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リアル・サバイバー
- 1 名前:GO。 投稿日:2002年04月25日(木)23時06分37秒
- 長編小説を書きたいと思っています。
どれだけのものになるかわかりませんが、
皆さん、
どうかお付き合いください。
- 2 名前:第一話「プロローグ」前編 投稿日:2002年04月25日(木)23時15分00秒
「この力はどこから湧いてくるの・・・?」
以前、辻に聞かれた事がある。
正直分からない。
必要か、どうかもわからないのに。
ただ・・・今は・・・必要だと思う。
- 3 名前:第一話「プロローグ」前編 投稿日:2002年04月25日(木)23時35分00秒
「もし私達が選ばれた人間なら、きっとこんな事しなくていいはずだよ」
飯田に言われた事がある。
確かにそうだ。
何故、こんなことをする必要がある?
最低だよ・・・こんな事・・
- 4 名前:第一話「プロローグ」前編 投稿日:2002年04月25日(木)23時37分44秒
「ウチはもう嫌やあ」
加護がいつか泣いて訴えた。
私だってもう嫌だよ・・
終わらせたいよ・・本当に・・
- 5 名前:第一話「プロローグ」前編 投稿日:2002年04月25日(木)23時39分59秒
「後藤はさ、生きるよ・・生きたいもん」
後藤がめずらしく俯いて喋った。
その目にはうっすらと涙が浮かんでたけど、
大丈夫。皆、帰れるよ。
- 6 名前:第一話「プロローグ」中編 投稿日:2002年04月25日(木)23時42分44秒
「大丈夫・・きっと・・・」
吉澤が真剣な眼差しで信じてた。
何度も皆が居ない所で呟いている姿を見たよ。
私も信じるよ。
- 7 名前:第一話「プロローグ」中編 投稿日:2002年04月25日(木)23時45分19秒
「絶対!絶対!絶対!あんた達なんかに負けないんだからあ!!」
意気揚揚と矢口は叫んでたね。
頬に、傷をつけて、涙で瞳を潤ませて・・。
信じよう・・絶対!
- 8 名前:第一話「プロローグ」中編 投稿日:2002年04月25日(木)23時47分28秒
「このまま・・・しんじゃうの?私達・・」
今にも消え入りそうな声で石川、呟いてたね。
でもその後、必ず、又、小さな声で呟くんだ。
「ポジティブ」って・・・
- 9 名前:第一話「プロローグ」後編 投稿日:2002年04月25日(木)23時50分21秒
「なっちは、皆を信じるべ」
なまった言葉で柔らかな言葉で、
優しい言葉を言ってくれたね。
信じたいよ・・・仲間を・・
- 10 名前:第一話「プロローグ」後編 投稿日:2002年04月25日(木)23時59分25秒
- これだけの事が一瞬にして蘇った。
これが世に言う走馬灯ってやつなんだろう。
保田は静かに微笑した。
(体が・・・熱いのは・・・傷のせいか・・・)
保田の目には涙が溢れていた。
意識の絡まった糸が静かに解けていく。
それと同時に保田の体も心も全て、『どこか』に飛んでいく。
解放か・・・投獄か・・・・
保田の目はゆっくりと閉じられ、その瞼の向こう側で、瞳孔は急速に拡大していった。
- 11 名前:第二話「HURRY GO ROUND」 投稿日:2002年05月02日(木)20時46分05秒
- 車が右へ左へ流れていく。
石川梨華は静かに歩道橋の手すりに足をかけた。
歩道橋から身を乗り出し、下を覗く。
(高い・・・)
上に登ってみてわかったが、歩道橋は結構高い。
石川の視界が一瞬、揺らぐ。
背後に衝撃。
手すりの上の石川の足が不意に浮いた。
石川の体が歩道橋から離れ、車の流れの中に入って、走ってきた車の影に・・消えた。
歩道橋の上にいる吉澤ひとみは口元を歪ませ、笑った。
- 12 名前:第二話「HURRY GO ROUNDA」 投稿日:2002年05月02日(木)20時47分43秒
- 矢口真里は偶然、そこを通りかかっただけだった。
矢口はある週刊誌を毎週買っている。
ただ、マイナーな雑誌だったため、毎回駅前に買いに来ていた。
今日もその雑誌を買いに来ただけだった。
が、まさか、こんな場面に出くわすとは。
矢口がお目当ての雑誌を手に入れ、駅まで歩いている途中だった。
不意に歩道橋の方を見た。
(あれれ?)
栗毛色の髪の少女が、階段で何やら頷いている。
その正面に、立ち塞がるようにロン毛の男がいた。
女の子は何度も目を擦っている。泣いているようだ。
矢口は思った。
(カップルかなあ?)
しかし、その矢口の考えもすぐさま考え直す必要が出てきた。
しばらくしてカップルは歩道橋に登り始めた。
階段を一番上まで登った所で、少女は階段の手すりに足をかけた。
と思った瞬間、男が・・・
「押したっ!!!」
矢口は思わず叫んでいた。
矢口とすれ違おうとしたサラリーマンが、体をビクつかせた。
何の抵抗も見せず、女の子は地面に向かって真っ直ぐ降りてくる。
矢口は少女の落ちてくる場所へ、慌てて駆け出した。
同時に能力を少しずつ解放した。
ずず・・・・ずっ・・・・
地面で少しずつ砂が動き始めていた。
- 13 名前:第二話「HURRY GO ROUNDB」 投稿日:2002年05月02日(木)20時48分50秒
- (死ぬの・・・私・・・)
近付いて来る車の波に、石川は黙って目を閉じた。
(つまらない人生だったな・・・)
(最後の最期まで・・・)
どこか遠くで車のクラクションが聞こえた。
叫び声や、悲鳴が聞こえた。
もはや、自分の世界とは思えない程、遠くに聞こえた。
終わりに石川は呟いた。
「・・・・ごめんね・・・・・」
誰に発した言葉かもわからない。
ただ、心から直接、口に流れ出た言葉だった。
体が折れ曲がる感覚が石川の体に響いた。
(死んだ・・・?)
(お腹・・・痛い・・・)
石川は静かに、おそるおそる目を開いた。
目の前には、地面があった。
「・・・な・・・何・・・」
頭に血が上り始めていて、鼻声で呟いた。
石川の頬を細かな砂が流れているのに気が付いた。
頭を上げた。
そこには、
砂に半分埋もれた車とその中の驚愕の表情の運転手、
一瞬、砂漠かとも思える大量の砂。
そして、
その大量の砂に片手を突き刺したまま、こちらを見つめている少女の姿があった。
- 14 名前:第二話「HURRY GO ROUNDC」 投稿日:2002年05月02日(木)22時38分48秒
- 「だ・・・大丈夫!?」
少女の第一声はそれだった。
石川は呆然と少女の顔を見返す。
(何・・・何なの・・?)
石川の体には砂が巻き付くように纏わりついていた。
理解するのに戸惑っている石川を横目に、少女は興奮しきったまま、歩道橋に顔を向けた。
「あんたっ!!なにやってんのよ!?」
歩道橋の上で石川と同じく呆然としていた吉澤がはっと我に返った顔をした。
と、同時に石川達がいる車線と反対方向に駆け出した。
「ちょっ、ちょっと!!待ちなさいよー!!」
吉澤は振り返らずに階段を駆け降りている。
「ん・・・もう!待てって!言ってんで・・・・」
逃がすまいといった表情で少女は砂の山に刺している手を吉澤に向かって振った。
「しょ!!!」
(な・・・!!)
少女が手を振り切ると同時に、石川の体に纏わりついていた砂が一瞬にして石川の体から
離れ、吉澤に向かっていった。
支えを失った石川の体が地面に落ちた。
ざざざざ・・・・・・!!!
砂の波が生き物のように吉澤に向かって行った。
その様子はまるで、蛇が獲物を狙っているのを見ているようだった。
砂の蛇。
- 15 名前:第二話「HURRY GO ROUNDD」 投稿日:2002年05月02日(木)22時39分49秒
- 矢口は男を逃がすまいと必死で砂を走らせた。
砂の蛇は先程まで行く手を阻ませていた乗用車のボンネットを通過すると、大きく跳ねた。
そのまま、歩道橋の側面をもう一度、三角跳びの要領で砂を走らせる。
歩道橋の上に砂の蛇が到着した時には、男は階段を駆け降りきろうとしていた。
「逃がさないんだからあっ!!」
ざざざざざ・・っ・・ずざざざざ・・・
砂の蛇は歩道橋を飛び降りると、階段の出口に向かってその身を歪ませた。
歩道橋を渡ろうとして、階段の下にいたサラリーマンを弾き飛ばし、男の前を塞いだ。
男が立ち止まる。
サラリーマンがゴミ捨て場に突っ込んだのを横目で見ながら矢口は叫んだ。
「観念しなっ!!」
- 16 名前:第二話「HURRY GO ROUNDE」 投稿日:2002年05月02日(木)22時40分49秒
- 吉澤は落ち着いた目で砂の蛇を見つめていた。
くるりと踵を返し、歩道橋を再び登りだした。
歩道橋下の砂の蛇を操っていると思われる女が、一言何か叫んだ。
が、関係無かった。吉澤は呟いた。
「じゃあね・・・梨華ちゃん・・」
歩道橋の真ん中に亀裂が走った。
- 17 名前:GO。 投稿日:2002年05月02日(木)22時46分59秒
- 第二話分の更新を終わります。
そういえば・・・もしかして題名から、
某番組と勘違いされてるのではと思っていましたが、
やっぱりありました。
これは某番組とは全然関係無いので、パクリ期待の方、
すみません。
(まぎらわしい・・・)
題名決めて、初めて気が付きました。
- 18 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年05月02日(木)22時57分30秒
- 某番組と勘違いしていた一人です(w
全然違っていてもとても面白そうなのでかんばってください。
なんか矢口の能力って某WJのマンガの登場人物に似てるような・・(^^;
- 19 名前:GO。 投稿日:2002年05月02日(木)23時20分42秒
- >>18 レスわざわざありがとうございます。
やっぱり紛らわしかったですね。
すんません・・・
応援、励みになります。
がんばります
更新は基本的に不定期ですが、だいたい
火曜、木曜、土曜をベースに頑張りたいです。
PS、某WJの登場人物とは恐らく関係ありません(^^;
- 20 名前:第三話「眠りの少女」 投稿日:2002年05月04日(土)19時04分55秒
- 病院から見た街はどこか寂しげに見えた。
(いつもこんな寂しい景色を見てんのかな・・・)
矢口はすれ違ったナースに会釈をすると、病室のドアノブを掴んだ。
「こんちわ〜〜す」
ほんの少し様子を見るように矢口は半分、顔を出して辺りを見まわした。
白いカーテンが風で揺れ、そのカーテンの中に一つのベットがある。
(うっし!誰も居ない)
矢口はそのまま、部屋に入ってドアを閉め、鍵をかけた。
「やっほ〜!元気してたあ?」
矢口はベットの上で静かに眠っている少女に声をかけた。
少女は返事をしなかった。
矢口は構わず、喋り続けた。
「今日ねえ、やばかったんだよ〜!まじで」
矢口は昼間の決闘の事を思い出して、いささか興奮気味で喋った。
「ウチらと同じ能力を持った人がいたんだ」
「始めは男だと思ってたんだけどね」
矢口はてへっと笑った。
「女の子だったんだって」
- 21 名前:第三話「眠りの少女」 投稿日:2002年05月04日(土)19時05分35秒
- 大きな音が頭上からしたと思った瞬間、歩道橋が崩れ落ちた。
矢口達の足元に大きな影が現われた。
俯いていた石川も慌てて、頭上を確認した。
大きな影の正体が、歩道橋なのだと分かると石川は悲鳴を上げた。
矢口も実際、悲鳴を上げたかったが、そんな暇は無かった。
砂の蛇を自分達の方に戻らせてすぐさま、歩道橋下、乗用車をかたっぱしから
吹き飛ばした。
吹き飛んだ先で、別の乗用車にぶつかったのか、ガラスの割れる音などが聞こ
えてきた。
押し潰されないようにという配慮だった。
矢口はわずかな時間で乗用車を残らず吹き飛ばすと、砂の蛇を分解して、砂の
カーテンを創った。
そのカーテンが矢口と石川に被さる。
歩道橋はその二人が包まった砂のカーテンに直撃した。
- 22 名前:第三話「眠りの少女」 投稿日:2002年05月04日(土)19時09分35秒
- 「死んだと思ったんだよ!実際!」
矢口は身振り手振りで話す。
少女は目を閉じたまま、聞いてるのやら聞いてないのやら分からなかったが、
矢口は構わず喋り続けた。
「それでね・・・」
- 23 名前:第三話「眠りの少女」 投稿日:2002年05月04日(土)19時11分08秒
- 矢口は砂のカーテンを一旦、ただの砂に戻すと、砂の中で埋もれている石川を
探した。
ざらああっ・・・
矢口の後で砂の流れる音がした。
石川の姿がそこにあった。
体が半分、砂に埋まっていて抜け出せないようだった。
「きゃはははは!大丈夫!?」
石川は困った顔で「大丈夫です・・」と小さく応えた。
(アニメのキャラクターみたいな声だなあ・・)
「大丈夫ならOK!で・・」
矢口は真面目な顔になると、先程まで空中に浮いていた歩道橋を見つめながら、
石川に訊いた。
「あいつは・・・・?」
- 24 名前:第三話「眠りの少女」 投稿日:2002年05月04日(土)19時11分39秒
- 矢口は吉澤を探しているようだった。
石川は慌てて、探すのを止めるよう制した。
「なんで・・?」
矢口がけげんな顔をする。
石川はなんとかして矢口を止めようと必死だった。
「殺されます!見たでしょう!?歩道橋が壊れて・・」
石川は歩道橋の残骸を横目でちらりと見た。
「よっすぃはただの人間じゃないんです!!」
そう言い放った石川は興奮で気付かなかったが、矢口は傷ついたように笑った。
矢口は笑顔で「そうだね」と言った。
「じゃあ、とりあえず、ここから離れよう!」
石川は周りに人の輪が出来ているのに気が付いた。
あまりの恥ずかしさに真っ赤にした顔を伏せ、走ってその場から逃げた。
- 25 名前:第三話「眠りの少女」 投稿日:2002年05月04日(土)19時17分22秒
- 必死で話す矢口の横で眠っている少女は夢を見ている。
無限・・果てなど見えない、ただ空虚な闇。
上を見ているのか?下を見ているのか?
右を向いているのか?左を向いているのか?
目を閉じているのか?開いているのか?
理解から程遠い、空間。そして感覚。
足元には地はあるのだろうか?
全神経を疑いたくなる程の、無感覚。
無感覚という名の感覚。
ただ、はっきりと分かる事、理解出来る事、具象ながらも言い表せる事。
それは・・・
自分。
自分がここにいる事。
それだけが確かな私の感覚。
- 26 名前:GO。 投稿日:2002年05月04日(土)19時36分49秒
- 第三話の更新しました。
題名に番号ふるの忘れてました(^^;
- 27 名前:第四話「FRIENDSHIP」 投稿日:2002年05月08日(水)22時03分27秒
- 崩れた歩道橋から約ニ、三メートル離れた所に喫茶店がある。
そこの店の端の席には、矢口と石川の姿があった。
先程から二人の間に交わされたやりとりは一、二言で、後は重い沈黙が続いていた。
石川は幾分緊張した面持ちで、コーヒーをかき混ぜながらミルクを溶かしていた。
矢口は店前の道路を走っていくパトカーを見ながら、口を開いた。
「びっくりしたでしょ?」
「えっ・・・?」
石川は矢口の急な問い掛けに一瞬、慌てながら応えた。
コーヒーカップの淵にスプーンが当たって、かちゃっと音がした。
「・・・はい・・」
矢口はその石川の姿を見ながら、微かに笑った。
- 28 名前:第四話「FRIENDSHIPA」 投稿日:2002年05月08日(水)22時04分13秒
- 「『よっすぃ〜』って言ってたよね・・・?」
店内のBGMが変わった。
石川は静かに矢口を見た。
真剣な面持ちで石川を見つめる矢口の姿があった。
「よっすぃ〜は・・・」
言い換えた。
「・・・ひとみちゃんは・・・超能力者なんです」
石川はそこから、ぽつぽつと語り始めた。
- 29 名前:第四話「FRIENDSHIPB」 投稿日:2002年05月08日(水)22時04分46秒
- 「ひとみちゃんは・・私の幼馴染でした。何処に行くにも一緒で・・」
石川は力無く笑った。
「親友でした・・・」
過去形だった。
矢口は黙って石川を見つめていた。
「・・・小学生の時、私が同級生に苛められていたんです。いつもこんな感じだ
から・・よくイジメの標的になってたんですよ。ははっ・・髪を切られたり、教
科書をゴミ箱に入れられたり・・・」
石川はコーヒーを一口、口に運んだ。
「・・・その日もイジメられてたんです・・・」
- 30 名前:第四話「FRIENDSHIPC」 投稿日:2002年05月08日(水)22時05分45秒
- 暗い教室。
いつも通りの光景だった。
それに慣れている石川は黙って下を向き、耐えていた。
男子生徒がいきなり石川の頭を叩く。
隣の席の生徒が、石川の椅子を蹴る。
周りの皆が笑う。
石川はただ黙って耐えていた。
目には涙が溜まっていた。
- 31 名前:第四話「FRIENDSHIPD」 投稿日:2002年05月08日(水)22時06分29秒
- 「・・ひとみちゃんが、いつも護ってくれてたんです」
石川は再び、コーヒーを口に運んだ。
石川の頭を叩いた男子生徒の机がいきなり真ん中から砕けた。
木の破片が辺りに舞い、男子生徒は慌ててその机の残骸から離れた。
と、同時に男子生徒が腰掛けていた椅子も机と全く同じ状態になった。
教室中がパニックになった。
石川もまた、呆然とその男子生徒の砕けた机を見ていた。
ふと教室の入り口を見た。
そこには隣のクラスの吉澤の姿があった。
笑って手を振っていた。
石川は気付いていた。
(『よっすぃ〜』が助けてくれたんだ!)
石川は吉澤の方へ駆けて寄って行った。
- 32 名前:第四話「FRIENDSHIPE」 投稿日:2002年05月08日(水)22時07分28秒
- どこまでも・・・どこまでも・・・
吉澤の跡を追っていった。
いつからか・・
追い着けなくなっていた。
- 33 名前:第四話「FRIENDSHIPF」 投稿日:2002年05月08日(水)22時07分58秒
- 「・・・あの・・」
しばらく黙って話を聞いていた矢口が口を開いた。
「・・・はい・・・」
「さっきから聞いてると、女の子みたいなんだけど・・・」
石川は不思議そうな顔をした。
「ひとみちゃんは女ですよ」
矢口は一瞬、固まった。
「・・・・女?・・」
「・・・女です・・」
「・・・・」
「・・・・」
「あの〜。話を続けてもいいですか・・・?」
「・・あっ!ごめん!」
矢口は慌てて、オレンジジュースに立っているストローに口をつけた。
(女だったのか・・・)
矢口は先を促した。
- 34 名前:GO。 投稿日:2002年05月08日(水)22時10分54秒
- 第四話、一日遅れで更新しますた。
GWのおかげで遅れてしまいました。
- 35 名前:くわばら。 投稿日:2002年05月09日(木)02時20分14秒
- 更新お疲れ様です。
楽しみな小説が増えました(^-^)
にしても、入院している人は誰なんでしょうか…。
- 36 名前:第五話「返り血」 投稿日:2002年05月09日(木)14時55分59秒
- 中学校に入ってからだった。
石川へのイジメは日に日にエスカレートしていた。
殴る、蹴るは当然。
有り金は全て取られ、服には必ずどこかに靴跡があった。
眼帯をするほどのケガは日常茶飯事で、訳も無く、石川の鞄は切り傷をつけていた。
それでも石川はただ耐えていた。
- 37 名前:第五話「返り血A」 投稿日:2002年05月09日(木)14時56分47秒
ある日、ついに石川の恐れていた事が起こることになる。
テニス部、部室。
石川の周りにはクラスの男子数名が取り囲むように立っていた。
それぞれの顔には、吐き気がするほどの歪んだ笑顔が浮かんでいる。
一番奥で落ち着かない感じの男の子がビデオカメラを手にしたまま、言った。
「やっ、やっぱり・・・やっ、止めませんか?」
石川の方を向いていた一人の生徒が、振り向き、ビデオの少年にボディを入れた。
ビデオ少年は体をくの字に曲げ、うめいた。
石川は慌てて顔をそらした。
「ばーか・・・しけたこと言ってんなよ・・・」
ビデオ少年の頬を足が蹴り飛ばす。
「これはボランティアだよ、ボランティア。誰も貰ってくれないだろうからよ、俺らが
わざわざ、貰ってやんだよ・・・」
蹴った少年は石川の方を向いた。
「こいつの処女を・・・」
- 38 名前:第五話「返り血B」 投稿日:2002年05月09日(木)14時58分04秒
- 矢口は呆然とその話を聞いていた。
ここまで、今の中学生のイジメは酷くなっていたとは知らなかった。
「・・・それで・・・大丈夫だったの・・・」
石川はこくんと頷いた。
矢口はそこで安心して、話の先を促した。
「それで・・・」
- 39 名前:第五話「返り血C」 投稿日:2002年05月09日(木)14時59分21秒
- 石川の着ているものは全て、脱がされていた。
石川は生まれたままの姿でその場に座り込んでいた。
部室の中では荒い息遣いと、カメラのジーッという音しか聞こえなかった。
「それじゃあ・・・俺からやるわ・・・」
すでに上着を脱いでいる男がそう言った。
「・・・しっかり撮れよ」
男はビデオ少年にそう指示すると、ゆっくりと石川に近付いてきた。
石川の肌に触ろうとした瞬間だった。
- 40 名前:第五話「返り血D」 投稿日:2002年05月09日(木)14時59分56秒
- 肌まで残り数十センチという所で男の指がおかしな方向に曲がった。
「うっ!!!」
石川は見た。
その男の指が、紙を丸めるようにぐしゃぐしゃになり、その各部から白い骨が飛び出すのを。
「ぎゃあああああああああああああああああああああ」
悶絶する男を前に、石川はただ呆然とその姿を見つめていた。
すぐに分かった。
(よっすぃ〜だっ!!!)
石川は慌てて、その姿を探した。
だが、見当たらない。
(なんで・・・?よっすぃ〜じゃないの?)
「うああああああああああああああああああ!!」
手を抱えて蹲る男の後ろで、再び悲鳴が聞こえた。
立ちあがった石川の目に飛び込んできたのは、真っ赤なヴィジョンだった。
(いた!よっすぃ〜!)
返り血を浴びて、楽しそうに笑う吉澤。
返り血。返り血。
よっすぃ〜。
返り血。
石川の意識が一瞬で飛んだ。
- 41 名前:第五話「返り血E」 投稿日:2002年05月09日(木)15時00分34秒
- 「それから、ひとみちゃんはおかしくなっちゃたんです!何を考えてるかも
分からなくなって、超能力で人を傷つけるようになって!・・・でも誰も超
能力なんて信じてくれないから・・・」
石川は顔を伏せた。
泣いているようだった。
矢口にはその苦労が痛いほど分かっていた。
自分の能力をいくら話しても、誰も信じてくれない。
確かに、そこにあるモノが、自分以外に認知されない恐怖。苛立ち。
矢口は何も言わず、石川を見つめていた。
(どうしようかな・・話すべきかなぁ・・・)
矢口は迷っていた。
自分は・・・この超能力の正体を知っている。
しかし、この能力の正体をばらしたが最後、石川はこの『闘い』に参加しな
ければならなくなる。
初対面の子をそんなことに巻き込んでよいものだろうか?
(いや、駄目)
矢口は首を横に振った。
この子は・・・今、どうかは知らないが・・・幸せだ。
どんな状況だろうと、『闘い』に参加するよりマシなはずだ。
矢口は拳を膝の上で握り締めた。
(じゃ・・なきゃ・・・『なっち』みたいに・・・)
- 42 名前:第五話「返り血F」 投稿日:2002年05月09日(木)15時01分49秒
矢口は顔を上げると、石川に尋ねた。
「よっすぃ〜は・・何処にいるか・・・わかる?」
石川は矢口の顔を見た。
石川は怒っているようだった。
「駄目です!殺されちゃいます!!今のよっすぃ〜は・・危険です!!」
矢口は思った。
(本当に良い子だね。この子。初対面の矢口の事も真剣に心配してくれる。
だから、こんなに怒ってるんだ)
「大丈夫・・・私がよっすぃ〜を助けてあげる」
矢口はそう応えると、席を立った。
「駄目ですっ!」
石川が叫び、席を立った。
幸い、他に客はいなかったが、従業員がこちらを驚いた顔で見ていた。
「大丈夫だって・・えっと・・・」
矢口は髪を少し掻きながら照れた顔で訊いた。
「名前は・・まだ、聞いてなかったよね」
「石川・・・・石川梨華です・・・」
「梨華ちゃんか・・・矢口は、・・っと、私は矢口真里。大丈夫だよ、
教えて、よっすぃ〜の居場所」
矢口は石川の顔を真剣に見つめた。
「矢口も超能力者だから」
- 43 名前:GO。 投稿日:2002年05月09日(木)15時04分55秒
- どうも、更新しますた。
展開オセー。
まあ、とりあえずマイペースで頑張りマス。
>>35 ありがとうございます。
やっぱり応援していただくと嬉しくてやる気が出ます。
病院の少女は一体、誰なんでしょうか!?(結構バレてる?)
- 44 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年05月09日(木)17時29分06秒
- 更新お疲れ様です。
病院の少女は・・・大体わかりました(w
多分、結構バレてます(^^;
- 45 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月10日(金)05時40分37秒
- 戦闘系ですかねぇ…楽しみです。
娘。が超能力を持っている小説は個人的に大好きです!
頑張って下さい!
- 46 名前:第六話「LET’S BATTLE」前編 投稿日:2002年05月10日(金)21時30分02秒
- 「・・・てわけでさあ、これから正義の超能力セクシー少女、矢口真里は
闘いにいかなきゃならないのよ・・・」
矢口は白いベットの上で眠っている少女の頭を撫でた。
少女は眉一つ動かさず、ただ静かに呼吸している。
「だから・・さ・・・ね・・・」
矢口は自分の瞼が熱くなっているのに気が付いた。
瞬き一つで涙が出てしまいそうなのを、ぐっと堪えると、笑顔で言った。
「・・・安心して・・寝てな・・よ・・」
声が上ずった。涙がこぼれた。
「きゃはっ・・・なん・・・なんだろね・・これ・・・、矢口、・・
じゃあ・・いくね・・・」
矢口は必死で涙を拭うと、席を立った。
そして、出ていこうと病室のドアに手をかけた瞬間だった。
『気を付けて・・・矢口・・』
矢口は慌てて、振りかえった。
そこには、先程と変わらず眠り続けている少女の姿しかない。
(・・空耳・・・?)
矢口は拳を握り締め、病院を後にした。
- 47 名前:第六話「LET’S BATTLE」前編 投稿日:2002年05月10日(金)21時31分03秒
- 「よっすぃ〜は・・学校にいると思います・・・」
石川の言葉通り、吉澤は学校にいた。
私立朝が丘高等学校、その校舎内に。
そう簡単には見つからないと思っていた矢口だったが、意外に早く見つける
事が出来た。
一階の一番端の教室に吉澤はいた。
窓際の机に腰をかけ、外を眺めている。
すでに時計は午後八時を回って、辺りはすっかり闇に支配されていた。
「・・・吉澤さん・・・」
吉澤がゆっくりと振りかえる。
矢口はその目に少々、悪寒が走った。
獣・・・いや、獣と比ではない。獣のほうがまだ、少しは温かい目をしている。
その目はまさに・・『悪魔』・・『鬼』・・『物の怪』・・またはその類。
矢口はその場から逃げ出したい衝動にかられた。
吉澤が口を開いた。
「・・何」
(『死神』!!『妖怪』!!『お化け』!!『悪鬼』!!)
矢口の足が震え始めた。
そのたった一言「・・何」に恐怖のインスピレーションが一気に矢口の頭の
中を駆けていった。
- 48 名前:第六話「LET’S BATTLE」前編 投稿日:2002年05月10日(金)21時31分46秒
- なにかの爆発した音が矢口の耳に届いた頃には、矢口は教室から飛び出していた。
教室の中を振り返ると、木の屑が空中に舞っていた。
(早く止めないと・・・!!)
矢口は教室に再び、戻った。
吉澤は冷たい目で矢口を見ている。
いや、睨んでいるのか。
矢口は目の前の机を砂に変えると、矢口を包むように砂の壁を創った。
どんっ!!!!
爆発音と同時に目の前の砂の壁が揺れる。
矢口は叫んだ。
「吉澤さんっ!!!聞いてっ!!!」
「なによっ!!!」
どんっ!!!
吉澤の返事と共に、再び砂の壁が揺れた。
「あなたを・・・助けにきたんだよっ!!!」
どんっ!!!
「きゃあっっ!!!」
矢口の目の前の砂の壁が吹き飛んだ。
- 49 名前:第六話「LET’S BATTLE」前編 投稿日:2002年05月10日(金)21時32分31秒
- 『無限・・果てなど見えない、ただ空虚な闇。
上を見ているのか?下を見ているのか?
右を向いているのか?左を向いているのか?
目を閉じているのか?開いているのか?
理解から程遠い、空間。そして感覚。
足元には地はあるのだろうか?
全神経を疑いたくなる程の、無感覚。
無感覚という名の感覚。
ただ、はっきりと分かる事、理解出来る事、具象ながらも言い表せる事。
それは・・・
自分。
自分がここにいる事。
それだけが確かな私の感覚』
- 50 名前:第六話「LET’S BATTLE」前編 投稿日:2002年05月10日(金)21時33分03秒
- ・・・いや、違う・・・
分かる・・・。
他人、自分では無いモノの存在・・・
モノ・・・夢・・思想・・・
いや、違う・・・
人。
人がいる。
誰・・・・
誰・・・・
- 51 名前:第六話「LET’S BATTLE」前編 投稿日:2002年05月10日(金)21時34分10秒
- 「きゃはっ・・・なん・・・なんだろね・・これ・・・、矢口、・・
じゃあ・・いくね・・・」
・・・・・『ヤグチ』
矢口!!!!
矢口!!!待って!!!行かないで!!!
矢口!!!
気を付けて!!!
ドアの閉まる音。
- 52 名前:GO。 投稿日:2002年05月10日(金)21時47分10秒
- 少しですが、更新しますた!
現在、その存在が確認されているのは矢口と吉澤と石川だけですね。
残り六人、いつになったら姿をみせるんでしょうか!?
>>44 レス、サンクスです!
ばれてますか!?
でも、想像通りいかせないのが、小説ですよね。
>>45 こちらもレス、サンクスです!
ブックマーク、嬉しいです!
戦闘系こそ目指して走っているものの、常に脱線してしまうところが
まだまだ、甘ちゃんですな・・・。
応援ありがとうございます!(;v;
ガンバルマス!!!
- 53 名前:第七話「白い病室で見てる夢」 投稿日:2002年05月13日(月)00時27分58秒
- 春。
今年も去年と同じようになつみは大学に通っていた。
バスの中から流れる景色を見るたび、なつみは何故かせつなくな
る。
理由は分からない。ただ、何か大事なモノを失ったような気持ち
になる。
- 54 名前:第七話「白い病室で見てる夢」 投稿日:2002年05月13日(月)00時28分43秒
- 歩道橋を何度かくぐると、バスは大きく右折した。吊り革がその
動きに抵抗するように大きく揺れた。
なつみは窓から目を離すと、自分の足元のバッグからカセットウ
ォークマンを取り出した。MDなどが流通しているこのご時世に
、カセットウォークマンは珍しかったが、なつみは古いそれを好
んで愛用していた。カセットを入れ、大きなボタンを押し込む。
なつみは少し溜息をついた。バスはまだ一度もバス停には停まら
ず、ただ目的地に向けて静かに走りぬける。
- 55 名前:第七話「白い病室で見てる夢」A 投稿日:2002年05月13日(月)00時29分21秒
- 目的地である大学前のバス停に着くと、なつみは大学の校門をく
ぐった。桜色の花びらが出迎えるように一斉に飛び舞った。その
花吹雪にしばらく、なつみの目は奪われていた。
舞っていた桜の花びらがほとんど地面に降りると、なつみは桜の
樹の下に誰かいるのに気が付いた。
その女の子は小柄な体で茶パツの、なつみと同い年位のコだった。
なつみは目が合ったので少し、感じ取れるかどうか位で会釈をし
た。
女の子は気付いていたのか、いかなかったのか、何も言わず校舎
に向かって歩き始めた。なつみは少々、ムッとしたが、まあ、別
に返事を期待してたわけじゃないし、構わず、なつみも校舎に入
っていった。
- 56 名前:第七話「白い病室で見てる夢」B 投稿日:2002年05月13日(月)00時30分18秒
- なつみは大学が終わると、大学の外に出た。
すぐに近くの喫茶店に入る。
喫茶店の中は大学生で少々、埋まっていたが、なつみは別段待た
される事も無く、すんなり席に座れた。
「ふう・・」
なつみは外の景色を見ながら一息ついた。すぐに水とメニュー表
を持った可愛いエプロン姿の女の子が現れた。
「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
なつみはその女の子のアニメのような可愛らしい声に少々、面食
らったが、まあ、この顔にこの声なら良い意味で納得できた。
- 57 名前:第七話「白い病室で見てる夢」C 投稿日:2002年05月13日(月)00時31分02秒
- ハンバーグ定食のバターコーンまで残さず食べた後、なつみはし
ばらくぼんやり空を眺めていた。
「今日も良い天気だべ・・」
そう呟いたと同時に、
「ふぅ・・」
という声と共に前の席に誰かが腰掛けた。なつみはけげんな顔で
そちらに振りかえると、朝の、桜の樹の下の女の子がそこにいた。
「え・・?」
「ど〜も〜、初めまして!」
なつみがわからないという顔をすると、少女は構わずウェイトレ
スを呼び止めた。
「すみません。コーヒー一つ」
「かしこまりましたあ。そちらはご注文はございますか?」
ウェイトレスがなつみの方を見てアニメのような声で訊ねたが、
なつみの耳には届いていなかった。
(なんだべさ・・・この子・・)
なつみは黙って少女の顔を見ていた。
- 58 名前:第七話「白い病室で見てる夢」D 投稿日:2002年05月13日(月)00時31分48秒
- 「注文はいいみたい。」
「そうですか?じゃあ・・」
ウェイトレスは席から離れて、又、別の席の注文を受けにいった。
注文を終えた少女はなつみがじっとこちらを見つめているのに気
が付いた。
「なんだよう、なっち。なにか矢口の顔についてる?」
「え・・いや・・」
なつみは慌てて視線を落とした。
と、おかしな事に気付く。
(今、この子、『なっち』って言った?)
慌ててなつみは訊ねた。
「もしかして・・あった・・事ありますか?」
「?」
矢口と名乗った少女はけげんな顔をしてなつみを見つめた。再び
なつみは視線を落とす。矢口が口を開いた。
「もしかして覚えてないの?」
なつみはただ黙って縦に頭を振った。
- 59 名前:第七話「白い病室で見てる夢」E 投稿日:2002年05月13日(月)00時32分38秒
- 「え〜!矢口、ショックだよ〜!」
矢口は眉をハの字にして叫んだ。
「なっちまで矢口の事覚えてないの〜?親友だったじゃ〜ん!」
なつみはどうしていいかわからなかった。
本当に話した覚えも無ければ、すれ違った記憶も無い。
「すみません・・・」
なつみは正直に謝るしかなかった。
と、そこにウェイトレスがコーヒーを持ってきた。
湯気だったコーヒーをテーブルの真ん中に置くと、
「ごゆっくり」
と言って席から離れた。
矢口はウェイトレスを指差して言った。
「あの子は?あの子は覚えてる?」
なんとなくその矢口の表情は鬼気迫る感じがあった。
なつみは「ごめんなさい」と再び謝った。
すると、矢口の表情が何故か和らいだ。
- 60 名前:第七話「白い病室で見てる夢」F 投稿日:2002年05月13日(月)00時33分25秒
- 「なんだ。まだ目覚めてないのか・・」
さっきまで一人大騒ぎしていた矢口は大人しく椅子に座った。
なつみはわけがわからず、少し泣きそうになっていた。
(なんなんだよ〜、この子〜)
(わけわかんないよ〜)
(早くここから出たい!)
なつみがそう思って席を立とうとした瞬間、なつみの足に一瞬、巻
きついた感覚がした。そのままなつみは再び席についてしまった。
「ちょっ、ちょっと!話聞いてよ〜!」
矢口が唇を尖らせてなつみに訴えた。
が、なつみの頭の中は今の足に起きた感覚の事でいっぱいだった。
(何!?いまの!?)
足元を見た。
闇。
足元には無限の闇が広がっていた。
- 61 名前:第七話「白い病室で見てる夢」G 投稿日:2002年05月13日(月)00時34分04秒
- 体が、静かに降りていく。
なつみは矢口のほうを見た。
矢口は泣いていた。
泣きながら、手を振っていた。
そこには喫茶店も、テーブルも、BGMも無かった。
ただ、底知れぬ闇があった。
(助けてよ!矢口!!)
『矢口』!
思い出した。
そのまま、なつみの感覚は全て止まってしまった。
- 62 名前:GO。 投稿日:2002年05月13日(月)00時36分42秒
- 更新です。
何度か、SAGEを忘れました。
ご迷惑をおかけしますた。
次回、第八話「LET’S BATTLE」中編です。
- 63 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月13日(月)01時01分31秒
- 面白いです。
自分が書いてるのよりよっぽど(w
期待してますのでこれからも頑張ってください。
- 64 名前:第八話「LET’S BATTLE」中編 投稿日:2002年05月13日(月)21時17分48秒
- 目の前の砂の壁が吹き飛び、矢口の体が砂の残骸の中から丸見えになった。
吉澤は無表情のまま、拳を振り上げた。
矢口は足元の砂を体に巻きつけると、身構えた。
ゴッ!!!!
「きゃあっ!!」
吉澤の拳が砂の上から矢口に突き立てられた。
その瞬間、砂が辺りに飛び散った。
吉澤の視界を砂の風が遮る。
(あ、ぶ、ねぇ〜〜)
矢口は足元の砂を流して、教室の端まで逃げた。
教室の端で矢口は立ちあがると、砂の風と闘っている吉澤を見つめた。
(まさか、ここまでとは思ってなかったし・・)
矢口は卑怯だが、不意打ちに全てを賭ける事にした。
いや、そうしなければ勝ち目は無いように思えた。
矢口は静かに、足元に溜まっている砂に手をかざした。
砂が、まるで磁石を前にした砂鉄のようにゆっくりと矢口に集まり始めた。
- 65 名前:第八話「LET’S BATTLE」中編 投稿日:2002年05月13日(月)21時18分41秒
- 吉澤は目の前の砂の風に苦戦しながら、能力を放った。
先程、マーキングしておいた机に向けて放つ。
ドドンッ!!
目の前の砂の風が爆風によって掻き消された。
吉澤はすぐさま矢口の姿を探した。
教室は矢口の能力によって、ちょっとした砂漠のようになっていた。
矢口は・・すぐに見つかった。
教室の端で目を閉じて、『何か』をしている。
動いてもいない。
なんの動作もないのだが、『何か』している。
吉澤は矢口の脇にある、机にマーキングした能力を発動させた。
ドンッ!!!
大きな音と共に机が弾け飛ぶ。
だが、矢口は黙って俯いている。
矢口の頬を熱い風が走り抜け、頬が少し切れた。
じゃっ・・・・じゃっ・・・!!
砂の擦れる音が吉澤の耳に届いた瞬間、吉澤の頭に細かな砂が
落ちてきたのが分かった。
慌てて吉澤が見上げた先に、砂の蛇がいた。
歩道橋の時のあの蛇が。
- 66 名前:第八話「LET’S BATTLE」中編 投稿日:2002年05月13日(月)21時19分20秒
- ざざざざざざ・・・・・!!!
吉澤の耳に砂の音だけが聞こえた。
体は砂に巻き込まれており、視界は遮られていた。
(痛い!)
身体中が砂で擦り切れているのがわかった。
ドコンッ!!
砂の蛇が何処かにぶつかったのだろう。
身体中に衝撃が走る。
(うっ・・・!!)
ドコンッ!!
再び、衝撃が走った。
ガシャンッッ!!!
ガラスの割れる音がした。
吉澤は空気が変わったのを感じた。
(・・・外!)
砂の蛇は教室を飛び出して、月明かりに向かって伸びた。
- 67 名前:GO。 投稿日:2002年05月13日(月)21時25分16秒
- 短いながらも、更新です。
戦闘はやっぱ疲れますです。
次回はあの二人が出ます。多分。
出なかったらスマソ
>>63 ありがとうございます。あと、どんな小説をお書きになってるのか
教えてください。
- 68 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年05月13日(月)21時58分31秒
- 更新お疲れ様です。
第七話の夢が微妙に謎っぽく、
そして、「あの二人」とはいったい誰なのか・・・
続きがすごい気になります。
大変だと思いますが頑張ってください。
- 69 名前:63 投稿日:2002年05月14日(火)19時01分39秒
- それだけは勘弁して下さい(^^;
自分で自分の小説を紹介するのは何か照れくさいんです(w
ちなみに矢口の能力がかなり好きです。
これからも頑張ってください。
- 70 名前:第九話「LET’S BATTLE」後編 投稿日:2002年05月14日(火)23時30分29秒
- 「・・このまま落ちたくなければ、言う事を聞きなさいっ!」
矢口は砂の蛇を静止させると、その中にいる吉澤に叫んだ。
「オイラは、君を助けにきたんだから」
砂の蛇の中からは何の返事も来なかった。
矢口はもう一度叫んだ。
「返事してよ!吉澤さん!」
ドンッ!!!
矢口の声に呼応するように足元の砂が巻き上がった。
そして、その下からコンクリートの破片が突き出してきた。
(よっすぃ〜の能力!)
このまま、突き出した破片の上に降りれば危ない。
矢口は砂でじゅうたんを創り、その上に降りた。
(どういうこと!?よっすぃ〜の能力は遠隔操作可能なの!?)
矢口は砂の蛇を見た。
砂の蛇の体は途中から二つに割れ、その割れ目から砂が流れ出ていた。
(逃げた!!)
矢口は窓に向かってじゅうたんを伸ばし、その上を走った。
窓際に近付いた瞬間だった。
ドドドオンッ!!!!
窓際の壁が一斉に砕けた。
鋭い破片が矢口のクロムハーツのピアスを揺らして頬の横を通りすぎた。
もう少しで耳をざっくり割られている所だった。
- 71 名前:第九話「LET’S BATTLE」後編 投稿日:2002年05月14日(火)23時31分10秒
- (やっぱり・・!)
矢口は吉澤の能力を完全に把握した。
(『bV 走破』か!)
矢口は砂を自分の周りに集めると、身構えた。
(この能力は厄介だな・・、どうする・・・)
ドンッ!!
真横で地面が抉れて、巨大なコンクリートと細かな粉を吹いた。
矢口はすぐさま防御した。
巨大なコンクリートは砂の壁を少し抉った。
「・・・っもう!!」
矢口はそのコンクリートを踏みつけ、飛んだ。
コンクリートはゆっくり、矢口のいた場所に沈んだ。
もう少し判断が遅れていたら下敷きだった。
矢口は砂の上に着地を失敗し、倒れこんだ。
(やばい・・やばいよぉ〜、ど〜しよ〜・・・なっちぃ・・・)
いよいよ勝ち目が無くなってきた。
(話くらい聞けよな!!)
矢口は辺りを見まわした。
吉澤の姿は無い。
(どこに行った!?)
矢口はいつでも防御できるように砂を身に纏うと、立ちあがった。
- 72 名前:第九話「LET’S BATTLE」後編 投稿日:2002年05月14日(火)23時31分45秒
- 急に静かになった。
矢口は完全に破壊し尽くされた教室を眺めながら、吉澤の姿を追った。
だが、どこにも見当たらない。
(逃げられた・・・?)
矢口は今度はゆっくりと窓際に近付いた。
窓、というか窓のあった場所から静かに吉澤を探す。
見当たらなかった。
(・・矢口がパニくってる間に逃げたんだ・・)
全身から糸が切れたように力が抜けた。
矢口はその場にへたり込むとしばらくそこから動けなかった
- 73 名前:第九話「LET’S BATTLE」後編 投稿日:2002年05月14日(火)23時32分17秒
- 矢口が病院から出てすぐ、入れ違いで二人の少女が入っていった。
入り口の受け付けで友達の部屋を聞くと、少女達はその病室に向かった。
エレベーターに乗って、『B』を押して、『閉』ボタンを押そうとした時だった。
「ちょっと待って下さい!」
閉まりかけているドアの向こうからそんな声が聞こえた。
ツインテールの少女がドアの向こうを覗いた。
車椅子に乗っている少女が一生懸命こちらに向かって何か言っていた。
「あの人・・乗るみらいれすよ?」
ボタンの前にいる少女は『開』ボタンを押した。
ドアが開く。
車椅子の少女が入ってきて、一気にエレベーターの中は一杯になった。
「はあ・・はあ・・ありがとうございます・・・」
車椅子の子はそう言って頭を下げた。
「いいれす」
ツインテールの少女は笑顔で応えた。
「何階でおりんの?」
ボタンの前の少女が聞いた。
車椅子の少女は後ろを向いて、軽く会釈すると
「・・え〜と・・五階です・・」と応えた。
エレベーターのドアが閉まった。
- 74 名前:第九話「LET’S BATTLE」後編 投稿日:2002年05月14日(火)23時32分49秒
- (近付いてる・・・。
あの二人だ・・・。
この感覚・・・エレベーターか・・・・
出遭っちゃ駄目・・・
出遭っちゃ・・・)
なつみは必死に心の中で呼びかけた。
無駄だとはわかっていたが、必死に呼びかけた。
しかし、なつみの呼びかけも虚しく、辻と加護はなつみの病室の扉を開いた。
なつみの心の中で、なつみではない声がした。
(『bU 集中』
『bV 走破』
スタートします)
(やめてっ!!!)
(対象、加護亜依、辻希美)
(お願いっ!!辻っ!逃げて!加護!!)
(スタート)
なつみの心の中でピーッという電子音が響いた。
- 75 名前:GO。 投稿日:2002年05月14日(火)23時40分51秒
- 更新ですっ!!
いやー、疲れました!!
辻、加護参上です。
これからが忙しくなります!!
次回の更新は金曜日です。
>>68 本当、レスありがとうございます!頑張って書きたいと思います。
第七話の夢は、夢だからこそ現実と非現実がごちゃまぜになるという感じです。
わけがわからないですが・・・続きもよろしくお願いします。
>>69気持ちがわかります(^^
矢口の能力の名前はまだでていませんが、結構単純です。
これからもご愛読のほどを。
- 76 名前:第九話「WINTER AGAIN」 投稿日:2002年05月18日(土)11時41分48秒
- 矢口は吉澤との戦闘後、すぐさま石川の携帯に連絡した。
石川の携帯の番号はファミレスで、もしもの時のために控えておいた。
「もしもし・・梨華ちゃん?・・・」
『矢口さんですかっ!!?』
電話向こうの石川の声は妙にうわずっていた。
『大丈夫だったんですか!?』
「・・・ごめん・・」
『ごめんって・・・何かあったんですか!?』
このままでは、矢口の一言一言に反応しそうだったので
とりあえず落ち着かせる事にした。
「ちょっと・・梨華ちゃん、落ち着いて・・」
『でっでも・・』
「矢口だったら・・大丈夫だったから・・」
『本当ですかっ!?』
「だから・・落ち着いて・・話できないじゃん」
『あっ・・・すみません・・』
石川は、きっと今頃、携帯片手にうな垂れているだろう。
矢口は結果から教えておこうと思った。
「あのね・・よっすぃ〜にね・・逃げられた」
『・・逃げたんですか・・・?よっすぃ〜・・』
先程とは打って変わって普段のアニメ声で石川が応えた。
しかしその声は震えているように思えた。
矢口は下唇を噛んだ。
「逃げられた・・・矢口がちょっと・・油断した隙に・・」
もうすぐ、夜が明けようとしていた。
- 77 名前:第九話「WINTER AGAIN」A 投稿日:2002年05月18日(土)11時42分32秒
- 携帯を片手に石川は家を出た。
もちろん、吉澤が来た時に家族を巻き込まないためだ。
居場所を教えた石川を吉澤が狙うのはありえない事ではなかった。
夏とはいえ、朝方は少々冷える。
だが、石川は構わずピンクのパジャマのまま、家から離れた。
超能力も何も持たない石川は矢口に会って護ってもらうしかない。
なによりも今は矢口に会わなければいけなかった。
『前の歩道橋の場所にいるから・・』
矢口の所まで、そうは時間はかからない。
走って行けば数分だ。
新聞を配っている中学生が、ピンクのパジャマで走る少女を
不思議そうに眺めていた。
- 78 名前:第九話「WINTER AGAIN」B 投稿日:2002年05月18日(土)11時43分48秒
- 大きな通りの裏通り。
吉澤は当たり前と言った感じでそこにいた。
石川は身構えたまま、怯えた視線を吉澤に向けた。
(歩道橋の近くには矢口さんがいるのに・・!)
すぐそこの角を曲がれば歩道橋が見える距離だ。
それだけに今、歩道橋が遠くに感じられた。
「梨華ちゃん、やっほ〜」
「・・・・」
吉澤の体には切り傷が其処ら中についていた。
きっと矢口との戦闘の際、ついたものである事はすぐにわかった。
石川はパジャマのズボンの、後のポケットに手を入れた。
手には冷たい鉄の感触が伝わった。
「さっきね・・矢口って人に襲われたんだ・・・」
「・・・・・」
「『あの場所』ってさ・・梨華ちゃんと私の秘密の場所だよね・・」
「・・・・」
「なんで、あの矢口って人さあ、知ってんのかなあ・・・」
言外に教えたんだろう?というニュアンスが含まれていた。
石川は応えず、じっと吉澤を見つめた。
- 79 名前:第九話「WINTER AGAIN」C 投稿日:2002年05月18日(土)11時44分33秒
- 「応えなよっ!!梨華ちゃんっ!!!」
ドゴゴゴゴンッ!!!!!
「!!」
石川の真横の壁やら電柱やらが吹き飛んだ。
破片が石川に降り注いで、腕の辺りが少々切れた感触がした。
「ねえっ!!!」
吉澤は再び能力を放とうとしているのが分かった。
石川はポケットからカッターナイフを取り出すと吉澤に向かって駆けた。
「なっ!!?」
「ああああああああああああああああああ」
石川は叫びながら吉澤を狙ってカッターナイフを突き出した。
吉澤は紙一重でかわすと、地面を叩いた。
ほぼ同じに石川の足元の地面が盛り上がった。
石川その場をすぐに離れると、吉澤に飛びかかった。
石川がいた所の地面が破裂した。
破片の幾つかが、石川の背中に刺さったが、石川は気にしなかった。
- 80 名前:第九話「WINTER AGAIN」D 投稿日:2002年05月18日(土)11時45分39秒
- 「あああああああああああああああああああああ!!」
石川は、なおもカッターナイフを振った。
「・・・うざいっ」
吉澤は全てを紙一重で交わして、石川の頬を殴った。
石川は少しよろけたが、再びカッターナイフを突き出した。
しかし、不安定な態勢で突き出したので速度はそれほどなかった。
そこを吉澤は逃さず、カッターナイフを持った右手を叩いた。
石川の手からカッターナイフが離れた。
「・・・うっ!!」
石川は後に倒れこむと、吉澤を睨んだ。
辺りは抉れたコンクリートと倒れた電柱、その破片が散らばっていた。
(いつもだ・・・)
石川はゆっくりと立ちあがった。
パジャマの背中がピンク色から段々濃くなって、赤い色に変わった。
(よっすぃ〜が・・通った道は全てこうなるんだ・・・)
吉澤は足元に落ちているカッターナイフを拾うと、空中に投げた。
空中でカッターナイフは砕け散り、鉄の屑に変わった。
(こうやって・・・よっすぃ〜は・・・出会ったもの全てを否定して
破壊して・・・)
石川の口から血が吹き出た。
よろけながらも、吉澤を睨んだ。
(孤独になる・・・)
- 81 名前:第九話「WINTER AGAIN」E 投稿日:2002年05月18日(土)11時46分09秒
- ズズズッッンッッ!!!
何が起こったのか、石川には理解できなかった。
自分は気が狂ったのではないかと、少々、恐怖を感じた。
辺りの温度が急激に下がった。
パジャマの格好の石川には肌寒いというレベルでは無かった。
- 82 名前:第九話「WINTER AGAIN」F 投稿日:2002年05月18日(土)11時46分44秒
- 吉澤の目の前には氷塊があった。
吉澤の肌に冷気が触れるまで、吉澤は何も考えられなかった。
我に返った。
(何ッ!!?これ!!?)
ガガゴッンッ!!
氷塊が割れた。
吉澤は退いた。
人、五人分くらいの氷塊の破片が吉澤に向かって落ちてきた。
ドゴッオオオオッンッ!!
「うああっ!!!」
吉澤の体が氷塊の下敷きになった。
ミシミシと吉澤の体が音を立てた。
(うううううっ・・)
吉澤は手を後に回すと、背中の上の氷塊に手を触れた。
(マーキング!!ターゲット、氷塊!!)
キュイイッという音が掌から聞こえた。
(マーキングできた!?と言う事は・・人口物!!?)
吉澤のアバラの骨がゴキンッと鳴いた。
(あぐっ!!・・とりあえずは・・)
ドオオオオンッ!!!
吉澤の背中の上の氷塊は砕け散った。
「ううっ・・・・」
(立てない!!くそっ!!)
吉澤の体は体温が下がり、骨が砕けており、とても立てる状態ではなかった。
石川が呆然と氷塊を見上げているのが見えた。
(『bW 氷現』スタート)
ピーーーーッ・・・
- 83 名前:GO。 投稿日:2002年05月18日(土)11時50分42秒
- 第九話、更新しますた。
能力の説明がまだないので、
ちょっとわかりにくいかな・・
とは思いつつ・・・・
PS、『氷現』っていうのは表現と氷原を合わせたものです。
よって『ひょうげん』と読みます。
- 84 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年05月18日(土)15時30分35秒
- 今日はじめて読みました。
すごくおもしろそうです(w
がんがってください
- 85 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年05月18日(土)16時45分09秒
- 更新お疲れ様です。
氷現・・・石川覚醒!?
そして、よっすぃ〜はどうなるのか!?って感じです(w
- 86 名前:63 投稿日:2002年05月18日(土)18時16分00秒
- いい感じですね。
続きが気になります。
- 87 名前:第十話「真実」 投稿日:2002年05月18日(土)22時25分54秒
- 石川自身には氷がそこに現われたようにしか見えなかった。
突然、周りの空気が冷えたと思ったら、氷が何も無い所から出てきた。
ただ、石川の頭の中には以前も同じような事があったような気がした。
どこでかは分からない。
ただ、どこかで見た事がある風景だったように思えた。
「あうううっ・・・」
吉澤は腹を抱え、苦しそうにうめいた。
足を突っ張ると、そのまま、氷塊から離れようとしていた。
しかし、石川はその動きに気付くと、氷塊のちょうど吉澤の真上の所が割れた。
(あっ・・・!氷が・・!)
石川は黙って吉澤に向かって氷塊が降りていくのを見ていた。
吉澤はその氷塊に気付いていなかった。
そして、氷が・・・
「あぶないっ!!」
石川が堪らず叫んだ時、吉澤の真上で氷塊は砕け散った。
砕けた瞬間、やっと吉澤が氷塊があった場所を見た。
- 88 名前:第十話「真実」A 投稿日:2002年05月18日(土)22時26分40秒
- (どういうこと・・?この氷は・・・私の思い通りになるの・・?)
確かに氷塊は、石川が叫んだ瞬間に砕けた。
吉澤がコンクリートの破片に掴まって立ちあがっているのを見つめながら
石川は考えた。
試しに念じてみた。
(飛べ!!)
吉澤の足元を狙って、石川はそう念じてみた。
氷塊の麓で氷の割れる音がした。
ビュウウゥゥゥ・・・!!!
「!!」
ズバンンッ!!
「うぐっ!!!!」
吉澤の足を掬うように氷塊が飛んでいった。
そして、吉澤の足に見事当たって、吉澤は地面に伏した。
石川は呆然と、氷塊を眺めた。
(これは・・・私は・・超能力・・・者・・?)
その時、氷塊が静かに消え始めた。
(えっ・・?)
と、同時に石川の体中から力が抜け始めた。
(・・・うっ・・・わ・・・)
頭が重い。
急激な脱力感。
膝が揺れて、そのまま石川も地面に伏した。
意識がどこかに飛んでいく・・・・
- 89 名前:第十話「真実」B 投稿日:2002年05月18日(土)22時27分19秒
吉澤は気を失いかけていた。
実際、気はもう失っていたのかもしれない。
夢か?現実か?
しかしながら、そんなことはもう関係無かった。
吉澤が止めようとしていた事はもう、叶わない。
石川を巻き込まないために今までしてきた事は全て裏目に出た。
- 90 名前:第十話「真実」C 投稿日:2002年05月18日(土)22時27分56秒
- (梨華ちゃん・・・)
本当は歩道橋から落とした時、助かるようになっていた。
恐らく、数日は病院で過ごさなければいけない位のケガをして助かる予定だった。
しかし、矢口の手によってそれは阻止された。
あの時、本当は助けられないほうが良かったのだ。
これで石川は『闘い』に参加しなければいけなくなった。
拒否は出来ない。
明日から、能力者達が石川を狙ってくるだろう。
- 91 名前:第十話「真実」D 投稿日:2002年05月18日(土)22時28分38秒
- (私は・・ただ・・梨華ちゃんを・・・)
今まで非情な態度をとる事で、石川に能力について恐怖の印象を与え
石川の能力の覚醒を阻止してきたのだ。
大好きな娘を救いたくて、進んで嫌われていた。
自分が嫌われる事で石川が『闘い』に参加しなくていいのなら
別に構わなかった。
(大事だから・・・護りたかったから・・・)
苛めていたのは、石川に接触して目覚めさせる可能性のある能力者達から
石川を遠ざけるためだった。
事実、吉澤は何度か石川に近付いた能力者達と戦闘をした事がある。
その戦闘で生死に関わる大怪我をして、家で静かにその傷を治している間
昔はどんな小さな病気でもお見舞いに来ていた石川が来ない寂しさに涙を
一人で流した。
それでも、自分の傷を見るたび、石川をこんな目に合わせてはいけないと
石川にはあえて辛く接した。
- 92 名前:第十話「真実」E 投稿日:2002年05月18日(土)22時29分27秒
- (ごめんね・・・梨華ちゃん・・・)
(私が・・・私が・・巻き込んじゃったね・・・)
(ごめんね・・・)
(ごめん・・・)
吉澤の視界が大きく揺らいで、黒くなった。
意識もどこかに消えた。
- 93 名前:第十一話「新たな始まり」 投稿日:2002年05月18日(土)22時30分39秒
- なつみは心の中の声に語り掛けた。
(あなたは・・だれなの・・?)
心の声は何も応えない。
(この子達は何?何故、私は知ってるの?)
なつみは叫んだ。
(応えてよッ!!!)
(『時期が来たら教えるよ・・・・』)
(!?)
心の声が応えた。
なつみは少々、面食らった。
何故なら返事が返ってくるのは初めてだった。
そう、少なくともなつみが眠ってからの数ヶ月間。
(・・・あなたは・・誰なのよ・・・・)
(『・・・なっち・・』)
(・・・私・・?)
(『違う・・・なっち・の・・約束・・』)
なつみは訳が分からなくなった。
(『あと・・三人・・・』)
(あと三人って・・何!?なんなの!?)
(『記憶・・・皆の・・』)
(!!?)
(『ax)
なつみは意識の扉を閉めた。
これ以上は、なつみの精神が耐えきれそうになかった。
- 94 名前:第十一話「新たな始まり」A 投稿日:2002年05月18日(土)22時31分10秒
- 一人の女性が電車から降りてきた。
「ふぅ・・・ここか・・」
女性はバックからメモ帳を取り出し、辺りを見まわした。
「えーと、ここからどう行けばいいんだろう」
なんせ、初めて着た所だ。
女性は何処に行けばいいのかわからなかった。
(しかたない・・『交信』するか・・・)
女性は静かに能力を放ち始めた。
(―――――)
女性の手が緩み、メモ帳が地面に落ちた。
ふいにメモ帳が開いた。
- 95 名前:第十一話「新たな始まり」A 投稿日:2002年05月18日(土)22時31分48秒
- その中には
『bP 覚静(かくせい)
2 交信(こうしん)
3 追憶(ついおく)
4 操砂(そうさ)
5 変身(へんしん)
6 集中(しゅうちゅう)
7 走破(そうは)
8 氷現(ひょうげん)
9 記爆(きばく)』
と書かれていた。
- 96 名前:GO。 投稿日:2002年05月18日(土)22時36分23秒
- 第一部 終了です。
第二部はまた、いつか、どこかの板で(またはこの板で)、更新したいと思います。
その時まで、よろしくお願いします。
PS.小説の感想等、書いていただければ、これ幸いです
- 97 名前:63 投稿日:2002年05月19日(日)00時29分04秒
- お疲れ様です。
感想としては、戦闘シーンのテンポが上手いなと思いました。
あと能力の名前等、見習わなければいけない箇所が何点もあり勉強になりました。
出来れば、二部が何処で始まったかこのスレに書いてくれると嬉しいです。
- 98 名前:くわばら。 投稿日:2002年05月19日(日)05時27分15秒
- おお、なんか凄い事になってきてますね。
能力をもった少女達が何と「闘い」しなければならないんでしょ?
楽しみです。
- 99 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月19日(日)12時15分41秒
- つーか謎を残しすぎ。
続き気になるから早く書いてくれ。
- 100 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年05月19日(日)21時13分33秒
- 更新&第一部終了お疲れ様です。
意外な真実(?)でビックリしました。
まさかそうだったとは・・・って感じです。
そして飯田登場!能力はやっぱりそれでしたか(w
- 101 名前:名茄子 投稿日:2002年05月21日(火)12時53分23秒
- やべっ!これおもろい!!
- 102 名前:GO。 投稿日:2002年05月21日(火)20時10分09秒
- >>97〜101 感想等、ありがとうございます
謝謝。
なんか、引っ越すのもなんなんで、やはりここで書きたいと思います。
がんばっていきたいです。
よろしくお願いします。
P・S 感想等は暇な時はいくらでも書いてください。
なんでも参考になりますので。
短くても構いません。面倒ならば別に構いません。
- 103 名前:第十一話「いきなりゲーム」 投稿日:2002年05月21日(火)20時11分44秒
- 第二部
なつみの病室。
真っ暗な中、電気もつけず、二人の女性がなつみを囲むように立っていた。
一人は長身。そしてもう一人は猫のような目をぎょろつかせていた。
「なっち・・・」
猫目の女性がなつみに囁いた。
なつみは全く起きる気配がなかった。
「・・・?」
長身の女性がなつみの体を強く揺すった。
しかし、なつみは以前として起きる様子はない。
「起きないね・・」
「ちょっと待って・・」
猫目の女性はなつみの額に触れた。
「どうも、ただ寝てるってわけでもなさそうだよ・・」
「?どういう事?」
「『追って』みる」
「うん」
猫目の女性は目を閉じて、なつみに向かって能力を放った。
掌からキュルルルッという音がした。
- 104 名前:第十一話「いきなりゲーム」A 投稿日:2002年05月21日(火)20時12分16秒
- (・・・)
(・・・)
(・・・!!)
なつみの額に手を当てていた保田が目を開いた。
だが、保田の目はどこを見ているか分からない視線だった。
たまらず飯田が口を開いた。
「圭ちゃん、どうだったの?」
「・・・・」
「どうしたのさ?」
保田が飯田に視線を向けた。
「なっち・・・自分に能力を使ってる・・」
「えっ・・・?」
「だから・・・起きないんだ・・」
飯田はなつみの顔を見た。
安らかな寝顔だった。
「そんな・・・・」
「事情までは分からなかったけど、矢口が関係してるみたい」
「矢口はもう目覚めてるの?」
「そこまではわかんなかった・・ただ・・・」
保田の視線が空を仰いだ。
「少なくともなっちは能力を理解してない」
飯田がなつみの前髪を撫でた。
「目覚めてないの・・?」
「うん。だから能力が暴走してるんだと思う」
その時だった。
病室のドアが開いた。
- 105 名前:第十一話「いきなりゲーム」B 投稿日:2002年05月21日(火)20時13分00秒
- 矢口はなつみのベットを囲むようにして立っている女性を見つけると
ドアを開けた時とは違い、真剣な表情で身構えた。
「・・・・!!!!」
隣にいた病服の石川も矢口を見て気付き、慌てて身構えた。
「矢口、石川・・・!」
飯田が思わず名前を呼んだ。
「!・・なんで・・・名前・・知ってんの・・・!?」
矢口はますます身構えた。
石川も矢口の後に少し隠れながら、保田達を睨んでいる。
「なんでって・・・」
飯田が矢口達に近付こうとした時、はっとした顔をして、その足を止めた。
保田が自分の顎を指でつついていた。
(合図・・!)
飯田は保田の意識に交信した。
(何?なんなの?圭ちゃん)
(ここは、私に任せて。カオリは後藤を呼びな)
(えっ・・?)
なんでと聞く前に保田が口を開いた。
「能力者でしょ?あなた達・・・」
(!!!!?)
飯田は慌てて保田を見た。
少し笑みが浮かんでいた。
「なんで・・そのこと・・・」
石川がそう言った瞬間には矢口が保田に向かって能力を使っていた。
「なっちに近付くんじゃねえよっ!!!」
- 106 名前:第十一話「いきなりゲーム」C 投稿日:2002年05月21日(火)20時14分25秒
- ザザザザザ・・・・・・ンッ!!!
なつみのベットの下をくぐり抜けて砂の蛇は保田に向かってきた。
保田はなつみのベットの上に飛び乗り、砂を交わした。
が、保田の背後で砂が折れ曲がり、背中を狙ってきた。
(なるほど・・・少々は使いこなせてるみたいだね・・)
保田は身を捻り、砂の蛇の追撃を避けると、石川を見た。
(石川は目覚めてないのか)
その瞬間、石川が何か集中しているのに気が付いた。
(!!しまった!『氷現』!!)
保田の足元に大きな衝撃が走った。
保田の足元には無数の氷の飛礫がなつみの体をうまく交わしながら
走っていた。
(石川は意外に細かくコントロールできてるみたいね・・)
倒れこんだ保田の体に向かって氷の飛礫が襲いかかった。
だが、保田が一振り、蹴りを放つと飛礫は色んな場所へ飛び散った。
(でも、軟弱)
保田はなつみの首を掴んだ。
矢口の砂が保田の体に向かってきていたが、止まった。
「なっち!!!」
矢口が叫んだ。
- 107 名前:第十一話「いきなりゲーム」D 投稿日:2002年05月21日(火)20時15分10秒
- 保田が冷たい口調で言い放った。
「動くと、殺すよ・・・」
「やらせねえよっ!!そんな事っ!!!首を絞める前にお前を倒してやる!!」
「矢口さんっ!!」
石川が哀願する口調で止めた。
「あの人・・まだ一度も能力を使っている気配がありません・・」
矢口がはっとした顔をして動きを止めた。
「・・・・・くっ!!」
矢口は悔しそうに呟いて、顔を伏した。
- 108 名前:第十一話「いきなりゲーム」E 投稿日:2002年05月21日(火)20時16分33秒
- 「ルールは単純。どっちかが負けを認めれば終了。殺してもOK。
そっちは二人がかりでいいよ」
矢口は目を閉じて能力を放ち始めた。
「矢口達が後藤を倒せば、なっちは解放」
「でも後藤が矢口達を倒せば・・・」
保田がちらっと横目でなつみを見た。
「なっちは永眠」
- 109 名前:第十一話「いきなりゲーム」F 投稿日:2002年05月21日(火)20時17分03秒
- ドンッ!!!!
砂の蛇がロッカーを倒して、飛びあがった。
「うおおおおおおおおおおおお」
矢口は叫びながら、後藤を狙って砂の蛇を動かした。
後藤は黙ってポケットに手を入れた。
石川も矢口の砂の蛇に合わせて、氷を出した。
「能力者が、がら空きじゃん」
後藤がポケットから拳銃を取り出し、そう呟いた。
「!!!」
(なんでそんなもの持ってるの!!?)
矢口は砂の蛇を戻して防御に回そうとした。
「矢口さん、大丈夫です!!」
石川はその動きを制すと、能力を解放した。
後藤の手元から光と火炎が一瞬吹いた。
ガキンッ!!!
矢口を護るように氷塊が目の前に現われた。
後藤は顎を指で突付いた。
飯田はその合図で後藤に交信する。
(リーダー!!矢口さん達の能力って何!?)
砂の蛇をぎりぎりで交わしながら、後藤は発砲した。
パンッ!!!!
ガキンッ!!!
再び、氷塊が現われ、石川の身を護る。
- 110 名前:第十一話「いきなりゲーム」G 投稿日:2002年05月21日(火)20時17分42秒
- (リーダー!!はやく!!)
(ちょっと待ってね・・・矢口の能力はね・・・!!)
後藤の足元に砂が集まってきた。
(bS『操砂』・・・五時間以内に触れたモノ(人工物に限る)
を砂に変える事が出来る。そして、その砂は操作可能。
砂は元のモノに戻る事は出来ない)
ドザァンッ!!!!
後藤の足を砂の波が掴んだ。
(くっ・・・!!)
後藤は矢口に向けて発砲した。
(bW『氷現』・・・氷を出現させる事が出来る。但し、その氷の面積は
その時の能力者の感情値、意識レベル、体温、距離、この四つに左右される。
しかもこの氷は『氷』という存在なので、溶けたり、水になったりしない)
案の定、氷塊が弾をはじく。
石川は氷塊とは別に、新たな氷の飛礫を作り出した。
それを矢口の砂の蛇に混ぜる。
ついに砂の蛇が後藤の体を捕らえた。
- 111 名前:GO。 投稿日:2002年05月21日(火)20時18分28秒
- 第二部始めました。
どうぞ、よろしくです(^^;
- 112 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月22日(水)04時44分07秒
- 正直、まだちゃんと話がつかめない…
ただ、ハマりそう(w
ガンガッテくださいです。。。
- 113 名前:第十ニ話「逆鱗」 投稿日:2002年05月24日(金)22時36分04秒
- 砂の蛇の体が後藤を締め上げ、目の前で大きな口を開いた。
その瞬間、砂の蛇の喉奥から大量の氷が飛び出して、後藤を襲った。
ズガガガガガガガガガガガッ!!!!!
「ガアッ!!ガッハッ!!!」
(!!!!!!)
後藤の顔から余裕が消えた。
保田と飯田が困惑の表情を浮かべたのが、矢口の視界の端に映った。
後藤はさっきまでと違い、ゆっくりと握っていた拳銃をなつみに向けた。
矢口がその動きに気付き、砂を巻き上げる。
ズザンッ!!!
砂に押し上げられ、後藤の手から拳銃が離れた。
すかさず石川が空中の拳銃を氷でこちらに向けて弾く。
後藤は別段、焦った様子もなくその拳銃を見つめていた。
矢口の足元に拳銃が落ちた。
(あんた・・・たち・・・・!!)
後藤の唇が少し笑みがかった感じで歪んだ。
(後藤の顔に傷をつけたねっ・・・・・!!!)
矢口が何か喋ろうとした時だった。
足元の拳銃が光った。
と、同時に拳銃は大木へと姿を変えた。
いきなりそこに突き出された大木の枝に、矢口は足をとられ
床に伏した。
- 114 名前:第十ニ話「逆鱗」 投稿日:2002年05月24日(金)22時36分48秒
- (これが、後藤の能力)
保田はなつみの前髪を触りながら微笑んだ。
(bT『変身』)
(矢口のそれとは違い、自然物のみを変身させることが可能。
但し、それには変身させるモノと変身するモノの認識が必要)
石川の体を押し退けるように大木の枝は部屋中に伸びる。
(今のような場合なら、『大木』と『拳銃』といったふうに。
簡単な認識で変身させられる。でも、それは何にも興味が薄い
後藤だから可能な芸当。もしも、後藤が『大木』の名前を気にしたなら
認識不足となり、変身させることはできない)
矢口の体の上の大木の枝が次第に大きくなり、矢口の小さな体を押さえ付ける
ようにその成長を止めた。
(まさに後藤に打って付けの能力だね)
保田がくくっと笑った。
石川はロッカーと枝に挟まれ、動けなくなっていた。
叫んだ。
「矢口さ・・・んっ!!!大丈夫ですかっ!!!?」
「うう・・・」
矢口もまた、枝によって体の自由を奪われていた。
「ちょっ・・・やばい感じ・・」
石川が氷の飛礫を目の前の枝に抜けて放った。
- 115 名前:第十ニ話「逆鱗」 投稿日:2002年05月24日(金)22時37分26秒
- ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ・・・・!!!!
目の前の巨大な枝が少しずつ削れていって、ひ弱な石川の力でも
折れるくらいになった。
「矢口さんっ!!!今、行きます!!」
しかし、すぐさまその行動は出来なくなった。
石川の目の前の細い枝をへし折り、後藤が立ち塞がったからだ。
「なっ・・・!!」
ドコッ・・!!
石川に有無を言わせず、後藤がボディを見舞った。
体がくの字に折れ、両膝を地面についた。
「うっ!えっ!!・・・ごほっ!!ごほっ!!!」
後藤が床を見つめながら咳き込む石川の耳に口を近付けた。
「イキテカエサナインダカラ・・・・」
ドカッ!!!・・・・プツッ!!!
石川の頭が後藤の拳によって強制的に横を向かされた。
その瞬間、右耳の聴覚を失った。
- 116 名前:第十ニ話「逆鱗」 投稿日:2002年05月24日(金)22時37分59秒
- 「あああああああああああああああ」
自分の声が左耳からしか聞こえない状態に石川は少しパニックに陥った。
ビュンッ・・・ガッ!!!
石川の鼻に後藤は的確にパンチを入れた。
鼻の奥で温かいものが流れ出したのがわかった。
そして、それは出口まで来ると、一気に噴出した。
「っ・・・あっぁ・・・」
石川は流れ出る鼻血を両手で押さえながら、後に退いた。
涙で景色が歪んだ。
右耳の聴覚が戻りつつあった。
「コロス・・・・・」
後藤は拳を振り上げた。
- 117 名前:GO。 投稿日:2002年05月24日(金)22時40分59秒
- 少しながらも更新れす。
後藤、マジ切れです。
>>112
レスありがとうございますっ!!!
はまっていただけるよう、がんばります!!!
- 118 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)15時08分58秒
- 後藤はいつ出てきたの?
- 119 名前:第十三話「運命は集結に向かって」 投稿日:2002年06月01日(土)02時43分49秒
- 「はい、そこまで」
振り上げた拳を止めると、保田が言った。
後藤は静かに保田を睨む。
「石川、すげぇ怪我してんじゃん。止めな」
保田は石川を横目で見ると、後藤の手を強く握った。
後藤は軽く舌打ちすると、保田の手を振り払って大木に触れた。
キュィィィィ・・・
矢口の上に乗っていた大木が姿を消し、それと替わって、先程後藤が持っていた
拳銃が現われた。
「圭ちゃんがやれって言ったくせに」
後でぶつぶつ言っている後藤を気にせず、保田は矢口達を見た。
石川は状況を掴めていなかったが、とりあえず戦闘は終了したと推測し
その場に座り込んだ。
矢口は保田に訊ねた。
「どういうことだよ・・・・」
保田はフッと鼻で笑うと、なつみから離れた。
少し、矢口の緊張の色が薄くなったように見えた。
- 120 名前:第十三話「運命は集結に向かって」A 投稿日:2002年06月01日(土)02時44分43秒
- なつみの入院している病院から東へ数キロ。
そこには辻、加護の通っている中学校があった。
その二階の渡り廊下の先、美術室。
辻は恐怖に身を震わせていた。
一つ、一つの物音に敏感に反応しては、それが『敵』ではないと
分かると、安堵の息を吐いた。
(なんなんれすか!?あの人たちは!!)
辻は部屋の廊下側の端へ移動すると、窓から渡り廊下を覗いた。
すぐさま、辻が頭を下げた。
渡り廊下を二つの影が、こちらに向かって進んできていた。
(来たっ!!!!)
辻は中腰のまま、部屋の奥へと進んだ。
後の方でドアを開けようとした音がした。
ガチャッ・・!!
鍵は辻が閉めていたため、ドアは開かなかった。
ガチャッ・・・!!!
もう一度、ドアを開けようと試みた音がした。
- 121 名前:第十三話「運命は集結に向かって」B 投稿日:2002年06月01日(土)02時45分35秒
- 三度目のドアの音は違った。
ガキンッ・・ゴガガガガガガガッ!!
一瞬、ドアが大きく揺れたと思ったら、ドアが吹き飛んだ。
辻はあげそうになった悲鳴をかみ殺すと、ドアの方を見た。
「ココニイルンデショッ??」
部屋に入ってきた顔立ちのはっきりした女性が辻に語り掛けた。
外人のようだった。
辻は返事をせず、ただ、睨んでいた。
「無駄ダヨ。出テ来ナヨ」
その外人の後から、今度は辻と同じ位の背の大きさの外人が入ってきた。
すでに能力を放ち始めていた。
(!!!)
辻が気付いて離れる頃には丸い光の球体が、辻の真上に浮かんでいた。
「見ツケタヨ・・」
背の小さな外人がにやっと笑った。
「!!」
球体が辻に向かって来た瞬間に、辻は床に向かって能力を放った。
ズドドドドドド・・・・ン!!!
辻の触れていた床が、何度か震えた後、抉れて穴が現われた。
(下っ!!)
辻の体を支えていた床がなくなり、辻は一階へと落ちた。
- 122 名前:第十三話「運命は集結に向かって」C 投稿日:2002年06月01日(土)02時47分01秒
- 下は音楽室だった。
辻が落ちたところには間が悪くピアノがあり、落ちた瞬間、
どこかの鍵盤に触れて、ポロンッと音がした。
辻は態勢を整える間もなく、音楽室を飛び出した。
「逃ガサナイヨオ!!!」
辻の開けた穴から二人の外国人も降りてきた。
「ミカッ!!」
「OK!!」ミカと呼ばれた女性は両手を合わせた。
ミカの背後から先程、辻を襲った光の球体が姿を現した。
ブオンッ・・!!
すぐさま、辻を目掛けて球体は飛んできた。
「きゃあっ!!!」
ドコッ!!!!
辻の肩に球体は大きく食い込み、そのまま跳ねた。
メキメキッ・・!!
ドオオオンッ!!!
球体が跳ねたと同時に辻には肩の骨が折れる音が聞こえた。
「あああああああああっ!!!」
後に倒れこんだ辻の顔を目掛けて、跳ねあがった球体が降りてくる。
辻は涙で歪んだ視界の端にそれをとらえ、飛び起きた。
しかし、球体は辻の背中に方向を変え、すぐさま襲ってきた。
ブオンッ!!!
ドゴッ!!!
「うぎっ・・・!!」
メキメキメキメキ・・・!!!
背骨を押さえ付ける音がした。
その音を聞いて、辻は慌てて地面を叩いた。
ドッ・・・・・!!!
辻の掌と地面の間で小さな爆発が起こった。
- 123 名前:第十三話「運命は集結に向かって」D 投稿日:2002年06月01日(土)02時48分04秒
- 次の瞬間、ミカの足元の床が一斉に動いた。
砕け散った床の破片がミカの足に刺さった。
「ウッ!!!」
球体の威力が一瞬、緩んだ。
その隙に辻は再び、地面を叩く。
手元の爆発と同時にその爆発が地面を駆け抜けた。
ドガガガガガガ・・・・!!!!
駆け抜けるにつれ、次第に爆発の威力は増していく。
ミカの隣にいた女性の足元に来たときにはその爆発は
部屋の半分を飲み込んでいた。
「レフアッ!!!」
ミカが叫んだ。
レフアも慌てて、能力を放つ。
光の矢がレフアの手元から辻に向かって伸びた。
が、辻の目の前まで矢が届いたときには、レフア達の体は爆発に
飲み込まれていた。
ガガガガ・・・・・ンッッ!!!!
音楽室のモノを何もかもを巻き込んで、爆発は部屋の端で止まった。
残ったのは砕け散った床と、巻き上げられた粉塵だけだった。
- 124 名前:第十三話「運命は集結に向かって」E 投稿日:2002年06月01日(土)02時48分38秒
- 辻はその場に座り込むと、先程までミカとレフアが居た場所を見た。
何が起こったのかはよくわからないが、
辻の目から涙が毀れた。
自分が人を殺したのは明らかだ。
「う・・・うう・・・」
辻は塞ぎこみ、静かに泣いた。
音楽室で唯一残ったベートーベンの肖像画が、辻をただ睨みつけていた。
- 125 名前:GO。 投稿日:2002年06月01日(土)02時51分03秒
- 更新しますたっ!!!
というか、更新遅いですね・・・
すんません・・。
頑張りますのでゆるしてくだされ。
後藤は飯田の『交信』で、すぐにやってきましたよ?
わかりにくかったか・・・
スマソ
- 126 名前:第十四話「屋上にて」 投稿日:2002年06月15日(土)22時15分40秒
- 対後藤戦の後、矢口達は保田達とともに病院の屋上へと来ていた。
街から少々離れて、丘の上にある病院だったので、眺めは良かった。
しかし病院から見た景色はやはり何か寂しいものがあって、入院している人達にはもっと
寂しく見えるんだろうな、などと矢口は考えたりした。
保田は先程買ってきた缶コーヒーを開けると、煙草に火をつけた。
辺りに煙草の臭いと煙が漂う。
「ふぅ・・・・」
保田が煙を吐いて、振りかえった。
「ごめんねえ・・・あんな事して・・」
石川が後藤に殴られた頬を擦りながら後藤を見た。
矢口がその石川の動きを横目で見ながら口を開いた。
- 127 名前:第十四話「屋上にて」 投稿日:2002年06月15日(土)22時16分44秒
- 「だから、どういう事だよ・・?」
能書きは言いから説明を。
そんな感じの言い方だった。
「『試した』んだよ」
後藤が膨れっ面で遠くを眺めながら口を開いた。
戦闘後から後藤はずっと不機嫌で、ここまで来てやっと喋った。
「『試した』・・・?」
「そう、『試した』の」
後藤が手すりに頬杖をついたまま振りかえりもせずに応えた。
苦笑いした保田の煙草の先が赤く光った。
煙草を口から離し、煙を吐いた。
と、同時に言った。
「矢口達の『能力』の操作や把握の具合とか知りたかったからさ」
「・・・・・」
「で、結果から言うと・・・」
保田が真面目な顔をした。
「二人共、一ヶ月後に死ぬ」
屋上に着いてからずっと、遠くの街並みを眺めていた飯田が振りかえった。
後藤が屋上の手すりを蹴った。
カァアアァァ・・・ン・・・
手すりが震える音で鳴いた。
後藤は振り返って付け加えた。
「確実にね」
- 128 名前:第十五話「過去(前世)へ」 投稿日:2002年06月18日(火)20時59分17秒
- 死神がすぐそこまで近付いていた。
その存在には誰も気付くことは無い。
人と人との間を擦り抜け、ただ静かに微笑を浮かべながら近付いていた。
死神の背後には何も残らない。
先程、すれ違った人はもう息をしてはいなかった。
- 129 名前:第十五話「過去(前世)へ」A 投稿日:2002年06月18日(火)20時59分54秒
- 矢口は叫ぶように言った。
「いっ、一ヶ月後!?・・・に死ぬって!?」
後藤が無関心な顔のまま言った。
「そう、一ヶ月きっかりで」
「どういうことなんですかぁ!!?」
石川が悲鳴を上げるように叫ぶ。
保田が新しい煙草に火をつけた。
「本当に・・何にも『思い出せて』ないのね」
「思い出す・・・?」
「そう、思い出すの」
保田がジッポのライターをポケットにしまった。
夜空に吸い込まれるように煙が昇っていった。
「あなた達は生まれ変わりとかって信じる?」
「えっ?」といった顔で矢口は石川を見た。
石川は顔を横に振った。
「石川は・・・信じません」
「オイラも」
保田はもう一息煙草を吸った。
煙草の赤い光がジジッと音をたてた。
「自分が誰かの生まれ変わりだとか思ったことない?」
- 130 名前:第十五話「過去(前世)へ」B 投稿日:2002年06月18日(火)21時00分38秒
- 再び投げかけられた質問の意味がよく理解できずに矢口達はそろって頭を横に振った。
「じゃあ、質問変えよう。あなた達は幽霊とか、UFOって信じる?」
これにも矢口達は「信じない」と答えた。
正直、何が訊きたいのかわからない。
矢口は少しイライラしてきた。
「なんなのよ?一体?」
保田が少し笑って答えた。
「自分達は超能力者なのにそういうのは信じないんだ」
「それとこれとは別物です」
矢口同様、少々苛立ち始めていたのだろう。
石川は珍しく語尾を荒げて言った。
「別物じゃないんだよ」
これもまた珍しく飯田が喋った。
いや、ちゃんと声を聞くのは初めてだったかもしれない。
飯田が続けた。
「私達は生まれ変わりなの」
しばらく考えて矢口が「誰の?」と訊こうとしたほんの少し先に石川が訊いた。
「誰の?」
「それは・・・」
- 131 名前:第十五話「過去(前世)へ」C 投稿日:2002年06月18日(火)21時04分29秒
- 「そこから先は能力を使ったほうが早いんじゃない?」
保田がいつのまにか煙草を捨て、二人をじっと見詰めていた。
「・・能力?」
「そう、カオリの能力」
「カオリって誰?」
「私、飯田カオリ」
飯田は自分を指差しながらそう言って早速能力を使っていた。
矢口達の頭の中に物凄い勢いでイメージが流れ込んできた。
不思議と懐かしい。
何故か切なくなる。
『そこ』には石川と吉澤の姿、そして安倍の姿もあった。
それは・・・『モーニング娘。』というあるアイドルグループの悲しいお話。
- 132 名前:GO。 投稿日:2002年06月18日(火)21時07分23秒
- 色々、立てこんでいまして少々遅くなりましたが更新しますた。
どれだけ遅くなっても話は完結させます。
ご愛読のほどを(^^;)
- 133 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月19日(水)21時06分09秒
- かの名作「導かれし娘。」を彷彿させます。あ、気に障ったらゴメソ。
複線とか続きが気になる書き方がうまいです。
というわけでさっさと続きかいて(w
- 134 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月20日(木)16時09分36秒
- 飼育は恋愛ものが多いんで、この小説俺には貴重です。
マターリ、マターリ。
- 135 名前:第十六話「前世にて」 投稿日:2002年06月20日(木)21時29分21秒
- (ここは・・・・)
(ここは・・・何処なの・・?)
(梨華ちゃん・・・)
(なっち・・・)
(何処・・・・・・?)
- 136 名前:第十六話「前世にて」 投稿日:2002年06月20日(木)21時30分16秒
- 「・・・ち・・」
「や・・・ち・・・」
「・・・やぐち・・」
「矢口っ!!」
矢口はその声で飛び起きた。
目の前には安倍と飯田の姿があった。
心配そうに矢口を覗きこんでいる。
「矢口・・大丈夫・・?」
飯田が手を差し伸べた。
矢口はその手を取り、起き上がった。
「ん・・・大丈夫・・多分」
「本当?最近、ミニモニとか別のユニットでも忙しいからね」
安倍は心配そうな顔をしていた。
矢口はあまり大丈夫ではないけれど少し笑顔で答えた。
「本当に大丈夫だよ」
「・・・そう?」
安倍はあまり納得した顔はしていなかったが、それ以上は訊かなかった。
矢口は頭を振りながら訊ねた。
「どうした・・・の・・私・・」
- 137 名前:第十六話「前世にて」 投稿日:2002年06月20日(木)21時31分04秒
- 「急に倒れたんだよ」
保田が部屋に入ってきた。
「ここは・・・何処・・?」
「??矢口、本当に大丈夫?」
安倍はなおのこと心配した感じで矢口を覗きこんだ。
「倒れたときに頭をぶつけたみたいね」
保田は矢口の荷物をまとめて部屋を出ていった。
「楽屋だよ」
飯田も矢口の顔を覗きこんだ。
「が・・くや・・?」
「そう、楽屋。ライブ後のね」
(思い出した!!今日はライブだったんだ!!)
「やっばーー!!出番は!?いつ!?今、誰が出てんの!?」
「もう、終わったよ」
安倍が泣きそうな顔をした。
「えっ・・・」
「今はライブ後の打ち上げだよ」
「・・・・・」
「大丈夫?病院に行ったほうがいいみたい。記憶が混乱してるみたいだけど・・」
- 138 名前:第十六話「前世にて」 投稿日:2002年06月20日(木)21時31分46秒
- 「・・・・」
「矢口?」
(なんだろう・・?すごく長い夢を見てたような・・・)
「大丈夫?」
(わかんない・・なんだろう・・?この違和感・・)
「矢口?」
(なにがあったんだろう・・・)
「矢口!!!」
(!!)
矢口はびっくりして叫んだ。
「なっ何!?」
「こっちの台詞だよ!!もうっ!!」
保田が再び、部屋へと入ってきて言った。
「今、タクシー呼んで来たから」
「圭ちゃん・・・矢口、本当に病院に行ったほうがいいみたい」
安倍が涙目で言った。
- 139 名前:GO。 投稿日:2002年06月20日(木)21時39分32秒
- 更新しますた(^○^)!!
>>133 レスありがとうございます!!!
「導かれし娘。」確かになんかそんな雰囲気は出してますね。
でも、実力的には遠く及びませんので・・・
むしろ、向こうが怒られるのではないでしょうか?
>>134 レスありがとうございます!!!
確かに少ないですね・・こういう感じの作品。
どっちかというとバトル物が好きなのは僕だけでしょうかねえ・・?
なんにしろ、頑張りマスのでこれからもヨロシクです(^^ゞ
- 140 名前:第十七話「目覚めた乙女と現世の忠告」 投稿日:2002年06月23日(日)14時03分22秒
- 矢口は保田と安倍に付き添われ、タクシーに乗っていた。
近くの病院で精密検査を受けるためだ。
先程から安倍が「大丈夫?」と数分ごとに訊いてくる。
その度、矢口は無理して笑顔を作り「大丈夫」と応えた。
実は、一体自分に何が起きたかがよくわからない。
「・・・・・」
矢口は窓を見た。
夜の街は忙しく、眩しい光を放っている。
街から少し離れた所に病院があるため、丘を登る途中でそのような夜景が見えた。
「ねえ・・圭ちゃん・・」
矢口がゆっくりと問い掛けると、保田が振り向いた。
「何?」
「オイラ、どれ位の時間、倒れてた?」
シートの前から無線の音が聞こえた。
「ん〜と、ざっと三十分位じゃない?」
安倍が助手席から身を乗り出してきた。
「なっちさあ、心配したんだよ〜」
その目には涙が溜まっている。
「ごめんって、なっち。心配ねえよ」
矢口は少し微笑んだ。
安倍もそれを見て安心したのか助手席に大人しく着いた。
- 141 名前:第十七話「目覚めた乙女と現世の忠告」 投稿日:2002年06月23日(日)14時04分10秒
- 『矢口!矢口!!』
「!!?」
居ないはずの飯田の声に矢口は慌てて、車内を見まわした。
しかし、やはり飯田はいない。
『矢口!!聞こえる!!?』
再び、飯田の声。
矢口はいよいよ本当に頭がおかしくなったように感じた。
保田の方を見た。
保田は何も言わず、窓の外を見ている。
飯田の声は聞こえていないようだ。
『矢口!!聞こえたら返事して!!』
「〜〜〜〜〜」
矢口は静かに俯いた。
(なんなの!?なんなの!?なんなの!!?)
- 142 名前:第十七話「目覚めた乙女と現世の忠告」 投稿日:2002年06月23日(日)14時05分05秒
- 『!!矢口!!聞こえるのね!!?』
(聞こえるよ!!もうっ!!なんなの!?幻聴なら消えてよ!!)
『幻聴じゃないわ!これは来世の声!!わかるでしょう!?』
(わかんないよ!!何!?なんなの!!?)
『落ち着いて!!矢口!!』
(なんで幻聴に落ち着けって言われなきゃならないの!!?もうっ!!)
『《今》の矢口の記憶があるはずよ』
(今の矢口・・!?)
『そう、現世の記憶・・・!』
- 143 名前:第十七話「目覚めた乙女と現世の忠告」 投稿日:2002年06月23日(日)14時06分02秒
- その言葉を聞いた瞬間に矢口の頭の中に今までの記憶が蘇った。
(・・・・・)
『思い出したみたいね・・』
矢口は助手席の安倍を見た。
(なっ、なんで、なっちが・・・)
安倍は病院で寝ているはずだ。
何故、こんな所に?
(それよりも何・・これ・・・)
自分は何故、保田と安倍と共にタクシーに乗っているのか?
保田は安倍を殺そうとして、石川と自分に後藤と闘わせて、
同じモーニング娘。のメンバーで、圭ちゃんとは同期で、
屋上で話してて、煙草を吸っていて、
写真集を出して、辻加護におばちゃんって呼ばれてて・・。
矢口の頭の中で色んな出来事が巡り、そして色んな違和感が生まれた。
(えっ・・・ちょっ・・・な・・・)
矢口は混乱していた。
『矢口・・大丈夫?』
矢口は叫んだ。
(大丈夫じゃないよ!!何!!これ!!何!??)
- 144 名前:第十七話「目覚めた乙女と現世の忠告」 投稿日:2002年06月23日(日)14時07分28秒
- 『矢口・・大丈夫・・落ち着いて』
矢口は頭を抱え込んだ。
その様子に気付いた保田が矢口の背中に触れた。
「大丈夫?矢口・・?」
その声は矢口には届いていなかった。
矢口の耳には飯田の声しか聞こえていなかった。
(どういうことなの!?なんで病院に向かってるの!?分かるけど・・・分からない!!)
『矢口・・・大丈夫・・落ち着いて・・。矢口は今、前世の世界にいるんだよ』
(・・・前世?)
『だから、現世の矢口の記憶と前世の矢口の記憶がごちゃまぜになってるんだよ』
(・・・・・なんで・・)
『あのね・・これがカオリの能力・・わかるでしょう?カオリが誰か・・』
- 145 名前:第十七話「目覚めた乙女と現世の忠告」 投稿日:2002年06月23日(日)14時08分01秒
- (カオリ・・・飯田・・・カオリン・・・わかる・・・そうだ!カオリンだ!!)
『そう、カオリの能力は《交信》。人の心と交信することができるの』
(だから・・今、オイラに話せてるのか・・)
『うん。そして、この前世にリンクさせる能力は圭ちゃんの能力《追憶》』
(追憶・・?なんで矢口は前世にいるの?)
『つまり、現世で矢口がこれから何をしなきゃならないのかを説明しようとしてるの』
(そんなもん口で言えよ〜急に前世とかに飛ばすなよ〜!)
『だって・・・矢口はさっきまで前世の記憶が無かったからさ・・喧嘩腰だし・・』
(う・・・・)
矢口は心の中でがっくり項垂れた。
- 146 名前:第十七話「目覚めた乙女と現世の忠告」 投稿日:2002年06月23日(日)14時09分00秒
- 『とりあえず、私達が友達だったっていうのは前世の記憶から分かるでしょ?』
(うん・・・・ごめんよぉ・・)
『しょうがないよ・・現世ではついさっき初めて会ったんだし・・』
(でも、まさか梨華ちゃん達とも知り合いだったとはねえ・・)
『(おしゃべりしてる暇ないよ!!)』
「!!」
矢口は保田の方を見た。
保田は心配そうに矢口を覗いていた。
保田が「どうしたの?」と訊いた。
矢口は「なんでもない」ととりあえず応えておいた。
どうやらさっきの声は『現世』の保田の声らしい。
(どうしたの?)
『(矢口!そっちに私となっちがいる!?)』
心に話しかけて来る声は保田に変わった。
- 147 名前:第十七話「目覚めた乙女と現世の忠告」 投稿日:2002年06月23日(日)14時09分39秒
- (いるよ〜圭ちゃん、ごめんねえ〜さっきは・・)
『(今、何処!?)』
(え〜と、病院の近く。でもね、圭ちゃんも悪いんだよ〜!なんにもわかんなかったのになっちを殺すとか脅すからあ)
『(・・・・・・)』
(??圭ちゃん・・?)
保田の声が心の奥で静かに響いた。
『(これから矢口達には不幸な事が起こる・・・)』
(え・・・?)
『(もちろん、前世の私も含めて・・・モーニング娘。全員に・・・)』
(な・・なにを・・・)
『(それをしっかりと見届けて・・・・)』
(????)
矢口は窓の外を見た。
あと少し登ったところに病院が見えた。
『交信』は途絶えたようだった。
- 148 名前:GO。 投稿日:2002年06月23日(日)14時15分20秒
- 更新しますた!!!!
しばらくバトルを書いてないのですが、そろそろバトりたいと思ってます。
ただ、ストーリー的にグダグダになる可能性があるので、あくまで控えめにね。
今回の感想は、『もしかしたら分かりにくいかな』です。
矢口のようにパニくった人もいそうですしねえ・・・。
分かりにくいのは俺の文章構成能力が不足しているためだ。
スマソ
- 149 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年06月23日(日)22時38分56秒
- 更新お疲れ様です。
最近忙しくて来れなくて、久しぶりに来てみたらかなり話が進んでますね(^^;
第17話ですが、自分は内容普通にわかりましたよ。
話の展開とかはすごくイイと思います。名作の予感が・・・・(w
今後も頑張ってください!
- 150 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月24日(月)16時01分31秒
- 石川や矢口の出会いに意味があったのが良かった!
これからの展開に期待します。
がんばって下さい。
- 151 名前:第十八話「不幸?」 投稿日:2002年06月24日(月)22時39分31秒
- (なんなんだよ・・・まったく、もう)
矢口は頬を膨らませると、保田を見た。
保田はなんだか分からない顔をしたが、矢口はそのまま窓の外を見た。
もうすでに病院の敷地内に入ったようだった。
立派なヨーロッパ調の白い門に、大きな噴水が見えた。
(ああ・・・何十年も前からあったんだ・・これ・・)
矢口は安倍の見舞いに来た時に何度か見た事があった。
いつもは裏門から入るため、久しぶりに見たその噴水に一瞬目が奪われた。
「おわっ!すっげぇ!」
保田がそれを見て声をあげた。
「きれいだべ・・」
安倍も少し見惚れていた。
タクシーはその噴水の周りを回るように走らせると、病院の建物の前で止まった。
- 152 名前:第十八話「不幸?」 投稿日:2002年06月24日(月)22時40分29秒
- 病院の中に入ると、保田が受け付けへ向い、矢口達は待合室で待っていた。
安倍は公衆電話からライブ会場のメンバーに電話しているようだった。
「うん」「そうそう」などと相づちの声が少し聞こえた。
矢口は安静のために横にされ、じっと天井を見つめていた。
『これから矢口達には不幸な事が起こる・・・』
(なんだろう・・?一体・・・)
矢口は寝返りをうった。
先程から保田のその言葉が頭から離れなかった。
(不幸な事・・?それが現世でしなきゃいけない事と関係あるの・・?)
(・・・・・・・)
(・・・・・・・)
(・・・わかんねえ)
矢口は溜息を吐くと、安倍を見た。
(あんなことになってるなっちが、元気だ・・・)
安倍は受話器を片手に近くのメモ用紙に色々書き込んでいた。
時折、笑顔も見せる。
(・・・・・・)
矢口は再び寝返りをうった。
- 153 名前:第十八話「不幸?」 投稿日:2002年06月24日(月)22時41分45秒
- 午前一時をまわった頃だった。
精密検査は遅いので明日にして、矢口は一日の緊急入院をすることになった。
ベットにシートを被せながら看護婦がちらちらと矢口を見ている。
そりゃそうだろう。
自分の職場にアイドルが来たら、自分もそういう行動を取りかねない。
「ど・・・・どうぞ・・」
看護婦が緊張した面持ちでベットへと進めた。
「あ・・・どうも・・」
矢口もなんとなくその場の空気に飲まれて緊張した。
(なんでオイラが緊張するんだよ・・・)
矢口はベットに入りこむと、溜息を吐いて目を閉じた。
なんというか・・・病院の臭いがする。
消毒液の臭いだろうか?
そんなことを考えているうちに眠りについた。
そのすぐ数分後だった。
- 154 名前:第十八話「不幸?」 投稿日:2002年06月24日(月)22時42分24秒
- (『地球代表、グループ・・・モーニング娘。』)
何処かでそんな声がした。
矢口は浅い眠りからすぐに戻ってくると、辺りを見まわした。
誰もいない。
(『ただいまより、空間座標をH8の方向に二十万光年移動させます』)
また聞こえた。
空耳ではない。
確かに誰かの声がした。
しかも全てはっきりと聞き取れる。
(・・カオリン?)
矢口は飯田に問い掛けてみたが返事はなかった。
- 155 名前:第十八話「不幸?」 投稿日:2002年06月24日(月)22時43分07秒
- (『ウィィイイイ・・・・ン!!!!!!』)
(な・・・!!)
矢口の指先が光の粒子となって飛び散り始めた。
(何・・・!?これ!?)
その光の粒子化は止まる気配がなく、むしろ広がっていった。
(いやっ!!!何!!!?)
(『イイイイイイイイィィ・・・・ン!!!!!』)
(たっ助けて・・・!!!!)
「たっ・・・・!!!」
助けてと叫ぼうとした瞬間に口が粒子化したため、言葉にならなかった。
病室のドアが開いた。
そこには体の半分が粒子化して、なくなった安倍の姿があった。
「矢口!!!!!」
「・・・!!!」
(なっち!!!)
矢口の鼻先が光の粒になるのが自分で見えた。
(何!!?これが・・・不幸なこと!!?)
目の前が光に包まれた。
- 156 名前:第十九話「その頃、辻加護は?」 投稿日:2002年06月24日(月)22時45分14秒
- ニ階にいた加護の耳に大きな爆音と衝撃が伝わるまで、加護は気を失ったままだった。
机が大きくうねり、窓がきしんで、ある所は割れた。
加護の体にその破片が降りかかると、加護は素早く立ちあがった。
(しもたっ!!!寝てたんかっ!!?)
立ち上がった瞬間に、急激な眩暈が加護の頭を揺らした。
歪んだ音と、真っ白な意識にかかる靄。
頭を振り、その眩暈を取り払う。
(うっ・・・のの・・!!)
加護は壁に体を預け、入り口まで進んだ。
そこは美術室の向いの棟、ニ階の職員室だった。
(のの・・・!!ののは・・・!!?)
加護は入り口のドアを開けようと手をかけたが、ドアは先程の振動で歪んで開かなかった。
(くそっ!!開かんっ!!)
加護は一瞬ためらったが、能力を使った。
加護の握った拳が一時的にほんの少し大きくなる。
その拳でドアを全力で叩いた。
ドゴンッ!!!!!!!!!!!
- 157 名前:第十九話「その頃、辻加護は?」 投稿日:2002年06月24日(月)22時45分56秒
- ブワァァァァ・・・!!!
空気を震わすほどの音と共にドアは廊下の窓を通過して中庭に落ちた。
そのすぐ後に衝撃波が職員室内の机やパソコンを吹き飛ばした。
(・・・・良し!)
加護は廊下に飛び出ると、そこの窓から身を乗り出して辻の姿を探した。
(・・・・何処・・・何処や・・・)
美術室のドアが破壊されている。
その美術室の中には大きな穴。
そして・・その下は・・音楽室。
(いた!のの!!)
教室の半分が焦げたような抉れたような状態になっている。
その中心で泣く女の子。
そこには絶望と悲哀に満ちた辻の姿があった。
(ののはどうしたんや!?勝ったんか!?)
辻の周りに先程の外国人達の姿は見られない。
「ののォ!!!!」
加護は堪らず叫んだ。
辻がその声に気付いてこちらを見た瞬間。
辻の目には加護ではなく、加護の背後の外国人が映っていた。
- 158 名前:第十九話「その頃、辻加護は?」 投稿日:2002年06月24日(月)22時46分54秒
- 「あいぼんっ!!!!後ォ!!!!」
(!!?)
加護が振り向いた瞬間には加護の体は窓の外へと押し出されていた。
体のどこかがガラスの破片に刺さったようだ。
どこかが痛んだ。
「うっ」
加護の目が宙を仰いだ。
意識を失わないように歯を食いしばった。
「うわああああああああああああああああ・・・!!!」
それでも開いた口から悲鳴が出た。
加護の目は宙から外国人に移った。
「ああああああああああああああああ・・・!!!」
そしてそのまま地面へと視界は流れた。
だんだんと地面が近付いてきている。
うっすらと加護の影が地面に現われた。
(っ!!!!!)
ヒュウウウウウウウウゥゥ・・・!!
「あいぼんっ!!!!」
ゥゥ・・・ドンッ!!!!!!
地面に叩き付けられた加護の体は一旦、少し跳ねた後、再び地面に落ちた。
砂埃が加護の体を中心に巻き上がった。
加護はそのまま地面に横になったまま動かなかった。
辻の悲鳴が校舎中に響き渡った。
- 159 名前:第十九話「その頃、辻加護は?」 投稿日:2002年06月24日(月)22時47分55秒
- ダニエルは地面に横たわる加護の姿を確認すると、松浦を呼んだ。
「HEY!終ワッタヨ!」
「え〜〜まじすかぁ!!?」
廊下の奥の女子トイレから松浦が出てきた。
「すんげぇ早いですね」
「簡単ダッタヨ」
ダニエルが窓の外を指差す。
それにしたがって、松浦は窓から加護の姿を覗いた。
(確かに死んでるみたいですね・・・・)
「よしっ!!じゃあ、ダニエルさん、もう片方もささっと殺っちゃいましょー!」
松浦は加護から目を離し、辻を見た。
辻は加護の方をずっと見ていた。
目は何処か虚ろで、焦点が定まってないようだった。
- 160 名前:第十九話「その頃、辻加護は?」 投稿日:2002年06月24日(月)22時48分49秒
- (ごめんなさいね、仕事なんですよ)
松浦は唇を笑みの形に歪ませると、能力を少しずつ解放した。
ブゥゥ・・ン!!
松浦の体の前に球体が現われた。
(これ・・ミカさんとなんとなくかぶるから嫌だったんですけどね・・)
松浦が球体に触れると球体は激しく反応した。
(でもミカさん死んじゃったのでもういいです)
松浦は舌をペロッと出してにやっと笑った。
「あいぼんっ!!!」
ガサッ・・!
(!)
辻の泣きそうな声がした後、木の葉が擦れる音がした。
松浦は慌てて加護の方を見た。
加護はゆっくりと立ち上がっていた。
松浦はダニエルを呼んだ。
「・・・どーも、生きてるみたいですよ」
「ウソォ!?」
「ウソじゃないです」
松浦は球体を小さくすると、窓の外に身を乗り出した。
- 161 名前:第十九話「その頃、辻加護は?」 投稿日:2002年06月24日(月)22時49分54秒
- 「じゃあ、私、『辻希美』の方、殺っときますので・・」
松浦は下を指差した。
「ダニエルさんは『加護亜依』の方、もう少しですんで、よろしくです」
「OK!!」
ダニエルはおどけてピースした。
松浦は窓から飛び出すと、顔を歪ませた。
(『辻希美』の次はあんたの番なんだから・・・ダニエル・・)
震える辻の前に松浦は降り立った。
「こんばんはぁ」
「!!!」
辻は震えながら後に退いた。
「あっれ〜?闘わないんですかあ!?」
「・・・・・・」
辻は上目遣いで松浦をずっと見ている。
「能力使わないならこっちから使かちゃいますよぉ?」
「・・・・・・」
「いいんですかあ?」
- 162 名前:第十九話「その頃、辻加護は?」 投稿日:2002年06月24日(月)22時52分18秒
- 辻は全く闘おうとはしない。
ただ、黙って震えている。
松浦の前にあった球体が大きくなった。
「これがぁ・・・」
松浦が球体に触れる。
ブウウウウゥゥ・・・ン!!
「松浦の能力・・・!!」
シュッ・・・シュッ・・・!!!
何かが球体から物凄い速度で飛び出して辻の横を通りすぎていった。
(な・・・?)
辻は立ち上がって身構えた。
足が震えて、立っているのがやっとだった。
「bP0『散弾』です・・・!!」
球体が一瞬、震えたと思ったら光の弾が一斉に飛び出した。
ドガガガガガガガ・・・・・!!!!
辻の体中にその弾は降り注いだ。
折れていた肩の部分に弾が当たった瞬間、気が遠のいた。
- 163 名前:第十九話「その頃、辻加護は?」 投稿日:2002年06月24日(月)22時53分30秒
- が、辻は足を踏ん張ってその弾全てを受けきった。
「が・・・がはっ・・うえ・!!」
辻はその場に倒れこんだ。
(うう・・・!!!)
「どうですかあ!?『散弾』のお味は!?」
「うっ・・・うっ・・・」
(し・・・死んじゃうのれす・・)
「ふふふ・・・まだまだ行きますよお・・・」
松浦が再び球体に触れた。
大きく球体が反応する。
次の瞬間。
ドドドドドドドド・・・!!!!
「ぎゃぁああああああああ!!!!!」
辻の体中に重たい衝撃が降り注いだ。
辻を中心として地面が大きく抉れた。
宙に浮いた床の破片を生気を失いかけている辻の目にうっすらと映った。
- 164 名前:GO。 投稿日:2002年06月24日(月)23時01分11秒
- 一気に二話、更新しますた!!
(何故なら俺がバトルを書きたかったからだ、スマソ!)
>>149 レス、どーもです!!!内容わかりましたか!!
良かったです!!本当に!!
皆に「わかんねえよ」って罵倒された日にはしょげますからね
名作・・・まだ遠い感じですね・・。
でもそれを決めるのは読者の方ですからね。
よろしくです
>>150 レス、サンクスです!!!
何処が良かった、あそこが良かったと言ってもらえると勉強になります。
どーもありがとうございます。
これから、もっと激しく展開していくのでお付き合いのほどを
- 165 名前:ヤグヤグ 投稿日:2002年07月02日(火)23時23分50秒
- 2日連続大量更新お疲れです。
更新早いっすね。
これからも楽しみにしてます。
頑張って下さい。
それにしても、松浦はこういうキャラが定着してきたなぁ。
- 166 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月06日(土)19時19分36秒
- アイドルサイボーグ松浦強ぇー!!
やはり娘。達の前に立ちはだかったか・・・
これからの展開期待!頑張ってください。
- 167 名前:nanasi 投稿日:2002年07月14日(日)00時22分34秒
- hozen
- 168 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月01日(木)16時22分39秒
- 保全
- 169 名前:GO。 投稿日:2002年08月02日(金)21時38分31秒
- すいません。。。
電話機の調子がいまいちで一ヶ月も話を止めてしまいました。
近々、更新しますので少々お待ちを!
そしてその間保全していただいた方々、サンクス!!!
- 170 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年08月12日(月)20時18分30秒
- 電話機の調子が悪いならしょうがないですね・・。
マイペースで頑張ってください!
いつまでも待ちますから(w
- 171 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月06日(金)01時50分08秒
- 保全
- 172 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年09月15日(日)01時04分36秒
- 保全〜
- 173 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年09月23日(月)22時11分16秒
- 保全〜
- 174 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年10月03日(木)23時04分22秒
- 保全
- 175 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年10月18日(金)21時53分35秒
- 保全〜
- 176 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年10月27日(日)20時14分32秒
- 保全。
- 177 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年11月03日(日)22時40分17秒
- 保全
- 178 名前:名無っすぃ 投稿日:2002年11月12日(火)17時28分30秒
- 保全・・
- 179 名前:某読者 投稿日:2002年11月30日(土)07時43分56秒
- hozen
- 180 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月30日(月)09時36分42秒
- 作者さん、続きを…
- 181 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月07日(火)22時48分20秒
- まだですか?
- 182 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月17日(月)02時10分56秒
- 楽しみにしてます
- 183 名前:名無し犬。 投稿日:2003年03月20日(木)22時22分53秒
- 保全
- 184 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月30日(日)00時59分04秒
- まだ電話機直らないの?
- 185 名前:第二十話「籠(加護)の中の鳥」 投稿日:2003年04月03日(木)14時43分18秒
- 「羽ばたけ・・・ほら・・・
もっと高く・・・!」
「羽ばたき方を忘れたの・・?」
「その一瞬に羽根に大きく力をこめるの・・・」
「そうそう・・・」
「あとは風が運んでくれる・・・」
「さあ・・・」
「飛べっ・・・・・!!!」
- 186 名前:第二十話「籠(加護)の中の鳥」 投稿日:2003年04月03日(木)14時55分15秒
- 加護は地面を睨みつけながらゆっくりとその身を起こした。
約三十メートルの地面へのダイブはあまり心地良いものではなかったが
加護の頭の中はなぜかさっぱりしていた。
(そうか・・・・)
加護は唇を笑いの形に歪めた。
(ワイは・・・・キレタのか・・・・・)
体中から力を感じた。
日頃の自分なら狂乱してしまいそうな程の力。
「ククク・・・・・・・」
- 187 名前:第二十話「籠(加護)の中の鳥」 投稿日:2003年04月03日(木)15時04分04秒
- そこから、加護の自我は飛んだ。
気がつけば目の前に血と肉の塊が沈んでおり
地面が所々抉れ、木々がなぎ倒されていた。
その《傷跡》は校舎も巻き込んで、教室がただの空き地のようになっていた。
加護は静かにその肉の塊を見下ろすと、血走った目で辺りを見回した。
「・・・・・・・・・」
鮮血で染まった加護の頬が引きつった。
すでに乾き始めていた血が少し音を立てて頬から落ちた。
- 188 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月04日(金)02時14分36秒
- ヒサブリの更新乙です。
マターリがんばってください
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