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LOVE GOES ON...
- 1 名前:ユウ 投稿日:2002年04月20日(土)02時56分08秒
- お初です。
矢口さんと中澤さんのラブラブっぷりがもう目にあまり
ついこんなものを書いてしまいました。
タイトルを見ればお気付きの方もいるかもしれませんが、
某市井さんと好きなアーティストが一緒です。
なので、この方たちの歌からインスパイアされたような話も出てくるかも・・・しれません。
- 2 名前:ユウ 投稿日:2002年04月20日(土)02時58分59秒
- 片想い
気が付くといつも視線で追ってる。
胸の奥が鷲掴みされたみたいに鈍くぎゅっと痛む。
恋の歌にあなたを重ねる。
知らずに涙がこぼれる。
助けてあげたいと思う。
傷つけたいと、思う。
夜、あなたを思う。
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- 3 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時00分14秒
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収録場所までみんなでぞろぞろ移動してたら、隣に裕ちゃんが並んだ。
視線を感じて見上げると、裕ちゃんがにこにこしてあたしを見ている。
「ん?なに?」
「いや、矢口はほんまちっこくてかわいらしいな〜と思って。」
頭をなでてくれる手が子供にするそれのようで、ちょっと悔しい。
なっ、何を言ってんだよーと、ふざけて裕ちゃんの背中をたたくと、
裕ちゃんは大げさに痛がってみせた。
そのあとまた、優しい顔でこう続けるんだ。
「大丈夫か?最近、しんどくないか?」
娘。を離れてもこうして気遣ってくれる彼女。
誰にでも優しいのだろうけど、たまにはこの優しさは自分にだけに
向けられてると勘違いでもいいから思いこみたい。
でも余計な心配はかけたくないから。
「うん、全然大丈夫だよ。」と笑ってみせる。
だって、裕ちゃんが矢口の笑顔が元気の元って言ってくれるから。
だからあたしはいくらでも笑うんだ。
裕ちゃんがあたしの側にいてくれる限り。
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- 4 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時00分59秒
- 「おはよー」
次々にメンバーが楽屋に顔を出してきた。
その度に読んでいた雑誌から顔を上げて無意識に今入ってきたメンバーを確認する。
それは、裕ちゃんが卒業してしまった今でも
変わらない習慣となって染みついてしまった悲しい条件反射。
声で誰が入ってきたかぐらいわかるのに。
ゆっくり閉まっていく扉の向こうに会いたいあの人の姿を思い浮かべて目を細めた。
ばかだなあたしは。
今日はハロモニの収録でもないし。
楽屋に入ってくるわけないじゃん。
この前あったのがもう2週間も前。
「大丈夫だよ。」
と本人の前で笑ってはみたものの、実は寂しくてどうしようもなくなる。
あの腕に抱きしめられたい。
もう、いつでも会える訳じゃないのに。
隣を見ればいつもいるわけじゃないのに。
裕ちゃんが卒業してしまってから何度も何度も思い知らされた。
この現実に心がまた沈みそうになる。
- 5 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時02分04秒
- いつの頃かやけに気になりだした。
簡単に抱きついてきて、簡単に「好き」って言って。
そして簡単にキスをしてくる、「あの人」のこと。
本人は自覚がないから余計にたちが悪い。
・・・矢口は、自分の気持ちに気付いてしまったんだよ。
自分ばかりどきどきしてしまうのが、悔しくてしゃくに障って、
だから彼女が娘。の楽屋に入ってきても前のように自分から抱きついたり
嬉しそうに声をかけそうになるのをぐっと我慢した。
側にいる誰かとの話に熱中したふりをしてね。
精一杯の強がり。
そのくせ「なんや〜、矢口かまってえーやー」と抱きついてきてくれることを
今か今かと心待ちにしてた。
たとえあなたが背後にいても、たとえ他の誰かにちょっかいをだしていても
あたしはいつもあなたの存在を全身全霊で感じていたんだ。
会いたいな。
- 6 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時04分00秒
- 「はぁ」
ため息をひとつついて、また雑誌に目をおとした。
横にいたよっすぃーがそんなあたしのため息に気付いて心配そうに視線を向ける。
はーだめだだめだ。
何か言いたそうにしているよっすぃーに笑顔を作って話しかけた。
勘がよくて優しい子だからね。
余計な心配はかけちゃいけない。
「ね、ね、この服、かわいくない?」
「えっ。あっほんとっすね、こーゆーの確かごっちん探してたなあ。おーい、ごっちーん」
突然笑顔に切り替わったあたしの反応に、とまどった表情をしながらもよっすぃーは
何も聞かずに話に乗ってきてくれる。
ほんとに君は優しい子だね。
メンバー内でもてるのも分かるよ。うんうん。
「なになに〜?」
ごっちんと一緒に石川も寄ってきてさらに賑やかになる。
「おいおい、このシャツはないだろー」
「うわっこのブーツたっかーい」
「きゃあ、このピンクのワンピースかわいい」
でも85年トリオのこの3人はいっつも楽しくてつられてこっちもけらけら笑ってしまう。
- 7 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時04分33秒
- 大丈夫。
あたしにはこんなに楽しいメンバーがいる。
大丈夫。
あたしはうまく笑えてるじゃない。
胸の奥の黒い固まりを見ないふりしてはしゃぐのにも、もう慣れてきた。
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- 8 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時05分22秒
- 「お〜い、おはよーさん」
4人できゃいきゃいやってると、ノックの音とともに勢いよく扉が開いた。
「あれっ、ゆーちゃん!?」
入ってきた人物を見てなっちがびっくりした声を上げる。
そりゃ、矢口だってびっくりしたさ。
だって、急に・・・。
「あっなかざーさんだ」
いち早く辻と加護が裕ちゃんに飛びつきにいった。
「うぉーい。あんたらおっもいわ〜。」
言葉と裏腹に嬉しそうな顔の裕ちゃん。
- 9 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時05分57秒
- 何で・・・。
ごっちんたちとけらけら笑い転げていた私は、このもやもやとした気持ちにさせる張本人、
突然の思い人の登場にそのままの笑顔で固まってしまった。
裕ちゃんだ。
裕ちゃんだ、本物だ。
「あれー裕ちゃん、どうしたのー?」
かおりも嬉しそうに裕ちゃんにここに来た理由を問う。
「あんな、あたしも今日隣で撮りやってん。
もう終わったんやけどな。あんたらがおるゆうから。」
加護を背中に辻を前抱きにして歩きづらそうにしてる裕ちゃん。
ううう〜、あいつらぁ、そんなくっつくなー。
とお子ちゃま二人にまで妬いてしまう私って・・・。
- 10 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時06分37秒
- でも。
今日は会えないと思ってたのに。
すっごい嬉しいよー。どうしよう。
早く。
早く。
裕ちゃん、早く矢口の所に来てよー。
さっきまでずうっと思っていた人がいきなり目の前に表れたから
嬉しすぎてでも何か変に意識して自分から近づけない。
早く。
早くこっち来てよ〜ゆうこぉ〜。
なのに裕ちゃんはそのままかおりと話し続けて、ようやく話が終わったと思ったら
辻加護に挟まれたまま今度はなっちにちょっかいを出したり、なかなか矢口のところまで来てくれない。
あーこらこら、なっち、そんな百万ドルのスマイルしちゃだめ。
無防備な笑顔に奴は弱いんだから。
セクハラおやぢになるでしょ。
うぁ、しまいには辻のやつ自分で歩くのやめて裕ちゃんにぶら下がり始めた。
「ぐえっ」と言いながらも振りほどこうとしない裕ちゃん。
加護、辻をつれて早く二人でネタ合わせでもやりなさい!
- 11 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時07分36秒
- 一人やきもきしている矢口の様子をよっすぃーが興味深そうに眺めている。
あっやば。
それにしても・・・。
むぅぅ。
何だよ。
いつもだったら「やぐちぃ(はあと)」って勢いで抱きついてくるのに。
んんんん、何か、また出てきた。
矢口の中のあの天の邪鬼の虫が。
こっちから話しかけるの悔しくなってきたぞ。
全然気にしてないよってオーラを出し雑誌に熱中するふりをした。
「矢口さん?・・。」
乱暴にページをめくる矢口に、よっすぃーはまた何か言いたそうな顔をしている。
ごめんねえ、よっすぃー。おいらこんな教育係で。
- 12 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時08分30秒
- 「ごっちん、よっさん、ついでに石川も元気か?」
頭の上で低くて柔らかな声が聞こえた。
私の動きをいやでも止めてしまう、その声。
反応したくなかったけど横目でちらっと声のする方を見てしまう。
横で「えー中澤さーん、何で石川は『ついで』なんですかー。」と
きんきんの声で抗議しているのはお約束のように笑いながら無視してる。
顔を上げた矢口と目が合うと、裕ちゃんはすっごく嬉しそうに、
そのグレーの目を細めくしゃっと笑った。
ああ、この笑顔だ。
この笑顔が見たかったんだ。と思う。
瞬間、私の心の中に甘くてそれでいてもどかしい想いがどっとあふれる。
- 13 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時09分52秒
- 「やぐちぃ〜〜〜〜、会いたかったでぇ」
裕ちゃんは座っている矢口に覆い被さるように思いっきり抱きついてきた。
バランスを崩したイスが傾く。
「うあっと。いたたたた、ゆーこ。痛いよーちょ、ちょっとぉ〜もう離れろぉおおお」
何だよ、今になってようやくかよ。
ずっと待ってたのに。
どーせ矢口は後回しなんでしょ?
矢口ばっかりがもやもやしてさ。
悔しいよ。
でも久しぶりに感じるその腕のぬくもりは、やっぱりとても心地よくて。
抱きしめられてすぐ横にあるきれいな横顔には、見慣れてるはずなのに今でも胸がどきどきする。
その間にも裕ちゃんは「は〜、久しぶりの矢口の感触はええなあ」って
ほっぺをすりすりしてくる。
- 14 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時10分37秒
- かぎなれた裕ちゃんの香りが矢口を包み込む。
もう、どきどきするからやめて。
裕ちゃんは何にも思わずにやっていることでも矢口にとっては
全部が嬉しくて、そしてその分だけ切なくなるものなんだよ。
あんまり好き好き言わないで。
その言葉にすがりつきたくなるじゃんか。
もしかしたら、って期待しちゃうじゃんか。
まったくアホ裕子め。
・・・だから私はあなたの事が好きなんだってば。
気付いてよ。・・・
いつまでこの気持ちを抱えこんでなきゃならないんだろう。
抱きしめられてるのに一気に切なくなってきた。
「ん?どしたん?」
ちょっと体を離して下から顔をのぞき込まれる。
「ここーに、二本縦線入ってんで」って眉間を指でなぞられる。
心配そうな顔。
真剣な顔するときれいだよねえ、裕ちゃん。
なんだか場違いなことを考えてる自分に気付いてはっとする。
- 15 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時11分08秒
- 分かってる。
大丈夫だよ、裕ちゃん。
そんな心配そうな顔しないで。
「だってぇ、痛いって言てんのに離してくれないから」
---好きなの---
本当のことを言ってあなたを困らせたりはしないから。
---あたしだけを見ていて----
今のままがきっと、一番あなたの側にいられるから。
---あたしだけのものにしたいの---
強くて黒い独占欲。
- 16 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時12分05秒
「もう、離してってばあ」
あたしだってこれぐらいの嘘をつけるまでは強くなったんだ。
裕ちゃんはちょっと、不満そうな顔しながらも
「だって、しゃーないやん。裕ちゃん矢口に会えて嬉しいねんもん。
でもごめんな、痛くして、どこや?ここか?」って矢口の腕を優しくさすってくれる。
かなわないなあ。この人には。
嘘だよ。
そんなに痛くなんかなかったよ。
でも、さすってくれるその手が心地良いから黙っていよう。
腕をさすりながらも裕ちゃんはイスをがたがたと移動させて、矢口とよっすぃーの間に座り込んだ。
よっすぃーはなんだかちょっとほっとしたような顔で矢口たちを見ていた。
やれやれ。これじゃ立場が逆転だよ。
- 17 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時13分34秒
- 「やぐちぃ、この前ありがとうなあ」
急に真顔で言われる。
ん?
この前って?何だ?
矢口、何かしたっけ・・・。
って不思議そうな顔をしていると、裕ちゃんは矢口のことをまっすぐに見て、
「ん、この前、うたばんで裕ちゃんのことかばってくれたやろ?
『今だって頑張ってますー』って。
裕ちゃんそんとき見ててな。もうな、めっちゃ嬉しかったぁ。」
柔らかくそれでいてちょっと照れくさそうに笑う。
あっ。
あの時だ。
うたばんのスペシャルで中居さんがふざけて裕ちゃんのことを
「中澤がクビになって・・・云々」って言ったとき。
すかさず抗議の声をあげたのはなっちと、そしてあたし。
「そーゆーこと言わないで下さいよー。」ってなっちの声にかぶさるように
「裕ちゃん、今も頑張ってます、すっごい頑張ってます」って。
ついつい本気で反論しちゃったんだ。
- 18 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時14分16秒
- なんか、中居さんを悪者にしちゃったみたいで、後でけいちゃんにも苦笑されちゃったけど。
だめなんだよなー。
裕ちゃんのことになると。
たとえ冗談って分かっていても、ついむきになっちゃう自分がいるんだ。
でもまさか、あれを見ていたとは。
「何かなー、離れてても矢口の愛を感じたわ。」
ちゃかすような口調。
「もう大好き、やぐち。」
甘えるような口調。
ちゅっ。
裕ちゃんは矢口を抱きしめて頬に軽くキスをする。
「あっこら、何すんだよ。」
裕ちゃん。
矢口がいつも天の邪鬼な反応しちゃうのはね。
一度素直になったら、自分の気持ちを止められないからだよ。
- 19 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時15分31秒
- 裕ちゃんの両腕は矢口の肩にかかったまま。
真正面からグレーの瞳に見つめられる。
ちょっとぉー、この状態どきどきして心臓に悪い。
目、合わせられないよ。
それなのに裕ちゃんは気にせずに嬉しそうな顔。
・・・はぁ。
もうだめだ。
神様。もう無理です。
矢口はこれ以上我慢なんてできません。
そんな潤んだ瞳で、(きっと裕ちゃんは潤ませてるつもりは毛頭ないと思うけど)
そんな優しそうな顔で見つめられたら、この気持ちを抑えられないよ。
- 20 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)03時16分48秒
- 体中に「好き」って言葉があふれ出して、今にもこぼれてきそう。
今何かしゃべれと言われたら、愛の言葉しか出てこない。
好きで好きで好きで好きで、どうしようもない。
・・・どうしよう。
言っちゃいたい。
この気持ちを言ってしまいたい。
がたん。
勢いよく立ち上がったら、理性が壊れる音のように派手な音をたててイスが倒れた。
「どしたん?」って顔して矢口を見上げる裕ちゃん。
もうこうなったら言ってしまおう。
「あ、あのさ裕ちゃん。あ、あの、今日、裕ちゃんち・・・」
- 21 名前:ユウ 投稿日:2002年04月20日(土)03時18分53秒
- とりあえず、今日の更新はここまでです。
ネタが古くてすみません。
年末の『とくばん』を見て思ったんです。
しかも地味なポイントなので、気付いた人は少ないのかも・・・。
割とマジに中居君に抗議する矢口さんが、私的にはとてもツボだったもので。
- 22 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月20日(土)12時46分14秒
- ツボにクリーンヒットでした(w
やぐちゅー第一なんで、これからもレスします。
がんばってください。
- 23 名前:ユウ 投稿日:2002年04月20日(土)18時21分57秒
- ありがとうございまっす。
クリーンヒットしていただけて嬉しいです。
頑張りまっす。
では、更新です。
- 24 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)18時22分39秒
「すいませーんモーニング娘。さん。お願いしまーす。」
まるで一部始終を見ていたかのように ジャストなタイミングで呼びに来る声。
タイムリミット。
呼ばれちゃった。お仕事の時間です。
はあ、矢口の決死の覚悟はいきなりくじかれちゃったよ。
裕ちゃんはきょとんとあたしを見ていたけど、
「ん、はよ行き?続きは今度聞くから。」
とふわっと笑って、立ち上がってるあたしの腕をぽんぽんと二回たたいた。
- 25 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)18時23分24秒
- 一通りの収録が終わってそのまま休む間もなく、取材先へと向かう。
テレビ情報誌の表紙撮影。
おきまりのレモンを持たされて、全員そろってのスチール撮影が始まる。
笑顔はもう無意識にでも出てくるようになった。
何度も響くシャッター音の中、さっきの自分の行動をぼんやり考えてしまう。
裕ちゃんに見つめられて、勢いで告白しそうになってしまったこと。
このままの状態で矢口はいいのか?
裕ちゃんは絶対にこの気持ちに気付いてない。
言わなければ今のまま、側にはいられる。
- 26 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)18時24分03秒
- でも・・・。
やっぱりだめだ、もう言おう。
これ以上我慢したら矢口がおかしくなっちゃう。
ダメでもともとだ。
もしかしたら、万に一つの可能性だってないわけじゃないかもしれないし。
小さな小さな希望で勇気を奮い起こす。
裕ちゃんだっていっつも矢口のことを構ってくるし。
「好き好き」言ってくるじゃん。
そうだ。
そうだよねえ。
もしかしたらさあ。
もしかしたら、うまく・・・。
- 27 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)18時24分53秒
「・・・ん。きれいになったよね。」
後ろにいたかおりの言葉で思考が中断される。
その間にもシャッターは途切れることなく切られてる。
「へっ?」
「だからぁ、裕ちゃん。きれいになったよね最近すっごく。」
「ああ、そうだねー。」
って、いつだってあたしにはきれいに見えるけど。
「やっぱり恋をすると、女は変わるのかぁ。」
えっ!?
待って、今何て言った。
「えっ・・・なに?どゆこと・・・?」
思わず後ろを振り返ってかおりを見てしまう。
かおりは、ちょっと矢口ぃ、前見てって言いながらもこう続けた。
「知らないの?裕ちゃん最近彼氏が出来たらしいよ。」
目の前でフラッシュが白く光った。
- 28 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)18時25分54秒
- かおりの話によると、この前収録が一緒だったとき、
廊下で携帯で話している裕ちゃんの会話を偶然聞いてしまったらしい。
「うん、今日ははよ帰るから。
うん。だから先に部屋で待ってて。」って。
その時の裕ちゃんの顔がすっごく幸せそうで、とろけそうな顔をしていた、
ともかおりは言った。
その日の取材の事はほとんど覚えていない。
でもきっと、あたしはうまく、いつもどおりに、笑えていたのだろう。
だってこれがあたしのお仕事だから。
願っていた場所だから。
夢よりも大切なものがあるなんて思わないよ。
ダカラ、ダイジョウブ。
- 29 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)18時26分41秒
- 「はふ〜」
湯船につかりながら、今日の出来事を思い返した。
あたしが悩み事や考え事にじっくり向き合う場所は決まっていつもお風呂。
そして泣き場所も。
なぜだかこの場所がゆっくり自分を見つめ直せる気がするから。
「やっぱり恋をすると、女は変わるのかぁ。」
耳をふさいでも、頭の中で同じフレーズがぐるぐる回る。
さっきのかおりの言葉が耳から離れない。
----裕ちゃんに恋人。----
誰だろう。
ドラマの人かな。
いや、もしかしたら芸能界とは全然関係ない人かもしれない。
卒業してからの裕ちゃんは精力的に色んなことにチャレンジしていて、
当然その分色んな人に会うわけだし。
もう、前みたいに裕ちゃんの知っている人は矢口も知り合い。
なんてことはないんだよね。
どんどん遠い所にいっちゃうね、裕ちゃん。
胸の奥が素手でつかまれたみたいに鈍く痛んだ。
- 30 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)18時27分14秒
- 裕ちゃんには恋人がいる。
あたしがこうして裕ちゃんのことを思っているように、
裕ちゃんもまたその人のことを思っているんだね。
あたしが裕ちゃんを思って眠れない夜を過ごしたように、
裕ちゃんもその人を思って眠れない夜を過ごしたりしたの?
その人を思って、涙を流したりするの?
その人に「好き」ってささやくの?
その人にあの笑顔を見せるの?
その人に甘えてみせるの?
その人に、その体を触れさせるの?
- 31 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)18時28分29秒
- 頭が割れそうに痛くて、いつのまに歯をくいしばっていた。
どうしていいか分からなくて頭から思いっきり湯船にもぐった。
強く思えば夢は叶う。
娘。に入れた時そう思った。
努力すれば報われるんだって。
でもそんなのは、嘘だった。
どんなに願っても、手に入らないものがあるってこと、
初めて知った。
絶対に手に入らないものがあるってことを。
どんなにあがいたって、裕ちゃんの心はあたし以外の誰かのもの。
- 32 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)18時29分05秒
裕ちゃん。
苦しいよ。
胸が苦しいよ。
- 33 名前:片想い 投稿日:2002年04月20日(土)18時29分40秒
不思議と涙は出なかった。
だってまだ私は一言も「好き」だって伝えてない。
それだけが救い。
私さえ我慢すれば、この気持ちを抑えれば今までどおりの関係でいられる。
せめて、友達でも。
仲間としてでも。
裕ちゃんの側にいられる。
あの腕に抱きしめてもらえる。
- 34 名前:ユウ 投稿日:2002年04月20日(土)18時42分38秒
- とりあえず、本日更新分です。
はー、片想いって切ない。(って、誰にいってんだか・・・)
- 35 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月21日(日)00時36分39秒
- あー、やぐちゅー見つけた。
嬉しいよー。
そうそう、ヤグチって、時々切ない顔してる時ありますよね。
裕ちゃんの話が出た時とか、思い出話の時とか・・・。
「裕ちゃんいなくて、淋しいんだろうな」って、いつも勝手な想像しちゃうんです。
この小説、結構はまりそう。
これからの展開に、非常に期待します。
- 36 名前:夢 投稿日:2002年04月21日(日)01時05分40秒
- 35さんに激しく同意。
思い出話の時の矢口の表情には、そう思わずにはいられないです。
なんかそれだけで姐さんの存在の大きさが染みてきたりとかしていいです。
ちなみにわたしは前にレスしたものだったりです。
- 37 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月22日(月)02時10分46秒
- やぐちゅー発見〜♪
姐さん彼氏出来てよかったね〜♪
最終的にはやぐちゅーなんだろうけど(w
今日のANNssでも矢口の事考えて美容室でシャンプーし、
終ってみたら目の前に本物の矢口が姐さんのほっぺをさわりながらいたそうな(w
- 38 名前:ユウ 投稿日:2002年04月22日(月)10時42分47秒
- おはようございます。
レスありがとうございます。
はまっていただければ、幸いです。
ご期待に添えられれば良いのですが・・・。
切ない矢口さん。
でもつっぱる矢口さん。
大人な中澤さん。
なるたけ、もしかしたらこんなのあるかも、
って感じで書いていきたいと思っています。
そうそう、ラジオで言ってましたねー。
中澤さん、
「あたしほんとに好きなんだなあと思った」って前置きして
始めた矢口さんの話。
もうかわいいぞー、この二人。
では、更新です。
- 39 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)10時44分15秒
ガシャッ
冷蔵庫の中から買い置きしてあるお茶のペットボトルを取り出す。
コップに注がずそのまま口をつけて流し込むと、
のぼせ気味の体に冷えた液体が気持ちよく染み込んでいった。
「ぷは〜、うっまい。」
裕ちゃんもお風呂上がりにビールをこうして飲んでるのかな、と想像して
一人冷蔵庫の前で含み笑いをかみ殺してしまう。
でも同時に、誰かと一緒に飲んでるところまで浮かんでしまい、
あわてて嫌な想像を頭をふって追い出した。
「ポジティブポジティブ」
娘。の誰かさんのようについ口に出して言ってしまう。
口に出すほど説得力がなくなるんだぞって自分でつっこんでたくせに。
- 40 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)10時45分27秒
今度はきちんとコップに注いだお茶を持って自分の部屋に戻った。
夜中だからあんまり音を立てないように、タンスからごそごそと段ボールを引っぱり出し
昔のビデオを探す。
矢口が娘。に入れてから、お父さんが毎回嬉しそうに録画し続けてくれていたもの。
デビュー当初はどきどきしながらもよく見ていたけど、また見直すのは本当に久しぶり。
それにしても、どうして昔の自分を見るとこんなに恥ずかしいんだろう。
「うあ、笑顔ぎこちなっ・・・」
まだ黒い髪の自分がカメラの前で必死に笑顔を作ってる。
やっぱり見ていられずそこだけ早送りして、目当ての人が出るとようやく再生させた。
画面では裕ちゃんが年齢をネタに歌番組でいじられている。
ぷぷ、ムキになって反論してる。かぁいい。
でもこんときはまだ裕ちゃんのことびびってたんだよな・・・。
- 41 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)10時46分29秒
「怖い。」
とにかくこの一言。
人見知りはほとんどしない矢口でもあれだけびびっていたんだから
圭ちゃんや紗耶香はそれこそ大変だっただろう。
しょっちゅう怒られてた。
歌番組での話し方。
目上の人との接し方。
挨拶。
その他もろもろ・・・。
それまで学校でも家でもそんなに怒られることなんてなかった矢口の
今までの人生の中で一番怒られていた時期だったと思う。
随分と泣かされたなー。
ま、それは今もか・・・。と、ちょっと笑う。
- 42 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)10時47分58秒
「ほんっと怖かったよね〜。」
画面の中で無邪気に笑ってる、元・リーダーを見てしみじみ言葉が出てくる。
いつからだろう。
裕ちゃんを「怖い」と思わなくなったのは。
むしろ、側にいるとかまいたくて仕方がなくなってしまったのは。
いっつも裕ちゃんの気持ちを引きたくて、ちょっかいを出してたんだよね。
ちらちら変わる画面をぼーっと見ながら、自分が出ると恥ずかしいから早送りして
でも裕ちゃんが映ると再生させて、ってことを繰り返してた。
・・・裕ちゃん、・・かわいい。
テープを替えて見ていると、今度は罰ゲームのガス噴射を受けて
半泣きで矢口に抱きついてくる裕ちゃんが映ってた。
はあ・・・この時はまだ矢口だけの裕ちゃんだったのに。
テレビだろうが何だろうが所構わず抱きついてくるようになったのは、
いつだったけかな・・・。
- 43 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)10時48分56秒
画面の中の矢口は楽しそうに裕ちゃんと笑ってた。
あんたねー、今この状況知らないでしょ。
だから笑ってられるんだからね。
いつまでも自分の側にいると思って安心してちゃダメだよ。
いつでもどこでも、毎日必ず会えることに油断して慢心していた、
ふがいない過去の自分に心の中で悪態をつく。
離れる時がくるなんて、あの頃思いもしなかった。
何本目かのテープで、ふとなぜか自分が映ってるのに早送りを止めて再生した。
そこには一瞬だけど、裕ちゃんの方を見て、切なそうな顔をしている
今とおんなじの矢口が映ってた。
ああ、ごめんね。昔のあたし。
ふがいないのは今のあたしもおんなじだよ。
裕ちゃんの心がどっかいっちゃった。
どうやったって、裕ちゃんの中ではただの「かわいいアタシの矢口」にしかなれないんだね。
そのニュアンスじゃほんとただのペットだよ。
特別・・・にはなれないのかな、もう。
「あたしの裕ちゃん」にはなってくれないのかな。
落ち込んでビデオの電源を切った。
- 44 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)10時54分08秒
急速に裕ちゃんを意識しだしてしまったきっかけがある。
それはツアー先でのこと。
ライブが終わって明日はもう帰るだけって日のホテルで。
夕食の時、事務所の人と一緒に裕ちゃんも成功したライブにビールで乾杯してた。
そのときからすでに「矢口、大好き」と公言していた裕ちゃん。
矢口のことを自分のすぐ横において、にこにこしながらお酒を飲んでた。
時々思い出したように矢口の頭をなでたり、抱きついてきたり。
トイレ行くにも「矢口と一緒じゃなきゃ行かない」って駄々こねてみたり。
そんな裕ちゃんを、お酒が入ると甘えたになるんだなあって、矢口はぼんやり見てた。
それまでだって、酔ったところは見ていたのに。
何でだろう、酔うほどにかわいくなっていく裕ちゃんが今まで見たことのない表情に見えて
ちょっとどきどきしたのを覚えてる。
なんか初めてリーダーの顔じゃない裕ちゃんを見た気がして新鮮だった。
周りがみんな楽しそうにしている中、飲めない矢口は最初は正直退屈だったんだけど、
そんなかわいい裕ちゃんを見ていたくてずっと隣にいたんだった。
- 45 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)10時55分42秒
「矢口ぃ。裕ちゃん、眠い・・・。」
宴もたけなわな中、裕ちゃんのその言葉で、その場で唯一しらふの矢口が
裕ちゃんを部屋まで連れていく係に任命された。
「ふふ〜ん、やぐちぃ。か〜わい〜。」
ってエレベーターの中でも矢口に抱きつきっぱなしの裕ちゃん。
小さい矢口はよろよろ裕ちゃんを抱えて部屋まで行くのがなんて大変だったことか。
「ほら、裕ちゃんついたよ。」
ベッドにそのまま裕ちゃんを転がす。
「着替えないと寝苦しいよ。」
でも裕ちゃんは
「う〜ん。・・・も・・・ええや・・ん・・・。」
ってそのまま寝ようとする。
「こら、ダメだよ。それにメイクも落としてないでしょ。」
寝そうになる裕ちゃんの体をゆさゆさゆ揺らした。
- 46 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)10時56分31秒
裕ちゃんはだるそうに薄目を開けて、それからにやりと笑うと。
「そしたら、矢口が一緒に寝てくれたらちゃんとする。」
!!
まったく、何を言うかと思ったら。
「な、なに言ってんのー。や、ですぅーそんなの。」
「あっそーゆーことゆうんや、矢口は。
もう裕ちゃん、むっちゃ落ち込んだわ〜。」
「あほっ、早く寝れ!」
「あ〜ん、やぐちぃ、一緒に寝〜て〜よぉ〜。」
ごねてるし、この人・・・・。
- 47 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)10時57分41秒
しばらくそんな言い合いをしていたけど、寝てる子と酔った裕子にはまったくかなわない。
矢口は酔ってとたんに聞き分けの悪くなった裕ちゃんと一緒に寝ることになってしまった。
さっきまでの足のふらつきはどこにいったのか、嬉しそうに着替えて顔を洗う裕ちゃん。
でも、ベッドに入るとやっぱり眠かったのかすぐに寝息をたてはじめた。
矢口の体は裕ちゃんに抱きしめられたまま。
抱き枕じゃないっつーの。
でも、すやすや穏やかに眠るその顔を見ながら眠ることが、
意外と安眠できることに矢口も気付いた。
きゅっとしがみついている腕の重さも気にならなかった。
朝、目が覚めるとどアップで裕ちゃんの顔。
起こすのをためらうほど幸せそうな寝顔。
ゆっくりと規則的な呼吸が繰り返される。
家族以外の人間の、こんな無防備な寝顔をこんな至近距離で見ることがあるなんて。
初めての経験だった。
子供みたいな顔で眠るんだなあ、としばらく観察してたらとたんに
矢口の心臓が主張し始めたんだ。
- 48 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)10時58分25秒
その日の朝、目覚めた裕ちゃんの第一声
「何で矢口がおるん?」
言われると思ったよ。
こんにゃろう。
昨夜のことを説明すると
「なんや、矢口と添い寝したん?裕ちゃんラッキー。」
って。
このときから嫌な予感はしていたんだ。
好きになったら苦労するだろうなって・・・。
予感的中。
あーあー、やっかいな恋だな・・・。
裕ちゃんをこんなにも好きになってしまうなんて、ね。
ひとりごちてお茶をのどに流し込む。
- 49 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)10時59分26秒
もちろん、最初は自分の気持ちを疑った。
まさか、メンバーを好きになるなんて。
それ以上に自分が同性を好きになったってことを認められなかった。
確かに世の中にはそういう恋愛もあるだろうけど、自分が実際に女の人を好きになるなんて。
何度も、これはメンバー愛だって自分で自分を納得させようとした。
でも、冗談でも「矢口ぃ。大好き。」って言われると嬉しくて。
その反面、どうせ冗談なんだよねって、後で必ず落ち込む自分がいて。
気が付くといつも目で追っていた。
裕ちゃんが他のメンバーと仲良く話してるだけで嫉妬した。
テレビでもどこでも、すぐに裕ちゃんにちょっかい出してる自分が、好きな子に素直になれずに
いじめてしまう小学生の男の子みたいだなって自分でも思ってしまった。
「矢口、かわいい!」とか
「矢口はあたしのもんですから」とか
そんな言葉の一つ一つが見えない呪縛となってあたしの心をゆっくりと縛り付けていった。
- 50 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)11時00分06秒
挨拶がわりのキス。
抱きしめてくれるその腕。
首筋から漂う香水の香り。
幼い寝顔。
怒るほどきれいになる横顔。
俯いた泣き顔。
ちょっと意地悪そうな目。
ライブ前、いまでも震える指。
そして、
あたしの心を離さないあの笑顔。
- 51 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)11時02分01秒
どれもこれも愛しくて。
いつもしっかりしている裕ちゃんが初めてあたしに弱音を吐いてくれたとき、
守ってあげたいって思ったんだ。
寂しく笑ったその顔をもう曇らせたくないって思ったんだ。
一つ一つ数え上げていけばきりがないほど、
この気持ちはまっすぐに一つの方向を指していた。
もう、疑いようもないほどに。
「ああ、あたしは裕ちゃんが好きなんだ」って気付いてしまった。
そして気付いてしまったあたしは、前よりずっとつらくなってしまったんだ。
手に入れたいと願う心と。
そんなことは不可能なんだと何度もうち消さなきゃいけない心。
もし告白して断られたら?
普通の男女間の恋愛でも気まずいのに。
今、矢口はあのぬくもりを手放すことなんて出来ないよ。
- 52 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)11時03分09秒
どうせ今日は眠れないんだからと、腹をくくって起きていることにした。
大きめの紙を取り出して、今思い付いたことを書き込む。
『裕ちゃんの好きなところ・嫌いなところ』
- 53 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)11時04分21秒
好きなところ
・矢口に好きって言ってくれる
・いつでも抱きしめてくれる
・頑張るとかならず誉めてくれる
・目を細めて笑う顔
・丸い鼻って言っても怒らない
・意地悪言っても怒らない
・でもきちんと怒って欲しいときは怒ってくれる
・でも、でも、それでも優しい
・つっこみが早い
・矢口に弱い部分を見せてくれる
・裕ちゃんのにおい
・真剣な時の顔
・仕事に一生懸命
・嘘を付かない
・大人なところ
・ちょっと低く鼻にかかった声
・お酒を飲むと甘えたになる
・優しいキス
・全部
結局全部か、なんじゃそりゃ。
と自分でつっこみつつ次。
- 54 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)11時05分02秒
嫌いなところ
・好き嫌いが多い
・かわいい女の子が好き
・誰にでもスキンシップで抱きつく
・誰にでも優しい
・簡単に好きって言う
・簡単にキスをしてくる
・矢口の気持ちに気付かない
・鈍感
・大人のふりをする
・今、矢口の側にいない
- 55 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)11時05分49秒
・・・嫌い。
嫌いだよ、裕ちゃんなんて。
裕ちゃんなんて、大嫌いだ。
そう思えたら、どんなに楽だろう。
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- 56 名前:ユウ 投稿日:2002年04月22日(月)11時07分21秒
- えっと、本日更新分です。
今日の夕方、更新できるようであればまたしたいと思いますが・・・。
- 57 名前:名無し愛読者 投稿日:2002年04月22日(月)11時14分31秒
- ライアルタイムで読んじゃった(w
夕方の更新お待ちしております。
矢口の片思いかわいい。
- 58 名前:ユウ 投稿日:2002年04月22日(月)19時43分00秒
- 矢口さんにはとことん片想いのつらさを味わってもらいたいのです。
人間それで強くなるのです。大きくなるのです。
ってことで、更新です。
今回は1話だけ。
次は、あんまり矢口さんをいじめてもなんなので予定を変更して、
途中から中澤さん視点のものを入れてみようと思いました。
うまくつながるか、ちと心配ですが・・・。
- 59 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)19時44分47秒
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「今、ドラマの空き時間中!暇やー。でもめっちゃ緊張する〜。矢口は今何してんの?」
取材が終わって携帯をチェックしたら、裕ちゃんからメールが来てた。
裕ちゃんから送ってくれるなんて、珍しい。
いつもは矢口から「今移動中。」とか、「志村さん、最高!」とか。
それこそたいして用事がなくても毎日のように送っていて、裕ちゃんはそれに
2回に1回ぐらいの割合でしか返事を返してくれなかったのに。
ここ最近あたしからメールを送ってなかったからかな。
「裕ちゃんに彼氏」
このことがずっと心にわだかまっていて、メールも送れなくなってしまっていたんだ。
- 60 名前:片想い 投稿日:2002年04月22日(月)19時45分46秒
でも、今日は裕ちゃんからメールがきた。
ただそれだけのことで、矢口の心はぐんっと軽くなる。
よしよし、早速返事を返しておこう。
「さぼってるなよーゆうこー。台詞は覚えたのかー?
矢口は今、取材が一本終わったところだよ。
今日はこれで終わり。なっちたちとご飯でも食べて帰ります。
裕ちゃんは何時まで撮影なの?早く終わったらおいでよ。
って、それは無理かな?頑張ってね。楽しみにしてるから。」
送信。と。
この文章量の違いだけでも、気持ちの大きさが違うような気もする・・・。
はあ。
そしてまた、ため息ひとつ。
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- 61 名前:ユウ 投稿日:2002年04月22日(月)19時49分06秒
- すいません。
ほんっと微妙な更新・・・。
あした・・・更新できれば、いいなあ・・・。
- 62 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月23日(火)17時15分02秒
- お待ちしてます。(w
- 63 名前:ユウ 投稿日:2002年04月24日(水)02時05分25秒
- 中澤さん視点はやっぱりもうちょっと後にします。
なんかうまいこと書けなかったので。すみません。
で、今回もやっぱり矢口さんです。
どかっと更新です。
- 64 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時06分39秒
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あれから1週間がたった。
かおりから衝撃のニュースを聞いてからの長い1週間。
いつも通りにしているつもりだけどやっぱりどこか元気のないあたしをみんなが心配してくれる。
よっすぃーはしゅっちゅう気にかけてくれてるので、今日休憩中、石川に耳をひっぱられて
どこかに連れていかれてた。
「イタイイタイイタイイタイタタタタ。」
訴える声が悲しく廊下に消えていく。
ごめんよ、かわいい妹よ。
矢口は、なっちのことも気にかかっていた。
裕ちゃんと話しているときのなっち。
裕ちゃんを見つめるその目が時折、矢口の目とおんなじような気がしたから。
もしかしたら、なっちもって・・・。
でも、今のなっちからは矢口を気遣うような空気しか感じない。
矢口は意外ななっちの強さを知った。
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- 65 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時07分39秒
「大丈夫なの?」
「大丈夫って何が?」
一人一人の撮影の合間に圭ちゃんが話しかけてきた。
何がってあんたねえ・・。と苦笑して矢口の横に座る圭ちゃん。
やっぱりばれてるってことだよね。心配かけてごめん。
「ん〜、・・・でも、まっ、これはしゃーないっしょ。」
「そうは想ってないくせに。
矢口はいつもそうやって強がる。」
わざと笑いながら言った言葉は勘のいい同期にあっさり見破られた。
圭ちゃんの手がもどかしそうに矢口の膝をたたく。
いたた。けっこう痛いよ圭ちゃん。
- 66 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時08分41秒
- 「あたし今から独り言、いおーっと。」
へっ?どしたの圭ちゃん。
圭ちゃんはまっすぐ前を見て、はーと長い息を吐いた。
「ほんとはね、ずっと後悔してた。
毎日一緒にいたし。約束なんてしなくても次の日には会えるのが当たり前だった。
離れる時がくるなんて、思いもしなかった。
だから、自分の気持ちに気付くのが遅かったのかな。
・・・言っときゃあよかったな〜。
ちゃんと伝えておけば良かった。
そしたら、もうちょっとふっきれてたかも。」
圭ちゃん・・・。
圭ちゃん、泣かないでよ。
ちょっと涙目になりかけてる圭ちゃんの手をきゅっと握った。
- 67 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時09分36秒
- 「はは、何だよー矢口。あたしの独り言だっつーの。」
「・・・ありがと。」
「別にさ・・・。矢口。おかしいことじゃないよ。
その・・・ね、ほら。
・・・矢口が誰を好きになってもさ、あたしは応援するから。
それよりも、あたしは矢口に後悔してほしくないよ。」
「・・・ん。ありがと。
でも。も、矢口も遅かったかも・・・。」
圭ちゃんはその大きな目を悲しそうに曇らした。
ごめんね。
せっかく元気づけてくれてるのに。
「矢口。私はたとえ今恋人が出来たとしても、
みんなに対する愛情は変わらないよ。
私たちはお互いさ、誰よりも近い場所にいるんだよ。
私にとっては矢口も、・・・裕ちゃんも一番大事な存在。
だって家族よりも誰よりも、なっがい密度の濃い時間を過ごしてきたんだよ。
・・・だから、大丈夫。
大切なものは何も変わらないから。
・・・ま、私の例えじゃ意味ないか〜。」
- 68 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時10分11秒
ありがとう、圭ちゃん。
ありがとう。
圭ちゃんは、裕ちゃんに彼氏が出来たって私たち娘。の絆は変わらないと言いたかったんだよね。
あたしにも分かるよ。
分かってるんだけど。
友達なら、ましてやあたしたちのような、ある意味特殊な環境で繋がっている仲間であれば、
一生分かれることはないんだろう。
恋人とは別れることはあっても仲間なら、あたしたちならきっと一生付き合っていられる。
でもそれはあくまでも、仲間として・・・。
矢口が望んでいるのは、なに?
- 69 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時10分57秒
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収録の後いつものように携帯をチェックするとY君からメールがきてた。
「今日、夕飯食べない?」
Y君とは何年か前からよく歌番組とかで一緒になって、
まだ裕ちゃんへの想いに気付いてない頃、かっこいい彼にきゃーきゃー言ってた。
ううん、ほんとは裕ちゃんへの想いに気付いていたのかも。
気付いていて、でもそれを認めるのが怖くて、ちょっとタイプだった彼に
自分の気持ちがいくようにしていたのかもしれない。
幸か不幸か、その頃の努力が実ってあたしたちは時々こうしてメールのやりとりをし、
時間が合えば一緒にごはんを食べに行ったりもする。
もうとっくに裕ちゃんへの気持ちに気付いてしまっているので、あくまでもそれは「友達」としてだけど。
- 70 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時11分29秒
彼の携帯を教えてもらえたとき、たしか裕ちゃんにもひやかされたなあ。
「なーんや矢口。良かったなあ。でもデートするなら気ぃつけえよ。」
って。
あのときは裕ちゃんに話したらどんな反応がくるかと思って、彼のことを話したんだ。
無意識でも、もしかしたら妬いてくれることを期待していたんだろうなあたしは。
でも、裕ちゃんは妬くどころか良かったねっなんて、こともなげに言ってくれちゃって。
嬉しいはずの報告が胸の痛みに変わったのを覚えてる。
あのときはどうしてこんなに胸が痛いんだろうって、原因が分からなかったけど。
分からなくて良かった。
どうしてこんなに苦しいのか。
分からなくて良かったのに・・・。
あの頃から何も変わってないじゃん。
そうだよ、裕ちゃんは昔から矢口のことなんか何とも思ってないんだ。
そんなことさえ思い出してまた落ちこんでしまう。
メールがきたと言っては喜んで。
些細な出来事でまた落ち込む。
今のあたしの喜怒哀楽全てを握っているんだなあ、裕ちゃんは。
自分の想いの強さに改めてとまどった。
- 71 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時12分10秒
誰かに話せば少しはすっきりするかもしれない。
今ではすっかりいい相談相手となってしまった気のいい男友達にメールの返事を送った。
「いいよ。8時にはあがれると思うから。どこに行く?」
すぐに彼からの返事。
「今日車だから迎えに行くよ。どこにいるの?」
とりあえず、会ってから食べるところを決めようということになり、
今いる場所だけメールで送った。
- 72 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時12分59秒
「よっ!」
「いよっ!」
収録が終わって、彼の車に乗り込む。
最近どうよ?なんて当たり障りのない会話から始まって、いつも通りの
馬鹿話をしながら、結局いつも行ってる無国籍の料理屋に向かうことにした。
「なんかどした?元気ないなあ、矢口。」
苦手なパクチーをせっせとよけていると、ふいに彼が言った。
どき。
勘のいい奴だなーもう。
パクチーをよける手が止まる。
「なんかあったか?」
まあ言いたくなかったらいいけど・・・。とつぶやきながら、
よけてあったパクチーだけのってる皿を自分の方に引き寄せる。
いつもこうして決して押しつけるようではなく、
自然に矢口の心の負担を取り除いてくれようとするんだよね。
どうして矢口の周りには勘の良くて優しい人が多いのだろう。
よっすぃーといい、圭ちゃんといい、この彼といい。
甘えてしまいたくなっちゃうよ。
- 73 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時13分41秒
- ある程度事情を知っている彼にこの前のことをぽつりぽつりと話し出した。
娘。内ではなかなか相談できないことも、彼にだったら話しやすい。
これまでにもお互いのことを相談しあって、矢口にとってはよき相談相手のお兄ちゃんのような彼。
彼は矢口に好きな人がいることも、もちろん知っている。
その相手がまさか、同性とは、しかも娘。の元リーダーとは思ってもみないだろうけど。
相手の名前とか、まあ色々都合が悪いことは避けて、今までも相談してきたから。
だから今回も、
「矢口の好きな人に恋人が出来てしまった。」
「毎日がつらくてつらくて仕方がない。」
「今までは告白してこの関係が壊れてしまうのが怖かったけど、
でも今となっては告白することさえ、無意味になってしまった。」
「もうどうしていいか分からない。」
彼に言葉を挟む余裕を与えず、一気に話しきった。
- 74 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時14分14秒
- 話しながら目に涙がたまってきた。
一人でお風呂場では泣けなかったのに。
誰かに聞いてもらえて安心したのかも。
ずっと我慢してたから。
こんなにも泣きたかったんだ、矢口は。
涙が指にこぼれ落ちた。
「へへ、ごめん。泣いちった。」
顔を上げると、それこそ彼の方が泣きそうな顔をして矢口を見ていた。
どうして。
どうしてそんなにつらそうな顔をしているの?
ああ、もしかして・・・。
ごめん、今気付いたよ。
「・・・・。矢口。
無理すんなよ。何で無理して笑うんだよ。」
矢口は、何も言えない。
「俺だったら・・・。」
こんな時に言うのはフェアじゃないかもしれないけど。
そう前置きして彼は続ける。
聞きたくないような、でも聞かなければいけないような。
強い視線から目をそらせない。
- 75 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時15分00秒
- 「俺、矢口のこと好きだから。」
ずーっと、矢口のこと見ていてくれたんだね。
「俺だったら、絶対に悲しませないから。」
そうか。この人も矢口と同じだったんだ。
矢口が好きな人のこと、裕ちゃんのことを嬉しそうに話すのを聞いて
ずっと傷ついていたんだ。
あたしが弱気になると、いつも慰めて、励ましてくれた。
絶対に大丈夫だからって。
ごめん。
気付かなくて、ごめんね。
「ずっと、言いたかった。
でも、矢口には想っている奴がいたから、言っちゃいけないって思ってた。
友達関係が崩れるのが怖かったのは、俺も同じだったんだ。
でも、もう我慢できない。
矢口。
新しい恋を始めろよ。
二人で楽しい恋愛をしようよ。
付き合って・・・・ほしい。」
こんな弱気な彼を初めて見た。
いつも矢口の相談に笑いながら、でもすっごく気遣って接してくれた優しい人。
- 76 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時15分38秒
- 矢口も、報われない恋愛にはもう疲れたよ。
矢口がこの人と付き合ったら、裕ちゃんも喜んでくれるかな。
告白して、裕ちゃんが矢口の想いを負担に感じるくらいなら
他の誰かと付き合った方が、裕ちゃんもいいよ・・・ね。
この人だったら、いっつも矢口を支えてくれる。
恋愛感情は今は持てないけど、時間がたてばいつかは好きになるかも。
なんてったって、最初は私の方が気になっていたんだから。
「ああ、ごめん。こんな時に。
返事は急がないよ。
もう、ここまで待ったんだから。いくらでも待つよ。」
何も言えないでいる矢口を見て、ますます不安そうに俯いてしまった彼。
大丈夫、心配しないで。
悲しそうな彼につい今までの自分の姿をだぶらせてしまう。
裕ちゃんに叶わない想いを抱いてる、かわいそうな矢口。
- 77 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時17分36秒
- 「ねえ。」
矢口の声にようやく顔を上げてくれた。
今まで見てくれてありがとう。
矢口をこれからも支えてくれるの?
「これからも矢口のパクチー、・・・食べてくれる?」
矢口の精一杯の、でも分かりづらいこの返事をしばらくぼーっと考えて。
それから、はっとした顔で口だけぱくぱくさせて「まぢで?」と聞いてくる。
その姿がなんだかおかしくて笑いながら頷くと、彼もすっごく嬉しそうに笑った。
- 78 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時18分16秒
- --------------------------
今日はハロモニの収録日。
久しぶりに裕ちゃんに会う日。
圭ちゃんとなっちにはY君と付き合い始めたことを話した。
圭ちゃんは悲しそうな顔をしながら、でも彼女なりの優しさでそれ以上何も聞かずに
「そっか。」とだけ言った。
なっちは・・・。
「矢口。いいのそれで?ほんとにいいの?」
って、何回も聞いてきたけど、矢口がうんって頷くと何とも言えない複雑な顔をしてた。
矢口は頑張って彼を好きにならなきゃ。
もうつらい恋なんて忘れるんだ。
裕ちゃんに会っても、もう心を動かしちゃいけない。
矢口は新しい恋を始めるんだから。
ともすればすぐに後悔しそうになる、自分に何度も言い聞かした。
- 79 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時19分00秒
- 派手なノックの音とともに扉が開いて裕ちゃんが入ってくる。
・・・来た。
「やーぐち。」
そしてこんな決心した日に限って裕ちゃんは一目散に矢口に抱きつきに来た。
矢口があんなにも眠れない夜を過ごしたのがばからしくなるほど、
裕ちゃんはいつも通りで。
まあ、そりゃそうか。
裕ちゃんは矢口の気持ちなんて知らないんだもんね。
いつものようにからみついてくるその腕から離れる。
あやうくその腕の魅力に引き込まれそうになる。
心が何か叫んでいるのは聞こえないふりをした。
思ってたより強く振り払ってしまった手に、裕ちゃんが一瞬「えっ」って悲しい顔をした。
ずるいよ。
何でそんな傷ついたような顔をするの?
別に何とも思ってないんでしょ。
ただの挨拶で抱きついているだけなんでしょ。
でも、今の矢口にでも、まだ裕ちゃんのことを悲しませることが出来るみたいで
ちょっとだけ嬉しかった。
・・・傷つけさせてよ。
- 80 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時19分35秒
- 「矢口、どしたん?なんか機嫌悪いん?」
横に座って、矢口が落ち込んでるときいつもしてくれるように下からのぞき込む。
ちょっと眉をひそめて、矢口が好きな真剣な表情。
裕ちゃんの手が優しく矢口の腕をなでる。
お願い。
優しくしないで。
矢口の決心が鈍る前に裕ちゃんにも話すことに決めた。
息を大きく一つ吐いて。
「裕ちゃん。」
急に真顔になったあたしに裕ちゃんは「ん?」って顔をする。
心の中で、言うなって警告音が響いている。
裕ちゃんの傷ついた顔が見たい。
あたしと同じ痛みをあげたい。
でも、何とも思ってくれなかったら・・・。
ちくちく、ちくちく。
胸の痛みが止まらなかった。
「あのね、Y君って知ってるでしょ?」
もう一つ息を吐く。
精一杯の笑顔を作って、一気に言った。
「矢口ね、彼と付き合うことになったの。」
- 81 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時20分13秒
- 裕ちゃんの反応を知りたかった。
ちょっとは傷ついてくれる・・・?
でも、また、以前のように良かったねって笑う裕ちゃんは
やっぱり今でも見たくない。
だから言ってからすぐに俯いた。
裕ちゃんは何にも言ってくれない。
矢口の腕をつかんでる裕ちゃんの動きが固まってる。
どして?と思って顔を上げると、裕ちゃんはなんか思い詰めたような苦しい顔をしていた。
「あ、ああー、あの子ね。矢口の友達やった子やろ。
いい子やもんな。そっかそっか。
ついに付き合うことになったんか。
良かったなあ、矢口。」
矢口の視線に気付くと、ちょっと強ばった顔をあわてて笑顔にしてそう言った。
- 82 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時21分23秒
- どうして今、苦しそうな顔をしたの?
裕ちゃんには恋人がいるんでしょ?
どうして?
わずかな期待が矢口の心を揺らす。
「裕ちゃんだって・・・。」
知らない間に口から出ていた。
「裕ちゃんだって、恋人がいるじゃん!」
なのに、何でそんな悲しそうな顔するんだよー。
「へ?」
まじまじと矢口を見つめる裕ちゃん。
「なにゆってんの?」
「・・・裕ちゃん、今誰とも付き合ってないで。」
今度は矢口が固まる番だった。
- 83 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時22分01秒
- 付き合って・・・・ない。
えっだって、この前かおりが言ってたのは?
慌ててる矢口を見て裕ちゃんは
「誰から聞いたん?」って不思議そうに聞いてきた。
矢口はこの前かおりが話していたことを裕ちゃんに聞かせる。
話を聞くと裕ちゃんは「はあ?」と驚いた顔をしたものの、
すぐに何か思い当たったように、くすくす笑う。
「あー、あれな。聞かれとったんや。
なんや、恥ずかしいなあ。
でもな、あれ。
相手、おかんやで。」
おかん・・・。ですか?
お母さんってことですか・・・。
あたし、めっちゃお母さん子やからな。
聞かれてたんか、恥ずかしいわ〜。
なんて、呑気に照れてる裕ちゃんを後目に矢口の思考回路はもうパニック寸前。
えっ、えっ。じゃあ、私の今まで流した涙は一体。
Y君とのことは一体・・・。
- 84 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時22分34秒
- 矢口はずるい。
今、一瞬、喜んでしまった。
裕ちゃんに恋人がいなかったことを。
そして同時に、Y君と付き合ったしまったことも後悔していた。
あたしは、なんていやな人間なんだろう。
裕ちゃんは矢口に向き合うと優しく矢口を抱きしめた。
あまりのショックでもう、逃げようなんて思わないでされるがまま。
耳元で裕ちゃんがささやいた。
その声が心なしか悲しそうなのは矢口の気のせいなの?
「そっか、矢口はもうY君のものか。
そしたらもうこうやってくっついたらあかんねんな。」
そう言って抱きしめる腕に力を込める。
やだ、そんなこと言わないで。
それなのに裕ちゃんは矢口の気持ちを知らずにさらに続けた。
- 85 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時23分04秒
- 「それじゃ、これも。
最後のキス、チュ・・・、や。」
そう言って、いつもみたいに不意打ちの軽いキス。
いつもと違うのはそれが唇だったこと。
最後って・・。
「何で、別にY君は関係ないじゃん。
だってこれは挨拶のキスでしょ。じゃ、いいじゃん。何で最後なの?」
思わず裕ちゃんの服をぎゅっと掴む。
嫌だ。
抱きしめてくれないなんて、嫌だ。
キスしてくれないなんて、嫌だ。
いつも嫌がって逃げてる矢口の言葉にちょっと驚いた顔の裕ちゃん。
- 86 名前:片想い 投稿日:2002年04月24日(水)02時24分05秒
- やだよ。
最後なんて、やだよ。
裕ちゃんと離れたくないから、Y君と付き合ったのに。
裕ちゃんに嫌われたくないから、自分の気持ちを隠してたのに。
矢口の反応に一瞬だけ困った顔をして、でもすぐにいつもの大人の顔になる。
裕ちゃんの嫌いなところ
・・・大人のふりをする
「矢口。裕ちゃんの座右の銘は、な。
『人のものには手を出さない』や。」
なかようやるんやで。って頭をなでて裕ちゃんは矢口から離れていった。
裕ちゃんの手が離れたところから、少しずつ体温が奪われていく。
裕ちゃんの後ろ姿が視界からゆっくりぼやけていった。
座右の銘は『弱肉強食』だろ・・・ばか・・。
- 87 名前:ユウ 投稿日:2002年04月24日(水)02時26分01秒
- はい、以上です。
思ってより矢口さん編が長くなってしまいましたが、
あと一回で矢口さんのはまとまりそうです。
- 88 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年04月24日(水)09時36分59秒
- やぐちゅー発見しました。
作者さん続きを楽しみにしています
- 89 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月25日(木)21時22分31秒
- うー、悲しい展開になるのでしょうか?
裕ちゃんには、幸せになって欲しい。
そして、そのお相手はヤグチであって欲しい。
世知辛い世の中、やぐちゅーで心の癒しを求めている私の、
些細な些細な願いです。
作者さん、お願い・・・
- 90 名前:ユウ 投稿日:2002年04月26日(金)15時56分00秒
- >>やぐちゅー中毒者セーラムさん
レスありがとうございます。
誰かが読んでくださっているのが分かるのってすっごく嬉しいです。
>>89さん
私も出来るなら、『とろっとろのあまあま』を書きたいのですが・・・。
でも、そこにたどり着くまでが長くて長くて。
すみません。続き頑張ります。
目指せ脳味噌とろけるほどのあまあま小説!
- 91 名前:片想い 投稿日:2002年04月26日(金)15時57分46秒
- -------------------------
なんて、タイミングだろう。
神様は意地悪だ。
今日はY君と会う約束をしていた。
「・・ぐち。・・・やぐち、聞いてる?」
「あっ、ごめん、えっと・・・なに?」
さっきからこんなことの繰り返しだった。
せっかくおいしいからと連れてきてもらった焼き肉屋なのに、ほとんど食べてない。
・・・『そっか、矢口はもうY君のものか。
そしたらもうこうやってくっついたらあかんねんな。』・・・
矢口から手放してしまった。
素直になっていれば、良かった。
勇気を出してれば、良かった。
今日の出来事なのに、もう裕ちゃんに抱きしめてもらいたくて仕方なくなってる。
二人で会っても心ここにあらずの矢口にY君もどうしていいか分からないようだった。
矢口の心はさっきからずーっとただ一人、裕ちゃんだけを想ってる。
- 92 名前:片想い 投稿日:2002年04月26日(金)15時58分37秒
ごめんね。Y君。
こんなふらふらした矢口で。
「今日はもう帰るか。」
「ん、ごめん・・・」
こんな時でもきちんと気遣ってくれる。
そんな彼に申し訳なく思いながらも素直に車で送ってもらう。
でも早く一人になりたくて、途中の駅で降ろしてもらうことにした。
今日のことをもう一度謝まってから帰ろうと、彼の方をむくと急に唇をふさがれた。
必死になって離そうとするけど、いつもの穏やかな彼じゃないみたい。
彼の歯が唇に当たる。
勢いよくぶつかったので口のはしが切れたみたいだ。
「ん、ちょっ、ちょっと。い、嫌。」
両手をつっぱって、彼を押しのける。
矢口の大きな声にようやく我に返ってくれた彼。
「あっ、矢口・・。ご、ごめん。」
- 93 名前:片想い 投稿日:2002年04月26日(金)15時59分11秒
何も言わず車を飛び出した。
飛び出して、走れるだけ走った。
肩で息をしながら立ち止まると、涙がぼろぼろこぼれ落ちてきた。
裕ちゃん。
裕ちゃんの最後のキスだったのに。
消えてしまった。
切れた唇を指でなぞる。
涙があふれてくる。
もうあの唇に触れることは出来ない。
『それじゃ、これも。
最後のキス、チュ・・・、や。』
裕ちゃん。
最後のキスなんて。
そんなの嫌だ。
こんなにも裕ちゃんが恋しくて恋しくてたまらないのに。
最後って言葉が頭の中をぐるぐる回る。
- 94 名前:片想い 投稿日:2002年04月26日(金)16時00分07秒
「ふっ、・・うちゃん。・・・裕ちゃん。
うっ・・・ヒック。ゆうちゃ・・ん。」
何度も何度も恋しい人の名前を呼んだ。
そうすれば、本人が現れてくれるとでも思ってるかのように
矢口の口からは裕ちゃんの名前しか出てこない。
駅前で人通りが多い。
酔ったサラリーマンの上機嫌な大声が遠くで聞こえる。
泣きながら歩くあたしに何人かの道行く人が振り返った。
帽子を深くかぶってはいるものの、勘のいい人なら矢口だって分かるかもしれない。
でもそんなのはどうだっていい。
誰に見られたってもういい。
- 95 名前:片想い 投稿日:2002年04月26日(金)16時00分58秒
「・・ゆぅ・・・ちゃん。」
憎たらしいまでの笑顔が浮かぶ。
今日のちょっと傷ついた顔が浮かぶ。
幼い寝顔が矢口の胸をしめつける。
今すぐ逢いたい。
触れて欲しい。
抱きしめてほしい。
そして、「さっきのは冗談や」ってもう一度キスしてほしい。
泣いて泣いて泣いて、泣いた。
周りなんてかまわなかった。
胸が苦しい。
裕ちゃんに泣き崩れて、すがりつけば矢口のものになるというのなら
矢口はきっとそうしてただろう。
・・・でも、出来なかった。
もうこんなプライドなんていらないよ。
- 96 名前:片想い 投稿日:2002年04月26日(金)16時01分47秒
どこにこんな水分がたまっていたのか、涙は枯れることはなく止めどなく流れてきた。
「ふっ、ふーー。」
子供が泣くように横隔膜にしゃっくりみたいな変な癖がついた。
助けて、助けてよ。
裕ちゃん。
最後なんて、嫌だよう。
どこをどう帰ったのか覚えていない。
気が付いたら、自分の部屋でドアを背に膝を抱えていた。
- 97 名前:片想い 投稿日:2002年04月26日(金)16時02分29秒
矢口は最低だ。
結局あの優しい彼を傷つけてしまった。
車を飛び出したときにちらっと見た、彼の悲しそうな顔が頭をよぎる。
でも、今は裕ちゃんのことしか考えられない。
本当にひどい奴だね、矢口は。
ごめんね。
ごめんね。
矢口はやっぱり。
裕ちゃんだけが好きだなんだ。
狂おしいくらいに裕ちゃんだけを求めてる。
最後って言われたあのキスの感触を必死になって思い出そうとしている。
「・・裕ちゃん・・・。す・・・き。」
誰にも聞かれずに何度つぶやいたか分からない言葉をまた口にした。
- 98 名前:片想い 投稿日:2002年04月26日(金)16時03分09秒
決めた。
もう自分に嘘はつかないって。
そして、優しい彼をこれ以上傷つけないって。
きちんと謝って、そして彼とは別れよう。
努力して好きになんてなるものじゃない。
矢口はそんなことさえ、忘れてた。
傷ついてもいい。
裕ちゃんに伝えたい。
矢口は、裕ちゃんが欲しいんだって。
仲間としての裕ちゃんじゃなくて。
矢口のものになってほしいんだ。
裕ちゃんだけが欲しいんだ。
今すぐ、裕ちゃんに触れたいんだ。
- 99 名前:ユウ 投稿日:2002年04月26日(金)16時06分39秒
- えーと、ようやくここまでたどり着きました。
矢口さんのしつこいくらいまでの独白。
やっと告白する気になりました。
すみません、長いですね。
次はやっと中澤さん編。
私も中澤さんのは書いてて楽しいです。
あまあまに・・・なればいいなあ・・・。
- 100 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月26日(金)21時03分54秒
- 「目指せ脳味噌とろけるほどのあまあま小説!」
なんて頼もしい言葉でしょう。
期待してます。
新しい「やぐちゅー伝説」を書いてください。
作者さん、大好き!
- 101 名前:ユウ 投稿日:2002年04月26日(金)22時22分00秒
- ちょっと休みの間だに更新できるか分からないので、今日またのせちゃいます。
はりきりですかね>私。
>>100さん
早速のレスありがとうございます。
ほんとに「とろっとろのあまあま」を書きたいんですけどねえ。
現実世界の彼女たちの方が実はよっぽど甘かったりして。
事実は小説よりも甘なり。などとも思ってしまいます。
期待に応えられるか非常に不安です。
新しい「やぐちゅー伝説」、書けたら、いいなあ・・・。
では更新です。
中澤姐さん視点。
- 102 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月26日(金)22時23分11秒
-------------------------
『永遠』なんてないこと知ってる。
人の気持ちに『絶対』なんてないことも。
大人になった自分が嫌なのではなくて。
ただ、臆病になった自分が少し悲しい。
『経験』を悔やむってことも、あるんやね。
-------------------------
- 103 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月26日(金)22時24分43秒
ううーん。
おもろいなあ。
あたしはさっきからくるくる表情を変える、ちっこい子供から目が離せない。
あっ笑ってる。
足ばたばたさせて。
っぅかわい。
それにしても笑い声、よう通るなあ。
- 104 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月26日(金)22時25分25秒
あー、後ろ後ろ。
すぐ後ろからカンチョウの姿勢で近づいていってる辻加護がおるやん。
「「すきありっ!!」」
あちゃー、もろ入ったなあれ。
あれは痛いやろ。
「んあ"っ」
って叫んだまま、あまりの痛さのためかその場にうずくまってる。
「こっら〜つーじーかごぉ〜〜〜〜!!!!」
あははは。リカバリー早っ。
もう追いかけとる。
さすが、ミニモニ。リーダー。
あっ、戻ってきた。
めっちゃすたすた歩いとる。痛ぁないんやろか。
今度はなっちと。
ん?なにしとんの?
二人でえっらい変な顔しあって。
こらこら、ぶっさいくやで〜二人とも。
顔見合わせて吹いちゃってるし。
・・・う〜ん、おもろい。
- 105 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月26日(金)22時26分48秒
- 「ねえさん、怖いて。」
なんやねん。怖いって失礼な。
みっちゃんは両手にコーヒーを持って、その一つをあたしにくれる。
「・・・何にやにやしてんですか?」
えっ、あたし今にやにやしとった?
「・・・ああ、またやぐっちゃん見てにやついてんだ。」
あたしの視線の先を追って納得したように言う。
またってなんやねん、またって。
「だって矢口かわいいんだもん。」
開き直ってやる。
「ふ〜ん。じゃあ、早くはっきりゆうてあげなや。」
「へっ?何を?」
「何をって。ほら、その・・・あれですやん。好きやーって。」
「そんなん、いつもゆうてるわ。」
「だーかーらー。ちゃんと。ほ、ん、き、で。」
- 106 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月26日(金)22時27分55秒
本気でって。
「なにゆうてんの?何であたしが矢口に告白すんねんな。
ただでさえ今母親に『まだいい人は出来んのかー彼氏はおらんのかー』って
めちゃめちゃプレッシャーかけられとんのに。」
昨夜の電話が思い出される。
「あんた、まだお母さんに紹介出来る人おらんの?もう、なっさけないなあ、ほんまに。」
口ごもるあたしに母親は春になったら東京まであたしの様子を見に来ると息巻いて、電話を切った。
この業界に入るのも、何するのも、今までも好き勝手に生きてきたあたし。
女手一つで、決して聞き分けのいい子供じゃないあたしに
遠く離れてもこうして愛情を注いでくれている。
最近、昔ほどあたしを叱る声に力がなくなったような気もしてきた。
考えてみれば当然なんだけど、母親も年をとったんだなあと感じた。
やっぱり少しでも親孝行がしてやりたいなと、思うんよ。
それで、母親が安心して自分の人生を楽しんでくれるのなら。
- 107 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月26日(金)22時29分00秒
「あーあー恋がしたいなー、彼氏欲しいなー、矢口かわいいなー。」
なんですかそれってみっちゃんはちょっと呆れた顔をしてコーヒーをすすった。
「ねえさんは、ほんっま鈍感やね。人の気持ちにも。自分の気持ちにも。
いや、ちゃうな。・・・誤魔化してるんやね。大人のふりして。」
ずばっと痛いとこつくなー。
何も言い返せない時は黙ってコーヒーのんどこ。
みっちゃんはあたしの顔をのぞきこんで笑う。
「はは、図星。や。」
「うっさいわ。ええのー、いろいろ大人の事情があるんですー。」
「やぐっちゃんもてるからな〜。かわいいしな〜。誰かに奪われちゃうかもよ?」
こいつ、絶対楽しんでるな。
- 108 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月26日(金)22時29分44秒
「なんで今日はそんなにつっかかるん?」
「ん?やぐっちゃんは、あたしにとっても大切な仲間ですからー。
あたしとねえさんができてる、なんて誤解もたれちゃってもねえ、困りますやん?」
ああ、さっきのコメントのことね。あんなん矢口の冗談に決まってるやんか。
あたしは飲み終わったコーヒーの紙コップをくしゃっと潰して、席を立った。
「ほら、みっちゃんも行くで。」
「なに?どこ?」
「懺悔ボックスやん。」
・・・・・
- 109 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月26日(金)22時31分56秒
みっちゃんたちと軽くビデオの前でじゃれてから、お目当ての人物を探す。
ちょっと目を離すとすぐいなくなるからなあ。
あ、いたいた。
「やーぐち。」
「ん?なーにー?」
あたしを見上げてにこっと笑う。
この見上げた顔がたまらなくかわいいって本人は分かってるんやろか。
「ちょっと。」
「へっ」
「ちょっと、来て来て。」
これからすることに上機嫌なあたし。
別にさっきのみっちゃんの言葉を気にしたわけやないよ。
・・・『誰かに奪われちゃうかもよ?』
そんなんちゃうけど、ほら、一応ね。
でも矢口、嫌がるかなあ・・・。
- 110 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月26日(金)22時33分02秒
案の定、ハロモニ懺悔ボックス前でのあたしの宣言はあっさり否定された。
「オレの矢口で〜す。」
「全部、嘘で〜す。」
でも言った後ちょっと照れて目をそらした矢口がもうかわいくてかわいくて。
思わず、ビデオの前だってことを忘れて素で言ってしまったわ。
「・・・かわい。」
「ほら、行くよ。」
ってこれ以上あたしが暴走しないように連れ去る矢口。
はいはい。
こんなとき、あたしは素直に矢口の前で子供になる。
だって、そうすると、矢口のあの得意そうな顔が見られるから。
ああもう、かわいいなあほんまに。
- 111 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月26日(金)22時34分05秒
- ----------------------------
娘。を卒業してから、最近あたしもほどよい距離感がつかめてきて
みんなとの関係がもしかしたら卒業する前よりも仲良くなったような気もしてた。
あたしがいなくてもきちんとやっていける。
それはそれでちょっと寂しいけど、一人一人が頑張ってる姿は頼もしくもあったし、
何よりあたしも頑張らなあかんって力をもらえた。
1年たって、それでもみんな「卒業した裕ちゃん」として変わらず慕ってくれてる中、
一人だけ、一緒にいた時以上に近づいてこようとしている子がいる。
・・・自惚れても、ええの?
----------------------------
- 112 名前:ユウ 投稿日:2002年04月26日(金)22時36分40秒
- また、ネタが古いですな。
でも、このシーンは私の心臓を確実に撃ち抜きました。
関西弁が難しく微妙なんですが、お許し下さい。
私、実は方言フェチで、柔らかな方言を話す方に異常に反応してしまいます。
当然、中澤さんの関西弁もしかり。
かわいいなぁ。
- 113 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月27日(土)00時31分31秒
- ネタが古いなんて、とんでもない。
それより、私を妄想に導いてくれる「やぐちゅー」の言葉や行動を
丁寧に描写してくれるのが、とても嬉しいです。
- 114 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年04月27日(土)10時17分40秒
- 話題古くないですよ、実際自分もそのネタ使ったし(W
これだから、やぐちゅーはたまらないですよ
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月28日(日)21時53分27秒
- やぐちゅ〜だ
矢口がんばれ。
- 116 名前:ユウ 投稿日:2002年04月29日(月)20時59分51秒
- >>113名無し読者さん
いつもいつもありがとうございます。
妄想・・・。この拙い文章ですが・・・どんどんして下さい。
>>やぐちゅー中毒者セーラムさん
ネタ、大丈夫ですか?良かったぁ。
ほんっと、あの二人にはやられっぱなしですよね。あまあまだあ〜。
>>115さん。
そうです。
やぐちゅうです。と、言うよりこれはほとんど矢口さんの独壇場?
では、更新します。
- 117 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月29日(月)21時01分24秒
「じゃ、明日6時に迎えに来ます。」
はいー。お疲れさまでしたーと車を降りる。
特別欲しい物があったわけじゃないけどその明かりにつられて、自宅近くのコンビニに入った。
ついでだからと、最近よく飲む水の買いだめをする。
雑誌コーナーには相変わらず、娘。たちの表紙のものや掲載紙がたくさん置いてあった。
どれどれ、と思って一冊を手に取る。
ふ〜ん、みんなしっかりしたことゆうようになったなあ。
あっ、矢口や。
かわいいなあと知らずに顔がほころんだ。
雑誌立ち読みして矢口見て笑ってる中澤裕子っていうのも
なんかちょっとおかしいやろ、と思って雑誌を元にもどした。
- 118 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月29日(月)21時02分49秒
何でかなあ。
何であたしはこんなに矢口が好きなんやろ。
もう見てるとかわいくてかわいくて仕方ないんや。
憎まれ口さえもかわいいもんな。
もう条件反射みたいに矢口を見ると触りたくてうずうずしてくる。
重症やな、あたし。
あの小ささもたまらん。
抱きしめるとすっぽり腕の中に収まる、あのサイズ。
っくう〜かわいいよなあ、やっぱり。
- 119 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月29日(月)21時03分31秒
その感情は何?と言われたら答えにつまるけど。
でもはっきり言えるのは、それは恋愛感情ではないってこと。
うーん・・・なんやろ・・・家族愛?
ああ、ちょっと近いかも。
でも仲間に対するものよりは一歩踏み込んでて。
・・・『愛情』
うん、そうやな。
純粋な愛情。
恋っていうよりは、それはむしろ愛情。
自分を慕ってくれる子に対する柔らかな感情。
穏やかな愛情。
あたしはずうっとそう思ってた。
その時まで。
- 120 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月29日(月)21時04分10秒
--------------------------------------
一人楽屋で台本を読んでたら、ノックの音。
「裕ちゃーん、いるー?」っていいながら顔を出したのは
あたしのかわいい矢口。
なんや、遊びに来てくれたんか。
ありがとうなあ。
最近矢口はこうしてよく一人で遊びに来てくれる。
別に何するわけでもないんだけど、娘。のことを話したり、
ミニモニ。で次は何をやるんだーとか教えてくれたり。
前よりも色んな話してる気がしない?
って、ゆうたら「うん、そうかも。」って矢口もうなづいてくれた。
嬉しいなあ。
- 121 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月29日(月)21時05分13秒
でも時々あたしをまっすぐに見つめてる視線が強い意志を秘めてるようで、
それにちょっとどきっとしたりもする。
仲間として慕ってくれてる以上のものをその目に見てしまいそうで。
気のせいやって思おうとしてもあたしの心音は跳ね上がってしまう。
・・・まさか、ね。
まさか。
その度にあわててあたしは自分の考えをうち消す。
あたしの心をじわじわとかき乱す当の本人は、いたってけろっとした顔で。
今日もちょこんと横に座って雑誌の占いを見ながら、ちょっとこれやってみよーっと
なんてつぶやいてる。
「あっ、それ相性占いやん。じゃ、矢口と裕ちゃんでやってみてや。」
いつものあたしのふざけた言葉に、矢口はちょっと複雑そうな顔をしてあたしをじっと見た。
あっまたや・・・。
また、あの目をした。
矢口のあの目を見るたびに、あたしは落ち着かなくなってしまう。
何でやろ?
- 122 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月29日(月)21時05分45秒
「裕子と占ったって、ぜーんぜん意味ないじゃんかよ。」
おっ、いつもの反撃が出たな。
ようやくあたしもほっとする。
ぷいっと下を向いて矢口はもくもくと占いを始めた。
なあ、誰との相性を占ってるん?そんな真剣な顔して。
一生懸命、なんか足したり引いたり計算してる矢口をぼーっと見てた。
なんか、矢口・・・。
こう、なんちゅうの。
体が大人っぽくなったなあ。
決して太ったわけじゃないんやけど。
いやむしろ痩せたはずやねんけど。
体つきが女っぽくなったってゆうか・・・。
柔らかそうやなあ。
あっちょっと・・・この体抱きしめたい・・・かも。
- 123 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月29日(月)21時06分21秒
ぅおっと。
はっと我に返る。
あたしは中学生男子かい!!
なに、矢口の体に見とれてんねん。
一人自分につっこんでると、
矢口は「あーあー。」と不満そうな声を漏らした。
「ん?どやった?誰かさんとの相性は良かったか?」
ゆってから、ちょっと胸がちくっとした。
・・・あれ、何だこれ?
矢口はじろっとあたしを睨んで
「・・・アホ裕子。最低だったよ。」と雑誌を持って楽屋を出ていってしまった。
なに、怒っとるの?
「アホ裕子」って・・・。
裕ちゃん、何もしてへんやん。
しかも裕ちゃんの雑誌やでそれ。まだ読んでへんのに。
まあ、ええわ。
後で向こうの楽屋にご機嫌でもとりにいこ。
何で怒っとるのかよう分からんけど。
裕ちゃん何だかんだゆうても、矢口には弱いんよ?
- 124 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月29日(月)21時06分53秒
矢口が出ていってから、なんだかあたしは落ち着かなかった。
さっき一瞬、ちりっと自分の胸をかすめたあの痛みが
どうして?って理由を探してる。
やっばいなあ。
これってもしかして・・・。
深く考えちゃだめだって、心の中でブレーキがかかる。
これはきっと、多分、今までの経験からゆうと・・・相当やばい感情や。
あたしは知ってる。
この感情を何て呼ぶのか。
数ある感情の中で、もっともやっかいなそれは。
『嫉妬』と言う名の、重たい感情。
自分でブレーキかけてる時点で、もう十分気付いちゃってるわけなんだけど。
やばいわ、ほんまに・・・。
あたし、これめちゃめちゃ焼きもちやいてるやん。
矢口が相性を占った、誰かも分からない相手に。
- 125 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月29日(月)21時07分27秒
----渡したくない。
----あたしだけの矢口でおって。
なんや、このどす黒い感情は?
これのどこが穏やかな愛情、やねん。
どこがメンバー愛、やねん。
のめり込んだら、・・・まずいやろ。
ようやく『恋愛禁止』の足かせはなくなったんや。
誰からも祝福される、幸せな恋がしたいって思うやろ?
それなのに、これはやばいわ。
よりによってこの相手は。
何で今頃気付くかなあ。
ま、ばれへんかったらええねん。
あたしは大人やろ?
自分に言い聞かす。
幸せな恋愛をするんやろ?
親も安心するような相手にするんやろ?
今やったらまだ引き返せる。
大丈夫。
今やったらまだ、自分の感情を誤魔化せれる。
- 126 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月29日(月)21時08分44秒
矢口は大事な大事な仲間やねんから。
絶対に傷つけてはいけない。
不用意にあたしの気持ちを押しつけて、動揺させちゃいけない。
矢口は、あたしの大切な仲間。
それ以上でもそれ以下でもない。
何度も何度も自分に言い聞かせた。
いいわけでもええんや。
あたしは臆病やから、どう考えたって不利なこの勝負にのることはできない。
親のためとか、矢口のためとか。
なんかそれらしい、理由があれば自分にブレーキがかけられる。
大丈夫。
今ならまだ自分を騙せる。
矢口に対する感情は、ただのメンバー愛、や。
そやろ?
その日、あたしは結局娘。の楽屋に行くことは出来なかった。
----------------------------------
- 127 名前:ユウ 投稿日:2002年04月29日(月)21時09分49秒
- 本日更新分です。
明日また、夜にでも頑張りまっす。
ああ〜、あまあまが書きたいな〜。
- 128 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月30日(火)00時35分14秒
- テンポのいい更新。
毎日が楽しみです。
裕ちゃんの、大人としての気持ちのブレーキがとても切なくて、
読んでいて、偉そうに「うん、うん」ってうなづいていました。
色々な思いを乗り越えて、ようやく達する「やぐちゅー」に、
真の幸せがあると思うので、
本当にこの小説大好きです。
作者さん、ありがとうございます。
- 129 名前:ユウ 投稿日:2002年04月30日(火)23時01分42秒
- >>128さん
楽しみにしていただいて、ありがとうございます。
とりあえず、ストックがある分はばんばん更新したいと思います。
初めて書いたこの小説とは呼べるかどうか分からない物を
大好きって言っていただいて、めちゃめちゃ嬉しいです。
中澤さんの気持ちも共感してもらえました?
私も「分かるよ〜姐さん、うんうん。」と思いながら書いてました。
アホですね。
では、更新です。
- 130 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時03分32秒
----------------------------------
最近おかしい。
どうも調子が出ない。
ふと気付くといつも考えてしまう。
「今なにしてるんやろ?」
「次いつ会えるんかな?」
だから、あかんてゆうてるやん?
・・・忘れてた。
あたしはダメだって言われることほど、やりたくなるんや。
----------------------------------
- 131 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時05分03秒
矢口が冷たい・・・。
別に会って何かをされたってわけじゃないんやけど。
メールが来ない。
今まではそれこそ、毎日のように送ってくれてたのに。
多いときは2通から3通、それ以上の時だってあったやん?
毎日あったのが急にぷつっと切れると、とたんに心配になる。
あたしの方は今までと同じように矢口に接してきたのに。
自分の気持ちがばれないように。
それなのに・・・。
まさか、避けられてる?
そういえば、前に楽屋に会いに行ったとき。
矢口は何か言いたそうにしてたなあ。
うちに来たいってことゆうてへんかったっけ?
相談したいことがあったんやろか?
矢口になんかあったんやろか?
なあ、矢口。
矢口は今、何を思ってるの?
- 132 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時06分13秒
心配だけど、わざとらしくならないように普通を装ってメールをしてみる。
「今、ドラマの空き時間中!暇やー。でもめっちゃ緊張する〜。矢口は今何してんの?」
仕事中みたいですぐには返事は返ってこなかった。
矢口からの返事に気付いたのは、撮影が終わった夜中近く。
『さぼってるなよーゆうこー。』と
いつも通りの口調で始まった矢口のメールにちょっとほっとする。
そっか今日はなっちたちとご飯食べに行ってたんか。
良かった。元気そうで。
さすがにこの時間じゃもうご飯は食べてへんやろ。
会えないのは残念だけど、諦めて家に帰る。
でも、ま、誘ってくれるってことは避けられてへんってことやよね?
とりあえず、一安心。
お風呂上がりに冷蔵庫を開けて、買い置きしてあるビールを手に取った。
プルトップを開ける手前で考え直して、お茶にする。
お酒で誤魔化そうとする自分がちょっとだけ嫌だった。
コップに注ぐのが面倒でペットボトルにそのまま口をつけて、
のぼせた体に冷えたお茶を流し込んだ。
- 133 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時07分21秒
「ふ〜、うっまい。」
そういえばこのお茶、矢口が「お茶なら絶対にこれ」って教えてくれたやつやんな。
あいつ変なとこにこだわりあるからな。
気付いたら無意識にそればっかり選んでしまうようになってた。
あっまた、矢口のこと考えてる・・・。
今日のメールのことでも。
たかがメール一つのことに、単純に一喜一憂している自分に気付いてしまった。
なんや、あたしもけっこうかわいいとこあるなあ、なんてのんびり思ったりもした。
こんな風に誰かを思って喜んだり、落ち込んだりするのは久しぶりやな。
つかの間、胸に暖かい物が宿ったけど、あわててそれもうち消した。
だから、ダメやって。
あかんやろ、中澤裕子。
あんたが恋愛する相手はあの子じゃないはずや。
あんたを幸せにしてくれるのは、他にいるはずやって。
第一、矢口にこの気持ちがばれてみ?
今までみたいにくっついたりできひん。
それこそ、きっついで?
だからちょっと冷静になって、よう考え?な、自分。
- 134 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時08分17秒
-------------------------------
今日はハロモニの収録日。
久しぶりに矢口に会える日。
早速娘。の楽屋に遊びに行った。
メールの返事は返ってきたけど、それでも矢口の様子が気になってたから。
矢口が元気やったらそれでええねん。
あの子が楽しそうに笑ってさえくれれば・・・。
入ってすぐに矢口の姿を探す。
・・・いた。
一人でイスに座ってた矢口は入ってきたあたしをじいっと見つめてた。
「やーぐち。」
珍しく顔に笑顔がない矢口に、わざといつものように抱きついた。
でも、直後その手を強く振り払われてしまう。
えっ。
なんで・・・?
- 135 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時08分57秒
今までこんな風に手を振り払らわれたはなかった。
何か嫌がることをしてしまったんだろうかと途端に不安になる。
あたしに触られるのが、いや・・・?
あたしの気持ちに気付いてしまった・・・?
手を振り払った後、俯いてしまった矢口。
自分の心配してる場合やないわ。
矢口の様子がおかしい。
いつもは嫌がってても、それは口だけで、あたしの胸にすっぽり納まってくれるのに。
「矢口、どしたん?なんか機嫌悪いん?」
俯いてしまっている矢口の顔をのぞき込む。
ちょっと矢口、裕ちゃんに顔を見せてや。
無意識に矢口の腕をさすってた。
- 136 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時09分53秒
長いため息のあと
「裕ちゃん。」
矢口は何かを決心したみたいに真剣な顔をしてあたしの名前を呼んだ。
なんや、どしたん?
何かあったんか?
「あのね、Y君って知ってるでしょ?」
ああ、おったなあそんな子。
矢口がきれいなきれいな笑顔であたしに言った。
「矢口ね、彼と付き合うことになったの。」
えっ。
付き合う?
矢口が?Y君と・・・?
・・・いや・・だ。
押さえつけてたはずの自分の感情が一気に溢れ出してくるのが分かった。
今ならまだ自分を騙せるんやなかったの?
なのに、何でこんなに胸が苦しいんやろ。
何でこんなに動揺してるんやろ。
- 137 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時10分48秒
矢口の視線を感じた。
あわてて、大人の仮面をつける。
危ない危ない。
慌てて何をいったのかよく覚えていない。
でもなぜか矢口は悲しそうな顔をして続けてこういった。
「裕ちゃんだって、恋人がいるじゃん!」
へ?
まじまじと矢口を見る。
あたしに恋人?
なに、それ?誰、それ?
「なにゆってんの?」
「・・・裕ちゃん、今誰とも付き合ってないで。」
矢口の動きが止まった。
- 138 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時11分34秒
誰から聞いたん?って聞くと
かおりがね、と興奮した勢いで話し出す矢口。
そのあまりのあわてっぷりが何だかかわいらしいのと、
かおりの相変わらずの勘違いっぷりがおかしくて話を聞きながら笑ってしまった。
普通、母親との電話を彼氏の電話と間違えるかー?
はー、びっくりした。
あたしが笑いをこらえきれずに、相手はおかんやで。と
告げると目の前の矢口は固まってしまった。
あたしの疑惑ははれたものの。
矢口の場合は本人の口から聞いたんやから、本当なんやね。
あらためて、胸が苦しくなってきた。
矢口に彼氏か・・・。
あの占いの相手はY君のことやったんか。
いつかはこんな日がくると覚悟はしていたけど、
う〜ん、想像以上に厳しいなあ。
これ以上側におったら、ええかっこうできそうもないわ。
- 139 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時12分33秒
矢口を優しく抱きしめた。
今度は何の抵抗もなくあっさり、あたしの腕におさまる矢口。
でもいつもみたいに背中に腕は回してくれへんねんな。
「そっか、矢口はもうY君のものか。
そしたらもうこうやってくっついたらあかんねんな。」
ちょっと抱きしめる腕に力をこめると、矢口の体に一瞬びくっと
力が入った。
ごめんな。
これ以上裕ちゃん大人のふりできんわ。
でも、最後にこれだけやらせて。
いつもみたいに軽くキスをした。
最後だからと、勝手に唇にさせてもらったけど。
「何で、別にY君は関係ないじゃん。
だってこれは挨拶のキスでしょ。じゃ、いいじゃん。何で最後なの?」
矢口は怒ったように言ってあたしの服をぎゅっと掴んだ。
- 140 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時13分11秒
矢口、そんな無茶いわんといて。
あたしそこまで人間出来てないんやで。
今までみたいにくっついたり、キスしたりしたら、
いつまでたっても矢口に執着してしまうやん。
矢口を誰にも渡したあないって思ってしまうやん。
どんどん、どんどんつらくなる胸の痛みをなくすため
一刻も早く矢口から離れたかった。
あたしは大人や。
自分に区切りをつけないと。
何でもいい。
何か矢口が納得するようなことを言って、とりあえずこの場を去ろう。
これ以上、側におったらやばい。
自分にいいわけ出来なくなる。
矢口に対する感情はただの、メンバー愛やって。
あたしを押さえる呪文を唱える。
頭を撫でて矢口から離れた。
- 141 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時13分41秒
- これでもう。
あたしは矢口を抱きしめることは出来ない。
冗談に誤魔化してキスすることも、出来ない。
あたし、「おめでとう」ってゆってないなあ。
矢口。
ごめんな。
裕ちゃんまだまだ子供やね。
- 142 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時14分27秒
「裕ちゃん!」
娘。の楽屋から逃げるように出ると、なっちが追いかけてきた。
ごめん、なっち。
あたし今すっごい情けない顔してるやろ?
かっこわるぅ。
そんなあたしの表情を読みとったのか、なっちはそこから動かず、何でだろう
ただ一言「ごめんね。」ってゆった。
あほぉ、なっちが謝ることちゃうやろ?
なっちが泣きそうな顔してどうすんねん。
相変わらず、泣き虫さんやな。
何か話したら涙が出そうやった。
「ん、大丈夫やし・・・。」
一言だけいって、なっちの頭をなでて自分の楽屋に戻った。
大丈夫やで。本番にはいつもの裕ちゃんになってるから。
- 143 名前:いいわけ 投稿日:2002年04月30日(火)23時14分59秒
- これでいいんやろ?
あたしが望んでたことやろ?
これであたしも自分が願った通りの恋愛が出来るやん。
・・・それなのに、どうしてこんなに苦しいんやろか。
自分にいいわけして、誤魔化してた罰やなあ。
矢口が笑っていればいい。
仲間として側にいられればいい。
そんなことはきれい事だった。
矢口が欲しい。
こんな決定打をもらって、ようやく気付いた。
あたしを幸せにするのは、ひまわりみたいに笑う、
たった一人の小さな小さな、あの子だけやったって。
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- 144 名前:ユウ 投稿日:2002年04月30日(火)23時15分58秒
- では本日分です。
明日また。
- 145 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月01日(水)00時00分19秒
- 更新、ありがとうございます。
毎日仕事終わってからの楽しみにさせていただいてます。
これからも、宜しくお願いします。
- 146 名前:ちぃ 投稿日:2002年05月01日(水)17時45分29秒
- ・・・始めて人のところに書き込むんで緊張しとります。
最近作った話の中にセリフがかぶりそうなところがあるんですが
そのへんは許してください。
たぶんこうだといいなぁってところが似てるんでしょう。
似たとこにつぼがあるって言ったらいいんでしょうかね。
がんばってください。
- 147 名前:ユウ 投稿日:2002年05月01日(水)19時41分45秒
- >>145さん
お仕事お疲れ様です。どぞどぞ息抜きしてって下さい。
いつもレスを下さるので、たいそう励みになります。
今回ので一応、一区切りです。
ご期待にそえてるかどうか・・・。
>>ちぃさん
うわっっっ。ちぃさんだ!
レスもらっちゃった。えっらい嬉しい。
わざわざありがとうございます。
私、ちぃさんの方でも書いたんですけど。
ここでもまた言ってしまおう。(←しつこい)
ほんっとちぃさんのお話がだいっ好きなんすよ。
もう、ちぃさんのを読んで自分でも書きたくなったほどに。
足下にもおよびませんが。
似てるつぼが一緒なんですかね?それもまた嬉しいです。
かぶりそうなセリフ、後で楽しみにしています。
では、更新します。
- 148 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時43分07秒
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矢口はあたしの楽屋に入ってきて、さっきから落ち着かない。
そわそわ視線が泳いだまま、さっきから加護がどーの辻がどーのとすごい勢いで話してる。
なんやろ?
話があるって言ってたけど。
きっと話したいことは他にあるはず。
『矢口ね、彼と付き合うことになったの。』
あの日、笑顔で報告してきた矢口。
あたしはその日、矢口に対する自分の感情を封印した。
強烈な独占欲・・・そして欲望。
なのに、目の前の矢口を見ていると今でもそれが顔を出す。
・・・まずいなぁ。
あれ以来、二人きりで話すのは初めてだった。
なあ、そんなに言いにくいことなん?
彼氏の相談とかやったら、裕ちゃんいややで。
- 149 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時44分03秒
「で、どしたん?」
いつまでたっても本題に入りそうもない矢口にこっちから問いかけてみる。
矢口は一瞬「あっ」と気まずい表情になったものの、話す決心がついたのか、「うん」とうなずいて見せた。
心なしか元気がなくなってきたみたい。
ようやく落ち着いてあたしの横のイスに腰掛ける。
「あのね、裕ちゃん。この前話した、Y君のことなんだけど・・・。」
なんや、やっぱり彼氏の相談かい。
はー、あたしにするなや、そんなん。
圭坊とかなっちにせいや。
だって、聞きたくないやん?
矢口が誰かのことをこんなにも思ってます、なんてこと。
でも、そんなことおくびにも出さずに「どした?」って
心配そうな顔をする。
大人、やからな。
「あの・・・、」
なかなか言わない矢口。
もー、なんやねんなー。
この間がいややねん。
- 150 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時45分12秒
「・・・たの。」
「えっ?」
ごめん、矢口。今ちょっとよく聞き取れんかった。
いや、っちゅうか、聞こえたんやけど、自分の耳を疑ってしまった。
「だから、・・・別れ・・たの。」
な、なにー。
いつかの矢口じゃないけど、勢いよく立ち上がってイスを倒してしまう。
な、えっ、ちょっ、だって。
ついこの前やん。
付き合ったのー。って嬉しそうにあたしに報告してきたのは。
なんや、だからこんな落ち込んでんのか。
あたしの矢口を悲しませて。
許せんな、そいつ。
付き合ったと聞いた時はそらかなりあたしもショックだったけど。
今度は、矢口の心をここまで落ち込ますことが出来る相手にものすごい嫉妬を感じた。
- 151 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時46分06秒
「ちょっ、そいつ、呼んでこい。
あたしがよおく、理由聞いたるから。
あたしのかわいい矢口を悲しませるなんて・・・。」
興奮してまくし立てるあたしをぽかんと見ている矢口。
「裕ちゃん、ちょっと落ち着いてよ。
違うの。矢口から別れようって言ったの。」
・・・へ?
矢口から・・・?
そろそろとイスに座り直す。
なんやよく話が読めないんですけど?
だって、あんた彼のこと好きやったんちゃうの?
占いの結果が悪くて落ち込んで楽屋に帰っちゃうくらいに。
彼のこと思って、裕ちゃんにメール送ることさえ忘れちゃうくらいに。
そういえば、ずーっと前に携帯番号教えてもらったって時も、なんかもう
嬉しそうにあたしに報告してたやんか。
- 152 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時47分29秒
「どして?だって、矢口、彼のことずーっと好きやったんやろ?
何で、せっかく付き合えたのに・・・?」
あたしの言葉に心底びっくりしたような矢口。
下唇をぎゅっとかんで、何かをいいたそうな顔をする。
かわいいかわいい、あたしの矢口。
そんなつらそうな顔しないで。
いつもみたいに裕ちゃんに笑顔見せて。
矢口の頬を手の甲でやさしく撫でた。
矢口は目を潤ませて切なそうな顔であたしを見上げる。
胸がぎゅっと苦しくなる。
もうどうしようもないほどかわいいな、あんた。
「裕ちゃん。違うよ。
矢口は他に、ずーっと前から好きな人がいたんだ。」
へ?
他に好きな人・・・ですか?
それはそれで初耳やなあ。
誰・・・なんやろ。
ちょいまち。
どっちみちあたしにはショックやんかその事実。
弱気になったあたしは矢口の頬からそろそろと手をはずす。
- 153 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時48分28秒
矢口はあたしの手の動きを目で追ってから話し出した。
「矢口ね、今まで怖かったんだ。
告白してだめだったとき。その人と今までの関係が壊れちゃうのが。」
ああ、分かるで。矢口。
あたし今でもそう思ってんもん。
あんたを失いたくないねん。
側にいれるんやったら、あたしはいくらでも大人の仮面をつけ続ける。
「でもね、Y君を結局傷つけて。自分も傷ついて。
それでようやく分かったんだ。
どうしても手に入れたいものがあるなら、勇気を出さなくちゃって。
・・・矢口はどうしてもその人が欲しいの。
その人しかいらないの。」
強くなったな、矢口。
- 154 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時49分29秒
矢口はまっすぐな視線をあたしに向ける。
その目を見て、あたしも昔は誰かのことをこうしてまっすぐに見つめたんだ。
って、ふと思い出した。
恋をするのに、いいわけも何もしなかった頃。
でも、あたしは矢口からその好きな人の名前を聞くのが怖くて
視線を逸らしてしまう。
ここまで、矢口の気持ちをとらえた人はどんな人なんやろ。
聞きたいけど、聞けない。
今でさえ、苦しくて胸が締め付けられているのに。
「裕ちゃん。」
矢口があたしの名前を呼ぶ。
「ん?」
顔を上げたあたしはうまく笑えてるやろか。
いつも通りの大人の顔が出来てるやろか。
- 155 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時50分22秒
「矢口はね。」
ああ、やっぱり聞かなあかんねんな。
矢口の目からぼろぼろと涙があふれてくる。
不意にあたしの手を握りしめる矢口。
「矢口は・・・、裕ちゃんしか欲しくないの。」
えっ?
今、なんて・・・。
あたししか、欲しくない・・・?
あまりに驚いて、矢口を見つめたまま何も言えなくなってしまう。
不安になったのか、あたしの手を握っていた矢口の手の力が徐々に弱くなっていく。
あかん。
あたしはその手を思いっきり引っぱり、立ち上がって矢口を自分の胸に引き寄せた。
「矢口。」
言葉が見つからない。
- 156 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時51分46秒
「裕ちゃん、好きなの。
好きで好きでどうしようもないの。
矢口は裕ちゃんがいれば何もいらないの。
裕ちゃんが欲しいの。
裕ちゃんだけが欲しいの。」
矢口はきゅっとあたしに抱きつく。
それはしがみつくと言った方が正しいほど力強く。
これ以上ない愛の言葉をぶつけてくれる矢口。
愛しい愛しい、あたしの矢口。
ごめんな。
矢口から言わせて。
「矢口・・・。」
不安そうに腕の中であたしを見上げる矢口。
もう、仮面なんてつけてる余裕ない。
あんたへの愛おしさで胸がめっちゃ苦しいねん。
- 157 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時52分31秒
「ええの?
あたしで、ええの?」
何度も何度もうなずく矢口。
「・・・裕ちゃんが、いい・・・。
裕ちゃんじゃなきゃ、いらないよ、矢口は。」
涙って嬉しすぎても出てくるんやね。
腕の中の小さなこの子が、あたしの中をいっぱいにしてくれる。
どうやったらこの気持ちを伝えられる?
なんて言葉ならあんたへの想いが伝わるんだろう。
悩んだけど、あたしも矢口と一緒の、一番ストレートな言葉で伝えることにした。
「あたしも・・・矢口が欲しい。」
耳元でささやくと矢口が泣きそうな顔をした。
泣くのをこらえてるようにかわいい口がへの字になった。
- 158 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時53分31秒
「矢口。好き。大好き。」
伝わるまで何度でも言おう。
もう、あたしの中の大人の仮面とか、いいわけとか。
そんなもの全部飛んでいってしまった。
あんなに必死になって守ろうと思ってたものなのに。
あたしが逃げてたばっかりに、矢口につらい思いさせた。
ごめんな。
臆病な裕ちゃんでごめんな。
愛おしさで、胸が痛い。
でも、今までの嫉妬の苦しさとは違って甘い痛みや。
きれいな涙が矢口の目からこぼれ落ちた。
顔をくしゃくしゃにして大粒の涙を流している矢口を
もう一度しっかり抱きしめ直す。
- 159 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時55分09秒
涙が収まった頃、ようやく顔を上げてくれた。
でも目が合うと恥ずかしそうに笑って、またあたしの胸に顔を埋めてしまう。
もうかわいくてかわいくて、どう扱ったらええんやろ、このお姫様を。
とりあえず、二人の間にちょっとの隙間もあけんように
ぎゅっと抱きしめる。
「裕ちゃんな、実はめっちゃやきもち焼きやねんで。ええの?」
こんなん聞くなんて、ずっこい大人やなあたし。
「えーっ、嘘だよそんなん。・・・だって今までは全然妬いてくれなかったじゃん。」
何かを思いだしたように口をとがらせる。
ちょっと拗ねた言い方さえかわいらしい。
とがらした矢口の口に指を当てる。
「あほやなあ、必死に仮面つけてたんや。矢口が離れていかんように。」
「アホ裕子・・・。離れないよ。」
- 160 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時55分58秒
ぎゅっとあたしの腰に回した手に力を入れた矢口の目にはまた、いっぱいの涙がたまってる。
その涙に優しく口づけた。
こぼれ落ちる前にあたしの口で全部すくう。
くすぐったそうに矢口が首をすくめて言う。
「良かった。」
「ん?」
「最後のキスって言われた時は、もうつらくて死んじゃうかと思った。」
泣きながらの笑顔がますますあたしの心を締め付ける。
そっか。
そんなら、きちんとお詫びをせんとな。
- 161 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時56分37秒
「矢口。」
頬に手を当てて顔を上に向かせた。
つやつやしてる唇がまるで誘ってるかのように薄く開く。
うるんでる瞳に捕らえられて、あたしは矢口から目が離せない。
いつからこんな大人っぽい表情するようになったんやろ。
至近距離で見つめ合う。矢口がゆっくり目を閉じていく。
おそるおそる顔を近づけて、優しくその唇に触れた。
ぷるっとした弾力があたしから理性を奪いそうになる。
ずっとこうしたかった。
どきどきしていた。
何でキスくらいで、こんなにどきどきすんねんな。
これが初めての恋ってわけじゃないやろ?
なのになんで、こんなに苦しいんかなぁ。
- 162 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時57分17秒
何度か触れるだけのキスを繰り返した。
矢口を見ると、潤んだ目であたしを見上げてる。
あかんて。
そんな目で見上げたら。
あたしに火をつける気か?
でもここまできてもまだ怖がってるあたし。
ええの?もっと矢口を欲しがってもええの?
ほんま中学生みたいやなあ。
そんなこと考えてる自分にちょっと苦笑してしまう。
好きすぎてよう手が出せへん、なんて、な。
あたしも意外と純やんな。
「もっとしても、・・・いいん?」
「・・・してよ。裕ちゃん。」
っくあああ〜、かわいいっちゅーねんこんにゃろう。
恥ずかしそうにそう言った矢口は、確実にあたしに火をつけた。
- 163 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時58分20秒
「ん・・・」
迷うことなく舌を滑り込ます。
深く深く口づけると矢口は小さく声をこぼした。
どこにも逃がさないないように、もっと深く感じられるように矢口の頬を両手ではさんだ。
角度を変えてかみつくように矢口の唇にキスを落とす。
矢口の舌に触れると体にちりっと電気が走った。
おふざけのキスとは違う、ありったけの思いを込めて矢口の感触を味わった。
矢口。矢口。矢口。
何度キスしても物足りない。
なあ矢口。
いまさら、さっきのは冗談だっていうのはなしやで。
・・・もうこの腕から出したらへんからな。
-------------------------------------------------
- 164 名前:いいわけ 投稿日:2002年05月01日(水)19時59分07秒
---------END---------
- 165 名前:ユウ 投稿日:2002年05月01日(水)20時00分33秒
- ふー、とりあえずここで終了です。
初めて書いたので読みづらい点も多々あったと思いますが。
読んで下さった方。
本当にありがとうございます。
- 166 名前:ユウ 投稿日:2002年05月01日(水)20時02分26秒
- GW明けに今回の話の「おまけ」をのせたいと思います。
大したものではないですが、中澤さんのと、矢口さんの。
ではその時まで。
- 167 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年05月02日(木)03時38分47秒
- あ、甘い!最高です!
自分読んでて溶けました。
始めて書いてこれほどとは凄いです。自分、脱帽ものですよ
- 168 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)19時29分12秒
- やぐちゅーごちそうさまでした。(w
おまけ楽しみにしています。
- 169 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月06日(月)21時19分21秒
- クサッ クサーーーーー!!!
- 170 名前:ユウ 投稿日:2002年05月08日(水)19時51分05秒
- >>やぐちゅー中毒者セーラムさん
レスありがとうございます。
心強い言葉、大変励みになります。
自分で書いたものだと一切甘さを感じられないので、そう言っていただけるとほっとします。
>>168さん
お粗末様でした。
もしよかったら、この「おまけ」も食後に召し上がって下さい。
食あたりを起こさなければ良いのですが。
>>169さん
すいません・・・やっぱり?
でもチッチッチ。(人差し指を左右に振りながら)
これぐらいで、『クサッ』と言われちゃあ困ります。
だって、まだまだくさくなる予定ですから・・・。
はー、でもやっぱりレスもらえるのって嬉しいもんですね。
単純だからそれだけで頑張ろうって思います。
でも、今回は中澤さんのと石川さんのになってしまいました。
少ないんですけど、更新です。
- 171 名前:そして、LOVE GOES ON... 投稿日:2002年05月08日(水)19時52分18秒
矢口の唇は麻薬。
離れるたんびに物足りなさを感じてまた引き寄せられてしまう。
触れてる間も胸がぎゅっと苦しいのに、離れるとまたその甘い痛みを求めてしまう。
このまま矢口をあたしの中に飲み込めたらいいのに。
今日も矢口をあたしの楽屋に連れ込んだ。
なんや、連れ込むって言葉が悪いなあ。
だって、向こうの楽屋じゃ二人きりなんてなれへんやん?
矢口を見るとどうしたって、抱きしめたいって欲望が止められないし。
・・・キスだってしたい。
何度も何度もキスを交わしてようやく二人、人心地がついた。
一度するとお互いが止められなくなってまう。
一体何度キスしたんだろう。
- 172 名前:そして、LOVE GOES ON... 投稿日:2002年05月08日(水)19時53分49秒
矢口はあたしの膝に乗り肩にあごをのせて、脱力したようにほけっとしている。
体で感じられる矢口の重さが心地よい。
さっきの余韻でか、話しかけてもそれに答える矢口の声もなんだかほにゃほにゃしていて、
それがますます部屋の空気を甘いものに変えていく。
ああ、矢口の体、ほんま気持ちええなあ。
柔らかくて、暖かくて。
あたしは矢口の小さな背中をなでながら、なめらかな首筋に鼻を寄せた。
甘い甘い矢口のにおいがあたしを満たしていく。
・・・幸せやなあ。
- 173 名前:そして、LOVE GOES ON... 投稿日:2002年05月08日(水)19時55分17秒
「・・・矢口の体、気持ちええなあ。」
矢口の柔らかな感触を楽しんでいたらつい口に出してしまった。
途端にがばっと体を起こして、赤い顔であたしをにらめつける矢口。
「・・・スケベ。」
うぉい!
何でそうなんねん。
「アホォ、ちゃうわ。そーゆー意味でゆったんちゃうで?
ただな、矢口の、体の・・・感触が・・・。」
「体の、・・・感触が?」
うわっ、その疑りの目。
「あっいや・・・。矢口?あの〜、ほんま体つきが大人になったなあ、な?」
ああ、矢口がますます引いていく。あたし、いいわけ、ほんまに下手や。
「アホ。」
ベシ。
いた、手刀された。
- 174 名前:そして、LOVE GOES ON... 投稿日:2002年05月08日(水)19時56分28秒
だって、そ〜ゆ〜意味でゆったんちゃうねんもん。
あたしのいいわけはあっさりと無視して、矢口は膝から下りようとする。
でも頭を押さえたまま訴えるような目で見上げたら、口をとがらしたまま
しぶしぶとまた体を預けてくれた。
あたしを見て顔を赤くしたまま、いーって顔をする。
かわいーっちゅうねん。
「アホ裕子。」
矢口の腕があたしの首に回る。
「はい。」
あたしは矢口の腰にぎゅっと腕を回す。
「アホ裕子、アホ裕子、アホ裕子、アホ裕子。」
「はいはい。」
くすくす笑って答えると不意に矢口が心配そうな顔であたしをのぞき込んだ。
- 175 名前:そして、LOVE GOES ON... 投稿日:2002年05月08日(水)19時57分37秒
「裕ちゃん?」
「あっ?」
「矢口が『アホ』って言い過ぎても・・・怒らないの?」
「はい?」
なにを言い出すかと思ったら。
「だって、・・・矢口いつも調子にのっちゃうと言い過ぎちゃうから。
裕ちゃん怒らないけどさ・・・。ほんとは嫌だった?」
不安そうに視線を落としてそうつぶやく矢口。
あんたなに急に不安になってんの?
そんなん、嫌、なんて思ったこと一度もないで。
「そんなことで怒るかいな。かわいい矢口に。」
頬をなでてから矢口の髪の毛に指を滑らす。
さらさらしていて気持ちいい。
「ほんと?」
「ん、ほんま。矢口の憎まれ口なんてかわいいもんやん。
せやから、そんなこと心配せんでええよ。
それにな、裕ちゃんにはいつも全然違う言葉で聞こえてくんねん。」
- 176 名前:そして、LOVE GOES ON... 投稿日:2002年05月08日(水)19時58分42秒
「えっなんて?」
視線が胸元からあたしの顔に上がる。
ああ、そんな目で見上げんといて。
「裕ちゃんの耳にはなあ・・・、」
顔を寄せて耳元でささやいた。
「矢口の『アホ』って言葉が全部『好き』って聞こえてくんねん。」
「なっ・・・」
「だから、『アホ』ってゆわれるたんびに、裕ちゃん矢口の告白聞いてんねんな〜。」
「ア、アホォー。」
矢口、顔また真っ赤やで?かわいいなあ、これくらいで。
「ん、ありがとお。」
あかん、顔がにやける。
矢口は赤くなりながらも、挑むような目であたしを見つめてる。
それから困ったように小さくつぶやくいた。
「アホ。でも・・・そうだよぉ。」
胸がまたぎゅっとつかまれた。
ああもう、どうしようもないくらいかわいいなあ、矢口。
不意に泣きそうになる。
矢口に顔を見られないように腰を引き寄せて、髪の毛に鼻をうずめた。
あたしも、大好きやで。矢口。
- 177 名前:ユウ 投稿日:2002年05月08日(水)20時00分33秒
- 続いて石川さんのです。
- 178 名前:そして、LOVE GOES ON... 投稿日:2002年05月08日(水)20時01分53秒
「ね、ね、石川。辻たちまだメイクしてる?」
矢口さんが中澤さんの楽屋から戻ってきて私に聞いた。
「はい、まだしてると思いますけど・・・。」
あれっ、矢口さんとっくに終わってませんでしたっけ・・・?
でもよく見るとグロスが落ちてる。
ちょっと目元も赤くなってる?
「そっか、良かったー。じゃ、ちょっと行って来るわ。」
まったくアホ裕子め。なんてぶつぶついいながら楽屋を出ていった。
矢口さん?
口元にやついてますよ?
「梨華ちゃ〜ん、今日の世界のジョーク聞いて聞いて〜。」
私の一番頼りになる?同期で、それに最愛のダーリンでもあるよっすぃーが
台本片手に近づいてきた。
いいんだけど。・・・よっすぃー、その笛・・・なぁに?
- 179 名前:そして、LOVE GOES ON... 投稿日:2002年05月08日(水)20時02分58秒
ついこの前までよっすぃーとは色々あったけど、でも今はようやく落ち着いて
お互いを一番大切な相手として認めあえるようになった。
あの時があったから今があるんだよね。
・・・良かった。
よっすぃー、私ね、あなたのこと・・・大好きだよ。きゃっ言っちゃった。
「えっとねじゃあいくよ、世界のジョォーク!!パフパフ〜!!」
・・・この人には全然伝わってないのかも。
「梨華ちゃん、羊飼いってどこの国だっけ?」
どんどん新しいアイドルとして進化していく最愛の人を
梨華。いい?支え続けるのよ。
自分を叱咤激励した。
- 180 名前:そして、LOVE GOES ON... 投稿日:2002年05月08日(水)20時03分54秒
収録中、矢口さんはいつも以上にテンションが高い。
それに伴って、中澤さんに対する対応まで厳しい。
さっきから顔を赤くして「アホ裕子」を連発してるし。
大変!そんなに言ったらいくら相手が矢口さんでも
中澤さん切れますよ?
そんなの困ります。
今切れられたら、この後のハロプロニュースの収録で私まで
とばっちりをくっちゃいそう・・・。
おそるおそる中澤さんの顔色を伺ったら、何だか困った顔して・・・。
あれ?にやけてます?
矢口さんの耳元に口をよせて、ぼそって何かささやいたかと思ったら
矢口さんはとたんに顔を真っ赤にして俯いてしまった。
・・・どうして?
- 181 名前:そして、LOVE GOES ON... 投稿日:2002年05月08日(水)20時04分36秒
中澤さんは「ありがとぉ。」って矢口さんの頭をなでてから、こっちに移動してきた。
ありがと?
すっと私の右横にたって、顔をぱたぱた手であおいでる。
中澤さんも矢口さんに負けずに顔、赤くなってますよ。
でもそれからはにこにこしながら対戦を見ている中澤さん。
至極機嫌が良さそうだったので思い切って言ってみた。
「・・・アホ」
「なんやて?石川。」
ぱこ。
いったぁ〜い。
そんな、はたかなくてもいいじゃないですかあ。
どうして矢口さんは良くて石川はダメなんでしょう・・。
石川にはこの二人がまったく分かりません。
- 182 名前:そして、LOVE GOES ON... 投稿日:2002年05月08日(水)20時05分30秒
左横にいたよっすぃーが私の頭をよしよしとなでてくれた。
よっすぃー。やっぱり大好き。
「梨華ちゃんさあ、やっと分かったよ。羊飼いの国はねえ・・・。」
支え続けようと思った決心があっさりとぐらつき始める。
「よっすぃー?」
「ん?」
「・・・アホ。」
私がそう言うと、よっすぃーの顔がゆっくりと満面の笑顔になる。
それから「ありがと、梨華ちゃん。」って私をきゅっと抱きしめた。
・・・この人もやっぱりよく分からない。
----------------------
- 183 名前:ユウ 投稿日:2002年05月08日(水)20時06分43秒
- えーと、更新は以上です。
石川さんの話、意味分かりませんね。
しかも短いし。
次回は、安倍さんの短い話があるのでそれにするか、
それとも石川さんが出てきたのでこのまま吉澤さんと石川さんの話にするか、
迷っています。
ではでは。
- 184 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月09日(木)16時38分44秒
- やぐちゅ〜、いいっすね〜。
でも、悩む矢口さんに暖かくアドバイスする圭ちゃんにも感動しましたです。
そんな素敵な圭ちゃんのお相手はいないのですか?
ちょっと気になったので……すみません。
- 185 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月09日(木)22時21分46秒
- おまけのお話もいいですねー。
自分も矢口さんの「アホ裕子」は好きと言ってるように聞こえます(w
裕ちゃんに「アホ」って言ってしまう石川さんに笑えました。
次回も楽しみです。
- 186 名前:ユウ 投稿日:2002年05月10日(金)12時53分21秒
- >>184名無しさん
ああああ、ありがとうございますぅ。
いいっすかあ?ああもう、嬉しい。
圭ちゃんはどうしても私の中でそういうイメージがあるんですけど。
最近、彼女きれいになってますよねえ。
素敵なお相手を見つけてあげたいのですが、どうも他の娘事情には疎くて・・・。
誰とだったら、お似合いなんだろう?
アドバイス、いただけます?
>>185名無し読者さん
ありがとうございますー。
おまけの話、まったくの自己満足なんで、いいと言っていただけてえっらい嬉しい!です。
なんかあのー、矢口さんの強がりっつーか、憎まれ口が私的には大変ツボなんですよ。
ああまた、そんなこと言っちゃって〜このこの。みたいな・・・。
アホや>私。
・・・石川さんは常に一言多いってことで。
では、レスが嬉しくてこんな昼間っから更新です。
安倍さんのと矢口さんのです。
- 187 名前:この手をほどけば 投稿日:2002年05月10日(金)12時54分37秒
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好きだから、
大好きだから、
分かることもある。
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- 188 名前:この手をほどけば 投稿日:2002年05月10日(金)12時56分01秒
「なっち、なっちは一人やないで。」
背中に優しく撫でてくれる手を感じる。
すっごく心地よくて、安心できて、なっちの大好きなこの場所。
なっちは知ってるんだ。
その手はなっちが泣きやむまでずーっとそうしていてくれることを。
だから、本当は泣き止みたくなかった。
いつまでもこの腕の中にいたいから。
涙を止めてもらいたくて側に行くのに、
でも、止まったらこの手が離れてしまう。
・・・いやだ。
背中に回した手にきゅっと力を込めた。
「ほんとになっちは甘えたさんやなあ。」
優しい低い声が聞こえる。
気持ちよくて懐かしくて、なっちの目からは自然に涙がこぼれてくる。
・・・ゆー・・ちゃん。
- 189 名前:この手をほどけば 投稿日:2002年05月10日(金)12時56分54秒
ピピピ・ピピピ・ピピピ・ピピピ
目覚ましの音で目が覚めたら、頬に涙がつたってた。
さっき見た夢の感触が残ってるみたいで、胸の中に懐かしいような
切ないような気持ちが小さく残ってる。
あ・・ゆーちゃんの夢かあ・・・。
なして、今頃・・・。
今までに実際にあったことなのか、それとも今そうして欲しいことが
夢となって出てきたのか分からないけど、それでも夢の中でゆーちゃんに会えたことが嬉しかった。
なのに、何で泣いてんだ、あたし。
そう言えば、最近裕ちゃんに背中撫でてもらってないなぁ。
前みたいに泣けば、抱きしめてくれるかな・・・。
不意に小さいあの子の笑顔が浮かんだ。
涙の訳が何となく分かった気がした。
- 190 名前:この手をほどけば 投稿日:2002年05月10日(金)12時57分52秒
----------------------------------
楽屋のすみで楽しそうにじゃれあってる裕ちゃんと矢口の姿が視界に入った。
よく見る光景だけど、その度に自分の胸がちりっと痛む。
矢口が裕ちゃんとのことを話してくれた。
良かったね。って矢口に言えた。
さらっと言えたはずなのに。
笑って言えたはずなのに。
裕ちゃん。なっち、今胸が痛いよ。
矢口の笑顔は周りの誰もが感づくほど、ストレートに裕ちゃんへの愛情を示している。
以前はよく、その笑顔の代わりにすごく切ない表情を覗かせたりもしていたけど。
ここ最近の矢口の笑顔はすごい。
子犬のようにまっすぐに裕ちゃんに向かっている。
からみついてた裕ちゃんの腕が自分から離れるととたんに不満そうな顔になる。
なっちはそんな矢口をいつも羨ましいと思っていたんだ。
まっすぐに自分の感情を表に出せる矢口を。
- 191 名前:この手をほどけば 投稿日:2002年05月10日(金)12時59分04秒
裕ちゃんの気持ちは気付いてた。
裕ちゃんは必死に隠そうとしていたみたいだけど。
収録の合間。
誰かと話してる時でも。
裕ちゃん。
無意識かもしれないけど、あなたはいつもたった一人のことを目で追ってたんだよ。
いつもいつも、裕ちゃんだけを見ていたなっちには
裕ちゃんがすごく優しい目でその子を見ているのが分かったんだ。
何だ、お互い両想いなんじゃん。
だから、諦めた。
必死に諦めようとした。
矢口に協力しようとした。
矢口になら、って思った。
裕ちゃんの悲しむ顔は見たくない。
裕ちゃんに、傷ついてほしくない。
気が強そうに見えて、ほんとはすごく脆い裕ちゃん。
なっちは裕ちゃんの笑顔を守りたかった。
- 192 名前:この手をほどけば 投稿日:2002年05月10日(金)13時00分00秒
でもあの日、多分矢口からY君と付き合い始めたって聞いただろうあの時。
顔を隠すように楽屋から出ていった裕ちゃんをとっさに追いかけてしまった。
なっちは、少し期待しちゃったんだ。
もしかしたら、もしかしたら裕ちゃんはなっちの方を向いてくれるかもしれないって。
わずかな期待。
ずるいよね。
矢口を応援してたはずだったのに。
矢口はなっちの大切な大切な仲間なのに。
でもさ、なっちだって、裕ちゃんのことをずーっと見ていたんだよ?
矢口とおんなじように、裕ちゃんだけを見てたんだよ?
でも、振り向いた裕ちゃんの顔を見たら何も言えなくなってしまった。
裕ちゃんのあんな顔、初めて見た。
バカだな、裕ちゃん。
なっちだったら、裕ちゃんにそんな顔させないのに。
いつだって笑わせてあげるのに。
- 193 名前:この手をほどけば 投稿日:2002年05月10日(金)13時01分05秒
でも、そんな自分の気持ちがすごく汚いものに感じて悲しくなった。
口をついて出たのは「ごめんね」って言葉だった。
こんな時でも優しく撫でてくれる、裕ちゃんの手が嬉しかった。
恋しかった。
だから余計、悲しかった。
・・・裕ちゃん、好きだよ。
- 194 名前:この手をほどけば 投稿日:2002年05月10日(金)13時01分39秒
裕ちゃんはいつでも優しい。
なっちが初めて一人でドラマをやるってときも、なっち以上に緊張して
おろおろしてた。
かと思えば、「あたしが見てるんやから、絶対大丈夫や。」って
なっちの不安を取り除く言葉をさらっとはいたりする。
泣いてると、抱きしめて背中をずっとさすってくれた。
泣きやむまでずーっと。
だから、なっちはいつも泣きたい時があると裕ちゃんの所にいったんだ。
裕ちゃんの背中を撫でてくれるその手が、大好きだったから。
でも、もう。
なっちは裕ちゃんから卒業しないとね。
-----------------------
- 195 名前:この手をほどけば 投稿日:2002年05月10日(金)13時02分48秒
「裕ちゃん?」
楽屋のドアをノックして部屋を覗いた。
「あれ、なっちか?珍しいなあ。おいで。おいで。」
裕ちゃんは嬉しそうに、読んでいた台本を膝において手招きしてくれる。
「どしたん?」
隣に座ると、ん?と目を細めて聞いてきた。
何も言わずに裕ちゃんに抱きついた。
ほんとはもっと冗談っぽくしたかったのに、うまくできなかった。
なんやなんやと笑いながらもいつものように背中をさすってくれる。
ああ、この手だぁ。
大好きな、裕ちゃんのこの手。
- 196 名前:この手をほどけば 投稿日:2002年05月10日(金)13時03分34秒
「ほんと、どしたん?しんどいんか?」
覗き込んでくる裕ちゃんを、きれいな顔だなあとその腕の中で見とれてしまう。
「ふふ、でも久しぶりやね。なっちがこうしてくるの。」
「・・・たまにはこうして甘えてきぃや?」
ぽんぽんと背中を撫でながら、なっちの髪をなでてくれる。
ずるいなあ。
矢口も言ってたよ。裕ちゃんはずるいって。
そんな風にさらっと優しいこと言わないでよ。
矢口、ごめん。
でも今日だけ、今だけだから。
裕ちゃんに甘えさせて。
ほんとはいつもいつも、こうしてもらいたい。
- 197 名前:この手をほどけば 投稿日:2002年05月10日(金)13時04分15秒
でも、もう諦めないとね。
裕ちゃんのことが好きだから。
大好きだから。
誰を見ているのか、なっちには分かるんだ。
あんなに苦しそうな顔をしていた裕ちゃんを、
今こうして穏やかな表情に変えることが出来たのは。
それはなっちではなくて、あの小さな体の元気な子。
裕ちゃんが好き。
矢口も好き。
大好きな二人のためには、なっちのこの感情はしまっておかなきゃならないんだ。
- 198 名前:この手をほどけば 投稿日:2002年05月10日(金)13時04分51秒
「ゆー・・・ちゃん。」
「ん?なんや?」
「・・・何でもない。」
言わないから。
困らせないから。
だから、今はもう少しこのままで。
この手を、
自分でほどけるまで、
何も言わないで。
この腕から離れたら裕ちゃん、あなたをふっきるから。
- 199 名前:この手をほどけば 投稿日:2002年05月10日(金)13時05分32秒
バイバイ、裕ちゃん。
胸の中で聞こえないようにつぶやいた。
背中をなでてくれる手が、今でもやっぱり大好きだよ。
暖かいこの体温が、大好きだよ。
忘れるから。
大好きだよ。
忘れるから。
忘れるから。
この手をほどけば。
- 200 名前:ユウ 投稿日:2002年05月10日(金)13時06分53秒
- 続いて矢口さんです。
- 201 名前:Don't you say... 投稿日:2002年05月10日(金)13時07分54秒
裕ちゃんの楽屋のドアを慌てて閉めて走り出した。
見なければ良かった。
どうして?
どうして・・・?
今見た光景に胸が嫌な痛みを訴えてる。
う〜ん、こんな気持ちいやだよう。
- 202 名前:Don't you say... 投稿日:2002年05月10日(金)13時09分27秒
「矢口ぃ?なんか怒ってる?」
裕ちゃんが矢口を後ろから抱き締めながらそう聞いた。
さっき、娘。の楽屋に裕ちゃんが迎えに来てくれて、
今矢口は裕ちゃんの楽屋で、裕ちゃんの腕の中。
怒ってるかって?
ああ、怒ってるさ。
抱きしめてくる腕の中でじたばたと暴れてやった。
さっきここにに遊びにきたら、裕ちゃんがなっちを
抱きしめてるのを見ちゃったんだよ。
ノックをしないでドアを開けた矢口も悪いけどさ。
でも、二人で、なっちと二人で何してるんだよぉ。
何だよ、何だよ、なんなんだよう。
矢口はもう、もやもやして半泣きだった。
裕ちゃんはなっちの気持ちを知らないだろうけど。
矢口は前に気付いたんだ。
なっちの裕ちゃんを見つめる視線の意味に。
- 203 名前:Don't you say... 投稿日:2002年05月10日(金)13時10分23秒
裕ちゃんのことを話した時、なっちは矢口に「良かったね。」って言ってくれた。
なっちがどんな気持ちで、あのきれいな笑顔で、その言葉を言ってくれたのか、矢口にだって分かる。
話さない方がいいかもって、何度も考えた。
すごくすごく心が痛んだんだよ。
なっちは矢口の一番大切な仲間。
何でも話して、笑い合って、裕ちゃんがいなくなってぽっかり空いた心の穴をお互い支え合ってきた。
でもだからこそ、なっちには誠実でいたかったんだ。
大切な仲間だと思ったから、なくしたくないって思ったから。
正直に、きちんと話したんだ。
裕ちゃんを信じたいのに。
好きって気持ちが大きくなりすぎて、
ちょっとしたことでも動揺しちゃうよ。
こんな矢口は、自分だっていやなんだよ?
- 204 名前:Don't you say... 投稿日:2002年05月10日(金)13時12分30秒
「矢口?こっち向いて。」
いやだ。向いてやるもんか。
今の矢口の顔、見られたくないもん。
それなのに、頬に手を当てられて優しく向かされた。
こんな時でも優しくしてくれるんだね、裕ちゃん。
裕ちゃんの視線を感じる。
顔を見たいけど、目を合わせられない。
目を見たらきっとまた裕ちゃんのペース。
「矢口?」
「ごめんな。なんかいやな思いさせたんなら、ほんまにごめんな。」
こわごわ矢口に触れてくる。
「裕ちゃんのこと、見て?」
そう言って、裕ちゃんは矢口の顎に手を添えて上を向かせる。
矢口のにらめつけるような視線をしっかりと受け止めて、困ったように笑う。
その笑顔に矢口の胸が締め付けられる。
好きなんだよ?
すごくすごく好きなんだよ?裕ちゃん。
- 205 名前:Don't you say... 投稿日:2002年05月10日(金)13時13分49秒
「なんで、怒っとるのか分からんけど・・・。」
「でも、・・・すねてる矢口もたまらん。」
裕ちゃんは人差し指で矢口の唇をなぞる。
キスなんて、してやんないんだからね。
でも、固く閉ざされたままの反抗的な矢口の唇に、それでも裕ちゃんは構わずにキスをしてきて、
簡単に矢口を動けなくさせる。
最初はチュッとわざと音を立てて、それから噛みつくようにもう一度。
動けない。
胸がざわつく。
もっとして欲しい。
・・・苦しいよぉ。
- 206 名前:Don't you say... 投稿日:2002年05月10日(金)13時14分54秒
ずるいよ。
そんな風に、情けない顔で笑いかけたりしないでよ。
矢口、強がりしか知らないんだから、そんな風にキスしたりしないでよ。
素直になりたいのに。
裕ちゃんを矢口の虜にしたいのに。
でも結局、この腕の心地よさに誤魔化されちゃう矢口の負けなんだ。
- 207 名前:Don't you say... 投稿日:2002年05月10日(金)13時15分35秒
「好きやで、矢口。」
苦しそうな顔で裕ちゃんがささやく。
そんな声で言わないで。
胸がぎゅって痛くなるじゃん。
嘘だよ。
もっと言って言って。
「大好き。矢口。」
矢口も・・・。
でも言葉で出てくるのはいつも、
「・・・裕子のア・・・」
全部言い終わらないうちに、また唇をふさがれた。
- 208 名前:ユウ 投稿日:2002年05月10日(金)13時16分16秒
- 今回の2つは、私の好きなアーティストさんからの曲をヒントに書きました。
元歌、分かる方いるかなあ・・・。
- 209 名前:ユウ 投稿日:2002年05月10日(金)13時17分07秒
- 次回は多分、石川さんと吉澤さんです。
でもまだ途中なのである程度書き上げてからじゃないと載せたいと思います。
- 210 名前:ユウ 投稿日:2002年05月10日(金)13時17分42秒
- 恥ずかしいから最後隠しちゃお。
では、では。
- 211 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月12日(日)01時44分16秒
- いやー、なっちが切ないですね。
でも、やぐちゅー好きな私としては、諦めてもらうしかない。
しかし、ホントに切ない。
なっちのためにも、裕ちゃんとヤグチは甘々に幸せになってもらわないと。
「ユウ」さん・・・、
(なんか裕ちゃんを呼んでいるようで、ちょっと恥ずかしい)
お願いします。
- 212 名前:ユウ 投稿日:2002年05月15日(水)14時37分12秒
- >>211名無し読者さん
なっち、切ないですよねホント。
自分で書いてて何言ってんだって感じですけど。
でもこうゆう、とことん切ないのも好きなんですよ私。
頑張って甘甘書きたいですハイ。
生クリームたっぷりのストロベリータルトばりの。
私も自分の名前ながら、「ユウ」ってかぶってるなあ・・・
と少々恥ずかしいです。
変えれば良かったかも。
今も石川さんと吉澤さんのを書いてるんですが、一向に進まず。
思いつくのは矢口さんと中澤さんのばかり・・・。
ど、ど、ど、どーしよー。
- 213 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月15日(水)23時11分44秒
- 生クリームたっぷりのストロベリータルトばりの
やぐちゅーが読みたいです(w
- 214 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月16日(木)00時46分09秒
- 「思いつくのは矢口さんと中澤さんのばかり・・・。」
いやー、心強いお言葉です。
どんなに短くてもいい、やぐちゅー小説を読ませてください。
「ユウ」さん、期待してます。
- 215 名前:ユウ 投稿日:2002年05月17日(金)20時42分18秒
- 更新します。
まずは、保田さん視点です。
- 216 名前:強がり 投稿日:2002年05月17日(金)20時43分15秒
「保田さ〜ん。」
今にも泣きそうな顔で石川が近づいてきた。
ちょっとちょっと、どおしたのよ。
そんな顔して。
泣きたいなら、行くべき場所はあたしの所じゃないでしょ。
なんて思いながら読んでた本を閉じて、石川の『行くべき場所』の相手を見て納得した。
ああ、なるほどね・・・。
「どしたの?」
理由が分かったものの、とりあえず聞いてみる。
帰ってくる答えなんて当然予想してるけど。
「・・・・よっすぃーがぁ・・・。」
ほら、やっぱりね。
- 217 名前:強がり 投稿日:2002年05月17日(金)20時44分10秒
矢口が吉澤にじゃれついた。
背の高い吉澤に覆い被さるように、後ろからちょっかいを出してる。
どうやら吉澤の携帯メールの中身を見ようと覗き込んでるらしい。
「見せろ〜」とふざける矢口に対して吉澤も「やめて下さいよ〜。」なんていいながらのにやけ顔。
ふむ。珍しいこともあるもんだ。
裕ちゃんもいる収録なのに、吉澤と一緒にいるなんて。
どうしたんだろ、矢口の奴。
そりゃ、矢口と吉澤は元から仲が良い二人だけど、ここ最近裕ちゃんにべったりだった矢口には珍しい行為だね。
「ああ、・・・あれ?」
と、目で原因の二人を指すと石川は困った顔でこくりと頷いた。
あまりにも思い詰めた表情に苦笑が出る。
・・・まったくこの子は。
「大丈夫すぐ終わるって。裕ちゃんが戻ってくればすぐ離れるわよ。」
「中澤さん、とっくに戻ってきてます。」
「へっ?」
今度は石川が目であたしの後ろを指した。
振り向くと、そこには裕ちゃんと、楽しそうな顔で話してる後藤の姿。
- 218 名前:強がり 投稿日:2002年05月17日(金)20時44分54秒
あれ?
「あの二人いつからああなの?」
「分かりませんけど・・・。私が来たときにはすでにごっちんと中澤さんは二人で話していました。
中澤さんがごっちんの今度の新曲かわええなあって話しかけてて・・・。」
ふ〜ん。
・・・・なるほどねえ。
矢口・・・。意地っ張りだねえ。
でもあんた、当て馬にする相手を選ばないと、ここに一人
恐ろしく真面目な固まりが凹んじゃってるわよ。
石川の存在も忘れてしばし、二組のカップルを交互に眺める。
矢口の大げさなくらい大きな笑い声が楽屋に響いた。
後藤と話してた裕ちゃんもぴくって反応する。
ゆっくり矢口の方を見て、一瞬だけ複雑な表情を浮かべる。
でもまた笑って後藤と話し始めた。
あんな表情、矢口は気付いてないんだろうな。
裕ちゃんもストレートに妬いてあげればいいのに。
ったく世話のかかる二人だよ。
- 219 名前:強がり 投稿日:2002年05月17日(金)20時45分42秒
「保田さん!」
「あっごめんごめん。って、何であたしが誤るのよ!
あたしに言ってもしょうがないでしょ?本人に言いなさいよ。」
「そんなこと言えたら苦労しません。」
キッとあたしを睨む。
何であたしには強気なのよあんた。
まったくもう、どいつもこいつも世話が焼けるわね。
でもこれ以上いじめるとホントに泣き出しそうだから、このへんにしておこう。
「・・・分かったわよ。後藤を呼んできてあげるから、ちょっと待って。」
「えっ、違いますよ。ごっちんじゃなくて。私が言ってるのは・・・。」
「いいからもう、待ってなさいって。」
あたしは親戚の世話好きおばちゃんかい。ったくもう。
とは言いつつ、誰かに頼りにされるのは嫌いじゃない自分がいるけど。
- 220 名前:強がり 投稿日:2002年05月17日(金)20時46分19秒
「ごとー。」
裕ちゃんと話してた後藤が顔をあげる。
「ふえ?圭ちゃんなに?」
「えっ、いや。何話してるのかなって。」
「裕ちゃんに新曲誉めてもらっちゃった〜。」
いつものようにへにゃと後藤が笑う。
「ふ〜ん、良かったねぇ。」
頭にぽんと手をのせるとその笑顔がさらに崩れる。
「あっさっき石川がシャッフルの事で話したいことがあるって言ってたわよ。」
石川、あたしはここまで。
後は適当に話合わせなさいよ。
あっまぢまぢ?と言って後藤が席を立ったので、続いてそこにあたしが座る。
さて、次はこの人ですか・・・。
- 221 名前:強がり 投稿日:2002年05月17日(金)20時46分51秒
裕ちゃんがにやにやあたしを見ている。
「・・・なに?」
「いや、圭ちゃん最近きれいになったなあ思て。なんや恋でもしてるんか?」
「なっ、何言ってんのよホントにもう。誰彼かまわずそんなこと言ってると矢口が怒るよ。」
裕ちゃんが笑いながら反論する。
「なんやそれ。誰彼かまわずこんなことゆうかいな。ほんまにそう思ったからゆったんやで?」
「はいはいありがと。でも裕ちゃんが気にする相手はあたしじゃないでしょ?」
そう言うと裕ちゃんは照れくさそうに顔を伏せて笑った。
「大丈夫や。ちゃんと気にしてるって。」
「じゃあ、あれは?」
今なお吉澤にべったりの矢口の方に視線を向ける。
「ああ、あれなあ。まあ矢口だってたまにはあたし以外の奴とじゃれつきたいやろ?」
本気でそう思ってるんだろうかこの人は。
だとしたら、すっごい鈍感だ・・・。
- 222 名前:強がり 投稿日:2002年05月17日(金)20時47分35秒
「・・・裕ちゃんは妬いたりしないんだ?」
「えっあたし?ごっついやきもち焼きやで。
でもなあれくらいの事でいちいち妬かれたら、そら・・・矢口だって嫌やろ?」
「う〜ん、そおかなあ・・・。」
あれはどう見ても『裕ちゃん妬いて!』って言ってるけどなあ。
さっきから矢口、ちらちら裕ちゃんの様子を伺ってるんだよ。
気付かないかなあ・・・。
あっ!
「もしかして、裕ちゃんも妬いてほしかった・・・とか?」
だからずっと後藤と話してたの?
「はあ?ちゃうわ。あたしがそんなめんどくさいことするかい!」
そうだよねえ。
裕ちゃんはそんな相手の気持ちを試すようなことする気がしないけど。
「いや、でもほら。恋の駆け引きって奴?」
大人なんだし、それくらい余裕でしょ。
「はぁ〜。恋の駆け引き・・・ね。そんなんようせんわ。」
「どうして?相手の気持ちを引きたいと思わない?」
- 223 名前:強がり 投稿日:2002年05月17日(金)20時48分26秒
裕ちゃんが考え込むような顔になった。
何かを思い出そうとするようにちょっと目を細める。
「う〜ん・・・。もっと若い頃はあったな。
相手にもっともっと自分のことだけ見て欲しくてわざと他の誰かといちゃついてみたり、
急に気のない素振りしたり。
でもな、もうそんなこと、ようせんわ。
だってもったいないやん?
せっかく大事な人が側におんのに。
気のない素振りするのも、相手にストレートに愛情を示すのも、要は伝えたいことは一緒やろ?
あなたが好きです。ってことやろ?
だったら、あたしはその人に、・・・矢口に嫌な思いさせたないもん。
いつだって矢口には素直に好きって言い続けたいし、
それに・・・つまらないことで縛り付けたぁない。」
きっぱりとそう言うと、にっと笑った。
裕ちゃんらしいと言うか何と言うか・・・。
でも・・・。
相手はあの矢口だよ?
裕ちゃんみたいに感情を理性で抑えられるとは思えないけど。
- 224 名前:強がり 投稿日:2002年05月17日(金)20時48分58秒
「矢口には伝わってる?」
「と、思うんやけどな・・・。」
途端に少し不安そうな顔。
「まあ、とにかく矢口を吉澤から引き剥がしてあげてよ。
あそこで一人凹んじゃってる子がいるんだけど?」
裕ちゃんが後藤と話してる石川に目を向ける。
「あっほんまや。なんや圭ちゃん世話好きやなあ。」
あたしの頭をぐしゃっと撫でて裕ちゃんが立ち上がった。
「うるさい、もう。あっそれから裕ちゃん。」
「なんや?」
「乙女心は結構複雑なんだよ?」
たまには妬いて欲しいって思うのは当然のこと。
裕ちゃんもさっき見せた複雑な表情、矢口にも見せてあげればいいのに。
- 225 名前:強がり 投稿日:2002年05月17日(金)20時49分47秒
「はいはい。分かってますって。」
「ふ〜ん、自信たっぷりでいいなあ。
あたしも裕ちゃんみたいにじたばたしない恋愛がしたいよ。」
「・・・じたばたしない恋なんてないやろ。」
裕ちゃん?小さくつぶやいたの聞こえたよ。
あたしの視線に気が付くとしまったって顔。
それから
「あたしは多分。
いくつになってもじたばたと矢口に恋し続けるわ。」
「それ、矢口に言ってあげなよ。」
「はは。そやな。」
裕ちゃんは、またいつもの自信たっぷりな顔で笑って、矢口に向かって歩いて行った。
- 226 名前:ユウ 投稿日:2002年05月17日(金)20時55分50秒
- はい、更新です。
- 227 名前:ユウ 投稿日:2002年05月17日(金)20時56分30秒
- >>213名無し読者さん
読みたい!と言って下さってありがとうございます。
でもねえ、これがなかなか甘くならないんですよ。
ほんっとすみません。
どうしても私は矢口さんをじたばたさせたいらしいです。
>>214名無し読者さん
いつもありがとうございます。
とりあえず、短いですが更新してみました。
期待に添えるように頑張ります。
- 228 名前:ユウ 投稿日:2002年05月17日(金)20時57分10秒
- 明日か明後日に矢口さんのをのせたいと思います。
・・・結局また矢口さんと中澤さんの話になっちまいました。
- 229 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月18日(土)02時26分22秒
- ユウさんのやぐちゅーいいっス!
姐さんはヘタレなんだけど大人って感じだし(w
矢口はほんとすることなすこと可愛いし
もうホントにサンキューです。
- 230 名前:ユウ 投稿日:2002年05月18日(土)21時18分52秒
- 更新します。
今日のは矢口さん。
- 231 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時19分42秒
「はあ。」
「どーしたんですか?矢口さん。」
さっきまでハイテンションだった矢口のため息に、よっすぃーもびっくりしてあたしを見る。
「いいなあ、よっすぃーは。」
「何がですか?」
「ん・・・ちゃんと妬いてくれる相手がいて・・・さ。」
何か言いたげにこちらを見ている石川の姿。
実はさっきから目に入ってたんだ。
ごめんよ。石川。
気付いてるのに、よっすぃーを取っちゃって。
- 232 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時20分56秒
------------------
加護たちと収録が終わって楽屋に戻ると、裕ちゃんとごっつぁんが話していた。
なに話しているのかは分からないけど、楽しそうに笑ってる裕ちゃんを見てたら
胸がずきっと痛んで近づけなくなった。
裕ちゃんがごっつぁんの頭を撫でる。
嬉しそうにごっつぁんが頷く。
裕ちゃんがごっつぁんに笑いかける。
う〜ん・・・。まただ・・・。この気持ち。
痛い痛い痛い痛い・・・。
もやもやするよう。
- 233 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時21分57秒
ちょうど側で携帯をいじってるよっすぃーがいたから、ちょっかいを出してみた。
わざと大きな声出したりして、裕ちゃんの気をこっちに引いてみる。
それで、裕ちゃんがすぐに矢口の所に来てくれれば止めるはずだったんだ。
それなのに、裕ちゃんはちらっと矢口の方を見たと思ったらさ、
にこって笑って矢口とよっすぃーのやりとりを見てるだけだし。
・・・何で!
何でそこで笑えるの!
ほら、いいの?
矢口、よっすぃーにこんなにくっついてんだよ?
背中からだよ。
抱きつくようにだよ。
ねえちょっとちょっと、心配じゃないの?
すぐ止めるはずが、裕ちゃんの反応が悔しくて意地になっちゃった。
自分でしてることなのに、どんどん胸が苦しくなる。
裕ちゃん・・・、こっち見てよ。
------------------
- 234 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時22分58秒
「あ〜、梨華ちゃんはちょっと妬きすぎなんですよ。」
なんて言いながらよっすぃー。
君、すっごい気にしてるよね。
さっきから視線泳いじゃってるし。
「はあ。」
もう一度ため息をつく。
矢口、ホントに何やってんだろ。
最初っから素直に裕ちゃんとごっつぁんの所に行けば良かったのかな?
よっすぃーはあたしのため息を心配して動けないでいるし、
でも石川の事も気になるしで、そわそわそわそわ。
ついでに石川も泣きそうな顔して、そわそわそわそわ。
- 235 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時24分00秒
ちっきしょー、いいなあ。
矢口だって、矢口だってさ。
・・・妬いて欲しいよっ!!!
石川の様にとは言わないけどさ。
でもこう、もうちょっとこう。
『矢口はあたしのものやで〜』
ってオーラを出しちゃってもいいんじゃない?
前はよくテレビでも言ってたじゃん。
んでもって、「こら矢口、あたし以外といちゃつくな。」なーんて、
よっすぃーから矢口を奪って、怒ってくれたってばちは当たらないんじゃない?
- 236 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時25分03秒
「・・・中澤さんとなにかありました?」
おそるおそるよっすぃーが尋ねてくる。
「ううん。」
俯いて首をふる。
ごっつぁんと話してる裕ちゃんに勝手に矢口が妬いてるだけなんです。
おまけによっすぃーをダシに妬いてもらおうと思ったのに、ダメだったんです。
・・・なんて言えないよ。
「なにか、意地悪された・・・とか?」
「ううん。裕ちゃん意地悪はたまに言うけど、でも矢口がホントに嫌がることはしないもん。」
でも、して欲しいこともしてくれないんだ。
----よっすぃーから矢口を奪って。
自分からよっすぃーにちょっかい出してるのを棚に上げて
都合のいい空想を膨らます。
- 237 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時25分52秒
「あの、中澤さんって矢口さんにちゃんと『好き』って言ってくれてます?」
「えっ?」
矢口が驚いて顔を上げるとよっすぃーが恥ずかしそうな顔してこっちを見ていた。
「いや、あたし、あんまり言えないんですよねー。何か恥ずかしくて。
だから、梨華ちゃんも不安になったりするのかなぁ・・・なんて。」
すいません、自分のことで。
って大きな体をぺこりと下げる。
うーん、石川の事だから不安になるだろうねえ。
ただでさえネガティブ思考だし。
そっかよっすぃーもあんまり言ってあげられないんだ。
「ううん。裕ちゃんは・・・その。・・・会えば必ず言ってくれる。」
そうなんだ、裕ちゃんはいつもきちんと言葉にして言ってくれる。
それも投げやりじゃなくて、ホントに心からの言葉で。
- 238 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時26分35秒
「そっかー、やっぱり中澤さんかっけーな。あたしも見習おーっと。」
でも。
「でも、・・・矢口も言ってあげてないんだ。」
「へ?どしてですか?」
「いや、多分よっすぃーとおんなじ。なんかさ、恥ずかしくて。」
うんうん、分かりますって頷いてるよっすぃー。
ごめん、ホントは嘘。
恥ずかしいとかそんな理由じゃないんだ。
・・・言うのが怖い。
矢口は、あれから、あの告白以来、裕ちゃんに『好き』って一度も言ってない。
- 239 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時27分12秒
想いが通じ合った今でも、毎日毎分毎秒。
裕ちゃんへの想いは膨らんでいくばかりで。
『好き』なんて言葉じゃもう表しきれない程。
口に出したら、自分の気持ちの大きさに押しつぶされちゃいそう。
矢口、暴走しちゃうよ。
でもさ。
裕ちゃんは不安にならないのかな。
まだ付き合う前だけど、
「人の気持ちに『絶対』はないからなあ。」って言ってた裕ちゃん。
矢口の気持ちを、たまには確認したくならないの?
矢口の気持ちは気にならないの?
- 240 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時28分24秒
矢口は不安になる。
裕ちゃんが『矢口、好きやで。』って言ってくれても。
ぎゅって抱きしめてくれても。
もっともっとって思っちゃうんだ。
もっと好きって言って。
もっとぎゅっとして。
もっと触って。
他の誰も見ないで。
もっともっと。
矢口だけ・・・。
裕ちゃんの心の中は矢口だけがいて欲しい。
- 241 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時29分19秒
なのに、裕ちゃんは矢口に何も求めない。
矢口ばっかりが裕ちゃんを求めてるんだ。
今日だって妬かせようと思って、よっすぃーといちゃいちゃしたのに全然気にしてくれない。
怒ってくれるかと思ったのに、にこって笑って見てるだけ。
裕ちゃん、自分でやきもち妬きだって言ったよね?
どうして、矢口に妬いてくれないの?
矢口のこと好きなんじゃないの・・・?
矢口はダメだよ。
裕ちゃんが誰かと仲良さそうに話してるのを見ただけで
耳の後ろがかっと熱くなって、胸がもやもやして。
それで、息が、胸が苦しくなるんだ。
さっきだってその場で裕ちゃんをごっつぁんから引き剥がして、
矢口だけしか触れない場所に閉じこめたくなっちゃったもん。
この前なっちのことでふくれてた時だって、結局理由を問いつめてくれなかったよね。
キスなんてしてやんない。って思ってた矢口の強がりを読みとったようにキスしてくれた。
- 242 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時29分56秒
どうして、平気なの?
矢口の事は気にならないの?
ちゃんと見てくれてるの?
裕ちゃん。
矢口どんどん欲張りになってくよ。
でも、どうしようもないんだ。
自分じゃ止められないんだ。
裕ちゃんもこんな気持ちになるのかな?
大人だから?
抑えてるの?
そんなんだったら嫌だ。
もっともっと子供になって矢口に全部ぶつけて欲しいのに。
- 243 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時30分39秒
そんなこと考えてたら、あたしはどうやらフリーズしてたらしい。
目の前でよっすぃーの手が上下に何度か揺れた。
「矢口さん?」
「あっ、はは。ごめんごめん。大丈夫だから。」
そろそろよっすぃーを解放してあげなきゃな。
なんて思ったら、不意に後ろからぎゅっと抱きしめられた。
振り向かなくても誰か分かるこの腕の感触。
ぴくって心と一緒に体も動いた。
「や〜ぐち。裕ちゃんともお話ししてや?」
覗き込んでくる裕ちゃんになんて顔していいか分からない。
今一番会いたくて、
今一番会いたくなかった人。
・・・裕ちゃん。
- 244 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時31分46秒
「よっさん、悪いな。矢口返してな?」
矢口を腕に抱いたままよっすぃーに言う。
ちょっとほっとしたようによっすぃーは頷く。
裕ちゃんは矢口の横に腰を下ろす。
それからにこにこした顔であたしに聞いた。
「よっすぃーと何話しとったん?」
この間と同じようにむぅっとした顔で黙り込む矢口に困った顔。
それでも笑って
「矢口、ずーっとよっすぃーと話しとるから、裕ちゃん妬いてまうわ。」って。
何言ってんだよ。
そっちがずっとごっつぁんと話してたんじゃん。
そんな風に笑って簡単に妬いたなんて言うなよ。
矢口だけがこんなに苦しいんだ。
裕ちゃんは笑って済ませることでも。
矢口だけが、こんなに・・・。
裕ちゃんを睨み付けて奥歯をぐっと噛みしめたら、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちた。
- 245 名前:make me your own 投稿日:2002年05月18日(土)21時32分25秒
「や、矢口?」
裕ちゃんが慌てた声を出す。
「ちょっ、あんた・・・どしたん?なあ。・・・ああちょっと泣かんといて。」
ばかやろお。裕子のせいだろお。
矢口だって泣きたくないのに。
「・・うっ・・ヒック・・・。ば・・かぁ・・・。」
ぺしぺしと裕ちゃんの腕を叩く。
涙で歪んでいく視界の中、おろおろしてる裕ちゃんの顔が見えた。
「あー、裕ちゃんが、矢口泣かしたぁー。」
「っちょ、大きな声でゆうなや、なっち。」
周りがなにごとかとこちらを伺ってる空気がする。
でも、涙は止められなかった。
「ああ、ごめんて。矢口?ごめんなぁ。ちょお、こっち。
あたしの楽屋行こ?な?」
裕ちゃんがあたしの肩を抱く。
それから娘。の楽屋から裕ちゃんの楽屋まで泣きながら歩いて行った。
- 246 名前:ユウ 投稿日:2002年05月18日(土)21時33分58秒
- はい、今日の更新は以上です。
- 247 名前:ユウ 投稿日:2002年05月18日(土)21時41分37秒
- >>229 名無し読者さん
レスありがとうございます。
私も強気な中澤さんも好きですが、へたれな彼女も大好きなんです。
ついでに、矢口さんには私の思うままに暴走してもらってますけど。
拗ねたり、妬いたり、素直になったり、忙しい人です。
- 248 名前:ユウ 投稿日:2002年05月18日(土)21時43分17秒
- レスもらえたので、やる気出ちゃいました。
頑張って出来るだけがんがんアップします。
明日にでもまた。
ではでは。
- 249 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月19日(日)00時18分12秒
- いやー、いいですね。
ヤグチの気持ちがいじらしくって、なんか読んでいて胸がぎゅっとなってしまいました。
いつも、「ユウ」さんの文章は無駄がなくて、きれいですよね。
表現もスマートだし・・・
ヤグチの暴走、等身大のように感じます。
きっと、実際の二人の間でも、拗ねたり、泣いたり、妬いたり(?)、素直になったり。
いろいろな「やぐちゅー」小説の中、最高レベルの心理描写の作品です。
次回も楽しみです。
- 250 名前:ユウ 投稿日:2002年05月19日(日)21時43分03秒
- 更新します。
今日は中澤さん。
- 251 名前:強がり 投稿日:2002年05月19日(日)21時44分18秒
ごっちんと話していたらいたら圭ちゃんが来た。
ごっちんに一言二言話してから、あたしの隣に座る。
圭ちゃんと二人で話すのも久しぶりやなあ。
最近は娘。の楽屋に来ても矢口にくっつき通しやったから。
・・・きれいになったなあ。
自信って顔に出んねんな。
仕事とプライベート、両方充実すると、あんな顔が出来るんや。
きりっとして。ええ顔しとる。
「・・・なに?」
そんなこと思っとったら、圭ちゃんが怪訝そうな声であたしに聞いた。
「いや、圭ちゃん最近きれいになったなあ思て。なんや恋でもしてるんか?」
なあ、そやろ?そやろ?
相手、当てたろか?
- 252 名前:強がり 投稿日:2002年05月19日(日)21時45分00秒
「なっ、何言ってんのよホントにもう。誰彼かまわずそんなこと言ってると矢口が怒るよ。」
何でそこで矢口の名前が出んねん。
別に口説いてるわけちゃうやん?
ほんまにそう思ったからゆうてんねんで?
笑ってそうゆうと。
「はいはいありがと。でも裕ちゃんが気にする相手はあたしじゃないでしょ?」
ちょっ、もお。
なんやの?さっきから。
ばれてるゆうのは分かっとったけど、
そんな何度も、矢口のことゆわんでもええやん。
なんや、恥ずかしくなってきた。
- 253 名前:強がり 投稿日:2002年05月19日(日)21時45分33秒
「大丈夫や。ちゃんと気にしてるって。」
「じゃあ、あれは?」
圭ちゃんの視線の先には、矢口と吉澤の姿。
先ほどから、子犬二匹がじゃれ合うように楽しそうにふざけてる。
あんなあ、圭坊。
そんなんゆわれなくても、さっきから気になってるっちゅーねん。
あぅ、矢口。
ちょっあんた、それくっつきすぎとちゃう?
よ〜し〜ざ〜わ〜。
気安く矢口の肩を抱くな!
矢口もそこで、笑うなっちゅーねん。
あんたのその人を見上げた笑顔はやばいんや。
大体、あんたが笑う場所はあたしの腕の中やろ?
- 254 名前:強がり 投稿日:2002年05月19日(日)21時46分23秒
胸がもやもやする。
耳の奥がかっとなる。
呼吸が苦しくなる。
だから、あんまり見んとこって思っとったのに・・・。
はっとして、圭ちゃんを見た。
良かった・・・。
気付かれてないわ。
こんなことくらいで妬くなんて。
あたしはいくつやっちゅう話やで。
----矢口を誰にも触らせたぁない。
あたしのものやって、みんなに言いたい。------
あの笑顔が他の誰かに向けられると、胸が苦しくて仕方なくなる。
誰にも、誰にも。
たとえそれが、娘。の誰かだとしても。
触らせたくないんや。
- 255 名前:強がり 投稿日:2002年05月19日(日)21時47分12秒
でもな、そんなん、不可能やん?
仕事も大切。
仲間も大切。
あたしはそうやって頑張ってる矢口が好きやねんから。
思ってることすぐ分かるような表情がええねん。
強がり言ってても、何よりも素直に話すあの目がええねん。
だから、あたしがそれを押さえつけるわけにはいかんのや。
いちいち妬いて、矢口の感情を押さえつけるのだけは絶対にしたぁない。
気を抜くと、すぐにあたしの中に強烈な独占欲が生まれてしまう。
いかんいかん。
優しい子やからな。
あたしのこと気にしてのびのびできんようになったら、それはあたしが悲しいもん。
- 256 名前:強がり 投稿日:2002年05月19日(日)21時48分08秒
「ああ、あれなあ。まあ矢口だってたまにはあたし以外の奴とじゃれつきたいやろ?」
だからこうやって、理解のある大人のふりをするんや。
「・・・裕ちゃんは妬いたりしないんだ?」
めちゃめちゃ妬いてるわ!
まあそれはいわんとこ。
圭ちゃんは腑に落ちない顔してさらに続ける。
「もしかして、裕ちゃんも妬いてほしかった・・・とか?」
は?
何でそうなるの?
「はあ?ちゃうわ。あたしがそんなめんどくさいことするかい!」
「いや、でもほら。恋の駆け引きって奴?」
- 257 名前:強がり 投稿日:2002年05月19日(日)21時48分47秒
駆け引き・・・か。
万が一、引きが弱かったり、反対に強くなりすぎたり。
相手を傷つけるだけやったら、どおすんやろ。
あたしはそんなのしたくないわ。
それに駆け引きって、自信があるからするんとちゃうんかなあ。
自分のことを何があっても好きでいてくれるって自信。
不安にさせても必ず自分の所に戻って来てくれるって自信。
あっでもそんな自信があったら、いちいち相手の気持ちを確かめるようなことする必要ないか・・・。
・・・やっぱり、恋って難しいなあ。
- 258 名前:強がり 投稿日:2002年05月19日(日)21時49分21秒
「はぁ〜。恋の駆け引き・・・ね。そんなんようせんわ。」
「どうして?相手の気持ちを引きたいと思わない?」
まあ、確かに昔のあたしならしとったけどね。
でも、やっぱりそれはあたしの柄じゃない。
はは。
圭ちゃんにえらそうなことゆうてから、空笑いが出てきた。
人の前だとええ格好出来るんやなあたし。
なら、今胸の中で渦巻いてる嫌な固まりはなんやっちゅうねん。
- 259 名前:強がり 投稿日:2002年05月19日(日)21時50分43秒
「矢口には伝わってる?」
相変わらず、核心を突く質問する圭ちゃん。
あんたとみっちゃんはホンマ要注意やな。
「と、思うんやけどな・・・。」
あたしが矢口を好きやってことは何度も伝えてるし・・・。
「まあ、とにかく矢口を吉澤から引き剥がしてあげてよ。
あそこで一人凹んじゃってる子がいるんだけど?」
石川が救いを求めるような顔でこっちを見ていた。
- 260 名前:強がり 投稿日:2002年05月19日(日)21時51分16秒
「あっほんまや。なんや圭ちゃん世話好きやなあ。」
石川のお願いと見せかけて、動けないあたしの背中を押しにきてくれたんか?
まさか・・・な。
勘のいいあんたにでも、そこまでは読まれてないやろ。
それとも、そこまであたし情けない顔しとった・・・?
でも、ま、矢口のとこに行くきっかけを作ってくれてありがとお。
お礼と愛情を込めて、圭ちゃんの頭をくしゃっと撫でたった。
行こうとすると呼び止められる。
「乙女心は結構複雑なんだよ?」
ダメ押しされてしもた。
「はいはい。分かってますって。」
「ふ〜ん、自信たっぷりでいいなあ。
あたしも裕ちゃんみたいにじたばたしない恋愛がしたいよ。」
- 261 名前:強がり 投稿日:2002年05月19日(日)21時51分47秒
・・・じたばたしない恋なんてないやろ。
圭ちゃんがじいっとこっちを見ている。
あちゃ、聞こえたか?
まあ、これくらいの本音ゆわせてや。
あんたにくらいにしか、ゆわれへんねん。
「あたしは多分。
いくつになってもじたばたと矢口に恋し続けるわ。」
じたばたするのも、恋の醍醐味、やろ?
「それ、矢口に言ってあげなよ。」
「はは。そやな。」
なんか圭ちゃんと話したら、ちょっとすっきりしたでえ。
ありがとおな、圭坊。
あんたがいつか、じたばたしとった時、
今度は姐さんが背中押したるからな。
- 262 名前:ユウ 投稿日:2002年05月19日(日)21時52分29秒
- はい、今日の更新は以上です。
- 263 名前:ユウ 投稿日:2002年05月19日(日)21時52分59秒
>>249 名無し読者さん
うーれーしーいー!!!
最大級の賛辞。ありがとうございます。
でも、なんか・・・ちょっと。
そんな誉めていただけて、恐縮です。恐れ多いです。
でもほんっと嬉しいです。
心理描写には結構時間をかけているのでそこまでちゃんと、読んでいただけると・・・。
ぐすん。
うれし涙、ぽろり。です。
誉められるの大好きなもんで、どんどん調子にのって木に登って更新しちゃいます。
まさか、私の性格、読まれてる・・・?
- 264 名前:ユウ 投稿日:2002年05月19日(日)21時53分41秒
- 明日か明後日に矢口さんのをのせたいと思います。
ではではまた。
- 265 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月19日(日)22時47分10秒
- レスありがとうございます。
小説を書いてくれるだけでも、有り難いのに、
「ユウ」さんは、レスも丁寧に応えてくれるので、とてもうれしいです。
「最大級の賛辞。」
いやいや、ホントに思っていることを、自分なりに表現しているだけで、
必要以上に褒めているわけではないです。
「ユウ」さんは、私にとっては、かけがいのない大切な作者さんです。
出会えてよかった。
これからも、たくさんのしあわせなやぐちゅーで、私を癒してください。
よろしくお願いします。
- 266 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月21日(火)15時16分04秒
- 矢口ですか(w
待ってまーす。
- 267 名前:ユウ 投稿日:2002年05月21日(火)18時35分08秒
- 更新します。
矢口さんです。
- 268 名前:make me your own 投稿日:2002年05月21日(火)18時36分12秒
裕ちゃんの楽屋。
畳の上で、裕ちゃんと矢口は向かい合って。
裕ちゃんが矢口の前にペットボトルのお茶を置いた。
無言でそれを飲む。
涙はようやく治まってくれた。
「さて、と。」
「なんで泣いたのか、話してくれるか?」
裕ちゃんが真剣な顔であたしを見てる。
ああ、この顔好きだなあ。
あたしはこんなときなのに場違いなことを考えてる。
「裕ちゃん、矢口になんかした?」
言えない・・・。
ただ単に、裕ちゃんはごっつぁんと話してただけなのに、それに勝手に妬いてた、なんて。
よっすぃーとのことを妬いて欲しかったのに、妬いてくれなくて勝手に悲しくなって
涙が出てきた、なんて。
これっぽっちの理由で泣いたなんて言ったら、裕ちゃん、きっと矢口のこといやになっちゃうよ。
- 269 名前:make me your own 投稿日:2002年05月21日(火)18時37分04秒
「なあ、話してくれんと裕ちゃんどおしていいか分からんよ。」
今度はほんとに困ったような顔で矢口を見つめる。
こんな表情も、好きだなあ・・・。
抱きしめるのを迷うように裕ちゃんの腕が矢口に伸びてはまた引っ込む。
強引に抱きしめてくれたらいいのに。
「・・・嫌いにならない?」
俯いてそう聞いた。
矢口はずるいんだ。
こう聞けば、裕ちゃんが必ず否定するって分かってて。
「あたしが?矢口を?嫌いになんてなるわけないやん。」
なにゆってんのホンマにもおー。
って言いながらようやくぎゅっと抱きしめてくれる。
- 270 名前:make me your own 投稿日:2002年05月21日(火)18時38分21秒
やっとたどり着いた腕の中で目をつぶって一気に言った。
「あのね、裕ちゃんが誰かと話してるだけで、胸がぎゅっと苦しくなるの。
こんなことで妬いたらダメだって分かってるのに、どおしようもなく苦しいの。
・・・裕ちゃんを誰にも渡したくないの。矢口だけのものにしたいの。
ごめんね・・・裕ちゃん。矢口さ、どんどん欲張りになってくよ。
・・・自分を抑えられなくなっちゃったよ。」
裕ちゃんが矢口の背中をぽんぽんと撫でてくれる。
「・・・そっか。そっかあ。つらかったんやな・・・。ごめんやで。
でも大丈夫やで、そんなことで嫌いになんてならへんよ?
矢口の気持ち、裕ちゃんめちゃめちゃ嬉しいもん。
あたしは、矢口のものやんか。な?
だから、安心しぃ。
誰とおったって、あたしは矢口のものやねんから。」
「・・・うそ。」
「なんで、あたしが矢口に嘘つくねん。」
- 271 名前:make me your own 投稿日:2002年05月21日(火)18時39分13秒
「・・・裕ちゃんさ、矢口のこと、ちゃんと・・・好き?」
「へ?そんなんいっつもゆうてるやんか。
・・・矢口のこと、大好きやで?誰よりも誰よりも大好きやで。」
「じゃあ、何でさ。何で・・・。」
声が大きくなる。
「なんで裕ちゃんは妬いてくれないのさ?
もっとみんなに、矢口はあたしのものやって顔してよ。
聞き分けのいい顔なんてしないでよ。
矢口が誰かとじゃれてたら、奪いに来てよ。
誰にも渡さないって、怒ってよ。」
- 272 名前:make me your own 投稿日:2002年05月21日(火)18時40分10秒
そんなこと出来るわけないのに。
分かってて駄々をこめる。
こんなのただの子供のわがままだ。
涙がまたぼろぼろ出てきた。
裕ちゃんは黙っちゃった。
やっぱり言わなければ良かったのかも。
裕ちゃん、嫌いにならないで。お願い。
- 273 名前:make me your own 投稿日:2002年05月21日(火)18時41分18秒
はあ〜。
裕ちゃんが長いため息をつく。
「ああもう。」
「何で、あんたはそんなことゆうの?」
「なんであんたは・・ホンマに・・・。
あたしが必死に抑えとるのに、簡単に壊そうとするなや。」
裕ちゃんは腕をほどいて、正面から矢口を見つめる。
苦しそうな顔。
怒ってるんじゃなくて、泣きそうに眉間を強ばらせてる。
裕ちゃん。
やっぱり、抑えてたの?
そんなの止めて、裕ちゃんを全部見せてよ。
- 274 名前:make me your own 投稿日:2002年05月21日(火)18時44分27秒
〜♪♪♪♪♪
不意に矢口の携帯がメールの着信を知らせた。
思わず注意が携帯にそれる。
「・・・あたし、今そのメールの相手に嫉妬してる。」
拗ねたように裕ちゃんがぽつりと言った。
「えっ、これ?」
携帯を手に取って見せる。
「今、矢口が握ってる携帯にも、嫉妬してる。」
「な・・にそれ、冗談言わないでよ。」
なのに裕ちゃんは気にせず続ける。
「その座布団にも。」
矢口が座ってる座布団に触る。
「お茶にも。」
ペットボトルを手に取る。
「それに、・・・吉澤にも。」
!!
妬いてくれてたの・・・?
- 275 名前:make me your own 投稿日:2002年05月21日(火)18時45分14秒
「矢口が触れるもの全部、矢口の目に映る物全部。
矢口が笑いかけるもの全部。
あたしは羨ましくてしょうがないんや。」
「嘘やと思ってるやろ?」
「抑えておかないとやばいのは、あたしの方やで?」
少しずつ裕ちゃんの顔が矢口に近づく。
額をこつんと矢口のにぶつけて、裕ちゃんは話し出した。
「あたしかて、あんたへの想いがめっちゃ強すぎて、
一度吐き出したら自分で自分を抑える自信がないねん。」
- 276 名前:make me your own 投稿日:2002年05月21日(火)18時45分57秒
「あたしに会ってないときのあんたも。・・・ほんとは全部束縛したい。」
「誰も見るなって言いたい。」
「誰にも触るなって言いたい。」
「あんたに触れていいのは、好きやって言っていいのは、あたしだけやってみんなに言ってまわりたい。」
「好きやねん。」
「苦しくて苦しくて仕方ないほど、あんたが好きやねん。」
- 277 名前:make me your own 投稿日:2002年05月21日(火)18時46分54秒
泣きそうな顔で裕ちゃんが矢口の髪に手を通す。
「この髪も・・・あたしのものや。」
そう言って矢口の髪の毛にキスをする。
「この指も。」
指に唇を寄せて矢口を見る。
「この涙も。」
両手で頬をはさんで涙を舌で舐めてくれる。
「この目も。」
瞼にキスを落とす。
「耳も。」
耳元でチュッて音がして、それから耳たぶを甘噛みされた。
初めての刺激にぷるって体が震えちゃう。
- 278 名前:make me your own 投稿日:2002年05月21日(火)18時47分40秒
「おでこも。」
「鼻も。」
「頬も。」
言葉通りにキスを落としていく裕ちゃん。
「・・・この唇も。」
矢口をじっと見つめる。
人差し指で唇をゆっくりなぞる。
薄く口を開くと裕ちゃんの指が矢口の舌に触れた。
ゆっくり裕ちゃんの指を舐めると裕ちゃんがぴくって動いた。
- 279 名前:make 投稿日:2002年05月21日(火)18時48分18秒
ぎゅっと抱き寄せられてそれから。
柔らかいキス。
軽いキスなのにどきどきして、頭がぽーっとなる。
唇を離して矢口を見て。
「それから・・・」
そう言って、矢口の左胸に手を置く。
裕ちゃんの目から涙がこぼれ落ちた。
「心も。」
---あたしのものや。
かすれた声でそう言うと、裕ちゃんは矢口の左胸にゆっくりキスをした。
- 280 名前:ユウ 投稿日:2002年05月21日(火)18時49分25秒
- はい、更新は以上です。
これでひとまずこの話はおしまいです。
弱い中澤さん、好きなんです。
まったく私の趣味の話ですみません。
- 281 名前:ユウ 投稿日:2002年05月21日(火)18時50分08秒
>>265 名無し読者さん
ありがとうございます。
いやいや、レスをいただけるのがほんっと嬉しいんですよ。
読んでもらえるだけじゃなく、しかもそれを気に入ってもらえるなんて・・・ねえ。
嬉しいですよ。ホント。
頑張ってこれからも癒し系な話を書いていきたいと思うんで、また、感想なんぞお願いします。
>>266 名無し読者さん
レスありがとうございます。
待ってもらった甲斐あったでしょうか?だと、いいんですが・・・。
- 282 名前:ユウ 投稿日:2002年05月21日(火)18時51分10秒
あとこれの続きの短いおまけの話が2つあります。
それはまた、今度。
ああ、最後のタイトル欠けちゃったよ・・・(涙)
- 283 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月22日(水)00時14分51秒
- 「ユウ」さん、こんばんは。
いつも楽しませていただき、ありがとうございます。
今回の章は、いつもは強い裕ちゃんが、ヤグチへの想いをとつとつと話す、
切ないシーン満載ですね。
前回のヤグチに次いで、私の胸もぎゅっとなりました。
幸せな告白なのに、切なく感じるのはなぜでしょう?
「ユウ」さんの、心理描写の上手さでしょうか。
二人の真剣さが、じっくりとお互いに染みこんでいくような気がします。
このまま「やぐちゅー」の幸せが続きますように。
- 284 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月22日(水)17時10分44秒
- 弱くて脆い中澤さん私もひそかに好きです。
だからユウさんの小説はすべてツボにHITしまくりなのでしょうか?(w
- 285 名前:ユウ 投稿日:2002年05月22日(水)20時28分48秒
- おまけのやつ二つ。
短いのですけど、更新します。
まずは中澤さん。
- 286 名前:white flag 投稿日:2002年05月22日(水)20時30分05秒
ふぅ〜。
壁にもたれて、矢口を背中越しに抱きしめた。
きゅっと腕に力を込めて矢口の首筋に顔をうずめる。
息を吸って、矢口のにおいを胸に満たした。
あたしが一番安心する、このにおいとぬくもり。
『・・・裕ちゃんさ、矢口のこと、ちゃんと・・・好き?』
不安にさせてたんやなあ。
ごめんな、矢口。
圭ちゃんのゆうとおりやったわ。
好きって伝えてるだけじゃ、あかんかったんやな。
あたしが大人のふりしてええ格好してるのなんて、
矢口は望んでなかってんな。
- 287 名前:white 投稿日:2002年05月22日(水)20時31分34秒
この子は、ホンマに・・・。
あたしが必死になって抑えとった感情なんて簡単に壊しよる。
いつものまっすぐなその目で。
あたしをいくらでもかき乱すんや。
つよがり言ってたのはあたしの方やったってことか。
あんたなあ。
分かってるの?
あんたの言葉一つでめちゃめちゃ安心してるあたしがおるんやで?
- 288 名前:white flag 投稿日:2002年05月22日(水)20時32分54秒
『なんで裕ちゃんは妬いてくれないのさ?
もっとみんなに、矢口はあたしのものやって顔してよ。
聞き分けのいい顔なんてしないでよ。
矢口が誰かとじゃれてたら、奪いに来てよ。
誰にも渡さないって、怒ってよ。』
矢口。
あんたはやっぱり強いなあ。
どこまでもまっすぐなんやな。
あんたの言葉があたしの鎧をはがしていくんや。
矢口はあたしのものやって。
ゆってもええねんな?
覚悟しいや。
- 289 名前:white flag 投稿日:2002年05月22日(水)20時34分00秒
なあ。
なあ。
あたしの腕の中でくつろいでる、そこのあんたや。
あたしの髪の毛をいじりながら、今は鼻歌なんかも出ちゃってる、そこのあんたや。
分かってるの?
あたしの気持ち、全部ぶつけてもええのか?
逃げたくならんか?
でもな。
あたしも腹をくくるわ。
欲張りに、あんたの全部を奪いに行くわ。
あたしの全部も、いらんゆうても全部あんたに差し出したるわ。
- 290 名前:white flag 投稿日:2002年05月22日(水)20時34分57秒
好きやなあ、ホンマに。
どおしよお、あたし。
好きやって伝えるだけで涙が出てくるなんて。
ああ、ホンマに。
・・・こんなに、好きでどおしたらええねや。
責任取ってや?矢口。
- 291 名前:ユウ 投稿日:2002年05月22日(水)20時35分46秒
- おっしゃ、お次は矢口さん。
- 292 名前:カノン 投稿日:2002年05月22日(水)20時36分53秒
裕ちゃんが矢口の心も、あたしのものやって言ってくれた。
どきどきした。
言われた時、胸がしめつけられるように痛くなった。
裕ちゃんの涙を見たとき、裕ちゃんの気持ちも伝わってきて。
ああ、ホントなんだ、って・・・。
ホントに裕ちゃんは矢口のことを好きでいてくれるんだって。
嬉しいよお。
裕ちゃん。
あんなつらそうな裕ちゃんの顔、初めて見たよ。
矢口がそうさせたの?
ごめんね。
- 293 名前:カノン 投稿日:2002年05月22日(水)20時37分52秒
でもね。
矢口は嬉しかった。
裕ちゃんのキスは壊れ物を扱うように優しくて、
あんなキスは矢口も初めてで。
胸がぎゅって掴まれて。
裕ちゃんにキスされた場所が一つずつ特別なものに変わっていった。
矢口の全部をあげるよ。
だから裕ちゃんの全部をちょうだいよ。
- 294 名前:カノン 投稿日:2002年05月22日(水)20時38分43秒
今、矢口は裕ちゃんの腕の中。
矢口の一番大好きなこの場所。
首筋に裕ちゃんの呼吸を感じる。
ちょっとくすぐったい。
でもすごく心地よくて、裕ちゃんのきれいな髪の毛をいじってた。
この髪も、矢口のもの。・・・だよね?
裕ちゃん。
大好き。
- 295 名前:カノン 投稿日:2002年05月22日(水)20時39分39秒
でもね、一つ忘れてる。
もう一つ、裕ちゃんのものがあるんだよ。
この声。
裕ちゃんに『アホ』っていう声も。
強がりわがまま憎まれ口叩く声も。
キスしたときにちょっとこぼれちゃう声も。
歌う声も。
もしも裕ちゃんに届かないなら何のために歌うの?
ねえ教えて。
裕ちゃんのために歌い続けるから。
頑張るから。
- 296 名前:カノン 投稿日:2002年05月22日(水)20時40分10秒
だからさ。
だからねえ、お願い。
いつだってこの腕に、裕ちゃんにしがみついてるから、
側にいて愛して可愛がって、矢口をずうっと離さないで。
ねえお願い。
- 297 名前:ユウ 投稿日:2002年05月22日(水)20時41分15秒
- はい、更新は以上です。
ちなみに矢口さんのはまた好きな歌からちょっといただいてます。
- 298 名前:ユウ 投稿日:2002年05月22日(水)20時42分32秒
- >>283名無し読者さん
どもども、早速の感想ありがとうございます。嬉しいっす。
切なかったですか?すみません、私が好きなもんで。
ホントならもっと甘甘になってもいいはずなのに。
中澤さんにはいつか自信たっぷりに「矢口はあたしのものや。」(口の端をつりあげての笑顔付き)
って言わせてみようと思います。(あれっ現実ではよく聞くなあ。)
>>284名無し読者さん
ありがとうございます。
ツボでした?良かったぁ。
ギャップがある人が好きなんですよ。
気が強そうなのに実は脆い、とか。
憎まれ口叩いてばっかりなのにふとした時に素直、とか。
なので、これからもそんな二人を書いていきたいと思っております。
良かったらまたレス下さいな。
- 299 名前:ユウ 投稿日:2002年05月22日(水)20時43分22秒
次回更新は来週にでも。
今度はもっとラフに甘〜くいってみるつもりです。
(とは言うもののちょっと自信なし。)
ではまた。
- 300 名前:ちぃ 投稿日:2002年05月23日(木)08時26分19秒
- 自分もギャップのある人好きです。
一生懸命なのに不器用な人とか
黙ってりゃ綺麗なのに口を開くと天然な人とか
見た目は無表情だけど結構感情は豊かそうな人とか
結構好きです。
- 301 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月24日(金)19時28分48秒
- やぐちゅーに乾杯!!
凄い!
ただそれだけです。(w
いいもの読ませていただきました。
- 302 名前:ユウ 投稿日:2002年05月27日(月)17時54分43秒
- 更新します。
- 303 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月27日(月)17時56分41秒
「ほな、カオリ。明日な。」
うん、裕ちゃんメールするねーって言葉に手で応えて楽屋を出た。
『裕ちゃん、ちょっとまた話聞いてもらってもいい?』
カオリからそんなメールが来るのは、あたしが卒業してからよくあることで。
だから今日収録で会ったときに、お互いいつ時間があるのか確認して
明日の夜ならってことで決定した。
カオリとご飯を食べながら話すのは楽しい。
お酒も無理しない程度に付き合ってくれるようになったし。
娘。のことやプライベートのことまで、色々と相談してくれる。
体は大きいのに繊細な心を持つカオリだから、リーダーってポジションも
いろいろストレスがたまるんやろうなあ。
だからこうやって話してくれて、裕ちゃん嬉しいねんで?
まだまだ頼りにされてるやんって思えて。
でもな、だいぶしっかりしてきたなカオリ。
5年前はこうして一緒にお酒を飲めて、仕事について対等に話せる日がくるなんて、
裕ちゃん想像できひんかったよ。
嬉しいなあ。
- 304 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月27日(月)17時57分52秒
「ねーゆーちゃん、明日カオリとご飯食べるの?」
明日のことを考えてにこにこしているあたしの横にいつのまにか矢口が並んだ。
おっかわいい格好して。
これから収録か?
「うん、そうなんや。ちょっと久しぶりにな。」
「う〜、いいなあ・・・。」
矢口も行くか?って言葉をのみこんだ。
カオリは相談したいことがあるってゆってたなあ。
それなのに断りもなく矢口を連れていったら、やっぱり失礼やろ。
ごめんなあ、矢口。
そんなことを思ってたら、よっぽど困った顔で矢口を見ていたのだろう。
矢口はちょっと寂しそうな顔しながらも、
「でも、明日遅くまで仕事だしな。・・・うっし、矢口はお仕事ガンバるよ。」
って小さくガッツポーズ。
「裕ちゃん楽しんで来てね。でも飲み過ぎちゃダメだよ。」
笑ってあたしの頭をなでてくる。
- 305 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月27日(月)17時58分44秒
なんやあんた、健気やね。
ホンマはまた苦しくなったりしたんやないの?
「大丈夫か?」
・・・胸、痛ぁない?
自分の心臓を親指で指して聞く。
「う〜ん、ちょっと痛いかも。」
矢口は苦笑いして、自分の胸をとんとん叩く。
「でも裕ちゃんは・・・・・、矢口のものだから。だからだいじょぉぶ。」
自分に言い聞かすように頷いて、今度はもっときれいな笑顔を見せてくれた。
!!
ああもう。
なんでそんなかわいいことゆうの?
「あ〜もう。矢口ぃ。むっちゃ好き。」
矢口の体をきゅっと抱きしめた。
そのままちゅうしようと思ったら
「ちょっ、ダメだって。」
ああそうやった、ここ廊下やった。
しぶしぶ矢口から離れる。
- 306 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月27日(月)18時00分06秒
「ねえ、でも今度さぁ・・・。」
あたしの服の裾を握って矢口が言った。
その時遠くから、嫌な気配。
「「お〜や〜び〜ん!!」」
大声で叫びながら矢口にタックルしてくる加護と辻。
勢いにふっとぶあたしのかわいい子。
そのまま、矢口に抱きついて連れていこうとするので、
ちびっこ二人をべりっと矢口から引き剥がした。
「「うあっ。」」
「「中澤さん、なにするんですかぁっ。」」
・・・あんたら練習しとるの?
それにしても、チビ二人にまで妬いてまうあたしって大人気ないかなあ。
むくれてるあたしの顔を見て
矢口はまず意外そうな顔をし、それから嬉しそうに笑った。
「すぐ行くから、先行ってて。」
って辻加護の背中を押す。
- 307 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月27日(月)18時01分00秒
「今度、なに?どっかいこっか?映画でも見る?」
辻加護を見送ってから、矢口にさっきの話の先を促す。
そうやなあ、矢口忙しいけどたまには外でデートしたいよなあ。
「うん、どっかって言うか・・・。」
「ん?行きたいとこある?」
もうあたしの顔はにこにこや。
だって、矢口とデートの約束だもん。
「・・・・・裕ちゃんち。」
ぽつりとつぶやく。
「えっ?あたしんちでええの?別にそれはかまわんけど。
どっかに遊びに行ってもいいんやで?」
そりゃあまあ、うちの方がゆっくり出来るけど。
- 308 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月27日(月)18時02分08秒
「いいの。行きたいの。でさあ、で・・・・・・、
矢口ご飯作ってあげるからさ・・・泊まってもいい?」
首をかしげて聞いちゃって。
あんたもうかわいいなあ・・・。
でも、不純なあたしは泊まりって単語にぴくって反応してしまう。
「あっ、ええよ。あの・・いつでもおいで?」
動揺がばれないように努めて冷静にゆう。
今の棒読み?大丈夫やよね?
「ホント?やった!」
矢口の方はなんも他意はなさそうに無邪気に喜んでるし。
この小悪魔が。
- 309 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月27日(月)18時02分56秒
「あっでも、やっぱりしばらくは無理やなあ。ドラマ朝早いし。」
みるみるうちにしょんぼりする矢口。
ごめんなあ。
だってそしたら、ゆっくりできひんやん?
それにここんとこ裕ちゃん寝不足やねん。
「あ"ーそおかあ・・・。ま、でもいいよ。それまでに何作るか考えとくからさ。」
あたしを見上げてにこっと笑う。
ひまわりみたいな笑顔。
この笑顔のために頑張ろうって思えるんや。
あーもう、かわいいなあ。
ちゅうしたいなあ。
抱きしめたいなあ。
でもここ廊下やし。
矢口これから収録やし。
- 310 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月27日(月)18時03分50秒
「矢口、これから収録やんな?」
「うん。」
「終わったら、楽屋おいで?」
「ん、オッケー。」
「頑張るんやで。」
頭を撫でたった。
行って来ま〜すって手を振ってスタジオに向かう矢口を見送った。
振り返ってもう一度大きく両手を振ってくれる。
うぁかわいい。
みなさーん、あそこに歩いてるちっこい子はあたしのもんですよー。って。
今すぐ叫び出したいわ。
・・・今度、売約済みって紙貼っとこ。
- 311 名前:ユウ 投稿日:2002年05月27日(月)18時05分24秒
- はい、短いですけど本日の更新でした。
- 312 名前:ユウ 投稿日:2002年05月27日(月)18時06分17秒
>>300 ちぃさん
レスありがとうございます。
ギャップのある人・・・いいですよね。
私事ですが、きれいな大人の人だと思ってた人が子供のような無邪気な表情すると、
すごく目を奪われてしまいます。
ってことで今回のテーマもそれです。
>>301 名無し読者 さん
レスありがとうございます。
ありがたいお言葉に感激・感涙です。
今回の話もまったく私好みな話なんですが・・・。
こんなんでもいいんでしょうかねえ?
- 313 名前:ユウ 投稿日:2002年05月27日(月)18時07分54秒
- これの続きの話があります。
それはまた明後日にでも。
ではでは。
- 314 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月27日(月)20時45分13秒
- カオリにヤキモチを妬いていることを、素直に表現するヤグチ、
非常に可愛いですね。
裕ちゃんも、ヤグチを苦しめないように気を使うところなんか、
優しさが滲み出ていて、本当にカッコイイ。
なんか、フィクションに思えないですよ。
「ユウ」さんの、自然で素直な表現に、こちらまで気持ち柔らかくなります。
甘々の「やぐちゅー」で、私の心を浄化させてください。
続き、とてもとてもとても・・・
楽しみにしています。
- 315 名前:ユウ 投稿日:2002年05月29日(水)14時19分21秒
- 更新します。
- 316 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月29日(水)14時20分55秒
「あれ?」
ノックの音に何の返答もないのでおそるおそるドアを開けてみたら
座布団を枕にしてぱったりと寝ている裕ちゃんが目に入った。
テーブルの上には「ごくせん」と筆文字でタイトルが記された台本。
散々読み込まれたようにくしゃくしゃになっている。
「ふ〜ん・・・。」
何となくぱらぱらとめくってみると、細かい裕ちゃんの文字がびっしり書き込まれてた。
頑張ってるんだね・・・。すごいよ裕ちゃん。
裕ちゃんは矢口が入って来たことなんてまったく気付かずに
すーすーと小さな寝息を立てている。
・・・最近ロケで朝が早いって言ってたもんねぇ。
頬杖ついて、しばらくテーブル越しに裕ちゃんの寝顔を眺めてた。
- 317 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月29日(水)14時22分29秒
久しぶりに見る裕ちゃんの寝顔はやっぱりとても幼くて、
自分が裕ちゃんを意識しだしたきっかけをぼんやり思い出した。
あの時、朝目が覚めたらすぐ目の前に裕ちゃんの顔があって。
いつもの気を張っている表情はその時とてもあどけなく、無防備なものに変わっていた。
ノーメイクのかわいい口元が薄く開いていて。
その唇に触ってみたいなーって、不意にそう思った衝動を必死になって押さえたんだ。
今もあの時とおんなじ無防備な寝顔。
・・・ぅあかわいい・・・裕ちゃん。
どうしよお。
起こすのかわいそうだし楽屋もどろっかな。
でも、でも。
『楽屋おいで?』って裕ちゃん言ったよね。
矢口もこのまま収録終わってばいばいじゃ寂しいよ。
- 318 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月29日(水)14時23分39秒
う〜ん。
・・・ちょっとだけ。
結局、かまってもらいたいっていう自分の欲求の方が勝ってしまうんだな、あたしは。
あの時触れなかった裕ちゃんの唇を指でつんつんしてみた。
起きる気配はなし。
いいかな・・・。
いいよね・・・?
矢口の中でいたずら心がむくむくと湧き起こる。
ほんとにそおっとそおっと、起こさぬように裕ちゃんに顔を近づけた。
慣れないシチュエーションに心臓がばくばくいってる。
あともうちょっと。
唇が触れる前に目を閉じた。
- 319 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月29日(水)14時24分40秒
チュッ
へへ。
裕ちゃんのおでこにキスしちゃった。
口にしようかと思ったんだけどさあ、なんか額にキスって特別な気がしない?
嬉しいなあ。
「んっ?・・・う〜ん・・・、あれ・・・やぐ・・ちぃ?」
あっ起きちゃった。
裕ちゃんが目をしぱしぱさせながら矢口を見つけてふわっと笑う。
寝起きだからか、力の抜けた幼い笑顔。
こんな裕ちゃんもかわいいなあ。
矢口より年下の子みたいだよ。
- 320 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月29日(水)14時25分36秒
「あっごめんね、起こしちゃった?」
なんて、起きてって思ってたくせに。
「う〜ん、・・・大・・・丈夫。今きたん?」
「うんさっき。裕ちゃんの寝顔見てた。・・・かわいかったよ。」
「なんや来たんなら起こしてくれたら良かったのに。」
裕ちゃんは照れくさそうな顔してもぞもぞと起きあがろうとする。
「あっいいってば。寝てなよ。最近寝てないんでしょ?」
「そやけど・・・。そんな、せっかく矢口に会えてるのに。」
起きあがった体で矢口のことを抱きしめようと手を伸ばしてくる。
でもまだ腕に力が入ってこないみたいで矢口をうまくつかまえられない。
だから今日は矢口からその腕の中に入っていってあげた。
今日の裕子かわいいから、特別だぞ?
安心したように笑う裕ちゃんの背中に手を回す。
- 321 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月29日(水)14時26分41秒
耳元で裕ちゃんが息を吸い込む気配がする。
いつもそうやって矢口のにおいを確認するよね?
くすぐったいけどでも嬉しい。
矢口のにおいを確認すると安心したように「ふう。」って息をもらす。
「ん〜、やぐちぃ。・・・しゅき。」
頬をすり寄せて、裕ちゃんは腕の中の矢口にだけ聞こえるように小さくささやく。
おっと、寝起きでいきなり告白ですか。
しゅき、だって・・・かわいい。
まだ寝ぼけてる?
「ん?大丈夫?まだ眠いの?」
半分閉じかかってる目で頭をぷるぷる振る裕ちゃん。
か、かわいいぞ〜その仕草。
まだはっきり目は覚めてないみたい。
動作がすごいゆっくりしてる。
- 322 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月29日(水)14時27分20秒
チュッ
裕ちゃんはゆっくりキスをしてきて、子供みたいに無邪気に笑った。
下になってる腕を出して矢口からきゅっと抱きしめてあげる。
裕ちゃんの背中をぽんぽんとなでてあげた。
裕ちゃんは嬉しそうに矢口の体にぴったりもたれかかってくる。
甘えっ子裕ちゃんだね、今日は。
ちょっと矢口は得意な気分。
裕ちゃんの体は寝起きの子供みたいにぽかぽかしていた。
- 323 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月29日(水)14時27分55秒
体をちょっと離して裕ちゃんを見る。
ぽーっとぼんやりして、潤んだ目。
眠そうに口角が下がった口元。
火照った頬。
ああもう。
今の裕ちゃんってば。
なんか、なんか、すっごく幼い。
うあ、もうダメ。
直球ど真ん中だってば、この表情。
矢口のかつて刺激されたことがなかった、母性本能ってやつをどかんと直撃してくるじゃん。
- 324 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月29日(水)14時28分37秒
「もうちょっと寝てなよ。時間が来たら起こしてあげるから。」
そわそわし出した気持ちを隠すように優しく言ってみた。
「う〜ん、でもなぁ・・・。」
抵抗するように裕ちゃんが言う。
でも裕ちゃん、声がすっごく眠そうだよ?
「矢口、側にいてあげるからさ。」
こんな顔されたら、離れらんないよ。
「・・・ほんま?」
首をかしげて聞いてくる。
そんな仕草さえかわいくって、もう矢口は撃沈寸前だってば。
「うん。」
そしたらごめんなあ、ちょっとだけ。て言って、
裕ちゃんは矢口の体から手をほどき、でも手は繋いだままで
また座布団を枕に横になろうとした。
- 325 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月29日(水)14時29分35秒
あっ。
実はさっきから気になってたんだ。
畳で寝るのって結構痛いんじゃない?
「・・・あのさ。」
「ん?」
「膝枕・・・してあげようか?」
「えっ!?・・・ええの?ほんま?」
おっ、急に目が覚めた?
でも何でそんなに驚くんだよ。
寝ようとした体をまた起こして、裕ちゃんは嬉しそうな顔して矢口を見ている。
そんな顔されたら、矢口だって嬉しいじゃんよお。
壁際によって自分の背中をもたれさせて足を伸ばした。
よし、ここなら膝枕してても楽ちんでしょ。
枕に使っていた座布団を裕ちゃんの体の下にくるように敷いて、膝をぽんぽんって叩く。
なんだか、期待に満ちあふれた顔の裕ちゃんがちょっとおかしい。
- 326 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月29日(水)14時30分17秒
「じゃ、おじゃまします。」
ぺこって正座でおじぎしてる。
もう裕ちゃん、顔にやけすぎ・・・。
嬉しさ余って歪んだ口元がなんかちょっとエッチィぞお。
裕ちゃんの頭が矢口の太ももにのる。
くすぐったくて恥ずかしくて、照れ隠しに足をばたばたと上下に動かしてみた。
「うお〜い、寝られへんわそれじゃ。」
笑いながら裕ちゃんが下から矢口を見上げる。
ごめんね。
あんまりにも今日の裕ちゃんかわいいから意地悪したくなっちゃうんだよ。
裕ちゃんの髪を撫でてあげると、裕ちゃんは気持ちよさそうに目を閉じた。
もういっこの矢口の手を裕ちゃんはきゅっと握ってる。
しばらくすると裕ちゃんは、穏やかな寝息を立て始めた。
ほんとに眠かったんだね。
- 327 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月29日(水)14時31分03秒
矢口の膝枕で無防備な顔して寝ちゃってる裕ちゃん。
両手で矢口の手をきゅっと握りしめて、顔の前にその手を置いてる。
小さな呼吸が矢口の手にも届いた。
ああもう、どうしよう。
裕ちゃん、かわいすぎるよ。
空いてる手で裕ちゃんのほっぺたをぷにぷに押す。
色、白いなあ。
ほっぺた柔らかぁい。
食べちゃいたいなあ。
このまま収録の時間なんて来なければいいのに。
裕ちゃんの寝顔、もっと見てたいよ。
こんな寝顔見られるのは、矢口だけなんだよ、ね?
- 328 名前:癒し時間 投稿日:2002年05月29日(水)14時32分11秒
う〜んって声にならない声をあげて
裕ちゃんが急に寝位置を変えた。
ごろんと、矢口のおなかに顔を埋めて、
矢口の背中にきゅっと腕を回す。
「・・・やぐちぃ。そんな見つめられたら裕ちゃん妙に緊張するやんか。」
ふえ?
起きてたの?
「あれっ?分かっちゃった?」
こくってうなずく裕ちゃん。
「起きちゃう?」
ぷるぷる首を振る。
「もうちょっとこのままでええ?すっごい安心する。」
裕ちゃんが回した腕に力を込めた。
矢口も・・・。
収録が始まるまでこうやって、ずうっと裕ちゃんの髪を撫でていた。
- 329 名前:ユウ 投稿日:2002年05月29日(水)14時33分27秒
- はい、更新は以上でぇす。
結構今回の話は個人的にも気に入ってたりします。
どおでしょう?
- 330 名前:ユウ 投稿日:2002年05月29日(水)14時34分02秒
>>314 名無し読者 さん
毎度!ありがとうございます。
そうなんです、今回はかわいいヤキモチ目指しました。
> なんか、フィクションに思えないですよ。
それ、ごっつい嬉しいお言葉です。
こんなん言ったらいいなあと思いつつ、違和感のないよう気を付けているので。
- 331 名前:ユウ 投稿日:2002年05月29日(水)14時35分05秒
甘いかどうか自分では分からないんですけど、時折シュガーカットしつつ
極力、甘めの方向で書いていきたいと思いますので、今後とも読んでやって下さいな。
次回更新はまた来週にでも。
でも、今度は内容がちょっと・・・なので、のせるかどうか迷っています。
書いてしまったものの、ちょっと自信がないんですよね。
ここではそんなのがなくてもいいかなあ・・・とか。
でも中澤さん自分で『エロの塊』とか言ってるしなあ・・・。ぶつぶつ。
まあ、どっちにせよ、それ以外の話も出来ているので
何かしらアップしたいと思います、はい。
- 332 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)14時37分55秒
- なぜかリアルタイムで読ませていただきました(w
もう・・・読んでるこっちが・・・トロトロにとろけてしまい大変です。(w
裕子激カワ!!家に持って帰りたい!!(取り乱してすいません
矢口になりたい。(w
やぐちゅーやっぱいいですね。
- 333 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月30日(木)05時45分48秒
- 甘いですね。(w
作者さんの描くやぐちゅーは温かい。
どんどん書いてください(w
- 334 名前:ユウ 投稿日:2002年05月31日(金)19時18分50秒
- 来週更新と言いつつ、書いてしまったものを早くあげてしまいたくなり今日のせちゃいます。
まったく、焦らすってことが出来ないこの性分。
特別バージョンとして、片想い真っ最中の矢口さん過去編です。
- 335 名前:過去編1 ホントの理由 投稿日:2002年05月31日(金)19時20分13秒
バスルームからシャワーの音が聞こえる。
部屋の主がいない静かな部屋で、チャンネルをがちゃがちゃ変えてた。
矢口の目はテレビに向けられているけど、意識はそのシャワーに集中してしまう。
シャワーの音がぴたっと止まった。
ばさっと何かを羽織る音が聞こえて「は〜、すっきりしたぁ。」
ってお風呂上がりの上気した顔で、この部屋の主、裕ちゃんが出てきた。
「なんや、矢口。まだおったん?」
髪をバスタオルで拭きながら、冷蔵庫のビールを取りだす。
横目で矢口を見ながら、裕ちゃんはそう聞いた。
「だって退屈なんだも〜ん。」
ベッドに腰掛けた足をぶらぶらさせてそう応えた。
これはホント。
最近はたまに、ホテルで一人部屋を割り当ててもらえるようになって。
疲れてる時は同室に誰もいない方が気を使わないで済むからいいんだけど。
でも、話し相手がいないっていうのも、ちょっと退屈。
- 336 名前:過去編1 ホントの理由 投稿日:2002年05月31日(金)19時21分05秒
「なっちとかは?」
「う〜ん、なんか今日疲れてたっぽいから・・・。」
これはウソ。
裕ちゃんと話したいから、ここに来てるんだよ。
「なんやそら。あたしかて疲れてるんやで?」
笑って裕ちゃんがビールを口に含む。
分かってるけど、そんなこと言わなくてもいいじゃんよ。
矢口はただ、裕ちゃんの側にいたいだけなのに。
「じゃ、帰るよ。」
これぐらいで怒っちゃう矢口はやっぱり子供だね。
でも、でも。
分かってよ。
- 337 名前:過去編1 ホントの理由 投稿日:2002年05月31日(金)19時22分01秒
「ウソやって矢口。ごめんな。矢口がおった方が裕ちゃん元気出るもん。」
立ち上がった矢口の腕を掴んで、裕ちゃんは自分の横に座らせる。
しぶしぶってふりをして、そこに座るあたし。
・・・素直じゃないなあ。ホントに。
裕ちゃんがそんなあたしの様子を見て笑ってる。
「なに?」
「ん、矢口はホンマに素直やなーと思って。」
えっ!!
何で?
「あんたの顔見てると、裕ちゃん自分が超能力者かと思てまうわ。」
?
「矢口が何考えてるかなんて、裕ちゃんには何でも分かるやで。」
裕ちゃんは得意そうな顔して、矢口の頭をくしゃくしゃと撫でる。
- 338 名前:過去編1 ホントの理由 投稿日:2002年05月31日(金)19時23分11秒
むぅ。
まただ。
またそうやって子供扱いするんだ。
分かってないよ、全然。
矢口がここに、この部屋に、わざわざ裕ちゃんの部屋に来てるのはさぁ。
いいかげん気付けよ、もう。
バカアホどんかんうわきもん。
もう、あったまきたぞ。
「じゃあさ、当ててみてよ。」
へって顔で裕ちゃんが見てる。
「矢口がどうしてここに来たのか、ホントの理由当ててみてよ。」
「どしたん?あんた。・・・そんな急に。」
裕ちゃんは矢口の剣幕にちょっと戸惑った笑みを浮かべる。
「ほらっ、分かんないじゃん。何で矢口がここに来たのか。
ホントの理由なんて全然分かんないくせに・・・。」
- 339 名前:過去編1 ホントの理由 投稿日:2002年05月31日(金)19時24分07秒
何だか無性に悔しくなった。
それが、こうやってかわいくないこと言っちゃう自分に対してなのか、
それとも鈍感な裕ちゃんに対してなのかは分からないけど。
「矢口?どした?・・・なんかいやなことでもあったんか?」
途端に心配そうな顔になる裕ちゃん。
・・・・好きなんだよ。裕ちゃん。
だから、いつだって一緒にいたいの。
ずぅっとずぅっと一緒にいたいの。
ただでさえ、一緒にいる時間が減ってしまったんだから。
でも、どうして矢口はいつも裕ちゃんに
かわいくないことばっかり言っちゃうんだろう。
こんな自分が嫌なのに。
もっと素直に裕ちゃんに甘えたいのに。
反抗的で、かわいげないよね、矢口。
こんなんじゃ、裕ちゃんが矢口を好きになってくれるわけないや。
- 340 名前:過去編1 ホントの理由 投稿日:2002年05月31日(金)19時24分52秒
鼻の奥がつぅんっとなったけど、ぐっとこらえた。
急に怒りだして、あげくに泣いたりしたら、
それこそ裕ちゃんは困っちゃうよね。
・・・ごめんね裕ちゃん。
不意にぎゅっと抱きしめられた。
「ゆうちゃ・・。」
「いいから。・・・なんもいわんとき。」
「・・・ごめんなさい。」
ふっと裕ちゃんが笑う。
「なんで、矢口が謝るん?裕ちゃんがいじわるゆうたからやろ。・・・ごめんなあ。」
背中をぽんぽんと撫でてくれる。
「今はなあ、前みたいに四六時中一緒にはおれへんけど。
それでも、あんたらのことはいっつも気にしてるんやで?
だから、何かつらいこととかあったら、何でも・・・言いや?」
- 341 名前:過去編1 ホントの理由 投稿日:2002年05月31日(金)19時25分40秒
つらいことかあ。
裕ちゃん。
当たってるんだけど、それちょっと違うんだよ。
矢口が悩み事があってここに来たって、そう思ってるの?
まあ、悩み事があるのはホントだけどさ。
まさかそれを当の本人に言えるわけがないじゃん。
でもまあ。
この腕はとても心地良いから。
裕ちゃんをもうちょっと騙して、このままでいさせてもらおう。
裕ちゃんに抱きしめてもらうだけで、こんなにも機嫌が直ってしまう矢口って
我ながら現金だなあって思うけど。
だってさ、ホントに気持ちいいんだよ、この腕は。
- 342 名前:過去編1 ホントの理由 投稿日:2002年05月31日(金)19時26分17秒
「・・・裕ちゃん?」
「なんや?」
「矢口がここに来たホントの理由はね・・・。」
「うん。」
「裕ちゃんの部屋の冷蔵庫からみんなの分のジュースもらうためなの。」
ああ?
あんたなあ、ホテルのジュースは高いんやで?
もう、下の自販機でこうたらええやろ。
ホンマにもう。
なんやねんなあ。心配して損した。
笑ってぶつくさ言ってる裕ちゃん。
- 343 名前:過去編1 ホントの理由 投稿日:2002年05月31日(金)19時26分51秒
矢口のウソには気付いてるから本気で怒らないんだね。
抱きしめてくれる腕もそのままなんだね。
裕ちゃん。
こんな風でしか甘えられない矢口を許して。
いつかここに来たホントの理由。
裕ちゃんに話せる日が来るのかな。
- 344 名前:過去編1 ホントの理由 投稿日:2002年05月31日(金)19時27分31秒
- -------------------------
「もう一本、飲んでいい?」
「あかん。」
裕ちゃん。
そんな風に大人気ないところも。
・・・けっこう好き。
-------------------------
- 345 名前:ユウ 投稿日:2002年05月31日(金)19時28分35秒
- 特別バージョンの過去編でした。
やっぱり私は片想い中の矢口さんが好きみたいです。
- 346 名前:ユウ 投稿日:2002年05月31日(金)19時29分28秒
>>332 名無し読者 さん
ありやとございやっす。
かわいいと思っていただければ作戦成功です。良かったぁ。
臨場感あふれるその取り乱し方、結構好きです。
では、中澤さん一人前、テイクアウトの方向で。
>>333 名無し読者 さん
ありやとございやっす。
当社比20%増を目指して甘くしてみました。
お言葉に甘えて、がんがん書いちゃいます。
- 347 名前:ユウ 投稿日:2002年05月31日(金)19時30分02秒
- ではでは。
また、来週。
- 348 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)00時40分27秒
- 更新、どうもお疲れさまです。
「過去編」「現在進行編」そして、予告されている「(ちょっとHかもしれない)新作」
どれも楽しみです。
どんどん、この二人の甘々な時間が膨らんでいきますね。
片想いのヤグチ、私も大好きです。
でも、結局はヤグチの手の平で裕ちゃんもコロコロしてしまうんですよね。
やぐちゅーに幸あれ!
来週の更新も楽しみに待ってます。
- 349 名前:ユウ 投稿日:2002年06月03日(月)14時57分58秒
- 更新します。
予告してたものです。
- 350 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月03日(月)14時58分49秒
- 「裕ちゃーん。タオル、これ使っていいのー?」
矢口が洗面所からひょこっと顔を出した。
好きなの使ってええよ。とゆうとほーいと返事してまた引っ込む。
・・・矢口。緊張してへんなあ。
今日、初めて矢口がうちに泊まりに来た。
明日二人とも仕事だけど、比較的遅い時間からの仕事だし、
矢口が裕ちゃんちに泊まりに行きたい!って前々から言ってたから。
そりゃあね、一緒にいれて、夜もずーっと一緒で嬉しいんよ。
でも、さっきからそわそわしてるのはあたしの方で。
「裕ちゃんこれなに?これなに?」
「うっわ〜、ホントに豹柄だよ〜。」
「この写真、矢口も飾ってる。」
とかまあ、矢口はばたばたとひとしきり騒いで
それでごはんの後には「お風呂かりるよっ」って
さっさと入りにいってしまった。
- 351 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月03日(月)14時59分37秒
「はぁ〜。」
矢口がお風呂に入ってしまったので、ソファにぼすっと倒れ込む。
心臓がどきどきする。
なんか胃まで痛くなってきてないか?
あたしってこんな時まで緊張しいなん?
なあ、初めてコトを起こす男子ってこんな気分なん?
なあ、こんなプレッシャーがかかるもんなん?
ってあたしは誰に聞いてんねん。
あたしが初めての時は・・・。
いや、やっぱり緊張したよなあ。
『お風呂』なんて、自分からよう言われへんかったもん。
なんか合図みたいで。
でも矢口は全然いつも通りやなあ。
- 352 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月03日(月)15時00分32秒
- ・・・やましいこと考えてるのはあたしだけってことですか?
そうやんな。
別に矢口は「泊まりに行きたい。」ってゆうただけやし。
なんかあの子のことやから、普通に手とかつないで寝ちゃいそうやな。
ま、別にそれはそれでええねんけど。
せめて、・・・腕枕くらいはしたいなあ。
堂々巡りの考えに浸る。
でもそう考えたら幾分気分が楽になってきた。
そうや、なに一人で暴走してんねん。
一緒の時間過ごせるだけでも、幸せやんかあたし。
よしよし、ビールでも飲もっと。
なんて立ち上がったら、
「お先ぃー。」
半袖短パンで、ほかほかした顔の矢口が出てきた。
すっぴんのほっぺがつやつや光ってる。
かあわいい。
- 353 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月03日(月)15時01分26秒
- ソファにあぐらかいて、髪の毛を拭いてる矢口。
チュッ
あんまりにもかわいいから、近づいてキスしてしまう。
「んっ、もお。お風呂入ってこーい。」
お風呂上がりで赤いのか突然のキスで赤くなったのか、
とにかく顔を火照らせた矢口に追い出された。
「はいはい。ほな、行って来るな?」
ちょうどいいからビールは後にしてあたしもお風呂に入ろう。
風呂上がりのビール、それに今日は矢口がいる。なんて最高やね。
- 354 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月03日(月)15時02分30秒
- -------
「裕ちゃん、はいこれ。」
お風呂から出ると、矢口が冷えたグラスとビールを渡してくれた。
おお、気が利くなあ。ありがとお。
ソファに座って二人でテレビを見る。
特別なことでもないのに、それがすごく嬉しい。
隣を見るとあたしの横でビールを飲む矢口。
かわええなあ。
えっ?ビール?
「ぅおい!あんたなに飲んどんねん。」
「えっ?だって裕ちゃんが飲んでるのおいしそうだったんだもん。」
矢口はあたしのグラスに注いだあと、缶に残ってるビールに口をつけていた。
「ああもう、大丈夫なん?それだけやで。外ではあかんからな。」
「うん、でも、も、いいや。・・・まずい。」
いーって顔して、結局ちょっと口を付けただけであたしに渡してきた。
なんや、ちょっと酔ったところ見たかったのに。残念。
- 355 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月03日(月)15時03分18秒
- 矢口はなんかにやにやしてあたしを見ている。
「なに?」
「裕ちゃんさ〜、酔うとかわいいんだよね〜。なんか急に甘えたになっちゃって。」
ああ、そうみたいやね。
でも何でそれで矢口がにやついてるの?
「・・・矢口に甘えたろか?」
試しに聞いてみると、矢口は嬉しそうに自分の肩をばんばんと叩いた。
頭を預けろってこと?
言われたとおりに矢口の低い肩に頭を預ける。
矢口の腕が回ってきてあたしの頭をなでてくれてる。
胸元からとくんとくんと心臓の音が聞こえてきて、あたしを穏やかな気持ちにさせる。
う〜ん、気持ちいいなあ。
お風呂上がりの矢口、いい匂い。
ん?お風呂上がり?
・・・やばい。また意識してきた。
- 356 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月03日(月)15時04分57秒
- でも矢口はとゆうと、あたしの頭をなでて得意そうな顔をしている。
まあ、ええか。
両手を矢口の腰に回した。
矢口の体に頬をすり寄せる。
はあ、やわらか・・・。
このままでも十分幸せやもんな。
矢口のちょっとほかほかした体を抱きしめてた。
- 357 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月03日(月)15時05分42秒
「裕ちゃん?」
矢口はあたしの顔をのぞき込むように見てる。
「ん〜?」
なんか気持ち良すぎて眠たくなってきた。
「あのさ、・・・今日さ・・・。あの・・・。」
なんやの?あんたすっごい心臓ばくばくゆうてんで。
「えーと、だからぁ、・・・あの・・・。ね?」
ね?ってゆわれても。
「なんやの矢口?はっきり言い?」
体を起こして矢口を見たら真っ赤な顔をしていた。
- 358 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月03日(月)15時06分25秒
- 「あー、もう、だからあ。こーゆーこと女の子から言わせるなっつーの。」
ベシッ。
いきなり手刀された。
「いたっ。何すんのあんた。大体女の子って。二人とも女の子やんか!」
「・・・裕ちゃんはもう『女の子』じゃないじゃん。」
「うわっ、ゆうてもうた。そうゆうこと。」
でも矢口がなにを言いたいのか、いくら鈍感なあたしでも分かったから。
「こんにゃろっ」
矢口の首に腕を回してしめるふりをして膝に抱きよせた。
けらけら笑いながら矢口は暴れる。
「こら、じっとしい。」
「や〜だよ〜。」
「じっとせんと、ちゅうできひんやん。」
「いいよ〜、ほらっ。」
ふざけて矢口は口をとがらす。
その口を奪おうとすると、笑ってするっと逃げる。
- 359 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月03日(月)15時07分51秒
- ・・・むぅ。
こうなったら。
得意げな矢口の耳元に指を滑らす。
ちょっと真剣な顔で矢口を見つめる。
「えっなに?」って顔で一瞬おとなしくなる矢口。
黙って矢口の耳を指でゆっくり刺激して、もう片方の耳をぺろっと舐める。
そのまま耳を甘噛みすると、矢口はぴきっと固まった。
顔を赤くしておとなしくなった矢口にささやく。
「ちゅうしても、ええの?」
矢口はなんにも言わずに首をたてにこくんと振った。
顔をゆっくり近づけると、矢口は目を閉じる。
- 360 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月03日(月)15時08分25秒
- チュッ
きゅっと目を閉じた矢口のおでこにキスをした。
いつかのおかえし。
裕ちゃんが寝てる時にあんたしたやろ?
えっ?って顔で矢口が目を開ける。
チュッ
それを狙って、今度は口にキスをした。
「ああ、もう。」
膨れた顔になる矢口を引き寄せる。
今度はさっきより長目のキス。
矢口があたしの肩をぎゅっと掴んでる。
赤くなってる耳元に
「・・・ベッド、いこか?」と低く囁くと矢口は小さく頷いた。
- 361 名前:ユウ 投稿日:2002年06月03日(月)15時09分10秒
- はい、更新です。
- 362 名前:ユウ 投稿日:2002年06月03日(月)15時09分49秒
- >>348名無し読者さん
どうもです。
本編で書ききれなかった過去編のエピソード。
実はいくつか書いてしまったので、折を見てちょこちょと載せたいと思います。
「(ちょっとHかもしれない)新作」、楽しみにしていただいてありがとうございます。
載せるのどうしようかと思ったんですが、浮かれて載せちゃいます(単純)。
せっかく書いたことだし、ね。ご賞味下さい。
- 363 名前:ユウ 投稿日:2002年06月03日(月)15時10分19秒
- ハロモニで中澤さんの顔ボックスを投げる矢口さん。
ああまたそうやって、ちょっかいだして〜。かわいいなあもう。
中澤さんが「かわいい!!!」と絶叫するのも頷けます。
ってことで、今日更新するつもりはなかったのに、二人にあてられ更新することに。
続きはまた今度。
ではでは。
- 364 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月04日(火)01時13分09秒
- ユウさんのお話、毎週の楽しみになってます。
もう、ここのやぐちゅーは愛し過ぎっ
- 365 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月04日(火)16時56分07秒
- 人間も模様がイイッス!!
ユウさんありがとうッス。
- 366 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月05日(水)11時25分18秒
- やぐちゅー見っけ。
めっちゃくちゃHOTな気分になりました。
感謝感激です。続きも楽しみににしています。(w
- 367 名前:ユウ 投稿日:2002年06月05日(水)16時49分44秒
- 更新します。
- 368 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)16時51分04秒
- -------------------------------
ほの暗い寝室のベッドに腰掛けて、がちんがちんになっている矢口の隣に座る。
ここで、あたしまで緊張しとったらあかんよな。
気付かれないようにそっと深呼吸した。
不安そうにあたしを見る矢口。
心配せんでええで、とかそんな言葉も思い浮かばなかったから、ただ優しく笑いかけた。
髪の毛を撫でて、矢口の頬に手を当てる。
あたしの手を自分の手で押さえ、頬をすり寄せる矢口。
不安そうな目はそのままに、あたしをじっと見つめてる。
あたしの中で何かが高ぶるのが分かる。
「・・・好きやで。」
自分の声がかすれて耳に届いた。
矢口が泣きそうな顔になる。
「かわい、矢口。」
そっと触れるだけのキス。
唇を離して、矢口の頬を両手ではさむ。
- 369 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)16時51分56秒
- 「・・・ゆうちゃん・・・・好き・・・」
矢口があたしのパジャマのシャツの裾をきゅっとつかむ。
胸が一瞬鷲掴みされた。
矢口、今『好き』ってゆってくれた?
あかん。
そんなん言われたら、裕ちゃん制御不能になるわ。
軽いキスじゃ我慢できなくてもう一度、矢口の唇を求めた。
「ふっ、ん・・・。」
矢口の口から漏れる声が甘さを含んでる。
すぐに離れるとちょっと物足りなそうに矢口は口をとがらす。
ちょっ、あんたその表情、やばいって。
矢口から目が離せなくなる。
矢口もじぃっとあたしを見つめてる。
「ゆぅちゃん・・・。」
「・・・やぐち。」
名前を呼び合ってすぐまた唇を寄せた。
- 370 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)16時53分25秒
- 矢口の唇をぺろっと舐めた。
それに応えるように少し開いた矢口の口の中に侵入しする。
一本一本の歯を確かめるように歯列をなぞる。
矢口の舌にあたしのそれを絡めて、離して、また絡めて。
静かな室内に自分たちの唇のすれる湿った音だけが聞こえてきた。
唾液が混じり合ってどちらのものか分からなくなる。
酸欠気味の苦しさで頭がぼおっとする。
矢口の唇があたしを溶かしていく。
「んっ・・・。」
唇を離すと、お互いの息づかいが聞こえた。
あたしを見上げる矢口。
耳も首筋もほんのり朱色になって、うるんだ目であたしを誘う。
半開きになった口からはこぼれる呼吸。
ああ、それ有罪。
- 371 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)16時54分27秒
- 毛布をめくって、ゆっくりと矢口の体をマットに倒した。
泣きそうな顔。
「怖い?」
「・・・ちょっと。」
「裕ちゃんもめちゃめちゃ緊張してるんやで。」
「ホント?」
頷いて矢口の手を自分の胸元に導いた。
ほら、分かるやろ?
「・・・ホントだ。」
ふわっと矢口が笑った。
「・・・ええの?」
「ん。・・・裕ちゃんに矢口を全部もらって欲しいもん。」
呼吸が止まる。
嬉しくて言葉にできなかった。
言葉のかわりにキスで返した。
- 372 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)16時55分16秒
- おでこ、まぶた、ほほ、はな、くちびる。
わざとチュッと音を立ててキスをする。
目を閉じたままキスを受け入れる矢口。
横たわった矢口のTシャツごしの胸に手を伸ばした。
柔らかな弾力が手のひらに伝わる。
自分が欲情していくのがはっきり分かる。
円を描くようにゆっくりと揉んだ。
布越しにでも分かるほどだんだんと先端が固くなってきている。
「・・・なんか、変な気分。」
ふぅっと軽い吐息とともに矢口が口を開く。
「ん?」
「・・・裕ちゃんとこんなことしてるなんて。」
「ほんまやなあ。・・・・・・でもあたし、もう止まらへんで?」
矢口は潤んだ目でうんって頷く。
- 373 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)16時56分05秒
- 矢口の背中に手を置いて体を軽く浮かせ、Tシャツを脱がせると、
矢口はあらわになった胸元を恥ずかしそうに両手で隠してしまう。
「見せて?」
「やだ。」
わざと拗ねた顔をすると、矢口がつぶやいた。
「・・・矢口だけじゃずるいよ。」
言葉の意味が分かったので矢口に言う。
「・・・ほな・・・脱がして?」
矢口が無言で頷く。
妙に真剣な顔でぎこちなくあたしのシャツのボタンをはずしていく矢口。
全部が外されたところで、自分で脱ぎ捨てた。
シャツが床に落ちる音がかすかに聞こえた。
- 374 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)16時57分02秒
- 「きれい・・・。」
矢口はあたしの胸をじいっと見つめてつぶやくとこわごわ手を伸ばして触れてきた。
触れてるのか触れてないのか、微妙なタッチの手つきに背中を何かが走っていく。
「矢口も・・・きれいやで。」
もう自分の胸元から手を外してしまった矢口を見つめた。
そのまま覆い被さるように抱きしめた。
あたしと矢口の間には何もはばむものがなく、素肌と素肌がそのまま触れあう。
裸でくっついてるだけで、何もしなくても、十分気持ちいい。
人の肌ってこんなに気持ちええねんな。
しっとりとなじみ合う。
矢口もあたしの背中に手を回す。
その小さな手であたしの背中をゆっくり撫で上げる。
ぞくぞくした。
- 375 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)16時57分49秒
- すっかり無防備になってる矢口の首筋にかぷっと噛みついた。
突然のことに矢口の体がびくって一瞬固くなる。
「あっごめん。」
「謝るな、バカ・・・・。」
矢口はあたしを見て小さく笑って、ふうっと力を抜いた。
ちょっと体を起こして矢口の体を両足ではさむように座る。
舌に力を込め、首筋をすーっと舐めあげた。
たどり着いた先の耳たぶを軽く噛む。
矢口がいやいやするように軽く首をすくめた。
それに構わず耳の中まで舐めながら、右手を矢口の胸元まで下ろした。
左手で矢口の手を握ると、矢口はきつく指と指をからましてきた。
「大好きやで、矢口。」
不安そうな矢口にそうゆうと、ぎこちなく矢口は頷いた。
- 376 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)16時58分43秒
- 胸全体を包むようにゆっくりと愛撫を加える。
最初は優しく、矢口の表情を見ながら、少しずつ手に力を加えていく。
時々、油断している首筋をぺろって舐めたりすると、
左手で握ってる矢口の手にぎゅって力が入る。
っくぅ、かわいいなあ。
固くなってる先端を親指と人差し指で挟むようにつまむ。
「っう・・ん。」
矢口は首をすくめて声をもらす。
この声、色っぽいなあ。
もっと聞かせてや。
そのまま親指の腹でこすりあげると矢口の体がぴくって動いた。
あたしの左手を握っている力が弱まったので、自由になった左手で
首筋から耳元にかけてをゆっくり刺激する。
両手での愛撫に矢口の呼吸も上がってくる。
- 377 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)16時59分36秒
- 「あっ・・ゆ・・ちゃ・・・ん。」
名前を呼ぶくせに矢口はもうあたしと目を合わせてくれない。
「めちゃめちゃ色っぽいで。矢口。」
「・・・やっ、・・・見ないで・・よう。バカ・・・。」
矢口は顔を横に向けてしまった。
右手では胸の先端を刺激をしたまま、脇腹を舐めあげる。
ぴくんって動く体を押さえつけるように舌に力を込めて。
もう片方の胸のふくらみの下までで引き返して、もう一度。
「・・・ふっ・・・・・んっ。」
焦らすつもりが矢口からもれる声にあたしが我慢できなくなってしまい、もう片方の胸に口を寄せる。
尖った先端ごと大きく口に含む。
そのまま舌で愛撫すると矢口の甘い声が頭の上から聞こえてきた。
- 378 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)17時00分21秒
- 矢口の手があたしの髪の毛をかきまわす。
舌を尖らしてちろちろ舐める。
転がすように、子供が飴を舐めるように。
矢口の両手がくしゃっと髪の毛をつかんだ。
「はっ・・・・あっ・・・ダメ・・・だっ・・・・てばあ・・・。」
そんなんゆわれたら、余計火がつくやん。
右手の愛撫はやめないまま、口に含んだ先端に軽く歯をあてる。
矢口の呼吸が荒くなってくる。
噛みつく代わりに今度は強く吸い付いたら、ひときわ大きく体がはねた。
- 379 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)17時01分55秒
- そろそろいいかな?
矢口の短パンに手をかけた。
腰の下に手をあてて、短パンを足から引き抜く。
矢口も恥ずかしそうに協力して腰を軽くあげてくれる。
「よっこいせ。」
あたしのかけ声にくすくす笑う声。
「ゆうこぉ〜、ムード壊すなよ〜。」
なんやと?もお。
「あんたが笑うからやろぉ?」
「・・・だってぇ。」
- 380 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)17時02分44秒
- 笑い続ける矢口の下着の布越しに指を添えた。
軽く振動を加えると、笑い声がぴたっと止まる。
「あっ・・。」
かわりに小さくこぼれる声が聞こえた。
同時にあたしの中にケモノが生まれた。
愛しくて愛しくて、あたしのこの爪で切り裂きたい。
矢口の感情なんて無視をして、ただただこの体と心を
自分のものしたい。
自分の中のケモノを抑えるようにわざと弱いタッチで触れていく。
「ゆぅ・・・ちゃん・・。」
切れ切れの声であたしを呼ぶ矢口。
答える余裕がないのは、あたしの方やなんて。
「・・・すき・・・だよお。」
胸がつまる。
あんた、ホンマ・・・・。
あたしをこれ以上のめり込ませてどおするつもりやねん。
- 381 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)17時03分38秒
- 矢口を見ると、とろんとした目であたしを見てる。
その目、めっちゃいやらしいなあ。
焦点の合ってないその目に自分の手をかざした。
「痛かったら、ゆってな?」
最初はなんのことか分かってなかった矢口も、あたしの爪を見てようやくうなずく。
「・・・だいじょぶ・・・だから。・・・・気にしないで。」
健気な矢口の言葉にあたしの中のケモノも小さくなる。
傷つけたら、あかん。
布越しに優しく指を上下に動かした。
矢口の表情を見ながら時に強く振動を加える。
その度に矢口は体をそらし、快感の波を押さえようとする。
「や・・・ふっ・・・・。ん・・ん・・。」
- 382 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)17時04分42秒
- 布越しでにでも十分潤いを感じた。
そっと下着の中に指を滑り込ます。
「あっ。」
心配そうにあたしを見る矢口に微笑んだ。
「あたしの・・・・ものやろ?」
強気な裕ちゃん、あんた好きやろ?
「うん。」
矢口は嬉しそうにうなずいて目を閉じた。
そこに触れると、指にしっとり湿り気がまとわりついてきた。
それを伸ばすようにこすりつける。
優しく優しく、傷つけないように。
びくっと体を動かし、矢口が細く息を吐く。
中心にあるぷくっと尖った小さな芯を見つけて、
爪をたてないように指の腹を使って円を描くように動かした。
「んん・・・・ん・・・ん。」
早さを変え、強さを変え。
「っく・・・あっ・・・・。」
矢口があたしの肩にしがみつく。
刺激から逃げるように動く矢口の腰を自分の体で押さえつける。
- 383 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)17時05分33秒
- 「あっ・・・・。」
矢口がびくっとする。
「あっごめん・・・・。」
爪、立ててもうた。
「・・・・・・い・・から。」
半分涙目になって矢口が微笑む。
呼吸が荒いまま無理に笑う矢口が愛おしい。
チュッ
涙にキス。
チュッ
不満そうに尖らした矢口の口にもキス。
「・・・大好き。矢口。」
「・・・・・あ・・たり前。」
なぜかちょっと得意そうな顔をする矢口。
おっあんた、ようこの状況で強気になれるなあ。
憎らしいほど、かわいいでそれ。
かわいさ余って・・・じゃないけど、ちょっといじめたろ。
- 384 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)17時06分18秒
- ちょっと強めにこする。
矢口がびくっと逃げようとするけど、もちろん逃げさせたりはしない。
あたしの爪が矢口の芯をかすめる度に体がびくって動いて
矢口の中からどんどんあふれてくる。
爪が軽くこすれるたびに快感を増幅させるらしい。
「ぁっ・・・んん・・・・ん・・・・ん。」
矢口の体が強ばり始めた。
涙目でその快感の中にいる矢口。
そろそろかな?
最初逃げるようにしていた矢口の腰があたしの指を追うように動き出す。
無意識でやっているのだろうけど、なまめかしい矢口のこの動きがますますあたしを興奮させる。
- 385 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)17時07分44秒
- 「っはあ・・・なんか・・・・あっ・・・。」
何かを我慢するように眉をひそめる矢口。
上気した頬と短い呼吸が限界が近いことを知らせてる。
「あっ・・・ゆ・・・ちゃ・・ん。・・・ゆ・・う・・・ちゃ・・。」
「・・・ここにおるよ。」
あたしの肩に痛いくらいにしがみついてくる。
そのまま強めにこすり続けた。
「ふぁっ・・あああぁ・・・・・・・ぅあっ。」
耳たぶを甘噛みしたとき、矢口の体が大きくしなった。
- 386 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)17時08分39秒
- -------------------------
矢口の呼吸が落ち着くまで髪を撫でていた。
「・・・・ゆ・・ちゃ・・・・ん。・・・すき。」
あたしの肩口に顔を埋めて矢口がつぶやいた。
そのままあたしの肩に唇を押し当てる。
「ん、あたしも。」
汗ばんだ矢口のこめかみにキス。
熱が引いて少し冷静になると矢口の体が心配になって、すべすべの背中を撫でながら聞いた。
「爪・・・痛ぁなかった?・・ごめんな。」
「痛くはなかったけど・・・。」
「けど?」
「・・・・・体がどこかに飛んでっちゃうかと思った。」
そっか。
ぎゅっとしがみついてたもんな。
- 387 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)17時09分21秒
- でも。
「傷、ついてたらどおしよ・・・・。」
ぷるぷる矢口は首をふる。
「傷・・・・ついてた方がいい。」
矢口は顔を上げてあたしの唇に指をはわせる。
大人びた仕草と表情にあたしの心音が跳ね上がる。
「ゆうちゃんの、・・・・しるしだもん。」
チュッ
照れくさそうに笑って、矢口はあたしにキスをした。
- 388 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)17時10分05秒
- ・・・・やられた。
まだまだ子供や思って油断していた。
子供の顔であたしを油断させ、大人びた表情であたしを戸惑わせる。
そうやってあたしを翻弄するんやな、矢口は。
なあ、そんな表情にさせたのは誰?
あたしやって自惚れてもええの?
なあ、
なあ、
どおしてそんなにかわいいの?
食べちゃいたいって、どおしたら食べれんねやろ。
優位に立ってられるのも、時間の問題。
・・・なんて、そもそも最初っからあたしに勝ち目なんてないやんな?
あたしはもうあんたにべた惚れやもん。
これ以上どこまで惚れさせる気やねんホンマにもお。
- 389 名前:しあわせなからだ 投稿日:2002年06月05日(水)17時11分00秒
- 矢口がぴったりくっついてくる。
あたしの背中に腕を回して、自分の体を押しつけるように。
安心したように、ふ〜ってため息をついて頬をすりよせる。
あたしも矢口に腕枕をし、もう片方の腕で抱き寄せた。
愛おしさで胸がいっぱいになる。
矢口のおでこに何度もキス。
あたしの首筋に、キスと言うより唇を押し当ててるだけの矢口。
おでこにキスするたびにかすかに笑ってくれる。
お互いの肌が触れ合ってるところからしあわせと言う名のエキスが体中にしみわたってくる。
じわじわ じわじわ。
このまま溶け合って一つの生き物になれたら、ええのに。
なれたら、ええのに。
あたしの呼吸と矢口の呼吸。
二人の呼吸がゆっくり呼応していく。
- 390 名前:ユウ 投稿日:2002年06月05日(水)17時12分20秒
- はい、更新は以上です。
ああ、やっぱりこの手の話って難しいかも。
書いてる私がえっらい照れくさい。
- 391 名前:ユウ 投稿日:2002年06月05日(水)17時13分07秒
- >>364 名無し読者さん
毎週の楽しみですか?ありがとうございます。
ネタが切れない限り、頑張って更新したいと思います。
>ここのやぐちゅーは愛し過ぎっ。
・・・にやり。
>>365 名無し読者さん
いえいえ、こちらこそお褒めの言葉ありがとうございます。
また感想下さい。調子に乗って書きますから。
>>366 名無し読者さん
見つけてしまいましたね。感想ありがとうございます。
続きも期待に添えてればいいんですけど・・・。
読んでてうっとおしいくらい、あつあつにしますよ〜。(ホントか?)
- 392 名前:ユウ 投稿日:2002年06月05日(水)17時13分56秒
- あと一つ矢口さんの。
それはまた今度。
ではまた。
- 393 名前:ユウ 投稿日:2002年06月05日(水)18時01分24秒
- と、思ったんですけど。
スレッドの容量がちと微妙なので見送りたいと思います。
新しく立てることも考えたのですが、まだそれほど書きためてるわけじゃないので、そんな状態で立ててもいいものかと・・・・。不安に思っています。
ですので、これで一応一区切りってことで。
今まで読んで下さってありがとうございました。
楽しみにしていただいた方たちがいて、大層励みになりました。
まだ読みたい!って危篤な方がいたら教えて下さい。
その時は調子に乗って登場しますので。
ではまた会う日まで。
ありがとうございました。
- 394 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月05日(水)22時29分35秒
- ユウさんのやぐちゅーを読むと心があたたまります〜。
お話をちゃんと完結させれば、短くても
新しいスレを立てるのは良いのではないかと。。。
できることなら矢口さんのも読みた〜い!
これからもユウさんの作品が読みた〜い!
とわがままを言ってみたりして(w
- 395 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月05日(水)23時57分28秒
- 短くても良いっす!
ユウさんのやぐちゅーが読めなくなるのは切ないっす!
出来れば、これからも愛し過ぎなやぐちゅーを・・・。
- 396 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月06日(木)00時28分52秒
- えっ!?
ヤグチのお話はお蔵入りですか?
容量はまだまだ大丈夫じゃないんですか?
読みたいです。
「ユウ」さん、お願い・・・
お蔵入りなんかにしないで、是非是非、公表してください。
私の勝手な思いなのですが、ものをつくる方の作品が、
「事情があって外に出ない」ということは、
非常な喪失感があるのです。
欲張りかも知れませんが、生み出した作品に触れさせてください。
何も創作できない、無能な私にはない、その才能に触れさせてください。
本当にお願いします。
- 397 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月06日(木)01時06分49秒
- お願いしますー
ユウさんのやぐちゅー読みたいですー
- 398 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年06月06日(木)01時20分17秒
- お願いします。調子にのっても全然構いませんので
帰ってきてください
- 399 名前:ミニマム矢口もえ 投稿日:2002年06月06日(木)04時03分16秒
- やぐちゅう いいですね〜〜
お疲れ様でした。。。。
でも、終わって欲しくないです。
継続 キボウ!!やぐ中 最高!作者さん 考え直して〜〜〜続けてくだされ。
- 400 名前:ユウ 投稿日:2002年06月08日(土)15時32分33秒
- 再び登場しました。
皆さん、暖かいレスありがとうございます。
えー、びっくりしました、はい。
正直、こんなに反応があると思わなかったので。
すっごく嬉しいです。
あの。
・・・・ホントに?(おそるおそる)
ホントに調子にのっちゃってもいいですかね?
ちょっとそんなに書きためてるわけでもないし、この話をどう終わらすかってことさえ
現段階では考えてはいないんですけど。
飽きずに読んで下さるって言うのなら頑張りたいと思います。
ええ、もちろん。
書くのは愛し過ぎなやぐちゅーを。
(このフレーズかなり気に入ってしまいました。)
とりあえず、来週あたりに新スレッドを立てようかなと。
はやっ。
ホントに調子にのってますね。
でも更新が今までよりゆっくりになるとは思いますが。
そしたらまた、読んで下さい。
ホントにありがとうございます。
- 401 名前:らん 投稿日:2002年06月08日(土)20時12分19秒
- 毎回、素敵なお話をちゃんと書いてくれていることが、
作者さん曰く「調子にのっている」と、いうことならば、
どんどんと調子にのっちゃって下さい。
新スレ楽しみにしていますよ。
長編でも、短編でも、「愛しいやぐちゅー」をお願いします。
- 402 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年06月10日(月)00時31分15秒
- やったー!
ここだけの話、ぶっちゃけ自分も書きためしないで
大体書くこともあります。←暴露
- 403 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月10日(月)00時53分25秒
- うぉっ!ユウさんのお話がまた読めるんっすね!
嬉すぃ〜。
フレーズ気に入ってもらえて、これまた嬉すぃ〜。
更新ゆっくりでも、楽しみに待ってま〜す!!
- 404 名前:ユウ 投稿日:2002年06月10日(月)14時18分52秒
- 同じくこの板に新スレッド作りました。
タイトルは『LOVE GOES ON...2』です。
>>401 らんさん
レスありがとうございます。
楽しみにしています、ってお言葉。めっさ嬉しいです。
これからもよろしくです。
「愛しいやぐちゅー」頑張ります。
>>402 やぐちゅー中毒者セーラムさん
セーラムさん。ああもう、ありがとうございます。
喜んでもらえて嬉しいです。
セーラムさんが『調子にのっても構わない』と私に火を付けたんですからね。
責任取って下さいよ。(なぜ脅す?)
暴露話にちょっとほっとしたりして・・・。
>>403名無し読者さん
ありがとうございます。
舞い戻ってしまいました。
でも、喜んでもらえて私も嬉すぃ〜。(←これ、実は私もよく使います。)
更新もなるたけ頑張ります。
愛し過ぎな二人をこれからもよろしくお願いします。
ではまた、新スレッドでお会いしましょう。
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