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1 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時02分41秒
コミカルからやや痛まで…
短時間にマッタリとをモットーにした作品集です。
マルチメンバー、マルチカップリングで書きます。
2 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時03分41秒

 ―風―

   薄手のシャツじゃまだ 少し寒い春の
   朝の匂いが切ないのは あなたを想い出すから

3 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時04分57秒
「んあ…ねちゃってた…?」

気が付くと朝になっていた。
ツアー先のホテルの中。
厚めのカーテンが朝日のほとんどを遮りほんの
一本の光が、私の手を指していた。

「…顔あらおっかな…」
4 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時06分13秒
私はソファーから身体を起こした。
身体を起こしたおかげで私の目の前に一本の光の筋が射しこみ
埃がボーっとする視界でちらちらとまっていた。
備え付けの鏡台には「寝ぼけたアイドルゴトウマキ」が映っていた。

寒かった。
昨日は帰ってきてそのまま寝てしまったから。
いつもこんな感じだったけれど何だか今日は朝の匂いが
やけに冷たく澄んでいて鼻が痛くなった。

大きな部屋には私一人しかいない。
薄暗い部屋で私は欠伸をした。
「あむ」と口に出して口を閉じた。
そうして目を擦っても誰も笑ってくれなかった。
5 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時06分49秒
私はいつからか他人との相部屋を断るようになっていた。
もともと一人でいるのが好きだったから別に淋しさなんて
感じるはずもないんだけれど…

ただ…

――さみしんぼなんだ…?

ふと目を上げた。

「いちーちゃん…」
6 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時07分59秒
”いちーちゃん”の声が聞こえた。
私はあわてて起こした身体を丸めてひざを抱えてソファーに座った。

「…違うよ…ごとーは他の人といるのが面倒だって言おうと思ったんだ…」

そう思わず呟いて私は膝に顔を埋めた。
昨日の雨の水の匂いが染み付いていた。

いちーちゃんは何でも教えてくれた。
どうしていいかわからなくてもがいていた私に微笑みかけてくれた。
7 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時09分09秒
――ごとーって苦手だもんな〜人に素直になるの。

「…違うって…」

声がくぐもる。

――素直になれないから人と一緒に笑ったり泣いたりするのが苦手なんだろう?

「いちーちゃん…違うよ…ごとーが怖がりなのしってるくせに…」

――ごとーはもっと強くならなきゃ。まずはみんなの前で泣けるようにならなきゃな。

「ごめん…いちーちゃんがいったこと…まだ出来てないや…」
8 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時09分59秒
私は唇を噛み締めた。
私だってみんなで笑って泣いて一つになりたい。
けれどやっぱり怖いんだよ…辛いんだよ…泣きたくなる。
でも泣いたらダメなんだよ…私は「モーニング娘。の看板」に
吊るされているから。泣いたら…だめなんだよ…?

強くなりたいよ…

私はいつだったか聞いた。

「どうしていちーちゃんはそんなに強いの?」
9 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時40分51秒


   足早な人波 立ち止まり見上げれば
   春のぬくもりが恋しくて 強い風 待ちわびる


いちーちゃんは教えてくれた。
きらきらした目で教えてくれた。
私が大好きだった瞳だ。

「なにが何だかわからないときは立ち止まって上を見れば良いんだよ。
後ろを振り返っちゃダメ。前を見てもただ人に付いて行くだけになっちゃう。
だから上を見るんだよ」

「うん」

私達は冬の雑踏の中で上を見上げた。
ちらちらと雪が降る日だった。
ビルの間から白い雪がゆっくり降りていた。
10 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時41分56秒
でももういちーちゃんは一緒にいることが出来ないんだ。
一緒に遊んだり出来ても一緒に『モーニング娘。』になって
一つになることは出来ないんだよね…

――ごとーはさみしんぼなんだ?

――ちがうよ。さみしくなんかないよ。

ウソ…

――じゃあ私がいなくなってもいいよね。

――いちーちゃんがいなくなりたいならごとーはとめられないよね。

ヤダ…

――私、モーニング娘。やめて一人で頑張ろうと思うんだけど、どう思う?

――んあ?いちーちゃんがえらんだ道ならごとーは…

淋しい…!

「やだああああああああっ!」
11 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時42分40秒
私は身体を解いて立ちあがった。
ぽつっと絨毯に染みを付けて雫が落ちた。
はあと息をつく。
光が一筋目の前に射しこんでいる。
まだ身体は熱く震えていた。

また眠ってしまったらしい。
そうして私は夢を見た。
また見てしまった…

私が裏切った”いちーちゃん”の夢を…

「っ…!!」

私は顔を覆った。

「ひ……っく……」

泣いた。

12 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時43分19秒
――ごとーはほんとにさみしんぼなんだな〜

悔しくて泣いた。
どうせ私はひとりぽっち。
泣いたって誰にも聞こえやしない。
誰も聞いてくれやしない。
いいじゃない。
今、私は「うすっぺらの看板の後藤真希」じゃない。
ただの「後藤真希」だから。

――よしよし…大丈夫だからなー私、ごとーのことわかってるから…

いちーちゃんの声が聞こえる。
プレッシャーや妬みに潰されそうな時にぽんと私の頭に置いた
柔らかい手。
13 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時44分21秒
「うく……」

一人。
独り。
だから泣いてしまえばいい。

――ごとーが一人前になるまで心配で私はモーニング娘。やめらんないよ〜

少年のように真っさらな笑顔。
きらきらした瞳。
大好きな瞳。
もう戻らない瞳。
14 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時45分18秒
――もうごとーのほうが私より人気あるし…私なんかいなくても…

そうだよ…?
いちーちゃんが行っちゃったのも変わっちゃったのも私の所為だ。
瞳からどんどん光が逃げて行っていた。
私の所為で…
私の所為で大好きないちーちゃんはどっかにいっちゃった…

「う…やだ…やだよぉ……」

看板じゃなくていいよ。
1番じゃなくていいよ。
ただみんなと一緒にいたいよ。
唄ったり笑ったり、たくさんのこと一緒にやりたいだけなのに…
15 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時46分16秒
私は箍が外れてしまった。
辛くて辛くて…
自分が憎くて、大嫌いで…

またいちーちゃんの声が聞こえた。

――ごとーのこと守りたくて、大好きで…だから強くなれる気がする。


「うえ…ああああああっ!」

いちーちゃんの好きなものは私?

私は頭を振りまわした。
そんな言葉…うそつき!うそつき!
16 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時47分01秒
いちーちゃんと私は教育係だからいっつも相部屋。
やなこともあったけど私はいちーちゃんが大好きだった。
いっつも夜まで話込んで、ゲームして、お菓子食べて、
気が付いたら二人で眠っちゃってて…

――どうしていなくなっちゃったの…?ごとーが…ごとーが悪い子だから?

「…?」

どこからか風が吹きこんだ。
気のせいかとも思ったけれどカーテンに目を移すとカーテンは
重そうにその身を動かしている。

「……開いてる…」

そういえば昨日帰ってきてすぐ空気が悪くて窓を開けたんだった。
そのまま寝ちゃたし風も強くなくて日が射していたから忘れていた。
17 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時47分38秒
私は何気なく窓に寄ってみる。

外を見た。

いちーちゃんを想い出した。
今度はいちーちゃんの声が聞こえたんじゃなくて
ちゃんといちーちゃんを想い出した。

――ゴトーは大丈夫!だって私の一番弟子だからね!

笑顔

――ゴトー。これからは上を見て歩いていきなね。

さよならの時

――前じゃないよ。後ろじゃないよ。ずっと上を見て。

いちーちゃん…

「ずっと…ずっと上…」
18 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時48分31秒
私は開いた窓から上を見上げた。
ぐちゃぐちゃのままの髪の毛が空に吸い込まれた。
薄暗い空に雲が流れている。
雲はどんどん遠ざかって行った。

まるでいちーちゃんのように…

「ずっと…上…見て…」

涙は溢れなかった。
上を見ていたから。
そうか。上を見ていれば泣いてたって娘。のみんなの前で泣いても
気が付かれないね。
19 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時49分11秒
じゃあ…私はみんなの中にいてもいいのかもしれないな…
みんなの前で泣いて笑ってもちゃんと看板でいて
モーニング娘。の一部になれるのかもしれないな。
それにいちーちゃんに強い子だねって言ってもらえるかもしれない…

私、いちーちゃんみたくなるんだ。

だっていちーちゃんいってた。

――私が強いのはきっとごとーがいるからだよ…

風が吹いた。

20 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時49分47秒
「後藤と相部屋なんて久しぶりだね〜」
圭ちゃんがそういって私の肩をぽんと叩いた。
私は次の日マネージャーさんに言って誰かと
相部屋にして欲しいと頼んだ。

「そっか〜…私、けっこー一人で泊まってたもんな〜」
私は靴下を脱ぎながらうんうんと頷き言葉を返した。
両方の靴下を脱ぎ終わると私は靴下を持ったまま両手を投げ出し
片方のベッドに大の字になった。
21 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時50分22秒
きもちいい…
私は足の指をふにふにと動かした。

「後藤〜やっと市井のこと気にしなくなったんだね…」

「え…」

私は思わず身体を起こした。

圭ちゃんは私に背を向けて鞄に向かっていた。
黙々と服を整理している。
私の方は見ない。
22 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時51分01秒
「市井が止めたのは自分の所為だ〜って…たまに泣いてたでしょう?」

「うそ…聞こえてた!?」

私は頭にかっと血が上った。
恥ずかしさと後悔で頭がかちかちと音を立てている。
私は靴下を放り出すと飛びあがって圭ちゃんの方のベッドに乗った。

ぎしりとベッドは大きな音を立てた。
圭ちゃんはくるっと振りかえる。
23 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時51分38秒
「う・そ☆」

圭ちゃんは口をあけながら目一杯ウインクをした。

私はそのまま横に倒れこんだ。

「…う…そ…?」

私は目を閉じて眉をひそめた。
圭ちゃんのくるくるという笑い声が聞こえる。

「いえ〜す☆」

「も〜!けーちゃんっ!」
24 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時52分43秒
私は圭ちゃんに飛びかかる。
圭ちゃんはまだまだ若いもんには負けないわよといいながら
私を擽ってきた。

「きゃははは!だめ!だめっ!きゃはは!」

「この〜!心配してたのは本当なんだからな〜!」

「きゃはははは!」
25 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)21時53分28秒
いちーちゃん。
私は大丈夫。まだ全然強くなんてないけど
みんなと一緒にちょっとずつ強くなるよ。

ちょっとのウソとちょっとの想い出。
いちーちゃんと感じた風はもう二度と吹かないけれど
いちーちゃんと感じた風を忘れないように…

私は強くなります。



   舞い上がる花びらに吹かれて あなたと見た春を探す
   小さなつむじ風鳴いている
   この風は あなたですか? 次の春も吹きますか?


-Fin-


26 名前:こぶろく 投稿日:2002年05月20日(月)22時25分30秒
『オムニバス短編集』6th Stage 〜Never Forget〜用に
書き起こした作品です。
練る期間が短いのと自分の世界観との違いで投稿を取りやめたものです。
いちごま…王道だけにくどくなりがちですがまたーりできてますかな?
27 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月23日(木)23時13分08秒
もうあれから2年ですね。
いちごま、良かったです。
次も期待してます。
28 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月06日(木)10時13分35秒
新作期待sage
29 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時10分19秒
>>27
ありがとうございます!
いちごまは好きなんだけど自分で書くと
消化不良を起こすので…
でもまた書きたいなあ…
2年かあ…

>>28
ありがとうございます!
期待してもらってうれしい〜!

ってわけでめっちゃ遅くてごめんなさい。
今回は新垣の超ショートストーリーです。
世界観を感じてもらえればいいな…ってことで。
30 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時12分41秒
―DREAM DRUNKER―

   気が付きゃ変なカッコして ノリノリで踊っちゃってさ
   「頑張ッタラ上手クユク」は 幻想なの?

31 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時14分38秒
夢を見ていました。
きらきらしたステージの下。
沢山の笑顔と沢山の喜び。
カーテンコール。
私の笑顔。

そんなものどこにもありませんでした。
32 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時16分00秒
「はい、新垣さん、もういいわよ」
夏先生が口に出しました。
「え…だってまだ…」
私は周りを見渡しました。
みんなまだ思い思いにダンスの練習をしています。
「いいから」
にこりともせず夏先生は私に言いました。
「もう少しレッスンをつけてくれませんか?」
その言葉に夏先生は笑いました。
ちょっと困ったように、大層可笑しそうに。
「だってあなたなにもしなくてもお父さんから
いいポジショニング与えてもらえるじゃない?」
33 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時16分47秒
「!!」

ぜいぜいと息をして起きあがりました。
手にじっとりと汗をかいていました。
「…」
私は唇を噛みました。
ちがう…そうじゃないのに…
お父さんはなにも関係ない…
なのに…なのに…
34 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時17分57秒
今日もレッスンがある…
誰に何を言われたわけじゃないけれどやっぱり
オーディションを掛け持ちしたのは事実。

でも私はどうしてもあのスポットライトの下に立ちたかった…

   ”違う 道を選んだ”
   仲間内 それで通してる

今日は休日だから朝からレッスン。
収録も確かあったかな?

私はバスに乗りこみました。
35 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時18分47秒
変に静かな休日のバス。
がたごと揺られて行く。
前に座っている人のウオークマンからシャカシャカと
やかましく音が漏れています。

私はその音を聴いて思いました。

今日は「"私のお休み"にしよう」

   もーちょい 遠いとこまで 行ってみよう
   邪魔なモンない ぐちゃぐちゃな鞄の中を 片付けよう



バスの運転手さんに聞いて終点の1個前のバス停で降りる。
私が降りなければいけなかったバス停を二桁分通り過ぎていた。
36 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時19分36秒
私が住んでいる所から車で来れるのだからそう遠くはないはずなのに
風の音がひゅうひゅう吹いていました。
うんと伸びて欠伸をして私は行き先も決めずに歩き始めました。

   More Choice 行けるとこまで 行ってみよう
   just My girl いっぱい 道をブーブー云いながら

錆びれた工業団地でした。
焦げたような、なにか金属の匂いが蔓延してます。
私はこんな饐えた雰囲気の場所は苦手です…
だから明るい場所に行きたいのに…
37 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時20分38秒
そんなことを考えて足が止まりそうになったとき
ばちばちというなにかが弾けるような音が聞こえました。
ひょこっと工場を覗いて見ると汗を掻いて口元を縛って
鉄鋼に向かっているオジさんが目に入りました。
首にかけた黄ばんだタオルで汗を拭きながら根気強く
鉄鋼に火花を散らしています。
と、汗を拭いた時その手からバーナーが落ちました。

がちゃっ!

「あっ!」

私は思わず工場の中に入りバーナーを落としたオジさんの方に
駆け寄りました。
おじさんはビックリした顔をしました。

「大丈夫ですか?」

私がそう捲くし立てるとおじさんは汗と油にまみれた黒光りした顔を
にかっと歪ませました。
38 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時22分02秒
「ほう…りさちゃんていうのかい?」
「はい」
私はオジさんと一緒に缶ジュースを飲みました。
おじさんがヘルメットを取ると白髪だらけの薄い頭でした。
額にも深く溝が刻まれています。

じりじりと日が熱いです。
でもその理不尽さが心地いい…
缶ジュースについた水滴が重そうにずるずると零れます。
両手で抱えた冷たいものを私は口に含みました。
そうしてふっと目を瞑りました。

「あー…今日も暑いなあ…」
おじさんはまたあの黄ばんだタオルで顔を拭きました。
タオルはもうじっとりと湿っているようで重力に逆らう気もなく
おじさんの胸でだらりとぶら下がっていました。
39 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時23分01秒
「オジさんは…明るいところに行きたいとは思いませんか?」
おじさんは目を潜めました。
「え?」
おじさんは少し缶コーヒーに口を付けながら上を見て何かを考えて
いたけれど思い出したように笑いました。

「?」
私は思わず小首を傾げました。
ツインテールが揺れました。
くせっ毛のツインテールは濃い影を足元に落としていました。

おじさんはまたにかっと笑いました。
「こんなに明るいじゃねーかなあ?」
40 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時24分28秒
「…」
私は目を細めました。
風が心地よかったです…
両手で包んだ缶ジュースはもう温くなってしまったけれど
心がすうっと軽くなって風が吹きこみました。
41 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時25分14秒
「りさちゃん!!何してたんだよ!」
加護さんのお説教。
顔にクリームべったりつけて…
「すいません!お腹痛くなっちゃって…」
「そっか…じゃあこのケーキいらないよね?」
「それより…あの…夏先生は!?」

   行ける、行っちゃえ! 騙し騙しで できるだけ

42 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月07日(金)22時26分42秒
ドアーを開けました。
「新垣さん?」
「夏先生!遅れてすいませんでした!私、聞いて欲しい事があるんです!…」

   だからこの際 ぐだぐだな本音なんかを
   ぶっちゃけ合おう

-FIN-
43 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月07日(金)23時42分04秒
こぶろく様
更新嬉しいです。
すごく切れ味の良い短編だと思います。
今後も更新楽しみにしてます。
44 名前:名前ってなあに? 投稿日:2002年06月12日(水)01時13分02秒
今回も楽しく読ませていただきました。
「MinD ESCAPE」のときも思ったんですけどこの人の曲と娘。って
意外と合うんですね…

久々にアルバムが聞きたくなりました
45 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月12日(水)22時25分37秒
>>43
ありがとうございます。
今回は勢い命の散文方にしてみたので
新垣さんだし不安もあったのですが
楽しんでもらえて嬉しいです。

>>44
娘。は成長課程な感じがいいので
あの方の曲も恋愛系意外は葛藤とか
成長課程みたいなところがメインで押し出されているので
相性はいいですね。
もっとかいてみたいです。
46 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時39分22秒
―ハヤテ―

   気まぐれ 君はキュートなハヤテ
   倒れそうな 身体を駆け抜けた

47 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時40分13秒
「こら!辻!」
「なんれすか〜?」
へらへらと辻は私の前で笑っている。
「こんなに散らかして!」
「だって便利なんだも〜ん!」
両手を上にほおり投げてまた笑った。
「こらーっ!」
「きゃはは!」

私も笑った。

辻が笑ったから
あのときも
あのときからも…
48 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時41分01秒
「リーダー…!?」
私に告げられたのはその言葉だった。
リーダーはいなくなったはずのモーニング娘。に
私はリーダーいう言葉をぶら下げて在籍する事になった。

よくわからなくなっていた。

私はリーダーになれる資質なんかない。
ボーっとしてるし人を引っ張って行く力なんか
きっと新しく入ってきたメンバー以上にないだろう。
49 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時41分46秒
リーダーの力量のないリーダーがいても機能する。
イコール
リーダーなんか必要じゃない。
イコール
私なんか必要じゃない。

この公式はずっと私の頭にこびりついていた。

   晴れそうで 曇り 毎日 小雨
   もう二度と壊せない気がしてた

50 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時43分20秒
鬱々と過ごしていたある日、いつもは加護と遊んでいる辻が
一人で黙々とテーブルに向かっていた。

「辻…ちゃん?」
私はまだこの時辻や加護に対して上からしっかり
激を飛ばせず、つい態度も下手に出てしまっていた。

辻は私の方を向くとにこっと笑った。

いつもはおもしろい事をいうとくすくすと笑うだけだった
そんな辻が私を見てにこっと笑ったのだった。

「飯田さん」
「なにしてるの?」
私がそう言いながら辻の横に座ると辻の目の前には
手書きの罫線の入った表が置いてあった。
その題にある文…
51 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時44分10秒
「…いいださんよていひょう?」
私がぽかんと言葉を零すと辻は慌てたように
手をばたばたとさせて顔を真っ赤にした。

「あ…あのですね〜!飯田さんはいっつもがんばってるのです。
それでですね〜辻はいっつも遅刻したりわすれんぼしたりして…
そうして飯田さんぺこぺこあやまってくれるじゃないですか?」

そう言えばそうだったかもしれない。
新メンバーの事故は全て私がリーダーと言う事で
頭を下げて回っていたのだ。

辻は困ったような、はにかんだ表情で頭を掻きながら
少しづつ言葉を紡いでいった。
52 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時45分09秒
「辻は…あいぼんとか〜…石川さんとか吉澤さんみたく
ちゃんとできなくって…みんな辻のことじゃまだな〜って
目で見てて…でも…」

辻はちらと私の方を見てまた頭を下げた。

「飯田さん…辻と一緒にあやまってくれたし
いっしょにいろんなことしてくれました…」

辻はてへてへと笑った。
53 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時47分08秒
「だから辻、飯田さんのためにこれからのすけじゅーるを
かいた飯田さん予定表をつくったんです!」
「…」

その紙は何度も何度も書きなおされている後が見えて
丁寧に集合場所や考えておく事、練習しておくべき事が
びっくりするほど詳細にかつ簡潔にまとめてあった。

「…飯田さん…」
辻が顔を上げた。
「辻もがんばるから…」
辻の目が潤む。
「リーダーを辞めないでください…」
一筋の光が辻の頬に落ちた。
「辻のせいで大変なのわかるけど…がんばるから…
だから…飯田さん…辻を…嫌いにならないで…」
54 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時48分03秒
なんでこの子にはわかったんだろう…
みんな私のことなんかわからなかった。

辻は私に抱きついてきた。

抱きしめられた腕の力でわかった。
そうか…この子も「不安」なんだ。
私と一緒で自分を信じる事ができなくて
苦しんでいる不安の塊なんだ…

私は辻の頭を撫でた。

実力のある同期を横目にもたもたとついていく
しかできない自分への歯がゆさ。
ぼろぼろのプライドを傷つけられ、誰にも誉められず
もうこの立場を放棄してしまいたいと…

同じこと考えていた辻は私のその不安を
純粋が故に見事に読み取ってしまったのだろう…
55 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時48分45秒
いつもいつも馬鹿ばかりやって私のこと
苦しめていたくせに…
気まぐれにこんなことするなんて…

私は泣いていた。

辻の黒髪に顔を埋めて。
甘い匂いがした。ミルクみたいな子供の匂い。

私は決めた。
「私はリーダーではない。だからリーダーになるため
リーダーの仕事を精一杯こなす。」
56 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時49分18秒
「まったく…」
辻をどやした30分後、スタジオの休憩室に入ると
散らかったままの部屋にテーブルに突っ伏して寝ている
辻の背中が目に入った。

くしゃくしゃと丸めてあるいくつかの紙を拾いながら
辻に近づき、辻の横にあったお菓子の空の袋でいっぱいになった
ゴミ箱にその紙を捨てた。

「…つじ…」

私は起こそうとした手をそのまま引っ込めた。
すやすやと眠る辻の頬っぺたの下にはカードが置いてある。
57 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時50分01秒
「飯田さんへ。いつもありがとうございます。
これからもののを…」

そこまでしか読み取れないカードを枕に
辻は幸せそうに眠っている。

素直で無邪気で、そしてこんなに気まぐれな辻を
私はほおっておく事が出来ない。

ゴミ箱に捨てたくしゃくしゃの紙には
たくさんの辻のありがとうが並べられていた。

私は辻を起こさないようにそっと白紙のカードを
一枚とるとペンで丁寧に書き綴った。
58 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時50分43秒
「辻へ。いつもありがとうございます。
これからもリーダーを」

私はちょっと上を見て悩んだ。
そうして付け加えた。

「振りまわしてください」
59 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月14日(金)22時52分28秒
私はカードを辻の横に置くと休憩室を出た。
暑さからか誰かが開けた窓から強い風が吹いた。

辻の悪戯のような疾風。

私は窓を閉めた。

   気まぐれ 君はキュートなハヤテ

-FIN-
60 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月15日(土)01時38分24秒
素晴らしい。
これ以上の賞賛が浮かばない。
次回にもめちゃ期待してます。
61 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月17日(月)20時18分09秒
>>60
ありがとうございます!
ののかお萌なものでして…
キュートなハヤテっていうフレーズが
辻っぽくて気に入っています。
62 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月18日(火)22時21分12秒
―PINK Graduation―

   好きな赤のリップが決まらない
   キレイに見えない…あの日から


63 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月18日(火)22時22分00秒
イシカワ・リカ。

好きな色。
ピンク。

私を私と肯定してくれる色。
ピンク。
64 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月18日(火)22時34分55秒
私はモーニング娘。
なぜ?
オーディションに合格したから。
そうですよね…

じゃあ…どうして私はこんなに辛いんですか?
なりなくてたまらなかったモーニング娘。になったのに。
どうして毎日こんなに苦しいんですか?
65 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月18日(火)22時36分10秒
私は鏡の前の自分を見つめました。
早くお化粧をして仕事に行かなくちゃ。

いつも通りの自分。
なにも変わらない自分。
変わって欲しくないけれど変われない自分に苛立つ
矛盾した感情。

お仕事に行っても話題になるのは辻加護ちゃんの歳と
吉澤さんの美形振り。
私はいつもおどおどしているだけだって自分でも
わかっています…

もちろん…そんなんじゃイケナイってことも…
66 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月18日(火)22時37分21秒

「今までのモーニング娘。になかった色」

つんくさんは私にそう言いました。
私は自分の頬を撫でました。
こころなしか昔よりこけた気がします。

「なかったっていうより…いないほうが良いんじゃない?」

そうして鏡の中の自分に指を立てました。
鏡の中の自分はなにも答えませんでした。

   独りで眺めてた MONO色 毎日を
   「変えたいの?」世界中恋して ピンク色になってく


67 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月18日(火)22時38分30秒
かちかちと時計は時を刻んでいました。
もうお化粧しなくちゃ。
私はなれない手つきで下地を塗りこみファンデーションを
叩きつけてふと顔を上げました。
ゆっくり好きなピンク色のルージュを引きました。
女の子らしいから。ただその理由で私はピンク色を
好むようになりました。

「こんなの…私じゃないじゃない…」

がたんとファンデーションのケースが落ちました。
ムラのあるファンデーションの上に雫が走りました。
雫は私の心の壁のようなメイクを削り落とし
お気に入りの薄ピンクのフレアースカートに肌色の
シミを作りました。
68 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月18日(火)22時39分30秒
私は何がしたいんだろう?
顔にも身体にもココロにも沢山沢山ウソを塗りこんで
カチカチに固めちゃって…
それで何になるんだろう?

もう…わからないよ…
どうしてわたしなの?どうして…
私は自分を偽っているのに…もう自分でもわからないのに
どうして他人が私の色なんてわかるの!?

教えてよ!誰か教えて!
そうじゃなかったら…もう私なんか要らないっていってよ!
69 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月18日(火)22時40分17秒
私は自分を抱きしめてその場に崩れました。
時計はかちかちと時を刻んでいました。

   うまくできないメイクと同じ 淡くただよう…思いなら
   あなたの言葉ひとつひとつを全部確かめたくてふるえてる

「わかんないよ…」



私は顔を洗いました。
これが本当の私のはずなんです。
でもウソで固めた私が本当の私じゃなきゃいけなくて…
70 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月18日(火)22時41分15秒
ファンデーションもなにも付けていない顔に
真っ赤なリップを引きました。
いつもはピンク色のルージュを引くその唇は
一瞬にして真っ赤に染まりました。
生まれて初めて買った、お洒落がしたいと思った時に
なけなしのお小遣いで買ったリップ。
ルージュなんて言えないその子供っぽいリップ。

「こんなの…素肌につけても…似合わないのにね…」

小学生の時はしゃいで意味もなく唇に引いた
このリップ。
大好きでお気に入りで。
どうして私はあんなに純粋だったのだろう…
71 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月18日(火)22時42分12秒
また私は泣いていました…
弱い私。
嫌いな私。

「あ〜あ…また顔洗わなくっちゃ…」

手のひらには涙と赤いリップが交じり合った液体。
それを見たとき頭に駆け巡った映像。

三人姉妹。
お母さんのリップを悪戯した私。
怒られたかった私。
私だけを見て欲しかった私。
ルージュと交じり合う涙。
怒られたかった私。
愛して欲しかった私…
72 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月18日(火)22時43分14秒
私はふっと目を細めました。
ああ…そうか…昔から私はそうだった…
なにかすごい事が出来るわけでもなく
かといって壊す事も出来ず私は自分を隠す事しか
考えられなかった…

私は思いました。

もうピンク色のルージュは止めようと。

私は私であるべきだと…

   素直になれば 揺れる私の
   想いは静かに染まってく

73 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月18日(火)22時44分40秒
ふわふわとしたストレートの茶パツ。
すらりとしたスタイル。
整った顔。

そしてピンク。

もうピンクを壁には使いません。
ピンクは私の好きな色です。
心の色がピンクです。

自分らしい色。ピンク。

それは大好きだけど壁にしていた赤と
自分らしさ、なにも隠さない白の交じり合った
今の自分の色なんです。

   Can you feel my heart?
   PINKに彩られていく

-END-
74 名前:名無し読者・60 投稿日:2002年06月19日(水)01時59分20秒
今回の更新もいいですねえ。
口紅についてここまで掘り下げられる
作者さんは女性なんでしょうか?
男性ならいろんな意味ですんげぇ!(笑)
今後も楽しみにしております。
75 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月19日(水)20時34分30秒
>>74
今回はルージュとピンクをキーワードに。
写真集の情報を探っていて
りかっちの唇を見ていたらかわいいな〜と
この話を思いつきました。
写真集辻加護とどちらをとるか…
悩みながらも頑張ります…むむ…
76 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月29日(土)20時56分18秒
―もう恋なんてしない―
   
   もし君に ひとつだけ
   強がりをいえるのなら


77 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月29日(土)21時00分52秒
「アイドルが恋なんて…ねえ?」

私はなにもしてないのに。
いきなり週刊誌を見せられて。
私の名前とあり得ない行動。
そうして私はアイドルの資格がないといわれた。
その時私が言った言葉。

「すいませんでした」

間違いとわかっていたけれど
後輩に追い抜かれて行く焦り
トップに立たなければ行けないプレッシャー
沢山の葛藤が私の中の資格をうやむやにした。
そうして出た言葉。
78 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月29日(土)21時01分44秒
「おこられちったよ〜」
私は休憩室にいたごっつあんに笑いかけた。
頭を掻きながら舌を出した。
心はちくちく痛んでいるのに。

ごっつあんはそんな私を雑誌から面倒そうに移した
眠そうな瞳でじっと見つめた。

「どうしたんだよ?」
私はごっつあんが座っているソファに座った。

「もう〜なっちショックだよ〜」
私はまだじっと私を見つめているごっつあんを
見ることが出来ずに下をむいて足をばたつかせた。
79 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月29日(土)21時02分44秒
「ほら〜なっち写真週刊誌になんやかんや
いわれてて〜もうアイドル辞めちゃおうかな…
なんてさ…」

目に涙が溜まってきたのがわかる。
泣いちゃだめ。
泣いちゃだめ。
涙は溜まるのに口は飽きれるほどべらべらと
言いたくない言葉を紡ぎ出す。
80 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月29日(土)21時03分49秒
いやだよ…
なっちはみんなに夢を与えたいのにさあ…
また逆戻りだべ?
弱虫で噂に振りまわされる元の
いじめられっこの寂しがり屋のなっちと。
「アイドルの資格のなかった」なっちと。
そんなの…

いやだよ…
81 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月29日(土)21時04分58秒
「やっぱ〜アイドルが恋なんかしちゃいけないって!
マネージャーさんがさ〜怒っちゃってね…
なっちそんな覚えないのにびっくりだよ〜」
そういって私はけたけたと笑った。
もう何を言っているかわからなかった。
悔しさと苛立ちと…
全てがぐちゃぐちゃになって胸がぎゅうぎゅうした。

「そんならさ〜なっち恋なんてぜ〜〜〜ったいしな…」

「もうやめてよ!」
82 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月29日(土)21時06分08秒
はっと顔を上げると唇を噛み締めて涙目になっている
ごっつあんが私を睨んでいた。
ばさりとごっつあんが読んでいた雑誌が落ちた。

「そんなの…」
ごっつあんは唇を噛みなおした。
そうして手で目をごしごしと擦った。
少しアイシャドーが崩れていた。
ウォータープルーフのマスカラも少し取れていた。

「私の前でくらい強がっててよ!」

「ごっつあん…」

私の目から雫がぼろと崩れ落ちた。
83 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月29日(土)21時07分52秒
ごめんな…
なっちそんなつもりじゃなかったんだ…
優しく慰めて欲しいとか叱って欲しいとか
そういうんじゃなかったんだ…
ただ…

「私となっちはライバルでしょう!?」

ごっつあんのこと嫉妬はしてたけど嫌いに
なりきれなくて…

強がれなかったよ…

ごっつあんがこんななっちの弱いところ
見たくないのわかってたのに…
84 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月29日(土)21時09分50秒
ごっつあんのはあと息をつく音が耳に響いた。
私はうつむいていた顔を上げた。

「今日…一緒にご飯…食べにいこうか?」


   もし君にひとつだけ 強がりをいえるのなら
   もう恋なんてしないなんて 言わないよ 絶対

-FIN-
85 名前:こぶろく 投稿日:2002年06月29日(土)21時10分41秒
うわあ…賛否両論ありそうなちょっとブラックなネタで
いってしまいました…でもなちごま結構好きなんです…
あーゆー空気持った美人姉妹っていません?
扱ったネタより二人の気持ちのやり取りを見てやってください。
86 名前:こぶろく 投稿日:2002年07月29日(月)23時45分43秒
―揺れる恋 乙女色―

   揺れる恋 乙女色
   思いは巡って 夜をさまよう


87 名前:こぶろく 投稿日:2002年07月29日(月)23時49分10秒

「どっちも…すっごく大好きなんです…」
辻は唇を噛みました。
「でもね…辻…」

88 名前:こぶろく 投稿日:2002年07月29日(月)23時53分06秒
***

夜。
ぼんやりとした光。
その光に顔を照らす少女の顔は驚くほど切なくて
大人びたその表情からは痛みを感じるほどの
寂しさが映し出されていた。

悩んでいた。
少女は悩んでいた。
小さな胸をいっぱいに使って悩んでいた。

誰にも悲しんで欲しくない。
そんな優しい子だから。
そんな甘い子だから。
大人になりきれない大人の優しさをもった子だから…


89 名前:こぶろく 投稿日:2002年07月29日(月)23時55分17秒
***

「だめだ…どっちかだけなんて…ムリだよ…」
辻は思わず光の先に手を伸ばしました。

「のんちゃん!」

はっ!

飯田さんの声が聞こえました。

「どっちかだよ…そうしないと辻が結局
困る事になるんだよ…」
「…いいださん…」

辻は手を伸ばすのをやめてひっこめると
がっくりとうなだれました。

「でもね…でもね…わかってるんだけどね…」

「紺野ちゃんも…あいぼんも悪いんだよ…」

90 名前:こぶろく 投稿日:2002年07月30日(火)00時08分16秒
***

少女の心は揺れていた。
どうして悩むのか?
理由は一つ。

好きだから

目を背けてしまうことが本当の得策なのだろう。
見なかったことに。知らなかったことに。
しかしこの少女にそんなことが出来るだろうか?

いや、できない。
少女はどちらも本当に大好きなのだ。

91 名前:こぶろく 投稿日:2002年07月30日(火)00時09分17秒
***

バイバイした時…
二人にはにっこり笑ったけど…本当は…

「…辻…嫌な子…」

なんだか泣きたくなりました。

   大人のふりしている 笑顔は嘘吐きで
   本当は泣き出したい 少し強がっている

でも辻にはもう、こうするしかなかったんです。
どちらも大好きだから。

裏切ってしまうなら…どっちも…

「許して…あいぼん…紺野ちゃん…」
辻は手に力をこめました。


92 名前:こぶろく 投稿日:2002年07月30日(火)00時10分39秒
***

「…ののぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

次の日。
あいぼんは手を握ってぶるぶる震わせてました。

「のの!うちのマルセイバターサンド
食べたやろ!冷蔵庫にしまっといたやつ!」

冷蔵庫の方からあっと小さな悲鳴。

「あ…あたしの…ハーゲンダッツが…ない…」

紺野ちゃんが目を丸くしています。
その様子を見ると紺野ちゃんがこっちを見ました。

「ののっ!」
「つ…辻さん…」

二人にせめよられました。

「ら…らって…置いてあるから…」
てへっと笑ってみました。

紺野ちゃんとあいぼんは顔を見合わせると
こくんと頷き合いました。

「?」

「こうげきだあ〜!」
「ひゃあああああ!!」
93 名前:こぶろく 投稿日:2002年07月30日(火)00時11分26秒
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ…

辻はこれでもかってくらい二人にくすぐられました。
そして辻の今日のおやつを全部二人にもっていかれました。

いいな〜っていったら紺野ちゃんがチョコレート1個くれました。
しゃあないなっていってあいぼんはアイス一口くれました。

お菓子食べないで偉いって飯田さんに誉められました。
…昨日のことは内緒だけど…

でも辻本当にどっちも大好きなんだ…



あいぼんも紺野ちゃんも…



−FIN−
94 名前:こぶろく 投稿日:2002年07月30日(火)00時12分31秒
…というわけで辻の葛藤。
こんののかごほのぼのってことで。
やっぱりほのぼの病なのか書けないとなると
うずうずしてきますねえ…がんばろ…
95 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月09日(金)01時08分10秒
ほのぼの、なごみますねぇ
96 名前:こぶろく 投稿日:2002年08月15日(木)22時42分19秒
>>95
なごみ、とかマターリとか感想で頂けると
本当に嬉しいんです。
ありがとうございます。

最近小ネタがなくて書き溜めていた小説を月板で
アップさせて頂いています。
雰囲気が違いますがこんののです。
お暇な方は「アイドル・サイボーグ」よろしくお願いします。
97 名前:こぶろく 投稿日:2002年08月16日(金)20時27分10秒
I REALLY WANT TO HURT YOU 〜僕らは完璧さ〜

   perfect 僕らは 完璧なのさ
   いつかは世界中の人へ誓うのさ


98 名前:こぶろく 投稿日:2002年08月16日(金)20時27分54秒

「んま…」
「ですね…」
私達はその言葉を最後にまったく喋らなくなりました。

がしゅがしゅがしゅ…

がしゅがしゅがしゅ…

がしゅがしゅがしゅ…











甘い

甘い甘い



……

「ん〜!おいしかったあ〜!ごちそーさまーっ!」
「ご馳走様でした」

「このスイカ、とっても美味しかったですね」
「うん、気が利いてるね〜
辻、ちょうどスイカが食べたかったんですよ」

私達は汚した口も構わず向かい合ってにっと笑いました。

99 名前:こぶろく 投稿日:2002年08月16日(金)20時28分40秒
今日スポンサーさんから差し入れがあって大きなスイカを
丸ごと頂いたんです。

私と辻さんは飯田さんとマネージャーさんから
ホームステイについての説明を聞いていたため
他のメンバーに出遅れてスイカを頂いていました。

「なんかちっちゃい…」
「辻さん…」
すいません…私もそう思っちゃいました…

ちなみに飯田さんはその他にもいくつか説明があったので
こんな風に私と辻さんでスイカにかぶりついていたんです。

スイカは甘く沢山の水分を含んでいて溜息が出ました。
とても冷えていたし夢中に食べていたことがとても満足感に
つながっています。
100 名前:こぶろく 投稿日:2002年08月16日(金)20時30分17秒
やっぱり辻さんと食べるのはいいかもしれません。
みんなちょこちょこ話たがるのですが私はある程度まで
食べ進めないと食べることに集中してしまって
話をしないこと去ることながらほとんど聞いてない事が多いから
こんな風な空気で食事が出来たらいいなって。

それに不思議と嫌な空気が流れないんですよね。

二人とも真剣にいつもがっつくのに…
101 名前:こぶろく 投稿日:2002年08月16日(金)20時30分56秒

そういえばいっしょに宿題をした時も

いっしょにダンスの練習をした時も

辻さんは

真剣で、真っ直ぐで、素直で

空気のように私を包んでくれた…

私達は何か大きいものを与え合っているわけでもなく
かといってなにか奪おうとしているわけでもなく

ただふわふわと

同じ目線で

笑い合っているだけ…

102 名前:こぶろく 投稿日:2002年08月16日(金)20時32分18秒
「あさ美ちゃんお化けみたーい!」
二人で鏡を覗きこむ。
私達はスイカの汁まみれになった頬を見て
笑い合いました。

「おばキューみたい…」
「きゅーたろーのことですね!?
あさ美ちゃんそっくりですよ!ほらー!」

私の頬を引っ張ってまた笑う辻さん。
「ひどーい!」
「あはは!似てたよ〜?」

どうしてこんな他愛のない会話なのに
どうしてこんなに完璧なのだろう?

どうして私の心に完璧にくっついてくるんだろう?
103 名前:こぶろく 投稿日:2002年08月16日(金)20時33分18秒
辻さんを捕まえてほっぺたをむにっと引っ張ると
ぎぶぎぶと私の腕を叩きました。

「も〜…あさ美ちゃんはよーしゃないなあ…
だから、なんかいいんだけどね?」

「なんか〜二人でおっきくなれる感じするでしょ?」

辻さんは暖かくて柔らかいです。

それが私の心に流れ込んでくる。

幸せとか嬉しいとかそういう気持ちになって。
104 名前:こぶろく 投稿日:2002年08月16日(金)20時34分46秒

私達は完璧です!

だって二人で歩いて行けるから。


   perfect 僕らは 完璧なのさ
   いつかは世界中の人へ誓うのさ 本当さ


-FIN-

105 名前:こぶろく 投稿日:2002年08月16日(金)20時36分57秒
久々のこんのの短編。
やっぱりこの二人は自分で書いててもほんわかした
気持ちになれてよいですね。
某AA小説の完結で刺激されたからこんののをかいたなんて
まして24時間テレビのこんののかおを期待してるなんて
そんなことまったくないです!はいっ!

このままこんのの職人になってしまおうかな・・・
106 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月25日(日)03時40分08秒
一読者の意見ですが、
>このままこんのの職人になってしまおうかな・・・
なっちゃって下さい(w
107 名前:名無し 投稿日:2002年08月26日(月)20時11分09秒
自分もこんのの職人に賛成です(w
あの二人は優しい感じの瞳が似ているような気がします。
でも意外と性格は逆のような気もします。でも食欲は似ています。
108 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年09月16日(月)01時14分19秒
こんのの最高です!!こんののあいぼんの三角関係はいしごまよしの三角関係に
対抗しうるとこまできていると思いますよ。
109 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月28日(土)22時01分19秒




バスが来るまで


110 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月28日(土)22時04分14秒

1.grape fruits days

    ぐるぐるメリーゴーラウンド
    君に 手が届かない


111 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月28日(土)22時05分43秒
「おはよ〜っ!」
そう言ってあいぼんは笑いながらいつものように私の方に駆けてきた。
「昨日新しいボンボン買ったんだ〜」
あいぼんはぼんぼんをつんと突ついた。
ピンク色のボールはぷるんとあいぼんの黒髪の中で揺れた。

あ…可愛い…

「うん!かわい〜」
「でっしょ〜!?」
私達はくるくると笑った。
112 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月28日(土)22時06分36秒
「加護、辻ちゃん、おはよう」
後藤先輩が笑ってくれる。
あいぼんはちょっと背筋を伸ばして大きな声で挨拶をした。
だから私もちょっと大げさに頭を下げた。
後藤先輩はあいぼんのバトミントン部の先輩だ。
あいぼんはバトミントンが上手で部長の後藤先輩によく
直々に教えてもらっている。
前「師匠」なんて呼んだりしててちょっと羨ましかったり…。
私、バレー部だからなあ・・・

あいぼんと後藤先輩が今日の部活動について話をしていて
私がちょっと離れてぼうっとしているとぽんと頭を叩かれた。
113 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月28日(土)22時07分16秒
「おはよう、のんちゃん。今日も早いんだね?」
飯田さんがスケッチブックを抱えて私の横に立っていた。
「うん!」
飯田さんが笑ってくれた。
このバス停から乗れるバスの終点に飯田さんが通っている大学がある。
どうしてそこにいかないの?と前聞いたらここの町の風景が好きだかららしい。
スケッチブックの中身を見たときはこの何もない味気ない町が
きらきら輝いて見えたほど飯田さんの絵はとても上手だ。

「あ、バスが来たね」

バスはあいぼんの前に止まって私達はぶしゅと音を立てて開いた。
ゆっくりと私達はバスに乗りこむ。
114 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月28日(土)22時08分14秒
「ちょおおおおおおおっとまったあああああああああ!」

どっしん!

「!?」

私とあいぼんが二人がけの椅子に座ったと同時にバスに衝撃が走った。

「まああにあった!いえ〜〜〜〜っ!」

よっすぃーだった…吉澤先輩…高校は違うけど中学校が同じだった。
いつもぎりぎりにバス停に来るんだけど今日は稀にある駆けこみ乗車の日だった。
バスケ部の吉澤先輩の跳力は中々の物で…でも最近太りぎみらしく
さっきの衝撃はそのせいに違いなかった。

「お客さん、早く乗ってください。」
苛立ったように運転手さんが無機質に喋りました。

「あ、すんません…」
そそくさとよっすぃーはバスの中ごろまで入って来て私の頭を撫でました。
「今日もかわいーなー」
「てへ…」
私はちょっと嬉しくなってくしゃくしゃになっているだろうツインテールも
気にしなくなってしまって…
115 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月28日(土)22時08分53秒
「よっすぃ〜!?」
突然の泣きそうなアニメ声。
一番後ろのイスに梨華ちゃんが居ました。
いや…いつも居るんだけど…よっすぃーと通いたくていつも席をとっているらしい。
手を組んで立ちあがる梨華ちゃん。先輩のはずなんだけど…

「どうしちゃったの!?どうしてすぐ私の所に会いに来てくれないの!?」
もう泣きそう…

「いや…辻に朝の挨拶を…」
梨華ちゃんは眉を寄せると頬に手を当てて首を振り出しました。
「いやっ!よっすぃ〜がすぐ私のところに来てくれないなんて…
耐えられない!絶対耐えられない!!そんなの…そんなの悲し過ぎるっ!」

「…お客さん…出発するんで早く座ってください…」
げんなりした運転手さんの声が聞こえました。
116 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月28日(土)22時09分40秒
女子高って怖いなあ・・・

私はそう思いながらあいぼんの話を窓に流れる風景を見ながら聞いていました。

私が住んでいるところは田舎の方で学校は割と人の流れのある街だから
窓を見ていると自分の居場所が勝手に移り変わる様が目に映る。

緑からみるみる灰色に変わって行くその流れ。

私はそれがやけに悲しくてバスに乗っている時間より緑に包まれた
バスが来るまでの時間のほうが好きだった。

バスがこなきゃいいのに…そんな風にも思ったりする…

大好きな人が笑ってくれるそのバスがくるまでの時間が本当に幸せだから…
117 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月28日(土)22時11分54秒
ちょっとだけ復活なこぶろくです。
こんのの職人と化しているので大丈夫です。
イロイロな所に手を伸ばしているので探してみてください。

ああっ!紺野ちゃんかわい〜!
ののたんかわいい〜!
118 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月29日(日)03時34分50秒
復活だ〜♪
それより「イロイロな所」とは?名無しで新スレでも立てたのですか?
119 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月29日(日)13時50分16秒
ある日、後藤先輩が転校した。
バドミントンの腕が買われて遠くの学校に行ってしまった。
あいぼんは泣いていて、私はなにも出来なかった。

そのうちあいぼんは部活を辞めてしまってなんだか怖い
彼氏が出来ていた。ぱつきん。ぱつきん。

私にはなにも言ってくれなかった…

バス停にも来なくなった。
あいぼんはぱつきんさんのバイクの後ろに乗って学校に行くんだ。

その日もあいぼんは私の前をヘルメットをかぶって通り過ぎて行った。

ちょっと私の方をうつろな目で見た気がしたけど…
120 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月29日(日)13時51分22秒
飯田さんも通うのが大変になったらしく引っ越してしまって
よっすぃ〜は梨華ちゃんの自分がよっすぃ〜に合わせるんではなく
自分によっすぃ〜を合わせてしまえばいいんだと目を輝かせてしまい
よっすぃ〜の家の前には毎日真っ黒でぴかぴかの車が止まっている。

私の幸せはなくなってしまった…

みんな私の元からいなくなって…手が届かない所に行ってしまった…

ざわざわと泣く木々の声が朝の寒さと合わさって
怖くて仕方なかったから私の耳からはヘッドフォンが離れなくなった。

広い緑の絨毯も私が一人だとわからせるように意地悪く囁いているようで
もうバス停では下しか向けなくなった。

早くバスがくればいいのに…
121 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月29日(日)13時53分16秒
更新少なっ!

ひらがなが多くない等身大の辻を書くのが今回の課題です。
なかなか難しいですね…あんまり敬語チックになっても
紺ちゃんに近くなるし…
やっぱりキャラって固定されているなあ・・・

>>118
このあいだのアイドル・サイボーグの名無しイメージのせいかな…
狩のネタスレにちょっと顔を出しているんですよ。
122 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月30日(月)20時44分25秒



2.アンブレラ



123 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月30日(月)20時46分40秒
その日は雨が降っていた。

私は相変わらず下を向きながらヘッドフォンからのちかちかという音を
耳に注ぐだけ注いで足元のアスファルトの黒に近い灰色を見つめていた。

びゅんっ…

「!?」

急に強い風が吹いて傘が飛ばされないようにとぎゅと手に力をこめた。

「…」

力をこめた肩を下ろす。風がやんだとき目に入ったのは

黒でも緑でもなく真っ白な傘だった。
124 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月30日(月)20時48分15秒
真っ白な傘を肩にかけた制服姿の女の子。
有名なお金持ちの、しかも頭のイイコが行くすごい学校の制服だった。
その子はちょっと寂しそうに遠くを見ていた。
まるで何かを探す見たく遠くのほうをちょっと焦ったように。

零れそうに大きな瞳。
透き通るように白くて柔らかそうな頬が雨の寒さでピンクになっていた。

その目には私が嫌いな緑色の絨毯が映っているのかな?
それとも頭のいい人にしか見えないなにか素敵な幸せが映っているのかな?
125 名前:こぶろく 投稿日:2002年09月30日(月)20時49分10秒
「…!」
「ふあ!?ご・・・ごめんなさい!?」

目が合ってしまって私は思わず目を伏せながら謝った。

なにやってるんだろう…
はずかしいなあ・・・

やっぱ早くバスがくるといいなあ・・・

「あの…」

ぴちゃん

靴が雨水を蹴る音。

白い傘の子が私の横に来た。
綺麗な子だった。

「バスはここに来ますか?」

バスはまだ来なかった。

126 名前:こぶろく 投稿日:2002年10月13日(日)19時20分06秒
「…来る…です…」

あんまりその子がくりくりとした瞳を潤ませて
私を見つめるもんだから私は訳のわからない言葉を
とっさに口走ってしまう。

「…よかった…」

雲が切れるようにすうと優しい笑顔が
冷えた笑顔の上に広がって行きました。
私は胸がぎゅっと詰まってちょっと引きつりながら笑いました。

「名前…は?」

「あさ美…紺野…あさ美です…」

はにかむように口にされて私はどきどきしてしまう。
127 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月18日(金)21時00分30秒
むふぅ〜・・・ののたんせつない。。。
でも、悲しいけど自分、こんのの萌えなのよねぇ
128 名前:こぶろく 投稿日:2002年10月21日(月)16時27分18秒
スレッガー中尉!こんのの萌えなのですね!
以後お見知り置きを!

てかバスが来るまでののんちゃんのキャラに無理が…
どうしよう…放置はしたくないんだけど・・・
129 名前:名無し 投稿日:2002年10月21日(月)20時00分07秒
オレを踏み台にしてでも頑張って下さい。
130 名前:こぶろく 投稿日:2002年10月22日(火)18時19分39秒
こっちのネタでも責められるんでしょうか…(笑
いや、大好きなんですけど…ダイスキですけど…

うう…こころぐるちいです…がんがります…
131 名前:こぶろく 投稿日:2002年10月27日(日)13時45分56秒
雨の日のバスは必ず定刻にはこない。
こんな辺鄙な所のバスならなおさらだ。
それを知らないこの子はきっと最近こっちに越して来たんだと思う。

まずこのへんにこの学校の子がいることはないからな…

俯く彼女を…紺野あさ美を横目でちらと伺ってみた。
当然のようにあの後会話は続かなかった。

じゃば…じゃばば…

水が大きななにかに弾かれる音。

バスが来た。
132 名前:こぶろく 投稿日:2002年10月27日(日)13時46分58秒
バスに乗りこみMDを聴きながら私はうとうととした。
雨の日の中途半端な暖房はむっとした匂いと湿気、そしてなにか重いものを
胸に染み込ませてくる。

雨の日の風景は窓に吸いつく雨の粒で歪んで見える。
もともと私の心に入ってくる風景は笑っている人より歪んではいるけれど。
もっとぐにぐにと歪んでいる。
私はそれを嫌だとは思わなかった。

だってそこにキレイな風景を歪ませる自分を感じなくて済むから。

がくんと何度かバスが停留所に止まったのを感じ何度目かの揺れで
自分の学校の一つ前のバス停につく。

そうしてあのまっしろい傘が目に入る。
133 名前:こぶろく 投稿日:2002年10月27日(日)14時00分01秒

一瞬目がくらんだ。

そして思い出した。

どうしてあんなに緊張して胸が痛んだのか。

あの子に。

あの傘はあいぼんとおんなじ傘だ…

まっしろいアンブレラ。

134 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月07日(木)01時33分10秒
作者さん描写上手いですね。
135 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月11日(水)02時29分58秒
続きに期待しつつ保全します
136 名前:こぶろく 投稿日:2002年12月21日(土)01時37分21秒
 
 
 
 
3.光
 
 
 
 
137 名前:こぶろく 投稿日:2002年12月21日(土)01時37分55秒
あいぼんと同じ傘はばあっと私の視界から遠ざかる。
頼りなげに揺れる白。
なぜか私は胸がいたんで…

それはきっとあいぼんとなにか重なって見えて…

儚く白くまぶしく…
具体的になにかを言わなきゃいけないならそれは
ウソになってしまうかもしれないけれど…

遠くの方に小さく小さくぽつんと白い光。

「ごめんね…」

なぜか私はつぶやいた。
138 名前:こぶろく 投稿日:2002年12月21日(土)01時38分52秒
私はぼんやりとして次のバス停で下りなければいけないのに
六つも乗り過ごしてしまった。

「…」

終点の一つ前のバス停にぽつんと私は立っている。
真っ青な空色の傘を待合室のイスに立てかけた。
やけに軽くなってしまった財布を鞄にねじ込む。
だあれもいないバス停。
ざあざあとトタンの屋根に叩きつけられてる雨粒。

私ははぁと溜息を漏らした。
その溜息も真っ白だった。
もう寒い。冬は近づいているんだ…
139 名前:こぶろく 投稿日:2002年12月21日(土)01時39分26秒
もう一度溜息をつく。
なんとなく気が重くなる、滅入る。
今度の溜息は顔を両手で覆ってそこに吹きかけてみた。

温かい…

ムカツクほど…

私は生きてるんだ…

どんなにむかついても、
どんなに寒くても、
どんなにドジでも、
どんなに苦しくても、
どんなに楽しくなくても、
どんなに寂しくても…
140 名前:こぶろく 投稿日:2002年12月21日(土)01時40分23秒
「…のんちゃん…?」

「ほぇ?」

自分の間の抜けた声で私は驚いて回りを見渡した。

「のんちゃん!?どうして?どうしてこんなところに?」

大きな目

「ほえ…ふぁ…ああっ…」

おっきな背・ながーい足

「のんちゃん…ほら…寒いでしょう?」

身長に負けないくらいの大きなカンバス

「ふぇ…」

「…の…のんちゃん!?」

飯田さん…

「あああああああああああああああああ!!!!!」
141 名前:こぶろく 投稿日:2002年12月21日(土)01時41分09秒
私はその場に崩れてしまってまた顔を覆って今度は涙を流した。
涙だけじゃなくてもう顔から出るものが全部出るように
私は赤ちゃんのように声をあげて泣いた。

雨が降っている。
私の声はちゃんと消えてくれているだろうか?

バスが来るまで…
飯田さんはこうやって私を胸に抱いて泣いてくれるだろう。

知っていたんだ…
ここのバス停の近くに飯田さんが住んでいる事は。
「遊びに着てね」って微笑んでくれた飯田さんが遠くて遠くて
怖くって…だからずっとこのバス停が怖くて…
142 名前:こぶろく 投稿日:2002年12月21日(土)01時41分53秒
会いたかったんだ…
飯田さんに…笑って欲しかったんだ…
でも怖かったんだ…
いなくなっちゃうのを認めちゃったみたいで…

飯田さんは私の頭を撫でてくれている。
いい匂いがする。
なんだか眠くなってくる。

バスがこなければいいのに…
143 名前:名無し 投稿日:2002年12月21日(土)20時56分47秒
久々の更新&飯田さんとの出会いに乾杯!!
144 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月31日(金)01時27分55秒
期待保全
145 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月28日(金)19時34分46秒
期待保全
146 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月13日(木)18時32分54秒
保全 期待
147 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月14日(金)17時01分53秒
保全
148 名前:こぶろく 投稿日:2003年04月23日(水)23時19分25秒
こぶろくです。
保全して頂いていて申し訳ないのですが
これを書いていた時期自体スランプでやっぱり
今も忙しさも相俟って続きを書くことは断念させて頂きたいのですが…
本当に心苦しいんですがこのまま保全していただくのも
心苦しい物ですので…

その代わりとは言えないのですがそのうち
ひょこっと復活すると思うので勘弁してやってください…(泣

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