インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板

やぐちゅーメイン

1 名前:つかさ 投稿日:2002年03月31日(日)23時19分23秒
初めて書き込みします。

やぐちゅー大好きなんで書いてみました。
レスは何でもいいので欲しいです。
登場するのは、当然、中澤、矢口、あとは、吉澤、石川くらいかな〜?

よろしくお願いします。
2 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年03月31日(日)23時20分18秒
「「お疲れ様でした〜〜!!」」
 ダンスフロアに響く声。
 つっかれたよ〜〜っっっ。
 矢口は心の中でそう一言叫ぶと、そのままぺたん、と床に座りこんだ。
 回りからも、
「うわ〜、腕いて〜〜っ」
「今回の踊り、きついよ〜〜」
「ほら、着替えに行くよっ」
 とさまざまな声があがっている。
 そんな中、
「お疲れ、矢口」
 ぽん、と肩をたたかれて見上げると、優しい笑顔のなっちだった。
「ん〜、なっちもお疲れ〜〜」
 にこっと笑顔をみせると安心したようになっちの顔がふっとゆるむのがわかった。
 そんなに疲れてたように見えたかな〜?
「ほら、着替えいこ?」
 思わずぼんやりしてしまった矢口の頭をぽんぽん、と叩くとなっちは矢口を促した。
 ふっと気付くと他のメンバーは三々五々と、着替えに移動し始めていた。
3 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年03月31日(日)23時21分31秒
 ん〜〜、やっぱ疲れてるのかな〜〜。
 着替えながら矢口はぼんやりと考えていた。
 というか、疲れないほうがおかしいスケジュール。
 朝から踊りつづけで、もう時計は22時をまわっていた。
 メンバーたちの雑談をなんとなく聞き流しながら、頭に浮かんだのは一人の人の顔。
 ・・・・・・逢いたいな・・・・・・。
 そう思った瞬間、携帯をとりだしてる自分に苦笑しながらも、矢口はメールを打ち出す。
『今日は遅くなりそうだから、泊まってくね〜。明日は、早く終わると思うから、
 晩ご飯の用意、よろしくお願いします 真里』
4 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年03月31日(日)23時22分44秒
 メンバーが着替え終わったのを確認したのか、
「んじゃ、明日の集合時間の確認〜」
 という圭織の声に耳を傾けながらも、矢口はもう一通メールを打ち始める。
『今から行く。今日は帰ってるのかな〜?まぁ適当にしてるよ♪矢口』
「明日は朝8時に事務所集合だからね〜〜っ。遅れちゃ駄目だよ。
 特に、後藤、なっちっ。遅れたら、前回の分も含めて、お説教ながいよ。」
「「え〜〜〜」」
 という二人の抗議と、みんなの笑い声。
「んじゃ、今日もお疲れ様でした、明日も頑張っていきまっしょい!解散!」
 その声に矢口は立ち上がった。
「矢口、もう帰るの〜?」
 という圭ちゃんの声にひらひらと手を振りながら、
「明日も早いしね。お疲れ〜〜」
 挨拶をして部屋をでた。
5 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年03月31日(日)23時24分18秒
 ・・・・・・最近、逢ってないんだよな〜〜。
 タクシーの中、ぼんやりと矢口は思う。
 そりゃ、向こうもドラマの撮りが始まって、忙しいのはわかる。
 こっちだって、忙しくない、なんて言えない状況で。
 でも、収録で会っても全然しゃべれないし、終わったら速攻で向こうは移動していっちゃうし。
 ここ二週間、何度か家に行ったけど・・・・そういう日に限って、
『ごめん、ドラマが押してて、多分朝までかかるっ』
 とか、
『撮影で沖縄行ってた〜〜ごめんな』
 とか。
 自宅通いだから、そうそう外泊もできないし。
 ぽつんと一つため息を吐くと、矢口はそっと、手の中に握りしめた鍵を見つめる。
6 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年03月31日(日)23時25分40秒
『しんどくなったら、いつでもおいで』
 優しい笑顔に何度も救われて。
 自分は一人じゃないんだって。
 ブラウン管の中で笑顔を作って、ファンの人の前で笑顔を作って。
 何が本当の自分の気持ちで、何がそうじゃないのか。
 笑顔でいることに疲れたとき、自分を見失いそうな時、いつだって、側にいてくれた。
『矢口は矢口でえ〜んやから。カメラの前やから笑ってなあかんって誰が決めてん?』
『側にいてやれんけど・・・・この鍵あれば、ちったぁつながってるって気、するやろ?』
『頑張れ、なんて言う気ないで。矢口もう、充分頑張ってるもんな。
 だから、無理せんでいい。矢口、好っきやで〜〜』
 綺麗な笑顔で。ちゃかした口調でも、ちゃんと自分を見ててくれるってわかる言葉。
 優しく抱きしめてくれる腕。あったかい腕。
 ・・・・・・誰よりも、安心できる腕・・・・・・。
7 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年03月31日(日)23時27分20秒
 ぎゅっと鍵を握りしめて、矢口は唇を噛む。
 好きな仕事してて。充実感だって、もちろんある。
 でも、たまに襲ってくるこの寂しさは何なんだろう。
 国民的アイドルグループ、なんて言われて。いつだって、世間の評価が一番で。
 矢口は矢口だよっ。 
 叫びだしたくなる時。
 誰も自分を見てなくて。モーニング娘。の矢口、としてしか見てくれなくて。
 メンバーといてても・・・・ぬぐいきれなくなる不安。
 そんな時、矢口は裕子に逢いたくなる。
『特別やで?』
 いたずらっ子の目つきしながら自分の部屋の鍵を、くれた。
『内緒やで〜〜。矢口やから、渡すねんから、大事にしてな』
 ぽんぽんって、頭なでられて。
 めちゃくちゃ、嬉しかった。
 矢口は、裕ちゃんの特別。・・・・ずっと前から決まってる。
 裕ちゃんは、矢口の特別。当たり前じゃん。
 ・・・・・・逢いたいよ・・・・・・裕ちゃん・・・・・・。
8 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年03月31日(日)23時28分18秒
 結局、メールの返事は来なかった。
 矢口は、裕子のマンションの前でタクシーから降りると、ふっと部屋の明かりを見上げた。
「・・・・・・・・」
 暗い窓の明かりに、何故か俯き加減になりながら、裕子の部屋を目指す。
9 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年03月31日(日)23時29分17秒
 カチャリ。
 慣れた手つきで鍵を開け、そっと矢口は玄関に滑り込む。
 やっぱり・・・・というか、部屋の中に人気はなくて。
「ば〜〜〜か・・・・・」
 ぽつんとこぼれた言葉に、涙までこぼれそうで。
 慌てて、矢口はぐしぐしと目元をこする。
 とたんに・・・・・・カチッという音とともに。
 玄関が明るくなった。
10 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年03月31日(日)23時32分13秒
「誰が馬鹿やねん?」
 柔らかい、声。
 聞きたかった、声。
 顔を上げると・・・・リビングへのドアとの境目に、一つのシルエット。
「・・・・・・・・・アホ裕子」
 ぽつん、と呟くと矢口は靴を脱ぐのももどかしく、裕子の胸に飛び込む。
「アホとか・・・・馬鹿とか・・・・も〜ちょっといい言い方ないん?」
 苦笑まじりの裕子の声。
 そして、ちょっと照れ交じりの真面目な声が降ってくる。
「おかえり」
 そして、優しく抱きしめられた。
「・・・・・ただいま」
 くぐもった声で返す矢口。
「「・・・・・・・」」
 お互い、何も言わない。
 何も言わずに、互いを抱きしめあって・・・・何を考えているのか・・・・。
11 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年03月31日(日)23時33分27秒
「・・・・ど〜してメールの返事くれなかったんだよ?」
 拗ねたような矢口の声。
「・・・・寝てたっちゅ〜ねん」
 だって、起きてたじゃんっ?!
 思わず顔をあげた矢口に裕子は、
「矢口が泣いてるような気がして、目が覚めた」
 さらっと答える。
 思わず顔を赤くした矢口に裕子はにやっと、笑う。
「シャワー浴びてき〜や。今日、ダンスレッスンやったやろ?汗くさいで〜」
「・・・・・あほっっ」
 捨て台詞にするには、矢口の顔は赤すぎて。
 くしゃりと裕子は矢口の頭をなでると、リビングへ戻っていった。
12 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月31日(日)23時45分37秒
あー、やぐちゅーの新作ですね。
非常に嬉しいです。
作家さんは、初の書き込みということですが、
とても丁寧な文章ですね。
これからの展開、期待します。
楽しませてくださいね。
よろしくお願いします。
13 名前:つかさ 投稿日:2002年03月31日(日)23時53分57秒
>>12
 レスありがとうございます。
 すごく嬉しいです。

 8割は書き上げてるので、このまま順調にいければなって思ってます。
 自分の読みたいやぐちゅーがないってだけで書き始めたけど・・・。
 難しいですね〜。
 自分が今まで読んで感動した大作、長編の作者さんたちを改めて尊敬しました(w
14 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月31日(日)23時54分21秒
やぐちゅー大好きです。
とにかく大好きです。
つづき楽しみです〜。
15 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月01日(月)00時49分24秒
なんか泣けてきた〜。
久々に期待のやぐちゅー。
せつない感じ・・・言葉にはあらわせないけど・・・最高です。
16 名前:よな 投稿日:2002年04月01日(月)03時27分08秒
やぐちゅう だぁぁ!
本日の「ANN-SS]でマタマタ裕ちゃん
【矢口好き!】って叫んでましたね(デレデレ)
まぁ今回、裕ちゃんが新ドラマ撮影でハムスターを目の前で見て
「誰かにニテルな…?」「あ!CM聴いて思い出した。矢口だぁ!」<ANNラジオCM
なんって公共の電波で「LOVE LOVE発言」言って許されるのはこの人しか居ませんね(笑)
で。。。やぐっさんも「裕子の下手な絵をANNからDL見て下さい」なんって何気にお互い… はあとはあと

今後更新に期待しながら 要チェック ヾ(@^▽^@)ノ
17 名前:007 投稿日:2002年04月01日(月)13時30分30秒
久々にお気に入りのやぐちゅー発見です。
もう読んでいて、ドキドキ〜つづきが速く読みたくて読みたくて(w
作者さま頑張って下さい。

18 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年04月01日(月)23時06分01秒
 かってしったる裕子の家。
 矢口は自分用のパジャマを引っ張り出すと、シャワーを浴び始める。
 ば〜か、ば〜か、裕子のば〜か。
 ・・・・・それでも、裕子じゃなきゃ駄目なんだ、やっぱり。
 抱きしめられて。ここまで安心できる人はいない。
『矢口が泣いてるような気がして』
 何事もなかったように、そんなセリフ吐いて。
 矢口の心をさらってく。
19 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年04月01日(月)23時06分53秒
 シャワーを浴びて、リビングへと戻ると、リビングの明かりは消えていた。
 ・・・・・もう、寝ちゃってるのかな?
 そっと、ベッドルームを覗くと、サイドテーブルのスタンドが目いっぱい光量を落として、
部屋を照らし出していた。
「・・・・裕、ちゃん?」
 小声で呼んでみると、裕子の手がおいでおいで、と布団の中から出てくる。
 ・・・・ゾンビみたいだよ。
 笑いをかみ殺しながら、そっと矢口は裕子の布団の中にもぐりこむ。
 とたんに回されてくる腕。
 そっと、抱きしめられた。
「・・・・・眠い?」
 裕子の顔は、何だかお疲れモードで。
 寝てたって言葉は嘘じゃないんだろう。
 あどけない表情を見せていた。
「ん〜〜ちょっとな。矢口こそ・・・・疲れた顔してんで?ちゃんとご飯食べてるか〜?
 痩せたんやない?」
「ん・・・・・だって・・・・寂しかったんだぞ?」
 言ったとたん、恥ずかしくなって、裕子の胸に顔を押し付ける。
「ごめんな〜〜。最近、遠出のロケ多くて・・・・。連絡もあんまりとれんかったやん?
 裕ちゃん、矢口不足でへこみそうやったわ。ありがとな、今日来てくれて」
20 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年04月01日(月)23時07分40秒
 ぽんぽんって軽く肩を叩かれる。
 涙腺が、ゆるんでくるのがわかりつつ。
 涙を止めようという気にはならなかった。
「明日もはやいん?」
「事務所に8時」
 もう、涙声になってんだから、余計なこと聞くな、あほ裕子。
「そうか〜。んじゃ、目覚ましかけとくからな?裕ちゃんの方が早いわ。
 朝起きて一人でびえ〜んて泣いたらあかんで〜〜」
 いつものちゃかした口調。んでも、背中をなでてくれるその手は相変わらず優しくて。
 裕ちゃんの一番が誰かなんて、言われなくても、聞かなくてもわかってる。
「いっぱい泣いたら、また裕ちゃんの好きな矢口の顔、見せてな?
 泣いてても、笑ってても、大好きやで」
 その言葉をきっかけに。矢口の目から、また涙が零れ落ちる。
21 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年04月01日(月)23時08分44秒
 いつだって、元気な矢口。
 キャンキャン吠える子犬みたいに、みんなにじゃれついて。
 元気いっぱい、笑顔で毎日過ごしてるよ。
『裕子〜〜〜っ!!』
 いつものかけあい、いつもの楽屋、いつもの収録。嘘じゃないよ。
 新メンバー入ってきて、大人の顔して、圭織、圭ちゃん、なっち・・・・。
 みんなで引っ張っていってる。
 それでも、やっぱり、泣きたい時はあって。
 まだ、矢口だって、19歳なんだよ・・・・・。大人の中に混じって、大人の顔して、
平気で毎日を過ごすことなんか、できない・・・・・。
 一人で泣くのは寂しいから。
 泣くのは、裕子の腕の中だけ。
 だから、裕子・・・・・。
22 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年04月01日(月)23時09分20秒
〜〜中澤裕子 独白〜〜

 泣きつかれたのか、いつの間にか、穏やかな寝顔を見せ始めた矢口。
 裕子はそっと矢口の髪の毛をなでる。
 いつからやろ? 矢口がこんな風にうちの腕の中で泣くようになったん・・・・。
 やっぱり、うちが卒業してからやったかな〜〜。
23 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年04月01日(月)23時09分51秒
 裕子が卒業する前まで。1年ほど、裕子と矢口は付き合っていた。
 身体の関係だってあった。
 お互いが、お互いを1番って思ってて。
 別れたのはいろいろあったからだけど。
 裕子はど〜しようもないくらい、やっぱり矢口が好きで。
 矢口だって、ど〜しようもないくらい、裕子が好きで。
 裕子が娘。を卒業してもそれは変わらなかった。
24 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年04月01日(月)23時10分23秒
 同じ仕事はだいぶ減ったけどな・・・・・。
 だから、余計に共有できる時間を大切にできるようになった。
 今は、友達以上、恋人未満ってか。
 裕子の中で、矢口は「別格」だ。
 別れてから、スキンシップ以上の意味で、裕子は矢口に触れたことはない。
25 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年04月01日(月)23時11分08秒
 ・・・・・最初は辛かったけどな〜〜。
 それでも、それ以上に、この娘が大事やった。
 だから、かな?
 卒業して、部屋の鍵、渡したのは。
『いつでもおいで』
 うちの心は、いつだって、あんたにはあけとくから。
 フリーパス券やで?すごいことやで?わかっとるんかいな?
 まだまだあどけない寝顔の矢口に、裕子は苦笑しながら、髪の毛をなで続ける。
26 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年04月01日(月)23時11分41秒
 裕子は、矢口みたいに、涙を流すことはないけれど。
 やっぱり、しんどくなったら、寂しくなったら、矢口に連絡を入れる。
『家、おいで〜や』
 嬉しそうに、飛んできて。
 裕子の側で最上級の笑顔を見せる矢口に、何度も心癒されて。
 今は、お互いが、お互いの「別格」。
 そう信じれるくらいの時を、裕子と矢口はこの1年で重ねてきた。
 恋人には、もう、戻れんかもしれんけど・・・・・。
 あんたに、一番大事な人ができるまで、うちはあんたの側におるよ。
 だから、矢口。あんたもうちに、一番大事な人ができるまで、うちの側におって。
27 名前:☆☆別格☆☆ 投稿日:2002年04月01日(月)23時12分57秒
 ワガママかも知れんけど。一方的な約束かもしれんけど。
 約束やで、矢口・・・・・。
 裕子は矢口の額にキスを落とすと、
「おやすみ、矢口」
 小さく呟いて、眠りに落ちた。
28 名前:つかさ 投稿日:2002年04月01日(月)23時20分31秒
>>14さん
 ありがとうございます。
 楽しみ、なんて言ってもらえてごっつ嬉しいです♪

>>15さん
 切ない感じ・・・・になるかはわかりませんが(w
 自分のやぐちゅーは、今は付き合ってません。今後ど〜なるかは・・・・。

>>よなさん
 詳しい情報ありがとですっ。自分、関西なんで、ラジオ、雑音だらけで聞いてます(w

>>007さん
 気に入っていただけて、何よりです♪

一応、以上が導入部分で、まだ、続きます。
次は、タイトル変わって「変化」
これは、中編くらいにはなる予定です。

レス、ありがとうございます。
今後も励みに頑張りますっ!
29 名前:14 投稿日:2002年04月02日(火)01時00分41秒
好き合っている2人なのに、今は付き合っていないとは
意外な設定ですな〜。
今後がますます楽しみです!
30 名前:名無し読者。 投稿日:2002年04月02日(火)01時16分00秒
作者さんの書くやぐちゅーはとってもあったかいなぁ〜。

別れたのはいろいろあったからだけど・・・このフレーズってかいろいろの内容・・・
いつか出てくるのかな?ちょっと読んでみたいなぁ〜。(w
31 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時10分17秒
ーーーー1−−−−

 それからしばらくたって。
 ある午後。矢口は裕子の家に来ていた。
「ん〜〜〜」
 ごろごろと転がりながら、ソファーで雑誌をぱらぱらとめくる矢口。
「矢口、紅茶でええか?」
 キッチンからの裕子の声に適当に生返事しながら。
 相変わらず生活感のない部屋だな〜と感心してたりする。
 必要最低限のものしか置いてない、シンプルな部屋。
 それはそれでいいんだけど・・・・・自分の雑然とした部屋を思い出し、苦笑しながらも。
 ・・・・裕子は寂しくないのかな?
 ふっとそんなことを考えたりする。
32 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時12分25秒
「今日は、圭坊と映画観に行ってたんちゃうん?」
 ストンと二人分の紅茶をカップにいれた裕子が矢口の脇に腰を下ろす。
「そ〜だけど?」
 圭ちゃんとは、映画観て、ご飯食べてから、別れた。
「一緒に来れば良かったのに」
「会いたかった?」
 何気ない裕子の一言に、ちょっとむっとくる。
 久しぶりにオフが重なって。
 圭ちゃんとも、遊びたかったけど、裕子にも逢いたかった。
 一緒に来れば良かったのにってのも分かるけど・・・・一人で来たのは、矢口のちょっとした
ワガママ。・・・・・独占欲。
「ん〜〜?別に?」
 しょ〜がないなって大人の笑み浮かべて、裕子は矢口の頭をぐしゃぐしゃとなでる。
「アホ裕子。紅茶、こぼれるだろ〜がっ」
33 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時13分25秒
 矢口はソファーから起き上がると、裕子の脇に腰を下ろした。
 紅茶を飲みながら、こつん、と裕子の肩に頭をあずける。
 ・・・・ゆっくりとした時間が、二人の間を流れる。
 ・・・・裕子は、何も言わない。
 ・・・・矢口も、何も言わない。
 それでも、何よりも心地いい時間。
 互いの触れ合ってる部分は、全然少ないけど。
 付き合っていた時よりも、一緒にいることが、心地いいと感じるのは何故なんだろう。
34 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時14分32秒
「そ〜いやさ」
 紅茶を飲み終わって、裕子に肩だかれながら、ぼんやりしていた矢口が口を開く。
「おとついくらいに、よっすぃーに告白された」
「・・・・へ?!?」
 鳩が豆鉄砲をくらったような裕子の顔。
「だって、吉澤っつったら・・・・・石川と付き合ってたんちゃうん?」
 確か、もう3ヶ月くらいになるはずだ。
「何か知らないけど、最近もめてて・・・・その余波、かな」
 意外と冷静な矢口の反応に安心しつつ、裕子は問いを重ねる。
「それで・・・・ど〜するん?」
「ん〜〜」
 ちょっと困り顔の矢口。
「吉澤のこと、好きなんか?」
「そ〜ゆうんじゃ、ないんだけどね」
 さらり、と流す矢口。裕子は黙って、その続きをうながす。
35 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時15分35秒
「矢口たちってさ・・・・・娘。って何なんだろうね?」
 デビューした時は、こんなんじゃなかったはず。
 矢口たちが加入した時だって、こんなんじゃなかった。
 ごっつぁんが加入して、徐々に、娘。は変わり始めた・・・・・。
「アイドル、なんだよね・・・・。矢口たちはさ」
 裕子は何も言わない。
「歌のうまさを求められるんじゃなくて・・・・歌番組でいじられて・・・・。
個性、を出すことを求められて。トークの質の高さを求められて」
 新メンバーの加入で、ますます目立つことが難しくなった。
 歌のうまさでのライバル関係じゃ、もう、ない。
「よっすぃー、今、石川にライバル意識を持ってるの、なんか、わかるからさ」
 しゃべりの下手さ、歌の下手さ・・・・。
 それでも、石川は前向きに頑張ってきた。
 その頑張りを認めて、メンバーはそれを受け入れて、石川の個性をいい方向に
引っ張り出そうとしてきた。
 カントリー娘。へのレンタル、ハロモ二でのキャスター。
「石川の個性ってかキャラってほぼ固まってるし・・・・。矢口らだって、いじりやすいよ」
 でも・・・・吉澤はそうじゃない。
36 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時16分59秒
『天才的美少女』とつんくに言われて。
 市井沙耶香の変わりにプッチモニに入り。
 Mr.Moonlightでは、初めてセンターに抜擢された。
 順調に階段を駆け上がってきたように見えた。
「男前キャラ」と言われて。
37 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時17分31秒
「今のよっすぃー、全然駄目だよ。できてないよ」
 自分が目立つことばかり考えて、突っ走るトーク。
 圭ちゃんや、なっちのトークとかと全然違う。
 空回りするのも当たり前だ、と矢口は思う。
 周りを見て、周りの空気を読んで。
 会話ってのはキャッチボールだから。
 しゃべれてない人がいたら、その人にボールを投げる。
 自分一人だけ、ボールを持ちすぎてたって、駄目なんだ。
 矢口は、裕ちゃんにそれを、教えてもらった。
38 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時18分06秒
「矢口は・・・・・よっすぃーの教育係だったのに」
 矢口の教育係は裕ちゃんで。
「ごめんね、裕ちゃん。矢口、よっすぃーに全然、大事なこと教えれてなかったよ」
 そんなことない。
 肩を抱く強さに、矢口は微笑んだ。
39 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時18分39秒
「それで・・・・なんで、吉澤が矢口に告白してくんねん?」
 まだわかんない?
 矢口は真っ直ぐに、裕子の目を見つめる。
「不安なんだよ」
 真っ直ぐな、言葉。
 今の石川じゃ、受け止めきれない吉澤の心。
 不安定に、揺れている。
 きっと・・・・石川のこと、大事に思ってるけど、それ以上にライバル心の方が強くて。
 素直に甘える事だって、きっとできなくて。
「・・・・吉澤と付きあうん?」
「付き合わないけど・・・・、お互いもっと良く知り合いたい、って言うつもり」
「それって・・・・。なら・・・石川は、どうなんねん?」
 少し怒ったような、裕子の瞳を矢口は臆することなく、受け止めた。
「裕子が支えてやればいいじゃん」
 その言葉を聞いて、少しだけ、傷ついたような瞳の裕子に、矢口の心だって痛むけど。
「付き合えって言ってるわけじゃないよ?矢口を支えてくれたみたいに、支えてあげればいい。
それに・・・・石川には、圭織だっている。教育係の圭ちゃんだっている」
40 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時19分46秒
 しばらくの沈黙の後。
「矢口を支えるみたいに、石川を支えるってるのは・・・・無理やけど」
 裕子は矢口を強く抱きしめた。
「わかった。矢口は好きなようにすればええ。フォローするから」
 ありがと、裕子。
 声には出さずに、裕子の腕の中で、矢口はそっと心の中で呟いた。
41 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時20分35秒
「鍵は、返さなくていいよね?」
 帰り道。わざわざ駅まで送ってくれる裕子の手を握り締めながら、矢口はそっと聞いてみた。
「当たり前やん。返された方がショックやって」
 からからと笑う裕子。
 何故だか、ほっとするのがわかった。
「裕子・・・・」
 別れてから、矢口の方から、「好きだ」って言葉にするのはまったくと言っていいほどなかった。
それでも、今、言いたい。
 矢口は、立ち止まった。
 裕子もその雰囲気を感じ取ったのか、立ち止まる。
 困ったように、頬をぽりぽりとかく。
「矢口の気持ち、ちゃんと吉澤に届くといいな。頑張るんやで?」
 はぐらかすように、そんな台詞。
「ちょっと、裕ちゃん」
「泣きたくなったり、しんどくなったら、いつでもおいでや。無理したあかんで。約束やからな?」
「裕ちゃんっ」
 言わせてくれないの?
42 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時21分39秒
 不満気な矢口の顔を見て、裕子は苦笑する。
「矢口、好きやで」
 耳元でぼそっとつぶやく。
 飽きるほど言ったセリフ。んでも、何回言っても飽きないのは何でやろ〜ね?
「矢口も・・・・」
 その続きは、聞きたいけど、まだあかん。
 矢口の唇にそっと、指を落とした。
「裕ちゃん、止まれんくなるやん、そんなん言われたら」
 ん?
 首をかしげる矢口の仕草がたまらないくらいに、可愛くて。
「吉澤のとこなんか、行かせたくなくなるやん」
 軽く抱き寄せた。
 一応、往来やからな・・・・冗談っぽく、冗談っぽく。
43 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時22分27秒
 そんな風にいつだって、セーブかけなきゃ、暴走してしまうくらいに裕子は矢口に
とらわれている。
 吉澤のことを心配する矢口に、矢口に心配される吉澤に、嫉妬を感じるほど。
 付き合ってこそすら、いないけど。
 お互いがお互いの、「特別」−−−−−。
 お互いがお互いの、「別格」−−−−−。
 わかっているけど・・・・。
 そんな関係を望んだのは自分だけども。
44 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時23分19秒
「アホ裕子っっ」
 言われた意味がやっとわかったのか、矢口が真っ赤になって、裕子の腕から抜け出す。
 楽しそうに笑う裕子の表情に、一瞬の葛藤の色なんて全然見えなかったけど。
 なんだか、裕子が離れていってしまいそうで。
 矢口は、ぎゅっと握りなおした手をしっかりつかみながら。
「矢口は、裕ちゃんのものだから。ちゃんと捕まえててよ?」
 好きだって言うより、ストレートな言葉を吐く。
「・・・・っっ?!」
 絶句したような裕子の顔がみるみる赤く染まる。
45 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月02日(火)23時24分00秒
 ちょうど夕陽が綺麗で。
「へへっ♪」
 嬉しそうに下から見上げてくる矢口の可愛さに、思わず裕子も笑顔になった。
 誰が離すかっちゅ〜ねん。
 吉澤と何があっても・・・・守るから。
 今、この時、笑っているあんたが、誰よりも好きやで。
46 名前:つかさ 投稿日:2002年04月02日(火)23時30分12秒
>>14さん
 意外な設定ですか〜?2月中旬ころ、なんかね〜さんのラジオ聞いてて、
 元気ないな〜と思ったのがこの話のきっかけです。思わず、矢口となんか
 あったのかな、とか妄想大爆発(w

>>30さん
 やっぱりその突っ込みはきますね(汗)<別れたのはいろいろあったから
 どんな理由を付けよう・・・・やば、思い浮かばないっっ(汗)
 なんてことはないですが(w

 ってことで、更新しました。
 どんなもんでしょうか??
 つじつまとかあってるかな〜とかかなり不安に思いつつ。
 基本的に、心理描写から入る書き方なんで、矛盾点がないか冷や冷やしながら
 更新してます。
 
47 名前:30 投稿日:2002年04月03日(水)02時36分55秒
ハイ!突っ込ませていただきました。(w
楽しみにお待ちしております!!!
やぐちゅー・いしよし→やぐよし・姐リカですか?
特に・・・姐リカが気になる(w
もちろんメインはやぐちゅーで(w

姐さん確かに2月は陰ってか?落ち込んでるっていうか?元気ないっていうか?表現できないけど(w

ラジオの前で・・・なんでキレてんねんってラジオに向かって突っ込んでました自分(w
48 名前:読んでる人 投稿日:2002年04月03日(水)10時20分26秒
このやぐちゅう、かなり良いです♪
こんなに好き合ってるのに、なんで別れちゃったんですかね?
その理由がすごーーーーく気になります。
49 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月03日(水)22時15分56秒
ほんまに最高のやぐちゅーサンキューです。作者さま。
もう〜先が読みたくてたまりません。
なんでこんなに引き込まれていくのかな?こんな文章書きたいよ〜。
50 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月03日(水)23時11分11秒
ーーーー2−−−−
 ・・・・・・ライバル・・・・・・。
 自分が目立つためには、誰かの脇役になっていては駄目だ。
 無茶してでも、自分、を出していかないと。
 でも、どうやって?
 自分って何?
 堂堂巡りの悩みの極地にいたのは、吉澤だった。
 まだ、大丈夫。まだ、平気。
 何が大丈夫じゃなくて、何が平気じゃないのか。
 そんなこと、わからない。
51 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月03日(水)23時12分11秒
 ただーーーーー。
 誰よりも、いとおしく感じていた梨華ちゃんにまで、苛立ちを感じるようになったのは、
いつからだったんだろうかーーーーー。
52 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月03日(水)23時12分57秒
「やぐち〜〜〜、会いたかったで〜〜♪」
 中澤が、矢口を抱きしめる。いつもの楽屋のいつもの光景。
「やめろよ、アホ裕子っっ」
 嫌そうな顔を作りながらも、嬉しそうな矢口。
『裕ちゃんはね〜、矢口の特別、なんだ』
 照れた顔しながら、矢口さんが以前言っていた言葉を思い出す。
 中澤さんだって、矢口さんを特別に思ってる。
 何も聞かなくたってわかる雰囲気。
 別に、中澤さんが、私たちに冷たいとか、そんなんじゃない。
 卒業して、娘。のリーダーじゃなくなって。
 逆に、優しいお姐さん的な役割を果たすようになって。
 リーダーの時より話しやすい雰囲気を、身にまとうようになった。
 それでも矢口さんといる時は、矢口さんを見てる目は、他のメンバーを見る目より、
ずっと、優しくて、真っ直ぐな目をしてる・・・・・。
53 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月03日(水)23時13分33秒
 矢口さんが、羨ましかった。
 中澤さんに包み込まれるような愛情をもらって。いつだって、元気に笑ってる矢口さんが。
 自分の中は、こんなにも暗くて、黒い感情がうずまいているのに・・・。
 だから、自分は、こんなことをしてるんだろうか・・・・?
54 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月03日(水)23時14分17秒
「やだっっ。やめてよっっ。よっすぃー・・・・んっっっ」
 腕の中の抵抗を封じ込めるように。
 吉澤は無理矢理、キスをする。
 唇をこじあけて、舌を入れる。
 蹂躙するように、口の中を暴れまわる、吉澤の舌。
「・・・・矢口さん・・・・」
 唇を離した瞬間、崩れ落ちるようにしゃがみこんだ小さな身体に、吉澤は抑揚のない声で
呼びかける。
55 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月03日(水)23時14分58秒
「・・・・何でこんなことすんのさ?!」
 涙目になりながら、それでも矢口は逃げようとしない。
 立ち上がって、吉澤を睨みつける。
 梨華ちゃんには、出来ないからーーーー。
 そんな答えを返すことなんて、とてもできなくて。
「矢口さんが好きだから、です」
「違うじゃんっっ。よっすぃーには・・・・っ」
 そんな答え聞きたくない。
 再び、力づくで、矢口の唇を奪いにいこうとしたその時。
56 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月03日(水)23時15分39秒
「何しとんねん?」
 静かな、力強い声が二人の間に割り込んだ。
「「・・・・」」
 吉澤は、楽屋の入り口に仁王立ちしている中澤を見つめた。
「ちょっっ・・・・よっすぃーっ!!」
 腕の中の矢口がもがく。
57 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月03日(水)23時16分28秒
「矢口、嫌がってるみたいやけど?」
 中澤さん、笑顔が怖いですよ。
 目は決して笑ってない中澤を、吉澤は、迎え撃つ。
「嫌よ嫌よも好きのうちって言いますよね」
「裕子、関係ないだろっ。邪魔すんなっ」
 中澤は、矢口の言葉を全く無視して、吉澤から、矢口を引き離した。
 そのまま後ろに矢口を隠して、吉澤を睨みつける。
58 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月03日(水)23時17分05秒
「関係ない、邪魔すんなって言われてるのに随分、健気なんですね」
 怒りのオーラが中澤の身体から立ち上る。
「それこそあんたには関係ないことやん?」
「「・・・・」」
 無言で睨みあう二人。
「裕子・・・・頼むから、もうやめて。呼びに来たんじゃなかったの?」
 一触即発の空気を必死になって、矢口が止める。
59 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月03日(水)23時17分39秒
「ああ・・・・そやったな」
 ふっと、吉澤から目を離して、中澤は、くしゃっと髪をかきあげる。
「準備できたみたいや。はよおいで」
 そのまま、何事もなかったかのように、足早に楽屋からでていく。
 一瞬、中澤の後を追いたそうな矢口だったが。
 寸前のことで止まる。
「よっすぃー・・・・。矢口が何か変な言い方したんだったら、ごめん。
 でも、お互いもっと良く知り合いたいって矢口は思ってる。
 よっすぃーが何に悩んでて、何にぶつかってるのか。受け止めたいと思ってるのは本当だから」
 真剣な表情の矢口に、吉澤は、何も言葉を返すことはできなかった。
60 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月03日(水)23時19分39秒
〜〜〜〜矢口真里 独白〜〜〜〜

 誰も使っていない楽屋。
 ハロモ二の収録の最中、矢口は吉澤を呼び出した。
 この前の吉澤からの告白の返事をするために。
 石川とのことをどうするつもりなのか?
 吉澤は何を考えているのか?
 ちゃんと話をするつもりだったのに・・・・・。
 問い詰めるような口調になってしまった。
『梨華ちゃんは関係ありません。もう、別れました。矢口さんが好きです』
 そして・・・・一方的にキス、された・・・・。
61 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月03日(水)23時20分18秒
『矢口、嫌がってるみたいやけど?』
 裕子の邪魔、タイミング、良すぎだって。
どっから覗いてたのさ、とか突っ込みたいとこは山ほどあったけど。
『関係ない、邪魔すんな』
 そんな言い方しかできなくて。
 内心、失敗した、なんて山ほど思ってるさっっ。
 矢口、馬鹿じゃない。
62 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月03日(水)23時21分01秒
 −−−−裕子、また傷つけた?
 ごめん、裕子。
 誰よりも大事に思ってる。
 矢口は裕子のもの。
 嘘じゃないから。
 信じてよーーーー。
63 名前:つかさ 投稿日:2002年04月03日(水)23時29分10秒
>>30さん
 梨華ちゃんに手、出せるほどうちのね〜さんは勇気もってませんっ(ww
 ラジオでキレるね〜さん・・・自分、最近は、慣れてきて、キレないと逆に不安(w

>>読んでる人さん
 別れた理由は、マジ突っ込まれるとヤバイっすっ(滝汗)
 いろいろ考えてはいるんですけどね・・・・(やっぱり汗)

>>49さん
 最高、ですか???
 ごっつ嬉しいです。自分の中では、付き合ってても、付き合ってなくても
 お互いにめちゃくちゃ信頼しあってるやぐちゅーが書きたかったんで。
 ありがとうございますっ!

ってことで、やっと話が動きました。今までは結構まったりいってたんですが・・・(w
怒涛の急展開っにはならんと思いますが、これからもよろしくお願いします。
64 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月03日(水)23時46分13秒
ヤグチも裕ちゃんも、自分の想いを隠してまで、
どうしてよっすぃーと梨華ちゃんを守るの?
この二人に何を求めているの?
ヤグチだって、まだまだ人に甘えたい年頃なのに、
辛い立場に立たされること多いよね。
なぜでしょう?
ヤグチをしっかりと受け止められるの、
裕ちゃんしかいないような気がするのですが・・・
この先の展開、二人の本当の幸せに期待したいです。
65 名前:つかさ 投稿日:2002年04月04日(木)23時28分30秒
一応、毎日更新が目標なんですが・・・・・。
ちょい、次の章に手直しいれたんで、明日更新します。
66 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月05日(金)01時11分25秒
>>65
ショッキ−!!(w
楽しみにお待ちしております。
67 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年04月05日(金)13時27分01秒
やぐちゅー小説発見!
続きを楽しみにしてます
68 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時17分54秒
 矢口さんは優しい。
『お互いもっと良く知り合いたいって矢口は思ってる。
 よっすぃーが何に悩んでて、何にぶつかってるのか。受け止めたいと思ってるのは本当だから』
 もしかしたら、口も聞いてくれなくなるかもしれない、って思ってた。
 全部をなくしたら、楽になれるかもしれない。
 そんな思いがあったことは否定しない。
69 名前:つかさ 投稿日:2002年04月05日(金)23時19分02秒
うわ、ごめんなさい。
ぼ〜っとしたまま、コピペしたら、いきなりミスっっ(汗)
もいっかい最初から^^;;;;;
70 名前: ☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時19分37秒
ーーーー3−−−−

 矢口さんは優しい。
『お互いもっと良く知り合いたいって矢口は思ってる。
 よっすぃーが何に悩んでて、何にぶつかってるのか。受け止めたいと思ってるのは本当だから』
 もしかしたら、口も聞いてくれなくなるかもしれない、って思ってた。
 全部をなくしたら、楽になれるかもしれない。
 そんな思いがあったことは否定しない。
71 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時20分17秒
 あれからーーーー何も変わらない。
 矢口さんは、いつも通り、私に接してくる。
 いつも通り・・・・ではないかもしれないけど。
 二人っきりになるのは避けられてるような気がする。
でも、気づかわれているような視線を感じることが増えた。
 あんなことがあったのに、まだ、私のことを心配してくれているんですか?
 強引にキスしたこと、私はまだ、謝ってないのに。
72 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時20分49秒
 仕事、仕事の毎日。
 逃げ出したい。
 矢口さんを逃げ場にしていいですか?
 そんなこと、しちゃいけない。わかっていても浮かぶ危険な考え。
 吉澤だって、気付いてる。
 矢口の視線の他に、もう一つ、吉澤の行動を追ってる視線があることを。
 そして、自分が、その視線に安らぎを感じていることも。
73 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時21分22秒
「よっすぃー、明日、ディズニーランド行かない?」
 矢口からの唐突なデートの申し込み。
「?」
 この人には、自己防御本能ってのがないんだろうか?
 真っ先に浮かんだそんな思い。
 戸惑う吉澤に、矢口は、言葉を続けた。
「気分転換もかねてさ〜。この前の話の続きもしたいし。どう?」
74 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時21分59秒
 一応、矢口も矢口なりに考えてはいたのだ。
 前みたいに、二人っきりになるのは避けたい。
 前、ハロモニの最中に吉澤を呼び出すことにしたのも、裕子が暇そうにしているのが
わかっていたからで。
 今度はどうするかな?
 いろいろ考えたけど、さすがにもう一回収録中に吉澤を呼び出すことは、ためらわれた。
 だから、ディズニーランド。
 外だったらさすがに吉澤だって実力行使はしてこないだろう、という読み。
 矢口、最近、行ってなかったしね♪
 趣味と実益をかねてってことで。
75 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時22分54秒
「でも、明日って夕方まで撮影じゃないですか?」
「でも、しばらくまとまったオフってなさそうだから。・・・・駄目?」
 ちょっとがっかりしたような矢口の声に、吉澤はぶんぶんと首を横に振った。
「駄目じゃないです」
「ありがと、よっすぃー」
 パレード見るだけでも楽しいよ〜〜。
 そう言ってにっこり笑った矢口に、そっと吉澤も微笑を返した。
76 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時23分24秒
「楽しかった〜〜っ」
 帰り道、腕にプーさんグッズを山のようにかかえて、ご機嫌な矢口。
 吉澤は、そんな矢口を見ながら、くすくすと笑った。
 思いがけない誘いだったけど、結構楽しめたな、と思いながら。
「中澤さんとはこういう遊園地とかって来ないんですか?」
 ふっと口を突いてでた質問。
 中澤の名前を出されて、矢口はちょっと照れた表情を見せた。
「前ラジオで十何年ぶりにディズニーランドに行った、とかはしゃいでたぐらいだからね。
 矢口はないよ。
 今度、シーでも誘ってみようかな、とは思ってるんだ。
 よっすぃーこそ、石川とは来ないの?」
 対照的に、石川の名前を出されて、吉澤の表情が揺れる。
 何も答えない吉澤に、
「本当に石川と別れちゃったの?」
 吉澤は、何かを言おうとしたが、ふっと黙り込む。
 頭の中に浮かぶ人は・・・・いつだって、変わらない。
 そして、真剣な表情になった吉澤。思わず矢口は2,3歩離れる。
 不思議そうな表情で矢口を見る吉澤に向かって。
「この前みたいに、逆ギレしてキスしてくんのはなしだよ?
 矢口、怖かったんだからねっ」
 冗談っぽく、ふくれてみせた。
77 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時24分06秒
「・・・・すいませんでした」
 申し訳なさそうに、吉澤はぺこり、と矢口に頭をさげる。
「よろしい」
 にこっと笑う矢口を可愛いな、と思いながら。
 梨華ちゃん・・・・何してる?何を思ってる?
 ふっと心の中を占めるのは、石川のこと。
78 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時24分36秒
 公園を見つけた二人は、
「ちょっと休んでいこっか?」
 矢口の提案により、仲良くベンチに腰掛けた。
79 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時25分21秒
 しばらくの沈黙の後。
「前さ、矢口に告白したの、本気じゃないよね?」
 矢口はそっと切り出した。
「・・・・すいませんでした」
 ぽつりと答える吉澤。
「謝って欲しいわけじゃないんだけど・・・・、じゃ、石川と別れたってのは?」
 静かな、矢口の声。
「それは・・・・本当です。『もう二人で会わないようにしよう』って」
「それでなんで・・・・矢口に告白してきたの?」
「矢口さんと・・・・中澤さんが、羨ましかったから、です・・・・」
 静かな声でやりとりを続けていた二人だったが。
「へっ?!」
 素っ頓狂な矢口の声でそれは、破られた。
80 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時26分15秒
「あ、ごめん」
 矢口は、慌てて自分の口を押さえた。
「そんなに意外ですか?」
 本当に、矢口さんって、ちっこくて、リアクションおっきくて、おもしろいな〜。
 はなはだ不謹慎なことを考えながら、吉澤は小さく笑う。
「意外ってか・・・・それこそ何で?って感じかな」
「お互いが、お互いを信頼しあってるって感じが・・・・私と梨華ちゃんにはないな、とか。
 私は中澤さんが矢口さんを包み込んでるような感じで、梨華ちゃんを守れない・・・。
 誰にも・・・・負けたくない」
 そう思ってるのに。
 ソロになって、のほほんとした雰囲気でも、確実に娘。の中の人気NO1のごっちん。
 カントリー娘。にレンタルされて、オリコン1位をとって。引っ込み思案な性格はあんまり
変わってないけど、娘。の中で、先輩たちに育てられて、着実に自信をつけてきてるのが
わかる梨華ちゃん。
 辻・加護だって、ミニモニで、矢口さんにひっぱられて、徐々に成長を見せている。 
81 名前:ロ〜リ〜 投稿日:2002年04月05日(金)23時26分52秒
はじめまして。
やぐちゅー&よしの微妙な三角・・・
今後の展開が楽しみです
82 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時26分54秒
 飯田さんや、安倍さん、保田さんや矢口さん。
 みんな、娘。の中でのそれぞれの役割をきちっとこなしてる。
 じゃあ、自分の役割は?
「・・・・負けたく、ないんです」
 何に負けたくないのかなんて・・・・そんなことわからないけど。
 何かにつぶされそうなプレッシャーに。
 自分は、梨華ちゃんみたいに、素直に悩んでます、なんて顔に出せない。
 馬鹿キャラ作って、暴走して。
 みんなが引いてるってわかっても、止められない。
 誰も・・・・止めてくれない。
83 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時27分36秒
「梨華ちゃんと一緒にいるのがつらかったんです」
 ぽつり、ぽつりとしか言葉をつむぐことができない吉澤を矢口は優しい瞳で見つめた。
 そして。
「負けたくないって、矢口だって思ってるよ。
 でも、矢口にとって、メンバーは家族みたいなものなんだ。
 矢口が負けたくないって思う相手は、自分自身。
 うまくいかなくて、へこんだ時、あ〜自分に負けたなって思うんだ」
 失敗やうまくいかないことを、誰かのせいにするのは簡単だけど、それじゃ駄目なんだ。
 そう話す矢口は、自分では気付いていないだろうけど、とても厳しい目をしていた。
84 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時28分09秒
「矢口と裕ちゃんだって、そりゃ、いろんなことがあったよ?」
 今の関係に辿り着くまで、いっぱい泣いたし、いっぱい傷ついた。
「矢口さんと中澤さんって今は付き合ってないんですよね?」
 そっと吉澤は尋ねた。
「うん。でも、今、お互いに誰よりも大切に思い合ってる。
 矢口は、裕ちゃんが大好き。多分、付き合ってた時よりも好きだなって思う」
 多分、裕ちゃんも。
 矢口は、中澤のことを話すとき、とても大事そうに話す。
 一つ一つの思い出が、まるで宝物だと言ってるかのように。
「やっぱり・・・・羨ましいな」
「よっすぃー」
 ちょっと怒ったような矢口の声が聞こえてきた。
85 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時28分39秒
「矢口の言ったこと、聞いてた?」
 きょんとする吉澤。
「羨ましいってさ。そんな簡単に矢口と裕ちゃんのこと、言って欲しくないよ。
 いっぱい、矢口と裕ちゃんは、泣いて傷ついて。
 でも、矢口も裕ちゃんも、お互いがお互いが好きだって気持ちから逃げなかった。
 一緒にいるのがつらい時なんて、一杯あったよ。
 逃げたかったよ。
 でも、そんなの駄目じゃん。
 裕ちゃんのこと好きな気持ちだけは、嫌いになりたくなかったから、矢口は頑張れたんだ」
86 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時29分14秒
『なぁ矢口。うちな、矢口を好きな気持ちにだけは嘘つきたくないねん。
 こんなにも、誰かを欲しいって思えたの、初めてやねん。
 矢口、好きやで・・・・・愛してる』
 初めて、裕ちゃんが愛してるって言ってくれた日。
 抱きしめられた日。
 人生で一番幸せだって思ってて。
 そんな日がずっと続くんだって信じてた。
 突然の別れ、そして裕ちゃんの卒業。
 でも、矢口は逃げなかった。
 裕ちゃんが好きだったから。
87 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時29分45秒
 ぽろぽろと涙をこぼしながら、溢れる涙を拭おうともせず、矢口は話し続ける。
「よっすぃーにとって、メンバーは何なの?ライバルだけなの?本当にそれだけ?
 メンバーは蹴落とさなきゃいけないライバルなの?
 梨華ちゃんと一緒にいるのが辛いからって逃げて、それでよっすぃーはいいの?」
「・・・・矢口さん・・・・」
 吉澤は、思わず矢口を抱きしめようとした。
「やだ」
 矢口は腕を突っぱねて、吉澤の腕から逃れる。
 なんで?
 不審そうな吉澤に、矢口は綺麗に綺麗に笑いかける。
「矢口が泣くのは、裕ちゃんの腕の中。矢口はそう決めたんだ。だから、駄目」

「よっすぃー、焦っちゃ駄目だよ。ゆっくりでいいからさ」
 別れ際の矢口の一言に、吉澤は黙って頭を下げた。
88 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月05日(金)23時30分50秒
〜〜〜〜吉澤ひとみ 独白〜〜〜〜

 やっぱり・・・・かなわないな。
 誰かを思う気持ちの深さも、メンバーに対しての思いも。
 自分は、まだまだだって気付かされた。
 たくさん、ごめんなさいを言わなきゃいけない人がいるような気がする。
 ゆっくりと、時間かけて。
 それでいいかな?
 それで、許してくれるかな?
89 名前:つかさ 投稿日:2002年04月05日(金)23時37分57秒
>>64さん
 丁寧で鋭い突っ込みありがとうございました。
 自分の中でも、矢口、辛い立場なのかな〜と思うのはちょこっとはあり。
 本当の幸せ、期待してくださいっ!なんて言っていいのかな・・・・(汗)

>>66さん
 とりあえず、大量更新なんで・・・・(w
 期待にそえてるかな〜。

>>やぐちゅー中毒者セーラムさん
 森板読んでますっ♪
 自分の板にレスを書き込んで頂いて、すごい幸せです♪
 今回は、ね〜さんは、お休みですが、次回は・・・・元気なく登場します(ww

ってか、このシーンは書きづらかったっ(マジ本音)
次回からはもうちょっと、いい感じの文章になってるかな???
期待はずれな文章だったらマジごめんなさい^^;;
何度書き直しても、吉澤視点は辛かったっっ!

ってことで、次は、ね〜さん視点ですっ♪
へタレ本領発揮で(w
90 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月06日(土)01時52分18秒
姐さん視点で・・・元気ない姐さんですか(w
姐さんっていろんなキャラが似合いますよね。
へタレ・関西キャラ・姐御キャラetc
気が強そうにみえて・・・ふと見せる脆さが結構好きだったりします。(w
この話かなりお気になので、最後まで書き上げてくださいね。
91 名前:つかさ 投稿日:2002年04月06日(土)03時07分38秒
>>90
 ってか、最後まで書き上げましたっ(w
 う〜〜む。ちょい悩んだけど、今日のMステにちなんで。
 もうちょっと、大量更新してみっかな???
 なんとなく、焦らしてみるのも一つの手かな、とも思ってたんですが。

 ってことで、今、番外編を書いています。
 矢口とね〜さんだけしか出てこないと、すらすら進むんですけどね・・・・(苦笑)
92 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時08分48秒
ーーーー4−−−−

 収録の間。
 待ち時間の中澤はぼんやりと椅子に座り込んで、考え事をしていた。
 最近、矢口と吉澤の仲がいい。
 吉澤も少しは落ち着いたみたいで、不安定さってのはなくなってるように見える。
 石川も、いろいろ辛いやろうけど、必死にカメラの前ではそれを見せんようにしてる。
 二人とも、成長したんやな〜って、ね〜さん、ちょっと感慨深かったりすんねんで?
 そら・・・・いいことやねんけどな。
 何やろ?何か・・・えらいごっつ、痛いねんな。
93 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時10分03秒
『関係ない、邪魔すんな』
 あれから、矢口は家にも来んようになった。
 うまいことやってんかいな?
 別に、今までだって、そんなに連絡を取り合ってた訳じゃない。
 ただ、しんどい時に連絡入れない期間の長さは、初めてかもしれないーーーー。
 でも。何がしんどいんやろ?
 何で連絡とられへんのやろ?
94 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時10分34秒
 矢口が、吉澤にキスされてた・・・・・・。
 なんで、あの光景が頭から離れんのやろ?
 何で、矢口のあの言葉があんなに心に突き刺さったんやろ?
『よっすぃーに告白された』
 矢口はさらっと言ったけど。
 一瞬、うちの心が跳ね上がったのは何で?
95 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時11分19秒
 −−−−わからんことだらけや。
 今の関係を望んだのは、うちや。
 うちは・・・・・それだけで、満足なんや。
 矢口が幸せやったら、それでええんやーーーー。
96 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時11分58秒
「中澤さん、よろしくお願いします」
 キャスターの服に着替えた石川がいつの間にか側に来ていた。
「あぁ、こっちこそ、よろしくな」
 大人の表情を作る自分に、心の中で中澤は自嘲した。
 ・・・・うちが子どもやったら、矢口にぶつかっていけんのかね?
97 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時12分50秒
「吉澤とは、どうなん?」
 まだ待ち時間があることを確認して、中澤はぼそっと石川に尋ねた。
「全然連絡こないです・・・・」
 悲しそうな顔をした石川を見て、中澤はしまった、と思うが。
「それでいいん?」
 追い打ちをかけるようなことを言ってしまう。
 石川は、ちょっとの間、黙りこんだ。
「良いわけじゃないけど、よっすぃーが楽しそうだから」
 ・・・・・・そやな。
 うちも、矢口が楽しそうやったら、それでいいわって、何年下に諭されてんねん。
 それでも、苦笑交じりの中澤の声が響く。
「嫉妬とか、独占欲とか。困った感情やね」
98 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時13分20秒
 いつもと違う中澤の声色に、思わず石川は中澤を見る。
 中澤の視線の先には・・・・楽しそうにじゃれあう吉澤と矢口の姿があった。
 ポーカーフェイスを保つ中澤。
99 名前:素人○吉 投稿日:2002年04月06日(土)03時13分40秒
これってやっぱりもう一度最初から読み直した方がいいのか…。(笑)

まぁ、…頑張って下さい。(←ちょい抵抗/笑)
100 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時13分43秒
 石川だって、心痛めていた。
 新メンバーが加入されて。
 いい意味でおおらかで、明るくて、あんまり物事を考えないタイプの吉澤が何か、
悩んでるように見える。
 ・・・・・気のせい、かな〜?
 それとも、私のせいで悩んでるの?・・・・よっすぃー・・・・。
101 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時14分41秒
 私は、結構わかりやすいらしくて・・・・・へこんだり、悩んだりしたら、みんなが声をかけてくる。
 保田さんとは違った意味でのイジラレキャラだし。
 んでも、よっすぃーは・・・・あんまり、悩んだりするとこ見せないんだよね。
 自分の心の中は、あんまり話さない。
 ・・・・踏み込まれたくないのかな?
 ・・・・付き合ってるのに・・・・、私、何もできないのかな・・・・・。
102 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時16分26秒
 違う。付き合ってた、だ・・・・。
『もう、二人で会わないようにしよう』って。
 そういうことだよね?よっすぃー。
 やっと、気持ちが通じ合えたって。
 嬉しかったのは、私だけだったのかな?
 ねぇ、よっすぃー。私、どうすればいい?
 まだ、大好きなんだよ。
 諦めることなんて、できないよ。
103 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時17分32秒
「ごめんな」
 不意に中澤から発せられた言葉に、石川はきょとん、とする。
 辛そうな顔、させてもうたな・・・・。
 中澤は、そっと胸の中で呟くと、そっと石川を抱きしめた。
「よっしぃーの代わりに言ったるわ。
 梨華ちゃん、大丈夫だから。頑張れ」
「・・・・中澤さん、似てないっ」
 胸の中にあったかいものと、泣きたくなるような切ない感情があふれて。
 石川は笑って、中澤の腕から抜け出した。
104 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時18分13秒
「似てなかったか〜?」
 ちゃかした口調でふざけた中澤だったが。
「中澤さんと矢口さんって、付き合ってるんですか?」
 石川の一言に凍りついた。
 石川は、ポーカーフェイスが崩れた中澤の様子に、しまった、と思ったが。
「相変わらず一言多いな、石川は」
 苦笑いして遠くをふっと見つめた中澤は、それでも石川を気づかうような表情で。
「ん〜、一年前くらいまでは付き合ってた。今は、付き合ってない」
「別れても、中澤さん、矢口さんと仲いいですよね?」
105 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時18分59秒
「まぁな」
 歯切れの悪い中澤の返事を気にしながらも、石川は続ける。
「何でですか?」
 今日の石川、二言も、三言も多いんちゃうん?
 どうはぐらかすか、と考えていた中澤は、真剣な石川の眼に見つめられて、あ〜〜と思う。
 必死なんや・・・・こいつも。
 吉澤との別れと立ち向かう勇気を求めてる。
 はぐらかすことは簡単だけど。
『裕子が支えてやればいいじゃん』
 そんな言葉さえ、うちの胸を切り裂く刃になってる。
 矢口・・・・。
 何かを吹っ切るように中澤は口を開いた。
「うちが・・・・矢口のこと、好きやから。
 別れてから・・・・きまずかったよ、そら。
 でも、うちの卒業とかあって。気まずいまま終わるのい嫌やから言ってん。
『矢口のこと大好きやから、笑って見送ってや』って」
106 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時19分30秒
 伝わってるんかいな?
 真剣な表情の石川からは、何も読み取れなくて。
「別れた理由って・・・・」
「そこまで踏み込むんか?」
 中澤は、石川にやんわり釘をさす。
「駄目ですか?」
 言ったらやばい。
 自分の中の警告をあえて無視して、中澤はしゃ〜ないな、という表情を作る。
「一つ言えるのはな、うちが・・・・悪かってん。好きすぎて、だから、別れた。
 うちの勝手な気持ちで、矢口を振り回してもうた。うちのワガママやったんや。
 こんな理由、誰にもわかってもらえるとは思ってない。
 でも矢口は何も言わずに、うちを慕ってきてくれてる。
 それだけで、充分なんや。
 だから、矢口が今後、誰と付き合おうが、うちが、傷つく資格なんてない。
 矢口のすることに口出しする資格もない。
 矢口のやりたいようにやらせたる。うちは、矢口を守る。それだけや」
 今のこの関係で、それで充分なんや。
 それ以上望んだら、あかんねん。
107 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時20分01秒
 自分に言い聞かせるような口調の中澤の表情は、今度はポーカーフェイスが作れていなかった。
 辛そうに、自分の言葉で自分をさらに傷つけてる言葉に、石川は、言葉を失う。
108 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時23分24秒
「中澤さん・・・・」
「スタンバイお願いしま〜〜す」
 石川の言葉と、ADの言葉が重なった。
「さ〜て、お仕事や。変な話して悪かったな。頑張っていきまっしょい!やで」
 ぽんぽん、と頭なでてくれる中澤は、いつもの笑顔を浮かべていたけど。
 何となく、石川にはわかってしまった。
 今、中澤が、心で泣いてるのだってことが。
「中澤さん、間違ってます。そんな思いやり、矢口さんにとっても辛いだけですっ」
 石川の一言で、崩れそうになる笑顔。それでも、中澤は何も言わない。
109 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時23分54秒
「私、ちゃんとよっすぃーに言います。ちゃんと、伝えて、はっきりさせます。
 自分の気持ちも、よっすぃーの気持ちも。
 よっしぃーが楽しそうだからそれでいい、なんて言いません。
 だから、中澤さんも、中澤さんも・・・・」
 何が言いたいのかわからなくなってきた。
 でも・・・・矢口さんといる時の中澤さんは、心底楽しそうで、嬉しそうで。
 矢口さんだって、それは一緒だ。
 なのに・・・・。
 なんで、そんな辛そうな顔、するんですか?
 傷つく資格がないなんて。そんな悲しそうな顔してるのに。痛そうなのに。
 矢口さん、そんな風に中澤さんが思ってるって知ったら、絶対悲しみます。
 私だったら、悲しくて、悲しくて・・・・。
110 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時24分48秒
 楽しそうに矢口さんとじゃれあっていたよっすぃー。
 私と二人でいる時は、そんなにつらかった?
 心の中では聞けるのに、本人を前にしたら、聞けない言葉。
 黙って見守ってようと思ったんだよ?
 素直に別れを受け入れようってそう思ったんだ。
 でも。
 よっすぃーもいつか、中澤さんみたいに泣くのかな?
 顔で笑って、心で泣くのかな?
 やだよ、よっすぃー。
111 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)03時26分19秒
 何だか、泣きそうな石川に中澤は慌てる。
 ど〜しろっちゅ〜ねんっっ。
 自分の不用意さがまねいたことやけど。
 何で、石川が泣きそうになんねんっっ。
 自分の辛そうな表情が、石川をそんな風にさせたなんて夢にも思わなくて。
 何や、心は痛いわ、石川は本番前やのに泣きそうや、なんて・・・・。
112 名前:つかさ 投稿日:2002年04月06日(土)03時27分54秒
ってことで。
思わず酔いにまかせて・・・・・・大量更新すぎっかな?
とりあえず、寝ます(w
おやすみなさい(ww
113 名前:素人○吉 投稿日:2002年04月06日(土)03時58分27秒
読み直した。
思ってたより石らしさが出てて驚き。(笑)
114 名前:読んでる人 投稿日:2002年04月06日(土)13時02分51秒
>作者さん
裕ちゃんが矢口と別れた理由が「好きすぎた」というコトなんだけど、
これは、そのまま付き合っていたら裕ちゃんの矢口に対する独占欲(?)みたいなのが強くなり過ぎ、
矢口が他のメンバーと一緒にいるだけでも嫉妬の対象になり、
その結果、矢口も他のメンバーも、そして自分自身も傷ついてしまう・・・
そんな事態を避けるために、別れた。
って、自分で勝手に解釈してしまったんだけど、間違ってます?
115 名前:名無し読者@やぐちゅー最高!! 投稿日:2002年04月06日(土)15時14分49秒
やぐちゅーといえばバカカップルって感じが多いですが(w
ここのやぐちゅーは一味違いますね。最高です。
もちろんバカカップルも好きなんですケドね。
サイドストーリーは・・・別れた時の回想シーンですか?かなり期待してます(w
116 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)23時05分57秒
ーーーー5−−−−

「ねぇ、よっすぃー」
 何となく不機嫌そうな矢口の声。
「何ですか?」
 問いかけながらも、何となく矢口の不機嫌の原因が分かるような気がして、吉澤は苦笑する。
 矢口の視線の先にいるのは、中澤と石川。
 楽しげに中澤が、石川を抱きしめている・・・・・。
「最近、裕子から連絡が来ないんだ」
 へ?
 なんとなく、吉澤もそのシーンにむかっときたので、それに関してなら同意できる用意はあった
のだが・・・・。
 何の脈絡もない矢口のセリフ。
「関係ない、邪魔すんなって矢口が言ってから、裕子から連絡が来ないんだよっっ」
 不機嫌極まりない、といった様子の矢口。
「はぁ・・・・」
 それは、矢口さんが悪いんじゃ?
 との心の声はもちろん口には出さない。
「ま〜〜たきっと、ぐだぐだ悩んでんだよ」
117 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)23時06分39秒
 ・・・矢口さん・・・・。
 思わず頭をなでようとしたら、きっと睨まれた。
「裕子もよっすぃーと一緒でヘタレだからなっ」
 私と一緒って、そりゃないっすよ〜〜。
 吉澤の様子を全く気にかけず、矢口はぽんぽんと言い放つ。
「ま〜〜だ、石川と仲直りしてないんだろうが??
 そのせいで矢口も裕ちゃんとこ、行けないんだからなっ」
 私のせいですか?
 それは、激しく違うような・・・・。
118 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)23時07分23秒
「何で、石川と仲直りしないんだよ?」
 それでも、矢口に下から睨みつけられると、何となく反論できなくなってしまう吉澤。
「何か・・・・今更何言えばいいかわかんないし・・・・。合わす顔なくて・・・・」
「顔ならここにあるじゃんっっっ。ちゃんとっっ。
 吉澤ひとみですって顔してあるぞっ。
 何言えばいいかわかんない?そんなもん、顔を見てから考えろっ」
 キレキャラにさらに磨きがかかってませんか?矢口さん・・・・。
 それができれば苦労しませんってば。
 俯いてしまった吉澤に、矢口は、やれやれ、といった表情になる。
119 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)23時08分00秒
「裕子は裕子で、全然矢口のことわかってないし。
 裕子は矢口が裕子のこと、どんだけ好きかって全然わかってないんだ。
 裕子だけが矢口のこと好きで、ってそれで悩んでるんだ。
 矢口のことなんて、お構いなしなんだ。むかつくと思わない?」
 結局、矢口さんは、中澤さんに怒ってるだけなんですよね?
 たまたま、脇にいる私は・・・・・やっぱり巻き添え食らってるんですか?
 どう反応しろと・・・・困ったような吉澤をぽかりと矢口はこづく。
「よっすぃーは、裕子が石川と一緒に、仲良さそうにしてて、むかつかないのかよ〜?」
 やっぱり気になってたんですね、矢口さん。
 素直じゃないってか何て言うか。
120 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)23時08分30秒
「でも、中澤さんのことだから、私と矢口さんのキス見たら、『ちゅ〜させろ、矢口』
って迫ってるように思ってましたけど、違ったんですね」
 何気なしに言ったセリフだけど。
 矢口さんの目つきがさらに鋭くなった・・・・。
「矢口と裕ちゃんはそんな関係じゃないっつったろ〜が〜っっ」
 ぼこぼこと頭を叩かれる。
「してないよ、そんなの。挨拶代わりのキスだって、別れてからここ1年くらい全然してない。
 恋人同士のちゅ〜なんて、もってのほか」
 今は、恋人じゃないし・・・・。
 矢口は寂しそうに付け加えた。
121 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)23時09分00秒
「す、すいません」
「謝られると、もっとむかつくっっ。何でど〜でもいいよっすぃーはちゅ〜してくんのに、
裕子はしてこないんだよっっ」
 矢口さん、さりげに酷いこと言ってません?
「大人だからじゃないですか?」
 思わず、中澤さんのフォローしちゃった。
「子どもの方がまだましだよっ。子どもだって、自分が何欲しいかくらいわかってるぞっ」
 どうやら、矢口さんの怒りに油を注いでしまったようだ・・・・。
122 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)23時09分35秒
「一緒に寝てたって何もしてきやしないしっ。
 裕ちゃんは矢口を抱き枕がわりにしてるんじゃないのかって思うくらいっ。
 矢口はそんなに魅力ないかよ〜〜?!」
 や、矢口さん、声が大きいです・・・・。ってか・・・。
「一緒に寝てるんですか?!」
 つられて思わず大きな声に・・・・・、あ、矢口さん、真っ赤になっちゃった。
「そんなのよっすぃーに関係ないだろっっ」
 矢口さんが言ったんじゃないですか・・・・・。
123 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)23時10分14秒
「でも、よく中澤さん、理性持ちますね・・・・」
「どうせなら、矢口の理性を誉めて欲しいよ・・・・」
 へ?!
 それって、ど〜ゆ〜意味ですか?
 矢口の失言に吉澤は思わず、もしかして、矢口さん攻め・・・・?良からぬ妄想が・・・・。
「あ、アホなこと考えてるんじゃないぞっっ?!」
 矢口さん、そんなに赤い顔して言っても、説得力ないですよ…。
124 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)23時10分44秒
 矢口への救いの神なのか。
 ADの、
「スタンバイお願いしま〜す」
 条件反射的にその声に、振り向いて・・・・・あれ?梨華ちゃん?
 なんか、泣きそうになってない?
 中澤さん?
 困ったような顔して、何を梨華ちゃんに言ってるんですか?
「裕子?」
 いぶかしげな矢口さんの声。
「ってか、よっすぃーっっ。駄目だってっっ」
 必死に袖を引っ張られて、ようやく吉澤は我に返った。
125 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)23時11分24秒
「よっすぃー・・・・・何だかんだ言って、心配なんじゃん」
 思わず、二人のとこに駆け寄ろうとして、止められた身としては何も言えない・・・。
 吉澤は身体を小さくする。
「すいません・・・・」
 そんな吉澤を見て、矢口はため息一つ。
126 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月06日(土)23時12分14秒
「今日、この後、石川とちゃんと話、してこいっ」
 情けない顔になる吉澤。
「矢口も、裕子と、ちゃんと話してくるから」
 ぽんぽん、って頭叩かれて。
「このままじゃ、良くないじゃん、お互いに」
 ・・・・矢口さん・・・・。
 中澤さんより、男前キャラになってません?
127 名前:つかさ 投稿日:2002年04月06日(土)23時21分05秒
>>素人○吉さん
 石の心理は書きやすかったっす(w

>>読んでる人さん
 とりあえず、別れの理由は、もうちょっとね〜さんに後で語らせますので。
 具体的理由はこの話では出しません。ってかその理由、結構いいな、と思った(w

>>115さん
 一味違いますか?嬉しいです♪
 ってか、別れ話は・・・・考えたんですが、ごっつ暗くて、真面目で救い様がない
 話になり^^;;ついでに、登場人物はフルメンバー?!この話より全然長いぞ
 ってな感じなんで、まだ、書くかは迷い中です(w

ってか、ヤンタンにね〜さんでてるの知らなくて聞き始めたら・・・・・。
すげ〜、ツボにはまりまくり。
これから、土曜の楽しみが増えました♪
128 名前:素人○吉 投稿日:2002年04月06日(土)23時40分35秒
よっすぃーのチューがどうでもいい…か…。フ。
129 名前:裕ちゃん防衛総省次官 投稿日:2002年04月07日(日)00時34分45秒
えー・・・皆さん。皆さんに、頼みがあります。
こちらにくれば詳細は分かりますが、現在、
青少年有害社会環境対策基本法という恐ろしい法案が、
春の国会にて提出されようとしています。
マンガ、アニメ等の創作物を規制するような法案で、
この法案が可決されると間違いなく同人系サイトは閉鎖に追い込まれると同時に、
あらゆるマンガやアニメ、小説、ドラマ等の創作物が日本から消えます。
皆さんの力を貸してください!
あなたのサイトに、このことをとりあげてください!
お願いします!!
詳細は、こちらです。
http://www46.tok2.com/home/snowwing/top/houan.html
130 名前:名無し読者@やぐちゅー最高!! 投稿日:2002年04月07日(日)00時37分03秒
>別れ話は・・・・考えたんですが、ごっつ暗くて、真面目で救い様がない話になり^^;;
>ついでに、登場人物はフルメンバー?!この話より全然長いぞってな感じなんで、
>まだ、書くかは迷い中です(w

絶対書いて下さい。どんなに長くて痛くてもOKです。(w
お願いします。

男前矢口カッコ(・∀・)イイ!!

ヤンタン今日からでしたね。ノリが最高でしたね。
131 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時08分51秒
ーーーー6−−−−

 〜〜〜矢口真里〜〜〜
 裕子。
 ねぇ、わかってる?
 アホとか、馬鹿とか、矢口は裕子にしか言わないんだよ?
 それだけ、心許してるんだ。
 もう、やめようよ。
 特別、とか、別格とか。
 そんな言葉、矢口はいらないよ。
 矢口は、裕子が欲しい。
 裕子は、何が欲しい?
132 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時09分29秒
 今日の収録で、辛そうだった裕子。
 石川に何言われたんだよ?
 何でもない顔して、二人とも、ちゃんとしてた。
 でも、いつもと違うことなんて、矢口にはお見通しなんだからね?
133 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時10分39秒
 しんどいはずなのに、裕子から来ないメール。
 裕子をしんどくさせてるのは、矢口?
 期待しちゃっていいの?
 よっすぃーのことで、妬いてくれてるの?
134 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時11分25秒
 全部、ぶつけるよ。
 逃げるなよ。
 ってか、逃げさせてなんて、やらない。
 矢口の全部を裕子にあげるから。
 裕子の全部を矢口にくださいーーーー。
135 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時12分06秒
 〜〜〜中澤裕子〜〜〜
 矢口。
 うちは、あんたにやっぱり惚れてるみたいやわ。
 特別、とか、別格、とか。
 そんな言葉で誤魔化してきたけど、もう、限界やわ。
 あんたと一緒にいてる吉澤に、妬いてる。
 吉澤があんたにキスしてるのを見たとき。
 うちは、嫉妬したよ。
136 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時13分03秒
 一年前。
 うちと付きおうてるあんたは、まだ、子どもやった。
 子ども相手に、どんどん本気になっていく自分が、怖かったんや。
 娘。卒業して。
 リーダーやなくなっても、あんたはうちの側にいてくれたよな?
 娘。は変わってく。
 その狭間でもがきながら、あんたはうちを必要としてくれた。
137 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時13分45秒
 なぁ、矢口。
 世間には、あんたに釣り合う男、いるはずや。
 『矢口は、裕ちゃんのものだよ』
 一年たっても、あんたは、まだそんなことを言ってくれるんか?
 信じてええんか?
 あんたをもう一回うちのものにしていいんか?
138 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時14分19秒
 うちは、汚い大人なんかも知れんけど。
 あんたを好きな気持ちにだけは、嘘は付きたくない。
 あんたを抱きしめたい。
 うちのものにしたいんやーーーー。
139 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時14分59秒
「裕、ちゃん」
 リビングに、裕子はいた。
 矢口が来たことに、気付いてないはずなんて、ないのに。
 部屋の照明落として。
 矢口の方なんて、見もせずに、ソファーに座り込んでた。
140 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時15分45秒
「なぁ、矢口。東京の夜景って綺麗やな」
 ぽつり、と呟かれた言葉に。
 初めて矢口は、窓のカーテンが開いていた意味を知る。
 そして、ゆっくりと窓の側に近づく。
「矢口には、裕子の方が綺麗に見える」
 裕子がこの夜景を見て、何を考えてたかなんて、そんなの知らない。
 そんなの矢口には関係ない。
141 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時16分29秒
「比べること、ちゃうやん」
 穏やかな、裕子の口調。
 すっと矢口は、カーテンを閉めた。
 さっきまで、部屋を照らし出していた、薄明かりは、もうない。
「何で、連絡くれなかったの?」
 裕子は、何も言わない。
「矢口が、よっすぃーとキスしてたの、見てたんでしょ?
 どう、思ったの?」
 何で、今日、あんなに辛そうな顔、してたの?
 矢継ぎばやに出そうな質問を矢口はぐっと、こらえる。
 裕子を責めたいわけじゃない。
142 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時17分45秒
「矢口・・・・」
 俯いていた矢口の耳に、衣擦れの音が聞こえたと思ったら。
 抱きしめられていた。
 強く、強くーーーーー。
143 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時18分17秒
「なぁ矢口。うちのこと、好きか?」
「今更、何、言ってるのさ・・・・」
 裕子の表情は見えないけど。
 裕子の手が。身体が。震えているのがわかる。
「世界で一番、裕子が好きだよ。決まってるじゃん。愛してるよ、裕子」
 驚いたように、一瞬、強張る裕子の身体。
「ヘタレやで?」
「でも、好きだよ」
「独占欲、強いで?」
「知ってる。でも、好き」
「ワガママやで?」
 も〜〜。
 暗がりに目が慣れてきたのか、裕子の表情がうっすら見える。
 不安そうな目を、しているーーー。
 矢口は、裕子からちょっと、身体を離して、裕子の目をじっと見つめた。
「矢口のこと、もうちょっと信じてよ。
 矢口は、どんな裕ちゃんでも、裕ちゃんが好き。愛してるって、初めて言ったんだよ?」
 驚くほど、自分の心が静かなのがわかる。
 裕子の目が、驚いたようにまん丸になって。
 ふっと嬉しそうに、笑ったように見えた。
144 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時18分54秒
 矢口は、そっと目をつぶった。
 すぐに、落ちてきた、裕子の唇。
 優しい、優しい、キス。
 裕子の気持ちが一杯つまった、矢口の気持ちが一杯つまった、キスだった。
145 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時19分51秒
「もう、離れろって言われても、離れないよ?」
「離れたいって言われても離さん」
 強く抱きしめてくる腕が嬉しくて。
「裕子、矢口のものになってくれる?」
「当たり前やん。矢口こそ、どうやねん?」
 返される裕子からの言葉が嬉しくて。
「矢口は、裕ちゃんのものだって、ずっと言ってるじゃん」
 頭を、裕子の胸にこすりつける。
「そやったな。って、だいぶ前から言ってたやん?」
 ことあるごとに、矢口が言っていたセリフ。
『矢口は、裕ちゃんのものだよ』
 驚いたような裕子の声にも、嬉しくなる。
「矢口は、裕子と別れてからも、ずっと裕子に片思い、してたんだよ?」
 気付いてなかっただろ?
 甘えた声に、裕子は苦笑するしかない。
「切ない思い、させてたんやな・・・ごめんな。うち、今度は矢口のこと、ちゃんと信じるから・・・」
「アホ裕子。前は信じてなかったのかよ?」
146 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時20分35秒
 ちょっと、むかっときたけど。
 そんなこと関係ないくらい、裕子の腕の中は気持ちいい。
「矢口のこと、信じるのが怖かってん」
「そんなこと考えてたの?」
 気付かなかった。
 驚いたように裕子を見る矢口を、切なそうな目で裕子は見返す。
「好きになりすぎて、怖かってん」
 裕子・・・。
「負けないくらい、矢口だって、裕子が好きなんだよ。
 ・・・・・・気付いてあげれなくて、矢口こそ、ごめん・・・・・・」
147 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時22分57秒
 そんなことない。だって、この1年は無駄じゃなかったやろ?
 そっと裕子は首を振って、再び矢口に二度目のキスを落とす。
「・・・んっっ」
 触れ合わせるだけじゃ、満足できなくて。深く、深く、もっと矢口を感じたい。
148 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時23分31秒
「矢口・・・」
 首筋へのキスに。
 一年ぶりの感覚に。
 溺れそうになる気持ちを矢口は必死に押し止めた。
「裕ちゃん・・・・今日は、キスだけじゃ、駄目?」
 裕ちゃんと気持ち、通じ合って嬉しいけど、やっぱり、気持ちがついていかないよ。
 身体だけの関係になっちゃいそうで、嫌だよ。
149 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月07日(日)23時24分07秒
 矢口の言葉に、裕子は。
「そやな・・・・これから時間はいくらだってあるもんな?」
 そっと、矢口の耳を甘噛みしながら、ささやく。
「・・・もうっ」
 ピクリと反応する矢口が可愛くて。
 でも。
「一年分のキスするまで、寝かさんからな?」
 それだけは、譲れない。
 腕の中にあるのは、求めて、求めてやまなかった、たった一人の存在ーーーー。
150 名前:つかさ 投稿日:2002年04月07日(日)23時32分55秒
>>素人○吉さん
 うちの矢口はね〜さん一筋なんです〜(w

>>裕ちゃん防衛総省次官さん
 初めて聞きました。ん〜〜、自分のHPは持ってないんですが。
 趣味の世界も侵害されちゃうのかな〜

>>名無し読者@やぐちゅー最高さん
 別れ話は善処します・・・・ということで(汗)
 就職が決まりそうなんで(w

ってことで、やっとここまで来ました♪
まるで、終わりがつきそうな終わり方ですが、まだ終わりませんっ。
しかし、この話はあと2シーンっす〜〜。
それでは。
151 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月07日(日)23時35分00秒
やぐちゅー小説の、『ヤグチしっかりバージョン』ですね。
裕ちゃんがヤグチに甘えるのって、凄く好きです。
ヤグチの手のひらの上で、コロコロする姿にニヤケてしまいます。
最近、幸せになる『やぐちゅー』が少ないので、楽しませてください。
お願いします。
152 名前:素人○吉 投稿日:2002年04月07日(日)23時40分18秒
>うちの矢口はね〜さん一筋なんです〜(w
 てか、いつもそれしか頭に無いじゃないっすか。
 
 あ、後、何気に暴露するとやぐちゅ〜のエッチシーンに萌えないデス、俺。(笑)
 (↑これ読んでイタメールすんなよ/w)
 
153 名前:読んでる人 投稿日:2002年04月08日(月)11時56分52秒
もどかしかったやぐちゅうの関係も、ようやく落ち着いた今、
あとは甘々な展開のみで進んでいくのかな?

あ、いしよしの問題が未解決だった・・・。
154 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時05分48秒
ーーーー7−−−−

 あれから、吉澤と石川もうまいこといったみたいや。
 ちょこちょこ喧嘩はしてるみたいやけど。
『よっすぃーと石川だから・・・。もう、喧嘩してても勝手にしろって感じだよ〜』
 大丈夫、うまくいってるよ。
 大事な大事な矢口が笑いながら言ってた。
155 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時06分34秒
 うちと矢口もうまいこといってる。
 まぁ、別に・・・あんまり、うちと矢口の場合は変わってないねんけどな。
 ちょっと、泊まりの回数が増えたくらいで・・・・。
 んでも、あんま外泊ばっかさせたらまずいしな。
『ご飯食べにいこうよ』
 とか。
『ラジオの収録まで時間あるから、逢いに行く』
 とか。
 そういうささいなことだって、嬉しいんやわ。
 一緒にいる時間は減ったけど。
 寂しさも多いけど、逢った時の楽しさは、倍になんねんな〜なんて。
 まるで、純愛やね?
156 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時07分17秒
 それでもやっぱり、矢口が何も言わずに、うちの腕の中で泣き続ける夜もある。
 娘。として、しんどいこと、一杯あるんやろうなって思うわ。
 うちは、矢口を抱きしめることしかできん。
 変わり続ける娘。に。
 寂しさを感じへんって言ったら嘘になる。
 13人体制になって。
 最初の5人の面影なんて、ほとんどないやん。
157 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時08分41秒
 圭織、なっち、圭坊、矢口、後藤、吉澤、石川、辻、加護に新メンバー。
 みんな、それぞれに、違和感や、戸惑い、苛立ち感じながら、それでも、走り続けてる。
『裕ちゃん、聞いて〜』
 愚痴くらいやったら、いつだって、大歓迎や。
158 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時09分51秒
 娘。辞めて一年たつけど、まだ、仕事のオファーがくる。
 幸せなことやなって思うと同時に。
 娘。卒業して、走り続けるうちの背中、ちゃんと見ててやって思うんや。
 娘。であることだけが、あんたらの存在価値やないねんで?
 うちですら、娘。やめても、弱肉強食の芸能界でなんとかやっていけてる。
 娘。を辞めてもこの世界にいられるっていう道を作っていくのがうちの役目。だからこそ、
頑張りたいし、頑張らなきゃって思う。
 どっかの雑誌インタビューで答えてんけど。
 それが、うちの正直な気持ちや。
 自分らの夢、忘れたらあかんで?
 心を休めたくなったら、いつだっておいで。
 どこにいっても、娘。は娘。やからなーーーー。
159 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時10分29秒
「あれ?吉澤やん」
 某テレビ局のロビーで。
 いつも、収録現場からちょっと外れているため、あまり人気のないロビー。
 中澤が、ロビーに来たのは偶然じゃなかったけど。
 ソファーでぼんやりとジュース片手に考え込んでる吉澤と遭遇したのは偶然で。
「久しぶりやな〜。元気してたか?」
 でも、一人って珍しいな〜。
 気軽に声をかけてくる中澤に、慌てて吉澤は立ち上がった。
「あの、この前はすいませんでした」
 は?
 きょとんとする中澤。
「え〜〜と、この前。矢口さんにキスしちゃって・・・」
 だんだん語尾が小さくなる。
『嫌よ嫌よも好きのうちって言いますよね』
『関係ない、邪魔すんなって言われてるのに随分、健気なんですね』
160 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時11分42秒
「なんか、失礼なこと言っちゃって・・・・すいませんでした」
 ちょっと、遅い謝罪かもしれないけど、中澤さんと二人でしゃべれる機会ってあんまりなくて。
「すいませんでした」
 もう一度、ぺこり、と頭を下げた吉澤に、中澤は、もうええよ、と首を振る。
「こっちこそ、大人気ない対応して悪かったな、思っててん」
 ごめんな。
161 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時12分42秒
 吉澤は、ほっとしたような表情を見せる。
「もう、収録終わったん?」
 吉澤に座りいや、と促しながら、中澤も、ソファーに座る。
「あ、はい。今日は珍しく、娘。全体での撮りで。さっき終わったとこです」
「お疲れさん。んで、どうかしたんか?」
 唐突な中澤の問い。
 質問の意図が掴めなくて、吉澤は中澤を見つめる。
「終わったんやったら、帰りの準備してるとこちゃうの?
 一人でこんなとこいてるから、何かあったんかなって」
162 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時13分17秒
 ・・・・思わず吉澤は俯いてしまった。
「もしかして、また石川と喧嘩したんか?」
 ちょっと笑いをふくんだ声に、吉澤はむっとした表情になる。
「だって、梨華ちゃん・・・」
『吉澤と石川の喧嘩の話聞いてたら、長いよ〜?』
 苦笑交じりの矢口の声を思い出し、慌てて中澤は吉澤の言葉をさえぎった。
 そして、唐突に中澤は、吉澤の耳もとに唇を近づける。
「んじゃ、うちが仲直りさせたるわ♪」
163 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時13分57秒
 俯いてる吉澤には見えんかったやろうけど、石川、こっちに向かって歩いてきてるやん。
 愚痴聞くのは勘弁やけど・・・・。
 ここはいっちょ、ね〜さんが一肌脱いでやろか♪
 大事な後輩のためやーーーー。
 とか言いながら、中澤の目はおもしろがってるとしか言い様のないもので。
164 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時14分42秒
「ちょ・・・中澤さんっ?!」
 するり、と吉澤の肩に回されてくる中澤の腕。
「なんや?」
 すっと、顔を寄せられて。
 目の前には、中澤のドアップ。
「な、何してるんですか?」
 ニヤリ、と中澤は意地悪く笑う。
「わからんの?」
 すっと閉じられる中澤の瞼。
 さらに、近づいてくる中澤の顔に。
 吉澤は思わず、凍りついた。
 ・・・・が、予想に反して、中澤は触れるか触れない、ぎりぎりの所で唇をとめる。
「?」
 その時、誰かが駆け寄ってくるような足音が聞こえて。
 中澤の顔が急に目の前から消えた・・・・。
165 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時15分23秒
「ひどいと思いません?矢口さん」
 収録が終わって、ロビーに向かいながら、矢口は心の中でこっそりため息をつく。
 脇にいるのは、石川。
「うんうん」
 適当に相槌を打ちながら、矢口の心の中を占めていたのは
 う〜、めんどくさいのに捕まっちゃったよ〜〜。
 という嘆きだったりする。
『明日、オフなんだ』
『なら、家おいで〜や。うち、今日昼からオフやから、迎えに行くわ〜。
何時ごろ、どこ行けばいい?』
『んじゃ、18時にロビーで待っててよ。楽しみにしてるよ♪』
 久々の裕ちゃんとのデートだってのに・・・。
 どうやら吉澤と石川はまた、喧嘩したらしい。
166 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時16分02秒
 喧嘩するほど仲がいいって言うけど、きみら、喧嘩しすぎ。
 それだけ、顔を合わせてるってことで・・・ちょっと、羨ましかったり。
「それでね、よっすぃーったら・・・」
 まだまだ続きそうな石川の話だったが。
「あれ?」
 不思議そうな声になる。
「あそこにいるのって、よっすぃーと、中澤さんじゃありませんか?」
 ロビーのソファーに座ってたのは、確かに吉澤と、中澤で。
 ふっと、中澤の視線が一瞬こっちを向いたような気がした。
 そして、ニヤリ、と人の悪そうな笑み。
 ・・・・こんな顔、裕子がする時は、ろくな時じゃない。
167 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時16分42秒
 長年の経験で、充分矢口もそれは承知していたが、目の前の光景は、繰り広げられた光景は。
 吉澤の肩に回された裕子の腕。
 近づく顔。
 ・・・・・・・・・・っっ!!!
 矢口は猛然と走り出す。
 一歩遅れたものの、石川もそれに続く。
168 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時17分24秒
「いったぁーーーー」
 いきなり中澤が視界から消えて。
 吉澤の耳に、間の抜けた中澤の声が聞こえたと思ったら。
「この、馬鹿裕子っっっ。何してんだよっっ?!」
 矢口の声がロビー一杯に響き渡る。
 さらに。
「私のよっすぃーに何するんですかっっ!!!」
 さらに響き渡るアニメ声。
169 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時18分03秒
 矢口に突き飛ばされて、床に転がったまま、中澤は、仁王立ちした矢口の表情に冷や汗を流す。
「や、矢口・・・なんや、矢口もいたんか〜〜。矢口ちっこいから、石川の影になってて裕ちゃん、
見えへんかったわ・・・」
 自然と声も小さくなる。
「それで???」
 冷たい矢口の声。
「い、いや、ほら、吉澤が石川と喧嘩したっぽいから、裕ちゃん心配で・・・・」
「心配だったら、キスするのかよっっ?!馬鹿裕子っっっ!!!」
 さらに声がでかくなる矢口の口を、立ち上がって、中澤はふさぐ。
「ご、ごめんっ。でも、ちゃんと寸止めしたってっっ。
 裕ちゃん矢口一筋やからっっっ。な、吉澤っっ?!」
 焦りまくった中澤の声に、まだいまいち状況が把握できなくて、呆然としながら吉澤は、
「は、はい・・・」
 とだけ答える。
170 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時18分42秒
 ・・・・この、馬鹿っっっ。
 な?うち寸止めうまいねんで〜〜。
 変なことで嬉しそうに胸を張る中澤から、矢口は、目をそらし、ついでにきびすを返した。
「や、矢口??」
「帰る」
 そのまま、足早にスタスタと玄関に向かおうとする矢口。
「ちょ・・・待ちいや」
 後ろから伸びてきた腕が、矢口を抱きしめた。
「ごめん。でも、なぁ・・・。ホンマに帰るん?せっかく逢えたのに・・・」
 真面目な声。
「・・・・アホ」
 唖然としたような顔の吉澤と石川の顔が矢口の視界に入る。
 恥ずかしくて、思わず中澤の腕を振り払おうとする矢口だが、中澤の、
「うちは、矢口だけやって言ってるやん。信じてぇや」
 矢口だけにしか聞こえないように。ぽつりと落とされた囁きに、思わず動きを止めた。
「・・・アホ」
 拗ねたように俯く矢口。
 くしゃくしゃと、頭をなでられる感触。
171 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時20分20秒
「お詫びに、晩御飯は奮発するから。矢口、何食べたい?」
 嬉しそうな中澤の声に。
 何か、子ども扱いされてるようで、やっぱりむかつく。
 中澤の腕から抜け出しながら、矢口は、ぽん、と手を打つ。
「ん?」
 矢口はにっこりと極上の笑みを浮かべた。
「裕子が食べたい♪」
172 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時20分57秒
 へ?
 ぽかんとする中澤の顔。
「奮発してくれるんでしょ?」
 笑顔を浮かべる矢口とは正反対に、中澤はちょっと困った顔をする。
 嫌なのかよ?
 不満そうな矢口の顔に、苦笑いしながら、中澤は、吉澤と石川に視線を送る。
「即答してやりたいとこやねんけど・・・あんま刺激強い会話は、まずいんちゃうん?」
 二人とも、真っ赤な顔をしている。
 し、しまった・・・。
 瞬間的に、矢口の顔も真っ赤になる。
173 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時21分27秒
「ま、矢口のリクエストも決まったことやし、そろそろうちらは退散するわ」
 矢口が逃げ出さないように、しっかり矢口の手を握りしめながら、
中澤は幸せそうに二人に手を振る。
「夫婦喧嘩は犬も喰わんって言うから、二人とも、喧嘩はほどほどにしとき〜や♪」
174 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月08日(月)23時22分02秒
「ってか・・・・・・矢口さんと中澤さんの痴話喧嘩の方がよっぽど、
犬も食べない奴だと思うんだけど・・・」
 どう思う?梨華ちゃん。
 続けられたセリフに、石川は頷く。
 そして。
「私らも帰ろうか?」
「うん、そうだね」
『私のよっすぃーに何するんですかっ』
 吉澤の耳には石川の声がちゃんと残ってて。
「ごめんね」
 素直にその言葉がでてくる。

「私こそごめんね」
 にっこり笑った石川の笑顔に、吉澤はクラクラきながらも。
 石川の手をしっかりと握りしめたのだった。
175 名前:つかさ 投稿日:2002年04月08日(月)23時29分03秒
>>151さん
 言われるまで、矢口しっかりバージョンだとは気付きませんでした(w
 幸せなやぐちゅー、自分も好きですv

>>素人○吉さん
 エッチシーンはいれません(w

>>読んでる人さん
 思わず、感想読んで笑ってしまった・・・・あ、でもこの扱いはありですよね?(w
 本当は気持ちが通じ合うとこで終わろうかと思ってたんですが。

 とりあえず、明日の晩でラストです。
 たくさんのレス、ありがとうございました。
176 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月09日(火)00時47分18秒
明日で終わりですか。
残念です。
「つかさ」さんのやぐちゅー小説、大好きです。
また、書いてくださいね。
しあわせな「やぐちゅー伝説」を増やしてください。
177 名前:読んでる人 投稿日:2002年04月09日(火)12時07分47秒
矢口が裕ちゃんを食べるシーンが見たい・・・
あ、Hシーン無しなんてすね。じゃあ、テキトーに妄想します(w

あと、矢口は裕ちゃんに対して「アホ裕子」と言うコトはあっても「馬鹿裕子」って
言うコトはないと思うんだけど・・・(しょうもないツッコミでゴメンね)

では、ラストの更新楽しみにしてます。
178 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月09日(火)23時07分37秒
ーーーー8−−−−

 夜景、綺麗だな。
 矢口は、リビングの照明を落として、カーテンを握りしめながら、じっと夜景を見つめた。
 ・・・・・・裕子・・・・・・。
「どしたん?」
 そっと後ろから抱きしめられた。
 風呂上りのシャンプーの匂いが矢口の鼻をかすめる。
「ん〜〜」
 矢口は、曖昧な返事をしながら、裕子の腕に、頭をこすりつけた。
「甘えた矢口やな」
 甘い、声。耳元でささやかれて、ゾクリ、と背中を何かが駆け上がる感覚ーーーー。
179 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月09日(火)23時08分09秒
「こんなに幸せで、いいのかな?」
 夜景から目を離して、裕子の顔を見上げる。
 そっと、裕子は矢口に軽いキスを落とす。
「うちも、まだ信じられへんかったりすんねんけどな」
「矢口だって・・・・」
180 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月09日(火)23時08分55秒
 何の変化もなかったら、そのまま裕子とは、友達以上、恋人未満、
お互いがお互いの「別格」。そんな関係が続いていたんだろうか?
 別れてからも、矢口は裕子に片思い、してた。
 ずっと、裕子が欲しかった。
 友達、と呼ぶには絆はあまりに深すぎて。
 親友、と呼ぶには歳は離れすぎていて。
 だから、「別格、特別」って言葉を使った。
 今、むちゃくちゃに幸せだけど。
 前の関係だって、幸せで。
181 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月09日(火)23時09分29秒
「裕子・・・・これで良かったと思う?」
 矢口の声は、不安そうだった。
「もう一回付き合い始めたことか?」
 優しい裕子の声に、矢口は、頷く。
 そして。
「うちは、別れてもええで?」
 矢口は、一瞬、言葉をなくす。
 裕子の言葉に、耳を疑った。
「・・・え?」
182 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月09日(火)23時10分27秒
 一瞬で、泣き出しそうになった矢口の表情を見て、裕子は言葉を続ける。
「別れたとしても、矢口がうちの中で、別格やってのは変わらんもん。
 うちの部屋の鍵はあんたに預けとくし。いつでもおいでってのも変わらんし。
 寂しくなったり、辛くなったら、あんた呼ぶのも変わらん。
 違うのは、プラトニックかそうじゃないかってことだけやん」
 裕子は真剣な眼差しで、矢口を見つめる。
「うちは、どっちでもええ。矢口がうちの側におってくれるんやったら。
 まぁ・・・・もう一回プラトニックに戻れってのは・・・結構きついかもしれんけど」
 少し、涙がにじみかけている矢口の目のふちを、裕子はぺロっと舐めた。
「愛してるって言えんようになんのも辛い、かな?
 後は・・・あんたが、誰かに抱きしめられたり、キスされたり・・・・そんなんも嫌やな。
 あんたをうちのもんやって公言できんのも、しんどいか。
 でも、そうなったらそうなったで、今度はうちがあんたに言うよ。
 うちは、矢口のもんやってな。
 今度は、うちがあんたに片思いするから」
 裕子は優しく笑う。
183 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月09日(火)23時11分19秒
 そんな裕子の瞳に、吸い込まれそうになりながら。
 あぁ、そうか、と矢口は妙に納得する。
 今、自分が不安になった気持ち、これからどうなるんだろうって怖い気持ち。
 きっと裕子は一年前にこんな気持ちになったんだ。
 きっと、一年前、裕子の気持ちがわからなかったのは、自分がまだまだ子どもで。
 一緒にいれることだけに満足していたからだったんだ。
 将来、とか。
 これから先、とか。
 何も考えずに裕子と一緒にいたかったから。
184 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月09日(火)23時12分04秒
「なぁ矢口。いけるとこまで、一緒に生きていこうや?
 うち、矢口がめちゃくちゃ大事で、大好きやねん。
 誰にも渡したくないくらい惚れてる。
 多分、一生に一回の恋やで?
 これから先、何かあって、別れることになっても。うちらの関係はかわらんよ。
 別れてからのこの一年で、うち、わかってん。
 うちは、自分で思ってるより、もっと、ずっと、深く矢口に惚れてるってな・・・・」
 無言で裕子を見つめる矢口の表情から、何も読み取れなくて。
「あかん?矢口は、うちと別れたい?」
 辛いセリフを言ってるはずなのに、裕子の表情は、やっぱり、優しい。
185 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月09日(火)23時12分55秒
「やっと・・・・やっと、矢口だって、裕ちゃんは矢口のものって公言できるようになったんだよ?」
 矢口の表情が、だんだん、泣き笑いに変わる。
「別れたいはずなんて、ないじゃん。
 矢口、ずっと裕ちゃんと一緒に生きていきたい」
 不安がないって言ったら、嘘になるけれど。
 それでも、裕子の言葉を、自分の心を、この一年を信じよう。
 
186 名前:☆☆変化☆☆ 投稿日:2002年04月09日(火)23時13分36秒
 笑顔になりながら、ぽろぽろと涙を流す矢口。
 零れ落ちる涙を唇ですくいながら。
「愛してるで」
 とびっきりの甘い声・・・・。
「愛してるよ、裕ちゃん」
 もう、絶対に離さないーーーー。
 二人の共通した想い・・・・・・・。

                                  【end】
187 名前:つかさ 投稿日:2002年04月09日(火)23時19分50秒
>>176さん
 ずっとレスありがとうございました。

>>読んでる人さん
 しょうもなくないっすよ〜。
 いや、なんとなく・・・・自分の中で、甘える時は、アホ裕子で怒ってるときは、
 馬鹿裕子かな、と(w

ってことで、今までお付き合いいただきありがとうございました。
とりあえず、これで終了とさせていただきます。
別れた時の話とか、またいつか書いてみたいなと思いつつ。
やっぱある程度書いてからじゃないと、途中放棄になるのは嫌なので^^;;
目標としてた毎日更新、たくさんレスをいただけたってことで自分的には大満足です。

そして、やぐちゅーは永遠に不滅です!
ありがとうございました。
188 名前:素人○吉 投稿日:2002年04月09日(火)23時24分05秒
お疲れさん。
結局一時放棄は無くなったんすね。(パチパチ、拍手)
189 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月09日(火)23時26分03秒
素晴らしい作品をどうもありがとう。
やぐちゅーファンとして、久しぶりの優しい二人の小説に出会いました。
裕ちゃんもヤグチも、不幸は似合わないですよね。
作者さん、最高 !
190 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月10日(水)00時47分34秒
幸せすぎて涙が出ました。
作者さんありがとー!
やぐちゅーバンザーイ!
191 名前:読んでる人 投稿日:2002年04月10日(水)10時10分15秒
良い作品を読ませてくれて、ありがとうございました。
次回作も期待して待ってます。

今度は痛めのやぐちゅうが読んでみたいと思うのは、自分だけでしょうか・・・?
192 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月11日(木)10時20分15秒
もう・・・やぐちゅー永遠!!
作者さんバンザイ!!

次回めちゃくちゃ楽しみに待っています。
193 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月11日(木)23時29分27秒
一気に読ませてもらいました。つかささん、すばらしいです!
あっしも、どこぞで、「やぐちゅう」書かせてもらっていますが、つかささんの
「やぐちゅう」サイコーです! 心にしみました。

なかでも、矢口の・・・
「逃げるなよ。
 ってか、逃げさせてなんて、やらない。
 矢口の全部を裕子にあげるから。
 裕子の全部を矢口にくださいーーーー。」
心が締め付けられたシーンでした。お疲れさまです
194 名前:☆☆番外編☆☆ 投稿日:2002年04月15日(月)00時34分00秒
〜〜数時間後〜〜

「でも裕ちゃん、浮気者だから、矢口、絶対また泣かされるんだ」
 ベッドの上で。
 矢口は、目を冷やしながら、ぼそっと呟いてみた。
「な、なんで〜な?」
 どこが浮気者やねんっ?裕ちゃん矢口一筋やって・・・。
 隣にいる焦りまくったような裕子の表情に矢口は、ニンマリ笑った。
「今日のこと、許したわけじゃないからね?」
 今日のこと???
「よっすぃーとのこと」
 即答する矢口に、中澤は苦笑した。
「冗談やって言ってるやん?」
195 名前:☆☆番外編☆☆ 投稿日:2002年04月15日(月)00時34分46秒
 軽く、頬にキス。
「機嫌なおして〜や?」
「やだ」
 きっぱり即答する矢口に、裕子の顔は情けなさそうになる。
「矢口〜〜〜〜」
 すりすりと、矢口の肩に頭をすりよせてみる。

 ・・・・甘えたモードの裕子って何でこんなに可愛いんだよっっっ。
 ついつい許したくなっちゃうけど。
 矢口は思わずにやけそうになるのを必死に押さえた。
「裕子、今日矢口の言ったセリフ、覚えてる?」
 肩に頭をすりつけてくる裕子。
 んにゃ?
 ・・・・そんな表情するな。
 不思議そうにこちらを見上げる裕子の顔は、なんだかとても色っぽくて。
 矢口、止まらなくなっちゃうぞ?
 ってか、止まる気は全然、さらっさらないんだけど。
196 名前:☆☆番外編☆☆ 投稿日:2002年04月15日(月)00時36分02秒
 矢口は、裕子の腕を自分の腕で押さえ込んで、裕子の身体の上に馬乗りになった。
「や、矢口?」
 そのまま、口付ける。
 唇だけなんかじゃ我慢できなくて。
 するり、と入り込んだ矢口の舌。
 裕子の舌をからめとる。
「・・・・・・んっ」
 唇を離すと、裕子から物足りなさそうな声があがる。
 それには構わず、矢口はそのまま瞼、おでこ、頬・・・顔中のあらゆるところにキスを降らせた。

「うち、明日仕事やって・・・・」
 矢口、明日オフなんやろ?
 いつの間にか、ホールドしてたはずの裕子の手が背中に回ってた。
 あやしくうごめくその手は、攻守交替を訴えてたけど。
「矢口、裕子が食べたいって言ったじゃん・・・」
 今日は、負けてなんかやらない。
 矢口はそっと、裕子の耳たぶを甘噛みしながらささやく。
「裕子のいい顔、見せてよ・・・・」
197 名前:☆☆番外編☆☆ 投稿日:2002年04月15日(月)00時36分50秒
 耳朶に吹きかけられる息に。
「・・・あっ」
 ぴくっと動く肩。そして吐息が裕子の口から漏れる。
「裕子は矢口のものなんでしょ?」
 証拠、見せて?
 囁くような呟きとともに、耳の後ろから首筋に舌が這わされる。
 矢口の手が、裕子のバスローブの隙間から、侵入する。

「ちょ・・・・うんっ・・・・・・あぁ・・・・」
 鎖骨をぺろっと舐めて。はだけたバスローブから覗く肩を、軽く噛む。
 手は胸をあやしくうごめいて。
「今日は、焦らすからね?」
 裕子の感じるポイントから、少しだけ外して。
 身体中に軽いキスを落とす。
 本当は、痕、つけたいけど。
 ぎりぎりの理性がそれを止めた。
198 名前:☆☆番外編☆☆ 投稿日:2002年04月15日(月)00時37分57秒
「や・・・・ぐち、なんで・・・・っん。あんっ」
 ちょっぴり潤んだ裕子の瞳。
 仰け反った首がなまめかしい。
「今日のお仕置き♪」
 楽しげに囁く矢口に、裕子の腰が押し付けられる。
 きっと、無意識なんだろうけど・・・めちゃくちゃやらしい・・・・。

 ぴんと立った乳首が「触って」と自己主張してるけど。
 まだだよ。
 矢口は、乳房に舌を這わしながら、太ももを軽いタッチでなであげる。
「も・・・・・・・あぁん・・・・」
 裕子は身体をのけぞらせる。
 もっと、もっと。
 身体がそう言ってるのがわかる。
 微妙に外された刺激でも、充分身体は熱くなってて。
 焦らされてる、そう思うだけで、どうしようもなくなってく。
「矢口・・・・」
 からまり合う視線。
「裕ちゃん・・・」
199 名前:☆☆番外編☆☆ 投稿日:2002年04月15日(月)00時38分51秒
 そっと矢口は裕子の乳首を口に含む。
「あぁっっ、・・・・んっっ」
 待ち焦がれていただろう刺激。裕子の誘うような甘い声。
 紅潮した頬に。
「・・・・こんな裕子、矢口だけしか見れないんだよね?」
 思わず愛撫をやめて、矢口は裕子を抱きしめた。
「あ・・・たり前やろ・・・。矢口やから・・・」
「好きだよ、裕子」

 いったんとめた愛撫を再開して。
 のけぞる顎、潤んだ瞳、首に回された手。
 すべてがいとおしくて、いとおしくてたまらない。
200 名前:☆☆番外編☆☆ 投稿日:2002年04月15日(月)00時39分45秒
「裕ちゃん・・・・・愛してる、愛してる」
 呟きに想いを全て託して。
 裕子は矢口の言葉が聞こえてるのか聞こえていないのか。
「好き・・・・・・や、矢口。・・・・・あぁっ」
 抱いてるはずなのに、抱かれてるような気がするのはなんで?
 想いのたけをぶつけるように、矢口は裕子の敏感な部分へ手をやる。
 くちゅり。
 そこはもう、充分濡れすぎるほど濡れていて。
「んっはぁぁっ・・・・・・・・あぁんっ・・・・・・」
 裕子の喘ぎ声はもう、誘ってるようにしか聞こえない。
 こっちがいっぱいいっぱいだって・・・・・・。
 それくらい、裕子の乱れる姿は扇情的で。
 でも。

「裕ちゃん・・・・・・気持ちいい?」
 指は滑らかに挿入されて。
 裕子の腰が跳ね上がる。
「・・・・・いいっ・・・・・・、や・・・・・ぐち、お願いやから、もう・・・・・・・・」
「・・・・・駄目。まだ、・・・・・だよ・・・・・」
 耳元への裕子の掠れた声に。
 燃え上がりそうな自分の身体に。
 自分の声も掠れているのがわかる。
201 名前:☆☆番外編☆☆ 投稿日:2002年04月15日(月)00時40分43秒
「・・・・・・な、んで・・・・・・」
 潤んだ瞳に。
 Gスポットを微妙に外して動かす矢口の指に、焦れたように蠢く腰に。
 背中に回された腕に。
「今日の・・・・・・お仕置きって・・・・・・言ったじゃん・・・・・」
 左腕で、胸の突起を刺激しながら、そっと矢口は裕子に口付ける。
 むさぼるようにからめとられる舌。
 ・・・・・・・・矢口だって、限界じゃん・・・・・・。
 のぼりつめる裕子を見てみたい。
 自分の腕の中で。

 自分の腕の中で意識を失うように達した裕子を矢口は抱きしめた。
 ・・・・・・・・あなたを、愛しています。
 誰よりも。
 そっと、抱きしめ返される腕が嬉しくて。
 あなたが笑顔でいることが嬉しくて。
 ずっと、あなたを見つめていたいーーーーー。

                                   end
202 名前:つかさ 投稿日:2002年04月15日(月)00時44分07秒
ってか・・・・・この話はかなり迷ったんですが(w
15日にどうしても何かあげたいってのはあり。
初エロ小説っす^^;;

さて、気付く人はいるのか?とか思いつつ。
姐さん一周年おめでとうございます。
203 名前:つかさ 投稿日:2002年04月15日(月)00時56分41秒
>>素人○吉さん
 sage進行で気付くかな?ってのは思ってますが。まぁ萌えなくても自分の中の
 この話の一区切りだったんで。長い眼で見てください(w

>>189さん
 やぐちゅーに不幸は似合わないっ。
 まったくもって同感です。幸多い小説が読みたいな〜。
 自分で書けって話ですね(w

>>190さん
 やぐちゅばんさい!って気分満載で今までのは書いてました。
 後は、いろんな意味での感動させてくれた作家さんへのお礼を込め・・・・・。

>>読んでる人さん
 痛めのやぐちゅー・・・・・・は、期待に添えるかわかりませんが。
 もう一つ、創作中です。レス、ありがとうございました。
 他のスレッドでも読んでる人さんのレスは見るので・・・自分のスレッドに
 レスいただけるなんてって感じで見てました。

>>192さん
 次回作は・・・・・さくさくいきたいな、とは思いつつ。
 もう少し(いや、だいぶか?w)お待ちください。
 4分の1は書いたのですが・・・・・まだ、ラストが決まってない・・・・・・(汗)
204 名前:つかさ 投稿日:2002年04月15日(月)01時00分34秒
>>193さん
 自分もあそこのシーン、結構気に入ってます。
 いろんな意味で、書きたいのはやっぱりやぐちゅーなんですよね(w
 >>どこぞで書かせてもらってる
 ってのがごっつ気になります(w
 見たことはあるのかな〜?

ってことで。今後、sageでいく気はないのですが・・・・・今回のだけはsageでいかせて
もらいます。あんまりageないでください(ぺこり)
書いた本人が一番恥ずかしいってのはありますが(w

仕事、忙しくなかったら、来週末くらいには新作をあげたいと思ってます。
パラレルで、学園ものです・・・・・見たことある設定だったら・・・・突っ込みください(w
今後は、また〜りいきたいな、と思ってます。
205 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月15日(月)01時02分07秒
15日という記念日にこの小説を見つけた事を感謝します。

何が「Hシーンは無い」んですか?(w
206 名前:読んでる人 投稿日:2002年04月15日(月)11時59分01秒
まさか、エロが来るとは・・・(w
いや〜萌えました。

次は学園モノでやぐちゅうですか。
これまた萌えそうな設定ですね。期待して待ってます。
207 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月16日(火)12時01分07秒
私も、エロがくるとは思っていませんでした。
発見できて良かった!
自分もどこぞで書かせてもらっています(つかささんからもレスを頂いた銀の病弱作者です…w)が、つかささんの小説は魅力的でホント、引き込まれます。
次回作も、期待して待っています!
208 名前:名無し読人 投稿日:2002年04月16日(火)20時16分44秒
は、は、はなぢが・・・。
209 名前:つかさ 投稿日:2002年04月22日(月)01時41分44秒
とりあえず・・・・・すいません、今週末はあげれませんでした・・・・。
ってか、どんどんどんどん話が長くなってくのは何故って感じで^^;;;
やっぱり半分もかきあげてないのをあげるのは嫌なので。
今日、構成をいじったんで、やっとこれから書きやすくなるかな、なれ!!ってな
感じっす(w
でも、まだラストが全然決まってない・・・・・(汗)

次はageますっ。更新しますってことで。
そして、次回予告。

学園物で、登場人物は、中澤、矢口、平家、市井、後藤ってな感じです。
王道に走るのか?痛い話にならないか、とか書いてる本人もまったく今はわかって
ません・・・・・・。
210 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月22日(月)10時53分01秒
待っていますよ。
っていうか、作者さんの作品の大ファンです。

みっちゃんに期待です。
娘。以外の出演者がいると、内容に深みが増すんですよね。
非常に楽しみです。
211 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年04月23日(火)09時23分17秒
楽しみに待ってます
212 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)00時01分55秒
決断
〜〜〜1〜〜〜

『なぁ、先生』
 たった一回だけ、中澤が見舞いに来たことがあった。
 ふらり、と。
 何を考えたのか、真っ赤なバラの花束を抱えて。
『容態とかよく知らんし、なんか・・・何持ってくればいいか、よくわからんくて』
 無愛想にバラの花束を突き出してきた中澤は、どこか困ったような表情をしていた。
『また、どこかに行くの?』
 ありがとう、嬉しいわ。
 笑顔を返すと、ちょっと嬉しそうな顔をして。
 曖昧な笑顔で、頷いた。
『先生には、また心配かけるけどな。性分やねん』
 一つのとこに留まることをせず、いつだって、自由な風のように生きている中澤。
 何にもとらわれずに。
213 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)00時03分16秒
『心配はしてるけど、楽しいんでしょ?』
『うん、そうやねんけどな・・・・また、みっちゃん泣かせてもうたわ』
 何だか、寂しげな横顔で。
 裕子は、ふわっと揺れるカーテンの向こう。窓の外を眺めた。
『わかってんねんけどな・・・・』
 うちが悪いってのは。
 中澤と連絡をとるのは至難の業で。
 平気で連絡不能になって、半年、一年とかぶりくらいにひょっこり顔を見せる。
 こんな風に、病院に来てくれるとは思ってなかったけど・・・嬉しい誤算だ。
 何だか弱気な表情の中澤。
 こんな表情を見たのは初めてかもしれない。
214 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)00時04分16秒
『いつまでたっても、貴方は、心配かける生徒ね』
 安定した生活とか。
 収入とか。
 地位とか名誉とか。
 まったく興味がありませんって顔して、簡単に全部を捨てて、いろんなとこに飛び出していく。
『生きてるねんから、いいやん』
 ぼそっと、拗ねたように呟いた中澤だったが、ふっと寂しげな表情を見せる。
 ごめんなさい、と言わないのは彼女の思いやりか。
 私は、もう、長くない。
『もう、こんな風に会うのも、最後かもね。ありがとう、来てくれて』
 やっぱり、判っているのだろう。
 中澤は、何も言わずに、真っ直ぐな眼をして、私を見つめていた。
『今すぐとは言わない。でもちゃんと、帰る場所を見つけるんだよ?』
 これだけは、約束して。
 嘘でもいいから、うんって言って。
『わかってる。約束するから』
215 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)00時04分51秒
 そっと、抱きしめられた。
 何故、こんな風に涙がでるのか、自分自身でもわからないけど。
『先生、ありがとな。先生に会えて、うちは、幸せやよ』
 泣かんとって。
 そんな風なセリフを中澤は絶対言わない。
 残す方より、残される方が辛い。
 泣きたいのは、中澤の方だろうに。
 優しい腕は、相変わらずで。

 学生時代から、中澤には、なんだかこういう風に悟っているところがあった。
 平家とつるんで、馬鹿やりまくってた時も。
 平家の寂しさを、誰よりも理解してたのは中澤だったのかもしれない。
 意外と成績だけは良くて。
 職員会議で、議題にのぼる中澤の素行は、けして誉められたものではなかったけれど。
 中澤は、誰かを傷つけるような行動は、けしてしなかった。
 彼女の瞳は、自分以外は敵だと思ってるような、刹那的なものではない。
 昔から、今もずっと変わらない。
 彼女の瞳は、自分を敵だと思ってる刹那的なもの。
216 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)00時05分37秒
『どうして、先生は、そこまで中澤をかばうんですかっ』
 何度も職員会議で言われたセリフ。
 退学になったら、何も言わずに、彼女は行方をくらますだろう。
 全部を捨てて。
 振り返ることもせず。

『先生って、変わってるね』
 いたずらっぽい瞳で、中澤は、笑っていた。
『中澤ほどじゃないよ』
 そう返すと、
『そらそうや』
 皮肉めいた表情を浮かべていた。

 何かを求めて、何かを得ようとあがいてるその姿。
 レディースのトップとか。
 裏番とか。
 そんな風に言われてる陰で。
 仲間をかばうために、ついた傷や。
 どんな大怪我をしても、誰も責めない中澤の姿を。
 中澤の強さは、誰かとつるんでるから、とかそんなんじゃなく。
 一人でいることを、自分の強さにできること。
217 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)00時06分26秒
『先生。どしたん?』
 現実に戻ると、中澤が心配そうな表情をして、顔を覗き込んできてた。
『昔を思い出してたわ』
 ふっと笑ってみせると、中澤は、照れたように、ぐしゃぐしゃと髪の毛をかきあげた。
『どうせ、変なことばっか思い出してたんやろ?』
『ちょっとは中澤も丸くなったな、って思ってたのよ』
 昔のあなただったら、平家を泣かせてしまったとか。
 今みたいに寂しさを表情に出すこともできなかったはず。
『そうか〜?』
 皮肉めいた表情は変わらないけど。
『安心しなさい』
 頭をなでると、
 ガキちゃうわ〜とか、憎まれ口叩きながら、中澤は、嬉しそうに笑った。

『んじゃ、そろそろ帰るわ』
 夕暮れどき。
 中澤は、腰をあげた。
『私は、貴方に何かをしてあげれた?』
 病室をでる中澤に向かって。
 思わず、口を突いてでた言葉。
 教師として。一人の人間として。
 踏み込ませない、踏み込まない中澤の潔さに、いつだって感心してた。
 いつだって、真っ直ぐで、風のようで。
 何にもとらわれないような中澤の心に、自分は何かを残せたのだろうか?
218 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)00時07分00秒
『先生は、うちを初めて怒ってくれた人やったよ』
 逆行になってて、中澤の表情は良く見えない。
 静かな、声。
『自分のためやなくて、うちのために、怒ってくれた初めての人や』
 忘れんから。
 聞き取れないほどの小さい最後のつぶやき。
 そして、中澤は黙って、頭をさげて、振り返りもせず、病室をでていった。

 本当に、義理固い奴だね。
 病室の中、小さく笑い声が響いた。
 最後の最後まで、自分は中澤のことを心配する運命なのかもしれない。
 でも、それも悪くはない。
 人慣れしてないネコをここまでなつかせることができた。
 そんなもので、幸せを感じるんだから、人間って。
 中澤、幸せになりなよーーーーーー。
219 名前:つかさ 投稿日:2002年04月24日(水)00時19分46秒
>>205さん
 「番外編」は短編かけない悲しさよって感じでアップした作品です(w
>>読んでる人さん
 萌えないですっ(w
 学園物なんで、さわやか路線でっ(w
>>207さん
 自分がこのスレたてたのは、207さんの作品の影響、めちゃありっす〜♪
 目指せ、幸せなやぐちゅーv
>>208さん
 最初で最後です、多分・・・・・(w
>>210さん
 深みがあるかどうかはわかりませんが・・・・・頑張ります。
>>やぐちゅー中毒者セーラムさん
 ありがとうございます。

ってことで、やっと、前編のメドがたったので・・・・・。
基本は毎日更新。しかし、ストックが底をついたら、更新、遅くなります(汗)
区切りいいとこまでは、さくさくあげれそうです。
後半の山場が、構成はできても、書く暇がね〜ってな感じなのでもしかしたら、
前編、後編でちょっと間があくかもしれません。
ってことで、この話も気にいってくれれば、幸いです(ぺこり)
220 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月24日(水)00時26分10秒
姐さんが生徒萌〜(w
リアルタイムで読めた♪(w
221 名前:読んでる人 投稿日:2002年04月24日(水)11時21分54秒
新作、お待ちしていました♪
まだ物語が始まったばかりで、中澤と矢口は出会ってすらないんですが、
今後、この二人がどーゆー出会いをして、どーゆー展開をしていくのか・・・
すごく楽しみです。
この作品も激しく期待♪
222 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)23時27分14秒
〜〜〜2〜〜〜

 久しぶりの日本。東京。
 中澤は、夕暮れ時、公衆電話の前で、ためらっていた。
 いつでも、どこかにふらっと行方知れずになった後は、そいつに連絡を入れるのが常だったけど。
『もう、勝手にしてくださいっ!!』
 半年前、喧嘩別れしてから、一回も連絡いれんかったのはやっぱり、まずかったかもしれん。
 どうも連絡しづらい。
 ふ〜〜む。
 困ったように髪をかきあげる中澤。
 まぁ、ええか。
 でたとこ勝負や。
 ニヤリ、と不敵に笑みを浮かべると、公衆電話を背にして、スタスタと中澤は歩き始めたのだった。
223 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)23時28分19秒
 ピンポーン。
 チャイムの音は普通だった。
 ただ、そのチャイムを鳴らした相手が・・・。
「よぉ。久しぶりやな、みっちゃん」
 不義理の限りを尽くしてくれて、最後に会ったときは大喧嘩って奴や。
「・・・・姐さん」
 半年振りやな・・・。
 これでも、前のことを気にしてたんか、結構早く戻ってきたんやねって思う私って結構ふびんかも・・・。
 平家みちよは、目の前にいる、何故か全然悪びれた様子もみせず、でかいリュック一個背負った
中澤裕子を見て、深々とため息をついた。
「ご挨拶やな〜。人の顔見ていきなりため息付くなや」
 ぽかりと一発どつかれた。
 さらに。
「玄関で立ち話もなんやから、上がらせてもらうな〜」
 こっちの都合もおかまいなしで、靴を脱ぎだす中澤に、平家はさらに盛大なため息で
答えたのだった。
224 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)23時30分29秒
 別に中澤と平家は姉妹というわけでもなく。中・高校の先輩、後輩という関係だった。
 先輩と呼ばれるのを中澤が嫌がったあげく、「姐さん」という呼び名で定着したわけだったが。
 平家が出会った頃の中澤は、もう金髪にピアスの校内では有名人。
 ついでに、単車を深夜乗り回しては、街道レースでぶっちぎりの強さを発揮していた。
 出会いは何となく。街道レース見物に行っていた平家に中澤が声をかけた、それだけだったけど。
 同じ関西出身ということもあってか、二人は妙に気があった。
 誰ともつるむことのなかった中澤だったが、平家だけは「みっちゃん」と呼んで普通に友人関係を
結んだのだった。
 悪意ある人間は、平家が中学、高校の理事長の娘だということで、中澤がてなづけた、などという
まことしやかな噂を流したりしていたけれど。
 事実としては、中、高校で悪行の限りを尽くした二人。
 停学処分や謹慎処分になったのは、全部中澤だった。
『なんで姐さんだけが』
 怒り狂う平家を、ひょうひょうとした風情で、なだめていたのは中澤だった。
225 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)23時31分17秒
『別にえ〜やん』
 怒るでもなく、嘆くでもなく。
 自分の立場に怒り、嘆き、泣いたのは平家の方かもしれなかった。
 理事長の娘、という立場で、それだけで、中澤と同等になれないような気がした。
『泣け泣け。泣ける時にちゃんと泣いとき〜〜』
 でも、妬み、とか、嫉妬心とか、羨望とか。
 利己主義な考え方をせず、自分を平家みちよとして見てくれる中澤のことが、
平家は大好きなのだ。
 そして、やっぱりそれは今も一緒で。
 大喧嘩しようがなんだろうが。
 平家は中澤に頭が上がらないのだった。

「先生、亡くなったんやな」
 なんとなく、無言になった雰囲気に戸惑った様子もなく中澤は続ける。
「昨日、日本に戻ってきてん。病院行ってみたけど、亡くなったって言われてな。
 お墓の場所、みっちゃんやったら知ってるんやないかと思って」
 世間話をしようと言う気もないのか、相変わらずの用件のみ伝えてくる。
 そして、一升瓶をリュックから引っ張り出す。
「飲もうや?」
 やっぱり無言で立ち尽くす平家を見て、中澤はちょっと困ったように笑う。
「ごめんな。先生亡くなった時に、一人にして」
 中澤は真っ直ぐに平家の眼を見つめた。
226 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)23時33分44秒
 半年前、最後に会ったとき。
 喧嘩の発端は、平家が中澤の行動を批判したからだった。
『先生、もうすぐ亡くなるねんで?! 最後くらい看取ろうって気にならないんですか?!』
『人の生き死にに、誰かがいて、それで何になんねん?』
 中澤のセリフは憎らしいほど冷静だった。
 一応、これでも悪いと思ってんねんけどな・・・・。
 悪いとは思ってても、自分の信念は曲げずにそのまま、すたこらさっさと飛び出していったのは
中澤が中澤たる所以だろう。
 誰かにしばられるのなんて、まっぴらごめんや。
 それは、誰になんと言われようが変わらん。
227 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)23時36分54秒
「先生、最後まで姐さんのこと、心配してはりました」
 中澤は、平家から視線を外さない。
「姐さんが、見舞いに来てくれたって。あの子にしては上出来だって」
 ぽろぽろと涙を流し始めた平家。
 中澤は、ぽんぽんと平家の頭を叩いた。
「ごめんなぁ」
 しかし、
「姐さん、うちの学校で講師やりません?」
 は?
 唐突な平家のセリフに、中澤は一瞬固まる。
「教員免許持ってましたよね?」
「ちょぉ・・・・待てや。何でいきなり?」
「しばらく日本で稼いで、またどっか行こう、思ってるんでしょ?なら、いいですやん」
 喧嘩売られてるんか?
 今度は、中澤がため息をついた。
228 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)23時40分11秒
 とりあえず、高校退学にもならなかった中澤は、そのまま周囲の驚きをよそに、大学に進学。
そして、教員免許取得などといった意外性のある方向を選んだのは、まぁ・・・・恩師の影響も多分に
あったわけだが。
 資格とっといて損はないだろう、という判断に基づき。
 後は、大学4年間で、ひたすらに、車の免許、リフトの免許、大型トラックの免許、
危険物取り扱い資格など。
 資格マニアと言われるくらい資格をとりまくっていたのだ。
 競馬や、パチンコなどのようなギャンブルではなく、趣味のように始めた株。
 金がなきゃ生きていけんやん。
 そして、ある程度金を稼ぎ、大学卒業とともに、ふらっと旅立って行ったのだった。
229 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)23時43分29秒
 平家は平家で、大学卒業すると共に、両親の早すぎる引退で、母校の理事長に就任した。
 若すぎる理事長ってことで、いろいろたたかれたりはしてるけど。
『みっちゃんが理事長〜?!世も末やな〜〜!!』
 目の前にいるこのお方は、飲み屋で、テーブルをバンバン叩いて笑い転げて下さった・・・・。
『姐さん、働いてみません?』
 断られるとわかっていても、聞かずにはいられなかった質問。
『ん〜?興味ない』
 その時はあっさり断られて、それで引き下がったけれど。
230 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)23時44分20秒
「前も断ったはずやけど?」
 中澤だって、別に働くのが嫌だとかそういう意図を持ってるわけではないが。
 気の置けない友達同士で、雇う側、雇われる側、とかそういう関係が嫌なだけだ。
 苦虫を噛み潰したような中澤の表情に、平家は思いっきり情けない表情になった。
「頼みますわ。適任は姐さんしかいないんです。
 意外と生徒受けは良さそうで、変に正義感強くて、自分のことでは怒らんけど、
 人のことになったら人一倍短気で、口悪くて、問題すぐ起こしそうで。
 講師首になっても路頭には迷わない逞しさも持ってますやん」
「は?」
 なんや失礼な言い方やないか?
 否定できんとこが悲しいけどな・・・。
「そんな人間、姐さんしか思いつかんのですっ!」
 きっぱりと断言する平家。
 思わずぼかっと2発蹴りをきっちり入れて、中澤はソファーに座りなおした。
「なんか事情がありそうやん。ゆっくり飲みながら話、しようや」
231 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)23時45分39秒
 飲み始めて1時間。
「茶パツやピアスのどこがあきませんのっ?!」
 いや、普通あかんやろ・・・・常識的に考えればな・・・・。
「別に授業サボろうが、学外で何して遊ぼうが、生徒の自由ですやんっ!」
 授業サボるのは・・・・まぁ、あんま誉められたことではないと思うけどな・・・・。
「スカート短くしようが、長くしようが、生徒の自由ですやんっ!」
 まぁ、そらそうやわな。
「別に、女子がセーラーじゃなくて、学ラン着たいって言っても構わんと思いません?!」
 ・・・・・・・・・・・・・・着たいって奴がおればな・・・・・・・・・。
「バイトだってすりゃいいし、バイクの免許だって、取りたかったら取ればいいやないですか。
 無免で乗り回すほうが危険ですやんっ!」
 まぁ、正論やな。
「私は、無個性な言われたことを全部守るような、そんな面白みのない生徒を作りたくて、
教職についたわけじゃないんですっ」
 みっちゃん、教師じゃなくて、理事長やろ・・・・。
 中澤の返事を聞いているのか、聞いていないのか。
平家は堰を切ったかのように話し続けた。
232 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)23時47分33秒
 とりあえず、平家の話を要約するとこうだった。
 学園始まって以来、最年少の若さで理事長につくことになった平家だが、理事長といっても
お飾りみたいなもので。
 決定権は、古参の頭の堅いステレオタイプの先生方が握っていて、校内改革などとんでもない
といった雰囲気なのだそうだ。
 ルールを守れない奴は、退学させる。
 異端分子は、切る。
 平家はもちろんそんなやり方には大反対なのだが。
 教師の間にも、同調者がいないわけではない。
 しかし、そういった意見を公に出し、学校を追われた教師は結構な数にのぼるそうで、
表立ってそういった意見に反論する教師はいないそうだ。
 平家自身、矢面に立って改革を断行するには、いかんせん、キャリアも、人望も、
まだまだ足りない。
 平家は、学園を変えるための起爆剤が欲しい、そう言った。
 中澤がどの先生と馬が合わず、衝突するか、その辺もよんでいるのだろう。
233 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月24日(水)23時48分50秒
 そして、夜もかなり更けたころ。
 二人の間には沈黙が落ちていた。
「姐さん、うちの学園に来てもらえませんか?学園を、生徒を守りたいんです」
 平家は、真っ直ぐな眼を中澤に向ける。
「考えさせてくれへんか?」
 中澤は、即答を避けた。
234 名前:つかさ 投稿日:2002年04月24日(水)23時52分08秒
>>220さん
 まじ、リアルタイムっすかっ?!
 結構、外したつもりだったんだけどな・・・・(w
 ね〜さん生徒ってあんまないから書いてみたかったけど、先生の名前が無いのは
 ご愛嬌(w
>>読んでる人さん
 ついに始めちゃいました(w
 これからっすね〜。長いので、覚悟しといてください(w
235 名前:名無し読者220 投稿日:2002年04月25日(木)00時22分18秒
今回はリアルじゃないけど・・・作者さんと出没時間が近い感じです。(w

何の教科の先生いなのかな?
そういえば・・・ごくせん保健室の先生なんで職員室しかいないのかな?(w

作者さんのやぐちゅー大好きなので・・・どんどん長編にしてください!
236 名前:207 投稿日:2002年04月25日(木)16時02分02秒
新作、始まりましたね〜。うれしいです。
ここの裕ちゃん、カッコいいですね。
平家さんのキャラもいい感じです。
それにしても、自分の作品に影響、だなんて…。
身に余る光栄です。

237 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月25日(木)23時07分44秒
〜〜〜3〜〜〜

 次の日。
 朝早い平家の出勤を見送った中澤は、そのまま、墓地に向かった。

「いい風やな〜〜」
 ジーパンに白いシャツ。
 さすがに3月とはいえ、まだ肌寒さが残るこの季節だが、中澤はまったく意にも介さない様子で。
 バサリ。
 無造作に、真っ赤なバラの花束を墓石の前に置いた。

 中澤にしては珍しい、旅立つ前の挨拶だった。
 入院している、もう長くないと聞いて、会いに行った。
『私は、貴方に何かしてあげれた?』
 先生の最後の言葉を思い出し、中澤は眼を閉じた。
 先生・・・・・・。
 思い出されるのは、最後に会った時。
『もう、こんな風に会うのも、最後かもね。ありがとう、来てくれて』
 もうだいぶ病におかされていたのだろう、先生は一回り小さくなって、顔色も悪かった。
 頭をなでられた手の感触に。
 何故だか、涙がこぼれそうで。
 でも、自分は泣かなかったけれど。
238 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月25日(木)23時08分34秒
 なぁ先生。
 うちが大学に合格決まった時も同じように頭なでてくれたよな。
 何も言わずに泣いてた。
 ほんまに喜んでくれてるねんなって、うち、嬉しかったんやで。
 うちが問題起こすたびに、かばってくれて。
 先生おらんかったら、うちはきっと今、ここにはいてへんねん。

 みっちゃんが、助けてくれって言うんや。
 先生が好きやった、あの学園に来てくれって言うんや。
 うちは・・・・何で教員免許なんて、取ったんやろうな。
 うちは、教師になんてなるつもりなんかないんや。
 うちは、先生みたいな教師にはなれん。

 人の出会いと別れ。
 うち、そういうの嫌いやねん。
 来るもの拒まず、去るもの追わず。
 人との関係なんて、所詮そんなもんやん。

 中澤は苦しげに一つ、ため息をついた。
 眼をあけると、初春のやわらかい光がまぶしかった。
 ふっと眼を細めて、切なげな表情を浮かべる。
239 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月25日(木)23時09分23秒
 めんどくさいことに巻き込まれるのは真っ平ごめんや・・・・。
 でも。
『学園を、生徒を守りたいんです』
 みっちゃん、いい眼してた。

 ・・・・・・・・・・・・・。
 中澤は大きく息を一つはく。
『貴方の思ったとおりの道を歩きなさい。それでいいのよ』
 高校の卒業式にかけてもらった先生の言葉が耳元でリフレインされた。
 軽く髪をかきあげ、墓石に頭を下げると中澤は、振り返ることもせず、ゆっくりとその場を
立ち去った。

 そして、4月ーーーーー。
「今日から、この学校で化学を担当することになりました、中澤裕子といいます。
よろしくお願いします」
 始業式でそう挨拶している中澤がいた。
240 名前:つかさ 投稿日:2002年04月25日(木)23時16分19秒
>>220さん
 ごくせんで、白衣ね〜さんが印象深くて・・・・・化学(w
 保健の先生も考えたけど、ストーリーに支障をきたしそうだったんで(ww
>>207さん
 ね〜さん、最後までかっこいいかどうかは・・・しかし、かっけ〜系で
 いきたいっす♪

 ってことで、決意、終わりです。
 続いて、やっと矢口登場vv
 決意のシーンをどこにいれるかで延々と悩みつづけて、結局、頭にぶちこめっ
っつ〜簡単な結論にたどりつきました。
 ちなみに、次の話のサブタイトルは、「風来坊ね〜さん、どこへ行く?」かな(w
241 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年04月26日(金)01時56分05秒
次回矢口登場ですか。
この先の展開に期待!
242 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時12分12秒
学園編
〜〜〜プロローグ〜〜〜

 来るもの拒まず、去るもの追わず。
 告白をOKしたのは、別に、向こうにとってはうちのことなんか、憧れやと思ってたからや。
 先生に憧れるなんて、誰だって持つような感情やし。
 いわゆる女子高のノリやろうなって。
 男とか、女とか。
 うちは、別にそんなん気にせんし。
 いろんなことがあった方が人生おもろいやん?
 自分の可能性の幅をせばめることはしたくない・・・・・・・。
 ってか、単に、断るのがめんどくさいとか。追っかけるのがめんどくさいとか。
 うちの場合の付き合う理由、別れる理由はそんなもん。
243 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時12分59秒
 まぁ、ちっこくて、可愛いな〜とは思ってたで?
 自分の趣味じゃない奴と付き合うほどうちは、ボランティア精神ないっちゅ〜ねん。
 誰かに縛られるのなんて真っ平ごめんで。
 縛ることだってしたくない。
 いろんな奴と付き合ったけど。
 別に、一人だってかまやしない。
 一人の方が、楽に生きれる。
 誰かに振り回されたり、誰かを振り回したり。
 そんなん疲れるだけやん?

 いつだって、思ってる。
 風のように生きたいって。
 地面に根をはって生きる生き方は・・・・・うちの趣味やない。
 うちは、そんな風に生きることはできない。
 それだけや。

 例えば。
 一輪の花を揺らして、気まぐれに去っていく。
 たまには、突風になって、いろんな花を散らせてみる。
 あったかいそよ風とか。
 冷たい切り裂くような風とか。
 いろんなとこに、いろんな風があるように。
 気まぐれ、風来坊、変わった奴。不人情、冷たい。
 好きなように言ってくれればいい。
 それがうちの生き方なんや。
244 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時13分48秒
 今更、それを変えようとは思わんねん。
 うちがいなくなっても、別に誰も泣かんですむように。
 誰かがいなくなっても、うちが泣かんですむように。

 もぅ・・・・・・涙の流し方なんて、忘れてもうたわ・・・・・・・・。
245 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時15分09秒
 最初は、印象、悪かったんだ。
 全然とっつきにくい人だと思ってた。
 金髪に、ピアスに関西弁。たまに青のカラコンを入れてたりする怖そうな人。
 いきなり告白なんてするつもりじゃなかった。
 教室で。講師室で。
 窓を開けるのが好きな先生なのかなって思ってた。
 でも。
 問題を解かせてる時とか。
 ふとした瞬間に。
 窓の外を眺めてる先生の横顔に気付いたんだ。

 どこかへ消えてしまいそうな儚げな雰囲気に、その時初めて気付いた。
 ノリのいい関西弁と、ちゃらけた感じのしゃべり。
 締めるとこは締めるけど、そんなに勉強しろ、一点張りの様子もなく。
 今までの先生にそんな先生、いなかったし、普通に、あ、ラッキーな先生にあたったかも。
 本当に、最初はそれだけだったんだ。
246 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時16分02秒
 ふとした瞬間に見せる表情が気になり始めて。
 関西弁だから、きつめに聞こえる言葉とか。
 でも、相手が泣きそうになった時に見せる困った表情とか。
 普段は怖そうだけど、笑うと凄く可愛い笑顔を見せるとか。
 冷たく見えるけど、実はそうじゃない、とか。
 まったく気にしてない振りしながら、体調悪そうな生徒見かけたら、一言二言かけたり。
 なんだろうね。

 ・・・・・・・・いつの間にか、好きになってた。
 女の人をを好きになるなんて思ってもなかった。
 女子高だから。
 友達では、下級生と付き合ってる子とかいたけど。
 ただ、先生にどう思われるかってことが心配だった。
 
『はぁ?』
 呆れたように吐き出された言葉に。
 すごく怖かった。
 怯えた表情に気付いたのか、先生は困ったように笑った。
『別に今、付き合ってる奴おらんからえ〜けど・・・・・・うちはあんまりええ相手ちゃうで?』
 それでも、構わなかった。
 先生の側にいられるなら。
『のんびりやっていこうや?』
 くしゃくしゃと頭を撫でられて。
 それが最高に嬉しかった日ーーーーーー。
247 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時16分42秒
『外見で、随分損をしてるんじゃない?』
『外見で人を判断するような奴と付き合いたくないわ』
 付き合い始めた当初、聞いてみたら。
 実に裕ちゃんらしい答えが返ってきた。

 ねぇ裕ちゃん。矢口は今、あなたの心のどれくらいの部分を占めれていますか・・・・・・・?
248 名前:つかさ 投稿日:2002年04月26日(金)23時20分04秒
>> やぐちゅー中毒者セーラムさん
 本当はここで、今日は終了にしとこうかと思ったんですが・・・・
 いっちゃいます。
 な〜んか、この話、ワンシーンがながいんですよね・・・・(汗)

 ってか、この話は何故か、矢口、ね〜さん2ショットが書きにくいっっ
 きっと、素直じゃないね〜さんに、矢口が拗ねてるんだよね・・・・(w
249 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時20分47秒
〜〜1〜〜

 ある昼休み。
「裕ちゃん、元気〜?」
 講師室、中澤裕子不在、の札を気にもせず、矢口は部屋のドアをバタンとあけて。
 ずかずかと中に入っていく。
「矢口、あんたなぁ・・・不在ってしといたやろ?」
 ため息、苦笑まじりの中澤の声。
 一見して、奥が見通せないように、ドアを開けると目の前には本棚がどかんと置かれてて。
 その奥は、ソファーとか置いてあって、結構居心地がいい。
250 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時22分16秒
 本でも読んでいたのだろうか、中澤の机の上には、何やら難しそうな本が置いてあった。
「いつものことじゃん。生徒の質問に答えるのがだるいからって、いっつも不在はまずいんじゃ
ないの〜?」
 矢口はまったく意にも介さない。
「教室、人いっぱいで。ご飯、ここで食べてもいいでしょ?」
「好きにしぃ」
 あっさり答える中澤。眼鏡を外して、ぽん、と机の上に置いた。
「裕ちゃん、コーヒー飲む?」
 ここ、うちの部屋やねんけどなぁ・・・。
 ぼそぼそと呟く中澤の声は無視して、矢口は、お湯をわかすために、やかんに火をいれる。
「今日は、紗耶香は一緒やないん?」
「なんか、委員会があるとかで、召集かかって行っちゃった」
「あいつも忙しいやつやな〜」
 苦笑まじりの中澤の声。
「んで、寂しくなったから、裕ちゃんとこ来たんか〜?」
 くしゃりと頭を撫でられる感触。
「違うもんっっ。ってか、今日裕ちゃんの誕生日じゃん・・・・」
 手はふりはらわなかったけど、むっとした顔で矢口は中澤の顔を見上げた。
251 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時22分47秒
「ん??そ〜やったっけ?」
 とぼけた顔をする中澤。
「裕ちゃんっ」
 む〜〜〜っとふくれる矢口に中澤は、ニヤリ、と人の悪い笑みを浮かべる。
「ん〜〜?お祝いにちゅ〜でもしてくれるんか〜?裕ちゃん大歓迎やで〜〜♪」
 ふわっと回される腕に、矢口は顔を赤らめた。

 付き合い始めて一ヶ月。
 普段のストイックそうな風貌からかけ離れて中澤が、結構スキンシップを楽しむ方だという
ことも段々わかってきた。
 ・・・・・・・でも、慣れないんだよっっ。
 矢口は、心の中でがうっと吠えた。
「ん〜?」
 ニヤニヤ笑いを崩さない中澤。
 でも、こんな顔、矢口しか見れないんだよね。
 ちょっと、優越感・・・・・とか、そんなんじゃなくてっっ。
 矢口は、ぐっと拳を握り締めた。
「矢口?」
 いきなり黙り込んでしまった矢口を気づかうような中澤の声。
「裕ちゃん、誕生日おめでとう」
 そのまま背伸びして、中澤の頬をかすめるようなキス。
 耳まで真っ赤にして、矢口は中澤の腕から抜け出した。
252 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時24分50秒
「こ、コーヒー入れるね」
 何でこんなにドキドキするんだよ〜〜〜。
 裕ちゃんがどんな反応するか見たかったのに。
 それでも、いったん激しく打ち出した鼓動はなかなか止まりそうもなくて。
 矢口は、インスタントコーヒーの粉を乱暴に、カップの中に放り込む。
「裕ちゃんブラックで良かったよね?」
 振り返りもせずに、ぶっきらぼうに聞く矢口の頭を、ふわっとした手の感触が覆った。
「やっぱり、矢口は可愛いな〜〜♪」
 ぽんぽんと叩かれて。手の感触は、とても優しくて。
 嬉しいんだけど。
「矢口は、裕ちゃんのこと、好きなんだよ?」
253 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時25分46秒
 まだまだ子どもで。
 全然裕ちゃんには届かないけど。
 矢口は、身体を反転させて、中澤を見上げた。
「・・・・・・・・うん」
 そのまま、中澤は身をかがめると、軽く矢口の唇にキスする。
「こんなんするの矢口にだけやから・・・・・。そんな心配そうな顔するなや」
 そっと抱きしめられて、耳元でこんなセリフ言われたら、もう何も言えないじゃん。
 やっぱり、まだ負けてる。
 でも、今はこれでいい。
『のんびりやっていこうや』
 あのセリフは、矢口に向けたものでもあったんだろうけど。
 きっと、裕子の気持ちも表してるって思うから。
 のんびりでいいから、矢口のこと、好きになってね、裕ちゃん。
 矢口は、中澤の腕の中でそっと、中澤の匂いを胸一杯吸い込んだのだった。

「なぁ矢口・・・・・・」
 そのまま、甘い雰囲気の中。
 中澤がぼそっとつぶやいた。
「ん?」
 上目遣いで中澤を見上げる矢口はとても可愛いのだけれど。
「お湯、沸騰してる」
「・・・・・・アホ裕子っっ」
 クスクス笑いながら、中澤は、矢口を抱きしめていた腕をほどいた。
254 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時27分20秒
 ご飯を食べて。
「そういや、裕子、いくつになったの?」
「アホ、麗しきレディにそんなん聞くなっ」
「どこにレディ?どこに麗しさ?」
 ぽかり、と中澤が矢口を殴る真似をする。
「あ〜、体罰だ〜〜っ」
 とか仲良くソファーでじゃれあっていた二人だったが。
「まだ矢口、16やもんな〜〜」
 ぽつりと呟いた中澤の言葉に、矢口は動きを止めた。
「・・・・・子ども扱い、するのかよ?」
「そういうんちゃうって」
 妙に真剣になった矢口の眼差しに、中澤は苦笑する。
「急いで大人になる必要もないし、無理に子どもでいる必要もないし。
 矢口は矢口やって、うちはそう思ってるから」
 こつん、と額と額を当てて。
 真っ直ぐな瞳で話す中澤に。
 矢口はちょっと照れた表情を見せた。
255 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時29分07秒
 そんな中、矢口がごそごそとポケットから何かを取り出した。
「え〜とあのさ」
「ん?」
「今月矢口、ちょっとお小遣いピンチでさ」
 ちょっと俯き加減で話す矢口。
「なんか裕ちゃんにプレゼントあげたかったんだけどさ・・・・・・、なんか、どれもこれも
中途半端な気がして」
 高校生のお小遣いなんて、たかが知れてて。
 ついでに、無理していいのあげても、裕子はそんなの喜んでくれない気がして。
 なかなか本題に入らない矢口に焦れったくなって、中澤は、ひょいと矢口の手に持ってるものを
取り上げた。
256 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時30分03秒
「あ〜〜〜っっ!!!」
 焦ったような矢口の声を無視して、ぱらぱらと綴りになったものを開くと。
「・・・・・・・・お弁当券?」
 きょとん、とした中澤の様子を見て、矢口は焦って言葉を続ける。
「だって、裕ちゃん昼ご飯とか、まともに食べてないじゃんっっ。
 いつも、おにぎり一個とかそんな感じだしさ・・・・・。
 どうせ、晩御飯だってろくにまともに作ってないんでしょ?
 だから・・・・・・」
 だんだん、矢口の声は小さくなる。
「ごめん・・・・・・迷惑?ってか、いらないよね、こんなの」
 完全に俯いてしまった矢口に、中澤が小さく笑った。
「矢口が作ってくれるん?」
 優しい声。

 どんな反応をされるか不安だった矢口が中澤を見ると。
 中澤は優しく笑っていた。
「うんっっ」
 途端に嬉しくなってしまう。
 我ながら単純だと思うけどさ。
257 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時31分22秒
 急に嬉しそうな顔をした矢口を見て、中澤はちょっと意地悪そうな顔をした。
「矢口、弁当なんて作ったことあるんか〜?」
「・・・・・・・あんまりないけど、絶対、裕子よりましだと思う・・・・・・・」
 思わず言葉に詰まる中澤。
「人間誰しも苦手なものはあるわな・・・・・・・」
 思わずぼそっと出た中澤の言葉にクスクス笑い合って。

「それじゃ、矢口、そろそろ行くね」
 昼休み終わり間近の時間に気付き、矢口は立ち上がった。
「あ、ちょぉ待って」
 中澤は、慌てたように、机に向かう。
 そのまま、ペンを持って、メモに何かを書き付けている模様。
 もしかして、矢口への感謝の言葉とか?
 思わずにやけそうになる表情を矢口は、必死に押し止める。
258 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時32分56秒
「はい、これ」
 一分もかからなかっただろうか、中澤は矢口に一枚の紙切れを手渡した。
「見ていいの?」
 わくわくしたような矢口の眼に、中澤は不思議そうな顔をする。
「その為に書いたんやけど?」
 矢口は、メモ用紙に視線を落とした。

 〜〜〜〜嫌いな食べ物〜〜〜〜
  トマト、バナナ。
  野菜全般。

  好きな野菜はもやしとピーマン
259 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時33分55秒
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「とりあえず、トマトとバナナは絶対喰わんからな?」
「・・・・・・・・・・・バナナは野菜じゃないじゃん・・・・・・・・・・」
 あまりの内容に矢口の突っ込みにもいつものキレはない。
 気付いているのか、気付いていないのか、中澤はマイペースを崩さない。
「あんま野菜、いれてくれん方が裕ちゃん嬉しいな〜なんて・・・・・」
「それじゃ、矢口がお弁当作ってくる意味ないじゃんっっ!
 裕ちゃんの身体のこと、これでも一応、心配してるんだからねっ!!」
「これでも一応って何やねんっっ!!」
 今度は中澤の突っ込み。
 さすがに切れ味するどい・・・・・ってそういう問題ではないが。

 不満顔の矢口に中澤は苦笑い。
「そら、矢口が作ってくれたもんやったら、頑張って喰うけどな?無理させたくないし。
 弁当作るんやったら、週一とか、二週に一回で、別にいいから。
 裕ちゃん、矢口の気持ちだけで嬉しいから。
 な?」
 優しく、くしゃくしゃって頭撫でられて。
 中澤の気持はもちろん矢口だってわかっているのだけど。
「・・・・・・・アホ裕子っっ」
 捨て台詞を残して、部屋を後にしたのだった。
260 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月26日(金)23時34分40秒
 中澤は、拗ねたような矢口の表情に、ニヤニヤしていたが。
 矢口が大事そうにメモをポケットにしまうのを見て、堪えきれないようにクスクスと笑い
出したのだった。
261 名前:つかさ 投稿日:2002年04月26日(金)23時38分19秒
ってことで、今日の更新終了。
仕事のしんどさに、ごっつグロッキー。
ま、しんどくない仕事なんてないって話で(w
262 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月26日(金)23時40分11秒
大量更新大感謝!!(w
263 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月26日(金)23時44分45秒
矢口、がんばれ!
つかささん、更新ありがとうございます。
お仕事の方もがんばって下さい。
ここの、やぐちゅーめっちゃ好きです。
264 名前:読んでる人 投稿日:2002年04月27日(土)15時30分08秒
中澤の矢口に対する想いは、まだ軽いものなんですよね?
やっぱり、この先、中澤は矢口に対する想いを深くしていくんでしょうか?
そのヘンがどう展開していくのか、楽しみです。
265 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月27日(土)23時18分26秒
〜〜2〜〜

「矢口、今日裕ちゃんとこでご飯食べない〜?」
 昼休み。
 授業が終わってざわざわとした雰囲気の中、市井が矢口に話しかけてきた。
 市井は高校編入組み。去年一緒のクラスになって、仲良くなった。
 特待生ということで最初は結構敬遠してたのだが・・・・学年5位以内をキープしている割りには、
ガリ勉タイプではなくて。
 結構くだけた感じの男前。
 下級生からの人気も高いと聞く。
 何でか知らないけど、裕ちゃんと仲いいんだよね〜。
 授業の片づけをしながら矢口は顔を上げた。
「うん。でも、何で〜?」
「裕ちゃんからかいに♪」
 いたずらっぽい笑顔を浮かべる市井に、矢口も笑う。
「それ、い〜ね〜〜」
 そして、二人はじゃれあいながら、中澤の講師室に向かったのだった。
266 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月27日(土)23時19分06秒
「それで、最近ど〜なのさ?」
 渡り廊下を歩きながら、市井は矢口に、何気なくっといった感じで聞く。
「どうって何がさ?」
「裕ちゃんとのことに決まってるだろ〜〜」
「別に・・・・・・普通だよ。紗耶香が委員会とかでいない時はお昼一緒に食べたり・・・・・・」
 お弁当作ってることは内緒にしとこう、うん。
「ふ〜〜ん」
 市井は含みのある発言。
「な・・・・・・・なんだよ」
「お弁当♪」
 実に楽しげな市井の発言に、
「何で紗耶香がそのこと知ってるんだよ〜〜〜っっ」
 まだ、三回くらいしか作ってないのにっっ。
 思わず驚いた表情になる矢口。
「この前、さんざん裕ちゃんにノロケ話聞かされてね〜〜。ってか一方的にだけど」
「ちょっと待ってよ、もしかして、からかうネタって矢口のことか〜っ?!」
「決まってるじゃん」
 矢口と中澤が付き合ってることを知ってる市井は、楽しげに答える。
 矢口と中澤が付き合うことになったきっかけは、市井。
 四月から、中澤のことが気になりながらも、授業以外で接点があまりなかった矢口。
 だから、市井が時々、中澤の部屋に遊びに行くことを知って、
『連れてってっ!!』
 と頼み込んだのだ。
267 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月27日(土)23時20分04秒
「裕ちゃん何気に矢口のことになると、凄い嬉しそうな顔するんだよね〜」
 愛されちゃってるね〜。
 矢口をこづく市井。
 しかし、矢口の顔は今ひとつ晴れない。
「・・・・・・・・そんなの、わかんないよ」
 思わずこぼれた言葉に矢口自身がびっくりした表情になった。
「何かあった?」
 市井は不思議そうな顔になって、立ち止まる。
「・・・・・・・・裕ちゃん、矢口に好きだって言ってくれたこと、ない」
 心配そうに矢口の顔を覗き込む市井に。
 思わず矢口は本音をぽろっと漏らしていた。

 3ヶ月前に、中・高校一貫のこの学園に赴任してきた講師。
 初めて会ったその日から。少しづつ気になりはじめて。
 付き合い始めて約2ヶ月。
 告白したのは矢口の方で。
 会いに行くのは矢口の方で。
 好きだって言うのも矢口の方。
 軽いキス、抱きしめられて。いつだってドキドキしてるのは矢口の方。
 捕まえようと手をのばしても、いつだって、スルって逃げていってしまう。
『のんびりいこうや?』
 でも。
 あったかい腕に。
 優しさに。
 もっともっとって、ワガママになってく自分に。
268 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月27日(土)23時21分04秒
「・・・・・・・不安なんだよ〜〜」
 どんどん好きになっていく気持ちに比例するように、どんどん大きくなっていく不安。
 無理に好きだって言ってもらっても嬉しくないけど。
「確かに、裕ちゃん、つかみ所ないけどね〜〜」
 市井は困ったような表情になった。
「でも、裕ちゃん、矢口のこと話すとき、すごくいい顔してるよ?」
「・・・・・・・そんなの矢口にはわかんない」
 ますます市井は困り顔になるが。
「わかんなかったら、聞けばいいじゃん?」
 なだめるように、矢口の頭をなでた。
「言葉ってさ、人と人がわかり合うためにあるんだよ〜。知らなかったろ?」
 ちょっと、得意げな表情になった市井に。
「知ってるもんっ。
 矢口ちっこいからってバカにしてるだろ〜〜っ」
 ちょっと元気になったような矢口の声に、市井ほっとしたように笑う。
「してないしてない」
 だから、さっさと裕ちゃんとこ、行こ?
 市井は矢口をうながした。
269 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月27日(土)23時22分57秒
 講師室に入ると、中澤は机に突っ伏していた。
「裕ちゃん?」
 慌てて矢口が中澤に駆け寄ると。
「・・・・・・・なんや、矢口と紗耶香かい」
 死にそうな声とともに、中澤はむくりと起き上がった。
「ご挨拶だね〜〜。二日酔い?」
 市井の問いかけに。
「ん〜〜。昨日、みっちゃん・・・・やない、理事長と飲んでてな」
「裕ちゃんでその状態なんだったら・・・・理事長はもっと凄いことになってんじゃん?」
 苦笑しながら市井。
 二人の会話にきょとん、とした表情をする矢口。
「紗耶香、理事長と知り合いなの?」
 歴代の理事長でも抜群の若さ。
 ただ、その若さゆえか、あまり表に出てくることは少なくて。
 式典や行事ごとでしか矢口は理事長の顔を見たことはなかった。
「・・・・・・平家みちよだっけ?」
「あ〜〜」
 ちょっと困ったような顔をする市井。
 中澤は、少し笑ってそんな二人の様子を見ていたが。
270 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月27日(土)23時23分38秒
「それよりな〜。あんたら、明日からしばらく、ここ、出入り禁止な。用事あるんやったら、
職員室き〜や」
 矢口にとって、爆弾発言を投げかけた。
「へっ?!」
「あ、うん、わかった」
 ちなみに、返事は当然のことながら、前者が矢口で、後者が市井。
「矢口、テストのこと忘れてるんじゃないの?」
 呆れたように市井が呟いた。
「そ〜ゆ〜こと。明日からテスト一週間前や。矢口、あんた勉強してないやろ?」
 あまりにも矢口がショックを受けた表情を見せていたのだろう、中澤は苦笑する。
「うちもしばらくは、生徒の質問とか。補講授業とかもあるし。テスト問題も作らなあかんやん
・・・・・・あんたらも大変やろうけど、教師だって結構大変やねんからな」
 しみじみと呟きながら、立ち上がってくしゃりと矢口の頭を撫でた。
271 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月27日(土)23時25分31秒
 テスト一週間前になると、テスト問題漏洩禁止のため、講師室への立ち入り禁止。
 その代わり、放課後教師は、職員室で生徒からの質問を自由に受け付ける。
 ・・・・・・・そんなの、忘れてた。
 泣きそうな表情になって、中澤を見上げる矢口の眼に。
 ・・・・・・・・しゃ〜ないな〜〜。
「矢口、補講授業受けにき〜や?どうせ、全然勉強してないんやろ?
 わからんとこあったら、質問しに来てくれて全然いいし。
 ・・・・・・・あ〜、もしそれで、遅くなるようなことあったら、一応うち、教師やし。
 生徒の夜の一人歩きはあんまり感心せんから・・・・・・・・」
 ???
 きょとんとする矢口を見て、市井はクスクス笑い出した。
「裕ちゃん・・・・手っ取り早く、一緒に帰ろう?って言ったら?」
「アホっ」
 中澤の一喝も、市井にはきかない。
「先生と生徒って建て前保つのも大変だね〜〜」
 のんびり呟きながら、パンを取り出した。
272 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月27日(土)23時26分01秒
 中澤は、固まってしまった矢口の目の前で手をひらひらとふってみる。
「矢口〜、寝とんか?」
「寝てないよっっ」
 反射的に返して、矢口はじっと中澤を見つめた。
「補講授業、受けにおいで?」
 軽くウィンクする中澤に、矢口の顔に笑みがこぼれた。
 そして、嬉しそうにこくこくと頷いたのだった。

 昼休みが終わって、教室へ帰りぎわ。
「紗耶香、ちょい話しあるねん」
 ふっと、中澤が市井を呼び止めた。
「矢口、外で待っててよ」
 不思議そうな顔しながら、矢口は外にでる。
273 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月27日(土)23時26分55秒
 残された中澤と市井。
「ちょっとは、夜、抜け出すの控え〜や?成績下がったらまずいんやろ〜し」
 中澤は本題だけをずばっと言った。
 特待生で学費免除を受けてる市井にとって、確かにテストは重要なのだが。
「今更・・・・・・でしょ?」
 市井は、不敵な笑みを浮かべて見せた。
「身体壊したらあかんで」
 心配そうな表情の中澤に、もう一度、ニヤリ、と笑ってみせて。
「久々に、裕ちゃんに教師らしいこと言われちゃったな〜」
 ひらひらと手を振りながら、市井は部屋を出て行った。

 残された中澤は。
「確かにガラじゃないわな」
 苦笑いとともに、髪をかきあげて、ふっと、窓から、空を見上げたのだった。
 もうすぐ、夏がやってくるーーーーーーー。
274 名前:つかさ 投稿日:2002年04月27日(土)23時34分02秒
>>262さん
 ぼちぼちやっていきます(w
>>名無しさん
 この話は矢口が頑張ってくれないと、全然進まないんですよね・・・・
 はい、今頃気付きました・・・・・(汗)
>>読んでる人さん
 ね〜さんの矢口への想い・・・・・深くなっていくんでしょうか・・・・
 まだ、全然深くなるとこまで書いてないので、深くなればい〜なとか思ってます。
 でも、ちゃんと、今はまだね〜さんと矢口の想いの深さが全然違うってことに
 気付いてもらえて、嬉しかったです^^

 今日のヤンタン最高っっ(w
 あややのぱっくんちょで、飲んでるビールを吹き出しました・・・・(w
 歌詞のとこでのね〜さんの潔さにも惚れ直し、今日はいい1日でしたね♪
275 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月29日(月)11時47分42秒
青春!ってかんじでいいですねー。
紗耶香はバイトでもしてるんですかい?

ヤンタンの作詞選手権の裕ちゃんの詞は
矢口のことを歌ってるにちがいないと
勝手に妄想してました(w
276 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時11分10秒
〜〜3〜〜

「裕ちゃんっ♪」
 7月も中旬。
 テストも終わって、やっと講師室立ち入り禁止が解けて。
 矢口は放課後、中澤の部屋にすっ飛んで来たのだが。

 中澤は、窓を全開にして……ソファーで寝ていた。
 規則正しい寝息に。
 穏やかな寝顔に。
 矢口の表情が、ふっと緩んだ。
「せっかく矢口が来てやったのにさ〜〜」
 口ではぶつくさ言いながら、矢口は、そっと中澤の寝顔を覗き込んだ。
 ・・・・・・・・・綺麗な顔。
 そっと優しく矢口は中澤の髪を撫でた。
 中澤の顔を見つめながら。
 ちょっとくらい、いいよね?
 心の中に沸き起こって来るのは、いたずら心。
 最近、全然二人で会ってなかったし。
 矢口、拗ねずにテスト、頑張ったんだよ?
 ご褒美♪ってことで。
277 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時12分08秒
 矢口はそっと、目をつぶると、中澤の唇に、キスを落として・・・・・・・ただ、触れ合わせるだけの
キスのつもりだったのに。
 するっと中澤の舌が入り込んできた。
 慌てて目を開ける矢口。
 中澤はまだ眼を閉じてて・・・・・・。
 寝てるの???
 無意識で反応、とか・・・・・・いや、そうじゃなくてっっ!!
 矢口は唇をはなそうとしたが。
 いつの間にか、中澤の腕が矢口の首にまわされていて、動くことができない。

 ちょぉ・・・・・・裕子・・・・・・・うますぎ。
 歯列を割って入ってきた中澤の舌は、矢口の舌にからめられて。
「・・・・・・ん・・・・・・・はぁ・・・・・・・」
 こぼれた吐息は矢口のもの。
 まずい、力はいんないって・・・・・・。
 先に崩れたのは矢口だった。
278 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時13分24秒
 中澤は、ふっと胸に重みを感じて目をあけた。
 寝てしまってたんか。
 ぼんやりと、寝起きの頭で考えて。
 んでも・・・・・・なんで、起き上がられへんのやろ?
 ふっと目線を自分の胸のとこに下げると。
「うわっっっっ!!!」
 何で矢口がこんなとこおんねん?!
 胸の上にあった矢口の頭を落っことさないように、気をつけながらではあるが。
 中澤は勢いよく身体を起こした。

「もぅ・・・・・アホ裕子」
 中澤が身体を起こしたため、中澤の膝の上に頭が乗る格好になって。
 矢口もしょうがなく起き上がるが、そのまま、ぺたん、と床に座り込んでしまった。
「・・・・・・・・うち、何かした・・・・・・・?」
 矢口を抱き起こして、そっと自分の膝の上に座らせながら、中澤は恐る恐る聞く。
 紅潮した頬に、少し潤んだ瞳の矢口。
 めちゃめちゃ可愛いんやけど・・・・・・。
「やっぱ、寝てたんじゃん・・・・・・アホ」
 矢口はそのまま中澤の首筋に顔を埋めた。
 あんなキス、初めてで。
 でも、裕子にとっては全然大したことないキスで。
「アホ・・・・・・・寝ながら、あんなキスしてくるんじゃね〜〜よ」
 まだ、ドキドキがとまらない。
279 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時17分55秒
 中澤は、一瞬、きょとんとしたような表情を見せたが。
「ごめん」
 そっと謝ると、矢口の髪の毛に口付けた。
「そんな凄いキス、した?」
 そして、こつん、と矢口の額に自分の額を当てる。
 絡まりあう視線。
「いつもあんなのしてこないくせに」
 無意識だったら、するのかよ。
 ちょっと、ふくれっつらの矢口に、中澤は苦笑した。
「でも、矢口がキスしてくるから悪いんやろ?」
「起きてたのかよっっ」
 中澤は笑って首を振る。
「夢の中で、矢口がキスしてくれてん。なんか、嬉しくてな・・・・」
 そのまま、中澤は、矢口に軽くキスする。
「テスト、お疲れさん♪」
 誤魔化されてるような気はしないでもないけど。
 誤魔化されてあげよう。
 ふっと笑った中澤の顔に、何だか嬉しくなって、矢口も笑ったのだった。
280 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時19分42秒
 そして。
 テストの採点とかで忙しくて、最近あんま寝てないねん。
 という中澤の訴えにより、中澤は、矢口に膝枕してもらいながら、
「矢口の膝、柔らかいな〜〜♪」
「落とすよ?」
 とかいうやりとりをしていたわけだが。
「ねぇ、今度、裕ちゃんの家泊まりに行っていい?」
 ふにゃっとしていた中澤の表情が、一瞬で真面目な表情に変わった。
「何で?」
「今週末、親、旅行でいないんだ。・・・・・・だから」
 少し、真面目な表情で中澤は矢口の顔を見上げていたが。
「うちの家来ても、おもろいことなんか何もないで?」
 ぶっきらぼうに呟くと、そのまま眼を閉じる。
「・・・・・・・・・だってさ」
 もうすぐ夏休みで。
「逢えなくなっちゃうじゃん・・・・・・・」
281 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時21分03秒
 不安そうな矢口に、中澤は苦笑した。
「アホ」
 膝の上に頭をのっけたまま、中澤は、矢口の頬を軽くつねった。
「わかった。おいで。ついでに、デートするか?」
 中澤の言葉に、矢口の顔が、ぱっと、輝く。
 付き合い始めて、休みの日に遊びに行く、なんて初めてで。
「ほんとっ?!」
 嬉しそうに、笑う矢口に、そっと中澤も微笑を返した。
「どこ行きたい?」

 ちょうどその時。
 トントン、と部屋をノックする音が聞こえてきた。
「あいてるで〜」
 中澤は、矢口の膝の上から身体を起こして、そのまま立ち上がった。
「姐さん、もうすぐ職員会議の時間ですよ」
「ん?」
 矢口は不思議そうな声をあげる。
 入ってきたのは、理事長だった。
 理事長の方も、不思議そうな視線を矢口の方に向けたが。
「これが、噂の矢口って子ですか?」
 ぽん、と手を打った。
282 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時23分03秒
「理事長。用件はそれだけですか?」
 そっけない中澤の声。
「いや、まだ時間あるから、コーヒーでも飲ませてもらおうかな、なんて」
 平家は、嫌そうな中澤を無視して、矢口の横に腰をおろす。
 そして、にこっと、矢口に笑いかけた。
「平家みちよって言います。一応この学園の理事長やらさせてもらってるんですけど・・・・・。
 はじめまして」
「矢口真里って言います。2年A組です。え〜と、よろしくお願いします」
 思わず矢口は挨拶を返しながら、ちらっと中澤の方を見る。
 中澤は、眉間にしわを寄せて、むっとした表情で、こっちを見ていた。

 矢口と視線があって中澤は、ひょい、と肩をすくめてみせると。
「矢口、うち、職員会議いかなあかんってことやから、そろそろ帰り」
 流しに行き、コーヒーの用意をしながら、矢口に声をかけた。

「もうちょっといいですやん」
 明らかに面白がってる感じの平家。
「それとも、しゃべられて困ることでもあるんですか?」
「・・・・・・・・」
 中澤は、何も言わずに平家をしばらく見つめて。
「好きにせぇや」
 投げやりに答えた。
283 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時24分36秒
「可愛いな〜〜」
 くしゃくしゃと頭をなでられて、矢口は困った顔をする。
 裕ちゃ〜ん。
 助けを求めるように、中澤を見つめても、中澤は、こっちを見ようともせずに、コーヒー
をいれていて。
「姐さん、昔から面くいやったからな〜〜♪」
「裕・・・・・中澤先生と、理事長って昔からの知り合いなんですか?」
 そう言えば、矢口、裕ちゃんのこと、あんまり知らない・・・・・。
「ん〜?もう10年くらいかな。学校時代からの友達やねん」
 にこにこと人懐っこい笑顔を平家は浮かべる。
「姐さんの相手、大変やろ〜?泣かされたらいつでも言ってき〜や〜?
 私が引き受ける・・・・・・イタっ」

 ぼかっといい音が聞こえてきたと思ったら、中澤が平家の頭に一発げんこつを落としていた。
「いつまで、矢口の頭に手、おいとんねん」
「普通、先、手出します?」
「文句があるんやったら、いつでも相手すんで?」
 ぎろり、と平家を睨みつけて。
 中澤は、ひょい、と矢口の手をとって、ソファーから立ち上がらせて、机の椅子に座らせた。
 そして、矢口と平家のの前にカップを置いて、中澤は、そのまま流しの前に立って
髪をかきあげた。
284 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時25分44秒
 しばらく、沈黙が部屋に落ちた。
 矢口は居心地悪そうに、もじもじしていたが。
 何となく、置かれたカップに口をつけて。
「あれ?」
 これ、コーヒーじゃなくて、ココアじゃん。
 中澤を見ると。
 ちょっと、照れたように笑っていた。
「矢口、コーヒー飲むとき、いつも飲みづらそうにしてたから。
 そっちの方がいいんちゃうかな〜って思って」
 気付いてたんだ・・・・・・。
 どうしよう、なんかめちゃくちゃ嬉しい。

 矢口の感慨に気付く様子もなく、中澤はそのまま、平家のところにつかつかと歩みよって。
 ぼかっっ。
 再び、平家の頭にげんこつを落とした。
「何するんですかっ?!」
 理事長の叫びはもっともで。
「人の顔見ながら、ニヤニヤすなっっ」
 裕ちゃんのセリフは・・・・・・どう考えても理不尽だと思うんだけど・・・・・。
 矢口は呆然としながら、二人のやりとりを見つめていた。
「これ以上アホになったらどうしてくれるんですかっ」
「アホがアホになったら、賢くなるかもしれん」
 しれっとそんな風に答える中澤に、平家は深いため息をついた。
285 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時28分22秒
「こんな人のどこがいいん?」
 しみじみと矢口に尋ねる平家に、矢口はくすくすと笑いながら。
「全部」
 迷いもなく、簡単に答えた。
286 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時31分23秒
 多分、矢口の知ってる裕ちゃんは、全然足りないんだろうけど。
 二人でいる時の裕ちゃん。
 そして、矢口が知らない時の裕ちゃん。
 もっと、知りたいって思う。
 裕ちゃんのこと、もっともっと知って、嫌なとこ見たとしても。
 矢口は裕ちゃんのこと、絶対嫌いにならない。
 不安に思うことは一杯あるかもしれないけど。
 いつだって、するってすり抜けていくけど。
 でもね。
 矢口と二人でいる時の裕ちゃんは・・・・・・普段、教室とか、職員室とか。
 今みたいに、理事長いる時とかと、全然違うんだ。
 「好きだ」って言ってくれないことは不安で。
 全然、言葉に出してくれないことに。
 たまに、泣きたくなる時だってあって。
 たまに、何だか、切なくて、苦しくて、胸が痛いよ。
287 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時32分26秒
 でもね。
 裕ちゃん自身、気付いてないのかもしれないけど。
 矢口のうぬぼれかもしれないけど。
 矢口と一緒にいる時の裕ちゃんは、普段の裕ちゃんじゃないよ?
 少しづつ、矢口だってわかってきた。
 冷たい言葉とか、そっけない対応するのは、他の人がいる時だけ。
 誰かがいたら、すごく冷たいし、そっけない。
 でも、冷たくしたり、そっけなくした後に、絶対こっちを見るんだ。
 ちょっと、不安そうな眼をして。
 矢口に対して無関心なわけじゃなくて、こんな風な優しさが、見えるから。
 不器用なんだなって思うんだ。
288 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時34分25秒
「姐さん、愛されてますね〜〜♪」
『全部』
 そう答えた矢口の表情があまりにも、優しくて。
 そんな風に想われている中澤が少し、羨ましい、とか思いながら、平家は笑った。
「・・・・・・独り者には辛いセリフか?」
 照れたように笑った中澤に、平家は驚いた。
 長い付き合いで、中澤の付き合ってた相手とか。少しは知ってたりするけど。
 こんな風に中澤が冷やかしに反応することはなかった。
 こんな風に照れた表情・・・・・・初めて見たかもしれない。

「さて。そろそろ時間、やばそうやん・・・・・みっちゃ・・・いや、理事長」
 中澤は表情を改める。
 ちゃんと公の場では、「理事長」「中澤先生」。
 特別扱いをするわけでもなく、公私混同は避けてる二人だ。
「今日は、夏休みの繁華街巡回のシフト組みでっせ〜〜」
「理事長、一緒に組みません?」
 中澤が、いたずらっぽい瞳で平家に尋ねる。
 一緒に組んで、さぼろうって魂胆なのだろうが。
「理事長は偉いから、そんなことには参加せんでもええんです〜〜」
「あ、せこっっ」
 けたけた笑いあう二人を見ながら。
 矢口は、ぴょこん、と椅子から下りた。
289 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月29日(月)23時36分46秒
「矢口」
 ドアのところで、中澤は、矢口の耳元で、平家に聞かれないようにぽつり、と呟いた。
「明日はちょっと忙しいからあかんけど、金曜、ここおいで」
 少し早口のセリフ。
 久しぶりに、矢口のお弁当食べたいな〜〜。
 優しい笑顔に。
「うんっ」
 嬉しそうに矢口は頷いたのだったーーーーーーー。
290 名前:つかさ 投稿日:2002年04月29日(月)23時51分18秒
>>275さん
 いや、もちろん作詞は矢口のことを思って書いたに違いないっ(ww
 紗耶香が何してるかは、後々ちゃんとでてきますんで、楽しみにしといてください

 昨日は更新できなくてすいませんでした。
 飲み会で思わず、オール・・・・・・(w
291 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月30日(火)04時32分26秒
作者様のやぐちゅーは最高〜♪
ここのスレ読むと心がダムになります(w
本当に幸せ〜!!
292 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時08分38秒
〜〜〜4〜〜〜

 来週からは、夏休み。
「あ〜〜っ、退屈だよ〜〜っ」
 短縮で、授業はもう午前中のみ。
 授業が終わって、帰っていくクラスメイトを尻目に、教室で駄々こねてる人物が1名。
なんとなくそれに付き合ってるのが1名。

「今日は、裕ちゃん、忙しいんだ?」
「ん〜〜。金曜に約束したけど」
「夏休み前だからね〜」
 軽く市井は笑って、そのまま窓をガラっとあけて外を眺める。
 クーラーのきいた教室に、むっとした空気が流れ込んできた。
「紗耶香も窓開けるの、好きなんだ?」
 何気なく矢口が尋ねると、市井はきょとん、とした表情をする。
「あ〜〜」
 何となくそのまま苦笑い。
「前、裕ちゃんに言われたんだよね。『学校の四角い箱の中にいるのって息がつまらん?』って。
 その時は意味がよくわからなかったけど」
 いったん言葉を区切って市井は続けた。
「今は、少し、わかるかもね」
 そのまま、中澤がよくするように、空を見上げる市井。
 ・・・・・・矢口には、わかんないな。
 同じように空を見上げてみても。
 矢口は、少し悲しそうな顔になった。
293 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時09分32秒
「紗耶香って、何で裕ちゃんと仲いいの?」
 でも、紗耶香の姿に、中澤がだぶって。
 何気なく矢口は疑問を口にした。
「あれ?裕ちゃんから何も聞いてないんだ?」
 こくこくと頷く矢口。
「ん〜〜。矢口だったら、いっか〜。でも、他の人に言っちゃ駄目だよ?」
 すとん、と市井は、矢口の前の席に、腰を下ろした。

「市井、寮生じゃん」
 そんな切り出し方で市井の話は始まったーーーーーーー。
294 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時11分03秒
 4月。
 授業が始まって、はや二週間がたとうとしていた。
「何しとんや?」
 ばれたっっ。
 窓のサッシに手をかけていた市井は焦って、後ろを振り向いた。
 そこにいたのは、今年の4月から来た新しい先生。
 確か・・・・・・中澤、とか言ったはず。
 関西弁に金髪にピアス。教師らしからぬその容貌に同じ教師の間で、かなり問題になってるって
聞いたことがある。
 初めて授業受けた時は、どうなることかと思っていた市井だったが、外見に反して、
中澤の授業はわかりやすかった。教壇に立つのは初めてということだったが・・・・・、なかなか。
『あんたら、静かにしいや?』
 ドスの効いた声は、長年、教師やってる人間だってそうそう出せるものじゃない。
295 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時11分49秒
「確か、市井、やったっけ?夜遊びに行くんか〜?」
「いや、気分悪くて、ちょっと、外の空気が吸いたくなって・・・・・・」
「普段着に着替えてか?」
 ニヤリと意地悪く尋ねる中澤。
 市井は、俯く。
「寮の規則は知っとるよな?」
 夜10時以降、部屋から外にでること禁止。11時消灯。6時起床。
 市井は黙り込む。
 停学、かな?
 この前抜け出したのがばれた生徒は、普段の素行に眼をつけられていたこともあって、
そのまま、退学処分になった・・・・・・。
 嫌な想像ばかりが頭をよぎる。
296 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時13分11秒
 何も言わずに俯いている市井の頭にぽん、と手がのせられた。
「まぁ気をつけて行ってき〜や。ちゃんと朝までに戻ってくんねんで?」
「は?」
「あ、ちなみに見回りは、4時から5時にもう一人の先生がやるから。そこで捕まったら
あかんで〜」
 以上、話、終わり。
 と中澤はきびすを返した。
「・・・・・・・捕まえないんですか?」
「捕まえて欲しいん?多分、停学か退学になると思うけど?」
 別に、停学か退学になりたいんやったら、このまま連行するけど、どうする?
 真顔でとんでもないことを言う中澤のセリフに、市井は慌てて、首をぶんぶんと大きく横に振った。
「金曜の晩やしな〜〜。うちも宿直なんてだるいことやってんと、遊びに行きたいわ」
 ・・・・・そんなこと、羨ましそうに言わないで下さいよ。
 思わず苦笑を浮かべた市井に。
「あ〜戻ってきたら、ちゃんと窓の鍵閉めとくねんで?戸締りはきちっとな〜♪」
 なんとも能天気な声を残して、中澤はひらひらと手をふって去っていった。
297 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時14分09秒
「それが、市井と裕ちゃんが初めて会った時の話」
「裕ちゃんらしいね〜〜」
 嬉しそうに笑う矢口に、市井はニヤニヤと笑う。
「でも、この話、まだ続きがあるんだよ?」
 ん?
 キョトンとする矢口に。
「それだけだったら、市井だって、いい加減な先生でラッキーって思うだけなんだけどさ」
 笑いを噛み殺して、話を続ける。

 その次の週の月曜日の放課後。
 寮に帰ろうとしている市井の方をぽん、と叩いた人物がいた。
「中澤先生?」
「帰るんか〜?今、時間ある?」
「はい・・・・・・・」
 この前の件でか、と市井はちょっと強張った表情を中澤に向けた。
「授業で質問あるって言ってたやろ?ちょっと、部屋まで来てくれへんか?」
 周りには下校途中の生徒が結構いて。
 中澤は、不自然に思われないようにか、適当な用件を口に出した。
「はい・・・・・」
 何人かの生徒が、まだ金髪ピアスが珍しいのか、ちらっちらっと中澤を横目に見ながら
通り過ぎていく。
298 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時15分02秒
「まぁ、楽にしてや」
 コーヒー飲むか?
 能天気な中澤の声に、市井は固い声で返す。
「本当の用件は、何ですか?」
「せっかちやな〜自分」
「・・・・・・・・・」
 市井はむっとした表情になる。
「んで、コーヒー飲むか?」
「・・・・・・・いただきます」
 おもしろそうに市井を観察しながら、中澤は、やかんを火にかけた。
 そして、デスクの上に鎮座しているパソコンの電源を入れる。

 しばらく、沈黙が流れた。
 パソコンの起動するかたかたという音だけが部屋に響いていた。
 中澤は、おもしろそうな表情を崩さず、市井をじっと観察していた。
 市井は、むすっとした表情のまま、腕を組み身動き一つしない。
 絶対にこっちからなんて、しゃべりかけてやるもんか。
 強情そうな面持ち。
 中澤は、ぽりぽりと頬をかいた。
 そのまま、流しへ行くと、コーヒーを入れる準備を始めた。
299 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時16分37秒
 そのまま五分は経過しただろうか。
「ほれ。砂糖、いるか?」
 マグカップがぽん、と市井の前に置かれた。
「結構です」
 市井はぼそっと答えて、中澤に視線をちらり、と向ける。
「ここの学校、厳しくなったな〜〜。息、つまりそうや」
 無愛想な市井の返事を気にする様子もなく、中澤は、コーヒーを片手に、
聞かせるともなしにぽつり、呟いた。
「うちはここの卒業生やねんけどな」
 中澤と市井の視線が合った。
 ふわりと、中澤が笑顔を見せた。
 ・・・・・・・こんな笑い方、するんだ。
 市井は、綺麗な笑顔に思わず驚いた表情になった。
300 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時18分10秒
「何驚いた顔してんねん」
 軽く指で中澤は、市井の頭をこづいた。
「いや、笑うと印象変わるんだなって・・・・・」
「よく言われるんや」
 中澤は、苦笑した。
「まぁそんなことはどうでもいいねんけどな〜。
 市井、夜の無断外出、止める気、ないんか?」
 いきなりの直球。
 市井は、動揺を隠せない。
「毎晩出かけてるわけじゃないんやろ?」
「金曜の晩だけですっ!」
 思わず真っ正直に答えてしまって、市井は、ちっと舌打ち一つ。
 中澤は、からからと笑って、
「誘導尋問弱いな〜〜」
 コーヒーを美味そうに一口すすった。

「・・・・・・・処分、するつもりなんですか?」
「今更?」
 ひょい、と首を傾げるて、逆に中澤は問い返してきた。
「まぁいいわ。とりあえず、こっちおいで」
 中澤はパソコンの前に移動すると、パスワードを打ち込んで、何かのプログラムを起動させて
いるようだった。
 市井は、黙って、中澤の後ろからパソコンの画面を覗き込んだ。
301 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時19分03秒
「・・・・・・これって・・・・・・・・」
 画面に表示されたデータに市井は思わず言葉をなくした。
「とりあえず、寮の構造データに、あとは、今月の宿直の当番表、ついでに見回り時間とコースや。
 メモするのはなしやぞ?
 これ生徒に漏らしたってわかったらさすがに裕ちゃんもやばいからな〜〜」
 全然やばいと思ってなさそうな感じで中澤は軽やかに言葉をつむぐ。
「金曜の晩だけ抜け出すんやったら、別にそんなに記憶力いらんやろ。
 時間とコースだけ、気をつけとけばいいねんから」

「ちょ・・・・・・待ってください。これが、本当のデータって証拠はどこにあるんですか?」
 市井の疑問はもっともで。
 騙されてるんじゃないか、という疑惑に満ちた眼差しが中澤を射抜く。
「別にないよ、そんなもん。
 だいたい、これだって決まってる定期の時間やコースっつ〜だけで、イレギュラーなんて
誰にも予測できんもんやし」
 あっさりと中澤は答えた。
 市井は、がっくりと思わず肩を落とす。
302 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時20分20秒
「・・・・・・・じゃあ何で、市井にこれを教えてやろうって気になったんですか?」
「気まぐれ」
 またもやあっさりと答える中澤。
「それだけじゃ納得できませんっ」
 強い口調で市井は中澤に詰め寄るが。
「疑い深いねんな、自分」
 ひょい、と中澤は、パソコンの前から立ち上がると、真っ直ぐに市井の眼を見つめた。
「何でかって聞かれたら、気まぐれや。
 後は、市井の抜け方の問題。あんなとこから抜けてたら、鍵一晩中開けっ放しで、他の
生徒が危ないやん。
 それから・・・・・」
 何故か中澤は、自嘲めいた笑みを浮かべて。
「ガラやないけど、退学者は出したくないんや」
 市井の眼を真っ直ぐみながら、言い切った。

「信じるも、信じないのも、あんたの勝手やけどな。好きにしぃ」
 中澤は、机の上のコ−ヒーカップをとると、そのままソファーに座って飲み始めた。
 しばらく市井は中澤の後姿と、パソコンの画面を交互に見ていたが。
 黙って、データを頭の中に叩き込み始めたのだったーーーーーーー。
303 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時22分39秒
「普通信じられる?それでそのデータが完璧に正しかったんだよ?」
「・・・・・・・・信じらんない」
 今度は市井がくすくす笑い出して、矢口は唖然としていた。
「・・・・・・・いい先生だよ」
 ぽつん、と呟いて、市井は腕を組んだ。
「結構、先生の中では睨まれてるみたいだけどね。
 今年度に入って、まだ退学者が一人も出てないのは、裕ちゃんが裏で動いてるからだって噂も
あるくらいだし」

「ふ〜〜〜ん。紗耶香って物知りだね〜」
 感心したように呟く矢口に、市井は苦笑いする。
「ってか、矢口、裕ちゃんしか見えてなさすぎだよ〜。
 他の生徒からも結構人気あるよ?」
 裕ちゃんは気付いてるのか、気付いてないのか、うまくあしらってるけど。
 市井は心の中でそっと呟く。
「え〜っっ嘘、マジ?!」
 焦りまくってる目の前の親友。
 でもどうやら裕ちゃんも、矢口のことしか見えていないみたいだけどね。
 他の人から言われても信じられないだろうから、言わないけどさ。
 矢口って、気使いで、人の心にはさといくせに、肝心なとこで結構鈍感だからな〜。
 裕ちゃんも苦労するだろうな。
 特に、言葉に何かを出して、伝えるの、苦手そうだし。
304 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時25分18秒
 市井は、
「気付かなかったよ〜〜」
 とか頭を抱え込んでる矢口の頭をぽんぽん、と叩いた。
「ってことで、市井の話は終わり。他言無用でよろしく♪」
 そのまま立ち上がったが。
 矢口が、制服のすそを引っ張ったため、思わずひっくり返りそうになった・・・・・・。

「そういや、紗耶香、何で金曜の晩に出かけてるの?」
 さっきの焦りまくった表情はどこへやら。
 矢口の顔は興味津々、といった感じで。
「・・・・・・・・・・」
「前、理事長と知り合いっぽい感じの話してたのって、関係あるんじゃないの〜?」
 ぎくり。
 市井の表情が、微妙に変わったことに気付いて、矢口はにんまりと笑う。
「さぁ吐けっっ♪」
 市井の制服をぐいぐい引っ張る矢口に。
「わかったから、制服にしわよるじゃんっっ!!」
305 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時29分44秒
 市井は矢口の手をほどくと、もう一度、矢口の前の席に、腰を下ろす。
「市井ね〜、バンド組んでるんだ」
 一つ息をついて、矢口の眼を見て、伝える。
「金曜は、バーで演奏してんの。練習時間とかあんまりとれなくて、しんどいんだけどさ」
「裕ちゃんはそれ、知ってるの?」
「一人での練習用にって音楽室の合鍵貸してくれたり。
 何回か、店にも来てくれたよ。最近なんて、理事長連れてきてさ・・・・・あれにはびっくりした」
 演奏中に、中澤が店に来たのはわかってて。
 連れの顔に見覚えがあるな〜とか思いながら、演奏してたのが間違いだったね。
 ソロのパートの時に、「理事長だっっ!!」って気付いた瞬間、大トチリ・・・・・・。
 メンバーのフォローでなんとかなったけど。
306 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年04月30日(火)23時30分35秒
「い〜な〜〜、矢口も行きたいっっ!」
 羨ましそうな矢口の顔。
「裕ちゃんに連れてきてもらいなよ」
「ん〜〜、連れて行ってくれるかな〜〜」
 笑って、今度こそ市井は立ち上がった。
「そ〜ゆ〜ことで。市井、そろそろ帰るけど、矢口、どうする?」
「矢口も帰るよ〜。一緒に帰ろうよ〜」
「って昇降口までじゃんっっ!」
 寮生の市井は思わず突っ込むが。
「気にしない、気にしない」
 笑いながら、鞄を持って矢口は、立ち上がった。
307 名前:つかさ 投稿日:2002年04月30日(火)23時37分51秒
>>291さん
 ありがとうございます^^どんどんダムになってくださいっ♪

 ってことで、更新終了〜〜♪
 今日のMUSIX、矢口が全然でなかった・・・・・
 ハロモニでもな〜んか、目立ってなかったし。
 矢口不足だっっ!(TT)
308 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月01日(水)23時05分28秒
〜〜〜5〜〜〜

 金曜日の晩。
 矢口は、自宅のベッドで眠れない夜を過ごしていた。
 明日は裕ちゃんの家に初めてお泊まり。そして、初めてのデート。
 うわ〜〜、緊張するよ〜〜っっ。
 今日の昼間、中澤は別に、普通だった。
 海が見たい、という中澤の提案により、明日は江ノ島に行くことになったんだけど・・・・・。

 それより・・・・・・泊まりってそういう、ことなのかな???
 裕ちゃん、慣れてそう・・・・・・。
 この前、寝ている中澤にキスした時の感覚を思い出し、矢口は顔を真っ赤にさせる。
 じたばたと布団の中で暴れる矢口。
 眠れるのは、もう少し先になりそうだ・・・・・・・・。
309 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月01日(水)23時06分07秒
 同じ頃。
 中澤は、マンションで首を傾げていた。
 何で矢口が来ることになったんやろ?
 素朴な疑問に、ふ〜〜む、と答えが見つけ出せずに考え込む。

 平家が用意してくれたマンション。
 過去、誰かと付き合ったとしても。
 自分の部屋に呼ぶなんて、したことなかったからな〜〜。
 ぽりぽりと頬を掻く中澤。

 矢口は。
 喜怒哀楽がはっきりしてて。
 見てて、楽しい。
 笑ったり、怒ったり、拗ねたり。
 自分の感情をそのままぶつけてくるようなタイプは今まで、うちの側にはおらんかった。
 最初は、素直なんやな〜とか思ってて。
 今は、それは矢口の強さなんかな〜って思ってる。
 人を好きになる恋愛感情とかってうち、よくわからんねん。
 誰かがいなくなって寂しい、とか。
 誰かがおれへんかったら寂しい、とか。
310 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月01日(水)23時06分47秒
 今、うちは、矢口がおらんくなったら、寂しいって思うんかな??
 またもや首を傾げる中澤。

 まぁいいわ。
 なるようになるやろ。
 ごろんとベッドに寝転がる中澤の方が、矢口よりは早く眠れそうな、そんな、夜・・・・・・。
311 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月01日(水)23時07分27秒
「矢口、何か食べてくか〜?」
「矢口、焼肉がいいっ♪」
 次の日の夕方。
 江ノ島を満喫した二人は、元気一杯だった。
 昨日の夜、寝付けなかった矢口は、最初は眠そうだったのだが。
 江ノ島の海みながら、中澤の膝を枕に爆睡2時間。
 中澤は中澤で、潮の香りや、波音に。
 ここしばらくのハードスケジュールの疲れを癒していた。
 もしかしたら、膝の上で気持ちよさそうに寝ている矢口の顔を眺めることが一番の癒し、
だったのかもしれないが。

「矢口、よう食べたな〜〜」
「裕ちゃんが少食すぎるんです〜」
 夕飯後、二人はじゃれあいながら、中澤の家へと向かっていた。
「何でそんなに食べるのに、身長にいかされへんのやろ〜な〜?」
 矢口は、すかさず中澤に蹴りを入れた。
「まだ伸びるもんっっ」
「もう成長期ちゃうやろ〜〜、いや、16っつったら成長期か・・・・・」
 思わず考え込む中澤。
「若さが羨ましいなら、羨ましいってそう言えばいいのにっっ」
「アホかっっ」
 きっちり突っ込む中澤。
 お互いクスクス笑いあう、そんな時間が嬉しい。
312 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月01日(水)23時08分51秒
 ガチャ。
 中澤は、マンションの部屋のドアの鍵を開けた。
「まぁ・・・・・・・散らかっても汚れてもないと思うねんけど」
 ワクワクした顔で、矢口は中澤の部屋に足を踏み入れた。
「・・・・・・・・・・・」
「まぁ、適当に座ってや」
 中澤は、途中のコンビニで買ってきたお菓子類をテーブルに並べ始める。
「矢口、ジュースやんな〜?」
 そのまま、キッチンに向かう中澤。
「・・・・・・・・・・・」
 無言の矢口に気付いているのか気付いていないのか、中澤はいたってマイペースだが。
「・・・・・・・・ねぇ、裕ちゃん」
 ようやく、矢口は言葉をしぼり出した。
『うちの家来ても、おもろいことなんか何もないで?』
 頭をよぎるのは、講師室で聞いた中澤のセリフ。
 裕ちゃん、この部屋・・・・・・ある意味、すごくおもしろいよ・・・・・・。
 部屋の入り口に突っ立ったままの矢口にやっと気付いたのか、中澤は、
「ん?」
 と矢口に視線を向けた。
313 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月01日(水)23時09分32秒
 唖然としている矢口の反応を見て、中澤は、肩をすくめた。
「部屋が広すぎるねんて」
 そういう問題・・・・・・?
「掃除、楽やで?」
 ・・・・・・・・そういう問題???
 頭の中が、「?」で一杯になってる矢口を、中澤は手招きした。
「ほら、こっちおいで〜や」

 矢口は、フローリングの床にぺたんと座り込んだ。
 当然のことながら、中澤の部屋にはクッションなんてものも存在しなくて。
「ほれ、乾杯」
 中澤は冷蔵庫の中から、ビールを取り出していた。
 いつの間にか、テーブルの上には、氷が入ったグラスと、コンビニで買ったジュースの
ペットボトルが置かれていた。
「この部屋、矢口以外に誰かきたことあるの?」
「ん〜?みっちゃんくらい」
 おいしそうにビールを飲みながら、中澤は答えた。
「何か言われた?」
「ラジカセくれた。後は、テレビくらい買えって怒られた・・・・・・」
 それまでは、テレビもラジカセもなかったのね。
 矢口は、こつん、と中澤の肩に頭を寄せた。
314 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月01日(水)23時10分16秒
 な〜んか、変なドキドキがふっとんじゃったじゃん・・・・・。
 その代わり、驚きと、納得が入り混じった何か変な気分。
「疲れた?」
 優しく肩を抱く中澤に、矢口は首を振る。
「裕ちゃんの膝枕がきいたんやな〜♪」
 中澤は、ニヤリ、と笑った。
「あ、アホっっ!」
 瞬間的に真っ赤になった矢口。
「可愛いな〜〜〜♪♪」
 ぐりぐりと中澤は矢口の頭をなでた。
315 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月01日(水)23時11分07秒
 矢口は可愛い、より、ちゃんと好きだって言って欲しいんだよっっっ!
 心の中での矢口の突っ込み。
 む〜〜っとした矢口の表情に、気付いているのか、気付いていないのか。
「風呂沸かしてくるわ」
 中澤は、立ち上がって、テレビのリモコンをぽん、と矢口に渡した。
「適当に見たいの見てて〜や〜。お菓子も適当につまんどき」
 そのまま部屋を出て行く中澤を矢口は、何を言うでもなく見ていたのだが。
 ふっと、部屋を出る前に中澤は立ち止まった。
「・・・・・・ちゃんと、好きやから」
 多分、テレビをつけていたら、聞こえなかっただろう。
 そんなくらいの音量で。
 振り向きもせず。
 ぐしゃぐしゃと自分の頭をかくと、中澤は、リビングから出て行った。
 しばらく、矢口は、リモコン片手に呆然としていたが。
「裕ちゃんっっ!!」
 慌てて、中澤を追っかけた。
316 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月01日(水)23時11分46秒
「何やねん、矢口、そんなに裕ちゃんと離れたくないんか〜?」
 バスルームで捕まえた中澤は、いつも通りの口調だった。
「裕ちゃん、さっき、何て言った?」
 対する矢口は真剣で。
「ん?何が?」
 とぼけた表情の中澤に、矢口は、焦れたように、口をとがらせる。
「さっきっっ!部屋出る前にっっ!」
「覚えてない」
 しれっと答える中澤に。
「何だよ、それっっ!!!」
「ここで、喚くな、耳痛いやろ」
 中澤はそのまま、矢口に背を向けると、風呂に湯をはるために、蛇口をひねって。
 そのまま、矢口をバスルームの外に連れ出した。
317 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月01日(水)23時12分19秒
 そして、中澤は矢口をぎゅっと抱きしめた。
「誤魔化すなよ・・・・・・アホ裕子」
 怒る、拗ねる、を通り越して、何だか泣きそうな矢口の声。
「矢口にとって、そんなに重要なことなん?」
 悔しいくらい落ち着き払った中澤の声。
 当たり前だろっっ!!!
 矢口は、腕を突っぱねて、中澤を思いっきり睨みつけた。
「なぁ・・・・・・矢口。今、矢口は誰を見てる?」
 唐突な中澤の質問に、矢口は首をかしげた。
「・・・・・・・・・裕、ちゃん」
「うん。うちも、矢口を見てる」
 にっこり中澤は、笑った。
「それじゃ、あかん?」
 再び、矢口をすとん、と中澤は胸の中に抱きしめる。
 ・・・・・・・・・反則だ。
 ぽんぽん、となだめるように背中を叩く中澤の腕に。
 綺麗な笑顔に。
 誤魔化されたくないのに、誤魔化されてしまう矢口は。
 やっぱり、負けてる。
318 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月01日(水)23時13分05秒
「ねぇ裕ちゃん」
 でも、負けてないことが、たった一つだけあるよ。
 矢口は、中澤の眼を見つめた。
「?」
「矢口は、裕ちゃんが好き。絶対に、好き。裕ちゃんが一番だから。
 だから・・・・・・・」
 いつか、好きだって、矢口の眼を見て言わせてみせる。
 裕ちゃんを捕まえてみせる。
 裕ちゃんを好きな気持ちだけは、誰にも負けない。
 でも、まだ、今は言ってあげないよ。
 悔しいもん。

「だから、何やねん?」
 こつん、と中澤は矢口の額に、自分の額をあてた。
 柔らかい、表情と、眼の光。
「・・・・・・・だから・・・・・・・ゆっくり、やっていこうよ・・・・・・」
 ぎゅっと、中澤は眼を閉じる。
 そして、何も言わずに、中澤は矢口をゆっくりと抱きしめた。
319 名前:つかさ 投稿日:2002年05月01日(水)23時15分35秒
今日の更新終了です。
そして、ごめんなさい、前編終わってないけど、ストック底をつきました(汗)
週末くらいにはなんとか・・・・・。
頑張ります。
320 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月01日(水)23時39分34秒
つかささんの書かれる矢口、可愛すぎです。

更新のほうはゆっくりお待ちしていますので、急がず頑張って下さい。
321 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月02日(木)02時14分58秒
全開で中澤に甘え倒す矢口が、メッチャかわいいです!
322 名前:読んでる人 投稿日:2002年05月02日(木)17時05分36秒
>>310を読む限りでは、裕ちゃんの矢口に対する気持ちはまだそんな深くないようですね。
やっぱり裕ちゃんの気持ちを深めるのは矢口次第ですかね?

ガンバレ矢口!!
裕ちゃんが矢口のコトを考えるだけで夜も眠れないくらいにさせちゃってくれっ!!
323 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月03日(金)10時34分34秒
今日全部読みました〜!大変だったけど楽しかったです!
324 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年05月06日(月)02時17分17秒
ここの、矢口可愛すぎ・・
もう溶け出してきた・・
325 名前:つかさ 投稿日:2002年05月06日(月)12時22分57秒
レスありがとうございます。
とりあえず、今、前編ラストのシーンっ。
今日は暇なんで晩までにはなんとか仕上げたいと。

頑張って動いてね、矢口・・・・(w
326 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)13時41分25秒
ほっほー、夜になるのが楽しみです。
「つかさ」さんの文章、丁寧だし、無駄がないし、きれいな言葉を使うし。
「もしかして、プロ?」って、思います。
あー、出会えてよかった。
これからも楽しませてください。
お願いします。
327 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月06日(月)23時55分09秒
〜〜〜ちょこっと番外編〜〜〜 

 シャワーを浴びて。
 夜。
 矢口と中澤は一つベッドの中。
 矢口は、中澤の腕の中でこっそりため息をついた。
 この部屋の様子からして、そりゃ、客用の布団なんてあるなんて思ってなかったけどさ。
 矢口、また今日も寝れそうにないじゃん・・・・・・。
 ん?
 ・・・・・・・ちょっと待て。
 ってことは、もしかして、他の人が泊まりに来た時はどうしてるんだ?
 中澤の腕の中で、矢口はみじろぎする。
328 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月06日(月)23時55分57秒
「ねぇ、裕ちゃんっ?」
 少し・・・・・いや、だいぶ声がとんがってたかもしれない。
 眠そうな表情で、中澤が、矢口の眼を覗き込んできた。
「・・・・・・どしたん?」
「・・・・・・矢口の他に誰か、この部屋泊まりにきたことあるの?」
「ないよ」
 即答で答えられても。
「理事長とか、どうなのさ?
 仲、良さそうだったじゃん・・・・・・」
 いったん、心の中に浮かび上がってきた疑問は、中々消えない。
「・・・・・みっちゃん?泊まらせたことはないで?あ、朝まで飲んだりってのはあったかも。
 でも、みっちゃん、ここのマンションやしな。どっちかの家で飲む時は、ほとんど
みっちゃんの部屋やし」
 何、心配してんねん?
 ぐしゃぐしゃと中澤は矢口の頭をなでる。

「・・・・・・だってさ・・・・・」
「妬いてるんか?」
 中澤の声は、ちょっと困ったような感じを含んでいた。
「みっちゃんはな〜〜。何やろうな???
 悪友、やで。それ以上でも、それ以下でもない」
 機嫌直してや?
 そっと、中澤の唇がおでこに落ちてきた。
「裕ちゃんは、何で先生になろうって思ったの?」
「・・・・・・・さぁ??」
 さらに、首をかしげた中澤に、矢口は吹き出した。
329 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月06日(月)23時56分57秒
「アホ裕子。矢口に逢うために、くらい言ってみせろよ〜〜」
 中澤の腕の中で、ふざけて暴れる矢口に、布団、落ちるやろ〜としばらくじゃれあっていた
二人だったが。
「矢口に逢えて良かった」
 いきなりぼそっと耳元で囁かれた真面目な声に。
 矢口は、思わず動きを止めた。

 薄暗い部屋の中、そっと中澤の表情をうかがうと、真剣な表情・・・・・・・がいきなり、
ニヤっとした人の悪い笑みを浮かべた。
「そう言ったら、信じる?」
「・・・・・・・・・・アホ裕子っっっ!!!!」
 思わず、布団の中ということを忘れて、中澤に蹴りを入れると。
 どうやら、見事に鳩尾に入ったらしく、中澤は苦悶の表情を浮かべた。
「ちょ、ちょお・・・・・・・・・・今の、ごっつ、痛いねんけど・・・・・・・」
「当たり前だろ、痛くしたんだからっっ!!!」
 む〜〜〜。
 拗ねきった矢口の表情に、中澤は、痛みを忘れてくすくすと笑い出す。
330 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月06日(月)23時57分54秒
 さっきまであった眠気はすっかりすっ飛んでしまった。
「パワー全開やな・・・・・・」
 拗ねきって、中澤の腕の中から逃げるように背を向けてしまった矢口。
 それでも、ちゃんとうちの腕を枕にしてるとこは・・・・・いや、このままやったら、腕に
噛み付かれるかもしれん・・・・・・・。

 中澤は、ひょい、と考え込む。
「なぁ矢口、機嫌なおして〜や〜〜」
 矢口の肩に手をのばし、顔をこっちに向けさせる。
「矢口、うちのこと知りたいって言ってなかったっけ?」
「・・・・・・・・・・言ってないよ、アホ」
 やっぱり不機嫌そうな表情だけど。
 少し、興味津々ってな感じに矢口の表情が動く。
 やっぱ、可愛いな〜〜。
「でも、裕子が話したいってのなら、聞いてあげてもいい」
 ・・・・・・ごそごそと身体の向きを中澤の方に向けながら、矢口が言う。
 素直じゃないセリフと、素直な動作。
 そのギャップがたまらん、なんて・・・・・・・初めて思うかもな。
 中澤は優しい眼で、矢口を見つめた。
 そして。
 そのまま明け方まで、二人はいろんなことを話し続けた。
331 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月06日(月)23時58分52秒
〜〜〜6〜〜〜

 アホ裕子っっっっ!!!
 夏休みに入って、矢口はすこぶる・・・・・いや、だいぶ機嫌が悪かった。

 夏休みが始まって、一週間もたたないうちに。
『あ、うち、しばらくでかけるから』
『へ?どこに?』
『どっか。一ヶ月くらいしたら戻ってくるから』
『は?』
『八月の第三週に学校の見回り当番やから、それまでには戻ってくるし。心配せんといい子で
待っててや〜〜♪』

 な〜んで、あんな人、好きになっちゃったんだろ・・・・・・。
 矢口は、深いため息をついた。
 携帯に連絡しても、ほとんど「電波の届かないところにおられるか、電源が切られております」
の声。
 出かけていって、一週間音信普通で。
 やっと、昨日、中澤から連絡が入った。
『今、和歌山の方におるねん〜。温泉気持ちい〜〜で〜〜』
 能天気な中澤の声に、怒る気力もうせて。
 とりあえず、一週間に一回は連絡してくるよう、約束させるのが精一杯だった。
332 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時01分13秒
「あれ?やぐっちゃん?」
 マクドナルドで一人でぼんやりと考え事をしていた矢口の耳に、聞きなれない声が飛び込んできた。
「?」
 振り返ってみると。
「理事長??」
 茶パツに、サングラス、ラフな格好の平家が立っていた。
「学校の外で、理事長はやめてや。それより奇遇やね〜。一人?」
「バイトの帰りで・・・・・・」
 と言いかけて、矢口は慌てて口をつぐんだ。
 なんとなく、家でうだうだしているのも嫌で始めた短期バイト。
 しかし、校則では、勿論のことバイトは禁止で・・・・・。
「・・・・・聞かなかったことにするわ」
 苦笑交じりに言いながら、平家はトレイを矢口の前に置いた。
「相席、いい?」
 律儀に聞いてくる平家。
「・・・・・・・もう座ってるじゃないですか」
 前、中澤の講師室で会ってから、矢口と平家はちょこちょこ話をするようになっていた。

「ええやん」
 平家はにこにこと笑うが。
 関西弁に、軽く髪をかきあげるその仕草に。
 似ても似つかないんだけど、思わず誰かさんを思い出してしまって。
 矢口は再び、大きなため息をついた。
333 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時02分10秒
「・・・・・・姐さんも、罪作りやね」
「・・・・・・・・・・・・・・」
 矢口のため息に、ポツリと漏らした平家の反応。
 何か言おうと矢口は、口を開きかけたが、結局何も言えずに黙り込む。
 平家も何も言わずに、ハンバーガーをぱくついていたが。
「・・・・・・・・寂しくないのかな」
 主語もまったくない矢口のセリフに、平家は食べる手を止めた。
「・・・・・そら、寂しいんちゃう?」
 人間やし。
 そう続けると、平家は、ラスト一口、ハンバーガーを口の中に放り込んだ。
 矢口は、平家の眼を見つめた。
 何か問いたげな眼。
「姐さんと恋愛するには、体力いると思うわ、ホンマに。
 体力ってか、気持ちの強さかな。中途半端な気持ちじゃ、姐さん、捕まえられへんからね」
334 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時03分17秒
 納得したのかしてないのか、矢口は、また一つため息をついた。
「何で、裕ちゃん、矢口の学校に来たんですか?」
 きっと、出会わなければ、こんな想いをすることもなかったかもしれない。
 平家を見る矢口の眼はちょっぴり恨めしげだった。
「私は、姐さん、意外と教師に向いてると思ってるねんけど。
 やぐっちゃんは、そう思えへん?」
 矢口の失礼な問いかけにも、平家は気を悪くするような様子もなく、続けた。
「結構、面倒見いいのも知ってたし。
 まぁあの、金髪、カラコン、ピアスはちょっと困るけど・・・・・」
 他の教師から私も責められて、大変なんやで。
 おどけた平家の言葉に、矢口は少し笑った。

「会いたいな〜」
 ぽつり、と零れ落ちた矢口の言葉。
「今日は、へこみやぐっちゃんやね」
「・・・・・・・・・・」
 反論も、否定もできなくて、矢口は、泣きそうな瞳になる。
「手に入れようと思わないと、何も手に入らないよ」
 不意に、平家がぼそりと呟いた。
335 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時03分59秒
 そのまま、何も言わず平家はジュースのストローをもてあそんで。
「動いて後悔するか、動かずに後悔するか。後悔しない人生なんてない」
 平家は懐かしそうに続けた。
「昔、私と姐さんにある人がそう言ったんや。
 もう、亡くなったけど」

「それって、裕ちゃんの学生時代の先生のことですよね?」
 矢口がふっと口をはさんできた。
 平家は少し、驚いたような顔をする。
「姐さんが言ったん?」
「前、家に行ったとき、ちょこちょこっとだったけど、平家さんのこととか、
その先生のこととか・・・・・・いろいろ聞いたから」
「ふ〜〜ん」
 何とも言えない表情で、平家は頬杖をついた。
336 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時05分22秒
 正直言って驚いた。
 姐さんの、やぐっちゃんへの態度に。
 はまってますやん?
 冗談混じりの問いかけや、ちゃかしに。
 姐さんは、いつだって、ポーカーフェイス。

 誰かを家に呼んだり。自分の話をあまりしないのは。
 弱さの裏返し。
 いつだって、強くありたいと思っている貴女は。
 必要以上に、誰かに依存することを、誰よりも恐れている。

 貴女をこの学校に呼んだのは、起爆剤。
 何かを変えて欲しかった、それも勿論あるけれど。
 一緒に、また、馬鹿やって、支えあい、支えられ。
 恋愛感情ではないけれど、貴女は私にとって、とても大切な人だから・・・・・・。
337 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時06分09秒
「あ、矢口そろそろ帰らなきゃ」
 時計を見て、慌てて矢口は立ち上がった。
「ありがとうございました」
 ぺこり、と平家に向かって頭を下げる矢口に、平家は、手をふる。
「全然大したことしてないから。まぁ残りの夏休み、楽しみ〜な」
 笑顔を見せた矢口の表情は、やっぱり少し、寂しそうで。
 頑張りぃや。
 そんな簡単に言葉に出来ずに、平家は、曖昧に微笑みながら、矢口を見送った。
338 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時07分41秒
〜〜〜7〜〜〜

 そのまま、2週間がたった。
『今、空港にいるの。来て』
 たったそれだけの留守電を残した。
 中澤は、どうやら、南下することに決めたらしく、鳥取砂丘に行って来た、九州に入った、
だの。ちょこちょこまめに連絡は入れてくれるようになった。
『今、奄美大島にいんねんけどな〜〜。一週間くらいここに滞在することになりそうやわ』
 最後の電話は4日前。
 沖縄まで行きたかったけど、知り合いの民宿で、バイトが急に辞めて、人手が足りなくなった
から、しばらくここで、手伝うことにしたわ。
 そんな話を中澤は楽しそうにしていて。
 矢口は、笑いながら相槌を打っていたけども。

 逢いたいよ・・・・・・・・・。
 もう少しで、裕ちゃんは戻ってくる。
 そんなのわかってる。
 でも。
339 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時09分04秒
 きっと、好きになるのに、理由なんていらない。
 理屈で、自分の感情が割り切れるんなら、こんなに困らない。
 自分勝手で、気ままで、ずるい人。
 付き合ってる相手のいいとこや悪いとこ。
 足し算や引き算で、恋愛するわけじゃない。
 
 寂しくなる。
 声を聞きたくなる。
 声を聞いたら、会いたくなる。

 なら、もう、しょうがないじゃん?

 裕子。
 捕まえたいけど、捕まえようとは、もう思わない。
 裕子は裕子らしく生きればいい。
 裕子の見る風景と、矢口の見る風景は、きっと違うんだ。
 淋しいけれど、きっとそれは事実。
 でもね。
 矢口にも、その風景を見せてよ。
 同じ風景を見て、同じように感じれなくても。
 矢口は、裕子と一緒に、その風景を見たいよ。
340 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時09分43秒
 裕子。
 側にいて、なんて言わないよ。
 矢口は矢口らしく生きる。
 裕子が矢口の側にいてくれないなら、矢口が裕子の側にいく。
 追いかける。
 どこに裕子が行こうと、諦めてなんてやらない。

 だから。
 裕子の笑顔を見せて。
 抱きしめて。

 矢口がいなくても、矢口のこと、思い出して欲しいんだ、ホントは・・・・・・・・。
341 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時10分23秒
「矢口っっ!!!」
 空港のロビーに焦りまくった中澤の声が響いた。
 奄美大島空港。
 東京から約2時間のフライトだった。
 意外と近いのか、遠いのか。
 ただ、夕方四時に到着したのが、今は夜の九時。

 閑散とした空港のロビーで。
 矢口は、中澤の胸に飛び込んだ。
 溢れてくる涙。
 何でかなんて、わからない。
 もしかしたら、来てくれないかもって思ってた。
 もしかしたら、もう、他の場所に行っちゃってるかもって思ってた。

 もしかしたら、矢口のこと、好きじゃなくなったかもって・・・・・・・思ってたから・・・・・・。
342 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時10分56秒
「矢口、矢口」
 宥めるように、ぽんぽんと背中を叩いていた中澤。
「ど〜したん?何かあったんか?」
 心配そうな声が、嬉しいけど。
「逢いたかったから、じゃ駄目?」
 涙をぽろぽろこぼしながら。それでも。不安そうな矢口の眼に、中澤は、驚いたように、
眼を見開いて。笑って、優しく、矢口を抱きしめた。

 中澤が働いているという民宿に、着いて。
 どうやら、中澤は、矢口の留守電を聞くやいなや、いきなり、車で、飛び出したらしく。
「すみません、すみません」
 民宿のオーナーにぺこぺこと謝っていたが、
「仕事もほとんど終わってたし、気にするな。中澤にはこっちも助けてもらってるしな」
 オーナーは豪快に笑い飛ばして、中澤は、苦笑していた。

 オーナーには、矢口を、親戚の娘、と紹介して。
 信じたかどうかは定かではないが。
 夜、中澤は矢口を夜の海辺に連れ出した。 
343 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時11分38秒
「家にはなんて言ってきたん?」
 とか。
「金はどうしてん?」
 という中澤のもっともな質問に矢口はぽつり、ぽつりと答えていた。

 紗耶香に協力してもらって、化学研究部の合宿という理由を、家には言ってきたこと。
 お金は夏のバイト代はたいたこと。
 勿論、合宿代、ということで、ちょこっとは親から貰ったりはしたのだが。
 顧問は中澤、ということで、合宿のレジュメまで作って、
『突然ですいません』
 と、紗耶香に、中澤のふりまでして、家に電話を入れてもらったり。

「だから、携帯の連絡先、裕ちゃんになってるんだけど・・・・・親から電話かかってきたら、
うまく誤魔化してくれる?」
 結構、用意周到な矢口の話を聞きながら、中澤は苦笑い。

「ホンマにビックリ箱やな、矢口は」
 満天の星空を珍しそうに眺めている矢口を、後ろから、そっと中澤は抱きしめた。
「ビックリ箱、嫌い?」
 いたずらっぽく笑う矢口に。
 中澤は、笑顔を返した。
「ドキドキする」
 そのまま軽く、矢口のこめかみにキス。
344 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時12分23秒
「綺麗やろ〜」
 中澤は、腕の中に、矢口を閉じ込めたまま、夜空を見上げた。
「うん」
 矢口もそれを見習う。
 波が、砂浜に打ち寄せる音に、視界いっぱいの星。
 そして、まわされた暖かい腕の感覚。

「裕ちゃん、今までいろんなところ行ったんだよね?」
「うん」
「いろんな人に出会って、いっぱい綺麗な景色とかみたんだよね、きっと」
「うん」
 簡潔に、かわされる言葉。
 矢口は、くるり、と身体の向きを反転させた。
 そして、そのまま中澤を見上げる。
345 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時13分08秒
「矢口、本気だから」
 何も言わずに、中澤は、矢口を見つめた。
「矢口は、どんな綺麗なとこ行っても、どんなに楽しくても、どんなに美味しいものとか
食べたとしても、裕ちゃんがいなければ、幸せじゃないんだ」
「・・・・・・・・・・」
「教室だって、裕ちゃんの部屋だって。裕ちゃんがいれば、矢口にとって、それは最高の
景色になるんだよ」
 無言の中澤。
「だから、思うんだ。
 今日見たこの景色が、裕ちゃんにとって、一番綺麗な景色じゃなくても、矢口と一緒に
見たってことで、裕ちゃんにとって、最高の景色になればいいなって・・・・・・・」
 何だか自分が凄く恥ずかしいことを言ってるような気がして、語尾がだんだん小さくなっていく。
 そんな矢口を見て、中澤は小さく笑った。

「うちは、付き合うのに、あんまりいい相手ちゃうって前、言ったやん?」
 浜辺に並んで腰をおろしながら、中澤が、ふっと口を開いた。
「うん」
 矢口は頷いた。
 付き合い始めた時。
 忘れるわけがない。
 あの時の情景、いつだって、裕子の言ったセリフ、一言一句、全部全部覚えてる。
346 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時14分21秒
「うちでいいん?」
 ちょっぴり自信なさげな中澤の瞳が、矢口の瞳を覗き込んできた。
「寂しい思い、させるで?
 今回みたいに、一杯泣かせるで?」
「・・・・・・・そんなこと、自信満々に言わないでよ・・・・・・・・・・」
 ため息まじりに、矢口は、そっと、中澤の唇に、キスした。
「矢口は、それでも構わないよ・・・・・・」
 簡単に、こんなセリフ、言ってるわけじゃない。
 裕子がいない間、一杯考えた。
 でも、矢口は裕子が好きなんだ。
 そんなの、理屈じゃなくて。
 だって、裕子が側にいたら、こんなにもドキドキして、安心して。
 悔しいくらい、側にいたいって思う。
 だから・・・・・・・。
347 名前:☆☆The place to come back☆☆ 投稿日:2002年05月07日(火)00時15分08秒
「アホやなぁ」
 うちより、いい奴一杯おるのに。
 今度は、中澤がため息まじりに返すと。
「裕子より、いい人はいっぱいいるかも知れないけど、矢口は、裕子が好きだから、
それでいいんだよ」
 照れくさそうに、矢口は、中澤の胸に頭をこすりつけた。
「・・・・・・・好きやで」
 不意に、中澤が呟いた。
「え?」
 思わず聞き返した矢口に、中澤も、照れくさそうに髪の毛をかきあげた。
「好きやって言ったんや」
 それでも真っ直ぐな、言葉に、真っ直ぐな、中澤の眼の光。
「裕ちゃん・・・・・・」
「矢口の、本気、受け取ったから。うちも、本気で返すし。
 あんまり泣かさんように、気、つけるから」

 そのまま、中澤は、矢口に口付ける。
「約束のキス」
 にっこり笑った中澤があまりにも綺麗で、可愛くて。
 矢口は真っ赤になって、俯いたのだったーーーーーーー。
348 名前:つかさ 投稿日:2002年05月07日(火)00時28分36秒
>>320さん
 かっこいいね〜さんを書きたかったんですが・・・・自分で読み返すと、確かに
 矢口、可愛い・・・・・・(w
>>321さん
 甘え倒す矢口・・・やっぱりそうですね〜。それを受け止めるね〜さんは、どんな
 風に読まれてるのかも気になる・・・・。
>>読んでる人さん
 きっぱり矢口次第です。うちのね〜さん素直じゃないもんで・・・・今日あげた
 ラストあたりで変化は・・・・・あるのかな?(w
>>323さん
 一気読みお疲れ様です^^これからも楽しんでくれれば嬉しいです^^
>>やぐちゅー中毒者セーラムさん
 どんどん溶けちゃってください。結構セーラムさんのレス、タイミングいいんですよね。
 話が進まない時に、レスきてて「頑張るぞ」とか思ってる単純な作者です(w
 ってか、今日の大量更新はセーラムさんのおかげだったりします(ぺこり)
>>326さん
 プロなんて、とんでもないですっ(汗)でも、誉められるのは好き(ww
 昨日のハロモニ、出かけててみれなかった・・・(TT)
 これからも、楽しんでいただけるよう、日々精進します^^
349 名前:つかさ 投稿日:2002年05月07日(火)00時41分58秒
さ〜て、何か、最初に複線張ってたのをまったく無視して、矢口、走ってますね〜。
いや、走ってくれてありがとうってな感じですが・・・・・(w

さて、一応これで当初予定してた前編終わりです。
そして、後編はま〜〜ったくの白紙の状態でして(汗)
構想はできてますっ。
ってか、ラストのシーンが書きたいがために考え始めたこの話。
むやみやったら長くなってるのはどうして・・・・・。
後藤なんて、名前すらでてきてやしね〜(汗)

とりあえず、きりよく終わってると思う(作者だけ? w)ので、一ヶ月後くらいから
後編始めたいな、と。すんません、ごっつ忙しいんです^^;;;
ただ、さすがに一ヶ月とかあくのはどうかな〜と思うんで、更新不定期で、書き上げた
のをあげていくのがいいのか、ある程度まとめて書いて連日更新した方がいいのかは、
ちょっとまだ、迷い中です。

レスくれた方々、ありがとうございました。
結構レス嬉しくて、書くスピードあがったりするんで・・・・・(w
頑張って書くんで、よろしくお願いします(ぺこり)
350 名前:読んでる人 投稿日:2002年05月07日(火)12時46分30秒
カーッ、矢口カワイイな〜。
これで中澤の矢口に対する気持ちが本気にならなかったらオカシイ!(w

名作集で、更新1ヶ月待ちなんて結構ザラだし、マターリと待ってます。
351 名前:ちぃ 投稿日:2002年05月07日(火)23時18分55秒
はじめまして。(自分からはという意味で)

つかささんの話し好きです。
レスをもらう前から読ませてもらってました。

マジレスありがたかったです。
書いてると制限なしに自由に話しを展開させたくなるんですよね。

では続き楽しみにしときます。
352 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月11日(土)01時21分07秒
初めてカキコします。
毎回の更新、楽しみに読ませていただいてました。
つかささんの書くやぐちゅー、ホントに大好きです。
特に、今回の裕ちゃん、個人的にはすげー大ヒット!!ですよ。

一ヶ月後の更新、楽しみに待ってますので、
ガンバテくださいね。

353 名前:207 投稿日:2002年05月11日(土)23時42分19秒
自分のところの更新に手一杯で、なかなか来させてもらうことが出来ませんでした…。
いや〜、とってもいい雰囲気になっていますね〜。
一途な矢口さん、すごくかわいい!
裕ちゃん、矢口さんに本気、見せたってください!
後編も、楽しみに待っています。
354 名前:つかさ 投稿日:2002年06月04日(火)01時00分58秒
ってことで、そろそろ一ヶ月たつんですが・・・・・
すいません、全然ストックが足りないってことで、
目指せ、姐さんの誕生日更新っ!!!

スレの残り容量を考えたら、短編あげてもいいかな〜とも思ってますが。
最近のハロモニで、がんがんやられまくってます(w
355 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月04日(火)23時36分27秒
短編でも何でも、「つかささん」の作品、読みたいです。
この一ヶ月、首を長くして待っていました。
是非、お早いうちにお願いします。
356 名前:五月雨 投稿日:2002年06月05日(水)00時16分40秒
レスを頂いたのできました♪

ストックがなくなると辛いのはわかります(しみじみ)
でも、うちもなんとか再開し始めたので頑張って下さい!!
357 名前:352 投稿日:2002年06月05日(水)01時26分30秒
すでに、つかささん作品の禁断症状に陥ってます。
短編でもいいっス、ゼヒゼヒお願いします!!
358 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月05日(水)12時02分45秒
短編でもなんでもいいのでお願いします。
つかささんの作品不足で死にそうです(w
いつか気が向いたらでいいので過去編みちゅーなんかは・・・やぐちゅー以外はダメですか?(w

是非是非短編お願いします!!
やぐちゅーでお腹一杯に満たしてください。(w
359 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月05日(水)12時05分04秒
すいません・・・あげてしまいました・・・ごめんなさい。m(._.)m
360 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年06月06日(木)01時37分41秒
つかささんのやぐちゅー読みたいなぁ
禁断症状が・・
361 名前:つかさ 投稿日:2002年06月07日(金)23時31分27秒
え〜と、とりあえず・・・・・・最初にあげていた「別格」「変化」の過去話、
あげます。
ど〜も今、甘いのが書けなくなってるみたいで・・・・・(w
どうして、最近のハロモニを見ててこんな話がすらすらと書けるのかは謎ですが(汗)

甘いやぐちゅー期待してた方ごめんなさい。
痛い系です(汗)
362 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月07日(金)23時33分35秒
『うち、娘。やめようと思うんや』
 矢口はきっと、その日のことを一生忘れない。

 何でもない日のはずだった。
 矢口が、裕子の新曲の話を出すまでは。
『カップリング、裕子も作詞、してるんだって〜?』
 仕事終わりの楽屋で、二人っきり。
 何気ない会話のはずだった。

 でも、急に裕子が真剣な眼差しを向けてきたんだ。

 何を言われたのか、わからなかった。
 何て答えたのか、それすらわからないぐらい・・・・・・・。

 裕子は矢口から目をそらさなかった。
 怖いくらいに、真剣な眼差しに。
 裕子の本気が伝わってきた。
363 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月07日(金)23時34分05秒
『・・・・・・・・何で?』
 しぼり出すようにして、やっと声がでた。
『・・・・・・・・ごめん』
 裕子は、何も言わなかった。
『それだけじゃ、納得できるはずがないだろっっ?!』
『矢口・・・・・・・』
 いつの間にかあふれ出た涙に。
 裕子は、いつものように、抱きしめてはくれなかった。

『ずっと一緒だって言ったじゃんっっ!!』
 娘。辞めないって。
 矢口の傍にいてくれるって。
 矢口だけを・・・・・・・・・・愛してるって。
『嘘つきっっ!!』
 裕子は一瞬だけ、辛そうに顔をゆがめた。
『・・・・・・・・・・ごめん』
 それでも、裕子は何も言わなかった。
『何で・・・・・・・だよ・・・・・・・・、矢口が悪いの?ごめんだけじゃ、わかんないよ・・・・・・・』
『矢口が悪いわけやない。うちが、決めたんや』
 潔い、裕子の言葉に。
 先に目をそらしたのは、矢口の方だった。
364 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月07日(金)23時34分35秒
『もう・・・・・・・決めたんだ?』
 俯いて、自嘲めいた笑みを浮かべる矢口。
 迷ってる、とか。
 どうしよう、とか。
 そんなレベルの問題じゃなくて。
 決定事項?
 報告するだけ、なんだ?
 頭の中を、言葉がぐるぐると渦巻いて。
 でも、何も言えなくて。
『裕子にとって、矢口ってその程度の存在だったんだ』
 顔を上げたとき、矢口は、知らず知らずのうちに、情けない笑顔を浮かべていた。
 今度は裕子がぎゅっと、目を閉じた。
 何かに耐えるみたいに、拳をぎゅっと握りしめて。

『うちに、何か言う資格はないやろ』
 呟くように、零れ落ちた裕子の言葉。
『・・・・・・自己完結?』
 裕子を傷つけるような言葉しか思い浮かばなかった。
『・・・・・・・最低だよ、裕子・・・・・・・』
『かもな』
 裕子はやっと目をあけた。
 矢口の表情をみて、苦笑する。
『矢口は、傍におってくれる人がええんやろ?』
 ・・・・・・・なんだよ、それ。
『何も裕子、わかってないじゃん・・・・・・・』
365 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月07日(金)23時35分07秒
 しばらくの沈黙のあと。
『なら、矢口にうちの何がわかる?』
 挑むような裕子の瞳が、矢口を射ぬいた。
『何もわかってないのは、矢口の方やろ』
 ふっと、裕子は淋しげな笑みを浮かべた。
『わかって欲しいとは思わんけどな』
 わからせてみろよっ!!!
 その声は、裕子の笑みを見た瞬間に、なぜか、消えた・・・・・・・。

 何も言えずに、凍りついたように動けない矢口の頭を裕子はなでようとして・・・・・・、
腕を止めた。
『もぉ、えぇやろ?終わりにしよ?』
『・・・・・・それも、裕子の中では決定事項なのかよ?』
『・・・・・・・・・・』
 黙って、何も言わずに、裕子は頷いた。

『・・・・・・・裕子のしたいようにすればいい』
 本当に、心が痛いとき・・・・・・・涙すらでないんだ。

 大切な仲間の卒業を誰よりも早く知り。
 大好きな人の心をなくしたんだ、と思ったのは。
 矢口が18歳の誕生日を迎えて一ヶ月もしないうちだったーーーーーーー。
366 名前:つかさ 投稿日:2002年06月07日(金)23時44分08秒
>>読んでる人さん
 すいません、続きの方じゃなく・・・・過去編に走っちゃいました(汗)
 今は、こっちの方が書きやすいってことで。

>>ちぃさん
 レスありがとうございます、すげ〜嬉しいです♪
 パラレルって難しいな〜と思いつつ。ちぃさんの作品も楽しみにしてます^^

>>352さん
 果たしてこの話で、楽しんでいただけるかは・・・・・非常に不安です(苦笑)
 書いてて、すごく楽しいんですが・・・・←鬼のような発言だ、我ながら(w
 甘いやぐちゅーはもうしばらくお待ちください(ぺこり)

>>207さん
 読者に戻られるって読んで・・・・次は自分が、感動させたんねん、とか思いつつ
 久々にあげた作品こんなんで・・・・・甘いやぐちゅーは頼みますっ(笑
367 名前:つかさ 投稿日:2002年06月07日(金)23時53分47秒
>>355さん
 はい、頑張りますっ。期待に添えるかは・・・・すいません、ごめんなさい(汗)

>>五月雨さん
 とりあえず、復活しましたっ。再開ってとこが言えないのが悲しいけど・・・(w
 お互い、頑張りましょう♪

>>358さん
 みちゅー・・・・基本的には甘いやぐちゅー好きで、あんまり他は考えてなかったん
 ですが。思いつけばってことで・・・(w

>>やぐちゅー中毒者セーラムさん
 森板では、リクエストに答えてくれてありがとうございました。
 とりあえず、復活ですっ。あんまり長くならない予定ですが・・・・・(w

たくさんのレス、ありがとうございました。
再開ってことではないですが、とりあえず、暗くてどうしようもない話だと考えて
いたのがやっと、何とか動くメドがたったので・・・・復活です。
今後とも、よろしくお願いします(ぺこり)
368 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月08日(土)00時14分09秒
過去編バンザイ〜!
痛いやぐちゅーでもやぐちゅーであれば大好きです。
369 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月08日(土)00時39分29秒
〜〜〜中澤裕子〜〜〜

 矢口を守りたい。
 娘。を守りたい。
 どっちがうちにとって、大事なんやろ?
 そんなん、わかりっこない。
 わかって欲しいなんて、思わない。
 自分ですら、自分の気持ち、わからんのにーーーーー。
 わかって欲しい、なんてのは傲慢以外の何者でもない。

 全部を受け止めて。
 全部をなかったことにして。
 ・・・・・・一つだけ、救いなのは、うちが、娘。やった事実は消えないってことや。
 想い出は・・・・・・全部、捨てていこう。
 あの娘が、うちの傍にいてくれた。
 まだ・・・・・・・・痛いねん。
 ごっつ、痛いねん。

 でも、自分が決めたことや。
『裕子のしたいようにすればいい』
 うちは・・・・・・・・したいようにする。
370 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月08日(土)00時40分18秒
 いつになっても、あんたは迷ってるうちの心を後押ししてくれる。
 でも・・・・・・・傷つけたな。
 ごめんな。
 うちにできる精一杯のことを、あんたに返すよ。
 そんなん、いらんって言われそうやけどな・・・・・・・・。

 なぁ、矢口。
 あんたが好きなんや。
 約束破ってごめんな・・・・・・・・。
371 名前:つかさ 投稿日:2002年06月08日(土)00時44分40秒
>>368さん
 即レスありがとうございます。痛いやぐちゅーでもいいと言われると、
 突っ走りますよ・・・調子にのるなって話ですね(笑)

きりよく、今日は、ここまでの更新です。
372 名前:352 投稿日:2002年06月08日(土)01時45分16秒
やった、更新されてる!
つかささんのやぐちゅーなら、
痛いのでも全然ダイジョブですよ。
どんどん調子にのってください!(w
373 名前:207 投稿日:2002年06月08日(土)02時33分46秒
復活、ありがとうございます!
痛いやぐちゅーでも、あくまでも過去のお話ですので、安心して読めますね(w


感動部門は、つかささんにお任せしましたよ!
自分は、中途半端なコメディ部門(?)担当で、しかも今は、楽隠居の身ですので…(w

374 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月08日(土)02時55分28秒
過去編・・・書いて欲しかった一品です。
つかさんの作品大好きです。
この過去編は・・・別れ〜別格までですよね・・・
ってことは片思い〜両思い(付き合うまで)・・・で過去の過去編いつかかいてくれるのかな?(w
っちょっと期待
でも・・・学園ものの後編もよみたいし(w
つかささん頑張ってください。
375 名前:読んでる人 投稿日:2002年06月08日(土)10時49分42秒
やっと続きが読める〜!
と、思ったら、別作品の過去編ですね。
でも、面白そうだし、痛いの好きなんで、この作品も期待してます。
376 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)00時15分54秒
 どんどん、裕ちゃんの卒業が現実のものとなってくる。
 あれから、矢口は裕ちゃんと、プライベートでほとんどまともに会話らしい会話は交わしていない。
 最初、いぶかしげだったメンバーも。
 裕ちゃんの卒業の話を聞かされて。
 納得したのかしてないのか。

『30歳までに、やりたいことをやりたいんや』
『ソロで自分がどこまでできるか試してみたい』
 メンバーの前で、堂々と言い切った裕子。
 でも、矢口の眼を一度も見ようとしなかった。

 アホ裕子。
 矢口をなめるんじゃね〜ぞ?
 どれだけ・・・・・・矢口が裕子のこと、見て来たと思ってるんだ。
 眠れてないだろ?
 ・・・・・・・・それは、矢口も同じだけどさ・・・・・・・。
377 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)00時16分24秒
 そして、3月7日。
「裕子、いる?」
 楽屋。
 『中澤裕子様』
 一人の名前が、やけに、物珍しくて、何だか違和感。
「・・・・・・矢口か」
 少し、驚いたような様子の裕子。
「痩せたんじゃない?」
「矢口もな」
 短いやりとり。
 緊張しているのか、裕子の表情は、硬い。

「やっぱり、一人の楽屋ってい〜な〜〜。のんびりできるわ」
 何か言いたくて、何も言えずに。
 何で来たんや?
 その問いを発することは簡単なはずなのに、裕子はそのセリフは言わない。
 ふっと、疲れたような笑顔で微笑まれて。
 気づかわれてるって思う。
378 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)00時17分03秒
「・・・・・・・裕ちゃん」
「もう、うち、ごめんって謝らんで?」
 何だか、涙がこぼれそうで。
 でも、裕子のきっぱりとした声が矢口の涙を止めた。
「大人には、大人の世界があるんや。汚い世界やなってたまに思うけど。
 ・・・・・・あんたらは、まだ、そんな世界、知らんでええ。
 だから・・・・・ちゃんと、笑って見送ってな」
 何だよ、それ。

「卒業の本当の理由は・・・・・・・?」
「30歳までに、やりたいことをやりたい。ソロで自分がどこまでできるか試してみたい」
 憎らしいほど、落ち着いた裕子の声。
 そして、頑固な瞳に。
 これ以上、何を聞いても、言っても無駄だってわかった。

「じゃあ、矢口と裕子の関係を終わらせる理由は・・・・・・?矢口、まだ聞いてないよ・・・・・・」
 動揺したように、裕子の瞳が、揺れた。
「うちのしたいようにすればいいやなかったんか?」
「納得できるはず、ないだろっっ!!!」
 涙を押さえることができなかった。
 かっこ悪い。
 そんな風に思いながら。
 でも、止まらない。
 止まらない、矢口の、想い・・・・・・・・・。
379 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)00時17分41秒
「矢口は、まだ裕子のことがっっ!!」
 最後まで、言い終える前に。
 抱きしめられていた。
 華奢な身体。
 細い腕。
 でも、強い力で・・・・・・。

「忘れてええで」
 耳元に、ぽつん、と囁くように裕子は言葉を落とした。
「うちは・・・・・・・いなくなるんや。もう、娘。やなくなる」
「それが何だよっ?!」
「時間とか、距離とか。矢口が思ってるより、大きいもんやで」
「それが何だよっ?!」

 馬鹿みたいだ。
 わかっていても、止められなかった。
「なぁ矢口・・・・・・・冗談半分みたいな形で付き合いだして。
 楽しかったで。
 でもな、忘れたらあかんやろ?
 うちら、女同士やん?」
「何だよ、それ・・・・・・・」
 涙が、止まらない。
380 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)00時18分26秒
 矢口を、矢口にしてくれたのは、裕子なんだよ?
 いつだって、見ててくれた。
 いつだって、裕子がいたから笑顔になれた。
『好きやで〜〜』
 矢口が何言っても、何しても、裕子はそう言って、抱きついてきた。
 無条件の、信じられる、愛情。
 誰よりも、誰よりも、大切な人。

「・・・・・・・もう、ガキのお守りはまっぴらやっちゅ〜ねん」
 不意に吐き出された裕子のセリフに、矢口の身体がびくっと強張った。
 でも、裕子の腕の力は変わらない。
「言ってることと、やってること、違うじゃんかよ・・・・・・」

 寂しがり屋で、不器用で。
 誰よりも、プレッシャーに弱くて、誰よりも、負けず嫌いな人。
381 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)00時19分03秒
「・・・・・・・・もう、遊びは、終わりや」
 ため息と共に吐き出されたセリフが、決別の言葉。
「納得、できるかよ・・・・・・・」
 精一杯の反抗。
 それすらも。
「なら、納得せんでええ。うちは、もう、納得してるから」
 冷たいセリフに断ち切られる。

 抱きしめられていた腕が、ゆっくりと離れていく。
「・・・・・・・裕・・・・ちゃんっ」
 つかもうと伸ばした矢口の腕。
「あかん」
 拒絶の言葉に。
 呆然と立ち尽くす矢口。

「時間や」
 短くぽつりと裕子は呟いた。
 裕子が・・・・・・どんな顔、してるのかなんて、わからない。
 矢口が・・・・・・どんな顔、してるのかなんて、わからない。
382 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)00時19分45秒
「裕子は・・・・・・・・娘。を捨てて、矢口を捨てて、それで平気なのかよっっ」
 楽屋から出ようとする裕子。
 矢口をちらっと振り向いた。
「平気や」
 浮かんだ表情は・・・・・・・信じたくなかったけど、微笑み。
 いつも、メンバーを見るのと変わらない、柔らかい微笑み。
「・・・・・・・何でだよ・・・・・・・・」
 そのまま、裕子は振り返りもせず、部屋をでていった。

 信じられなくて。
 信じたくなくて。
 裕子が、矢口の傍からいなくなる。
「・・・・・・何で・・・・・・だよ・・・・・・・」
『ガキのお守りはまっぴら』
『遊びは、終わり』
『平気や』
 裕子のセリフがぐるぐると頭の中を駆け巡る。

 矢口は、うずくまるようにしゃがみこんだ。
 もう、何も・・・・・・・わからない。
 もう、何も・・・・・・・信じたくない・・・・・・・・。
383 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)00時20分50秒
〜〜〜中澤裕子〜〜〜

 捨てるんやない。
 守りたい。
 うちは、一人でも平気や。

 なぁ矢口。
 早くうちのこと、忘れてな。

 ・・・・・・矢口かて、平気やんな?
 メンバーいてるもんな?
 もう・・・・・・大丈夫やんな・・・・・・。
384 名前:つかさ 投稿日:2002年06月09日(日)00時26分59秒
>>352さん
 とりあえず、痛い系はこれで終わり・・・・・になるのかな。
 内容的には、ブラックっす〜〜。
 ラストで救いを・・・・・とは思いつつどうなるかは(汗)

>>207さん
 確かに、過去の話だと思えば・・・・・ってのはありますね(笑)
 ってか、この話で感動はあるのか・・・・・ふと疑問に。
 ますます痛くなってるし(汗)

>>374さん
 過去編の過去編は・・・・・まったく考えてなかったです。
 ん〜〜そこまで引っ張る気はあんまり・・・・とりあえず、後編の方が先に来る
 ことは確実です(w)

>>読んでる人さん
 ノリと勢いで突っ走ってます。楽しんでいただければ・・・・幸いです〜♪
385 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)23時19分31秒
 裕ちゃんの卒業の記者会見の日から。
 矢口は、ぼろぼろだった。
 何でもないようなフリをして。
 笑って、歌って、踊ってた。
 時々、気づかわれるような視線を裕子から、メンバーから感じてはいたけれど。

 そんな中、事務所から、呼び出された。
 裕ちゃんの卒業で穴があく、木曜日のオールナイトニッポンのDJへの依頼。
 何で矢口が?

 人気面や・・・・・・裕ちゃんの後を引き継いでって考えるなら、圭織やごっつぁん、なっち・・・・・。
 チャンスだって思う気持ちと。
 もう、どうでもいいって気持ちと。
『考えさせてください』
 それだけが、精一杯だった。
386 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)23時20分09秒
 裕ちゃんの卒業ライブに向けて、ダンスレッスンも始まっていた。
 これで、もう、裕ちゃんは、娘。じゃなくなる。
 いろんな思いがこみあげて。
 矢口は、練習に打ち込めないでいた。

 居残りダンスレッスンが日課のようになって。
「・・・・・・・・疲れたな〜〜」
 誰もいない、ダンスフロアで、矢口は大の字に寝転がっていた。
 白い天井がやけに、高く感じて。

「矢口?」
 名前を呼ばれて、矢口は、身体を起こした。
「・・・・・・・・やっぱり、まだやってたか」
 部屋に入ってきたのは・・・・・・圭ちゃん、だった。
「・・・・・・・・・・」
 何だ、圭ちゃんか。
 さすがにそんなセリフは吐かなかったものの。
 矢口はだるそうに再び、フロアに寝転がった。
387 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)23時20分51秒
 保田は矢口の横に腰を下ろして、じっと矢口を見つめた。
「ねぇ矢口・・・・・・。裕ちゃんの後、引き継いで、オールナイトのDJやるんだって?」
「・・・・・・・・・・」
 目をつぶったまま、何も答えない矢口。
 保田は、ふっとため息をつくと、ゆっくりを口を開く。
「裕ちゃんが、どうしても矢口でってねじこんだらしいよ」
「・・・・・・・え?」
 やっと、矢口が目を開けた。
「矢口やったら、絶対にできるからってね」

 ・・・・・・・・何で、そんなこと。
「・・・・・・・そんなの、矢口には、関係ないじゃん」
 素直になれない、気持ち。
 ・・・・・・・ありがとう、なんて、そんなの絶対言えっこないし。
「娘。から、誰かを脱退させるって話、事務所から出たんだって」
 保田は、矢口から視線を外した。
 淡々とした口調で話しつづける。
「話題作りの一貫だって・・・・・・・裕ちゃんが承諾しなかったら、他の誰かがやめることに
なってたんだ」
「何それ?」
 矢口は思わず、むくりと起き上がった。
「事務所側としては、裕ちゃんが最適だってのは思ってたみたいだけど・・・・・・」
「何で圭ちゃんがそんなこと、知ってるの?」
 きつい矢口の眼差しに、保田はひるむことはなかった。
388 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)23時21分40秒
「裕ちゃんの卒業に納得できてないのは、矢口だけじゃないよ?
 調べたんだ。
 今までの仕事のコネとか、フル動員させて。
 ・・・・・・・昨日、裕ちゃんと話もしたよ・・・・・・」

『何やねん、急にこんなとこ呼び出して〜。もしかして、愛の告白か?あかんで〜、
裕ちゃん矢口一筋やねんから』
 ちゃかした口調に、いつもより、饒舌なしゃべり。
 きっと、呼び出した用件なんてわかってるはずなのに。
 黙りこんでしまった保田を見て、中澤はふっと笑った。
『もうすぐ、春やねんな』
 窓の外を眺める中澤の表情に、憂いはまったくなく・・・・・・。
『裕ちゃんはこれで良かったの?』
『しゃ〜ないやん?』
 妙にさっぱりとした口調に、迷い、とか葛藤は微塵も感じられなかった。
『事務所にはさからえんやろ。つんくさんとか動いてくれて、ハロプロには残れるらしいし』
389 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)23時23分11秒
『・・・・・・何で、話してくれなかったの?』
 保田の声は、震えていた。
『話して、どうにかなったんか?』
 冷たい、と感じるくらいの中澤の声に、保田は何も言えずに俯く。
『事務所に対して妙な不信感植え付けるのもまずいやろ』
 苦笑混じりの声は・・・・・・やっぱり、リーダーだな、と思わせるもので。
『娘。頼むで』
 ぽんぽん、と頭を軽く叩かれた。
『・・・・・・・矢口のこともな。支えてやってや』

 それってどういう・・・・・?
 保田が顔を上げると。
 中澤は、視線をそらした。
『うちが辞める理由・・・・・矢口にだけは話さんといて』
 もう、これ以上、泣かせたくないんや。
『裕ちゃんっ!!』
『うち、弱い人間やから・・・・・・・・・けど、矢口のことだけは絶対に守りたいから』
 それ以上は何も言わずに中澤は部屋をでていった。
390 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月09日(日)23時23分55秒
「・・・・・・・・・」
 矢口は何も言わなかった。
 いや、言えなかった。
「矢口にだけは話すなって言われたから、矢口にだけ話すことにしたんだ」
 ニヤっと笑って、安田は軽く矢口にウィンクする。
 圭ちゃん・・・・・それって確信犯。
 泣き笑いの表情で、矢口はそれにこたえる。
「一番辛いのは、裕ちゃんだよ。矢口、それ忘れちゃ駄目だからね」
 矢口は黙って頷いた。
391 名前:つかさ 投稿日:2002年06月09日(日)23時27分47秒
今日の更新はここまで。
明日の晩で終わるかな??
まぁなんとか、スレッド容量内で終わりそうでほっとしてます。
プロットたてずに、頭で考えた文章を打ってるので、話のつじつまに不安は
感じつつ(汗)
392 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月10日(月)01時09分12秒
さすが「つかささん」。
痛い話の中にも、ちゃんと裕ちゃんのヤグチへの愛情がたくさん詰まっていますね。
次の更新、楽しみです。
393 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月10日(月)01時46分38秒
フィクションとは分かってるけど、ちょっとリアルで泣けた・・・
394 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月10日(月)23時11分11秒
 それから。
 やっぱり、矢口と中澤の仲はぎくしゃくしたままだった。
 このままじゃいけない、とお互い思ってるのはわかりつつ。
『や〜ぐ〜ち〜〜、どしたん?』
『・・・・・・何でもない』
 裕子の目が見れないのは、矢口の方。
 困ったような表情で、髪の毛をかきあげる裕子の仕草を見ることが多くなったような気がする。

 でも。
 ・・・・・・・矢口、何も裕子のこと、わかってなかった。
『なら、矢口にうちの何がわかる?何もわかってないのは矢口の方やろ』
 正月過ぎた頃。
 裕子は、よく一人でぼんやりと考え事、してた。
 ハードスケジュールの疲れがとれてないのか、とか。
 一番近くで、裕子のことを見てたのは、矢口のはずなのに。
 裕子の悩みに一番真っ先に気付かなきゃいけなかったはずなのに。

 裕子の苦しみを、わかりたかったよ・・・・・・・・・。
 全部がもう、こんな形で、決定事項になっちゃう前に。
395 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月10日(月)23時11分49秒
「矢口?」
 急に肩に手をおかれて。
 ぼんやりと考え事をしていた矢口は、びくっと肩を震わせた。

 久しぶりに、裕子の部屋に来ていた。
『ちょっと、話、しようや?』
 いつものようにダンスレッスンが終わった後、裕子に声をかけられた。
『うちの家でい〜やんな?』
『・・・・・・・・・・・・』
 黙りこくったままの矢口に、いつものように話し掛けてくる裕子。
『裕ちゃん、悪さしちゃ駄目だよ〜?』
 気まずい雰囲気に、なっちのフォロー。
『誰がするかっちゅ〜ねん〜〜』
『日ごろの行いでしょ〜』
 圭ちゃんの声に、メンバーが笑って。
 でも、矢口は、ずっと俯いたままだった。
 困ったように、裕子が笑ったのが、雰囲気でわかったけど。
『ほな、いこか』
 ぎゅっと、手を握り締められて。
 嬉しかったけど・・・・・・・やっぱり何も言えなくて。

「や〜ぐ〜ち?」
 裕子の家につくまで、矢口は結局、ずっと何もしゃべれなかった。
 裕子はいろいろしゃべりかけてきたけど・・・・・・最後は何も言わずに、黙って矢口の手を
握り締めてた。
「・・・・・・・・なぁ、何かしゃべって〜や」
396 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月10日(月)23時13分21秒
 ソファーに座ってた矢口の前に、裕子はしゃがみこんで。
 そっと、頬に手を添えられて。
 下から見上げてくる、裕子の眼・・・・・・・。
 ・・・・・・・何だか、こんな風に、眼を合わすことも久しぶりで。
「やっと、眼、合わせてくれた」
 嬉しそうに、裕子が笑った。

「・・・・・・・・・ぅ・・・・・・・こ」
「ん?」
「ゆう・・・・・・・こぉ」
 もう、駄目だった。
「裕子、ゆうこ・・・・・・裕ちゃん・・・・・・・」
 裕子に抱きついた。
 涙が、止まらない。
 わんわん、泣いた。
 こんなに泣いたのは、子どもの時以来だってくらい、ガキのように、泣いていた。
 裕子は、ずっと、矢口を抱きしめていてくれた。
397 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月10日(月)23時14分04秒
「ちょっとは、落ち着いたか?」
「ん・・・・・・・ひっく、ぐすっ」
 冷やしたタオルと、あったかい紅茶。
 まだ、全然涙は止まらないけど。
 裕子は、そっと、矢口の隣に腰を下ろした。
「裕ちゃん・・・・・・・ごめんね」
 タオルで顔を思わず隠した。
 きっと矢口、今、すごくひどい顔してる。
「何でやねん」
「ごめん・・・・・・・・ごめんね・・・・・・ごめんなさい」
 何も気付いてあげれなくて、ごめんなさい。
 ひどいこと言っちゃってごめんなさい。
 裕ちゃんの優しさにずっと甘えてて・・・・・・ごめんなさい。
 切れ切れに呟くと。

「アホか」
 裕ちゃんは、もう一度、矢口をぎゅっと抱きしめてくれた。
「裕ちゃんの元気の素は・・・・・・矢口やねんで?」
 裕子はそっと、タオルを矢口の手からとりあげると。
 真っ直ぐな眼で矢口を見つめた。
「だから、矢口、笑って見送って。そしたら、うち、頑張れるから」
「アホ・・・・・・アホゆうこぉ・・・・・・」
 何でそんなこと言うんだよぉ。
 矢口は、裕子に抱きついた。
 甘い、匂い。
 柔らかい、身体。
 ・・・・・・・・・やっぱり、大好き。
 忘れることなんてできない。
398 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月10日(月)23時14分47秒
「矢口、やっぱり、裕子のこと好きなんだよぉ」
 嗚咽まじりの矢口の告白。
 裕子の腕が強張るのがわかった。
「矢口・・・・・・・・うちも、矢口のこと好きやで」
 なら、別れる必要なんてないじゃんよっっ!!!
 涙でぐちゃぐちゃになった顔を矢口はあげる。
 でも、裕子は、首を縦には振らなかった。
「矢口は、うちの中で別格、やねん」
 恋人、とか。
 そんなものを超越した存在。
「泣かせたくなかったのに・・・・・・泣かせてもうたな」
「・・・・・・裕ちゃんがいなくなるのに・・・・・・矢口が泣かないはずがないだろ・・・・・・」
「うん」
 ちょっと、嬉しそうに、裕子は頷いた。

「なぁ矢口。
 もう、うちは娘。やなくなるけど・・・・・・、うちのこと、ちゃんと見ててな?」
「当たり前じゃん。
 いつになっても、どこにいっても、矢口は裕ちゃんのものだから・・・・・覚えといてね?」

 その日の晩にした約束を、けして二人は忘れないだろう。
399 名前:☆☆決別☆☆ 投稿日:2002年06月10日(月)23時15分34秒
『矢口は・・・・・・・・中澤裕子に出会えて本当に良かった』

 その言葉に見送られ。
 ーーーーーーー2001年、4月15日。中澤裕子、モーニング娘。卒業ーーーーーーー。
400 名前:つかさ 投稿日:2002年06月10日(月)23時21分05秒
あ、end付け忘れた(汗)
ってことで、終了っす。

>>392さん
 愛情たっぷりです。でも、矢口、いっぱい泣かせちゃったな〜〜(苦笑)

>>393さん
 一応、リアルになるようには心がけてたんで・・・・嬉しいです。

ってことで、きりよく、次は新スレッドたてようかな〜と。
次こそは☆☆The place to come back☆☆の後編、いきます。
週末くらいを予定。しかし、予定は未定(汗)
お付き合い、ありがとうございました。
401 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月13日(木)03時12分40秒
卒業・・・なんだか今でも痛い。(涙
裕ちゃんにとって卒業はよかったと今は思えるんですけどね・・・でも・・・
卒業って言葉は・・・
頑張れやぐちゅー!
402 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月16日(日)19時45分10秒
もう・・・やっぱりつかささんの小説凄すぎ!!

Converted by dat2html.pl 1.0