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涙をふいて

1 名前:Tommy 投稿日:2002年04月02日(火)14時22分19秒
泣ける作品目指してます。

6作目になりますが、このHNでは処女作です。
2 名前:Tommy 投稿日:2002年04月02日(火)14時23分03秒

下書きしてるうちに、安部なつみさんが出演した、
最後の夏休みというドラマの内容に似てきてしまいました。
でも決してパクりではありません。
信じてください。

うわっパクりだって思っても、そういうレスはしないで下さい・・・
頑張って下書きした駄作なので・・・(泣
3 名前:Tommy 投稿日:2002年04月02日(火)14時23分39秒
(吉澤ひとみ視点)




いつのまにか、もう冬の気配がしなくなった。




いつのまにか、もう春の香りが暖かかった。







清潔感あふれる、この空間。


壁も、床も、天井も、白一色に染まっている。




誰もが知っているこの独特の香りも


あたしにとっては、鼻をくすぐることもない。






慣れてしまった自分が、憎い。











春からは高校2年生のはずだった。

制服のネクタイも、初々しい赤から紺へと変わる。



また、新しい自分をスタートするはずだった。




―――――



だけど、入学式は、この病室のベットで迎えることになってしまった。



「よしこ〜、入るよ〜?」



厚いドアの向こうから聞こえる声は、とても機嫌が良さそうだ。


半透明のガラスから見える髪は、私の髪の色と同じ。


2年生になる前に、一緒に染めたんだよね。




静かな音で扉が開くと、満開の笑顔で部屋に入ってきた。

4 名前:Tommy 投稿日:2002年04月02日(火)14時24分23秒
「じゃじゃ〜ん!これ、学校から取って来た!」


彼女の右手には、数十センチの桜の枝。


淡いピンク色の花びらが綺麗だ。




「ごっちんってば、勝手に学校の取っちゃっていいの??」


あたしが訊ねると、桜を花瓶に入れて満足そうにしてからこっちを向いた。


「ううん、中澤せんせーに怒られちゃったよぉ。アハッ」


「も〜、ごっちんはすぐに悪さするんだから。」

「えへっ」



そういって彼女はベットの横にあるイスに腰掛けた。








「でも、嬉しい。ありがとう。」

「うん・・・。」





そういって彼女の頭をそっとなでると、

心地よさそうな笑顔で、あたしを見てくる。





春の陽射しが、あたしたちにスポットライトを当てていた。

5 名前:Tommy 投稿日:2002年04月02日(火)14時24分59秒


小6の時、私は白血病に侵された。


気付くのが早かったために、その時は半年ほどで完治した。








しかし、16歳になった今。白血病が再発したのだった。



もう半年の命と宣告された時は、何もかもやる気が失せて

涙も出ず、ただ放心状態の毎日が続いた。



―――――


だけど、この半年の命を大切に生きなければ。


そう思うようになってきた。




とは言っても、未だに病院のベッドから抜け出す事は出来ない。


小学校や中学校、高校にあがる時もいっつもごっちんとは一緒だったのに



最後まで、一緒にいられなくなっちゃったね。














―――まだ染めたての2人の髪は、根元から綺麗なブラウン。



本当は、2人で金髪にしよっかとか話してたよね。


けど・・・あたしが入院するから。

あまり、根元が黒いのが目立たないようにって。



ごめんね、ごっちん。





あたしがいなくなったら、


もう気遣わなくていいから・・・

6 名前:Tommy 投稿日:2002年04月02日(火)14時25分33秒


うちの家族は、小さい頃に父親を亡くしている。

弟2人とお母さんとあたしの4人家族だ。

やんちゃな弟たちは、まだ小学生。

あたしがもう半年しか生きられない事も、あまり理解できてないようだ。





コンコンッ



「ひとみ、入るわよ。」


「はぁい。」


果物を持ったお母さんが、病室に入ってきた。


妙に笑顔なので、何かいいことがあったようだった。




「どうしたの、嬉しそうじゃん。」


「ふふふ。ひとみ、明日の午後、外出許可が出たわよ!」


「え!?ホントに??」

「うん。だいぶ体調も安定してきたみたいだし、半日だけならって。」


「やったぁっ!!」


あたしは思わずベットから飛び出てガッツポーズをした。



だって、初めての外出許可なんだもんっ!

ごっちんと、どっか行きたいな。




「いっつもお見舞い来てくれてるんだから、真希ちゃんとどこか出かけたら?」


「うんっ。あ、お母さん!家から1番新しい服持ってきてね!絶対だよ!!」

「はいはい。もう、ひとみはすぐ騒ぐんだから。」



そういいながらも、お母さんもすごく嬉しそうだった。

7 名前:Tommy 投稿日:2002年04月02日(火)14時26分37秒
あたしは点滴の台のタイヤをガラガラ言わせながら、病院の公衆電話に駆け込んだ。


昔から忘れない、ごっちんの家の番号を押す。


あまりにはしゃぎすぎて、何度も押し間違えてしまった。



プルルル・・


つながった!



『はい後藤です。』

「あ、吉澤ですけど。」

『あら、ひとみちゃん。』


電話に出たのはごっちんのお母さんだった。


ごっちんのお母さんは、すっごくごっちんに似ていて、

優しい目をしている。


実際ホントに優しくて、いっつもニコニコしてるんだよね。


ごっちんの家もお父さんが昔亡くなって、

お母さんと、ごっちんと、弟のユウキ君と、お姉さんの弥生さんの4人家族だ。




「あの・・・ごっちんは?」

『あ、真希ならさっき、ひとみちゃんのお見舞い行くって言ってたけど?』

「え?あ、わかりました。じゃぁもうすぐ来るかな。」

『そうね。じゃぁ、今度おばさんもお見舞い行くからね。』

「はい、ありがとうございますっ。」



電話を切ったあと、また点滴を引きずりなが病室に戻った。

8 名前:Tommy-KO? 投稿日:2002年04月02日(火)14時27分32秒

「よしこっ」

「ごっちん!」


病室にはすでにごっちんが待っていた。



「ごっちん、あのね、外出許可が出たの!!」

「へっへ〜ん、さっきおばさんから聞いたよぉ。えへへ。」


どうやらあのおしゃべりなお母さんが、バラしたようだった。


なーんだ、驚かそうと思ったのにサ。



「ねぇ、どっか行こう?どこがいいかなぁ・・・遊園地とか、水族館とか!どこがいい?」


点滴をベットの横に置いて座った。


私がニコニコ笑うと、ごっちんはいきなりギュゥ〜〜って抱きついてきた。




「ぅわわっっ!な、なに?どうしたの・・・?」






「よかった・・・・・よかったね・・・・・」


「・・・・ごっちん・・・?」




ごっちんの体温が、スーッと伝わってくる。


・・・あたしたちは、ずっと小さい頃から楽しい事も嬉しい事も分け合ってきた。


だから今度は、あたしの幸せを分けてあげる。


もう、治らない病気だけど

一生懸命、戦うから。










けど






ホントはあたし・・・・強がりだから。









恐いんだよ・・・・恐いの・・・・



9 名前:Tommy 投稿日:2002年04月02日(火)14時28分12秒


「よっすぃー。薬うつから、じっとしててやー。」


「はぁい。先生、また変なところにうたないでよ〜?」



ここの病院の院長でもある平家先生は、日本でも有名な女医だ。

まぁとにかくメッチャ美人だから、患者さんの甘え様もすごいらしい。



「たまにはよっすぃーも甘えてや?へーけさん悲しいわー。」

「何言ってんですかぁ。これでも結構甘えてるつもりなんですけどー。」

「かわいげないコやなぁ〜っっ」

「いってぇ!先生、うつとこ間違ってんじゃない!?」

「あれ?すまんすまん。」


そういってまたガーゼで消毒を始める。



とはいっても、あたしはこのはちゃけた平家先生が結構好きだ。

小6の時の手術だって、ずっとそばで応援してくれた。


不安でいっぱいだったあたしに、

先生は「がんばれ。絶対成功させたるから。絶対助かるから!」

って励ましてくれたよね。

あのころからだいぶたったのに、まだ関西弁は抜けてないみたい。


10 名前:Tommy 投稿日:2002年04月02日(火)14時28分48秒

あたしがつい笑ってしまうと、先生は片方の眉毛をクイッと上げた。


「なんや?何がおかしいねん。」


「ふっ、いや。なんでもないっす。」

「なんやぁ〜!?あ、先生に言わんとはええ根性しとるやんか〜!」

「いてててっ!ギブッ!!ギブッ!!」



最近、そんな先生とあたしのやりとりをずっと見てる看護婦さんが居た。

多分、新しい人だと思うけど。



「いってぇ・・・・ねぇ先生、あのコ誰?」

「んぁ?梨華ちゃん?あのコは新人ナースやで。」

「へ〜。何歳??」

「よっすぃーよりいっこ上やと思うで。何で?惚れたか?!」

「ちっ違いますよ!!何言ってんですかぁ!!」



梨華ちゃんは、うちらのやりとりをじっと見ていた。

目が合うと、真っ赤になって床に視線を落とした。


・・・・なんなんだ?
11 名前:Tommy 投稿日:2002年04月02日(火)14時30分17秒
今日はこのへんで。
Tommyとしては初スレです^^
頑張ります!
12 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月02日(火)19時29分31秒
こういうのほんとに待ってました!!感激です。
応援してるんで頑張ってください。最高の設定ですね! 
13 名前:夜叉 投稿日:2002年04月02日(火)20時04分04秒
作者様、期待してますんでがんがってくださいね。
14 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)08時54分17秒
>名無しさん

ありがとうございますvv初レス♪初レス♪がんばります!!

>夜叉さん
ありがとうございますvvがんがります!軟骨です!軟骨です!
15 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)12時15分58秒
次の日―――



1番新しいジーパンに、

1番新しいパーカーを着て、

1番お気に入りのバッグを持って。


久しぶりに携帯に電源を入れた。



ピルルル。。。



画面をみると、「メール3件」となっていた。



【ヨッスィ、元気かぁ?たまには連絡くれよ! 矢口】

【マンガ貸したままだったでしょ?あれ、あげるから(^o^) なつみ】

【バレー部全国大会優勝しました!! 飯田】



先輩達からのメールだった。


なんだか胸がドキドキして、

あぁ、あたし今みんなと同じなんだって思えた。









「よしっ。」



その時、コンコンッという音と共に、お母さんの声が聞こえた。


「ひとみ、真希ちゃん外で待ってるわよー。急ぎなさい。」

「はぁーい。今行く!!」



準備が終わるとトイレに駆け込み、鏡を見た。


久しぶりのオシャレに胸がドキドキした。


今日1日だけ、みんなと同じになれるから。

病気で弱い女の子なんて、絶対いやなんだから!!

16 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)12時23分37秒
外に出ると、ごっちんが大きく手を振っていた。


「よしこぉ〜!早く行こうよ!」

「うんっ。じゃぁ行ってくるね。」


あたしは見送りに来ていたお母さんと平家先生に手を振った。










あたしたちはまず電車に乗って水族館に行った。


「見て、ごっちん!これ平家先生に似てる!」

「え〜!?ってかマンボーじゃん!似てないって!」


澄みきった水槽の中に、心地よさそうに泳ぐ魚たち。

となりでは、病院では出せないような大きな声ではしゃぐごっちん。



どれも、なんだか新鮮に感じた。


あぁ・・・やっぱり外は違うな。




「・・・よしこ?よしこー?」

「え、あ・・・ごめん、何?」

「大丈夫?眩暈とかした??」

「いや、なんか・・・・ちょっと感動してた。」


今の世の中は汚れていると言われてるけど、


改めて感じる世界は、病院の白い空間よりよっぽとキレイだから。


17 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)12時28分06秒


しばらく見ていると、少し先に女の子と男の人が居た。

男の人ってゆーか・・・・おじさん??


どうやら親子では無さそうだし、女の子は嫌がっているようだった。



「ごっちん、あれってなんかあやしくね?」

「え?・・うわっオヤジがいい年こいて高校生ナンパすんなよ〜・・・」

「ちょい行ってくる。」

「え?ちょ、よしこ??」



あたしはすぐにその2人に近づくと、

オヤジはその女の子の腰に手をあてた。





チッ



「おい、おっさん!」

「・・・・?」


そのおじさんは振り向くと、サッと女の子の腰から手を外した。


「なーにやってんだ。わかってんだよ、セクハラおやじ!!」

「なっなんだと?僕はただ時間を聞かれただけ・・・」
18 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)12時29分31秒
「あたし、時間なんか聞いてません!!」


女の子は大きい声でそう言った。




・・・・と、よく見るとその女の子は、あの新人看護婦さんだった。



「あ・・・・・。」



でも、今はおやじを追っ払う方がさきだ!!


「てめぇみたいなハゲおやじに誰が話し掛けるかっつーの。ばーか。」


あたしはそのオヤジを睨みつけた。



「・・・っただ若いコと話してみたかっただけだっ!」


捨てゼリフをはいてその場を立ち去っていった。


19 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)12時30分36秒


「大丈夫?」


「・・・うん。ありがとう。」

「梨華ちゃん・・・だっけ?」

「あ、はい。吉澤さんですよね?」

「うん。・・・何、ひとりで来てたの?」

「はい、水族館好きなんで。」


うーん、なんかそういうの好きそうな顔してるもんなー・・・。



「でも、あーいうのには気をつけなよ。」

「ありがとう・・・。」

「じゃ、あたし行くから。」




そういってごっちんの元へ戻ると、

梨華ちゃんは軽く会釈をした。


「ごめんね、ごっちん。」

「ううん、ってか知り合い??」

「うん。うちの担当の看護婦さん。」

「ふ〜ん・・・・。まぁいいや。行こっか!」

「うん!」



そんなこんなで、半日はあっという間に過ぎた。

20 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)12時31分25秒

病院の前につくと、ごっちんは大きく伸びをした。


「ふぁ〜疲れたぁ。」


「今日はありがとね。楽しかった。」

「ごとーもだよぉ〜?よしこと遊べて最高だったよ!」


ちょっと上目遣いの彼女に、ドキッとした。


あたしは周りを見渡して誰もいないことを確認した。




そして、両手をポケットに入れたまま、ごっちんの額にキスをした。




「・・・・・。」


ごっちんは真っ赤になって下を向いてしまった。


その仕草もなんだかすごく可愛くて、そっと頭をなでた。



「じゃ、気を付けてね。」


「・・・・う、うん。」




こうして楽しい半日は終わった。


21 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)12時32分04秒

翌朝、寝ぼけっつらで廊下を歩いてると、

ナース姿(?)の梨華ちゃんがパタパタ走って来た。



「吉澤さんっ。」

「あ、おはよう。」


「あのっ・・・・昨日は、ありがとう。」


「うん、いいよ。っていうか・・・ひとみでいいんだけど?」


「あ・・・・うん。ひとみ・・・・ちゃん。」


高くて小さい声を聞き取るのにちょっと苦労するけど、

平家先生のバカでかい声よりはよっぽどマシだった。

「じゃぁ、それだけだから・・・・っ」

「ん。バイバイ。」
22 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)12時33分22秒

朝、あたしは病室の窓から外を見ていた。



ちょうど登校時で、みんながゾロゾロと登校していた。

この病院の前は通学路だからよく見かけるけど、

見たことないコがいっぱいいるなー・・・・。

って・・・・・・新入生か。

そうだよね、うちはもう2年生なんだもんね。先輩かぁ・・・。



制服がかわいいから絶対ここに入る!って決めた高校だった。

なのに・・・1年間しか着れないなんてさ・・・・。

いいな、あたしと同い年のコはあと2年も着れるんだよ?

ごっちんも・・・・・・・


あたしなんて、制服が着れない上に・・・

みんなが3年生になったころには、もうこの世にはいないんだよ?






そんなの・・・・不公平だよ・・・



23 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)12時34分00秒


「ひとみちゃん?」


「え?」


気が付くと、梨華ちゃんが病室に居た。


「どうしたの?泣いてるよ?」

「え、うそ・・・」


慌てて頬をなでると、ツーッと涙が流れていた。


梨華ちゃんは窓の外をチラッと見て、

またあたしに視線を戻した。


「・・・ひとみちゃん。」

「へへっ、しょうがないよね。あたし病気だもん。みんなとは違う。」


そういって袖で強く涙をふいた。


「そんなことないよ。がんばろう!弱気になるのはダメだよっ」


梨華ちゃんは必死にあたしを励ましつづけた。

・・・・なんだかそんな仕草見てたら、ちょっと元気になった。



「弱気だなんて、梨華ちゃんに言われたくないよ〜だっ」


そういってコツンっとおでこを突付くと、

プーッとほっぺを膨らまして「もーっ」という顔をしていた。



でも、あたしはみんなとは別の世界にいるってこと、知ってるから。

しょうがないって、わかってるから。




弱くないなんて、無理なんだよ。

24 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)12時35分08秒


放課後、ごっちんがお見舞いに来てくれた。

もちろん、私服に着替えてから。

いつもの気遣いである。







いつもなら、ごっちんが来てくれて嬉しいハズなのに、

今日はなんだか違う。

だってさ、あたし病人なんだよ?


「よしこぉ、今日なかざわ先生がさー・・・」


どうしてごっちんはそこまで・・・

だってごっちんだって、普通の高校生じゃん?

あの病院の前を通って登校して・・・


あたしとは・・・違う世界の人間じゃないの?

どうして・・・・・優しくするの?



「・・・・よしこ?」



あたしは何も言わずに、彼女の肩に顔をうずめた。










「・・・・学校に、行きたいよ。」



25 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)12時35分53秒


「学校に・・・・行きたい。」



ごっちんの肩に、涙が染み込んでいく。







「・・・・・行こうよ。」



「・・・・え?」



「学校、行こうよ。」




あたしはただ彼女の顔を見つめる事しか出来なかった。











―――――――


夜、あたしは私服に着替えてにベットに座っていた。


『今夜10時に、ごとーが迎えに行くから。』



昼間、ごっちんが残した言葉。



『一緒に、学校行こ?』







少し・・・・不安だけど。



自分を、信じてみます。

26 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)12時36分36秒

幸い、あたしが入院している個室は1階にあった。


5、4、3、2、1・・・・



時計の針が10時をさした時、


カギを開けておいた窓がコンコンッと音を立てた。


「・・・よしこっ」



小声でごっちんが呼んでいた。


「今行く。」



窓を最大に開けて、外にヒョイッと飛び出た。



「体、大丈夫?」

ごっちんは窓をそーっと閉めながら言った。


「うん、ヘーキ。行こっか!」



ごっちんの自転車の後ろにのって、学校へ向かった。

27 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)12時37分10秒


もう真っ暗になった学校。


昼間とは状況がまったく違うけど、

やっぱり学校はいい・・・・。


この校庭の砂も、灯されないライトも、締め切った校舎の窓も。


全て、帰ってきた。




あたし、帰ってきたんだよ、学校に。





「ごっちん・・・・・ありがとう。」




「ううん、このくらいしかできないけど。」




ごっちんの優しい笑顔がフッと消えたとき、



急に辺りがグニャグニャ曲がって


熱い眩暈と共に意識が途切れた。


28 名前:Tommy 投稿日:2002年04月03日(水)15時45分05秒
今日の交信はこのへんで(゚皿゚)
29 名前:夜叉 投稿日:2002年04月03日(水)18時33分43秒
吉澤ーーーーーーーぁ!!


この展開にドキドキしております、期待して待ってますね。
30 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月03日(水)23時08分49秒
ごっちんいいやつだぁ…
よっすぃーどうなっちゃうんだろう!
31 名前:Tommy 投稿日:2002年04月04日(木)09時44分03秒
>夜叉さん
おたけびありがとうございます(w
ドキドキして期待してやってください^^

>名無しさん
>ごっちんいいやつだぁ…
ですよねぇ・・・(ぇ
気になる続きは、今から交信しまーす
32 名前:Tommy 投稿日:2002年04月04日(木)09時46分24秒
目が覚めると、あたしはいつものベッドに居た。

なんだか体が重い――――・・・寝てたのかな。


あー・・・おなか空いたなー。






・・・・そうだ。





あたし、昨日学校に行った。


ごっちんと2人で行ったんだった。

それで急に意識が途切れて・・・・









あたしは初めて発作が起きたことに気が付いた。







・・・・ごっちんは?


重い体を起こしてベッドから出た。
33 名前:Tommy 投稿日:2002年04月04日(木)09時47分10秒


病室を出ようと、ドアノブに手を掛けたその時だった。


ふと聞こえたのは、間違いなくごっちんの声だった。




「あの・・・よしこは・・・?」


・・・誰かに話し掛けてんのかな?


「後藤さん、あなた何もわかってないっ!」



梨華・・・ちゃん・・・??



「ひとみちゃんは・・・いつ発作が起きてもおかしくない体なの!」

「・・・それは知ってるけどっ・・・」

「あなたは素人だからわからないけど、命に関ることだってあるんだから!」


言い合い・・・というよりは、梨華ちゃんが一方的に叱っているような感じだった。



「・・・ごとーは看護婦じゃないから病気のことはわかんないけど、
よしこの気持ちはわかるもん!」


「気持ちとか・・・っそういうレベルじゃないの。もしひとみちゃんが死んだら・・・
あなたは責任とれるの?!」





梨華ちゃんの言葉で、ごっちんは言い返せないようだった。



ドアの向こうとこっちで、複雑な気持ちが揺れていた。

34 名前:Tommy 投稿日:2002年04月04日(木)09時48分08秒




次の日も、その次の日も、


ごっちんはお見舞いに来なかった。



ただ彼女か来ないだけで、1日がこんなに長く感じる。



あたしは、ごっちんをすごく必要がってたのかもしれない。





コンコン


とその時、ドアを叩く音が聞こえた。


あたしはごっちんだと思ってドアを開いた。




「ひとみちゃん。」




「・・・・・あ、梨華・・ちゃん。」


「後藤さんだと・・・思った?」

「え・・・・あ、いや・・・」


図星。


「ごめんね、あたしで。」


梨華ちゃんの真剣なまなざしをあびる。

35 名前:Tommy 投稿日:2002年04月04日(木)09時49分11秒


「そういうわけじゃ・・・」



「うそ、冗談だよ。」



そういってまた彼女は笑顔に戻った。



「後藤さんは・・・普通の高校生だから、病気の事は知らない。」


梨華ちゃんはゆっくり話し始めた。


「後藤さんは、ひとみちゃんじゃないから病気の痛みも知らないの・・・。」


「・・・どういう意味?」


「それは、あたしもだけどね。病気の痛みは、本人しかわからない。」


「・・・・・そりゃぁ・・うん。」

「後藤さんは、ひとみちゃんの気持ちがわかるって言ったけど、
病気の痛みはわからないって、あたし言ったの。」



・・・・こないだの事か。



「今は、病気を少しでも抑えることが大切だと思うの。」

「・・・・・うん。」

「また元気になったら、後藤さんとだって、遊びにいけるじゃない?」





あたしはその時、



梨華ちゃんは、あたしよりずっと大人なんだって知った。


36 名前:Tommy 投稿日:2002年04月04日(木)09時49分42秒


あれから1週間。


ごっちんは全く姿をあらわさなかった。

あたしも、連絡は取ろうとしなかった。

あたしには・・・ごっちんの気持ちなんかわからないよ・・・

今、どう思ってるの?

あたしのこと、嫌いになったの??



不安と悲しみが入り混じった感情が、

涙となってあたしを締め付ける。





・・・・ごっちん








帰ってきてよ・・・・

37 名前:Tommy 投稿日:2002年04月04日(木)09時50分21秒


ふと、ベットの横にあるカレンダーが目に入った。


ちょうど明日のところにハートマークがつけてあった。



・・・・そうだ、明日はごっちんの誕生日だった。





ガチャ


ちょうどお母さんが部屋に入ってきた。


「お母さん!あのさ、明日ごっちんの誕生日なの。」

「うん?知ってるわよ。」

「だから、何か・・・えっとじゃぁでっかいクマのぬいぐるみとか、買って来てくれない?」


あたしは手をいっぱいに広げて大きさを表した。



「・・・これ?」


気が付くと、お母さんが持ってきた荷物の中に

大きな紙袋があった。



「そんなことだろうと思ってね、これでいい?」


そういってお母さんは、中から大きなクマのぬいぐるみを取り出した。



「わぁ〜!!でっかい!これならきっと喜んでくれるよね?」

「そうだね。ちゃんと仲直りするんだよ?」

「へ?」



お母さんは優しい笑顔でそう言った。


もう・・なんでお見通しなんだからっ。

38 名前:Tommy 投稿日:2002年04月04日(木)09時50分56秒


次の日―――


あたしはごっちんのお母さんに電話して、

ごっちんを病院に来てくれるように頼んだ。




病室でドキドキしながら彼女を待っていた。







ガチャ


静かにドアが開く音がして、

次にあたしの目に飛び込んできたのが、

心配そうな顔をしたごっちんだった。




「ごっちん・・・っ。」


「よし・・・こ・・・」


泣きそうな顔で何かを言おうとしていた。

あたしはただ彼女の言葉を待っていた。


「・・・よしこ、ごめんね・・・・・・」




・・・・ごっちん・・・・



「ううん、全然。それより、これ!」


あたしは、部屋に隅に置いていた包みを渡した。


両手を広げても持ちきれないほどの大きなプレゼントに、

彼女はただただ感動するばかりだった。

39 名前:Tommy 投稿日:2002年04月04日(木)09時51分43秒


「誕生日プレゼント。かわいいっしょ?」


大きい大きいぬいぐるみをみて、ごっちんは涙ながら笑った。


「へへっ、おおきすぎだよぉ・・・」

「いいのっ。これが、あたしの気持ちだもん。」


ごっちんの手からプレゼントをそっと取ってベットに置いた。


そして、ぎゅーっと抱きしめた。


ごめんね、


そして、ありがとうという気持ちを込めて。

40 名前:Tommy 投稿日:2002年04月04日(木)09時54分21秒


次の日、他の病院から小さい女の子がこの病院に来た。


そのコの名前は、辻希美ちゃん。

今年、中学3年生になったばかりらしい。




でも、病院の中でも点滴を引きずりながら駆け回る希美ちゃんは

あたしより、ずっとずっと元気で、強いんだなって思ってた。







「お姉ちゃん。」

「?」


突然希美ちゃんに声を掛けられたのは、廊下を歩いている時だった。


「あたらしくきた、つじのぞみっていうのれす。おねえちゃんは?」

「あ、吉澤ひとみです。」

「ひとみちゃんなのれすね!ののは、つじちゃんってよんでくらさい。」

「ん、わかった。よろしくね。」



「あ、これあげるのれす。」

「え?」

そういって渡されのは、ピンクの包み紙に包まれたキャンディーだった。


「ありがとう。」

あたしはニコッと笑ってお礼を言った。

希美ちゃんの素直な気持ちが嬉しかったから。


「おねえちゃんは、なんのびょうきなのれすか?」


「え・・・?」


「ののは、はっけつびょうなのれす。」


舌っ足らずなしゃべりかたでそういった。
41 名前:Tommy 投稿日:2002年04月04日(木)10時01分14秒


そのあと、カワイイ八重歯を見せて笑ったのだった。


でもどこか悲しい笑顔で、あたしもなんだか切なくなった。



「・・・あ、じゃぁお姉ちゃんと一緒の病気だね。」


そして辻ちゃんの頭をなでてあげると、またニヘッと笑った。



――――

こんな小さい子でも、病気と闘ってるんだよね。





あたしも、頑張らなきゃけないよね。


42 名前:夜叉 投稿日:2002年04月04日(木)22時27分12秒
がんがれぇ、吉澤ぁ(泣)。

作者様もがんがってくださいね、まぢで。
43 名前:Tommy 投稿日:2002年04月05日(金)08時21分00秒
>夜叉さん

いつもレスありがとうございます。
ヨッスィもがんがってほしいけど、作者もがんばらねば。。。まぢで(w
44 名前:Tommy 投稿日:2002年04月05日(金)08時24分16秒



「ひとみちゃん、このほんよんでほしいのれす!」


突然、病室に辻ちゃんが入ってきた。


「んー?いいよっ。」


辻ちゃんはあたしの膝に座って、ニコニコしていた。






「・・・・ったとさ。めでたしめでたし。」


本を読み終えると、ピョンッと膝からおりておじぎをした。


「どうもありがとうなのれす!」


そして、いいえも言えないうちにタタタタっと部屋を出て行ってしまった。




それから毎日辻ちゃんは部屋に遊びに来ていた。


ちょうど今日は、ごっちんがお見舞いに来てくれていた。


45 名前:Tommy 投稿日:2002年04月05日(金)08時25分39秒

「このコが辻ちゃんかぁ。こんにちは、後藤真希です。」

「こんにちはれす!つじのぞみれすっ」


ごっちんはカワイー!といって辻ちゃんを膝に乗せた。

そして、辻ちゃんが持ってきた本を読んでいた。







読み終えたあと、辻ちゃんはギュッとあたしとごっちんに抱きついてきた。


「ひとみちゃんも、まきちゃんも、だいすきなのれす!」


そういった辻ちゃんに、ごっちんはキャハハッと笑っていた。







けど、あたしはいつもと違う感覚に気が付いた。


確実に、辻ちゃんの体がいつもより軽く感じたのだ。




体、弱ってるんだ。・・・痩せてる。


にへっとした笑顔の奥には、整わない体が悲鳴をあげていたのだ。



46 名前:Tommy 投稿日:2002年04月05日(金)08時26分15秒



「ののは・・・しんじゃうのれすか?」


「・・・・っそんなことないよ・・・がんばろうよ・・・」


「ののは・・・いいのれす。ひとみちゃん・・・・・・・・」


差し出された手をギュッと握った。


「本とか、よんでくれてありがとうなのれす。」

「ううん・・・・そんなの・・・・」


あたしはただ首を横に振って泣いていた。



「まきちゃんにも・・・よろしくれす。」


「・・・・っ・・・・っ」









「なかよくしてくれて・・・・・・・・ありがとうなの・・・れす・・・」








ピ――――・・・・・







機械音だけが響き渡る。


ご両親はもう涙も出ない悲しみに包まれていた。










どうして、人間は死ななきゃならないの?




死ぬなら、どうして生まれたの?





おかしいって・・・・




おかしいよ・・・っ!!


47 名前:Tommy 投稿日:2002年04月05日(金)08時29分38秒
ふっと目がさめた。




・・・つじちゃん?






「夢・・・・か。」



縁起わる・・・

辻ちゃんが死んじゃう夢なんて・・・



あたし、何やってんだろう・・・



バタンッ



「よしこ、辻ちゃんが!!」


突然ごっちんが入ってきて、そう叫んだのだった。



「辻ちゃんが・・・倒れたの・・・」


「え・・・?」

「早く、病室行ってあげて!!」




あたしは返事もせずに病室に向かった。
48 名前:Tommy 投稿日:2002年04月05日(金)12時04分57秒
「辻ちゃん!辻ちゃん!」


病室にいくと、目を細くした辻ちゃんが寝ていた。

苦しそうに呼吸をしていた。



「ののは・・・しんじゃうのれすか?」


「・・・・っそんなことないよ・・・がんばろうよ・・・」





―夢と・・・同じ?―



「ののは・・・いいのれす。ひとみちゃん・・・・・・・・」


夢と同様、差し出された手をギュッと握った。


「本とか、よんでくれてありがとうなのれす。」

「ううん・・・・そんなの・・・・」


あたしはただ首を横に振って泣いていた。



「まきちゃんにも・・・よろしくれす。」


「・・・・っ・・・・っ」









「なかよくしてくれて・・・・・・・・ありがとうなの・・・れす・・・」
49 名前:Tommy 投稿日:2002年04月05日(金)12時06分52秒





ピ――――・・・・・







機械音だけが響き渡る。


ご両親はもう涙も出ない悲しみに包まれていた。




わけわかんないって・・・






正夢じゃぁ残酷過ぎるよ・・・





だけど・・・・


夢も現実も、考えることは同じ。


どうして、人間は死ななきゃならないの?




死ぬなら、どうして生まれたの?





おかしいって・・・・


おかしいってば・・・!!
50 名前:Tommy 投稿日:2002年04月05日(金)12時08分57秒
あたしは病室に戻ってひたすら泣いた。




「よしこ・・・・」



辻ちゃんのことが頭から離れない――――


ただ泣いてばかりいるあたしに、ごっちんは心配そうに声をかけてくる。




・・・ばかみたい、あたし。


そんなごっちんの声も耳を通らない。


それどころか、ウザく感じてきてしまっていた。






「・・・・ごっちんだってさ、なんであたしなんかのお見舞い来るの?」


あたしは自分の言った言葉にすこし後悔した。



「・・・・え?」


「ごっちんだって友達と遊びたいんでしょ?だったら来なくていいのに・・・」




本当に自分が言った言葉なのか、

これは本心なのか、


わからなかった。

51 名前:Tommy 投稿日:2002年04月05日(金)12時10分35秒



「なんでそんなこと言うの・・・?」


ごっちんは悲しそうな表情になってきた。


なのに、あたしの口は止まらない。




「もうすぐ死ぬって人の前でさ、よく笑ってられるよね・・・」


「・・・・っ・・・」


「あたしだって怖いんだよ!死ぬの怖いんだよ・・・・」



もうごっちんは言葉を返してこなかった。


あたしは・・・言いたい事を叫びっぱなしで、むなしい人間だった。



「どうせあたし達はちがう世界の人間なんだよ・・・・
ごっちんだって・・・普通の高校生やってればいいじゃん!!!」








最後の言葉を言い切る前に、ごっちんは部屋を出て行ってしまった。







モヤモヤした、嫌な空気と後悔だけが残った。



52 名前:ななし 投稿日:2002年04月05日(金)23時33分09秒
うあー!!(泣)
せつねぇよ!!
53 名前:Tommy 投稿日:2002年04月06日(土)09時38分38秒
>ななしさん
>うあー!!(泣)
>せつねぇよ!!
切ないっすねぇ・・・うぅ・・・(ぇ
多分、痛いまま行くと思います。そういう小説ですので(w
54 名前:名無し野郎 投稿日:2002年04月06日(土)12時53分23秒

え、マジ?切なすぎるよ〜!
でも実はそういう話が好きだったりする自分・・・・。
がんばってくださいね!
55 名前:Tommy 投稿日:2002年04月06日(土)17時32分05秒
>名無し野郎さん
ありがとうございます^^
痛め初挑戦なのでがんばります!
56 名前:夜叉 投稿日:2002年04月06日(土)19時15分30秒
目の前で自分と同じ病気の人が亡くなるってのは、かなり辛くて、それを受け止めるのに忍耐がかなりいると思います。
今の吉澤にはそれが出来ない、あまりにもそういうことに子供で大人になれないんでしょうね。
考えさせられますね、与えられた時間には。

続き、マターリお待ちしております。
57 名前:Tommy 投稿日:2002年04月07日(日)10時34分50秒
>夜叉さん
感想ありがとうございます。
最初に泣ける作品を目指していると書きましたが、
みなさんに泣いてほしい、というよりは
小説を通して、たとえばこんな話があったら。とか、
いろんな感情やなんかが人それぞれ考え方が違うと思うんです。
だから、ひとりひとり考えさせられる小説にしたい。というのが本心ですね。
なんてガキが言う言葉じゃないっすけど^^;
でわ、更新します。
58 名前:Tommy 投稿日:2002年04月07日(日)10時35分22秒


(いったん視点外します)



「後藤さん。」


「・・・?」


真希が病院を出ようとした時、梨華に呼び止められた。



「ちょっと・・・いい?」



2人は病院の屋上へ向かった。








「なん・・・ですか?」


「ひとみちゃんのことだけど。」


「・・・・・?」


「あたしね、ひとみちゃんの事が好きなの。」




真希は驚いた様子も見せず、いたって冷静だった。



「後藤さんは・・・ひとみちゃんの事どう思ってるの?」



「どうって・・・・そりゃぁ、親友だよ。」

「親友だったら命預けられるのかな?」



素早い梨華の質問に、真希は唇を噛んだ。


「あたしは看護婦だから、患者さんに特別な感情は持っちゃいけなかった。」


「・・・・・・。」
59 名前:Tommy 投稿日:2002年04月07日(日)10時36分01秒


「でも好きになってしまったの。それは・・・いけないことだけど、
ひとりの看護婦として、病気と一緒に戦おうと思った。」


「・・・よしこが・・・どう思ってるかも知らないじゃん・・・」


梨華は少し考えて、また口を開いた。


「ひとみちゃんがどう思ってるかとか、そういうのは今考えられないと思う。」






「今は、病気を治すのを優先しなきゃならないから。」

「・・・・・。」


「だから今はお互いに、恋愛感情を持たないようにしようって・・・
それが言いたかったの。」




梨華が言い終えると、真希は自分の胸に聞いた。


素直になれない自分が、悔しかった。



「でもそれは、後藤さんがひとみちゃんをどう思ってるかだけど。」






そういいのこして、梨華は屋上を去っていった。


60 名前:Tommy 投稿日:2002年04月07日(日)10時38分10秒

(ひとみ視点)



・・・・ちょっと・・いや、かなり言い過ぎたかも・・・じゃなくて言い過ぎた・・・



もう、二度と傷つけないって決めたのに・・・決めたのに・・・っ


あたしはただ自分の吐いた言葉に後悔することしかできなかった。


でも・・・今度は後悔するだけはやめた。


許してくれないかもしれないけど、ごめんって・・・言うから。


そういって病室のドアを開けた。






ガチャ





勢いは一瞬で消えた。


61 名前:Tommy 投稿日:2002年04月07日(日)10時39分05秒

「ごっちん・・・・。」


部屋の前を行ったり来たりしていたようで、

ドアが開いた途端、ピタッと止まった。



「・・・あ、いや・・・ただ通りかかっただけだから・・・」


下手なウソに、少し昨日の罪悪感を思い出してしまった。

今、彼女にウソをつかせているのは自分のせいだから。



普通、あんな事言われた次の日に会いにいけないよね・・・


バカだ・・・あたし。



「ごとー・・・さ、」


意外にも、先に口を開いたのはごっちんだった。



「あの看護婦さんに・・・言われたこと、合ってたのかもしれない。」


「・・・・え?」


「ごとーは、やっぱり・・・もうよしこに会えない。」




そういって、彼女は走り去ってしまった。


なのに、笑ってた・・・へへって・・・




なんであたし・・・・・追いかけなかったんだろう。
62 名前:Tommy 投稿日:2002年04月07日(日)10時40分16秒


あたしは梨華ちゃんの元へ行った。

わからない、何を言おうとしたのかも考えてなかった。







「梨華ちゃんっ!」


ちょうど階段を上っている梨華ちゃんを呼び止めた。


「ひとみちゃん・・・勝手に出歩いちゃ・・・」

「何言ったの?」


気が付かなかった。あたしは今、すごく鋭い目をしていたかもしれない。



「え・・・・?」

「・・・ごっちんに何言った?」


あたしはその質問だけを繰り返した。




「・・・あたしは・・・・」
























「ひとみちゃんが・・・・好きなの・・・・」

63 名前:Tommy 投稿日:2002年04月07日(日)10時41分53秒


目を見開いた。

今の梨華ちゃんの言葉を頭の中で何度も何度も聞く。



・・・あたしを・・・好き?



「・・・・・ごめん、いきなり・・・」

「・・・え、いや・・」


次の言葉を失った。

予想外の展開に、ただ目を泳がせるだけだった。



「でもそれは、看護婦としてダメなことだと・・・思うの。」


「・・・・・え?」


「だから、ひとみちゃんが病気と戦い続けるまで、あたしはあなたを愛しません。」



梨華ちゃんは、切ない笑顔でそう言った。



あたしは震える体をどうにかして止めようとしていた。


「それを、後藤さんに言っただけだよ。」

64 名前:Tommy 投稿日:2002年04月07日(日)10時42分26秒


「・・・・・それでごっちんは?」


「何も・・・言わなかった。」



心がズキンと痛んだ。



「・・・・そっか・・・」


「うん・・・・」


「・・・でも梨華ちゃんの事は・・・・」

「わかってる・・・」



あたしはグッと唇を噛んだ。



「ごめん、わかんないけど多分あたし・・・・」





















「ごっちんが好きなんだと思う。」

65 名前:Tommy 投稿日:2002年04月07日(日)10時43分28秒
一応短編なので、明日ぐらいにラストスパートかけます。
きりがいいので今日はこのへんで。
66 名前:ななし 投稿日:2002年04月08日(月)13時29分18秒
ごっちん戻ってきて〜
67 名前:Tommy 投稿日:2002年04月08日(月)16時56分03秒
>ななしさん
戻ってきます!!(w
68 名前:Tommy 投稿日:2002年04月08日(月)17時00分29秒


夢を見ていた。





無限に続く緑の草原を、ひとりでひたすらまっすぐ進む。


なんでかな、あたし、ずっとここにいたような気がする。


こんな広い草原から抜け出せるわけがない。


ずっとそう思ってた。




今やっと、あたしは歩き出した。


きっと、誰かの助けを得て。





それは、愛するあの人―――――――











目がさめると、あたしはいつものベッドにいた。



もう、何日寝ていただろう。





目を開けるのもつらかった。


69 名前:Tommy 投稿日:2002年04月08日(月)17時01分01秒

(真希視点)





医者にあと半年の命だと告げられてから

ちょうど7ヶ月が経った頃だった。


よしこは予告された期間より1ヶ月も長くいることができたのだ。


でも、もうよしこの体は限界まで達していて、
ベッドの上から起き上がれない状態だった。



もう、みんなわかってた。

これ以上、よしこの病気は良くはならないと。




彼女は目をつぶったまま、

小さい小さい心拍数の音を聞いていた。

70 名前:Tommy 投稿日:2002年04月08日(月)17時01分34秒



ごとーはここ2日、ずっとずっとよしこのそばにいた。

夜も眠らず、彼女の横顔をずっと見ていたのだ。



もう、『がんばれ』という言葉はかけなかった。





「・・・・よしこ、よしこ・・・・」






必死に名前を呼びつづけた。


今にもピーッと鳴り響きそうな機械音を掻き消すように。





後ろでは、よしこのお母さんと2人の弟が静かに見守っていた。









もう、いつ意識がなくなってもおかしくないのだから。


71 名前:夜叉 投稿日:2002年04月08日(月)17時02分48秒
ついに、戦闘モードな二人…(汗汗)。
でもそれ以前に吉の体が気になります。完治することを願っております。
作者様のご意向、よく分かります。ラストスパートに向けてがんがってくださいね。
期待してお待ちしております。
72 名前:Tommy 投稿日:2002年04月08日(月)17時02分50秒

「・・・・お母さん・・・」



突然、かすれた声が聞こえた。

まぎれもなく、彼女の口から。



「最後の・・・・・お願い・・・・・。

ごっちんと・・・・・・2人に・・させてくれる・・・・?」





よしこのお母さんは、ブワッと涙を溢れさせた。



そして、弟たちの手を引いて病室を出て行ったのだ。



73 名前:Tommy 投稿日:2002年04月08日(月)17時03分37秒




「ごっ・・・・ち・・・ん?」


「何?ごとーはここにいるよ・・・?」




差し出された手を、両手でギュッと握った。


そして、彼女はゆっくり目を開ける。



「今まで・・・・・・・たのしかった・・・ね。」


「ばか、何言ってんの!ごとーもだよ・・・・っ」







やだ・・・泣かないって決めたのに・・・・・・



涙、止まんないよぉ・・・






「・・・・一緒に・・・病院抜け出したり、水族館行ったり・・・・・・・」


「・・・・・っ・・・・っ」


ごとーは、うん。うん。って頷きつづけた。


よしこの細く開いた目を見つめながら。




「ホントに・・・・・楽しかった・・・・・・・」


「・・・・・うん・・・ごとーも・・・だよ・・・」

74 名前:Tommy 投稿日:2002年04月08日(月)17時04分09秒



「あのね・・・・・・・・・ごっちん・・・・」


「うん・・?」




「あたし・・・・・・・ごっちんが好きだったの・・・・・・・・」






・・・・その時


嬉しいとかそういう感情の前に


涙が、溢れて、溢れて



大きな雫が、何粒も何粒も落ちた。








思い出が、ひとつひとつ消えていくように―――









「ごとーも・・・・・・・好きだから・・・・・。」



「・・・・ごっちん・・・も?」



「うん・・・・今までずっと・・・・・これからもずっと大好きだから・・・・・・」












75 名前:Tommy 投稿日:2002年04月08日(月)17時04分48秒




よしこ・・・・っ







「ありがとう・・・・・これで、安心・・・・・できた・・・・よ・・・」





















ピ――――――・・・・・




















吉澤ひとみは、



17年間、一生懸命生きました。




そして、みんなよりは少し早いけど




静かに、目を閉じ、







もう、二度と目を覚ます事はありませんでした。


76 名前:Tommy 投稿日:2002年04月08日(月)17時05分22秒





1年半後――――






あたしは、丘の上に立っていた。





【吉澤ひとみ ここに永遠に】





「よしこ、卒業おめでとう。」



あたしは筒の中から証書を取り出して、お墓に向けた。



「これは、学校から特別に作ってもらったんだよ?」











「一緒に、卒業できたね。」







今、生きてることに感謝して、










ごとーは、これからもよしこの分まで生きます!








「じゃ、また来るね!」








fin...

77 名前:Tommy 投稿日:2002年04月08日(月)17時07分06秒
短編なので、すぐに終わってしまいました。
だんだん文章力があがってればいいなぁと願って、
Tommyであり、とみこは次の旅へでますます。。。
ちなみに次回作の予定はまだありませんが、
アイデアが浮かべば下書きでも始めようと思います。
78 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月08日(月)22時33分54秒
な、泣きました…
79 名前:ロ〜リ〜 投稿日:2002年04月09日(火)00時48分24秒
吉ぃーーー(号泣

おつかれさまでした。
Tommyさん(とみこさん)の次回作待ってます。
ぜひまた痛い系を・・・。

80 名前:夜叉 投稿日:2002年04月12日(金)17時35分57秒
吉の病気が回復することを願ってたのですが、それもむなしく…。
でも、二人が最後にお互いを大事にすることが出来て良かったです。
作者様、お疲れさまでした。
新作の方、楽しみにお待ちしております。

更新中にすいませんでした…(反省)。
81 名前:Tommy 投稿日:2002年04月13日(土)19時09分34秒
>夜叉さん
新作はもう焼きあがってますよ^^お空に。
82 名前:名無し☆ 投稿日:2002年05月18日(土)20時02分43秒
泣かせていただきました!!
すごく感動しましたよぉ〜!
涙がボロボロと流れてきました^^
実はとみこさんの時からも読ませていただいてたんで復活してくれてうれしいです!

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