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R。−娘。公道最速伝説−

1 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月20日(水)02時38分09秒
数々の名作を拝見し、自らも書きたいという衝動に駆られてしまいました。(笑)
初の作品ということで、至らない所も多々あるとは思いますが、温かく見守って頂ければ幸いです。

娘。メンバーを中心にしたモータースポーツものです。
どこかで見たようなストーリーになると思いますが、その辺はどうか目をつぶっていただきたく(^^;

よろしくお願いします。
2 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月20日(水)02時40分35秒
 ※注意※

この作品はフィクションです。実在の人物、団体などには、一切関係ありません。

    実際の運転では交通ルールを守って、安全運転に努めましょう。
3 名前:【Legend 1】 悪夢の金曜日 投稿日:2002年03月20日(水)02時43分07秒
<Friday Night>

埼玉県のM市、M峠を駆け下りる、赤いFD3S。
迫り来るコーナーを全て豪快なドリフトで進入、しかし正確にクリッピングポイントをついて
最速のラインで立ち上がって行く。


「さっすがー!やっぱ圭織さんに勝てるヤツなんかいないよね」
多くのギャラリーが集まる中、その様子をコース中盤、左ロングコーナーで見ていた少女、新垣里沙。

圭織さん―――赤いFDのドライバー、飯田圭織率いる“moonlight”は
地元K峠を制圧、新たに勢力を広げるため、隣接エリアのM峠に遠征して来ていた。

突然やってきた敵を迎え撃ったのは、M峠最速を名乗るチーム“Dandelion”。
しかし難関エリアのK峠を制覇した圭織のテクニックは素晴らしく、
ヒルクライムを挑んだオレンジのSW20のドライバー、小川麻琴があっさり敗北、
ダウンヒルバトル中のリーダー、黄色のEK9を駆る矢口真里も、じわじわと差を広げられていた。
4 名前:【Legend 1】 悪夢の金曜日 投稿日:2002年03月20日(水)02時45分49秒
「くそっ!なんなのよアイツ!上りも下りも速いなんて卑怯じゃんかっ!」
憎まれ口を叩いてみても、一向に圭織との差は縮まらない。それでも必死にアタックする
EK9のバックミラーに、一瞬、4つの光点が写った。

「・・・?」

始めは気のせいだと思った真里。しかし、光点はあっという間に大きくなっていき、
4つ目の左コーナーを立ちあがろうとする頃には、謎の車がぴったりと、真里のテールに貼りついていた。
5 名前:【Legend 1】 悪夢の金曜日 投稿日:2002年03月20日(水)02時47分10秒
「なっ、なんなの!?エースのヤグチが、こんなあっさり追いつかれるなんて?!」
動揺し立ちあがり加速の鈍る真里の左側に、スッと並び掛ける謎の車。

「くっ!誰だか知らないけど、地元でオーバーテイクされるわけにはいかないのよっ!」
短いストレートを並走する2台。そのまま、右タイトコーナーへアプローチを開始する。
いつものタイミングよりも、ワンテンポ遅らせてブレーキを踏む真里。
その直後、真里の視界の端に、一筋の閃光が走った。

「?!」
6 名前:【Legend 1】 悪夢の金曜日 投稿日:2002年03月20日(水)02時49分17秒
ただでさえ限界を超えたブレーキングで突っ込む真里に対し、
そのはるか奥にブレーキングポイントを取る謎の車。

「正気?!そんなスピードで、曲がれっこ…!」
真里は確信する。
『ぶつかる…!』

とっさの判断で、コーナリングのためのブレーキングから、車を止めるためのブレーキングに変更する真里。
横方向のグリップを失わない程度の、ギリギリの踏力でブレーキペダルを踏みつけた。

視界から消えつつある真里のEK9を横目で見ながら、3→2へシフトを放りこむ、謎の車のドライバー。
同時に、ステアリングを支えていた左手首を、下に引き込む。
直後その左手を上に跳ね上げると、ステアリングは一瞬で右へ1回転。

刹那、フロントウィンドウに映る景色が、真横に流れた。
7 名前:【Legend 1】 悪夢の金曜日 投稿日:2002年03月20日(水)02時51分23秒
真里の目前で、横を向く謎の車。
ステアリングを握る手に大量の汗が吹き出す真里が、
コーナーの外側で散り散りになって逃げ出そうとするギャラリーが、
この2台がクラッシュする映像を、脳裏に鮮明に映写した。

しかし次の瞬間、謎の車はそのままの姿勢でクリッピングポイントをかすめ、
外側のガードレールに触れるか触れないかのところでクリアした。
そこにいた誰もが今までに聞いたこともないような、咆哮を残して…
8 名前:【Legend 1】 悪夢の金曜日 投稿日:2002年03月20日(水)02時52分52秒
幸いにも、どこにもぶつけることなく切り抜けた真里は、コースサイドにEK9を止める際、
その先の左コーナーで一瞬にして姿を消す、謎の車の姿を目にした。
汗で濡れた右手でターンバックルを外し、震える左手で目に溜まった涙を拭いながら、
真里はぽつりと呟いた。

「夢でも…見てるの?悪い夢…。」
9 名前:【Legend 1】 悪夢の金曜日 投稿日:2002年03月21日(木)01時04分54秒

一方、先行していた圭織のFD3Sにも、謎の車の影が忍び寄って来ていた。
「…カオリはそう簡単には抜かせないよ」
ミラーでその存在、そのテクニックを感じ取っていた圭織は、右足を床まで踏みつけた。
13B−REWの叫びと共に、フル加速するFD3S。謎の車の影が、みるみる小さくなる。

残り少なくなったM峠のコーナーを、地元の人間が今まで見たこともないようなスピードで
次々とクリアしていく2台。
FDが派手なドリフトで進入すれば、謎の車は最小限の舵角で無駄のない4輪ドリフトで追う。
コーナーの立ち上がりでFDが引き離せば、謎の車がコーナーの進入で追い込む。

両車の間隔はつかず離れず。決定的な差を生み出すことなく、バトルは終盤を迎えていた。
10 名前:【Legend 1】 悪夢の金曜日 投稿日:2002年03月21日(木)01時06分16秒

先行するFDの圭織。しきりにバックミラーを気にしながら、圭織は一つの確信を得ていた。
「…確かに突っ込みでは追い込まれるけど、立ち上がりはこっちの方が上。
 このままのペースで行けば…抜かれない。」

短いストレートを疾駆する2台。左手には“ようこそM山へ”の大きな看板が見えた。
この先の左中低速コーナーを、このままの位置関係でクリアすれば、圭織の勝利である。

コース前方のポールに、数字の1(峠の起点=最終コーナー)が記されているのが見えた。
コース右側にマシンを寄せ、最後のアプローチ。
その前に、後車の位置を確認しようと、圭織がバックミラーを見る。
軽く笑みを浮かべているほどだった圭織の表情が、一瞬にして凍りついた。

『!!あいつが…いない?!』
11 名前:【Legend 1】 悪夢の金曜日 投稿日:2002年03月21日(木)01時09分22秒

ゴール直前、最後のコーナーに進入する直前。
的確なブロックラインを描くため、敵車の位置を確認しようとした
FDのバックミラーには、何も映っていない。
表情が一変し、瞳孔が開く圭織。慌ててその眼で左のドアミラーを見ようと視線を移す。
直後、戦慄が走った。

「う、うあああああっっ!!」
さっきまで後ろにいたはずの謎の車が、今、自分の真横にいる。
圭織はブレーキをギリギリまで遅らせ、なんとか先頭を守るために対処しようとするが
いつの間にかイン側に入られた謎の車によって自由を奪われた彼女に、もはや打つ手はなくなっていた。

最後の最後、勝利を自慢するかの様に、派手なアクションのドリフトで、最終コーナーをクリアしていく謎の車。
その車の左サイドウィンドウの中に、圭織は自分を打ち負かしたドライバーの横顔を見据えていた。
12 名前:【Legend 1】 悪夢の金曜日 投稿日:2002年03月21日(木)01時10分23秒

看板の横を走り抜けた後、減速することなく走り去っていった謎の車を見ながら、
圭織はFDをコース脇に止める。
静まりかえるギャラリーの中、FDから出てきた圭織は、後方からやって来る
真里のEK9のエギゾーストサウンドに気付いた。

「あんな腕の立つヤツ温存するなんて、カオリもなめられたもんだね」
EK9から降りてきた真里に向かって、圭織は皮肉っぽく言い放った。
「し、知らないよ!あんなヤツ!…うちらだって、初めて見たんだ。
 あんな形した車、今まで見たことないよ…」
再びM峠に静寂が走った。
13 名前:【Legend 1】 悪夢の金曜日 投稿日:2002年03月21日(木)01時12分23秒
「…二つだけ、わかったことがある。」
圭織は、真里やギャラリー達の方を見て、不敵な笑みを浮かべながら言い放った。
「アイツは、誰よりもこのコースを知りつくしている。今のアンタ達なんか、目じゃないくらいにね。
 そして、アイツは…」
謎の車が走り去った方に、厳しい表情で向き直る圭織。そして一言、呟いた。

「女だ。」

   …continued on 【Legend 2】
14 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月21日(木)01時16分40秒
第1話、更新終了しました。

ご意見・ご感想などあればお願いします。
15 名前:名無し娘。 投稿日:2002年03月21日(木)10時57分15秒
つかみと言う事も有ってか、スピード感のある読みやすい文章ですね。
この手の話はどうしてもアレを思い起こしますが、どう考えても
謎の車はトレノじゃ無いでしょうから、その辺がキモになりそうですね。
クルマが速いのか、ドライバーが尋常じゃないのか気になります。
16 名前:3105 投稿日:2002年03月21日(木)16時33分29秒
車が出てくる話は好きなので頑張って続けて下さい。
謎の車が何なのかヒジョーに気になります。
17 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月22日(金)01時49分05秒
おお、レスがついている・・・
やっぱり嬉しいモノですね、ありがとうございます!

>名無し娘。さん

  素晴らしいお褒めのお言葉、ありがとうございます!
  やっぱり・・・思い出しちゃいますよね、ト○ノ(笑)

  とりあえずあの話から遠ざけよう、遠ざけようとはしてるのですが・・・


>3105さん

  ありがとうございます!
  良かった、車ネタはうけないものかと思っておりました(^^;
  謎の車・・・「センスがない」と言われないことを祈りたい・・・<車選び
18 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月22日(金)01時53分55秒
というわけで、引き続き第2話を一気に公開したいと思います。

つたない文章ですが、お付き合い下さいませ。
19 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)01時56分21秒
<Saturday>

昨晩M峠を掛け抜けた“謎の車”の話題は、瞬く間に市内の走り屋達に広がっていた。
・・・一番精力的に広めているのは、ある一人のしゃべり好きな女なのであるが。。。
20 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)01時57分24秒
「…わかった、わかったからちょっと落ち着けや、真里。」
ここはM市のとあるショップ「Hello! Racing Factory」(通称「HRF」)。
ストリートからサーキット、ジムカーナなど様々なステージのチューニングを一手に引き受ける
市内では、いや近隣エリアにおいても結構有名なショップである。
21 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)01時58分57秒
そして、興奮する真里の話をなんとか抑え込んだ、関西弁の男。
彼こそがこのショップのオーナーメカニック、寺田光男。

彼は若い頃関西からM市に移り住み、このHRFで一生懸命に修行を重ねていた。
3年前に前オーナーが亡くなり、その一生懸命さで彼に惚れ込まれていた寺田が現在、
前オーナーの遺志を継ぎ、2代目として経営しているのである。
地元の走り屋達には“おっちゃん”の愛称で親しまれている。

・・・まだ30代前半という若さにも関わらず。
22 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時00分09秒
「まぁまぁ、ジュースでも飲んで落ち着けや。ほれ。」

突然やって来て、ピットでギャーギャー騒ぐ真里をなんとかなだめ
店の事務所に連れて来た寺田は、つなぎのポケットから小銭を取り出し
真里と、一緒に来ていた麻琴に、ジュースを買って差し出した。

「んく、んく、んく・・・・・・ぷはー!でさぁ、きーてよきーてよ!」
「・・・お前なぁ、おごりやからって、もーちょっと大事に飲まんかい。。。」
取り出した煙草に火をつける前にしゃべり始めた真里に呆れながら、
寺田は真里の話に耳を傾けた。
23 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時02分15秒
「・・・とゆーわけなのよ。おっちゃん、なんか知らない?」
「なんか知らんか、って言われてもなぁ。お前らのおかげで
 ここらへんにはお前らみたいな走り娘。がぎょうさんおるしなぁ・・・」
灰皿片手に、事務所の換気扇の下で煙草の煙をくゆらせながら、寺田はぼそっと呟いた。

このエリアは、女ながらにエースを名乗っている真里や麻琴に憧れて走っている少女達がとても多い。
昨夜の圭織を始め、隣接エリア・県外エリアにも名のある少女達が多くおり
近辺の走り屋達は、そんな彼女達のことを“走り娘。”と称しているのである。
24 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時03分11秒
「大体女同士、お前らのネットワークの方が引っかかりやすいんちゃうか?」
「それで引っかからなかったら、こうしておっちゃんに聞きに来たんじゃん。」
「ん。まぁ、そらそうやなぁ。…白い車の、めっちゃ速い、女、ねぇ…」
「む〜、M峠歴10年以上のおっちゃんでも知らないかぁ…」

それっきり、3人は黙り込んでしまった。
25 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時04分10秒
一方。
M市の中心部近くに位置する、市立M高校。
学力は中の上クラス、インターハイの常連に軒並み名を連ねる運動部の活躍で
県内でもかなり人気の高い高校の一つである。

この日は、夏休みを前にして終業式が行われていた。
26 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時05分21秒
校舎の4階、その一番端に位置するクラス、3年D組。
「高校生活最後の夏休みを、1分1秒無駄にすることなく有効に活用して…」
教壇では、グレーのスーツをパリッと着こなした担任の女教師が、お決まりの文句を口にしている。

教室を見回しながら話し続けていた担任の言葉が、ある一点を見るなり、止まる。
安易に原因を悟った生徒達が振り返ったその視線の先には、一人の女子生徒が
机に突っ伏して気持ち良さそうに寝ていた。

ふぅ、とため息を一つ吐いた担任、つかつかとその生徒のもとに歩み寄ると
手のひらにはぁ〜、と息を吐きかけ、生徒の背中に向かって打ちつけた。
27 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時06分37秒
「い、いってぇぇっ!!」

あまりの痛さに飛びあがる女子生徒。途端にどっと沸く教室。
「吉澤ぁ!アンタが一番しっかり聞いてなきゃダメでしょうが!!」

鋭い目つきで担任に睨みつけられた、“吉澤”と呼ばれた生徒―――吉澤ひとみは
痛めた背中をさすりながら、苦笑いで返すことしか出来なかった。
28 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時07分41秒
「よっすぃ〜、大丈夫?」

終業式を終えて、教室を後にする生徒達の中。
鞄を持って立ちあがったひとみの後ろから、甲高い女子生徒の声がした。
「ああ、梨華ちゃん。」
ひとみが振り向くと、そこには細身のかわいらしい女子生徒―――石川梨華が
心配そうな顔をして立っていた。
29 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時09分01秒
「まったく、よっすぃ〜の居眠りぐせは、いつまでたっても治らないね。」

下校途中、駅へ向かうひとみと梨華。途中ファーストフード店で買ったドリンクを飲みながら
梨華は呆れたように言い放った。

「だってさぁ、人間眠い時はどう頑張ったって眠いんだよ。くせじゃなくて、自然なことなの、自然なこと。」
ハンカチでパタパタと仰ぎながら、ひとみはオーバーなアクションで訴えた。
「それを圭ちゃんってば…あんな起こし方することないじゃん。まだ痛いよ、もう!」
「よだれ垂らしてまで爆睡してたら、保田先生じゃなくたって怒るよ・・・」
「。。。」
30 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時09分55秒
「大体よっすぃ〜は、ちょっと自覚が足りなさすぎだよ。もう高校最後の夏なんだから
 いろいろとやらなきゃいけないことだってたくさんあるんだし、それに…」

梨華はM高内でもトップの成績を誇る生徒で、クラスでも委員長を任せられている。
そのためか、ひとみのような生徒を見るとどうしても説教臭くなってしまう。
梨華にとっては、ひとみが相手だからこそ、という想いがあったりもするのだが。

ひとみとしても、その想いを嬉しく感じている面もあるのだが、説教は苦手である。
制服の裾をバタバタさせて暑さを凌ぎながら、梨華の話を適当に頷きながら聞いていた。
31 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時11分07秒
そんな2人が駅に近づくと、クラスメート数人がゲームセンターの前でたまっていた。
「あれ、何してんの?みんな。」
「おっ!ひとみ、いいところに来た♪これからカラオケ行くんだけど、あんたも来ない?」
「そうだねぇ・・・行こうか。梨華ちゃんも行こうよ。」
「ちょ、ちょっとよっすぃ〜、人の話聞いてた??高校最後の夏休みだって・・・」
「カタイこと言わない。高校最後の夏だからこそ、思いっきり楽しもうよ。」
「その通り!ひとみ、いいこと言った!さぁさぁ、委員長も一緒に楽しむよ!」

梨華は、ひとみとクラスメート達に担ぎ上げられるようにして、カラオケボックスへと連行されていった。
「えぇ〜。。。よっすぃ〜。。。みんなぁ〜。。。」
32 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時14分03秒
その頃、HRFの事務所では。
冷房が程よく効いた事務所の中、真里のケータイがけたたましく鳴り響く。
「もしもし?ああ、はいはい。どしたの?・・・うん、うん・・・はぁ?何それ?!
 わかった!今すぐ行くから、待たせといて!!」

不機嫌な表情で乱暴に電話を切った真里。その様子を見て緊張する麻琴に向かい
「moonlightのヤツが来たって。飯田圭織が『昨日のヤツと1対1で勝負させろ』って言ってるらしい。
 行くよ!麻琴!!」
すっくと立ちあがって怒鳴る真里。麻琴もあわてて真里の後を追いかける。
「あ、おっちゃん、また今度来るから、何かわかったら教えて!あと、ジュースありがと!」
あわただしく出ていく2人を、苦笑いしながら見送る寺田。向き直って窓を開け、
真夏の真っ青な空に向かって煙を吐いた後、ぽつりと呟いた。

「M峠の白い悪夢、か。ずいぶんと懐かしい名前、思い出してもうたなぁ・・・」
33 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時15分27秒
真里と麻琴が乗ったEK9が峠のふもとに着くと、赤の180SXの前にいる里沙と、
“Dandelion”のチームメート達が真っ向から対立していた。

「で、何の用かしら?変な邪魔が入ったからしきり直す、っていうなら、別に受けてあげてもいいけど?」
間に立った真里がふてぶてしく里沙に言い放つ。里沙はそれに、不敵な笑みを浮かべながら言い返した。
「もはやアンタ達に用はないの。私達が会いたいのは、その変な邪魔をしたドライバーよ。」

用はない。その言葉に表情が一変する真里。それを嘲笑うかのように、里沙は続けた。
「来週金曜の夜、白い車のドライバーに、圭織さんとの1対1のバトルを申し込むわ。
 コースはここ、M峠の下り1本勝負。」
34 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時17分52秒
苛立ちの声をあげる“Dandelion”のメンバー。
「…アンタ、ずいぶんと自分勝手なことばかり言うわね。他人のホームコースで、誰に断るでもなく
 得体の知れない相手とバトルしようって言うの?」
「だからこうして、コースを貸してよって頼みに来たんじゃない。それともあれ?
 よそ者にコースレコード出されるのが、そんなに怖いの?」

怒りで身体が震え出す真里。下唇を噛みしめ、手のひらに爪が食い込まんばかりに拳を握りしめる。
「まぁ、逃げるんなら逃げるでいいけどね。『M峠の走り娘。は腑抜け』ってエリア中に流れるだけだから。ははっ♪」
そう笑って180SXに乗りこもうとする里沙に、真里が里沙に指を指しながら言い放つ。
35 名前:【Legend 2】 最後の夏休み 投稿日:2002年03月22日(金)02時20分20秒
「・・・待ちなさいよ。待ちなさいよアンタ!・・・わかったわ、来週の金曜ね、伝えておくわ。
 楽しみにしてなさい・・・!当日はアンタ達のその無駄に伸びた天狗っ鼻、思いっきり
 へし折ってやるから!」
その言葉をふん、と鼻であしらった里沙は、180SXのリアタイヤを派手にスピンさせて
市内へと消えていった。

「ど、どーするんですか?!真里さん!!あの白い車がどこの誰か、まだなんにもわかってないのに・・・」
勢いに任せて言い放った真里の言葉に、麻琴がうろたえるのももっともである。
しかし真里は麻琴の言葉も聞かず、里沙の走り去ったあとを見つめていた。
「なんとかしなきゃ・・・。M峠のみんなのためにも、なんとかしなきゃ・・・!」

…continued on 【Legend 3】
36 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月22日(金)02時23分41秒
以上、第2話更新終了です。
嗚呼、話がどんどんあっちへ寄っていくような・・・(w

ご意見・ご感想、お待ちしております。
37 名前:3105 投稿日:2002年03月22日(金)15時00分34秒
また見に来ちゃいました。
謎の車の正体楽しみにしています。
38 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月23日(土)04時37分07秒
レスありがとうございます!
いろいろやってたらこんな時間に・・・(^^;


>3105さん
  ありがとうございます!
  凄い励みになります・・・そのお言葉。
  謎の車の正体・・・これからドカーンと(笑)

それでは、これから第3話、半分だけ公開します。お付き合い下さいませ。
39 名前:【Legend 3】 M峠の白い悪夢 投稿日:2002年03月23日(土)04時39分45秒
<Monday>

M市内にある、とある小さな雑貨店。
そのレジカウンター裏で、バタートーストを口にくわえ、スニーカーの紐を締めるひとみの姿。
カウンターに座り、スポーツ紙を広げながらその様子を見ていた女性が、声を掛けた。

「なんやひとみ、どこ行くのん。」
綺麗な金色のショートヘア、くわえ煙草に、関西弁。この雑貨店のオーナーでありひとみの姉、中澤裕子。

裕子とひとみは、裕子の母親とひとみの父親が再婚して成立した、10歳以上も歳の離れた姉妹である。
最近、双方の親が再び離婚してしまったため、ひとみは既に独立していた裕子の元に身を寄せ、
現在2人暮しをしている。
40 名前:【Legend 3】 M峠の白い悪夢 投稿日:2002年03月23日(土)04時41分15秒
「んー、ひはひゃんひ(梨華ちゃん家)。」
「…アンタ、ちゃんと食べ切ってから表出てな。。。晩ご飯どうするん?」
「モグモグ…ゴクン。んー、たぶん梨華ちゃんと一緒に食べてくるよ。」
2つに割いたトーストの半分を飲み込んでから答えるひとみ。と同時にもう半分を口に放りこむ。

「そか。気ぃつけてな。梨華ちゃんにあんま迷惑掛けるんやないで。」
「はんはほほへ(なんだよそれ)。モグモグ…ゴクン。ふぅ。んじゃ、行ってきます。」
もう半分のトーストを飲み込んだひとみは、バッグを担ぐと元気に外へ飛び出していった。
41 名前:【Legend 3】 M峠の白い悪夢 投稿日:2002年03月23日(土)04時42分38秒
「よし!カンペキ♪」
キッチン全体に、甘いバターの香りと、梨華の明るい声が響き渡る。
今日は、梨華の家でひとみと2人、勉強会を開くことになっている。
まあ、勉強会とはほとんど2人っきりになるための口実でしかないのだが。
梨華はやって来るひとみのために、たくさんのクッキーと紅茶を準備して待っていたのである。

―――ピンポーン。
クッキーを皿に盛りつけ終わったと同時に鳴り響く、ひとみの到着を知らせる電子音。
梨華は身につけていたピンクのエプロンを椅子に掛けると、パタパタと玄関に駆け出した。
「はーい!待っててー!」
42 名前:【Legend 3】 M峠の白い悪夢 投稿日:2002年03月23日(土)04時45分16秒
「…ヒマやなぁ」

夏休みに入ったというのに、客足はいつもとあまり変わらない裕子の雑貨店。
昼過ぎにちょこちょこと来客があった時以外は、実に退屈な時間を過ごしていた。
「今月もまた大変やな…」
裕子が虚空を見つめ、くわえ煙草で今後の生活のやりくりについて考えていると、
カウンターの上にある店の電話が鳴り響いた。

『ひさしぶりやなぁ』
「…なんや、寺田か。」
『おっ。声聞いただけでわかるとは。なんやオレも愛されてるんちゃうん?』
「何言うてんの。この辺で関西弁使う人間なんて限られてるわ。」
電話が繋がるや否や始まった、まるで夫婦漫才のような問答。
43 名前:【Legend 3】 M峠の白い悪夢 投稿日:2002年03月23日(土)04時46分45秒
「ところで。お前いつの間に現役復帰してたんや?」

所変わって、HRFの事務所。寺田は事務仕事をしながら、裕子に電話していた。
「こないだうちの客で、お前に抜かれたって大騒ぎしてたやつがおってな。
 なんや今、峠ではちょっとしたブームになってるらしいやんか。」
寺田は懐かしい声を聞きながら、昔の思い出を巡らせていた。
44 名前:【Legend 3】 M峠の白い悪夢 投稿日:2002年03月23日(土)04時49分21秒
『へ?何言うてんの。うちはとっくの昔に現役やめたんやで?あれから峠には行ってへんよ。』
電話の向こうで裕子が否定する。

「…なんや水臭い。昔一緒に走った仲やんけ。そんなん隠すことなんかないやろ。」
『だから隠すも何も、うちはだいぶ前から峠には行ってへんって。』
「嘘いうなや。ここらへんであんな車乗りまわしてるヤツ、おまえしかおらへんやろ。」
『ああ、あれか…。あれは…あ、いらっしゃいませ〜。すまん、お客来たからまた今度な。じゃ』
そう言って裕子は、一方的に電話を切ってしまった。

「…なんやアイツ。30近くなって峠走ってるんが、そんな恥ずかしいんか…?」
聞いてないからいいにしろ、そんなことは本人にとって余計なお世話である。
45 名前:【Legend 3】 M峠の白い悪夢 投稿日:2002年03月23日(土)04時50分44秒
「ん…」
部屋に差し込む夕日が眩しくて、目を覚ましたひとみ。
伸ばした左腕の上では、梨華が気持ち良さそうに眠っていた。
「梨華ちゃん…」

勉強会はやはり名ばかりとなり、梨華の焼いてくれたクッキー片手に、話に花を咲かせた2人。
いつしか2人は一緒に夢の世界に旅立っていた。
ひとみのために気合いを入れて早起きした梨華は、まだしばらく起きる気配もない。

ひとみはベッドから起きて、テーブルの上のクッキーを1枚口に放り込む。
冷めてしまった紅茶でそれを流し込むと、ベッドに戻って、梨華の額にそっと口づけした。
一瞬、梨華の寝顔がほころんだ様に見えた。

ひとみは梨華の隣に身体を滑り込ませ、梨華の頭を抱え込むようにして、再びまどろみの中へ身を投じていった。
46 名前:【Legend 3】 M峠の白い悪夢 投稿日:2002年03月23日(土)04時52分10秒
すっかり日も落ち、閉店間際となったHRF。
高く上がったリフトの上では、真里のEK9が下回りのチェックを受けていた。

「さっすがおっちゃん!で、その人はどこにいるの?」
仕事上がりらしくスーツを着こなした真里が、まくしたてるように寺田に聞く。
寺田から一報を受けた真里は、同僚からの食事の誘いを断ると、
終業と同時にEK9に鞭を入れてHRFにやって来たのである。

「まぁまぁ、落ち着けや」
そう言って寺田は、自販機から取り出したウーロン茶を真里に放り投げた。

「いや、これは10年も前の話なんやけどな…」
47 名前:【Legend 3】 M峠の白い悪夢 投稿日:2002年03月23日(土)04時53分13秒
「“M峠の白い悪夢”って呼ばれてた女がいたんや。」
自分のデスクに座り、煙草に火をつけた寺田は、上り行く煙を眺めながら話し始めた。

「俺達が走ってた頃、どこからともなく白い4WDの車がやって来てな。
 地元では誰も見たこともなかった車が、地元の誰よりもぶち切れたコーナリングで連戦連勝。
 そのドライバーがまだ20歳にもなってない女で、俺達はめちゃめちゃショックを受けたもんや。
 俺達はその人間業やないドライビングスタイルと、若いくせに気の強いしゃべりに皮肉を込めて
 “M峠の白い悪夢”って呼んでたんや。」

そう言うと寺田は、壁際にある書類棚から1冊の写真集を取り出して真里に見せた。
48 名前:【Legend 3】 M峠の白い悪夢 投稿日:2002年03月23日(土)04時58分45秒
「お前等がやられたん、これの真っ白いヤツやろ?」
「…!そう!これ!4つ目ライトの白い車!」

白いボディに赤・紺・水色のラインが入ったハッチバックマシンが、土煙を巻き上げて激走する写真や
断崖絶壁の上の峠道を疾駆する写真を見て、大きな声を張り上げる真里。
その真里の声を聞いた寺田は、窓の外を見ながら呟いた。

「ランチア・デルタ・インテグラーレ。10年前のWRCを戦ったラリーカー。そのベースマシンや。」


...continued on 【Legend 4】
49 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月23日(土)05時02分37秒
…というわけで、半分だけの予定だったのですが
勢いで第3話、更新してしまいました(笑)
こんなペースで大丈夫か??自分(^^;

謎の車も早くもバラしてしまいました(w
知ってる人、いるかなぁ・・・?

率直なご意見・ご感想、お待ちしております。
50 名前:☆修正☆ 投稿日:2002年03月23日(土)05時17分15秒
>>48 寺田の最後のセリフ

×「ランチア・デルタ・インテグラーレ。10年前のWRCを戦ったラリーカー。そのベースマシンや。」

○「ランチア・デルタ・インテグラーレ。10年前のWRCを戦ったラリーカー。
  M峠の白い悪夢が乗ってるのは、そのベースマシンや。」

に修正してお読みください。
51 名前:近くで似たようなのを書いてる人。 投稿日:2002年03月23日(土)13時48分40秒
ども、始めまして。
デルタですか。いいところ突いてますね。
というか…


ちぃ〜先に使われた!!!


って悔しがってますが(笑。

…いいもん、ほかにもランチアはあるからさ(泣

ということでよろしくです。(←何がや
楽しみにしてるから、放置しないでね。
52 名前:3105 投稿日:2002年03月23日(土)21時09分27秒
ランチアですか・・・渋いっすね。
つーかマニアックですね(笑。
好きですよこーゆー渋い趣味。
続き楽しみにしております。
53 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月24日(日)02時22分50秒
毎度、レスありがとうございます!

>近くで似たようなのを書いてる人。さん

  スレ汚しなどととんでもない!レスありがとうございます!
  って、まさかデルタがかぶるとは…(^^;

  近くでデルタが出そう(だった)話ですか…
  どれだろ?教えて下さいませんか?(笑)

>3105さん
  
  いつもありがとうございます!
  マニアック…確かに(笑
  ト○ノに対抗できるマニア度を追求したら・・・(w

それでは第4話を半分(今回は本当に半分^^;)更新します、お付き合い下さいませ。
54 名前:【Legend 4】 お客の来ない雑貨店 投稿日:2002年03月24日(日)02時24分24秒
<Tuesday>

夕暮れに包まれるM市、その商店街の端にある雑貨店。
裕子の雑貨店のカウンターには、今日はひとみが座っている。
裕子が所用で得意先を回っているため、ひとみはその留守番をしていた。

「…しっかし、相変わらずヒマな店だなぁ。。。」
透明なショーケースの向こうを行き交う人を見ながら、ひとみは一人、頬杖をついて呟いていた。
その時、木製のドアがキィ、と開き、スーツ姿の一人の少…女性が入って来た。

「あ、いらっしゃいませ〜」
55 名前:【Legend 4】 お客の来ない雑貨店 投稿日:2002年03月24日(日)02時26分42秒
「ごめんください、こちらに中澤裕子という方は…」
小さなメモを片手に持って入ってきたのは、真里だった。寺田に教わった名前と場所を頼りに
仕事が終わってからこの店へとやって来たのだった。

「あ、えっと、今ちょっと外出してるんですけど…」
真里の姿を見たひとみは、そう言った後固まってしまう。
―――う、うわっ…なんかすっごいカワイイ人だなぁ…―――

「あ、そうなんですか、どうしよ…」
ひとみの姿を見た真里は、そう言った後固まってしまう。
―――わ、わぁ…なんだかすごくキレイな子…―――

目を合わせたまま動かない、動けない2人。
お互いが目を合わせたまま、微動だにせずに立ち尽くしている。
その時、木製のドアがキィ、と開き、裕子が入って来た。

「あ、お客さん?いらっしゃい。」
56 名前:【Legend 4】 お客の来ない雑貨店 投稿日:2002年03月24日(日)02時27分55秒
はっ、と我に帰る二人。パッと目線を外した真里は、
「あっ。。。す、すいません、また明日来ます!」
と言って、ものすごい勢いで出て行ってしまった。

「…なんやあのコ。変なコやなぁ。何してたん?アンタら。」
裕子の問いかけに動揺しながら答えるひとみ。
「え?あ、いや…別に。って、あっ!あの人アネキに用があって来てたのに!」
「…って、帰ってしもてるやん…」
2人は真里が去っていったドアの方を見つめていた。
57 名前:【Legend 4】 お客の来ない雑貨店 投稿日:2002年03月24日(日)02時32分54秒
<Wednesday>

M市の中心部にある、○○デパート。
ひとみは、裕子に頼まれた買い物をしにやって来ていた。

本来なら梨華が一緒にいてもいいはずだが、彼女は学習塾の合宿で出掛けてしまっていた。
大量の荷物を引きずりながら、メモを確認するひとみ。
ふと裏を見ると、裏にもびっしりとメモ書きがされていた。

「…あのバカアネキ、帰ったらタダじゃおかねーぞ…」
58 名前:【Legend 4】 お客の来ない雑貨店 投稿日:2002年03月24日(日)02時35分08秒
一方その頃、裕子の雑貨店。
相も変わらず客はまばらで、裕子は暇な時間を過ごしていた。
しばらくして、汗だくで帰って来たひとみからマシンガンのように打ち出される文句を何とかなだめて
部屋の奥へ追いやると、夕日が降り注ぐ店の前で煙草に火をつけた。

そこへ、黄色いEK9がやって来る。
裕子の前で止まったEK9から、スーツ姿の真里が降りて来た。

「中澤…裕子さん……ですか?」
59 名前:【Legend 4】 お客の来ない雑貨店 投稿日:2002年03月24日(日)02時36分04秒
「そやけど…アンタ、誰?昨日はとっとと帰ってもうたけど。」
3分の1になった煙草を踏みつけた裕子は、真里の目を見据えて言った。

「あっ…すいません、昨日はちょっとビックリしちゃって…。あたし、矢口真里といいます。
 おっちゃ…HRFのオーナーに紹介されて来たんですが。」
「…アンタか。寺田のとこで騒いだ客って。しっかしカワイイ顔してんなぁ♪ウチの彼女にならへん?」
裕子は立ち上がると、真里の顎を持ち上げて顔を近づけた。

「きゃ、きゃぁっ!!ななな、何するんですかっ?!」
真里は慌ててその手を払い、後ろに飛び跳ねた。周りの人に注目を浴び、真っ赤になる真里。
「ジョーダンやがな、ジョーダン…」
60 名前:【Legend 4】 お客の来ない雑貨店 投稿日:2002年03月24日(日)02時37分00秒
「単刀直入に言います。今度の金曜の夜、M峠でバトルして下さい!」
店内に招き入れられた真里は、開口一番、裕子に頼み込んだ。

「…ん〜、そんなこと言われてもなぁ…。ウチはだいぶ前に走るのやめたから、もう走り方忘れてもうたわ。
 それに、毎日この店開かなあかんから、あんまり夜遊び出来へんのよ。年やしね…」
「そんな…あんな走り、今のうちらじゃ誰も出来ません!それに………」
言いながら店を見回す真里。それに気付いた裕子は首を小さく横に振りながら言った。
「……………言うな。それ以上言わんでいい……………」
61 名前:【Legend 4】 お客の来ない雑貨店 投稿日:2002年03月24日(日)02時38分14秒
「とにかく!今のウチに頼まれてもそれは出来へん。アンタらと混ざって走るなんて出来るかいな。」
裕子はそう言って店の奥に隠れてしまった。
店内に一人残された真里。しばらく俯いていたが、奥に聞こえるように大きな声で言った。
「あたし、また来ます!裕子さんに“うん”と言ってもらうまで、明日もあさっても来ますから!」
そう言って真里は店を後にした。

「まいったなぁ…あんなカワイイ女のコの頼み、断るなんて性に合わんわ…
 “付き合ってくれ”って言うのなら即OKしたるねんけどな…♪」
裕子は鼻の下を伸ばし、気持ちの悪い微笑を浮かべていた。
62 名前:【Legend 4】 お客の来ない雑貨店 投稿日:2002年03月24日(日)02時39分13秒
その様子を、2階の自分の部屋で聞いていたひとみ。
沈痛な面持ちでEK9に乗りこむ真里を見て、ひとみは呟いた。

「あの車、あんな人が乗ってたんだ…」


...continued on 【Legend 5】
63 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月24日(日)02時44分21秒
嗚呼、またも有言不実行(w
思っていたよりも短かったので、全部あげてしまいました…(^^;

ご意見・ご感想、どうぞお気軽にお寄せ下さいませ。
64 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月25日(月)00時35分10秒
後藤は出ないんでしょうかね・・・?
65 名前:名無し娘。 投稿日:2002年03月25日(月)00時55分16秒
さぁ出るクルマ以外どんどんアレに近づいていくのが怖いですねぇ(w
しっかしデルタ!渋っ。デルタと言えばカンクネン
日本人的にはGT-Fourのサインツなんでしょうけども(w

実は謎のクルマはTOYOTA-2000GTでした!・・・有り得ない(^^;
66 名前:名無し娘。 投稿日:2002年03月25日(月)01時01分44秒
実は後藤のクルマがランチャ・ラリーで・・・(w
やっぱFRでドリドリじゃないと燃えないでしょー(妄想中)
67 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月25日(月)01時34分05秒
裕子伝説も読みたいYO!
68 名前:近くで似たようなのを書いてる人。 投稿日:2002年03月25日(月)02時13分00秒
かぶったと言っても、サイドストーリーで出そうと思ってたので。
メインはレイナードとかのなので(笑
ランチア…実はかなり好きなメーカーなので、違う車種でお茶を濁す予定です。

…でも4駆は卑怯でしょ(笑。

69 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月25日(月)02時56分18秒
おおっ!!5つもレスがついている!!(涙
みなさん、ありがとうございます!!


>名無し読者さん

  後藤、出します、出させます(笑
  ちょっと先になると思いますが・・・その時までどうか末永いお付き合いをば(w

>65 名無し娘。さん

  嗚呼、それを言わないでくれぇぇ(w
  実は謎の車、デルタかセリカ(ST185)で迷ったという裏話を持ち出してみたり(笑

  2000GTで峠ですか・・・自分は回避の方向で(ww

>66 名無し娘。さん

  ら、ランチアvsランチアですか??
  すっげー熱いけど・・・ついて来られる人が激減しそうだ(爆

  FRドリ、楽しいっすねぇ♪
  この間仲間の車に同乗してきました(笑
70 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月25日(月)02時56分55秒
>名無しさん

  来たっ!サイドストーリーのご要望(笑
  考えております♪落ちついたら書いてみようと思いますので、
  その時までよろしくお願いします♪

>近くで似たようなのを書いてる人。さん

  ああっ!やっぱアレか!(w
  いや、以前から読ませて頂いておりました(ww
  次回からコテハンでレスさせて頂きます♪(笑

  …うん、自分でもそう思う(笑 ←4駆は卑怯
  だからパワーは出来るだけ・・・(爆


というわけで、これより第5話更新します♪
今回は、マジで半分だけ(w
71 名前:【Legend 5】 峠のプライドvs貞操 投稿日:2002年03月25日(月)02時58分28秒
<Friday>

「もう立派に常連さんやね…」

裕子の雑貨店には、裕子とひとみと…真里。一昨日から1日も休むことなく、真里はこの店にやって来ていた。
「…お願いします。今夜、M峠を走って下さい。下りの1本でいいんです。お願いします!」
小物を何点か買ったその代金を払いながら、真里は裕子に頼み込んでいた。
しかしお釣りを渡し「ありがとうございました〜」と言うだけで、裕子は他に何も言葉を発しない。
72 名前: 【Legend 5】 峠のプライドvs貞操 投稿日:2002年03月25日(月)03時15分26秒
「アネキ、行ってあげなよ。これだけ来てくれてるのに…」
その様子を見ていたひとみが、商品棚を拭きながら裕子に物申す。
ばつが悪そうに微笑みかける真里に、裕子の睨みもお構いなしに照れてしまうひとみ。
そんな2人をずっと黙って見ていた裕子だったが、ふと思い切ったように話し始めた。

「…しゃーないな、ほんなら、交換条件といこか。」
73 名前:【Legend 5】 峠のプライドvs貞操 投稿日:2002年03月25日(月)03時18分16秒
「ウチと1日デートしてや♪そんなら走ってあげてもええで♪」

「え、えぇっ?!」
「は、はぁっ?!」

裕子のとんでもない頼みに、真里とひとみは同時に声を上げてしまう。
「…なんでひとみが驚くん?ウチとこのコがデートするのが、そんなにうらやましいん?」
「ばばば、バカなこと言ってんじゃねーよっ!!」
不敵な笑みを浮かべる裕子の視線を受け、ひとみは激しく動揺する。
自分の心を見透かしたような裕子の行動に、ひとみはいつも翻弄されてしまう。
74 名前:【Legend 5】 峠のプライドvs貞操 投稿日:2002年03月25日(月)03時22分24秒
「…わかりました!」
「え、えええええっっ!!!」

しばらく考え込んだ挙句、真里は裕子を真正面に見据えて言い切った。
その真里の言葉を聞いたひとみは、さっき以上の驚きの声を上げた。
「い、い、い、いいんですかっ?!コイツ2人きりになったら何するかわかりませんよっ!
 しかももう30ギリギリのオバさ………」
75 名前:【Legend 5】 峠のプライドvs貞操 投稿日:2002年03月25日(月)03時25分03秒
直後、コーヒーの空き缶が転がる音と、人間が床に倒れる音が店内に響く。
野球の投手のように、右手を前方に伸ばしたままの裕子が、笑顔で真里に質問した。
「ええのか?ホンマに。ひとみの言うとおり、ウチはすごいで……♪」
「………………それで……M峠のみんなのプライドが守られるなら。」
真里は一瞬躊躇するが、再び裕子の目をキッ、と見据えて言った。

「…ほな決定♪何時?」
「……今夜10時。峠の頂上、茶屋前のストレートで待ってます!」

真里はそう言うと、倒れているひとみを抱き起こし、
意識のあることを確認すると店を後にした。
76 名前:【Legend 5】 峠のプライドvs貞操 投稿日:2002年03月25日(月)03時26分54秒
背後にひとみの文句を聞きながら、裕子は店の裏にあるプレハブの倉庫へ向かう。
シャッターを開け、壁に掛かっているスイッチを入れると、
倉庫の奥に白いデルタの姿が浮かび上がった。

一通りエンジンルームをチェックし、ボンネットを閉める裕子。
パンパンと手をはたくとフェンダーに腰掛け、大きく背伸びをした後、呟いた。

「さて、と。」
77 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月25日(月)03時29分24秒
約束通り(w、第5話の前編、更新しました。

ツッコミ所満載のこの物語(爆、いろいろなご意見・ご感想お待ちしております。
78 名前:3105 投稿日:2002年03月25日(月)11時20分42秒
殆ど毎日更新すごいですね。
裕ちゃん以外の卒業メンバーは出てこないいんですか?
市井とか出して欲しいです。
79 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月26日(火)00時04分21秒
どっかでみたマンガに近かったりします?・・・(w
とうふやの・・・
裕ちゃんの走りに期待〜♪
よしこの走りにも期待〜♪
80 名前:名無し娘。 投稿日:2002年03月26日(火)00時47分16秒
矢口貞操の危機(^^;
目の前に餌ぶらさげられた姐さんは速いでぇ〜(w
81 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月27日(水)02時50分18秒
毎回、レス頂きましてありがとうございます!

>3105さん

  えっと・・・結構書きだめしてるんで(笑
  市井ちゃんですか。だいぶ先になるかもしれませんが・・・

>名無しさん

  ん〜、近いって言いますか、ほとんどそのまんまと言いますか・・・(w
  裕ちゃん&よしこの走り、期待しててください♪
  ・・・ん?”よしこの走り”って何ですか??(ww

>名無し娘。さん

  自分の身体を投げ売ってまで、峠を守る矢口・・・(違)
  暴走馬裕子、きっと真夜中も大暴走(w


というわけで、第5話の後編、更新します。
なんか既にバレバレの感もありますが(w、どうかお付き合い下さいませ。
82 名前:【Legend 5】 峠のプライドvs貞操 投稿日:2002年03月27日(水)02時51分19秒
<Friday Night>

M峠の夜空には、美しい満月が高く高く上っている。
コースサイドには、1週間前にこの峠…いや、近隣のエリア全域に衝撃を与えた謎の車、
ランチア・デルタ・インテグラーレの姿を見るために、1週間前を大幅に上回る数のギャラリーが集まった。
83 名前:【Legend 5】 峠のプライドvs貞操 投稿日:2002年03月27日(水)02時52分58秒
峠の頂上、茶屋前ストレート付近の路肩に並べられた“Dandelion”のマシン達。
その前で、真里と麻琴はデルタの…裕子の到着を、今か今かと待ち望んでいた。
だが、携帯電話の時計表示は、すでに午後9時40分を回っている。

「真里さん…ホントに来てくれるんですか?」
麻琴が不安げに質問する。真里は何も言わず、ただ満月を見上げていた。

『来るって信じるしかない。あたし達が出来ることは、ただそれだけ………』
84 名前:【Legend 5】 峠のプライドvs貞操 投稿日:2002年03月27日(水)02時53分44秒
午後9時55分。
茶屋前ストレートのスタートラインには、既に圭織のFD3Sが並べられていた。

「ねぇ、まだ?やらないならやらないで、早く決めてくんない?こっちもヒマじゃないんだよね。」
コクピットに収まって集中力を高める圭織の変わりに、里沙が減らず口を叩く。
「まだ5分あるでしょ。もうちょっと、待ってなさいよ…」
そう言う真里だったが、本人もかなり落ち着きがなくなっている。
85 名前:【Legend 5】 峠のプライドvs貞操 投稿日:2002年03月27日(水)02時54分54秒
刻々と近づく、約束の時間。
峠全体から、徐々に不穏な空気が流れ始める。
もしかしたら、来ないんじゃないのか。せっかく来たのに、何も見ずに帰らされるのか。
他のエリアから来たギャラリーが徐々に憤りを高ぶらせていく様子を、
はっきりと感じ取ることが出来るようになってきた。

そんな空気に包まれ、緊張と不安で張り裂けそうになる胸をぐっと抑え込むように、
胸のペンダントを握りしめ、グッと祈りを込める真里。
『裕子さん…お願い!あたし一人のプライドなんかどうだっていいの…。
 このM峠のみんなのために…来て!』
86 名前:【Legend 5】 峠のプライドvs貞操 投稿日:2002年03月27日(水)02時56分54秒
その時、麻琴の携帯が鳴り響く。相手の発言を聞いた麻琴が、開口一番、大きく叫ぶ。

「来ました!白い車が、こっちに向かってます!!」

今夜のM峠に集まった人間の全てが、待ち望んでいたであろう麻琴の一声。
閉じていた瞼をスッと開けた圭織。時を同じく、その場にへたり込んでEKのバンパーに頭を乗せる真里。
この夜最大の、M峠に集まった全ての若者の期待を一身に背負った役者が、いよいよこの桧舞台に立つ。
87 名前:【Legend 5】 峠のプライドvs貞操 投稿日:2002年03月27日(水)02時57分47秒
数分後、茶屋前ストレート奥のコーナーを立ち上がる、白い4つの光点が見えた。
ここにいるほとんどの人間は、このエギゾーストサウンドを2回以上聞いたことのない者達ばかりだろう。

FDのコクピットから出て来た圭織の前に、ゆっくりと止まるデルタ。
左側のドアが開き、ブルーのジーンズと白いスニーカーが、路面にゆっくりと下ろされていく。
88 名前:【Legend 5】 峠のプライドvs貞操 投稿日:2002年03月27日(水)02時58分36秒
その上に立ち上がる金髪の女性…ではなく、茶色の髪をした少女。
白い肌に丸い頬、ほくろの多い顔に、瞳の大きな目。どこをどう見ても、裕子ではない。
ガードレール前でその様子を見ていた真里は、驚きのあまり声を裏返らせながら絶叫した。

「あっ、あなた、ひとみちゃんじゃない!!」


...continued on 【Legend 6】
89 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年03月27日(水)03時03分42秒
というわけで、モロバレという凄まじい逆風の中(w、第5話更新完了です。
バトルシーンはなるべく独自路線を出して行きたい・・・(^^;

ご意見・ご感想・苦情(w、お待ち申し上げております。
90 名前:名無し娘。 投稿日:2002年03月28日(木)00時14分31秒
アレで文○と思わせて拓○が走ったので、ここは(矢口目当てで)
姐さんが走ると読んでいたのですが・・・ベタだった(^^;
こうなったら矢口に思い切り空回ってもらわないと(w
・・・M峠に側溝はあるのかなぁ?(w
91 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月31日(日)00時03分18秒
これ系の話は難いよね。でも展開がDと被るのは萎えるよ…
バトルシーンはオリジナルでいってね!期待しているからよろしこ。

俺としてはEKは圭ちゃんの愛車というイメージが(w
(わかる人、いるよね?)
92 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年04月01日(月)04時38分39秒
いつもレスありがとうございます!!
PCの調子が悪くなってしまいまして、こちらへ書き込むことが出来なくなっておりました。
なんとか活動出来る状況に戻りましたので、本日より再開します。

>>90 名無し娘。さん

  ここで姐さんもアリはアリだったのですが…
  子供のケンカに大人が出てくるのはアンフェアだろうということで(←都合よ過ぎ)
  いけ…矢口の空回りは、今回はなしの方向で(w
  側溝はないことにしてます(w

>>91 名無し読者さん

  そこら辺は大変申し訳ないと思ってます…
  今後の展開はオリジナルで考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。

  圭ちゃんの愛車は…個人的にはス○キの(略(w


それでは、第6話更新します。お付き合い下さいませ。
93 名前:【Legend 6】 お前が代わりに行ってこい! 投稿日:2002年04月01日(月)04時39分39秒
「なっ、なっ、なんで?!裕子さんは!?」
猛ダッシュでひとみに詰め寄る真里。同時にひとみの白いカッターシャツを強く握り締める。

「はぁ…あの、なんか急に『今までにない超最高級のオトコ達相手の合コンに誘われた』とかなんとか言って…
 『ウチの幸せがかかってんねん。あっちはお前が代わりに行ってこい!』って出てっちゃったんです。。。」
とんでもなさ過ぎて、なんと返していいかわからなくなるひとみの言葉。
真里はシャツを掴んでいた手を離すと、先ほどと同じようにその場にへたり込んでしまった。
94 名前:【Legend 6】 お前が代わりに行ってこい! 投稿日:2002年04月01日(月)04時40分48秒
「な…なんだ…そりゃ…は…はは…はははは…」
もはや何が何だかわからなくなってしまい、力なく笑うことしか出来なくなった真里。
どこかへ飛んで行きそうになった真里の意識、しかしそれを再び引き戻したのは、同じひとみの言葉であった。

「あの赤い車、また来てるんですね。」
95 名前:【Legend 6】 お前が代わりに行ってこい! 投稿日:2002年04月01日(月)04時41分49秒
「あの車が邪魔したから、アネキとの賭けに負けたんだよなぁ…
 家事全部担当1週間、マジでキツかったんだから…」
さすが姉妹、と言うべきか、言っていることがチンプンカンプンなひとみ。
しかし真里は、その“今この瞬間において何の脈絡もない言葉”の中に、ぼやけた繋がりを見出していた。

「ね、ねぇひとみちゃん?先週あの赤い車の後ろの方に、黄色い車、走ってなかった?」
「あ、あれ矢口さんの車だったんですよね…?。すいません。あの時、急いでたから…」

真里の頭の中で、ぼんやりと浮かんでいた思考の糸が、ものすごい勢いで繋がっていく。
抜けていた腰の力を取り戻した真里は、勢いよく立ち上がると、ひとみに言った。

「お願い!ひとみちゃん、走って!」
96 名前:【Legend 6】 お前が代わりに行ってこい! 投稿日:2002年04月01日(月)04時49分29秒
<Friday Night PM.10:30>

「私は飯田圭織。あなたは?」
「吉澤……ひとみです。」
真里の言う通りにデルタに乗りこみ、FDの右横に並べたひとみ。
そのウィンドウ越しに話し掛けられた圭織に向かって、ひとみは呟くように答えた。

「吉澤ひとみ…いい名前ね、覚えておくわ。……あなたも一つ覚えておいてね。
 今夜はこの間のようにはいかない。あなたが私の前を走ることは…ない。」
圭織はそういうと、ウィンドウを閉めて前を見据えた。
その雰囲気にちょっと怯えつつ、大きく一つ深呼吸するひとみ。
パンッ、と頬を叩くと、視線を数百メーター先の右コーナーへと向けた。
97 名前:【Legend 6】 お前が代わりに行ってこい! 投稿日:2002年04月01日(月)04時51分45秒
デルタとFDの間に立つ真里。右手を高々と挙げると、カウントを数え始める。
「5秒前!4…、3…」
それと同時に昂ぶっていく、2つのエンジンの咆哮と、2つの心臓の鼓動。

「2…!」
M峠に、いや、関東エリアに、この後一大センセーションを巻き起こすことになる伝説の扉が……

今、開かれる。

「1!」
98 名前:【Legend 6】 お前が代わりに行ってこい! 投稿日:2002年04月01日(月)04時52分21秒
       −Tonight’s Battle−
     飯田圭織   VS   吉澤ひとみ
    MAZDA RX-7  LANCIA DELTA INTEGRALE
     <FD3S>          <L31E5>
     330ps          (215ps)

        ※()内:カタログスペック
99 名前:【Legend 6】 お前が代わりに行ってこい! 投稿日:2002年04月01日(月)04時53分22秒
「Go!!」

真里の腕が振り下ろされると同時に、轟音と共にアスファルトを蹴飛ばす2台の車。
スタートダッシュはひとみが上だったが、長いストレートでは圭織の伸びが優った。
1コーナーを制したのは圭織のFD。直後、ひとみのデルタも闇の中へと姿を消す。

沸き立つmoonlightのメンバーと、静かに1コーナーを見つめるDandelionのメンバー。
真里はコースの真ん中で、裕子の店で買ったペンダントを握り締めながら、祈った。

『ひとみちゃん…頑張って!』
100 名前:【Legend 6】 お前が代わりに行ってこい! 投稿日:2002年04月01日(月)04時54分35秒
M峠は、ふもと付近はRのきつい急勾配、その後徐々にRと勾配を緩めながら上っていく。
逆に言えば、下りの序盤は高速のセクションが続くということ。
高速コーナリングで分がある圭織のFDは、段々とデルタを引き離す。
「悪いけど手加減はしないよ。あんたが後半に詰めて来るのなら、
 こっちは前半で逃げ切れるだけ逃げさせてもらう。」

最大330psのパワーを、幅255mmのリアタイヤを介して路面に伝え加速する、圭織のFD。
下り勾配とはいえ、カタログ値で200psそこそこのデルタでは、330psのFDには離される一方である。
大きなドリフトアングルで進入しながらも、正確にクリップをついて右中速コーナーをクリアする圭織。
「マジかよ!?地元でここをああやって抜けるヤツ、見たことねえ!!」
「デルタはついて行けてない……飯田圭織、ヤバ過ぎ!」
101 名前:【Legend 6】 お前が代わりに行ってこい! 投稿日:2002年04月01日(月)04時55分41秒
それでも、直線的なラインを描いてコーナーをクリアし、なんとかついて行こうとするデルタ。
そのステアリングを握る…というよりは手を添えていると言った感じのひとみは、ある一つの考え事をしていた。

「まいったなぁ……このままじゃ、矢口さんのお願い聞いてあげたことにはならないだろうし……
 かと言ってあの人追い抜いちゃうと、矢口さんがあのバカアネキに………あぁ〜もうどーすりゃいいのさぁ?!」

バトル中だというのに余計なことを考えているひとみではあったが、彼女の操るデルタは
ガードレールギリギリをかすめるように走り抜ける。
パワーでは負けているが、アクセルを開けている時間は圭織を大きく上回っていた。
102 名前:【Legend 6】 お前が代わりに行ってこい! 投稿日:2002年04月01日(月)04時56分27秒
デルタをミラーに捉えながら疾走する圭織の正面に、自分のヘッドライトを弾き返すカーブミラーが見えて来た。
コース中盤にある、この低速左ヘアピンをきっかけにして、コースは徐々に勾配を増す。
同時にコーナーのRもきつくなり、いよいよバトルは後半戦に突入していく。

前方でヘアピンへのアプローチを開始しようとする圭織を見ながら、ひとみはある一つの決心をする。
「……決めた。とりあえず今はあの人を抜く。矢口さんのことは、私が守ってあげればいい!」
103 名前:【Legend 6】 お前が代わりに行ってこい! 投稿日:2002年04月01日(月)04時59分55秒
2台はいよいよ、180度転回する左ヘアピンへ進入していく。
短時間で減速し、コース幅をいっぱいに使いテールスライドさせながらクリアする圭織。
対するひとみのデルタは、いつまで経っても減速する気配がない。
圭織が路面に残したブレーキのブラックマークを通過しても、デルタのテールランプはその照度を上げようとしない。

血の気の引いていくギャラリー達。そのほぼ全員の頭の中に、同じ言葉が思い浮かぶ。
「あいつ……事故るぞっ?!」


...continued on 【Legend 7】
104 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年04月01日(月)05時05分12秒
というわけで、第6話更新しました。
続く第7話はまた今夜、一気に掲載しますのでよろしくお願いします!

ご意見・ご感想、どうぞお気軽にお寄せ下さいませ。
105 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年04月02日(火)03時46分41秒
続いて、第7話を更新します。
ひとみvs圭織のバトルに決着がつきます。いや、つけます?(笑

どうぞお付き合い下さいませ。
106 名前:【Legend 7】 目覚める伝説 投稿日:2002年04月02日(火)03時49分47秒
明らかに常軌を逸していた。
どんなに高性能のブレーキシステムを搭載している車であろうと、
大抵が1トンを超える市販車の慣性運動を抑え込むには、あまりに距離が足りない。
思わず逃げ出してしまうギャラリーの姿が、その絶望的な状況を物語っていた。
107 名前:【Legend 7】 目覚める伝説 投稿日:2002年04月02日(火)03時51分08秒
しかし次の瞬間。
デルタがグンッ、と前傾姿勢を取る。ブレーキディスクが灼ける赤い光が走り、金属が擦れる甲高いノイズが響く。
パンッ、という短い破裂音を発し、デルタのノーズは一瞬でクリップを捉え、それを中心に独楽のように回る。
瞬く間に進行方向を逆転させたデルタは、4本のタイヤでアスファルトを蹴飛ばし
あっという間に立ち去っていった。

ヘアピンの外側に取り残されたギャラリーは、目前で起こった出来事を理解出来ずに
ただただ立ち尽くすだけだった。
108 名前:【Legend 7】 目覚める伝説 投稿日:2002年04月02日(火)03時52分10秒
デルタに襲い掛かってくる、数々の低速コーナー。
それらをひとみは、事も無げに4輪ドリフトを繰り出しながら、
直前に走り抜けた圭織よりも短時間で視界から消えていく。

通常4WD車は“曲がらない”ものと考えられている。しかしそれが、一度ひとみの手に掛かると
その類稀なコントロール技術によって4つのタイヤを自在に滑らせ、あらゆる方向に向きを変える。
一旦向きを決めてしまえば、あとは4つのタイヤに持てる駆動力の全てを伝えて加速していくことが出来るのだ。

「すっ…ごい。あれが、女のコの走りなの…?!」
「ブチ切れてるよ…男でもあんなコーナリング、出来っこねぇ。。。」
109 名前:【Legend 7】 目覚める伝説 投稿日:2002年04月02日(火)03時53分07秒
次第にツイスティになって行くコース。
短いストレートで稼いだスピードを出来る限り落とさないよう、ギリギリのコーナリングを見せる圭織だったが
背後にはジリジリとひとみのデルタが近づいて来る。
「……やっぱり来たね。だけど、ここから先へは絶対に行かせないよ!」

2台の前方から、コース幅も狭くタイトな右コーナーが迫ってくる。
誰もが息を飲むレイトブレーキングで突入し、大きなドリフトアングルでコーナリングする圭織。
そして、誰もが息を詰まらせる超レイトブレーキングで進入し、圭織のFDに寄せていくひとみ。
FDの右シートに座る圭織と、デルタの左シートに座るひとみの距離が、これ以上ないほどに近づいて行く。
110 名前:【Legend 7】 目覚める伝説 投稿日:2002年04月02日(火)03時54分57秒
ほぼ同時にコーナーを立ちあがったFDとデルタ。
すぐ先には左コーナーが迫っていた。
圭織はそのまま、インサイドをキープして突入して行く。
それを見たひとみは、咄嗟にステアリングを右に切り、デルタをコース右側に寄せた。

「外から…!?無理だよ、そこからじゃ!」
圭織の言うとおり、コーナー外側からの追い抜きというものは、両車の間に絶対的な差がないと難しい。
実力が拮抗しているこの状況では、デルタが前に出ることはほぼ不可能である。
ブレーキングでなんとか並び掛けるデルタではあったが、コーナーを先に立ち上がったのはFDの方だった。
111 名前:【Legend 7】 目覚める伝説 投稿日:2002年04月02日(火)03時57分55秒
2台を待ちうけるコーナーは、残り2つ。
あと2つを抑えこめば勝てる圭織。しかし前回のこともあり、油断は出来ない。
それは本人にも充分理解出来ていた。油断していないつもりだった。
しかし、つい先程ひとみがとった行動は、圭織の想像以上に心理的影響を与えていた。

中速の右コーナーが迫る。
圭織はデルタの動きを見つつ、走行ラインをコース中央寄りに寄せた。
コーナリングスピードは若干落ちるが、デルタが抜いて行くスペースは殺せる。
勝利を得るために圭織が取った、必勝のブロックラインである。

……はずだった。
112 名前:【Legend 7】 目覚める伝説 投稿日:2002年04月02日(火)04時01分29秒
ブレーキング開始と共に右のクリッピングポイントを確認する圭織の視界の中に、
右ドアミラーに映ったデルタの姿を捉えた。
スゥ、と右へ寄るデルタ。
「無理よ。あなたが通るスペースは、そこにはない!」

そう確信した圭織が、自分のラインを取ることに集中し、前方に視線を移した次の瞬間。
車が存在出来るはずもない自分の真横に、デルタの姿があった。

「なっ……なぁっ?!」
113 名前:【Legend 7】 目覚める伝説 投稿日:2002年04月02日(火)04時02分44秒
そこにいることが出来ないはずのデルタの姿に、驚愕する圭織。
ハーフラインを取った圭織の右サイドには、確かに車が通るスペースはなかった。
しかしひとみのデルタは、フロントバンパーの右端でコース脇の茂みを突き破りながら
自分が通るべきスペースを作り出していた。
右半分がダートに乗り上げているため、左右でミューの違う路面に足を取られて
右へ左へと、姿勢を激しく乱れさせるデルタ。
ひとみはそれを両の腕でねじ伏せながら、1cm、2cmと圭織の前に出ていく。
114 名前:【Legend 7】 目覚める伝説 投稿日:2002年04月02日(火)04時06分21秒
「ちょ、ちょっとぉ!そんなライン、ありなの?!カオリ信じらんない!」
絶叫する圭織。しかしコーナーを立ち上がったFDのヘッドライトが
しっかりとデルタのリアバンパーを照らし出す。

最後の左コーナー。鮮やかな4輪ドリフトで駆け抜けていくデルタを追い抜く力は、
FD3Sには、いや、飯田圭織には残っていなかった。

10年前のM峠を駆け抜けた、白い悪魔の伝説。
ひとみがフィニッシュポイントを駆け抜けた瞬間、その伝説が10年の時を越え、再びこのM峠に甦った。
115 名前:【Legend 7】 目覚める伝説 投稿日:2002年04月02日(火)04時07分57秒
ふもとの駐車場に車を止めた、ひとみと圭織。
ゆっくりと降り立ったひとみの元に、圭織が歩み寄る。
「若いくせに……無茶するよね。」
葉の緑色が付着したデルタの右フロントフェンダーを見ながら、圭織は苦笑した。

そこへ、結果を聞きつけ頂上から降りて来た両チームのメンバーがやって来る。
緊張の面持ちで2人を見つめる両メンバーの前で、圭織はひとみに手を差し出した。
116 名前:【Legend 7】 目覚める伝説 投稿日:2002年04月02日(火)04時08分42秒
「負けたけど、楽しかったよ。また一緒に走ってね。」
終始厳しかった圭織の表情に、ふっと笑顔が浮かんだ。
それを見たひとみも、笑顔で圭織の手を握った。

「みんな、帰るよ!」
圭織の一声で、一斉に動き出すmoonlightのメンバー達。
M峠にエギゾーストサウンドが響き渡り、十数台の車が次々に去っていく。

最後の車が闇の中に消えると、M峠は再び静寂に包まれた。
117 名前:【Legend 7】 目覚める伝説 投稿日:2002年04月02日(火)04時09分54秒
「ひとみちゃん。」
圭織を見送ったひとみの後ろから掛けられた声。
そこには目を潤ませ、鼻をすすりながら缶ジュースを差し出す、真里の姿があった。

「来てくれて…ありがとね。」
くしゃくしゃの笑顔でそう言った真里に、ひとみは顔を赤くした。
もっともこの後、胸に飛び込んでくる真里のせいで、さらに赤くなってしまうのであるが。
118 名前:【Legend 7】 目覚める伝説 投稿日:2002年04月02日(火)04時10分53秒
M峠の静寂は、再び突き破られた。
シャンパンファイトならぬ、コーラ&ソーダファイトで盛り上がる人々のおかげで。

「カンパーイ!」


...continued on 【Legend 8】
119 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年04月02日(火)04時19分19秒
ということで第8話、更新完了しました。
ボディ半分をダートに乗せてフルブレーキングなど、ABS付きの車ですらやる勇気はないですが(w

一応ここで本編は一旦打ち切りまして、サイドストーリーをお送りしようと思ってます。
ある程度話をまとめてから公開するつもりなので、更新は3〜4日空けるかもしれません。
それまでどうか、お待ち頂ければなぁと思っております(^^;

ご意見・ご感想などありましたら、どうぞお気軽にお寄せ下さいませ。
120 名前:3105 投稿日:2002年04月02日(火)16時14分16秒
いやー人間業じゃないですよ、アレは・・・
でもそんなよっすいーが好き。
サイドストリー楽しみにしております。
121 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月06日(土)03時54分08秒
摩擦係数の違う路面でフルブレーキ… 怖すぎます(w
サイドストーリーはどんな話か気になります。
個人的にはなんで各自がその愛車にしたのか?とか希望したり。
特に姉さんがデルタにしたかが気になってみたり。
また読ませていただきます。
122 名前:名無し娘。 投稿日:2002年04月07日(日)16時02分20秒
姐さんがまだ峠に憬れる少女だった頃
WRCで王者だったセリカと唯一勝負できたのがデルタだから(w

個人的には、吉澤はダート側のタイヤをほとんど使わない
「片輪走行」に近い状態だったんだと思い込んでいます
恐ろしいほどの荷重移動テクですね(苦)
123 名前:鈍足の貴公子 投稿日:2002年04月08日(月)02時31分33秒
お待たせ(?)しました!
本日よりサイドストーリーの方を開始します。
その前に感謝の返レスをば。

>120 3105さん

  確かに……男でも容易には出来ない芸当をやってのけるよっすぃー。
  まさに「かっけー」といった感じでしょうか(笑

>121 名無し読者さん

  この間、とある大きな公園内で同じようなシチュエーションを作って
  自分の車でやってみたのですが。←かなりアホ
  バトル中は絶対やりたくない技でした(w

  車を選んだ理由か・・・足せるところは足してみようかな。

>122 名無し娘。さん

  もしや90年代初頭からのWRCフリークでいらっしゃいますか?(笑)

  片輪走行か・・・
  そういや昔、ボタン一つで片輪走行や大ジャンプをブチかます
  真っ黒のトランザムがいたっけなぁ(w

それでは、R。サイドストーリー『M峠の白い悪夢』、開始します。
どうぞお付き合い下さいませ。
124 名前:名無し娘。 投稿日:2002年04月13日(土)08時06分02秒
おはようマイケル。更新の時間ですよ(w
125 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月21日(日)05時44分14秒
作者さま〜。どうしちゃったんですか?
サイドストーリー開始の投稿から音沙汰ないですけど。
楽しみに待ってますよ。
126 名前:3105 投稿日:2002年04月21日(日)13時54分42秒
サイドストーリーまだですか?
127 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月27日(土)04時04分00秒
宣言した直後から更新止まっているから放置ではないと思いますが…
続きよろしく〜
128 名前:読んでる人 投稿日:2002年04月29日(月)18時46分20秒
続き待ってます。
129 名前:作者さんを知る人 投稿日:2002年04月30日(火)01時26分39秒
ええ・・・続きが気になる方や、心配なされている方もいらっしゃるようで
すので作者さんに成り代わり勝手ながら書かせていただきます。
作者さんが続きを書くと宣言してから・・・放置されているわけですが・・・
彼のHDDがあぼーんしてしまったそうで・・・最近、新しいPC買ったそうです。

そういったわけですが、ブロードバンドの契約なんぞでまだネットできないらしく、
5月の上旬あたりには・・・復帰できるのではないかとおもわれます。

ただ、書き溜めていたといわれている部分も消えているはずなので・・・
そのあたりは書き直しになるかもしれませぬ。
完全に復帰しましたら何らかのアクションをここにするように伝えておきますので、
今しばらくお待ちくださいませ。

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