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ままごとのような本当の愛〜小説「続あすりか」〜

1 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年04月11日(木)12時32分33秒
 端から見れば、まるで「おままごと」のように見えるかもしれない。
 でも、私たちにとってこれは、本当の愛なんです。

 小説「あすりか」の続編です。
 「あすりか」 =http://mseek.obi.ne.jp/kako/sea/998894340.html
 「あすりか2」=http://mseek.obi.ne.jp/kako/sea/999142658.html
 「あすりか3」=http://mseek.obi.ne.jp/kako/sea/1003388366.html
 「あすりか4」=http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=sea&thp=1010726149
2 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月11日(木)12時34分23秒
 あの雨の日から早くも約半年が過ぎた。
 壊れてしまった星形ピアスは、あの後、二人の愛の力で魔法のように直って……
しまうようなこともあるはずはなく、壊れたままで、机の中に大切にしまってある。
 あの日から私たち二人がどうなったかって言うと…実のところ、ほとんど変わっ
てない。
 相変わらず梨華ちゃんは可愛くて、私はそんな梨華ちゃんが大好きで。
 その…時にはベッドを共にして…そんな時も、相変わらず私が梨華ちゃんに抱か
れてるわけで……私なりに頑張ってみてはいるんだけどね。
 いつかは、格好良く梨華ちゃんを抱いてあげたいと思うから。

 ともかく、そんな私たちにお構いなく、周りの状況だけは大きく変化していって
いる。
 あれからすぐに、モーニング娘。が増員をして、いわゆる五期メンバーが加入し
た。
 そのお披露目のための番組出演とか、新曲のレコーディングやダンスのレッスン
とか…とにかく、梨華ちゃんたちは大忙しで、一時期、全然会えなくなってしまっ
た。
3 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月11日(木)12時35分30秒
 でも、だからこそ余計に、あの夜流した涙が、梨華ちゃんの言葉が、触れ合った
肌の温かみが、全部が掛け替えのない二人の思い出になった。
 全く会えない寂しさも、電話の声だけで乗り越えていけた。
 それは、あの雨の日の思い出のお陰だったと思う。
 大体、1カ月もしたら、ちゃんと会えるようになったし。

 五期メンバーとは、随分長い間、ちゃんとは会ったことがなかった。
 楽屋まで迎えに行って、梨華ちゃんの仕事が終わるのを待ってたこともあるけど、
梨華ちゃんはお姉さんチームってことで夜遅かったから、その時間には五期メンバー
は帰っちゃってた。
 だから、私が五期メンバーと直接会ったのは年末。
 正月のハロプロコンサートへ向けてのリハーサルだった。
4 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年04月11日(木)12時41分53秒
 随分、お待たせしてしまいました。
 いや、もう待ってる人はいないのかもしれませんが。
 森板で、「銀杏色に染められて」
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=wood&thp=1016153663&ls=25
というショートショート集を細々と書きながら、「あすりか」の続編のプロットを
温めてきました。
 気まぐれな作者ですが、またおつき合いいただければ幸いです。
5 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月11日(木)15時23分26秒
「キャッ!」
 自分のソロパートとかを頭の中で繰り返したりしてたんだけど、どうしても落ち
着かなくて、鏡の前に座ろうとしたら、そのイスに足を引っかけて転んじゃった。
「ちょっと石川! 大丈夫?」
 隣に座ってた保田さんが、助け起こしてくれた。
「は…はい。大丈夫です」

「あんたねぇ…まだリハーサルなんだから、緊張し過ぎだよ? どうしたの?」
 呆れたような、心配そうな顔で尋ねられた。
 自分でも緊張でガチガチになっちゃってるって分かってる。
 でも……。
「…今日、明日香ちゃんが見学に来るんです……」
6 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月11日(木)15時24分21秒
 私の言葉を聞いて、保田さんの表情が、完全に呆れ顔に変わる。
「あのねぇ、石川……」
「分かってます! 自分でもリハーサルでカチコチになっちゃって変だって思いま
す。でも…明日香ちゃんには、少しでも上手な私の歌を聞いてもらいたいから……」

 困った顔で「はぁ〜…」って深いため息を吐く保田さん。
「別に、明日香のために張り切るのは変じゃないし、悪いことでもないよ。でもねぇ、
もうちょっとリラックスしなさい。力むだけが頑張るってことじゃないんだから」
 すがるような気持ちで保田さんの話を真剣に聞いてたら、私の顔にそっと手が伸
びてきた。
 人差し指と中指を眉の間に当てて揉むように開く。
「眉が寄っちゃってるよ?」
 保田さんが「ね?」って感じで、優しい視線を送ってくれてる。
7 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月11日(木)15時25分00秒
 鼻の奥がツンッてして、涙が出そうになっちゃった。
 それを誤魔化す意味もあって、大きく一つ深呼吸。
「す〜…はぁ〜…」
 保田さんはニコニコ笑ってる。
「ちょっとは落ち着いた?」
「はいっ!」
 何だかお母さんに見守られてるみたい…。

「あのぉ……」
 急に後ろから声を掛けられて、ビックリして振り向く。
「麻琴…ちゃん?」
 そこには遠慮気味に、でも期待に満ちた目をして立ってる小川麻琴ちゃんがいた。
「先ほどから話されてる…明日香さんって…もしかして福田明日香さんのことです
か?」
「…そうだけど」
「ホントですか! 明日香さんが来るんですか?! わ〜、どうしよう…私、すご
い憧れてるんです!」
 一気に興奮が吹き出したみたいに、麻琴ちゃんはすごい勢いでしゃべってる。
 私はそれをポカ〜ンと見てるだけだった。
8 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月11日(木)16時00分25秒
お帰りなさい!やっぱり海板にはこの話がないと落ち着かないです。
9 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月11日(木)16時59分44秒
続編開始おめでとうございます
あすりかの恋の行方はもちろん
5期メンとの絡みも楽しみです。
10 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年04月12日(金)12時40分44秒
 こんなにお待たせしてしまったのに、レスがいただけて本当に嬉しいです。
>>8
 ただいまです。
 こんな作者ですが、何とぞ宜しくお願いします。
>>9
 五期メンバー…実はまだちょっとキャラが掴みきれてない(藁
 不安はありますが、続編、頑張りまっすよ!
11 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月12日(金)12時41分17秒
 本当は、ライブのリハーサルとかに行くのは気が進まない。
 メンバーが卒業するとか、節目になるようなライブには、これまでだって参加し
たけど、リハーサルはまた別の話。
 ライブ本番なら、私は単なる一人のお客さんの目で見ていられる。
 でも、リハーサルは違う。
 それこそ「関係者以外立入禁止」な空間な訳だ。
 別に気後れしてるんじゃなくて……その場にいると、どうしたって「元モー娘。
の一員」としての感覚が呼び起こされてしまう。

 未練はない。と言っても、全く痛みが無い訳じゃない。
 自分で決断したことだから、ちゃんと心の中に傷が残っている。
 ある意味、誇らしくもある傷だけど、時にズキッて疼くことがある。
 今でも歌うこと自体は大好きだから。
12 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月12日(金)12時41分54秒
 だから、会場の前まで来た今でも、ちょっと後悔してる。
 まぁ、梨華ちゃんに約束しちゃったんだし、いつまでもウダウダしてる場合じゃ
ない。
 短くため息をついて、入り口をくぐる。

「よぉ、珍しいのが来たな」
 いきなり旧知のスタッフさんと遭遇。
「…どうも」
 ぎこちなく笑いながら近づいていくと、胸の奥がシクッと痛む。
「誰かに呼ばれたのか?」
「はい。石川さんに…」
 そう言うと、ちょっと意外そうな顔をしたけど、特にそれ以上何かを言われるこ
ともなく、すんなり通してくれた。
13 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月12日(金)12時42分37秒
 遠くから場内で流れる音が洩れ聞こえる通路。
 そこをてくてくと歩いていくと、何人か知ってるスタッフさんに出会う。
 一言二言話すだけでも、やっぱり懐かしい。
 でも、私はもうあの頃の私とは違う。
 それはちょっとしたこと…例えば、挨拶が「おはようございます」じゃなくなっ
てたり、そんなこと。
 心の中で、「私はもう業界の人間じゃない」って思いがあるから、余計に「おは
ようございます」っていう簡単な言葉も出てこなくなる。

 何だか冷たい空気に包まれてる。
 こういうところの通路特有の冷たさだけじゃなく……。
 まとわりつく冷気をそのままに、「モーニング娘。様」と書かれた部屋の前まで
辿り着いた。
 中からは、ワイワイとにぎやかな声が洩れている。
 いわゆる姦しい状態。
 ホッとしながら、コンコンッてノックする。
「はぁ〜い、どうぞ」
「お邪魔しま〜…す…」
 恐らく圭織だろう声を受けてドアを開ける。
14 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月12日(金)12時43分14秒
「わ〜! すご〜い! 本物の福田明日香さんだぁ〜!」
 な…何事? 一体……。
 初めて見る顔…テレビでは見たことあるけど…確か小川さんって子が、目をまん
丸にして私を見てる。
 おまけに、両手を祈るように胸の前で組んで……。

 ダッ!て感じで目の前まで駆けてきた。
「モーニング娘。五期メンバー・小川麻琴です。新潟県出身です。ずっと福田さん
に憧れてました!」
 凄い勢いで自己紹介。
「……あ…そりゃ、どうも……」
 その肩越しに見える梨華ちゃんは、怪訝な表情で小川さんと私のことを眺めてた。
 たぶん、私も今、同じ顔をしてると思う……。
15 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月14日(日)12時48分14秒
おや今度は五期メンも話に絡むのかな。
16 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年04月15日(月)10時02分29秒
>>15
 五期メンにも挑戦してみようかなと。
 ただ、専ら小川になるかも。
 全体に五期メンを書き分けられるほど、キャラを掴んでるとは自分で思えないの
で、可能な限りってことになると思います。
17 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月15日(月)10時03分11秒
 麻琴ちゃん、明日香ちゃんがドアのところから顔を出した途端、すごい勢いで駆
け寄っていった。
 もう何だかよく分からない……。
 それは明日香ちゃんも同じみたい。途方に暮れた顔をしてる。
 ま、当たり前だよね。
 いきなり目の前ではしゃがれても、どうしたらいいか分からないよ。

「あの…握手してもらえませんか?」
 そんな状況でも、麻琴ちゃんは積極的。
 明日香ちゃんも仕方なしに手を差し出しながら、「助けて」って感じで私の方に
視線を送ってる。
 …うぅ…可愛いよ〜。
 私以上に困ってる明日香ちゃんの様子に、私の方は逆に落ち着いてきちゃった。
 こんな時こそ、私が明日香ちゃんを助けてあげなきゃ!
 ……滅多にないチャンスだし。
 早くしないと、保田さんや飯田さんにお助けガールの役をとられちゃう。
18 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月15日(月)10時03分41秒
「麻琴ちゃん、ちょっと」
「はい? 何ですか?」
 振り返った麻琴ちゃんの目はキラキラしてた。
 きっと、本当に明日香ちゃんに憧れてて、その本人に会えた喜びでいっぱいなん
だろうな〜。
 純粋で良いな〜とは思うけど…ちょっと複雑だよ。

 二つの意味でジェラシー感じちゃう。
 一つはもちろん、「明日香ちゃんは私のもの!」ってこと。
 もう一つは……先輩として、もうちょっと私に憧れてくれても……。
 ま…良いんだけどね…ホントに…はぁ〜……。
19 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月15日(月)10時04分22秒
「…急にはしゃいだりして、明日香ちゃん、ビックリしてるじゃない」
「あ!…ごめんなさい……」
 あら? シュンッてしちゃった。
 わ…私、そんなにきついこと言ってないよね?

「あ〜! 梨華ちゃんが麻琴ちゃんをイジメてる〜!」
「いけないんだぁ!」
 ギクッとして、声のした方を見ると、あいぼんとツ〜ジ〜が「面白いもの見つけ
た!」って全身で表してた。
「イ…イジメてないよ〜」
『イジメた〜! 梨華ちゃんが麻琴ちゃんをイジメた〜!』
 ……そんな、声をそろえて言わなくても…クスン…誰か助けて。
20 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月15日(月)10時05分02秒
「こらぁ! 加護と辻はウルサイの。こっち来なさい」
 飯田さんが両手を腰に当てて、仁王立ち。
「あ、リーダーだ〜。逃げろ〜!」
 それを見て、何だか嬉しそうに逃げる二人。

「まったくもう…明日香、久しぶり」
 逃げる後ろ姿にため息をついて、明日香ちゃんの方を向いた飯田さんは、もう笑
顔になってた。
「うん。久しぶりだね」
 言いながら、明日香ちゃんは私に寄り添うように立って、そっと手をつないでく
れた。
 明日香ちゃんの手、温かいな〜……。
21 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月15日(月)10時05分48秒
 飯田さんが、つないだ手をチラッと見て、大仰にため息をついて……。
「明日香、全然会いに来てくれないしぃ、電話もメールも、そっちからは全然だも
ん…石川にはしょっちゅうのくせにさぁ」
「そ…そんなことないよ」
 おっきな身体でいじけてみせる飯田さんに、明日香ちゃん、すごく慌ててた。
 
「そんなことありますぅ。みんなだって、明日香の声、聞きたいんだからね?」
 飯田さんの言葉に、安倍さんや保田さん、矢口さんもウンウンて肯いてた。
 …ついでに麻琴ちゃんも。
 やっぱり明日香ちゃん、モーニング娘。にとって、大切な人なんだな〜。
 私が感じてるのと違う意味で、先輩達から明日香ちゃんへの愛を感じちゃうね。
 やっぱりジェラシー。
 だから、つないだ手にギュッて力が入っちゃった。
22 名前:名無し娘。 投稿日:2002年04月16日(火)15時39分33秒
やぁ、また始まったんですね。明日香ちゃん本体に目立った展開がなくて寂しいので、
こちらの明日香ちゃんに萌えられるのがうれしいです。作者さんがんばって。
23 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年04月17日(水)11時33分34秒
>>22
 ホント、お待たせしてしまいました。
 ご期待に沿えるよう、萌えられる明日香&梨華ちゃんにしていきたいと思ってます。
 頑張りまっすよ!
24 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月17日(水)11時34分28秒
 ホント、ビックリしたよ。
 小川さんって子に、突然「憧れてました!」なんて言われちゃってさぁ。
 今も何だかキラキラした目で私のこと見てるし。

 その上、圭織たちの攻撃もあるし、ちょっと居心地悪い。
 なかなか離してくれないのを、冷や汗ものでかわし続ける。
 梨華ちゃんも何だか口数少ないし……ちょっと気になる。
25 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月17日(水)11時35分04秒
「明日香ちゃん、ステージとか見に行ってみる?」
 そう言ってくれた梨華ちゃんの言葉に飛びついて、そそくさと控え室を出る。
 手をつないだまま出ていく私たちを、あの小川さんって子がジ〜ッと見てたのが
ちょっと気になったけど、正直、ホッとした。
「助かったよぉ…ありがとう、梨華ちゃん」
「ううん。別に…」

 あれ? 何か…元気ないっていうか…。
「…どうしたの?」
 口を尖らせて目をそらされた。
 ゲゲッ! 私、何か機嫌を損ねるようなことやっちゃったかな?
「だって…明日香ちゃん、モテモテなんだもん……」
 …はぁ?
26 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月17日(水)11時35分56秒
「ちょっと…梨華ちゃん?」
 つないだ手を少し引いて、こっちを向かせようとしたけど、イヤイヤッて肩を揺
すって目を合わせてくれない。
 よく見ると頬がちょっと薄紅色。
 これは…私、焼き餅焼かれてる?
 でも…誰に対して?

「ねぇ、梨華ちゃん…もしかして、焼き餅焼いてる?」
「そ…そんなこと……」
 頬の色がパ〜ッと濃くなって、俯いちゃう。
 梨華ちゃん、分かりやす過ぎ…だし、何て言うか……色っぽいんだよねぇ。
 私の方までドキドキしてきちゃって…二人、無言でステージまで歩いて行った。
27 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月17日(水)15時52分24秒
 こんなことでジェラシー感じちゃうのって、何だか恥ずかしい。
 だから、明日香ちゃんには知られたくなかったのに……。
 どうしても普通にはしていられなかった。
 分かりやすいよね、私って……。

 気まずい雰囲気のまま、手だけはつないでステージに向かった。
 そこでは丁度、マイクテストをやってた。
 自然とステージ下の方へと足が向く。
 マイクを手に、ステージ上で位置を変えてテストを繰り返してるスタッフの人。
「お疲れさまです」
「よぉ、仲良しだね」
 私たちが手をつないでるのを見て、笑ってる。
「はい!」
 キッパリ答えて、チラッと明日香ちゃんの顔を見ると、照れくさそうにしてた。
28 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月17日(水)15時55分59秒
 ステージの上を見上げて、何となく、そこに立ってる明日香ちゃんを想像してみ
た。
 保田さん達に信頼され、愛されてる明日香ちゃん。
 麻琴ちゃんが憧れてる明日香ちゃん。
 それはきっと、私と手をつないでる明日香ちゃんじゃなくて、ステージの上で歌っ
てる明日香ちゃんに対して。
 私はステージで歌う明日香ちゃんを知らない。
 もちろん、明日香ちゃんのことをもっと知りたい!って思って、在籍当時の番組
やコンサートの記録ビデオとか、あれこれ見せてもらったけど……。
 そういうのは、やっぱり生には敵わないことは実感として分かる。
 だから、ステージ上に存在する生の明日香ちゃんを知らないことが、すごくすご
く悔しいことのように思えてきて……。

「…歌って……」
「え?」
 今度は、しっかりと顔を見て言う。
「歌ってほしい…今、このステージで」
 目を大きく見開いた驚きの表情が、だんだんと困惑に変わっていく。
 無理を言ってる自覚はある。
 そのことで、明日香ちゃんを困らせてるっていう心苦しさもある。
 でも、どうしてもどうしても見たいから、今は駄々っ子であり続けよう。
「お願い、明日香ちゃん」
29 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月18日(木)16時55分23秒
 「歌って」って…突然そんなことを言われても……。
 ホントにどうしちゃったの、梨華ちゃん?
 何だか必死な感じ…さっきからの焼き餅と関係あるのかなぁ?

「お願い、明日香ちゃん」
 いや、そう言われても……。
「…そんなの、スタッフの人が許可するわけないじゃん」
 そうだよ。今の私は一般人なんだから、梨華ちゃんにお願いされたって、そんな
こと出来るはずがない。
 …って高を括ってたんだけど……。
30 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月18日(木)16時56分11秒
「ほんなら、スタッフの許可が出たら歌うんやな?」
「それはまぁ…って、みっちゃん?!」
 横から平家のみっちゃんがニヤニヤしながら近づいてきてた。
 咄嗟に答えちゃったけど、まさか……。
「すいませ〜ん。マイクテスト兼ねて、歌っても良いですかぁ?」
 ステージの上のスタッフに向かって大声を張る。

「あぁ〜?……ま、いいけど」
 私に視線を飛ばしたスタッフは、簡単にOKを出した。
「どうも!……ってことで、福ちゃん、出番やで」
 …やられた。
 まったく…物好きが多いんだから。みっちゃんもスタッフも……。
「いや…でも…ほら…あのぁ…そう!…一曲通して歌えるの、無いから…『Never
Forget』はダメだからね」
 一応、先回りまでして抵抗してみる。
31 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月18日(木)16時56分52秒
「はいはい、平家さんに任せとき」
って余裕の表情。
 みっちゃん、スタッフの人にゴニョゴニョ頼み込んでる。
 あの笑い方…何か企んでるな。
 ニヤニヤ笑うみっちゃんと、期待でいっぱいの笑顔の梨華ちゃん。
 二人に無理矢理マイクを握らされて、ステージに押し上げられる。

 そして流れ出したのは……。
「…『GET』……」
「忘れたとは言わせへんでぇ。合宿で、あんなに必死で練習したんやからな」
 ステージの下から嬉しそうに、みっちゃんと梨華ちゃんが私を見上げてた。
32 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月18日(木)16時57分28秒
 何でこんな目に遭わなきゃ……。
 そんな風にぼやいてると、スタッフからは
「一応、マイクテストを兼ねてるから、ステージの端から端まで歩いてみてね」
とか言われて、ポンッて背中を押された。
 ため息を一つ。
 まぁ、所詮はお遊びだから…そう自分を納得させて歌い始める。

 ♪「じゃあな」なんて笑わせないで
    呼び出しておいて
  何日も連絡待った
    だからうれしくて……♪
33 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月20日(土)04時46分14秒
今現在のあすかが歌うこの曲を聞きたい…
全ての始まりであるこの名曲を!!
34 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年04月22日(月)09時26分03秒
>>33
 あの頃以上に、歌詞をいろいろな面から読めるはず。
 現実の明日香は、どんな色をつけてこの曲を歌うでしょうね?
35 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月22日(月)09時26分41秒
 すごい……ステキ……。
 歌い出した明日香ちゃんから目が離せなかった。

 いつも一緒にいる明日香ちゃんは、確かにしっかりしてて、知的な格好良さを感
じる。
 でも、時々見せてくれる焦った顔とか、失敗しちゃったって舌をペロッて出した
り、すごく可愛いところもいっぱいあって、そんなところも大スキ。
 特にベッドの上での、奥手で幼い明日香ちゃんは「私だけのもの!」って思うし。
36 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月22日(月)09時28分19秒
 今、私に見せてるステージの上の明日香ちゃんは、また別人だった。
 振りも無しで、ただゆっくり歩きながら歌ってるだけなのに、圧倒される何かが
全身から放射されてた。
 オーラよりももっと積極的に迫ってくる感じの何か。
 それが、背筋をゾクゾクッて、さっきから走り回ってる。
 もう、引き寄せられるようで、何だか膝から下が頼りない。

 これが…ステージでの明日香ちゃん……。
 もう…もうねぇ…梨華の心、わし掴みって感じ。惚れ直したって、こういうこと
を言うんだね。
 でも、何故だか分からないけど、不安になってくるよ。
 今まで「私の明日香ちゃん」って思ってきたのが、ただ単に私の思い上がりなん
じゃないかって……。
 何か…何だか…明日香ちゃんの姿が遠くに見えてきちゃったよ……。
37 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月22日(月)17時07分45秒
 お遊びだよって、自分を納得させて始めたのに……歌い出したら、そんなこと、
どうでも良くなってた。
 心配するまでもなく、歌詞は自然に口をついて出てきた。

 気持ち良い……。
 暗転した客席が、余計に広さを感じさせる。
 その広い空間に向かって、歌声を響かせる。
 跳ね返ってくる残響。
 何だか「簡単にはいかせないぞ!」って挑まれてるようで、それさえ心地良い。

 やっぱり、歌うの、楽しいなぁ……。
 歌ってる時しか感じられない開放感に浸っていると、ライブでの感動が蘇ってく
る。
38 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月22日(月)17時08分19秒
 歓声が轟き、体の芯を震わせる。
 会場全体を揺るがすジャンプ。手拍子。
 薄暗がりの中から浮かび上がるファンの笑顔、笑顔、笑顔……。

 今だったら、何だって出来るって思った。
 どんな歌でも歌えるし、どんなダンスだってやり通してみせる。
 今までにない力が全身に漲って、どこまででも成長していけるって確信できた。
 そして…そして……。
39 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
40 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月22日(月)17時15分56秒
 一瞬にして、思考が現実へと帰ってくる。
 私は、もうその場にはいるべき存在じゃない。
 ファンの前でステージに上ることはない。
 今は、ほんのお遊びでステージに上がらせてもらってるだけ。
 私は普通の女の子。
 歌が好きな、大好きなだけの、ただそれだけの女の子だった。
 ただそれだけの……。
41 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月23日(火)10時57分38秒
 チラッと見たら、平家さんは客席に座って、前の席の背もたれに両手をそろえて、
その上にあごをのせて見てた。
 ニコニコ笑って、とにかく嬉しそう。
 その向こうから中澤さんが歩いて来て、平家さんの隣に静かに座って……時折、目
を細めて明日香ちゃんの表情を確かめながら腕を組んで、穏やかな表情で微笑んでた。

 ふと気がついたら、娘。のメンバー全員も、客席に座って明日香ちゃんの姿を目で
追ってる。
 五期メンバーは麻琴ちゃんを中心に、やっぱり憧れの視線を送ってた。
 あいぼんやツ〜ジ〜も、二人並んで嬉しそうに眺めてる。
 よっすぃ〜は、何だか悔しそうな表情。
 ごっちんは、いつもと変わらない。
 先輩達は……一言じゃ言い表せないような、複雑な表情をしてた。
42 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月23日(火)10時58分53秒
 その中でも一番分かりやすかったのが安倍さん。
 単純に懐かしそうで、愛おしそうで、哀しそうだった。
 きっと、また一緒に並んで歌いたいんだろうな。
 それ位は私にも分かった。

 後は…飯田さん。
 すぐに涙ウルウルになってるし。
 感激屋さんなところはいつも通りだけど、時折、悔しそうな顔もする。一瞬だけ
ど。
 この歌で競い合ったことがあるだけに、感激してばかりもいられないのかもしれ
ないね。
43 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月23日(火)10時59分50秒
 保田さんと矢口さんは、本当に複雑な表情をしてる。
 高音の所で明日香ちゃんの声が揺らいだら、何だか嬉しそうな顔をして、次の瞬
間にはそれを後悔してるような顔で……。
 やっぱりそれは嫉妬なのかな?
 そのことは、私にとってはすごくショックだった。

 保田さんも矢口さんも、私たちにとっては常に目標の存在で、そこに追いつこう
と努力することがモーニング娘。の一員になることと同じ意味だったから。
 特に保田さんは、私の教育係だったから、本当にいろいろなことを教わった。
 それも一方的なものじゃなくて、私の意見もちゃんと聞いてくれて、ちゃんと取
り入れてくれた。
 大人だな〜って感心させられて、頼りになる先輩として尊敬してるのに……。
44 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月23日(火)11時01分08秒
 その保田さんが、明日香ちゃんの歌に動揺してる。
 保田さんでもそういうことがあるんだな〜って、ホッとする部分もある。
 見ちゃいけないものを見てしまったような、イヤな気持ちも湧いてくる。
 自分自身が明日香ちゃんを遠く感じてしまうこともあって、すごく居心地が悪かっ
た。

 それなのに、明日香ちゃんの歌声はどこまでもステキで……。
 「歌って」なんて言うんじゃなかった。
 ううん。歌ってもらって本当に良かった。
 二つの気持ちがない交ぜになって、頭の中をグルグル回ってた。
45 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月24日(水)10時02分23秒
 娘。を卒業して、急激に押し寄せてきた自由な時間。
 あれもこれもやりたいって、望んでいたこともたくさんあった。

 毎日、学校に通って授業を受けて、休み時間には友達とおしゃべりをして、時に
は悩みを相談されたり……志望高校への入学を目指して勉強に励むっていう、普通
の受験生の生活は満喫できた。
 でも、そんな私をまだ追いかけてくる人達もいて、バイトを辞めなくちゃいけな
くなったり、上手くいかないことも多かった。
46 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月24日(水)10時03分00秒
 元モーニング娘。っていう肩書きは、そんな人達にとっては重要なことらしかっ
たけど、私自身にとっては何の意味もなかった。
 私にとってモーニング娘。っていうのは、「歌う場所」そのものだった。
 歌が好きな仲間が集まって、それを聞いてくれるファンに伝わるように、歌を楽
しむ場所だった。
 どんな歌かじゃなくて、歌ってるっていう事実が全て。
 歌わないモーニング娘。なんて意味がない。そう私は思う。

 私はもう、その輪の中からは外れてしまった。
 だから、私はもう、モーニング娘。でも何でもない。
 「元」なんて付けて呼ばれるような存在じゃない。
 今でも歌は大好きだし、娘。のみんなのことも好きだ。
 でももう、同じ輪の中にはいない。
 ただ歌が大好きなだけの、それだけの女の子。
47 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月24日(水)10時04分53秒
 そのただの女の子を、こんなステージに上がらせるなんて……みっちゃんは何を
企んでるんだろう?
 客席に見えるみっちゃんは、ただ楽しそうにニコニコしてるだけ。
 案外、面白いからってだけの理由だったりして。
 ……みっちゃんの場合、あり得るかもしれない。
 単純明快な人だもんね。

 それなら私も、せいぜい楽しませてもらうことにしよう。
 曲ももうすぐ終わりだし。
 あれこれ思い悩みながら歌って終わるには、この曲はもったいなさ過ぎる。
 最後に、今の素直な気持ちを込めて歌うよ。
 何だかソワソワしてる梨華ちゃんに向かって……。
48 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月24日(水)10時06分52秒
 明日香ちゃんは丁度一周して、ステージの真ん中に立って私の方に熱のこもった
視線を投げてきた。
 急に胸が苦しくなって……。

 ♪せめて聞かせて欲しいわ
  「スキ」だって〜♪
49 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月24日(水)10時07分37秒
 明日香ちゃんから目がそらせなかった。
「…スキ……」
 つられるように呟いて、それに後から気づいて、ボッて顔に火がついちゃった。
 だって〜、いつもの明日香ちゃんからは想像できない位、照れのない情熱的な視
線だったんだもん。
 さっきまで、あんなに悩んでた私はどこかへ飛んで行っちゃった。
 歌ってもらって、本当に本当に本っ当〜に良かった!

 マイクを下ろしてステージの端へ歩いてくる明日香ちゃんへ、真っ赤な顔のまま
駆け寄った。
 そしたら……明日香ちゃん、笑顔なのに涙を流してた。
 紛れもない満足の笑顔に、一筋の涙だけが不釣り合いに光ってた。
50 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月25日(木)10時06分36秒
 寂しくもない。
 哀しくもない。
 涙を流す理由なんて、何にも無かった。
 なのに勝手に涙が出てた。

 私自身も驚いたけど、梨華ちゃんはもっとビックリしたみたい。
「明日香ちゃん……」
 そう言って私の手を握って、ウルウルしてる。
 右手だけ離して、人差し指で涙の跡を払う。
 大丈夫。何でもないんだよ、梨華ちゃん。
 言葉にはせずに、そっと手を握り返した。
51 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月25日(木)10時07分12秒
「福ちゃん、気持ちよかったか?」
 出たな悪の首領・みっちぃめ!
 梨華ちゃんのお尻を触るだけじゃ満足できずに、私をステージに上げて何しようっ
てんだよ。
 ったく。

「そんな怖い目で睨まんでもえぇやんかぁ」
 急に気弱になるみっちゃんの後ろで、裕ちゃんがアハハと笑ってる。
「明日香、久しぶりに広いとこで歌うて、ホンマは気持ち良かったんやろ?」
 そりゃ…まぁ……。
 でも、裕ちゃんの「何でもお見通しやで」って感じの目が癪に触ったから、ふんっ
て顔を背けて答えないでおく。
 また裕ちゃんが、アハハと豪快に笑った。
52 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月25日(木)10時08分00秒
「…歌えるっていうんは、幸せなことやから」
 さらっとした言葉だったけど、心情がこもってた。
 ハッとして見たら、目は真剣だった。
 みっちゃんも口をキュッて結んで肯いてる。

「たまには思いっきり歌わんと、心がしおれてしまうでぇ。『歌う子ども』なんや
ろ?」
 昔よくやってくれたように、私の頭を掌でポンポンッと撫でるように優しく叩く。
 これ…私、弱いんだよね……。
 ほら、目が潤んできちゃった。
 慌てて目をパチパチして涙を堪える。
53 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月25日(木)10時09分06秒
 そうだよね。
 みっちゃんや裕ちゃんには分かるんだ。
 歌えるってことが、どれだけ幸せなことか。
 娘。は、とにかくハードスケジュールで、コンサートの予定が次から次に組まれ
てる。
 でも、それは本当に有り難いことで、コンサートなんてしたくても出来ない人だっ
ていっぱいいる。
 そのことが、娘。に割を食った形のみっちゃんと、演歌キャンペーンを経験した
裕ちゃんには、身に染みて感じてるんだよね。

 今日だって本当だったら、自分のデビュー曲を歌わせてくれるなんて余程のこと
だ。
 最終オーディションの課題曲で私にも縁の深い曲だけど、逆にそのことで、みっ
ちゃんにとっては自分で勝ち取った曲だっていう思い入れが強いはず。
 それを歌わせてくれたっていうのは、やっぱり、みっちゃんの優しさな訳で……。
54 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月25日(木)10時09分48秒
 やばい…。
 また、ウルッてきちゃったよ。
 もう…何で年長組は、こうも人を泣かせようとするのかねぇ…。

「みっちゃん…ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
 平然と答えるその顔が、何だか小憎らしくて……。
「福ちゃ…ぅわっ?!」
 だから首筋に飛びついて、抱き締めてやった。
「く…苦しい…福ちゃん……」
 ポロポロッて、二、三粒こぼれた涙は、みっちゃんのTシャツが吸い込んでくれ
た。
55 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月26日(金)03時23分28秒
激しく感動!! (TT)
56 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年04月26日(金)09時51分42秒
>>55
 そう言っていただけると本当に嬉しいです。
 頑張りまっす!
57 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月26日(金)09時52分55秒
 …平家さん…私の前で明日香ちゃんに抱きつかれるなんて……ひどいです〜!
 私を怒らせる前に、明日香ちゃんから離れなさ〜い!
 三つ数えるまでに離れないと、大変なことになっちゃいますよ。
 良いですか?
「いや、そんな無茶苦茶な…私は何にもしてない…ふ…福ちゃんも、く…苦しいて……」

 苦しんでるフリしたって許しませんよ。
「い〜ちっ…に〜ぃっ…」
 大体、明日香ちゃんに抱きつかれて、嬉しがるならともかく、苦しがるなんて、そん
なことあるわけないんですから。
「あのぉ、石川さん」
「さ〜…え? 何、麻琴ちゃん?」
 今丁度、平家さんに正義の鉄槌を下すところなのに。

 だけど麻琴ちゃんは、そんなことにはお構いなし。
「ちょっと伺いたいことがあるんですけど」
 もう…仕方ないな〜。
 平家さん、命拾いしましたね。
 麻琴ちゃんに感謝した方が良いですよ。
58 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月26日(金)09時53分27秒
 後ろ髪引かれる思いで、麻琴ちゃんの方に向き直る。
「麻琴ちゃん、どうしたの?」
「あのぉ、石川さんって福田さんとすごい仲良しみたいですけど…」
 ただの「仲良し」じゃないの!
 明日香ちゃんは、私にとって「運命の人」なんだから。
 …なんてことは、流石の私も、うかつにおしゃべりしちゃったりはしない。
 一応、五期メンバーには、明日香ちゃんとのことは秘密にしてるから。

「うん! すっっっごく仲良しだよ…それが、どうかしたの?」
 それにしても、何でこんなこと聞いてくるんだろう?
「良いなぁ…あのですねぇ、石川さんからお願いしてもらえないですかねぇ?」
「何を?」
 キラキラ光ってる目が私を見てる。
 …イヤな予感がする。
59 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月26日(金)09時53分59秒
「あのぉ…私、一度で良いから福田さんの家に行ってみ…」
「ダメ!」
「…たいんですけど…え?」
 許しません。不許可です。
 さっきみたいにはしゃがれたら、明日香ちゃん、迷惑だもんね。うん。

 だから、重ねて釘を刺しておくことにする。
「それはダメ。明日香ちゃんの家は極秘中の極秘、トップシークレットだから、教え
てあげられないよ」
「えぇ〜…そんなぁ……」
 明日香ちゃんに限って、何かあるとは思えないけど、悪い虫がつかないように防虫
剤を撒いておかなくちゃね。
60 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月26日(金)09時54分32秒
 なのになのに!
「こ〜ら。五期メンバーをイジメちゃ駄目っしょ?」
 突然、安倍さん登場……。
「まこっちゃん、なっちが頼んであげるさ。そうだ! 今度のオフとかどう? なっち
も久しぶりに明日香ん家に行きたいし」
「ホントですか?! うわぁ、どうしよ! すっごい嬉しいですぅ!」
「そうかい? じゃ、早速頼んでみよっか」

 呆然としてる私を置いて、盛り上がった二人は明日香ちゃんの方に行っちゃった。
 次のオフは、私が明日香ちゃん家に行こうと思ってたのに〜!
 何で安倍さんは、人の恋路を邪魔するんですか〜!!
 ……やっぱり安倍さんは小姑なのね。
 グスン。
61 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月26日(金)12時37分20秒
なっちはまこっちゃんを使ってあすりかの愛を邪魔する気か(w
62 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年04月27日(土)16時31分24秒
>>61
 さてどうなんでしょう(ニヤリ
 なっちには、これからも活躍してもらわないとね。
 小姑として(藁
63 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月27日(土)16時32分10秒
 散々みっちゃんの首を絞めて、胸のつかえがスッて下りた。
 そしたら、なっちが小川さんと一緒に来て、
「明日香ん家に行ってもいいかなぁ?」
だって。
 相変わらず、私を見る小川さんの視線が気になるけど……。
 ま、いっか。
「…家に来たって、別に何にもないよ? それでも良いなら私は構わないけど…」
「それで良いさ。明日香の部屋を見に行くだけで十分だべ」
「嬉しいですぅ!」
 いや、そんなに喜ばれてもねぇ…。

 うっ…小川さんの背中越しに、遠くから刺すような視線が……梨華ちゃんの目が、
怖い……。
「り…梨華ちゃんも、来るでしょ? なっちと小川さんも、梨華ちゃんと一緒でも
別に良いよね?」
 自分の声が思った以上に焦った感じで、ちょっとビックリ。
 そんな私のことを面白がってたなっちも、全然気にしてない小川さんも、どっち
にも異論はなくて、即OK。
 その場は何とか話をまとめて、
「じゃ、また連絡するから」
とか適当に誤魔化して、逃げるように二人から離れる。
64 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月27日(土)16時32分43秒
 廊下に出て、一息つけるかと思ったんだけど……。
「…明日香ちゃん…私より、安倍さんの言うことの方を聞くんだね」
 私を追い越して、梨華ちゃんはドンドン歩いていく。
「そ…そんなことないよぉ!」
 背中を追いかけて横に並ぶと、梨華ちゃんは「どうだか」って疑いの眼差し。
 やばいよ。怒らせちゃった?
 ま、たぶん、拗ねてみせてるだけなんだろうけどね。
 …もし、本当に怒ってたらどうしよう……。

「ねぇ、梨華ちゃん…機嫌直してよ。何でも言うこと聞くからさぁ。ね?」
 必死な自分が、ちょっと情けない。
 それはともかく……。
 梨華ちゃんは、急にピタッて立ち止まる。
「…ホントに?」
 まだ半信半疑って感じで、私の顔を覗き込む。
65 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年04月27日(土)16時34分10秒
「ホント、ホント!」
 力みすぎ、私。
 でもその甲斐あって、やっと梨華ちゃんスマイルが見られた。
 うん。やっぱり梨華ちゃんは笑顔が一番可愛いよ。
「じゃ〜、今日はお泊まりしていってね」
 え?! 今日は食事までのはずじゃ……。

「や、でも…ほら、着替えとか持ってきてないし……」
「大丈夫。私の貸してあげるから♪」
 笑顔のまま、有無を言わせぬ切り返し。
 またこれが、視線の痛いこと……。
「……はい」
「よしっ! 決まり〜」
 ハァ〜……本当に華ちゃんの笑顔って可愛いね。
 私の人生を狂わせるほどに……。
66 名前:65は、(以下略) 投稿日:2002年04月28日(日)05時04分17秒
時すでに狂っております。
あすりか萌えー。
67 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月28日(日)13時06分22秒
そういえば続編始まってから前編では準主役だったよっすぃーがでてこないですね
68 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年04月30日(火)12時16分21秒
>>66
 確かに仰る通り、既に「あすりか」の歯車を大きく回りだして、明日香ちゃんの
人生も狂っちゃってますね。
 もちろん、チャミ銀のせいですが(藁

>>67
 ご心配なく。
 今はまだ出番じゃないですが、今回もよっすぃ〜を中心に嵐が吹き荒れる予定で
すよ。
 乞うご期待!
69 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月30日(火)12時17分13秒
 明日香ちゃんの歌声にしんみりしちゃったり、麻琴ちゃんとか安倍さんっていう
お邪魔虫が登場したりと、ブルーになっちゃいそうだったけど、結果的に明日香ちゃ
ん家に行けることになったし、今日は明日香ちゃんがお泊まりしてくれるし、結果
オーライ♪
 やっぱり明日香ちゃんは優しいね。
 だからスキ!
 あ、そうだ……。
 見渡すと、私達以外に廊下に人影は無し。
 チャンス!

「明日香ちゃん、もう一つお願いして良い?」
「…良いけど…」
 何でそんなに警戒の眼差し?
 でも、明日香ちゃん、良いカンしてるね。
70 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月30日(火)12時17分53秒
「あのね……」
 淡く色がのってる程度の明日香ちゃんの唇に、不意打ちで自分のを重ねる。
 キスしちゃった♪
 プックリした下唇を挟む。
 柔らかくて、何となく甘酸っぱい感じ。

 もったいないけど一瞬だけのキス。
 顔を離したら、ポカンッてまん丸目が見えた。
 私を見上げる顔が、見る見る色づいていく。
 はい。真っ赤な明日香ちゃんの出来上がり!
 こういうのも、とっても可愛いね。
71 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月30日(火)12時18分36秒
「も…もう! 誰かに見られたら、どうするんだよぉ」
 明日香ちゃんったら心配性なんだから。
 他に人がいないって、ちゃんと確認したもん。
「大丈…痛い!」
 後ろから頭を叩かれちゃった。
 この痛さは……。

「こんな目立つとこで、キスなんてしてんじゃないの!」
 やっぱり…保田さんだ。
 でも……。
「えぇ〜! だってさっき見回した時はいなかったのに……」
 もしかして、保田さんって忍者?!
「何言ってんのよ。私は、こっちのドアから出てきただけ」
 あらら…私達が出てきたのと違うドアが、そんなところにあったなんて……。
72 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月30日(火)12時19分20秒
「私だったから良かったけど…あんたは迂闊過ぎるのよ、まったく……」
「ごめんなさ〜い」
 また怒られちゃった…私ってダメね…。
「だけど…今回は圭ちゃんだったんだから、結果オーライってことで。あんまり怒
るとシワになっちゃうよ?」
 明日香ちゃん……やっぱり優しいからスキ♪

「ハァ〜……まったく、明日香は石川に甘過ぎるよ」
「な…何だよぉ」
 保田さん、明日香ちゃんをジッと見てて……最後にもう一回ため息をついてから、
私のことをギロッて睨んだ。
 こ…怖い。
「とにかく気をつけなよ? 下手したら大騒ぎになるんだから」
 そう言って、会議室の方に歩き出す。
73 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年04月30日(火)12時20分04秒
 もっと怒られるかと思ったから、ホッと一安心…する間もなく、保田さんが廊下
の角で振り返る。
「何してんの、石川? 打ち合わせが始まっちゃうでしょ!」
 あ! そうだった…すっかり忘れてた。
「今行きま〜す!」
 返事して、明日香ちゃんに向き直って両手をしっかり握る。
「明日香ちゃん、ごめんだけど、控え室で待っててくれる?」
 お仕事に引き裂かれる二人…別離の瞬間…こんなの哀し過ぎる……。

 なのに明日香ちゃん、
「分かった。頑張ってね」
ってニコニコ笑ってる。
「明日香ちゃ〜ん!」
 何だか泣きそうだよ〜……。
 そしたら…。
「どうしたの、梨華ちゃん? よしよし」
 明日香ちゃんが、頭をなでなでしてくれた。
「…離れるのは哀しいけど、お仕事行ってくるね」
「はいはい。行ってらっしゃい」
 後ろ髪引かれるような思いを、笑顔でさっぱりと送り出してくれた。
 よ〜し! 頑張るぞ!!
74 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月01日(水)12時17分49秒
 梨華ちゃんの甘えたぶりにも困ったものだね。
 そこも可愛いんだけど……圭ちゃんの言う通り、やっぱり甘いのかなぁ?
 ま、そんなことはともかくとして…きっちり三十分後には打ち合わせも終わって、
今はリハーサルが始まってる。
 娘。達が歌い躍り、スタッフがあれこれチェックして右往左往してる。
 そんな中、ポツンと座ってる私。
 客席の真ん中辺り、ちょっと前よりの席。
 最初こそ、目でメンバーを追ってたんだけど、だんだん、いろんなことが頭の中
に溢れてきた。

 やっぱり梨華ちゃん、艶っぽいねぇ。
 体付きも動きも、雰囲気までつくづく「女」を感じさせる存在だよね。
 そんな梨華ちゃんに、少なからず魅力を感じてる私。
 やっぱり普通じゃないのかなぁ?
75 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月01日(水)12時18分32秒
 どんな女性でも、多かれ少なかれ、ちょっと「男」を感じさせる部分ってあるよ
ね。
 その点、娘。は比較的サバサバした男っぽい子が多い。
 その例外が梨華ちゃん。
 私は…子どもだったっていうのもあって、メンバーだったころは男言葉を使った
りしてた。
 ま、今でもまだまだ子どもだけどね。
 それでもそれなりに女らしくなってきてる……と思いたい。
 でも、見るからに女らしい梨華ちゃんを好きなのって、私の「男」の部分なんだ
ろうか?

 こんなことになる前に想像してた女の子同士の恋愛って、どっちかが男役をやる
もんだっって思ってた。
 そう。吉澤とごっちんみたいに。
 でも、私達は違う……と思う。
 お互い「女」のままで、それでも恋愛感情を持ってる。
 こういうのも「有り」なんだろうか?
 いや、「無し」って言われても今更困るけどね。
76 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月01日(水)12時19分12秒
 こういうこと、前からずっと考えてた。
 微笑む笑顔が夢だと気づいて切ない朝も、働いているふとした瞬間も、肌を触れ
合わせてる夜も。
 梨華ちゃんに、
「私のどこがスキ?」
って尋ねられる度に……。
 ずっとずっと考えてた。
 このまま付き合ってて良いのか?っていう不安と共に。
 結局、「私は私のままで梨華ちゃんを愛せば良い」って思うことで、自分を納得
させている。
 今も、それ以外の答えには辿り着けない。

 これが正解なのかもしれない。
 でも、間違いなのかもしれない。
 今はただ、梨華ちゃんと一緒にいられることが幸せだから、梨華ちゃんも私とい
て「幸せ」だって言ってくれるから、きっとこのままで良い。
 他の答えが見つけられないから、迷いながら自分なりに、全力で梨華ちゃんを愛
したいと思う。
 いつか正解を見つけられるまで、漠然とした不安を抱えながら……。
77 名前:前作の読者158 投稿日:2002年05月01日(水)22時38分16秒
祝!続編!!待ってた甲斐がありました。短編とあわせて追っかけていきますよ。
78 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年05月02日(木)10時01分11秒
>>77
 いやぁ、ホントにお待たせしてしまいました。
 でも、待ってくれていた方がいるっていうのは、すっごく励みになります。
 ガッカリさせないように、何とか頑張りまっす!
79 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月02日(木)10時01分53秒
 明日香ちゃんが私を見てくれてた。
 ステージの上からは、薄暗い客席はモノクロの世界であまり見えないはずなのに、
明日香ちゃんだけははっきりカラーで分かった。
 私の視線はそこに釘付けで、明日香ちゃんはそれにニッコリ笑顔で応えてくれて
る。
 頑張らなきゃ。

 さっきの歌ってる明日香ちゃんが浮かんでくる。
 今はまだ、比べるのが怖いくらいの実力の差がある。
 だけど何時か、何時かは隣に並んでいられるようになりたいから。
 いっぱい歌って、いっぱい汗を流して、何度も何度も繰り返して身体にリズムと
フリを覚え込ませる。
 保田さんが身をもって教えてくれたように。
 明日香ちゃんの笑顔をエネルギーにして。
 いっぱい、いっぱい……。
 何度も、何度も……。
80 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月02日(木)10時02分38秒
 今までに体験したことがないくらい張り詰めて、リハーサルはあっと言う間に終
わっちゃった。
 まだまだ明日香ちゃんとの差は大きすぎて、何だか焦っちゃうくらいに短い時間
に感じられた。
 居残りとか、階段の踊り場で自分から練習してる保田さん。
 いつも、こんな気持ちなのかな?
 頑張れば頑張るほど、目標が明確になって、なのに遠く感じられて……だから、
あんなに練習するのかな?

 今の私も、時間を惜しんで少しでも明日香ちゃんに近づいていきたいって気持ち
で溢れてる。
 後三十分でも良いから。
 保田さんにお願いして、一緒に練習してもらおうかな。
 それくらいなら、きっと明日香ちゃんも見ててくれるよね。
 そう思って客席を見たら……。
81 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月02日(木)10時03分30秒
「明日香ちゃ〜ん!」
 向上心に満ち溢れた私は、もうどっかに行っちゃった。
 だって、明日香ちゃんの隣に平家さんが座ってて、何か楽しそうにちょっかい掛
けてるんだもん。
「あ、梨華ちゃん、良かったよ。頑張ってた…ね…って、ちょっと?!」
 そんな笑顔したってダメなんですからね、平家さん。
「平家さん、さようなら!」
 明日香ちゃんの腕をグイグイ引いて、一刻も早く離れなくちゃ!

「ちょっと梨華ちゃん…私、平家さんと話…途中……」
「平家さんなんか良いから、早く一緒に帰ろ。ね?」
 引きずるようにして、明日香ちゃんと一緒に出て行っちゃう。
 後ろから平家さんをからかう中澤さんの声が聞こえる。
「あ〜ぁ。みっちゃん、石川に嫌われてもたなぁ」
「……何で? なぁ姉さん、私、何か悪いことした?」
 その後の話はドアが締まて聞こえなくなっちゃった。
82 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月03日(金)14時30分05秒
初めてレスしますが、前の「あすりか」から見させて頂いています。
細かい心理描写にただただ感心させられています。
今後の展開を大いに期待しています。
83 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年05月04日(土)14時50分19秒
>>82
 初レス、ありがとうございます。
 心理描写、考えてると自分が楽しいんですよ。
 結局、好きなんでしょうね。
84 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月04日(土)14時50分59秒
 みっちゃん達を置き去りにして廊下に出ると、梨華ちゃんは私の腕をギュッて抱
き込んできた。
 …思わず足が止まって息を吸い込んじゃう。
「あ…あのさ、梨華ちゃん……」
「なぁに〜?」
 笑顔が近い。
「…何でもない……」
 本当のこと言うと、む…胸が二の腕に当たっちゃってる…んだけど…。

「??変な明日香ちゃん」
 梨華ちゃんは全然気がついてないみたい。
 女の子同士だもん。気にすることないよね。
 ……とは思うんだけど、私は気になって仕方がない。
 ドキドキ、ドキドキ。
 さっきキスされちゃった時から、やっと収まった鼓動が、またまた高まってくる。
 大体、今日は梨華ちゃん家にお泊まりなんだから、これくらいで動揺してちゃ、
身が保たないぞ!
 そんな風に自分に活を入れようとしても、駄目なときは駄目なんだよね。
 頭に血が上ってきて、ちょっとフラフラする。
 そのまま控え室まで、引っ張られるままに歩いていく。
85 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年05月04日(土)14時52分05秒
「着替えるから、ちょっと待っててね」
「うん」
 梨華ちゃんの姿がカーテンの向こうに消えてから、大きくゆっくりと深呼吸して、
何とか自分を落ち着かせ……。
「明日香ちゃん、ごめん。バッグ取ってくれない?」
「バッグ?」
 見慣れたピンクのバッグは、すぐに見つかった。

「梨華ちゃん、バッグ、下から入れるよ」
 カーテンの下を滑らせるように差し入れる。
「ありがとう。汗かいちゃったから、下着も換えようと思って」
 し…下着……。
 一瞬、手が止まる。
 ハッ!! 私ったら自意識過剰だよ。
 中学生の男子じゃあるまいし、まったく……。
 ホントにどうしちゃったんだろう、私。
 今日はちょっと、おかしいぞ?……。
86 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月08日(水)15時36分49秒
 >>85は「焼き銀杏」明日香視点です。
87 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月08日(水)15時37分23秒
「お待たせ!」
 着替え終わってカーテンを開けたら、明日香ちゃんが難しい顔をしてた。
 こめかみに手を当てて、何か考え事してるみたい…なのに、何故かほっぺがピン
ク色。

 心配になってきちゃった。
「どうしたの、明日香ちゃん?」
 ドキッ!
 私の方を見る明日香ちゃんの瞳がウルウルッて…超セクシー……。
88 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月08日(水)15時38分18秒
「ううん、何でもないよ。食事、行こっか」
 立ち上がって近づく明日香ちゃんは、もういつもと同じ。
 さっきの表情は、何?
 ドキドキしちゃったよ。

「あ…え〜と…食事は、家で食べようかな〜って……シャワーも浴びたいし」
「え? 食べに出るんじゃないの? シャワーだって、ここにもあるんじゃ……」
 怪訝そうな顔の明日香ちゃん。
「実は…もう作ってあるの…ビーフストロガノフ」
 そう言ったら、すぐにピ〜ンと来たみたい。
 私のこと、イタズラッ子を見るみたいに見つめてる。
89 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月08日(水)15時39分03秒
「梨華ちゃん…最初っから、今日はお泊まりさせる気だったんだね」
 はい、その通りです。
 ……ジッと見つめる明日香ちゃんの目を、真っ直ぐ見返せない。
「ごめんなさ〜い…だって……リハーサルが始まってから、ずっとすれ違いだった
から……」

 仕方がないなぁって感じで肩をすくませて、項垂れてる私の頭にポンッて手を置
いてくれた。
 明日香ちゃん……。
「…それじゃ、参りましょうか」
 そっと私の方に伸びてきた手。
「うん!」
 しっかりその手をつかんで、歩き出す。

 どんな時も、私に差し伸べられる手。
 温かい手。
 柔らかい手。
 この手さえ見失わなければ、私は大丈夫。
 信頼性無限大の手を握って、いつものように私の心は安らかだった。
90 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月09日(木)14時18分30秒
 さっきから感じてた違和感が、いつの間にか不快感となってお腹の底の方から溜
まって来てた。
 何だか足腰が重た〜い感じだったけど、つないだ梨華ちゃんの手が温かくて、意
外と平気な顔で廊下を歩いて行けた。
 それでも、お腹から断続的に鈍痛が走る。
 久しぶりにしても、ちょっとしか歌ってないのに、すごく疲れてる。
 全体的にむくんでる感じだし……。

 だんだん症状がはっきりしてきて、理由が分かってきたぞ。
 毎月って訳じゃなく、時々、三、四日前にこんな症状が出る時がある。
 基本的に、私は軽い方なんだけど、この症状が出た月は重いんだよね。
 初めての時はビックリして病院に行ったりした位。
91 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月09日(木)14時19分28秒
 「月経前症候群」って言うらしいけど、説明を受けてから余計に憂鬱になった。
 だって「今月は苦しいぞ」って宣告されてるようなもんでしょ?
 でも最近は随分慣れてきて「そっかぁ、今月は重たいんだなぁ…」って感じ。
 三、四日したら、必要なこと以外はしないで寝込むことになりそうだ。

 何となく、梨華ちゃんにバレないように出来るだけ平気を装う。
 女の子同士だし、別に分かっちゃっても良いんだけど、折角お泊まりしに行くん
だし、嬉しそうな梨華ちゃんに変な気を遣わせたくないから。
 それでも梨華ちゃん、何か変だって思ったみたい。
「今日は疲れちゃったから、タクシーで帰ろっか」
 そう言って、タクシー券をヒラヒラさせる。

 ホントだったら「電車で良いよ」って言いたいところだけど、正直、ちょっと辛
かったからお言葉に甘えることにする。
 タクシーに乗ったら、思わず「フゥ〜ッ…」ってため息をついちゃった。
 その間も手はつないだまま。
 なのに梨華ちゃんは、何も話し掛けて来なくて…いつの間にか私、寝ちゃってた。
92 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月13日(月)13時35分06秒
 今日の明日香ちゃんの寝顔、車に揺られて、時々苦しそうに歪む。
 廊下を歩いてる時から、辛そうだったもんね……。
 明日香ちゃん、あんまりこういう顔を他人に見せない人だから、気づくのが遅く
なっちゃって、余計に辛くしちゃったね。
 ごめんなさい。

 これまでこういうことが無かったの、もしかしたら、二人の周期がほとんど同じ
だからかもしれないね。
 私もそろそろだし。
 そんなことも「これも運命?!」とか思っちゃう私って……。
 明日香ちゃんの前髪に、サラサラと指で触れながら、顔がニヤついちゃう。
93 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月13日(月)13時35分48秒
「お客さん、そろそろ着きますよ」
「あ、はい」
 気が付いたら、もう家のすぐ傍。
 目を上げたら、ルームミラー越しに私達を見てる運転手さんと目が合っちゃう。
 やだ。恥ずかしい。

「仲良いんですね。まるで姉妹みたいだ」
 微笑ましそうな運転手さんに、何と答えたら良いか分からなくて、
「はい……」
ってそれだけしか言えなかった。
94 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月13日(月)13時36分41秒
「明日香ちゃん…明日香ちゃん…」
「…う〜…ん……」
 肩を揺すっても、なかなか目を覚まさない。
 無理して疲れちゃったのかな〜…とか思ってたら、いきなり、パシッて手を払わ
れちゃった。
「もう!…ほっといて!」
 ……こんな邪険な明日香ちゃん、初めてで…すごい…すごい悲しくなっちゃった。

 でも……。
「あ!…えと…違うの!……梨華ちゃん、ごめん!」
 目を開けてチラッと私を見た明日香ちゃんは、すごいビックリした表情になって、
ワタワタと起き上がって謝り始めた。
「あの…寝ぼけちゃって…お母さんと間違えちゃった」
 もう大慌てって感じで、タクシーに乗ってるのも忘れちゃってるみたい。
95 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月13日(月)13時37分26秒
 見てて急に可笑しくなっちゃって……クスクス笑っちゃった。
 明日香ちゃん、目をパチパチして、「?」マークをいっぱい飛ばしてた。
 それがまた可愛くて……状況が分からないままの明日香ちゃんの手を引いて、タ
クシーを降りてエレベーターに飛び込んで…ギュッて抱きしめてキスをしちゃった。
「り…梨華ちゃん…急に……」
「明日香ちゃんがいけないの。可愛すぎるから」
 そう言って、もう一度キスする。

 最初は身じろぎしてた明日香ちゃんだけど、諦めたのか、受け入れてくれたのか、
とにかく大人しくなっちゃった。
 本当の本当に二人きりの時間と空間。
 気が付いたら私を柔らかく抱き返してくれてて……エレベーターが私の部屋の階
に着くまで、長いキスを交わした。
 今日ほど、エレベーターがゆっくり昇るのを望んだ日は無かった。
96 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月14日(火)09時46分55秒
 もうねぇ…焦ったよ、ホントに。
 寝ててもムカムカ気分が悪くてさぁ……思わずお母さんに起こされたと勘違いし
て、八つ当たり気味に手を振り払ったら……実は梨華ちゃんなんだもん。
 梨華ちゃん、泣きそうな顔してるしさぁ…。

 もうねぇ…久しぶりだよ、あんなに大慌てになっちゃったの。
 「とにかく謝らないと!」って、そればっかり気が焦っちゃって。
 俯いてる梨華ちゃんの顔を、下から覗き込むようにしたまでは良いけど、何て言っ
たら良いか咄嗟に浮かばないもんだね。
 やっと出た言葉が、
「あ!…えと…違うの!……梨華ちゃん、ごめん!」
だもんね。
 何が「違うの!」なんだか…今考えたら、自分で呆れちゃうよ。
 でもこの時は、「梨華ちゃんを傷つけちゃった!」って、とにかく必死だったか
ら……。
97 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月14日(火)09時47分34秒
 それなのに梨華ちゃん、突然笑い出して…何だか分からないうちに、タクシーか
ら降ろされちゃった。
 それから…それから、エレベーターの中でキスされて……自分でも信じられない
けど、その状況を受け入れちゃったんだよね。
 別に、梨華ちゃんの「明日香ちゃんがいけないの」って言葉に納得したわけじゃ
ない。
 何て言うか……欲求に理性が負けちゃったって感じで……。

 …自分で怖いことを言ってる気がする。
 今日の私は変なんだよ。
 頭はジワ〜ッと締め付けられるように痛むし、相変わらずお腹の底の方からは鈍
痛が這い出て来てる。
 身体はダルイし、精神的にもイライラするし……。
 だから…今日は変なんだよ。
98 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月14日(火)09時49分29秒
 そんな私は、梨華ちゃん家のテーブルの前に座って、お盆を手に近寄ってくる梨
華ちゃんを待ってる。
「は〜い、出来たよ〜! 明日香ちゃん、お待たせ〜」
 お盆から大皿をテーブルに移しながら、梨華ちゃんは会心の笑顔。
 それもそのはずで、梨華ちゃん特製のビーフストロガノフは、本当に美味しそう
だった。
「うわぁ…すごいね、梨華ちゃん!」
「ホントに? 早く、早く食べてみて!」
 期待いっぱいの梨華ちゃんの目。
 それ以上に、私の胃袋が期待でいっぱい。

「いただきます」
 パクッ……。
「美味し〜い。これ、美味しいよ!」
「ホントに?!」
「ホントにホント!」
 幸せそうな梨華ちゃんの顔。
 スプーン一杯ごとに幸せで満たされていく私の胃袋。
 外からと中からの幸せ。
99 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月14日(火)09時50分03秒
 ……ハッ!
 幸せに浸ってる場合じゃない。
 忘れてたけど、これも症状の一つでもあるんだよね。
 食べても食べても、ついつい食べちゃうようになる訳で。
 体内のバランス不全を、食欲でカバーしようとしちゃうらしい。
 気を付けないと、あっという間にカロリーオーバー。
 折角の梨華ちゃんのご馳走だけど、この皿一杯分で我慢、我慢。

「あ、もう食べちゃったんだね。もう一杯どう? すぐお代わり入れてくるから」
 え?
「いや、ちょっと梨華ちゃん……」
「もしかして、美味しくなかった?」
 う……そのすがるような視線は…反則……。
「……すごく美味しかったよ……じゃ、もう一杯だけ」
「は〜い♪」
 …幸せ太り、間違いなし。
100 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月15日(水)10時09分43秒
 明日香ちゃんは「美味しいね」って何度も言ってくれて、結局三杯も食べてくれ
た。
 すごい嬉しかったけど……食べ過ぎじゃないのかしら?
 ペロッて平らげちゃったの見て、ちょっと気になったけど、今はそれどころじゃ
ないの。

 ザ〜ッ。
 シャワーのお湯を受けてピンクに染まった明日香ちゃんが、目の前にいる。
 いつものように私が誘って、一緒にお風呂に入ってる。
 いつもと違うのは…明日香ちゃんがほとんど嫌がらなかったこと。
 とうとう、自然に受け止めてくれる日が来たのね。
 もう胸がドキドキ。
 いつもと違って、私の方が緊張しちゃってる。
101 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月15日(水)10時10分27秒
 ボディーソープをスポンジに取って、よく泡立てる。
「明日香ちゃん、背中、洗うよ」
「あ、うん。ありがとう」
 何の抵抗も無く、すんなり背中を任せてくれる。
 すごい! すごいよ!! 感動しちゃう!
 もう嬉しくて、嬉しくて。

「キャッ! り…梨華ちゃん…もう…」
 あれ?
 私ってダメね。
 すぐに思った通りにしゃべったり行動したりしちゃうから。
 そうボンヤリ、明日香ちゃんに抱きつきながら、考えたりなんてしたり……。
102 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月15日(水)10時11分17秒
「だぁから、梨華ちゃん…ちょ!…ホント、駄目っ!」
 あらら。
 手が偶然にも明日香ちゃんの胸に……流石に嫌がられちゃった。
 あんまりしつこくすると、本当に嫌われちゃうから、ここは一時撤退。
 でも、さっきの感触……何だか、いつもより明日香ちゃんの胸、張ってたような……。

 そっか〜…そうだよね。
 生理前って、ちょっと胸が大きくなる時があるもんね。
 ちょっと敏感だったり……。
 ということは……今日、いつもより感じる明日香ちゃんが見れちゃうかも。
「?…梨華ちゃん、どうしたの?」
 …想像して、一人でゾクゾクして来ちゃうよ〜。
「明日香ちゃ〜ん!」
「わっ! また…もう、梨華ちゃ〜ん!」
103 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月16日(木)14時49分15秒
 何だか興奮気味の梨華ちゃんを落ち着かせるのに、ものすごく手間取ってしまった。
 ただでさえ頭がフラついてたのに、お風呂でバタバタしたせいで、すっかりフラフラ
な状態。
 それに……どさくさに紛れて胸をいっぱい触られちゃって、そのぉ…ツンツンに感じ
ちゃってる…。
 梨華ちゃん、私の体が保ちそうにないよ……全く。

「ふぅ〜……」
 ドサリとベッドに倒れ込む。
 梨華ちゃんに借りたパジャマは、私にはちょっと大きめ……なのに、お尻は丁度ピッ
タリ。
 は〜ぁ…でっかいお尻は、相変わらず悩みの種。
 憂鬱だなぁ……。
 集中力も散漫で、眠くて、とにかく体がダルいんだ。
 それなのに……。
104 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月16日(木)14時50分04秒
「明日香ちゃん、大丈夫?」
 寄り添うように梨華ちゃんが座って、心配そうに覗き込んでくる。
「…何が?…全然大丈夫だよ」
 私ってどうしてこう、梨華ちゃんの前だと格好つけたがるかなぁ。
「ホントに? 何だか疲れてるみたい」
 言いながら、額と額を合わせて熱を計る。
 フワッて、梨華ちゃんの香り……。

 ドクン、ドクン、ドクン。
 心拍数が急上昇。
 今度は、胸が苦しくなってきたよ。
 息苦しくて…あ…目の前が白〜くなってきた。
 ううん。白じゃない。
 微かなレモン色……薄桃色……青空の色……。
 パステルチックな霧が、ぼんやり漂ってる。
105 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月16日(木)14時51分19秒
「キャッ!…明日香ちゃ…ん…むぐ…ん〜……」
 唇が重なる感触。
 また、キスされた?
 違う……キスしたの…私が?

 下唇を吸い込むようにして啄んでるのは……やっぱり私の方。
 混乱してる頭からの命令無しに、舌は唇のラインをなぞる。
「ん…んふぅ…」
 漏れ出る吐息が悩ましくて、頭がクラクラするよ。
 何か…何かが、私の中から這い出て来ようとしている。
 私を怯えさせる、私の中の何かが……。
106 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月18日(土)14時58分45秒
 わっ! わっ! わっ!
 今日の明日香ちゃんったら大胆。
 それに…キスも、いつもより上手。

 唇の形をなぞるように動く舌のザラッとした感触。
 私だってことを確かめるように、何度も何度も飽きることなく繰り返される。
 唇同士のプクプク感。
 口の中の柔らかな部分を舌が触れて、お互いの熱が交換される。
 それが、すごい心地よくて……。
 ウットリと、されるがまま。

 心のどこかで、「すぐに逆転できるから」って思ってた。
 だから最初は余裕をもって、明日香ちゃんに身を任せることができてたんだけど……。
「ふっ…ん…ん〜!…あ…ぁん…」
 耳…耳、触っちゃ……。
「あ…明日香…ちゃ…んっ!」
 息が…苦しいよ……。
 すぐにも…イッちゃいそう…だよ。
107 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月18日(土)14時59分33秒
 耳は…ダメなの。
 ちょっと触られただけで、イッちゃう。
 ただ機械的に、体がそういう反応を示す。
 何の喜びも無しに……。
 苦しくて…怖くて……切ない。
 凍えたように手足が強ばる。

 過去の情景がパ〜ッと浮かんでくる。
 最初は面白がって何度も求めてくるのに、次第に飽きて白けた顔になる。
 それが怖いから、あれこれ手を替え品を替え、一生懸命に尽くしても、結局はそれ
まで。
 行き着く先は、別れ。

 明日香ちゃんは違うっ!
 明日香ちゃんだけは違うって、そう信じてる。
 …信じてた…のに。
 でも、やっぱり怖いの。
 飽きられちゃうんじゃないか、離れて行っちゃうんじゃないかって。
 今までの誰よりも大切な明日香ちゃんだから……。
108 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月18日(土)15時01分50秒
 明日香ちゃんの柔らかな指が、耳の縁を辿って、ス〜ッて顎のラインをなぞる。
 たったそれだけで、背筋を戦慄が走って、私を急き立てる。
「…はっ…うぅ…ぃゃ…ふぅっ…!…」
 強ばった体も口も、全く言うことを聞いてくれないの。
 ただ、冷たい涙ばかりが流れ出て……。

「…梨華ちゃん…綺麗……」
 吐息と一緒に聞こえてきた言葉に、ハッとして明日香ちゃんを見返す。
 涙に揺れるその向こうに、優しい視線で私を包む明日香ちゃんがいた。
 明日香ちゃんの目も、涙で潤んでて……。
「ごめんね…でも、すごく…すごく綺麗で…私、我慢できなくて……」
 また涙溢れた。
 今度の涙は温かい。
109 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月18日(土)15時02分50秒
 言葉だけじゃなくて雰囲気全体が、凍えた体と心を温めてくれた。
 面白がった顔じゃなく、白けた顔でもない。
 ちょっと切なげだけど、私のことを大切に求めてくれていた。
 私を真っ直ぐに見つめてくれていた。

 動くようになった腕で、思い切り明日香ちゃんを抱き締めた。
 ギュッて抱き締めた。
 涙の流れを追うように、明日香ちゃんの唇が目元から頬を伝って、最後に耳にキス
をしてくれた。
 私は…私は、それで熔けちゃった。
110 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月20日(月)14時59分30秒
 綺麗……本当に綺麗だった。
 私の指の動き一つ一つに反応して悶える梨華ちゃんが……。
 だから、自分の指が梨華ちゃんの耳へと伸びていくのを、止めることが出来なかっ
た。
 そこだけは禁断の場所だと知っていながら。

 いつもの私が頭の片隅で、
「駄目っ! 梨華ちゃんを裏切ることになっちゃう!」
 そう叫んでた。
 でも、指の動きを一ミリも止めることは出来なかった。
 今の私は、奥底の方から這い出てきた何かに、完全に支配されていた。
 梨華ちゃんの体が強ばっていくのに気がついていても、それでも指の動きは止め
られない。
111 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月20日(月)15時00分14秒
 ビクビクと震える手足が、ポッと紅潮する肌が、悩ましく揺れる腰が、流れる涙
が、それから……。
「…ぃゃ…はぁん……」
 耳をくすぐる喘ぎ声が、梨華ちゃんの全てが綺麗で……私の奥底から這い出る何
かに、強く強く呼びかけてるから、だから我慢できなく

て……。

「…ごめんね、梨華ちゃん…でも…すごく綺麗だから……」
 全てが欲しかった。
 この表情を見ても良いのは、私だけ。
 この声を聞いても良いのも、私だけ。
 他の誰も知らない梨華ちゃん。
 私だけの梨華ちゃん。
112 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月20日(月)15時01分06秒
 なのに梨華ちゃんを苦しめてる。
 切ない表情が私を傷つけて、涙が滲み出てくる。
 自分でやってることなのに、ホント変だよね。おかしいよね。
 悔しくて、もっと涙が溢れてくる。

 その私の涙に梨華ちゃんが気づいて、何故か、ほわっと柔らかい表情になった。
 許してくれるの?
 まだ信じてくれるの?
 私は許しを求めるように、梨華ちゃんの涙を追って唇を滑らせて耳元へキス。
 心の問いに答えは無かったけど、見る見るうちに梨華ちゃんの体の強ばりが取れ
ていった。
 全てを私に預けるように。

 その時、微かに聞こえた気がしたんだ。
「明日香ちゃん…最後まで…」
って。
 ゾクゾクする感覚が背筋を走り回って、頭の中が白い靄でいっぱいになって……
気がついたら、梨華ちゃんを激しく攻めてた。
113 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月20日(月)15時01分56秒
 ダンスで鍛えられた太股から、手を根本の方に戻してくると、そこはもうすっか
り蜜で溢れかえってた。
 一番お腹側で膨らんで、ツンッと自己主張してるその周りを、親指で円を描くよ
うに撫でてあげる。
 そうしながら、人差し指と中指は、花びらを押し分けるように差し込んで、何度
も行ったり来たり。
 まとわりつく蜜が滑らかで、次第に奥へ奥へと誘い込まれる。
 固く尖った乳首ちゃん。
 コロコロと舌先で転がる感触が本当に素敵で、夢中になって転がし続けた。

「はぁっ!…ぁ…あ…ぃやっ…ダメ…あ…す……明日…香ちゃ…ぁんっ!!」
 すぐに限界を迎えた梨華ちゃんは、掠れた声で私の名前を叫んで、激しく腰を突
き上げる。
 意識を失って気絶しちゃったみたい。
 だから声も無く、荒い息だけが聞こえる。
114 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月20日(月)15時11分33秒
 そこでハッと我に返る。
 ジワジワと広がる罪悪感。
 私、とんでもないことをしちゃった……。
 耳元が梨華ちゃんの弱点ってことを知ってて、無理矢理そこを攻めて……無理矢
理イカせちゃったんだ。

 これじゃ…レイプと同じだよね。
 最低だよ……最低の最っ低〜っ!
 情けなくて涙が止まらないよ。
「ごめん…ごめんね…梨華ちゃん、ごめんなさい」
 何度謝ったって、私の罪は決して消えないけど……それでも、他に出来ることは
ないから。
115 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月21日(火)17時34分41秒
 熔けたと同時に、軽くイッちゃった。
 ふわっと宙に浮かんで……でも、もっと高くまで昇っていけそうな予感がした。
 だから、
「明日香ちゃん…最後まで…」
って呟いてた。

 後はもう明日香ちゃんにお任せ。
 本当に、今日の明日香ちゃんは大胆。
 それに情熱的。
 いつもみたいに考え考え、四苦八苦しながら私の体を触ってるのと大違い。
 あっと言う間に、遙か高みにまで押し上げられて、痺れながら昇り詰めちゃった。
116 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月21日(火)17時35分15秒
 今までで一番気持ち良かったって断言できる。
 だって、気絶しちゃうくらいなんて、本当に初めてだもん。
 これまで、上手い人は何人かいた。
 今日の明日香ちゃんよりも。
 でも、そんなの関係ないんだね。
 きっと明日香ちゃんの愛の深さが、今までで一番だったから、今までで一番気持
ちよかったんだね。

 気がついたら明日香ちゃんが覗き込んでた。
 すごい幸せな気分だったから、ニッコリ笑って、
「ありがとう、明日香ちゃん」
って……言おうと思ったのに……。
117 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月21日(火)17時36分03秒
「ごめん…ごめんね…梨華ちゃん、ごめんなさい」
 お礼より先に、逆に謝られちゃった。
 何で?
 しかも、明日香ちゃんが泣いてる!
 どうしたの?!

「私、ひどいこと、しちゃったね…最低だね」
 嗚咽を堪えるように、下唇を噛んでる。
 そんなに強く噛んじゃダメだよ。
 ほら、唇が白くなっちゃってるじゃない。
「どうしたの、明日香ちゃん?…泣いたりしちゃ、イヤだよ」
「だ…だって…私、耳を触ったり…梨華ちゃんに、ひどいこと、しちゃった……」
 なぁ〜んだ、そんなことか…。
 でも、明日香ちゃんはそんなことでも、心の底から悔やんでくれるんだよね。
 本当に、明日香ちゃんって優しいね……。
118 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月21日(火)17時36分33秒
「大丈夫だよ、明日香ちゃん」
「で…でも……」
 泣いてる明日香ちゃんを見られるのは私だけ!なんて、変な優越感を感じたりし
ながら、明日香ちゃんの頭をポフポフと撫でてあげる。
「耳元は感じ過ぎちゃうから苦手だけど、明日香ちゃんなら全然平気だよ」
 明日香ちゃんは、涙に濡れた目で疑いの眼差し。

「…いやっ、ほ…本当だよ? ウソなんてついてないから」
「……本当に? 私を慰めようとして、そんなこと言ってるんでしょ?」 
 そ…そりゃ、慰めのための言葉だけど、でも半分は本当だったもんね。
「本当だよ〜! す…すごい気持ち良かった…あ…」
 勢いに任せて、恥ずかしいこと言っちゃったじゃない、もう!
「明日香ちゃんのH〜!」
 急に顔が熱くなっちゃったよ。
119 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月21日(火)17時38分15秒
「え?…いや、私は何も……」
「明日香ちゃんが、信じてくれないからいけないの!」
「そんな無茶苦茶な……」
「もう、怒ったんだから〜!」
「キャッ!」
 ガバッて感じで押し倒しちゃう♪

「…本当に…気持ち良かったんだからね?」
 チュッて左目の下にキスをする。
「うん…それなら…良かったぁ……」
 明日香ちゃん、くすぐったそうな顔で目をつぶっちゃった。
「同じ位、気持ち良くしてあげる」
 涙でしょっぱい瞼に唇をつけながら、明日香ちゃんの乳首ちゃんに指を絡ませる。
120 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月21日(火)17時41分51秒
「ぁ…嫌っ…」
「嫌って言ってもダメ〜」
 相変わらず元気いっぱいの乳首ちゃんを、コリコリッて苛めてあげる。
「ゃんっ!…で…でも……」
「でもも無し!」 
 もがくように身をよじらせて、白いのどを見せる明日香ちゃんが可愛くて、もっ
ともっとコリコリッてしちゃう。

「さっきの…罰?」
 恨めしそうに私に向けられる目。
 でも目元がもうピンク色に染まってて興奮しちゃってるのバレちゃってるんだよ、
明日香ちゃん?
「それだけじゃなくて……」
「?」
「…今日のお昼、平家さんに抱きついてた」
「あ!…いや、あの…あれは違うの!…ほ…ホントだよ?」
 慌てた顔がまた可愛くて、微笑みそうになるのをグッと我慢して、スネた表情で
もっと慌てさせてみたり……。
 時にはお芝居で困らせちゃうのも大事だね♪

 結局、乳首ちゃんだけじゃなくて、下の方もいっぱい苛めてあげて、キスもいっ
ぱいしてあげて……。
 可愛い明日香ちゃんの姿や声を、いっぱいいっぱい私だけのものにすることが出
来た。
 でも…今日の明日香ちゃんがすごかったのって、やっぱりアレの前だからかな?
「…ふぅ…ゃんっ!…」
 この明日香ちゃんの「ゃんっ!」って声、私、大スキ!
 だから…ちゃんと明日香ちゃんのサイクルをチェックしなきゃね。
 そして次の時も…ウフフ。
121 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月22日(水)14時28分58秒
 その後は、もうねぇ……ホントに、梨華ちゃんの気が済むまで「苛められ」ちゃっ
たよ。
 まぁ、耳を攻めちゃったことも、みっちゃんに抱きついたことも、梨華ちゃんが
本気で怒ってないってことが分かったから、それで良いんだけど。
 何度も何度もイカされて。
 夜が明けて、今、腰が重い…重すぎる……。

 布団の下は真っ裸。
 気が付いたときにはその状態で寝てた。
 ただ隣で寝てたはずの梨華ちゃんの姿が無くて、何だか心細い感じ。
 布団の中を伝うように、梨華ちゃんが寝てただろう場所に手を伸ばすと、まだほ
んのり温かい。
122 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月22日(水)14時30分49秒
 でも…それで良かったのかも。
 手を動かしただけで、布団と触れてる部分がザワザワと泡立つような感覚がした。
 昨晩、昇り詰めた名残。
 燃え尽きずに残った、快感の火種。
 もし梨華ちゃんがまだ隣に寝てたら…燻ってるものに、また火がついちゃいそう
だから……。

 だから、あんまり刺激を受けないように、ジッと動かないでおく。
 部屋の様子がやっと分かる程度の薄暗いベッドルームで一人、ぼんやり天井を見
つめてる。
 でも、昨晩気を失うように疲れて寝ちゃうまで、我慢しきれずに、どれだけHな
喘ぎ声を漏らしたか、とか…どれだけ梨華ちゃんの指を…そのぉ…く…食い締めた
か、とか…。
 頭は徐々に覚醒してくるのに、そんなことばっかり思い出されて、恥ずかしさで
頭に血が上ってきてボ〜ッとしてくる。
 覚醒するごとにボ〜ッとしちゃう、変な循環。
123 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月22日(水)14時31分20秒
「明〜日〜香ちゃん♪」
 ドアが開いて、明るいダイニング・キッチンから光が差し込む。
 その逆光の中で、梨華ちゃんの笑顔が部屋を覗き込んでる。
 眩しいのと、恥ずかしさが蘇ってきたのとの両方で、首をすくめて布団で顔を隠す。

「朝ご飯、出来たよ」
 寝たふり、寝たふり……ごめんね、梨華ちゃん。
 もうちょっと体が落ち着くまで、時間をちょうだい、ね?
「明日香ちゃ〜ん…まだ起きれない?」
 ドアの所から、もう一度、声を掛けてくれたけど、これも無視するしかない。
 そしたら、ため息が聞こえてきて、バタンッてドアが閉まる音が響いた。
124 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月23日(木)01時40分30秒
何か泥沼
125 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年05月23日(木)16時27分44秒
>>124
 泥沼ねぇ。
 う〜ん…確かに二人とも、お互いにズブズブと深みにはまりっ放しですね。
 でも、それも可愛いっ!…とか思いながら書いてるバカ作者です(w
126 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月23日(木)16時28分15秒
 もう…朝ご飯の用意が出来たから、明日香ちゃんを呼びに来たのに……。
 結構、明日香ちゃんもお寝坊さんなんだね。
 ま、そんな明日香ちゃんも可愛いけど♪

 そうそう、可愛いと言えば…明日香ちゃんの寝顔がまた可愛いの。
 隣で寝てて、チラッてその寝顔が見えるだけで幸せな気分に浸れるくらい。
 そうだ!
 明日香ちゃんが起き出すまでにもう一回、寝顔を見せてもらっちゃお。
127 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月23日(木)16時29分17秒
 起きちゃわないようにドアを閉めて、明かりが漏れないようにする。
 抜き足、差し足、忍び足。
 ゆっくりベッドに近づいて、顔に掛かってる布団をそ〜っと持ち上げたら……。

「…エヘヘ……」
「明日香ちゃん?!…起きてたの?」
 気まずそうに、ごまかし笑いを浮かべてる明日香ちゃん。
 目がバッチリ合っちゃった。
「…寝たふりしてたんだね」
 ブ〜ブ〜。
 唇とんがらせて、メッて睨んじゃう。
128 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月23日(木)16時30分13秒
「あ〜…え〜…寝たふりって言うか…ん〜と…何か、身体の調子が良くないからさ……」
 えぇ〜!
 それは一大事じゃないの!!
「調子悪いの? 熱は? だるい? 風邪かな?」
 あたふたしながら、おでこに手を当てて熱を測ったら、明日香ちゃんがその手を
やんわり握ってきた。
「大丈夫……あのさ…あれの、前…だから」

 あ…そうだった。
 昨日も明日香ちゃん、変だったもんね……お陰で私は得しちゃったけど♪
 きっと精神的に、すごくバランスが崩れてるはずなんだよね。
 私だったらこんな時、イライラしちゃって八つ当たりしたりしちゃうのに……。
 明日香ちゃんって、本当に我慢強いんだよね。ア〜ンド優しいの。
 なのに昨日は、あんなになっちゃって……我慢できないくらいHな気分になっ
ちゃったのかな〜?
129 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月23日(木)16時34分27秒
 そんなこと考えてたら、明日香ちゃん、握った私の手をほっぺに当ててた。
「梨華ちゃんの手、冷たいね…気持ちいいよ」
 目をつぶって、そんなことを言う。
 もう! もう! もう!
 そんな風にされちゃったら……襲いたくなるじゃない。
 え〜と……キスくらい…良い、よね?
 ちょっとドキドキしながら、息も止め気味に顔を近づけて……。

 もう少し…ってところで、明日香ちゃん、パチッと目を開けて、
「ご飯、もう出来てるんだよね?」
だって。
「う…うん」
「良かったぁ。もうお腹ペッコペコだよぉ」
 ちょっとダルそうに、ノソノソとベッドから這い出して、キッチンの方へ。
 今日は「食欲第一」な明日香ちゃんなのね。
 …あ〜ぁ。もうちょっとだったのに〜!
 残念だったな〜。
130 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月24日(金)13時20分03秒
 危ない、危ない。
 もう少しで、キスされちゃうところだった。
 今日はね、それは駄目。
 まぁ、いつもでも「駄〜目っ!」とかって言っちゃうんだけど…恥ずかしいから。

 でも、今日は違う理由。
 …我慢できそうに無いから。
 何かねぇ、もう自分の体を持て余し気味。
 昨日よりもっとダルイし、何だかムカムカする。
 そのくせ空腹感も増してきてるし……。
 ヤバイ感じだなぁ。
131 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月24日(金)13時20分44秒
 テーブルの向かい側に座ってる梨華ちゃんは、ちょっと不満そうだけど、取り敢
えず我慢してもらうしかないね。
 白いご飯とお味噌汁を、ゆっくりゆっくりよく噛んで食べて、異常な空腹感を誤
魔化してみたりする。
「あのね、明日香ちゃん…」
「ん?」
 まだご不満らしく、唇を尖らせたまま、上目遣いに私の表情を覗いてる。

「次…いつ会えるかな?」
「…梨華ちゃん、当分はリハーサルで忙しいんでしょ?」
「うん……」
 会えないのは私だって寂しいよ…でも、今の状況だと、体調が戻るまで会わない
方が良いかも。
 私の身が保ちそうにないもんね。
132 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月24日(金)13時21分23秒
「次のオフは…十六日だっけ?」
 今日から一週間後。
 これを逃すと、ず〜っと会えるチャンスはないかも。
 だって、年末年始の特番の収録とか、賞レースもあるし……。
「そう…年内最後のオフ」
 大切な会えるチャンス。
 それなのに、梨華ちゃんは何だか複雑な表情。
 楽しみじゃないの?

「…安倍さんと麻琴ちゃんが明日香ちゃん家に行く日……」
「あ!」
 すっかり忘れてた……。
 そっかぁ…だから梨華ちゃん、あんなに嫌がったのか。
「り…梨華ちゃんも来るよね?」
「うん…」
 そんな目をしないでよ、梨華ちゃん……切ない気持ちが伝染してくるよ…。
133 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月24日(金)13時22分20秒
 しばらく無言が続いて……。
「お泊まり…させてほしい…」
「そんな…」
 すがるような梨華ちゃんの瞳。
 ズルイよ……息が止まりそうで、目が反らせないじゃない。

「明日香ちゃん家に…良いでしょ?」
 考えがまとまるよりも前に、梨華ちゃんの笑顔が目に飛び込んできた。
「ありがとう、明日香ちゃん!」
 簡単に肯いちゃって大丈夫なの?
 とことん梨華ちゃんに弱い自分に、ほとほと困り果てちゃうね…ホントに。
134 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月25日(土)08時43分59秒
まめな更新ご苦労さま。ガンガレ!
135 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月27日(月)17時04分14秒
 明日香ちゃん、目を白黒ながら「うん…」って肯いてくれた。
 きっと本調子じゃなかったから、こんなに簡単に許してくれたんだろうな。
 別にそれを狙った訳じゃないけど…ちょっとは狙ってたかな?…私ってズルイ?

 でも、もしかしたら年内最後になるかもしれないオフに、安倍さんや麻琴ちゃん
を家に呼んじゃうなんて……明日香ちゃんが悪いよね?
 お泊まり位させてもらっても罰は当たらないよ。
136 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月27日(月)17時04分46秒
 それにしても…明日香ちゃん、心配だな〜。
 いつもの頼り甲斐ある明日香ちゃんじゃなかったから。
 だって…十六日だよ?
 明日香ちゃんの誕生日の前の日だよ?
 そのことに、全然気が付いてないんだもん。

 お泊まりしたら、明日香ちゃんがまさに十七歳になる瞬間に立ち会えちゃうって
こと。
 もうねぇ、これはすごいプレゼントを用意して、ドラマティックな演出も考えて、
最高の誕生日にするしかないでしょう!
 …プレゼント。
 星形のおそろのピアスに代わる、二人の愛の証を、絶対プレゼントするの!
137 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月27日(月)17時05分48秒
 …って意気込んでたら。
「石川さん、石川さん!」
「…麻琴ちゃん、何? どうしたの?」
「福田さんの好きな物って何ですか? ご自宅に伺う時、何か持っていこうと思う
んですけど、何にしたら良いか分からなくて」
 う…教える訳には…いかないよ。

「……そういうのは自分で考えることが大事だと思うの」
 麻琴ちゃん、あなたが憎くて意地悪してる訳じゃないのよ?
 え〜と…
「そうですか。そうですね。気持ちが大事ですよね。ありがとうございます」
 うぅ…胸が痛むのは…何故?
 …い…良いのよ!
 明日香ちゃんに関わることなら、私は悪魔にだって魂を売っちゃうんだから!
 …明日香ちゃんに嫌われない程度なら…ね…。
138 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年05月27日(月)17時07分00秒
>>134
 ありがとうございます。
 ガンガリまっす!
139 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月29日(水)17時09分24秒
 梨華ちゃん家から直行で仕事場へ。
 体調の方は、下降の一途。
 ダル〜……。
 こりゃ、確かに今月は辛いことになりそうだ。
 うっとうしいなぁ。

 不本意ながら、仕事の方も集中力が長続きしない。
 グッと我慢して取り組んで、集中力が途切れそうになったら、自分の中で上手く
休憩をとるようにする。
 それでも昼休みまでが長〜く感じられたよ。
 ふぅ……。
 始まったら休みをもらわなきゃダメっぽいね。
140 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月29日(水)17時10分05秒
 やっと昼休みになって、食事をとっていると着メロが鳴る。
 ゲッ…パネルに表示された名前……「吉澤」。
 嫌な予感。

「もしもし?」
『もっしも〜し。相変わらず梨華ちゃんとラブラブしてる訳?』
 いきなりこれだ。
「…あんたねぇ……何か用?」
『別にぃ。あんたが寂しがってるかなぁって思ってさ』
 思わず「誰が!」って怒鳴りそうになって、グッと堪える。
 とにかく、こいつにはごっちんと上手くやってもらって、私達には構わないで欲
しいものだ。
141 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月29日(水)17時10分57秒
「あんたの方こそ、ごっちんと上手くいってるんでしょうね?」
『当ったり前じゃん。そっちと違って、清く正しく美しい関係を、順調に育んでま
すよ』
「あっそぉ…」
『あ…そう言えば今度、安倍さんと小川が家に行くんだって? 小川にまで手を出
さないでよ?』
「出す訳ないでしょっ!!」
 やっぱり怒鳴っちゃって、周りから変な目で見られちゃったじゃん。

『アハハハ…冗談だよ。梨華ちゃんに、ぞっこんだもんね』
 全くこいつは……。
 それにしても「ぞっこん」って、今時言わないでしょ。
『じゃ〜ねぇ』
「ちょっと…」
 ツ〜ツ〜ツ〜……。
 いつも通り、吉澤のヤツは自分勝手だった。
142 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月30日(木)12時45分44秒
 あれから毎日のように、麻琴ちゃんにあれこれ尋ねられる。
「石川さん、石川さん! 福田さん家へのお土産、自分でクッキー焼いて持ってい
こうと決めたんですけど……それで大丈夫でしょうか?」
とか、
「安倍さんから聞いたんですけど、十七日が福田さんの誕生日なんですね。そのプ
レゼントって、また別に用意した方が良いでしょうか?」
とか、
「どんな服を着ていけば良いですかねぇ?」
とか……。

「髪型は……」
「靴は……」
「石川さん、石川さん!……」
 いくら邪険に扱っても、ちゃんと教えてあげなくても、必ず私の所に訊ねに来て、
報告してくる。
143 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月30日(木)12時46分24秒
 あんまりにもしつこいから、ずっと疑問に思ってて聞きそびれてたことを、つい
に尋ねてみることにした。
「…麻琴ちゃん……何で一つ一つ、私に確認しに来るの?」
って。
 実際、安倍さんとかの方が、質問にちゃんと答えてるみたいなのに。

 麻琴ちゃん、何だかモジモジ恥ずかしそう。
「えぇと……」
 何、何?
 言いにくそうにしてるけど……。
「ん? 怒ったりしないから、何でも言ってみて」
144 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年05月30日(木)12時47分52秒
「あのですねぇ…加護ちゃんが…教えてくれたんです…」
「あいぼんが? 何を?」
「…石川さんと福田さんはラブラブだからって…福田さんのことなら、石川さんに
聞くのが一番だって……」
 「ラブラブ」って…あいぼん……。

 でも、私以上に麻琴ちゃんの方が慌ててた。
「いや…別に変な意味じゃないって分かってますよ…そんなイヤらしい関係じゃ…
あ!…ご…ごめんなさい……」
 麻琴ちゃんは真っ赤な顔をして、しどろもどろになっちゃってた。
 まぁ実際、私と明日香ちゃんの関係は、その「変な意味」「イヤらしい関係」に、
該当しちゃう訳だけど……。
 焦りまくって、訳の分からない言葉を並べてる麻琴ちゃんを
「大丈夫、大丈夫」
とか、適当になだめながら、「あいぼんをどうとっちめてやろうか」って、そんな
ことを考えてた。
145 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月31日(金)10時58分56秒
 予想通りに、重〜いそれが始まった。
 仕事中、残り二時間ほど。
 たったそれだけの時間なのに、いつも以上に辛くて、仕事をこなすのが精一杯だっ
た。
 それでも何とかその日はやり遂げて、定時に。
 主任さんに、明日から二日間、休みの許可をもらう。

「だいぶ辛そうだけど…大丈夫?」
「はい。ありがとうございます」
 体調の悪さと、休むことに何だか申し訳ない気持ちで気が重かったけど、気遣っ
てくれてちょっと嬉しくなる。
「言ってくれれば早く帰ってもらっても良かったのに……一人で帰れる?」
「大丈夫です。それじゃ失礼します」
「お疲れさま」
 ホッと気が抜けて、重い足を引きずるようにして帰途につく。
146 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月31日(金)10時59分32秒
 帰りの電車に揺られるだけでも辛い。
 ホント、疲れやすい状態になってる。
 吐き気と頭痛もする。
 そんななかを、やっとの思いで帰宅。
「ただいま」
「お帰り〜」
 いつも通りに明るいお母さんだったけど、私の顔色をチラッと見て、ちょっと心
配そうな表情を見せる。

「…夕食だけは、ちゃんと食べなさいよ」
「うん…」
「用意が出来たら呼ぶから、部屋で横になってなさい」
 素直にお母さんの言葉に従って、部屋へと上がっていく。
147 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年05月31日(金)11時00分10秒
「ふぅ……」
 服を着替える余裕もなくて、そのままバタンッてベッドに倒れ込む。
 そのまま目をつぶると、沈み込むように意識が薄れていく。
 うつらうつら。

 ボヤ〜ッと浮かんでくる光景。
 ステージで歌い、踊る梨華ちゃん達。
 私は……それを後ろから見てる。
 客席に向かって、梨華ちゃん達と同じ視点で立ってた。
 梨華ちゃん達と一緒のライブ……楽しいだろうなぁ。
 そんな幻想も束の間に、意識はもっともっと希薄になって……ただ真っ白な空間
が広がっていった。
148 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月01日(土)20時45分30秒
そんなにツライのか
女の子って大変だね
149 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年06月03日(月)15時47分23秒
>>148
 ホ〜ント、女の子って大変ですね。
 ガンバレ、明日香ちゃん!
150 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月03日(月)15時47分53秒
「こら待ちなさい、あいぼん!」
 全くもう!
 明日香ちゃんとのことは秘密だよって約束してたのに、麻琴ちゃんに話しちゃう
なんてダメじゃない。
 約束はキチンと守らなきゃ。
 ここは、年長者としてそのことをガツ〜ンと厳しく叱っておかないとね。

「わぁ〜! 梨華ちゃんがイジメる〜!」
 なのに、あいぼんは楽しそうに逃げ回ってる。
 こら〜!
 鬼ごっこじゃないんだから。
 もう……。
151 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月03日(月)15時48分27秒
「後藤さ〜ん、助けてくださ〜い!」
 よっすぃ〜と話してたごっちんの背中に回り込む。
 いつもだったら、
「ん〜? 梨華ちゃん、あいぼん苛めちゃダメじゃない」
とか、アハハッて笑顔で私のこと、からかってくるのに……。
 あいぼんも、そのつもりだったはず。

「うるさいなぁ…あっちに行ってて……」
 ……初めて見た。ごっちんの機嫌が悪い顔。
 話し相手のよっすぃ〜は、困った顔。
 周りのみんなもビックリした顔で、シ〜ンて静まりかえっちゃった。
152 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月03日(月)15時49分04秒
 一番ビックリしたのは、あいぼんだね。
 こっちも珍しい表情を見せてる。
 ごっちんの顔を見つめて立ちつくして……オドオドしちゃって、どうしていいか
分かんないって表情。
 加入以来、久しぶりに見たよ……。

 あの時、とにかく先輩達がどんな人達か分からなくて、怖くって……。
 あいぼんも、ツ〜ジ〜も、よっすぃ〜も…多分、私も……いつもそんな表情をし
てた。
 そのことが思い出されて、私までキュ〜ッて切なくなる。
 あいぼんを抱き締めてあげたくなっちゃった。
153 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月03日(月)15時49分42秒
「…加護!」
 おいで、おいでをしてるのは保田さん。
 あいぼん、パッと笑顔になって、逃げるように保田さんの所に駆けていく。
 それを合図のように、凍ったような雰囲気も溶けちゃった。
 ごっちんは部屋の外へ。
 よっすぃ〜も追いかけて出て行っちゃった。

「おばちゃ〜ん! 梨華ちゃんがイジメるんや〜」
「こら〜! おばちゃんじゃないっ!」
 保田さんに、掌でパチンッて頭を軽く叩かれたのに、あいぼんはニヘッて笑って
抱きついてる。
 何だかほのぼのしてて良いな〜……じゃなくて!
「あいぼん! 私の話をちゃんと聞きなさ〜い!!」
154 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月05日(水)11時45分50秒
 私は真っ白な空間だった。
 「我」が希薄で、その分、広大な空間そのものだった。
 暑くも寒くも、丸くも四角くもなく、ただ、そこに存在していた。
 全てを包み込むような空虚さ。
 だからこそ、穏やかで平和だった。

 ♪〜。
 どこからか音が……私自身を震わせて、次へ次へと伝わっていく。
 拡散した「我」が、メロディに反応して収束していった。
 確固とした福田明日香に戻ると、途端に頭痛や嘔吐感が蘇って、気分が悪くなる。
 そんな私を、着メロが呼んでいた。
155 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月05日(水)11時46分46秒
「もしもしぃ?」
『あ、福田さ〜ん! 加護で〜す。助けてくださ〜い!』
 不穏な言葉に似つかわしくない、明るい声。
 その声を聞いたら、気分が少し良くなったみたい。
「加護ちゃん?」
『そうですぅ。梨華ちゃんが、うちをイジメるんや〜』
 遠くから追いかけるように、
『明日香ちゃ〜ん、そんなのウソだからね〜』
っていう梨華ちゃんの声。
 …二人で何してるんだか。
 急に脱力しちゃって「はぁ…」とか、気の抜けた声を出しちゃう。

『もしもし、福田さん? 聞いてます?』
 ドアを叩くようなドンドンドンッて音。
 加護ちゃんの声が微妙にエコーが掛かってる。
 トイレに逃げ込んだのかな?
「聞いてますよ」
『福田さんと梨華ちゃんは、ちゃんとラブラブでいてくれないと困るんですよぉ』
 ちょっとぉ…加護ちゃんが追いかけられてるのと、私たちのラブラブと、どんな
関係があるっていうの?
156 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月05日(水)11時47分18秒
『福田さんが構ってあげないから、梨華ちゃん、ヒステリー気味なんです』
『こら〜! あいぼん、変なこと言わないの!!』
 ドンドンドンッ!
『ね? 今、梨華ちゃんは福田さん不足でヒステリー中なんです。今も加護に焼き
餅やいてるんです。だから仲良くしてあげてくださいね』
『もう、何言ってるの! あいぼんが麻琴ちゃんに変なこと言うから怒ってるんで
しょ!!』
 ドンドンドンッ!
 なるほどね……。

「加護ちゃん、梨華ちゃんと代われる?」
『え〜と……』
 ドンドンドンッ!
『…無理っぽいです』
「そっかぁ…じゃ、私の方から梨華ちゃんに電話してみるよ」
『お願いしま〜す』
 梨華ちゃんが怒る位だから、きっと加護ちゃんが何か悪戯をしたんだろうけど、
助けてあげますか。
 相変わらず加護ちゃんは、やんちゃやってるねぇ。
 でも、何か憎めないんだよ。
 梨華ちゃんに電話を掛けながら、二人が追いかけっこしている光景を思い浮かべ
てたら、「ふふふっ」て、勝手に笑みがこぼれた。
157 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月05日(水)13時20分03秒
ごっちん初登場!
でもどうしたのごっちん
158 名前:名無しさん。。。 投稿日:2002年06月05日(水)22時11分20秒
吉澤も不気味な電話だった
どうなるんだろ?
159 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年06月06日(木)13時43分31秒
>>157
 ごっちんの不機嫌の原因が、またもや、あすりかの二人に苦難となって立ちはだ
かることに…なるはずです。

>>158
 当然、よっすぃ〜も深〜く関係してきます。
 あすりかを苛める悪い作者ですね(藁
160 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月06日(木)13時44分01秒
「こら〜! あいぼん、出てきなさ〜い!!」
 ドンドンドンッ!
 さっきまで、保田さんの周りをグルグル逃げてたあいぼんを、ようやくトイレの
個室に追い込んだんだけど……。
「福田さ〜ん! 助けてくださ〜い!」
 明日香ちゃんに電話するなんて、ズル〜イ!
 ドンドンドンッ!

 ♪〜〜。
 あれ? 今度は私の電話……。
「もしもしぃ?」
『明日香ちゃん?!』
 あいぼんと電話してたんじゃないの?
 !!そっか。
 やっぱり、明日香ちゃんは私とお話してる方が楽しいんだよね。
 うん、そうだね。決まりっ!

『梨華ちゃん、加護ちゃんが何したか知らないけどさぁ…もう許してあげなよぉ』
 ガ〜ン…明日香ちゃん、あいぼんに丸め込まれてる……。
「え〜…明日香ちゃん、加護ちゃんに甘すぎ〜」
 やっぱりズル〜イ! 贔屓だ〜!!
 別に焼き餅とかじゃ…ないよ。
161 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月06日(木)13時44分40秒
「だって、あいぼんが悪いんだよ?」
 秘密って約束してたのに、ペラペラしゃべっちゃったんだから。
『分かってるよ、梨華ちゃん』
 …ズルイ。
 そんな優しい声で言われたら、私……。
『梨華ちゃんが理由も無しに怒ったりしないってことは、私が一番知ってるから』
 明日香ちゃ〜ん……。

『だからさぁ…加護ちゃんが何をしたのか、私にも教えてよ』
 ちょっと恥ずかしくなっちゃった。
「……もう良いの。明日香ちゃんに免じて、あいぼんのこと許してあげることにす
る」
 だって、冷静になって考えてみれば、麻琴ちゃんにバレちゃった訳じゃないし。
 ここまで大騒ぎにしちゃって、明日香ちゃんに話したりしたら、私のこと、怒り
ん坊だって思われちゃうかもしれないし……。
『ホント? やっぱり、梨華ちゃんって優しいね』
 エヘヘ〜……明日香ちゃんに誉めてもらっちゃった。
162 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月06日(木)13時45分12秒
「やったぁ!」
 バタンッてドアが開いて、話を聞いてたらしいあいぼんが、ニコニコ顔で出てくる。
 あれ? 何か…誤魔化されてるような気がするよ。
 あれれ?
「梨華ちゃん、もうまこっちゃんに変なこと言わへんから。ごめんな?」
「ううん。反省してるなら良いよ。許してあげる」
「ありがとう! 福田さんによろしく〜」
 スタコラサッサ。
 あっと言う間に行っちゃった。

『もしもしぃ? 梨華ちゃ〜ん。お〜い』
 いっけない。明日香ちゃんを放っておいちゃった。
「ごめんなさい。急に、あいぼんが出てきたから…」
『加護ちゃん、許してあげた?』
「うん」
 明日香ちゃんに逆らうことなんて、私に出来っこないの。
『良かった…梨華ちゃんは、怒ってる時より、笑ってる時の方が可愛いもんね』
163 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月06日(木)14時21分23秒
 も〜…明日香ちゃんったら……優しいから、スキ。
「…スキ」
 あ…また思ったことが、そのまま言葉になっちゃった。
『!!…もう…梨華ちゃん…バ〜カ』
「バカじゃないもん!……ホントに…スキ」
『梨華ちゃん……』
 何故だろう?
 急に思いが込み上げて来ちゃった。

「明日香ちゃんは?」
 聞きたいよ。明日香ちゃんの思いも。
『……私も……』
 一瞬の躊躇い。
 電話の向こうで、気恥ずかしげな咳払いが聞こえる。
『…好き…だよ』
「明日香ちゃん、愛してる!」
 思わず叫んじゃった。
 入り口の方から、何か物音が聞こえたような気がしたけど、その時は全然気にな
らなかった。
164 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月07日(金)11時35分51秒
 机の中から、例の星形ピアスを取り出す。
 眺めてると、梨華ちゃんの顔が浮かんできて、いろいろ考えちゃう。
 また言わされちゃった…「好き」って。
 未だに苦手なんだよね。
 苦手なんだけど…今、胸にあふれてくるこの思いは、何だろう?
 切ないような、温かいような、満たされるような……。
 梨華ちゃんに「好き」って伝えること、本当は私も嬉しいのかな?

 「好き」って伝える時、いつも梨華ちゃんは本当に幸せそうで、それを見て、私
も嬉しくなってるんだって思ってた。
 でも、ちょっと違うみたい。
 もちろん、それもあるんだけど、「好き」って言うこと自体が私の心を揺さぶるっ
て感じ。
 思いを言葉にする度に、胸の中が激しく揺れて…その揺れで自分の思いの強さを
実感する。
 その思いがまた言葉になって……。
165 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月07日(金)11時36分36秒
 どっちが先か後か。表か裏か。
 メビウスの輪のように、梨華ちゃんへの愛情と「好き」っていう言葉が、どこか
らが表でどこからが裏なのか、境目が分からない連続状態でつながってるんだね。
 ピアスを机の上に置いて、ベッドに寝転がる。

 きっと本当は私も、「好き」って、たくさん言いたいのかもしれない。
 自分の思いを確かめるために。
 でも…やっぱり恥ずかしいんだよぉ!
 ベッドの上で、泳ぐようにジタバタ恥ずかしがってたら…。
 コンコンッ!
「明日香、ご飯よ…って、あんた一人で何してんの?」
 お母さんがドアの所に、目を丸くして立ってた。
166 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月07日(金)11時38分52秒
 あぅ…余計に恥ずかしいとこ、見られちゃったよぉ!
「…すぐ行く……」
「それだけ元気なら、大丈夫そうね」
 肩をすくめて、さっさと降りて行っちゃった。
 残された私は……どんどん恥ずかしさが込み上げてくる。

 どんな顔して降りていけば良いんだろう?
 そろっと立ち上がって覗いた鏡の中で、真っ赤な顔した私が立ちすくんでた。
「はぁ〜あ」
 ため息一つ。
 灯りを消してドアから出ようとして、部屋を振り返ったら、机の上で星形のピアス
がキラッ。
 その光の中で、「くすくすくすっ」て、梨華ちゃんがウサギのように笑ってた。
167 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月08日(土)15時43分27秒
『…好き…だよ』
 明日香ちゃんの言葉で、胸がいっぱいになっちゃったから、遠回りして屋上に上
がる。
 いっぱい、いっぱい空気を吸わないと、「好きだよ」で窒息しちゃいそうだった
から。
 明日香ちゃんは、本当に優しい人だから、誰に対しても優しい人だから、だから
……時々、心配になっちゃうの。
 私が明日香ちゃんの一番なのかな?って。
 なかなか言葉に出して言ってくれないし。
 不安になっちゃうよ。

 お話してるうちに分かってきたけど、明日香ちゃんって本当は結構「平気な人」
だよね。
 厳しいことでも、ズバッと言ってくれる。
 嫌がられるかなってことでも、平気で言う。
 でも、それは大切なことだったり、アドバイスだったり、本音の言葉だったりする。
168 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月08日(土)15時44分30秒
 私の前ではあんまり無いけど、Hな話だって平気みたい。保田さんが言ってた。
 キワドイ言葉でも、平気でポンポンポンッて口にしちゃう。
 それで周りがビックリしても、ケロッて平気な顔なの。
 自分が当事者でなければ……ね。
 私の前では恥ずかしがって、いつも真っ赤な顔になっちゃうの。

 だから、一番大事な言葉がなかなか聞けない。
「好きだよ」
 もっとたくさん言ってほしいのに……。
 今、私は明日香ちゃんの「好きだよ」でいっぱい。
 この幸せをいつも感じていたい。
 階段を一段一段、明日香ちゃんの大好きなお空が見える屋上へと上っていった。
169 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月08日(土)15時45分18秒
 屋上に出るドアに手を掛けて……。
 ガチャッ。
「キャッ!」
 飛び出してきた人影とぶつかって、その場にへたり込んじゃう。
「…ごめん」
 見上げたら、飛び出してきたのはごっちんで……暗い顔で私に一言謝って、すご
い勢いで降りて行っちゃった。

「ごっちん!」
 よっすぃ〜が出てきた時には、もうごっちんの姿は見えなくなってた。
「ちぇっ…」
 寂しそうな、怒ったような顔。
 うずくまってる私に気づいた時、最近見ることのなかった表情のよっすぃ〜がいた。
 あの時の…私を襲った時の表情……ゾッとして縮み上がっちゃった。
 私の様子に我に返ったみたいに、ス〜ッて表情を消して、よっすぃ〜はトボトボ
降りて行った。
 何? 何なの〜?
 ポツンと一人になっちゃった私の耳に、よっすぃ〜の漏らした深いため息だけが
残ってた。
170 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月10日(月)10時13分10秒
「この子、部屋で何か泳いでたのよ」
「違〜う!」
「泳いでたじゃない。ベッドの上で」
とか、お母さんにからかわれながらの食事を速攻で切り上げて、逃げ込むようにお
風呂へ。
 生理中はシャワーで済ませるって人も結構いるみたいだけど、私の場合は生理中
だからこそお湯に浸かりたい。
 少しぬるいお湯で長時間、半身浴をすると鈍痛が和らぐんだ。
 …ある意味、今度は本当にバスタブの中で泳ぐ訳だね。

「ぷぅ〜…」
 バシャッと顔や肩にお湯をかけて、湯気で煙った天井を見上げる。
 いろんな雑念が、浮かんでは消え、消えては浮かび……。
 その合間合間に、
「好き…だよ」
 梨華ちゃんへの言葉が思い出されて、思わずニヤついちゃうんだ。
 腰とか頭の痛みは引いてるけど、何だかこめかみの血管がトクトクトクッて鳴っ
てる。
 生理中って血圧が高くなるのかな?
 それとも私、想像だけで興奮しちゃってるのかな?
 ぼ〜んやり、そんなことを考えながら、心ゆくまで入浴を楽しんだ。
171 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月10日(月)10時14分30秒
 お風呂から上がると、後はもう寝るだけ。
 ダル〜イ体を、とにかく休ませないと。
 早々にベッドに潜り込んで、さて寝ようとして……。

 ♪〜……。
 う…また携帯が私を呼んでる。
 電源切っておけば良かったかなぁ。
 でも、梨華ちゃんからだったら、声が聞きたいし……。
 そう思ってモゾモゾとベッドから這い出る。
 液晶パネルを見ると……「吉澤」。
 この間の電話も特に内容が無かったし、放っておこうかと一瞬思ったけど、切れ
る様子が無いから諦めて出ることにする。
172 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月10日(月)10時15分09秒
「もしもしぃ?」
『…待たせすぎ。早く出なよ』
 うわっ…今日はまた、暗〜い声だね。
「どうしたの? この間は脳天気に明るかったのに」
 言いながら、こりゃ、ごっちんと何かあったなって、すぐに分かった。

『あのさぁ…ちょっと顔貸してくれない?』
 まるで体育館の裏に呼び出すみたいな言い方。
「…まさか、今からとか言わないでしょうね?」
『あんたが良いなら今からでも』
 こりゃ、相当深刻そうだね。
 でも、流石に今日は体が保ちそうにない。
「ごめん。今日は体調が悪いから……明後日とか、どう?」
 明後日までには治まってくれるだろうし。
173 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月10日(月)10時16分41秒
 頭の隅で、「このお人好しが!」って声が聞こえるけど、それは無視。
『明後日……じゃ、仕事が終わったら連絡するから』
「はいはい」
 今、どんな話か聞いたって、どうせ答えてくれないんでしょ?
『とにかく明後日。じゃ』
「『じゃ』って…もしもしぃ?」
 いつものように一方的に電話を切るし……。

 何だかなぁ。
 ちょっと私達の前途に暗雲が立ち込めてきたみたいだね。
 全く…加護ちゃんの言葉じゃないけど、
「ごっちんと吉澤は、ちゃんとラブラブでいてくれないと困るん」だよね。
 気が滅入りそうだよ。
 自然と指が動いて、梨華ちゃんの番号を呼び出す。
「梨華ちゃん、何か知ってるかなぁ?」
 独り言なんて呟いてみたり。
 ホントは、ただ梨華ちゃんの声が聞きたいだけなんだけどね。
174 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月11日(火)00時06分07秒
海板でだらだら続いてるアレ
何とかならんか?
ほとんどレスもつかないし
読んでるやつなんているのか?
よく続けられるな
ある意味異常だ
175 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月11日(火)00時43分48秒
レスつけないのって、
話をつなげてほしいからじゃないの?
そういう発言は適当じゃないと思う。
少なくとも私は読んでる。
スレ汚しスマソ
176 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月11日(火)05時10分08秒
私も読んでまーす♪
「好き」って言葉にあれこれ考えるとこ、
ドキドキしました。
177 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月11日(火)09時32分30秒
すごい更新が待ち遠しいスレの一つです。
178 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年06月11日(火)11時58分34秒
>>174
 あぅ……だらだら…異常って……この作品のことですか。
 好きで書いてて、続けるのって変ですかねぇ?
 何か邪魔なんでしょうか?
 読んでくださってる方はいると思ってますし……。
 ま、見逃してくださいな。
>>175
 読んでいただいてありがとうございます。
 いろんなご意見の方もおられるってことが分かりましたし、ま、チャミ銀は出来
ることを続けていこうと思ってます。
>>176
 わ〜い、カンナナさんだぁ!
 「好き」について、チャミ銀も書きながらドキドキ(藁
 あ、こういうとこは「異常」かも。
>>177
 ありがとうございます。
 頑張りまっす!
179 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月11日(火)11時59分11秒
 あの後、屋上から空を見て深呼吸して……何か…悲しい気分で明日香ちゃんを思
い浮かべちゃった。
 もう……ごっちんとよっすぃ〜のことが気になっちゃって、幸せ気分はどこかに
行っちゃったよ。
 折角、明日香ちゃんの「好き」で胸いっぱいだったのに……。

 トボトボッて感じで控え室に戻ったら、暗〜い雰囲気が充満。
 ごっちんとよっすぃ〜も帰ってきてたけど、話し掛けられるような様子じゃなかった。
 ドヨ〜ンとした空気が、ごっちんを中心に立ち込めてた。
 こんなごっちん、初めてだよ。
 よっすぃ〜も何も言わずに、ごっちんの横に座ってて、ごっちんはそれを知らん
ぷりしてるの。
 どうしちゃったの〜?!
180 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月11日(火)11時59分41秒
 時々、飯田さんとか保田さんが声を掛けるんだけど、ごっちんは素っ気ないし、
よっすぃ〜も曖昧な返事しかしないし……。
 重苦しい雰囲気を引きずったまま、リハーサルは淡々と過ぎていく。
「…お疲れさまでした〜」
「お、石川、お疲れ〜」
 やっと今日のリハーサルが終わって、逃げるように家路につく。
 歩きながら、自然に明日香ちゃんに電話を掛けちゃう。
 明日香ちゃんの声を聞いて、早く落ち着きたかった……のに。

 ツ〜ツ〜ツ〜……。
 何で話中なの〜?
 …誰と話してるんだろう?
 ……あ! 別に明日香ちゃんのことを疑ってるんじゃないけど……。
 益々ドヨ〜ンとしちゃったよ。
 何に対してか分からないけど、とにかくふて腐れ気味で電車に揺られて…家にた
どり着く。
 携帯、もう一回掛けてみようかなぁ…ちょっと恨めしげに電話を見て……ベッド
の上にポ〜ンて置いてシャワーを……。
181 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月11日(火)12時00分18秒
 ♪〜〜…。
 明日香ちゃんからだ!
 携帯に飛びついて、即座に出る。
「明日香ちゃん!」
『…ビックリしたぁ……』
 あれ? ビックリさせちゃった。

「もしも〜し?」
『聞こえてる…って言うか梨華ちゃん、声が大きいよ』
 いっけない。
 興奮しすぎだね。
「ごめんね……」
『別に良いけどね』
 明日香ちゃん、優しいからスキ♪
182 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月11日(火)12時01分13秒
 何をお話ししようかなぁって思ってたら。
『あのさぁ…最近さぁ…ごっちん達、どう?』
「どう?って…」
 さっきまでのドヨ〜ンとした空気を思い出しちゃった。
「何か…上手くいってないみたい」
『…やっぱりね』
 ???明日香ちゃん、何か知ってる?
「何で分かったの?」
『ん? ん〜……』
「明日香ちゃん!」
 あんまり言いたくないって感じだけど、明日香ちゃんには隠し事は似合わないん
だから、私にはちゃんと言わなきゃダメ〜!

『はぁ〜…あのね……さっき、吉澤から電話があったんだぁ……』
 あ…さっきのお話中。
『それで、様子が変だったから…ま、アイツはいっつも変だけどさ』
 最後は冗談っぽく言ってるけど、心配してる気持ちは伝わってくる。
 ちょっと…ムカッ!
 焼き餅じゃない。
 焼き餅じゃないよ。
 ただ……ちょっと…ジェラシー。
183 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月11日(火)18時33分27秒
初めまして 毎日更新楽しみに見てます
レスはしないけど楽しみにしてる私みたいな人けっこういると思うので
これからもがんばってください
明日香好きの私にはたまらんです!
184 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年06月12日(水)09時21分33秒
>>183
 初めまして!
 楽しみにしてくださってるんですか。本当にありがとうございます。
 明日香好き同士、これからもよろしくお願いします。
 チャミ銀も頑張りまっす!
185 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月12日(水)09時22分20秒
「もしもしぃ? 梨華ちゃん、聞いてる?」
 急に黙り込んじゃった梨華ちゃんが心配で呼び掛けてみる。
『…ちゃんと…聞いてるよ〜』
「それなら良いけど」

 何か機嫌が悪いみたい……。
 さっきの吉澤と言い、何か変だよ。
「今日、何かあったの?」
『ごっちんとよっすぃ〜のこと?』
「うん……」
 それと梨華ちゃんの不機嫌の原因も……っていう言葉は心の中にしまっておいて。
186 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月12日(水)09時23分02秒
『…私も分かんないよ。でも…』
「でも?」
『ちょっとだけ見ちゃったんだ…』
 そう言ってから、躊躇いながら、屋上に上がる階段で見たごっちんと吉澤の様子
を教えてくれた。

『すごい怖い目をしてたよ』
 梨華ちゃんの声が震えてた。
 吉澤のその目、私も自分で見たかのように思い描けるよ。
 あの日の、あの目だから……。
187 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月12日(水)09時23分57秒
 状況を聞いたら、明後日、吉澤に会いに行くのが嫌になってきたけど……何とか
してやりたいんだよね。
 結局、みんなが言う通り、私はお人好しなのかもしれない。
「梨華ちゃん…悪いけど、ごっちんとそれとなく話してみてくれない?」
 悩みって、自分の中に閉じこめてると、どんどん、どんどん大きくなっちゃうから。
「梨華ちゃんに話を聞いてもらえれば、ごっちんも楽になると思うから」
 私は吉澤の方を担当するから…梨華ちゃんには秘密だけど。
 余計な心配掛けちゃうもんね。

『…ごっちん、明日香ちゃんに聞いてもらった方が、喜ぶと思うけど?』
 あれ? 梨華ちゃん??
 何でそんなに、つっけんどんな言い方なの?
 私、梨華ちゃんを怒らせるようなことしちゃったのかな?
「梨華ちゃん? 何で怒ってるの?」
 教えてよ。
 どうしたら、梨華ちゃんを笑わせることが出来るのか。
188 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月13日(木)08時51分24秒
吉澤が出てきて、ようやく前の流れに戻ってきましたな。
新しい路線も良いけど、前の続きも気になってたので
期待してます。
189 名前:名無し娘。 投稿日:2002年06月13日(木)09時48分02秒
2人とも人のことはほっといて、2人だけで楽しめばいいのに(w

自分も更新が毎日楽しみだし、IEのHomePageはここの最新記事25になってます。
作者さん、これからもがんばって。
190 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年06月13日(木)10時04分39秒
>>188
 よっすぃ〜&ごっちんもストーリーの大きな柱ですよ。
 期待に応えられるよう、頑張りまっす!
>>189
 ありがとうございます。
 ホームに設定していただいているとは……ちょっとビビリそうです(藁
 プレッシャーに負けないように続けていきたいです。
191 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月13日(木)10時05分20秒
 明日香ちゃん、さっきから、ごっちんとよっすぃ〜の心配ばっかりしてる……。
 私のこと、心配じゃないのかなぁ?
 よっすぃ〜に睨まれた時なんか、すごい怖かったんだよ?……。

 なのに、なのにさ……。
『梨華ちゃん? 何で怒ってるの?』
とか言っちゃって。
 気づいてよ…私のジェラシー。
 いつもは私の考えてること、すぐに分かっちゃうくせに……こういう時だけ鈍感
なんだから。
192 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月13日(木)10時06分03秒
 明日香ちゃんはジェラシー感じたりしないのかな?
 私のことなんか、そんなに気にしてないのかな?
 明日香ちゃんは優しくて、賢くて、とっても良い人なのに…私の心をこんなに乱
して、悪い人だね。
 良い人だから、私のこんな惨めな気持ちなんか、分からないのかな〜?
 もしそうだとしたら……良い人であればあるほど、とっても悪い人だよ。

 だから……。
「明日香ちゃんには教えてあげない」
 意地悪したくなっちゃった。
『梨華ちゃん?! 何で?』
 ビックリして、ちょっと声がひっくり返っちゃってる明日香ちゃん。
193 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月13日(木)10時06分44秒
「…明日、ごっちんとお話ししてみるよ。じゃ〜ね」
『あ…うん…え?! もしもしぃ、梨華ちゃん?…ちょ……』
 プチッ。ツ〜ツ〜ツ〜。
 親指が、明日香ちゃんの声を消しちゃった。
 電源も切っちゃう。

 ベッドでゴロゴロ。
 明日香ちゃん、私のこと心配してくれてるかな?
 きっと今日は、私のことでいっぱいだよね?
 もしかしたら寝られないかも……私のせいだね。
 もっともっと、私のことで心を揺らして。悩んで。
 いっぱい明日香ちゃんを困らせたい。
 私はこんなに悪い子だから、明日香ちゃんも、もうちょっとは悪い子になってほ
しい。
194 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月14日(金)09時21分17秒
 え?…え?!…え〜!!
 電話、切られちゃった。
 梨華ちゃん……あれ?
 どうして?……どうしよう……。

 急いで掛け直してみても。
『…ただ今、電話に出ることが出来ません……』
 ガ〜ン…留守電……。
 怒ってる?
 私、梨華ちゃんを怒らしちゃったの?
195 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月14日(金)09時21分57秒
 どうしよう…どうしよう…どうしよう!!
 落ち着けぇ…落ち着け、私!
 ……やっぱり、どうしよう!
 ただでさえ情緒不安定な状態なのに、落ち着いてなんかいられないよぉ!
 えぇ〜と、えぇ〜と…誰かに相談してみようかな?
 冷静な立場からの意見が欲しい。

 裕ちゃん…は、最近の梨華ちゃんのこと、あんまり知らないだろうし…それに、
この時間だとまた酔っぱらってるかも……。
 圭織…は、話が長くなりそう……。
 なっち…には、あんまり二人の仲のことは言えない……。
 圭ちゃん…だね。圭ちゃんなら大丈夫だよね、うん。
196 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月14日(金)09時22分31秒
『…それで私に電話してきた訳?』
 いつも通りのぶっきらぼう。
「うん…ごめん……」
『まぁ良いけど。で、明日香に心当たりは無いのね?』
 心当たり…何だろう……。
「ごっちんと吉澤のことを話してて…!…もしかして!」
『何? 何か思い出した?』
「梨華ちゃん、吉澤に何かされたとか? ねぇ、圭ちゃん! 仕事中、何か無かった?」
 吉澤のヤツ、梨華ちゃんに手を出そうとしたんじゃ。

『…それは…違うんじゃないかと思うけど……』
「え??…何で?」
 圭ちゃん、やれやれって感じ。
 どうして?
『明日香、本当に全然心当たり無いの?』
 私?
「……梨華ちゃんを傷つけるようなこと、言ったり、したりしてない…と思う……」
 電話の向こうから、私に聞かせるためのため息。
 きっと、ちょっと上を見て、あごのホクロの辺りを指先でかいてるんだろう。
 どうしようか考えてる時のポーズ。
197 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月14日(金)09時23分07秒
『明日香、落ち着いて、もう一回考えてみなよ…石川と自分の立場を入れ替えてみ
てさ』
「立場を入れ替えて?」
 考えてみなよってことは、圭ちゃんは答えを知ってる訳?
『そう。そしたら絶対、石川の心が分かるから……明日香が本当に石川のことが好
きなら…ね』
 本当に好きならって…嫌なプレッシャー掛けないでよぉ…。

『ま、とにかく冷静になってさ。好きなら、石川のこと、一晩中考えたって苦じゃ
ないでしょ? 妄想するつもりでさ』
 妄想って……。
「圭ちゃんのH!」
『私は何もHなことなんて言ってないでしょ。Hなのは明日香』
 ぐぅ…。
『じゃ、分かったらまた電話してよ』
「…うん」
『頑張ってねぇ』
198 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月14日(金)09時24分04秒
 何だか悔しいなぁ…。
 軽くあしらわれたのもそうだけど……梨華ちゃんの気持ち、圭ちゃんに分かって、
私が分からないなんて……悔しいよ。
 絶対に分かってやる!
 梨華ちゃんのこと、一番好きなのは私だから。
 それを証明しないと。

 必死になって考え始めて……でも、やっぱりよく分からなかった。
 何でぇ?…私、本当に梨華ちゃんのこと、好きなのに…違うのかなぁ?
 打ちのめされた感じと、どんどん酷くなる頭痛と腹痛を抱えて、バッタリとベッ
ドに倒れ込む。
 たぶん、熱も出てきたみたい。
 梨華ちゃん……私……。
 グルグル、グルグル世界が回って…だけど、梨華ちゃんのことを考え続けた。
199 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月17日(月)10時25分40秒
 明日香ちゃん、どうしてるかなぁ…。
 朝起きて、最初に考えたことは、やっぱり明日香ちゃんのこと。
 電話を掛けようかと思ったけど、昨晩のことを思い出して我慢した。
 もうちょっと位は、明日香ちゃんに心配かけた方が良い……大丈夫…かなぁ?

 明日香ちゃんって、結構寂しがり屋さんだからね〜。
 それに基本的に真面目だし、昨晩のこと、深刻に考えちゃってるかも…。
 あれこれ考えてるけど、結局本当は、私自身が明日香ちゃんの声を聞きたいだけ。
 なのに、明日香ちゃんのことにすり替えて、やせ我慢してる私って……。
 何のためかよく分からないけど、直感のままにやせ我慢を続けることにする。
200 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月17日(月)10時26分32秒
 明日香ちゃん不足のままで家を出て、リハーサルに。
 控え室に入ったらすぐに、ごっちんを探す。
 明日香ちゃんの言いつけは、ちゃんと守らないとね。
 それに、お話を聞いてあげて、ごっちんが元気になったら、きっと明日香ちゃん
に誉めてもらえるもんね♪

 えぇ〜と…ごっちん、まだ来てないみたい。
 部屋の中には、飯田さんと保田さんが何かうち合わせしてて、それと五期メンバー
が集まってた。
 最近仲良くなった麻琴ちゃんに聞いてみようかな。
「ね〜麻琴ちゃん、ごっちん見なかった?」
「……見てません」
 あれれ?
 何かすごい目で睨まれちゃった……何で?

 いつもだったら明日香ちゃんのことで、うるさい位に話し掛けてくるのに、今日
はプイッて目を反らして部屋を出て行っちゃった。
 どうしちゃったんだろう……とうとう私の態度に怒っちゃったのかなぁ……。
 呆然としちゃうよ。
 取り残されちゃった私を見て、他の五期メンバーの方がワタワタしてる。
 麻琴ちゃんを追いかけようか、私に声を掛けようか、どっちも出来ずに、口をパ
クパクさせてた。
201 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月17日(月)10時27分04秒
 それでも、
「あのぉ…後藤さんなら、屋上の階段を、上ってるのを、見ましたよぉ」
って、焦っててもしゃべり方がのんびりな紺野ちゃんが教えてくれた。
「ありがとう」
 お礼を言って、取り敢えず部屋を出る。

 そしたら、廊下の角を曲がる麻琴ちゃんの横顔が見えた。
 何だかやっぱり怒ってるみたい。
 それにちょっと悲しそう……。
 ごっちんのことと言い、麻琴ちゃんのことと言い、訳が分からないよ〜。
 自然にため息が出てきて、それを引きずりながら、屋上の階段へ向かった。
202 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月18日(火)11時54分25秒
 グルグル、グルグル、梨華ちゃんの顔が私の周りを回ってる。
 ウサギみたいな笑顔、ちょっと拗ねた横顔、ポロポロッて涙を流してる泣き顔…
…いろんな梨華ちゃんが私を見てた。
 楽しい時も、悲しい時も、いつも梨華ちゃんは私を見てくれてた。
 そのこと自体が、何よりも幸せで……。

 ふわふわした幸福感にドップリ浸ってたら、夢の中の梨華ちゃんの視線が、一瞬、
私から反れた。
 不安……。
 どこ見たの?
 誰に笑いかけたの?
 私じゃない誰かに向けられた梨華ちゃんの視線……。
 たった一瞬のことなのに、千々に心が乱れて……目が覚めた。
 悲しみに彩られた目覚め。
203 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月18日(火)11時55分21秒
 そっか……。
 私って馬鹿だなぁ。
 圭ちゃんに呆れられても仕方ないよね。
 鈍感で、孤独に慣れた私でさえ、こんなに不安になるんだから。
 繊細で、寂しがり屋の梨華ちゃんだったら、もっと何倍も不安になってるよね。

 なのに私ったら……。
 ごっちんのことばっかり心配して、梨華ちゃんの心まで気が回らなかった。
 私って本当に馬鹿だよ。
 梨華ちゃんが怒って電話を切っちゃうのも仕方ないよね。
 そのことに気が付いたら、余計に頭とお腹が痛くなってきた。
204 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月18日(火)11時55分55秒
 そう言えば、今何時?
 カーテンの隙間から光が漏れてるから、夜が明けてるのは間違いないけど……
お腹も空かないから、時間の感覚が全くおかしくなっちゃってる。
 身を起こすと頭がフラフラするけど、我慢してキッチンへ下りてみる。

 トントントンッて、キッチンに立ってるお母さんの背中越しに、食事を用意する音。
「…おはよう」
「あら、起きたの?」
 振り向いたお母さんは逆光を背負ってる。
 庖丁をまな板に置いて、近づいて来て私の額に手を当てる。
「熱は無いみたいね」
「うん。ちょっと頭をお腹が痛いけど、平気」
 不思議だけど、お母さんに触れられると、痛みが引いていくような気がする。
205 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月18日(火)11時56分26秒
「何言ってるの。寝込んでたくせに」
 え?!
「朝、起こしに上がったら、寝汗かいて呻いてたんだから」
 …ホントに?
「もうすぐお昼の準備が出来るから、食欲無くてもちゃんと食べなさいよ?」
 もうお昼なの?
 私、十二時間以上も寝てた訳?
 って言うか、それ、ほとんど倒れてたって言わない?

「…うん」
 呆然と答えて、パジャマのまんまでイスに座り込む。
 自分で思ってた以上に酷いって知らされて、何だか余計に体が怠くなったような
気がする。
 病は気からって本当だね。
 いや、私の場合は病じゃないんだけどね。
 半分放心状態で、トントントンッていう音だけが頭に響いてた。
206 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月19日(水)15時29分04秒
 さわさわと髪を風に遊ばれて、ごっちんは屋上にいた。
 でも、フェンスに手を掛けて、うつむくように地上に視線を落としてる。
 もったいないなぁ…まずそう思った。
 晴れ渡って、こんなに空が綺麗なのにって。
 上を向いて、青い空を見ればいいのにね。
 そしたらきっと、心の中も、さわやかな青に染まって、広々とするのにな。

 そのことを私に教えてくれたのは明日香ちゃん。
 空を見るのが大好きっていう明日香ちゃんの影響を受けて、私もいつの間にか空
を見上げるのが好きになった。
 本当は、ちょっと眩しそうに見上げる明日香ちゃんの横顔が可愛かったからなん
だけど……。
207 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月19日(水)15時29分37秒
「ごっちん」
 ドアの所から声を掛けたら、ごっちんはチラッとだけ私を見て、小さくため息を
ついた。
 よっすぃ〜が来てくれるのを待ってるんだってこと、すぐに分かるよ。
 そのため息が、ごっちんにとって私は期待外れだって言われてるみたいで、かな
り気まずかったけど、それでもゆっくりと近づいて行った。

「どうしたの? 元気ないじゃない」
「ん〜……」
 隣に立った私に、いつものニヘッて感じの笑顔を向けてくれる。
 ただ、その目に力がこもってないのが、何だか痛々しい。
「よっすぃ〜と…何かあった?」
「ん?…ん〜……」
 曖昧な返事。
208 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月19日(水)15時37分53秒
 しばらく無言のまま。
 ごっちんは地上を見つめてる。
 私は空を見上げてる。

「……なかなか、先に進めないんだぁ」
 しばらくして、ごっちんがポツンとそう呟いた。
 咄嗟のことで、何のことか分からなかった私に、ごっちんは続けて恥ずかしそう
にポツポツ話してくれた。
「あれから…二人きりの時には…キス、してくれたり…なんだけど……」
 まだキスだけ?!
 あれから、もう半年だよ?
 よっすぃ〜ったら何してるのよ…もう……。
209 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月19日(水)15時38分42秒
 呆れたような私の視線に気づいて、ごっちんは慌ててよっすぃ〜をかばい始めた。
「ち…違うよ? ちゃんとお泊まりとかもしてくれるし……抱いて…くれたりも……」
 だんだん声が小さくなって、顔が真っ赤になって。
 今更、恥ずかしがらなくても良いと思うけど。

「じゃ〜、別に良いんじゃない?」
「ん〜……抱いてくれるって言っても…本当に抱き締めて一緒に寝てくれる…だけ
…それでも嬉しいんだけど……」
 はぁ?
 全くもう…よっすぃ〜も、ちゃんと分かってくれたと思ってたのに……。
 ごっちんが可哀想じゃないの。
 真っ赤な顔でうつむいてるごっちんを見ながら、心の中でよっすぃ〜を叱りつけ
てた。
 面と向かっては出来ないから……。
210 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月20日(木)11時41分52秒
 お母さんの作ってくれた、卵でとじたおかゆをすするようにして、やっと食べる。
 このおかゆ、普段でも大好きなんだけど、食欲がない今日みたいな日には、最高
に有り難い。
「ご馳走様」
「はいはい」

 いつもと違って心からの「ご馳走様」にも、お母さんは変わらずに軽い返事。
 でも、それが逆に安心につながるから不思議だよね。
 食べ終わって、リビングでテレビでも見ながらゴロゴロしようと思ったんだけど、
日ごろ見ないような番組ばかりで、全然面白くない。
 ま、頭痛と腹痛のダブルパンチで、集中出来ないからだろうけど……。
211 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月20日(木)11時43分14秒
 こういう時こそ、お湯にゆったり浸かりたいよね。
 リビングを出たら、出掛ける用意万端のお母さん。
「ちょっと出てくるから。鍵、締めといて良い?」
「うん。そうして」

  お母さん、チラッとパジャマ姿の私を見て、
「…お風呂?」
「勝手にお湯張るから大丈夫」
「それは良いけど…あんたも『一応』女の子なんだから、ちゃんと窓閉まってるか
とか、確認するのよ?」
 ちょっとお母さん! 「一応」って強調しなくても良いじゃない。
「……分かった」
 言いたいことはあるけど、言い返す気力が湧いてこないよ。
 あ〜ぁ……。
「じゃ、行って来ます」
「行ってらっしゃ〜い」
212 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月20日(木)11時43分53秒
 ザ〜ッと湯船にお湯を張りながら、ゴシゴシと体を洗う。
 寝汗で気持ち悪かったのが、スッキリする。
 でも、体のだるさは一向に消えてくれない。
「全くもう…」
 …毎月のことで慣れてるとは言え、本っ当に鬱陶しい!
 始まる前は、食欲は止まらなかったり、胸が張っちゃったり、ちょっとしたこと
ですべての欲求が溢れてきて……。
 始まったら今度は逆に、頭痛に腹痛、何もやる気が起きてこない。
 ホント、極端だよねぇ。

 そう言えば……ちょっと胸に手を当ててみたり。
「…縮んじゃった…かな?……」
 少なくともググッと張ってきてる感じはしない。
 何か…ちょっと…もったいない気がするよね。
213 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月20日(木)11時44分40秒
 別に巨乳に憧れてる訳じゃないけどさぁ…梨華ちゃんの胸が頭に浮かんじゃった。
 私だって、小さくはないんだよ。
 どっちかって言うと大きい方…だよね。
 だけど……。
 綺麗なピンクに色づいた、形の良い梨華ちゃんのおっぱい。
 ちょっと羨ましい……。

 ブンブンブンッて頭を振って……。
「痛ててて…」
 あぅ…頭がズキズキするよ。
 妄想して一人で顔を赤くしてる場合じゃないよ。全く……。
 シャワーで体と雑念を洗い流して、ザブンと湯船に浸かった。
214 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月25日(火)09時54分19秒
 でも、よっすぃ〜は、それで平気なのかな?
 よっすぃ〜が、ごっちんのことを本気でスキなのは間違いないと思う。
 なのに、いつまでもキスまでで満足してるなんて……。
 おかしいよ、よっすぃ〜。
 それとも……私の方がおかしいのかな?

 お互いにスキだって分かってて、キスまでしてて、なのにそれ以上進展しないな
んて…私なら我慢できないよ。
 私だったら「明日香ちゃんのこと、こんなにスキなんだ!」って行動で示したい
し、明日香ちゃんにもそうしてほしい。
 これって変なのかな?
 そうなのかな?
 最初、明日香ちゃんにもすごく嫌がられたし……。
215 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月25日(火)09時55分16秒
 私が難しい顔してたから、それを見てたごっちんは、もっともっと不安そうな表
情になってた。
「ご…ごっちんから、よっすぃ〜には何て言ったの?」
 慌ててそう言ったら、ごっちん、益々真っ赤になっちゃった。
「…一緒にベッドに入ってる時に『寂しいよぉ』って……」
 あ…え〜と…具体的な「おねだり」の言葉じゃなくて……。
 私まで恥ずかしくなって、二人で真っ赤な顔になっちゃった。

「そ…そうじゃなくってさ…二人で今後どうしたい…とか、話し合ったりしない?」
 明日香ちゃんも、こういうことは、二人できちんと話し合うことが大切だって言っ
てるしね。
「あぁ…うん。よっすぃ〜が『ずっと仲良しでいようね』って言って…だから『もっ
と仲良くしたいよぉ』って言ってみたの…」
 おぉ! 良いじゃん、良いじゃん。
「そしたら、よっすぃ〜は?」
「よっすぃ〜はぁ…『今までだってじっくり大切にやってきたんだから、焦る必要
はないよね』って」
216 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月25日(火)09時55分48秒
 ……よっすぃ〜、それ、ダメ過ぎ。
 ごっちんも、
「悲しくなっちゃった…」
ってため息。
 そりゃそうだよね。
 折角、ごっちんが思い切ってお願いしたのに、その答えじゃ納得出来ないよ。

 よっすぃ〜が、ごっちんのこと、大切に大切に思ってることは伝わるよ。
 でもさぁ、スキになったら、もっと仲良くしたい、より親密になりたいって思う
のが普通でしょ?
 ごっちんはそれを求めてる訳で、なのに「焦る必要はない」って……。
217 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月25日(火)09時56分28秒
「…よっすぃ〜…そういうのキライなのかな?」
って、ごっちん。
 そんなことは絶対にないよ。うん。
 だって、明日香ちゃんを毒牙にかけようとしたよっすぃ〜なんだから。
 私だって……。

 でも、そんなこと、ごっちんには言えないし。
「そんなことないと思うけど……」
って言うのが精一杯。
 あぁもう!
 もどかしくて仕方ないよ。
 明日香ちゃん、どうしてあげたら良いのかな?
 教えてよ……。
218 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年06月25日(火)09時58分03秒
 ちょっと体調崩してまして、更新出来ませんでした。
 今後は、元気に頑張っていきたいなと思ってますです。
219 名前:名無し娘。 投稿日:2002年06月25日(火)11時00分30秒
更新待ってましたよ!がんばってね。
明日香ちゃんの体調不良が作者さんに乗り移ったのかな(w
220 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月25日(火)23時53分09秒
心配してましたよー。
無理しないでくださいね!
221 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年06月26日(水)09時47分44秒
>>219 >>220
 ご心配掛けてすいません。
 もうすっかり元気です。
 元気に更新していきますので、これからもよろしく!
222 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月26日(水)09時48分22秒
 お風呂から上がってスッキリした気分で、部屋に戻って大人しくベッドに入る。
 後は……ただベッドに潜り込んでゴロゴロするだけ。
 まだ午後の陽射しがカーテンから漏れ入るような時間。
 なかなか寝付けない。

 それでも、ウトウトッとして……突然、吉澤の殺気に満ちた視線が私を見てた。
「…愛してるよ……ごっちんのこと……」
 私を睨みながら呟いた吉澤の言葉。
 この言葉を聞いた時、吉澤の思いが悲しすぎて、キリキリと胸が締め付けられる
ように痛んだのを思い出す。
223 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月26日(水)09時49分08秒
 考えてみれば、ごっちんと吉澤は、梨華ちゃんと私の二人の時間の大きな部分を
占めている。
 不思議な関係だよね。
 それもこれも、吉澤一人に振り回されてる気がするよ。

 いい加減、放っておけば良いのは分かってるんだけど……気になっちゃうんだよね。
 もちろん、それは梨華ちゃんのことを気になるっていうのとは、全く別の理由だ
けど……。
 でも、梨華ちゃんはそれに対してジェラシーを感じてる訳で……やっぱり、吉澤
が問題を起こす中心にいるんだよね。
224 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月26日(水)09時49分51秒
 はっきり言って最初は憎らしいと思ってた。
 今でも、少しはそう思う。
 でも、知れば知るほど憎みきれないんだよね。
 あまりに悲し過ぎる存在だと思うから。
 こんなこと、私が思ってるって吉澤が知ったら、きっとものすごく怒るだろうけ
どさ。

 とにかく明日だ。
 吉澤に直接会って話してみない内は、どうしようもない。
 一瞬、ゾクッと寒気が背筋を走る。
 また襲われたらどうしよう……そんなことは無いと思いたいけど……。
「ふぅ〜……」
 息を吐いて、気持ちを落ち着かせる。
 怖い怖いと先取りで思ってても仕方ない。
 頭の中から、ごっちんと吉澤のことを追い出す。
 今は体を休めることに専念しないと。
 戦いに備えて。
 ベッドの中でモゾモゾと体勢を整えて、もう一度眠りについた。
225 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月27日(木)11時31分42秒
 スキなのに、その思いが通じないって悲しいね。
 相手もスキでいてくれるのに、それが信じられないなんて悲しいね。
 言葉だけじゃ頼りなくて…でも、言葉が無くちゃ不安で……。

 私もずっと、そうだった。
 明日香ちゃんと出会うまでは、そうだった。
 ううん。
 本当は、今でもそうなのかも。
226 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月27日(木)11時32分20秒
 でもね、今はとっても楽しいの。
 だって、明日香ちゃんは私の思いに応えてくれるから。
 応えてくれようとするから。

 私の思いが全部、明日香ちゃんに届いてるかどうかは分からない。
 私も、明日香ちゃんの思い全部を、ちゃんと受け止められてるかどうかは分から
ない。
 でも明日香ちゃんは、それを受け止めようと努力してくれてる。
 何とか、思いを私に届けようとしてくれてる。
 だから…それが嬉しいの。
 それだけで満たされる感じがするの。
227 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月27日(木)11時33分13秒
 ごっちんとよっすぃ〜には、今、それが必要な気がするんだけど……。
 ごっちんは、今以上のものを欲しがってる。
 よっすぃ〜は、今のままで十分幸せだと思ってる。
 ごっちんは、今以上に進めれば、それが幸せだと思ってる。
 よっすぃ〜は、今以上のことは「汚らわしい」と思ってる。

 どうしたら二人共が幸せになれるんだろう?
 私には、何がしてあげられるの?
 思い迷う間、私もごっちんも無言だった。
 私は空を見上げて、ごっちんは地面を見下ろして…。
228 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年06月27日(木)11時33分56秒
「……よっすぃ〜……別にスキな人がいるのかな?」
 ごっちんが気弱に、そんな言葉をこぼした。
「そんなこと…ないよ…」

 そう。そんなことは絶対にない。
 よっすぃ〜はごっちんのこと、心から愛してるはず。
 でも…どうして私の言葉には、説得力がないんだろう?
 悲しげに笑うごっちんに、私はそれ以上のことを入ってあげられなかった。
229 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年06月27日(木)11時39分12秒
>>228
ケアレスミス
> 悲しげに笑うごっちんに、私はそれ以上のことを入ってあげられなかった。

【訂正】
 悲しげに笑うごっちんに、私はそれ以上のことを言ってあげられなかった。
230 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月29日(土)15時52分51秒
 ♪〜…。
 着メロに起こされると、部屋の中は真っ暗。
 ただ携帯電話だけが、色鮮やかに点滅してる。

「…もしもしぃ?」
 のどに引っかかるような自分の声を聞いて、まだ覚醒しきってないことに気づく。
『もしもし、明日香ちゃん? 私』
「梨華ちゃん…」
 ということは、もう仕事が終わるような時間ってことか。
「仕事終わったの? お疲れさま」
『ありがとう…あのさぁ…今日、ごっちんとお話してみたんだけど……』
231 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月29日(土)15時57分19秒
 だんだんと覚めてきて、頭が働き出す。
 そうだよ。梨華ちゃんにお願いしてたんだ。
 でも…あんまり興味があるみたいな態度だと、また怒らせちゃうかも。
「ふぅん…で、どうだった?」
 あ、しまった…ちょっとつっけんどんだったかな?

『…明日香ちゃん、昨日から私に冷たいよ……』
 梨華ちゃん…泣きそうな声しないで。
「ごめん!…そんなつもりなかったんだけど」
 ぶっきらぼうなのは、私の悪いところ…だよねぇ。
232 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年06月29日(土)15時58分11秒
『……ねぇ…私のこと、スキ?』
 いや…だから、私が苦手なの知ってて…梨華ちゃんの逆襲だぁ!
 電話だと顔が見えないから、余計に恥ずかしいんだよね。
「…好きだよ……」
 でも言っちゃうんだよ。
 つくづく梨華ちゃんには弱いよねぇ…。

『…本当?…だったら……』
 あれ? 何だか前にもこんなことがあったような気もするけど……デ・ジャ・ビュ?
『…キス…して?』
 あぁっ! やっぱり前にもあったよぉ。
『……電話だよ?』
 しかも、私も同じこと言ってるし…成長ないなぁ。
233 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月01日(月)10時36分21秒
 前にも同じやり取りしたね。
 もちろん、わざとだよ?
 でも、意味は全然違う。

 前の時は、すっかりネガティブ・モードだったから、他に余裕がなかったんだよ。
 とにかく明日香ちゃんに甘えたかったの。
 今日は確信犯。
 定期的に、明日香ちゃんの愛を確認しないとね。
234 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月01日(月)10時36分56秒
「…キス…して?」
 私の「明日香ちゃんをスキだ!」っていう気持ちと、明日香ちゃんの私をスキっ
ていう気持ち。
 両方をしっかり確かめておきたいから。
『……電話だよ?』
 思いっきり戸惑ってる明日香ちゃん。
「それでもいいの…それでも私には届くから」

 自分の携帯電話の通話口に、チュッて唇をつけて、明日香ちゃんからのキスを待つ。
 きっと明日香ちゃん、真っ赤な顔になってるね。
 可愛い♪
『……チュッ……』
 あ…ちょっと不意打ちのキス。前の時は、もっと躊躇ってたのにね。
 届いたよ、今。
 明日香ちゃんの愛が。
235 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月01日(月)10時38分01秒
 確信犯なズルイ私。
 なのに、今、すごい感動してる。
 涙が出そうだよ。
 胸の奥がキュ〜ッて切なくて、そのくせ、体中がポカポカ温かくて……。

「明日香ちゃ〜ん…」
 甘えた声を出しちゃった。
『梨華ちゃん…安心した?』
「うん! もう大安心だよ!!」
 これで落ち着いて、ごっちん達のこと、お話し出来るよ。
236 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月02日(火)09時45分58秒
 もう…ぃゃん……。
 これはもう、新しい苛めだよ…梨華ちゃん。
 だってさぁ…恥ずかしいんだもん…。
 耳まで真っ赤だよ?…見えないだろうけど。

『それで、ごっちんとお話しした時のことだけど……』
 気持ちを引き締めて、ちゃんと集中しないと言葉が頭の中に入ってこないよ。
「うん。どうだった?」
『結構、重症…かな?』
 梨華ちゃんは、ごっちんとした話を聞かせてくれた。
 時々、自分の考えたことを交えながら。
237 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月02日(火)09時46分39秒
 でもさぁ、梨華ちゃん。
 聞いてて、すごく恥ずかしいんだけど…「それだけで満たされる感じがするの」
とか…私への思い、そんなにストレートに話さなくても…照れちゃうよ。
 梨華ちゃんは平気な声で言うけど…恥ずかしくないの?
『だから私が思うには、よっすぃ〜はもっと自分の思いを、ごっちんにぶつけるべ
きだと思う』
「そうだねぇ…」

 確かにそうだ。
 ごっちんと吉澤の思いは、たぶん一緒。
 だけど、具体的なことになると、かなり違いがあるんだよね。
 それを解決するには、二人でよく話し合うのが一番だとは思うけど…あの吉澤が、
素直に自分の気持ちをごっちんに伝えられるんだろうか?
 疑問だよ…。
 今の梨華ちゃん位、はっきり愛情表現が出来れば、何の問題も無いんだろうね。
 私達だって、私の方がそういうの、まるっきり苦手だから、梨華ちゃんじゃなかっ
たらここまで続いてないんじゃないかと思う。
 そういう意味じゃ、吉澤と私は似てるんだよね…ムカツクけど!
238 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月02日(火)09時47分45秒
「…今度は、私が吉澤に話を聞いてみるよ」
『えぇ〜!…私が聞いてくるよ』
 心配してくれるのは嬉しいよ。
 でも、梨華ちゃんにばっかりお願い出来ないから。
「梨華ちゃんは引き続き、ごっちんのフォローしてあげてよ。大丈夫。危ないこと
はしないから」
 たぶん…ね。

『本当?……分かった』
 ごめんね、梨華ちゃん。
 嘘つくつもりはないんだ。
 でも「もしかしたら危ないことになるかも」なんて言えないよ。
 そうなるとも限らないし。
 意外と穏やかな話し合いで済むかもしれないしね。
 ……あんまり期待出来ないけど。
239 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月03日(水)10時06分01秒
 全部、明日香ちゃんにお話ししちゃったら、ホントに安心出来ちゃうんだよね。
 頼ってばっかりいちゃいけないんだけど、でもやっぱり、信頼感があるから。
 しっかりしてる明日香ちゃんがスキ。
 でも、さっきみたいに恥ずかしがってる明日香ちゃんは、もっとスキ。
 もうねぇ、可愛くって、ギュギュッて抱き締めたくなっちゃうよ。
 それでその後は……。

「キャッ♪」
『…梨華ちゃん?』
 あ…いけない、いけない。
 また、声に出しちゃった。
「何でもない、何でもないよ」
 慌てて答えたけど、自分でも怪しいと思うほど焦った声だった。
240 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月03日(水)10時06分36秒
『…ホントにぃ?』
 やっぱり思いっきり疑われちゃってる。
「ほ…本当だよ〜」
『……ま、良いけどね』
 あっさり許してくれたみたい。
 ほっ。
 明日香ちゃん、優しいからスキ♪

 おっと、いけない。
 またトリップしちゃうところだったよ。
 それより今は、ごっちん達のことだよね。
 出来る限り励ましてあげたいよ。
 でも……。
241 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月03日(水)10時07分21秒
「ねぇ、明日香ちゃん。ごっちんに、何て言ってあげたら良いと思う?」
 今日だって、何とか励ましたいとは思ってても、何も言ってあげられなかったから。
『ん〜…難しいねぇ…でも…』
「でも?」
『梨華ちゃんが思ったままを、伝えてあげれば良いと思うよ』
 でも〜……。
『私達は手を貸すことしかできないんだし…最終的には、あの二人自身の力でしか
乗り越えられないんだから…』
 そうかもしれないけど…心配なんだもん。

『だって、私達もそうやってここまで来られたじゃない。あの二人も、お互いに好
きなのは間違いないんだし……きっと乗り越えられるよ』
 …そっか。
 そうかもしれないね。
『私達はそれを信じて、良かれと思うことを、言ったり、してあげたりするしかないよ』
「うん!…ありがとう…やっぱり明日香ちゃんは頼りになるね」
 本当にそう思うよ。

『……』
 あれ?
「明日香ちゃん?」
『…もう…恥ずかしくなっちゃうじゃない…』
 あ、照れちゃってる。
 やっぱり可愛いね、明日香ちゃん♪
242 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月04日(木)11時16分52秒
「……うん…うん…分かった……それじゃ…はい、はい……バイバ〜イ」
 ピッ。
 切ったばかりで、バックライトが仄かに明るい携帯電話を枕元に置く。
 暗闇に目が慣れて、カーテンの隙間から漏れる月明かりだけでも、部屋中が見渡
せる。

 机とベッド、洋服ダンス以外は書棚しかない。
 とても年頃の女の子との部屋とは思えないほど、殺風景。
 ただ一ケ所、ベッドが接する壁に、鮮やかなポスターが貼ってあるのだけが、ちょっ
と女の子の部屋っぽいかな。
243 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月04日(木)11時17分33秒
 それもつい先日までは無かった。
 リハーサルを見学に行ったあの日、もらって帰った娘。達のポスター。
 自分が辞めてからは、家族にさえ許さなかったのに…また自分の部屋にポスター
を貼るようになるとはねぇ。

 もちろんそれは、出来るだけ梨華ちゃんを見ていたいっていう欲求の為せる業な
訳で。
 ファンの男の子と、何ら変わりない。
 梨華ちゃん一人のポスターじゃなく、全員のってところが、多少の恥じらいを感
じさせるよね。
 ……素直じゃない、とも言えるけど。
244 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月04日(木)11時18分08秒
 あれこれ考えながら、ベッドに身を沈ませてるけど…全然、眠くない。
 そりゃそうか。
 電話に起こされるまで、しっかり十分な睡眠をとってたんだし。
 それに……さんざん梨華ちゃんにからかわれちゃって、心も体もテンション上がっ
ちゃってるもん。
 何だかさぁ…このままじゃ…一人でHなことしちゃいそうな状況…。
 人肌恋しさっていうのかな?
 何だかジワジワと迫ってくる気がする。
 でもねぇ…それはいくら何でも寂しすぎるよ。

 ク〜…。
 …空腹感も迫ってきてる。
「よいしょ」
 思い切ってベッドから出る。
 夜遅くて本当は絶対に駄目だけど、夜食を食べに下りよう。
 一人でHするよりは、絶対に良いだろうから。
245 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月05日(金)10時04分19秒
 明日香ちゃんに全部お話ししちゃって、胸の支えも下りた感じ。
 優しくて可愛い明日香ちゃんの声も聞けて、愛情の補充もバッチリだし、グッス
リ寝られそう。
 って言うか…もう…眠気が……。
 ごっちんからお話聞いて、自分じゃ感じてなかったけど、結構、気を張ってたの
かなぁ。
 ホッとしちゃって、急に疲れがドッと押し寄せてきた。

 ダラダラと着替えて、ゴソゴソとベッドに潜り込んで。
 そこまでは記憶があったんだけど……。
 次に気が付いたら、もう朝だった。
246 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月05日(金)10時04分59秒
 ホント、一日一日が早いね。
 今日も、リハーサルの合間にテレビ収録とかもあって、すごい忙しい日になりそう。
 でも、気力十分、体力も十分。
 スッキリした私で、今日もポジティブ全開だよ〜!

「おっはよ〜ごっざいます〜」
 スキップしながら控え室へ。
 ルンルン気分でちょっと早く来ちゃったからか、部屋の中には一人しかいなかった。
「おはようござ…あ…」
 笑顔で振り返った麻琴ちゃんが、私を見てサッと怖い顔になった。
247 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月05日(金)10時05分54秒
 何で?
 昨日もそうだったけど、私のこと、本当に嫌いになっちゃったのかな?
 でも、確かにちゃんと質問に答えてあげなかったのは悪かったな〜って思ってる
けど、そんなに怖い顔で睨まれるほどのことはしてないよ?
 それとも、気が付かないうちに、麻琴ちゃんの機嫌を損ねるようなこと、しちゃっ
てたのかな?

「…麻琴ちゃん…何で怒ってるの?」
 一歩、二歩と近づいたら……。
「近づかないでください。汚らわしい!」
 え?!
 何て言ったの?
 カッと体全体が熱くなって、心臓がドキドキドキドキと、全力で走り出してた。
248 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月05日(金)10時06分30秒
「汚らわしいって…」
 胸の奥の方がズキッ、ズキッて痛んで…声まで掠れてた。
「変な気持ちで福田さんに近寄らないでください。福田さんが可哀想です」
 明日香ちゃん?
 可哀想?
 麻琴ちゃんの言ってることが、単語以上の意味では分からなくなってた。

「石川さんは、汚らわしいです」
 私を突き飛ばすように、麻琴ちゃんは部屋を出ていった。
 …「汚らわしい」…「汚れてる」……。
 えぐられるような痛みが胸に走って……部屋に一人残された私は…ガタガタと震
えてた。
249 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月08日(月)11時28分24秒
 結局、インスタントのスパゲティを作って食べて、腹筋なんかちょっとしたりし
て……。
 そしたら電話が掛かってきた。
 吉澤から。

「…もしもしぃ」
『明日のことだけど、ちゃんと覚えてる?』
 やっぱり唐突なヤツだなぁ。
「夜で良いんだよね?」
『仕事が終わったら連絡する。場所は…あんたん家の近くの、あの公園はどう?』
 ……全くぅ…コイツはいつもいつも、私が嫌がるような場所ばかり指定してくる。
 あの公園には、あれ以来、二度と足を踏み入れてない。
 前を通りかかることはあるけど…。
250 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月08日(月)11時29分55秒
「……分かった」
『どうしたの? 何か都合悪い?』
 私の無言が気に食わなかったみたいで、そう問い返してきた。
 でも、吉澤に「怖いから」とは、口が裂けても言えない。

「別に。大丈夫だよ」
『…そ。じゃ、電話するから、その時に、またね』
 ガチャッ。
 返事をする間もない。
 何でそんなに余裕が無いんだか……。
251 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月08日(月)11時33分35秒
 何だかなぁとか思いながら、パソコンの電源を入れる。
 いつも巡回してる所を、ダラダラと見てみる。
 未だに応援してくれてるファンの人の書き込みとかを読んだりすると、何だか申
し訳ないような気もするけど、でも「だからこそ頑張らないと!」って思えてくる。
 辞めてすぐは、確かに「もう放っておいて」って思ってたけどね。
 今は、「人の思いは有難いな」って思う。
 そう思えるようになったのは、きっと梨華ちゃんと出会ったことと無縁じゃなく
て……。

「…ん?」
 そんな書き込みに紛れて、不穏なものが目に飛び込んできた。
『某週刊誌が、モ娘。の記事掲載のタイミングを計ってるらしい』
 微妙な言い回しだけど…もしかしたら、やばい記事を事務所に持ち込んで、交渉
してるってことかも…。
252 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月08日(月)11時34分10秒
 デビューしてすぐの頃、マネージャーさんに業界ではそんなことがあるって、教
えてもらったことがある。
 その時は
「お前等も、そんな話で困らせられるくらいに、ビッグになってくれりゃなぁ」
とか言って笑い話にされたけど、今の娘。達なら、そんなことも十分にあり得るよね。

 とはいっても、書き込みには、それ以上の情報は全くなし。
 信憑性も怪しい訳で、私の考えすぎだよね。
 そう思って、そのことは忘れることにする。
 パソコンの電源を落として、ベッドに横になる。
 雑誌をパラパラ見てるうちに眠くなって、やっと心静かに目をつぶることが出来た。
253 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月09日(火)11時49分24秒
 全身が薄ら寒くて、自分で自分を抱き締めた。
 しっかり、ギュッて抱き締めた。
 なのに、全然そんなんじゃ自分を支えられなくて、頼りない足取りで…何故か分
からないけどフラフラと歩いて、いつの間にか屋上に出てた。
 その間もずっと自分を抱き締めてて…なのに全然温かくならなくて、どうしても
傍にいてほしかった。
 明日香ちゃんに。

 涙は出なかった。
 哀しくはなかったから。
 それとは違う何かの感情…一番近いのは「怖い」…かなぁ…。
 だから震えが止まらなかった。
 震えてる自分が、また怖かった。
 何も言わずに、ただ抱き締めてほしかった。
 明日香ちゃんに。
 この震えを止めてほしかった。
254 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月09日(火)11時49分58秒
 でも、明日香ちゃんは今いないから、すがりつくように電話を掛けた。
 小刻みに手が震えてた。
 きっと、登録してなかったら電話も出来なかったと思う。
 番号を一つ一つ打つなんて、到底出来そうもなかった。

 トゥルルルルル…トゥルルルルル…トゥルルルルル…。
 ガチャッ。

『…もしもしぃ?』
 まだ半分寝てるような明日香ちゃんの声。
「ん…明日香ちゃん……」
 もうそれ以上は何も言えなかった。
 ふわっとした明日香ちゃんの声を聞いただけで、もう震えは止まってたの。
 その代わり、涙が次から次と流れ出て、何かがのどを塞いじゃってた。
255 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月09日(火)11時50分35秒
『梨華ちゃん? どうしたの?…お〜い…もしもしぃ?』
 のどを塞ぐ何かを、懸命に飲み込もうとする。
 二回、三回…。
「…ふ…ぁ…明日香ちゃん……ありがとう…」
 それだけ言うのが精一杯。

『なぁにぃ?…梨華ちゃん?…もしも〜し?』
 電話の向こうで呼び掛ける明日香ちゃんを、電話ごと抱き締めて泣き続けた。
 答えのない電話なのに、明日香ちゃんは、ずっとずっと呼び掛けてくれてた。
 それがまた嬉しくて…。
 どうしようもなく、涙があふれてた。
256 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月10日(水)09時53分30秒
『ん…明日香ちゃん……』
 寝ぼけたまんまで「もしもしぃ?」って電話に出たら、梨華ちゃんだった。
 いつもだったら、梨華ちゃんの声を聞いただけで、何だか顔がにやけちゃうくら
いに胸が温かくなるのに…。
 今まで一回も聞いたことないような、切ない声だった。
 何かに追い詰められたような、怯えるような声。

 聞いた私まで、胸の奥が凍えそうになる。
 「寝てる場合じゃない!」ってシャッキリと目が覚めた。
 何か梨華ちゃんの身に起こったの?
257 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月10日(水)09時54分14秒
「梨華ちゃん? どうしたの?…」
 返事がない。
 でも、通話口から漏れ聞こえるのは…嗚咽?!
 梨華ちゃん、泣いてるの?
「お〜い…もしもしぃ?」
 返事してよ。
 ねぇ、梨華ちゃん!

『…ふ…ぁ…明日香ちゃん……ありがとう…』
 何? 何が「ありがとう」なの?
「なぁにぃ?…梨華ちゃん?…もしも〜し?」
 もう焦っちゃって…。
 だって、電話なんだもん。
 顔が見えないんだもん。

「もしも〜し! 梨華ちゃん?」
 とにかく声を掛け続けることしか出来なくて…パジャマのまま、部屋を行ったり
来たりしながら、梨華ちゃんからの返事を待ってた。
258 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月10日(水)09時55分06秒
『…えぇと…もしもし?』
 え? 梨華ちゃん?…じゃないね、この声。
「もしもしぃ?」
 誰? 誰が梨華ちゃんの傍にいるの?
『あぁ…やっぱり明日香かぁ』
 …この声は…圭ちゃん?!

「圭ちゃん、一体どうなってるの? 梨華ちゃん、何で泣いてるの?」
 やっと状況が分かる!って、もう焦りまくりで圭ちゃんを問いただす。
『そりゃ、私の方が聞きたいよ。この子、屋上で電話を耳に当てたまんま、ボロボ
ロ泣いてるんだもん』
 なのに圭ちゃん、いつも通りにサラッとドライなお答え。
 言ってる内容が衝撃的なだけに、余計に私を混乱させる。
259 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月10日(水)09時57分15秒
「圭ちゃん! 落ち着いてないで…」
『まぁまぁ、明日香も落ち着いて』
 これが落ち着いていられますかって言うの!
 でも、電話の向こうじゃ、圭ちゃんの冷静ぶりは全く変化無し。

 梨華ちゃんに話し掛けてるみたいで、声が遠い。
 ボソボソッて感じで『石川、どうする?』とか何とか……。
『電話、掛け直しても良い?』
 今度はハッキリ私に向かっての言葉…って、え?
「…ちょっと、梨華ちゃんは? 話したいんだけど…」
『まだちょっと話せそうにないから、落ち着かせて、私が話を聞いてみるよ。それ
から明日香にも電話させるから』

 …圭ちゃんの言ってることは、まぁ、的確な判断だと思うけど…もう、だって、
私、梨華ちゃんの元気な声が聞きたいの!
『じゃ、また後で』
 え?! ちょっと待ってよ!
「もしも〜し!!」
 ツ〜ツ〜ツ〜ツ〜……。
 電話からは無感情な音が届くだけ。
 部屋の真ん中に、頭の中が真っ白な私が、ポツンと残されたままになってた。
 圭ちゃん…怨むよ…。
260 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月11日(木)10時57分00秒
「お〜い、石川ぁ!」
 階段の所から声が掛かる。
「あんた、こんなとこで何を……」
 振り返ったら保田さんで、泣いてる私を見て、固まってた。
 いつも大きな目が、もっともっと見開かれてる。

「…どうしちゃったのよ…」
 ゆっくり近寄ってくる保田さん。
 でも、涙が止まらなくて、声が出せなくて…「何でもないんです」ってつもりで、
首を振るだけ。

「石川?」
『もしも〜し!…梨華ちゃん!…お〜い…』
 保田さんと明日香ちゃん。
 二人から呼び掛けられても、少しも答えられない。
 哀しみと、恐ろしさと、悔しさと…そんなものが、いっぱい、いっぱい、のどを
塞いでて……。
261 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月11日(木)10時57分43秒
 保田さん、私が持ってる通話中の電話に気づいて、
「電話中? 誰?」
って。
 それにも答えられないから、電話を保田さんの方に差し出した。
「私に出ろってこと?」
 私が肯くのを見て、軽くため息。

「…えぇと…もしもし?……あぁ…やっぱり明日香かぁ」
 保田さんの受け答えを聞けば、明日香ちゃんが心配しちゃってるってことが分かる。
「まぁまぁ、明日香も落ち着いて」
 それに引き替え、保田さんはもうすっかり落ち着きを取り戻してて…でも私の方は、
その間も全然、涙は止まってくれなかった。
262 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月11日(木)10時58分35秒
 だから、
「石川、どうする? 今、話せる?」
って保田さんが聞いてくれても、首を横に振るしかなかった。
 ひょいって肩をすくめて、保田さん、電話に向かい直す。
「まだちょっと話せそうにないから、落ち着かせて、私が話を聞いてみるよ。それ
から明日香にも電話させるから」
 え?!
 あの…保田さん? それじゃ、明日香ちゃんが余計に心配に……。
「じゃ、また後で」
 ウソ……電話、切っちゃった。

「あ…あの、切っちゃったん…ですか?」
 ビックリして、思わず訊いちゃったよ。
「何だ、あんた話せんじゃない」
 …そういうことじゃなくて……。
「ほら、涙拭いて」
 差し出されたハンカチを受け取りながら、涙が止まってることに初めて気づく。
263 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月11日(木)11時01分03秒
「急いで準備しな。もうすぐ時間だから」
 それは…サブリーダーとしてのご指示ですか?
 少しは話を聞いてくれても良いのに…そんな風に思っちゃう。
「…はい」
 返事をしながら、ハンカチを畳み直して……「洗って返します」。そう言おうと
したら、先にパッてハンカチを取り替えされちゃった。
 何か嫌な感じって思ったら……。

 保田さん、照れくさそうに笑ってた。
「…明日香の声聞いて…ちょっとは落ち着いた?」
 すごいなぁ。
 私のすることなんて、お見通しって感じ。
 大人になると、何でも分かるようになるのかなぁ?
「はい!」
 ちょっと感動しちゃって、気が付かないうちに、胸の支えがほんの微かに減った
みたい。

 保田さん、ハンカチをギュッて握って、濡れた感触を確かめてるみたい。
 私、いっぱい泣いちゃったから、何だか恥ずかしいな…。
「…時間が空いたら、ちゃんと話、聞いてあげるから…もうちょっと頑張りなよ…
大丈夫?」
「頑張ります!」
「よし! じゃ、急ぐよ」
 背中を押されて、つんのめるように階段を下りていく。
 保田さん、わざと忘れ物をさせるように急かしてくれたのかな?
 きっと、屋上に置き忘れた私の涙は、お日様に照られて蒸発しちゃうんだろうね。
264 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月12日(金)10時39分28秒
 もうすっかり目が覚めちゃったから、下りて朝食。
 でも……何食べても味が分からないよ。
 モソモソ一人で食べてるけど、頭の中は梨華ちゃんのことばっかり。

 梨華ちゃんの泣き声。
 一体、梨華ちゃんの身に何が起こったのか。
 泣き虫なのは、梨華ちゃんのチャームポイントで、今に始まったことじゃない。
 でも、今日みたいなのは初めてだよ。
 あんなに追い詰められて切羽詰まった泣き方は、余程のことだよ。
265 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月12日(金)10時40分07秒
 それなのに何も出来ない私。
 さっき、どうしても落ち着かなくて電話を掛けたけど、仕事中みたいで留守電。
 圭ちゃんも同じ。
 余計に落ち着かなくなっちゃったよ。

 冷静になろうとして、でもどうしても梨華ちゃんに何が起こったのか想像してし
まって……。
 最初、吉澤の仕業かと思った。
 そこまで吉澤が追い込まれて、発散のはけ口を梨華ちゃんに…アイツならやりか
ねない。
 だけど、電話が掛かってきたのが早い時間帯だったし、そんなことない……って
信じたい。
 あれこれ考えることしか出来なくて、考えれば考えるほど、悪いことしか思い浮
かんでこない。
266 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月12日(金)10時40分51秒
 梨華ちゃんのネガティブがうつっちゃったのかなぁ?
 二人で過ごした時間が、こんなに密度の濃いものなんだもん。
 似てきても全然不思議じゃないよね。

 でも今、私が不安になってても何もプラスにならないから、どうにかして気を紛
らさないと。
 そう思って、自分の以外の食器まで洗ったり、部屋の掃除をしたり……。
「あら珍しい」
なんて言われながら、率先してお母さんの手伝いをした。
 洗濯の終わった洗い物を持って、ベランダに出る。
 パンパンッ!て伸ばしたシャツの向こうに青空が見えて、ちょっとだけホッとす
ることが出来た。
267 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月15日(月)15時10分24秒
 今日はヘトヘトに疲れちゃった…もうガムシャラに仕事したもんね。
 だって、少しでも空白があったら、すぐに哀しみが顔を覗かせるから。

 保田さんのお陰で、何とか平静な自分に戻れたけど……それはでも、表面上はっ
てことだから。
 麻琴ちゃんに、あんなこと言われるなんてやっぱりショックだよ…。
「石川さんは、汚らわしいです」

 乗り越えられたと思った自分の壁。
 明日香ちゃんに出会えて、明日香ちゃんに救われて、克服できたと思ってたのに……。
268 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月15日(月)15時11分14秒
「梨華ちゃんは汚れてなんてないよ」
「…梨華ちゃんのこと……好き…」
 明日香ちゃんの言葉は、私にとって絶対の力をもってて、いつも私を包み込んで
くれる。

 それでも…たった一言の麻琴ちゃんの言葉で、こんなに心が乱れちゃう。
 麻琴ちゃんに言われたっていうのも、確かに衝撃だったけど……それ以上に、い
つまで「汚れてる」って言葉につきまとわれ続けるんだろうって、そのことへのショッ
クの方が大きかった。
 そのままの私を受け入れてくれなかった過去の恋人達。
 近くは、よっすぃ〜。
 そして今度は麻琴ちゃん。
269 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月15日(月)15時12分13秒
 立場の違う全然別人から、繰り返しぶつけられるこの言葉――「汚れてる」。
 もういい加減にしてほしかった。
 その呪縛から逃れたかった。
 明日香ちゃんに出会って、その呪縛から解き放たれたと思ったのに……。
 明日香ちゃんに相応しい相手になりたいのに……。

 哀しくて、泣きたくて…。
 そんな気持ちの表面に笑顔の仮面を張り付かせて、自分を追い込むように仕事に
没頭した。
 …今、明日香ちゃんに会いたいよ。
 …私、明日香ちゃんに会ってもいいのかなぁ?
270 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月17日(水)10時19分03秒
『お掛けになった電話番号は、電波の届かない所におられるか、電源が入っていな
いため、掛かりません……』
 やっと落ち着いて梨華ちゃんの話も聞けると思ったのに……。
 何度も掛けてるんだけど、一向につながらない。
 …どうしたんだろう……。
 どうしちゃったのかなぁ…梨華ちゃん。

 暇になると、途端にまたいろんな疑念が湧いてくる。
 本当に吉澤は、今回の件に関係ないんだろうか?……。
 手持ち無沙汰も手伝って、吉澤に電話して追求してやろうかって考えが浮かぶ。
 思い浮かんだら即実行。
 仕事中かもしれないけど、相手が吉澤なら、多少の迷惑は問題ない……かな。
271 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月17日(水)10時19分34秒
 少し呼び出しで待ってたら、意外にすぐに出た。
「もしもしぃ?」
『…今、仕事中なんだけど?』
 その割にはすぐに出たじゃない。
「ホント? ごめんごめん」
 一応、謝っておくか。
『…ま、良いけど…』
 実は休憩中なんでしょ?

『梨華ちゃんの様子?……張り切ってるよ』
「それだけ?」
『……あんた、喧嘩でもした?』
「何で?」
 やっぱり様子がおかしいんだね?
『ん〜…別に変って訳じゃないけど…妙に真剣だからさ……眉間にしわ寄りっぱな
しだったよ』
 眉間にしわ……それは宜しくない兆候だなぁ。
272 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月17日(水)10時20分11秒
『でもさぁ、そんなの直接本人に聞けば良いじゃない』
 む。痛いところを突いてくる。
「…電話つながんないんだよ」
『あぁ…そりゃヤバイね』
 何言ってるんだか。
『ベタベタなあんた達も、とうとう破局って訳?』
「そんな訳ないでしょ!」
 何てこと言うんだこいつは。
 しかも嬉しそうだし。
『どうだか…ま、頑張ってよ』
 くっそぉ…相変わらず憎たらしい奴め。

『そう言えば、さっき梨華ちゃん、保田さんと一緒にどっか行っちゃったよ…心配
だねぇ』
 電話の向こうでニタニタしてるのが目に見えるようだよ。
「圭ちゃんなら何の心配もないじゃない」
『無理しちゃって。保田さん、教育係だけあって梨華ちゃんも尊敬してるし、尊敬
が愛に変わるってことも…』
 ブチッ。
 電話を切ってやった。
 全く人の心配を喜ぶんじゃないっつぅの!
 ……大丈夫…だよねぇ、梨華ちゃん?
273 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月18日(木)10時14分07秒
「で? 何で泣いてた訳?」
 保田さんの言葉は、いつも率直そのもの。
 だから私も、変に飾ったり誤魔化したり出来ずに、思ったままを答えられる。
「…さっき…麻琴ちゃんに言われたんです……」

 休憩時間になって、手を引かれるようにして、今いる階段の踊り場に連れてこら
れた。
 ここは保田さん御用達の場所。
 時には発声練習をしてたり。
 時にはダンスの復習をしてたり。
 時にはボ〜ッとしてたり……。
 場所自体に保田さんの雰囲気が染みついてるように感じる。
 それ位、ここには保田さんの存在感があふれてる。
274 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月18日(木)10時14分41秒
「麻琴ちゃんに『石川さんは、汚らわしいです』って言われちゃって……」
 踊り場から下の階を見下ろすようにうつむきながら、ポツポツッて話していく。
 それだけで、少しだけ気が晴れていく。
 安心感が湧いてくる。
 明日香ちゃんとはまた違った感じで、私をふわって包んでくれる。

「それで? あんた自身はどう思うの?」
 階段の手すりに肘を付いて、あごのホクロの辺りを中指の先で触ってる。
「…やっぱり私は『汚れてる』のかなぁって…」
 明日香ちゃんの前でも、ううん、前だから余計に強がってる私。
 でも保田さん相手だと、何の抵抗も無く弱音が吐けちゃうの。
 …必ずしも優しく受け止めてくれる訳じゃないけど。
275 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月18日(木)10時15分26秒
「そう……じゃ、ホントにそうなのかもね」
 ほら…こんな風に。
「でもさぁ……明日香は絶対、そんな風には思ってないよ」
 おっきな瞳を細めてほほ笑みながら、私を見てくれた。
「私も…ね」
「……はい」

「少なくとも、あんたの部屋よりは、あんた自身は汚れてないよ」
 アハハッて声が踊り場に響く。
「ひどいですぅ! 今はちゃんと片づけてますよぉ!」
「それも明日香のため?」
 今度はニヤッて感じで笑ってる。
「…はい」
「そんなに大事に思ってるんならさ、明日香の信頼をきちんと受け止めてあげなよ…
…他の誰から何て言われても良いじゃない…ね?」
「はい!」
 この場所で積み重ねられた保田さんの努力。頑張り。
 その一部をもらったような気がした。
276 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月19日(金)10時06分38秒
 吉澤にからかわれて「今夜の相談って何なんだ?」とか思いながら、部屋から下
りて、昼食の準備をしてるお母さんを手伝う。
 娘。時代は「得意料理はカップラーメン!」とか言ってた私も、今じゃ、ちょっ
とした料理位は出来るようになってきた。
 まぁ、お母さんから言わせると「手際が悪すぎる」とかで、「あんた才能無いん
じゃない?」って駄目出しされてる。

 ♪〜…。
 あ…携帯が鳴ってる。
「はいはいはい。ちょっと待ってくださいよぉ」
とか言って、濡れた手を拭きながらテーブルの上の携帯に駆け寄る姿は、我ながら
所帯じみてると思う。
「もしもしぃ?」
『…あ…明日香ちゃん?…私』
 梨華ちゃんだ!
277 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月19日(金)10時07分15秒
「梨華ちゃん、ちょっと待ってね」
『うん、良いよ』
 ワタワタしながら振り返る。
「お母さん、ごめん。電話だから部屋に上がるね」
「全く慌ただしい子ねぇ。終わったら、ちゃんと下りてきて食事取るのよ?」
「は〜い」
 ドタドタと部屋に戻っていく。

「お待たせ、梨華ちゃん…大丈夫?」
『うん。もう大丈夫』
 声にいつもの元気が戻ってた。
 良かったぁ……。
『保田さんが相談にのってくれたの』
 ん? 圭ちゃん…いや、ここは別に意識しなくても良いんだよ。
 あれは吉澤のただの軽口なんだから……。
278 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月19日(金)10時08分01秒
「…それで一体、何があったの?」
『あのね……』
 梨華ちゃんは、小川さんとのことを、結構冷静に話してくれた。
「なるほどねぇ…」
 今は平静みたいだけど、その時は梨華ちゃん、ショックだったろうなぁ。

 …あれ? でもさ、それって……。
「小川さんは私達のこと、どこまで知ってるんだろう?…って言うか、どうして知っ
てるの?」
『……さぁ?…分かんないよ…』
「あ…ごめん…」
 梨華ちゃんを問い詰めるつもりじゃないんだよ。
「ちょっと気になっちゃたから…」
279 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月19日(金)10時08分32秒
 そしたら、電話から口を遠ざけて、誰かに話し掛けてる梨華ちゃんの声がする。
『保田さんはどう思います?』
って。
 何でか分からないけど、胸がキュ〜ッて小さく痛む。
 べ…別に圭ちゃんに焼き餅焼いてるんじゃないよ。
 ただちょっと…意識しちゃっただけ……。

 あぁもう!
 それもこれも、あの吉澤のせいだっ!
 今夜、絶対に仕返ししてやろう。
 うん、そう決めたっ!
280 名前:愛読者 投稿日:2002年07月19日(金)13時36分31秒
あすりか3でこの物語を知り、
それからあすりかから読んで愛読するようになった者です。
くれぐれもお体に気をつけて地道に話を進めていってください
これからも話の展開を楽しみながら応援していきたいと思います。
281 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年07月22日(月)09時51分32秒
>>280 愛読者さん
 ご愛読、ありがとうございます。レスが遅くなってごめんなさい。
 こうして応援してくださる方がおられる限り、着実に進めていこうと思ってます。
 頑張りまっす!
282 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月22日(月)09時52分12秒
 明日香ちゃんに電話したら、後ろの方でザ〜ッていう流し台の音がしてる。
 家のお手伝いしてるんだね。
 偉いねぇ、明日香ちゃん。
 エプロン姿、見てみたいな。

『梨華ちゃん、ちょっと待ってね』
って言われて、電話の向こうでお母さんと何か話してる。
 トントントンッて階段を上がる音。
 ガチャッてドアが開いて閉まる音。
 聞いてるだけで、明日香ちゃん家の中をどんな風に動いてるか分かっちゃうよ。
 私も明日香ちゃん家の子になってきたかな〜……エヘヘ。
283 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月22日(月)09時52分46秒
『お待たせ、梨華ちゃん…大丈夫?』
 すごい焦ったような私を気遣うような声。
 大丈夫だよ、明日香ちゃん。
 私はもう元気。
「保田さんが相談にのってくれたの」
 そう言って安心してもらおうと思ったのに…何だか明日香ちゃん、黙っちゃった。
 どうしたの?

 でもそれも一瞬のことで、すぐに明日香ちゃんらしくなる。
『小川さんは私達のこと、どこまで知ってるんだろう?…って言うか、どうして知っ
てるの?』
 ホントだ……私、そんなことまで気が回らなかった。
 急なことだから、ちゃんとした返事が出来なかったよ。
 でも、やっぱり明日香ちゃんはすごいな〜。
284 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月22日(月)09時53分30秒
 何だかそのすごさを保田さんにも知ってもらいたくて…って言うか、本当は見せ
びらかしたくなっちゃった。
「保田さんはどう思います?」
 フムッて感じで、いつも通りあごのホクロの辺りを触りながら考えてる保田さん。
 どうです? 明日香ちゃんってすごいでしょう?

「…どうせ、石川が自分でバラしちゃったんじゃないの?」
 な〜っ!
「ひどいです〜!」
 もう、何て失礼なことを!
「アハハハ…まぁ、小川のことは私に任せなって」
 笑いながら、私の頭をポフポフ叩く。
 む〜…これで誤魔化されちゃう、私も私かな……。

『……お〜い、梨華ちゃん?…もしも〜し?』
 あ! いっけな〜い。
「もしもし! ごめんなさ〜い」
 慌てて電話に出る私を残して、保田さんは階段の方へと歩いていく。
「石川」
 降り口で私の方を見て、保田さん、自分の腕時計を指さしてる。
 続く言葉は声に出さずに、唇だけが動いてた。
 ――遅れないようにね。
285 名前:ゲロ吐いちゃうよ 投稿日:2002年07月22日(月)20時34分32秒
いいかげんにやめろや!
286 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月23日(火)01時13分13秒
>>285
嫌なら、読まなければ済む事だよ。
287 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月23日(火)02時57分27秒
>>286が今良いこと言った。
288 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月23日(火)16時46分09秒
>>286
その通り。
作者様、応援してますんでがんがってください。
289 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年07月24日(水)10時13分32秒
>>285 これでも収束へ向けて着実に進んでますのでご容赦を。

>>286 >>287 >>288
 歩みの遅い作者ですが、頑張りますのでこれからも応援してくださいね。
290 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月24日(水)10時14分04秒
 電話の向こうで、梨華ちゃんと圭ちゃんが話してる。
 笑い声とかも聞こえてきて、楽しそう。
 …何だか…寂しいよ。

「……お〜い、梨華ちゃん?…もしも〜し?」
 切なくなって、思わず呼び掛けちゃった。
『もしもし! ごめんなさ〜い』
 梨華ちゃん、すごく焦ってる。
 駄目だなぁ、私。
 まるで駄々っ子じゃないか。
291 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月24日(水)10時14分48秒
 そりゃ、梨華ちゃんのことは好きだよ。
 梨華ちゃんも、私のことを好きでいてくれてる。
 でもだからって、梨華ちゃんは私の専有物ってことにはならないよ。
 梨華ちゃんは、あくまで梨華ちゃん自身のもので、その上で私に心を寄せてくれ
てるだけ。

 だからこそ、本当はもっと私も
「梨華ちゃんのこと、好きだよ」
って、思いを届け続けないといけないんだよね。
 なのに、私はそういうのが苦手だから、なかなか言えない。
 素直に思いを届けられない。
 きっとそこには、
「スキ」
って言い続けてくれる、梨華ちゃんへの甘えがある訳で。
 私の中には、根拠のない余裕でいっぱい。
292 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月24日(水)10時15分30秒
 もしも…もしも、梨華ちゃんの心が変わったら……。
 心のどこかにそんな恐れがあるのに、自分で知らん顔して、相変わらず梨華ちゃ
んに甘えっ放し。
 だから、圭ちゃんへの尊敬の念とかを見て、必要以上に動揺したりするんだよ。
 情けないよね、私…。

『明日香ちゃん…明日香ちゃん?』
 悶々としてる間に、梨華ちゃんの言葉を聞き逃しちゃった。
「ごめん。ボ〜ッとしちゃって…何て言ったの?」
 クスクスクスッて心地良い笑い声。
『もう…ちゃんと聞いてくれなきゃダメじゃない…もう一回言うよ?』
「ごめんね」
『明日香ちゃん、だ〜いスキ!』
 梨華ちゃんの思いが、真っ直ぐ私に向かって来た。
293 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月24日(水)10時16分25秒
 なのに……。
「…うん」
 他にいろいろと言い方はあるのに、こんな答えしか出来ない私って。
 自己嫌悪だよ。
『エヘヘヘ…』
 照れてる梨華ちゃん。

 ――私も…好き。大好きだよ。
 心の中では何回でも言葉に出来るのにね。
 ごめん…ホントにごめんね、梨華ちゃん。
294 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月25日(木)11時13分03秒
「心配掛けてごめんなさい」
 もう大丈夫だからってこと、でも、ちょっとでも会えたら嬉しいなってこと、で
もでも、次のオフに会えるから我慢出来るよってこと……。
 そんなことを、一方的にバ〜ッておしゃべりしちゃった。

 それでも、明日香ちゃんの
『うん…』
とか、ちょっと素っ気ない相づちを聞くだけで幸せな気持ちになれる。
 …私って独りよがり?
295 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月25日(木)11時14分22秒
 だけど今日の明日香ちゃんは、何だか変。
 素っ気ないを通り越して、無反応になってきちゃってるよ?
 どうしたんだろう……。
「あのね…私あらためて思っちゃった…私…やっぱり明日香ちゃんのこと……スキ♪」
『…ん…』
 ちょっと…明日香ちゃん?

「明日香ちゃん…明日香ちゃん?」
 お〜い。聞こえてますか?
『え?!…あ…ごめん。ボ〜ッとしちゃって…何て言ったの?』
だって。
296 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月25日(木)11時15分05秒
 もう……。
「もう一回言うよ?」
 今度こそ、ちゃんと聞いててよ?
「明日香ちゃん、だ〜いスキ!」
 さっきより表現がグレードアップ!

 そしたら明日香ちゃん、
『…うん』
って声が上擦ってる。
 今度の『うん』は、さっきと違う。
 照れて真っ赤になった顔が見える位に、明日香ちゃんの恥ずかしさが伝わってき
たから。
「エヘヘヘ…」
 何だか私もちょっと照れくさくなっちゃった。
297 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月25日(木)11時16分34秒
 理想は、明日香ちゃんに
『私もだよ…梨華ちゃんのこと、大好き』
とかって言ってもらっちゃうことだけど……それは贅沢と言うものよね。

 おっと、もう時間が迫って来ちゃった。
「もうリハーサルが再開しちゃうの。明日香ちゃん、私頑張るからね」
『うん…応援してるから』
 あぁ…もうその一言だけ十分です!
「ありがとう!…じゃ、行って来ます」
『行ってらっしゃい』
 明日香ちゃんに見送られて、マイ・スウィートホームって感じ。
 …やっぱり独りよがりな私。
298 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年07月25日(木)23時55分57秒
何だこりゃ?
299 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月26日(金)03時39分11秒
>>298
読んでの通り
つうか興味無いなら帰れ
300 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月27日(土)02時59分48秒
粘着にも程がある(ワラ
301 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月27日(土)04時44分24秒
>>300
ここはその粘着を楽しむ場だ。
302 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月28日(日)19時29分57秒
作者さん、雑音もあるようですが気にせず頑張ってください。
303 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年07月29日(月)12時40分14秒
>>298 まさしく読んだままの物です。

>>300 粘着ですかぁ? それも良いもんですよ?

>>302 ありがとうございます。
 頑張りまっすよ!
304 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月29日(月)12時41分06秒
 梨華ちゃんも頑張ってるんだ。
 私も頑張らないとね。

 取り敢えずの勝負は、あの公園。
 吉澤の相談ってやつを、しっかり受けてやろうじゃないの。

 夕食の準備も手伝って、久しぶりにお父さんといろいろ話をしたりして、少しは
親孝行出来たかな。
 そんな感じで、ゆっくりと時間が流れて、そろそろ電話が掛かってきそう。
305 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月29日(月)12時42分12秒
 準備は万端。
 押入から取り出した懐中電灯。
 もちろん、中の電池も新品に取り替えてある。
 これでもう、あの公園への恐怖感も解消した……多少は。

 電話を待ちながら、ふと引き出しを開けて、あのピアスを取り出してみる。
 電灯の光でもキラキラ輝いてて、今でもお気に入り。
 壊れてて、付けて出歩いたりは出来ないけど、それでも私の宝物だから…。
306 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月29日(月)12時43分01秒
 ♪〜…。
 来た来た。
「もしもしぃ…福田です」
『私。今、公園に着いたから。待ってるからね』
「分かっ……」
 ツ〜ツ〜ツ〜…。
 これくらのやり取り、最後まで聞け〜!

 全く、アイツは……。
 ブツブツ言いながら家を出て、懐中電灯を片手にトボトボと歩いていく。
 ……やっぱり…ちょっと怖い…。
 重くなる足を引きずって、何とか公園に辿り着く。
 まぁ、目と鼻の先にある訳だから、ものの二分もかからないんだけどね。
307 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月29日(月)12時43分55秒
 公園の中に入って見回すと……いたいた。
 ジャングルジムの一番高いところに登って座ってる。
「よぉ…お疲れ」
 近づいていったら、そんな風に声を掛けてきた。
 何が「お疲れ」なんだか……。

「…早かったんだね」
「まぁね。結構、順調に進んでるから……ところでさぁ…その懐中電灯、何? 探
し物でもする気?」
 面白そうに、私が手にした懐中電灯を指さしてる。
 あんたには関係ないっての。
 …「怖い」なんて、恥ずかしくて言えないでしょ。
308 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月29日(月)12時44分45秒
「それで、相談って何?」
 誤魔化すように訊ねる。
 いつも以上に仏頂面な私を見て、吉澤は大げさに肩をすくませてみせる。
「別にね…大したことじゃないんだけど……」
 私にジャングルジムに登って来いって感じで、手招きをしてる。
 そっちが下りてくれば良いでしょ…ったく。
 心の中でそんな風に毒づきながらも、ジャングルジムに手を掛ける。

 ジャングルジムに登るのなんて、小学校の時以来。
 その時は何の抵抗もなかったけど、今はヒラヒラ揺れるスカートの裾が気になっ
て仕方がない。
 勢い恐る恐る登ることになって、その姿を見て、吉澤がケラケラ笑ってる。
 益々嫌な感じ。
 何とか登って、吉澤の隣に座る。

 あの頃は高いと思ったこのジャングルジム。
 今だと対して高くない。
 それでも、公園を一望する見晴らしは、心をスカッとさせてくれる。
 しばらくは二人とも無言で、並んで景色を眺めてた。
309 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月29日(月)18時55分58秒
おお!よっすぃ登場ですね 面白くなってきた!!
波乱の予感・・・
邪魔が入ってちょっとムカつきました(藁
気にせずがんばってください 期待してます!
310 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年07月30日(火)14時27分10秒
>>309
 よっすぃ〜ファンの方ですか?
 そう。まさしく波乱が……。
 マイペースで頑張りまっす!
311 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月30日(火)14時27分55秒
 リハーサルの最中、麻琴ちゃんが私を見る目は、ずっと冷たいまま。
 でも、そんなこともうどうでも良い。
 今、私に出来ることは一生懸命に練習して、明日香ちゃんに見せても恥ずかしく
ないコンサートにすること。
 ただそれだけしかない。
 麻琴ちゃんには悪いけど、明日香ちゃんへの思いの方が強いから、いつまでも気
にしてられないよ。

「石川」
 やっと一日の練習が終わって、今からなら明日香ちゃんといっぱいおしゃべり出
来るって思ってたら、保田さんに呼び止められた。
「小川のことなんだけど」
 保田さん、その渋い表情を見ただけで、上手くいってないことが分かりますよ。
「あの子も意外と頑固でねぇ…」
 そうなんですか?
 いつもは素直なのに…。
312 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月30日(火)14時28分51秒
「聞き出せたのは、あんたから明日香への電話が原因らしいってこと…一体、何話
してたの?」
 え?…電話…あ、あれかな〜?
「べ…別に特別なことは……」
「どうせ、あんたのことだから『明日香ちゃん、大スキ〜』とか何とか言ってたん
でしょ」
 う…図星です…もしかして保田さんって、プロファイラー?
「やっぱり…あんたねぇ、顔に出しすぎるのよ。単純だから、すぐに分かっちゃう
の」
 そんなバカみたいに言わなくても……グスン。

「とにかく、明日香リスペクトな訳よ。『明日香さんを汚すような存在は、例え先
輩でも許せません!』だって……」
 許せないって言われても。
「気を付けなさいよ。『私は断固、戦います!』とか言って、随分と張り切ってた
わよ?」
 た…戦うって?!
313 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年07月30日(火)14時30分10秒
「それから『明日香さんの家で片を付けます』とも言ってたわねぇ…明日香の家に
押し掛けるつもりかしら?」
 明日香ちゃん家で?!
 明日香ちゃんに迷惑掛けるのは絶対にダメ〜!
「どうしよう……今度、安倍さんと三人で明日香ちゃん家に行く約束をしてるんで
す…」
「なるほどね。その時に決着をつけようってことか」
 保田さ〜ん!
 そんなに落ち着いてないで、助けてくださいよ〜!

「分かったから、服、引っ張んじゃないの! 伸びちゃうでしょ…なっちにも協力
してもらう方が良いかもね。場合によっちゃ、明日香の家に行くの、やめた方が良
いかも知れないし」
 そ…そうですね。
 安倍さんにも助けてもらえれば、心強いですよね。
「…あんた、ホントに単純だねぇ。なっちにも別の意味で気を付けないといけない
んじゃないの?」

 ハッ! そうだった…。
 前門の虎、後門の狛犬って、このことですね。
「…あんた、わざと間違ってるでしょ?」
 あ痛っ!
 叩かないでくださいよ〜。
 何で保田さんが怒るんですか?
 もう…訳分かんない……。
314 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月30日(火)19時06分01秒
>>310
私は明日香ファンなんですけど
私の中ではよっすぃ〜登場=波乱の予感なので
俄然楽しみになってくるんです 今後の展開に期待!!
315 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年07月31日(水)14時22分17秒
>>314
 明日香ファンの方でしたか。
 よっすぃ〜登場=波乱。
 はい。その図式はチャミ銀の中でも成り立ってます(藁
316 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月31日(水)14時23分01秒
 ジャングルジムの上に座って、足をブラブラさせながら、静かに時間を過ごす。
 ほぼまん丸の月が明るくて、意外な陰影でちょっと幻想的な風景。
 これで隣に座ってるのが梨華ちゃんだったら、もう最高なんだけどね。
 相手が吉澤じゃ、悪いけど素敵な時間とは言えないな。

 ってことで、さっさと蹴りを付けてしまおう。
 吉澤の方から、ちっとも話を切り出す様子がなかったから、こっちから口を開い
た。
「…あのさぁ…ごっちんと、上手くいってないの?」
 単刀直入過ぎるかもしれないけど、吉澤相手に、変に気を遣うのも馬鹿馬鹿しい
から。
 チラッと私を見た吉澤も、ちょっとムッとした感じだったけど、特に何も言わな
かった。
317 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月31日(水)14時23分39秒
 木立を抜ける微かな風がサワサワ鳴ってる。
 それよりもほんの少しだけ低く、「はぁ〜」っていう吉澤のため息が聞こえた。
「…上手くいってない訳じゃない…と思う…んだけど…」
 何だか頼りないなぁ。
 吉澤って、こんな感じだっけ?

「ごっちんのこと…私は本気なんだ…そのことは、ごっちんも分かってくれてると
思う」
 思わず同情しちゃうような力のない声で、そう呟いた。
 私は…吉澤のその呟きを黙って聞いてるだけ。
「私はね…二人の間に、肉体的な関係を持ち込みたくないんだよね」
 私を見る吉澤の視線に皮肉を感じたのは、私の思い過ごしだろうか?
「所詮、肉体関係なんて刹那的なものだから……」
318 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年07月31日(水)14時24分18秒
 そうかなぁ?
 そうなのかなぁ?
 私の中のどこかから「違う!」って叫ぶ声が聞こえる。
 でも、「そうだよね」っていう納得の声も、確かに聞こえてて……。

 梨華ちゃんと一線を越えて、より親密に、より一体感を得たのは間違いない。
 そう思うんだけど、やっぱり私は、基本的にそういうのが苦手だ。
 どうにかして、そうじゃない方法で、もっと梨華ちゃんと心の交流が持てるん
じゃないか。
 未だにそう思ってる自分がいる。
 だから…吉澤の言葉に、どこか引っかかりながらも、否定することが出来ないで
いた。

 きっと難しい顔で考え込んでたんだと思う。
 十秒か二十秒。
 ふっと気が付いたら、すごく近くで吉澤の息づかいを感じた。
 何?
 思った瞬間、サッと月明かりが陰った。
319 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年08月02日(金)18時15分41秒
もしかして作者さんも
今回の脱退にショックを受けているんですか?
もしそうなら
傷が癒えるを待ってますから
頑張ってくださいね。
320 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月08日(木)02時12分53秒
ストーリーの主要人物2人が急に卒業で話の組み立てが
大変になっているとは思いますが、更新を楽しみにしております。
頑張ってください。
321 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月11日(日)02時05分54秒
初回からよまさせていただいております!
大変だと思いますが是非頑張って続けてください!
お願いします!
322 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月13日(火)10時31分45秒
更新が止まっちゃってる。いつまでも待ってるよ、作者さん。
323 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月14日(水)21時00分33秒
作者さん 体調崩してるとかじゃないですよね?
ちょっと休憩ってことならいいんですが… 心配です
期待してますので今後も頑張ってください
324 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年08月15日(木)10時50分04秒
>>319 >>320 >>321 >>322 >>323
 皆さんにご心配をおかけして申し訳ないです。
 本人の体調はいたって快調なんですが、何せ福ちゃんの次に好きになったのが、
圭ちゃんだったので、心理的ダメージが思ったよりきつかったです。
 と言っても、そんなに深刻ではないので、もう少しだけお待ちください。
 必ず続きを更新しますので。
325 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月15日(木)15時39分59秒
作者さん春まではまだ日がありますからそう気を落とさずにがんばって下さい。
326 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年08月16日(金)10時12分34秒
>>325
 ありがとうございます。
 取り敢えず今日は、梨華ちゃん視点を更新してみます。
 次の明日香ちゃんの場面は、ちょっと力を溜めないと書けないかもとか心配して
ますが、それでも頑張りまっす!
327 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年08月16日(金)10時13分21秒
 相変わらずプンプン怒ってる保田さんをなだめながら、帰り支度を整える。
「もう…保田さん、許してくださいよ〜」
 保田さんの腕をつかんで、ブンブン振ったり。
 そしたら、ため息ついて、しょうがないなぁって顔で私を見る。
 ふふふ…保田さんって、甘えられるのに弱いのよね。

「はいはい。分かったから、そんな泣きそうな顔しないの…じゃ、私、先に帰るか
ら」
 やんわり腕を振りほどかれて、また頭をポフポフ叩かれた。
「あ、はい。お疲れさまでした〜」
「石川も、お疲れさま」
328 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年08月16日(金)10時14分14秒
 保田さんを見送って、さて私も帰ろうかなって思った時、
「お…石川、まだいたのか」
 マネージャーさんに見つかっちゃった。
「あ…はい。あの…すぐ出ます」
 いつも、
「仕事が終わったら、サッと帰って、スッと疲れをとること」
っていうのが口ぐせだから、またそう言われちゃうと思って慌てちゃったんだけど……。

「あ、石川…あのな……」
 呼び止められた言葉は、いつもと違って歯切れが悪くて。
「? 何ですか〜?」
 マネージャーさんは困った顔で私を見てる。
 私も困った顔でマネージャーさんを見るしかない。

「…福田とは……」
「はい?」
 すごい聞きにくそう。
「福田とは…友達…だよな?」
「はぁ?」
 どういうことです?
329 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年08月16日(金)10時15分01秒
「あのな…さっき、妙な雑誌記者が来て…石川と福田が、そのぉ…妙な関係なんじゃ
ないか…って…」
 何か一気に胸苦しくなってきた。
「妙なって…私と明日香ちゃんは、そんな変な関係じゃありません!」
 一抹の後ろめたさがないって言ったらウソになるけど、でも本当に私は、明日香
ちゃんとの関係が変だとは思ってないから。

 私の勢いに押されるように、マネージャーさんは一歩、後ろに下がる。
「そ…そうだよな…すまん、変なこと聞いて」
 何だか無性に腹が立って、自然と言葉が荒くなる。
「どいてください。私、もう帰りますから」
 マネージャーさんとドアの間をすり抜けるようにして廊下に出る。
「あ、すまん…き、気を付けて帰れよ」
「失礼します」
 ほとんど走るみたいにしてリハーサル・スタジオを飛び出す。
 何か…すごい…胸が切なかった。
330 名前:320 投稿日:2002年08月17日(土)00時46分29秒
急かしてしまったようで申し訳無いですが、みんな期待している
という事でご容赦下さい。
とにかく、本格復帰を待っています。
331 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年08月19日(月)16時15分15秒
>>330
 次の明日香ちゃん視点、ちょっと手こずってます。
 って言うか、「こんなので良いのかなぁ?」って思っちゃうんですよ。
 もうちょっと待っててください。
332 名前:名無し 投稿日:2002年08月23日(金)23時39分15秒
遅ばせながら読ませていただきました^^
あすりかって結構珍しいですよね。そこがいいんですけど☆
あと、あすりか4が読めなくなってます。どこか他に読めるとこ
ないですか??
続き楽しみにしてます〜
333 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月24日(土)12時11分03秒
>>332
過去ログ倉庫に行ってください。
334 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年09月02日(月)11時52分14秒
>>332
 ありがとうございます。
 そして、ずいぶんと間をあけてしまって申し訳ありませんでした。
 何とかかんとか、再会出来るかなって感じですが、頑張ります。
 ちなみに「あすりか4」は
http://mseek.obi.ne.jp/kako/sea/1010726149.html
です。
>>333
 ナビゲートありがとうございました。
335 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月02日(月)11時52分54秒
 近過ぎて、ちゃんと焦点が結べない吉澤の顔。
 月明かりを遮るように迫ってくる光景が、あの夜の梨華ちゃんと重なる。
「嫌っ!」
 反射的に顔を背けたら、吉澤の唇がピトッて左頬にくっついた。
「な…何を…きゃっ!」
 そのままの勢いで後ろへ押し倒されてしまった。

 背中と頭をガツッて格子状の鉄棒にぶつけて、かなり痛い。
 カッと頭に血が上って、問い詰めてやろうと睨み付けたら……何で、そんな顔で
私のこと、見てるんだよ……。
 両手で私の肩を押さえつけながら、すごく平静な顔に微笑みを浮かべて見下ろし
てる。
 それが…悔しいけど…あの夜の梨華ちゃんに重なって……。
 一瞬、何も言えなくなった。
336 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月02日(月)11時53分27秒
 しばらくその体勢のまま。
 だんだん呼吸が苦しくなってきた頃に、吉澤の奴、ニヤッて笑って言った。
「何だか、蜘蛛の巣に捕まった蝶々みたいだね」
 …何? 何なの一体。
 もしかして、私を口説いてる訳?
 どういうつもりなの?

「こんなことして…あんた…何で、ごっちんを悲しませるようなことばっかりする
の?!」
 叩き付けるように言ったつもりが、弱々しく響く自分の声に、何だか舌打ちした
い気持ちだった。
 対して吉澤は、そのままの体勢で大きく息を、一つ、二つ…。
「……ごっちんは特別だよ……」
 ごっちんを思い浮かべたのか、微かに恋する顔になった吉澤。
 なのに私はこんな状況にされてて…もう訳が分からない。
337 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月02日(月)11時54分01秒
「…だから…ごっちんは特別大事にするんだ……」
 宙にゆるんでた焦点が、私の顔にまた結び直す。
「でもね、あんたのことも気になるから…」
 あ…前にホテルで告白されたの…もしかして本心なの?
 てっきり、私と梨華ちゃんの仲をこじらせて面白がってるんだと思ってたのに……。

「あんたは、何て言うか…そう…イジワルした時、妙に可愛い反応するから…」
 にこやかに語る吉澤のことが、改めて怖く感じる。
 背筋にジワジワと悪寒が広がって…。
 何? この感じ…。
338 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月02日(月)11時54分34秒
「でもやっぱり、ごっちんが一番だから…あんたとは…ちょっと楽しくやれれば良
いんだ」
 それって…。
「…遊び…ってこと?」
 混乱した胸の中に吹き出したこの怒りは…ごっちんが可哀想だから…だよね。
「まさか……私はただ、自分の感情に素直でいたいだけ…自分を騙して生きていく
なんて、馬鹿げてると思わない?」
「それは……」

 何て答えれば良い?
 私は何て答えたいの?
 息が苦しくて、頭に酸素が行かなくて、全然考えがまとまらないよ……。
 梨華ちゃん…梨華ちゃん…私、何て言えばいいの?
339 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年09月03日(火)11時06分28秒
 「妙な関係」……。
 帰りの電車に揺られながら、その言葉が頭の中をグルグル、グルグル…。
 明日香ちゃんと私。
 二人って、「妙な関係」なのかな〜?
 こんなにスキなのに……。
 互いに愛し合ってるのに……。

 他人は関係ないって思ってた。今も思ってる。
 面と向かって「変な関係だ!」って言われても、そんなの関係ない。
 今更、そんなことで動揺しない。
 でも……。
 身近な人が、私達のことで動揺してるのを見たら、すごい心が揺れちゃうよ。
340 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年09月03日(火)11時07分00秒
 マネージャーさんの困った顔。
 申し訳ないって気持ちとか、不安だとか……。
 だんだん、だんだん、切なさが込み上げてくる。

 出会いは確かに変だったかも。
 でもそれは私のせい。
 あの頃は、全く自分を見失ってたから……。
 なのに明日香ちゃんは、最初から今までずっと素直で誠実で、真心から私を包ん
でくれてる。
 私だって、それに応えようと一生懸命やってきたつもり。
341 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年09月03日(火)11時07分37秒
 二人で大事に育ててきた、二人の心安らぐ関係。
 それが「妙な関係」だなんて、絶対に認めたくないよ!
 でも…でも…やっぱり「妙な関係」…なのかな〜?

 ねぇ。
 明日香ちゃんはどう思う?
 きっと、いろいろ考えて、それでも
「『妙な関係』なんかじゃないよ」
ってキッパリ言ってくれるよね?
 その時の明日香ちゃんの表情を思い浮かべながら、ちょっと心の平静を取り戻し
たけど……まだ、消しきれない切なさを胸に宿したまま、ゆっくりと窓に流れ込む
駅の風景を見て、そっと立ち上がった。
342 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年09月04日(水)18時41分11秒
作者さんお帰り〜
343 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月05日(木)01時06分18秒
作者さんが戻ってきて嬉しいです!
344 名前:332 投稿日:2002年09月06日(金)18時08分46秒
更新おつかれです^^
二人共悩んでますね〜雑誌記者も嗅ぎ回ってて
嫌な予感もしますが^^;

>>333
遅ばせながらありがとうございました^^
345 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年09月07日(土)11時09分52秒
 ちょっと更新はお休み……ゴメソ
>>342 >>343 ただいまです〜!
>>344 嫌な予感……予感であるうちはまだ幸せ…とか言ってみたり(藁
346 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月09日(月)11時33分40秒
 吉澤に押し付けられて、ダッフルコート越しに冷たい鉄の感触が背中に食い込ん
でる。
 それとは別に、吉澤の手が肩口から下の方へとずれるのが感じられる。
「…あんたはそれで良いかもしれないけど…こんなことしてると絶対、ごっちんを
悲しませることになるって、何で分からないの?!」
 言葉と一緒に、白い息が吉澤の顔に上っていく。
「……黙っててくれれば大丈夫じゃない」
 手も止めずに、そんなことを言ってるけど…ホント、どういうつもり?

 現在進行形で手を出そうとしてる私に対して、いわば共犯になれって言ってる訳?
 馬鹿も休み休み言え!って感じだよね。
 でも…事実を告げて、ごっちんを傷つける役なんて、そんなのも真っ平ごめんだ。
347 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月09日(月)11時34分39秒
 そんな私の惑いなんて関係なく、吉澤はゆっくりと私の胸のラインをなぞる。
 フワフワのコートの上からだから、別に何てことはない…まだ…。
 けど…吉澤のウットリした目が、何だか怖いような…切ないような…。
 ジワジワと背中から染みてくる冷たさが、益々、私の不安感を煽る。
 何の支えもなくブラブラと揺れてる足も、何だか踏ん張りが利かなくてすごく頼
りない。

 この状態から逃げるには……吉澤を押し退けるか、体をずらすしかないけど……
どっちも難しいなぁ。
 力じゃ吉澤に勝てそうもないし、大体、迂闊に体をずらすと、ジャングルジムか
ら落ちかねない。
 頭はそう教えてくれてるけど、吉澤の手がコートのボタンを外しに掛かって、反
射的に抵抗しようとしたら……。
「暴れたら落ちちゃうよ…あんたは怪我しても良いかもしれないけど……梨華ちゃ
ん、悲しむだろうね」
 フッと梨華ちゃんの泣き顔が頭をよぎる。
 う…何だよ。そんなこと言うなんて…卑怯だよ。
 最初に吉澤に言われた通り「蜘蛛の巣に捕まった蝶々」と同じように、見えない
糸で身動きとれなくされちゃった。
348 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月09日(月)11時35分12秒
 すっかりボタンを外されて、胸元をグッと開かれる。
 もちろん、中にはまだセーターとか着てるけど…年末の夜の空気が、私の身を冷
たく包む。
「う…」
 吉澤の顔が胸へと下りてきて、思わず声を出しそうになった。
 ソッと胸の上に置かれる頬。
 顔を谷間に埋めたまま、吉澤は全く動かなかった。

 それ以上、服を脱がされる訳でもなく、恥ずかしい所を触られることもなかった。
 ただただ、私の胸を枕にしているだけ。
「…ちょっと……ねぇ…退いてくれない?…背中が痛いんだけど……」
「あんたの胸…何だか落ち着くんだよね」
 やっぱり、私の苦情なんて聞いてやしない。
「あのねぇ…私は枕じゃないんだけど」
「良いじゃない。どうせ、梨華ちゃんに散々触らせてるんでしょ?」
 そういう問題じゃない!
349 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月09日(月)11時35分48秒
 咄嗟に返事が出来なくて、思わず顔を赤くしてしまう。
「あぁ! やらしいこと想像しちゃったんだ〜」
「ち…違うよ!」
 胸元から顔を上げた吉澤に見下ろされて、何だか無性に恥ずかしくなっちゃった。
「アハハ…すぐにムキになるんだから、ホント、あんたって可愛いよね」
 自分の身を起こして、手を引いて私も起こしてくれる。

「ホント、イジメ甲斐があるよ」
 言うのと同時に、人差し指で私の乳首ちゃんをツンッて…。
「キャッ!」
 一瞬のことで、私がコートの前を掻き合わせた時にはもう、笑い声を上げながら
ジャングルジムを飛び降りてた。
「…もう…馬鹿っ!」
 それにしても、セーター越しにピンポイントで当てるなんて、一体どういう……。
「アハハハ…じゃ、相談に乗ってくれてありがと。バ〜イ!」
 すごく楽しそうに笑いながら、あっと言う間に走って行っちゃった。
 ちょっと…何にも相談なんて無かったじゃない。
 一方的に話して、勝手に胸を枕にして……何だったの一体?
350 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月12日(木)01時29分32秒
真っ赤になっちゃう明日香ちゃん
カワイイ
エッチなよっしーも
なんかカワイイ
351 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月16日(月)23時30分58秒
正当防衛上反撃を
352 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年09月18日(水)11時26分07秒
>>350
 ありがとうございます。
 カワイイ明日香ちゃんを応援してくださいね。
 そして、よっすぃ〜にも要注目!
>>351
 さてさて、明日香ちゃんの方からどんなアクションを起こすか。
 更に梨華ちゃんは?
 ご期待に沿えるように頑張りまっす!
353 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年09月18日(水)11時26分41秒
 駅から少し離れただけで、人通りがほとんどなくなった。
 私の前を歩いてるのは、会社帰りだろうお父さんが一人。
 きっと家で奥さんと子どもが待ってるんだろうなぁ。
 良いなぁ……私は家に帰っても独りぼっち。

 だから、この駅で降りちゃった。
 そもそも、帰りとはまったく違う方向の路線に乗っちゃってた。
 無意識のうちにっていうか……すごい寂しかったから。
 街角を吹き抜ける風だけじゃなくて、心の奥にも冷気が吹き込んでたから……。
354 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年09月18日(水)11時27分18秒
 そのうちに、前を歩いてたお父さんは団地の中へと入って行っちゃった。
 冷たいコンクリートのかたまりから、温かそうな団欒の光がいくつも漏れ出てた。
 それを見てる私は、暗く寒い道の上。
 もう、私の前にも後ろにも誰もいない。
 今、私は独りぼっち……。

 キュッて胸が痛んで、発作のように手が動いてた。
 トゥルルル…トゥルルル…トゥルルル…トゥルルル…ガチャッ。
『もしもしぃ?』
「…もしもし…明日香ちゃん?」
 我慢出来なくなって、歩きながら電話を掛けちゃってた。
『梨華ちゃん?…仕事終わったの?』
「うん…」
 明日香ちゃんの一言一言にしがみつくような思いで、温かさを求めてた。
355 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年09月18日(水)11時27分51秒
 その間も、足は止まらない。
 一歩一歩、目的地に向かって進んでいく。
 道の先に感じる温かい光に導かれるように……。

 今、私の前にも後ろにも誰もいない。
 でも、私は独りぼっちじゃないよね、明日香ちゃん?
 携帯電話をキュッと握りしめながら、どんどん、どんどん、早足になって……ほ
とんど走るようなスピードになってた。
356 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月24日(火)11時09分22秒
 吉澤が帰っちゃった後も、何となく家には戻りたくない気分だった。
 ジャングルジムから下りて、ブランコに座る。
 小さく前後に揺らす。
 少しずつ、少しずつ、大きくなる揺れ。
 足を地面から離して、何を考えるでもなく、ただ揺られる。

 キ〜、キ〜、キ〜……。
 小さくきしむ音が、闇の中に吸い込まれていく。
 それと共に、掴んだ鉄の鎖から、掌にジワジワと冷たさが染み込んでくる。
 さっき吉澤に、ジャングルジムに押し付けられてた背中と同じように……。
357 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月24日(火)11時10分11秒
 吉澤……何であんなことしたんだろう?
 今回のことで実感したけど、やっぱり吉澤の恋愛観は根本的に変わってる。
 それとも…私の方が変なのかな?…そんなことないよね?
 吉澤は、何だか目的別に相手を決めて、その上で、付き合い方を区別出来るらし
い。
 私には、そんなことは出来ないよ。

 例えば目的別っていうと……私が一番大切なのは、もちろん梨華ちゃんでしょ。
 えぇと、それから…休みの日に一緒に遊びたいのは…これも梨華ちゃん。
 悩んだ時に相談するのも…やっぱり梨華ちゃんだなぁ。
 それからそれから…Hなこと…の相手は、梨華ちゃん以外は考えられないし…。
 ともかく、全部が梨華ちゃんになっちゃうんだから、目的別とか区別とか、そん
なの出来っこない。
358 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月24日(火)11時11分01秒
 やっぱり吉澤は変だよ。
 ごっちんのことが好きだったら、どんな時でも、ごっちんのことしか頭に浮かん
で来ないと思うんだけど……。
 吉澤はそうじゃないのかな?
 それとも、吉澤はそんな状態で、他の相手と付き合えちゃうんだろうか?
 もしかして……ごっちんのイメージを相手に被せてる?
 そこまでして、ごっちん本人を守るなんて、ちょっと…どころじゃなく変だよね?

 ――守る?
 自分で勝手にそう思っただけなのに、何故かその言葉に引っかかった。
 吉澤の行動は、本当に、ごっちんを守るためのものなのか?
 そもそも、何から守るのか?
 実際に、守ることが出来ているのか?
 疑問ばかりがグルグルと巡って、全然、答えが見えてこなかった。

 キ〜、キ〜、キ〜……。
 同じ所を行ったり来たり。
 ブランコのような思考を止めてくれたのは、携帯電話の着メロだった。
 ♪〜…。
 地面に足をザザザ〜ッて引きずるようにして止まる。
359 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月24日(火)11時11分52秒
「もしもしぃ?」
『…もしもし…明日香ちゃん?』
 耳に飛び込んできたのは、何だか不安そうな梨華ちゃんの声。
 どうしたんだろう?
「梨華ちゃん?…仕事終わったの?」
『うん…』

 話しながら、もう頭の中は梨華ちゃんでいっぱい。
 やっぱり私は、吉澤のようには出来ない。
 梨華ちゃん一人でも、私の全部でなきゃ受け止められないんだから。
 今だって、自然と全神経を耳に集中してる。
 だからすぐに分かった。
「梨華ちゃん、外なんだね。まだ帰る途中?」
『…明日香ちゃんも外出?…お家じゃないよね?』
 あらら。
 梨華ちゃんも私と同じなんだね。
360 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月24日(火)11時12分22秒
「ちょっとね…何となく、あの公園にいるんだ」
 吉澤のことを隠すのは、少し罪悪感もあったけど…余計な心配はさせたくないか
ら。
『公園?…そっかぁ……』
 気づかれちゃうかも……言葉の空白が、チクリと私を不安にさせる。

「あの…梨華ちゃん?」
『…会いたいの……』
 はい?
 あまりに不意打ちの一言。
「ど…どうしたの、急に……」
『きっと明日香ちゃんなら、会えば分かるよ……会わなきゃ分かんない……』
 何か梨華ちゃん、なぞなぞみたいなこと言ってる。
361 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年09月24日(火)11時13分35秒
「え…でも、今からじゃ時間が遅くなっちゃうよ?」
 今、梨華ちゃんはすごく疲れてるはずだよ。
 年末は信じられないくらいハードだって、経験上、私には分かってるから。
 この時期、無理をしちゃうと本当に体調を崩しちゃうんだからね。
 梨華ちゃんだって、そんなこと分かってるでしょ?
『すぐだよ…ほんのすぐ』
 すぐって言ったって……。

 その時、公園の入り口からタッタッタッタッタッて足音が響いてきた。
 まさか……。
「ホラ、すぐだったでしょ?」
 荒い大きな息で白く曇った向こうに、梨華ちゃんがニッコリ笑ってた。
362 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年10月03日(木)10時11分09秒
 目も口もポカ〜ンて開いて私を見てる明日香ちゃん。
 ブランコに腰掛けてて、ほっぺの赤い「少女」って感じで、その姿はもうねぇ…
可愛いのっ!
 途中から走りっぱなしで、まだ息も落ち着いてないけど、明日香ちゃんの前にテ
テテテテッて近寄っていく。
 口をパクパクさせてる明日香ちゃんの前にかがんで、頭をなでなでしちゃう。

「あの…梨華ちゃん…何で?」
 ん? 「何で?」って何が?

 何で、頭をなでなでしてるのか?
 何で、こんなに早く着いたのか?
 何で、ここに来たのか?

 とにかく、そんなことはどうでも良いじゃない。
 私は明日香ちゃんに会えただけで、こんなに幸せいっぱいだよ?
363 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
川o・-・)ダメです…
364 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年10月03日(木)10時12分28秒
「迷惑…だった?」
 それだけが心配。
 明日香ちゃんは、私に会いたくなかったの?
 寂しくなかったの?
 明日香ちゃんは強い人だもんね……。

「ううん…でも…梨華ちゃんが疲れちゃってるだろうなって思ったから…」
 まだ頭をなでてる私の手を握って、明日香ちゃんはそっと立ち上がった。
「大丈夫?」
 心配そうに私の目を覗き込んでる。
「全っ然、大丈夫! 明日香ちゃんの顔を見たら、疲れなんてどっか行っちゃった
もん」
 そう言って笑ったら、やっと明日香ちゃんも微笑んでくれた。
365 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年10月03日(木)10時13分08秒
 明日香ちゃんに会ったら、あれも言おう、これも聞こうって考えてたんだけど…
…全部、どうでも良くなっちゃった。
 今、二人で手をつないで、公園から明日香ちゃん家まで歩いてる。
 私達以外、何も動くものがなくて、だから「今」は私達だけのもの。

 明日香ちゃんの「今」と私の「今」。
 冬の夜に響く足音が、二人の「今」が重なってることを教えてくれてる。
 大事な「今」が、何かお話ししている間に消えちゃうんじゃないかって、怖くて
何も言えなかった。
 ギュッて指先に力を入れて、しっかりと明日香ちゃんの手を握る。
 明日香ちゃんも、ギュッて握り返してくれて…満たされた喜びが、フツフツッて
心に浮かび上がってきてた。
366 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月04日(金)03時40分49秒
キターーーー
367 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年10月07日(月)14時34分26秒
>>366
 お待たせしちゃってごめんなさい。
 最後まで頑張りますので、見捨てないでくださいね。お願いします。
368 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年10月07日(月)14時35分08秒
 ビックリしちゃったよ、もう…。
 突然、目の前に梨華ちゃんが出てくるんだもん。
 あんまりにも予想外だったから、「私が、よっすぃ〜のことをいろいろ考えてた
から、焼き餅焼いて、梨華ちゃん、テレポーテイションして来たのかも?!」とか、
思わず非現実的なこと考えちゃったよ。
 そんな風に、ちょっと気が引けちゃってたところに、
「迷惑…だった?」
なんて言われたら、もう焦っちゃうじゃない。

「ううん…」
って言うのが精一杯で、
「でも…梨華ちゃんが疲れちゃってるだろうなって思ったから…」
とか、言い訳めいたこと口にしちゃったよ。
369 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年10月07日(月)14時35分58秒
 でも…ホントにごめんね。
 梨華ちゃんが小川さんのことで泣きながら電話してきてくれた時、反省したはず
なのに、相変わらず私は、根拠のない余裕で一杯。
 相手の気持ちが分からないなんて、まるっきり子どもだよね。
 それも、かなり嫌な子どもだよ…私って。
 ブランコに座ったままの私の頭を、腰をかがめて髪を撫で付けてる梨華ちゃんが、
すごく大人に見えた。

 その手をそっと握って立ち上がる。
 二人並んで立っても、やっぱり私が見上げる位置関係。
 ニッコリほほ笑んでても、梨華ちゃんの目元には重なった疲れの色が見える。
 その何割かが私の子どもっぽいワガママのせいだって思うと、胸がズキッて痛むよ。
「…大丈夫?」
 そうは聞いてみたけど……。

「全っ然、大丈夫! 明日香ちゃんの顔を見たら、疲れなんてどっか行っちゃった
もん」
 そういう風にしか、梨華ちゃんは答えないだろうってこと、分かってるのに聞い
ちゃった。
 その言葉を、私は何とか微笑んで受け止めるしかないってことも分かってる。
 いつまでも寒風の中に梨華ちゃんを置いておく訳にもいかない。
 だから、手を引いて家に向かう。
 梨華ちゃんは、すごく嬉しそう。
 手をつないで歩くのなんて、久しぶりだもんね。
370 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年10月07日(月)14時37分26秒
 でも…本当は、私だって嬉しいんだよ。
 だから、梨華ちゃんの指先に力がこもった時、それに応えるつもりでギュッと握
り返したんだ。
 家に着いてからも、その手を離したくなかったけど、そうもいかないよ。
「お帰り…あら? 石川さんも一緒?」
 出てきたお母さんが、不思議そうな顔をしてる。

「あ、うん…電話したら、近くでロケやってるって言うからさ…石川さん家まで遠
いし、泊まっていったら?って……」
 咄嗟にそんなウソをついちゃった。
「……そう。別に良いけど…それならそうと電話してくれれば良いのに」
 不満そうな顔で私を睨んで、パッと表情を和らげて梨華ちゃんに向き直るお母さ
ん。
「明日香が無理を言ったんでしょう? ごめんなさいね、石川さん」
 この変わり身の早さ……大人って怖いよね。
「あ…いえ…こちらこそ急にお邪魔しちゃって……」
 梨華ちゃん、緊張しちゃってる。
 …ちょっと可愛い。

「どうしましょ。晩ご飯ならまだあるけど…でも、明日香と違ってこんな時間に食
事をとったりしないのかしら?」
 そんなこと言いながら、まだウロウロしてる。
「もう! お母さんは良いから。後は私がちゃんとお世話します」
「そんなこと言って…もう…」
 口を尖らせてブツブツ言いながら、それでも肩をすくめてやっと居間の方へと姿
を消した。
371 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年10月07日(月)14時38分00秒
 ホッとして振り返ったら、梨華ちゃんがクスクス笑ってた。
「相変わらず、お母さんと仲良いんだね」
「そんなこと…」
 恥ずかしくなって、言い訳を口の中でモゴモゴ。

「そ…そんなことより」
 この時期、一番、体を冷やすことに気を付けないとね。
「梨華ちゃんは先に私の部屋へ上がってて。お風呂にお湯張ってくるから」
 階段下でそう言って、バスルームに向かおうとしたら……
 フワッて背中から抱き締められた。
「…離れたくない…一瞬でも……」
 そんなことされたら…もう、何が何だか分からなくなっちゃったよ。
372 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月10日(木)08時26分18秒
お母さんにタジタジな明日香ちゃんキャワイ!
373 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月10日(木)19時05分34秒
お風呂 一緒に入っちゃったりなんかしたら・・・(妄想中)
374 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年10月15日(火)05時08分09秒
妄想もまた楽し
375 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年10月17日(木)12時03分48秒
>>372
 明日香ママは強者ですから。
 何せ、明日香ちゃんのママですからね(藁
>>373 >>374
 そうです。
 妄想が楽しいから、この作品も続けてるってことですから。
376 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年10月17日(木)12時04分35秒
 ――離れていっちゃう…明日香ちゃんが…私から……。
 明日香ちゃんの背中を見ただけで、そんな思いが溢れてきて心が冷えた。
「…離れたくない…一瞬でも……」
 背中から抱き締めた明日香ちゃんの体は、小さくて柔らかくて、温かかった。
 その温もりで、何とか震える心を温める。

 腕の中で身じろぎして、明日香ちゃんは首だけ振り返って目の端で私を見つめて
る。
「り…梨華ちゃん……」
 そこから後の言葉は聞こえなかった。
 口をパクパクさせてほっぺを朱に染める明日香ちゃん。
 愛しさと一緒に「絶対に離さない!」って込み上げてくる…これって、純粋じゃ
ない思いだよね。
377 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年10月17日(木)12時05分15秒
「梨華ちゃん、何かあった?」
 明日香ちゃんの質問に、胸がいっぱいで首を振ることしか出来なかった。
 困った顔のまま
「…じゃ…一緒に……」
 後は口の中でモゴモゴ言いながら、やんわりとほどいた私の手を取って歩き出す。

 ごめんね、明日香ちゃん…いつも迷惑ばっかり掛けちゃって。
 いけないなって思ってるんだよ、いつも。
 でも…どうしても…ね。
 甘えちゃってるね。
 しっかりしなきゃ!って思うんだけど……。
378 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年10月17日(木)12時05分50秒
 何も言わずに手を引いたまま、脱衣所からバスルームに入っていく明日香ちゃん。
 背中越しに、キュッて蛇口をひねる音がして、お湯が流れ出す。
 そのまま脱衣所に戻って……何故か明日香ちゃん、そこで立ち止まっちゃった。
 ちょっと考え事してるような、何かを我慢してるような、そんな感じ。

「明日香ちゃん?」
 どうしたんだろう?って思って、声を掛けたら
「…ハ〜」
って思い切ったように息を吐いて……バタンッて脱衣所のドアを締めちゃった。

「…明日香ちゃん?」
 ますます訳が分からなくなった…のはそこまでで、振り返った明日香ちゃんの目
を見たら、パッと分かっちゃった。
 そうしたら、首から上に血が集まったみたいに、急にほっぺが熱くなって、頭が
ボ〜ッてしてきた。
「梨華ちゃん…」
 明日香ちゃんの声も緊張気味。
 思わず私も体を固くしてうつむいちゃいそうになった。
 ツイッてつま先立ちになった明日香ちゃんの顔が、超ドアップになって……。
 触れ合った唇が、柔らかくて温かくて…涙が出そうになった。
379 名前:ヤスカ 投稿日:2002年10月19日(土)23時48分53秒
はじめてレスします。
最近この小説の存在を知ったのですが、いい雰囲気ですなぁ。
切ない心模様の描写がなんともいえず・・・
最初から丁寧に読ませていただきました。

この物語も終結に向かっているようですが、どんな結末になっても、
「あなたに会えて 本当によかった」「好きになって、よかった」
と、あすりかが心の中で抱くようになってほしいと願っております。
380 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月20日(日)00時35分48秒
>>375
明日香ママが強者という事は梨華ママはやはり…。
381 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年10月23日(水)10時13分59秒
>>379
 初めまして!
 気に入っていただけたようで嬉しいです。
 最後までご期待に沿えるよう、頑張りまっす!
>>380
 梨華ママは……やっぱり梨華ちゃんのママですから(藁
382 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年10月23日(水)10時14分31秒
 キスなんて…するつもりじゃ、なかった…はず……。
 でも、今、してる。梨華ちゃんと。

 廊下で梨華ちゃんに抱き締められた瞬間から、もういつもの私じゃなくなってた。
 背筋にゾクッて、電気みたいなのが走って。
 いつの間にかバスルームに二人で立ってて、そしたら胸がドキドキ、ドキドキし
ちゃって。

 頭の中ではね、
「ここでキスなんて変だよ」
とか
「梨華ちゃんに嫌われちゃうよ」
とか、いろいろ浮かんだんだけど……そこから一歩も足が動かなくて、込み上げて
くる感情に逆らえなくて…で、こういうことになっちゃってた。
 これって…私から誘った…ことに…なるのかな?
 ……なるよね。
383 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年10月23日(水)10時15分03秒
 あぁ…何か自己嫌悪。
 だって、今までずっと
「お互い好きだからって、やっぱり、けじめは必要だと思う」
って言い続けてきたのは、どこの誰?って感じ。
 自分がされて嫌なことは、他の人にもしちゃいけない。
 まして、相手が大切な人なら尚更だよね。

 でも、どうしても逆らえなかったんだよ。
 ――キス、しちゃいなよ。
 心の奥からささやくんだもん。
 ――梨華ちゃんとのキス、好きでしょ?
 好きだよ。好きだけど…。
 ――梨華ちゃんも喜ぶって。
 そう、かなぁ?
384 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年10月23日(水)10時15分43秒
 振り返ったら、梨華ちゃんが私を見つめてて、そして…唇が、ふっくら咲いてた。
 もう、駄目だった。
 気が付いたら、キス、しちゃってた。

 梨華ちゃんも嬉しかったんだろうね。
 だって、ギュッて私を抱き締めて、すごいディープなキスを返してくれたから。
 もう、駄目。
 私の体、フニャンッて力が抜けていっちゃったよ。
385 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月25日(金)12時47分10秒
明日香ちゃん、梨華ちゃんにラブラブだね
386 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年10月31日(木)14時11分30秒
>>385
 もちろん、二人はラブラブですよ!
387 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年10月31日(木)14時12分07秒
 抱き締める明日香ちゃんからは、いろいろな薫りが漂ってくる。
 髪からは私と同じシャンプーの匂い。
 それと混ざるようにして明日香ちゃんお気に入りのシャープな感じの香水の匂い……。

 あれ?
 これ…この匂いは…何?
 微かに匂う明日香ちゃんのとは違う香水……。
 記憶に引っ掛かる覚えのある匂い。
 この香水、どこかで誰かが付けてたよ……。
388 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年10月31日(木)14時12分45秒
「…どうしたの?」
 唇が離れちゃって、不思議そうな明日香ちゃんの顔がドアップで見える。
「え?!…ううん…別に…」
 ホント、別に大したことじゃないよね。
 だって、愛しい明日香ちゃんが、今、私の腕の中にいるんだから。

 ニッコリ微笑んだら、明日香ちゃんもちょっと首を傾げて笑顔を返してくれる。
 うぅ…か、可愛すぎる…。
 思わず背中に回した手で、背筋をス〜ッてさすっちゃう。
「!ぃゃん…な…何? 梨華ちゃん??」
 明日香ちゃん、ゾクッてしちゃったんでしょ?
 それに「何?」なんて聞いちゃって、分かってるくせに。
 これから、一緒にお風呂に入るんだから。
389 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年10月31日(木)14時13分24秒
 私が何も言わずに見つめていたら、見上げる明日香ちゃんの顔が、ちょっとずつ
ピンクに染まる。
 それでも私は、
「脱がしちゃうよ?」
なんて言葉にしない。
 そのままゆっくり、セーターの裾に手を掛けて上にずらしていく。
 明日香ちゃん、息を止めて瞳を見開いて…すぐに目も口もギュッて閉じちゃって。
 恥じらう姿が、また可愛いの。
 その表情だけで、私の鼓動がいつもの二割増しになっちゃうよ。

 そんな幸せな瞬間。
 また、あの香水の匂いがした。
 今度は、ある人物の姿がパッと浮かんできた。
 でも、そんなはずないよね、明日香ちゃん?
 私に隠れて、よっすぃ〜と会ったり、香水が移るくらいに触れ合ったり、そんな
ことしないもんね?

 違う意味で早くなった鼓動を無視して、グッと持ち上げて脱がせたセーターを、
丁寧に畳んで、あっち行けしちゃう。
 次々に私に脱がされていく明日香ちゃんの瞳は、変わらず純粋で……私は、それ
を信じれば良いんだって、自分に言い聞かせた。
390 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年11月06日(水)12時13分57秒
 瞬間、梨華ちゃんに脱がせてもらったセーターから、吉澤の香水の匂いがした。
 きっと、梨華ちゃんも気が付いてるはず。
 なのに知らない振りをしてくれてる。
 私、また梨華ちゃんを傷付けちゃってるね。
 吉澤に会ったことが、とても悪いことのように思えて……。

 脱衣所の湿った空気に身をさらして、ゾクッて身が震える。
 それは寒さだけじゃなくて……。
 ――汚れてる。
 そんな思いが自然に浮かんで、胸がシクシクと痛んだ。

 全身すっかり素肌になった私に、笑顔だけで何も言わない梨華ちゃんが、仕草で
「私も脱がせて」って伝えてる。
 ぎこちなく笑い返して、手だけはテキパキ。
 その間も、憂鬱な考えは頭の中でドロドロ。
 益々気まずいよ……。
391 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年11月06日(水)12時14分35秒
 そしたら突然。
「明日香〜。お風呂なの?」
 ドアの向こうから訊ねるお母さんの声で、グイッて現実に引き戻される。
「う…うん…」
「石川さんは?」
 どうしよう…どう答えようかな……。

「……一緒に入るの」
「はぁ?…本当なの?」
 意表を突かれたって声。
「うん。おしゃべりしながら、ね」
 努めて平然と「こんなの普通のことだよ」って感じで駄目押しする。
392 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年11月06日(水)12時15分32秒
「…ふぅん…そう…ま、良いけど。のぼせたりしないようにね」
 誤魔化せた? ホントに?
「分かってるよ」
 ぶっきらぼうに返事したけど、心の中じゃ安堵のため息。
「じゃ、パジャマ…二人分、用意しておくから」
「ありがとう」

 ホッとしたと思ったら、また緊張しちゃったよ。
 だって…梨華ちゃんが胸を押し付けて、抱き付いてきたから。
 ドギマギしながら見上げると、梨華ちゃんはクスクス笑ってた。
「お母さんに言い訳しちゃって……明日香ちゃんも、私とお風呂に入りたかったん
だね」
って耳元でささやかれて。
 何となく、そう言われると不本意な気がするけど……でも、結果的にはそういう
ことなのかなぁ……。
 もしかして…私も結構、Hなの?
393 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月07日(木)23時57分32秒
驚くママも言い訳するあすかも可愛いっす
394 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年11月11日(月)11時14分47秒
>>393
 遂に明日香ママにも可愛いとの応援が。
 何だかすごく嬉しい作者です。
 頑張りまっす!
395 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年11月11日(月)11時15分29秒
 肌に湯気が触れる柔らかな感覚。
 目の前には明日香ちゃんの可愛い背中。
 お風呂はやっぱり良いよね〜。
 温かいって言うか、ホッとするって言うか……。
 とくに今は、愛しの明日香ちゃんと一緒だし♪

 その明日香ちゃん、寒いのか恥ずかしいのか、とにかく只でさえ小さな体を縮こ
まらせてる。
 でもそれだと洗いにくいんだけど……。
「明日香ちゃん、お風呂なんだから〜リラックスして」
「…リラックス…してるよ」
 いや、あのね、明日香ちゃん……脇ギュッて締めて、肩ガチガチッて力入れて、
そんな「リラックス」って無いと思うの。
 二人一緒のお風呂は、もう何度目かなのに全然慣れないんだね、明日香ちゃん。
 でも、初々しくってそれも可愛い♪
396 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年11月11日(月)11時16分27秒
 ゴシゴシゴシ。
 はい。キレイになりましたよ〜。
「明日香ちゃん、こっち向いてね〜」
「……」
 モジモジしちゃってる明日香ちゃんも可愛いけど、それじゃいつまで経っても洗
えないよ。

「もう! こっち向くの!」
 両肩をガシッて掴んで、無理矢理こっちを向かせる。
「あわわわ…」
 明日香ちゃん、慌てておっぱいを隠してる。
 ……あのね、明日香ちゃん。
 いくら私でも、いつもいつもHなことばっかり考えてる訳じゃないんだよ?
 分かってる?
397 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年11月11日(月)11時17分25秒
「……ホントに?」
 明日香ちゃん、その疑うような目は何?
 ひど〜い!
 本当の本当だよ?
 今はただ、明日香ちゃんをキレイに洗ってあげようとしてるだけなんだから。
 ……そのついでに見れちゃうのは、役得ってことで。

「…ハァ〜……」
 いや、だから、そのため息は……。
 まぁ良いけどね。
「はい、明日香ちゃん。バンザ〜イってして」
 明日香ちゃん、まだ戸惑いながら、それでもオズオズ両手を上げる。
 じゃ、キレイにしてあげるからね〜。

 まずは…やっぱり、おっぱいから。
「梨華ちゃん、やっぱり何か手つきがやらしいよぉ」
「大丈夫」
 何が大丈夫かは、私も知らないけど。
 とにかくキレイにしてあげるからね、明日香ちゃん♪
398 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月16日(土)22時14分36秒
チャミ銀さんの入浴シーンすごく好き
399 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年11月18日(月)16時30分01秒
>>398
 ありがとうございます!
 …って言うか、チャミ銀が一番好きで書いてるんですよね(藁
400 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年11月18日(月)16時30分37秒
 満面の笑みを浮かべて、梨華ちゃんが私の体を洗ってくれてる。
 …なんだけど…もうちょっと、そのぉ……ゴシゴシって感じで洗ってほしいんだ
けど。
「だって〜、力入れ過ぎたら痛いよ?」
 そりゃ、入れ過ぎたらね。
 梨華ちゃん、力入れ無さ過ぎなんだもん。

 まぁ、そのこと自体は別に良いんだよ…。
 ただね…そのぉ…妙に気持ち良いんだよ。
 …時々ゾクッてしちゃうくらい。
 梨華ちゃんの洗い方…って言うか、触り方、別の意図がこもってない?
401 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年11月18日(月)16時31分21秒
「ないない♪」
 歌うような梨華ちゃんのご返事。
「…ホントにぃ?」
「ないよ〜…で『別の意図』って…どういうの?」
 え?!
「……『別の意図』っていうのは、ほら……『別の意図』…だよ……」
「何それ〜。分かんないよ〜」
402 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年11月18日(月)16時32分14秒
 絶対わざとだね。
「分かってて、私に言わせようとしてるでしょう?」
「え〜? 何が〜?」
 とぼけちゃってる梨華ちゃんの笑顔は可愛いけど、ちょっと小憎らしい……。
「…Hなこと……」
「『Hなこと』って?」
 苛めだ…陰湿だよぉ!
 なのに梨華ちゃんはニコニコ微笑んだまま。
403 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年11月18日(月)16時32分56秒
「今日の梨華ちゃん…意地悪だよ……」
 拗ねてみせたら……。
「!キャンッ!」
 特大のゾクッ!が襲ってきた。
「り…梨華ちゃん…嫌だぁ」
 梨華ちゃんの指が、私の乳首ちゃんをつまもうとしてる。
 泡で滑って逃げるのを、弄ぶように追いかけ続ける意地悪な指。

 腕で隠そうとしても、それさえ逃げるように隙間から乳首ちゃんが顔を出しちゃう。
「えいっ!」
 しっかり捕らえた人差し指と親指から、ツルンッて逃げる乳首ちゃん。
 …いつもと全然違う感触に、ゾクゾクが止まらないよ。
「り…梨華ちゃ〜ん……」
 身もだえながら、息が荒くなってきちゃって…。
「『Hなこと』って……こういうこと?」
 ググッて全身で寄ってきた梨華ちゃんが囁いて、チュッて耳元にキスをくれた。
 可愛い小悪魔・梨華ちゃんに捕らわれた小さな子羊・私の運命は……。
404 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年11月19日(火)15時09分56秒
 別にHなことしようと思ってたんじゃないんだよ……最初はね。
 明日香ちゃんのふっくらバストが、綺麗だな、可愛いなって思いながら洗ってた
だけ。
 やっぱり明日香ちゃん、大きいよね。
 アンダーバストのライン(バージスライン)がクッキリしてる、明日香ちゃんの
ふっくらバスト。
 乳首ちゃんもすごい可愛らしいの。

 私も大きいって言われるけど、はっきり言って自分のにはちょっとしか興味がない。
 だってね…あんまり感動がないんだもん。
 それに比べて、明日香ちゃんのを見たら、可愛くて、綺麗で、何かね〜安心するの。
 ホッと出来る。
 何故だかは分からないんだけど……。
405 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年11月19日(火)15時10分30秒
 だから、念入りに丁寧に洗ってた。
 ただそれだけ。
 なのに明日香ちゃんは
「くすぐったい」
とか
「変な感じがする」
とか言って嫌がるんだもん。

 最後には
「梨華ちゃん…何か洗うのと別の意図ない?」
とか言っちゃって。
 明日香ちゃんから恥ずかしそうに
「…Hなこと……」
って言われたら、私だって、そりゃ我慢出来なくなるよね?
 そんなにご期待されちゃったら、応えない訳にはいきませんとも!
 だからこれは全部、明日香ちゃんのせいなんだからね。
406 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年11月19日(火)15時11分10秒
 ボディソープの泡に包まれてても、そこだけはポッと灯った明かりのように色付
いた乳首ちゃん。
 そこを
「えいっ!」
って、つまんじゃう。
 あ…ツルンッて滑って逃げられちゃった。

「!キャンッ!」
 ……もうダメです。
 こんな可愛い声で誘われちゃったら、頭の中から他の全部がどこかへ飛んで行っ
ちゃったよ。
 夢中になって泡に包まれた乳首ちゃんを追いかけてた。
 明日香ちゃんは身もだえながら、クッて下唇を噛んで声を我慢してる。
 でも、息が荒くて…色っぽいよ〜。
407 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年11月19日(火)15時11分51秒
 そういうのを見ちゃうと、私も何だか切ない感じだよ。
 右手は相変わらず乳首ちゃんを追いながら、左手は自然と下りていって……。
「あ…ふぅ…」
 自分で触っちゃってた。
 …もう潤んじゃってたし。

 そのことを確認して、やっと恥ずかしさが込み上げてきた。
 チラッと明日香ちゃんを見たら…。
「り…梨華ちゃん?」
 や〜ん!
 ビックリ顔の明日香ちゃん。
 見られちゃったよ〜。

 どうしよう…どうしよう…。
 頭がグルングルンしちゃって。
「明日香ちゃん…オナニー…したこと…ある?」
 わ〜!
 私、何聞いてるの〜!!
 もうパニックしちゃって何が何だか…。
「私のこと…思い出しながら…したこと…ある?」
 なのに勢いでここまで聞いちゃうし。
 明日香ちゃん、私のこと嫌いにならないで〜!!
408 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月23日(土)01時23分45秒
凄くイイ展開! わくわく
409 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月24日(日)13時20分07秒
梨華ちゃんナイスな質問(w
さて明日香ちゃんはどう出るか 楽しみ!
410 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年11月25日(月)11時51分52秒
>>408
 わくわく、それが一番嬉しい感想かも。
>>409
 パニクる明日香ちゃんの巻。
 どうでしょうか?
411 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年11月25日(月)11時52分24秒
「明日香ちゃん…オナニー…したこと…ある?」
 梨華ちゃんの濡れた瞳に見つめられて、その言葉を聞きながら、私の意識は凝固
した。

 オナ…何?
 え?!
 オナニー…って……あの「オナニー」?
 え? え? え?……。
412 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年11月25日(月)11時52分55秒
「私のこと…思い出しながら…したこと…ある?」
 梨華ちゃんのことを?
 ……いくつかの夜がパ〜ッと脳裡を過ぎ去って、怖くなって慌てて追い払う。
 湯気の立ち込めたバスルームなのに、唇がカサカサ。
 否定の言葉も、肯定の言葉も、どっちもが引っ掛かっちゃって声にならない。

「…私は…明日香ちゃんのこと…思い出してしたことあるよ?」
 もう、さっきから梨華ちゃんの一言一言が、ドカンドカンッて私の理性を破壊し
ていく。
 梨華ちゃんが…私のこと思い出して…してるの?
 私にもたれ掛かるようにして左手を使ってる姿が生々しくて、胸が塞がったよう
に息苦しい。
413 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年11月25日(月)11時53分29秒
 私も……したことあるよ。
 こうやって……。
 梨華ちゃんを支える右手。
 潤んだ私自身へと下りていく左手。

「ぁ…はぁ…ん!…はぁ…はぁ……」
 差し迫った喘ぎ声が鼓動のリズムと同期して胸に響く。
 これ…梨華ちゃんの?…それとも…私?……。
 もう…もう見栄も外聞もなくて……。
「したことあるよ…私も…私も梨華ちゃんのこと……」
414 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年11月25日(月)11時54分12秒
 物憂げに私を見上げた顔の中で、瞳だけが喜びで輝いてた。
「嬉しい…明日香ちゃんが私のこと…はぁん…」
 肩を揺らしながら、私の方に首をスッと伸ばして…互いの唇をついばむように
キスを交わした。
 ハートがドキンドキンと二つリズムを刻む間。
「あふ…ぁ…」
 自分の指で呼び起こされる快感に耐えきれずに、力尽きたように梨華ちゃんの
首が私の胸元に垂れる。
 私も…もう…限界だよ。
 その時、胸元を伝って梨華ちゃんの唇が乳首ちゃんをくわえる。
 でもそれは、いつもみたいな愛撫じゃなくて……チュウチュウとおっぱいを吸う
赤ちゃんみたいで……。

 ――私が守ってあげる。梨華ちゃんを守ってあげるから。
 理屈でも判断でもなく、ただ湧き上がってくる感情だけが私を包んで、そして……。
「ぁ…あ…り…梨華ちゃん!」
「ぁふ……あ…明日香ちゃん!」
 二人でもたれ合って果てた。
415 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月25日(月)20時01分13秒
明日香ちゃんもオ(ryしてたとは! 結構ビクーリ
416 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月26日(火)11時10分38秒
>>415 あすりか2の174〜176あたりのお話だよ〜
    懐かしいね〜
417 名前:415 投稿日:2002年11月27日(水)00時27分34秒
>>416 あ、読んだはずなのに! 忘れてますた(w
418 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月27日(水)21時51分21秒
お風呂でこんな声出したら響いて家の人に聞かれちゃいそう(w
419 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月28日(木)11時25分09秒
>418 むしろそういう展開をきぼん(w
420 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年12月02日(月)14時21分52秒
>>415 & >>416 & >>417
 あ、すごい!
 こんなに長く続いてるのに、覚えててくれた読者さんがおられるなんて。
 作者でも忘れてることいっぱいあるのに(藁

>>418 & >>419
 唯でさえ響くお風呂場なのにねぇ。
 この二人は何考えてんだか…って、え?!「オマエがやらしてるんだろ!」。
 …はい、その通りです。
 ごめんなさい(ペコリ
421 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年12月02日(月)14時22分40秒
 麻琴ちゃんに言われた言葉…「汚らわしい」って言葉。
 今、私は明日香ちゃんの目の前でそれを証明してる。
 恥ずかしい行為を見られて興奮してる。

「…私は…明日香ちゃんのこと…思い出してしたことあるよ?」
 こんなことまで告白しちゃって……。
 だって…好きなんだもん。
 一緒にいられないときでも、ずっと触れ合ってたいんだもん。
 明日香ちゃんに会えずに、一日が終わっていくのが寂しいんだもん。
 だから……。
422 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年12月02日(月)14時23分29秒
 やっぱり私って「汚らわしい」よね。
 もう、明日香ちゃんにも呆れられちゃったかも。
 何でこんな変なこと言っちゃったんだろう。
 明日香ちゃんにまで嫌われたら、私、どうしたら良いの?

 なのにその上、明日香ちゃんにまで
「私のこと…思い出しながら…したこと…ある?」
とか訊いちゃったし。
 そんな訳ないじゃん。
 明日香ちゃんは私と違って……。
423 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年12月02日(月)14時24分25秒
「したことあるよ…私も…私も梨華ちゃんのこと……」
 ホントに?!
 信じられない。
 でも…嬉しい…。
 見上げたら、明日香ちゃんの瞳も潤んでた。

 明日香ちゃんも私と同じようにしてた。
 二人の心臓のドキドキが重なって……。
 乱れる呼吸をぶつけるように、荒々しくキスをした。
424 名前:チャーミー石川 投稿日:2002年12月02日(月)14時25分08秒
 視界がチカチカッて。
 あ…ママ。
 ううん。明日香ちゃんだよね?
 でも…このおっぱい、やっぱりママ?
 訳分かんなくなっちゃったよ〜。

 どっちにしても…梨華、悪い子でしょ?
 こんな恥ずかしいことしてるの。
 見られてるのに指が止まらないの。
「ぁふ……あ…」
 悪い梨華を許して、ママ。
 ううん、明日香ちゃん。
 許して……。
「明日香ちゃん!」
425 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年12月10日(火)12時43分26秒
 ……やっちゃった。
 本来、自分一人の秘め事のはずなのに。
 それも、よりにもよって梨華ちゃんに…最も嫌われたくない人に見られちゃうな
んて。
 ただただ呆然としちゃうよ…。

 お互い、しがみつくように抱き合いながら、肌の柔らかさを感じてる。
 きっと梨華ちゃんが感じてる私の体温、すごく熱いだろうな。
 恥ずかしさと、二人同時に感じた爆発とで、脳みそが熔けちゃうくらいに熱がこ
もってる
 本当は恥ずかし過ぎて、こんなにのんびりなんてしてられないはずなのに、そん
なことすら考えるのが億劫になってる。
 今はただ、こうして二人で……。
426 名前:焼き銀杏 投稿日:2002年12月10日(火)12時45分41秒
「明日香、どうしたの? 何だか変な声が聞こえたけど……」
 お母さん!
 ドアの向こう、入り口のあたりから聞こえてきた声に、さっきまでと違う意味で、
心臓がバクバク。
 梨華ちゃんも飛び上がりそうになってる。
 な…何て答えよう。
 えぇと…えぇと…。
 視線があちこち揺れて、ドアから梨華ちゃん、お湯の波、タイルの継ぎ目、それ
から梨華ちゃん、ドア……。

「…ごめんないさい…ちょっと二人でふざけちゃっててさ」
 えぇい!
 こうなったら開き直りが肝心だ!
「ふざけて…あぁ…そう……」
 今までに聞いたことのない、狼狽えた感じのお母さんの声だ。
 へぇ…こんな反応する時もあるんだ。
 妙なことで感心してるうちに、何となく落ち着いてきちゃった。
 梨華ちゃんと目があって、思わず笑い出しそうになっちゃって、二人で懸命に我
慢した。
427 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月24日(火)12時02分46秒
期待age
428 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年12月26日(木)16時56分34秒
 すいませんです。
 ちょいと入院なんぞをしていたもので、更新が延び延びになっちゃってます。
 退院しましたので、もう少しお待ちいただけると幸いです。
429 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月27日(金)22時09分17秒
作者さんお大事に。
気長に更新待ちます。
430 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月30日(月)00時37分01秒
入院されていたとは。
健康第一ですから、無理せずゆっくり直して下さい。
431 名前:おっぱい 投稿日:2003年01月07日(火)14時19分04秒
おっぱいのみてー
432 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2003年01月10日(金)16時23分05秒
>>429 & >>430
 ご心配お掛けしちゃってごめんなさい。
 もう随分良いんですよ。
 ってことで、久々の更新です。
 実は、入院前に書いてたのを書き直したら、まったく別物の展開になっちゃいま
した(藁
 大丈夫なのか?>自分
 何とか予定してるプロットに戻れる…はずです。
 きっと…たぶん…。

>>431
 駄目です!
 明日香ちゃんのは梨華ちゃん専用なので(藁
433 名前:チャーミー石川 投稿日:2003年01月10日(金)16時24分29秒
 明日香ちゃんのお母さんの声がした時、心臓が止まるんじゃないかと思うくらい
ビックリしちゃった。
 だって…ちょうど明日香ちゃんとママとが、頭の中でゴッチャになって「ごめん
なさい」してる時だったから……。
 だから、明日香ちゃんがいつもみたいに上手く誤魔化してくれて、見つめ合って
クスクス笑いを我慢してる間も、本当はドキドキが止まらなかった。

 何であんなことしちゃったんだろう…。
 何であんなこと言っちゃったんだろう…。
 自分でも分からないよ…。
 でも……やっぱり、あれが原因かな〜?
 明日香ちゃんのおっぱい…触れると、見ると、感じると……すごい安心できるの。
 まるでママが傍にいるのが分かってる時みたいに。

 だから…だから……何だろう?
 ホッと気が抜けちゃって、あんなこと、しちゃったり言っちゃったりしたのかな〜…。
 でもやっぱり、ホントのところは自分でも分からないよ。
434 名前:チャーミー石川 投稿日:2003年01月10日(金)16時25分16秒
 いろいろ考えてたら、のぼせちゃいそう。
 明日香ちゃんのほっぺも真っ赤だったから、
「…上がろっか」
「そうだねぇ…ふぅ……」
って感じで、二人でフラフラしながら立ち上がった。
 明日香ちゃんを支えるために腕を回してあげて……自然な感じでお尻に触ったの
は、ナイショナイショ。
 ふっくら柔らかで、ちょっとトキメキ。

 そんなイタズラ心を出しながらお風呂場から脱衣所に出たら、パジャマが二つ置
いてあった。
 明日香ちゃんの服はなくなってるし、私の服はキチンと畳んである。
 あれ?って感じで明日香ちゃんを見たら、クスクス笑ってる。
「…きっとお母さんだよ。さっきの慌てぶりを誤魔化すつもりじゃない?」
 あ〜…なるほど。
「今さら無理なのにねぇ…ああ見えて、お母さんも意外と慌てん坊なんだから……」
 明日香ちゃんは、そんなこと言ってるけど…ホントは私たちの方が恥ずかしいこ
としてた訳で……。
 きっとお母さんが驚いちゃうような声が聞こえちゃったんだよ……どうしよう…。

「でも…明日香ちゃん……」
 心配が声に出ちゃった。
「大丈夫だって。こっちが平気な顔してたら、お母さんも聞き間違いだって思うか
らさ」
 ホントに〜?って思ったけど、心配するのはやめにした。
 だって、明日香ちゃんの言う通りにしてたら間違いないもんね。
 うん!
 大丈夫だよ!
 ……きっと……たぶん……。
435 名前:焼き銀杏 投稿日:2003年01月15日(水)11時40分54秒
 お母さんったら、日頃は私のパジャマなんか出してくれないのにさ…。
「自分のことは、ちゃんと自分でしなさい」
とか言ってさ。
 ちょっと可笑しいと言うか…微笑ましいと言うか……。

 パジャマに着替えた私達が廊下に出たら、慌ててリビングに入っていくお母さん
の後ろ姿が見えた。
 アタフタしちゃって。
 ホント、珍しいもの見せてもらった感じだよ。
436 名前:焼き銀杏 投稿日:2003年01月15日(水)11時41分33秒
 …とか、いい気になってクスクス笑ってる場合じゃなかった。
 今度はまた、私自身がアタフタしちゃって…。
「ねぇ、明日香ちゃん、良いでしょ?」
 梨華ちゃんと二人して私の部屋に入って、いつも通り、梨華ちゃんはベッド、私
は床に布団を敷いて…と思ったんだけど……。
「ねぇ…明日香ちゃんもベッドで寝ようよ」
 えぇ!?…そ…それは……。

「二人の方があったかいよ?」
 それはそうです…人肌ってくらいですから…でもね…。
「暖房なんか切っちゃった方が良いよ…ね?…乾燥しちゃうし」
 う〜……た…確かにのどは大切にしなきゃ駄目です…でもね…。
「風邪ひいたら困るし」
 もちろん、梨華ちゃんに風邪なんかひかせられないよ!…でもね…。
「も〜…このままじゃ湯冷めしちゃうよ〜」
 いやだから…梨華ちゃんはベッドに入ってくださればよろしいのですが…。
「イヤッ! 明日香ちゃんと一緒じゃなきゃ入らないもん!」
 梨華ちゃん、そんな駄々こねないでよ……。
「…少しでも明日香ちゃんの近くにいたいの」
 ……もう何も言えません。
437 名前:焼き銀杏 投稿日:2003年01月15日(水)11時42分27秒
 そんなこんなで…二人でベッドで寝ております。はい。
 梨華ちゃんの言う通り、確かに一人の時より格段に温かいね。
 エアコンも切っちゃって、加湿器だけが音を立ててる。
 ホントのこと言うと、私も嬉しいよ。
 梨華ちゃんをすごく近くに感じられて。
 でもね…。

「あのぉ…梨華ちゃん…何でこういう体勢なんでしょうか?」
 ちょっと息苦しかったりするんですが…。
「だって〜、すごく安心できるんだもん。きっとよく寝られそうだから」
 ちょっとくぐもった梨華ちゃんの声。
 何故かと言うと…スッポリと頭を布団の中に埋めてるから。
 寄り添うように横向きで寝た梨華ちゃんの頭が、ちょこんって私の胸のところに
置かれてる。
 ドラマに出てくるベッドで寝てるカップルのような体勢。
「こんなの実際はないよね」
とか思ってたんだけど……。

 とにかく……。
「ねぇ、梨華ちゃん…やっぱり寝にくくない?」
 すんごく緊張しちゃって、ドキドキ、ドキドキしてる心臓の音を聞かれちゃうよ。
「………」
 あれ?
 返事がない。
 そっと布団の中を覗いてみたら、梨華ちゃん、もう寝ちゃってた。
 はぁ…もうこれは、有無を言わさずこのままでいるしかないってことっすね。
 ゆ〜っくり掛け布団を下にずらすと、幸せそうな梨華ちゃんの寝顔が現れる。
 その寝顔を見つめながら、今日、梨華ちゃんが突然やってきた理由とか、いろいろ
考えながら、私も静かに目を閉じた。
438 名前:チャーミー石川 投稿日:2003年02月03日(月)16時29分10秒
 あったかい……。
 そっと載せた私のほっぺを、ふわっと包み込んでくれる柔らかさ。
 心の奥の方から、じわっと安心感が湧いてくるよ。

 あぁ…ここは私の居場所なんだね。
 さっきまで胸の中で強張ってた不安が、溶けて流れる。
 肩こりのように強張ってた強がりが、す〜ってほぐれちゃう。
439 名前:チャーミー石川 投稿日:2003年02月03日(月)16時29分41秒
 お風呂の中で無心にしゃぶってた明日香ちゃんのおっぱい。
 今も私を受け止めててくれてる。
 こんな私でも……。

 とてもじゃないけど、明日香ちゃんみたいに上手に歌うことなんて出来ない。
 ダンスの方はまだマシだと思うけど…明日香ちゃんみたいにカッコ良くは踊れない。
 おしゃべりだって、相変わらず空回りしちゃうし。
 それでも…それでも、明日香ちゃんは私のことを、ちゃんと私として認めてくれ
てる。
 私のままで受け入れてくれる。
440 名前:チャーミー石川 投稿日:2003年02月03日(月)16時30分12秒
 マネージャーさんに言われた「妙な関係」って言葉に、あんな心乱しちゃうなん
て…バカバカしくなった。
 別に他の人から見て、どうだろうと良いじゃない。
 明日香ちゃんの隣にいて、私はこんなに幸せなんだから。

 私にとって明日香ちゃんは、間違いなく掛け替えのない存在なんだから、離れる
ことなんて考えられない。
 それがどんな風に人から見られようと、どんな悪口を言われようと、明日香ちゃ
んだけは失う訳にはいかないよ。
441 名前:チャーミー石川 投稿日:2003年02月03日(月)16時30分46秒
 あったかくって柔らかい明日香ちゃんの胸の上で、そのことを確認できて、私の
中から悩みが全部出て行っちゃった。
 もう何の苦しみもない。
 ただ明日香ちゃんと一緒にいられるだけで、それだけで後はもう何もいらないから。

 ふっと意識を失うように、急に眠気が襲ってきた。
 もうちょっと明日香ちゃんとお話をしてたいな〜。
 でも…あんまりにも心地よかったから、眠気の波にさらわれるままに夢の海へと
沈んでいった。
 おやすみなさい…明日香…ちゃん…。
442 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月03日(月)23時36分09秒
広いシーツの海で泳ぎ疲れて眠る時 君の柔らかな素肌の匂いがしている〜♪

この2人の幸せを壊さないで! ってカンジですが、もしや、嵐の前の静けさ?
443 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2003年02月13日(木)15時31分56秒
>>442
 すごく綺麗なイメージで捉えていただいていて、明日香ちゃんと梨華ちゃんの二人
も、すごく喜んでると思います。
 ありがとうございます。

 さて…随分と長くなってしまいましたし、キリが良いように思いますので、次スレ
に移行したいと思います。
 引き続きご愛読を。

「ままごとのような本当の愛=part2=」
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