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Dearest

1 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月28日(火)18時00分51秒

今更ながらの2期メン+飯田です。

2 名前:Dearest 投稿日:2002年05月28日(火)18時01分37秒
ずっと、変わらないでいられるかな。
同じ気持ちで、いられるかな。

これからもずっと一緒かな。




3 名前:Dearest 投稿日:2002年05月28日(火)18時03分01秒
ヤグチには、2人の幼馴染がいる。
姉妹みたいなモンだ。長女、次女、三女みたいな感じで、3人年が違う。
ヤグチは、プリティーでセクシーな、次女。ちなみに今年ハタチ。
身長がめっちゃ小さいせいで、今年ハタチってつってもなかなか信じてもらえないんだけど。

じゃあ、長女の役割をしてくれる幼馴染ってのは、どーゆー人か。
保田圭っていって、名前は男みたいだけど、ちゃんと女。
年は、今年22。でも中身はオバチャンだ。
ハマってるのは軟骨と白子だとか。
そんな好みと趣味にはついていけないけど、思いやりがあるとってもいいお姉ちゃんだ。
ヤグチと同じく焼き肉が好きで、よく食べに行ったりなんかしてる。
4 名前:Dearest 投稿日:2002年05月28日(火)18時03分36秒
そして、三女。
…昔は、可愛かったのに。
いっつも人の後ろついてきて、寂しがり屋で、泣き虫で。
今じゃ、人の後ろどこか、誘ってもついて来なくて。
真っ暗にしたら夜寝れないトコは相変わらずみたいだけど、ちっちゃい時みたく泣くことは見なくなった。
そんな可愛かった妹的存在の名前は、市井紗耶香。
いかにも女の子、なんて外見を一変して、今じゃ女に大人気の、男みたいな女の子。
ヤグチ達と同じく焼き肉が(…いや、肉が)好きな紗耶香だけど、一緒には食べに行かない。
5 名前:Dearest 投稿日:2002年05月28日(火)18時04分09秒
「だってさ、誘っても、『矢口のオゴリだったらいいよ』なんて言うんだよ!」
「いいじゃない、奢ってあげたら」
「ヤダよ! だってムカツクもん」
「アンタも心が狭いわねぇ」
「……」
ジュージュー肉を焼きながら、圭ちゃんと紗耶香の悪口。
…つっても、ヤグチが一方的に愚痴ってるだけなんだけども。
「なに? 圭ちゃんはむかつかないのぉ?」
「だってあたしは大人だもん」
「ヤ、ヤグチだって大人だし!」
「じゃあ、大人として可愛い妹的存在に奢ってあげなさいよ」
「……アイツ、可愛くないから却下」
――って、こんなこと言う自体、大人じゃないのか。

そもそも、圭ちゃんは紗耶香にまだ懐かれてるから許せるんだ。
ヤグチなんか、懐かれてるどころか、ナメられてるもん。
6 名前:Dearest 投稿日:2002年05月28日(火)18時04分46秒
「昔はさ、そりゃ可愛かったよ。でもアイツ、変わったもん!」
「そ〜お? 全然変わってないよ。まだまだお子ちゃまなトコとか」
「お子ちゃま? さやが? ドッコが〜…大人ぶってんじゃんか」
「ぶってるだけでしょ? まだまだアイツはお子ちゃまだね」
「……ふーん」
それは、圭ちゃんの前だからじゃないの。
…そう言おうとして、やめた。
口にするとなんだか、負けてしまったみたいで。

身体だけおっきくなって、顔もカッコよくなって。
「やぐっちゃん」、なんて呼んでた呼び名も、いつのまにか「矢口」になって。
圭ちゃんは、いつまでも「圭ちゃん」なのに。
なんだかヤグチだけ、紗耶香に拒絶されたみたいだ。
だって現に、ヤグチはお子ちゃま紗耶香を見ていない。
7 名前:Dearest 投稿日:2002年05月28日(火)18時06分10秒
おいしそうにハラミをほうばる圭ちゃんが、なんだか憎らしい。
ヤグチには見せなくなった紗耶香を見てるってのが、なんだか羨ましい。
「ねぇ、圭ちゃんはさぁ…」
「ん?」
ちょっと待ってね、と手で制し、ゴクンとハラミをおいしそうに腹に入れてから、改めてヤグチを見る。
「なに?」
「…別に、たいしたことじゃないけどさ」
「うん」
「圭ちゃんは紗耶香と、最近遊んでる?」

ヤグチが紗耶香と最後に遊んだのって、いつだろう。
すぐに答えが見つからないほど、前のような気がするぞ。
だけど圭ちゃんは、すぐに答えが見つかる。
8 名前:Dearest 投稿日:2002年05月28日(火)18時07分01秒
「うん、おとといかな。紗耶香がバイト先来て、バイト終わってからちょっと遊んだ」
「うそっ」
「どうしてウソつかなきゃいけないのよ」
苦笑する圭ちゃん。
「矢口は?」
「へ?」
「紗耶香といつ遊んだ?」
「え、っと…………ずっと、遊んでない」
呟いて下を向く。
圭ちゃんの笑いが消えたのが、見えた。
「……ま、矢口友達多いしね」
「…そ、そうなんだよ〜、ヤグチ人気者だからさ! 生意気な妹の相手してる暇はないのさ〜、キャハハ」

でもさ、たまには幼馴染全員集合で遊ぼうよぉ、なんつって。
実現なんか、しないだろうけど。
…もちろんそれは、言ってない。
9 名前:Dearest 投稿日:2002年05月28日(火)18時07分37秒
友達には、「矢口って悩みなんかないでしょー」とかってよく言われるケド。
ヤグチには、最近悩みがあります。

それは、………どうしてタン塩がこんなにおいしいのか。


………………………じゃなくって。


ヤグチは紗耶香に、嫌われているんでしょうか?

それが、悩みだったりします。




10 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月28日(火)18時08分14秒
特に意味はないのですが、更新分隠し。
11 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月28日(火)18時09分18秒
新スレッドなのでしょうがないのですが、
こんなのが青板の一番最初で、恥ずかしいです。
12 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月28日(火)18時09分47秒
それでも見てくれる人を願って。
更新、以上です。
13 名前:ヤグヤグ 投稿日:2002年05月28日(火)23時23分03秒
2期メンヲタの私にとっては、最高の組み合わせです。
頑張って下さい。
14 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月28日(火)23時57分12秒
べっつに、恋人でもなければ、好きな人でもない。
だけどヤグチ達は、幼馴染で。
じゃあ幼馴染だからそんなに気になるのか、って言われたら、悩むケド。
でも、圭ちゃんには懐いててヤグチにはこっちが話し掛けないと話してくれないっていうのも、ムカツク。

圭ちゃんは、好きなんだ。
紗耶香だって、可愛くないケド、好きだ。
なんてったって、アイドル。じゃない。幼馴染だし。

だけどいつのまにか、ヤグチ、はみってない?
そりゃ、友達はいるけどさ……親友以外に気楽に気も使わない、素の自分を出せるのは、2人だけなのに。
紗耶香はヤグチに、素を見せてくれているか。
そもそも、紗耶香の素って、どんなんなんだろう……。
15 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月28日(火)23時57分43秒
部屋の窓を開けると、目の前の視界には微妙に閉めてるカーテン。
身体をよじって、そのカーテンの隙間から中を見ようと試みる。
「……っし、もうちょっと……ぐぐ…」
少しだけど、テレビがついてるのは確認できて。
テレビがついてるってことは、そこに誰かいるってコトで。
自分の部屋ってことは、素の自分なワケだから。

だって、ヤグチに見せてくれないんだもん。
ちょっとくらい、覗くだけだったら、いいよね。

頑張って頑張って、身を乗り出して。
幼馴染で家が隣で部屋も隣なんていう都合いい部屋設定を利用して。
バカなこと、考えたのはいいんだけど。

「よっ、…と、と……って、ぎゃーー!」

――身の乗り出し過ぎで、窓から落ちそうになる事件が発生。

16 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月28日(火)23時58分13秒
「な、なんだよ!?」
プリティーでもセクシーでもない声を聞きつけて、カーテンを、そして窓を開ける素の紗耶香。
……なんか、そんなあっさり開けてくれたら。
今までのヤグチの苦労、すっごい虚しいんですけども。
………なんて、悲しんでる場合ではない。

「さ、さやっ! ちょと助けてっ」
「……や、っていうか、何してんの?」
うんうん、分かるよ。その気持ちは分かるよ。
そりゃ、いくらヤグチの前で大人ぶってる紗耶香でも、ビックリするよね。
変な声が聞こえたと思ったら、窓のふちでかろうじて下に落ちることを留まってるヤグチを見たら。
…でもさ、その前にさ、

「………お願いします、助けてくださいぃぃ……」


17 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月28日(火)23時58分50秒
***

「自殺願望があったなんて、知らなかったよ」
矢口真里救出を終えた紗耶香の第一声は、心配よりまずコレだった。

「――アホかっ!」
「いたっ!」
「どうせ自殺するなら、もっといい自殺方法考えるわ!
何が悲しくて、家の窓からあんな情けないカッコで死なにゃならん!」
「…助けた恩人殴った……」
「な、なによ。脅す気!?」
「………別に」
ツン、と顔を反らして、不機嫌そうに呟く。
…違う、こんなコト言いたいんじゃなくって。

「………助けてくれてアリガト」

顔を真っ赤にして言ったのを知られたくなかったら、小さい声で俯いて言って。
面と言えたら、いいのに。
言い終わってから顔を恐る恐る上げると、
不機嫌そうだった紗耶香の顔が、一瞬だけどとっても嬉しそうに見えた。
18 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月28日(火)23時59分25秒
でも、一瞬なんていうのは、1秒にも満たなくて。
ヤグチの前での“いつも”になった、比較的無表情に戻る。
……昔の“いつも”は、笑顔だったのに。
圭ちゃんの前では、やっぱり笑顔なんだろうか。

「…っていうか自殺するつもりじゃなかったら、何してたの?」
「え」
「新手の遊び?」
「どんな遊びだよっ!」
「分からないから聞いてんのに…」
「べ、別にいーじゃん!」
ああ、可愛くない。
普段は可愛くて可愛くてしょうがないのに、どうしてコイツの前では可愛くなくなるんだろう。
誰が見ても可愛いヤグチを目指してるオイラにとって、絶対付き合っちゃいけないタイプだね。
……って、付き合わないけどさ!
19 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月29日(水)00時00分05秒
そ、そもそもヤグチは理想が高くって。
目指せ!好奇心旺盛な少年タイプ!
……って、あわわわ。ちょっと被ってんじゃん紗耶香と!
でもでも、紗耶香女だし。
でも紗耶香、女にモテてるし。
いやっ、ヤグチは女だけど紗耶香なんか………

「………しもーし。矢口、おーい」
「!!!」
「意識が何処かに飛んでたみたいですが、頭の中は大丈夫でしょうか」
「なっ……」
我に返ると、ちっちゃい頃の可愛らしい顔とは一変した、オトコマエの紗耶香の顔。
つい動転しちゃって、思わず突き飛ばしてしまった。

「………なんか、市井は嫌われてるみたいで」
いったいなぁ、もう、と腕をさすりながら、立ち上がる。
「…別にさ、いいけどね」
「ちょっと…」
「変わらないでいる、なんて事は、無理なんだから」
「さや何言ってんの…? 別にヤグチ、さやのコト嫌ってなんか…」
「まあなんにしろ、無事でよかったっす」
「はぁっ? ちょ、さやか…」

――何なんだ、一体。
嫌われてるのは、こっちの方じゃないか。


20 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月29日(水)00時00分37秒
もう一度更新してみたり。
21 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月29日(水)00時01分14秒
……暇なんです。
22 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月29日(水)00時03分08秒
>>ヤグヤグさん

見て頂いてありがとうございます。
私も2期メン好きなんで、頑張ります。
23 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)01時41分34秒
お、新作ですね♪
オイラも二期メン押しなんで、期待しています。
24 名前:Dearest 投稿日:2002年05月29日(水)08時40分07秒
「アンタ達、喧嘩したのぉ?」
「喧嘩なんてもんじゃないよ。一方的に紗耶香が言い逃げしただけ」
幼馴染で家が近所のヤグチ達の、最寄駅前のファーストフード店兼圭ちゃんのバイト先にて。
モグモグとポテトをヤケ食いしながら、バイト終わりの圭ちゃんにまた愚痴る。
「ヤグチなんも悪いコトしてないもん。なんでだか勝手に紗耶香が怒っただけ」
「勝手にって……紗耶香は意味もなく怒る子じゃないでしょ」
「昔はそうだったけど、今は意味もなく怒る子になったんだよ」
「……怒らないよ、今も」
「っ…」
…そうだよね。圭ちゃんは紗耶香の「今」を知ってるもん。
どうせヤグチだけ、知らないもんね。

意味もなく、紗耶香は怒る子じゃない。
「今」もそうなんだとしたら、じゃあ何?
ヤグチが何したっての。だってあの場には、ヤグチしかいなかったじゃん。
25 名前:Dearest 投稿日:2002年05月29日(水)08時40分46秒
急に顔を近づけるから、ビックリして突き飛ばした。
流れを適当に説明して原因を突き止めてもらおうと思ったら、圭ちゃんが反応したのはそこだった。
「そりゃ、アンタが悪いわ」
「はあ〜? なんでっ」
「なんでって…。どうしていきなり顔近づけたからって、突き飛ばさなきゃいけないの」
「それは……」
ちょっとヤグチの理想のタイプに似てたからとか。
女だけどオトコマエなその顔にドキッとしちゃったからだとか。
…い、言えない。

「で、でもさっ、それだけで怒る!?」
「…怒るよ。あの子繊細だもん」
「繊細だからって……相手はヤグチじゃん。
幼馴染だし、気心なんか知れてるのに……」
…もっとも今となっちゃ、紗耶香の気心なんかヤグチにはわかんないけど。
「…なんか、紗耶香の思ってること、全然わかんないよ」
思わず、本音が口に出てしまった。
26 名前:Dearest 投稿日:2002年05月29日(水)08時41分22秒
ヤグチの本音を聞いて、圭ちゃんは微かに笑う。
そして、言うんだ。
「紗耶香は、昔と全然変わってないよ」
――なんて。

ドコがだよ。
めっちゃ変わってんじゃん。

「…ただ、アイツはまだまだお子ちゃまだからさ」
「…………」
「紗耶香も矢口のこと、わかんないって言ってたよ。
……きっと、お子ちゃま同士だからわかんないんだね」
27 名前:Dearest 投稿日:2002年05月29日(水)08時41分59秒


なんだよ、それ。
余計、わかんないし。
オバチャンの言葉は、お子ちゃまなオイラには、難しすぎるんだ。


28 名前:Dearest 投稿日:2002年05月29日(水)08時42分39秒
***

バイトをしてても、気分が乗らない。
なんか、憂鬱。
バイトなんか、来なきゃよかった。
そう思ってると、すぐ横から怒鳴り声。

「矢口さん! レジ! お客さん!!」
ものすごい短くて簡単な言葉だけれど。
要点は、ばっちりだ。
「うぉお!?」
色気も何にもない声で驚いてみる。
見ると、そこは行列。
慌ててイライラしてるお客さんのカゴから商品を取り出してレジ打ちしようとするんだけども。
でも、焦ってはいけない青春。
固定したハズなのに、焦ってるため商品が下に落ちちゃって。
「〜〜〜っ! もういい、私がやるから矢口さんもう上がって!!!」
主任に言われ、素直に「ハイ…」と言う通り。
29 名前:Dearest 投稿日:2002年05月29日(水)08時43分15秒
あ〜あ、どうせ明日バイト行ったら、多分クビって言われるんだろうな。
だったらもうこのまま辞めちゃえ、なんて、非常識なことを考えてみる。
…ウソだよ、ちゃんと行くよ。
こう見えても、マジメなんだから。ヤグチは。

こう見えても、頭いいし。因数分解得意だし。
こう見えても緊張だってするし。隠れ緊張屋さんなんです。
こう見えても、オトメだし。セクシーにギャルに憧れるし。
こう見えても、気にしいだし。紗耶香のこと気になって気になって仕方ないし。

ってか、なんでアイツのことで悩まなきゃいけないんだ、バカ。
いつヤグチが紗耶香のこと嫌いなんて言った、バカ。
バカバカバカ。

「紗耶香のバカ〜!!!」

30 名前:Dearest 投稿日:2002年05月29日(水)08時44分01秒
あまりにも腹立って。
ご近所迷惑かえりみずに、家に入る前に叫んでやる。
だけど、しまった。
そのご近所には、そのバカ紗耶香の家があったのだ。

「どうせなら聞こえないように言え、やぐっちゃんのアホ!!!」
「あ……」

…これ最悪。
紗耶香の部屋の、もう1つある窓が空いてたみたいで。
やぐっちゃんのアホ、って。
…? やぐっちゃん!?

「やぐっちゃん、って何年振り…?」
ビックリして、尋ねてみる。
2階の紗耶香の表情は、あんましはっきりとは見えないけど、しまった、なんて顔。
「む、昔の名残だよっ」
「今までその名残の「な」の字すら見せなかったクセに!」
「ど、どうでもいいじゃんか!!!」
顔を赤くして、ガンと窓を閉める。
けどその時に「ぐわわっ」となんとも言えない声が聞こえたと思ったら、
も1度ガラっと窓を開けて、閉める。
なんだろうと思ってカーテンを閉めてない丸見えの窓をじっと見てると、片手を押さえて悶えてる紗耶香の姿が。
31 名前:Dearest 投稿日:2002年05月29日(水)08時44分42秒
……どうやら、ガン、と閉めたと思ったら、指を挟んでたみたいで。
そしてもう一度窓を開けて、挟まれた指を抜いて、と。
――あぁ、やっぱりバカは変わってない。
昔からアイツは、あんなヤツだ。
「バカなヤツ……」
そして、バカなヤツほど、可愛かったりするんだ。

やぐっちゃん、なんて、本当にひさしぶりに聞いた。
あんなバカな姿、本当にひさしぶりに見た。
どうして今まで、言ってくれなかったんだろう。
どうして今まで、見せてくれなかったんだろう。
今日みたいなアクシデントがなければ、聞くことも見ることも出来なかった。

ヤグチは、「今」の紗耶香を知らない。
ヤグチが知ってるのは、「昔」の紗耶香。
今も昔も、幼馴染なのは変わりないのに。


あんなバカな紗耶香を見ることが出来るのは、もう二度と来ないんだろうか。



32 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月29日(水)08時45分31秒
2期メン好きです。
33 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月29日(水)08時46分05秒
中でも矢口が、一番好きだったりします。
34 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月29日(水)08時47分06秒
>>23さん

ありがとうございます。頑張ります。
35 名前:名無し 投稿日:2002年05月29日(水)14時44分12秒
こういうのって久しく見なかったから超期待してます。
それと作者さんのレスがいちいちツボなんですけど(ワラ
36 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)18時02分29秒
>「紗耶香も矢口のこと、わかんないって言ってたよ。
……きっと、お子ちゃま同士だからわかんないんだね」

全てを分かってる風な、大人な圭ちゃんが良いですね。
37 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)01時55分21秒
圭ちゃんとヤグチ、どう違うんだろう。
違う所を挙げるとしたら、まず、年。性格。顔。…当たり前。
それに、圭ちゃんにはヤグチみたいにセクシーさはないし。
でもヤグチには圭ちゃんみたいにオバチャンでもないし。
……なんて、些細なコトから大きなコトまで、いっぱいだ。
でも、一緒なのは1つ。

どっちも紗耶香とは、幼馴染なんだ。
38 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)01時55分56秒
小さい頃から、紗耶香のコトはホントの妹みたいに可愛がってたし、
家に泊まりに来た時も、電気真っ暗にして寝れない紗耶香に合わせて、明るいままで寝てあげたし。
自分で言うのもなんだけど、いいねーちゃんじゃん、ヤグチ。
そして、これからもいいお姉ちゃんのハズなのに。
紗耶香がおっきくなるにつれて、いいお姉ちゃんの役割は、圭ちゃんに代わってしまった。

ヤグチとは遊んでくれない。
ヤグチには相談してくれない。

ヤグチ、何かした?
紗耶香がもう、ヤグチにはわかんないよ……。

39 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)01時56分28秒
なんだって、知ってるつもりだった。
考えてるコトはお見通しのハズだった。アイツ、分かり易いから。
けど最近じゃそれが通用しなくなったのは、ただ単にヤグチの頭が低下したのか、
いつのまにか変わっちゃった紗耶香のせいなのか。
答えなんか、分かるハズがない。

「じゃあ、ヤグチにどうしろと?」
「――へ?」
「…あ、ごめんなんでもない」
イカンイカン。心の中で言ってたつもりなのに、いつのまにか口に出してたみたいで。
目の前には、ポカンとスパゲティを口に入れようとしたままの、親友飯田圭織。
「ごめん、圭織。食べていいよ」
「あぁ、うん」
気を取り直して、口をつける圭織。
シンプルなミートスパゲティが、とってもおいしそう。
……ん? ミートスパゲティ?
40 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)01時57分01秒
「あれっ、圭織、シーフードドリア頼んだんじゃ?」
「………あ、そうだった」
「いや、食べる前に気づけよ」
気付いた途端に、「すいませーん」、と大声で店員を呼び、ミートスパを退いて、ドリアも持ってきてもらうように言う。
「なんかね、味が違うと思った」
「いや、味より前に、形も色も全然違うから」
……彼女は、天然というレベルを超えている。
だから、そんな彼女だから、いくら親友でも何を言うかわかんなくて。
不意に出される言葉に、一方的にこっちがビックリするんだ。

「だからね、カオリ、やっぱり紗耶香のこと好きみたい」
「………………………ハァ?」

…いや、「だからね」って。
誰も、紗耶香の話してないから。
全然話、繋がってないから。
それに、「やっぱり」って何さ。
……………あぁ、疲れる。
41 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)01時57分37秒
「ご、ごめん。なんだって?」
「カオリ、やっぱり紗耶香のこと好きみたい」
「………そーいう告白は、本人を前にしてした方がいいと思うけど」
面識がないワケじゃない。
圭織はヤグチが高1の時からの付き合いで、その時くらいまでは仲がよかった紗耶香と、
圭ちゃんの4人で遊んだりもしていたし。
仲がよくなくなった今だって、圭織と紗耶香はメールも会ったりもしてるみたいだし。
圭ちゃんだけじゃなく、圭織にも負けてるヤグチ。
…………別に、いいもん。

紗耶香は、女の子にモテるし。
圭織が告白したとしても、対応は慣れたもんだろうから、そういう意味では心配はない。
そりゃ、親しい人からの告白に、ちょっとはビックリするだろうけど。
ヤグチだってこんな風にいきなり言われて、そりゃちょっとはビックリしたけど、もう慣れっこだ。
まだ紗耶香と仲が良かった時も、こうして圭織みたいに告白され、紗耶香を紹介してほしいと言われたこともしばしば。
「……いいじゃん、応援するよヤグチ」
「あー、でもさ、カオリ紗耶香に1度振られてるんだよね……」
「え、なんで!?」
42 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)01時59分23秒
っていうか、いつコクったんだよ!
ヤグチさん、かなりビックリ。

「んー……ちょっと前だよ。でも好きな人いるって断わられた」
「好きな人いるの?」
「うん。でも、片想いだって言ってたけど…」
「…へぇ」
でも、片想いだったらチャンスはありじゃん。
圭織のためを思って言ったのに、圭織はフルフルと首を横に振る。
「……無理だよ、多分」
「なぁーんで決めつけんの」
「カオリは多分、紗耶香の好きな人知ってるから。相手は鈍感な人だけど、きっと両想いだと思う」
「――誰?」
「ん?」
「紗耶香の好きな人、誰?」
43 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)01時59分59秒
ヤグチは、知らない。
ヤグチは今の紗耶香のコト、何にも知らない。
幼馴染なのに、知らない。
それとも幼馴染って、こんなモノなんだろうか。この程度なんだろうか。
でも、圭ちゃんは今の紗耶香のコト、知ってる。
知らないのは、ヤグチだけ。
そして誰も、教えてはくれない。

「……んなの、自分で聞きなよ。幼馴染なんだから」

聞けないから聞いてんの。
幼馴染だけど幼馴染の役割が出来てないから、悩んでんの。
44 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)02時00分58秒
「紗耶香見てたら、分かるよ。誰が好きか、って」
「顔出やすいもんね〜、そういうとことかからかいがいあって好きなんだけどさ」
「でもさ、片想いってホントつらいよ〜。まあ紗耶香もつらいんだろうね」

珍しくお喋りな圭織。
誰も、そんなコト聞いてない。
なんだか無性に腹が立って、

「ごめん、帰る」

それだけ言って、席を立つ。
圭織は、うんバイバイ、とヤグチの気持ちを知らないのか和やかに手を振った。
だから余計にムカついちゃって。
最後の圭織の一言が、ヤグチには聞こえなかったんだ。


――だから、早く気付いてあげなよ。


はたしてそれは、誰に向けて言ったのか。
はたしてそれは、何に意図していたのか。

聞こえなかったヤグチには、その真意は掴めなかった。


45 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月30日(木)02時01分35秒
うぎょあぁあぁ!!!
46 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月30日(木)02時02分11秒
……取り乱しましてすいません。
上げてはならないものを上げてしまった…
47 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月30日(木)02時05分42秒
>>35さん

期待されたら、裏切ります。
文章にツボってくれたらこれほど嬉しいものもなかったんですけど、
レスにツボってくれたってのも、嬉しいものです(w

>>36さん

圭ちゃんは大人です。でもまだ処(ry
48 名前:名無し35 投稿日:2002年05月30日(木)02時27分13秒
>47
裏切らないで・・・落ち着いて・・・(w
文章にもツボってますよ。変な言い方して申し訳。
49 名前:36 投稿日:2002年05月30日(木)07時08分11秒
>圭ちゃんは大人です。でもまだ処(ry

大ウケしました!(爆
出来たら、圭ちゃんや圭織も幸せにしてあげて下さいね?
50 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月30日(木)08時06分13秒
続き期待sage
51 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)09時54分23秒
***

ある朝、家の前で紗耶香にばったり会った。
紗耶香がヤグチのこと「やぐっちゃん」って呼んでからは、1度も会ったことはなかったんだけど。
多分それは、奇跡だったんだ。
だって家が隣同士なのに、会わない事の方がオカシイんだから。

「………何、どっか行くの」
「…矢口、にはカンケーない」
「その『矢口』の部分の強調の仕方が怪しい」
「う、うっさいな」
そこ通るんだからどいてよ、と言う紗耶香の言葉に、通させないヤグチ。
ちっちゃい頃は、ヤグチに「どいて」、なんか言ったことなかったのに。
どっか行け、と言ってもついてきた金魚のフン紗耶香だったクセに。
「もう金魚のフンは卒業したの?」
「は?」
「昔は、いっつもヤグチの行くトコ行くトコついてきたクセに」
「……昔でしょ。今もそうだったら、怖いじゃん」
52 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)09時54分54秒
…そうだよ? 今もそうだったら、ウザイ通り越して怖いよ。
けど、いざそうじゃなくなったら、嬉しい通り越して淋しいよ。

「…あの、急いでるんですけど」
「ヤダ。行かせない」
「はあ〜? 何を子供みたいなことを…」
「子供じゃないもん、大人だもん!」
「はいはい」
「っ……」
なんだよぅ、なんだよぅ。
ムカツクんだよぉ、バカ紗耶香。

「なんでそやって、人をナメんのさっ!
いーかげんにしろよな、ヤグチだっていつまでも優しいねーちゃんじゃないんだ!!!」
「は? ちょ、何?」
「昔の紗耶香は、もっと可愛かった! 昔の紗耶香は、もっと優しかった!
紗耶香、今、すっごい変わった!!!」
「…………」
「バカ! アホ! しね!」
「やっ、ていうか……」
「圭ちゃんと圭織とで仲良く3Pでもしてろバカぁ!!!」
「はぁっ!? ちょっとやぐっ――」
53 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)09時55分28秒
グッと大きな涙が込み上げてきて、文句もそれまでにして、ひたすら逃げる。
近所の人と目が合っちゃって恥ずかしかったけど、涙を拭ってる余裕もない。
今はただ、紗耶香から逃げる。

っていうか、今考えると、なんていう捨て台詞だ。
あぁ、恥ずかしい。
でもそれ以上に恥ずかしいのは、言われた紗耶香なんだろうけど。
でも、実際にそれが実現したらどうなる?
……………ヤダ。すっごいイヤだ。
なんか、すっごいすっごいすっごいヤダ。

はみるからヤダ、とかじゃなくって。
ヤグチも入って4Pがしたいんだよ〜、とかじゃなくって。
あああ。何を言ってるんだヤグチは。

紗耶香が誰かと、そーいうことするっていうのがイヤなんだ。

54 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)09時56分03秒
実はもう、しちゃってるのかもしれない。
相手は男か女か、そんなのもヤグチは知らない。
普通に考えれば男となんだけど、紗耶香の場合は女、ってのも十分ありえる。
だけど、どっちにしてもほんとにしちゃったらイヤだ。
ヤグチが言ったことによって、ほんとに実現なんかしちゃったら、ヤダ。

昔は、ヤグチや圭ちゃんの言う冗談を、いっつも真に受けて実行とかしてた紗耶香。
でも今は、昔と違うから。
まさか真に受けて、3Pなんかしないだろうけど。
………でも、ちょっと待って。
圭ちゃん、「紗耶香は昔と全然変わってないよ」って言ってたよね。
それに、「アイツはまだまだお子ちゃまだからさ」とも。
全然変わってない。まだまだお子ちゃま。
ちっちゃい時のまま、なんでも真に受けてた紗耶香のまま。
……いやいやいや。今時まさかまさか。
でもでも。いやいや。でもでも。いやいや。

「――――あぁ、もお〜!」


55 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)09時56分33秒
なんかもう、まず自分がヤダ。
どうして自分の発言でこんなに振り回されなきゃいけないんだ。
じゃあ、ほっときゃいいじゃん。
でもほっといて、ホントになったら困るから、こうして戻ってる。

「っ……バカ紗耶香!」
幸い紗耶香は、まだその場にいて。
急にどっか行って、急に戻ってきたヤグチに明らかにビックリしてる様子で。
「ちょっと待って、そこ動くなよ!!」
「はあ…?」
戸惑ってるようだけど、紗耶香は言う通り動かなかった。

「ハァッ……ハァ……」
「…一体矢口は、何がしたいの」
「…ちょっと待って……息がまだ…」
「……別に、待つけどさ」
意外な言葉。
だってさっき、急いでるとか言ってたのに、待つって。
それになんか、微妙に紗耶香の顔とかも赤くなってるし。
なんでだろう。怒ってるから?
理由はどうあれ、不覚にも、ちょっと可愛いとか思ってしまった。
56 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)09時57分11秒
待つって言ってくれた紗耶香の言葉に甘えて、存分に息を整える。
その間も紗耶香は、動くな、と言ったヤグチの言葉通りに全然動かず。
変わったと思ってたけど、素直に言うこと聞くこんなトコは変わってないのかな。
それともただ単に、動くのがめんどいとか。
……なんでこんなに、気にならなきゃいけないんだ。
「………急ぎの用事はもういいの?」
「ん? あー……でも、やぐっ……ち…の方が急ぎみたいだし」
「じゃあ、ヤグチがゆっくり歩いて戻ってきたんなら、こうして待ってくれなかった?」
「へ?」
「ヤグチが慌てて戻って来なかったら、紗耶香、圭織と圭ちゃんと3Pしてた?」
「す、するわけないだろっ」
「絶対? 絶対しない?」
「っていうか、しとけって言ったのそっちじゃん……意味わかんないし」
そう言って紗耶香は、ため息をつく。

呆れられたかな。アホだと思われたかな。
意味わかんないとは言われたな。
ヤグチ、紗耶香に嫌われてるのかな、やっぱ。
57 名前:Dearest 投稿日:2002年05月30日(木)09時57分48秒
「結局矢口は、何がしたいワケ?」

文句言って、去って、戻ってきて。
何が、したい?
違う、ヤグチはただ――――

「紗耶香が、知りたい」







58 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月30日(木)09時58分38秒
辻加護写真集を買った。
59 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月30日(木)09時59分58秒
その時店員さんが思った気持ち――

「知りたくない」

60 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月30日(木)10時05分05秒
>>名無し35さん

裏切りません。落ち着きます(w
いえいえ。自分が書いたものにツボってくれたことは、レスでもすごく嬉しいことですから(w

>>36さん

圭ちゃんと圭織も幸せに……(^▽^)さんのように張り切って
「梨華頑張る!!」とは言えませんが、頑張ります。

>>50さん

続き更新しました。
61 名前:36 投稿日:2002年05月30日(木)18時15分30秒
>まさか真に受けて、(略

矢口さん?圭織は兎も角、圭ちゃんの意思は?(w
それにしても更新が早くて嬉しいですね。
62 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時17分17秒
別にいいもん、なんて言いながら、実はめっちゃ嫉妬してたヤグチ。
ヤグチだって幼馴染なのに。
圭織よりも、紗耶香とは長い付き合いなのに。
ヤグチは、紗耶香の今を全然知らない。
何考えてるか。何をしてるのか。誰を好きなのか。

「ねぇ、教えてよ。ヤグチ、紗耶香のこと、わかんないよ。
紗耶香、変わっちゃったもん。昔と全然、変わっちゃったもん」
「やぐ……」
「圭ちゃんは、紗耶香のこと変わってないって言う。
紗耶香はずっと、あの頃のままだって言う。でもヤグチの前じゃ、全然違うもん。
……ねぇ、紗耶香はヤグチのこと嫌いなの?
ねぇ、紗耶香の好きな人って誰なの? 顔見たってどうしたって、読めないよ。
圭織は分かったって言ってるのに。ヤグチには、わかんないよっ…ぅ〜…」
「やぐっ……ちゃん」
「っ」

またひさしぶりに、やぐっちゃんと言われた。
そして、初めて紗耶香に抱きしめられた。
63 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時18分01秒
ちっちゃい頃は、抱きしめてあげる立場だった。
だけど今は、年こそ上だけど、身長も体力も何もかも紗耶香の方が上で。

――あぁ、そうか。変わったんじゃなくて、大きくなったんだ。

紗耶香は、何1つ、変わってない。
ただ、大きくなっただけなんだ。
大きくなったことを、変わったと勘違いしていて。
紗耶香がこんなに大きくなってたなんて、傍にいながら気付かなかった。知らなかったんだ。

「うぅ……」
「いちーだって……やぐっちゃんの気持ち、わかんないよ?
でも、抱きしめて今やっとわかった気がする………ごめん、心配させて」

またギュッとされる。
……イヤじゃない。嬉しいよ。

「さやは、変わってなかったんだね…」
「そう、紗耶香は変わってない」
「…え?」
あれ。紗耶香って一人称、「紗耶香」だっけ。
つい今の今まで変わってなければ、「市井」だったハズ。

「ほんと、お子ちゃまな幼馴染を持つと苦労するわ」
「「――って、圭ちゃん!?」」
64 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時18分32秒
慌てて2人、抱きしめてた腕をほどいて離れて。
その間に、圭ちゃんが入る。
「「なななななんで……」」
「なんでって、だってこの周辺はあたしの庭でもあるもの。あたしがいるのも当たり前でしょ」
「「………」」
そうだった、ここは幼馴染3人の集合の場所、家の前だったんだ。

「約束してるハズなのに、紗耶香のバカは来ないし。
で、外に出て見たら、3Pでもしてろって勝手に人の名前出す勘違いバカがいるし」
「ちょっと待って…勘違いバカって」
「もちろん矢口」
「うそぉ!? ちょっと、なんでヤグチが勘違いバカなんだよ〜」
「で、言うだけ言って去ってったと思ったら、また戻ってきてラブシーンしてるし」
「「ってか、見てたのかよ!」」
「見てたわよ! っていうか気付きなさいよ!!!」
「「ご、ごめんなさい……」」
って、なんでこっちが謝らなきゃダメなんだ?
65 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時19分13秒
「ほんっと、アンタ達は昔っから変わってないんだから。
ヤグチは負けず嫌いで素直じゃなくて強がりで」
「それに昔からセクシーだし…」
「…それに、自分をセクシーだと思ってる勘違いバカだし」
「な、なんだとぅ!? セクシーなのはホントだぞっ」
「で、紗耶香は紗耶香で、バカだしすぐ真に受けるし、照れ屋だし恥ずかしがりだし」
「って、ヤグチのセクシー云々は無視かよっ」
「それに………」
チラっと紗耶香とヤグチの顔を見て、微笑む。

「昔っから、矢口の事が大好きで大好きでたまらないとこ、全然変わってないもんね」

……へ………?

紗耶香が、ヤグチのことを?
大好きで大好きで、たまらないって?
………ウ、ウッソだぁ〜。
それを確認するために紗耶香の顔を見ると、もうタコにも負けないくらいの赤に染まっていた。
66 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時19分58秒
「さ、紗耶香、ヤグチのこと嫌いだったんじゃないの…?」
「だ、誰がいつそんなこと言ったんだよ!! や、やぐっちゃんがいちーのこと嫌いなんじゃん!」
「それこそいつ言ったんだよ!」
「だって…近付いたら吹っ飛ばすし……」
「そそ、そんなの、紗耶香が顔めっちゃ近づけてくるから悪いんじゃん!
いちいちそんなので嫌いって真に受けるなよ!」
「ちょっとちょっと、ラブシーンの後は今度はケンカ?」
「うっ……」
タイミングのいい圭ちゃんの止め方に、勢いがなくなる。
そして、しばらく黙り込み。

…ちょっと、整理をしてみよう。
ヤグチは紗耶香のこと、変わったと思ってた。
でも、本当は全然変わってなくて、ただ大きくなってただけで。
なんでもすぐ真に受けたり、照れ屋だったり恥ずかしがりなバカな紗耶香で。
昔と今、全然変わってなくて。
ヤグチのことが、大好きで大好きでたまらないってのも、昔と一緒、っていうワケなんだ。
67 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時20分51秒
でも、それじゃあさ。
大好きでたまらないんだったら、もうちょっと懐いてくれたっていいじゃん。
もうちょっと笑ってくれたっていいじゃん。
もっと遊んでくれたっていいじゃん。
そんなの、大好き、って言えるの?

「だから紗耶香は、照れ屋で恥ずかしがりなんだって。
それに、紗耶香はお子ちゃまだって言ったでしょ? 身体だけ大きくなっただけよ」
「………?」
「もうっ、ホント矢口は鈍感ねっ!」
だから紗耶香はぁ、と頭を掻いて言おうとする圭ちゃん。
だけどそれを、紗耶香が止める。
「…圭ちゃんいいよ。わかんなかったらわかんなかったで別にいいし…。
それに、反応も怖いしさ……」
「…アンタはほんと、昔から同じで意気地なしね!」
もう知らないからね、とプンスカ怒って家へと戻ってく。
取り残されたヤグチ達。
68 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時21分30秒
「圭ちゃん怒っちゃった……」
「そ、そうだね」
「「………………」」
なんとも言えない、妙な雰囲気。
そんな空気の時に、紗耶香の携帯が鳴る。
「あ、ごめん…。……もしもし、あ、圭織?」

時間にしたら1分くらいなんだろうけど、ヤグチにはすごい長い時間に感じられて。
なんだか、胸の奥がウズウズウズウズ。
じっと電話してる紗耶香の顔だけを、見てる。
そして、電話が終わる。

「………圭織んトコ、行くの?」

俯いて。なんでだか、声が歪んで。
胸が、苦しい。
69 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時22分42秒
「……圭織んトコ、行くんだ?」
返事がないことを肯定として受け取ったヤグチはさらに俯く。
「圭織と、付き合うんだ?」
「圭織と、手ぇ繋ぐんだ?」
「圭織と、抱き合うんだ?」
「圭織と、キスするんだ?」
「圭織と、えっちするんだ?」
「圭織と、ケッコ――」
「――ちょ、ちょっと待てぃ!」
なんでそこまで発展するんだよ……、と、またため息をつきながら、紗耶香が呟く。

「そりゃ、後で圭織んとこには行くよ? っていうか、ゲーム貸してもらう約束してたし」
「……ヤダ。行くな」
この、ゲームオタク。
「…なんでさ。今まで市井が誰と遊ぼうが関心なかったクセに…」
「関心あったよ! でもそれ以上に紗耶香がヤグチのことに関心なかったんじゃん!!」
「なっ……ありまくりだよ! 今だってありまくりだ!!!」
「え……」
70 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時23分53秒
「夜、部屋の明かり見てもいつもついてないし、夜遅く帰ってくるし、変な遊びだっていつのまにかしてるし…」
「って、部屋覗いてたのかよ!」
「だ、だから、関心が………こんな夜遅くまで何してんだよ、って気になって…」
モゴモゴと口篭もる紗耶香。困った顔も、ちっちゃい頃と変わってない。
「っていうか、変な遊びって何よ。変な遊びするような友達なんかじゃないよ」
「…でも、ほら。あの時…」
……ちょっと待って、それって。

「あの時のは、遊びでもなんでもないんだからね。っていうか、こっちは真剣だったんだ!」
「……真剣に自殺しようとしてたってこと?」
「ち〜がう! 素の紗耶香を見ようとしてたのっ」
「素の市井を…?」
「…だってヤグチ、今の紗耶香、知らないもん」
テレビは何を見てるのとか。音楽は何を聴くのとか。
こんな関係になるまでは、テレビを見るより音楽を聴くより、ヤグチ達と遊んでいたから。
今、おっきくなって、テレビや音楽に興味を持っているとしても、何を見てるか聴いてるか何も知らない。
だから、知りたかったんだ、紗耶香のこと。
71 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時24分40秒

「…なんだよ……自分だって部屋覗いてたんじゃないか…」
「う、うっさい!」
「でもさ、市井は何にも、変わってないよ。素がどんなのか、よく知ってるじゃん」
「でも、でも……」
「変わってないよ、ずっと。テレビだって音楽だって、興味ない。…ドリカムは除いてだけど。
市井が興味あるのはずっと、やぐっちゃんだけ……」

キザなコト言いながら、めっちゃ照れちゃって。
……そーいうの、ずるいよ。
可愛さではヤグチ、紗耶香に敵わないじゃん……。

72 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時25分26秒
「……アホっ、じゃあなんで今まで、無愛想な対応してたんだよっ」
「え、だって…」
「だってじゃない! 寂しかったんだからね……」
「ご、ごめん」
「謝るんだったら、理由を言えっ」
「……だ、だからぁ」
73 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時26分12秒

恥ずかしかったんだ、やぐっちゃんって呼ぶのが。
心の中ではずっとそう呼んでたんだけど、口に出すのがなんだかとっても恥ずかしくて。
恥ずかしかったんだ、やぐっちゃんと目を合わせるのが。
無邪気なその瞳で見られたら、身体と共に大きくなった心が、全部やぐっちゃんの想いで溢れてしまいそうで。
だから、いつも無愛想になっちゃって。
誘ってくれても、恥ずかしくてつい断わって。

好きだから。
大好きで大好きで、たまらないから。

素直に感情をぶつけられたらいいんだけど、市井は照れて恥ずかしくって言えなくて。
大人みたいにサラっと何気なく言えたらいいんだけど、市井はまだまだお子ちゃまで。


74 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時26分51秒
……照れ屋な紗耶香の、精一杯の告白。
ロマンチストの紗耶香の、精一杯のキザな告白。
それは、いくら鈍感でお子ちゃまなヤグチでも、簡単に理解出来た。
紗耶香はちっちゃい時からずっと、ヤグチのことが好きだったんだ。
ねーちゃんだと思ってたのは、ヤグチだけだったんだ。
そして同時に、今までの自分のこのモヤモヤな気持ちも、理解出来た。
…あぁ、ヤグチってホント、鈍感だった。
75 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時27分30秒
結局2人は、圭ちゃんの言う通り、お子ちゃまだったんだ。
そしてそれを圭ちゃんは、ちゃんと分かってて。
その上で、2人の面倒を見てくれた。
…あぁ、幼馴染って、いいなぁ。

「……大好き、ってそういう意味だったんだね……」
「え、ど、どしたの? あ…やっぱヤダった? そうだよね……」
「…だからぁ、なんでもそやって勝手に思い込むなっつーの!」
「――わっ」
今度は、ヤグチが抱きしめる番。
うん、やっぱり大きくなってる。
でもこの感じ、この匂いは、昔と同じだ。

「……けど、ヤグチはやっぱ変わっちゃった」
「え…」
「ヤグチ、昔は紗耶香のコト、好きだった。大好きだった」
「……なのに、変わっちゃったってことは……」
紗耶香の顔が歪み、昔の泣き虫紗耶香の顔と重なる。
…うん、やっぱ変わってないね泣き虫なのも。


「そう、変わったんだ今は。
ヤグチ、今は紗耶香のコト、好き。大好き!」


76 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時28分11秒
それだけ言って、最高の笑顔で抱きつく。
紗耶香はきっと、きょとんとしてることだろう。

「ちょ、ちょっと待ってよ……さっき、変わったって」
「そうだよ? 変わったよ?」
「え、でも……」
「わっかんないかなぁ」
「わ、わかんないよ」
じゃあ、教えてあげよう。このヤグチ様が。

「ねーちゃんとしてじゃなく、女として紗耶香が好きに、変わったの」

77 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時29分06秒
恋愛感情なんて、昔はなかった。
ただただ、紗耶香がほんとの妹みたいに可愛くて、好きで。
でも今は、違う。
気付いたよ、ヤグチ。
幼馴染として気になるんじゃなく、1人の女として市井紗耶香が気になるんだってことを――。
…ノーマルだと思ってたのは、大きな大きな勘違い。
でも、アブノーマルだって、いいもん!

「えっ、えっ……じゃ、じゃあ両想いなの?」
「……そーいうことになるかな」
「ま、マジっすか!」
うわわわどどどどーしようどうしよう、なんて慌てちゃって。
今更慌てたって、どうすんだよ。
「バカ。今は大人しくじっとしてろ」
「は、はい……」

顔を真っ赤にして素直に言うことを聞く紗耶香。
結局そのまま、じっとしたままヤグチ達は、抱き合ってた。


ヤグチと紗耶香の関係は、何1つ変わってはいない。
変わったのは、ヤグチの気持ちだけだったんだ。


78 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時29分45秒
***


「ふーん、付き合うことにしたのね」
「よかったじゃん。拍手!」
パチパチパチと、あんまり祝福されてるのかわからない祝福。
でも、嬉しいのは変わりないんだけど。
「幼馴染から恋人へ変化、か……って、あたしはどうなるのよ!」
「圭ちゃんも幼馴染だよずっとぉ。それに、変化したんじゃなくて、幼馴染兼恋人、なの」
「そうそう」
恋人である前に、幼馴染だし。
その関係はずっと変わらなくて、これからも変わることはない。
ただ、兼がつくだけで。
圭ちゃんだって紗耶香とは幼馴染兼相談相手、じゃないか。
……なんて、ちょこっと嫉妬なんかもしてみたりして。

「はいはーい、質問」
幼馴染同士で話をしてる所に、ヤグチの親友の声が。
「じゃあカオリはどうなるの〜?」
「……あ」
そうだ、忘れてた。
圭織とヤグチは、恋敵なのだ。
79 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時30分24秒
「か、圭織……でも市井、断わったじゃんか」
「うん。断わられたよ。でも、やっぱり紗耶香が好き〜」
綺麗な髪をなびかせながら、どさくさに紛れてヤグチの幼馴染兼恋人に抱きつく圭織。
「ああっ…!」
「なーんて。うっそ〜」
ガクッ。
ひきはがそうとしたヤグチより早く、自分から離れる。
そして目的を見失ったヤグチは、ボスッと紗耶香の腕の中へ。
「…カオリは、紗耶香とは友達でいいや。だってカオリ、矢口のことも大好きなんだもん。
だから、2人が幸せだったら、カオリはそれでいいよ。っていうか、矢口が早く自分の気持ち気付くよう、応援だってしてたし」
そしてもう一度、拍手をする。
「だって、親友兼恋敵って、イヤじゃん。
っていうかそれよりも聞いて矢口! カオリ、吉澤に告白されちゃった!」
「え、吉澤ってあの吉澤ひとみ?」
「そう! でね、実はもう、付き合ってるんだ…」
「「「はあ!?」」」
80 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時31分10秒
ついこないだまで、やっぱり紗耶香が好きって言ったのはドコ行ったんだよ!
っていうか2人が幸せだったらそれでいいって、圭織が先に幸せになっちゃってるんじゃんかよ!
「ちょっと、何よみんなして! あたしだけ幸せじゃないじゃない!」
「って、怒るとこはそこなのかよっ!」
「いいじゃん、圭ちゃんには誰かカオリが紹介してあげるよ〜」
「ちょ、ちょっとみんな……あんま大きい声出したら他のお客さんに迷惑がかかるよ……」

紗耶香の気弱な注意も、みんな無視。
ギャアギャアと突っ込み合いが始まる。
81 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時31分48秒


ヤグチには、1人の親友がいる。
手に負えないくらいの天然だけど、おもろいヤツ、飯田圭織。

ヤグチには、2人の幼馴染がいる。
1人は、面倒見がよくて大人なんだけど、なぜかモテない保田圭ちゃん。
もう1人は、気弱でオトコマエなのに情けない、市井紗耶香。

大事な大事な、人達。




82 名前:Dearest 投稿日:2002年05月31日(金)17時32分36秒




ずっと、変わらないでいられるよね。
同じ気持ちでいられるよね。

これからもずっと、一緒だよね。





誰にも負けない、ヤグチが大好きな3人。愛しい人。







83 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月31日(金)17時33分10秒
ズバンと勢い更新。
84 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月31日(金)17時33分42秒
そして、更新&Dearest終了。
85 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月31日(金)17時35分36秒
途中で区切ろうと思ったのですが、
勢いで読んでもらわないと突っ込みどころがたくさん出ることを恐れ、
勢いで全部逝っちゃいました。
恐がりなんです…ブルブル
86 名前:名無し作者 投稿日:2002年05月31日(金)17時39分38秒
>>36さん

圭ちゃんの意思は、無視です(w
圭織と圭ちゃん…こんな幸せの結末でした。。
87 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月01日(土)05時39分04秒
Dearest終了おつかれさまです。
鈍感矢口がすごい面白かったです。
この話すごい好きなんで、できればその後の二人を
書いてほしいです。
88 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年06月01日(土)14時09分09秒
き…切り替えが素早い圭織さん…^^;
でも、すごくあったかい話で良かったです!
おつかれさまでした。
89 名前:読んでる人 投稿日:2002年06月01日(土)19時26分15秒
今日、初めて読みました。
作者さんが書く矢口がかなりツボにハマリました。
次回作も期待してます。
90 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)10時46分07秒
自分にとって2期メン&飯田さんは(あと後藤もいればパーフェクト)
大好きなメンバーなんで、良かったです。
次回作、楽しみにしています。
91 名前:36 投稿日:2002年06月02日(日)22時46分44秒
はぅっ、ちょっと見に来なかったうちに終わってる!
あ、無事完結、お疲れさまでした。
圭ちゃんはやはり『なぜかモテない』んですね(w
圭織さんはよっすぃーとですか、絵になるカップルですよね。
87さんに同意!オイラも出来ましたら、続編が読んでみたいです。
92 名前:ポテト 投稿日:2002年06月05日(水)09時46分27秒
一気に読みました。
私も続編希望。
番外編でもいいから、圭織さんとよっすぃーの方も読みたいです。
(めったにない、下手したら皆無に近い組み合わせですし)
93 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月15日(土)13時40分25秒
続編希望
94 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月17日(月)11時22分38秒
みなさま感想ありがとうございます。
返事が遅くなって、申し訳ございません。

>>87さん
鈍感矢口と、矢口に片想いする市井、っていうのを書きたかったんです。
その後の2人ですか・・・(汗

>>88さん
この話だけということでお許しください(汗>飯田さん
生暖かくを目指しました(w

>>読んでる人さん

矢口が評判よくて嬉しいことこの上ないです。

>>90さん

後藤さんも出したかったのですが、長くなりそうだったので断念した私です。
でも、後藤さんも好きです。

>>36さん

そうなんです。なぜかモテない保田さん(w
かおよしが最近自分の中でひっそりとブームなので(遅っ!)、あんな形にしてみました。

>>ポテトさん

一気に読んでくれてありがとうございます。
飯田さんと吉澤さんの話ですか・・・考えます。

>>93さん

(汗
95 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時51分12秒




血の繋がりがなければ、女同士はずっと一緒にはいれないんだろうか―――。



96 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時51分42秒
親と子でもない。
姉と妹でもない。
従姉でも従妹でもない。
親戚でもない。

彼女達は、恋人同士だった。――いや、恋人同士だ。

97 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時52分17秒
「……今日は家帰るの?」
「…帰るよ。だって毎日はさすがに許してくれないもん」
そういって、笑顔を作る。
その笑顔はどこか苦しくて、諦めが出た笑顔。

私達、本当は友達なんかじゃない。
私達、本当は恋人同士。

親は一体、こどもの気持ちをどこまで知っているのだろう。
こどもはこんなに悩んでいるというのに。

98 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時52分54秒
友達の家に泊まると言って。
楽しくお喋りなんかは、するさ。
だけど、友達と楽しくエッチをしてるだなんて、どこの親が想像する?

友達が、友達ではないのだ。
娘が、普通でははないのだ。
娘と、友達だと思っているその娘が、実は恋人同士なのだ。

誰が、そんな彼女達を分かってくれるんだろう。
99 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時53分35秒
「……帰る前にもいっかい、紗耶香チュウしてよ」
「……いいよ」
それで、キミの気持ちがちょっとでも安らげるなら、いくらでも。


血の繋がりがない。友達でもない。

そんな2人は、これからもずっとずっと、一緒にいてはいけないのだろうか。


100 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時54分07秒
出逢ったのは、偶然だった。
惹かれあったのは、必然だった。
こうなることは、自然だった。

性格も容姿も正反対の2人は、知りたいことがたくさんあった。
出身地も育った環境も違う2人は、話したいことがたくさんあった。
女しか愛せないという同じ悩みをもった2人は、分かってくれない周囲に不満がたくさんあった。
彼女達が愛し合うようになった原因は、たくさんあった。
101 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時54分47秒
親に、他の友達に、こんな関係を続けて黙っているのは、もうすぐ1年になる。
出逢った頃の2人は、まだ18と20だった。

「1年前と比べて、ちょっと髪伸びたよね?」
「…あー、最近切ってないし」
「あ、じゃあ――」
「いい。なっちが切ったら、いちー次の日から街歩けなくなるから」
「ひっどーい! それに、まだなっちが切るって言ってないのに」
「分かるよ、言おうとしてることくらい」
なっち単純だから。
そんな軽口を言うと、顔を真っ赤にしながら怒る彼女。――安倍なつみ。
そんななつみを、愛をたっぷり込めてからかうのが、年下の市井紗耶香。

2人は、女同士の恋人同士。
102 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時56分22秒
もう1年。まだ1年。
長いのか、短いのか。
過去に他の女と付き合ったことのある紗耶香の交際期間としては、最長記録。
紗耶香が初めての相手のなつみは、それだけで最長記録。

でもまだまだ、一緒にいたい。

103 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時56分57秒


結婚しよう。

永遠の約束。
それが言えたら、私達はいつだって笑顔なのに。



104 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時57分35秒
隣には、そりゃちょっとは生意気だけれど、優しい彼女の紗耶香がいて幸せだ。
隣には、そりゃちょっとはわがままだけれど、可愛い彼女のなつみがいて幸せだ。

けどそれは、いつまで―――?

ずっと一緒にいれる時間は、ないんだ。
105 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時58分10秒
友達であると親に言っている以上、いつまでも泊まってはいられない。
女同士である以上、いつまでも結婚は出来ない。

結婚しよう。
こどもが欲しい。

言いたい。言えたら、どんなにいいか。
106 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時58分42秒
明日には、2人のこの関係がバレて、引き離されるかもしれない。
明日には、2人のこの関係がバレて、世間で冷ややかな目を向けられるかもしれない。

既成事実なんか、どうやったって作れない。
自分達に出来ることはせいぜい、遺書を書いて2人で仲良く自殺するくらい。
107 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時59分13秒
愛さえあれば、なんだって乗り越えれる。
たとえそれが、女同士で交わされる愛でも―――?

明日が、怖い。
ずっと一緒にいられないなら、明日なんか、来なきゃいい。
今さえあれば、それでいい。
隣にキミさえいれば、それだけで―――。
108 名前:女同士 投稿日:2002年06月18日(火)02時59分47秒
「…ねぇ紗耶香」
「んー?」
「帰る前に、もっかいチュウしよう?」
「…おぅ、いえす」
それで、キミとの別れがもう少しでも延びるなら―――。




ずっと一緒にいれなくても。
…それでも、ずっと一緒にいたいんです。









109 名前:今読んだ人。 投稿日:2002年06月18日(火)03時00分23秒
続編キボン(w
110 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月18日(火)03時00分25秒
………えぇっと。
111 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月18日(火)03時00分56秒
こんな話、こんなCPは、ナシですか?
112 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月18日(火)03時02分06秒
うわっと。リアルタイムレスせんくすです。

>>109さん

アリなら、続編考えたいのです(w
113 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月18日(火)03時07分44秒
よく考えたら、109さんはDearestの方を言ってるんでしょうか…
もしそうなら、恥ずかしいことこの上ないですね(大汗
114 名前:36 投稿日:2002年06月18日(火)03時17分26秒
おや、新作はCP違うんですね。これはこれでアリだと思いますよ。
続編も頑張って下さい。
115 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月20日(木)10時41分37秒
矢口も絡まして(w
116 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月21日(金)01時11分51秒
新作の続編キボン(w
Dearestの続編もいいですけど
珍しいCPなんで読んでみたいです。
117 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時13分48秒


「Dearest」番外編、飯田圭織いきます。

118 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時15分02秒
恋は、突然の告白から始まった。



「…飯田さん、ヨシザワはですね、飯田さんのことが大好きなんです」
「え―――?」


119 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時15分43秒
カオリは、紗耶香が好き。
告白は断わられちゃったけど、まだ全然好きだし。
そんな時に、予想もしてなかった吉澤、吉澤ひとみの告白。
この、飯田圭織に。

そもそも、吉澤ひとみって、誰?
カオリと矢口が通ってる女子大では、多分知らないだろうという人物。

なんで、まだ高校生で、大学にも通ってないのに吉澤のことをほとんどの人が知ってるのかというと。
……吉澤は、年上キラーなんだ。それも、超強力な。

オトした女は、数知れず。
しかも、それはなぜかカオリ達が通ってる大学の女の子オンリーで。
誰かが吉澤に聞いて、そしてそれが何人もの生徒によって回ってきた理由に寄ると、

「だって、ここの大学、女の子のレベル結構高いから」

らしい。

120 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時18分27秒
で、この学校に通っている以上、吉澤の告白の対象には入ってるんだけど。
綺麗な女の子から、可愛い女の子。
いまいちタイプが掴めないけれど、ウワサによると、巨乳好きだとか。
今までオトした女を眺めると、そのウワサは真実だと思うんだけど。

実は、紗耶香に内緒だけど、矢口も一度吉澤に告白されたことがあるんだ。
…あぁ見えて結構、矢口胸デカいし。
でも、吉澤は結構矢口のタイプだったはずなのに、すっぱりと断わったんだけど。
あの時からもう、紗耶香は心の中にいたんだよね。
で、それから、ターゲットを変えて、吉澤は別な巨乳を探してたみたいなんだけど。
突然。
吉澤は、カオリの前に現れた。

ちょうど、紗耶香が前から貸してほしかったっていうゲームを昨日クリアして、電話して、
ゲーム貸してあげるから会おうという待ち合わせを取り付けて、マンションから出た時だった。
どこで聞いたのか、それともついてきたのか。
ニコニコした顔して、吉澤がいた。
そしてマジメな顔して、吉澤が言った。
121 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時19分07秒
「…飯田さん、ヨシザワはですね、飯田さんのことが大好きなんです」
「え―――?」

…そして、カオリから出た返事。

「………カオリ、胸おっきくないんだけど」


122 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時19分53秒
言った途端、その場で大笑いする吉澤。
………何なの?

「いやぁ、そりゃ、これまでは巨乳の人ばっかり選んでましたよ。
だけどね、ヨシザワ気付いたんです。女は、胸じゃない!」
「…はぁ」
「顔はね、そりゃ、いい方がいいですよ? でもね、いくら顔が綺麗で可愛くたって、心も綺麗で可愛い人ってのがいないんですよ」
「…へぇ」
「たまに心もその通りの人もいるんですけど、大抵、男又は女がいまして。
どうしたもんかと悩んでた時に、アナタと出逢ったのです」
「…ふぅん」
「まあまあ、最初は分かってもらおうとは思いませんよ。色々と悪いウワサも聞いてるかもしれませんし」
「…じゃあ、吉澤さんは何がしたいの?」
「飯田さんに、気持ちを伝えたかったんです」
にっこり、と。
…なんていうんだろう、この笑顔。
……なんかもう、天才的に可愛い。
123 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時20分41秒
「…でも、なんでカオリなの? 吉澤さんみたいな可愛い顔してたら、他にもいっぱいいるじゃん」
「でも、飯田さんは1人しかいないでしょ?」
「…だからぁ、なんで――」
「見たんです。飯田さんの絵」
「え…」
「あ、シャレっすか?」
「…ま、まあね」
ホントは全然そんなつもりなかったのに、ウケてるのを見て、調子に乗ってしまう。
そんなカオリを、吉澤は笑って見つめる。

「ある展覧会を、美術が好きな女の子とデートしながら見てたんです。
そしたらそこに、飯田さんの絵が飾ってあって。
綺麗な絵、書くんだなぁ〜って。心が綺麗じゃないと、書けないんだろうなぁ〜って。
正直、それまでは飯田さんのことチェックしてなかったんですけど、その絵見てなんかもう、惚れちゃって。
それで、顔も確かめて、更に惚れちゃって。
ガマンできなくて、こうしてコクったワケなのです」
…あぁ、そうだ。
何度も何度もチャレンジして出してた絵が、こないだやっと当選してある所に飾ってもらって。
自信作だったんだ。今のカオリの全部を詰め込んだ絵。
それを、吉澤は見たんだ。
124 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時21分21秒
ファンだ、と吉澤は言う。
だけどファンじゃ治まらないから、こうして告白した。吉澤は言う。
…だけど。
「……カオリ、好きな人いるし」
「ええええ!? マジですか!?」
「ジョーダン言える仲じゃないじゃん」
「ややや。じゃあもっと仲良くなりましょ」
言って、さりげなく肩に手を回してくる。
…うっわ、さすが女をとっかえひっかえしてるだけあって、手が早い。
こう、手を回されてもイヤな感じしないというか、そういうのを心得てるなというか。
…感心してる場合じゃなくて。

「悪いけどカオリ、年下嫌いなの」
「うっわー、なんスかその理由。どうやっても叶わないじゃないですか」
「そおだよ」
「……じゃあ、飯田さんの好きな人は?」
「年下」
「矛盾してるじゃないですかっ」
「紗耶香は別なの」
「ずっる〜」
ブーブー唇を尖らせて、反抗する吉澤。
……なんだか、すごく意外。
クールだと思ってたんだけど、こんな表情とかするんだ。
125 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時21分55秒
不覚にも、ボーッと見つめてたら、いつのまにか吉澤の綺麗な顔が目の前にあった。
「――惚れちゃいましたか?」
「……なっ」
からかうような視線。
赤くなんかなりたくないのに、赤くなる頬。

年は違うけど、カオリにとっては同じ年下なのに、紗耶香とは全然違う。
紗耶香は、カオリがこんな風にからかう側だったのに、相手が吉澤だと――。
なんだかとっても、吉澤のペース。

「飯田さん」
「…な、なによ」
真剣な顔して、見つめられて。
どうしてだろう。目を逸らせない。
「好きな人と、運命の人ってのは、違う場合もあるんですよ」
「…だから?」
「その好きな人は、飯田さんの運命の人じゃない」
「……………」
じゃあ、誰がカオリの運命の人なのよ。

「飯田さんの運命の人は、ヨシザワです」



126 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時22分35秒
……本当に、どっから来るんだろう、この自信。
人の運命の人まで、勝手に決めちゃってさ。
真顔で面と向かって言われた恥ずかしさに、逸らせなかった目も逸らすことができたんだけど。
「そ、そんなの、アンタの思い込みじゃんっ」
「…そうかなぁ。飯田さん、顔赤くなってますけど?」
「これはっ…!」
あぁ、なんで。なんでよ。
カオリ、紗耶香が好きなのに。
紗耶香にずっと、片想いしてたのに。

…紗耶香がカオリの運命の人じゃないってのは、認めるよ。悔しいけどさ。
紗耶香の運命の人は、他にいるもん。生まれた時から、隣にいたもん。
…だけど、だけど。
それでもカオリ、好きなのに。

「まだ、その人のこと好きなら、忘れさせてあげます」
「無理だよっ」
「無理じゃないです。飯田さんが、こっち向いてくれたら」
「そんなの……」
「じゃあ、向いてくださいよ」
127 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時23分11秒


力強い、吉澤の目。
気持ちまで引き込まれそうな、吉澤の目。

カオリ、おかしいんだろうか。
カオリ、やばいんだろうか。
カオリ、紗耶香が好きじゃなかったんだろうか。

吉澤の目をもう一度見つめた時、もうカオリは吉澤のことを好きになっていた――――。







128 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時23分49秒
前、後編に分けてみたり。
129 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時24分25秒
今日中、もしくは深夜に続き更新します。
130 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)12時29分25秒
>>36さん

少しお試しで書いてみて、その設定で矢口はきついだろうと思い、違うCPに挑戦してみました。
……でも、私にはとても難しかったみたいです(w
気はいつでも、その2人に向いていますので(w

>>115さん

矢口を絡ませたら救いがないくらいドロドロになりそうです(w
そんな自分も、矢口はすごく好きなのですが(汗

>>116さん

ありがとうございます。新作、考えたいと思います。
だけどその前に、Dearestの続編が固まりそうなので、そちらを優先してしまいそうです(汗
131 名前:幸せですか? 投稿日:2002年06月22日(土)22時28分01秒
好きになるまで、時間がかかると思ってた自分の気持ち。
相手の底まで知らないと、好きになんかならないと思ってた自分の気持ち。

まさか、たったの30分で、人を好きになるなんて思わなかった。
相手の目を見ただけで、抜け出せないほど好きになるなんて思わなかった。
132 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)22時28分36秒
「でもさ、圭織。相手、あの吉澤ひとみでしょ?」
「うん」
「タラシでしょ?」
「うん。でも、優しいよ」
「…そりゃ、女とっかえひっかえなんだから、優しくなきゃ女も懐いてくんないでしょ」
「……なんか矢口、否定的」
「圭織のため思って言ってるんだよっ」
そんな親友、矢口真里の気持ちは有難い。
だけどもう、戻れないほど好きになっちゃって。
「ってか、付き合って何日目だった?」
「2日目」
「でしょ!? そんな2日でどっぷりハマッちゃうほどいいのかぁ?」
「良くなきゃ、ハマらないよ」
「……だよね。分かってて聞いたヤグチさんが悪かったです」
そう言って、ゴツンとテーブルに頭をぶつける。
そしてそのまま動かない。

で、動かない矢口を見てて気付いたんだけど、髪、茶色に落としたんだ。
それを口に出したら、
「昨日会った時にも落としてたよ!」
と呆れられた。
133 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)22時29分11秒
言われてみれば、そうだったような。
昨日は紗耶香と矢口の交際宣言やカオリと吉澤の交際宣言してて、頭のことなんか気にしなかったよ。
それも口に出したら、
「……圭織は一体、ドコ見て相手と喋ってんだよ……」
と力ない突っ込みを入れられた。

「っていうか、もうカオリの話はいいよ。そっちの話聞かせてよ」
「そっちってどっち」
「やぐっち」
「さむっ!」
「うるさい」
「…はいはい、わーかりましたよ」
ムクリと体勢を立て直して、ポリポリと茶色くなった頭を掻く。
照れてるのか、ちょっと顔が赤い。
「……別に、報告することとかないよ、全然」
「えー、嘘だぁ。チュウとかしてるんじゃないの?」
「し、ししししてるわけないだろバカッ!」
「今更純情ぶったってダメだよ〜。矢口のえっちな過去はカオリ知ってるんだから〜」
「わぁ〜〜! そ、そんなの、さやに言ったら圭織とは縁切るからね!!!」
「え、でも、カオリと矢口、血ぃ繋がってないよ?」
「友達の縁だよっっっ!」
はぁ、もうイヤだ。なんて、矢口の嘆き。
最近矢口の泣きそうな顔をよく見る。
134 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)22時29分49秒
「どしたの。紗耶香になんか言われたの?」
「圭織に突っ込むのがしんどくて泣けてくるんだよ!」
「あ、カオリのせい?」
「圭織のせいじゃなきゃ、今ここに他に誰がいるんだよっ!」
「……矢口の後ろに、幽霊が…」
「ひぃっ!? わ、わ…ウソっ!!!」
「うっそだよ〜」
「――――圭織、いっぺん死にたい?」
「…遠慮しとく。吉澤と付き合ったばっかりだし…」
「あ、そう」

それからふぅ、とため息を一度ついて。
矢口が言う。

「…圭織、今、幸せ?」
「? うん、すっごく幸せだよ」
「……そっか。よかった」
135 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)22時30分30秒
言って、なんだかホッとしたような笑顔の矢口。
……あぁ、そっか。

「大丈夫。気にしてないから」
「えっ?」
「運命の人じゃなかったからね、カオリは紗耶香の」
「……………」
「でも、おかげで見つけることできたし」
「…圭織の、運命の人?」
「うんっ」

年下で、遊んでて、ちょっと強引だけど。
慎重派のカオリが、わずか30分で惚れてしまったっていう立派な記録付きだし。

「幸せだよ。すっごく。矢口は、幸せですか?」
「……うん。すっごいすっごい、死んじゃうくらい、幸せ」
「だったら、いい」
136 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)22時31分14秒
大切な、親友だから。
大切だった人と、幸せになってくれてなきゃ、こっちの立場もないし。
…もっとも、立場も何も、幸せになってるかどうかの確認もせずに、先に幸せになっちゃったんだけど。

「……でも、圭ちゃんに『今幸せ?』って聞いたら、殴られるかな」
「まだ吉澤さんとイチャイチャしたいんだったら、命縮めることは言わない方がいいよ」
「…そうだね、そうする」

圭ちゃんには、本当に悪いんだけど。
一足先に、幸せになってます。

「……圭織にも現れたように、圭ちゃんにも、現れるよね、運命の人」
「うーん、どうだろう」
「―――って、おい!!!」




きっと、もうすぐ――――。







……………………………………たぶん。だけど。














137 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)22時31分57秒
前後編だと言っておきながら、後編が短すぎる罠。
138 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)22時32分34秒
あと、ごめんなさい。
題を入れ忘れてました。
139 名前:名無し作者 投稿日:2002年06月22日(土)22時34分39秒
「Dearest」番外編の飯田編の題は、「幸せですか?」です。
……なんだか勝手な終わり方でごめんなさい。
次は、上手くいけば、保田さんです。
140 名前:36 投稿日:2002年06月23日(日)01時30分51秒
>吉澤の目をもう一度見つめた時、もうカオリは吉澤のことを好きになっていた――――。

『ヨシザワは、妖しい技を使った』『イイダは恋に落ちた』って感じですね(w
でも、吉澤さん?飯田さんを泣かせたら、許さないからな!

最後に、完結お疲れ様でした。
次回の保田さん編も楽しみに待たせて戴きます。
141 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月23日(日)18時50分48秒
完結お疲れさまでした。
ここのCP、全部めっちゃツボなんですけど。
続きがあるそうなので、楽しみにしてます。
でもまず先に、保田さんが幸せになる番ですよね?(w
142 名前:ポテト 投稿日:2002年06月24日(月)10時16分31秒
吉澤さんと飯田さん。
いいですね。
続き、楽しみに待ってます。

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