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MUSUME OF THE DEAD 〜死者の街〜

1 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時02分06秒
 以前、赤板でスポーツものを2作品書かせてもらってます。
 今回はホラーアクションです。
 バイオハザードの世界観だけを借りて、話はゲームとあんまし関係なくいきます。
 白板では先にバイオものの小説がありますが、こちらもごひいきに。

 お約束のように、グロテスクで暴力的な表現があります。
 
 更新は週に2回。
 金曜の夜から土曜にかけてと火曜の夜から水曜にかけてやるつもりです。
 これは変更する可能性はありますが、その時はなるべく連絡はするつもりです。
2 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時03分09秒
 ープロローグー


 ―これさえあれば・・・―

 1人の人物が笑みを浮かべる。

 −世界を変えてやる。誰にも文句は言わせない。
 理想の国をこの手で作り上げてやるんだ。−

 その笑みは次第に狂気じみていった。
3 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時05分39秒
 ―第一章― 惨劇の始まり

 東京都M市。
 都の臨海開発事業によってできた新興住宅地。
 実質、大手外資系企業グループのアップフロント
エージェンシーグループ,
 通称UFAによって作られた企業城下町といって
も過言ではない。

 UFAは元々,町の小さな製薬会社から巨大企
業に成長していったグループである。経営陣は創
業当初の一族も残っておらず,現在は全く違う会
社となっている。

 現在は本業だけでなく,機械・化学・IT関連
のメーカーとしても大きな影響を持つ。最近は金
融・不動産・流通・外食・レジャー施設にまで手
を広げ,世界有数の企業グループとなっていった。

 しかし黒い噂も絶えず,政界との癒着も疑問視
されている。 だがM市はUFAがあってこそ潤っ
ているのは間違いない事実である。
4 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時07分44秒
 町は学校,病院等の公共施設は全てUFAが賄って
いる。UFAの多額な都への納税より特例として自治
区の指定を受けている。治安上の問題で警察だけは唯
一都の施設として置かれていた。最も,法律上の問題
さえなければUFAが自分たちで治安維持部隊の一つ
や二つ位は簡単に置けるはずではある。
5 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時08分49秒
 私立ゼティマ学園。
 UFA100%出資の幼稚舎から大学までの一貫教育制。
 生徒のほとんどは親がUFA関連企業に勤めているものばかりだ。

 外資系のUFAが設立した故か、
 アメリカのキャンパスのイメージを受ける雰囲気の校舎が建つ。

 赤い屋根の時計塔が街のシンボルとして校内にそびえたつ。

 図書館にはあらゆるジャンルに渡り、何百万冊の書物が置かれている。
 研究施設は至るところに存在し、数がいまいち把握できないほどである。
 部活動にも力を注ぎ、各スポーツの専用グラウンドと体育館が揃う。

 学業・スポーツでは一流の指導者を集めている。
 英才教育を受けていった人間のほとんどはそのままUFAグループの企業で働く。
6 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時09分35秒
 実際,公立の学校が無いM市であるが,
 日本でも有数の教育環境が公立学校並みの学費で提供されているため,
 市民は文句なしに子供をゼティマに通わせる。

 また会社の研究所とは違った視点からの研究を行う意味でも,
 学校はUFAから独立した研究機関としての性質も兼ねている。
7 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時10分44秒
 9月の早朝。

 紺野は陸上部の朝練のためいつもの通学路を歩いていく。
 9月といってもまだまだ暑さは残るが、朝は随分涼しくなってきた。
 ここのところは雨が続いたが、今日は久々の快晴だ。朝日の光が街中を照らす。

 1年前にゼティマに勤める親の都合で故郷の北海道からM市に引っ越してきた。
 新興住宅街のM市は高層マンションが立ち並ぶが、
 計画的な街作りにより至るところに公園が置かれ環境は申し分ない。

 広々としているこの街を紺野はすぐに気に入った。
 特にこの学校へ続く並木通りは故郷の街並みを思い出す。

 紺野あさ美。

 見た目はのほほんとしているが,
 成績はトップクラスで陸上部では長距離でも入賞を果たし,
 学級委員も務める優等生であったりする。
8 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時12分25秒
 「おはよう,紺ちゃん。」
 「おはよう,辻ちゃん。」

 辻希美。
 紺野がM市に引っ越してきて初めてできた友人だ。
 バレー部に所属している。
 最近はもっぱら食欲が旺盛で,色気よりも食い気が先行している。
 少し太ってきて気にしている面もあるが,食欲にはどうしても勝てない。

 二人とも部活の朝練で一緒に登校することが多い。

 「おはよう,みんな。」

 独特の訛りのある挨拶が聞こえた。バレー部主将の高橋愛だ。
 紺野と辻よりも年は1つ上だが,紺野とは近所付き合いがあり,
 普段もため口で話す。
 彼女もそういう関係は嫌いで,バレー部でも後輩に対しても
 ため口で話すように言っている。
 紺野と似た時期に福井県から引っ越してきたが,いまだに訛りが抜けきらない。

 「先輩おはようございます。」
 バレー部新人の新垣里沙だ。

 「里沙ちゃん,まだ敬語使ってる。うちではそんなのはいいのにさ。」
 「すみません,キャプテン。」
 「ほらまた使ってる。じゃあ,そろそろ練習始めなくちゃね。
 あさ美ちゃん,またね。」
 「うん。」

 バレー部の3人は走って体育館に行った。
9 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時13分35秒
 紺野がいつも通り練習を切り上げ教室に入ってきた。

 「おはよう,まこっちゃん。」
 「おはよう。」

 本を読みながら素気なく返事を返したのは小川真琴。
 2週間前に転校してきたばかりだ。 
 親の仕事の都合で小川のように転校してくる生徒は別段と珍しくはない。

 ざっくばらんな校風であるが,
 小川は特にクラスに馴染もうとする気配はなかった。
 成績は紺野に負けず優秀で,
 体育でもスポーツは何をやらせても上手いが部活をやるつもりはないらしい。

 「今日は何を読んでいるの?」
 「これ。」

 小川は本の表紙を紺野に向ける。

 「バイオハザード・・・?」
10 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時14分21秒
 小川はいつも図書室か教室で難しそうな本を読んでいる。

 「どんな内容なの?」
 「ロシアで実際,計画未遂に終わった生物兵器計画の話。」

 小川はどうせ話してもわからないだろうという態度で本を読みなおす。

 「ひょっとして最近,学校で病人が多いのも生物兵器のせいだったりして。」
 「バカね、そんなことあるわけないでしょ。」

 最近は学校全体で体調不良を訴える者が増えている。
 突然,吐き気に襲われるらしい。
 不思議なことに,しばらく休むとけろっとしている。
 大事には至ってないのが念のため,学校でも生徒への健康管理を促している。
11 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時15分00秒
 「あの子いつも愛想が悪いんだよね。」

 辻が教室に戻ってきていた。

 「何か悩み事でもあるのかな。」
 「違うよ。単に性格が悪いだけだよ。」


 始業のチャイムが鳴る。

 一人の小柄なお団子頭の女の子が走りこんでくる。

 「よっしゃ!セーフや!センコーまだきとらへん!」

 関西弁の威勢のいいこの女の子は加護亜依。
 お調子者でクラスでもちょっとした問題児だ。
12 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時15分47秒
 「あいぼん宿題はしたの?」
 「しもうた!忘れてた!そういうののこそやってんのか?」
 「へへへ・・・」

 辻は自慢げにノートを取り出す。

 「ののがやってるなんて。雪でも降るんとちゃうか。」
 「昨日はまじめにやったんだよ。」
 
 確かに珍しいことである。年に1度あるかないかのことだ。
 普段は辻も加護同様に紺野から宿題をうつしている。

 「頼むわ〜,幼稚園からの付き合いやろ。見せてくれな〜。」
 「う〜ん,どうするのれすかね〜。」
 「わかった。今日アイスクリームおごったる。」
 「それだけ。」
 「じゃあ2個。」
 「いいよ。」
 「ありがと,恩にきるわ。」

 「辻ちゃん,その宿題昨日のだよ。」
 「え?紺ちゃん,それって本当?」
 「うん・・・」
 「お願い紺ちゃん,宿題貸して!」
 「うちもお願いや。」
 「しょうがないな,いいよ。」

 結局いつも通りになった。
13 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時16分42秒
 辻が紺野の手を連れて走る。 
 
 「早くしないと購買でパンが売り切れちゃうよ。」

 辻が不満気にお腹をさする。

 「まだ食べるの。」
 「当たり前だよ。」

 先ほど食堂で昼食を食べたばかりだが,
 辻の胃袋はこれではまた満たされない。
 食べ物のことになると辻はとまらない。
 紺野は仕方ないので一緒に走っている。

 購買に着いたがすでに人影はまばらだ。
 辻が慌てて走り出す。

 「おばちゃん,パン余ってる?」
 「ごめんね,さっき売り切れたばかりなんだよ。」
 「うそ〜」

 辻が半泣きになる。
14 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時17分45秒
 「あれ,辻さん。」
 「あ,福田先生。」

 福田と呼ばれた教師は辻の生物の授業を担当している。
 年の割に堂々とした風格を持つ。
 教授としてゼティマ大学に勤めていたが,
 本人たっての願いで今年中等部にうつってきた。
 福田の下で学び,後々UFAの優秀な研究員になっていったものも多い。

 「ひょっとしてパン買いに来たの?」
 「そうなんれす。」
 「じゃあ悪いことしたわね。お詫びに私の研究室にくる?
 今朝,知り合いからケーキ貰ったんだけど食べる。」
 「ケーキれすか。」

 辻の目が輝く。

 「紺野さんもくる?」
 「あ,私は委員会があって。」
 「そうなの。残念ね。」
 「せっかくなのに,すみません。」

 紺野が頭を軽く下げる。

 「じゃあ辻さん,いこか。」
 「はいれす。」
 「またね,紺野さん。」

 紺野は福田の顔を見て一瞬ぞくっとした。
 普段は物静かで頼りがいのある先生だが時折見せる冷たい表情が,
 紺野にとっては怖ろしいものに映る。

 このことを他の友人にも話すが,その度勘違いだと笑われるだけである。
15 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時18分23秒
 委員会から紺野が帰ってくると,辻がほくほく顔で座っていた。

 「辻ちゃん,どうだった?」
 「へへへ,残った分はお土産でもらっちゃった。」
 「へー,良かったね。」
 「紺ちゃんも食べる?」
 「私は大会近いから・・・」

 大会が近づくと紺野はカロリー計算しながら
 食事管理をするので間食は取っていない。

 「あいぼんケーキ食べる?」

 辻が加護に声をかける。

 「食べる,食べる。何のケーキ?」

 「ニンジン。」

 「ニンジンは勘弁してーな。」
 「どうして。こんなにおいしのに。」

 辻はまたペロリと一個平らげた。
16 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時20分10秒
 放課後,辻が体調不良を訴えた。

 「気分が悪いのれす・・・」
 「単にケーキの食べ過ぎとちゃうか。」
 「辻ちゃん,大丈夫?部活は休んでおく?
 最近なんか流行ってるみたいだしね。」
 「そうするのれす・・・」

 紺野が心配そうな表情で辻の額に手を当てる。

 「熱はそんなにないみたいね。じゃあ,愛ちゃんには言っておくから。
 加護ちゃん,家まで連れて行ってあげられる?」
 「かまんよ,どうせ帰り道一緒やし。ほら,のの行くで。」
 「わかったのれす・・・」
 「加護ちゃん,よろしくね。」
 「まかせとき。」

 加護が,辻に手を貸しながら連れて帰っていく。

 「気分も悪いけど,お腹減ったのれす・・・」
 「あんた,食べ過ぎで腹壊してるのにまだそんなこと言ってる。」
 「あれ位はいつもの量なのれす・・・早く家かえってアイス食べるのれす。」
 「あほや。」

 辻の顔色を見れば調子が悪そうなのはわかるが,
 お腹が減ったというのには呆れるしかなかった。
17 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時21分26秒
 翌朝,昨日の天気とはうって変わっての雨であった。
 ニュースによれば台風が近づいてきているらしい。
 そんな天候とは裏腹に、辻は何事もなかったように元気良く登校してきた。

 「辻ちゃん大丈夫なの?」

 昨日,辻が部活を休むことを聞いた高橋が心配して教室にまでやってきていた。

 「平気なのれす。」

 辻の顔色は幾分良くなっているが,目が少し虚ろである。

 「そうなの。今日は部活出られそう?」
 「大丈夫れす。」
 「そう,じゃあ待ってるからね。」

 高橋は教室を出ていきながら,辻の様子がいつもと違うことが気になっていた。
18 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時22分06秒
 昼休み,辻の食欲は凄まじいものであった。
 いつも食欲は凄いが,今日の辻は獣が肉をあさるような姿である。

 「肉が欲しいのれす。」
 「私のハンバーグいる・・・?」

 紺野が自分の皿を差し出す。
 辻はモノもいわず,それを手でつかんで食べる。

 「のの,少し太ったんちゃうか。」

 辻は加護の言葉も聞こえてないかのようにひたすら食べている。
 心なしか体が昨日に比べて一回り大きくなっている気はする。
 紺野もそれについて少し違和感を感じている。
  
 「あれ,辻ちゃん。」

 辻はモノも言わず席を立ち上がってどこかへ向かっている。
 まるで夢遊病者のようにふらふらと歩いている。
19 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時23分26秒
 「紺ちゃん,ののどっか変とちゃうか・・・」

 辻の異様な様子に周囲の生徒も訝しそうな顔つきで見ている。

 辻が突然泡を吹きながら仰向けにバタリと倒れこんだ。

 「辻ちゃん!」

 紺野が慌てて辻にかけよる。
 周囲の女子生徒の何人かが悲鳴を上げる。

 「どうしたんですか・・・・辻さん!?」

 騒ぎを聞きつけた新垣がやってきた。
 辻の様子を見て,顔色が一変したのがすぐにわかった。

 「里沙ちゃん!愛ちゃんを呼んできて。」
 「はい・・・わかりました。」

 新垣は一目散に高橋を呼びに行った。

 「加護ちゃん。運ぶの手伝って。
 医務室はここから近いから私達で運ぶ方が早いよ。」

 加護は紺野の声でようやく我に返った。

 「うん・・・・」

 加護は未だに信じられない様子で辻の上半身を起こして,
 紺野が辻を背負うのを手伝う。
 辻を運びながら加護は紺野の冷静な対応に驚くばかりである。
 普段はぼけているがこういう時はさすがに頼りになる。
20 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時26分51秒
 医務室では専属の医師が一人いる。

 「どうしたん?」
 「先生,辻ちゃんが・・・」
 「どれどれ・・・熱があるな。すぐにベッドへ寝かせなさい。
 今日はやたらと病人が多いな。ひょっとしたら何かの感染症か
 もしれないからみんなも気をつけておくように。」

 医師はやれやれと疲れた表情をしている。
 そういえば午前中も体調不良を訴える生徒がたくさんいた。

 紺野と加護は辻をゆっくりとベッドに寝かせる。

 医師が聴診器を辻にあて,しばらくしてそれを外した。

 「原因がわからんが,念のため救急車で病院へ運ぼう。
 呼びに行くからここで待ってなさい。すぐに戻るからね。」

 医師は急いで医務室を出て行った。

 「ののどうなるんやろ・・・」

 加護が心配そうな目で紺野に聞く。
 生意気にしているが元々は気の弱い子である。

 「大丈夫だって,すぐに良くなるよ。」

 紺野は窓越しに外を見た。
 雨が朝よりも更に激しくなっている。
 不気味なほど真っ暗で外の風景はよく見えない。
21 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時27分34秒
 「あさ美,辻ちゃんどうなってんの!?」

 高橋が息を切らせて医務室に入り込む。
 新垣も一緒だ。

 「原因がわからないって。」

 高橋は辻のもとに駆け寄る。

 「う・・・・」

 高橋は思わず目を反らした。
 新垣も目をつむった。

 辻は白目を剥きながら,舌を垂らしうめき声をあげている。
 もはや少女の顔ではない。
 お団子頭がかろうじて面影を残している
 皮膚はどす黒くなっている。
 不思議なことに,さっきよりも確実に体が大きく膨らんでいる。
 とてもではないが人間には縁遠い姿である。

 「のの,なんかブツブツ言ってへんか・・・」

 加護が辻の口元に耳を近づける。

 「は・・・ら・・・へ・・・た」

 「腹が減った・・・腹が減ったやて!」
 「こんな時まで食い意地張ってしょうがないわね・・・」

 高橋がうんざりという表情を浮かべる。
22 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時28分13秒
 「それにしても先生遅いね。救急車呼びに行っただけなのに。」

 紺野が医師の帰りが遅いのに気がついた。すでに10分近くたっている。
 いくらなんでも生徒に病人を任せて部屋を出ているのに遅すぎる。

 「私,様子見てくる。」

 紺野は廊下へ出ると,すぐそこに医師が立っていた。

 「あ,先生。少し遅くて気になったので様子見に行こうと思ってたんですよ。」

 医師は紺野の言葉にも無言のままだ。

 「先生・・・?」

 紺野は医師の様子が段々とおかしいのに気づいた。
 フラフラと何かにすがりつくように紺野に近づきそのまま倒れた。
23 名前:日公 投稿日:2002年05月25日(土)04時28分46秒
 「先生!」

 紺野は一瞬わが目を疑った。

 医師の背中が獣に食い千切られたようにズタズタに引き裂かれている。
 内臓がはみ出ているのがすぐにわかる。
 紺野はたまらずその場で嘔吐した。
24 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月25日(土)11時10分55秒
http://www.eiken.city.yokohama.jp/infection_inf/bcw1.htm
25 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月25日(土)18時02分59秒
何か凄く続きが気になります(w
ちなみに麻琴ですよ〜
26 名前:やぐちゅ〜みっちゅ〜狂患者 投稿日:2002年05月25日(土)23時02分03秒
わ〜、グロテスク〜・・・・
まさか、ののがGみたいにどんどん化け物に変化していくの?
それと、医務室の先生ってまさか裕ちゃん!?
裕ちゃん死んじゃイヤ〜!
27 名前: 投稿日:2002年05月26日(日)10時02分34秒
>>26
中澤さんじゃないと思いますけど・・・。
こうゆうのは主要キャラは散り様もカッコよく書くのが常套手段ですし。
28 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)22時29分13秒
 早速、更新が遅れてすみません。

 》24

 ありがたく以降の話の参考資料にさせていただきます。

 》25

 不覚にもずっと「真」で勘違いしていました。
 ええ、誤字とかあればまた指摘お願いします。

 》26

 展開の都合上どうなっていくかはお教えできませんが、
 医務室の先生は裕ちゃんではありませんのでご安心を。

 》27

 娘。がそれぞれ主要キャラとしてできるだけ活躍はさせたいと
 思っていますが、まだまだ展開的にあれこれ試そうかと。
29 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)22時37分37秒
 しかし,そのままでは状況が終わりそうにない。
 前方から生徒ら数人,制服を着ているため生徒と判断したといってもいいだろう。

 髪は抜け落ち,皮膚が垂れ落ち,目の玉が飛び出ている。
 手や口元からは誰のものかわからない血が滴り落ちている。
 作り物にしてはあまりにもリアルにできすぎている。
 紺野は目を何度もこすって確認したが、
 幻覚ではないことは間違いないようである。

 声をかけてもこちらの言葉に全く反応がない。
 彼らが医師を殺したのであろうか。
 それにしても人間の所業とは思えぬ医師の有様である。


 「きゃー!」

 医務室から悲鳴が聴こえた。
 紺野は何事かと医務室を覗き込んだ。
 辻らしき,いや間違いなく辻であろう。

 変わり果てた姿の辻が新垣に襲い掛かっている。

 新垣も必死に抵抗するものの虚しく,一瞬にして辻が新垣の首を噛み千切った。
 新垣は悲鳴も上げられず,手足をジタバタと動かしていたが,
 次第にピクリともしなくなった。
30 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)22時39分30秒
 新垣の首から鮮血が飛び散る。

 その返り血を近くにいた加護が浴びてしまう。
 加護は一瞬驚いた表情で自分に飛び散った新垣の血を眺めていたが,
 我に返り悲鳴をあげて腰を抜かし,地べたに座り込んだ。
 加護の口元が引きつって唇が痙攣を起こしている。
 
 悲鳴に気づいた辻が今度は加護に襲い,加護の右肩に噛み付いた。

 「ぎゃー!放せやのの!」

 加護は必死に左手で辻の顔を押しのけようとするがびくともしない。

 「加護ちゃん!」

 紺野は咄嗟に近くに置いてあった折りたたみ椅子を辻の背中に叩きつけた。
 辻はその衝撃で加護を放した。

 紺野はためらわず辻を攻撃できた。
 友人とはいえ,もはや狂気の沙汰でしかない辻を
 人間として認識することはできなかった。
31 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)22時44分37秒
 しかし辻はこれといって痛がる気配は全くない。
 今度は紺野の手を掴んで壁に投げ飛ばした。
 
 「は・・・・・・ら・・・・・へ・・・・・・・た」

 辻は新垣の死体に向かって行き,そのまま新垣の死体を食べだした。
 腕からうまそうに食べている。
 新垣の右手から骨が見え出した。
 片腕を骨までしゃぶりつくすと次は心臓を取り出して食いついた。

 加護は右肩の負傷の痛みを忘れるほどそれをじっと見入っている。
 高橋は膝がガクガクと振るえ,いつのまにか失禁をしている。

 紺野は一瞬気を失ったがすぐに目が醒めた。

 背中がズキンと痛む。痛いということはまだ生きているようだ。
 幸い頭部を打たずにすんだ。
 もし打っていれば今頃あの世へ行っているかもしれない。

 紺野は痛みを堪えながらなんとかフラフラと立ち上がる。
 奇跡的に怪我は打撲程度で済んだようだ。

 紺野は改めて医務室の状況を見渡した。
 新垣を食べる辻を見ると、たまらず目をそらした。
32 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)22時45分36秒
 今はとにかくここから脱出することだけを考えなければ。
 何が原因かはわからないが辻はもはや人間ではない。
 そう紺野は確信した。
 頭では冷静でも体は少し震えている。

 「加護ちゃん,愛ちゃん,とにかくここを逃げよう。」

 紺野は加護のもとに寄る。

 「加護ちゃん歩ける?」
 「ああ,なんとかなりそうや。」

 加護はこの場を何とか抜ける体力は残ってそうだ。

 「さあ,愛ちゃんも。」

 紺野が高橋に手を差し伸ばそうとした時であった。

 「もう嫌!お家に帰る!」
33 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)22時47分33秒
 高橋は突然何かにとりつかれた様に四つん這いでそのまま廊下に出て行った。
 紺野は医師が死んでいた状況を思い出した。

 医師の数メートル向こうには化け物になった
 辻と同じような風貌の生徒が何人かいた。


 もし,彼らも辻と同様だったら・・・・


 廊下から悲鳴が聴こえた。

 紺野は悪い予感が当たったことを呪った。

 高橋が数人の生徒達,もう生徒と呼ぶのはやめよう。
 化け物達に襲われていた。

 なす術も無く,生きたまま腸を抉り取られ,顔面をかじられている。
 心臓がまだ残っているせいか,
 鯛の生き造りのように体はピクピクとまだもがいている。

 生物学的にはまだ生きているのであろうが,助からないのは明白であった。
34 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)22時49分47秒
 「加護ちゃん,早く逃げよう。」

 じっと見ている暇はなかった。
 紺野は昔,無数に襲いかかるゾンビを銃で打ち倒して行くゲームを
 やったことがあるのを思い出した。
 まさか自分が似たような状況になるとは想像もしていなかった。

 たしかタイトルは「バイオハザード」・・・

 あの化け物は「ゾンビ」なのか・・・・・・・
 

 紺野は加護を気遣いながら,ゆっくり走った。
 
 「ごめんな,あさ美。うちが怪我さえせーへんかったら・・・」
 「大丈夫だって,絶対に助かるから。」

 自分1人でも逃げられるのかわからない状況で,
 自分の言葉には自信がなかった。

 加護の出血の様子を見れば相当無理をしているのがわかる。
 傷を押さえているハンカチは血でぐっしょりとぬれて
 いまにもしたたり落ちそうである。

 生きて脱出できる気はしなかったがそれでも最後まで諦めたくはなかった。
35 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)22時50分56秒
 逃げている途中にも校舎のあちらこちらで悲鳴が聞こえた。
 ゾンビ達,数匹にも会ったが,映画やゲームのように動きは遅く知能も無い。
 負傷している加護にでも走れば振り切れない相手ではなかった。
 しかし狭い校舎の廊下で大勢に囲まれることを考えると楽観視はできない。

 二人が階段を降りようとしたらゾンビが1体上ってきた。
 しょうがないので違う階段から回ろうとするとそこにもゾンビが2体いた。
 下へ降りる階段が全て塞がれてしまい,紺野は焦った。
 強引に突っ込めば加護がゾンビの餌食になりかねない。

 後ろから荒い息が聞こえた。
 加護にしては野太いと思うと振り返ればゾンビがすぐ目の前にいる。

 「加護ちゃん!背中にのって!」

 紺野は加護をおぶってすぐさまゾンビとの距離を空けたが,
 気づけば周りは囲まれ退路が断たれている。

 (しまった・・・)

 紺野は迷わず無理してでも突っ込めば良かったと後悔した。
36 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)22時55分07秒
 ゾンビ達が餌を見つけたといわんばかりに嬉しそうに近づいてくる。
 実際にはゾンビにそんな感情はないのであろうが、そう見えた。

 「ごめん・・・加護ちゃん・・・」
 「こっちこそごめん。うちがおらんかったら1人で逃げられたのに。」
 「ううん,いいの。大事なお友達を置いてはいけないもの。」
 「そんなこと言ってくれて嬉しいで・・・」

 二人は観念して目を閉じた。


 「二人とも大丈夫?」

 前方のゾンビが膝をついて倒れこんだ。
 続いて横のゾンビも顔が吹っ飛ばされて倒れこんだ。

 前を見ると、そこには見たことのある少女が1人立っている。


 小川であった。


 両手にはモップが握られている。
 モップといえども先端は金具でできているので十分な武器にはなりそうである。
 実際にゾンビの頭を叩き割っている。
37 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)23時01分40秒
 「こっちよ!ついてきて!」

 小川はモップを周囲のゾンビにモップを振り回しながら退路を作る。


 (思いもよらなかった人物に助けてもらった・・・・・)
 (普段は全く愛想のない小川がどうしてこの危険の中にわざわざ助けてくれたのか・・・・・)


 途中何度かゾンビに出くわしたが,
 小川はいとも簡単にモップでゾンビを蹴散らしていった。


 (どうして怖がることもなくゾンビに立ち向かっていけるのか・・・)
 (そしてゾンビと互角に渡り合える身のこなし・・・・)


 今はそんなことを気にせずにとにかく小川についていくことだ。
 少なくとも助かる確率は随分上がるであろう。

38 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)23時02分35秒
 突然小川が立ち止まった。
 よく見ればそこは理科室の前である。

 「ここに一旦隠れるよ。」

 小川がそういって扉をあけた途端にゾンビが中から1体現れた。
 突然の襲撃に小川は間一髪モップの柄で攻撃を受け止めた。
 そしてそのまま理科室の中へ押し込む。

 「あさ美,手伝って。」

 小川が中からあさ美を呼びつける。
 紺野は恐る恐る中へ入る。
 小川がモップと足でゾンビを押さえつけている。
39 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)23時05分04秒
「そこに岩石のサンプルがあるでしょ。
 それ10キロ位あるけどあんたなら持てるでしょ。
 それをこいつの頭にぶちかましてあげて。」

 とんでもないことを小川は平然とした顔で言う。

 「でも・・・」
 「早くしろ!いつまでもこうしていられるわけないでしょ!」
 「うん・・・」

 紺野は加護をゆっくりと下ろして岩石を持った。
 ずしりとくるが持ち上げられないことはない。

 「さあ,早くぶちかましてあげて。もうこっちもきつい。」

 いざゾンビの顔を見ると殺された新垣や,高橋の顔を思い出す。
 このゾンビも制服を着ているところから辻同様に元は人間であろうが,

 助かるためには小川の言うとおりにするしかない。
 紺野は渾身の力を込めて岩石をゾンビの顔にめがけて投げ下ろした。
 ぐしゃりと嫌な音がする。
 ゾンビはそのまま動かなくなった。
40 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)23時06分10秒
 「やるね。」

 小川が感心したように紺野を見る。
 紺野も息を荒げながら額の汗をふく。
 元はといえば人間である。
 段々と悪いことをしたという後悔の念が押し寄せる。

 「同じ生徒を殺しちゃった・・・」
 「しょうがないでしょ。やらないとあんたが殺されていたんだよ。」

 小川が紺野の肩を叩く。

 「それに加護ちゃんは守れたんだ。」

 紺野は加護のことを思い出した。

 「そういや加護ちゃんは?」
 「大丈夫やで・・・」

 加護がニッコリと力なく微笑む。
41 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)23時10分48秒
 紺野は理科室の扉を閉め内側から鍵をかえた。
 そして慎重に物陰にゾンビが潜んでないかを確認した。
 安全だとわかると直ちに二人のところへ走ってきた。

 「話は後ね。先に加護ちゃんの怪我の治療よ。」
 「うん,でもどうするの・・・・」
 「実験室からアルコールランプをできるだけたくさん持ってきて。
 あとマッチ。それに解剖用のメスもね。」

 紺野が道具を持ってくる間に,
 小川はカーテンや綿をシーツとして加護にかぶせていた。

 「これでいい?」
 「うん,上等。」

 小川がメスで加護の右肩あたりの服を引き裂いた。
 改めてみるとケガの具合がひどいのがわかる。
42 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)23時11分40秒
 「痛いけど我慢してね。」

 小川はアルコールで加護の傷口を消毒する。

 「しみるわ・・・・」

 加護は苦悶の表情をあらわにする。

 そして小川は実験用のガスバーナをマッチで火を点けてメスを熱する。

 「あさ美,加護ちゃんが動かないように抑えてて。」
 「何をするの・・・」
 「さっきよりもまだ痛いから。暴れると危ないし。」

 加護の表情が見る見る青ざめる。

 「おい,勘弁してや・・・もう治ったし・・・」
 「その傷でそんなわけないでしょ。ほっといたら命の保証しないよ。」 

 加護も覚悟を決めたかのように目をつぶる。
 自分でも放っておいて治るほどのやわな傷ではないことはよくわかっている。
 医者をすぐに呼べるかどうかもわからないこの状況では
 小川の言葉を信じるしかない。
43 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)23時12分28秒
 「とっとと終わらしてくれや。」

 雷が以前に増して怒号を鳴り散らした。
 紺野と加護は思わずびくっとする。
 小川は平然としている。

 「大丈夫。あさ美,しっかり抑えててね。」

 小川は躊躇無く熱したメスを加護の傷口にあてる。

 「ぎゃー!!!!!」

 加護が暴れるのを必死に紺野が押さえつける。

 「もう少しで終わるからね。」

 小川は次々とメスで押さえつけて傷口ふさいでいく。
 ジュッと音がして湯気が立ち上がり,微かに嫌な異臭が鼻につく。
44 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)23時13分17秒
 「ようし,終了。加護ちゃんお疲れ。」

 加護はただ安堵の表情で何も反応が無い。
 紺野も自分が手術を受けたように汗をびっしょりかいている。
 
 「加護ちゃん喉がかわいていると思うけど少しの間我慢してね。
 今飲むとせっかく治療したのが台無しになっちゃうから。」
 
 加護から反応はない。
 
 「まこっちゃん,返事が無いよ・・・・」
 
 紺野が訴えるように小川を見る。
 小川もさすがに心配になり加護の脈を取り,胸に耳をあてた。

 「大丈夫,心臓は普通に動いているよ。気絶してるんだよ。

 そりゃ麻酔もなしでの治療だから元気でいる方がおかしいよ。」
 
 「そっか・・・」

 紺野は加護の額の汗を拭いて,カーテンを布団代わりにかけてやった。
45 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)23時14分08秒
  落ち着いて理科室を見回すと,先ほど自分が倒したゾンビがまだ転がっている。

 「まこっちゃん・・・これもこのまま置いとくの・・・」
 「そうだよ,下手に外に出して私達の存在が気づかれちゃまずいからね。」
 「でも・・・」

 ゾンビが見える数メートル先にはおそらくゾンビに襲われた生徒の死体もあった。
 体中の至る所が食いちぎられ,もはや原型はとどめていない。

 雷の鳴る間隔が短くなり、紺野も段々慣れてきた。
 紺野は今日一日の出来事を思い出した。

 辻の様子が突然おかしくなり,ゾンビになった。そして新垣を襲った。
 高橋も元は生徒であったゾンビ達に襲われ無残に殺された。
 自分と負傷した加護も間一髪であったところを小川に助けられここまできた。
46 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)23時15分10秒
 「とにかく助けがくるのを待とう。
 加護ちゃんがこの状況じゃ動けないしね。
 ここは2階だから降りられないこともないけど、
 校庭にはゾンビがたくさんいるから死にに逝くようなものだよ。」

 小川は何やら薬品を物色しては何かを作りながら話す。

 高橋と新垣の死を悲しんでいられる状況でないのは間違いなさそうだ。

 しかしながら小川は一体何者であるのか?
 ゾンビをいとも簡単に倒していく身のこなし。
 そして薬も道具もろくにない状況での治療。
 とてもじゃないが同じ中学生とは思えない。

 何か不可思議なこの状況の秘密でも知っているのではないかと思えてきた。

 とにかく色々聞いてみるつもりだ。どうせしばらくはこのままなんだ。
 しかし、今はどっと疲れが押し寄せてきた。
 緊張が続いたので当たり前だ。
 しかし寝たいとは全く思えなかった。
 もちろん、さらに恐ろしい事実が待っていることを知る由もなかった。


  ―第一章― 惨劇の始まり  終了
47 名前:日公 投稿日:2002年05月29日(水)23時18分22秒
 1章終了です。
 2章以降もある程度は書いているのですが、もう一度練り直そうかと
 思うので週末は更新できないかもしれません。
 その時は連絡しますのでご了承ください。
48 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月30日(木)15時31分45秒
更新乙です。
マターリ待ってますので頑張って下さい。
49 名前:日公 投稿日:2002年06月01日(土)06時54分03秒
》48
ありがとうございます。
今週はお休みさせていただきますが、
来週はその分ペースも進めたらと思ってます。


更新ですが、週2回を予定していましたが
実際書きながら更新していくと思ったより時間がかかりまして。
申し訳ないですが、金曜から土曜にかけてのみとしたいと思います。
50 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月01日(土)11時42分44秒
がんばれ〜
51 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時13分23秒
 ≫50
 お待たせしました。

 W杯でなかなか更新を進めるのも難しいですが、
 今日はきちんとできそうです。
52 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時14分41秒
  ―第二章― 勃発

 数々の事件を手かげてきた警視庁M署の中澤裕子。

 彼女のような猛者でも今日だけは打開策を見つける
ことができず手を焼いている。
53 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時15分35秒
 今から1時間前・・・

 中澤は遅い昼食を取っていた。
 台風が近づいているのに備えて待機するように命令されていた。

 「裕ちゃん、風が段々強くなっているね。」

 安倍はサンドイッチをつまみながら食堂のニュースを見ている。

 新人の頃にM署の刑事課に赴任してきて以来、
 中澤のパートナーとなって現在までに至る。

 一応、中澤は上司にあたるが呼び捨てである。
 中澤も別段気にしていない。


 M署の刑事課に属する2人。殺人・強盗等の犯罪事件を担当する。
 だが滅多に凶悪犯罪の起きないM市での仕事はというと、
 こそ泥や喧嘩といった小さな事件ばかりである。

 安倍はどうでもいいことで忙しい毎日にうんざりしている。
54 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時17分36秒
 中澤は以前、本庁の捜査一課で活躍していたらしいが
 どういうわけか移動を希望してM署にきたらしい。

 理由を聞くと、こっちが楽だからというだけらしい。
 それほど本庁の仕事は大変であったということであろうと、
 安倍にも想像がついた。

 「今夜に到着するみたいやで。」

 中澤が椅子にもたれながら眠そうにあくびをする。

 パンツスタイルのスーツにハイヒールと台風に備えて
 待機している刑事の服装としてはあまりにも場違いすぎる。

 中澤は刑事でも身だしなみを整えて女を忘れないというポリシーがあるので
 誰がいっても着替えないであろうが。

 女を忘れないという割には三十路を目前にしたここ数年、男性に縁がない。
 中澤は仕事ができるから男が引いてしまっているせいだというが、
 それだけではなさそうだ。
55 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時18分55秒
 「こんな時に事件が起きたら最悪だよね。」
 「しょうもない喧嘩とかでな。そんな時はなっちがいってな。
 うちは殺し専門や。」
 「何いってんのよ。たかだか所轄の刑事が殺しの捜査専門なのに。
 大体この前のこそ泥の時だって。」

 先月、夏の暑い日であった。
 民家に泥棒が侵入したとの通報で中澤と安倍が駆け付けた。

 中澤は体の調子が悪いというのを理由に冷房の効いたパトカーの中で寝ていた。
 もちろん仮病である。
 聞き込みは半ば強引に全て安倍1人に任せた。
 安倍は熱い中へとへとになりながら周辺住民の聞きこみを続けたが
 決め手となる情報は得られなかった。

 しょうがないので安倍は中澤のところに戻り、パトカーの窓を叩く。
 中澤はやれやれという表情で窓を開ける。
56 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時19分25秒
 「何やねん?早くせんと冷房が逃げていくやろ。」
 「裕ちゃん。ちょっとは手伝ってよ。」
 「うちもう年やねん。熱い日差しは体に悪いねん。」
 「こんな時だけ年のこといって。本当調子いいんだから。」
 「犯人は捕まりそうなん?」
 「全然、目撃者がいないからね。」

 安倍は汗を拭きながら、うんざりという表情で中澤を見る。

 「犯人は息子や。」

 中澤は手元にあるコーラの缶をあけた。
57 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時19分56秒
 「そんなわけないでしょ。」
 「指紋は?」
 「家の人以外のはないんだよね。でも手袋してたら関係無いし。」
 「足跡は?」
 「近くに置いてあったスコップで無茶苦茶になってる。」
 「こそ泥がそこまでするわけないやろ。」

 中澤がコーラをグイっと飲む。

 「息子は見たんか?」
 「うん。」

 安倍は中澤がコーラを飲むのを見て、たまらずゴクリとする。
58 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時20分29秒
 「マザコンみたいな奴ちゃうかったか?」
 「うん、いわれたら・・・」
 「ついでにおかんも息子にべったりみたいな感じやろ?」
 「そうそう。」
 
 中澤はコーラを飲み干し、アルミ缶を握りつぶす。
59 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時21分20秒
 「どうせおかんも息子が盗ったんは薄々気づいてるやろ。
 けど自分の息子がやった現実を直視ができん。
 だから他の誰かがやったと思い込んで警察を呼んだ。
 ほんま迷惑な話やで。警察はそこまで暇やないっつうねん。」

 「裕ちゃん、それ本気でいってんの・・?」
 「試しにもう一回、おかんと息子を尋問してみな。すぐにボロが出るわ。」

 安倍は他に手段がないので騙されたつもりでやってみた。
 すると息子はすぐに自供し、母親も捏造であったことを白状した。

 安倍は外に一歩も出てない中澤が何故すぐに真相を突き止めたのかを聞いた。
 中澤がいうには長年の刑事生活による勘だという。

 どこまで本当なのかは皆目見当がつかない。
60 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時22分07秒
 「あん時だって、私ばっかり押し付けて。
 わかってたんなら、さっさと言ってよね。」
 「それはなっちに足を使う聞き込みをして刑事として成長してもらうためや。」
 「嘘ばっか。」

 一瞬食堂内の蛍光灯が停電した。
 
 「そういや、ゼチィマ学園で生徒か暴れてるって通報があって
 少年課が出て行ったけど、この雨の中大変だね。」
 「それにしても最近のガキは何考えてるんや。暴れる場所も考えてへん。」
 「うん、1人や2人じゃないみたいだね。あれだけの人数が出て行くんだからね。」
 
 食堂内に館内通報が流れた。
61 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時23分34秒
 「少年課より応援要請。刑事課及び、
 警備課署員は直ちにゼティマ学園に出動せよ。
 なお、現場にて負傷者が出ている模様。拳銃帯同を許可する。」

 「そら、お呼びや。うちらまでが出るなんてガキ相手に何してんのや。」
 「でもケガ人が出てるし、うちらまで出るなんてよっぽどのことだよ。」
 「しゃあないな。雨の中おっくうやけど行くか。」

 2人はすぐさまパトカーに乗り込んだ。

 台風が近づいているせいで、雨は一層激しく降りしきる。
 ライトをつけなければ数メートル先の視界もろくに見えない。
 現場へ走行中も無線での交信が絶えず繰り返される。
62 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時24分14秒
 「裕ちゃん、パトロール中の人達全員が駆り出されているみたいだね。」
 「ああ、少々やっかいな暴動みたいやな。」
 
 「―こちらゼティマ学園より。隊員のおよそ半分が負傷。
 生徒の凶暴性は只者じゃありません。
 生徒達は人間を逸脱した・・・う、うわぁぁぁ!―」

 無線から悲鳴があがり、通信が途絶えた。
63 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時24分50秒
 「どなんしたんや!」

 中澤は運転しながら無線を掴んだ。

 「こちら刑事課中澤どうぞ。学園はどないなってるんや!
 ちょっと返事せんかい!」

 無線からは他の警官の呼びかけしか聞こえてこない。

 「裕ちゃん・・・」

 安倍の表情が険しくなる。

 「なっち、しっかりつかまっときや。」

 中澤はアクセルを全開にしてゼティマ学園に向かった。
64 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時26分09秒
 到着した中澤は生徒達の異様な風貌に自分の目を疑った。
 抜け落ちた髪に飛び出している眼球。
 最初はマスクを被っているのではないかと思っていたが、
 すぐに間違いであるとわかった.。

 中澤達より先に到着していた警官が生徒達を取り押さえようとしたが、
 逆に押し倒されそのまま首を噛みちぎされそのまま動かなくなった。

 中澤は幼少の頃見たホラー映画を思い出した。
 もちろん現実にはありえるわけはないとは信じていたが。

 警官を殺した生徒が今度は中澤の方へ向かってふらふらと歩き出してきた。
 
 「なっち、銃をだしときや・・・」
 
 安倍も状況はわかっているようで、無言でうなずいた。
 
 「ゾンビ・・・」

 中澤は小声で聞こえないように言った。
65 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時29分27秒
 「こら!いい加減にせんか!おまえら自分で何してんのかわかってるんか!」

 中澤の言葉はゾンビの耳には届くはずもなくそのまま中澤の肩を掴んだ。
 強烈な圧迫が肩を襲う。

 「こいつなんちゅう馬鹿力や!」
 「裕ちゃん!」

 安倍がゾンビの脇腹めがけてタックルをかます。
 ゾンビは僅かにぐらつき中澤はその隙に肩の手をふりほどいた。

 中澤は拳銃を取り出しゾンビの足にめがけて発砲した。
 雨音の中、拳銃の乾いた音ははっきり聞こえた。
 中澤はさらに自分の目を疑うことになった。
66 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時30分13秒
 「なんでや。こいつ、痛くも何ともないんかい?」
 
 普通の人間であれば痛みに耐えられず、まともに歩くことだできないはずである。
 ゾンビはひるむことなく襲いかかってくる。

 「堪忍やで!」

 中澤はたまらず心臓部めがけて撃った。
 命中したものの、一瞬動きが止まっただけで再び襲いかかる。

 「裕ちゃん!さがってて!」

 安倍がゾンビに弾を4発撃ちこんだ。
 中澤も続いて3発撃ちこんだ。
 ゾンビはようやく動きを止めて倒れた。
 中澤はさらにゾンビに近づき頭部にめがけてとどめの一発をお見舞いした。
67 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時30分48秒
 「化け物か、こいつは・・・」
 「裕ちゃん・・・」

 安倍は目で横を見るように合図した。
 数匹、いや10匹以上はいるであろうゾンビ達が校門から出てきた。

 「勘弁してくれや・・・・」

 中澤は肩を落としながら拳銃の弾を詰め直した。
68 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時33分58秒
 ―15:14分―

 「うわ!!!!」

 中澤の近くにいる警官が複数のゾンビに囲まれている。
 警官が銃を撃ちつづけるが無情にもゾンビに押えられる。
 最後に必死で一発を空に向けて発射した手がそのまま見えなくなり、
 悲鳴を上げてやがて聞こえなくなった。

 1時間近くこうした小競り合いを続けるうちに、
 警官の数もゾンビにやられ半分以下に減っている。
 M署管轄の警官全員をかき集めても状況は好転しない。

 動きが鈍いため、攻撃をよけるのは簡単だが、数が多すぎる。
 警官達の疲労の色は濃くなるばかりである。
 更には、ゾンビの数が減る気配は一向にこない。
 このままでは全滅を待つだけである。
 
 台風が上陸したようで、立っているのがやっとの状態である。
 中澤は肩を揺らしながらゾンビに照準を定める。
 暴風雨のため弾の照準も狂ってしまうため、
 どうしても至近距離で撃たなければならず、
 危険度はそれだけ高い。

 レインコートを着ているものの、この雨の中では役に立たず、
 せっかくの中澤のスーツもずぶ濡れだ。
 しかし、今はそんなことをいっている状況ではない。
69 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時34分35秒
 中澤は後方から嫌な予感がし、振り向くとゾンビが立っている。
 中澤は反射的にゾンビの眉間に発砲する。
 ゾンビは一発で倒れこんだ。

 「そっか・・・よっしゃみんなきけ!ゾンビの弱点は頭や!
 脳みそふっ飛ばしてやれ!」

 ゾンビの弱点がわかり、少し体に力が戻ってきた。
 ところが中澤は弾が残り少ないことに気づいた。
 6発しか残っていない。
 
 「なっち!どれだけ弾が残ってるんや!・・・・なっち!?」
70 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時35分58秒
 ゾンビに首を掴まれた安倍の足が地面から宙に浮いている。
 指が無情に安倍の首筋に食い込む。
 さながらマリオネットのようにぶらりとしている。
 安倍の唇からは血がゾンビの腕に垂れ落ちて行く。

 「何さらすんじゃ!ぼけが!」

 ゾンビがまだ血の気が残る安倍の首筋に噛みつこうとした時に、
 ゾンビの頭が破裂した。
 安倍の体が地面に無造作に倒れこむ。
71 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時37分02秒
 「なっち!しっかりせんか!」

 中澤は安倍の気道を確保するために安倍の体をゆっくり動かす。

 「あ・・・・うん・・・。」
 
 安倍は指を微かに震わせるように動かしてぱたりと手をついた。


 「ちょっと待っときな・・」

 安倍の胸に懸命な心臓マッサージを行うが、
 空しくも容態は好転しないままである。

 「じゃまや!」

 中澤はその間にも近づいてくるゾンビを撃ち倒す。
 中澤は1発ずつ確実にゾンビを倒していき、全ての弾を使い切った。
72 名前:日公 投稿日:2002年06月08日(土)00時38分06秒
 本日はここで終了ということで。
73 名前:読者G 投稿日:2002年06月08日(土)21時20分21秒
うぉおおお、すごい展開に!なっつぁん!
74 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月09日(日)06時10分55秒
なんか、かっこいい〜裕ちゃん!
ゆゆゆ
どうなるんだ?
75 名前:日公 投稿日:2002年06月14日(金)03時22分09秒
 個人的になりますが今日は日本戦を見ます。
 結果によってはそのまま飲みに行くかもしれないので
更新ができてない場合があるかもしれません。
 週末中には必ずする予定なのでご迷惑をかけるかもし
れなせんがお願いします。
76 名前:日公 投稿日:2002年06月16日(日)23時44分13秒
おまたせしました。
更新が不定期で申し訳ないです。
ワールドカップのせいにはしたくないのですが・・・
(;^▽^)

≫73

ひょっとすれば押しの娘がえらいことになる展開もあるかもしれませんが
どうかごひいきに。

≫74
今回の更新はさらに中澤の人間性を出していきたいと思っています。
77 名前:日公 投稿日:2002年06月16日(日)23時44分47秒
 「くそ、ここまでか・・・」

 中澤は拳銃をゾンビに投げつけた。
 そして安倍の脈を取った。

 「なんてことや・・・」
 
 安倍の頭上に丸い光が灯った。
 何事かと頭上を見上げる。

 ヘリが上空に浮かび上がっている。
 見ればそれに続きヘリがもう2機上空を飛んでいる。

 「応援部隊か、今頃遅いわ・・・・」

 ヘリからロープが下ろされ次々と隊員がするすると降りてくる
78 名前:日公 投稿日:2002年06月16日(日)23時45分46秒
 「ご丁寧にSATやんか。」

 SAT。
 警視庁第六機動隊。この他に大阪府警や千葉県警の機動隊も指す。
 主にハイジャック・テロ対策の任務が与えられている。
 この部隊が、特殊急襲部隊(SAT)と呼ばれる
 対ハイジャック・テロ特殊部隊である

 SATの隊員はヘルメットと防弾チョッキを身にまとい
 マシンガンをたずさえている。
 一斉にマシンガンが発射された。
 向かいくるゾンビを次々と倒して行く。
 そしてバズーカ砲が撃たれた。
 一気にゾンビ達が吹っ飛ぶ。
 形勢は一気に逆転した。
 先ほどまでの苦戦が嘘のようである。

 
 SATが校外のゾンビを一掃したようである。
 続けて学内からゾンビが出てこないように門を硬く閉ざした。
 ゾンビはただ門を叩くだけである。
 ゾンビには門を越える知恵はないようである。
79 名前:日公 投稿日:2002年06月16日(日)23時46分30秒
 「次の作戦準備開始に当たれ。」

 指揮官らしい人物が命令する。

 「第3小隊は校庭のゾンビの掃討にあたれ。
 第1、第2小隊はヘリにのりこめ。」
 SATの部隊の何人かがハシゴを壁に掛け、
 そこに上った狙撃班が一斉に射撃を開始した。

 中澤は新たにヘリコプター1機が上空から降りてくるのを見つけた。
 中から1人の女性が降りてきた。

 「突入準備完了です。」

 指揮官がその女性に向かって敬礼した。
 
 「了解。中には何が待っているか分からんから気をつけるように。」
 「はい。ではこれから作戦を開始します。よーし、5分後に突入!」

 指揮官はヘリに乗り込み、中等部の校舎の屋上へ向かって飛び出した。
80 名前:日公 投稿日:2002年06月16日(日)23時48分09秒
 「警視庁やなく警察庁のあんたがくるなんてよっぽどのことみたいやな、
 あっちゃん。」
 「・・・なんや、裕ちゃんかいな。最後にあったんはいつやったっけ?」
 「久々の再会やのに冷たいな。」
 
 「あっちゃん、一体何が起こってんのや。
 どうみても人間やない化物がいきなし街中で暴れ出して。」
 「色々わけがあってな。ご苦労さん、今日はゆっくり休んでちょうだい。」
 「ご苦労さんやないわ!わけわからんうちに同僚がたくさん死んだんやで!
 しかもこんな酷い殺され方で!」
 「後はうちらにまかして。」
 「あほいうな!こんな目に会ったんや!うちらにも知る権利がある!」

 中澤が稲葉の襟元を掴む。

 「落ち着き、機密事項や。うちの立場もわかってくれや。」
 
 稲葉は中澤の掴んでいる手を振りほどく。
 
「とにかく早く署に戻った方がええで。まだ化物がそこらにおるかもしれんから。
 ほな、忙しいからまた。」

 稲葉が乗り込むと同時にヘリが上空に飛び立った。
81 名前:日公 投稿日:2002年06月16日(日)23時48分55秒
 中澤はヘリが見えなくなるまで見届けた後、
 動かなくなった安倍の手を握り締めた。

 「こんなんじゃ死んでも死にきれんわな。」

 中澤は安倍の目をそっと閉じてやった。

 ―第2章― 勃発  終了 

82 名前:日公 投稿日:2002年06月16日(日)23時50分13秒
 今日はきりのいいところで。
 次回はまだ登場していないメンバーの登場です。
83 名前:やぐちゅ〜みっちゅ〜狂患者 投稿日:2002年06月17日(月)16時22分51秒
オオ!
裕ちゃんは刑事だったのか〜。
それにSATのあっちゃん、かっこええな〜。
使っていたサブ・マシンガンはMP5Nとかですかね?

なにげな、なっちゅ〜♪
けど、いきなり痛め・・・
84 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月17日(月)22時56分11秒
姐さんカッケ−!!
惚れた・・・パートナーのなっちは・・・
85 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時30分33秒
>>83
すんません。
あっちゃんは警察庁の官僚役なんです。
読みなおすとあっちゃんの紹介が不充分で反省です。
ちなみに武器名についてほとんど無知状態です。
もうちょっと勉強しなければです・・・・

≫84
なっちは残念ながら・・・・
さすがになっちはあまり惨たらしくするのも抵抗がありまして。
話の内容的に誰かが死ぬ展開も絶対条件で非常に悩むところです。
86 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時31分29秒
 ―第3章― 突入

 警視庁第6機動隊(SAT)隊長の保田圭は時計の針をしばらく見て命令を出した。

 「突入!」

 ヘリからロープが下ろされると、次々と隊員が降りていく。

 「ここから2チームに別れるぞ。
 敵は人間じゃないようだからみんな心してかかるように。」

 保田は校舎の4階へ向かった。
87 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時32分57秒
 作戦はこうである。
 事前調査によればゾンビのほとんどが中等部校舎から
 出現しているとわかったのでまずは中等部校舎を制圧することになった。
 4階建ての校舎に屋上から突入し、保田率いるAチームが1階と3階、
 Bチームが2階と4階と、それぞれの階のソンビを一掃して生存者を救出し、
 外で待つCチームが校舎外の退路を確保しておくという作戦であった。

 SATとしての出動は初めてではないが、
 今までとは比べ物にならない深刻な事態であるということは認識できていた。
 自衛隊の野戦用並の重装備を命じられ、
 交代制である3チームを非番の隊も含め一気に召集された。

 そしてテロの方がどれだけマシであったであろう、ゾンビという初めての敵。
 武器の威力のおかげで苦戦こそはしなかったものの、
 通常の装備ではどうなっていたかわからないほどである。
 しかし校舎内では安全のため手榴弾とバズーカの使用はできない。
 人数も先ほどとは違い1個小隊だけで、
 マシンガンだけという装備でどれだけ太刀打ちできるかという不安がつきまとう。
88 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時33分45秒
 だいたいゾンビの存在自体が常識の範囲を越えている。
 どうすればこんな不死身の化物が存在しうるというのであろう。

 4階に到着してからゾンビが10数匹いたが問題なく片付いた。
 生存者の捜索をしたが、
 見つかるのは無残にゾンビに食べられた生徒の死体ばかりであった。
 窓際に死体が多いことに気がついた。
 おそらくゾンビ達に最後に追い詰められた生徒達が固まったせいであろう。

 窓から下を見れば、そこにも何人かの生徒の死体があった。
 珍しくゾンビに食べられていない生徒の死体もある。
 3階のこの高さから飛び降りて逃げたとしても無事ではすまないであろう。
 仮に運良くケガで済んだ生徒も、手負いのままではゾンビから逃げ切れないまま・・・・
89 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時34分30秒
 たまらず吐き出す隊員が何人か出た。
 テロとの交戦で死体は見なれているはずの彼らにとっても
 生徒のあまりにも無残な死体には絶えきれなかった。
 しかもまだ幼い中学生がほとんであるからなおさらである。

 「よし3階には生存者はいないようだ。1階へいくぞ。」

 保田は平静を装うため勢い良く言った。
 本当は早くこの場から去りたかったというのが正直なところである。

90 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時35分51秒
 Bチームこと警視庁第6機動隊第2小隊の後藤は冷静であった。
 確実に無駄な弾を使わずゾンビ達を仕留めて行く。

 警察学校を卒業してから2年足らずでSATに召集された。
 特殊部隊には勿体無いほどの美しい容貌であるが、
 SATのエース的存在である。
 銃器の扱いから格闘術において、
 SATの中でも目を見張るまさに戦闘のプロである。

 「隊長、4階のゾンビは倒したよ。
 生き残ってる人はいないみたいだね。次いこっか。」

 周囲は冷静な人間だともっぱら評判であるが。
 単に超マイペース志向の人間なだけである方がある意味正解であるかもしれない。

 Bチームは2階に向かっていた。
 後藤の先に階段を降りた隊員が通路で何かを見つけたようである。

 後藤も何かと思い駆け足で降りようとした瞬間に機関銃の音が鳴り響き、
 後藤の目の前で隊員が倒れた。
 後藤は反射的に壁に身を隠した。
91 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時36分38秒
 Bチームの小隊長が慌てて廊下に呼びかける。

 「保田隊長!Bチームですよ!何やってんですか!」

 後藤はすぐに様子がおかしいことに気づいた。
 保田のAチームは2階に寄り道するわけがない。
 そもそも誤認で仲間を撃つほど間抜けな連中でもない。
 後藤は銃を構えた。

 「隊長!出ていっちゃダメ!」
 「は?」

 小隊長が何事かと後ろを見た途端、再び銃声が鳴り小隊長が倒れた。

 「みんな!なんかわからないけど銃を持った敵だよ!」

 後藤は壁から銃声が聞こえた廊下を一瞬覗きこんだ。
 人数は確認できなかったが迷彩服を着た兵士が銃をこちらに向けていた。
 どうやら保田達でないのは明らかである。
92 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時37分09秒
 後藤は息を大きく吸って廊下に勢い良く飛び出した。
 敵は待っていましたとばかりに銃を撃ってくる。
 後藤はそれを予想していたかのように滑り込みながら弾をかわし、
 敵にめがけて思いっきり銃を乱射した。

 何人かが倒れこんだが、残りの敵がひるまず反撃してきた。
 後藤は目の前の教室に飛びこんでそれをかわした。

 銃撃を逃れて息つく暇もなく教室の中にはゾンビ達が待ち構えてきた。
 
「あ〜ん、もう、こんな時に。」

 難なくゾンビを仕留めるものの追い討ちをかける事態が起きた。

 「これって・・・手榴弾じゃない!わーん、もう間に合わないよ!」

 後藤は窓の外に向かって急いで走り出した。
93 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時38分01秒
 一足先に作戦を終えたAチームが正門でCチームとともに
 Bチームの帰りを待っている。

 「遅いわよ。何やってるのよ。無線は?」
 「繋がりません。」

 後藤のいるチームはいつも必ずこうやって遅れる。
 その度に保田が叱りつける。
 今日はどうやって説教しようかと、話す事を考えている。

 「今日は私が新人のころの話をしようか・・・・」

 校舎の2階から爆発音が鳴り響く。
 爆発は保田のいるところから反対側で起きたらしく、
 ここからでは様子を知ることはできない。
 保田はまた後藤がやらかしたのかと思ったが、すぐにその考えを退けた。

 「銃しか持たせてないのに何であんな爆発がするのよ。」

 保田はBチームの身に何かあったと予感した。

 「Bチームに何かあったみたいね。Aチーム行くよ。Cチームはここで待機。」

 保田達は再び校舎に入っていった。
94 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時40分08秒
 「Aチームは大変だな。」

 警視庁第6機動隊SATは3小隊から成り立っている。
 3交代制勤務に各隊、実際に突入をする突入班。
 後方からの狙撃支援を行う狙撃班。
 工作活動等の後方支援を行う支援班に分かれる。

 今回は3小隊を再編し、A・Bチームには各隊突入班・狙撃班による実戦部隊。
 Cチームは支援班や経験の浅い新人隊員から主に成り立っている。

 「ごっちん・・・」

 新人隊員の吉澤は同い年の後藤の身を心配する。
 キャリアでは後藤が先輩にあたるが、
 2人ともSATには珍しくのんびりした性格が合うせいか
 休暇も共にすることが多い。

 突入班でありながら新人のために今回は待機ばかりであるが、
 後藤のいるBチームに何かあったと思うと、いてもたってもいられない。
 吉澤は先ほどから何度も同じところをいったりきたりしている。

95 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時40分50秒
 「あぁぁぁぁぁ!」

 吉澤が突然に奇声を発した。
 他の隊員たちは一瞬驚いて吉澤を見るが、やれやれと持ち場に戻る。
 吉澤はときたま突然に奇声を発する。
 どうも癖らしいが、SATという特殊な立場であるため、
 念のために精神科医に見てもらったことはあるが特に異常はなかったようである。
 他の隊員も慣れっこである。

 「隊長!偵察に行ってきます!」

 「は?何いってんだ。」
 「じゃあ、そういうことで。」
 「おい!またんか!」

 吉澤は銃を持って校舎に向かって走り出した。 
 他の隊員が止める間もなく吉澤の姿は見えなくなった。
96 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時54分47秒
 突進型の性格の吉澤は後のことも考えずに行動することが多い。
 もちろん生きて帰ってこれたとしても厳罰が待っている。


 後藤は生きていた。
 窓ガラスを割ってそのまま外へ飛び出した。
 そして間の悪いことに、ゾンビ達が後藤を取り囲み出した。
 急いで爆発から逃れようとして、マシンガンを教室に忘れてきたことに気づいた。
 更に悪いことに着地の際に足をひねり、走って逃げることも無理なようである。

 「弱ったね。」

 後藤は手近な石ころを投げるが、もちろんそれでゾンビが退散することはない。
 じりじりとゾンビの影が近づいてくる。
 ここまでの至近距離で見るのは初めてだが、何ともおぞましい。
 ゾンビの息が自分にかかっている気がして我慢できそうにない。


 「ごっちん!」

 助走をつけながら吉澤がマシンガンを槍投げの選手のように後藤に投げた。
 後藤は片手でそれを受け取った。

 「よっすぃーサンキュー!」

 後藤はあっさりとゾンビを倒していく。
 吉澤もゾンビを打ち倒しながら後藤のところを駆けつける。
97 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時55分35秒
 「ごっちん間一髪だったじゃん。」
 「ありがとね、ほんと危なかったからね。」

 まるで他人事のように後藤が話す。
 吉澤も笑って流す。
 この怖いもの知らずの強靭な精神が2人をSATの隊員として
 居場所を与えるのであろうか。
 いや、抜けているという方が正しいのかもしれない。
 結果的には功を奏しているようである。

 「ごっちん足は大丈夫?」
 「うん、なんとかね。あれ?よっすぃー、2階見てよ。」

 後藤は爆破された教室の二つ隣の部屋を指差した。
 二つの小さな人影が見えた。
 はっきりとは確認できないが、銃を持っている敵ではないようである。
98 名前:日公 投稿日:2002年06月21日(金)23時56分21秒
 「生き残りの生徒かも。ごっちん、私助けに行く。」
 「私も行く。上には銃を持った敵がいるからね。」
 「その足じゃ無理でしょ。」
 「これくらい平気だって・・・・いた。」

 後藤は勢い良く立ちあがるが、すぐに転倒した。

 「正門の方にCチームが待ってるからそこまで帰ってて。
 保田さんの部隊もくるから大丈夫よ。」

 吉澤は親指を立ててウインクを決める。

 「そっか、気をつけてね。」
 「まかせときな。」

 吉澤は校舎の側の樹木をよじ登り、枝から爆破された教室に飛び移っていった。
99 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月30日(日)20時36分47秒
よっすぃー、気をつけて
更新お待ちしております
100 名前:日公 投稿日:2002年07月01日(月)18時53分25秒
 この週末は氏ぬほど忙しくて更新が遅れて申し訳ありません。

 ≫99
 ありがとうございます。
 今回は自分ではSATメンバーがお気に入りで楽しんでいます。
101 名前:日公 投稿日:2002年07月01日(月)18時55分16秒
 小川は紺野と加護を教室の隅へできるだけ目立たないように移動させた。
 外で人の喋り声が聞こえて助けがきたと思ったが、
 銃声と悲鳴が聞こえてそうでもないことがわかった。

 「警察じゃないの?」

 紺野は加護の手を握りながら小川を心配そうに見つめる。

 「人間同士で銃の撃ち合いをしてるみたいだから、
 私達の味方じゃない人がいる可能性は高いわね。」
 「どうすればいいの・・・」
 「私達の味方側の人間が勝つことを祈るしかないわね。」

 さすがの小川にも額に汗が滲みでている。
 紺野と小川は加護を隠すように身を伏せて窓越しに廊下の様子を見ている。
 今は落ち着いているとはいえ、いつ悪化するかわからない加護の容態も気になる。
 紺野の唇はさっきから何度も噛むせいか出血で青く腫れあがっている。
102 名前:日公 投稿日:2002年07月01日(月)18時56分03秒
 「静かになったよ。」
 「し!まだわからないわよ。」

 小川が人差し指を立てて紺野を制する。
 単発で銃声がなる。
 単なる小康状態のようである。


 男達数人の話し声が聞えてくる。

 「撤退だ。これ以上応援がきたらやばい。」
 「ブツは持ってるのか。」
 「ああ、大丈夫だ。」
 「ようしせーので撃ちながら後ろの階段へ走るぞ。」

 再び銃声が鳴り響く。

 「なんでこんなところに、うわ!」

 数人の悲鳴が聞こえて再び沈黙が戻った。
103 名前:日公 投稿日:2002年07月01日(月)18時56分45秒
 紺野はただ目を閉じてひたすら無事に出られる事を祈るばかりであった。


 「動くな!」

 銃声が一発轟く。

 「保田さん!私ですよ!」

 先ほどとは違い、女性の声が聞えてくる。
104 名前:日公 投稿日:2002年07月01日(月)18時57分45秒
 「よっすぃーじゃないの。何してんのよあんた。」
 「いや、生存者を発見しまして。」
 「勝手に別行動とるんじゃないわよ。」
 「ごめんなさい。」
 「ごめんで済めば警察なんかいらないわよ。」
 「そこに転がってるのは?」
 「味方じゃないみたいです。」
 「そんなの見たらわかるわよ。あんたが射殺したの?」

 「はい、Bチームと交戦していたのを見かけてここから逃げようとしていたので。」
 「1人くらい生かしておきなさいよ。どこの誰だかさっぱりわからないじゃないの。」
 「ごめんさい。」
 「まあ、いいわ。それより、さっき生存者見つけたって言ったわよね。こいつらのことは後よ。それにしてもBチームは全滅よ。」
 「そうですか・・・」
 「敵がどれだけいたかわからないけど、相当の敵ね。」

 会話はしばらくの間止まっている。
105 名前:日公 投稿日:2002年07月01日(月)18時58分37秒
 「後藤が見かけないわね。」
 「ごっちんは校舎の外で助けました。多分Cチームのところに帰ってると思います。」
 「何でそんなところにいるのよ。」
 「さぁ?」
 「さぁってね・・・・」

 保田はため息をつく。

 「それでよっすぃー、生存者は?」
 「この教室にいるはずだと思うんですが・・・」
 「敵と勘違いしてるってことはないわね。」
 「多分・・・」
 「生徒かどうかはわからないから、十分用心しときなさいよ。」

 保田は教室の戸をノックした。
106 名前:日公 投稿日:2002年07月01日(月)18時59分29秒
 「誰かいるの?警察よ。あんた達を助けにきたわよ。でてらっしゃい。」

 「警察みたいよ。」

 紺野の目が輝きだす。

 「まだ信用しきれないのよね・・・」

 小川は出ていいものかとまだ判断に迷っているようである。

 「本当にここにいるの?」
 「そうだと思うんですけど。安心して。もうお化けは全部やっつけたからね。」

 吉澤も教室の中に呼びかける。

 「この人なら安心みたいね。念のためここで待ってて。」

 小川はモップを携えながら、教室の扉を少しだけ開けて外をのぞきこんだ。

 「どうして私じゃなくて吉澤だとすぐに出てくるのよ。」

 保田は小声で呟いた。
 たまらず後ろにいる他の隊員たちが苦笑する。
 すかさす保田が振り返ると、すぐさま隊員たちは笑うのをやめた。
107 名前:日公 投稿日:2002年07月01日(月)19時00分17秒
 小川はどうやら警察と判断したようで廊下へ出た。

 「あなたここの生徒?」

 吉澤は小川の手を握る。

 「ええ・・・」

 小川はまだ少し警戒しているのか、
 隊員達の顔を1人ずつ確認するように見ていく。

 「大丈夫、警察だから。怖かったでしょ。もう心配しないでね。
 私達がついてるからね。」

 小川はようやく安心したのかほっと一息をついたが、まだ表情は険しい。
 保田は年端もいかない少女が大人でも平常心を失うような状況でこれだけ冷静にいられることを感心していた。
108 名前:日公 投稿日:2002年07月01日(月)19時01分21秒
 「生き残りはまだいるの?」
 「中に2人います。でも1人は重傷ですぐにでも手当てをしないと。」
 「あんた名前は?」
 「小川麻琴です。」

 教室の中では紺野が加護の手を握りながら心配そうに保田と小川の顔を交互に見る。

 「警察ですか・・・?」

 紺野は勇気を出して第一声を出して保田に尋ねた。

 「そうよ。もう大丈夫よ。お友達は大丈夫?」
 「呼んでもさっきから返事がなくて・・・」

 紺野は緊張の糸が切れたようにボロボロと大粒の涙を流し始めた。

 保田はすぐに加護の容態を見た。

 「大丈夫よ。意識はないけど、心臓は動いているわ。
 すぐに手当てすれば助かるわよ。」
 「本当ですか・・・」

 紺野は泣きすぎるあまりにうまく声が出せないでいる。
109 名前:日公 投稿日:2002年07月01日(月)19時02分10秒
 「急いでケガ人連れてここを出なさい!」

 保田が指示で隊員たちはケガ人を担ぎ上げて動き出した。
 吉澤もそっと加護を抱き上げて教室を出て行く。
 隣では心配そうに紺野が並んで歩く。

 「何やってんの。あんたも早く行きなさい。」
 「いや、ちょっと色々気になって。」

 吉澤はきょろきょろと落ち着かない様子でいる。

 「あんた、人撃ったの初めてだっけ?」
 「え、ええ・・・・」

 保田は紺野と小川についてくるように促した。
110 名前:日公 投稿日:2002年07月01日(月)19時03分04秒
 廊下に出ると前方からゾンビが1体向かってきた。

 「まだいたのか。」

 保田は苦虫を吐き捨てるように言って腰から拳銃を取り出した。

 紺野はゾンビのお団子頭を見てすぐに気がついた。
 すっかり変わり果てているが辻であることは間違いない。



 「は・・・・ら・・・・へ・・・・・た・・・・」



 保田が引き金を数回引くと辻、いやゾンビは血を噴出しながら倒れた。


 紺野は耳をふさぎずっと目を閉じたままであった・・・・・


 第3章―突入― 終了
111 名前:ヤグヤグ 投稿日:2002年07月07日(日)18時08分02秒
あいぼんが助かって良かったー!
圭ちゃん&よっすぃー、かっけーっす。
112 名前:日公 投稿日:2002年07月07日(日)23時13分07秒
 金曜日の更新といいながら用事が入ってほとんど遅れ気味・・・
 なんとか週末中にはできるようにします。

 ≫111

 あいぼん助かって良かったすね。(私が書いてるのにとツッコミはなしで。)
 特に私が誰押しかは明らかにしません。
 もし言ってしまうと、皆さん自然に先が読めてしまうと思いますので。
113 名前:日公 投稿日:2002年07月07日(日)23時15分09秒
 第4章 ―束の間―


 辻の声が聞えてくる。

 「このケーキおいしいよ。」

 「辻ちゃん・・・?」

 紺野は辻の方向に向かって行く。

 「辻ちゃん、食べすぎちゃだめだよ。」

 「だって・・・は・・・・ら・・・・へ・・・・た・・・・・」

 辻の体全体の皮膚がみるみる膨れ上がりゾンビになっていく。

 「先輩・・・私の心臓どこいったんですか・・・・」

 生首だけの新垣が泣きながら紺野に訴えかける。
114 名前:日公 投稿日:2002年07月07日(日)23時15分44秒
 「紺ちゃん・・・・さっきから私の内臓がはみでるんだよ・・・」

 高橋が内臓を必死に自分の裂けた腹に押し込もうとしている。
 左の頬は骨が剥き出しになっている。

 「は・・・・ら・・・・へ・・・・た・・・」
 「先輩・・・私の手はどこにあるんですか・・・」
 「さっきから顔がすーすーするんだけどなんで・・・」

 3人が一斉に近づいてくる。

 「いやー!!!」

 紺野は悲鳴を上げながら起き上がった。
115 名前:日公 投稿日:2002年07月07日(日)23時16分40秒
 あの惨劇の後、加護は病院へ運ばれ紺野も診察を受けて異常がないことがわかるとパトカーで家に送ってもらった。
 家へ着くと両親が泣きながら玄関に出迎えにきた。
 風呂を沸かしてくれていて、入るといくらか疲れは取れた。
 食事も用意していてくれたが、さすがに食べる気はしない。
 あんなものを見た後では。

 時計を見ると午前8時を指していた。
 いつもなら母親が起こしにきているはずである。
 遅刻だと慌てて布団から出たが、
 冷静に考えれば死にかけた我が子を1日位学校を休ませようと思うのが親心であろう。
 それにあんなことがあれば臨時休校になっているであろう。
 仮に学校が普通にあっても、友人が目の前で惨たらしく殺されたところになどは行きたくない。

 一息ついてベッドの布団に潜り込んで、昨日の事を忘れようと目を閉じた。
 当然といえばそうだが、まだ疲れは残っている。
 再び眠るまで時間がそんなにかからなかった。
116 名前:日公 投稿日:2002年07月07日(日)23時17分36秒
 「いい加減に喋ったらどうだ。」

 光が差し込まない無機質な部屋に1人は白衣を着た女性が、
 椅子にロープで動けないように縛り付けられている。
 ゼティマ学園教師の福田がどういうわけがここで、
 複数のスーツを着た連中に囲まれている。

 「あんたね、警察でしょ。今の日本でこんな尋問許されるわけ。」

 福田はつまらなそうな顔をして悪態をつく。
 昨日から寝ることも許され尋問が続いて疲弊しきっている。

 「国からお墨付きだから大丈夫よ。」

 髪を短くした男性的な印象を受ける女性が静かに冷たく言い放つ。

 警視庁公安部の市井紗耶香警視。

 彼女のような若さで警視という肩書きがあるのはいわゆる彼女がキャリア組であるからである。
117 名前:日公 投稿日:2002年07月07日(日)23時18分35秒
 「ゼティマ学園にソンビどもが出てきたのもあんたの仕業でしょ。UFAといい、何を企んでるんだか。でもあんたは会社を追い出された身分か・・・」
 「好き勝手言って証拠がないでしょ。」
 「だから聞いているんでしょ。」
 「無茶いうわね。」
 「どこに隠しているの?れいの資料は・・・」
 「ばかね。何度言われても知らないわよ。」
 「しょうがないわね。」

 市井はやれやれという表情で、隣にいる黒服の男に合図を送った。
 黒服の男ももちろん刑事である。
 その男はスーツケースから注射器を取り出した。

 「自白剤だけど死ぬことはないから。言わなくてもわかってるか。」

 黒服の男は福田の腕をとって注射を打ちこんだ。

118 名前:日公 投稿日:2002年07月07日(日)23時19分28秒
 「言うわけないでしょ・・・・」
 「まあ、しばらくしたら言うでしょう。」

 福田が徐々に鬱状態になっていく。

 「・・・・学校にある私の部屋にあるパソコンに・・・ロックされていて・・・パスワードは・・・『NEVER FORGET』」
 「へえ、意外に前向きなパスワードだね。ゼティマ学園へ行く。車の手配を。そいつを逃げないように見張ってろ。」
119 名前:日公 投稿日:2002年07月07日(日)23時20分31秒
 「言うわけないでしょ・・・・」
 「まあ、しばらくしたら言うでしょう。」

 福田が徐々に鬱状態になっていく。

 「・・・・学校にある私の部屋にあるパソコンに・・・ロックされていて・・・パスワードは・・・『NEVER FORGET』」
 「へえ、意外に前向きなパスワードだね。ゼティマ学園へ行く。車の手配を。そいつを逃げないように見張ってろ。」

120 名前:日公 投稿日:2002年07月07日(日)23時21分07秒
 市井は数人の護衛を引き連れてゼティマ学園に乗り込んだ。
 ゾンビは全滅させたとの報告は受けたが、念には念を入れる。
 そもそも護衛は市井が希望したのではなく、市井の上司がわざわざつけた。
 将来自分の上に立つ人間に万が一のことがあってはとの配慮からである。

 ゆくゆくは警察庁に入り、官僚になることが約束されているエリートである。
 しかしキャリア特有のことなかれ主義は一切もたない。
 現場の刑事顔負けの洞察力で自らが陣頭に立ち、捜査を指揮する。

 彼女は公安部でもテロ対策のエキスパートである。
 よってその捜査振りが表沙汰になることは滅多にない。
 ほとんどが隠密行動である。
121 名前:日公 投稿日:2002年07月07日(日)23時21分55秒
 市井は目的の場所らしきところにやってきた。
 飾り気のないドアが立ちはだかる。

 「ここで待っていろ。」
 「しかし。」
 「いいから」

 市井は護衛を制止し、拳銃に弾が入っているかを確認してから1人で部屋に入っていった。
 部屋の中は何者かが侵入した後で、書類があちらこちらに散乱している。
 ゾンビが本能のままに荒らしたというよりは、人間が何かを探して散らかしたという様子である。

 「やっぱり遅かったか・・・」

 無傷のパソコンを見つけたもののすでに初期化されておりデータは残っていなかった。
 市井は眉間にしわを寄せながら部屋から出てきた。
122 名前:日公 投稿日:2002年07月07日(日)23時22分42秒
 「そうだ。SATとの戦闘で死亡した迷彩服の連中の身元はわかったのか。」
 「いえ、全くわからない状態です・・・」
 「そうだろな。」
 「何か警視はわかってらっしゃるような話し方ですが。」
 「それがわかったら苦労しないんだよね。」

 市井はけろっとした表情で答えた。

 「彼らの所持品で何か変わった物は?」
 「今のところ資料と見られるようなものは何も・・・」
 「そっか、連中で生き残ったのが持って帰ったか、それとも・・・・いっか。やめておこう。」
123 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)09時12分36秒
いちーちゃんはいくつなんだろ?
続きが気になる
124 名前:日公 投稿日:2002年07月15日(月)03時45分11秒
 更新毎の量が少ないので多めに取りたいと思い、
 申し訳ありませんが今回はお休みします。

 ≫123

 ありがとうございます。
 市井に限らず人物の年齢は年の差以外はあまり気にしないでもらえたら。
 福田が教師役と色々微妙なもので(汗
125 名前:やぐちゅ〜みっちゅ〜狂患者 投稿日:2002年07月17日(水)00時15分01秒
更新お疲れさまでした。
刑事の裕ちゃんに、警察庁のあっちゃん、公安の市井ちゃん☆
卒業した明日香まで!オールキャストだ☆

この後はどうなるんだろう?
学校が館だとしたら、次は明日香のせいでM市全域が?

私のところでも、ちょい役ですが明日香が登場します。
126 名前:日公 投稿日:2002年07月31日(水)01時30分45秒
 放置状態で申し訳ありません。
 現在のところ再開は8月10日頃を予定しています。
 ごひいきにしていただいている方には大変ご迷惑をおかけします。

 ≫125

 ありがとうございます。
 私自身は旧メンからのファンですが、
 現在も好きなので全員を登場させたいと思っています。
127 名前:日公 投稿日:2002年08月18日(日)22時56分08秒
 久しぶりの更新です。
 量がしょぼいのでsageでいきます。
128 名前:日公 投稿日:2002年08月18日(日)22時56分57秒
 中澤は安倍の死を悲しむ間もなく事後報告の処理に追われた。
 止めたはずの煙草を再び吸い始めた。
 居酒屋のオヤジのようにセブンスターの箱を自分の机に積み重ねている。
 
 「こら、裕子!吸いすぎだって!」

 背中に甲高い声が響く。
 中澤は頭を掻きながら後ろを振り返る。
 金髪で小さな体にスカジャンにジーパンとラフな格好の女性が立っている。

 「矢口やないか。」
 「よう、久しぶり。」
 「あんた何してんのや。」
 「何ってM市がこういう状態だから助っ人にきたんでしょ。」
 
 矢口真里は中澤の以前の部署で相棒であった刑事である。
 そして安倍とは警察学校時代の仲間でもあった。

 「なっちは・・・」
 「そうや、矢口」

 中澤は矢口の話す言葉を途中で遮るように話し出した。
129 名前:日公 投稿日:2002年08月18日(日)22時58分31秒
 「なっちがおらんから、今度は矢口に相棒になってもらうで。」
 「勝手に決めちゃっていいのかよ。」
 「こんな状態で命令系統も無茶苦茶や。いちいち上司の許可なんかもらってられっかいな。」
 「さすが裕ちゃん。それにしてもさ・・・」

 矢口もポケットから愛用の煙草のセーラムを取り出して火をつける。
 
 「やっぱ今回の件はUFAが絡んでるのかな?」
 「なんといえんわな。この街自体がUFAのものやから捜査もやりづらいし。」
 「けど、このままじゃなんか許せないんだよね。」
 「慌ててもしょうがない。落ち着きや。」
 「ちょっと待ってよ。なっちが殺されてんのに平気なの!」

 矢口は頭を掻きながら立ちあがる。右手にもつ煙草はほとんど吸われないまま灰だけが増えつづける。

 「悔しくないのかよ!」
 「チャンスがくるから待て。」

 中澤は穏やかに言いながらも目で矢口に座れと促す。
 その迫力に圧倒されて矢口も黙って座る。

 周囲ではオフィスの電話が鳴りっぱなし、職員がその対応に追われている。
 続けるように中澤の机の電話も鳴り出す。
 中澤は面倒くさそうに受話器を取る。
130 名前:日公 投稿日:2002年08月18日(日)22時59分17秒
 「はい中澤。」
 『中澤さんにお話したいとと電話がきたのですが。』
 「誰から?」
 『それが名前を聞いても教えていただけなくて・・・』
 「いたずらかいな?まあ、ええよ。繋いでちょうだい。」
 『それじゃお繋ぎしますね。』
 
 保留のメロディがしばらく流れる。
 中澤は受話器を耳に傾けたまま、煙草を再び口にくわえて火をつけた。
 一口吸って煙を吐いたところで電話がつながった。

 「もしもし中澤ですが。」
 『中澤さんですね。』

 どうやら女性の声のようである

 「何の用?うちも忙しいからイタズラなるすぐ切るで。」
 『昨日の事件のことに関してといえばどうですか。』
 「わかった。じっくり聞かしてもらおうやないか。」
131 名前:日公 投稿日:2002年08月18日(日)22時59分58秒
sageでいこうと思ってたら間違ってageてしまいました。・・・
132 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月24日(土)17時40分32秒
誰だ!?裕ちゃんにタレコミ電話してきたのは!?
133 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月31日(土)15時59分42秒
(・e・)ノ<ここまで読んだ…ラブラブ
134 名前:nanasi 投稿日:2002年09月16日(月)08時13分47秒
hozen
135 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月01日(火)21時01分03秒
保全
136 名前:nanasi 投稿日:2002年10月18日(金)21時52分47秒
hozen
137 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月26日(土)17時45分10秒
保全
138 名前:名無し 投稿日:2002年11月30日(土)15時11分02秒
保全

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