red moon
- 1 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年04月11日(木)22時01分35秒
- まだまだ初心者でいきあたりばったりではありますが、こちらで書かせていただきます。
元ネタ少々有りですが、文章は自力で行きますので、よろしくお願いします。
更新の方は、放置無しで週に最低でも1回はしていきたいと。
吉澤ひとみ中心の内容になります。
気持ち、スレがsageってから更新していきたいと思っています。
- 2 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月16日(火)02時30分44秒
- 師匠!見つけちゃいましたよ(w
がんがってください!!
- 3 名前:zero 投稿日:2002年04月16日(火)18時37分34秒
吸血鬼。
世間では、そんな言葉でくくられるらしい。
うちは、他の人と何ら変わりがないと思ってる。
どっからどう見ても、女の子だし。
ただ一つ。
血を食らう、という行為以外は。
- 4 名前:01 love or lust? 〜それはあまりにも遠すぎて 投稿日:2002年04月16日(火)18時40分01秒
月と共に生きていく吸血鬼。
今日もどこかで闇に隠れ、生き血を狙いながら息を潜めている。
あなたの隣にいる人も、もしかするとそうかもしれない…。
- 5 名前:01 love or lust? 〜それはあまりにも遠すぎて 投稿日:2002年04月16日(火)18時43分20秒
街にネオンが灯る頃、辺りを静かに闇が包んでいく。
この街は眠ることを知らない。
終日、建物の灯りが消えることが無く、沢山の音で溢れかえる。
通りに面している坂道は、登っては降り、降りては登りの人の流れを繰り返している。
小さな路地から、その流れを横切ろうとしている女がいた。
彼女は携帯を片手に、「はい、…はい」と気のない返事を繰り返しては、
何度も流れにぶつかっていく。
緩くカールした、肩まである茶褐色の髪を流れに揺らしながら、
白の薄手のコートの裾を翻す。
彼女の名前は吉澤ひとみ。
会話の終えた携帯をコートのポケットに突っ込み、人の流れを抜けると、
細い路地をさらに奥へと進んでいく。
細い路地を抜けると、その道はホテル街へと続いている。
どうやら仕事の連絡だったようだ。
吉澤はあるホテルの中へと何事もないように吸い込まれていった。
そう、この街が彼女の「仕事場」だ。
- 6 名前:01 love or lust? 〜それはあまりにも遠すぎて 投稿日:2002年04月16日(火)18時46分19秒
どこにでもあるホテルの一室。
暗めの室内に浮かび上がる、ベッドサイドにある球体。
小さく流れるBGM。
時を告げる物が一つも置かれていない部屋。
吉澤にとってはどこの部屋も同じに見える。
真ん中にどっしりと置かれているベットに座り込むと大きく息を吐いた。
ベットの向こう側はガラス張りになっている浴室。
勢いよく流れるシャワーの音と高い鼻歌。
白い湯気の向こうに、今日の「お客様」の影がうっすらと見える。
あまり背は高くないようだ。
「そういえばさぁ、名前聞いてなかったよね?」
バスローブを身に纏い、黄金色の髪の毛先に水滴を滑らしている。
ベットの正面の鏡に映る吉澤の姿に話しかける女。
吉澤はベットに倒していた体をその声の方へと向ける。
鏡に映る、けだるそうに女を見る姿。
「仕事」ではあまり相手の名前なんて聞かない、
自分の名前も言わない、言うつもりもないし。
それに、それは意味をなさないし。
- 7 名前:01 love or lust? 〜それはあまりにも遠すぎて 投稿日:2002年04月16日(火)18時48分22秒
ゆっくりと重い体をベットから起こし、ぐしゃぐしゃと髪を掻き上げる。
「…、とみ…」
聞き取れない、女は思った。
「えぇ?何?」
女は鏡から視線を外し、答えをさらに促すようベットの方に体を向けた。
吉澤はベットの上から身を起こし、女に近づくと当たり前のように抱きしめる。
「吉澤ひとみ」
そう耳元で優しく囁くと、吉澤の吐息が女の耳に触れる。
体中に熱が帯びてくる。
心がざわつく。
腕の中で俯いてしまう女の体。
その仕草に気づいた吉澤は、少し体を離して、女の顔をこちらに向かせようとする。
- 8 名前:01 love or lust? 〜それはあまりにも遠すぎて 投稿日:2002年04月16日(火)18時50分18秒
「ねえ…」
低く響く熱い声、自然とそちらへ顔が向く。
吉澤は頬にそっと触れ、視線を合わせるよう顎を少し持ち上げた。
女は甘く濡れた瞳で吉澤を見つめる。
人並み外れた端正な顔立ち、柔らかい眼差し。
視線を逸らすことができない、吸い込まれそうな瞳。
しかし、それは赤く、怪しく透きとおっていた。
「名前なんて、関係ないじゃん」
吉澤はそう囁くと、その薄い唇でくちづける。
柔らかく、軽く啄むように。
何度となく降り続ける。
それは優しいものから、深いくちづけへと変わる。
「んっ…、ふぅ… 」
小さく吐息を漏らし始める口元。
それを楽しむかのように、吉澤は唇の輪郭に舌を這わす。
──さてと…。
次の行動に移るために、吉澤は体を離した。
- 9 名前:01 love or lust? 〜それはあまりにも遠すぎて 投稿日:2002年04月16日(火)18時52分38秒
熱を帯びた肌。
口づけを遮れてしまって半開きの濡れた唇。
さらに深いものを望んでいるように熱く潤んだ瞳。
それらは、吉澤の欲望を煽るばかり。
高ぶる欲望を抑えきれない。
「痛くしてもいい?」
吉澤は首筋に軽くキスをしながら囁く。
女に考える暇など与えられない。
敏感になった肌はピクリと跳ね上がり、さらに赤みを増す。
我慢できない、と女はこくりと頷く。
吉澤は不敵に笑みを浮かべながら、軽く耳たぶを噛む。
緩く結ばれたバスローブの紐は容易く解くことができた。
首筋から胸元に舌を滑らし、空いている左手を胸元に忍ばせた。
- 10 名前:01 love or lust? 〜それはあまりにも遠すぎて 投稿日:2002年04月16日(火)18時54分28秒
「…ぁっ」
濡れた唇から言葉になることのできなかったものがあふれる。
膝の力が抜けそうになり、体を支えることができなくなる。
無意識のうちに吉澤の背中に手を回し、女はしがみつく。
「大丈夫、痛いのは最初だけだから…、あとは…」
両手で胸を弄ぶようにそのまま泳がせ、吉澤の舌先は唇に触れる。
熱い吐息を感じる。
半開きのそこから、切なそうに舌が覗いてる。
触れて欲しそうに。
──おいしそう…。
赤く澄んだ瞳は、さらに怪しく、深い色に染まる。
吉澤は本能の赴くまま、女の首筋にむしゃぶりつく。
女のそこに鋭く深く。
- 11 名前:01 love or lust? 〜それはあまりにも遠すぎて 投稿日:2002年04月16日(火)18時56分14秒
かぷっ
「あぁ!!」
快楽には遠い、小さく悲鳴めいたものが部屋に響く。
ちゅうううううぅ
「はぁあ…っ、ぅんあぁっ…ああああああああぁぁっ」
一瞬にして、快楽に遠くて近いものへと導く。
体中の熱が上昇し、体を大きく揺さぶる。
思うように動かない意識と体が引き裂かれそうになる。
目の前に真っ白の光の世界が広がり、何も見えなくなる。
鼓動が早くなり、あまりの早さに意識は追いつかない。
肌が教えていた熱の感覚は薄れていく。
意識が遠のいてく、これは一体…。
- 12 名前:01 love or lust? 〜それはあまりにも遠すぎて 投稿日:2002年04月16日(火)18時58分17秒
がっくりと頭を垂れる女の体は重みを増していく。
ゆっくり女の首筋から離れる吉澤。
赤く鋭い瞳は、獲物を掴んで放さない。
高揚していた吉澤の感情は、無理に落ち着きを取り戻そうとしている。
その口元には、うっすらと深紅の滴が滴っている。
「ふぅ…」
一つ呼吸すると、滴を舌で拭う。
いつも気を遣う…、そう思いながら、腕にかかる重みをベットに移す。
女の顔を手を近づけ、息をしているのを確認する。
──うん、大丈夫。
そっとベットから離れ、シーツを掛けてやる。
ぼんやり、首筋の痕を見つめる。
- 13 名前:01 love or lust? 〜それはあまりにも遠すぎて 投稿日:2002年04月16日(火)19時00分17秒
もうこんなことを幾度繰り返すのか、ぐるぐると頭の中を駆けめぐる。
額から流れていた汗が冷え、その温度が吉澤を現実へと引き戻す。
そんな感情を冷たい汗と一緒に拭い去りながら、掛けていたコートを羽織る。
「ごちそうさまでした、っと」
両手を合わし、ベットの方にペコリと頭を下げる。
その姿は、行為とは全く無縁な子供のようだ。
そして「仕事」の報酬として、女の財布から札を抜いていくことを忘れない。
部屋の主が起きないよう、吉澤はそそくさとドアを後にした。
- 14 名前:01 love or lust? 〜それはあまりにも遠すぎて 投稿日:2002年04月16日(火)19時01分39秒
静まりかえった雑居ビルの屋上で、吉澤は一人街波を見下ろす。
沢山の色の粒子が眼下にちりばめられていて、人の流れもちっぽけに見えてくる。
ここから街を一望することができ、吉澤のお気に入りの場所の一つである。
吐く息は白く、その白さが自分を取り戻してくれそうで、なんだかうれしかった。
冷たい外気が火照った体に心地よく感じる。
「やっぱ、夜は落ち着くよ」
白い貯水タンクの上に座り込んで、大きくのびをしながら深呼吸する。
体全体が冷たさに染まっていくのが分かる。
ふと、空を見る。
吉澤の薄茶色の瞳には、赤く澄んだ大きな月が映る。
「今日は満月なんだ」
それは吉澤の心を惹きつけて放さない。
月は何か言いたげに見つめる。
さっきまでの行為を見透かされてるようで、吉澤はそれから目を反らすことができなかった。
「今のうちには、あんたしかいないんだよ…」
吉澤はそれに向かって、寂しそうに小さく微笑んだ。
その月明かりは、吉澤が吸血鬼として生きていくようになった頃を思い出させようとしていた。
- 15 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年04月16日(火)19時06分06秒
- >>3-14
更新しました。
- 16 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年04月16日(火)19時10分59秒
- 手探りのまま試行錯誤を重ねつつ、更新してみました。
なかなかうまくはいかない物ですね。これからも精進あるのみです。
まだまだ闇の中ですが、駄文にお付き合い下さい。
>2 よすこ大好き読者。様。
早速有難うございます。
どこまで行けるか、自分でも見通しがついてませんが、やれるだけやってみるつもりです。
見失いかけていたら、いつでも遠慮なくどついてやって下さい。
- 17 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月17日(水)18時18分32秒
- 吸血鬼ものですね。けっこうこの手の話好きなので楽しみにしています。
しかし、師匠。さすが文章がきれいっす。
がんがってください!!
- 18 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月21日(日)15時01分15秒
- 他の登場人物も気になる
- 19 名前:ごーまるいち 投稿日:2002年04月21日(日)23時06分32秒
- おお!前作とは毛色がまったく違いますね!
これからどんな登場人物が現れて絡んでいくのか、すっごく楽しみです。
更新がんがってくださいね(^^)
- 20 名前:婆金 投稿日:2002年04月24日(水)00時15分09秒
- 夜叉さんハケーン!これから、楽しみです。
それにしても、吉ドラキュラ、カッケー★
私も、ちゅぅぅぅっと血ぃ吸われたいものです。
- 21 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年04月24日(水)21時32分08秒
外来宗教の宣教師と日本人女性が恋に落ち、女性の体に一つの小さな生命が宿る。
当時、外来人と結婚する、ましてや子供をもうける等ということが許される風潮ではなかった。
二人の愛はそんな風潮をも蹴散らすかのように激しく、固く結ばれたままだった。
しかし、女性の父親である地主はこの恋、ましてや結婚に猛反対をしていた。
『許されぬ恋』
二人は何もかもから追われるように、夜も更けたある夜に駆け落ちを決行した。
- 22 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年04月24日(水)21時36分53秒
行く宛てはなく、何者からも迫害されることもない遠くを目指し、共に歩いていく。
そして、二人はある小さな里にたどり着いた。
そこの住人らは、外来人であろうと誰であろうと訪れた人を温かく歓迎し、
宣教師であるという事を告げると、有り難い話だ、と口をそろえて二人を迎え入れてくれた。
二人はその地に根を下ろすことにし、女性は無事、一人の女の子を出産する。
吸い込まれそうな大きな茶色の瞳を持った女の子は『ひとみ』と名付けられ、
『二人の希望の光(a ray of hope)』という意味を込めて、『レイ』と英語名を名付けた。
慈父母の大きな愛と里の住人らの慈愛に包まれて、娘はすくすくと育っていった。
- 23 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年04月24日(水)21時41分13秒
しかし、時代は大きく歪み始める。
娘が5歳の頃、日本は外来宗教を禁じる政策を取り始めた。
それは布教を阻止し、宣教師を弾圧、排除する、というものだった。
危険は押し迫っていた。
いくら小さな里だと言っても行政の手は入る。
門前に外来宗教の紋を掲げていた宣教師の家を見つけることは容易く、
庭先に色を咲かせていた花々は多くの使いの者によって踏みつぶされていく。
事の重大さに危険を感じ、犠牲は一人でいいと考えた宣教師は
里の住人に頼み、自分の妻と娘を密かに逃がした。
一人その地に残った宣教師は、行政の手によって捕らえられ、
多くの宣教師らと共に島へと流されたのだった。
- 24 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年04月24日(水)21時43分06秒
里の住人の手を借りて難を逃がれた二人は、宣教師の無事を祈りつつ、
この地を離れようと、山の向こう側に抜ける道を急いでいた。
──ここなら、まだ…。
離ればなれになってしまった父と住み慣れた家が気になって、娘は後ろを振り返った。
丘の上にあったはずの物はなく、見えたのは炎の柱だった。
幼い娘の大きな瞳は、燃え上がる炎の色に染まる。
娘はあまりの光景に足がすくんで、その場から動けない。
震える小さな声で前を行く母親を呼んだ。
「…お母さん、お家が」
小さな手荷物を持ち、娘の手を引いていた母親は
娘が立ち止まったことに気が付き、その声に振り向く。
母親の瞳に映る大きな炎。
それは残酷すぎる。
別れ際の宣教師の言葉が耳の奥から離れない。
『何があっても、レイ、ひとみと共に生きていってほしい』
- 25 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年04月24日(水)21時44分30秒
「ひとみ…」
母親は目を細めて、幼い娘を力一杯抱きしめた。
もしかすると会えなくなるかもしれない父親、夫の分まで強く。
熱く溢れ出るものは娘の肩を小さく濡らしていく。
「お母さん…」
震える母親の肩で娘は小さく呼ぶ。
母親はその声に答えるように抱きしめ続けた。
──この子だけは…。
- 26 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年04月24日(水)21時45分55秒
外来宗教禁止令は日本中を駆け回る。
それらに関するもの全てを焼き払い、罪のない宣教師達は次々と島で殺された。
宣教師達を庇うものは同罪と見なされ、容赦なく島に流された。
そして二人は、血眼になって捜していた吉澤の祖父の手によって、
一度は捨てた故郷へと連れ戻された。
- 27 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年04月24日(水)21時47分32秒
初めて見る母親の生まれ故郷。
吉澤にとって、かけがいのない血の繋がっている祖父。
しかし、吉澤に対する祖父の態度は冷たく、憎悪にも似た視線は執拗以上に向けられる。
少なからずも、祖父に対して淡い期待をしていた吉澤には
祖父のそんな視線が訝しく思えてくる。
「儂の言うことを聞かないから、こんなことになるんだ!」
祖父は厳しい口調で隣にいる母親を怒鳴りあげ、大きくごつごつした掌が宙を切った。
弾き上げられた乾いた音と鈍く重い音が、張りつめられた空間に響き渡る。
それは一瞬にして、吉澤の小さく幼い心に恐怖感を植え付けた。
酷く赤く腫らした頬は祖父の怒りを物語る。
母親は声も上げることも涙を流すこともなく、
ただじっと、何かを堪えるように歯を食いしばっていた。
- 28 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年04月24日(水)21時50分28秒
「見れば見るほど、あれに似てくるわ…」
父親譲りの髪の色と色の白さ、
そして、二人の子供だという色素の抜けた茶色の瞳。
吉澤の何もかもが気に入らないのか、祖父は吉澤の向こう側に見える父親をにらみつけた。
母親の腫れ上がった頬、
自分を見る狂気なほどの視線。
幼き抵抗は鋭く刺さる視線に目を反らし、顔を背ける。
俯く吉澤の顔をのぞき込むと、祖父は吐き捨てるように言い放つ。
「ふん…、悪魔の子め」
吉澤の中で何かが滑り落ち、それは粉々に砕け散っていく。
- 29 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年04月24日(水)21時51分51秒
祖父は部屋の障子を乱暴に閉めて出ていくと、傲慢な足音を響かせていく。
出ていくのを横目で見送り、素早く隣の娘を抱きしめると、
母親は堰を切ったように涙を流した。
──ここへ来ると、こうなることは分かっていたのに…。
帰って来たくなかったのに…。
「ひとみ、あなたはお父さんと私の大切な子供だから…」
温かい腕の中で、何度も何度も呪文のように繰り返される母親の言葉。
しかし、母親の気持ちは吉澤に届かない。
祖父の言葉は耳に残り、幼い心に痛いほど刻まれた。
- 30 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年04月24日(水)21時56分26秒
- >>21-29
更新しました。
- 31 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年04月24日(水)22時04分53秒
- レス有難うございます。
第二話はあと一回続きます。
反省する点は多々…、大変申し訳。難しすぎますねぇ…(--;
>17 よすこ大好き読者。様。
自分もこういう話好きなんですが、読むと書くでは大違い(^^;;。
自分以外の作者様がたが神様のように思えてくる毎日。
今回ばかりは前のようには行きませぬ…。
見捨てられないようにがんがります。
>18 ななしさん様。
自分も早く出したいところなのですが、話が思うように進まないので出て来れません。
もう少ししたら出てくると思うのですが…。もうしばらくお待ち下さい。
- 32 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年04月24日(水)22時12分29秒
- >19 ごーまるいち様。
前の作品とは違うものにしたくってがんがっているのですが、自分の力なさをまざまざと見せつけられてただいま玉砕風味。
あえてチャレンジした話です、持っている力を100%以上出してみたいです。
つか、そんな力あるんか?自分。 Σ(;0^〜^)
>20 婆金様。
かっけー吉を目指しているのですが、どこまで自分が続くことが出来るか、そっちの方が心配で。
ぢゃ、そちらから吉に連絡してくださると、夜に…(^^;;
- 33 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月25日(木)13時06分18秒
- すごい長生きですか?
何やら大河ロマンの様相を…(w
- 34 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月29日(月)20時17分06秒
- おじいちゃん。こわ〜〜〜〜〜い!!(笑
吉はハーフなのですな。
続き楽しみに待っています。
- 35 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年05月02日(木)21時03分55秒
「あの娘を奥の蔵に連れて行け」
大屋敷の主人の言うことは絶対である。
それは主人の妻でも許されることはない。
一度言い出したら覆すことをしない、祖父の性格だ。
母屋へと続く廊下で使用人達にそれを命じた。
この屋敷では主人に真っ向から意見できる者など一人としていなかった。
「しかし旦那様、お嬢様には…」
「あれには後で儂の方から話しておく」
5歳の女の子を一人で蔵へ…、誰もが困惑の色を隠せない。
しかし、使用人達には主人の命に従うことしかできなかった。
- 36 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年05月02日(木)21時06分07秒
何も知らない吉澤が一人連れてこられたのは古く大きな蔵の前だった。
黒く重い扉が開かれ、中からは埃とカビの饐えたような匂いがする。
「ひとみ様、今日からこちらで過ごしていただきます」
吉澤の手を引いていた使用人が口を開いた。
いまいち自分の置かれている状況が飲み込むことができない。
吉澤は大きな瞳で使用人の顔を見上げる。
「お母さんは…?」
「お嬢様は旦那様とお話があるそうなんで、後でこちらにやって来られます」
使用人はその視線に合わそうとせず、吉澤を蔵の中へと連れて入った。
踏み入れれば踏み入れるほど埃が舞い上がり、吉澤は小さく咳をした。
扉の外からしかこぼれてこない儚げな光に照らされている蔵の中は
静かでひっそりと声を潜めているようだ。
- 37 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年05月02日(木)21時08分07秒
──こんなところに一人…
一瞬、ぞくっとする。
吉澤はそんな恐怖感を振り払うかのように、高い天井を見上げた。
壁の高い位置にある格子戸から外の光が漏れていた。
蔵の中の暗さに慣れてしまった瞳にはそれが眩しく映る。
吉澤は手を翳しながら、漏れてくる光を目で追う。
ふいに、後ろで扉の閉まろうとする鈍い音がした。
「!!!」
扉の方に駆け寄るも、虚しく扉はきっちりと閉まってしまった。
向こう側の光が遮られてしまったため、吉澤の回りに黒の闇が忍び寄る。
「ちょっ、ちょっと!ここから出してよ!」
扉の向こう側では錠を掛ける鉄の音が聞こえる。
吉澤は何度となく厚い扉を小さな拳で殴りつけ、外の使用人達に問いかけた。
しかし、それも空しく、外の声は遠くに消えていこうとしている。
- 38 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年05月02日(木)21時10分08秒
「なんで!?なんで、うちが…。なんで…ぇっ」
扉の前で拳を握ったまま、泣き崩れる吉澤。
何度殴ったのだろうか、小さな拳には人間である印が滲んでいる。
「うちは…何も悪いことしてないのにぃ…っ。うちがっ…な、にしたっ…」
吉澤はありったけの力を込めて扉を殴り、やり場のない怒りをぶつけた。
しかし、扉の向こうは物音一つもしない。
痛みの感覚さえ感じなくなった手を握りしめ、吉澤は扉を背に座り込んだ。
胸の中を繰り返すのは酷く突き刺さった祖父の言葉。
──『悪魔の子め』
自分がどうしてそのような言われ方をしなければならないか、
どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか、
幼い吉澤には分からないままだった。
- 39 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年05月02日(木)21時11分58秒
与えられる食事は日に一度きり。
母親への思いは募るばかりで、閉じこめられた日から10日以上経っても、
吉澤は母親の姿を感じることが出来なかった。
今日はひどく体がだるく、咳が止まらない。
床に敷かれた質素な布団にくるまり、吉澤は外から聞こえてくるかすかな声に耳を澄ましていた。
「お嬢様、縁談が決まったそうよ」
「旦那様も酷い人だよ。嫌がってるのに縁談進めて…」
──お母さんが縁談…?
「一番かわいそうなのは、ひとみ様だよ。まだ小さいのにあんな酷い仕打ち…」
「お嬢様、あれから塞いだままで、一歩も外に出ていらっしゃらないよ」
「どうやら旦那様が厳しく監視してるらしいぞ…、あ、おいっ…、旦那様だ…」
使用人達の声はそこで途絶えてしまう。
聞こえてきた言葉に小さな心はいとも簡単に動揺した。
吉澤は声を殺しながら、布団の中で震えていた。
──お母さん、うちを一人にしないで…よぅ
- 40 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年05月02日(木)21時13分31秒
扉の錠が開こうとする音が聞こえてくる。
食事の時間だ。
いつもなら飛びつくことはないが、今日の吉澤は違っていた。
少しずつ開かれる扉。
外の光が漏れ始め、蔵の中をほのかに照らし始める。
吉澤は四角い光の枠の方へ向かって走る。
食事を置いていこうとしている使用人の腕に掴みかかり、
扉を閉めようとするのを阻止しようとした。
「…ぁさんに縁談があるって…!」
吉澤は持てる力で腕に縋り付く。
不意に腕を掴まれた使用人はびっくりしてしまい、扉の前で尻餅をついてしまった。
腕に捕まっている吉澤を離そうと必死になって抵抗する。
しかし、尻餅をついてしまった為、使用人は思うように力が入らない。
素早く動く小さな体は取り押さえることが困難で、
吉澤は使用人と激しくもみ合い、蔵の中まで使用人を引きずり込んだ。
- 41 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年05月02日(木)21時15分07秒
「お母さんは…、な、んで…縁談なん…ぁっ…、うちからお母さんを取らないで!」
吉澤の声はだんだん大きくなっていく。
声に力が集中したためか、喉に負担がかかる。
「ごほっ…」
咳と共に何か違和感を感じた。
吉澤は自分の体に目をやると、胸の辺りにおびただしい血の海を見た。
一瞬の怯みを使用人は見逃さない。
力の抜けた吉澤を腕から離して、扉の向こう側まで逃げた。
蔵の中にいる吉澤の姿は、普通と言うにはあまりにも違いすぎた。
口から血を流し、それは首を伝い、胸を赤く染め上げている。
小さな掌には血が滴っていた。
「うわぁ…っ!」
吉澤のその様子を見るや否や、使用人は小さく悲鳴を上げると、
扉に鍵を閉め、一目散にその場を立ち去った。
- 42 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年05月02日(木)21時16分36秒
自分に何が起こっているのか、吉澤も分かっていなかった。
分かっているのは、自分の疑問に答えてもらえなかったということと、
使用人が自分の姿を見て逃げ出してしまったということ。
陽がもうだいぶ陰っているのだろう。
格子戸から漏れていた光は弱まっている。
自分の姿を確認しようにも蔵の中はあまりにも暗すぎる。
吉澤は咳と血の止まらぬ重い体を壁づたいに引きずりながら布団へとなだれ込んだ。
母親に置いていかれるのではないか、という恐怖感と
自分が自分でなくなるような感覚に襲われる。
遠くなる意識の中、蔵の外にいるであろう使用人達の声が耳に入ろうとする。
「近づかない方がいい。あれは伝染する」
- 43 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年05月02日(木)21時17分55秒
小さな体では耐え難い感覚。
──どうして…、どうしてうち一人だけが…
こみ上げてくる激しい咳。
どこからこんなに流れるのかと思えるほどの血の海。
数々の言葉で酷く切り刻まれた小さな心。
──お母さんっ…、怖いよぉ…
誰かっ…、誰かここからうちを出して…ぇ
吉澤の血の付いた掌の中には母親からもらった十字架がしっかりと握られていた。
- 44 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年05月02日(木)21時19分34秒
こんなところで、一人で死にたくない…!!
- 45 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年05月02日(木)21時21分50秒
「そんなに生きていきたい?」
聞こえるはずのない、自分以外の声。
吉澤は耳を疑う。
その声は母親の声でもなく、祖父の声でもなく、使用人達の声でもない。
恐る恐る声が聞こえる方を見上げた。
「誰…?」
蔵の格子戸に腰を掛けている人影が見える。
漏れてくる月明かりが眩しくて、その人物の顔が見ることはできない。
「私と一緒に来る?時を超えて、遠くまで…」
その声は吉澤を優しく包み込む。
「出し…てくれる…の?ここから…この中から…」
「それは容易いけれど、一つだけ条件があるよ」
- 46 名前:02 dying light 〜黒衣の天使 投稿日:2002年05月02日(木)21時25分29秒
飛び降りてきた黒く大きな翼状の影。
人物の背中から見えるその影は人の物ではないと、幼い吉澤にも分かった。
「ここを出たら、もう光の中では暮らしていくことは出来ない。
夜の世界が全てになるけど、それでもいいの?」
薄明かりの中、浮かび上がる赤い瞳。
しかし、それは穏やかな眼差しで吉澤を見つめる。
──この人なら…
「それでもいい!この蔵と、この体の恐怖から逃げることが出来るのなら。
…一人じゃなかったら、どこへでも」
大粒の涙が吉澤の頬を伝っては流れ落ちていく。
月明かりに照らされた白い腕は吉澤の涙を優しく拭う。
「じゃあ、おいで…」
吉澤は差しのべられた掌に手を添える。
その掌は酷く温かく、それでいて、吉澤を優しく包み込む。
黒く大きな翼は小さな体を抱き抱えると、遠く月夜の中に消えていった。
- 47 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年05月02日(木)21時31分12秒
- >>35-46
更新しました。
- 48 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年05月02日(木)21時43分15秒
- レス有難うございます。
更新量、回数共に少ないのですが、読んでいただける人がいらっしゃると、いううれしさを噛みしめております。
話がなかなか動かないと焦っている自分と呆れている読者様がいるような…。
自分で自分の首を絞めてますが何か…(−−:
>33 名無しさん様。
まだ先が長いんですよ、この話。気が付いたときには、大変なことになってると自分も冷や汗ものでした。
ちなみに吉の推定年齢は半世紀近かったり(爆)。
>34 よすこ大好き読者。様。
こんなおやじ、この時代には吐いて捨てるぐらいいたんだろうなぁ、と思いながら書いてたり。
とりあえず、話の方は頭の中では終わってるんですけどねぇ(^^;;
- 49 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年05月02日(木)21時47分45秒
- 今回の話は、ストックゼロの状態で行っております。
元ネタがあるのなら、更新が早いだろうと言う声も聞こえてきそうですが、なるべくならかけ離れた物にしたいと思っているので更新の方が遅くなってしまって…。
書き上がったら、なるべく早めに更新をしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
合掌。
- 50 名前:REDRUM 投稿日:2002年05月02日(木)21時49分35秒
- (0^〜^)<リア〜ルタイーム!
可哀相すぎるっ。
吉には十字架が似合いますね
目を離せない内容で、続きが楽しみです。
- 51 名前:婆金 投稿日:2002年05月03日(金)02時33分00秒
- 吉クンを連れていったのはダレ〜!?
気になる、気になる。
ワクワク、でもドキドキ
- 52 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月03日(金)11時16分01秒
- 吉には、そんな過去が・・・。(驚
切なくって、ちょっと涙ぐんでしまいましたが何か?(w
更新は、夜叉さまのペースでいいです。楽しみに待っておりますです。
- 53 名前:じじ 投稿日:2002年05月03日(金)18時30分02秒
- ハケーン!
今回は難しそうな話ですね。
私の脳みそが壊れない限りお付き合いさせていただきます(w
ちーすーたろかー
- 54 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年05月03日(金)19時40分57秒
- 重い話じゃないですよね? 私は書けない分野かも。
マターリお待ちしております。
- 55 名前:くわばら。 投稿日:2002年05月08日(水)01時51分54秒
- マターリ待ってます。
- 56 名前:ごーまるいち 投稿日:2002年05月09日(木)01時26分40秒
- 吉の過去にホロリとしてしまいました。
夜叉さんの文体やっぱり好きです(告白)
マターリお待ちしてます。がんがってくださいね。
- 57 名前:理科。 投稿日:2002年05月09日(木)05時31分06秒
- 新作だぁ!何でいつのまに???
銀といい、ここといい…描写ウマーです。。。
よっすぃ〜が可愛そうすぎる…。
- 58 名前:03 月唄 投稿日:2002年05月24日(金)22時43分49秒
閉じた視界に入り込んできた微かな光に吉澤は呼び起こされる。
ゆっくりと瞼を開くと、隣にある障子からこぼれている月明かりが吉澤の視線を奪っていく。
開かれている障子の間からは、月が顔を覗かせていた。
吉澤はゆっくりと布団から起きあがると、ぼんやりその月を見つめていた。
茶色の瞳に浮かび上がる檸檬色の満月は小さな心を惹きつけて止まない。
「目が覚めた?」
小さく床板が軋む。
月明かりを背に、髪の長い女性がその視界に入ってくる。
けれど、明るい月を見つめていた吉澤にはその顔は影になって見えてはこない。
はっきりしないうつろな目で女性を見つめていた。
ただ分かるのは、父親が普段着ていた服装によく似ている服を着ていることだ。
- 59 名前:03 月唄 投稿日:2002年05月24日(金)22時48分15秒
「ここは…?」
「もう、あの蔵の中じゃないよ」
吉澤に優しく声を掛ける。
少しずつ影は薄れていく。
印象的な透明のピアスが吉澤の視線を奪う。
吉澤の頭をふわりと撫でると、大丈夫だよ、と女性は優しく包み込む。
その温かな体温が吉澤の錆び付いていた歯車を少しずつ動かしていく。
──そっか…、この人に助けてもらったんだ。
動き始めた滑車は尖った感情を溶かしていく。
──もう、あんな思いしなくていい。
あの言葉に苦しめられなくていい。
こみ上げる思いは腕の中で俯いている吉澤の唇を強く噛みしめていた。
- 60 名前:03 月唄 投稿日:2002年05月24日(金)22時51分14秒
女性は落ち着きを取り戻し始めた小さな背中をぽんぽんと軽く叩き、
対面するように間を作ると、吉澤の正面に座り込む。
「自分の名前は石黒彩。あなたの名前は?」
緩くカールされた栗色の長い髪が揺れた。
強い瞳の向こう側には吉澤を包み込む何かが見え隠れしている。
幼い心は何かに惹きつけられる。
「吉澤…ひとみです」
「ひとみかぁ…、いい名前つけてもらったね。
自分のことは彩って呼んでくれたらいいから。よろしく、ひとみ」
すらりとした白い手を吉澤に差し出すと、石黒は柔らかく笑いかける。
差し出された手に自分の手を置こうかと吉澤が迷っていると、石黒に強引に手を取られ、
二人はやっと握手をする形になった。
「よろしくお願いします、彩…さん」
笑顔の石黒とはにかんでいる5歳の吉澤。
吉澤の吸血鬼としての生活と、石黒との生活はここから始まった。
- 61 名前:03 月唄 投稿日:2002年05月24日(金)22時52分48秒
ぐうぅぅうううぅ…。
闇の中で低く響く音。
一瞬なんの音か分からなかった石黒は、吉澤と握手をしたまま回りを伺った。
見えるのは闇と浮かび上がる月明かり。
他に何一つ変わってない室内に石黒は不思議そうに首を傾げた。
ふと視線を落とすと、白い小さな頬を赤く染めて俯いている吉澤がいた。
「えっ…?そっか、そうだよね。二週間も眠り続けてたらお腹も空くよね」
ちょっと待ってて、と小さく吉澤の頭を撫でると、石黒は奥の部屋へと入っていった。
- 62 名前:03 月唄 投稿日:2002年05月24日(金)22時55分07秒
「ひとみ、こっちにおいでよ」
白い布団の上で正座していた吉澤は奥から聞こえる石黒の声の方に向く。
役割を失いかけていた嗅覚は、奥から漂ってくる食べ物の匂いをしっかり捕らえる。
吉澤は匂いに誘われて、奥の部屋へと足を運んだ。
囲炉裏のある小さな部屋。
傍らに置いてある行灯の灯りと真ん中にある囲炉裏の炎がぼんやりと部屋の中を映し出す。
掛けられた鍋からはおいしそうな匂いと湯気が立ち上っている。
石黒は囲炉裏の傍に吉澤を座らせると、雑炊の入った小さなお椀を手渡す。
「遠慮せずに食べて。温かいうちがおいしいよ」
にっこり笑うと、石黒は小さな手に箸を握らせた。
お椀から伝わる温もり。
吉澤は一口箸を運び、それを十分噛み締める。
蔵の中では感じることの出来なかった温もりが今は近くに感じている。
なんてことない普通の雑炊だったが、吉澤の心に染み渡っていった。
無言のまま、雑炊を食べ続ける吉澤を湯気の向こう側で石黒は優しい視線で見つめていた。
- 63 名前:03 月唄 投稿日:2002年05月24日(金)22時57分33秒
「ひとみ、お椀貸して」
食べ終わりそうな吉澤の隣に座ると、石黒は雑炊を装い始めた。
「彩さんは食べないの?」
吉澤が何気無く聞くと、石黒は無言で頷いてお椀を渡す。
「うちら吸血鬼は人間の食べ物を食べても仕方がないんだ。
物を食べたという感覚だけで、全然お腹が一杯にならないの」
「お腹一杯にご飯を食べても?」
覗き込んでくる大きな瞳は深く澄み渡っている。
石黒は小さく笑うと、雑炊を食べる手が止まっている吉澤の前髪をくしゃりと撫でた。
「ひとみはまだ小さいから、そんなことしなくていいよ。時がくれば分かるから。
それまではお腹一杯にご飯を食べて、大きくなろうね」
石黒の視線は吉澤にとって限りなくやさしい物だった。
吉澤はにっこり笑って頷くと、再び雑炊に口をつけた。
- 64 名前:03 月唄 投稿日:2002年05月24日(金)22時59分08秒
石黒は鍋からわき上がる湯気をぼんやりと見つめて考えていた。
なぜ吉澤があんな場所に閉じこめられていたのか。
幼い体で、しかもあの様子だとどう考えても普通ではない。
相当のことがあったに違いないのだろう。
しかし、吉澤が話そうとしないのなら、聞くこともない。
吉澤の口から自然に出てくる時があるのなら、その時はしっかり聞いてあげたい。
そう心に決めた。
石黒は吉澤に吸血鬼としての「いのち」を与えた。
それだからこそ、吉澤には強く生きていって欲しいと強く願うのだ。
- 65 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年05月24日(金)23時04分42秒
- >>58-64
更新しました。
- 66 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年05月24日(金)23時18分20秒
- レス有難うございます。こんな展開でごめんして(汗汗)。
>REDRUMさま
リアルタイムおめ。読み直そうと思って更新してみたら…、ビクーリしました(^^;;
自分もそう思います。<十字架。ストイックな感じがして (・∀・)ノイイ。
>婆金さま
連れて行ったのはあの人だったんです。これで寝れない日々もなくなるかと…(苦笑。ほんまか!?)
>よすこ大好き読者。さま
これからもまだ吉にがんがってもらいますよほ、と言ってみるテスト(笑)。
まだ先は長いです…(−−;
>じじさま
書いてるこっちが混乱してますが何か(^^;;。お付き合い願います、追い掛けていきますよ(爆)。
>名無しベーグル。さま
重くするつもりはないのですが、もうすでに重いですか?(^^;;
いろいろ書きたいことは山とあるのですが、順序を考えると、ぞっとしてきます。
- 67 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年05月24日(金)23時20分59秒
- 一回で書き込めなかった…(^^;;
>くわばら。さま
お待たせしました。待たせた上に少ない更新で、大変申し訳。
>ごーまるいちさま
イヤーソ、好きだなんて…(^^)、じゃ、新婚旅(略。w
まだまだ書き足りてないので納得しておりません(爆)。納得することってあるのかなぁ…(^^;;
>理科。さま
ええ、1ヶ月前ぐらいからなんですけど、まだ4回しか(今回を入れて)更新しておりません(鬱)。
あちらでもありがとうございます。むこうとは違うのでお口に合うかどうか…。
- 68 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月27日(月)21時33分25秒
- 正体は、石黒さんでしたか!
5歳の、雑炊をたべてるよしが見たい!!
とかいってみるテスト(笑
続きマターリまってます!
- 69 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年05月28日(火)20時49分06秒
- ( `・ゝ´) でしたか。いやぁ意外でした。
マターリお待ちしております。
- 70 名前:03 月唄 投稿日:2002年06月01日(土)21時55分52秒
生まれたばかりの吸血鬼は何ら人間の子供と変わりはなく、
人間の子供と同じように成長し、生活をしていく。
しかし、15歳という成人の時を迎えると大きな変化が現れる。
吸血鬼の本能が目覚め、鋭い牙が彼らを支配し始めるのだ。
自分の食欲を押さえることなど出来なくなり、自らの欲求を満たすため、糧として人間の生き血を食らい続ける。
それは繁殖期を迎えると、さらに自制が利かない物になり、本人自身の人格を壊すほどの凶暴さを持つ。
中には狙った獲物の生き血を一滴たりとも残こそうとせず、死に至らしめる輩も出てくる。
自制の利かなくなった彼らは、本能のままに食い尽くそうとするのだ。
彼らの静寂さと暴虐さはかけ離れているように見えるが、
それは遠くてあまりにも近すぎる、紙一重のようなものである。
そして、その代償として、闇の中で彼らは月と共に生きていく。
- 71 名前:03 月唄 投稿日:2002年06月01日(土)21時57分17秒
吸血鬼になったばかりの吉澤はまだ機が熟していない。
石黒は長い時間を掛けて、それを吉澤に伝えようとしていた。
「最初話した時に言ったけど、吸血鬼は陽の光を浴びて生きていくことは出来ないの。
だから、うちらに与えられた場所は一つ…、この月の光の下だけ」
上弦の月明かりの下、石黒は長く伸びている吉澤の髪を束ねている。
「彩さん、他の仲間の人達はどうしてるの?」
「どうしてるだろ…。うちらはあまり群れで行動しないんだ」
その言葉に小さな心は酷く動揺した。
震える声を振り絞って、吉澤は振り返る。
「うちはそばにいていいの?」
小さく羽を震わす瞳は悲痛の色を隠せない。
石黒は柔らかな頬に手を添えて、視線を合わせる。
「大丈夫、安心してそばにいなよ」
向けられた視線は凛としていて力強く吉澤を見つめる。
その向けられた視線に安心したのか、ほのかな月明かりに身を任せて、瞼を閉じた。
- 72 名前:03 月唄 投稿日:2002年06月01日(土)21時58分50秒
吸血鬼となった吉澤は日が経つにつれて、月に魅せられることが多くなってきている。
時々、自分が呼ばれているような感覚になったりもする。
体は吉澤の知らないところで変化を遂げようとしていた。
- 73 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年06月01日(土)22時01分08秒
- 更新しました。
- 74 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年06月01日(土)22時15分21秒
- ほんとに更新量少なくてごめんなさい。
何となく自分の更新の仕方が疑問に思えてきたので、今回から少しずつ更新することにしました。
これからの更新は数はあると思いますが、一つ一つの量は少なくなります。よろしくお願いします。
>よすこ大好き読者。さま
こんな展開でごめんなさい。期待を裏切ることが出来たのでしょうか?>石黒
5歳の吉というか、24Hの時の小さい頃の写真の吉を考えながら書いてたんで、あれを妄想して雑炊を食わせてやってください(^^;;
少なくなる一方ですが、お付き合い下さい。
>名無しベーグル。さま
いろいろ考えたのですが、石黒しか出てきませんでした(^^;;。そうです、石(略。w
皆さんが誰を想像してたのか知りたくなった、と言ってみるテスト(笑)。
おかしな点が出てきたら、指摘してください。よく、誤字とかあるし…(−−;
- 75 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月02日(日)17時34分24秒
- 関西弁じゃないから、姐さんやへーけさんはないのかな?
ってな感じで考えておりましたです。
更新量は、関係ないですよほ。読ませて頂いてる身なので…。
楽しみに待ってます。
- 76 名前:aa 投稿日:2002年06月07日(金)00時22分40秒
- http://www.zakzak.co.jp/geino/geino.html
- 77 名前:aa 投稿日:2002年06月07日(金)00時24分24秒
- http://www68.dns.ne.jp/~bbs2/upload3/helen/OB00011363.jpg
- 78 名前:03 月唄 投稿日:2002年06月09日(日)23時23分56秒
二人が一緒に生活するようになってからのある細い三日月の夜。
ちょっと出てくるね、と言い残して、石黒は月明かりの中に翼を泳がせていった。
ここ数日、石黒が出ていくことが多く、吉澤が一人で月夜を過ごすのにも慣れてきた。
最初の頃は一人にされるのがどうしても恐くて、出かけようとする石黒を引き留めようとして
何度か困らせたこともあった。
もう、このまま石黒が帰ってこないのではないのだろうか。
吉澤の怯懦した心がをそうさせていた。
部屋に残された吉澤は、障子を開いて月明かりを部屋に誘い入れる。
月明かり達は寂しくないように吉澤を柔らかく包み込み、
吉澤も誘われるように裸足で庭先に降りた。
闇に浮かぶ三日月を見つめ、自分を小さく抱え込んで草の上に座った。
- 79 名前:03 月唄 投稿日:2002年06月09日(日)23時24分44秒
一人になると、必ず考えてしまうことがある。
石黒特有の、包み込むような優しい雰囲気が心地よいことに気付くのだ。
──あの温かい手を離したくない、と思うのはどうしてだろう…。
大切な何かを思い出させるような…、
しかし、それを思い出すには何かが違っているような…。
吉澤は三日月に疑問を投げかけてみたが、月明かりは答えを教えてはくれない。
小さな胸はきゅうっと締めつけられ、切なさで満ちていく。
草木は左右に揺れて、生暖かい風を吉澤の元まで連れてくる。
切なさに頭を垂れていた吉澤はその風に顔を上げると、視界に入ってくるはずの三日月の姿がない。
急に心細くなった吉澤の頬に一粒の雫が落ちてくる。
その雫は次第に群を成し、音を立てながら地面を濡らしていく。
どうやら、雨雲が三日月を隠してしまったようだ。
吉澤は闇を見上げたまま、雨に打たれ立ちつくしている。
- 80 名前:03 月唄 投稿日:2002年06月09日(日)23時25分43秒
「…み、ひとみっ!何してるの!?」
後ろから聞こえる石黒の声に振り返った。
吉澤の顔に安堵の色が見え始める。
「彩さん…。おかえりなさい」
「何考えてんの!早く…」
走り寄ってきた石黒は雨から逃れるように、濡れている吉澤を庇いながら部屋に連れて入る。
「びしょ濡れじゃない…」
そう言いながらも、雨の中にいた吉澤を責めることをしなかった。
石黒は手拭いを手に、濡れている髪を拭いていく。
大きく揺れる視界の中、吉澤は石黒の優しさを感じていた。
「今日は早かったんだね」
「うん…。でも帰ってきたら、ひとみが雨の中にいるからびっくりした」
滴を拭う手拭いから伝わる石黒の体温。
冷えた吉澤の頬はそれをゆっくり感じ取ると、胸の奥底で波紋となって広がっていく。
──今、わかった。
追われるように逃げた、
あの時握られていたお母さんの掌の温もりに似ているんだ。
波紋は吉澤の心を急かすように身体中をかけ巡る。
- 81 名前:03 月唄 投稿日:2002年06月09日(日)23時27分04秒
「お母さん…」
吉澤は小さな声で呟いた。
手拭いのかすれる音にかき消されて、小さな言葉は石黒の耳には届かない。
「はい、これでいいよ。着替えを出すから…」
石黒はにっこりと笑うと、箪笥の中から着替えを取り出す。
「お母さんに会いたい…」
吉澤の声は消え去りそうだった。
背中で聞いていた石黒は着替えを吉澤に手渡す。
「ひとみ…、お母さんに会うことは止めておいたほうがいいと思うんだ」
「どうして?どうしてお母さんに会っちゃいけないの?」
着替えもせずに、小さな手はぎゅっとそれを握りしめている。
吉澤に着替えをすることを促すと、石黒は息を一つ吐いた。
「お母さんに会うことはできないよ。ひとみの身体はもう人間のものじゃないから」
石黒は心を鬼にして言葉を吐いた。
こんなこと言っても5才の吉澤が理解できるなんて、思ってもいない。
小さな子供が親のことを忘れるなんて出来るはずがない。
これからの吉澤のことを考えると、敢えてそう言わざるを得ない。
- 82 名前:03 月唄 投稿日:2002年06月09日(日)23時28分20秒
母親とあんな別れ方をしてしまった。
このまま会えないのなら、一目でいい、元気な母親の姿をこの目に焼きつけたい 。
その思いが吉澤をつき動かす。
「彩さん、うちの…」
ぽつりぽつりと口を動かす吉澤。
宣教徒の父との別れ。
狂気で非情な祖父の仕打ち。
離ればなれにされてしまった母親。
病に冒されていたであろう自分の体。
今まで自分を取り囲んでいた全てを石黒に打ち明けた。
- 83 名前:03 月唄 投稿日:2002年06月09日(日)23時29分27秒
吉澤の告白に石黒は黙ったまま、じっと耳を傾けていた。
ある程度の覚悟はしていた。
いや、してるはずだった。
石黒は深く目を閉じると、わき上がる感情を殺していた。
降り続いていた雨が次第に小さくなると、雲の切れ間から月明かりが漏れてくる。
──自分に出来ることは、ただ一つ。
ゆっくり目を開けると、石黒は吉澤の両手を握った。
「ひとみ…、お母さんに会わせてあげるよ」
「ほんと?ほんとに会わせてくれるの?」
澄んだ大きな瞳は石黒の顔を覗き込んでくる。
石黒は吉澤の頭を撫でると、視線の高さを吉澤に合わせた。
「但し、声を掛けることは出来ないよ。
遠くから見つめるだけになるけど、それでもいいの?」
吉澤は笑顔の花を咲かせると、何でも首を縦に振った。
──ひとみに笑顔が戻るのなら、それでいい…。
うれしそうな吉澤の頭をやさしく撫でると、石黒は笑いかけた。
- 84 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年06月09日(日)23時32分46秒
- >>78-83
更新しました。
- 85 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年06月09日(日)23時36分38秒
- レス有難うございました。
>よすこ大好き読者。さま
そうですね、関西の二人を使うと、関西弁になってしまいますもんね。消去法で逝くと、まずこの二人が消えるっと(^^;;
お言葉に甘えきっております。しばらくこのテンポです。
>aa さま
更新遅れ気味で申し訳ありません。なるべく早めに更新したいと思っております。
- 86 名前:婆金 投稿日:2002年06月10日(月)01時57分23秒
- ただでさえ月の満ち欠けって切ないのに、吉クン・・・
新月から次の新月までくらい(?)マターリ待ってます。
- 87 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月10日(月)16時16分56秒
- 初レスです。
ヨスコが切ないです。(OT〜T)
続き楽しみにしてます。がんがってください。
- 88 名前:ごーまるいち 投稿日:2002年06月10日(月)22時47分03秒
- 月明かりに包まれて一人佇む吉を思うだけで、
吉ヲタなワタシは涙がちょちょギレそうになってしまいます(涙)
作者様のペースで、マターリ進めていってください。
がんがってくださいね♪
- 89 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月13日(木)17時55分06秒
- 切ないだす。ちっちゃな吉くん。
マターリ待っています。がんがってください。
- 90 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月23日(火)19時34分34秒
- 保全
- 91 名前:03 月唄 投稿日:2002年08月13日(火)20時27分25秒
その日は朝から雨が降り続き、昼過ぎからうっすらと霧が光を覆い尽くす。
二人はその霧に隠れて、闇が降りてくるのを待っていた。
「ひとみ、やばくなったらいつでも逃げれるようにしておくんだよ」
石黒は何度となく吉澤に注意を促し、屋敷の近くで一人待たせると屋敷の門を叩いた。
使用人と話をしている石黒の後ろ姿を見ながら、
吉澤は心なしか屋敷がひっそりとしているように思えた。
しかし、母親に会えるという気持ちが勝っているせいか、そんなことは気にするに値しなかった。
使用人が屋敷の中に入っていくと、石黒は微動だにせず、扉の向こうを見つめている。
──やっと、お母さんに会える。
そんな気持ちが小さな心を一杯にする。
鼓動は大きく胸を打ち鳴らし、吉澤の掌は汗ばんでくる。
話ができるわけでもないのに…、と自分に言い聞かせては、着物で掌の汗を拭う。
扉の向こうから使用人がやって来て石黒に何かを渡すと、
大きく一礼をして屋敷の中に入っていった。
石黒はそれを着物の袖に入れると、ゆっくりと吉澤の方へと歩き始めた。
- 92 名前:03 月唄 投稿日:2002年08月13日(火)20時28分32秒
「彩さん、お母さんは…?」
何も答えず吉澤の方を一見して、石黒は黙って小さな手を取ると、
真っ直ぐ前を向いたまま、歩き始めた。
どれくらい黙ったまま歩いただろうか。
石黒の視線は真っ直ぐ前を向いたまま。
吉澤はそんな石黒の後ろ姿を見上げることしかできなかった。
握りしめられた手の力が次第に強くなることに、
吉澤の胸は反応せずにいられなかった。
「いたっ…」
小さな小石に吉澤の足がつまずく。
その声に我に返ったのか、石黒が振り返る。
「ひとみ、大丈夫?」
膝を赤く滲ませながら、石黒の顔を見上げる吉澤。
それは吉澤が生きているということの徴(しるし)。
真っ直ぐな視線に耐えられなくなった石黒は胸に吉澤を抱きしめると、
静かにしゃべり出した。
「おじいさん殺されたらしいんだ、使用人の人がそう言ってた」
- 93 名前:03 月唄 投稿日:2002年08月13日(火)20時30分35秒
一言言って深く息をすると、石黒は遠くを見つめた。
「これから自分が言うこと、しっかり聞いてくれる?」
「え…?」
吉澤は石黒の顔を見上げようとしたが、長い腕がそれを許さない。
「聞いてくれる?」
胸の奥から聞こえてくる石黒の声に吉澤は黙って頷いた。
石黒は大きく深呼吸をして、抱きしめる腕を強める。
「お父さんからもらった十字架、今持ってる?」
吉澤は小さく頷くと、着物の袖から紺色の巾着を取り出し、石黒へと手渡す。
巾着の中で銀色の十字架が静かに光り放つ。
石黒は先程使用人から受け取った包みから一本のロザリオを出すと、十字架をそれに通した。
吉澤は目を疑った。
今、石黒の持っているものは自分の父親がかつて持っていたもの。
忘れるはずがない。
父親と別れたときに母親に持たせ、それを分けて吉澤にあたえた信仰の徴。
「彩さ…」
「お母さんはひとみに会えないの。だから、これをひとみに、って…」
父親と別れてから初めて一対になった徴は石黒の手によって吉澤の首に掛けられた。
──何があっても、レイ、ひとみと共に生きていってほしい
吉澤の脳裏に父親の最後の言葉が過る。
- 94 名前:03 月唄 投稿日:2002年08月13日(火)20時31分33秒
一対になったそれがどういう意味を持つのか…。
- 95 名前:03 月唄 投稿日:2002年08月13日(火)20時32分27秒
小さな心はその答えを拒否すると、
羽を静かに震わせ始め、吉澤の視界を崩そうとする。
頭の中で警笛が鳴り響き、体中の体温は奪われていく。
「…っう」
耳を塞いでも、心を閉じようとしても聞こえてくるのは吉澤の名前を呼ぶ母親の声。
その声は柔らかい母親の温もりを思い出させると同時に、
吉澤の胸を強く締め付け、どす黒い影を招き入れる。
「どうして…っ!」
胸に去来する不安に吉澤の手は石黒の姿を探し始める。
すぐ傍にいるのに、母親に似た温もりは、石黒の温もりはあまりにも遠すぎて。
「ひとみ!」
石黒の名前を呼ぶ声は吉澤の耳に届かない。
瞳は宙を泳ぎ、何かに藻掻き、小さな手は安らかな温もりを求め続ける。
──もう、ここには長くいられない。
傷ついた小さな心を繋ぎ止めようと、石黒は必死になって吉澤の体を抱きしめ、
何かを掴もうとする小さな手を包み込み、何度も何度も吉澤の名前を呼んだ。
「ひとみ…っ、自分はここにいるから!傍にいるから…。ひとみっ!」
- 96 名前:03 月唄 投稿日:2002年08月13日(火)20時33分30秒
悲しいのに、
苦しいのに、
胸が痛いのに、
涙も出ない。
「あ…ゃさ…っ」
石黒の腕の中、吉澤はただ短く嗚咽を繰り返すだけ。
- 97 名前:03 月唄 投稿日:2002年08月13日(火)20時34分28秒
一粒の涙でいい。
流すことが出来れば、少しでもこの痛みがやわらぐのに…。
- 98 名前:03 月唄 投稿日:2002年08月13日(火)20時35分20秒
- 99 名前:03 月唄 投稿日:2002年08月13日(火)20時35分51秒
吸血鬼になってから吉澤は涙を流したことがない。
正確に言うと、流すことが出来ないのだ。
彼らは泣くことが出来ない、という痛みを背負いながら長い時間を生きていく。
どんな痛みであろうとも、それを「涙」で洗い流すことも出来ずに。
- 100 名前:03 月唄 投稿日:2002年08月13日(火)20時37分28秒
月は西の空に傾き、東の空は闇が消えかけている。
吐く息の白さを感じながら、見慣れている街並みを見下ろした。
あれからしばらくして、うちはお母さんが亡くなったことと、
それから間もなく祖父が殺されたことを聞いた。
あの時、お母さんは亡くなっていたのに、彩さんはそれを言おうとしなかった。
それが彩さんなりの優しさだったんだと思う。
聞いたうちも妙にさばさばしてて、落ち着いて話を聞くことが出来た。
胸がざわめくこともなければ、心が痛むこともなく。
正直言って、あの時の記憶がない。
覚えているのは、手の中に握りしめられていた十字架と首に掛けられていたロザリオ。
それ以外は何も覚えていない。
- 101 名前:03 月唄 投稿日:2002年08月13日(火)20時38分02秒
- 座ったまま大きく伸びをして、タンクから飛び降りた。
静けさが戻ろうとしていた街並みに人の流れが押し寄せようとしている。
手すりにもたれ掛かったうちの傍を風が流れ、髪を弄んでは包み込みこんでいく。
首に掛けている十字架を手に取ると、優しくそれに口づけて、
「限られた永遠」という見えない砂時計を今日もうちはひっくり返す。
また一日が過ぎていく。
こういうのを「生かされている」というの?
彩さん、うちにはまだ見えてこないよ…。
薄れゆく月を見つめながら、探しても見つかるはずのない面影を追った。
- 102 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年08月13日(火)20時42分53秒
- >>91-101
更新しました。
- 103 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年08月13日(火)20時45分30秒
- レス有難うございます。
自分の仕方に疑問があると言いながら、更新に1ヶ月以上間を開けてしまって申し訳ありませんでした。
正直書けなかった、と言うのが本音です。過去から現在に戻るところが分かりづらかったのでは?と思います、こちらの力不足です。
無理をせず、マイペースな更新になると思います。それでもお付き合い願えるのならうれしいです。
>婆金様
それぐらい、それ以上の時間が掛かってしまって申し訳ないです。
3話目の詰めになるところなんで、納得いかなくって。。。
>ごまべーぐる様
読んでいただいて有難うございます。
初めて読んでもらえたのに、更新を怠ってしまって申し訳ないです。
ぼちぼち話も先に進むことと思いますので、よろしくお願いします。
- 104 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年08月13日(火)20時46分02秒
>ごーまるいち様
書きたかったシーンがやっと書けた、と言っても内容が薄いのは内緒です(爆)。
こんなペースで申し訳ないです、これからはどうにかなると。。。(^^;;
>よすこ大好き読者。様
ちっちゃい吉、この回で終わりです。以後出てくるかは不明。。。
次からは話も動いてくる予定なんで、これからもお付き合い願います。
>名無し様
保全有難うございます。保全しなくてもいいくらい更新できるようにがんがります。
- 105 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年08月14日(水)16時05分13秒
- ズワーイ!!更新だ〜!待ってました!
いつ読んでも、胸が切なくなりますね。
続き期待しています。ガンガッテください!!
- 106 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月27日(火)01時08分30秒
- (・e・)ノ<ここまで読んだ…ラブラブ
- 107 名前:婆金 投稿日:2002年08月29日(木)00時12分11秒
- また読める幸せ!
やっぱメチャクチャ面白い。
- 108 名前:04 ひなたの温度 投稿日:2002年10月01日(火)22時13分08秒
診察室の窓から大きな中庭が見える。
樹木達は枝木を揺らし、新緑の芽を小さく震わす。
ベンチの周りでは、誰かのお見舞いに来たのか、元気そうな子供の声が飛び交う。
向かいのベンチではそれを優しく見守る老夫婦。
そんな風景が診察室にいる石川梨華には、少しばかりうらやましく思えた。
「石川さん、あと採血だけですからね。
もう少し辛抱してね。」
不意に後ろから声を掛けられ、我に戻った石川は、
小さく返事をすると、右腕を差し出した。
「半日以上もこんな検査ばっかりじゃつまんないでしょ?
いい若い人が病院通いなんて。」
看護士はそう言いながら、苦笑している石川のシャツの袖を上げていく。
- 109 名前:04 ひなたの温度 投稿日:2002年10月01日(火)22時13分47秒
「でも、石川さんは運が良かったわね。中澤先生が執刀してくれて。
あの人、見かけに寄らず名医だから」
石川の顔をのぞき込んで小さく笑うと、奥の方を指差しながら、
他の人に聞こえないように看護士はこっそり囁く。
その言葉が奥まで聞こえたのか、パーテーションの向こうではバサバサと大きな音が響いた。
「あぁん!!!何かゆーたか?聞き捨てならんことが聞こえたような気ぃするんやけど?」
ひょっこり覗いた顔が鬼瓦のような形相だったのか、二人はあわてて視線を逸らす。
「おぉ、怖…。」
看護士は首をすくめながら、石川に笑いかけると、
石川もそれにつられてくすくすと笑った。
- 110 名前:04 ひなたの温度 投稿日:2002年10月01日(火)22時15分12秒
「ほらほら、いらんこと言わんと、しっかり採血しといてや。
石川も笑ろうてたら違うとこ刺してまうで。」
奥からヒールの音を響かせながら、カルテを両手に颯爽と歩いてくる白衣の女、中澤裕子。
どさどさと机の上にカルテを置くと、椅子に腰掛けてカルテに向かう。
中澤は移植手術の名医で、その学会では彼女の名前を知らないものはいないぐらいである。
しかし、彼女の風貌がそのことを語ることはない。
白銀の髪、水色のカラコン、丁寧に施された爪。
それら全ては医者と言うには、不釣り合いなものだった。
中澤のことを世間一般では蔑視することがあるが、石川はそんな風には思っていない。
なぜなら、中澤がいなければ、石川の止まりゆく体を制止できなかったのだから。
医師と患者、そんな関係ではあるが、石川にとって中澤は姉のような存在でもあり、
石川に生きていく一つの目標をもたらした。
そして、中澤も石川のことを妹のように気に掛けていた。
- 111 名前:04 ひなたの温度 投稿日:2002年10月01日(火)22時15分52秒
「はい、終わりですよ。」
看護士は石川の左手を取り、ガーゼを押さえさせた。
石川が小さく頭を下げて感謝の意を表わすと、
看護士はニコリと微笑み、奥のパーテーションへと消えていった。
中澤の回転椅子が後ろに向くと、水色のカラコンが石川を見る。
「どないや?前の時よりも元気そうやな。顔色もええし。」
「はい。ありがとうございます。」
──くぅー、ほんま可愛ええなぁ…。
感銘の笑みを向ける石川が可愛くて仕方ない中澤は、
手を伸ばし、ついつい石川の頭を撫でてしまう。
中澤の頬は緩みっぱなしだというのは、言うまでもなく。
「ほんま、よう頑張ったなぁ。裕ちゃん感心するわ。」
「先生のおかげで、石川、ここまで頑張って来れました。
本当に感謝してます」
「えーの、えーの。うちは医者として当然のことをしただけや。
そや、学校の方はどないや?」
- 112 名前:04 ひなたの温度 投稿日:2002年10月01日(火)22時16分29秒
コンコン。
せっかくの空間を邪魔された中澤のこめかみが小さく脈打つと同時に、
カラコンは石川の後ろにあるドアを渋い視線で睨み付けた。
「誰やねんっ、もう…。ええわ、ほっといたら。
で、石川どないや?もう慣れたか?」
こめかみはピクピクさせながら、顔は恐ろしいくらい笑顔で石川の顔を覗き込む。
怯えたように身を引き締める石川の額にうっすらと汗がにじみ始める。
「先生…?、ノック…」
「えーねん、気にせんとき。どうせ大した奴やないし。」
回転椅子のキャスターが石川に近づく。
「なぁ…、石川?」
「あ、でも…」
囁く声は緩く優しく響き、カラコンの奥の瞳は深く見つめる。
石川の視線は中澤とドアとを何度も往復して、不安の色を隠せない。
- 113 名前:04 ひなたの温度 投稿日:2002年10月01日(火)22時18分16秒
「大したこと無い奴って誰のことや!!!!!」
ドアが大きく開くと同時に発した声と仁王立ちの白衣、平家みちよ。
白衣といっても、中澤の下で勉強している研修医の一人である。
石川の手術に立ち会い、入院中に平家が病室に入り浸っており、平家も退院後の石川のことを気に掛けていた。
石川は中澤同様、姉のように慕っていた。
「あ、平家先生。」
扉の向こうにいた平家の姿に石川はほっと胸をなで下ろす。
「なんや、みっちゃんか…。」
「『なんや』ってどういうことよ。」
どうでもええわ、と中澤は視線を逸らした。
平家は中にいた患者が石川だと気づくと診察室に飛び込んで
中澤を放置したまま、石川に話しかけた。
「梨華ちゃん、元気そうやん。」
「おかげさまでこんなに。平家先生も元気そうで。」
「なぁん、『先生』だなんて…。」
石川の言葉に照れまくっている平家をよそに、中澤は呆れていた。
- 114 名前:04 ひなたの温度 投稿日:2002年10月01日(火)22時19分53秒
「ろくなレポートも出せへんのに『先生』はないやろ。
石川、こんなん、『みちよ』でええねん。」
「裕ちゃん、『ろくな』は余計。出すだけましでしょ。
梨華ちゃん、うちは研修医やから、『先生』なんて言わんといて。
うちのことは、『みっちゃん』でええから。」
平家は中澤を一喝すると、石川の手を取り、にっこりと笑っている。
「梨華ちゃん、今日この後暇?一緒にご飯なんて…」
「あああああっっ!なんで、石川の手ぇ握ってるんや!どさくさにまぎれてぇ!」
石川の手を握りしめている平家を離そうと、中澤は二人に間に割り込んでいく。
「ええやん。裕ちゃんはこうして梨華ちゃんに会えるけど、うちは会えんもん。
なぁー、梨華ちゃん?」
「今日、大丈夫ですよ。この後薬もらいに行くんですけど、それからでも…」
「ええよ、うちは全然構わんから。みっちゃんずっと待ってるから」
- 115 名前:04 ひなたの温度 投稿日:2002年10月01日(火)22時21分56秒
二人の間を行ったり来たりして、必死になって自らの存在をアピールしている中澤。
石川はそんな中澤の姿が面白くて堪らない。
笑いを堪えて、中澤を見上げる。
「中澤先生は?」
「裕ちゃんはこれから学会に行かんといかんから、また今度っちゅーことで」
「なっ!うちだけ退けもんか?」
石川の声で笑顔になった中澤の顔は一瞬にして雲行きが怪しくなる。
反面、平家は石川の手を取ったまま、妄想を膨らませていた。
「梨華ちゃん、何食べに行こうか?」
「え!?…あ…っと、中澤先生、今度一緒に行きましょうね」
「絶対、絶対、絶対やで!石川、あんたなんていい子なんや…」
中澤は石川の頭を撫でながら、細い腕を回す。
笑顔で中澤に声をかけてみたものの、おもむろに抱きしめられた石川の体は緊張しており、
そんなことを知ってか知らずか、中澤の腕はさらに力がこもる。
しかし、その腕を平家がいとも簡単に引き剥がしていく。
- 116 名前:04 ひなたの温度 投稿日:2002年10月01日(火)22時23分08秒
「はいはいはいはい。裕ちゃんの気持ちはよー分かった。
じゃあ、こうしましょう。この次食事に行くときは裕ちゃんと三人で行きましょう。
ねー、梨華ちゃん?」
「ちょー、待ちぃや!なんで三人で行かないかんの?おかしいやん!
第一、石川と二人でって言ってるやん。なんで、みっちゃんと行かないかんの?」
間に挟まれた石川は顔色を交互に伺い、おろおろするばかり。
二人のボルテージはますます上がっていく一方で収まることを知らない。
「なんでって、うちは梨華ちゃんの保護者みたいなもんやもん!
裕ちゃんと二人っきりやったら何されるか…」
「何にもせぇへんわ!みっちゃんとおる方がうちには気がかりやわ!」
がちゃ。
不意に診察室のドアが開いたので、二人は一斉にそっちの方を睨んだ。
そこには不機嫌そうな婦長の顔が覗いていた。
「ここは病院なんですよ。静かにしなさい!!!」
「げっ!鬼婦長!」
中澤は思わず、口に出してしまった。
しまった、と思ったのだが、出てしまったものはしょうがない。
この後、中澤と平家の二人は鬼婦長に軟禁され、こってりと油を絞られたのだった。
- 117 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年10月01日(火)22時27分04秒
- >>108-116
更新しました。
- 118 名前:椎真夜叉 投稿日:2002年10月01日(火)22時33分10秒
- レス有難うございます。
さて、いつの頃の話を書いているのやら…(汗)。
>よすこ大好き読者。様
以前の色はどこへやら。。。
話はさらに迷走ちうです。こんな奴なんで(ry。鬱
>名無しさん様
読んで頂けて有難うございます。
更新するのが遅すぎて、忘れられてるような気が。。。(^^;;
>婆金様
そう言っていただけるなんてうれしいです。
ただ、時間が掛かりすぎてはいますが、今後ともよろしくお願いします。
- 119 名前:婆金 投稿日:2002年10月02日(水)23時26分08秒
- 更新!嬉しい!!
よくよく考えてみると、マターリ更新って
その分、長く、作品を楽しめるワケですよね。イイ
モテ梨華ちゃん、カワイイ
- 120 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月20日(日)21時18分34秒
- マターリほぜむ
- 121 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月16日(土)17時17分50秒
- いい〜!石川可愛いです
保全
- 122 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月17日(火)21時46分53秒
- ほぜむ。作者様帰って来て下さい。
- 123 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月07日(火)22時40分06秒
- 保
- 124 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月02日(日)15時12分36秒
- 全
- 125 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月02日(日)01時17分04秒
- 保全
- 126 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月07日(月)00時42分30秒
- ho zen
- 127 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月30日(金)19時50分59秒
- hozen
- 128 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月30日(月)01時35分57秒
- hozen
- 129 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月30日(水)01時26分56秒
- hozen
- 130 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)00時46分43秒
- hozen
- 131 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/02(木) 00:25
- 1年
- 132 名前:トリプル 投稿日:2003/12/02(火) 18:27
- すごく話がいいのにもう1年経っちゃいましたよ・・・。
早く先が読みたいから戻って来てくださいっ!!
まぢで読みたいのに。
- 133 名前:椎真夜叉 投稿日:2003/12/08(月) 23:05
- 長い間、更新が滞っており申し訳ありません。私情と諸事情で書くことができませんでした。
最後まで書く気持ちはあるのですが、次の更新がいつできるという約束ができないので、もう少し時間をいただけないでしょうか。
1年という時間を空けておきながら、勝手なことばかりで申し訳ありません。
足を運んでいただいた方、何度となく保全をしていただいた方、本当にありがとうございます。
ブランクが空いてしまったので、期待に添えられるような話は書けないかもしれませんが、この話を完結させたいと思います。
申し訳ありませんでした。
- 134 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/30(火) 23:35
- 待ってます
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