インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板
憧れのあの人…
- 1 名前:べーぐる。 投稿日:2002年05月08日(水)01時36分05秒
- え〜、同じく緑板で『ある雨の日…』という作品をかかせてもらってますです。
内容的には短い作品ですが、楽しんでいただけたら自分としてもさいわいでございますです。
感想がありましたら、ドンドン書いちゃってくださいです。
- 2 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年05月08日(水)01時36分59秒
- 電光掲示板の上にある大きな時計が、2時を指した。
――時間だ。
『これより、女子100m自由型、決勝を行います……』
アナウンスの声にざわめきが掻き消されていく。
――はじまるんだ。
放送のなごりが消えて、次第に客席が騒がしさを取り戻していく。
さっきまでとはまったく違った空気が、会場を満たしていた。
――緊張する。
わたしが泳ぐわけじゃないのに……これからはじまるって思っただけで、こんなに胸が高鳴るなんて……。
あそこに……電光掲示板の1番上に、先輩の名前が表示されるのを、もう待ちきれないでいる。
そのとき、ひときわ大きな歓声が上がった。
予選を勝ち進んだ選手達が一列に並んで、それぞれのコースの前までやってくる。その足取りは堂々としていた。
――吉澤先輩……。
探すのは簡単だった。
先輩はいつも中央のコースにいるから。
声援が送られる中で、1コース目から選手の紹介がはじまった。
すべての視線が選手達に注がれる瞬間。
――わたしも、あの場所にいきたい。
先輩と同じところに……。
――先輩と同じコースを泳ぎたい。
予選でもはじっこばっかだもんな、わたしなんて……先輩はすごいよ。
- 3 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年05月08日(水)01時39分23秒
- 『……吉澤ひとみ、朝比奈学園』
それまでと比較にならない声援が送られる。
平日だから学園生が応援にきてるわけじゃない。
それなのに、ここにいるみんなが先輩を見てる。
知ってるんだ。すごいってことを……。
響き渡る歓声を吸い込むように、先輩はゆっくりと立ち上がった。
水面を見据える真剣な表情。それはわたしのいちばん好きな顔。
――こういう時って何を考えてるんだろ。
決勝まで残ったことないから、わたしには想像もできないけど。
先輩でも緊張とかするのかな?
……しないわけないか。
選手紹介が終わると、スタートの準備に入った。
張り詰めた雰囲気が高まっていく。
飛び込み台の上に先輩が足をかけた。
審判の合図で身をかがめる。
――はじまるっ!
- 4 名前:925 投稿日:2002年05月10日(金)18時54分09秒
まだ、始まったばかりだけれど、この先がすごく楽しみ!
語り手の後輩は一体だれなんだろう? 気になります。
- 5 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年05月11日(土)01時19分08秒
- 次の瞬間、大きな水しぶきがあがった。けど、その音はここまで届かない。
すべてが声援で埋め尽くされていた。
このレースが会場全体を動かしていた。
頭が真っ白になっていく感じがした。
何度も何度の先輩の名前を叫んだ。その辺にいるひとの迷惑なんて、どうでもよくなってくる。
先輩の試合を見るときはいつもそう。夢中になって、自分の周りが見えなくなる。
他の選手、ましてやわたしにはない魅力を、先輩の泳ぎは持っているんだ。
何が違うのかはわからない。
わからないからこそ、惹かれてしまう。
――いつか、わたしも先輩みたいになりたい。
泳ぐことで、ひとの心を動かせるように。
- 6 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年05月11日(土)01時20分29秒
- ターンを前にして、先輩はトップから体半分ほど遅れていた。
決勝ともなれば、周囲にいる選手だってすっごくはやい。
トップを泳ぐひとなんて、先輩と同じで、強化指定の選考対象になったんだから。
でも、少しも不安じゃない。
だって、先輩はここからだから。
50メートルのターンから上がったところで、ひとりを抜き去った。
すごいっ!
目に見える早さで、トップとの距離が縮まっていく。
またひとりかわした。
――これで、あとひとりっ!
コースロープの色が青から黄色……そして白へ。
――残り5メートルっ!
あと頭ひとつぶん……けど絶対に大丈夫っ!
だって、先輩だもん。
のどがつぶれるくらいに声をあげた。
先輩がトップに並んだ。
……そして、ふたりは同時にゴールした……ように見えた。
- 7 名前:べーぐる。 投稿日:2002年05月11日(土)01時25分47秒
- え〜、今回はちょっと多めに更新してしまいました。
次回の更新は…いつだろ?(汗)
でもまぁ、早いうちに更新していきたいと考えてますんで、
2〜3日したら更新してるんじゃないですかね(爆)
>>925さん
応援ありがとうございます!
期待に添えるようにがんばります!
後輩、誰なんでしょうね(w
- 8 名前:M@RIK@ 投稿日:2002年05月12日(日)13時49分09秒
- また気になるところで・・・
買ったのはいったいどっちなんだ〜!
と叫んだところで、いったい後輩はだれなんだ?(w
- 9 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年05月12日(日)23時11分16秒
- 会場がどよめきに溢れる。
みんなの視線が電光掲示板に注がれる。
……すんごくどきどきしてきた……。
自分の結果のときより、もっとすごいよ。
――どっちだろ……ううん、そんなの決まってる。
先輩が負けるはずない!
今朝、わたしに約束してくれたんだから。
優勝できなかったら、好きなものをおごってくれるって。
今までに何度もやったけど、この賭けに勝ったことは一度もない。
同着に見えた隣のコースの選手がすごいのもわかる。だけど、本当にすごいのは先輩だけなんだから。
絶対に負けちゃいけないんだから。
- 10 名前:べーぐる。 投稿日:2002年05月12日(日)23時14分13秒
- ほんのちょっとだけ更新でございますです。
>>M@RIK@さん
勝ったのはどっちなんでしょうね(w
さらに、後輩とは誰なんでしょう(w
- 11 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年05月13日(月)00時01分08秒
- 誰もが電光掲示板に目を奪われてる中で、吉澤先輩だけは、けだるい感じを楽しむようにコースロープに寄り掛かって浮かんでいた。
――ここの掲示板の反応が遅いのを知ってるんだ。
先輩がキャップを取る。先輩によく似合ってるショートヘアーが水面に映った。
それから、首だけを真横に向けて、電光掲示板を視界にいれた。
先輩が見てくれるのを待っていたみたいに、オレンジ色の光が灯った。
静かになっていた会場に、どっと歓声が湧いた。
1番上には、『HITOMI YOSHIZAWA』の名前があった。
無意識のうちに立ちあがっていた。隣のひとも、その隣のひとも、そうだった。
先輩に目を向けると、こっちを見ていた。
――今日もおごりはなしですね。
口だけ動かして、そう言うと、先輩は笑ってみせた。
もしかして、伝わったのかな?
……って、そんなわけないよね。
- 12 名前:べーぐる。 投稿日:2002年05月13日(月)00時04分26秒
- またまた更新です!
ちょっとペン(?)が進んだモノで…(笑
次回更新は…火曜日にします!
……断言したからにはやらなきゃ(汗
でわ、火曜日までお楽しみに〜♪
- 13 名前:M@RIK@ 投稿日:2002年05月13日(月)01時23分31秒
- お〜よっすぃ〜勝ちましたね〜
う〜ん後輩可愛いね〜誰だろう・・・
ますます気になる・・・(w
- 14 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年05月14日(火)00時12分20秒
- それから、わずかの差で敗れ去った隣のコースのひとに 話しかけられていた。
ふたりとも楽しそうにしてる。
高いレベルで競い合う相手がいて、レースのあとであんな風に笑って話せるのって、どんな気分なんだろ。
自分を全部出し切ったあとで、お互いに笑顔でいられるのって、すごいと思う。
スタートがもう少しうまく行っていれば勝てたかもしれないとか、ターンのタイミングが悪かったとか……
いろいろと後悔したりしないのかな?
わたしはいつもそう。
今日だって、あと少し……。
……やめやめ。
せっかく先輩がすごい泳ぎを見せてくれたんだから、こんなこと考えるのもったいない。
今はもっとこの感じに浸っていたい。
『続きまして……女子400mリレー、決勝を行います……』
掲示板から先輩の名前が消えた。
いつかはわたしもあそこに名前を載せるんだ。
先輩に言ったら、思い切りからかわれたけど、憧れのままで終わらせたくない。ほんの少しでいいから近づきたい。
だから、いつか必ず、あそこに……。
――『AI TAKAHASHI』って、刻むんだ。
- 15 名前:べーぐる。 投稿日:2002年05月14日(火)00時18分58秒
- え〜、宣言どーり火曜日になりましたんで更新です!
と言っても、ほんの少しですが…(汗
>>925さん&M@RIK@さん
後輩が誰だか判明しましたね〜(w
次回はよしたかトークです!…まだ予想ですが(爆
お楽しみに〜
- 16 名前:M@RIK@ 投稿日:2002年05月14日(火)21時37分50秒
- 愛ちゃんかぁ〜(w
さ〜ここからどうやって進むのでしょ?
楽しみでぇす♪
- 17 名前:925 投稿日:2002年05月15日(水)20時52分36秒
- よしたか、いいですねぇ♪
続きが楽しみ!
- 18 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年05月20日(月)23時48分16秒
- 「愛ちゃんっ!」
――っ!!
「な〜に、びっくりしてんの?」
「せんぱ〜いっ!」
わざわざ来てくれるなんて、うれしいよぉ。
「となり、座っていいかな?」
「はいっ!」
プールから目を離さずに、肩からバッグを下ろす。
すらりと伸びた細い足が、制服のスカートの裾から覗いていた。
人気あって当たり前かぁ……先輩、綺麗だもんなぁ〜。
はぁ……わたしが超えるべき課題は山のごとしだ……。
朝比奈の制服も似合っているし。
わたしが着たらどうなるんだろ? 今度、お姉ちゃんの借りて着てみようかな? う〜ん、でも似合わなかったら、いやかも。
「どうかした?」
「その制服、かわいいですよね」
「あ、そっか。愛ちゃん、うち狙ってるんだっけ?」
「はい」
「ふ〜ん、動機は制服かあ〜。水泳部じゃなかったんだ」
「えへへ〜、そうでーす」
「入試面接でそんなこといっちゃダメだよ?」
「わかってますよぉ! ……それに、本当の理由じゃないですからっ」
「へぇ〜。じゃあ、どうして?」
そんなの決まってるじゃないですか。
「先輩が通ってるからですっ」
「はぁ? なにそれ?」
……わたし、へんなこと言ったかな?
- 19 名前:べーぐる。 投稿日:2002年05月20日(月)23時52分05秒
- え〜ひさしぶりです。
ちょっとだけ更新しま〜す!
次回更新は明日! 明日です!
こうでもしないとまた更新が疎かになるんで断言しときます(w
- 20 名前:べーぐる。 投稿日:2002年05月21日(火)00時19分51秒
- あ、追加事項を1つ。
現在もう1つ『出発の前に…』という短編を書いています。
その作品はこの『憧れのあの人…』が完結したらこの緑板に載せますので、
読者様がよろしければそちらの方も読んでやってくださいませ。 でわ。
っていうか先にタイトル載せちゃってよかったのだろうか…(汗
- 21 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年05月21日(火)23時12分39秒
- 「おかしいですか?」
「う〜ん、おかしいというか……やっぱ、梨華ちゃんの妹だなぁ〜って」
「ひど〜い! それっ、どういう意味ですかっ」
そりゃ、お姉ちゃんはボケボケなとことかあるけど……わたしはダイジョブだもん!
「ひどい……って、あんた。梨華ちゃんが可哀想だなぁ〜。明日、学校で言っちゃお〜」
「あっ!! う、うそです、いまの! だって、先輩が……」
「別に私は『愛ちゃんが梨華ちゃんの妹だ』って言っただけだよぉ」
「あ〜っ、先輩ずっる〜い」
「あははははは」
……でも、残念だな。
わたしが入学する前に、先輩は卒業しちゃう。
いろいろと教えてもらいたいけど無理なんだ……。
こんな風に話すことも、もっとたくさんできたかもしれないのに……。
「……けど、そっか……愛ちゃんとは一緒に通えないんだよね……」
「……はい」
はぁ……ほんと、残念……。
- 22 名前:べーぐる。 投稿日:2002年05月21日(火)23時15分56秒
- 宣言どーり更新です! …少しだけですが(苦笑
話はこのままよしたかトークが続きます。
ちなみに梨華ちゃんは登場しません。名前だけの登場です(爆)
次回もお楽しみにっ(w)
- 23 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月03日(月)18時48分54秒
- いいねぇ。吉水泳かぁ。速そうだよね。
期待してるよ♪がんばって
- 24 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年06月07日(金)21時13分45秒
- 「わたしのライバルになってくれたりしたら面白かったのに」
「なに言ってるんですかっ、むりですよっ!」
「何がむりよ? あのねえ、やりもしないうちからそんな……」
「ち・が・い・ま・す。わたしが朝比奈の3年になっている頃には、わたしの方が上かもしれないからですっ!」
「ほほう、そのココロは?」
「なぜならぁ〜、わたしのほうが、、ずぅ〜っと若いからでーす!」
「……愛ちゃん?」
「えへへ、なんですかあ? ……って、わっ、きゃっ……」
先輩の手が制服の中に入ってくる。
- 25 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年06月07日(金)21時14分33秒
- 「せ、せんぱっ! く、くすぐったあい!!」
「ほほほほほほ」
「きゃははは……やめっ! ……いきっ! いきがっ!」
「な〜に言ってるのぉ? 愛ちゃんがはやく私を超えられるように、肺活量の特訓よっ! 特訓!!」
「あははっ、やめっ……やめてぇ……やめてくださ〜い……」
「若さで克服しなさいっ」
「あははっ、まいりましたからぁ〜、やめてぇ〜……ごめんなさ〜い。ゆるしてぇ〜」
「……よろしい。今日の特訓終わり!」
「はぁ〜、助かったぁ〜」
泳いでいるときとは別人みたいだけど、こういう先輩も大好き。
わたしを妹みたいに思ってくれてるなんて、すんごく贅沢。
お姉ちゃんに感謝しないと。先輩とお姉ちゃんが友達じゃなかったら、こんな風にできなかったんだから。
- 26 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年06月07日(金)21時15分07秒
- 「あはは……部活も愛ちゃんがいれば、もっと楽しかったのにねぇ〜」
「いじめるつもりですねっ」
「どうかなぁ〜。あ、でも、まずは愛ちゃんに合格してもらわないといけないから……そっちが問題かなぁ〜」
「それっ、どういう意味ですかっ?」
「さぁ〜」
「言っておきますけど、わたし、お姉ちゃんの妹ですよっ」
吉澤先輩ならよく知っているはず。
お姉ちゃんの成績表が、体育を除いて上2つの数字で埋っていることくらい。
「なるほど、妙な説得力があるなぁ。けど、受けるのは梨華ちゃんじゃなくて、愛ちゃんでしょ〜?」
「ひっど〜い。先輩に馬鹿にされたって、お姉ちゃんに言いつけます」
「コラコラ、梨華ちゃんを困らせるようなことしないの」
……たしかに、お姉ちゃんに報復を頼むのは可哀想だ。
きっとおろおろしちゃって何もできないだろうから……。
- 27 名前:べーぐる。 投稿日:2002年06月07日(金)21時18分49秒
- 超ヒサブリの更新ですね。
今ままで更新していなかったぶん、まとめて大量更新です。
次回の更新でこの話は終わりますです。
>>23 名無し読者さん
応援ありがとうございます!
ご期待に添えるよう、がんばります!
- 28 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月08日(土)22時40分40秒
- 次でもう終わりなの??
ちと寂しいが、でも次が控えてるんだよね。確か♪
- 29 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年06月24日(月)14時48分47秒
- 「先輩はいいですよね! 水泳で通っちゃうんですからっ!!」
「失礼だなぁ……ちゃんと受験したよ?」
「ええぇっ! うっそーっ!?」
「特訓?」
「うわっと…ちょ、ちょっと、うそうそ、ごめんなさい。つい本音が出ただけですよぉ」
「追加メニュー?」
「じょ、じょ〜だんですよっ。大好きですから、ゆるしてくださ〜い」
ふざけて抱きつく。
――あっ
…………すごくやわらかい……。
あんなに、はやいのに……あったかいんだ。
あんなにすごいのに、ふかふかして……。
……やわからい……。
「ほ〜んと、調子いいんだから!」
先輩は呆れ顔でわたしを見た。それから吹き出すように笑い出した。
「えへ、よく言われまーす」
- 30 名前:憧れのあの人… 投稿日:2002年06月24日(月)14時49分22秒
- 『ただいまより、表彰を行ないます……』
アナウンスが終わるのを待って、先輩は立ち上がった。
「さ〜て、行ってきますか」
「いってらっしゃ〜い」
先輩の表彰を見るのって、これで何度目だろ。
もう数え切れないほど見てきた気がする。
電光掲示板に順位が表示される瞬間の胸の高鳴りはないけど、わたしもあそこに立てるようになりたい。
わたしの欲しいものを、先輩は全部持ってる。
――ううん、違う。そうじゃない。先輩が持ってるから、欲しくなるんだ。
『女子100m自由型、1位、吉澤ひとみ……朝比奈学園……』
――いつか、わたしもあの場所に立つんだ。
吉澤先輩の上がったあの表彰台に。
そうすれば、何が見えて、何を考えて、何を思ったのか全部わかるはず。
憧れに近づける。
少しずつでいい。
いつか、きっと、たどり着く。
――だから、その日まで、待っててくださいね。
- 31 名前:べーぐる。 投稿日:2002年06月24日(月)14時56分23秒
- え〜、終わってしまいました(w
久々の更新で本っ当に申し訳ないです…m(__)m
>>読者の皆様
できれば感想などいただけたらと思いますです。
感想、文句、疑問に思ったことなど、どんなことでもいいので。
それでわ、次回更新…じゃなくて、次回作を楽しみに待っていてください!
Converted by dat2html.pl 1.0