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娘。大学物語

1 名前:探求者 投稿日:2002年05月25日(土)02時01分39秒
娘。大学物語 一話

「まずい!遅刻だ〜!!!!」
駅の階段を必死に駆け下り、改札の向こう側で停車しているバスにむかって走る。

彼女の名前は安倍なつみ。今日は彼女の大学の入学式である。
遅刻魔の彼女は前日に目覚ましをセットしたのを確認したはずだったのだが…。

「待って!待ってェ〜〜〜!!!!」
必死の爆走の甲斐なく安倍の目の前で無常にもバスは発車してしまう。
「あぁ〜・・・(泣)遅刻確定だよ〜・・・。こんな日に限って目覚ましが壊れるなんてぇ〜(泣」

と、いうことらしい。

…実際は彼女が気づかないうちに止めたのだが。

ちなみに入学式は十一時からであるが、今は九時四十分だ。余裕な時間である。

「しかたがない…次のバスに乗るしかないか…」
(遅刻の覚悟はできてるし。まぁ大して言われないよね。たかが入学式だし)
開始の時間を間違えてることには全く気づいていないようだ。
2 名前:探求者 投稿日:2002年05月25日(土)02時02分11秒
 安倍なつみ、今年娘。大学文学部に合格し今日から大学生になり
常におひさまのような笑顔とややふっくらした体型は温和な印象を周囲に与える女性。

その安倍は今次のバスを待ちながらそのおひさまのような笑顔を周囲に振りまいている。
見たものがみんな幸せになれそうな笑顔、彼女のチャームポイントであるそれを…
3 名前:探求者 投稿日:2002年05月25日(土)02時03分12秒
聖.娘大学、その歴史はまだ浅いが施設、環境ともに最高水準とも言われてる大学だ。
総長はつんくという。入学式などの格式ばった場所でも普段着のような服装で祝いの言葉を
述べるような、そんな総長。
総長がこういう人だからか聖.娘大学の校風は『自由と自律』と非常にシンプルだ。
そして今日が入学式だ。……開式は一時間ちかく先だが。

「……なんで誰もいないべさ…」

時間を勘違いしたからである。

「もしかして……なっち場所間違えたかなぁ」

…………………

ふいに後ろから声が聞こえた。

「そこにいるの、誰?」
4 名前:探求者 投稿日:2002年05月25日(土)02時03分55秒
安倍が振り向くとそこにはスーツ姿の金髪小学生……に見えてもおかしくない人が立っていた。
どうみてもヒールなしでは150pもなさそうな身長なのにスーツを着て金髪なのである。
おまけに童顔。小学生と見られてもおかしくはない、そんな人。

「なんで小学生がここにいるの。もしかして迷子?」

「なんで小学生になるんだよ!ヤグチはこれでもれっきとした大学生だよ!
 そっちこそなんで一時間も前に講堂にいるのさ」

「なっちと同い年?……見えないっしょや〜」

多少ムッとしたように矢口は言った。

「うっさいな!これでもヤグチは今年ここに入学する新入生だっての!」

声を荒げてきた矢口。誰もいないぶん講堂はよく声が通る。
5 名前:探求者 投稿日:2002年05月25日(土)02時04分35秒
「え!?…わかった、飛び級してきた小学生でしょ?」

「だから小学生じゃないって言ってんでしょ!」

自分の気にしてることをズバズバ言われて面白くない矢口である。

「なーに言ってんのさー、こんなちっちゃい大学生なんていないっしょー?」

「矢口の話を聞けっての!私は大学生なの!小学生じゃないの!」

徐々に大声になっていく矢口。だんだん周囲の講師たちの視線を集めてきた。
もちろん本人は気づいていない。

「あなた勘違いしてるっしょ?ここは大学の入学式する場所で小学校じゃ…」

「人の話を聞け〜!」

「さっきからごちゃごちゃ言ってるけどここは大学、小学生の来るところじゃ…」

まったく話を聞かない安倍に対して矢口はややうんざりしたように言った。

「もういいよ…」
6 名前:探求者 投稿日:2002年05月25日(土)02時07分32秒
ふと周りを見回すと大学の講師らしき人がこちらを見て笑ってる。
どうやらそうとう大きな声で漫才をしていたようだ。

「ほらほら〜、小学生は帰…」

「…もぉいいから………とりあえず座ろ?てか座れ」

恥ずかしそうに安倍を引きずって講堂で座る場所を探す矢口。
…でもやはり安倍は話を全く聞いてない様子で、

「小学生がなんでここにいるべさ〜?」

まだ言っていた…
7 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月25日(土)16時18分05秒
ちょ〜おもしろそう!
がんばってください
8 名前:探求者 投稿日:2002年05月26日(日)01時18分45秒
数分後講堂の右隅の方に座った二人、矢口はうんざりしながら安倍と話していた。

「だからぁ〜、ヤグチは今年ここに入学する大学生なの!小学生じゃないの!わかった!?」

「なんだぁ。そんならそうと早く言ってくれたらよかったのに〜」

「…………………」

やっぱり話を聞いてなかった安倍に矢口は呆れて絶句してしまったようだ。

「あぁ、自己紹介まだだったね。私、安倍なつみ。今年この大学に入学するの。あなたは?」

「なんでそんな和んでるんだよ!さっきまであんだけヤグチを馬鹿にしたくせに!」

「ヤグチっていうの、へぇー。学部はドコなの?なっち知りたいべさぁ〜」

「っ!…………」

ふいに矢口は押し黙ってしまった。安倍は心配になり、

「なになに、どうしたべさ?なっちなんか変なこと言ったべか?」

「………」
9 名前:探求者 投稿日:2002年05月26日(日)01時19分16秒
「どうしたべさ?おなか痛い?大丈夫?病院行くべか?」

「クククッ、キャハハハハ!べさって!べさって言ったぁ〜!何それ?ドコの方言なの〜?
いもっぽ〜い!キャハハハハ!」

堰を切ったように笑い出す矢口。笑う仕草だけなら完全に小学生みたいなもんである。

「えっ、なっちまたべさって言ったべか?方言抜けてないべか?」

「キャハハ!またゆった〜。あ〜おかしッ!キャハハ」

なおも爆笑する矢口にさすがにムッとした安倍は

「ひっどいっしょや〜!なっち怒った!もう知らない!」

「キャハハ、ごめんごめん。でもコレでお互い様ってことで、ね?」
10 名前:探求者 投稿日:2002年05月26日(日)01時20分12秒
いもっぽいと言われて頬を膨らませる安倍を見てようやく笑うのを止め謝った矢口。
でもやっぱり多少笑いながら

「じゃあ改めて自己紹介ね。私は矢口真里。今年ここの文学部文学科に入学するの。
あなたは安倍…」

「なっちは安倍なつみ、室蘭出身。あなたと同じ文学部文学科に入学するの」

「偶然だね、同じ学部学科なんだ、へぇ〜。専修は?」

「日本文学。矢口さんは?」

「ヤグチも日本文学専修。奇遇だねぇ〜」

「ね〜。私たち気が合いそうっしょや〜」

さきほどの言い合いが嘘のように打ち解けている。

「みたいね。あ、じゃあヤグチのことはさんづけしないででいいよ」

「じゃあなっちのこともなっちって呼んでね、ヤグチ」

「うん、なっち!」
11 名前:探求者 投稿日:2002年05月26日(日)01時22分20秒
>>7
ありがとうございます。

ってことで自己紹介。
探求者と申します。いろいろあってここで書かせてもらいます。
どうぞヨロシク。
12 名前:なちまりすと 投稿日:2002年05月26日(日)12時26分24秒
なちまりの気配…
13 名前:探求者 投稿日:2002年05月28日(火)22時05分37秒
話していれば時間もたつ。いつのまにか講堂は新入生で徐々にいっぱいになってきた。

矢口が時計を見るともう開会まであとわずか。楽しいときほど早く時が過ぎる。
どうやらそうとう長く話してたようだ。

「じゃあなっち、続きは入学式のあとね。総長の話でも聞こっか?」

「だね」
14 名前:探求者 投稿日:2002年05月28日(火)22時06分15秒
数分後。開会予定時刻はとっくに過ぎていたが開会されない。
生徒のほうも緊張感が途切れだんだん騒がしくなってきた。

「まだ始まらないね…」

「ね。確か初めは総長からの祝いのお言葉とかだったよね?」

「えっと…予定表にはそういうふうに書いてあるけど」

「ヤグチ退屈だよ〜。ねぇなっち、なんか暇つぶしになぞなぞでもしよ〜よ。ね?」

「なっちはなぞなぞ不得意なんだけどな。しりとりとかにしようよ〜」

「なんで女子大生がしりとりなんだよ〜」

「えぇ?北海道ではそういう感じだったよぉ」

「どこだよ北海道の!いまどきそんなとこ、北海道でもないって!
やっぱなっちいもっぽ〜い。キャハハハハ!」

しりとりもどうかと思うけどね。
15 名前:探求者 投稿日:2002年05月28日(火)22時06分46秒
ふと講堂のざわめきが静まっていく。どうやら遅刻した総長がようやく来たらしい。

「!ヤグチ、静かに。総長が出てきたみたいだよ」

「やっときたの?こんだけまたせやがってぇ〜」


壇上に総長らしいとはお世辞にも言えないようなラフな姿をした男がでてきた。
特に暑いわけでもないのに背広も着ずに髪は金髪、どうみても総長どころか教師にすら見えない。
新入生の八割以上が誰だこいつという視線で壇上の男に興味の視線を送る。

「え〜っと、初めまして。俺が総長のつんくや。これからもよろしゅうな」

第一声からして格式ばった総長のイメージからかけ離れている。
16 名前:探求者 投稿日:2002年05月28日(火)22時07分42秒
放置じゃないですよ(念のため
私生活がいろいろと急がしいのです。
>>12
まぁいろいろです。
17 名前:読んでる人 投稿日:2002年06月01日(土)21時36分11秒
あ、なんか面白そうな作品が始まってますね。
個人的には、このままなちまりに突き進んでいってくれると嬉しいです(w
今後に期待していますので、頑張って下さい。
18 名前:探求者 投稿日:2002年06月03日(月)23時08分10秒
「とは言ってもこの聖.娘大学では総長にはほっとんど権限なんてほとんどあらへん。
できることは書類にサインすることくらいなもんや。各々、この大学でやりたいこと、興味のあることを
いくらでもやってから卒業してくれ。留年しすぎて退学ってのもないからな。
ほな、俺からの挨拶はこれでしまいや。では各人充実した大学生活をこころ行くまでエンジョイしてや」

予想していたよりもはるかに短く、簡潔な言葉を述べて、総長はすぐに下がってしまった。
おもわず拍子抜けし<反応できなくなる教授や講師と生徒たち。


「え〜、続いては……」
19 名前:探求者 投稿日:2002年06月03日(月)23時08分43秒
「あの総長さん、変わった人だよね。なっちはどう思う?」

「んー…、なっちおなかすいたー。ご飯食べたいなぁ」

「もぉご飯?…あぁもうそんな時間か。よし、じゃあ近くのファミレス行こうか」

思い立ったら即行動の矢口と万事食欲優先の安倍である。
当然の流れでファミレスを探しに大学を出てゆく。
外は食事に行く大学生で徐々に騒がしくなっていった…。
20 名前:探求者 投稿日:2002年06月03日(月)23時11分22秒
ども、作者です。私生活の忙しさが加速していく一方なんで
更新遅いです。放置はしないので見捨てないでください(w
>>17
惰性で書いてる人なので俺自身先が全く読めてないです。
なちまりになるかもしれないし、、、どうなることやら。
21 名前:名無し 投稿日:2002年06月10日(月)13時59分12秒
続きキターイ
22 名前:探求者 投稿日:2002年06月12日(水)22時33分15秒

「ふぁぁぁ、……うるっさいなぁ」

理工学部棟の一室。一人の金髪女性が机に臥せっていて気持ちよさそうに転寝している。
が、外から聞こえる安眠を邪魔するかのような騒がしい声で転寝から呼び戻された。

「ゆうちゃんやっと起きたの?もう正午過ぎだよ」

「外がやかましくってかなわんわ。圭坊、今日ってなんか行事あったかぁ?」

「今日は入学式。このまえ掲示板見に行ったとき書いてあったじゃんか」

言われてみればそんなこともあったような気がする。でも寝ぼけてるせいか思い出せない。
23 名前:探求者 投稿日:2002年06月12日(水)22時33分51秒
「そうかぁ?見に行ったか…ゆうちゃん覚えてないでぇ」

「もう。ゆうちゃんったら忘れっぽいんだから…そろそろ年なんじゃないの?」

ふと日差しがまぶしくて窓のほうを見る。正午も過ぎると言うのにブラインドがかかってない。

「なんや圭坊、気ぃきかんなぁ。ゆうちゃんのためにブラインドくらい下げてくれたってええのに〜」

「なんで私が寝てるゆうちゃんのためにそこまでしなきゃいけないのよ!自分で下げなさい!」

「なんや冷たいなぁ、ゆうちゃんは圭坊のことこぉ〜んなに愛してるのに」

「くだらない冗談言ってないで自分で動く!ホラホラ!」

一気にまくし立てられしぶしぶ自分でブラインドを閉めに行く白衣の金髪不良学生。
けだるそうに動く姿はどう見ても大学生っていう感じには見えず昼間のホステスとでもいう感じだ。
24 名前:探求者 投稿日:2002年06月12日(水)22時34分26秒
「はぁ動くのがだるいわぁ。ゆうちゃんも年やでこりゃ…」

ブラインドを閉めようと窓に近づく。ふと窓から外を見ると…

「……なぁ、圭坊?」

「何、ゆうちゃん?」

「あの金髪の子、誰やろか?」

窓の向こうにはスーツ姿の金髪の小さい子がどこかいもっぽい女性をつれて門をくぐろうとしていた。
小さい体をせかせかと動かしている。その姿が小動物を連想させてどこか微笑ましい。

「あの金髪の子?あんだけ目立った子はみたことないし…新入生じゃないの?」

「そうか…なぁ圭坊、理工学部には顔広いよなぁ?」

「私!?まぁ、狭くはないけど…」

「おっし、じゃああの子の学科調べといてや」
25 名前:探求者 投稿日:2002年06月12日(水)22時36分31秒
「はいはい…って、ゆうちゃん!何言ってんのよ!」

絶妙なノリ突っ込みをかます。あれほどの突っ込みは相当呼吸があわないとできないだろう。

「だって圭坊、顔広い言うたやんか。じゃ、よろしくな」

「そんなこと…第一理工学部以外には顔利かないし…」

「文学部やったらみっちゃんに頼むからえぇ。ほかの学部にも舎弟ならいっぱいおる。大丈夫や」

平然と言い放つ。頼まれた人の困った顔が目に浮かぶようだ。

…数瞬の間…

「……わかりましたよ。金髪のちっちゃい子探せばいいのね?」

「そうそう。素直な圭坊はゆうちゃん大好きやでぇ」
26 名前:探求者 投稿日:2002年06月12日(水)22時37分20秒
「うわっ!ゆうちゃんキスしないでよ!」

すんでのところで回避して、言い放つ。仕掛けたほうはがっかりしたように

「なんでやぁ?せっかくのゆうちゃんの熱いベーゼを…」

「うっさい!私にその気はないって何度言ったらわかんのよ!」

「なんやて!せっかくのゆうちゃんの誘いを断るとはいい度胸や!この狛犬!」

「誰が狛犬よ!」

大学構内に響き渡る大声。
一度始まった掛け合い漫才はいつ終わるとも知れない……
27 名前:探求者 投稿日:2002年06月12日(水)22時41分38秒
ストックコピペしておいて思ったこと。

理工学部が講堂とかある大学の本部キャンパスにあるって
おかしいような…

今回切りのいいところで終わらせたら予想以上に長くなってしまいましましたねぇ。
ストックを上手く使うため次回の更新はちょっと間があくやもしれません。
ではそういうことで。
漫画のフルーツバスケットにはまっている探求者でした。
28 名前:りか 投稿日:2002年06月12日(水)22時55分47秒
結構おもしろーい(w

なちまり&UKですかね?

次がきになーる。がんばってくらはい。
29 名前: 投稿日:2002年06月13日(木)18時10分38秒
この話すきだから頑張ってください!
それから、私もフルーツバスケット好きなのです〜。
30 名前:読んでる人 投稿日:2002年06月14日(金)10時38分55秒
ん?もしかして姐さんは大学生?
31 名前:探求者 投稿日:2002年06月24日(月)21時14分43秒
すいません、忙しくて更新できません(泣
姐さんは大学生です。
理工棟の主ってことにしてください(w
32 名前:探求者 投稿日:2002年06月30日(日)21時26分14秒

一方こちらは安倍と矢口。目的のファミレスを探して大学近辺をうろうろしていた。

…道に迷いながら。

「どうしてこんなところにいるっしょや〜!ご飯食べる場所なんかどこにもないじゃんか〜!」

大学の近辺のはずなのに周囲を見ても見事に住宅ばかりである。

「うっさいなぁ!ヤグチだってここ初めて来たんだ!迷うくらいいいじゃんか!」

「だったら先頭にたって『ファミレス行こう』とか言うなだべさ!」

まったくもって正論である。まぁこの場合正論は逆効果にしかならないが。
33 名前:探求者 投稿日:2002年06月30日(日)21時26分47秒
「うっさい!しかもまただべでてるし…」

「はっ!興奮しちゃうとつい…恥ずかしいっしょや〜」

頬を赤らめながら言う安倍。見てる矢口は、

「はぁ……もぉ口論する気も失せた。おなかへったよ〜!」

これだけ歩けば当然といっちゃ当然である。

さらに歩くこと十数分。

安倍が何かをかぎつけたように、

「、、、、、お好み焼き」

とつぶやいた。
34 名前:探求者 投稿日:2002年06月30日(日)21時28分28秒
矢口が周囲を見ると確かに『お好み焼き』の看板が見える。
しかもそんなに混んでなさそうだ。

「もうどこでもいいから!早く行こ…ってなっち早すぎ!」

「ヤグチが遅いんだべさ!急ぐっしょや!」

場所がわかるないなや猛然と走り出す安倍とそれを追う矢口。どうやら非常に空腹なご様子。
百メートルを十秒で走れる勢いで店に入る安倍と追う矢口。食欲とは恐ろしい。


店内に入る。なかなか古風な雰囲気の店で、客もそれほど多くない。
隠れた穴場とでも言えそうな雰囲気だ。

奥の席ではアニメ声の客が熱心に何かを語ってる。
向かいの客はどことなくぼーっとしながら話を聞いていて、なんとなく眠そうだ。
カウンターの前の客は宙を見つめて静止している。
そう、例えるなら二流SF番組でよくある、「宇宙と交信」とでもいった感じに。
35 名前:探求者 投稿日:2002年06月30日(日)21時29分28秒
次回更新は二週間後の土曜以降を予定しています。
待ってた方、いらっしゃったらすいませんでした(汗
ようやく更新できました。
36 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月01日(月)01時06分23秒
待ってましたよー。
なちまりに姐さんが絡んでくるんですか?
この3人好きなんで続き楽しみにしてます。
37 名前:探求者 投稿日:2002年07月09日(火)21時43分23秒
なっちが気づいたように、

「あれぇ…かおり。飯田圭織じゃないの!?」

ご飯であたまがいっぱいの安倍が他のことに気づいただけでも奇跡である。
…だが無反応。

「かおり?かおりだっしょや〜?」

無反応。

「かおり〜。ねぇかおり〜?」

…やっぱり無反応。
38 名前:探求者 投稿日:2002年07月09日(火)21時45分21秒
「……なっち、この人、なんか怖い…」

「そんなことないよ〜。圭織は交信癖があるだけで普通の子だよぉ〜」

交信癖って。…まぁいいとして、あいかわらず圭織と呼ばれた女性は無反応のまま宙を見つめている。
よく、黙っていれば美少女なのに…というフレーズを聞くが、この場合は逆に黙ってる分だけ非常に恐い。

「あぁ、駄目ですよ。そのお姉さん、注文してからずっとそのまんまなんですから」

一見男だか女だかわからない店員が答える。どうやら看板娘らしい。客にとてもかわいらしい笑顔を振りまいている。非常にかわいい。なんとなく歌舞伎町のホスト街にいそうな雰囲気。

「さぁお客様、、、メニューでございます」

しなやかに、流れるように。そういう形容がよく似合う動きでメニューを置く。
立居振舞がやはりホストチックなのは気のせいだろうか…
39 名前:探求者 投稿日:2002年07月09日(火)22時06分54秒
「いいの。ほっといたらいつか復活するよ。さ、矢口!とりあえずご飯!ご飯食べるべさ!」

せかす安倍に矢口はしぶしぶ圭織のとなりのカウンター席に座る。
微動だにしない圭織をとりあえず放置して、安倍と矢口は貰ったメニューな流し見る。
矢口が注文したのはスペシャルミックス天。大阪風のお好み焼でなんかいろいろのっている。
シーフードなんかも入っていて非常に豪勢なものみたいだ。

「お目が高い。当店自慢のメニューを一目でお選びになるとは」
「そ、そうですか(なんだこの店員)」

苦笑いを愛想笑いのように見せてごまかす矢口。
そりゃそうだ、こんな某漫画キャラみたいな人が目の前にいたら・・・ねぇ?
40 名前:nattiga 投稿日:2002年07月09日(火)22時10分27秒
そして安倍は

「豚肉にエビにイカにタコにホタテにアカガイ、ベビースターにソバ固め・キャベツ大盛り、
ついでにトロロとちくわもいれといてくれだべさ!」

「メニューにないもの頼むなよ!てかお好みにちくわってなんだよ!」

「ちくわは基本だべさ!お好みには絶対いれるべさ!」

「………ちくわ、あるよ」

「あるんですか……」

なっちの暴走に普通に応じる店の亭主。空腹と疲労でヘロヘロの矢口に
これ以上のツッコミを求めるのは酷というものであろう。
41 名前:探求者 投稿日:2002年07月09日(火)22時11分31秒
名前ミスった・・・萎え

なっちが頼んだものは・・・ってやろうとしたのにぃぃぃ!
42 名前:探求者 投稿日:2002年07月25日(木)23時41分20秒
注文したものが来る間、店員はしきりに矢口と話していた。この店員、やっぱりホストだ。
不意に圭織が動き出す。

「うん、そうだよ!そういうことだよ!」

突然席を立ち言い放つ圭織。もちろん店内の誰も反応できない。
周囲が凍結している中にもかかわらず安倍のみが

「なっちのお好み焼きまだだべさ〜!」

と叫んでいる。空腹状態のこの人はこのうえなく恐ろしい。

「???あれ、ここはドコだっけ?かおりなんでここにいるの?」

ベタな天然にもほどがある。それだけでも対処に困るのに

「まだだべか〜?なっちのお好み焼まだだべさ〜?」

「…プ、ププ、ククククク」

「ククククク、ワハハハハハハ!」

「アハハハハハハハハ!!!!!」

誰かの笑い声が合図となり堰を切ったように爆笑する店内。
43 名前:探求者 投稿日:2002年07月25日(木)23時42分06秒
「はっ!…なっちまた訛ってた?それでみんな笑ってるの?」

勘違いしてる人をさらに笑いの種にする店内。
飯田はもう気にせずに冷めたお好み焼を黙々と食べている。…いや、耳に入っていないと言うべきか。

笑いの渦にある店内で、(一人以外)忘れていた店主が

「どうぞ」

安倍の前におかれるなんかゴテゴテしたモノ。
素材のハーモニーなどは全く考えずに頼まれたものだけをただ大量に乗せただけのモノ。
広島風がベースのようだがもはやお好み焼という漢字そのままなモノである。

「お好み焼だべさ!やっと来たべさー!」

そしてそれを満面の笑顔(+訛)で迎える安倍。
これだけ幸せそうな顔で迎えられれば食べ物も本望だろう。
…こんなモノに調理されさえしなければ。
44 名前:探求者 投稿日:2002年07月25日(木)23時43分11秒
食べ始めると安倍は黙ってしまうし飯田は怖くてもともと話し掛けられない。
途方にくれて半ばやけ食いのようにお好み焼をほおばる矢口。
ほおばる姿がどこかハムスターに似ていて愛らしく見える。

「お客さん聖.娘大学の学生?」

話し掛けられたほうを見ると先ほどのホストもどき。
改めて格好を見てみてもやはりホストである。
確かにかっこよく、美男子というよりは中性的というかんじの容姿に
ウェイターの制服が非常に似合っている。

「ん、ふぁんふぇ?(なんで?)」

口のなかにいっぱい入ってるため日本語にならない矢口。
その姿はやっぱりハムスターである。

「いやぁ、あそこの大学、近いからねぇ。あそこの大学生かと思ったんですよ」

「それで?」

「あそこの大学生、綺麗な人多いし。貴方も綺麗だからそうかと思ったんですよ」

率直に述べるウェイター。歯に衣着せぬキザな物言いが実によく似合っている。
45 名前:探求者 投稿日:2002年07月25日(木)23時44分19秒
そこへ店主が低い声で言った。

「吉澤、無駄話してると時給下げるぞ」

「はいはい、わかってますよマスター」

ウェイターは水をくばりに奥のほうへ行ってしまう。
取り残された矢口は困惑している。

「なんだったんだろう今の・・・」

「はぁ〜、おなかいっぱいだよぉ〜」

振り向くと例のブツを食べきった安倍がいた。

「ヤグチまだ食べ終わってないじゃん。食べきれないならなっちが食べたげようか?」

「ん、あぁ、いいよ自分で食べるから」

数分前にお好み焼が着たばかりではなかったのかという疑問を抱きつつ
矢口はお好み焼を食べるのを再開する。

(あの量を数分で食べ終わったの?
どう見てもお好み焼数人前はあったの思ったのに・・・
なっちっていったい・・・)

食べながらもやはり釈然としない矢口。
疑問は深く尽きることもない。
46 名前:探求者 投稿日:2002年07月25日(木)23時45分49秒
ヨシコの言動って上手く表現できないなぁ・・・
設定も結構微妙になってきたし(苦笑
まぁ、完結はさせようと思いますので期待してる皆様、
気長にお待ちください。
47 名前:探求者 投稿日:2002年07月25日(木)23時47分35秒
ヨシコの言動って上手く表現できないなぁ・・・
設定も結構微妙になってきたし(苦笑
まぁ、完結はさせようと思いますので期待してる皆様、
気長にお待ちください。
48 名前:探求者 投稿日:2002年07月25日(木)23時48分11秒
あぁ、二重投稿・・・・鬱
49 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月26日(金)22時03分28秒
更新されてる〜
50 名前:読んでる人 投稿日:2002年07月26日(金)22時15分49秒
気長にお待ちしております。
51 名前:探求者 投稿日:2002年08月25日(日)22時39分18秒
一方こちらは食事の終わったなっち。
矢口はまだ食べてる最中なのでかわりに飯田に話しかけようと飯田のほうに振り向く。
もちろん太く短い神経の飯田は気づかない。もそもそとお好み焼を食べている。

「か〜おり」



「・・・か〜おり!」



「・・・か〜おり!!!」

「うわ!!」
52 名前:探求者 投稿日:2002年08月25日(日)22時41分33秒
転寝してる人が突然目覚めるがごとくの反応をする飯田。
寝てるのか食事しているのか、それとも寝ながら食事をしているのか。
どれかに一つにして欲しいなぁとおもいつつ安倍は

「かおり・・・起きてる?」

「何言ってるのかおりはずっと起きてるよ。なっちもとうとうボケた?」

至って平然と言う飯田。この態度にはどうしても慣れないなぁと思いつつ

「いや、大丈夫だよ。それにしても久しぶりねーかおりー」

とりあえず話題を移す安倍。飯田に会話の主導権を握られると話が終わらないことを考慮してである。
…まぁ無駄な努力に終わることになるのだが。

「かおりねー聖.娘大学の文学部哲学科心理学専修なの。心理学っていうのはねー、
児童心理学とか犯罪心理学とかいっぱい種類があってーかおりはー・・・」
53 名前:探求者 投稿日:2002年08月25日(日)22時42分45秒
機関銃のようにではない。矢継ぎ早に話すわけでもない。
ただただおちのない話が延々と、まったりと続く。
このような会話(と呼べるのだろうか?)に人はどれだけ耐えられるのだろうか?

そして安倍はもちろん

「かおり、久しぶりに会ったんだからさ、再会を記念して三人でカラオケ行かない?」

飯田の話をなかったごとく流す。この流れはもはやコントとしか言いようがない。

「私行くなんて言ったっけ…?」

ぽつりとつぶやく矢口。無理もない。さっきから突っ込む気力もなくなってもそもそと
お好み焼きを食べていたのだから。これ以上こんなペースでこの二人に付き合っていたら本気で萎えそうである。
なんとか自分は参加しない方向にもっていこうと話を持っていきたい矢口であった。

「あのさ・・・」
54 名前:探求者 投稿日:2002年08月25日(日)22時43分20秒
「あ、店員さん。ここら辺でいちばん曲が多いカラオケ店ってどこ?」

矢口の呼びかけを無視して話をすすめる天使。そもそもカラオケに行くことに誰か賛成したっけ?

「お〜い…」

「そうですね…、駅前のあそこなんていいと思いますよぉ」

詳しく場所を説明しだす店員。
一方すでに先ほどから放置されている飯田と同様もはや安倍の五感に存在していない矢口。

安倍の脳内は太くて短い一本の神経が通っているようである。一つのことにしか集中できないと言えば聞こえがいいが、要するに単細胞ってことである。
55 名前:探求者 投稿日:2002年08月25日(日)22時44分41秒
プチィ…

何かが切れる音がした。
第三者がいたならばそう証言したことだろう。

「さぁっきから呼んでんだから返事しろよぉ〜!!!!」

「うるさいべさ。大声出す人、なっち嫌いだべさ」

最後の一握りの気力を振り絞った矢口の大声。…そしてそれを柳のごとく受け流す安倍なつみ。天然とは恐ろしいものである。

それでもひるまない矢口。勇敢と見るべきなのだが悲壮感溢れるのは何故だろう…?

必死に説得する矢口。要約すると

カラオケは大勢で歌うほうが楽しい。
        ↓
現段階での参加者は三人
        ↓
だったら次の機会にもっと大勢で行くことにしよう。

矢口の(あまり凄くはないが)全知全能をかけた三段論法である。
56 名前:探求者 投稿日:2002年08月25日(日)22時46分41秒
えっと、お久しぶりです読者様。
一月ぶりの更新です。
お待ちの皆様、申し訳ありませんでした。
57 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月04日(水)00時24分59秒
マターリ更新、乙
58 名前:探求者 投稿日:2002年09月16日(月)02時11分18秒
説得する際も少人数でのカラオケのつまらなさを誇張表現をふんだんに使い安倍を説得する矢口。

「そうだねぇ・・・。じゃあ今日は諦める?」

(やった!)

矢口の顔が晴れ晴れとなる。ものすごく幸せそうだ。

が、もちろん・・・・

「かおり行きたい」
59 名前:探求者 投稿日:2002年09月16日(月)02時12分00秒
先ほどまで停止していたお方のこの一言で全てが決まった。
天国から地獄へ。矢口の百面相である。
やっぱりこうなる運命なんだね。


そして、カラオケ店。
「当然飲むよね?」
「もちろんだべ」
「まじかよ…」

カラオケに着いてからの飯田は妙にテンションがあがっていた。交信もせずに
曲をいれているかおりにエンジェルスマイルの安倍、そしてもはや表情が隠れるくらい疲れきった矢口。


安倍が頼んだのは甘いカクテルで、ちびちび飲んでる仕草がとてもかわいい。
矢口は自棄になったようにカクテルを煽っている。
60 名前:探求者 投稿日:2002年09月16日(月)02時12分41秒
そして飯田は…

「…マジ?」

自分から飲む?と聞いといて

ビール一杯で完全に出来上がっていた・・・

「かおりCOCCO歌うね〜」

歌い始める飯田。歌詞はともかくなかなか上手い。

「じゃあ次はなっちが…」

リモコンを取ろうとした安倍。
だがリモコンが見当たらない。
あたりまえだ、飯田が左手に握り締めているのだから。
61 名前:探求者 投稿日:2002年09月16日(月)02時13分23秒
「もしかして…一人で歌い続けるつもり・・・?」
「みたいだね・・・」

COCCOの歌声が部屋に響く。

「…なっち逃げない?」
「う〜ん…」

聞いてるうちにだんだん精神に異常をきたしそうな歌詞が部屋中に響き渡る。

「…賛成」

数時間後、飯田が正気に戻ったときには部屋には自分ひとりで、代金が全部驕りになったという・・・。
62 名前:探求者 投稿日:2002年09月16日(月)02時14分31秒
よーやく第1話?終了
>>57
感想レスありがとうございます
2話も引き続き見捨てないでいただければ
幸いです。。。。。
63 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月16日(月)11時18分07秒
見捨てたりしませんよ。
64 名前:第2話 投稿日:2002年09月16日(月)23時31分05秒
初夏である。五月である。学生たちは新たな学年にようやく慣れ始める時期である。
大学四年生は卒論に手をつけ始め、三年は一番暇な学年である。
二年は、大学で学ぶものがだんだんと専門的になっていき、大学が楽しいかどうか分かれる時期。

さて、カラオケでの惨事から一月ほどが経過した安倍たち一年生は
どのように過ごしているのだろう。
65 名前:探求者 投稿日:2002年09月16日(月)23時31分35秒
―「あ゛ぁぁぁ!英論文が終わらな〜い!」

「ちょっと矢口黙ってよ!こっちは独逸語の予習で手一杯なんだから〜」

「いいじゃんかよ〜。どうせなっちは英論文終わってるんだから!こっち手伝ってよぉ〜」


「自分の課題は自分でするべさ!」

図書館で語学の課題に追われていた…
66 名前:探求者 投稿日:2002年09月16日(月)23時32分57秒
娘。大学は何故だか一年次の英語に英論文がどの英語の講義でも課題として出てくる。

総長曰く「英語の論文程度書けへんのは社会で困る!」だそうだ。

もちろん生徒にとってはただの余計なおせっかいなのだが、卒業生曰く
非常に後々いいことがあるとのこと。
まぁ、だからと言って大学生にとって非常に辛いのは事実なわけで。
論文の元ネタ探しができ、かつ集中して論文が書ける空間である図書館は一年の溜まり場となるのである。

もっとも、溜まり場にいる連中のうち、三割近くは絶望の表情にまみれていて
修羅場をくぐりぬけた先輩たちからは『亡者の溜まり場』とよばれていたりする。
67 名前:探求者 投稿日:2002年09月16日(月)23時36分02秒
待ってくれた人への感謝の意もこめて二日連続で更新しました。
といっても小出しですけど(w
執筆速度激遅なのでそこら辺はご容赦願います。
>>63
すごく嬉しいです。ありがとうございます。
68 名前:探求者 投稿日:2002年10月16日(水)01時07分49秒
無論のこと、新入生である矢口と安倍も御多分に漏れず溜まり場にしているのであった。
といっても、安倍は訛りが激しいわりに語学が得意で、英論文も一般生徒よりは
スラスラ書いているので亡者というほどでもなかった。
問題は矢口のほうである。

もともと英語が不得意で国語系と歴史系で入試を乗り切った矢口にとって、
この英論文の課題が出るたびに顔に死相が浮かび、まさに亡者となる。
69 名前:探求者 投稿日:2002年10月16日(水)01時09分12秒
そのたびに安倍に助けてもらいつつ半死半生で切り抜けえてはいたのだが
今回は安倍にも見捨てられた模様である。

「頼むよなっちぃ〜。手伝ってぇ…」

哀願する矢口に向けられる天使の笑顔。

「なっち…」

歓喜の表情を顔一面に浮かべたその瞬間

「諦めるべさ」

昼下がりの図書館に死者が一人増える。
一瞬の間に地獄から天国、また地獄と浮き沈みを繰り返した矢口であった…
70 名前:探求者 投稿日:2002年10月16日(水)01時10分24秒
「・・・こうなったら。なっち!」

「何さ〜」

「お好み焼き屋行くよ!そして飲むよトコトン!やってられっかよこのやろ〜!」

「一人で行きよなよ。なっちはまだ独逸語の課題が」

「ごちゃごちゃ言わずに来い!今夜は帰らせん!」

暴走した矢口に引きずられていく安倍。
夕暮れ時の図書室でのひと時の狂想曲…
71 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月19日(土)15時45分15秒
いつのまにか更新されとりました
大学、大変ですねぇ。
72 名前:72 投稿日:2002年10月27日(日)08時27分34秒
おもしろいっす。
73 名前:探求者 投稿日:2002年11月06日(水)20時21分38秒
−同時刻、図書室の一区画−


夕暮れ時の図書室。
一人の女の子が転寝をしていた。
かわいいがどこか魚のような顔に、
これ以上ないほどの幸せそうな表情を浮かべて転寝をしている。
…英和辞典を枕にして。

その女の子を揺り動かす別の女の子。
こちらもまたかわいい。傍らには英語の論文が広げられている。
数度の揺さぶりを経てようやく目覚める熟睡少女。

「―――何〜」

図書館に間延びした声が広がる。
どうやら寝ていた友人を起こそうとしてたみたい。

「どうしたのぼ〜っとして。私が呼んでも反応しないしさ」
74 名前:探求者 投稿日:2002年11月06日(水)20時22分15秒
「んぁ、寝てたみたい」

にへら〜っとした笑顔で答える真希。

「あ、そう。起こしちゃってゴメンね」

ばつが悪そうに笑う顔がまたかわいいとしか言いようがない。
ただしちょっと間抜けのようである。

名を石川梨華。娘大学文学部文学科の一年生である。

「てか梨華ちゃん、寝てたら起こさないでよ…」

呼ばれたほうは後藤真希。
寝るが好きな文学科の一年生で石川曰く「寝顔がかわいい女の子」だそうだ。

「だから謝ってるんだよ〜。それに…」

ちょっと時計に視線を移す梨華。

「ちょっと…何?」

真希は低血圧なので起こされたときの機嫌の悪さは酷かった…。
75 名前:探求者 投稿日:2002年11月06日(水)20時23分22秒
少し間をおき梨華は恐る恐る言葉を口にした。

「だってごっちん、もう五時半だよ?四時半にはここを出ようって言ったの、真希ちゃんじゃない」

「…なんですと?」

「だから、もう五時半」

時計を見るとシックなデザインのアナログ時計の長針がちょうど6を指していた。
周囲を見回すと徐々にだが人が減り始めている。諦めや絶望に顔を染めてる人や
終わったのかはたまた腹を括ったのか、妙に表情が爽やかな人もいた。
真希は改めて時計に目をやる。時刻はやはり五時半だった。

「・・・・・」

76 名前:探求者 投稿日:2002年11月06日(水)20時24分22秒
黙って俯きわなわなと震える真希。うつむいた表情からは何も読み取れず、
多少心配になった梨華は、

「どうしたのごっちん?突然黙って」

「・・・・た」

「何、聞こえないよ」

「・・・おなか空いた」

静寂。

「・・・はい?」

思わず聞き返してしまった梨華。
あそこまで深刻な顔で言われたことがアレである。
聞き返すのが常人というものであろう。

「だから、ご飯が食べたい、って言ったの」

「・・・・・」

今度は梨華が黙る番であった。
しかし黙った梨華の肩を揺らして、真希はご飯食べようと催促しだす。

「この前のお好み焼き屋なんかどう?」

「あ、あの店員さんがかっこいい

「そう!そうなのよごっちん!あの人かっこいいよね!私もそう思うの!」

店員のかっこよさを力説しだす梨華。

「梨華ちゃん、話反れてるよ…。ごはん行くんだよ、わかる?」

そしてそんな梨華を軽くあしらって話を戻す真希。
77 名前:探求者 投稿日:2002年11月06日(水)20時25分50秒
がんばって普段より多めに更新しました。
更新が不定期かつさりげなくてすいませぬ。。。。
次回の更新は今月中にできればうれしいです。

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