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吉澤さんが天才だった頃

1 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月08日(月)21時00分54秒
青版で『あなたにここにいて欲しい』という
重くて、暗くて、痛い話を書いていたものですが、
今回はコメディーを書かせていただきます。
と、いうより、ギャグです。でもちょっと切なくなる予定。
今回もいしよしです。
お付き合いいただける方がいらっしゃれば、幸いに思います。
宜しく、お願いします。
2 名前:プロローグ 投稿日:2002年04月08日(月)21時02分16秒
あれは事故だった。
とても悲しい…、
けれど、ちょっと間の抜けな事故だった。

コンサート終盤。
否が応でも盛り上がる会場。
そして、あの曲。

♪好きな人が〜優しかぁった〜 ピース!
3 名前:プロローグ 投稿日:2002年04月08日(月)21時03分34秒
あの“ピース!”がまずかった。
安倍、次いで梨華。
順番に顔を見合わせ微笑む吉澤の振り。

微笑むために、梨華に寄りかかる吉澤。
テンションが上がってダンスも自然と大きくなる。
そして、勢い余り互いの頭を強打。
瞬間、吉澤の側頭部に強烈な痛みが走る。
4 名前:プロローグ 投稿日:2002年04月08日(月)21時04分17秒
アンコール終了。
幕が下りた途端、吉澤はバタンとその場に倒れ込んだ。

翌日、梨華の心配事は、愛しいあの人のお昼ご飯から、
愛しいあの人の記憶障害に変わった。

世の中、決して平和じゃない。
5 名前:プロローグ 投稿日:2002年04月08日(月)21時04分59秒
救急車に乗せられ病院に運ばれる吉澤。
朦朧とした頭で、譫言のように呟く。
梨華ちゃんの…
梨華ちゃんの頭は硬い…。
それが、記憶を失ってしまう前、天才だった吉澤の最後のひとこととなった。
6 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月08日(月)21時09分41秒
今日はプロローグだけで終わります。
明日は、第1話熱帯夜。
プロローグの続きみたいな感じなので、私にしては量が多いですが、
一気にいってしまおうと思います。
基本的に月曜から木曜まで、完全週休3日制の更新です。(祝日は除く)
7 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月08日(月)22時50分32秒
「あなたにここにいて欲しい」読んで感動しました。
今回のコメディも楽しみにしています。
がんばって下さい。
8 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月09日(火)00時55分38秒
面白そう
9 名前:熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時28分14秒
吉澤が退院し、梨華とふたりの同居生活が始まった。
記憶と知識と常識とクールで繊細な性格を、すっかりなくしてしまった吉澤。
本来の姿を一刻も早く取り戻すべく、
唯一、なんとなく見覚えがあるという梨華と、一緒に暮らすことになったのだ。

仕事仲間でもあり、事情を知っている梨華が絶えずそばにいるのは、
事務所的にも好都合だ。
安心である。
幸いにも、肉体的損傷はない。
退院したら、早速仕事に復帰させよう。(事務所関係者談)

酷い事務所である。
10 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時29分22秒
うーん、背中が痛い。
布団が一組しかないので、仕方なく昨夜はソファーで寝た吉澤。
寝癖のついた髪をかきあげながら、寝ぼけ眼で立ち上がる。

「歯ブラシなら洗面所にあるよ。ピンクのが私、よっすぃーのは青」
わざわざ用意してくれていたのか。
さすが気の利くおねーさんだ。
お礼を言おうと梨華の顔を見た。
が、しかし、
ひとつの疑問にぶちあたる。
わざわざ用意したにしては、使い込んである。

「よっすぃーは家が遠いから、仕事で遅くなるとよくうちに泊まっていったの…」
不信げな表情に気がついたのか、梨華が慌ててそう付け足す。
「なるほど」

それにしては、布団が一組しかないのは何故だろう?
ふと、そんなことを思ったりもしたが、深く考えないことにした。

深く考えないのが得意な、今の吉澤である。
11 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時29分52秒
吉澤のこのありさまはトップシークレットだ。
コンサート中の事故で記憶喪失。
はなはだイメージがよろしくない。
アイドルとしては致命的だ。
CM契約にも支障をきたしかねない。

そこで事務所は考えた。
このことはひた隠しにしよう。
そして、とりあえず、面倒は石川梨華に押し付けよう。

つくづく酷い事務所である。
12 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時30分29秒
「いい?きちんと挨拶するのよ」
「ほーい」
「メンバーの名前は覚えたよね?」
「ばっちり!」
何故か自信満々の吉澤。

おー!これが本物のモーニング娘。
昨夜、梨華から“モーニング娘。の歴史”を写真付でみっちりレクチャーされた吉澤。
心配する梨華をよそに、すっかりファン気分でウキウキだった。

「吉澤、もう大丈夫なの?」
「はい、もうすっかり」
おい、おい、飯田さんに話しかけられちゃったよ。

あっ!矢口さんだ、ちっさくてかわいーなー。
あっ!安倍さんもいる、かあい〜。
あっ!ごっちんだ、美少女じゃん。
あっ!圭ちゃんだ、…。
13 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時30分59秒
吉澤の頬は緩みっぱなしである。
吉澤もかなりの美少女なのだが、どうやら当人は気付いていないらしい。
そもそも、自分が女の子であるという自覚が、少しばかり欠落している。

「なに呆けた顔してるのよ!」
隣の梨華は少々ご機嫌斜め。
でも一番は梨華ちゃん。
怒った顔もかわいいね…。

まったく懲りない吉澤である。
14 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時31分34秒
「お疲れ。今日は、はじけてたね」
何も知らない飯田。そう言って吉澤のポンと肩を叩く。
「どーも」
吉澤は嬉しそうに満面の笑み。
しかし、隣の梨華は心なしか顔が蒼い。

本番中、吉澤が不審な動作をするたび、
ツッコミ不能なボケをかますたび、
怪しげな英単語を口にするたび、
梨華は、胃に痛みを感じた。

「梨華ちゃん」
相変わらず、お気楽そうな吉澤。
「何?」
「仕事って楽しいね」
「…」

梨華の胃に穴が開く日は近い。
15 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時32分14秒
復帰第1日目の仕事はなんとか無事に終了した。
真夏の太陽が沈むには、まだしばらく時間がある。

「よっすぃー、買い物にでも行こうか?」
「そうだね」

とりあえずソファーベッドを注文。
今の小さなソファーでは、結構がたいのある吉澤には辛い。
「昨日、寝れなかった?」
「そうでもないけど、ちょっときつかったかな」

衣料品、雑貨、玩具…。
ふたり楽しげに見て回る。
16 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時32分52秒
女の子らしい梨華とクールな吉澤。
梨華の好きな色はもちろんピンク。吉澤は黒と白。
以前は趣味も正反対だったふたり。
買い物に出かけても、どちらかと言えば、吉澤が無理に合わせて付き合っていた。
けれど、今日の吉澤は心から楽しそうだ。
そんな吉澤の様子に、梨華もほんの少し得した気分。

「ねえ、よっすぃー、あのピンクのぬいぐるみ、すっごい可愛い!」
梨華が畳一畳ぶんはあろうかという、巨大なクマのぬいぐるみを指差す。
「ほんとに、可愛いね」
そう言う吉澤の視線は、ぬいぐるみではなく梨華に釘付けである。
かわいー。
17 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時33分25秒
衝撃の出会いを思い出す。
あれはまさしく一目惚れだった。

病院のベッドで、長い、長い眠りから覚めた吉澤。
じっと自分を見つめる目の前の美少女。
か、か、かわいー…。
「…よっすぃー」
どこから出しているのか、背中がむずむずしてくる独特な声。
可愛すぎる…。
どこの誰だかわからない。
しかし、その愛らしさに瞬殺されてしまう吉澤だった。

まさか、それが自分の彼女だったとは知る由もなく。
18 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時34分03秒
部屋に戻ったふたり。
楽しい気分のまま、夜遅くまで他愛のない語らいの時間が続く。

「じゃあ、そろそろ寝ようか」
「そうだね」
ソファーベッドは今日注文したばかり。
梨華はベッドへ吉澤はソファーへ。

「一緒にこっちで寝る?」
梨華の声は少しばかりうわずっている。
吉澤も一瞬硬直する。
「そ、そうだね」
19 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時35分08秒
眠れない…。
「よっすぃー」
そっと呼びかけるが返事はない。
もう、寝ちゃったのか…。

両親の顔も忘れてしまったあなただけれど、
自分の名前を書くとき、“澤”を辞書で引いていたあなただけれど、
えーい!面倒くさい、と、薬を一日分いっぺんに飲み、
先生にお説教されてしまうあなただけれど、
わずかにでも、私のことだけは覚えていてくれた。
それが、心から嬉しかった。
20 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時35分53秒
本当のところ、吉澤は梨華のことも、まったく覚えてはいなかった。

私のことは覚えてるよね?
懇願するようなその眼差し。
この少女の瞳に悲しみの翳りなど見たくない。

もちろん、そのときの吉澤は、そんな難しい単語を使って考えていたわけではない。

それはまさに、野性の勘。

覚えてると言えば彼女は喜んでくれるはず。
彼女を喜ばせたらきっといいことがあるに違いない。

おかげで、梨華と一緒に暮らせることになった。

野性の勘は素晴らしい。
21 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時36分43秒
やっぱり、どうしても眠れない。
その寝苦しさは、連日続く暑さのせいばかりではない。
梨華は、隣で眠る吉澤の横顔をそっと眺める。
その中性的で整った顔立ちは、以前となんら変わるところがない。

初めてのキス。
そして、初めての夜…。
恥ずかしそうに私の肩を抱くあなた。
『好きだよ…』
そう耳元で囁いてくれた。

あのドキドキがたまらなかった。
完璧主義で、クールで、年下なのに私よりずっと大人。
自信のない姿なんて決して見せなかった。
なのに、私に触れるあなたの手も…震えていた。
あなたの唇が…、
あなたの指先が…。
あなたは忘れてしまったのね、あの夜のことも…。
22 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時37分32秒
と、突然、吉澤がガバッと体を起こす。
そして、梨華の体に覆い被さるような形で、両手をベッドの上につく。
「よっすぃー…」
吉澤の視線が、梨華の瞳に注がれる。
その視線は、唇に、胸元に…。
梨華の胸が激しく高鳴る。
「梨華ちゃん、思い出した…」
「そ、そんな、突然…」
だめだよ…。
梨華は体を硬くする。
でも、少し期待…。
「寝る前に牛乳飲むことにしてたんだ…」
そう言って吉澤はキッチンに向かう。
調子の外れた鼻歌を歌いながら。

期待した私が馬鹿だった。
どうでもいいけど、ひとの胸見て、牛乳思い出すのはやめて欲しい。
23 名前:第1話 熱帯夜 投稿日:2002年04月09日(火)20時38分18秒
やばいところだった…。
吉澤はコップに注いだ牛乳を一気に飲み干す。
そして、ほっと胸をなで下ろす。

こんな状態じゃ、とても眠れやしない。
寝た振りはしていたけれど…。

隣には梨華の柔らかい体の感触。
甘い香りが、…してきたり…なんかして…。
ふと感じる梨華の視線…。
あー、もう限界だ。
思わず梨華の体の上に…。
と、そこで、
不意に我に返った。
いったい何をしているんだ…。
いけない、いけない。
危うく嫌われるところだった…。

吉澤は部屋に戻ると迷わずソファーに横になった。
寝苦しい夜はもうしばらく続く。
24 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月09日(火)20時47分01秒
更新しました。
第1話終了です。明日からは、先を書きつつ、校正しながら、少しずつ更新します。

>7名無し読者様
レスありがとうございます。
すごく嬉しいですが、
前作を読んでくれた方には、イメージが違いすぎて申し訳ないです。

>8名無し読者
レスありがとうございます。
もし、気に入っていただければ、お付き合い下さい。
25 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月09日(火)22時35分28秒
>本番中、吉澤が不審な動作をするたび、
>ツッコミ不能なボケをかますたび、
>怪しげな英単語を口にするたび、
>梨華は、胃に痛みを感じた。
解ります。吉澤さんの奇行にはこんな原因が有ったんですね・・・。
26 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月10日(水)06時37分33秒
前作も読んでたんですけど、こうも雰囲気が変わるとは…(w
素直に面白いです
27 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月10日(水)19時23分57秒
前作から読ませていただいておりました。私も26さんに同じく
雰囲気がガラリと変わってて良い意味でビクーリ(w
こう、笑いへのテンポが凄く(・∀・)イイ!!です。ギャグにはテンポが大事ですからね。
いやはやホント面白くて続きが気になります・・・・ハァハァ。

梨華乳見て牛乳思い出す(ふり?)よっさんに激しくワラいました。野性の勘マンセー(w
28 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月10日(水)20時30分35秒
時は過ぎ、季節は冬。

今日は某菓子メーカーのCM撮影。
ふたりのシーンの後休憩となり、控室で弁当を広げる。

「よっすぃー、もうすぐ矢口さんの誕生日なんだけど、覚えてる?」
梨華はほんの僅かな期待を込めて聞いてみる。
私と一日違いなんだよね…。

「へえ、そうなの」
吉澤はキョトンとした顔。
「ありがと、教えてくれて。そっか、プレゼント何がいいかな…んー…」
矢口の喜ぶ顔を想像しているのか、少し嬉しそうな吉澤。
29 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月10日(水)20時31分29秒
「もうひとつ忘れてることない?」
「へっ?…忘れてること…」
吉澤は眉根を寄せて考える。
「ん…いっぱい忘れてるからな…」

確かに、その通りである。

「…もういい、たいしたことじゃないから…」
梨華は寂しそうに俯く。

期待は裏切られるためにある。
30 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月10日(水)20時32分51秒
梨華は左手にはめた指輪をそっと撫でる。
去年の誕生日、吉澤からのプレゼント。

梨華ちゃんにはちょっと大人っぽ過ぎるかな?
あのひとは、そう言ってからかうように笑った。
酷いよ、よっすぃー。
ちょっと、拗ねてみせると、吉澤は梨華の手を取り指輪をはめてくれた。
まるで結婚式のワンシーン。
ありがとう、一生大切にする。
吉澤の右手が梨華の顎を僅かに持ち上げ、そして…。

と、そこで、
梨華の甘い回想は打ち切られる。

「うあ゛―!」
吉澤叫び声。
目の前には弁当のゆで卵を喉に詰まらせて、もがき苦しむ吉澤。

それが現実である。
31 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月10日(水)20時33分56秒
もうー、なにやってるの。
呆れつつも吉澤の背中をさすってあげる梨華。
「だから、よく噛んで食べなきゃだめだって、いつも言ってるじゃない」
梨華はウーロン茶のプルトップを開けて、吉澤に手渡す。
「あー、苦しかった…」
梨華の妙に疲れた顔。
「どうしたの?」
「…なんでもない」

このひとには、もう二度と期待しない。
あらためて心に誓う梨華だった。
32 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月10日(水)20時34分49秒
ある日の夜。

今日も一日がんばった。
満足げな吉澤。

今日も一日ハラハラした。
疲労困憊の梨華。

いつも、こんな感じである。

吉澤は収録中、わけのわからない英語を連発する。
なかなか発音はいい。
さすが英検1級を持っていただけのことはある。
別に資格を剥奪されてわけではないが、あえて、ここは過去形にしておこう。
33 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月10日(水)20時35分55秒
しかし…。
梨華はため息をつく。
確かに、発音はいいのよ。
でもね、よっすぃー…、
あなたの英語は、単語も文法もムチャクチャだわ。

吉澤は、他にも、漢検1級、ソフトウェア開発技術者等々、
履歴書欄に書ききれないほどの資格を取得している。
実は密かに司法試験を目指していた。
34 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月10日(水)20時36分47秒
アイドルは少しくらいバカなくらいの方がいい。
以前の吉澤は、そう言って素晴らしい肩書きを隠していた。
ときには、わざとボケてみたりもした。
確かに、少しぐらいバカなほうが可愛いかもしれない。

少しぐらいはバカなほうが…、
あくまでも、少しぐらい。
35 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月10日(水)20時37分28秒
疲れたちゃったよ…。
「もう、私、寝るね」
そう吉澤に声をかける梨華。
が、
吉澤は既に夢の中。
なんの苦労もないがごとく幸せそうな寝顔。

なぜだかひどく悔しい梨華だった。

明日はオフ。
そして…。
36 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月10日(水)20時55分31秒
レスありがとうございます。

>25名無し読者様
個人的にはカッコイイ吉澤さんが好きなんですが、
書き手としては、いろいろやってくれる吉澤さんに感謝してます。

>26名無し読者様
前作を読んでくれた人がいたことに、すごい感動したもんで、
面白いと言ってもらえると、ほっとします。

>27名無し読者様
勇気付けられるコメントありがとうございます。
ギャグは難しいですね。
真面目な顔で仕事(してるふり)しながら毎日がんばって考えてます。

37 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月10日(水)22時06分12秒
(;´▽`)<このひとには もう二度と期待しない‥‥

石川さんの顔が目に浮かびます。
38 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月11日(木)02時55分54秒
ここのよっさんから、現実のよっさんが綺麗に浮かんでくる・・・
それで良いのか吉澤?
39 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月11日(木)21時01分38秒
久々のオフ。
そして梨華の誕生日。
それが幸運なのか不運なのか、今ひとつ量りかねる梨華だった。

日が高く昇ろうとする時刻。
吉澤はまだ夢の中。
もう!今日がなんの日だかわかってるの?

わかってないか…。
40 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月11日(木)21時02分39秒
今日は何をしよう。
梨華は思いを巡らす。

遊園地にでも行こうかな?
それとも家でゆっくりして、いつもよりほんの少し豪華な夕食。

ベッドの脇に座って吉澤の寝顔を眺める。
穏やかで気持ちよさそうな顔。
もう少し寝かせてあげよう。
41 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月11日(木)21時03分41秒
去年の誕生日には、あなたが夕食を作ってくれた。
スパゲティー、サラダ、コロッケ…。
ちょっと男っぽい料理だったけど、とっても美味しかった。

今のあなたの料理。
味は悪くない。
意外なことにも…。

でも、食べる前少し緊張するの。
何が入っているかわからないから…。

梨華は昨夜の食卓を思い出す。
ねえ、よっすぃー、
じゃがいもがなかったからって、カレーに、さつまいもは合わないと思うよ…。
42 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月11日(木)21時04分40秒
「…うう…」
吉澤がようやく目を覚ます。
「あー!」
突然叫び声を上げる吉澤。
「やっべー、寝過ごした。プレゼント買いに行かなきゃ」

いつになく必死な吉澤の形相に、梨華はただ呆然とする。
明日は矢口の誕生日なのだ。

歯ブラシを口に咥えたまま、洗面所から出てきて服を着替え始める吉澤。
「じゃあ、梨華ちゃん、行ってくるね」
「ねえ、よっすぃー」
「何?」
「今日ね…」
「ああ、話は帰ってからね」

目覚めてから約3分。疾風のように駆け抜けていった吉澤。
よっすぃー…もう、酷いよ…。
43 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月11日(木)21時05分35秒
ひとり部屋に残った梨華。
おとなしく吉澤の帰りを待つしかない。

3時、4時、5時…。
時は無情に過ぎてゆく。
梨華はひとりで夕食の買い物に出かけることにした。

8時、9時、10時…。
よっすぃー、何してるの?

ひとりぼっち。
史上最悪の誕生日。
44 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月11日(木)21時06分36秒
梨華はソファーに座り、ぼんやりテレビを眺める。
せっかく作った夕食は、テーブルの上ですっかり冷めてしまっている。

時計の針はもう間もなく、今日の終わりを告げる。
と、その時、
ベランダのほうでガタンと音がする。
泥棒?
怪しげな人影が動く。

こんな夜遅くに、ベランダからの侵入者。
まともな人間であろうはずがない。
泥棒か、ストーカーか、変質者。

よりによって、どうしてこんな時に…。
梨華の鼓動が一瞬にして跳ね上がる。

助けて、よっすぃー!
あんな吉澤でも、用心棒としては頼りになる。
45 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月11日(木)21時07分18秒
「梨華ちゃん!開けてくれー」
ベランダから叫び声。
それはまさしく…。
泥棒でも、ストーカーでも、変質者でもなく…、

吉澤だった。
46 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月11日(木)21時19分22秒
更新しました。

レスありがとうございます。

>37名無し読者様
可哀想な石川さん。ずっとこんな感じです。

>38名無し読者様
どうなんでしょうね?本当はおもいっきりカッコイイことを期待してるんですが。

今回の更新は、笑えるネタもないので、もう少し先までいこうかとも思いましたが、
後の段取りもあるので、また月曜です。
47 名前:素人○吉 投稿日:2002年04月11日(木)21時48分40秒
はぅはぅー。もう、すんげーツボ。
妙にこの二人が親子に見える(笑)

早く続きが読みたいデス。
48 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月12日(金)00時16分41秒
>47
メール欄を正しく使ってるやつ久しぶりに見た
49 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月13日(土)18時46分34秒
(0^〜^0) ←気持ちの良いアフォぶりでございます(w
50 名前:名無し 投稿日:2002年04月15日(月)04時47分12秒
おもしろいっす!
>でも、食べる前少し緊張するの。
>何が入っているかわからないから…。
って(w                                

51 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月15日(月)20時19分18秒
レスありがとうございます。

>47素人○吉様
本編は明日からちゃんとやります。すみません…。

>49名無し読者様
3話は、健気なアフォ、4話は、ほのぼのしたアフォ、
5話、どんあアフォをやってもらうか、構想中です。

>50名無し様
少ない笑い所に、きっちり反応してくれて、ありがとうございます。

ちょっとスランプ。5話のストーリーが全く浮かびません。
ラストは出来てるけど…。

と、いうわけで、
とっても、話の途中ですが、ここで番外編。
ネタは4/14ハローモーニング、及び昨夜の桃板です。
(新鮮じゃないとネタにできないし…)

52 名前:突然番外編 投稿日:2002年04月15日(月)20時21分01秒
今日はハロモニの収録。
控え室には4組ずつの赤と青のジャージが並べてある。

「今日は修学旅行って設定なの、わかる?」
心配げに吉澤の顔を覗き込む梨華。
「シュウガクリョコウ?…聞いたことはある…」
ため息をつく梨華。

「とにかく、何処に行ったとか聞かれたら、金閣寺って答えるんだよ」
「キンカクジ?」
「全面、金箔のお寺だよ」
「ふーん、悪趣味だね」
53 名前:突然番外編 投稿日:2002年04月15日(月)20時22分14秒
「んで、今日は何すればいいの?」
「枕投げだよ。よっすぃー得意の体力勝負ものだから、大丈夫でしょ」

でも、そのバカ力で、私に枕投げるのは、やめてね…。
手加減という言葉も忘れてしまった吉澤に、少し不安を覚える梨華だった。

スタジオに入ると8組の布団が敷いてある。
「なんだこりゃ…」
ぎょっとする吉澤。
「修学旅行っていったら、みんなで寝るものなのよ」

金箔の部屋で寝るのか…。
なんか、ヤラシイなあ…。

中途半端に梨華の言葉を端折って解釈する吉澤。
金閣寺で寝てどうする気だ…。
54 名前:突然番外編 投稿日:2002年04月15日(月)20時26分56秒
布団の上で辻や加護と、はしゃぐ吉澤。
レベルが同じなので気が合うようだ。

あー、もう…。
なんで、毎回、私は収録前にこんなに疲れるんだろう…。

「私もう寝る…」
梨華はふざけている皆からは、一番離れた布団の中に潜り込む。
ささやかな抵抗である。

梨華はほんの一瞬浅い眠りに落ちた。
お願いだから、本番まで誰も近寄らないでね…。

しかし、世の中そんなに甘くはない。
55 名前:突然番外編 投稿日:2002年04月15日(月)20時28分01秒
いくら楽しくはしゃいでいようと、常に梨華を気にしている吉澤。
大好きなのだから仕方がない。
いささか、はた迷惑な話ではあるが…。

「よ、よっすぃー…」
なんで、いきなり布団に入ってくるの…。
なんで、頼みもしないのに腕枕なんかしてるの…。
なんで、右手を腰に回してるの…。

シュウガクリョコウって、きっと、こういうことをするものに違いない。
そう信じて疑わない吉澤だった。
56 名前:突然番外編 投稿日:2002年04月15日(月)20時29分05秒
そこへ、ゆっくりと保田がスタジオへ入って来た。
いつも、いつも、騒がしいわね。
そう、言いたげに憮然とした表情。

保田圭21歳。
大人である。
いちいち子供のじゃれ合いなどに、構っていては身が持たない。

と、
隅の方で怪しい気配。
もちろん、梨華と吉澤。

保田にとって、梨華は特別可愛い後輩。
まさか邪心はないが、もし自分が男であれば彼女にしたい。
それくらいの気持ちはある。
目の前で、いちゃつかれたら、ちょっと面白くない。
少なくとも、それくらいには特別なのである。

保田の頭をかすめる二字熟語。
それは、
参戦!
57 名前:突然番外編 投稿日:2002年04月15日(月)20時30分20秒
「や、保田さん…痛い…」
保田の奇襲に、思わず自ら、吉澤の胸に顔を埋める梨華。
「チャーミーが壊れるー」
必死で保田の魔の手から、梨華を守ろうとする吉澤。
何を勘違いしたか、辻、加護までもが上に乗ってくる。

「ケメコー!」
先輩に対するとは、とても思えぬその口のききよう。
くそー!
せっかく、これからだったのに…。

いったい、何をする気だったんだ…。
58 名前:突然番外編 投稿日:2002年04月15日(月)20時31分47秒
収録終了。
妙にぐったりした梨華の顔。

最悪…。
よっすぃーったら、思い切り、枕、投げてくるし…、
本番前のスタジオでは、変なコト、してくるし…、
保田さんまで悪ふざけするし…、
辻、加護の体重は重いし…。

もう、全部よっすぃーが悪い。
吉澤を睨みつける梨華。

梨華ちゃん、何怒ってるんだろう…。
ふと、吉澤の脳裏に、本番中、中澤が言った言葉が蘇った。
吉澤は自分の犯した過ちに気がついた。

そーか、あーゆーことは、押入の中でやらなきゃいけなかったんだ…。

おしまい
59 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月15日(月)20時35分22秒
お遊びでした。すみません。

明日は予定通り、続きいきます。
60 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月15日(月)21時36分16秒
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
噂の祭りシーンですね(w
萌えますた(;´Д`)ハァハァ
61 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月15日(月)22時32分12秒
ヨッスィ━━━━━━(;´▽`)━━━━━━ !!!!!
タイムリーネタワショーイ!!
萌えワラわせていただきました(w
相変わらず吉は野性の本能丸出しですな。
62 名前:AIM-9 投稿日:2002年04月16日(火)00時21分27秒
爆笑
中澤ーーーお前は何という事を教えるんだ(笑)
63 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月16日(火)17時03分43秒
番外編ありがとうございます。
萌えどころイパーイ!の、「ハロモニ」だっただけに・・・・・。
さーて、アフォな吉を、もう一度巻き戻してみるとするか(爆)
がんがってください。
64 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月16日(火)20時41分54秒
「ど、どうしたの、よっすぃー…」
そこには、巨大なピンクのクマのぬいぐるみを背負った吉澤が立っていた。
冬だというのに、額には汗がびっしょり。

「遅くなってごめんね、梨華ちゃん」
吉澤は、クマと一緒に自分の体に縛り付けたリボンをほどき、泥だらけの服を払う。
「誕生日プレゼント」
「よっすぃー…」
う、嬉しいけど…、
「なんで…」

そのぬいぐるみは、いつか梨華が、店で見て可愛いと言ったもの。
それを覚えていた吉澤が、誕生日プレゼントに買ってきたのだろう。
しかし、梨華にはさっぱりわからない。
なぜこんな深夜に泥だらけになって帰ってきたのか、しかもベランダから…。
そして、その、あまりにも…。
65 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月16日(火)20時42分50秒
「寝坊したのが失敗だったよ」
照れくさそうに笑う吉澤。

そう、吉澤は寝坊したことを心から悔いていた。
それが失敗だったと、
あくまでもそれだけが唯一の失敗だったと…。
66 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月16日(火)20時43分40秒
急いでぬいぐるみを買いにやって来た吉澤。
店にはいるなりスタスタと店員の元へ駆け寄る。

「あれ下さい」
「あれ…ですか?」
困惑した面持ちの店員。
「あれは、売り物じゃないんですが…」
吉澤が指差すその先、
そう、それはどこから見ても店内ディスプレー用である。

「売ってくれないんですか!」
吉澤に凄まれて、一歩後退する店員。
必死な吉澤はさらに詰め寄る。
世の中は気合でどうにでもなる。
吉澤はそう思っている。

「どうしてもっていうなら、売らないことも、ない、ですが…」
「じゃあ売って下さい」

世の中、気合である。
67 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月16日(火)20時44分24秒
「プレゼントなんです」
「プレゼント…ですか…でも、ちょっと包装は…」
一辺2メーターの箱を常備している店があったら、ちょっとびっくりである。
しかし、いかにも納得できない様子の吉澤。

吉澤に常識を求めてはいけない。

「…あの、それでは、リボンでも巻いておきましょうか」
「はい」
吉澤、満面の笑顔。
「ピンクのリボンでお願いします」
68 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月16日(火)20時45分44秒
巨大なぬいぐるみを抱えて去ってゆく吉澤の後ろ姿。
それを呆然と見送る店員。
あのプレゼントを受け取る人は、いったいどんな物好きなんだろうか?
よっぽど広い家に住んでいるのだろう。

ちなみに梨華の部屋は1DKである。
69 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月16日(火)21時09分41秒
レスありがとうございます。
本編より多いな…。

>60名無し読者様
吉澤さんと、お祭りのお陰です。

>61名無し読者様
私の筆力では、現実の吉澤さんには、かないません。

>62AIM-9様
笑ってもらえるのも、全て吉澤さんのお陰。

>63よすこ大好き読者。様
ハロモニはすごかったですね。
追いかけてもらってたんですか?

念のため、本編は番外編よりソフト路線です。
私の頭では、スタジオで、石川さんの布団に入ろうなんて、考え付かないので…。

あと、私は、真面目な話も書く人間でして…、
ギャグ考え過ぎでストレスがたまってきて、
ちょこっと、極短い、真面目な話を書きました。
前作に載せたので、もし、暇があったら読んでもらえると、うれしいかな…と。
たいした内容じゃないので、強くお勧めはできませんが…。
70 名前:素人○吉 投稿日:2002年04月17日(水)16時32分40秒
>吉澤に常識を求めてはいけない。
 解りました。(爆)

 あぁ、アフォよっすぃ〜良すぎ…。
71 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月17日(水)18時22分29秒
現物の(?、吉とダブって見える・・・・。(笑
な〜んか、こういうのやってそうですよね。
めちゃ、たのしみにしていま〜す。
72 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月17日(水)20時11分59秒
道行く人の奇異な視線もお構いなし。
大好きな梨華ちゃんへ、最高のプレゼントを手に入れた。
きっと喜んでくれるに違いない。
吉澤はそう信じて疑わない。

が、しかし、
そこにはひとつの問題が…。
これを抱えて電車に乗るのは難しいかも知れない。
切符を買う前にそれに気付いた吉澤。
少し偉かった。
73 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月17日(水)20時13分33秒
当然タクシーにも乗れない。
約30キロの距離。

走って帰ろう。

なんてことはない。
高橋尚子は42.195キロを2時間19分代で走るのだから。
なんの根拠もなく、自分とオリンピック金メダリストを比べて安心する吉澤だった。

しかし、高橋尚子は、巨大なぬいぐるみを抱えてフルマラソンを走ったりはしない。
74 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月17日(水)20時14分58秒
吉澤が梨華のマンションにたどりついたときには、もうすっかり夜も更けていた。
やっと着いた…。

が、しかし、
さらにもうひとつ問題が…。
電車に乗れないくらいだから、玄関から入るのは難しいかもしれない。
マンションに入る前に気付いた吉澤は、やっぱり少し偉かった。

しかし、そもそも、そのプレゼントの巨大さに問題があるのだ。
そこにはまったく気付かない吉澤だった。
75 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月17日(水)20時15分44秒
明かりの灯る梨華の部屋を見上げる。
ベランダからならなんとかなるだろう…。
梨華の部屋は5階。
大丈夫だ…きっと…。
待っててね、梨華ちゃん。

吉澤はリボンを解いて、自分の体にぬいぐるみを縛り付ける。
そして、マンションの外壁をフリークライミングがごとくよじ登った。

娘。をクビになっても、即刻レンジャー部隊としてやっていける吉澤である。
76 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月17日(水)20時16分29秒
「覚えててくれたんだ?」
「え?」
「私の誕生日」
「梨華ちゃんの誕生日を、チェックしてないわけないじゃん」
いささか得意げな吉澤。

「よっすぃーって、ほんとに、どうしようもなく…」
「ん?」
「…バガだよね」
「ひっでー!」

せっかく苦労して買って来たのに。
そう言おうとした瞬間、梨華が吉澤に抱きついてきた。
「梨華ちゃん…」
なんで、泣いてるの?
77 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月17日(水)20時17分02秒
冷めた夕食を、それでも美味しそうに食べるふたり。
幸せな笑い声は明け方まで続く。

よっすぃー、ありがとう。
でも、ごめん。
一生大切にするとは言えない…。

梨華の脳裏には“日本の住宅事情”という単語が浮かんでいた。
78 名前:第2話 誕生日 投稿日:2002年04月17日(水)20時17分49秒
その日未明、ピンクの熊がマンションをよじ登っているという通報が、
最寄りの警察署に寄せられた。
「よっぱらいの幻覚じゃないの」
「まったく、ピンクの熊なんか、いるわけないじゃないかよ」
見回りに来た宿直の警官は、寒そうにコートの襟を立て愚痴をこぼす。

もちろん、そんな出来事などまるで知らないふたりだった。
79 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月17日(水)20時26分18秒
更新しました。第2話終わりです。
明日から第3話です。これまでよりは、若干長めの話しになります。

レスありがとうございます。
 
>70素人○吉様
解ってもらってありがとうございます。

>71よすこ大好き読者。様
やっぱり、本物の吉澤さんはスゴイ人かもしれない…と思う今日この頃です。
80 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年04月17日(水)23時02分24秒
はじめまして、梨華っちさいこ〜と申します。
んあ、ヨシコの潜在能力恐るべし(w
梨華ちゃんが幸せな誕生日をすごせてヨカータヨカータ。
81 名前:肩身が狭くなっちゃった 投稿日:2002年04月18日(木)04時04分22秒

>でも、ごめん。
>一生大切にするとは言えない…。
ここまで忍び笑いで堪えたのに、ど夜中に大爆笑してしまった。(鬱)
家族の冷たい視線が・・・怖い
82 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月18日(木)20時11分11秒
吉が、ピンクの熊を背負ってよじ登っている姿が安易に想像できるんですが・・・・・(笑
会社で、コソーリ読んでて、噴出しそうで怖いです。(爆
続きお待ちしております。(^^;
83 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月18日(木)20時15分12秒
レスありがとうございます。

>80梨華っちさいこ〜様
どーも。
ずっと、こんな感じですが、よかったらまた来てやってください。

>81肩身が狭くなっちゃった様
そんなに、笑ってもらったとは、嬉しい限りです。
迷惑かけてしまったようで…
84 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時17分16秒
梨華の朝は、吉澤の台本にふりがなをつけることから始まる。

吉澤ひとみの世界のジョーク。
せ・か・い。
鉛筆で書いたその文字を、少し眺めてから消しゴムで消す。

世界ぐらい読めるよね。
読めるって言って。
読んでね、お願いだから…。
85 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時18分34秒
「よっすぃー!もう…早く起きてよー」
気持ちよさそうに眠る吉澤の肩を揺り動かす。
「んうぁ〜」
やっと、上体を起こす吉澤。
目が半分開いていない。
まったく、もう…。

カーテンが揺れるその微かな物音にさえ目を覚ます。
そんな繊細な人だった。
以前の吉澤が懐かしい。
それはそれで困りものだったのだけれど…。
86 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時19分43秒
「早く着替えないと遅刻しちゃうじゃない!」
「ほら、さっさとご飯食べてよ」
「もー、ご飯粒こぼさないで!」
すでに恒例となりつつある朝の怒声。
「ほーい」
吉澤は意に介するふうもなく、いたってマイペース。

「ほんとにもう…私はよっすぃーのお母さんじゃないんだからね」
恋人だったのよ…。
そう付け加えたい梨華であったが、心の中にしまっておいた。
ふたりのあの甘い関係を、すっかり忘れてしまった人。
今の吉澤にそんなことを言っても虚しいだけだ。
87 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時20分36秒
吉澤の頭には、相変わらず虫が湧いている。
時にそれは、てんとう虫だったり、キリギリスだったり、
あるいは、カミキリ虫だったりする。

しかし、そんな吉澤にも最近密かに思い悩むことがあった。
88 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時21分36秒
一向に記憶が戻る気配はない。
このままここで暮らしていていいのだろうか?
梨華ちゃんもお年頃。
好きな男の人のひとりぐらいいるだろう…。

吉澤をそんな気持ちにさせるもの、
それは、梨華が薬指にはめている指輪。
人前では指輪の位置を変えている。
その微妙な女心…。

意外にも細かいところに気を回している吉澤である。

恋の力は、時に人をひどく敏感にする。
89 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時22分29秒
吉澤のアホさ加減を、もっとも身近に見ている梨華。
そして、その迷惑を一番に被っている梨華。
さらに、その尻拭いを一手に引き受けている梨華。

吉澤が、そんなことを気にしていようとは、夢にも思っていない。
90 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時23分34秒
梨華ちゃん、好きだよ…。
こうして一緒に暮らして、ますます好きになった。
絶対に叶うことのない、バカみたいな、片思いだね。
梨華ちゃん、大好きだけど…。
だけど、開放してあげなきゃ…。

健気な吉澤である。
指輪は吉澤からのプレゼントなのだが、もちろんそんなことは覚えていない。

健気だけれど、間抜けである。
91 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時25分38秒
撮影の合間、ふたりは近くの銀行に立ち寄った。

今日は給料日。
今月の生活費を下ろすため、通帳とカードを持ってATMの列に並ぶ。

梨華の給与明細にはYH特別手当てという怪しげな項目がある。
つまり、吉澤ひとみ特別手当てである。

心のこもった事務所からの慰労だ。
ありていに言えば、金は払うからこいつを何とかしてくれ。
そういうメッセージである。
92 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時26分26秒
月末のせいか長い列。
吉澤は珍しく神妙な顔で、物言いたげに梨華を見ている。

「どうしたの?」
「うん…、そろそろ、実家に帰ろうかと思うんだ」
「えっ?」
「やっぱ、ほら。親の顔を覚えてないって状況も、なんとかしないと…」

そうだよね…。
やっぱり、一番大切なのは家族。
そこには、私なんかの入り込む余地はない。
そう思うと梨華の胸はキュッと締め付けられる。
93 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時27分18秒
以前のあなたは、私の大切な恋人だった。
心から大好きだった。
いつも私を守ってくれるひと。
知的で、クールで、大人で、誰より頼りになるひと。

けれど、今のあなたは…、
ろくに漢字も読めなくて、
正月早々、全国生放送で、四国の県名は九州と答えてしまうひとで、
どうしようもなく間抜けで、頼りなくいて、
でも、純粋で優しいひと。
私は、そんなひとに、悔しいけど片思いしてるんだ。

なんだか、本当に悔しい…。
94 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時29分24秒
“通帳の記載欄が一杯になりました、窓口へお越し下さい”
ATMの画面表示。

「ありゃりゃ、窓口に来いだってさ」
吉澤のわざとらしいくらい明るい声。
ふたり、店内に入る。

「うーん、あのお姉さんが一番可愛いなー」
そう言ってカウンターに向かう吉澤。
「バーカ…」
梨華は吉澤の後ろから、いつものようにひと睨み。
95 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時30分11秒
「あの、通帳が一杯になったみたいなんですけど…」
吉澤がそう言った瞬間、笑顔だったお姉さんの顔が凍り付く。

なにか間違ったことを言っただろうか?
何気ないひとことで、人を凍り付かせてしまうことが、たまにある…、
いや、ちょくちょくある吉澤。
自分の言葉を心の中で反芻してみる。
今回は何も言ってない、はず…。
96 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時31分01秒
「キャー!」
その悲鳴は、お姉さんではなく背後から。
梨華ちゃん?
振り返るとそこ、フルフェイスのヘルメットを被った男。
男は梨華の腕を掴んで、首筋に包丁を突きつけている。

「金を出せ!」
男はそう言って持っていたバックを窓口に放り投げる。
店内の空気が張りつめる。
怖い者知らずの吉澤も、さすがに身動きできない。

「早くしろ!」
冷静さを取り戻した行員が、カウンターの中で現金をバックに詰め始める。
「他のやつは動くんじゃねえぞ!」
現金の詰まったバックを受け取ると、男は梨華を突き飛ばして店から出ていった。
97 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時32分46秒
吉澤は慌てて梨華の元へ駆け寄る。
「よっすぃー!」
梨華は泣き顔で吉澤に抱きついた。
「えーん、怖かったよぉ…」
体を震わせ、甘えた声で、吉澤にしがみつく梨華。
いつもと逆の立場。
非常事態にも関わらず、妙にドキドキしてしまう吉澤。

幸せだなー。

お気楽な吉澤である。
98 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時33分58秒
慣れない警察の事情聴取。
マスコミ対応の打ち合わせ。
当然その日の仕事はキャンセル。
部屋に戻った時には、ふたりともぐったりしていた。

テーブルにはコンビニ弁当がふたつ。
トップアイドルのわびしい食卓である。
99 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時35分07秒
「今日はさんざんだったね…」
そう言ってため息をつく梨華。
「でも、梨華ちゃん、怪我しなくて良かったよ」
「そう…なんだけどね…」
妙に淋しげな梨華の顔。
食も進まないようだ。
無意識に右手で左手の薬指に触れている。

いつもの指輪がない。
吉澤は、ほとんど奇跡に近い観察力で気が付いた。
100 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時35分55秒
「指輪どうしたの?」
「え?」
梨華の表情が一瞬固まる。

よっすぃー、ひょっとして覚えてるの?
去年の誕生日のこと…。
「いつものやつ、今日してないから…」
「ああ…」
だよね…。

奇跡はそうそうおきるものではない。
101 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時36分44秒
「たぶん、銀行でなくしたんだと思う…」
今度は吉澤の表情が変わる。
「大変じゃない!」
そう言って突然立ち上がる吉澤。
割り箸を持ったまま玄関へ向かう。

「ちょっと、よっすぃー。どこへ行くのよ?」
「銀行」
当然と言いたげな吉澤。
梨華ちゃんの大切な指輪、今すぐ探しに行かなきゃ…。
吉澤の思考はその一点のみである。
102 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時37分39秒
「今何時だと思ってるの?」
時計に目をやる吉澤。
「午後10時36分」
「銀行は何時まで?」
「3時」
「開いてると思いますか?」
「閉まってますね…」
「良くできました」

シュンとしてテーブルに戻る吉澤。
手には割り箸を持ったまま。
103 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時39分27秒
「それにね、銀行にはないと思うの」
「どうして?」
「あの時、ないのに気づいて、あたりを探してみたんだけど、落ちてなかったから…」

あの時、吉澤に抱きついて泣いていた梨華。
心の中では、誰か大切な人からの贈り物を気にしていた…。
そう思って、幸せに浸っていた自分がちょっと悲しい吉澤だった。

しかし、今大切なのは梨華の指輪である。
梨華ちゃんを悲しませるものは許さない!

立派な男気である。
104 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月18日(木)20時42分02秒
「じゃあどこに?」
「あの強盗に持って行かれたのかもしれないね」
悲しそうに俯く梨華。
「ひっでー!あの指輪泥棒野郎」
「…銀行強盗なんだけど…」

絶対捕まえてやる!
その夜、ベッドの中でひとり拳を握り締める吉澤だった。
105 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月18日(木)20時47分11秒
更新しました。
気が向いたので、今日はちょっと多めです。

いつものように、木曜なので次回はまた来週です。
106 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年04月18日(木)23時41分26秒
ヨシコ、記憶を失っても男前だ! カッケー!!

メール欄笑わせてもらいました。
ちなみにオイラの「間違い」は友達に連れてかれたカードショップで
冗談半分で娘。のカードを買ったことでした…。
107 名前:よすこ大好き読者 投稿日:2002年04月19日(金)00時25分12秒
ちなみに私は、去年の暮れまで全員の名前がいえなかった。
間違いは、ヲタもだちに何本かビデをを送ってもらって・・・・。
そこから今日までくるとこまできちゃいましたって感じで・・・・(^^;

男気のある吉。やっぱ吉はこうでなくっちゃ!
108 名前:肩身が狭くなっちゃった 投稿日:2002年04月19日(金)00時44分57秒
ゆっちさんの真っ当な人生からの転落過程に涙が・・・
ちなみに私は、娘にCDを買わせてますが・・・。
109 名前:ホッピー 投稿日:2002年04月19日(金)03時14分24秒
(O´〜`O)<いつも楽しみにしてるべ。ドキドキ。
110 名前:よしいし読者。 投稿日:2002年04月19日(金)06時01分40秒
初めまして、いつも楽しく読んでいます。
良いですね〜この(0^〜^0)
かなりお馬鹿ですけど…そこが愛らしいというか…(汗
梨華ちゃんの眉間の皺が消えなくなっちゃいますね(笑
111 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月22日(月)02時17分17秒
Σ( ̄□ ̄;)ハッ!? こんなに面白い小説を、いままで見逃していたなんて……
つーワケで、今日まとめて読みました。(メール欄も含め)オモロ過ぎで、腹痛いです。
無理のない更新で、是非とも最後まで(アフォな)吉澤さんと共に突っ走ってください。
112 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月22日(月)20時45分32秒
レスありがとうございます。

>106梨華っちさいこ〜様
その冗談が命取りでしたね…。
ご愁傷様です。

>107よすこ大好き読者様
私も、その頃は、辻さん加護さんの区別がどうしてもつきませんでした。
ヲタもだち…いいですね。私のツレは大抵大卒女子なので、言えない…。

>108肩身が狭くなっちゃった様
羨ましい…。
私は、いつも、別のCDと一緒に買ってます。毎回、倍の出費…。

>109ホッピー様
読んでもらって、ありがとうございます。
HN見覚えがある気がするのですが、気のせいですか?

>110よしいし読者。様
どーも、初めまして。
吉澤さんには、このペースでいってもらいます。梨華ちゃんにはわるいですが…。

>111名無し読者様
笑ってもらえるのが、何より力になります。
暖かいコメントありがとうございます。
113 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月22日(月)20時48分13秒
“モーニング娘。石川梨華銀行強盗に襲われる”
連日のようにワイドショーを賑わせたビッグニュースも、既に下火になりつつある。

犯人は依然逃走中。
犯人逮捕に燃えているのは、世界一優秀な日本の警察。

そして、吉澤。

銀行強盗である。
凶悪犯罪者である。

吉澤ごときに捕まえられるような、間抜けではないだろう。
114 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月22日(月)20時48分48秒
梨華は昼食の焼きそばを作っている。
吉澤は引っ越しに向けて荷物の整理。

「できたけど、お昼ご飯にする?」
「そうだね」

テーブルに向かい合って座るふたり。
梨華は部屋の隅のダンボールに目をやり、軽くため息をつく。

会話ははずまない。

「おいしいね」
「そうかな」
覇気のない梨華の声。
「やっぱ、梨華ちゃん料理うまい!」
吉澤は梨華の気持ちを引き立てようと懸命である。
「料理って…、焼いてソースかけただけだよ」
「…」
115 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月22日(月)20時49分42秒
梨華はあの日以来沈みがちである。
よっぽど指輪のことがショックなんだろう…。
明るく振る舞っている吉澤だが、指輪の向こう側に見え隠れする彼氏の存在に、
実はそうとう胸をかき乱されている。

梨華ちゃんの彼氏ってどんなひとなんだろう?
格好いいんだろうな…。
こんな可愛い梨華ちゃんのハートを射止めるような男だもん…。
吉澤の勝手な妄想は膨らむ。
きっと…、
背が高くて、スポーツ万能で、優しくて、男前で、頭の切れる人に違いない…。
太刀打ちできないよな…。

実際に、梨華の好きな人は、
背が高くて、スポーツ万能で、優しく、男前で、頭がキレてる女の子だったりするのだが。
116 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月22日(月)20時51分29秒
あーあ…。
ため息の数は日増しに多くなる。
やっぱり、行っちゃうんだよね…。
梨華のため息の原因は、もちろん吉澤の引っ越しである。

「ねえ、梨華ちゃん、せっかく休みなんだし、遊びに行かない?」
「引っ越しの準備はいいの?」
「別に急ぐわけじゃないしさ」
「そう、だよね」
少し笑顔の梨華。
「そうだよ」
ようやく見せた梨華の笑顔に、ほっとする吉澤。

実は出て行きたくない吉澤と、実は出て行かせたくない梨華。
まどろっこしいふたりである。
117 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月22日(月)20時56分45秒
内容も薄く、短いですが、更新です。

んー、まだ5話のネタが浮かばない…。
ネタさえ浮かべば、すぐ書けるんだけどな…。

また、吉澤さん、なんかやってくれないかな…。

118 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年04月22日(月)22時53分52秒
あぁあ! やきもきする!!
ヨシコ! 持ち前の男らしさで押し倒せ!!

…う〜ん、どうも最近発情期気味。
119 名前:ホッピー 投稿日:2002年04月23日(火)03時15分15秒
(O´〜`O)<更新おつかれさま。ここのいしよしは微笑ましくて好きだべ…
120 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月23日(火)20時31分56秒
ふたりが向かったのは遊園地。
娘。はオフでも世間は平日。
園内はいい具合に空いていて、上機嫌で遊ぶたり。

「次あれ乗ろうよ」
ジェットコースターを指差す梨華。
「えっ、すっごい怖そうだよ」
吉澤は少しばかり逃げ腰。
「大丈夫だって」
「う、うん…」
梨華に手を引かれてゲートに並ぶ。

意外と、男らしくない吉澤である。
121 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月23日(火)20時33分03秒
「うわー!」
「キャー!」
強烈な風。
体にかかる重力。
悲鳴を上げながらも、楽しそうなふたり。
急回転、急カーブ。
「キャー!」
梨華は吉澤の腕にしがみつく。

あっ…。
なんだか、腕に、柔らかいものが、あたっている…んだけど…。
吉澤の恐怖感は一瞬のうちにぶっ飛んでいった。
いいのかな…?
いいんだよね…?
いっか…。

ラッキー!

「キャー!」
よっすぃー、こわいよー。
「うわー!」
梨華ちゃん、力入れすぎだよー。

カップルで乗るジェットコースターの醍醐味というやつである。
122 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月23日(火)20時33分41秒
楽しかったね、よっすぃー」
「そ、そうだね…」
吉澤は足元がふらついている。
「大丈夫?」
「…うん、ちょっと、刺激が強すぎて…」
「そこまで怖かったっけ?」
若干意味を取り違えている梨華。

「休憩する?」
「そうだね…」
123 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月23日(火)20時34分21秒
ジュースを買ってベンチに座るふたり。
どうも隣のベンチが気になる。

「よっすぃー、あの籠の中、赤ん坊だよね?」
「みたいだね…」
「お母さん、どこ行っちゃたんだろう?」
「…トイレかな?」

心配になって籠の中を覗き込む。
赤ん坊はすやすや眠っている。
しかし、いくら待っても、その子の親が戻ってくる気配はない。
思案した末、ふたりは赤ん坊を迷子センターに届けることにした。
124 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月23日(火)20時35分00秒
場内アナウンスがかけられるが親は現れない。
「…捨て子じゃないよね…」
不安げな梨華。
放ってはおけなくて、ずっと赤ん坊の寝顔を見ているふたり。
と、その時、
赤ん坊が目を覚まして、そのパッチリとした目を開ける。
「かわいー」
同時に同じ言葉を口にする。

「将来はモーニング娘。に入れたいね…」
そう言う吉澤に大きく頷く梨華。
赤ん坊の小さな手を指で優しく撫でると、赤ん坊が笑った。
「娘。になったら、おもいっきり可愛がってあげるよ。ね、よっすぃー」
梨華と吉澤は見つめあって笑う。
傍目には、まるで我が子をあやす若夫婦のようだ。
125 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月23日(火)20時35分52秒
ガタン

「す、すみません、その子の母親です」
そう言って入って来たのは二十歳前後の女。
「いったい、どこへ行ってたんですか?」
センターの人に怒られる母親。
しどろもどろに言い訳をする。

出て行く親子の後ろ姿を見送る。
「お母さん見つかってよかったね」
そう言いながらも、少し寂しそうな梨華だった。
126 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月23日(火)20時42分05秒
更新しました。
レスありがとうございます。

>118梨華っちさいこ〜様
過激なご意見で…。
あの人は、たぶん、寸前までいっても、押し倒せない根性なしだと思います。

>119ホッピー様
応援してやって下さい。
(有名人だったんですね…)

127 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月23日(火)20時46分36秒
あー。自分のコメント入れるの忘れてました。
いつものように短い更新です。
笑いはないけど、
一応和やかに楽しいシーンと、次話伏線なんかがあったりって感じです。
次回で3話は終わりです。

では、また明日。
128 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月23日(火)20時58分46秒
寂しいなら・・・吉の子供を生むしかない!!(笑
時がゆっくり流れてるようで、ほのぼのします。
がんがってくださいね。
129 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年04月24日(水)07時07分13秒
んあ〜、若夫婦マターリ。
それにしてもヨシコさん、ほんとに男になっちゃったのか?
柔らか〜いものがあたったときの反応が男そのものだぞ。
130 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月24日(水)20時17分45秒
親子と入れ違いに身長170センチ程のウサギが入ってきた。
正確にはウサギのきぐるみを着た人間である。

手をふりながら、スキップしてやってくる。
迷子の子どもを慰めるのも仕事なのだろう。

たいへんだなー…。
同じエンターテイナーとして、同情を込めてウサギを見つめるふたり。

ウサギの胸にはペンダントのようなもの。
面白い形のペンダントトップだな…。
と、
ふたり顔を見合わせて叫ぶ。
「指輪!」
131 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月24日(水)20時18分31秒
その声にびっくりしてふたりを見るウサギ。
「やべえ…」
確かにウサギはそう呟いた。

次の瞬間。
ウサギに掴みかかろうとする吉澤。
慌てて逃げ出すウサギ。

「待てー!このヤロー!」
吉澤も必死だがウサギも必死である。
「待てよー!指輪泥棒!」
132 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月24日(水)20時19分10秒
走る、
走る、
ひたすら走る。
やがて園内を出て一般道へ。
全力疾走でウサギを追いかけるトップアイドル。

めったに見られない光景である。

とうとう行き止まり。
右側には川が流れている。
追い詰められたウサギに吉澤は飛び掛る。
もう体力の限界だったウサギは、吉澤の一撃でその場に倒れこむ。
勢いあまった吉澤は、そのまま川へ落ちていった。
133 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月24日(水)20時19分55秒
病院のベッドで目覚めた吉澤。
「よっすぃー…」
目の前には梨華。
まるでいつかのよう…。

「梨華ちゃん…」
「よかった、ちゃんと覚えててくれて…」
梨華の目には涙が溜まっている。
梨華ちゃん…?
134 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月24日(水)20時20分36秒
「お願いだから、もう、無茶はしないでね…」
「無茶?」
吉澤はそこでようやく思い出す。
「あー!指輪」
「指輪なんかどうでもいいよ。よっすぃーのほうがずっと大切なんだから…」
「でも…」
ふと、吉澤は自分の右手が何かを握り締めていることに気付いた。
赤くなるまで握り締めた右手を出して開いてみる。

「あっ!」
その中には梨華の指輪があった。
「よっすぃー…」
梨華の目から涙が溢れ出す。
135 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月24日(水)20時21分17秒
「2回目の、プレゼントだね…この指輪」
「っえ?この指輪って…」
「ああ、よっすぃーがくれたんだよ」
「な、なんだ…」
悩んで損しちゃった…。
でも、
でも、
でも、
やったー!彼氏いないんだ。
幸せを噛みしめる吉澤。
136 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月24日(水)20時21分47秒
「梨華ちゃん…」
「何?」
「もうしばらく、梨華ちゃんの家にいていいかな?」
黙り込む梨華。
「迷惑?」
恐る恐る聞いてみる吉澤。
「しょうがないわね、よっすぃーは、私が側についていてあげないと、何するかわからないもん」
137 名前:第3話 片恋情 投稿日:2002年04月24日(水)20時22分27秒
銀行強盗も捕まり、引越しもなくなり、指輪も戻り、万事ハッピー。

ちなみに、銀行強盗はモーニング娘。の大ファンだった。
大金が手に入ったからといって、突然仕事を辞めては怪しまれる。
そう思って、仕事を続けていたあたりは理性的である。
しかし、いくらファンだからといって、強盗中に偶然手に入れた指輪を、
嬉しがって胸にぶら下げておくとは少し間抜けだ。

吉澤に捕まえられるだけのことはある。

無事、指輪の誤解も解けた。
しかし、あれほど気にしていた指輪の位置と微妙な女心については、すっかり忘れている吉澤。

恋の力は、人を時にひどく鈍感にする。
138 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月24日(水)20時31分42秒
更新しました。

レスありがとうございます。

>128よすこ大好き読者。様
さすがに、スルドイですね。
第4話 タイトルは「家族愛」です…。

>129梨華っちさいこ〜様
男になりたい…このラインが…とか言う人だから、
これぐらいはありえるかなって、思ったんですが。

第3話終了です。
タイトルは”かたおもい”と読んでください。
遊び心で、全部漢字3文字に統一しようと思ってたんですが、
3つ目にして、当て字に走ってしまいました。
貧困な語彙で情けない…。

139 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年04月24日(水)21時18分13秒
よぉぉし! ナイスガッツヨシコ!! あんた最高にカッケーぜ!!
最後の強がりお姉さんの梨華ちゃんも(・∀・)イイ!
140 名前:よしいし読者。 投稿日:2002年04月25日(木)18時19分23秒
ああぁ〜〜よすぃこ〜〜〜

( ^▽^)<「指輪なんかどうでもいいよ。よっすぃーのほうがずっと大切なんだから…」

なんでこの言葉に気がつかないんだぁ〜〜
こんなよしこが好きです(W
141 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年04月25日(木)20時47分53秒
今日もなんとか無事に一日の仕事が終了した。

ベッドに横になった途端、梨華の体には疲労が怒涛のように押し寄せる。
最近、常識問題形式の番組企画がやたらと多い。
私を胃潰瘍にする気なの?

しかし、今日の撮りは意外とよかった。
正直、梨華はほっとしている。

日本地図を書けという問題。
吉澤の書いた日本地図は、かなり日本列島に似ていた。
少なくとも遠目には…。

四国が4つに区切られているのを見たとき、
梨華は至上の幸福を感じた。

幸福の沸点が、かなり低くなった梨華である。

がんばったね、よっすぃー。
たとえ、そのひとつに、態本と書いてあろうとも。
そして、紀伊半島と中国地方が、どこかへトリップしていたとしても。

吉澤の更なる成長を願いつつ眠りに落ちる梨華だった。
142 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月25日(木)20時49分31秒
「よっすぃー、朝だよ」
いつものように、吉澤を優しく起こす梨華。
「早く起きてよ」
いつものように、優しくしていては起きない吉澤。
「起きなさい!仕事、遅れるでしょ!」
結局、いつものように、叩き起こされてしまう吉澤であった。

「う…うん、おはよー…梨華ちゃん、今日もかわいーね…」
寝起きの頭で、つい本音を口にしてしまう吉澤。
「もう、寝ぼけてないで、早く着替えて用意してよ」
文句を言いつつ、実はちょっと嬉しい梨華。

「ねえ梨華ちゃん、なんか変な声聞こえない?」
「変な声?」
まだ寝ぼけてるの、そう言おうとした時、梨華の耳にも確かに何かが聞こえた。
声は外から。
梨華は玄関の扉を恐る恐る開けてみる。
と、
「よ、よっすぃー!」
梨華の叫び声に驚いて駆け寄る吉澤。
そこには50センチほどの籠。そしてその中に赤ん坊。
143 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年04月25日(木)20時51分26秒
“1週間だけ預かって下さい。お願いします。”
添えられていたのは、哺乳瓶やオムツの入った紙袋、そして、その短い手紙だけ。

「この子ひょっとして…」
「だよね…」
それは、以前ふたりが遊園地で迷子センターに連れて行った子のようだった。

「警察に届けなきゃ、まずいよね…」
梨華がそう言うと、赤ん坊が突然泣き出す。
梨華は慌てて赤ん坊を抱きかかえた。

「泣かないで、いい子だから、ね、ね」
梨華があやすと泣き止んで笑顔になる赤ん坊。

かわいー…。
144 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年04月25日(木)20時53分25秒
「よっすぃー、どうしよう…」
「…預かっちゃおうか」
「でも…」
「人に言えない、よっぽどの事情があるんだよ」
「けどさ…私たちも仕事があるし…」
「なんとかなるよ」
「赤ん坊の世話なんか、できるかな…」
「大丈夫。この吉澤さんがついてるから、大船に乗ったつもりで安心してよ」

それが、一番の問題なわけだが…。

しかし、話し合った結果、1週間だけ預かることにした。
145 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年04月25日(木)20時57分16秒
この小さな赤ん坊と、あの大きな赤ん坊。
私は、ふたりの子供の面倒をみなきゃならないのね…。

至極もっともな感想である。

結局、赤ん坊のその愛らしさに、母性本能をくすぐられてしまった梨華。
そして、そんな擬似母子を守ってあげたい。
父性本能がバッチリ目覚めてしまった吉澤。

こうして、梨華は、不安に苛まれつつ、泥の船に乗ることとなった。
146 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月25日(木)21時15分16秒
更新しました。

レスありがとうございます。

>139梨華っちさいこ〜様
ますます、お似合いのカップルかと、私は思います。

>140よしいし読者。様
いつ気付くんだ、って感じですが、気長に待ってて下さい。

遊び心第2段で、各話にちょっとだけ出てくる、
1話のぬいぐるみ、2話の指輪、3話の赤ん坊が
次話のメインになってます。
ゆえに、今現在全く5話がまだできていないのは、ちょっとヤバイ。
週末は、頭をアフォモードに切り替えて、本気でネタ考えます。

祝日があるので次回更新は、来週火曜日です。(休みの日は自分の家にいないため)
147 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年04月25日(木)21時58分53秒
四国に関しては梨華オネーサンがやさしく教えてくれたのでしょうか?
ワカル?>(;^▽^)  (`〜´0;)<ムムム…

ゆっちさん必死ですね。明日の朝は寝坊しないように(w
148 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月26日(金)01時33分41秒
若夫婦……これは萌えますな…
(´д`)ママ…
149 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月27日(土)00時57分28秒
114の大船は戦艦大和ですか?
150 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月29日(月)20時49分47秒
次は、二人の大と小の子供??
四国が8っつだろうが何だろうと、アフォな吉がいとおしくてたまらないですな。
151 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年04月30日(火)20時25分27秒
赤ん坊を抱く梨華。
隣には3人分の荷物を両手に持って歩く吉澤。
はまり過ぎなくらい、はまっている子連れの美形カップル。
育児雑誌の表紙にしたら、部数が3割ほどアップしそうである。

「石川!いつ子ども産んだんだよ」
ふたりを見つけて目を丸くする矢口。
「ち、違いますよ!」
「名前なんていうの?」
「な、名前…」
梨華の声が裏返る。
名前のことなどまったく頭になかったふたりである。
「ヨシカ、ヨシカちゃんです」
慌ててそういう吉澤。
咄嗟にしては、よく出来た名前である。
おそらく、吉澤の“吉”と梨華の“華”をくっ付けただけだろう。

吉澤の考えることなど、せいぜいそんなもんである。
152 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年04月30日(火)20時27分15秒
「可愛いじゃん。この大きい目はパパ似だな」
そう言って、赤ん坊と吉澤を見比べる矢口。
「違いますってば!どうして私がよっすぃーの子を産むんですか」
「冗談に決まってるじゃん。なんでふたりとも赤くなってんの?」
思わず顔を見合わせるふたり。
「身に覚えがあるとか…っな、わけないか…」
以前から、ふたりの関係に、若干の疑念を抱いていた勘の鋭い矢口。

しかし、いくら男前の吉澤でも、さすがに子どもは作れない。

「知り合いの子なんですけど、急用で出来て、1週間だけ預かることに…」
まさか、朝玄関に置いてあったので連れてきたとは言えない。

梨華の出番には吉澤が、梨華の出番には吉澤が赤ん坊の面倒を見る。
両方いないときはスタッフにお願いする。
物珍しさも手伝って、メンバーたちも可愛がってくれる。
無謀とも思われたアイドル子連れ出勤だが、案外なんとかなりそうだ。
153 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年04月30日(火)20時28分20秒
「石川」
撮影所の廊下。前を歩いてきた矢口が梨華に声をかける。
「子ども泣いてたよ」
「本当ですか?」
梨華は足を速める。
「ママは大変だね」
「ママじゃないですってば…」

控室の前。廊下まで響く赤ん坊の泣き声。
梨華は慌てて扉を開けた。

「すみませーん!」
部屋の中では飯田と保田がオロオロしていた。
「ああ、よかったね、ママが帰って来たよ」
ほっとしたような飯田。
「ママじゃないです…」
とにかく赤ん坊を抱きかかえる梨華。
すると、ピタリと泣き止んだ。
「やっぱり、ママがいいんだね」
「保田さん…」
誰も聞いてくれない…。
154 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年04月30日(火)20時29分33秒
「ところで、よっすぃーはどこへ行っちゃったんですか?」
「ああ、パパは紙おむつ買いに行ったよ」
あの…。
私、まだ17歳なんですけど…。

ガタン

「すみません、遅くなって。どれ買っていいのかわからなくて…泣きませんでした?」
噂のパパが帰ってきた。
「大丈夫だよ、ママがいるから」
そう言う飯田。
完璧に梨華の意向は無視されている。
「そっか、よかった。早かったね、ママ」
「よっすぃー!」
あなたまで…。
155 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年04月30日(火)20時30分32秒
撮影が終わり、メンバーたちは次々帰っていく。
「パパ、ママ、お疲れ様」
「お疲れ様です…」
「お疲れ様でーす」
訂正するのを諦めた梨華。
そして、上機嫌ですっかりパパになりきっている吉澤。

人生、楽しんだほうが勝ちである。
156 名前:ゆっち 投稿日:2002年04月30日(火)20時48分34秒
レスありがとうございます。

>147梨華っちさいこ〜様
思いつきませんでしたが、それは和みますね。
今度そんな場面も書いてみたいです。
(フロッピー無事奪還)

>148名無し読様
若夫婦が日本一似合う17歳の女の子ではないかと…。
ウッドストックカフェ見て思いました。

>149名無しさん様
戦艦大和はよくわからないんですが、
たぶん、そんなたいそうなもんじゃないと…。

>150よすこ大好き読者。様
いつもより、今回の吉澤さんのアフォモードは低めです、たぶん。
パパの自覚があるので…。

世間は連休ですが…、
私も連休ではあるのですが…憂鬱。
玉突き事故で、愛車は大破。
おまけに、テレビ大阪ハロモニ一週間遅れ。
全然、小説と関係ないコメントですみません。

では、また明日。


157 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年04月30日(火)21時33分26秒
必死にママであることを否定する梨華ちゃんがかわいい。
相変わらず呑気なヨシコさんもかわいい。いや〜今回は癒されまくった。
私は連休は関係なく仕事なのですが、おかげで頑張れそうです。
…車、大破っスか…頑張ってください……。
158 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月01日(水)02時30分07秒
梨華ママかわい〜!(笑)
 
作者さん…憂鬱というか悲惨な事に…。お気持ちお察しします…。
159 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月01日(水)14時40分07秒
くぅ〜〜〜!!!
(・∀・)イイ!!っす(w
もう最高はあとはあと

車っすか・・・頑張ってください
うちの地元もハロモ二。一週間遅れなので気持ち分かります(泣
他にも見れなさ過ぎる番組多いんですけどね(泣
160 名前:読者A 投稿日:2002年05月01日(水)18時19分23秒
 リズムが良くてすとんすとん読めて最高です!
キャラもなんかリアルだし。
あんまり面白いんで思わずカキコ。
161 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月01日(水)19時00分28秒
作者さーん!貴方サマ、最高でっせ。
癒されまくってます・・・ハイ。
ここのヨシザーさん、めっちゃ好きです。
162 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月01日(水)20時15分05秒
帰路、憑かれたようにベビー用品店へ寄り道してしまうふたり。
「これ買って帰ろうよ」
梨華がピンクのガラガラを指差す。
「そうしよっか。でも、ああいうのも買ってあげたいよな」
吉澤が見ているのは三輪車。
「まだ無理だよ」

当然である。
首がすわったばかりの赤ん坊に、いったい何をさせようというのであろうか。
163 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月01日(水)20時16分21秒
「可愛いお子様ですね」
店員のおばさんが声をかけてくる。
「…いえ」
「まあ!目元がパパにそっくり、口と鼻はママかな」
あまりにも信じきっているその様子。
否定しようと思った梨華だか、咄嗟に言葉が出ない。

「よく言われるんですよ」
意識して低い声を作る吉澤。
「ヨシカっていうんです。可愛いでしょ。まあ、僕と梨華の子だから当然だけど…」
聞かれもしないのにベラベラしゃべりだす吉澤。
「もう、恥ずかしいからやめてよ」
「いいじゃないか、僕は愛してるんだよ、ヨシカと梨華を」
「すみません、この人、ちょっとおかしいんですよ…」
真っ赤になりながら、店員に謝る梨華。

「お幸せに…」
営業活動を断念してその場から離れていく店員。
あまりのバカ亭主ぶりに付き合いきれなくなったのだろう。

正しい判断だ。
164 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月01日(水)20時17分23秒
部屋に戻ったふたり。
分担して夕食の準備とヨシカ(仮名)の世話。
ほっと息をつけた頃にはもう深夜。

「ほんとうに、もう…、よっすぃーって、メチャクチャだね」
「何が?」
「パパになりきっちゃってるし、人前で、その…愛してる…とか…言うし…」
「ふたりっきりでならいい?」
さっきのパパ声を作る吉澤。
しばらく真顔で見つめあうふたり。

「変な冗談言わないでよ…」
「ごめんなさい…」
165 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月01日(水)20時18分04秒
あー、びっくりした。
ベッドに入ってもまだ胸の鼓動が収まらない梨華。
冗談なのはわかっているけど…。

ちょっと調子に乗りすぎたか…。
反省する吉澤。
でも、楽しかったよな…。
それに、最後のは冗談じゃなかったんだけど…。

「よっすぃー、もう寝た?」
「起きてるよ」
「…家庭って、いいよね…」
「…うん」

穏やかな気持ちで眠りに落ちるふたり。
166 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月01日(水)20時18分48秒
しかし、子育てとは、そんな甘いものではない。

オギャー!オギャー!

「どうした?ヨシカ」
「よし、よし、いい子だね」

オギャー!オギャー!

「どうした…」
「いい子だから寝てね…」

オギャー!オギャー!

「どうしたんだよ…」
「お願いだから、もう寝て…」

結局、明け方近くまで、ふたりはほとんど眠れなかった。
167 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月01日(水)20時35分08秒
レスありがとうございます。

>157梨華っちさいこ〜様
ずっと仕事ですか。それはとっても大変ですね。
石川さんの顔でも思い浮かべながら、頑張ってください。

>158投稿日様
本日、めでたく廃車が決定しました。
全損です。でも、何故か、私は、かすり傷一つなし。

>159名無し読者様
ハロモニ一週間遅れはイタイですよね。
おたがい、がんばりましょう。(何をだろう…)

>160読者A様
 喜んでいただけるとは、ホントに嬉しい。
 ありがとうございます。

>161名無し読者様
 いやー、なんか、そんなに誉められると、恥ずかしいですね。
 ちょっと、この先、話しのテンポが落ち気味になりそうなので、
 あんまり、期待しないで下さい。
168 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月01日(水)20時40分54秒
また、コメント入れ忘れ。
更新しました。
いつものように少量ですが、また明日です。
169 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年05月01日(水)21時53分35秒
そっか〜、赤ん坊だもんな〜、夜泣きするのか〜。
…いや、子育て経験ないのでわかんないのですが…。
とりあえず二人とも明日の仕事にひびかなきゃいいですけど。
170 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月02日(木)06時32分46秒
数日後。
仕事から戻ったふたりと半分。
オムツを取り替える梨華。
吉澤は楽しそうにミルクを作っている。

ようやくミルクを作る要領を覚えて、実は、ちょっと自慢だった。

粉をお湯に溶かすだけのことなのだが…。

「なんで飲まないんだろう…」
吉澤が呟く。
梨華の腕の中で機嫌よく笑っているヨシカ。
哺乳瓶には口をつけようとしない。
せっかく作ったミルクを拒否されて、少しばかり不満げな吉澤。

「まだ、お腹減ってないんじゃないの」
「そうかな…」
梨華の顔を見つめる吉澤。
「やっぱり、母乳がよかったりして…」
吉澤の視線が下方向へ移動する。

「…出るわけないでしょっ!」
「そこを、なんとか…」
「…」
「やっぱ、無理か…」

世の中には、自然の摂理というものがある。
171 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月02日(木)06時33分34秒
「ねえ、梨華ちゃん、写真撮ろうよ」
「うん、いいよ」
そういうと梨華は棚からデジカメを取り出す。

「いまいち、使い方がわからないんだけど…」
「なんで、使い方のわからないものなんか、持ってんの?」
「これ、よっすぃーのだよ」
「…」

吉澤はカメラを受け取ると、おそるおそるスイッチに触れてみる。
「わかった?」
「うーん、なんとなく…わかったような、わからないような…」

もちろん、全くわかっていない。
172 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月02日(木)06時34分11秒
「この、スイッチ押しても大丈夫かな?」
「大丈夫って?」
「押した途端、爆発するとか、ないよね…」

どんな勘違いをしているのだろうか?
押すと爆発する装置が備えられたカメラなど、普通、存在しない。

約30分。
「梨華ちゃん、だいたいわかったんだけど…」
「ん?」
「コンビニで使い捨てカメラ、買ってくるね…」
そう言って部屋から出て行く吉澤。
最初から素直にそうしておくべきだった。
173 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月02日(木)06時35分09秒
ヨシカを抱く梨華。
吉澤は右手を梨華の肩にまわし、左手をいっぱいに伸ばしてシャッターをきる。
親子水入らずのスリーショット。

「でっかくひきのばしてパネルにしようよ」
嬉しそうな吉澤。
「パネルにはしなくていい…」
溜息をつく梨華。

そんなことしたら、人が来るたびに説明しなきゃならない。
ふと、父親が尋ねてきたときの光景が目に浮かんだ。
絶対だめ…。
きっと、卒倒しちゃうよ…。

「なんで?」
「普通の写真でいいじゃない…写真たてにでもいれてさ…」
「…うん」
まだ少し不満そうな吉澤。
「じゃあ、一番大きな写真にしてもらおう…」

どうやら、吉澤は大きいものが好きらしい。
174 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月02日(木)06時35分53秒
1週間。時はあっという間に過ぎていった。

ミルクの用意も、オムツの取り替えも手早くなった。
夜鳴きは辛いけれど、交替で起きるようにすれば、なんとかやっていけないこともない。
なにより、赤ん坊の笑顔を見ると、ふたりの疲れは吹っ飛んでしまう。

ベッドに座りヨシカを抱く梨華。
吉澤はぴったり寄り添い、ヨシカの頭を撫でる。
ヨシカが笑う。

うぁ、うぁ…

「今、ママって言わなかった?」
「いや、パパって言った」
「ママだって」
「パパだよ」
「…どっちでもいいか」
「そうだね」
ふたり顔を見合わせて笑う。

たった1週間で、ふたりの親ばかはしっかり板に付いてきたようだ。
175 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月02日(木)06時36分43秒
「ヨシカも梨華ちゃんもミルクの匂いがする」
「よっすぃーもだよ」
微笑むふたり。
「よっすぃー…なんか、幸せだね…」
「うん」

と、
ピンポーン。
玄関のチャイム。
幸せの終焉を予感させる音…。
176 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月02日(木)06時42分58秒
更新しました。

>169梨華っちさいこ〜様
レスありがとうございます。
大変そうですが、楽しそうです。
私も、子育ての経験はないです。念のため。

よく考えたら、今日会社から直で実家に帰るので朝一更新。
次回は連休明け、火曜です。
177 名前:吉澤ヲタ 投稿日:2002年05月02日(木)13時54分50秒
桃板の更新情報に興味を引かれて来てみたんですけど、とても面白いです。
前作もすごく良かったし…。
ところで「あなたに…」のタイトルは洋楽か、
もしくは新井素子さんの小説からとっていると思うのですが、
今回のタイトルには何か由来があるのでしょうか。
常識だったらすみません…。
178 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月02日(木)18時40分01秒
う〜ん。ヨシカに、梨華乳を、含ますところを想像してしまった・・・。
私も・・・・・アフォです。(笑
親ばかな二人がイイ!!
179 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年05月03日(金)00時16分21秒
ヨシカちゃん行っちゃヤダ〜!! もういいじゃん。この三人で幸せな家庭を築けば。

ところで「よしかちゃん」を変換したら、普通に「吉華ちゃん」と出てきました。
パソまでいしよしヲタになっているぞ、ヤバすぎ。
こんなアフォなオイラとパソをこれからも楽しませてください。続き期待しています。
180 名前:肩身が狭くなっちゃった 投稿日:2002年05月06日(月)01時00分33秒
>「そこを、なんとか…」
またもや爆笑!十分覚悟を決めてお腹に力を入れて読んでたのに・・・
ゆっちさんに完敗です。
181 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月07日(火)20時13分55秒
「本当に、すみませんでした」
遊園地で見た女の人。赤ん坊の本当の母親である。
彼女は未婚の母。
子どものことは隠して付き合っている男の人がいたのだという。

「遊園地に行った時も、彼のことを考えてたら、つい、ぼーっとしちゃって…」
つい、ぼーっとして、子どもをベンチの上に忘れてしまった…。

恐ろしい母親である。

「彼から旅行に誘われて、最後の思い出にって思って…でも、この子がいるし…」
最後の思い出のために、見ず知らずの人に赤ん坊を託した。

やっぱり、恐ろしい母親である。
182 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月07日(火)20時14分38秒
「そんな時、偶然、街で見かけたんです」
「…」
「この子を娘にしたいって言っていた、優しいうなカップルを…」
吉澤と梨華。わけがわからず、きょとんとしている。
「これは、もう、神様のプレゼントじゃないかって…」

「ああ、そうか…あれだよ、よっすぃー」
やっと納得したように、梨華が吉澤を見る。

そう、確かに、ムスメにしたい。ムスメになったら可愛がる。
あの時ふたりはそんな言葉を口にしていた。
しかしそれは、“娘。”であって、“娘”ではない。
183 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月07日(火)20時15分08秒
「あの、モーニング娘。って知ってますか?」
そう聞いてみる梨華。
「はあ?喫茶店のメニューかなんかですか?」
ベタなボケだ。

「…その、テレビとかで、見たことですか?」
「私テレビ見ないんで、家に置いてないんです」
「…なら、いいです…」

「本当にありがとうございました。おかげでいい思い出ができました」
そう言って赤ん坊を抱き、出て行こうとする女。

と、
ガタン。
乱暴に玄関の扉が開く。
そして、見知らぬ男が入ってきた。
184 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月07日(火)20時15分39秒
「なに言ってるんだ!」
「あなた!」

不思議な感性の母親と突然乱入してきた男。
梨華と吉澤は呆然と事の成り行きを見守るしかない。

「なんで言ってくれなかったんだ!」
「だって…」
「俺のこと、子どもがいるからって、おまえを捨てるような男だと思ってたのか!」
「でも…」
「おまえの大切な子どもなら、俺の子どもでもある」
「あなた…」
「結婚しよう」
他人の家で、突然抱き合って、熱いラブシーンを繰り広る。
すっかりふたりの世界。

「あの、そういうことなんで、失礼します。お世話かけました」
そう言うと、今度は本当に出て行った。
185 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月07日(火)20時16分13秒
2人と半分が出て行って、急にがらんとした部屋。

「なんか、凄いもの見ちゃったね、梨華ちゃん」
「生昼メロだったね…」
再びベッドに寄り添い座るふたり。
もうその腕の中に赤ん坊はいない。

「あー、やっと今日からゆっくり寝れよ、梨華ちゃん」
「そうだね…」
そう言いながらも、僅かに潤んでいる梨華の目。
「ちょっと…寂しいね…」
「…うん」

そっと、梨華の肩に手を乗せる吉澤。
「じゃあ、子どもでも作ってみる?」
無言で見つめあうふたり。

パッシッ!
梨華の平手が吉澤の頬を打つ。

「そういう冗談はやめてって言ってるでしょ!」
186 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月07日(火)20時16分55秒
赤い顔でベッドに潜り込む梨華。
まったくもう…。
目がマジだったから、本気で襲われるかと思ったじゃない。
よっすぃーなら…、いいんだけど…。

でも、そういうときは、好きだよとか、愛してるよとか、
そういうこと言ってよね。
一応、始めてみたいなもんなんだから…。
いきなり、子ども作る?はないでしょう…。

まあ、ただの冗談なんだろうけど…。
187 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月07日(火)20時17分25秒
なにも叩くことないのに…。

確かに性質の悪い冗談に聞こえたかもしれない。
しかし、吉澤は冗談で言ったわけではない。
もちろん、邪な気持ちがあったわけでもない。

とにかく吉澤は梨華が大好きなのである。
梨華が欲しいと思うものは、なんでもプレゼントしてあげたい。
たとえば、クフ王のピラミッドが欲しいと言われれば、
今すぐ、エジプトへ行って、ムバラク大統領に直談判するぐらいの勢いである。
だから、子どもが欲しそうな梨華を見て、ちょっとがんばってみようか…、
そう思ってみただけのことだ。

世の中は気合。
それが吉澤の信条である。

しかし、気合だけではどうしようもないことが、世の中には確かにある。
188 名前:第4話 家族愛 投稿日:2002年05月07日(火)20時18分00秒
数日後、一枚の手紙が送られてきた。

“おかげさまで、彼と結婚することができました。
その節は、本当にお世話になりました。娘も元気にしています。

モーニング娘。偶然、電気屋さんのテレビで見ました。
美男美女のカップルだとは思っていましたが、芸能人の方だったんですね。
センターで歌っている旦那様はとても素敵でした。
あと、おふたりのこと、世間には内緒なんですよね。
決してしゃべったりしませんから、ご安心下さい。
では、いつかおふたりに、可愛い赤ちゃんができますように…。“

彼女が今度、偶然、電気屋さんのテレビで、
“ぴったりしたいX'mas”を見ることがないよう、祈るばかりだ。
189 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月07日(火)20時35分34秒
更新しました。

レスありがとうございます。

>177吉澤ヲタ様
タイトルの由来は、思いつきです。
前作とのギャップが大きいので、ひとめでコメディーとわかるようにと。
思いついたってことは、似た名前がどこかにあるのかも知れません。
前作のほうはご指摘の通りで、小説のほうです。
女の子の愛情の話しという点では一致してますが、
内容より、タイトルからくる、切ない感じのイメージが好きだったので…。

>178よすこ大好き読者。
そのあたりは、次の前振りのために後から挿入したシーンだったのですが、
お約束の母乳ネタ入れ忘れてるな…って思って、ついでに付足しました。

>179梨華っちさいこ〜様
なかなか、物分りのよいPCですね。
うちのPCあまり物覚えがよくない。
でも、会社のPCが妙な物を変換してしまったときには、ちょっと焦ります。

>180肩身が狭くなっちゃった様
笑えました?
良かった…。
そこのシーン、後から挿入した甲斐があったというものです。

明日から第5話です。
よろしくお願いします。
190 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月07日(火)20時37分00秒
すみません。敬称付け忘れ。
191 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月07日(火)20時43分51秒
今回も笑い萌えました。
ていうか、この二人なら
フツーに子供作れても全然おかしくないんじゃないか?なんて気も(w
192 名前:名無し(0^〜^0) 投稿日:2002年05月07日(火)20時46分00秒
初リアルタイム!!
どうなるんだ、どうするんだ、いてまえ〜(0^〜^0)!
ゆっちさん、頑張って〜!!
193 名前:たろ 投稿日:2002年05月08日(水)00時40分34秒
>しかし、気合だけではどうしようもないことが、世の中には確かにある。
確かに(w
でもひたすら梨華ちゃん大好きな吉がすごくイイ!
194 名前:吉澤ヲタ 投稿日:2002年05月08日(水)15時12分51秒
オリジナルのタイトルだったんですね。すごくいいですこれ。
内容と合った甘酸っぱくて切ない良い響きですね。
続きがんばってください。
195 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月08日(水)19時22分22秒
>今すぐ、エジプトへ行って、ムバラク大統領に直談判するぐらいの勢いである。
キャハハハ。吉だったらやっちゃうかも?(w
すげーおもしろいです。続き楽しみにしています。
196 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月08日(水)20時35分11秒
今日は定期診察。
もちろん、吉澤のアタマの具合を診てもらうのである。
ついでに、梨華の胃の具合も診てもらうことを、激しく推奨する。

ちょっと、とぼけた風体の若い主治医。
その向側に並んで座る梨華と吉澤。

吉澤は眉を寄せて何事か考えている。
どうやら、真剣に考えているようだ。
いつものように、考えているふりをしているわけではないらしい。

今日の昼は何を食べようかな?

お腹が減っているのだろう。
吉澤の頭は、ほとんど、第一次欲求と石川梨華だけで成り立っている。
197 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月08日(水)20時36分12秒
我がごとなのに、今ひとつ真剣みに欠ける吉澤。
毎度のことである。
実は、休日のデート気分だったりもする。

それに対して、お姉さん然とした梨華。
懇願するかのように医師の顔を凝視する。

「記憶は戻るんでしょうか?」
「脳に機能的な障害はないようですから、そのうちに…」
「そのうち?」
「そのうち…ですね、きっと…」
調子の狂う医者である。

「機能障害もないのに、なんで知識がなくなったり、人格が変わったりするんですか?」
梨華の質問に、医師はしばらく頭を抱えて考え込む。
そして、
「たぶん、打ち所が悪かったんでしょう」

打ち所って…。
それだけ?

この理不尽な状況に、医学的見地に立った理由付けを期待していた梨華。
がっくり、肩を落とす。
198 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月08日(水)20時37分42秒
結局、何の進展も見られぬまま、病院を後にするふたり。
沈んだ気持ちで歩く梨華。

はやく治ってもらわないと、取り返しがつかなくなる。

私は昔のよっすぃーが好きだったのよ。
ほんとに、好きだったのよ…。

ずっとあなたの側にいたいと思ってたのに…、
私にはあなたしかいないって思ってたのに…、
約束だってしたのに…、
なのに…、
このどうしようもない、間抜けなひとが…、
言いたくないけど、
認めたくないけど、
かわいくて仕方がない…。

これじゃ、私が二股かけてるみたいじゃない。
どう責任をとってくれるのよ。
199 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月08日(水)20時38分22秒
不意に吉澤の息が頬にかかる。

「梨華ちゃん…」
吉澤が梨華の耳元で囁く。
吉澤の顔が間近にある。唇が触れてしまうほど。

美少年のようなその端整な顔立ちで、
その切なげな眼差しで、
そのセクシーな低い声で…、

「お腹、減った」
お願いだから、そういう馬鹿なことを言うのはやめて欲しい…。

「ねえ、梨華ちゃん…」
「ちょっと黙っててよ」
つい、少しきつい口調になってしまう梨華。
吉澤は何を怒られたのかわからず、不安げに梨華の顔を見る。
そして、哀しそうな顔で俯いた。
200 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月08日(水)20時39分54秒
よっすぃーが悪いわけじゃないのよね…。
そう、よっすぃーの頭の具合がよくならないのも、
こんなときにお腹がすいてしまうのも、
男前な外見と中身のギャップが激しいのも、
別に、よっすぃーが悪いわけじゃない。

梨華はシュンとしている吉澤の頭を撫でる。
「お腹減ったんだね?」
「うん…」
まだ少し不安そうな吉澤。
「何が食べたい?よっすぃーの好きなものでいいよ」

パッと吉澤の顔が輝く。
「好きなもの…オムライス、ベーグル、それから…」
本当に嬉しそうな吉澤。

「好きなもの、んー、K1、それから…えっと、梨華ちゃん!」
意識的か、無意識か、話が逸れていく吉澤。

おそらく無意識であろう。

「K1は食べられないでしょ…」
あえて、最後のひとことは聞かなかったことにする梨華。

「梨華ちゃんは、おいしそうだね。ガブッ」
そう言って梨華の頭をかじるふりをする吉澤。
「…」
梨華の冷たい視線。
「ごめんなさい…」

201 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月08日(水)20時40分46秒
レストラン。向かい合って座るふたり。
幸せそうな吉澤。

テーブルの上にはオムライス。
テーブルの向こうには梨華。
大好きなものに囲まれて、幸せでない方がおかしい。

「ねえ、よっすぃー…」
「何?」
「少しは、なにか思い出せそう?」
「うーん…」
考え込むように、天井を見上げる吉澤。
今度は、考えているふりである。
202 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月08日(水)20時41分39秒
思い出せないものは仕方がない。
第一、何の不自由も感じない。
なにより、梨華ちゃんがそばにいるから毎日が幸せだ。
わざわざ思い悩む必要などどこにもない。

火の打ち所のない完璧な論理。
そう、吉澤は思っている。

「よっすぃー、ほんとに考えてる?」

ああ、ばれてる…。

「…もう、いい。とりあえず、ひとつだけ聞いてくれる?」
「うん」
「ケチャップは服に飛ばさないでよ、洗濯たいへんなんだから」
「はーい」
203 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月08日(水)20時56分53秒
レスありがとうございます。

>191名無し読者様
私も、ぜひ子供を作って欲しいなー、と、思ったりしてます。
夫婦な感じがするんで…。

>192名無し(0^〜^0)様
リアルタイムで読んでもらえたんですか、
感動です。ありがとうございます。

>193たろ様
好きさ加減が、日増しにひどくなっているような気がしてます。
現実もそう見えてしまう、病気な作者です。

>194 名前 : 吉澤ヲタ様
タイトルとか人名とか考えるの、実は苦手で、
この世界は人名考えないでいいから楽ですが…。

>195よすこ大好き読者。様
仕事中に、エジプトの大統領誰だっけ?
なんてことを、真剣な顔をして考えている毎日です。

更新しました。
4話書き上げてから、5話にいくまでに、かなり時間がかかったので、
ちょっと、最初の頃のスピード感が落ちてるかな、と、思いつつも、
結局、自分に書けるレベルの笑いしかできないかと、
開き直って、なんとか進めていきます。

では、また明日。
204 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月08日(水)21時15分14秒
おもしろかったです!!
がんがってください。
205 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年05月09日(木)00時43分19秒
梨華ちゃんいい子だなぁ(泣
二人のよっすぃ〜を好きになってしまったんだね。
ヨシコよ、早く気づかせてやれ。二人ともよっすぃ〜だってことを…
206 名前:たろ 投稿日:2002年05月09日(木)02時19分41秒
二人のやりとりにほんわかと幸せな気分になってしまいました。
梨華ちゃん、ごめんね。
207 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月09日(木)20時17分09秒
ある日の朝。
気持ちよさそうに眠る吉澤。
梨華はひとり支度を始める。

今日は、朝からずっと、カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)の仕事である。

準備を終えた梨華。
吉澤を起こすべきか、そっとしておくべきか、少し悩む。

早起きして、家事をしてくれたら助かる。
しかし、二度手間になることもたまにある…いや、よくある。
たまの休みには寝かせておいてあげたい気もする。
それに…。

結局、そっとひとり部屋を後にする梨華。

このひとは、起こさなかったら、いったいいつまで寝ていられるのだろうか?
少しばかり、好奇心をかきたてられる梨華だった。
208 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月09日(木)20時18分13秒
「うう…」
昼をまわった頃、ようやく目覚めた吉澤。
「…?」
半分しか開いていない目で、あたりを見回す。
「…梨華ちゃん…」
起き抜けの回らない頭で立ち上がると、梨華を探し始める。

もちろん、ばっちり覚醒していたとしても、たいして頭が回るわけではない。

「梨華ちゃん…」
洗面所のドアを開けてみる。
続いて、トイレ、浴室、洋服ダンス、机の引出し…。

梨華は小人ではない、念のため…。

最後に冷蔵庫を開けたとき、はたと気付いた。

今日はひとりの仕事だ。
起こしてくれたらよかったのに…。
209 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月09日(木)20時18分46秒
梨華の顔を見ずに始まる一日。
普段、べったり一緒にいるだけに、少し寂しい吉澤。

仕方がないのでビデオのスイッチを入れる。
映し出されるのは昨日オンエアーされたmusix。
カントリーの新曲が流れる。

かわいー…。

巻き戻してもう一度再生する。
ちょっと、スロー再生をしてみたりなんかもする。

もっと梨華ちゃんを映せよ!
画面に向かって心の中で悪態をつく。

今度、編集しよう…。

musix吉澤‘Sカット版。
少し怖いものがある。
ほとんどマニアの世界である。

キャイーンのトークが始まると、当然のごとく早送りする吉澤だった。
210 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月09日(木)20時19分19秒
梨華の可愛い姿をしっかり脳裏に焼き付けた後、
簡単な食事を済ます吉澤。

掃除でもしようかな…。

案外、殊勝な心がけの吉澤。

まずは棚の整理。
乱雑に置かれた小物を、取りあえず床の上に放り出す。
と、

吉澤の目に入ったのはデジカメ。
こないだは、使い方がわからなくて断念した。
吉澤が気になるのは、既に撮影されたその中身である。

何を撮ったんだろうか?

もちろん、撮影は吉澤本人である。
しかし、覚えていない。
そこが気になる。

再度、自力で挑戦しようかな…。
それとも、TV東京のスタッフに教えてもらおうかな…。
でも、イケナイ写真がはいってたらやだなー…。
211 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月09日(木)20時19分56秒
以前の吉澤はクールで繊細な天才だった。
噂でそう聞いている。
そんな得体の知れない吉澤が撮った写真。

想像がつかない…。

今なら、何を撮るだろう?

梨華ちゃんの顔とか、
梨華ちゃんと遊んでるところとか、
梨華ちゃんの寝起き隠し撮りとか…。

その程度ならいいよな…。
もっとヤバイ写真…。
なんてことは、まさか…。

いくら得体の知れない吉澤といえども、元は本人である。
全く、予想外のことはしないであろう。
つまり…。

やりかねない…。

そう心の中で呟いて、本棚からマニュアルを探し始める吉澤だった。
212 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月09日(木)20時28分45秒
レスありがとうございます。

>204名無し読者様
そう言ってもらえると、ほっとします。
がんばります。

>205梨華っちさいこ〜様
実は三角関係の話しだったりするんですよ。
石川さんと、天才吉澤さんと、アフォ吉澤さんの…。

>206たろ様
ほんとは爆裂な感じでいきたいんですが、ほのぼのの方が得意なんで、
つい、そっち方向へ…。

更新しました。
実はここまでしか出来てなかったりするんですが…。
なんとかなるでしょう。
いつもどうり次回は来週月曜更新です。
213 名前:吉澤ヲタ 投稿日:2002年05月09日(木)21時07分51秒
アフォ吉澤いい!実にいい!
214 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年05月10日(金)00時37分48秒
寝かせえといてあげるお姉さん梨華ちゃん。
起きてすぐ梨華ちゃんを探す甘えん坊ヨシコ。
くっ、うらやましい…。
215 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月10日(金)00時37分55秒
机の引出しに居てほすぃ
216 名前:たろ 投稿日:2002年05月10日(金)00時57分20秒
よっすぃ〜カワイイよ…めちゃめちゃツボです。
すっかりはまってしまいました。
217 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月10日(金)04時51分02秒
石川がおかんみたい
218 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月10日(金)10時45分26秒
吉澤さん、ある特定のことに関してはだいぶ頭がよくなってる気がするのは気のせいでしょうか(w
219 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月11日(土)18時57分34秒
>画面に向かって心の中で悪態をつく。
私も、日常茶飯事のようにやっていますが何か?(w
220 名前:パム 投稿日:2002年05月13日(月)04時51分45秒
ほのぼのしてていいなぁ。アフォのヨッスィーに萌えてます。
>画面に向かって心の中で悪態をつく。
219さん、激しく同意です。
221 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月13日(月)19時56分38秒
テーブルの上にはデジカメとマニュアル。
そして、国語辞典、漢和辞典、英和辞典、ことわざ辞典、世界の名言格言集。

活字を読むのが得意でない吉澤。
だからといって、何故、ことわざ辞典と名言格言集が必要なのかは疑問である。

デジカメの操作方法を、賢人の名言を駆使して格調高く記したマニュアルは、
あまり見たことがない。
遠まわしな表現から、行間を読み取りつつ操作を理解するなど、
ちょっと勘弁して欲しい。

とりあえず、部屋中の辞書類うずたかく積み上げる。
すると、少し賢くなった気分で安心なのである。

相変わらず、単純な吉澤である。
222 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月13日(月)19時57分45秒
格闘すること1時間。
ようやく液晶ディスプレイに映し出された写真。

予想通り梨華の姿が多い。
何気ないスナップ。
料理をしているところ。
楽屋風景。
どれもこれも、梨華が一番可愛く映るアングルを、見事に捕えている。

えらいぞ!自分。

自分で自分を褒め称えながら、ひとコマ、ひとコマ写真を見ていく。

かわいいなー。
なんでこんなにかわいいんだろー。
223 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月13日(月)19時58分32秒
結局、イケナイ写真はなかった。
ほっとする吉澤。
しかし、しだいにデレデレだったその表情が曇る。

なんか悔しい…。

それは、別に、イケナイ写真がなかったからではない。
それも、ないではないが…。

梨華と以前の吉澤の間にあったであろう、数々の思い出。
今の吉澤がなくしてしまったもの。
ツーショット写真の梨華は、どこか甘えた表情。
吉澤を信頼しきって、心底リラックスしているように見える。

どうして、こんなふうに甘えてくれないんだろう…。

当たり前である。
今の吉澤を信頼しきって、心底リラックスしていては、命を落としかねない。
当然、今の吉澤には、常に疑いつつ、心底警戒していなければならないのである。

1枚の風景写真が吉澤の心を捉える。
どこかの公園だろうか。何でもない夜景。

いつかどこかで見た風景。
そして、そこには、なにか大切なものが隠れている気がする。
224 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月13日(月)19時59分13秒
珍しく、吉澤が真剣な物思いに耽っているとき、ようやく梨華が帰ってきた。

「ただいま」
「お帰り」
「よ、よっすぃー…何これ…」

思わず立ちすくむ梨華。
部屋一面に散乱した小物や本。

「泥棒?」
「いや、違うんだ、ちょっと…」
「いったい、何をしたの?」
「あの、その…掃除、そう、掃除をしようと思って…」

自分の言葉に、ようやく掃除の途中だったことを思い出す吉澤。
殊勝にも、梨華のいないうちに掃除をしようと思ったのだ。
吉澤が殊勝なのは、心がけだけに終わった。

「どうして、掃除をしようと思ったら、余計に部屋が汚くなるの?」
「不思議だね…」
黙り込むふたり。
225 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月13日(月)19時59分47秒
「あの…」
言いかける吉澤を梨華が制す。
「わかった、もういい。理由は聞かない。聞いたらたぶん、頭が痛くなると思うから」

素晴らしい学習能力である。

「まったく、しょうがないんだから…」
疲れた身体に鞭打ちながら、片付けをはじめる梨華。
しかし、今朝、吉澤を起こさなかったことに胸をなでおろす。

もし、起こしていたら、朝っぱらから掃除を始めていただろう。
そんなことをしたら、物凄い勢いで部屋が散らかっていったに違いない。
226 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月13日(月)20時10分28秒
レスありがとうございます。

>213吉澤ヲタ様
いいですか?それはよかった。
最近吉澤さんの性格がよくわからなくなってきてます…。

>214梨華っちさいこ〜様
彼女達はいつまでも、甘い新婚生活ですね。
よくわからないけど…。

>215名無し読者様
それは無理かと…。

>216たろ様
ありがとうございます。
カワイイですか?カワイイかな、カワイイか一応…。

>217名無しさん様
そのようですね。

>218名無し読者様
人間、日々学習し、成長しますから。
特に、好きなことは習得が早い…。

更新しました。
書いたところなので、推敲があまいような気もしますが、
こんな感じでしばらくいきます。

では、また明日。
227 名前:誰か。 投稿日:2002年05月13日(月)20時27分34秒
なんか・・・なんだか、せつない、です。
もう、ココの更新を今か今かと毎日待ってます!
作者サン、どうやったらこのような作品が書けるんすか?!

228 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年05月13日(月)21時42分54秒
切ない表現の後に上手いツッコミが入るんでどう反応してよいのやら(w
う〜ん、やはり今のヨシコにとってもう一人のヨシコは強敵のようですね。
229 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月13日(月)21時52分13秒
今、風呂に入ってたんですが、ふとレスの返事が足りないような気がして、
気になって出てきました。

再度レスありがとうございます。

>219よすこ大好き読者。様
私もやってます。もちろん。

>220パム様
ほのぼの感が伝わると嬉しいです。
みんな、考えることは同じなのですね。

たいへん失礼しました。
では、頭洗ってきます。

230 名前:肩身が狭くなっちゃった 投稿日:2002年05月13日(月)23時16分20秒
>たいへん失礼しました。
>では、頭洗ってきます。
(爆)!!!
やめてください、笑い死にします!
231 名前:たろ 投稿日:2002年05月14日(火)03時02分39秒
元よっすぃーが撮った写真の数々を見てみたい!
よっすぃーにしか見せない表情がたくさんあるんだろうな〜。いいなあ。
232 名前:パム 投稿日:2002年05月14日(火)06時25分42秒
信頼しきっていては命がいくつあってもたらんって、、、(W
かなり笑わせていただいてます。
石川の奮闘振りに期待して次の交信まってやす。
233 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月14日(火)18時55分30秒
頭洗うの、頑張ってくだせぁい。
ヨシザーさんの次の行動が予測できん・・・(笑)
234 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月14日(火)20時16分20秒
梨華の後について片付けを手伝う吉澤。
表情が冴えない。
「どうしたの?」
「んん…何でもないよ…」
声にも元気がない。
「もう怒ってないから、そんな顔しないで…ね」
そう言って吉澤の頭を撫でる梨華。
いつもなら、それだけで元気を回復する吉澤。
しかし、まだ、表情が暗い。

どうしたんだろう?
悪いものでも食べたのかな?

ふと、梨華の目に入ったのは、テーブルに置かれたままのデジカメ。
「よっすぃー、使い方わかったの?」
「うん、ここを押すと順番に写真が見れるんだ」
そう言って、吉澤はデジカメを梨華に渡す。
「へー、すごいね。よっすぃー、えらい!賢い!」
ちょっと大げさに驚いてみせる梨華。
吉澤は恨めしげに梨華を見る。
「梨華ちゃん、なんか、馬鹿にしてない?」
「…」
235 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月14日(火)20時17分24秒
ほんとに、どうしちゃったんだろう…。

梨華は、冷蔵庫の中身を思い出してみる。
卵、レタス、牛乳、鶏肉…。
変なものは入ってなかったはずなんだけど…。
生肉、そのまま食べたのかな?

吉澤は、野生のライオンではない。

「梨華ちゃん、疲れたから、先、寝るね…」
そう言ってひとりベッドに潜り込む吉澤。

梨華は呆然とする。
今日は1日別行動だった。
梨華ちゃん、梨華ちゃん、梨華ちゃん。
しつこいぐらい、付きまとってくるであろう吉澤を想像し、
うんざりしつつも、ちょっと楽しみにしていた梨華だった。
236 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月14日(火)20時18分34秒
吉澤の枕もとに膝をつき、額に手を当てる梨華。
「熱はないみたいだね…」
「ねえ、梨華ちゃん…」
「何?」
「ん、いや、なんでもない…おやすみ」
「…おやすみ」

吉澤が眠ったあと、椅子に腰掛ける梨華。
デジカメを手に取ってみる。

懐かしい…。

梨華の目にとまったのは、吉澤の心を捉えた写真。

ああ、この公園…。

あの日…。
実家にいた私を、突然訪ねてきたあなた。
どうしても、聞いて欲しいことがあるんだ。
そう言うなりあなたは私を抱き締めた。
私はびっくりして何も言えなかった。
梨華ちゃんが好きだ。
耳元で、低い声。
ずっと、一緒にいたい。いてくれる?
私は答える代わりに、あなたの胸に顔をうずめた。
そして、初めてのキス。

ぽっと頬を染める梨華。

やっぱり、あのよっすぃーも好き。
私が本当に好きなのは、どっちなんだろう…。
237 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月14日(火)20時19分24秒
それから数日間。
吉澤は柄にもなく悩んでいた。

あの風景写真が気になる。
そして、写真の中ふたりには、妙に嫉妬してしまう。
これが、まったくの他人であるなら、諦めもつく。
場合によっては、文句だって言える。

風呂上り、鏡の前に立つ吉澤。

「吉澤さん、梨華ちゃんを幸せにしてあげてよ」
「まかしときな、吉澤」
「吉澤さん、梨華ちゃんを泣かしたら承知しないぞ!」
「泣かしたりなどしないさ、吉澤」
「吉澤さん、梨華ちゃんを譲ってくれない?」
「嫌だよ、吉澤」

世界のジョークのように、立ち位置をかえて、小芝居を演じてみる。

「よっすぃー、なにひとりでぶつぶつ言ってるの?」
いつのまにか、横に立っている梨華。
「…あ、あの、コントの練習…」
「ふーん…」
「さっ、寝よっと…」

ある決心を胸に、眠りにつく吉澤。
いつまでもこんな状態でいるわけにはいかない。

吉澤の信条はあくまで気合である。
そして、根性である。
女の子のように、いつまでもイジイジと悩んではいない。

少しコメントに問題があるような気がするが、
吉澤を見習って、ここは、深く考えないことにしよう。
238 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月14日(火)20時30分45秒
レスありがとうございます。

>227誰か。様
へ?
本当なら嬉しいのですが、どこか別スレの間違いでは?
どう過大評価しても、そこまで、たいした話ではないような…。

>228梨華っちさいこ〜 様
こんな徹底したコメディーを書くのは10年ぶりくらいで、
難しー。

>230肩身が狭くなっちゃった様
事実をありのままに記述しただけなんです…。

>231たろ様
きっと、ムチャクチャかわいーことでしょう。
私も見たい。

>232パム様
石川さんは苦労しっぱなしであります。
きっと、何度か死にかけたことでしょう。

>233名無し読者
がんばって洗いました。
吉澤さんの行動は謎です。

239 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月14日(火)20時32分15秒
コメント入れ忘れ。
更新しました。
生きていたら、また明日です。(多分生きてます)
240 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月14日(火)20時39分37秒
明日が楽しみだー!!
どうか生きていてください。
なんか、ここのヨシザワ君、超ぉカワイイです♪
241 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年05月14日(火)21時03分51秒
>>229
ゆっちさんの入浴シーンハァハァ……いや、冗談です。
いや〜、本当にどっちのヨシコがいいんでしょうね。
悩め〜、梨華ちゃん。ある意味君は贅沢なんだから。
242 名前:たろ 投稿日:2002年05月15日(水)00時24分26秒
鏡の前で一人「世界のジョーク」なよっすぃーがイイ!
あまりにもリアルに脳内再生できて、自分でもおかしかったです(w

何を決心したんだろう。気になるぞ〜
243 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月15日(水)18時44分30秒
気合ヨリ精神力デ
244 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月15日(水)20時09分02秒
初夏の爽やかな日差しが、カーテンの隙間から僅かに漏れる。
鳥の鳴き声が遠くに聞こえる。
清々しい朝。まだふたり夢の中。

と、

リン、リン、リン!
ガン、ガン、ガン!
ウィーン、ウィーン!
ピー、ピー、ピー!

「…なっ、なに、なんなの!火事?」
凄まじい音に、飛び起きる梨華。
「…うう…朝か…」
さすがの吉澤も目を覚ます。
「朝か、じゃないよ、よっすぃー、何これ」
「何って、目覚まし時計だよ」
当然とばかりに、けたたましく鳴り響く目覚し時計のスイッチを、
ひとつひとつ止めてまわる吉澤.

リン、リン、リン

「あれ、もうひとつ、何処に仕掛けたんだっけ?」

まるで地雷である。
245 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月15日(水)20時09分33秒
ようやく静寂を取り戻した部屋。
「いったい、どういうつもり?」
「たまには先に起きて、梨華ちゃんを起こしてあげようかなって、思ったんだ」
「…」
「でも、残念、梨華ちゃんも起きちゃったんだ…」
「こんなにうるさかったら、目が覚めないわけないでしょ」
当然である。
しかし、これくらいうるさくないと、吉澤は起きない。

ジレンマである。
246 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月15日(水)20時10分37秒
「そうか…ひとりだけ起きれる、強烈な目覚ましってないのかな?」
溜息をつく梨華。
「タイマーセットして、電流でも流してみたら?」
「電流か…それ、どこで売ってるの?」
「…」

朝起きるためために、命を危険にさらすのはお勧めできない。
ひょっとすると、二度と目覚めないかもしれない。

それはともかく、吉澤が寝坊しなかったために、いつもより余裕のある朝。
新聞をめくる吉澤。

「何読んでるの?スポーツ欄?テレビ欄?4コママンガ?漢字読める?」

少し、失礼である。

「違うよ。国際欄。世界情勢でも把握しておこうと思って」
キョトンとする梨華。

世界情勢より、一般常識を先に把握して欲しいものである。

「でも…漢字が読めない…」
「…」

結局スポーツ欄を読み始める吉澤。
梨華は正しかった。
247 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月15日(水)20時11分17秒
「よっすぃー、そろそろ行かなきゃ」
「そうだね」
そう言って立ち上がる吉澤。
梨華の方へ手を差し出す。
「荷物、持ってあげるよ」
不思議そうに、吉澤の顔を見つめる梨華。
「い、いいよ、そんなの…」
「いいから、かしてよ」
無理矢理、梨華の手から鞄を取り上げ、満足げにスタスタト前を歩く吉澤。

吉澤は決心したのである。

梨華ちゃんに好きになってもらえるように…、
梨華ちゃんに甘えてもらえるように…、
梨華ちゃんを守ってあげられるように。

絶対、男らしくなってやるんだ!

誰か言ってあげて欲しい。
あなたは、なにか、勘違いしている。
248 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月15日(水)20時21分12秒
レスありがとうございます。

>240名無し読者様
生きていました。
だんだんわけがわからなくなる吉澤さんです。

>241梨華っちさいこ〜様
どーも。
どっちがいいんでしょうね、って無責任な私。
贅沢なんでしょうか?

>242たろ様
小芝居シーンは無意識に指が動いて書いてました。
なんでだろう?

>243名無しさん様
精神力ですか。
あるんだか、ないんだかって感じですが…。

少しですが更新です。
最近自転車操業で、前日にやっとUP分書き上げてる状態です。
でも、完全週休3日(祝日は除く)は崩しません。
また、明日。
249 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月15日(水)21時43分21秒
>絶対、男らしくなってやるんだ!
勘違い吉に萌え(笑
カナ〜リ、ここの吉にはまっております。
250 名前:ぷー 投稿日:2002年05月16日(木)00時47分28秒
こんにちわ!始めから読んでました。もちろん青のも。
ここの吉はおもろいです。最高!
吉カッケ〜!カッケ〜よ!カッケ〜けど何かが違う…。
251 名前:パム 投稿日:2002年05月16日(木)04時48分34秒
男らしくってあんた・・・(w
いやぁ〜、ナイスなボケにいつも笑わせてもらってやす。
梨華っちは何度くらい死にかけたのだろう?(w
252 名前:たろ 投稿日:2002年05月16日(木)06時54分22秒
わはは、よっすぃーそう来たか!爆笑しました。
方向性はまちがっているものの(かなりね)、そんな姿もいじらしくて萌え〜
253 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年05月16日(木)08時05分14秒
いいぞ!! それでこそヨシコだ!!
ヨシコは常に男らしくあれ!!
あれ? オイラ何か間違ったこと言いました…?
254 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月16日(木)20時18分05秒
「罰ゲーム?」
ふたりをみつけるなり不審げにそう言う矢口。

手ぶらで歩く梨華。
その横には両手に鞄を抱える吉澤。
しかも鞄のひとつはどう考えても似合わないピンク。
傍目には、罰ゲームか、かかあ天下の夫婦にしか見えない。

「ち、違うんですよ。やめてって言ってるのに、よっすぃーが勝手に…」
「だって、梨華ちゃんの手、ちっちゃいから、重いもの持たせたらかわいそうだもん」
「ちっちゃくないよ、ほら」
手を広げて見せる梨華。
「かわいー」
女の子らしい細い指に、思わず見とれる吉澤。
255 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月16日(木)20時18分55秒
「ふたりとも、わかったから、いちゃつくのは仕事終わってからにしなよ」
そう言って呆れ顔で去っていく矢口。

いちゃついてなんかないのに…。
もう、よっすぃーのせいでまた誤解されたじゃない。

軽く吉澤を睨む梨華。

そっか、今日は仕事終わったら、いちゃついてもいいんだ。
直属の先輩に、許可もらっちゃった。
ラッキー。

俄然、今日の仕事に、やる気が出てきた吉澤だった。
256 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月16日(木)20時19分26秒
なにかというと、梨華の世話を焼きたがる吉澤。

「荷物、運んであげるね」
「…あ、ありがとう」

「割り箸、割ってあげるね」
「…そんなの、いいよ」

「弁当、食べさせてあげようか?」
「いいってば…」

「着替え、手伝おうか?」
「…」

メンバー達の奇異な視線もお構いなし。
本当に嬉しそうな吉澤。

いつのまにか、吉澤の男らしさはだんだん方向が逸れている。
これもまた、いつもの事ではあるのだが。
257 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月16日(木)20時20分02秒
梨華は困ったような顔で吉澤を見る。
「私さ、大概のことは、自分で出来るの…」
あなたと違って…。
そう心の中で付け加える。
「だから、ちょっと、ほっといてくれないかな…」
「遠慮しなくていいのに」
明らかに、遠慮ではない。

「ひょっとして迷惑?」
ひょっとしなくても、迷惑だ。
しかし、あまりにも淋しげな吉澤の顔に、言葉を濁す梨華。
「気持ちは嬉しいんだよ…」
「迷惑なんだ…」
俯く吉澤。
「そうじゃないの…」
吉澤の気持ちを引き立てようと、慌てて口を開く梨華。
「ほら、みんなの前じゃ、恥ずかしいじゃない…」
258 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月16日(木)20時20分34秒
なーんだ、梨華ちゃん照れ屋なんだから…。
じゃあ、家に帰ったら思いっきり可愛がってあげよっと。
あんなことや、
こんなことや…。
んー。楽しみだな…。
だいたい、今日は、いちゃいちゃしてもいい日だったもんな…。
ありがとう矢口さん。

思わず口元に笑いがにじみ出る吉澤。
梨華は、その表情にそこはかとない不安を感じる。

不用意にも、必要以上に、吉澤の気持ちを引き立ててしまった梨華だった。
259 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月16日(木)20時34分37秒
レスありがとうございます。

>よすこ大好き読者。様
どうして、吉澤さんはこうなってしまったのでしょう…。
でも、はまってもらえて嬉しいです。

>250ぷー様
どーも。読んでいただいてありがとうございます。
青と同じ人をモデルにしているとは思えない吉澤さんです。

>251パム様
笑ってもらうのが、何よりです。
笑いって、泣かすより難しいんで…。

>252たろ様
間違ってますね、確かにかなり。
でも、吉澤さんは一生懸命なのです。

>253梨華っちさいこ〜様
>ヨシコは常に男らしくあれ!!
間違ってます…。
間違ってないようにみえるのが、困ったところで…。

更新しました。
今週もなんとか乗り切りましたが、ストックは尽きました。
次のシーンは吉澤さんの思う、あんなことや、こんなこと、
なんでしょうが、それはなんなんでしょうか?
わかった人がいたら教えてください土曜日までに(結構本気で募集中)

では、また来週月曜です。
260 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年05月16日(木)21時16分41秒
イシカーさん入浴時に強襲をしかけ、洗ってあげる攻撃。
梨華ちゃんさすがにマジ説教。

す み ま せ ん 、 人 間 辞 め ま す 。
261 名前:ぷー 投稿日:2002年05月17日(金)00時59分45秒
>260
案外いいかも…。っていうかそれでお願いします!
262 名前:ホッピー 投稿日:2002年05月17日(金)02時01分44秒
(O´〜`O)<やっぱりこの小説すきだべ。楽しくなれるべ。
      ゆっちさん、これからもばんがってね。
263 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月17日(金)16時05分41秒
家に帰って、お姫様抱っこして、1枚づつ服を脱がして……。
スットッキーングを、脱がして…。足先から上に舐めて……。(妄想中)
歯磨きまで手伝っちゃったりなんかして……。(w
スンマセン 逝 っ て き ま す 。
264 名前:たろ 投稿日:2002年05月18日(土)14時05分51秒
一緒にお風呂入るの賛成!大賛成!!
まずは梨華ちゃんの髪の毛を洗ってあげて、そのあと体中くまなく(以下自粛

あー、もう考えただけで……
こんな真っ昼間からすみません(w
265 名前:パム 投稿日:2002年05月19日(日)04時14分16秒
おおっと、更新おつかれです。
いっしょにお風呂・・・いいっすね(ハァハァ
矢口に許可をいただいた吉澤さんには思いっきりがんばっていただきましょう(w
266 名前: 投稿日:2002年05月19日(日)14時34分35秒
 はじめて読みました。マジおもろいっす。
 今は書かなくなってしまった某作家を彷彿とさせるC調なテンポが素晴らしい(w
267 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月19日(日)22時54分21秒
トイレにまで紙もってついていって…

( ^▽^)<しないよ

>>266
H浦功?
268 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時45分35秒
仕事が終わり、ふたり家路に向かう。
先を越されないよう、自分の荷物をすばやく手に持つ梨華。
そして、胸にしっかりと抱え込む。

まるで、犯罪大国に来た旅行者のようである。

吉澤は気にするふうもなく、黙って横を歩く。
いったい次はどんな手口を使ってくるのか。
警戒していた梨華は、吉澤のそっけない反応にいささか拍子抜けする。

わかってくれたのかな…。
淡い期待。
だめだ、期待しちゃ…。
こういう後は、いつも酷い目に遭うんだから…。

その通りである。
この数時間後には、ほんの少しでも期待したことを、
梨華は、心から後悔することになる。
269 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時46分58秒
タクシーに乗り込むふたり。
いつになく口数が少ない吉澤。
その横顔をそっと見つめる梨華。
黙っていれば完璧な美少年。
そう、黙っていさえすれば…。

ようやく部屋にたどり着く。
「疲れたね…」
靴を脱ぎながら、なにげなく呟く梨華。

その一言が、命取りである。

「疲れたの?」
どこか嬉しそうな吉澤の声。
梨華を見つめるその顔に、よからぬことを考えているらしい、怪しげな笑みが浮かんでいる。

その時、梨華の心の中で、はっきりと黄色信号が点滅し始めた。
270 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時47分31秒
吉澤は自分の鞄を肩に掛けて、梨華をひょいと持ち上げる。
世に言うお姫様抱っこというヤツである。

「な、なに、するのよ!」
吉澤の腕の中で手足をバタバタさせる梨華。
「疲れたんでしょ。ベッドまで運んであげる」
「じ、自分で、歩けるから…」

何故男らしさがお姫様抱っこに繋がるのかはよくわからない。
しかし、その腕力だけは、確かに男前である。

梨華を抱いたまま、部屋の中を妙にゆっくり歩く吉澤。
梨華の身体が重いわけではない。
単に、楽しんでいるだけである。

ようやくベッドの上に開放されて、ほっとする梨華。
さっきより、3倍は疲れている。
271 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時48分09秒
簡単な食事を済ませるふたり。
今回は食べさせてあげるとは言わなかった。
さっきのお姫様抱っこ攻撃で満足したのだろう。
そう思って少し安心する梨華。

しかし、今日の吉澤、その程度のことでは、全く満足していなかった。
なんといっても、矢口の許可をもらった特別の日である。
新たな野望を胸に秘め、
ご飯を食べさせるなどという些細なことには、執着しなかっただけなのである。

「そろそろ、お風呂に入って寝ようかな…」
呟く梨華。
その言葉に、吉澤が、一瞬、妙な反応を示したような気がした。
気のせいだろうか、
その反応が“お風呂”という単語対して、顕著に表れているように思えた。

もちろん、気のせいではない。

黄色信号の点滅が速くなる。
272 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時49分05秒
「よ、よっすぃー、先に入ってくれない?」
「いいけど、なんで?」
「う、うん、ちょっと…」
正直に、襲撃されそうな気がするから、とは、言いにくい。

「どうせなら、一緒に入る?」
「い、いい…」
慌てる梨華。
「そう。そのほうが、手っ取り早いのに…」
そう言いながらひとり浴室に消えていく吉澤。

手っ取り早いって、どういう、意味なんだろう…。

既に信号は赤に変わっている。
273 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時50分16秒
短パンにTシャツ姿で浴室から出てきた吉澤。

「あがったよ。梨華ちゃん、入ってね」
「う、うん」

「コーヒーでも飲んで、気合、入れようかな…」
そう言ってキッチンに向かおうとする吉澤。
梨華は慌てて止める。
「コーヒーはだめ。牛乳にして」
今、吉澤を不必要に覚醒させたくはない。
ましてや、気合など入れられたら、たまったものではない。
出来ることなら、牛乳に睡眠薬を混ぜて飲ませたいぐらいである。

それにしても、寝る前に気合を入れて、何をしようというのであろうか。
恐怖心に顔を青くする梨華だった。

「なんで、コーヒーはだめなの?」
「牛乳の方が、体にいいでしょ…」
「そっか、わかった。梨華ちゃん、優しいね」
274 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時50分53秒
「私、お風呂に入る!」
キッチンから戻って来た吉澤に、真剣な表情で宣言する梨華。
まるで、戦地に向かう兵隊のようである。
「うん…入ってよ…」

「わかってると思うけど、着替えは、手伝わなくていいからね」
「そう。残念だね」
わかってはいなかった。
手伝う気満々だったようだ。
あらかじめ釘をさしたことに、ほっと胸をなでおろす梨華。

「あと…覗いたり、とか、しないでよ」
いささか、言いにくそうに梨華。
「そんなこと、するわけないよ」
「そ、そうだよね…」
275 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時51分54秒
いくらなんでも痴漢扱いは可哀想だったかな…。
反省しながら浴室に向かう梨華。

脱衣所で服を脱ぎ終わると、浴室に入ってシャワーを浴びる。
蒸気が立ち込め白く曇った鏡。
浴槽に身体を埋めると、天井から滴が落ちて水面を揺らす。

ひとりになれる時間。
1日で1番リラックスできる時。
落ち着くよね…。


ガラッ

「キャー!」
何故か鉢巻をして目の前に立っている吉澤。
梨華は、叫ぶと同時に、思い切りお湯をかける。
しかし、そんなことには、一向に怯む様子もない吉澤。

「覗かないって、言ったじゃない!」
「覗いてなんかないよ。堂々と入って来たじゃん」

もっと悪い。

「そういう問題じゃないでしょ、いったい、何しに来たのよ」
「疲れてるみたいだから、身体、洗ってあげようかなぁ、って、思っただけだよ」
疲れさせている張本人が、自信満々にそう言う。
後ろ暗いところなど何もないといった表情である。
276 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時52分34秒
ボディソープをつけたスポンジを右手に持って、準備万端で待ち構える吉澤。
そろそろ、のぼせそうで、体力が限界に近づく梨華。

考えてみれば、女同士なんだし…、
今までだって、健康ランドとか、一緒に行ったこともあるわけだし…、
妙に意識して、恥ずかしがる方がおかしいんだよね…。
それに、親切心から言ってくれてるわけで…、
なにも、痴漢行為に及ぼう、なんてわけでもないんだから…。

必死に自分を納得させようとする梨華。
覚悟を決めて立ち上がる。

吉澤は、湯気の中にぼんやり浮かび上がるその身体のラインに、生唾を飲み込む。

ここで、ことさら湯気を強調するあたりが、作者の根性のないところである。
などと言って、この後の展開に妙な期待を抱かせないよう、配慮もしておく。
277 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時53分11秒
吉澤に背を向けて座る梨華。
その背中を吉澤のスポンジを持った右手が滑る。
泡で真っ白になった背中。
吉澤は、梨華の手首を左手で掴むと、その腕も洗い始める。

「いいよ、背中だけで…」
「ついでだし…」
そう言いながら丹念に梨華の手を擦る。
と、
吉澤の手が一瞬止まる。

吉澤の右腕にやわらかいものがあたる。
それは、ジェットコースターで、恐怖のあまり、梨華が腕にしがみついてきた時と同じ感触。
ひとつ違うのは、ふたりとも素肌だということ。

「よっすぃー…今、ヘンなコト考えてたでしょ…」
「…」
「今すぐ、出て行って!」
乱暴に吉澤の手からスポンジを奪い取る梨華。
後ろ暗いところが多分にある吉澤は、黙ってその指示に従った。

親切心と痴漢行為は、紙一重なのである。
278 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時53分43秒
生涯でもっとも疲労を感じた入浴を終え、ベッドの上、大の字になる梨華。
「よっすぃー?」
頭を上げて周りを見回すが、吉澤がいない。

さっきのこと気にしてるのかな?
出て行って、なんて言ったから、ほんとに家から出て行ったりして…。

心配になって、立ち上がる梨華。

「よっすぃー」
洗面所の扉をあけると、そこに吉澤がいた。
「はひ?」
歯ブラシを咥えたまま、間抜けな声を出す吉澤。
まったく反省の色がない。
うがいをして、洗った歯ブラシをコップに立てかける。
279 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時54分15秒
「梨華ちゃんも、歯磨き?」
そう言うと嬉しそうにピンクの歯ブラシを手に取る吉澤。
梨華は、嫌な予感に一歩後退する。
洗面所の壁に凭れかかるような格好になった梨華。

「梨華ちゃん、口開けてね」
反射的に口を開けてしまう梨華。
案外、催眠術にかかりやすいタイプかもしれない。

梨華の口に歯ブラシを突っ込む吉澤。
「じ、じぶ、んで、ひゃ、ふー」

吉澤の手を払いのけようとする梨華。
「そんなに動いたら、ちゃんと磨けないよ」
そう言って梨華の腰に手を回し、体重をかけるようにして身体を固定する。
腕力では勝負にならない梨華。
諦めて肩の力を抜く。

「よっしゃ、きれいになった」
そう言って水を入れたコップを手渡す吉澤。
口を濯ぐ別の方法を、ちらりと思い浮かべた吉澤だったが、
あえて実行には移さなかった。

「自粛、自粛…」
わけのわからないことを呟きながら、出て行く吉澤。
280 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時55分06秒
洗面所から出てくると、戸棚をごそごそ始める梨華。

「ねえ、よっすぃー、トイレットペーパー、どこへやったの?」
「ああ、一番上の棚だよ」

背伸びして、棚を開ける。
しかし、一番奥につっこんであるトイレットペーパーには手が届かない。
そこへ、背後からひょいと手を伸ばす吉澤。
軽々と取り出す。
「ありがとう」

ここで、やめておけば、少しカッコよかったかもしれない。

紙を手に持ったままトイレの前に立つ吉澤。
「よっすぃー?」
「ふいてあげようか?」
「よっすぃー!」
「冗談だよ…」

本当に冗談だったのか、定かではない。
281 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月20日(月)07時55分47秒
ベッドの中。何度も寝返りをうつ梨華。

眠れない…。

胸に触れた吉澤の腕。
腰に回された手の感触。
思い出すと顔が熱くなる。

「よっすぃー…」
小声で呼んでみるが返事はない。

もう、寝ちゃったのか…。

その頃吉澤は、ぐっすり眠っていた。

今日1日の任務を全て果たして、心地よい眠りに浸っている。
その寝顔に、僅かな笑みが浮かぶ。
きっと、いい夢を見ているのだろう。

どんな夢なのかは、あえて追求しないでおこう…。

282 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月20日(月)08時15分36秒
レスありがとうございます。

>260梨華っちさいこ〜様
おもいきり、使わせていただきました。
人間でいて下さい。

>261ぷー様
と、いうわけで、こういうふうに、なりました。

>262ホッピー
ありがとうございます。
みんなで、幸せになりましょう。

>263よすこ大好き読者。様
歯磨きシーン。どんな体勢になるのかわからなくて、
カーテン相手にやってみたりして、ちょっと、自分でバカかと思いました。
舐めるよと、脱がすのは、割愛させていただきました。

>264たろ様
髪を洗うのは、いろいろ試してみた結果、
どうしても、吉澤さんが暴走しそうな体勢になってしまうので、
出来ませんでした。

>265パム様
一緒には入りませんでしたが、
けっこうがんばってくれたのではないでしょうか。

>266カ様
しょっちゅう原稿オトして、新刊が出ると奇跡よばわりせれ、
シリーズものはたいがい1で終わるSF作家のことですか?
 
>267名無し読者様
しないわけでもないようで…。

283 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月20日(月)08時16分31秒
今回は、とっても、楽な仕事でした。しかも、楽しかった。
ちゃんと、希望にそっていたかは、不安ですが、
書いていて自分が楽しかったから、まあ、いいか…。(勝手なヤツです)

皆様、どうもありがとうございました。

量が少し多いので、朝に更新です。
青はちゃんと、夜にやります。(関係ないけど…)

では、また明日。
284 名前:肩身が狭くなっちゃった 投稿日:2002年05月20日(月)11時14分00秒
>どんな夢なのかは、あえて追求しないでおこう…
是非追求して欲しいと思う自分が、確実に存在する。
285 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年05月20日(月)14時14分26秒
一言・・・(゚∀゚)イイ!!っす(w
吉澤の夢が凄く気になる。。。(w
想像するだけで(もぁもぁもぁ)

逝 っ て き ま す 
286 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月20日(月)19時46分39秒
おっ?おぉ??!
なんかイイ感じなんじゃないの〜?!
そーかぁ〜イシカーさん、
ヨシザーさんの腕の感触に赤くなっちまったんですか〜。
オメデトウゴザイマス。
287 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年05月20日(月)23時33分18秒
採用ありがとうございます。
胸に触れただけでフリーズしてしまうヨシコ、いいですね〜。
今のヨシコではこの辺が限界ですよね。
ところで歯磨きシーン、みょうにエロく感じたのはオイラだけですか?
288 名前:たろ 投稿日:2002年05月21日(火)01時22分06秒
おもしろかったです!めちゃ笑いました〜

>口を濯ぐ別の方法
やっぱりアレですよね、アレしかないですよね? 口移(寸止め
うあ〜〜〜〜〜っ、想像してしまった。

違ってたらすみません。少 々 こ わ れ ぎ み で す
289 名前:89式小銃 投稿日:2002年05月21日(火)01時38分32秒
273で爆笑したでございます。
290 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月21日(火)21時26分14秒
今日はロケ。
現場は神奈川県の某所。

「そう言えば梨華ちゃん、出身、神奈川だったよね」
そう話し掛ける吉澤。
「うん、まあね…」
冴えない表情の梨華。

実は、実家のすぐそばなのである。
地元で仕事をするというのは、あまり気持ちのいいものではない。
嫌なわけではないが、どこか気恥ずかしい。
今にも近所のおばさんが出てきて、
まあ、梨華ちゃん、大きくなったねえ、などと言われそうできがきじゃない。

「気分でも悪いの?」
心配そうに梨華の顔を覗き込む吉澤。
「そんなことないよ…」

本当は、吉澤の方が体調不良なのだ。
どうも、風邪気味らしい。
しかし、風邪ごときで弱音を吐いていてはいけない。
吉澤の目標は、梨華に頼りにされるような、立派な男になることである。
291 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月21日(火)21時26分53秒
休憩時間。撮影現場の隅のほうで、新メンバー達の悲鳴が聞こえる。
「なにがあったんだろう?」
心配げな梨華。
「なんだろうね…」
ふたりが顔を見合わせているところへ、新垣が駆け寄ってきた。
「吉澤さん、助けてください!」

摩訶不思議な話ではあるが、吉澤は、新メンバーをはじめ、
特に年下の仲間内には、頼りがいのあるお兄さん、いや、お姉さんとして、
案外慕われている。
それは、男前な容姿、抜群の運動能力、そして、後ろでフォローする梨華の努力のお陰である。

「なにがあったの?」
なんでも言ってみなさい。
そう言いたげな、自信に満ちた表情。
もともと、可愛い女の子が好きな吉澤。
頼られると悪い気はしない。
もちろん、本当に好きなのは梨華ひとりである。
292 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月21日(火)21時27分29秒
「ヘビがいるんです」
「ヘ、ヘビ…」
吉澤の声が裏返る。

ヘビは苦手なんだ…。
ヘビだけは勘弁して欲しい。

「よっすぃー、ヘビだめだったよね…」
吉澤のことはたいてい理解している梨華。
「ごっちん、探しに行ってくる」
そう言って駆け出そうとする梨華の腕を、吉澤が慌てて掴む。

「ヘビぐらい大丈夫だよ」
そう言いつつも、目がうつろな吉澤。
しかし、ここで引き下がっては立派な男にはなれない。

「ほんとに大丈夫?」
「まかせなさい」
293 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月21日(火)21時28分31秒
「吉澤さん!あれなんです」
新メンバー達が指差す先。

それは、確かにヘビだった。
どう見てもヘビだった。
いくら吉澤が、うなぎだと思い込もうとしても、
やっぱりそれは、ヘビだった。

青い顔の吉澤。
「やっぱり、ごっちん、呼んでこようか?」
「なーに、これくらい平気だよ」

もちろん、全然平気じゃない吉澤。
しかし、もう後には引けない。
294 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月21日(火)21時29分15秒
格好良くヘビを退治し、
新メンバー達に、吉澤さんってやっぱりステキ、なんて、言われ、
ちょっと、梨華がやきもちを焼いたりなんかするシーンを頭に浮かべる吉澤。

イメージトレーニングである。

やだけど…、
怖いけど…、
梨華ちゃん見ててよ!
えーい!

意を決して、とぐろをまくヘビの首のあたりを鷲掴みにする吉澤。

どんなもんだい!
まいったか!

と、
ヘビが吉澤の手に巻きついてくる。

あっ、あっ…。
「あ゛ぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!」
卒倒して、そのまま倒れる吉澤。
295 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月21日(火)21時30分13秒
気付いたときはベッドの中。
目の前には梨華。
このシチュエーションは、これで3度目である。

「よっすぃー…」
「梨華ちゃん?」
「よかった…」
「どうしちゃったんだろう…」
「よっすぃー、ヘビを掴んだまま倒れちゃって…」

ヘビ?
ヘビ…。
ヘビ!

思い出しただけでも寒気がして、再び気を失いそうになる吉澤。

「大丈夫だよ、もういないから…」
「あ、うん…」
296 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月21日(火)21時31分00秒
「でね、気を失ってるだけみたいだったから、とりあえず、うちに連れてきたの」
「うち?」
「そう、私の実家」
「へっ!」
何故か慌てて起き上がると、ベッドの上に正座する吉澤。

「気は使わなくていいよ。みんな出かけてるみたいだから」
「そ、そうなんだ…」
ほっとする吉澤。
梨華の両親との初対面がこんな形では、格好がつかない。

「もう、大丈夫なの?」
「うん、もう平気」
「じゃあ、帰ろうか」
頷く吉澤。
297 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月21日(火)21時42分46秒
レスありがとうございます

>284肩身が狭くなっちゃった様
石川さんが出てくる幸せな夢でしょう。
吉澤さんの頭の中は、そればっかりですから。

>285ぶらぅ様
想像だけにとどめておきましょう。
それがきっと幸せです。
 
>286名無し読者様
なんだかんだいって、幸せなひとたちです。
おめでたいです。

>287梨華っちさいこ〜様
こちらこそ、ありがとうございました。
結構、純情な吉澤さんです。

>288たろ様
いろいろ方法はありますが、
…、で、しょうかね…。

>289 89式小銃様
爆笑、
嬉しい言葉です。

更新しました。
明日で、第5話終了です。
メインストーリーより、余談が多かった気がしますが…。
298 名前: 投稿日:2002年05月22日(水)00時44分07秒
後藤はヘビ大丈夫なのか・・・・(w
よっすぃ〜、リカパパに下手な挨拶してしまうのかと期待(w
>>作者様
 ご存知なようで。。。
299 名前:たろ 投稿日:2002年05月22日(水)01時31分46秒
梨華ちゃんにいいとこ見せようとヘビに立ち向かう吉澤さん、カコイイよ!
君はもう立派な男です(違うか)。
それにしてもよっすぃーの行動って、悉く梨華ちゃんのフォローによって
成り立ってますね。この関係好きだなー。
300 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月22日(水)20時14分29秒
玄関を出て歩き出すふたり。
吉澤の足元がふらついている。

「ひょっとして、頭、打ったの?病院、行こうか?」
「違うんだ、ちょっと今朝から風邪気味みたいで…」

吉澤の額に手をあてる梨華。
「やだ、熱、あるんじゃない。なんで早く言わないの?」
「だって…」
黙り込む吉澤。

せっかく格好良いところを見せようと思ったのに、
こんなさんざんな結果に終わってしまった。
体より、そのことの方がよほど気にかかかる吉澤。

「どうしちゃったの?」
「あの写真見て…」
「なに?」
「デジカメの」
「ああ」
「前は、ずっと、頼りにしてくれたんだなって…」
「…」
「思い出も、いっぱいあって…」
再び黙り込む吉澤。
301 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月22日(水)20時15分03秒
「なんだ、そんなこと気にして、ずっと、無理ばっかりしてたんだ…」
おかしそうに笑う梨華。
「今のよっすぃーとだって、思い出はいっぱいあるじゃない」
「…」
「玄関に置いてあった赤ん坊を、ふたりで育てたこととか、
私のために、銀行強盗を捕まえて、川に落ちて病院に運ばれたこととか、
私のために、ぬいぐるみ背負って、マンションの外壁を登ってくれたこととか…
どれも、みんな、私にとっては、忘れられない思い出だよ」

確かに、人生に一度でもそんなことがあれば、忘れたくても、決して忘れられないだろう。
冷静に考えると、今、吉澤が生きているのが不思議なくらいである。

「それに、頼りないなくて、甘えん坊のよっすぃーも…好きだよ…」
「梨華ちゃん…」
302 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月22日(水)20時16分10秒
目の前に広がる景色に、吉澤の足が止まる。
「梨華ちゃん、この公園…」
そこは、まぎれもなく写真で見た公園。
「どうしたの?」
「ここ、写真の公園だよね」
「う、うん…」
吉澤は思い立ったように、梨華の手を掴むと公園の中へ入っていく。

「どうしたのよ…」
戸惑う梨華に構わず、どんどん足を進める吉澤。
「ここだ…」
そう呟いて立ち止まった場所。
その場所こそ…。

よっすぃー…。
思い出したの?
告白してくれたこと…。
初めてのキス…。
ずっと一緒にいよう。そう約束したこと。

「今、思い出した…」
そう言ってじっと梨華を見つめ、肩に手を置く。
「よっすぃー…」
目を閉じる梨華。
甘いムード。
ずっと、この時を待っていた…。
「梨華ちゃん、梨華ちゃんのこと、ずっと、す、す…」
303 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月22日(水)20時16分48秒
と、
その時。

「おーい!」
遠くから聞こえる叫び声。
その声の方向に目をやるふたり。
「おーい!チャーミー!」

「逃げよう!」
慌てたように吉澤の腕を掴んで走り出す梨華。
「ど、どうして…」
わけもわからぬまま、とりあえず梨華について走り出す吉澤。

「待てよ!逃げるなー!」

「な、なに、あの変なひと、知り合い?」
「う、うちの、父親」
「へっ!?」
304 名前:第5話 既視感 投稿日:2002年05月22日(水)20時17分24秒
部屋に辿り着いたふたり。

「でも、なんでお父さん見て逃げたの?」
逃げたくなる気持ちもわかる気がする吉澤だったが、あえて聞いてみた。
「捕まると、いろいろうるさくて…」
「なにを?」
「休みの時ぐらい帰って来いとか…」

「ねえ、よっすぃー、思い出したんだよね…」
照れくさそうに切り出す梨華。
「そうなんだ。すっかり、思い出したんだ…」
じっと吉澤を見つめる梨華。

「なのに、梨華ちゃんのお父さんを見たら、びっくりしちゃって、また忘れちゃった…」
「へ?」
「んー。どうしても、思い出せない…」
がっくり肩を落とす梨華。

「でも、いいや」
「なんでよ?」
「だって梨華ちゃん、頼りなくて、甘えん坊でも好きだって言ってくれたし」
嬉しそうな吉澤。
風邪も、熱も、いつのまにかどこかへ飛んでいってしまっている。

どういうことよ…。
なんで、そういう自分に都合のいいことだけ覚えてるわけ?

次は、いったいどんな攻撃を仕掛けてくるのだろうか。
そう思って、今日もひとり眠れない夜を過ごす梨華だった。
305 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月22日(水)20時22分01秒
レスありがとうございます

>298カ様
後藤さん、だめなんですか。
あんまり知らないんです。なら書くなよって感じですが。
>よっすぃ〜、リカパパに下手な挨拶してしまうのかと期待(w
それは、次話にて

>299たろ様
吉澤さんは石川さんのためなら必死です。
でも、その尻拭いは石川さんがするわけですが…。

更新しました。
第5話終了です。
明日から、第6話 婿養子
では、また。
306 名前: 投稿日:2002年05月22日(水)22時17分45秒
 石川父、本当に出てきた(w。
 いや、確かにヘビでもゴキでも眉一つ動かさなさそうですよね(w >ごっちん
307 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月23日(木)01時26分14秒
娘をチャーミーと呼ぶ石川父最高ですw
308 名前:たろ 投稿日:2002年05月23日(木)04時36分29秒
>「おーい!チャーミー!」
ウケました(w お父さん…
しかもナイス(バッド?)タイミングで。

甘えん坊よっすぃー、すごく好きです(0^〜^)
第6話も楽しみにしてます。
309 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月23日(木)20時20分25秒
「シャッフルユニットの組分けを発表する」
メンバー達を集めて、某プロデューサーがそう切り出す。
何を思ったか、さっきから吉澤はプロデューサーにガンを飛ばしている。
心なしか、プロデューサーは吉澤の視線を避けているように見える。

「その前に、プレゼントや。1週間の休暇をやろう」
嬉しそうなメンバー達。
プロデューサーも笑顔になる。
そして、吉澤の方にちらっと目をやる。
しかし、吉澤の眼光は相変わらず鋭い。

やば…。
心の中で呟くプロデューサー。

おかしい。
なんで、目を合わせないんだ。
さては…。

さらに凄みを効かせる吉澤。
それは、3人くらい人を殺したことがあるような目だった。

「よっすぃ、どうしたの?」
不審に思った梨華が小声で訊ねる。
「ちょっとね…」
310 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月23日(木)20時21分31秒
それは1年前。
梨華と別の組になったことを知った吉澤は、プロデューサーに直談判した。

「シャッフルユニットぐらい、一緒にしてくれてもいいじゃないですか!」

忙しいアイドル家業。
そうそう、遊びまわることは出来ない。
それならば、仕事中に欲求不満を解消するしかない。
常々、吉澤はそう思っている。

「けどな、吉澤。お前に3人祭は似合わんやろ。身長差もあるし」
「大丈夫です!ずっと中腰でいます」
「あほか」

確かに中腰で踊りつづけるの腰に悪いかもしれない。
そう思う吉澤。

「じゃあ、梨華ちゃんを10人祭に入れてください」
「なんちゅうても、3人祭が一番目立つんや。お前は、石川のチャンスを潰す気か?」
そう言われると、弱い吉澤。
しかし、そんなことでは引き下がらない。

「じゃあ、いっそ、もう1組増やして、梨華ちゃんとふたりでやらせて下さい」
「それ、誰が歌うねん」
一瞬言葉に詰まる吉澤。
しかし、食い下がる。
「ラップにしましょう」
311 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月23日(木)20時22分51秒
こんな調子で延々1時間。
いいかげん疲れてきたプロデューサー。
戦法を変える。

「なあ、吉澤。シャッフルは、コンサートのメインや」
「だから…」
「ブリブリ衣装の石川、はっぴ姿の吉澤。ふたり並んだところ、想像してみろ」
「はあ…」
「どう、見えると思う?」
「お似合いのカップル」
吉澤の顔が僅かにほころぶ。

「DVDも出るし、写真集も発売や、どうや?」
「…確かに…、でも、やっぱり、一緒にやりたい」

「わかった、来年は一緒にしたるから、今回は我慢してくれ」
「来年…」
まだ不満げな吉澤。
312 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月23日(木)20時23分49秒
プロデューサーは最後の手段とばかりに、横にいたスタッフに耳打ちする。
指示を受けて出て行ったスタッフは、派手な衣装を手に持って戻って来た。

「これが3人祭の衣装や」
ぽかんと口をあけて眺める吉澤。
「このスカートを、吉澤のために、もう1センチ短くしたる。これで、どうや?」

魅力的な条件である。

「わかりました」
そう言って扉に向かう吉澤。
ものは試しで、もうひとことだけ言ってみる
「あと2センチ」
「1.5」

こうして、三人祭りのスカートは、マイナス1.5センチで、競り落とされた。
313 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月23日(木)20時24分38秒
「今回の組分けは…」
口を開くプロデューサーに、最後のひと睨みを送る吉澤。
「え…ちょっと、待ってくれ」
スタッフを呼ぶプロデューサー。
部屋の隅でこそこそと話を始める。

「え!」
驚きの声を上げるスタッフ。
「それじゃ、バランスが悪いじゃないですか」
「そやけど、こうせな、生きてこの部屋から出られへんかもしれんのや…」
「でも、このふたり一緒にすると、やばくないですか?特に吉澤」
「そこは、石川によう言ってきかせといて…」
「もし変な噂が流れたら…」
「そのときは、さりげなく男の噂でも流してやな…」

10分後。ようやく張り出された組分け表。
吉澤は上機嫌でプロデューサーに笑顔を向ける。

「梨華ちゃん、今度は一緒でよかったね」
「うん。でも、なんで、よっすぃーの名前だけ、マジックで書いてあったんだろう…」
「なぜだろうね」

ヨッシャ!
これからも、この手でいこう。

またひとつ、よけいな知恵を吸収してまう吉澤だった。
314 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月23日(木)20時31分22秒
レスありがとうございます。

>306カ様
出てきました。
ちょっとしたメインキャストになる予定です。

>307名無し読者様
確か、そう呼んでるんですよね。

>308たろ様
甘えん坊の吉澤さんに、少し試練が訪れるかもしれません。
まだ、先書いていませんが…。

更新しました。
一発目は、本題からそれて、時事ネタです。
後はタイトル通りの内容になるかと…。

では、次回は、来週月曜です。
315 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年05月23日(木)20時53分13秒
おお、今日はある意味男前だな、ヨシコ。
316 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月23日(木)23時40分35秒
そうか……
あれは メンチと気合での 同ユニットだったのか……。
317 名前:たろ 投稿日:2002年05月23日(木)23時57分09秒
今回のシャッフルにはこんな裏話があったんですねー(w
それにしても、スカートの長さで説得されてしまう吉に萌え!
318 名前:肩身が狭くなっちゃった 投稿日:2002年05月24日(金)00時58分04秒
>「それ、誰が歌うねん」
この小説読むときは、飲み物は口に入れません。
でも、今日からは食べ物もやめます。
ポテチ(咀嚼途中)がキーボードに・・・(鬱)
319 名前:梨華ヲタ 投稿日:2002年05月24日(金)01時13分39秒
今までを、一気に読みました。
一言

         すごく(゚∀゚)イイ!!

続きがはやく読みたいです。
ゆっちさんは、ひょっとして、・・・神?
320 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月25日(土)02時27分41秒
初レスです。
海板で駄文を書き散らしてる者でございます。(最近までここにいました)
青板の方も最初から読んでましたが・・・交互に読むとここの吉澤さんとかなり
ギャップが(^^;;

真似のできない面白さに毎回唸らされてます。がんがってください!
321 名前:名無しマイペース 投稿日:2002年05月25日(土)22時18分53秒
今日一気読みしたんですが。。。
アフォ天然丸出し吉澤、

カワ(゚∀゚)イイ!!カワ(゚∀゚)イイ!!カワ(゚∀゚)イイ!!

新鮮、こんな吉澤新鮮かつカナーリカワ(゚∀゚)イイ!!(シツコイヨ
マジで最高、ゆっち様最高、苦労人石川最高。

次の更新日が待ち遠しすぎる。これからもかんがってください。
322 名前:某読書人 投稿日:2002年05月26日(日)23時21分25秒
今日のミュージカルのライブで「ピース」をやった時、
この小説を思い出してしもた(w
323 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月27日(月)20時28分28秒
明日から1週間の休暇。
出来ることなら、梨華と旅行にでも出かけ、
1日中、思う存分、べたべたしていたい吉澤である。

が、しかし…。

あーあ…。
でも、しょうがないか…。
ふたりの将来を考えたら、今は我慢だよな…。

自分を納得させるように、心の中で呟く吉澤。

吉澤は、その不可思議な頭の中に、
ふたりのどんな将来像を描いているのだろうか。

それは、謎である。
324 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月27日(月)20時29分10秒
始まりは一本の電話。
梨華の父からだった。

偶然出くわしたとき、愛する娘が、悲鳴を上げて逃げ出した。
まるで、変質者扱いである。
父は深く傷ついたらしい。
どこで聞きつけたのか1週間の休暇。
帰ってきてくれるんだろ?
寂しげな父。
もし、帰ってきてくれなかったら、父さんは、きっと淋しくて死んでしまう。
そう言って駄々をこねる父。
結局梨華が折れることになる。

実父といい、吉澤といい、
梨華は、つくづく、手のかかる人間に愛される星の下に生まれてきたようだ。
325 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月27日(月)20時29分58秒
明日の荷物を詰め終わると、心配げに吉澤を見つめる梨華。

「いい?寝る前にはガスの元栓を締めるんだよ」
「はーい」

「戸締りはしっかりするんだよ」
「はーい」

「暑いからって、お腹出して寝ちゃだめだよ」
「はーい」

やけに元気のいい吉澤の返事。
梨華の不安はさらに募る。

こういう自信満々なときに限って、
このひとは、何かとんでもないことをしでかすのよ…。

想像がつかないだけに、始末が悪い。
おそらく、吉澤自身にもわかっていない。

何をするつもり?
あらかじめ言っておいてよ。
だめ、やっぱり聞きたくない…。

心配しても仕方がない。
結局、誰にも、一旦走り出した吉澤は止められないのだ。

悪いことは、起こってしまってから考えよう。
最近、やっとそう思えるようになった梨華。

人生、あきらめが肝心である。
326 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月27日(月)20時31分07秒
それにしても、なんであっさり、帰省を承諾してくれたんだろう?
それだけが不思議でならない梨華だった。

きっと、どこにでもついて行くと言って聞かないあろう吉澤。
その姿を想像しては、憂鬱だった梨華。
ホッとしたものの、こうもあっさりされると、少し寂しい。

もちろん、吉澤は、梨華の行くところなら、どこへでもついて行きたい。
それが、海の底ならば、酸素ボンベを持ってついて行く。
いざとなれば、エラ呼吸ぐらいマスターするつもりである。

しかし…。

やっぱり、いつの世も、嫁さんの実家ってのは、敷居が高いよ…。
まだ、嫁にはもらってないか…。
細かいことはどうでもいいや…。

何を勘違いしたのか、そんなことを考えている吉澤だった。

「よっすぃー、そろそろ寝るね…」
「うん、明日、絶対起こしてよ」
「起こすけど…」
「起きなかったら、何してもいいから」
珍しく目が真剣である。

「…1週間か…長いな…」
ぼそりと、寂しそうに呟く吉澤。
「よっすぃー…」

そう、長い1週間が、今、始まろうとしていた。
327 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月27日(月)20時31分40秒
「よっすぃー!ちょっと、起きてよ」
「…うぁ…」
梨華に揺り動かされて、片目を開ける吉澤。

「…もう朝?」
「朝だよ。それより、今ね、母親から電話があったの」
「なんて言って?吉澤さんと離れるのが寂しかったら、帰ってこなくてもいいよ、とか?」
素直に願望を述べてみる吉澤。
「バカ…違うよ。よっすぃーも連れて帰って来いって…」
「へっ?」

首の上に乗った壊れかけのコンピューターに、無理矢理、梨華の言葉を解析させる吉澤。

よっすぃーも、一緒に、連れて、帰って、来い…?

それって…、
つまり…、
嫁の実家に挨拶に行く?

「あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーー!」
いきなり叫びだす吉澤。

全壊である。
328 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月27日(月)20時32分31秒
「な、なによ、突然…」

私、何か間違ったこと言ったけ?

今朝の母親との会話を反芻してみる梨華。
「吉澤さんは、実家に帰らないの?」
「うん、そうみたい。ひとり残すのはちょっと心配なんだけど…」
「なら、いっそ、一緒にこっちに来たら?」
「いいの?」
「いいよ。お母さんも、1度会ってみたいし」
「そう、じゃあ、よっすぃーに言ってみる」
ごく普通の母娘の会話。

もっともな結論だよね…。

ふたりには、大きな見解の相違があるようだ。
329 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月27日(月)20時50分12秒
レスありがとうございます。

>315梨華っちさいこ〜様
方向は間違ってますが。男前です。

>316名無し読者様
ひとつの、解釈例ですが、
私は、絶対、吉澤さんが、何かしたと信じてます。

>317たろ様
スカートの長さは(短さは)大切ではないかと…。

>318肩身が狭くなっちゃった様
キーボード、詰まってませんか?

>319梨華ヲタ様
とんでもない。
ただの、いしよしの病にかかった人間です。

>320ごまべーぐる様
こっちのほうは、大好評のうちに終わられたようで、
私は、根性がなくて、ああいうふうに書けないので、羨ましい限りです。
海のほうは、また、そちらの方で…。

>321名無しマイペース様
そーとー変な吉澤さんですが、
イメージが現実に近いというレスが結構あって、
やっぱり、本物が偉大なのではないでしょうか。

>322某読書人様
ハロプロライブSPのピースを見たとき、
ネタが浮かんで、ここまで来てしまいました。

更新しました。
ちょっと、ゴタゴタしておりまして、
まだ、先が全くできてませんが、また明日です。


330 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月28日(火)00時06分55秒
吉くん。壊れています(爆
石の実家での1週間楽しみです。
331 名前:たろ 投稿日:2002年05月28日(火)01時58分23秒
>嫁の実家に挨拶に行く
相変わらずの勘違いぶりに笑いました。
ついに全壊してるし(w
よっすぃーがんがれ、ふたりの将来のために!
332 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月28日(火)21時19分17秒
「何着ていったらいいかな?」
洋服ダンスを開けて、悩む吉澤。
「そんなの、どうでもいいよ。たかだか、うちの実家なんだから」
「そうはいかないよ、やっぱ、ここはビシッと」
「ビシッとしたいなら、スーツでも着れば?」
投げやりにそう言う梨華。

スーツか…。
でも、あれは遊び人にみえるもんな…。
あれ着ると、無意識にホスト入っちゃうし…。

「あれさ、ちょっと派手じゃない?」
「派手?」
「黄色とか、紫とか…」
「まさかと思うけど、ミスムンの衣装のこと考えてる?」
キョトンとする吉澤。
まさしく、その通りである。

「誰が、男装しろっていったの…」
「へ?」
「そのへんのOLが着てるような、普通のスーツに決まってるでしょ」

突然、笑い出す吉澤。
「梨華ちゃん、間違ってるよ。そんなの、持ってるわけないじゃん」

もちろん、間違っているのは吉澤である。
ちなみに、いくら吉澤といえども、
黄色や紫のホストスーツを、自前で持っているわけではない。
333 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月28日(火)21時20分17秒
「普段着でいいじゃない」
呆れ顔の梨華。

普段着か…。
そうだよな…。
これから長いつ付き合いになるんだから、カッコつけてたら、後が辛い。

安心したように、着慣れた服に手をかける吉澤。

「でも、ジャージはやめてよ。横歩くの、恥ずかしいから」
「そんなの、当然わかってるよ」

一旦手に取ったジャージをしまい、ジーパンに足を入れる吉澤だった。
334 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月28日(火)21時20分51秒
気に入られなかったらどうしよう…。
石川家の家風にそぐわない、とか、言われたらどうしよう…。

ドキドキの吉澤。
全国生放送の時以上に緊張している。
歩き方がぎこちない。
右手と右足が一緒に出ている。

「よっすぃー…どうしたの?」
「梨華ちゃん…お腹痛くなってきた…」

まるで子供である。
335 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月28日(火)21時21分31秒
いよいよ目の前に現れた石川家の門。
何のことはない、極普通の民家の玄関。
しかし、吉澤にとってそれは、まさしく加賀百万国の城壁であった。

梨華の後ろからおそるおそる中へ入る吉澤。
「ただいまー」
足音が近づいてくる。
吉澤の緊張感は最高潮に達する。

「お帰り」
出てきたのは梨華の母。
その視線が吉澤に向けられる。
「吉澤さん、こんにちは」
「こ、こん、にちは」

ちゃんと挨拶しなきゃ…。
ドキドキ。
挨拶…、
挨拶…、
ちゃんと、挨拶…。
初めての、挨拶…。

「は、初めまして、吉澤ひとみです」
「はじめまして」

「お、お、お嬢さんを、私に下さい!」
「…?」
「…?」

違ったか?
336 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月28日(火)21時22分12秒
テーブルの上にはケーキと紅茶。
母と娘、そして偽娘婿が、歓談の時を過ごしていた。

「吉澤さんって、冗談が上手だね」
「ハハハ…もう、すみません、冗談ばっかりで…」
引きつった笑いを浮かべる吉澤。
その様子を、疑わしげに見つめる梨華。

どうも、様子がおかしいと思ったら…。
本人より前に、親に結婚の承諾を取り付けてどうするの?
そもそも、結婚なんか出来るわけないじゃない。

母の気さくな人柄に、ようやく緊張がほぐれてきた吉澤。

結婚はまだ早かったか…。
そうだよな…。
まだ、17歳だもんな…。
結婚できるのは、18歳からだっけ…。

自らの勘違いに、ようやく気付いた吉澤。
しかし、年齢以上の障壁があることは、全く気にしていない
337 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月28日(火)21時22分50秒
「さあ、そろそろ、夕飯の買い物にでも行ってくるわね」
そう言って立ち上がる母。
「吉澤さん、嫌いな物ある?」
「いいえ、何でも食べます」
「何が好き?」
「オムライスとか焼きそばとか…あと…り…」

何が好きと訊かれれば、質問の趣旨に関わらず、真っ先に梨華が頭に浮かぶ吉澤。
しかし、相手は実母である。
梨華ちゃんと言いかけて、寸前の所で何とか思い止まった。

「り?」
「り、り、リトマス試験紙」
「…?」
「し、し、シリンダー」

とりあえず、ひとり、しりとりを始めて誤魔化す吉澤だった。
338 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月28日(火)21時28分52秒
レスありがとうございます。

>330よすこ大好き読者。様
壊してしまいました。
1週間、どうなるのか、まだ、考え中だったりします。

>331たろ様
吉澤さんは、ふたりの将来のてめにがんばってくれることと思います。
必要以上に…。

更新しました。
今週は、多分不調です。
来週は、がんばります。
でも、次回更新は、明日です。まだ、できてませんが…。
339 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年05月28日(火)21時40分42秒
ヨシコさん、大切なことを忘れてないかい?
記憶の失う前のあなたは、嫁入り前の娘さんに手を出しているんだぞ。
ばれないようにしないとね。
340 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月28日(火)22時14分04秒
(;0´〜`)<おなかいたくなってきた…

↑あるある、子供の頃とかに。ここの吉を読むと心が和みます(w
341 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月28日(火)22時55分11秒
海では、ありがとうございました。

(0゜〜゜0)<お、お、お嬢さんを、私に下さい!

いきなりトバしてますね(w
続き楽しみにしてます!
342 名前:肩身が狭くなっちゃった 投稿日:2002年05月28日(火)23時05分38秒
くそー!
あなただったんですね?青でよっすぃ痛めつけてるのは・・・
せめて、こっちのよっすぃ幸せにしてやってくれ〜
343 名前:ホッピー 投稿日:2002年05月29日(水)01時04分16秒
(O´〜`O) < ホッピー大人になるにつれてお腹痛くなったべ。
        吉澤と一緒で嬉しいべ(w
344 名前:素人○吉 投稿日:2002年05月29日(水)12時17分30秒
四月からガッコが始まって忙しくて
なかなかNET繋げなかったのですが、
やっとぶっ通し読めました。(嬉泣)

吉、かっこかわい過ぎです。
石をせいいっぱい想う吉の姿に涙。
かなりドッキンドッキンです。
345 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月29日(水)19時44分58秒
面白すぎます。ほんとに…。
あっち行って、こっち来るとホント癒される〜。
ジャージあたりが、ツボにはまってしまいました。(笑
346 名前:たろ 投稿日:2002年05月29日(水)19時56分49秒
好きなものを聞かれて条件反射的に梨華ちゃんの名前がでてしまう
よっすぃーが、かわいくって仕方ないです〜。
うちにも一人欲しいくらい(笑
石川家での一週間に大期待!!
347 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月29日(水)20時35分31秒
和やかに夕食が始まる。
母と石川3姉妹、そして吉澤。

「吉澤さんって、テレビで見るよりカッコイイですね!」
三女が嬉しそうにそう言う。
「照れるなー、そんなことないよ」
未来の義妹に誉められて、上機嫌な吉澤。
「そうだよ。テレビで見てる分にはカッコイイけど、世話がかかるんだから…」
こちらは、いささか不機嫌そうな梨華。
「私も、吉澤さんの世話を焼きたい!」
結構、本気なようである。
意外なライバル出現に、戸惑う梨華。
「世話を焼かれるなら、年上の方がいいよね?吉澤さん」
長女も参戦。

石川3姉妹、吉澤争奪バトルの様相を呈してきた。
348 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月29日(水)20時36分30秒
モテモテな吉澤。
自然と頬が緩む。
ふと隣に鋭い視線を感じる。
梨華が睨みつけていた。
吉澤を肘で小突く梨華。

なにデレデレしてるのよ。
しゃんとしなさいよ、もう…。

しかし、吉澤は全く堪えている様子がない。

ひょっとして、やきもち?
かわいー。

そんな、幸せのまっただ中にいた吉澤。
ダイニングの扉が開くと同時に、そのお気楽ムードが一変する。
349 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月29日(水)20時37分03秒
「ただいま」
一家の主、ご帰還である。

「チャーミー!」
梨華の顔を見つけて満面の笑み。
「やめてってば、その呼び方」
うんざりしたような梨華。
「帰って来てくれたんだな、会いたかったぞ!」
梨華の様子などお構いなし、両手を広げ、今にも抱きついてきそうである。

と、
父のその視線が、吉澤を捕らえる。
その表情が、瞬時にしてこわばる。

「き、君は?」
慌てて立ち上がる吉澤。
「は、は、はじめまして、吉澤ひとみです」

今回、「お嬢さんを私に下さい」とは言わなかった。

賢明な判断である。

言っていたら、生きて石川家から出ることは、できなかったかもしれない。
少なくとも、次に目を覚ますとすれば、間違いなく病院のベッドの上である。
350 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月29日(水)20時37分34秒
自慢の次女と久々の食事。
嬉しくて仕方ないはずの父。
しかし、不機嫌そうに黙々と箸を動かすのみ。
ちらりと、吉澤の方を見ては、不満げにため息をつく。

重い食卓の空気。
嫌気のさした石川姉妹は、さっさと自室に戻って行く。

「吉澤さん、おかわりは?」
空になった、茶碗を見て、すかさず声をかける母。
「い、いいえ、結構です…」
「遠慮しないでね」
「いえ、ほ、ほんとに…」
「いいの?若いんだから、たくさん食べなきゃ」
「お腹いっぱいで…もう…後は、寝るだけですし…」

寝るだけ。
その言葉に異様な反応を示す父。

「母さんしつこいぞ!」
叫び出す父。
「いらないと言ってるんだ。寝る前によけいな体力をつけさせてどうする」
351 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月29日(水)20時38分11秒
「あなた、なにか勘違いしてない?」
諭すような母。
「吉澤さんは、梨華をお嫁にもらうつもりで来たわけじゃないんだから、ねえ?」
「は、はい」
当初は、完璧にそのつもりであったが、
ここは我が身の危険を察知して、素直に頷く吉澤。

「嫁だと!嫁になど絶対にやらん!」
さらに興奮する父。

「もー!やめてよー!」
耐えきれずに口を開く梨華。
おろおろするばかりの吉澤。
ウインブルドンの観客のように、顔を左右に振る。

「だいたい、よっすぃーは、女の子なんだよ」
「そんな細かいことは、どうでもいい」

細かいことだとは思えないが、父は納得しない。

こいつは、梨華を奪ってゆく気に違いない。
娘を思う父親の本能が、そう告げているのだ。
352 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月29日(水)20時38分53秒
「もう、相手にしてられないよ」
そう言って立ち上がる梨華。
「よっすぃー、行こう」
「う、うん…」
手を引かれて歩き出す吉澤。
「ごちそうさまでした」
「気にしないでね、吉澤さん」
申し訳なさそうな母。
「はい、おやすみなさい。お父さん、お母さん」
そう言って出ていく吉澤。
一瞬おいて、部屋の中から叫び声が聞こえる。
「君に、お父さんと呼ばれる筋合いはないっ!」

梨華の部屋。やっと息をつく吉澤。
「怖いお父さんだね…」
「普段はそうでもないんだけど…」

その頃食卓では。
「なあ、母さん」
「なに?」
「しばらく、夕飯は、野菜中心のメニューにしてくれ」
353 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月29日(水)20時54分54秒
レスありがとうございます。

>339梨華っちさいこ〜様
そんなことも、ありましたね。
でも、今の吉澤さんは無実なので…。

>340名無し読者様
吉澤さんは、純心な子供のようなひとなのです。

>341ごまべーぐる様
トバシすぎると、とんでもないことになるんです。

>342肩身が狭くなっちゃった様
私が青の極悪人です。でも、明日がラストなので勘弁してください。

>343ホッピー様
純心なのです。
いいことです。

>344素人○吉様
お久しぶりです。
学生さんだったんですか。
そのほうが、多いんですかね。
私のような大人にならないように、勉強してください。

>345よすこ大好き読者。様
私も、明日の仕事に差し障らないよう、
あっちから、先にアップすることにしてます。

>346たろ様
かわいいですが、手間がかかるひとですよ。
吉澤さんは、石川さんが好きでしょうがないんです。
(私の頭の中では)

更新しました。
なんとか、1日分でっち上げました。
明日も、たぶんこんな感じです。
週末には、書きだめして、もうちょっと推敲できればと思ってます。
354 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年05月29日(水)21時04分57秒
どうやらヨシコなみにアフォな人が現れましたね。
ヨシコ VS 梨華パパ 楽しみ。
355 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)21時13分36秒
実は心ひそかにこの展開を期待してたもんで、いやぁ嬉しいなぁ(w
356 名前:某読書人 投稿日:2002年05月29日(水)22時16分50秒
ひょっとして梨華父さんも昔は天才だったんですか?(w
石川さんは母親からアフォのてなづけ方を教わるがよろし
357 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)23時18分41秒
>「しばらく、夕飯は、野菜中心のメニューにしてくれ」

あらお父さん、もしやヨシザーさんの偏食をご存知で?
358 名前:名無し娘。 投稿日:2002年05月30日(木)01時24分44秒
体力を奪うつもりが逆に喜ばせてしまう罠(w
359 名前:たろ 投稿日:2002年05月30日(木)02時02分27秒
父親の嗅覚、恐るべし(笑
まさに本能ですね。
一人でヒートアップしていく梨華父がおもしろすぎです。
よっすぃーがんがれ!
360 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月30日(木)20時35分45秒
「よっすぃー、朝だよ」
所変わっても、吉澤を起こす事から始まる梨華の朝。
「…うぁ…」
妙な擬音を発しては、間抜けな顔で目を覚ます吉澤も、いつも通り。
今朝も最初に見たのが梨華であることに、この上ない幸福を感じる。

よーし、今日も1日中、どこまでも、ついていくぞー!

決意を新たにする吉澤。
雛鳥のすりこみ理論を、日々、証明してい歩く、奇特な人間である。

床の上にはアルバムか散乱している。
昨夜、梨華の写真を見ては、遅くまではしゃいでいた。

「梨華ちゃんの子供の頃、カワイ過ぎだよ」
思い出したように笑う吉澤。
「もー、また、そんなこと言って…」
照れくさくて、怒ったような顔をする梨華。
「だって、もう、カワイくって、カワイくって」
「やめてよぉ」
頬を染めて俯く梨華。

その照れた表情が、またも吉澤の心をくすぐる。

なんで、こんなにかわいーんだろう…。
幸せだなー。
361 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月30日(木)20時36分18秒
その頃ダイニングには、まったくもって、幸せでないひとが、ひとりいた。
もちろん、父である。

テーブルにはトースト、サラダ、スープ、オムレツ。
いつもより豪華。
そもそも、それが気に入らない。

「梨華はまだ起きて来ないのか?」
ブスッとした父の声。
「まだ寝てるんじゃないの。昨日遅くまで起きてたみたいだし」
姉がそう言う。
父の顔から血の気が失せる。
「なんだか、夜中にガサガサやってたみたいだね」
次は妹。
父のフォークを持つ手が、小刻みに震えている。
「そう言えば、たまに梨華の叫び声が聞こえたわ」
とどめを刺したのは母だった。

「なんだとー!なんで助けに行かないんだ!」
「助けって、あなた、梨華も楽しそうだったわよ」
「許さんっ!」
肩で息をする父。
362 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月30日(木)20時36分49秒
「アングルがどうしたとか言ってたから、写真でも撮ってたんじゃないの」
姉の言葉に、父の想像は、ますます悪い方向へ加速する。
「しゃ、写真だと!なんで、そんなことを!あの変態野郎!」

「もう、朝から興奮してないで、さっさとご飯食べてよ」
そう言ってジャムの瓶を父に手渡す母。
それを、奪い取るように受け取る父。

しかし、蓋が開かない。
どうがんばっても開かない。
顔を真っ赤にしてねじってみるが開かない。

「くそー!どいつも、こいつも、ひとをバカにしやがってっ!」
363 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月30日(木)20時37分24秒
そんな、とんでもなく険悪なムード漂うダイニング。
何も知らない命知らずの梨華と吉澤がやってきた。

「おはようございます」
「おはよう」

「さあ、私、もう行くわ」
「私も行く、待ってー、お姉ちゃん」
流血騒ぎに巻き込まれたくない姉妹。
慌てて出て行く。
「いってらっしゃい」
キョトンとしてふたりを見送る吉澤。

ジャムの瓶を手に取る梨華。
「…?…ん…」
当然、開かない。

ざまーみろ、父親をないがしろにした罰だ。
その様子を横目で見ながら、子供のようなことを考えている父。

「…固い」
ちらっと横を見た吉澤。
何も言わず梨華の手から瓶を取り上げ、いとも簡単に開けてしまった。

「こ、殺してやる!」
フォークを握り締め、立ち上がる父。
「ジャムの蓋ぐらいで、勝ったと思うなよ!」
その凄まじい形相を、唖然として見上げる吉澤。
364 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年05月30日(木)20時37分56秒
「父さんはな、一家のために、毎日、汗水垂らして働いてるんだ」
戦法を変えたのか、梨華に向かい、語りに入る父。
「雨の日も、風の日も、3人の娘を育てるために、父さんは…」

その時、テレビでは芸能ニュースが始まった。
『今年も、高額納税者番付が発表されました』
『モーニング娘。若いのに凄いですね』

「くそー!もういい!もう行く!」
「あなた、ご飯は?」
「いらん!食べたくない」

最後の嫌がらせに、フォークを吉澤のトーストに突き刺すと、
父は早足でダイニングから出て行った。

「まったく、困ったひどだわ。ごめんね吉澤さん」
「…はあ、別に、いいですけど…」
「勘違いしてるみたいなの。吉澤さんに、梨華を取られるんじゃないかって」
「そうですか…」

さすがスルドイ…。
そっか…、
梨華ちゃんをお嫁さんにするには、そういう問題もあるんだ…。

ここにもひとり、勘違いをしている人間がいた。
365 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月30日(木)20時45分13秒
レスありがとうございます。

>354梨華っちさいこ〜様
吉澤さんが目立たないんで、どうしようかと考え中です。

>355名無し読者様
私も、帰省ネタを考えたときには、絶対こういう展開にしたいと思いました。

>356某読書人様
天才だったのかもしれません。
いい、アドバイスですね。

>357名無し読者様
知らなかったんですね、お父さんは。

>358名無し娘。様
そういうことであります。

>359たろ様
父の愛ですね。
過剰な愛情の対決です。

更新しました。
なんとか、1週間乗り切りました。
ほっ…。
次回はまた来週月曜です。
366 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月30日(木)22時35分00秒
( ´ ▽ `)y-~ 

チャーミー・父、期待を裏切らない暴走ぶりです。

367 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年05月31日(金)00時17分31秒
ヨシコにひかせるとは梨華パパかなり強力ですね。
勘違いっぷりも最高です。
まるで誰かを見ているような…。
368 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月31日(金)00時21分45秒
梨華ちゃんは、ファザコンですか?と、聞きたくなるぐらい
梨華パパと、吉は似てるように思えますが。(w
明日も、仕事がんがれそうです。(笑)
369 名前:ぷー 投稿日:2002年05月31日(金)02時04分13秒
大嫌いなネズミの恐怖に怯えながら読んでます。(それだけおもしろい!ってことです)
被害妄想で子供っぽい石川父最高ですね!
しかも勝手に勘違いしてる人いるし(w
娘が自分よりたくさん稼いでたら悲しいね…。
370 名前:ぷー 投稿日:2002年05月31日(金)02時07分09秒
ああっ!すいません!!あげてしまった…。
日光に逝って反省してきます…。
371 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月31日(金)02時13分07秒
梨華父いいね〜(w

ある意味、吉澤を超えたな。
372 名前:たろ 投稿日:2002年05月31日(金)06時46分30秒
勘違い野郎二人、最強(w
梨華父にも吉にも、試練の一週間ですね〜

ゆっちさん一週間お疲れさまでした。
373 名前: 投稿日:2002年05月31日(金)14時34分43秒
この二人、一晩呑み明かせばマブダチになれると見た(w
374 名前:誰か。 投稿日:2002年05月31日(金)20時31分47秒
結局は似た者同士ですねー(笑)
いつか分かち合えるのだろうきゃ〜!!?
375 名前:肩身が狭くなっちゃった 投稿日:2002年06月02日(日)01時01分24秒
>最後の嫌がらせに、フォークを吉澤のトーストに突き刺すと
最高の嫌がらせですね(爆
ここまで、自分自身を貶める行為の出来る梨華父に乾杯!
376 名前:. 投稿日:2002年06月03日(月)00時49分31秒
ども、最近小説にはまった新参ですが・・・爆笑です。
第6話「婿養子」最高!梨華父、いい味だしてます。
これからも、執筆がんばって下さい。
377 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月03日(月)22時06分35秒
朝食を済ませ、部屋に戻る。
溜息をつく梨華。

ごめんね…。

父の暴走。
その矢面に立っている吉澤は、さすがに意気消沈しているように見える。
平生、吉澤の暴走によって、甚大な被害に被っている梨華。
差し引きすれば、まだまだ、お釣りがくるぐらいではあるが、
それはそれ、これはこれである。

「帰ろうか?」
優しい表情で、吉澤の顔を覗き込む梨華。
吉澤はじっと梨華を見つめる。
そして、ひとこと。
「なんで?」

「なんで、って…、辛いでしょ?」
少し考えるような吉澤。
「辛くないこともないけど…」
「だよね…」
「けど、戦いは、まだ、始まったばかりだよ」

戦い…?
だめだ…。

週に1度の割合で発せられる空襲警報が、梨華の頭に鳴り響いた。
378 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月03日(月)22時07分16秒
「戦う相手は強い方が燃えるってもんだしね」
目を輝かせる吉澤。
それは、勝負にかける男の目である。

あの父。
いったい、どのあたりが強いのであろうか?
しかし、吉澤は、戦うに値する強敵だと認識してる。
相手にとって不足なし。
凡人にはわかりかねる、着眼点である。

梨華は、お星さまにお願いしたい気分だった。
戦うのはやめて欲しい。
そして、お願いだから、燃えないで…。

「買い物に行こうよ」
妙に嬉しそうに、そう言う吉澤。
さっきまでの、戦う男はどこかへ消えている。
まるで普通の女の子のようである。
「いいけど、欲しいものでもあるの?」
「うん、ちょっとね」

また、なにかよからぬことは企んではいないだろうか?
そんな疑念を抱く梨華。
しかし、とにかく、吉澤の表情が明るいことにほっとする。
気分転換をして、妙な考えを捨ててくれれば、それが一番。
今日は、少しぐらいの我儘だったら聞いてあげてもいい。
379 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月03日(月)22時07分57秒
「ちょっと出かけてくる」
母に声をかける梨華。
玄関まで見送りに来る母。
「気をつけてね」
「はい、行って来ます、お母さん」
すっかり、婿養子気分の吉澤。

「さあ、行こう」
そう言うと、吉澤は梨華の手を取る。
手を繋いで、仲良くお買い物。
新婚夫婦のイメージを体現してみる吉澤であった。

「恥ずかしいからやめてよ」
「いいじゃん。誰も見てないんだから」
「うちの、近所なんだよ。誰に見られてるかわからないよ」

誰に見られているかわからない。
その通りである。
電柱の影からふたりの様子を見て、怒りに体を震わせている男がいた。

男は心の中で呟く。
1度でいいから…、
殺したい。

その手を離せ!
くっついて歩くな!
笑うな!
380 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月03日(月)22時08分35秒
今すぐ飛び出して行って叫びたい父。
しかし、仕事を休んでまで娘を尾行しているなどとは、さすがに知られたくない。
ここはぐっと我慢である。
どこで調達したのか帽子とサングラス、そして付け髭。
どこから見ても、不信人物。

大通りに出るとタクシーを拾うふたり。
父も慌ててタクシーを探す。

「あの車を追ってくれ」
「はあ…わかりました…」
戸惑いながらも、ふたりのタクシーを追い始める若い運転手。
「あれ、あのふたりって…」
「知ってるのか?」
「ええ、ファンなんです。ひょっとしてお客さん、雑誌記者かなにかですか?」
「まあ、そのようなもんだ…」
実の父だとは言えない。
381 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月03日(月)22時09分11秒
「で、君は、どっちが好きなんだ?」
「そうですね…」
美少女ふたりを想像してか、嬉しそうに考える運転手。
それが、命にかかわる重要な質問だとは知る由もない。

「石川さんかな…」
満足げに頷く父。
1問目は無事正解したようだ。

「どこがいい?」
「やっぱり、女の子らしくて、可愛いところかな」
さらに大きく頷く父。
「あとは?」
「あと…声とか」
「それから?」
しつこさに、困惑し始める運転手。
しかし、サングラスの下から、僅かに窺える鋭い視線。
「えっと…あの…ええ…」
「もうないのか!」
怒鳴る父。
「いえ…その…」
「純情で穢れをしれないとか、父親思いで優しいとか」
「それは、なにか、違うような…」
サングラスを1センチ程ずらす父。
「ええ、その通りです。きっと、父親思いの優しい子です」
父の疑わしげな眼差し。
382 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月03日(月)22時10分20秒
張り詰めた空気。
何か言わなければと、必死で話題を探す運転手。

そして、
「吉澤さんも、可愛いですよね、少年っぽくって」
とうとう、地雷を踏んでしまった。

「ヤツの話はするなーっ!!」

黙々と、ハンドルに集中する運転手。
やがて、背中からの刺すような視線も、威力が弱まってくる。

「でも、なんで追ってるんですか?ふたり一緒なら、彼氏と密会ってこともないですよね」
父の顔が僅かに強張る。
「ひょっとして、あのふたりがアヤシイとか?」
「…」
「そう言えば、そんな感じもしますよね」
「…」
「あっ、やっぱり、アヤシイ。お客さん!シャッターチャンスですよ」
父は運転席の真後ろに移動すると、背後から運転手の首に手を回す。
「お、お、きゃ、…くさん、く、苦しい…」
「黙って運転しろ!これ以上余計なことをしゃべったら、命はないと思え」

そのころふたりは。
「梨華ちゃん、髪にゴミがついてるよ。取ってあげるね」
「うん」
「はい、取れたよ」
「ねえ、よっすぃー、なんだか、誰かに睨まれているような気がするんだけど…」
「ばかだなあ、梨華ちゃん、そんなことあるわけないよ」
「そうだよね…」
383 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月03日(月)22時26分19秒
レスありがとうございます

>366ごまべーぐる様
暴走し過ぎで、手に負えません…。

>367梨華っちさいこ〜様
ここまでにするつもりはなかったんですが。
どうしよう…。

>368よすこ大好き読者。様
仕事は大切です。
お互いがんばりましょう。なんか変…。

>369ぷー様
ねずみ?
それは、たいへんです。
がんばって下さい。違う…?
>370ぷー様
別に、私自身は、上げ下げにこだわってないです。

>371名無し読者様
越えられると、困るんですよ。
吉澤さん主役だから…。

>372たろ様
どーなるんでしょうか?
まだ、私にもわかりません。

>373カ様
私も、そう思います。
飲めるといいんですけどね…。

>374誰か。様
なんで、似ちゃったんでしょうか…。不思議です。

>375肩身が狭くなっちゃった様
ずっと、フォーク持って怒ってたんで、刺すしかないかと…。

>376 . 様
ありがとうございます。
どうなるか、わかりませんが、またお付き合いください。
384 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月03日(月)22時27分06秒
「梨華父が天才だった頃」更新しました。
吉澤さん主役の話が書きたい、今日この頃。
今週はがんばるとかいいながら、さっき書いたばっかりで、
誤字もあったりで、さらにスランプ気味ですが、
また明日です。
385 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月03日(月)23時11分23秒
おとんおもろい
386 名前:名無しマイペース 投稿日:2002年06月03日(月)23時50分57秒
石川さん、悪寒が走らずおとんが走ってる模様。
しかしのんきなよしこは可愛いなぁ、本当にアフォで可愛いなぁ。
スランプですか、自分にはかんがれ!しか言えないのが悔やまれます。
もちろん続きは大いに期待。
387 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月04日(火)00時56分16秒
嗚呼、なんて不幸な運転手さん。
どこぞのタクシー運転手さんを思い浮かべてしまいますね…(w
388 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月04日(火)01時24分09秒
父は有給取ったのでしょうか?
389 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年06月04日(火)07時37分50秒
ヨシコの梨華パパ攻略作戦開始ですか。敵はかなり強力だぞ。
390 名前:日本人 投稿日:2002年06月04日(火)13時12分35秒
あたし一応は女子中学生だけど、
こんなオヤジいたらマジ殺しますよ?(笑)
よっすぃー、頑張って変態オヤジに勝つんだ!!
391 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月04日(火)22時20分50秒
街中を楽しげに歩く若いふたり。
そして、その後をつける、いかがわしい中年男。

離れろ、離れろ、離れろ…。
念仏のように心の中で唱える父。
迷わず成仏して欲しいものである。

もう夕暮れ時。
相変わらず、休日を楽しむふたり。
しかし、中年男は、疲労で膝がガクガクである。

なんで、こんなキツイ思いをしなきゃならんのだ!
理不尽にも、そんなことを思う父。
どう考えても自分が悪い。
しかし、父の結論は、何が何でもただひとつ。

アイツが悪い!

こんなに足が痛いのも、
こんなに娘が心配なのも、
明日は仕事が山積みなのも、
ついでだから、日本経済の低迷も、

すべてアイツが悪い!
392 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月04日(火)22時22分05秒
「梨華ちゃん、もうそろそろ帰ろうか」
1日デートを堪能し、満足げな吉澤。
「そうだね」
頷く梨華。
「ねえ、よっすぃー」
「ん?」
「よっすぃーの欲しいものって、これだったの?」
そう言いながら、包みを手に取る梨華。
「そうだよ」
「よっしぃーって、優しいね…」
梨華は恥ずかしそうに俯く。
その包みの中身は、父のために買ったネクタイ。
「もうすぐ、父の日だしさ」
「そんなこと、すっかり忘れてた。ありがとう…」
「これで、お父さんの機嫌が直るといいね」
393 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月04日(火)22時24分49秒
包みに込めた吉澤の思い。
それは、もちろん、優しさなどではない。
まさしく、はちきれんばかりの下心。
滞りなく婚姻を推し進めるための、懐柔策、第一弾である。
しかも、梨華に感謝されるというおまけつき。
吉澤は、自分の頭の良さに、内心感動していた。

「なにか、お礼しなきゃ」
「いいよ、そんなの」
この上、お礼などされては、さすがに気が咎める。
あくまで固辞する吉澤に、梨華は詰め寄る。

「何が欲しい?」
「梨華ちゃん」
パブロフの犬状態で、思わず、余計なひとことを言ってしまう吉澤。
冷たい視線を感じる。
「冗談、冗談…」

「で、なにが欲しいの?」
さっきより、若干声のトーンが低い。
必死で欲しいものを考える吉澤。

梨華ちゃん以外、梨華ちゃん以外…。
んー。
梨華ちゃんしか浮かばない…。

「じゃあ、ほっぺに、チュー」
「…」
「冗談…」
394 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月04日(火)22時26分39秒
タクシーに乗り家路に向かう。

「梨華ちゃん、お父さんは、今日は何時頃に帰ってくるの?」
「どうだろう。仕事が忙しいとか言ってたから、遅いかもね」

確かに忙しい父である。
それは仕事ではないが…。

「どうして、そんなこと聞くの?」
「う、うん…お父さんの喜ぶ顔、早く、見たいなー、なんて…」
「よっすぃー…」

吉澤が見たいのは、決して、父の喜ぶ顔ではない。

あの父である。
梨華が可愛くて仕方がないのである。
梨華からプレゼントを貰えば、天にも昇る心地になるはずである。

なぜか吉澤には、父の心の動きが、手に取るようにわかった。
どさくさに紛れてお願いすれば、ひょっとすると、認めてくれるかもしれない。

しかし、万一、父が認めたとしても、日本の憲法が認めない。
395 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月04日(火)22時28分27秒
タクシーが家の前に停車する。
後部座席から降りるふたり。

「よっすぃー」
「なに?」
振り向く吉澤の頬に、梨華は背伸びして軽くキスをする。
「お礼…」
「…」

全身硬直状態で、失神寸前の吉澤。

もちろん、その頃、同じように失神寸前の男がいた。
あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーー!
そして、本日ふたり目となる、不幸なタクシードライバー。
「お、お、きゃ、…くさん、く、苦しい…」

その晩、父は帰ってこなかった。
396 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月04日(火)22時31分50秒
明け方近く、石川家の玄関がガタガタ揺れる。
強盗でも、入ってきたかのようである。

「おーい!帰ったぞー!」
全身からアルコールの臭い。
ベロンベロンの父。

強盗よりも性質が悪い。

ふらつく足取りで、向かう先は梨華の部屋。
「貴様―!起きろー!」
寝起きがおそろしく悪い吉澤。
しかし、耳元で叫ばれ、胸倉を掴まれては、さすがに目を覚ます。

「…お、お父さん」
「誰が、お父さんだっ!お前を産んだ覚えはないぞー!」

産んだ覚えは、誰ひとりないはずだ。

「なっ、なにしてるのよ!」
異変に気付いた梨華。
慌てて起き上がると、父を吉澤から引き離した。
そして、そのまま、粗大ゴミを扱うかのように、部屋の外へ追いやる。

「もう!二度と顔も見たくない!」
バタンと扉を閉める梨華。

「よっすぃー、ごめんね、大丈夫?」
「あ、う、うん…」
呆気に取られている吉澤。

吉澤は思う。

やばい…。
想像以上に手強い…。
397 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月04日(火)22時41分14秒
レスありがとうございます。

>385名無しさん様
彼はますます変なひとです。

>386名無しマイペース様
ありがとうございます。
スランプですが、がんばります。

>387名無し読者様
運転手さんは、客を選べないので可哀想…。

>388ごまべーぐる様
一応、有給になるかと思われます。労働者の権利ですから。

>389梨華っちさいこ〜様
手強いです。
どうしよう…。

>390日本人様
女子中学生ですか。
若いですね。
過激ですね。

更新しました。
今日も、ぎりぎり、なんとか、一応、アップできた、という感じです。
398 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月05日(水)00時31分12秒
>産んだ覚えは、誰ひとりないはずだ。
……そうですよね、でも…ツボだ。
399 名前:たろ 投稿日:2002年06月05日(水)01時44分34秒
怪しすぎる梨華父の行動に笑いつつも、ちょっとだけ同情。
タクシーの運転手さんには、たくさん同情。
それにしても下心でいっぱいのよっすぃー、いいなあ(w
400 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月05日(水)21時08分45秒
結局プレゼントは渡せぬまま。
事態はなんら好転の兆しを見せることもなく、石川家での日々は過ぎてゆく。

仕事から帰ると、始終不機嫌そうにしている父。
幸いにも救急車の出動には至っていないが、一触即発の状態である。
婿養子への道は、長く、険しい。

夕食時。
父はまだ帰宅していない。
笑い声の満ちた食卓。

和やかな食事風景である。
石川家は平和である。
あの男さえいなければ…。
401 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月05日(水)21時09分43秒
「明日、友達の家に泊まるから、私、帰って来ないよ」
そう言う姉。
「そうなの?私も学校の一泊研修だよ」
次は妹。
「お母さんも、お友達と旅行」
顔を見合わせる、梨華と吉澤。

「じゃあ、明日は、よっしぃーとふたりきりか…」
父については、あえて触れない梨華。
記憶の底から、抹殺したいのである。

「ふたり、って…梨華ちゃん…」
濃いキャラクターの父。
残念ながら、吉澤の記憶からは、まだ抹殺しきれていない。

「いつもと一緒だからいいよね?」
「う、うん…」
どう考えても、いつもとは違う気がするが、曖昧に頷く吉澤。
402 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月05日(水)21時10分30秒
そんなビミョーに平和な食卓。
ようやく、父が帰ってきた気配。
立ち上がる姉。
慌てて、自室に戻って行く。

「ただいま」
いつにもまして、不機嫌な父の声。
「お帰りなさい」
諦めたのか、気にする様子もない母。
見向きさえしない梨華。
しかし、吉澤は、性懲りもなく、父の導火線に火をつける。

「お帰りなさい、お父さん」
「お父さんと呼ぶな!」
怯むことなく、笑顔の吉澤。
「まあ、まあ、落ち着いてください。お父さん」
「お父さんじゃないと言っとろーがっ!」

この会話は、朝、夜、必ず交わされる。
もう、止めに入る者もいない。
既に、石川家恒例行事となりつつある。

吉澤は笑顔のまま。
怒鳴られるのにも慣れてきたようだ。
403 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月05日(水)21時11分35秒
興奮を抑え、食事を始める父。
「明日、急な出張が入った」
「そうなの。じゃあ、明日は本当に、梨華と吉澤さん、ふたりきりなんだ」
母の言葉。
父の額にくっきりと血管が浮かぶ。

「ふ、ふたりっきりだと!」
普段は同居しているふたりである。
今更、目くじらを立てても仕方がない。
しかし、父にとって、今、この瞬間が大切だった。
目の前で、ふたりきりの夜を黙認するこは、どうしてもできなかった。

「なんで、母さんがいないんだ!」
「旅行だって、前から言ってるじゃないの」
妹の方を見る父。
「学校の行事なんだからしょうがないでしょっ」
「学校なんかやめてしまえ!」

無茶苦茶である。
404 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月05日(水)21時12分20秒
黙っていた梨華も、我慢出来なくなって口を開く。
「そんなに心配なら、お父さんが仕事辞めれば!」
不意に、考え込む父。

本気で辞める気?
まさか…。

不安になる梨華。
あり得ないことでもないだけに怖い。

「わかった」
決意を込めた父の表情。
「辞めるの?」
「バカか。一家の大黒柱である父さんが、仕事を辞めるわけないだろう」
ホッとする梨華。

たまには、まっとうなことも言う。
こんな父でも、石川家の世帯主である。
たとえ、娘より収入が低くとも。
405 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月05日(水)21時13分09秒
「出張先へは、通うことにする」
そう言うと、吉澤を睨む父。
「遅くなるかもしれんが、必ず帰ってくるからな」
「わかりました。お父さん」
「お父さんと呼ぶな!」
「大丈夫です。梨華ちゃんのことは、任せて下さい」
またも、余計なことを言う吉澤。
父の血管は断裂寸前。

実は、少しばかり面白がっている吉澤。
確信犯である。

「それはそうと、出張って、何処なの?」
ふと気になって、訊ねる母。
「すぐ隣だ」
「隣?」
「韓国」
「韓国に通うの?」
「ああ、必ず帰って来るぞ」

必ず帰って来るであろう。
もしも、最終便がなくなったら、泳いででも帰って来るに違いない。
406 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月05日(水)21時17分57秒
レスありがとうございます

>398名無し読者様
そうなんです。
産めないんです。

>399たろ様
吉澤さんも、だんだん強くなって、
少しは賢くなってきました。

更新しました。
気付けば400超えてますので、
平常営業は6話で終わって、次は最終話とするつもりです。
もう、長くはないと思うので(だぶん)お付き合いください。
407 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年06月05日(水)21時46分46秒
海外出張じゃないっスか。実はパパさん、すごい人なんですかね?

……たとえ、娘より収入が低くとも。
408 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月06日(木)08時17分32秒
この話の次で最終話ですか…
ここのはずっと読んでいたい幸福感と面白さがあるので惜しいなぁ
409 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月06日(木)19時34分22秒
>必ず帰って来るであろう。
もしも、最終便がなくなったら、泳いででも帰って来るに違いない。

…黙って父を応援することにします。(父、おもしろすぎです)
終わるのは寂しいですが(コーヒー飲みながらこのお話を読むのが日課
だったので)、がんがってください。
410 名前:たろ 投稿日:2002年06月06日(木)21時03分07秒
韓国まででも通う覚悟の父、えらいです。あっぱれ!
確信犯のよっすぃーもナイスです。

最終話が近づいているんですね。う〜ん、かなり寂しいです…
411 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月06日(木)23時56分53秒
慌しいく家族が出かけ、家には梨華と吉澤のふたりきり。
「なんだか寂しいな」
散々酷い目に遭っていながら、そんな言葉を漏らす吉澤。

忘れることが、得意なのである。
神の域に達した、忘却能力である。

将来は同居もいいかもしれない。
でも、新婚時代は別居がいいか…。
甘い生活を十分楽しんだ後に同居。
やっぱり、二世帯住宅なんかがいいかもしれないな…。

家の中を見まわす吉澤。
勝手に、よそ様の家の改築計画を練り始める。

「お昼ご飯なに食べたい?」
「…うん」
梨華の質問に生返事を返す吉澤。
吉澤の頭の中では、既にブルドーザーが出動している。

「ねえ、よっすぃー?」
「玄関」
「…?」
キョトンとする梨華。
「玄関は食べちゃだめだよ」
念のために、そう言っておく。

「玄関はふたつあった方がいいかな?」
「はい?」

玄関がふたつ?

梨華には、吉澤の言っていることがまるで理解出来ない。
ただひとつわかったのは、
吉澤が、梨華の話を全く聞いていなかったということだ。
412 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月06日(木)23時58分05秒
「玄関なんてどうでもいいでしょ」
少し拗ねる梨華。
「拘らないタイプなんだね」
「はい?」
まるで会話は噛み合っていない。

梨華ちゃんがそう言うなら、玄関はひとつでいいや。

ひとり納得する吉澤。
もちろん、梨華は、玄関はひとつでいいなど、ひとことも言っていない。

吉澤の頭に、石川家の玄関がありありと浮かぶ。
表札がふたつ。

表札は石川?それとも吉澤?
“吉澤梨華”
その字面を想像しただけで、何故かドキドキしてしまう吉澤。

しかし、ここは石川家の未来のために、石川姓を名乗るべきかもしれない。
そんなどうでもいいことを、真剣に考えている吉澤。

“まちぶせ”を思い出してしまうのは、年のせいだろうか。
413 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月06日(木)23時58分53秒
「出かけるのも面倒だね。何作ろうか?」
もちろん梨華の話は昼食である。
しかし、吉澤の話は、あくまでも二世帯住宅だった。
「庭を造ろう」
「…」

「…お昼ご飯の話なんだけど…」
「家庭菜園を作ったら、新鮮な野菜が食べられるよ」
「そんなの待ってられない」
「すぐに造る?」
「だって、もう昼過ぎてるよ」

ちょうどいい具合に、話がずれている。

「梨華ちゃん、とりあえず、昼ご飯でも食べようか」
「…」
414 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月06日(木)23時59分25秒
穏やかな午後。
何をするわけでもなく、のんびりと時を過ごす。

「ねえ、梨華ちゃん、子供は3人くらいいたほうがいいよね」
「へっ?」
急に子供の話を振られ、一瞬、戸惑う梨華。

「そうかもね…」
梨華も、吉澤も3人兄弟。
きっと兄弟の数を言っているのだろう。
そう思って同意する梨華。
まさか、梨華が産む子供の数だとは思いもよらない。
「よかった、梨華ちゃんと同じ意見で」
「へっ?」

広い庭、綺麗な玄関。そこに住むのは夫婦と父母、そして3人の子供。
ブルドーザーはフル稼働。
石川家二世帯住宅は、着々と完成に近づいてゆく。
あくまで、吉澤ワールドでの出来事である。

そんな勘違いだらけの幸せな休日。
あっという間に日は落ちてゆく。
415 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月06日(木)23時59分57秒
布団に潜り込む吉澤。
「お父さん本当に帰ってくるのかな?」
「さあ、どうだろう」
興味のなさそうな梨華。
「そんなこと気にしないで、もう寝ようよ」
「うん…」
灯りを落とす梨華。
やがて部屋の中で聞こえるのは、ふたりの穏やかな寝息だけとなる。

ガチャ
バタン

玄関のほうから物が崩れ落ちたような音がする。

「な、なに…」
目を覚ます梨華。
吉澤のほうを見ると、想像通り、ぐっすり眠っている。

ガタン
ダダダダダー

なんなのよ…。

きっと、
たぶん、
お父さんだよね…。
近所迷惑だから、なんとかしなきゃ…。
416 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月07日(金)00時00分33秒
真夜中の物音。
いくらか恐怖を感じる梨華だったが、吉澤を起すのは躊躇われた。
吉澤が出ていったら、もっと凄まじい近所迷惑になるに違いない。

ほんとにもう…。
ため息をつきながら部屋から出て行く梨華。

吉澤はすっかり夢の中。
その中身は幸せな新婚生活、そして二世帯住宅。
この程度の物音では、まったく揺らぐことのない夢の世界である。

「キャー!」
梨華の悲鳴。

「…んう…ん…梨華ちゃん?」
途端に、目を覚ます吉澤。
愛の力は凄まじい。

「梨華ちゃん…」
寝ぼけながらも、梨華のいる方へ、犬のような嗅覚で近づいていく吉澤。

「梨、梨華ちゃん!」
吉澤の目の前には、見知らぬ男に腕を掴まれている梨華がいた。
417 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月07日(金)00時01分08秒
「こっのヤロー!」
反射的に男に飛びかかる吉澤。

不意をつかれて男はその場に倒れこむ。
しかし、相手はアメフト選手のようながっちりした男。
すかさず反撃に出る。
さすがの吉澤も、この体格差では勝負は厳しい。
何度もお腹の辺りを殴られる、けれど必死で立ち向かう。

と、
「な、なにしてるんだ…」
背後から聞こえる声。
父だった。

「お、お父さん、足を、こいつの、足を、お、押さえて、ください…」
父の姿も見つけると、息を切らしながら、応援を求める吉澤。
「わかった」
いまひとつ状況は把握しかねるが、非常事態を察知した父。
吉澤の要請に応じる。

数分間の格闘。
ようやくふたりがかりで、強盗を捕らえることに成功した。
418 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月07日(金)00時01分45秒
真夜中の強盗騒ぎ。
石川家に平穏が戻ってきた頃には、もう東の空は明るくなり始めていた。

ソファーに座る3人。
「お父さん、大丈夫ですか」
心配げに父を見る吉澤。
「これくらい、なんてことはない」
相変わらずぶっきらぼうな物言いだが、いつものように喧嘩腰ではない。

「これ」
そう言って、こないだ買ったプレゼントを父へ渡す梨華。
「ん?」
「もうすぐ父の日だし…」
「え?」
「よっすぃーが、何か買ってあげたらって言ってくれたんだよ」
「…」

立ちあがる父。
「明日も早いから、もう寝る」
それだけ言ってリビングから出て行く父。

「ありがとうぐらい言ってもいいのに…」
不満そうな梨華。
「きっと、照れくさいんだよ」

そう、父は照れくさかった。
寝室に戻ると、踊りだしそうな勢いで、ひとり喜びを体で表現していた。
419 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月07日(金)00時02分20秒
東京へ戻る日の朝。
周りに人がいないのを確認し、父が吉澤に近づいてきた。

「ちょっと来い」
そう言って、吉澤を廊下の隅へ引っ張っていく父。
「お、お父さん、なにをするんですか」
「いいから」

「君は…」
吉澤の目は見ずに話し始める父。
「梨華が好きか?」
あまりにストレートな質問。
一瞬たじろぐ吉澤だったが、答えはひとつである。
「好きです」
「本気なんだろうな」
「もちろんです」
「じゃあ、一発殴らせろ」
「はい?」
「可愛い娘を奪われる父親の心に比べたれ、それぐらい痛くないだろ」
「は、はい」

バッシ!
420 名前:第6話 婿養子 投稿日:2002年06月07日(金)00時02分57秒
石川家での婿修行1週間が終わり、ようやく部屋に戻ってきたふたり。

吉澤はベッドの上で大の字になる。
「やっぱり、うちはいいよなー」
完全にリラックスしている吉澤。
しかし、あくまでこの部屋の所有者は梨華であって、決して吉澤のうちではない。

「楽しかったけどね、いいこともあったし」
そう言って笑う吉澤。
「いいことって?」
「うん、ちょっとね」

「体は大丈夫なの?」
吉澤は、強盗との格闘で、体中に青痣を作っている。
「体は大丈夫なんだけど、なんだか頭の調子がよくないんだよね」

いまだかつて、吉澤の頭が好調だった試しはない。

「頭、うったの?」
「最後の一発が効いたのかな…」
「なにそれ?」
「ん、いや、なんでもない」

なんなんだろう…。
なんか変なんだよな…。

頭の具合に違和感を覚える吉澤。
それが最初の予兆だった。
421 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月07日(金)00時13分36秒
レスありがとうございます。

>407梨華っちさいこ〜様
どうなんでしょうか…。
よくわからない人です。

>408名無し読者様
そういって頂けると、今までやってきた甲斐があります。
ありがとうございます。

>409ごまべーぐる様
最後は、いい父でした。(かな?)
私も、金、海、楽しみにしてます。

>410たろ様
父は根性で通いました。
もう少しです。お付き合いください。

更新しました。
今日(昨日?)までに第6話を終わらせたくて、
ギリギリまで書いてましたので、日付またぎになりました。
ちょっと、無理矢理な感じですが、お許し下さい。

次回月曜から最終話です。
422 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月07日(金)00時30分02秒
急展開の予感…。

>“まちぶせ”を思い出してしまうのは

リアルタイムで聴いた世代ですが何か(w?
423 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月07日(金)01時00分35秒
うああ面白れえええ
噛み合わない会話が素敵すぎます。
もうすぐ終わるのが悲しいけど期待してます。
424 名前:肩身が狭くなっちゃった 投稿日:2002年06月07日(金)01時55分31秒
まちぶせ
試しに歌ってみたら、一番余裕でクリア二番の途中で敢えて歌うのやめた。
結構、暗い(怖い?)歌だったのね、今気づいた。
ラストまで歌えそうな自分がちょっと嫌かも・・・
425 名前:日本人 投稿日:2002年06月07日(金)20時04分34秒
体中に青痣作ってまで梨華ちゃんを守ったよっすぃー、カッケー!!
父チャン、可愛い〜です♪
426 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月08日(土)13時36分04秒
よしも、梨華パパも(・∀・) イイ!
吉の頭は、どうなるんでしょうか?
気になる……。
427 名前:へその小っこい男 投稿日:2002年06月09日(日)21時13分06秒
ゆっちさんの作品、オイラ大好きです!
赤板のほうも楽しみにしてます♪
ってか、稲本!!早くゴール決めてくれぇー!!
428 名前:たろ@仕事中。。。 投稿日:2002年06月10日(月)12時09分01秒
ひたすらマイペースな吉がいいですねー。
でも体を張って梨華ちゃんを守ろうとするあたりは、さっすが男前!
お父さんともなんとか和解できたようで、よかったよかった。

さてと、仕事します…
429 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月10日(月)18時43分58秒
吉澤はある重要な事実に気がついた。
吉澤の人生にとって、重要なことはただひとつ。
いかにして、梨華との幸せな未来を築き上げるか。

所構わず、“梨華ちゃん好き光線”を発している吉澤。
一部の人間を除いて、既に公認の仲となりつつある。
シャッフルユニットの同組も、自らの努力によって勝ち取った。
父の承諾も取り付けた。

外堀は順調に埋まっていく。
しかし、まだひとつ大きな問題が残っていた。
ふたりの仲を認識していない一部の人間に、梨華本人が含まれていることだ。

このままでは、内堀の中に、吉澤自身が埋まってしまいそうである。

告白するぞー!

握り締めた拳を見つめながら、心の中で叫ぶ吉澤。
そして、おもむろに腹筋運動を始める。

一世一代の大勝負。
必要なのは、得意の気合いである。
体力と根性である。

そして、なぜか、腹筋であった。
430 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月10日(月)18時45分03秒
一方、梨華も密かに悩んでいた。
以前の吉澤とは恋人だった。
それは、紛れもない事実。

そして、今の吉澤が梨華を好きなこともわかっている。
嫌という程わかっている。
ときには、お願いだからやめてと言いたくなるくらいである。
橋の下へ捨ててこようかと思うことさえある。

しかし、吉澤の本心がわからない。

あなたの好きはどういう意味なの?
ベーグルと同じレベル?
母親に甘える子供?
それとも…。

最初は、吉澤の記憶が回復しさえすれば、全てが元に戻ると思っていた。
それまでの辛抱だと、自分に言い聞かせてきた。

確かに、そうなれば元には戻るだろう。
しかし…。
自らのプライドのために、否定したかったひとつの事実。
もう、認めないわけにはいかない。

単純で、バカで、間抜けなあなた。
そんなあなたの口から聞きたい。
あなたは、私のこと、いったいどう思っているの?
431 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月10日(月)18時45分49秒
明日はミュージカル。
照明を消し、早々とベッドに潜り込む梨華。

「ねえ、梨華ちゃん…」
暗闇の中から、珍しく神妙な吉澤の声が聞こえる。
「どうしたの?」
「話があるんだ…」
「なに?」
「あのね…その…やっぱり、明日…明日話すよ…」
「…そう。明日早いんだから、早く寝た方がいいよ」
「うん…」

くそー!
根性なしっ!

布団を頭まで被ると、自らを叱責する吉澤。

どうして言えないんだよぉ…。
梨華ちゃんがスキ。
ひとことなのに…。

やがて梨華の寝息が聞こえ始める。
しかし、吉澤は眠れない。
吉澤が眠れないとどうなるか。

当然、次の日は起きられない。
432 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月10日(月)18時46分53秒
寝坊した挙句に、焦ってテーブルをひっくり返し、
朝食を床にぶちまけてしまった吉澤。

「もう!何度も起こしたんだからねっ!」
朝から怒り心頭の梨華。
「遅刻したら、よっすぃーのせいだよ!」
「昨日、考え事してたら、寝れなくて…」
情けない声を出す吉澤。
「なにを考えてたのよ!」
「今、言ってもいい?」
「いいよ。そのかわり10秒以内で言ってよ」
「じゃあ、いい…」
到底愛の告白などできる雰囲気ではない。

タクシーに飛び乗る。
寝癖のついた頭に、ジャージ姿の吉澤。
とても、国民的トップアイドルには見えない。

なんとか、辿り着いたホール。
集合時間には30分の遅刻。

慌しくステージの幕が開く。
舞台に上がると、見事に台詞をすっ飛ばす吉澤。
新人じゃないんだから緊張するなと、散々怒られる。

吉澤は本当に緊張していた。
今夜、梨華に告白することを考えて、緊張で胸が張り裂けんばかりだった。
とてもじゃないが、歌ったり、踊ったりしていられる気分ではない。

今日こそちゃんと言わなきゃ…。
でなきゃ、仕事にならない。
433 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月10日(月)18時47分43秒
ステージを終えると、梨華のもとへ駆け寄る吉澤。
「今日は外食しない?」
「いいけど、なんで?」
「話があるんだ」
「昨日の話?」
吉澤は真剣な表情で頷く。
「今朝も、なにか言いかけてたよね。なんなの?」
「あとで、話すよ…」

話なら、いくらでも家で出来るはず。
妙にもったいぶる吉澤の態度を、不審に思う梨華。

なに考えてるんだろう?
連れられて来たのは、高級フランス料理店。
吉澤のただならぬ様子に梨華の不信感はつのるばかり。

一生の思い出となるはずの場所である。
ムードが大切である。
舞台の合間に予約を入れた吉澤。
そんな暇があるのなら、台本を読みなおして欲しいものである。

それはともかく、愛の告白に、フランス料理。
吉澤にしては、まっとうな選択である。

しかし、梨華はどうしてもひとことだけ言いたかった。

お願いだから、ジャージはやめて…。
434 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月10日(月)18時48分30秒
「梨華ちゃん、あのね…」
「なに?」
「あのね…」
「だから、なによ」

ああ…。
言えないよぉ…。

前菜から始まり、次々に料理が運ばれてくる。
しかし、吉澤は“あのね”の先がどうしても言えない。
本日53回目になる“あのね”の後、テーブルにコーヒーが並んだ。

「だから、なんなのよ」
いいかげん痺れを切らし、少し怒ったような梨華。

まずい…。
怒らしちゃった…。
えーい!
言ってやるー!

「あのね、梨華ちゃん」
決意漲る吉澤の表情。
「ス、ス…」
「ス?」
「ス、スキップがしたい!」
「…」

呆れ顔の梨華。
「そんなにしたいの?」
「う、うん、まあ…」
「家に帰ってからにしてくれる?」
「わかった…」
435 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月10日(月)18時49分32秒
結局告げれぬままに家に戻る。

とりあえず、スキップをする吉澤。
その背中が妙に寂しい。

部屋を一周する吉澤を、腕組みしながら眺める梨華。

やっぱり、私にはわからない…。
あなたの、本当の気持ち…。
夜も眠れないほど、スキップをしたくなる、その、あなたの気持ちが…。

でも、なんで、昨日の晩からスキップを我慢してたんだろう…。
私の許可が必要なほど、激しいスキップってわけでもないみたいだし…。

同居人の許可を要する激しいスキップなるものがあるとすれば、
一度見てみたいものである。

「気がすんだ?」
「うん、満足…」
そう言いながらも、満足したようには見えない吉澤。

なんで、こんな哀しい気分の時に、スキップなんかしなきゃいけないんだ…。
スキップのばかやろー!
もう、死ぬまでスキップなんかしてやらないんだ。

スキップに八つ当たりをしても、吉澤の心が晴れることはない。

梨華の頭にも、疑問が残ったまま。

スキップ…。
スキ、ップ…。
スキ…。
まさかね…。

こうしてまた、吉澤の眠れない夜が始まった。
436 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月10日(月)19時06分06秒
レスありがとうございます。

>422ごまべーぐる様
同世代でしたか。
もっと若い方かと思ってました。

>423名無し読者様
話が噛み合わないのも、もうすぐ終わりです。
最後までお付き合い下さい。

>424肩身が狭くなっちゃった様
同世代、ふたりめですか?
私は、1番までしか歌えません。

>425日本人様
本物の若者ですよね。
お父さん許してもらえましたか。

>426よすこ大好き読者。様
最後は和解で、婿養子の道が開けてきました、
が…。

>427へその小っこい男様
お名前に笑わせていただきました。
赤の本格開始はこっちが終わり次第です。

>428たろ@仕事中。。。様
仕事してください。
仕事は大切です。
私も、6話の半分ぐらいは仕事中に書きましたが…。

更新しました。
ちょっと、急な感じになりますが、後ラスト2回で完結させます。
今回が本気なアフォ最終かもしれません。
ラストはちょっとシリアスムードです。
437 名前:世捨て人 投稿日:2002年06月10日(月)19時35分36秒
腹筋がねじ切れるくらい笑わせてもらいました〜〜〜
438 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年06月10日(月)20時22分50秒
改めてヨシコの必死な姿がかわいいなぁ。
これじゃあ梨華ちゃんが混乱するのもしょうがないですね。
439 名前:肩身が狭くなっちゃった(ゆっちさんより多分年上) 投稿日:2002年06月10日(月)22時59分11秒
マジで苦しい!三途の川を渡りかけるほど笑った!
よかった戻ってこれて、「母親の死因・よしこのスキップ」では
残された子供たちの心に大きなトラウマを作ってしまう・・・
440 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月11日(火)00時24分49秒
ジャージでディナーですか。
カッケー!
こんな可笑しすぎるスキップにはもう二度とめぐり合えないかもしれません。

>もっと若い方かと思ってました。

( ´D`)<大人気ない大人れすから

>肩身が狭くなっちゃったさんの「母親の死因・よしこのスキップ」にも
爆笑させていただきますた。
三途の川からブジ戻ってこられてヨカター(T▽T)
441 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年06月11日(火)00時32分54秒
あぁ〜〜どうなるどうなるですかぁ(T▽T)
スキップ姿を想像し爆笑しつつ、混乱姿も想像しつつ(w
(0^〜^0)の頭はどうなるのか気になる・・・
442 名前:427 投稿日:2002年06月11日(火)20時35分42秒
いやっ・・・この名前は、以前ぷっつぃもにダイバーに
『へ○のデカイ男』さんという方のお便りがありまして・・・。
ぶっちゃけ、オモロかったのでパクらせて頂きました♪(笑)
ご存知のかたも、たぷーりいると思います。
443 名前:425の日本人。 投稿日:2002年06月11日(火)20時50分31秒
はい!
オヤジさん、よっすぃーのことを認めてくれたんで
そこから一気に梨華パピーを見る目が変わりました(w
ってか、ゆっちサン、私のこと覚えててくれたのですかっ!!?
・・・もう、嬉しくて、嬉すくて、ありがとうございやす!(涙)
先程満面の笑みで家をスキップで一周してきましたよ♪
444 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月11日(火)21時14分23秒
真夜中。
微かな低いうめき声に、梨華が目を覚ます。

「うう…う…」
吉澤が頭を抱えて蹲っている。
慌てて飛び起きる梨華。
「どうしたの!」
傍らにしゃがんで、吉澤の肩を抱き締める。
「あ、頭が、痛い…」
「…どうしよ…救急車!救急車呼ぶね」
「待って…」
立ち上がろうとする梨華の腕を握る吉澤。
顔を上げて、苦しそうに梨華を見る。
その表情に、梨華はギョッとする。

違う…。

吉澤のその目に、忘れかけていた知性の煌きが確かに感じられた。
しかし、それはほんの一瞬のこと。
445 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月11日(火)21時15分44秒
夢から覚めたように、首を振る吉澤。
「あれ…なにしてたんだろう…」
不思議そうに呟く。
それは、いつも通りの間抜けな顔である。

「頭、大丈夫?」
「頭大丈夫って、失礼だな、梨華ちゃん」
そう言って、笑いながら梨華を見る吉澤。
今度は吉澤が驚く。
梨華の目には涙が光ってる。

梨華ちゃん?

「昔の恋人、思い出しちゃった…」
突然のライバル出現に戸惑う吉澤。
「…今でも、好きなの?」
「たぶん…」
「なら、どうして、別れたの?」
「突然、いなくなったから…」

やっぱり、好きな人がいたのか…。

再び、床についたあとも、梨華の言葉を思い出しては眠れない吉澤。

だけど、突然いなくなるようなヤツなんかより、絶対幸せにしてあげるよ。
ライバルなんかに負けない。
だから、はやく…。
はやく告白しなきゃなー…。
446 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月11日(火)21時16分35秒
翌朝、梨華が目を覚ますと、布団の中に吉澤はいなかった。
自力で起きるなんて珍しい。

窓の外に目をやると、雲ひとつない青空。
でも、今日は傘を持って行ったほうがいいかな?
ふと、そう思う梨華。

吉澤は、テーブルに肘をついて、何やら考え込んでいる様子。
目の前には開かれた本。
また、マンガでも読んでいて、読めない漢字が出てきたのだろう。
まったくもう。
と、
へっ?
梨華は一瞬我が目を疑う。
そのページには数式や記号が並んでいる。
タイトルは『数学の世界』
447 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月11日(火)21時17分18秒
「よっすぃー…わかるの?」
梨華はおそるおそる、吉澤の顔を覗き込む。
吉澤の真剣な眼差し。
まさか、記憶が…。
「いや、さっぱりわからない」
なんだ…。
紛らわしいことしないでよ。
妙にほっとする梨華。

「けど、なんか懐かしい気がするんだよな…」
そう言って吉澤は、いとおしそうに、その小難しい本を手に取った。

「あっ、そうそう、梨華ちゃん、こないだの台本、ふりがな間違ってたよ」
梨華は顔を赤らめる。
よっすぃーに間違いを指摘されてしまうなんて…。

でも、なんだか…、
予感…。
448 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月11日(火)21時17分54秒
時折夜中に頭が痛いと言ってうなりだす吉澤。
しかし、すぐにおさまって、何事もなかったように眠ってしまう。

吉澤はいまだに告白できないでいる。
勇気を振り絞って、言いかけるのだが、気付いたら別の単語を口にしている。
それは、前後の会話になんの関係もなく、
スキンケア商品だったり、スキッと爽やかだったり、杉林だったりした。
今日の夕食も、リクエストした手前、しかたなくすき焼きを食べた。
本物の根性なしである。

明日はオフ。
明日こそはと心に誓い、吉澤は眠りについた。
449 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月11日(火)21時18分49秒
深夜、ふと目を覚ます吉澤。
いまだかつてない衝動に駆られて、眠る梨華の傍らへ座った。

「梨華ちゃん…」
起こしてはいけないと思いながらも、小さな声で呼びかける。
「…よっすぃー?」
目を開ける梨華。
「ごめん、起こしちゃって…」
「どうしたの?」
「梨華ちゃん、どこにも行かないでね…」
「なによ、急に…」
「明日になったら、梨華ちゃんがいなくなってるような気がして…」
「…」
「どこにも行かないよね?」
「あたりまえじゃない」
「約束だよ。ずっと一緒にいたいんだ…好きだから」
そう言うと吉澤は、布団に潜り込んだ。

よっすぃー…。
ありがとう。
私も好きだよ…。
でも、どこかへ行ってしまうとしたら、
それは、私じゃなくて…。
450 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月11日(火)21時35分59秒
レスありがとうございます。

>437世捨て人様
笑っていただけると、私も幸せです。

>438梨華っちさいこ〜様
吉澤さんは、最初から最後まで必死でした。
きっと明日も…。

>439肩身が狭くなっちゃった(ゆっちさんより多分年上)様
ご無事でなにより。
ゆっち(ごまべーぐるさんより多分年上)

>440ごまべーぐる様
入店拒否されずにすんでよかったと、ほっとしてます。
私も、大人げない大人です。

>441ぶらぅ様
スキップ姿はきっと可愛いと思います。
本人は辛いんですが…。

>442427様
そうなんですか。
私が嵌ったのは、去年末くらいなので、勉強になりました。かな?

>443425の日本人。様
覚えてますよ。
その若さは衝撃でした。
気をつけてスキップして下さいね。

更新しました。
もう、ほんの少しだけなのですが、一応ここで切りました。
今日はラストへのつなぎという感じで、明日がラストです。
では、また明日。
451 名前:名無しマイペース 投稿日:2002年06月11日(火)22時58分23秒
明日ラストですか、大好きだったのになぁここのよっすぃ〜。。。
ホント、淋しくなります。
あぁ明日が待ち遠しい限りです・・・。
452 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月12日(水)08時00分03秒
>451名無しマイペース様
レスありがとうございます。
そう言って頂けると、嬉しい限りです。
続けようと思えばいくらでも続きますが、
2スレッドも使うような話ではないので、このへんが潮時かと思います。

変なところで切って、気になるので、もう少しだけだし出勤前に完結させます。
では、最終回です。
453 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月12日(水)08時01分08秒
朝から梨華は気付いていた。
しかし、気付いていない振りをした。
出来ることなら、ずっと、気付かないでいたかった。

その眼差し。
その息遣い。
昨日までとはまるで違う。

「梨華ちゃん…」
キッチンに立つ梨華を吉澤は不意に後ろから抱きしめる。
「やだ、よっすぃー、ふざけないでよ」
梨華は早くなった鼓動を感じながら平静を装う。
「思い出したんだ…」
「また…今日は何の冗談?」

吉澤は梨華の肩をつかみ、体を強引に自分のほうへ向かせる。
「全部思い出したよ、ふたりのことも…」
吉澤の顔が間近にある。
何も言わずじっと注がれる視線。
距離がさらに近づく。
「よっすぃー…」
唇まで、あと5センチ…、3センチ…、
梨華は目を閉じる。
454 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月12日(水)08時01分41秒
と、その時。
梨華の携帯から着信音が鳴り出す。
「あっ…電話」
「放っておこうよ」
吉澤は梨華を抱く手の力を緩めようとはしない。
「でも…」
音はしつこく鳴り続ける。
「急用なのかも…」
困惑した梨華の眼差。
吉澤はひとつ大きな息をして、梨華の体を開放した。

「仕事…。急にロケのメンバーが足りなくなって…行かなくちゃ…」
「そうか…」

「ごめんね、急いで帰ってくるから…」
「わかった。じゃあ、待ってるよ」
梨華は身支度をして、慌てて出ていった。
455 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月12日(水)08時02分34秒
ひとり部屋に残った吉澤。
高揚した気持ちのやり場もない。
ふと思い立ってペンを取り、梨華に宛て手紙を書く。

苦労かけたね。
本当にありがとう。
病室で目を覚ましたとき、梨華ちゃんを一目見て好きになった。
だからよかったと思ってる、記憶をなくしたこと。
だって、世界で一番好きな人と、2度もめぐり会えたから。
もし、ふたりが生まれ変わって、どこか知らないところで出会ったとしたら、
そのときもきっと好きになる。
約束するよ。
456 名前:最終話 好敵手 投稿日:2002年06月12日(水)08時03分08秒
もうそろそろ梨華が帰る頃。
吉澤は落ち着きなく何度も時計に目をやる。
不意に胸騒ぎがして靴を履き外へ出る。
表通りまで迎えに行こう。

前方に梨華の姿。
なんだか、ひどくほっとした。

と、その時。
右から、暴走したトラックが赤信号を突っ込んでくる。
梨華ちゃん危ない!
そう思った瞬間、吉澤は走り出していた。

吉澤に突き飛ばされ、歩道の脇にしゃがみこんだ梨華。
その目に映るのは、トラックに跳ね飛ばされ、高く中を舞う吉澤の体。

「よっすぃー!」
夢中で駆け寄り吉澤の体にしがみつく。
「よっすぃー!」
何度叫んでも返事はない。
やがて遠くからサイレンの音。
457 名前:エピローグ 投稿日:2002年06月12日(水)08時04分17秒
あんなひと、世界中のどこを探したって、きっと、どこにもいない。

幻だったのかな…。
長い夢をみていたのかな…。

真っ直ぐな視線。
明るい笑顔。

吉澤と暮らした日々の思い出が、次々と梨華の脳裏を駆け巡る。

大変なこともたくさんあった。
だけど、楽しかった。

馬鹿なひとだった。
手に余るひとだった。
だけど…、
大好きだった。

「最善は尽くしました、しかし、おそらく、もう…」
医師の冷たい声が耳から離れない。

涙が溢れ出す。
吉澤の血の気を失った真っ白な顔に、滴か落ちる。
458 名前:エピローグ 投稿日:2002年06月12日(水)08時05分49秒



〜数日後


病室のベッドの上、吉澤はようやく長い眠りから目を覚ました。
目の前には見知らぬ美少女。
「よっすぃー…」

か、か、かわいー…。

死のふちから蘇った吉澤。
生まれ変わっても、やはり、吉澤である。

目覚めたばかりのまだ朦朧とした頭。
吉澤は思う。

必ず、この美少女をお嫁さんにするぞ。
たとえ、どんな手段を使っても…。

どうやら、悪い方向へパワーアップしているようだ。

こうしてふたりの3度目の恋物語が、今また始まろうとしていた。

梨華の苦難の日々は、まだまだ続く…。
459 名前:エピローグ 投稿日:2002年06月12日(水)08時06分40秒
―FIN―


460 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月12日(水)08時17分28秒
終了です。

この、どうしようもなく、くだらない話にお付き合い頂きまして、
本当にありがとうございました。

二ヶ月もこんなバカなことをしていたのか…。
妙な感慨があります。
後半は、書けなくて苦しんだこともありましたが、
ほとんど、書いている本人が、一番楽しんでました。
それもこれも、読んでくださったり、感想を下さった方々のおかげです。

ありがとうございました。
では、すっきりしたところで、仕事に行きます。
461 名前:REDRUM 投稿日:2002年06月12日(水)10時25分03秒
早速。完結ごくろうさまでした。

(0 ̄〜 ̄ )にハラハラしたり笑ったり、とても楽しませていただきました。
新作も期待しまくっておりますのでがんがって下さい。
462 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月12日(水)11時16分44秒
お疲れさまです。
どういうオチかと思ったらそうきたかと。
とにかく最初っから最後まで笑わせてもらいました。
何度PCの画面に唾噴いたことか・・・

次回作も期待しております。
463 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月12日(水)13時36分23秒
完結お疲れ様でした。
この2ヶ月すごく楽しみに読ませていただきました。
何度目覚めても(^▽^)好きな吉が、(・∀・) イイ!
ありがとうございました。
次回作も楽しみにしています。
464 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年06月12日(水)13時55分42秒
完結お疲れ様です。
最後はどうなるのかと思っていたら…
そうきたか!(wしかも悪い方向(w
だけどいつでも好きあってるお2人(・∀・)イイ!!
次回も頑張ってください。
465 名前:理科。 投稿日:2002年06月12日(水)16時21分22秒
お疲れさまでした。
毎回、更新が楽しみで仕方なかったです。
梨華パパVSよっすぃ〜が特に好きでした。(w
次回作もがんがってください。
466 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年06月12日(水)18時43分42秒
いやぁ〜、そうきましたか。
梨華ちゃん、苦労しますねぇ。
とにかく一つだけわかることは、ヨシコはどんなときでも
梨華ちゃんに夢中だってことですね。せめてもの救いでしょうか。
赤の新作も楽しみにしています。お疲れ様でした。
467 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月12日(水)19時14分57秒
完結おめでとうございます。
自分はいしよりのいしよしヲタなのですが、ここの(0^〜^)は可愛くて
仕方なかったです。アフォな事をしでかせばしでかすほど、愛が湧くというか(w
3度も出逢えるのは結構幸せかもしれませんね。
(いしかーさんにはたまったもんじゃないカモしれませんが(^^;; 
では、お疲れ様でした!
468 名前:ホッピー 投稿日:2002年06月12日(水)19時46分26秒
(O´〜`O) < お疲れさま…
469 名前:ルーク 投稿日:2002年06月12日(水)21時24分22秒
完結おめでとうございます。
お疲れ様でした。
とにかく、バカで石川に一途な吉澤が大好きでした。
物凄く、楽しかったです。
本当にお疲れ様でした。
新作の方も楽しみにしています。
そして、いつか、吉澤さんが、天才だった頃のお話が読んでみたいなと
言ってみたり(笑)。
と、では、ここら辺で失礼します。
470 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年06月12日(水)21時29分30秒
お疲れ様でした。
かなり笑わせていただきました。アフォな吉澤くんが良かったです。
赤の方も頑張って下さい。
471 名前:吉澤ヲタ 投稿日:2002年06月12日(水)22時11分29秒
すごく良かったです。毎回楽しませていただきました。
次作もがんばってください。
472 名前:. 投稿日:2002年06月12日(水)22時27分42秒
作者様
本当にお疲れ様でした。
こんなに楽しい「いしよし」は初めてでした。
赤の新作も続きが楽しみです。

473 名前:肩身が狭くなっちゃった(ゆっちさんより多分年上) 投稿日:2002年06月12日(水)23時27分07秒
完結お疲れ様でした。毎晩大笑いをさせて頂きました。
実は私喘息患者で、エアゾル片手に
命を掛けて(笑いすぎは発作を誘発する)読ませて頂いておりました。
生き延びた幸せを今かみ締めつつ、楽しかった毎日のお礼(苦情?)申し上げます。
474 名前:たろ 投稿日:2002年06月13日(木)00時14分53秒
完結おめでとうございます。
最後はどうなっちゃうのかとドキドキしましたが…ほっと一安心。
さらにパワーアップしたよっすぃー、最強ですね(w
何度でも惹かれ合う2人の絆の固さがうれしいです。

毎日ここに来るのが楽しみでした。
アフォでまっすぐな吉澤さんが、かわいくてかわいくて…
めちゃめちゃハマりました。
次回作も期待してます!
お疲れさまでした。
475 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月13日(木)22時03分34秒
たくさんのレスありがとうございました。

>461REDRUM様
こんな、どうしようもない話にお付き合い下さいまして、
本当にありがとうございます。

>462名無し読者様
笑ってもらえることだけ考えて書いてました。
とってもうれしいです。

>463よすこ大好き読者。様
いつもお世話になってます。
吉澤さんの一途な思いだけで、2ケ月が過ぎてしまいました。

>464ぶらぅ様
きっと、この後は、更なる苦労が、
石川さんをおそうことかと思われます。

>465理科。様
こんなところまで申し訳ないです。
石川さんのお父様には、失礼の限りを尽くしてしまいました。

>466梨華っちさいこ〜様
そうなんです。
結局、吉澤さんは石川さんに夢中。それのみのお話でした。

>467ごまべーぐる様
可愛いといってもらえると、ここの吉澤さんの労が報われます。
石川さんはたいへんですが…。
476 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月13日(木)22時04分08秒
>468ホッピー様
読んでいただけましたか。
ありがとうございます。

>469ルーク様
天才だった頃の吉澤さんは、きっとシリアスが似合うかと。
ボケ役が石川さんになるかもしれません。

>470名無しベーグル。様
笑っていただけましたか。
嬉しいです。いろいろ、ありがとうございます。

>471吉澤ヲタ様
ありがとうございます。
桃の方でもコメント頂いてましたよね。

>472 . 様
ありがとうございます。
私自身が、「いしよし」に嵌っているので、
こういうことに、なりました。

>473肩身が狭くなっちゃった(ゆっちさんより多分年上)様
私も、いい大人なんですが、3年ほど前に喘息になりました。
軽いみたいで、風邪をひいたときぐらいしか、発作はでないようです。
奇遇ですね。
そういう話じゃありませんでしたね…。

>474たろ様
ラストは、各所で評判が悪いみたいなんですが…。
毎日読んで頂いて、ありがとうございます。

再度、皆様ありがとうございました。
477 名前:皐月 投稿日:2002年07月07日(日)06時03分01秒
完結・・・いい話でした。
今後復活するのでしょうか?
待ってます!
478 名前:ゆっち 投稿日:2002年07月08日(月)14時07分03秒
>477皐月様
レスありがとうございます。
>いい話でした。
…?何かの間違いでは…。
更新頻度を自分に課しておりましたので、
無理矢理進めてましたが、
正直、ずいぶん前から、スランプで、
今は、まだ、最初の頃の勢いで書ける自信がありません。
スミマセン。

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