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屋根の下のベース弾き
- 1 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月04日(土)20時30分04秒
- 森板で書いていた続きです。
よろしくお願いします。
- 2 名前:LIGHT MY FIRE 投稿日:2002年05月04日(土)20時46分24秒
- ―――保田視点
「オバチャンやん」
加護が先に気づいたわ。
「オバチャンれす」
「だぁーっ!オバチャン、オバチャンて!アタシはまだ23のうら若き乙女よっ!
ピチピチよっ!!」
「オバチャンやん。ウチ、このモーニングAセットにするわ。卵は目玉焼きで。コーヒーにして」
「ののはBセットれす。ミルクティーがいいれす」
「ハイハイ」
矢口!笑ってんじゃないわよ!(涙)
- 3 名前:LIGHT MY FIRE 投稿日:2002年05月04日(土)20時52分16秒
- 「・・・めっさウマイわ、マジで。卵の焼き具合が絶妙や」
「うん・・・このジャムもバターもおいしいれす。パンも・・・ふっくられす」
チビッコども、目を丸くしながら食べてるわ。
ホホ、当然よ。このアタシ御用達の店なのよ!
まずいワケがないじゃない!
「あの・・・お姉しゃん」
「何?」
「この前、ジャージを着た女のひとが、公園にアイスクリームサンデーを届けに来てくれたんれすけど、
お姉しゃんのお店のれすか?」
「ああ、なっちに頼んだ時のね。そうだよ、裕ちゃんからの特別注文でさ」
「おいしかったれす〜」
「食べるの好き?」
「へいっ!大好きれす!」
アラ・・・辻ったら可愛いじゃない。
アタシまでちょっとほのぼのしちゃったわ。
ポケットでアタシの携帯がブルったわ。
メールね。誰かしら?
・・・アラ、紗耶香だわ。
フムフム・・・。
「・・・いよいよね」
ニヤっとアタシは微笑んだわ。
ホホ、アタシの微笑みは高くつくわよっ。でも今ならもれなくお買い得よっ。
「・・・こわいれす、オバチャンが、オバチャンが・・・」
「・・・のの、目ェ合わせたらアカンで」
――― 何か聞こえたけどきっと気のせいねっ。フフフフ・・・。
- 4 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月04日(土)20時57分01秒
- ここでいったん切ります。
遅れましたが・・・
前スレ
↓
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=wood&thp=1018614026
- 5 名前:みぎみぎ 投稿日:2002年05月04日(土)21時05分51秒
- 新スレおめれとーなのれす。
思わず辻ちゃん言葉になってしまいました。
先日バイト先の小学校新一年生(女子)に
「おばちゃん」と呼ばれ、
思わず「…先生とお呼び」
と言いたく(実際には硬直しただけだった…)なりました。
保田さんガンバです。
まだ四捨五入すりゃ20歳です!
(年齢の四捨五入と視力を両目合わせるのとは同じくらい意味がない気がしますが)
そりではこれからも楽しみにしてますです。
- 6 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月04日(土)21時48分55秒
- レスお礼です。
>みぎみぎさん
(´D` )<そうれすか・・・オバチャンっていうのは、ぢつはほんにんのこころのもちようらと
つじはおもうんれすけど・・・がんばってくらしゃいね!
( `.∀´)<ツライ時はアタシの胸で泣くといいわ!ホホ、高くつくけどね!
後、補足ですが・・・
タイトルの『LIGHT MY FIRE』はドアーズの曲より。
本当は更新分全部出してから書きたかったのですが(w、思いがけず早くスレッド
引越し警報が発令されたのでここで明かします。
( ´D`)( ‘ д‘)<<だっせー!!
- 7 名前:LIGHT MY FIRE 投稿日:2002年05月04日(土)22時13分05秒
- ―――吉澤視点
―――その頃。
あたしは大学にいた。
来週提出のレポートに必要な本を図書館に借りに行き、
ちょっと買い物して、その足でなっちさんの店へバイトに向かう予定だ。
――― 結局、バイトは始める事にした。
なんだかんだと音楽は好きだし、なっちさんはいい人そうだし。
ただ・・・問題は。
まだ市井さんのバンド加入の返事をしていない。
自分でも、優柔不断だとは思うけれど。
用事をすませ、校門に向かって歩いて行くと、
「目標発見!」
これは市井さんの声。
「ラジャ!」
とごっちん。
「・・・へ?」
「ゴルァ!吉澤ぁ!!」
保田さん参上。
あれよあれよという間に、保田さん、市井さん、ごっちんの三人にあたしは取り囲まれていた。
「な、ナニゴト?」
突然の事でうろたえる。
「どーしたも!こーしたも!吉澤、テメ!バンドはどうすんだよ!!」
市井さんは怒鳴る。お怒りはごもっとも(汗)。
「ホホ、今ならもれなくアタシとの熱〜い一夜がついてくるわよっ。大金積んだって買えないわよっ!
感謝なさいっ!」
「・・・いえ、大金もらってもいらないっす」
「んまっ、言うじゃない」
「あっは!とりあえず、入るかどうか返事したほーがいいと思うよ。圭ちゃんの特典は別として♪」
「後藤、アタシはマジよ!」
「あっは!圭ちゃん、ヨシコがタイプ?」
「ちょっと待ってください!」
- 8 名前:LIGHT MY FIRE 投稿日:2002年05月04日(土)22時19分41秒
- 「何だよ、吉澤」
と市井さん。
「聞いていいっすか」
「んあ〜、どうぞ」
ごっちんは眠そうに目をこすった。
「まず、保田さん!今日仕事はどうしたんです!」
「アンタ、今日は土曜よ!アタシは今日は休み!」
「『部外者立入り禁止』って校門に注意書きがあったでしょーが!」
「ホホ、あながちそうじゃないのよね〜」
「?どういうコトっすか」
「アタシはココのOGよ!どう?グウの音もでないでしょ!」
「・・・グウ。専攻、何スか?」
「経済学科卒よっ!ちなみに卒論は『消費社会におけるお笑い研究』よっ!」
「・・・何スか、そのギリっな研究は。・・・よく卒業できましたね」
あたしは疲れきって肩をデロっと下ろした。
「んま!アタシは『全優』で卒業よ!論文も教授連にバカウケだったわっ」
「またまた〜」
「ああ、それはホント。圭ちゃん、実は勉強できるし。さて・・・加入すんの?」
市井さんはあたしの目をじっと見る。
「いやあのその・・・」
「どっちなんじゃい!」
「その・・・実は市井さんたちがウマすぎて・・・ウチ、ついていけんのかなって」
「アンタの実力はもうリサーチ済みよっ」
保田さんはニヤリと笑ってGジャンの胸ポケットからMDを出した。
「・・・何スか?」
「『♪I WANNA HOLD YOUR HAND〜』」
「・・・あ〜!もしやこの前の!!」
- 9 名前:LIGHT MY FIRE 投稿日:2002年05月04日(土)22時24分39秒
- 「んあ〜、ヨシコ鋭いねぇ」
ごっちんがのほほんと言う。
「だ、誰っスか!録ったの!」
「んぁ〜、ごとーで〜す!」
幼稚園児のよい子のように、ごっちんは元気よく手を挙げた。
「さて、他聞きたい事は?」
市井さんは腕組みして言った。
「・・・ウチ、自信ないんです」
「それは聞いたって」
「そうじゃないんです・・・実はウチ、高校ん時、バンド仲間とコンテストに出た事あるんです。
若気の至りで」
「ほお」
「そんで・・・結構いいトコまで行ったんスけど審査員に『ベースが垢抜けなくて泥臭い』って
言われて結局コンテストも落ちて・・・それ以来、ダメなんです」
「何がダメなの?」
「ウチが・・・足、ひっぱんじゃないかと思って・・・。あんなスゴいプレイするバンドなのにって。
それにベースなら、アヤカさんが・・・」
「ばかっ」
「・・・ごっちん」
「バカだよっ、ヨシコは。バカバカバカバカバカバカバカ!」
「そんなバカバカ言わなくたって・・・」
「アヤカちゃんはキーボードがいいってゆってんだよ?ベースはヨシコ!
もう〜、いちーちゃん、何とか言ってよ!」
「まあ、ここまで言ってダメならしゃーないな。行こうぜ」
三人は踵を返して立ち去ろうとする。
「・・・待ってください」
―――三人が背中を向けたままニヤっと笑った事を、あたしに知る由も無い・・・。
- 10 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月04日(土)22時30分10秒
- 本日分の更新はここまでです。
『新旧プッチ』揃い踏み。
しかし、何だか青春ドラマのようにクサくなった今回の更新でした(w
- 11 名前:登場人物紹介 投稿日:2002年05月04日(土)22時52分05秒
- (´ー`・):安倍なつみ(23)。北海道出身。『アベ楽器店』オーナー。
地元でOLをしていたが、祖父の死後上京し、店を継いだ。得意技は『なっちは天使』
(^◇^〜):矢口真里(22)。神奈川県出身。『喫茶タンポポ』オーナー。
母が亡くなる前は二人で店を切り盛りしていた。梨華を『アゴン』と呼ぶ。見た目はギャル
- 12 名前:理科。 投稿日:2002年05月04日(土)23時08分42秒
- 新スレ、オメ〜です。
よっすぃ〜、やっぱカッケ〜ですねぇ♪
圭ちゃんもいい味だしてます(w
更新…あいかわらず凄すぎ。
見習いたいものです。
- 13 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月04日(土)23時12分15秒
- ・アゴーン♪
(T▽T )<も〜う、矢口さん!『アゴーン』てひどい!シャクレテナイモン
(^◇^〜)<『ひど〜い!』(モノマネ)キャハッ、キショッ!
(T▽T )<自分は『ポチ』じゃん!ナンナノヨ、カナガワケンアゴッテ
从#~∀~#从 <♪ヘータレヘタレ、シャークレシャクレ
(T▽T )<裕ちゃんまでひどーい!!
ANNで最近個人的に受けたネタを使わせていただきました(w
- 14 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月04日(土)23時48分09秒
- 寝る前にレスのお礼を・・・。
>理科。さん
(;`.∀´)<り、理科。さんにアタシのキャラを褒めてもらえるなんて・・・
生きてるといいコトあるわね!ホラ作者!キリキリ逝くわよ!!
元祖ヤッスー作家(スミマセン)の理科。さんにお褒めの言葉を賜りましたので、
ちょっと自分は逝ってきます(w 更新量は・・・う〜ん、『下手な鉄砲も数打ちゃ当たる』
方式ということで(ニガワラ 文才は無いので、理科。さんや他の上手な方がマジうらやましいっす。
・補足
『喫茶タンポポ』モーニングセットの内容
・Aセット(クロワッサン、卵、サラダ)380円
・Bセット(トースト、卵、サラダ)380円
・Cセット(サンドイッチ(クロワッサンかフランスパンのオープンサンドか))
400円
卵はボイルド、スクランブル、フライドから
全品、コーヒーか紅茶付き(カフェオレ、ロイヤル・ミルクティーは20円増し)
(^◇^〜)<デザートもちょこっとつくよ〜。キャハッ!
- 15 名前:みぎみぎ 投稿日:2002年05月05日(日)00時02分01秒
- やはりアイスは20円高いんですか?
- 16 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月05日(日)00時22分39秒
- 新スレおめでとうございます。
補足・・・・・・に、カナーリワラタ!!
と、いいつつCセットのオーレで、420円だな。
と、まじめに選んだ自分がいますが、何か?(w
続き楽しみにしています。
- 17 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月05日(日)00時49分29秒
- 寝ようと思ったけれど(w
>みぎみぎさん
(^◇^〜)<オイラの店はそんなケチじゃないよ〜。キャハッ!
ありますよね、アイスはプラス20円とかいう店(w
自分の記憶では、あんましそのテの店はおいしくなかった気がします。
>よすこ大好き読者さん
(^◇^〜)<はいよ〜、ミルクは多目にする?クロワッサンでいいの?
さすが会長(w クロワッサンだったらパーフェクトに『ヤッスーセット』ですよ。
新スレでもよろしくれす。いつもありがとうございます。
- 18 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月05日(日)01時12分28秒
♪
ヽ^∀^ノ ¶ <お、電話だ
( ´ Д `)<んあ〜、いちーちゃん。ごとーだよ
ヽ^∀^ノ <おう、どした
( ´ Д `)<今、ガッコなんだけど、ロッカールームでヨシコ見たよ
ヽ^∀^ノ <ナニ!?(てかオマエ、土曜の午前中によく起きれたな!?)
( ´ Д `)<どする?作戦実行する〜?
ヽ^∀^ノ <おうよ!圭ちゃんにはこっちから連絡するから!
( ´ Д `)<んあ〜
────『喫茶タンポポ』
ニヤリ メアワスナヨ ノロワレルレス
( `.∀´)¶ ( ‘ д‘)( ´D`)
──── 大学
(((0^〜^)<♪
ヨスコの運命や如何に!?
- 19 名前:LIGHT MY FIRE 投稿日:2002年05月05日(日)17時28分39秒
- ―――その後、あたしは三人に渋谷に連行された。
「ホホ、例のスタジオを二時から押さえてるわよっ」
電車の中で保田さんが自慢げに言った。
「カァ〜ッ。さすが圭ちゃん!仕事が早いねぇ〜」
オヤジのように市井さんは言う。
「・・・あの。ウチ今日バイトなんスけど」
「バイトは四時からでしょ。それまでちょーと付き合ってよ」
「何でウチのバイトのシフトまで知ってんスか・・・」
「フフ・・・それはね!」
ジャーン!
という効果音がしそうな感じで、市井さんが携帯を掲げた。
ちゃんと車内だから電源切ってある・・・。
ナニゲにマナーを守るヒトなんだ・・・。
「メールでなっちに聞いたのさ!」
やっぱし・・・。
電車から降りて市井さんの携帯のメールを見せてもらうと、
『よっすぃ〜は今日は4時入り!
まだバンドの返事してないべか?
あんだけのベースの腕がもったいないべ!』とあった。
「ま、そう言うコト」
市井さんは自分の携帯をポケットにしまうとニヤっと笑った。
- 20 名前:LIGHT MY FIRE 投稿日:2002年05月05日(日)17時36分42秒
- 連れて来られたスタジオには、アヤカさんが既に来ていた。
「お〜い!」
アヤカさんが笑顔で手を振る。
「コンニチハ」
会うのはライブ以来なので、あたしは頭を下げた。
「久しぶり〜。聞いたよー、入ってくれるんだってー?」
「・・・ハ?」
三人の方を振り返ると、それぞれ天井を見上げたり、口笛を吹いたりしていた。
「いや、圭ちゃんがさー、『吉澤加入決定!ヤツはもうアタシに夢中よ!』ってワケ分からない
メール送ってきてさー」
「ままままま、とりあえず時間がもったいないし!」
市井さんに背中を押されスタジオに入る。
「・・・練習するんスか?」
「アラ、鋭いじゃないっ」
保田さん・・・ここでソレ以外の何をすると言うのです。
あたしは大きく溜息をつくと、
「ベース・・・今日持ってないんスけど」
「あ、それなら、あたしのがあるから」
アヤカさんが自分のを差し出してくれた。
「タングだけど」
「どうも」
受け取って、ケースを開ける。
この前借りたのはフェンダーだったけど・・・。そういや初めてのベースもフェンダーだったっけ。
ゴミ置き場で拾ってきたヤツ(笑)。
結局すぐダメになって買い換えたけど・・・あれからハマったんだよなー、ベースに。
「・・・ん?」
- 21 名前:LIGHT MY FIRE 投稿日:2002年05月05日(日)17時56分54秒
- こここここれ!六弦じゃん!!
な、何で!?何で!?
あたしの不安そうな顔に気づいたのか、
「・・・ごめんねー。紗耶香と圭ちゃんがどーしても、よっすぃ〜の実力を見たいっていうから・・・止めたんだけどね」
アヤカさんが申し訳なさそうに言った。
「んあ〜。ヨシコ、六弦も弾いたコトあるって言ってたよね〜」
「・・・うん、言ったけど・・・三回だけよ?」
「ままままま!とりあえず!時間がもったいないし!!
ハイハイ、吉澤はちょっと指慣らしで弾いてていいから!」
「『ハートに火をつけて』でいいよね!この前のアレンジで!ベースはヨシコに任すから!
悪いけど、六弦で好きに弾いてよ。いちーちゃん、ギターアンプにつないで!」
「・・・任すって(泣)」
・・・ごっちん、正式メンバーじゃないのにメチャ仕切ってるし。
取り敢えず、試しに弾いてみた。
あ・・・ピッチ広いし思ってたより弾きやすいカモ。
何より薄いのがイイ!
- 22 名前:LIGHT MY FIRE 投稿日:2002年05月05日(日)18時01分59秒
- 「・・・いいっス!いつでもどうぞ!!」
あたしは他のメンバーの方を見た。
みんなちょっと呆然としている。
後でごっちんに聞いたところによると、あたしはその時やたらと挑戦的な目をしていたらしい。
「おう!じゃ、行くぜ!ワンツースリー・・・」
市井さんの掛け声で、プレイが始まった。
・・・もうどうにでもなれ!
半ばヤケクソで弾き始める。
『You know that it would be untrue
You know that I would be a liar
If I was to say to you・・・』
アヤカさん、キーボードもマジ・・・カッケー。
六弦ベースまでこなすなんて・・・オイラ、尊敬しちゃいます。
ごっちん・・・ソレ、市井さんのグレッチ(ホワイト・ファルコン)じゃ。
後でしばかれるよ・・・?
保田さん・・・一夜をともにするのはイヤっすけど、オイラ、保田さんのプレイだけは好きっす。
そして何より。
市井さん・・・吉澤は市井さんのギターと歌にマジ・・・ホレました。
・・・ナンか、だんだん気持ちよくなってきた。
ハハ、アドレナリン、大放出?
『Try to set the night on fire・・・』
・・・終わった。
気がつくと、
「ヨシコ!カッケー!!」
ごっちんが、笑顔でウチに抱きついた。
- 23 名前:LIGHT MY FIRE 投稿日:2002年05月05日(日)18時12分15秒
- ――― 後藤視点
「いや〜、あんなアレンジを見せてくれるたぁな〜」
終わった後、いちーちゃんはご満悦だった。
あっは。いちーちゃん、ヨシコのベースにそぉとぉホレこんでたもんね。
いちーちゃんが嬉しいとごとーも嬉しいんだ。
「・・・ん?」
いちーちゃんがあたしのギターを見た。
「・・・!後藤、テメ!それ、アタシのギター!!」
「あっは!いちーちゃん、気づくの遅すぎ!!」
「最近部屋にないと思ったら、テメ、持ち帰ってたな!!」
「んあ〜、だって、フツーに頼んでも貸してくんないじゃん」
「ったりめーだ!アタシの命の次に大事な・・・」
「んあ〜、いちーちゃんはもひとつグレッチ持ってるし、それにそのギブソンもあるじゃん」
「だからってー、勝手に持ち帰るヤツがあるか!」
「あっは!ごとーのモノはごとーのモノ。いちーちゃんのモノもごとーのモノ」
「んま、ジャイアンね!ホホ、アタシもこれからはそれでいこうかしら」
「・・・充分だよ、圭ちゃん」
「何か言った?アヤカ」
「ううん、何も・・・」
アヤカちゃんは悪気なく笑った。
あっは!アヤカちゃん、ナニゲに毒舌♪
ヨシコもメチャ嬉しそう。
顔をくしゃくしゃにして笑ってる。
『ウチ・・・もっとうまくなりたいっス!!』
この一言で、ヨシコ入団が決まりました♪
- 24 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月05日(日)18時39分17秒
- 今回の更新はここまでです。
入団テストでいきなり六弦ベース。(ハイCの音が聞きたかったらしい)
( `.∀´)<まったく、作者と同じくらいムチャなバンドねっ
(;0^〜^)<・・・自分で弾かせといて
『LIGHT MY FIRE』(邦題『ハートに火をつけて』)はドアーズ二枚目のシングルで
オリジナル版はアルバムに収録されてますが、(シングルは間奏かなりカット)とにかく間奏が長い(w
全体で7分くらい、1番が終わって次に2番が始まるのは5分40秒を過ぎた頃。
(ライブ版は11分か12分はあった)
実際はボーカル、ギター、ボックス・オルガン、ドラムという構成の曲です。
(;0^〜^)<ベースレスの曲を、という時点でムチャだYO!
ヨシコがアヤカに借りたベースはハンドメイド・ベースです。
キーボード希望の割には六弦ベースまでこなす、ナゾのキーボード担当・アヤカ。
とりあえず、やっと入団するトコまで書けました(ニガワラ
- 25 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月05日(日)21時12分11秒
- 森板で告知した番外編を書かせていただきます。
今日中に・・・あがるかな(w?
- 26 名前:First Love 投稿日:2002年05月05日(日)21時16分34秒
- ――― 石川視点
ある日。
みんな出払って家の中がとても静かでした。
「あれ〜、みんなはー?」
ひとみちゃんが階段から降りてきます。
「あ、ひとみちゃん。出かけてるのかと思った。バイトは?」
「ん〜、今日は休み」
「裕ちゃんは平家さんと朝から出てて、ののちゃんもあいぼんと出かけたみたい」
「そうなんだ、今日はウチと梨華ちゃんだけなんだ」
ひとみちゃんの一言で・・・あたしはとても幸せな気持ちになりました。
「ひとみちゃん、晩ゴハンどうする?」
『ふたりきり』
この一言に、あたしはこの上なく舞い上がっていました。
「ん〜、何でもいいよ〜」
「今日はひとみちゃんの好きなモノ作ってあげる!」
「え、いいの?じゃ、オムライス!」
ひとみちゃんが笑顔で言います。
コドモみたいでカワイイ・・・。
何だか、お母さんみたいな気持ちになっちゃいました。
- 27 名前:First Love 投稿日:2002年05月05日(日)21時19分31秒
- 夕方、ひとみちゃんと二人でスーパーに出かけました。
玉ねぎ、鶏肉、マッシュルームの缶詰、卵・・・。
ゆっくり歩いていきながら、カゴに入れていきます。
ひとみちゃんと歩いていると、みんなが振り返ります。
ひとみちゃんはとてもキレイだから。
でも、ひとみちゃん本人はどうでもいいみたいで。
「んあ〜、ヨシコ、体育ある日なんてジャージで登校よ?」
ごっちんがいつだかそう言っていました。
「あのツラでこだわらんっちゅうのもスゴイよな〜」
あいぼんが感心したように言います。
でも・・・そこがひとみちゃんのいいトコロで・・・。
「ハッハ、あのコ、梨華ちゃんのコト見てるよ!」
ひとみちゃんが楽しそうに言います。
「・・・エ?」
見ると、5歳くらいの男の子が、じっとあたしの顔を見つめています。
とりあえず笑ってみると、プイッとそっぽを向いて走って行ってしまいました。
「ハッハ、照れてる!照れてる!ヒュ〜!幼児泣かせ!!」
・・・ひとみちゃん、全然嬉しくないよ(泣)。
でも何だかこうしてると・・・新婚さんみたい。
嬉しくて、頬が緩んでしまいます。
「梨華ちゃん・・・どしたの?」
ひとみちゃんが不思議そうにあたしの顔を覗き込みます。
「え、なぁに?」
「ナンか・・・さっきからやたらとニヤニヤしてるけど」
・・・う!
ひとみちゃんに気味悪がられたかしら!
「ご、ごめんなさい・・・」
「いや・・・いいケド」
それでもやっぱり嬉しくて、顔が勝手に笑ってしまいます(笑)。
- 28 名前:First Love 投稿日:2002年05月05日(日)21時22分32秒
- ―――後藤視点。
その日、ごとーはいちーちゃんと渋谷に来てたんだ〜。
特に用事はないんだけど。
まあ、お散歩かな?
「いちーちゃん、また学校の子に言われたよ〜」
「何て?」
「『市井さんと付き合ってるんですか?』って。ごとー、この質問、もう100万回くらい
聞いたんだけど」
「こっちもそれくらい受け付けてんぞ」
「んあ〜、そうなの?」
「おう」
へ〜、そうなんだ・・・。
「ごとー、ギター見ていい?」
「んあ〜、いいよ〜」
市井ちゃんは一軒の楽器屋さんに入って行った。
一通り見て回ると、いちーちゃんがガラスケースの前から動かなくなった。
ひょいっと後ろから見ると、グレッチのブラック・ファルコンが飾ってあった。
「いちーちゃん、欲しいの?」
「いや・・・カッコイイなぁーと思ってさ」
いちーちゃん、トランペットが欲しい子供みたい・・・。
ホント、昔からこうなんだから。
- 29 名前:First Love 投稿日:2002年05月05日(日)21時25分30秒
- 『ごとー!ついに買ったぜ!』
いちーちゃんが高校に上がった頃、いちーちゃんは嬉しそうにごとーに買ったばかりのグレッチを
見せてくれた。
あれは中古のだったっけ。
うんとバイトして、貯金も下ろして、いちーちゃんは念願のグレッチを手に入れた。
ごとーもなんだか嬉しかったなぁ。
いちーちゃんはその後、ライブで客席に投げる用のピックをまとめ買いし、また二人で雑踏に出て行った。
「んぁ〜、いちーちゃん。ごとー、シルバーアクセ見たいなぁ」
「おう、行くか」
店に入り、いちーちゃんとショーケースを色々見て回った。
「見て見て!いちーちゃん!!」
「あ〜?」
「ホラ!」
ごとーが指さしたのは、クロムのピアスだった。
「クロムじゃん」
「そ!ホラ見てよ!ルビーがついててカワイイっしょ?」
いちーちゃんはしばらく黙ってそれを見た後、こう言ったんだ。
「そのピアス、プレゼント包装でお願いします」
- 30 名前:First Love 投稿日:2002年05月05日(日)21時36分46秒
- ―――石川視点。
―――夜。
二人だけの夕食が始まりました。
今日のメニューはひとみちゃんのリクエストのオムライス、コンソメスープ、サラダです。
張り切って、いつもより腕によりをかけました。
「いっただきまーす!」
スプーンを手に取ると、ひとみちゃんは勢いよく食べだしました。
何だか、運動部の男の子みたいです。
「ん・・・んぐんぐ!」
急にひとみちゃんが立ち上がりました。
のどにひっかかったのでしょう。しきりに自分の胸をたたいています。涙目で。
あたしはあわてて水の入ったグラスを渡します。
「あ、ありがと・・・げほっ」
あたしは背中をさすってあげました。
「も〜、ひとみちゃん。ダメだよ、あわてて食べたら」
「だ、だって・・・あんまりおいしいからさぁ〜」
ひとみちゃんはちょっと恥ずかしそうに言います。
エヘヘと笑って。
・・・この人は。
―――どこまで人を夢中にさせたら気が済むのでしょう?
夕食の後、デザートのイチゴを食べながらお茶を飲みました。
ひとみちゃんは自慢のギターでカントリー娘。に石川梨華美(モーニング娘。)の
『恋人は心の応援団』を弾いてくれました。
あたしも笑いながら一緒に歌います。
『♪こんな私を丸ごと愛して』
『ファイ♪』
幸せな時間は。
そうしてそうして過ぎてゆきます―――。
- 31 名前:First Love 投稿日:2002年05月05日(日)21時40分33秒
- ―――後藤視点。
「・・・いちーちゃん、ホントにいいの?」
店を出た後、あたしは言った。
「てかオマエ、買った後に何言ってんの」
「だって・・・普段はめちゃケチなのにさ」
「ケチて・・・。まあ、入学祝いもまだやってなかったからさ、ちょうどいいわ」
そう言っていちーちゃんはスタスタ歩いて行く。
「ホラ、後藤。行くぞ」
遅れて行くあたしを、いちーちゃんは振り返って促した。
「あ・・・うん」
その後バーに入り、いちーちゃんはバーボン、ごとーはカクテルを頼んだ。
「いちーちゃんてさ」
「ん?」
「お酒はワイルド・ターキー、タバコはハイライト、ギターはグレッチ。
バンドで目立ちたいからってパツキン、形から入るタイプだよね」
いちーちゃんは黙って苦笑した。
「明日からジョギングを始めるコトにしたら、お店にジョギングシューズを買いに行くタイプだよね」
「ワケわかんね」
そう言って、アナタは笑う。
- 32 名前:First Love 投稿日:2002年05月05日(日)21時43分57秒
- その日もごとーは酔って腰が立たなくなって、いちーちゃんにおんぶされて店を出た。
「・・・んあ、いちーちゃん」
いちーちゃんの背中はあたたかい。
「・・・たく、世話が焼ける」
いちーちゃんは低い声で言う。
「・・・いちーちゃん、ごとーのコト・・・好き?」
「・・・ナニ言ってんの、オマエ」
「ちゃんと答えてよう」
いちーちゃんはしばらく黙っていた。
そして・・・
『世界で一番オマエが大事だよ』
「・・・ハハ、なんちゃって。
・・・ごとー?」
「・・・寝てやがる」
ごとーはいちーちゃんがその時何て答えたのか、未だに知らない。
『あの時なんて言ったのよう』
って問い詰めても、
『さあな』
ってはぐらかすし。
ふーんだ。
いちーちゃんなんか・・・大キライ。
- 33 名前:First Love 投稿日:2002年05月05日(日)21時56分00秒
- ―――石川視点。
おフロに入り、髪を乾かしていると、裕ちゃんが帰ってきました。
「梨華ぁ〜、土産やぞ〜」
と言って、折り詰めのお寿司を差し出します。
「あ、ありがと・・・」
「一日留守にしてスマンかったな、今日は一人やったんやろ?」
「ううん、ひとみちゃんと一緒だったよ」
「・・・!ナ、ナニ!?吉澤と!!!」
裕ちゃんは急に声をひそめて、
「・・・どうやってん?」
「『どうやってん』て・・・何よ?」
「・・・だから!ふ・た・り・き・り!やったんやろ!?」
「な・・・裕ちゃんのバカ!!」
あたしは顔を思いっきり赤くしました。
「あー、中澤さん。お帰りなさい」
そこへ。
おフロから上がったひとみちゃんが、バスタオルで頭を拭きながら現れました。
「吉澤」
裕ちゃんはひとみちゃんの肩をぽんと叩きました。
「ハイ?」
「梨華を・・・頼んだぞ」
「・・・裕ちゃん!」
「・・・へ?なんなんスか?」
裕ちゃん・・・ひとみちゃん、困惑してるじゃない!
・・・ちょっと嬉しいけど。
- 34 名前:First Love 投稿日:2002年05月05日(日)22時02分58秒
- 「『よろしく』だってさ」
裕ちゃんがおフロに向かった後、ひとみちゃんが首を傾げながら言いました。
「あ・・・気にしないで。裕ちゃん、たまにワケ分かんないコト言うから・・・」
「ふ〜ん、そうなんだ」
疑いもせず、アナタはそうしてニコニコ笑う。
―――神様。
この人に出逢えて・・・よかったです。
「おやすみ」
その一言でさえ、あたしには嬉しい。
「おやすみなさい」
今夜も―――アナタの夢が見れたらいいのに。
- 35 名前:みぎみぎ 投稿日:2002年05月05日(日)22時04分25秒
- ど、ドアーズ…60年代の王者っすね。
実はドアーズはあんまし知らないのですが…
まだなんかロックにしてはおとなしかたような…
そんな印象があります。
どんなアレンジだったのか気になりますー(^▽^)ノ☆
伝説のベーシストと言えば
ジャコ=パストリアスっすよね…
『The Chicken』
とか、どうっす?(笑)
- 36 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月05日(日)22時13分41秒
- 名無し読者さんのリクエストにお答えして『いしよし・いちごま』書きましたが、
いかがでしたでしょうか?
いしよしがイマイチ甘くなかったな〜、っていうのが本人の感想です(ニガワラ
構成も・・・ちょっとなぁ。
タイトルは宇多田ヒカルの曲からです。(いしかーファンとしてはマジで今心配っす)
いちーちゃんは初恋だけれど、いしかーには初恋ではありません。
でもまあ、ここまで本気になったという点で『First Love』って事で。
いや、石川視点は何だか難しかったです。後藤は結構スラスラ書けるんですが。
- 37 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月05日(日)22時37分04秒
- (((0^〜^)<♪
(;^▽^)<ひとみちゃん、その格好・・・ ヒッピー?
(0^〜^) <へへ、60年代風ファッション! サイケデリ−ック
(;^▽^)<そ、そう(顔がいいだけに・・・イタイわ)
(;´D`)<60年代をハゲシクカンちがいしてるれす
( ‘ д‘)<まったくや ダサッ
オチナシ、スマソ
- 38 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月05日(日)22時45分35秒
- レスのお礼を・・・。
>みぎみぎさん
(;0^〜^)<ジャ、ジャコ!?・・・オ、オイラには無理だYO!
『The Chicken』・・・う〜ん、市井さんか後藤さんに頼んでみます?(w
ジャコはやっぱりベーシストは避けて通れんですな。漫画家で例えると手塚治虫でしょうか?
- 39 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月06日(月)00時07分14秒
- ・オムライスばんざい
(♯^▽^)<♪(オムライスにケチャップで『HITOMI』)
(0^〜^) <あ、オイラの名前!よーしオイラも!ニョロニョロ・・・
(♯^▽^)<(キャッ!『LOVE R・I・K・A!』だって!)
(0^〜^) <♪〜
ベタすぎ。
しかし、家庭科の調理実習のようなメニューでしたな。
- 40 名前:理科。 投稿日:2002年05月06日(月)06時03分57秒
- いえいえ、甘々でしたよ♪
ごちそーさまです。
いつもですが、特に今回はイイ!です。
いしよし大好っきな私は満足ですが何か?(w
大量の更新、乙カレーです。
- 41 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月06日(月)13時20分28秒
- 大量更新&番外ありがとうございました。
番外も、いい感じで甘々でしたが、
「オムライスばんざい」が私的には、つぼでした。(笑)
後、当然クロワッサン・ミルク多めで、砂糖なしでお願いします。(爆
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)18時21分03秒
- いい感じですよ♪
十分満足です(w
自分、最近学校でベースを習い始めたのですが…
買うとしたらやっぱ安くて4万前後・・
学生には辛いっす〜(泣
早く上手くなりたいっすね!(関係ない話すまそ・・)
- 43 名前:みぎみぎ 投稿日:2002年05月06日(月)19時04分22秒
- 42さん
YAHOOのオークションに行って、
オークション→ホビー、カルチャー→楽器、器材→
→弦楽器→ギター→エレキベース→本体
で検索したら、2万円弱でもあります。
まぁUSEDですが。
時に掘り出し物もありますから、
とりあえず練習用に欲しい時はいいのでは?
ごまべーぐる様
オムライスにケチャップで字…(笑)
ベタです! このベタさ具合がたまりません!(笑)
続き、メチャ楽しみにしています〜♪
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)21時32分47秒
- みぎみぎさん>>
本当ですか?後で調べてみます(w
今は練習用でいいと思うので…
- 45 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月06日(月)22時24分54秒
- その日、辻と加護は学校の屋上に上がり、二人で昼食を取っていた。
クラスが別なので(加護がA組、辻がC組だった)毎日ではないが、選択教科の音楽など合同授業の後など、
たまにこうして一緒に昼ゴハンを食べていた。
「・・・ん〜、いい天気れすね〜」
先に食べ終えた辻が座ったまま伸びをした。
「ホンマやな。絶好のサボリ日和や」
「さぼっちゃダメれすよ、学校に来てんの先生も知ってるのに」
「ののはマジメやなぁ」
「そうじゃないれすけど・・・のののお父さんは授業を途中でフケるくらいなら
朝から学校をさぼれって言ってたれす」
「なんや・・・ようワカらん教育指導やな」
加護はそう言うと少し笑った。
「それより・・・今度音楽でギターのテストあるじゃないれすか」
辻は自分のパンの袋を小さく折りたたんで言った。
「ああ、連休明けにするヤツな」
「のの、あんまし自信ないんれすよ。今回は簡単なコードれすけど」
辻はとても手が小さく、簡単なコードでも結構苦労して押さえていた。
指が痛くてしょうがない時もある。
加護はニヤリと笑うと、
「うちにエエ先生がおるがな」
と言った。
- 46 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月06日(月)22時30分43秒
- 「あいぼん、クラスにお友達は出来たれすか」
「まあ、ボツボツと・・・気になんの?」
この前音楽の歌のテストで、『好きな歌を歌っていい』
という教師の言葉を鵜呑みにし、加護は振りつき・モノマネつきで
『桃色片思い』を熱唱した。モチロン『ピーチ!』も忘れずに。
先生は苦笑していたが、生徒にはバカ受けだった。
(その後更に調子こいて『一人メロン記念日』を休み時間にアンコールに応えて行ったが)
実際のところそれ以来、加護はクラスでもよく話しかけられるようになった。
放課後の寄り道の誘いもたまに来る。
「へいっ、ののがいない時でもあいぼんがさびしくないようにって思って」
「てか自分、ナニうぬぼれてんねん!?」
加護のツッコミに辻はただフフッと笑う。
「食べないんれすか。食べないんなら、のの、もらうれすよ」
辻はそう言うと、加護がお楽しみに取っておいた、菓子パンの赤いドレンチェリーをひょいっと
指ですくいあげて口に入れた。
「・・・あ〜!」
加護は情けなさそうな声を出すと、小さく溜息をつき仕方なく残りのパンを食べた。
その時ちょうど、予鈴が鳴った。
「あいぼん、遅れるれすよ」
「おう、今行くわ」
加護はスカートの後ろをはたきながら立ち上がった。
辻の背中が目に入る。
ヒョコヒョコと、三つ編みにしたツインテールが揺れていた。
『オマエみたいな大食らいなヤツの代わりなんか・・・おらへんわ』
加護は心の中で呟いた。
「あいぼぉ〜ん」
辻がドアのそばで呼ぶ。
「今、行くて」
加護は何だか自分の中で、何か新しいものが生まれてる気がした・・・。
- 47 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月06日(月)22時50分20秒
- 今回の更新はここまでです。
タイトルはC−C−Bのヒット曲より。(このままいくと昭和歌謡全集になってしまう(汗)宇多田は平成だけど)
C−C−Bは1980年代半ば、『Romanticが止まらない』という曲で一躍有名になったグループです。
ショッキング・ピンクとかとにかく派手な髪でシンセ・ドラムを叩き、当時流行ったテクノサウンドを刻んでいました。
タイトルに使った曲は、ちょっとグレてしまった昔の彼女に、今でも思いを寄せる少年の恋心を歌った名曲であります。
- 48 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月06日(月)23時12分59秒
- レスのお礼です。
>理科。さん
(♯^▽^)<ひとみちゃんに喜んでもらいたくて、梨華、ガンガリました!
(0^〜^) <おいしかったYO! オイラ、キカンハイッタシ
恋するいしかーさんを書くのは難しいです。自分の周りでは何故か本編より顔文字の
オムライスネタの方が好評です(w
>よすこ大好き読者。さん
オムライスネタ・・・ベタかなと思いながら書いたんですが、ツボだったようでよかったです(w
(^◇^〜)<はいよ〜、しばらく待っててね。今パン焼くから(今からかよっ)
>名無し読者さん
リクエストをくださった方ですか?喜んでいただけたのなら何よりです。
ベース・・・自分は昔ちょこっとピアノをやってましたが、自宅の練習用はお古のキーボードでした。
みぎみぎさんのおっしゃる通り、中古でも掘り出し物は探せば結構あると思いますヨ。
( ^▽^)<ファイ♪
(0^〜^) <オイラもガンガルYO!
>みぎみぎさん
(♯^▽^)<ホントは『L・O・V・E LOVELY HITOMI!』って
書きたかったんです♪
オムライスネタ・・・ホントに『ベタでスマソ』って感じでした(w
ドアーズは曲が、というより歌詞の内容とライブ・パフォーマンスが激しいグループかもしれません
- 49 名前:みぎみぎ 投稿日:2002年05月07日(火)00時28分04秒
- C-C-Bと言われると、
その昔「ザ・ベストテン」で「C-C-Bふりかけ」なるものを、作ってましたよね…。
そして、なんか市松模様の床の上で黄色いゴーカートに乗りながら、イヤフォンマイクで歌ってましたよね…?
(謎の記憶)
考えてみると、当時黒柳徹子も今より20歳近く若かったはずだが、
何故か黒柳徹子は今も昔も変わっていないような気がする。
- 50 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月07日(火)00時57分51秒
- C-C-Bと言われると、(みぎみぎ様を真似してみた。スマソ^^;)
私は、「毎度お騒がせします」ですな。(懐かすぃ〜)
最近は、音楽の授業でギターとかあるのか〜
私は、ハープ弾かされたな〜しかも、「マイウェイ」だったような・・・(汗
- 51 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月07日(火)17時10分22秒
- ―――吉澤視点
その日、あたしは部屋である紙袋を前に正座して考え込んでいた。
「う〜ん・・・」
いくら考えても、キリがない。
そう思い、意を決して
「・・・ヨシ!」
立ち上がった。
―――数分後。
『ガラガラガラ・・・』
「ひとみちゃん、ゴハン・・・!?」
「・・・うわ!!ナニやってんの自分!?」
「・・・女装、れすか?」
「なんでやねん!!」
あたしは・・・高校の制服姿で梨華ちゃん・辻・加護の三人にまとめてツッコんだ。
しかし・・・格好にまるで説得力がない(泣)。
理由を話せばこうだ。
「次のライブでタンポポの『恋をしちゃいました』をやるから各自制服を用意するように」
とのお達しが市井さんから出た。
「ちょっと待ってください!タンポポはいいですけど、何で制服なんスか!?」
と、あたしは打ち合わせ場所のマックで半ば悲鳴に近い大声を上げた。
「え〜!?アタシ、インターナショナル・スクールだったし、制服ないよ〜」
とアヤカさん。うう、こういう別な理由で困ってるヒトもいるのね(泣)。
「ホホ、大丈夫!アタシのがあるから」
と保田さん。
・・・てか!保田さんも着んの!?
「ややや、保田さんも・・・スか?」
「んま!当たり前じゃない!ホホ、これで次のライブは失神者続出よ!」
いや・・・それって絶対違う理由で失神・・・いや、今は言うまい。
「吉澤、タンポポはどんな衣装を着てた?」
市井さんは言った。
「どんなて・・・何かチェック柄が多かった気がします。こう・・・ヒラヒラで」
あたしは手でヒラヒラのゼスチャーをしてみせた。ヒラヒラ〜って。
「そう。そこでだ!」
- 52 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月07日(火)17時14分25秒
- 市井さんは立ち上がり、ビッと人差し指を上げた。
ごっちんはその横で爆睡している。たまに『・・・んあ〜』とか言って。
「ヒラヒラでチェック!こんな衣装揃えてたら金がかかるし、
作るのもめんどくせーし何より着回しがきかねぇ!
だからてっとり早く制服で間に合わす!!どうだ!!」
力強く言い放った市井さんをあたしは唖然と見上げた。
それならタンポポを歌わなきゃ・・・そういう突っ込みもできないくらいの迫力だった。
- 53 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月07日(火)17時16分49秒
- 「・・・ふーん、オバチャンの制服姿かぁ」
食卓で、加護が茶碗を持ったまま何故だか遠い目をした。
「・・・こわいれす」
ののは俯いてポツンと言った。
「で、でも、ひとみちゃん!さっきの制服!可愛かったよ♪」
梨華ちゃんが何だかよく分からないフォローをする。
「うう・・・もう言わないで」
あたしの母校は上はブレザーのリボンタイで、下はチェック柄のミニのプリーツスカートだったが、
今日着てみて・・・思っきし後悔した。
姿見に映る自分は・・・まさに女装。
わざわざ母さんに連絡して実家から宅配で送ってもらったが、
「アンタ、何すんの?」と電話の向こうの声はとても不審がっていた。
「紺のハイソックスまで履いて、かなり本格的やったで」
加護がからかうように言う。
「だから言うなって・・・」
あたしは暗い目でメンチカツを口に運んだ。
「それよりさぁ、頼みがあんねんけど」
加護があたしに言った。
- 54 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月07日(火)17時25分17秒
- 「何?」
「ウチとののに、ギター教えてくれへん?」
「いいけど、何で?」
「今度音楽の授業でギターのテストがあるんれす。のの、ただでさえ手がちっこくて苦労してるし、
あんまし自信がないんれすよ」
「ああ、そういう事なら」
「あ、あたしも習いたいな!」
梨華ちゃんが言った。
「梨華ちゃんも授業でギターのテストあるんれすか」
「そうじゃないけど・・・何か新しいコト始めたいなぁってね」
辻:「(梨華ちゃんが言う『ぽじてぶ』(注:ポジティブ)ってヤツれしょうか)」
加護:「(梨華ちゃん・・・分かりやす過ぎや)」
「よし!このヨシザワに任せない!まとめて面倒見ちゃる!」
あたしは胸をドンと叩き力強く宣言した。
―――夕食後。
辻は加護の袖を引き、こっそり耳打ちした。
「あいぼん、ありがとれす」
「ウチは何もしてへん」
「それでもありがとうれす」
辻は笑顔で言った。
加護は何も言わずただ黙って笑い、台所から立ち去った。
- 55 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月07日(火)18時45分43秒
- 今回はここまでです。
『4thいきまっしょい!』を聴きながら、最中食べながらの更新でした。
ちなみに、まだここの人たちはGWすら始まってません(汗
以前『HEY×3!』でしたか、辻が浜ちゃんに深爪なのを指摘されてましたが、
ホントにちっちゃい手ですよね。
( ´D`)<紅葉の手というのれすよ
レスのお礼は後ほど・・・。
- 56 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月07日(火)21時29分52秒
- ・裕子、20歳の青春
从#~∀~#从<ガツガツガツガツ・・・(失恋で自室にこもり、アオリイカハコ食い中)
( ^▽^)<お姉ちゃん♪何してるの?(梨華・小5)
从#~∀~#从<やかまし!ほっとけ!ヘタレ! シャクレ
( T▽T)<ヴェ〜ン!おねえぢゃんがおごったぁ〜!!
从#~∀~#从<ウチは失恋の痛手を・・・イカで(ガツガツ)癒しとんのじゃ!
( T▽T)<梨華もホシイ・・・
从#~∀~#从<・・・ちょっとだけやぞ
『姐さん、ゴチバトルで自腹切らなくてよかったね記念(ニアピンは逃したけどね♪)』
从#~∀~#从<いまさらかいっ!!
矢部流にゴハンからいった姐さん。
『上等な』(w イカもだが、あの透けるようなマンボウがうまそうでしたね。
- 57 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月08日(水)00時05分13秒
- レスのお礼を・・・。
>みぎみぎさん
『黄色いゴーカート』はうっすら覚えてます。ベストテンは結構歌手にイロモノ企画を
やってましたね。黒柳さんは・・・確かにあんまし変化がない(w
個人的には『他のアイドルは‘ちゃん’づけなのにナゼ明菜は‘さん’づけ』なのか
というのが、黒柳さんへの疑問でした。(^▽^)<年がバレるね♪
>よすこ大好き読者。さん
中山美穂とかが出てましたよね。なつかすぃ〜(w
音楽でギターというのは10年以上前ですが、友人の学校であったようです。
それを参考にしました。今はどうなんでしょうね。
ハープで『マイ・ウェイ』っていうのもスゴイですね(w (^〜^O)<カッケー!
川o・-・) こんこんたんじゃうびおめでたう
- 58 名前: 投稿日:2002年05月08日(水)00時58分39秒
- 4期メンの場面はほのぼのして良いねー
- 59 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月08日(水)19時26分39秒
- ―――吉澤視点
その夜、あたしはギターを下に持って降り、居間で早速三人に指導を開始した。
「ではまず・・・ドレミファソラシド〜」
「へいっ」
ののがちっこい手で弦を押さえる。
「ヨシ、次は加護」
「おう」
加護も難なく弾いた。
「次はあたしね♪」
みんな、手ぇちっちゃいなぁ。
梨華ちゃんが弾くのを見て、そんな事を思った。
ハハ、ウチがでかすぎ?
「では次はコードね。まずはC。のの、音出してみて」
「これでいいれすか」
「いいよ。じゃ、G・・・そうそう」
そうやって小一時間、三人に順番に教えていた。
ののは、やはり手の小ささがネックになってるようだ。今もちょっと顔をしかめている。
まだこのレベルのコードならマシだろうけど、その内もっと痛がるかもしれない。
「ののがもしギターを自分用に買うんなら、ネックの細いのにしなよ」
一通り練習を終えた後、あたしはののの手をさすってあげた。
「そん時はよっすぃ〜が見立ててください」
「ハイハイ」
ウチは笑って、ののの頭を撫でた。
- 60 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月08日(水)19時29分43秒
- ギターは中澤さんに頼んで居間に置き、とりあえず連休明けの辻・加護のテストまで、
ウチがいない時でも三人が好きに練習できるようにした。
手入れとチューニングを欠かさない事を条件に。
「面白いれす!」
チューニングと手入れの仕方を三人に教えてる時、チューナーを見てののは面白がっていた。
「梨華ちゃん、手、痛い?」
まだ下でギターをいじっている二人を残して、あたしと梨華ちゃんは二階に上がった。
梨華ちゃんはしきりに手をさすっていた。
「ううん、大丈夫」
「慣れると大分マシになるから」
「うん」
梨華ちゃんは笑顔でうなずく。
「あたし、うんと練習して上手くなるね」
「ハハ、こりゃ楽しみだ」
「その時は、あたしのギターに合わせてベース弾いてね」
梨華ちゃんはちょっと「えっへん」ってな感じで胸を反らす。
「ハイハイ、おやすみ」
あたしは彼女の頭をぽんぽんと軽く叩き、自分の部屋に入っていった。
- 61 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月08日(水)19時30分12秒
- さすが、我等のヤッスー!!そりゃあ失神者が……(略
最近ここのヤッスーの虜です。(笑
- 62 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月08日(水)19時33分48秒
- GWが始まった。
あたしは四月中の連休は全部バイトを入れた。
「ウチは大助かりだけど、デートの予定はないんだべか?」
なっちさんにあたしは苦笑して首を振ってみせた。
辻・加護コンビも実家に帰ったり、親戚の家に行くのは五月に入ってからにするらしい。
「梨華ちゃんはどこも行かないの?」
ある日洗濯を終え、縁側でまったりしながら、あたしは梨華ちゃんと隣り合わせて座っていた。
「うん、神奈川へ母さんのお墓参りは行こうと思ってる」
ウチが黙ってると、
「あたしを生んだ方のお母さん」
と付け足した。
「友達とどっか行ったりはしないの」
「あたし・・・友達いないから」
梨華ちゃんは足元の石を軽く爪先で転がしながら言った。
そう言えば・・・バイトしてる様子もなさそうだし、大学でたまに見かけても大体一人でいる。
「・・・そう」
あたしにはこれだけしか言えない。
黙ってるのが気になったのか、
「ごめんね、ヘンなこと言って」
梨華ちゃんは無理に笑顔を作った。
「いや・・・いいけど」
あたしは傍らの缶コーラを取り上げ、残りを一気に飲み干した。
いい天気だ。
四月にしては強い日差しが差し込む。
梨華ちゃんも目を細めて、う〜んと言って伸びをした。
「あのね、あたしね」
梨華ちゃんがフフッと笑って言った。
「ひとみちゃんや、あいぼんやののちゃんと仲良くなれて嬉しいんだ」
「そっか」
その一言に、ちょっと安心した。
- 63 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月08日(水)19時52分41秒
- やっとGW突入。
友達のいない石川。友達の定義は難しいけれど・・・単に「いない」と思い込んでる
バヤイもアリでは。ここの石川は結構心を閉ざしてます。その理由は追々・・・。
(;`.∀´)<石川、アタシはナニ!?
( ´ Д `)<んあ〜、ごとーはトモダチだと思ってるよ
( ゜皿 ゜)<カオ、イシカワ、イイヤツダトオモッテルノニ(ナゼ交信バージョン?)
(O^〜^)<そうだYO!
レスのお礼です。
>58さん
書いてる人間が4期好きなんで(w あんだけ各人がキャラ立った期は他ないと思います。
( ^▽^)(0^〜^) ( ´D`)( ‘ д‘)<マンセー!!
>よすこ大好き読者。さん
もしやリアルタイムですか(w?
ヤッスーはこうでなくては。失神ライブ、また観に来てください(w。
( `.∀´)<ホホ、チケットは当然招待券を都合するわよ!
- 64 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月08日(水)20時09分45秒
- ・市井紗耶香の『人生がもう始まってる』―――『Fコードが弾けた日』
厨房市井、ギター初心者の難関・Fコードの特訓中・・・
♪
ヽ^∀^;ノ < く、くくくく・・・
( ´ Д `)<んあ〜。いちーちゃん、どしたの?
ヽ^∀^;ノ <いや、Fコードがな・・・難しくて・・・ぐぐぐ!
( ´ Д `)<んあ〜、そうなの?(まーたムリして難しいほうから始めて・・・
やさしいヤツからやればいいのに)ごとー、それならできるかも ヤラセテ
ヽ^∀^;ノ <(ムカッ)それならやってみろよ!
♪〜
( ´ Д `)<んあ〜 スイスイ
ヽ^∀^;ノ <あ・・・(ムカツク)
- 65 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)23時39分14秒
- そういえばよっすぃ〜の初ライブは無事に終了したんですか?
もし、終了済みなら番外編でリクエストしたいんですが、迷惑でしょうか?
- 66 名前:理科。 投稿日:2002年05月09日(木)05時25分33秒
- 『・裕子、20歳の青春』にワラタ!
( T▽T)<…友達、いないの。
…何とお声をかけていいのでしょうか?
毎日、朝が楽しみです♪
- 67 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月09日(木)21時15分00秒
- 本日は『ベース弾き』はお休みさせていただきますm(__)m
その代わり・・・某板で新スレ始めました(w
(場所はメール欄をご参照ください。エ(略 アリかも)
レスのお礼を・・・。
>名無しさん
(O^〜^)<オイラの初ライブは次なんだ!また観に来てね!
読み返して、次が『初ライブ』と分かる記述がないことが判明(ニガワラ
迷惑なんてとんでもない。また何かリクエストがあればどうぞ!
>理科。さん
( `.∀´) <毎朝の楽しみだなんて・・・聞いた、作者!?カレーなんて食ってる
場合ぢゃないわよ!!
そう言っていただけて・・・(涙)。顔スレ、小ネタをバラまいた甲斐があります(w
石川はちょっとずつですが(他メンもですが)成長してます。
- 68 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月10日(金)16時12分14秒
- 4月のGW中のある朝、休日は朝寝坊する辻は珍しく早起きした。
と言っても9時は過ぎていたが。
今日は自炊日なので台所で朝食の支度をしていると、中澤ハイツの住人・飯田が
「おはよ、辻」
と入ってきた。
「いいらさん、おはようれす。朝早くからどうしたんれすか」
「うん、ちょっと裕ちゃんに借りてた本返しに来たんだ。辻も早いじゃん、休みなのに」
「何らかいいお天気だったので、早く目が覚めました」
「・・・ん〜、ホントいい天気だねぇ」
飯田は伸びをした。
「・・・そうだ」
飯田はポンと手を叩いた。
パーにした手のひらに、グーの手を打ちつけるアレである。
「ねえ、辻。今日予定ある?」
「一日ヒマれす」
「ドライブ行こっか」
辻の満面に笑みがこぼれた。
- 69 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月10日(金)16時16分17秒
- 「じゃ、カオ、車出して来るね〜」
「ののはお弁当作るれすっ」
「オッケ〜。じゃ、後でね〜」
飯田はひらひら手を振りながら出て行った。
『あいぼんも誘っていいれすか』
『もちろん』
飯田は加護が加わるのを快諾してくれた。
問題は・・・どう言って加護を誘うかだ。
さっき廊下で姿を見たので、まだ寝てるという事はない。
(部屋に戻って二度寝してるかもしれないが)
加護がどれだけ人見知りするか、辻はこのひと月ほど行動を共にし、
その現場をしょっちゅう目の当たりにした。
この下宿には大分馴染んできたようだが、3月下旬に初めて来た頃は
辻くらいにしか口を聞かなかった。
学校もクラスが離れたので、正直なところ、関西から単身上京してきて
他に知り合いもいない加護が、クラスで友達を作れるか心配だった。
最近はボツボツと何人かと行動しているようでちょっと安心している。
普段あんまり顔を合わさない飯田に、加護が遠慮するのではというのも考えられた。
『まあ、ストレートに言うのがイチバンれすね』
玉子焼きを作りながら、辻はそんな事を思った。
- 70 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月10日(金)16時20分12秒
- 「何してんの、自分」
加護が台所に入ってきた。
「あ、あいぼん。お弁当作ってるんれすよ」
「弁当?どっか行くん?」
「あいぼんも一緒れすよ♪」
「・・・へ?」
「いいらさんとドライブれすっ」
加護は何とも言えない複雑そうな顔をした。
加護はお弁当用の冷凍エビフライをレンジでチンしたり、
おにぎりをこしらえるのを手伝ってくれた。
「・・・ホンマに、ウチも行ってエエの?」
タッパーにおかずを詰めながら、加護がボソッと言った。
「大勢で行った方が楽しいれすよ♪」
「飯田さん・・・迷惑ちゃうの」
「またそんなコト言う〜。いいらさんも『加護もおいで』って
言ってくれてるんれすから」
- 71 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月10日(金)16時24分07秒
- 「楽しそうね♪」
そこへ洗濯と玄関先の掃除を終えた石川が入ってきた。
「遠足みたい、おべんと作って」
「バナナはおやつに入らないれすよ」
石川と辻は顔を見合わせて笑った。
「二人ともどっか行くの?」
「ドライブや。飯田さんの運転で」
加護がめんどくさそうに答える。
「え〜、いいなぁ。あたしも行きたいなぁ」
石川は加護に後ろから抱きついてじゃれついた。
加護は顔をしかめて石川を振りほどきながら、
「そんなん、ウチらに言うんじゃなくて、飯田さんに頼んだらエエやん」
「うん、そうしてみるっ」
- 72 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月10日(金)16時26分56秒
- 飯田が、
「オ〜イ!支度できたぁ〜?」
愛車(ローンで購入)を玄関先に回して現れた。
「いいらさんれす」
辻は残りのおかずを手早く詰め、タッパーのフタを閉めた。
「飯田さ〜ん、石川もドライブに連れてってくださいよ〜」
石川は台所の窓から飯田に手を振った。
「おう、来いよ!」
飯田も振り返す。
「あいぼん、ありがと!連れてってくれるって♪」
石川はまた加護に抱きつく。
「そう、よかったな」
加護は、はぁと溜息をついた。
(梨華ちゃん・・・ののといいらさんが二人でお話するとあいぼんが一人になると
思って・・・)
「梨華ちゃん・・・ありがとれす」
加護に隠れて、辻は小声で言った。
石川は入り口で振り返り、小さくウィンクした。
- 73 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月10日(金)16時32分13秒
- ―――吉澤視点
次のライブは、連休も明けた週末の5月11日だった。
この前のライブハウスでガールズ・バンドの対バンをするらしい。
あたしには『CUBIC−CROSS』での初ライブとなる。
大学の方は先生もやる気がないのか(笑)、授業が無く10連休となった。
これは毎年恒例らしい。
埼玉の実家には5月3日から5日まで帰る事にした。
幼なじみの亜弥とも会う予定だ。
『ひーちゃん、絶対デートしよーね!!約束破ったらひーちゃんのお母さんに
言いつけるからね!』
とメールが入っていて、苦笑した。
2日の夕方、学校から一旦帰って来た加護がバタバタと奈良に帰る支度をしていた。
「あいぼん、ののはもう準備できたれすよ」
ののも、親戚の家に泊りがけで遊びに行くらしい。
「支度できたかー」
平家さんが勝手口から顔を覗かせた。
「平家さん、どしたんですか」
バイトから帰ったあたしは小腹が空いたので、ベーグルを食べていた。
「へーけしゃんが車で東京駅まで送ってくれるんれすよ」
ののと平家さんは顔を見合わせ、「ねー」と口をそろえて言った。
「みちよはほんまヒマやなぁ」
中澤さんがその横で憎まれ口を叩く。
- 74 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月10日(金)16時35分30秒
- 「姐さん、またそないなコト言うて・・・」
平家さんはまだ何か言いたそうだったが、あえて言うのをやめたようだ。
それが正解だと思う。
「ほな、行こか」
三人が出ようとすると、
「待って、待って!」
台所からエプロンをした梨華ちゃんが出てきた。
「何れすか」
ののが振り向く。
「これ、あいぼんに」
赤いペーズリー柄のバンダナで包んだものを手渡した。
「・・・何?」
加護が不思議そうな顔をする。
「お弁当。サンドイッチだけど」
「・・・あ、ありがと」
「新幹線に乗ってる間、お腹が空くかと思って」
梨華ちゃんはそう言って笑った。
- 75 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月10日(金)16時43分46秒
- 本日はここまでです。
『梨華お姉ちゃん・大活躍の巻』
個人的に『加護に構う石川』って何か好きなんですよ(w
実際の石川もお姉ちゃんぶるの好きそーだし(w
それにしても(ニガワラ、ご覧いただいた方はお分かりいただけたでしょうが、
昨日立てたスレとなんちゅうギャップや、と思いながらの今回の更新でした(爆
- 76 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月10日(金)17時07分11秒
- ・バナナはおやつに
梨華(小5)、明日の遠足の準備に余念がない
( ^▽^)<おやつは300円までっと♪クッピーラムネカルミンモリナガラムネ ラムネバッカシ
从~∀~从<おう、梨華!明日遠足やて?
( ^▽^)<そうだよ、お姉ちゃん♪(珍しく顔に『♯』がないわ)
从~∀~从<忘れモンせんようにな!
( ^▽^)<ウン!・・・あ!
从~∀~从<何や、早速かい
( ^▽^)<ウン、コレがないと・・・(ごそごそ)バナナ!!
从#~∀~#从<・・・ぎやぁぁぁぁぁぁ!!!(バチコーンッッ)
(#T▽T)<・・・なんで? ヒリヒリ
- 77 名前:@ 投稿日:2002年05月11日(土)15時06分30秒
- どうもっ
森板でYOU&Iを書いてます作者です。
引越し連絡&レスありがとうございます。
こちらでも楽しみに読ませてもらってますよ♪
- 78 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月11日(土)17時50分50秒
- #が無い…(w
笑っちゃいました(w
続きお待ちしてます♪
- 79 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月11日(土)19時41分59秒
- あややは、幼馴染ですか。楽しみ…。(謎)
続き期待して待っています。
- 80 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月11日(土)23時46分20秒
- 翌日、今度のライブの練習を終えてから、あたしは実家に帰った。
「ひーちゃん!」
玄関に入るなり、亜弥が飛びついてきた。
「あやや・・・来てたんだ」
「ウン!ひーちゃんが今日帰って来るって聞いて!ねぇ、お土産は?」
「お土産って・・・ウチがいんのは東京よ?」
「ひとみはケチだからねぇ」
お母さんがエプロンで手を拭きながら、台所から出てきた。
「もー、母さんまで。ねぇ、晩御飯まだー?オナカ空いたー」
お母さんは「何ですか、この子は。帰るなり」と言いいながらも、
「手を洗ってらっしゃい、ゆで卵もたくさん作ったから」
とまた台所に引っ込んだ。
「ひーちゃん、今日は一緒に寝ようね♪」
あややは嬉しそうに腕を絡ませてきた。
幼なじみっていいなぁ。
- 81 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月11日(土)23時48分30秒
- その日は久々に家族全員揃っての夕食だった。
あややもいる。
そうしてると、何だか昔に戻ったようだ。
「姉ちゃん、ゆで卵食いすぎ」
二人いる弟の下の方にツッコまれて、みんなに笑われる。
しょうがないじゃん、好きなんだから。
夕食後、上の弟があたしが高校時代バイトして買った、
YAMAHAのロックギターを私物化してる事が判明し、
それが原因で久々に姉弟ゲンカをした。
「ちょっと〜!アンタには去年フェルナンデスのギター買ってあげたでしょ!!」
中学入学のお祝いに、わざわざアンプ内蔵のギターを買ってやったというのに。
あたしは頭から湯気を立てて怒った。
「あんなハデなピンクの使えっかよ!」
「だからってアタシのギター使うコトないでしょうが!」
「大体、姉ちゃんのセンス疑うわ。何で弟に買ってやるギターがピンクなんだよ!」
「それがイチバン安かったんだよ!」
ギャーギャー言い合っていると、
「ひーちゃん、もう許してあげて・・・」
「何ですか、亜弥ちゃんも久しぶりに来てくれてるというのに・・・」
お母さんとあややが見かねて止めに入った。
「とにかく、返しなさいよ!」
捨て台詞を吐いて、あたしはドスドスと足音荒く、二階の自分の部屋に上がった。
- 82 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月11日(土)23時51分37秒
- 「・・・まったく、昔はあんなに可愛かったのに・・・」
ブツブツ言いながら、寝る支度をする。
「まあ、男の子だしね」
あややもパジャマに着替えながら、フフッと笑った。
「ひーちゃん・・・また背伸びた?」
「そんなワケないじゃん」
あたしは苦笑した。
ハタチ過ぎて伸びるわけがない。
「何か・・・久々にあったせいか、ひーちゃんカッコよくなってる」
あややは感慨深そうに言う。
「そうっスか?」
くしゃくしゃと頭を撫でてやった。
「ウン、東京でいいひとできたの?」
「あやや、何かおばさんみたいな言い方よ?『いいひと』って」
「『おばさん』はひどいなぁ。ひーちゃん、もてるでしょ」
「まっさかぁ」
あたしはベッドに腰掛けて大笑いした。
「ゼンッゼン!」
手でバッテンを作って更に笑い転げる。
「ウチ、昔からゼンゼンよ?それはあややもよく知ってるでしょーが?
あ、ウチが今度入ったバンドのボーカルとギターの人で市井さんってヒトがいるんだけど、
このヒトがまたモテまくりなんだわ。ライブハウスで入り待ち、出待ちアタリマエ。
大学も一緒なんだけど、モーすごいのナンノ!!」
- 83 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月11日(土)23時55分36秒
- 力説するあたしを、あややは不思議そうな眼で見ていた。
「あやや、どしたん?」
「・・・ひーちゃん、ホントに知らなかったの?」
「何をさ?」
「あたし達、高校も一緒だったじゃない」
「ウン」
「ひーちゃん狙いの子、メチャメチャいたよ?ついでに言うと中学の時もだよ」
「・・・エ?」
―――あたしはそのまま固まってしまった。
その後、あややから具体的にどの子がウチを狙っていたかというレクチャーを受けた。
名前を聞かされ、
「・・・そう言えば何か帰りとかミョーに偶然によく会った気が・・・」
と言うと、
「・・・ひーちゃん、ソレ全然偶然じゃない」
あややはトホホというように首を振った。
「えー、ウチを待ってたってコト?」
「・・・ソレ以外ないじゃん」
「そっかぁ」
ゴロリと寝っ転がると、あややは
「ひーちゃんがニブいのは今に始まったコトじゃないけど・・・」
何だかブツブツとデカイ声で独り言を言っていた。
「そーいや、この前手紙くれたじゃん、誕生日の時(森板『手紙』参照)」
「ウン」
「あれに『気になってるヒトがいる』って書いてあったけど、ダレ?」
「今付き合ってるヒトだヨ」
あややはちょっと照れくさそうに言った。
「ホ〜。あややもオトナだなぁ」
コイビトかぁ。
ウチも欲しくなくはないケド・・・。
でも、当分ウチはベースに夢中だろう。
ロックが恋人!ハハ、カッケー!!
でも・・・何か寂しいカモ。
「ひーちゃんも早くいいヒトできるといいねっ」
年下の幼なじみに意見されて、「ハイ」と素直に肯いた。
- 84 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月12日(日)00時11分00秒
- 今回の更新はここまでです。
あややは人気だなぁ。
ここのヨシコは自分がモテてるって自覚ありません。
バレンタインに本命チョコもらっても『義理』と解釈するヒトです。
レスのお礼を。
>@さん(読みはアットマークさんでよろしいのですか?)
ありがとうございます。ガンガリます!@さんも期待してます!
@さんのいしとごま、自分にはかなりツボなんで・・・。
>名無し読者さん
何人くらいの人がもう気づいてるのでしょうね(ニガワラ 交互に書くとすごいギャップが
あって楽しいですよ(爆
>よすこ大好き読者。さん
途中レスはどうぞお気になさらずに♪リアルタイムだったようでちょっとビクーリしましたが(w
あややは今回初めて書くので結構試行錯誤でした。
- 85 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年05月12日(日)16時47分48秒
- あやゃ可愛いなぁ(w。自覚のない吉もイイ。
自覚がないからモテたのかも知れないけど。
凄い更新量ですね。見習いたいものです(涙)。
- 86 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月12日(日)19時30分42秒
- (○`〜´)<ピンクのZO-3弾いてろYO!!! ですか?(笑
確かに年頃の男の子が持つのは抵抗ありそなくらい可愛すぎです(w
- 87 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月12日(日)19時54分00秒
- あややかわいいっすね。というところであややが付き合ってる人って誰だ??
気になりますね。
- 88 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月13日(月)02時11分44秒
- ―――5月2日の夕方、加護は東京駅で平家や辻と別れ、
18時3分東京発、ひかり135号に乗り、京都駅へと向かった。
3時間近くの長旅である。
京都駅まで父が迎えに来てくれることになっている。
席に着き、列車が東京からだんだん離れて行くのをしばらく窓から眺めていた。
『さて、茶ぁでも飲むか』
乗車前に駅構内のコンビニで買ったペットボトルの烏龍茶を開ける。
ふと思い立って鞄から石川に持たせてもらった弁当を取り出し、包みを開けた。
赤いチェック柄のサンドイッチ用の折り詰めに、色々なサンドイッチや鳥の唐揚げなどが詰めてあった。
『弁当なんかどこでも買えんのに・・・ホンマ梨華ちゃんはお人好しや』
加護はそう思いながらも、卵サンドをつまんで食べた。
「・・・うまいなぁ」
―――列車はまだ新横浜を過ぎたばかりだ。
- 89 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月13日(月)02時14分01秒
- 辻は加護を見送った後、東京駅でいとこ達と合流しディズニー・シーへ向かう事になっていた。
今夜はホテルに泊まり、明日一日、丸々遊ぶ。
『楽しみれす〜♪』
いとこ達を待ちながら、辻はワクワクしていた。
『あいぼんのおみやげは何がいいれすかね、ののはシカせんべいを頼んだれすし』
『ここはやっぱり、ミッキーのクッキーれすかね』
『フジテレビにも行くかもしれないれすし、サザエさんクッキーなんかもいいれすね』
『やっぱりナボナか東京ばななかひよこまんじゅうれしょうか』
どうしても食べ物から離れない辻だった。
- 90 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月13日(月)02時16分33秒
- ―――5月4日。
昼過ぎ。
後藤は昨日のライブの練習を終えてから、自宅で死んだように眠っている市井を揺すり起こしていた。
「いちーちゃん!起きなよ〜!」
「・・・ん〜、うるせーなー。今日はバイトもないし休みなんだよ」
市井は頭から布団をかぶり直した。
「だったら〜、おでかけしようよ〜!GWなんだよ、メチャいい天気なんだよ!」
更に揺する後藤。
「連休はドコも混んでてヤなんだよ!」
「いいじゃ〜ん。ねぇ、ホラ!」
―――結局市井はズルズルと布団から引きずり出されて、後藤につき合わされるのだった。
- 91 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月13日(月)02時20分19秒
- ―――同日。
梨華は早朝から神奈川まで実母の墓参に来ていた。
朝方家を出るとき居間の方を覗くと、姉・裕子と平家が酔いつぶれて爆睡していた。
呆れながらも二人にそっと毛布を掛け、家を出た。
その日は誠に天気がよく、眩しい日差しに梨華は目を細めた。
『お母さん、来たよ』
梨華は母の墓に向かい、黙って手を合わせる。
「・・・あたし、頑張ってると思う?」
答えのない問答を梨華は続けていた。
飯田は飛行機で北海道に帰り、実家でのんびり過ごしていた。
辻には『白い恋人』を買って帰る約束をしている。
「お姉ちゃん、その子のコトすごく可愛いんだね」
妹に指摘され、
「ま、ね」
そう言われて、まんざらでもない飯田だった。
- 92 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月13日(月)02時23分12秒
―――その頃保田は。
ガード下の飲み屋で焼き鳥つまみにコップ酒を呷っていた。
千葉の実家に帰っても、家族は旅行に出ていて誰もいない。
「ネェちゃん、エエ飲みっぷりやな!」
どこかのオッサンに声を掛けられる。
「なによー、アタシを置いてみんなでハワイなんか行ってさ!ヒック!
どうせ土産はマカダミアナッツチョコでしょ!」
ワケのわからぬクダを巻いていたが、
「そうだそうだ!女房のヤツ!大黒柱のオレを無視しやがって!!」
「そうだー!!」
オヤジと話はまるでかみ合ってないが、酔っ払い同士それでも妙に意気投合するのであった。
- 93 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月13日(月)02時38分31秒
- それぞれのGW風景です。
イチバン理想的なのは辻かなぁ。(混んでない時に行きたいが)
連休だろうとなかろうと飲んだくれる姐さんとみっちゃんでした。
从#~∀~#从<酒じゃ、酒!酒持ってこんかーい!!
( `◇´)<姐さん、近所迷惑やからやめなはれ!
レスのお礼です。
>名無しベーグルさん。
あややは正直、難しかったです。いしかーも自分には難問ですが。師匠のあややを
見習いたいです(涙)。更新量は単にGWヒマだっただけですヨ(w
>名無し読者さん
ここのヨスコは信じられないセンスの持ち主です(w せめてブルーとかねぇ。
あややの恋人・・・やっぱりカッケーヒトかも(w
>よすこ大好き読者。さん
ひーちゃんは初恋ですが、ひーちゃんがにぶちんなので冷めたようです(w
恋人はやはりオトコマエなようです。
- 94 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月13日(月)02時54分18秒
- ・それぞれのGW
―――奈良
( ‘д‘)<シカせんべい買うてこいて・・・アイツ食う気か?
ダイタイクエルンカ シカセンベイ
―――東京
( ´D`)<あいぼんのおみやげは・・・東京ばななはののも食べたいれすし、
ナボナもはずせないれす。ハトサブレトヒヨコマンジュウモチェケラッチョ
―――奈良
( ‘д‘)<まぁ、通天閣音頭のレコードでも買うてったろか オーロラテルコゲンキカナ
―――東京
( ´D`)<・・・これではあいぼんのお土産がなくなるのれす
―――奈良
( ‘д‘)<通天閣で卓球ができることも教えたらなアカンな
ソースニドヅケゲンキンノクシカツヤト
オチナシ、スマソ
・・・シカせんべいは食えるのか?
人間が食ったという話はいまだかつて聞いたことがない・・・。
- 95 名前:みぎみぎ 投稿日:2002年05月13日(月)11時49分50秒
- わらわの小学校の同級生は食しておった。
しかし感想は「味が、無い」という非常に気をそぐ物で、
彼女は食べかけのそれを鹿に投げ与えていた。
おそらく人間の味覚にはあっさり過ぎるのだと思われる。
食べられないものでもないらしい…。
奈良だったら「そうめんふし」が美味しい。
大阪だったら通天閣で「ビリケン音頭」でしょう!
- 96 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年05月13日(月)21時51分05秒
- 自分もお土産を選ぶ時は悩みますなぁ・・
最近は限定キティが人気です(w
自分色んな地域行ったりするって見られているらしく(藁
あややの恋人は男前(wひょっとして?(ww
- 97 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月14日(火)00時50分59秒
- 5月5日。
―――保田視点
「♪ち〜まき食べ食べ にいさんがぁ〜 はか〜ってくれたぁ〜 せいのたぁけぇ〜」
ホホ、今日は子供の日ねっ。
ちまきと柏餅を土産に裕ちゃん家にお邪魔するの。
天気がいいから思わず歌なんか口ずさんじゃうわっ。
アラ、石川が家の前を掃いてるわ。
感心、感心。
「あ、保田さん。コンニチワ」
石川があたしに気づいて挨拶したわ。
「ホホ、休日なのに感心ねっ」
「ヒマですから」
石川は謙遜したように言うわ。
「裕ちゃんはいるかしら」
「平家さんとドライブに行ってます」
「アラ、残念ね」
ドライブねぇ。きっとみっちゃんが一方的に運転させられてるんでしょうね。
容易に目に浮かぶわ。
「何かご用だったんですか」
「用事ってほどのコトじゃないけど・・・食べる?」
あたしがちまきと柏餅の入ったビニールを差し出すと、石川は目を輝かせて
「わぁ〜、あたし甘いモノ大好きなんですよ。上がってください!今、お茶入れますから♪」
パタパタとサンダルの音をさせて、家の中に入って行ったわ。
ホホ、可愛いじゃない!
ちょっと好みカモ、と思ったアタシって逝ってヨシ?
ううん、誤解しないでちょうだいよ。
そりゃ、石川は可愛いわ。
でもね、世界の恋人・保田圭にはちょっとまだまだ青くさいわ。
まだまだケツの青いガキよっ。(キャッ!圭ったら!)
「保田さ〜ん、早く〜」
「ホホ、今行くわよっ」
ま、タマには石川と二人でまったりするのもいいわねっ。
- 98 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月14日(火)00時58分15秒
- レスのお礼です。
>みぎみぎさん
そうですか、シカせんべいは人間も食べられる代物だったのですね(遠い目)。
何となく、人間は食べてはいけないのだと思ってました。情報ありがとうございます(w
>ぶらぅさん
初レスの方ですね。ご来店(?)ありがとうございます♪勘違いでしたらスマソ
どこかで書かれてませんでしたか?何か見覚えのあるHNなんですが・・・
あややの恋人・・・さて、誰でしょう(w
- 99 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年05月14日(火)18時28分23秒
- こちらでこのHNでは初かもしれません(w
前まで名無しでした(藁
小説はまだ書いてません(^^;書いてみたいですけど…
あややの恋人(wお待ちしております(w
- 100 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月14日(火)23時12分26秒
- ―――保田視点
あたしは居間に通されたわ。
「今日、ひとみちゃん帰ってくるんですよ」
石川はお茶の支度をしながら何だかウキウキしているわ。
石川って・・・分かりやすいわ。
吉澤も単純だけど、いい勝負ねっ。
アラ、あれは・・・ギター?
居間の隅にでかいケースが置いてあるわ。
「石川、あれ、ギター?」
「ええ、ひとみちゃんに借りてるんです」
「何で?」
「あいぼんとののちゃんが授業でギターのテストがあるらしくって、
いつでも練習できるようにって居間に置いてるんです。
あたしもちょっと習ってみようかなって仲間に加わったんですヨ」
「・・・へぇ」
石川ったら・・・。
さてはギターは口実ね!
アンタ、モテたいからってギター始めるギター小僧並みよ!!
ホホ、ちなみにアタシは体力あり余ってドラムにいったんだけどね!
自宅にはサイレント・ドラム一式完備よっ。
(ローンじゃなくて一括購入よ!
あまりの値に目玉飛び出るかと思ったわっ、きよし師匠並みに!!)
- 101 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月14日(火)23時19分40秒
- まあ、そんなコトはいいわ。
ちょと・・・カマ、かけてみようかしら。
「ねぇ、石川」
「ハイ」
「吉澤って・・・恋人いるらしいわよ」
・・・ブーッ。
「あ、熱!」
石川ったら、いまどき漫画にもないようなベタなリアクションねっ。
おかげで・・・こっちはおもっきし茶ぁかぶったわよ!
「ご、ごめんなさい!」
石川が慌ててふきんでアタシの顔を拭いたわ。
ダーッ!それ、テーブル拭くふきんじゃないのよ!
アタシの顔ってテーブル並みなの?ねぇ、石川!?
「・・・ホントですか、保田さん」
タオルを手渡しながら石川は真剣な顔で聞いてきたわ。
その様子があまりにもおかしくて、顔を近づけて、
「ウッ・ソ!」
って言ってやったわ!
「・・・もぅ〜、保田さぁ〜ん!」
石川は案の定、アタシを軽く叩いたわ。
「気になるの?」
「・・・ハイ」
「まぁ、多分いないと思うわよ。てか、恋愛自体に興味がなさそうよ?」
「いいんです、そこが」
- 102 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月14日(火)23時24分33秒
- 石川、アンタ、顔とろけてるわよ!
何よ、頬まで赤くして!
見てるこっちが恥ずかしいわ、ったく!
「ハァ、まあ、今度新宿でライブやるから観に来るといいわ。
チケットは今度あげるから」
「ひとみちゃんの初ライブですよね!」
「まあね」
「行きます!絶対行きます!!」
・・・これでまた常連客が一人増えるコトになるのね。
ハァ、アタシのファンじゃないってトコがちょっとシャクだけどねっ。
「でも、安心したわ」
「・・・エ?」
「あんたがさ・・・恋愛恐怖症になってなかったから」
「・・・コワイですよ」
石川は立ち上がって窓辺に立った。
- 103 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月14日(火)23時27分04秒
- 「自分でも・・・矛盾してると思います」
「でも吉澤に嫌われるのもコワイんでしょ」
石川は既に涙目だわ。
「吉澤に恋人ができるコトも」
「・・・ぐすっ。ヒックヒック・・・」
・・・あ〜ぁ。泣かしちゃったわ。
まったく、よく泣くコね。
「まぁ、がんばんなよ。進んでも戻っても傷つくんなら、
ちょっとでも進んでる方がいいじゃん」
アタシは石川を抱きしめて背中をポンポンと叩いてやったわ。
「・・・ハイ」
「ダメですね、あたし。いつも後ろ向きで・・・」
「カラに閉じこもってるよりいいわよ」
もう一度、アタシは石川の背中を叩いた。
- 104 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月14日(火)23時31分06秒
- 「ただいま〜」
アラ、吉澤の声だわ。
帰って来たのね!
「梨華ちゃ〜ん、いる〜?」
「あ、いるよ〜!」
石川ったら!
さっき泣いたスズメがもう笑ってるわ!
まったく・・・お医者様でも草津の湯でもって昔から言うけどホントね!
「おかえり、ひとみちゃん」
「おかえり、ひとみちゃん!」
「・・・保田さん、来てたんスか。てか・・・キショイっす」
んま!ちょっと石川のマネはスベったかもしれないけど!ズイブン失礼じゃない!!
「それよりさ・・・ジャーン!」
吉澤が何か・・・ものすごく派手なピンクのギターを取り出したわ。
あれは、フェルナンデスのギターね。アンプ内蔵型の。それにしても派手な色だわ。
「なぁに、ひとみちゃん?」
「梨華ちゃんにプレゼント!」
- 105 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月14日(火)23時36分49秒
- 「・・・エ?」
石川、目を丸くしてるわ。
「イヤ、これさぁ〜、ウチの弟の入学祝に買ってやったんだけど、
色がイヤだっつってゼンゼン使わないの。もう使わないっていうから
梨華ちゃんにあげる!」
「・・・いいの?」
石川はおずおずと受け取ってるわ。
―――アタシは別の意味でビックリしたわ。
弟の入学祝にピンクのぞうさんギター・・・。
それにしても・・・吉澤・弟の気持ちが分かるわ。
アタシが弟でもちょっと姉のセンスを疑うかも。
・・・ピンク。
「ありがとう〜・・・」
石川はこの上なく幸せな表情になってるわ。
さて、後はお若い方たちに任せて、邪魔者は去るとするかしら。
「じゃ、そろそろ帰るわね」
「あ、スイマセン、保田さん」
「ホホ、いいのよっ・・・それより」
アタシはそっと石川にだけ聞こえるように
「よかったじゃない」
石川は恥ずかしそうにうなずいたわ。
- 106 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月14日(火)23時50分03秒
- オトナなヤッスーでした。ギターはいしかーの手に・・・。
(*^▽^)<・・・ひとみちゃんの(弟の)ギター・・・
レスのお礼です。
>ぶらぅさん
どこかで見かけたHNだと思ったのですが、某板の同じスレでレスをしていたようです(w
あっちも行かれてたのですか(汗 このマターリワールドと混乱しませんか(w?
- 107 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月15日(水)03時30分55秒
- ・タンパク質はどこへゆくか?
―――中澤家台所
グツグツ ゴトゴト
(0^〜^)<♪
( ^▽^)<ひとみちゃん、お料理?
(0^〜^)<卵ゆでてるんだYO!
( ^▽^)<ひとみちゃんはホントにゆで卵が好きなんだね!
(0^〜^)<ウン!オイラ、ひとパックくらいペロリといくYO!
(;^▽^)<エ・・・?(ゆで卵ね、あの頬袋の主成分はゆで卵なのね!)
(0^〜^)<♪〜
『ゴナゴト』でヨスコが「(0^〜^)<多い時は一日ひとパック」と言っていた。
・・・そんなに食べて家の人に怒られないのだろうか?
肉がキライでベーグルも好き、薄味のものがすきなんでしょうね。
- 108 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月15日(水)17時27分48秒
- ―――保田視点
アタシはその後大人しく家に戻ったわ。
階段下のポストに郵便物が入ってないか見ていると、
「アラ、カオリじゃない」
お隣さんの圭織がコンビニの袋を提げて現れたわ。
「帰ってたの」
「圭ちゃんこそ、千葉に帰るんじゃなかったの」
「まぁそれがさー、みんなでハワイなんか行ってさー。
一人でいてもしょうがないから速攻帰って来たわよ」
「ふぅ〜ん。あ、そうだ。圭ちゃん、今ヒマ?」
「ヒマよ」
「実家帰ったら今山梨にいる友達も帰ってて、甲州のおいしいワインくれたんだー。
飲もうよ!」
「いいわねっ。今夜はキリキリ逝くわよっ!」
ホホ、楽しい夜になりそうねっ。
- 109 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月15日(水)17時35分46秒
- カオリの家にお邪魔して、アタシたちは焼き鳥サカナに赤ワインを堪能したわ。
ハァ、この魅惑的な色。
フルーティーな味わい。
アタシのようなオトナの女にこそふさわしいわっ。
「おいしいねぇ」
カオリはアタシが持参した焼き鳥が気に入ったみたい。
ホホ、昨日行きつけのガード下の飲み屋でお持ち帰りした残りよ。
何か、関西弁のワケの分からないオヤジに絡まれたけどさ。
結局意気投合しちゃって朝まで飲んじゃったわよ!
「ホホ、さすがアタシの御用達の店のでしょ」
「ウン、この軟骨も・・・」
カオリ、アタシの好物をあんまり食べないでちょうだいね。
身はいくら食べてもいいから。
「吉澤とかも帰ってきてんのかな」
カオリは言ったわ。
「ええ、さっきちょうどあたしが裕ちゃん家にいる時に帰って来たわよ」
「へぇ」
「石川にあげるギター持って」
「へ?あのふたりってそんなに仲いいの?」
「まぁ、今んトコ石川がひたすら夢中みたいだけどね」
「そうなんだぁ」
カオリはしみじみしながらまた軟骨に手を伸ばしたわ。
ハッ!アタシったら!語りモードに入ってて油断してたわっ。
「でもまぁ、誰かを好きになるコトは大切だよね」
カオリ、イイコトいうじゃないっ。ダテに交信してないわねっ。
「そうね、石川の場合」
「「ああいう事があったからねぇ」」
ふたりして、しみじみ語っちゃったわ。
- 110 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月15日(水)17時41分17秒
- ―――(時間は少し遡って)吉澤視点
あたしは梨華ちゃんにあげるギターを持って実家を後にした。
駅まで、あややが車で送ってくれている。
「あややも免許取る年になったかぁ」
助手席であたしはしみじみしながら言った。
「何言ってんの、ひーちゃん。ひとつ違うだけじゃん」
「そうだねぇ」
「それより、そのギター、下宿の娘さんにあげるの?」
「うん。何か、ギター始めたいって言ってたし。最初はこれでいいかなって」
「・・・ひーちゃん、その人のコト」
「好きだよ」
あややは一瞬黙った。
「あ、友達としてね。深い意味はないよ」
「ひーちゃん!」
「うわ!ハイ!」
何じゃ、あややのヤツ!急に大声出して。
「『好き』に深いも浅いもないんだよっ」
「ハ・・・ハイ?」
「ひーちゃんは東京でそれをもっとよーく学ぶコト!次に会うまでの宿題ね!!いい?」
「ハ、ハイ」
「返事は一回!」
「ハイ!」
『深いも浅いもない』?はて・・・?
そうこうしてる内に駅に着いた。
- 111 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月15日(水)17時43分55秒
- 「サンキュー、あやや。助かったよ」
「気をつけてね」
「うん、あややも」
「ひーちゃん」
「ン?」
「大好きだよ」
あたしは笑ってあややの頬にキスをした。
「じゃ」
吉澤の後姿を車内から見送りながら、亜弥は幼なじみがもう自分の手の届かない所へ
行ってしまった事を痛感していた。
『ばいばい、ひーちゃん』
車は、やがて走り出した。
- 112 名前:登場人物紹介 投稿日:2002年05月15日(水)17時59分57秒
- 从‘ 。‘从:松浦亜弥(18)。埼玉県出身。ひとみの幼馴染。あだ名は「あやゃ」
短大に入学したばかりで初恋の相手はひとみだった。
从‘ 。‘从<ひーちゃん、二ブイんだもん!
(0^〜^;)<う、うるさいな!
実際のあやゃは兵庫県出身です。ヨスコと幼馴染という設定なので・・・。
- 113 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月15日(水)18時15分23秒
- ・おさななじみ
ウエーン!!
从 T 。T从
ゴルァ! オトコオンナノトミコー
(((#0`〜´0)ノ ((( ・∀・) (((;´∀`)
ナカナイノ!
(0^〜^;)ノ从 T 。T从
(0^〜^;) 从 T 。T从
! ?
(O^〜^) 从´ 。` 从
シャボンダマシヨ! ウン!
(O^〜^) 从´ 。` 从
♪ キャッキャッ♪
(O^〜^)y- 从‘ 。‘从y-
, ⌒ヽ ( )
( ' ( ヽ⌒ヽ 、
ゝ `ヽ( ) (⌒ 、
( 、⌒ ヽ ( ヽ
( (⌒ ) (
( Y⌒ ヽ
( `) ○
ゝ ノ ノ ノ○
○ノ
○
三
( ( )
( ⊂ つ ヽ
ヽ 人 ´ )
(_)_)(_(_)
- 114 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月15日(水)20時55分04秒
- >焼き鳥サカナに赤ワイン
ヤッスーらしい・・・(爆
しかも軟骨とな!面白すぎです。しかも今は白子にはまり中(笑
梨華ちゃんの過去に何があったか気になりますな。
- 115 名前:@ 投稿日:2002年05月15日(水)21時43分54秒
- 名前は@ってなってますけど読み方はあっとさんで(w
ってでも自分が書いてる方で実は一ヶ所だけほんとの
HNで書いちゃったのがあるんですよね;
探してみてください(w最近ここのヤッスーがツボです
- 116 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月16日(木)18時53分00秒
- いつもご愛読いただきまして誠にありがとうございますm(__)m
本日より2,3日ほどネタ・ストック補充ともうひとつの板の方を
ひと区切りをつけるため、『ベース弾き』をお休みさせていただきます。
ではまたのご来店を心よりお待ちしております。
レスのお礼です。
>よすこ大好き読者。さん
ヤッスー人気バクハツです。軟骨に白子って・・・ホンマに酒飲みっすねぇ(w
アイドルも変わったなぁ(遠い目)。いしかーの過去は徐々に出す予定です。
>@(あっと)さん
分かりました。今度探してみます(w ヤッスー大人気です。主役は一応ヨスコなのですが
ニガワラ
- 117 名前:オムらいっすぅ 投稿日:2002年05月17日(金)17時26分52秒
- お久し振りです!…って言っても、海板でレスするのは初めてですね。
ここの所、風邪引いてまして…。今、学校で流行ってるんですよ。
風邪ってナメたら恐いんですね…(ぇ)
ごまべーぐるさんも、お体にはどうかお気をつけて下さい。
>あの頬袋の主成分はゆで卵なのね!
激しくワラタ(w
「ああいう事」も気になりますねぇ。
…それにしても、ここのあやや可愛い〜♪
- 118 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年05月18日(土)16時21分48秒
- 石川にどんな過去があったのか凄く気になりますね!
松浦の相手は誰なのかもいまだに(w
ゆ・・・ゆで卵すげーっす(w
- 119 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月19日(日)21時03分09秒
- ―――吉澤視点
GWが終わった。
土曜はいよいよあたしの初ライブだ。
練習も大詰めを迎え、あたしは授業が終われば即、練習かバイトという生活を
送っていた。
そんな訳で、あんまり最近下宿で晩ゴハンを食べていない。
ある日夜11時頃帰宅すると、ちょうどお風呂から上がってきた梨華ちゃんと
階段の下で会い、
「大丈夫?ゴハン食べてる?」
と悲しそうな顔で言われた。
・・・そんなにやつれていたんだろうか。
外食(主にコンビニメシだが)ばかりはやっぱよくないなぁ。
「大丈夫だよ」
笑顔で答え、ふと梨華ちゃんにあげるものがあった事を思い出す。
「梨華ちゃん」
「なぁに?」
「コレ、あげる」
財布から今度のライブのチケットを取り出し渡した。
「コレ・・・ライブのチケット?」
「そ。ウチの初ライブ!ヒマなら来て」
「ウン!」
梨華ちゃんは笑顔で言った。
- 120 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月19日(日)21時12分19秒
- ―――石川視点
ひとみちゃんからチケットを受け取って、
あたしはかなり有頂天だった。
―――実は保田さんからもう1枚もらっていたのだけど。
『ホホ、アタシの華麗なテクニックをあますことなく堪能するがいいわ!!』
―――頭の中に保田さんの高笑いがよぎる。
『ゴメンナサイ、保田さん』
あたしは心の中で手を合わせた。
これは、誰かに譲ろう。
よく会場の入り口に譲ってくれるヒトを探してるヒトっているよね。
「ゴメンナサイ、保田さん!」
あたしはもう一度手を合わせて謝った。
- 121 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月19日(日)21時17分48秒
- ―――吉澤視点
―――土曜日。
いよいよ本番。
あたしは楽屋で心臓を押さえて震えていた。
「ヨシコー、緊張してるー?」
ごっちんがニヤニヤしながら突付いて来た。
「う、ううん。そんなコトないいいいい!」
「「「・・・声も足も震えてるって」」」
全員に突っ込まれる。
「まぁ、あのベースの腕があればな」
市井さんもニヤニヤ笑う。
「プププ、プレッシャーかけないでくださいいいい!」
椅子に座ったまま、じたばたと騒ぐ。
「・・・アンタ、大丈夫?」
ウチ以外、全員がひきつったように笑っていた―――。
- 122 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月19日(日)21時21分49秒
- ―――石川視点
あたしは開演の1時間前に会場に来ていた。
「・・・えっと」
保田さんの分のチケットを誰かに譲るべくライブハウスの前を
キョロキョロ見渡していた。
『チケット譲ってください』
ふいにスケッチブックに書かれた大きな文字が目に飛び込んだ。
見ると、あたしと同年代くらいの女の子だった。
ふわふわの髪の大人しそうなコ。
アブナそうなヒトならヤだけど。
あたしは意を決してその子に近づいていった。
「あのぉ〜・・・」
「ハイ?」
・・・可愛いコだなぁ。
思わず見惚れていると、
「あの、何でしょう?」
声を掛けられて我に返った。
「あ!ごめんなさい!あの、あたし、その・・・チケット1枚余ってるんですけど」
そう言うとその子は嬉しそうにニッコリ笑った。
「今、お金出しますね」
鞄からお財布を出そうとするのを押しとどめて
「あ!いいです!あたしもタダでもらったようなモンだし!」
ていうか、タダでもらったんだけど。
「え、でも」
「いいです、いいです」
彼女の手にチケットを握らせると、あたしは慌ててその場を去った。
「・・・あ!待って!」
背中越しに彼女の声が聞こえたがダッシュして逃げた。
―――ハァ、ダメだなぁ。
あたし、こんなんだから、トモダチできないんだろうなぁ。
さっきの女の子もヘンに思ったかも。
夕方のごったがえした新宿の街で、あたしはハァとためいきをついた。
- 123 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月19日(日)21時33分33秒
- 少しですが、交信です。( ゜皿゜)ノ<ピーガガガ・・・
>オムらいっすぅさん
お体のほうはもう大丈夫ですか。5月ってホントに体調崩しやすいですよね。
どうぞお大事に。あやゃはちょっとの登場なのに大人気です。もうちっと勉強
します。
从‘ 。‘从<ありがとうございます!
>ぶらぅさん
(;^▽^)<み、みなさん気にしてくださってるんですね。
あやゃの恋人・・・今んとこ登場未定です。卵はゴナゴトでヨスコが言うておったんですよ。
- 124 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月19日(日)21時48分13秒
- ・居酒屋百景
ガヤガヤ
川‘〜‘)||<んと、何にしようっかなぁ。まず白子でしょ、軟骨に・・・あ、中トロ
なんかあるんだ ケイチャンノオゴリ♪
( `.∀´)<ちょっとカオリ、おごってもらう立場なんだからもうちょっと
遠慮しなさいよ
( ゜皿 ゜)
(;`.∀´)<な、何よ
( ゜皿 ゜)<イマ、ケイチャンガ、ヤキソバUFOツクルトキ、オユトイッショニカナラズソースヲイレル、ノロイヲカケタ
(;`.∀´)<しょぼっ・・・
( ゜皿 ゜)<ドスグロイスープニ、ホドヨクカラマリスギタ、ノビノビナマズマズノ、ミワクテキナメン・・・
(;`.∀´)<・・・分かったわ、好きなの頼みな
川‘〜‘)|| <♪〜 チュウトロ、モロキュウ、カラアゲ・・・
- 125 名前:みぎみぎ 投稿日:2002年05月20日(月)01時14分22秒
- 交信に釣られてやってきました。
ノロイ…怖いけど面白いです(笑)
チューニングをあわせてノロイ交信を全部聞きたいです。
でもその内やりますよね?
「ベーシスト・アンダー・ザ・ルーフ名場面・珍場面集」…ドキドキ
投票制とかにしたら、面白いでしょうね。
ってか上位は顔文字で埋まるな!(笑)
期待してます☆
- 126 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月20日(月)19時34分53秒
- ―――石川視点
―――7時。
いよいよ開演だ。
オールスタンディングの会場はもう満員で殆ど身動きもとれないくらいだった。
今日はガールズ・バンドの対バンで、皆のお目当てはひとみちゃんのいる
『CUBIC−CROSS』だった。
ヴォーカルとギター担当はあたしと同じ大学の市井さんという人だ。
キーボードはやっぱり同じ大学の木村さんって人だ。
『ごっちんが最後の曲で出るから』
チケットをくれた時、ひとみちゃんが教えてくれた。
『ホホ、今日はアンタのために叩くわよっ!』
今朝道で会った時、保田さんは例のコワイウィンク(口を開けてカンペキな
笑顔でってヤツ)をしながら言った。
―――さっきのコ、来てるかな。
ふと、チケットを譲った女の子の事が気になった。
・・・お人形さんみたいなコだったなぁ。
目が大きくて。
睫毛長そうで。
あ〜あ、神様って不公平だなぁ。
そんな事を思っていたら一組目のバンドの演奏が始まった。
ひとみちゃん達の出番は最後だ。
- 127 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月20日(月)19時36分47秒
- ―――吉澤視点
「♪あ、あ、あ〜あ〜」
本番前、市井さんが発声練習している。
あたしは自分のベースを念入りにチェックしていた。
ふと、アヤカさんと目が合った。
「緊張してる?」
「あ、ハイ」
あたしは苦笑して答えた。
「ニホンではこういう時、人の字を掌に3回書いて飲み込むんだっけ?」
「舞台にキスをするというのもありますね」
「キスは見られたらちょっとイヤだよね。人がいない時ならともかく」
アヤカさんは笑った。
あたしもつられて笑う。
その後、二人で仲良く「ひ〜と、ひ〜と」と言いながら掌に人を書いた。
- 128 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月20日(月)19時42分57秒
- ―――石川視点
いよいよ『CUBIC−CROSS』の出番だ。
一曲目は『ハートに火をつけて』という歌だった。
・・・スゴイ。
あたしはステージのひとみちゃんに釘付けになった。
ひとみちゃんは普段は穏やかで。優しくて。
でも舞台のひとみちゃんはまるで別人だった。
強くて、激しくて―――。
・・・カッコよすぎ。
眩暈が・・・しそうだった。
心臓が、締めつけられそう―――。
『ベースってさ、目立たないけど大事なポジションなんだよ』
いつか、ギターを教えてくれた時にひとみちゃんが言った。
『目立たへんのに好きなん?』
あいぼんにそう言われて、ひとみちゃんは苦笑しながら、
『ま、縁の下の力持ちってかね』
弦を爪弾いた。
「ヤッスー!愛してるわぁぁ〜!!」
隣の人が急に大声で叫びだした。
ギョッとして思わずステージの保田さんを見ると、
あたしに今朝して見せたウィンクを返していた。
「・・・キャアァァァァ!!!」
隣の人は感極まった感じで叫んでいる。
・・・そうか。嬉しいんだ。
「・・・ひとみちゃーん!!」
あたしも負けじと叫んだ。
- 129 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月20日(月)19時55分36秒
- 今日はここまでです。
『あがらないおまじない』は昔読んだ漫画(タイトルすら覚えてない(^^;;
小野ナントカって人のバレーかダンサーのヤツだったと思うのですが)からの
知識で、かなりうろ覚えです。かなり自信ないです。
レスのお礼です。
>みぎみぎさん
」~~~~~
( ゜皿 ゜)<*7jれぉsjほ狽汲鰍鰍:ぷf:あうfg:−あg
文字にするとこんな感じでせうか(w?←すでに字じゃないし
「ベーシスト・アンダー・ザ・ルーフ名場面・珍場面集」・・・う〜ん。
このスレが200くらいまでいって、6月(上半期の締めの月)頃まで続いて、
なおかつ、他の方がノってくださるんなら、考えます(w
- 130 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月21日(火)22時34分30秒
- ―――石川視点
2曲目はバンドのオリジナル曲で、さっきとは打って変わって
しっとりとしたバラードだった。
皆、シーンとして聴いている。
あたしは今日、ひとみちゃんだけが目当てだったけど――― 来てよかったナと
正直思った。
ステージの市井さんはとても切なそうで。
何だかこっちが飲み込まれそうだ。
『市井さん、マジ、歌スゲーから』
ホントだね、ひとみちゃん。
あたし、音楽のコトはよく分かんないけど(ベースって三味線みたいに
ベンベンいうんだねって言ってひとみちゃんに苦笑されたけど)、
市井さんの歌の世界はとても素敵だった。
- 131 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月21日(火)22時37分05秒
- あ・・・。
ひとみちゃんがニッコリ笑った。
あたしに・・・ではないけど。
さっきのチケット女の子と鉢合わせしないようにと開演ギリギリに入ったのが
災いして、あたしかなり後ろの方だし。
その笑顔はとても素敵だけど―――他の人には向けないで。
何か、あたしものすごく心の狭いコト思ってる。
自分で自分がとてもイヤになる。
『ガツーンといったれ!ガツーンと!!』
裕ちゃんの恋のアドバイスは決まってこうだ。
『人生は当たって砕けろじゃ!!』
その割には裕ちゃんは本当に砕けてるけど。
でも裕ちゃん―――あたし、コワイよ。
もう、失うのが―――。
ステージのひとみちゃんを見ながら、あたしはちょっと泣きそうになった。
- 132 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月21日(火)22時40分51秒
- ―――吉澤視点
2曲目が終わった。
次はいよいよお楽しみの『恋をしちゃいました!』だ。
ウチらは一旦引っ込んで例の制服に着替える。
いきなり制服で登場して客席を沸かそうという作戦だ。
それと前後してチューニングもしなければならないから大忙しだ。
その間、ドラムの保田さんにMCで時間を稼いでもらう。
(ちなみに保田さんは客席から足元が見えないから、
あらかじめシャツとスカートは着用しており、トークしながらブレザーを
羽織るという段取りになっている)
「ごっちんの制服って市井さんのとよく似てるねぇ」
せわしなく着替えながら、既に着替えてる隣のごっちんに話しかけた。
「んあ?そりゃ、高校一緒だし」
「そうなんだ」
「入学年度は違うからタイの色は違うけどね」
ごっちんはそう言って襟元の深緑のネクタイを掴んでこっちに見せた。
市井さんのをチラッと見ると紺だった。
- 133 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月21日(火)22時42分38秒
- 「はぁ、制服なんて着るの初めてだよー」
アヤカさんの方を見ると、保田さんのを借りたという紺ブレ、チェックのスカート、
スカートと同じ柄のリボンタイだった。
「ハハ、アヤカ!えっちくせー!!」
市井さんがチューニングをしながら笑った。
確かに・・・違うものになっている。
「もぉ〜!」
アヤカさんは市井さんを軽く小突いた。
「ヨシコも・・・アレだねぇ」
ごっちんがあたしの全身をしげしげと見ながら言った。
「何がさ?」
「ナンカ・・・違う」
何を言わんとしてるか何となく分かったので、
「ひとみでぇ〜す!ウフッ!」
ポーズつきでウィンクした。
「ウラァ!時間ないんじゃい!!とっととチューニングせんかい!!」
鬼のような形相で市井さんにはたかれた(笑)
- 134 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月21日(火)22時44分09秒
- ―――その頃ステージでは。
保田のトークに客席が酔いしれていた―――。
「ホホ、アタシのドラムに今日も酔いしれてくれたかしら?」
「ヤッス〜!!」
沸く客席。
そのドラムには誰かが(と言ってもそんな事するのは市井か後藤だが)
黒の極太油性マジックで書いた、『ヤッスーLOVE!』という文字が、
でかでかと輝いていた。
「一ヶ月ぶりの新宿ね!来月は渋谷でやるから来るのよ!!来ないなら放置よ!
詳細は入り口のフリーペーパーかウチのHPを見て頂戴!!」
「わ〜!!」
「アドレスは・・・忘れたわ!」
「ギャハハハ!!」
「サーチエンジンで『CUBIC−CROSS』って入れたらきっと出るわ!
てか、フリーペーパーに書いてあるわ!ホホ、アタシったら逝ってヨシ?」
「ヰキロ〜!!」
- 135 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月21日(火)22時47分19秒
- ―――石川視点
2曲目が終わってから保田さんを除いたメンバーが奥に引っ込み、
保田さんのトークショー(MCというよりはトークショーだった)が始まった。
さっきから隣の人は(『ヤッスー愛してるわ〜!』に始まり、『ヤッスー抱いて〜!!』
とか、かなりコアな保田さん、いや『ヤッスー』ファンのようだ)
もう瞬きも惜しむようにステージの保田さんを一心に見つめてる。
「ホホ、そろそろいいようね!」
保田さんがそう言うと、照明が消えてステージが真っ暗になった。
アレ?と思ってたら、
次の瞬間―――。
「キャァァァ―――!!」
メンバーが―――制服を着て立っていた。
保田さんもいつの間にか、紺色のブレザーを着て、ネクタイをしていた。
あ、ひとみちゃん!この前部屋で着てた制服だ!!
『どの曲で制服着るの?』
って聞いても
『ナイショ』って教えてくれなかったけど、こういうコトだったんだ!
- 136 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月21日(火)22時49分10秒
- 「みんな〜!今日は楽しんでくれた〜?」
市井さんがマイクを持って喋り始めた。
客席はものすごい盛り上がりだ。
「新生『CUBIC−CROSS』初ライブ!新メンバーを紹介するぜ!
まず、キーボード、アヤカ!!」
アヤカさんはさっきの『ハートに火をつけて』のサビの部分を弾いた。
さっきのと違って、ギターみたいな、肩から提げるキーボードに変わっている。
またお客さんが沸く。
「アヤカでーす!今回から正式メンバーになりました!今日はみんなアリガトね〜。
I LOVE YOU SO MUCH!」
最後に両手で投げキッスをしてアヤカさんの紹介は終わった。
次は―――ひとみちゃんだ。
あたしは自分が紹介されるワケでもないのに、まるでわが事のようにドキドキしてた。
- 137 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月21日(火)22時50分49秒
- 「ベース!ひとみ!」
市井さんが叫ぶと、ひとみちゃんはこの前してみせてくれた
『チョッパー』とかいう弾き方で、しばらくガンガン弾いていた。
・・・カッコい〜。
うっとりして見つめていると、急に
「ひとみでぇ〜す!」
・・・オカマの人のような裏声で皆を笑わせていた。
「ヨシコって呼んでねぇ〜」
「ヨシコぉ〜!」
客席の誰かが叫んだ。
「よっすぃ〜でも可よぉ〜」
「どっちなんだよ!!」
客席からツッコまれてひとみちゃんは嬉しそうに笑っていた。
他のメンバーも笑ってる。
「さてさてさて!本日最後の曲、そろそろ行くぜ!
『恋をしちゃいました!』」
市井さんが言うと、それが合図なのか、演奏が始まった。
- 138 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月21日(火)22時53分22秒
- 『友達の紹介で
出会って今日で2回目
お化粧なんてどれくらい
して行くものなの?』
あ・・・この曲知ってる。
ひとみちゃんから聞いた時はどの歌か分かんなかったけど・・・。
『メールが届きました』
『着いちゃった!!』
あ、ここお客さんが言うトコね。
『「後ろにいます」と』
『着いちゃった!!』
あたしも混じっていっぱい叫んだ。
『振り返れば あの人が』
ここで、保田さん以外のメンバーが一旦後ろを向き振り返った。
ごっちんは振り返った時、ものすごくヘンな顔をして見せた。
何だか、すごく楽しい!
- 139 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月21日(火)22時57分25秒
- 『恋になればいいな』
『いいな!!』
『恋になればいいな』
『いいな!!』
もうあたしは何も遠慮せず、みんなと叫んでいた。
『デートの途中メールした
楽しいですね』
間奏の間、あたしは隣のヤッスーファンのヒトと顔を見合わせて笑った。
何か喋ったワケじゃないけど、見ず知らずのヒトと何か通じ合ったような気が
して、とても嬉しい。
- 140 名前:スクールガール 投稿日:2002年05月21日(火)23時00分52秒
- 『ラーメンを食べました』
『食っちゃった!!』
『映画にも行きました』
『行っちゃった!!』
『緊張で覚えてないよ』
『恋をしちゃいました』
『やっちゃった!!』
『恋をしちゃいました』
『やっちゃった!!』
『デートの最後メール来た
「君が好きです」』
ステージの皆は、それはとても楽しそうで―――。
演奏が終わると、市井さんはひとみちゃんとアヤカさんに、
順番に抱きしめてほっぺたにキスをした。
「キャァァァァ―――!!」
あたしも・・・叫ぶトコだった。
・・・しっかり、梨華。耐えるのよ、梨華。
―――こうして。
ひとみちゃんの新宿初ライブは幕を閉じた―――。
- 141 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月21日(火)23時04分28秒
- 更新しました。
ライブシーンは上手く書けない・・・。
- 142 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月21日(火)23時55分33秒
- ・後日談
( `.∀´)<ちょっと石川、アンタ(O^〜^)からもチケットもらったそうね!
一枚はどうしたの?
(;^▽^)<エッ・・・(喋ったのかな(O^〜^))。
あの・・・ライブハウスで他のヒトに譲りました。ゴメンナサイ
( `.∀´)<ホホ、怒ってるんじゃないわよ!新たなファンが増えるんなら
それもヨシ!よ!!
(;^▽^)<あ、ハイ・・・(よかったぁ(#T▽T))
その頃・・・。
(o^〜^o;)<(うぅむ・・・保田さんからももらってたのか。梨華ちゃん、
もしや保田さんが・・・)
ハゲシク勘違い。
- 143 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月22日(水)06時01分41秒
- 保田さんおもろいな
- 144 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月22日(水)17時43分32秒
- コアな、ヤッスーファンがいますな。(w
負けられん……………(ナニガ?
こんなバンドがあるなら、見にいきたいっすね。
続き楽しみにしています。
- 145 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月22日(水)22時31分51秒
- いつもご愛読いただき誠にありがとうございますm(__)m
本編は一旦ここで区切って、次回から番外編に入ります。
姐さんと石川モノです。
ただ今書き溜めている段階なのでしばらくお待ちください。
ネタストックが尽きるのは早い・・・(^^;;
もうひとつの板の方も(続きというか番外編みたいなもの)
同時に(ちみちみとですが)書いてて、ちょっと混乱してます(ニガワラ
そちらもある程度いったらUPする予定でおります。
それではレスのお礼です。
>名無しさん
( `.∀´)<ホホ、光栄ですわ!アナタ、お目が高くってよ!!
(0^〜^;)<主役はオイラだよほ。。。
多分ヤッスーがここの一番人気だろうとかいってみるテスト(w。ありがとうございます。
自分もヤッスー好きです。
>よすこ大好き読者。さん
( ´ Д`)<んあ〜、あのヒトいつもいるよねぇ〜。
( `.∀´)<ホホ、熱烈なグルーピー(古っ)ねっ。
ヨスコが4月に観に行った時にも彼女(彼?)はいました(w 負けないように
ガンガッテくださいね!
- 146 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月23日(木)00時19分33秒
- SSとか 物語に深みが増すようなものは大歓迎です!
(だからAAもだいすっき!)
下宿モノ、バンドモノって なが〜く続けてもらえそうな
気がするので、更新とか大変でしょうが 頑張ってください。
ココの吉くん 鈍いトコとかいいですね、大好きです。
- 147 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月24日(金)01時07分06秒
- ・中澤家の一日
―――AM7:55
デンシャマニアワン ニッチョクダッタノヲワスレテタレス
((( ‘д‘) ((( ´D`)
从 #~∀~从ノ <気ィつけて行けよ!
―――AM8:15
(((;0^〜^)<一限目ギリギリだYO!ヒッシュウオトストヤバイ ゴチーンノートカリヨカナ
( ^▽^)ノ<行ってらっしゃい!
―――その頃の後藤
( ´ Д`)<ZZZzzz・・・(お約束)
―――AM11:15
((( ^▽^)<行ってきまーす!←2年生なので比較的ヒマ
( `◇´)ノ<行っといで!←掃除を手伝わされてる
―――PM12:15
从 #~∀~从つフ<カァ〜ッ、茶漬けはホンマにうまいなぁ
( `◇´)<お茶漬けくらい作りなはれ!←作らされてる
―――PM4:15
((( ^▽^)<♪ ←学校帰りにスーパーで買物
―――PM5:30
ハラヘッタワ- マダレスカ
( ‘д‘) ( ´D`)
ジュッジュー
从 #~∀~从つ ̄□<晩メシは6時からじゃ!もうちょっと待て!
―――PM8:30
(((0^〜^)<ただいま バイトツカレター ←1人遅い夕食
―――その頃の裕子は
・居酒屋にて
从 #~∀~从ノ□<ギャッハッハッハ!!
( `◇´)ノ□<姐さん、今日はほどほどにしィや!ツレテカエラヘンデ!
―――PM11:30
(^▽^)<みなさん、それではおやすみなさい!
- 148 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月24日(金)01時17分30秒
- レスのお礼です。
>名無し読者さん
(*^〜^*)<エヘ、照れるよほ。。。
(;^▽^)<鈍いから気づいてくれないっていう悩みもあるんですよ〜
(;‘д‘) <梨華ちゃんのあぷろーちが分からんなんてそーとーやで
周りから見たら一目瞭然なのに気づかないにぶちん、それがココのヨシコの売りです(w
- 149 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月24日(金)20時53分21秒
- 先日告知した番外編の更新をします。
子供時代の石川を姐さんの視点で、という話です。
- 150 名前:迷子 投稿日:2002年05月24日(金)20時57分00秒
- 「フ・・・アクションッ!」
台所で裕子は大きなくしゃみをひとつして、親父のように「あ〜」と言った。
梨華は
「オヤジみたい」
と言いながら、さっき裕子が測った体温計を見た。
「37度6分。微熱ね」
「ファクションッ!ア〜、ホンマかなわんワ」
裕子はそう言うと鼻をすすった。
「だからあれほど居間で寝るなって言ったじゃない。お酒飲んで。
何か食べたいモンある?卵酒でも作ろうか?」
「酒・・・う〜。当分見たない・・・」
裕子はオーバーに首を振ってみせた。
梨華は
「・・・重症ね」
と言いながら、体温計を振って引き出しにしまう。
- 151 名前:迷子 投稿日:2002年05月24日(金)20時59分40秒
- 「姐さんの具合どない?」
裕子が自室に寝に戻ってからしばらく、平家が見舞いに訪れた。
「ああ、平家さん。大丈夫よ、ちょっと微熱はあるみたいだけど」
「そうか。コレ、ちょっとやけど」
平家は産地直送の卵と初物の枇杷の入った袋を差し出した。
「ごめんね、平家さん。いつも」
「いやええんよ、いつも世話なってるし」
平家は手を振って笑う。
「平家さんっていい人だね、ホント裕ちゃんにはもったいないくらい」
「何言うてんの、姐さんかてアレでエエトコあんねんで」
「うん、そうなんだけど・・・裕ちゃんのワガママに根気強く付き合って
くれるのは平家さんしかいないわ」
梨華はしみじみと言った。
「まあ、ね」
苦笑する平家。
- 152 名前:迷子 投稿日:2002年05月24日(金)21時01分31秒
- 「ハラ減った〜」
夕方、裕子がフラフラしながら台所に現れた。
「ハイハイ、おかゆ作ってあるわよ。食べれそう?」
「ん〜」
顔をしかめ、裕子はどかっと椅子に座った。
梨華は裕子の額に手を当てた。
「熱は・・・下がったみたいね。薬が効いたみたい」
「ハラ減った〜」
「ハイハイ、お姉さま。卵がゆでよろしゅうございますか」
「なんでもエエ」
裕子は億劫そうに答え、差し出されたおかゆを一口食べた。
「何や、えらいウマイ卵がゆやなあ」
「フフッ、平家さんが産地直送の卵、持って来てくれたの。お見舞いにって」
「へぇ」
「枇杷ももらったけど、食べる?」
「うん」
- 153 名前:迷子 投稿日:2002年05月24日(金)21時04分13秒
- 裕子が食べている間、梨華は段ボール箱を台所前の廊下に重ね、整理しだした。
「何してんねん」
「ガラクタの整理。使えるものは今度のバザーに出そうと思ってね」
今は下宿人を抜いたら家族二人だが、それでも不用品は結構たまるものだ。
梨華はしばらく
「これはいる、これは・・・保留」
と言いながら、より分けていた。
「・・・あ!」
「何や、エエもんでもあったんか」
「見てよ、裕ちゃん!」
梨華が差し出したのは、リカちゃん人形だった。
初めてこの家に来た時、まだ幼かった梨華が持っていたものだ。
「ああ、オマエの人形か。懐かしいなぁ」
裕子も手にとって昔を思い出しそっと撫でた。
「祐ちゃんがお洋服作ってくれたよね」
リカちゃんは当時服飾のデザインの勉強をしていた裕子作のドレスを着ていた。
「服、ボロボロやったがな。見るに見かねてや」
『・・・このコもボロボロやったよなぁ』
裕子はもう一度、人形を見つめて撫でた。
- 154 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月24日(金)21時08分07秒
- 今回はここまでです。
>150−153までがプロローグ、『迷子』は番外編のタイトルです。
次回からは過去の話を姐さん視点で。
- 155 名前:迷子 投稿日:2002年05月25日(土)04時07分03秒
- ―――梨華が初めてうちに来たんは、ウチがハタチの時やった。
梨華のお母さんが病気で亡くならはって、うちで引き取ったんや。
『オマエには血ィつながらへん妹がおる』
ってお母ちゃんに初めて聞いたんは・・・いくつの時やったやろ。
最初はびっくりしたけど、心のどこかで『やっぱり』って気ィしてたわ。
ウチも所謂『お妾さんの子』やから。
ウチのオトンはエエ人なんやけど、『飲む、打つ、買う』の内、特に最後のが
ひどくってホンマ女遊びが絶えへんかった。
うちのお母ちゃんも大阪の新地ってトコでクラブのホステスしてて、
その頃サラリーマンしてたオトンが出張で大阪来てて、
偶然お母ちゃんの店に飲みに来て・・・って具合にウチが出来たワケや。
だから、『妹がおる』って聞いた時も、正直あんまり驚かんかった。
- 156 名前:迷子 投稿日:2002年05月25日(土)04時08分48秒
- その子は7月のある日、オトンに連れられてやって来た。
神奈川の横須賀ってトコにおったらしい。
横須賀なんて山口百恵の歌でぐらいしか知らんかったわ。
- 157 名前:迷子 投稿日:2002年05月25日(土)04時11分32秒
- 梨華はオトンに手ェ引かれてうちに来た。
朝はよから横須賀まで迎えに行ったオトンは、ホンマは相当眠いやろうに、
『疲れてないか?』とか『ハラ減ってないか?』とかしきりに梨華に気ィ遣てた。
お母ちゃんは遠巻きにそれを眺めてた。
梨華は物珍しそうに家の中をキョロキョロと見回してたわ。
「すごい!このお家、お部屋がたくさんある!」
梨華が感極まったように言いおった。
「アンタの家はどんなんやったん?」
ウチが聞くと、
「んとねぇ・・・ドアを開けたらすぐお台所で、夜になったらその部屋の奥で
お布団引いて寝てたよ」
「ワンルームのマンションか」
「ううん、アパート」
「アパート?部屋はひとつだけか?」
「うんっ」
梨華は悪びれず頷いた。
「木造か?」
「うんっ」
「6畳一間か?」
「んと・・・そんなになかった」
「便所も共同とか言うんちゃうやろな」
「トイレはお家にあったよぉ。お風呂はなかったから銭湯行ってたけど」
正直・・・オトンをシバきたくなったわ。
ヘンなとこでセコイとは常々思ってたけど、自分が囲てる女くらいもうちっと
ましなトコに住まわせたれよ
- 158 名前:迷子 投稿日:2002年05月25日(土)04時14分29秒
- よく見ると、何や梨華が着てる服もお世辞にもキレイとは言えんかった。
でも、よっぽど亡くならはったお母さんは、べっぴんさんやったんやろうな。
顔立ちは妙に整ってたわ(オトンはお世辞にも男前とは言えんし)。
「おやつにしよか」
それまで黙ってたオカンが椅子から腰をあげた。
どうやら梨華を『受け入れる』事をオカンなりにハラ括ったようや。
「うんっ。お母さん」
笑顔でお母さん、って呼ばれて、オカンはかなり複雑そうな顔やった。
- 159 名前:迷子 投稿日:2002年05月25日(土)04時26分22秒
- ウチがこの家にオカンと来たんは、実はウチが高校出てからや。
本妻さんが亡くならはってから3年経って寂しくなったんか、
オトンは京都におったウチら親子を、東京に呼び寄せた。
自分ひとりで下宿屋を切り盛りするのが大変やったってのもあるやろうな。
受験生やったウチは進路を東京の短大に変更して、オカンと東京出てきた。
長年、月に一回来るか来ィへんか、ってくらいの男にオカンはかなり愛想尽かしてた
ようやけど、オトンが粘り強く説得して、ようやっと重い腰を上げたわ。
- 160 名前:迷子 投稿日:2002年05月25日(土)04時28分57秒
- その夜。
フロから上がって二階の自分の部屋に行こうとすると、すすり泣くような声が
何処かから聞こえてきた。
「・・・どないしたんや」
ウチは梨華の部屋の戸を開けた。
梨華はびくっとして布団の上で身を縮こませてる。
ただ事ではない怯え様や。
暗闇の中、何や、妙なニオイがしてきた。
「・・・もしかして、おねしょしたんか?」
梨華は目をこすりながらコクンと頷いた。
「・・・ゴメン、ナサ・・・」
「初めての家で緊張してんな。ホラ、立ち。違う布団出したるから」
その後、ウチの部屋の押入れから客用の布団持って来たり、
梨華をフロ入れて着替えさしたりして、何や疲れたわ。
その間中、梨華は泣きながら
『お姉ちゃん、ゴメンナサイ』ばっかり言うとった。
・・・ホンマ、疲れたわ。
- 161 名前:迷子 投稿日:2002年05月25日(土)04時33分46秒
- 「梨華をウチの籍に入れへんて?」
それから数日後、オトンから聞かされて、ウチは思わず聞き返した。
「そうや」
「そりゃまた何で」
「アイツが認めんのや、『面倒は見るけど中澤の籍には入れたない』って」
『アイツ』というのは、オトンがオカンのコト話してる時使う呼び名や。
「でも、学校とかはどないすんねん」
「・・・このまま当分『石川』を名乗らせとこか」
オトンは頭を抱えた。
ウチはオトンのそういうところが大嫌いやった。
気ィ弱くて。オカンの言いなりで。
そのくせ女には手ェ早くて。
「・・・好きにしたらエエ」
ウチは、それしか言えんかった。
- 162 名前:迷子 投稿日:2002年05月25日(土)04時35分21秒
- ある日、梨華が泣きながら学校から帰って来おった。
「どないしたん」
オカンが言うと、
「ヒック・・・イシカワはナカザワって家の子なのに苗字が違うって・・・
捨てられたコなんだって・・・皆が」
ウチはオカンと顔を見合わせた。
イチバン心配してた事が現実になった。
ウチはいじめっ子に怒ると同時に・・・不甲斐ないオトンに腹を立てた。
大体、自分があちこちの女にパッパパッパ手ェ出すから、バチが当たったんじゃ!
「『メカケ』って何?」
梨華がしゃくりながら口を開いた。
「誰がそんな事言うたんや」
オカンが静かに言った。・・・ヤバ、これは本気で怒っとる時の声や。
「同じクラスのコ。イシカワは『メカケのコ』だって」
「そのコの家、ドコや」
「・・・ちょっ!オカン!」
ウチは危機を感じて引き止めた。
あれは・・・ウチが小3の夏やった。
- 163 名前:迷子 投稿日:2002年05月25日(土)04時39分00秒
- 駄菓子屋で近所の悪ガキとつまらん事で衝突して、
取っ組み合いのケンカになったんや。
『裕子はメカケの子や!』
って罵倒されて、悔しさに歯軋りしてると、たまたまそこを買い物に
行こうとしてたオカンが通りかかった。
オカンはいきなり相手の子ォの胸倉掴んで
『アンタ・・・もうイッペン言うてみ!』
・・・ドスの利いた声で脅しおった。
『ヒ・・・ヒィッ !カンニンしてください!!』
その子は真っ青な顔でガタガタ震えてた。
歯もカタカタ鳴っとった。
『今度言うたら・・・どうなるか分かってるやろな?』
『いいいい、言いません!絶対言いません!!!』
トドメの一言が利いて、その子はやっとオカンから解放された。
脱兎の如く、っていうんか。
命からがら、って感じで走って逃げた。
我が親ながらゾーっとして、その子が解放された時は正直ホッとしたわ。
―――と思う間もなく。
『パシーン!!』
ウチはオカンに引っぱたかれてた。
『アンタがしっかりせんからあないなコト言われるんやで!!』
子供心に不条理を感じたわ。
自分の境遇を自分が不甲斐ないせいにされるとは。
『・・・オカンのあほ!』
―――もう一発どつかれたんは言うまでもないわ。
- 164 名前:迷子 投稿日:2002年05月25日(土)04時40分40秒
- ―――そんなコトがあったから、オカンが暴挙に出るのをウチは恐れて止めた。
オカンを止めたのは意外な人やった。
「やめとけ!みっともない!」
オトンはウチとオカンの間に割って入ってオカンの腕を掴みおった。
「何ですのん!ウチの子がそないなコト言われて黙ってろいうんですか!?」
「エエから!」
そこからエンドレスな夫婦喧嘩になった。
梨華はワケも分からず、二人の間で泣くばっかりや。
ウチは溜息を吐いて、
「おいで、おやつ食べ」
梨華の背中を押して台所に避難した。
- 165 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月25日(土)04時46分06秒
- 更新終了です。
>153
祐ちゃん→裕ちゃんの間違いです(汗 スミマセンm(__)m
- 166 名前:理科。 投稿日:2002年05月25日(土)05時40分33秒
- やっとPC安定したので一気に読みました…。
ライブも良かったし、何より
裕ちゃんと、いしかーさんの過去が。。。(泣
がんがってください!
- 167 名前:みぎみぎ 投稿日:2002年05月25日(土)09時47分46秒
- 貧しさに負けたアカンでー!
オー!(T▽T)ノ
アネゴな祐ちゃん…ラブ
そしてオカンがカッコエエっす!
- 168 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年05月27日(月)17時37分44秒
- うるる(T▽T)
『メカケ』の意味が分からなくて親に聞いて分かりました…(^^;
梨華がんがれ!裕子がんがれ!かあさんふぁいと!
- 169 名前:ゆっち 投稿日:2002年05月27日(月)21時21分46秒
- 休み中に、一気に読ませていただきました。
石川さんの、切ない片想いな感じが好きです。
私も、遊び程度にギターをやるので、
音楽の時間、Gはこう押さえるんだよ、なんて言って教えてた、
遠い昔を思い出してしまいました。
- 170 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月27日(月)23時48分14秒
- 姐さん&姐さん母、カッケ〜!
>「すごい!このお家、お部屋がたくさんある!」
素直なちっちゃいりかちゃんに萌え。
続き楽しみです。
- 171 名前:迷子 投稿日:2002年05月28日(火)21時51分53秒
- ―――梨華の学校が夏休みに入った。
梨華はどこへも行こうとせず、一日中家におった。
たまに宿題見てやったりはしてるけど、ウチも短大が夏休みとは言え、
バイトがあるからそうそう構ってやれん。
「あの子、やっぱり友達おらへんのやろか」
オカンはウチと同じ事を心配しとった。
「そのうち出来るやろ、心配すんな」
オトンは言う。
『そのうち』っていつやねん。
ウチはバイトから帰って、一人遅い晩メシを食いながら、心の中でツッコンだった。
- 172 名前:迷子 投稿日:2002年05月28日(火)22時05分14秒
- ウチがバイトのない日、珍しく梨華と同じクラスやという女の子が遊びに来た。
その日はオトンもオカンも出かけとったから、ウチがお茶やケーキを出したった。
二人は居間へ行って、おとなしく遊んどるようや。
しばらくそっとしといたら、居間の方から
『ガシャーン!!』
と大音響がした。
「な、何や!?」
ウチは慌てて居間へ飛んで行った。すれ違いざまに梨華の友達が走ってった。
「あ・・・ちょっ!」
その子は止める間もなく、すごい勢いでドアを閉めて帰ってまいおった。
「梨華、何や、今の音・・・」
居間を覗くと、梨華は壁際に立ち尽くしてガタガタ震えとった。
・・・あーあ。
キャビネットに飾っとった酒が割れてもうとる。
オトンの秘蔵のジョニ黒やらヘネシーやらが酒浸しの海の中、粉々になっとった。
「・・・ケガはないな?」
梨華は涙目でコックリ頷いた。
「雑巾持っといで。片付けるから」
それからウチと梨華は酒でベタベタになりながら、散乱した居間を片付けた。
それが済んだら、割れたもた酒を近所の酒屋へ二人で買いに行った。
大して高い酒じゃないからよかったけど、ウチには結構痛い出費やった。
「お姉ちゃん、ごめんね」
帰り道、梨華は言いおった。
「アホ。こういう時は『ありがとう』って言うんや」
「ありがとう・・・」
梨華は小さな声で言った。
夕暮れの中、酒瓶持って歩いてるウチらは少しは姉妹に見えるかな。
梨華の小っちゃい、頼んない手を握りながらそんな事を考えたわ。
- 173 名前:迷子 投稿日:2002年05月28日(火)22時11分19秒
- それから数日後。
バイトの帰り、駅でこの前ウチに遊びに来た子と偶然会った。
「あ!」
ウチが言うと、その子は物凄い勢いで逃げ出した。
「ちょっ!待ちぃや!!」
ウチも今回は頑張った。ようやく追いついたわ。
「な、何ですか?」
「聞きたい事があるんや、何でこの前いきなり帰ったん?」
「用事を思い出したからですよ」
「ホー、タイミングのエエ用事やねぇ。正直に言うたらお姉さん怒らへん。
居間の酒の瓶割ったんはアンタか?」
梨華の様子から、疑問に感じてた事をウチはその子にぶつけた。
何だか梨華が何かを隠してるような気がしたから。
「石川が悪いのよ!」
その子は急に態度を豹変させた。
「梨華が何してん?」
「だって、転校してきたばっかりなのに、色気出して男子を誘ってるじゃない!」
「あの子はまだ子供やで、そっちの勘違いちゃうんか」
「メカケの子だからよ!」
ウチは引っぱたきたい衝動をかなり抑えた。仮にもヨソさまの子や。
その代わり相当コワイ顔をして、
「・・・それがどないしてん。もういっぺん言えや、コラ」
大人気なくドスを利かした。
「アンタだってメカケの子なんでしょ!」
・・・どっから情報漏れとるんや。
戸籍を見たわけでもあるまいに。
子供がこういう事言う時は大体オトナの無責任な噂を耳にしとるからや。
ウチもイヤってほど味わってきた。
「それが何や?メカケの子は生きてたらアカンのか?ウチと梨華は生きてることもアカンのか?
なぁ?」
ウチは静かに泣いてた。
その子は気がついたら消えとった。
夕暮れの雑踏の中、ウチは手の甲で目を拭った。
- 174 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月28日(火)22時37分05秒
- 今回の更新です。少しですが。。。
いや、ひどい風邪を引いてここ2,3日ばかし寝込み、
食欲もなくポカリのみで生きてました。(やっとうどんくらいなら食せるようになりました)
皆さんも風邪には気をつけてくださいね。
レスのお礼です。
>理科。さん
( T▽T)<いいんです、死んだお母さん優しかったし、新しい家族もよくして
くれましたし・・・。
健気ないしかーさんに姐さんは自分を重ねて見てるところもあるのです。
>みぎみぎさん
从 #~∀~从ノ <イヤ、そんな、照れるがな!それにしても藤圭子とはシブイな!
手が掛かるワガママさんだけど、頼りになる姉なのです。
>ぶらぅさん
( T▽T)<ありがとうございます!梨華、がんがります!!
『メカケ』は古い表現でしたね、やっぱり。お家の方は怪訝な顔をされたのでは(^^;;
>ゆっちさん
(T▽T;)<いいんです、今は片思いですが、いつかは。。。
初レスありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。ゆっちさんも
がんがってください!
>よすこ大好き読者。さん
( ^▽^)<自分のお部屋があるのが嬉しかったんです!
母子二人で木造4畳半一間・風呂無しアパートで育った子が、一戸建ての大きな
家に感じるのは、まずコレだろうと思いました。
- 175 名前:みぎみぎ 投稿日:2002年05月29日(水)01時13分28秒
- 姐さん! オトナです!
もうついて行っちゃいます!(そらストーカーやがな)
そういえば小学校の時アパートに住んでいる子が遊びに来て
「すごい! 玄関が高い!(上がりかまちのこと)」
と
「わぁ、廊下がある!」
と言って感動していました。
彼女はその後
「あの子の家には庭には砂場とブランコがあって、絨毯引きの廊下があって、子ども部屋の中にジャングルジムがある」
というそりゃ確かにその通りだが、イメージとしては数段ゴーセーなお宅を想像しちまうぞ?
という話しをしまくって下さり、
その後の私のお誕生日会には男子も含め相当数の子が押しかけてきてどえらいことになりました。
ファミコンがまだ珍しく、ナメ猫が流行っていた頃の話しです。
そして私はその子の家に遊びに行った時
玄関を開けた右手に冷蔵庫があったのでものすごくびっくりしました。
二昔近く昔の思い出です…(笑)
- 176 名前:迷子 投稿日:2002年05月31日(金)02時42分12秒
- 「裕ちゃん?」
しばらくして、ウチは誰かに声を掛けられた。
顔を上げたら、喫茶『タンポポ』のおかみさんの娘さんやった。
「おぅ!矢口やないか、久しぶりやな!」
泣いてた事が知られるのが恥ずかしいから、ウチは慌てて目をこすった。
「うん……裕ちゃん、目、まっかっかだよ?」
中学生の小娘に指摘されて、顔から火ィ吹くかと思うくらい恥ずかしかったワ。
「う、うるさいな!コドモのくせに!」
そう言うと、矢口はスっとハンカチを差し出した。
「今度会った時返してね」
ウチがうろたえてる間に、矢口は笑顔で手を振って駅の改札を通ってまいおった。
アホみたいに突っ立って、ボーっとその後姿を見送った。
- 177 名前:迷子 投稿日:2002年05月31日(金)02時44分04秒
- 矢口は『タンポポ』のおかみさんに頼まれて、去年ウチが勉強を見たってたんや。
おかみさんの自宅は神奈川にあって店が休みの時なんかに、たまに帰ってはるようやった。
旦那さんは事情は知らんけど亡くならはってて、矢口は留守宅をおばあさんと二人で守ってる。
ウチはそういうのにてんで弱くて、矢口の事も特に目をかけて可愛がってた。
矢口も一人っ子やから、ウチにようなついてくれた。妹みたいに。
―――コドモやと思ってたのに。
ウチはさっきのハンカチをそっと鞄の中にしまい、駅を後にした。
- 178 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月31日(金)02時56分38秒
- 少しですが交信です。( ゜皿 ゜)ノ<ユキアタリバッタリー!!
レスのお礼です。
>みぎみぎさん
自分は事実を述べたのに、いつの間にかハナシデカなっとるっていうパターンですね(w。
お察しします。姐さんラブですか。…苦労しますよ?从 #~∀~从ノ <やかましわ!
( ‘д‘)<作者は子供の時、友達の家にわざわざ家庭用ビデオデッキ見に行ってんで!
( ´D`)<まだビデオがめずらしかったんれすね。
ちなみに『ナメ猫』は写真集と下敷き持ってましたが何か(w
主題歌も試しに歌ってみたらスラスラ歌えました(爆
( ^▽^)<♪オレたちネコだち大集合〜メザシ横丁の交差点〜
古いネタ、スマソ
- 179 名前:みぎみぎ 投稿日:2002年05月31日(金)10時18分19秒
- それは知らないです(笑)
姉さんのディープ具合にはいつも感服脱帽でございます。
続き待ってるワ。でも体はお大事に☆
- 180 名前:迷子 投稿日:2002年05月31日(金)13時36分47秒
- 「りーか、何してんねん」
ある日の午後、部屋を覗くと、梨華は絨毯の上に座り込んでた。
「リカちゃんとお話してるの」
「……ハァ?」
梨華の手にはリカちゃん人形があった。
梨華はふざけてる様子はなく、いたってマジメだった。
「オマエ……まだお人形で遊んどるんか?」
ウチはどっと疲れた。
我が妹ながら先行き心配や。このコ、もう小5やで?
「遊んでるんじゃないよ、お話してるんだよ」
梨華は心外だ、という顔をしおった。
「オマエなぁ……友達欲しないんか?」
こないだああいう事があってこんな事を言うのは酷かとも思たけど、
ウチは思い切って言った。
「友達なら……リカちゃんがいるもん」
「人形は喋らへんやろ」
「梨華の話、聞いてくれるもん」
「それについて何か答えてくれるんか」
すると、みるみるうちに梨華の目から涙が溢れてきた。
「お姉ちゃん……キライ」
ウチはどうする事も出来ずに泣きじゃくる梨華をただ見てた。
- 181 名前:迷子 投稿日:2002年05月31日(金)13時38分06秒
- ウチは非常にヘマな事をしてもた。
後からオトンに聞いた話によると。
あのリカちゃんは梨華のお母さんが娘に買い与えたもんやったんや。
言わば形見や。
人間の友達を作ろうとせず、人形相手に会話する妹が歯がゆくて、ついやってもた。
ある夜、梨華が寝静まってるのを見計らって、ウチはリカちゃんを
自分の部屋に持ってった。
「余り布で……間に合うかな」
下宿人がお盆で帰省しとるから、ミシンも遠慮のう掛けれる。
ボロい服着たリカちゃんを、この裕子様がお姫サンにしたるわ。
- 182 名前:迷子 投稿日:2002年05月31日(金)13時39分25秒
- 翌朝。
調子こいて3着も服、縫うてもうたから完徹や。
とりあえずリカちゃんを服と一緒に梨華のトコに戻して、
あくびしながらウチは下に降りて行った。
台所ではオカンが朝飯の支度をしとった。
「裕子、ゆうべはエライ頑張ってたみたいやないの」
オカンが言った。
「ふぁ〜、ちょっとな」
あくびして朝刊を読んでると、梨華がいつの間にか来とった。
「おう、おはようさん」
「ちょっと来て!」
梨華はウチの腕を掴んで居間の方に引っ張って行きおった。
「何やねん、朝から」
「リカちゃんの服、お姉ちゃん?」
「ウチは知らんで。小人の仕立て屋が寝とる間に縫うたんちゃうか」
「ありがとう!…キライなんて言ってゴメンナサイ!」
「だから、小人の仕立て屋が……」
梨華はウチに抱きついて、ほっぺにチューした。
- 183 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月31日(金)13時49分42秒
- 更新しました。
(今更ながら)間違いハケーン
>>172
割れたもた→割れてもた
割れたもた…どんな状態なんだ(^^;;
レスのお礼です。
>みぎみぎさん
>でも体はお大事に
( ´D`)ノ<ありがとうれす。頬はこけたのに体重はかわらないれす。ふしぎれすね〜
しょうもない知識ばかりあってもしょうがないですよ(ニガワラ
- 184 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月31日(金)14時10分25秒
- ・事前リサーチ
( ‘д‘)<もうじき( ´D`)の誕生日や…何をやったらエエんやろ?
( ^▽^)<ののちゃ〜ん♪今何か欲しいものある?
( ´D`)<欲しいものれすか?そうれすね、8段アイスれしょ、クレープ、ケーキ、
ハンバーグにスパゲティーに、ラーメンもいいれすね…それと(エンドレス)
(;^▽^)<あの、食べたいものじゃなくて欲しいものよ?
( ´D`)<(ブツブツ)お寿司もオツれすね…サビ抜きじゃないと
キツイれすけど←すでに聞いてない
(;‘д‘)<(…ナンノサンコウニモナラヘンワ)
…その頃
从 #~∀~从ノ <みちよ、ウチの誕生日は『1日ワガママ権』でエエで!
( `◇´)<ふだんとなんら変わらへんがな!
- 185 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月31日(金)14時19分37秒
- ある意味ほんとうの姐リカだなー(w
密かにこのカップリングスキです。
- 186 名前:迷子 投稿日:2002年06月03日(月)22時35分22秒
- 久々に『喫茶タンポポ』へ向かう。
たまにはコーヒーでも飲んでのんびりしたいし、
矢口から借りたハンカチを返さなあかんし。
ウチの記憶が確かなら、今日は水曜だから矢口は神奈川からこっちに
泊まりに来てる筈だ。
矢口は夏休みとか長い休みの時はいつもそうしとる。
勉強もその時とかに見てやってた。ウチが神奈川の家に行く事もたまにあったけど。
袋にハンカチと一緒にチョコを入れ、ウチは『タンポポ』に入って行った。
「いらっしゃい〜。あー、裕ちゃん!」
矢口は店の隅で問題集を広げとった。
感心、感心。
「よう、ちょうどエエわ。これ、ありがとうな」
袋を差し出す。
「あ、チョコが入ってる〜。ありがと、裕ちゃん」
そう言って矢口は笑った。
「久しぶりね、裕ちゃん。梨華ちゃんは元気?」
おかみさんが水とおしぼりを持ってきてくれはった。
梨華は一度、オカンと一緒にここに来たらしい。
「ケーキがスゴクおいしいんだヨ!」
ってわざわざこの店の事は知り尽くしとる、常連のウチに報告してくれた。
- 187 名前:迷子 投稿日:2002年06月03日(月)22時41分12秒
- 「ええ、おかげさんで。今は何や、こどもキャンプってのに行っとるんですわ。
ボランティアの大人の人と」
梨華があんまり何処にも行かへんから、本人同意の上で(と言うか半ば
させられたんやけど)オカンはあちこち調べてキャンプを申し込んだ。
リカちゃんも大事やけど、生きてる人間にも目を向けなアカン。
オカンとウチの意見は一致した。
出発の朝、梨華は『トホホ』という顔をして、リュック背負って玄関を出た。
車で送ってやったオトンが言うには、途中、車内でかなりグズグズ言うたらしい。
「今度、梨華ちゃんに会わせてね!裕ちゃんに似ててすごく可愛いんでしょ?
お母さんが言ってた」
矢口が興味津々てな感じで言った。
「顔は全然似てへんで」
ウチは苦笑して、噂の出所のおかみさんの方を見た。
おかみさんは黙って笑って、ウチが注文したアイスコーヒーを作ってはる。
「ハイ、お待たせ。ごゆっくりどうぞ」
運ばれてきたアイスコーヒーを口にする。
ああ、夏はビールもエエけど、やっぱりコレや。
「裕ちゃん、ココ分かんないんだけど」
矢口が問題集持ってウチの席に来た。
久しぶりに家庭教師をしてやりながら、ふと梨華が寝小便たれて迷惑かけてへんかな、
と考えたりした。
- 188 名前:迷子 投稿日:2002年06月03日(月)22時47分29秒
- 梨華がキャンプから帰って来おった。
元々色、黒いのが、更に日焼けしとったわ。
バイトから帰ってきたウチが居間でテレビ見てた梨華を見て、
「おかえり、どないやった?」って聞く前に吹き出してもうたから、
梨華は「も〜お!」ってほっぺを膨らませて拗ねてもた。
「お母さ〜ん!お姉ちゃんがあたし見て笑うんだよー!ひどいでしょう!」
そばで洗濯物畳んでたオカンは笑っとった。
「裕子、メシは食たんか?いらんかったら片付けるぞ」
台所からオトンに呼ばれた。
「おう!今、行くわ!」
「それでね、ゴハンってすぐ焦げるんだよ!ねえ、お姉ちゃん!聞いてる?」
嬉しそうにキャンプの話をする梨華に、ウチはメシを食いながら付き合った。
「聞いとる、聞いとる。梨華のせいでメシが焦げたんやろ?」
「違うよ〜、ゴハンはあたしの担当じゃなかったもん」
「焦がしたのは別のモンか」
「もう〜」
梨華はウチの腕を叩きおった。
手探りやけど、やっと我が家ってモンが出来てきた。
ウチらは最初っから完全に家族を持ってたワケじゃない。
元々が寄せ集めみたいな一家や。
それでも、ようやっと機能しだしたんや。
- 189 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月03日(月)22時53分48秒
- 更新しました。
レスのお礼です。
>名無し読者さん
( ^▽^)<お姉ちゃん、姐リカだって!
从 #~∀~从<おう!気に入ってくれてはるようやぞ!
最近、このカップリング、人気急上昇です。自分も書いてて楽しいです。
- 190 名前:みぎみぎ 投稿日:2002年06月04日(火)00時57分47秒
- 韓国風のおにぎりって美味しいんですよ☆
ボウルいっぱいのご飯に、
大さじ一杯のごま油を混ぜるんです。
そんでごま(白ごま)とジャコ(乾燥してるヤツ)を混ぜて
にぎる!(手に塩と水はつけない。必要ないです。)
面倒だったらおむすび山の青菜でも可。
メチャ美味ですので試してください☆
ただしキムチとかと一緒に食べないと太ります。
いくつでも食べられるので(汗)
韓国の留学生の人に教えてもらったレシピです☆
あー…チヂミいいなぁ…
これからの季節、韓国冷麺もいいなぁ…
- 191 名前:迷子 投稿日:2002年06月05日(水)05時34分04秒
- 8月も半分以上過ぎた。
もうじき梨華の夏休みが終わる。
ウチはふと思いついて、梨華のお母さんのお墓参りも兼ねて、梨華を連れて
旅行する事にした。
今年は初盆になるから、梨華はオトンやオカンとつい先日お墓に行きおった。
ウチはどうしてもバイト休めんかって、残念ながら参加でけんかったけど。
この夏は黙々とバイトしたから多少なりとも貯えはある。
オトンとオカンにその事を言うと、珍しく手放しでエエ考えや、と褒めてくれた。
自分らも下宿人の面倒見んのや、中澤ハイツの事で手、一杯やから、長期の休み
やのに梨華をどこにも遊びに連れてってやれん事に、負い目を感じてるようやった。
「行ってきまーす!」
梨華は元気よく玄関を出た。
「お姉ちゃん、早くー!!」
「待て、旅行は逃げへんわ」
梨華は昨夜、ロクに寝てへんくせに今朝は6時起きやった。
ウチは8時に起きよう思ってたら、
「遅くなると暑くなっちゃうよ〜」
と叩き起こされた。
昨夜はオトンとオカンが入れ替わり立ち代わり、ウチの部屋にやって来て、
「これで梨華においしいモン食べさせたり」
と、1万ずつくれた。
2人の過保護ぶりに笑てもたわ。
- 192 名前:迷子 投稿日:2002年06月05日(水)05時40分27秒
- 飽きるくらい電車に乗って、横須賀に着いた。
駅前の生花店で花を買って、墓地に向かった。
「ココ」
梨華が手で示したのは、まだ建ったばかりと思われる、真新しい墓だった。
さほど大きくはないが、それなりに立派なものではあった。
失礼ながら、梨華に家の話を聞いてたから、もっと貧相な墓を想像してた。
バケツから柄杓で水を掬い、このお墓と両隣とお向かいさんにもついでにかけた。
花を供え、線香に火をつけ半分梨華に渡して一緒に立てた。
梨華は目をつぶって手を合わせて、何やら熱心に拝んでいる。
ウチも考えた挙句、
「この子を産んでくれはってありがとうございます」と心の中で言った。
それにしても暑い。
ただ立ってても、滝のように汗が流れてきおるわ。
「お母さん、暑くないのかなぁ」
帰り際、梨華がぽつんと言った。
「どうやろな、クーラーが効いてたらエエねんけどな」
ウチも暑さのあまりワケの分からん事言うてもたわ。
「そだね」
梨華は笑って走り出した。
- 193 名前:迷子 投稿日:2002年06月05日(水)05時52分06秒
- その後、梨華に案内されてお母さんと住んでたというアパートに行った。
梨華の話以上にそこはボロい建物で。
「あそこだよ」
梨華が指差したのは2階の角部屋だった。
そこには女物の趣味の悪い派手な下着が干してあった。
他の部屋も似たりよったりだ。
母子ふたりがここでどんな暮らしをしていたか。
考えたら、何だか申し訳なくなった。
「梨華、お父ちゃんはたまにあんたに会いに行ってたんやろ」
横浜に向かう電車の中でウチは思い切って聞いてみた。
「ウン」
「あんたのお母さんに…その、生活費とかお父ちゃん、ちゃんと渡してたんか」
「お母さんがいらないって言っていつも返してた」
梨華は言った。
「…そうか」
お母さんの真意は分からんけど。
最後のプライドというやつやろうか。
「お父ちゃんはあんたに優しかったか」
「今も優しいよ」
「ハハ、そやな」
実際、オトンは梨華を目の中に入れても多分痛ないくらい可愛がってる。
ウチとオカンは苦笑してその溺愛ぶりを目の当たりにしてた。
「お父さんに何か買ってもらうと、お母さん、『贅沢させるとクセになるから
やめてください』って言ってた」
「…そうか」
あのリカちゃんは唯一の贅沢なんやろか。
ウチはオカンがそれなりに頑張ってくれたのもあって、キツイいじめに遭うたりは
したけど、お腹いっぱい食べさせてもうてたと思う。
オトンも毎月小遣いくれてたし。
オトンが今更ながら頑張って梨華に過保護になっとんのもちょっと分かる気ィした。
- 194 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月05日(水)05時57分14秒
- 更新しました。
レスのお礼です。
>みぎみぎさん
焼肉のシメは韓国風冷麺です(キパーリ おにぎりレシピ感謝です(^^)
何かの番組で見たのですが、韓国の方は日本に旅行するとこっちのごま油を
買って帰るそうです。
( ´D`)ノ<重宝されてるそうれす!
- 195 名前:迷子 投稿日:2002年06月06日(木)17時32分55秒
- その夜は中華街で食事し、ホテルに泊まった。
梨華は部屋に入る時、ドアの前で靴を脱ごうとしたので
「部屋の中で脱いだらエエねんで」
と笑いをこらえながら止めた。
「お部屋ではどうするの?」
「スリッパがあるはずや」
「ふうん」
「風呂の入り方は分かるか。風呂の中で体洗うんやで」
「?」
「お風呂につかったまま洗うんや」
「へえ〜」
「外国の人はそうしてはるんや」
「お姉ちゃん、物知りなんだねぇ」
梨華が感心したように言いおった。
風呂に湯を張って、梨華を先に入らせた。
「カーテンは風呂の内側に入れんねんで」
って言うて。
「お姉ちゃん、一緒に入ろうよ」
「狭いのに2人もムリや」
「そっか」
- 196 名前:迷子 投稿日:2002年06月06日(木)17時35分02秒
- ウチが風呂から上がると、梨華はベッドの上でガイドブックを広げてた。
「さて、お姉ちゃんはオトナのお楽しみとイコかなぁ〜♪」
冷蔵庫から缶ビールを取り出して、フタを開けた。
「お姉ちゃんってホンット、ビール好きだねぇ」
「オマエもジュース飲むか」
「ウン」
梨華にオレンジジュースを手渡した。
「お姉ちゃん…」
「何や」
「一緒に寝ても…いい?」
「枕は持っといでや」
梨華は嬉しそうにウチのベッドに入って来た。
「あのね」
「ん〜?」
「あたし、このお家に来てよかった」
「ほう」
「お父さんが最初お姉ちゃんのコト、『気ィ強いやっちゃけど悪いヤツやない』って
言ってて、ちょっとコワカったんだけど」
オトンめ。
帰ったらシメなアカンな。
「お姉ちゃんは梨華のコト好き?」
「さあな」
梨華がも〜おと言ってるのが分かった。
いつまでもこんな日々が続けばいい。
梨華の寝顔を見ながらそんな事を思った。
- 197 名前:迷子 投稿日:2002年06月06日(木)17時37分05秒
- ―――年は過ぎて。
梨華は小学校を卒業してエスカレーター式の女子校に入った。
中学ではテニス部に入りおった。
お母さんにラケット買ってもらったと、嬉しげにウチに見せた。
その頃にはもうオカンも『中澤の籍に入れてエエ』という気持ちになっとった。
ところが梨華がうちの籍に入ると石川の家を継ぐ人間がおらんようになるって
事で、結局苗字はそのままやった。(後で知ったんやけど、梨華の母方の唯一の
血縁者がその頃事故死しはったかららしい)
ウチは短大を出た後、小さなデザイン事務所に就職した。
人手のあんまりないトコで、終電で帰宅ってのも珍しゅうなかった。
それでもやりがいがあって、会社の人もエエ人ばっかりやったから
毎日が充実してた。
オトンとオカンは相変わらずやった。
年取ってさすがに枯れてきたんか、オトンの女道楽もかなり減った。
それでもたまに近所のスナックの気に入ったホステスに鞄、買うたったりして
オカンにしばかれとった。
- 198 名前:迷子 投稿日:2002年06月06日(木)17時41分22秒
- 梨華が高校2年に上がった春やった。
オカンが家で急に倒れて、そのまま2度と目を覚まさんかった。
病院の冷たい部屋でオカンはまるで昼寝してるような顔で
横たわってた。
梨華は声も出さずに泣いてた。
病室の窓からは散ってもうた桜の木が見えたのを今も覚えてる。
オカンが逝ってもうて、オトンはすっかり老け込んだ。
ウチは仕方なく会社を辞め、下宿屋の手伝いをする事にした。
梨華もあんまり笑わんようになっとった。
オカンに去られて寂しくなったんか。
半年も経たんうちに今度はオトンが倒れおった。
幸い一命は取り留めたけど、自宅で寝たきりの生活を余儀なくされた。
梨華は学校から帰ってくるなり毎日オトンの面倒を見た。
朝も登校時間ギリギリまでオトンにメシを食わせてやったり、
話しかけてやったりしてる。
その献身ぶりには正直頭が下がった。
それでも1日の大半、面倒見るんは必然的にウチの義務ではあった。
下宿人の面倒見たり、中澤ハイツの事なんかと同時にオトンの
面倒も見なあかん。
公的な介護サービスも利用する事もあったが、その頃のウチはかなりくたびれてた。
- 199 名前:迷子 投稿日:2002年06月06日(木)17時42分42秒
- ある日、中澤ハイツの住人のひとり、みちよって子がうちに来た。
「姐さん、たまには休み」
って言って、夕食の支度や掃除まで殆どやってくれた。
「みちよ…何でそこまで」
ウチは疲れ果ててお礼を言うべきところをこんな失礼な事を言うてもた。
「いや、親父さんと姐さんにはいつも世話なってるし」
みちよは怒りもせず笑って言った。
その途端、ウチはボロボロ泣いてもた。
「…姐さん?」
みちよがウチの顔を覗き込む。
「ウチ…も、疲れた」
そのまましばらくわあわあ子供みたいに声を上げて泣きじゃくった。
みちよはしばらく黙ってたけど、
「姐さん、頑張ってるもんな」
ぎゅっと強く抱きしめた。
- 200 名前:迷子 投稿日:2002年06月06日(木)17時47分19秒
- 「裕子ぉ〜」
それから数日後、寝床からオトンが呼んだ。
「何やの、オトン」
台所で洗いモンしてたウチは、エプロンで手を拭いてオトンの部屋に行った。
「ちょっと大事な話あるんや」
オトンが言うには、銀行の貸し金庫に預けてる物を
確認しろ、との事やった。
早速言う通りにすると、中身は梨華のお母さんの名義の通帳と印鑑やった。
「あれは何やの?」
「梨華の学費や」
「学費?」
「そうや、大学行くようになったら梨華に渡してくれてあいつに預かったんや」
……何であんなボロいアパートに住んで切り詰めた生活を送ってはったんか、
通帳の残高を見て納得した。
全部梨華の為やったんや。
ウチに通帳を任せてほっとしたんか、オトンはまもなくオカンのとこに行ってもた。
- 201 名前:迷子 投稿日:2002年06月06日(木)17時49分08秒
- オトンの初七日が済んだ。
ウチは梨華を台所に呼んで、通帳と印鑑を3つずつ渡した。
「お姉ちゃん、これは?」
「形見分けっていうんかね、これも。オトンとオカン、そしてお母さんから」
「…えっ?」
「皆アンタの為にコツコツ貯めてたんや。将来の足しになるようにって」
梨華は信じられないという顔をして恐る恐る通帳をめくった。
「さて、ウチらふたりになってもた。あんたはこれからどうする?」
「え?」
「あんたも今年高3や。自立したいって言うんならどこかに部屋借りたらエエ。
保証人の事なら任せたらエエ」
「…あたし、ここにいちゃダメ?」
「好きにしたらエエ。決めるのはオマエや」
ウチが席を立つと、梨華は珍しく乱暴に立ち上がって2階に上がって行った。
『しばらく頭を冷やしてきます。探さないでください』
梨華がこんな置手紙をして出て行ったのはその日の晩やった。
- 202 名前:迷子 投稿日:2002年06月06日(木)17時54分07秒
- 「梨華!」
どこ行ったんや!
あのボケ!
ウチは心当たりを順番に当たってみた。
―――そう言えば。
あいつが初めてうちに来た年に旅行に連れてって。
遊園地で迷子になってそん時も難儀して探したわ。
迷子預かりセンターでわぁわぁ泣いて。
泣いてる迷子はオマエくらいやったぞ。
こっちはほっとしたと同時にごっつ恥ずかしかったわ。
あまつさえ雨まで降り出した。
「…梨華!」
梨華は『喫茶タンポポ』の前で立ち往生しとった。
『タンポポ』はシャッターが降りてて『本日休業』の札が掛かってた。
「このボケ!どこほっつき歩いとったんじゃ!」
「…ごめんなさい!」
梨華は身をすくめた。
ウチは振り上げた手を下ろして、梨華を抱きしめた。
「…ウチの言い方が悪かった。もうオマエは大人や、だから自分の
生き方は自分で決め」
「…ごめんなさい」
ウチと梨華は迷子みたいなモンや。
父親と母親、両方揃った家に生まれた時からいたわけじゃない。
ここを出たら、もうどこにも帰る家もない。
でも、もうこの子の好きにさしたらなあかん。
ウチにそれを引き止める権利はないんや。
「…あたし、裕ちゃんといたいよぉ!」
泣きじゃくりながら梨華が言いおった。
「シスコン!」
「裕ちゃんのせいだよ!」
「とりあえず帰るぞ!寒い!!」
梨華の一言にほっとした自分がいる事に気がついた―――。
- 203 名前:迷子 投稿日:2002年06月06日(木)17時57分21秒
- 梨華もようやっと大学通う年になった。
夏のある日、突然の電話にウチは気が遠くなった。
「妹さんが意識不明の重態です」
車にはねられて、病院に運ばれたとの事やった。
気がついたらウチはみちよの携帯に電話を掛けてた。
みちよはすぐに飛んできてくれた。
「ホラ!乗り!」
丁度駅前におったみちよはそのままタクシー拾って来てくれた。
車に乗ってる間の記憶は殆ど無い。
病院に着いて降りた時、
「…りかまでおらんようになったら」
うわ言を言ってるウチをみちよは引っぱたいた。
「姐さんがしっかりせなどないすんの!」
「…みちよ」
「ウチにできる事があったら何でもする!だから!」
みちよは泣きそうな顔してた。
「…堪忍やで」
手のひらでそっと両頬を挟んで言った。
- 204 名前:迷子 投稿日:2002年06月06日(木)17時58分36秒
- 手術室のランプはなかなか消えなかった。
…神様。
梨華まで、連れて行かんといてください。
もう、ウチは何もないんです。
だから…。
「…姐さん!」
ランプが消えた。
梨華がストレッチャーに載せられて出てきた。
「…先生!」
「もう大丈夫です」
先生の一言にウチは全身の力が抜けてもた。
「…お姉ちゃん」
病室で梨華が意識が戻った時、そう言った。
ウチは笑って静かに涙を流した。
- 205 名前:迷子 投稿日:2002年06月06日(木)18時05分09秒
―――あれから色んな事があったわ。
裕子は、妹の人形をそっとテーブルに置いた。
梨華はガラクタの整理を済ませ、下宿人の夕食の支度を始めた。
「リカちゃんはどうすんねん」
「ウン、お部屋に持ってく」
「そうか」
「ウン」
裕子はもう一度、リカちゃんを撫でた。
- 206 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月06日(木)18時08分12秒
- 番外編はこれで終わりです。
最後ははしょりすぎた感はあります(^^;;
分かりにくい書き方でしたが、最後のシーンで現在(冒頭シーン)に戻ってます。
- 207 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月06日(木)18時26分51秒
- ・突撃(?)隣の晩御飯
―――月曜
( ^)〜^)<オムライス、ウメー! モグモグ
―――水曜
(O^〜^)<親子丼、カッケー!
(♯^▽^)<たくさん食べてね!
―――金曜
(O^〜^)つ〇<スコッチエッグ、ウメー!マワリオニクツイテルケド
(;`.∀´)<何か最近メニュー片寄ってない?←ご相伴(1回500円)
从 #~∀~从<…気にすんな!(ホンマに献立任せてたらコレや!)
(♯^▽^)<…
( ´ Д `)<んあ〜。タマゴオイシイネェ ←どうでもいい(ご相伴その2)
- 208 名前:理科。 投稿日:2002年06月07日(金)20時24分43秒
- (OT〜T)<…うう。梨華ちゃん…。
ええコや。ホンマにええ(?)話や…。
…ジーンとしてしまいますた。
そんな過去があったなんて。
がんがってください!
- 209 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月07日(金)22時19分01秒
- 泣きますた。
とにかく、心にこみ上げるものが……。
続き楽しみにしています。
- 210 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月07日(金)22時45分17秒
- >理科。さん
(#T▽T)<ありがとう、ひとみちゃん!
あまり泣きが入るのもなんだし、と試行錯誤して書きましたが、そう言っていただけて
何よりです。ありがとうございます、がんがります!
>よすこ大好き読者。さん
从 #i∀i#从 <おおきに!そう言うてもうて作者も本望やわ!
泣かせすぎず、あっさりしすぎず、というのが狙いでしたが…。いや、難しいです
(苦笑 ありがとうございます、がんがります!
- 211 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月07日(金)22時46分43秒
- 本編に戻る前にかなり短い話をひとつ…
- 212 名前:ONE SUNNY DAY 投稿日:2002年06月07日(金)22時51分41秒
- ―――石川視点
3月も下旬になるとかなり暖かくなった。
今年は桜も早く蕾を開いた。
そろそろお花見に行かなくちゃ。
明日、新しい下宿人さんがうちに来る。
今年我が家で下宿する子は、あいぼんとののちゃんの高校生2人と、
明日来る予定の大学生の女の子1人。
「電話で話したけど、何や、エライ声低いネェちゃんやったぞ」
裕ちゃんが言った。そばにあった書類を取り上げ、読み上げる。
「え〜、吉澤ひとみ19歳。埼玉県出身。
私立朝日女子学院大学英文学科…何や、オマエと同じトコやな」
「ホントに?」
- 213 名前:ONE SUNNY DAY 投稿日:2002年06月07日(金)22時55分48秒
- 2階の部屋にはその吉澤さんの荷物が既に届いていた。
「えらい質素やな。イマドキの娘にしては」
裕ちゃんの言う通り、主な家具はパイプベッドと整理ダンスくらいだった。
折り畳み式の小さなテーブル、カラーボックス。
後はダンボールが少しあるくらいだった。
その中に、厳重に梱包したよく分からない大きなものがあった。
よくクッキーの缶に入ってる、突起をプチプチつぶすビニールで何重も
ぐるぐる巻きにしてある。
「何じゃこりゃ?死体か」
裕ちゃんはそれを指で突付いた。
「バカ言わないでよ」
裕ちゃんはたまに(?)ヘンなコトを言う。
「まあ、エエわ。明日聞いてみよ」
裕ちゃんはあまりナリに構わんネェちゃんかもしれんな、この荷物の様子では、
とかなり失礼なコトを言った。
そんなコト…。
その子と、仲良くなれたらいいな。年も同じみたいだし。
夜、そんなコトを考えながら眠りについた。
- 214 名前:ONE SUNNY DAY 投稿日:2002年06月07日(金)23時00分36秒
- ―――翌日。
朝からいいお天気だった。
よかったわ。
雨だったら、吉澤さん可哀想だもの。
『ピンポーン』
玄関のチャイムが鳴った。
「梨華ー、ちょっと出てんかー。今、手ぇ離されへんねん」
裕ちゃんがそう言うので、あたしは玄関に走った。
ドアを開けると、金色がかった茶髪の背の高い女の子が立っていた。
「あ、初めまして。吉澤です」
うわ、声低い…。でも、何だか聞いてて心地よい声だ。
『オッサンみたいな声』って裕ちゃんが言うから、どんなひとかと思ったけど。
顔も…すごい美人。
あまりの綺麗さに、どきどきしながら手を握った。
「よろしくお願いします」
―――この日から。
あたしはこのひとの虜になった。
- 215 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月07日(金)23時02分51秒
- 終わりです。
『乙女いしかーさん、オトコマエ・ヨスコに感動』の巻。
では、また。。。
- 216 名前:婆金 投稿日:2002年06月08日(土)00時19分14秒
- 『乙女いしかーさん、オトコマエ・ヨスコに感動』の巻。万歳!
シスコンいしかーさん万歳!(いしかーさんの昔、泣きました・・・)
がんがってください。
- 217 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月09日(日)18時51分52秒
- ―――吉澤視点
6月に入った。
東京もそろそろ梅雨入りだろう。
あたしは変わらず、バンドとバイト、プラス学内のたまのクラブ活動(市井さんに
強制入部させられたフォークソング部(とは名ばかりのロック研究会))
で忙しかった。
あいぼんとののの高校生コンビは、衣替えで爽やかな夏服となった。
「ホッホー!いや、女子高校生って感じだねぇ〜」
登校前に朝の食卓でからかうと、
「オッサンや、女だけのハズの下宿にオッサンがおるで」
あいぼんはののの腕を取って、ワザとウチに背を向けひそひそ声で言った。
「まったくれす。あいぼん、オッサンはほっといてもう行くれす」
そろって出かけてゆく、白い半袖シャツの背中が眩しかった。
- 218 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月09日(日)19時16分18秒
- ある日、市井さんに次のライブの練習でしごかれて、へとへとになって
駅に降り立った。
下宿まで歩いて10分。
いつもなら根性で帰るのに、その日に限って何でか何処かで休みたくなった。
肩にしょったベース(ヨシコ・グレイト・カモンーナ!2号)がいつもより
重く感じられる…。
駅前の通りを歩いて行くと、
『喫茶タンポポ』という看板が目についた。
…6時か。帰ればすぐ夕飯だけど、たまにはいいか。
『カランカラン…』
「いらっしゃいませ」
店に入ってくと、カウンターに小柄な金髪の女の人がいた。
「空いてるお席にどうぞ」
ウチと入れ替わりに、サラリーマン風のおじさんが席を立って支払いを
済ませて出て行った。
とりあえず、窓際の席に腰を下ろす。
「ご注文、お決まりですか」
「あ、ハイ。本日のコーヒーというのをお願いします」
「しばらくお待ちください」
金髪の人はカウンターに戻り、サイフォンのフラスコに水を入れ始めた。
「お客さん、音楽やってる人?」
突然声を掛けられてビクッとする。
- 219 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月09日(日)19時21分30秒
- ああ、ベースの事を言ってるのか。
「あ、ハイ。ベースをちょっと…」
「へぇ。バンドとかやってんの?」
「エエ、大学の先輩とかと組んでやってます」
「どこの大学?」
「朝日女子学院大学ってトコです」
「朝日…?もしかして…保田さんって人知ってる?」
「保田さんって『キリキリ逝くわよっ!』が口ぐせで、猫目で口開けて
完璧な笑顔で凄まじいウィンクして、職業は郵便局員で好物は軟骨と白子って
その嗜好がオヤジくさくて、酔うと軽くセクハラかましてくる保田さんですか?」
「そう!その保田さん!キャハハ!スゴイ!全部その通りだよ〜」
その女の人はおかしそうにしばらく笑っていた。
- 220 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月09日(日)19時30分22秒
- 「お姉さん、面白いねぇ〜。そっかぁ、圭ちゃんとバンドやってんだぁ」
あたしも一緒になって笑う。
「あ、あたしは矢口真里。よろしくね。圭ちゃんはここの常連さんなんだ」
「吉澤ひとみです。ウチ、最近東京出てきたばっかなんスよ」
「へぇ。実家どこなの?」
「埼玉っす。3丁目で下宿してるんすよ」
「ああ、中澤さん家ね。あそこのちびっこ2人組、たまに来てくれるよ」
「辻と加護ですね。うるさいでしょう」
「フフ、賑やかで楽しいよ」
矢口さんはそう言うと、出来上がったコーヒーを温めてあったカップに
ゆっくり注いだ。
「ハイ、お待たせしました。ブルーマウンテンです」
「あ、どうも」
心地よい空間だ。
清潔な店内。ほどよい装飾。コーヒーの香ばしい香り。
ゆったりとした時間が流れる。
「曲、かけていい?」
「あ、どうぞ」
矢口さんは奥のCDプレーヤーをセットした。
「この曲…」
『煙が目に染みる』だったか。
サラ・ヴォーンの渋い歌声が店内にゆったり流れた。
「うん、『SMOKE GETS IN YOUR EYES』。
矢口のね、大好きな人が好きな歌なんだ」
「へぇ、恋人とかですか」
「ナイショ」
そう言って矢口さんは可愛らしく笑った。
…大好きな人かぁ。
ウチもいつか、好きな人ができたらその人に曲とか作ってギター弾いて
聴かせるのかなぁ。…寒っ(笑)。
矢口さんの淹れたコーヒーはおいしくて。
疲れも吹き飛ぶ感じだった。
- 221 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月09日(日)19時38分02秒
- 更新しました。書いてて、サイフォンで淹れたコーヒー飲みたくなりますた。
レスのお礼です。
>婆金さん
ヽ^∀^ノ<ありがとう!今度のライブは婆金さんに捧げるよ!
从 #~∀~从ノ<おおきにな!いや、そろそろ姉離れさせなアカン
思てんねんけどな←妹離れできてない人
ありがとうございます。がんがります。
- 222 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月09日(日)19時50分57秒
- 書き忘れです。。。
タイトルはジャズのスタンダード・ナンバーより。
元々は『ロバータ』というミュージカルで使用された曲だそうです。
サラ・ヴォーンや数々の歌手が歌っています。
「オンリー・ユー」のプラターズのカヴァーが大ヒットしました。
( `.∀´)y−~~<アダルトな曲よ!ホホ、アタシとこんな恋愛してみない?
(〜^◇^)<キャハ!『ダメよ!ひろしさん!!』(by『愛の嵐』)
- 223 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月10日(月)04時02分46秒
- ―――石川視点
あたしはその日、渋谷に来ていた。
ひとみちゃんのバンドのライブを見るために。
今回はひとみちゃんから割引でチケットを買った。
「ゴメン。タダ券あげれたらいいんだけど、数に限りがあって」
ひとみちゃんは申し訳なさそうに言ってくれた。
「…あれ?」
隣の人があたしの方を見た。
「…あ!この前、チケット譲ってくれた人だよね!」
…びっくりした。もう会うことなんてないだろうと思ってたから。
「あ、その…」
その場から逃げ出したかった。
「探したんだよー、あれから。あの日も開演前まで入り口で待ってたのに〜」
「ス、スイマセン」
「ううん、怒ってるんじゃないよ。ホラ、お金まだ渡してないし」
「あ、あれは。もらったモノなんでホントにいいです」
「そうなんだ。お友達が来れなくなったとか?」
「いえ、その…2枚もらったんだけど、一緒に行く人いなくって」
「そっか。どちらにしろ、ちゃんとお礼したいって思ってたから、
また会えてよかった」
そう言うとその子は手を差し出した。
「よろしく♪柴田あゆみです」
「あ…石川、梨華です…」
おずおずと握る。
カワイイ名前!って言って柴田さんはニコニコしてた。
- 224 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月10日(月)04時12分06秒
- 「あの…柴田さんは誰のファンなんですか?」
開演までまだ時間があり、間が持たないので話しかけてみる。
「あたし?うん、市井さんかな、やっぱ。ごっちんもカワイイよね」
柴田さんは更に
「今度入ったベースの子もイイよね」
と付け足した。
「あ…カッコいいですよね」
「うん、音とか今までの『CUBIC−CROSS』にはなかった感じで」
「そんなに見に来てるんですか?」
「初期から知ってるよ。何か、昔からベースにあまり恵まれてなかったけど。
アヤカって人がベースで前に一回ゲストで出て、そのまま正式メンバーになるから
これで安泰かと思ったら、キーボードに行くっていうし、バンド自体を
ベースレスにするのかなって思ってた」
あたしは感心して聞き入ってしまった。
「梨華ちゃんは誰が好きなの?」
「あ、あの…ひとみちゃん」
「ほ〜お。既に目をつけてると」
「あの…ウチに下宿してるの」
「エ?友達なの?」
「ウ、ウン…」
「もしかして…彼女とか?」
あたしは慌てて首を振った。そうであれば…どれだけ嬉しいことか。
「あっは!梨華ちゃん、顔、真っ赤!」
柴田さんはおかしそうに笑った。
- 225 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月10日(月)04時14分42秒
- 終演後、柴田さんに
「お茶しない?」
と誘われた。
「あ、ちょっとなら…」
渋谷は全然分からないので店は柴田さんにお任せする事にした。
「ココ!カプチーノがおいしいんだ〜」
そこは夜遅くまでやってる店で、カップルやグループが楽しそうにお茶してた。
普段あんまりこんな時間に出かけないから、もの珍しくてキョロキョロしてしまった。
「梨華ちゃん、何する?」
「あ、ミルクティー、ホットで」
「オッケー。席取ってて」
その店はファーストフードのようにカウンターで注文して品物を受け取るところだった。
「お待たせ!」
すぐ柴田さんがカップの載ったトレイを持ってやって来た。
「ハイ、砂糖は適当に持ってきたけど」
「あ…スイマセン。400円でしたよね」
財布を出そうとすると、
「いいよ、チケットと付き合ってくれたお礼」
カップに口をつけて柴田さんは言った。
「でも…」
「でもはナシ。てか、梨華ちゃんカワイイし、タイプなんだぁ〜」
「…エ?」
「あ、あたしちゃんと付き合ってる人いるよ。友達になりたいっていうか」
「あ、ハイ。トモダチですね、トモダチ…」
「あたしに彼女がいなかったら口説くんだけど、お姫様はリッケンバッカーを抱えた
王子様に夢中みたいだし」
……むせてしまった。
「アハハハ!梨華ちゃん、分かりやす〜い!」
あたしはその時、かなり眉が下がってたと思う。
(気にしてるんだけど、顔の構造までは変えられない)
- 226 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月10日(月)04時17分34秒
- その後、話が弾んで、あたしは自分の家に帰る方面の電車がもうない事に気づき、
顔面蒼白になった。
「ウチ、泊まんなよ。実家で狭いけど」
ここから近いという柴田さんのご好意に甘え、お家にお邪魔する事に。
「こんな時間に…お家の方、ご迷惑でしょ?」
「全然。今度は梨華ちゃんのお家に遊びに行かせてね」
柴田さんはあまり物事にこだわらない性格のようだ。
お友達もたくさんいるんだろうなぁ。
顔も可愛いし。
ハァ、あたしなんて…。
30分程歩き、途中コンビニに寄ったりして柴田さんのお家に着いた。
「コラー、不良娘〜。遅いぞー」
お母さんらしき方がお台所から出ていらっしゃった。
「ごめーん。あ、今日友達泊まるから」
「こ、こんばんは!突然申し訳ありません」
あたしは慌てて頭を下げた。
「アラ、可愛いお嬢さん。学校のお友達?」
「あ、そうだ。梨華ちゃんって何やってるヒト?」
「大学生です」
「ドコ?」
「朝日女子学院だけど…」
「一緒じゃん、あたしは家政学部だけど」
「あ…社会学部なの」
柴田さんのお母さんはしばらくあたし達のやりとりを見ていたが、
「お母さん、もう寝るわ。戸締りと電気とガス、よろしくね。
じゃ、梨華ちゃんだっけ?何もないけど、ゆっくりしてってね」
2階に上がってしまった。
- 227 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月10日(月)04時21分07秒
- 「そうかそうか、同じ大学だったか」
柴田さんは満足そうに言う。
あたしは…正直あまり嬉しくなかった。
「あの…柴田さんは何年生?」
「ん、2年」
「じゃ…あたしの話、知ってるでしょ。去年、社会学部の学生であったコト…」
柴田さんはしばらく考えて、ああ、という顔をした。
「関係ないじゃん。てか、言ったでしょ〜。可愛いからタイプだって」
「…柴田さん」
「あたし、正直あんまり噂話とか興味なくってさ。今の今まで梨華ちゃんが
その噂になったヒトだってことも忘れてたよ」
「でも…話は知ってるんだ」
「梨華ちゃんさぁ〜」
柴田さんは溜息をついて言った。
「何があったのかは本当のところは知らないよ?あの時もかなりガセネタ流れたし。
でも、気にしてないヒトもいるんだし。アタシみたいに」
「う…ヒック」
あたしが泣き出したので柴田さんは参ったなぁ、と言いながらお台所に連れてった。
椅子に座らせて、熱い紅茶を入れてくれる。
泣き止むのを見計らって、お湯で絞ったタオルを渡してくれた。
「水分補給と、美容のために」
って笑って言って。
柴田さんと友達になりたい。
熱いタオルで涙でぐしゃぐしゃの顔を拭きながら、そう思った。
「ハハ、梨華ちゃん、泣いた顔も可愛いんだね」
「柴田さんみたいな綺麗なひとに言われたら皮肉に聞こえます」
「てか、梨華ちゃん、自分も相当だと分かってる?」
「ブスだと思ってます。色、黒いし」
「…ハハ。ソレ、あんましヒトに言わない方がいいよ」
柴田さんはひきつったように笑って、自分もお茶を飲んだ。
- 228 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月10日(月)04時23分47秒
- その後。
お風呂を頂いて、柴田さんの部屋に行き、お布団に入った。
「『柴田さん』って呼んだら、その巨乳を思う存分触るからね」
などととんでもない命令を出され、泣く泣く『柴ちゃん』と呼ぶコトで
納得してもらった。
……あの事件があってから、初めて出来たお友達。
みんな、あたしから去ってしまった。
今も学内で偶然顔を合わすと、聞こえよがしにひそひそと噂話をするヒトもいる。
大分慣れたけど、大学をやめたい、って思うコトもあった。
でも、学費を出してくれてる裕ちゃんや、あたしの為にお金を遺してくれた
お父さんと2人のお母さんに申し訳ない。
「…柴ちゃん」
「ん〜?」
「…ありがとう」
柴ちゃんは『オレにホレるとヤケドするぜ』と言って、お部屋の電気を
リモコンで消した。
―――久しぶりに『トモダチ』の空気を感じながら、眠りについた。
- 229 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月10日(月)04時26分18秒
- 更新しました。やっとしば登場…。実際とかなりキャラ違うかもしれませんが
ご容赦ください(汗
- 230 名前:登場人物紹介 投稿日:2002年06月10日(月)04時53分08秒
- 川σ_σ||:柴田あゆみ(20)。神奈川県出身。ライブ会場で(^▽^)と知り合う。
かなりのバンド通。恋人もいるらしい。美少女で名高い。
・美少女日記(?) (〜^◇^)/<そのマンマじゃねぇかよっ
川σ_σ||<梨華ちゃん、吉澤さんって恋人いるの?
(;^▽^)<…エ、いないと思うけど(狙ってるの?)コイビトイルンジャ…
川σ_σ||<そっかぁ。梨華ちゃんは?
(;^▽^)<いないよ!アハハ(モテないし)←ハゲシク勘違い
川σ_σ||<ふ〜ん。そっかぁ
(;^▽^)<ハハ…(な、何?目的は!?)
川σ_σ||<♪〜 ←単に聞いてみたかっただけ
柴ちゃんは自分の中でカナーリ、ミステリーな存在です…。
- 231 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月10日(月)16時09分24秒
- 柴ちゃんいい人だなぁ〜
石川さんがどんな過去を抱えてるのか気になるトコ。
- 232 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月10日(月)17時56分05秒
- ―――ある土曜日
裕子は平家と『喫茶タンポポ』にいた。
「しかし、姐さんと外で酒以外のモン飲むのも珍しいな」
平家はそう言ってアイスコーヒーを口にする。
裕子はカウンターの矢口をずっと目で追っていた。
「ちょっと姐さん、聞いてる?」
「聞いとる」
裕子の顔はまるで締りがない。
「あ、裕ちゃん。そう言えばこの前裕ちゃん家の下宿の子、来たよ。
えっと…名前ちょっと思い出せないんだけど、ベース持ってた」
矢口が言った。
「吉澤や、デカイネェちゃんやろ」
「そうそう。あの子、大きいよねぇ〜」
矢口にデレデレする裕子を平家は内心呆れて見ていた。
「ホンマ、姐さんは矢口の前ではぐにゃぐにゃやねぇ。ビッとしなはれ、ビッと!」
「そんなこたあらへん〜」
そう言いながらぐにゃぐにゃである。
『だめだこりゃ』
平家は匙を投げた。
「梨華ちゃんは今日、家におんの?」
しばらくして平家は話題を変えた。
「何や、新宿へ友達とライブ行くいうてたわ」
「…友達、できたんや。よかったな」
「まあな」
裕子と平家は去年の出来事に思いを馳せた。
「…早いなぁ。もう1年か。一時はどうなるかと思たけど」
裕子は返事せず、黙って頷いた。
「しかし、姐さんには頭が下がるわ。おかみさんが亡くならはってから
ほとんど女手ひとつで下宿屋切り盛りしてきたもんなぁ」
「オトンがすぐ寝たきりなってもたからな。仕方なしにや」
裕子は苦笑した。
「そんなことあらへん」
平家は首を振る。
「姐さんはようやってるわ」
「ウチは何もしてへん。梨華もよう間に合うてるし」
平家はコーヒーを飲む裕子の横顔を黙って見ていた。
- 233 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月10日(月)17時59分37秒
- ―――石川視点
あたしは新宿にいた。
先週に引き続き、またライブを観に。
ひとみちゃんが『ゲストで出るし、歌うの1曲だけだけど』とチケットを
2枚くれた。
悩んだ末に、柴ちゃんに『よかったら行かない?』とメールを送った。
『行く!!』
速攻返事が来た。
「いや〜、持つべきものは友よねぇ〜」
柴ちゃんは終演後大変ご満悦だった。
「あ、柴ちゃん。ひとみちゃんが楽屋に来ていいって言ってくれたんだ。
一緒に行かない?」
「行く、行く!」
楽屋に行くと、私服に着替えたメンバーがくつろいでいた。
「んあ〜、梨華ちゃんだ〜」
ごっちんが抱きついてくる。
「友達?」
ひとみちゃんが柴ちゃんを見て言った。
「あ、うん。柴田あゆみさん。同じ大学なの」
「ホホ!アタシの後輩ねっ!」
「あ!保田さんだっ!感激です〜」
柴ちゃんの様子に保田さんは満更でもない様子だった。
「2人ともこれから打ち上げなんだけど、よかったら来ない?」
アヤカさんが誘ってくれた。
「ね、紗耶香」
「え、あ、うん」
市井さんは落ち着かない様子で目を泳がせてる。
やっぱり…迷惑なのだろうか。
「あっは!おいでよ〜。柴田さん、可愛いねぇ〜」
「やーん!生ごっちん、やっぱり可愛い〜」
2人は特に気にせず、キャッキャッはしゃいでいた。
「…どしたの?梨華ちゃん」
ひとみちゃんがあたしの顔を覗き込んだ。
「ううん、なんでもないよ」
とりあえず、笑ってみた。
- 234 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月10日(月)18時02分39秒
- ライブハウスの近くの居酒屋に皆で入って行った。
「カンパ〜イ!」
めいめい注文した飲み物が揃い、乾杯する。
「石川さんさ、その…ケガはもういいの?」
市井さんが恐る恐るという感じで言った。
あたしはビクッとなった。
やっぱり…来るんじゃなかった。
誘ってくれたアヤカさんには悪いけど。
「ケガ?梨華ちゃん、ごとーちっとも知らなかったよ。いつケガしたの?」
隣のごっちんがあたしの腕を取って言った。
「あ…ケガしたのは去年なの。その…交通事故に遭って、学校もお休みしてたの」
「大変だったんだぁ〜、元気になってよかったねぇ」
「う、うん」
市井さんは目を伏せて聞いてる。
保田さんとアヤカさん、柴ちゃんは黙っていた。
しばらくシーンとしたが、ひとみちゃんが
「柴田さんって何学部?」
突然違うネタを振った。
「あ、家政学部。2年だよ。大学入る前に専門通ってたから一浪の年になるけど」
「あ、ウチも。へぇ〜、そうなんだ」
「吉澤さんも専門だったの?」
「ウン。親に大学出とけって言われてさ〜、ウチ、アホなのに」
「ヨシコの英語はアヤシイからねぇ。ヒトミ・ヨシザワの世界のジョークとかさぁ」
ごっちんが何気に突っ込んで爆笑となった。
- 235 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月10日(月)18時18分26秒
- 「じゃ、ファンのおふたりに聞くけど、ウチのバンドの中ではどの曲が好き?」
保田さんが言った。
あたしが少ないファン歴の中からから考えてると、柴ちゃんは
「保田さんが作詞して市井さんがアレンジしたオリジナルのと、大分前に
アンコールでやった『スタンド・バイ・ミー』とか好きです」
澱みなく答えた。…すごい。
「オー!通だねぇ!しかもかなり初期からのファンと見た!」
市井さんはちょっとはしゃいでいた。
「梨華ちゃんは?」
ひとみちゃんがあたしの方を見る。
「えと…『ハートに火をつけて』とか、先月新宿で聴いた市井さんの
オリジナルとか。その…歌に感動しました。心に響くというか…」
あたしどうしてもっと気の利いたコトが言えないんだろ。
恥ずかしくなって俯いてると、市井さんは
「サンキュ。あれは好きなヒトのコト考えながら作ったヤツなんだ。
気に入ってくれて嬉しいよ」
とても優しい笑顔で言ってくれた。
- 236 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月10日(月)18時32分01秒
- ひとみちゃんがあの時、違う話題を振ってくれたから助かったけど…。
正直、その場から逃げ出したかった―――。
あたしと柴ちゃんはお先に失礼して店を出た。
店を出てしばらく歩いていたら、イッパイイッパイになって、
こらえきれず涙が出てきた。
「よく頑張りました。店で泣かないのはエラかったよ」
柴ちゃんはあたしの頭を撫でる。
あたしは黙って頷く。
あそこで泣いちゃったら、もっと迷惑をかける。
「お姉さんがご褒美に缶ジュースを買ってあげましょう」
柴ちゃんは缶ジュースを2本買って公園へ行こう、と声を掛けた。
「吉澤さんっていいコだね。梨華ちゃんがホレるのも分かるかも」
柴ちゃんはゆっくりブランコをこいだ。
あたしは隣のブランコに座ってジュースを飲んだ。
「色々あるだろうけど、できるコトがあれば力、貸すからさ」
「ウンッ!」
あたしはボロボロ泣きながら缶ジュースを握り締めた。
『No I won't be afraid Oh I won't be afraid
Just as long as you stand by me…』
柴ちゃんは立ちこぎをしながら小さく綺麗な声で、さっき好きだと言った歌を
口ずさんでいた。
空には蒼い月が浮かんでいる…。
- 237 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月10日(月)18時39分16秒
- ―――後藤視点
翌朝。
始発が出る時間帯までメンバーと店にいて、あたしはいちーちゃんと帰った。
土手を2人で歩く。
夜明け前の淡いブルーの空。
星が名残惜しそうに消えかかってた。
「いちーちゃんさ」
背中に声をかける。
「梨華ちゃん、キライなの?」
「違うって」
「じゃ、何であんなよそよそしかったの?特に最初会った時さ〜」
「別に…フツーだよ」
フツー?女には優しいいちーちゃんが?
歌を褒められてお礼は言ってたけど。いつもならもっとはしゃいでるハズだ。
「そういうの、すごい気にするコなんだからさ〜」
「悪かったよ」
いちーちゃんはハイライトを咥えた。
「ちっとも反省してないっ!」
ごとーはタバコを振り払った。
ポトンと地面に落ちる。
いちーちゃんは一瞬ムッとしたようだったけど、すぐ歩き始めた。
川の流れる音だけがしばらく響いていた。
「ね、何か梨華ちゃんのコトで皆隠してるような気がするんだけど。
一体何なの?」
いちーちゃんは振り向いた。怖い顔をして。
「あ…ゴメン」
すぐ謝った。いちーちゃんがあまりにもマジだったから。
「…時間が解決するよ」
こんな時にもいちーちゃんはカッコつける。
実際カッコいいんだけど。
川風があたし達の間を吹き抜けた。
埃っぽいニオイを運んで。夜明け前のひんやりした風は酔った頬には心地いい。
そろそろ夜が明ける。
あたしはいちーちゃんと黙って青い薄明かりの中、また歩いて行った。
- 238 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月10日(月)18時49分34秒
- 更新しました。
情景描写は苦手です(^^;; 夜明け前の感じがうまく出ない。
レスのお礼です。
>名無し読者さん
柴っちゃんは実際のキャラが掴めないのでああいう風にしました。いしかーさんの過去は
徐々に出していく予定です。
(0^〜^)ノ<気に入ってくれててうれしいYO!
ありがとうございますm(__)m
- 239 名前:ごーまるいち 投稿日:2002年06月10日(月)22時37分34秒
- 柴ちゃんすっごく良い人だなぁ。惚れました(節操なし)
これからも梨華ちゃんの頼りになるおねーさんでいてね。
夜明け前の雰囲気、すんなり思い浮かびますよー。
お酒を飲んだ帰り、空が綺麗で気持ち良いんですよねぇ(w
- 240 名前:婆金 投稿日:2002年06月11日(火)00時21分05秒
- スキャットだらけ(?)のAUTUMN LEAVESが入った
サラ・ヴォーンのCDと、プラターズのSMOKE GETS IN YOUR EYESを
聴きながら読みました。
いしかーさん・・・どうなるんでしょう!?
- 241 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年06月11日(火)00時41分47秒
- お久しぶりです〜。
石川さんよかった(T▽T)
姐さん最高っす!!
柴ちゃん凄くいい人ですね、石川さん頑張れぇ
- 242 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月11日(火)22時22分26秒
- ―――吉澤視点
あたしは最近おかしい。
例の『タンポポ』でコーヒーを飲んでから、矢口さんのコトばかり考えてる。
…矢口さん、小っちゃくて可愛かったなぁ。
抱きしめたら、壊れちゃいそうで…。
「コラ!吉澤、テメ、たるんでっぞ!」
ライブの練習もミスが多く、市井さんに怒鳴られてた。
「あっは!ヨシコ、恋するオトメみたい♪ぼーっとして」
ごっちんに言われ、はっとする。
- 243 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月11日(火)22時34分21秒
- …そう言えば
CDショップに行っても、無意識に恋の歌っぽいのを探してる。
用もないのにバイト帰りなんかに『タンポポ』を覗きに行ったりしてる。
…そのくせ、店に入る勇気がなくて。
夜、眠れなくてベッドの中で天井のシミを数えてる。
……初恋なんてとうの昔のことだけど。
あの感じを久々に思い出した。
市井さんに怒鳴られて、あたしはスタジオの隅の方に移動して自主練を始めた。
…矢口さんの笑顔。
矢口さんの声。
頭に耳にこびりついて離れない…。
溜息をついて、ベースの調整をした。
- 244 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月11日(火)22時44分47秒
- ―――石川視点
ある日。
台所で皆でおやつを食べていた。
ごっちんも遊びに来てて、裕ちゃんもゴハンの支度をしながら話に加わっている。
あたしは柴ちゃんと待ち合わせしてて、柴ちゃんからの連絡を待っていた。
「梨華ちゃん、どっか出かけんの?」
あいぼんがあたしの格好を見て言った。
「ん、ちょっとね。お友達と待ち合わせ」
「デートみたいれす、おめかしして」
ののちゃんの言葉に皆笑った。
ひとみちゃんが上から降りてきた。
「お〜、うまそ〜。あれ、梨華ちゃん、デート?」
クッキーをつまみながらひとみちゃんは言う。
「違うよ、柴ちゃんと待ち合わせ」
「てか、梨華ちゃん恋人ホントにいないの?」
あたしが答えようとすると、
「ね、ヨシコ」
ごっちんが口を開いた。
「ヨシコは好きなヒト…いるの?」
「え、あ…」
あたしは窒息死しそうなくらい息をつめてひとみちゃんが
口を開くのを待った。
「矢口さん、かな…」
…目の前が、真っ白になった。
『…リカチャン、リカチャン』
誰かの声で引き戻される。
「え、あ」
「梨華ちゃん、携帯鳴ってんで!」
あいぼんがテーブルの端に置いといたあたしの携帯を渡してくれる。
「あ、ありがと…」
この着メロは柴ちゃんだ。
メロン記念日の『THIS IS 運命』。
柴ちゃんが好きな歌だ。
- 245 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月11日(火)22時52分34秒
- 「もしもし?」
『梨華ちゃん?ゴメン、今駅に着いたから』
「あ、うん。今から行きます」
『うん、待ってるね』
携帯を切ってあたしは
「それじゃ、ちょっと出かけてくるね」
「うん、気をつけてね」
ひとみちゃんは何も知らずにニコニコしてる。
「行ってきます」
あたしは笑顔で家を出た。
―――後藤視点
梨華ちゃんはかなり動揺してた。
不自然なくらい笑顔で。
それにしても…。
ヨシコの鈍感ぶりはどうよ?
ごとーですら、梨華ちゃんの気持ちは分かるのに。
あ〜あ、どうして人間は愛する人に愛されないのかな。
ダメじゃん、神様。
―――石川視点
あたしは待ち合わせの駅に着いた。
さっき柴ちゃんからのメールで
『雨降ってきたからスタバにいるね』
とあった。
スターバックスに向かうと窓際の席にいた柴ちゃんが店の中から手を振った。
「ごめん、お待たせ」
「イエイエ、何を仰いますやら…どしたの?」
柴ちゃんが訝しげな顔をした。
「え、何?」
「イヤ…梨華ちゃん、何かヘンな顔してる」
「…それは生まれつきだよ」
言い終わらないうちにボロボロと涙が出てくる。
- 246 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月11日(火)22時56分16秒
- 「ホウ…それはそれは」
泣きながら事情を話すと、柴ちゃんはぐっとひとくちカプチーノを飲んだ。
「梨華ちゃんさ」
「ウン」
柴ちゃんにもらった駅前でよく配ってるティッシュで鼻を拭う。
「ソレ、よっすぃ〜の片思いなんでしょ」
「そう…だと思う」
「だったらまだ希望はあるじゃん」
「え、でも…」
「何なら寝込みを襲っちゃうとか」
ニヤッと柴ちゃんは笑う。
「…うちの姉さんみたいなコト言わないでよぉ〜」
「へぇ、理解のあるお姉さんじゃん。よかったよかった」
…何がいいんだ、何が。
あたしは溜息をついてカフェオレを飲んだ。
「ま、とにかく希望は捨てない事よ」
ポンと柴ちゃんはあたしの肩を叩いた。
「柴ちゃんは…前向きだね」
「悩んでたってしょうがないじゃん」
柴ちゃんはそう言って笑う。
「あ、あたしもこれでも人並みに悩むよ?前付き合ってた人が二股掛けてたって
分かった時は『どうすんのよ!』って詰め寄って一発グーで殴って終わりにしたし」
「柴ちゃん…それ、全然悩んでない」
可笑しくて、涙が出てきた。
しかもグー…。
「あ、そっか」
柴ちゃんも笑った。
柴ちゃんがいてくれてホントによかった。
しばらくふたりで笑い合っていた。
- 247 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月11日(火)23時01分51秒
- ―――吉澤視点
あたしはバイト先で窓ガラスを拭いてた。
「雨、まだ降ってる?」
なっちさんに声を掛けられる。
「あ、ハイ」
なっちさんはあたしが梨華ちゃんに頼まれた、ピンクのZO−3ギターの
不具合を見てくれている。
「どうですか」
「たいしたことはないべ。すぐ直るべ」
「スミマセン」
安倍さんの携帯が鳴った。
「ハイ、安倍です。あ、真里っぺ。どしたんだべ」
「…ハァ?分かったべさ、店終わったら行くべ。
あ、この前言ってたCDも持ってくよ、じゃ」
「何ですか?」
「いんや〜、何か店のスピーカーの調子が悪いから見てくれって言うんだべ。
なっちは電器屋さんじゃないっちゅーの」
あたしは笑った。
「えーっと…あ、あった」
なっちさん引き出しからCDを出してきた。
「…それは?」
「あ、なっちのプラターズのCDだべ。真里っぺに貸すんだよ。よっすぃ〜も聴くべか?」
「どんな曲入ってるんすか」
「ウン、『オンリー・ユー』とか『煙草の煙が目に染みる』とか」
「…エ?」
「なっち、中でも『煙草の煙が目に染みる』が一等好きだべ」
なっちさんは眩しいくらいの笑顔で言った―――。
- 248 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月11日(火)23時04分43秒
- ―――バイトが終わってまっすぐ下宿に帰る気が起こらず、本屋とかコンビニとか、
用事もないのにフラフラした。
「吉澤やんか!」
振り向くと、中澤さんと平家さんだった。
「あ、どうも」
「今、バイト終わったんか?」
「あ、ハイ」
「お疲れさん、ウチは今から飲みに行くわ」
「気ィつけて帰りや」
平家さんが言った。
あたしは頭を下げて2人と別れた。
…何だろ。このモヤモヤ。
頭がすっきりしない。
2人と別れてからもあたしはまだ駅前をウロウロしてた。
かれこれ、1時間くらいか。
「オイ!」
中澤さんに後ろから肩を掴まれる。
「まだ帰ってへんかったんか!」
「中澤さんこそ、どしたんですか?」
「ウチの吸うとる煙草が居酒屋になかったから買いに来たんや。ちょうどエエ、
付き合え」
酔っ払いに逆らうとロクな事にならないので、黙っておとなしくついて行った。
- 249 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月11日(火)23時09分10秒
- 「ドコまで行くんすかぁ?」
「もうすぐや」
何だか、周りがいかがわしい雰囲気になってきた。
「この先にウチの行きつけのタバコ屋がある」
「こんな時間に?もう閉まってるんじゃ」
「店がダメなら自販機がある」
そこは俗に言うホテル街で、派手なネオンが瞬いていた。
何だか落ち着かない。
「…あ!」
「どないしたんや?」
なっちさんと矢口さんが…すーっとホテルの中に入って行った。
中澤さんも気づいたようで、急に黙った。
「…やっぱり、付き合ってるんですか、あのふたり」
…しばらくして、あたしはやっと声を振り絞って言った。喉がやけに渇く。
「そうみたいやな」
「…知ってたんですか」
「まぁ、薄々と。現実に見たんは初めてやけどな」
―――それから。
中澤さんの吸いたい煙草を自販機で買って、(ウチにはてんで分からない、
外国産のだった)何故か2人で川原に行った。
- 250 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月11日(火)23時13分00秒
- 「ココなら思いっきりギターも弾けんで」
持って帰ってきた梨華ちゃんのギターのことを言ってるんだろう。
「何でこんなトコに…」
「アンタ、泣きそうな顔してんで」
「……」
「失恋にキク歌っちゅうのはあるんかいな」
「…何かリクエストありますか」
「…せやなぁ」
中澤さんはしばらく考え、
「『煙が目に染みる』でも歌うてもらおうか」
『They asked me how I knew
My true love was true
I of course replied
Something here inside,
Cannot be danied …』
中澤さんはさっき買った煙草を取り出して火をつけた。
雨上がりの、湿っぽい空気にムッと立ち込める匂い。
ウチはZO−3ギターを掻き鳴らし、続けて歌った。
中澤さんは黙って川の方を向いて聴いてる。
- 251 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月11日(火)23時17分36秒
- 『My love has flown away
I am without my love
Now laughing friends deride
Tears I cannot hide,
So I smile and say
When a lovely flame dies
Smoke gets in your eyes …』
静寂が戻った。
川の音だけが響く。
「エエ歌やな」
中澤さんがポツンと言った。
「アンタも吸うか?」
煙草を受け取って火をつけてもらう。
…とたんにむせた。久しぶりな上に…キツイ。カライ。
「ハッハ、中学生みたいやな」
その前に中学生は吸っちゃいけませんてば。
「名曲でも、そのどピンクのギターで弾いた日にゃカタなしやな」
「何でですかぁ〜、これはウチが梨華ちゃんにあげたんスよ」
「そうか」
2人でしばらく川を眺めてた。
…あたしはこらえきれなくなって、
「中澤さーん!吉澤は矢口さんが好きでしたーーー!!」
思っきし叫んだ。
「…そうか」
中澤さんはただ煙草をふかしてた―――。
- 252 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月11日(火)23時23分47秒
- 中澤さんの携帯が鳴った。
「ハイ。あ、みちよか。おお、スマン、スマン。いや、途中で吉澤に会うてな、
酔い覚ましに川原におんねん、今」
中澤さんがあたしに携帯を差し出した。
「何スか?」
「みちよが吉澤に代われって」
出てみると、
「あ、よっすぃ〜!スマンけど、姐さん店まで連れて来てくれへんかなぁ。
あの人、ホンマ鉄砲玉やから。頼むわ」
平家さんの泣きそうな声を聞いてるうちに、平家さんの心がなんだか
分かった気がした。
「分かりました、ちゃんと連れて行きますから」
電話を切った。
居酒屋まで中澤さんを連れて行き、平家さんに引き渡してからあたしは帰宅した。
「あ、ひとみちゃん。遅かったね」
梨華ちゃんが居間から出てきた。
「ウン。あ、これ、直してもらったから」
ギターを渡す。
「あ、ありがとう…どしたの?」
「え、何が?」
「ひとみちゃん、何か元気ないよ」
「いや、そんな事。おやすみ」
スッと前を通って居間を出る。
「…ちょっ!ひとみちゃん!」
あたしは階段を駆け上がって、部屋に入って戸を閉めた。
「ひとみちゃん!ひとみちゃん!」
梨華ちゃんが外からドンドン叩く。
- 253 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月11日(火)23時25分36秒
- 「ねえ!何があったの!」
「…何でもないッ!お願い、ほっといて!」
あたしは涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃになった。
「ほっとけないよっ!」
「お願い…大丈夫だから」
戸に背中をつけてあたしはずるずると床にしゃがんでいった。
―――最低だ。関係ない梨華ちゃんにまで八つ当たりして。
あたしは畳に膝を抱え、声を殺してしばらく泣いた。
―――石川視点
…何も出来ない自分がもどかしい。
ひとみちゃん、泣いてた―――。
あたしの前を通りすぎる時、確かに目に光るものがあった。
今も戸の向こうからすすり泣く声が聞こえる。
部屋の鍵も掛けてしまってる。
あたしは自分自身に歯がゆさを感じながら、しばらく部屋の戸を見つめてた―――。
- 254 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月11日(火)23時47分04秒
- 更新しました。
レスのお礼を。。。
>ごーまるいちさん
初レスありがとうございます(^^)柴っちゃんは最初から出そうと思ってたので、
気に入っていただけて何よりです。ごーまるいちさんもがんがってくださいね。
>婆金さん
レゲエの神様ですね(w ヒサブリに聴いてみたくなりますた。プラターズのは自分も
持ってます。いしかーさんは…見守ってやってください(^^;;
>ぶらぅさん
お久しぶりです(^^)いしかーさん、親友もできたしちょっとずつがんがると思います。
今回ビミョーな波乱はありますたが(^^;;あの番外編で姐さんファンが増えました。
間違いハケーン
>>235
中からから→中から
( `.∀´)<まったくしょぼい間違いねっ!
あ、それと…森板時代とここの最初の方にビートルズの
『I WANNA HOLD YOUR HAND』を出しましたが、タイトルは正しくは
『I WANT TO HOLD YOUR HAND』でした(汗 ツタヤにビデオ借りに行って、
たまたまビートルズのCDコーナー見て気づきました。
申し訳ありませんでしたm(__)m
(今までずーっと『WANNA』だと思ってた。。。)
- 255 名前:理科。 投稿日:2002年06月12日(水)16時37分01秒
- …ただただ切ないですね。
梨華ちゃんも、よっすぃ〜も。。。
この先どうなるのかドキドキワクワクしながら
更新、お待ちしております。
- 256 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月12日(水)19時53分41秒
- ―――翌朝
裕子は気がついたら平家の腕の中で眠ってた。
どちらも一糸纏わぬ姿。
…まったく記憶がないわけではない。
『抱いて』と言い出したのも自分だ。
平家の家の玄関を入った途端、たまらなくなって彼女にしがみついた。
とりあえず一旦家に帰り、朝食の支度をした。
吉澤はどうしてるのか。それが気がかりだった。
しばらくして辻と加護が起きてきて、慌しく朝食を取り学校へ行った。
梨華も何故だか腫れぼったい目をして降りてきた。
「おはよ…」
魂、ここにあらずといった顔だった。
「どないしてん、エライべっぴんさんなって」
「…うん」
「吉澤は昨日、ちゃんと帰ってきたか?」
「裕ちゃん、何か知ってんの?」
梨華は裕子の腕を掴んだ。
「まあ、そっとしとくんが一番やろ」
「何があったの?ひとみちゃん、泣いてたよ」
「これはあの子の問題や。誰かがどうとでけるコトやない」
梨華は裕子の言葉に黙り込んでしまった。
「ゴハンにしよか」
裕子は梨華の肩を叩いた。
- 257 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月12日(水)19時57分35秒
- しばらくして、平家から電話があった。
「姐さん、上着忘れてんで。どうする?持って行こか」
平家の声は普段と変わらなかった。ゆうべの事は微塵も感じさせないくらいに。
裕子は
「取りに行くわ」
と言って電話を切った。
平家の家に行くと、彼女はベランダで洗濯物を干してる途中だった。
裕子は床に膝を抱えて座り、それを眺めていた。
「なぁ」
裕子は口を開いた。
「何?」
「何で…ゆうべああなったん」
「覚えてへんのかいな」
平家は苦笑する。
「そうやのうて…アンタ、ウチのこと好きなワケでもないやろ」
「そやったら拒否するがな。姐さんこそ、何でなん?」
「ウン…そこなんや」
裕子は軽く自分の指を噛んでしばらく考えた。
- 258 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月12日(水)20時01分55秒
- 「寂しかったんか?」
平家はシャツを干す手を止め、裕子の方を向いた。
「そうやない言うたらウソになるけど…それだけでああ言うほど若ない」
「ソレはウチもや」
「み、みちよこそ、ゆうべは独占欲の鬼みたいなコト、ずーっと言うとったやんけ!」
いきなり裕子は思い出したように言った。顔を赤くして。
平家はまた苦笑する。
「まあ、ああいう時はな」
「みちよの気持ちが分からへん…」
裕子は更に膝を抱えた。
平家は近づいていって、
「束縛しようとは思わへん。姐さんの好きにしたらエエ」
肩を抱きしめた。
「…何やねん、オトナぶりおってからに」
裕子は自分の肩を抱きしめる平家の腕に、自分の手を添えた。
そうして、思いを込めてキスをした。
「みちよ、ハラ減った」
「ハイハイ、お昼にしよか」
平家は笑って台所に向かった。
- 259 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月12日(水)20時06分20秒
- ―――吉澤視点
―――気がついたら日が高く昇ってた。
ゆうべ…あのまま泣き疲れて畳の上で眠ってしまったみたいだった。
そばにあった目覚ましを掴んで時間を確認すると、昼の1時を回ってた。
今日はバイトもないし、昼からの授業も休講だ。
何だか体の力が抜けた。
下に降りてってそっと台所の様子を伺う。
誰もいないみたいだ。
梨華ちゃんも、大学に行ったようだ。
「ハァ、メシでも買って来ようかねぇ」
ハラが減っては何とやら。
とりあえず、コンビニに向かう。
―――石川視点
あたしは午前の授業を受けた後、すぐ帰宅した。
駅前のスーパーで夕食の買い物を済ませ帰路に着くと、家の前に保田さんがいた。
「保田さん」
「ホホ!待ったわよ!」
「どうしたんですか」
「有休取ったはいいけど、何処にも行くあてがなくてヒマだから遊びに来たのよ!」
「…なら何で有休取るんですか」
「んま、随分な言いようね!裕ちゃんもお出かけ?」
「ええ、平家さんの所に行ってるみたいです」
あたしは保田さんと家の中に入って行った。
- 260 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月12日(水)20時10分08秒
- 保田さんをとりあえず台所にお通しした。
冷蔵庫に買ってきた材料を入れ、お茶を沸かす。
「ちょっとアタシの元・住まいも見せてもらっていいかしら」
テーブルでお茶を飲みながら保田さんが言った。
「いいですけど…ひとみちゃんの許可を得ないと」
とりあえず、上に上がった。
「ひとみちゃん?」
戸をノックしても返事はなし。
戸には鍵が掛かってなくてすぐ開いた。
「ほぉ〜、綺麗にしてるじゃない。てか、殺風景な部屋ねっ」
「…もう閉めますよ。バレたらひとみちゃんに怒られますし」
「…ナニしてるんスか?」
後ろにひとみちゃんが立っていた。手にはコンビニの袋。
「ヒャッ!ひとみちゃん、あのこれは…!」
「ホホ!あたしの大学時代の青春の部屋を見に来たのよ!」
「…へ?」
「あ、あの、保田さん、前ここの部屋使ってたの。中澤ハイツ入る前に」
「そうっスか。てか、勝手にヒトの留守中に開けないでくださいよ〜」
ひとみちゃんはいつものように笑った。
…よかった。少し、元気になったみたい。
「出かける時は施錠!コレ、ナカザワ下宿の常識!」
「あ!ウチ、鍵掛け忘れ…あ〜あ」
「ホホ!石川もアンタの派手な下着を顔を赤らめながらもしっかり見てたわよ!」
「マジで?」
ひとみちゃんがあたしの方を見る。
なななな、何てコト言うんですか!保田さん!!
- 261 名前:SMOKE GETS IN YOUR EYES 投稿日:2002年06月12日(水)20時25分03秒
- 「ちが、違う…!」
しどろもどろで否定すると、
「な〜んてね!ウソぴょんっ!」
保田さんがお得意のケメコポーズで言った。
「キショッ!てか、梨華ちゃんがそんなコトするわけないっしょ!」
ひとみちゃんが楽しそうに笑う。
…やっぱり、この人のコト、好きだ。
ひとみちゃんが嬉しいと、あたしも嬉しい。
ふざけてはしゃぐふたりを見つめながら、あたしは自分の思いを再認識した。
「ウチさ、失恋したんだ」
夕食の後、縁側でひとみちゃんが言った。
「…エ?」
「いや、ウチ矢口さんのコトちょっと気になってたんだけど、矢口さん付き合ってる
ヒトいたんだ」
「…そう」
「ゴメンね、ゆうべは」
ひとみちゃんがあたしの方を見る。
あたしは黙って首を振った。
「梨華ちゃんは優しいね」
ひとみちゃんはそう言って笑う。
優しいのはあなたの方で―――。
その優しさに、何度助けられてきたか分からない。
だから―――。
今度はあたしがひとみちゃんを助けてあげたいの。
缶コーヒーを飲む横顔。
最初は外見に惹かれたけど。
でも、そのあったかさに触れてるうちに、どんどん自分の気持ちが膨らんでいった。
多分、もう止められないだろう。
「飲む?」
あたしが見ている事に気づいてコーヒーを差し出した。
「あ、うん。いただきます」
缶コーヒーは苦くて、時々甘くて。
自分の気持ちみたいな味だった。
- 262 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月12日(水)20時36分07秒
- 更新しました。
レスのお礼です。
>理科。さん
(#T▽T)<うぅ、何もできない自分がもどかしかったんです
(;0^〜^)<ごめんよほ。オイラ、多分もう大丈夫だから
いしかーさん、ちょっと強くなるの巻でした。ヨスコも多分ちょっと成長したかと
思われ。
訂正です
>>247
なっちさん引き出しから→なっちさんは引き出しから
- 263 名前:オムらいっすぅ 投稿日:2002年06月12日(水)22時54分57秒
- お久し振りです。沢山更新出来てますねぇ、私も見習わないと(w
わお、柴っちゃん登場ですね〜!(話題が少し遅いですが)
強いですね、彼女は。梨華ちゃんもいい友達を持った!って感じです。
そして、よっすぃ〜失恋ですか…。でも元気になって良かったですね〜
さてここからが本番、今度こそ梨華ちゃんが支えてあげなければ!
そしてよっすぃ〜も少しは気付いてあげなければ(w
続きも頑張って下さい〜。応援してます♪
- 264 名前:みぎみぎ 投稿日:2002年06月13日(木)10時05分21秒
- ごまべーぐるさん…更新早!
わし、追いつきませんよ(涙)
ううう。がんばりますです。
- 265 名前:みぎみぎ 投稿日:2002年06月13日(木)10時05分59秒
- sage忘れたーーーーー!(爆)
- 266 名前:16 CANDLES 投稿日:2002年06月13日(木)17時49分37秒
- ―――加護視点
ハァ、まったく蒸し暑いな。
最近雨が多いし、かなわんワ。
でも東京はまだいくらかマシかもな。
奈良は盆地やから、夏の暑さはハンパやないで。
そんなこんなで。
6月17日は、ののの誕生日や。
ウチは極秘に(?)リサーチして、マイメロディーのぬいぐるみをこっそり
プレゼントとして用意した。
中澤はんは2日後の19日が誕生日やから、平家はんとかに
『1日女王様権』を贈る権利を授ける、とか、ワケ分からんコト言うて
とてもイヤがられてた。
普段と大差ないんちゃう、ソレって思うし。
梨華ちゃんがある日、
「何か欲しいものある?」
って晩御飯の時、ののに聞いてたから、ウチは参考の為聞いてないフリして
しっかり聞き耳立てたワ。
そしたら、
「8段アイスれしょ、麺が太目の焼きそばと、チョコバナナクレープに
メロンにシュークリームに…」
食い物名ばかり挙げてったのに呆れ、『ソレは食いたいモンやろっ!』って
ツッコむ気も起こらんかった。
- 267 名前:16 CANDLES 投稿日:2002年06月13日(木)17時59分29秒
- ののの誕生日と中澤はんの誕生日は、17日に一緒にお祝いされるコトになった。
ちょうど17日は月曜で学校やから、ののは紙袋にいっぱいプレゼントを
入れて持って帰ってきた。
「エライ荷物やな」
一足先に帰ってたウチは、廊下でばったりののに会ってそのハンパじゃない量に
ぎょっとした。
「お友達がたくさんプレゼントくれたれす、お昼をおごってくれた子もいるれす」
ののは屈託なく笑いおった。
「ののちゃん、ケーキに何て書く?」
台所から梨華ちゃんが顔を出した。
大学から帰ってずっとケーキを焼いたりして、合同パーティーの支度をしてはった。
「何でもいいれす。お任せするれす」
ののはそう言って自分の部屋に荷物を置きに行った。
しばらくして台所に行き、ウチはさっき言ってたケーキの方をちらっと見た。
ケーキには『HAPPY BIRTHDAY!!NOZOMI&YUKO』と
ピンクのチョコの字で書いてある。
ロウソクは何本やろ。…ゆったら中澤はんにシバかれるな。
献立はこれまたベタに持つトコに白い紙の飾りがついた唐揚げやら、
ナビ○コのリッツのハコの裏の写真みたいなカナッペやった。
(リッツ・パーティーへようこそ!とか書いとるヤツや。ホンマにそんな
パーティー開いてるヒトいるんやろか、と長年の謎やったんが今解けたワ)
- 268 名前:16 CANDLES 投稿日:2002年06月13日(木)18時04分50秒
- 「んあ〜、今日はご馳走だねぇ」
後藤さんが例の口調で現れた。
「フフ、つまみ食いしちゃだめよ」
梨華ちゃんはウィンクしてサラダをパーティー会場に持ってった。
すぐ戻って来て冷蔵庫からジャムを出した。
「ふたりともココで待ってて。もうすぐだから」
「んあ〜、何か手伝うよ」
「あ、ウチも」
梨華ちゃんがジャムの瓶のフタを開けようとしてた。
「ア、アレ?」
硬いんか、なかなか開かへん。
ウチも頑張ってみたけど、お手上げやった。
「んあ〜、貸して」
後藤さんはそう言って瓶を受け取った。
一瞬何か気ィみたいなモンを送ってヒネリを入れたかと思うと、
『パカッ』
難なく開いた。
「すご〜い!ごっちん、力持ちだねぇ!」
梨華ちゃんは感動の面持ちで言う。
後藤さんは得意げやった。
ウチは素直に感動して
「師匠と呼ばせてください!!」
後藤師匠に頭を下げた。
師匠は
「え〜?ガラじゃないよ〜」
って照れてはる。梨華ちゃんは横で
「師匠!」って言ってふざけてた。
- 269 名前:16 CANDLES 投稿日:2002年06月13日(木)18時07分29秒
- 参加者が揃ってパーティーが始まった。
保田のおばちゃんは仕事でちょっと遅れるらしい。
よっすぃ〜もバイトで遅なるいうてた。
「イヤ、16かぁ。若いねぇ」
カンパイした後、平家はんが言わはった。
「どうせ若ないいうんやろ」
中澤はんがすぐさまどつく。
「イタイなぁ〜、も〜」
平家はんは叩かれた腕を押さえ、ブーブー言うてはる。
「辻、コレ」
飯田さんが何やら板みたいなモンをののに渡さはった。
「開けてもいいれすか」
飯田さんが頷くと、ののは丁寧に包みをはがした。
中身が公開された瞬間、一同から嘆息が漏れた。
それは…ののを描いた水彩画で、まるで写真みたいにソックリやった。
「いいらさん、ありがとうれす!のの、大切にするれす!」
ののは絵を抱きしめて頬を紅潮させて言った。
飯田さんは優しく微笑んでる。
「飯田さ〜ん、石川の絵も描いてくださいよ〜」
「石川は難しいんだよ、絵にすんの」
え〜、そうなんですかー、と梨華ちゃんは笑う。
「ごとーはコレね」
師匠は立ち上がって傍に置いてたギターを取った。
口にはちっこいハーモニカ(後で師匠に聞いたらブルースハープというヤツらしい)。
端に金属の棒みたいなんがついてある。
よく街中で弾き語りしてはるヒトなんかがやってるアレや。
「18番ゴトウマキ、『SIXTEEN CANDLES』を歌いま〜す♪」
師匠はギターを弾き出した。
- 270 名前:16 CANDLES 投稿日:2002年06月13日(木)18時10分32秒
- 『Happy birthday
Happy birthday baby
Oh I love you so
Sixteen candles
Make a lovely light
But not as bright
As your eyes tonight
Blow out the candles
Make your with come true
For I'll be wishing
That you love me too …』
…師匠、カッコよすぎや。
さすがウチが師匠と認めただけあるわ。
間奏でハーモニカをこれまたカッチョよく吹き鳴らしてはる。
皆、笑顔で手拍子してる。
『Sixteen candles
In my heart will glow
Forever and ever
For I love you so 』
『For I love you so …』
最後にじゃかじゃかじゃかじゃかじゃんって感じで締めて、大喝采の中、
師匠のミニ・ライブは終わった。
「んあ〜、Happy Birthday!辻ちゃん!!」
師匠にほっぺにキスされて、ののは首をすくめ嬉しそうに頬を赤らめた。
- 271 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月13日(木)18時26分31秒
- 更新しました。
レスのお礼です。
>オムらいっすぅさん
(0^〜^0)ノノ <ウン、オイラ、元気になったよほ。アラヨッ
( ^▽^)<ムリしちゃだめよ♪
オヒサスブリです(^^)。これでちっとばかしふたりの距離は近づいた?
>みぎみぎさん
( ´ Д`)<んあ〜、ヒマな作者だからねぇ
( `.∀´)<アタシの登場回数が増えるのならヨシ!よ
色々とお世話になってますm(__)m ありがとうれす。
( ´D`)ノ<おしらせなのれす
知人のご好意で下記のアドレスのサイトに、ごまべーぐるコーナーを設置して
頂きました。『ベース弾き』と金板の方をまとめてあります。またお暇な時にでも
覗いて頂けたら幸いです。
ttp://migimigi.hoops.ne.jp/goma_index.html
- 272 名前:オムらいっすぅ 投稿日:2002年06月13日(木)18時33分13秒
- リアルタイムですた。
コーナー設置おめでとうございます!早速行ってみますね♪
今回はあいぼん視点ですね。ごっちんを「師匠」って呼ぶあいぼん可愛い(w
裕ちゃんとみっちゃんの絡みも面白くて好きです。
年ネタはやっぱ出るんですね…(w
次も楽しみにしてます♪
- 273 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月13日(木)18時44分07秒
- ・間違い訂正
>>259
帰路に着く→帰路につく
何かヘンだと思って辞書を引いたら案の定…。(;^▽^)
・今回のタイトルはザ・クレスツの『SIXTEEN CANDLES』より。
自分は観た事はないのですが、『SIXTEEN CANDLES』という
アメリカ映画もあるそうです。(邦題『素敵な片想い』)
- 274 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月14日(金)02時35分01秒
- 何気なみっちゅーがツボだったりします。
でも・・・姐リカ?っていうんですかね?
またこの二人の絡みもちょっぴりでいいので入れて欲しいな(w
- 275 名前:16 CANDLES 投稿日:2002年06月15日(土)00時06分48秒
- その後も宴は盛り上がり、平家はんが後藤師匠の伴奏で、自分の持ち歌の
『ムラサキシキブ』という歌を歌わはった。
しかもフリつきや。かなりゼイタクなプレゼントやワ。
「すごいれす!プロの歌手みたいれす!」
「プロじゃ!!!」
ののの悪気の無い台詞に、平家はんは泣きそうなカオしてはった。
中澤はんは笑い転げてはる。
皆もギャハハと笑ってる。
―――こんなに楽しい誕生日会は久しぶりや。
「ホホ!遅くなってすまなかったわねっ!」
保田のおばちゃんがやっとこさ現れた。
「圭ちゃん、遅〜い!」
飯田さんがそう言っておばちゃんの席を空けてあげはった。
「まあまあ。辻」
「へいっ」
「これ、気にいるといいんだけど」
ののは礼を言って受け取り、おばちゃんのプレゼントを
「開けてもいいわよ」
と促され開けてみた。
「オルゴールれす!」
曲はモーニング娘。の『I WISH』やった。
独特の音色が柔らかく流れてくる。
「おばちゃん、ありがとうれす!」
「おばちゃんは余計よっ!」
ののが幸せそうなカオをするんで、おばちゃんは怒れんで笑いながら言った。
- 276 名前:16 CANDLES 投稿日:2002年06月15日(土)00時13分10秒
- 中澤はんには皆でおカネを出し合って、シルクのパジャマと
豹柄のベッドカバーを買って贈った。
いつも世話なってます、という気持ちを込めて。メチャ喜んでくれはった。
梨華ちゃんはそれにもカンパしてくれたけど、別にアクセサリーを
買わはったらしい。
ホンマ仲エエ姉妹や。
梨華ちゃんはややシスコン気味やけど。
中澤はんも年離れた梨華ちゃんが可愛くてしゃーないみたいや。
パーティーもお開きになって、皆それぞれ帰っていかはった。
ウチは後藤師匠に今度ハーモニカを教えてもらう約束をした。
師匠みたく、カッチョよく吹いたんねん。
そんで今度の音楽のテストでギター弾きながら、吹くんや。
皆の視線釘付けで。
あ〜、そう考えると今からゾクゾクするわっ。
「梨華ちゃんにもらったれす」
ののの首には茶色の革紐に小さなシルバーのクロスがついた、可愛いチョーカーがあった。
「へぇ、ええやん」
「梨華にしてはセンスエエやんか」
中澤はんがニヤニヤして言う。
も〜お、と言って梨華ちゃんは中澤はんの腕を叩いた。
中澤はんは笑って『ほな、先休むワ』て出て行かはった。
さあ、次はウチやな。
そろそろ部屋に戻ってプレゼントを取りに行くか。
「ののの欲しかったマイメロディーのぬいぐるみももらったれす!」
「…エ?」
ウチは固まってもた。
「誰、に?」
アホみたいに口開けて。
「同じクラスのお友達れす!」
のの、その笑顔がメチャ眩しいワ…。
- 277 名前:16 CANDLES 投稿日:2002年06月15日(土)00時18分45秒
- ののの部屋にソレを見に行ったら、ウチが買ったヤツと大きさまで一緒やった。
…ウチはアホや。
ちょっとオリジナルチーってやつに欠けた。
キャラモノが好きやからってそのぬいぐるみて…。
「…ハァ」
台所のテーブルで暗い顔をして座ってると、まだ帰ってはらへんかった師匠が、
「んあ〜、どしたの、弟子」
と頭を撫でてくれはった。
「イヤ、師匠、それが…」
事情を話すと、
「渡せばいいじゃん」
あっさり師匠は言わはった。
「でも…カッコわるないですか。ダブってるんですよ?」
「じゃ、何かオマケをつけたら?」
梨華ちゃんがぬっと現れた。聞いてたんかいな!しかも前フリないし!
「あっは!いいね、ソレ!」
師匠も笑てはる。
「オマケって?」
「ん〜、そうねぇ…あ!ののちゃんの好物を作ってあげるとか」
「今からケーキ焼くの?」
「ケーキとまではいかなくても」
梨華ちゃんがいたずらっぽく笑った。
「それより豪華なのができるかもよ?」
- 278 名前:16 CANDLES 投稿日:2002年06月15日(土)00時24分56秒
- ウチは梨華ちゃんと師匠に手伝ってもらって、クレープを焼いた。
師匠の提案で、何枚もクレープを積み重ねて、間にチョコバナナを
挟んだヤツを作ることになった。
梨華ちゃんは、今日のケーキ作りで残った生クリームとチョコシロップを
提供してくれはった。果物カゴにあったバナナも。
焼きあがったクレープをお茶の缶のフタくらいの大きさに型抜きして重ねていき、
小さいミルクレープを作っていった。
「できた!」
急場しのぎにしてはウマイことできた。
「おいしそう!」
「んあ〜、カンペキだね!」
3人でガッツポーズをした。
さっきのケーキの使い古しやけど、ロウソクを立てて、ウチはふたりに
礼を言って特製ケーキを持ってののの部屋に行った。
ノックしたら、ののはすぐ出てきた。
「どうしたんれすか」
「これ…」
ウチは例のぬいぐるみの包みとケーキを渡した。
「誕生日おめでとう、ほなな」
恥ずかしいから、ウチはすぐ去ろうとした。
「あいぼん!」
「何や!」
「一緒にお祝いしてくらさい」
ののは笑顔で言った。
- 279 名前:16 CANDLES 投稿日:2002年06月15日(土)00時28分35秒
- お茶を入れて、ケーキのロウソクに火をつけた。部屋の明かりを消して。
「あいぼんも願い事するれす」
ののに言われてウチは一生ケンメイ考えた。
てか、主役が考えんねんぞ、ソレって。
…ウチは、何がほしいんやろ。
「願い事、いいれすか」
「ウ、ウン」
「じゃ、一緒に吹き消すれす」
『ノノトイツマデモイッショニ…』
『フッ!』
火はすぐ消えた。
「ぬいぐるみ、ありがとれす!」
ののはウチのぬいぐるみを抱きしめて言った。
「てか、ダブってもたな」
ウチは苦笑した。
「ううん、嬉しいれす」
『プレゼントはココロなんだよ』
師匠はさっきこう言わはった。
師匠、ウチ、一生師匠についてゆきます!
- 280 名前:16 CANDLES 投稿日:2002年06月15日(土)00時35分55秒
- ―――石川視点
「ひー!遅くなった!」
ひとみちゃんが11時過ぎに戻ってきた。
バイトの後、急用が入って遅くなったらしい。
「のの、もう寝たかなぁ」
「ウン、多分」
「じゃ、ココ置いとくか」
ひとみちゃんはののちゃんの部屋の前に紙の袋を置いた。
「何?」
「ん、ギターのチューナー。欲しいって言ってたからさ」
ののちゃんはギターをちょっとずつマスターし、学校でたまに友達と
弾いてるらしい。前に嬉しそうに教えてくれた。
ひとみちゃんはそれを覚えてたんだ。
あたしもちょっと嬉しくなった。
ひとみちゃんは
「ハラ減った〜!」
大きく伸びをして言った。
「フフ、すぐ支度するわね」
―――こうして穏やかに誕生日の夜は過ぎてゆきました。
- 281 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月15日(土)00時47分44秒
- のの&姐さん、誕生日おめでとう短編でした。
レスのお礼です。
>オムらいっすぅさん
先日はどうもでした(^^) 姐さんの年ネタはお約束ですから(w このふたりは
書いてて楽しいです。
从 #~∀~从ノ<やかましわ!
>名無し読者さん
何気にラブラブなふたりなのです。姐リカファンって多いなぁ。
考えておきます(^^)
( `◇´)<まぁ、手ェかかる人やけどな、放っとけんちゅうか。
- 282 名前:オガマー 投稿日:2002年06月15日(土)05時19分53秒
- ごまべーぐるさんのスレにもレスさせて頂くとします(笑)
梨華たんガムバレ!!
オイラはモーレツに君を応援してまふ。
その気持ち吉に届くことを祈りながら…
- 283 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月15日(土)06時20分34秒
- レスのお礼です。
>オガマーさん
(#T▽T)<うう、温かいお言葉ありがとうございます!こんなあたしを
これからもよろしくお願いします!
初レスありがとうございます(^^)これからも見守ってやってください。
さて。ちょっと短いお話をひとつ…。
- 284 名前:特別なひと 投稿日:2002年06月15日(土)06時28分36秒
- パーティーがあったその週末、裕子は平家の自宅にいた。
『ふたりでお祝いしよ』
平家は帰ってからわざわざ電話をかけてきた。
平家はとっときのバカラのシャンパンフルートを取り出してきて、
あらかじめ冷やしてたおいたシャンパンを開けた。
「誕生日おめでとう」
グラスを重ね、乾杯する。
平家の言葉に、裕子は内心複雑なモノを感じた。
「どしたん?」
「ん…いや、もう30かぁと思てな」
「姐さん、女は30からやで」
「でもなぁ」
「何やの」
「アンタ…ウチより5つ下やん」
「うん」
「…エエんか?」
「何がやの」
「ウチ…先、死ぬかもしれんで」
「人間はみんな死ぬて」
平家は優しく笑った。
「だから、姐さんといたいんや」
裕子は柄にもなく照れて赤面した。
「姐さん、手、出して」
裕子は言われるままに右手を差し出した。
平家はプラチナの指輪を取り出し、裕子の薬指にはめた。
- 285 名前:特別なひと 投稿日:2002年06月15日(土)06時30分36秒
- 「…みちよ」
「姐さんは梨華ちゃんがイチバン大事やて分かってる」
平家は続けた。
「だからウチは100番目くらいでエエ」
後の2から99までは何やねん、といつもならツッコむだろう。
だが、裕子は黙って薬指の指輪を見ていた。
「みちよにウチ…誕生日に何もしてへんで」
ただ居酒屋で、いつものようにふたりで飲んだくれた。
「エエ、エエ。それにウチは」
「神様から姐さんっていうプレゼントをもうた」
- 286 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月15日(土)06時33分27秒
- オチなし。スマソ
・特別な人
从 #~∀~从<みちよとこの前シャンパン飲んだんや!
( `.∀´)<へぇ、ドンペリとか?
从 #~∀~从<いや、クリュグとかいうヤツや!
( `.∀´)<何年もの?
从 #~∀~从<えと…89年やったかな
煤i;`.∀´)<は、89年!?(ビンテージじゃん!)
从 #~∀~从<おぅ、めちゃウマかったで!
(;`.∀´)<…そうでしょうとも(しかもその指輪…カルティエじゃ)
もっとオチなし(^^;;
- 287 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月15日(土)07時09分23秒
- ――― 後日談
ニコニコニコニコ
( ^▽^)
从 #~∀~从<……
( ^▽^)<エンゲージリングは左だよねっ。じゃっ、右は?
从 #~∀~从<…『恋人がいます』や
ニコニコニコニコ
( ^▽^)
从 #~∀~从<……
- 288 名前:水海 投稿日:2002年06月16日(日)00時49分26秒
- いつも楽しく読ませていただいてます。
クリュグ・ビンテージ。思わずyahoo!で検索かけてしまいました。
しかし、売れない歌手のみっちゃん(あくまでも物語上ね、あくまでも)、
姐さんのために…… 愛の証ですね。
- 289 名前:婆金 投稿日:2002年06月17日(月)01時17分55秒
- 辻加護エピソード、可愛くていいですね。
それにしても、いしかーさんの幸せを祈ります。
そしてやっぱりシスコン万歳!
- 290 名前:土曜の夜は 投稿日:2002年06月17日(月)05時17分20秒
- 「クラブに行きたいのれす」
きっかけは辻のこんなひとことだった。
彼女の言うクラブは『ターさま、いらして』の方ではなく、若者が集って踊る
方のアレである。
DJが『♪ブンシャカ ブンシャカ』ってしてる方である。
「クラブいうたらアレか、ヤマちゃんやらミネちゃんやらいう、ハゲのオッサンが
飲みに行くトコか」
裕子も何か勘違いしている。それでは近所のスナックである。
「今日みちよちゃん来てないの、とか言うてなぁ」
勝手に話の中でホステスにされた平家は、複雑そうな顔で黙ってコーヒーを飲んだ。
「何でまたクラブに?」
姉のバカな発言は無視して、梨華が言った。
「ののももう大人れす、16歳なのれす。だからクラブにゆくのれす」
「てか、その童顔でか。フツーに入店拒否されると思うで」
「あいぼんは興味ないれすか」
「なくはないけど…ウチらだけじゃムリやろ」
「そこれれす!」
辻は人差し指をピッと上げた。
「なにーな」
「付添い人をつけるれす」
梨華の方を見て、辻はにっこり笑った。
- 291 名前:土曜の夜は 投稿日:2002年06月17日(月)05時20分28秒
- 「へぇ、クラブかぁ〜」
吉澤はバイトから帰って遅い夕食を取りながら、梨華の話を聞いていた。
「ウン。でもあたし、あんまりそういうの行ったコトなくて」
「てか、梨華ちゃんってあんま出かけないよね、夜とか」
柴田と友達になってから徐々に外出の機会は増えだしたが、
それでも梨華は年頃の娘にしてはインドアーだった。
「ウン、今まであんまり友達いなかったし…」
「そっか。ウチもヒサブリだなぁ、クラブは」
「ひとみちゃんはよく行ってたの?」
「ん〜、バンド絡みとかでね」
「へえ」
「行ってみる?思い切って」
「本気?」
「ウン」
吉澤はニヤッと笑った。
- 292 名前:土曜の夜は 投稿日:2002年06月17日(月)05時25分58秒
- ―――そしてある土曜日
ここは中澤ハイツ前。
「集合〜。ハイ、点呼取るよ〜」
飯田の掛け声で、ぞろぞろとクラブ観光メンバーは集まった。
「…保田さん、何スか?その格好は?」
吉澤は不審げな顔をして言った。
「ホホ!NYの最先端のクラブファッション風ってのが今日のコンセプトよっ!」
「…なんていうか、クラブってより、『デスコ』って感じ」
柴田の声を潜めた言葉に梨華は迷わず頷いた。
「オバチャン、スゴイカッコやなぁ」
「何者れすか」
「わぁっ!」
保田は後ろにのけぞった。
「アンタ達こそ何よ!てか、誰の服よ!ソレ!」
「エ?中澤はんと梨華ちゃんとよっすぃ〜やで」
「ののもれす」
辻・加護コンビはばっちりメークもし、普段の3割増しは大人に見えた。
服装もかなり気合が入っている。入店拒否はされない程度にと、
吉澤と梨華が頑張った。
「や〜ん!可愛い〜」
柴田がふたりに抱きついた。
柴田は基本的に可愛いモノ好きだった。携帯なんかもピンクを選ぶタイプである。
「この姉さん、誰?」
ぎゅっと抱きしめられて息苦しさを感じながら加護は言った。
「あ、あたしのお友達の柴田あゆみさん」
「石川の友達なの?」
飯田は思わず聞き返した。
「ハイ、よろしくお願いします」
柴田は飯田と保田の方を向き、頭を下げる。
飯田と保田は顔を見合わせ、『ヨカッタ』と目で会話し頷き合った。
- 293 名前:土曜の夜は 投稿日:2002年06月17日(月)05時28分53秒
- 件のクラブに一行は到着した。
幸い入店拒否される者もなく、中に入りとりあえず空いてる席を探す。
「吉澤の格好もスゴイよねぇ」
飯田が言った。
その日の吉澤はシャツの中にTシャツ、フツーのジーンズ。足元はスニーカー。
一見、『コンビニにアイス買いに来たニイちゃん』だ。
しかし、皮のゴツいブレスやクロムハーツの馬蹄型のペンダントなど、吉澤なりのこだわりがあった。
「フフン、ジーンズは古着なんですよ、これがマタ!」
「はぁ、カオにはただの履き古したジーパンしか見えないわ」
「ののもれす、いいらさん」
理解してもらえず吉澤はトホホ、という顔をした。
- 294 名前:土曜の夜は 投稿日:2002年06月17日(月)05時31分06秒
- 一同はフロアに出てみた。
保田は「キリキリ逝くわよ!」と言って激しく踊りだす。
飯田も実は『ダンシング・クイーン』の名を欲しいままにしている、
かなりの踊り手である。
ふたりは周囲の注目を集めながら踊りまくった。
このクラブはその日、80年代のディスコをコンセプトにした日でもあった。
ベタにビー・ジーズが流れる。
『♪スティン・アライブ スティン・アライブ』
吉澤は踊りながら大声で歌った。
カタカナを通り越して、ともするとひらがなになりそうな発音だった。
「よっすぃ〜って…英文科なんだよね、確か」
と柴田。
「…ウン」
梨華は困惑しながら笑った。
- 295 名前:土曜の夜は 投稿日:2002年06月17日(月)05時33分22秒
- 中が急に暗くなった。
お約束でチークタイムである。
スローバラードの曲がムーディーに流れる。
梨華は気を利かした柴田に背中を押され、一歩進んで吉澤の前に出た。
「あ、えっと…」
戸惑っていると、吉澤と目が合った。
「踊る?」
苦笑しながら吉澤は言った。
「あ、うん…」
梨華はおずおずと吉澤の背中に両腕を回す。
「では、シツレイします」
おどけて吉澤も腕を回してきた。
梨華は気が気ではない。
心臓がいつもの5倍くらいのスピードで動いている。
この鼓動を聞かれるのが恥ずかしい。
顔も、相当赤くなってるはずだ。
「梨華ちゃんて…イイ匂いするね」
吉澤が言った。
「エ…」
「何か香水つけてる?」
体勢的に耳元で囁かれるような形になり、梨華は必要以上にクラクラした。
「あ、ちょっと…だけ」
「そっか」
ひとみちゃんこそ…。
吉澤のシャツの匂いに梨華はドキドキする。
髪の毛からこぼれるシャンプーの香り、汗、体のぬくもり…。
梨華はギュッと吉澤を抱きしめ、
『もう死んでもイイ!』
幸せを噛み締めた。
- 296 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月17日(月)05時43分45秒
- 更新しました。眠くて間違い多いカモ(汗 何かヨスコがジゴロみたいだ(w
( ̄〜 ̄ 0)<イイ匂いするね ムフーン
レスのお礼です。
>水海さん
从 #~∀~从ノ<いや〜、うまい酒や!←分かってないヒト
自分もネットで値段見て死ぬかと(w ミチャーソ、愛の人です。ところで勘違いでしたら
スマソ どこかで書かれてませんでしたか?覚えのあるHNなのですが…。
>婆金さん
( ´D`)ノ<あいぼんのケーキはおいしかったのれす!
姐さん・みっちゃんのアダルトコンビとの対比なのれす。少女たちはこういう可愛い
誕生日がいいかと。金板…ありがとうございます(w
- 297 名前:オガマー 投稿日:2002年06月17日(月)08時49分58秒
- 罪ですね、ヨスコ( ̄ー ̄)
梨華たむが幸せでオイラも幸せ(氏
吉澤でかした!
その調子で梨華たむをもっともっと幸せにしてあげて♪
ごまべーぐるさん、ジゴロよしこグッジョブですw
- 298 名前:ゆっち 投稿日:2002年06月17日(月)10時50分20秒
- やっぱり、こういう甘いシーンはイイです。
仕事中、ひとときの幸せです。
ありがとうございます。
- 299 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月17日(月)11時24分56秒
- みちゅーもクラブに連れて行ってやってくれ〜。
年寄りはr(w
- 300 名前:オムらいっすぅ 投稿日:2002年06月17日(月)20時06分06秒
- こんにちわ〜。300げっと!?出来たかな?
と言う事で300おめでとうございます♪
これからも頑張って下さい!(お前もな…)
そういえばよっすぃ、英文科だったんですね(w
カタカナ(ひらがな?)発音…まぁ、今どきは皆こうですよね(えっ?)
そして梨華ちゃん幸せ状態。私もオガマーさん同様しやわせです〜(謎)
いいですねぇ。やっぱ甘いのが一番っす♪
…実はこのクラブ会場にも、いちごまの二人がいたりして…(妄想)。
- 301 名前:土曜の夜は 投稿日:2002年06月18日(火)02時36分49秒
- ――― 一方、吉澤も。
『ハァ、梨華ちゃん、マジいい匂いするよ…』
華奢な梨華を抱きしめて、ドキドキしていた。
『何の香水だろ?後で聞いてみよかな…それにしても、さっきからウチの
オナカらへんに当たってるのは、やっぱ…胸?』
控えめとはいえない感触に、吉澤はドギマギする。
『女のコだなぁ、やっぱ。感触とか…すげーやわらけー』
強く抱きしめると、壊してしまいそうだった。
肩なんかも自分とは比べ物にならないくらい細い。しかも、掴むと薄そうだ。
ふと、目が合った。
照れくさくて、ふたりともクスッと笑う。
吉澤:『カップルだったら、ここで…』
梨華:『恋人同士だったらココで…』
『『キスとかするんだろうなぁ』』
ふたりはそのまま曲が終わるまで踊った。
「ハァ、たくさん踊ったれす」
辻と加護が席に戻ってきた。
何かあった時の為に、ふたりは誰か大人のそばにいるようにはしていた。
「ちーくというのも踊ったれす」
「加護とだろ〜、見てたよ!」
飯田は笑って言った。
「…ナニがかなしゅうてチーク」
加護は力なく席に座る。
「カオだって不本意ながら圭ちゃんとちょっと踊ったよぉ〜。気にすんなって」
不本意ってナニよ、不本意って!ゴルァ!!と保田は息巻いた。
「あれ〜、圭ちゃんじゃん?」
後ろから後藤が声を掛けた。
- 302 名前:土曜の夜は 投稿日:2002年06月18日(火)02時42分42秒
- 「あれ〜、師匠やないですか。どないしはりましたん?」
加護はすぐさま振り向いた。
「んあ〜、いちーちゃんがここのDJのヒトと知り合いなんで来たの。
あっは!加護ちゃんも辻ちゃんも気合入ってるぅ〜!」
後藤に今日の格好を冷やかされたふたりは顔を赤らめる。
「それにしても〜、高校生が〜!メッ!」
「高校生ですでに常連だったヤツがゼンゼン説得力ないわよっ!」
保田のツッコミに後藤は天を見上げ口笛を吹いてごまかした。
『サスガ師匠…カッコエエ!高校生で既にクラブデビュー&常連!!
ハァ、ウチも見習わな!』
加護は溜息をつき、尊敬の念を更に強くした。
その頃、柴田はメークを直しに洗面所に入った。
「「あ」」
ふたり同時に声を出す。
そこで手を洗っている市井がいたのだ。
「あ、この前はどーもね」
ファンを大切にする市井は笑顔で挨拶する。
「いえ、こちらこそ」
洗い終えた市井はポケットを探って中のハンカチを出そうとした。
「あ、やべ。カバンの中だ」
柴田は気を利かして自分のハンカチを差し出す。
「あ、サンキュ」
笑顔で受け取る市井。
柴田はこの前の打ち上げ以来、心に引っかかっていた事を聞き出すべく、
口を開いた。
「あの」
「ん、何?」
「お聞きしたいことがあるんですが、いいですか?」
「うん、どうぞ」
「単刀直入に言います。市井さんって梨華ちゃんの事、避けてません?」
本当に単刀直入だったので、市井は唖然とした。
- 303 名前:土曜の夜は 投稿日:2002年06月18日(火)02時48分44秒
- 「例の噂のせいですか」
「……」
「スミマセン、ヘンなこと言って。でも、梨華ちゃんはいい子ですよ。ちょっと
ネガティブすぎるのが玉にキズですけど」
「…いや。柴田さんは友達思いなんだね」
「イエ。後、これは個人的質問なんですけど」
「はぁ」
「ごっちんとどういう関係なんですか?」
ニコニコして言う柴田に、市井はヘナヘナとなった…。
辻・加護コンビのクラブデビューはつつがなく終えた。
帰ろうとして、入り口で再び後藤と会う。
「あれ〜、ごっちん?来てたんだ〜?」
吉澤はさっき後藤が来た時と入れ違いに戻って来たので、今日会うのは
初めてだった。
「んあ〜、いちーちゃんも一緒だよ〜」
市井は吉澤の隣の梨華と目が合った。
無視するのもヘンなので、
「あ、この前はどーも」
社交辞令的な挨拶はした。
「あ、コンバンハ…」
梨華もとりあえず頭を下げる。
柴田:「(梨華ちゃん!不自然すぎ!!)」
後藤:「(いちーちゃん!もぉ〜!!)」
それぞれにヤキモキする彼女たちだった。
「あ、石川さん。今度吉祥寺でライブすっからヒマなら来てよ」
市井の精一杯の譲歩だった。
「あ、ありがとうございます」
「柴田さんも」
市井は意味あり気に柴田を見た。
柴田も意味あり気に微笑み、
「ええ」
と頷く。
- 304 名前:土曜の夜は 投稿日:2002年06月18日(火)02時50分38秒
- 「とりあえずは64点ってトコかなぁ」
クラブからの帰り道で、後藤は市井に言った。
「ナニが?」
聞きながら市井は煙草を咥える。
「いちーちゃんの今日の対・梨華ちゃん態度」
「ちゅーとはんぱな数値だなぁ」
市井は苦笑する。
「そう、中途半端なの」
後藤は続ける。
「とりあえずー、今日もっと態度悪かったら居酒屋で甘エビのお刺身を6人前くらい
おごらせるつもりだったんだけど、5人前に減らしてあげる」
「てか、1人前減っただけじゃネエかよっ!」
市井の煙草もずり落ちる。
「後はホッケの開きとじゃがバタと焼き鳥とシーザーサラダとサイコロステーキと」
放っておくとチェーン系の居酒屋メニューを全部列挙しそうなイキオイだった。
「てか、おごるとはヒットコトも言ってねーぞ!!」
「あ、おごってくれるんだ。さんきゅー♪」
「ヒトのハナシを聞けーーー!!!」
ふたりは仲良く夜道をゆく。
- 305 名前:土曜の夜は 投稿日:2002年06月18日(火)02時54分18秒
- これから飲みに行くという保田・飯田コンビとクラブ前で別れ、下宿チーム、梨華、
今日はここにお泊りの柴田は中澤家に戻って来た。
裕子は
「ホナ、柴田さん。ごゆっくり」
と言って入れ替わりに出て行った。
「ザンネン。お姉さんとゆっくりお話したかったなぁ」
柴田は通された居間でコーヒーを飲みながら言った。
「軽くセクハラかまされるんで」
加護が声を潜めて言う。
「ウッソ!アハハ!」
「お風呂上りに台所で素っ裸でビール飲んでるし」
吉澤が笑って続けた。
梨華はユデダコのように赤くなって慌てる。
「―――ウソ!んも〜、あれだけ服着ろって言ってんのに…!!」
「ののも見たのれす」
「…はぁ〜」
梨華はヘナヘナと床に崩れた。
「ハッハッハ!」
居間にしばらく笑い声が響いた。
- 306 名前:土曜の夜は 投稿日:2002年06月18日(火)02時57分31秒
- 「そーいやさ」
しばらくたってから吉澤が言った。
「梨華ちゃんって何の香水使ってんの?すげーイイ匂いしたじゃん」
「あ、ディオールのヤツで…裕ちゃんにもらったの」
「何てヤツ?」
「名前…忘れちゃった。また見とく」
ふたりのやりとりを柴田と加護は興味津々で見てた。
辻はひとり、「(でぃおーる?うちのお母さんが持ってる服れしょうか?)」と
考えていた。
「柴田はん、アレどう思う?」
2階に上がるとき、加護がこっそり柴田に耳打ちした。
「(このコ、分かってんじゃん!見所あるわ!!)まぁ、香りに興味を示すのは
ポイント高いかなと」
「やっぱりそうか」
ふたりは顔を見合わせてニッと笑った。
何も知らずに吉澤と梨華は今日のメンバーの珍妙な踊りを再現し合い、
笑い転げていた―――。
- 307 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月18日(火)03時14分22秒
- 更新しました。レスのお礼です。
>オガマーさん
(O^〜^)ノ<女の子ってイイ匂いするYO!←キミもやろ
無意識でしょう、きっと(w ニブチンだし。いしかーさん的には盆と正月がいっぺんに
来たような大騒ぎだったでしょうね。
>ゆっちさん
(;^▽^)<きょ、恐縮です。お仕事もがんがってくださいね!
こんなアフォなものでなごんで頂けたら作者冥利に尽きます。赤もがんがってください!
>名無し読者さん
从 #~∀~从ノ<たまには若いモンに混じってフィーバーしよか!
フィーバーってゆっとる時点で年寄りだと(ry ふたりはまた別な機会に(w
>オムらいっすぅさん
( ´ Д`)<んあ〜、キリバンおめでと〜。よく出るとワカッタね〜
エスパーか!?とビクーリ(w キリバンなのでヽ^∀^ノもサービスで。ヨスコは入試が異常に
できたのでしょう、多分(w
- 308 名前:オガマー 投稿日:2002年06月18日(火)05時49分07秒
- 今回、更新分、読み始めていきなりやられてしまひました…
よすこw
- 309 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月18日(火)08時55分47秒
- レスのお礼です。
>オガマーさん
(;0^〜^)<エ?オ、オイラ、何かした!?←やっぱりワカってないヒト
(;‘д‘)<アカンわ、こりゃ
ツッコミどころ満載なオヤジ・ヨスコ(w ちょっと中学生の男子も入ってました。
間違いハケーン
>>284
冷やしてたおいた→冷やしておいた
>>293
ジーパンしか→ジーパンにしか
>>305
かまされるんで→かまされるで
- 310 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月18日(火)09時15分40秒
- ・サタデーナイトフィーバー(ベタにカタカナで読んでいただけるとよいかと…)
(0^〜^)ノノ♪ハッハッハッハッ スティンアライブ スティンアライブ
川;σ_σ|| カタカナだね (;^▽^)ウン
♪へ(´D`へ)(ノ´D`)ノ♪ ハアーアアー
(;‘д‘)あるイミ最強や
(ノ`.∀´)ノ♪ユアーザダンシングクイーン(ry ユーキャンダンース
(∩゜皿 ゜∩)ブーブー!!
(((#^▽^)〜`O))) ♪〜
ナンデコウナンノヨ(((;`.∀´)皿゜)))コッチノセリフ
- 311 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月18日(火)21時24分58秒
- ―――後藤視点
ごとーはその日、いちーちゃんにギターのアンプを届けるために
出かける準備をしてた。
ついでにおかずなんかも持って行く。
肉じゃがとキンピラゴボウとホウレンソウのゴマ和え、
うちのおかーさんが漬けたナスとキュウリの漬物。
タッパーに詰めて紙の手提げに入れる。
何でもいちーちゃんのアンプがウンともスンともいわなくなったらしくて、
ごとーが実家からorangeのアンプを持ってきたんだ。
「んあ〜、へーけさ〜ん!」
おかずをへーけさんにもおすそ分けするために、へーけさん家のインターフォンを
押した。
「お、どしたん。ごっちん」
すぐ平家さんが出てきた。
「んあ〜、あのね。ごとー肉じゃが作ったんだ〜。よかったら食べて〜」
「オー。いつもスマンなぁ。アレ?どしたん、エライ大荷物やないの」
へーけさんがごとーの足元のアンプを見て言った。
「んあ。いちーちゃんのアンプ壊れたらしくってごとーのを貸すの。
今から届けに行くんだ〜」
「ごっちん、時間ある?」
「ちょっとなら」
「待っとり。ウチも打ち合わせで出るから車で送ったるわ」
あっは!だからへーけさんダイスキ!
- 312 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月18日(火)21時32分19秒
- ごとーは中澤ハイツの最寄駅より3つ先の駅まで、へーけさんに送ってもらった。
「方向的にここまでしか送れんケド」
って、へーけさんは申し訳なさそうに言ってくれたけど、駅までアンプを
持って歩くのを考えたら有難すぎるよ。
ごとーは電車に少し乗っていちーちゃんの住む街に着いた。
ていっても大学のあるトコの隣の駅なんだけど。
駅徒歩2分。1LDKのマンションに、いちーちゃんは部屋を借りてる。
「んあ〜。いちーちゃ〜ん。来たよ〜」
「おぅっ!入れよ!」
奥の方からいちーちゃんの声がした。
中に入ると、いちーちゃんは洗濯中だった。
「んあ、これアンプね」
「おー、わりぃな。ケーキあるから食ってていいぜ」
「あっは!コレ、ウチのおかーさんから。いちーちゃんにも分けろって」
さっきの漬物を取り出した。
「オー、おばさんの漬けたナスとキュウリかぁ。あ〜、これで茶漬け!
たまんねぇな!」
嬉しそうにスキップなんかしてる。
いちーちゃんは手洗いするのとそうでないのとを選り分け、
「ちょっとコレ、フロ行って洗ってくるわ」
と、おきにのシャツを手に持ってバスルームに向かった。
ヒマなのでついてって後ろから鑑賞する。
ボブ・マーリーを口ずさみながら洗面台で洗う。
ユニット・バスにいちーちゃんの歌声が響いて洗剤のイイ匂いが漂う。
- 313 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月18日(火)21時36分32秒
- 「いちーちゃん、ごとー肉じゃが作ってきたけど食べる?」
「食う!食う!」
「キンピラとゴマ和えもあるけど」
「オー!いい嫁さんになるぜ〜」
嫁さんねぇ…。
ホントに調子いいんだから。
「じゃ、ゴハンにする?もうお昼だし」
「おう!」
お味噌汁を作ろうと、台所に立った。
炊飯ジャーを開けたらわずかなゴハンしかなかったので、この前ごとーが置いてった
レンジでチンするレトルトのゴハンを用意した。
お味噌は確かまだ余ってたはずだから…。
レンジ台に載ってたお鍋を開けると、何だか異臭がした。
鍋を持ち上げて入ってたお玉でそのお味噌汁の底をさらうと、イヤな粘りがある。
「いちーちゃん!このお味噌汁いつ作ったの〜!!」
ごとーはバスルームのいちーちゃんに声をかけた。
「エ?マジ!?もうくさってた?」
「も〜!ヘンな臭いして糸みたいなの引いてるよ!!」
「マジかよ〜」
「も〜!」
しょうがなく、中身を捨ててすぐさまお鍋を洗う。
「も〜、この前の引越しは『半年前に炊いて炊いたコトを忘れてた炊飯ジャー』とか
ロクなものがなかったしさぁ」
そのまま開けずに燃えないゴミの日に出したんだ。
あまりにも開けるのが恐ろしかったから。
「過去に生きるな。明日に生きろよ」
いちーちゃんはお風呂場からワケの分かんないコト言ってる。
「夏場は油断するとすぐ傷むんだから、レンジにほったらかしにしちゃだめだよ〜」
文句を言いながらがしがしお鍋を洗った。
- 314 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月18日(火)21時40分30秒
- いちーちゃんは掃除とか洗濯とかはワリとマメだけど、料理はこのような始末だった。
だからいちーちゃんのおかーさんに頼まれて、ごとーがたまにこうやって
ゴハンを作ってる。
いちーちゃん、料理は味も悪くないしやればできるんだけど、食品管理ってのが
めんどくさいみたい。
「ハイハイ、マミー。分かりましたよー」
誰がマミーなんだ。
ゼンゼン反省の色がないのは火を見るより明らかだった。
「よっと」
ちょうど洗濯機が洗濯終了のブザーを鳴らし、いちーちゃんはベランダに出て
干しだした。
冷蔵庫にキャベツが残ってたから、刻んでお味噌汁を作った。
「おー、すげー!ごちそうじゃん!」
干し終えたいちーちゃんがいつの間にかテーブルに着いてた。
「たまにはちゃんとしたもの食べなよ」
「ハイハイ。いっただきまーす♪」
いちーちゃんは放っておくとコンビニのものばかり食べてる。
おばさんが心配するのも分かる気がする。
「ところでさ」
「何じゃ」
「次のライブ、アンコールどうすんの」
「あー、それな」
いちーちゃんはいったんお箸を止めた。
「ソレ、アタシのやりたいヤツやっていい?」
今更何をって感じ。
でも、いちーちゃんがこう言う時は必ず大事なことがある時だ。
「いちーちゃんの好きにしなよ。皆には次の打ち合わせで言えばいいじゃん」
「おぅ。サンキュ」
いちーちゃんは嬉しそうに笑った。
- 315 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月18日(火)21時51分24秒
- 更新しました。ごま母さん、大活躍の巻。
タイトルは名曲『夏の思い出』の歌詞より。
( ´ Д`)<♪はるかな尾瀬〜
- 316 名前:オムらいっすぅ 投稿日:2002年06月18日(火)22時39分31秒
- いいですねぇ、料理が得意で家庭的なごっちん。
>いい嫁さんになるぜ〜
その通りですね♪これからも市井ちゃんの面倒見てて欲しいです(w
それにしても…話題が少し戻りますが、
まさか私も、本当にごまが出てくるとは思ってもみませんでした。
いやービックリです(w
市井ちゃんはついでみたいですが…話の流れからみても、
全然不自然になってない所が凄いですねー。
特に柴ちゃんや梨華ちゃんに対面する時とかですねぇ。
あと、すっかり奢ってもらうつもりのごっちんが好き…(爆)
さて、柴ちゃんは何を企んでるのでしょう?(w
続き楽しみにしてます♪頑張ってくらさいね〜
- 317 名前:婆金 投稿日:2002年06月19日(水)00時19分00秒
- 一番近くにいる人にだけしか分からない、香り。
いしかーさん、最高の香水のつけ方してますねぇ。
読んでるだけで、こっちもクラクラ〜
- 318 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月19日(水)21時54分45秒
- ―――石川視点
あたしは学校に行くため、電車に乗っていた。
そろそろテストも近いのでノートの整理もしないと。
…ゆうべは随分バカな夢を見た。
つり革に掴まり、電車に揺られながら少し思い出す。
『…ひとみちゃん』
ひとみちゃんの部屋で夜、ふたりでいた。
月明かりが差し込む中ベッドを背にして畳に座り、ひとみちゃんに
もたれかかっている。
ひとみちゃんは少し笑って、ベースの手入れをしてる。
『ベースばっかり可愛がっちゃヤ〜ダァ〜』
あたしはヤキモチを妬いて膨れっ面をした。ひとみちゃんの腕を掴んで揺する。
ひとみちゃんはふと手を止め、あたしの顎に指を触れる。
しばし見つめ合う。あたしはうっとりして目を細めた。
『…梨華ちゃんがイチバン…』
―――ひとみちゃんが何か言おうとして、そこで目が覚めた。
「ハァ…」
溜息をついてると、
「梨華ちゃん、おはよ!」
いきなり柴ちゃんが現れた。
「ひゃっ!」
あたしの驚きように、柴ちゃんは逆にびっくりしたようだった。
「なぁにぃ〜?ボーっとして。朝からえっちなコトでも考えてたんでしょ?」
「…違うよぉ」
力なく否定する。
「ハハッ。そういやもうじき夏休みじゃん。予定は決まった?」
「ん。まだ何も」
- 319 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月19日(水)22時01分03秒
- 「そっか。ああ、そーいえば。加護ちゃん元気?辻ちゃんも」
「元気だよ。何か、あいぼんと仲良くなったみたいだね」
ふたりはメルアドを教えあって、時々メールのやりとりをしてるようだった。
「あのコ面白いよ〜。『姉さん、腰は酷使したらあかんで』とか、タメになるメール
送ってくれるしさぁ」
楽しそうに柴ちゃんは言った。
…そんなメールを送りあってたのか。あいぼんったら。
「梨華ちゃん、休み中どっか遊びに行こうよ」
「うん!」
よかった…。去年は入院してて何処にも行けなかったから。
今年は楽しい夏にしたい。
大学に着いて、これから第二外語の授業があるという柴ちゃんと別れ、
あたしは図書館に向かった。
借りてた本を返却して、レポートに必要な文献のコピーを取る。
「んあ〜」
誰かに肩を叩かれて振り向くと、ごっちんだった。
「あ、ごっちん」
「あっは!ガッコで会うの珍しいね〜。てか、ごとーもレポート書く為に来たんだけど」
あまり話し込んでると他の人の迷惑になるので、とりあえず図書館を出た。
「ごっちん、何か借りたの?」
ふたりで歩きながら話す。
「んあ、レポートの参考文献とコレ」
ごっちんがカバンから取り出したのは、リンドグレーンの『ちいさいロッタちゃん』だった。
「あ〜、懐かしい〜」
「ごとー、子供の時、大好きだったんだぁ〜。懐かしくて借りたの」
ごっちんは目を細めて笑った。聞いてるあたしもニコニコしてくる。
「レポートはもういいの?」
「うん、朝イチで来てもう殆ど仕上げたから。梨華ちゃん、ちょっと時間ある?」
「ん?いいけど…」
- 320 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月19日(水)22時08分17秒
- ごっちんに連れられて、一番古い校舎に来た。
ここに来るのって…初めてカモ。
あたしのいる学部では殆ど使わないし、昼間でも常に中が薄暗いイメージがある。
一階の突き当たりの部屋の前に着くと、
「どーぞ!お入りください!」
ごっちんが恭しく、ドアボーイのように戸を開けた。
「あ、失礼…します」
「後藤か?」
…あの声は。
市井さんだ―――。
「あ、来てたんだ。お客さんだよ〜」
「客?」
おずおずと入って行くと、床に座りこんでいた市井さんはギターを抱えたまま、
唖然とした顔であたしを見上げた。
「あ、どーも…」
やっと言葉が出たという感じだ。
「あ…お邪魔、します」
市井さんは立ち上がって壁に立てかけてたパイプ椅子を広げて、
「どーぞ。狭苦しいトコだけど」
奨めてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「カァ〜ッ!やっぱ女には優しいねぇ〜!」
横でごっちんが冷やかすように言う。
- 321 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月19日(水)22時12分43秒
- 「バカ言うな。アタシは誰にでも優しいよ」
市井さんはあたしの方を向き、
「冷蔵庫にウーロン茶とかあるから。てきとーに飲んで」
早口で言うとまたギターに没頭しだした。
「コラー!部長!お茶くらい出せー!」
「あ、いいよ、ごっちん。お客さんなんて大層なモンじゃないし」
慌てて立ち上がると、
「いいの、いいの。ジュースとお茶、どっちがいい?」
「あ、お茶を…」
「了解♪」
ごっちんは冷蔵庫からウーロン茶の1・5リットルのペットボトルを出すと、
戸棚にあったコップに注いでくれた。
「ハイ♪」
「あ、いただきます…」
- 322 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月19日(水)22時20分57秒
- 「…うぁ〜!!書けねぇ!!」
突然市井さんが大声を上げ、頭を掻きむしりだした。
「か、書けないって…?」
小声でごっちんに聞く。
「んあ〜、曲作りが煮詰まってんだよ」
よく見ると、市井さんのそばに楽譜があった。
「あ、それならあたしもう…」
カバンを持っておいとましようとすると、
「ああ、いつものコト。気にしない、気にしない」
ごっちんはジュースを飲みながらのんびり言った。
…困ったなぁ。市井さん、あたしのコト、キライみたいだし…。
ごっちんがいてくれるからいま何とかなってるのに。
「後でヨシコ、来るって言ってたよ」
ごっちんがあたしの心の中を見透かすように言った。
「そうなの?」
「ん。さっきメール来た。昼休みに来るって」
壁時計を見ると、12時までほんの数分だった。
「こんちゃーす!」
…早速来た。
「あれ〜?梨華ちゃん来てたんだ」
ひとみちゃんがカバンを机に下ろしてあたしの方を見た。
「ごとーが図書館でナンパしてきたの。それより早かったじゃん」
「ん。先生が早めに切り上げてさぁ。あー!ハラ減ったよぉ」
「あ、ごとーも。ヨシコ、何か買いに行こっか?」
「ウン。ウチ財布出すわ」
「いちーちゃん、何か欲しいものある?」
「ビスコとでっかいプッチンプリン。後、カフェオーレ。ビスコは小麦胚芽のヤツな」
ごっちんの言葉に市井さんは顔も上げずに言った。
「ハイハイ。梨華ちゃんは?」
「あ、あたしはいい」
「うん、分かった。行こ、ヨシコ!」
ちょ、ちょっと!…ふたりにしないでよぉ〜。
- 323 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月19日(水)22時36分45秒
- 更新しました。从#~∀~#从←本物は29か。より一層イイ女になってくらさい。
レスのお礼です。
>オムらいっすぅさん
川σ_σ||<フフッ、秘密です♪
ヽ^∀^ノ<そうだねぇ…そのうちに
まぁ、それは追々…。ごまさんはハナから自分で支払う気はないようです(爆
( ´ Д `)<ゴハン作ってるし〜、それで五分五分かなぁ
>婆金さん
川σ_σ||<何の香水だったの?
(;^▽^)<あ…『ミス・ディオール』ってヤツ。
ユウチャンガシリアイノヒトカラオミヤゲデ…
フツーなら秒殺でしょう(爆 ヨスコですから…。(0^〜^0)<?
深く読み取ってくだすって感謝です。
- 324 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月19日(水)22時47分35秒
- ・女の道
( ‘д‘)<♪〜
( ´D`)<(ハァ、あいぼんは女の子らしいのれす…。ののもあいぼんみたいに
女の子らしくなりたいのれす)
( ´D`)<いいらさん、女の子らしくなるにはどうすればいいのれすか?
川‘〜‘)||<ん〜、そうだねぇ。辻の場合はまず食べる量を減らすとか…
セメテ8ショクヲ5ショクニ
川‘〜‘)||<とにかく
( ゜皿 ゜)ノ<オヤツヲ ヘラセーーーッッッ!!!
(;´D`)<ハァ〜(道はけわしいのれす…)
ツジハソノママデイイヨ ソウレスカ?
川‘〜‘)|| ノ(;´D`)
- 325 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月19日(水)22時56分53秒
- ・甘い(?)囁き
从 #~∀~从<みちよは…ウチのどこを気に入ってん?
( `◇´)<エー?何やの?
从 #~∀~从<エエから!
( `◇´)<せやなぁ…気ィ強い割に小心モノなトコとか…
从 #~∀~从<な、何やと!
( `◇´)<妙にセコイとことか…
从 #~∀~从ノ<オ、オイ!黙って聞いてたら!!シバクゾ!オラァ!!
( `◇´)<そういうトコも全部含めてホレてる
从 #~∀~从<……
- 326 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月20日(木)21時43分32秒
- ―――気まずい時が流れた。
そう思ってるのはあたしだけしかしれないけど…。
「石川さんは昼メシ買いに行かないの?」
不意に市井さんが口を開いた。
目線は相変わらずギターの方にあったが。
「あ、あたしはお弁当があるんで」
「そ。あ、ここでよかったら、勝手にテーブルの上のジャマなモンどかして
食べていいから」
「すいません」
市井さんはそれには返事せず、小声で『ココは…イヤ、こうか』とか言いながら
また作曲に没頭していた。
「あの…」
「あ、何?」
「質問があるんですが、いいですか?」
「後藤とは付き合ってませんよ」
―――ビックリした。まだ聞いてもいないのに、何で分かったんだろ。
「な、何で…」
「アナタのお友達も前クラブで会った時、同じコトきーてきたから」
柴ちゃん…そんなコトを。
「後藤とは幼馴染。それだけ」
「ホントに…それだけですか?」
「…何が言いたいの?」
市井さんが初めてギターから顔を上げた。静かな口調だが少し怒気を含んでる。
あたしはしまったとは思ったけど敢えて続けた。
「ごっちんがひとみちゃんと仲良くしてるのを見ても、何も感じないんですか?」
「あんたは感じんの?」
「ハイ。できたら…独り占めしたいと思ってます。
ごっちんのコトは大好きですが、それとは別なんです」
市井さんは黙ってあたしの顔を見ていた。
「つまり…吉澤が好きだと」
「エエ。市井さんもごっちんが好きなんですよね」
市井さんはとても不思議そうな顔をし、しばらくしてからプッと吹き出した。
- 327 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月20日(木)21時47分22秒
- 「あんたって…直球だねぇ!アハハハ!」
市井さんはギターを床に置いてお腹を抱えて笑い出す。
「な、何で笑うんですか!」
「イヤ、ここまで突っ込んで聞いてきたヤツっていないからさぁ、ハハ!」
市井さんはひとしきり笑った後、
「気に入ったよ」
立ち上がり、あたしに近づいてきて肩をポンと叩いた。
「あ、ありがとう…ございます」
何が気に入られたらのかは分からないが、市井さんの横顔は何だか嬉しそうだった。
「にしても、アタシと後藤ってハタから見たらデキてるよーに見えるワケ?」
「ハイ。付き合ってないのが不思議なくらいです」
「それは後藤に言ってくれよ」
「…認めましたね」
市井さんは目を見開いた。
照れくさそうに頭をかく。
「…何で分かったの」
「歌です」
「歌?」
「この前の渋谷のライブの。好きな人のコト考えながら作ったって
言ってたじゃないですか」
「…ああ」
「あんなに…切ない歌を歌えるのってスゴイなぁって。あたしが作詞とかできたら
迷わず作るんですが」
「『ひとみちゃんに捧げる歌』?」
「…ハイ」
それが出来たらどんなにいいだろう。ひとみちゃんもちょっとは気づいてくれるかもしれない。
「夢を壊すようで悪いけどさ」
「ハイ?」
「仮にあんたが歌を作れたとしても、あのニブチンが気づくかどうかってのが
ポイントだと思うよ?」
…とほほ。そうだった。
あたしの作詞能力より、あの人の恋愛偏差値が問題だった。
でも…そこが好き。
市井さんがあたしの目の前で手のひらをサササッと動かした。
「あ、スミマセン…」
頬を赤らめる。
いけない。また勝手な想像しちゃった。
- 328 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月20日(木)21時52分22秒
- 「あんたって昔のアタシに似てるかも」
市井さんはクスッと笑って言った。
「…?何がですか?」
「イヤ、ひとりでヤキモキしてるトコとか」
「ハァ。今は違うんですか?」
「あきらめもつくよ、20年近くも一緒にいたら」
「ダメです!それじゃ!」
「ア?」
「大体、市井さんがしっかりごっちんを捕まえとかないから、クラブでごっちん、
ナンパされたりするんですよ!」
「見てたの」
「エエ。この前ちらっと見かけました」
誰か男の人に声を掛けられたごっちんは、「トモダチと来てるし、じゃーね」と
ひとことだけ言って去って行った。
あたしだったらオロオロしそうなのに、毅然としたごっちんはすごくカッコよかった。
「ナルホド。胆に銘じとくよ」
「銘じるだけじゃダメです!実践しないと!」
「それなら自分はどーなんだよ。ひとみちゃんに好きって言ったら?あのニブチン、言わなきゃ一生
気づかないかもよ?」
グウの音も出なかった…。確かに一生気づかないわ、あの人(泣)。
- 329 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月20日(木)21時54分03秒
- しばらくしてごっちんとひとみちゃんが帰ってきた。
「いちーちゃーん!ビスコ、フツーの赤いハコのしかなかったよぉ〜」
「エ〜?アタシの午後のひと時がぁ〜」
…楽しそうにコンビニ袋の中を探ってる2人を見て、あたしはほのぼのした。
「り〜か〜ちゃんっ!」
「ひゃっ!」
ひとみちゃんが何か冷たいモノをあたしの頬にひっつけた。
見ると、ソーダ味のアイスキャンディーだった。
「食べる?」
「ありがとう…」
ひとみちゃんも笑ってミルク色のアイスキャンディーを食べた。
あたしも袋を開けてアイスを出す。
涼しそうな色は、ひとみちゃんの今日のTシャツの色に似ていた。
- 330 名前:夏が来れば 投稿日:2002年06月20日(木)22時00分11秒
- 「まったく暑いなぁ」
台所で裕子は文句をたれながら夕飯の支度をしていた。
ちなみに今日の中澤家の献立はそうめんの肉味噌がけと、焼きナス、オクラのとろろ和えだった。
「この暑いのに献立考えんのもひと苦労やわ」
この後は平家の家に行く事になっている。
あの一件以来、彼女とは恋人と呼んでも差し支えないような間柄にはなっていた。
誕生祝に指輪までもらった。
平家がここまで自分を思っていたとは、少し前までなら考えられなかった。
ずっと、気のいい飲み友達だと思っていたからだ。
ぼうっとそんな事を考えていると、
「裕ちゃん、ただいま〜」
梨華が大学から戻って来た。
「おぅ、お帰り」
「着替えたら手伝うよ。あ〜、暑かった!」
梨華はそう言って2階に上がって行った。
「お〜、いい匂い!」
吉澤が台所の入り口から顔をひょこっと出した。
「お、アンタも今日は早いやないの」
「へへっ、たまには。バイトもないし」
屈託なく笑う。
「梨華と一緒やったんやな」
「エエ」
「…アンタな」
「ハイ?」
「恋人…おるん?」
「…ヘ?中澤さんは平家さんと付き合ってるんじゃ?」
「誰がウチの事言うてんねん!コドモに用はないわ!
おるんか?おらへんのか?」
裕子のえらい剣幕に吉澤は少したじたじとなった。
「…いません」
「好きなヤツもか?」
「今のトコロは」
「…そうか。スマンな、ヘンなコト聞いて」
「イエ」
裕子はまた背中を向け、夕飯の支度に戻った。
―――何でまた急に恋人のコトなんて。
中澤さん、一体何が言いたかったんだろ?
さっぱり分からず、吉澤は2階の自分の部屋に行った。
- 331 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月20日(木)22時04分50秒
- ここでいったん切ります。
コピペシパーイ(^^;;
>>327
「…おーい」
市井さんがあたしの目の前で手のひらをサササッと動かした。
上のちゃむの台詞が抜けてますた。申し訳ありませんでしたm(__)m
- 332 名前:I WILL 投稿日:2002年06月20日(木)22時14分32秒
- その翌日。
梨華、後藤、辻・加護の4人は台所にいた。
後藤は前日にロッタちゃんの映画ビデオを梨華に貸す約束をし、
それを届けに来ていた。
「頂き物のビスケットがあるからお茶にしましょう」
梨華はそう言って棚を開けた。
フォートナム・メイスンなんかの紅茶の缶がいくつかある。
「ののちゃん、ビスケットには何が合うのかな」
「熱いダージリンなんかオツれす」
辻の言葉に、梨華はダージリン・エキストラの缶を取り出した。
「よっすぃ〜の事やけど」
加護が口を開く。
「アレ、アカンで」
「何がれすか?」
「梨華ちゃんのラブラブ光線にやられるどころか、露とも気づいてへん。
ニブいのにもホドがあるわ」
「んあ」
「師匠もそう思わはります?」
「ごとーですら気づいてんのに。あっは!ダメヨスコ!」
後藤はわざとふざけて言う。
ダメヨスコ!と辻・加護コンビは楽しそうに真似をした。
「そんな…ひとみちゃんのいない時にソンナコト言って」
梨華は眉をハの字にする。
「あのれすね」
辻が突然口を開いた。
「何や」
「梨華ちゃんってよっすぃ〜の事好きなんれすか?」
一同は目を見開いた。話についていけてなかった者・約一名。
どこに伏兵が潜んでいるか分からない。
「じじじ自分、知らんかったんか!?」
加護がわなわなと震えながら立ち上がった。
「へいっ。ののは梨華ちゃん、よっすぃ〜をトモダチとして好きなのかと
思ってたれす」
辻は神妙にうなだれる。
- 333 名前:I WILL 投稿日:2002年06月20日(木)22時18分03秒
- 「まぁ、恋と友情は紙一重なトコあるしね」
後藤がさり気にフォローする。
「そうなんですか、師匠?」
「んあ。ごとーも言うほど恋愛の達人じゃないけどさぁ」
後藤も照れくさそうに頭をかいて笑う。
「よっすぃ〜に好きって言わないんれすか?」
「のの、よー考えてみぃ」
加護が人差し指を立てて言った。
「へいっ」
「ののに好きなヤツがおって、その人はののの気持ちになかなか気づいてくれません。
…好きって言えるか?」
うーん、うーんとうなって辻は一生懸命考えた。
「…分からないれす。その時になってみないと」
「…そうか」
辻の答えは間違ってはいないが、加護は多少なりともがっかりした。
別にドラマティックな答えを期待したわけではないが。
「それにしても…ののもちょっとした天然やな。そのボケっぷりがっていうか」
「何れすか〜。感じ悪いれす〜」
辻はムッとした。
「よっすぃ〜とエエ勝負や」
「…同レベルですか。それはショックれす」
辻は本気でヘコんだ。おやつも喉を通らない、ワケがなく、ものすごいスピードで
ビスケットを消費する。
「ののは…色気より食い気やなぁ」
加護がため息をつく。
「ののちゃんはそこがいいのよ」
梨華が優しく言う。後藤も頬杖をついて優しい目で見守る。
いいのれしょうか?
でも…このビスケット、すごくおいしいのれす。
辻はやっぱり辻だった。
- 334 名前:I WILL 投稿日:2002年06月20日(木)22時28分32秒
- 「師匠、何かエエ作戦おまへんやろか?梨華ちゃんラブラブ大作戦リーダーとして」
加護が身を乗り出してきた。
『いつの間にそんな作戦が…』
梨華は冷や汗をたらす。しかも後藤が知らぬ間にリーダーとなっていた。
「んあ〜、そうだねぇ…」
後藤はしばらく考え、やがて言った。
「昔の人は言いました!」
「ホォ!」加護は立ち上がった。
「『将を射んとする者はまず』!」
「ウン!」
「『馬を射よ』!!」
「ヤッター!」
「?お馬さんに矢を刺すんれすか?かわいそうなのれす」
辻は「?」という顔で言った。
「モノの例えやがな!外堀から攻めい!ってコトや!」
「ケンカはよくないのれす」
自分を放っておかれて話だけ一人歩きしてる上にムダな争いまでおきそうな事に、
梨華はオロオロした。
「カァ〜ッ!恋愛はバクチじゃ!ケンカのひとつやふたつなんや!!」
「あいぼんは」
辻は口を開き、
「よっぽど激しい恋愛をしてきたんれすね」
淡々と言った。
- 335 名前:I WILL 投稿日:2002年06月20日(木)22時32分40秒
- ―――石川視点
『まずはオーソドックスに相手の嗜好を探る』
ごっちんの言う通り、
「ビートルズのホワイト・アルバムを貸してほしい」と夕飯の時、
ひとみちゃんに言ってみた。
「あ、いいよ」
ひとみちゃんはあっさり答えてくれた。
「部屋にあるから後で持ってく」
「ありがとう」
ひとみちゃんは2階に上がると、すぐあたしの部屋に届けてくれた。
「ごめーん!CD誰かに貸してたみたい!MDに落としたヤツならあるけど、いい?」
「ううん、これで充分だよ。ありがとう」
「実家だったらレコードがあるんだけどねぇ。歌詞カードもないし」
「ううん、いいよ。オススメの曲ってある?」
「ん。この」
「『I Will』かな」
- 336 名前:I WILL 投稿日:2002年06月20日(木)22時35分54秒
- 部屋に戻ってMDをかけた。
何となく、明かりも消した。
『Who knows how long I've loved you
You know I love you still
Will I wait a lonely lifetime
If you want me to--I will…』
『Love you forever and forever
Love you with all my heart…』
聴いてるうちに…涙がこぼれてきた。
『Love you whenever we're together
Love you when we're apart
And When at last I find you
Your song will fill the air
Sing it loud so I can hear you
Make it easy to be near you
For the things you do endear you to me
You know I will 』
『I will…』
『ウチのイチバン好きな曲なんだー』
こぼれるような笑顔で、ひとみちゃんは言った。
あたしは…こんなに愛せるだろうか?
人を好きになるのは怖い。
あの事があってから…あたしは輪をかけて臆病になった。
でも…色んな人に出逢って、あたしはちょっとずつ強くなりたいって願うようになった。
転んでも、自分の足で立ち上がりたいって。
誰よりも大切な裕ちゃんに、余計な心配かけないようにって。
- 337 名前:I WILL 投稿日:2002年06月20日(木)22時39分16秒
- 『梨華…梨華が生きとるだけでエエ』
あの日…あたしが病院で意識を取り戻した時、裕ちゃんは泣きながらあたしの手を握った。
あたしはその泣き顔を見ながらぼんやり、裕ちゃんの身体を随分小さく感じた。
―――お姉ちゃんはいつもあたしの前にいて、あたしはその背中を追いかけてった。
『早よおいでぇな!』
あたしがいないのに気づいて、お姉ちゃんは笑って振り向く。
『…お姉ちゃん』
あたしは初めて会った頃の、お姉ちゃんの年に追いついた―――。
その手をそっと握り返して、あたしはもう自分が子供でない事を知った。
『君を愛し続けるよ いつまでも
心の底から君を愛してる…』
…手を伸ばせば、届く距離にいるのに。
あたしは心の中のひとみちゃんへの想いに何故だか悲しくなって、
ベッドの上で膝を抱え、そこに顔を埋めて泣いた。
- 338 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月20日(木)23時09分53秒
- 更新終了です。
タイトルはビートルズの『I Will』より。
ホワイト・アルバムは通称で『The Beatles』が正式タイトルです。
本文中の対訳は『ザ・ビートルズ アンソロジー3』の
山本安見氏のものを引用させていただきました。
ヨスコさん同様、手元に落としたMDしかなく、CDが行方知れずなので(^^;;
- 339 名前:オムらいっすぅ 投稿日:2002年06月20日(木)23時35分15秒
- 沢山更新してあって嬉しいです〜!今回は視点が色々あって楽しい…(w
い、いつからごっちんがリーダーに(w
しかも「梨華ちゃんラブラブ大作戦」もいつ出来たんでしょうねぇ(w
最近ここのあいぼんに夢中になりかけてきてます。
可愛すぎなのれす、はい。ののちゃんも相変わらず食い気が一番ですねー。
あと、梨華ちゃんと市井ちゃんもやっと普通に仲良くなったみたいで。
お互いの苦労話とか面白かったです。本人達は本気なんでしょうけど(w
何はともあれ良かったですねー。仲良しが一番♪(w
続き楽しみです♪頑張って下さい〜
- 340 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月20日(木)23時59分59秒
- このお話の温度が、たまらなく好きです。
心地よい……和みます。
- 341 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月21日(金)02時45分38秒
- ビートルズ好きです。(笑
これ読んだ後、ついCD出して「I WILL」聞いてしまいました。
懐かしい気持ちで浸ってしまいました。(w
梨華ちゃんの1年前になにがあったかきになりますが、
明かされるまで楽しみにしています。
- 342 名前:I WILL 投稿日:2002年06月21日(金)22時23分57秒
- 「……」
梨華は映画の中のオードリー・ヘップバーンのような格好をし、
駅前のとある店の前にいた。
この暑いのに、サングラスにマチコ巻きのスカーフ。
うさんくささ満載だった。
「…梨華ちゃん?」
「ひゃっ!」
梨華は飛び上がって驚いた。
「何してんの?何その格好?」
後ろから声を掛けた加護は不審気に言った。
「あ、そんなアヤシイかな…」
梨華はそう言ってサングラスを外す。
「てか、こんな地元でメチャうさんくさいって(しかも何や、そのミョーに
張り切った格好は!)」
ワンピースはジバンシーな梨華だった。
「いちおー、目立たない格好したしたつもりなんだけど…」
『このヒト自分が見えてへん!』
今更ながら加護は驚愕する。
「ハァ…ところで何してんの?」
「あ、イヤ、そのね…」
梨華がうろたえてるのを無視して、加護は上を見上げた。
『アベ楽器店』
看板を見て、加護はハハーンという顔をする。
「会いたいんなら、店入ればエエやん」
『てか、同じ家に住んどるがな!』
心の中でツッコむ加護だった。
「あ、でも!」
「行くで!」
うろたえる梨華の手を取って、加護はずるずると引っ張って店内に入って行った。
『ホンマ手ェかかるネエちゃんやで』
それでも面倒見ることには、満更でもない加護だった。
- 343 名前:I WILL 投稿日:2002年06月21日(金)22時26分42秒
- 「こんちはー」
加護は店の中央で元気よく言う。
「いらっしゃい!…あれ、あいぼんじゃん」
すぐエプロンをした吉澤が現れた。
「どしたの?」
「何や梨華ちゃんが用あんねんて」
「あ、梨華ちゃんも来てんの」
「そこにおる」
吉澤は棚の裏に隠れるように立っていた梨華のところに行った。
「いらっしゃい」
「ひゃっ!」
思わずビクつく梨華。
「お客様、何なりと」
笑顔の吉澤。梨華はちょっととろけそうになる。
「あ、その。ギターの弦を…ください」
「あのZO−3の?」
「あ、ウン」
「じゃ、これね。袋にお入れしましょうか」
「イイエ、そのままで」
「では、お印だけで」
ふたりのやりとりを横目に、加護は壁やショーケースにディスプレイされた
ギターを眺めていた。
「ほぇ〜、色んなん、あんなぁ…。ウチには何がなんか分からんわ」
「分かんないことがあったら何でも聞くといいっしょ!」
「ふわっ!」
突然現れた店長の安倍に加護は仰け反った。
- 344 名前:I WILL 投稿日:2002年06月21日(金)22時30分31秒
- 「よっすぃ〜と同じ下宿の子だね?話はいつも聞いてるっしょ」
安倍はニコニコして言った。
「いや〜、めんこいなぁ」
「ハァ、どうも…」
見るからに人の良さそうな安倍に、加護は徐々に警戒心を解いていく。
『この人が喫茶店の姉ちゃんの彼女か…ハァ、エライ可愛い姉ちゃんやなぁ』
小柄でショートカット。目のクリクリした童顔の女性。
矢口も若く見えるが、このヒトは何歳なんだろうと加護は考えた。
「この前よく似た子が弦、買いに来たよ」
「…ののが?」
安倍の言葉に加護は少なからずや驚く。
「ああ、来ましたね。学校の友達って子と一緒に。何でも、学校でギター同好会
みたいなの作るって言って」
吉澤が横から言った。
「…そうなんや」
そんな事、初耳だった。
自分の知らない友達がいるのは別段おかしくないが。
自分の知らない行動半径や出来事がある事に何だか違和感があった。
『アカン…ウチ、めっちゃ心の狭いコト考えとる』
わしゃ、恋するオトメかっちゅうねん!とひとりツッコミをしながら、
加護は安倍や吉澤と楽しそうに話しこんでいる梨華をぼんやり見ていた。
- 345 名前:I WILL 投稿日:2002年06月21日(金)22時33分47秒
- その後図書館に本を返しに行くという梨華と別れ、加護はTSUTAYAで
適当にビデオを借りて帰宅した。
「おかえりれす!」
辻は台所で何やら料理を作っていた。
聞くと、中澤ハイツで水漏れがあり、裕子がその事で出ている間手伝っているとの
事だった。
「何作ってんの」
「カレーれすよ。2日めがうまいのれす!」
「今日はカレーかいな」
「へいっ。ののはカレー名人れすから」
辻は作業に戻る。
ふたりは今日、テスト休みだった。
高校はもうじき夏休みに入る。
「何カレーなん?」
「へいっ、牛肉ときのこのカレーれす。空豆も入れるれす」
「ふーん」
楽しそうに鼻歌など歌い鍋の中をお玉でかき回す辻を見ながら、加護はさっきの
楽器店での事を思い出していた。
『学校の友達って子と一緒に』
―――てか、誰やねん!?
訳もなく、加護は苛立った。
- 346 名前:I WILL 投稿日:2002年06月21日(金)22時36分58秒
- 夕食は件のカレー、グレープフルーツとクレソンのサラダだった。
黙々と食べながら、加護は時々チラッと辻の顔を見ていた。
「何れすか、さっきから」
「なにーな」
「さっきからののの顔チラチラ見てるれす」
「気のせいや」
「いーえ、違うのれす」
「コーラ!」
裕子が制止する。
「メシ食うかケンカするかのどっちかにせい。行儀悪いぞ」
「「…ハイ」」
ふたりは黙って食事を続けた。
『もぉ、あいぼんったら。なんなんれしょうか』
辻は自室に戻っても怒っていた。怒りながらパソコンを開け、メールのチェックを
する。
「…あ〜!も〜!!」
加護は自分でも理由の分からないモヤモヤに、ベッドの上でバタバタと暴れた。
「「あ」」
風呂場でふたりは顔を合わせた。
ふたりの風呂の順番は隣り合わせているので、会うのは珍しい事ではない。
「待ってくらさい」
黙ってドアを閉めようとする加護の腕を、辻は引っ張った。
「何やねんな」
「聞きたい事があるのれす」
「こっちは別に何もないわ」
「ののはあるのれす」
観念して加護は腕を下ろす。
「のの、何かしたのれすか?」
「いや…」
「なら何で、ゴハンの時、ののの顔チラチラ見てたんれすか?」
「別に…」
「ケンカはダメだよぉ〜」
この声は…。
ふたりは振り向いた。
そこには梨華が眉をハの字にして立っていた。
「ケンカするほど仲いいってね」
その横の吉澤がのほほんと言う。
『てか、止めへんのかい!』
加護はバツが悪くなり、
「…とりあえず、フロ入るわ」
そのままドアを閉めた。
- 347 名前:I WILL 投稿日:2002年06月21日(金)22時40分00秒
- 『…ホンマに何やというねん』
シャンプーを勢いよく泡立て、加護は頭をがしがし洗う。
『ウチも何や!ヤキモチかいな!』
滝に打たれる修行僧のように、思い切りシャワーの飛沫をかぶった。
『とりあえず、謝っとこか。メンドーなコトにならんうちに』
「…やれやれ」
加護は浴槽に体を沈めた。
『おやつあるけど食べへん?』
風呂から上がってから、こんなメールを送った。
『てか、同じ家住んどんのに携帯にメール送るってどないやねん。
ウチも梨華ちゃんのコト言えへんわ』
しばらくたって、返事が来る代わりに本人が現れた。
しかし、顔は怒っている。
加護も黙ってポテチの袋を開けて、黙って差し出した。
辻は頷いて黙々と食べ始める。
バリバリ、バリバリ…。
室内に、ポテチを食べる音だけがしばらく響く。
次はポッキーの箱を開ける。
加護は黙って差し出す。
頷いて受け取り、今度はポキポキいわせながら黙って食べる。
- 348 名前:I WILL 投稿日:2002年06月21日(金)22時43分12秒
- 「…だぁーっ!何が悲しゅうてシケたツラしてポッキー食わなあかんねん!!」
「それはこっちの台詞れす」
辻は上目遣いで見上げ、またポッキーを口にする。
「大体なんやねん!ヒトに隠れてギターの特訓しおってからに!!」
「…ハ?」
加護の苦情の意味合いがイマイチ理解できなかった。
「だからや!ガッコで同好会もどきみたいなん作って、自分、ギターやってんねんやろ?」
「そうれすよ」
「ゼンゼン知らんかったわ!」
「ハァ。それはごめんれす」
加護の言わんとしてる事が段々分かってきて、
「現在部員募集中れす。当然入ってくれるれすよね?」
何とも言えない笑顔で、ポッキーを1本差し出して言った。
「…見学してからや」
ひったくるように受け取り、加護は苦みばしった顔でポキポキと食べ続けた。
「ビデオ、何借りたんれすか?」
「『釣りバカ日誌』や」
「…プッ」
「何やねん、文句あるんかい」
「一緒に見るれす♪」
思わぬビデオ鑑賞会。
辻は加護とクッションを抱えながら、夜更けまで話し込んでビデオを観ていた。
- 349 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月21日(金)23時03分23秒
- 更新しました。プチケンカの巻。
大人になると、遠慮するのかこういうちっちゃいことでケンカしなくなるなぁ。
レスのお礼です。
>オムらいっすぅさん
( ‘д‘)ノ<おおきになぁ〜♪
( ´D`)<ののもよろしくれす
ちゃむといしかーさんは大真面目なのれす。例えどんなにアフォでも(w
>名無し読者さん
从 #~∀~从ノ<ウチが癒すで!
( `◇´)<姐さんが癒し系やったらビクーリや!
そう言って頂けて励みになります。マターリが目標なので…。ありがとうございます。
>よすこ大好き読者。さん
(;^▽^)<あ、そのお話はいずれ…
(0^〜^)<ウン。オイラ、マターリ待つYO!
追いつかれました(w ビートルズは自分の中で定番なので…。『I Will』は名曲
ですよね♪
間違いハケーン
>>327
何が気に入られたらのかは→何が気に入られたのかは
しょぼい間違いですね。スマソ(^^;;
>
- 350 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月21日(金)23時18分07秒
( ‘д‘)( ´D`) 釣りバカ鑑賞中 ♪>[TV
( ´D`)<『合体』ってなんれすか?
(♯‘д‘)<ハァ!?
( ´D`)<ロボットみたいに変身するんれすか?
(♯‘д‘)<まぁ…そうなんちゃう ナニキクンヤ!イキナシ!!
( ´D`)<あ、『合体』にバッテンしてるれす。変身シッパイれすね
( ´д`)<…そうやね
- 351 名前:水海 投稿日:2002年06月21日(金)23時38分18秒
- 更新お疲れ様です。
あぁ…見たいなぁ ジバンシーで ヘプバァンなりかっち。
顔小さくて、スレンダーで……あ、でも 胸おっきいなぁ…。
ヘプバァンになるなら 小さくないと……。
- 352 名前:婆金 投稿日:2002年06月22日(土)00時30分42秒
- いしかーさんの過去がチラホラ・・・
あ〜、でも辻加護のプチ喧嘩、かわいいな。
- 353 名前:オガマー 投稿日:2002年06月22日(土)06時06分06秒
- 曲がわからなかったりして(氏
ののとあいぼむかわいw
- 354 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月22日(土)21時28分19秒
- ( ‘д‘)<タンポポの『王子様と雪の夜』って歌エエな!フユノウタヤケド
( ´D`)<かわいい歌なのれす オウジサマミタイナカッコウッテ ヤッパシシロタイツレショウカ
(* ^▽^)<(…王子様)
゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
パッカパッカ パッカパッカ…(SE:伏せたお椀)
((((0^〜^)ノ◎←ベーグル持参
゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
渚で…
゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
ウフフ アハハ ザザーン…(SE:柳行李に小豆)
(#´▽`)人(^〜^0)
゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
○
о
。
オヤツナトタベヨカ ソウレスネ
(*/▽\*)<キャッ! ( ´д`) ( ´D`)
- 355 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月22日(土)21時45分33秒
- レスのお礼です。
>水海さん
从 #~∀~从ノ <ウチの洋服、勝手に持ち出してんねん!
( `◇´)<姐さんがジバンシーってのもどうかと思うけどな
写真集を見たのですが、ヘップバーン体型ではないですね(w 胸以外は合格ですが。
>更新お疲れ様です。 その言葉に癒されますた(wありがとうございます。
>婆金さん
( ´D`)<あいぼんはヤキモチやきやさんなのれす
(;`д´)<う、うっさいわ!
うちにはバムセのぬいぐるみがあるのれす(w 石川さんもですが、辻加護も成長
しているのです。過去の話は徐々に…。マターリお待ちください。
>オガマーさん
( ´D`)<あいぼん、『合体』ってなんなんれすか?
( TдT)<もー、カンベンしてぇなぁ!
くだらないネタでスマソ(w 仲良しなふたりなのれす。いちおー歌ってる人なんかも
後の説明で付け加えてますので、よければ聴いてやってください(^^)
- 356 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月22日(土)21時49分44秒
- >>342
誤「いちおー、目立たない格好したしたつもりなんだけど…」
正「いちおー、目立たない格好したつもりなんだけど…」
- 357 名前:ミニマム矢口もえ 投稿日:2002年06月23日(日)03時33分10秒
- 昨日市井さんのライブ観覧に行って
ここのでの「市井ちゃんのギターさばき」を思い出しながら
鑑賞に浸りました。
今後も良い物書いて下さいね。(つづき待ち って事でw)
- 358 名前:I WILL 投稿日:2002年06月24日(月)22時47分34秒
- ―――吉澤視点
大学から帰ると、中澤さんが黒ずくめの格好をして台所にいた。
「あ、おかえり」
「ただいま帰りました…今日は何かあるんスか?」
「ああ、今日はうっとこのオトンの命日やねん。もうすぐみっちゃんたちも来るわ」
「ごめんくださーい」
平家さんと飯田さんが連れ立ってやって来た。
「おお、スマンな。まぁ、上がってーや」
ふたりとも略式ではあるが喪服だった。
「あの、中澤さん」
「ん、何や」
「あたしもお線香だけあげさせてください」
初めてかも。この家の仏間に入ったの。
入ってくと、ののとあいぼんが神妙な顔をしてお仏壇に手を合わせていた。
「あ、ひとみちゃん」
振り返った梨華ちゃんも黒いワンピースだった。
「お線香をと思って…」
「ありがとう。お父さんも喜んでるわ」
お線香を手に取って火をつける。
薄く煙が棚引いた。
「梨華ちゃんのお父さんはいつ亡くなられたんれすか?」
ののが言った。
「ん、三年前。あたしが高三の時よ。去年三回忌だったから、今年は簡単にってね」
「へぇ。お母さんもその頃亡くならはったんやろ。大変やってんなぁ」
「うん。裕ちゃんがいてくれたから…」
梨華ちゃんがはにかむように笑う。
「梨華ちゃんと中澤しゃんは仲良しなのれす」
「メチャラブラブやし。もー当てられっぱなしや」
あいぼんの言葉に梨華ちゃんは照れくさそうに笑った。
「ホントにスキなんだね。お姉ちゃんっ子っていうか」
ウチも続けた。
「ウン。実を言うと最初はちょっと怖かったんだけど…」
「ののもれす」
間髪入れないののの言葉に皆で笑う。
- 359 名前:I WILL 投稿日:2002年06月24日(月)22時59分29秒
- 夜八時半を回ってから、なっちさんと矢口さん、保田さん、ごっちんが現れた。
ごっちんは「んあ〜、ピック買いに店行ったらなっちに聞いてさぁ。
ごとーもお線香だけでもと思って」と言った。
「もう三年かぁ。アゴンも大人になったなぁ」
矢口さんがしみじみ言う。
「も〜、アゴンてひど〜い!シャクれてないもん!!」
梨華ちゃんの情けなさそうな顔に皆で笑う。
「ホホ!最近痩せてますますシャクレが目立つんじゃないの?」
「保田さんもひどいですぅ〜!」
「「シャークレシャクレ!」」
辻加護のコーラスまで加わり、梨華ちゃんはもうもう!と言いながら、あたしに
しがみついてきた。ちょっとびっくりしたけど、何でか満更でもない。
- 360 名前:I WILL 投稿日:2002年06月24日(月)23時01分29秒
- その後、あたし達は中澤さんが仕出屋さんから取ってくれたお弁当を頂きながら、
台所で少し話をした。
「梨華ちゃんのお父さんってどんな人だったの?」
ごっちんの言葉に
「そうだね、優しい人だったよ。いっぱい色んなもの買ってくれたし」
梨華ちゃんは昔を懐かしむように目を伏せる。
「目の中に入れても痛ないってヤツやな」
あいぼんは天ぷらを頬張りながら言った。
「ウン。お母さんにも裕ちゃんにも優しくしてもらったよ」
梨華ちゃんがこんなにご両親の事を話すのは初めてだった。
みんな黙ってしみじみと聞いてる。
「実はね」
「あたしがこの家に初めて来たのも今日なんだ」
もう十年たったの、と梨華ちゃんは言った。
「アゴンも昔は可愛かったよな〜」
矢口さんが言った。
「今はイシカワ、可愛くないですかぁ〜?」
「あ〜、カワイイ、カワイイ!」
わざと投げやりに言い、梨華ちゃんの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「ウフッ!真里っぺもカワイイ!」
「キショッ!真里っぺ言うな!」
ギャハハハ!と、ののとあいぼんは笑った。真里っぺ!真里っぺ!と真似してる。
「何だ!オマエらも〜!」
矢口さんがふたりにゲンコツをくらわす真似をする。
あたしと梨華ちゃんは目が合い、ちょっと笑い合った。
- 361 名前:I WILL 投稿日:2002年06月24日(月)23時10分29秒
- 「梨華ちゃんって子供の頃も可愛かったんだろうねぇ」
後片付けを手伝いながら吉澤は梨華に言った。
「エ〜?なぁに〜?」
頬を染めながら、梨華は振り向く。
「今度写真見せてよ。子供の頃の」
「ん〜、恥ずかしいけどいいよ」
ちょっと嬉しさを感じながら、梨華はテーブルを拭いた。
「ハァ。今年もつつがなく終えたわ」
裕子は平家にビールを注いだ。
ふたりは居間で少し飲んでいた。
「お疲れさん」
「三年か…早いなぁ」
裕子はソファーに体を投げ出し、髪をかき上げる。
「姐さんもよう頑張ったなぁ」
「ウチは何も…。みちよにはようしてもうたなぁ」
「おおきに」
珍しく腰の低い裕子に平家は笑った。姐さんらしないで、と。
「みちよ」
「ん?」
「…何でもない」
「何やの、いったん言い出しといて」
『そばにいて』なんて恥ずかしくてとても言えない。
言えたら苦労はしない。
「なにーな。言いやぁ〜」
平家がふざけてじゃれついてきた。
「うっさいな!何でもないわ!」
すぐさま平家を叩く。痛いやん、と文句を言いながらも、平家は裕子を抱きしめた。
「…何かあったら言うねんで」
「…うん」
裕子は平家の腕の中で小さく返事した。
- 362 名前:I WILL 投稿日:2002年06月24日(月)23時13分25秒
- 「やれやれ、無事終わったな」
裕子と梨華は一緒に風呂に入っていた。
『たまには姉妹水入らずで』珍しく、裕子が言い出してきた。
「ウン、終わったね」
「十年か…早いなぁ」
浴槽で体を伸ばしながら裕子は言った。
「早いねぇ。お互い老けるワケだ」
横目で睨み、梨華に軽くゲンコツを食らわす。
梨華ははしゃいで笑う。
「たまには背中なと流したるわ」
風呂から上がり、裕子はタオルを手に取りボディーシャンプーを泡立て
梨華の背中を洗った。
「あ〜!いい気持ち!次はあたしね!」
裕子を座らせ、次は自分が洗う。
最初にこの家に来た時はほんの子供だった。
よくぞ、ここまで。
裕子は背中を流されながら感慨に耽った。
「今日は一緒に寝ようね、お姉ちゃん♪」
「オマエなぁ…ハタチにもなって三十の姉と寝る女がドコにおんねん」
「ココにいる」
自分を指差し、梨華はニコニコ笑う。
- 363 名前:I WILL 投稿日:2002年06月24日(月)23時16分44秒
- 結局、裕子は自分のベッドを半分空けて梨華を隣に寝かせた。
「久しぶりだねぇ、一緒に寝るの!」
梨華はとても楽しそうだった。
その様子を見て、裕子は苦笑する。
『お姉ちゃ〜ん!一緒に寝よ!』
子供の頃は枕を持ってしょっちゅう自分の部屋に来た。
鬱陶しがりながらも、それを拒否したことはない。
「オマエな」
「うん?」
「吉澤のコト…好きなんやろ?」
「…ウン」
「吉澤に言わへんのか?」
「……」
梨華は黙った。
「まぁな、吉澤次第やけど、ウチは反対せぇへん。むしろ賛成や」
「裕ちゃん…」
「吉澤はオマエをエエ方向に引っ張ってくれる。本人は無意識やろうけど」
「うん」
「辻とか加護にもエエ影響を与えてる。加護なんか最初うちに来た時からは
考えられんくらい明るうなった」
裕子は続けた。
「ひとりじめしたいんか?」
梨華は泣きながら頷いた。痛々しいくらいに。
「しゃーないやっちゃな。欲しいんならぶつかりィな」
「…こ、コワイの。あのコトを知られて嫌われ、るのが…」
梨華はたどたどしく言い、嗚咽を漏らす。
「あほ。ほんまにあほやなぁ」
梨華を抱きしめながら裕子も鼻をすすった。
あの事件からも一年経つ。
梨華が今生きてる事に、裕子は梨華を生かしてくれたすべてのものに
改めて感謝した。
- 364 名前:I WILL 投稿日:2002年06月24日(月)23時28分45秒
- ―――市井視点
「ほぉ。お父さんの命日が初めて家に来た日でもあると」
アタシは大学の部室で、昨日イシカワさん家に行った話を後藤に聞かされていた。
「何か運命って感じだな」
「いちーちゃんもそう思う?」
「おう。そーいやさー」
「何さ」
「オマエ、あのいしかーさんによく構うよな。普段あんま他人に関心持たない
クセに」
前々から疑問に思っていたコトをアタシは口にした。彼女へのあまりの懐きように
コイツがホレたかと思ったくらいだ。
「…ん。あのさ」
「何?」
「いちーちゃん、昔うちの近所に住んでた、サユリちゃんって女の子、覚えてる?」
「サユリ…ああ、いたな。覚えてるよ。オマエと同じクラスだったコだろ?
…そーいや、いつの間にか引越しってったんじゃ?」
後藤は俯いた。ギターを床に置いて「どしたんだよ」とすぐに顔を覗き込む。
「…サユリちゃんさ、前の学校でいじめられてごとーたちの学校に転校して来たのね。
サユリちゃん、すごくおとなしくてあんま喋んないコだったけど、動物とか植物のことにすごく
詳しくて優しかったから、ごとー大好きだったんだ」
「…ウン」
その頃、確かに後藤はその子の話ばかりしてた。何をするのもサユリちゃん、
サユリちゃんって。
- 365 名前:I WILL 投稿日:2002年06月24日(月)23時33分21秒
- 「いちーちゃんがさ、足の骨折って入院したコトあったじゃん」
「ハハ、あったな。そんなコトも」
スーパーマンになる!とか言って、2階のベランダから飛び立って即入院。
我ながらバカなコトしたわ。
「ごとー、サユリちゃんとお見舞い行ったじゃん。そん時病院で水疱瘡を
誰かにうつされて、ごとーしばらく学校お休みしたのね」
「ああ、おばさんに聞いたよ」
「そしたら」
ごとーはまた俯いた。
「…サユリちゃん、またクラスでいじめられて、ごとーがまた学校に行くように
なったら転校してたの」
「…そうか」
「それならまだいい…。サユリちゃん…自分の部屋で遺書遺して死んじゃったの」
「え!?」
マジびっくりした。転校した後、どうしてたのか全然知んなかったし。
「だから、ごとーね…もうあんな思いするのはイヤなの!」
- 366 名前:I WILL 投稿日:2002年06月24日(月)23時38分53秒
- 後藤は声を上げて激しく泣き出した。
クールとか冷たいとか無関心とか人には言われてるけど。
実際のコイツは泣き虫で。
支えてやらなきゃ、崩れてしまう。
「オマエのせいじゃない」
アタシは後藤を強く抱きしめた。
それしかできないから…。
「オマエは悪くない」
それで後藤が安心すんのならアタシは何千、何万回とでも言ってやる。
「…今日は、エタニティーなんだね。ここんとこ、JAZZだったのに」
しばらくして、後藤は少し顔を上げて言った。
「オマエこそ、ティファニーかよ。イッチョマエに」
後藤の首筋からは大人の香りが漂ってる。
アタシの知らなかった後藤がそこにいる。
トモダチのコトも。イシカワさんのコトも。
「んあ、おかーさんが入学祝いに買ってくれたの」
「そっか」
後藤の頭をくしゃっと撫でた。
「梨華ちゃん見てたら…サユリちゃん、思い出して。ごとー、ヘンだね」
「フツーだ」
「あっは!何ソレ!いちーちゃん、ヘ〜ン!!」
後藤は涙をそのままにして、鼻を啜りながら笑う。
泣き顔も可愛いけど。
コイツにはやっぱ、笑顔が似合う。
- 367 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月24日(月)23時48分31秒
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ミニマム矢口もえさん
ヽ^∀^ノ<ありがと!アタシのこと思い出してくれて!
HNに萌えてしまいますた(w 生いちーはいかがでしたか?確か、たいせーから
高そうなギターもらって特訓してたんですよね。
HNにちなんで(〜^◇^)も今回サービスで(w
間違いハケーン
>>365
ごとーは→後藤は
この部分は実は最初ごま視点で書いてたので、直し忘れです(^^;; スマソ
- 368 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月25日(火)01時21分37秒
- >>363
引っ張ってくれる→引っ張ってくれてる
>>364
あのいしかーさんによく構うよな→イシカワさんをよく構ってるよな
- 369 名前:婆金 投稿日:2002年06月25日(火)02時08分59秒
- シスコンいしかーさん and ちっちゃいいちーちゃん かわいすぎ
どんどん、物語に引き込まれてます。
- 370 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月25日(火)16時48分56秒
- ごっつあん。やさしくていい子だ……(涙
一年前には、何が!!!!気になってしょうがありません。
が、ここは我慢我慢。。。。。(w
- 371 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月25日(火)22時23分00秒
- ある金曜日。
裕子は食事の支度をしていた。
煮物を炊いていると、平家から携帯にメールがきた。
彼女はライブで今沖縄にいる。
『リハいま終わってん〜。疲れた〜(ToT)』
『おつかれさん』
『おみやげ何がエエ?この後熊本とかも回るんやけど』
『別にエエ。余計な事にお金使いな』
『遠慮せんと(^^)
好きなん言うてエエで』
『別に何も…みちよが元気に帰ってきたらそんでエエ』
間を置かず、ほとんどチャットのようにやりとりする。
しばらくたって平家から届いたのは、
『愛してる』
―――最後のメールが届いたのを見て、裕子はすぐさま平家に直接電話した。
「…オイ!何やねん!最後のは!!」
「あ、姐さん。今くらいやったらゴハンの支度か。ウチは今ホテルの部屋やけど」
「そうや!…そんなのはどうでもエエ!最後のメールはなんじゃ!」
「偽らざる本音や」
「…アホ!」
「愛してる」
電話越しにチュッという音まで聞こえてきた。
「…切んぞ!」
ハイハイ、と笑い声がする。
「…みちよのアホ」
裕子は顔を赤くしてブツブツ言う。
支度を手伝っていた梨華は姉の様子を横から微笑ましく見守っていた。
- 372 名前:I WILL 投稿日:2002年06月25日(火)22時28分22秒
- ―――吉澤視点
あたしはライブの練習を終え、夜の街をメンバーのみんなと歩いていた。
「んあ〜、ごとーたちはここで」
「アタシもデートだから!お疲れ〜」
市井さん、ごっちん、アヤカさんの3人は手を振って雑踏の中に消えていった。
「ホホ!珍しくふたりね!」
保田さんが笑う。
「ハァ」
「大丈夫よ!取って食いやしないわ!」
「アタシはマズイですよ」
「んま!せっかく酒でもおごってやろうと思ったのに!」
「保田さぁ〜ん」
目一杯のカワイイ笑顔でじゃれつく。
「キリキリ逝くわよ!」
笑いながら、週末の華やかな街を歩いていく。
保田さんに連れられてきたのは銀座だった。
何か、すっごくオトナな感じのショットバーに入って行く。
「キョロキョロしない!」
小声で怒られる。
「…ハァ。スンマセン」
「おや、保田さん。いらっしゃい」
その店の主人らしき初老のバーテンダーが、保田さんを見てにっこり笑った。
「ホホ!マスター、お久しぶり!」
「今日はお若い方とご一緒で」
「んま!アタシも若いつもりなんだけど!」
「これは失礼」
ふたりはしばらく談笑してた。
キョロキョロすんな、と言われたけど、あまりの珍しさにやっぱり辺りを
見渡してしまった。
飲みに行くっつったら、たいてー居酒屋だし。
「ホラ、吉澤。何すんの」
「え、あ…。こういうトコではナニ頼めばいいんでしょ?」
保田さんが苦笑する。
- 373 名前:I WILL 投稿日:2002年06月25日(火)22時32分43秒
- 「今日は暑いですし、ハイボールなどいかがでしょうか?お酒とか炭酸は大丈夫ですか」
「あ、ハイ。ソレ、お願いします」
マスターのおすすめに従う。
「じゃ、アタシはドライマティーニを」
「しばらくお待ちください」
待ってる間、ヒマなのでカウンターの後ろの棚の酒瓶なんかを見る。
「保田さん、『いつもの』とか言わないんですね」
「いつも同じものが飲みたいとは限んないじゃないの」
「ハァ、そうっスね」
ちょっと離れた席に、いかにもデート中な社会人風カップルが静かに飲んでいた。
いいなぁ。ウチもあんなデートしたいよ。
てか、今横にいるの保田さんだし(泣)。
「お待たせしました。ハイボールにレモンはお入れしますか?」
「あ、ハイ」
グラスを手に取って、保田さんとカンパイする。
『次のライブ成功を祈って』と。
ひとくち飲む。
「…ウメェ〜!」
うっかりデカイ声で言ってしまい、さっきのカップルの人たちやマスターに
くすくす笑われた。
「…バカ!」
保田さんが小声で叱り、あたしの膝を叩く。
「イテッ!」
「声デカイ!」保田さんはあくまで小声だ。
「だってホントにおいしかったんですよ〜」
「ハハ。そのひとことが何よりのごほうびです」
マスターがグラスを拭きながら優しく笑う。
こうして、銀座の夜は更けていった。
- 374 名前:I WILL 投稿日:2002年06月25日(火)22時34分34秒
- 「ホンットに恥ずかしいったら!」
店を出た後も、保田さんはぶりぶり怒ってた。
「…スンマセン」
しゅん、としてると、
「まぁ、アンタのその素直なトコは好きだけどね」
保田さんは仕方ない、といった感じで笑った。
「エ?ウチにホレたんすか?」
「…アンタ、長生きするわよ」
「あ、どうも」
ニコニコしてると、『イシカワはどうして…』とか、保田さんが何やらブツブツ言っていた。
「梨華ちゃんがどうかしたんスか?」
「何でもないわよ。とにかく帰るわよ」
「ヘ〜い」
家に帰ると疲れと酔いとで急にぐったりきて、睡魔が襲ってきた。
「あ、ひとみちゃん。おかえり」
「ただいま…」
部屋の前で梨華ちゃんに挨拶したトコまではどうにか記憶がある。
―――その後は。
ベースとカバンを置いてパジャマに着替えようと、ジーンズを脱いで、シャツも脱ぎ捨てた。
そこで限界となって、ばったりベッドにつっぷした―――。
- 375 名前:I WILL 投稿日:2002年06月25日(火)22時37分00秒
- ―――石川視点
「…ひとみちゃ〜ん」
ベッドにうつぶせになって死んだように眠っているひとみちゃんを、あたしは揺すっていた。
このままじゃ風邪ひいちゃう。いくら夏だからって。
上からお布団もかけてないし。
というか、掛け布団の上で寝てるし。
ふと見ると、ひとみちゃんがほとんど下着の状態で寝ていることに気づいた。
気づいたとたん、耳まで赤くなる。
「ひ、ひとみちゃぁ〜ん…」
見てはいけない、と思いながらも、つい目がいく。
「…ん」
枕を抱きかかえるように頭をのせ、ひとみちゃんがちょっとうめいた。
…色っぽいなぁ。睫毛長いし…。
長い足を投げ出して、横たわってる。
つい近づいて寝顔を覗き込んでしまう。キレイ…。
え〜と。今日のひとみちゃんは白地に小花柄のキャミソールに薄い水色のローレングスの
ボクサータイプのショーツに…て!そうじゃなくてぇ〜!!
「ん〜」
またひとみちゃんがうめいた。
「いちーさぁ〜ん…」
エ!?市井さん!?
「そのギターテク…めちゃかっけーっス…むにゃむにゃ…」
…うう。ひとみちゃん、アナタは夢の中でもバンドなのね(泣)。
ひとみちゃんを起こすことはあきらめ(熟睡してるからかわいそうだし)、自分の部屋のクローゼット
から薄い夏用の掛け布団を持って来てひとみちゃんにかけた。
コドモみたいな寝顔…。
「―――おやすみ、ひとみちゃん」
そっと戸を閉めて、部屋から出て行った―――。
- 376 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月25日(火)22時56分11秒
- 更新しました。
(#^▽^)<…ひとみちゃん (0 ̄〜 ̄0)<グォ〜…(ほぼパンツ一丁)
ちょっとサービス。(;`.∀´)<…誰に対してのサービスなのよ
レスのお礼です。
>婆金さん
( ´ Д`)<あん時、複雑骨折してタイヘンだったよね〜
ヽ;^∀^ノ<おう、母ちゃんに死ぬほど怒られたぜ!
ありがとうございます。引き込まれると言うと、安倍公房『砂の女』
向こうは掘っても掘っても砂。こっちは掘っても掘ってもアフォ…。
…逝ってきます。がんがりますです。
>よすこ大好き読者。さん
( *´ Д `)<んあ、恥ずかしいよ〜 テレル…
( ^▽^)<ごっちん、大好き♪ テレチャッテカワイイ!
いつもありがとうございます。自分の中でごまはいいヤツなイメージがあるので。
いしかーさんになついてるごまっていうのが個人的ツボなのです。
何か自転車操業のように書いてますが(w、がんがります。
- 377 名前:I WILL 投稿日:2002年06月26日(水)22時00分16秒
- ―――吉澤視点
「…んあ」
何か体の上下に柔らかい感触があって目が覚めた。
少し体を起こし、その原因は掛け布団2枚に挟まれて寝ているからだと知る。
ウチ、どしたんだろ…?
ゆうべ保田さんにバーでおごってもらってそのまま帰って…えっと。
ダメだ、どーしても思いだせん。
「この布団は…?」
ウチのじゃないし。
床を見ると、ジーンズとシャツがちゃんと折りたたんで置いてあった。
…ハハ。ウチ、下着で寝てるよ…。恥ずかすぃ〜!
とりあえず、着替えて掛けられていた布団を丁寧に畳んだ。
梨華ちゃんの部屋のドアをノックする。
すぐ出てきた。
「あ、おはよう…」
何故だか顔が赤いような気がするのは気のせいだろうか。
「おはよ。あのさ…コレ、梨華ちゃん?」
布団を差し出す。
「あ、うん。ひとみちゃん、ゆうべ掛け布団の上で寝ちゃってたし…」
「ゴメン。服も畳んでくれたんだよね。ありがと。じゃ、コレ」
「あ、ウン」
「あのさ…」
去り際にふと気になることがあって、振り返った。
「なぁに?」
「ウチ…ゆうべ、ヘンな格好で寝てなかった?」
「エ…ああ、ゴメン。暗いから分からなかった」
「あ、そっか。ハハ、ゴメン。ヘンなコト聞いて」
「ううん、アハハ…」
ふたりで笑い合って、「それじゃ」と言って立ち去った。
- 378 名前:I WILL 投稿日:2002年06月26日(水)22時06分53秒
- ―――石川視点
……ゴメンね、ひとみちゃん。
ウソ、ついちゃった。
でも、あたしもいやらしいのかな。
ひとみちゃんのあんな格好見て…。
まだ胸がドキドキしてる…。
えっちな本を平家さんと読んでギャーギャー男の子みたいに騒いでる裕ちゃんのコト、
言えないわ。
キスすればよかったとか、抱きつけばよかったとか決して考えたわけじゃないから、
まだ許される…よね?
「ののたちはもうすぐ夏休みれす」
朝ごはんの時、ののちゃんが言った。
「そーか、そーか。休みの間はどうするんや?親戚の家に行くんか?」
裕ちゃんが聞き返した。それによって、ごはんの量とかも変わってくるし。
「ののの両親とお姉ちゃんが、8月に日本に来る予定れすので、その時に行くれす」
ののちゃん、すごく嬉しそう。
「そーか、よかったなぁ〜」
裕ちゃんも何だか我が事のように嬉しそうだった。
「それ以外はどうすんねん、自分?」とあいぼん。
「ここにいるれすよ。あいぼんは?」
「ウチは…そうやなぁ〜。お盆には帰ろと思てたけどな」
「吉澤はどないすんのや?」
裕ちゃんはひとみちゃんの方を見た。
「東京にいます。バイトもありますし。お盆に帰るくらいですかね」
「そうか。また献立とかもぼちぼち考えよか」
…ひとみちゃん、ここにいるんだ。
ちょっと…ううん、かなり嬉しい。
どこか遊びに誘おうかな。
あ、でもバイトとバンドで忙しいかな。
- 379 名前:I WILL 投稿日:2002年06月26日(水)22時20分13秒
- 「梨華ちゃんは旅行とか行かへんの?」
突然あいぼんに振られて、びっくりした。
「あ、うん。神奈川のお母さんのお墓に…」
「そっか。親孝行やなぁ。感心、感心」
あいぼんの口調が大人びていたのでくすっと笑う。
というか、近所のおじさんみたい。
「どっかさ、行かない?夏休みに」
振り向くと、ひとみちゃんがニコニコ笑ってた。
「梨華ちゃんのヒマな時でいいから」
「あ…ウン!」
…やったぁ〜!
裕ちゃんとふと目が合うと、良かったな、っていう風に笑ってた。
どこ行こう…。
海でしょ、プールでしょ…あ〜、楽しみ!
「お母さんが向こうのお菓子を買ってきてくれるれす」
「自分、食うコトばっかやな。まぁ、エエけど」
ののとあいぼんは漫才のように会話を続けていた。
「あいぼんもお盆に帰るんれしょ?今度こそシカセンベイ買ってきてください」
「だからあれは人間の食うモンじゃ…分かったわ」
「ウチも食ってみてーな〜!」
ひとみちゃんが言った。
「そんなん食べてシカなっても知らへんで」
横で裕ちゃんが呆れてる。
「のの、トーストおかわりれす」
「ハイハイ」
パンをトースターにセットして、しばし待つ。
ひとみちゃん、どこ行きたいんだろう。
あたしはそればかり考えてた。
- 380 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月26日(水)22時27分18秒
- 更新しました。今日は寒い。。。
・虫干し(ちょっと早いか)
从 #~∀~从ノ■<あー!ホンマに押入れの整理はメンドくさいな!
从 #~∀~从つ□<なんじゃこら?サクブンファイル、5-3 イシカワリカ?
パラパラ…
从 #~∀~从<どれどれ…
「大好きなお姉ちゃん 5年3組 石川梨華
( ^▽^)<私にはお姉ちゃんがいます。お姉ちゃんはお酒を飲んでよくよっぱらってます。
よって帰ってくると大声で歌っているのでよくわかります。
そのたびにお父さんやお母さんに怒られてます。
でも、お姉ちゃんは私にすごく優しくしてくれます。よく一緒にねます。
おこづかいもたまにくれます。おこるとこわいけど。
私はおねえちゃんが大好きです。」
从#~∀~#从<………
(( 从 #~∀~从<(今日はアイツの好きな白玉でも作ろか)
本物のいしかーの作文(卒業文集だったか)は修学旅行ネタで食べ物のことばかり書いてた。
- 381 名前:オガマー 投稿日:2002年06月26日(水)22時36分20秒
- おお…
吉はどこに行きたいのだろうか…
梨華たむと一緒にドキドキ(笑)
シカせんべー…おいしいのかな(笑)
いしかーさんの作文こぼれネタが嬉しかったりw
- 382 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月27日(木)04時24分52秒
- 随所随所のりかゆう?シスコン姉妹最高〜。
りかっち頑張れ!!いしよし・・・(w
みっちゅーもツボ。みちよに甘える裕子が結構新鮮かも(w
- 383 名前:ミニマム矢口もえ 投稿日:2002年06月27日(木)05時06分11秒
- おー更新お疲れさんです。
なにげに「みっちゅう」も進行してますね!
あぁぁぁ いけずな吉に清き一票(笑)
- 384 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月27日(木)15時20分48秒
- つ、ついに初デート???(w
私も、シカセンべー食べてみたい。。。。。。
- 385 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月27日(木)18時28分39秒
- >オガマーさん
うまいとかまずいの前に味がないそうです。。。(聞いた話ですが)奈良にお越しの
際には是非一度…。( ´D`)つ○<ジャムをつけて食べるのれす
>名無し読者さん
ミチャーソには甘ったれな姐さんなのです( `◇´)<素直じゃないトコもまたエエねん!
シスコン姉妹、人気だなぁ(w
>ミニマム矢口もえさん
みっちゅーは書いてて楽しい、と逝ってみるテスト。(0^〜^)<イケズするの?
清き一票、ありがとうございます(w
>よすこ大好き読者。さん
( ´D`)つ□<梅ジャムをつけるのれす! 絶対まずいと思います(w
初デートは爽やかに…。
- 386 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時33分17秒
- 週は明けて月曜日。
あたしは補講を受けるために大学に行った。
梨華ちゃんもレポートを出しに行くというので、一緒に出た。
「あ、いけない!保険証忘れた!」
梨華ちゃんは玄関で引き返した。
「ゴメン!ひとみちゃん先行ってて!」
「いいよ、まだ時間あるし取っといでよ」
しばらく待つ。
「ひとみちゃん、待っててくれたんだ。ごめ〜ん」
すぐに梨華ちゃんは戻って来た。
「保険証ってどっか具合悪いの?」
「ううん。歯医者さんの予約してるから。月が変わったしね」
「そっか」
そのまま大学に向かう。
補講をふたコマ受けて、部室にでもカオ出そうかと思って廊下を歩いていた。
「あ、ひとみちゃん!授業終わったの?」
向こうから梨華ちゃんが手を振って走ってきた。
「ウン。梨華ちゃんは?」
「図書館で調べものしてたの」
「そっか。お茶でもする?」
「うん」
- 387 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時35分59秒
- 並んで廊下を歩いていく。
階段を降りていくと、
下から、何かいかにも香水くさそうな派手な連中が上がってきた。
正直ああいう人たちは苦手なので、何となく避ける。
ふと見ると、梨華ちゃんの顔が青ざめていた。
血の気がないっていうか。
…どしたんだろ。
「…次はベース弾きなんだ。懲りないねぇ」
その一団のひとりが通りすがりに言った。
梨華ちゃんの体がびくっとする。
「まったくねぇ、あんなコトがあったのに」
くすくす笑い声がした。
「…ちょっと待ちなよ」
一番最初に言ったヤツの腕を掴んだ。
「何よ、あんた。離しなさいよ!」
「あんたが彼女に謝ったらね」
負けずにスゴむ。
「ウチのコトは何言ってもいいわ。バンドなんかやってっと慣れてっから。
彼女を侮辱したコトは謝んなよ」
「…やめ、やめて。ひとみちゃん…」
それまで震えてた梨華ちゃんが止めに入った。
「サイテーね、あんた!あんたのせいでどんだけ迷惑かかったって思ってんのよ!
もう自分は新しい恋人といちゃついてんの?信じらんない!」
「あんた!一体なに…!」
「もうやめて…」
梨華ちゃんが嗚咽を漏らした。
「梨華ちゃん、何でこんなコト言われて黙ってんのさ!?」
「あたしが…悪いの、あたしが…」
「だからって…!」
「分かったら離してよ、せいぜいそこの淫売と仲良くすんのね」
この一言で決定的にキレた。
「…テメ!」
「…ひとみちゃん、やめて!」
もつれ合って、バランスを崩した梨華ちゃんが階段から落ちた。
「…梨華ちゃん!」
―――梨華ちゃんは返事をしなかった。
- 388 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時38分02秒
- 「―――梨華ちゃん!梨華ちゃん!」
階段を駆け下りて梨華ちゃんのところに行く。
―――あの一団は無視して行ってしまった。
追いかけて2,3発ぶん殴りたいが、そんな場合ではない。
「梨華ちゃん!」
必死で揺すると、
「あ…ひとみちゃん」
ようやく返事があった。
「大丈夫?ケガは?頭打ってない?」
「だ、いじょうぶ…」
梨華ちゃんはゆっくり体を起こそうとした。
「血!血が出てる!!」
梨華ちゃんの足からハンパじゃない量の血が流れていた。
「今医務室に!くっそ〜!何じゃ!あの連中!!」
「あたしの…彼女」
「…へ?」
「前に…付き合ってたひと」
「彼女?てか、別れたからって恋人だったヤツがあんなコトフツー言う?」
「うん…」
―――梨華ちゃんはゆっくり話し始めた。
- 389 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時39分41秒
- ―――石川視点
あたしは高校を卒業して、外部受験で受かったこの大学に入った。
知り合いもおらず、心細かったが、同じクラスにいたあの人に声を掛けられて
すぐ打ち解けた。
恋に落ちるのも時間がかからなかった。
連休中に、彼女の家で、初めて抱かれた。
初めての恋も。初めての夜も。
全部差し出した。
抱かれてから、彼女の態度が急変した。
あたしは遊ばれた。ふたまたをかけられてた。
気づくのも、時間がかからなかった。
大学ではひとりになった。
正直、失恋の痛手を引きずったまま、同じ教室で授業を受けるのは辛かった。
『失恋に効くのは新しい環境よ』
保田さんのアドバイス通り、バイトを始めたり、習い事を始めたりした。
何とか忘れそうになったある日、バイトの帰り、夜道で誰かに羽交い絞めにされた。
「やめ…!」
抵抗すると、顔を殴られ、蹴られて倒れてしまった。
「やめて!お願い!!」
相手は黙ってあたしのシャツを引き裂いた。
雨が口に入る。
あの日は小雨が降っていた。
背中もぐしょぐしょになった。
不意に首を絞められた。
「…う!や…だ!」
まだ死にたくない。あたしはまだやりたいことがある。あたしが死んだら…裕ちゃんがひとりになる。
今朝の裕ちゃんの笑顔を思い出して、あたしは段々体がしびれてくるのを実感した。
「―――石川!」
飯田さんがあたしを救ってくれた。
- 390 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時40分47秒
- 飯田さんはあたしを病院に連れてってくれ、その日は裕ちゃんに連絡して家に泊めてくれた。
飯田さんはお風呂で泣きながらあたしの体を洗ってくれた。
保田さんが黙って温かいおかゆを作ってくれた。
行為は未遂で済んだが、あたしは人形のように口を聞かなかった。
相手は女の子だった。顔はよく分からなかったが、無表情だったのを覚えてる。
『しばらくゆっくり休み』
裕ちゃんの言葉に甘え、あたしは一週間何もせず家にいた。
その間、バイトも連絡してやめた。
大学に戻ると、誰かの視線を常に感じるようになった。
朝も昼も夜も。
気持ち悪くて、裕ちゃんに駅まで迎えに来てもらったこともある。
『石川梨華は淫売』
大学の掲示板に、こんな張り紙が貼られたのもその頃だった。
『名誉毀損で訴えたる!』
たまたま目撃した保田さんから知らされた裕ちゃんは激怒した。
『証拠もっと集めて警察に届出よ。梨華ちゃんのためにも。カッカするだけでは解決せえへん』
平家さんやみんなになだめられて一旦は落ち着いた。
裕ちゃんも渋々頷いた。
- 391 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時42分32秒
- ―――あの日。
朝からひどい雨だった。
5限目の授業を終えて、駅までの道をひとり歩いてた。
車が水溜りの水を飛ばしながら走ってく。
スカートのすそを気にしながら、歩いていた。
後ろからクラクションが鳴った。
よけようと脇にそれる。
―――あの顔を、あたしは一生忘れないだろう。
憎しみを抱いた相手には、人間は無表情になる。
あたしはあの時、知った。
―――あたしはその車に撥ね飛ばされ、宙を舞った。
―――次に気がついたら、白い空間にいた。この消毒薬の匂い…病院?
『…梨華!』
…裕ちゃんだ。
何だか、随分長い夢を見ていた気がする。
初めて中澤の家に来た日のこと。裕ちゃんに横浜へ旅行に連れてってもらったこと。
お母さんに誕生日にリカちゃん人形を買ってもらったこと。お父さんとお母さんに夏祭りに連れてって
もらったこと。
全部、夢だったのかしら―――。
- 392 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時43分52秒
- 「お姉ちゃん…」
夢かどうか確認するために、あたしは随分長い間呼んでいなかった呼び名で呼んだ。
『梨華!ウチや!分かるやろ!?』
裕ちゃんは必死であたしの手を握った。
「…お姉ちゃん」
そっと、握り返した。
あたしを撥ねた車は、あたしを撥ねた後逆走し、そのまま逃走した。
その日のうちに、運転手は逮捕された。
あの雨の日にあたしに乱暴したこと、中傷するビラを貼ったこと、付回したこと、淡々と取調べで答えた
らしい。
そのひとはあたしが以前付き合っていたひとの恋人だと、誰かから聞いた。
事実は曲解されて伝わった。
ふたまたをかけてたのはあたしだということになっていた。
あたしが諸悪の根源だと。
学内では尾ひれがついて噂だけがひとり歩きした。
ケガは直って退院はできたが、とても復学できる状態ではなかった。
『しばらく休むか?』
裕ちゃんが言った。
申し訳ない、とは思ったけど、裕ちゃんの言葉に甘えることにした。
- 393 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時47分06秒
- ―――吉澤視点
「…彼女ってのはどいつ?」
梨華ちゃんの話を聞いて、しばらくたってからあたしは口を開いた。
「最後に…怒鳴ったひと」
梨華ちゃんは俯いた。
「とりあえず、医務室行くよ」
おんぶして、歩いて行く。
『出張につき、本日不在』
医務室にはこんな張り紙があった。
ドアノブをガチャガチャと回す。
「…こんな時に!」
チッ!と舌打ちして、おんぶしたままここから一番近い部室に向かった。
確か、救急箱があったはずだ。
部室で梨華ちゃんを机のうえに座らせて、救急箱をあさってガーゼと包帯を出した。
「ひとみちゃん、シャツとジーンズに血が…」
「こんなのどうでもいいよ。ホラ、足出して」
梨華ちゃんは泣きそうな顔をして足を出した。
とりあえず、これで応急処置はできるだろう。
「あれ〜?ヨシコー?」
ごっちんの声だ。
「オイ、これ!血じゃねぇのか!?」
市井さんもいる。さっきドアを開けるとき、かすってしまったか。
「ヨシコ、一体なに!?」
勢いよくドアを開けてごっちんが入ってきた。
「…梨華ちゃん!その足!!」
梨華ちゃんの血は、白いガーゼをみるみるうちに紅く染めた。
- 394 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時49分04秒
- 「オイ!病院行ったがよくないか?」
いつも冷静な市井さんもさすがに青ざめている。
「そのつもりです。すいませんが勝手に救急箱借りました」
「そりゃいいが…」
「梨華ちゃん、どーしてこんな…」
ごっちんが泣きそうな顔で梨華ちゃんの腕にしがみついた。
梨華ちゃんは黙ってごっちんを抱きしめてる。
「てか、ワケの分からんオンナに絡まれたんスよ!あいつら!梨華ちゃんを…!」
「…分かった。とりあえずイシカワさんを病院に連れてくぞ」
市井さんは携帯を取り出してタクシー会社に電話した。
あたしと市井さんは梨華ちゃんを連れて、校門前に呼び出したタクシーに乗り込んで
病院に向かった。
病院に向かう間、3人とも黙っていた。
病院ではすぐ見てもらえた。
待合室で待ってる間、あたしは市井さんに話しかけた。
「…梨華ちゃんの、彼女って知ってました?」
「直接面識はないがな」
「あんなひどいコト言って…!殴ってやればよかったっスよ!」
「気持ちは分かるが暴力では何も解決しないぞ」
「…ハイ」
「送ってやれ。荷物はアタシが後で届けてやっから」
梨華ちゃんの診察が終わった後、市井さんはそう言って帰って行った。
- 395 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時51分00秒
- 「どーする?タクシーで帰る?」
「お金がもったいないよ…電車で帰ろ?」
梨華ちゃんが言うのに一瞬はためらったが、従うことにした。
電車でもずっと無言だった。
駅に降りたって、梨華ちゃんが足が痛いらしく、ひきずるように歩いてることに
気づいた。
イヤがるのを無視して、またおんぶする。
少し遠回りして、堤防を歩くことにした。
「…ごめんね、ひとみちゃん」
背中で、か細い声がした。
「何がさ」
「迷惑かけて」
「ケガしてるひとはおとなしく言うこと聞きなさいって」
「…そんな」
「ウチがついてて…ゴメン」
「ひとみちゃんのせいじゃないよ!」
「うわ!梨華ちゃん揺すらないでって!」
慌てて体勢を治しかつぎ直す。
「梨華ちゃんのせいじゃないよ。色んなコト、あっただろうけど」
「………」
「とりあえず、お家に帰るとしますか」
「ウン」
- 396 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時53分50秒
- 『Who knows how long I've loved you
You know I love you still
Will I wait a lonely lifetime
If you want me to--I will…』
何となく、口ずさんでみた。
『Love you whenever we're together
Love you when we're apart
And When at last I find you
Your song will fill the air
Sing it loud so I can hear you
Make it easy to be near you
For the things you do endear you to me
You know I will… 』
夕暮れの赤い光の中、背中に華奢なこのひとを背負って歩く。
「…夏休みさ、楽しいコトいっぱいしよ?いっぱい遊ぼ?」
「…ウン!」
背中からの返事には涙が混じっていた。
「…ひとみちゃん」
「ン?」
「…大好き」
「―――ありがとう」
ただ―――これだけしか言えなかった。
『君を愛し続けるよ いつまでも
心の底から君を愛してる…』
どこまでも、世界が赤かった―――。
- 397 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時54分55秒
- ―――市井視点
アタシはその日、一旦家に戻り、自分の車で吉澤たちの荷物を中澤さん家に届けに行った。
ちょうど圭ちゃんが来てて、あたしは中澤さんと圭ちゃんに一部始終を話した。
「…ホンマにすいません」
中澤さんは涙声で頭を下げた。
お礼がしたい、と仰るのを取り敢えず辞退して、失礼した。
…後藤は、今頃カンカンに怒ってるはずだ。
イシカワさんの血を見て、後藤はかなり冷静さを失っていた。
「オマエは残ってろ」
イシカワさんを病院に連れていく時そう言うと、
「何でさ!ごとーだって心配なのに!」
案の定、後藤は食ってかかった。
「あんまりいてもかえって足手まといだ。オマエはここにいろ。何かあったら連絡する」
敢えて取り合わず、部室を後にした。
「いちーちゃんのハゲ!おたんこなす!」
背後から罵詈雑言が響いた。
帰り、車を出す前に後藤に携帯からメールを打つ。
『イシカワさんのケガはそんなにひどくなかった。
血が出た割には傷も浅かった。あとは打ち身と捻挫くらいだ。
本当は彼女の口から聞くのがいいのだろうけど、
イシカワさんのことを何でも受け止める自信があるなら
今夜家に来い。彼女に何があったか話すから』
送信して、車を走らせた。
- 398 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時57分09秒
- マンションに戻ると、部屋の前で後藤がふてくされた顔でしゃがみこんでいた。
「合鍵持ってんだから中で待ってろよ」
「あんまりハラたつから外にいたの」
「ワケわかんねーな」
促して中に入った。
アタシは冷蔵庫の麦茶をふたり分注ぎ、ひとつを後藤に渡した。
それからアタシが知ってる限りのことをありのまま話した。
途中で後藤は目を見開いたりして驚いていたようだが、激昂するということはなく割に
静かに聞いていた。
「…それでそのひとは今もガッコー来てんの?」
一通り話し終えた後、ポツンと後藤は言った。
「ああ、フツーに来てる。…撥ねたヤツはどこの刑務所か知らんが服役中だ」
「…おかしいよ!そんなの!!」
後藤はアタシの襟首をつかんだ。
「梨華ちゃんひとりが!何で…!」
「気持ちは分かるが向こうは法的に問題はない。後は民事訴訟で持ってくしかないだろ」
「いちーちゃんは何とも思わないの!?」
「…思わなかったら係わり合いを持たないよ」
「そんなのって…!」
後藤はアタシの襟から手を離した。
アタシは立ち上がって、窓辺に行った。カーテンを開けて外を見る。
慌しい一日だった。もう日は暮れて空は夜の蒼に染まっていた。
- 399 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)18時59分24秒
- 「後藤」
「何…?」
「生きていたら、色々割に合わんことや、やるせなくなるようなこともあるよ。
アタシも今日特に思ったよ」
「ウン…」
「でも、生きてかなきゃしょーがねぇだろ」
「ウン」
「それに」
「イシカワさんはひとりじゃないよ」
後藤は堰切ったように、大声を上げて泣き出した。
彼女のそばにいって、背中をだきしめてやる。
「い、いちーちゃん…」
「何だ?」
「ごとー、今日いっぱい泣いてもいい?つぎ、りかちゃんに…ヒック、会ったとき、
笑顔でいられるように…」
「…覚悟の上だ」
後藤を抱きしめる手に力をこめる。
- 400 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)19時00分59秒
- 「…いちーちゃんはその噂を信じなかったの?」
しばらくしてから後藤が顔を上げて言った。
「ああ、あまりにもガセが多かったからな。イシカワさんを直接知ってたワケじゃないし」
「…よかった」
「何が?」
「いちーちゃんがその噂を鵜呑みにしてたら、ごとー、いちーちゃんを100万回殴ってた」
「…よかったぁ〜。100万回もぶたれたら死ぬからな」
冗談ぽく言うと、後藤はやっといつものように笑った。
「梨華ちゃんを最初避けてたのは何で?」
「ん…あ、何か、痛々しいコだなぁと思って。正直苦手だった」
「そっか…よかった、仲良くなれて」
「まぁ、フツーにな」
「何よ、フツーって!」
後藤がバカ力でバシン!と腕を叩いた。
「テメ!いてーよ!」
「無視してたのには変わりないじゃん!」
「悪かったよ…反省してます」
「もっと大きな声で!」
「…ゴメンナサイ!」
よろしい!と言って、後藤はくすくす笑ってアタシを抱きしめた。
- 401 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)19時06分44秒
- ―――吉澤視点
その夜、あたしは台所で、中澤さんと向かい合って座っていた。
「…すみませんでした」
あたしは何回目になるか分からない謝罪の言葉をまた口にした。
中澤さんは黙って首を振った。
「市井さんて子からも、梨華からも聞いた。アンタのせいやない。顔、上げ」
「ウチ、そばにいたのに何もできなくて…!」
思い出すだけで悔しい。
涙が溢れてきた。
「梨華が言うてたで…『ひとみちゃんがあたしのために怒ってくれた』って。
ウチはそれだけで充分や。な、吉澤?ウチは嬉しいんやで。シスコンって言われるかもしれんけど、
あの子に体張って守ってくれる人がおるってだけでウチは嬉しいんや」
「…中澤さん」
「ハハ、ウチもエエ加減、妹離れせなアカンな」
中澤さんは笑って鼻を啜り、指で涙を拭った。
「スミマセン、ウチ…いざとなったらここ…出て行きます」
「…ちょっ!アンタ何言うてんの!?」
「だめれす!」
振り向くと、ののが入り口に立っていた。
「のの…」
「出て行くなんてだめれす!ののが許さないれす!!」
「今出てったら、梨華ちゃん、取り乱すで」
あいぼんが続けた。
「吉澤はどうしたいんや」
中澤さんが静かに言った。
「…ウチは」
梨華ちゃんの笑い顔が頭に浮かんだ。
ほんの3ヶ月だけど、もう、彼女の存在はウチの中で大きくなってた―――。
「…すみません。卒業まで置いてください」
「当たり前やないの。そう言うて親御さんから預かってんねんから」
中澤さんがバシーンと思い切り腕を叩いた。
「イテー!マジ、痛いっスよ!」
あたしの様子を見て、3人は笑った。
- 402 名前:I WILL 投稿日:2002年06月27日(木)19時08分33秒
- 「梨華ちゃんは今、どこに?」
台所を出るとき、中澤さんに聞いた。
「今日は仏間に布団敷いて休ませてる。アイツはあの部屋何でか好きやからな。
アンタももうお風呂入って休み」
「…ハイ」
お風呂に入る前に、仏間の襖を静かに開け、そっと入って行った。
梨華ちゃんが眠っている。
あたしは身を屈めて、そっと寝顔を見た。
頬に触れ、口の傍にある髪を払ってあげる。
指に寝息が触れ、何故だか安心する。
その儚げな寝顔は、見てて不安になるから―――。
「…ゴメン」
また涙が出てきた―――。
その細い肩を抱きしめて、頬にキスした。
- 403 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月27日(木)19時09分35秒
- 更新しました。
- 404 名前:オガマー 投稿日:2002年06月27日(木)19時40分52秒
- ほぉ…
切ないですね…
吉の気持ちは!?…
更新楽しみにしていまーす!!
- 405 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月27日(木)22時15分45秒
- んぁー!なんか遂にキましたね!いろいろと!
物凄く期待。
- 406 名前:婆金 投稿日:2002年06月28日(金)00時19分53秒
- 吉澤さん、ほんっとうに石川さんのコト、頼みます!
切ない・・・
- 407 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月28日(金)23時00分04秒
- ウオ〜〜〜つ・ついに真相が!!
切ない切な過ぎます!(T▽T)
ここからの展開が楽しみです。がんがってください。
- 408 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年06月29日(土)01時28分50秒
- ―――石川視点
翌日。
あたしはケガの消毒と包帯交換のため、昨日の病院にいた。
ひとみちゃんは「テストさえなかったら一緒に行きたいんだけど…」とすまなそうな顔で
言った。
聞くと、第二外語のフランス語のテストとのことだった。
「絶対ダメ!語学は甘く見ると後で泣くよ!」
背中を押して、朝学校に送り出した。
―――何だか申し訳なかった。
元はと言えば、あたしの不注意なのに。
…それにしても。
勢いとは言え、『大好き』なんて言ってしまった…。
『ありがとう』とは言ってくれたけど、『好きになってくれてありがとう』なのか、
『ゴメン、受け入れられないけど気持ちは嬉しい』のありがとうなのか。
考えれば考えるほど分からない。
昨日の事を思い出すだけで顔が赤くなりそうだ―――。
ひとみちゃんの背中…広くてあったかかった。
大学の階段であのひとに食ってかかった時の、激情した顔。
あたしの血を見た後の、悲しそうな顔。
帰りに堤防で背中のあたしに振り返った、優しい顔…。
色んなひとみちゃんを思い出してた―――。
- 409 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年06月29日(土)01時42分18秒
- ―――吉澤視点
「梨華ちゃん、ケガの具合どう?」
大学でフラ語と般教のテストを受けた後、あたしは速攻帰宅した。
駅でたまたま病院帰りの梨華ちゃんに会い、そのまま散歩がてらに川原に来た。
「ん、大分よくなったよ。もう傷みもほとんどないし。傷もキレイに治るって」
「そっか、よかった」
土手にふたりで寝転ぶ。
子供たちが下の原っぱで野球をしてる。
どこかのおじいさんも犬の散歩をしてる。
「打ち身のあとはまだちょっとあるけど…」
梨華ちゃんが少し足を投げ出して、その箇所を見せた。
…ほっそい足してんな〜。
しかし、ちょっと…目のやり場に困る。
「あ、そのうち消える、と思うよ…」
うろたえてよく分からない返事をしてしまった。
「そうだね」
にっこり微笑まれる。
「あ〜、何かキモチいいね〜!」
う〜んと伸びをして、梨華ちゃんは草の上に寝っ転がった。
「…梨華ちゃん?」
問いかけた時には、もう夢の中のようだった。
改めて、その寝顔を覗き込む。
何か眠り姫、って感じ。
物語のお姫様は王子のキスで目が覚めて…。
柄にもなくドキドキしてきた。
てか、ウチ…どうしたんだろ。
昨日、『大好き』と梨華ちゃんは確かに言った―――。
…どういう『大好き』なのか。
梨華ちゃんはあいぼんとかに、
梨華:『あ〜いぼん♪カワイ♪』
あいぼん:『も〜、やめてんか!』
とたまに抱きついてるし、
ごっちんにも
梨華:『ごっちん、大好き♪』
ごっちん:『あっは!』
と言ったりしてる。
…それの延長線上の好意?
…さっぱり分からん。
- 410 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年06月29日(土)01時48分03秒
- その頃、後藤は犬の散歩のバイト(代理)を終え、その足で中澤家に向かった。
途中パン屋に寄り、アイスをいくつか買った。
「師匠、久しぶりでんな〜!」
加護が嬉しそうな顔で飛び出してきた。
「んあ〜、アイス食べる〜?」
近所のパン屋の袋を掲げる後藤。
「食べるれす!」
即答の辻だった。
「梨華ちゃんとよっすぃ〜はいないのれす」
「知ってるよ。さっき川原で見かけたし」
「へ、そうなんですか?」
「んあ、ごとートモダチの代理で犬の散歩のバイトしててさ〜。
さっき川原に行ったら、梨華ちゃんとヨスコがいて」
「この暑いのにれすか?」
「そうだよね〜。何かイイムードなんで声かけないで帰ってきたよ」
「「イイ…ムード?」」辻・加護は声を揃えた。
「何か梨華ちゃんが昼寝してて、ヨスコが梨華ちゃんの顔、覗き込んでた」
「それって…キス寸前じゃ」
加護がポッと頬を赤らめる。
「…賭けよっか?ごとーは寸前で梨華ちゃんが目を覚ますに『モナ王』1個」
「ののはよっすぃ〜が意気地なしでできないに『ガリガリ君』ひとつれす」
「うわ!師匠もののもベタやなぁ〜。ウチは両方へタレででけへんに
『ジャイアントコーン』」
「…賭けになんないれすね」
3人は顔を見合わせ仕方なく笑った。
- 411 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月29日(土)01時51分26秒
- 更新しました。
タイトルはレゲエの神様、ボブ・マーリーの曲より。
睡魔に負けました(w
レスのお礼はまた改めてさせて頂きます。
- 412 名前:水海 投稿日:2002年06月29日(土)02時03分00秒
- 吉くんの中で
二人の関係が 王子と姫 に なりつつあって、良い感じです。
メチャ激甘に なって 欲すぃ…(でも 吉が鈍くてダメなんだろうなぁ)。
(0^〜^)<ほっそい足してんな〜。
コラ!ちゃんとケガの心配しなさい(w。
- 413 名前:オガマー 投稿日:2002年06月29日(土)03時17分02秒
- またいいところでお止めになってw
ドキドキして眠れないじゃないっスかぁ〜〜〜ぐぉ〜(爆
ドキドキしながら更新待ちw
- 414 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月29日(土)09時47分34秒
- わたしは、「ガリガリ君(グレープフルーツ味)」に、賭ける!!(笑)
- 415 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月29日(土)10時27分37秒
- おはようございます。
さて、レスのお礼です。
>オガマーさん
いいとこでしたか(w 書いた後、「ショボイ賭けやな」と自分で書いてて思いました。
よすこさんは成長を待つとしましょう(w
(0^〜^)<ナンデ? ←それがニブチンという
>名無し読者さん
キました(w 引っ張りすぎてごめんなさい、って感じです。「テメー!そんだけ
引っ張ってソレかよ!」と石投げられないかな、と今もビクビクしてます(w
ご期待に添えるようにがんがります。
( T▽T)<リカモガンガル!
>婆金さん
(0^〜^)ノ<まかせてYO!
これでひとやま越えたかな、という感じです。長い道のりでした(ニガワラ
よすこさんにもがんがってもらうとしましょう。
>水海さん
(#^▽^)<ひとみちゃん、ハズカシイ…
ほんまにケガ人相手に何考えてんねん、って感じですね(爆 そうですねぇ、
よすこにもっと学んでもらうとしましょうか(何を?)
>よすこ大好き読者。さん
( ^▽^)<ひとみちゃんに振り向いてもらえるようにがんがります!
ここまで長い道のりでした(遠い目)。やっと次に進めるかな、このふたりはって
感じですね。じゃ、私は『チョコモナ王』で(w
- 416 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月29日(土)10時36分56秒
- ・お散歩
キャンキャン!
((( ´ Д`)<んあ、歩くの早いよ〜 マッテ (犬の散歩バイト中)
( ´ Д`)<あ ヨスコトリカチャン
ドキドキ グーグー
(#;0^〜)(−▽−)
( ´ Д`)<……
キャン!
((( ´ Д`)<んあ〜、行くよ〜 オイデ
- 417 名前:婆金 投稿日:2002年06月30日(日)00時12分29秒
- では私は「ガリガリ君(セミスィートチョコレート味)」に賭けます!
ごっちん、友だち思いで、かわいくて・・・、良いなァ。
- 418 名前:水海 投稿日:2002年06月30日(日)12時37分41秒
- いつも楽しませていただいてます。
>416のAA、
二人をからかいもせず、なにげに スルーしてくるごとー。
そして そのことを報告しつつ、上手に年下と遊んであげられる
ごとーが かわいいです。やさしいからできることなんだろうな。
- 419 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月30日(日)19時47分48秒
- ニブチンのよっすぃ〜がやっと目覚めたのはめでたいですが
ごっちんはいちーちゃんの気持ちに気付いてるんでしょうか?
もしかして、よっすぃ〜以上のニブチン?
頑張れ、いちーちゃん(w
- 420 名前:いしよしサイコ〜 投稿日:2002年07月01日(月)00時38分17秒
- ごまさん、私はだぁれだ?(w
こっちにレスするのは初めてですな♪
何気にAAによる物語の表現、萌え〜って感じ!
背景が分かり易くて面白いですね。
それじゃ、次回も更新がんばって!!
(0^〜^)ノ<また来るよ〜ん♪
- 421 名前:ごーまるいち 投稿日:2002年07月01日(月)19時08分46秒
- 自分は万馬券を狙って「逝きつくところまで逝く」にハーゲンダッツ(爆
冗談はさて置いて、やっと、ですね。次のステップに進むまでにも
また長い道のりを乗り越えるしかないんでしょうか?(w
- 422 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月01日(月)21時00分39秒
- ―――吉澤視点
あたしはしばらく梨華ちゃんの寝顔を眺めてた。
さっきまで陽が照っていたが、雲が出てきて陰ってる。
薄いけど形の良い唇ばかり視界に入る。
覗き込んだまま、つい指でそこに触れそうになると、
「…ん」
梨華ちゃんは目をこすって起き上がった。
「あ、ごめん…あたし、寝てたんだね」
「いや、キモチよさそうだったよ」
ヨコシマな気持ちを誤魔化すためにわざとらしく笑う。
「…どしたの?」
梨華ちゃんがあたしの顔を覗き込む。
「エ…」
しばらく沈黙が流れる。
雲が流れ、その影が草に映る。
あたしは思い切って梨華ちゃんの頬に指を触れた。
おそらく震えていたと思う。
梨華ちゃんは一瞬ピクッとなったがすぐに目を閉じた。
「梨華ちゃ、ん…」
自分の顔を近づける。
心臓が、壊れちまうかと思った…。
ライブの出番前より緊張してるし。
「…ひとみちゃん」
甘い囁き。微妙に掠れててより誘う。
―――どれくらいそうしていただろう。
あたしたちって…意気地なし。
お互い手をグーにして、相手の唇をほぼ直立不動でただ待っていた―――。
「帰ろっか」
気まずさを隠してわざと明るく言って立ち上がった。
「うん、そだね」
梨華ちゃんも立ち上がってスカートの後ろを軽く払った。
…神様。アタシに、勇気をください。
- 423 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月01日(月)21時10分22秒
- ―――翌日。
梨華は保田とうなぎ屋にいた。ボーナスも出たので特別にご馳走していた。
大きな処ではないが、この界隈では有名な店だ。
店頭ののれんに「うなぎ」と書いてあって、「う」の字が
うなぎの絵というような店である。
「ホホ!遠慮せずに食べるといいわ!」
「わ〜!いただきま〜す!」
梨華は笑顔で箸を割った。
「保田さん、このお店、高いんじゃないんですか」
声を潜める梨華。しかも保田は肝吸いまで取ってくれた。
「ホホ!ボーナスってものがあるのよ!大丈夫!さ!遠慮なんかしてたら直る
ケガも直んないわよ!キリキリ食べな!」
「ハ〜イ!」
「まだ丑の日には早いけどね。ま、夏バテ防止っていうかね」
梨華がうな重を食べるのを見ながら、保田は白焼きつまみにビールを飲んでいた。
「おいしいです〜!」
「それは何よりだわ。待った甲斐があったってものね」
この店は裂くところから始めるので、30分は待った。
炭火で団扇をバタバタとはたきながら焼くので、すきっ腹にあの香ばしい香りは
なかなか拷問だった。
「保田さんはうな重食べないんですか?」
「持ち帰りに蒲焼きと白焼きを頼んだからこれでいいのよ」
「帰ってまだ食べるんですか?」
「カオリと夜に飲むのよ」
ニヤリと保田は笑った。
- 424 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月01日(月)21時14分26秒
- ついでにお猪口でグイッと、というジェスチャーもつけた。
「吉澤とはどうよ?」
梨華は俯いて顔を赤らめた。
「エ…どうとは?」
小声でボソボソと呟く。
「決まってんじゃない、どこまで進んだかよ」
粋なうなぎ屋でかなり下衆な話題だった。
「あ、その…キス」
「したの!?」
テーブルに乗り出す、オバチャン保田。
「するトコでした…」
梨華のかなり恥じらいを帯びた口調に保田は苦笑する。
「するトコねぇ…まるで中学生ね」
「だって…ひとみちゃんが」
梨華はもじもじと箸をいじくった。
「カァーッ!向こうが来ないんならこっちから!ガツーンと!ブチューッと!」
大きく両手を広げタコのような口をし、保田はたまたま目が合った店の親父に
怪訝な顔をされる。
慌てて元の顔に戻り、
「ったく!どっちも意気地がないわね〜」
大きくため息をついた。
「ハァ、スミマセン」
梨華はまた俯いてタレの染みたゴハンを口に運ぶ。
「でもま」
「一歩前進ね」
保田は笑顔で言った。
- 425 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月01日(月)21時19分01秒
- 「というワケなのよ」
夜、保田は自宅で飯田とうなぎをつまみながら一杯やっていた。
飯田が持ち込んだ日本酒を程よく冷やし、ブルーの硝子のお銚子に入れ直した。
「ほうほう。やるねぇ、吉澤も〜。王子って感じ!」
飯田はこの間からの一部始終を聞いて、冷酒を口にした。
「でしょ。オトコマエよねぇ〜」
ちょっと保田の目は恋する乙女風になっていた。星なども組みこまれている。
『圭ちゃん…イヤすぎる』と飯田は思ったが、敢えて口にするのはやめた。
「圭ちゃん、石川のケガはもういいの?」
「包帯は取れたみたいよ。ガーゼは当ててたけど」
「そっか。よかった」
飯田はふっと安心したように微笑んだ。
その笑顔を見て保田は『なんか…キレイじゃん』などと考えてしまった。
『ううん!アタシったら!ダメだぞ!ガンバレ!』
一体誰に対する応援なのか。
保田は『ガンバ!ガンバ!』と心の中で繰り返した。
飯田もよく交信をするが、今日は保田が交信気味だった。
『圭ちゃんがあんなに遠い…』
飯田は一瞬戸惑ったが、構わず白焼きに舌鼓を打った。
「…ハッ!アタシったら、どこへ逝こうとしてたのかしら!!」
ブルルルッと保田は頭を振った。
「おかえり。そろそろビール開ける?」
飯田は淡々と言い、冷蔵庫からいそいそと瓶ビールとグラスを持ってきた。
保田は『モーたい』という番組で、冷蔵庫でグラスを冷やすというアイディアを
見てから、早速実践していたのだ。
- 426 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月01日(月)21時25分31秒
- 「ねぇ、カオ」
「何?」
「アンタ、キスしたコトある?」
栓を抜いていた飯田は整った眉を顰めた。
「…ハァ?圭ちゃん、今日いつもにも増しておかしいよ?」
「ウキーッ!アンタには言われたくないわよ!」
ぶつぶつと言いながら保田は冷酒を飲み干した。
「あるよ、キスくらい。こう見えてもカオ、モテるんだからね」
「最近キスしたのはいつよ」
「んと…今日かなぁ」
「今日!?ア、相手は誰よ!?」
保田は目を見開いて慌てた。
「フフ、カワイイ女子高生♪」
グラスにビールを注いで、飯田はニンマリ笑う。
「誰!?」
またもやテーブルに乗り出す保田。目は血走っていた。
「辻」
「…何だ、辻かぁ〜」
心底がっかりし、保田は投げやりに椅子の背にもたれる。
「あれ、妬かないの?」
「辻相手に何を妬くのよ。てか、妬く理由って何よ?」
「そういう話じゃないの?」
「…ハァ〜。も、いいワ。この話は忘れて」
保田が横を向く。
飯田は近づいて、一瞬だけ頬にキスした。
「……!」
頬を押さえ、保田は赤くなる。
その反応を見て、飯田はクスクス笑いながらビールを飲んだ。
「…アンタね」
赤い顔のまま、保田は妙にとろんとした目で飯田を見た。
「圭ちゃん、顔赤い」
「うっさいよ。これは」
「酒に酔ったのよ」
保田は頬杖をついて憮然と言った。
- 427 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月01日(月)21時45分46秒
- 交信しました。
( ゜皿 ゜)ノ<ヤーイ、ケイチャン、テレテヤンノー!(;♯`.∀´)ノ<うっさいよ!
レスのお礼です。
>婆金さん
(0^〜^)ノ<オイラはピングレ味! ピンドン味でもいいYO!(ねーよ)
ごまは心の優しい娘さんなのです。イメージとしては『手を握って――』でしょうか。
>水海さん
( *´ Д `)<エ、照れるよお…
ごまさん、大人気!( ‘д‘)<ウチの師匠やしな!(←我が事のように喜ぶ弟子)
>名無し読者さん
( ´ Д`)<んあ?いちーちゃんは幼馴染よ?
いちーに明日は来るのか!?ヽT∀Tノ<…がんがるよ。応援よろしく!
>いしよしサイコ〜さん
( ^▽^)ノ<初レスありがとうございます!
AA、今回評判です(w 何でかいしよしじゃないひとがちうしてますが。
>ごーまるいちさん
(*/▽\*) <イヤン!梨華、恥ずかしい!イキツクトコナンテ…
大穴が来たらすごいですね。でも、(0^〜^)<イキツクトコ?←こういうヒトですからね(ニガワラ
- 428 名前:オガマー 投稿日:2002年07月01日(月)22時03分46秒
- ネタバレになりそーなので
一番思ったことが書けないー(w
一応さけんどこう(何)
ケメ子にさんせーーーーーー!!(爆
- 429 名前:いしよしサイコ〜 投稿日:2002年07月02日(火)00時50分57秒
- 感想の方は、みぎさんとこに書いたので
ここでは手短にします。(w
あっちにも顔出してね♪
私、最近はあそこも毎日のぞきに行ってまっせ〜!!
- 430 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月02日(火)01時05分36秒
- >( ´ Д`)<んあ?いちーちゃんは幼馴染よ?
やっぱり(w
いちーちゃん、がんがれ!応援してるよ!
- 431 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月02日(火)22時35分37秒
- 辻と加護は今日が終業式だった。
明日からようやく待望の夏休みに入る。
教室で解散した後、加護は図書館へ本を返却するため、辻のいる1年C組の前を
通りかかった。
C組の教室前の廊下で、辻が誰かと話している。
辻は何やらその生徒に絡まれているようだった。
「オイ、のの。何しとんねん」
加護はすぐさま声をかけた。
辻ともう一人の生徒が振り向いた。
「あ、あいぼん…」
「誰?友達?」
その生徒は言った。Tシャツに白いジャージで天然パーマっぽい髪だった。
「へいっ。同じ下宿の加護亜依ちゃんれすっ」
「ふ〜ん。アンタが加護さんかぁ〜」
そう言ってジロジロ見た。
「な、なんやねん!感じ悪いなっ!」
怒る加護を無視してその生徒は続けた。
「いやね、辻さんをウチのチアリーディング部に勧誘してんだけどさぁ、
なかなかOKしてくれなくって」
「ああ、あのエンジェルなんちゃらってクラブか!当たり前じゃ!
ののはギター研究会の代表なんや!そんなポンポン持って踊っとるヒマないわ!」
「だから〜、その研究会の負担にならないようにするからって言ってんだけどね」
「のの、イヤならイヤって言うてエエねんぞ!」
加護が手をグーにして言う。
辻は泣き出しそうな顔をし、ふたりを見る。
- 432 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月02日(火)22時38分42秒
- 「何、アンタ。カンケーないじゃん」
小川が呆れたように加護を見た。
「あるわい!ウチもギター研究会の部員なんじゃい!それよりオマエ何者やねん!?」
「1年E組、小川麻琴。チアリーディング部の副部長。以後よろしく」
「1年で副部長!?てか、なんちゅうクラブや!」
「実力社会だからね」さらっと小川は言った。
「うわぁ〜、イヤなヤツや!ウチならオマエみたいな副部長のおるクラブ、
絶対入ったらへんわい!!」
辻は困ったようにふたりを見ていた。
それに気づいて、小川は辻の肩に手を置き、
「じゃあさ〜、クラブはいいから夏休みどっか遊びに行かない?」
小川の一言に加護はキレた。
「勧誘を装ったナンパかい!行くぞ!のの!!こんなアゴのジャージ女、
相手してるヒマはない!」
『アゴ』と言われ、小川は反射的に「なんだコノヤロー!」と得意の猪木芸が出た。
本能というか、脊髄反射である。
「またね〜、辻ちゃ〜ん!」
小川から後ろから手を振ると、加護がすぐさまものすごい形相で振り返り、
「『ちゃん』言うな!」怒鳴りつけた。
「じゃ、希美さま〜!」
「うっさい!猪木に弟子入りして雑巾がけから始めろ!」
加護に言われ、『ソレもいいカモ』と思う小川だった…。
- 433 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月02日(火)22時49分39秒
- 「で、どうだったの。勧誘のほうは?」
購買部の前で、小川は隣接する付属中学の新垣里沙に声をかけられた。
食後にアイスなどを、と思いアイスキャンディーをかじっているところだった。
新垣は小川の近所に住んでいる。
クラブは違うが、仲はいい。
「いや〜、同じ下宿のヤツが現れて、邪魔されて失敗」
小川は頭をかく。
「へえ、誰?」
「A組の加護亜依。あのちっちゃいの」
「ウソ!加護さんと同じ下宿なんだ!」
「何、アンタ加護って知ってんの?」
「コレ見てよ!」
新垣はカバンから分厚いファイルを取り出した。小川が手にとってめくると、
そこには膨大な量の加護の写真があった。
「何じゃ、こりゃ?何でアンタ、こんなの持ってんのよ?」
入学式、制服を着た集合写真、入学直後のオリエンテーションも兼ねた1泊2日の
宿泊研修、授業風景、プール開き、ありとあらゆる写真がある。
加護は外部受験者の中で首席だったので、入学式で新入生代表で挨拶もした。
その時の写真ももちろんある。
「うん。高校の知り合いの人に頼んで、生徒販売用のを余分に買ってもらってんの」
「アンタ、加護ファンなの?」
「エ、そんな。ファンなんて…」
新垣はもじもじしだした。
『こんだけ写真、集めといて!何照れてんだよ!』
小川は心の中でツッコみながらさらにページをめくった。
「あ、辻ちゃんじゃん」
授業を撮影したもので、加護と笑いながらギターのチューニングをしている
辻の写真があった。
「これ、1枚くれない?加護が隣にいるのがムカつくけど」
「いいけど、1枚500円ね」
「…高ッ!ぼったくりかよッ!」
その怒りはアゴにまで達した。
- 434 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月02日(火)23時00分25秒
- 更新しました。
レスのお礼です。
>オガマーさん
( `.∀´)ノ凸 <わかってんじゃない!さ、一杯やんなさい!
ネタバレ防止ご協力ありがとうございます。まさしく「意気地梨」なふたりです。
>いしよしサイコ〜さん
(`.3´)<本当にねぇ〜!こんな風にぶちゅっと!ねぇ! ムーチョッ!
うなぎ屋の親父はさぞ怖かっただろうな…。こっちにもありがとうです。
>名無し読者さん
ヽ^∀^ノ <応援ありがとう!がんがるよ!
ごまはある意味最強かも知れません(w よすこはフツーにニブチンですが。
- 435 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月02日(火)23時12分22秒
- ∬`▽´∬:小川麻琴(15)。新潟県出身。高1.中学時代チアで活躍し推薦入学した。
お気に入りは辻で何かと構う。得意技は猪木。∬`▽´∬<ナンダコノヤロー!!
( ・e・):新垣里沙(14)。神奈川県出身。中3.小川のご近所さんで付属中学に通う。
加護命!で生写真を熱心に収集している。アイドルのトレカ集めも好き。
( ・e・)<ラブラブ!
訂正です
>>423
ご馳走していた。→ご馳走してもらっていた。
- 436 名前:いしよしサイコ〜 投稿日:2002年07月03日(水)01時04分47秒
- 更新おつかれ様です。
新キャラの登場ですな!
相変わらず、鼻っぱしらの強い加護が笑えます。
2人とも、チアグループに引っ張り込まれてしまうんでしょうか?(w
いしよしカップルの今後の動きも、すんごーく気になります!
次回も楽しみに、更新待ってますよ〜
- 437 名前:オガマー 投稿日:2002年07月03日(水)01時18分46秒
- やっすー…頂きます…(オズオズ
5期メンですねぃ♪
いろいろ輪(?)が広がって楽しいww
- 438 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月03日(水)07時36分22秒
- ―――その日の夕方。
飯田と保田は喫茶タンポポでお茶をしていた。
「圭ちゃん、夏の休みはいつよ」
氷イチゴをサジでつつきながら飯田は言った。
喫茶店にあるのは普通『フラッペ』だが、この店はあくまで『かき氷』だった。
夜店の屋台のようなかき氷機もちゃんと完備している。
「例年通り、交代で休むわよ」
ふたりは『東京ウォーカー』などの情報誌をめくりながら、
夏のプランを考えている。
「カオ、行きたいところあるんだけど付き合ってよ」
「いいけど、アンタ北海道は帰んないの?」
「時間できたら帰るよ。しばらくは研究会とかで東京離れられないし」
「ふ〜ん。院生もタイヘンだねぇ」
保田はそう言ってアイス・オーレをストローで啜る。
「さて、できたっと」
矢口がそう言ってマジックを置いた。
「何書いてたのよ」
保田が顔を上げた。
- 439 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月03日(水)07時41分07秒
- 「ジャーン!」
矢口はそのポスターを掲げた。
「「『喫茶タンポポ・アルバイト募集』?」」
保田と飯田のふたりが同時に読み上げる。
「そんなに人手が足りないの?」
飯田は店内を見渡して言った。大繁盛しているわけではないが、矢口ひとりで
何とかなる規模ではないかと考えていたからだ。
「いや〜、たまにイッパイイッパイでさぁ〜、ダンナ」
矢口は苦笑する。特に出前が殺到した時はお手上げである。
「人件費は大丈夫なの?」
「そんな見切り発車しないって」
保田の発言に矢口は苦笑して言った。
「時給750円。曜日・時間応相談。週3〜4日程度。土日祝入れる方歓迎。
交通費1日400円まで(近隣の方歓迎)…う〜ん。カオに、もすこし時間があれば
考えるんだけどなぁ〜」
「アンタ、家庭教師やら色々やってんじゃん」
保田があきれて言う。
「さて、貼るとするか」
矢口はガムテープ片手に表に出た。
―――学校帰りの辻は、帰宅途中そのアルバイト募集の貼り紙を目にした。
しばらく考えた後、
「ごめんくださいれす」
意を決して、店に入って行った。
- 440 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月03日(水)07時43分41秒
- ―――吉澤視点
「「あ」」
ウチはバイトから帰って、ゴハンの前にひとっぷろ浴びようとして、ちょうど
お風呂上がりの梨華ちゃんと廊下で出くわした。
「あ、ひとみちゃん。おかえり。遅くまでバイト大変だね」
「あ、いや、そんな。ありがと」
あれ以来、あたしたちの会話はこんな風だった。
ふたりともギクシャク話し、ギクシャク笑う。
「それじゃ、お風呂入るから」
「あ、うん。ごゆっくり」
…緊張して、ウチ右手と右足同時に出てるし。
つーか、何で家ん中で行進する必要があんだよ?
「あ!ひとみちゃん…!」
梨華ちゃんが叫んだ時にはもう遅く、あたしは目の前の壁にぶつかった。
「大丈夫!?」
慌てて梨華ちゃんが駆け寄る。
「だいじょ、うぶ…てて」
鼻を押さえてうめいていると、梨華ちゃんが頭を下げてあたしの顔を覗き込んだ。
「わわわわわ!」
「どうしたの!?」
む、胸!胸が見えてる!!
キャミソール風のパジャマから谷間が!ああ!!
しかも梨華ちゃんは何ともいえない、いい香りを漂わせていた。
その香りにぽーっとなる。
「ひとみちゃん?」
「梨華ちゃん…いい匂いする。石鹸?」
「あ、うん。バラの香りの、今使ってるから」
「バラかぁ〜」
あたしの頭の中がバラでいっぱいになった。
…ハァ。
ウチ、キテるわ。
- 441 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月03日(水)07時46分54秒
- ―――石川視点
『ホントに大丈夫なの?』と声を掛けたが、ひとみちゃんは何だかぼーっとした顔を
して、『あ、だいじょぶ、だいじょぶ』と言いながらお風呂場に行ってしまった。
…何だか心配だわ。
「…フツーに会話でけんのかいな」
「わぁ!」
突然、裕ちゃんが現れた。
「だ、だって…」
「考えてみ」
裕ちゃんが耳元に顔を近づける。
「…吉澤は今、湯煙のなかでその白い柔肌をあますことなくさらしてる。
一糸まとわぬ、生まれたままの姿でや…どないや?」
…考えただけで、のぼせてきた。
「姐さん。アンタあほか!」
いつの間にか平家さんがいて、裕ちゃんをばしっとどついた。
「痛いな!何すんねん!みちよのくせに生意気じゃ!」
「妹相手に何言うてんねん!ホンマにこのひとは〜」
「大きなお世話じゃい!」
ふたりはしばらく、くだらない口ゲンカをしていた。
あたしはその様子を見て、何だかうらやましくなった。
- 442 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月03日(水)07時51分07秒
- ―――裕ちゃんは平家さんと付き合いだしてから、ぐっと綺麗になった。
元々美人だけど、前よりずっと―――。
『何がきっかけなの?』と馴れ初めを尋ねたところ、
『カラダが先や』とミもフタもない返事が返ってきたけど。
たとえカラダが先でも、ふたりが今信頼しあってるのが分かるから羨ましい。
(平家さんの超人的な努力で成り立ってる、という気がしなくもないが)
『裕ちゃんってワガママだし、迷惑かけてない?』
と平家さんに聞いたことがある。
平家さんは苦笑して、
「姐さんがワガママなんは昨日今日始まったことやないし」
と言った。
…オトナだなぁ。
まだケンカしているふたりを見ながらあたしは小さくため息をついた。
裕ちゃんの薬指のリングが、何よりふたりの幸せを物語ってる。
その夜はベッドの中で、天井をぼんやり見上げながら、眠りにつくまで
ひとみちゃんのことを考えた。
- 443 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月03日(水)08時06分42秒
- 更新しました。
从 #~∀~从ノ<みちよのくせに生意気じゃ!
( `◇´)ノ<ウチはの○太かい!
みっちゃん、いい子(ry
レスのお礼です。
>いしよしサイコ〜さん
(;‘д‘) <の、のののコトになったらついムキになんねん!なんでやろ?
( ^▽^)<ウフッ、あいぼんったら♪
満を持して(?)5期メン登場。いしよしは何かお互い意識しすぎてます(w
>オガマーさん
∬`▽´∬<ついに登場だ!コノヤロー!
( ・e・)<ラブラブ♪
ここのオガーは∬´▽`∬ よりは∬`▽´∬ですね。金の人とエライ違いです。
訂正です。
>>432
小川から→小川が
- 444 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月03日(水)12時53分25秒
- やっぱ面白い。
更新早いし多いしで言うことありません(w
ずーっと続けてほしいですね(w
がんがって、作者さん。
- 445 名前:オガマー 投稿日:2002年07月03日(水)15時31分37秒
- ひとみちゃんは香りのことになると口をすべらすんですねww
- 446 名前:いしよしサイコ〜 投稿日:2002年07月03日(水)21時46分19秒
- >( `◇´)ノ<ウチはの○太かい!
こっれ笑えた〜!
よっすぃ〜、梨華ちゃんにクラクラって感じですね♪
よっすぃ〜の気持ちが、よーっく分かる!
私も読んでてドキドキしちゃったよ〜
次回の更新、お待ちしとります♪
- 447 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月03日(水)22時14分59秒
- みっちゅーが、随所でイイ味出してて、何か好きです。
照れてる吉澤と石川もかわいい。
- 448 名前:あおのり 投稿日:2002年07月04日(木)02時49分42秒
- 今日この小説を知りここまで一気によまさせていただきました。
すごく面白くて時間がたつのを忘れてしまいました。
初々しいよしいしがかなり壺にはまっております。あとへーけさんも・・
小説も凄いですけどおまけの顔文字コーナーもとても面白いです。
楽しみにしております、これからも頑張ってください。
なんか小学生の感想文みたくなってしまいました。スマソ
- 449 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月04日(木)16時06分08秒
- ―――吉澤視点
テストも大分片付いた。
レポートの締め切りはいくつか迫ってるけど。
あたしは完徹で3つばかしレポートを片付け、すぐさま部室に行き、
寝転んで爆睡した。
…1時間ほどたった頃だろうか。
「ごめんくださ〜い」
聞き覚えのある甘い声がした。
「…梨華ちゃん?」
目をこすって立ち上がると、
「あ、ひとみちゃん!」
梨華ちゃんが入り口で立っていた。
「あ、どしたの?」
「ん、あのね。市井さんに借りてたCDを返しに来たの。…ゴメン、寝てたんだね」
「いや、いいよ。渡しとこうか?」
「あ、お願いしていいかな」
しかし、一体いつCD借りるほど仲良くなったんだろ?
まぁ、いいか。
「おー、石川じゃん!」
市井さんがタイミングよく現れた。
「んあ〜、梨華ちゃんだ!」
ごっちんはすぐさま駆け寄り、
「ケガ、もういいの?」
心配そうに足元を見た。
「あ、もうすっかりいいよ!あの、市井さん。お借りしてたCDを…」
「ああ、いつでもいいのに」
「何借りたの?」と言ってごっちんが袋の中を覗き込む。
「ピストルズじゃん!梨華ちゃん、ピストルズ聴くの!?」
ごっちんは目を丸くした。あたしもギョッとする。
「うん、一度聴いてみたくて…」
梨華ちゃんは頬を赤らめて言った。
…ハァ。梨華ちゃんがパンクねぇ。
あたしはCDを手に取って、まじまじと『勝手にしやがれ』のジャケットを見た。
- 450 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月04日(木)16時10分33秒
- 「あっついねぇ〜」
うちの部室は冷房がなく(というか壊れたまま)、夏場は窓全開でやり過ごしてるそうだ。
「んあ、アイス買ってこよ。梨華ちゃんとヨスコ、いる?」
ごっちんは椅子から立ち上がった。
「あ、うん」
ウチはサイフからお金を出した。
「お願い」
梨華ちゃんもカバンからピンクのサイフを出す。
梨華ちゃんはイチゴ味のを、ウチはモナカを頼んだ。
「んあ、いちーちゃん、ごとーのお供ね」
え〜!っとか言いながら、市井さんは立ち上がった。
この暑いのにとか文句タラタラだけど、結局いつもマメに付き合ってる。
「ハハ…」
ふたりが行ってしまってから、急に会話に困った。
「暑いよねぇ〜」
当たり前のことを言ってなんなんだ、ウチは。
「そうだね」
梨華ちゃんも笑って答える。
「うちの部室、クーラー壊れててさ」
「そうなんだ」
「夏は常に窓全開なんだって」
「アハハ」
ふと、会話が途切れた。
間が持たなくて窓の外を見た。
「あ…」
「どしたの?」
すぐ梨華ちゃんの方を見た。
「血…やっぱり、アト残ったね…」
「あ、これね」
全部見えるわけではないが、首を曲げて自分の背中を見る。
梨華ちゃんがケガした日に着てたシャツ。その夜、お風呂場でよく洗ったが、
やっぱり全部は落ちきれなかった。
「ごめんね…」
梨華ちゃんが眉を下げて悲しそうな顔をした。
「気にしなくていいって。よく見なきゃ分からないくらい薄いし」
「でも…」
「いいって、いいって」
「ホントにごめんね。バイト代が入ったら弁償するから!」
「そんなのいいって。てか、バイトすんの?」
「あ、うん。とりあえず夏休みだけ」
「へぇ」
- 451 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月04日(木)16時14分05秒
- あんなにやかましく響いてたセミの鳴き声がふとやんだ。
他には何も音がしない。
静かだな…。
視線が合い、何か照れる。
「あのさ」
思い切って聞いてみた。
「何?」
「あれから…その、大丈夫?」
あの連中とは同じ大学だから、またああいう事がないとは限らない。
梨華ちゃんの事だから、黙って耐えてしまうだろう。
あたしが何を言わんとしてるか分かったらしく、
「あ、うん。大丈夫。心配しないで」
健気にも笑顔だった。
何かその顔を見てたら切なくなってきた。
「梨華ちゃんさ…ムリしなくていいからね」
「ムリなんて…」
しばらく間を置いて、
「あたしね」
梨華ちゃんは続けた。
「ひとみちゃんに嫌われるのがコワかったの…」
「へ?」
突然だったので、つい素っ頓狂な声を上げてしまった。
「何で?」
「ホントのコト知られたら、嫌われるんじゃないかって」
「ああ…嫌うだなんてそんな」
梨華ちゃんは潤んだ目であたしを見上げてる。
このひとのことだ。
泣くのを必死でこらえてるんだろうな。
そう思ったら何とも言えない気持ちになってきて、そっと抱きしめてた。
「…ひとみちゃん」
ホントに…この子は何て華奢なんだろう。ウチの腕の中にすっぽり収まる。
こんな小さな体で、あんな仕打ちに耐えてきたのか。
「ウチがついてるから…」
「…ウン」
梨華ちゃんは腕の中で小さく頷いた。
- 452 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月04日(木)16時23分46秒
- 「コレ、あげるわ」
あたしは自分がつけてたネックレスを外し、梨華ちゃんにつけてあげた。
「エ、あ…。あたし…このブランドのよく知らないんだけど高いんじゃ」
「ウチ同じの、もう一個持ってるから大丈夫」
「あ、ありがと…」
梨華ちゃんは俯いて襟元のネックレスを見てる。
「何かあたしもらってばっかだね」
申し訳なさそうに梨華ちゃんは言った。
もらってるのはウチの方だよ。
梨華ちゃんの優しさをいっぱい…。
「そうだっけ?」
「ウン」
「まぁ、お守りっていうかね。ウチがいない時でもソイツが梨華ちゃんを
守れるようにっていうか。なんてね、ハハ」
照れ隠しで笑うと、梨華ちゃんはまたウチを見上げた。
「大事にするね…」
「…ウン」
今度は、梨華ちゃんから抱きついてきた。
- 453 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月04日(木)16時25分26秒
- その頃。
部室の外では―――。
「…よぉ」
と市井。
「何さ」
「…アイツ、『ペア』の概念知ってるんかな?」
「無意識だと思うよ。それよりアイス溶けちゃうよぉ〜!」
市井と後藤はドアの陰に隠れて、室内の若いふたりを温かく見守っていた。
「そんなもん、袋ごとドアのノブにでもぶらさげとけよ」
「あれ、もう行くの」
「人の恋路の邪魔をしたらウマにつぶされて死ぬっていうだろ」
「…蹴られて、じゃなかったっけ?」
「どっちでもいい。行くぞ」
「キスしてるよ」
「マジ!?」
「ウッソ!」
後藤はおどけて言った。
「カァッ〜!あんなシチュエーションで何でキスしないんかねっ!まったく!」
「ヨシコはいちーちゃんとは違うんだよ。それより、オナカすいた」
「メシでも食い行くか」
「やった!あのね、ごとー焼肉がいい!カルビでしょ、ロースにタンにハラミに
センマイに…。あっは!石焼ビビンバもいいね!締めはやっぱ冷麺だねっ!」
「…よく食うな〜。ほどほどにしとけよ」
「ウン、いちーちゃんのおサイフの中身と相談する」
「…テメ!支払う気ゼロかよ!」
「大丈夫、食う気はマンマンだから」
「何が大丈夫なんだよっ!」
文句をたれながらも、今日もサイフの中身を心配する市井だった…。
- 454 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月04日(木)17時08分33秒
- 更新しました。
レスのお礼です。
>444の名無し読者さん
( ´D`)<ありがとうれす!そのおことばがなによりのはげみれす!
( T▽T)<感激です〜!
今まで書いてきてよかった…。温かいお言葉、本当にありがとうございました。がんがります!
>オガマーさん
(;0^〜^)<エ…ダメ?
(* ^▽^)<……
一種の匂いフェチでしょうか。花の香りに虫はつい近づいてゆくのです。
>いしよしサイコ〜さん
煤i#^〜^#;)<エ!オ、オイラ、べべべべ別に!
(; ‘д‘)<そのあわてぶりはなんやねん
♪よっすぃ〜りかにノックアゥッ!(ベベ恋のメロディーで)まるで中学生です(w
>447の名無し読者さん
从 #~∀~从ノ<おおきに!ついでにみちよも頼むわ!
( `◇´)ノ<ついでかい!
どつき合いながらもラブラブな、夫婦漫才のようなふたりなのです。いしよしはこれからですね。
>あおのりさん
( `◇´)ノ<おおきに!最初から読んでくれてんな!ごっつうれしいワ!
( ^▽^)<目が疲れたときは目薬ですよ♪ オユデシボッタアツイタオルモイイデス
初レスありがとうございます。これからもよろしくです。顔文字は気がついたら
コーナーになってました(w
- 455 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月04日(木)17時21分16秒
- ・女の買い物
(^▽^)<今日はみんなでお買い物に来てます♪
( ^▽^)つ■<黒もいいな…
(0^〜^)<かっけー!
川σ_σ||<梨華ちゃん、あっちにいいのあるよ!
( ^▽^)<ホント?
キャッキャッ
( ^▽^)川σ_σ||
ヽ;^∀^ノ<後藤、まだ迷ってんのか?カレコレ1ジカン…
( ´ Д`)つ□<んあ!(真剣)
ゴッチンニアウー!! ンア…
川σ_σ||( ^▽^) (´ Д `* )
ヽ;^∀^ノ<これだから女の買い物は…たくっ
(;0^〜^)<市井さん…
- 456 名前:いしよしサイコ〜 投稿日:2002年07月04日(木)18時52分53秒
- ごまさん、更新ありがとー!
う〜ん、やっぱ梨華ちゃんとよっすぃ〜の登場シーン
私的には一番嬉しいよー♪
影から、2人を温かく見守るいちごまコンビもいい!!
> 煤i#^〜^#;)<エ!オ、オイラ、べべべべ別に!
慌てるよす子さん、気に入りますた♪
- 457 名前:オガマー 投稿日:2002年07月04日(木)19時38分32秒
- ( ̄ー ̄)←形状記憶になりそーです
ほんとはもっとだらけた顔だけど(氏
ごっちんどこまでわかってんだろーなぁ(笑)
あ、いちーちゃんの思いを、ね
- 458 名前:水海 投稿日:2002年07月04日(木)19時39分32秒
- (^▽^)も、(0^〜^)も! その部屋クーラー壊れてて
暑いんだろう? 二人でそんな だったらもっともっと
暑くなってしまうでしょうが!(w。
………二人が幸せだったらいいんだけどね。
- 459 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月04日(木)22時56分14秒
- ぺ、ペアの概念…(w
ニブチン結果オーライですな?
- 460 名前:なっつぁん 投稿日:2002年07月05日(金)21時12分39秒
- 初レスです。
作者さん、いつも楽しく読ませていただいてます。
ここの登場人物、みんな和やかで読んでて楽しいです!
お忙しい中、更新されるの大変でしょうが
続きを楽しみにしております。
- 461 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月05日(金)21時53分35秒
- 辻・加護は夏休みに入った。
加護は朝、目をこすりながら朝食に現れた。
辻はすでに起きて納豆をかきまぜている。
「のの…早いやん」
加護は目を見開いて驚く。
辻は大体休日は朝遅くまで寝ていた。
自分より遅いこともしばしばだ。
「へいっ。今日からアルバイトれすから」
「…バ、イト?」
「へいっ。タンポポで臨時ウエートレスをするんれすっ」
辻はにこにこ笑う。
「ヘ?いつの間に?」
「何でも、アルバイト募集の貼り紙を見たんだって」
梨華が会話に入ってきた。
「ふ〜ん…」
加護は自分の茶碗にごはんをよそって席についた。
「吉澤はまだ寝てるんか?」
裕子は梨華のほうを見た。
「あ、うん。ゆうべもライブの練習で遅かったみたい」
「ごちそうさまれす」
辻が箸を置いた。
「もうエエんか?」
辻がおかわりもしないのを見て、裕子は多少驚いた。
「へいっ。初日から遅れてはカッコ悪いのれす」
「気ィつけて行けよ」
「へいっ。中澤しゃんも何か食べにきてくらさい」
「せやなぁ。一回くらい売り上げ協力しとこか」
裕子は笑って言った。
『のののヤツ…バイトするなんてひとことも言わんかったのに』
加護は俯いて味噌汁をすすった。
- 462 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月05日(金)21時58分27秒
- 「ふぁ〜、よく寝た…」
辻が出かけた後、頭をぼりぼりかきながら吉澤が降りてきた。
寝癖もそのまんまである。
「おう、やっと起きたか」
裕子は振り向いて笑った。
「おはよ、ひとみちゃん」
梨華が立ち上がって吉澤の味噌汁をつぐ。
「おはよっす」
吉澤はちょっと辺りを見渡して、
「ののはまだ寝てんの?」
「何言うてんねん。自分がイチバン寝坊しとるんやで」
加護が言った。いつもと違い多少トゲがある。
「アハハ、そっか」
吉澤は席について箸を手に取る。
「ごちそーさま」
台所から出て行く加護の背中を見ながら、
「…何か、ビミョーに機嫌悪くない?」
吉澤は梨華のほうを見た。
「ん、理由はだいたい察しつくけど」
「ほへ?何?」
「あのね…」
梨華は吉澤の耳元に顔を寄せて話し始めた。
- 463 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月05日(金)22時05分59秒
- 昼過ぎ。
イヤがる加護を引っ張って、吉澤と梨華はタンポポに向かった。
「なんやねん!知り合いに来られたら向こうイヤやて!ゼッタイ!」
加護はそう言って抵抗した。
「まままま!カワイイののちゃんのために売り上げに協力しようじゃないの」
加護の腕を取る吉澤。
「そうそ。おねーさんたちがおごってあげるから、何でも好きなの食べていいよ♪」
笑顔で迫るふたりに負け、加護は大きくため息をつくとおとなしくタンポポへ入って行った。
『♪カランカラン』
「いらっしゃいませ!」
入るなり、辻が笑顔で振り向いた。
「あ!来てくれたんれすね!こちらへどうぞ!」
3人は案内された席に着き、メニューを広げる
「あたし、タンポポセットにしようかな〜♪」
ご機嫌な梨華。
「まだ1時半だし、間に合うよね。あいぼんは〜?」
同じようにうれしそうな吉澤。
対して不機嫌極まりない加護。
「…カレーランチ。アイスコーヒーで」
スネながらもしっかり選ぶ加護だった。
「すいませ〜ん!タンポポセットAとBひとつずつとカレーランチ!アイスティーと
アイスコーヒーふたつで!」
「席から怒鳴るなよ!恥ずかしい!」
吉澤の袖を加護は引っ張った。
「は〜い。しばらくお待ちください」
カウンターから矢口が笑った。
梨華と吉澤が談笑している横で、加護はチラチラと辻の様子を見ていた。
皿を下げてテーブルを拭いたり、客が来たらすぐオーダーを取りに行ったりして、
それなりに甲斐甲斐しく働いているようだった。
- 464 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月05日(金)22時10分19秒
- 「あいぼん、来てくれてありがとうれす」
注文したものを運んできた時、辻は笑顔で言った。
「別にウチは…ウン」
赤くなる加護を見て、吉澤と梨華は優しく笑った。
「んあ〜、ホントにおごってもらっていいの〜?」
その頃。
後藤は、平家や裕子とタンポポに向かっていた。
「かまへん、かまへん。いつもおかず分けてもらってるさかい」
「売れへん歌手やから手加減したれよ」
ニヤニヤ笑う裕子を
「あ〜、そんなコト言うんなら姐さんにおごってやらんとこ」
わざと平家はそっぽを向いて言った。
「あ〜!みっちゃん美人!みっちゃん人気者!みっちゃんニッポンイチ!」
途端にしらじらしいくらい裕子はおだて上げる。
「しゃーないな、好きなん食べ」
オトコマエな平家だった。
『♪カランカラン』
「あ」
後藤は声を上げた。
辻がエプロンをして立ち働いている。
「よ〜!ごっちん!」
吉澤がフライを頬張りながら片手を上げている。
「んあ〜、これはまた…」
「辻ちゃん、アンタバイトかいな」
席に着いて平家が言った。
「へいっ。社会勉強れすっ」
「感心、感心。『働かざる者食うべからず』言うからなぁ」
「なんや、みちよが言うと説得力あんなぁ」
裕子の無礼な発言を無視して、平家は
「姐さんも知ってたんなら教えてくれたらエエのに」
肘でつついて言った。
「いや、知らせんほうが新鮮な驚きがあってエエやろ?」
受け取ったおしぼりで手を拭きながら裕子は笑う。
「あっは!それで裕ちゃん、タンポポがいいって言ったんだね」
鼻歌まじりで後藤はメニューを開いた。
- 465 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月05日(金)22時38分09秒
- 更新しました。
強引なおねーちゃんたちにトホホな加護亜依さん(15)の巻。
カッケー! ホイッ♪ ナンヤノコノヒトラ…
(^〜^0))) (^▽^ ))) (´д` ;)))
レスのお礼です。
>いしよしサイコ〜さん
从 #~∀~从ノ<矢口、生中ひとつな!
( `◇´)ノ<喫茶店にビールがあるかい!
覗きながらも温かく見守るふたりなのです。
>オガマーさん
( ´ Д`)<んあ?気持ち?
ヽT∀Tノ<いいけどよ… ナレテルシ
いまや彼女がニブチン・キングでは?と逝ってみるテスト。
>水海さん
(;#0^〜^(^▽^#;)<<(さすがに…ちょっと暑い)
どんどんツッコんでやってください(w
>名無し読者さん
(0^〜^)<? ペアナノ?
(;`.∀´)<やっぱり意識せずに渡したわね…
ニブチン炸裂です。いつ気づくでしょうか。
>なっつぁんさん
(・´ー`・)<HNから見てなっつぁんさん、なっち推しだべか?
( ^▽^)<ここでは楽器屋さんなんですよね♪
初レスありがとうございます。がんがります!
- 466 名前:なっつぁん 投稿日:2002年07月05日(金)23時08分35秒
- 更新おつかれです!
私、本名が「夏美」なんです。
だから「なっつぁん」て書いたんですよー
でも、実は梨華ちゃんに憧れてるという・・・(笑
マジレス失礼しました!
- 467 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月05日(金)23時17分51秒
- ・補足 『喫茶タンポポ』ランチメニュー(AM11:30〜PM2:00)
タンポポセットA…750円
(フライ盛り合わせ、パンかライス、サラダ、フルーツ、ドリンク)
タンポポセットB…750円
(煮込みハンバーグ、パンかライス、サラダ、フルーツ、ドリンク)
タンポポセットC…720円
(クラブハウスサンド、フルーツ、ドリンク)
カレーセット…740円
(カレーライス、サラダ、フルーツ、ドリンク)
(〜^◇^)ノ<ドリンクはコーヒー・紅茶・ジュースから選んでね〜
- 468 名前:いしよしサイコ〜 投稿日:2002年07月05日(金)23時36分22秒
- ごまさん、やって参りましたよ〜♪
「私、たんぽぽのAセット、お願い!」
いつもの仲良しメンバーが、例のお店に続々と集まって来ましたね!
いしよし&加護、親子みたいで嬉しい♪
・・・ごめんなさい。 ちょっと酔ってるみたい!
実は、ここに来る前に、例の「行きつけのお店」で
一杯いただいてきたんです!(w
ごまさんも、後ほどいかがです?
シェフも待ってると思いますしね。
では、次回の更新も首を長くして待ってますね〜♪
- 469 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月06日(土)01時02分33秒
- 寝る前にレスのお礼です。
>なっつぁんさん
(・´ー`・)<そうなんだべか!なまらびっくりだべ!
( ^▽^)<ウフ♪嬉しいです。
ほうほう。ちょっとうらやましいです。ちなみに私はひとみでも梨華でもありません。
(誰も考えるワケないか)
>いしよしサイコ〜さん
(〜^◇^)つ〔タンポポA〕<はいよ!辻、これ運んで!
( ´D`)ノ<アーイ!
全員集合、って感じですね。タンポポのメニュー作りについ真剣になる自分がいることに
気がつきました(w
- 470 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月06日(土)03時23分25秒
- ・喫茶タンポポの面接
( ´D`)<ここでアルバイトさせてくらさい
(〜^◇^)<う〜ん。18歳未満の子は保護者の方の同意が必要なんだけど。
辻のご両親はオーストラリアにいらっしゃるんだっけ?
( ´D`)<同意れすか。ちょっと電話お借りするれすね(店内の公衆電話の所へ)
(;〜^◇^)<エ?
( ´D`)¶<コレクトコールでお願いするれす。
もしもしお母さんれすか?のの、夏休みにアルバイトしたいんれすけど
(;〜^◇^)<早っ!(しかもコレクトコール)
( ´D`)¶<へいっ。矢口さんに代わるれす
(〜^◇^)¶<お母様ですか?店長の矢口と申します…はい、それでは
採用理由:食いっぷりと行動力
- 471 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月06日(土)05時08分04秒
- 銀座のショット・バーで飲む保田と飯田…
( `.∀´)ノ∇<それでさぁ
川‘〜‘)||<……
( `.∀´)<カオリ?
( ゜皿 ゜)<…ピーガーガーゴー
( `.∀´)<ああ、交信中なのね ソノウチモドッテクルデショ
( ゜皿 ゜)<ケイチャン、ボーナスヲナニニツカッタ?ショウジキニコタエロ!
(;`.∀´)<(何で命令形なのよ)えっと、実家に仕送りしてバンドの経費でしょ。
服も少し買って…貯金とあと石川にうなぎをおごったわ
煤i ゜皿 ゜)<ウナギ!カオ、ソンナノハツミミ!!シカモイシカワニ!ヘェェェー!!
(;`.∀´)<アンタも食べたでしょうが!持ち帰りのを!
( ゜皿 ゜)<ケーイチャントイシカワーハ、アッチッチ♪
(;`.∀´)<(アッチッチて!昭和を感じるわ!)今どき小学生でも言わないわよ!
( ゜皿 ゜)<アッチッチ♪
(;`.∀´)<…明日食いに連れてってやるわよ
川‘ー‘)||<やった♪
土用丑の日は20日ですたか。
- 472 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月06日(土)10時52分52秒
- ・幸せですか?
从 #~∀~从ノ□<フロ上がりにビール飲んどる時がな!最高や! プハー!
( `◇´)<それっばかしやな。ちなみにウチは…姐さんの面倒見るのがかな
(# ^▽^)<エ… ヒトミチャンガイルシ…
(O^〜^)ノ◎<オイラはベーグルとゆで卵食べてるとき!
( ´D`)ノ□<ののはア8段アイスと揚げパンとメロンとヤキソバと(ry
( ‘д‘)<ウチもまぁまぁそこそこかな ノノ、キタイヲウラギラヘンナ
( ´ Д`)<んあ〜。ごとーは寝てるとき ZZZ…
(〜^◇^)<オイラは石焼きビビンバ食べてるとき!キャハハ!
(・´ー`・)<なっちは故郷のことを思い出すときだべ!
( ゜皿 ゜)<カオハ、ケイチャンヲコエタトキ
(;`.∀´)<何をよ!ちなみにアタシはヒ・ミ・ツ♪
ヽ^∀^ノ<キショッ!アタシは歌ってる時かな ギターモ
幸せは、案外身近にあったりする
- 473 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年07月06日(土)14時43分15秒
- Aセット、ライス、アイスコーヒーでおながいします。(w
いつも更新の多さには、びっくりします。
がんがってくださいね。
- 474 名前:婆金 投稿日:2002年07月07日(日)21時44分03秒
- Cセット。コーヒー、アイスにできますか?
この話、マジ好きです。
でもムリしない程度にがんがって下さい。
- 475 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月08日(月)14時16分00秒
- 後藤はカレーセット、裕子と平家はタンポポセットAを頼んだ。
「んあ〜、フライもおいしそうだね〜」
「ごっちん、エビフライ食べてエエで」
平家は言った。
「あっは!エビフライカレーだ!」
後藤ははしゃいで笑う。
「何や、エライ気前エエやん。ウチが取ったらいつも怒るクセに」
裕子がニヤニヤ笑う。
「裕ちゃんは取るばっかりで自分のあげないからだよ」
「コラ!離れた席からツッコむな!」
裕子は後方の席の妹を振り返り睨んだ。
「さてと。ウチは働いてきますか」
食べ終わった吉澤は立ち上がり財布を出した。
「ひとみちゃん、今日も遅いの?」
吉澤の分のお金を受け取りながら梨華は言う。
「ん、バイトの後バンドの打ち合わせあるから」
「体、大事にしてね」
「ん。サンキュ」
ふたりは微笑みあった。
『ナニ見つめ合ってんねん』
まだ機嫌の悪い加護は、アイスコーヒーを啜りながら心の中でツッコむ。
吉澤は手を振って店を出て行った。
- 476 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月08日(月)14時18分05秒
- 「んあ〜。どしたの、機嫌悪いじゃん」
立ち上がって後藤がやってきた。
「い、いえ師匠!別に!」
「フフ、誰かさんがバイト始めたからゴネちゃって」
梨華がニヤニヤ笑う。
「へ〜」
「ちちちち違いますて!師匠!も〜梨華ちゃんも勝手にナニ言うてんねん!」
加護は赤くなって慌てて首を振る。
後藤と梨華は顔を見合わせて笑った。
「ウ、ウチは別にののがバイト始めたからてそんな…」
「毎日ではないれすよ」
辻がひょこっと現れた。
「わぁっ!いつの間に!てか、フツーに聞いてたんかい!」
「へいっ。喫茶店は気をつけないとお客さんの話が筒抜けなんれす」
「それは盗み聞きやっ!」
「まぁ、どっちでもいいれす。それよりあいぼん」
「なんや」
「ののはあいぼん、大好きれすよ♪」
ぽかんと口を開けた加護を放っておいて、辻は鼻歌まじりで立ち去った。
その様を見ていた梨華と後藤は肩を震わせて笑いをこらえる。
離れた席では裕子と平家が
「…若いってエエなぁ」
と感慨に耽っていた。
- 477 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月08日(月)14時24分45秒
- 「んあ、辻ちゃんもやるねぇ♪」
帰り道、後藤は笑いながら言った。
「フフッ。あいぼん、照れちゃって」
加護はATMでお金下ろしてくると言って、銀行へ向かった。
裕子と平家もそれぞれ用事を済ませに行った。
「あのさ」
後藤は言った。
「なぁに?」
「梨華ちゃんって…いつからヨシコが好きなの?」
梨華は立ち止まって固まった。
「……」
「もしかして…ひとめぼれ?」
驚きと恥ずかしさがいっしょくたになった表情で後藤を見た。
「…何で分かったの?」
「いちおー、梨華ちゃんラブラブ大作戦のリーダーだしさ」
「誰かに聞いたの?それより…前から思ってたんだけど、どうしてひとみちゃんのコト好きって…」
「んあ、別にフツーに見てたら分かるよ?てか、気づいてないの、ヨシコくらいだよ〜」
「…そうだよね」
梨華は俯いた。
一目瞭然なのに、気づいてないのは本人ばかりなり。
何とも皮肉なものだった。
尤も、あの天才的に鈍い吉澤に分かれというのも難しい話だが。
「…なーんか、うらやましいなぁ〜」
「うーん」と伸びをして後藤は言った。
「どうして?」
「んあ、何か恋愛してるって感じじゃん」
「…片想いだよ?」
「(そうでもないと思うケド…)片想いでもさ、なんかいいじゃん、誰かを好きになるって」
「ごっちんは…好きな人いないの?」
「あっは!梨華ちゃんのコト大好きだよ♪」
後藤はふざけてキスをするマネをする。
梨華は「も〜」と言いながらも、満更でもなかった。
「ヨシコも裕ちゃんもへーけさんも加護ちゃんも辻ちゃんも、ごとー大好きだよ」
- 478 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月08日(月)14時27分06秒
- 「…市井さんは?」
「あっは!そうそう、いちーちゃんもいたね!」
『いたね』って…。
市井さんが聞いたら泣くんじゃないかしら?
梨華は市井の苦悩に思いを馳せた。
「んあ。いちーちゃんはさぁ、ごとーにとって空気とかお水みたいなモンだから」
「お水?」
「ないとすごく困るの」
ニコニコして後藤は言う。
その横顔を見て、梨華はふたりの誰にも入れない絆を強く感じた。
あたしこそ…うらやましい。
「とにかくさ、あのニブチン、言わなきゃゼッタイ気づかないよ」
「…言った」
「…ヘ?」
梨華の予想外の言葉に、後藤はほへっという顔をした。
「いつ?」
「あたしが階段落ちてケガした日」
「ああ…」
「つい…イキオイで」
梨華は頬を赤らめた。
「ほ〜。何て言ったの?」
「え…だ、大好きって」
「ヨスコはなんて?」
「あ、『ありがとう』って…」
後藤はう〜んとうなった。
「…ビミョーだね」
「だよね…」
梨華は眉をハの字に下げた。
「まぁ〜。まだこれからだし」
後藤は梨華の肩を叩いた。
「そうだよね」
ポジティブ、ポジティブと梨華は自分に言い聞かせた。
- 479 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月08日(月)14時40分51秒
- 更新しました。
レスのお礼です。
>よすこ大好き読者。さん
(〜^◇^)つ〔タンポポA〕<へイ、お待ち!ライスとね!
( ´D`)つ日<アイスコーヒーれす!
気がついたら、ここまできてますた。応援ありがとうございます。
これからもよろすくおながいします。
>婆金さん
(〜^◇^)つ〔タンポポC〕<へい!Cセットお待ち!
( ´D`)つ日<コーヒー好きのお客さんが多いれす
ありがとうございます。その言葉を胸にぽつぽつ書いていくれす。
これからも細々とやっていこうかなと考えております。
- 480 名前:オガマー 投稿日:2002年07月08日(月)16時44分49秒
- ののかぁいい
あいぼむかあいいw
- 481 名前:いしよしサイコ〜 投稿日:2002年07月08日(月)23時59分49秒
- ごまさん更新お疲れでやんす〜☆
喫茶「たんぽぽ」の面子は、いつも和やかでいいよね!
今夜も笑わせてもらっとります♪
それにしても、よっすぃ〜と梨華ちゃん。
相変わらず「微妙な感じ・・・」ですな〜(w
でも、お互い気持ちは通じてる様な・・・
「幸せですか?」のAAコメント、何気に笑える〜♪
なんかイメージどおりって感じ!!
- 482 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月09日(火)01時08分38秒
- ここのなんとも言えないもどかしさがある、いしよしが好き〜
なんなく「めぞん一刻」を思い出します。
そして、後藤は人のこといえないような… ヽ^∀^ノ<慣れてるけどね…
近すぎるもの、それはそれでうまくいかないもんなんですね。
- 483 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月09日(火)13時22分56秒
- ―――石川視点
いよいよライブ当日。
あたしは柴ちゃんと待ち合わせて会場に向かった。
待ち合わせの時間とかを電話で話して決めた時、
「そうそ。今度は動きやすい格好してきなよ」
と柴ちゃんは言った。
「へ?動きやすい格好って?」
「走ってもツラクないような格好」
柴ちゃんの説明はイマイチ分からなかったが、とにかくあたしは普段あんまりしないような格好をした。
「お〜」
待ち合わせ場所に現れたあたしを見て、柴ちゃんはニヤニヤと笑った。
「何よ〜」
ちょっと膨れてみせる。
「いや〜。何かかわいいじゃん」
今日のあたしの格好は白いノースリーブのカットソーにカーキ色のホットパンツだった。
サンダルを履こうかとも思ったが、思い切って黒のワークブーツにした。
「…あれ?」
柴ちゃんが不思議そうな顔をする。
「どしたの」
「そのネックレスさ…クロムハーツのじゃ」
「うん」
「梨華ちゃん、クロムも好きなんだ。何か意外」
「あ、その…」
慌てて首を振る。
「どしたのよ」
「その…もらったの」
「ヘ?クロムを?随分豪儀なヒトだね〜。誰だ、そんな太っ腹さんは」
「…ひとみ、ちゃん」
柴ちゃんはしばらく黙っていたが、少したってから
「よかったじゃん」
ちょっと笑って肩をぽんと叩いた。
- 484 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月09日(火)13時29分46秒
- ―――吉澤視点
出番前、ベースの調整をしていると、
「吉澤」
と市井さんに声を掛けられた。
「なんスか?」
「もしオマエだったらさ…友達のために歌う時、シメに何て言う?」
「へぇ〜?」
しばし考える。
トモダチねぇ〜。
「フツーに『ベイベー、キミに捧げるぜ』って言います」
「…却下。ドコがフツーなんだよ」
市井さんはあきれた表情で立ち去った。
チェーッ。
だったら聞かなきゃいいじゃん〜。
―――石川視点
ライブハウスに入る。
チケットには「SUMMER PARTY 2002」と書かれていた。
何だか、タイトルを見てるだけで楽しそうだ。
ステージに何となく目をやると、保田さんのドラムに「ヤッスーLOVE!」とか
「ケメコ参上!(@`.∀´@)」と書いてあった。
ケメコ…。
今度からそう呼んでみようかな。
「そろそろだね」
フリーペーパーに目を通してた柴ちゃんは、そう言って鞄にそれを直した。
「行くぜー!みんなついて来いよ!」
市井さんの突然の掛け声で今日のライブが始まった。
- 485 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月09日(火)13時38分06秒
- 「本日一発目!『ダンシング!夏祭り』!キリキリ逝くわよっ!」
保田さんが叫ぶ。
『クラブのDJ兄ちゃんは
ブンシャカレコードこすってる
祭りの季節になったなら
なぜだか田舎に帰っちゃう』
『雑誌でウワサのギャルちゃんも
パラパラなんぞをやっていた
祭りの季節になったなら
地元に帰って浴衣に着替えて』
『踊ります 日本の祭り
わっしょい!わっしょい!
わっしょい!わっしょい!』
『踊ります!』
『ブンシャカ!ブンシャカ!』
「わっしょい!わっしょい!」
客席からすさまじいコールが起こる。あたしも柴ちゃんも叫ぶ。
『パラパラ!パラパラ!』
「わっしょい!わっしょい!」
『そそれ ダンシング
夏祭り!わっしょい!』
あ、今日のひとみちゃんはリーゼントだ!
ヤだ、かっこいい。
「よっすぃ〜!」
あ…ショック。
やっぱりあたし以外にもファンがいるんだ。
って。当たり前か…。
でもやっぱり…ヘコむなぁ〜。
- 486 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月09日(火)13時48分23秒
- 次の曲までに間があった。
ライトが落ちたと思ったら…次、点いた時…腰を抜かすところだった。
何故って…メンバー全員が『3人祭』のコスプレだったから!
「ヤッスゥ〜!かわいい〜!!」
―――この声は!
あのコアなファンのヒトだわ!
『(Fu〜n) チュッ!チュッ!
チュチュチュッ!サマーパ〜ティー
チュッ!チュッ!
期待しちゃうわ チュッ!』
この曲は前もって録音してあったのか、伴奏はテープか何かだった。
全員物凄い笑顔で、歌って踊ってる。
当然、ひとみちゃんもピンクのヅラだ。
あ〜!写真撮りたかった〜!
「ダーヤスマンセー!!」
その声に対して保田さんは例の濃いウィンクをサービスしてた。
―――保田さんの3人祭コスプレは何というか…。
子供の頃、昼間に見たお化けの映画を何となく思い出した…。
白昼夢、とでもいうのかしら。
『片思いは 切ないけど
今日は
あの人と一緒!
プリティーな水着着て
勝負 勝負 勝負 勝負
パーティー パーティー!』
ひとみちゃん…すごく嬉しそう。
両隣のごっちんや市井さんと微笑みあってる。
- 487 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月09日(火)13時53分03秒
- 『夏の海は ロマンチック!
なぜか なぜか
乙女心(ごころ)大胆ね
夏の海は メルヘンチック!
でもね でもね
胸が 胸が 苦しいよ』
『(Fu〜n) チュッ!チュッ!
チュチュチュッ!サマーパ〜ティー
チュッ!チュッ!
期待しちゃうわ チュッ!』
アヤカさんのウィンクは3人祭りとはまるで違うものですが全然OKです…。
保田さん…お願いですからコドモが見たら泣きます。
『(Fu〜n) チュッ!チュッ!
チュチュチュッ!サマーパ〜ティー
チュッ!チュッ! ついに…チュッ!』
全員の『チュッ!』で曲は終わった。
「あたし…死ぬ前に絶対走馬灯のようにこの『3人祭』思い出すと思う」
何故か遠い目で柴ちゃんが言った。
同感だわ…。
- 488 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月09日(火)14時05分31秒
- 3曲目は『サマーれげぇ!レインボー』だった。
さっきとは打って変わっていかにもレゲーっぽい衣装になった。
これもスッゴク盛り上がる。
『シャランラランラー
シャランラランラー
シャランラランラー
ランラーランラーラン…』
会場が一体となって叫んでいた。
最初始まる前は冷房が寒いくらい効いていたが、今はもうすごい汗をかいている。
「アンコールにいく前にひとつだけ言わせて」
市井さんがマイクを持って語りだした。
「最後はアタシが敬愛するボブ・マーリーの曲です。
アタシがイチバン好き曲で…大事な友達に今日捧げようと思う。
じゃ、今日最後の曲『あきらめないで』」
『You know that I love you
Tell yea what you just won't let be
You know that I love you
Baby what you just don't let be
Every morning I get up and sip my cup
My eyes get red no one to help me』
『One more thing I like to say right here
Baby what you just won't let be
One more thing I like to say right here
Baby what you just won't let be』
全部は聞き取れないけど…市井さんが何だかすごく心を込めて歌っているというのは
伝わってくる。
あたしはひとみちゃんファンだけど、市井さんの歌はとても好き。
- 489 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月09日(火)14時13分37秒
- 『I'd like to say
Baby you're so nice
I'd like to do the same thing twice
Baby you're so nice
I'd like to do the same thing twice
I love you so much so
Love you love you so much』
メンバーの全員が歌ってる。
ごっちんもアヤカさんも保田さんも…ひとみちゃんも。
何か…聴いてて涙が出てきた。
何て優しい歌なんだろって。
気がつくと、柴ちゃんがあたしの手を握っていた。
ふと目が合うと黙って笑っていた。
あたしも笑って握り返す。
『I'm living and what's wrong
I need your company
Baby what's wrong
I need your company』
さっきの曲にも負けないぐらいの大合唱だった。
曲が終わると、
「いちーサイコー!」
とか
「かあさん〜!!」
と大歓声が起こる。
「―――愛してるぜ!ベイベー!!」
声の限りに、市井さんは叫んだ。
- 490 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月09日(火)14時17分25秒
- 場内が異様な熱気に包まれた。
「―――梨華ちゃん!行くよ!」
「エ?行くってどこへ!」
「いいから!」
柴ちゃんはあたしの手を取って、人の波間を縫って走り出した。
ちらっと振り返ると、何か―――とんでもない騒ぎになっているぽかった。
ステージは人の波で見えなかったけど。
柴ちゃんは走ってる間にも携帯を取り出し、
「もしもし。今出たから」
誰かに連絡を取っていた。
「出たって…誰かと会うの?」
「それは後のお楽しみ!」
混乱したライブハウスからどうにか脱出して少し行くと、小型のRV車が止まっていた。
「お待たせ〜」
柴ちゃんは後部のドアを開けて乗り込んでいく。
「ホラ!梨華ちゃんも乗った乗った!」
急かされて戸惑いながら乗り込む。
「あ、こんばんは…」
運転席の金髪の人に挨拶する。
「こんばんは。あゆみがいつも世話になってます」
金髪の人が振り返って頭を下げる。
「あの、お友達?」
柴ちゃんの方を見ると、
「あたしのダーリン」
という返事だった…。
「大谷雅恵です。よろしく」
「マサオ、かわいいっしょ?あたしのお気に入りは」
「オメーはホント面食いだなぁ〜。さて、お嬢さん方。どちらへ」
「ん、夜の東京見物とでも行きますか」
「オッケー!」
大谷さんはブレーキを踏み込んだ。
- 491 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月09日(火)14時36分59秒
- 更新しました。ヤッスーファンの皆様、ごめんなさい(^^;;
ちなみに『あきらめないで』は『DO IT TWICE』の邦題であります。
市井が何故これを歌ったのか。真相は次回以降に…。
レスのお礼です。
>オガマーさん
(‘д‘* )<エ?照れるやん!
( ´D`)<うれしいのれす!
最強美少女コンビっちゅうことで。あいぼんさんはよくゴネますが(ニガワラ
(; `д´)<うっさいわ!
スナオじゃないのがある意味スナオなのれす。
>いしよしサイコ〜さん
(0^〜^)<ビミョー?
( ‘д‘)/<キミがやないかい! ビシッ!!(ツッコミ効果音)
こんな喫茶店あったら常連になって毎朝スポーツ新聞読みながらモーニング食べたいです。
(〜^◇^)/<オッサンだよっ!
そんで新聞読みながらよそ見してトーストに塩かけすぎたいです(なんだそりゃ)
>名無し読者さん
( ^▽^)←五代くん
(O^〜^)←響子さん
(;〜^◇^)/<逆かよっ!確かに響子さん、ニブイけどッ!
自分も書いててそう思いますた(爆 ちなみに私は四谷氏が好きです。スルドイご指摘をありがとうございます。
ごまさんは…結構博愛主義なヒトだし、確かに近くにいすぎて気づかないというのもあります。
- 492 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月09日(火)14時44分48秒
- >>490
ブレーキ→アクセルです
素で間違えてるし(^^;;
- 493 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月09日(火)14時56分59秒
- (`_´):大谷雅恵(21)。北海道出身。柴田の恋人。知り合ったきっかけは
何と雑誌の文通コーナー。金髪がトレードマーク。オトコマエ。
( ^▽^)<どうやって知り合ったの?
川σ_σ|| <ン。ロック雑誌の文通コーナーにマサオのが載ってて、それにあたしが
手紙出したの
(; ^▽^)<ぶ、文通!?(このメール全盛の時代に!?)
川σ_σ|| <マサオがあたしにメロメロになっちゃって
(; ^▽^)<あ…そう(結局ノロケになるワケね)
(♯`_´)<……
- 494 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月09日(火)16時35分39秒
- >川σ_σ|| <マサオがあたしにメロメロになっちゃって
・・・・メロンなだけにメロンメロン・・・(爆
失礼しましたm(__)m
吉澤君と市井君の3人祭りのコスプレ・・・・見て〜!
- 495 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月09日(火)17時32分13秒
- いい!
の一言につきます!凄い面白いです。
更新が楽しみで楽しみで仕方ないんですけど(w
今、一番のお気にいり小説です!
作者サマ、がんがってください!
- 496 名前:オガマー 投稿日:2002年07月09日(火)20時42分20秒
- マサオかっけーw
しかし、よしこ、天然ジゴロ?(変?
いちーさんもカッケー
- 497 名前:ベリィ 投稿日:2002年07月10日(水)10時19分35秒
- はじめましてですがずっと密かに読ませて戴いてました!
ついに柴ちゃんの彼氏が出てきたもので思い切って
初レスです。。。(^_^;)
もともといしよし好きだったんですが,ここのヤッスーの
魅力に近頃大分ノックアウトです。(笑)それぞれの
カップルがこれからどうなっていくのか本当に楽しみです!
毎日この小説を読みに来るのがすごく楽しみなので
負担にならないのであればできるだけ長く続けていただけると
嬉しいです。 長々と失礼しました。頑張ってくださいvvv
- 498 名前:Dr.マルッチ 投稿日:2002年07月10日(水)10時25分02秒
- いつもお世話になっております。
一応こちらでは初レスになりますね。
相変わらずいいですなぁ。
読ませますねぇ。
やっすーマンセー(w
マサオもなにげにカッケーし。
では、がんがってくだせぇ。
- 499 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月10日(水)17時35分19秒
- 車はしばらく都内を走っていた。
『市井さんたち、あの後大丈夫だったのかしら…』
窓から夜景を見ながら、梨華はさっきのステージの残像を頭の中で再生する。
『何だかファンの人にもみくちゃにされてたようだけど』
柴田に手を引かれてすぐに会場を出たので詳細は分からないが、
ステージに多数のファンが押し寄せているのは確かだった。
『ひとみちゃん、無事でいてね』
梨華はきゅっと右手を握り締めた。
最初は柴田と景色を見ていたが、今朝早起きしたのもあって梨華はいつの間にか
眠りに落ちた。
熟睡したわけではなく、途切れ途切れにふたりの会話が聞こえる程度の眠りだった。
「…ん」
「あ、姫がお目覚め」
柴田が顔を覗き込む。
「…あたし寝てたんだ」
「40分ばかしね」
「じきパーキングエリアだけど何か買うか?」
大谷の提案に、ふたりは頷いた。
車を止めて三人とも降りて自動販売機で飲み物を買った。
「それクロム?いいね」
大谷が梨華のネックレスを見て言った。
「あ、ハイ」
「アタシも欲しいなぁ」
「自分で買いなよ、稼いでんでしょ」
柴田は大谷の背中をバシンと叩いた。
『フフ。何だか微笑ましい』
そう様子を見て梨華は笑う。
飲み物を買ってまた車に戻った。
- 500 名前:DO IT TWICE 投稿日:2002年07月10日(水)17時42分52秒
- 走り出してしばらく。
柴田の携帯が鳴った。
着メロは何故かビートルズだった。
「もしもし?」
『よ〜。ソッチ、無事?』
電話の相手は市井だった。
「無事ですけど、最後のはビビリましたよ」
『わりい、わりい』
柴田の非難めいた言葉に市井は屈託なく笑う。
「でもまぁ、個人名出さないだけ成長しましたね」
『ハッハッハ。痛いトコつくなぁ〜』
「そちらは今どこですか」
『ん。圭ちゃんの運転で茅ヶ崎に向かってる』
「そうですか。梨華ちゃんに代わりますね」
柴田は携帯を手渡した。
―――石川視点
「も、もしもし?」
誰なのか分からずおずおずと出る。
『石川?』
「あ、市井さん」
『アタシの美声に今夜も酔いしれてくれた?』
後ろでごっちんが『バーカ』って言ってるのが聞こえる。
「アハハ!スッゴク楽しかったです!」
『アンコールも聴いてくれた?』
「あ、ハイ」
『あれは石川にウチらから心を込めて歌のプレゼント』
「…エ?」
『いや〜。柴田が前にクラブで会った時、“もし今度のライブで梨華ちゃんのために
歌ってくれたら、親戚がやってる旅館に割引で招待します”って挑発したからさ〜』
あたしは隣の柴ちゃんの顔を見た。知らんぷりして、ニヤニヤしてる。
『まあ、それはどーでもよかったけどな。とにかくー、色々あるだろうけど
ぼちぼちやってけよ』
「何さ、ぼちぼちって〜」
またごっちんの声がした。
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