吉澤共和国
- 1 名前:ポー 投稿日:2002年06月01日(土)03時00分00秒
- 初めまして。
いろいろ読んでいるうちに、自分でも書きたくなってしまいました。
よっすぃ〜中心とした短編で行きたいと思います。
何か気づいた点や、感想などお待ちしてます。
- 2 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月01日(土)03時01分33秒
- あたしたちモーニング娘。は、今ミュージカルの真っ最中。
今日は夕方開演なので、ちょっと早めに着いたあたしとごっちんは買出しにコンビニへ来ていた。
「なんなんだよぉ、これはぁぁぁ」
雑誌を手に取り私は思わず大声を出した。
近くで立ち読みしていた男性が、ビクッとしてこちらを見た。
「シッ、よっすぃ〜。声が大きい」
隣にいたごっちんが、肘で突っついた。
そんなごっちんの声も今のあたしには届かない。
だって、あたしが今見ている雑誌には…。
「あ、梨華ちゃんじゃん。かわいく撮れてるねぇ」
覗き込んできたごっちんが、能天気に言った。
かわいくじゃねえよ、かわいくじゃ。
なんなんだよ、これ。
聞いてねぇよ。
エロ本みたいな雑誌に、あたしの梨華ちゃんがこんな色っぽい顔して写ってるなんて…。
ただでさえ、最近色っぽさが増してきて不安なのに。
不特定多数の男たちがやらしい目で見るんだぞ。
うっわぁー、ムカツク。
自然と雑誌を持つ手に力が入る。
- 3 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月01日(土)03時02分42秒
- そんなあたしの気持ちも知らずに、ごっちんは梨華ちゃんの写真を見て「かわいー」とか、「超色っぽくない?」とか言っている。
「ちょっとよっすぃ〜、聞いてるの?」
「え、うん聞いてるよ。か、かわいいよね」
平静を装って答える。
一応クールでかっけーあたしが、こんな雑誌のグラビアに嫉妬してるなんて思われたくない。
でも、顔は引きつってるんだろうなぁ…。
ごっちんに気づかれなければいいけど。
「ねえ、そろそろ劇場にもどらないと。これ、買ってこうよ」
そう言うとごっちんは、雑誌をカゴに入れるとさっさとレジに行ってしまった。
「いいよぉごっちん、買わなくてもぉ」
「いいのいいの。みんなで見ようよ」
いたずらっぽく笑って言った。
- 4 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月01日(土)03時05分54秒
- ごっちんと一緒に控え室に戻ると、矢口さんと辻、高橋、飯田さん、安倍さん、圭ちゃんがいた。
辻、高橋以外の中学生はまだ来ていないようだ。
それに、梨華ちゃんの姿もない。
まだ来てないのかな?
でも、梨華ちゃんのバッグあるから、トイレかな?
目で梨華ちゃんを探していると、急にコンビニの袋を持っている手が重くなった。
「よっすぃ〜、アイス買ってきた?」
そう言いながら辻が袋の中をガサガサと物色している。
「ちょっと待ちなって。今出すからさぁ」
辻を制して、テーブルの上に買って来た物を広げた。
「おお、石川じゃんこれ」
梨華ちゃんが表紙の雑誌を、矢口さんが目ざとく見つけた。
矢口さんの声に反応して、他のメンバーも寄ってきた。
「これねぇ、梨華ちゃん超エッチぃんだよぉ」
ごっちんが矢口さんから雑誌を取ると、梨華ちゃんのページを広げた。
- 5 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月01日(土)03時06分37秒
- エッチぃってなんだよ。
さっきはかわいいとか言ってたくせに。
確かにちょっとエッチぃよ、その写真。
あたしにしか見せない顔だって思ってたのにさぁ。
なんだよ、それ。
そんなに優しい瞳で微笑むなよ。
あたしにだけ、その瞳を向けてよ。
なんで今ここにいないんだよ。
って、辻!あたしのチョコモナカ食ってんじゃねえよ。
もう、頭の中で誰に文句を言ってるのかも分からない。
とにかく、みんなと一緒になって見たくもない。
あたしは、気づかれないようにそっとその輪から離れたところのイスに座った。
近くにあった雑誌を広げるが、みんなの声が耳に入ってくる。
「梨華ちゃん色っぽーい。オイラにはできねぇなぁ」
「あははははっ、矢口には無理だねぇ」
「ちょっと、圭ちゃんに言われたくないんですけどぉ」
「でもさぁ、梨華ちゃん大人っぽくなったねぇ。なっちビックリしたさぁ」
「そうそう、前の写真集もさぁ…」
うわぁ、もう聞きたくねぇ。
そう思って立ち上がると、ちょうど梨華ちゃんが戻ってきた。
- 6 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月01日(土)03時08分03秒
- 「あ、石川。今、ちょうどこれ見てたんだよ」
圭ちゃんがそう言って、雑誌をひらひらとさせた。
「なんですかぁ?」
よくわかってないようで、首をかしげながらみんなのところへ寄っていった。
そんな梨華ちゃんの仕草がかわいくって、ちょっと気持ちが安らぐ。
って、安らいでんのかよ。
三村さんふうに自分につっこむあたし。
なんか、泣きたくなってきた…。
「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
梨華ちゃんのいつもの1オクターブ以上高い声が部屋に響いた。
必死で雑誌を奪い取ると、抱え込んだ。
梨華ちゃんの異常なまでの反応に、みんなは驚いている。
高橋なんて、いつもにもましてビックリ顔。そんなに見開いてると目、落ちちゃうよ。
「あはっ、梨華ちゃんどおしたの?」
ごっちんが声をかけた。
「そうだよ、よく撮れてるよ。いい写真じゃん」
圭ちゃんはそう言うと、梨華ちゃんの手から雑誌を受け取った。
「ほら、ここの表情なんかすっごくいいよ」
優しく誉める。
「でもぉ、恥ずかしいですぅ」
顔を真っ赤にして目をウルウルさせている。
- 7 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月01日(土)03時10分21秒
- そんなに恥ずかしいなら、撮るなよ。
ここにいるメンバーの何百倍の人が見るんだぞ。
かなり意地悪な事を考えるあたし。
今までのあたしは、こんなじゃなかった。
なんで梨華ちゃんの事になると、こんなに嫌なやつになっちゃうんだろう。
梨華ちゃんと付き合いだしてから、どんどん嫌なヤツになってる気がする。
自己嫌悪。
こんなんじゃ、梨華ちゃんに嫌われるよ。
あたしだってヤダもん。こんな恋人。
みんなに誉められて、さっきまでとはうって変わって、みんなとうれしそうに雑誌を見ている梨華ちゃん。
調子に乗って、同じポーズまでしている。
それを真似する辻。
その様子を眺めていると、梨華ちゃんと視線が合った。
いつもの、優しい笑顔。
あたしにだけ向けられていると思ってた、優しい瞳。
なのにあたしは、不自然に視線を逸らしてしまった。
今、自分が考えている事が見透かされそうだったから。
居たたまれなくなり、控え室を出た。
部屋を出る一瞬、梨華ちゃんの不安げな顔が視界をかすめた。
- 8 名前:ポー 投稿日:2002年06月01日(土)03時11分24秒
- 今日はここまで。
いかがですか?
感想おまちしております。
- 9 名前:くわばら。 投稿日:2002年06月01日(土)05時05分47秒
- 初めまして。嫉妬するヨシザーさんの心境が面白いです。(三村風ツッコミも)
やっぱ「UTB」を本屋さんで頑張って探してみようと思いました。(笑)
続き楽しみです。
- 10 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)09時30分18秒
- テンポいいし読みやすいです!がんばってください!!
- 11 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月03日(月)18時39分13秒
- ハジメマシテ。
話の展開がツボなのですっごい楽しみです。
作者さんと嫉妬深いよしこさんを応援してますー。
- 12 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月05日(水)00時05分48秒
- ひと気のない所を探しているうちに、劇場の地下ロビーにたどり着いた。
1階のロビーに比べると、天井が低くちょっと暗い。
なんだかひんやりとした空気。
今のあたしの気持ちを冷ますのにちょうどいいや。
壁際にあるイスに腰掛け、頭を壁に持たれかけさせ、天井を見上げる。
暗い天井は、何故だか気持ちを落ち着かせてくれる。
そのまま目を閉じると、すーっと嫌な自分が抜けていくようだ。
今日のあたしはなんか変だ。
いつもはこんな気持ちになったりしないのに。
梨華ちゃんの不安げな顔が頭をよぎる。
しょうがないよ、梨華ちゃん最近大人っぽくなってきたんだもん。
それに、あたしたちの仕事ってみんなに笑顔を見せる事なんだから。
そう、自分に言い聞かせる。
でも、それで気持ちが収まるほどあたしはそんなに大人じゃない。
この気持ち、どうすれば収まるんだろう?
- 13 名前:ポー 投稿日:2002年06月05日(水)00時06分56秒
- そんな事を考えていると、近くに人の気配を感じた。
目を瞑っていてもわかる。
梨華ちゃんだ。
どんな表情で立っているんだろう。
きっと、こんな顔…。
瞼を開くと、想像どおりの八の字眉の心配そうな顔。
口はへの字に曲がっている。
ごめん、あたしのせいだよね。
ちょっとでも面白がってしまったことに反省。
「よっすぃ〜?」
不安げにあたしの前に立った。
ちょうどあたしの顔を上から覗き込むような体制で。
あたしが何か言うのを、梨華ちゃんは待っている。
でも、何を言って良いのか分からない。
ただ目の前にいる梨華ちゃんが、無性に愛しくてたまらない。
梨華ちゃんを失いたくない。
梨華ちゃんの姿を見て、強く思った。
- 14 名前:ポー 投稿日:2002年06月05日(水)00時13分59秒
- あたしは、とっさに梨華ちゃんの腰に手をまわし引き寄せた。
そして、梨華ちゃんのお腹に顔を強く押し付けた。
細い腰が折れてしまうんじゃないかと思うほど、ぎゅーっと引き寄せて。
梨華ちゃんが今、あたしの目の前にいてくれていることを体で確認したかった。
「どうしたの?」
優しくあたしの頭を撫でながら聞いた。
あたしは何も言えず顔を押し付けたまま、ただ首を振った。
「そう」
優しい声でそう言うと、梨華ちゃんは無言で頭を撫でつづけてくれた。
あたし、自分で気づいてなかったけど、すっごい梨華ちゃんの事好きになってる。
付き合い始めた頃よりも、ずーっと。
梨華ちゃんのぬくもりを感じながら、そう実感した。
どのくらい時間がたったのだろう。
10分、15分。いや、もしかしたら2,3分かもしれない。
そのくらいあたしには長く感じた。
あまりこの体制でいるのは梨華ちゃんが辛いだろうと思い、体を離した。
顔を上げると、ちょっと困ったような顔をして微笑んでいる。
- 15 名前:ポー 投稿日:2002年06月05日(水)00時15分41秒
- 「気が済んだ?」
「うん、ありがと」
やっぱり、続きの言葉が出てこない。
急に鼻の奥がツーンとした。
なんでだろう?
自分でもよくわからないけど、梨華ちゃんの顔を見たら涙が出てきた。
「ひとみちゃん?」
突然泣き出したあたしに驚いたようで、心配そうにあたしの目の前にしゃがんだ。
あたしと目線の高さを合わせるために、床に膝立ちしている。
「梨華ちゃん、汚れちゃうよ」
「いいの。それより、何かあったの?」
心配そうに首を傾げてあたしを見つめる瞳。
不謹慎だけど、心配してくれている事がうれしかった。
「ごめん、ちょっと甘えさせて」
そう言ってあたしは、梨華ちゃんの肩に額を乗せた。
目を閉じているうちに、自然と涙は止まった。
やっぱりあたしは、梨華ちゃんが傍にいてくれないとダメみたい。
「もしかして、あの写真の事気にしてる?」
あたしの頭を撫でながら、梨華ちゃんは言った。
「怒ってなんかないよ。ただ…」
「ただ?」
首を傾げたのか、梨華ちゃんの頭があたしの頭にコツンと触れた。
「ただ…寂しかっただけ」
素直に言うのが恥ずかしくて、最後の方は声が小さくなった。
でも、梨華ちゃんにはちゃんと聞こえてたみたい。
- 16 名前:ポー 投稿日:2002年06月05日(水)00時17分12秒
- なんで、寂しいのよぉ」
ちょっと笑って、あたしの頭をぐしゃっと撫でた。
「だって、なんか遠くに行っちゃったみたいで。あたしだけの梨華ちゃんじゃないんだなって…。」
目を閉じていると、素直に自分の気持ちが言える。
でも、それに対する返事がない。
やっぱり、こんな嫉妬してるあたしなんて嫌かな?
もしかして、嫌いになった?
梨華ちゃんの沈黙が怖い。
「梨華ちゃん…?」
恐る恐る梨華ちゃんの返事を待つ。
すると、梨華ちゃんは手をフッと離し、あたしの背中に手をまわした。
「そんなことないでしょ?ほら、こうやって一緒にいるよ?」
「梨華ちゃん…」
「ね、写真じゃこんなことできないでしょ」
そう言って、背中をポンポンと軽く叩いた。
「それにね…」
あたしの体から離れ、目の前でニコッと微笑んだ。
「こういうことも出来ないよ?」
なんだろう?と思った瞬間、あたしの唇に梨華ちゃんの唇が触れた。
それは1秒にも満たないものだったけど、梨華ちゃんの温もりが伝わってきた。
ほらね?と言うような表情の梨華ちゃん。
- 17 名前:ポー 投稿日:2002年06月05日(水)00時18分44秒
- 「でも、うれしいな」
そう言うと梨華ちゃんは、立ち上がってあたしの隣に座った。
「へ?なにが?」
「妬いてくれてありがとう」
ちょっと顔を赤らめている。
「ひとみちゃんが妬いてくれてるなんてうれしい。いつもは私が妬いてばっかだから」
「え、そうなの?」
そんなの気づかなかったよ。
そんな事、考えた事もなかった。
だって、いつも梨華ちゃんは余裕があって、あたしよりも大人で…。
「そうだよぉ。ひとみちゃん、みんなに優しいし。特にごっちんでしょ、矢口さんでしょ、あいぼんでしょ、高橋でしょ、亜弥ちゃんでしょ…」
指を折りながら、一人一人の名前を挙げている。
確かに、今梨華ちゃんが挙げている名前の人たちは、かわいいしあたしのお気に入りの人たちだ。
まぁ、ごっちんはお気に入りって言うよりも親友なんだけどね。
って、梨華ちゃん鋭い…。
あたしがちょっかい出して遊んでいるの見られてたのか。
しかも、たまにしか会わない亜弥ちゃんまで。
ごめんね、心配かけて。
でも、あたしは梨華ちゃんが一番なんだよ。
恥ずかしくって、面と向かっては言えないけどね。
- 18 名前:ポー 投稿日:2002年06月05日(水)00時27分16秒
- 更新しました。
泣き虫へなちょこよっすぃ〜になってしまいました。
9>くわばら。さま
楽しんでいただけましたか?『UTB』今ならまだ買えそうですね。
10>名無し読者さま
今回はテンポダウンしてませんか?初めての小説なもので、かなり不安です(w
11>名無し読者さま
応援ありがとうございます。これからも読んでやってください。
みなさん、レスありがとうございます。
読んでくれている方がいるって、うれしいです!!
- 19 名前:のびえもん 投稿日:2002年06月05日(水)01時04分08秒
- おもしろいっす。今、一番好きな作品です。
- 20 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月08日(土)14時37分25秒
- へなちょこよっすぃーがすごく、かわいいです。
続きがすごく楽しみです。がんがってください。
- 21 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月10日(月)19時32分24秒
- へなヨスコイイ!
お姉さんいしにも萌えました。
続き楽しみにしてます。
- 22 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月10日(月)23時07分55秒
- 「梨華ちゃん、ごめんね」
隣の梨華ちゃんにもたれかかる。
「今日のひとみちゃんは甘えんぼさんですねぇ」
フフッと笑って、梨華ちゃんもあたしにもたれかかった。
しばらく何も言わずにじっとしていると、
静かでひんやりとした空間が、さっきまでとは違って温かな空間になった。
会話はないけど、心同士が会話をしていような感じ。
ああ、これが心が通じ合ってるってやつなのかなぁ。
最近忙しくて、梨華ちゃんとこうやって過ごすことがなかったから、パワー切れだったのかな?
でも、これでパワー充電完了。
今日も明日も明後日も、ミュージカル頑張っちゃうよ?
「梨華ちゃん、そろそろ行こっか?」
いつまでもこうしていたいけど、そろそろ開演準備しないとね。
「そうだね」
いつの間にか目を瞑っていた梨華ちゃんが、瞼を開いた。
その横顔が、なんだか大人っぽく見えてハッとした。
なんだか、いつものあたしの知ってる梨華ちゃんじゃないみたい。
またちょっと寂しさが復活。
- 23 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月10日(月)23時19分40秒
- 「ん?なあに??」
あたしの視線に気づいて、フフッと笑った。
「梨華ちゃん、大人っぽくなったよねぇ。あの雑誌の写真も、すごい色っぽかったもん」
自分の中に生まれたちっちゃな寂しさを、自分の言葉でかき消した。
「え〜、なにそれぇ。そんなことないよぉ〜」
梨華ちゃんは照れ笑いをして、立ち上がった。そして、あたしの前に立って、
「行こう、ひとみちゃん」
両手で私の手を引っ張り、立ち上がらせてくれた。
「本当だよ。最近梨華ちゃんすっげーキレイになったもん。
あんな、エロ本みたいな雑誌に色っぽい梨華ちゃんが載ってるんだよぉ。そりゃ、イジケたくもなるって。」
そう言いながらさっきの写真を思い出すと、やっぱり少しムカツいた。
梨華ちゃんと繋いだ手を、無意識にギュッと強く握る。
「エロ本?フフフフッ」
あたしが強く握った手を、もう片方の手で上から優しく撫でた。
何がそんなにおかしいんだよぉ。
こっちは本当の事言ってるだけなのにぃ。
- 24 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月10日(月)23時21分49秒
- 「エロ本じゃないよぉ。『UTB』だよ?ごっちんも亜弥ちゃんも柴ちゃんも載ってたでしょ?それに、ののとあいぼんだって」
「へ?そうなの??」
そういえば、巻頭の梨華ちゃんのトコしか見てない。
「そうだよぉ、私たちのライブも載ってたよ?」
あきれたように、梨華ちゃんは言った。
「でもでもぉ、結局は男の人たちがやらしい目であの写真見るんだよぉ?おんなじだよ。
しかもさぁ、あたしだってあんまり見たことないエプロン姿まであるしぃ…」
そう、あたしのあまり見たことのないエプロン姿。
だって、梨華ちゃん料理得意じゃないんだもん。
しょうがないって言えば、しょうがないんだけどさ。なんか、納得いかないんだよね。
- 25 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月10日(月)23時27分24秒
- 「それに、あれは写真集の1部分なんでしょ?ってことは、もっとすごい写真があるんじゃないの?」
実はそれが一番気になっていた。
だって、雑誌に載ってたやつにパーカー1枚の姿があったから。(まぁ、中にキャミとショートパンツくらいは穿いているんだろうけどね。)
「ひとみちゃん」
ため息交じりで苦笑した。
「あるわけないでしょ。なにを想像してるの?」
「だってさぁ…」
「出来上がったら一番にひとみちゃんに見せるから。ね?
ひとみちゃんに見てもらいたくて頑張って撮ったんだから、ちゃんと見てよ?」
言い聞かせるように、俯いたあたしの顔を覗き込んだ。
そうだよね。あたしも写真集撮った時、梨華ちゃんに一番に見てもらいたかったもん。
すっかり忘れてた。
「ごめん、分かった…」
「よろしい。じゃ、行こう」
ニコッと微笑むとあたしの片手を引っ張り、1階への階段に向かった。
- 26 名前:ポー 投稿日:2002年06月10日(月)23時39分36秒
- 更新しました。
19>のびえもんさま。
そう言ってもらえるなんて、うれしいです。
20> よすこ大好き読者。さま
ありがとうございます。思ってた以上に、よっすぃ〜がへなちょこになってしまいました(w
21>: ごまべーぐるさま
ヘナヘナよっすぃ〜、今回はいかがでしたか?
こうやってレス頂くと、やっぱりうれしいものですね。
更新ペースが遅くなるかと思いますが、よろしくお願いします。
- 27 名前:じゃない 投稿日:2002年06月11日(火)01時10分54秒
- |.∀´) チラッ
いいねえ、へなちょこ。
- 28 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月12日(水)19時46分12秒
- ヨスコに「アンタも載ったやん」とツッコミ入れてしまいますた。
自分の写真集を棚に上げてる旦那に萌え〜。
- 29 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月16日(日)00時30分41秒
- あ、でももう1つだけ確認したい事があったんだ。
マネージャー達の会話を小耳に挟んだだけだから、もしかしたら聞き間違いかもしれない。
やっぱり梨華ちゃんから直接聞いとかないとね。
「あのさぁ…」
やっぱりしつこいかな?
梨華ちゃんはもっとすごいのないって言ってるし。
あぁぁ、でも聞きたい!!
「もういっこだけ聞いていい?」
「もぉ、まだあるの?」
あ、完全に呆れてるよぉ。
でも、その顔は怒ってないよね?
いいや、聞いちゃえ。
「あのさぁ、水着姿…とかないよね?」
階段の1段上にいる梨華ちゃんの顔を、恐る恐る覗き見る。
あぁ〜、やっぱりしつこかったかなぁ。
- 30 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月16日(日)00時31分58秒
- あれ?なんか変な動きしてるぞ。
しかも、どこからそんな声出してるの?
こんな時は、何か隠してる事があるに違いない。
梨華ちゃんってウソつけないんだよねぇ。
まぁ、そんなトコがかわいいんだけどさ。
って、おい!!
あるのかよっ、水着姿っ!!
「り、梨華ちゃん?もしかしてあるの??」
「え、うん…。」
マジっすかぁ?
吉澤、ショックです…。
って事は、あのパーカーの中は水着…。
そして、あたしの想像ではビキニ。
うわぁぁぁぁぁ!!聞くんじゃなかったよ。
あたしだって、あんまり見たことないのにぃ…。
「でもね、そんなやらしい感じじゃないし、なんかこう、健康的って言うかぁ…ね?」
ぎこちない笑顔をあたしに向ける。
ね?って言われても、そんな笑顔じゃごまかされないよ。
だいたいさぁ、水着姿の梨華ちゃんで健康的って言われても説得力ないんですけど。
- 31 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月16日(日)00時33分06秒
- 「じゃあ、なんで水着姿あるのを隠したの?」
ほら、答えられないだろ。
だって、問題ないなら言えたはずだもんね。
「なんか恥ずかしくってぇ。でも、仕事だからしょうがないでしょ?
それに、ひとみちゃんに最初に見てもらうつもりだったから良いじゃない。」
「よくない、良くないよ。だったら、仕事だったらなんでもするのぉ?」
かなり意地悪く言った。
本当はこんなこと言っちゃいけないって頭では分かってる。
「なんでそういうこと言うのよ…」
あ、梨華ちゃんの頬が膨らんできた。
やべぇ、目がマジで怒ってる。
逆ギレっすか??
「なんでそういうこと言うのよっ。私だって好きでやってるわけじゃないよ。
しょうがないでしょ、今回のコンセプトがそういう感じだったんだから。
ひとみちゃんだって、同じ仕事してるんだから、それくらいわかってよ。」
「ごめん…」
やっぱりしつこかったかなぁ…。
怒らせちゃった。ハハハ…。
でも、『こんせぷと』ってなんだろう?
- 32 名前:ポー 投稿日:2002年06月16日(日)00時40分41秒
- ちょこっと更新。
27>じゃない さま。
いいっすか?へなちょこ(w
28>ごまべーぐるさま。
へなちょこ君は、自分の事は棚に上げまくりが良いかな、と。どんどんツッコミ入れてください。
- 33 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月16日(日)09時40分05秒
- タイムリーなネタですねぇ
なかなか面白いです
- 34 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月16日(日)18時39分16秒
- >水着姿の梨華ちゃんで健康的って言われても説得力ないんですけど
確かに(w
最後の(0^〜^0)<『こんせぷと』ってナニ? に爆笑。
- 35 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月24日(月)23時55分58秒
- そりゃあさ、わかってるんだよ。
大人の人たちに、こうしなさいって言われたらやるしかないのくらい。
仕事だし。
でも、もうちょっと自覚して欲しいんだよね。
梨華ちゃんが最近特に大人っぽく、色っぽくなってるって。
そしてそれが、あたしをどんなに不安にさせるかって事を。
あたしが想ってるほど、梨華ちゃんはあたしの事想ってくれてないんじゃないかって不安なんだよ。
だから、あたしはそれを気づかれないようにいつもクールに装ってるんだ。
- 36 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月24日(月)23時57分27秒
- 「ひとみちゃん、今日はなんかおかしいよ?」
あたしが黙ってしまって、梨華ちゃんは困ったような顔をしている。
「ごめんね。今日のあたし、かっこ悪いね。困らせてばっかりだね」
前までは、梨華ちゃんが傍にいてくれるだけで良いと思ってた。
だから、梨華ちゃんがどんな仕事をしても、どんな衣装を着ても、誰と話をしていても良かった。
それが、最近ではそうじゃなくなった。
あたし以外の人と話したり、仲良くしたりしていると辛い。寂しい。
梨華ちゃんを独占したくてしょうがない。
もっとあたしと一緒にいて欲しい。
もっと笑顔を向けて欲しい。
もっと、あたしの事を好きになって欲しい。
こんな事、自分が考えるなんて思ってもみなかった。
- 37 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月24日(月)23時58分21秒
- 「ううん。そうやって甘えてくれるのも、うれしいよ。クールなひとみちゃんもいいけど、甘えんぼのひとみちゃんもかわいいし」
ニコッと微笑んでくれたその笑顔が、すごく優しくてかわいくて…。
「だからね、ちゃんとお話しよう?自分の中だけで解決しないで、ひとみちゃんの考えている事教えて」
真剣なまなざしであたしを見つめ、階段を1段降りた。
「それとも、私って相談できないくらい頼りない?」
うわっ出た。目をウルウルさせての上目づかい。
あたし、これに弱いんだよねぇ。
「そ、そんなことないよ」
ちょっと、すっげーかわいいんですけど…。
思わずじっと見つめてしまう。
「じゃあ、教えて。ひとみちゃんが何を考えてるか」
これは、言わなきゃダメな状況だよね。
でも、かなり恥ずかしい。
はぁ〜、どうしよう…。
「やっぱり、私ってひとみちゃんにとって頼りにならないよね…」
梨華ちゃんは消えてしまいそうなか細い声でそう言うと、下を向いてしまった。
やばっ、ネガティブモードに入っちゃったよ。
- 38 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月25日(火)00時00分12秒
- 「あのさ…」
あたしは意を決して、さっきまであたしの中で渦巻いていた気持ちを打ち明けた。
まぁ、若干恥ずかしくない程度に抑えたけどね。
って、なんで笑ってんの?
さっきまで泣きそうになってたのに。
「ひとみちゃんさぁ…」
梨華ちゃんは、まだ笑いをこらえて肩を震わせている。
「ん?」
梨華ちゃんの顔を覗き込んでみると、すっごいニヤニヤしている。
でも、顔真っ赤だよ?
「私の事すっごく好きなのね?」
「はっ?」
な、なんていうことを…。
言うか?普通、そんなこっぱずかしいことを。
梨華ちゃんは、また一段上の段に上がり、あたしの頭をくしゃっと撫でて抱き寄せた。
そして、耳元でこう言った。
「私もすっごくひとみちゃんのこと好きだよ」
またまた、恥ずかしい事をこの人は…。
でも、すっげーうれしい。
- 39 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月25日(火)00時01分51秒
- 「あのね、あたしは梨華ちゃんの写真の事がどうこうっていうよりも、ただ梨華ちゃんに甘えたかっただけなのかもしれない。
だから、変なふうにうろたえちゃったけど、今は自信もって梨華ちゃんの写真集を見ることができると思う。
出来上がったら、他の誰よりも一番に見せてね」
こんなこと言うのはちょっと照れくさいけど、この際もう関係ないや。
写真集が出来た時はクールにキメてやる。
もう、どーんと来いってんだぁ。
「うん。もっちろん」
梨華ちゃんはニコッと笑うと階段を上り始めた。
「梨華ちゃん」
前を向いてしまった梨華ちゃんの顔が見たくて、呼んでみた。
「なあに?」
振り返って、微笑んでくれる。
「へへっ、なんでもない」
不思議そうな顔の梨華ちゃん。
あたしは今、この瞬間梨華ちゃんを独り占めしていることがうれしくってしょうがなかった。
ねえ、梨華ちゃん。
あたし、すっげー梨華ちゃんの事好きなんだよ?
ちゃんと伝わったかな?
- 40 名前:セクシーベイベー 投稿日:2002年06月25日(火)00時02分40秒
ー数日後ー
ピロロロロ♪
あ、メール着信してる。
メルマガの芸能ニュースだ。
ん?なになに??
『石川梨華、胸の谷間と締まったウエスト見せつけ 写真集発売』
モーニング娘。のメンバー、石川梨華が……プールではちょっぴりセクシーな初のビキニ姿も披露。モー娘ナンバーワンのスタイルを誇る胸の谷間と引き締まったウエストを見せつけている。
な、なんだよこれぇ〜!!
胸の谷間…引き締まったウエスト…。
り、梨華ちゃぁ〜ん!!!
おわり。
- 41 名前:ポー 投稿日:2002年06月25日(火)00時10分12秒
- 終了です。
最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。
なんだか、気づいたら写真集が発売になってて、無理やり終わらせてしまいました。
ヤマ場というか、そういうのも全くなかったのですが、楽しんでいただけましたでしょうか?
33>名無し読者さま。
ありがとうございます。そう言ってもらえるのが、すごくうれしいです。
34>ごまべーぐるさま。
最後までお付き合い、ありがとうございます。
何度も感想もらえてうれしかったです。
みなさま、ありがとうございました。
これに懲りずに、またの機会にはよろしくお願いします。
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月25日(火)01時01分16秒
- 手玉にとられた感じでワラタ
- 43 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月25日(火)17時31分58秒
- 完結おめでとうございます。
確かに「見せつけてる」写真集でしたね(w
お疲れ様でした。
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月26日(水)11時57分31秒
- うーん。ポーさんのへなちょこりんな吉澤くんは可愛いですね〜。
完結、お疲れさまでした。 次回作もさりげなく期待しています。
見せつけてる写真集、見たいなー!
amazonで予約のに…まだ届きません。
- 45 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年07月06日(土)15時24分53秒
- 完結お疲れ様でした。(遅っ
梨華ちゃんの写真集を、フラゲする為に必死に本屋を6件回った
自分を思い出してしまいました。(w
へなちょこな吉。カナーリよかったです。ありがとうございました。
- 46 名前:ポー 投稿日:2002年07月10日(水)00時04分10秒
- 読んでくれたみなさん、ありがとうございます。
最後まで読んでくれて、うれしいっす。
43>ごまべーぐるさま。
本当に、見せつけてましたね(w
ごまべーぐるさんの作品、読ませていただいてます。すごい好きです。
そんな、ごまべーぐるさんに読んでもらえたなんて、うれしいです。
44>名無し読者さま。
写真集は見れましたか?
ここのよっすぃ〜同様にへなちょこ作品でしたが、そう言ってもらえるとうれしいです。
46>よすこ大好き読者さま。
ありがとうございます。
いえいえ、完結して時間がたってても、感想入れてもらえるのはうれしいっす。
と、いうことで、みなさまありがとうございました。
調子に乗って、近いうちに次回作載せてしまいます。
ごめんなさい!!(またしてもへなちょこ作品なんで、今のうちに謝っときます)
- 47 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年07月18日(木)00時02分53秒
- 「え〜、なんか太って見えない?この衣装」
今日は、初めてのシャッフルユニットの衣装あわせ。
そのままジャケ写も撮ることになってる。
それにしても、焦りました。
あたしはこの時、自分がこんなに太っているなんて思ってなかったよ。
しかも、梨華ちゃん、ごっちん、里田まいちゃんも同じ色なのに、どーしてあたしだけ膨張して見えんのよっ。
「よっすぃ〜、最近太ってきたもんね」
ニコニコと悪気のなさそうな顔して、グサッとくる事をいう梨華ちゃん。
つーか、あんた細すぎ。
でも、その細い腰は大好きなんだけどね。
なんか、守ってあげたくなるような…って、違うよ、今はあたしの事だ。
「この形も良くないんだよね。ま、オイラは黒っぽいからしまって見えるからいいけどさ」
自分のスカートの裾を両手で広げてみる矢口さん。
矢口さんは良いですよ。
ちっこいし、二の腕以外は細いし。
- 48 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年07月18日(木)00時04分05秒
- 「よっすぃ〜の年くらいは、少しくらいふっくらした方がええんちゃうん?
これから段々と、オトナの女の体になっていくんよ」
ちょっと変なセクシーポーズをとる平家さん。
「いや、あの、あたしくらいの年って、梨華ちゃんもごっちんもそうなんですけど…」
「あぁ?そうやなぁ。まぁ、人それぞれっちゅう事やな。あの子らはもう、かなりオトナの体になってると思うし。梨華ちゃんに関しては、よっすぃ〜の方が良く知ってるんちゃうん?」
ニヤニヤして、梨華ちゃんを見る。
あ〜あ、梨華ちゃんは顔を真っ赤にして俯いちゃってるよ。
それにしても平家さん、そのやらしそうな顔、中澤さんみたいっすよ。
口に出したら殴られそうな言葉を、頭の中でつっこんだ。
でも、思わず、
「セクハラおやじ」
ボソッと、呟いてしまった。
やっぱ、思ってる事って、つい言葉に出ちゃうんだよねぇ。
聞こえてませんように…。
- 49 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年07月18日(木)00時06分35秒
- 「あ゛ぁ?なんやと??」
ギロッと平家さんがにらんだ。
うわ、やばっ聞こえてました?
「はぁ〜、みっちゃんは悲しいわ。あんなかわいかったよっすぃ〜がこんな事言うなんて。
そんな悪い事言う口は、どの口や?この口か?あ゛?」
平家さんはそう言って、思いっきりあたしの頬を両手で引っ張った。
「あ゛〜〜〜〜、イタタタタ。痛いっすよぉ〜」
ほんっと、マジで痛い。
「あ〜ん、もうやめてくださいよぉ、平家さん」
すかさず平家さんを止めようとする梨華ちゃん。
ナイスフォロー!!
しかも、その上目遣いもナイス!
それなら平家さんもゆるしてくれるでしょう。
…なんて事を考えてたのに、予想に反して平家さんは
「あんなぁ、梨華ちゃん。もう、その手は通用せえへんよ。
今さらそんなベタな手で引っかかるはよっすぃ〜くらいやっちゅうねん!!」
横目で梨華ちゃんをニヤっとみると、思いっきりあたしの頬を引っ張って手を離した。
- 50 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年07月18日(木)00時07分24秒
- いってぇ〜〜〜〜!!
痛すぎて声も出ないよ。
「キャハハハハハッ。痛そぉ〜」
そう言いながらも大爆笑している矢口さん。
いや、マジ痛いっすよ。
「大丈夫、よっすぃ〜?」
心配そうにあたしの頬を撫でてくれる梨華ちゃん。
はうぅ〜。やっぱり梨華ちゃんだけは心配してくれるんだね。
ありがとう。
吉澤は、幸せもんです。
- 51 名前:ポー 投稿日:2002年07月18日(木)00時11分50秒
- 調子に乗っての、新作です。
ちょっと、最近のよっすぃ〜について思った事です。
やっぱり、よっすぃ〜はスラッとしてたほうがいいなという、個人的希望を込めて…。
ご意見、ご感想など、どしどしお願いします。
- 52 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月19日(金)09時24分23秒
- ぃゃぁ、切実です(ニガワラ
- 53 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月23日(火)13時51分24秒
- あの年頃の女の子はどうしても…(ニガワラ
続き楽しみにしてます。
- 54 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年07月31日(水)00時13分09秒
- 「ねえ、梨華ちゃん。やっぱりヤバイかなぁ?」
仕事を終えて、梨華ちゃんの家でくつろぎタイム。
ユニットが一緒だから、仕事が終る時間も一緒。
それならってことで、ここ数日は梨華ちゃんのお家でお泊り。
お風呂から出て、体を拭きながら鏡を見た。
映った自分の姿をみて、今日の衣装あわせの事を思い出した。
それで、さっきのセリフ。
Tシャツをたくし上げて、お腹の肉を掴みながら出てきたあたしを見て、
梨華ちゃんは何を言われてるのか分からない様子。
床にペタンと座ってソファに寄りかかり、キョトンとしている。
ははっ、目が丸くなってるし。
「だからぁ、ダイエットしないとまずいよねぇ…」
いや、わかってるんですよ。ヤバイって事くらい。
でも、梨華ちゃんから何か言って欲しいんだよね。
あ、でも、「やばいでしょ、ソレ」とか、言われたらショックかも…。
どうなんですか?石川さん。
一瞬間があってから、あたしの予想に反して梨華ちゃんはニッコリと微笑んだ。
「ん〜、無理しなくていいんじゃないの?だって、プニプニしてて気持ちいいもん」
ん〜、それはよろこんでいいんでしょうか?
プニプニって…。
- 55 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年07月31日(水)00時15分34秒
- 「それにさぁ、無理にダイエットしてもリバウンドしちゃうよ?」
そう言いながら、氷がたくさん入ったコップのお茶をコクッと飲んで、
風呂上りのほんのり桜色した頬にコップをあてている。
「はぁ〜、気持ちいい」なんて言ってるし。
すっごい他人事って感じだよね。
まぁ、他人事なんだろうけどさ。
まだ、自分のお腹の肉を掴んでるあたしを見て、梨華ちゃんはクスっと笑った。
そして、もう一度コクっとお茶を飲んで、今度は氷を口に含む。
あ、今ちょっと呆れた笑いじゃない?
もしかしてあたし、かっちょ悪い?
- 56 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年07月31日(水)00時21分21秒
- 「ほほにすはれはぁ」
「へ?」
何と?
今、何て言ったんですか?
「ほんなほこふぁってないれ、ほほにすはりなほぉ」
そう言って、梨華ちゃんは自分の隣にあたしが座れるように少しずれた。
ああ、『そんなとこに立ってないで、ここに座りなよ』ね。
そんなに氷が冷たいなら、我慢しないで出せば良いのに。
梨華ちゃんは、あたしのを見ながら「ふぁ〜、ふぅめはい」って言って、口をパクパクさせてる。
眉は八の字になって、ちょっと辛そう。
あ〜、でもなんかかわいい。
魚みたい。
とりあえず、せっかく梨華ちゃんが空けてくれたから隣に座る。
目の前のテーブルには、梨華ちゃんが飲んでるのとは別に、もう一個のコップが置いてある。
あっ、あたしの分もお茶いれといてくれたんだぁ
「ありがと」
そう言って、あたしもお茶をゴクゴクと飲む。
「ぷはぁー」
やっぱ、お風呂上りのお茶ってサイコー!!
「よっすぃ〜、おやじくさぁーい」
口の中の氷をガリガリと噛み砕きながら、梨華ちゃんは笑った。
でも、決して嫌がってる顔じゃない。
- 57 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年07月31日(水)00時24分54秒
- 「よっすぃ〜?」
「ん?」
涼しげな目で、首をかしげながらあたしを見る。
まだ、口元は冷たそう。
あたしは、思わず梨華ちゃんの頬に手を伸ばした。
親指で唇をなぞってみる。
ひんやりしてて、気持ち良い。
「よっすぃ〜?」
「ん?なによぉ?」
あたしは梨華ちゃんの頬に手を当てたまま、梨華ちゃんの次の言葉を待つ。
ちょっと、梨華ちゃんの頬をフニフニと親指で引っ張ってみる。
梨華ちゃんも、されるがままになっている。
おぉ?なんか面白いぞ。
もうちょっと続けてみよ。
フニフニフニフニ…。
ははっ、おっもしれぇ〜。
- 58 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年07月31日(水)00時26分28秒
- 「ちょっと、よっすぃ〜」
「ほぇ?」
おっと、夢中になりすぎた。
梨華ちゃんの目がムッとしてる。
「ああ、ごめんごめん。で、なに?」
手を離して、梨華ちゃんを見た。
「もう、いい」
頬を膨らませて、そっぽを向いてしまった。
でも、それでいて本気では怒ってはいない目。
「ごめんってぇ〜。りぃ〜かぁ〜ちゃん」
梨華ちゃんの両肩に手を置いて、顔を覗き込んだ。
そして、こっちを向かせる。
ほら、思ったとおり。
目が少し笑ってる。
「あのね、ひとみちゃんはそのままで充分かわいいよ」
そう言って、梨華ちゃんはあたしの唇にキスをした。
不意打ちだ。
まだちょっと冷たい唇の感触に、あたしは心を奪われた。
- 59 名前:ポー 投稿日:2002年07月31日(水)00時33分59秒
- 遅くなりましたが、更新です。
いしよしの場面は、時間がゆっくりと流れてしまうような…。
52>名無し読者さま
切実ですねぇ(ニガワラ
53>ごまべーぐるさま。
ネグリジェっぽいですよねぇ。あー、びっくりした(w
- 60 名前:オガマー 投稿日:2002年07月31日(水)15時29分49秒
- かわいいw
- 61 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月11日(日)22時07分48秒
- いつもの娘。の楽屋。
スタッフが用意してくれたお菓子がいっぱい…。
でもでも…今日からお菓子をやめるぞ。
そんな決意をしてすぐに、隣に座ったごっちんがお菓子に手を伸ばした。
メンズポッキーの箱をペリペリっと開けて、ポキポキポキ。
ポキポキポキ……
ふと、ごっちんがじーっとポッキーを見つめているあたしに気づいた。
「んあ、どしたぁ?食べる??」
そう言って、ごっちんは開けてないほうのポッキーの袋を差し出した。
「いや、いらない。ありがと」
「あ、そう」
小首をかしげて、再びボーっとしながらポッキーをポキポキポキ。
あ〜、この音がまた食欲をそそるんだよねぇ。
でも、がまんがまん。
- 62 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月11日(日)22時09分01秒
- 昨日は結局、キスでごまかされちゃったけど、
本当は梨華ちゃん、どう思ってるんだろう?
この、今のあたしの状態。
やっぱ、細い方がかっけーよねぇ。
ってことは、ダイエットしかないっしょ?
あ〜、でもどうやったらいいんだろう?
自慢じゃないけど、あたしひとつの事あんまり長続きしないんだよねぇ…。
でも、なんで?
なんであたしばっか太るのよ?
だって、ダンスで相当体動かしてるし、お菓子だってそんなには…。
梨華ちゃんだって、ごっちんだって同じくらいお菓子食べてるのに。
くっそぉ〜、なんでなんだよぉ。
ののなら分かるけど、なんであたしもなんだよ。
そんなことを一生懸命悩んでるあたしの目の前では、
ののがチョコボールを直接箱を口につけて、ザザーっとイッキ食いしてる。
それを紺野が口をあんぐりと開けて、高橋が目を真ん丸くして見てる。
- 63 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月11日(日)22時09分37秒
- 「よしこ?」
ごっちんの声で視線を戻すと、不思議そうな顔してごっちんがあたしを見ていた。
「どぉしたぁ〜?」
あたしの目の前でポッキーをゆらゆらと揺らしながら、聞いてきた。
「いや〜、ダイエットしようかなって思ってさ」
「ふ〜ん」
あれ?それだけかいっ。
っていうか、興味なさそー。
「そういえば、ごっちんはどうやってダイエットした?」
思い出した。
一年ちょっと前、ごっちん太ったって騒いでたよね?
あたしは、ごっちんの返事を少し期待しながら待った。
だって、ごっちんもあたしと負けず劣らず根性無しのはず。
いっつも、なにやっても長続きしないんだよねぇって笑ってた。
「ごとーはぁ」
うんうん。
「えーッとねぇ」
なになに?
「なぁ〜んにもしなかったよ。あはっ」
ガクッ。
参考になんねぇ〜。
- 64 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月11日(日)22時10分22秒
- 「何にもしないで、そんなに痩せたの?うっそだぁ〜」
「いやいや、ほんとだってば。だって、ごとーそういうの長続きしないもん」
そう言って、ごっちんはポッキーをまとめて5本位をバキバキと食べた。
「後藤、ちょっと話があるから」
マネージャーにそう呼ばれて、ごっちんはポッキーの残りをあたしに渡して部屋から出て行った。
あたしは、食べたいけど我慢するためにポッキーをどうしようかと持て余してしまった。
チョコの香りが、あたしを誘っているようで早く手放さなければ食べてしまいそうだ。
「あ、ポッキー。一本もらっていい?」
空いたあたしの隣に、早速梨華ちゃんが座った。
あたしの返事を聞くまでも無く、梨華ちゃんはポッキーを一本抜き取った。
「ごっちんは?」
ポキッと一口食べて、梨華ちゃんが言った。
「なんか、話があるってマネージャーに呼ばれたよ」
「ふ〜ん、なんだろうね。ソロの新曲の話かなぁ?」
そう言うと、またポッキーを食べた。
- 65 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月11日(日)22時11分08秒
- 「ね、よっすぃ〜。今日もウチ来る?」
「うん、行って良いなら行こうかな。明日午前中休みだし、梨華ちゃんとゆっくりしたいし」
「うん、分かった。じゃあ、帰りにちょっとお買い物してから帰っていい?買いたいものがあるの」
「いいけど、何買うの?」
「土」
つち?はぁ??
意味わかんないんですけど。
明らかに頭の悪そうな顔をしたあたしを見て、梨華ちゃんはクスッと笑った。
「じゃ、約束ね」
そう言うと、ポッキーを一本抜いて「やすださぁ〜ん、ポッキーゲットしてきましたぁ〜」と、甲高い声で叫びながら圭ちゃんのトコへ走って行った。
う〜ん、いまだに梨華ちゃん理解不能。
まだまだ訓練が足りないかな。
- 66 名前:ポー 投稿日:2002年08月11日(日)22時15分50秒
- なんだか、駄作な予感…。
なのに、更新してしまいました。
前回は氷、今回はポッキー、次回は・…どないしよ(w
60>オガマーさま。
ありがとうございます。(照
いやいや、私じゃないって?(w
- 67 名前:オガマー 投稿日:2002年08月12日(月)04時11分45秒
- アハハ!レスワロタw
駄作なんてことないと思いますよ?
なんかまったり感が好きですw
いやー、やっぱクスッと笑う梨華たんはかわええw(何
- 68 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年08月17日(土)05時49分47秒
- のののオトコマエな食い方に感嘆。
カッケー!
ポッキーはそんなに食べませんが、横でポキポキ食べられるとほしくなる罠。
いしかーさん、土って。ホームセンターにでも行くのでしょうか。
ではでは、続き楽しみにしてます。
- 69 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月27日(火)22時07分08秒
- 仕事も終わって、みんな各々帰る準備をしている。
あたしはさっさと帰る支度を済ませて、梨華ちゃんを待つ。
中学生組は大騒ぎしながら片付けをしているし、
お姉さんチームは打ち合わせを終えて、今から片付け開始な感じ。
ふと、部屋の隅で座っているごっちんが目に入った。
いつものようにボーっとしているように見えるけど、ちょっと様子がおかしい。
悩み事でもあるかのような物憂げな表情が、いつより大人びて見える。
最近、あの顔をしているごっちんをよく見かける。
でもちょっと声をかけ辛い雰囲気があって、いつもあたしはただ見ている事しかできなかった。
「おまたせ〜。帰ろ」
いつの間にかあたしの隣には、帰り支度を済ませた梨華ちゃんが立っていた。
「あ、うん」
それでもあたしは、ごっちんから目を離せずにいた。
このまま放っておけないほど危うげに見えた。
「よっすぃ〜?」
梨華ちゃんの視線が、あたしの視線の先にあるごっちんを捕らえた。
「ごっちん、また…」
あたしの隣に並んだ梨華ちゃんが、心配そうな声で呟いた。
- 70 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月27日(火)22時07分47秒
- 梨華ちゃんだって、気づいていたはず。
最近のごっちんの様子。
あたしと同じくらい、梨華ちゃんだってごっちんと一緒にいるんだから。
きっと梨華ちゃんはあの八の字眉で、あたしと同じように何もできない自分をいらだたしく思ってるんだろう。
と、あたしは勝手に思っていた。
- 71 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月27日(火)22時08分22秒
- でも、梨華ちゃんの行動は違った。
すたすたっとごっちんの前に立つと、
左手を腰にあてて右足を前に出し、右手を振るという変なポーズでごっちんに声を掛けていた。
「ごとーさーん。ごっちーん。真希ちゃーん。こんにちは、チャーミーでぇーす!!」
わざとごっちんの思考を邪魔するかのように、大きな声で大きい動きをしている。
いや、あの、それは今のごっちんにはどうかと…。
ごっちんは、面倒くさそうに顔上げた。
しばらくボーっと梨華ちゃんを見つめた後、いつものフニャっとした笑顔で笑った。
「どしたのぉ?変だよ梨華ちゃん」
「え〜、だってごっちんボーっとしてるんだもん。私の事をちゃんと見て、文麿さまぁ〜」
今度は、『石川さん』のキャラで、大きく手を広げてる。
困った顔をして、助けるを求めるような目であたしを見るごっちん。
ごめん、ごっちん。
突っ走った梨華ちゃんは、あたしには止められないや…。
- 72 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月27日(火)22時10分40秒
結局梨華ちゃんのペースに乗せられて、訳がわかんないうちにごっちんも一緒に梨華ちゃんの家に行く事になった。
こうやって3人で過ごすのは久しぶりだから、なんだか楽しい。
そう思ってるのはあたしだけじゃないはずで、ごっちんもさっきからよく笑っている。
さっきのあの表情は、ウソみたいだ。
梨華ちゃんも、いつもよりも更に饒舌になっている。
「今日は腕を振るうから」と張り切る梨華ちゃんに連れられて、梨華ちゃんちの近くのスーパーで夕飯の買い物を済ませた。
梨華ちゃんの「腕を振るう」に少し不安が無いわけではないけど、ごっちんがいるから大丈夫かな。
ま、いざと言う時はいつものよう水で流し込めばいいか。
なんて失礼な事を考えてると、梨華ちゃんは隣のお花屋さんへと向かって行った。
- 73 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月27日(火)22時11分23秒
- 「ちょっと、待っててね」
梨華ちゃんはそう言うと、慣れた様子でお店の奥へと入って行った。
お店の人となにやら楽しそうに話している。
あたしとごっちんは、入口の近くのお花を2人で眺めながら梨華ちゃんを待った。
ごっちんは、近くに置いてある花の香りをクンクンかいでいる。
「あ、〜だぁ」
とか花の名前を言ってはかいでいるけど、あたしには花の名前なんてさっぱりわかんない。
そういえば梨華ちゃんの家にも、よく花が置いてある。
「切花は可哀想だから置かないの」とよく言ってるとおり、鉢植えがたくさん飾られている。
でも、いくら説明してもらっても、花の名前は頭に入らない。
「よっすぃ〜、女の子なんだからそれくらい知っておかないと」ってよく言われるけど、
カタカナの名前ばっかりで覚えられないんだからしょうがないじゃん。
- 74 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月27日(火)22時13分21秒
- 「ごめん、ちょっとてつだってぇ〜」
店の奥から梨華ちゃんの声がした。
無意識に足を一歩踏み出したときに、
「あ、ごとーが行くよ」
あたしよりも店の奥にいたごっちんが、「どしたのぉ〜?」と言いながら声のほうへ向かっていった。
ごっちんってば、相変わらず梨華ちゃんにやさしいな。
よしこ、ちょっとジェラシー…なんてね。へへっ。
- 75 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月27日(火)22時14分16秒
- あたしは二人が出てくるまで、お店の外で待つことにした。
花の甘い香りから抜けるようにして外へ出ると、外はまだ少し明るい。
最近、こんなに日が長くなっているなんて知らなかった。
夏前特有の湿度の高いムッとした空気が、体中にまとわりついた。
もうすぐ夏だなぁ。
久しぶりに季節を実感することができた気がした。
最近、忙しくって外の世界と触れることがなかったから。
こんなにじっとりした空気なのに、なんだか新鮮で気持ちよく感じた。
あたしは、思いっきりこの湿った空気を吸い込んで体をギューッと上へ伸ばした。
「よっすぃ〜、お腹出てるよ」
後ろから声がしたので振り返ると、
横長のプランターを抱えたごっちんが、フニャっと笑って立っていた。
「梨華ちゃんが、よっすぃ〜も手伝ってって。中で待ってる」
- 76 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月27日(火)22時37分42秒
- 横長なプランターを抱えたごっちん。プランターの上には、植物の栄養剤とかが乗せられている。
その隣で、土が2袋ずつ入ったビニール袋を2袋抱えたあたし。
さらに、先ほど買った食料品を持った梨華ちゃん。
調子はずれな鼻歌を、ご機嫌な様子で歌いながらあたしたちの前を歩いている。
「ねえ、梨華ちゃんこれで何するつもりなんだろうね?」
「さあ?でも、今日ごっちんがいてよかったぁ〜」
「んあ?」
プランターを持ち直しながら、ごっちんが不思議そうな顔をした。
「だってさぁ、ごっちんがいなかったらこの荷物、あたし一人で運ぶことになってたんだよぉ。
ごっちんがいてくれて、すっげー助かったよぉ」
あたしも、よいしょっと土の入った袋を持ち直した。
「あはっ、確かに。梨華ちゃん、よしこの限界とか考えてなさそうだもんねぇ」
「うん。深く先のことは考えないからねえ、梨華ちゃんは」
そう言って、ごっちんと二人でご機嫌に前を歩く梨華ちゃんを見つめた。
- 77 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月27日(火)22時39分41秒
- 「ほら、二人ともだらだら歩いてないでさっさと歩く!」
まるで今の会話が聞こえていたかのように、タイミングよく梨華ちゃんが振り返って言った。
「ねえ〜、これ何すんのぉ〜?」
ごっちんがプランターを横に揺らした。
「へ?花を植える以外に何するのよ?」
梨華ちゃんは不思議そうな顔をした。
確かに・・・。
土とプランターならそれしかないか。
それに気づかなかったうちらって・・・。
「なんだよぉ、そんなことなら秘密にしなくても良いじゃんかよぉ」
あたしは梨華ちゃんの言葉に不満を言った。
「ってゆうかよしこ、そんなこと秘密にされてたの?梨華ちゃん意味わかんないよ」
「え〜、なんとなく・・・」
「だったらごっちんだって、花植える以外何すんだよ」
「あはっ、そだねぇ」
ごっちんがケタケタと笑った。
- 78 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年08月27日(火)22時41分08秒
- 日が暮れ始めてきれいな夕日の中、あたしはこの風景をすごく幸せだと感じた。
梨華ちゃんとごっちんと、あたし。
3人で楽しく笑い合って。
この3人でいるときは、あたしと梨華ちゃんは恋人というよりも親友に戻る。
梨華ちゃんと二人でいるときと同じように、あたしにとっては大切な時間。
あたしは、それはこれからもずーっと続いていくものだと思っていた。
いや、ずーっと続いてほしいと願っていた。
いつかはこの3人が離れなくてはいけなくなることを、心の奥底で感じていながらも。
- 79 名前:ポー 投稿日:2002年08月27日(火)22時48分52秒
- えっと、更新です。
今回は食べ物は無しでした。
67>オガマーさま。
あはっ(照
68>ごまべーぐるさま。
ポッキーの罠は恐ろしい…。きっと、ポッキーガールズにつられてポッキーを買ってしまうんでしょうね。
- 80 名前:オガマー 投稿日:2002年08月28日(水)01時13分52秒
- >親友に戻る
このフレーズがいいなぁw
- 81 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月05日(木)22時58分36秒
- 「ごっちん、このスープおいしい」
「へへっ、サンキュー」
梨華ちゃんとごっちんが作ってくれた夕食を3人で囲む。
ごっちんが作ってくれたジャガイモの冷たいスープは、とてもおいしかった。
『びしそわーず』とか言うらしい。
メモっとこ。
「ねえねえ、私のオムライスは?」
梨華ちゃんがあたしとごっちんを見る。
ごっちんはパクッとオムライスを口に運んで、ちょっと困ったような顔をした。
「え?おいしくない?」
心配そうに、梨華ちゃんはごっちんの顔を覗き込む。
「いや、えっと…ちょっと、ほんのちょっとだけなんだけどぉ、しょっぱい…かな」
申し訳なさそうに、遠慮がちにごっちんは言った。
「あ、でもちょっとだけだから…おいしいよ」
そう言って、もう一口パクッと食べた。
- 82 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月05日(木)22時59分32秒
- その様子を見ながら、あたしもオムライスに手をつけた。
しょ、しょっぱぁ〜い。
ま、あたしはいつものことだから飲み込んじゃえばいいや。
でも、ごっちんは辛いかなぁ?
なんて考えながら、
「うん、おいしい。あたしにはちょうどいいよ」
まだ心配そうに見ている梨華ちゃんに、笑顔と一緒に言った。
そして、さらに2,3口をパクパクッと口に入れた。
あたしの様子を見た梨華ちゃんは、
「そっかぁ、ごっちんは薄味が好きなんだね。ごめんね」
なんて言って、のん気に食べ始めた。
うわっ、こんなしょっぱいのに梨華ちゃん平気なの?
もしかして…いや、やっぱり……味覚バカ?
なんともない顔でパクパクと食べてる梨華ちゃんをまじまじと見ていると、
あたしと同じような表情で梨華ちゃんを見てるごっちんと目が合った。
ごっちんは諦めの表情をあたしに向けると、首をすくめて再び食べ始めた。
- 83 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月05日(木)23時01分03秒
ふたりが食事を作ってくれたから、片付けはあたしの役目。
大体いつもこんな感じ。
あたしだって料理くらい作れるけど、作ってくれるならお任せしようって思ってる。
だって、ごっちんが作ってくれる料理はおいしいんだもーん。
梨華ちゃんのは…愛情たっぷりでそれはそれでおいしいし、ね。
「梨華ちゃーん、これは?」
「あ、それはこっちに置いといて。先に、これをいれるから」
「ほーい」
「うわっ、ごめん。こぼしちゃった」
「だいじょうぶ。次こっちもお願いね」
「りょうかーい」
あたしの背後からは、なにやら楽しそうな二人の声。
ごっちんがコショコショと何かを言っては、梨華ちゃんがクスクスと笑っている。
くっそぉ〜、あたしも遊びたい〜。
二人が何やってるのか気になるから、手っ取り早く片づけを済ます。
「ごっちーん、梨華ちゃーん。あたしも仲間に入れてよぉ」
ベランダの窓を開けて、並んでしゃがみこんでいる2人に駆け寄った。
- 84 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月05日(木)23時02分16秒
- 「よっすぃ〜、終わった?」
梨華ちゃんが顔だけ上にあげた。
返事の代わりに、梨華ちゃんの頭に軽く手をやり、ナデナデする。
二人の足元には、さっき買って来たプランター。
中には土が入れられている。
「なにやってんの?」
ごっちんの後ろから覗き込むと、ごっちんはその土で小さな山を作ってる。
ごっちんは顔を上げずに、
「お城作ってんの」
そう言って黙々と手を動かしている。
そんなごっちんを隣で優しく見ながら、ちょこっと手を出して邪魔する梨華ちゃん。
ごっちんが作った山に、梨華ちゃんが指をブスっと刺してはごっちんがその穴を埋めている。
「邪魔すんなよぉ〜」
楽しそうに、梨華ちゃんに文句を言うごっちん。
そんなごっちんがおかしいのか、さらに手を出して邪魔する梨華ちゃん。
かわいいなぁ〜。
子供みたいだよ、このふたり。
あたしはまるで保護者のようにごっちんの隣にしゃがんで、二人の様子をしばらく眺めていた。
無邪気に遊んでいる二人を見ているだけでも、心の中がポーっと暖かくなるような幸せな気分だった。
- 85 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月05日(木)23時04分46秒
- 「ほら、ごっちん。遊んでないで植えるよ」
ごっちんの邪魔するのに飽きたのか、梨華ちゃんがごそごそと小さな袋を取り出した。
「自分だって遊んでたくせに…」
ごっちんはそう言うと、さっきまで一生懸命作っていた山(ごっちんが言うところのお城)をバンバンと潰した。
つーか、そんな簡単に壊すなよ。
さすがごっちん。
あまりにもあっさりと壊してしまう、ごっちんのクールさに苦笑。
「はい、手を出して」
梨華ちゃんがそう言うと、あたしとごっちんは素直に片手を広げて出した。
すると梨華ちゃんはあたしたちの手の上に、小さな種を置いた。
「あ、ひまわりの種」
あたしは手の上に置かれた種をつまみ上げた。
ひまわりの種を見るなんて、小学校の時以来だ。
自分の小学生時代を少し思い出した。
- 86 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月05日(木)23時11分44秒
- 夏休み、ひまわりの当番で水をやりに登校した日。
好きだった男の子と一緒に歩いた帰り道。
クラスの子たちとキャーキャー騒いで遊んだプール。
ガリガリ君の当たりが出て、続けて2本食べてお腹を壊した。
あの頃の友達は今、何やってるんだろう。
普通の高校生かな?
それとも、働いている?
もしかして、結婚しちゃってる人もいるかも。
まさか、あたしが今こんな仕事してるなんて、あの頃は想像できなかったなぁ。
- 87 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月05日(木)23時12分41秒
- そんな風に感傷に浸っている横で、
「ひまわりの種っておいしいんだよねぇ〜」
ごっちんがひまわりの種をしげしげと見つめながら、のんびりとした声で言った。
ごっちん、雰囲気ぶち壊し。
「ごっちん、食べちゃだめだよ。植えるんだから」
せっかく感傷に浸ってたのに、ぶち壊されたからあたしは突っ込む。
「食べないよぉ、だってこれ生じゃん。よしこじゃないんだからさぁ」
「うわ、そういう問題?しかも、あたしそんなに何でも食べないよぉ。辻じゃないんだから」
そんなあたしたちのやり取りを見て、梨華ちゃんはクスッと笑うと、
「ほら、二人とも植えるよ」
そう言って、プランターの中の土に小さな穴を掘った。
ごっちんとあたしも、それにならって穴を掘る。
- 88 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月05日(木)23時13分29秒
- それぞれが種を植え終わると、梨華ちゃんは小さな白いプレートをあたしたちに渡した。
「はい、これに名前書いてね」
そう言って、自分はさっさと名前を書くと、自分の種を植えた傍にそれを挿した。
あたしたちも順番に名前を書いて、それを挿す。
「なんかいいねぇ〜、こういうの」
最後の仕上げに梨華ちゃんが水をやっている、種を植えたばかりのプランターを二人で見つめながら
ごっちんはしみじみと言った。
プランターには、『よっすぃ〜』『ごとー』『りか』と書かれた3つのプレートが仲良く並んでいる。
「元気に育ちますように」
梨華ちゃんもあたしの隣にしゃがむとプランターに向かって手を合わせた。
なんとなく、あたしもそれを真似する。
- 89 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月05日(木)23時14分07秒
- 「これって、どのくらいで咲くの?」
ジーっとプランターを見つめたまま、ごっちんが言った。
「えっとねぇ、今6月でしょぉ?ちょっと植えるの遅くなっちゃったから、8月くらいには咲くと思うけど…」
ちょっと自信なさげな梨華ちゃん。
「ちゃんと生えてくんの?」
そんな梨華ちゃんの様子を見て、あたしはちょっと不安になった。
だって、せっかく植えたんだから、ちゃんと育って欲しいでしょ。
「大丈夫だよ…たぶん」
梨華ちゃんもその気持ちは同じなわけで、「大丈夫だよ」というところにかなり願望が込められていた。
その横では、まだプランターをジーっと見つめているごっちんがウンウンとうなずいていた。
「元気に育ちますように」
もう一度梨華ちゃんがプランターに向かって手を合わせた。
「「元気に育ちますように」」
あたしとごっちんは、今度はちゃんと復唱しながら手を合わせた。
- 90 名前:ポー 投稿日:2002年09月05日(木)23時20分19秒
- 更新しました。
ageてしまって、ちょっと鬱。
なんだか、最初の予定と違った方向へ話が進んでしまいました。
ちょっと、過ぎてしまった夏を惜しんで、夏っぽい話を入れてみました。
今回は、3人の関係をうまく描きたいなって思ってます。
80>オガマーさま。
そう言ってもらえると、すごいうれしいです。
まだちょっと続きます。
よろしくお願いします。
- 91 名前:オガマー 投稿日:2002年09月06日(金)00時05分05秒
- かわいいです。
ヲイラもなんとなく感傷に浸ってみたりして(笑)
なんかいいですなー、こういうの。
- 92 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月06日(金)00時40分42秒
- ほのぼのしますた
- 93 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月11日(水)23時36分30秒
- 朝、目を覚ますと、隣にいるはずのごっちんの姿がなかった。
時計を見ると、まだ8時。
今日は3時くらいに出れば間に合うはずだから、起きるには少し早い時間。
寝ぼけ気味の頭を無理やり起こして、あたしは布団から抜け出た。
隣のベッドでは、梨華ちゃんがすやすやと眠っている。
こっそり寝顔を盗み見てから、梨華ちゃんを起こさないようにそーっと寝室を出た。
寝室から出ると、ごっちんがベランダの戸を開けてしゃがんでいた。
「ごっちん早いねぇ〜」
あたしの呼びかけに、全くの無反応。
とりあえずあたしもごっちんの隣にしゃがんだ。
普通ならこれで、少しは目線を向けたりとか反応するはずなのに、
ごっちんの目線はずーっとプランターに向いたまま。
「どしたぁ〜?」
いつものように、ボーっとしてるのかと思ってごっちんの表情を伺う。
でも、その表情はただボーとしているというのではなく、最近良く見るあの寂しげな表情だった。
- 94 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月11日(水)23時37分14秒
- 「ごっちん?」
あたしがそう呼びかけたとき、初めてあたしの存在に気づいたようだった。
「ん〜?」
ごっちんは、寂しげな表情を隠すように、ゆっくりと微笑んだ。
ただ、目の奥にはまだ寂しさが残っているようにあたしには見えた。
「ごとーはさ、よっすぃ〜と梨華ちゃんが娘。に入ってくれて良かったよ。二人がいなかったら、
今まで続けてられなかったかもしれないなぁ。」
また目をプランターに戻して、まるで独り言かのようにごっちんは呟いた。
「なに?どしたの、突然」
「ん?なんでもなぁ〜い」
そう言うと、ごっちんはフニャ〜っと笑った。
あたしは、ごっちんがどうしてそんなことを突然言い出したのかわからなかった。
まだ不思議そうな顔をしてるあたしを見て、ごっちんはもう一度笑った。
「何?」
「よっすぃ〜のそういう顔が、梨華ちゃんは好きなんだって」
ちょっといたずらな目をして、からかうようにごっちんは言った。
- 95 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月11日(水)23時37分56秒
- 「はぁ?何言ってんの?」
「う〜んとねぇ…。梨華ちゃんの前で、そういう隙だらけの顔を見せてくれるのがうれしいんだってさ。
なんかぁ、私のこと信頼してくれてるのかなとか思っちゃって。きゃっ」
後半は手を胸の前に組んでポーズをつけながら、梨華ちゃんの真似をしながら言った。
しかも、すごく楽しそう。
「え〜、なんだよ。それ」
あたしは、どんな顔だ?とか思いながらも、恥ずかしくて前髪をいじって気持ちを誤魔化す。
「あはっ。梨華ちゃん、よくごとーにのろけてるよぉ。よっすぃ〜、愛されてるねぇ。このぉ〜幸せもんっ」
そう言って、ごっちんはウリウリと肘であたしのわき腹をつついた。
「はははっ……」
梨華ちゃん、いくらごっちんにでも恥ずかしいよ。
まさか、ほかのメンバーには言ってないよね?…ハァ。
- 96 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月11日(水)23時40分20秒
- 「そうだ、よっすぃ〜さぁ、梨華ちゃんの作った料理、ちゃんと噛んでないでしょ?」
ごっちんがいきなり話題を変えた。
いきなり、何言い出すんだ?
あたしはごっちんの話の意図が読めなくって、少し戸惑った。
「よく噛まないと、太るんだって。体にも、良くないよ」
そう言うと、またプランターに目を戻す。
「梨華ちゃんも、無理して食べられるよりもちゃんと言ってもらったほうがうれしいんじゃないかな?
ごとーだったら、好きな人には喜んで食べてもらいたいな」
ごっちんはあたしの顔をのぞき見た。
きっと、あたしは何とも言えない顔をしていたのだろう。
ごっちんは、少し早口で次の言葉を付け足した。
「あ、いや、よっすぃ〜が嫌々食べてるって言ってるわけじゃないよ?
はっきり言わないのは、よっすぃ〜の優しさだと思うし。
でも、そういうことも素直に言ってもらったほうがうれしいと思う。
そのほうがよりいっそう信頼関係がうまくいくんじゃないかなぁ〜?とかね」
- 97 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月11日(水)23時41分56秒
- 「うん……」
「あ、これは例え話であって、よっすぃ〜はもっと梨華ちゃんに遠慮っていうか、
気を使うって言うか、無理…っていうのは違うかな?
でも、そういうのはしないで、もっと何でも言ったほうがいいと思うよ。
っていう話なんだけどぉ…」
「……」
「あぁ〜、何言ってんだろう?
だからぁ〜、何でも言い合ったほうがうまくいくんだよ。
って、今でも充分うまくいってんだろうけどさぁ、もっと良い関係でいられるっつうかぁ…」
「ごっちん?」
ごっちんの言いたいことは大体わかった。
あたしたちがこれからもいい関係でいるには、それは必要なことだと思う。
でも、どうしたんだろう?
今まで、あたしと梨華ちゃんの関係について、ごっちんが何か言うって事はなかったのに。
でも、隣のごっちんは笑顔をつくりながら話しているにもかかわらず、目は真剣で…。
- 98 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月11日(水)23時42分35秒
- 「ふたりがこれからもずーっと、ずーっと仲良くしてくれないと、ごとーは嫌なんだよ。
そうじゃないと、ごとーの…ごとーがごとーでいられる場所がなくなっちゃうから…」
ごっちんはそう言い切ると、立ち上がってキッチンへと向かった。
立ち上がる瞬間、あたしにはごっちんの目にうっすらと涙が浮かんでいるように見えた。
「ごっちん!」
あたしは、ごっちんの背中に向かって呼びかけた。
でも、その後何を言って良いのかわからない。
ごっちん、どうしたの?
なにかあった?
本当ならそう言うべきなんだろう。
でも、ごっちんの背中には、そういった言葉を寄せ付けないようなオーラがあった。
- 99 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月11日(水)23時43分34秒
- 「朝食、作ったんだ。食べる?」
そう言って振り返ったごっちんは、いつものフニャ〜っとした笑顔だった。
今までの表情はなく、でも、これ以上は何も聞くなよってオーラを発している。
あたしはただ頷いて、椅子に座った。
そして初めて、ごっちんが出かける支度を済ませていることに気がついた。
「ごっちん、今日は午後からでしょ?どしたの??」
「あ、ごとーはその前に打ち合わせがちょっと入ってるんだ。
だから、もう出かけなきゃいけないの」
そう言いながらも、グラスに牛乳を注いでくれる。
「ごっちん、さっきの話…」
やっぱりさっきの話が気になる。
あたしは椅子に座ったまま、対面に立っているごっちんを見上げた。
「あ、ごめん、忘れて。なんでもないから」
ごっちんは、再びフニャっとした笑顔を浮かべた。
そのあとすぐ、ごっちんは、
「ひまわり咲いたら絶対呼んでねぇ〜」
と何度も言って、出かけて行った。
- 100 名前:ポー 投稿日:2002年09月11日(水)23時50分33秒
- 更新終了。
まとまりのない文章になってしまい、反省。
91>オガマーさま。
夏休み最後の日を思い出して、
感傷に浸ったらかなりブルーになってしまいました。w)
92>名無し読者さま。
ほのぼのしてもらえましたか。よかった。ホっ
- 101 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月12日(木)09時13分51秒
- 脱退関連かな・・・?
寂すぃね・・
- 102 名前:オガマー 投稿日:2002年09月14日(土)10時38分49秒
- なんかいいですね。
この言葉ばっかり言ってるけど(笑)
なんかいいんですよ。
こういう空気感好きです(w
- 103 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月25日(水)00時31分28秒
- ごっちんが出かけて行った後も、あたしはさっきのごっちんの言葉を思い返していた。
よく噛んで食べないと太る…。
じゃなくって、
あたしと梨華ちゃんの関係のこと。
確かに、今まであたしは梨華ちゃんに不満とか、我儘とかをたくさん言うことはなかった。
自分が多少我慢すれば、梨華ちゃんと穏やかに過ごせるから。
そうすることで、お互いを傷つけあうことは避けられるから。
そして梨華ちゃんもまた、あたしに対して不満を言うことはなかった。
だから、あたしたちは今まで大きな喧嘩と言うものをしたことがなかった。
それって、あたしたちが仲がいいからだと思っていたけど、
実はそれって普通じゃないって今気づいた。
- 104 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月25日(水)00時32分04秒
- お互いを気遣っているようだけど、本当は自分を傷つけたくないための自己防衛。
もしかしたら梨華ちゃんはその距離を縮めたいと思っていたのかもしれない。
でも、あたしは気づいていなかった。
本当は、もっとたくさん素直にならなくちゃいけないってことに。
あたしと梨華ちゃん、二人の間にはいつもごっちんが入ってくれていた。
だから、今まで何事もなくうまくやっていけたんじゃないか。
ちょっとした喧嘩は、ごっちんが解決策をアドバイスしてくれた。
たぶん、ごっちんは二人の愚痴を聞いていたからうまいアドバイスができていたんだろう。
でもそれじゃあ、あたしと梨華ちゃんの関係は、ごっちんがいるから成り立っていたって事?
もし、ごっちんがいなかったらあたしたちは…。
- 105 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月25日(水)00時32分46秒
- 「おはよ、よっすぃ〜。どうしたの?ボーっとしちゃって」
突然後ろからすーっと抱きしめられて、あたしは我にかえった。
まだ寝起きなせいで、梨華ちゃんはいつもよりも若干低めな声。
あまりにも考えこんでいたせいで、あたしは梨華ちゃんが起きてきていたことに気づいてなかった。
「ん?おはよ〜」
あたしの腕にまわされた、梨華ちゃんの指先をなぞりながらあたしは返事した。
「ねえ、どうしたの?」
梨華ちゃんはあたしの梨華ちゃんをなぞる指先を、逆の手で握った。
あたしは手の動きを止めて、されるがままにしていた。
頭の中ではごっちんに言われたことがリフレインしている。
- 106 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月25日(水)00時33分18秒
- 「もう、よっすぃ〜聞いてるの?」
ちょっとすねた声が、耳元でする。
あたしの肩の上に乗った梨華ちゃんの顎の感触がこそばゆい。
息をスーッと吸い込むと、梨華ちゃんの髪の甘い香りが鼻をくすぐる。
幸せな朝のひと時って感じだ。
フル回転していた頭を休ませるために、もう一度大きく息を吸う。
「ごっちんは?」
後ろから玉子焼きをフォークで刺して、梨華ちゃんはあたしの口へそれを運んだ。
「なんか仕事が入ってたみたい。さっき出かけてった。
これ、ごっちん作ってくれたんだよ。梨華ちゃんも食べな。おいしいよ」
あたしも、左肩に乗ってる梨華ちゃんの口へ玉子焼きを運んだ。
「ん〜〜、ホワホワしてておいひぃ〜」
口をもごもごさせて、梨華ちゃんは幸せそうな声を上げた。
- 107 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年09月25日(水)00時33分50秒
- あたしはこの幸せな時間を手放したくないって改めてそう思った。
でも、そのためにはどうしたらいいのかまだわからない。
いきなり素直にいろいろ言い合えって言われても、あたしはまだ弱くて。
梨華ちゃんを傷つけてしまうことも、自分が傷ついてしまうことも怖いから。
だから、ゆっくり考えよう。
まだ17歳。時間はたっぷりある……はず。
- 108 名前:ポー 投稿日:2002年09月25日(水)00時40分15秒
- 101>名無し読者さま。
ごっちんがいない娘。寂しいっすねぇ…。
102>オガマーさま。
いえいえ、もっとおだててください(w
こういう空気感、大事にしてきたいと思ってるんで。エヘ(w
- 109 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月26日(木)07時03分23秒
- うん、後藤がいなくなってどうなっちゃうんでしょねぇ…
- 110 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月07日(月)00時06分08秒
- それから数日経ったある日、仕事から帰ると梨華ちゃんからメールが届いた。
ここ最近は、娘。の新曲のレコーディングとかプロモーションで、忙しくてなかなか梨華ちゃんの家には行けてない。
でも、帰ってからも必ず梨華ちゃんとはメールのやり取りをする。
たまに平家さんと一緒にいるときにメールをしてると、チャットみたいなメールするなって呆れられる。
メールするより電話のほうが早いだろって。
で、梨華ちゃんからのメールはというと、
『目が出たよ!!』
そのひとこと。
へ?目が出たって???
それは、ビョーキか何か?
そんなんじゃわかんないよ。
あたしはディスプレイを、目を丸くして見つめる。
しかも、メールにはなんだか真っ黒な写真が添付されている。
最近新しくした携帯のカメラで何か撮ったらしい。
でもこれ、なんだ??
- 111 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月07日(月)00時06分49秒
- 梨華ちゃんは、変なメールを送ってくることがよくある。
この前は、
『よっすぃーは、戦闘行ったことある?』
ってメールが来てびっくりしたっけ。
『行ったことあるわけないじゃん』
って返事を送ったら、
『そうなの?私はあるけど。ののが行ったことないって言ってたから気になったんだけど』
って返ってきた。
だって、普通行ったことないでしょ?この平和な日本人の女の子が。
でも、そういえば梨華ちゃんはバトルロ○イアル好きだって言ってたっけ。
血がドバドバ出る映画好きだもんね。
そうか、梨華ちゃん戦闘行った事あるんだ…。
- 112 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月07日(月)00時07分22秒
- って、んなわけないだろっ。
面倒くさいからソッコー電話した。
結局『銭湯』と『戦闘』の変換間違えってことで話はすんだんだけど。
ってことは、今回も変換間違え?
梨華ちゃん、慌てもんだからなぁ。
目・眼・女・芽・・・『芽』だ!!
『芽が出た』んだね。やっとよしこは理解したよ。
こんなに短いメールで、解読するのにこんなに時間がかかるなんて…。
平家さんの言うとおり、電話で話したほうが早いや。
それにしても、芽が出るのって早いんだね。
- 113 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月07日(月)00時08分18秒
- 〜♪
梨華ちゃんに電話しようと携帯を手に取ったとたん、携帯が鳴った。
梨華ちゃんからだ。
「梨華ちゃん?」
あたしの言葉が終わらないうちに、興奮気味の梨華ちゃんの声があたしの耳を攻撃する。
『よっすぃ〜、聞いて聞いて!芽が出たの!!ひまわり!!!
帰ってお水あげようとしたら、芽が出てなかったのに出てたの!!』
あまりにもでかい声が耳元からして、あたしは思わず携帯を耳から遠ざけた。
耳から10センチ近く離しても、梨華ちゃんの声は聞き取れるくらい大きい声でかなり興奮のご様子。
「梨華ちゃん、落ちつい…」
『それがね、もう小さくってカワイーの。ああ、元気に育ってくれてるなって思うともううれしくって。
ホント言うとね、ちゃんと育つかすごーく心配だったの。だって、お水あげるの忘れた日だってあったし。
でも、芽がでてくれて良かったぁ。とりあえずひと安心って感じだよね?よっすぃ〜も見においで。
あ、そうだ。ごっちんにも教えてあげなくっちゃ。じゃあ、よっすぃ〜、またあとでメールするから』
「あっ、梨華ちゃ…」
- 114 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月07日(月)00時08分57秒
- プツッ
ツーッツーッツー
ハァ・・・すっげぇ〜テンションたけぇよ。
耳がじんじんする。
きっと今頃、めちゃめちゃうれしそうな顔してごっちんに電話してんだろうなぁ。
そのまま携帯を見つめてニヤニヤしてるあたし。
きっとこんな姿を家族にでも見られたら、気味悪がられるだろうな。
〜♪
今度はメール着信音が鳴った。
『ひまわり、芽が出たんだってね。早く見たいよ〜 ごとー』
やっぱり梨華ちゃん、ごっちんにも速攻連絡したんだ。
それにしても、ごっちんはあのひまわりの事をかなり気にかけている。
いつもはこういう事も、あまり関心示さないのに。
植えたときも、次の日も、じーっと見つめていたし。
なんか、気になる・・・。
それから毎日、梨華ちゃんからはひまわりの報告があった。
あたしもごっちんも、早く見に行きたかったんだけど、忙しくてなかなか行くことはできなかった。
だから毎日梨華ちゃんは、メールで写真を送ってくれた。
そして、7月も終わりになった頃・・・。
- 115 名前:ポー 投稿日:2002年10月07日(月)00時11分16秒
- 更新しました。
なんか中途半端な終わり方…。
>109 名無し読者さま。
いつもレス、ありがとうございます。
もう少しで終わるかと思うので、お付き合いお願いします。
- 116 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月13日(日)01時40分50秒
- ひまわりを植えてから1ヶ月とちょっと。
週末は地方にハロプロコンサート。
そしてその他の日は、レギュラー番組や歌番組の収録でかなり忙しい毎日を過ごしていた。
シャッフルユニットでの活動がひと段落着いたら、次は娘。の新曲プロモーション。
世の中は夏休みが始まって、みんな楽しそうに過ごしているのにあたし達は働きづめ。
でも、好きでやってる仕事だし、メンバー全員と一緒にいる時間が増えたのは楽しい。
まあ、自分にそう言い聞かせないとやっていけないっていうのも多少はある。
明日は、いよいよ代々木一日目だ。
最近地方を廻ってたから、週末東京で過ごすのは久しぶり。
といっても、一日二回公演だから遊ぶ時間はもちろんない。
でも梨華ちゃんの家に行くチャンスがあるかなってちょっと期待している。
いくら仕事してて土日は関係なくっても、やっぱり週末はちょっとウキウキする。
だって、それが週末だから。
ははっ、意味わかんねぇ〜。
- 117 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月13日(日)01時41分37秒
- そろそろ寝ようかと思って、あたしは携帯を手の届くところにおいてベッドに入った。
いつもならこのくらいの時間に、梨華ちゃんからの『ひまわり観察メール』が届くはず。
そう思ったときに、携帯のメール着信音が鳴った。
『ひまわりが咲いたよっ!!すっごいかわいいよ。明日見に来ない? 梨華』
おおぉ〜、やっと咲いたんだぁ。
メールを見たとたん、すっごくうれしかった。
普段はあんまり花には興味ないけど、あのひまわりは何故か特別に思える。
きっと、ごっちんも梨華ちゃんも同じ思いのはず。
なかなか見に行けなくて、梨華ちゃんに任せっぱなしで申し訳なかったけど、
あのひまわりは、あたしとごっちんと梨華ちゃんのひまわり。
3人のひまわり。
よし、明日はごっちんとひまわりを見に、梨華ちゃんの家に行こう。
ほら、やっぱり週末って楽しいや。
ウキウキしながら、梨華ちゃんにメールを返信した。
- 118 名前:ポー 投稿日:2002年10月13日(日)01時42分10秒
- ほんの少しですが、更新しました。
- 119 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月13日(日)14時35分07秒
- メール待ってる吉澤かわいいなぁ
- 120 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月15日(火)00時21分21秒
- 代々木一日目を無事に終わらせ、あたしとごっちんは梨華ちゃんと一緒に、梨華ちゃんの家に帰った。
梨華ちゃんの家に着くなり、ごっちんはベランダへ一直線に走りこんだ。
ガラっと窓を開けて、プランターの前にしゃがみこむ。
「おぉ〜」
ごっちんが感嘆の声をあげる。
そんな様子がかわいらしくって、あたしは梨華ちゃんと目を合わせてクスッと笑った。
「よしこもおいでよぉ〜」
ごっちんが振り返ってあたしたちの方を見た。
「おう、見る見る〜」
そう言って、あたしはごっちんの後ろに駆け寄って、ごっちんの後ろからプランターを覗き込んだ。
そこには、三つかわいく並んだ小さなひまわりが咲いていた。
小学校とかで植えるような大きなひまわりじゃなくて、小さなかわいいひまわり。
それぞれのひまわりの前には、白いプレートがささっている。
- 121 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月15日(火)00時22分22秒
- 「かわいいよね〜」
ごっちんはため息をつくように言った。
「これはね、ビッグスマイルっていうひまわりなんだよ」
冷たいお茶を3つ、グラスに入れて持ってきた梨華ちゃんが言った。
「普通のひまわりよりも小さくって、おうちで育てられるやつなの」
梨華ちゃんの説明を聞きながら、あたしとごっちんはひまわりをもう一度見た。
たしかに、ビッグなスマイルって感じはする。
元気いっぱいだ。
そして、それを眺めているあたしたちも、笑顔でいっぱい。
さすが、ビッグスマイル…。
- 122 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月15日(火)00時23分01秒
- 「ねえ、よっすぃ〜、ごっちん。お茶いれたけど?」
「んあ〜」
「は〜い」
いつまでもひまわりを見ているあたしたちに、呆れたような顔の梨華ちゃん。
梨華ちゃんの家に着いてから、20分。
荷物を置くことさえすっかり忘れていた。
梨華ちゃんの一声で、やっと3人で腰を落ち着かせた。
- 123 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月15日(火)00時23分40秒
- しばらくはひまわりの話とか、メンバーの話とか、他愛のない話を続けていた。
でも会話がすこし途切れたとき、いつになく真面目な顔でごっちんが言った。
「よっすぃ〜と梨華ちゃんに、話しておきたいことがあるんだ」
はっきりとした口調で。
でも、声はなんとなく震えていた。
「ごとーね、娘。卒業することになったから」
その言葉を聞いたとき、あたしの頭の中は一瞬思考が止まった。
ソツギョウスルコトニナッタ
耳から言葉が入ってきてるけど、その言葉の意味が理解できない。
ソツギョウ……
そつぎょう……
「卒業!?」
やっと思考を始めた頭は、理解したと同時にあたしの口から言葉を吐き出した。
- 124 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月15日(火)00時24分26秒
- 「うん、卒業。これからソロで、後藤真希としてやっていくことになった」
そう言うごっちんの眼差しは、硬い意思を示していた。
そして、ずっとずっと先の将来を見つめている様でもあった。
「そっかぁ…」
あたしよりも取り乱すであろう梨華ちゃんの口から、意外とさらっとした言葉が出た。
思わず梨華ちゃんの顔を見ると、梨華ちゃんは寂しげだけどしっかりと事実を受け止めている様子。
娘。である以上、メンバーの追加があれば、卒業がある。
それはすでに納得していたはず。
でも、それが今、こうやってごっちんの卒業として目の前に事実を突きつけられると、
あたしは、どうしていいのかわからない。
だってごっちんは、あたしの憧れた後藤真希で、仲間で、親友だから…。
- 125 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月15日(火)00時25分21秒
- 「いつ?」
思ったように声が出なくて、掠れてしまう。
「いつ卒業するの?」
まともにごっちんの顔が見れなくて、目を逸らす。
「9月23日のコンサートで。ほかのメンバーには、明日つんくさんから報告されるはず。
本当はそれまで誰にも言っちゃいけなかったんだけど、よっすぃ〜と梨華ちゃんには先に言っておきたかったから」
ごっちんの声は、やっぱり少し寂しげで…。
何も言えないで俯いているあたしの手に、隣にいた梨華ちゃんがそっと手を重ねた。
そして、ぎゅっとあたしの手を握った。
まるで、あたしを励ますかのように。
「うん、わかった。頑張ってね。寂しくなるけど」
梨華ちゃんの声も微かに震えていて、泣かないように頑張っているのがわかる。
何か言わなくちゃ
そう思ってごっちんに視線を向けると、ごっちんは少し寂しげな瞳で微笑んだ。
「あの、さ。あの…頑張ってね。応援してるから」
何をどう言っていいのかわからない。
本当にごっちんを応援したいと思ってるし、頑張ってほしい。
でも、それ以上に寂しさがこみ上げてくる。
- 126 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月15日(火)00時26分45秒
- 「でも、さみしいね。こうやって3人で遊ぶこともなかなか出来なくなっちゃうしね。
あと2ヶ月でしょ?じゃあ、いっぱい、いっぱい残りの2ヶ月楽しまなくっちゃね」
明るい声で梨華ちゃんが言った。
珍しくポジティブな発言。
でも、これが梨華ちゃんの精一杯の思いやり。
なんだか、すっごくかっこいい。
久しぶりにお姉さんな梨華ちゃんを見た気がする。
あたしも、このまま情けない姿ではいられない。
かっこよくごっちんを送り出そう。
「ごっちん、うまく言えないけど頑張ってね。何かあったらいつでも呼んでよ。
卒業しても、今までと同じでよしこが駆けつけるからさ」
ちょっと男前モードを出してそう言うと、ごっちんはクスッと笑った。
「ありがとぉ〜。ごとーは、よっすぃ〜と梨華ちゃんがいてくれたから頑張れたんだよ。
二人がいなかったら、ごとーは娘。続けられなかったよ」
ごっちんはあたしたちの後ろへまわると、あたしたちを後ろからぎゅっと抱きしめた。
ごっちんと梨華ちゃんの体温が伝わってくる。
- 127 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月15日(火)00時27分39秒
- 「あたしたちも、同じだよ。すっごい楽しかったし」
あたしは肩に置かれたごっちんの手を握った。
「3人でいろんな事したよね?遊びに行ったり、買い物したり。
こうやって一緒にひまわり植えたり。」
そう言って優しい瞳でひまわりを見つめるごっちん。
「本当に今までありがとう」
そう言うと、もう一度あたしたちをギュッと抱きしめた。
「ううん、私たちもごっちんと出会えてよかったよ。ね、よっすぃ〜?」
「うん。それにほら、あたしたちのこともさ、ごっちんがいなかったら付き合ってなかったかもしれないし。
本当に、ごっちんには感謝してるよ」
あたしたちは、精一杯の感謝の気持ちを込めて言った。
「梨華ちゃん、よっすぃ〜をよろしくね。よっすぃ〜、梨華ちゃんを大事にするんだよ」
ごっちんはそう言うと、荷物を持って立ち上がった。
「二人とも仲良くね。じゃないと、また3人で遊べないからさ」
そう言った後、あたしたちの顔を見てフニャっと笑った。
「なにしけた顔してんのぉ?明日すぐに辞めるわけじゃないんだからさぁ。じゃ、また明日ね〜」
軽くあたしと梨華ちゃんの頭をぽんぽんと撫でて、ごっちんは帰っていった。
- 128 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月15日(火)00時28分12秒
- ごっちんがどうしてあんなにひまわりを気にしていたのか。
それがなんとなくわかった気がした。
きっとごっちんには、それがあたしたちとの絆のように思えてたのかもしれない。
(ちょっと、大袈裟かな?)
そして、それが最後の3人だけの共通の思い出になるかもしれない。
だからこそ、すごく大切に想っていたんだろう。
そしてあの日、どうしてごっちんがあんな事言ったのか。
あたしと梨華ちゃんの、これからの事を。
これから新しい道を一人で進んでいくごっちん。
それと同時に、ごっちんにばかり頼ってきたあたしたちの関係も、新しい道を進む。
疲れたときには、あたしたちの所に戻ってきてほしい。
だって、ここはごっちんの居場所だから。
だから、あたしと梨華ちゃんはこの心地よい場所を守っていかなくっちゃいけない。
きっと、そういうことだろう。
- 129 名前:ポー 投稿日:2002年10月15日(火)00時30分25秒
- 更新しました。
予想以上に展開が遅く、しかも最初に考えていたものとは全く違ったものになってしまいました。
まだまだ、力のなさを感じてしまいます…。
- 130 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年10月15日(火)04時18分06秒
- レスはヒサブリですが、ずっと読んでました。
3人の友情に、目頭に熱いものが。。。(T▽T)
がんがってください。
- 131 名前:オガマー 投稿日:2002年10月15日(火)06時12分59秒
- ちょっとseek離れしてたら、2回更新あったんですね。
熱い友情!なのにほのぼの感つーかマターリ感がなんか
ジンワリと心に響いてきます。
がんがってください!
- 132 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月20日(日)01時10分44秒
- 次の日のコンサートが終わると、つんくさんから発表があるといって、
メンバーがひとつの会議室に集められた。
昨日ごっちんが言っていた事が発表されるというのは、すぐにわかった。
でも、わかっていても凄く不安な気持ちが胸を締め付ける。
だって、つんくさんから発表されてしまえば、それは現実として突きつけられてしまうから。
ほかのメンバー達は、不思議そうな顔をして会議室へと向かった。
みんなダラダラとしゃべりながら歩いていて、あたしと梨華ちゃんの前には圭ちゃんがいるくらいだった。
目の前を歩いている圭ちゃんは、ほかのメンバーとは違って少し緊張した面持ちで歩いている。
もしかして、圭ちゃんもごっちんのこと知ってるのかな?
そんなことを考えてると、梨華ちゃんがあたしの服の裾をちょっとつまんだ。
「よっすぃ〜、大丈夫?」
「うん…。梨華ちゃんは?」
「やっぱり…泣いちゃうかも」
「大丈夫、頑張ろう。笑顔で送ってあげよう」
こういう時こそ、かっこよく梨華ちゃんを守りたい。
そう考えたあたしは、
『あたしも泣いちゃいそうだよ』というその一言を飲み込んで、
梨華ちゃんの手をぎゅっと握った。
- 133 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月20日(日)01時11分49秒
- 「ねぇ、ごっちん。なにかな?なんだろ??」
「う〜ん、なんだろうねぇ」
ほかのメンバー達の声に混じって、後ろからあいぼんとごっちんの会話が聞こえた。
チラッと後ろを見ると、お揃いのTシャツと着た二人が、仲よさそうに歩いている。
ごっちんと手を繋いだあいぼんは、楽しそうに無邪気に笑っている。
あいぼんの笑顔は、ごっちん大好きって顔に書いてありそうなくらいの満面の笑み。
そしてその隣では、ごっちんが少し切ない表情で微笑んでいた。
あたしは梨華ちゃんの手をもう一度ギュッと握ると、これから発表される事への不安を振り払って先を進んだ。
- 134 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月20日(日)01時13分31秒
「おうおう、みんなおつかれなぁ〜」
会議室には、すでに数人の事務所のスタッフと一緒につんくさんが
テーブルの一番奥の席に座って、ひと癖もふた癖もありそうな笑みを浮かべてあたし達を迎えた。
あたしと梨華ちゃんは無言で頷くと、圭ちゃんに続いて部屋の奥へと進んだ。
梨華ちゃんはつんくさんの隣で圭ちゃんの向かい側に。
あたしは圭ちゃんの隣に座った。
全員が席に着くまでは、それぞれがしゃべっていて部屋の中はざわざわとしていた。
チラッと隣を見ると、圭ちゃんはやはりさっきと同じように深刻な顔をしている。
梨華ちゃんなんて、顔を俯かせているがすでに泣きそうだ。
- 135 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月20日(日)01時14分11秒
それから、つんくさんから発表されたことは、あたしの想像を超える話だった。
ごっちんの卒業だけでなく、圭ちゃんの卒業。
タンポポ・プッチモニ・ミニモニのユニット再編成。
話を聞いているうちに、もう何がなんだかわかんなくなってきた。
だって、ごっちんだけじゃなくて圭ちゃんも…。
二人はあたしを残して、プッチも卒業。
そのかわりに、小川とアヤカがプッチに加入?
タンポポも、梨華ちゃん以外は入れ替え?
平家さんが、ハロプロ卒業?
え?え??もう、何言ってんのかわかんないよ。
- 136 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月20日(日)01時14分42秒
- 気がついたら、つんくさんはもう部屋からいなくなっていた。
部屋の中には、数人のすすり泣く声。
あたしもボーゼンとしながらも、涙が出てきそうで下唇を噛んでこらえる。
ふと梨華ちゃんが心配になって視線を向けると、なにがなんだか分からないといった顔で視線が定まっていない様子。
涙も出ないほど、なにも考えられないんだろう。
あたしの両隣では、圭ちゃんが机の上に伸ばした指先をじっと見つめてるし、
紺野はしゃくりあげながら泣いている。
机に突っ伏している人、何も考えられなくて俯いている人。
それぞれが、今言われたことを理解できずに戸惑っている。
やっと頭が動き始めたと思ったら、今度はテレビのスタッフがあたし達にカメラを向けていることに気づいた。
あたしたちの表情を、ひとりひとり撮っている。
こんなとこ撮るなよ
そう思いながらも、いつものことだから仕方ないと諦めた。
だって、あたしが入る前から娘。はこういうものだから。
- 137 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月20日(日)01時15分25秒
- みんなの様子が落ち着いてくると、スタッフに従ってコメント撮りをすることになった。
ごっちんの卒業について言葉にして出してしまうと、涙まで一緒に出てきそうだ。
それをぐっとこらえて、ゆっくりと言葉を選んで話す。
もう、涙を我慢することで頭がいっぱいで、何を話したか覚えていない。
絶対に、あたしが泣いている姿をごっちんには見られたくなかった。
そして、梨華ちゃんにも。
だって昨日、梨華ちゃんと約束したから。
ごっちんを笑顔で送ってあげようって。
それに、梨華ちゃんにはあたしの弱い姿は見せたくなかった。
これからあたしが梨華ちゃんを守っていかなくちゃいけないんだから。
ごっちんにばかり頼っていたあたしも、卒業するんだ。
そう、自分に誓ったから…。
- 138 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月20日(日)01時15分55秒
- 自分の撮りを終えて、あたしは少し離れたところでメンバーの撮りを眺めていた。
さすがに、安倍さん、飯田さんは、今まで何人もメンバーを送り出しただけあって涙はなかった。
でも、心を痛めているのが凄く伝わってくる。
諦めともつかないような表情で、ポツリポツリとコメントをする姿は、心臓を掴まれたように痛かった。
そして、梨華ちゃん。
話しながら、涙が頬を伝っていく。
本人は涙を流している全く自覚がないようで、一生懸命自分の言葉を探している。
梨華ちゃんの撮りが終わったとき、あたしは真っ先に梨華ちゃんに駆け寄ろう。
泣いている梨華ちゃんを慰めるのは、あたししかいない。
そう思って、撮り終わった梨華ちゃんに近づこうとした。
でもあたしよりも先に、泣いている梨華ちゃんの肩を抱いたのは圭ちゃんだった。
梨華ちゃんは、圭ちゃんに抱きついて、圭ちゃんの胸で泣いている。
あたしはそれを、遠くから見ているだけしかなかった。
- 139 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月20日(日)01時16分36秒
- 今回卒業を発表された、もう一人のメンバー。
そして、梨華ちゃんの教育係だった圭ちゃん。
あたしにとっても、かけがえのない先輩。
でも、この胸を締め付ける想いはなんだろう。
圭ちゃんに甘える梨華ちゃんを、あたしは何度となく見てきた。
それを見るたびに、あたしの胸は締め付けられてきた。
でも、今日はいつもよりも激しい…嫉妬心。
梨華ちゃんが圭ちゃんの卒業を悲しむ気持ちは痛いほど良くわかるけど、
でもこの感情は止められない。
だって、今日、今の梨華ちゃんを守るのはあたしのはず…。
二人を見ていられなくて、その場から離れた。
誰もいないところで、ゆっくりと座りたい。
そう思って、人気のない廊下を一人で歩く。
- 140 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月20日(日)01時17分16秒
- スタッフも誰もいないところを求めて歩いているうちに、自販機のある喫煙所に出た。
電気はついていなくて、自販機の明かりだけがボウっと近くを照らしている。
そこで冷たいお茶を買うと、ゆっくりと椅子に座った。
さっきまで我慢していた、いろいろな感情がこみ上げてくる。
ごっちん、圭ちゃんの卒業。
それに、現プッチモニの解散。
悲しみと言うよりも、ショックのほうが大きい。
それに、さっき見てしまった、梨華ちゃんと圭ちゃん。
あたしよりも圭ちゃんのほうが頼れるのかな。
いや、圭ちゃんも卒業するんだからだよ。
でもホントは、今までもあたしのこと頼りないって思っていたのかも。
いろいろ考えては、自分の考えを打ち消していく。
いろんなことが、どんどんあたしを不安にさせる。
そして、梨華ちゃんの気持ちさえも疑ってしまう自分が情けなく思える。
- 141 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月20日(日)01時17分58秒
- すると突然、昨日から我慢していた涙がすっと流れてきた。
泣くつもりじゃなかったのに、自分でも扱いに困った感情が溢れてくる。
卒業することを口にした、昨夜のごっちん。
ごっちんの隣で無邪気に笑ってたあいぼん。
発表したときのつんくさん。
無理に笑顔を作ってコメント撮りをする安倍さん。
そして、圭ちゃんに肩を抱かれる梨華ちゃん。
いろんな映像が、頭の中でフラッシュバックする。
どんどん涙が流れてくる。
声が出てしまいそうで、唇を噛む。
「くっ……」
それでも、小さな嗚咽が漏れてしまう。
誰かが来ないか気になりながらも、涙がとまらない。
「よっすぃ〜…」
いきなり近くで声がした。
誰かが来ないか気にしてたはずなのに。
そう思って通路側を見るが、誰もいない。
声の主を探して見回すと、自販機の陰であたしから死角になってるところに飯田さんがいた。
- 142 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月20日(日)01時18分37秒
- 飯田さんも一人で泣いていたのか、目が真っ赤でまだ潤んでいる。
それでも、心配そうな目であたしを見ている。
「…見られちゃいましたか」
見られた恥ずかしさから、ちょっと自嘲気味に笑う。
「ごめん」
飯田さんは、真っ赤に腫らした大きな目を少し伏せた。
あたしは、頬を伝う涙を手の甲で拭った。
それでも、涙は止まらない。
「あれ?おっかしいなぁ。涙止まんない…」
そう言い終わらないうちに、あたしの瞼に影が移った。
そして、フッと暖かい温もりに包まれた。
「よっすぃ、悲しいときは泣いていいんだよ」
そう言って、抱きしめてくれた飯田さんの声も震えていた。
「カオもそうだから…」
飯田さんがそう言ってくれたことで、あたしの心の中でプチンと何かが切れた。
「飯田さん、ごっちんが…ヒック…圭ちゃん…プ、プッチ…ヒッ…んで、なんでこんな…」
あたしは声を上げて泣いた。
飯田さんは何も言わずに、あたしの頭を撫でていてくれた。
- 143 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月20日(日)01時19分17秒
どれくらい泣いただろう。
気が済むだけ泣くと、不思議と気持ちはすっきりとした。
「ありがとう。もう、大丈夫です」
そう言って顔を上げると、飯田さんの目からも涙が流れていた。
「ん。カオもよっすぃ〜のおかげでうまく泣けたよ」
そう言って微笑んだ飯田さんは、潤んだ瞳がすごく色っぽかった。
「うまくって…」
色っぽい表情とは似つかわしいおかしな表現に、あたしは少し笑った。
「よし、もう大丈夫だよね?よっすぃ〜は辛くても我慢しすぎるから、たまには泣かないと駄目だよ。
もっと、感情を出さないともたないよ。ウサギは一人だと寂しくて死んじゃうんだからね。」
「ありがとう、飯田さん。でも、最後は意味わかんないです」
「なんでわかんないのぉ?だからね、カオが思うのは、ウサギはね…」
それからしばらく、あたしは飯田さんの『ウサギはどうして寂しいと死んじゃうのか』についての解釈を聞く羽目になった。
- 144 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年10月20日(日)01時20分01秒
- でも、この時飯田さんの『泣いていいんだよ』の一言に、あたしはすごく救われた気がした。
あたしは昔から、親の前でも泣くことは少なかった。
感情を表に出すのが下手なのかもしれない。
でも、飯田さんは分かってくれていた。
さすが、リーダー。
無意味に交信していたわけじゃなかったんだ。
でも、飯田さんには悪いけど、本当は梨華ちゃんに一緒にいてもらいたかった。
かっこ悪いあたしを見せるのは嫌だけど、梨華ちゃんに慰めてもらいたかったような気がする。
「じゃ、そろそろ戻ろうか」
飯田さんがそう言ってあたしの頭をクシャっと撫でた。
ふっと甘い香りがして、胸の中がフワッと暖かくなった気がした。
- 145 名前:ポー 投稿日:2002年10月20日(日)01時22分13秒
- 更新しました。
こんな駄文にお付き合いありがとうございます。
もうすぐで終わりって言っといて、なかなか…。
- 146 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時44分55秒
- 荷物を取りに控え室に戻ると、メンバーはみんな目が腫れていた。
ごっちんは居心地悪そうにしながらも、腕にしがみついてるあいぼんを慰めている。
目、腫れてないかな
泣いたのがバレルと嫌なので気になったが、鏡を見るとそうでもなかった。
ちょっとだけ赤いけど、まあばれないだろうってくらい。
「ふたりでドコ行ってたの?」
目が腫れて、ちょっと怖い顔になっちゃった圭ちゃんが、目ざとくあたし達に気づいた。
「え、あ、お茶買って来た」
開けずに持っていたお茶を見せた。
飯田さんは、にっこりと微笑んだだけ。
「ふ〜ん。そう」
微妙な表情の圭ちゃん。
その横には、顔を俯かせた梨華ちゃんがいる。
別に後ろめたいことはないけど、泣いてたなんて思われたくない。
そう思ってごまかしているのが、不自然に見えちゃったかな。
さっさとこの場を離れたくって、急いで荷物をまとめて帰る支度を始めた。
- 147 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時46分32秒
- 「ねえ梨華ちゃん、怒ってんの?」
「怒ってないよ」
さっきからこの会話の繰り返し。
ごっちんの卒業の発表から、3週間ほど経った。
記者発表もして、世の中に公表されてしまってから周りが慌しくなっている。
北海道ロケに行ったり、レギュラー番組のプッチモ二特集とかタンポポ特集とか、いろいろあった。
取材もたくさんあったし。
それとともに、梨華ちゃんのほうは新生タンポポの新曲に取り掛かっていた。
そんななかで、この前から梨華ちゃんのあたしに対する態度がおかしい。
「怒ってるの?」って聞くと、「怒ってない」ってムッとした顔で返事が返ってくる。
なかなか二人でゆっくり話す機会もなくって、ずっとこんな感じだった。
明らかに梨華ちゃんに避けられている気もして、なかなか二人っきりになれなかった。
やっと二人の時間が持てたのは、地方野外コンサート先のホテルだった。
いつまでもこんな状態でいるのは辛いから、あたしから梨華ちゃんの部屋へ押しかけた。
部屋へ入ってからは、ずっと同じ会話の繰り返し。
- 148 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時47分02秒
- 「ね〜え、りぃ〜かぁ〜ちゃん。なんで怒ってんだよぉ〜」
「怒ってないよ」
梨華ちゃんの頬を突っつくあたしの手を、パチっと振り払った。
それが怒ってるっていってんだよぉ。
なんか気に障ることしたっけ?
この3週間、ずーっとあたしは考えている。
いつもならごっちんに泣きつくけど、今回は自分で解決するつもり。
こんなことで迷惑かけちゃ悪いからね。
だから、こんなに時間かかってるって話もあるけど。
それにしても、今回の梨華ちゃんは手ごわい。
いつもなら謝っちゃえば許してくれるのに、今回は全くダメ。
仕事上では普通にしてるのに、仕事が終わるとそっけない。
だいたい圭ちゃんと一緒にいたりして、あたしの方には寄ってこない。
あたしなんかしたぁ〜〜〜??
いろいろ思い返そうとしても、ぜーんぜん思い当たらない。
っていうか、あたしも梨華ちゃんとケメ子が一緒にいる所を見てムカついていた。
ハッキリ言ってくれない梨華ちゃんに、だんだんイラついてくる。
- 149 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時47分33秒
- 「梨華ちゃん、何怒ってるんだかわかんないけど、ごめん。
きっと、あたしが悪いんだよね?だから、機嫌直してよ。
ほら、明日もライブあるんだし、それにごっちん卒業しちゃうんだから、最後は仲良く見送ろうよ。ね?」
このままこうしててもしょうがない。
ごっちんの事を持ち出すのはずるいけど、しょーがないじゃん。
だから、あたしはこの場をおさめるために謝って、梨華ちゃんの肩を抱いた。
梨華ちゃんの表情は、相変わらず浮かない顔。
眉間にしわも寄っている。
「ほらぁ、ごめんって。ね、梨華ちゃん」
もう一度梨華ちゃんを引き寄せると、頭をくしゃっと撫でた。
そして何も言わない梨華ちゃんを、納得してくれたって都合よく理解するしかないあたしは、
自分の部屋へ戻ろうと部屋の入り口に向かった。
- 150 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時48分07秒
- 「理由もわからないのに、謝らないでよっ!」
部屋を出ようとドアを開けたそのとき、背中に枕が飛んできた。
ドスッと鈍い音がして、その重みで前につんのめった。
「いってぇ〜。何すんだよぉ」
振り返ると、梨華ちゃんが真っ赤な顔であたしを睨みつけていた。
「なんでいっつも、そうやってすぐ謝るのっ。
何について謝ってるのかもわかんないで謝られたって、意味ないでしょっ。
だいたいよっすぃ〜は、いつもそうやって適当にごまかすんだから」
「適当って、そんなつもりないよ?」
怒ってる梨華ちゃんを挑発しないように、なるべくやわらかく答える。
っていうか、背中痛い。
「適当でしょっ。だいたいよっすぃ〜の言葉って気持ちこもってないよ。
何考えてるんだか、全然わかんないっ。」
「何、それ。っていうか、枕投げることないじゃん」
梨華ちゃんの言い方に、あたしはカチンときた。
さっきまでのイライラが復活して、語気が荒くなる。
- 151 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時48分49秒
- 「よっすぃ〜が悪いんでしょ。ほんっと何考えてるんだかわかんないよ」
「そんなに言うなら、梨華ちゃんはどうなの?怒ってないとか言って怒ってるじゃん。
こっちこそ、梨華ちゃんの考えてることわかんないよっ」
あたしは足元に落ちている枕を拾うと、梨華ちゃんに向かって投げ返した。
ボスッ
あっ、当たっちゃった。しかも、顔面。
ま、いいか。
「いったぁ〜い。なにすんのよっ」
枕が当たった頭を抑えると、キッとあたしを睨む。
「そっちが悪いんでしょ?言いたいことあるなら、はっきり言えば?」
考えていたよりも冷たい声が出た。
そんなあたしの言葉に、梨華ちゃんの眉がピクっと動いた。
そして枕を持つと、ずんずんとあたしに向かって歩いてきた。
- 152 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時50分01秒
- 「よっすぃ〜だって、いつも言いたいこと全然言ってないでしょっ。
いつもいつも、私の顔色ばっかうかがって」
そう言いながら、枕でボスッとあたしの肩を叩く。
いてっ。
「なにかあってもすぐ謝って済まそうとするし。一方的に私が怒ってるだけみたい…。
喧嘩にもならないなんて、それで付き合ってるって言える?ねえっ」
ボスボスッ
「なんでいつも、怒らないの?なんで私がなに言ってもすぐに謝るの?
本当は私のことどうでもいいって思ってるんでしょ。
だから適当にそうやってあしらうんでしょっ」
もう一度あたしを叩こうとする腕を、あたしはとっさに掴んだ。
「は?何言ってんの?そんなことないよ。あたしは梨華ちゃんと喧嘩なんてしたくなんだよ。
どうでもいいなんて、全然思ってるわけないじゃん。
だいたいさっきから聞いてれば、何?梨華ちゃんはあたしと喧嘩したいの?
あたしは梨華ちゃんと仲良くやっていきたいんだよ。喧嘩なんかしたってしょうがないじゃん」
無意識に、梨華ちゃんの腕を掴む手に力がはいる。
- 153 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時50分33秒
- 「痛っ。離してよっ」
あたしの腕を振り払うと、下からあたしを睨みつけた。
泣いているのかと思っていたその瞳には、全く涙はなかった。
本当に怒ってるときは泣かないんだぁ。
冷静にそう思っている自分がいて、少しだけ笑えた。
- 154 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時53分20秒
- 「ちょっと、なにやってんのよ、あんたたち」
隣の部屋から、圭ちゃんが顔を出した。
その時初めて、あたしたちはドアを開けたまま口論していたことに気づいた。
「なに?どうしたの??」
圭ちゃんの後ろから、飯田さんも一緒になって出てきた。
「あんたたちねぇ、こんなとこで喧嘩するんじゃないわよ。いったいどうしたの?」
そう言いながら、圭ちゃんはあたしと梨華ちゃんの間に割って入った。
さりげなく梨華ちゃんを自分の背後へ押しやる。
その手を、すっと握る梨華ちゃん。
なんか、その一連の動作が無性にムカついた。
- 155 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時53分56秒
- 「はぁ?圭ちゃんには関係ないでしょ。ほっといてよっ」
その、梨華ちゃんの保護者のような態度があたしの神経に障る。
「あんたねぇ、なにその態度。いい加減にしなさいよ。」
圭ちゃんが一歩前へ出た。
梨華ちゃんは圭ちゃんの手を掴んだままだ。
なんだろう、このイライラは。
圭ちゃんの登場で、ますます気が立ってくる。
「圭ちゃんには関係ないって言ってんでしょ。そこ、どいてよ。
なんか、あたしが梨華ちゃんいじめてるみたいじゃん」
あたしも一歩前へ出る。
「よっすぃ」
飯田さんが、圭ちゃんの肩に手をかけようとしたあたしの腕を掴んだ。
飯田さんの顔を見ると、優しげな瞳で大きく首を振った。
その一瞬の空気が、あたしのを少し落ち着かせる。
- 156 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時54分30秒
- 「ごめん、圭ちゃん。でも、これはウチらの事だから口出さないで」
声のトーンを落ち着かせて、圭ちゃんに謝った。
でもその視界の隅で、梨華ちゃんが圭ちゃんの手を少しだけ自分のほうへ引き寄せたのが見えた。
「梨華ちゃん、二人だけでゆっくり話そう」
あたしは、圭ちゃんの手を握る梨華ちゃんの手首を掴んで、部屋の中へと引っ張った。
「痛い」
そう言って、梨華ちゃんはあたしの手を振り払おうとする。
でも、力じゃあたしは負けない。
そのままギュッと掴む。
「よっすぃ、石川痛がってるでしょ。離してあげなさいよ。あんた、もうちょっと落ち着きな」
圭ちゃんは、怒っていると言うよりも呆れた表情であたしを見た。
なんか、大人だ。
それがまた、ムカつく。
- 157 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時55分02秒
- 「あたしは、梨華ちゃんと話がしたいだけなの。あたしは喧嘩するつもりなんて全然なかったんだから。
梨華ちゃんはさぁ、あたしにどうしてほしいわけ?
黙ってちゃわかんないよ」
もう、誰に怒ってるんだかもわかんなくなってきた。
梨華ちゃんに?それとも、圭ちゃんに?
だいたい、あたしなんで梨華ちゃんと喧嘩してるんだ?
「もう、いい。分かってくれないていい」
梨華ちゃんはそう言って、俯いてしまった。
あれ?とうとう泣いたのかな??
喧嘩吹っかけてきたのはそっちのクセに。
ちょっと意地悪な気持ちが顔を出した。
「石川、ちゃんと言わないとだめだよ」
今度は諭すように言う圭ちゃん。
やっぱり大人だ。
くそっ。
- 158 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時56分24秒
- 「なんかさぁ、あたしよりも圭ちゃんのほうが梨華ちゃんのこと分かってくれるんじゃないの?
梨華ちゃんも圭ちゃんと一緒にいたほうが楽でしょ?」
あたしのその言葉に、梨華ちゃんはハッと顔を上げた。
「信じられない」という表情が浮かんでいる。
「吉澤」
圭ちゃんが怖い顔して、わざとあたしを呼び捨てで呼んだ。
さらに言葉を続けようとする圭ちゃんの後ろから、梨華ちゃんが前へ出た。
「よっすぃ〜だって…よっすぃ〜だって私よりも飯田さんのほうが良いんじゃないの?」
はぁ?
いきなり何言い出すんだ、この人は。
あたしと…飯田さん??
いや、そりゃあふざけてちょっかい出したりしてるけど、
それってふざけてやってるっていうのは周知のことで。
梨華ちゃんだって分かってるはず。
なんで??
- 159 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時57分15秒
- 「ほら、何も言い返せないじゃない。私には言えない事でも、飯田さんには聞いてもらったりしてるんでしょ?
わたし、見たんだから。
よっすぃ〜、わたしの前じゃ絶対に泣かないのに、飯田さんの前で泣いてたでしょ。
よっすぃ〜だって、飯田さんのほうがあたしよりも何倍も良いんじゃないっ」
梨華ちゃんの目から、一筋の涙がこぼれた。
ごっちん卒業発表の日の事を言ってるって、すぐ分かった。
梨華ちゃんに見られてたなんて、気づかなかった。
人が来ないか気にしてたつもりだったのに。
泣いているとこを見られてしまったことへの気恥ずかしさと、
梨華ちゃんに誤解させて悲しませたことへの悔しさから、なにも言うことが出来なかった。
- 160 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時57分52秒
- 「石川、それ違うよ」
何も言えないあたしを庇ってか、
飯田さんが梨華ちゃんに近づいて、梨華ちゃんの頬に手を当てた。
そして、親指ですっと涙を拭った。
「なにが違うんですかぁ」
「それはよっすぃとちゃんと話しな。落ち着いて。ね?」
ニコッと梨華ちゃんに微笑んだ飯田さんは、クルッとあたしの方へ向き直った。
「ねえ、よっすぃ。よっすぃは、石川の事ちゃんと見てる?
表面だけじゃなくてもっとちゃんと見てあげないと、バッテリー切れちゃうよ?
いい?家へ帰るまでが遠足なんだよ」
そう言うと、飯田さんは自分の部屋へと向かっていった。
「圭ちゃん、カオもう寝るね。圭ちゃんも、早く寝たほうが良いと思うよ。
二人とも、ゆっくり二人で話してみれば?
それと、圭ちゃん、石川を甘やかしすぎ。じゃあ、おやすみ」
自分の部屋のドアを開けて、言いたい事だけ言うと部屋へ入ってしまった。
- 161 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月05日(火)14時58分22秒
- なんか、毒気を抜かれた気がした。
これが、飯田さんの独特の空気。
へ〜んなのっ。
なんか、喧嘩する気もなくなったよ。
「あたしも寝よっかな。あんたたちも、落ち着いて話なさいよ。
っていうか、あたしたちを喧嘩に巻き込まないでくれる?どうしようかと思ったわよ」
圭ちゃんも毒気を抜かれたらしい。
「はぁ〜、疲れた」とか言いながら、部屋へと戻っていった。
- 162 名前:ポー 投稿日:2002年11月05日(火)14時59分08秒
- 更新しました。
- 163 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月06日(水)01時00分53秒
- 2人の言い合いが…甘酸っぱくていい感じです。
次回も楽しみに待ってます!
- 164 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時34分13秒
- 残されたのは、あたしと梨華ちゃん。
いきなり放置されたこの展開についていけてない梨華ちゃんは、眉間にしわを寄せたままで固まってる。
どう…しよう。
何言っていいか、わかんない。
別に、あたしはもう喧嘩する気ないし、梨華ちゃん何か言ってくれないかなぁ。
変な沈黙が、あたしたちを包む。
今まで喧嘩したことないから、こういう時どうしていいか困る。
- 165 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時35分01秒
- 「あはっ、おっかしいのぉ〜」
突然、圭ちゃんたちの部屋の反対側から声が聞こえた。
「「ごっちんっ!!」」
あたしと梨華ちゃんの驚きの声が、重なった。
「いつからそこにいたの?」
だって、全然気づかなかった。
ごっちんは、ドアの前でしゃがんで笑ってる。
「えっとねぇ、枕が飛んできたくらいからかな」
そう言って、立ち上がった。
顔はフニャっと笑ったまま。
「ってことは、結構前からだよね。なんで何も言ってくれなかったんだよぉ」
「だって、おもしろかったんだもん。よっすぃ〜と梨華ちゃんの喧嘩」
へらへらしながら、こっちに歩いてくる。
「なにそれぇ〜。見てないで止めてくれてもいいじゃない」
梨華ちゃんも一緒になって抗議する。
「あれ?梨華ちゃんは止めてもらいたかったの??」
「そういう訳じゃ…」
「ならいいじゃん」
ごっちんは、そう言って片手を腰に当てると、首をきゅっとかしげた。
- 166 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時35分41秒
なに考えてるんだか、さっぱりわからない。
「あはっ、よっすぃ〜超アホ面だよぉ」
指差して笑ってるし…。
なんでこんなに楽しそうにしてるんだよ、ごっちん。
クスッ。
あっ、梨華ちゃんまで笑ってるし。
「アホ面ってぇ〜、もう、梨華ちゃんまでぇ〜」
さっきまでの張り詰めた空気が、一気に和らいだ。
これはきっと、ごっちんの気遣い…だと思いたいけど、
「っつうかさぁ、二人の喧嘩、そうとう面白かったんだけどぉ。ごとー、声かけるのも忘れてたよぉ」
って、本当にあたしたちの喧嘩を面白がってる様子。
「だってさぁ、ふたりのマジ喧嘩って、見たことないもん。いや〜、最後にいいもん見せてもらったよ」
悪戯な目で、ニヤニヤしている。
それから、ごっちんは緩んだ顔をちょっと戻した。
「ふたりとも、ちゃんと喧嘩できるじゃん。今まで言いたい事言わなすぎだよ」
「いや、べつにあたしは喧嘩するつもりなんてないし」
ごっちんの言葉に少し驚いた。
- 167 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時36分46秒
- 「よっすぃ〜はそうでも、梨華ちゃんは違うんじゃない?ねぇ、梨華ちゃん」
目を細めて、ごっちんは梨華ちゃんを見た。
あたしもつられて梨華ちゃんを見る。
梨華ちゃんは少し言いにくそうな感じだ。
「あはっ、ちょっと言いにくいかなぁ?
ごとーが思うには、よっすぃ〜、キミちょっと言葉が少ないよ。
いろいろ話してくれないと、不安になっちゃうもんなんだよ?
梨華ちゃんも、一人でやきもきしてないで、少しずつでも言わなきゃダメだよ」
ごっちんは、もう一度腰に手を当てると、あたしたち二人を優しい目で見た。
- 168 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時37分20秒
- 「そうだ、ちょっと待っててね」
何かを思いついたように、ごっちんは自分の部屋へと入っていった。
そして、すぐに出てくると、両手には二つのカップアイスと小さなスプーン。
「甘いものでも食べながら、ゆっくり二人で話しなよ。
よっすぃ〜も、梨華ちゃんも、この機会に思ってることちゃんと言ったら?
それと、今日はもう、うるさいから喧嘩しないでね。ごとーは眠いんだから」
アイスとスプーンをあたしに手渡すと、ごっちんはあくびを1つした。
「続きは、明日ちゃんと報告してもらうから、そこんとこよろしくね」
そう言いながら、ごっちんは梨華ちゃんの部屋のドアを開けてくれると、
あたしたちを部屋へと押し込んだ。
「じゃ、ごゆっくりぃ〜」
ごっちんがフニャっとした笑顔で手を振っているのが、閉まっていく部屋のドアの隙間から、
いつまでも見えていた。
- 169 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時38分33秒
- 再び二人だけになった、あたしたち。
またちょっと、どうして良いのか分からないような、微妙な空気。
ちょっとの沈黙が、凄く長く感じる。
「アイス…」
「へ??」
「アイス、溶けちゃうよ?」
困ったような笑顔で、梨華ちゃんはあたしの手元を見た。
そうだ、すっかり忘れてた。
手が水滴でびしょびしょになってる。
「そんなトコに立ってないで、こっちに来れば?」
あたしの両手からアイスを取ると、梨華ちゃんはベッドに腰掛けた。
「どっちがいい?」
両方のアイスをあたしに見せる。
でも、それって…。
「梨華ちゃん、それ、両方バニラ」
「あれ??やだぁ〜、もう」
ちょっと照れが入った、かわいい笑い。
あたしもつられて、笑いながら片方を手に取ると、梨華ちゃんの隣に座った。
- 170 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時39分04秒
- またちょっとの沈黙。
こういうときに、うまく話せない自分がもどかしくなる。
梨華ちゃんが気を使って話してくれたのに、あたしはこういうとは全然ダメだ。
特に食べたいわけではないけど、沈黙が嫌でアイスの蓋を開ける。
表面が少し硬くなっていて、プラスチックのスプーンで突付いても、なかなか刺さらない。
「硬いね」
梨華ちゃんも、同じようにスプーンでアイスを突付いてる。
やっと、アイスにスプーンが刺さり始める。
ちょっとずつだけど、口に運ぶ。
冷たい感覚と甘い香りが、口の中に広がる。
久しぶりにバニラ味を食べたけど、意外とおいしい。
バニラの香りが、心を落ち着かせてくれる気がする。
- 171 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時39分34秒
「本当に、怒ってたわけじゃないんだよ」
アイスを突付きながら、梨華ちゃんがポツっと呟いた。
「ただね、ひとみちゃんにとって、私はなんだろうって思っちゃって」
「え?そんなの、わかってるでしょ?だって…」
あたしの言葉をさえぎるように、梨華ちゃんは言葉を続けた。
手は、アイスを突付きながら。
「ううん、聞いて。私は、ひとみちゃんにとって、ちゃんと恋人なのかなぁって。
もしかしたら、ただの親友…友達…なのかなって」
あえて『ひとみちゃん』という梨華ちゃんの言葉が、あたしをドキッとさせる。
いつもは『よっすぃ〜』と呼んでるのに、たまに『ひとみちゃん』って呼ぶことがある。
些細な違いなんだけど、それが二人の特別な関係を紡いでくれている気がする。
さっきの喧嘩してたときは、『よっすぃ〜』
今は『ひとみちゃん』…。
あたしは単純に考えてたけど、梨華ちゃんの中で、どんな想いが込められているんだろう?
- 172 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時40分04秒
- 「だって、ひとみちゃんは何も言ってくれないんだもん。
辛いこととか、悩みとか、そういう弱いトコ全然見せてくれないんだもん。
きっと、そういうトコはごっちんのほうがよく知ってると思うし。
いつも優しくしてくれるけど、よっすぃ〜はみんなに優しいし。
よっすぃ〜の気持ちを疑っちゃう自分が嫌で…。」
アイスを弄る手を止めた梨華ちゃんは、顔を上げてあたしを見た。
ちょっと膨れっ面で目には涙をためて。
そんな梨華ちゃんが、すごく愛しく見えた。
無意識のうちに、抱きしめそうになる。
でも、これじゃいつもと一緒になっちゃう。
梨華ちゃんの思っていることを、もっとよく聞きたい。
「ねえ、私ってそんなに頼りない?どうしてもっと私を頼ってくれないの?
私は、ひとみちゃんにとってなんなの?」
だんだんと涙声になる梨華ちゃん。
- 173 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時40分37秒
- 「いっつも頼るのは私ばっかりで。
わたしだって、ひとみちゃんの支えになりたいんだよ?
私は、ひとみちゃんの特別でいたいのに…」
梨華ちゃんは、ポロポロと涙を流しながら、それを拭うことなく言った。
あたしは耐え切れなくなって、梨華ちゃんの肩を抱き寄せた。
一瞬、肩に力が入って逃れようとする梨華ちゃんを、あたしは強く引き寄せた。
梨華ちゃんがそんなこと考えてるなんて思ってもみなかった。
あたしの気持ちは、今までも充分伝わっていると思っていた。
でも、ごっちんが言うとおり、言葉に出さないとだめなんだ。
「梨華ちゃんは、あたしにとって、特別だよ。すっごいすっごい、大事な人」
梨華ちゃんの頭へ手を載せる。
軽く撫でると、梨華ちゃんは頭をあたしの肩に寄せた。
- 174 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時41分08秒
- 「あたしは、ボキャブラリー?とかあんま無いし、うまく言えないんだけど、
梨華ちゃんには、いつも支えられてるよ。
頼られたらうれしいし、
梨華ちゃんの一生懸命な姿、顔、声、存在全てにいつも励まされるし、癒されてる。
それに、梨華ちゃんの笑顔が大好きだから、心配とかさせたくなかった。
でも、それは言葉にしないとダメなんだよね」
梨華ちゃんがあたしの顔を見ているのが、気配でわかる。
「梨華ちゃんに心配させたくないから、強い自分でいたいと思った。
かっこよくありたいって。
それで、梨華ちゃんを守っていけたら良いなって。
今まで、ごっちんに甘えていた部分がたくさんあって。
でも、ごっちんがいなくなっちゃったら、あたししか梨華ちゃんを守れないって思っていた。
だから、梨華ちゃんには弱いところは見せたくなかったんだ」
わかってくれたかな?
そう思いながら、梨華ちゃんの顔を覗き込む。
けど、なんだか納得いかない顔。
- 175 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時41分46秒
- 「でも、なんで、わたしでもごっちんでもなくって飯田さんなのよぉ…」
口を尖らせて、不満を言う。
ああ、まだ、あの時のことを根に持っていたのね。
「ああ、あれはね…。」
自分でも、あれだけ泣いたことがないから、説明するのはちょっと恥ずかしい。
「あれはぁ、たまたま飯田さんがいただけなんだよ」
「たまたま?」
「そう、たまたま」
まだ納得できてない様子。
あたしの次の言葉を待っている。
「だからぁ、ひとりで泣いてたの」
「ひとりでぇ?」
ちょっと疑わしげな声。
「あの時、つんくさんからの発表とか、いろいろあったから一人でいたかったの。
泣かないでごっちんを送ってあげようって約束してたし。
でも、泣きそうだったから、一人でいたかった。
そしたらそこに、たまたま飯田さんがいた。それだけだよ」
「ふ〜ん。でも、そういう時こそ、私に頼って欲しかったな」
納得してくれたみたいだけど、今度は不満げ。
そんなこと言っても、梨華ちゃんはあの時圭ちゃんのトコで泣いてたじゃん。
- 176 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時42分23秒
- 「だいたいさぁ、梨華ちゃんがいけないんだよぉ」
「えぇ〜?なんでよぉ??」
本当に気づいてない様子。
でも、これ以上は恥ずかしくって言えないよ。
でもって、梨華ちゃんは「なんで?なんで?」を繰り返す。
「もういいよ」
梨華ちゃんのあたしに対する気持ちは、よぉ〜くわかったから。
本当にわかってない様子の梨華ちゃんは、キョトンとした顔であたしを見る。
そんな梨華ちゃんを、もう一度クシャっと撫でる。
くすぐったそうに、微笑む梨華ちゃん。
自然と、あたしの顔にも笑みが浮かぶ。
お互いの肩にもたれあいながらの沈黙。
でもそれは、さっきまでのギクシャクした空気ではなくて、ほんわかとした柔らかい空気。
気持ちよくって、ずーっとこのままでいたくなる。
- 177 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時42分54秒
- 「ひとみちゃん?」
「ん?」
沈黙を破って、梨華ちゃんが顔を上げた。
「これからは、もう少しいろいろ話してね。
私も、守ってもらうだけじゃなくて、ひとみちゃんのこと守りたいから」
そう言う梨華ちゃんの顔は、真剣な目をしている。
「それにね、私はひとみちゃんが思ってるほど、弱くないよ?
そりゃあ、落ち込んだりとかするけど、何でも思ったこと言ってね」
そう言うと、もう一度あたしの肩に頭を乗せた。
「うん、わかった。けど、梨華ちゃんもあたしにいろいろ話してよ?
あたしは、圭ちゃんみたいに大人じゃないし、頼りないかもしれないけどさぁ」
最後の言葉を言ってしまってから、失敗したって思った。
だって、その言葉を聞いた梨華ちゃんは、すっごいうれしそうな顔で笑ったから。
「ひとみちゃんってば、保田さんにやきもちやいてた?」
あれあれ?とか言いながら、あたしの顔を覗き込んだ。
あたしは恥ずかしさから、顔を見られないように顔をそむける。
けど、梨華ちゃんは追うように、さらに顔を近づける。
- 178 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時44分03秒
- 「見んなよぉ〜」
そんな風に見るから、なんか意識しちゃって赤面してくるのがわかる。
顔を背けながらもちらっと梨華ちゃんに視線を向けたら、バチっと目が合った。
「やだぁ、もう、うれしいぃ〜」
満面の笑みで、あたしの腕をパンパンと叩く。
痛っ、痛いって。
「いつも私だけがやきもちやいてるんだって思ってた。いや〜ん、ひとみちゃんってばカワイー」
今度は、あたしの腰に抱きつく。
こんな梨華ちゃんの行動が、女の子っぽくって照れくさい。
一緒にいると、自分が同じ女の子だって思えなくなってくることがよくある。
でも、こんなところが大好きだ。
なかなか口に出しては言えないけど。
抱きついたまま無言になった梨華ちゃんの頭を、ゆっくりと撫でる。
愛しさを込めて。
ゆっくり、ゆっくり。
大好きだよって、心の中で言いながら。
- 179 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時44分34秒
- 「よっすぃ〜、少しやせたね」
「そっかな?最近、あんまり食欲なかったからかな?」
梨華ちゃんは、腰に廻した手を少し強めた。
「食欲なくすほど、一人で考え込まないでね」
「うん…。ありがとう。でもさぁ、やせられてラッキーって感じ?」
ちょっとおどけてみせる。
「…ばか」
もう一度、梨華ちゃんはあたしのおなかに顔を強く押し付けた。
- 180 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時45分06秒
- 「うわっ、梨華ちゃん、梨華ちゃん」
梨華ちゃんが強く抱きついたと同時に、左手にあったアイスがドロっとこぼれた。
すっかり食べるのを忘れてた。
あたしの呼びかけに、梨華ちゃんが体を離した。
こぼれたアイスが、ベッドカバーを汚す。
「あ〜あ、こぼれちゃったね」
慌てたあたしとは反対に、落ち着いた声。
それでいて、目が笑っている。
「手、べたべたになっちゃったね」
アイスまみれのあたしの左手をゆっくりと取ると、
オロオロしているあたしを横目に、梨華ちゃんは体をずらした。
「甘いね」
あたしの指先をちょっとだけ舐めると、少し照れくさそうに笑った。
その照れくさそうな顔が、またあたしの心をくすぐる。
「唇にアイス、ついてる」
そう言ってあたしは梨華ちゃんの唇に、ゆっくりと口づけた。
バニラの香りが、かすかに香る。
レモン味のキスってしたことないけど、あたし達のキスはバニラ味だ。
ゆっくりと顔を離すと、梨華ちゃんもゆっくり瞼を上げた。
- 181 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時45分47秒
- 「ねえ、ひとみちゃん。私のこと好き?」
「あったりまえじゃん」
「もう、ちゃんと言ってよ」
小さく頬を膨らます。
予想通りの反応が、すごくうれしい。
「大好きだよ。世界で一番」
「本当?」
「うん。愛してるよ」
突然、さっきの飯田さんの言葉が頭に浮かんだ。
『家へ帰るまでが遠足なんだよ』って、あの時は意味がわかんなかった。
けど、飯田さんの言いたかったことは、きっとこういう事?
あたしには梨華ちゃんと付き合うことが、ゴールだって思ってた。
けど、本当はそれがスタートだったんだ。
まだ子供なあたしは、自分の想いを伝えられて満足してた。
それはきっと、遠足で駅に着いたのと同じ状態。
本当は、それがゴールじゃない。
遠足はまだまだ続いていたんだ
そして、今はまだ遠足の途中。
帰るまでは、気を抜いちゃいけないんだよね。
先生も、そう言ってた。
伝えたい気持ちは、言葉にしないと伝わらない。
それは、付き合っている今でも同じこと。
飯田さんは、それが言いたかったんだよね?
さっすが、リーダー。
奥が深いです。
- 182 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時46分17秒
- 「ひとみちゃん?」
言葉が途切れたあたしを、不思議そうな顔で見る。
「なぁ〜んでもないよ。梨華ちゃん、大好きだよ」
そう言うと、あたしは梨華ちゃんに深く口付けた。
深く、深く。
「愛してる」って言いながら。
- 183 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時46分51秒
次の日、あたしと梨華ちゃんは、飯田さん・圭ちゃんにこってりと絞られた。
アイドルなんだから、ホテルの廊下で痴話げんかするなって。
それに、人を巻き込むんじゃないわよって。
あたし達は、ただただ、平謝り。
合間に二人で目を合わせては、肩をすくめる。
それを見られては、また圭ちゃんに怒られた。
そして、ごっちんには、仲直りしたよって報告。
「うんうん、これでごとーも安心して卒業できるよ」って、笑ってた。
結局ごっちんに助けられたって感じだったけど、
あたしたちの初めて気持ちをぶつけ合った喧嘩は、無事に(?)終わった。
- 184 名前:乙女の悩み 投稿日:2002年11月10日(日)17時47分30秒
- あたしの17歳のこの3ヶ月は、貴重な3ヶ月になった。
太ったり、嫉妬したり、喧嘩したり。
親友が、娘。から卒業することになったり。
世の中では、思春期っていうのかな?こういうのは。
あれ?ちょっと違うか。
けど、確実にあたしはちょっと前進したように思える。
今までの、ごっちんを含めた3人の関係とはまた違った、
新しい関係を梨華ちゃんとつくっていこうって思う。
まだまだ、17歳。
たくさん悩んで、たくさん前に進んでいこう。
そして、ごっちん。
卒業、おめでとう。がんばれよ。
あたしも、がんばるからさ。
娘。じゃなくなるのは寂しいけど、あたしたち3人はいつまでも親友だよね?
これからも、よろしく。
一緒に植えたひまわりが種をつけたら、来年も一緒に植えようね。
『よっすぃ〜』『ごとー』『りか』って、3つの白いプレートを並べて。
〜fin〜
- 185 名前:ポー 投稿日:2002年11月10日(日)17時53分44秒
- 更新しました。そして、完結。
なので、age。
なんだか、グタグタになってしまいました(w
読んでくださった皆さん、すみません。
そして、ありがとうございました。
163>名無し読者さま。
いつもレス、ありがとうございました。
そうやって感想いただけると、すごくがんばろうって思いました。
こんな不甲斐ないモノにお付き合い、ありがとうございました。
では、またの機会に。
- 186 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月12日(火)00時58分33秒
- 完結お疲れ様でした。
いしよしごまがリアルに感じ、3人のひまわりがよかったです。
またの機会をお待ちしています。
- 187 名前:ポー 投稿日:2002年12月09日(月)23時38分53秒
- 新作です。
また薄い内容ですが、まったりと。
ネタはちょっと古いです。
- 188 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月09日(月)23時42分32秒
- 「もし、自分が男だったら、彼女にしたくないのは誰?」
うたばんでのひとコマ。
貴さんの質問に、娘。たちが答えるって言うコーナー。
みんなが自分の答えを書いているなか、あたしは書かずにみんなの様子をみている。
だって、答えは前の質問『二人でユニットを組みたくないのは誰?』っていうやつの答えと一緒だから。
っていうか、どの質問が来ても、ほとんどコレなんだけどね。
クックックッあたしの答えを見た時の、この人の顔を想像しただけでもたまんない。
きっと、想像どおりの反応をするんだろうなぁ。
あたしの隣で、一生懸命答えを書いているこの人を見ながら、笑いがこみ上げてくる。
「よっすぃ〜は、さっきと答え一緒なの?」
貴さんが、書こうとしないでいるあたしに気づいた。
「2人組みでユニット組むのも嫌だし、自分が男だったら彼女にしたくない。コレ誰っ」
- 189 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月09日(月)23時43分18秒
- へへへ。
見せちゃうよ?
いい?見てよ??
ジャーン!!
すぐに愛しい彼女が反応した。
「ちょっと、なんでよぉ〜」
そう言いながら、半笑いであたしの肩を叩く。
この、女の子らしい反応。
くわぁ〜〜、たまんないね。
「コレがやですよねぇ〜」
つい意地悪く言いたくなる。
本当は、全然嫌じゃない。
むしろ、好き。
こういう反応がほしくって、ちょっと意地悪してしまうあたし。
おもわずニヤけてしまう顔を、頑張って引き締めようとする。
けど、顔は正直で全く引き締まらない。
- 190 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月09日(月)23時44分12秒
- あたしの隣では、一生懸命弁解する梨華ちゃん。
あたしの肩をつかんで、必死の形相。
しかも、なぜか隣に座っている矢口さんにまで説明してる。
「歳も近いし同期だし…」なんて言って、仲良いことをアピール。
わざわざ全国のみなさんにアピールしてくれてるトコが、またうれしいじゃない?
だから、敢えてあたしは何も言わないで梨華ちゃんだけを見る。
いろいろと話しながら、あたしの肩をポンと叩いて同意を求めてくる。
それに対しても、あたしは曖昧な返事を返す。
「必死だよ?石川」
必死で説明してる梨華ちゃんに、矢口さんが助け舟を出した。
やべっ、そろそろ梨華ちゃん泣きそうかも
そろそろ、何かしゃべったほうがいいかな?
「ど〜いうこと?」
ちょうどいいタイミングで、中居さんがあたしに聞く。
さっすが司会だね。
ちゃんとポイントは押さえてるじゃん。
- 191 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月09日(月)23時45分01秒
- 「あのぉ〜、友達でもあんまこういう子いないんですよ。女の子女の子してるっていうかぁ。
でも、吉澤は結構男っぽいんですよ」
「うんうん。それで?」
中居さんの相槌が入る。
「だからぁ、あんまりねぇ…」
ニヤニヤしながら横目で梨華ちゃんを見ると、なにやら深刻な顔。
眉なんて、それ以上さがらないんじゃないかって言うくらい八の字になっている。
あれ?やりすぎたかな。
ちょっと、泣かないでよぉ〜。
「え、じゃあよっすぃ〜は石川とは友達にもなりたくないと。そいうこと?」
半笑いの貴さんが、あたしじゃなくって梨華ちゃんの顔を見ながら言う。
貴さんの意地悪心に火をつけちゃったらしい。
梨華ちゃんまで、「そうなの?」って真剣な眼差し。
悪乗りさせると梨華ちゃんが泣きかねないから、そろそろ止めとこう。
「いやいや、そうじゃなくってぇ。
梨華ちゃんは女の子らしい服装するんですよ。でも、吉澤は割りとラフな格好するんですよ」
そうそう、ジャージっぽいとかパジャマじゃないのそれ、とか言われちゃうような格好ね。
それを思い浮かべたのか、クスッと梨華ちゃんが笑った。
でも、まだ泣きそうな顔のまま。
- 192 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月09日(月)23時45分35秒
- 「よっすぃ〜は、日曜のお父さんみたいな格好してるんですよ」
すかさず安倍さんのフォローが入る。
グッドタイミング。
梨華ちゃんの顔にも笑顔が戻る。
- 193 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月09日(月)23時46分07秒
それからは、あたしの普段の格好をネタにしばらくイジられる。
ののやあいぼんも調子に乗って喋りまくるし。
でも、あたしの横にはちょこっと苦笑いした梨華ちゃんがいて、
それがすごく幸せ。
他のメンバーの彼女にしたくないメンバーを見ると、
安倍さんは圭ちゃん。
飯田さんは梨華ちゃん。
う〜ん、なんとなくわかる気はするけど…。
あいぼんの新垣っていうのが、意味不明。
っていうか、新垣ってそういう選択肢には入ってこなくない?
ありえねぇ〜って感じでさ。
あ、それはあたしだけか。
- 194 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月09日(月)23時47分08秒
- 「でも加護はぁ、よっすぃ〜彼女にしたい」
あいぼんがうれしいことを言ってくれる。
それまではののの、あたしを彼女にしたくないって話だった。
男の子っぽくて、彼女にはしたくないらしい。
それがいいって言ってくれる人もいるんですけどねぇ。
やっぱり、あいぼんはいい子だね。
よっすぃ〜は女の子じゃないなんて言う、ののとは大違いだよ。
素直にうれしくって、顔をほころばせる。
すると、あたしの横の人の空気が、ピキッとなった。
あっ、もしかして怒っちゃった?
普段からあいぼんにちょっかい出しすぎって、梨華ちゃんにはよく怒られてる。
でも、あいぼんかわいいし、妹みたいで良いじゃん。同期だし。
って言い訳してるけど、やっぱりお気に召さないらしい。
しかもあいぼんは、「テレビでは見せない、いいことあるんだもん」なんて意味深な言葉を。
- 195 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月09日(月)23時48分13秒
- やめてくれよぉ〜。
否定できない自分の行動を思い浮かべて、笑うしかないあたし。
しかも隣からは、すっごい重い空気が流れてくる。
やばい、もうあいぼん変なこと言わないでよぉ。
つい、心の中であいぼんを責めてしまう。
ごめんよ、あいぼん。
そんなあたしのことなんてお構いなしに、安倍さんまで「怪しい関係なんですよぉ〜」とか言うし。
あいぼんはベラベラ喋りまくるし。
次第には、飯田さんまで「カオリさんの犬になりた〜い。とか言うんですよ」とかバラすし。
もう、あたしは怖くて顔を隣に向けることは出来なかった。
重〜い視線が、あたしの左頬に突き刺さる。
- 196 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月09日(月)23時48分44秒
- だめだ、よしこ。
見ちゃいけない。見たら、テレビなんて続けてられなくなる。
耐えるんだよしこ。
頑張れ、よしこ。
このネタはもうすぐ終わる…はず。
「よっすぃ〜、顔引きつってるぞ」
小さな声で、矢口さんから注意が飛ぶ。
テレビでは、どんな時も笑顔でいろ。
矢口さんから、最初に教わったこと。
けど、そう言いながらも、声が少し笑ってるのは気のせい?
もしかして矢口さん、この状況面白がってません??
くっそぉ〜、みんなして…。
絶対、安倍さんもあいぼんも面白がってやってるんだ。
この状況を楽しめてないのは、あたしと…梨華ちゃんだけ。
みんなのばかぁ〜〜〜!!
- 197 名前:ポー 投稿日:2002年12月09日(月)23時51分43秒
- 今日はここまでです。
すみません。こんな感じで…エヘ。
- 198 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月10日(火)03時39分01秒
- あはは!!思い出しながら読んじゃいました!
続き楽しみです!
- 199 名前:ポー 投稿日:2002年12月22日(日)00時53分01秒
- ◇
「梨華ちゃ〜ん、怒んないでよぉ」
「しらないっ」
「ごめんってぇ〜」
「うるさいっ」
謝るあたしにプイッと背を向けて、無視を決め込む。
頬をプクーッと膨らませて、さっさと着替え始める。
収録が終わって、ひと足先に戻ってきたあたしと梨華ちゃん。
さっきから謝ってるけど、まったく効果なし。
「話だけでも聞いてよぉ〜」
「触んないでよっ、バカッ変態ッ」
肩に触れたあたしの手を振り払う。
変態って…。グスン。
- 200 名前:ポー 投稿日:2002年12月22日(日)00時53分55秒
- 「よっすぃ〜、変態だってぇ」
振り返ると、入り口にはニヤニヤしたあいぼん。
隣ではののが、「変態変態♪」って節をつけて歌ってる。
「…っ。もとはと言えば、あいぼんがいけないんだろぉ」
「ほぇ?なんで??」
いや、なんでってあんた…。
「加護はぁ、よっすぃ〜がかわいいって言っただけでしょ?
だってよっすぃ〜、加護といる時かわいいんだもん」
「だからぁ〜、それをテレビで言うなって」
「おお、変態が怒ったぁ〜」
ののがキョロキョロと無意味な動きをする。
「うっせえよ、ののっ」
あたしのことなんてほっといてくれよ。頼むから。
そう思いながら、横目で梨華ちゃんを見る。
梨華ちゃんは呆れた表情であたしを見ていて、フゥッと小さくため息をついた。
そしてまたさっさと着替え始める。
- 201 名前:ポー 投稿日:2002年12月22日(日)00時54分32秒
- 「のんちゃんにあたってもしょうがないでしょ」
飯田さんが、ちびっ子2人の後ろから顔をのぞかせた。
その後ろでは、飯田さんが入り口を塞ぐ形で仁王立ちしているもんだから、
スタジオから戻ってきたメンバーたちが怪訝な顔して立っている。
「だいたい、よっすぃ〜の普段がそうだからいけないんでしょ。加護のせいにしないのっ」
「はい、すんません」
「加護をかわいがるのはいいけど、押し倒すのはどうかと思うの」
「はい…」
「それにね、石川と公共の電波使ってイチャつくのはやめなさい。こっちが恥ずかしいから」
「あの、イチャついてなんか…」
「なにっ??」
「いえ…すみません」
飯田さんの後ろから、わらわらと控え室に入ってくるほかのメンバーの視線を受けながら怒られてるあたし。
しかも、内容が内容なだけに、うわぁ〜、カッコ悪……。
- 202 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)00時57分00秒
- 「ちょっとちょっと奥さん、吉澤さんとこのひとみちゃん、いい年して怒られてますわよ〜」
「あら、ほんとですわ。もう、子供じゃないんですからねぇ。おほほ」
怒られているあたしの後ろで、ちびっ子2人が、主婦コントを始める。
「その原因が、吉澤さんの浮気らしいですわよぉ。節操が無いって言うか、ねぇ〜」
「あれじゃあ、飯田さんもも怒りますわよねぇ〜。石川さんもご立腹らしいですわよ」
「そうでしょうねぇ。この前もほら、矢口さんとこのお嬢さんを襲ってましたでしょ」
「「いや〜ね〜」」
ってこら、いつあたしが矢口さん襲ったんだよっ。
思わず後ろを振り返って、2人を睨みつける。
2人は「お〜こわっ」とか言いながら、ニヤニヤしている。
あたしのことはいいから、さっさと着替えろよっ。
二人の後ろでは、まだまだ怒った顔した梨華ちゃんがあたしを睨んでいる。
なんか怒っているっていうよりも、それが更に進化して何故かへこんでる?
しかも、もうすっかり着替え終えて、荷物をさっさとまとめ始めている。
次の仕事は別々だから、この時間のうちに仲直りしとかないと…。
- 203 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)00時57分36秒
- 「こらっ、こっち見なさい」
飯田さんがあたしの顔を両手で挟んで、無理やり前を向かせる。
そうだ、あたし怒られてるんだったっけ。
これ、長くなるかなぁ。
飯田さんのお説教は、始まると長い。
だいたいは、意味不明な感じなんだけど、とにかく長い。
怒られてる方だって、怒ってるほうだって理由を忘れるくらい。
誰かが救いの手を差し伸べてくれない限り、これから逃れることは出来ない。
だから怒られつつも、そっと助けてくれそうな人を目で探す。
のの、あいぼんは指差して笑ってるし、圭ちゃんは知らん振り。
5期メンは助けにならないし。
いつもなら助けてくれる梨華ちゃんは、こっちを見てもくれない。
あとは…、あっ安倍さん。
助けてくださいよぉ〜。
口でパクパクと言ってみるが、首をすくめてお手上げポーズ。
「知らないべさ」って口を動かしている。
そりゃあないっすよぉ、安倍さん。
「ちょっと聞いてるのっ」
「はいぃぃっ」
姿勢を正すあたしの視界の隅では、のの・あいぼんが肩を寄せ合ってクスクスと笑ってる。
くっそぉ〜あいつら。
覚えておけよ。
- 204 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)00時58分52秒
- 「まあまあ、カオリそれくらいにしてあげなよ。あとは、オイラから注意しとくからさ」
気づいたら、矢口さんが飯田さんの隣に立っていた。
さっき探した時には見あたらなかったのに、いつの間に・・・。
しかも、すっかり着替えまで済ませている。小さくって見えなかったのかなぁ?
でもとりあえず、助かったぁ〜。
もう、矢口さんから後光が射して見えるよ。
一時はどうなるかと思ったから。マジで。
「だってね、聞いてよ矢口。よっすぃ〜ったら、カオリの言うこと全然聞いてくれないの」
「うんうん、それはよっすぃ〜が悪いよね。」
「それにね、石川が怒っているのが、のんちゃんのせいだって言うの」
「うんうん、わかったから。そういうトコも注意しとくからさ、カオリは着替えてきなよ」
なんかピントの合わないことを訴える飯田さんをなだめる矢口さん。
なだめるって言うか、聞き流してる?
なんか扱い慣れてるって感じだよね。
飯田さんも「矢口、任せたよ」なんて言ってあっさりと引き下がってるし。
そんなにあっさり引き下がるなら、もっと早くに終わらせてくれよ。
それにね、梨華ちゃんが怒っているのがのののせいだなんて、
あたしひと言も言ってないですよ?
- 205 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)00時59分48秒
- 「よっすぃ〜、石川の困った顔見たいからって、言い過ぎなんだよ。調子に乗りすぎ。
あれじゃあ、他の人がトークに入りようが無いでしょ?
もう、新人じゃないんだからそこら辺のトコよく考えるんだよ。わかった?」
「はい。すんません」
あたしの目の前に立った矢口さんは、腰に手を当てて子供に言い聞かせるようにあたしの顔を覗き込んだ。
「それにね、言われたくないようなことはしないの。
まあ、調子に乗ってテレビでしゃべっちゃう加護達も悪いんだけどさぁ」
「はい。反省してます」
「あと、石川にちゃんと謝るんだよ。いい?
絶対あいつ、勘違いして落ち込んでるから。
あのまんまじゃ、この後の仕事に行っても使い物にならないよ」
「はい」
あんな飯田さんの説明だったのに、矢口さんの言っていることは的を得ている。
あたしだって、さすがに今回はやりすぎたかなって思ってるし。一応ね。
でもね、なにもみんなしていろんな事言わなくっても良いじゃんかよぉ。
だってさ、あいぼんはかわいいし、飯田さんは懐きたくなるんだもん。
だから構って遊んでるだけじゃん。
ふ〜んだ、ふ〜んだ。
みんなだって、喜んで一緒に遊んでるくせにさぁ。
ぶーぶー。
- 206 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)01時01分06秒
- おっと、これじゃあ、さっきまでと一緒だよ。
早く終わんないと、梨華ちゃん行っちゃう…。
ほらほら、反省してるって言ってるじゃん。
だからもういいでしょ?ねえ、矢口さん。
お説教はこれくらいにしてくださいよぉ。
「まあねぇ、あいつの困った顔って、構いたくなるんだよねぇ。
オイラもさぁ、それが面白くってキショいとか言っちゃうし」
困った目で訴えるあたしを見て、苦笑しながらそう言う。
しかも、言い終えたあとにいたずらっ子な顔する矢口さん。
やっぱ、かわいいなぁ。
後輩想いで、立派な先輩。それでいて子供みたいな顔を覗かせる。
思わず抱きしめて持って帰りたくなっちゃうこともしばしば。
だけど、後が怖いからそれだけは我慢してるんだけどね。
「ちょっと、よっすぃ〜?聞いてんの?」
にやにやしてるあたしの顔を、下から怪訝な顔して覗き込んでる。
「はい、聞いてます。あの、だから…」
「うん、行っていいよ。ほら、早く行かないと石川、次の仕事行っちゃうよ」
そう言って、あたしを後ろに向かせて背中をポンと押してくれた。
ありがとう、矢口さん。
あとでちゃんと反省しますから。
- 207 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)01時01分53秒
- 梨華ちゃん、やっぱ怒ってるかな。
なんて言ったら許してくれるだろう。
「ごめんなさい、もうしません」ってこれって、浮気男の常套句っぽいしなぁ。
それにあたしがしたことは、別に浮気じゃないし。
メンバーとのスキンシップ?みたいなもんだし。
う〜ん…。
「なあに、ひーちゃん?」
気づいたら、梨華ちゃんの横に立っていた。
そんなあたしを、睨んで冷たいお言葉。
それに今、ひーちゃんって言いました?
しかも、「ひーちゃん」ってとこを、気持ち強めに。
やっぱり怒っていらっしゃるのね…。
「あの、さぁ。誤解なんだよね。そう言うんじゃないから、うん。
飯田さんとかあいぼんとかとは…ね。そう言うんじゃ…」
って、何言ってるんだあたしは。
これじゃあ、本当に浮気の言い訳してるみたいじゃん。
- 208 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)01時02分49秒
- 「その事はいいの。もう怒ってないから」
「え?」
「もう、怒ってないって言ってるの」
言ってることが、わかんないんですけど。
どうして許してくださるの?
「だからぁ、あいぼん押し倒したり、飯田さんにちょっかい出したり、矢口さん襲ったりするのは嫌だけど、
でも許すって言ってるの」
「えっと…なんで?」
「だって、そんなこといちいち気にしてたらやってられないでしょっ。メンバーなんだし」
言葉の最後がちょっと投げやりな感じがした。
それに、本当に矢口さんを襲ってなんかいないし…。
やっぱり、まだ怒ってそう・・・。
「なに?許してほしくないわけ?じゃあ、もう許さないーだ」
煮え切らない態度のあたしに痺れを切らしたのか、さっさと部屋から出て行こうとする。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「なに?」
「あ。あの、ごめんね。」
無意識に掴んでしまった梨華ちゃんの肘を、ゆっくりと離す。
梨華ちゃんは、そのあたしの手をじっと見つめている。
- 209 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)01時04分46秒
- 「なんで、あんなこと言うのよぉ」
小さいけど、しっかり怒っている声。
俯いちゃってるから顔は見えないけど、そうとう怒ってそう。
「あんなこと?」
「よっすぃ〜は、わたしと付き合いたくないんでしょ?
あいぼん達とはあんなに楽しそうにしてたのに、私とは嫌そうに話してたし…」
「はぁ??」
「そうならそうと、はっきり言ってくれれば良いでしょっ。なんでうたばんでなんか言うのよ」
え?もしかして、そのことを怒ってるの?
っていうか、本気にしてるの??
開いた口がふさがらないって言うのは、こういうことを言うんでしょうか。
あたしは、びっくりしたよ。
なんでこの人は、そう思えちゃうの?
普通、例えそう言われても、怒ることはあっても本気にはしないでしょう?
- 210 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)01時05分38秒
- 「はぁ〜、梨華ちゃんって本当にバカだよね」
「……」
ん?なんでそこで梨華ちゃん黙っちゃうの?
いつもなら、何か言い返してくるはずなのに。
しかも、さっきよりも険しい顔。
ん?あれ??あれれれれ???
「あっ、違うから。そういう意味じゃないから」
「そういう意味って、どういう意味よ」
梨華ちゃんの眉間の皺が、キューッと深くなった。
あらららら。
また変に勘違いの上に深読みして、ネガティビティになっちゃってる?
口なんかへの字になっちゃって、もうカワイイッ!
やっぱり、あたしってあまのじゃく。
梨華ちゃんがへこんでる顔とか見ると、うれしくなっちゃう。
より一層、梨華ちゃんのこと大好きになっちゃうんだよね。
「そういう意味って、こういう意味」
俯き気味で、あたしの顔なんて見ていない梨華ちゃんをギュッと抱きしめた。
腕の中で、梨華ちゃんが驚いているのがわかる。
「ちょっ、やだ」とか言ってもがいているけど、そんなの無視無視。
離さないもんね〜。
ん〜、良い抱き心地。
- 211 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)01時06分48秒
- 「本当にバカだよね。あたしが梨華ちゃんの事こんなに好きなのに。そんなこともわかんないんじゃ」
耳元でそっと言うと、それまでもがいていた梨華ちゃんの動きがピタッと止まった。
「梨華ちゃん?」
あまりにも固まってるから、心配になって顔を覗き込んでみる。
その顔は、まだまだ暗い。
背中に『真っ暗』って言葉を背負っているみたいに。
「じゃあ、なんであんなこと言ったのよ」
「なに?付き合いたくないって事?」
あたしの腕の中で、コクンと頷く小さな体。
そんな小さな動きでさえ、愛しく思える。
- 212 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)01時07分35秒
- 「あんな質問、どうでもいいんだよ。ただ、梨華ちゃんの名前を出したかっただけだから。
だってね、そうすれば梨華ちゃん、あたしの顔見てくるれるでしょ」
あたしの顔を見ようとする梨華ちゃんの頭を制して、梨華ちゃんの首に顔をうずめる。
「だってさ、最近梨華ちゃん忙しいじゃん。だから、梨華ちゃんのいろんな表情見たかったんだよ。
梨華ちゃんの笑った顔、怒った顔、困った顔。全部好きだから。
でも、どんなに近くにいても、その顔があたしに向けられなかったら凄く寂しいし。
だから、ごめん。あたしを見てくれることがうれしすぎて、調子に乗っちゃった」
「よっすぃ〜…」
「梨華ちゃん…」
- 213 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)01時08分26秒
- 「よっすぃ〜、ここ楽屋なんやけどぉ」
梨華ちゃんの顔をこっちに向かせて見詰め合っていたら、後ろからちょっと不機嫌そうな声。
「まさか、ここでチューとかしないでしょうね?」
更にもう一人の呆れたような声。
うっさいうっさい。今いいとこなんだから、邪魔すんなよ。
あいぼんと圭ちゃんの声に、無言で抗議する。
「石川、そろそろ行かないとまずいんじゃないの?」
圭ちゃんがそう言うと、梨華ちゃんは壁にかかった時計に目をやった。
チッ、圭ちゃんってば余計なことを…。
「よっすぃ〜、もう行くね」
そう言ってあたしから体を離した梨華ちゃんは、ふわりと微笑んだ。
よしっ、機嫌直ったみたいだ。
梨華ちゃんのその表情を見て、心の中でガッツポーズ。
「あの、本当にごめんね」
「うん、もうわかったから。でも、もうしないでね」
「はい」
あたしの反省した顔を見てか、もう一度微笑むと、梨華ちゃんは部屋を出て行った。
出て行く直前に「メールするからね」って言ってくれた顔は、あたしの一番好きな笑顔。
やっぱり、困った顔よりも怒った顔よりも、笑顔が一番大好きだ。
- 214 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)01時09分50秒
- 「ちょっと、ヤバイよこの人」
「ニヤけすぎれす」
「ほぇ〜、緩みっぱなしですね」
「アイドルとは、思えないよね」
「アホや」
「完璧です」
閉まったドアに向かって手を振り続けていると、周りでコソコソと話す声が。
っていうかキミたち、わざと聞こえるように言ってるでしょ。
でもね、ニヤけているとか言われても良いんだ。
アイドルって思えなくても良いんだ。
だって、しょーがないじゃん。
ネガティブなトコも、空回りするトコも、調子に乗りやすいトコも、割と暗い性格も、
全部ひっくるめて、梨華ちゃんのこと好きなんだもん。
- 215 名前:だって好きなんだもん 投稿日:2002年12月22日(日)01時10分34秒
- 梨華ちゃんの表情や言葉ひとつで、あたしの気持ちなんかコロッと変わっちゃうんだ。
まるで、山の天気みたいに。
あたしの心の中は、いつだって梨華ちゃん100%。
テレビではクールにキメてるのに…とか言われちゃってもへっちゃらだよ。
きっとね、あたしは梨華ちゃんの魔法にかかっちゃったんだ。
本気でそう思う時があるんだよ。
梨華ちゃんに出会えたその瞬間から、ずーっと魔法にかかったままなんだ。
だから、神様。
別に、キリスト教じゃないけど、こういうときだけでもお願いします。
どうか、魔法が解けませんように。
だって、こんなに好きなんだもん。
fin
- 216 名前:ポー 投稿日:2002年12月22日(日)01時16分57秒
- 更新&完結しました。
ネタが古いだけに、いかがでしたでしょうか?
>198 名無し読者さま
楽しんでいただけましたか?
自分も、あの時の2人のやり取りが微笑ましくてひとりニヤけていました。
いつもいつも、駄文ですみません。
読んでいただいた方、一言でも良いので感想をいただければうれしいです。
では、また懲りずに参上させてもらいます。
- 217 名前:ROM読者 投稿日:2002年12月23日(月)12時25分04秒
- お初です。この場面大好きで、録画を見て色々妄想してました。
MC中居に話を振られたよっすぃ〜のコメントを待っている時
のなっちとかおりの「こいつ何を言うつもりだ・・」みたいな
険しい表情が忘れられません。きっと作者様の妄想(失礼!)
が当たっているような気がします。すごく楽しめました。
- 218 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003年01月06日(月)01時42分35秒
- ガマンできずにレスします!!
も〜、最高!!
作者様の書くいしよしはリアリティがあって、いいです
番組やら写真集がらみのネタとか、かなーりツボです!
現実に限りなく近い妄想が好きな私には嬉しくて、楽しくて!
これからも期待してます
- 219 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月10日(金)00時02分07秒
- あの時のうたばんは、見ていてかなり興奮したのですが
なるほど、収録後の楽屋でこんなやりとりがあったんですね(w
作者さんの書くいしよしも、その他のメンバーも、すごくキャラを掴んでますよね。
前の方も書いてますが、すごくリアルで面白いです。
次回も楽しみに待ってます!
- 220 名前:ポー 投稿日:2003年02月02日(日)15時56分33秒
- 遅くなりましたが、みなさんレスありがとうございます。
217>ROM読者さま。
実は自分もあの時の2人の微妙な表情が気になってました。
やんちゃな子をはらはらしながら見守る姉たちって感じでしたね(w
218>ラヴ梨〜さま。
そんなに喜んでいただけると照れちゃいます(エヘッ
現実に限りなく近い妄想・・・大好きです。
219>名無し読者さま。
キャラ、ちゃんとつかめてましたか?
人数多くて、イマイチキャラがわかんない人もいるんですけどね(w
面白いって言ってもらえるのが、イチバンうれしいです。
最後に書いてから、なんか色々ありましたね。
そこらへんからまた、少しずつ書いてみようかと思っています。
いつ更新できるかわかりませんが、また読んでやってください。
皆さんのレスが、励みになりますので・・・。
- 221 名前:ROM読者 投稿日:2003年02月10日(月)22時24分33秒
- 色んなことがあるけれど、でもやっぱり応援したくなってしまいます。
みんなホントに良い子達だから。作者様の娘たちに対する感じ方はと
ても共感できる部分が多くて、作品も本当に自然で爽やかです。
また、作者様の世界に触れさせてください。
- 222 名前:大人になるって? 投稿日:2003年02月19日(水)00時06分44秒
- 「よっすぃ〜、スタジオ行くよぉ」
あいぼんがあたしの左腕に腕を絡ませると、
撮影スタジオへとあたしを引っ張った。
いつもみたいにくっついては来るけど、なんか今日のあいぼんはおとなしい。
緊張してるのかな?・・・珍しい。
ま、あたしもちょっと緊張気味なんだけどさ。
今日はマスコミに発表するための、『おとめ組』『さくら組』に分かれて初めてのスチール撮影の日だ。
あいぼんに引っ張られながらスタジオに入ると、すでに『おとめ組』の撮影は進んでいるようで、
スタジオはスタッフの活気に溢れていた。
そしてその中心で撮影しているメンバーを見ると、あたしは凄く不思議な感覚に襲われた。
いつもなら一緒に写っているはずのメンバーが、あたしたちとは違った衣装で撮影していて、
そしてその中には新メンバーの3人も一緒に入っている。
さらにそのセンターには梨華ちゃんが立っており、笑顔でカメラに向かっている。
ののも飯田さんも小川も、そして美貴ちゃんも慣れた様子でポーズをつけている。
それはいつものメンバーの姿ではないような気がして、
まったく違うグループを見ているみたい。
――まぁ、本当に違うグループなんだけどね。
- 223 名前:大人になるって? 投稿日:2003年02月19日(水)00時08分39秒
- そんな感覚にとらわれているのはあたしだけではないらしく、
「なんか変な感じだね」ってあいぼんはあたしに囁いた。
少し離れたところには、ちょっと怖い顔した安倍さんが、
やはり静かに撮影を見守っている。
きっと、あたしなんかよりも安倍さんの方がずっとずっと複雑な気持ちでいるんだろうなぁ。
そう思うと、なんだか切なくなってくる。
メンバーが卒業する時も加入してくる時も、
「それが娘。だからしょうがないっしょ?」って笑顔で言う安倍さん。
矢口さんみたく素直に涙を流すわけでもなく、
あたしたちみたいにそれをきっかけにして娘。に入ってきたわけでもない。
そんな安倍さんはただ、笑顔で自分を納得させるだけ。
その笑顔は、時折痛々しささえ感じられる。
『さくら組』のリーダーとして、初めてウチらメンバーの前で挨拶した時はおどけていたけど、
でも、心の中では大きな声で叫んでいるのかなって思った。
心が痛いよって。
- 224 名前:大人になるって? 投稿日:2003年02月19日(水)00時09分40秒
- あたしは、そんな安倍さんをうまくサポートできるのかな?
気づけばこのユニットの上から3番目(年齢も、経験も)だし、
いつまでも年下組とかいって遊んでいられない。
後輩たちを引っ張っていく、責任感っていうものを持ち始めないといけないんだと思う。
そういえばこの撮影の前に、圭ちゃんに言われたっけ。
「いつまでもガキ大将じゃだめだよ」って。
そういうのが大人になっていくってことなのかな?
でも、それって結構寂しいな。
うん。
- 225 名前:大人になるって? 投稿日:2003年02月19日(水)00時10分22秒
- それとは別に、もう一つ寂しいことが。
っていうか、一番コレが寂しい出来事。
初めてのスチール撮影なんだから、もっと気持ちよくやりたいはずなんだけど、そんなのムリ。
だって・・・だって・・・・・・梨華ちゃんと一緒じゃないんだもん。
娘。に同期で入ってから、ずーっとずーっと一緒にやってきたのに・・・。
なんであたしと梨華ちゃんが別れなきゃいけないんだよ。
納得いかねーっ。
それにさ、それに・・・。
今日の梨華ちゃん、すばらしい笑顔じゃありませんか?
まったくあたしが見ていることも気づいていない様子で、元気にポーズつけている。
あいぼんまで、「梨華ちゃん張り切ってるやん」って。
- 226 名前:大人になるって? 投稿日:2003年02月19日(水)00時11分29秒
- そりゃあセンターだし、年も上から2番目の位置だし。
このグループで責任もってやっていかなくちゃいけないって気持ちがあるのはわかるけど。
もうちょっとあたしに目を向けてほしいって言うのは、あたしの我儘ですか?
両脇の新メンバーに笑顔のアドバイスをする姿は、もうすっかり先輩で。
なかなか笑顔を作れない後輩に、「キムチィーって」って教えてる様子はお姉さんな感じで。
でもさぁ、笑顔を作るとき「キムチィー」ってあんまりやんなくない?
な〜んて突っ込んでみたくなる。
でも突っ込みいれるには、あたしと梨華ちゃんの間には距離がありすぎて・・・やっぱり、納得いかねー。
- 227 名前:大人になるって? 投稿日:2003年02月19日(水)00時12分52秒
- あ、せっかく梨華ちゃん教えてるのに、田中にシカトされてんの。
ははっ、梨華ちゃん困った顔して首傾げてるし。
フッと梨華ちゃんから目をそらした田中の表情は、何を考えてるんだかわかんない微妙な顔。
こりゃあ、梨華ちゃんも飯田さんも大変だろうなぁ。
でもカッケー、あいつ。
やっぱ、問題児じゃん。
いいねぇ、問題児。
ふははははっ。
困った梨華ちゃんの顔を見てると、自然と顔が緩んでくる。
フハッて声が漏れたせいで、あいぼんが何笑ってんの?って顔してこっち見てるのがわかる。
いいじゃんいいじゃん、こうやって梨華ちゃん見てるのが幸せなんだから。
- 228 名前:大人になるって? 投稿日:2003年02月19日(水)00時14分15秒
- スタッフも新人の無表情に困ってるみたいで、笑わせようと色々話しかけてる。
うはっ。
ののが笑ってどうすんだよ。ってか泣きそうじゃん。
笑いすぎだよ、あいつ。
な〜んて色々考えながら『おとめ組』を見ていたら、あたしの左腕を掴むあいぼんの手に力が入った。
隣を見ると、あたしに腕にギュッと摑まったあいぼんが、なにやらブツブツ言っている。
「なぁ〜にが、いいらさん、だよ」とか、「笑いすぎやっちゅーねん」とか聞こえてくる。
そのあいぼんの鋭い眼差しの先には・・・・・・楽しそうに笑っているののが居た。
- 229 名前:ポー 投稿日:2003年02月19日(水)00時21分58秒
- 新作です。
これまたちょっと古いネタです。
少しだけ、お付き合いくださいませ。
221>ROM読者さま。
爽やかですか?いえいえ、ただの妄想の世界です(w
- 230 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月19日(水)02時13分03秒
- 梨華ちゃんを困らせていいのはよっすぃーだけだって(w
- 231 名前:ROM読者 投稿日:2003年02月19日(水)20時10分53秒
- 加護ちゃん・・ちょっと痛いかも。でもどちらかと言えば
いいらさんの心の支えがのんちゃんだけっぽいおとめもま
た・・どうなるんでしょう。
- 232 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月19日(水)22時28分08秒
- 個々の台詞が自然でイイ。心の呟き、めっちゃよっちぃらしくて素敵れす(w
作者さんのお話大好きです。頑張って下さい。
- 233 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月03日(月)23時17分55秒
- あいぼんもあたしと同じ気持ちなんだろうなぁ。
ずーっとののと一緒だったんだもん。
特にこの2人は、合宿の時から仲良かったから。
あたしたちみたいに付き合ってるとかそう言うんじゃなくっても、
この2人には見えないキズナみたいなものがあると思うし。
なんていうか、相棒?っていうのかな。
お笑いで言う、相方ってやつだね。
その2人が離れちゃったら、そりゃあ不安になるよ。
あたしはあいぼんをそっと引き寄せると、後ろからギュっと抱きしめた。
あたしにとっては大切な妹のようなあいぼん。
寂しい時にはあたしが守ってあげたい。
声には出さないけど、抱きしめたあたしの左腕に両手でしがみついているあいぼんは、
体全体で寂しいと言っている気がする。
- 234 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月03日(月)23時19分43秒
- そんなあいぼんを見ていると、
あいぼんも成長してるんだねって嬉しくなる反面あいぼん大人になんかならないでぇ〜って思ってみたりする。
これってすっげー自分勝手なんだけど、やっぱりあいぼんには子供の気持ちを忘れてほしくないな。
あいぼんの場合、周りが要求する子供っぽさと自分の成長との折り合いがつかなくってイラついたりもしてるけど、
それをちゃんと克服して少しずつ成長していってる。
ののだって最近は大人っぽくなってきたって一部では評判だ。
初めて会った時はただの子供だったのに、
最近じゃいろんな表情をするようになったし。
ははっ、なんか保護者な気分。
・・・それに比べてあたしはどうだろう?
プライベートと仕事の区別をつけられなくて、
梨華ちゃんと分かれてしまうことに不貞腐れちゃって。
頑張っている梨華ちゃんを素直に応援できないなんて、まるで子供だ。
あいぼんやののよりも、全然子供。
圭ちゃんじゃないけど、そろそろガキ大将は卒業しないとね。
- 235 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月03日(月)23時21分16秒
- ――でもでも、やっぱり
「おもしろくない」
「おもろないわ」
「おもしろくないですねぇ」
思わず口に出してしまったけど・・・。
あはっ、子供もう1人見っけ。
やっぱりあいぼんもあたしと同じお子様だ。
前言撤回!!
っていうか、ん?
あいぼんの他に、もう1人の声が聞こえなかったか?
「亜弥ちゃんやん」
あいぼんの声で後ろを振り返ると、
かなりご機嫌斜めな亜弥ちゃんが立っていた。
- 236 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月03日(月)23時23分50秒
- 「あっれぇ?どうしたの、ウチらの撮影見に来るなんて珍しいじゃん」
「別にモーニングさんの撮影見に来たんじゃありません。
ミキスケが気になって来ただけです」
「・・・あ、そう」
バッサリ言い切ったね、こいつ。
ああ、そうだろうね。ウチラなんか見てもしょうがないもんねぇ。
胸の前に腕を組んで、顎をちょっと上げて『おとめ組』をっていうか美貴ちゃんを睨んでいる亜弥ちゃんは、
テレビでみる『あやや』ではなかった。
「なぁんかぁ、いつもの亜弥ちゃんじゃなぁ〜い」
すかさずその表情を突っ込むあいぼん。
新しいおもちゃを見つけた子供みたいに目を生き生きとさせている。
やっぱり、あいぼんはこうでなくっちゃ。
「あやや、お顔怖ぁ〜い」
あたしもそれに乗っかって、両頬に手を当てて茶化してみる。
「放っといてください」
左眉をピクッと上げて、本気で不愉快そうな顔。
でもでも、そんな顔すると余計にちょっかいだしたくなるんだよ?
あいぼんだって、ニヤッとしてるし。
- 237 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月03日(月)23時26分42秒
- 「もしかしてぇ、美貴ちゃんが娘。入るの気に入らないのかなぁ〜?」
「そんなことないですっ」
あいぼんの言葉にムキになってすかさず答えてくる。
だからぁ、そうやってムキになるとこが面白いんだってば。
「じゃあ、なにがおもろないのぉ?」
「うっ・・・」
「そうだよねぇ。別になんも問題ないはずだよねぇ。もともと別々にソロ活動してたわけだしぃ」
「そ、そうですよ。そんな嫌なんて事ないですよ」
あいぼんとあたしの言葉に、そう強がってはいるけど顔はなんとも微妙な顔してる。
その表情を見て、あいぼんがニヤっと笑ってあたしを見た。
あたしもあいぼんも、亜弥ちゃんから聞きたいことは同じだ。
「亜弥ちゃんはぁ、美貴ちゃんのことどう思ってるのぉ?」
人差し指を顎に当ててかわいこぶったポーズをして、あいぼんが亜弥ちゃんの顔を覗き込んだ。
言っていて自分で照れてたらしいあいぼんは、その後あたしの顔を見てニカっと笑った。
子供が悪戯したあとにお母さんを見るような、かわいい笑顔で。
それにしても、直球で聞いたね、あいぼん。
そのくらい無邪気ぶって聞けるのは、娘。の中でもあいぼんくらいじゃないかな。
- 238 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月03日(月)23時28分08秒
- 「どう思ってるって、どういうことよ?」
そんな無邪気さなんて、亜弥ちゃんには全然通用しなかったらしい。
あいぼんをキッと睨みつける。
けど、目が少し泳いでないかい?
あいぼんも全然気にしてないみたいで、へらへらしてるし。
「だからぁ、好きなの?どうなの??」
「好きに決まってるでしょっ。私たち親友だもん・・・」
「ふ〜ん、親友・・・ね」
「なによ」
「べっつにぃ〜」
「あ、なんかムカつくっ」
半切れ気味の亜弥ちゃんと、へらへら余裕のあいぼん。
あまりにも対照的なんだけど、なんだか2人ともかわいいぞ。
「で、どうなの?ん??」
亜弥ちゃんの肩に手をかけて、引き寄せながら顔を覗き込んでみる。
このままほっといたら、結局話は進みそうも無いし。
ちょっと仕掛けてみようかな。
- 239 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月03日(月)23時30分35秒
- 「え、あ、ちょ、ちょっと・・・」
「ん?どした??っていうか、どうなのよ」
顔を近づけたあたしに戸惑いながら、亜弥ちゃんの視線は撮影中の美貴ちゃんに。
まるで美貴ちゃんが見ていないか、気にするように。
あたしもつられてそっちを見たけど、美貴ちゃんは気づいていないみたい。
もちろん、梨華ちゃんにも気づかれてない。
くそっ、梨華ちゃん少しは気付いてくれればなぁ〜。
もっと近づいちゃえ。
「いや、マジで。どうなのよ、美貴ちゃんとはさぁ。
吉澤としては気になるわけよ、そこんとこ」
「本当にただの友達だから。それ以上は何もないから」
少し体を引き気味にして、亜弥ちゃんは目を逸らした。
「うっそだぁ〜。ぜってーなんかあるって。亜弥ちゃんが気づいてないだけじゃないのぉ?」
「あぁもうっ、うるっさいなぁ。なんでもないって言ってるでしょ」
あたしの腕を払いのけて、上目遣いに頬を膨らませる。
そろそろ本気で怒っちゃったかな?
- 240 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月03日(月)23時31分21秒
- でもさぁ、絶対友情以外の感情があると思うんだけどなぁ。
本人たちが気付いていないだけで。
あたしと梨華ちゃんだって、最初はそうだったもん。
恋愛感情を友情だって思い続けていて、っていうか思い込んでいて。
結局気付いていないのは、あたしと梨華ちゃんの2人だけだったって後でわかった。
ごっちんには「あれは友達を見る目じゃないでしょ」ってあっさり言われた。
だからこそ、亜弥ちゃんと美貴ちゃんって見ててじれったくなるんだよね。
あの頃の自分たちを見ているみたいでさ。
2人のお互いを見る目って言うのは、まさに「友達を見る目」じゃないんだよ。
あたしたちも、あんな感じだったんだろうなぁって感心してみたりして。
- 241 名前:ポー 投稿日:2003年03月03日(月)23時45分22秒
- 遅くなりましたが、更新です。
話が思いもよらない方向へ・・・(w
230>名無し読者さま。
・・・ですよねぇ。
それか、あいぼんくらいですかね。田中さん、まだまだ早いです(w
231>ROM読者さま。
石川さんも頑張ってそうなんですけどねぇ…なかなか(w
232>名無し読者さま。
ははっ、照れてしまいまふ。これからもよろしくです。
みきあやの2人が、娘。のメンバーをどう呼んでいるのかわからず、
適当に書いてしまいました。
特に、よっすぃ〜が2人をどう呼んでいるのか全くわかりません。
変なところがあっても、見逃してくださいませ。
- 242 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月04日(火)00時10分24秒
- ふじもってぃーとまっつーって誰かが呼んでたのは覚えてるんですけどねw
あやみきもはじまって自分には好きなCPばかり(w
続きお待ちしてます!
- 243 名前:ROM読者 投稿日:2003年03月05日(水)01時20分39秒
- >石川さんも頑張ってそうなんですけどねぇ…なかなか(w
自覚はあるけどちょっと空回り。でも一生懸命なあなたがスキ(吉
・・色々あやみきのト−クを聞いてると、みきてぃはあややに振り
回されてるのを楽しんでいるように思えます。 なんか可愛い。
- 244 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月07日(金)00時21分47秒
- 「じゃあじゃあさぁ、例えばぁよっすぃ〜が美貴ちゃんと付き合っても平気だよね?」
唐突にあいぼんが言った。
いきなりなんて事を言うんだよ。
「え、だって梨華ちゃんがいるよ?」
あいぼんの言葉に亜弥ちゃんは素で反応。
そりゃそうだ。あたしには梨華ちゃんって言うかわいい彼女がいるんだもん。
そりゃあ美貴ちゃんかわいいし、年上好きのあたしとしてはストライクゾーンなんだけどさぁ、
やっぱり梨華ちゃんがど真ん中なんだよねぇ。
っていうか、むしろノックアウト。
もう、他の女の子なんて目に入りませ〜ん。
「だからぁ、例えばだって。美貴ちゃんに好きな人がいて、それがよっすぃ〜なら?」
「そんなら良いにきまってる・・・よ。ミキスケがよっすぃ〜の事好きなら・・・」
って、おいおい。
そのまま話は続行ですか?
それに亜弥ちゃんさぁ、そんな事言っても顔は良くないっていってるじゃん。
ぎこちない笑顔まで作っちゃって、まったく・・・。
やっぱり素直じゃないね、この娘は。
作戦ちょっと変更決定!!
- 245 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月07日(金)00時28分21秒
- ちょうどその時、
「はい、終了です。おとめ組のみなさんお疲れさまでしたぁ〜」って言うスタッフの声が聞こえた。
チャーンスッ!!
「じゃあこういうのは?あたしと亜弥ちゃんが付き合うとか」
あたしはそう言って、もう一度亜弥ちゃんの肩を引き寄せた。
両腕で亜弥ちゃんを抱きしめたりしてみる。
念のため梨華ちゃんを目で追ってみるけど、やっぱりこっちの事は目に入らないらしい。
どうせ、ひとつの事に集中しちゃってる梨華ちゃんは、他の事には目が行かないしね。
ふーんだ。
「美貴ちゃんとは、そういうんじゃないんだよね?前は好きだって言ってくれてたじゃん」
耳元でそっと囁いてみる。
亜弥ちゃんの肩越しにあいぼんを見ると、
撮影を終わらせた美貴ちゃんをニヤニヤしながら横目で追っている。
あいぼんもあたしの意図に気づいたらしい。
そしてあたしに目配せして、「やれ」って合図を送ってきた。
あたしは小さく頷くと、亜弥ちゃんの目をじっと見つめた。
「え、え?ちょっと、ふざけないでよ」
「いや、ふざけてないし。だから、例えばの話だよ」
そう言いながら、亜弥ちゃんに向かって微笑んで見せる。
- 246 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月07日(金)00時29分38秒
- どうかな?あたしのジゴロっぷりは。
梨華ちゃんが怒るから最近はやってなかったけど、衰えてないでしょ?
伺うようにあいぼんをみると、小さく指でOKサイン。
やった、あいぼんOK出ましたっ!!
亜弥ちゃんも少し顔を赤くして俯いてるし。
かぁ〜わいいぃ〜。
って、目的忘れそう・・・。
- 247 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月07日(金)00時31分33秒
「ちょっと、何してるんですかっ」
来た来たっ。
視線を向けると、抱き合っている(ように見える)あたし達の横に、
走ってきたのか息を切らした美貴ちゃんが立っていた。
「何って、ねえ・・・」
わざと余裕かまして、亜弥ちゃんに微笑んで見せる。
そんなあたしに、明らかにムッとした美貴ちゃん。
亜弥ちゃんは、慌ててあたしから離れようとするけど、離さないようにギュッと引き寄せる。
そしてわざと見せつけるように、亜弥ちゃんの耳元に顔を埋めて美貴ちゃんに聞こえないように囁いた。
「亜弥ちゃんが親友って思ってても、むこうは違うかもよ」
ピクッと動いて顔を上げようとする亜弥ちゃんを、軽く抑える。
コレでかかってこなかったら、今日は諦めようかな。
時間もなさそうだし。
ま、いい暇潰しになったかな。
久しぶりに亜弥ちゃん抱きしめられたしね。へへっ。
そんなことを考えながらゆっくりと美貴ちゃんを見る。
もちろん余裕ぶった微笑みもつけて。
すると美貴ちゃんは、乱暴に亜弥ちゃんを抱いているあたしの腕を引き剥がした。
- 248 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月07日(金)00時35分07秒
- 「あたしの亜弥ちゃんに、なにするんですかっ」
かなりムッとした顔して、美貴ちゃんはあたしを睨みつけている。
言ったね、「あたしの亜弥ちゃん」って。
なんだ、やっぱり両想いなんじゃんこの2人。
あいぼんを見ると、口を大きく開けて声を出さないように笑ってる。
へへっ、作戦大成功だね。
「美貴たん…」
美貴ちゃんの言葉にびっくりした様子の亜弥ちゃん。
でも、もう目がキラキラしちゃってすっごい顔が嬉しそう。
美貴ちゃんはといういと、自分の言葉にちょっと戸惑い気味。
「だからぁ、そういうことなんだって。なぁ、亜弥ちゃん?」
うれしそうに亜弥ちゃんの傍に寄って行って、肩をポンと叩くあいぼん。
「いや〜、若いってええなぁ」って2人に向かって言う姿は、大人を通り越してオヤジくさいよ?
「ちょっと、なにがそういうことなんですか?」
まだちょっとムッとしている美貴ちゃんが、怖い顔してあたしを見つめる。
こえぇ〜〜。
美貴ちゃんってさぁ、空気を凍らせるような怖い顔するんだよね、ホント。
今、心臓ピクッとしたもん。
- 249 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月07日(金)00時36分06秒
- 「オォ〜ノォ〜、イッツジョークねぇ〜。ワタシナニモシテマセンねぇ〜」
両手を挙げて亜弥ちゃんから離れると、クルッとまわって見せる。
こうなりゃおどけて誤魔化すしかないよね。
まさか、「暇つぶしに試してました」なんて言えないし。
「ナニこの人、まわってるし」って、あいぼんが笑った。
いや、キミも共犯なんだからフォローしてよ。
いっつもあいぼんは目で「やれ」って命令するだけでさぁ、実行犯のあたしが怒られるんだから。
でも、それにつられてか、亜弥ちゃんも笑ってる。
っていうか、亜弥ちゃんはもう嬉しくって笑ってるって感じ。
こらっ、2人とも。
指さすな、指っ。
そして、状況が飲み込めなくて、はしゃぐ亜弥ちゃんに苦笑気味の美貴ちゃん。
でも、2人の手はしっかり握られていて、それを見るだけでも二人の間に流れる暖かい空気が伝わってくる。
- 250 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月07日(金)00時43分34秒
- 少し落ち着いてきた時、「ねえ、なんなの?」って美貴ちゃんはまだ怪訝な顔で亜弥ちゃんを見た。
けれども亜弥ちゃんは何も答えずに、代わりに最高の笑顔を向けた。
「いいのっ。行こう、美貴たん」
「う、うん」
まだ納得できてないような微妙な顔した美貴ちゃんを、ご機嫌な様子で亜弥ちゃんは引っ張っていった。
亜弥ちゃんの後ろ姿は、まさにウッキウキ状態。
美貴ちゃん、いつもああやって亜弥ちゃんに振り回されてるんだろうなぁ。
そんな2人を見送って微笑みあうあたしとあいぼん。
なんか、かっけぇーぞ、あたしたち。
「そうだ」
ピタッと立ち止まると、亜弥ちゃんは1人で戻ってきた。
「あのですねぇ、松浦は痩せてる人が好きなんです。
だから、今のよっすぃ〜とは付き合えません。じゃあ、失礼しまぁ〜す」
ニコッと笑って大きな身振りで頭を下げると、美貴ちゃんの元へと走っていった。
くっそぉ〜、わざとらしくテレビ用の喋り方で言いやがった。
それに昔って言っても、2・3年前だろっ。
それにあたしだって、痩せてる子の方が好きなんだよっ。
梨華ちゃんみたく。
いや、痩せてなくても、梨華ちゃんがイチバンなんだけどさ。
- 251 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月07日(金)00時46分40秒
- 「痩せてる方が好きなんだってぇ。残念だねぇ、よっすぃ〜?」
「うっさいよ」
ニヤニヤしてるあいぼんを、軽く小突く。
まあなんにしても、二人が幸せならいいけどね。
なんだかあたしは、付き合い始めた頃のあたしと梨華ちゃんのこと思い出したよ。
付き合うことをみんなに報告したら、
「は?あんた達付き合ってたんじゃなかったの?」って圭ちゃんに言われたし、
ごっちんには、「長かったねぇ〜。ってか、遅いよ」って何故か怒られた。
でも、あの時の幸せな気持ち、絶対忘れられない。
あの2人にも、そんな幸せを味わってほしいな。
ちょっと心がほんわかして良い気持ち。
あいぼんも、エヘヘって照れくさそうに首をすくめている。
ちょっとだけ良いことした気分。
本当はただの悪戯心だったのに。
っていうか、暇つぶしだったのにね。
- 252 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月07日(金)01時00分35秒
- 更新しました。
人の恋路で遊ぶ、お子ちゃま2人でした。
242>名無し読者さま。
あやみき?みきあや?どっちかわかんないんですけど、このCP好きなんです。
ただ、なかなかうまく書けなくって。
…すみません(w
243>ROM読者さま。
そうそう。あややの暴走を楽しんでる感、ありますよね(w
- 253 名前:ROM読者 投稿日:2003年03月07日(金)01時12分00秒
- やっちまった・・前回のレス、思いっきりフライング
してました。逝ってきます・・
- 254 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月23日(日)20時40分11秒
- 「あ〜いぼ〜ん」
「おう、のの。お疲れぇ〜」
撮影を終えたののが、パタパタと小走りで来た。
手にはすでにペットボトルのジュースを持って。
パチッとハイタッチを交わす2人。
コショコショと何か言って笑いあっている。
そんな2人を見ていると、自然と笑みがこぼれてしまう。
だってこれが、あたしが娘。に入ってからずっと見てきた光景だから。
「うわっ、今度は笑ってるし。キッショーい。梨華ちゃんのがうつったんとちゃうん?」
「なんだよぉ、失礼な。キショい言うな」
そう言ってあたしはあいぼんにヘッドロックをかける。
「ギブギブ」と言いながらあたしの腕を叩くあいぼん。
てへてへと笑っているのの。
う〜ん、やっぱり良いね。こういうのって。
- 255 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月23日(日)20時41分14秒
- あいぼんを締めながら、視線をちょっと上げると梨華ちゃんが映った。
今撮影した分のポラを見ながら、新人2人に話しかけている。
きっと熱心に写り方とか教えてるんだろう。
でもさぁ、少しくらいこっち見てよ。
少し離れたところでは、美貴ちゃんと亜弥ちゃんが楽しそうに喋ってるし。
ああ、やだやだ。ラブラブオーラ出しやがって。
「よ・・・すぃ〜・・・」
力ないあいぼんの声で我に返った。
うわっ、思わず腕に力を入れすぎていた。
「ごめん。大丈夫??」
「くはぁ〜、死ぬかと思ったわぁ」
あいぼんは少し涙目でケホケホと咳をした。
「いや、ほんっとゴメン。うっかり忘れてた」
「忘れんなや」
「へへへへへっ、だめだよぉよっすぃ〜。あいぼん、死んじゃうよぉ」
ジャンプしてあたしの頭を叩くあいぼんと、あたしの腕をひっぱるのの。
う〜ん、やっぱりキミたちは大人になんないでね。
- 256 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月23日(日)20時43分16秒
- あいぼん、よっすぃ〜、そろそろ始まるよぉ。行こ?」
メイクさんと一緒に歩きながら、安倍さんが声をかけてきた。
珍しく顔が強張っている気がする、安倍さんの笑顔。
それは今回の撮影が、いつもと意味合いが違うからなのかな。
こんなに緊張が顔に出ている安倍さんは、初めて見た。
「なっち」
そんな安倍さんを追うようにして、少し離れた所から飯田さんが呼びかけた。
それはいつもの緩やかなニュアンスの話し方とは少し違った、
リーダーモードの入った凛とした張りのある声で、やけにスタジオ内に響いた。
再び歩き始めた安倍さんは、その声で立ち止まってゆっくりとそちらに視線を向けた。
ほんの一瞬の沈黙。
そして安倍さんは、小さく頷いてふわっと微笑んだ。
- 257 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月23日(日)20時44分00秒
- 「行って来るね、カオリ」
「うん。行ってらっしゃい、なっち」
端から見れば何の意味も持たない短い会話なんだけど、
二人の間に言葉なんか必要ないくらいの信頼関係があったようにみえた。
言葉なんかなくても分かり合える関係。
それはすごくかっこ良くって、大人な感じで。
そして他のメンバーには決して分かり合えることのできない二人だけの年月が、
そこには流れているという事を感じた。
やっぱかっけーよ、この人たちは。
いつかはあたし達もそうなれるのかな。
あたしと梨華ちゃんとののとあいぼん。
たとえ2つの違うグループに分かれてしまっても、
この4人の一緒に過ごしてきた年月は無駄にはならないよね?
- 258 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月23日(日)20時45分35秒
- 「なに?どしたの、ぼーっとしちゃって。ほら、早く行かないと」
あたしの視線に気づいた飯田さんが、こっちに向かって歩きながら笑って両手で「行け」って身振りをした。
「ほぉらぁ、みんな待ってるでしょ。あいぼんも遊んでないで行きなさい」
あたしとあいぼんの頭を軽く押すと、ののの肩に手を置いた。
「ここでのんちゃんと見てるから、行ってこーい」
「ほいっ」
元気良く返事をしたあいぼんは、ののに「ほななっ」って片手を上げると走ってカメラ前へと走っていった。
「じゃあ行ってくよ、ハニー」
「行ってらっしゃい、ダーリン」
飯田さんとお約束の投げキッスの真似をすると、あたしはあいぼんの後を追った。
- 259 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月23日(日)20時48分37秒
- カメラ前には、すでにあたしとあいぼん以外のメンバーは揃っていて、
高橋と新垣、安倍さんと矢口さんはいつもみたいに喋っていた。
それはいつもみたいな撮影前の風景。
そこにあいぼんも加わって、小さな笑いが起こっている。
紺野はというと、緊張気味の亀井になにやら一生懸命話しかけている。
どうやら、緊張をほぐしてあげようとしてるっぽい。
けど、紺野も微妙に緊張気味。そして、反応の薄い亀井。
そんな姿を見ていると、紺野もだんだんと先輩らしく見えてくる。
しかも一生懸命さがこっちにもひしひしと伝わってきて、まるで誰かさんを見てるみたい。
ふと、紺野たちが入ってきた頃を思い出す。
あの頃の梨華ちゃんは、自分が先輩になるってことをかなり意識していた。
っていうか、意識しすぎて空回りしていた。
なんとなく今の紺野の姿はそれを思い出させた。
ユニットで一緒だと似てくるのかな?
紺野、空回りしないように気をつけてね。
- 260 名前:大人になるって? 投稿日:2003年03月23日(日)20時49分28秒
- 「よっすぃ〜遅いっ!!」
「ごめぇ〜ん」
矢口さんに手を合わせて謝る身振りをして、みんなの間に入っていく。
「どうしよう〜やぐちぃ。なっち、超緊張してきたぁ〜」
安倍さんがいつもの笑顔でバタバタとジャンプし始めた。
でもそれは、さっきまでの硬い表情ではない。
収録や撮影の前の、安倍さんのいつもの儀式のようなもの。
「おいおいリーダー、頼むよぉ。なぁ、お豆」
「はいっ。でも新垣も眉毛が伸びてしまいそうなほど緊張してますっ」
「マジで?って、んなわきゃないだろっ。キャハハハハ」
最近、この2人がやけに仲良さげなのは気のせい?
なんか良いコンビになりつつあるような…。
- 261 名前:ポー 投稿日:2003年03月23日(日)20時59分26秒
- 久々の更新。けど、話進まず・・・。
ダラダラです。すみません。
253>ROM読者さま。
いえいえ、ぜーんぜん気にしなくていいですよ。
だって、誰でも想像できちゃうことですから(w
- 262 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月10日(木)23時51分13秒
- 「うぉ〜、すっげぇ見晴しいぃ〜」
自分の立ち位置に立ってみると、そこはいつもとは全然違った光景があった。
すっきりと前が見渡せて、全然人の頭が邪魔にならない。
前に一列しかいないのが、こんなにすっきりとしているとは思わなかった。
今までだったら、前の人の頭の隙間から顔を出さないといけないくらいだったのに。
「うぅるさいってぇ、よっすぃ〜」
隣に立っている、矢口さんが大袈裟に耳を塞ぐ。
「だって全然違うじゃないっすかぁ。ほらぁ、前がすっげぇ見えますよ。かっけぇ〜」
「そーかぁ?」
「そうですよぉ。矢口さんがちっこいからわからないだけですよ」
そう言って矢口さんの頭の上に手を置いてみせる。
すると、矢口さんはそれを振り払い両手を握り締めて仁王立ちになった。
でも、そんな姿がまたかわいい。
- 263 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月10日(木)23時51分54秒
- 「うっさいっ。ちっこい言うなっ」
「だって本当にちっこいじゃないっすか。それじゃ台に乗っててもあいぼんの後ろから顔見えないんじゃないですか?」
「なんだとぉ。お前、ふざっけんなよぉ」
矢口さんはグーにした右腕を、わざと大きく振り上げる。
「うははははっ、手伸ばしても届くかなぁ?」
「くそっ、マジむかつくっ」
そうやって殴りかかろうとする矢口さんの腕をつかんでみたりしながら、ふざけてじゃれてみる。
ギュって抱きしめると「なんだよぉ、離せよぉ」とか言いながらわざとらしく突き放そうとする。
ははっ、これでハタチなんて思えないくらいカワイー。
しばらくこうやってキャーキャーと騒いでいると、
前列に立っている、リーダー安倍さんがクルッとこっちに顔を向けた。
「もう、矢口もよっすぃも二人とも静かにしなさい」
「「はい・・・」」
自分だってさっきまで叫びながらジャンプしてたくせに…。
「ほら、よっすぃのせいでなっちに怒られたじゃんよぉ」
「え〜、あたしのせいですかぁ?」
安倍さんに聞こえないようにこそこそとお互いに責任を押しつけ合う。
だって、今の安倍さん怖かったんだもん。
- 264 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月10日(木)23時52分36秒
- でも、撮影が始まると、おふざけモードだったあたしたちも一気に集中力を上げる。
一応、プロだしね。
フラッシュの光が激しくたかれるにつれて、どんどん自分の世界に引き込まれる。
そして、絶え間なく切られるシャッターに合わせて、様々な表情を次々と作っていく。
時には隣に居る矢口さんの肩に手をまわしたりしてポーズをとったり、体の向きを変えてみたり。
それは、世界が真っ白になってしまっているかのような不思議な感覚。
しばらくその状態が続いてフラッシュが止むと、額にはじんわりと汗がにじんでいた。
でもまだテスト用のポラ撮影だ。
これからが本番。
おっしゃぁ〜、テンション上げてくぜぃ!!
チラッと隣を見ると、矢口さんも頬を紅潮させて気合充分。
あたしと視線が合うと、ヘヘッって笑い合ってみたりして。
な〜んか、イイ感じ。
「さくら組」も悪くないかも。
- 265 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月10日(木)23時55分29秒
- はぁ!?なんだよ。
なんで藤本と腕組んでんだよっ。
亜弥ちゃんはどうしたんだ、こらっ。
前言撤回!!
やっぱ、さくら組よりもモーニング娘。一つのグループの方がイイ。
「どうした、よっすぃ〜?顔が怖いぞ」
ジーッとそっちを睨んでいるあたしに気づいて、矢口さんが顔を覗き込んできた。
「あ、さては梨華ちゃんとふじもっちゃんが気になってるんだろ。
梨華ちゃんタメのメンバーできるの喜んでたんだから、許してあげなよ」
そう。たしかに梨華ちゃんは、美貴ちゃんが入ってくるって決まってから凄く嬉しそうだった。
今までメンバーで同い年がいなかったから。
あたしとごっちんが仲良くしてるのが羨ましかったって言ってたし。
でもさぁ、なにも腕組まなくったっていいじゃん。
- 266 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月10日(木)23時56分54秒
- 「こぉ〜らぁ〜、顔引きつってるぞ。ちゃんと笑顔つくれんのかぁ?」
背伸びしながらニコニコと笑顔であたしの両頬を引っ張った。
「イタタタタ。痛いれすってやぐふぃはぁん」
もぉ〜、赤くなったらどうすんですか。
「まぁったくよっすぃ〜はガキなんだからぁ。
よっすぃ〜とごっつぁんが仲良くしてても、梨華ちゃんは怒んなかったろぉ」
ピンっと手を離すと、ペチペチとあたしの頬に軽く触れた。
「そうですけどぉ…」
「だろぉ?それに、そういう事は直接梨華ちゃんに言ってやんなよ。喜ぶと思うけどな、矢口は」
「え?なんでですか??」
あたしの質問には答えずに、
「さあねぇ〜」って意味有りげに言って正面に向き直った。
- 267 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月10日(木)23時57分34秒
- もう一度視線を二人に向けると、美貴ちゃんだけがあたしに気づいた。
美貴ちゃんは口角をきゅっと上げて、勝ち誇ったような顔であたしを見た。
そんな美貴ちゃんには気づかない様子で、話し続ける梨華ちゃん。
くっそぉ〜、ぜってぇ〜さっきの仕返しだよ。
でもさぁ、亜弥ちゃんといちゃいちゃしてたのは、キミたちのためだったんだよ?
それをそうやって仕返しするかなぁ??
ふふん、キミもまだまだコドモだね。
あたしはそんなの気にしないよ。
じぇーんじぇん、そんなの悔しくないよ。
……って余裕かましたいとこなんだけど、なかなかそうもいかない。
あたしもまだまだだな。
- 268 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月10日(木)23時58分47秒
- 撮影が再開しても、2人が気になってしまってしょうがない。
フラッシュの合間に見える二人の姿は、すっごく楽しそうだし。
次第に自分の表情が硬くなっていくのがわかる。
笑顔を作ろうとするんだけど、視線は2人が居るはずの方へ。
「吉澤さん、表情硬いよ」なんてカメラマンさんに注意までされちゃって。
結局、撮影が終わるまで、満足のいく笑顔なんて作れやしなかった。
それもこれも全部美貴ちゃんのせいだ。
いや、そもそもあたしと梨華ちゃんを離れ離れにさせたのがいけないんだ。
つんくさんのばぁ〜か!!
ハゲッ!!
- 269 名前:ポー 投稿日:2003年04月11日(金)00時02分19秒
- はい、更新終了です。
どうも私の書くよっすぃ〜はグチっぽくってしょうがない…。
こんな感じで、もう少しお付き合いください。
- 270 名前:ROM読者 投稿日:2003年04月12日(土)01時38分10秒
- >いや、そもそもあたしと梨華ちゃんを離れ離れにさせたのがいけないんだ。
そうだ、その通り!作者さんじゃなくても愚痴りたくなりますよねェ。
- 271 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月27日(日)23時44分57秒
- ■■■
「あんたねぇ、この表情はどうなのよ?」
呆れた顔して、圭ちゃんは手に持った写真をピンッと人差し指で弾いた。
「こんな顔してたら、『あたし不満でいっぱいです』って言ってるようなもんでしょ」
そこには、カメラを睨みつけるような表情のあたしが写っていた。
あたしはそんなつもりは無かったんだけど、圭ちゃんにはそう見えたらしい。
でも、もう撮っちゃったんだもんしょうがないじゃん。
「もっとなっちとか矢口みたいに笑顔作んなさいよ。これじゃ怖いって」
そう、その写真とは、『さくら組』の宣材写真。
メディア配布用に昨日撮った集合写真だ。
もうすでに仕上がっていて、さっきマネージャーが控え室に置いていった。
それを真っ先に手に取ったのが、圭ちゃん。
昨日からずっと気になっていたらしい。
『おとめ組』と『さくら組』の2枚を見比べて、微妙な表情。
口角を上げて、フッとため息とも笑いともつかない息を吐いた。
- 272 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月27日(日)23時45分50秒
- 「なにふたりで話してるのぉ〜?」
そんなあたしと圭ちゃんの間に、梨華ちゃんが割って入ってきた。
「ああ、あんたも言ってやってよ。よっすぃ〜、もっと笑顔で写れって。
コレじゃあ色々と深読みされちゃうでしょ」
そう言って圭ちゃんは写真を差し出した。
「……ぃ」
「はい?」
「かっこいい…」
「はぁ?何言ってんの、あんた」
「よっすぃ〜、かっこいい〜」
梨華ちゃんの目は、すっかり写真のあたしに釘付け。
もう、圭ちゃんの声なんて聞こえていない。
いや〜、そんな言われると照れるっす。てへへ。
「ばっかじゃないの、あんた」
すっげー醒めた目で梨華ちゃんを見て、圭ちゃんはため息一つ。
- 273 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月27日(日)23時47分03秒
- 「ちょっと矢口ぃ、どうにかしてよ」
たまたま通りかかった矢口さんに助けを求めた。
「なに、どした?」圭ちゃんに腕を掴まれた矢口さんは、あたしと梨華ちゃんを交互に見る。
うっとりと写真を見つめる梨華ちゃんと、その隣でへらへらしてるあたし。
「ほっときなよ、こんなの相手にするだけムダムダ。圭ちゃんだってわかってるでしょ」
「いや、そんなのわかってるんだけどさぁ。
矢口もこれ見てみなよ、あんたも同じさくら組でしょ」
そう言って圭ちゃんは梨華ちゃんの手から写真を取って、矢口さんに差し出した。
写真を奪われた梨華ちゃんは、不満げに口を尖らせてる。
そんな顔もすっげーかわいいんだけど、写真じゃなくて実物がここにいるんだけどなぁ。
あたしもちょっと、不満顔。
そんなあたしの顔を見た後、写真を見て矢口さんは呆れたようにフッと鼻で笑った。
「だからぁ、そうやって不満顔ばっかしてないで、声に出してちゃんと言えよ。ばぁ〜か」
そう言って、写真であたしの額を叩いた。
- 274 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月27日(日)23時48分31秒
- 「なに、またなんかあったの?」
「この時さぁ、梨華ちゃんがねぇ…」
「ちょっ、矢口さん!!」
興味津々な圭ちゃんに、矢口さんが余計な事を言いそうな予感。
慌てて矢口さんの頭を抱えて、口を手で押さえる。
フガフガと騒いでいるけど、そんなの無視。
だって梨華ちゃんの目の前で余計なこと言われたら、かっこ悪くてしょうがない。
「え〜なになに?知りたぁ〜い」
「いや、知らなくて良いから」
ほらぁ、梨華ちゃんまで興味持っちゃったじゃん。
「あたし、なんとなくわかっちゃったぁ」
にやっと笑う圭ちゃん。
「え〜、保田さんわかっちゃったんですかぁ?
あの時いなかったのに。ねぇ、よっすぃ〜教えてよぉ」
膨れっ面して、梨華ちゃんがあたしの腕を引っ張る。
その勢いで矢口さんの口を押さえていた手がはずれた。
「ぷはぁ、お前ふっざけんなよ。まーじ死ぬかと思った」
「あ、ごめんなさい。でも、矢口さん余計なこと言うからですよ」
「はぁ?そんなこと言うなら、言うぞ?」
にやっとして圭ちゃんと顔を見合わす。二人してニヤニヤ。
そんな二人の顔を見て、「なぁにぃ〜」って口を尖らせる梨華ちゃん。
はうぅ〜、絶対この人達おもしろがってるよ。
- 275 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月27日(日)23時52分14秒
- 「もうさぁ、なんであんな元気なんだろうねぇあの子たち。
っていうか聞いてよぉ。
あのね、最近のんちゃんまでがカオリのことおばちゃんって言うのぉ。
超ーショックなんだけどぉ。
圭ちゃんと一緒にしないでって言ってるのにぃ。
ねえよっすぃ〜、カオリおばちゃんなのかなぁ?
そんなことないよね、ね?」
一気にまくし立てて、後ろから両腕をあたしの両肩に乗っけてもたれかかってきた。
「ちょっと、今の聞き捨てならないんですけど。
なによぉ、あたしと一緒じゃ嫌なわけ?」
お約束のように突込みを入れる圭ちゃん。
- 276 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月27日(日)23時53分06秒
- それにケタケタと笑いながら矢口さんが同意する。
「まあねぇ、圭ちゃんと一緒にされるって言うのはキッツイよねぇ。
あー、オイラもこの前辻加護にハタチっておばちゃんとか言われたぁ。
梨華ちゃんもさぁ、すぐだよ、すぐ」
「え〜〜、私おばちゃんなんて嫌ぁ。
まりっぺはもう十代じゃないからしょうがないよ。
って、飯田さん。よっすぃ〜から離れてくださいよぉ」
「いいじゃん、ちょっと貸してよ。カオ、疲れちゃった」
矢口さんに反論しながらも、飯田さんの腕をペチペチと叩く梨華ちゃん。
そして、あたしを後ろからギュッと抱く飯田さん。
あの〜、なんか背中に胸が当たってるんですけど・・・。
ついついニヤけてしまうあたしの顔を、圭ちゃんと矢口さんがからかう。
さっきの会話なんてすっかり忘れているらしくって、
梨華ちゃんは飯田さんの手を振り払うのに一生懸命。
- 277 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月27日(日)23時54分26秒
- まあ、いつもこんな感じ。
喋ってる人数が増えていくと、一つの話題なんてそうそう続かない。
しっかし、いいタイミングで飯田さん来てくれたよねぇ。
「あ〜、写真できたんだぁ」
今度は安倍さんが控え室に入ってきた。
取材で遅れてたのが終わったらしい。
とてとてっとうちらの輪の中に入ってきて、写真を手に取る。
「なんかさぁ、ののとあいぼんが別々なのって変な感じじゃない?
あの子達、いつも一緒だったっしょ?」
2枚を優しい目で見ながら言った。
そして、「梨華ちゃん寂しいっしょ?よっすぃ〜いなくって」って
何の他意もなさそうな顔でニコニコッと笑顔を梨華ちゃんに向けた。
「え〜、そうですねぇ。ちょっと…寂しいかな」
「うわっ、キショッ」
ほんのり頬を紅く染めて言う梨華ちゃんに、すかさず矢口さんの突っ込み。
梨華ちゃんは笑って「まりっぺひど〜い」といいながら、
視線をあたしに向けて照れくさそうに笑った。
うわっ、すっげーかわいいんですけど。
梨華ちゃんのそんな表情を見せられると、こっちまで照れてくる。
- 278 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月27日(日)23時56分21秒
- 「こらそこ、目で会話するなっ」
「ひどーい、カオリってものがありながら…」
圭ちゃんと飯田さんがからかい始める。
梨華ちゃんと違って、あたしがそういうの弱いの知ってて…。
「ね、よっすぃ〜は?よっすぃ〜は私と離れて寂しい?」
何が楽しいのか、梨華ちゃんまで調子に乗って聞いて来る。
いくら梨華ちゃんがかわいくっても…ねぇ。
「いや、梨華ちゃんキショいって。別に寂しくなんかないよ」
つい強がってこんな事言ってしまう。
「ひどぉ〜い」
頬を膨らませる梨華ちゃんに、
矢口さんが「ほんっとイタイから」って突っ込む。
それでも笑顔を向けてくれる梨華ちゃんがなんだか照れくさくって、
誤魔化すようにおちゃらけて、
「カオリさんはあたしと離れて寂しくないですか?」
って背後に顔を向けて聞いてみる。
思いのほか、飯田さんの顔がそばにあってびっくりした。
- 279 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月27日(日)23時57分22秒
- 「う〜ん、そんなに寂しくないかなぁ」
「え〜、超ショックなんですけどぉ。吉澤ははカオリさんと離れて寂しいですよ?」
なんで飯田さん相手だったら恥ずかしげもなく言えるんだろう。
チラッと横目で梨華ちゃんを見てみると、少し悲しげな笑顔。
他の人たちは気づいていないみたいだったけど、あたしは気づいてしまった。
そして、そんな顔をさせたのはあたし。
本当は、さっき梨華ちゃんに言いたかったんだよ。
そう言う気持ちを込めて視線を送るが、そんなのわかるはずがない。
顔を上げた梨華ちゃんと一瞬目が合ったと思ったら、
梨華ちゃんは小さく笑って部屋を出て行った。
- 280 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月27日(日)23時57分58秒
- 「あれ、梨華ちゃん?」
安倍さんの声で、矢口さん、圭ちゃんもちょっと違う雰囲気を感じたらしい。
「よっすぃ〜、言う相手間違ってるよ。石川に言ってあげなきゃ」
飯田さんはそう言って、あたしから離れた。
いつもこうだ。
照れ隠しのために、つい梨華ちゃんに対して素直になれない。
もっとあたしが大人ならこういう状況もうまくかわせるのかなって思うと、
コドモな自分が嫌になる。
あたしがコドモなばっかりに梨華ちゃんを少しずつ傷つけてしまうんだ。
- 281 名前:大人になるって? 投稿日:2003年04月28日(月)00時05分58秒
- 相変わらず内容のない更新です。
そろそろ終わると思いますが・・・。
これくらいの年頃の微妙な心がうまく描けないのがもどかしいです。
270>ROM読者さま。
いつもレスありがとうございます。
ほんとはやんちゃなよっすぃ〜が好きなんですけどねぇ。
- 282 名前:ROM読者 投稿日:2003年04月29日(火)22時15分47秒
- まるで、現場でコソーリ録音してきた音声をそのまま書き起こした
ような臨場感に脱帽です。
>相変わらず内容のない更新です。
とんでもない、リアルを通り越してノンフィクションと言ってもいい
程のこの何気ない空間がたまらないのです。
- 283 名前:ROM読者 投稿日:2003年05月19日(月)06時46分13秒
- ちょっと保全。
- 284 名前:ポー 投稿日:2003年05月19日(月)21時29分37秒
- 282,283>ROM読者さま。
ありがとうございます。喜んでもらえるよう、頑張ります。
保全までしてもらっちゃって、申し訳ないです。
前回<275>の頭に一文入れ忘れてました。
なのでいきなり飯田さん登場してしまって、わけわかんなくなってます。
一応↓コレ入れて見てください。お恥ずかしい…。
- 285 名前:275です。 投稿日:2003年05月19日(月)21時30分08秒
- 「あ゛〜疲れたぁ」
ガチャっとドアが開いて、飯田さんがよたよたっと入ってきた。
その疲れ方からすると、今まで子供チームの控え室にいたらしい。
- 286 名前:ポー 投稿日:2003年05月19日(月)21時33分05秒
では、気を取り直して、本編です。
- 287 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月19日(月)21時34分25秒
- 「しょーがないなぁ、お前は。早く行ってあげな」
凹み気味のあたしに、矢口さんがデコピンを一発。
「あはっ、なっちもやっていい?『もっと素直になりなさい』っと」
ピンッと笑顔で一発。
「あたしは手加減しないよ〜。『石川を泣かせんじゃないわよ』っと」
圭ちゃんの指がゴツッと額の骨に当たる。
イッテェ〜……。
圭ちゃん絶対別の感情こもってるよ。
マジ、イタイ。
涙出そう。
「大丈夫かぁ、よっすぃ〜?もう、圭ちゃん力入れすぎ」
額を押さえて痛みをこらえているあたしの頭を、飯田さんがゆっくりと撫でてくれる。
やっぱり、飯田さんは優しいよ。
もう、ユニット分かれてもついていきます…。
って思ったのに、「だいじょおぶです」って顔を上げたらニコッと微笑んで、無言でデコピン一発。
しかも、圭ちゃんのが当たった場所にピンポイントで。
痛さのあまり、言葉が出ない。
足からも力が抜けてしまって、思わずしゃがみこむ。
- 288 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月19日(月)21時35分54秒
- 「あ〜あ、死んだね」
「死んだねぇ。かわいそ〜に」
「カオリの方があたしより酷いって」
「え〜、だってカオリもやりたかったんだもん。ずるいよ、3人だけなんて」
って、そんな理由であたしは今痛いんですかっ。
突っ込みたくても言葉が出せない。
「まぁ、梨華ちゃんも最近は強くなって泣かなくなったからいいけど、そーとー凹んでるのは確実だね。ちょー心配だよ、矢口は」
まったく心配してるようには聞こえない、あっけらかんとした言い方の矢口さん。
「まぁ、あの子のことだからきっとどん底まで落ちてるね。ここら辺に『悲』ってテロップ出るくらいに」
楽しげに圭ちゃんがそう言うと安倍さんが、「ちょっとそれ、おもしろいかも〜」って笑って、本当に楽しそう。
落ち込んでいることさえネタにされちゃう梨華ちゃんのキャラって、ちょっとかわいそうかも。
昔は本気で心配してくれていた優しいおねーさん達はどこへ行ってしまったんだろう?
あたしが何も言わないのをいいことに、しばらく同じ梨華ちゃんネタで盛り上がっている。
しまいには「ほらほら、早く行けよ」ってあたしの頭まで小突いてきたりして。
- 289 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月19日(月)21時37分24秒
- 頭上から、そんなおねーさん方の好き勝手な声が微かに聞こえてはきてるけど、なんの反応もできない。
早く梨華ちゃん追いかけろって言っておいて、酷い仕打ちじゃないっすか?
あ〜、意識がだんだんと薄れてきた…。
遠のいていく意識の糸をゆっくりと手繰り寄せていると、誰かがしゃがんだ気配がした。
顔を上げると、目の前にはたった今あたしを撃沈させた飯田さん。
大きな目を広げて少し眉間に皺を寄せて、首を傾けながらあたしの顔を覗きこんでいる。
「なん…ですか?」
あ〜、まだおでこの骨がジンジンする。
って、なんでそんなに見てるんですかっ。
怖いですって。
- 290 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月19日(月)21時38分45秒
- 「ねえ、よっすぃ〜?冗談で言ってるのは石川もわかってると思うんだけど、もうちょっと優しくしてあげないと。
言葉なしで気持ちが伝わりあう仲でも、たまには言葉に出していってもらわないと不安になっちゃうよ。
言葉っていう素敵なものがあるんだから、使わないと損だと思うけどなぁ。
カオリだったら、言葉に出して何でも言ってほしいけど」
瞬きもせずにじーっと見つめて一気にまくし立てる飯田さんはちょと怖かったけど、単純なあたしはその言葉に感動してしまった。
そうだよね、言葉にしなきゃわかんないよね。
あたしが照れて言えない言葉を、きっと梨華ちゃんは待っているんだ。
でも、それが出来ないから困ってるんだよね。
あたしはもっと大人に、いや、もっと強くなりたい。
「たまには素直になりなさい」
飯田さんはふわっと笑って、あたしの頭をグシャグシャと撫でた。
- 291 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月19日(月)21時40分15秒
- おねーさん達のからかいとも言える声援を背に控え室を出て、あの場所へ。
ここのスタジオには、人があまり通らない階段がある。
そこは、あたしと梨華ちゃんの秘密の場所。
娘。に入ってすぐの頃、なかなか思うようにいかなくて落ち込んでいたあたしを梨華ちゃんが連れて来てくれた。
「落ち込んだ時は、ここで1人で泣いてるの」って言って。
それからはいつでも2人で来るようになった。
あたしが落ち込んでいるときは梨華ちゃんが、梨華ちゃんが落ち込んでいるときはあたしが慰めて。
時には叱ったり叱られたりしながら、あたしたちお互いを支え合って月日を過ごしてきた。
それだけ濃い時間を共有してきたから、自然とお互いが考えている事はわかるようになった。
そしてそれが恋に発展するのには、たいして時間はかからなかった。
だからこの場所は、あたしと梨華ちゃんの歴史を全て知っている。
- 292 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月19日(月)21時41分03秒
- 「やっぱりここだ」
一番上の段に、体を丸めるようにして小さく腰掛けている梨華ちゃんを発見。
階段の踊り場にある大きな窓からは暖かい日差しが差し込んでいる。
けれども、とても明るい場所なはずのに、梨華ちゃんの周りには真っ暗でどんよりとした空気が漂っている。
ははっ、圭ちゃんの言ったとおりだ。
でも「悲」っていうよりも、「暗」っていうテロップの方が似合いそうかも。
想像するとそれがあまりにも似合っていて、思わず口元が緩んでしまう。
さりげなく口元に手をやって押さえてみるが、なかなか顔が元に戻らない。
「なに、笑ってんのよ」
「え、笑ってないよ?」
「嘘。笑ってる」
「いや、笑ってないって」
不満げに頬を膨らましている梨華ちゃんに、精一杯真面目な顔を見せる。
それでも、梨華ちゃんはまだあたしを睨みつけている。
- 293 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月19日(月)21時42分05秒
- 「梨華ちゃんは?」
「え?」
「梨華ちゃんは、何してたの?」
「…べっつにぃ〜」
ぷいっとあたしから目を逸らす。
ははっ、かぁーわいー。
「そっかぁ、なんでもないのにここにいるなんて珍しいね。あたしには、一人でいじけているように見えるけどなぁ」
梨華ちゃんの隣に腰を降ろして、顔をのぞき込む。
梨華ちゃんは、あたしを避けるように顔を逸らすから、あたしもそれを追う。
「見ないでよ」
「いいじゃん、なんで隠すんだよぉ」
「やだぁ〜」
「逃げんなって」
避ける梨華ちゃんの両腕を掴んで、体をこちらへ引き寄せる。
その勢いで、梨華ちゃんの顔が初めてあたしの方へと向く。
膨れっ面の、不貞腐れた目。そして、少し潤んだ瞳。
- 294 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月19日(月)21時42分38秒
- 視線が合ったのもつかの間、「あっち行ってよっ」怒ったようにそう言うと、あたしの手を振り払って顔を膝に埋めてしまった。
怒らせるつもりなんて全然無かったのになぁ。
まさか、泣いてないよね?
頭を撫でようとしても、無言で手を振り払われてしまう。
本気で機嫌を損ねてしまったらしく、もうあたしが何を言っても聞いてくれない。
こうなってしまうと、ヘタレなあたしは何も出来なくなってしまう。
こういう時、かっけー大人は気の利いた事を言ったりするんだろうけど…。
- 295 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月19日(月)21時43分33秒
「もう、最近のよっすぃ〜は意地悪だよ」
沈黙をもてあまして自分の爪を何気なくいじっていると、隣で梨華ちゃんが呟いた。
顔は膝に埋めたままだけど、明らかにあたしに向けて言った言葉。
「飯田さんとかあいぼんには優しいのに、どうして私には意地悪なの?もう、わかんないよ」
今にも泣き出しそうな声。
もしかしたら、泣いているのかもしれない。
けれども、あたしからは顔が全然見えない。
ただわかっていることは、梨華ちゃんに対するあたしの態度が梨華ちゃんをすごく不安にさせているということ。
「…ごめん。でも、意地悪しているつもりはないよ。だから、こっち向いて?」
ゆっくりと梨華ちゃんの髪を撫でる。
悲しそうな梨華ちゃんを見るのは、本当に辛い。
しかもあたしのせいだなんて、胸が締め付けられるように痛い。
「嘘。さっきだって、飯田さんには優しかったもん」
そう言って、自分の足元ばっかり見て、あたしには視線を全く向けてくれない
- 296 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月19日(月)21時44分29秒
- 「あ〜、だからさぁ、いや、ほんと…ごめん。別にさぁ、飯田さんだから優しいとかじゃなくって…」
本当は、かまってほしいからつい意地悪しちゃうんだ。なんてそんなこと、恥ずかしくて言えないよなぁ。
だって、小学生みたいじゃん。
「ほら、え〜と、ね、わかんないかなぁ…」
って、わかるわけないよね?こんなんじゃ。
なんて言えばいいのかわかんなくって、頭をガシガシと掻いてみる。
でも、全然いい言葉が浮かばない。
え〜い、さっき飯田さんに言われたじゃん。「素直になりなさい」って。
「ごめんなさいっ。嘘、言いました。ホントは梨華ちゃんに意地悪してましたっっ」
わざと大げさに、頭をペコッと梨華ちゃんに向かって下げる。
そんなあたしの言葉に梨華ちゃんが反応したらしく、顔を上げた気配がする。
「どういうこと…?」
「はいっ、あたしがガキだからです。みんなの前だと照れくさくって…つい」
恥ずかしさでもう、顔が上げられない。
- 297 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月19日(月)21時45分06秒
- 「それに……」
「それに?」
「梨華ちゃん、最近大人チームとばっかりいるんだもん。特にごっちんが卒業してから。圭ちゃんと矢口さんとかとばっかりいるしさぁ…」
それに、この前だって3人で温泉とか行ってるし。
別に一緒に行きたかったわけじゃないけど、たまの休みくらい一緒に過ごしたかったよ。
ゴニョゴニョと口の中で呟く。
「いや、だからね、ってこういう事いうのマジで恥ずかしいんだけど、梨華ちゃんに構ってほしかったんだよ。もっとあたしを見てほしいっていうか…
梨華ちゃんが反応してくれることがなんだか嬉しくって」
うわぁ〜、言っちゃったよ。
もう絶対顔上げらんない。
「だから、ごめんなさいっっあたしがガキでした。こんなあたし、嫌いになった?」
恐る恐る顔をゆっくりとあげる。
恥ずかしいのもあるけど、それよりもこんなにぶっちゃけちゃって嫌いになられてないかが心配。
……呆れてるよね?かっこ悪いよね、こんなあたし。
今度はゆっくりと視線を梨華ちゃんの顔へ。
すると想像していたのとは全く違った、梨華ちゃんの表情。
- 298 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月19日(月)21時45分57秒
- 「え、あ、ちょっと、泣かないでよ。ほんっと、マジごめん」
「泣いてないよ。」
梨華ちゃんの涙を目にしてとたんに慌てだすあたしを見て、半泣き半笑いで梨華ちゃんは目じりを指で拭った。
「そんなことじゃ嫌いになんかならないし、今のはちょっと嬉しかったよ」
そう言ってもう一度微笑んだ。
あ、あたしの大好きな笑顔だ
「あの・・・さ」
「ん?」
「でも、呆れてない?」
「なにが?」
「ほら…あたしがガキだから」
ゴニョゴニョと歯切れ悪く、探るように聞く。
「あぁ…ちょっと、ね」
「マジで?」
ガックシ……。
やっぱ、あたしがガキすぎなんだよねぇ。
それに梨華ちゃん、大人チームにいるせいか最近どんどん大人っぽくなってるし。
外見だけじゃなくて、中身も。
それに引き換えあたしは……。
- 299 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月19日(月)21時46分32秒
- 「嘘」
「ほえ?」
「うっそぴょ〜ん。だから、そんなことじゃ呆れないし、嫌いになんかならないの!」
人差し指をピシッと立ててポーズをつけて、あたしの目を真っ直ぐに見つめる。
もう、どんなアイドルも絶対に勝てないようなかわいさ。
心臓がバクバクしすぎて、ヤバイかも。
反則技だよ、それ。
それなのにあたしってばやっぱり、
「うっそぴょ〜んって、寒いよ」なんて、相変わらずの憎まれ口を叩いてしまう。
梨華ちゃんもお約束の膨れっ面。
でも、目は優しく笑ってる。
「ごめん、また嘘言った。すっげーかわいいっ!!」
今度は素直になって言い直す。
ついでにギューって抱きしめて。
- 300 名前:ポー 投稿日:2003年05月19日(月)21時47分58秒
- 遅くなりましたが、更新です。
- 301 名前:ROM読者 投稿日:2003年05月20日(火)01時10分12秒
- 更新お疲れ様です。
小僧化してるよっすぃ〜が可愛いですね。嫉妬してる梨華ちゃんもこれまた
可愛い・・。また、あまり考えていなさそうで、実は的確なアドバイスをす
るリーダーも素敵です。いつもながらリアルな心模様に感服致しました。
- 302 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時43分29秒
- 「あ、そうだ」
抱きしめられながら、ふと何かを思い出した梨華ちゃん。
ゆっくりとあたしの手を解くと、急に難しい顔になった。
「さっき、矢口さんと保田さんが言ってた事、教えてよ。
なんかさぁ、わたしだけ仲間はずれって感じで気に入らないんだよね」
さっきって…ああ、あれか。
やっぱり覚えてたんだね。
さすが負けず嫌いの梨華ちゃん。って、ちょっと違うか?
「えっと、どーしても知りたい?」
「うん。どーしても知りたい」
「どーしても、どーしても知りたい?
「どーしても、どーしても知りたい」
「あたし、かっこ悪いけど知りたい?」
「かっこ悪くてもいいのっ。かわいいからいいのっ。だから教えて」
絶対意地でも聞き出そうって感じだ。
…負けました。
かっこ悪くてもいいなら、良いです。
かわいいですか?そんなことないです。
でも、そんなこと言う梨華ちゃんがかわいいから良いです。
飯田さん、吉澤は今、素直というよりもやけくそです。
- 303 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時44分34秒
- 「あの写真撮ってる時ね、梨華ちゃんが見えたから。だからあんな表情だったのっ。わかった?」
きょとーんとした梨華ちゃんの表情。
ゆっくりと首をかしげている。
頭の上には「?」って吹き出しがでていそう。
あまりにもかわいくって、顔がニヤけてしまう。
「ねえよっすぃ〜、わかんないよぉ」
ニヤけてるだけで何も言わないから答えをせかして、あたしの腕を揺さぶる。
「だからね、あの時美貴ちゃんと楽しそうに腕組んでたじゃん。だから、むかついたのっ。
しかもさぁ、美貴ちゃん勝ち誇ったような顔してあたしを見るし」
じっと見つめてくる視線が照れくさいから、そっぽを向いて視線を逸らす。
「だからだよ。スタジオ入ってか
ら一度もあたしを見てくれなかったし…」
「え〜、そうだったんだぁ。ヘヘヘヘヘッ」
こっちは照れくさくってしょうがないのに、梨華ちゃんはなぜかすっごく嬉しそう。
ごっちんばりのフニャッとした満面の笑顔。
- 304 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時45分47秒
- 「なんで笑ってんだよぉ。もういいよ、行くよ」
もう、すぐにでもこの場を離れたい。
立ち上がって、梨華ちゃんの手を取る。
梨華ちゃんは笑顔を崩さないまま、あたしの顔を見上げた。
「ねえ、よっすぃ〜?」
「ん?」
「あれね、美貴ちゃんとわざとやってたの」
「えっ、な、なんでよ?」
思いがけない梨華ちゃんの言葉。
「ん〜?えへっ」
「いや、えへっじゃなくて」
「だってさぁ〜、よっすぃ〜亜弥ちゃん抱きしめたりするんだもん。それにあいぼんとか飯田さんとばっかり遊んでるし。
だからね、ちょっと…意地悪してみたの。よっすぃ〜気づくかなって」
肩をすくめて、上目遣いであたしの顔を伺う。
「それに美貴ちゃんも、よっすぃ〜が亜弥ちゃんを抱きしめた事怒ってて…それで、ね。
2人でわざとやってたの。ごめんね」
顔の前に両手を合わせてかわいく謝る。
- 305 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時48分12秒
- ……やられた。
あたしの反応は、梨華ちゃんの計算どおりだったのか。
そんなところがまた大人な感じ?
無意識であいぼんや亜弥ちゃんと遊んでるだけのあたしとは大違いかも。
ちょっとムカつくけど、それに気づけない自分がもっと情けない。
「ん、怒ってないよ。ただ、自分に呆れてるだけ」
「まあまあ、気を落とさないで。ね?」
繋いだあたしの手をフルフルっと揺らして、笑顔で顔を覗き込む。
もしかしてあたし、慰められてる?
「梨華ちゃん、あたしいつまでたってもコドモだよね。もうちょっとオトナになるよ」
「え?」
「だってさ、いつもこんなじゃん。やきもち焼いて、でも素直になれなくて、それでいつでも梨華ちゃんに変なふうにちょっかい出して困らせて嫌な思いさせて。
梨華ちゃんはどんどん大人になるのに、あたしばっかり梨華ちゃんに甘えて。でももうすぐ離れちゃうし、このままじゃダメかなーとか思ってて。それに…」
更に言葉を続けようとした時、梨華ちゃんがスッと立ち上がった。
- 306 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時49分17秒
- 「私もそんなに大人じゃないよ。だからそんなに急いで大人にならないで。私だってやきもち焼くし、素直じゃないし」
そう言って一段上に立つと、あたしの唇にそっとキスをした。
「それにね、コドモのよっすぃ〜、かわいいから大好きだよ?」
ちょっと頬を赤らめる梨華ちゃんは、そりゃあもうかわいくって。
あたしはただ、頷くしかできなかった。
「よし、いい子」
そう言って梨華ちゃんはあたしの頭をクシャッと撫でると、階段からトンと降りた。
なんかさっきから子ども扱いされてないか?
かわいいとかいい子とか言われてるし。
イジけてる梨華ちゃんを慰めに来たはずなのに、気づいたら慰められてるし。
ああ、やっぱりあたしってまだまだ大人になれないのかな…。
- 307 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時49分49秒
- そんなことを考えながら、楽屋に戻るためにあたしの前を歩く梨華ちゃんの後姿を眺める。
「大人じゃないよ」って本人は言ってるけど、あたしと比べると随分大人だ。
たまにイジけたりはするけど立ち直りは早くなってるし、昔に比べると、気づけば梨華ちゃんよりあたしの方が甘えていることが多くなっている。
なんだか梨華ちゃんが遠くに行ってしまうような気になってくる。
あたしも早く追いつきたい。
「ねえ、よっすぃ〜?」
ふと梨華ちゃんが立ち止まって、あたしを見た。
「あんまり早く大人になっちゃうと、もったいないよ?」
階段の大きな窓から射しこむ光が、梨華ちゃんの顔を照らす。
キラキラと輝く陽の光に照らされ、最近グッと綺麗になったと評判の梨華ちゃんの顔を際立たせる。
「無理して頑張って大人にならないで。私もまだまだコドモだし、よっすぃ〜が1人で大人になっちゃったら寂しいよ。
だから、まだまだ周りにたっくさん甘えて、ゆっくり2人で大人になっていこう?」
そう言うと、ゆっくりとあたしの腕に自分の腕を絡ませた。
- 308 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時50分31秒
- 「前に中澤さんに言われたんだ。人は必ず大人になっちゃうんだから急いで大人になっちゃったらもったいないって。
大人は周りにたくさんいるんだから、もっと自由にやりなさい。
急いで大人になっても、子供でいられるときしか見れないことを見逃してしまうからって。
自然に大人になる時が来るから、その時期が来るまで焦ること無いって。それにね…」
あたしの顔を覗き込みながら、いたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「コドモなよっすぃ〜は、かわいいから好き」
う〜ん、かわいいかぁ。どっちかっていうとかっこいいの方が好きなんだけどなぁ。
それに、こんなに面と向かって言われるのってなんか恥ずかしいや。
「あ、照れてるぅ。もう、かわいいんだからぁ」
「うるさいよ。見るなよぉ」
そんなあたしをからかう梨華ちゃん。そして口ではこんな事言っても、かなり嬉しいあたし。
こんな二人の空気がくすぐったくて心地良い。
「だからね、今のままで充分大好きだよってこと。わかった?」
そう言ってあたしに向けられた梨華ちゃんの笑顔は、まるで太陽のように心地良く、あたしの心を落ち着かせるには充分の力を持っていた。
- 309 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時51分30秒
- 「ねぇ、ニヤけてないでちゃんと聞いてる?」
「ちゃんと聞いてるよ。梨華ちゃんがあたしを好きだって事でしょ」
「ちょっとぉ、ちゃんと聞いてたの?それだけじゃないでしょぉ?」
本当に大丈夫なの、この子。って顔して、梨華ちゃんは眉をひそめる。
だからぁ、そうやって反応してくれるのが嬉しいんだってば。
「ウソウソ。ちゃんとわかってるってぇ。ちょーっとボケてみただけだよ。
じゃあさ、あたしも時間が経てば、自然と大人になれるのかな?」
「そうだね〜、なりたくなくてもなっちゃうんじゃない?」
「え〜、なりなくなくてもぉ??」
「そうだねぇ〜、なりたくなくてもだね。でもね、大人になってもよっすぃ〜のことはずっとずっと大好きだよ」
ちょっと不満顔のあたしの顔を見てクスッと笑った。
- 310 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時52分34秒
あたしには、そんな時期が本当にくるのかな?
いつまで経っても大人になれない気がするよ。
あ、でもそれって、いつまでも少年の心を持ってるって事だよね?
お、良いじゃん良いじゃん。
なんかモテそうな感じだよね。
たしか、矢口さんの好みのタイプも「少年の心を持ってる人」だった気がするし。
もしかしたら梨華ちゃんの好きなタイプも同じなのかな?
ってことはよ?
あたしはこのままでいいんだ。
な〜んだ、ちょっとだけでも悩んで損したよ。
むしろ大人になんかならない方が良いんじゃないの?
- 311 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時53分31秒
- 「へへっ、梨華ちゃん」
「ん?なあに」
「ありがと」
ゆっくり腕を解くと、向かい合うように梨華ちゃんの腰に両手を廻した。
「あとね、さっき言えなかったんだけど、梨華ちゃんと娘。で離れちゃうのは本当はすっごく寂しいよ」
やっぱりこういう事言うのは照れるけど、梨華ちゃんが嬉しそうに微笑んでくれるのはもっと嬉しい。
あたしの一言で、こんなに幸せそうな顔してくれるならいくらでも言葉に出して言いたい。
やっぱり言葉って大切だね。
「梨華ちゃん、大好きだよ」
ゆっくりと唇を梨華ちゃんの唇へと近づける。
瞼を閉じて、ゆっくり、ゆっくりと…。
「あれぇ〜、梨華ちゃんとよっすぃ〜何してんのぉ?」
突然でかい声が廊下に響き渡る。
ビビったあたしは、とっさに梨華ちゃんの腰から手を解く。
梨華ちゃんもびっくりして声がした方へ振り返った。
- 312 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時54分30秒
- ―
――
―――
「梨華ちゃん大好きだよぉ〜」
「私もよ、よっすぃ〜」
「「ん〜〜〜〜」」
口をタコみたいに突き出して、キスの真似をするあいぼんとのの。
「ちょっとぉ〜、やめてってばぁ」
「いーじゃんいーじゃん、邪魔すんなよぉ。ってゆうか、梨華ちゃんウザい。見えないから、そこどいて」
顔を真っ赤にして二人を止めようとする梨華ちゃんと、面白がって2人を楽しむ矢口さん。
椅子に座って真正面からそれをじっくりと見ている飯田さんと、そんな2人がかわいくってしょうがないって顔して見ている安倍さん。
安倍さんは、「もう、ののもあいぼんもかわいーねー」って連発している。
そんなみんなを少し離れたところから見て、呆れ顔をしながらも優しく微笑んでいる圭ちゃん。
そしてあたしは…どうして良いのかわからない。
- 313 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時55分02秒
あの時、振り返るとあいぼん、のの、紺野、小川が立っていた。
あいぼんとののは、からかう材料を見つけてすっごく嬉しそうな顔して。
紺野は真っ赤な顔して口をぽかんと開けてるし、小川は目をまんまるにしていた。
あいぼんとののには前にも何度かキス現場を見られたことがあったけど、この2人は初めてだったはず(今回は未遂だったけど)
特に最近はあたしもみんなの前でイチャつくこととか少なかったし、純情な2人にはちょっと目の毒だったかも。
しかも、タンポポとプッチの後輩2人。
梨華ちゃんと2人して、「マズイ」って顔して見合わせてしまった。
その後大喜びでもうダッシュする2人を追いかけて、大人チームの楽屋へ。
ドアを開けるなり今のこんな状況。
いつまでも末っ子状態のちびっ子2人と、苦笑ぎみの小川と紺野。
その4人を探しにやってきた高橋と新垣まで来て、結局娘。全員集合。
楽屋はみんなの声で大騒ぎになっている。
それももうすぐでなくなってしまうかと思うと、ちょっと寂しい気持ちが出てきてしまう。
- 314 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時55分59秒
- でも、そんな感傷なんて吹き飛んでしまうほど、今の楽屋は超うるさい。
そしてさらに、そんなことを考える暇を与えない、あたしの今の状況。
ののとあいぼんの行動はいつものことだから良いけど、その2人を見ながらもあたしへと向けられるいくつもの意味深な視線。
無邪気さ満点の笑顔で「ゲッツ!!」のポーズをとる安倍さん。
目を細めた笑顔で、眉をぴくぴくさせてピースする矢口さん。
あたしに色っぽく投げキッスをする飯田さん。
そして……バチッとウインクしてくる圭ちゃん。
もう、全てお見通しな感じで完全に遊ばれてる。
やっぱりおねーさんたちには、かなわないや。
居たたまれなくなって梨華ちゃんに視線を向けると、梨華ちゃんはもうすっかり諦めて近くの椅子に座って事の成り行きを眺めている。
そして、自然にあたしと視線が合うと、フワッと微笑んだ。
あたしもその微笑につられて、笑みが浮かぶ。
更に梨華ちゃんは、あたしに向けられた視線の数々に気づくと少しはにかんだ表情で首をすくめた。
『ちょっと照れくさいね』
『うん』
- 315 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時57分58秒
- 「はい、そこっ。目で会話しないでくださ〜い」
あたし達の視線のやり取りに気づいた矢口さんから、すかさず突っ込みが入る。
「いいんですぅ〜。もう、邪魔しないでぇまりっぺ〜」
「うわっ、ほんとキショい。マジ、キショい」
「キショくないもん。ねぇ、よっすぃ〜?」
とても楽しそうな笑顔の梨華ちゃんがあたしに同意を求めてくる。
「ねぇ〜、梨華ちゃん。もう、矢口さんうらやましいからってそういうこと言って邪魔しないでくださいよ」
「うわっ。なによっすぃ〜まで。しかもちょっと顔赤いし」
「そぉんなこと、ないですよ」
って、そんなことあります。
いつもなら、照れ隠しで一緒になってキショイとか言ってるから。
だからちょっと恥ずかしいです。
でも、そういうのはやめようかなってちょっと思ってみたりして。
だってあたしのたったコレだけの一言なのに、梨華ちゃんってば凄く嬉しそうな顔してくれるんだもん。
- 316 名前:大人になるって? 投稿日:2003年05月27日(火)23時59分00秒
- 「あらやだ。もう、ラブラブねぇ」
「なっち、おばさんクサイよ」
顔に合わずおばちゃんっぽい手の動きをつけた安倍さんに、圭ちゃんが突っ込む。
「ひどぉーい、カオリというものがありながら〜」
椅子の上であぐらをかいた飯田さんの、超適当な野次まで飛んでくる。
あいぼんとののまで調子に乗って、「ひどぉ〜い。遊びだったのね〜」とか言ってるし。
みんな、うちらで遊んでやがる。
でも、しょうがないよね。
うちら、まだまだコドモだもん。
お姉さんたちにこうやって遊ばれているうちは、その分たくさん甘えさせてもらおうね。
だから梨華ちゃんも1人でさっさと大人にならないでね。
今はまだ、梨華ちゃんの方が少し前を歩いているけど、ゆっくりゆっくり大人への階段を一緒に登って行こう。
仕事が別々になってしまっても、いつも手を取り合ってゆっくりゆっくりと。
そうすれば、大人になるって、意外と難しいことじゃないかもしれないよ。
ね?梨華ちゃん。
〜fin〜
- 317 名前:ポー 投稿日:2003年05月28日(水)00時07分42秒
- 思っていたよりも長くなってしまいました。
終わり方、唐突でしたか?
ちょっとそれが心配です。
301>ROM読者さま。
いつもいつも、嬉しいお言葉ありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたなら、幸いです。
>小僧化してるよっすぃ〜が可愛いですね。
なんだか、よっす〜見てると小学生の男の子な感じなんですよね(w
なので、こんなになってしまいました。
いったい、何人の人に読んでもらえているのだろう?
と、疑問に思いながらも更新続けて数ヶ月…。
1人でも読者がいてくれる限り、また書きたいと思っています。
そのときは、宜しくお願いします。
- 318 名前:キュウ 投稿日:2003年05月28日(水)07時57分53秒
- はじめてのレスですが、ずっと読ませていただいてましたよー。
いやー、いいなぁ。
梨華ちゃんとよっすぃ、二人だけの間にある空気感(ていうのか?)が
すごく好きでした。
思わず応援したくなるようなカワイイ二人ですね。
次作も楽しみに待ってます。お疲れさまでした。
- 319 名前:シフォン 投稿日:2003年05月28日(水)21時34分00秒
- 今までずっとROMらせていただいておりましたが、初レスです!!
作者様の読みの鋭さには、いつも感心しておりました(素)
娘。達の楽屋って、こんな雰囲気のような気がしてなりません(笑)
なかなか素直になれないよっすぃ〜も、可愛くてとっても良かったです♪
また作者様の作品が読めるのを楽しみに待っています♪
これからも頑張って下さい☆
- 320 名前:ROM読者 投稿日:2003年05月28日(水)22時42分52秒
- 完結お疲れ様でした。この作品、実はPDAに落として暇な時に最初から何度
も読み返していました。そして読む度に、急速に変わりつつある娘。たちのそ
の時々の情景を思いだしては、時に笑い、時に涙していました。
>終わり方、唐突でしたか?
いや、私は絶妙だと思います。この時期だからこそ。あとは作者様のお陰で鍛
えられた妄想(失礼!)想像力を働かすことがきっと楽しみになってくると思
います。また作者様の作品にお目にかかれる日をお待ちしています。
- 321 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月28日(土)01時04分20秒
- ほぜん
- 322 名前:ポー 投稿日:2003年06月30日(月)23時25分17秒
- >>318 キュウさま。
初レス、ありがとうございます。
これからも、そんな空気感を大切にしたいと思ってます。
>>319 シフォンさま
初レス、ありがとうございます。
いやいや、そんなに褒めないでください。調子に乗っちゃいますので(w
>>320 ROM読者さま。
そ、そんなPDAにまで落として読んでもらえてたんですかっ!!
嬉しいと同時に、ちょっとお恥ずかしいです…。
その後、妄想力は発揮できましたか?(w
皆さん、感想ありがとうございます。
こんなに褒めていただけるなんて思ってなかったです。
これからも宜しくご贔屓に(w
- 323 名前:彼女のいない午後 投稿日:2003年06月30日(月)23時30分58秒
- 「うぉ〜〜〜〜」
ドサッと誰も座っていないソファに寝転がる。
体を横向きにして、入りきらない足を横に投げ出す。
最近、なんだか自分でもよくわからない。
情緒不安定とでもいうのだろうか。
忙しくて、時間に追われて。
ミュージカルと平行して、シャッフル、娘。本体の新曲レコーディング。
PV撮影に、レギュラー番組の収録。
何も考えないで物事をこなしてしまっていて、
それじゃいけないんじゃないかって思ってたりするけど、
結局それも、忙しさに追われて考えることも出来ず。
気づくと一週間、一ヶ月があっという間に過ぎてしまって。
まわりの時間に、自分の頭の中の時間の流れがついていけなくなって、オーバーヒート気味。
だからこうして、遊んでいるわけでもないのに1人で大声を出してみたりしたくなる。
- 324 名前:彼女のいない午後 投稿日:2003年06月30日(月)23時32分07秒
- 「おっきな声出して、どうしたぁ?」
あたしの声に反応して、クスクスっと笑って安倍さんがあたしの顔を覗き込んだ。
顔をあたしと同じように横向きにして、ふわっと笑ったその笑顔は、まるで太陽のように明るい笑顔。
窓から射す陽の光が安倍さんの顔に当たってキラキラと輝いていて、
それは無条件に誰でも優しく受け入れてくれるような安心感を与えてくれる。
「あ〜…安倍さぁ〜ん」
そんな安心感からか、少し甘えた声が出てしまった。
ちょっと恥ずかしい…。
「どしたぁ、何かあった?なっちで良ければ聞くけど?」
そう言って、あたしの少し長くなって目にかかった前髪を払ってくれるその笑顔に、
さっきまでの尖った心の角が、少し削れた気がした。
「よっすぃ〜??」
「ん〜〜、なんでもないです。なんか、ちょっと疲れただけですから」
目を細めて心配そうな顔してくれている安倍さんに笑顔で返す。
- 325 名前:彼女のいない午後 投稿日:2003年06月30日(月)23時32分59秒
- 安倍さんの笑顔見たら、落ち着きました。
なんて恥ずかしいことは絶対言えない。
時々突然人に甘えたくなることってあったりするでしょ?
今がそれ。
疲れたときほど、人に甘えたくなる。
本当なら梨華ちゃんに甘えたいところなんだけど、あいにく今はここにいなくって。
でも、そんなあたしを受け止めてくれる、優しい先輩ならここにいる。
だから言葉には出せないけど、思いっきり甘えてみるのも悪くない。
今日は新曲のPV撮影の日で、梨華ちゃんは現在撮影中。
そして今は出番がない飯田さん、安倍さん、あいぼん、のの、あたしは楽屋待機中。
他にも出番が無い子もいるはずだけど、どこかに行ってるみたいだし、
新メンはスタジオで、他の人の撮影を見学するように言われてるはず。
たった5人しか楽屋にいないから、いつもより静かで時間がゆっくり流れているような気がしてくる。
それに、後輩がいないからその場を盛り上げるといった気も使わなくて良い。
暖かい日差しと、やわらかいソファ。
そして、与えられた安心感。
ほどよく訪れた眠気が、疲れた頭に侵食してくる。
- 326 名前:彼女のいない午後 投稿日:2003年06月30日(月)23時35分29秒
「よっすぃ〜〜」
「ぐぁっっ」
甘えた声と同時に、あたしの上にあいぼんが全体重をかけてドサッと乗っかってきた。
構える間もなく来たもんだから、思わず変な声が出てしまう。
「おわぁっ、変な声」
「もう、あいぼんがいきなり乗っかってくるからでしょ」
「うひひひひっ」
この、甘えん坊いたずらっ子は…。
こんなかわいい笑顔を見せられちゃうと、怒る気にもなれないじゃないか。
普通、眠りかけている時にいきなり飛び乗ってきたら驚くでしょ?
そして、怒るでしょ?
でも、許す。
かわいいから、許す。
矢口さんだったら許してくれないよ?
普通に怒られるからね。
あたしだから許してあげるんだからね。
まあ、あいぼんはそういうの全てわかってやってるんだろうけどさ。
- 327 名前:彼女のいない午後 投稿日:2003年06月30日(月)23時36分12秒
- 「よっすぃ〜、寝ちゃうの?遊ぼうよ〜」
あたしの上に乗っかったまま、あたしの頬を摘んでフニフニといじる。
高校生とは思えないくらい、無邪気な姿。
「う〜ん…眠いからやだ。あいぼんも寝ようよ」
「え〜〜」
不満げな声を無視して、少し奥につめてあいぼんが入れるスペースをつくる。
ポンポンとそこを叩いてあたしから降りるように促すと、
「しょうがないなぁ。一緒に寝てやるか」と憎まれ口を叩きながらも素直にそこに入ってくる。
もう、素直じゃないんだから。
「うわっ、落ちるって。よっすぃ〜、もっと詰めてよ」
「え〜、じゃあこれでいい?」
もっと奥に詰めてもダメなので、ソファから落ちそうになるあいぼんの腰に手を廻して支えてあげる。
あいぼんもあたしの体に腕を廻して、落ちないようにしがみつく。
なんかこの感覚が、ぬいぐるみを抱いてるみたいで気持ちいい。
その気持ち良さから、再び程よい眠気がやってきた。
- 328 名前:彼女のいない午後 投稿日:2003年06月30日(月)23時36分57秒
- 「ねぇ、ホントに寝ちゃうのぉ?」
「うん…」
「こら、起きないとチューしちゃうぞ」
「うん…」
だんだんと眠りにつき始めているあたしに、不満げなあいぼん。
あたしの首に腕を廻すと唇にチュっとキスしてきた。
でも、そんなので目が覚めるわけがない。
だって、もう慣れっこになってるんだから。
これが梨華ちゃんのキスだったりしたら、いっきに目が覚めるんだけど。
ギュッとあいぼんを抱いたまま、ゆっくりゆっくりと眠りに落ちる。
眠ってはいるけど、なんとなく意識が残ってしまう浅い眠り。
あいぼんがもぞもぞと動いているのがなんとなく判る。
始めは眠りにつき始めたあたしを起こそうと悪戯していたあいぼんも、次第に動かなくなってきて寝息を立て始めた。
そしてあたしも、深い眠りに落ちていった。
- 329 名前:彼女のいない午後 投稿日:2003年06月30日(月)23時38分02秒
- ―
――
――――
―――――
「…っすぃ〜、よっすぃ〜」
ポンポンポンと頭を軽く叩かれて、目が覚めた。
うっすらと瞼を開くと、飯田さんが微笑んでいる。
「うぁ、おぁようございますぅ」
「おはよ。よく寝てたねぇ、あいぼんもグッスリだね」
「ん?あぁ…」
道理で首が重いと思ったら、あいぼんがしがみついたままだ。
ギュッとあたしの首にしがみついて、顔を埋めている。
しかも起きる気配なんか全く無い。
「そろそろ準備した方が良いから、あいぼんも起こしてあげて」
「ぅあ〜い」
あいぼんが落っこちないように腰を片手で支えながら、もう片方の手で頭を軽く揺らす。
「あいぼ〜ん、起きろよぉ〜」
「……」
「あ〜いぼ〜ん」
2度目の呼びかけで目を覚ましたお姫様は、目をうっすらと開けるとフニ〜って笑った。
そしてそのままあたしの首にギューッとしがみついた。
- 330 名前:彼女のいない午後 投稿日:2003年06月30日(月)23時38分40秒
- 「あいぼん、苦しいから…」
「エヘヘへっ」
甘えた笑顔を見せて、あたしの頬におはようのキス。
まったく、いつまでも甘えん坊なんだから。
でも、この笑顔に癒されちゃったりしてるんだよね。
さっきまでのもやもやした気持ちなんてすっとんじゃってるし。
もちろん、あいぼんだけじゃない。
安倍さんの笑顔。
飯田さんの微笑。
安倍さんと飯田さんの2人に挟まれて笑っているのの。
そして、暖かい午後の日差し。
全ての要素があたしを癒してくれる。
こういう時に、素敵な仲間に出会えて良かったなって思える。
すごく単純なことなんだけど、それって大切なことで。
恋人や家族以外の前で、こんなに安心して無防備になれることって案外無いし。
あたしとあいぼんのやり取りを、温かい目で見守ってくれている飯田さん・安倍さん・のの。
寝起きのあたしとあいぼんを見ては、クスクスと笑っている。
そんな、仲間と過ごす午後のひととき。
彼女と過ごす時間とは違った、安らぎの時間。
――これも、あたしの大切な時間。
- 331 名前:彼女のいない午後 投稿日:2003年06月30日(月)23時39分29秒
この時、後々あたしに災難が降りかかるなんて微塵も考えていなかった。
安心して、無防備になりすぎたことが原因で…。
でも、それはまた別のお話ってことで。
fin
- 332 名前:ポー 投稿日:2003年06月30日(月)23時49分00秒
- はぅっ、すみませんっ。
ごめんなさいっ。
メンバーと過ごすよっすぃ〜が書きたかっただけなんです。
……どうでしょうかねぇ?
実は後日談っぽいのも、書きかけたんですけど…。
なんかいつもと同じパターンに陥りそうなので、やめちゃいました。
お手すきの方は、感想などお願いします。
- 333 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月01日(火)21時58分39秒
- ニヤリ!・・やっぱり、あの写真を見ちゃったら萌えますよね。
相変わらず、「どこで見てたの?」と小1時間問い詰めたくなる
ほどの見事な情景描写に脱帽です。
>その後、妄想力は発揮できましたか?(w
はい、ここまでは。でも、この後の誰かさんが起こす災難・・(略
まだまだ作者さまの足元にも及びません。
後日談(やきもち編)も是非!御願い致します。
- 334 名前:キュウ 投稿日:2003年07月02日(水)01時29分38秒
- 後日談希望する人、手上げて〜♪
ノ ハーイ!
というわけで…ぜひぜひ後日談を続けていただけたらな、と。
穏やかな午後のお昼寝タイム、幸せな気持ちになれました。
- 335 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月08日(火)23時05分42秒
「おはよーございまぁーっす」
いつものように、元気良く明治座の楽屋に到着。
まだ時間が早いせいか、メンバーは誰も来ていない。
「い〜ちばん乗り〜。イェ〜イ」
こういうのってなんだか嬉しい。
今日は良いことあるかも。
荷物を自分の鏡台の前に置いて、MDウォークマンだけ取り出して部屋の中央に置かれたテーブルの前に座る。
テーブルの上には、スタッフが用意した雑誌やお菓子、飲み物が置かれていて、
今日発売らしいテレビ番組の情報誌も何冊かある。
それらには手を出さず、ウォークマンのイヤフォンを耳に挿して寝っ転がる。
こういう空いた時間に聞いておかないと、新曲なんて覚える暇が無い。
足でリズムを取りながら、流れてくる音楽に合わせて口ずさむ。
広々とした楽屋に、自分ひとり。
ウォークマンからの音楽と、あたしの声だけが響く。
せっかく広いスペースを独り占めできるんだから、足も手ものびのびと広げる。
う〜ん…気持ちよすぎて眠くなってきた。
- 336 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月08日(火)23時06分40秒
- ―――
――
―
ウキャキャキャッ
ガシャガシャ
ベリベリッ
「あ、踏んじゃった」
いろんな声や音とともに、誰かがあたしの足を踏んずけた。
「いってぇ〜」
「あ、ごめんなさいっ」
ガバッと起き上がると、目の前にはあたしを踏んずけて申し訳なさそうにしている紺野。
その隣には、何故か不機嫌そうな梨華ちゃん。
腰に手を当てて、あたしを一瞥すると一言、
「紺野、謝ることないよ。そんなとこで寝てるよっすぃ〜が悪いんだから」
どうやらあの後、寝てしまったらしい。
MDはすっかり止まっていて、周りには全員揃ったらしいメンバーが所狭しと動き回っている。
「ごめんなさい、痛かったですよね?本当にごめんなさいっ」
「あ、いや、大丈夫だから」
いきなり起こされてこの状況に頭がついていけずにいるあたしに、必死で謝る紺野。
大丈夫って言っても、まだまだ心配そうな顔。
「ほんと、大丈夫。こんなトコで寝てたあたしが悪いんだし」
「そうそう、どこでも寝ちゃうよっすぃ〜が悪いんだよ」
あたしの言葉の後に、再び梨華ちゃんの棘のある言葉。
そして、そんな梨華ちゃんを見て苦笑気味の紺野。
- 337 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月08日(火)23時07分12秒
- ねえねえ、あたし何かした?
寝てる間に何かしちゃったの?
探るように梨華ちゃんを見ると、目すら合わせてくれない。
仕方ないので今度は紺野を見ると、「吉澤さんが悪いんですよ」とでも言いたそうな顔。
でも、身に覚えは全くない。
なんでだろう?
あたし、何かしたっけ??
天井の一点をを見つめながら、最近の自分の行動を振り返る。
ミュージカルの本番中、演技にまぎれて手を握った。
その時は、嫌そうじゃなかった。
だから、毎日こっそりと手を握っている。
番組収録中、視線が合った。
いつもの柔らかい微笑を向けてくれた。
言葉はないけど、それだけで通じ合えているような柔らかな空気。
そして昨日の夜、電話で話した時はいつもと変わりはなかったはず。
ってことは、今日?
でもあたし、今日はさっきまで寝てて誰とも会ってないし、梨華ちゃんとも話してない。
- 338 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月08日(火)23時08分04秒
- 「えっと、あの、梨華ちゃん?」
「……」
「怒ってるの?」
「知らないっ。自分で考えれば?」
プイッと顔を逸らして「行こっ」って紺野の腕を掴んだ。
紺野は小さくあたしに「ごめんなさい」って言うと、引きずられるようにして鏡台の方へと連れて行かれた。
知らないって言われても、あたしのほうが知らないよぉ〜。
自分で考えるって、何を考えればいいんだよぉ。
なんだよ、なんでなんだぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!
- 339 名前:ポー 投稿日:2003年07月08日(火)23時16分48秒
- 後日談、リクエストありがとうございました。
ほんの少しですが、upしました。
>>333 ROM読者さま。
あの写真はきますねぇ。ニヤリ
>>334 キュウさま。
幸せになってもらえたのなら、自分も幸せです。
とっても嬉しいです。
ご期待にお応え出来たかどうかが不安です…。
- 340 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月09日(水)02時11分42秒
- なはは。よっすぃ〜の叫び声が聞こえてきそう。
>ご期待にお応え出来たかどうかが不安です…。
めっちゃ期待通りで、よっすぃ〜には悪いけど・・かなり面白いです。
巻き添えを食ってる紺ちゃんも想像できて笑えますね。でもこんなとき
の梨華ちゃんってホント恐そう。
続きが楽しみです。
- 341 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月13日(日)22時32分56秒
- いいなぁ…あったかくなる。
そういえばあの写真一番最初見たとき、ヤグチとあいぼんだと思ったのは自分だけですか?
普通に起きてる時は似てないけど、寝顔は似てるんだなぁ…
- 342 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月16日(水)00時43分15秒
- 周りのメンバーを見回すと、みんなニヤニヤしながらもあたしから目を逸らす。
ポツーンと1人取り残された気分。
なぁ〜んか寂しいかも。
そうだ、こういう時、あの2人なら何か教えてくれるはず。
そう思ってもう一度楽屋を見回すと、
――いた。
その2人は体をくっつけて、コショコショとこっちを見ては笑っている。
どう考えても、あれは何かを知っている様子だ。
「辻ちゃぁ〜ん、あいぼぉ〜ん、カモォ〜ン」
手のひらを上に向けて、二人に向かって手招きする。
呼ばれた二人は、クスクスと笑いながら素直にあたしの方へと寄ってきた。
「ねーねー、よっすぃ〜、コレ見た?」
あたしが喋りだす前に、ののが待ってましたとばかりにテーブルの上にあった雑誌をペラペラとめくり始めた。
「あれ?あ、ここじゃない。あれ?ないぞ??」
「あ〜、ダメだよのの。そんなふうにめくったらグチャグチャになっちゃうよ。もっと前だってぇ」
「いいのぉ〜。ののが探すから、あいぼんは手ぇ出さないで」
何度も何度もページをめくるののに、あいぼんが横から手を出す。
そのあいぼんに手を出されないように、胡坐をかいた足の上に雑誌を乗せて抱え込むのの。
- 343 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月16日(水)00時44分38秒
- 「じゃ、いいも〜んだ」
あいぼんも諦めたのか、携帯を開いて操作し始めた。
完全に質問するタイミングを逃したあたしは、ひとり待ちぼうけ。
はぁ〜、誰でも良いから教えてくれないかなぁ…。
――ポンポン。
座ったまま肩を落としたあたしの背中を、無言であいぼんが軽く叩いた。
「ん?なに?」
「ジャ〜ン!!」
振り返ると目の前に突き出された携帯電話。
よーく見てみると…
「あ゛〜、なんだよこれぇぇ〜〜〜!!!」
「撮られちゃった。エヘッ」
それはこの前、あたしとあいぼんがソファでギュッとして昼寝していた時の写真。
それを待ち受け画面にして、フニャッと笑顔のあいぼん。
って、エヘッじゃねえよっ。
なんで待ち受けになんかしてんだよ。
も、もしかしてその写真、他のメンバーにも送られてきてるとか?
それでもって、梨華ちゃんにも送られてるとか?
ハッ、まさかそれで怒ってる…?
- 344 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月16日(水)00時45分41秒
- 「よっすぃ〜も欲しい?送ろうか?」
呆然としているあたしをよそに、再び携帯を操作し始めるあいぼん。
「…あ、いや、いらないから。って言うか、誰から送られてきたの?」
「まあまあ、いいじゃん」
「よくないっ」
「いーからいーから。ほいっと。よっすぃ〜の携帯に送ったよ」
あたしの質問になんか全く無視したあいぼんは、ピッと携帯のキーを押すと顔を上げてもう一度笑った。
「あったぁ〜。見てみて、よっすぃ〜」
今度はののがあたしの背中を叩く。
嬉しそうにはしゃいだ声で、バチバチとあたしの背中を平手打ち。
はいはいはいはい、今度は何ですか。
もうこれ以上驚くことはないよね。
振り返ったあたしは唖然とした。
だって、だって、ののが開いて見せたその雑誌には、
携帯よりもはるかに鮮明に写った、同じシチュエーションの写真が2枚も載っていたから。
「マジ……勘弁」
気持ち良さそうにあいぼんを抱きしめて眠っているあたし。
それがこんなに大きく載ってしまうなんて。
コレ、だったのかぁ。
怒るよね、当然。
あ〜、どうしよう……。
- 345 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月16日(水)00時46分26秒
- この場所から見える梨華ちゃんは、背中だけ。
鏡に向かっている後ろ姿だけを見ても、明らかに機嫌悪そう。
隣に座らされている紺野がかわいそうに見えてくる。
きっと、あたしが寝てる周りで、みんなでこの雑誌を見ていたに違いない。
その時の、次第に機嫌が悪くなっていく梨華ちゃんの表情は簡単に想像できる。
更には写真メールまで出回っていたら……怒るよねぇ。
途方にくれて梨華ちゃんの背中を見ていると、梨華ちゃんの前の鏡越しにチラッと視線が合った。
「……っ!!」
一瞬背筋に悪寒が走る。
やばい、あたし殺されるかも…。
そう思ってしまうくらい、鋭い梨華ちゃんの視線。
視線が合ったのはほんの一瞬だったのに、梨華ちゃんの怒りがグサッとあたしに突き刺さった。
「あれれぇ?ねえあいぼん、よっすぃ固まっちゃったよ?」
「よっすぃ〜、どないしたん?おぉ〜い」
あたしの腕を両方から掴んでぐらんぐらんと揺らす、あいぼんとのの。
それでもあたしの体は強張ったまま動くことが出来ない。
頭から運動命令が出てるはずなのに、それが体に伝わらない。
「よっすぃ〜、動かないとチューしちゃうぞ?」
「しちゃうぞ?」
「「ん〜〜〜〜」」
- 346 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月16日(水)00時48分29秒
- 「うわぁぁぁぁ!!」
両側からあたしの頬にキスしようと、唇を突き出してくる二人を慌てて避ける。
強張っていた体が、今度はすんなりと動いた。
セーッフ!!
いくら二人がふざけてやっているのがわかっていても、これ以上梨華ちゃんの神経を逆撫でするわけにはいかない。
「あっぶないなぁ〜。ほんっと勘弁してよ」
「「えへっ」」
「えへっ、じゃないっつーの!」
全然悪びれることなく、肩をすくめる辻加護。
むしろこの状況を楽しんでいる節さえある。
この二人にとって、あたしは最高の遊び道具なのかもしれない。
そんな事を考えていると、辻加護の後ろをコソコソと動いている二つの影が映った。
「飯田さんっ、安倍さんっ!!」
まさに今楽屋から出ようとした二人は、あたしの声を聞くとビクッと体を揺らしてゆっくりとこちらに振り返った。
「な、なに?どうしたの、よっすぃ〜?なっち達ちょっとトイレ行くんだけと」
「そ、そうなの。ごめん、後にしてっ」
不必要なほど思いっきり笑顔の安倍さんと、視点が定まらない飯田さん。
明らかに挙動不審。
- 347 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月16日(水)00時50分07秒
- 「ちょぉ〜っと、いいっすかぁ?」
二人の言葉を無視して立ち上がると、二人に向かってゆっくりと歩を進める。
わざと笑みを浮かべてあたしが近づいていくと、安倍さんは飯田さんの後ろにコソッと隠れた。
きっと今、あたし、すっげー怖い目してると思うんだよね。
でも、今回ばっかりはちょっと許せませんね。
だって、あの雑誌に写真載せた張本人達なんだから。
しかも、あたしとあいぼんの寝顔と一緒に、ポーズまでつけて写真撮ってたし。
この罪は重いっすよ。
「ちっ、違うのっ。二人がとーってもかわいかったからつい…ね、カオリ?」
飯田さんの後ろから顔だけ出して言い訳する安倍さん。
ちっちゃい子が言い訳してるみたいで、ちょっとかわいい。
そんな姿を見せられると、許してあげようかなとか思ってしまう。
でも、見上げるようにして同意を求められた飯田さんは、何故か自信満々で自分を正当化。
「そうだよっ。だってね、あんなかわいい顔してたらつい撮っちゃうでしょ。ほら、カオたち悪くない」
やっぱり、許すのやーめた。
だってムカつくんだもん。
- 348 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月16日(水)00時51分42秒
- 「うぉっ、あたしが悪いんですかぁ?普通、こういうの載せるよとか言ってくれるでしょう」
「え〜、いいじゃん、そんなの。カオ、リーダーだしぃ」
「そうそう、それにいつもアレに載せる分は許可とかとってないっしょ?」
…なんて人たちだ。
確かにあんなとこであいぼん抱いて寝てたあたしは悪いかもしれないけど、
それを勝手に雑誌に載せて謝りもしないなんて。
しかも、リーダーなんていう権力まで振りかざして。
「じゃあ、あたしが飯田さんのあんなことやこんなことしてるトコを盗撮しても良いって事ですか?」
「それは違うよ。あれは盗撮じゃないもん。内緒で撮っただけだもん。
それに、よっすぃ〜はカオと違ってリーダーじゃないし」
「くっ…」
さらに権力を振りかざす、リーダー飯田圭織。
仁王立ちして腰に手を当て斜に構えた姿は、
後ろに『何か文句でもある?』という文字をどーんと背負っているようにさえ見える。
リーダーになると、みんなこうなっちゃうのかなぁ?
その後ろで「そうそう」って頷いている安倍さんは、半年後にはあたしのリーダー。
リーダーになった後の安倍さんは、どうなっちゃうんだろう…。
- 349 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月16日(水)00時54分23秒
- はぁ…とっても疲れてきた。
今朝来た時はご機嫌だったのになぁ、あたし。
あれは幻だったのかなぁ。
「まままままぁ、載っちゃったもんはしょーがないじゃん。ね、よっすぃ〜、許してあげなよ。
ほら、カオリとなっちも謝りな」
そう言って、三人の間に仲裁に入ってきたのは矢口さん。
あたしと飯田さんの間に入って、見上げるようにあたし達の間をキョロキョロと顔を動かす。
「あはっ、矢口、虫になってるよぉ」
この状況の当事者のはずなのに、安倍さんはのん気な声を出して笑った。
それはまったく自分は関係ないよと言っているような、無邪気な笑顔。
「こらっ、なっちもそんな事言ってないで謝るのっ」
「う…ごめんよ、よしこ」
矢口さんに怒られて、シュンとする安倍さん。
- 350 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月16日(水)00時55分09秒
- 矢口さんはその姿を見てうんうんって頷くと、今度は飯田さんを見上げて、
「カオリは?」
「えぇ〜、だってカオ悪くないもん。すっごいすっごいかわいかったんだよ?
カオも一緒にお昼寝したかったくらいだもん」
「はいはい。それはわかるけどぉ、よっすぃ〜迷惑してるんだから、それは謝らないとダメだよ」
全く反省してない飯田さんには呆れるけど、この光景はちょっと面白い。
ちっちゃな子に叱られてるおっきな子の図。
口を尖らせて「ごめんなさい」なんて言われたら、何にも言えなくなっちゃうよ。
「よっすぃ〜も、ニヤけてないで何とか言ったら?どうするの??」
「あ、え〜と…」
「ほら、早く言いなって。あ〜もうっ、二人とも謝ってんだから何か言いなよ」
「まあまあ、矢口。落ち着きなって」
歯切れの悪いあたしにイラつく矢口さんをなだめている安倍さん。
矢口さんの肩に手を置いて、あたしにむかって「どした?」って笑顔を向けてくる。
- 351 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年07月16日(水)00時56分56秒
- 「あの、もういいです。…すみません」
って、なんであたしが謝ってるんだよっ。
何かおかしくないか??
だってこれじゃあ、あたしが怒られてるみたいじゃん。
思わず最後に付け足してしまった「すみません」の一言があたしを後悔させる。
「ほらね、カオ悪くないじゃん」
「よっすぃ〜も反省してることだし、ね、矢口?」
「じゃあ、いっか。よっすぃ〜、もっとはっきり言いなさい、はっきりと」
大きく胸を張る飯田さんに、矢口さんをなだめる安倍さん。
そして、許してやるよと言う感じで満足気に戻っていく矢口さん。
絶対何か間違っている…。
だって、矢口さんは仲裁に入ってきたんだよね?
なんであたしが怒られるの?
あたし、悪くないのに…。
それに、この二人、やっぱり反省してないし。
けど、もうこれ以上は何も言う気になれない。
あ〜、あたしってば、つくづくこの先輩たちに弱いんだなぁ……。
- 352 名前:ポー 投稿日:2003年07月16日(水)01時03分54秒
- 今回分、更新終了です。
>>340 ROM読者さま。
>でもこんなときの梨華ちゃんってホント恐そう。
そうですよねぇ。そんな感じ、ちゃんと出てますか?
自分の想像では、確実によっすぃ〜は梨華ちゃんの尻に敷かれてるはず(w
>>341 名無し読者さま。
自分は、よっすぃ〜と辻ちゃんだと思ってました(照
- 353 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月16日(水)03時01分14秒
- 更新お疲れ様です。
辻加護に勝るとも劣らない道産子1期コンビのお茶目っ振りが笑えます。
メンバーの個性が見事に表現されていて、これが娘。の日常なのかなっ
て思えます。
例の企画が始まってから何気にあの雑誌を毎週買うようになってしまい
気が付いたら部屋の隅に山積みになってます。
- 354 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月02日(土)00時07分57秒
- □□□
「はい、じゃあ10分休憩とって」
あ〜、だめだ。
寝不足のままダンスレッスンなんかしたもんだから、頭がクラクラする。
やっと与えられた休憩時間は、たったの10分。
その貴重な時間は…寝ることにしよう。
昨日は2回公演だったから、いつもなら帰ってすぐ爆睡なんだけど、全く寝付けなかった。
歌って踊って汗だくになって、2回公演の日は起きていられないくらい体力が消耗する。
なのに、結局気づいたら朝になっていた。
原因はわかっている。
梨華ちゃんだ。
昨日はあの後、先輩3人の相手をしているうちに本番は始まってしまい、
梨華ちゃんには話をきいてもらえなかった。
さらに、視線すら合わせてもらえなかった。
お芝居の最中の視線を合わせる場面でも微妙にずらされるし、
いつもなら手を握るところでもさりげなく逃げられた。
2部のライブでも、一度も目が合わない。
それが、2回公演分。
そんな状態だから、電話にはもちろん出てもらえなかったし、メールの返事も返ってこない。
精神的にも体力的にも、ぐったり。
なのに、もしかしたら返事が返ってくるかもって、携帯が気になって眠れずに朝を迎えてしまった。
- 355 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月02日(土)00時09分59秒
- 「あれ?柴っちゃん、なんでここにいるの?」
「ちょっとなにそれぇ、私も11waterなんですけどぉ。
それって私が存在感ないとでも言いたいの?感じわるぅ〜い」
柴っちゃんはそう言って、わざと頬を膨らましてそっぽを向いた。
そうだった。
今の今までやっていたダンスレッスンは、いつもの娘。のではなくてシャッフルのだったんだ。
ほんのちょっと前のことだったのに…。
やっぱりボーっとしすぎだ、あたし。
「いや、そういうんじゃなくってぇ、シャッフルやっていたの忘れてたから」
「ほんとにぃ?」
「うん、本当に。マジで」
「ふぅ〜ん…」
「な、なによ」
「べっつにぃ〜」
慌てて弁解するもんだから余計に怪しいのはわかるんだけど、でもやっぱり焦って弁解してしまうのは何でだろう?
まだ何か言いたげに、あたしの顔をジーッと見つめる柴っちゃんの視線が痛い。
「どぉ〜せ、梨華ちゃんの事でも考えてたんでしょ。
見たよぉ〜、あいぼんギュッとして寝てる写真」
- 356 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月02日(土)00時10分57秒
- ああ、またその話ですか…。
今日は朝からみんな、その話ばっかり。
あたしの顔見ては、ニヤニヤして「浮気モノ」って。
どうせ、柴っちゃんもそう言いたいんでしょ?
諦めておとなしく柴っちゃんの言葉を待っていると、
柴っちゃんは少し眉をひそめた。
「あのさぁ、昨日の夜梨華ちゃん電話してきて超メイワクだったんだけど」
「はぁ、すみません。ご迷惑かけます」
わざとらしく大げさに言う柴っちゃんとに、大きな身振りで頭を下げるあたし。
これはあたしと柴っちゃんとのお約束の会話。
梨華ちゃんの一番の相談相手だから、
あたしが何かしでかした時には必ず梨華ちゃんの終わりの無いグチを聞かされてしまっている。
だから、本当に柴っちゃんには頭が上がらない。
あたしがどれだけヘタレなのかとか、
あたしの事を梨華ちゃんの次によく知っている人はきっと柴っちゃんに違いない。
「ねえ、聞いてる? 夜中の2時までだよ?しかも、ずーっとひとりでいじけ話。
わたしも今日ダンスレッスンがあるっつうのに。
ふぁ〜ぁ、おかげで私も寝不足だよぉ」
アイドルとは思えないほど大きな欠伸とともに、両腕を大きく伸ばして体をのけぞらせた。
- 357 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月02日(土)00時11分48秒
- 「しかもだよ?相談聞いててあげてるのに、
今度は『よっすぃ〜と一緒のユニットなんてずるいぃ〜』って八つ当たりしてきてさ」
「あ〜、ほんとごめんなさい。いつもいつも…。
なんかぁ、電話してもメールしても返事なくって。今日も話せてないんだよねぇ」
「それはだめだよぉ。あのさぁ、キミは何年梨華ちゃんと付き合ってんのかねぇ?
話さない時間が長ければ長いほど、梨華ちゃんはどんどん凹んでいくんだよ?
それでどんどん変なこと考え始めちゃうんだから。
前だって、それでよっすぃ〜と別れるとか言い出したじゃん」
…そうだった。
あれは付き合いだしてすぐの頃、あたしとごっちんの仲が良すぎてケンカになったことがある。
- 358 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月02日(土)00時14分00秒
- あの頃のごっちんは、市井さんが卒業してすぐで娘。の中でも孤立しつつあった。
もともと同期のいないごっちんにとって、市井さんはかけがえのない人だったんだろう。
だからあたしは友達として、一緒にいてあげたかった。
でもそれは梨華ちゃんには伝わらず、梨華ちゃんはひとりどんどん悪い方へと考えてしまっていたらしい。
あたしの言葉が足りないばっかりに…。
そして、だんだんとあたしと梨華ちゃんの会話がなくなっていった。
あの頃の梨華ちゃんは、今よりもずーっとずーっとネガティブで、へこみやすかった。
だから余計にあたしとごっちんの関係を、友達以上に考えてしまっていたのだろう。
あたしたちは今よりもずっと子供だったし、まだまだお互いのことがわかっていなかった。
お互いを独占したいという気持ちも強かったし、お互いを信じる自信もなかった。
まあ、今でもそのへんは成長できてないのかもしれないけど…。
- 359 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月02日(土)00時15分31秒
- あとから聞いた話では、あの時本気で別れを考えていたらしい。
その時の事を思い出しながら、梨華ちゃんはうっすらと涙を浮かべていた。
この時柴っちゃんが梨華ちゃんの相談に乗ってくれていたから、
あたしたちは今も続いているのかもしれない。
「まあ、今はそこまで思いつめたりはしないだろうけどね。
あれから一応、ポジティブになってきたし。
でも、レッスン終わったらちゃんと梨華ちゃん捕まえるんだよ」
そう言って柴っちゃんはあたしの肩をポンと軽く叩くと、村田さん達の方へと行ってしまった。
メロンさんたちの中にいる時は末っ子のように甘えてる柴っちゃんだけど、
あたしたちにとっては素敵なお姉さん。
柴っちゃん、ありがとね。
柴っちゃんは梨華ちゃんにとって、
うちのメンバーにできないことを相談できる唯一の人なんだろうね。
ちょっと妬けるけど、柴っちゃんがいてくれて嬉しいよ。
村田さんたちの中でふざけている柴っちゃんの背中を見ながら、
あたしは心の中で感謝した。
- 360 名前:ポー 投稿日:2003年08月02日(土)00時17分20秒
- 前回より2週間経っての更新です。
定期的に更新したかったんですけど…ねぇ。
- 361 名前:ポー 投稿日:2003年08月02日(土)00時27分46秒
- >>353 ROM読者さま。
あの雑誌、いろんな事情で(っていうか、貧乏なので)ほとんど立ち読みです。
ただ、あいぼん&よっすぃ〜写真のは買ってしまいました(w
「乙女の悩み」のときは、ごっちんと圭ちゃん。
そして今回は、なっちの卒業発表。
更新途中でそんな発表があると、特に寂しくなってしまいます。
最近特に、なっちの魅力にはまりつつあっただけに、残念です。
でもでもめげずに、次は一週間以内に更新します。
- 362 名前:ROM読者 投稿日:2003年08月02日(土)18時26分06秒
- 更新乙です。
柴ちゃんのアドバイス、いい感じですね。さて・・どーするよっすぃ〜。
>定期的に更新したかったんですけど…ねぇ。
無理はしないでください。いいペースだと思いますよ?
>そして今回は、なっちの卒業発表。
27日の代々木昼公演の爆弾発表・・スタンド席で聞いてました。(T^T)
ある程度は予測していた事ではあるし、引退するわけじゃないし、なっち
のことは、これからも変わらず応援していくつもりですが、ただ、発表後
何事も無かったかのようにステ−ジに立つ圭織や矢口っちゃんを見てたら
涙が止まらなくなりました。(ちょっと複雑な思いが・・・
- 363 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)14時58分45秒
- 「ねぇ、よっすぃ〜。みんなでご飯行かない?」
レッスンが終わった後、矢口さんがののやアヤカと声をかけてくれた。
ハロプロコンとか、こういう時じゃないと他のユニットの子とご飯食べる機会は少ない。
だからいつもなら一緒に行くところだけど、今日はそうもいかない。
「ごめん、今日はパス」
「えぇ〜、なんでだよぉ〜〜。付き合い悪いなぁ」
「えっと、今度誘ってください。今日は、すんません」
さっさとその場を逃げるように抜け出すと、急いで梨華ちゃんの元へ。
7AIRのレッスンが早く終わっていなければ良いけど…。
レッスン室から廊下へ出ると、ハロプロのメンバーがちらほら。
7AIRのメンバーもいる。
ということは、梨華ちゃんもレッスン終わっているはず。
「おぉ、よっすぃ〜」と声をかけてくれる人たちを適当にかわして、
小走りに隣のレッスン室へ。
- 364 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)14時59分25秒
- そーっとドアを開けると、そこには1人鏡に全身を映して踊っている梨華ちゃんが。
すでに他のメンバーは出てしまっているのに、まだ個人練習をしている。
その姿は、ここ最近、娘。のセンターとしてやるようになってからよく見る姿だ。
ごっちんが卒業してから、梨華ちゃんを取り巻く環境は急激に変わっていった。
娘。以外のユニットの活動や、安倍さんに次ぐ娘。の顔としての活動。
責任感の強い梨華ちゃんにかかったプレッシャーは、あたしが想像する以上のものに違いない。
なのに、「私、歌ヘタだから、せめてダンスくらいはちゃんとしないとね」
そう目を細めて言うと、いつも最後まで1人で練習していた。
音楽に合わせてキュッキュと鳴る梨華ちゃんの靴音を聞きながら、
あたしは少し複雑そうに微笑んだ梨華ちゃんの笑顔を思い出した。
- 365 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時00分02秒
「よっすぃ〜?」
いつのまにか音楽は止まっていて、梨華ちゃんは少し気まずそうな顔していた。
額から流れる汗を拭うことなく肩で息している梨華ちゃんの姿はとても輝いて見えて、
あたしはただアホみたいに見とれてしまっていた。
いつのまにこんなに輝いて、凛々しくなっていたんだろう。
あたしがまだ娘。に入ってすぐの頃に、安倍さんやごっちんに感じた強い輝きだ。
縦に真っ直ぐ一本の線が通っているみたいに、ピンと張った凛々しさ。
昔みたいな、弱い細い線ではない。
これはきっと、娘。のセンターをやってきた約10ヶ月でついたものなんだと思う。
自分の場所を見つけた自信。
娘。のメインとしての責任。
それらが今の梨華ちゃんを作っていったんだろう。
今まで近くにいすぎて全然気づかなかったけど、
こうやってユニットが離れることで初めて気づいた、梨華ちゃんの成長。
なんだろう?
この胸がザワザワする感じは。
なんだか梨華ちゃんが遠くに行ってしまったような気がする。
今でさえ見落としてしまいがちなのに、今後娘。が二つに分かれてしまったらどうなっちゃうんだろう。
そんな寂しいような、不安な気持ちがわき上がる。
- 366 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時00分49秒
- 「どうしたの、よっすぃ〜?」
ゆっくりと近づいてきて、まともに顔を見れないでいるあたしの顔を覗き込む。
「ねえ、梨華ちゃん」
「ん、なに?どうしたの、そんな顔して」
いつになく自信なさげなあたしの声に、梨華ちゃんは心配そうな笑顔をむけた。
でもその表情は、あたしに対する愛情がすごく感じられる優しい表情。
その優しい表情を向けられると、甘えたい気持ちでいっぱいになる。
「あのさ、梨華ちゃん」
「ん?」
「……キス、してもいい?」
あたしの好きな梨華ちゃん。
そのぬくもりを少しでも感じたい。
今、一緒にいるって実感したい。
梨華ちゃんの返事を聞かないうちに、ゆっくりと顔を近づける。
そして、唇が触れるか触れないかというときに……。
- 367 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時02分07秒
- 「ダメッ!!!」
ドンっとあたしの肩を押すと、梨華ちゃんはクッと睨むようにあたしの顔を見上げた。
その押された反動で、後ろへヨロヨロと後ずさりするあたし。
「え…なんで?」
「なんでじゃないよ。あいぼんのこと、ちゃんと説明してよ」
プクーッと頬を膨らませたその顔は、さっきまでの梨華ちゃんではない。
でも、きっとコレが今の本当の梨華ちゃんなのかも。
さっきはダンスレッスンしてたわけだし、多分、仕事モードの梨華ちゃん。
今ここにいる梨華ちゃんは、プライベートモードな梨華ちゃん。
それはきっと、あたしにしか見ることができない梨華ちゃんなのかもしれない。
「ふはっ」
そんな膨れっ面した梨華ちゃんを見ると、なんだか笑いがこみ上げてきた。
さっきまでのあたしの不安っていったいなんだったんだろう。
ユニットが別れて、仕事で会える時間が減るくらいどうってことない。
それくらい、あたしたち二人の間には強い絆ってもんがあるじゃないか。
- 368 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時03分09秒
- 「もう、よっすぃ〜?何笑ってんの??」
「いやぁ、ごめん。なんか、幸せだなぁ〜って思って。梨華ちゃんと一緒にいられることが、さ」
「…意味わかんない」
「へへっ」
まだ膨れっ面の梨華ちゃんの頭を軽く撫でる。
すると梨華ちゃんは、膨れっ面のままでも少しくすぐったそうな顔をする。
あ、この表情。
こういうふとした梨華ちゃんの表情が、たまらなく好きなんだ。
- 369 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時07分41秒
- 「あいぼんの事、ごめんね。嫌な思いさせちゃったよね?」
「……」
「でも、本当に昼寝してるとこにあいぼんがもぐりこんできただけだから」
そう弁解しなくても、本当はわかってくれてるはず。
伊達にずっと一緒にいたわけじゃない。
でも、不安になる気持ち、よくわかるし。
「ねえ、梨華ちゃん?」
「なに?」
「これからさ、仕事が一緒っていうのも減ってくじゃん?」
「ん?あ、うん」
「だからさ、こうやって一緒にいられる時間、大事にしようね。
ひとつひとつの仕事、ほんの少しの空き時間。
もし、少しでも不安こととかあったら、その分たくさん話をしよう…ね?」
結構真面目に話しているつもりなんだけど、梨華ちゃんの目を見て話すとニヤけちゃうのはなんでだろう?
フニャ〜っと笑ったあたしにつられて、梨華ちゃんもフワッと笑ってくれる。
「じゃあさぁ」
「ん?」
何か変な事を思いついたらしく、少しニヤついて梨華ちゃんが話を切り出した。
こんな顔してるときは、結構ヤバイかも。
だって、梨華ちゃんって時々とんでもないこと言い出すんだもん。
すっごいサムい事とか、ウザい事とか、キショい事とか…。
- 370 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時08分41秒
- 「お仕事で一緒の時に、今までみたいに避けないでくれる?
隣の席とかになっても、今までわざと避けてたでしょ?そういうのもやめてくれる?」
「えっ…」
「だって、今よっすぃ〜が言ったことって、そういうことでしょ?
一緒にいられる時間でしょ?お仕事の時も」
ニコーッと笑顔でそう言う梨華ちゃんの目は、断ることができないくらいに力強い。
あたしだって、今までやりたくて避けてたわけじゃない。
それなのにわざと梨華ちゃんと話したりしなかったのは、仕事を忘れそうで怖かったから。
なるべくトークとかでは絡まないように、目を合わせないように頑張った。
本当は梨華ちゃんがそれを寂しそうにしていたのも知っていたけど…。
それで二人は仲悪いとか言われたりもしたけど、そんなの関係ないって思ってたし。
でも、そろそろ大丈夫かもしれない。
あたしだって、少しは成長したはずだから。
- 371 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時09分34秒
- 「うん、いいよ」
「え!?本当にいいの?」
やけにあっさりとOKしたあたしに、かなり意外だったというような表情。
「なんだよぉ、梨華ちゃんから言ったくせに」
「だってぇ〜、よっすぃ〜そういうの嫌だと思ってたから…」
「うん、前は嫌だったよ、そういうの。
梨華ちゃんと一緒にいてニヤけちゃう自分がテレビに映っちゃうのとか、そういうの嫌だったもん。
今でも、ちょっと恥ずかしいよ。でも…」
「でも?」
「そうやって仕事で絡めるのって、もうあと少ししかないかもしれないじゃん?
だからね、大事にしたいんだ。そういうのも」
もう一度、梨華ちゃんの頭をゆっくりと撫でる。
片方の手で、束ねたところからこぼれている髪の束を指に絡ませたりしながら、頬にもう片方の手を滑らせていく。
梨華ちゃんは、またくすぐったそうな顔をしながら、両腕はあたしの腰へ。
特に言葉なんかなくても、今考えていることはきっと同じ…
- 372 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時10分13秒
「そうだっ」
またもキスをしようとする寸前に、梨華ちゃんが目をバチッと開いた。
「あいぼんのこと、気をつけてね」
「…へぇ?気をつけるって何が??」
「もう、よっすぉ〜鈍いから」
呆れたように、ため息ひとつ。
そんなこと言われても、わかんないよ。
あいぼんの何を気をつければいいんだよ。
- 373 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時11分01秒
- 「あいぼんね、きっとよっすぃ〜の事、好きだと思うの。メンバーとして、友達としてではなくてね。
でも、まだ恋愛ってまではいかないだろうけど。
だからね、よっすぃ〜がああやって抱きしめちゃったりすると、
気持ちに勢いついちゃったりすると思うの。
だから…気をつけて」
「ほぇ?そんなこと、あるわけないじゃん。あいぼんだよ?」
そう、あの、あいぼんだよ?
ちっちゃくってかわいくって、あたしたちの妹みたいなあいぼんだよ?
そのあいぼんが、あたしに恋愛感情…?んなわけ、ないじゃん。
「そんなこと、あるよ。あいぼんだって、もう高校生だよ。
付き合い始めた頃のよっすぃ〜と同い年だよ?
いつまでもコドモじゃないんだから……だから、心配なの」
「ん、大丈夫だから。あいぼんは、あたしたちの妹みたいなもんじゃん」
笑顔で答えるあたしに、まだまだ心配顔。
あたしって、そんなに信用できないかな?
- 374 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時13分18秒
- 「それでも心配なの。よっすぃ〜のこと、信用してないんじゃないよ?
でも、あいぼんさくら組だし、これからよっすぃ〜と一緒にいる時間長いだろうし。
それに、あいぼんと争いたくないの。悲しませたくないの。
だから、気をつけてあげて」
ライバル出現で嫉妬するというよりも、妹が心配でしょうがないという表情。
これが梨華ちゃんの優しさであり、弱点なんだろうなぁ。
「もしかして、昨日からずっとそのこと考えてた?
だから、目逸らしたり、口きいてくれなかったり、メールとか電話出てくれなかったの?」
「…うん。ごめんね。なんか、あいぼんの事が気になっちゃって」
「っんとに、ばかだなぁ、梨華ちゃんは」
グシャグシャっと自分の髪をかくと、梨華ちゃんをギュッと抱きしめた。
柴っちゃんの言うとおりだ。
梨華ちゃん、ひとりで変なこと考えてたよ。
昔だったら、本当に別れるとか言い出してたかも…。
- 375 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時14分09秒
- 「大丈夫、気をつけるから。もしそうなっちゃったら、一緒に考えよう。
でも、あたしには梨華ちゃんだけだから」
「よっすぃ〜…」
「大丈夫…」
今度こそ、ゆっくりと梨華ちゃんの唇に触れる。
お互いの唇から伝わるぬくもりは、「ずっと一緒にいようね」って無言の言葉を伝え合っている。
そう、どんなことがあっても、ずっとずっと一緒に…ね。
- 376 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時15分01秒
- 『チロリロリーン♪』
二人しかいないはずのレッスン室に、小さな機械音が響いた。
最近よく聞く、この音……。
バッと振りかって入り口をみると、少しの隙間から突き出た一本の腕。
その手には、携帯が握られている。
どこかで見たことのある携帯とストラップ…。
キャアキャアと笑う二つの笑い声と、走り去る足音。
あたしと梨華ちゃんは驚きのあまり、顔を見合わせて笑ってしまった。
「今の、ののとあいぼんだよね?撮られちゃったね」
「ね」
恥ずかしそうだけど、どこか嬉しそうな梨華ちゃん。
ちょっと音の外れた鼻唄を歌いながら、自分の荷物をまとめ始めた。
『〜♪』
「あ、きたよ、よっすぃ〜」
カバンから出した携帯を手に持って、あたしに手招きをする。
パカッと開いた携帯を覗き込むと、
subject:『よっすぃ〜&梨華ちゃんの密会を激写!!』
from:のの
そこにはバッチリとあたしと梨華ちゃんがキスしている写真が添付されていた。
- 377 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時16分02秒
- 「やられたね」
「ね。でも、良かった。
あいぼん、ののとまだこんな悪戯してるくらいだから大丈夫だよね?」
本当に安心したようで、嬉しそうな梨華ちゃん。
きっと、今回のことであいぼんがあたしの事を本気で好きになってたらどうしようとか、すごい考えてたんだろう。
それは、梨華ちゃんの目の下の隈が物語っている。
心配で眠れなくって、最悪の時のことばっかり考えて。
そんな梨華ちゃんが簡単に想像できる。
でも、そんな梨華ちゃんを想像すると、胸がギュッとなる程愛しくなる。
どんなに心配しても、あたし、梨華ちゃんから離れることできないよ。
もし、梨華ちゃんが離れたくなってもね。
「ちょっとなによぉ〜」
愛しそうに梨華ちゃんをみるあたしの視線に気づいた梨華ちゃんが、照れくさそうにあたしの腕を叩く。
「いやぁ〜、梨華ちゃんかわいいなって思って」
「もう、よっすぃ〜言い方がエロいよ」
「うわっ、ひどっ」
わざと落ち込んだ素振りを見て、クスッと笑う。
そんな空気がまた、梨華ちゃんを愛しくさせる。
- 378 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時16分42秒
- 「あ、そうだ。ほら」
照れ隠しするように、梨華ちゃんは今度は別のメールを開いて見せてくれた。
subject:『浮気発覚!!』
from:安倍さん
そのタイトルのメールに添付された写真は、あのあいぼんとの写真。
しかも、雑誌には載っていないアングルで超ドアップ。
顔しか映ってないから、どういう状況なのかもわからないくらい。
それは、あいぼんに見せてもらったのとは全然違う。
「なっ…」
「ね?もういっこのは、ののからので、みんなに廻ったやつだと思うけど」
ピピッと操作して、別のメールを表示。
そっちは、昨日あいぼんからもらったやつ。
っつうか、安倍さん。
もう大人なんだから、ののと同じことしないでくれよ。
それに、ののよりタチが悪いです…。
「これでおあいこだね」
とても嬉しそうに梨華ちゃんは涼しげな眼で笑うと、携帯をパタンと閉じた。
- 379 名前:彼女といたい午後 投稿日:2003年08月10日(日)15時17分20秒
この後、あのメールがハロプロメンバーに出回り、しばらく冷やかされたのは言うまでもない。
もちろん、ハロプロメンバー以外に出回ることはなかったけど…。
けど、この一件であたしは今までよりも、番組とかで梨華ちゃんに絡むことも多くなったし、
それを自然に振舞えるようになってきたと思う。
ある意味、安倍さん、飯田さんに感謝……なのかな?
〜fin〜
- 380 名前:ポー 投稿日:2003年08月10日(日)15時26分33秒
- やっと終了です。
自分の予定より、1日遅れての更新です…。
今まで読んでくださった方、ありがとうございました。
また、グッと来るネタがあれば書きたいと思っています。
ほとんど自己満ですね(w
>>362 ROM読者さま
毎回のレス、ありがとうございます。
やっと、終わりました。
いや〜、思ってより長くなってしまいましたね(w
>何事も無かったかのようにステ−ジに立つ圭織や矢口っちゃんを見てたら
涙が止まらなくなりました。
辻ちゃんが泣いてトイレから出てこなかったって、さっきハロモニでやってました。
自分もそれを聞いたら、泣けてきました…。
- 381 名前:ROM読者 投稿日:2003年08月13日(水)20時16分42秒
- お疲れさまでした。ラストに至るまでのシーンの殆どが共感でき、
なかでも2人の細かい心理面の
描写は絶妙でした。
4期の関係は歳を重ねても変わらないで欲しいし、娘。もこれから
色々な波があると思うけれど、OGを含め、変わらず応援したいと
思います。
- 382 名前:ポー 投稿日:2003/10/14(火) 01:32
- 自己保全。
- 383 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/16(木) 00:38
- ho
- 384 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:39
-
…なんか、寒い。
体が少し冷えているので、
隣にいるはずの梨華ちゃんを抱き寄せようと手を伸ばした。
ぱすっ。
予想していたのとは違う、布団の感触。
そこにいるはずの梨華ちゃんがいない。
まだ動き始めるには充分でない頭を無理やり起こして、薄目を開ける。
ぽっかりと空いた1人分のスペース。
「…梨華ちゃん?」
もう一度確認のためにそこへ手をやるけど、やっぱりそこにはいない。
微かに残った梨華ちゃんの温もりを確かめて、体を起こした。
「さぶっ」
ここ最近冷え込んできたせいで、布団から出るとTシャツを着ていてもやはり寒い。
今年は夏が短かったって言うけど、秋だって短いんじゃないの?
なんて思ってしまう。
「り〜かちゃ〜ん?」
ベッドからポスッと降りて、隣の居間へ。
わずかに開いた部屋のドアから、電気の光が入り込んできている。
「あ〜、さみぃ〜」
両手で反対の腕をさすりながら部屋を出ると、梨華ちゃんが床に座っているのが見えた。
体育座りみたく両足を抱え込んで、床に置いた雑誌を眺めている。
まだパジャマのままだから、少し寒そう。
体を縮こまらせて、ブルッと1つ体を震わせた。
小動物みたいな後姿に、思わず微笑んでしまう。
- 385 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:40
- 「着替えないと風邪ひくよぉ〜?」
後ろからギュッと抱きしめて、両足で挟むように座り込む。
「ほらぁ、体冷えちゃってるじゃん。何見てんの?」
いつからそんな格好で見てたんだろう。
肩なんか、かなり冷たくなっている。
よし、あたしの体温で少しでも暖めてあげよう。
「あ、おはよ、よっすぃ〜。ほら、今日発売の…」
梨華ちゃんはそう言うと、ちょっと照れ笑いをしてあたしに視線を向けた。
そして、目線をあたしから床の雑誌に戻す。
「おっ、あたし昨日見れなかったんだよねぇ〜」
それは娘。でページを持っている、週刊のテレビ情報誌。
発売前日にはマネージャーの元に届けられることになっている。
今週号はあたしとミキティ。
昨日の帰り際に渡されて、帰って速攻寝てしまったから、
まだどの写真が使われたのか見ていない。
「どれどれ?」
梨華ちゃんの肩に顎を置いて、それを覗き込む。
「……あらぁ〜」
「ね、吉澤&石川夫妻だって」
クスッと目を細める梨華ちゃん。
「なぁ〜んか、照れるなぁ〜。まさかあの時の言葉で載せちゃうなんてさぁ」
「…だね。でも私は嬉しいよ?」
本当に嬉しそうに、もう一度写真に目を向ける梨華ちゃん。
指先で写真をなぞったり、ののの顔の上をそっと撫でたり。
その目は、本当に娘を愛でるような優しさを感じる。
- 386 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:41
- 「あはは。くっそぉ〜、かわいい事言うじゃねぇかよぉ〜」
あたしは照れ隠しも含めて、ちょっと大きめな声を出すと、
「うりゃあ」とか言いながら梨華ちゃんをギューッと強く抱きしめる。
だって、あたしじゃ素直に言えないような事を、
口に出してさらっと言ってくれるなんて嬉しいじゃないか。
梨華ちゃんも、「イヤ〜〜」とか言いながら、あたしに体を委ねてくれる。
う〜ん、、相変わらずかわいいぞぉ〜。
またまたギューッと抱きしめて首筋にチュッとキスしてみたり。
梨華ちゃんはくすぐったそうに笑って身をよじるけど、あたしはそれを逃がさない。
そしてまた1つ、今度は頬にキスをして。
しばらくそうやってじゃれあっていると、
梨華ちゃんがクシュンと1つクシャミをした
- 387 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:42
- 「そろそろ着替えよっか?」
後ろから抱きかかえるように梨華ちゃんを引っ張って立たせてあげる。
「うんしょっと」って言いながら立ち上がる姿が、なんか微笑ましい。
「なに、ニヤニヤしてんのよぉ〜。もう、やらしいなぁ〜」
「やらしくなんかないよぉ。だって、梨華ちゃんいつもと違うんだもん。
メンバーといる時と違って、なんか幼いっていうか、かわいいっていうか…」
「当たり前でしょ。よっすぃ〜といる時は、みんなといる時とは違うもん」
「おおっ」
「なによ、『おおっ』て。ほら、着替えるんでしょ」
呆れたようにそう言うと、あたしをおいて寝室へとさっさと行ってしまった。
でもね、呆れているように見せてたけど、本当は照れ隠しでもあったでしょ?
それくらい、あたしにはお見通しだよ。
ふふん♪
もう、かわいいんだからぁ〜。
- 388 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:42
- 着替え終わって居間に戻ると、先に着替えた梨華ちゃんはクタ〜ってソファに寝そべっていた。
きっと疲れてるんだろう。
昨日だって、クリスマスドラマの撮影だったっていうし。
それに、他のドラマの制作発表だってあったはず。
最近忙しかったから、いくら寝ても寝足りないっていうのはすごい良くわかる。
「よっすぃ〜…」
クタ〜と寝たまま、両手をあたしに差し出して少し甘えた声で呼ぶ。
目はまだ眠そうだけど、口元は少し笑っている。
「なぁ〜に甘えた声出してんの?」
「お腹しゅいたよぉ〜」
「ん〜、おなかしゅいたでしゅか?って、キショイよ梨華ちゃん」
アハハって笑うあたしに、わざとらしくブーたれた顔を見せる。
「ちょっとまってて、あたしが特製朝ごはん作ったげるから。
その前に、カーテン開けるよ?」
軽く梨華ちゃんの頭を撫でてカーテンを開く。
外は朝のはずなのにとっても暗い。
カラカラとベランダへの窓を開けると、外はザーザーと雨が降っていた。
- 389 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:43
- 寒いわけだ。
秋の雨って言うよりも、冬の雨に近いかも。
冷たい空気にあたって、体がブルッと縮こまる。
でも、空気はいつもよりも澄んでいて、
なんだか懐かしいような不思議な気持ちにさせられる。
するとふと、あることが思いついた。
今日ならあれができるかも。
昔から少し憧れてたんだよねぇ。
「ねえ、今日って14時集合だよね?」
「ん?そうだよ。14時に天王洲スタジオ」
気配で、梨華ちゃんが首だけをこちらへ向けて返事をしているのがわかる。
「じゃあさ、ちょっと早めに出て外でお昼食べようよ。あたし、やりたいことあるんだ」
「いいけど、なにするの?」
「ん〜、梨華ちゃんと買い物とか、ご飯食べたりとか、いろいろ…ね」
「それだけぇ?」
「ん?」
それだけなんかじゃ全然無いよ。
でも、今はまだ言いません。
だって、少し恥ずかしいからね。
- 390 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:44
- 誤魔化しついでに、ニコーっと笑って窓を閉める。
そして、まだソファの上でクターッとしている梨華ちゃんの頭をポンと叩いてキッチンへ。
「ふ〜ん」
梨華ちゃんは、納得できないような顔でソファから起き上がると、
クッションを抱え込むようにしてソファの上で胡坐をかいた。
「あ、でも疲れてるなら良いよ。ぎりぎりまでのんびりするんでも良いし」
やかんにお湯を沸かしながら、カウンター越しに呼びかける。
だって、無理させちゃったら悪いじゃん。
あたしのやりたいことは、いつでもできることだから。
ただ、今日はたまたま条件が合っているだけ。
「ううん。ちょうどコートとか買いたかったんだ。
よっすぃ〜、付き合ってくれる?」
「うん、もちろん。じゃあ、ご飯食べたら出かけよう」
あたしのその言葉をきっかけに、
梨華ちゃんはパタパタと出かける準備を始めた。
- 391 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:45
- □□
「梨華ちゃん、早く〜」
帽子をかぶって、靴を履いて、バッグを持って、全て準備オッケー。
玄関のドアの前で、スタンバイ中。
あとは梨華ちゃんが出てくるのを待つだけ。
…なのになかなか出てこない。
あたしがご飯作っている間も(って言っても、パンとコーヒーとゆで卵だけなんだけど)、
梨華ちゃんはお出かけ準備してたはず。
なのに、あたしよりも遅いっていうのはどういうこと?
はっ、もしかして着るもので悩んでる?
それって、かなり危険じゃない?
だって、気合い入れてる時に限って、服のセンスやばいじゃん。
さすがに最近は上下チェックとか、全身ピンクはなくなったけど。
でも、おかしな時はまだ多い。
まあ、今に始まったことじゃないけど、あんまり変なのはちょっと、ね。
そんな事を考えているところへ、「ごめ〜ん、お待たせ」って、梨華ちゃんが出てきた。
意外に服装は普通。というよりも、むしろかわいい。
- 392 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:46
- 「ん?どうしたの?」
ポケーと見ているあたしに不思議顔。
「ううん、べつに。っつうか、どうしたの?今日服、変じゃないよ」
素直じゃないあたしは、いつもこういう言い方しかできない。
それでも梨華ちゃんは嬉しそうに笑ってくれる。
「でしょ?この前柴ちゃんに選んでもらったんだぁ」
「うん…かわいいよ」
やっぱり目を見ては言えないや。
ボソッと言って、「行こう」って梨華ちゃんの手を取った。
- 393 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:47
- 「雨、止まないねぇ」
マンションの入り口で、梨華ちゃんは空を見上げた。
「せっかくよっすぃ〜とお出かけなのに…」
残念そうな梨華ちゃんには悪いけど、あたしは雨に止んでほしくなんかない。
だって、あたしのやりたいことは、雨が降ってなきゃできないことだから。
「梨華ちゃん、傘」
そう言って、梨華ちゃんの左手にある傘を取った。
そして傘を開いて梨華ちゃんの目の前に立つ。
「ほら、行くよ」
開いている右手を差し出して、梨華ちゃんの手を取る。
少し戸惑いながらもあたしの隣に納まる梨華ちゃん。
そのまま歩き出すけど、不思議そうにあたしの顔を見上げている。
「ねえ、傘持ってこなかったの?」
「持ってきたよ。カバン中入ってる」
「ささないの?」
「さしてるじゃん」
そう答えて、今さしてる傘を揺らす。
「そうじゃなくって、自分の傘」
「うん、ささない」
「なんで?」
「なんでも」
思わず緩む頬を、無理に引き締める。
だって、コレがあたしのしたかったことなんだもん。
- 394 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:49
- 『相合傘』
今までだってしたことがなかったわけじゃない。
スタジオ移動の時とか、突然雨が降ってきたりすると、メンバー全員分無かったりする。
そういう時とかなら、何度もしたことがある。
でも、こうやって手を繋いで相合傘して街を歩くなんて初めてで。
嬉しくて思わず鼻歌なんか唄っちゃったりして。
「よっすぃ〜、ご機嫌だね」
「おう、超ご機嫌だぜぃ」
相合傘してショッピングしてお茶して。
ああ、なんか、すげーデートみたいだ。
いつもなら出かけるときはあまり手を繋ぐことができないけど、
相合傘してる時は手を繋いでても人の目から隠せるし。
それにくっついて歩いてても不自然じゃない。
これが憧れの『相合傘』なんだね。
恋人繋ぎした手をギュって力入れて、それを大きく前後に振ってみたりして。
そんなあたしに暖かい目で微笑みかけてくれる梨華ちゃん。
見たいお店があると、
ちょっと小走りになって梨華ちゃんがあたしを引っ張ったり、
靴紐が解けたのを直して立ち上がると、
梨華ちゃんが手を差し伸べてくれたり。
それらがすごく自然な仕草で、
そうすることが当たり前みたいな雰囲気で。
それは、とっても幸せな気分。
- 395 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:49
- 幸せな気持ちから始まった、あたしの一日。
今日はあたしにとっては特別な日になりそう。
いつもは嫌がられてしまう雨の日だけれど、
今日ばっかりは、その雨に感謝。
案外雨も悪くないよ。
たまにはこういうのも楽しくていいね。
ね、梨華ちゃん?
- 396 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:50
- □□□
「おっ、来た来た。ののちゃ〜ん、パパとママが来ましたよぉ〜」
あたし達の姿を見つけて、茶化すように矢口さんが楽屋中に響くような声で言った。
パパとママって・・・。
思わず繋いだ手をどちらとも無く離してしまい、お互いに照れ笑い。
「パパ〜」
突進してきたののが、あたしの腰にタックルかけてくる。
2、3歩後ろへよろけるけど、そこは持ちこたえてののを受け止める。
「おはよ、よっすぃ〜パパ」
ののはテヘヘと笑いながら、抱きついたまま顔を上げた。
「おはよぉ〜、我が娘よ」
あたしも調子を合わせて、お父さんっぽく声を低くして抱きしめる。
その隣で梨華ちゃんは、「おはよ、のの」ってののの頭を撫でる。
そんな梨華ちゃんの仕草に、またまた顔が緩んでしまう。
「よっすぃ〜と梨華ちゃん、見つめ合ってキショーイ」
あたし達3人から少し離れたところから、あいぼんが言い放った。
なんだか少しご機嫌斜めな感じは気のせい?
- 397 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:50
- 「おはよ〜、あいぼん」
「おはよ」
やっぱりちょっと、挨拶が不機嫌気味。
顔も微妙に膨れっ面。
「パパとママにキショイなんて言うんじゃないぞ」
また、パパモードで言ってみる。
だって、ののがあたし達の子供なら、あいぼんだってそうに決まってる。
そんなあたしの言葉にキョトンとした顔。
それから、フニャ〜と笑って
「キショイからキショイって言ったんじゃん」って憎まれ口。
「あ〜、パパはあいぼんをそんな子に育てた覚えはないぞ」
「っていうか、育てられた覚えないし」
「あ〜、ののも無いかも」
「ちょっと待って!私も産んだ覚えないよ」
って、梨華ちゃんまで…。
「そんな事言わないで、パパにおはようのチューしてよ〜」
両手を広げて、あいぼんを追い回す。
「嫌だよぉ〜」って言いながら逃げ回るあいぼん。
それを見守る梨華ちゃんとのの。
やっぱりあたしの居場所って、ここしかないんだ。
追いかけっこしながらも、そう思った。
- 398 名前:雨の日 投稿日:2003/10/25(土) 14:51
- 素直に甘えてくるののと、憎まれ口を叩きながらも甘えん坊のあいぼん。
時にはからかわれながらもその二人を優しく見守る梨華ちゃん。
本当の家族じゃなくっても、今のあたしにとっては最高の家族みたいなもん。
もちろんそれは、他のメンバーにも言えること。
まだ入ったばかりだけどかわいい6期メン。
初めての後輩で慕ってくれる5期メン。
そしてあたし達を大きな愛情で包み込んでくれている先輩達。
外は雨だけど、あたしの気持ちは晴れマークでいっぱい。
たまにはこういう雨の日もアリだよね。
〜fin〜
- 399 名前:ポー 投稿日:2003/10/25(土) 14:52
- 久しぶりのUPです。
「まあ、見てやっても良いか」
くらいの軽い気持ちで読んでみてください。
- 400 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/25(土) 16:16
- 超待ってました。
- 401 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/26(日) 00:11
- すっごくおもしろかったです!!吸い込まれるように
読みました。中編・って感じで読みごたえがあって、もっと読みた〜い!
などとわがままな希望が・・・いしよし・は良いですね♪
某テレビ情報誌、似合いすぎでした。
- 402 名前:ROM読者 投稿日:2003/10/27(月) 02:16
- 更新お疲れ様です。
何気ない日常の中にある二人のほんのりとした関係がとても
心地良いです。
やっぱり食い付いちゃいました?ROMは110頁を開いた
途端、思わず「おぉ〜〜っ!!」っと声が出てしまいました。
- 403 名前:ポー 投稿日:2003/11/11(火) 00:16
- >>400 名無し読者さま。
超待っててもらえたなんて、超嬉しいです。
>>401 名無し読者さま。
そんなにほめてもらえるなんて、申し訳ないです。
>>402 ROM読者さま。
やっぱり食い付いちゃいました(w
- 404 名前:ポー 投稿日:2003/11/11(火) 00:17
- 更に更に、新作UPです。
今度は視点を変えて・・・
- 405 名前:ニッポン・チャチャチャ 投稿日:2003/11/11(火) 00:18
- 「それじゃあ、お疲れ様でした」
マンションの前まで事務所の車で送ってもらって、車を降りた。
いつもはタクシーで帰るんだけど、
今日はメンバーとは別の仕事があったから、マネージャーのお見送りつき。
こうやって送ってもらうことは何度もあるけど、なかなか慣れることができない。
だって、私1人のために車出してもらうなんて申し訳なくって。
1人でタクシーでも帰れるのに。
でもこれも、ソロになれば当たり前になことなのかな。
そういえばごっちんも、最初の頃は慣れなくて落ちつかなかったって言ってたっけ。
……ま、私はまだまだ慣れなくても良いや。
エレベーターに乗って、自分の部屋の階のボタンを押す。
いつも思うことなんだけど、エレベーターの乗るとどうして移動階の表示をじっと見てしまうんだろう?
他に人が乗ってる時は目のやり場に困るっていうのはあるけど、1人なのにどうして?
ぼーっとそんなことを考えているうちに、目指す階に到着。
予定よりも早く帰れたから、まだ夜も深くない。
だから、いつもみたいに気を使って歩く必要が無いのはちょっと嬉しい。
- 406 名前:ニッポン・チャチャチャ 投稿日:2003/11/11(火) 00:19
-
今日もよっすぃ〜、来てるのかな?
私よりも先に帰ったはずのよっすぃ〜は、
最近ある目的があって私の家に来ている。
なんでも、自宅に帰るのでは間に合わないらしい。
鍵をカチャッとあけると、中から光が溢れ出る。
この瞬間、いつも何とも言えない幸せな気持ちになれる。
ああ、私の帰りを待ってくれてる人がいるんだ。
しかもそれは、私の大好きな人。
なんて私は幸せなんだろう。
誰かがいる家に帰ってくることがこんなにも幸せだなんて、
実家にいる頃は全然気がつかなかった。
だって、家に人がいるのが当たり前って思っていたから。
そんな幸せな気持ちで部屋を進んで、
居間への扉をゆっくりと開ける。
「ただい…」
「よぉっしゃぁ〜〜〜!ナイスファイッ!!!」
私の言葉を思いっきりかき消してしまうような叫び声が部屋中に響き渡る。
声の主は、クッションをバスバスと叩きながらも目はテレビに釘付け。
私が帰ってきたことには全然気づいていない様子。
もう、最近いつもコレなんだから…。
- 407 名前:ニッポン・チャチャチャ 投稿日:2003/11/11(火) 00:22
- バレーボールのワールドカップが始まってから、仕事の早く終わった日はいつもこう。
中継が終わるまでは、何を言ってもダメ。
話しかけても空返事だし、こっちに顔を向けてもくれない。
さっきまでの幸せな気持ちはシュンとしぼんでしまう。
だって、私を待っていてくれてるわけじゃないんだもん。
ここに帰ってくるまでの、幸せな空想している時の方が楽しかったかも。
でも、それとはまた別な幸せがこの時間にはある。
この数日でわかったことなんだけど、
バレーボールを見るときのよっすぃ〜はいつもとは全然違う。
一瞬一瞬で「ああ〜」とか「よっしゃぁ〜」とか言いながら、
いろいろな表情を見せてくれる。
悔しそうな顔、嬉しそうな顔、そして真剣な顔。
そして、まるで選手達と同じコートに立っているかのような、張り詰めた顔。
ダイニングの椅子に座って、斜め前からよっすぃ〜の表情を眺めていると、
次々と新しいよっすぃ〜の顔を発見できる。
日本が連続してポイントをとられたらしく、
親指の爪先を苛立たしげに噛んでいる表情は悔しそうで、
そんな表情は、普段では滅多に見ることが出来ない。
うまくダンスが出来なかった時の表情ともまた違うし。
きっとバレーボールをしていた時のよっすぃ〜は、
いつもこうだったんだろうなぁ。
ハワイでのビーチバレーや、
最近練習しているフットサルで時々見ることはできたけど、
きっともっと真剣で鋭さを持って、
ひとつひとつの動きに神経を行き渡らせていたんだろう。
同じコートに立つ選手達に声をかけ、
自分自身を奮い立たせて勝負して。
- 408 名前:ニッポン・チャチャチャ 投稿日:2003/11/11(火) 00:24
- テレビには、私やよっすぃ〜とほとんど同じような年の選手が
コートの中を駆け回っている姿が映し出される。
闘争心むき出しで、それがまたなんとも言えないような輝きを見せている。
その姿が娘。に入ったばかりの頃のよっすぃ〜と重なって見えた。
あの頃のよっすぃ〜は、私には無いような張り詰めた空気を持っていた。
それは、きっとスポーツをしていた人ならではの闘争心。
それこそ、娘。の中にいるときの競争とかとはまるっきり違う、
勝つか負けるかの一発勝負の顔。
娘に入ってすぐの頃に、「ライバルは後藤真希」って言ってたあの表情。
そうやってバレーボールに情熱を注いでいたんだから、
ワールドカップっていったら血が騒ぐのも無理は無いよね。
いつまでも私に気づいてくれないのも、
この期間だけは許してあげよう。
そう思って、テレビとよっすぃ〜を交互に見る。
日本はどうやら大きくリードされているらしく、選手達の表情も苦しそう。
「ガンバレ、ガンバレニッポン」って、
やたらと大きな声で叫んでいるアナウンサーの声だけが耳につく。
よっすぃ〜はクッションをギュッと抱え込んで下唇を噛み締めている。
テレビに向かって、「まだいける。まだいける」って呟きながら。
- 409 名前:ニッポン・チャチャチャ 投稿日:2003/11/11(火) 00:25
-
なぁ〜んか、妬けちゃうなぁ。
だって、私の知らないところでこんなにも愛するものがあったなんて。
こればっかりは、私勝てないかも。
でも、それだけ好きなものがあることってかっこいいと思う。
私にはそういうものがないから。
高校時代にやっていたテニスだって、そこまで…って感じだったし。
唯一あるとしたらそれはお仕事なのかもしれないけど、
それだけっていうのはちょっと寂しい。
「あ、梨華ちゃん帰ってたんだぁ」
いきなりよっすぃ〜が私に気づいたもんだから、
バッチリと目が合ってしまった。
あまりにもよっすぃ〜をまじまじと見ていたから、ちょっと気恥ずかしい。
そんな私の様子に気づいていないのか、
「おかえり」ってフワって笑ってくれて、そしてすぐに視線はテレビに。
でも、その笑顔1つで私の今日の疲れは吹っ飛んでしまった。
やっぱりわたしには、よっすぃ〜以上に好きなものは無いんだよね。
テレビを見つめて一喜一憂している姿を見ながら、改めて実感してしまった。
- 410 名前:ニッポン・チャチャチャ 投稿日:2003/11/11(火) 00:26
-
- 411 名前:ニッポン・チャチャチャ 投稿日:2003/11/11(火) 00:27
- 「あぁ〜……」
試合終了と同時に、よっすぃ〜はがっくり肩を落として大きく声を漏らした。
うっすらと目には涙が浮かんでいるようにさえ見える。
でも、下を向いてゆっくり目を瞑ってから「くっそぉ〜」って上げた顔には、
もうその涙はなかった。
けれども、まだ悔しそうな表情は残っていて、
それだけ真剣に応援していたことがわかる。
「梨華ちゃん、ニッポン負けちゃったよ。
やっぱりつえーよ、イタリアは」
「うん、強かったね。でも、頑張ってたよね」
「うん。でも、まだ次があるから。次こそ、ぜってぇ〜勝つ!!
うぉ〜〜!!」
さっきまでの落ち込みはどこへやら、
急に立ち上がって握りこぶしを高々と上げ、大声で叫ぶ。
この変わり身の速さは、ついていきたくてもなかなかついていけない。
でもそれが、とてもかわいく愛しく思える。
「よっすぃ〜」
「ん?なに??」
フニャ〜ッと私にだけ向けてくれる笑顔。
「大好き」
「……プッ」
「もう、どうして笑うのよぉ〜」
大好きって思ったから言っただけなのに、そんなふうに吹き出さなくったっていいじゃない。
「うそうそ。僕も好きだよ、ハニー」
ふざけて声を低くして言うよっすぃ〜。
両手を大きく広げて、私をギュッと抱きしめてくれる。
「もう〜」
呆れたような声を出してみるけど、体はしっかりよっすぃ〜に抱きついて。
そんな私をゆっくりと撫でてくれる、優しい手。
目を閉じても感じられる安心感。
全てが私を優しく包み込んでくれる。
- 412 名前:ニッポン・チャチャチャ 投稿日:2003/11/11(火) 00:28
- 「ねえ、よっすぃ〜?」
「ん?」
「どうしてバレー、やめちゃったの?」
今までなかなか聞けなかったこと。
なぜか聞いちゃいけないような気がしてた。
「ん〜、それはキミに逢うためだよ」
そう答えながら、ムニッと私の頬を摘むよっすぃ〜。
妙に肩に力が入ってしまっている私とは正反対の、ニヤニヤと余裕の笑顔。
「もう、ふざけないでよぉ」
「ふざけてませんよぉ?」
そう言って、ニコッとわざとらしく笑顔を見せて小首を傾げた。
もう、完全におちょくられてる感じがする。
少し頭にきた。
だって、いつもこうなんだもん。
私が聞きたいことがあっても、
ふざけてるのか言いたくないのかわからないけどこうやってはぐらかされて。
かと思うと、突然意味不明なこと言い出すし。
「なに、ふてくされてんのさぁ」
黙りこんだ私に気づいて、人差し指で頬をつっついてくる。
「ふくれてないもん」
「ふくれてんじゃん。ど〜したのぉ?」
って、まだまだ余裕ののんびり口調。
- 413 名前:ニッポン・チャチャチャ 投稿日:2003/11/11(火) 00:29
- 「そんなにね、たいした理由じゃないよ?」
目で私に「それでも聞きたいの?」って問いかける。
でも私は聞きたい。
あんなに大好きなのに、どうしてやめちゃったのか。
たいした理由じゃなくても、よっすぃ〜の事だから知っていたい。
「バレーボールやるにはさ、あたし身長低いんだよ。それに、実力も足りないし。
中学入るまでは良かったよ。
でもさ、推薦で入ってくる人って、半端なく凄いんだよ。
だからもし高校までやり続けても、レギュラーとかなれなさそうだったし。
それにね、やりたいことも見つけたから」
今度は照れたように笑うと、もう一度私の頬を摘む。
「なんつうかさ、タイミングが良かったんだと思うよ。
もう続けてくのは無理かなぁ〜とか思ってたときに、オーディション受かってね」
「でも、普通に部活としてやっていくこともできたでしょ?」
フニフニと頬をいじる手に、自分の手を重ねる。
するとよっすぃ〜は、ちょっと困ったような顔をした。
「だめなんだよ、それじゃあ。やるなら全国とか行くくらい真面目にやりたかったし」
「そっか…」
「うん。だから、後悔はしてないよ」
それだけバレーを大切に思っているって事が伝わってくる、真剣な眼差し。
- 414 名前:ニッポン・チャチャチャ 投稿日:2003/11/11(火) 00:30
-
やっぱり勝てないのかな、私。
比べるものじゃないことくらいわかってるけど、少し妬けてくる。
「それにね、バレーよりもずっと好きなもの見つけたし」
「バレーよりも?」
「うん。比べものにならないくらいね」
それって仕事のことだろうね。
ということは、私は仕事・バレーボールの次の3番目なのかなぁ。
あ、でも、ゆで卵も好きだし、最近はフットサルも好きだし…。
せめて一桁以内には入れてもらえてるかなぁ。
「梨華ちゃん、どうしたの?
聞かないの?バレーよりも好きなものは何か」
そんなこと、私に質問させるの?
まったく、罪のない笑顔しちゃって。
でもこの笑顔に、私はいつもドキドキさせられちゃうんだから。
ねえよっすぃ〜、こんなにドキドキしてるのは、私だけなの?
- 415 名前:ニッポン・チャチャチャ 投稿日:2003/11/11(火) 00:31
- 「お〜い、梨華ちゃん。聞いてる??お〜〜い、石川さぁ〜〜ん」
ハッと気づくと、よっすぃ〜が心配そうな顔して私の顔を覗き込んでいた。
あまりにも考え込んでしまっていたせいで、
よっすぃ〜が何か言っていたのに気づかなかった。
「え、なに??」
「もう、え、じゃないよ。聞いてなかったの?」
「ゴメン…」
「いや、いいけどさ。たいしたことじゃないし」
「…ゴメン」
そんな私に、よっすぃ〜はニコニコと笑っていてくれるけど、
なんだか自分が嫌になってきてしまう。
結局私は、ポジティブになったって言ってはいるけど、
根本は変わっていないんだよね。
こうやって1人落ち込んでいるし、
今だってそのせいでよっすぃ〜の言葉を聞き逃してるし。
あ〜あ、これじゃあよっすぃ〜の一番になんてなれるわけないよね…。
またしても落ち込んできてしまった私の頭を、優しくなでてくれる手。
その手の感触に安らぎと自己嫌悪を感じていると、
フワッと体全体を暖かく包みこまれた。
「バレーなんかとは比べ物にならないくらい、大好きだよって言っただけだよ」
抱きしめられたまま、耳元で囁くよっすぃ〜の優しい声。
少し言葉がそっけないのは、照れているせい。
でも、私には十分すぎるくらいの言葉。
「ちょっと、聞いてんの?」
「聞いてるよ」
「…なら、いいけどさ」
言ってからもっと恥ずかしくなったのか、余計にそっけなくなるよっすぃ〜の言葉。
だけど、その分愛情が伝わってくる。
- 416 名前:ニッポン・チャチャチャ 投稿日:2003/11/11(火) 00:33
- 「私も、一番好きだよ。よっすぃ〜」
「知ってるよ、そんなこと」
ゆっくりとお互いに体を離して、見詰め合う。
「梨華ちゃん、顔、真っ赤だよ」
「よっすぃ〜だって」
二人して同時にプッと吹き出す。
「梨華ちゃん、耳まで真っ赤じゃん」
「うるさいなぁ〜。よっすぃ〜なんて首まで真っ赤だよ」
なんて言い合って笑って。
こんなに幸せな時間を共有できるんだから、
よっすぃ〜の気持ち疑っちゃいけないよね?
こんなによっすぃ〜が大切にしてくれているのは、私だけだって思ってていいよね?
自惚れじゃないよね?
でもやっぱり、よっすぃ〜にとってバレーボールは大切なものだっていうのは変わりないと思うし、
自分と比べて勝ち負けとかじゃなくて、
そういう気持ち大切にしてほしいって思う。
それにね、バレーのおかげで私の知らないよっすぃ〜の顔、いっぱい見ることできたから
だから、この期間だけバレーボールによっすぃ〜を譲ってあげよう。
それでもっともっととびきりの笑顔が見たいから、私も一緒になって応援するよ。
ガンバレ、ニッポン。
〜fin〜
- 417 名前:ポー 投稿日:2003/11/11(火) 00:35
- 初めての石川さん視点でした。
そして、不純な応援動機。
いや、ただ自分がワールドカップにはまってるっていうだけなんですけどね。
お暇でしたら、読んでみてくださいまし。
- 418 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/11(火) 05:16
- おもしろーい。
タイムリーで甘甘、ニ度おいしい。
初レスですが吉澤共和国大好きっす。
- 419 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/11(火) 23:14
- ポー様 の文章、本当、好きです!! 読みごたえがあるし。
私も バレー・涙しながら見てますよ〜。
いしよし話・又読みたいです・・
- 420 名前:ROM読者 投稿日:2003/11/12(水) 01:59
- 更新お疲れ様です。
去年の24Hテレビでモスクワ5輪当時の選手に囲まれて
嬉しそうなよっすぃ〜の顔を思い出しました。
- 421 名前:ポー 投稿日:2003/12/03(水) 00:56
- 418>>名無し読者さま。
初レス、ありがとうございます。
これからもだらだらと書いていきますので、よろしくお願いします。
419>>名無し読者さま。
読みごたえ…ありますか?(w
でも、そういってもらえると嬉しいので、調子にのってまた書いてしまうんですよね。
有難いお言葉です。申し訳ないです・・・。
420>>ROM読者さま。
どうやらツボが近いようですね(w
そんなよっすぃ〜を見てたであろう、石川さんを妄想してみました。
遅くなってしまいましたが、ありがとうございました。
また、良いネタを見つけていきたいと思います。
- 422 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/25(日) 00:52
- 「うぁ、お疲れしたぁ〜」
「明日寝坊しないでよ、なっちぃ」
「あれ〜?矢口さんはぁ?」
「ラジオ行ったでしょ?」
「あ〜、今日もいっぱい食ったぁ〜」
「3回公演はきっつぅ〜。体痛いっつーの」
「もうだめぇ〜、なっち起きてらんないべ〜」
バラバラと車から降り立ち、人気の少なくなったホテルのロビーに7人の娘。
思い思いに言いたい事喋って、人の話なんてほとんど聞いていない。
一応分別はついてる年頃なのでなるべく声は小さめにしているが、
うるさいのはご愛嬌。
なんてったって、2日連続のライブでしかも今日は1日で3公演。
疲れがピークに達してて、もう変にテンションが上がっちゃってる。
今だってこの7人で焼肉食べに行って喋り疲れてるのに、
興奮状態がなかなか治まらないとこだ。
- 423 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/25(日) 00:55
- 「よっちゃん、よっちゃん」
この集団の先頭きって歩いているあたしの両腕に、
右にあいぼん左にののがぶら下がるように腕を絡めてきた。
「ちゃんと梨華ちゃん起こしといてよ〜。えへへぇ〜」
にま〜と笑って、口をあいているほうの手で押さえるあいぼん。
「さっきね、『部屋帰ったらすぐ寝ちゃお』とか言ってたよ、梨華ちゃん。
のんの隣で、すっごい眠そうだったもん」
左側からは、ののがあたしの腕を引っ張る。
「おう、まかせとけって」
そう返事して、二人の顔を交互に見る。
そんな二人の顔は、全く眠そうな様子はなくって、ニコニコと元気一杯。
しっかし、元気だよなぁ。
さすがのあたしだって今日はヘトヘトなのに。
明日が特別な日じゃなかったら、
あたしだって部屋戻ったら速攻寝ちゃいたいくらいだよ。
ちらっと後ろを振り返ると、梨華ちゃんはミキティと二人で楽しそうに話している。
そのふたりの後ろには、少し距離を置いてより一層眠そうな安部さんがボーっと歩いている。
ご飯食べてる時はめちゃくちゃ元気だったけど、もうすっかりお疲れな様子。
「あ、でも12時過ぎるまでは入ってくんなよ」
忘れずに、二人にちゃんと釘を刺す。
だってやっぱり、一番最初はあたしでいたいじゃん?
「「うぃ〜っす」」
にやにやしながら、ユニゾンでお返事。
ホント、この二人は息がぴったりだね。
「そうだ。忍び込むのも無しだからね。
忍び込んできたら、ただじゃおかないよ?」
「そぉ〜んなこと、しませんよぉ。ね、のん?」
「ね?」
二人はクスクスと笑いあうと、あたしの両腕から離れて後ろへ走っていった。
- 424 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/25(日) 00:57
- そうこうしているうちに、エレベーター前に到着。
ボタンを押して、扉を見てるだけっていうのもなんなんで、なんとなく振り返ってみる。
すると、「あ〜べさ〜ん」と叫びながら、
もうほとんど歩けずにいる安部さんに飛びついている、ののとあいぼんが目に入った。
そんな二人に、あたしのすぐ後ろにいた飯田さんが、「静かにしなさいっ」と注意する。
それと同時に、「なぁ〜にもぉ〜、びっくりするべさぁ〜」と、安部さんの声。
その声に立ち止まって、クスクスと笑う梨華ちゃんとミキティ。
あたしも一緒になって大爆笑。
そうやってみんなに笑われながらも、
安倍さんは、「あ〜、心臓止まるかと思ったべ」って大袈裟に胸を押さえ、
その隣には、かなり得意げなののとあいぼん。
夜のロビーに私達の笑い声が響く。
もう、こんな光景も見れなくなっちゃうのかな。
笑いながらもふと、そんな思いがこみ上げてきた。
あと1週間後には、安部さんの卒業。
そして半年もすれば、ののとあいぼんの二人が卒業。
いくらまだ12人いるって言っても、この3人が抜けちゃうと急に静かになりそう…。
だって、この3人が娘。のムードメーカーって言っても過言ではないんだから。
安倍さんのお日様のような明るい笑顔。
ののとあいぼんの無邪気でサービス精神旺盛な、明るい笑い。
それらがなくなってしまった時、あたしはすっごい寂しくなるんだろうなぁ。
なんて事を考えているうちに、6人到着。
ちょうどエレベーターの扉が開いて、中から降りて来たおじさんがビックリ顔。
降りようとしたら若い女の子が7人もいたら、そりゃあビックリするよね。
一瞬一歩後ろに下がったもん。
それにもしかしたら、あたし達がモーニング娘。って気づいてたのかもしれない。
ののとあいぼんは、そんなおじさんの様子がおかしくて、
キャアキャア言って笑ってる。ちょっとおじさんのモノマネもしたりして。
それを見てミキティが爆笑して、梨華ちゃんが二人に
「早くエレベーター乗りな」って急かして。
そんなやり取りを見て、カオリンと目を合わせて笑ってしまうあたし。
- 425 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/25(日) 00:59
- 「安部さん?乗んないの?」
エレベーターのドアを閉めようとしたミキティが、
まだエレベーターにすら乗ってない安部さんに気づいた。
「うわぁ、立ったまま寝ちゃってるよぉ」
俯いて立っている安部さんの顔を覗き込んでるあいぼん。
「ほら、なっち、なっち。乗るよ、置いてっちゃうよ?」
カオリンが手を引っ張ると、くた〜っとエレベーターへ転がり込む。
その様子を見て、みんなで大笑い。
そんな安部さんをネタにお喋りしているうちに、目的階へ到着。
「なっち、降りるよ」と言いながら、カオリンが安部さんを引っ張ってエレベーターを降りる。
ホント、この人22歳?
なんて思ってしまうくらい、かわいらしい安部さん。
1人になったら誰も面倒見てくれないですよ。大丈夫ですか?
ぞろぞろとエレベーターを降りると、
「おやすみぃ〜」なんて言いながら各自の部屋に向かって散っていく。
ののとあいぼんは、梨華ちゃんにわからないようにあたしに目配せしながらね。
ちなみに、あたし達大人チームは個室で、辻加護は一緒の部屋。
焼肉は一緒に行かなかったけど、子供チームの子達はみんな2人1部屋だ。
- 426 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/25(日) 01:00
- 今日のこのフロアーは、ハロプロ関係者で貸しきり状態。
ハロプロライブは人数が多いからっていう理由もあるけど、セキュリティの問題もあるから。
つまり、このフロアーで多少大声出しても、一般の方に迷惑をかけることはないっていうこと。
その証拠に、「たん、遅〜い!!」って大声がフロアに響く。
ずっと待っていたのか、あたし達が着いたとたんに亜弥ちゃんが自分の部屋から猛ダッシュ。
「あぁ、起きてたんだぁ。ただいま、亜弥ちゃん」
頬をプーっと膨らませて仁王立ちの亜弥ちゃんに、全然余裕のミキティ。
「そんな大声出したら、寝てる人たちが起きちゃうでしょ」
亜弥ちゃんの頬を人差し指でプスッと刺して、クスッと笑う。
あ〜あ、あんなに優しい笑顔しちゃって。
うちらには絶対見せない、特別な笑顔だよ。
「まだ寝るわけないでしょ、子供じゃないもん」
まだ少し拗ねているけど、亜弥ちゃんの目はもう笑っている。
二人の間には、すっかり甘ったるい空気が流れているのがわかる。
「行こ、よっすぃ〜。邪魔しちゃ悪いでしょ?」
梨華ちゃんがすっと隣に来て、あたしの手を引っ張った。
「だね、あたしも梨華ちゃんと二人っきりになりたいし」
耳元でそう囁くと、「バカ」って、くすぐったそうに笑った。
- 427 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/25(日) 01:01
- お風呂に入った後、梨華ちゃんの部屋へ行く約束をとりつけて自分の部屋へ。
さっさとお風呂入っちゃわないと、あっという間に明日になっちゃう。
携帯の時計を見ると11時ちょっと前。
あと、1時間。
ん?11時?
お風呂の準備をしようとして、ふと思い出した。
そうだ、ちょうど矢口さんのラジオ始まる頃じゃん。
ベッドサイドのラジオをつけると、まだ前の番組がやっている。
今のうちにお湯はってこよーっと。
小走りにバスルームへ行って、戻ってくるとちょうど番組が終わったところだった。
普段はあんまり聞くことは無いんだけど、
(ってそんな言うと矢口さんに怒られそうだけど)今日は特別。
でも時間が無いので、オープニングのフリートークだけ聞いてそのままバスルームへ。
さくっとお風呂入って出てきたら、11時20分。
髪は濡れたままだけど、ま、いいか。
フロントへ電話して、昨日頼んでいたものを12時なったら届けてもらえるよう頼む。
梨華ちゃん、驚いてくれるかなぁ?
あー、楽しみ♪
- 428 名前:ポー 投稿日:2004/01/25(日) 01:03
- 久々の更新です。
石川さん、お誕生日おめでとう(1週間遅れですが・・・)
続きはまた明日です。
- 429 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:30
- 梨華ちゃんの部屋をドンドンとノックして、もう一度時間を確認。
さっき内線かけたら、慌てた声で「あと10分待って!」って言われたから、
もうすでに11時35分。
急がせちゃったかなぁ?なんて思いながら待っていると、ゆっくりとドアが開いた。
開かれたドアからは、まだ髪が濡れたままの梨華ちゃんが顔を出した。
「ごめんね、お風呂ゆっくり入れなかった?」
「ううん、大丈夫」
そう言って「どうぞ」って迎えてくれた。
目の前にいる梨華ちゃんは、まさに今お風呂から出ましたって言う感じ。
ほかほかと湯気が見えてきそうなくらい、顔も火照ってる。
『ぽっぽっぽっぽ〜体がほってってるぅ〜♪』
さっきお風呂にお湯をはってる間に聞いた、
矢口さんのラジオを思い出す。
『ほてってる』っていう、矢口さん自作の歌らしい。
疲れてかなりキテるよね。
だいたい、タイトル安易すぎ。
「なに、笑ってんの?」
思い出し笑いしているあたしに、不審顔。
クイッと首をかしげて顔を覗き込んでくるもんだから、
フワッと石鹸の香りが鼻先をくすぐる。
フローラルの香り?みたいな、甘い、心地よい香り。
それでもって、お風呂上りの梨華ちゃん。
もう、完璧な条件揃ってる。
やっべえ、抱きしめたくなっちゃうよ。
「なになに?」
目を細めてあたしの返事を待っている感じが、またかわいい。
「さっきね、矢口さんがね、変な歌歌ってたんだよ。ラジオでぽっぽっぽっぽっぽ〜ってね」
抱きしめるのはちょっと我慢して、ラジオをつける。
ラジオからは、矢口さんがリスナーの子と話をしているのが流れてくる。
申し訳ないけど、音量は小さめ。
少し照明が暗めの部屋に、矢口さんの笑い声が小さく響く。
- 430 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:31
- 「髪、乾かしてきなよ。待ってるから」
梨華ちゃんの濡れた髪を指先でつまんで、自分の鼻元へ持ってくる。
目を閉じてすぅーっと鼻で息を吸うと、シャンプーと梨華ちゃんの香りがあたしの中に入ってくる。
そしてゆっくりと目を開くと、梨華ちゃんがクスッと笑ってあたしを見つめている。
「でも、なるべく早く戻ってきてね」
上目遣いで梨華ちゃんを見つめると、
少し照れたように、もう一度クスッと笑ってバスルームへ入っていった。
- 431 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:31
-
- 432 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:32
- 「…ぃ〜」
「…すぃ〜?」
「よっすぃ〜」
軽く肩をポンポンと叩かれる感覚と、梨華ちゃんの甘い声が耳元で聞こえる。
ハッ、やばいっ!!
ガバッと起き上がると、「キャッ」と梨華ちゃんがびっくりして後ろへ下がった。
「今、何時っ!」
返事を待たずに、ポケットから携帯を取り出す。
23時59分。
「やっべぇ〜、セーフッ」
急いでベッドから飛び降りて、梨華ちゃんの目の前に気をつけして立つ。
そんなあたしの様子を見て、小首を傾げる梨華ちゃん。
もう一度時間を確認。
……よしっ、0時!!
あっ!
慌てて左手でポケットを探って、小さな四角い箱が入っているか確かめる。
よし、こっちもOK。
「えっと、梨華ちゃん…」
『梨華ちゃん、オメデトー!!!!
ハッピーバースデー!ハッピーバースデー!!』
あたしの言葉を遮って、ラジオからでっかい声が。
- 433 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:33
- ……やられた。
せっかくボリューム小さくしてたのに、矢口さん声でっかすぎ。
「ハァ……」
せっかく色々考えてたのに、なんだか気が抜けちゃったよ。
思わず再びベッドに座り込んでしまう。
ラジオからはまだまだハイテンションで『おめでとう』を言ってる矢口さん。
梨華ちゃんもその声に、無邪気に喜んでいる。
「や〜ん、まりっぺうれしい〜」って、ちょっとキショイ言い方で、精一杯喜びを表現。
あ〜、あの時寝なければ、矢口さんに先を越されずに済んだのに。
かなり後悔。
だって、矢口さんがラジオでおめでとう言うのはわかってたから。
約束したんだもん。梨華ちゃんに聴かせるって。
だから一応、矢口さんも0時になってから少しだけ、間をあけてくれたんだから。
あたしが一番最初に梨華ちゃんに言えるようにって。
もう、かなりへこむよ。
なんてヘタレなんだ、あたしってば。
くっそぉ〜。
「よっすぃ〜、どうしたの?」
矢口さんのおめでとう攻撃がひと段落着いて、梨華ちゃんがへこんでるあたしに気づいた。
「ん〜?先に言われちゃったなぁ〜って思って」
「なにが?」
キョトンとした顔して、全く理解してない様子。
よし、ここは気を取り直して・・・。
- 434 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:34
- 「……梨華ちゃん」
もう一度気をつけして、梨華ちゃんの前に立ち直す。
そしてもう一度、左のポケットを確認する。
「19歳、お誕生日おめ…」
『ピーンポーン』
今度は部屋のチャイムがあたしの邪魔をする。
ハァ…もう来ちゃったのかよ。
「だれだろう?」
不思議そうに入り口に向かおうとする、梨華ちゃんの腕を捕まえる。
「ちょっと待って」
「でも…」
「いいから」
入り口を気にする様子の梨華ちゃんの腕をグイッとひっぱって、
もう一度こちらを向かせる。
「梨華ちゃん、19歳のお誕生日、おめでとう」
目を見てそう言って、ゆっくり優しくキスを1つ。
「一番に言えなかったのが残念だけど」
そう言うあたしに、「そんなことないよ」って首を振る。
「直接言ってくれたのは、よっすぃ〜が誰よりも一番最初だもん。ありがとう」
今度は梨華ちゃんから、チュッとお返しのキス。
「でね、コレなんだけど…」
左手からそっと落とさないように丁寧に、小さな箱を取り出そうとしたら…
- 435 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:34
- 『ピーンポーン』
ドンドンドン
「はーい。今行きまーす」
入り口に向かって梨華ちゃんはそう叫ぶと、
「ちょっと待っててね」と言って、パタパタと行ってしまった。
くっそぉ〜、なんなんだよ。
今日のあたしってば、かなりダメダメ…。
ボスッと再びベッドに体を預けて、ポケットから箱を取り出す。
足をブラブラさせながら、その箱を弄ぶ。
う〜ん、意外とプレゼントって渡すタイミングが難しいよね。
入り口の方からは、「ちょっと待ってね」と言う梨華ちゃんの声と、
カチャカチャとチェーンをはずす音が聞こえた。
やっぱり来たらしい。
ま、こっちはあとで渡せばいいや。
では、梨華ちゃんの反応を見に行きますか。
- 436 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:35
- 「「梨華ちゃん、おめでとー!!」」
梨華ちゃんが開くよりも先に、引っ張り開けられたドアから二人登場。
パパンッとクラッカーを鳴らして、ニマーっと笑うののとあいぼん。
「やっだぁ〜、もう梨華ちゃんおばちゃんじゃない」
「ってゆうか、オトナの女?」
「ねねね、よっすぃ〜にチューしてもらった??」
一気にまくし立てて、あいぼんの言葉に「キャ〜」って勝手に二人で盛り上がっちゃってる。
「シー、静かにしなさい」
梨華ちゃんの言うこと聞かずに、「おめでとー」とか、他にも余計な事を叫んでる。
こらこら、梨華ちゃん困っちゃてるでしょ。
苦笑いして、あたしの方に目で助けを求めてきてるし。
でも、本当はすごく嬉しいんだよね。
苦笑いしている割には、すごいキラキラした笑顔だもん。
「はいはい、キミ達、何しに来たのかな?」
梨華ちゃんを後ろから抱きしめて、肩越しに二人に向かって目で合図。
忘れてんじゃないだろうな?ってね。
そんなあたしの視線に気づいた二人は、
ののがドアを押さえて、あいぼんが廊下へと消えた。
待っている間に、コショコショと梨華ちゃんの髪で遊んでいると、
「よっちゃーん。ちょっと…」と、あいぼんの声がして、ののが手招きしている。
- 437 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:35
- 「なんだろうね?」
後ろに立つあたしに顔を向けて、梨華ちゃんが言った。
気になってしまうんだろう。一歩、前へ踏み出そうとした。
「あ〜、なんだろうね。あたし、行ってくるよ」
両手で梨華ちゃんの両肩をポンと叩いて、あいぼんの所へ。
「おぉ、うまそー。でっけー。かっけー!!」
「シーッ、よっすぃ〜」
思わず出てしまった大きな声に、ののからの注意が飛んでくる。
一歩廊下へ出ると、そこにはよくルームサービスとかで使われるワゴンが。
そして、その上にはちょっと大き目のショートケーキがホールで置いてある。
上にはもちろん、『Happy Birthday to RIKA』の文字。
実はコレ、あたしとあいぼんとののからのプレゼント。
ホテルのカフェに、今朝注文したもの。
さっきフロントに電話したのは、これをあいぼん達の部屋へ持って来てもらうように頼んだため。
梨華ちゃんびっくりするだろうねって、3人で考えたんだ。
同期3人からのプレゼント。
「早くよっちゃん、火つけるよ」
「おう、ちょっと待って」
ワゴンの中に用意されているチャッカマンを使って、2人で火を灯していく。
フワーっと、暖かい光があたし達の周りを包み始める。
- 438 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:36
- 「よし、行くよ。せーのっ」
あたしの合図で、パチッとののが部屋の電気を消す。
「「「ハッピバースディ トゥーユー ♪ ハッピバースディ トゥーユー♪
ハッピバースディ ディーア りぃ〜かちゃぁ〜ん♪」」」
3人で声を合わせて、ワゴンを押して部屋の中へ。
「え〜、うそ〜、いや〜」
びっくりした梨華ちゃんが、胸の前に手を組んであたし達を迎えてくれる。
部屋の中も、暖かい19本のろうそくの火の光でいっぱいになる。
「「「ハ〜ッピバ〜スデイ トゥ〜ユゥ〜♪」」」
―さあ、梨華ちゃん吹き消して。
あたし達と一緒に梨華ちゃんは小さく拍手をすると、フゥ〜っと思いっきり火を吹き消した。
パチパチパチと、あたし達4人の拍手が部屋に響く。
「やー、ありがとう。うれしいよぉ〜」
ピョコンピョコンと飛び跳ねながら、「ありがとう」を連発。
のの、あいぼん、そしてあたし、と順番に抱きしめて。
目なんかちょっとウルウルしてて、こんなに喜んでもらえるなんて思わなかったよ。
あたしたち3人も、そんな梨華ちゃんの反応が嬉しくってしょうがない。
お互いに目を合わせて、肩をすくめてVサイン。
- 439 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:37
- その後は4人でケーキを食べて、おしゃべりして。
娘。に入った頃の思い出話や、今だから言える暴露ネタ。
そして、これからの事・・・。
たくさんたくさん、いろんな事を話した。
もちろん、昨日今日のライブの失敗談やメンバーの事も。
気づいたらあっという間に2時間が過ぎていた。
そしてふとしたタイミングでそれまで勢い良く喋りまくっていたのに、
突然沈黙が訪れた。
「・・・・・・寝ちゃったみたいだね」
ポツリと梨華ちゃんは呟くと、ベッドで体を寄せ合ってる
ののとあいぼんの掛け布団を直してあげる。
ケーキを食べた後、二人とも空いてるベッドに入ってそこからお喋りしていた。
「そのまま寝ないでよ〜」
「だいじょぉぶぅ〜」
なんて言ってたのに、やっぱりね。
おなかいっぱいだし、ベッドはあったかいし、二日連続でしかも今日は3回公演だもん。
「ったくぅ、しょうがないなぁ〜」
あたしも梨華ちゃんの右隣に並んで、二人の寝顔を一緒に眺める。
あいぼんの頬をそっと突っつくと、ムニャムニャとくすぐったそうに顔を動かす。
それが面白くって、もう一度突っつくと、またムニャムニャ・・・。
「あいぼん起きちゃうでしょ」なんて、梨華ちゃんは注意してくるけど、
自分だってののの鼻の頭をを人差し指で突っついてる。
そんなふうにしてるのに、ののもあいぼんも全く起きる気配が無い。
- 440 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:38
- 「グッスリ寝ちゃってるね」
目を合わせてクスッと笑い合う。
「いつまでもこうしていたいなぁ〜」
ポツッと呟きながら、梨華ちゃんは二人の前髪をゆっくりと撫でた。
大切な宝物を慈しむように、優しく、優しく。
「ののとあいぼんが卒業しちゃうなんて、ウソみたいだね」
「うん」
あたしの言葉に頷く梨華ちゃん。
ベッドサイドのライトによって、美しくその横顔が浮かび上がる。
ドキッとした。
どこか寂しげで、でもどこか嬉しそうで。
その何とも言えない表情が、いつになく色っぽく見えたから。
19歳の石川梨華がここにいた。
「梨華ちゃん」
あたしは左手を梨華ちゃんの左肩に伸ばして、ギュッと引き寄せた。
- 441 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:38
- 「よっすぃ〜?」
「ん?」
「今日、ありがとね。すっごい嬉しかった」
そう言って、梨華ちゃんは頭をあたしの肩へ寄せた。
「こんな素敵な誕生日、一生忘れないよ」
「うん。でも、お礼はこの二人に言ってね。
昨日ね、同期四人でお祝いしたいって言ってきたんだよ。きっと、最後だからって」
すやすやと眠る二人の顔に、昨日のキラキラとした笑顔が重なって見えた。
昨日この計画を提案しに来た二人は、最初は少し遠慮気味だった。
あたしたち二人で過ごすバースデイの邪魔しちゃ悪いかなって。
でも、そんな素敵な提案、あたしが乗っからないわけがない。
だって、人数多い方が楽しいじゃん?
それに、ののとあいぼんってあたし達にとって特別な存在だし、
梨華ちゃんが喜ばないわけないよ。
そう言ったら二人は、キャアキャア言って喜んでくれた。
でも、確か、
「もちろんうちらはすぐ部屋戻るから、後は二人でごゆっくり・・・」
って、クスクスと意味深な笑いをしていたはず。
・・・結局こうなることはなんとなく予感していたよ。
二人の寝顔を見て、思わず笑みがこぼれてしまう。
- 442 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:39
- 「そうだ、梨華ちゃん」
抱いていた左肩から手をはずして、ポケットに手を突っ込む。
「これ、ホントは19日になってすぐに渡したかったんだけど」
さっきから、『ここから早く出してくれ』って自己主張していた小さな箱を取り出す。
「気に入ってもらえればいいけど・・・」
「え〜、なんだろう?嬉しい」
ガサガサとラッピングをはがす梨華ちゃんの手元を、ドキドキしながら見つめる。
梨華ちゃん、気に入ってくれるかな?
包装紙のなかから顔を出したのは、真っ白い四角い箱。
「何かなぁ?」って目を細めて、ゆっくりと梨華ちゃんが蓋を開く。
「・・・・・・かわいい」
ほうっとため息をつくように一言。
シルバーの小さなお花のピアス。
真ん中に小さなローズクォーツっていうピンクの石がついている。
実はコレ、『恋や恋愛のお守り』って言われてるらしい。
お店のお姉さんがそう言って薦めてくれたんだ。
恥ずかしいから、そんな説明は梨華ちゃんにしないけどね。
- 443 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:39
- 「ね、つけて」
1つを指先で丁寧に摘んで手のひらに載せ、あたしに差し出す。
そして、耳のピアスをはずして、髪を耳にかけた。
「え〜、人のつけるのってなんか怖くない?」
「いいから、つけてよぉ。大丈夫だって」
ほらほらって、甘えたようにあたしをせかす。
でもさぁ、怖いんだよね、こういうのって。
自分のなら全然余裕なのに、人の、特に梨華ちゃんのなんて怖くてやだ。
痛くしちゃうかもしれないじゃん。
「ね、よっすぃ〜がつけてよぉ」
「やだ、怖いもん」
「大丈夫だからぁ。ね?」
笑顔が段々、いたずらっ子みたいな笑顔になってくる。
「あ、面白がってるでしょ?」
「ん?そんなことないよ。ほらほら」
こういう時の梨華ちゃんは、案外しつこい。
あたしの弱味を見つけたときは、ここぞとばかりに攻撃してくる。
いつもはあたしがそうやって梨華ちゃんをからかうから、仕返しにって。
ま、これもあたしの自業自得かも。
だって、梨華ちゃんの負けず嫌いはわかりきってることなんだから。
「・・・しょうがないなぁ。痛かったらちゃんと言ってね」
「うん」
ニコーッと嬉しそうに耳を向ける。
- 444 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:40
- そんな嬉しそうな横顔を見つつ、少し震える手でピアスをつまみあげる。
梨華ちゃんの耳たぶの小さな穴に、そっと、ゆ〜っくり細いチェーンを通していく。
「ね?ぜーんぜん痛く無かったよ」
そう言いながら両方の耳についたプレゼントのピアスを、嬉しそうに鏡でチェックする。
「うん、すっごいかわいい。ありがとう」
「いえいえ。でも、そんなに高いもんじゃないんだけどね」
「そんなの関係ないよ。・・・あれ?」
お礼を言った梨華ちゃんの視線が、あたしの耳でとまる。
「それ・・・」
「うん、お揃いで買っちゃった。嫌だった?」
チラッと髪を上げて、耳につけたピアスを見せる。
「嫌なわけないでしょぉ?」
「そっか、良かった」
「だって、よっすぃ〜、今までそういうのしてくれなかったし・・・」
「うん」
「ありがとう」
今日何回目かわからないくらいの、『ありがとう』を言って、
梨華ちゃんはあたしの肩に頭を寄せた。
- 445 名前:Last Birthday 投稿日:2004/01/26(月) 01:40
- 「よっすぃ〜?」
「ん?」
「十代最後のお誕生日、すっごくすっごく楽しかったよ」
「って言っても、まだ始まったばっかだけどね」
「もう、そうやってすぐあげあし取るぅ」
ピシッてあたしの手を叩く。
「いってぇ〜」
「ごめんね。大丈夫?」
大袈裟にリアクションすると、すぐに心配顔。
「うそ」
「もぉ〜」
そして、今度は膨れっ面。
表情が、子供みたいにクルクル変わって面白い。
そんなふうに、いつもは少しオトナだけど、まだまだ子供みたいなところもあるわけで。
そんなオトナと子供の間の19歳、素敵で楽しい一年にしようね。
そして、十代最後の一年間、一日一日を大切に過ごして行こうね。
それと、同期4人で過ごした最後のお誕生日。
この日の事を絶対に忘れないでいこうね。
梨華ちゃん、お誕生日おめでとう。
〜Fin〜
- 446 名前:ポー 投稿日:2004/01/26(月) 01:43
- 更新終了。
一週間遅れでした。
今日(正確には昨日)なっち卒業の日だっただけに、
このままボツにしてしまおうかとも考えたのですが・・・。
貧乏性なので、載せちゃいました。
お時間があれば、読んでみてください。
- 447 名前:ROM読者 投稿日:2004/01/28(水) 09:34
- 更新お疲れ様です。
ボツだなんてとんでもない!こんな可愛い作品を。(笑)
まるで映像を見ているようにリアルに情景が想像ができて
それぞれのメンバーの思いが伝わってきました。
- 448 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/09(火) 16:08
-
- 449 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/10(水) 00:20
- 『よしこ、ちょっと付き合って』
まだ寝起きの頭で久しぶりに聞いたごっちんの声は、どこか切羽詰ったものを感じた。
「ん〜、いいけどいつ?」
『今日。今から』
「いいけどぉ・・・どうしたの?」
窓の外は、どんよりとした天気。
厚い雲が空をずっしりと覆っている。
雨、降りそうだな。
『・・・ごめん。仕事、大丈夫?』
「夕方からだから。で、ドコに付き合えばい・・・」
『ごめん、すぐ済むから』
あたしの質問には答えたくないらしく、何度も『ゴメン』を繰り返しながら
矢継ぎ早に待ち合わせ場所や時間を決めると、ごっちんは電話を切った。
最後に一言、『ホント、ごめんねー』って無理に明るい声を付け加えて。
何か決意を胸に秘めているような、それでいてどこか不安げな声。
あの、不安定だった時期のごっちんを思い起こさせる。
いつもどこか不安げで、けどそれを見せないようにわざと明るく振舞っていたあの時を。
今にも泣き出しそうな空が、まるでごっちんの気持ちを代弁しているかのようで、
あたしを不安な気持ちにさせた。
- 450 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/10(水) 00:20
-
◇◇
- 451 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/10(水) 00:23
- 電車に乗ると、平日の昼前とあって空席がちらほらと目に付いた。
母親に連れられた小さな女の子のはしゃいだ声が、車内に小さく響いている。
あはっ、か〜わい〜なぁ〜。
思わず笑みがこぼれるあたしを見て、女の子は少し照れて手を振ってくれた。
さっきまでの不安な気持ちを取り除いてくれる、無垢な笑み。
空いている席の1つに腰を下ろすと、
なんとなく向かい側の窓から流れる景色に目を向けた。
ところどころで咲いた梅の花が、もうすぐ春が近い事を感じさせる。
春といえば、卒業。
あたしももうすぐ高校を卒業する。
そして、あたし達娘。にとっても、卒業は特別な意味を持っている。
新しい旅立ちのとき。
次のミライへの出発点。
送り出す側にも、新しいミライが待っている。
- 452 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/10(水) 00:23
- 春。
新しい希望の季節。
あぁ、あたしってば詩人みたい。
かっけーかも。あたし。
雲の隙間から差し込んでいる日差しを、ボーっと見つめる。
ついつい気持ちと一緒に体までゆるくなって、ずりずりと体がシートからズレ下がってくる。
いけねっ。
前にも梨華ちゃんに怒られたんだった。
男の子じゃないんだから、足広げて、浅く座るんじゃありませんってね。
体を起こして、足も閉じて、きちんと座りなおす。
けど、体に力が入らずに、今度はウトウトと眠りがあたしを誘い始める。
あぁ、これだから春って・・・。
- 453 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/10(水) 00:25
- ブルブルブル』
ダウンジャケットのポケット中で、携帯が振るえた。
その振動で、ピクッと目が覚まされる。
梨華ちゃんかな?
今日は梨華ちゃんも午後からの仕事のはずだし、一緒にどこか行こうってお誘いかも。
あ、でも、これからごっちんに会わなきゃだし・・・。
そう思って、取り出してチェックすると紺野からだった。
紺野からメールなんて、珍しいな。
ごっちんから変な電話があったばっかだし、もしかしたら紺野絡みなのかも。
ちょっと引っかかるものを感じて、メールを開いた。
『昨日の夕方から後藤さんと連絡が取れません。何かご存知ですか?』
ごっちんへの気持ちを、いつもまっすぐに向けている紺野。
そんな紺野のごっちんを心配している気持ちが、簡潔だけどその一文で伝わってくる。
『ごっちんと何かあった?』
そう返信すると、びっくりするくらい早く返事が返って来た。
『何も無いです。でも、昨日から電話に出ないしメールも返ってきません。
吉澤さんなら何か知っているかと思ってメールしました』
う〜ん、紺野絡みじゃないのかぁ。
これは会ってみないとわかんないかも。
『ごめん、よくわからない。何かわかったら連絡するよ』
この後の展開がわからないので、紺野にいい加減な返事なんてできない。
送信ボタンを押して、あたしは心配でオロオロしている後輩を想った。
きっと、両手で携帯を握りしめて固まっていることだろう。
それを想像すると、すこし笑えてきた。
あまりにも、『真面目』という言葉が似合いすぎるから。
- 454 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/10(水) 00:26
- メールを送信して、携帯をポケットに戻した時、
ふと、目の前に座っている男性が読んでいる雑誌が目に入った。
週刊の写真誌。
表紙に書かれた白抜きの文字。
嘘だろっ!?
あたしは一瞬、自分の見たものを疑った。
泣きそうな笑顔のごっちん。
無理して明るく装うごっちんの声。
それらが頭の中をフラッシュバックする。
あれから約4年。
あたしが知っているごっちんと彼女が一緒にいた時期は短いけれど、
その時のごっちんの笑顔は、無邪気でとてもかわいく素敵なものだったことを覚えている。
しっぽがついているんじゃないかって思ってしまうほど、子犬のように彼女にじゃれついて。
そんな、キラキラした笑顔のごっちんを見るのが、あたしの楽しみでもあった。
そして、その後のごっちんの苦悩、成長、新しく手に入れた幸せ。
あたしはずっと近くで見てきた。
ごっちんは今、何を考えているんだろう。
また、あの時ように後悔して、自分を責めている?
それとも、彼女を責めている?
もし、ごっちんがあの雑誌を、あの記事を知ってしまったのなら、
ごっちんはあたしを呼び出して、何をするつもりなんだろう・・・?
今更、何を・・・。
胸がギュッと苦しくなる。
あたしには、何もしてあげられない・・・。
さっきまで無邪気な笑い声を車内に響かせていた女の子は、
いつの間にか母親の膝の上で眠っている。
幸せそうな、無垢な寝顔。
その子の頭を、優しく撫でる母親。
穏やかな幸せが、その母子を包み込んでいる。
- 455 名前:ポー 投稿日:2004/03/10(水) 00:30
- いつもとはちょっと趣向が違うので、sageで。
そんなに長くはならない予定です。
- 456 名前:レオナ 投稿日:2004/03/10(水) 16:30
- 更新お疲れです。
なんか、不思議な感じですね。
これからも、がんばってください。
- 457 名前:ROM読者 投稿日:2004/03/12(金) 06:22
- 更新お疲れ様です。
とりあえず、展開を見守りたいと思います。
- 458 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/21(日) 17:18
-
◇◇
- 459 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/21(日) 17:18
- 待ち合わせ場所に着くと、帽子を目深にかぶったごっちんをすぐに見つけることができた。
それほど大きくない街の、それほど大きくない駅前。
まばらな人通りの中、ごっちんは何をするでもなくただ、すぅっと立っていた。
ミュージカルをやっていたせいか、また一段と痩せた体。
コートを着ていてもわかる、肩の細い線。
なんだか、消えちゃいそうだ。
早く捕まえないと、どこかへ行ってしまいそうなほど儚く見える。
「ごっちん」
すぐ傍まで近づいて声をかけると、ごっちんはあたしに顔を向けてフニャッと笑った。
右手を軽く上げて、悪いね〜って。
いつもより、更に力の無い笑顔。
悩みがある時や元気が無い時によく見せる作り笑顔。
あたしにはそんな気を使わなくてもいいのに・・・。
- 460 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/21(日) 17:20
- 「髪、すっごいキンパツだね。キラキラしてるよ」
ごっちんは、帽子からはみ出したあたしの髪にゆっくりと触れた。
いつもと同じような会話。
わざわざしようとしているのが痛いほどわかる。
「ごっちん・・・」
「ごめんね、いきなり呼び出して」
フッと目を足元に逸らして、ごっちんは小さく呟いた。
あたしからは、寂しげに笑った口元しか見えない。
「どーしたんだよぉ、暗いぞぉ?」
わざとらしく明るい、あたしの声が空々しく響く。
あれ?
やっぱり、反応なしか。
あたし達二人の間を、少しの沈黙が訪れた。
聞こえるのは駅前にあるパチンコ屋さんから聞こえる、
安っぽいジャラジャラとした音だけ。
「来て」
そんな沈黙を嫌うかのように、ごっちんはスタスタと歩き始めた。
「ごっちん?」
どこへ行くんだろう?
声をかけようとしたけど、
ごっちんの背中は全てをシャットアウトしているかのような雰囲気。
かなり早足で、すでに数メートルも距離が開いてしまっている。
こんな時何を言っても仕方がないことは、今までの付き合いで百も承知。
黙ってついていくしかない、か。
さっさと諦めをつけて、
すでに歩き始めているごっちんの後を追った。
- 461 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/21(日) 17:21
-
あたしたちは小さな商店街を通りぬけ、やがて住宅街へと入っていった。
来たことの無い、ごく平凡な東京のはずれの小さな街。
住宅街ならではの、昼前のひと時が静寂で包まれている。
すれ違うのは主婦っぽい女性か老人ばかり。
そんな中を十代のあたしたちが歩くのは、不自然なんだろう。
しかも、わき目も振らずテクテクと。
すれ違う人たちが、チラッとあたし達に目を向けているのがわかる。
なぁ〜んか、気まずいなぁ。
思わずあたしはキョロキョロしてしまう。
だって、明らかにあたし達って浮いてるもん。
でも、そういった視線や周りの風景などは全く目に入っていないかのように、
ごっちんは、ただひたすら思いつめているかのように足早に歩いていく。
何度も来たことがあるかのように、迷うことなくまっすぐと。
ごっちんの背中、いつもよりもずっと小さく見えるよ。
ねえ、その小さな体で、何をそんなに思いつめているの?
心の中でそう問いかけて、
ごっちんとの距離を縮めるためにあたしは小走りで後を追った。
- 462 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/21(日) 17:24
-
◇◇
- 463 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/21(日) 17:25
- 大通りが見えてきて、交差点に差し掛かった時、突然ごっちんが立ち止まった。
突然電源を切られてしまったロボットのように、本当に突然、ピタッと。
どうしたの?信号、青だよ。
隣に並び、そう声をかけようとしてあたしは息を飲んだ。
ごっちんの視線の先、道路を挟んで向こう側に懐かしい姿があったから。
「市井さ・・・」
思わず口をついて出た言葉を、慌てて飲み込んだ。
やっぱり、ごっちんはあの記事の事を知っていたんだ。
でも、何を・・・・・・。
横目でごっちんの様子を見ると、
顔をまっすぐ前へ向け、下ろされた拳をギュッと握って唇を噛み締めている。
目は帽子に隠れてしまっているけど、
きっと視線を逸らさずに彼女を見つめているんだろう。
- 464 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/21(日) 17:29
- 左手に買い物袋を抱えて、大き目のパーカーを着て歩いている彼女。
少しふっくらして、あの頃の、人に胸の内を見せまいとする尖った面影はない。
時折右手をお腹に当てては、優しい笑みを浮かべている。
その表情は、さっき電車の中で見たお母さんと同じ愛しいものを見守る表情。
電車の中であの雑誌の見出しを見たとき、ガセネタだろって一瞬考えた。
でも、その考えは彼女の表情や仕草によって否定された。
・・・本当だったんだ。
そのようにひとりでヒョコヒョコと歩いている彼女の姿を、
じっと見つめているごっちん。
思わず右手を彼女に向かって伸ばしかけ、空を掴む。
握った右手は、あたしから見ても強く硬く握られているのがわかる。
「・・・情けないね」
そしてそんな自分を、ごっちんは鼻で笑った。
「そんなことないよ」
あたしは、そう言うだけで精一杯だった。
もし、愛する人が自分の前から突然消えてしまったら。
そして、別の男の人との子供を宿している姿を見てしまったら。
そう考えるだけで、あたしの胸はキリキリと痛んだ。
ね、ごっちん、帰ろう。
- 465 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/21(日) 17:30
- そう声をかけようとしたその時、ごっちんの足が一歩踏み出した。
信号は点滅し始めているけど、急ぐ様子はなく、むしろゆっくりと。
そして2歩、3歩、横断歩道を渡りかけたとき、
「紗耶香っ」
道路の向こう側で、男の人の声がした。
思わず声のした方を見ると、彼女の後ろから走ってくる若い男性。
その男性を、またしても優しい笑顔で迎える彼女。
当然のように彼女の持っている荷物を受け取り、彼女の手を引いて歩き出す。
傍から見れば、幸せ一杯の若夫婦。
呆然と立ちすくむごっちん。
次第に遠ざかっていく二人。
信号が赤に変わり、信号待ち先頭のタクシーがクラクションを鳴らす。
けど、ごっちんは動こうとはしない。
「危ないよ」
ふと我に返って、横断歩道で立ち尽くすごっちんの手を引っ張る。
フラフラと引っ張られたごっちんは、そのまま倒れこむようにあたしに体を預けた。
その体には全く力が入っていない。
手を離したら倒れてしまいそうだ。
まるで、人形でも抱いているかのような感覚。
あたし、もう見てられないよ。
どうしてわざわざ辛い思いしてまでここに来たの?
「ごっちん、もう帰ろう?」
背中に回した右手を離し、ゆっくりとごっちんの頭を撫でる。
毛先まで手入れの行き届いた、綺麗な栗色の髪が風でなびいた。
- 466 名前:Go to the future 投稿日:2004/03/21(日) 17:31
- 「クッ・・・」
「フィッ・・・クッ・・・ヒック・・・・・」
ごっちんの肩が小刻み震えだし、嗚咽が次第に大きくなっていく。
ボロボロと流れ出す涙。
スルスルっとあたしの両腕からごっちんが抜け落ち、地面へとしゃがみこんだ。
両手で顔を覆って、ただただ肩を震わせている。
さっきまでごっちんを抱いていたあたしの両手が、そのままの形で空を抱いている。
不甲斐なくごっちんの傍で立っているだけのあたし。
こうやって泣き崩れている親友に何もしてあげられないなんて、悔しくなる。
彼女が消えていった街角には、再び走り出した車の音が行き交っている。
しゃがみこんで泣いているごっちんを、通り行く人が訝しげに盗み見していく。
ある人はこっそりと。
また、ある人はあからさまに覗き込むように。
見てんじゃねえよ。
周りを威嚇するかのように睨みまわす。
だって、今のあたしにはこれくらいしかできないから。
- 467 名前:ポー 投稿日:2004/03/21(日) 17:37
- 遅くなりました・・・。
短いですが、更新しました。
>>456 レオナさま。
初めまして、ですね。
こんな駄文ですが、最後まで読んでいってくださいね。
>>457 ROM読者さま。
とりあえず、見守っててください。
いつもありがとうございます。
次回はなるべく早く更新したいです。
- 468 名前:ROM読者 投稿日:2004/03/22(月) 06:47
- 更新お疲れ様です。
先のことなんてわからないけれど、我々が受けた以上に
元メンバー達、特に2、3期の心中は、察するに余りあ
ると思います。・・・彩っぺの時の姐さんのように。
- 469 名前:Go to the future 投稿日:2004/04/20(火) 01:49
-
◇◇
- 470 名前:Go to the future 投稿日:2004/04/20(火) 01:49
- 「よ・・・すぃ〜?」
しばらくして、小さな嗚咽を挟みつつあたしを呼ぶごっちんの声。
顔を向けると、両足を抱えてしゃがんだまま目を真っ赤にして見上げている。
「ん?どした?」
「喉、渇いた・・・ヒック」
「へ?」
「だからぁ、喉渇いたって言ってんのぉ」
今まで泣いていたことへの照れか、頬を膨らませて何故かキレ気味。
そんなトコがかわいいなぁとか思ったりしながら、
「はいはい」って近くの自販機まで歩いていく。
その後ろから「冷たいのね」って注文が飛んでくる。
まったく、わがままなんだから・・・。
「はい。お茶で良いよね?」
「うん。ありがと」
そう言って受け取ると、しゃがんだまま両手で缶を持ってゴクゴクと飲み始めた。
まだ寒いのに、キンキンに冷えてるお茶をイッキしてて寒くないのかな?
コートのポケットに両手を突っ込んで、あたしはその様子をじっと見つめる。
「プハーッ」
一気に飲み終えると、缶を地面に置いた。
カコッと置かれた缶の音がやけに響いて聞こえる。
- 471 名前:Go to the future 投稿日:2004/04/20(火) 01:51
- 泣き癖がついてまだエグエグいいながら、ごっちんは鼻をズルズルとすすっている。
その鼻を手でこするもんだから、鼻まで真っ赤になっちゃって。
なんか、ちっちゃな子みたい。
「なぁ〜に笑ってんだよぉ」
ごっちんは、真っ赤な顔して頬をプクッと膨らませた。
「だってさぁ、ごっちん、かわいいんだもん」
「なんだよぉ、それ。むかつくぅ〜。
ね、ちょっと、手貸して」
両手を広げてあたしへ向かって差し出す。
ん、ちょっと待てよ?
その差し出された手を、じっと見つめる。
「ね、それ、今、鼻拭いた手だよね?」
「んあ?拭いてないよぉ」
「いや、今拭いてたって」
「違うよ、鼻掻いてただけだよ」
口を尖らせて、「ほら、早く」って両手をブラブラ。
「そう?ならいいけどさ・・・」
って言ってもホントはちょっと不満あり。
ポケットから両手を出して、よいしょってごっちんを立たせてあげる。
さりげなく手首を持って。
「くぅあ〜、久しぶりによく泣いたぁ」
ごっちんは立ち上がるとぐ〜っと体を伸ばして、へへっと笑った。
それは、どこかすっきりとした気持ち良さそうな笑顔。
あぁ、さっきの作り笑顔より全然かわいいや。
「よしこ、ありがとね」
あたしの背中をポンポンと叩くと、地面に置いた缶を手に取った。
そしてゴミ箱へそれを捨てると、さっさと歩き始めた。
- 472 名前:Go to the future 投稿日:2004/04/20(火) 01:53
- 「ちょっとごっちん、どこ行くの?」
「あっち〜」
返事とも言えない返事をしながら、来た道とは別の方へと歩いていく。
「ねぇ〜、ごっちぃ〜ん。どこ行くのぉ〜?」
「んあ、もうちょっとぉ」
振り返りもしないで歩調も緩めず、テクテクテクテク。
キラキラ輝く栗色の髪がサラサラとなびいている。
「ねぇ〜、ごっちぃ〜ん」
「うるさいよ、よしこぉ」
「う〜・・・」
だってそんなこと言ったってさぁ・・・、ほらあたしだってこの後予定があるわけだし。
ゴニョゴニョ言っているあたしになんて耳を貸さない。
相変わらず、テクテクテクテク。
「おぁ、あったあった」
突如ごっちんは嬉しそうな声を上げると、
「よしこ、早くぅ」と言って小さな公園へ入っていった。
住宅地の中にある、小さな公園。
入り口は木の陰で薄暗くなっているし、
囲っているフェンスに沿って木がたくさん植えられている。
それはまるで、住宅地の中に現れた小さな森。
中には小さなブランコと砂場、それにいくつかのベンチ。
それだけしかない、本当に小さな公園。
知らなかったらきっと通り過ぎてしまいそうなくらいだ。
ごっちん、何でこんなところ知ってたんだろう?
来たことあるのかな??
- 473 名前:Go to the future 投稿日:2004/04/20(火) 01:56
- さっさと近くのベンチに座ったごっちんは、
足をブラブラさせてあたしを待っていた。
目を瞑ったまま、フニャ〜って微笑んで冷たい風に顔を向けて。
「ホントは今日、ここに来てどうするかなんて考えてなかったんだ」
あたしが隣に座ると、目を瞑ったままごっちんが話し始めた。
「昨日、見たのね、あの雑誌。
なんかねぇ、頭の中真っ白になっちゃって。
ほら、後藤、市井ちゃんと付き合ってた時期あったし」
知ってるでしょ?と、あたしを見て、目を細める。
「市井ちゃんはさ、後藤とかよりもずっと歌に対して思い入れって言うか、
真剣にやりたいっていう気持ちが強かったのね。
娘辞める時にね、いつか同じステージに立ちたいねって言ってた。
なのにさ、その夢も忘れちゃったのって。
何のために、後藤たちは別れなきゃいけなかったのって…」
まだまだ鼻声で、たまに鼻をズルッとしてみたりしてるけど、
あたしから見えるごっちんの横顔は、
怒ってるわけでも悲しんでいるわけでもなく淡々としている。
「しかも相手はバンドのメンバーだよ?ふざけんなってムカついた。
市井ちゃん、バンドでデビューしてもなかなかうまくいかなくて.
ソロも・・・ね。
だから逃げるって言うか、そういうので結婚するなら最低だって思ったの。」
だからさっき、ごっちんから「情けないね」って台詞が出たのか。
あれは市井さんに対してのものだったってこと、
あたし、よくわかってないでいたよ。
- 474 名前:Go to the future 投稿日:2004/04/20(火) 01:59
- 「でもさ、さっきの市井ちゃん見てわかったんだ。
あぁ、今、幸せなんだなって。
後藤も見たことないような幸せな顔してた。
それがね、すっごく嬉しかったんだ。
そしたら、なんだか泣けてきた。
いろんな気持ちがうわぁ〜ってきて。
それでね、ああ、良かったなって」
ゆっくりとベンチから立ち上がって数歩歩くと、
あたしの前でくるっと振り返った
「後藤は、市井ちゃんをあんな顔させられるほど
幸せにはできなかったからね」
おどけたように肩をすくめると、フニャッと笑った。
「そんなこと、無いと思うよ」
「んあ?」
「ごっちんと一緒にいるときの市井さん、優しい顔して笑ってたもん。
新入りのあたし達を見る目とは全然違ってね」
「あはっ、確かに」
あたしの言葉にあの頃を思い出してか、思い出し笑いをする。
「市井ちゃん、超厳しかったもんねぇ。
初めて4期に会ったとき、ガンつけてたし」
「それはごっちんも一緒だよ。
梨華ちゃんマジ泣きしてたんだから」
ひとごとのように笑うごっちんに、あたしは呆れて笑う。
初顔合わせの時の市井さん、敵意むき出しだったし、
ごっちんだって一言も口聞いてくれなかったじゃん。
すっげー怖かったんだから。
「だからね、ごっちんが幸せにしてあげられなかったわけじゃないと思うよ」
あたしもベンチから立ち上がって、ごっちんの前に立つ。
「ほんとにそう思う?」
「うん。そう思う」
「そっかぁ、良かったぁ」
あたしの言葉に嬉しそうな笑みを浮かべると、ごっちんはゆっくり歩き始めた。
- 475 名前:Go to the future 投稿日:2004/04/20(火) 02:03
- 「ここはね、後藤と市井ちゃんがお別れした公園なの」
あたしを中心に、円を描くように1歩1歩ゆっくり歩く。
「別れっていうのは違うかな?
もし、市井ちゃんが後藤と同じステージに立てるようになったら…。
そしてその時、二人の気持ちがまだお互いを想ってたら、また会おうって。
それまではお互い夢に向かって、頑張ろうねって」
「…じゃあその時、市井さんもまだ、ごっちんの事好きだった?」
あたしの問いかけに、ごっちんは「たぶんね」と小さく頷く。
「そうなんだ…知らなかったよ」
だってあの頃、市井さんが一方的にごっちんを振ったってみんな思ってたから。
「うん…たぶん誰も知らないと思う。
市井ちゃんも自分の我儘だって、わざとみんなにそう思わせてたから。
あとに残る後藤のために」
そう言って目を細める。
「嫌いになったから別れるってことじゃなかったから、最初は辛かったよ。
市井ちゃんに会えないこと。
でも、それが普通になって、市井ちゃんを想う日が減ってきて、
市井ちゃん以外の人を好きになって…。
あたし冷たいヤツかもって思ったときもあるよ。
だから、正直ホッとしたんだ、今回のこと。
あぁ、やっと終わったなって。
やっと失恋できたなって……って」
そう言って力ない笑みを浮かべると、再び言葉を続ける。
「ほら、後藤さぁ、物事はっきりしないと気が済まない正確でしょ?
あの時は市井ちゃんの言うこと聞いてあげたいって気持ちが強かったんだけど、
やっぱり心のどこかで納得できてなかったんだよね。
それなのに、他の人のこと気になりだして、好きになっちゃう自分が嫌だった。
だから今まで好きになった人ともうまくいかなかったんだと思うし、
紺野にも気持ちを、はっきりと伝えてあげられなかったんだと思うんだ。
ちゃんと区切りをつけたかったんだよね、きっと。
そこら辺が曖昧になってたから、なかなか前へ進めなかったんだと思う」
- 476 名前:Go to the future 投稿日:2004/04/20(火) 02:04
- 「でもね」
ピタッと足を止めてそう言うと、フワッと笑った。
その瞬間、それまで曇っていた空から一筋の光が射した。
それは、まるでごっちんの中で新しい世界が生まれたかのように。
そう、あたしには見えた。
「でも、これでやっと終わったんだ。
それがわかっただけでも、今日ここに来て良かったなぁって思う」
あの頃と同じくらいの長さの髪が、やっと出てきた陽の光にキラキラ輝いている。
「…そうだね。よかったじゃん、ちゃんと失恋できてさ」
「ふはっ、なんだよ、それぇ」
「失恋、おめでとー」
わざと茶化すように、言ってあげる。
恥ずかしいから言えないけど、本当はうれしいんだよ?
ごっちんがそうやって、いろんな事話してくれたこと。
そして、過去の恋愛から解き放たれたこと。
これからの恋愛に、向き合っていけるようになったこと。
「そうだ、紺野が心配してたよ?ごっちんと連絡とれないって」
「ええ?まじで??っていうかさぁ、紺野ってちょっと心配しすぎなんだよねぇ。
だって連絡してないって言っても、昨日今日だけだよ?」
言葉とは正反対の、ニヤニヤと嬉しそうに緩んだ笑顔。
「しょうがないなー」とか言いながら、早速携帯を取り出してるし。
「ま、あたしがハッキリしてないのが、余計に心配させちゃったんだろうけどね」
肩をすくめてそう言うと、「あー、紺野ぉ?」って話し始めた。
そんなふうに紺野と話しているごっちんは、すっごいかわいい笑顔で「ゴメン」を連発している。
そんなごっちんを見ていると、あたしも梨華ちゃんと話したくなっちゃったよ。
携帯で話してるごっちんを横目に、あたしも携帯を取り出す。
リダイヤルボタンを押して、聞こえてくる呼び出し音。
それさえもが楽しくなってくる。
『もしもし、梨華ちゃん?今から迎えに行くね』
〜Fin〜
- 477 名前:ポー 投稿日:2004/04/20(火) 02:10
- やっと終了。。。
なるべく早めに更新しますって宣言したのに、
いつの間にか時間が経ってました。
最後の更新にこんなにも手こずるとは、自分でも思ってませんでした。
まだ飽きずに読んでくださってる方、
ありがとうございました。
- 478 名前:ケロポン 投稿日:2004/04/20(火) 23:57
- 完結ですか?お疲れ様です。
ごっちんはそんな意味で泣いてたんですね
なんかあったかくなりました
- 479 名前:ROM読者 投稿日:2004/04/22(木) 05:25
- 更新&完結お疲れ様です。
否定するのは簡単だけれど、やっぱり前向きに考えた方が
自分にとってもプラスになるのかな。みんな色々な思いと
葛藤しながら生きているのだから。ラストが微笑ましくて
良かったです。
- 480 名前:ポー 投稿日:2004/06/20(日) 15:38
- >>478 ケロポンさま。
完結でした(w
ごっちんの泣いてる意味、それをうまく伝えられない自分が歯がゆかったです。
>>479 ROM読者さま。
否定してしまえばそれまでなので、それはちょっと悲しいなと。
応援している側の気持ちとしては、やっぱりプラスに考えたいと思いました。
レス、遅くなってすみませんでした。
あっという間に2ヶ月も経ってたんですね。
次は、久々のいしよしです。
- 481 名前:夏祭り 投稿日:2004/06/20(日) 15:40
- 「あ〜、クソあちぃ〜」
20時を過ぎたっていうのに、外はまだまだ暑い。
もうすっかり夏になったんじゃないの?って思っちゃうくらい。
風もないし、体が汗でベトベトしている。
「あ〜、だっりぃなぁ〜」
「そーだね」
暑い暑いって騒いでいるあたしとは反対に、涼しげな返事。
「石川、暑くねーの?」
「暑いよ?」
「なら、いいや」
けれど、半歩先行く梨華ちゃんの背中は、やっぱり涼しげだ。
当たり前だけど、あたしの感じる暑さと梨華ちゃんの感じる暑さっていうのは違うわけで。
なのに、あたしは同じように感じていたいし、感じてもらいたい。
我儘なのはわかっているし、無理なことなのもよーくわかっている。
最近手だって繋いでないし、こうやって一緒に歩くのも久しぶりなくらい。
今まで長く一緒にいたせいか、ちょっと距離が開いてしまうと気まずく感じてしまう。
だから、同じように感じているって実感したいんだ。
この、半歩離れた距離。
それが二人の心の距離みたいでひどく歯痒く感じる。
そんなあたしの気持ちなんて、きっとこの人にはわかんないんだろうなぁ。
- 482 名前:夏祭り 投稿日:2004/06/20(日) 15:41
- 「最近のよっすぃ〜は冷たい」
「最近のよっすぃ〜はどこか遠くにいるみたい」
「最近のよっすぃ〜は…」
口を開けば、そんな言葉ばかり。
反論するのも面倒くさいし、口論は苦手だから黙ってしまう。
でもね、その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。
卒業するのは仕方ないけど、あたしはどこか置いていかれた気分になるわけだよ。
梨華ちゃんはどんどん1人の仕事も増えて、一緒にいられる時間は短くなるし。
それに、どんどんどんどん綺麗にオトナになっちゃって。
物理的な距離と、精神的な距離、両方とも離れていっちゃう気がするんだ。
正直、焦るんだよ。
あたし、このまま梨華ちゃんと一緒にいていいのかなって。
だから、精一杯背伸びして、オトナになろうって頑張って。
仕事もいっぱい頑張って。
与えられたフットサルのキャプテンだって、結構頑張ってるんだよ。
キャプテンだから梨華ちゃんに対して特別な感情を出すわけにはいかなくて、
無理して「石川」って呼んだりしてさ。
そのせいで普通に「梨華ちゃん」って呼ぶのが照れくさくて、
最近じゃ「石川」ってしか呼べなくなっちゃったけど。
あたし、こんなに頑張ってるんですってアピールするのはかっこ悪いけど、
少しくらいは気づいてほしいんだ。
もっと、昔みたいにあなたに近づきたいって思っているあたしの事を、
あなただけには。
- 483 名前:夏祭り 投稿日:2004/06/20(日) 15:42
- 「ねえ、なにか聞こえない?」
半歩前の梨華ちゃんが、パタッと立ち止まって耳に手を当て耳を澄ませて振り返る。
それにあわせて、つい立ち止まってしまう。
やっぱり開いている、半歩の距離。
「え〜、なんも聞こえねーよ」
「ちょっと、ちゃんと聞いてみてよ」
耳を澄ましもしてないの、しっかりバレてる。
まったくもうって笑って、耳に手を当ててあたしに促す。
本当は耳に手を当てなくったって、ちゃんと聞こえてる。
ポンポンと響く太鼓の音に、ピーヒャラピーヒャラとお囃子の笛。
だけど、一応耳に手を当てて見せる。
「ねっ?」
三日月みたいな目で、嬉しそうに笑う梨華ちゃん。
「うん。どっかでお祭りやってるみたいだねぇ」
「行ってみようか?」
「…はい?」
いやいや、ちょっと待ってよ石川さん。
無謀でしょ、それ。
いくら小さなお祭りっぽいからって、人ごみの中は危険じゃない?
テンションが上がりまくってる人ごみで、あたし梨華ちゃん守れる自信ないよ。
「ね〜、だめ?」
上目遣いで首を傾げるその姿に、一瞬クラッと気持ちが揺らぐ。
あたし、この人のこの顔に弱いんだよ。
- 484 名前:夏祭り 投稿日:2004/06/20(日) 15:42
- 「見つかったら大変だよ」
「大丈夫だよ、ほら、二人とも帽子被ってるし」
梨華ちゃんは、やけにツバの広い帽子に手を当てて深く被って見せる。
「ほら、よっすぃ〜も」
ツイっとあたしの目の前に立って、あたしのキャップをグイっと深く被せる。
「見つかったら逃げればいいじゃん。最近お祭りなんて、行ってないし。ね?」
笑顔でそう言うけど、梨華ちゃんの目の奥はちょっと不安げ。
「う〜ん…」
「…やっぱり、やめようか」
何も言わないあたしに、諦めの表情で笑いかける。
昔なら強引にでも、梨華ちゃんはあたしの手を引っ張って行っただろう。
でも、それもできないくらい、あたし達の距離は開いてしまっているのかな。
遠くで鳴るドンドンという太鼓の音が、あたし達の沈黙の空間に鳴り響く。
「…帰ろうか」
クルリと向き直って、梨華ちゃんまた半歩前を歩き始める。
- 485 名前:夏祭り 投稿日:2004/06/20(日) 15:43
- もし、今このまま歩き始めたら、あたしたちの距離って縮まらないかもしれない。
いや、むしろ開いてしまうかも。
そう思った瞬間、あたしは梨華ちゃんの左手首をギュッと掴んでいた。
「行こう」
「え?」
「お祭り」
いきなり手首を掴まれて、梨華ちゃんはあたしの言葉を理解できずにいる。
そんなキョトンとした顔が、これまたよく出来てるくらいにかわいらしい。
そう思うと急に照れくささが出てきて、掴んだ手を思わず離してしまう。
「行こうよ、お祭り。あたし、金魚すくいやりたい」
「見つかったら大変だよ?」
「大丈夫、二人とも帽子被ってるし」
そう言って、あたしはキャップのツバをクイッと上げて見せる。
ちょっとおどけた表情もつけたりして。
「男の人とかに囲まれたら危ないよ?」
「大丈夫、あたしが守るから」
ちょっとクサイかなって思いながら、目を合わせて笑って見せる。
すると梨華ちゃんは、「寒いよ、よっちゃん」なんて言ってクスッと笑った。
なのに「ちゃんと守ってね」なんて小さな声で言う。
「お前の方がクサいよ」
「もう、お前なんて言わないでよ。いつも言ってるでしょ」
「はいはい」
「もう…」
諦め顔でため息1つ。
- 486 名前:夏祭り 投稿日:2004/06/20(日) 15:44
- 「じゃ、行こうか」
さりげなく、さりげなくあたしは左手を梨華ちゃんに差し伸べる。
本当はドキドキしてて、初デートで初めて手を繋ぐみたいに緊張してる。
差し伸べた左手に、あたしよりも小さな右手がスッと入り込んでくる。
何度も何度も繋いできた、心地よい温もり。
やっと、定位置に収まったって感じがして、なんだか胸がキュンとなる。
きっと、これほどまでにあたしの手にピッタリと収まる手は、他にはないだろう。
「や〜、なんか久しぶりだね、手繋ぐの〜」
あたしはこんなにドキドキしてんのに、キャピキャピと喜ぶ梨華ちゃん。
でも、なんか嬉しい。
あたしと手を繋ぐことくらいで喜んでくれることが。
「あっちの方かな?」
照れくさいから、あんまり梨華ちゃんを見ないようにして、音のするほうに歩き出す。
繋いだ手から、あたしの緊張伝わってないよね?
ちょっと心配だけど、ま、いいか。
でもね、梨華ちゃんの喜んでくれてる気持ちはちゃんと伝わってきてるよ。
梨華ちゃんの卒業までの1年間、思っているよりあっという間かもしれない。
今よりももっともっと一緒にいられなくなるし、話だってしにくくなるかも。
だから、言葉に出来ないようなこんな気持ちの時は、また手を繋いでみるのも良いかもね。
そうすれば、物理的な距離だけじゃなくて、気持ちもこんなに近づけるから。
- 487 名前:夏祭り 投稿日:2004/06/20(日) 15:44
- 「ねえ、ほらあそこだよ」
嬉しそうにあたしを見上げる、無邪気な笑顔。
指差す先には、細い道沿いにたくさん並んだ出店たち。
太鼓の音と共に、おいしそうなにおいも漂っている。
「ほら、ちゃんと被って」
「あ、サンキュ」
ちょっぴり背伸びして、梨華ちゃんはあたしの帽子を深く被り直してくれる。
「はぐれないように、ちゃんと捕まっててね」
今度はあたしが手をギュッと繋ぎ直して、ゆっくり人ごみの中へと歩き始めた。
しっかり、離れないで歩いて行こうね。梨華ちゃん。
〜Fin〜
- 488 名前:ポー 投稿日:2004/06/20(日) 15:46
- 短めにサラッとでした。
ご感想などお待ちしております。
- 489 名前:ROM読者 投稿日:2004/06/20(日) 16:10
- 更新お疲れ様です。
多くのファンの気持ちを代弁してくれたように思えました。
ちょっと切ないけれど、でも温かく見守っていきたい。
読んでいてドキドキが伝わってきました。
- 490 名前:プリン 投稿日:2004/06/23(水) 17:22
- 更新お疲れ様でした!
始めましてw
ここのいしよし大好きです。これからも頑張ってくださいね。
思わず卒業の事を…。
でも、4期は永遠ですから。大丈夫ですよね。
切ないけど・゚・(ノД`)・゚・。
次回も更新もマターリ待ってます。
頑張ってください。
- 491 名前:ポー 投稿日:2004/06/30(水) 02:06
- 久しぶりの更新だったのに、すぐにレスがいただけるとはっ(w
ホント、ありがとうございます.
>>489 ROM読者さま。
早速のレス、ありがとうございます。
ホント、あの二人は温かく見守っていきたいですよね。
>>490 プリンさま。
初めましてです。
>ここのいしよし大好きです。
なかなか他の作者さま方のいしよしには追いつけないのが悩みなのですが…。
そう言ってもらえると、最高に嬉しいです。
ありがとうございますっ。
- 492 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:18
-
ねえ、よっすぃ〜。
どうして私を見てくれないの?
こんな近くにいるのに、すっごく遠く感じるよ。
- 493 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:19
- 今日も娘。の楽屋はワイワイガヤガヤ。
いくつかのグループに分かれてはいるけど、笑いの中心には常にあの人。
亀ちゃんやあいぼんたちと遊んでいるけど、なんとなくみんなの興味はあの人に向いている。
変なことでもしたら、部屋のあちこちから笑いがおきていることからもよくわかる。
そんな姿を見て、どこか遠くに感じてしまう私。
いつもムードメーカーで、みんなに慕われている人。
そんな彼女を独り占めなんてできないってことくらいわかっている。
そんなの、何年も前からわかっていたこと。
だから余計に、プライベートの時間に一緒にいられる事がとても嬉しかった。
私だけに向けてくれる優しさ、笑顔、そして甘えてくれるかわいさ。
その全てが愛しくて。
だけど最近、そんなプライベートの時間を一緒に過ごすことすらできなくて、
私の心はざわついている。
- 494 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:19
- 私の卒業が決まってから、私達の周りは緩やかにだけど、確実に変化している。
サブリーダーになることが決まっているよっすぃ〜。
そして、娘から出て行く私。
お互いに持っている意識が、全く反対を向いてしまっているのは否めない。
そして私が卒業したら、休みの日も違うし今より一緒の時間がなくなってしまう。
そうしたら、きっと彼女の気持ちは離れていってしまうんじゃないか。
そう考えると、言いようのない恐怖感が胸に湧き上がる。
最近は体も締まってきて、美少女っぷりを発揮している彼女。
だんだんオトナっぽくなってきて、細かい仕草が女の子らしくなってきている。
(言葉づかいは相変わらずだけど)
恋人の贔屓目を抜いても、やっぱり魅力的な女の子だし、
男の子からの誘いだって、ないわけじゃない。
そんなことを考えると、どうしようもなく落ち着かなくなる。
彼女と仲良くしているメンバーに対しても、嫌な気持ちが生まれてしまう。
そんなに仲良くしないでって。
はぁ、わたしって嫌なやつだなぁ・・・。
- 495 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:20
- そんなふうに落ち込んでいる私の耳へ、大きな笑い声が飛び込んでくる。
「もぉ〜、吉澤さんやめてくださいよぉ〜」
「うははははっ、こんなの、よゆーだよっ。もっといけるよ?」
「いや〜、よっすぃ〜ばっかじゃないのぉ」
ギャアギャアと騒いでいる、おバカなよっすぃ〜とその仲間達。
はぁ、なんだかなぁ…。
思わずため息をついてしまう。
そんな私の気持ちも知らないで、
今度は大声で「麻琴、麻琴ぉ」って麻琴を呼んで、二人でミニコント開始。
年下のメンバーを飽きさせないようにっていう、よっすぃ〜の気遣いなのはわかるけど、
やっぱりどこか胸がザワザワザワザワ。
麻琴は名前で呼んでるのに、どうして私は「石川」なの?
どうして前みたいに「梨華ちゃん」って呼んでくれないの?
どうして私といる時は、そうやって笑ってくれないの?
どうして……どうして…。
あ〜、やだやだ。
1人で考えていると、どんどんネガティブになっちゃう。
だから、たまに二人っきりになれてもいつも文句ばっかり言っちゃうのかなぁ。
最近のよっすぃ〜は冷たいとか、何を考えているかわからないとか…とか……。
本当はもっと仲良くしたいのに。
もっと、昔みたいに笑い合いたいのに。
はぁ〜あ、どうしたらいいんだろう。
- 496 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:20
- そうやって、今日何度目かのため息をついた時、
突然、楽屋のドアが大きな音を立てていきなり開いた。
一瞬静まる楽屋内。
そして入ってきたのは、携帯でケンカ腰のミキティ。
「はぁ?何それ。そんなに美貴の言うことが信じられないの?
美貴がいつ、亜弥ちゃんのことほったらかした?
もし、そんなに信じられないならいいよっ」
楽屋に響き渡るような、それでいてドスの聞いた声。
みんなはいつものことだからって、またお喋りを再開する。
まるで何もなかったかのように。
ミキティは相変わらずケンカ口調で、テーブルを挟んだ私の向かいの席に座る。
椅子に乗せた右足を抱え込むようにして、左手で頬杖つきながら携帯で話す。
それは、まるで夜中にコンビニとかで見かける高校生みたい。
「あぁ…うん」とか頷きながら、かなり不貞腐れた様子。
でも、突然にフニャ〜と緩んだ笑いを見せた。
そして、声のトーンがいきなり変わる。
「…別に、そんなに怒ってないけどさ。…うん。わかってるよ。
…っていうかさぁ、美貴よりも亜弥ちゃんは大丈夫なの?仕事は。
…えっ、マジで?じゃあ、決まりね。…うん。
……うん、わかったよ。…うん。じゃあまたねぇ〜」
電話を切ると、ドカッとテーブルに突っ伏すミキティ。
眠いのかダルいのか、ピターっと目を閉じている。
ミキティの話し方はいつもみたいにぶっきらぼうで、でも声のトーンはどこか甘くて。
いつもケンカをしてても、すぐに仲直りしてより一層仲良くなって…。
今の私には、そんな姿がとても羨ましく思える。
私とよっすぃ〜にもこんな時があったはずなのに、今じゃケンカをするほど会話がないし。
いったいドコですれ違い始めちゃったんだろう…。
- 497 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:21
- 「なぁに、人の顔見てんだよ」
目を瞑っていると思っていたミキティが、薄く開いた目で私を見ている。
というか、睨んでいる。
「ミキティは良いよね、いつも亜弥ちゃんと仲良さそうで」
「はぁ?なに言ってんの?そっちだって仲良さそうじゃん」
バッカじゃないの?とでも言いたげな顔。
「…そんなことないよ」
思わず出てしまった本音の弱音。
いつもだったら、ミキティに弱音なんて絶対吐けないのに。
っていうか、吐かないのに。
ちょっとびっくりしたミキティの表情。
「どうした?よっちゃんと何かあった?」
「何にもないよ」
「…ならいいけど」
「何にもなさすぎるくらいだよ…」
そう、何も、何もない私とよっすぃ〜。
一度出てしまったら、弱音が流れるように出てくる。
絶対に甘えられない相手なのに。
同じ年だからこそ、弱いトコを見せたくなかったのに。
「梨華ちゃん、美貴でよかったら聞くよ?」
そんな、珍しく優しい美貴ちゃんの言葉に、
私の弱ってた気持ちはグラッと揺らいでしまう。
それからしばらくの間、美貴ちゃんに不安な気持ちをぶちまけた。
よっすぃ〜との微妙な距離。
残して行く者と残される者の気持ちのズレ。
サブリーダーとなるよっすぃ〜の邪魔をしたくないからこそ、言えない我儘。
年下の彼女にお姉さんぶりたい、些細なプライド。
こんな状況が続くなら、別れたほうが良いのかな?などなど…。
そんなまとまりなく、前後する私の話を黙って聞いてくれるミキティ。
何かを考えながら、相槌を打ってくれる。
だから、余計に歯止めが利かない。
- 498 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:22
- そうやって一気にまくし立てた後、ミキティはポツリと言った。
「バッカじゃないの。アホくさっ」
えっ?
今まで親身になって聞いてくれてると思ってたのに違ったの?
そんな私を一瞥すると、ミキティはガタンと音を立てて立ち上がった。
「くだらねー。やっぱ美貴には梨華ちゃんが理解できないや。
別にいいじゃん、仕事が別になるくらい。信じられないなら別れれば?
美貴はお互いが信じられなかったら別れるけど」
そう言って立ち去った。
ちょっと、ひどいよ。
なんなのよ。
やっぱり言うんじゃなかったよ。
そんな、美貴ちゃんみたいにパキッと割り切って付き合うなんて
できるわけないじゃない。
「梨華ちゃん」
俯いた私に、戻ってきたミキティが声をかけてきた。
顔を上げると、顎を上げて見下すように私を見つめているミキティ。
その鋭い目に喉の奥がギュット締まる。
「そういうことは、美貴じゃなくて本人に言いなよ。決めるのは二人なんだから」
そう言うミキティの後ろに、状況がわからずキョトンとしているよっすぃ〜が立っていた。
- 499 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:23
- 「よっちゃんさぁ、今日この後の予定は?」
グイッと手を引っ張られて、前へ出るよっすぃ〜。
「え、あ、特にないけど…」
「じゃあ、梨華ちゃんと帰んなね」
有無も言わさない迫力のミキティ。
「いいけど…。じゃあ、まあ、久しぶりに帰ります、か?」
わけもわからず、ミキティの眼力に逆らえずにいるよっすぃ〜。
上目遣いで私の顔を伺う。
私もそれに小さく頷く。
「はい、じゃあもう美貴は解放してもらうよ。
美貴は亜弥ちゃん相手するだけで、もういっぱいいっぱいなんだからさ」
ニヤッと笑みを浮かべると、そそくさとその場を立ち去った。
そんな美貴ちゃんの行き先は、紺野と高橋のいるお菓子コーナー。
さっきまでの迫力はどこへやら、二人とキャーキャー騒いでいる。
それとは逆に、微妙に無口になっちゃう私とよっすぃ〜。
チラチラと視線を合わせては逸らしてしまう。
はぁ〜、これじゃあいつもと同じだよ…。
小さくため息つく私に、苦笑気味のよっすぃ〜。
そして、訪れる沈黙。
もう、だめなのかな、私達…。
- 500 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:23
-
□□□□□□□□□□□□□□□□□□
- 501 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:24
- 仕事も終わって、タクシーを家の少し手前で降りた。
コンビニ行きたかったし、それに少しでも一緒に歩きたかったから。
一緒に歩くのなんて久しぶりで、またも無口になってしまう私達。
タクシーの中では、少しは会話ができてたのに。
この空気が気まずいのか、ほんの少し私の後ろを歩くよっすぃ〜。
並んで歩けずに、半歩だけ開いてしまっている私達の距離。
まるで、今の私達を表しているかのようで、つい目を背けてしまう。
なかなか縮まらない、ほんの少しの距離…。
「あ〜、クソあちぃ〜」
突然沈黙を破るかのように、よっすぃ〜が服をバタバタと煽ぎ始めた。
「あ〜、だっりぃなぁ〜」なんて言いながら。
私も「そうだね」なんて相槌打ってみるけど、本当は心の中はグッチャグチャ。
やっと話すきっかけになりそうだけど、その後に続ける言葉が見つからない。
本当はもっともっと話をしたいのに。
- 502 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:24
- 「石川、暑くねーの?」
「暑いよ?」
「なら、いいいや」
やっぱり短く終わってしまう会話。
どうしてこんなに続かなくなっちゃったんだろう。
前なら、手を繋いでどうでもいい様な事をダラダラと喋ったりしてたのに。
どうでもいい事すら話せなくなるなんて。
最近ではほとんど繋ぐことのない右手を、よっすぃ〜から見えないようにそっと見る。
前に繋いだのはいつだったかなぁとか、考えたりして。
そしてまた訪れる、沈黙。
半歩後ろから聞こえるスニーカーを引きずるような足音が、
近くにいるのに遠く感じてしまう。
そんな聞きなれた足音に混ざって、遠くから微かに聞こえる楽しげな音。
とても優しい気持ちにさせてくれる、懐かしい音。
- 503 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:25
- 「ねえ、なにか聞こえない?」
思わず振り返って立ち止まると、よっすぃ〜も、私に合わせて立ち止まる。
やっぱり開いた、半歩の距離。
「え〜、なんも聞こえねーよ?」
それでも、ちょっと笑った優しい瞳。
「ちょっと、ちゃんと聞いてみてよ」
そんな目で見られると、ちょっとドキッとしちゃうよ。
よっすぃ〜に悟られないように、耳に手を当てて促す。
「ねっ?」
聞こえるでしょ?
ピーヒャラってどこかでお祭りやってる音が。
「うん。どっかでお祭りやってるみたいだねぇ」
特にこれと言った感想がないかのような、飄々としてるよっすぃ〜。
あれ?
楽しくない?
嬉しくない??
どこかワクワクしないの???
それって、私と一緒だからつまらないって事なの?
- 504 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:26
- 「行ってみようか?」
意を決して、誘ってみる。
いつもとちょっと違ったことしてみるのも良いじゃない。
それなのによっすぃ〜は、全くその気がなさそう。
「ね〜、だめ?」
今よりは楽しくなれるかもしれないよ?
また、昔みたいに遊んでみようよ。
仕事のこととか忘れて、ね?
困った顔して私から目を逸らしたよっすぃ〜は、
「見つかったら大変だよ?」って渋い顔。
「大丈夫だよ、ほら、二人とも帽子被ってるし」
だから、お願い。
二人でお祭り行けるの、もしかして最後になるかもしれないんだから。
「見つかったら逃げればいいじゃん。
最近お祭りなんて、行ってないし。ね?」
「う〜ん…」
それでも考え込むよっすぃ〜。
- 505 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:27
- もう、ダメかな。
ふと、そんな気持ちが湧き上がった。
だって、もしうまくいってる二人だったら、
こういう時って一緒に盛り上がるじゃない。
なんていうか、思ってることが一緒。以心伝心っていうの?
なのに、そんな気配すらない私達。
しかも、どこかお互いをけん制しあっちゃってる感じがあるし。
「やっぱり、やめようか」
遠くで鳴るドンドンという太鼓の音が、余計に空気を重くする。
「帰ろうか」
向き直って、再び歩き出す。
急にこみ上げてくる涙。
もう、ダメなの?私達。
何が違っちゃったんだろう。
こんなに好きなのに…。
昔とは違って、ふたりともグループ内での立場があるから?
私が1人で先に卒業しちゃうから?
よっすぃ〜、よっすぃ〜はもう、私のことは好きじゃないの??
涙を流さないように、
頑張って歯を食いしばって足を機械的に前へ進める。
- 506 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:28
- 「行こう」
「えっ?」
聞き慣れた大好きな声と共に、突然引っ張られた左手首。
振り返ると、少し照れくさそうに微笑むよっすぃ〜。
「お祭り」
私の手を離すと、鼻の頭を掻いてもう一度微笑む。
「行こうよ、お祭り。あたし、金魚すくいやりたい」
ぶっきらぼうだけど、優しい声。
「見つかったら大変だよ?」
さっき言われた言葉を言い返す。
「大丈夫、二人とも帽子被ってるし」
キャップのツバを上げて、おどけた表情を見せるよっすぃ〜。
言い返してやったよって感じの、悪戯な笑顔。
「男の人とかに囲まれたら危ないよ?」
「大丈夫、あたしが守るから」
私の言葉に、大袈裟に胸を張る。
「寒いよ、よっちゃん」
そんなこと言ってくれるなんて、嬉しいじゃない。
- 507 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:28
- 「ちゃんと守ってね?」
自分でもクサイかなって思うような事をつい言ってしまう。
だって、本当に嬉しいんだよ。
「お前の方がクサいよ」
「もう、お前なんて言わないでよ。いつも言ってるでしょ」
「はいはい…」
そう、この感じ。
こうやって軽口叩いたりしながらも心が暖かくなる感じは、
やっぱりよっすぃ〜だけ。
離れかけた私を引き止めてくれたのは、よっすぃ〜の笑顔。
私、やっぱりこの人じゃなきゃダメなんだ。
「じゃ、行こうか」
さりげなく差し出された左手。
私だけの特等席。
久しぶりにそこへ収まる私の右手。
「や〜、なんか久しぶりだね、手繋ぐの〜」
嬉しすぎて、涙が出ちゃうかも。
ホント、胸がドキドキしてるの。
やっと帰ってこれたなぁって。
- 508 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:29
- 「あっちの方かな?」
こんなにドキドキしている私には気づいてないのか、
音のする方に歩き始めるよっすぃ〜。
もう、どうしていつもそんなに飄々としてるのよ。
でも、久しぶりに間近で見る笑顔は、とても優しく私だけに向けられている。
ここにいるのは、みんなのよっすぃ〜じゃなくて私だけのよっすぃ〜。
それまで遠く感じていた距離は、グンと縮まった。
「ねえ、ほらあそこじゃない?」
角を曲がったとたんに見えた、明るい路地。
狭い通りにたくさんの出店が並んでいるのが見える。
「ね、ちょっと待って」
お祭りへと足を進めるよっすぃ〜を引き止める。
「ほら、ちゃんとかぶって」
さっき引き上げたキャップを、背伸びして深く被せてあげる。
ちゃんと被らないと帽子の意味ないでしょ?
するとよっすぃ〜は、
「あ、サンキュ」ってかわいい顔して律儀にお礼を言ってくれる。
もう、そんな顔されると胸がキュンってしちゃうよ。
母性本能がくすぐられるっていうの?
- 509 名前:梅雨空模様のち… 投稿日:2004/07/01(木) 21:29
- 「はぐれないように、ちゃんとつかまっててね」
今度はよっすぃ〜が、頼もしくそう言って私の手をギュって握ってくれる。
もう、離さないよっていうかのように。
ぐんぐん引っ張ってくれる、頼りがいのある横顔。
もちろん、私だってもう離さないよ。
これからもずっとずっと、一緒に、ね。
〜Fin〜
- 510 名前:ポー 投稿日:2004/07/01(木) 21:30
-
前のストーリーの、石川さんVer.でした。。。
- 511 名前:ROM読者 投稿日:2004/07/01(木) 23:41
- 更新お疲れ様です。
背景が妙にシュールで更に深みが増したように感じました。
一見ぶっきらぼうな同い年の後輩の優しい気使いが素敵な
エッセンスになっていて良かったです。
- 512 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/25(水) 21:47
- 最高でつ
- 513 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/08/31(火) 01:14
- 「「二人合わせて、ダブルユーでぇ〜っす」」
久しぶりに早く帰れたのでテレビをつけると、
いきなり飛び込んできた二人の笑顔。
「梨華ちゃーん、ちょっと風呂はいるの待ったぁ!」
あたしは慌てて、風呂場に向かって叫ぶ。
「早く早くっ。テーレービー!!」
その声にバスルームからヒョコッと顔を出す梨華ちゃん。
ほらほら、そんなキョトンとした顔してないで早くこっち来いって。
大きく手招きしてるあたしに梨華ちゃんは、、
「お風呂入ろうとしてたのにぃ」ってぶつぶつ言って寄ってくる。
ちょうど服を脱ぎ始めたところだったらしく、
カーディガンを脱いでキャミソール一枚にミニスカートな姿のままだ。
足はもちろん生足で。
ほらほらってあたしの隣に座らせて、テレビを見せる。
すると映し出された我が娘たち。
- 514 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/08/31(火) 01:14
- 「あ、あいぼんとののだ」
「ね?風呂入るの止めて良かったでしょ」
最近、娘。のライブレッスンの毎日。
更に梨華ちゃんは、美勇伝のレッスンまである。
辻加護はWとしての活動で忙しいらしく、たまにメールが来るくらい。
みんな忙しくて、なかなか4人で会うことなんてできない。
こんなに長い間二人が傍にいなかったことなんてないから、そろそろ限界だった。
あたしも梨華ちゃんも、口には出さないけど寂しくて。
たまにふとした会話で二人の名前が出ると、一瞬間が空いてしまったり。
だから、テレビでも二人の元気な姿が見れたのが凄く嬉しい。
テレビを見ている人までも元気にしてしまうような、とびきりの笑顔の二人。
ああ、頑張ってるなぁって、嬉しくなる。
梨華ちゃんもあたしと同じように感じているみたいで、優しい瞳でテレビを見つめている。
テレビに向かって手を振ったり、
「ねーねー、すっごい可愛くない?」
ってあたしの腕を叩いたりして大騒ぎ。
- 515 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/08/31(火) 01:15
- もう、本当のお母さんみたい。
バックで踊っているベリーズ工房と比べてなのか、
「うちの子が一番かわいいわ」
なんて、ハロプロの先輩としてはどうなの?ってな発言まで飛び出して。
まあ、その通りだから仕方ないんだけどね。
「ちょっと、なにニヤニヤしてんのよ〜?」
「べつにぃ〜、なんでもないよぉ?」
「あ〜、なんか変なこと考えてるでしょ?」
「うっせーよ。ほらほら、テレビ見なよ」
そんなこと言い合いながらも、あたしと梨華ちゃんの顔は緩みっぱなし。
歌が終わっても、座っている二人が映る度にソワソワソワソワ。
「あ、のの足開いてる」とか、
「また二人で喋って、司会の人の話聞いてないよ」
とか、二人していちいちチェックまで入れてしまう。
あたしも梨華ちゃんも、それはもう本当の親のような気分。
きっと、あたしたちの本当の親もこんな気分なんだろうね。
- 516 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/08/31(火) 01:16
- 「ね、よっすぃ〜?」
「あ?」
「なんか、疲れたね」
「梨華ちゃんも?」
「うん、よっすぃ〜も?」
「うん」
番組が終わったとたん、どっと疲れが押し寄せる。
二人して顔を見合わせて、なぜか照れ笑い。
あ〜、変な感じ。
「安心したぁ、元気そうで」
梨華ちゃんはそう言うと、あたしの肩にそっと頭を乗せ、
小さくもう一度、「よかった」って呟いた。
- 517 名前:ポー 投稿日:2004/08/31(火) 01:21
- 短いですが、新作です。
あと1回くらいで終わる予定です。
>>511 ROM読者さま。
まだちょっと、藤本さんの扱いにはなれてません(w
褒めてもらえてテンション上がりました。
>>512 名なし読者さま。
ありがとうございます。
なかなか上手く書けませんが、これからも読んでやってください。
- 518 名前:ROM読者 投稿日:2004/08/31(火) 19:34
- 更新お疲れ様です。
ROMもこの二人を見ている時の心境は、殆ど親心かも。
昔の問題児たちも、これから素敵なアーティストとして
歩んで行くことでしょう。
- 519 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:27
-
◇◇
- 520 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:27
- 「ね、梨華ちゃん?」
「ん?」
ゆっくりと瞼を開く梨華ちゃん。
あまりにも気持ちよさそうに目を閉じてるから、寝てるのかと思った。
「あの、さぁ…」
「なに?」
「ちょっと、ドキドキするんですけど…」
「なにが?」
いや、なにが?ってアンタ。
そんな、キャミ一枚で寄りかかられたら、見えるんですけど。
「……谷間」
「えっ?」
あまり慌てた様子なく、自分の胸元を見る梨華ちゃん。
そして、ふんわりと微笑む。
「えっち」
くわぁっ!!
そんな上目遣いで言うなんて、反則だよ!!
あたしの反応を楽しむかのように、ちょっといたずらな三日月目で見つめてるし。
あ、もしかして誘ってる?
誘ってるよね?
誘ってるでしょ、それは。
うん、誘ってる。
間違いない!!
- 521 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:28
- 「梨華ちゃん」
ゆっくりと梨華ちゃんを仰向けに床に倒すと、自分の両腕を床に立てる。
目をゆっくり閉じる梨華ちゃん。
その瞼にゆっくりキスをひとつ。
おでこ、鼻の頭、ほっぺへとキスを落としていく。
そして、唇……。
「…んっ」
少し苦しげだけど甘い吐息が、どちらともなく漏れる。
「なんか、久しぶりだね。こういうの」
梨華ちゃんの額にかかった前髪をそっとどけてあげる。
すこし上気した頬で、微笑む梨華ちゃん。
ゆっくりと両手をあたしの背中にまわす。
「また痩せた?」
ちょっと心配そうなハの字の眉。
「そんなことないよ。ベストをキープ中」
「がんばってるね」
「わりとね」
最近なぜか、放っておくと体重が減ってしまう。
そんなあたしをいつも心配げにチェックする梨華ちゃん。
でもこれはきっと、あたしが大人になるから。
梨華ちゃんがどんどん痩せていったのと、たぶん同じ。
だから、心配いらないよ。
そんな気持ちを込めつつ、今度は首筋へとキスを落とす。
ゆっくりひとつ、そしてまたひとつ…。
- 522 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:29
- 「ね、お風呂入ってから…」
「んあ?」
再び唇へと向かおうとするあたしの唇を、ピタッと掌で押さえる梨華ちゃん。
なんだよ、これからって時に。
…意外と冷静なのね。
「オッケー。とりあえず、おあずけってことで」
梨華ちゃんの背中に手をまわして、起きるのを手伝う。
もちろん、視線は合わせたまま。
ちょっと照れくさそうに、はにかんじゃったりして。
本当、こういうのって久しぶり。
ちょっと前まで危機を迎えてたし、お互い忙しかったから。
でも改めて、梨華ちゃんの温もりが愛しさを増してくれるのを感じる。
やっぱりあたし、梨華ちゃんいないとだめかも…。
「じゃ、先にお風呂入ってくるね」
「うん」
名残惜しいけど、あとでゆっくり…ね。
- 523 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:29
- 〜♪〜〜♪〜
「よっすぃ〜、ケータイ鳴ってるよ」
ちょうど近くにいた梨華ちゃんが、あたしの携帯をホイッと投げた。
「サンキュー」
って表のディスプレイを見ると、『あいぼん』の表示。
「あいぼんからだ」
携帯を開いて梨華ちゃんに目配せする。
嬉しそうに寄ってくる梨華ちゃん。
あたしの肩に手を掛けて、携帯に耳を寄せる。
「もーしもーし?」
『あ〜、よっちゃん?あいぼんだよ』
『ののもいるよぉ』
って二人の声。
でも、なんか変だ。
携帯の外側のスピーカーから聞こえてるっぽい。
梨華ちゃんも、首を傾げて耳をすましている。
- 524 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:29
- 『よっちゃん、テレビ電話!!』
『みーえーなーいよぉ。変な犬が動いてるぅ』
「えっ?って、ああ、ちょっと待って」
携帯を耳から離してちゃんと画面を見ると、あいぼんとののが映っている。
ふたりで目いっぱい顔を寄せて、カメラ位置の取り合い中。
画面の右隅には、二人に送られているあたし側の犬のキャラクター。
「あれ?あ??」
慌ててピピッとボタンを操作するけど、なかなかこっち側が映らない。
だって、テレビ電話とかってあんまり使わないから操作方法忘れちゃったよ。
「ねえ、これじゃない?」
「ちげーよ、さわんなって」
わかりもしないのに梨華ちゃんが手を出すもんだから、余計におかしな事になる。
電話が切れたらどうすんだよ、まったく。
『あ〜、梨華ちゃんもいるの?』
「いるよぉ〜。あいぼ〜ん、ののぉ〜」
こちらに向かって手を振っている二人に、手を振り返す梨華ちゃん。
まだ、こっち側のカメラは映ってないのに…。
- 525 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:30
- 「あ、これだ」
やっと思い出した、操作方法。
ピッとボタンを押すと、右隅にあたしの顔が映る。
『映ったぁ。よっちゃ〜ん』
「あいぼ〜ん」
画面いっぱいに映ったあいぼんに手を振る。
『あのね、今日は早く終わったって紺ちゃんから聞いたの』
『でね、電話してみたの。ね、あいぼん?』
『ねぇ〜』
って二人で顔を見合わせている。
ニコニコニコニコしちゃって、かわいいっつーの、この子達。
「あのね、今観てたよ、テレビ。凄いかわいかったよぉ」
あたしから携帯を奪い取る梨華ちゃん。
もうその顔はグニャグニャに緩みきった笑顔。
『あったりまえじゃん。のんとあいぼんだもん』
ぐわ〜と画面に近づいて、変顔するのの。
鼻の穴とか口とか、いろんなところをドアップで映し出す。
「またぁ〜、そんな顔しないのっ」
「メッ」とでも言いそうな勢いで、ちょっとキモい言い方の梨華ちゃんに
案の定、『キモいよ』と、真顔で返すのの。
「梨華ちゃん、マジでそろそろやめたほうが良いって」
ってあたしの言葉に、ののもあいぼんも頷く。
そして、ちょっと凹みの梨華ちゃん。
- 526 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:30
- 『あれ?梨華ちゃんさぁ…』
ののの隣で笑ってたあいぼんが、顔を画面に寄せる。
「なに?」
『それ、下着?』
『キャー、エッロ〜い』
あいぼんの言葉に、騒ぎ始めるのの。
「ち、違うよ。キャミだもん」
『うっそだぁ。あ、もしかして今よっちゃんと…』
『えっ、えっ、そうなの?そうなの??』
勝手にギャーギャー騒ぎ始める二人。
そして、それをムキになって否定する梨華ちゃん。
更に面白がってからかい始める二人。
ははっ、なんか今までと全然変わんないや。
まあ、そう簡単に変わられても困るけど。
「ちょっとよっすぃ〜、笑ってないでなんか言ってよぉ」
『うわっ、キモッ』
すかさず入るあいぼんのツッコミ。
「ひっどぉ〜い〜」
『あのね、梨華ちゃん。全然かわいくないから』
「ののまでそういうこと言わないでよぉ」
って結局からかわれ放題。
そろそろ助け舟出しとく?
そうしないと後で何言われるかわかんないし。
- 527 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:30
- 「こら、お前たち。母さんを困らせるんじゃないぞ」
『父ちゃんっ』
早速ののがふたすじキャラで乗ってきた。
うんうん、いいね。
さすがうちの子。
『あのさ、父ちゃん?』
「なんだい?ひとすじ」
今度はあいぼん。
やっぱいいね、この空気感。
間だってピッタリあってる。
さすが同期はダテじゃない。
『どしたの?兄ちゃん』
『母ちゃんのココんとこ』
あいぼんが、自分の胸元を指差す。
『キスマークついてるよ』
「「!!」」
パッと胸元を手で隠す梨華ちゃんに、携帯を梨華ちゃんから奪い取るあたし。
きっと二人して顔が真っ赤になってるはず。
だって……ねぇ。
- 528 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:31
- すると、『『ギャハハハッ』』と爆笑している声が聞こえてきた。
『って、うっそぉ〜♪こんな画像で見えるわけないじゃん』
「「!!!!!!っ」」
あ〜、だまされた。
この、クソガキっ。
あ〜あ、梨華ちゃんマジ泣きしそうなくらい顔赤くなっちゃったじゃんよぉ。
『父ちゃん、マジで何かやってただろ?』
『母ちゃ〜ん、父ちゃんと何してたのぉ〜』
『兄ちゃん!オレ、わかんねぇ』
『ふたすじ、兄ちゃんもわかんねぇ』
ってこいつら…。
「ふっざけんなよぉ〜!!」
くっそぉ〜、テレビ電話なんかがあるからいけないんだっ。
こんなもんがあるから…。
「あなたやめてくださいっ」
「止めるな、トメ子」
「いいえ、トメ子は止めません」
携帯を床に投げつけようとするあたしの腕を掴むトメ…梨華ちゃん。
携帯からは『父ちゃんごめんなさーい』って、笑いながら言ってる子供たち。
笑い声、まる聞こえなんだよ。お前ら。
「いいから、貸して。ね、よっすぃ〜?」
なだめるように携帯をあたしから取り上げる梨華ちゃん。
そして、携帯に向かって頬を膨らませる。
- 529 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:31
- 「だめでしょ二人とも。大人をからかわないのっ」
『『は〜い。ごめんなさ〜い』
それでもクスクス笑っているふたりの声。
その後ろから、ふたりを呼ぶマネージャーの声が聞こえる。
『よっちゃん』
「なんだよ、あいぼん」
『あいぼんたちこれからまだお仕事あるんだ。だから行かなくちゃ』
「そっかぁ、大変だね」
あいぼんの横ではののが、『もう帰りたいよぉ〜』って泣きまねしている。
「二人とも、無理しないようにね」
『梨華ちゃんとよっすぃ〜もね』
心配げな梨華ちゃんに、ニカッと笑うのの。
『母ちゃん、父ちゃんと仲良くね』
「あいぼんも、ののと仲良くね」
更にいたずらな目でからかうあいぼんに、さらっと微笑む梨華ちゃん。
- 530 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:32
- 『あのねぇ、あいぼんねぇ…』
ののがニヒヒと笑って、あいぼんを見る。
『よっちゃんと梨華ちゃんに会えないから寂しくて電話したんだよぉ』
ののが言い終わる前に、画面にバッとあいぼんが映る。
どうやらののから携帯をひったくったみたい。
『ち、違うよ。ほんと。ただ、時間があまっただけだからね』
顔の前で、手をパタパタ振って、違うって思いっきり否定する。
『ののが寂しいって言ってたんじゃんよぉ〜』
『ちげーよ、あいぼんが言ってたんだよ』
って、電話の向こうで言い合っている。
やっべーよ、すげーかわいいじゃん。こいつら。
その妙に慌てたあいぼんがかわいくて、あたしと梨華ちゃんは顔を見合わせる。
『ほんとに違うから』
そう言うあいぼんの横からは、
『ホントだよー』
って、ののの声。
- 531 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:32
- 「うちらも寂しかったよ。ね?梨華ちゃん」
「うん。また電話してね」
『はーい』
元気のよいのののお返事と、
『うん』
って決まり悪そうなあいぼん。
『じゃあ、のの達仕事行くね』
ののがそう言って、あいぼんをチラリと見る。
『それでは…』
『『ダブルユーでしたぁ〜』』
最後は息ぴったりの二人の笑顔と、Wサイン。
『『バイバーイ』』
という声とともに、プチッと切れる携帯。
- 532 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:32
-
「あ〜…疲れたね」
「うん……」
「元気だね、あいつら」
「ね」
急に肩の力がどっと抜ける。
梨華ちゃんも、くた〜とあたしに寄りかかる。
「梨華ちゃんがさ」
「ん?」
「卒業したら、やっぱこんな感じなのかな?」
ほら、こう、今までと違う距離感?
電話が切れた時の寂しさっていうか、
あれ?今のは現実だったの?みたいな、さ。
「わたしとよっすぃ〜は、また違うでしょ」
後ろからキュッとあたしを抱きしめる梨華ちゃん。
「わかってるよ」
その腕を、そっと撫でる。
わかってる。
絶対、卒業なんかで離れるもんか。
あたしたち二人の歴史ってものが、短くてもそれなりにあるんだから。
寂しさはあるかもしれないけど、それを乗り越えてこそ…ってもんだ。
負けないよ、あたし。
物理的な距離や、会えない時間なんかに。
- 533 名前:Wの笑顔 投稿日:2004/09/05(日) 19:32
- 「じゃあ、お風呂入ってくるね」
「うん。ごゆっくり」
バスルームに向かう後姿を見送っていると、メールが着信した。
タイトルは『ありがとう』
『久しぶりに話せて楽しかったよ♪
梨華ちゃんとずーっとずーっと仲良くね あいぼん・のん』
おまけの画像は、ののの変顔だった…。
〜Fin〜
- 534 名前:ポー 投稿日:2004/09/05(日) 19:35
- 終了しました。
まだまだ子供であってほしい、辻ちゃん加護ちゃんでした。
>>518 ROM読者さま。
そうですね、まさに親の気持ちになっちゃいますね。
だって、初めて見たとき小学生だったんだから(w
これからの二人の成長が楽しみですね。
- 535 名前:ROM読者 投稿日:2004/09/05(日) 20:20
- 更新お疲れ様です。
はぁ〜、ドキドキした。てっきり始まってしまうのかと・・・
コホン・・・失礼しました。
ROMも仕事をしていて時々実感しますが、色々な面で助け合
える同期がいるって本当にいいものです。
この4人も、変わらず良い関係でいてほしいと思います。
- 536 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/05(日) 21:50
- イイですね〜和みます。
この四人は最高ですね。
- 537 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/05(日) 22:02
- いいなぁ〜いいなぁ〜いいなぁ〜
やっぱりこの四人は最高だよね。
七期のオーディションあるみたいだけど
この四人はまさに永遠に不滅だよ!
後にも先にも無いだろう!w
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