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小説『One Life』
- 1 名前:foo? 投稿日:2002年04月16日(火)12時41分21秒
- かなり久しぶりに書くのでどうなるかわかりませんが、ゆっくりと話を練りながら書こうと思います。
石川視点です。なお、年齢関係がおかしいところがありますが、話の構成上気にしないで読んでください。
- 2 名前:foo? 投稿日:2002年04月16日(火)12時42分33秒
- ここは…どこ?
辺りは真っ暗。あたしはその中で,真っ直ぐ伸びた道を歩いている。
一体なんなんだろう?でも進むしかなさそう。
あたしはとりあえず歩いて見る事にした。
しばらくすると分かれ道が出てきた。
うーん、どっちかなぁ…
…? 右の道の向こうに人影が見える。
誰だろう?まぁいっか。あの人についてってみよ。
ゆっくり、ゆっくり歩いていく。なのに人影はどんどん大きくなる。
後ろ姿がはっきりとして来る。
何…?あたしが良く知っている様な、そんな後ろ姿。
足音も立てず、その人はただ前へと進んでいく。
あたしもただその人について行く。
- 3 名前:foo? 投稿日:2002年04月16日(火)12時44分56秒
- もう相当に歩いた頃、不意にその人は立ち止まった。
あたしも思わず足を止める。
その人はあたしの方を振り返った…!
保田さん?!
その人は紛れも無く、保田さんだった。
あたしは弾かれたように駆け出した。
ずっと…ずっと会いたかったんですよ…
保田さんはあたしに微笑みかけると、また前へと進んでいく。
何で…?
どんなに走っても、保田さんに追いつけない。
あたしは必死で走る。
だけど、保田さんはどんどん小さくなっていく。
ついに、あたしは保田さんを見失ってしまった。
何で…。何であたしを置いていっちゃうんですか?
何で…
- 4 名前:foo? 投稿日:2002年04月16日(火)12時47分10秒
- 「保田さん!」
辺りを見回す。いつもの見慣れた風景。あたしの部屋の風景。
夢か…それにしたって…
あたしは保田さんの微笑みを思い返していた。
ふと目覚まし時計を見る。時間は10時を回っていた。
「あー!!」
やってしまった!新学期早々、遅刻だぁー!
あたしは急いで着替え、キャンパスに愛チャリを走らせた。
「梨華ちゃんが一限サボるなんてねぇ。」
「そんな事がありえるの?」
昼休み、あたしは学食で友達のごっちんとよっすぃーに
今朝の遅刻のことで色々言われていた。
「別にサボろうとしたわけじゃ…」
「まあ、いいんじゃないの?」
「だいたい3年になるまで、欠席0、遅刻0なんてありえないよ。」
ごっちんとよっすぃーは言いたい放題言っている。
全く…。
「あー、梨華ちゃんがむくれてるぅー。」
「むくれた顔もかーわいいー。」
「もー!」
今日のあたしはまるで2人のおもちゃだ。
- 5 名前:foo? 投稿日:2002年04月16日(火)12時50分04秒
- 「あーうん、合コンあるよー。」
ごっちんが髪をいじりながら言う。
「梨華ちゃんもついに来る気になったの?」
「ううん。今日はバイトもあるし…」
あたしは去年からド○ールでバイトをしている。もうそろそろ一年に
なる。
「そっか。」
すると、よっすぃーがあたしに聞いてきた。
「ねえ、バイト先で最近恋の予感は無いの?」
「別に何も…。」
あたしはそう答えた。
「まあ、梨華ちゃんも去年は色々あったしね。」
「保田さんだっけ?」
ごっちんが何の気無しに言う。
「あ、うん…。まあその事はもういいじゃない。」
あたしは逃げるようにして携帯の時計を見る。
「じゃあ、あたし3限あるから行くね。」
あたしはごっちんとよっすいーに手を振って、講義室に向かった。
- 6 名前:うっぱ 投稿日:2002年04月17日(水)02時12分09秒
- 何やら訳ありの匂いがしますね。
散りゆく夜桜でも見ながら、期待してます。
では。
- 7 名前:foo? 投稿日:2002年04月22日(月)12時27分23秒
- 更新でございます。都合により更新ペースはかなり遅いです。
たいてい週一くらいがいいとこです。なにせ時間もストックもないもので。
勘弁してくらはい。では続きを。
- 8 名前:foo? 投稿日:2002年04月22日(月)12時29分08秒
- あたしはここ最近、というか四月になってから何となく張りのない
生活を送っていた。講義中でもぼーっとしたり、家でも特に何をする
訳でもなく、ただ時間が経つのを待ってる感じだ。
原因は分かっている。
同じバイト先に、保田さんという人がいた。
保田さんは違う大学の、2つ上の人だ。
最初はあたしと性格が違いすぎて、苦手意識を持っていたけど
次第にその性格や、時々見せる優しさにひかれていった。
最初はお姉さんみたいに思っていた。でも時間が経つにつれて、
他の女の人に抱くのとは、違う感情を持っていった。
その気持ちに気付いた時は、はっきり言って凄く動揺した。
まさか女の人に恋をするなんて思っていなかったから。
悩みに悩んで、親友のごっちんとよっすぃーに相談した時、
二人ともさすがに驚いていた。当然だろう。
今まで男の人と一度も付き合ったことの無いあたしから
そんな話を聞いたのだから。
だけど二人とも、それぞれの言葉であたしを励ましてくれた。
それであたしは少し勇気をだそうと思った。
- 9 名前:foo? 投稿日:2002年04月22日(月)12時30分34秒
- だけど、保田さんは先月でバイトを辞めてしまった。
最後に一緒になった日、仕事中はいつもの様にしていたけど、
バイトが終わって控室で話をしてる時に泣いてしまった。
保田さんは驚いて、『どうしたの?』って聞いてきた。
あたしは、『もう会えないじゃないですか…』って涙声で言った。
すると保田さんは優しく微笑んで、『会うよ。』って言って、
頭をそっと撫でてくれた。まるで、子供を安心させるかの様に。
その時あたしは、呟くように『好きです』って言ったけど、
保田さんの耳には届かなかったみたいだった。
そして、それが最後の会話だった。
保田さんがいなくなって、あたしは大きな心の支えを失った
みたいだった。恋愛感情以前に、人として大きな存在だという事が
初めて分かった。あたしの心にはポッカリと大きな穴が
空いてしまったみたいだった。
「はい、じゃあ今日はこれで終わりにします。」
教授が授業終了を告げた声で、あたしは我に返った。
あーあ…またボーっとしてる。これじゃダメだって言うのに…
あたしは自己嫌悪しながら、教室を出た。
あたしの心の中とは対照的に、青空が広がっていた。
- 10 名前:foo? 投稿日:2002年04月22日(月)12時32分18秒
- 今日は天気も良く暖かくて、家に帰ってこもっているには
もったいなかったので、あたしは街に出てみることにした。
この街の通りはこの時期、毎年桜が満開になるのだが、
今年は暖かいためかもう、葉桜になっている木が殆どだった。
そんな葉桜を見ながら、あたしはいつもの本屋に寄って、
立ち読みをすることにした。
ファッション雑誌を読んでいると、誰かが肩を叩いてきた。
振り返ると、そこには矢口さんが立っていた。
矢口さんはバイト先の先輩で、結構仲がいい。
保田さんの件では相談にも乗ってもらったことがある。
「珍しいねぇ、街中で会うなんて。」
矢口さんは何かギャルみたいな格好をしている。バイト先で見る時は
シンプルな格好なので、そのギャップに少し驚いた。
「そうですよね。それにしても…」
「ん?どした?」
「矢口さんって普段そんな格好してるんですか?」
「ええ?うん。あたしはこんなんが好きだけど、バイトにこんな格好じゃ行けないっしょ。」
ハハハッと矢口さんは笑っていった。それもそうか。
と、矢口さんは不意に真顔になってあたしの顔を覗き込んだ。
- 11 名前:foo? 投稿日:2002年04月22日(月)12時35分16秒
- 「ど、どうしたんですか?」
あたしは戸惑いを隠せないまま尋ねた。
「梨華ちゃんさあ、何か悩んでるでしょ?」
ドキッとした。
「何でですか?別にそんなことないですよ。」
「何ていうか、目に元気が無い感じ。圭ちゃんの事相談された時とは
全然違う人みたい。」
保田さんの名前を出されて、あたしはますますドキッとした。が、幸いな
ことに、矢口さんはそれに気付いていないみたいだった。
「ま、グチ聞くくらいならしてあげるから。グチりたくなったらお姉さんのとこに
電話でもメールでもしてきなさい。」
「はあ…」
「あ、もう行かなきゃ。今日シフトなんだ。」
矢口さんは時計を見ていった。
- 12 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月22日(月)23時49分27秒
- やすいし・・・ですよね?
ひじょ〜〜〜〜に期待してます!!
- 13 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月25日(木)22時32分23秒
- やっすーはどこに行ってしまったんでしょ?
続きを楽しみにしています。
- 14 名前:りか 投稿日:2002年04月26日(金)18時06分31秒
- 気になります。
梨華ちゃんとけいちゃんなんか
訳ありですね?(笑
けいちゃんが気になりますw
続きがんばってください。
期待してます
- 15 名前:foo? 投稿日:2002年05月08日(水)15時11分13秒
- 更新です。本当はもっと早くするつもりだったんですが、色々ありまして遅れました。
その分G.W中に書き溜めたものを出したいと思います。
そしてレスつけてくれた皆様、ごめんなさい。今後は少しでもペースを
上げてがんばるのでよろしくお願いいたします。では。
- 16 名前:foo? 投稿日:2002年05月08日(水)15時14分10秒
- 「お、お疲れ様です…。」
「じゃあね、梨華ちゃん。」
そして矢口さんは行ってしまった。
あたしはまだ、戸惑いを隠せないでいた。
あたし…そんなに元気ないのかなあ…
人ごみの中であたしは一人、視線を地面に落として立ち尽くしていた。
もう30分ばかり立ち読みをしたあと、あたしは本屋を出て
家に帰ることにした。今日も何となく過ごした感じはイナメナイ。
ホントに誰か助けてよ、こんな無気力なあたしを。
あたしは、自分への苛立ちとケンカしながら自転車を走らせた。
そして、そんな風にして一ヶ月が瞬く間に過ぎて行った。とりあえず
授業中は集中するようになったし、遅刻も無くなった。
週に二回のバイトもいつも通りにこなしていた。
いつもの生活を取り戻したかのようにあたしは思っていた。
だが、日常は破られた。
- 17 名前:foo? 投稿日:2002年05月08日(水)15時15分27秒
- 4月最後の日、いつもの様にバイトへ行くと今日は矢口さんが先に来ていた。
「おはよう、梨華ちゃん。」
あたしは軽く挨拶をして奥の控室に行き,制服に着替えてシフトを交代した。
ゴールデンウィ−クのど真ん中にも関わらず、店内は閑散としている。
掃除やドリップをしながら、客の入りを見ているがやはり今日は人が少ない。
そのため、店内もとても静かで聞こえてくるのは女子高生のおしゃべりと、
道路を走る車の音くらいだ。
「矢口さん、今日って暇ですねー。」
「そうだねぇ。皆どっか行ってんじゃないの?あーあ、あたしもどっか行きたいなぁ。」
「例えば?」
「うーん、ベタだけどディズニーシーとか、USJとか。
方向違うけど、温泉でまったりとかもいいなあ〜。」
「あーいいですねー、温泉。ふやけた〜い。」
- 18 名前:foo? 投稿日:2002年05月08日(水)15時16分33秒
- そんな話で二人盛り上がっていると、店長があたしを呼んだ。
「来月のシフトなんだけど、こんな感じでいいかな?」
「…結構多めですね。」
「皆忙しい、って言っててね。でも後半からは皆大丈夫みたいで少なめにしてあるから。
どう?」
「はい。いいですよ。」
「じゃあ、これでお願いね。」
そういうと、店長は事務室に戻っていった。
「ねえねえ、知ってる?3、4、5日は保田さん入るらしいよ。」
戻ってきたあたしに矢口さんが言った。
「えぇっ!?何でですか?」
「最近、人足りないし皆忙しいでしょ?それでこの前保田さんが店にきたとき、店長が頼んだら気 分転換に、って3日間だけ引き受けてくれたんだって。」
「そうなんですか…。」
「梨華ちゃん、3日間一緒だよ。」
「へっ?」
「さっきシフトの話してたんじゃ無かったの?ま、帰りにでも見ればいいんじゃない?あー、あ と1時間だ。」
- 19 名前:foo? 投稿日:2002年05月08日(水)15時17分48秒
- 矢口さんはそういうと、材料を取りに裏の倉庫へ言ってしまった。
気がつけば、お客さんは一人もいない。本当にこの店は大丈夫なんだろうか。
それにしても、保田さんと一緒か…。
あたしは半分嬉しくもあり、半分怖くもあった。
あんな別れ方しちゃったからなぁ…。
「…ちゃん、梨華ちゃん。」
はっとして前をみると、そこにはごっちんがいた。
「ごっちん!?何で?家ここらへんじゃないじゃない。」
「えっ?うーんちょっとね。アハハっ。あ、アイスカフェオレ1つね。」
「はーい。」
トレイに乗せたアイスカフェオレを持って、ごっちんは奥の席に座った。
「あの子、お友達?」
いつの間にか戻ってきていた矢口さんがあたしに尋ねた。
「ああはい、大学の友達なんですけど…」
「可愛い子だねぇ。」
「そうですね。学校でも人気ありますよ。」
「ふーん。」
- 20 名前:foo? 投稿日:2002年05月08日(水)15時19分03秒
- 30分もした頃、ごっちんは空になったグラスを返却口に戻すと、あたしのところへやって来た。
「あと、どのくらいで終わる?」
ごっちんが唐突に聞いてきたので、
「あと、5分かな。」
とあたしが答えると、
「じゃあ、一緒に帰ろうよ。待ってるから。」
ごっちんはあたしの返事も聞かず店を出た。
「時間なんで、交代します」
次のシフトの人が来たので、あたしと矢口さんは控室で着替えをした。
「衝撃のカミングアウトがあったりしてね。」
矢口さんが帰り支度をしながら、イタズラっぽく言った。
「何言ってるんですか、そんなわけないですよ。あっちも偶然だって言ってたし。」
「それもそっか。じゃ、お疲れさん。」
矢口さんは一足先に部屋を出て行った。
あたしが外に出ると、ごっちんが店の前で待っていた。
「ごめんね、待たせちゃって。」
「ううん、あたしが勝手に待ってたんだから。じゃ、帰ろっか。」
あたし達は歩き出した。
- 21 名前:foo? 投稿日:2002年05月08日(水)15時20分05秒
- それから、あたし達はたわいも無いおしゃべりをしながら、道を歩いた。
夜道はとても静かで、あたし達の笑い声がやけに響いた。
そして、しばらく歩いていると、いつも通る大きな桜の木の前に差し掛かった。
「ねえ、梨華ちゃん。」
ごっちんが不意にかしこまった口調で話しかけてきた。
「なーに?」
「あ、あのね、あたし…」
ごっちんは何やら口篭もり、うつむいてしまった。
「どうしたの?」
あたしはごっちんに顔を近づけた。
と、あたしの唇に柔らかい感触が不意に広がった。
あたしは驚きのあまり、身動きできなかった。
が、ごっちんは我に返ったのか、慌ててあたしから離れた。
「ご、ごめん!」
それだけ言うと、ごっちんは走り去ってしまった。
あたしはただ呆然として、ごっちんの後ろ姿を見送った。
そして、その場にはごっちんの唇の感触と戸惑いだけが残された。
ごっちん…。
あたしはゆっくりと歩きだして、家路についた。
今夜は眠れぬ夜になりそうだった。
- 22 名前:foo? 投稿日:2002年05月08日(水)15時21分21秒
- 次の日、ごっちんは学校に来なかった。
「ごっちん、どうしたんだろうね。遅刻はするけどサボりはしないのにね。」
何にも知らないよっすぃーは、何の気無しに話し掛けてきた。
「た、体調でも悪いんじゃないかな?」
あたしはベタな答え方をした。
「そういや、梨華ちゃんも今日は目の下にクマできてるよ。」
「う、うんちょっと昨日は眠れなくて。」
「また勉強でもしてたの?頑張りすぎだよ。夜は寝なよ。」
本当は昨日の「事件」のせいで寝付かれなかったのだが、
そこは伏せておく事にした。
「うん、今度からそうする。」
と、よっすいーは机から立ち上がった。
「ねえ、どっか行かない?あたし今日暇なんだ。」
「いいよ、明日からはずっとバイトだから。」
「マジで?ごくろうさんだね。じゃあ、行こうか。」
あたし達は講義室を出た。
それからあたし達は、ウインドーショッピングをしたり、
ビリヤードをしたりして遊んだ後、喫茶店に入って休んだ。
- 23 名前:foo? 投稿日:2002年05月08日(水)15時22分45秒
- 「ちょっと疲れちゃったね。」
「う、うん。」
あたしは正直、何をやっている最中も昨日のことで頭がいっぱいだった。
ごっちんの事、明日保田さんに会う事、いろいろ考えていた。
「梨華ちゃん?」
よっすぃーに呼ばれてあたしは我に帰った。
「どうしたの?さっきからボーっとして。」
「あ、ごめん。ちょっと考え事してて…。」
「…悩んでるのかな?」
よっすぃーは真っ直ぐにあたしを見ていった。
「…ちょっとね。」
あたしは小さく舌をだして答えた。
「何か、オーラが違うもん。悩んでる梨華ちゃんがいっつも
纏ってるオーラ。」
「やっぱり分かる?」
「何年あんたと一緒にいると思ってるの?小中高大一緒じゃん。
話して楽になるなら、話してみ。無理に聞く気は無いけど。」
「よっすぃー…。」
- 24 名前:foo? 投稿日:2002年05月08日(水)15時23分15秒
- 今日は以上です。
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月08日(水)21時30分43秒
- やすいしかと思ったら
いしごまもあるのか?(w
いしごま好きなので期待!(w
- 26 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月08日(水)21時44分49秒
- ごっちん…
どーなるんですかー
続き楽しみにしてます〜
- 27 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月11日(土)15時48分34秒
- ごっちん頑張れ!!梨華たんとヤッスーの再会も気になる。
梨華たんのごっちんに対する気持ちってどうなんでしょうか?
更新楽しみに待っています。
- 28 名前:foo? 投稿日:2002年05月14日(火)14時31分10秒
- 作者です。実はPCに不都合が生じまして、更新が滞りそうなんです。
今もネットカフェからアクセスしてます。出来る限り早く再開するので
どうか見捨てないでください。
幸い原稿は書けるので書き溜めておきます。
読者の皆様、ご迷惑をお掛けします(謝)
- 29 名前:foo? 投稿日:2002年05月16日(木)17時41分49秒
- とりあえず、今まで書き溜めたものを更新しておこうと思います。
ではでは。
- 30 名前:foo? 投稿日:2002年05月16日(木)17時43分50秒
- 小さい頃から一緒だったよっすぃー。小学校のころ男の子にいじめられていた
あたしを守ってくれたよっすぃー。中学校の時も、高校のときも同じクラブで、
くじけそうになると叱ったり、励ましたりして
あたしの「チカラ」になってくれたよっすぃー。
そして、今もこうしてあたしを守ってくれようと
しているよっすいー。ありがとう…。
「実は…」
そう思うとあたしはごく自然に、昨日の「事件」について、
そして保田さんのことを話した。
「…なるほどね。」
よっすぃーはそれだけ言うと、フウッと息をついた。
「ビックリしたでしょ?」
「そりゃあね。」
「…。」
あたしは何も言えなかった。
「それで、梨華ちゃんはどうしたいの?」
「それは…」
- 31 名前:foo? 投稿日:2002年05月16日(木)17時44分57秒
- 「あたしは何でも言ってあげられるけど、最後にどうするか決めるのは
梨華ちゃんなんだからね。」
よっすぃーはあたしの目を真っ直ぐ見て言った。
あたしは…分からない。
「ま、明日あの人に会うんでしょ?」
「うん…。」
「自分の気持ち、確かめてくればいいんじゃない?
でも、自分に嘘はつかないほうがいいよ。」
そして、色々話したあと、あたしとよっすぃーは喫茶店を出て別れた。
『自分に嘘はつかないほうがいいよ』
帰り道の途中、よっすぃーの声が頭の中で何度も響いていた。
でも…保田さんのことであたしが傷ついても、
あたしはごっちんを傷つけたくない…。
夕焼け雲が赤く照らされてきれいに、しかしどこか悲しくさせる光を放っていた。
- 32 名前:foo? 投稿日:2002年05月16日(木)17時45分53秒
- そして、長い夜が明けて5月3日がやって来た。
昨日は緊張しすぎて、一睡も出来なかった。お陰で目の下には
またしてもクマが出来ている。
久しぶりの再会だと言うのに、最悪の顔だ。
あと何時間かで行かなくてはならない。
それまであたしは、落ちつかないままに音楽を聴いたり、
TVを見たりした。とにかく、考えすぎるとネガティブになる事は
自分が一番分かっているので、考えないことにした。
そして、時は来た。
「おはよーございます。」
あたしはいつも通りに控室の鍵を取りにいった…?無い。
と言う事は、もう来ている?
あたしは控室に行った。
ドアを開ける。
「おはよーござ…ああ、梨華ちゃん久しぶりだね。」
振り向いたその顔は紛れも無く保田さんだった。
「お、お久しぶりです。」
ヤバイ。もう顔が赤くなってる…。
- 33 名前:foo? 投稿日:2002年05月16日(木)17時46分47秒
- 「どうしたの?顔赤いよ。熱でもあるんじゃない?」
そう言うと保田さんはあたしのオデコに自分のオデコをくっつけてきた。
胸の鼓動がどんどん早くなる。
「…大丈夫みたいだね。」
そう言うと、保田さんはオデコを離した。
「じゃあ、先行ってるから鍵お願いね。」
「は、はい…。」
鍵をテーブルの上に置くと保田さんは出て行った。
ああ、ビックリした。もう気が変になりそう。
あたしはさっきの暖かさを感じようと
自分のオデコに手を当てた。
そして、思った。たった数秒間の再会ではっきりと悟った。
あたしは保田さんが、好きだ。
何て単純なんだろう、と誰かが思ってもかまわない。
あたしは「保田さんが大好きだ…。」
それからあたしは保田さんと仕事をしていたが、
あたしは落ち着かなかった。そりゃあ、好きな人がそばにいるとなれば
あたしはそうなってしまう。でも、保田さんはそんなあたしの様子に
気付く様子もなく、普通に話しかけてくれた。
- 34 名前:foo? 投稿日:2002年05月16日(木)17時47分55秒
- 「…でね、公務員試験の勉強って大変でさあ…」
あたしは、保田さんの話をただただ聞いていた。
声が聞ける、笑顔が見れる、時々困ったみたいな顔を見せる。
その全てがあたしには幸せだった。
時間はあっという間に過ぎて行った。
「交代でーす。」
もう交代かあ…。もっと一緒にいたいなあ…。
「梨華ちゃーん、先行ってるよ。」
保田さんの声を聞いて、あたしはさっさとタイムカードを
押すと控室に戻った。
ドアを開けると、保田さんはもう帰り支度を始めていた。
「お疲れ様ー。」
久しぶりに聞いたこのセリフ。安心するセリフ。
「お疲れ様です。」
「久しぶりに働いたけど、疲れるねぇ。歳だわ。」
そう言うと、保田さんは苦笑して見せた。
「梨華ちゃんさあ、最近どう?」
「何がですか?」
- 35 名前:foo? 投稿日:2002年05月16日(木)17時48分57秒
- そう言うと、保田さんは意味深な表情で、
「んー、彼氏出来たのかなぁ、と思って。」
あたしは頬が紅潮していくのを感じていった。
「な、ど、どうしてですか!?」
「なーんかさあ、雰囲気違うんだよね。キレイになったなあと思って。」
それは、保田さんに恋してるからだ。が、あたしは
その言葉を飲み込んだ。
「そうでなきゃ、好きな人でもいるんじゃないの?」
あたしの顔はこれ以上無いほど赤くなったに違いない。
「あー、赤くなったぁ!そうなんだぁ、若いっていいね。」
保田さんはからかうように言った。
「ま、がんばってよ。あたしも陰ながら応援してるから。」
そう言うと、保田さんは鍵をあたしに預けて出て行った。
一人取り残されたあたしは、まだ顔が赤くなっているのを感じていた。
何のつもりであんな事を言ったんだろう。
それよりもあたしは、保田さんがあたしの事を気にかけて
くれたのが嬉しかった。
あったかい気持ちのまま、あたしは部屋を出た。
- 36 名前:foo? 投稿日:2002年05月16日(木)17時50分00秒
- 明日も、明後日も楽しみだなぁ…。
5月4日。今日も保田さんとバイト。
「おはよーございます。」
保田さんの一言から始まる時間。
今のあたしにとって一番たいせつで、楽しい時間。
なんでもないお喋り。保田さんの声が聞ける。
保田さんの色んな顔が見られる。
あたしはそれだけで幸せ…。
5月5日。今日も幸せ気分で、バイトへ行く。
今日も始まる楽しい時間。
でも今日はちょっと忙しくて、お喋りできる時間も少ない。
今日で最後なのに…。
そして、時間はあっという間に過ぎて行った。
- 37 名前:foo? 投稿日:2002年05月16日(木)17時51分08秒
- 「お疲れー。何か今日忙しかったね。」
「ですよね。」
最後の日だっていうのに…。
「まあ、3日だけだったけど、いい気分転換になったよ。
梨華ちゃんともお話できたしね。」
保田さんはあたしの方を見てそう言った。
「じゃあね、梨華ちゃん。今度、やぐっちゃんと三人で遊びたいね。」
バタンと音がして、ドアが閉まった。
あたし、このままでいいの?
何も伝えなくていいの?
そう思うと、あたしの体は動き出していた。
鍵を戻すと大急ぎで外に出た。
辺りを見回すと、遠目に保田さんが見えた。
あたしは走りだした。
あの大きな桜の木のところで、あたしはやっと追いついた。
「保田さん!」
あたしが声を掛けると、保田さんは驚いた様子であたしを見た。
「梨華ちゃん、どうしたの?」
心臓がその鼓動を早める。
伝えたい思いがどんどん膨らんでくる。
「あ、あたし、あの…」
- 38 名前:foo? 投稿日:2002年05月16日(木)17時52分15秒
- 「おーい。ここ、ここ。」
不意に聞こえた男の人の声。
「圭、今日は時間どおりに来たなぁ。」
「なーに言ってんの、最近は時間守るじゃない。」
保田さんは嬉々としてその人と話している。
今まで見たことのない位の笑顔を見せた。
「ん?この子は?」
あたしに気付いたのか、男の人があたしを見て言った。
「ああ、バイト先の子だよ。そういえば梨華ちゃん、
何かあたしに言うことがあったんじゃないの?」
「あ、あたし、こ、これを…。」
あたしは、元々今日返すつもりでいたCDを差し出した。
「あー、CD貸してたね。わざわざごめんね。」
「だって、当分会えないですもんね。」
あたしは無理して笑顔を作った。
「そうだね。」
「じゃあ、あたしはこれで。」
あたしは走ってその場を離れた。
早く離れたかった。
- 39 名前:foo? 投稿日:2002年05月16日(木)17時53分04秒
- 家の前にきて足を止めると、視界がグニャリと歪んだ。
あたしの頬を涙が伝っていく。
左手のリング、すれ違いざまに漂うタバコのにおい。
うっすらと、予想出来たことのはずだった。
でも、それが現実に姿をあらわした時、
あたしは言いようのない絶望を感じた。
涙があとからあとから溢れて来る。
そして、一人でいることが怖くなった。
あたしはよっすぃーに電話をかけた。
「留守番電話サービスセンタ…」
そこまで聞いて、あたしは電話を切った。
メモリーを見ていくと、あたしの指は『後藤真希』で止まった。
少し躊躇したが、あたしは発信ボタンを押した。
- 40 名前:foo? 投稿日:2002年05月16日(木)17時54分22秒
- 一応ここまでです。多分二、三週間もすれば復帰できると思います。
それでは、しばしの間お別れです。
- 41 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月16日(木)23時36分57秒
- が〜ん。
圭ちゃんってば・・・。しくしく。
大変そうですが、復帰待ってます!
- 42 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月17日(金)15時42分28秒
- ああ梨華たん切ない。マターリ待っていますよ。
- 43 名前:foo? 投稿日:2002年05月31日(金)18時40分01秒
- PCはあきらめて、ネットカフェからつなぐことにしました。
今日は書き溜めた分をあげさせていただきます。
- 44 名前:foo? 投稿日:2002年05月31日(金)18時43分48秒
- 気まずいとか、そんな事は考えなかった。
ただ、誰かと一緒にいたかった。
『プルルルル…』と言う音が四、五回鳴ったあと、
電話をとる音が聞こえた。
「もしもし?」
ごっちんの声が耳に入ってくる。
それだけで、なぜか安心できた。
「ごっちん?夜遅くにごめんね。」
「ううん、大丈夫だよー。」
「今から行ってもいいかな?」
沈黙が訪れた。唐突すぎたかな?
ごっちんはしばらく考えている様子だったが、
「いいよ。」と言ってくれた。
あたしは、すぐに自転車に乗ってごっちんの家を目指した。
「ひとり」が怖かった。自分の「存在」を確かめたかった。
そんなネガティブな感情に追いかけられるようにして、
あたしはごっちんの家に到着した。
チャイムを押す。
「梨華ちゃん?」と言う声がインターホンの向こうから聞こえた。
「うん。」と言うとガチャ、と言う音と共にドアが開いた。
そして、ごっちんが顔を出した。
- 45 名前:foo? 投稿日:2002年05月31日(金)18時45分39秒
- 気まずいとか、そんな事は考えなかった。
ただ、誰かと一緒にいたかった。
『プルルルル…』と言う音が四、五回鳴ったあと、
電話をとる音が聞こえた。
「もしもし?」
ごっちんの声が耳に入ってくる。
それだけで、なぜか安心できた。
「ごっちん?夜遅くにごめんね。」
「ううん、大丈夫だよー。」
「今から行ってもいいかな?」
沈黙が訪れた。唐突すぎたかな?
ごっちんはしばらく考えている様子だったが、
「いいよ。」と言ってくれた。
あたしは、すぐに自転車に乗ってごっちんの家を目指した。
「ひとり」が怖かった。自分の「存在」を確かめたかった。
そんなネガティブな感情に追いかけられるようにして、
あたしはごっちんの家に到着した。
チャイムを押す。
「梨華ちゃん?」と言う声がインターホンの向こうから聞こえた。
「うん。」と言うとガチャ、と言う音と共にドアが開いた。
そして、ごっちんが顔を出した。
- 46 名前:foo? 投稿日:2002年05月31日(金)18時49分27秒
- 「ごめんね、こんな夜遅くに。」
あたしはごっちんに謝ると、家の中に入れてもらった。
ソファに座るや否や、ごっちんは心配そうな表情であたしを見つめると、
「何があったの?」
と、いきなり核心に迫る質問をしてきた。
「ううん、何でもないよ…。」
あたしはごっちんに心配をかけまいと、
精一杯平静を装った。
「じゃあ、何でこんな時間に?今までこんな事無かったじゃない。」
ごっちんはさらにつっこんでくる。まるで警察の取り調べみたいだ。
「ただ、その…何て言うか、ひとりでいるのが嫌だなと思っただけだよ。」
あたしは苦しい言い訳をした。
「梨華ちゃん…泣いた…の?」
ごっちんが急に潤んだ目であたしを見つめながら問い掛けた。
「えっ?」
「目の下に乾いた跡…見えるよ。」
あたしは慌てて頬に手をやった。
「やっぱり何かあったんじゃない?」
ごっちんはさらに問い詰めてくる。
「だから、何でも…」
- 47 名前:foo? 投稿日:2002年05月31日(金)18時52分16秒
- 「どうして?」
あたしが言い訳するのも聞かず、ごっちんが静かに言った。
「どうして何にも話してくれないの?どうして一人で抱え込もうとするの?」
ごっちんはさらに続ける。段々涙声になってくる。
「悩む時はいっつも一人で、抱え込んで辛そうな顔してる。
梨華ちゃんは自分じゃ気付いてないかもしれないけど、あたしには
分かるんだよ。だって…」
そこまで言って、ごっちんは口をつぐんでしまった。
「だって…?」
あたしが聞き返すと、ごっちんは俯いて、消え入るように言った。
「梨華ちゃんが…梨華ちゃんが大好きなんだもん…」
部屋の中を沈黙が支配した。
ごっちんはすっかり下を向いてしまった。
あたしは何も言えなかった。
ただ、ごっちんを見ていた。
- 48 名前:foo? 投稿日:2002年05月31日(金)18時53分55秒
- 「…梨華ちゃんといると、いつも幸せな気分でいられる。安心できる。」
「ごっちん…」
「あたし、保田さんが羨ましかった。顔も見たこと無いし、話で聞いただけだけど、
保田さんの事話す梨華ちゃんの、嬉しそうな顔見てると、凄く苦しくなった。
こんなに梨華ちゃんに愛されてる保田さんが…」
そこまで言うと、ごっちんは声も上げずにその場で泣き出した。
あたしは、どうしていいのか分からなかった。
あたしとよっすぃーの前じゃ、いつでも笑顔で、
泣いた事なんか一度も無かった。
そのごっちんがあたしの事で、涙を見せた。
こんな、情けないあたしの事で。
心の中を罪悪感が包みこんでいった。
「あたし…帰るね。」
あたしはいたたまれなくなって、部屋を出ようとした。
「待って…」
あたしが振り向くと、言い様も無いほどせつない顔をして、
ごっちんがあたしを見つめていた。
「一緒に…いてよ…」
- 49 名前:foo? 投稿日:2002年05月31日(金)18時55分42秒
- 凄く不安な目をしたごっちん。あたしは、
どうしていいか分からなかった。でも、そんな目をされたら…。
「うん…分かった。」
あたしは心の整理もつかないまま、返事をしてしまった。
それからあたしはごっちんを落ち着かせると、
今日あった事を包み隠さず、話した。
「…そうだったんだ。」
ごっちんは静かに言った。
「まあ、最初からそんな気配はあったから
もう半分諦めてたんだけどね。前向きに行かないと。」
あたしは無理して明るく振舞った。
「梨華ちゃん、強いね…。強いよ。」
「え?」
ごっちんの言葉にあたしはビックリした。あたしが…強い?
「なんでそんなに前向きになれるの?」
「だって、過去は変わんないけど未来は変えられるんだよ。」
「でも…保田さんのことまだ好きなんでしょ?」
ごっちんが濡れた目であたしを見つめながら尋ねた。
「うん、好きだよ。大好き。でもね、負けおしみじゃ無いけど
あの人に会えてよかったって思うよ。ホントに。」
- 50 名前:foo? 投稿日:2002年05月31日(金)18時57分24秒
- ごっちんは黙ってあたしの話を聞いていた。
「確かに『恋人』にはなれなかったけどあんなにときめいて、色々悩んで、迷って。
あたし、生きてるって気がした。」
「…」
「今まで傷つきたくないって思って生きてきた。でも、傷つかなきゃ
大きくもなれない。人の痛みも分かってあげられない。それが分かっただけでも
良かったって思うよ。」
「じゃあ、あたしは?あたしの気持ちは?」
ごっちんが不意にあたしに尋ねた。
「あたしはすごく、すごく梨華ちゃんが好きなんだよ?」
「…」
「梨華ちゃんはあたしをどう思ってるの?」
ごっちんは…大事な友達。大事な仲間。
そういう意味ではあたしもごっちんが好きだ。
…はっきり言ってしまったほうがいいのだろうか?
「ねえ、梨華ちゃん!」
- 51 名前:foo? 投稿日:2002年05月31日(金)18時59分08秒
- 「ごっちんは…友達だよ。大事な、大事な友達だよ。」
考えがまとまらないうちにあたしは言ってしまった。
そしてごっちんは黙りこんでしまった。
「あたし、ごっちんのおかげでどれだけ救われたかしれない。
どれだけ笑顔になれたか、どれだけ元気もらったか…」
ごっちんはあたしを今にも泣き出しそうな目で見つめている。
それを見ているこっちも辛い。
「…うん、うまく言えないんだけど、あたしはごっちんに会えて
本当に良かった。だから…ありがとう。」
「…」
「ごめんね。あたし口下手だから…」
「ううん。ちゃんと、伝わってるよ。梨華ちゃんのあったかい気持ちが
じんわり心のなかで広がってるよ。」
ごっちんは笑顔を作ってあたしに向ける。
その表情があたしをまた切なくさせた。
「梨華ちゃん、お願い聞いてくれる?」
「何?」
- 52 名前:foo? 投稿日:2002年05月31日(金)19時00分34秒
- 「…キスして。それで全部忘れるから。頑張るから。」
ごっちんの目。決意と悲しさが混ざりあったような目。
その目を見たら…あたしは自然と頷いていた。
「これで…最後だよ。」
あたしは目を閉じて、そっとごっちんの唇に
自分の唇をゆっくりと重ねた。
柔らかくてあったかい、でもどこか淋しい…
ごっちんの涙も、あたしの涙も全て包み込んで
どこかへ行ってしまえばいいのに…
最後のキスは、優しさと悲しさが混ざり合った、複雑な味だった。
- 53 名前:foo? 投稿日:2002年05月31日(金)19時07分27秒
- 更新いたしました。
>41さん。ホントはああいう展開じゃなかったんですが…
練ってく内に切ない話にしたくなってきたので
圭ちゃんに彼氏を作ってしまいました。
>42・いしごま防衛軍さん。石川ばっかり傷ついてるみたいですが
なんか成長していく様を書きたかったのであんな事になってしまいました。
では、また後日更新いたします。
- 54 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月31日(金)21時28分54秒
- これからどうなるんだろう?
続き期待してます
- 55 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月02日(日)01時58分14秒
- うむ。ごっちんには梨華たんと幸せになるチャンスはもうないんですか?
これで最後なんですか。うがーーーーーごっちん切な過ぎるよ。
しかし、ごっちん諦めるな。梨華たんだけを想い続けてくれーー。
更新楽しみに待っていますよほ。
- 56 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時08分58秒
- 作者です。今まで忙しくて更新できなかったのですが、
今日になってやっと余裕が出来たので更新します。
あと、前に二重投稿してしまってすいませんでした。
なんと、書き溜めたら終了してしまったので、全てあげます。
>54さん。ある意味どんでん返しです。
>いしごま防衛軍さん。切ないかどうか…
では最終回(?)です。
- 57 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時09分55秒
- 次の日、あたしは学校を休んだ。
よっすぃーから電話がかかってきたが、
今日は具合が悪くてムリと言っておいた。
保田さんに気持ちを伝えられなかった。
ごっちんを傷つけてしまった。
やるせなさ、苛立ち、罪悪感…
いくつものネガティブな感情があたしを支配していた。
そのくせ、ごっちんには偉そうな事ばっかり言ってしまった。
何してんだろう、あたし…
ベッドに寝転がったまま、あたしは懊悩していた。
ただ、天井をボーっと見ていた。
そんな風にしていると、不意に携帯が鳴った。メールだ。
携帯に手を伸ばして、メールを見る。
『矢口でーす(^^)v今、何してる?もし暇だったら
一緒にご飯でも食べに行こうよ。来てくれるなら
HMVでマッテマス☆』
あたしは回らない頭でちょっと考えた。
…気分転換にはいいかな。
『いいですよ(^O^)20分くらいで行きます。』
メールを送信すると、あたしは身支度をして部屋を出た。
- 58 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時11分29秒
- HMVに着くと、あたしは視聴機のところにいる矢口さんを
見つけた。相変わらず派手な格好だなぁ。
あたしが肩を叩くと、矢口さんは振り向いてからヘッドフォンを外すと、
「おっ、来たね。じゃあ行こっか。」
あたし達は外に出た。
「美味しいお店みつけたんだよー。」
アーケードの中を歩きながら、矢口さんは
いつもの様にいっぱい話し掛けてくる。
でも、あたしは相槌を打つぐらいしか出来なかった。
「あ、ここだよ。可愛いでしょ?」
そこは真っ白な壁で、ペンションを小さくしたような木造の建物だった。
そして店先にはたくさんのカスミ草が飾ってあった。
そのカスミ草は白くて、白くて、あたしの心のとげを
少しだけ取り除いてくれた。そんな気がした。
あたしはその花に見入っていた。
「梨華ちゃん?行くよー。」
矢口さんの声を聞いて、あたしは我に返ると
急いで矢口さんについて行った。
店に入ると、矢口さんは急に大人しくなった。
さっきまであんなにしゃべってたのに…。
どうしたんだろう?
やがて、一人のウエイターがメニューを持って
あたし達のテーブルにやってきた。
- 59 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時14分57秒
- 「いらっしゃいませ。ご注文は?」
差し出されたメニューを取る。
「矢口さん、何がオススメですかねぇ?」
あたしが聞くと、矢口さんは指でトントンと
一つの料理を指差した。
『シーフードセット…¥1,000』
なるほど。じゃあ、今回は矢口さんに従ってみよう。
「お決まりですか?」
「じゃあ、あたしはシーフードセット。矢口さん決まりました?」
「あ、あたしは…じゃあ、あたしも同じので…お願いします。」
かしこまりました、と言うとウエイターはメニューを持って
厨房へ向かっていった。
矢口さんがふうっとため息をつく。
「カッコいいよね〜、あの人。」
「は?」
何を言い出すんだ、このヒトは?
「もしかして…あたしを食事に誘ったのは…」
「だって、一人じゃ恥ずかしいんだもん。」
そういうと矢口さんは顔を赤くして、両手を頬に当てると
斜め下を向いた。
「あたしさぁ、今あの人の事ばっかり考えちゃうんだよねー。
どんな所に住んでて、どんな性格でとかさー!」
矢口さんは一人で盛り上がっている。
- 60 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時15分59秒
- 「梨華ちゃん、かっこいいからってとっちゃダメだからね。」
矢口さんは冗談っぽく言った。
「大丈夫ですよ、そんな心配しなくても。」
あたしはそんな矢口さんを見て少しおかしくなった。
「おまたせいたしました、シーフードセットになります。」
さっきのウエイターが料理を持ってくると矢口さんは
ジーっと見つめている。目がハートだ。
「ごゆっくりどうぞ。」
料理を食べている間も、矢口さんはアナザーワールドへ旅立って
いるようだった。
「矢口さん?スープ冷めちゃいますよ?」
あたしが声を掛けると、矢口さんは我に帰ったようで、
料理を口に運び始めた。
「そういえばさぁ、梨華ちゃんどうだった?」
「何がですか?」
「ゴールデン・ウイ―ク。圭ちゃんと一緒だったでしょ?」
あたしは言葉を詰まらせた。でも、矢口さんは相談にも乗ってくれたし、
報告の義務はあるかな?
「…ダメでした。」
「は?」
それから、あたしはあの日の出来事をごっちんの部分を除いて
一部始終話した。
- 61 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時17分05秒
- 「…そっか。」
「もうずいぶん泣いたから、大分落ち着きましたけど。」
あたしは思い出すとまた泣きそうなので、笑顔を作って見せた。
すると、矢口さんはあたしの肩を叩いて、
「まあ、また新しい恋愛ができるって。そういう風に出来てるもんだよ。」
と言ってくれた。
「ありがとうございます…。」
「じゃあ、行こうか。」
あたし達は席を立った。
会計の時、例のウエイターがレジにやってきた。
あたしが会計を済ませ、矢口さんがお金を払っていると、
「ここんとこ、よく来てくれますよね?」
「え?あ、ああはい…ここの料理気に入っちゃって。」
「ありがとうございます。」
ウエイターが笑顔でそういうと、矢口さんは耳を真っ赤にしている。
「またどうぞー。」
ドアを開けて外に出ると、矢口さんはまたしてもどこかへ旅立って
しまっていた。
それにしても…あのウエイターどっかで見たことある気が
したけど…気のせいだよね。
「はあ〜声かけられちゃったよ。幸せだにゃ〜。」
「恋、してますね。」
あたしがそう言うと、矢口さんは緩みきった顔で
「恋してるよ〜。」
- 62 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時18分05秒
- 矢口さんはまた盛り上がったのか、語り始めた。
「人を好きになるのにカッコいい理由なんていらないよね。」
「えー、だってあの人カッコいいから、矢口さんだって恋してるんですよね?」
あたしが相槌を打つと、矢口さんの語りはヒートアップした。
「いいじゃん、それで。顔が好き、声が好き、性格が好き。
好きって気持ちがいいんだなぁ。幸せなんだなぁ。」
そこまで言って矢口さんは時計を見る。
「まだ2時かぁ。中途ハンパに時間あるなぁ。」
「何か用事でもあるんですか?」
「3時から授業なんだよ〜。」
「そーなんですか。お疲れです。」
「あたし、本屋で立ち読みでもして時間つぶすわ。」
「じゃあ、あたしはこれで…」
「ごめんね、梨華ちゃん。じゃあ、また。」
そう言うと矢口さんは街の雑踏に消えていった。
ふう、矢口さん凄いなあ…。あのパワーは真似できない。
- 63 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時18分51秒
- あたしは自転車を止めた所に戻って、鍵を外そうとした。
ポケットに手を入れる…?
あれ?鍵がない。
もう一方のポケットにも手を入れてみる。
無い。
パニクりかけたその時、あたしは財布の中に鍵を入れたのを
思い出した。財布を取り出して小銭入れを開ける。
はたして鍵はそこにあった。
慣れないことするもんじゃないな。
あたしが鍵を差し込んだその時、誰かが不意にあたしの肩を叩いた。
振り返ると、そこには…!
「具合悪いんじゃなかったの?」
「よ、よっすぃー…」
- 64 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時20分06秒
- そこにはよっすぃーが立っていた。
「梨華ちゃんが学校サボるなんて…ねえ。」
半分あきれた感じの表情を浮かべるよっすぃー。
あたしは何も言えなかった。
「街に出てくるようだったら、大丈夫だね。」
「よ、よっすぃーは何で?ここに?」
「あたしは、その…買い物?」
よっすぃーはぶっきらぼうに答えた。
「まあ、そんな事はいいからお茶でも飲もうよ。」
よっすぃーはあたしの手をとって、半ば強引に
近くのスタバへあたしを引っ張っていった。
席に着いてから、よっすぃーはずっと黙ったままだった。
「ねえ、怒ってるの?」
あたしが聞いてもよっすぃーはあたしをじっと見つめたままだ。
口をへの字に結んだまま、腕組みをしている。
コーヒーをすする音だけがあたし達の間に響く。
絶えがたい沈黙だ。まして相手がよっすぃーだ。
心を読まれてるみたいで落ち着かない事この上ない。
「ねえ、よっす…」
- 65 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時20分52秒
- 「昨日何かあったでしょ?」
あたしの言葉を遮ってよっすぃーが口を開いた。
「梨華ちゃんが学校休むなんて、しかも仮病?何もないわけないじゃない。」
「…」
その語調は少し荒く、いつものよっすぃーとは雰囲気が違う。
「よっすぃーこそ、いつもと違うよ?」
「どこが?ちゃんと目も二つあるし、鼻も口もついてるでしょ?」
「そういう事じゃなくて…」
やはりよっすぃーは怒っている。
小さい頃から、よっすぃーは怒るとこんな風にひねくれたことを言うのだ。
「だから、あたしは何かあったでしょって聞いてるの。」
「…」
あたしは黙っていた。昨日の出来事はハンパじゃなく
ごっちんを傷つけただろう。その事をよっすぃ―までもが
知ってしまったら、あたし達三人のトライアングルが壊れてしまう…
そんな気がしたのだ。
- 66 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時21分23秒
- 「梨華ちゃん」
「何?」
「服に口紅のあとついてるよ。」
あたしはとっさに服をつかんで跡を探した。
しかし、それらしきものはどこにも見当たらない。
どういうこと?…!
よっすぃーの顔を見ると、してやったりといった感じの
表情を浮かべている。
しまった…
「まあ、全部知ってるけどさ。今ので決定的ってとこかな。」
よっすぃーはコーヒーを口に運ぶ。
「何で…こんな事…」
あたしの中にもふつふつと怒りが湧いてきた。
「ごっちんから今日全部聞いたよ。ごっちんが梨華ちゃんを好きだった事。
昨日の夜キスしたこと。梨華ちゃんが振られたって言ってた事も全部ね。」
「…」
「ああ、ごっちんは悪くないよ。今日ごっちんの様子がかなりおかしかったから
あたしが問い詰めたら言ったの。あたしもかなり強引だったから。」
「何でそんな事したのよっ!」
あたしは店中に聞こえてしまうくらい大きな声で言った。
よっすぃーは冷めた目であたしを見ている。
「何で?知りたかったから。それじゃいけない?」
- 67 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時21分55秒
- 「ひどい…ひどいよ。」
あたしは泣きそうになっていた。
「よっすぃー、ひどすぎるよっ!」
あたしは怒りと悲しみで行き場の無くなった感情をよっすぃーにぶつけた。
そして、そのまま店を飛び出した。
何で?
何でこんな事になるの?
あたしが何も出来ないから?無力だから?
またネガティブな感情があたしを支配していく。
家に着くとあたしは鍵をかけてベッドにうつぶせになった。
よっすぃー…何で?
ずっと、ずっと一緒だったのに…
辛い時にはいつだって励ましてくれたのに、どうして?
変わっちゃったの?
あたしが情けなすぎて、見捨てたくなったの?
涙が止まらなかった。
全てを失った気分になった。
恋も、友達も、生きがいさえも。
あたし…どうしたらいいの…
- 68 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時22分47秒
- そのまま夕方まで過ごしていると、不意に携帯が鳴った。
「もしもし…」
「あー、梨華ちゃん?あたし。ごっちんだよー。」
ごっちん…
昨日の事もあるので、あたしは怒るわけにもいかなかった。
「どうしたの?」
「んーと、どうしても一つだけ聞いておきたいことがあってさ。」
「何?」
「梨華ちゃんさー、昨日告白したの?」
また蒸し返すつもり?
「だから…その事はもういいの。」
「あたし思うんだけどー」
「…」
「もし、告白しなかったら絶対後悔すると思うんだ。
自分の本音が好きな人に届かないなんて、振られるより
悲しいよ?ホントに好きだったら言わないとダメだよー。」
「…」
「あたしも昨日は梨華ちゃんに言わないでおこうって思ってたんだけど
やっぱりダメだった。だって本当に好きだったんだもん。」
「ごっちん、もうその話は…」
「でもさー、やっぱり言ってよかったよ。梨華ちゃんがあたしを
どう見てくれてるか分かったし、もっと好きになったもん。あ、友達としてね。」
- 69 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時23分21秒
- 「ごっちん…」
「だからさー、梨華ちゃんも勇気だそうよ。
告白しないでふられたー、なんて逃げだよ。立ち向かおうよ。」
「…ありがとう。」
「うん、それだけなんだけどー。じゃあね。あ、明日は学校来るんだよー。」
そして電話は切れてしまった。
『自分に嘘はつかないほうがいいよ』
よっすぃーの声。
『好きっていう気持ちがいいんだな〜』
矢口さんの声。
『立ち向かおうよ』
ごっちんの声。
色んな声があたしの中に鳴り響いた。
そうだ…あたしは自分の気持ちに『正直に』ならなきゃダメなんだ。
甘えてちゃダメなんだ。
そう思うと、あたしは電話を手にとり保田さんに電話をかけていた。
何度かのプルル…という音の後、保田さんの声が聞こえた。
- 70 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時24分01秒
- 「もしもし?」
「あ、あのあたし、梨華です…」
「あー、どうしたの?」
「今ってお時間ありますか?」
「うん。まあ、あるよ。」
「お話したい事があるんですけど…」
「なになに?」
「あの桜の木の前に来てくれませんか?」
保田さんはしばらく考えているようだったが、
「うん、いいよ。10分もあれば行くかな?」
「じゃあ、待ってますから。」
「ほいほーい。」
あたしは電話を切ると、急いであの桜の木へ向かった。
桜の木についてから、ほど無くして保田さんがやって来た。
「すいません。急に呼び出しちゃったりして。」
「ううん、いいんだよ。ちょうどコンビニ行こうと思ってたし。」
保田さんは優しく笑った。
「で、話って?」
胸の鼓動が早くなる。
「あの、あたし…」
上手く言葉が出てこない。
保田さんも首をかしげている。
- 71 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時24分51秒
- 「あ、あたし、保田さんとバイトしててすごく楽しかったんです。
話とか面白いし、優しいし…」
「あらあら、どうしたのよ?急に…」
保田さんはちょっと驚いている。
「保田さんと一緒にいると時間が早く過ぎるっていうか
もっと一緒にいたいって言うか…」
「…」
「あたし…あたし、保田さんが好きなんです!大好きなんです!」
保田さんは黙ったままだった。
あたしの「好き」が恋愛的なものだということは
分かってくれたみたいだった。
でも…
「ごめんなさい…やっぱり迷惑ですよね。」
「迷惑なんかじゃないよ。」
えっ?
「あたしも、梨華ちゃんが好きだったよ。ずーっと。」
保田さんは照れたみたいにして髪をかきあげた。
えっ?えっ?
「だって…あの、5日に一緒にいた男の人は…?」
「えっ?ああ、あれはあたしの兄貴だよ。」
- 72 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時25分30秒
- お兄さん…そうだったのか。
「あたしも梨華ちゃんといると落ち着くし、楽しいんだよね。
もっと一緒にいられたらいいのになって、ずっと思ってたよ。」
「じゃあ…」
保田さんははにかみながら言った。
「デートしよ。コンビニで買い物だけど。」
あたしの目から涙がこぼれた。
「ちょ、ちょっと泣かないでよ。」
保田さんが動揺したので、あたしは涙を拭いて笑った。
「だって、だって…絶対ダメだと思ってたから…」
保田さんはやれやれ、といった感じで涙をそっと拭いてくれた。
「行こう。梨華ちゃん。」
「はい!」
あたしたちは手をつないで、桜の木を後にした。
道を歩きながら、あたし達は色んな事を話した。
「あのさー、いつからあたしの事好きだった?」
「うーんと、去年の12月くらいですかね?」
「あたしは梨華ちゃんに一目ぼれだったよ。」
「そうなんですか?!」
「店長にシフト変えて下さいって言ってたけど、無理だった。」
保田さんは苦笑している。
「あたしは正直、最初はちょっと苦手だったんですよ。」
- 73 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時26分34秒
- 「えー?!なにそれ。ひどーい。」
「最初は、ですよ。あたし人見知りなんですよ。でも今はだーいすきです。」
「だーいすきかぁ…いい響きだなぁ。」
「何か矢口さんっぽいですよ。」
「やぐっちゃんの口癖うつるんだよ〜。」
あたしは笑った。久しぶりに心から楽しかった。
そしてあたし達はコンビニに着いた。
「あれ?あれさぁ、やぐっちゃん?」
保田さんが指差した方を見ると、確かに派手な格好をした矢口さんが
買い物をしていた。
「矢口さん…ですね。」
「あとの二人は見たことないけど、学校の友達かなぁ?」
その横にいる二人を見てみる。
…よっすぃーと、ごっちん?!
何で?
声が聞こえてくる。
「うまくいったかな〜?」
「どうだろう?」
「梨華ちゃん、傷ついてないかな…」
「よっすぃー、大丈夫だって〜。」
「でも、あたしひどい事したよ。キレたり、冷たくしたり。」
「じゃあ、あたしはどうなるのさー。」
- 74 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時27分50秒
- あたしは3人の会話を盗み聞きしていた。
「梨華ちゃん?」
保田さんがあたしの態度に異変を感じたのか、声を掛けてきた。
「あ、いや、ちょっとありえないなぁ…」
「何が?」
「あの2人あたしの友達なんですけど…」
と、あたしが3人の方を向いた瞬間、よっすぃーと目があった。
よっすぃーは慌てふためいて、矢口さんとごっちんの肩を叩いた。
それであたし達に気付いた2人もビックリしている。
開いた口が塞がらない、という感じだ。
あたしは3人に近づいた。
「どーいうこと…」
「ここじゃなんだから、外で…」
よっすぃーが言うと、3人はあたしをコンビニの外へ連れ出してしまった。
「梨華ちゃーん!」
保田さんも後を追って店を出て来てくれた。
外にでると、3人は何もかも話してくれた。
- 75 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時28分34秒
- よ:「まず、今日学校でごっちんから話を聞いたのね。昨日の。」
ご:「で、あたしは、どーしても梨華ちゃんに後悔して欲しくなかったから、
何とか梨華ちゃんが告白できるようにしむけたかったんだー。」
や:「で、あたしのところによっすぃーから電話があって…」
り:「ちょっと、ちょっと。そこが分からないですよ。」
や:「…あたしとよっすぃーは付き合ってるの。」
り・保:「えー!」
よ:「コホン…。で、真里に…」
り・保「真里ー?!」
よ:「いいでしょっ!別に!で、真里に梨華ちゃんを食事に誘ってもらって
気分転換、兼恋の幸せについて語ってもらったの。」
や:「あのウエイターさんはよっすぃーだったんだよ〜。
特殊メイクのマスクしてたから気付かなかったでしょ?」
り:「マスクって…。どっかで見たことあるとは思いましたけど…。」
よ:「で、あたしはその後、急いで追っかけて、梨華ちゃんを
拉致したってわけ。」
- 76 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時29分14秒
- 保:「梨華ちゃんを拉致?!あんたねー…」
よ:「こ、誇張ですよ。で、あたしはちょっと梨華ちゃんに冷たくして
こう、人恋しくさせたかったというか…ごめんね、梨華ちゃん。」
り:「そうだったの…あたしよっすぃーに見捨てられたかと思っちゃった。」
よ:「ごめんね、梨華ちゃん。」
ご:「で、あたしが電話。よっすぃーが多分ごっちんだったら怒れないだろうから、
話も聞いてくれるんじゃないかって。」
り:「…」
ご:「沈んでる梨華ちゃんにポジティブパワーを送るのが、あたしの仕事。」
よ:「あとは、梨華ちゃんが告白するかどうかだけだったけど、大丈夫だったみたいだね。」
3人が話し終えると、保田さんは激怒した。
「あんたたちねー、そんな行き当たりばったりなことしてよかったと思ってんの?!
下手すれば、梨華ちゃん傷つくだけだったんだよ!」
「それは…」
ごっちんもよっすぃーも何も言えずにいる。
「それでも友達なの?!もっと他にやり方ってもんが…」
「保田さん…」
あたしは、怒りの収まらない保田さんをなだめた。
「でもさ」
矢口さんが口を開いた。
- 77 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時29分52秒
- 「2人とも、梨華ちゃん大好きなんだよ。信じてるんだよ。くじけても
梨華ちゃんならきっと立ち直って、バネにしてくれるって。
梨華ちゃん、本当に女の子らしいけど強いんだって。」
「やぐっちゃん…それにしても…。」
「だいたい、圭ちゃんも悪いんだよ。あたしに梨華ちゃん好きだ、
梨華ちゃん可愛いって何回言った?もう耳にタコが出来る位聞いたよ?
それを一回だけ本人に言えれば、あたし達もこんな事しなかったんだよ。」
「そ、それはそうだけどさぁ…」
保田さんは一息ついてから言った。
「好きすぎて、言えなかったんだよぉ…。」
そう言うと、保田さんは下を向いてしまった。
「あたし…」
口を開いたあたしの方をみんなが向いた。
「あたし…凄く幸せだったんだね。」
「…」
「皆がこんなにあたしの事考えてくれて、あたし…」
「あーあ,梨華ちゃんったら…。」
ごっちんが言う。
「ホントに涙もろいんだから、小さい頃から変わんないね。」
よっすぃーがいつものように言う。
「じゃあ、ここは圭ちゃんに任せて邪魔者は退散しますか。」
矢口さんが言うと、ごっちんとよっすぃーは車(よっすぃーのヴィッツ)に
乗った。
- 78 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時31分01秒
- 「じゃあね、梨華ちゃん。」
「明日は学校来ようねー。」
「圭ちゃん、梨華ちゃんのことよろしくー!」
3人は車に乗って帰っていった。そして、あたしと保田さんだけが残された。
「梨華ちゃん、大丈夫?」
保田さんが心配そうにあたしに話し掛けて来た。
「大丈夫ですよ。保田さんがいるんですもん。」
それを聞いて保田さんは優しく微笑むと、あたしの手をさっきよりも
少し強く握ってこう言った。
「行こっか。」
「どこにですか?」
「デートの続き。まだ買い物してないよ。」
あたしは本当に嬉しくなって、保田さんに抱きついた。
「ちょ、ちょっと…」
保田さんは顔を赤くして照れている。
「怒ってくれたとき、すっごく嬉しかったですよ。」
「梨華ちゃん…」
「さ、買い物しましょうよ♪」
「今日はハーゲンダッツと、午後ティーと…」
- 79 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時31分31秒
- 人はなぜ誰かを愛してしまうのだろう?
人はなぜ傷ついても誰かを愛そうとするのだろう?
愛だけで幸せになれるわけじゃない
愛だけが全てのルールじゃない
でも、人は誰かに愛を求めてしまう
多少リスクを背負っても手にしたい愛…
誰かがそんな歌を歌っていた
「幸せ」の意味さえ曖昧なこの世界で
あたしは「幸せ」をみつけた
みんながいてくれること
みんなと一緒にいられること
そして、愛しい人が傍にいてくれること…
この幸せを守りたいと願う
この幸せがずっと続いて欲しいと願う
そのためにあたしは強くなりたい
あなたがいてくれたならきっと強くなれる
だから…ずっと傍で…
あたしの「One Life」を
あなたの傍で過ごさせてください…
〜Fin〜
- 80 名前:foo? 投稿日:2002年06月10日(月)18時38分56秒
- こんな感じでオシマイです。
またしても、気分で話を強引に捻じ曲げてしまいました(汗)
圭ちゃんの彼氏→兄貴とか。
もう何かダメ小説でした(萎)
石川が挫折しまくって、でもはっぴーえんどみたいなの
書きたかったんですが、全然ダメでしたね。ははっ(苦笑)
それでは、読者の皆さん、ありがとうございました。
- 81 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月12日(水)05時02分20秒
- 完結ご苦労様でした。
梨華ちゃんと圭ちゃん好きな自分にはHAPPYなラストでした。w
なんか何処の圭ちゃんもいいように使われて結局一人身で終わらせられたりで...はっ!いけませんねw
とにかくお疲れ様でした。
これが、またお話書く活力にでもなれば幸いです。
- 82 名前:LINA 投稿日:2002年06月13日(木)14時39分32秒
- 完結おめでとーございます!
やすいし好きのあたし的には、楽しくハラハラしながら読まっせてもらいました♪
最後は、\( ^▽^)/<ハッピー!
になってよかったです♪
- 83 名前:foo? 投稿日:2002年07月02日(火)18時40分01秒
- どうも。作者です。
<81名無し読者さん、82LINAさん、レスありがとうございます。
この度、またまた懲りずに小説を書き始めようと思います。
今回は主人公は男で、ヒロインは圭ちゃんです。
ほかのメンバーをどうからませていくか試行錯誤していますが、
がんばってみようとおもいます。このスレで書いていくので
よろしくお願いします。
- 84 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月02日(火)18時44分24秒
- 『午前一時-全てが変わった瞬間-』
「ふう…」
俺はシャワーを浴びて身体を拭き、着替えると
ソファに身体を投げ出した。
「今日も…疲れたな。」
今日は学校行って、街ぶらついて、その後バイト行って…。
千葉の田舎から東京に出てきて2年が経つ。
不自由のない毎日。不満があるわけでも無い。
だけど、何か満たされない。なぜだ? …考えるの面倒だ。もう寝るか。 俺は指輪をつけて時計に目をやる。
「一時か…」
俺はソファから起き上がると、ベッドに入り目を閉じた。
『ピンポーン』
しかし、程なくして玄関のチャイムが鳴った。
一体誰だ?こんな夜中に?
俺は無視して、ベッドから出ることはしなかった。
『ピポピポピンポーン』
…しつこいな。文句言うか。
俺は身体を起こすと玄関に向かい、チェーンロックをかけたまま鍵を開けた。
すると、隙間から一人の女が顔を出した。
- 85 名前:foo? 投稿日:2002年07月02日(火)18時45分47秒
- 女は俺が出てきたことに驚いているようだった。
そして、恐る恐る俺に話しかけてきた。
「あ、あの、この家の方ですか?」
「はい、そうですけど。」
俺はぶっきらぼうに言った。
すると、女は紙切れを取り出し、何かを確かめているようだ。
何なんだ?一体。
「ここって、コーポYZの301ですよね?」
女はまた尋ねてきた。
「ええ。」
そう言うと、「すいません」と言ってドアを閉めた。
家でも間違えたのか?全く迷惑な話だ。
俺は鍵をかけ、ベッドに戻った。
ベッドに入って目を閉じると、またしてもインターホンが鳴った。
またか?
俺は玄関へ行き、鍵を外すとドアを開けた。
そこにはさっきの女が立っていた。
「あんた、一体何なんだ?こんな夜遅くに。」
俺は多少怒気をこめて言った。
- 86 名前:foo? 投稿日:2002年07月02日(火)18時46分40秒
- すると女はバツが悪そうに頭を掻き、話し始めた。
「ここ、先々月まで友達が住んでたんですけど引っ越して、
あたしに新しい住所教えるの忘れたらしいんです。ああ、でも困ったなあ。」
俺は黙って話を聞いていた。
「今日飲み会で後輩がつぶれちゃったんですよ。それであたしが友達の
家近いからって連れてきたんですけど…。しかもこの子未成年なのに…」
女は言いながら、俺のことを見ている。
嫌な予感がする。
「それで?俺には関係の無い話だろ?」
俺は冷たく突き放そうとした。だが、女は全く人の話を聞いていない。
「あの、迷惑だとは思うんですけど、今夜ここに泊めてもらえませんか?」
「あなたの家じゃダメなんですか?」
「あたしの家は電車じゃないと行けないんですよ。」
「他の友達の家は?」
「一番近くて徒歩30分位。でもつぶれたの連れてるから…」
「でもなあ…」
「女の子が夜道歩いてて襲われちゃったらどーするんですか?!」
キレた。迷惑な事この上ない。ったく面倒だな。
「…分かりましたよ。どうぞ。」
俺はしぶしぶ承知した。
- 87 名前:foo? 投稿日:2002年07月02日(火)18時48分11秒
- 女はつぶれてる子をベッドに寝かすと、正座して俺に頭を下げた。
「本当にすいません。助かりました。」
「別に…本当に襲われたら俺も困るし。」
俺はあくまで冷たく答えた。
「ねえ、椎名くん。」
俺は耳を疑った。何で俺の名前を知ってるんだ?
「椎名くん、ちっとも変わんないね。クールな所。」
そう言うと、女はにっこり微笑んだ。
「何で俺の名前を知ってるんだ?」
俺は尋ねた。
「高校のクラスメイトだったから、かな。」
女はそう答えた。
クラスメイト?はて?
「…すまない。覚えてないな。」
「ひどーい!二年間は一緒だったのに…」
何?二年間一緒?
「伸と亮は三年間一緒だったけどな。」
「まぁ、あたし中退だからね。覚えて無くてもしょうがないか。」
- 88 名前:foo? 投稿日:2002年07月02日(火)18時49分23秒
- 女はため息をついて窓の方を見た。
中退って…。そんな奴の事を俺が覚えてる訳が無い。
まあ、こいつにしてみたら知ってる人でまだラッキーだったって事か。
俺がそんな事を考えていると、女は俺の顔を覗き込んできた。
「な、なんですか?」
「あたしの名前、当てて見せてよ。」
何を言い出すんだ?この女は?
「何でそんな事しなきゃならないんですか?」
「当ててくんなきゃ大声出すよ。『襲われるーっ!』って。」
「はあ!?」
「いいからいいから。当ててよー。」
俺は考えた。…が全く思い浮かばない。
くそー、このままじゃ犯罪者になってしまう。
必死で考えていると、一人の女の名前が浮かんできた。
俺は何でも言ってみようと思い、その名前を口にした。
「保田…圭?」
すると、女はニッコリ微笑んだ。
「あったりー!何だ、覚えてるじゃん。」
「適当に言っただけだ。」
- 89 名前:foo? 投稿日:2002年07月02日(火)18時50分25秒
- 「またまた。照れちゃってー。」
女…保田さんは俺の鼻を人差し指で突いた。
「それより、あんた…保田さんはどうするんだ?」
俺が聞くと、保田さんは当然のように言った。
「ここに泊まるよ。もう夜遅いしそれに…」
保田さんは意地悪な目で俺の方を見ながら言った。
「椎名くんがあの子に何かしたら困るしね。」 「な…」
「ウソウソ。冗談だよ。じゃあもう寝ようか。おやすみなさーい。」
そう言うと保田さんは床に寝転がり、程なくして眠ってしまった。
おいおい…あんた女だろ?ったくしょうがないな。
俺は彼女に毛布をかけてやると、台所に寝袋をひいた。
全く…。迷惑な話だ。
俺は目を閉じた。疲れていたせいか、俺はすぐに眠りに落ちた。
この再会が俺の人生を変えていくことになるとは、
この時は気付く由も無かった。
- 90 名前:foo? 投稿日:2002年07月02日(火)18時54分27秒
- 今回はプロローグって事でこんな感じです。
週一回は更新したいと思いますが、事情により出来ない事も
あるかも知れませんが、見捨てないでください(^^;)
それでは〜。
- 91 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月08日(月)14時05分03秒
- 俺が目を覚まして部屋を覗くと、二人はまだ寝ていた。
起こしちゃ悪いな…って言うか面倒だな。
そういや今日は伸たちと早朝サッカーする予定だったな…。八時か。もう行かなきゃ。
俺は書きおきを残すと、サッカー用具を持って家を出た。
「マジでー?!」
サッカーの休憩中、芝生に座って昨日の話をすると伸と亮は驚いていた。
「保田って、あの保田だろ?」
「お前、覚えてないって…」
「覚えてるも何も…同じクラスにそんな奴いたか?」
「ありえねーよ。」
伸がぼやくように言う。
「覚えてないにしても…お前、テレビ見ないのか?」
亮がそれに続いて言う。
「テレビとどう関係があるんだ?」
俺が言うと、伸も亮も目を丸くした。
「保田圭っていやあ、いまや国民的アイドルグループの『モーニング娘。』
のメンバーだぜ。」
モーニング娘?
「名前くらいは聞いた事あるな。」
「お前驚かないのか?アイドルがお前と一つ屋根の下だったんだぜ?」
伸が興奮しながら言う。
- 92 名前:foo? 投稿日:2002年07月08日(月)14時05分40秒
- 「別に…。だって知らなきゃ普通の女の子だろ?」
言いながら、俺はゴールの方に歩いて行き、
PKの位置にボールを置き右隅を狙ってボールを蹴った。
ゴールポストギリギリに飛んだボールが枠を捕えてネットを揺らす。
「相変わらず見事だな。」
亮が口笛を吹きながら、俺に言う。
「俺、今でも分かんねーよ。なんでエスパルス行きの話蹴ったんだ?
お前の大好きな森岡と一緒にプレイ出来たんだぜ?」
伸が俺に聞いてくる。
「…サッカーは趣味だ。仕事にはしたくない。」
俺は答えた。この二人と何度この話をしたか…。
「その趣味で俺らインターハイ優勝できたんだからな。」
「修矢一人で10得点だもんな。マジ感謝だぜ。」
「もうその話はいいだろ?俺はきままにサッカーしたいの。」
「じゃあさ、保田の話しようぜ。」
伸が言った。何でそうなるんだ?
亮がそれに乗っかって話す。
「保田かー、テレビで見る限りじゃ大分可愛くなったよな。」
「そうかあ?俺は安倍なつみの方が好みだけどな。」
「安倍ー?」
「まあ、あの中ではね。」
- 93 名前:foo? 投稿日:2002年07月08日(月)14時07分31秒
- 「なあ、修矢はどう思う?保田の事。」
伸が俺に話を振ってきた。
「どうも思うも何も…知らなかったからな。」
「じゃあよ、昨日会ってみてどうだった?」
「自己中で、色気ゼロ。俺にちょっかい出したらすぐ寝やがった。」
俺は昨日の彼女の行動を思い返しながら言った。
今、思い出しても迷惑だし、腹が立つ。
「修矢が女の事そんな風に言うの初めて聞いたな。」
「保田ってそんなキャラなんだな…。よっすぃーとかならよかったのにな。」
伸が気の毒に、と言う感じの顔で俺を見ている。
「そういや今、何時だ?」
亮が唐突に俺に聞いてくる。
「10時だけど…?」
「やべっ!」
亮が慌てて帰り支度をする。
「俺、今日デートの約束してたんだ!」
「何ぃ!(キャプ翼風)誰とだよ?」
- 94 名前:foo? 投稿日:2002年07月08日(月)14時08分31秒
- 伸がやられた、と言う感じで亮に聞く。
「この前、合コンしただろ?あの時の有美ちゃん。」
「マジかよー!大ヒットじゃん!」
伸が本気で悔しがっている。
「へへっ、悪いね。じゃあな。」
そう言うと、亮は愛車のバンディッドに乗って帰ってしまった。
「有美ちゃんかー。いいなあ。な、修矢?」
「そうか?って言うかお前も彼女いるだろ?」
「そりゃそうだけどよ…まあお前は女に興味ねーからな。せっかくルックスいいのに。」
伸がやれやれ、といった感じで俺に言う。 「もしかしたら、アイドルとの恋が始まるかもな。」
「それだけは無い。」
「男と女なんていつどうなるか分からないぜ?」
伸がいやにまじめな顔で言う。…そんなもんか?
「俺も帰るかな。明日提出のレポートあるんだ。まだ何もやってねーし。」
伸は渋い顔をして俺に言う。 「ああ。じゃあ俺も帰るわ。」
「保田が待ってるといいな。いい話のネタになるぜ。」
「誰が信じるんだよ。そんな事。」
「ははっ、それもそうか。じゃあな。」
- 95 名前:foo? 投稿日:2002年07月08日(月)14時11分09秒
- 伸も愛車のニュービートルに乗って帰っていった。
俺はレストアバイクの『グリーヴァス』に乗る。
アイドルだったのか…。まあ、うざったい事には変わりはない。
もう…いないといいけどな。
俺はゆっくりと、遠回りをして家に帰った。
玄関のドアを開ける。
靴は…ある。…もう昼近くだぞ。
「おかえりなさーい。」
俺は突然の声に本気でビビった。
「…まだいたのか?鍵、郵便受けに入れて帰れって書置きしただろう?」
「なーにそれ。せっかくお昼ご飯作ったのに。」
マジかよ…。
俺は左手でオデコを押さえて首を振った。
「どうせ、朝ご飯食べてないんでしょ?」
保田さんは、勝気な顔で俺を見る。
「まあ…そりゃそうだけど…。」
「昨日泊めてくれたお礼よ。」
- 96 名前:foo? 投稿日:2002年07月08日(月)14時12分31秒
- さっさと帰ってくれるのが一番のお礼なんだけどな…
が、言うとまた面倒な事になりそうなので抑えた。
部屋に入ると、何やら、味噌汁だの、肉じゃがだの実家以外では
食わないような料理が並んでいる。
「あ、椎名さんですね。昨日はどうもありがとうございました。」
昨日つぶれた子が俺に頭を下げる。
「いやいや、この人に脅迫されたから。」
俺は保田さんを見ていった。
「ちょっとー、あたし脅迫なんかしてないって。」
保田さんがほっぺたを膨らませて俺に抗議する。
「しただろ?大声出すよって。」
「だって仕方なかったんだもん。」
「って言うか、やぐっちゃんに対して声の掛け方優しくない?」
保田さんが不満そうに言う。
「そんな事無いだろ?」
「ある!」
「ふふっ。」
俺達のやり取りを見ていた女の子が笑った。
「椎名さんと圭ちゃんって仲良いんだね。」
「な…」
- 97 名前:foo? 投稿日:2002年07月08日(月)14時13分35秒
- 「ぜ、ぜーんぜん。どこ見てそんな事言うの?」
保田さんはむきになって否定する。
「ほら、よく言うじゃない。『ケンカするほど仲がいい』って。」
彼女は口元に笑みを浮かべて、保田さんに言う。
「だって、椎名くんあたしの事覚えてなかったんだよ?
二年間ずっと同じクラスだったのに。」
「そりゃ、しょうがないだろ。大体話した事も無いんじゃないか?」
「あるもん…」
今度は少々イジケ気味になった。
何て情緒不安定な女だ。
「まあまあ。早く食べないと冷めちゃうよ。」
『やぐっちゃん』と呼ばれた女の子が保田さんをたしなめた。
助かった…。
「椎名さん、圭ちゃんって料理上手いんですよ。」
「いただきまーす。」
俺は味噌汁をすする。…何か食った事あるな、この味。
今度は肉じゃがを食べてみる。
…これも食った事ある気がする。まあ、でも旨いな。
ふと気付くと、保田さんが首をかしげて俺の方を見ている。
「ねえ、美味しい?」
「…ああ。」
- 98 名前:foo? 投稿日:2002年07月08日(月)14時16分47秒
- 「ホントっ?!やったー!」
保田さんが満面の笑みを浮かべる。
「圭ちゃん…何か新婚さんみたいだよ?」
「な、なーに言ってんのよ!」
そういうと、保田さんは顔を真っ赤にして
やぐっちゃんの背中をバンと叩いた。
そのせいか、彼女はむせ返ってしまい、激しく咳き込んだ。
「おいおい、大丈夫か?」
俺が声を掛けると彼女は、咳き込みながら言った。
「ゲホッ、だ、大丈夫…ゲホッ…ですよ。」
…大丈夫じゃないだろ、どう見ても。
「やーっぱりやぐっちゃんには優しいじゃん。」
保田さんが唇をとんがらせて言ってくる。
…何でそんなにからんでくるんだよ。
俺は無視して黙々とメシを食った。
やがて食事が終わると、保田さんはテキパキと片づけを始めた。
「俺がやるから、置いといていいぞ。」
「いーの。」
そう言うと、保田さんは台所に消えていった。
- 99 名前:foo? 投稿日:2002年07月08日(月)14時17分23秒
- 俺はソファに座り、テレビのスイッチを入れる。
すると見た事のある解説者が、画面に映しだされた。
W杯が始まってからは、どこの局でもこぞってサッカー番組をやっている。
この番組ではイングランドのフォーメーションをボードに並べて、
あちこちに動かしながら解説をしている。
「椎名さんってサッカーしてたんですか?」
隣に座っていたやぐっちゃんが俺に聞いてくる。
「まあ、ちょっとは…今は友達と遊び程度にやるくらいかな。」
「どこが優勝すると思います?」
「…ブラジルかな。」
「どうしてですか?」
「ロベルト・カルロスが好きだから。」
そんな話をしていると、片づけを終えた保田さんが戻ってきた。
「お二人さん、盛り上がってますねぇ。」
冷ややかな目で俺を見ながら、保田さんが言ってくる。
「別に…」
俺は取り合わないようにした。
「椎名くんさあ、やぐっちゃんには優しいよね?」
「…」
「惚れた?」
「そんな事は断じて無い。」
- 100 名前:foo? 投稿日:2002年07月08日(月)14時18分12秒
- 保田さんはさっきから何かにつけて俺にからんでくる。
何考えてんだかさっぱり分かりゃしない。
「椎名くん、今何時かな?」
保田さんが唐突に尋ねてきた。
「十一時だけど?」
「やばっ!」
俺が答えると、保田さんは慌てふためいた。
「やぐっちゃん、ヤバイ!遅刻だよー!」
「マジでー?!早く行かなきゃ!」
やぐっちゃんも慌てている。何なんだよ。
「じゃあね、椎名くん!」
「椎名さん、どうもすいませんでした!」
二人が玄関のドアを閉めると、俺は速攻で鍵をかけた。
やっと…静かになった。
それにしても…保田さん、からんで来すぎだろ?
何なんだよ一体…俺に何の恨みがあるんだっつーの。
気疲れした俺はちょっとだけ昼寝する事にした。
- 101 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月09日(火)02時02分57秒
- この設定結構ツボ
- 102 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月10日(水)20時29分11秒
- おっ!新作ですかあ。
続き楽しみに待ってます。
- 103 名前:foo? 投稿日:2002年07月15日(月)12時21分29秒
- >101さん、名無し読者さん、レスありがとうございます。
前作のようにグダグダにならないように頑張って行きたいので
宜しくです。
では更新します。
- 104 名前:foo? 投稿日:2002年07月15日(月)12時29分20秒
- 夢を見ていた。
俺は街の中を歩いていた。高層ビルが軒並み並ぶ都会だ。
だが、すれ違う人間には表情が無く、マネキンのようだ。
そんな街で会った一人の紳士。
黒いスーツに身を包み、グレーの髭を蓄えている。
歳は50前後と言ったところだ。
『君の夢は何だね?』
唐突にその男が俺に尋ねる。
『夢は…世界で一番サッカーが上手くなりたい。』
『じゃあ、世界で一番サッカーが上手くなるようにしてあげよう。』
…冗談だろ。
『その代わり、君は大事なココロを一つ私に差し出さなければならない。』
本気でいってんのか?
『私は本気だぞ。』
その言葉に俺は驚いた。…心が読めんのか?この人?
『そうだ。私は君の心を読んでいる。』
…マジかよ。
『私を信じるのか?信じないのか?』
信じるも何も…。信じられるか。
『私はどっちでもいいんだがね。』
紳士が俺を意地悪そうに見ながら言う。
- 105 名前:foo? 投稿日:2002年07月15日(月)12時30分05秒
- こんなありえない話を信じろ、何ていうほうが普通は無理だ。
でも…本当にサッカーがうまくなるなら…。
『分かった。信じるよ。』
『そうか。じゃあ大事なココロを差し出したまえ。』
俺の…大事なココロ?大事なココロは…
『じゃあ、…を。…をあんたに差し出すよ。』
『分かった。ちょっと、待ちたまえ。』
そう言うと、男は俺の顔を覗きこんできた。
まるで品定めでもしているようだ。
やがて男は深く頷いた。
『じゃあ、そのココロを差し出す代わりに、君を世界一のサッカー選手にしてあげよう。』
そう言うと、男は俺に手をかざした。
その刹那、まばゆい光が俺を包んだ。
- 106 名前:foo? 投稿日:2002年07月15日(月)12時31分30秒
- …またこの夢か。
高一の時から、何度も見ている夢。
だが…
初めてこの夢を見た次の日、俺は格段にサッカーが上手くなっていた。
と言うより、スペースを生み出せるようになった。
ボールを持てば、直感的に蹴ったところにフリーの味方がいるし、
ボールが無ければ、空いたスペースへ瞬時に駆け込めるようになっていた。
反復練習では身に付けきれない、カンが異常に鋭くなっていた。
相手のパスコース、動き…全てが手にとるように分かった。
シュートやフリーキックも例外ではなく、殆どが絶好のコースへ飛んでいくのだ。
それが分かった俺は、フィジカル面をひたすら鍛えていた。
高二も終わりに近づいた頃、俺は高校レベルでは当たり負けないほどになっていた。
そして高三の夏、俺達の部はインターハイで優勝した。
皆が喜ぶ中、俺は一人素直に喜べなかった。
頭の中にはあの紳士の顔だけが浮かんでいた。
スカウトもあちこちから来たが、全て断った。
- 107 名前:foo? 投稿日:2002年07月15日(月)12時34分22秒
- 何かは分からないが、何かが足りない。
だが、それが何なのかも分からない。…考えるの面倒だ。止めよう。
俺は時計に目をやる。
時計の針は「11」の所を指している。
「もう11時か…。」
俺はシャワーを浴びる事にした。
が、その時携帯が鳴った。
番号を見るが、全く身に覚えが無い。
俺はとりあえず通話ボタンを押してみる。
「もしもし?」
「あっ、椎名くん?あたし。保田でーす。」
何?
俺は番号を教えた記憶はないぞ?
「ちょっとー、椎名くん?」
「何で番号知ってるんだ?教えた覚えは無いぞ。」
「ごめんなさい。料金請求の紙がテーブルにあったから…。」
しまった…。
「だからって、人のプライバシーを勝手に…」
「ゴメンなさい…。ホントーにごめんなさい。」
「分かった分かった。もういいよ。」
「昨日は本当にありがとうね。助かっちゃった。」
「いや、別に…。」
「分かってたんでしょ?」
「何が?」
「あたしと…やぐっちゃんの事。」
「…今日友達から聞いた。それまでは知らなかった。」
「そう…」
- 108 名前:foo? 投稿日:2002年07月15日(月)12時35分13秒
- 「で、何の用なんだ?その事話すためだけに電話したのか?」
「あっ、そうだ。ちょっと椎名くんにお願いがあって…。」
「お願い?面倒なのはご免だぞ。」
俺が言うと、保田は黙ってしまった。
「もしもし?」
「あのね…一日だけあたしの彼氏になってくれない?」
は?何だって?
俺は驚きのあまり言葉を失った。
「この前、メンバーと恋バナしてたら彼氏がいる、いないの
話になって、みんないるって言うからあたしもついいるよ、
って言っちゃって。」
下らない…。
「で、みんなが会いたい、会わせろって言うから
あたしもついいいよって言っちゃって。」
「で、何で俺なんだ?芸能人の方が自然だろ?」
「芸能人だとまずいのよね。色々複雑で。」
「あっそ。」
「だから、椎名くんだったら後腐れもなくいけるかなと思って。」
後腐れ…何か腹が立つな。
「ウソでした、でいいだろ?」
- 109 名前:foo? 投稿日:2002年07月15日(月)12時36分54秒
- 「良くない!」
保田さんが受話器の向こうでキレた。
全く迷惑な…
「ま、嫌ならいいよ。その代わり…」
「その代わり?」
「毎日電話してやるんだから。」
か、勘弁してくれ…。
「負けたよ…。」
「じゃあ、いいんだ?いいんだよね?」
声が明るくなる。
「いつだ?」
「来週。日曜日12時に原宿駅の表参道側出口で。」
「分かった。」
「ありがとう。助かったよー。じゃ、よろしく。」
そして電話は切れてしまった。
俺は携帯をテーブルに置くと、ため息を漏らした。
何でこんな事になるんだ?
普通の男にしてみたら、きっと願ってもない事なんだろう。
でも…俺は違う。こんなのはうざったいだけだ。
脅迫されたから受けたようなものだ。
そして、昨日今日会ったばかりの男にこんな依頼を
してくる彼女も理解できない。
一体俺が何をしたっていうんだ?
全く…。
でも、毎日電話よりはマシだな。
俺はベッドに入って目を閉じた。
昨日は遅寝早起きだったせいかすぐに深い眠りに落ちていった。
- 110 名前:foo? 投稿日:2002年07月15日(月)12時39分43秒
- 今日は以上です。来週は都合により更新できないんで、2週間後に
また来ます。それではー。
- 111 名前:名前ってなあに? 投稿日:2002年09月18日(水)01時13分32秒
- 続きは書いていただけないのですか?
- 112 名前:nanasi 投稿日:2002年10月22日(火)14時37分39秒
- 続きは・・・・?
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