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変奏曲

1 名前: 投稿日:2002年03月16日(土)13時38分58秒

季節のめぐりて
時すぎゆくとも
変はることなき永遠(とは)のしらべ
彼(かのと)は母
彼女(かのひと)は父
見よ
月失ひし太陽 虚ろに白日つくるを
太陽失ひし月 夜の闇に吠えるを
あまりの
輝きに
ふたつが共に空にあることを
禁じられしその日より
2 名前: 投稿日:2002年03月16日(土)13時41分31秒
後藤姉弟の話で、アンリアル。
年齢性別全く関係ありません。
エロあり。
嫌いな人はご注意下さい。

元ネタ有りなので、興味ある方は、探してみて下さい。
3 名前:桜の章  花言葉:あなたに微笑む 投稿日:2002年03月16日(土)14時09分47秒
ひどく桜の振る日であった。
2002年、4月。
土曜。午後三時。
公園の、平らになったところには花見客が大勢いてにぎやかだが
真希と市井が歩いているところは傾斜が急でひとがいない。
はじめて来る町のはじめて来る公園だった。桜が風に吹かれ、はらはらと額や唇に触れてくる。

「すごいね。桜吹雪だ。結婚式の予行練習みたいだね。」

真希と市井は婚約していた。仲人の家を訪ねた帰りに、ふと近所を散歩してみたのだ。
「そうだね。」
散ってゆく桜にはどことなく不吉さを感じていたが、真希は市井のことばを否定しなかった。
4 名前:桜の章  花言葉:あなたに微笑む 投稿日:2002年03月16日(土)14時10分31秒
「式ではやっぱり、例のキャンドルサービスなんてやつをやる?」
見合いをしたのは3ヶ月前。見合いしてすぐに結婚が決まった。式は4ヶ月先である。
「市井さんの好きなほうで。」
さっきから体がだるい。さっき、公園に来る途中で不意に息苦しい感覚に襲われ
全身が重くなっている。

「市井さんの好きなほう、って…。2人の結婚式なんだから。」
市井の顔にいくぶんか訝しむものが現れた。真希はごく軽く咳払いをし、
「式は私たちのことというより、親戚や世間に対しての儀式だから
市井さんのお家の趣味に合うのがいいと思ったの。」
声のトーンを上げて言った。
真希の声は、意識的にトーンを上げると、おだやかで明るい印象を聞く者に与える。
しごく単純で簡単な操作だ。
これだけのことで相手はおだやかで明るいという判断を下してくれるのだ。単純で簡単な判断を。
5 名前:桜の章  花言葉:あなたに微笑む 投稿日:2002年03月16日(土)14時11分21秒
「儀式なんだもん。できるだけ問題がないようにするほうがいいと思ったの。」
「ああ、そうだね。そうかもしれない。」
市井の表情もおだやかなものにもどった。
「だけど、きみ、それでいいの?」
急な勾配を下るために両手でバランスをとるふうにしてから、市井はつづける。

「結婚式には当然、希望がたくさんあっただろう?」
「希望って?」
「だって晴れ舞台だろう?結婚式って。」
「晴れ舞台…。」

結婚式。
市井との結婚式。
その日のことを想像してみた。

「そうね…。」
真希の語尾は窄んだ。なぜだろう。いかなる映像も頭に浮かばない。
「お義母さまの趣味にまかせるのがいいと思います。私はそれに従います。」
「へぇ。わりと従順なんだな。お勤め柄、さぞかし注文をつけると思ってたのに。
美術的観点からどうのこうの、とかさ。」
真希は大きな画材店に勤めていた。
「勤め柄なんて…。そりゃ、お店に来るお客さんにそういうひとは多いかもしれないけど。」
「ふぅん。でも、女の子って、小さいころから憧れてるじゃん、結婚式に。
ウエディングドレスのデザインがどうとかブーケがどうとか、教会はどこだとか。」
6 名前:桜の章  花言葉:あなたに微笑む 投稿日:2002年03月16日(土)14時13分19秒
「きみの友達はたくさん呼んでくれていいよ。」
真希が黙っていると市井は話をつづけた。
「新婦の友人というとたいてい着飾った女性がずらりとならぶだろう、華やかになっていいよ。」
「私の友人よりも市井さんおお家でおつきあいのあるひとを多く呼んだほうがいいわ。」
市井は会計士だった。市井の父親もそうである。伯父が医者。係累の多くはその総合病院と
なんらかのかたちで繋がる仕事に就いている。
真希の家は親戚づきあいをほとんどしないが、市井の家はそうではない。親戚のほとんどが
都内に住んでおり、ひとつの大きな家族のようにさかんに行き来がある。

「じゃ、リストアップはうちのほうにまかせてくれるかな。」
「うん。」
「あのさわがしい従姉妹どもも来るんだろうな。女子大に行ってるあの3人組。
着物をわざわざ作らせたとか言ってはじゃいでた。」
「華やかになっていいね。」
「華やかを通り越して、うるさいんだ、あいつらは。」
乱暴なことばづかいに、親しみの情が感じられた。
7 名前:桜の章  花言葉:あなたに微笑む 投稿日:2002年03月16日(土)14時17分51秒
「姉貴と、それから兄貴の嫁さん、これがあいつらに交じるともっとすごいんだぜ。
くだらないことを大声で言っていっせいに笑う。」
市井は自分のこともここまで気さくに他人に話してくれるのだろうか。

「女3人で姦しいんだから5人もそろったらうるさいのなんのって。それにときどき、お袋まで
交じる事があるからなぁ。」
計6人の女が集まったようすを、市井は歩きながら話した。
「よせばいのに親父とか兄貴が、またちょっかい出すんだ。」
目の前に張り出している桜の枝から花をひとつだけ摘む。それであごをくすぐるように
くるくるとまわした。
市井をまねて、真希も桜の花を摘んでまわした。市井が家族の話をするのを聞いているのは
好きである。そんなときの彼はきらきらするものを見せてくれているようだった。

「法事なんて、もう、祭りだよ。祭り。」
「たのしそう。」
そしてそのくせ、きらきらしたものを見せてもらった後、真希はいつもわけのわからない
焦りを感じた。
8 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月18日(月)04時48分40秒
面白そう。がんばって
9 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月08日(月)17時22分44秒
つづき、まだかなぁ〜。

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