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ロケット花火

1 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月17日(水)03時20分33秒
吉澤主役で、年齢だとか滅茶苦茶です。

2 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時23分04秒
【01】

まだ午前だというのに8月の太陽は、ムカツクくらい熱い。

何でこんな暑い中、バイトに行かなきゃならないんだろう?
まったく、どれだけチャリのペダルを漕いでも
図書館まで着かないような気がしてきた。



高2の長い長い夏休みを持て余したウチは、図書館でバイトを始めた。
仕事の内容は---
際限なく有る、県立図書館の本に
バーコード(本を借りる時とかに、ピッとやるヤツ)を貼ること。
いたって、単純作業。
親戚の口利きがあったから、という以外に
このバイトを撰んだ理由は特にない。
別に何のバイトでも良かった・・・、時間さえ消費できるのなら。


3 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時25分37秒


「よっすぃー、ゴメン。別れたい」

それは聞いていて呆気にとられるくらい、シンプルな言葉だった。
夏休みが始まった日、
ウチは1年半つき合ったカノジョに、たった3秒で振られてしまった。

その日、ウチとごっつぁんはいつものカフェで待ち合わせをしていた。
二人の、二人だけの夏休みの計画を立てるために。
なのに・・・、飲み物が運ばれてきた途端、別れ話を切り出されたのだ。


ウチらは上手くいっていると思っていた。
違う学校に通っていたけど、ほとんど毎日会っていたし、
何より、お互いがお互いを必要としていた、と思っていた。

『よっすぃーの優しいところが好き』とごっつぁんの口は何度もそう言った。
ウチはごっつぁんの、ウチにだけ見せる安心した笑顔が大好きだった。

4 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時26分54秒
「・・・・・・何で?」
そう訊くウチに、ごっつぁんは『好きな人が出来た』と
またシンプルな答えを返してきた。

「そう・・・、じゃ仕方ないね」
あまりにも唐突な話にパニクっていたウチは、
自分でも気付かないうちに別れ話を承諾していた。

一生の不覚。
ウチは未だ、ごっつぁんに未練たらたらだ。
しかし一旦別れたからには、そうそうごっつぁんと会える訳はなく
夏休みの予定も空白になってしまったから・・・
ウチはバイトを始めたのだ。

17歳のこの夏、ウチは
‘インパクトは思いも寄らない時に来訪する’ことを身をもって知った。


5 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時30分53秒
【02】

額にうっすら汗をかき始める頃、バイト先の図書館へ到着した。
「おはよう!」
「吉澤、今日も若いな!!」
すっかり友だちになったバイト仲間や、司書さんから声をかけられる。
ここ一週間、何も変わらない光景。 


「じゃ、吉澤。今日は保田文庫をお願いします。
 えっと。ラベル貼りじゃなくて、分類をお願い。ハイ、分類表」
図書館管理社の社員、
飯田さん(一応、私の上司みたい)から指示が出る。

‘○○文庫’と名付けられる文庫は、その名の通り
○○サンが寄贈した本を図書館が所蔵しているもので
‘保田文庫’もきっと保田サンが寄贈したコレクション本が、
ウチが来るのを待っているに違いない・・・。


6 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時32分40秒
それにしても、ラッキー!
ウチは県立図書館が幾つか抱えている‘文庫’が好きだ。
普段、人目には触れることのない、
図書館の1.5階にある倉庫へ梯子を登っていくことも好きだし、
そのカビ臭い空間が醸し出す、何とも言えない雰囲気も好きだ。
何より文庫の中での作業は、集中力が増すから
ごっつぁんのことを考えなくてすむ。

飯田さんからもらった分類表を手に、薄暗い1.5階へ上がっていくと
保田文庫には、外国製の変わった装丁の蔵書の山の中に紛れて
国内で発行された比較的新しい本もまばらに見えた。
ざっと見て100〜150点くらい。
文庫にしては点数が少なすぎる気持ちもするけど
今日中にウチひとりで
分類し終えることが出来る量でもない・・・。

「あのぅ・・・吉澤さんですか?お手伝いします」
途方に暮れていた私の背後で、声がした。
7 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時34分15秒
声のした方へ振り返ると、ウチと同い年くらいの女の子が
今にも泣きそうな、少し困った表情をして直立していた。
ホントは文庫の中の照明が暗くて、女の子の表情までは
分からないんだけど、多分、泣き出しそうな顔をしていると思う。

で、石川梨華と名乗るそのコは、新入りのバイトらしい。

「あぁ・・・。じゃ、その棚から順に本を取ってくれます?
 そしたらウチが分類していきますから・・・。
 石川サンは、また棚に戻して。」
自分でも驚くくらい冷たい語調だった。
別に言い訳をするわけではないけど
とにかくウチは、さっさと作業を済ませたかった。
夏の暑さにやられてか、普段以上にクールになっていた
ということは否めないけど・・・。
8 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時36分02秒
「吉澤さんは何で、このバイト始めたんですか?」
30分ほどして、二人の作業もスムーズに進むようになった頃
石川サンが訊いてきた。

まさか『失恋を紛らわすため』と答えるわけにもいかず
かといって、別の答えを瞬時に用意できなかったウチに
石川サンは『ごめんなさい』と言った。

「謝られても・・・。
 別に、親戚から紹介されただけですけど?」

「そうですか。
 私は『何かあるんじゃないかな?』って思って」

こんな本だけがある場所に、本以外の何があるというのだろう?
『何があるんですか?』そう訊きたい気持ちもあったけど、
その後の会話がめんどくさそうだったので、言わずにいた。
でも石川サン、何が言いたかったんだろう・・・。

9 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時39分13秒
【03】

「お昼の時間やでぇ!
 裕ちゃん、最近、フレーバーティーに凝ってんねんか。
 美味し〜いの、入れたるから、降りといで」

1階から、司書の中澤さんの声がした。

石川サンと二人で梯子を降りていくと、
すでに1階には甘く爽やかな香りが漂っていて、飯田さんや中澤さんたちが
フルーツフレーバーのお茶を啜っていた。

ウチの姿を確認した飯田さんが『吉澤、ちょっとちょっと』と
声をかけて、ウチの耳元に囁いた。

「新入りの子、カワイイでしょ?
 ダメだよ、手ぇ出しちゃ!」

「何、言ってんですか・・・。出す訳ないですよ」

ウチは低く呟き、でも石川サンをちらりと見やった。

石川サンは中澤さんと何か楽しくお喋りをしているらしく
二人で声を立てて笑っている。

図書館横の木立が窓越しに、館内に優しい陰を作っていて
そのキラキラとした木漏れ日の中、石川サンは笑っている。



10 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時40分44秒
「何や、吉澤。またベーグルなん?
 よう飽きひんな」

「1週間ずっと、だよね。
 カオリなんて見てるだけで飽きてきた。当分ベーグルはいいわ」

中澤さんと飯田さんがタッグを組んで、ウチのお弁当にちゃちゃを入れる。
ムスッとしていると
「美味しそうですね、ベーグル。
 私は、久しぶりに食べたくなりました」
と石川サンが、ウチの顔を覗き込みながら言った。
午前中にも何度か言葉を交わしたのに、
何で気付かなかったんだろう・・・。
とにかく、石川サンの声があまりにも
特徴のあるものだったから(アニメ声ってやつ?)
ウチは思わず、プッと吹きだしてしまった。

「めずらしいナァ、吉澤が笑うとるで」
中澤さんが楽しそうに言った。
11 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時42分31秒
そういえばウチは、ごっつぁんと別れてから
いろんな感情がいっぺんに死んでしまったようで、
一度も笑ってなかったかも知れない。

急にごっつぁんの笑顔が甦ってきた。

ごっつぁんは今、好きな人に向かって、フニャっと笑っているのだろうか?
ウチだけに見せてくれた笑顔を、その人に見せているのだろうか?

物哀しくなった気持ちを払拭するため、少しためらったけど
『よかったら・・・、1つどうですか?』と
自分のベーグルを1つ、石川サンに差し出した。

「ありがとう。じゃあ、遠慮せずに頂きます」

ベーグルを渡す時に見た石川サンの手は
掌が小さくて、指もスッと細くて、
いかにも女の子!っていう手だった。ウチの手とは大違いだ。
ただ・・・、確かに流行ってはいるけど
石川サンには、ボヘミアン調のブレスは似合わないような気がする。
何だか、左手のレザーブレスだけが無骨で、
女の子らしい石川サンには、妙にちぐはぐな印象・・・。

12 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時43分50秒
「二人とも、何かよそよそしいね。
 同い年なんだからさ、もっと仲良くしたら?」

飯田さんは時々、何の脈略もないことを言っては
回りをハッピーにさせてくれる。

見るともなしに石川サンの顔に目をやると、
石川サンもウチの方を見ていたらしく目が合った。

「えぇっと・・・、梨華 でいいです」

「じゃ、梨華ちゃんで。
 ウチは・・・ひとみ、で」

「じゃ、ひとみちゃんで」

「タメ口上等!で行こう!!」

今まで笑えなかったのに・・・、
何故だかウチは笑顔で梨華ちゃんと会話をしていた。


13 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時45分14秒
「保田さんって、どんな人だったんだろうね?」

二人で熱心に作業をこなし、保田文庫の分類も
後少しで終わろうとしていた午後4時過ぎ、
梨華ちゃんが出し抜けにそんなことを言ってきた。

図書館に本を寄贈した人のコトなんて、
今まで一度も考えたことのなかったウチは
無言のまま、脚立のてっぺんに座っている梨華ちゃんを仰ぎ見た。

梨華ちゃんが棚から数冊、本を抜き取り
それをウチに手渡そうと、こちらを向いた時
やっとウチらは顔を見合わせた。

「梨華ちゃんは、どんな人だったと思う?保田さんって」

「そうだね・・・、何か優しい人?
 後・・・、う〜ん。     
 アッ!」


14 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時48分23秒
考え事が災いしたのか、ドタン!バタバタバタ!!と音を立てて
梨華ちゃんが、手にしていた本と一緒に、脚立から落ちてしまった。

「いったぁ〜」
「大丈夫!?」

お尻を打ったのか、腰辺りを必死でさすっている梨華ちゃんを見ていると
何故だか知らないけど、たまらなく可笑しさがこみ上げてきた。

「ホント、大丈夫? アハハ」

堪えきれなくなったウチは、とうとう声を出して笑ってしまった。

「も〜ぅ!ひとみちゃんっ!!」
少しすねたように梨華ちゃんは言った。

「どないしたんや!?何かスゴイ音が聞こえてきたで?」
下から、中澤さんの声がした。

「何でもないです!ちょっと本を落としただけで」

「ちょっと!本は大切に扱ってよ!!」
ウチの言葉に、飯田さんがやたらデカイ声で返事をした。

まだ床にぺたりと座り込んだままの梨華ちゃんに
手を差し出して、起き上がらせる。

「ありがとう、ひとみちゃん」
ここは暗くて、やっぱり梨華ちゃんの表情はよく分からないけど
きっと頬を薄紅く染めて微笑んでいると思う。

「飯田さんに怒られちゃうし、片付けよっか?」
ウチの一言を合図に、さっき落とした本を片付け始めた・・・。

15 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時52分16秒
「何だろ、コレ?」
梨華ちゃんがそう言って、床から何かを拾い上げた。

床に落ちた本をまたぎながら、ライトの下で確かめると
それは茶封筒で、表書きには‘なつみへ’と書かれていた。

茶封筒は、今までダレにも見つかることなく
落ちた本のどれかに挟まっていたようだ。


封はされていなかった。

中には何枚もの便箋が収められているのか、
茶封筒は厚く膨れ上がってる。

「・・・中、見ちゃってもイイかな?」
ウチはポツリと呟いた。

『保田さんって、どんな人だったんだろうね?』
さっきの梨華ちゃんの言葉が、ウチの頭ン中を駆けめぐっていた。
茶封筒の中に、保田さんがいるような気がしてならなかった。

16 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)03時53分06秒
「じゃ・・・中身、出すよ?」
ハァーと、一度大きく息を吐いてから
梨華ちゃんが茶封筒に手を入れた。

中身は思っていたとおり
びっしりと文字で埋め尽くされた、何枚かの便箋だった。

『何て書いてある?』ウチがそう言い終わると同時に、
梨華ちゃんが便箋に書かれた文章を声に出して読み始めた。


17 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)04時55分28秒
なつみへ
 やっと再会できたね、何年ぶり?私がお父さんと、あの家を出ていってから
 だから、3年ぶりか。今日久しぶりに会ったなつみは昔と変わらず、純粋で
 す。本当です。私には直ぐに分かります。寝顔なんて『天使がもしいるとし
 たら、こんな顔をしているんだろうな?』と思わせるくらいです。でもほん
 の少し欲を言うと、病院なんかじゃなく、もっと別の場所で会いたかったな。
 何で世間は、なつみに刃を向けてしまったのでしょうか。なつみはただ純粋
 に生きているだけだというのに。今は真っ白な包帯が巻かれた左手首に、あ
 なたは数時間前、自ら真っ赤な血を流してしまいました。なつみはその純粋
 さ故、いじめに遭っていたとあなたの通っている学校の先生が認めました。

          -1-
18 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)04時56分49秒
 私は、まだ意識の戻らないなつみの隣でこの手紙を、あなた宛のこの手紙を
 書いています。何でなつみのそばを離れてしまったのかな?私。「お姉ちゃ
 ん、戻ってきて!なっちにはダレもいない、ダレもいないよ!!」最後に私
 が聞いた、なつみの声。いくら親の離婚があったからといっても私はなつみ
 の側にいるべきでした。後から後から溢れてくる悔恨に、心が潰されそうで
 す。でも私は、耐えます。耐えなければなりません。何故なら、この胸の痛
 みはそのまま、なつみの辛さを分かってあげられなかった私の罰だと思うか
 らです。

          -2-
19 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)04時57分58秒
 なつみが再び目を覚ますまで、私は止めどない悔恨をそのままにしておきま
 す。なつみ、次に目を覚ましたら、きっと前より良い世界があなたを待って
 います。少なくても、私はなつみの側にいて、ずっとあなたの味方です。そ
 れだけは、分かって下さい。消灯時間が来たようです。今日は帰らなければ。
 明日、また来ます。勿論、明後日も。その次も、その次も。

          -3-
20 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)04時58分51秒
 追伸:なつみがこの手紙を手にするのはずっと先のことだと思います。なつ
 み、なつみが大切な誰かと(その日を思うと少し寂しいけれど、私以外の誰
 かと)輝く未来へと旅立つ日、あなたは私から一冊の本を受け取るでしょう。
 この手紙を挟んで、不格好に脹らんだ一冊の本を。 

 圭


21 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月17日(水)04時59分30秒

手紙を読む梨華ちゃんの声はだんだんとくぐもっていったので、
最後の方は正直、聞き取りにくかった。

「コレ・・・、なつみサンへ届けないとね?」
そう言う、ウチの声もくぐもっていた。


22 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月17日(水)23時32分02秒
なっちぃ〜(泣
23 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月19日(金)00時04分15秒
【05】

バイト終了時刻の5時になり
ウチと梨華ちゃんが1階へ降りていくと、もう飯田さんの姿はなかった。
中澤さんに訊くと、2時間くらい前に本社の方へ帰ったらしかった。

飯田さんに保田文庫について訊こうかと思っていたけど、
代わりに中澤さんに訊くことにした。
よくよく考えると、そういう事は
司書の中澤さんの方がよく知っているだろうし・・・。

24 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月19日(金)00時06分06秒
「中澤さん・・・、ちょっと訊きたい事があるんですけど」

「何や、深刻な顔して」

ウチはいつの間にか奥歯をギュッと噛みしめていて
言葉がスムーズに出てこなかった。
すると横から
『保田文庫の・・・、保田さんってどういう人だったんですか?』
と梨華ちゃんが言った。

「えっ。 何やて、保田さん?」
そう訊き返した中澤さんは、明らかに怪訝そうな顔をしていた。

「ハイ。保田 圭さんです。何で、本を寄贈したんでしょう?
 新しい本も結構あったような気がするんですけど・・・」

そう言うウチの顔を、中澤さんは困ったような顔をして眺めていた。

「ホンマはこういうの、喋ったらアカンねんけど・・・」

何かを諦めたように、そして何かを決心したように
中澤さんが小さく呟いた。

25 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月19日(金)00時10分43秒

「本を寄贈したのは、圭さんのご遺族や。
 圭さんは1月前、急な交通事故で亡くならはってん。
 妹さんの病院を見舞いに行った帰りに・・・、21歳の若さやったそうや。
 圭さんは、凝った装丁の本や、
 希少価値のある古本をコレクションしとったらしいな。
 それらが形見分けで、妹さんの手に渡ったんやけど・・・。
 妹さん、圭さんが亡くなったことを受け入れるのを
 拒否するように、圭さんの本を全てこの図書館へ寄贈したんや」



26 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月19日(金)00時13分54秒
【05】

戸惑いの表情を残したまま、梨華ちゃんが上目遣いでウチを見る。
だからウチには、
これから梨華ちゃんが何を言おうとしているのか分かってしまう。

「やっぱり、渡そうよ。
 圭さんの本を寄贈した妹さんが、なつみさんでも。
 まだ圭さんの死を受け入れられてなくっても。
 ・・・意識、戻ってるみたいだし」

ウチはため息混じりに、そう言った。


カラン、と解けだした氷がグラスの中で音を立てた。

27 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月19日(金)00時17分58秒
バイト帰り、夕立に遭ったウチらは
駅前の小さなカフェで夏の通り雨をやり過ごすことにした。
ただの雨宿り・・・、
別に他の店でも良かったのだけれど
『もしかしたら、ごっつぁんが居るかもしれない』と
どこかで期待していたウチは
『ここのアイスカフェラテは絶品だから!』と梨華ちゃんを
ごっつぁんとよく来たこのカフェへ、誘った。



28 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月19日(金)00時18分54秒
BGMやらミッドセンチュリーを意識したインテリアやら・・・。
とにかくオープンしてまだ間もないこのカフェは、
ごっつぁんとウチのお気に入りのモノや音楽で満たされていた。


「このイス、カワイイね。
 そうだ、よっすぃー。ガッコウ卒業したらさ、一緒に暮らそうよ!
 で、これと同じイスを部屋に置こう。
 後藤、頑張ってバイトするよ〜」

風化させたくない。ごっつぁんへの気持ちも・・・、思い出も。

でもそんなウチの心をうち砕くように、
注文したアイスカフェラテが2つ、テーブルに運ばれてきても
梨華ちゃんと静かな会話を始めても、
ごっつぁんの気配を感じることは出来なかった。

29 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月19日(金)00時20分22秒
「なつみさん、探さなきゃね」
そんな梨華ちゃんの言葉に、ウチは曖昧な相づちをうった。

グラスの中身が空になろうとする頃、
カフェの窓から、未だ余力を持て余す夏の日差しが差し込んできた。
・・・雨が上がった。


「ダメ。予備校とかあるし」
「え〜!?
 いちーちゃん、約束したじゃん?」

いきなり後ろで、聞き慣れた声がした。

もうほとんど条件反射で後ろを振り向くと、
ごっつぁんがいた。ウチの知らない人と一緒に。

30 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月19日(金)00時21分36秒
ごっつぁんはウチと目が合うと
『よっすぃー!久しぶり、元気だった?』と、こともなげに言った。
ウチはひどく動揺しているというのに。

「何、知り合い?
 後藤、ちょっと紹介してよ」


市井サンの声は耳にすんなり入ってくる、心地よい声だった。
透明感があって耳ざわりがいい・・・、
ずっと側で聴いていたいような声だった。

そしてウチは直感した。
ごっつぁんの好きな人は、市井サンだと。
金髪でショートヘアの、市井サンだと。
端整な顔立ちをした、美少女って感じの市井サンだと。

こんな哀しいことが分かってしまうなんて、
直感なんて無くなってしまえばいい。

31 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月19日(金)00時23分49秒
勝手にごっつぁんが、ウチと梨華ちゃんが座っているテーブルへ
座ってきたから、今は4人で狭いテーブルを囲んでいる。

話の様子だと、ごっつぁんはまだ市井サンに告ってないようだ。安心。

「それ、何?」
テーブルの上に、割と無造作に置いていた
保田さんの茶封筒に視線をやりながら、ごっつぁんが訊いた。

ウチも梨華ちゃんも、押し黙る。

「後藤・・・、何でもイイじゃん」
特有の心地よい声で市井サンが、好奇心たっぷりのごっつぁんを諭す。

『大人なんだ。一コしか違わないのに、市井サンは大人なんだ』
そう思うと、負け犬根性丸出しだけど無性に腹が立ってきた。


32 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月19日(金)00時25分31秒
「図書館で見つけて・・・。
 この手紙を書いた人の代わりに、届けるつもり」

そう言いながら、ウチは市井サンとごっつぁんの真ん中に
便箋を広げて差し出した。

ウチの隣りに席を移した梨華ちゃんが、慌てて
『どこに届けていいのか分からないんです。
 まだ名前しか分からなくて。
 でも、司書さんとかには言えないし・・・』と
取って付けたように付け加えた。
その声は、何故か少し不機嫌っぽかった。

市井サンとごっつぁんは、同じ速さで眼を動かしながら手紙を読んだ。


33 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月19日(金)00時27分18秒
「これは・・・・・・さ。
 この手紙ごと司書さんに渡して、
 届けてもらった方が良いんじゃない?」

ごっつぁんの当然な言葉に、ウチは口をつぐんだ。

そういえば何故、ウチも梨華ちゃんも
自分の手で保田さんの手紙をなつみさんへ届けたいと思ったんだろう?

ウチはただ『届けなきゃ』という想いしかなかったから・・・。
他にどんなに理由を探しても、それ以上でもそれ以下でもない。
でもそれはウチの場合で。

梨華ちゃんは、どうして?


34 名前:書いてる者です 投稿日:2002年04月19日(金)00時46分53秒
更新終了です。
【05】ダブルカウント・・・。さっそく間違いハケーンでした。

>22 名無し読者様
 レス、ありがとうございます!
 自分も、なっちぃ〜(泣    って感じでした。
35 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月20日(土)15時25分24秒
微妙な顔合わせ
36 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月21日(日)23時34分17秒
【06】

「届けたいんです。それで、なつみさん・・・、あっ。
 なつみさんって方に、手紙を届けるんです。
 えぇっと・・・、会いたいんです、私。
 なつみさんに会いたいんです」

遠慮がちな声だけど、強い意志を持ったように梨華ちゃんが答えた。

ごっつぁんと市井サン、そしてウチが一斉に梨華ちゃんに注目すると
梨華ちゃんはおもむろに、左手をテーブルの上へ置き
右手で、フリンジの付いた幅広のレザーブレスを外した。

レザーブレスを外した梨華ちゃんの左手首には、
みみず腫れのような傷跡が、圧倒的な存在感を誇示していた。


「中3の時、いきなりクラス担任の先生に斬り付けられたんです。
 大学を出たばかりの若い先生で・・・
 私の左手首を強く掴んで『つき合って欲しい』って言ってきたんです。
 先生は私に指輪をはめようと・・・して、いました」


37 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月21日(日)23時37分01秒
嗚咽に言葉を詰ませながら必死に梨華ちゃんは喋っている。

ウチはと言えば、いきなりの梨華ちゃんの話に血の気が引いている。
胸が一杯になっているのか、それとも空っぽになっているのか
それさえ分からない。

「『イヤです』って私が答えたら・・・。
 先生は手に持っていた指輪を3階の窓から外へ投げ捨てて、
 ポケットに隠し・・・持っていた果物ナイフ、取り出し たんです。
 それで『じゃあ、死んで?石川が悪いんだよ』って・・・言って」


38 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月21日(日)23時37分39秒
「うん、分かった。
 分かったよ」
何が分かったのか、全く分からないけど
ウチは出来るだけ優しく、生まれたての雛鳥を扱うように
梨華ちゃんの肩に手をまわした。

ぽろぽろ涙を流しながら、それでもウチの腕の中で梨華ちゃんは
最後まで喋った。

39 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月21日(日)23時41分53秒
「でも、私は生きてて良かったから・・・。
 恐い目に遭ったからこそ、人の優しさに気付くことも出来たから・・・。
 なつみさんに会いたいんです。
 『私だったら、なつみさんに何かしてあげられる』
 なんてことは思ってないんです。
 ただ・・・『良いこともきっとあります』って言いたいんです。
 だから会いたいんです」

ウチは梨華ちゃんの細い肩を抱きながら
『‘人は誰でも、何かを背負って生きている’って誰かに教わったな』
なんて、ぼんやり考えていた。

あれは誰の言葉だった?
あぁ、司書の中澤さんだ。
バイトの初日、中澤さんにそう言われたんだ・・・。



40 名前:書いている者です 投稿日:2002年04月21日(日)23時46分04秒
更新終了です。

>35 名無し読者様
 レス、どうもありがとうございます。
 微妙でした・・・。
 
何か微妙ですね。スミマセン
41 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月22日(月)02時35分49秒
はぁ〜、成る程。そんな過去が…
42 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月26日(金)00時32分36秒
【07】

あれから3日後
《なつみさんの知り合いと会えることになった》と
ごっつぁんからメールが入った。

なつみさん探しに協力してくれることになったごっつぁんと市井サンは
《なつみって子を探してるんだけど、知らない?》というメールを
友だちとかに手当たり次第、送ってくれていた。
それで昨日、そのメールになつみさんの知り合いが引っかかったというのだ。
なつみさんの知り合いサンは、市井サンの知り合いみたい。


ウチはさっそく今日のバイト後、
なつみさんの知り合いサンと例のカフェで会うことにした。
ごっつぁんや市井サン、梨華ちゃんもモチロン一緒だ。




43 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月26日(金)00時38分22秒


今日はフツーに眠れるだろうか・・・。


ウチはこの3日間、ほとんど眠れずに朝を迎えている。
夜、寝ようと瞼を閉じると
梨華ちゃんの左手首の傷跡が思い出されるから。
それで眠れない間中ずっと、
あの傷と一緒に、どんな思いを引きずってきたのだろう?
と梨華ちゃんを想う。


市井サンは5日前、何もかも分かったように
全てを包み込むように
静かで暖かい視線を梨華ちゃんへ向けていた。


・・・マジ、市井サンには敵わない。
(あ〜ッ!ムカツク。自分。何で今、市井サンが出てくるんだよ!?)

ごっつぁんをいつも笑顔にしてあげられるのは、ウチじゃなくて市井サンだ。
悔しいけど、事実みたいだから仕方ない。
それに・・・。
まだ認めたくないけど、ごっつぁんが大好きだった日々を
既に遠い日に感じている自分が確実にいる。



44 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月26日(金)00時40分31秒


ウチの1メートル横、梨華ちゃんはフツーにバイトをこなしている。
飯田さんや中澤さんと他愛のない会話をしては笑って、
お昼にはウチとベーグルを食べて・・・。

この間、梨華ちゃんが喋っていたことなんて
全く無かったみたいに、まるでフツーにバイトをこなしている。
それがウチには痛い。

梨華ちゃんにいろいろ訊きたいけど、訊きそびれている。
つか、迂闊に訊けない気がする。
っていうか、何を訊いていいのか分からない。
だからウチは、梨華ちゃんに無言で微笑む。
いつも梨華ちゃんが、ウチにそうしてくれるように・・・。



45 名前:書いている者です 投稿日:2002年04月26日(金)00時48分37秒
更新終了です。

>41 名無し読者様
 駄文(ダラダラと、稚拙な文章でスミマセン)を
 読んでくれている人がいるのかと思うと、本当に有りがたいです。
 
46 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月26日(金)01時58分31秒
傷のこと、重いですねぇ…
吉澤君にもっと包容力を期待してみたり
47 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月28日(日)00時39分35秒
【08】

歩きの梨華ちゃんに合わせて、ウチはチャリを手で押しながら歩く。


二人でカフェへ行く道すがら、何気なくオレンジの空を見上げてみた。

そしたらウチの頭上には、
気ままに方向転換を繰り返すコウモリが舞い群れていた。
夏の夕空は、コウモリたちの独壇場だ。
よく他のコウモリにぶつからないな、と一人感心する。


ウチだったら、あんなに上手くは飛べないだろう。




48 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月28日(日)00時44分11秒
カフェにはもう、ごっつぁんと市井サンが着ていて
店の一番奥にある大きなテーブルを陣取っていた。


「梨華ちゃん、奥へどうぞ」
「おっ!よっすぃー、紳士だねぇ」
奥の方の席へ梨華ちゃんを促していたら、からかうようにごっつぁんが言った。
その後すぐウチが『当たり前じゃん』って笑って言ったのは
自分でも説明のつかない、複雑な気持ちをごまかすため・・・。

でもウチは何に、誰に、複雑な気持ちを持っているんだろう?
ごっつぁん?
市井サン?
梨華ちゃん?
何で自分の気持が、自分で分からないの?


「梨華ちゃん」
そう梨華ちゃんを呼ぶ時のウチの発音は、ひどく空々しい。
それは梨華ちゃんの傷の話を聞いた時から・・・。
そんなウチの微かな変化に気付きながら
だけど梨華ちゃんは『なに?』と自然に返事をしてくれる。

何で梨華ちゃんはそんなに優しくて、そんなに凛としているんだろう。


49 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月28日(日)00時45分47秒
ウチと梨華ちゃんが飲み物をオーダーしてすぐ
「あっ、来た。
 矢口〜!こっち」
と市井サンが、大きな声を出して言った。

市井サンの視線を追うと、
ザワザワとうるさい、客で溢れたカフェの通路を
小柄で金髪がヤケに目立つ女の人が
真っ直ぐこちらへ向かって来るのが見えた。


もともと市井サンの知り合いだった矢口さんは
市井サンから大体のことは訊いていたみたいで、
席に着くなり『手紙、見せてくれる?』と言った。

梨華ちゃんがバッグから手紙を出す間、
矢口さんは苛立ったような強い視線で
梨華ちゃんとウチを交互に眺めていた。
・・・まるで値踏みされてるみたい。

「勝手に、読んじゃったんですけど・・・」
梨華ちゃんが手紙を矢口さんに渡すと、
途端に矢口さんの頬はゆるんで(どうやらウチらの印象は良かったみたい)
『あっ、オイラは矢口。石川と吉澤ね?』って笑った。

だけどこの日、矢口さんの笑顔を見たのは
コレが最初で最後だった。

50 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月28日(日)00時52分42秒
「悪い。・・・この手紙、オイラが預かっててもイイかな?
 なっち、ちょっと前にまたリストカットして、
 入院生活に逆戻っちゃって・・・。
 だから圭ちゃんの・・・このメッセージは
 オイラのタイミングで、なっちに渡したいんだ」

矢口さんとなつみさん、圭さんがどんな関係だったかは
分からないけど、きっと矢口さんにとって
二人は大切な人なんだろう。
手紙から視線を上げた矢口さんの眼は、少し赤くなっていた。


長くて重い沈黙。

でも店内は相変わらず、ザワザワしていて・・・。
ウチはそんな空間で
『梨華ちゃんがなつみさんに‘きっと良いことがある’って
 言える日なんて、ホントに来るのかな』
って胸の中で呟いた。



51 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月28日(日)00時55分12秒
5人でカフェを出ると、もうすっかり日は落ちていた。
街の彼方此方にはまだかすかに太陽の匂いが残っていたけど、
空を仰ぐとそこには満天の星空が広がっていた。


「キレイだね」
誰かがそう言った。
ウチは、なつみさんもウチらと同じように、この星空を見ていたらイイと思った。





52 名前:書いている者です 投稿日:2002年04月28日(日)01時06分29秒
更新終了です。
間違いハケーン・・・
43 “市井サンは5日前、何もかも分かったように”は正しくは
  “市井サンは3日前、何もかも分かったように”です   (泣 

>46 名無し読者様
 レスありがとうございます。
 吉澤君に包容力、書いてる者に文章力。欲しいです・・・
53 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)16時57分09秒
【09】

次の日曜日、昼近くに目が覚めると矢口さんからメールが届いていた。
《カフェに、11時30分集合!》
ベッドに寝ころびながら、ケータイで時刻を確認すると11時5分・・・!?

むし暑い、夏の、少し重たい風を切りながらチャリを飛ばしたけれど
結局、ウチの到着がビケだった。
ごっつぁん、市井さん、矢口さん、梨華ちゃんが
カフェの一番奥のでかいテーブルから、ウチに向かって手を振っている姿は
何だか行き場のない子猫が自然と一カ所で肩を寄せ合っているみたいだ。

「急なんだけど。今日、病院行けることになったから・・・。
 なっち、随分落ち着いたって、おばちゃんからデンワあって」
何かをしていないと気が落ち着かないのか、
両手でケータイを弄びながら矢口さんがそう言った。



54 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)16時57分50秒
カフェのスタッフが、
ナシゴレンだとかサバB定だとか、アスパラガスの冷製スープだとかを
ウチらのテーブルに運んできても、
たっぷり時間をかけてそれぞれ空腹を満たす間も
ウチらはあまり喋らなかった。

会話が弾むハズなんてない。

みんなきっと、これからの時間を考えている。
なつみさんに会えるっていうのに、いざとなると
どんな顔をして会えばいいのか、何を喋って良いのか・・・。

ウチは変な緊張感に捕らわれて、この場から逃げたくなった。
だけどふと眼があった市井サンが、やっぱりこの間梨華ちゃんに向けていたような
あたたかな表情でいるので、逃げるのは止めにした。
逃げたら、市井サンに負ける気がした。



55 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時06分27秒


外科病棟の病室には、開け放たれた窓から生ぬるい風が流れ込んでいた。
それは身体にまとわりつくような湿気を含んだ風で
ウチを何だかイヤな気分にさせた。
だけど、そんな風でも時々は、眠っているなつみさんの髪を優しく揺らした。

「なっち、なっち。
 みんな来てるよ、起きて?」
眠っているなつみさんの耳元で
ささやくように矢口さんが声をかけると
なつみさんはうっすら瞼を開いた。

寝ている時には気付かなかったけど
なつみさんの眼はクリクリしていて
18歳だと訊いているけど、
どう見ても16歳くらいにしか見えない童顔で・・・。
なつみさんは、いわゆる、小動物系フェイス。

56 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時07分28秒
なつみさんは、ベッドを取り囲んでいるウチらの顔を順に見て
『・・・圭ちゃんがいない』と呟いた。
それからなつみさんのクリクリ眼には涙がたまっていって
しまいには、そのカワイイ顔は涙で大きくゆがんだ。

どんどん涙を流すなつみさんの眼は虚ろで、
ウチは少し恐くなった。
なつみさんの瞳の奥には、
バランスを保てなくなった心が見え隠れしているようだった。


57 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時08分32秒
「圭ちゃんがいない、圭ちゃんがいない!
 みんな何にも教えてくれなかった!!
 なっち、退院するまで圭ちゃんが死んだなんて知らなかった!
 何で、誰もなっちに何も教えてくれないの!?」

病室には、他にも何人か入院患者が居たし、その人達を見舞いに来た
人達も居たけど、なつみさんは人目をはばからず、叫んだ。
なつみさんは圭さんと一緒に、心のバランスも失ったのだろうか。
ウチには、なつみさんの叫びは
『誰か側にいて、私を助けてよ!』っていう悲鳴に聞こえた。

そんななつみさんの姿を
ウチとごっつぁんは唇を噛みしめて、
市井サンと梨華ちゃんは全てを見据えるような、静かな視線で、
矢口さんはほとんど表情をなくして、眺めていた。
誰もが『何か喋らないと』と思ってたハズ。
でも誰も言葉が出なくて・・・。




58 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時09分32秒

「ゴメン。ほんっと、ゴメン」
別れ際、矢口さんはそう言った。


あの後、なつみさんが興奮しすぎて病室は一時騒然として
駆けつけたナースに、ウチらは『アナタたち、今日は帰りなさい』と
病室を追い出されてしまった。




59 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時10分21秒
【10】

飯田さんは親指だけを立てた握り拳を、肩越しに
後ろへ向け『友だちが来てる』とだけ言った。

親指の指し示す方を見ると、ごっつぁんが立っていた。

水曜の昼休み。




60 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時11分34秒
図書館の敷地には背の高い木が林立していて、
ウチとごっつぁんは図書館の建物から一番近い
木陰のあるベンチに座った。
蝉時雨が夏の暑さをいっそう増幅させていたけど
流石に木陰に入るとグッと涼しく感じられた。

そして、キラキラと注ぐ木漏れ日を受ける
ごっつあんの横顔は、あまりに綺麗だった。
フツーの横顔だけど、胸に染みる。
つき合っていた時も、ときどきごっつぁんは、めちゃくちゃ綺麗に見えた。
今も、ちょうどそんな感じ。

61 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時12分48秒
「何か・・・、よっすぃーと二人きりって久しぶりだね」

「そうだね、2週間ちょっとぶり?
 こんなに会わないのって、初めてだよね。
 あっ、でもこれからは・・・、ずっと、か」

ウチは単純に、ごっつぁんと二人きりの時間が嬉しくて
何も考えずに喋りだして、結局自分で自分の首を絞めるような
自虐的な返事をしてしまったみたい。

『悪いね』そう言って、ごっつあんは苦笑した。

ごっつぁんに、自分が悪いなんて思って欲しくなかった・・・。
だから、ウチは慎重になって次の言葉を撰んだ。

「やっ、そんな。
 あ〜、今日はどうしたの?」
で、しばらく考えた挙げ句の言葉がこれ。バカ丸出し。


「そろそろ、いいかな?」

ウチは、ごっつあんが言いたいことが分からなかった。

62 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時13分39秒

「よっすぃー、梨華ちゃんとはどう?」

そうごっつぁんがウチの目を見ずに言った時、
ウチはやっと全てを理解した。

ごっつぁんは元カノジョのウチに
『市井サンに告っていい?』って訊いているのだ。
ごっつぁんなりに、ウチを気づかってくれているのだろうけど
それはそれで、かなりキツイ。
ウチには、もうごっつぁんの心に入る隙間は
1ミリも残されていないってことだから。

63 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時14分26秒


完璧、失恋。
カンペキ、シツレン。






64 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時15分42秒
あ〜、でも何でだろ?不思議と、平気。

もっと気持ちが錯乱して、滝のように涙を流しながら
『ごっつぁん、捨てないで!』ってなると思ってたのに・・・。

だけど全然、平気!無傷!!ってわけでもなくて。
気持ち的には『大丈夫、ウチは大丈夫』って
ごっつぁんに伝えたいんだけど
やっぱり多少、不安感とか喪失感で頭がごっちゃになった
今のウチには、上手い言葉が見つからない。


「市井さん、カッケ〜!!」
気付いたら、ウチはベンチの上に立ってそう叫んでいた。
やっぱ、ウチってバカ丸出し?





バイト後、ウチは梨華ちゃんをいつものカフェに誘った。
・・・何となく、真っ直ぐ家へ帰りたくなかったから。

65 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時17分01秒
【11】

カフェに来る途中、梨華ちゃんとちょっとしたケンカをしてしまった。
くっだらない理由。
夕焼けに照らされる梨華ちゃんの頬が真っ赤で、
それが何げにカワイらしく、まじまじと梨華ちゃんの顔を見ていたウチに
『何?何か付いてる!?』と梨華ちゃんが訊いてきて、
『うん。付いてるけど、教えてあげない!』って返事をしたら
『もぅ!知らない!!』とぷぅっと頬を脹らませて
梨華ちゃんがふてくされてしまった、ってホントくだらない理由。


だからこうしてカフェに着いて、アイスモカを目の前にしても
梨華ちゃんはご立腹中で・・・。

66 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時18分28秒
「ゴメン。・・・ウチが悪かった」
ここは一つ、謝っておいた方が無難でしょ。

「ひとみちゃん、ホントは『悪かった』なんて思ってないでしょ?
 ダメ。許してあげない」
梨華ちゃんって案外、大人げない。

「心から言ってる言葉は、ちゃんと通じるんだからね?
 分かる?
 クールなひとみちゃんは格好いいけど、
 心からの言葉を喋れないひとみちゃんは格好悪いよ」

梨華ちゃんは不思議な人だ。
いつもは子どもみたいに笑うくせに、
不意にすごく大人な顔をしてウチに説教よろしく話をする。
そんな時、ウチはただのガキになる。
今だってそうだ。
頬杖をつきながら窓の外を眺めて、
梨華ちゃんに何か返す言葉を探しているウチって
端から見たら、拗ねているだだっ子にしか見えないんだろうな。

・・・何かいつの間にか形勢逆転されてる?

67 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時19分46秒
「あっ、梨華ちゃん!?あれ、矢口さんじゃない?」
表の通りを矢口さんが、今にも走り出しそうな勢いで歩いている。

「そうだね、どこ行くんだろう?
 ちょっとメール入れてみようか、悪いかな?」

梨華ちゃんはそう言ったけど、メールを入れる必要はなかった。
矢口さんが何故だか急に歩みを止め、こちらを向いた瞬間
ウチと矢口さんの目線が触れたから。

「お〜、やっぱ冷房効いてるトコはいいねぇ!」
なんて言いながらカフェへ入ってきた矢口さんの額には玉の汗が光っていた。

矢口さんは、ウチのアイスモカを勝手に一気に飲んで
『なっちに会いに行こうかと思って・・・。
 まだ面会時間が終わるまで少し時間があるから』と言った。

68 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時20分27秒


「こんなところで、涼んでていいんですか?」

アイスモカとチャイを注文した矢口さんに、梨華ちゃんが訊いた。
ウチも梨華ちゃんと同じことを考えていた。

「う〜ん。やっぱ今日は病院行くの止めようかと思って。
 恥ずかしいんだけどさ、オイラ・・・、自信ないんだ」
力無く矢口さんが言った。
今さっきまでの、元気な矢口さんとはまるっきり別人のようだ。

「自信?」
子どもでも大人でもない表情で、梨華ちゃんが言った。

69 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時21分34秒
「うん。
 オイラ、なっちに笑ってもらいたいんだよ。
 だけど圭ちゃん、死んじゃって・・・、なっちは笑わなくなった。
 なっちの笑顔も、圭ちゃんと一緒に・・・。
 オイラ、死んだ笑顔をもう一度甦らせる自信は無いよ・・・」

アイスモカとチャイが運ばれてきて
短い沈黙があった後、小さくため息をついて、矢口さんはまた喋りだした。

「なっちの笑顔って、めっちゃくちゃカワイくってさ・・・。
 オイラ、その笑顔に何度も救われた。
 だから今度は、オイラがなっちを笑顔にしてあげたい」

チャイの入ったカップを両手で包み込むように持って、
時々、遠い想い出を手繰り寄せるように目を細めながら
矢口さんは喋り続けた。

「オイラ、ちっちゃい時から、ちっちゃくって。
 中学生になったばかりの時、背のことで
 クラスの子に少し、からかわれてさ・・・。
 そん時なっちが駆けつけてきて『やめれ!』って言ってくれて。
 それから矢口がからかわれる度に助けてくれて、
 その後必ず『ダイジョーブ!』って笑ってくれたんだ」

70 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時22分53秒
矢口さんが弱々しく笑った後
「チャイ、美味しいですか?」
と唐突に、ホントに唐突に梨華ちゃんが口を開いた。

ウチも矢口さんも、梨華ちゃんが何を言い出したのかと目をまん丸にした。
だけど梨華ちゃんはそんなウチらの気配など全く気にはしなかった。
それからゆっくり時間をかけて・・・、自分に言い聞かせるように喋り始めた。

「私・・・、前にも言いましたよね。
 傷のこと。
 斬りつけられて、自分の血しぶきが眼に入って・・・
 その後の意識は無いんです。
 次に目を覚ましたときは、病院のベッドの上でした。
 目、覚ました時・・・私、泣きました。
 何で生きてるんだろう?って。
 私を斬りつけた先生の顔が浮かんできては、
 一秒ごとに恐怖ばっかり大きくなっていって・・・。
 こんなんだったら生きてるより、死んだ方が楽なのに!って」

盗み見た梨華ちゃんのレザーブレスが、ウチの胸に突き刺さった。


71 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時24分49秒
「でも、同じ病室の入院患者をお見舞いに来ていた方が・・・
 見ず知らずの人なんですけど、その方が私にお茶を入れてくれたんです。
 で、そのお茶を口に含んだら・・・。
 何か温かくって。そのお茶の温かさって、そのまま人の温かさだったんです。
 身体にも心にも、温かさが染みて・・・。
 気が付いたら、私、やっぱり泣いてました。子どもみたいに声を上げて。
 生きてて良かったって」

途中、何度も頷きながら梨華ちゃんの話を聞いていた
矢口さんの頬には、熱い滴が流れていた。

梨華ちゃんはハンカチでそれを拭いながら
『きっかけって、そんなもんなのかも知れませんね。
 全てが簡単に行くわけじゃないですけど、きっかけさえ見つかれば』
と笑顔さえ浮かべて言った。

72 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時25分32秒
ウチは、何となく分かった気がした。
梨華ちゃんがたまに大人な表情になるわけが。
梨華ちゃんはいろんな感情を、そのまま丸ごと受け入れているのだ。
だから梨華ちゃんは優しいし、凛としている。


追いつきたい。

ウチは梨華ちゃんに追いつきたいと思った。



73 名前:ロケット花火 投稿日:2002年04月29日(月)17時26分51秒

その日の夜、ごっつぁんからメールが届いた。

《フラれた。いちーちゃん、今はダメだって。でも全然構わないから。後藤は、ずっといちーちゃんのこと好きだから。それだけは自信持って言えるよ!》
《ちょっと羨ましい、そんなに市井サンのことが好きなごっつぁんが。応援するよ!》
《うん、サンキュ》

ごっつぁんと、こんなメールのやり取りをする日が来るなんて、思いもしなかった。
メールの一通一通に、いちいち
『ごっつぁんとホントに別れてしまったんだ』って思わされるけど
正直、もうあんまり哀しくはない。

ウチはごっつぁんにメールを送った後、梨華ちゃんにもメールを送った。

《なつみさん、笑ってくれるといいね。じゃ、おやすみ》
《矢口さん、いるもん。大丈夫だよ、きっと!おやすみ》



74 名前:書いている者です 投稿日:2002年04月29日(月)17時30分36秒
更新終了です。
休みの間に、更新したくて・・・。
75 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月29日(月)22時57分27秒
なつみさんにも生きてる喜び、人の温かさを
早く知ってもらうことができたらいいなと。
76 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月30日(火)05時44分09秒
出合いを通じて吉澤が少しずつ成長していってる感じは良いですな
77 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月03日(金)00時31分04秒
【12】

病室へは、相変わらず開け放した窓から
そろそろ盛りを過ぎようとしている夏の風が吹き込んでいる。
でも先週の生ぬるい風とは違い、カラッと爽やかな風。
風は、なつみさんのベッドを取り囲んでいるウチらを
あっさり追い越して、廊下へと吹き抜けていく。
そのせいかどうか分からないけど、
今日のなつみさんは穏やかに見える。

78 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月03日(金)00時36分06秒


ごっつぁんが「いちーちゃんと買ってきた!」ケーキは
パン屋兼ケーキ屋のショーウィンドウの中で、よく
“チーズケーキ 直径20B”とか書かれたプレートの後ろに
デンッと居座っているヤツだった・・・。

ウチは呆気にとられて
その丸々チーズケーキを見つめながら
『ごっつぁんは市井サンにフラれたばかりで、
 市井サンもごっつぁんの想いを断ったばかりで、
 二人で一緒に行動するのは、まだ辛いだろうに』とぼんやり思った。


79 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月03日(金)00時38分02秒
「こんなの、どうやって切るの?
 お皿とかは?」
ウチの右隣で、
やっぱり少し呆れ顔の梨華ちゃんが大きく溜息をついた。

『アタシが切るよ。準備はカンペキ!』と市井サンは得意げに言いながら、
バッグからケーキナイフや箱入りウエットティシュとかを取り出した。

『スゲェ!』っていう歓喜の声が、矢口さんからあがった。

ごっつぁんと市井サンが
ケーキやウェットティッシュを用意してきたのは
少しでもなつみさんの気持ちをほぐそうとしたのだろう。
何となく、二人の気持ちは分かる。



・・・だけど、それは裏目に出てしまった。
それは、もうサイアクに。



80 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月03日(金)00時40分46秒

リストカットした時の様子や情感が
フラッシュバックしたのだろうか、
ケーキナイフを見た途端、なつみさんの顔が凍り付いた。

「なっちは食べない。
 みんなどっか行ってよ!」
なつみさんの声に、ウチらの回りには不穏な空気が流れ始めた。

「なっち、みんななっちの為に来てくれてるんだよ?」
矢口さんが、少し責めるように、なつみさんの肩を揺さぶる。

「なっちは誰にも『来てくれ』なんて頼んでないよ!?
 来てくれるんなら、圭ちゃんがイイ!!
 でも圭ちゃんはもういない!
 だから、もう誰も要らない!!」

なつみさんが叫び声に近い声でそう言いうと
病室に『バシッ!』という乾いた音が響いた。


ウチは矢口さんが、なつみさんの頬をぶつのを
黙ったまま眺めていた。
さっきの、もの凄い音にちゃんと比例して
なつみさんの左頬は見る間に赤く腫れていく。


81 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月03日(金)00時42分19秒

「ちょっと!
 手ェ、あげんなよ!!」

ウチの左隣で乱暴な言葉を吐き捨てたのは
市井サンだった。

すぐに、いつも静かな市井サンに戻ったけど
それでも市井サンが見せた一瞬の豹変ぶりに
ウチはたじろいて、右へ避けると
梨華ちゃんとぶつかった・・・。




82 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月03日(金)00時43分01秒




何でウチは、今まで気付かなかったんだろう?
何でウチは、今まで忘れていたんだろう?






83 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月03日(金)00時44分40秒


ケーキナイフを見て
昔の出来事を思い出したのは、なつみさんだけじゃなかった。


梨華ちゃんに触れた右手から、梨華ちゃんの震えが伝わる。




84 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月03日(金)00時46分47秒


「なっちが、圭ちゃんを感じなくなったらお終いなんだよ?
 圭ちゃんは、いるよ!」

しばらく市井サンを強い視線で睨み付けていた矢口さんだけど
強い口調でそう言って、何かをなつみさんへ投げつけた。

「それが証拠だから!」
捨て台詞を残して、矢口さんは病室を出ていった。
慌てて矢口さんの後を追った市井サンを追って、
ごっつぁんも病室から出ていってしまった。



ぼーっと突っ立ったままのウチの右側には
梨華ちゃんの震えが、止まらず伝わっている。




たまらない。
こんなシーン、ウチは望んでなかったのに・・・。





85 名前:書いている者です 投稿日:2002年05月03日(金)00時59分40秒
更新終了です。
致命的かも?っていう間違いを1コ以上ハケーンしましたが、この際ムシしようと・・・。

>75 名無し読者様
 レスありがとうございます。
 なっち・・・。もう少しで、きっと!

>76 名無し読者様
 レスありがとうございます。
 吉澤君の成長ぶり、ちゃんと表せられていたでしょうか?不安です。
 っていうか、この話自体、面白いのかどうか不安です。

メール欄が読めないのは、My machineがMacだからでしょうか?残念
86 名前:理科。 投稿日:2002年05月03日(金)04時54分00秒
お初でごじゃいます。
何か…なっちが痛いですね。
このメンバーで早くなっちを楽にして
あげてほしいです。がんがってください。
87 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月03日(金)11時29分19秒
一気に読みました。
なっちの傷、梨華ちゃんの傷。どっちも痛いですね。
なっちを心底救おうとしているやぐ…。
続きが気になります。がんがってください。
88 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月04日(土)19時58分29秒
【13】

全身がロックされたように動かない。
けど唯一、自分の意志で動かせる視線をなつみさんのベッドへやる。

頭ン中は真っ白。
(思考もロックされてるみたい・・・)

そのままウチは、たっぷり10秒は
矢口さんがベッドに投げつけていった‘証拠品’一点を見ていた。

それはよく見ると、透明の冷凍保存バッグだった。
よくTVとかで『密封して鮮度を保つ!』なんて宣伝してるヤツ。


中には、圭さんの茶封筒が見える。


矢口さんは『証拠』だと言っていたけど、
茶封筒を入れた冷凍保存バッグは
ホントに刑事ドラマの証拠品を連想させて、少し笑える。

そして・・・、
矢口さんは一体いつまで圭さんの手紙を
預かるつもりだったのだろうと思ったら、胸がつまった。


その瞬間、不思議なことだけど、ウチの全てのロックは解除された。



89 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月04日(土)19時59分34秒


『ずっといちーちゃんのこと好きだから。それだけは自信持って言えるよ!』
『今度は、オイラがなっちを笑顔にしてあげたい』
『私は生きてて良かったから・・・』

頭のてっぺんからつま先まで、ウチの身体をグルグル回り始めた言葉が
ウチの胸の底をどんどん熱くさせていく。


90 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月04日(土)20時00分54秒

ウチは自由がきくようになった右手で
ギュッと力を込めて梨華ちゃんの左手首を掴んだ。



分厚いレザーブレスの上からだったけど
ウチの体温やら気持ちやらは、余裕で伝わるハズ。
・・・っていうか、伝える。


梨華ちゃんの震えが止まるまで、掴んだ手を離しちゃいけないと
ウチはもう知っていた。




91 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月04日(土)20時01分27秒




ダイジョーブ、ウチが隣りにいるから!
何度も何度も、心の中で叫んだ。




92 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月04日(土)20時02分30秒
随分長い時間が過ぎたように感じるけど
実際は多分、数秒程度だと思う。
少しずつ震えがおさまってきた梨華ちゃんは
ウチに向かって、無言で頷いた。

嬉しさと勘違いするくらい、ホッとした。



93 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月04日(土)20時03分41秒


「なつみさん。それ開けて、読んで下さい」
そう言ったのは、いつもの優しくて凛とした梨華ちゃんだった。

ウチは、梨華ちゃんの言葉を継いで、ずっとなつみさんに
言わないといけないと思っていたことを言った。

「それ、図書館でバイトしてる時に見つけたんです。
 悪いんですけど・・・、勝手に、読ませてもらって。
 それでどうしても、なつみさんへ渡さなくちゃって思って・・・。
 圭さんの手紙で
 梨華ちゃんとか市井サン、矢口さんと知り合うことが出来ました。
 もちろん、なつみさんとも」





94 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月04日(土)20時05分09秒

大切な人に側にいてもらえないどころか
手の届かないところへ行かれてしまう・・・

そんな思いをしたことのないウチには
今、なつみさんがどんな気持ちで圭さんの手紙を
読み進めているのか分からないけど、
その様子、ウチには苦行のように見える。

圭さんの手紙を読むことは、圭さんの死っていう
事実を受け入れることと同じだから・・・。



痛みを背負った人は、その痛みに耐えるか乗り越えるかしなければならない。
梨華ちゃんは痛みを乗り越えた。
なつみさんも今、乗り越えようとしている。
ウチには乗り越える痛みはないけれど
痛みを耐えたり、乗り越えようとしている人を
見守らなければならない。
何故だかそういうことを、ウチは瞬時に知った。
こういうの、直感的とか本能的って言うのだろうか?

95 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月04日(土)20時08分15秒

さっきからずっと
梨華ちゃんは、なつみさんの頭を抱いている。

そうやって梨華ちゃんは
なつみさんに『良いこともきっとあります』って伝えている。



96 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月04日(土)20時10分16秒



手紙を読み終えたばかりのなつみさんの顔は
涙と鼻水でぐしゃぐしゃだけど、
どこか晴れ晴れとしているように見える。



「行こっか?・・・多分、もう大丈夫だよ」
梨華ちゃんがウチに小声で囁いた。



病室から出ていく時
『圭ちゃん・・・ 矢口・・・』と後ろで聞こえた。




97 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月04日(土)20時12分20秒
【14】

フツーの夏休みに戻った。
午前中に図書館へ行き、本の山と格闘し
昼休みには梨華ちゃんや中澤さん、飯田さんとバカ話をして・・・。
ただ、前と違うのは
蝉時雨がアブラゼミのそれからツクツクボウシのそれへと移ったことと
『ひとみちゃん、ハイッ!』と本をウチに渡してくる時に見える
梨華ちゃんの胸の谷間にドギマギすることくらい。


そんなフツーの夏休みを何日か過ごした、8月第4週のある日
ウチのケータイに、立て続けにメールが入った。

98 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月04日(土)20時13分18秒


《さっき、なっちが笑った(泣 》


《今度の日曜、夏休み最後の日曜だからさ。みんなで海、行こう!つか、行く。梨華ちゃんも誘ってよ?あっ。後藤また、いちーちゃんにフラれた。でも諦めない、諦められない》



99 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月04日(土)20時16分53秒
バイトの真っ最中だったけど
あんまり嬉しくて、安堵感も一気に広がって
(ごっつあんがまた市井サンにフラれたのはご愁傷様だけど)
思わず笑みがこぼれた。


2通のメールを見せようと
ケータイのディスプレイを梨華ちゃんへ向けると
「こっちにも届いたよ」
と梨華ちゃんは、何故だか少し照れくさそうに笑いながら言った。



100 名前:書いている者です 投稿日:2002年05月04日(土)20時57分32秒
更新終了です。

>86 理科。様
 うわっ!理科。様だ。レスありがとうございます。
 読んでました、っていうか読んでます。
 『お隣さんは・・・』の最後はどうしようかと思いました。
 『きみのために〜』のボクサー吉には、ノッカウッされました。
 『まるち〜』ヲモシロ!
 ・・・読者魂に火がついて、まともなレスが出来ません。スミマセン

>87 よすこ大好き読者。様
 レスありがとうございます。
 励みになります!
 よすこ大好き読者。コレ、一気に読んだんですか!?
 それは・・・、致命的な間違いが発見されやすいかも!?ヲロヲロ
 がんがります

でも・・・多分、次の更新で終わりです。
それで、できれば幾つか番外編を書ければいいなと(この話が面白いのか
不安がってたのにもかかわらず)。 
101 名前:書いている者です 投稿日:2002年05月04日(土)23時32分15秒
>100 
 よすこ大好き読者。様 スミマセン
 ‘様’と敬称を付け忘れてしまいました・・・。
 逝ってきます
 
102 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)06時07分59秒
なんだか気持ち良いラストになりそうな予感。
最後まで頑張って下さいね
103 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)12時22分35秒
何か良いです。
最後お待ちしてます
104 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月06日(月)20時52分25秒
>痛みを背負った人は、その痛みに耐えるか乗り越えるかしなければならない。
すっごく納得です。それでも人は、前に進んでいくんですよね。

読んでると、がんばって前に進もう!って前向きな気持ちになります。
ラスト、がんがってくださいね。

105 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)00時42分41秒
【15】

日曜日はあっという間に来た。

午後1時。海、日和。

待ち合わせの駅前で、実のない会話をしていた
ウチと梨華ちゃんの前に
セブンシーターのミニバンが停まる。

運転席に座っているのは、免許取りたての矢口さん!

セブンシーターのクルマに矢口さんの身長は不釣り合いで
初めてそのミニバンを、パッと眼で捉えた時は
『無人のクルマが動いてる!?』と驚いたほどだった。

梨華ちゃんもウチの隣りで笑っていて、二人して
微笑を含ませた顔でクルマに乗り込むと
『やっぱり?やっぱり吉澤達も、
 子どもの頃に乗ったミニSLとか思い出した?』と
 市井さんが訊いてきた。

「もぅ!オイラそんなにヘンかな?」
バックミラー越しに訊いてくる矢口さんに
『そんなことないよ』と返事を返したのは、助手席のなつみさんだった。

106 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)00時43分46秒


『なっちの笑顔って、めっちゃくちゃカワイくってさ』


矢口さんの言葉はウソじゃなかった。
バックミラーに映る、初めて見る、なつみさんの人なつっこい笑顔は
ホントにカワイくって、ウチはしばらく見とれてしまった・・・。


イデデ!


ウチの隣りに座っている梨華ちゃんが、
みんなからは見えないように、ウチの太股をつねった後
『ひとみちゃん、デレデレしすぎ!』と
小声で、でも語気荒く言った。


・・・まぁ、太股は痛いけど、ウチの気分は上々だ。


107 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)00時47分04秒

ウチらは海へ直行せず、まずD.I.Yショップへ行き
バーベキューセットやビーチボールや花火とかを購入した。
その後でスーパーに寄り
カット野菜や貝や肉、お菓子などの食材を買い込み、やっと海へ向かった。


海アイテムが増えるにつれ、否が応でも
『いよいよ海だ!』とみんなの気分が盛り上がる。

そんな、浮き足だったみんなを乗せた車内はずっと和やかで
ウチは何だか嬉しくなって、シートに浅く座って窓を開け
『海の匂いがしてきたよ〜!』なんて大声で言ったりした。
勢い良く車内に吹き込んできた風が、梨華ちゃんの髪を大きく乱し
『もぅ、ひとみちゃん!
 ちょっと静かに出来ないの?
 子犬じゃないんだから・・・、そんなにはしゃがないでよ!』と
ウチはまた梨華ちゃんに怒られた。


「キャハハハ、よっすぃーも梨華ちゃんには敵わないね!」
後ろを向いてそう言った矢口さんに、
『ホラ!ちゃんと前見て運転して!!』となつみさんが言った。


「なんだ、やぐっつぁんもなつみさんには敵わないんじゃん!」
3列目のシートから、ごっつぁんの楽しそうな声が聞こえた。
108 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)00時48分12秒


夏休み最後の日曜日。
地元の人しか知らない、この穴場的浜辺にも
家族連れやカップルなど、大勢の人達が集まり
過ぎゆく夏を惜しむようにバーベキューや海泳ぎを楽しんでいる。
その様子をぼんやり眺めていたら
『吉澤、若いのに働きが悪い!』と市井サンに怒られてしまった。
回りを見ると、みんないそいそとバーベキューの準備に勤しんでいた。


109 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)00時49分31秒

つき合ってた時から
どこか投げやりな部分を持ってると感じていたごっつぁんも、
一度、他人に傷つけられた梨華ちゃんも、
ずっと一人きりだと思ってきたなつみさんも、
ウチらを静かに見守ってきたような市井サンも、
明るい笑顔の奥で、なつみさんを優しく包んできた矢口さんも、
みんな楽しそうに笑っている。

きっとウチも、みんなみたいに笑っているんだろう。



110 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)00時53分34秒


あっという間のバーベキューを楽しみ(みんな食べ過ぎだっての!)
腹ごなしのボール遊びも一段落すると
もう太陽は深い赤に染まっていた。


太陽の赤はとても強くて、海を赤く染めるだけでは飽きたらず
みんなも姿も赤く浮き出している。



「ごめん。
 それで、ありがとう」

赤い顔をしたなつみさんが唐突に言った。



「気にしない。
 つか、アタシが困ったら助けて」

やっぱり赤い顔をした市井サンが、迷い無く言った。
 



111 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)00時55分34秒

それから後は、みんな好きなように過ごした。
ウチはごっつぁんと砂の城を作ったり、膝まで海に浸かって水遊びをしたし、
市井サンと梨華ちゃんはパラソルの下で眠っていたし、
なつみさんと矢口さんはずっと海を見ながら何か喋っていた。

2、3回はナンパされたけど、その度にウチと市井サンが追い払った。


そのうちに『のどが渇いた』と誰ともなく言い出して
ジャンケンで負けたウチと市井サンがコンビニへ
飲み物を買いに行くハメになった。



ウチが500NPETのお茶に手を伸ばすと
市井サンは片手で、ウチの手を制しながら
『海で飲むのはコレしかないでしょ!?』と
ビン入りコーラを持ったもう片方の手を挙げた。



ビン入りコーラの入った袋を提げながら
市井サンと二人、みんなのいる場所へ帰っている途中で
綺麗なオネエサン達に逆ナンされた。
二人でニヤニヤしていると、
韋駄天の足で砂浜を走ってきた梨華ちゃんとごっつぁんが
阿修羅の顔で、綺麗なオネエサン達を追い払ってくれた・・・。



112 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)00時56分59秒


太陽がすっかり水平線の向こうに沈みきって、渚が月明かりに照らされる頃
ウチらの花火大会は始まった。



みんなで横並びになって、線香花火を誰が一番長持ちさせられるか競争した。


子供だましの打ち上げ花火に、キャーキャー言って点火した。


一度に何本も手持ち花火を持って楽しんだ。



ホームセンターで買った花火は、すぐに底をついて
ウチらのつかの間の花火大会は終わった。




113 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)00時59分02秒

祭りの終わりはもの悲しさと少しの惨めさしか残らないもので
みんな言葉少なに、花火の残骸を片づけしていたら
不意に矢口さんが花火を拾う手を止めて
何も言わず、どこかへ行ってしまった。


114 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)01時04分26秒

みんな不思議な顔をしながら、矢口さんの帰りを待った。



5分くらいして帰ってきた矢口さんが手にしていたのは、7本のロケット花火。



「親が、仲良しのご近所さんと一緒にやった時の花火が残ってるかも?
 って思って、クルマん中、探したんだけど。
 ゴメン、これしか無かった・・・」


うなだれ気味に言う矢口さんの右手から
ごっつぁんが素早く1本のロケット花火を抜き取り
砂浜に少し埋もれたコーラの空ビンを1つ、拾い上げて
渚まで走っていった。



みんな、ごっつぁんの行動を黙って見ていた。



115 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)01時06分50秒


ごっつぁんは空ビンにロケット花火を差し込んで
ポケットからライターを取り出し点火した。




ロケット花火は勢いよく、海と夜空の間に発射された。





ヒュウッ・・・・・・・・・・・・、パン!
「いちーちゃん、好き〜!!!」





116 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)01時08分12秒


大声で叫んだ後、こちらを振り返ったごっつぁんは
ウチと目が合うとニヤリと笑った。


了解。

ごっつぁんの始めたマジゲーム、ノリましょう!!




117 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)01時09分08秒

ウチはリレーのバトンのように
ごっつぁんから空ビンとライターを受け取ると
矢口さんからロケット花火を1本もらい、渚まで走った。





ヒュウッ・・・・・・・・・・・・、パン!
「梨華ちゃん、隣りにいて!」





118 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)01時11分05秒

子供じみたことをしてしまった、と少し恥ずかしくなったウチは
視線を砂浜に落として、みんなのいるところへ歩き始めた。



「ビンとライター!」
ウチのすぐ前で声がして顔を上げると、
すでにロケット花火を手にした、なつみさんが立っていた。


119 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)01時12分54秒





ヒュウッ・・・・・・・・・・・・、パン!
「圭ちゃん、ありがとう!
 みんな、ホントにありがとう!
 矢口、一緒に・・・ずっと」



「なっち・・・」声にならないくらいの小さな声が
隣りから聞こえてきて、ウチは遠慮がちに隣に顔を向けた。

ハッと息をのんだ。



一粒、涙が矢口さんの頬を流れ落ちるのを、ウチは見てない振りをした。



今度は梨華ちゃんが、なつみさんから空ビンとライターを受け取った。


120 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)01時20分09秒



ヒュウッ・・・・・・・・・・・・、パン!
「・・・ありがとう、みんなに会わせてくれて。
 ひとみちゃん、好き!」


えっ!?
ウチは自分の耳を疑った。

ヒトミチャン、スキ って聞こえたんですけど?


膝を抱えて砂浜に座っていたウチに
後ろから市井サンが蹴りを入れてきて
ウチは初めて、梨華ちゃんが言ったことが事実だって気付いた。


ヒトミチャン、スキ 


胸の底から熱いモノがこみ上げてきて、泣きそうになった。
めちゃくちゃ嬉しかった。


ぽーっとしていた。


ふと我に返ると市井サンは、ウチを後ろから軽く飛び越えて
梨華ちゃんの側へ駆け寄っていた。


121 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)01時27分43秒





ヒュウッ・・・・・・・・・・・・、パン!
「アタシの気持ちが変わった時、
 後藤の気持ちが変わってなかったら・・・。
 しょうがないな・・・、後藤」



ごっつぁんの方を向くと、ごっつぁんは嬉しそうにフニャっと顔を崩した。



胸が一杯になった。

この夏休みのことを思った。

梨華ちゃんとなつみさんの痛み・・・
痛みの大きさは測れない、とか
側にいて欲しい人は大切にしなきゃいけない、とか
感じることを止めちゃダメだ、とか
17歳のこの夏、ウチは
いろんなことを幾つも知った。


122 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)01時29分06秒


矢口さんはいつになくまじめな顔をして、渚へと歩いていった。





ヒュウッ・・・・・・・・・・・・、パン!
「圭ちゃん、任せて!
 なっちをオイラに任せて!!」



123 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)01時32分04秒


いろんな気持ちが溢れてくるのを止めることが出来なくなって
ウチはこの夏、初めて涙を流して泣いた。



見上げた夜空は涙でにじんで、
いつもより多くの星が煌めいているように見える。


星空がウチらを優しく包んでくれているようだ。


圭さんがウチらを優しく包んでくれているようだ。




124 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月07日(火)01時33分59秒

みんなで渚に立った。
水平線のずっと向こうから吹いてくる潮風には
もうほんの少し、秋の気配が混ざっている。



最後のロケット花火、圭さんのロケット花火に、矢口さんが火を付けた。





ヒュウッ・・・・・・・・・・・・、パン!





誰も何も言わなかったし、みんながどんな想いで
7本目のロケット花火を見ていたかは分からない。






ウチは・・・、



ウチはロケット花火を見ながら
秋の景色も冬の景色も、みんなで見たいと願った。












それから、欲張りだけど・・・
ウチが隣りを向いたとき、そこにいつも梨華ちゃんがいればいいと願った。









fin






125 名前:婆金 投稿日:2002年05月07日(火)02時06分26秒
終了です。
今まで駄文にお付き合い下さった方、心からありがとうございます。
(と言いつつ、番外編を目論んでます)

死ネタはナシで、お気楽なヤツだけ書こう!とショボいルールを
自分に課したものの‘ロケット花火’でルール違反をするハメになり
どうしようかと悩んだ末、そうだ!コテハン使わなければ良いんだ!!と
これまたショボい結論に達してしまい、これまでヘンな名前を使ってました。
(内容と、ケンケーない話でスミマセン)

>102 名無し読者様
 レスありがとうございます。 読んでくれて、ありがとうです。
 嬉しかったです。
 気持ち良いラストでしたでしょうか?ドキドキ

>103 名無し読者様
 レスありがとうございます。 読んでくれて、ありがとうです。
 少しでも良いと感じて頂けたのなら、書いた者冥利に尽きます!

>104 よすこ大好き読者。様
 レスありがとうございます。 読んでくれて、ありがとうです。
 先日は、本当に失礼しました・・・
 何か説教臭い!?と思いながら書いていたんですけど
 前向きな気持ちになる、なんて言葉を頂いて・・・。感涙です!
126 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月07日(火)03時07分49秒
作者は婆金さんでしたか(w
いやぁ、幸福感のあるラストで良かったですわ
読んでるこっちも幸せ
127 名前:理科。 投稿日:2002年05月07日(火)17時23分37秒
お疲れサマでした。
最後の終わり方が…凄い好きです。
特になっちの台詞が…(泣
番外編もあるそうですね?楽しみに待ってます。
128 名前:夜叉 投稿日:2002年05月07日(火)20時19分46秒
婆金様、お疲れさまでした。
もしかすると…、と思いながら最初から黙って読んでいました。
ラストの花火のシーン、凄く良かったです。
説教くさいだなんてとんでもない…。いいお話を有難うございました。
番外編、楽しみにお待ちしております。
129 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月08日(水)02時09分05秒
お疲れ様でした。

>《さっき、なっちが笑った(泣 》
この一行でマジ泣きそうになりました。

きれいなラストシーン。よかったです。
久しぶりにいい作品に出会えました。
130 名前:婆金 投稿日:2002年05月09日(木)01時09分16秒
チラッと読み返してみたら、変換ミスとか言葉合わせてないところとか
「直してぇ!」と思う箇所がうじゃうじゃ!ハァ〜
それと、書く時は死ネタはナシで!と思ってましたが、読む方は
好きです。「あぁ!死んじゃった〜。かわいそう(泣)・・・、もう
一回読もう!」てな具合に。

番外編は週明けくらいから出来れば・・・と思っています。
131 名前:婆金 投稿日:2002年05月09日(木)01時10分57秒
>126 名無し読者様
 レスありがとうございます。
 婆金さんでしたか(w ←(wがとっても気になります。
 笑われてる?イエイエ、笑われてナンボの存在です。というより
 名前を知っていただいているだけでも儲けモン!嬉すぃ〜!!

>127 理科。様
 レスありがとうございます。
 感動あり笑いあり(痛いのもあり)の理科。様作品に骨抜きです。
 今日もこれから読みに行こう!ワクワク

>128 夜コソーリ叉様
 レスありがとうございます。
 私が初めてレスをいただいたのって、夜叉さんなんです。
 今までずっと見てもらって・・・、フツーに、素直に、嬉しいです。

>129 名無し読者様
 レスありがとうございます。
 マジ泣きそうだったってレスに、マジ泣きそうです。
 久しぶりにいい作品に出会えたってのは・・・もの凄く有り難いです。
 でも他に、イパーイ良い作品あります。
132 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月12日(日)17時49分37秒


   □ウソツキ?□





133 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月12日(日)17時50分26秒

お姉ちゃんへ

手紙、読んだよ。


ごめん、何から書いていいか分かんないや。お姉ちゃんに知らせたいこと
いっぱいあるのに・・・。ダメだね、なっちは。あっ、今、なっちが書いて
る手紙を勝手に読んだ矢口が(恥ずかしいから見るな〜!)「がんばれ!
なっち!!」だって。なっちが自分で言うのも何だけど、全く矢口は過保
護です!
矢口もそうなんだけど、なっちのことを心配してくれる友だちが、いっぱ
い増えたよ。なっちもみんなのこと、すごく大切に思ってる。先週なんか
ね、みんなで海、行ったの!矢口の運転で!!矢口はさぁ、ホント運転上
               -1-
134 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月12日(日)17時51分28秒
手いんだよ?スゥーって発進して、止まるんだよ!?カッコイイよ、矢口
は。あっ、海ではね、バーベキューしたり花火したりしたんだよ。すっご
い楽しかった!半日は海にいたから、みんな日焼けして。梨華ちゃんなん
て「日焼け対策は万全です!」とかって言ってたけど、一番黒くなったん
じゃないかな?でもね、そういうことも含めて全部、なっちは楽しくて。
高校に入ってから、いじめられてたことなんて、忘れるくらい楽しくて。
               
お姉ちゃん、ごめんね。なっち、今、幸せです。
               

なっちは・・・、幸せになっていい人間なのかな?だってなっちは、お姉ちゃ
んにウソついてた。矢口にもウソついてた。どうしようもない人間だ、なっ
ちは。「お姉ちゃん、戻ってきて!なっちにはダレもいない、ダレもいない
よ!!」なっちは、お姉ちゃんにそう言った。お姉ちゃんがお父さんと家を
               -2-
135 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月12日(日)17時52分46秒
出ていった後、初めて再会した日だったね。なっち、ずっとお姉ちゃんの後
をついて歩いてたから・・・。お姉ちゃんがいなくなってしまって、どうやっ
て生きてけばいいのか分からなくなったんだ。お姉ちゃんは‘なっちは純粋
だ’って手紙に書いてくれたけど、それはね、お姉ちゃんがなっちの前にい
つもいてくれたからだよ?なっちには強くて優しいお姉ちゃんがいるんだ!っ
て思うだけで、恐いものなんて無くなってたから・・。他の子に優しくできた
のも、お姉ちゃんのようになりたかったから。矢口に優しい態度をとったの
も、なっち、一人でお姉ちゃんごっこをしてたんじゃないかな?って今は思
う。本当に最悪だ。だから、最悪だから、なっちは知ってて無視してた、矢
口の気持ちを。中学の頃に、友だちにからかわれてた矢口(中学時代の矢口
のこと、知ってるよね?何度も家に遊びに来たもんね)を何度かはげまして
たら、矢口ねだんだんなっちを特別な存在に思い始めてくれて。なっちはそ
のことに初めから気付いてた。でもその頃、なっちはお姉ちゃんだけしか要
らなかったから。大好きなお姉ちゃんが、なっちのすべてだったから・・・。
               -3-
136 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月12日(日)17時53分44秒
だからね「なっちにはダレもいない」って一言は、矢口とお姉ちゃん、2人
にウソついてた言葉です。なっちには矢口がいてくれるって分かってて「なっ
ちにはダレもいない!」って、ウソついた。お姉ちゃんは、なっちが強くお
願いしたら絶対になっちを助けてくれたから。でもお姉ちゃんが、なっちの
側にいてくれることは、もうなかった。スッゴイ、お姉ちゃんに裏切られた
気がした。それで、なっちは「お姉ちゃんなんか要らない!」って、お姉ちゃ
んのことをお姉ちゃんと呼ばなくなった。わざと他人のように‘圭ちゃん’っ
て呼ぶようになったんだ。要らない人間なんて、一人もいちゃいけないのに
ね。今は、そういうこと分かるよ?でもなっち、3年間も‘圭ちゃん’って
呼んできたんだ。だから‘お姉ちゃん’って、すごい久しぶりな気分。でも
お姉ちゃんは、そんなこと知らないよね。お姉ちゃんが知らないなっちが、
これからもどんどん増えていくよ。

寂しい?でもね。
               -4-
137 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月12日(日)17時55分01秒
お姉ちゃん。なっちはね、この夏知ったんだ。
目を背けたくなるようなことにも、立ち向かうことが必要だって。そのこと
を教えてくれたのは、矢口と紗耶香と梨華ちゃんとよっすぃーとごっちん
(さっき書いた、なっちの大切な人たちだよ!)です。みんなね、お姉ちゃ
んが死んで、心がぐちゃぐちゃに歪んだなっちの側にいてくれたんだ。嬉し
かった。なっちね、笑うタイミングがつかめずにいた時があったの。その時
矢口は「あっ、あのさ、なっち。あせらないで?オイラは待ってるから、ずっ
と」って言ったんだよ!?矢口本人は、すごくあせった顔してるのに!なっ
ちその言葉聞いたら、逆に、ヘンに安心して。思わず笑っちゃったんだ。そ
したらさ矢口、泣いちゃったの。なっちは笑ってるのに、矢口は泣いてるの。
「矢口は、何でこんなに一生懸命なんだろう?最悪ななっちを何で見放さな
いんだろう?」って思ったら、急に胸が熱くなって。
矢口は、ずっとなっちのこと見守っていてくれたんだ。
ホントに大切なこと、やっと気付くことができたよ、なっちは。
               -5-
138 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月12日(日)17時56分13秒
お姉ちゃん、なっちは矢口と輝く未来へ歩き始めたからね!
手にはしっかり、お姉ちゃんの手紙を持ってるよ!

それでね、矢口は、今、寝てます。この手紙書くのにずいぶん時間かかっ
ちゃったからなぁ。
仕方ないです、海に行くのはまた今度にします。
あのね、お姉ちゃん。ホントはこれから、先週みんなと行った海に、矢口と
2人きりで行く予定だったの。それで、波にね、この手紙をお姉ちゃんのと
ころまで届けてもらおうと思ってたんだけど・・・・。でもホント、スヤスヤと
眠っている矢口はかわいいなぁ。まぶたにchu!なっちもブランケット持っ
てきて、矢口と一緒にお昼寝することにします!

おやすみ、お姉ちゃん。
おやすみ、圭ちゃん。

                               なっち
               -6-
139 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月12日(日)17時57分38秒















140 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月12日(日)17時59分48秒

圭ちゃん

やっぱ、何て書いてあるか気になって。ごめん、圭ちゃん、なっち。
でもなっちはまだグッスリ!眠ってるから、またちゃんと封を閉じたら、一
生気付かないんだろうな、矢口が手紙を読んじゃったことなんて。そうだ!
お返しに、まぶたにchu.chu!!

あのね、圭ちゃん。
なっちは、ウソをついた自分が幸せになっていいのかな?って心配してたけ
ど、なっちのウソ、許してやってほしい。矢口は知ってるから。なっちは矢
口の気持ちに気付いても、圭ちゃんの方が大切(圭ちゃんは大人〜って感じ
で、かっちょよかったからね!)だから、矢口に下手に期待を持たせるよう
なことは出来なかったって。やっぱ、なっちは純粋なんだよ。
141 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月12日(日)18時01分16秒
最悪なのは、矢口だよ。
矢口は、なっちの隣りにいたかった。ずっと。矢口は、圭ちゃんに嫉妬して
た。ずっと。だから 圭ちゃん死んだって初めて聞いた時 「矢口が、なっ
ちの一番になれる!」って思った。でもね、なっちの取り乱し様は矢口の想
像以上だった。圭ちゃんの大きさを、改めて知った。それで「オイラ、何て
ことを思ってしまったの!?」って、自分が怖くなった。だから、どうして
もなっちには、元の笑顔を取り戻してほしかった。なっちが好きって純粋な
気持ちだけじゃなかった。矢口は自分の罪ほろぼしのためにも・・・。口じゃ、
かっちょいいことばっか言ってたけど。よっすぃー達が、圭ちゃんの手紙を
見つけてくれて。それから、みんなでいるうちに、少しずつ「あぁ、やっぱ
オイラはなっちが好きだ」って気持ちが大きくなっていったんだよ。矢口も
みんなから、いろんなことを教えてもらった気がする。なっちにもね。一人
じゃ、みんな、生きていけないんだよ。
なっちがね、久しぶりに笑ってくれた時(なっちの手紙にも書いてたけど)
矢口は泣いた。自分の汚い部分も、涙と一緒に流れたような気がした(自分
勝手な感想かな?でもそう思った)。
142 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月12日(日)18時02分55秒
圭ちゃん?
なっちのウソも、きっとまだまだある自分の汚さも、圭ちゃんの手紙も。
矢口は、全部、引き受ける。
だからさ?先週、海で言ったみたいに、なっちのことは矢口に任せてくれな
いかな?ま、イヤだ!って言っても聞かないけど。

なっちは、まだ起きる気配がありません!いつまで寝るつもり?この人は。
でもね、なっちの寝顔を見てたら、また眠たくなってきた・・・。2度寝しちゃ
お(昼寝で2度寝ってヘン?)!
なっち、次起きたら、夜ご飯食べに行こうね。

じゃっ!おやすみ、圭ちゃん。
おやすみ、お義姉ちゃん。←言ったモン勝ちだから!
 
                                矢口 
143 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月12日(日)18時04分12秒






   □ウソツキ? 〜fin〜 □


144 名前:婆金 投稿日:2002年05月12日(日)18時14分45秒
更新終了です。
出来れば、後、3つ。
145 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年05月14日(火)18時26分35秒
今気づきました(w
番外編とてもいいです。
後3つもお待ちしております
146 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月16日(木)01時07分54秒




   □カガイシャ?□








   
147 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月16日(木)01時09分13秒




5月の憂鬱は、7月には払拭されるはずだった---




148 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月16日(木)01時10分27秒

「ねぇ、いちーちゃん。
 何でさぁ、あんなこと言ったの?」

この一言は、先週、矢口達と海に行ってから
すっかり後藤の口癖になってしまったようだ。

「あぁ?何のこと?」

何のことだか、十分承知で訊き返す。

「だから・・・」

口に出しづらいなら、訊くな!つぅの。

「だからさ・・・。
 『アタシが困ったら助けて』って。
 思ってないっしょ?ホントは、そんなこと」

これは、先週から幾度となく繰り返されてる
アタシ達のやり取り。
そしてアタシは、いつもここで言葉に詰まる。

「・・・・・・・・・・、そういうことを言ってみたかった」

それで結局、いつも本心を言う羽目になる。

夜の潮風にやられてか、それとも
矢口達の優しさに触れてしまったからか。
とにかくアタシは、ああいう風なことを
言ってみたい衝動に駆られた。
ま、今考えれば甚だバカらしい。
149 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月16日(木)01時12分30秒

「いーちーちゃーん?」

アタシの思考回路を寸断させるように、アタシの顔を覗き込む後藤。

これも、先週から幾度となく繰り返されてる
後藤の行動。

1パターン。

後藤が次に言う言葉は
『じゃ、さ。いちーちゃんの気持ちが変わるのって、いつ?』だ。

「じゃ、さ。いちーちゃんの気持ちが変わるのって、いつ?」

「・・・・・・・・・・・・」
いい加減、辟易する。
この後『ねぇ、いつ?』って後藤は訊く。

「ねぇ、いつ?」

次はアタシの喋る番。
いつもだったら『いつだろうね?』と微笑みながら言う。
でも。
ミックスジュースを、心底、美味しそうに飲んでいる後藤を見ていると、
アタシを、心底、愛しそうに眺めている後藤を見ていると、
とうてい微笑んだり出来そうにない気持ちになる。
それどころか。
だんだん、胸の底がチリチリしてくる。

150 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月16日(木)01時13分31秒

「ねぇ、いつ?」

また・・・。二度も訊くなよ。
イライラする。

来ないよ!来るわけない、そんな日。
・・・アタシが誰かを好きになっていい日なんて!!



「後藤さぁ?
 吉澤と別れなかったら良かったのにね」



さっき喉元まで出かかった言葉とは違う言葉が、淀みなく口をついて出る。
イライラする。
あの時と同じ様な苛つきが、一気にアタシを支配する。



「よっすぃーは、いちーちゃんのこと
 かっけー!って言ってくれたのに!!」

ガンッと乱暴にカップをテーブルに置き、
後藤はそのままカフェを出ていってしまった。
あまり大きな音が立ったので
回りの席に座っている客が何人か、一斉にこっちを向いた。

151 名前:婆金 投稿日:2002年05月16日(木)01時22分19秒
ヨパライ更新終了です。
番外編、1つ減らします。ちょっと考えたら、あんまり必要ない話が1つ
あったので。この話を合わせて、後、2つです。

>145 ぶらぅ様
 レスありがとうございます。
 ヨパライage★age nightです。
 番外編、始めちゃって良かったのかな?って思ってたので嬉しかったです。
152 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月16日(木)22時38分01秒
いちーちゃん、昔何かあったのかな?
他の番外編も楽しみにしてます。
153 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月17日(金)18時50分11秒
ワーイ!!番外編だぁ!楽しみにしています。
154 名前:夜叉 投稿日:2002年05月18日(土)23時04分07秒
番外編始まってたんですね。
矢口の手紙、分かるような気がします。そうじゃないと人間じゃないのでしょうね、誰しもが密かに沈めている感情ですから。改めて教えてもらいました、有難うございます。

さくさくと期待してます。
155 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)01時23分11秒

どんな顔をすればいいか分からない。

出来るだけ、静かな顔。
出来るだけ、静かな気持ち。
・・・そう、してみようとするけど、なかなか上手くいかない。

弱ったな・・・。後藤、出てっちゃうし。

しかも何?あの捨て台詞!
『よっすぃーは、いちーちゃんのこと
 かっけー!って言ってくれたのに!!』だってさ。


可笑しくて、笑えもしない。


吉澤は、根本的に勘違いしている。
アタシは‘かっけー’くない。全然、そんなんじゃない。

・・・吉澤はアレだな。


素直なんだ。


素直だから、アタシを‘かっけー’って
勘違いしちゃったりするし(初めて会った頃はアタシを敵視してたけど)
素直だから、石川を救えちゃったりする。


嗚呼、アタシに一欠片でも吉澤の素直さがあれば・・・
あんなことにはならなかったんだろうな、って何、思ってんのアタシは。

自分がやったことでしょ?


さっきまでのイライラは
自分がしたことへの、アタシ自身への、空恐ろしさへ変わってる。


とりあえず、逃げよう。
アタシを捕らえようとする
アタシ自身の何か(後悔、それとも懺悔の気持ちとか?)から。

156 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)01時24分38秒

「あっ、すいませ〜ん!
 ・・・エスプレッソ」


チャイにしようか(それとも‘お薦め!ソフトクリーム’にしようか)
一瞬、悩んだけど、やっぱエスプレッソ。
あんま、意味はナイけど。


アタシガ、ワルイ ノニ。


指で回したり、テーブルの上に立てたり。
テーブルにセットされた灰皿の中から
【cafe_do】と、このカフェの名前が
プリントされたマッチ箱を取って、しばらく弄ぶ。

そういえばこの間、石川が
『cafe_doの‘do’って、北海道の‘do’なんですよ!
 知ってました?今度、メロン使ったスィーツが出るらしいですよ』
って言ってたっけ。

157 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)01時26分58秒
石川はこのカフェ、お気に入りなんだって。
ここでバイトしたいんだって。
石川って、健気!


アタシガ、ワルイ ノニ。


「お待たせしました」
ここの新入りスタッフもカワイイ。
里田まいちゃん。里ちゃん。実は、名前、チェック済み。
だから、どうこうってのはナイけどさ。


アタシガ、ワルイ ノニ。


アタシガ、ワルイ ノニ。

アタシガ、ワルイ ノニ。
アタシガ、ワルイ ノニ。



うるさいな、何か。


アタシガ、ワルイ ノニ。



あ〜、逃げ切れなかったんだ、アタシ・・・。
結構ムリして楽しいこと考えてたのに。



158 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)01時27分40秒



5月の憂鬱は、7月には払拭されるはずだった---




159 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)01時29分23秒

アタシは、モテた。今も、モテる。
女の子に。
はぁ?って思うけど、性格が男前だからとか、
ショートヘアだからってことだけでモテる。
ま、中学から女子校だし(持ち上がりで女子大までいける。でも受験しよう)。


「紗耶香のこと・・・。フツーの友だち以上に好きだよ」
「市井サン、今、つき合ってるコとかっています?」
「センパイ・・・。これ読んで下さい」
「市井が好き」
「私、紗耶香と友だちなんてヤだ」


中学ン時は、確かに嬉しかった言葉。
自分は人気あるんだって
素直に喜べた(あっ、アタシも昔は素直だったんだ)。
でも・・・気付くよ。
みんな、好き勝手に言ってくれたから。
みんな、ホントのアタシを見てなかったから。
結局、誰でもイイんだ・・・って。

アタシの気持ちは何処にある?
160 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)01時31分14秒
だからアタシは片っ端から、そういうの断った。
そのうち、アタシのことを好きっていうコは減っていったんだけど
春は別。

新入生って、メンドくさい(編入生も、ちょっと)。

去年の春も散々な目にあった。


ズズッ(うっ、やっぱエスプレッソって濃いなぁ)


4月のうちは、新入生も自分のことで目一杯らしくて
まだいいんだけど、5月になると学校にも慣れてきて・・・。
いろんな情報も入ってくるようになるしね。
友だち同士のネットワークも構築されてくるしね。

『2年の市井センパイがカッコイイ!』

何か、ファンクラブみたいなやつまで、できちゃって・・・。
家までつけてくるコとかもいたりして・・・。
ウザイっていうより、ちょっとコワイ。もう、憂鬱の域。

で、アタシはそういうの完璧ムシった。

さすがに2か月もムシってると
みんな、アタシに飽きるようで。



アタシは7月に、やっとウザさから脱出できた。
憂鬱を払拭することができた。


ズズッ(ちょっと濃さに慣れた)


161 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)01時33分08秒


アタシの学習能力って、たぶん低い。
だって、去年の経験を活かせなかったんだもん。

今年の5月もやっぱりアタシは憂鬱だった。
やっぱり家までつけてくるコも出てきたし。
それに・・・
コイツは本気でアタシのこと想ってるかも?ってコが一人いたから。

アタシに告ってくるコはみんな、ホントのアタシを見てない!とかって
思ってたくせに、実際、アタシのことをホントに好きだってコが現れたら・・・。
嬉しいし、好きになろうとしたんだけど、
どうやっても好きになれなくって・・・、そのコのこと。


元気で、カワイらしいコだった。人なつっこくて。いいコだった。


何度アタシが『ゴメン。その気ナイから』って断っても
高橋はさぁ、告ってくんの。

まだ教室の机ン中に残ってる、何通も。
『by あいごろ』って手紙。
162 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)01時35分09秒

高橋の真っ直ぐな気持ち。


受け止められなかった。


純粋に、アタシを好きになってくれた気持ちなのに。


何でか、好きになれないの。


どうしようもなく焦って、イライラした。
初めは、高橋のことを好きになってあげられない自分に苛立った。
だけど・・・、だんだんアタシのイライラは
アタシを好きだと言い続ける、高橋へ向いていった。




まだ6月も半ばだった。



2か月もムシってれば、相手もアタシに飽きる---
去年、学習したことは忘却の彼方。


163 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)01時35分53秒

パァンって。



高橋の頬を、パーで叩いた。



早く終わりにしたかった。
7月を待てなかった。





速攻、終わりは来た。



高橋の耳の鼓膜は破けた。




---聴力障害が残るかも知れません---




ズズッ(オェ。カップの底に残った砂糖、飲んじゃった)
164 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)02時02分59秒
更新終了です。今回の番外編、思ってた以上に話が長くなったので
明日、また更新します(それで今回の話はお終いです)。

>152 名無し読者様
 レスありがとうございます。
 いちーちゃん、昔、何かありました・・・。
 この間の泥酔更新、言葉が足りなかったですね。スミマセン。

>153 よすこ大好き読者。 様
 レスありがとうございます。
 先日、バイト先のPCでメール欄を初めて確認できました。
 よすこ大好き読者。様の言葉、ありがたかったです。

>154 夜叉様
 レスありがとうございます。
 さくさくと、ってこんな感じでイイですかね?
 烏滸がましくも、Love&Lifeと、その他諸々ってのが一応(ry
165 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)18時54分17秒

高橋は、親にも学校のセンセーにも
アタシに叩かれたと言わなかった。
だから学校中に‘市井が高橋を殴った’って噂(つか、事実だけど)が
広がっても、アタシにお咎めは無かった。
センセーとか、絶対アタシを怪しがってたけど・・・
高橋が何も言わないから。
アタシは・・・アタシも何も言わなかったから。
何で何にも言わなかったのかな?
何で何にも言えなかったのかな?
もぅ分かんないや。


とにかく推定無罪。


166 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)18時55分05秒
屋上へ続く階段の踊り場へ呼び出されたのは
高橋が、他校へ編入する前日だった。
ウチの学校は屋上、立ち入り禁止だから・・・。
その人気のない場所に放課後、呼ばれたってことは
何か言われるんだって、覚悟は決めてたつもり。


居づらくなったって。

折角、外の中学から受験して入った高校なのに。

全部、アタシが悪いのに。

アタシが悪いのに。

アタシが悪いのに。


でも高橋は言った。





「市井サンは悪くないです」




無期懲役をくらったみたいだった。
っていうか、自分で罰を与えなきゃって思った。
高橋がアタシを裁かないんだったら、
アタシが自分で自分に罰を与えなきゃって。
167 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)18時55分39秒

アタシの気持ち(よく分からないけど、後悔とか懺悔の気持ちとか?)
どこにぶつけたらいいか分からなくなったから、
自分にフィードバックさせるしかなかった。

アタシは高橋を傷つけたから。
アタシは高橋の大切なものをなくしてしまったから。

自分からも、何か大切なものを奪わなきゃって思った。


ズズッ(それは・・・、だけど
    どんなことをしても、気持ちのバランスを取りたかった
    アタシの心の裏返し?)


アタシは、人を好きにならないことにした。

アタシを好きになってくれた人を傷つけたアタシは人を好きになる資格なんて無い。
実はそれまでにテキトーな気持ちで他の学校のコ
何人かとつき合ったことあったけどそういうことも一切合切剥奪。

168 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)18時56分38秒

高橋は、去っていく前
『握手して下さい』って言った。


アタシは、握った高橋の手を引き寄せて
高橋にキスをした。

高橋にしてあげらること・・・
それくらいしか思い浮かばなかった。


何の味もしなかった。



だけどあの時、他に何ができた?ってアタシは思うけど
後藤は『あのキスは非道い』って言う。


あの踊り場のもう少し上らへんで、授業をサボって寝過ぎてた後藤は
アタシと高橋の、一部始終を見てた(後から聞いた話だけど)。

それで後藤に『いちーちゃんは、人の気持ちが分かってない』って言われた。
『高橋は吹っ切ろうとしてるのに、あんなことしちゃダメだ』って言われた。
・・・それから何故か『いちーちゃんを一人にしない』って言われた。


いっこ下の後藤の存在は
前から知ってたけど(いつも寝てるのに、妙に人気あるヤツって)
今度はコイツに付きまとわれるのか、と最初は思った。



そろそろ夏休みが始まる頃だった。



ズズッ(夏休みは・・・アッという間に終わった)
169 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)18時57分17秒

夏休みは、何かいろんなことがあった。
久しぶりに矢口といっぱい喋ったし。
吉澤やなっち、石川とも、たくさん喋った。

だけどアタシは自分のこと、みんなに話せなかった。
石川の話を聞くと・・・。


・・・ちゃん?


石川は、自分を斬りつけたセンセーのこと、許さないよね?


アタシがやったこと話したら、みんなアタシのこと・・・。


アタシは、黙って見てるしかなかった。
吉澤みたいに、一生懸命、動いたり、思ったりできなかった。

だってアタシに、そんな資格無いでしょ?



・・・ちーちゃん?



先週みんなで行った海だって。
アタシはあそこに、みんなと立ってて良かったのかな?



・・・いちーちゃん!?



アタシは・・・



「いーちーちゃーん!!!」



うるさいな、何か。



「いちーちゃんって!」

あっ。後藤?
170 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)18時57分47秒
「後藤、何で?
 いつ戻ってきたの?」

後藤の前に置かれてる、何かのフルーツ系ジュースが入ったグラスは
もう半分くらい空になってる。

「『何で?』じゃないよ、もぅ。
 何度もメール入れたのに・・・、返事かえってこないし。
 めちゃくちゃ探したのに、いちーちゃん、まだここにいるし」


メール?
全然、気が付かなかった(ま、マナーモードにしてたし)。

カバンからケータイを取り出して、メールを確認する。

つかアタシ、フツーのコーヒー飲んでる?
・・・、どんだけここに居たんだろ?
171 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)18時58分18秒
メール、12件も入ってるよ!!
しかも全部、後藤から・・・。

《いちーちゃん?ホント、今、どこ?》

《いちーちゃん?》

《いちーちゃん!どこにいるの?》

《いちーちゃん、応答願います》

《嬉しいよね!いちーちゃん!!!》

《あ〜、でもホッとした》

《ヤッター★高橋!手術、成功だって!!》

《もしかしたら良いニュースあるかもしれません》

《さっきからね、友だちからメール、いっぱい入ってくるんだ》

《ごめんね、いちーちゃん。何か返事して?》

《さっきは後藤が悪かったです》

《やっぱ、さっきは後藤が悪かったかな?勝手に出てっちゃって》

172 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)18時58分56秒

「高橋・・・、耳、治るの?」


アレッ!?何で?
何でこんなことしか喋れないの?


安心感は確かにあるんだけど・・・
グラグラ、心が揺れてる。
どうしたんだろ?アタシ。




「うん!」

後藤は今までにないくらい、フニャってる。
嬉しそう。

173 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)18時59分27秒

でも。


やっぱ、アタシは・・・。


やっぱ全部、アタシが・・・。


そうだ。やっぱアタシが


「いちーちゃん!」


アタシの思考回路を寸断させるように、アタシの顔を覗き込む後藤。


「いちーちゃん!
 高橋は、いちーちゃんのこと悪く思ってないよ!?
 それでも、誰かに許してもらいたいんなら・・・
 後藤が・・・
 後藤が、いちーちゃんを許してあげる」



あっ!


あぁ。


あぁ・・・、ね。


そっか、そうか。
ようやく気付いた。



アタシ、許してもらいたかったんだ。
174 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)19時00分00秒

スゥ〜って、身体から力が抜ける。
心からも、何かが抜けてるみたい。




高橋?
アタシ、許されていい?




「いちーちゃんが欲しいもの、後藤が何でもあげる」



アタシ、欲しいものを『欲しい!』って言っていい?



アタシ、人を好きになっていい?



力が抜けて、ぼんやり後藤を眺めてたら、急に切なくなってきた。



アタシずっと、後藤を待たせてた。

175 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)19時00分59秒


「後藤?」
ボソリと呟くように言ったのに、
後藤はアタシの声を正確にキャッチした。


「何?いちーちゃん」


人の気持ちって単純なのかな?
それとも、アタシが単純なだけ?
でも、そうで良かった。


176 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)19時01分53秒

後藤は泣きそうなのか、笑いそうなのかよく分からない顔をして
アタシの次の言葉を待ってる。




もう待たせちゃダメだね。



後藤が、アタシの目の前にいる。
そう。これが、アタシの全て。




「後藤さぁ?
 ・・・アタシ、気持ち変わった」




後藤の顔は、泣きそうなのか笑いそうなのか
やっぱりよく分からない。






「いっ・・・、いぢぃ〜ぢゃ〜」



泣いてる。





「良かったぁ〜」




笑ってる。




177 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)19時02分35秒




5月の憂鬱は、9月にアタシの恋花を咲かせた---


178 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月19日(日)19時03分37秒


   □カガイシャ? 〜fin〜 □

179 名前:婆金 投稿日:2002年05月19日(日)19時04分52秒
更新(?)終了です。
番外編、出来れば、後1つ。
180 名前:名無し 投稿日:2002年05月20日(月)02時43分04秒
う〜ん・・・イイ。
クールだ・・・
181 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月23日(木)15時55分12秒
最後は石川さんかな。
楽しみに待っております。
182 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月26日(日)15時59分17秒



   □迸ル。□



183 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月26日(日)15時59分50秒
無力で空っぽ。

もぅボロボロ。

死んだ方が楽でいい。

ううん、きっと、このまま死んじゃった方が自然なんだ。


そんな考えが私の心に染みついてた。



184 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月26日(日)16時01分20秒

終日、病院のベッドに横たわって
先生に斬りつけられた左手首を眺めてた。




「じゃあ、死んで?石川が悪いんだよ」
耳にこびりついて離れない言葉。
先生の、表情のない顔。



怖かった。



身体にも心にも刻み込まれた“恐怖の記憶”。



拭っても、拭いきれない。





ズキ ズキ ズキ ズキ
ドキンドキンドキンドキン

痛みと心拍数は同じ数、同じ量。

だから私が生きてる時間が長くなるほど、
痛みは増していくの。



185 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月26日(日)16時02分26秒

そろそろ、本当に終わりにしようと思い始めた時
いかにも安物!なプラスチック製のコップが
私の視界に飛び込んできた。


白い湯気がかすかに立つコップからは、清かな日本茶の匂いが漂ってた。


「あ、お茶?」


私にお茶を入れてくれたのは
隣の女の子を時々お見舞いに来てた人。

その人は目で、私に「お茶を飲め」と促した。
とっても優しい眼差しが私に向けられてた。

あんな目で見られるなんて、ものすごく久しぶりなことだった。

ずっと・・・、お見舞いに来てくれる先生達や友だちの
同情的で攻撃的な視線に耐えられずにいたから。

みんな、私に優しい言葉をかけてくれた。
でも私には、みんなが口に出さない言葉がハッキリ聞こえてた。



「石川が色気出して、誘ったんじゃないの?」




186 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月26日(日)16時03分28秒

いろんなことに疲れて、いろんなことがどうでもよくなって
私はヤケになったみたいに、お茶を口に流し込んだ。

そしたら、おもわず、そのお茶が温かくって・・・。

柔らかい温かさが、のどを通って身体の隅々まで
染み渡っていくのが分かる気がした。

お茶と一緒に、お茶を入れてくれた人の温かさも
私の身体の隅々まで染み渡ってく気がした。


泣けてきて・・・。


私の涙は熱かった。

生きてて、良かった。



明日をちゃんと迎えなきゃ
って思った。




187 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月26日(日)16時04分38秒
「なに、してるんですか?」


「何や!
 石川かぁ。ちょっとビックリさせへんといて!!」

中澤さんは段ボール箱へ本を詰め込んでいた手を止め
イタズラを見とがめられた子どものように
顔を強ばらせて、こちらを振り返る。

「顔、見せに来ましたよ」

「・・・、元気やな?」
そう言って、中澤さんは
深いところに強さと優しさを含んだ瞳で私を見る。


『時々、顔を見せに来るように』
それは退院するとき、中澤さんから言われた言葉。


「ちょっと待っときぃや。
 マスカットティー入れてきたる。石川、好きやねんな?」

私って、無類のお茶好きだと思われてる?
でも何か・・・敵わないなぁ、中澤さんには。
私も将来、中澤さんみたいな女性になりたいな。


188 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月26日(日)16時05分20秒

「美味しいです」
本当に。
自分が入れた時とは比べものにならないくらい美味しい。

「そらそうや。
 心込めて、入れとるからな」

中澤さんの入れてくれるマスカットティー
中澤さんの視線
中澤さんの言葉

中澤さんが創りだす独特の空間は、居心地がいい。
この空間に浸って、私は
生きてて良かったって思えた。

189 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月26日(日)16時07分51秒

「吉澤、どうしたんや?
 今日は一緒やないん?」

私はドキリとして、中澤さんの顔から
マスカットティーの入ったカップへ目を落とした。


中澤さんの空間から、無理矢理はじき出された気がする。


「『バイトで一生分の本を見たから、当分、図書館には行かなくていい』って。
 これから会う約束はしてるんですけど・・・」

中澤さん、いつもは私の心配だけしてくれるのに・・・
何でひとみちゃんの話、出てくるかなぁ?

「ったく・・・。吉澤らしいわ!
 そうや、石川。
 これ飲んだら、ちょっと手伝ってぇな」

そういう中澤さんの言葉を
私は遠くで聞きながら
『バイトしたいんやったら、アタシの目の届くところでやってぇな。
 知り合いに図書館でバイトできるように頼んどくわ』と
夏休み前に中澤さんが言った言葉を思い出していた。


病院を退院してからも
中澤さんは、ずっと私を見守ってくれていた。



でも何か、今日は様子がおかしい。


190 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月26日(日)16時08分39秒


「これ・・・」

私は段ボール箱の前で、立ちつくした。

さっきまで中澤さんが作業していた文庫。
段ボール箱の中身は、保田さんの本。

「木は森に隠せ、言うやん?
 本も図書館に隠せ、やな」

どういうことだろう?


191 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月26日(日)16時09分28秒

「えぇか、石川。
 捨てたらアカンもんってあるんや。
 ・・・まぁ、捨てなアカンもんもあるけどな」

どうしても解せず、
まだ立ちつくして黙り込んだままの私に
中澤さんは楽しそうに笑いながら言った。

「ボーっとしとらんと!早よ、手伝いな。
 バレるやん、・・・アタシが勝手に本を預かっとったって。
 妹さんに本、返されへんようになるやん」


じゃ・・・?


「じゃ、私とひとみちゃんが分類した作業って?」

「一種のカモフラージュやな」

そういって中澤さんはカラカラ笑う。


騙されてた!
これから、中澤さんを見る目が変わるかも知れない・・・。


192 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月26日(日)16時10分24秒

保田さんの本を梱包し終えたのと
中澤さんが「石川?もうアタシに会いに来るな」と
言ったのとは、ほとんど同時だった。


私は「何でですか!」と、まくしたてた。

「そんな、怒りぃなや。
 これ、あげるし、なっ?」

吉澤と一冊ずつな、と差し出されたのは2冊の絵本。


中澤さん、私に何を伝えたいのかな?


私は探るような目で中澤さんを見た。

193 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月26日(日)16時11分20秒

「卒業や、石川。
 もぅ裕ちゃんから卒業せな、な?
 その絵本は、卒業記念の品、餞の品や」


中澤さんの冷静な口調。
私の胸を寂しさで一杯にさせた。


「じゃ、中澤さんに助けてもらったって言っていいですか?
 ずっとみんなに言いたかった・・・。
 希望とかくれたの、中澤さんだって」
私はそっぽを向いたまま言った。

一応、反抗してるつもり。

まだ中澤さんの居心地良い空間に包まれていたい。


「裕ちゃんは、カワイコちゃんの正義の味方やからなぁ・・・。
 正義の味方は名前、明かされへんねん。
 正義の味方はパッと去っていくもんやねん」



気付きたくはなかったけど
何となく、察していた。


私、何か大切なものを忘れていたのかも知れない。

194 名前:ロケット花火 投稿日:2002年05月26日(日)16時12分02秒

踵を返して文庫を出ようとした時、中澤さんの最後の声を聞いた。


「石川、よう頑張ったな。
 でも頑張らんでもいい時もあるんやで!
 好きな人、大切にするんやで!」



図書館を出ると、まだ残暑厳しい9月の空気をいっぱいに吸い込んだ。




もぅ楽な方には流れません(多分)


そう心の中で呟いた途端、何故だかひとみちゃんに逢いたくなった。
今すぐ、逢いたくなった。


195 名前:婆金 投稿日:2002年05月26日(日)16時19分34秒
更新終了です。
少し長くなるかも知れません(でも、すぐ終わるかも?まだ分かりません)。

>180 名無し様
 レスありがとうございます。
 クールとか、熱いとか、みんな温度差アリアリです。

>181 名無し読者様
 レスありがとうございます。
 もぅ、バレバレですね。キャッ、恥ずかしい。
 それにしても、お待たせしました(また待たせたら、スミマセン)
196 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月26日(日)23時25分44秒
初レスです。
今日初めて一気に読みました。
何と言うか、夏の日の眩しさとかそれぞれの切なさが交錯してて、とても素敵でした。
(上手く言えない自分がもどかしい、スマソ)
自分も図書館がらみの仕事をしていましたが、裏方の仕事の感じとかよく表現できてて
感心しました。
本を延滞して、ここの姐さんに
从 #~∀~从ノ <アカンがな!
って怒られたいと思った自分は逝ってヨシ!でしょうか。

姐さんといしかーさんのエピソード楽しみにしてます。がんがってください!
197 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)23時26分17秒
姐さんの言葉が暖かい感じでよいね…
198 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月27日(月)22時16分51秒
続きが楽しみですよほ。
姐さんカッケー。
199 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年05月28日(火)20時40分01秒
終わり方がいつも素敵ですね。(羨ましい)
更新がんがって下さい。
200 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時09分26秒

「ひとみちゃん・・・」

思わずそう呟いた、ひとりごとみたいに。

待ち合わせの時間まで、まだ全然あるし
どんなに叫んでも、私の声はひとみちゃんに届かないって
分かってるけど。

時間とか、距離とか
もどかしい。
胸が張り裂けそう。

早くひとみちゃんに逢いたい。


201 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時11分24秒


「呼んだ?」




202 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時12分53秒
突然、後ろで声がして振り向くと
そこにいるのが当然、というような顔をして
ひとみちゃんが立ってる。

何で!?
何で、ひとみちゃんがいるの!?

「どうしたの?
 待ち合わせの時間、まだだよね?」

そういいながら、でも、無条件に頬がゆるんでいくのが
自分でも分かる。

本当に好き。

ひとみちゃん。


「ん〜、早く逢いたくなった、かなぁ?なんて・・・。
 あっ、あれ?
 梨華ちゃん、どうしたの?
 ・・・何か、あった?」


203 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時13分51秒

私は、ひとみちゃんに抱きついた・・・。

私、中澤さんから生きる希望をもらったの。
でも今日までずっと、中澤さんに甘え過ぎてたみたい。
これからは一人で歩いていかなきゃね。
ううん、出来ることなら
ひとみちゃんと並んで歩いていきたい。

ひとみちゃんは、私にパワーをくれる。

私も、ひとみちゃんにパワーをあげたい。

みんなと泣いたり、笑ったり
素直に過ごしていきたいね。

そんな気持ちを上手く言葉に出来なくて
何も言わず、ただ、ひとみちゃんに抱きついた。

204 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時14分35秒

「梨華ちゃん・・・。
 ずっと隣りにいるからね。
 ウチ、頼りないけど・・・、
 ・・・守っていきたいって思ってるから」

そう言って、ひとみちゃんは
私の髪を優しく撫でてくれる。


「私も、守る!」

やだなァ、私、何、宣言してるんだろ・・・。
ちょっぴり恥ずかしい。

205 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時15分35秒

「じゃ、よろしくお願いします」

ひとみちゃんの微笑を含んだ声が、体中に響く。

「あの・・・。いきなりお願いしたいことが
 あるんですけど」

ひとちゃんの、少しせっぱ詰まったような声。
どうしたんだろう?

「あの・・・。背中にゴツゴツ、何かが
 あたってて痛いんですけど・・・」


あっ。
私、さっき中澤さんにもらった絵本を持ったままだった。
あんまり強くひとみちゃんに抱きついちゃったから・・・。

「ゴメン!
 痛かった?」

慌てて、ひとみちゃんから離れる。

206 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時16分34秒

「ダイジョーブ!
 それより、何それ?」

そうだ、なんだろ?この絵本。



二人して、絵本を読む・・・。


とたんに困惑と嬉しさが合わさったような気持ちになる。

ひとみちゃんは、何だか
決まり悪げに苦笑している。


「キャラ・・・、逆だよね?どう考えても」

私がそう言うと

「え〜、でも梨華ちゃんの方が
 こういう思い、強いンじゃないの!?」

と、ひとみちゃんが反撃する。


ひとみちゃんの、少し素直じゃないところは
絵本の中の、くろいうさぎにソックリだと思うけど・・・。

207 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時17分17秒


9月の風が、私とひとみちゃんの間を
吹き抜けていった。

少しの寂しさを覚えた、私の心を察知したように
ひとみちゃんが言った。

「そうだ。目ェ、閉じて」


208 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時18分16秒

深く頷いてから、目を閉じる。



左手首を掴まれる。
そして左手は、そのままゆっくり
胸の辺りまで持ち上げられる。

ひとみちゃんの温かい体温にまざって
冷たい感触が掌に伝わる。




何だろ?



「目ェ、開けていいよ」


小さく深呼吸して、目を開ける・・・。


209 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時19分55秒

私の掌には、シルバーの(でも細くて、女の子っぽい)
チェーンブレスがのせられてる。

「バイト代で・・・。
 梨華ちゃんには、そっちのが似合うよ?
 傷は見えちゃうけどさ。
 ・・・さっき言ったけど、ウチ、ずっと隣にいるし」


ひとみちゃんを想う気持ちがどんどん脹らんでいく。
人って、こんなに誰かを好きになれるんだ?


「それで・・・さ?
 梨華ちゃんが、今つけてるブレス、ウチにくれない?
 かっけーよね、それ」

210 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時20分30秒

『えぇか、石川。
 捨てたらアカンもんってあるんや。
 ・・・まぁ、捨てなアカンもんもあるけどな』

そう言った、中澤さんの顔が脳裏に浮かんだ。

211 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時23分10秒

やっと、中澤さんが本当に言いたかったこと・・・
理解できたような気がする。


「ゴメン、ひとみちゃん。
 これはあげられない。
 これは捨てなきゃいけないものだから。
 ひとみちゃんには、もっと違うの、ちゃんと選びたい」


私がそう言うのを、初めから分かってたみたいに
ひとみちゃんは無言で、私の左手首からレザーブレスを外し
新しいチェーンブレスをつけてくれる。


優しい瞳。





212 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時24分25秒



生きてて良かった


いつか、許せるようになりたい


みんなと出会えて良かった
ひとみちゃんと出会えて良かった


好きで良かった




胸の底から迸る、いろんな感情が、私に言わせる。



「ずっと、愛してる」











213 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時25分20秒


   □迸ル。 〜fin〜 □


214 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時26分30秒


   □You Make Me Happy□


215 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時27分18秒

他の人から見たら極々小さなことに、つまずいて
なかなか前に進めないことなんて日常茶飯事。
まだまだ未完成、未熟者。
勘違いや、間違えてること、いっぱいする。


たぶん、これからも
上手くいかない日々が何日も、何十日も、何百日も待ってると思う。

でも。

今、大切な友だちがいる。
今、好きで好きでたまらない人がいる。


それで、ハッピー!


216 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)02時28分26秒


   □You Make Me Happy 〜fin〜 □

217 名前:ロケット花火 投稿日:2002年06月02日(日)03時18分30秒
完了です。
長くなるかも?と言った舌の根も乾かぬうちに・・・。スミマセン
ここまで、この駄文を読んで下さった方、本当にありがとうございます。
本当に、本当に。

>196 ごまべーぐる様
 レスありがとうございました。
 昔、図書館でバイトしたことあります(バレバレですね)。
 从 #~∀~从ノ <逝ったらアカン!
         逝っていいのはMacじゃメール欄読まれへん思うとった婆金や!
 それにしても。これ、そんなに誉めていただくようなものじゃ・・・。
 それより私、名無しで、ごまべーぐるさんの作品(森だった頃)に
 レスしたことあります(バラさなくても・・・)!
 
>197 名無し読者様
 レス、ありがとうございました。
 姐さんのエピソード、実は □クロマク?□ ってヤツで独立した
 番外編にしようかな?って思ってたんです。
 一度、脳内ボツになりかかったヤツです。
 レス、励みになりました。何度も書いたらウソっぽくなるかも知れませんが
 心から、ありがとうです。
218 名前:婆金 投稿日:2002年06月02日(日)03時19分24秒
>198 よすこ大好き読者。 様
 レス、ありがとうございました。
 よすこ大好き読者。 様には、ありがたい言葉を幾つも頂いた 
 ような気がします。うぉ〜!って猛烈に、がんがれました。
 番外編までお付き合い下さって、多謝です。
 ずっとありがとうございました。 

>199 名無しベーグル。様
 レス、ありがとうございました。
 この間は、いきなりすみませんでした。
 レス頂くなど、お手数をおかけして・・・申し訳ないです。
 名無しベーグル。様の「どっからこんな発想がわいてくるんだろ!?」
 と思わずにはいられない作品が好きです(後少しで完結!?)。
 
219 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)03時56分02秒
今日一気に読みました!!
最 高 で す た

なんかこう、胸が切なくって、、、
なんとも抱き締めたくなるイシカーさんですねー
吉、、、幸せもの!!
220 名前:オガマー 投稿日:2002年06月02日(日)04時13分59秒
お疲れさまです。
本編が終わった頃に一度通して読んだことがあるんですが、
本編のラスト辺りがすごく好きで。
番外編もジィーンとくるものばかりでした!!
お疲れサマです。
221 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月02日(日)05時10分29秒
姐さんのプレゼントは『しろいうさぎとくろいうさぎ』ですか。
いやぁ、甘甘だなぁ(w 自分も確か知人の結婚祝いに差し上げた記憶が。
完結お疲れ様でした。
しろうさとくろうさの未来に幸あれ!


222 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月02日(日)12時15分40秒
読んだあとの後味がっていうのか、さっぱりした晴れやかな気持ちになりました。
これは、婆金さんの文章力のすごさですね。
涙を誘って、最後にHAPPY読んでて元気になりましたよほ。
完結お疲れ様でした。&ありがとうございました。
223 名前:夜叉 投稿日:2002年06月05日(水)20時47分07秒
番外編、お疲れさまでした。
いしかーさんの捨てなきゃならない物、早くに捨てられそうですね。
温かい思いを有難うございました。ただただ脱帽です。
224 名前:理科。 投稿日:2002年06月07日(金)20時30分18秒
…最後の場面がとってもいいですねぇ。
ほんわかと胸が温かくなりました。
姐さんがカッケ〜...あの言葉が素晴らしすぎです…。
お疲れさまでした。
225 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年06月11日(火)00時13分10秒
番外編、とてもよかったです。
なんかジーンときてしまいました。
完結お疲れ様です。
226 名前:婆金 投稿日:2002年06月13日(木)01時57分43秒
レス、ありがとうございました。

>名無し読者様
 最後まで読んで頂いて・・・(感涙)ありがとうです。
 石ヲタの私としては、名無し読者様のお言葉、天にも昇るほど嬉しいです。
 ・・・語彙が少なくてすみません、
 やっぱりありがとうの言葉しか出てきません。

>オガマー様
 本編が終わった頃にも読んで頂いていたんですか、ありがとうございます。
 ラストが良かった、とありがたいお言葉を頂けるのは[fin]の場所が
 良かったから?と思ってみたりしています。
 オガマー様、これからがんがって下さい!

>ごまべーぐる様
 もぅホント、バレバレですねぇ。『しろいうさぎとくろいうさぎ』です。
 私も友人にあげました(ケコーン祝いに)。
 今思えば姐さんプレゼント『キキララ』が良かったかな?と。
 少し悔やまれます。ごまべーぐるさま、これからも、がんがって下さい!

>よすこ大好き読者。様
 最後までありがとうございました。
 こんな駄作にお付き合い下さって・・・、よすこ大好き読者。様の
 キャパの広さに感謝です。
 1番初めの頃から、ホントにありがとうございます。

227 名前:婆金 投稿日:2002年06月13日(木)02時06分20秒
>夜叉様
 えぇっと。もう、お忘れになっているかも知れませんし、今更の話
 なのですが・・・。よろしくメカドックは氣志團でした。ワンワン
 しつこいくらい、言葉ではもう表せないくらい、ありがとうです。
 夜叉さん、マターリがんがって下さい。

>理科。様
 理科。様にレスを頂けるなんて・・・。嬉しすぎます!
 ホントに何で理科。様はあんなに面白くてホロリとさせられる作品が
 書けるのですか!?あ〜、ダメだ。理科。様を前に(?)すると
 いつものことですが、ろくなレスができません。すみません

>ぶらぅ様
 番外編、読んで頂いてありがとうです。
 本編の最初の頃から「ごっちんがいちーちゃんを選んだことに
 意味づけをしたいな〜。そして、いしかーさんの顛末を!」と
 思っていて・・・。それで、番外編を付けてみました。

読んで下さった方、本当にありがとうございました。

 

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