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”フォーミュラー・娘。” Rd.3
- 1 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年06月09日(日)16時26分42秒
- フィンランド人とのクオーターでダメ学生のものです。
緑板(倉庫)の 〜最速娘。伝説誕生〜”フォーミュラー・娘。”
http://mseek.obi.ne.jp/kako/green/1007830858.html
および金板の ”フォーミュラー・娘。” Rd.2
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=gold&thp=1015426332&ls=25
の続編です。
日本を舞台の中心にしたレースものです。
もちろんアンリアルです。
わからなかったり、おかしかったり、つまらない場合など、なにかありましたらカキコしてください。
できる範囲で対応していくつもりです。
あと、基本はsageでお願いします。
- 2 名前:ここまでのダイヂェスト・その1 投稿日:2002年06月09日(日)16時28分03秒
- 国内で1・2を争う人気のシリーズ、全日本フォーミュラー・ニッポン女子選手権、
通称 ”F・娘。”(えふむすめ)は4シーズン目。
○開幕戦・鈴鹿
勝負は序盤から飛び出した吉澤ひとみ、それを追う安倍なつみと後藤真希で争われた。
決着は終盤まで持ち越され、後藤のプレッシャーに負けた吉澤のスピンで決着。
後藤はマカオGP惨敗から立ち直ったことを勝利で証明する。
2位は2代目チャンピオンの安倍。吉澤はスピンで3位に終わった。
○第2戦・もてぎ
スタートから混乱となったこのレース、安倍は1周目で押し出されリタイヤ。
吉澤と後藤がリードするマッチレースとなるが、後藤のリタイヤで決着。
これで吉澤が初優勝。2位はタイヤ交換のタイミングが良かった矢口真里。
3位には後続を押さえきった保田圭が入った。
○第3戦・富士
前戦優勝の吉澤がポールポジションを獲得するも、トラブルでスタートできず。
レースは逃げる先頭集団を、大きく遅れた後藤がファステストで追う展開。
先頭は高橋愛だったがペナルティで脱落。代わって安倍が逃げきって優勝。
最後まで諦めなかった後藤は僅差で2位。石川梨華が初表彰台の3位を獲得。
- 3 名前:ここまでのダイヂェスト・その2 投稿日:2002年06月09日(日)16時28分40秒
- ○第4戦・美祢
酷暑でリタイヤ続出のレースになり、先頭も目まぐるしく入れ替わる。
安倍も先頭に立つがスピンでリタイヤすると、市井紗耶香と後藤の一騎打ちに。
が、後藤はパンクで緊急ピットイン。これで市井が復帰戦優勝を飾る。
2位はピットタイミングであやで上位に進出した石川。3位は着実に走った吉澤が入った。
○第5戦・もてぎ
多重クラッシュで再スタートとなったレース。
序盤に赤旗中断とピットのタイミングから平家みちよが大きくリード。
それを追うのは新型パーツを投入した吉澤と石川。平家も劣るマシンで懸命に逃げる。
結局、終盤に平家をパスした吉澤と石川が1-2フィニッシュ。平家も初の3位表彰台。
○第6戦・鈴鹿
シーズンも終盤、タイトル争いに各チームの思惑が絡む。
飛び出したのは後藤と吉澤。だが、吉澤は高橋に抑えられて後退し、石川と接触してリタイア。
終盤、早いピットインの賭に勝った安倍が後藤とのバトルを征して今期2勝目。
2位は後藤、3位にはルーキーの松浦亜弥。石川はなんとか4位に入る。
- 4 名前:ここまでのダイヂェスト・その3 投稿日:2002年06月09日(日)16時30分53秒
- 最終戦を前にしてのポイントランキングは以下の通り
タイトル争いは上位4人によって争われる。
1 #19 安倍なつみ 29
2 #6 吉澤ひとみ 28
3 #1 後藤真希 24
3 #5 石川梨華 24
5 #20 市井紗耶香 10
5 #55 矢口真里 10
7 #11 保田圭 8
8 #56 飯田圭織 5
9 #3 平家みちよ 4
9 #14 松浦亜弥 4
11 #8 辻希美 3
11 #7 加護亜依 3
13 #2 高橋愛 2
14 #36 稲葉貴子 1
14 #15 小川麻琴 1
第6戦までのエントリーリストは以下を参照
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=gold&thp=1015426332&st=37&to=37&nofirst=yes
最終戦の予選から更新していきます。
マイペースな更新となってしまいますが、みなさまよろしくです。
- 5 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年06月09日(日)16時35分42秒
- …ポイント表ぐちゃぐちゃじゃないか(泣
ということでしつこいけどもう一回
DRIVER'S POINT After RD.6
Pos. No. DRIVER POINT
1 #19 安倍なつみ 29
2 #6 吉澤ひとみ 28
3 #1 後藤真希 24
3 #5 石川梨華 24
5 #20 市井紗耶香 10
5 #55 矢口真里 10
7 #11 保田圭 8
8 #56 飯田圭織 5
9 #3 平家みちよ 4
9 #14 松浦亜弥 4
11 #8 辻希美 3
11 #7 加護亜依 3
13 #2 高橋愛 2
14 #36 稲葉貴子 1
14 #15 小川麻琴 1
第6戦までのエントリーリストは以下を参照
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=gold&thp=1015426332&st=37&to=37&nofirst=yes
- 6 名前:おことわり 投稿日:2002年06月09日(日)16時38分56秒
- 初めに、おことわりを。
実際のフォーミュラー・ニッポンの日程は土・日曜日の2日間となっているようです。
内訳は、土曜に1回の練習走行と2回の予選、日曜に練習走行とメインの決勝レースです。
が、よく調べずに書き始めたために、
話の中では金曜日から公式日程があるような記述をしてしまいました。
よって、ここでは実際の日程を無視して、話とつじつまが合うものとしました。
F・娘。の場合、予選の日程は独自のもので開催している、と解釈してもらえれば幸いです。
ご了承下さい。
- 7 名前:最終戦・富士(予選)-01 投稿日:2002年06月09日(日)16時42分55秒
- 一週前のF1日本GPの興奮さめやらぬ11月初めての週末、F・娘。シリーズも最終戦を迎えていた。
長かったシーズンも晩秋の富士スピードウエイでついに最終決戦。
そのためかサーキットはいつもよりも華やかな雰囲気に包まれていた。
しかし、チームやドライバーは浮かれているわけにいかない。
4つあるタイトルの中、注目の集まる2つはまだ決定していないからだ。
また、タイトルの可能性が無いチームやドライバーにとっても消化試合とはならない。
来期へのアピールはここが最後のチャンス。
少しでも良いところを見せて、来期へつなげていきたい。
もしかすると、思いがけないシンデレラストーリーが生まれるかもしれない。
日本に残ったF1関係者がVIPシートで見守っているからだ。
- 8 名前:最終戦・富士(予選)-02 投稿日:2002年06月09日(日)16時43分58秒
- 公式日程前の木曜日、寺田代表から異例のリリースが各チームとドライバーに向けて出された。
内容は、スポーツマンシップ精神に則り正々堂々としたレースを望む、というもの。
また、著しい逸脱が認められたときは罰則も辞さないとの但し書きも付いていた。
具体的なことは書かれていなかったが、前回のフィラが採った作戦と、
吉澤と石川のアクシデントを示しているのは明らかだった。
後味の悪かった鈴鹿の議論はインターネットで始まり、新聞や雑誌、TVを巻き込んだ大論争となっていた。
モータースポーツは特殊ではあるが、歴としたスポーツであり、そして興業でもある。
特に世間への影響力が大きなF・娘。ではイメージが重要だった。
最終戦、しかもタイトルを決めるレースで同じようなことになったら、それこそ取り返しがつかなくなる。
それだけは避けたいという思惑は、チームも運営側も同じ。
全チームとも、これを承諾する返答をした。
ドライバーズアソシエイションも、これを徹底するとのリリース。
石川と吉澤には会長の飯田から特に強く注意が出されていた。
- 9 名前:最終戦・富士(予選)-03 投稿日:2002年06月09日(日)16時45分18秒
- 注目のドライバーズタイトルを争うのは、件の吉澤と石川を含む4人。
ランキングトップは前戦優勝の安倍なつみ。
それを1点差で追うのは、今期急成長した吉澤ひとみ。
そして、同じ5点差で可能性を残している後藤真希と石川梨華。
この中から4代目のF・娘。チャンピオンが誕生する。
レース前の様子は、四者四様。
相変わらずリラックスしているのは後藤。フィラのピットも雰囲気は和んでいる。
反対に殺気立っているのは安倍の所属するナカザワ。中澤の表情も固い。
その中間といえるのがゴナツヨ。吉澤と石川の仲はコミニュケーションを取るほどには回復していた。
チーム内の雰囲気も悪くはなかったが、以前の笑い声あふれる陽気さでも無かった。
このあたりのいつもと違う空気は、まさに最終決戦の様相。
- 10 名前:最終戦・富士(予選)-04 投稿日:2002年06月09日(日)16時46分02秒
- それとは別に、契約絡みのゴタゴタも起きていた。
長かった免停が解け、このレースから復帰する筈だったEE JUMPのユウキが、
木曜日の夕方に突然解雇されたのだ。
チームオーナーで監督も勤める和田との確執や素行不良などが噂されたが、真相は不明。
しかし、このトラブルでユウキがモータースポーツ界から追放されるのは確実だった。
代わってドライブするのはここまで乗ってきたミカでなく、スポンサーを持ち込んだアヤカだった。
今シーズンは成績も芳しくなく、スポンサーの撤退も確定していたEE JUMP。
これで噂されていた資金難を暗に認めることになった。
噂話に拍車がかかる。チームの売却が決まった。いや、撤退は避けられない、等々。
実際にアヤカの持ち込んだスポンサー…アヤカの親族企業なのだが…が参入を計画しており、
EE JUMPを含む数チームと交渉していたのだった。
アヤカの代役ドライブとスポットでの支援もその交渉の過程で急遽決まったことであり、
交渉を有利に進めたい和田の執念が実ったと言えるだろう。
- 11 名前:最終戦・富士(予選)-05 投稿日:2002年06月09日(日)16時47分55秒
- この時期になると、いつも以上に盛んになるのがストーブリーグ。
来期のシートは上のカテゴリーから決まっていくため、極東の国内選手権が確定するのは遅くなる。
よって、この時期における話の信憑性は噂話レベルのものが多い。
しかし、そうでないものもある。特に、上のカテゴリーが絡む場合は信頼度が高い場合も。
そのひとつ、現在パドックで噂されているのが後藤の来期について。
昨シーズンの段階でF1を含む各種のオファーがあったのだが、それらを蹴った後藤。
それだけに、来期への飛躍が期待されていて、マスコミも質問を繰り返していた。
その波に揉まれたマネージャーが、アメリカを含めた各種のシリーズと交渉していると漏らしたのだった。
すなわちこれは、アメリカ行きの可能性が高いことを意味する。
そしてアメリカといえば、CARTシリーズを連想するのは簡単なことだった。
もちろん、後藤はCARTをへの挑戦を否定も肯定しなかったのだが。
- 12 名前:最終戦・富士(予選)-06 投稿日:2002年06月09日(日)16時49分12秒
- それより精度が落ちるレベルでも、いくつかの飛び交っていた。
吉澤が海外参戦を、それも後藤と同じフィールドを希望しているほか、
安倍にはF1を含むいくつかのオファー、などなど。
また、同じ去る者として少しさみしいのが稲葉貴子の場合。
稲葉はこのレースを最後にフォーミュラーからの引退を表明。
今後は信田と共同運営しているチームで後進の育成に集中するという。
基本的には中澤と同じ立場となるわけだ。
余談だが、中澤がパリ・ダカールラリーに参戦することを発表。
初めてのラリーレイドに挑む中澤。まだまだ情熱はつきない。
- 13 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月09日(日)21時29分48秒
- >余談だが、中澤がパリ・ダカールラリーに参戦することを発表。
待ってました。
関係ないけど・・・サッカー日本は前半いい感じ(w
このままいけ−!!!
- 14 名前:bagel_love 投稿日:2002年06月09日(日)23時26分20秒
- 後藤のアメリカ行き、CARTはやばいんじゃないですか?
HONDAがIRLへの移行を発表したし、TOYOTAも移行の噂があり
存続自体がかなり危うい状態になってますよ。
もてぎはIRLが来年から2005年までのレース開催が決定したようですし。
やっぱり、後藤にはF1に行ってハマサキロッシとケリをつけて欲しいです。
予選楽しみにしてます。
- 15 名前:名無し♂ 投稿日:2002年06月10日(月)16時15分28秒
- 見てるで、最終戦楽しみにしてる
あと私信。たまには顔出して(w
- 16 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年06月13日(木)23時02分10秒
- スウェーデンが予選1位突破でハッピーなミカ・ニネンでございます。
ええ、本当はフィンランドに出て欲しかったんですけど、ま、しょうがないかなと。
日本も勝ててよかったよかった。がんがって予選通過してほしいねん。
>>13 名無し読者 さん
こうやって自分にプレッシャーかけてしまう罠(笑。
最近時間無いために進度が遅くてすみません。パリダカ編は期待せずに待っててくださいな。
>>14 bagel_love さん
そこを突っ込まれるとは(汗
CARTとIRLの関係は知ってますけど、想定したシーズン的にはまだCART優勢なので(笑
ま、その辺のぐちゃぐちゃを記述するのもあれなんで、
この世界ではIRL自体無いことにしちゃおうかなと…ってダメ?
それと、ハマサキロッシとは…まぁおいおいってことで。
>>15 名無し♂ さん
レスどうもです。見られてるのか…ハズカシ(汗
これからも暇があったらおじゃましますね。<私信返し
ということで、この後更新です。
- 17 名前:最終戦・富士(予選)-07 投稿日:2002年06月13日(木)23時04分39秒
- ここで予選のシステムを説明しよう。
予選は金曜日と土曜日の2日間で行われる。
それぞれ、午前の公式練習(60分間)と午後の予選(45分間)というスケジュール。
F1と違い予選枠での周回数制限はない。
この2回の予選走行枠の中で出したベストラップでスタートのグリッドが決定する。
もちろん、最速のタイムを出したドライバーがグリッドの先頭のPPとなり、以降タイム順に並んでいく。
ただし、ピットレーンのスピード違反などのペナルティでタイムが取り消されることもある。
その場合は後方のグリッドからのスタートとなってしまう。
もっとも、それがペナルティなのだが。
- 18 名前:最終戦・富士(予選)-08 投稿日:2002年06月13日(木)23時05分50秒
- 周回数の制限が無い分、タイヤの制限は厳しい。
1イベントで使えるのは、ドライタイヤが4セット、ウエットを3セットとなっている。
また、メーカーはブリヂストンのワンメイク、スペックも統一となっている、
このあたりはコストを制限する意味合いもあるのだが。
タイヤ数の関係から、使い方は自ずと限定されてくる。
ドライ路面の場合、決勝レースにはニュータイヤを2セット残したい。。
スタート時と途中のピットインの交換、それぞれでニュータイヤを使うのが普通だからだ。
結果、予選に使えるドライタイヤは2セットだけになる。
ウエットならばもう少し違ってくるが、大きくは変わらない、
そして、最終戦を迎えた富士の空は晴れ渡っていた。
- 19 名前:最終戦・富士(予選)-09 投稿日:2002年06月13日(木)23時20分06秒
- 土曜日、予選2日目。
注目の最終戦だけあって朝早くから熱心なファンが詰めかけていた。
早くもフラッグや横断幕を持ち出した観客もいるようで、スタンドが目に鮮やかだ。
すでに日程は前日の練習走行と予選1回目を終了していた。
ここまでのトップタイムは後藤真希。続いて飯田圭織、保田圭、吉澤ひとみの順。
そのほか、石川が6位、安倍は8位という結果。
とはいえ、各自ニュータイヤを温存しており、これから行われる予選でタイムアップするのは確実。
ここまでに順位は参考程度に考えた方がよいかもしれない。
事実、チームも予選に向けて緊張が高まっていた。
もちろん、ドライバーも予選に向けて集中していく。
午前10時、2回目の公式練習がスタート。
ピットオープンとともにコースインした紺野を先頭に、
りんね、アヤカ、小川、ソニンといったところが続く。
中堅の矢口や保田、そして注目のトップ4も準備を整えていた。
とはいえこのセッションでの目的はマシンのセットアップがメイン。
各選手ともにピットインとアウトを繰り返してセッティングを煮詰めていく。
- 20 名前:最終戦・富士(予選)-10 投稿日:2002年06月13日(木)23時20分56秒
- 高速コースの富士スピードウェイは、他のコースと空力のセッティングが異なる。
全車とも富士スペシャルとも呼ばれる高速仕様の小さいウィングを装備。
そのため、もてぎで優位を誇ったゴナツヨの新型ウィングもここでは出番がない。
もちろん他チームも鈴鹿で用いたウィングは使わないので、全車が同じ空力パッケージとなる。
(平家のローラも、ここではレイナードとは異なるが高速仕様の小型ウィングである。)
すなわちそれは、マシンの性能差が小さい事を意味する。
同時に、セッティングの差が全てになるため、各選手ともマシンの調整に余念がない。
少しでもタイムが出て乗りやすいマシンに仕上げるべく、試行錯誤が続く。
- 21 名前:最終戦・富士(予選)-11 投稿日:2002年06月13日(木)23時22分15秒
- 中断もなく1時間のセッションが終了する。
昨日からの走行で路面にラバーが乗っているのか、全車が予選1回目のタイムを更新していた。
トップタイムは昨日から好調な後藤真希。2番手は最多の周回数をこなした石川。
吉澤も好調を維持し、4番手のタイムを刻んでいた。
また各車ともタイヤの温存を考慮し、周回は20周前後にしていた。
最多の32周を消化したのは石川梨華。ただしセッティングに悩んだわけでない。
石川は走り込んでマシンを仕上げていくタイプで、常に周回数は多めだ。
逆に少ないのは小川の9周と安倍の10周。
小川はマシントラブルを抱えていたのだが、安倍はノートラブル。
安倍も走り込む方なのだが、今回はなぜか少な目だった。
それだけでなく、走りに今一つキレが感じられない。
セッティングも悩んでいるようだが、周回数が少ないのと関連しているかもしれない。
それでも、安倍がタイトル争いで一番有利な立場にいるのは変わらないのだが。
- 22 名前:最終戦・富士(予選)-12 投稿日:2002年06月13日(木)23時23分34秒
- 予選を前に、マスコミ向けのショートインタビューが開かれた。
対象はルーキーの5人。スポンサーロゴの入った鮮やかなレーシングスーツを身にまとい、
被ってきたスポンサーのキャップを机に置いて着席していく。
不安を隠せない表情もあれば、いつもと変わらない笑みも。
まだあどけなさが残る5人がマイクの前にそろい、フラッシュが閃光を浴びせる中、
最終戦へ向けて一言ずつ答えていく。
「表彰台はフロックじゃないってことを証明したいですね」
自信満々の松浦は5番手のタイム。
いつもと変わらないスマイルでさらりと言う。
「後藤さんの援護しなくていんで、思いっきり走りたいでス」
10番手のタイムを記録したのは独特の福井弁が特徴的な高橋。
松浦を追いかけて、密かに闘志を燃やす。
- 23 名前:最終戦・富士(予選)-13 投稿日:2002年06月13日(木)23時25分49秒
- 「ポイント取れてほっとしました。これに満足しないで次を狙います」
前のレース、終盤で飯田をかわして初入賞の小川はここまで14番手。
地味な印象で過小評価されているのを払拭したい。
「えっと、コースをはみ出ないようにしたいです」
このところ速さを見せつつある紺野は12番手のタイム。
ここまでの最高位は8位。このレースでは何とかポイントを取りたい。
「レースできるだけで幸せです。でも、結果を残さないとですよね」
紺野と同じく、ノーポイントの新垣のタイムは18番手だった。
度重なるバッシングを乗り越えてきた新垣、それをバネにしたい。
次代のスターを決定するルーキー・オブ・ザ・イヤーはの候補はこの5人。
松浦が一歩リードしているが、逆転のチャンスもまだ残っている。
果たして、栄冠は誰の頭上に輝くのだろうか?
- 24 名前:最終戦・富士(予選)-14 投稿日:2002年06月13日(木)23時27分23秒
- 予選の開始時間が刻々と迫っていた。
ピットが緊張感を増し、ドライバーが装備をチェックする。
マシンの最終チェックを済ませ、いつでも発走できるようにするメカニック。
状況を確認し予選の作戦を練るのは、監督を含むチーム首脳。
オフィシャルが持ち場について、時計の針に神経を集中する。
ピットレーンにはコースオープンを待つマシンが2台、紺野とりんね。
出口のシグナルが赤から青に変わりオフィシャルが合図すると、紺野の白いマシンが発進する。
スタートグリッドをかけた、45分間の戦いが開始された。
- 25 名前:名無し娘。 投稿日:2002年06月15日(土)05時41分35秒
- F1でやれる実力のある選手がわざわざCARTをやりたがる理由は何でしょうね?
レーサーというのは可能な限り上のステージで戦いたがる人種だと思うのですが
何か後藤らしい理由がありそうですねぇ。
パリ・ダカ・・・ではストラトスの出番はなさそう(w(どのステージでも無いが)
- 26 名前:bagel_love 投稿日:2002年06月15日(土)22時53分52秒
- >この世界ではIRL自体無いことにしちゃおうかなと…ってダメ?
ハマサキロッシとの、ケリをつけて欲しかったから余計な屁理屈付けただけで
その辺は、一向にかまいませんよ。
だってミカさんの書くお話なんですから、こちらはレスに反応していただける
だけで十分です。
いよいよ、最終戦の最後予選が始まりますね。
なっちの調子が非常に気になります。
- 27 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月16日(日)01時47分15秒
- 今、ル・マン二十四時間耐久レ−スやってる。
- 28 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年06月17日(月)19時52分19秒
- スウェーデンの敗退に傷心なミカ・ニネンでございます。
ぜひぜひ、日本が勝ち進んでセネガルに敵討ちして欲しい…って何か間違ってるね(笑
>>25 名無し娘。 さん
いちおうCARTへの伏線はここまでいくつか張ったんですけど…
後藤らしい理由かっていうとそうでもなかったり(汗
ちなみに、ストラトスはもう出番は無いです…今のところですけど
>>26 bagel_love さん
いえいえ。客観的な意見はありがたいです。このあたりは後々フォローしないとですね。
しかし現実世界ではどうなるんですかね、CARTとIRLは。個人的にはターボが好きなんで(笑
気になるなっちですが実は……(決勝編に続く)
>>27 名無しさん さん
やってますねぇ、ルマン。というかもうゴールしちゃったけど(笑
アウディの3連覇と対照的に、日本人は軒並み運が無かったようで。
これにめげずに来年もがんばって欲しいですね。
ということで、この後、すぐでは無いけど更新です。
- 29 名前:3105 投稿日:2002年06月17日(月)23時20分54秒
- いつも楽しく読ませてもらってます!
アウディ速かったですねえ。あそこまで速いとあんまり面白くないですよね。
あと寺田さんのチームはホントに残念でしたね。
ルマン編やるんですか?楽しみにしてますよ。
- 30 名前:最終戦・富士(予選)-15 投稿日:2002年06月18日(火)00時19分39秒
- 続いて数台がコースインしていく。
しかし、マシンの最終チェックやコース状況の把握が主でまだ本格的なアタックは行われない。
特に、上位陣はみんな周りの様子を見ている状態。
それでも空気は張りつめ、いつでもアタックできるように戦闘態勢で待機。
初めにアタックしたのは、やはり紺野あさ美だった。
シーズン始めのおどおどしたところが無くなり、自分のペースで行動できるようになった紺野。
早めの時間帯から積極的にアタックするのも、彼女なりの一生懸命さだった。
それとともに走りもまとまってきていた。一番の成長株かもしれない。
その紺野があっさり自己ベストを更新。予選2回目ではトップのタイムで、総合でも6番手に浮上。
これを見て他の選手も動き出した。
ピットに戻っていた矢口がコースイン。辻と加護もマシンに乗り込む。
そして注目のトップ4で初めに動いたのは、石川梨華。
ヘルメットを被り、マシンに乗り込む。
- 31 名前:最終戦・富士(予選)-16 投稿日:2002年06月18日(火)00時25分42秒
- 石川の「ホィ!」という合図でスタッフがエンジンを始動。ゆっくりとマシンを進める石川。
残り34分というタイミング。コースは比較的空いている。タイヤはまだユーズド。
ピットアウトの1周目をゆっくりとこなす。
ハンドルを小刻みに切って前輪を、急発進で後輪を暖めながら進む石川。
最終コーナーからスピードをのせてコントロールラインを通過。アタックラップへ突入。
石川のアタックに、多くの注目が集まる。
今回の石川はいつも以上に気合いが入っていた。
もちろん、タイトルがかかっているというのもある。だがそれだけではない。
ここまでのベストグリッドは開幕戦の2位。しかし、以降はチームメイトの後塵を拝している。
一発の速さに欠けると表されているのは、自分でも知っている。
だからこそ予選でPPを獲得し、レースでも優勝する。そう誓っていた。
- 32 名前:最終戦・富士(予選)-17 投稿日:2002年06月18日(火)00時27分54秒
- 石川らしい綺麗なアタックは、ここまでのトップである矢口を上回ってきた。
そのままさらにアタックする石川。タイム的にはまだまだ満足していない。
が、これで決着しないのは誰もがわかっている。ニュータイヤを残しているからだ。
この時点でのアタックは牽制と保険、そして最終調整の意味がある。
さらに自己ベストを更新して戻ってきた石川と入れ替わってコースインしたのは、吉澤ひとみ。
こちらは一回だけのアタックで終了する。タイムは2番手。
石川、吉澤ともにピットでセッティングの変更を行う。
特に石川はセッティングにシビアなことで有名だ。
神経質にオーダーを出して、細かい調整を続ける。
- 33 名前:最終戦・富士(予選)-18 投稿日:2002年06月18日(火)00時29分23秒
- 対照的に、セッティングに寛容なのが後藤真希。
メカニックへの要求も大体こんな感じでね、と大ざっぱ。
これでも、市井の手ほどきでセッティングを気にするようになったのだが。
その後藤がコースイン。一度チェックでピットに戻った後、今度は本当にアタックに入る。
強烈なブレーキングと鋭いターンインは、後藤のドライビングの最大の特徴。
見ているだけで興奮してしまうほど、華がある。
ミスの後、2周目のアタックで自己ベスト更新。そして順位でも石川を抜いていた。
それを見た石川が少しだけ表情を変える。モニタを凝視していた吉澤も眉間を寄せる。
安倍だけはモニタに背を向け、集中を高めていた。
- 34 名前:最終戦・富士(予選)-19 投稿日:2002年06月18日(火)00時31分35秒
- その安倍なつみが不気味だ。ここまでの周回数が少ない。
タイムはそこそこ出ているから、トラブルを抱えているわけでなさそうだ。
しかし、万全でもなさそうで、特に最終コーナーがいまいち。
対照的に、チームメイトの市井は精力的に走り込み、タイムもそこそこ。
実際に、市井は安倍を手助けすべくセッティングを還元していた。
そのチーム・ナカザワの2台が連なってピットアウトしていく。
安倍が前、後ろに市井の順。安倍はこれが初のアタック。
時間は折り返し目前の、残り26分。コースは少し混雑気味。
タイヤを暖めた2台が同時にタイムアタックに突入。
ポイントランキングトップの安倍のアタックに視線が集まる。
- 35 名前:最終戦・富士(予選)-20 投稿日:2002年06月18日(火)00時34分01秒
- ストレートを駆け抜け、1コーナーへ進入。
強烈なブレーキングでホイールの中のローターが焼けてオレンジに光る。
続いてサントリーコーナー、100Rとクリア。ヘアピンでアタックを終えた辻をパス。
絶妙なアクセルワークとライン取りは他の追随を許さない高レベルの安倍。
ダンロップコーナーも縁石をキッチリ使って走る。
そのあとは最終コーナー。入り口は250Rだが奥で150Rへと変化する難しいパートだ。
ここはタイム差の出やすい高速コーナーであることに加え、ストレートの最高速にも影響する。
いわば、富士で一番の攻略ポイントだ。
安倍はここまで最終コーナーの奥でマシンを曲げるのに手こずっている様子だった。
今回のアタックもそれは変わらず。アンダーステアで脱出速度が少し鈍る。
タイミングモニタを見つめる中澤の表情が曇る。
それでもタイムは出ている。吉澤に続く4番手だ。
- 36 名前:最終戦・富士(予選)-21 投稿日:2002年06月18日(火)00時35分43秒
- 予選も折り返しを迎えたところで、トップは後藤。石川、吉澤と続く。
安倍は矢口にかわされたが5番手のタイム。さらに、飯田、辻、保田の順。
やはりランキング上位のドライバーがタイムを上げてきた。
予選順位はポイントに関係しないが、決勝を有利に進めるには少しでも前のグリッドが欲しい。
最後のアタックに向けて、各ドライバーがマシンに微調整を施す。
各車ともニュータイヤを残していた。路面の状況も良くなってきている。
予選終盤での順位変動は十分にあり得るのだ。
残りの20分に、グリッド争いが凝縮される。
- 37 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年06月18日(火)00時48分28秒
- しっかし以前に比べると更新速度めちゃくちゃ落ちたな、自分。
この勢いだと今月中にシーズン終わらせるのは無理っぽいなぁ(泣。
ほんと、遅くてレスがつく度に読んでる方々に申し訳なくなってくる…。
>>29 3105 さん
読んで頂いてありがとうございます。これからもよろしくです。
ルマンのアウディはある程度しょうがないかと。来年以降、対抗できるところが出くればなぁと思う。
今こそ日産とかはチャンスだと思うんだけど…。ま、簡単じゃないけどね。
ルマン編ですが…このペースだと世間が忘れることに書き出せるんじゃないかと(爆
ただ、書いてる人のモチベーションとかもあるんで、断言はできませんよ。
始まったらラッキー♪、ってな程度で待っていて下さい。
では、がんばって週2回更新を目指して、またです〜。
- 38 名前:最終戦・富士(予選)-22 投稿日:2002年06月19日(水)12時00分02秒
- 初めにニュータイヤを使ったのは、矢口真里。残り20分を切ってからのこと。
矢口も必死だ。現在、市井と同ポイントのランキング5位。
タイトルの可能性は無くなったが、途中参加の同期には負けられない。
それに続いて数台がコースインする。もちろん、ニュータイヤを装着してだ。
トップ4も様子を窺う。マシンに満足しいてる後藤はタイヤを交換してタイミングを待つ。
吉澤はフロントの車高を少しだけ下げ、石川はウィングの角度を調整。
安倍は腕組みしてメカニックと対話。リアサスに変更を加えようとしていた。
そんな中、均衡を破ったのは松浦だった。
- 39 名前:最終戦・富士(予選)-23 投稿日:2002年06月19日(水)12時01分52秒
- 12番手だった松浦がニュータイヤで渾身のアタック。
ここまでのベストを上回る初の16秒台、1'16.807を刻んだのだ。
これで松浦がトップに浮上。それを見た各チームが一斉に動き出す。
吉澤、市井、石川が続いてコースイン。後藤もマシンに乗り込んだ。
松浦のタイムに触発されたのは上位陣だけではない。
すでにアタックしていた高橋も16秒台を記録して松浦に続く。
矢口も自己ベスト更新、1'16.602で松浦を抜き総合トップに立つ。
だが、矢口のポジションも安泰ではない。その後方には吉澤ら有力選手が続いている。
予選は残り14分となったところ。コース上はアタックするマシンで溢れていた。
- 40 名前:最終戦・富士(予選)-24 投稿日:2002年06月19日(水)12時04分06秒
- 吉澤のアタックはダンロップでミス、そのままピットへ戻る。
市井は自己ベストを更新、16秒台で3位に浮上。
そのすぐ後ろの石川もベストを刻む。矢口のタイムを0.197上回ってトップ。
連続アタックを敢行していた高橋はソニンに引っかかってしまい不発に終わる。
再びコースインした松浦も自己ベストを更新するが、順位は変わらず。
そのほかのドライバーもコースへ出て、さながらちょっとした渋滞のようだ。
こうなるとアタック中に他のマシンに引っかからないかどうか、という要素が大きくなる。
クールダウン中の高橋に吉澤が引っかかってしまい、ピットに緊張が走る瞬間も。
また、マシンが増えればそれだけトラブルやアクシデントも起きやすくなる。
それが赤旗による中断となることもありえる。
後藤と安倍はそれを見越してか、いまだ大きな動きは見せていない。
残り9分、吉澤が渾身のアタックで1'16.302を叩き出し、トップに躍り出る。
- 41 名前:最終戦・富士(予選)-25 投稿日:2002年06月19日(水)12時07分57秒
- さらに鞭を入れる吉澤、区間のファステストを刻みさらに上を狙う。
が、ここで黄旗が。そしてそれはすぐに赤旗にかわる。
吉澤としては勢いをくじかれる格好になってしまう。
ピットのモニターには、サントリーコーナーを抜けたところに止まっているマシンが。
クリームイエローのマシンはEE JUMP、ゼッケン10のアヤカだ。
ギアボックスの不調を抱えほとんど周回していないアヤカ。
手は施してコースインしたものの、コース上でロックしていまい動けなくなってしまった。
これで回収車が出動、そのために赤旗による中断となった。
この赤旗でかなりのマシンが影響を受けた。
アタックラップに入っていたのは、ファステストを刻んでいた吉澤を含む5人。
そのほか、りんねが赤旗中に平家を追い越してしまった。
これは著しい危険行為として、ペナルティの対象となる。手痛いミスだ。
- 42 名前:最終戦・富士(予選)-26 投稿日:2002年06月19日(水)12時26分31秒
- コースマーシャルによる迅速な作業でマシンが撤収される中、選手は再開に向けて集中を高めていた。
短い中断だが、集中をずっと続けておくには長い。
マシンに乗り込んだままの後藤、すぐに走り出せる状態で待機。
石川もマシンに乗ったままフロントサスの微調整を指示。ヘルメットも気にする。
マシンを降りてリラックスしているのは吉澤。右手にベーグル、左手にドリンクボトルを持って。
安倍もマシンを降りているが、ヘルメットは被ったまま。
騒音の中、中澤と顔と顔を接近させて言葉を交わす。
撤収作業が終わってコースの清掃も終盤にかかる。予選の再開が近い。
ピット出口には何台かのマシンが再開を待っていた。
その中には、ここまで予選をリードしている吉澤と石川、そして今まで動きの少なかった安倍が。
予選は残り8分少々。トップは吉澤、続いて石川、矢口、市井の順。
とはいえ、ニュータイヤと状況の好転に、まだまだ順位の変動はあり得る。
- 43 名前:最終戦・富士(予選)-27 投稿日:2002年06月19日(水)12時28分14秒
- 一番に飛び出したのは紺野あさ美。ここまでのタイムも16秒台目前と健闘している。
そして幻のアタックとなった吉澤が続く。目指すは15秒台だ。
石川も負けられない。マシンのセッティングは万全だ。後は自分の力を発揮するだけ。
その後方、安倍も黙々とタイヤを暖める。今回から使っているクロム仕上げのヘルメットが眩い。
各車適度に間隔をとって一周、コントロールラインを通過してアタック開始だ。
ヘアピンでタイヤをロックさせるミスをしたものの、紺野が自己ベスト。
1'16.929で9番手に上がる。
飯田が区間の自己ベストを出して回ってくるが、最終コーナーでスローダウン。
慌てるピットクルー。原因はガス欠だった。何とかもう一度アタックしたい。
中断で集中を切らしたのか、吉澤のアタックが不発に。ピットへ戻って仕切り直す。
落ち着いた走りの松浦が自己ベストの1'16.055でトップに浮上。さらに連続してアタックへ。
石川が縁石を使いながらダンロップをクリア、らしくないアグレッシブさが意気込みを示す。
最終コーナーを立ち上がる石川、そのタイムに注目が集まる。
- 44 名前:最終戦・富士(予選)-28 投稿日:2002年06月21日(金)20時52分26秒
- が、コントロールラインを過ぎて表示されたタイムは平凡なものだった。
石川の表情が曇る。最終コーナーでシフトミスしてしまったのだ。
まだチャンスはある。集中を切らさないまま連続アタックへ突入。
その後方に注目の安倍がアタックしていた。ここまでは、区間のファステスト。
最後の区間も速い。そして懸案の最終コーナーもまとまっている。
中澤が満足そうにうなずく。ようやく、満足できるアタックをさせられたと。
黒いゼッケン19がストレートに戻ってきた。モニタに表示されているタイムカウントが止まる。
中澤が、吉澤が、そして後藤がそのタイムに注目する。
自己ベストを大幅に更新した安倍。タイムは、1'15.803。
残り5分を切って、15秒台の争いに突入した。
- 45 名前:最終戦・富士(予選)-29 投稿日:2002年06月21日(金)20時55分39秒
- これでピットがさらに忙しくなる。
安倍が叩き出したベストは、状況が良くなっていることを意味していた。
すなわち、まだタイムを削る余地があるということ。
最後のタイムアップを狙って、ほとんど全車がコースに出る。
もちろん、後藤と吉澤も最後のアタックへ。
そんな中、アヤカは窮地に追い込まれていた。
ここまでトラブルの連発でアタックどころかセッティングを決めることすらできていなかった。
なんとか出したタイムは1'22.734だが、この時点でのトップタイムの107%に達していないのだ。
すなわち、このままだと予選落ちである。
今の時点で足りないのは1.625だが、アタックのラッシュでトップタイムが更新されることを考えると、
2秒くらいはタイムを削っておきたい。
しかし、マシンは先のトラブルで乗り捨てていた。
最後の手段としてソニンのマシンを借りてコースインしていた。
セッティングが合っていないが、贅沢は言っていられない。
残り時間は、あと僅かなのだから。
- 46 名前:最終戦・富士(予選)-30 投稿日:2002年06月21日(金)22時34分03秒
- なだれ込むようにマシンがやってくる。
各ドライバーとも、最後のチャンスに賭けてアタックを敢行していた。
その甲斐あってかほとんどのドライバーが自己ベストを更新、順位も乱高下していた。
注目は、トップの安倍のタイムを誰が更新するか。
勢いからいくと、後藤・吉澤あたりが有力だ。
一方で当の安倍は余裕なのだろうか、時間を残してピットへ戻っていた。
安倍が中澤とモニタを見つめる中、タイムが更新されていく。
コントロールラインを通過したのは矢口。1'16.121で3番手に浮上する。
矢口をを追う市井は0.038届かない4番手。チームは悔しがる。
懸命にタイムを削る高橋。最終コーナーでミスするも自己ベストの1'16.324で市井に続く。
その後ろに、注目の吉澤・石川、そして後藤が疾走していた。
中澤が安倍が、そしてピットが注目していた。
- 47 名前:最終戦・富士(予選)-31 投稿日:2002年06月21日(金)22時35分17秒
- ダンロップコーナーをスパッと切り返していく吉澤。
ブチ切れモードとでも表現した方がいいのだろうか。
猛烈な勢いで最終コーナーを駆け上がってくる。
ポストにはチェッカーフラッグが用意されていた。予選の残り時間は30秒を切っていた。
吉澤が通過。タイムは安倍を上回る1'15.631。
その瞬間中澤の顔がゆがんだが、安倍はそのままだった。
ギリギリのタイミングでチェッカーを受けなかった吉澤、そのままスピードを緩めない。
続くのは石川。今日の石川はいつも以上の気合いが入っていた。
刻んだタイムは吉澤をも上回る1'15.582。もちろん、トップだ。
チェッカーを受けスローダウンする石川。やり遂げた充実感で笑顔だ。
だが、予選は完全に終わっていない。
まだチェッカーを受けていないマシンは残っているのだ。
- 48 名前:最終戦・富士(予選)-32 投稿日:2002年06月21日(金)22時41分31秒
- 最終コーナーに姿を現したのは、白のゼッケン1。
ここまで、区間ベストを刻んできていた。
後藤が勝負強いのは周知の事実。注目が集まる。
チェッカーを受けながら刻んだのは1'15.449。
石川の天下は1分も続かなかった。
さらにマシンは続く。
市井が自己ベスト更新、矢口を0.008で逆転する。トータルでも6番手だ。
予選落ちの危機に瀕していたアヤカが1'20.465を記録。これでほぼ予選通過だ。
アヤカの健闘とともにマシンの列が途切れる。
グリッドがほぼ決まり、予選が無事に終了したかのように思われた。
ピットに張りつめていた緊張感がゆるみ、集中が和らぐ。
そんな中、いまだチェッカーを受けていないマシンが1台残っていた。
周囲の注目の薄れる中、最後まであきらめずにアタックしていたのは、吉澤ひとみだった。
- 49 名前:最終戦・富士(予選)-33 投稿日:2002年06月21日(金)22時44分52秒
- 間隔が開いたので忘れかけられていた吉澤。
だが、ギリギリのタイミングでラストチャンスを得ていた。
この時点で後藤・石川に次ぐ3番手。悪くはなかった。
だが、狙うのは一番。チームスタッフは最後の逆転を疑っていなかった。
渾身の力で駆け抜ける最終コーナー。
吉澤は中断で一度切らしてしまった集中を、この時は完全に取り戻していた。
ストレートを駆ける青いゼッケン6番がチェッカーフラッグを受ける。
同時にタイムカウントが止まった。
モニタに表示されているのは、なんと1'15.442。
後藤をわずか0.007で逆転していた。
タイミングモニタの順位表が書き換えられ、吉澤が一番上に来る。
それを無線で聞いた後藤が、すこしだけ悔しがる。
一方でしてやったりの吉澤。笑顔で小さくガッツポーズ。
スタンドに小さく手を振りながら戻ってくる。
逆転ポールにチームも沸く。とはいえ、大はしゃぎはしない。
これは予選。スタートのグリッドが決まっただけなのだ。
本当の勝負は、明日の決勝なのだから。
(決勝編へ続く)
- 50 名前:F・娘。第7戦 富士スピードウエイ 予選RESULT -1 投稿日:2002年06月21日(金)22時51分40秒
- Pos. No. DRIVER TIME チーム
1 #6:吉澤ひとみ 1'15.442 5-NATUYO
2 #1:後藤真希 1'15.449 FILA
3 #5:石川梨華 1'15.587 5-NATUYO
4 #19:安倍なつみ 1'15.803 NAKAZAWA
5 #14:松浦亜弥 1'16.055 KEN MATSURA
6 #20:市井紗耶香 1'16.103 NAKAZAWA
7 #55:矢口真里 1'16.121 TANPOPO
8 #2:高橋愛 1'16.324 FILA
9 #11:保田圭 1'16.560 TOMY'S
10 #7:加護亜依 1'16.721 BRINCO!
11 #8:辻希美 1'16.798 BRINCO!
12 #21:紺野あさ美 1'16.929 RedPoint
13 #56:飯田圭織 1'17.102 TANPOPO
14 #3:平家みちよ 1'17.562 FLAT-OUT
15 #15:小川麻琴 1'17.590 KEN MATSURA
16 #64:あさみ 1'17.702 COUNTRY
17 #12:新垣里沙 1'17.905 TOMY'S
18 #36:稲葉貴子 1'18.012 SHINODA M-1
19 #9:ソニン 1'19.097 EE JUMP
20 #10:アヤカ 1'20.465 EE JUMP
21 #63:りんね (1'17.601) COUNTRY
- 51 名前:F・娘。第7戦 富士スピードウエイ 予選RESULT -2 投稿日:2002年06月21日(金)22時52分32秒
- 以上、予選通過車両
予選通過基準タイム(P.P.107%):1'20.723
*#63は赤旗追い越しにより全セッション予選タイム抹消のペナルティが課せられた。
ただし、最後尾グリッドを条件に決勝レースの出場が許可された。
シャシの略称 R:REYNARD、L:LOLA、Ge:G-FORCE
エンジンチューナの略称 G:Gackt-SPORTS、O:OKAMURA TECH、加:加納自動車
- 52 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年06月21日(金)22時59分05秒
- ということで、ようやく予選が終了です。
…51の書き込み後ろ半分がいらなかったり、
実は予選タイムが滅茶苦茶速かったりと、失敗してばっかですねぇ。
いや、シャシとエンジンチューナーはリザルトに載せてたんだけど、
字数制限に引っかかって削ったりとか、言い訳はいろいろあるんですが。
- 53 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年06月21日(金)23時15分51秒
- 変なところで切ったのは、ネタバレ防止です。はい。
この後はもちろん決勝レースですが、ほとんど書けてないので、
やっぱり時間が掛かってしまう罠…(泣
どーでもいいけど、吉澤さんってポール4回(最終戦含む)で、
しかも開幕戦以外全部フロントロウに入ってるのね。
めっちゃ速いやん……凄いね(笑
ということで、次回更新までしばしお待ちください。
では。
- 54 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年06月25日(火)22時05分40秒
- さぁ、盛り上がってまいりました(←なにがじゃ)
なんとかメドが立ったので、待望?の決勝レース編の更新です。
また細切れの更新になると思いますが、ご了承ください。
なんとか今月中に終わらせたいな〜と思っていますが、どうなるかはわからんです。
では、この後更新です。
- 55 名前:最終戦・富士(決勝)-01 投稿日:2002年06月25日(火)22時11分59秒
- 決戦の朝を迎えた富士の空は晴れ渡っていた。
ドライバーの朝は早い。午前9時30分から走行が行われる。
それに合わせて身体のコンディションを整えていかなければならない。
とはいえ、方法はドライバーによって千差万別。
朝早くから一汗かく選手もいれば、ギリギリまで睡眠をとる選手も。
が、それぞれのスタイルに誰も干渉しない。
彼女らもプロだ。結果が全ての世界だということはみんな承知している。
その結果が結実して、タイトルに実ろうとする時が近づいていた。
- 56 名前:最終戦・富士(決勝)-02 投稿日:2002年06月25日(火)22時15分27秒
- 今期のF・娘。に冠されたタイトルは4つ。
ドライバー、チーム、エンジンチューナー、そしてルーキー・オブ・ザ・イヤー。
このうち、エンジンチューナー部門はすでに加納自動車が獲得していた。
ゴナツヨとナカザワが稼ぎ頭となり、大量リードでのタイトル獲得だ。
代表の加納典明が石川の才能に惚れ込み、今期からゴナツヨを陣営に引き入れたのが大きかった。
2位はガクトスポーツ。フィラがメインだったが届かなかった。
とはいえ、トップを争うポテンシャルは持っている。
オカムラテックはブリンコとタンポポがポイントゲットしたが3位。
今一つ低調で、競争力でもわずかに劣っていたことは否めない。
走らないエンジンに我慢できなくなった矢口が代表の岡村隆史に直訴、
こじれてビンタ合戦になってしまったという出来事はちょっとした伝説としてパドックでささやかれていた。
- 57 名前:最終戦・富士(決勝)-03 投稿日:2002年06月25日(火)22時20分40秒
- ルーキー・オブ・ザ・イヤーは新規参戦の5人が対象となっている。
リードするのは第6戦で3位4ポイントを得た松浦亜弥。
それを2ポイント差で追うのが高橋愛、さらに1ポイントおいて小川麻琴。
紺野あさ美と新垣里沙はノーポイントだが、可能性は残している。
とはいえ、松浦な状況にいるのは確か。
最終戦でも速さを見せ、タイトルを確実にしたい。
- 58 名前:最終戦・富士(決勝)-04 投稿日:2002年06月25日(火)22時25分03秒
- チームタイトルはゴナツヨ(52pt)とナカザワ(39pt)のみが可能性を残していた。
とはいえ、吉澤と石川で荒稼ぎしたゴナツヨが大きくリードしていた。
どちらかのドライバーが4pt(3位)以上を獲得すれば文句無く決定する。
安倍と市井の所属するナカザワは最低でも1台が優勝し、もう1台が4位以上に入賞しなければならない。
その時のタイトル獲得条件を箇条書きにすると、
<ナカザワのタイトル獲得条件>
○1台が1位でもう1台が4位のとき→ゴナツヨがノーポイント
○同じく、もう1台が3位のとき→ゴナツヨは1pt(6位)以下
○同じく、もう1台が2位のとき→ゴナツヨは3pt(4位)以下
○それ以外の時→ゴナツヨがタイトル獲得
このように、ナカザワにとっては厳しい状況となっている。
とはいえ、可能性はゼロではない。
中澤は最後まであきらめずに戦っていくことを宣言。チームを鼓舞した。
- 59 名前:最終戦・富士(決勝)-05 投稿日:2002年06月25日(火)22時30分32秒
- そして、もっとも注目を浴びているのがドライバーズタイトル。
安倍なつみ(29pt)・吉澤ひとみ(28pt)・後藤真希・石川梨華(ともに24pt)の4人が争っていた。
各選手のタイトル獲得条件を箇条書きにすると、
<石川梨華のタイトル獲得条件>
1)1位のとき
吉澤と安倍が3位以下
2)2位のとき
後藤が1位以下、吉澤が6位以下、安倍が7位以下
<後藤真希のタイトル獲得条件>
1)1位のとき-*
吉澤が2位以下、安倍が3位以下
2)2位のとき
石川が1位以下、吉澤が6位以下、安倍が7位以下
- 60 名前:最終戦・富士(決勝)-06 投稿日:2002年06月25日(火)22時32分58秒
- <吉澤ひとみのタイトル獲得条件>
1)1位のとき
無条件でタイトル決定
2)2位のとき
安倍と後藤が3位以下
3)3〜5位のとき-*
安倍が吉澤から1台以上はさんだ後方で、石川と後藤が2位以下
<安倍なつみのタイトル獲得条件>
1)1位のとき
無条件でタイトル決定
2)2〜3位のとき
吉澤が安倍の後方
3)4〜6位のとき-*
吉澤が安倍の直前か後方で、石川と後藤が1位以下
4)7位以下のとき-*
吉澤が6位以下で、石川と後藤が3位以下
*印は同ポイントでタイトル獲得の場合を含むことを示す。
同ポイントの場合、上位入賞回数の多い方がランキングが上位となる。
- 61 名前:最終戦・富士(決勝)-07 投稿日:2002年06月25日(火)22時36分46秒
- 言うまでもなく、ポイントトップの安倍が有利な状況。
1ポイント差の吉澤もそうだが、優勝すれば自力でタイトルを決められる。
それを追う後藤と石川は厳しいとも言えるが、何が起こるかわからないのがレース。
当然、逆転のタイトルもあり得る。
特に、運に恵まれることの多かった石川、そして勝ち方を知っている後藤だ。
虎視眈々と、栄光を狙っている。
もちろん、安倍と吉澤も譲る気は全く無い。
木曜日に出された寺田からのリリースもあり、がっぷり四つの直接対決となるのは確実。
熱い熱い闘いが期待されていた。
- 62 名前:最終戦・富士(決勝)-08 投稿日:2002年06月25日(火)22時39分15秒
- 朝のウォームアップ走行は、決勝前にマシンを仕上げる最後のチャンス。
特に、レースを想定して燃料の多い状態で走ることが多い。
つまり、レースでの速さを見ることができるわけで、予選とはまた違った速さの指標となる。
ここで上位を占めたのは、予選でも上位だった4台。石川、後藤、安倍、吉澤の順。
さすが、タイトルを争っているだけはある。
矢口、保田と続いて7番手に紺野が入った。
他のドライバー達を押しのけての躍進は、驚きと期待で迎えられた。
ともあれ最後の走行枠を終えて、あとは決勝レースを残すのみとなった。
- 63 名前:最終戦・富士(決勝)-09 投稿日:2002年06月25日(火)22時42分22秒
- レースを前に再びマスコミ向けのインタビューが行われた。
呼ばれたドライバーは予選上位の4人。それはタイトルを争う4人でもある。
4人が会場に入って来る様子は前日のルーキーたちとは違った。
雰囲気というか、発するオーラのようなものが力強いのだ。
熾烈なタイトル争いが彼女たちを成長させたのだろうか。
質問が飛ぶ。タイトルのかかったレースに向けての意気込みを、というお約束的なもの。
「自分の全力を出し切りたいッスね。そうすれば、結果はついてきてくれるから」
始めに答えるのは、予選一番手の吉澤。
「んー、勝ちたいなーと。ここんとこ勝ってないし。
F・娘。もこのレースが最後かもしれないから、勝って気持ちよく締めたいなぁ、と」
”最後”の言葉に場がざわめく。後藤のCART転向はかなり話が進んでいるのかもしれない。
- 64 名前:最終戦・富士(決勝)-10 投稿日:2002年06月25日(火)22時43分22秒
- 「いつものことですけど、完走が第一です。
でも、勝ちたいですね。優勝したことないですから。もちろん、タイトルだって欲しいですよ」
少し緊張して答える石川。いまだにカメラに囲まれるのは慣れていない。
「なっちがタイトルには一番有利なのはわかってるから。タイトルを獲りにいくよ」
余裕の発言とは裏腹に、こわばった表情の安倍。
予選での不審な行動も手伝って、記者たちは言葉の裏を探る。
最後に、4人で握手しながら記念撮影。
同時にフェアなレースを誓う。
- 65 名前:最終戦・富士(決勝)-11 投稿日:2002年06月27日(木)22時27分48秒
- サポートレースも終わり、メインイベントの決勝へ向けて準備が進んでいた。
ホームストレートにマシンが集い、最後の調整をしていた。
PPを獲得したのは最後で逆転した吉澤ひとみ。
吉澤は現在28pt。逃げ切って優勝すれば文句無しでタイトルだ。
前のレースではタイトルに惑わされてしまった。
その反省から、今日は自分の力を100%出し切ろうと集中していた。
斜め後方、2番手は後藤真希。
最後の最後で0.007という僅差でひっくり返された予選。
その時は悔しがったが、今では気にしてない。予選は予選、決勝は決勝。
後藤の頭の中には、決勝で勝つことしかなかった。
3番手グリッドについたのは、石川梨華。
予選1位は逃したが、レースでの1位が残っている。
複雑な気持ちで前を見つめる石川。視線の先は、吉澤のマシン。
仲直りはしたが、以前と同じ関係に戻ったわけでもなかった。
- 66 名前:最終戦・富士(決勝)-12 投稿日:2002年06月27日(木)22時30分28秒
- 予選4位は安倍なつみ。
終始控えめな予選だったが、順位、タイムともそこそこだった。
タイトルを獲ることの厳しさを知っているからか、その表情は固い。
抜きやすい富士では絶好のポジション。コクピットで静かに決戦を待つ。
安倍の後方、5番手には松浦亜弥。期待の大型ルーキーが評判通りの躍進。
6番手の市井と7番手の矢口はランキング5位をかけて競う。
ルーキーとして松浦を追う高橋が8番手だ。
ここ富士スピードウエイは抜きやすい高速コース。
事実、同じく富士で行われた第3戦の後藤のように、ごぼう抜きも無理ではない。
予選順位的には8番手くらいまで可能性があると言えるだろう。
- 67 名前:最終戦・富士(決勝)-13 投稿日:2002年06月27日(木)22時32分34秒
- フォーメーションラップのスタートが近づく。
マシンからスタッフや機材が離れ、吉澤を先頭にして順に発進する。
動けないマシンはなさそうだ。トラブルが頻発していたアヤカも隊列に加わっていた。
マシンを左右に振り、タイヤを暖めながらゆっくり走行していく。
同時に、路面の状況の最終チェックも。
こうして1周を終え、順々にグリッドに戻る各車。
全車が戻り、安全が確認されてグリーンフラッグが出される。
エンジンが高鳴り、集中が高まる。
シグナルが灯り、レッドからグリーンに変わった。
- 68 名前:最終戦・富士(決勝)-13 投稿日:2002年06月30日(日)15時19分58秒
- 一斉にマシンが動き出す。
鋭いスタートを決めたのは、2番手の後藤。吉澤も並んで続く。
石川と安倍の間を抜けて松浦が3位に浮上。
高橋も好スタートで2台を抜くが、松浦には届かない。
後方では多少の混乱。あさみが平家と接触してウィングを落とす。
その落ちたウィングをソニンが避けきれない。踏んでパンクしてしまう。
2台はピットへ戻って修復を受けることに。
1コーナーの進入で後藤が前を取る。吉澤は接触を避けて後退。
一旦前に出た松浦だが、ブレーキングを遅らせすぎて乱れる。
その隙を石川がつき、インから抜き返して再び3位。
安倍も並びかけたが、ここは松浦がこらえた。
- 69 名前:最終戦・富士(決勝)-15 投稿日:2002年06月30日(日)15時22分04秒
- 先頭は後藤、すぐ後ろに吉澤。
さらに石川、松浦、安倍、高橋と続くオープニングラップ。
吉澤は最終コーナーから後藤のスリップに付き、早くも前をうかがう。
一方の後藤は慌てていない様子。2周目の1コーナーであっさり前を明け渡す。
後方の石川は遅れないよう懸命に追う。松浦と安倍も僅差だ。
吉澤に抜かれた後藤だが、ペースをあわせているためか間隔は開かない。
前に出た吉澤も、このまま簡単に逃げられるとは思っていないだろう。
ミラーで後藤を確認して、気を引き締める。
- 70 名前:最終戦・富士(決勝)-16 投稿日:2002年06月30日(日)15時24分32秒
- 前の3台がペースアップして、後続に差を付け始める。
引っ張るのは吉澤。負けじと後藤が背後につけ、石川が懸命に追う。
一方の松浦は様子を見るかのように少し引いた位置へ。安倍がその直後に。
タイトルを考えると、安倍としては松浦を抜いて前3台を追いたいところ。
しかし、今のところは行動を起こそうとはしていなかった。
様子を見る作戦なのか、あるいはペースが上げられないのか。
どちらともつかないが、活発な動きがないところがむしろ不気味だ。
- 71 名前:最終戦・富士(決勝)-17 投稿日:2002年06月30日(日)15時27分45秒
- 安倍の後方も熱いバトルが繰り広げられていた。
スタートで前に出た高橋を、矢口と市井が追う展開。
さらに、後方から保田も追いつき四つ巴のバトルへ。
市井と矢口は現在ポイント上で同点だ。どちらも譲らない。
逃げる高橋も、松浦になんとか追いつきたい。
燃料の重いマシンを細心のコントールで走らせる。
勝負は、これからだ。
さらにその後方、飯田が辻・加護を引き連れるように走行。
落ち着いた走りを見せる飯田。そして対照的な辻と加護。
ヘアピンで突っ込む加護、最終コーナーで抜き返す辻、とやりたい放題。
なぜかバトルになることの多いこの2人だが、見ているとなぜか微笑ましくなる。
レースが終われば、2人は何事もなかったようにじゃれあうからかもしれない。
- 72 名前:最終戦・富士(決勝)-18 投稿日:2002年06月30日(日)15時30分07秒
- 吉澤と後藤の間で接近戦が始まる。
後藤が吉澤のミスを見逃さない。インをついて前に出る。
無理な抵抗はしない吉澤。今日のレース展開では、リタイヤしたらタイトルは絶望的になる。
もっともそれは他の3人も同じだ。後藤だって無理なオーバーテイクは慎む。
まだまだ、レースは序盤なのだから。
2人の後ろにつける石川も今日はアグレッシブだ。
ヘアピンで吉澤のインに飛び込む素振りを見せ、ストレートでもスリップを使う。
そのまま1コーナー、ブレーキ合戦で石川が前に出る。
交錯する2台に、鈴鹿のアクシデントがダブる。
だが、お互いにわかっている。お互いにマージンを残したフェアなバトルだ。
- 73 名前:最終戦・富士(決勝)-19 投稿日:2002年07月05日(金)12時20分51秒
- 一方で松浦と安倍の2台は動きがなかった。
淡々とラップを刻む松浦に、ついていく安倍。
先頭集団との差は10周目で約4秒にまで広がっていた。
前の3台がバトルを始めたのでタイムが落ち、開かないとはいえ大きい差だ。
監督の中澤も沈黙を守り、チームも動きがない。
むしろ、前を走る松浦とそのチームの方が浮き足立っているくらいだ。
いっそのこと、抜きにかかってくれた方が気がラクだ。
もっとも、松浦の走りからはそんな動揺は微塵も感じられないが。
- 74 名前:最終戦・富士(決勝)-19 投稿日:2002年07月05日(金)12時26分06秒
- 12周目、ペースの上がらなかったアヤカがピットイン。
やはりミッショントラブルが完治しなかったようで、そのままリタイヤ。
スポンサーとの交渉を有利にするためにアヤカへ提供されたシート。
だが、トラブルだらけだった今回はむしろマイナスの印象を与えてしまった。
もう1台のソニンもタイムはそこそこだが、パンクで後退してもう上は望めない。
昨シーズンはGフォースシャシとともにシリーズに殴り込み、EE JUMP旋風を巻き起こした。
その勢いを保持したかったが、開幕前にユウキが起こした不祥事がケチのつきはじめ。
アドバンテージになるはずのGフォースも、今では逆に足を引っ張る存在に。
ここ最近は改良型ローラの平家にさえ水をあけられる始末。
開幕戦の予選でポールを獲ったチームとは思えない低迷ぶりだ。
こんなハズではなかったのに、と悔やむ和田。
来シーズンの事を考えると、シクシクと胃が痛くなってきた。
- 75 名前:最終戦・富士(決勝)-21 投稿日:2002年07月05日(金)12時31分41秒
- レースも中盤を迎え、そろそろピットの動きが出てくる頃になっていた。
一番に動いたのは新垣。オーバーステアがひどく、空気圧を調整したタイヤでコースへ復帰。
続いて市井が安倍より先にピットへ向かった。これには周囲が驚く。
安倍は松浦の後方にいたため、早めにピットインすると思われていたからだ。
お構いなしのバトルを続けていた先頭の3台も、そろそろタイヤ交換か。
ここまで、吉澤が石川を抜き返し、後藤がミスで後退、
2位に上がった石川が吉澤を抜こうとして失敗、後藤に抜かれるという激しい展開。
先頭は吉澤、そして後藤、石川とほぼ等間隔で続く。
しかしレースが進むと激しい闘いから、お互いを牽制しあう静かなバトルへ。
このままライバルが動くのを待つか、あるいは先に動くか。
追いかける場合、前にいるものにあわせるのがセオリー。
だが、ここまで力が拮抗していると、それすら通用するか疑わしい。
- 76 名前:最終戦・富士(決勝)-22 投稿日:2002年07月05日(金)12時36分11秒
- さんざんやり合っていた辻と加護が、ついにヘアピンで接触。
乱れる2台をよそに、後方につけていた紺野が冷静にかわす。
紺野が抜くときに、”二人とも熱くなりすぎです”と無線で報告。
それを聞いたチームスタッフは爆笑したという。
同じ頃、市井に続いて矢口もピットイン。無事にタイヤ交換を済ます。
思えば第3戦の同じく富士のタイヤ交換がターニングポイントだったかもしれない。
あの時のエンジンストールがなければ、今頃はタイトル争いに加わっていたかもしれない。
もっとも、鴨・鱈・肝、もとい、かも・たら・ればを言い出せばキリがないのだが。
矢口がコースに復帰。が、僅差で市井の後方になってしまう。
この詰めの甘いところが、今期の矢口を的確に象徴していた。
- 77 名前:最終戦・富士(決勝)-23 投稿日:2002年07月05日(金)12時38分38秒
- 先頭集団が周回遅れに接近していた。
後ろからあさみとソニン、すこし開いて新垣の順。
周回遅れの処理も、レースでは大切な要素である。
バトルしているときの遭遇は、大きな影響を与える場合が多い。
ドライバー個人の得手不得手もあるし、コースのどこで遭遇するかという運もある。
あるいは譲ってもらえる人柄や、人間関係が差を生むのかもしれない。
あさみはヘアピンで吉澤、ダンロップで後藤に譲る。
が、次の最終コーナーでは石川に譲り損ねる。
石川は少し慌ててストレートで抜くが、すでに前2台とは差が開いていた。
さらに不運は続く。吉澤と後藤はストレートでソニンをかわすが、石川は届かない。
1コーナーでも抜き損ねて、さらに差が開く。
唇を噛む石川。自分の不甲斐なさを呪う。
とはいえ、過ぎたことはどうしようもない。
ポジティブを叫び、気持ちを切り替える。
- 78 名前:最終戦・富士(決勝)-24 投稿日:2002年07月05日(金)12時40分08秒
- 周回遅れはその後方でも動きを作り出した。
あさみとソニンは手際よく処理した松浦。安倍も同じようにパス。
続いて新垣に接近するが、次々あらわれる周回遅れに松浦は少し焦れていた。
ヘアピンの進入でインにノーズを入れる。が、新垣が一瞬早くインを閉めた。
これで減速を強いられた松浦は失速、ラインもふくらむ。
そこを安倍は見逃さなかった。がら空きのインに飛び込み、コンパクトなラインで回る。
不意を付かれた松浦は、何もできなかった。
安倍は100Rで新垣をパス。そのままペースを上げて松浦を引き離す。
松浦の若さが、安倍の経験に打ち破られた瞬間だった。
- 79 名前:最終戦・富士(決勝)-25 投稿日:2002年07月13日(土)17時46分29秒
- 17周目、石川がピットインする。
タイヤ交換をロスなくすませて、ピットアウトしていく。
前に離されてしまったことと、吉澤と重ならないようにタイミングを早めたのだ。
ゴナツヨでは前を走るドライバーにピットタイミングの選択権を与えていた。
ここで優先権を持つ吉澤はまだ動かない。後藤の様子を見ているのだろう。
その後ろの2台、安倍と松浦もピットイン。同じタイミングにあわせてきた。
チームとしてもこれが今期最後のピット作業。悔いを残さないように手際よく作業が進む。
ヘルメットのシールドを上げた安倍と、中澤の視線が合う。
中澤の心配そうな表情に、安倍は力強くうなずいて返事をする。
それに耐え切れなくなる中澤、視線を逸らしてしまう。
両者ともほぼ同タイムで作業を終わらせる。
となれば、順位は入れ替わらない。安倍が前のままでコース復帰。
「無理すんなや。無事で帰ってきてくれれば、それでえぇ…」
中澤はピットアウトした安倍後ろ姿を見てつぶやいた。
- 80 名前:最終戦・富士(決勝)-26 投稿日:2002年07月13日(土)17時47分11秒
- 市井の背後につける矢口が異変に気付く。
メットのシールドがやけに汚れるのだ。
レースはようやく折り返し地点。なのに、捨てバイザーを3枚中2枚をすでに使ってしまった。
最後の1枚は終盤に残しておきたい。グローブをはめた手でシールドを拭う。
もしかして、と思ってストレートでマシンをずらす。
案の定、市井の真後ろにいるときがいちばん汚れる。
「サヤカ、オイル吹いてるよ…」
何かのトラブルの前兆かもしれない。
事によっては、市井の前に楽に出られるかもしれない。
喜びをぐっと押さえてレースに集中する。
まだ、確実なことではないから。
- 81 名前:最終戦・富士(決勝)-27 投稿日:2002年07月13日(土)17時48分00秒
- 高橋がタイヤ交換を終えてピットアウト。
フィラの作戦は的中し、安倍と松浦の間に割り込むようにコースへ復帰。
ポイント的には有利な松浦、このままでもルーキーオブザイヤーである。
だが、闘争本能は抑えられない。グリップの上がらない高橋に松浦が接近。
ヘアピンで仕掛けるも、高橋がうまくブロック。
焦れる松浦。高橋も簡単には前に出させない。
フィラは高橋に続いて、後藤のタイヤ交換の準備を進める。
それを見てゴナツヨも動き出す。
やはりタイヤ交換のタイミングを合わせるつもりの両者。
吉澤と後藤、どちらも譲らない。
- 82 名前:最終戦・富士(決勝)-28 投稿日:2002年07月13日(土)17時48分42秒
- 後方、朝の練習走行で速かった紺野がレースでも渋いところを見せていた。
辻と加護をかわした後もペースは落ちず、飯田をピット作業でかわして10位に浮上していた。
紺野の前には保田、そして矢口と市井が。
ハンドリングに問題を抱える保田とはラップが違い、追いつかれるのは時間の問題。
さらに、紺野は矢口と市井のラップタイムをも上回っていた。
このペースなら、終盤は面白い展開になるかもしれない。
- 83 名前:最終戦・富士(決勝)-29 投稿日:2002年07月13日(土)17時49分27秒
- だんだんとミラーに映る姿が大きくなるゼッケン19から逃れようと、懸命の石川。
石川は2セット目のタイヤは今一つで思ったように走れないでいた。
一方、松浦の前に出た安倍はペースアップ。
安倍の2セット目は石川と逆に好調のようで、差を少しずつ削っていく。
追われる石川だが、意識はあくまで前へ。ここで守りに入るのはまだ早い。
なぜなら、先頭の2台はまだピットインしていない。
ピット作業如何ではまだまだ優勝の、そしてタイトルの可能性は残っている。
ミラーを気にせず、前へ集中する石川。
まだ、チャンスは残っていると信じて。
- 84 名前:最終戦・富士(決勝)-30 投稿日:2002年07月13日(土)17時50分28秒
- 22周目。互いに我慢比べになっていた先頭2台がピットへ。
吉澤が前、後藤が後ろでピットロードをゆっくりと進む。
順調にいけば、これがシーズン最後の作業となるピットクルーたち。
「カモーンナ!!」
案内用のロリーポップ担当が耐えきれずに叫ぶ。
2人のタイトル争いに関わって、サーキット中の注目が集まっているのだ。
誰だって緊張してしまうだろう。
2台がほぼ同時にピットへ収まる。
今回は隣同士ピットに振り分けられた両チーム、フィラが出口側だ。
電光石火のタイヤ交換。
両チームとも、白熱のタイトル争いに水を差さないように練習を何度も重ねてきた。
ここまで定評のあるフィラより、ゴナツヨの方が僅かに作業が速い。
動き出すのも吉澤が少しだけ先だった。
吉澤が発進するのを見て、フィラのクルーが後藤に少しだけ待ったをかける。
そのままなら、接触しかねなかったから。
後藤だって無理はしない。ちょっとだけ待って飛び出す。
吉澤、後藤と変わらない順でコースに復帰する2台。
残り18周、タイトル争いはコース上で。
- 85 名前:最終戦・富士(決勝)-31 投稿日:2002年07月13日(土)17時51分09秒
- ピットアウトした吉澤と後藤の位置は、石川の直前。
前に出られなかった石川だが、差は小さい。
後方の安倍も含めてタイトル争いの役者が揃った。
先頭は吉澤、続いて後藤。少しだけ開いて石川と安倍が続く。
このままの順位でゴールすれば、優勝の吉澤がチャンピオンになる。
もっとも、このまま終わるとは誰も考えていないが。
安倍から少し開いて5位に高橋、6位松浦。
7位・8位は序盤から接近しっぱなしの市井と矢口。
9位には紺野、10位に飯田。保田は11位まで下げてしまった。
これが、全車タイヤ交換を終えた23周目の上位陣。
残り周回、17周。
まだまだ、何がおきるかわからない。
- 86 名前:最終戦・富士(決勝)-32 投稿日:2002年07月13日(土)17時51分44秒
- 市井の走りが乱れてきた。
ミッションのオイル漏れによるトラブルで、ギアシフトが渋くなったのだ。
コーナーでの加速がぎこちなくなり、ラインも乱れる。
しかしブロックは忘れない。ポジションはなんとか守る。
市井だって、同期の矢口を意識している。
このまま抑えきってゴールしたいが、ミッションが不安だ。
何とかゴールまで持ちこたえて欲しいと祈りながら操作する。
市井にはもうひとつの使命があった。
チームタイトルの獲得である。
それを果たすためにも、完走は絶対条件。
もっとも、安倍ともどもさらに少し上位に入らなければなのだが。
- 87 名前:最終戦・富士(決勝)-33 投稿日:2002年07月13日(土)17時52分35秒
- 安倍と市井の走りを見守るナカザワの首脳陣。もちろん、順位が気になる。
獲得の条件は厳しいが、あえてチームタイトルの獲得を宣言した中澤。
だが、実際のところタイトルの獲得はほとんどあきらめていた。
それも、レースが始まってからでなく、木曜日の時点で。
2人のドライバーを信頼していないではなく、ある事情があるためだった。
「なっち……」
- 88 名前:最終戦・富士(決勝)-34 投稿日:2002年07月13日(土)18時01分29秒
- ◇ ◇ ◇
木曜日の夕方、サーキット入りしたチーム・ナカザワのモーターホーム。
その一番奥にある監督の部屋で口論する二つの人影。
一人は、もちろん監督の中澤。そしてもう一人はエースの安倍。
「なんでこんな重要なこと黙ってたんや!」
「関係ないでしょ。なっちは逃げたくないだけ」
「ウチは許さんで!契約解除してでも走らせんで」
「構わない。なっちは他チームに移ってでも走るつもりだよ」
- 89 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月14日(日)04時06分45秒
- どうしたんだ、なっち!
- 90 名前:bagel_love 投稿日:2002年07月20日(土)10時28分47秒
- 次は、安倍vs石川のバトルになるんですかね?
それとも、四巴の争いになるんでしょうか?
なっちの秘密とともに非常に楽しみな展開になってきましたね。
- 91 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年07月20日(土)18時28分09秒
- 最近企画やチャットなどに出没して、ここを更新シロ、と石を投げられそうなミカ・ニネンです。
言い訳すると、最近、F・娘。のほうは全然書けないんですわ。
エンディングも書き上がって、レースも残り10周前後とリザルトを残すのみなのですが、
その残った部分が上手く書けないんですよ、なぜか。
まるで文章の神様がどこかへ行ってしまったかのように。
気分的にラストはまとめてアップしたいので、あんまりストックを放出したくないのですが、
放置気味になるのも心苦しいので、少しの更新でお茶を濁させてください。
>>89 名無し娘。さん
なっちは逃げません。なにがあってもなっちなのです。
>>90 bagel_love さん
そです。四巴の戦い、タイトルの行方はまだまだわかりません。
ということで、この後少し更新です。
- 92 名前:最終戦・富士(決勝)-35 投稿日:2002年07月20日(土)18時29分59秒
- 始まりは一本の電話だった。
相手は有名な眼科医。内容は安倍の右目について。
中澤の表情が一変する。
信じられなくて、何度も何度も聞き直す。
その度に、同じ答えが返ってくる。
網膜剥離、失明の危険、そしてドクターストップ。
眼球の奥にある、光を感じる膜が網膜である。
その網膜が、目の回りに受けた衝撃で破れて剥がれるのが網膜剥離。
ボクサーなどによく起きる症状だ。
軽度の症状は、視野の中を糸や虫が飛ぶような飛蚊症など。
もう少し進むとそれが影のように大きくなり、最後は失明に至るのだ。
安倍は前回の鈴鹿から視界に影が走るようになり、念のためとそれで診察を受けたのだという。
診断は中度の網膜剥離。ただちに治療を要し、でなければ安静に。
もちろんレースへの出場は停止。レース中、頭部に受ける強いGが症状を悪化させるという。
それだけでなく、クラッシュで強い衝撃を受け、一気に失明に至ることも有り得る。
どんなスポーツでも、眼は重要な役割を果たしている。
高い動体視力を要求されるモータースポーツなら、なおさら。
医師の下したドクターストップは、当然のものだった。
- 93 名前:最終戦・富士(決勝)-36 投稿日:2002年07月20日(土)18時31分20秒
- 中澤に呼び出された安倍は、あっさり認めた。
その上でレースに出ることを懇願した。
もちろん中澤は認めない。
二人の意見は平行線をたどり、なかなか決着しなかった。
自分のところのドライバーを危険な目に合わせたくない中澤。
チームの、そして自身のタイトルのために最後まで闘いたい安倍。
どちらも、当然の心理だ。
中澤の切り札である契約解除の脅しにも動じなかった安倍。
最後は負けるなら闘って負けたいという安倍に言葉に、折れることにした。
それくらい、安倍の意志は固かったのだ。
結局、安倍に協力する中澤。
本当なら、競技長なり寺田なりに訴えればいくらでも止められる。
でも、しなかった。
自分だって安倍の心情は痛いほど分かる。
ただひとつ、無理はしないと約束して。
タイトルなんて、正直どうでもよかった。
中澤は、安倍が無事に帰ってこれることだけを祈っていた。
- 94 名前:最終戦・富士(決勝)-37 投稿日:2002年07月20日(土)18時32分36秒
- ◇ ◇ ◇
安倍が石川に襲いかかる。
最終コーナーで後ろにつき、ストレートでスリップを使う。
それを嫌がるように石川がマシンを振るが、安倍も追随。
ブレーキングから1コーナーへの進入、インを狙うも石川がブロック。
出口でラインをクロスさせるも、前に出られない安倍。
中澤は気がついていた。この週末、安倍の走りが違うことに。
先の1コーナーの突っ込みが少しだけ鈍いのだ。
ブレーキングやターンインの思い切りも良くない。
本人は意識していないだろうが、おそらく自己防衛本能が働いているのだろう。
安倍の心中を察して、心苦しくなる中澤。
もしかすると、間違った選択をしたのかもしれないと自問しながら。
- 95 名前:最終戦・富士(決勝)-38 投稿日:2002年07月20日(土)18時34分46秒
- 先頭を走るのは、吉澤と後藤。
人気、実力ともにトップクラスの2人である。
その2人が激しいつばぜり合いを展開。差は常に1秒前後だ。
2人の直接対決は第2戦のもてぎ以来のこと。
あの時は後藤の不戦敗。もっとも、リードされていた吉澤は勝てそうになかったが。
さらにその前、開幕戦鈴鹿もガチンコのバトルだった。
結果は吉澤のスピンで、後藤が優勝を飾った。
それ以降はどちらかが遅れたり、誰かに押さえ込まれたりで直接のバトルはなかった。
どちらに軍配が上がるのか、そしてチャンピオンを獲るのか、周囲の注目が絶えない。
- 96 名前:最終戦・富士(決勝)-39 投稿日:2002年07月20日(土)18時36分34秒
- その吉澤は極めてリラックスしてドライブしていた。
好調時になるあの感覚も、もう慣れたもの。
マシンも好調。タイヤも問題なし。
まるでクルマが身体の一部になったように、路面の状況が克明に伝わってくる。
後ろからは後藤が迫っているのは知っているが、プレッシャーにはなっていない。
心の平静を保ち、最後まで全力で走り抜く。
それがこのレースに望むときの決意。
タイトルのことは意識しないようにしていた。
追いかける後藤も、タイトルのことはあまり考えないで走っていた。
「だってさ、ごとーは優勝しなきゃダメなんでしょ、最低でも。
じゃ勝つよ。深いこと考えないでさ。それでタイトルがに届かなかったら、それまでってことでしょ」
それがレース前の後藤の言葉。
一年前の屈辱を忘れず、文句ない勝利を目指していた。
- 97 名前:最終戦・富士(決勝)-40 投稿日:2002年07月20日(土)18時38分13秒
- 市井がさらに苦しくなる。
ギア抜けが発生、シフトレバーを常に押さえながらの走行を強いられる。
自然とハンドル操作がおぼつかなくなり、後ろの矢口にスキを与えてしまう。
当然のようにそこを狙う矢口、思い切って抜きにかかる。
その時、矢口にミラーに何か映るのが見えた。
「なに!?」
ミラーに映ったマシンに動揺する矢口、抜くのを躊躇してしまう。
「ま、待てよ、何で紺野がここにいるの!?」
軽いパニックに陥る矢口。だが、それは矢口の認識が間違っていた。
コンスタントにラップを刻んだ紺野がついに追いついたのだ。
むしろ、ペースの上がらない矢口たちの責任だ。
追いついた紺野は、市井はもちろん矢口よりも動きが良い。
ようやくセッティングの勘所を見つけた紺野、生き生きとレースをしていた。
- 98 名前:bagel_love 投稿日:2002年08月03日(土)08時26分04秒
- 後藤は本当にCART(脱退)へ9月23日で行っちゃうんだ。
保田も来春には別のカテゴリに移っちゃうんですね。
なんか国内フォーミュラが寂しくなりますね。
- 99 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年08月05日(月)17時19分01秒
- 電撃移籍の影響も色濃い今日この頃、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
ようやく自分の事についてのあれやこれらが片づいて制作に集中できるようになりました。
まずはがんがって最終戦を完結させたいと思います。
更新は完結してから一気にいこうと思っているので、もうすこしお待ちを。
>>98 bagel_love さん
毎回レスありがとうございます。
引退するわけじゃないので、2人を暖かい目で見守っていきたいですね。
もちろん、娘。たちも変わらずに応援してきますよ。
- 100 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月12日(月)03時03分02秒
- 待ってまーす!
- 101 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年08月12日(月)17時19分05秒
- ようやく文章の神様が降りてきたてことで、ラストまで完了しました。
宣言通り、一気にアップしたいと思います。
全部で54スレの予定です。
…予想より多いやんけ(汗
>>100 名無しさん
励ましありがとうです。
ということで、お待たせしました。
ご期待に添えるかどうかわかりませんが、よかったらおつきあいください。
あと、キリ番ゲットおめでとです。
…ここまでのキリ番、自分ばっかりな罠(笑
- 102 名前:最終戦・富士(決勝)-41 投稿日:2002年08月12日(月)17時19分59秒
- 紺野に追いつかれた市井と矢口はそれぞれ問題を抱えていた。
市井は序盤からのミッション不調。
後ろの矢口はオーバーヒート。市井に接近しすぎたためだ。
市井の前に出るか、間隔を取るかして冷やそう思っていた矢口だが、紺野を背負って状況が一変。
こうなると簡単ではない。地団駄を踏む矢口。何とか市井を抜こうと決心する。
後ろについた紺野は冷静に状況を見ていた。
市井がトラブルを抱えているのは一目瞭然。
矢口も万全ではなさそうだ。抜けるとは思ったが、一気に勝負はかけない。
2台が競う隙、いわゆる漁夫の利を狙っていた。
- 103 名前:最終戦・富士(決勝)-42 投稿日:2002年08月12日(月)17時21分04秒
- その時はすぐにやってきた。
ヘアピンの進入で市井がミス、ラインが大きく膨らんでしまう。
あいたインへ飛び込む矢口。が、矢口も少しオーバースピードだった。
同じようにアウトへ膨らみ、2台がもつれかける。
「あぁっ〜!!」
スタンドから悲鳴が漏れ、注目が中継モニタに集まる。
だが、展開は誰もが予想しなかった方向に。
アウトへはらんだ2台の内側を、縁石に半分乗りながらすり抜けていくマシンが。
後方につけていた紺野だった。
この時、一番冷静だったのは彼女かもしれない。
紺野は、辻・加護のときと同じく”市井さんと矢口さん、冷静になりましょう”と無線を入れてきた。
チームは、再び笑いに包まれたという。
- 104 名前:最終戦・富士(決勝)-4 投稿日:2002年08月12日(月)17時21分48秒
- 矢口にも抜かれた市井がついにストップする。
同期2人の泥仕合は、トラブルによるリタイヤで決着。
これでゴナツヨのチームタイトルが確定となった。
しかし、レースの緊張感は失われない。
もっとも栄誉あるドライバーズタイトルが残されているからだ。
1位吉澤、2位後藤、3位石川、4位に安倍という先頭集団は先程から変わらない。
残りは10周、このままの順位でゴールすれば吉澤がチャンピオンなのも同じ。
だが、皆がこのままで終わらないと思っていた。
4人の誰にもタイトルのチャンスは残っている、と。
- 105 名前:最終戦・富士(決勝)-44 投稿日:2002年08月12日(月)17時22分44秒
- その吉澤が、先ほどからペースを上げていた。
抜きどころの多い富士で勝つには、リードを広げて抜かれないようにするのも手だ。
無駄を少しずつ削って、ラップタイムを上げていく。
できるかどうかは別として、このまま全力で逃げ切るつもりだった。
それに対応できないのが石川と安倍だった。
目に見えて差が開くわけではないが、間隔を維持していくのがやっとの石川。
そしてその石川の前に出られないでいる安倍。
少しずつ、苦しくなっていく。
- 106 名前:最終戦・富士(決勝)-45 投稿日:2002年08月12日(月)17時23分42秒
- 1コーナー進入のブレーキング。
石川を追う安倍の視界に黒い影が横切る。
「…まただ」
レース終盤から頻繁にこの症状が出るようになっていた。
それにつれて、走りにキレが無くなっていく。
レースウィーク初日、眼に症状は出ていないのに全開で走れなかった。
自分では限界まで攻めて走っているつもりなのに、身体が自然と加減してしまうのだ。
自分を制御できないことが悔しい安倍。
予選のアタックにだって満足できていない。
だから、順位はほとんど見なかった。見たら、悔しくなるだけだから。
- 107 名前:最終戦・富士(決勝)-46 投稿日:2002年08月12日(月)17時26分44秒
- レースでも同じだった。
いつもなら抜きにかかる間合いなのに、身体がそれを拒否する。
ストレートからのブレーキングに、いつも以上の恐怖を感じる。
中澤の視線を、怖がっている自分を知られたくなくてそらした。
松浦を抜けなかったし、今も石川を抜けないでいる。
感情に押しつぶされそうになりながら、チャンピオンの意地だけで戦っていた。
- 108 名前:最終戦・富士(決勝)-47 投稿日:2002年08月12日(月)17時27分48秒
- 石川も安倍も執念を感じていた。
走りのキレはいつもより劣っているようだ。けれど、それ以上の迫力が背後から迫っていた。
技術でなく、意地。あるいは、狂気が渦巻いていた。
差を付けたくても、離れない。
自然、前へと向かっていた意識が後ろへ回ってしまう。
結果として離れてはいけないはずの吉澤らとの差が開いていく。
わかっていても、追えない。
逆に、焦ってフロントウィングを縁石にヒットしてしまう。
これで翼端版を破損した石川のマシンは、ハンドリングにわずかな異変をきたしてしまう。
石川と安倍のタイトルが、少しずつ遠くなっていく。
- 109 名前:最終戦・富士(決勝)-48 投稿日:2002年08月12日(月)17時28分31秒
- 先頭を逃げるのは同じく吉澤。
そして、変わらず背後につける後藤。
吉澤がファステストを更新すると、負けずに後藤もタイムを削ってくる。
その差は常に0.5秒以内と、接近したまま。
まるで、どちらが先にミスするかの我慢比べのようになっていた。
お互いに、相手が目に入っていないかのように。
とはいえ、後藤は何とかして前に出たいのも事実。
このまま吉澤を逃がすつもりはない。
ここまではミスを待っていたが、残り周回はあとわずか。
勝負をかけるなら、そろそろかもしれない。
- 110 名前:最終戦・富士(決勝)-49 投稿日:2002年08月12日(月)17時29分27秒
- 残り7周となるホームストレート。
吉澤と後藤が連なって駆け抜けていく。
後藤が、吉澤に真後ろにぴったりつけていた。
ミラーの死角にマシンを潜ませ、コーナーの飛び込みで一気に前に出るつもりか。
それに気付いている吉澤、少しマシンをずらして後藤の位置を確認。
ブレーキングからターンインで1コーナーへ侵入。
ラインとしては隙があるものの、後藤が来れない間合いだ。
それに、インに飛び込んでも汚れきった終盤の路面で、ラインを外すことはリスクが大きい。
そこまでのリスクは冒さないと予想していた。
- 111 名前:最終戦・富士(決勝)-50 投稿日:2002年08月12日(月)17時40分03秒
- 吉澤の読み通り、インに入ってこない後藤。
だが、後藤は出来なかったのではなく、あえてしなかったのだ。
後藤もまた、限界に近い走りを続けていた。
前戦ごろから取り戻していた好調の波を持続している後藤、吉澤のバトルを十分に楽しんでいた。
「よっすぃ、こんなに楽しいのヒサブリだよ…」
100Rの立ち上がり、カウンター軽くあてながら脱出。
吉澤との間隔は、変わらない。
特別に意識するドライバーはいないと公言する後藤。
だが、実際はまったくいないわけではない。
いつまでも特別な存在であるのが、レースの厳しさを教えた市井。彼女は別格だ。
その対極にいるのが、あの忌々しいイタリア人。マカオの屈辱は忘れない。
そして今、目の前を走る吉澤のことを強く意識していた。
- 112 名前:最終戦・富士(決勝)-51 投稿日:2002年08月12日(月)17時41分24秒
- 早くから世界を視野に入れている後藤にとって、F・娘。はその前の段階との認識しかなかった。
すなわち通過するだけのカテゴリーとして見ていた。
しかし、実際にF・娘。を戦って、その考えが間違っていた事に気付く。
リザルトだけなら後藤は勝っていたが、レースの内容では満足できるものではなかったのだ。
さらに厳しい現実を突きつけたのは、マカオの惨敗だった。
もちろんそれで世界を諦めたわけではない。
足りないものを自覚し、切磋琢磨するために再びF・娘。を選んだ今シーズン。
それだけ、F・娘。のレベルは高かったのだ。
加えて、F・娘。に愛着を感じていたし、大切な仲間でもあったから。
だからこそ、勝ち上がり、世界へ飛び出すつもりだった。
それが、彼女たちへの恩返しになるのだから。
- 113 名前:最終戦・富士(決勝)-52 投稿日:2002年08月12日(月)17時42分16秒
- 残り周回が少なくなり、後方でも争いが激しくなる。
5位の高橋愛、そしてその直後につけるのは松浦亜弥。
今年を代表するルーキー同士の対決だ。
プレッシャーをかける松浦に気押されてか、高橋はペースが上がらない。
しかし、松浦も最終コーナーで失速するトラブルで攻め切れない。
不可解な失速の原因が明らかになったのは残り5周のストレートだった。
燃料計算を間違えた松浦のマシンはスローダウン。ガス欠という初歩的なミスだった。
ハンドルを叩いて悔しがる松浦。チームも暗く沈む。
これで5位の高橋は単独走行に。
後ろには矢口を振り切った紺野が6位、初入賞を目指す。
8位は飯田、9位・10位に辻と加護がトップテン。
その後ろでは小川と平家がバトル、そしてりんねと続く。
- 114 名前:最終戦・富士(決勝)-53 投稿日:2002年08月12日(月)17時43分09秒
- まだ予断を許さない状況の先頭争い。
逃げる吉澤、追う後藤の図式は変わっていない。
石川と安倍も追いかけているが、少し離れてしまった。
そして、これはそのままチャンピオン争いにもなっている。
最終コーナーからストレート、そして1コーナーが速いのは後藤。
その後のサントリーコーナーから100R、そしてヘアピン、ダンロップコーナーでは吉澤が差を広げる。
そんな一進一退のバトルも、残り周回数が本当に後少しになってきた。
そして、あと3周となったところで後藤が勝負に出た。
- 115 名前:最終戦・富士(決勝)-54 投稿日:2002年08月12日(月)17時44分40秒
- ストレートでスリップにはいる後藤と、それを嫌がる吉澤。
それ自体は何度も繰り返されている状況だ。
そのあとはブレーキング合戦、そして進入ではインを狙う後藤とブロックする吉澤。
ここ数周はそんな流れだった。
が、残り3周となった1コーナーで後藤はアウトから狙っていった。
今までとは逆の手を取った後藤に、吉澤も冷静に対応する。
アウト寄りのラインを取ってブロックする。
後藤は並びかけるものの、ラインを押さえられて前に出られない。
吉澤、後藤の順で1コーナーを脱出。
このまま、レースは動かないのだろうか。
- 116 名前:最終戦・富士(決勝)-55 投稿日:2002年08月12日(月)17時45分29秒
- その後ろで石川と安倍も接近戦。
後藤と石川の差は約1.5秒となりタイトルは絶望的になっていた。
それでも、2人はあきらめていなかった。最後までなにが起きるかわからないのがレースだ。
後藤がアウトから前を狙った1コーナーで、安倍もまた勝負をかけた。
追従してくれない身体を奮い立たせ、深いブレーキングでインを狙った。
石川に安倍が半車身並びかけ、フロントとリアが急速に接近する。
モニターをみていた中澤が、思わず目をそらしてしまう。
決死の覚悟で勝負に出た安倍だったが、目前に迫る石川のリアに身体がすくんでしまう。
石川も安倍の強い気迫を感じながらのブロック。
思いが交錯する1コーナーを前で立ち上がったのは、石川だった。
- 117 名前:最終戦・富士(決勝)-56 投稿日:2002年08月12日(月)17時46分19秒
- 最終コーナーで再び接近する吉澤と後藤。
ストレートに戻ってくると、残りは2周だ。
あと2周で、今シーズンのすべてが決定する。
ピットが、観客が2台の戦いに注目する。
ここまで凌いできた吉澤に、すこしだけ余裕が出来ていた。
インからだけでなく、アウトからでも1コーナーで抜かれなかったからだ。
このまま逃げ切ればタイトルを獲得することすることを、少しだけ意識した。
ミラーには、先ほどと同じ位置にいる後藤が映った。
先ほどと同じでアウトから来るか。
そのまま、2台は1コーナーへ侵入する。
- 118 名前:最終戦・富士(決勝)-57 投稿日:2002年08月12日(月)17時47分03秒
- 後藤はこの瞬間を狙っていた。
数度の攻防を凌ぎきった吉澤に訪れる、一瞬の隙を見逃さなかった。
アウトから並ぶように見せかけるラインで進入。
吉澤のラインはニュートラルで、イン側にちょうど1台分のスペースが空いていた。
そこを狙って後藤のマシンが滑り込む。
虚を突かれた吉澤も防戦する。
無理には寄せないでラインは明け渡す。
この状態からのブレーキング勝負では前を守るのは難しい。
1コーナーのブレーキポイント。
深く鋭いブレーキングで後藤が前に出る。
アウト側の吉澤は後藤のリアタイヤにフロント翼端版を接触させそうな位置になった。
- 119 名前:最終戦・富士(決勝)-58 投稿日:2002年08月12日(月)17時48分09秒
- ブレーキングで前を譲った吉澤は、出口で抜き返す作戦に一瞬で切り替えていた。
ラインを維持してコーナリングスピードを高めて、コンパクトに素速く回る。
ラインをクロスさせて前に出るのだ。
クリッピングポイント。
吉澤が先にターンインして、後藤のインへとマシンを向けた。
前の後藤もそれはわかっている。限界性能を引き出すコーナリング。
前を守るべく、少しでも早くコーナーを脱出したい。
2台のラインがクロスして、距離が縮まる。
後藤も無茶なブロックはせず、速度に勝る吉澤が追いすがる。
吉澤のフロントタイヤが、後藤のリアタイヤを追い越す。
しかし、吉澤に出来たのはそこまでだった。
後藤が前を守って1コーナーを抜けた。
続くサントリーコーナー、後藤がオーバースピードで進入するも、吉澤も追いきれない。
最後の最後で動いたレース展開に、場内が騒然となる。
ただの優勝争いではない。タイトルがかかっているのだ。
- 120 名前:最終戦・富士(決勝)-59 投稿日:2002年08月12日(月)17時49分22秒
- 「裕ちゃん、この場合どうなるの?」
ピットに戻ってきた市井が中澤に尋ねる。
「えっと、後藤が24ポイント+優勝の10ポイントで合計34ポイント。
対する吉澤は、28ポイント+2位の6ポイントだから34ポイント」
「同点じゃん…」
「そんな時は、上位に入った回数が多い方が上のランキングになることになってる。
このままだと後藤が優勝2回、2位2回、6位が2回となるわな」
「で、吉澤の場合は優勝が2回、2位1回、3位が2回だから…」
「そや。後藤の逆転チャンピオンやな」
- 121 名前:最終戦・富士(決勝)-60 投稿日:2002年08月12日(月)17時50分09秒
- 後藤にかわされた吉澤は、予想以上に冷静だった。
状況は厳しい。立場は逆転して不利であるし、残れされたレースはほんのわずか。
なにより、このままゴールすれば後藤にタイトルをさらわれることも、わかっていた。
しかし、あきらめない。
最後の最後まで全力で戦うこと。それが残された道だから。
先頭の2台が最終コーナーを立ち上がる。
後藤・吉澤の順にストレートを通過して、ラストラップに突入する。
後藤のスリップストリームに入る吉澤。
このレース最後の1コーナーが近づく。
最大の勝負所なのは、お互いにわかっていた。
- 122 名前:最終戦・富士(決勝)-61 投稿日:2002年08月12日(月)17時51分36秒
- 後藤の後ろから様子をうかがう吉澤。
前の後藤のヘルメットが動く。後ろをミラーで確認しているのだ。
動きを読み切れなかった吉澤が決断する。左から、後藤のアウトを狙う。
吉澤が後藤の後ろから抜け出す。スリップが効いているので後藤より少し速い。
ニュートラルなラインを取る後藤。その外からかぶせるように進入する吉澤。
ブレーキングで並ぶ2台、後藤がタイヤ3つ分くらい前だ。
どちらも譲らないまま、ターンイン。
吉澤がさらに詰め寄る中、後藤が少しだけラインをアウトにずらした。
限界の中での、センチ単位の攻防。
勝ったのは、後藤真希だった。
- 123 名前:最終戦・富士(決勝)-62 投稿日:2002年08月12日(月)17時53分12秒
- 1コーナーを前で抜けたのは後藤だった。
チャンピオンの意地、そして執念が少しだけ吉澤を上回った。
吉澤も諦めない。背後につけて最後のチャンスを狙う。
が、この周の後藤はファステストを刻むほどのスピードだった。
ヘアピンで差を詰めきれない吉澤、ダンロップで後藤に差をつけられてしまう。
最終コーナー。
この日の後藤はここが速かった。吉澤もスリップに入るが抜くには至らない。
後藤の白いマシンが、ホームストレートに姿を現す。
そのまま、右手を突き上げてチェッカーフラッグを受けた。
- 124 名前:最終戦・富士(決勝)-63 投稿日:2002年08月12日(月)17時54分09秒
- 後藤真希がレースを制した。同時に2年連続の王座も決めた。
ピットウォールに集まったフィラのスタッフが盛り上がる。
スタンドが声援をあげ、チアホーンが鳴り響く。
スタンドにウエーブが走り、フラッグが激しく打ち振られる。
みんな、熱戦を繰り広げた選手達に感謝し、後藤を祝福していた。
興奮したファンがコースに進入、オフィシャルが走り回る。
ファンの1人が後藤のマシンに接近、チームフラッグを手渡そうとする。
気が付いた後藤がマシンを止めて、受け取ってからまた走り出す。
そのフラッグを振って声援に応えながらのウイニング・ラン。
ゆっくりと、タイトルを噛みしめながら走っていく。
- 125 名前:最終戦・富士(決勝)-64 投稿日:2002年08月12日(月)17時55分20秒
- 「…負けちゃった」
パルクフェルメに戻ってきた吉澤は、それだけつぶやいてコクピットの中で脱力していた。
全力を尽くした。しかし、勝てなかった。
悔しさが全身を覆い、疲労が身体を重くしていた。
ようやく、マシンを降りようとようやくハーネスとハンドルを外してモノコックに置いた。
そこに差し出されたのが、見たことのあるレーシンググローブ。
後藤の手だった。
その手に引っ張ってもらいながらコクピットから出る吉澤。
後藤もマシンから降りた直後なのか、まだヘルメットを被っていた。
そのまま、吉澤の耳元に口を近づけて後藤が言う。
「楽しかったよ。ありがと」
吉澤にとって、それは一番の讃辞だった。
差し出された手を握りながら、吉澤も返す。
「今度は勝つよ。絶対、手加減しないから!」
強く握手する2人。お互いをねぎらい、認めあう握手だ。
- 126 名前:最終戦・富士(決勝)-65 投稿日:2002年08月12日(月)17時58分15秒
- 安倍はマシンを降りると出迎えに来ていた中澤へと向かった。
その意を察した中澤は、安倍の肩を抱いて奥の方へ。
その肩は、小刻みに震えていた。
人影が無いところで、安倍は中澤の胸元へ飛び込んできた。
中澤はそっと腕で包み込む
「裕ちゃん、ゴメン。なっち負けちゃったよ。
強がったけど、本当は目が見えなくなるんじゃないかって、すごく怖かった。
そしたら、全然思うように走れなくなって…情け無いよね。
……本当にゴメンね…」
すべてを受け入れるようにじっとしている中澤の胸で、安倍は啜り泣いていた。
「ええんや。なっちが無事ならそれでいい。
タイトルなんかこれからいくらでも獲れる。
また来年、いっしょに頑張ろうやないか」
安倍は、泣きながらうなずいた。
- 127 名前:最終戦・富士(決勝)-66 投稿日:2002年08月12日(月)17時59分32秒
- 表彰式。
表彰台には奇しくも同じ歳の3人が揃っていた。
これからの日本のレース界を担う若手の3人でもある。
中央でガッツポーズを決める後藤真希。2年連続のタイトルを獲得は初の快挙だ。
トロフィーに口づけして、喜びを振りまく。
次は、世界へ飛び出すと決意して。
2位の吉澤ひとみは悔しさを隠せない。
それもそうだ。後藤と同ポイントなのにタイトルを逃した。
しかしルールはルール。素直に、負けを認めていた。
石川梨華は3位。結局初優勝は叶わなかった。
しかし、今期は全7戦で入賞と大健闘。表彰台も4回獲得。
来年こそは、一番高いところに登ってやると誓う。
- 128 名前:最終戦・富士(決勝)-67 投稿日:2002年08月12日(月)18時00分47秒
- 歓喜のシャンパンファイトが始まる。
目で合図する吉澤と石川、後藤に集中砲火。
後藤は逃げまどうが、悪くない気分だ。
隙を見て反撃する後藤。モロに喰らった石川が何度も目をこする。
最後に、吉澤と石川に担がれる後藤。
視点が一段と高くなり、王者の気分をさらに盛り上げる。
右の人さし指を突き出して、高らかに勝利を宣言した。
- 129 名前:F・娘。第7戦 富士スピードウェイ 決勝RESULT 投稿日:2002年08月12日(月)18時03分10秒
- F・娘。第7戦 富士スピードウェイ 決勝RESULT
Pos. No. DRIVER LAP TIME BEST
1 #1 後藤真希 40 52'05.147 1'17.728
2 #6 吉澤ひとみ 40 + 1.250 1'17.732
3 #5 石川梨華 40 +7.987 1'17.806
4 #19 安倍なつみ 40 +10.445 1'17.842
5 #2 高橋愛 40 +57.291 1'17.811
6 #21 紺野あさ美 40 +1'10.572 1'17.798
※MAJOR RETIREMENT:#20 市井紗耶香(LAP 29)
#14 松浦亜弥(LAP 35)
※FASTEST LAP:#1 後藤真希 1'17.728(40/40) 203.788km/h
DRIVER'S POINT
Pos. No. DRIVER POINT
1 #1 後藤真希 34
2 #6 吉澤ひとみ 34
3 #19 安倍なつみ 32
4 #5 石川梨華 28
5 #20 市井紗耶香 10
6 #55 矢口真里 10
- 130 名前:エピローグ-01 投稿日:2002年08月12日(月)18時04分31秒
- 都内にある高級ホテルのホールで、シーズン最後の行事となるF・娘。の表彰パーティが行われていた。
選手たちはいつもはレーシングスーツでなく、派手に着飾っていた。
おへそがまぶしいピンクのドレスは松浦。対抗したかのように、高橋もブルーのホットパンツが目を引く。
もっとも、力を入れてきたのはドライバーだけでない。
中澤も深いスリットのチャイナドレスで視線を集めていた。
このスリットにはスポンサーを誘うという狙いもあるのだが。
- 131 名前:エピローグ-02 投稿日:2002年08月12日(月)18時05分40秒
- ステージにあがった後藤に、年間チャンピオンのカップが渡される。
会場の声援に応えるように、賞金を記した小切手のボードとともに掲げる。
達成感と希望に満ちた笑顔が印象的だった。
後藤は、この場で来シーズンのCARTへの参戦を正式に発表した。
チームとの契約も済ませ、年明けにはテストも予定していた。
エンジンはトヨタを積むチームだった。元々トヨタ系のドライバーである後藤。
CARTの成績次第ではトヨタからのF1デビューもあるのでは、と噂されていた。
後藤自信、F1を意識しないわけではない。
しかし、どんなレースでも全力で戦う。
それが自分の役目だし、一番の近道なのだから。
挨拶で淡々と決意を述べた後藤
F・娘。を離れても、後藤は後藤真希のままだ。
- 132 名前:エピローグ-03 投稿日:2002年08月12日(月)18時08分01秒
- 眼帯姿が痛々しい安倍。
レース後に行われた網膜剥離の手術は無事に終わった。
が、しばらくの療養が必要となり、来シーズンの序盤数戦は欠場の予定。
ピンチヒッターとして新人の里田まいの名が上がっていた。
安倍にとって走れないことは苦痛だった。
しかし、辛くはなかった。永遠に走れないのではないのだ。
未来に光は見えていた。いつもと同じ笑顔が、眩しかった。
いつも、いつまでも何があっても忘れない。
この道を進む決めた、あの決心を。
- 133 名前:エピローグ-04 投稿日:2002年08月12日(月)18時09分09秒
- 「ねぇ、よっすぃは来年どうするの?」
プログラムが一段落し、フリータイムになった会場で石川が聞いた。
「う〜ん。まだ、迷ってるんだよね…。いろいろ選択肢あるし」
「そっか…。やっぱり、アメリカ?」
吉澤の来期についての根強い噂。
それは、後藤を追ってCARTへ行くのではないかというものだった。
石川は親友の心の内を直接確かめたかったのだ。
- 134 名前:エピローグ-05 投稿日:2002年08月12日(月)18時10分10秒
- 吉澤は、深呼吸してから話し出す。
「うん。たぶんCARTに行くと思う。ごっちんを追うってのもある。
けど、自分を試したい気持ちの方が、大きい」
「…」
「でも、今のところ前半だけのスポット契約になりそうなんだ。だから…」
「だから?」
「日程もぶつからないし、F・娘。とダブルエントリーしようと思ってる」
「え!? 本当に?」
驚く石川。吉澤はさらりと言う。
「もちろん、大変なのはわかってる。
でも、監督が許してくれたし、なによりチャンスだから。
できるって自信があるうちに、自分の可能性を確認したいんだ…」
「そっか…」
- 135 名前:エピローグ-06 投稿日:2002年08月12日(月)18時11分10秒
- しばらくの沈黙。
そして、静かに石川が口を開く。
「私も、言うことがあるんだ。来年のことで」
「なに?」
「移籍することにしたんだ、チームを」
「え!? マジで?どこに?」
今度は吉澤が驚く。石川は申し訳なさそうにしている。
「うん。中澤さんのところ。
でも、誤解しないで。よっすぃを嫌いになったわけじゃないよ。
いろいろあったけど今でも大切な親友だし、これからもずっと親友でいたい。
でも、コースの上でも親友ってのは、ダメだと思うんだ…。
だから、自分とよっすぃのために違うチームに行かなきゃ、って」
「…そっか。梨華ちゃんらしいね」
「とにかく、これからもよろしくね」
「うん。手加減しないよ」
2人にとって今年は飛躍の年だった。
新しいシーズンの健闘を誓う吉澤と石川。次のメインを狙って。
- 136 名前:エピローグ-07 投稿日:2002年08月12日(月)18時12分40秒
- 代表である寺田光男が、選手やチーム関係者に感謝と激励を述べて回っていた。
満面の笑みと力強くしかし軽やかな言葉は、実り多い今シーズンの満足感から。
後藤のCART挑戦で、寺田の立てた当初の目的はほぼ達成したと言えた。
しかし寺田はF・娘。にそれ以上のものを見いだしていた。
彼女達が繰り広げる戦いは、本物のモータースポーツ。
それを期待し、楽しんでいるのは寺田だけではなかった。
全国のファンがF・娘。を愛し、彼女たちを目指す人たちも増加していた。
F・娘。のスピリットを絶やさない。
そしてここから飛び出した人材で世界を制覇する。
これが、寺田の新しい目標であった。
- 137 名前:エピローグ-08 投稿日:2002年08月12日(月)18時13分31秒
- 監督1年目を無事終えた中澤が、シーズンを回想する。
チームランキング2位、ドライバーランキングは3位と5位。上出来な結果だった。
それにしても、自分が走っていたのが遠い昔ように感じるほど今シーズンはハイレベルだった。
現役には少しだけ未練は残っていた。しかし、今ではそれも無くなった。
後藤は文句無く速い。安倍も負けずに強い。吉澤や石川らの成長も著しい。
それを考えると、引退の判断は正しかったように思えるのだ。
メンバーの中で唯一Fポンの経験があった中澤。
チームを運営してみて、その経験はむしろコースの外で活かせると悟っていた。
今ではF・娘。シリーズ全体のためなら、喜んで裏方に徹するつもりだ。
初勝利を熱望している石川をチームに迎え入れ、さらなる上昇を狙う。
- 138 名前:エピローグ-09 投稿日:2002年08月12日(月)18時15分52秒
- 激闘のシーズンは、こうして幕を下ろした。
来シーズンの開幕に向けて、短いシーズンオフを迎える選手達。
しかし、次のシーズンに向けてトレーニングなどすべきことは山ほどある。
選手の移籍や残留などの話も進み、期待の新人藤本美貴の参戦もほぼ確定。
来月には早くも合同テストの予定も組まれていた。
ゆっくりと、しかし確実に新しいシーズンへ向けて動き出していた。
最速の娘。の座を賭けた戦いは、まだまだ続く。
〜 フォーミュラー・娘。 完 〜
- 139 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年08月12日(月)18時17分13秒
- エピローグに続いて、この後フィナーレ(をぃ。
そうだ! We're Aliveでも聴きながらサクッと読んで頂ければ最高かと。
- 140 名前:フィナーレ-01 投稿日:2002年08月12日(月)18時18分17秒
- 流れる時はゆっくりと積み重ねられてゆく。
そうやって作られた長い歴史は、重みを増して威厳を放ち、人々を引きつける。
いかに時代が移り変わろうと、積み重ねられた歴史は変わらずに光り輝く。
そう、50余年の歴史と伝統は、フォーミュラー・ワンをよりいっそう華やかにしてくれる。
オーストラリア・メルボルン。
フォーミュラー・ワン、今年も開幕。
- 141 名前:フィナーレ-02 投稿日:2002年08月12日(月)18時19分43秒
- 開幕戦はいつだって特別だ。
短いオフを挟んでの再会を喜び、新しいシーズンの健闘を誓う。
少しだけ増えたニューフェイスを歓迎し、見なくなった顔を懐かしむ。
誰もが華やかさに酔い、希望に満ちた時。
期待と不安を胸にF1の舞台へ躍り出る。
恒例の写真撮影が行われる。
レーシングスーツにヘルメットを抱えた、メディア向けの正装。
この写真は長く使うものだから、どちらも気を使う。
ともあれ、選手が順にあらわれ撮影が進んでいく。
当然、その中には我らが期待の日本人ドライバーも含まれている。
- 142 名前:フィナーレ-03 投稿日:2002年08月12日(月)18時20分29秒
- 後藤真希。
昨シーズン、トヨタレーシングからF1デビュー。
開幕戦の5位入賞を初めとして、10ポイントを獲得してランキング8位。
それ以上に熱い走りが注目を集め、次代のスター候補と称された。
そんな逸材を他チームが放っておくわけがない。
数チームが接触したと噂され、もちろんトヨタも引き留めを計った。
詳細は不明だが、後藤が電撃的な移籍を決断したのは紛れもない事実。
シルバーのスーツに身を包み、スリーポインテッドスターが描かれたヘルメットを手にして、
後藤真希、マクラーレン・メルセデスで2年目のシーズンを迎える。
- 143 名前:フィナーレ-04 投稿日:2002年08月12日(月)18時21分09秒
- 吉澤ひとみ。
BARホンダのテストドライバーを勤めた昨シーズンは忍耐の時だったかもしれない。
それでも、アコードを駆ったDTMでは快走を見せて人気・知名度ともに急上昇。
テストドライバーとしての評価も悪くなかった。が、BARはレギュラードライバーの残留を決定。
吉澤は流浪の身になるのかと思われた。しかし、捨てる神あれば拾う神あり。
後藤を失ったトヨタレーシングが吉澤に白羽の矢を立てたのだ。
レースを渇望していた吉澤が拒否するわけがなく、こうして後藤に次ぐ電撃移籍が成立した。
赤と白のレーシングスーツに違和感を覚えつつ、満面の笑みでフラッシュに応えていく。
待望のF1デビューのとなる吉澤ひとみ、リラックスしてその時を迎えた。
- 144 名前:フィナーレ-05 投稿日:2002年08月12日(月)18時22分06秒
- 石川梨華。
国内での活躍が認められ、このオフからルノーのテストドライバーに大抜擢。
誕生日が同じで親交のあったルノーのエース、ウタダッシュが推薦してくれたからだ。
だが、石川に訪れた幸運はこれだけでなかった。
当のウタダッシュが直前に病気で入院、欠場を余儀なくされる。
代役として選定されたのが石川。エースの意向も後押ししていた。
ウタダッシュ復帰までの数戦のみだが、夢に見たF1をドライブが現実のものとなったのだ。
レーシングスーツの水色と黄色、そしてピンクのヘルメットが目を引く石川梨華。
突然のチャンスと止まらない怒濤の展開に緊張して、ぎこちなく笑う。
- 145 名前:フィナーレ-06 投稿日:2002年08月12日(月)18時22分58秒
- スタートを目前に迎えたグリッド。
VIPやマスコミ、スタッフが入り交じるストレート上。
色とりどりのマシンがスタートを前に最後の調整に入っていた。
その喧騒の中、今回のゲスト解説である安倍が予選3番手の後藤へインタビューをしていた。
脇には、付き添ってきた飯田の姿も。
安倍は網膜剥離を乗り越えてF・娘。へ復帰を果たしていた。
走りは衰えておらず、F・娘。ではタイトルこそ獲れていないが常に優勝争いに絡んでいた。
ファンの間では、今でも安倍をF1へという声が絶えない。
安倍自身もそれはわかっているし、挑戦したいとも思っている。
でも、このまま日本で、F・娘。で走っているのも悪くないと考えている。
後藤真希、吉澤ひとみ、そして石川梨華。
自分を越えてチャンピオンとなった者たちがこうして世界へ羽ばたいていく。
それを見守る役が一人くらいいても、いいじゃないかと。
- 146 名前:フィナーレ-07 投稿日:2002年08月12日(月)18時23分46秒
- それだけではない。
今シーズンも、松浦や高橋といったところがタイトルを狙っている。
もちろん、安倍も負けるつもりはない。目標は勝利だけ、容赦はしない。
世界へ行きたいのなら、私を越えて行きなさい。
ここにいる彼女たちがそうしたように。
ベテランで安倍と腐れ縁となりつつある飯田も、想いは同じ。
私たちがとうせんぼするから、悔しかったら実力で越えて行けよ、と。
- 147 名前:フィナーレ-08 投稿日:2002年08月12日(月)18時24分40秒
- 金髪にグラサン、少し凄みの入った容貌の中澤。
腕組みした視線の先には、予選を失敗して19番手となった石川が申し訳なさそうな顔をしていた。
中澤のチームはF・娘。で順調な活動を続けていた。
しかし世界へ展開していくには、チーム運営によるドライバーの育成では限界があった。
そこで始めたのが、ドライバーのマネージメント。
寺田の協力を得て、売り込みや契約交渉、トレーニングなども含めたトータルなプログラムを作った。
選ばれたのは、初めに矢口。続いて石川。そして努力は実を結びつつあった。
矢口は今期からプレミアレーシングリーグに参戦が決定。
石川もテストドライバーへの抜擢から突然のF1デビュー。
偶然が作用したとは言え、石川は中澤の手による初めてのF1ドライバーとなった。
が、これからが腕の見せ所。今度はレギュラーのシートを狙う。
- 148 名前:フィナーレ-09 投稿日:2002年08月12日(月)18時25分32秒
- 16番手グリッドと、こちらも奮わなかった吉澤ひとみ。
少しでも挽回しようと吉澤が市井紗耶香と最後のミーティングをしていた。
国内でトヨタF1のテストドライバーを経て、ドイツのチームへ合流した市井。
今では、エンジニアに近い仕事をこなしている。
昨シーズンは後藤の担当となり、ルーキーの大活躍を裏から支えた功労者となった。
後藤は活躍を認められてマクラーレンへ移籍。同時に市井も移籍するつもりだった。
しかし、マクラーレンは話し合いに乗ってくれなかった。
幸いトヨタは暖かく残留を認めてくれ、今期は吉澤の担当に任命された。
シーズン前、市井と吉澤は誓った。
二人して後藤に、マクラーレンに一泡吹かせようじゃないか、と。
- 149 名前:フィナーレ-10 投稿日:2002年08月12日(月)18時26分38秒
- スタートの時間が刻々と近づき、マシンの周りから人影が減っていく。
フラッグが振られて、フォーメーションラップがスタートする。
石川はマシンを発進させるとき、駆動系の動きに何か違和感を感じた。
すぐにテストの時に同じ挙動をしたことを思い出す。
そう、ラウンチコントロールの異常でマシンが止まったときと同じだ。
ラウンチコントロールとは、スタートを最適に行う電子制御のデバイス。
何度かトラブルが起きたことがあり、そのたびにマシンが動かなくなった。
今度も、それと同じトラブルの前兆なのかもしれない。
迷う石川。無線でピットに訊くも、答えは要領を得ない。
中澤の言葉を思い出す。自信を失ったときに、何度も何度も言われた言葉。
「最後に信じられるのは、自分だけなんやで」
石川は、自信を持ってスイッチをオフにした。
- 150 名前:フィナーレ-11 投稿日:2002年08月12日(月)18時27分43秒
- フォーメーションラップを終えて、グリッドへ順に戻ってくる選手たち。
3番手グリッドにマシンを静止させる後藤。
斜め前、2番手はフェラーリのエース、アユン・ハマサキロッシが。
思えば、あのマカオの時とは入れ替わったスタートのポジションだ。
あのとき、ハマサキロッシは後藤を見ながら何を考えていたのだろうか?
マカオのことは覚えている。忘れっこない、あんな屈辱を。
それを晴らすためにF1を目指してきたようなものだ。
しかし、昨シーズンは勝負にならなかった。マシンの差が大きかったからだ。
ようやく、対等に勝負できるようになった今シーズン。
この借り、1シーズンかけてゆっくりと返してやるよ。
後藤の目が、鋭く光る。
- 151 名前:フィナーレ-12 投稿日:2002年08月12日(月)18時28分27秒
- 全てのマシンがグリッドに戻ってきた。
グリーンフラッグが振られて、あとはシグナルを待つのみ。
マシンが高鳴り、陽炎がカオスを生み出す。
吉澤は胸の高まりを押さえられない。
ここまでのことが走馬燈のように胸に去来する。
同点ながら僅差でタイトルを逃したシーズン。
石川と争って、最終戦でもぎ取った初めてのチャンピオン。
栄光から一転、閑散としたサーキットで黙々と走りつづけた辛い日々。
賞賛は浴びていたのに、シートを得られなかったこと。
そして、トヨタからの意外なオファー。
結果的に、お世話になったホンダへ恩を仇で返すことになってしまった。
でも、自分の気持ちは抑えられなかった。
信じた道を進んで行くしかできないのだから。
深呼吸をして、シグナルへの集中を高める。
これで終わりじゃないんだ。ここからが、長い長い道のりの始まりなんだと。
レッドシグナルが全て消えて、スタートとなった。
- 152 名前:フィナーレ-13 投稿日:2002年08月12日(月)18時30分11秒
- 全車が一斉に動き出す。
開幕戦らしい混乱したスタートになった。
PPのマシンも大きく出遅れ、後方のハマサキロッシと後藤が前に出た。
動けないマシンも。中団に位置するルノーのユーキ・ゴリクスが全く動けない。
そこに後続が接触、破片をまき散らしながら宙を舞った。
さらに数台が巻き込まれ、破片を浴びてしまう。
吉澤の位置からは、マシンが白煙とともに飛び上がったのが見えた。
距離が近いし、マシンのスピードはすでに乗っていた。止まるには間に合わない。
避けなければ。状況は全く見えなかったが、右だと感じた。
同時に身体が動いていた。コースをはみ出て脇の芝生に乗り入れる。
祈るように進む。もしここに止まったマシンがいたりしたら避けられない。
ウォールに当てないようにコントロールしていると、視界の横をマシンの残骸が通り過ぎていった。
ドライバーの無事を祈りつつ、周りを見ながらコースへ復帰する。
幸運にもアクシデントに巻き込まれなかった吉澤、このとき6位に浮上していた。
- 153 名前:フィナーレ-14 投稿日:2002年08月12日(月)18時31分07秒
- マニュアルクラッチでスタートした石川。
だが、スタートは苦手だった。緊張で大失敗して最後尾まで落ちてしまう。
慌てる石川。しかし、それが逆に功を奏す。
アクシデントを見て、余裕をもってスピードを落とすことができた。
現場を通り過ぎるとき、同じマシンが止まっているのが見えた。
動けなかったゴリクスのマシンはひどく壊れていて、原型をとどめていなかった。
ゴリクスが動けなかった原因はラウンチコントロールのトラブルだった。
石川の乗るマシンもゴリクスと同じもの。同様のトラブルが起きる可能性もあった。
それを察したチームが無線でラウンチコントロールをオフにせよ、と伝えてきた。
一方の石川、スタート前に問いかけたが聞いてもらえず、痛くプライドが傷ついていた。
今さらの無線に、しないよ! と強く言い返した。
- 154 名前:フィナーレ-15 投稿日:2002年08月12日(月)18時32分19秒
- アクシデントの撤収のためにセイフティーカーの導入となった。
隊列を組んで走行するマシンたち。アクシデントで早くも10台が脱落、残りは14台のみ。
先頭は赤のフェラーリ、ヒョウ柄ヘルメットのハマサキロッシ。
その後ろ、シルバーアロー・マクラーレンの後藤真希が丹念にタイヤを暖めながら続く。
数台を挟んだのちの6番手には赤と白のトヨタ、ルーキーの吉澤ひとみが。
こちらもルーキー、石川梨華はトラブルを抱えながらも10位につけていた。
アクシデントという運が作用したものの、日本期待の3人は順調な滑り出し。
開幕戦ということを考えると、更なる期待が持てる。
コースの清掃がほとんど終わり、レース再開が近づく。
マシンが高鳴り、観客のボルテージも上がる。
ピットロードにセイフティカーが消えて、コース上はマシンのみになる。
最終コーナーへ入っていく隊列。
ストレートに戻って再スタート、バトルが始まる。
- 155 名前:フィナーレ-16 投稿日:2002年08月12日(月)18時32分53秒
- セイフティカーが消えたとき、後藤はマカオの時も同じだったな、と思い出していた。
とはいえ、ひたっている場合ではない。闘いなのだ。
狙いはあの時と同じ、再スタートだ。
最終コーナーを加速していく。
ストレートでマシンをスリップストリームに入れる。
ハマサキロッシも気がついているはずだ。しかし、開幕戦からあの手はとらないだろう。
コントロールラインを過ぎてフラッグが振られる。
ピットから、”Go!Go!Go!Go!”と無線が入る。スタートが切られた合図だ。
それを確認して勝負をかける。1コーナー飛び込みで並びかけた。
ハードブレーキ、続いてターンイン。
強烈なGがかかって視界が歪む。が、赤いマシンは視野から消えた。
インを閉めての切り返し。赤がミラーに映る。
後藤が、鮮やかなオーバーテイクでトップに躍り出た。
- 156 名前:フィナーレ-17 投稿日:2002年08月12日(月)18時33分50秒
- 大歓声が起きた。
ピットで、スタンドで、そしてテレビの前で。
ある者は、マカオの出来事を思い出して因縁の対決を叫ぶ。
またある者は、迫力ある映像に純粋に感動して。
そして長いF1史上で、日本人が初めてトップに立つことに狂喜する人々も。
日本中が、期待で膨らんでいた。
- 157 名前:フィナーレ-18 投稿日:2002年08月12日(月)18時35分25秒
- とはいえ、レースはまだまだ始まったばかり。
今シーズンもまだまだ開幕戦だ。シーズンは長い。
それに、後藤の、そして吉澤や石川のキャリアもまだこれから。
チャンスは、山のようにあるはずだ。
この先に何があるか、誰にもわからない。
栄光をつかむかもしれない。
悲運に涙するかもしれない。
それでも、彼女たちは走り続ける。
情熱が燃え尽きるまで、この先ずっと続く道を、ただひたすらに。
思いを右足にこめて、栄光のチェッカー目指して。
〜 つづく 〜
- 158 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年08月12日(月)18時37分54秒
- …大変なミスを犯していました(泣
エピローグとフィナーレのあいだに入れるつもりの最終結果、
すっかり忘れていました(泣
このあとにカキコして、お茶を濁したいと思います。
- 159 名前:F・娘。最終RESULT 投稿日:2002年08月12日(月)18時40分30秒
- DRIVER'S POINT
Pos. No. DRIVER POINT
1 #1 後藤真希 34
2 #6 吉澤ひとみ 34
3 #19 安倍なつみ 32
4 #5 石川梨華 28
5 #20 市井紗耶香 10
6 #55 矢口真里 10
7 #11 保田圭 8
8 #56 飯田圭織 5
9 #3 平家みちよ 4
10 #14 松浦亜弥 4
11 #2 高橋愛 4
12 #8 辻希美 3
13 #7 加護亜依 3
14 #36 稲葉貴子 1
15 #15 小川麻琴 1
16 #21 紺野あさ美 1
TEAM'S POINT
Pos. TEAM POINT
1 5-NATUYO 62
2 NAKAZAWA 42
3 FILA 38
4 TANPOPO 15
5 TOMY'S 8
6 BRINCO! 6
7 KEN MATSURA 5
8 FLAT-OUT 4
9 SHINODA M-1 1
10 RedPoint 1
11 COUNTRY 0
12 EE JUMP 0
- 160 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年08月12日(月)18時50分31秒
- ようやく終わった、というのが今の正直な気持ちです。
スレ立てたときに筋はほとんど完成していたので、
気分的には結構前に完結してました。(爆
始めの予定では、F1の開幕のころに完結するつもりでしたが、
もうタイトルが決まっているほどシーズンが進んでした。
モチベーションの低下とか、自分個人の都合、他の企画などに参加するなど、
いろいろと遅くなる理由はあったので、と言い訳してみるテスト。
- 161 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年08月12日(月)18時58分40秒
- 実のところ、自分の都合で放置もやむなしな状況になりかけたときもありました。
モチベーションがあがらないときもありました。
しかし、何とかここまでたどりついたのは、読者の皆さんのおかげです。
レスをくださったり、他所で話題に出してくださったり、励みになりました。
はっきり言いますと、この話は自分の需要を自分で満たすために始めたものです。
ですから、読者の事はあまり考えないで書いてきました。
それでもついてきてくださった読者のみなさまに、感謝*2です。
ほんとうに、ありがとうございました。
- 162 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年08月12日(月)19時07分41秒
- で、これからについて。
F・娘。はこれで終わりです。
やり残したことあるけれど(後藤姉妹?のこととか、ウエットレースとか)、
少なくとも、1シーズンを通して書くことはしないでしょう。
…だって面倒くさいだもん(爆
そのかわり、番外編的な短・中編をちらほらと書けたらな、と思っています。
何度か口走ってしまったパリダカ編とか、その他のアイディアとかとか。
そのほか、全然モータースポーツと関係無い話を書くかもしれません。
甘〜いいしよしもので桃板の話題をさらうのも悪くないかな、とかね。
そのときは、このHN使わないでしょうけど。
ということで、しばしお休みです。
ではでは。
- 163 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月12日(月)23時07分09秒
- 待ってましたの更新から一気にフィナーレへ。
ちょっと急いだかなぁ、という印象はあったですけど
エピローグで、フィナーレでまたぐっと来ました。
フルシーズンじゃない『F1』娘。の活躍も見たいものです。
ご苦労様でした。
- 164 名前:bagel_love 投稿日:2002年08月13日(火)20時24分58秒
- 一気の完結お疲れさまでした。
本編(Rd7)で物足りなさを感じた分もエピローグとフィナーレで
ぐっと引き締まり、読後に爽快感が残りました。
まぁ、完結してしまったことによる一抹の寂しさもありますが...
復帰をお待ちしております。
- 165 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月15日(木)20時55分13秒
- 完結お疲れ様です。
モータースポーツ物って今までなかったような気がするからとても新鮮でした。
物語自体もいいできだと思うしこれからも何か書いてほしいですね。
- 166 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)10時48分22秒
- 本当にお疲れ様でした。
パリダカ編首を長−く待ちつづけます(w
- 167 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年08月21日(水)11時17分44秒
- 24hテレビも無事に終わった8月の下旬、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
私はしばらく作ってなかった模型作ってみたり、ぼーっとしてみたりと過ごしてます。
だらだら時間を過ごしてるだけでなく、短期バイトで汗を流したりも。
というのも、25日のエムウエーブに参戦予定でして。
チケ代その他を捻出するためにがんがっております。今さらですが。
ここまで遊ばせてくれた本人達に感謝の気持ちを表さなければ、と思いまして。
初めての娘。コンサートに今からドキドキ(笑。
みなさんレスありがとうでした。
レスをくださらない読者の方にも感謝です。
>163 名無し娘。さん
うぉ、急いだのバレバレでしたか(汗。
F1は書きたいけどピット作戦とか他チームのドライバー考えないとなので…
>164 bagel_love さん
フィナーレは結構悩んだのですが、スッキリしてもらえたようでよかったです。
>165 名無し読者 さん
ジャンルとして無い物を狙った部分もありまして。
娘。小説好きでモータースポーツ好きな人間は少しは居るだろうと(笑
>166 名無しさん さん
首が折れる前にパリダカ編始めるよう、がんばります(笑
- 168 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年08月21日(水)11時19分20秒
- お話の方もちまちまと書いてはおります。
しかし、更新はしばらく先になると思います。少なくとも25日以降に(笑。
今のところ進めているのは、中澤裕子のパリダカ編(中編予定)のほか、
吉澤ひとみの短編、そしてユニット(ヒミツ)による中編の3本です。
これで12月くらいまでは引っ張れるかなと、思っております。
よろしければ、これからもよろしくお願いします。
ではでは。
- 169 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年09月03日(火)15時35分42秒
- 気がつけばもう9月、夏ももう終わりですな。
25日の長野は楽しんできました、って今更かよ(笑。
娘。コンは初めてだったので、驚きと感動の連続でした。いろいろと。
現在は色々とあって、進みが遅くなっているのですが(汗、
書く気が全くなくなったわけではないので、続けるつもりです。
たとえペースが落ちてでも。
とりあえずは、吉澤ひとみの短編が完成間近なので、近くあぷする予定です。
中澤姐さん編は…今しばらくお待ちを(汗
蛇足。
実は自分、姐さんが一押しなんです。
ということで今日のソロライブ参戦です。良いチケとれてかなりどきどき。
ライブ見れば姐さんの話書く気力がわいてくると思います。多分。
- 170 名前:bagel_love 投稿日:2002年09月09日(月)00時02分12秒
- よっすぃ〜短編まってます。
それって、やっぱりF娘。の番外編ですよね。
それとも全くの新作?
どちらにしても、早く読みたいです。
忙しい中大変とは思いますが、頑張ってください。
- 171 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年09月09日(月)00時51分06秒
- スピード違反で呼び出されて、明日が出頭のニネンです。
罰金とかいろいろ考えると今からガタガタブルブルっすよ(泣。
大体何であんなところでスピード違反の取り締まりしてるかなぁ。
自分なんかよりもっと取り締まるべきものあるでしょ、と小一時間問い(略
…でも違反が無くなるわけでもなし、悲しいね。
閑話休題。
宣言したよっすぃ〜短編ですが、終盤で行き詰まっています。
上手くいけば今晩これからうp出来るかもしれませんが、最悪の場合2、3日では済まないかも…(汗
中身の方ですが、F・娘。の番外編となっております。
よっすぃ〜のその後をさくっと、というのが主旨なのですが…さくっと行ってないかも(泣
ということで、しばしお待ちください。ではでは。
- 172 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年09月09日(月)22時44分00秒
- お待たせしますた。
なんとかよっすぃ短編なんとか書き上がりましたので、これから更新です。
タイトルは”ベーグル!”。ちょっとネタ入ってます。
エピローグとフィナーレのあいだに位置するお話です。
では、どうぞ。
- 173 名前:ベーグル!-01 投稿日:2002年09月09日(月)22時45分15秒
- グリッドについたマシンに乗り込んだ吉澤は、強い空腹を感じていた。
何のことはない、寝坊で朝食を摂り損ねただけのことだった。
しかし、スケジュールが詰まっていてここまで軽い食事しかしていなかった。
今だって何か食べたいのだが、すでにスタート直前、ドリンクしか用意されていない。
そうこうするうちに、スタートの時間は刻々と迫る。
スタッフと最後の確認を済ませ、マシンを始動させる。
グリッドからスタッフが離れてフォーメーションラップが始まる。
吉澤は、空腹を我慢してレースに集中する。
- 174 名前:ベーグル!-02 投稿日:2002年09月09日(月)22時46分09秒
- ◇ ◇ ◇ ◇
ドイツツーリングカーマスター(選手権)、略称DTM。決してPCでの音楽制作ではない。
2000年に復活したDTMは再びヨーロッパで大人気のシリーズになった。
メルセデス、オペル、アウディとドイツ系だけだった参戦メーカーも、
プジョー、アルファロメオそしてフォードが加わりヒートアップ。
昨シーズンからはついにホンダもアコードで参戦を開始、
初年度から快走を見せてツーリングカーレースでもホンダスピリットを発揮していた。
ホンダの参戦とともに、DTMの人気は日本でも大いに高まっていた。
となると日本人ドライバーの参戦が期待されるのは当然のこと。
しかし、ヨーロッパ中心のDTMに日本人が参戦するのはハードルが多い。
ましてや、ワークスとして人気と実力が見合うドライバーとなるとそう候補は多くなかった。
そんな中から選ばれたのが、吉澤ひとみだった。
- 175 名前:ベーグル!-03 投稿日:2002年09月09日(月)22時47分59秒
- BARホンダのテストドライバー兼第3ドライバーとして契約を交わした吉澤ひとみ。
昨シーズン獲得したタイトルを評価されてのことで、順調なステップアップといえるだろう。
しかし、F1テストドライバーとはなかなかに微妙な立場である。
契約では2人の正ドライバーに何かあったときは代役で乗れることになっている。
しかし、その確率は非常に低い。
もっとも、テストドライバーとは運と巡り合わせが大きく影響するものだ。
10年間様々なチームのテストドライバーを勤めながら1回も決勝に出たことのないドライバーもいれば、
逆にわずか数ヶ月でレギュラードライバーの座を手に入れたドライバーもいる。
もちろん、わずかなチャンスを活かせるだけの実力は当然必要だが。
- 176 名前:ベーグル!-04 投稿日:2002年09月09日(月)22時48分43秒
- レースに出られない吉澤は期待と不安で一杯だった。
テストをメインにこなしていく毎日。BARはテストの少ないチームではないのでドライブする機会は多かった。
しかし、テストとレースは似て非なるもの。吉澤を満たすものではなかった。
忍耐の時だと自らに言い聞かせる吉澤、耐えていた。
そんな吉澤の元へ舞い込んだDTMの話。
ホンダのつながりと、ヨーロッパに居住していること、そして人気と実力を買われて。
光栄だったが、DTMはハコ車のレースである。フォーミュラーにこだわる吉澤は悩んだ。
最終的には、ホンダからの強い働きかけもあり参戦を決断する吉澤。
元F1ドライバーなどそうそうたる面々が参戦していることが興味を引いたのもある。
そして、なによりレースに飢えていたのだ。
- 177 名前:ベーグル!-05 投稿日:2002年09月09日(月)22時49分36秒
- かくして、開幕戦からエントリーした吉澤。
準ワークスのサテライトチームに所属、マシンは昨年型だが途中で最新型に変わる予定だった。
体制には問題なかった。が、問題は乗っているドライバー側にあったのだ。
何しろ始めてのマシンに、初めてのコース。そして相手もわからないドライバーだらけ。
わからないモノづくしで吉澤は戸惑うばかりだった。
その中でも一番戸惑ったのが、接触である。
フォーミュラーに専念してきた吉澤にとって、ツーリングカーの肉弾戦は縁遠いものだった。
接近戦での接触は当たり前。白熱すれば押し出すのもザラだった。
一方のフォーミュラーの場合、基本的に触ったらお互いにお終いになってしまう。
その常識で育った吉澤が、簡単に馴染めるはずがなかった。
- 178 名前:ベーグル!-06 投稿日:2002年09月09日(月)22時50分35秒
- 結局、デビューレースはメロメロな走りの末、押し出されてリタイヤだった。
とはいえ吉澤にもプライドがある。いつまでも低迷し続ける訳にいかない。
多少は慣れた第2戦は計測予選で7位を獲得。期待に応える。
しかし、8周で行われるレース形式の予選で大きく順位を落としてしまう。
スタート直後の混乱に巻き込まれ、その後もペースが上がらなかったのだ。
後方からのスタートとなった決勝。
中団まで順位を上げるも、ベテランの元F1ドライバーと競っているうちスピン。
なんとか完走はしたものの、最後尾だった。
- 179 名前:ベーグル!-07 投稿日:2002年09月09日(月)22時52分12秒
- 第3戦、第4戦もいいところがなく終わり、インターバルをはさんだ第5戦。
シリーズは全10戦。早くも折り返しだ。
こういったインターバル明けから流れが変わることは多い。
もうひとつ好材料が。ここからマシンが最新型に更新されたのだ。
吉澤も中澤や石川からアドバイスを受けてやる気満点である。
1周のタイムを競う計測予選では再び速いところをみせる吉澤。
今回は4位。自己最高はなのはもちろん、アコード勢でも最高位だ。
続くショートレースによる予選も手堅くまとめて5位でフィニッシュ。
そして決勝。自己ベストでの5位スタートに気合いが入る。
スタンディングスタートが得意な吉澤はダッシュを決めてジャンプアップ。
1周目を3位で帰ってくる。
- 180 名前:ベーグル!-08 投稿日:2002年09月09日(月)22時53分16秒
- とはいえ、余裕からはまだまだ遠い吉澤。
ポジションを守るのに精一杯。しかし、先頭集団から離されもしなかった。
レギュレーションでマシンの戦闘力が均一化されているDTMらしい、団子状態が続く。
サイド・バイ・サイド、バンパー・トゥ・バンパーのバトルがいつものように繰り広げられる。
抜きつ抜かれつの接近戦で吉澤はトップグループの中にいた。
適度にクリーンさと狡さを使い分けてのバトル。夢中でポジションを守る。
首位には立てなかったが、入賞はもちろん表彰台も見えていた。
しかし吉澤は少しだけ熱くなりすぎていたかもしれない。
レース終盤にペナルティを示すブラックフラッグが提示される。
一緒に出されたゼッケンは、吉澤のものだった。
張り切りすぎた吉澤のブロックが悪質な進路妨害と判断されたのだった。
渋々ピットストップ・ペナルティを受ける吉澤。
初の入賞は目前ですり抜けていった。
- 181 名前:ベーグル!-09 投稿日:2002年09月09日(月)22時53分49秒
-
◇ ◇ ◇ ◇
そして迎えた第6戦・決勝レース。
パレードラップを終えて全車がグリッドに戻ってきた。
前のグリッドからマシンが静止していく。
吉澤は今回6番手を獲得。マシンはそこそこまとまっており手応えを感じていた。
「あ゙っ〜〜!!」
グリッドにマシンを止めて、うなり声をあげる吉澤。
空腹に加えてフラストレーションがたまって爆発寸前だった。
ここまでの結果は、周りからの期待に応えているとはとても言えない状態だった。
そして、期待が失望に段々と変わっていることにも気がついていた。
それだけでない。来年の去就も怪しくなっていた。
BARはレギュラー2人の残留で固まりつつあるという方針が耳に入っていたのだ。
重圧と不安を振り払うようにかぶりを振る吉澤。
何か満たされない気持ちに追い立てられながらも、シグナルへと集中する。
- 182 名前:ベーグル!-10 投稿日:2002年09月09日(月)22時54分22秒
- スタートダッシュを決めた吉澤。
2台をかわしたが、1コーナーで抜き返されて5位へ。
今回も差は開かずに、集団で先頭争いが続く。
吉澤も周りを見て走ることができるようになっていた。
前4台の動きを見つつ、後ろからのアタックも防ぐ。
直前の選手のミスに乗じてパス。4位へ浮上する。
が、相手もさるもの。シケインで強引に吉澤のインをとる。
吉澤のマシンと軽く接触して挙動を乱すが、カウンターを当てて安定させる。
4位のポジションは譲ってしまったが、冷静さは失わない。
DTMも6レース目。驚きや焦りは、もうなかった。
- 183 名前:ベーグル!-11 投稿日:2002年09月09日(月)22時55分33秒
- 連なって走るトップグループの6台。吉澤もその中にいた。
マシンが触れるほどの接近戦。ワンミスで順位が入れ替わる。
先頭も何度か入れ替わり、それによって全体の順位も動く。
吉澤も一時2位まで浮上した。
レースは誰もが決め手に欠けたまま終盤に突入していた。
先頭集団は1台が脱落して5台が団子状態。
昨年のチャンピオンに、元F1ドライバー、そして話題のルーキーと集団の顔ぶれは豪華。
その中で、日本からの挑戦者である吉澤ひとみが堂々と渡り合っていた。
- 184 名前:ベーグル!-12 投稿日:2002年09月09日(月)22時56分17秒
- スタート前の不安を忘れるほど走りに集中する吉澤。空腹すら感じていなかった。
そして、久々に好調時の感覚を得ていた。
周りと自分の動きが手に取るように分かり、相手の考えを容易に読みとれる。
自信が全身にみなぎり、身体とマシンの動きがシンクロする。
プレッシャーを受けたルーキーがインに寄りすぎ縁石で挙動を乱す。
これに乗じてアウトから抜く吉澤、3位に浮上。
続いての元F1ドライバーとはブレーキング勝負に持ち込む。
相手も百戦錬磨だ。並んだままコーナーを脱出、次のコーナーへ飛び込んでいく。
軽く接触するまで寄せてラインを確保する吉澤、進入で前を取った。
- 185 名前:ベーグル!-13 投稿日:2002年09月09日(月)22時57分10秒
- ラスト2周。
吉澤の前を走るのは昨年のチャンピオンであるユウカフェルトだた1台だけ。
とはいえ、後続もぴったりとつけているから油断は出来ない。
ワンミスで大きく順位を落とすことは、容易に想像できた。
ユウカフェルトは後ろに構わず逃げに入っていた。
マシンの差が小さいDTM、大きなリードは築くのは難しい。
追っ手から少しでも離れたいというのが逃げる側の心境なのだろう。
吉澤もラインを修正して差を詰めにかかる。
- 186 名前:ベーグル!-14 投稿日:2002年09月09日(月)22時58分47秒
- ラストラップ。
同じように縁石をカットしながら疾走する先頭集団。
連結された列車のように、一列に連なって走っていく。
集団が少しだけ縦に長くなったのは、先頭のユウカフェルトがスパートをかけたからか。
吉澤にはユウカフェルトの動きが手に取るようによく見えていた。
逃げるためにマージンを削ってアタックしているのが、容易にわかる。
そこにつけ込む吉澤。ミラーに映るように位置をとってプレッシャーをかける。
それが効いたのか、中速の右コーナーでミス。縁石のカットが少しだけ深い。
挙動を乱すユウカフェルト、吉澤がそれを見逃さない。
強引に並んで、無理矢理前に出る。
- 187 名前:ベーグル!-15 投稿日:2002年09月09日(月)23時00分07秒
- 初めてトップに立った吉澤の勢いは衰えなかった。
ユウカフェルトにつけいる隙を与えない。
そのまま、最終コーナーまでポジションを守りきった。
トップでチェッカーを受ける吉澤ひとみ、DTMでの初優勝を逆転で飾った。
静かに激戦を見守っていたスタンドが一斉に騒ぎ出す。
チアホーンが一斉に鳴り響き、割れんばかりの歓声がわき上がる。
ホンダのフラッグ、そしてどこにあったのか多数の吉澤のフラッグが大きく振られる。
ドイツの観客が、吉澤の初優勝を大きく歓迎していた。
- 188 名前:ベーグル!-16 投稿日:2002年09月09日(月)23時02分04秒
- 「そう、これだよ!。やっぱサイコー!!」
あふれる歓声に、左手をいっぱいに窓から突き出して応える吉澤。
久しぶりに勝利の味を味わうとともに、歓声の波に感激していた。
ここまでの鬱積したものや、来期への不安などはどうでもよくなっていた。
それだけ、吉澤にとって久しぶりの”勝利”だったのだ。
ゆっくりとウイニングランをする吉澤。
歓声がウエーブとなりマシンを追いかけていた。
興奮がおさまらない吉澤。何しろ吉澤の一挙一動にスタンドが反応するのだ。
調子に乗った吉澤は、ちょっとしたことを思いつく。
前後左右を確認して、コース幅のあるところに停車する吉澤。
いたずらを思いついた悪ガキのような笑顔を浮かべて右足を動かした。
- 189 名前:ベーグル!-17 投稿日:2002年09月09日(月)23時04分40秒
- 停止したマシンが再び動き出した。
今度もゆっくりと。しかしタイヤスモークを後輪からもうもうと立てながらだ。
そして、一瞬の後にマシンがくるりと回転する。
続けて2回転、3回転とマシンはアスファルトにブラックマークで円を描き続ける。
一瞬静かになったスタンドが再び興奮する。
今まで以上の歓声が上がり、吉澤は満面の笑みを浮かべる。
正確に6回転した吉澤は、再び歓声を引き連れてコースを進んでいく。
- 190 名前:ベーグル!-18 投稿日:2002年09月09日(月)23時05分45秒
- 吉澤がパルクフェルメに戻ってきたのは一番最後だった。
マシンを止めると、チームスタッフに報道陣、観客、マーシャルまでもが取り囲む。
興奮したファンが押し寄せてマシンから降りるのも一苦労。
人の波をかき分けてゆっくりとポディウムへ進むが、その間にも握手を求められたり、手を引っ張られたり。
律儀な吉澤は言葉が分からないまま、一つずつ反応していく。
もちろん、マイクとフラッシュも吉澤を取り巻いていた。
眼鏡のレポーターが早口で何度も尋ねていたが、ドイツ語訛りの英語を聞き取ることはできなかった。
食い下がるレポーターに、吉澤も申し訳ない気分になる。
何とか聞き取ろうと、もう一度というゼスチャーをする吉澤。
いつの間にか、忘れていた空腹感が戻っていた。
- 191 名前:ベーグル!-19 投稿日:2002年09月09日(月)23時07分28秒
- 3度目のトライでもほとんど聞き取れなかった吉澤。
単語はいくつか聞き取れたが、記憶に残ったのは”ドーナッツ”だけだった。
すると、空腹感とドーナッツのイメージが合わさって、思わず身体が反応してしまう。
腹の虫が動いた感触。もしかするとおなかの鳴る音が聞こえたかもしれない。
強烈な空腹に突き動かされて、衝動を我慢できない。
「ベーグル!!」
思わず叫んでしまった。
これが国際映像だということは、すっかり忘れていた。
結局のところ、吉澤が食べ物にありつけたのは表彰式と記者会見が済んだしばらく後のことだった。
- 192 名前:ベーグル!-20 投稿日:2002年09月09日(月)23時08分10秒
- この日のレースの様子は世界中へ伝えられた。
もちろん、吉澤のインタビューも一緒にである。
地域によってリアルタイムあるいは録画といった差はあったが、その日のうちに世界を駆け巡った。
スピンターンを決める映像に『Hitomi "bagel" Yoshizawa』のクレジット。
極めつけは”見事なドーナッツでしたね”との問いに”ベーグル!”とだけ答えたインタビュー。
それらの映像が与えるインパクトは大きかった。
日本とドイツはもちろん、イギリスやフランス、イタリアなどヨーロッパ各地で大ブレイク。
一夜にして”ベーグル”の冠詞とともに吉澤の名が知れ渡ったのだ。
- 193 名前:ベーグル!-21 投稿日:2002年09月09日(月)23時10分15秒
- が、本人は事情がよく掴めていなかった。知らぬ間に有名になって困惑する。
なにしろ、なぜベーグルと呼ばれるのかすらわかっていない状態だった。
そこへタイミング良くかかってきた電話は、後藤からだった。
『よっすぃ〜こないだは優勝おめでとさーん。見てたよ』
「ごっちんこそ4回目の入賞おめでとう」
電話でお互いの健闘を讃える吉澤と後藤。
F・娘。で熱戦を繰り広げたライバルであり、親友でもある2人。
世界へ飛び出した今でも親交は続いていた。
電話での会話はもちろん、会って食事することも少なくなかった。
今期トヨタレーシングからF1に参戦している後藤は、チームのあるドイツのケルンに住んでいる。
吉澤はイギリスに住んでいたが、DTMなどでドイツに行く機会は多かったのだ。
- 194 名前:ベーグル!-22 投稿日:2002年09月09日(月)23時11分32秒
- 「ごっちんに聞きたいんだけど」
『なに?』
「何で私、ベーグルなの?」
『んぁ、ベーグルって自分で言ったじゃん。勝ったときのインタビューで』
すぐにそのときのことを思い出す。空腹でベーグルと叫んだあの時だ。
「たしかにベーグルって言ったけど…何でこうなるの?」
『レポーターは”ドーナッツ見事でしたね”って聞いたら、よっすぃ怖い顔して”ベーグル!”って叫んだんだよ』
「そんなこと聞いてたの?……で、ドーナッツってなに?」
『知らないのよっすぃ?ドーナッツってスピンターンのことだよ。
ぐるぐる回って路面にタイヤの跡が輪になるでしょ。だからドーナッツって言うのだけど。
ごとーてっきり知っててベーグルって答えたのかと。
ベールだって輪になってるからさ。違うの?』
「…知らなかった。ていうかそれカッケーよ!」
目から鱗を実感した吉澤。
”ベーグル”という愛称を一発で気に入った。
- 195 名前:ベーグル!-23 投稿日:2002年09月09日(月)23時12分18秒
- ”ベーグル”吉澤の快進撃は続く。
DTM第7戦も連勝、勝利の”ベーグル”を決めてご満悦。
観客も大興奮で、サーキットは一時パニックに陥ったほどだ。
表彰台でベーグルをかじる吉澤。ベーグルコールが響き渡った。
急遽、有名なベーグルショップがスポンサーとしてサポートしていたからだ。
わずか数週間で”ベーグル・吉澤”の名は広く知れ渡り、ファンのあいだでは共通語になっていた。
DTMでも好成績を残し、話題だけでなく実力もあることを証明。
最終戦でも優勝を決め、3勝でランキング3位を獲得した。
吉澤の評価は上がる一方だった。
- 196 名前:ベーグル!-24 投稿日:2002年09月09日(月)23時15分32秒
- 注目される吉澤ひとみの来期。
いくつかのF1チームが接触しているとの噂があり、本人もF1を希望していた。
多数の選択肢の中で、重視したのはレース参戦が保証されていること。
その中で一番可能性が高いところを選んだ。
F1最終戦・鈴鹿の直前。
吉澤ひとみが来期、トヨタレーシングからF1デビューすることが発表された。
記者会見で瞳を輝かせながら答える吉澤。
数ヶ月前のどんよりとした気分は無くなり、明るい来期をじっと見据えていた。
そこには、はっきりと道が見えていた。
記者からの質問に笑顔で答える吉澤。
自信を持って、言い切る。
「目標は、F1でベーグルを披露することです」
〜end〜
- 197 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年09月09日(月)23時25分41秒
- 間違ってageてしまいますた。
ま、たまには上の方にあるのも悪くないかな、と(爆。
始めはベーグルとドーナッツの形が似ている事から思いついたネタでした。
しかし、本編(第5戦)で入れ損ねてから何とか使えないかな、と考えたのがこの話でありまして。
しかし、短編じゃないよなこれ(汗。長いし締まりないし。
一応、25レス以内で一気にアップする、というのが自分では短編の定義としているんですが。
…ま、そんなことはどうでもいいですね(笑
- 198 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年09月09日(月)23時31分56秒
- 次回作は、進行度からいくと中澤姐さん編となります。
AXでパワーもらったので書けると思います、きっと(笑。
長くなるので今回のように一気にうPしない(できない)ので、中編という扱いです。
…ま、どうでもいいか(笑
ではでは、またです。
- 199 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月28日(土)17時55分44秒
- とうとう姐さん編ですか?
ずっと待ってました(W
お台場ファイナル凄かったですね。あんないいライブ初めてでした。
DVDにもなるようで・・・嬉しいな(W
- 200 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年10月01日(火)10時04分29秒
- ごちーんファイナルから約1週間、短編集も終わりほっと一息な今日この頃のニネンです。
このところは短編集を読みふけっておりまして、全然書いておりませんでした。スマソ(汗。
姐さんのパリダカ編は順調に遅れておりまして(爆。
とりあえず、数日のうちに開始するつもりですが、スローペースになると思います。
ちょっとPC調子悪いので、修理に出すつもりなので。
>>199
お台場は行ってないんですよ。行きたかったのに(泣。
11/5のAXは行けたらいいなぁ、と思っているんですが。
どちらにしても、DVDはうれしいっす。PVのDVDも出るらしいですしね。
- 201 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年10月07日(月)00時25分53秒
- お待たせいたしました。
中澤姐さんのパリダカ編、なんとかメドが立ったので更新を開始いたします。
ちまちまとマイペースな更新になると思いますが、よろしくお願いします。
それと、ストーリー的にもちょっと地味に展開しているため、
ご期待に添えないかもしれませんが、ご了承ください。
では、中澤裕子 in SAHARA ”砂漠の雌ライオン”、開始です。
- 202 名前:砂漠の雌ライオン-01 投稿日:2002年10月07日(月)00時28分10秒
- 青く透き通る空。
どこまでも続く地平線。
黄金色の、まるで宝石の山のように輝く砂丘たち。
今まで見たどんな写真も、目の前の実物にはかなわなかった。
この景色を何日も楽しめる、そう思うと心が踊った。
……目の前のこの状況さえ、無かったら。
中澤はため息をひとつついて、再びスコップを持つ手に力を込めた。
- 203 名前:砂漠の雌ライオン-02 投稿日:2002年10月07日(月)00時31分17秒
-
◇
パリ・ダカールラリー、通称”パリダカ”。
発端は冒険好きなフランス人がサハラ砂漠をクルマで走ってみよう、との思いつきから。
ついでに誰がいちばん速く着けるか競争してみよう、ということで競技になる。
1978年の第1回から途切れることなく続いているこのラリー。
開催年度によってスタートやゴール、経由地こそ変わるものの根底のチャレンジスピリットは不変だ。
その精神は多くの人間を虜にしている。
あるものは身体とバイクのみで無謀な挑戦を続けている。
また完走しても次の完走を目指して何度も挑むものもいる。
完走することに、そして参加することに大きな意義のある、現在では数少ないレースである。
- 204 名前:砂漠の雌ライオン-03 投稿日:2002年10月07日(月)00時33分29秒
-
◇ ◆ ◇ ◆
さかのぼること半年ほど前の、お盆直前の真夏の都心。
中澤はスポンサーを訪問していた。
長らく支援してもらっている企業であり、チーム設立時にも世話をしてくれていた、大切なパートナー。
実は、中澤は以前この会社の大阪支社にOLとして勤めていたのだ。
F・娘。が始まるまでは社会人と二足のわらじをはいていた中澤。
それはレース活動を理解してくれたうえに、支援までしてくれた会社のおかげであった。
それだけではない。退社してからも中澤のスポンサーとして支援を続行。
さらに中澤のチーム設立を聞くや向こうから増額を約束。
この不景気な時なかなか無い話だ。中澤は大いに感謝している。
足を向けて寝られないとは、まさにこの事だ。
- 205 名前:砂漠の雌ライオン-04 投稿日:2002年10月07日(月)00時34分42秒
- 役員室で担当者を交えての話が進んでいく。
安倍と市井が優勝した直後で、タイトルの可能性もあった。高い評価を受ける中澤。
交渉は無事に進み、希望以上の条件が提示される。
仮契約の書類が配布され、中澤はペンを取った。
そのときドアがノックされ誰かが部屋に通された。
「堀内さん!」
中澤が振りかえるとそこには懐かしい顔があった。
褐色の肌、きれいにそろった髭。散々お世話になったこの顔を見間違えることはない。
OL時代の中澤のボスであり、レースに一番理解を示してくれた人物。
今では本社の取締役になっているという。
- 206 名前:砂漠の雌ライオン-05 投稿日:2002年10月07日(月)00時35分57秒
- もともと、会社は中澤のレース活動を理解してくれなかった。
レースでは成績が上がらず、会社でも評価されない。そんな日々に中澤は耐えた。
会社内では絶対にグチをこぼさなかった。
耐えられなくなると酒を飲んだ。レースと会社の話を肴に浴びるように飲んだ。
ある日のこと、中澤は飲み屋で隣りあった中年の男性と盛り上がっていた。
相手はどこかで見た顔だが、思い出せなかった。
モータースポーツが好きで、しかも仕事の業種が近いらしい。
中澤の苦労を良くわかってくれた。
理解してくれない会社の事を愚痴る中澤。
それにうなずく男。僕が社長だったらそんなことはすぐに改善させるよ。
男はそんなことを言って去って行った。
- 207 名前:砂漠の雌ライオン-06 投稿日:2002年10月07日(月)00時37分11秒
- 翌日、仕事中に突然支社長室に呼ばれる中澤。心当たりが無い。ついに解雇か。
覚悟して部屋に入る。そこで中澤は顔から火が出る思いをする。
そこには昨日の飲み屋の相手が鎮座していたのだ。
中澤が非礼を侘び、忍ばせていた辞表を出したそのとき、男は口を開いた。
「そんなことはない。言っただろう、改善させるって」
それ以来中澤のマシンとスーツには、いつも勤務先のロゴが入っている。
飲み屋の男、堀内孝雄のおかげである。
- 208 名前:砂漠の雌ライオン-07 投稿日:2002年10月07日(月)00時38分20秒
- 「中澤さん、頼みがあるんだ」
堀内は口を開いた。独特の通る声の裏に少しだけ嫌な予感が。
数枚の写真を取りだし、中澤の手元へ持ってくる。
美しい風景写真だ。ぬけるような青空と砂丘の地平線、その中を一直線に走るクルマ。
「どう、サハラ砂漠を走ってみる気はないかね」
その一言で察する中澤。パリ・ダカールラリーへの出場要請だ。
「…え、いや…あの…」
返答に詰まる中澤。このラリーは知っている。その過酷さに積極的に走ろうとは思えなかった。
「そこをなんとか。この通り!」
懇願する堀内。土下座すらしかねない勢いだ。中澤の気持ちが揺らぐ。
その場にいる他の人間からも説得される。契約内容の評価にはこれも含まれるとのこと。
中澤は断わることができなかった。
- 209 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月11日(金)01時27分07秒
- パリダカ〜キター!!!
待ってった。ありがと>作者さま
堀内かよ!(w
- 210 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年10月12日(土)00時30分05秒
- さてさて、今週末はF1日本GPですな。
本当は鈴鹿行って観戦したいけど、やっぱり今年も出来ません。
ゆっくりテレビで観戦ですわ。それも悪くないんだけどね。
>>209 名無し読者 さま
お待たせしました。パリダカ編ようやく開始いたしました。
堀内さんの役どころですが、初期段階ではナビの予定でした。
でもそれじゃあんまりなのでこんな感じに。
そして、ナビは……
これからも週1のペースでこれくらいずつ更新していければと思っております。
よろしくです。
- 211 名前:砂漠の雌ライオン-08 投稿日:2002年10月12日(土)00時35分38秒
-
◇
かくして、中澤のパリダカ参戦の準備が開始される。
クルマはトヨタ・ランドクルーザーで市販車改造部門に出場。
整備やマシンの作成はフランスの名門チームが請け負うことに。
日本で作られるクルマは、フランスへ送られて最終調整されることに。
フランスに送りだす寸前、中澤はマシンと対面を果たす。
第一印象は、悪かった。
競技車は、速く走ることが目的。速く走るためのクルマは、低く構えているのが基本。
だが、目の前のクルマはその常識を無視していた。
小山の様に大きい車体は、ブロックパターンタイヤによって高く持ち上げられていたのだ。
もちろん、狭い改造範囲にそったチューンだが、RV車に興味の無い中澤の目には強烈に映った。
- 212 名前:砂漠の雌ライオン-09 投稿日:2002年10月12日(土)00時40分38秒
- さらに、周辺を軽く走らせただけで中澤は愕然とする。
パワーの無いエンジン、重たいハンドル、定まらないクルマの挙動。
とても、走らせて面白いクルマでは無いと感じる。
競技をするクルマではない。いや、完走もできないのでは…。
不安な中澤の表情を読み取ったのか、エンジニアが自信ありそうに言う。
「これは前の大会でクラス優勝したクルマと同じ仕様です。ですから、問題ありません」
「確かに、確かにそうかもしれん。だがな、うちはパリダカ初出場やで。初心者やで!」と中澤。
「わかってます。だから、中澤さんの豊富な経験でゴールまで持たせてください」
クルマをいたわる走りには定評がある中澤。
過去にトラブルを抱えながらなんとかゴールまで持たせたという経験は多い。
3位表彰台を得ながら、ご丁寧にウイニングラップに止まるというおまけが付いたときもある。
だが、はじめからそれを期待されるのも苦痛である。思うように走るのがいちばんなのだから。
- 213 名前:砂漠の雌ライオン-10 投稿日:2002年10月12日(土)00時41分41秒
- ラリーでは重要な要素であるナビゲータは、フランス人に決まる。
出場経験は10回を数え、完走も多いベテラン。優勝争いに加わったこともある。
大きな体と明るい笑顔は頼りになりそうだ。初挑戦の中澤には心強い。
日本語も喋れるという。語学が苦手な中澤には救いだった。
フランスに降りたった中澤を出迎えてくれた彼は、大きな手で握手を求め自己紹介する。
「シープ・ノノリオールなのれす。ノノと呼んでくらはい。完走目指して頑張るのれす」
「あ…な、中澤裕子です。よ、よろしくな…」
その言葉使いに思わず脱力する中澤。外見とまったくマッチしていない。
日本語が少しおかしいとは聞いていたが、まさかこんな感じだとは想像していなかった。
「言葉がへんらと良く言われるのれすが、気にしないでくらはい」
外見だけで人を頼りにした自分が、少しキライになった中澤だった。
- 214 名前:砂漠の雌ライオン-11 投稿日:2002年10月12日(土)00時42分33秒
- ラリーがパリをスタートするのは12月の終わり。
そのため、クリスマスはフランスで迎えた。
誰もが素敵な彼氏と幸せなひとときを過ごしたい日。
だが、最近ではそれもかなわなくなっていた。
ここ数年は仕事が入っていたし、だいいち相手もいなかったからだ。
昨年のイブの日は、ファンとのトーク&ディナーショーだった。
もちろんファンはファンであり、中澤の心の隙間を埋めてくれはしない。
しかし、わいわい騒いでお酒と料理を楽しんでいれば、あまり寂しくはなかった。
が、どうだ。今年は寒風吹きさすガレージでクルマの最終仕上げを見守っているのだ。
スタッフは数人、しかも作業は遅れていて彼らの手は空きそうに無かった。
中澤はひとりぼっちでガレージの壁に寄りかかる。
唯一の仕事であるポジション合わせもすんで、中澤は本当に手空きに。
「寂しいわぁ……。」
- 215 名前:砂漠の雌ライオン-12 投稿日:2002年10月12日(土)00時43分26秒
- 中澤の様子に気が付いたのかノノリオールが巨体を揺らしながら寄って来て、話し掛けてきた。
「どーしたんれすか?なかざわしゃん。ノノのおうちでディナーやるから来てくらしゃい」
不安な気持ちも持ちつつ招待される中澤。
ガレージからすぐそばのアパートで奥さんが暖かく迎えてくれた。
「ほんまにようきたなぁ。うちのひとよろしくなぁ」
アイボンヌ・フランソワと名乗る奥さんも日本語を話せた。なにか懐かしい感じがした。
聞けば籍こそ入れてないがかなり長い付き合いなのだという。
ワインが振舞われ、料理が出てくる。見栄えはそこそこだが、抜群においしい。
フランス人の暖かさにふれて心温まる中澤。
このナビゲータともうまくやっていけそうだった。
- 216 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月12日(土)21時54分04秒
- パリダカいいですね〜。
ノノかなりウケ。
楽しみです〜。
- 217 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月12日(土)22時08分33秒
- 明日22:00F1
- 218 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年10月13日(日)00時39分58秒
- いやぁ、琢磨がんばったよ琢磨。
予選7番手は立派ですよ。前にはフェラーリとマクラーレン・ウィリアムズだけですから。
決勝もぜひぜひ好成績を上げて、来期につなげてほしいですね。
>>216
パリダカの魅力が描ければいのですけどね。自分筆力では自信ないです。
とりあえずノノでウケてもらえて一安心
>>217
F1は早くも最終戦ですね。
以前の中継はもっと早い時間だったような気がするんですけど。
自分は10時まで用事があるので、ちょうどいいのですけど(笑。
- 219 名前:隠れ読者 投稿日:2002年10月19日(土)02時39分34秒
- わくわくしながらヒッソリこっそり待ってます。
- 220 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年10月21日(月)00時43分09秒
- スマソ、今週の更新は諸事情のよりおやすみです(汗
ウィークディに更新して遅れを取り戻すつもりなので、ご勘弁を。
>>219 隠れ読者 さん
お待たせしてスミマセン。
コッソリひっそりでなくてもいいので、お待ちください。
- 221 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年10月29日(火)00時21分39秒
- 全然更新できなくてスミマセン。
本当は昨晩に更新する予定だったのですが…
ということで更新です。2回分くらいできたら、いいなぁ…
- 222 名前:砂漠の雌ライオン-13 投稿日:2002年10月29日(火)00時23分24秒
◇
12月29日。年末の賑々しいパリ。
その凱旋門広場に集結した競技車たち。
ここでスタートセレモニーが行われる。もちろん、中澤もその中にいた。
クルマがただスタートするだけなのに、あたりはお祭り騒ぎ。
広場は盛り上がったギャラリーに埋め尽くされている。
順番が巡ってきて、スタートランプに上る中澤・ノノリオール組。
結局、事前走行でも少しか走れなかった。不安は拭えない。
クルマの印象は変わらなかったが、ダートに持ちこむと少しは気持ち良くドライブできたのが救いか。
ラリーの事についてはナビからたくさん話を聞いていたが、今一つ実感が湧いていなかった。
砂漠を走るときは路面変化に気を付ける。砂丘には埋まらないように乗り越える。
ナビゲーションはまかせる。そのくらいしか頭になかった。
早口の司会者が中澤を紹介して、歓声が上がる。中澤が手を振ると、さらに歓声が増える。
「よっしゃ!」
気合を入れてクルマに乗りこみ、発進させる。
中澤の長い旅が、今始まった。
- 223 名前:砂漠の雌ライオン-14 投稿日:2002年10月29日(火)00時28分50秒
- パリダカといえども、はじめから砂漠を走るわけではない。
南ヨーロッパのラフロードが始めのステージ。が、これはいわゆるウォーミングアップ。
距離は短いしタイム差も少ない。中澤も無難にこなす。
大変なのはその前後にあるリエゾン(移動区間)である。
ヨーロッパの町並みを走り抜けるルートが指定されている。
一日で南ヨーロッパを一気に南下するきびしいコース設定。
知らない道、なれない右側通行、なじまないクルマ。
しかし、ノノリオールのナビゲーションは的確で時間内に到着する。
運転している中澤は方向感覚を失い従うのが精一杯だった。
ここで迷って時間に遅れ、早くもペナルティを受けた競技車もいた。
「ノノ、やるやないか〜」
「これが仕事なのれ、できて当然なのれす」
ケロリと答えるノノリオール、心強い相棒だ。
「中澤しゃんもドライビングお願いなのれす。まだクルマに慣れていないみたいれすから」
「あ、あぁまかせときぃ…」
ノノリオールの指摘がずばり当たって、うろたえる中澤。
さすがにベテラン。よくわかってる、と舌をまく。
- 224 名前:砂漠の雌ライオン-15 投稿日:2002年10月29日(火)00時29分46秒
- フェリーで地中海を横断してラリーはアフリカのモロッコに上陸。ここからが本格的な勝負。
12月31日に初のアフリカのステージがスタートする。
中澤は砂漠はおろか、アフリカすら初めてである。
まずは、そのスケールの大きさに驚く。
輝く砂丘がどこまでも続き、空はきれいな青に澄みきっている。
空と地面は地平線の向こうで溶け合ってひとつになっている。
自然の雄大さに唖然とする。クルマが、そして自分の存在がとてつもなく小さく感じる。
「は〜」
感嘆とも溜息ともつかない言葉が出る。
この中をこの身ひとつとクルマで走ると思うと、思わず身体じゅうが興奮した。
クルマに乗りこみ、シートベルトを締めてスタートに備える。
ハンドルをぎゅっと握る。気合がはいる。
「ちからを抜いてくらはい。ここはサーキットじゃないのれす」
ノノリオールの声でがくっと崩れる中澤。しかし、身体はまだ力んでいた。
- 225 名前:砂漠の雌ライオン-16 投稿日:2002年10月29日(火)00時31分55秒
- スタートのタイムカウントを聞く中澤。
いままでサーキットでコンマ何秒という勝負をしていた中澤にとって、それはなにかゆっくりしていた。
”GO”の合図とともにマシンをダッシュさせる。
『そんなに慌てることはないのれす。それに、そんなスタートはクルマを壊しちゃうのれす』
インターカムでノノリオールが伝える。
「競技やんかこれ。速く走らなあかんやろ?」
『ここで数秒稼いでもしょうがないのれす。1回スタックすれば1時間くらいすぐかかっちまうのれす』
「え…そんなん?」
1時間といったら、F・娘。1レースが終わってしまう長さだ。
改めて、競技の性格が違う事を思い知らされる中澤。
そして、それをすぐに身を持って感じることになる。
- 226 名前:砂漠の雌ライオン-17 投稿日:2002年10月29日(火)00時33分38秒
- 砂漠といっても、その地形は単に砂丘だけでない。
岩盤が剥き出しになっている岩砂漠もあれば、石ころがごろごろしているガレ場もある。
アフリカ初日のステージは、スタート直後こそガレ場だったがすぐに砂丘越えになる。
砂丘を越えるには、絶妙のアクセルワークを要求される。
まず、砂丘を超えるためにアクセルを開けてスピードを乗せる。
このとき、アクセルを開け過ぎてはならない。
タイヤを空転させると砂を掘ってしまう。こうなると亀の子状態、すなわちスタックしてしまう。
いちばん砂地が柔らかいは砂丘の頂点付近。ここではアクセルを戻して惰性で越えるのがセオリー。
下りも難しい。スピードが出すぎないように注意しないと路面の変化に付いていけない。
それに、砂丘の影は見えない。他の競技車や岩などの障害物があるかもしれないのだ。
かといって、完全に止まるとスタックする可能性がある。
とにかく、止まらないようにリズムよく越えて行かなければならない。
- 227 名前:砂漠の雌ライオン-18 投稿日:2002年10月29日(火)00時35分09秒
- 初めての、1個目の砂丘を中澤は無難に越える。
が、感動するヒマは無い。すぐに次の砂丘が迫る。
神経を右足に集中させ、クルマを進める。すでに、緊張で汗だくになっていた。
頂上に達すると同時にアクセルを抜き、車体を惰性で進ませる。
が、砂丘の下にはスタックしたバイクが。
「なんでそんなとこいるんや!」
『あっ、そのままれ!』
自分とノノリオール声が重なり、意味をなさない音になる。
中澤は避けようとハンドルを切った。スタックのことは頭に無かった。
ノノリオールはそのままで当たらないと判断した。そして、スタックを避ける事を考えた。
しかし、急造のコンビゆえ、意志疎通がうまくいかなかった。
下りでスピードが乗った車体が豪快にカーブする。
砂の抵抗で速度が落ちて、過重のかかった外側のタイヤが砂に食いこむ。
「う、なんやこれ!」
中澤は車体が砂に埋まって行く感触を初めて味わっていた。
- 228 名前:砂漠の雌ライオン-19 投稿日:2002年10月29日(火)00時36分43秒
- 『スタックしました。あきらめるのれす。』
中澤はアクセルから足を離した。エンジンを止める。
ノノリオールは手際よくハーネスを外して車外に出た。
続いて外に出る中澤。タイヤが半分、砂に埋まっていた。
呆然となる中澤。暑さが急に増して、汗が砂に落ちる。
「しゃぁ、脱出れす」
ノノリオールは平気な顔をしてスキッド板とスコップを取り出して来た。
「スコップでタイヤを掘りだして、その下に板をいれるのれす」
早くも、パリダカの洗礼を受ける中澤。気合をいれる。
「よっしゃ〜、やるで!」
- 229 名前:砂漠の雌ライオン-20 投稿日:2002年10月29日(火)00時38分04秒
「はぁ〜」
クルマを止めて、大声とともに虚脱する中澤。
運転席からゆっくりと降りる。疲労の色が濃い。
中澤のクルマがビバークポイントにたどり着いたのは、夕闇の頃。
この日の行程は約300キロと比較的短い。
が、走り切るまで8時間以上かかっている。
平均時速は40km/hを下回っていた。
マシンは埃にまみれているが、損傷は無かった。
初めてのスタックは、10分もかからずに脱出できた。
が、張りきりすぎた中澤。脱出した頃はへとへとになっていた。
そして、それが仇となる。疲労でドライビングに集中できなくなる。
すると運転に繊細さが無くなり、スタックしやすくなる。
スタックすると、車外に出て穴掘りをしなければならない。
当然、スタックからの脱出は体力を消耗してしまう。
こうして、悪循環にハマっていった。
スタックの回数も数えていたが、10回を過ぎた頃には数える気力すら無くなっていた。
- 230 名前:砂漠の雌ライオン-21 投稿日:2002年10月29日(火)00時42分02秒
- 体力にはそれなりに自信があったが、いつもと違う作業のためへとへとになっていた中澤。
普段は使わない筋肉を酷使したため、筋肉痛が恐ろしい。
スコップで掘りだす砂は予想以上に重かった。
それ以前にスコップなんてめったに使った事が無かった。
手には、マメができていた。
これがこの先、何日も続くと思うと気が重かった 。
一方で、ナビのノノリオールはケロっとしていた。
中澤を食堂に案内すると、バクバクと食べ始める。
空腹に襲われていた中澤もつられるように食べ始める。
見た目はよくなくて、砂が少し混ざっていたが、割りとおいしい。
聞くと、これでもレトルトなのだという。
なんでもフランスの食品会社が協賛しているらしい。
- 231 名前:砂漠の雌ライオン-22 投稿日:2002年10月29日(火)00時42分40秒
- 食事の後は明日の準備が待っている。
ルートマップに訂正があったりするのでチェックも欠かせない。
といっても、言葉がわからない中澤はノノリオールにまかせていた。
そして、クルマの整備も朝のスタートまでに行う。
その点中澤は恵まれていた。サポートのメカニックが3人もいるのだ。
大多数の参加者がサポートメカニック無し。すなわち自分達だけで整備もこなしていた。
昼間は走り、夜は整備や修理に追われる。
修理が終わらなかったら徹夜もありうるし、本当に直らなかったらそこでリタイヤだ。
そんな過酷な中で競技を続けている参加者に比べると中澤はラクな環境にあった。
中澤は整備や修理をまかせてゆっくり休んで、走る事だけに集中できる。
とはいえ、初参加の中澤はそれに気が付く余裕は無いのだが。
- 232 名前:砂漠の雌ライオン-23 投稿日:2002年10月29日(火)00時43分51秒
- カウントダウンが進む。
歓喜の声が上がり、特別に配られたシャンパンがぬかれる。
ノノリオールがはしゃいで、早口でみんなと声をかけ合っている。
そう、新年を迎えたのだ。キャンプ地全体が明るい雰囲気に包まれる。
「なかざわしゃんものむのれす〜」
早くも顔を真っ赤にしたノノリオールがシャンパンをすすめる。
こうやって陽気にしてるのも悪くない。中澤は微笑んでシャンパンをあおった。
新年をはじめてアフリカの地で迎えて、期待と不安が半分づつ。
- 233 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月29日(火)10時25分36秒
- 己が敵ですか?(w
ライバルも欲しいな。
- 234 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年10月31日(木)00時30分00秒
- 最近お疲れ気味なミカ・ニネンです。
ええと、やっぱり更新が遅くなりそうです(汗。
理由は、メインに使ってるパソコンの修理が長引いてるから。
以前に修理に出したときはすぐに直って来たのですが、今回は長引いてる模様。
もう、年内に完結できればいいやくらいの感じになっててスマソ。
>>233
レスどうもありがとです。
とりあえずライバルというか絡んでくる人物を何人か予定してます。
が、登場は後半になるので、当面は内なる敵との戦いが続くかと。
- 235 名前:砂漠の雌ライオン-24 投稿日:2002年11月10日(日)10時39分17秒
- テントと寝袋が、ビバーク地での寝具のすべて。
慣れない中澤は浅い眠りに悩まされる。
夜明け前、寝るのをあきらめて這いだす。
一部の参加者はまだ新年を祝って騒いでいた。
しばらく歩きまわったあと、明日走っていく方角を眺める。
夜の闇があたりを覆いつくし、わずかな星の光が砂丘の輪郭を浮き上がらせていた。
昼間はあれだけぎらぎら輝いていたのに、いまでは穏やかな大海原のようだった。
その表情の変わりように驚く。どちらも美しい。
「どうれすか、初めての砂漠は?」
いつの間にかそばに来ていた背後からノノリオールが声をかけてきた。
ノノリオールは新年を祝う騒ぎの中にいたようで、赤い顔を陽気な笑顔。
「なんか、すごいなぁと思ってな」
「ノノもこの景色見るためにパリダカに出てるようなものなのれす」
並んで地面に腰を下ろす2人。
「こんな大自然の中れは人間はちっぽけなのれす。だから、ちぃっとぐらい焦ってもしょうがないのれす」
「そうやなぁ…」
- 236 名前:砂漠の雌ライオン-25 投稿日:2002年11月10日(日)10時40分17秒
- 「ノノたちは自然を打ち負かすために走っているのではないのれす。
大体、人間が自然に勝てるわけがないのれす。だからいかに自然を味方にして乗り越えていくか。
それがこのラリーを走り抜く秘訣なのれす」
確かに、そうだ。
スタックから脱出すべく作業している時のノノリオールを思い出す。
始めはマイペースな動きに苛立ちを覚えた中澤。
しかし、中澤が疲れ切って動きを止めた時も、同じペースで作業を続けていた。
結果、トータルの作業量ならノノリオールの方が断然多い。
これもノノリオールなりの方法だったのだ。
「これからも、よろしゅうなぁ」
頼りになるナビゲータに改めて握手を求める中澤。
それを力強く握り返すノノリオール。
急造のコンビは、初日を無事に終えてより強い結束を結んだのだった。
- 237 名前:砂漠の雌ライオン-26 投稿日:2002年11月10日(日)10時44分16秒
- わずかな睡眠で迎えた元旦のスタート。
とはいえ、気負いの抜けた中澤はそれほど疲労を感じていなかった。
サムアップでエールを贈るオフィシャルに笑顔を返し、マシンをスタートさせる。
心は軽やか、鼻歌を唄いながらマシンを走らせる。
しかし、中澤の淡い期待が砕かれるのにそう多くの時間はかからなかった。
タイムコントロールにやっとの思いでたどり着き、ようやくゴールする中澤。
今日もスタックの連続。初めてのパンクとタイヤ交換も体験した。
クルマを止めると、中澤はハーネスすら外す気力も残っていなかった。
出るのは、先を悲観するため息ばかり。
ノノリオールに促されて、ようやくクルマを降り始めた。
- 238 名前:砂漠の雌ライオン-27 投稿日:2002年11月10日(日)10時47分06秒
- 「ちょっ、ノノは疲れてないんかい?」
手早く明日の準備を始めたノノリオールに声をかける。
「もちろん、疲れてますよ」
スタックを10回以上と、前日と同じくらいの作業量だった。疲れないはずはない。
中澤も前日の教訓から無理せずマイペースで動いたが、疲労は如何ともしがたい。
「こういうものれすよ。疲れないレースなんて無いんれすから」
「そりゃそうやけどな、ウチくたくたなんやぁ〜」
「くたくたなんて言葉、ノノは知りません」
…やっぱり、ウチは若くないんやろうか。
不安になった中澤だった。
- 239 名前:砂漠の雌ライオン-28 投稿日:2002年11月10日(日)10時48分31秒
-
◇
今さらながらだが、パリダカは過酷なラリーである。
アフリカに入ってからのコース設定は1日で400km以上、ステージによっては1000kmに達する。
タイムを争う競技区間はその大部分を占めており、場合によってはステージすべての場合もある。
同じコースを総合優勝を狙うワークス勢から重量級のカミオン、そしてモト(二輪)まで多彩なマシンが走る。
中澤のクルマの場合は最高速は180km/hを越えるが、アベレージおおむね80〜90km/h程度。
加えて、迷ったりスタックやトラブルで止まったりすれば、さらに時間がかかる。
そのため、コースにもよるが中澤の場合は1日で概ね8時間ほど走りっぱなしになる。
朝早くスタートして、夕方か夜にゴールする日々が続く。
無駄な体力を使わないよう心がけていても、疲労は蓄積されていく。
- 240 名前:砂漠の雌ライオン-29 投稿日:2002年11月10日(日)10時49分34秒
- 極端な話、完走を狙うならゆっくり走ればいい。
実際にゴールを最大の目標としているプライベーターも少なくない。
しかし、中澤は初出場とはいえ順位を求めていた。
完走に価値があるとはいえ、やはり速さを競う競技。闘争本能は抑えられない。
実績のあるクルマに、充実した体制。そして自らへの自惚れもあった。
クラス優勝は無理としても、トップ集団に互していき、表彰台くらいは上がれるのでないかと。
そのつもりで、集中を高く保ったまま走り続けていた。
しかし、積み重なっていく疲労が集中を妨げる。
そして経験したことのないこと、スタックからの脱出やパンクなどにも遭遇。
そのたびに、貴重な時間が費やされ、順位を失っていった。
その日を走りきり、自らの順位を確認しては、失望する。
そんなことを3回繰り返してから、中澤はリザルトを見るのをやめた。
- 241 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年11月10日(日)10時56分05秒
- ということでPCが修理から上がってきた記念更新です。
実はもうちょっと前に帰ってきてたけど、各種の設定とかに手間取ってしまいまして。
加えて、メインPCのほうの調子も悪くなったりとかとか。
ま、読んで下さってる方には関係ないことですけど。
とりあえず、前と同じ状況に戻ったので、週一回の更新目指してちまちま続けていきます。
でも、まだ序盤なんだよなぁ。どれくらいかかるんだろほ…(汗
- 242 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月15日(金)11時25分28秒
- 更新ありがとうございます。
楽しませていただいてます
- 243 名前:砂漠の雌ライオン-30 投稿日:2002年11月17日(日)17時18分38秒
- しかし、それで中澤のモチベーションは失われなかった。
順位を気にしなくなってからは、むしろ積極的になっていった。
サーキットレース主体だった中澤にとって、ラリーレイドは全く別次元の競技。
なにしろ初体験の世界。要求されるものが全く違う。
中澤はサーキットにはない未体験の奥深さに惹かれはじめていたのだ。
なにしろ、単純にスピードを出せばいいのではない。
相手は雄大な自然なのだ。ノノリオールの言葉通り、真っ向勝負したのではかなわない。
常に先の状況を予測し、何があってもそれに対応していかなければならないのだ。
目先の1分1秒を稼ぐことよりも、その先の1時間を失わない。
それがパリダカにおいて重要なことだった。
- 244 名前:砂漠の雌ライオン-31 投稿日:2002年11月17日(日)17時20分23秒
-
◇
マシンを襲う衝撃。
中澤は一瞬”しまった”という表情をするが焦りはない。
周りの状況に気をつけて、スタックしないようにマシンを止めて車外に出る。
見当はついているが、一通りマシン全体をチェック。
やはり右リアをヒットしてのパンク。ホイールは歪んで曲がりタイヤも裂けている。
こうなるとやることは決まっている。タイヤ交換だ。
中澤がリアハッチを開けてジャッキと工具を取り出す。
スペアホイールはノノリオールが引っぱり出す。
続いてジャッキアップ。中澤がジャッキをセッティングし、ノノが操作する。
マシンが完全に上がる前に、中澤はインパクトレンチでホイールナットを緩め始める。
その間にノノがジャッキアップ完了。ナットを最後まで外し、ホイールも外す。
- 245 名前:砂漠の雌ライオン-32 投稿日:2002年11月17日(日)17時21分55秒
- タイヤ装着前にホイールハウスをのぞき込んで点検、ダメージが他にないか確認する。
ノノがOKマークを出して中澤も頷く。幸運にもマシンは壊れてないようだ。
ホイールを装着する。ノノがハブに合わせ、中澤がインパクトでナットを締める。
これもコツがある。対角線の順に締めていかないとハブを壊す恐れが。
装着完了。最後にもう一度確認してから工具や破損したホイールを積み込む。
ノノリオールと視線を交わして、マシンに乗り込む。
これが4回目のタイヤ交換。
マシンを止めてからここまで10分少々、慣れたものだ。
- 246 名前:砂漠の雌ライオン-33 投稿日:2002年11月17日(日)17時23分45秒
- 人間の適応力にはすごいものがある。
メカが苦手で、最近は自分の乗用車のタイヤ交換すら人任せにしていた中澤。
初めてのパンクではノノリオールに任せきりで、本人は右往左往するだけだった。
しかし、砂漠という極限の環境とパリダカという競技の場で必要に迫られると、人は変わらざる負えない。
中澤はタイヤ交換をわずか数回で会得してしまった。
タイヤ交換だけではない。簡単な点検と整備はもはや日常茶飯事となっていた。
中澤自身もそれに何ら違和感を感じていない。
走り抜くため、そして自らに負けないために必要なことをする。
ただ、それだけのことだった。
- 247 名前:砂漠の雌ライオン-34 投稿日:2002年11月17日(日)17時25分08秒
- 適応力が発揮されたのはそれだけでない。
砂漠での日常生活自体、通常とは異なるもの。
初めは様々なことに驚き拒否反応を示していた中澤だったが、
一週間が過ぎた今では当然のように受け入れていた。
紫外線は怖いが強い日差しも慣れたし、テントと寝袋だけもぐっすり眠れるようになった。
時折吹き付ける風も、砂さえ気をつければなんてことはない。
濁った水も、砂の入った食事だって気にならなくなった。
水を大量に使うシャワーなんてアフリカに入ってからは一回も無く、簡単に洗顔できるだけだ。
だからずっとノーメイクのスッピン状態だ。
一応、メイク一式は持ってきてはいたが、砂で使えなくなったのと軽量化のために下ろしていた。
確かに、スッピンには抵抗があった。が、みんな同じく埃だらけなのだ。
男だけでなく、何人かいる女性の参加者、そしてオフィシャルまでみな同じ。
それがわかると、気にならなくなった。
- 248 名前:砂漠の雌ライオン-35 投稿日:2002年11月17日(日)17時25分46秒
- そして、それらは走行中のことにも及ぶ。
どうしても避けられないのが生理現象。8時間も走れば、腹も減るしのども渇く。
水分はドライビング中でも摂れるが、食事はそうもいかない。
悠長に止まるわけにいかないので、結局は走りながら食べることになる。
そのため、バナナやチョコバーといった、甘くそして食べやすいものが主なものになる。
が、中澤はバナナが大嫌いでなのある。
初日は隣でノノリオールが食べるバナナの臭いで卒倒しそうになったぐらいである。
かといって、甘いものが苦手な中澤はヌガーやチョコバーも受け入れ難かった。
仕方なく、ビスケットとなど甘みの少ないものを選んでいた。
しかし、それもはじめの数日のみ。しばらくするとあるものを何でも食べるようになった。
…さすがに、バナナだけは克服できなかったが。
- 249 名前:砂漠の雌ライオン-36 投稿日:2002年11月17日(日)17時26分19秒
- そして、とるものをとった後には出たくなるものがある。
スタート前には済ませておくのは当然だが、長時間も車上に揺られればどうしようもない。
脱水症状を防ぐためにドリンクを飲みながらだから、余計にだ。
これは他の参加者全員に共通の問題でもある。
普通は通過する街で(名ばかりの)トイレを借りるか、あるいは大自然へ還元するのが解決法だ。
しかし中澤は歴とした独身女性である。どうしても、抵抗がある。
この悩みを解決していくれたのが、ドイツ人の女性ドライバー、ノリカシュミットだった。
三菱ワークスから参加、総合優勝を果たしたこともある彼女はパリダカの常連。
中澤の参加を素直に喜んで、なにかと世話をしてくれていた。
その彼女が教えてくれた…自身もしているという…は方法は、オムツだった。
それを聞いて頭を抱える中澤。
つけることに抵抗はあるし、それで済ますのは気が進まなかった。
しかし、大自然の中での場合と天秤にかけて、タイムロスも無くなるオムツのほうが勝ると判断。
この歳でねぇ、と苦笑いしながら。
- 250 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年11月17日(日)17時33分59秒
- わずかですけど更新です。
下ネタとか微妙に含まれてますけど、実際に切実な問題らしいです。
優勝した増岡さんも付けてたとインタビューで答えていたし、
クラインシュミットも付けてたような気が。
決しておむつのゆゆたんハァハァとかではないので。念のため。
そうそう、昨晩のゆゆたんライブの放送見たんですけど、すごく良かったです。
お台場いけなかったのがすごく悔やまれます。
いや、ゆゆたんかっこいいよゆゆたん。またライブ希望。絶対に行くから。
>>242
ということで更新しました。
こんなのでよければ楽しんでください。
- 251 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年11月17日(日)17時35分05秒
- 間違ってageてしまった…
しかもこんなネタのときに(泣
- 252 名前:名無しティーゲル 投稿日:2002年11月17日(日)17時37分00秒
- ( ^▽^)<梨華はしませんよ〜
- 253 名前:名無しパンター 投稿日:2002年11月17日(日)17時37分56秒
- 从#~∀~#从<ウチもしないで〜
- 254 名前:砂漠の雌ライオン-37 投稿日:2002年11月25日(月)20時18分08秒
-
◇
朝日が上るのと同時に目を覚ました中澤。
ゆっくりと起き出して、身支度を整える。
スタートしてから1週間、全16日間の日程は折り返しを迎えていた。
今日と明日は二カ所設定されたマラソンステージの一カ所目。
明日のゴールまでサポートが受けられない上に、GPSも使用禁止。
主催者が用意したマップのみで走りきらなければならない。
まさに、前半戦のヤマ場。そして走りきった後の明後日は大会唯一の休息日。
ここを走りきれば丸一日の休みとなるわけだ。
休息地のキャンプにはシャワーも用意されているという。
身体も気分もすっきりリフレッシュして後半戦に臨めるという訳だ。
バックミラーをのぞき込んで自分の姿を確認する中澤。
この埃だらけでボサボサ髪の顔とも明後日にはお別れだ。
しかし、よく見てみると案外に肌のツヤが良い。
メイクをしていないからだろうか、化粧品のストレスから解放された肌の状態はいつになく良かった。
アドバイスをくれたドイツ人を思い出してつぶやく。
「ノリカシュミットの若さの秘訣はパリダカ?…んなことあらへんよな」
- 255 名前:砂漠の雌ライオン-38 投稿日:2002年11月25日(月)20時21分35秒
- ビバーク地を出発し、スタート地点へマシンを進める。
すでに他の競技者も集まっていて、順に並んでスタートを待っていた。
スタート順は初めにモト、続いて4輪、そしてカミオンのクラス別。
同じクラス内では順位が早い方からスタートする。
そのため大体の順位はわかるし、他の競技者との前後関係も容易にわかる。
中澤の直前に並ぶクルマはここ3日ほど同じ。ハシノ・チィリ組のランクルだ。
ドライバーのエミール・ハシノはスペインの貴族。
正式にはプリンセス・エミール・”ヒメサマ”・オサマノ・ブランチ・ハシノという長い名前を持つ。
ナビゲーターはハシノ家に代々仕える家系だというサカスィータ・チィリ。
パリダカの常連となりつつあるこのペア、経験豊富で完走率も高い。
- 256 名前:砂漠の雌ライオン-39 投稿日:2002年11月25日(月)20時23分46秒
- 砂を巻き上げて走り出すハシノペアを見送る。
『今日も前はハシノれすね』
「そうやなぁ。今日は付いていってみよか」
『今日のステージは難しいれすから、いいですね。そうしましょう』
ハシノペアと中澤ペアは同じクラスで同じ車種。加えてハシノと中澤は同じ歳。
思わずライバル視したくなるが、無用な闘争心はぐっとこらえる。
まだまだ先は長いのだ。彼女らの経験を参考にしても罰は当たるまい。
- 257 名前:砂漠の雌ライオン-40 投稿日:2002年11月25日(月)21時39分43秒
- 砂漠を疾走する2台の陸の巡洋艦。
前を行くのは、ハシノ駆る白いランクル。その後方約100mを追走するのは中澤の黒いランクル。
ハシノに無用なプレッシャーを与えず、かといって離れすぎないように付いていく中澤。
もっとも、今日は風がないので巻き上げる砂埃を遠くから容易に視認できるのだが。
「巧いなぁ。さすが完走経験あるとちゃうわ」
中澤が感心する。
スピードコントロールが秀逸で、メリハリのあるドライビングをするハシノ。
障害物を回避するのも予裕あるラインをとってハイペースで抜けていく。
かと思うと、尖った岩の多いガレ場では必要以上と思われるほどスピードを落とす。
しかしトータルでは結構速い。付いていっているのに余裕たっぷりというわけでもない。
経験をフルに活用して全体のペースを上げる走りは無駄が少なく、中澤は少しずつ離されていく。
もっともここまでのステージタイムは、全体的にハシノの方が速い。
離されるのは仕方ないことではあった。
しかしそのハシノがなぜ初心者である中澤に近い順位なのか?
理由は簡単、序盤の転倒で中澤の築いたスタックの山以上にタイムロスを喫していたからだ。
- 258 名前:砂漠の雌ライオン-41 投稿日:2002年11月25日(月)22時03分32秒
- 再び砂丘地帯に突入。
今度はフラットな路面が続き、両者ともほぼ全開で駆けていく。
純粋なスピードでは中澤の方が速い。整った路面ではハシノをよせつけない。
中澤が開いてしまった間隔をじりじりと詰めていく。
接近しすぎないようにアクセルを緩めるが、それでも差は小さくなっていく。
『この先の分岐ろうします? ハシノペアに付いていきますか』
ノノが叫ぶ。正面には巨大な岩山が。越えられないから右か左どちらかに迂回しなければならない。
ロードマップでは左回りを推奨しているが、距離的には右回りの方が近い。
ただし、状況がほぼ同じ左回りルートに対して、峡谷を抜ける右回りルートの路面が悪いのは明らか。
加えて右コースはロードマップには載っていない。思わぬ障壁があるかもしれない。
過去の経験があるなら話は別ではあるが。
「もうちょい、様子見てみよ」
『れすね。何となく左ルートっぽいれすけど』
それまで右前に見えていたハシノのマシンが、今では正面に位置していた。
- 259 名前:砂漠の雌ライオン-42 投稿日:2002年11月25日(月)22時05分36秒
- 岩山が接近する。今やハシノは中澤の左前方を走っていた。
「左やな」
『左れすね』
声を掛け合って確認する。
中澤が少しずつマシンの向きを変える。
ノノリオールもロードマップをめくり、ラリーコンピューターの設定を修正する。
ハシノは減速したのか、今や中澤は並ぶ寸前。
ナビのチィリのヘルメットがさかんに動き、後方を気にしていた。
次の瞬間、目の前の砂煙が赤く光る。
反射的にアクセルを戻してブレーキに足を乗せる中澤。ノノも危機を察知して身体を固くする。
一瞬の判断、中澤は軽くブレーキをかけて左にハンドルを切る。
右側をハシノのランクルが掠めていく。その間隔はわずか数十cm。
目の前で急に針路を変えたハシノをかわしてため息をつく中澤。
『危なかったのれす』
「そやなぁ、無事でよかった。向こう行っちゃったけどな」
『ずっと後ろに付かれたのがイヤらったのれしょうね』
白いランクルは岩山の向こうへと消えて行った。
- 260 名前:砂漠の雌ライオン-43 投稿日:2002年11月25日(月)22時18分28秒
- その後も順調に走行を続ける中澤。
途中で4台の集団と遭遇した。みんなチームも国籍も異なるプライベーターだ。
砂煙がひどいので適度に間隔を取りながら、コンボイを組んでいた。
ナビゲーションと整備が制限されているマラソンステージでは過剰な競争は禁物。
お互いに助け合っていくのが暗黙の了解になっていた。
中澤もここに参加することに。集団の最後方につく。
前を走る1台がスタックした。他の3台が止まって手を貸す。
中澤もノノに促されてマシンを止める。
言葉はばらばら。けれど飛び交う単語と身振りで意志の疎通はできた。
結果、自力では脱出できずに引っ張り上げることになる。
牽引は一番近くにマシンを止めた中澤がすることに。
慎重にマシンをバックさせ、ロープをつなげる。
合図にあわせてマシンをゆっくり進める。ミイラ取りがミイラにならないよう注意深く。
あっけなく脱出に成功。ドライバーが手をあげて感謝する。
手を貸していたドライバー達も歓声をあげながらマシンへ戻る。
中澤も晴れやかな気分。ノノが乗り込むのを待って発進する。
- 261 名前:砂漠の雌ライオン-44 投稿日:2002年11月25日(月)22時23分13秒
- 残り約100kmの箇所に設定されたCPになだれ込む5台。
半分開けた窓からロードブックを差し出し、オフィシャルから通過のスタンプをもらう。
これがないとCP不通過でペナルティを科せられてしまう。
チョコバーをかじりながら順番を待つ中澤が、ミラーに映る砂煙に気が付く。
スタンプをもらいウィンドウを閉めたノノリオールも気が付いた。
砂煙の中から現れたのは、スタートからしばらく中澤の前を走っていた白いランクルだった。
しかし、なにか様子がおかしい。中澤は振り返って直接見る。
『フロントが壊れてます』
「ウィンドウにもヒビが入ってるな」
『たぶん、転倒したんじゃないれしょうか…』
「なんか、複雑な気分やな…」
ルート選択の勝負には勝ったのだが、単純に喜べない自分がいた。
- 262 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年11月25日(月)22時36分10秒
- 週末にできなかったので、月曜に更新いたしました。
ようやっと、競技らしいシーンに入ってきました。
これで読者に満足してもらえるかどうかは、かなり微妙ですが。
話としてもようやく折り返しぐらいかな?だいぶ多くていやーんです。
何とかまとめてこのスレ内では完結させるつもりですけど。
- 263 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月01日(日)14時07分56秒
- 更新お疲れ様です。
パリダカってカンジが伝わってきます。
わくわくしながら読んでいます(w
- 264 名前:砂漠の雌ライオン-45 投稿日:2002年12月04日(水)00時07分06秒
- その後何度かヒヤッとしたものの、無事にその日のゴールを迎えた中澤。
途中から一緒に走ったドライバー達と挨拶を交わす。
中澤と同じランクルに乗るドイツ人のコンビ。
日産パトロールにはフランス人ドライバーとスペイン人のナビ。
パジェロを駆るのはUAEの富豪。
イングランド人の兄弟がドライブするのは、ランドローバー・ディスバリー。
そして初めてのパリダカで奮闘する中澤。
めちゃくちゃな組み合わせなのに、一緒に走った仲間意識が芽生えていた。
ワークスの張りつめた戦いに注目が集まるパリダカ。
だが、その裏ではこんなほのぼのとした友情も展開されているのだ。
- 265 名前:砂漠の雌ライオン-46 投稿日:2002年12月04日(水)00時09分41秒
- 中澤に遅れること約20分、ハシノ車が到着する。
気になって様子を見に行く中澤、ゴール地点へ。
マシンは派手にダメージを受けていた。右フェンダーが吹き飛び、ライトやグリルも損傷していた。
しかしフレームやサスペンションは無事なようだ。クルマがブレたり傾いてはしていない。
転倒したからか、右のミラーは無くなっていてルーフも波打っていた。
フロントウィンドウも派手にヒビが入っているが、酷いのは右側。
ドライバーの側はヒビが少なく視界は確保されていた。
中澤は”転倒したら砂地獄”というノノの言葉を思い出す。
軽い転倒でもボディが歪んで建て付けが悪くなる。すると隙間から容赦なく砂が進入してくるのだ。
ドアが開いた。埃まみれのレーシングスーツが降りてくる。
「あっ!」
とたんに集まる周囲の視線。中澤は呆気にとられる。
ハシノの唇には艶やかなリップ、そして頬には仄かなチークが。チィリも同じく。
唖然とする中澤の横を勝ち誇ったように歩いていく2人。ハシノは確信犯だった。
唇がひび割れていることにいまさら気が付いて、敗北感が漂ってくる。
気にしていなかったのに…。
- 266 名前:砂漠の雌ライオン-47 投稿日:2002年12月04日(水)00時14分01秒
- マラソンステージ2日目。
昨晩はアシストメカニックがマシンにふれることが出来なかった。
マシンに触れるのはクルーのみ。よって、各自でメンテナンスをしなければならない。
中澤もノノリオールを手伝ってマシンの点検と整備を行った。
競技者の疲労が色濃いが、雰囲気は明るい。この日をゴールすれば待望の休息日だ。
列になってスタートを待つ車内。目の前は相変わらずハシノ。
ただし、そのクルマにはボンネットからフェンダーにかけて無数のテープが走っており、痛々しい。
ハシノ車のスタートを見送り、自分のスタートを待つ僅かな間にノノが話しかける。
『昨日は誰へ電話してたのれすか』
「ん?古い友人になぁ。まぁええやんか、お楽しみ」
『あした電話すればいいのに』
「昨日じゃなきゃならない理由があったんやって」
中澤は笑顔で答える。
しかし、心の中は笑っていなかった。
- 267 名前:砂漠の雌ライオン-48 投稿日:2002年12月04日(水)00時19分26秒
- 前日の4台と再び一緒になる中澤。
中澤のポジションは前から3番目。前後2台ずつに挟まれる格好だ。
多少の駆け引きも感じるが、やはり単独走行より心強い。
一方この先を単独で走っているハシノ。そのハシノの上げる砂煙が微かに見える。
追いかけたい気持ちもあるが、それをこらえて淡々と走行する。
昨日のことが頭によみがえる。走りで負けたハシノは女性らしさで対抗したのだ。
が、ここで挑発に乗ったら相手の思うツボ。今日はぐっと我慢して明日以降に備える。
そっちがそうなら、ウチも奥の手取らせてもらうで。
そう明日。明日には頼んだものが届く。それで一泡吹かせたるわ。
- 268 名前:砂漠の雌ライオン-49 投稿日:2002年12月04日(水)00時24分46秒
- マラソンステージ2日目も無事に走りきった中澤、待望の休息日を迎えた。
日程的にも行程的にもほぼ中間。ここで気持ちを切り替えて後半に望む。
中澤は思いきり寝坊をした。目覚めたときは太陽が真上に。
遅い朝食を取ってからクルマを見に行く。
休息は人のためだけではない。クルマにとっても休息であり治療の時。
ほとんどのクルマが整備を受けていた。
もちろん中澤のクルマも例に漏れず。メカニックとノノが共同で整備をしていた。
中澤も少し手伝う。ウマに乗せられ前後サスが外された相棒に、これからもよろしくねと声をかける。
そして待望のシャワー。水圧は低く温度もぬるいが贅沢は言ってられない。
砂だらけの髪を丁寧に洗い、それから全身を流す。
さっぱりしてシャワーを出る。時計を見るともう時間だ。
ヘリポートに向かい、一昨日の晩に電話した相手を出迎える。
予定より少し遅れて到着した大型ヘリから乗員が降りてきた。
一目でわかった。駆け寄って抱き合う。
「裕ちゃん久しぶり!」
「彩っぺ!」
- 269 名前:砂漠の雌ライオン-50 投稿日:2002年12月04日(水)00時34分08秒
- F・娘。初期メンバー5人のうちのひとり、石黒彩。
渋い走りでシリーズを盛り上げていたが、2年目のシーズンをもって引退。
その後有力チームの敏腕メカニックと結婚し出産、幸せをつかんでいた。
しかしモータースポーツへの情熱は冷めなかった。
今はフリーのジャーナリストとして駆け出したばかりのところだ。
そんな石黒が今回、取材を兼ねて中澤へ陣中見舞いに来てくれたのだ。
- 270 名前:砂漠の雌ライオン-51 投稿日:2002年12月04日(水)00時38分28秒
- 「で、頼んだものは?」
心強くなり軽口になる中澤。砂漠なんで旧知の友人に会うことなんて貴重な体験だ。
「まったく、急だから大変だったのよ。重いし税関で止められるし」
石黒はカバンから袋を取り出した。袋の中身を確認する中澤。中にはいくつかの箱が。
心配そうに声をかける石黒。
「裕ちゃんさ、ここでやるの?」
「そや。シャワーあるから大丈夫やろ。それよか説明書きフランス語で読めへんのだけど」
「当たり前でしょ、パリで買ったものなんだから。使い方は確認したけど」
「じゃぁ大丈夫やな。さっそくやろか。もちろん彩っぺ手伝ってくれるよなぁ」
「ったく、わがままなのは変わらなんだからさ」
苦笑いする石黒。箱の中からプラスチックボトルを取り出す。
ボトルの中身は臭いが強い薬剤が入っていた。
- 271 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年12月04日(水)00時47分27秒
- 更新しました。
初めは土日の内に更新してたんですけど、
先週の月曜に続いて今週は火曜……どんどん遅くなってますな(笑
話のほうはようやっと休息日に辿り着きました。
でもこの先まだいくつかエピソードがあるんですけど…消化しきれるか心配でつ。
>>263
ありがとうございます。
パリダカってカンジだそうで、うれしいお言葉です。
これからもよろしくです。
- 272 名前:新規読者 投稿日:2002年12月07日(土)21時55分48秒
- 今日見つけてRd.1から全部読ませていただきました〜
(「マカオ」と「石川梨華」でGoogleに掛かった)
レースはほぼF1しか見たことない半初心者なんですが
思わず来期からFニッポンも見たくなりました。いや、おもしろいっす。
残念ながら1に書いてあるリンク先にRd.2が見つからなかったのですが
どこかに残っているのでしょうか?
- 273 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年12月07日(土)22時29分48秒
- なんとなく覗いていたらカキコあってうれしかったミカ・ニネンです。
最近いろいろあって、パリダカ編は遅々として進展してません。
この週末の更新もちょっと難しいかもです。なんとか年内に完結させたいのですが。
>>272 新規読者さま
ありがとうございます。Rd.2は倉庫落ちしてるみたいです。
http://mseek.obi.ne.jp/kako/gold/1015426332.html へどうぞ。
…って、Googleでこのスレひっかかるのか(汗
- 274 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年12月07日(土)23時03分50秒
- <ショートカット集>
Rd.1
http://mseek.obi.ne.jp/kako/green/1007830858.html#276
Rd.2
サイドストーリー(SS)-4
http://mseek.obi.ne.jp/kako/gold/1015426332.html#5
第5戦もてぎ
http://mseek.obi.ne.jp/kako/gold/1015426332.html#38
SS-5
http://mseek.obi.ne.jp/kako/gold/1015426332.html#97
第6戦鈴鹿
http://mseek.obi.ne.jp/kako/gold/1015426332.html#123
SS-6
http://mseek.obi.ne.jp/kako/gold/1015426332.html#193
- 275 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年12月07日(土)23時08分17秒
- <ショートカット集>
第6戦までのダイヂェスト&ポイントランキング
>>2-5
最終戦・富士(予選)
>>6-51
最終戦・富士(決勝)
>>55-129
F・娘。最終リザルト
>>159
エピローグ
>>130-138
フィナーレ
>>140-157
ベーグル!(短編)
>>173-196
砂漠の雌ライオン
>>202-
- 276 名前:新規読者 投稿日:2002年12月08日(日)00時23分17秒
- すげーレス早っ
サンキューです。Rd.2読み中です。
パリダカ編もおもしろいんで頑張ってくれさいね〜
更新されたら必ず熱読いたします
んでは
- 277 名前:新規読者 投稿日:2002年12月08日(日)00時24分02秒
- ageちまいましたスマソ
- 278 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年12月11日(水)19時28分38秒
- 結局FS3の記念ライブは行きませんでした。でもようやく写真集買ったもんね。
この後、数時間後になると思いますが更新予定です。
>>277 新規読者さん
あまり気にせずにどうぞ。たまにはあげないと忘れられちまうので(w
- 279 名前:砂漠の雌ライオン-52 投稿日:2002年12月11日(水)23時42分07秒
-
◇
夕食に現れた中澤に皆の視線が集まる。
ノノに至っては驚いてスプーンを落としてしまったくらいだ。
わざとハシノの前を通る中澤、驚愕の表情を確認してから着席する。
「どうだった?上手く行ったでしょ」
隣に座った石黒が満足そうに笑う。
「おかげさまで満足満足。彩っぺ様々やね」
スプーンを手に取る中澤。そこに写る姿は朝までの中澤と全く違っていた。
眉は優美な曲線を描き、まつげはマスカラが丁寧に塗られていた。
控えめのアイシャドーが目元を引き締めクールな印象を与える。
ファンデーションも控えめだが、唇は鮮やかな紅。
それも流行りのグロス系ルージュが魅惑の光線を放つ。
しかしそれらは引き立て役でしかなかった。もっとも目を引いていたのがヘアスタイル。
ボサボサだった髪は綺麗に切りそろえられ、見事なカラーに。。
ぼやけたブラウンでプリン状態だったが、今では透き通るような金色に。
このカラーリング剤こそが、中澤が依頼したものだった。
- 280 名前:砂漠の雌ライオン-53 投稿日:2002年12月12日(木)00時15分56秒
- 休息日が明けて、再び戦いの日々へと突入する。
後半戦はモーリタニアへ入ってからが競技区間となる。
リエゾンで国境を通過してから競技開始。
スタートを前にヘルメットを被る中澤。
ミラーを見ながらジェットタイプのメットから出ている前髪や襟足を整える。
メイクもごく軽く、香水も微かに香る程度につけていた。
もちろん、ゴールの頃には汗をかき、砂埃にまみれることは承知の上で。
その甲斐あって、前半までの中澤とはまるで別人のようだ。
このまま最後まで中澤の相手となりそうなハシノペア。
相も変わらず中澤の前でスタートを待っている。
休息日の修理で破損したウインドグラスやフェンダーは交換されていた。
それでもルーフは歪んだままで、黒いテープもまだ残っていた。
もちろん、ハシノ自身もメイクは怠っていない。
中澤のことを意識しているのは明らかだった。
- 281 名前:砂漠の雌ライオン-53 投稿日:2002年12月12日(木)00時17分01秒
- 逃げるハシノに、追う中澤。
両者にそのつもりはあまりなかったが、自然とそんな状態になっていた。
力関係もそのまま。高速区間では中澤が速く、路面が悪くなるとハシノが差を開く。
しかしハシノは振り切ろうとはしないし、中澤も追い抜かない。
微妙な関係が続いていた。
中間のCPには同時に到着。後方のスタートである中澤が差を1分縮めたことになる。
その後は砂丘越え。果敢に砂丘を突っ切るハシノに対して、なるべく迂回する中澤。
しばらくは見え隠れしながらも視認していたが、やがてわからなくなる。
砂埃が漂っている。前を走っている競技車がたてたものだろうか。
幸いに視界を遮られるほどではなかった。
一度軽くスタックするが慣れたもの。5分とかからず脱出した。
- 282 名前:砂漠の雌ライオン-54 投稿日:2002年12月12日(木)00時18分29秒
- 前方にスタックしている二輪を見つけた。
砂を掻き上げるだけの後輪。車体がそのまま直立するほど埋もれている。
途方に暮れている人影が中澤の目に止まった。
見覚えのある人影は前田有紀、中澤の勤めていた会社の後輩だ。
どうしても放っておけなくて助けに向かう。
「ゆきどん大丈夫かいな!」
「中澤さん!」
目を潤ませて喜ぶ前田。後続からも2台が救助に止まった。
自力で脱出するのが無理なのは一目見て明らか。牽引するしかない。
スペイン人が牽引のアドバイスを。フォークの両方を引っ張るようにロープを掛ける。
念のためスキッドプレートもタイヤの下に差し込み、パジェロが引っ張る。
ゆっくりと引き出されるバイク。前田がバイクにまたがったままバランスを取る。
脱出成功。小さな歓声があがり、達成感がわきあがる。
「ありがとうございます」
礼を言う前田に中澤が返す。
「まだまだこれからやで。完走してダカールで旨い酒浴びようや!」
約束して、再び走り出した。
- 283 名前:砂漠の雌ライオン-55 投稿日:2002年12月12日(木)00時19分43秒
- 中澤ら3台がゴール。前田もすぐにゴールした。
ハシノはすでにゴールしていた。
これでトータルでは差を開かれたことになる。どのくらいか気になるが、あえて聞かない。
まだ距離は残っているし、完走が第一の目標。
この日大会10日目を終了。総行程9,804kmのうちここまで6,039kmを走破。
残すは6日間で3,765km、うち競技区間は3,012km。
その中には最後の山場となるであろうマラソンステージも残されている。
まだまだ先は長い。
けれど、先のことを考えても悲観的にはならなくなった。
- 284 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月12日(木)17時36分01秒
- こんにちは、始めまして。
数日前にこの話を見つけて最初っから一気に読んでしまいました。
こんなにも長い間書き続けてらっしゃって本当にスゴイと思います。
まだパリダカもありますし、これからも遊びに来させていただきます。
それでは、更新頑張って下さいね。
余談ですが、なっちの網膜剥離がその後どうなったのか
少し出ていましたが詳しく読んでみたい気がしました。
お時間の都合などで実現は難しそうですが
暇になったときは思い出してください(笑
- 285 名前:Strong Four 投稿日:2002年12月14日(土)19時26分29秒
- はじめまして。
休み休み読みながらもやっと追いつきました。
やっぱりモータースポーツって面白いですね。
でもこの小説を読む合間に雑誌を立ち読みしてると、
自分が浦島太郎状態になっている事を痛感しました。
バタネンとかワルデガルド、ってどこいったの?とか
ランチャってもう走ってないの?とか・・・
CGTVのWRCしか知らない人間にはちょっと辛かったです。
日野の鯉のぼりが今年もパリダカ走るようですし、ちゃんとチェックしとかないと・・・
で、大変申し訳ないんですが、質問をひとつ。
DTMで吉澤が乗ったアコードって4WDに改造したんでしょうか?
FWDでは、ドーナツはできないような気が・・・
それとも後輪を軸にしてノーズ振り回したのかな?
- 286 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年12月15日(日)00時22分37秒
- 一難去ってまた一難なミカ・ニネンです。私事で申し訳ないですけど。
パリダカ編の年内の完結はちょっと苦しいかもしれないっす。
今週末の更新もできないかもです。遅筆でゴメンナサイ。
最近”読んでます”などの声を多く見かけて、嬉しいような恥ずかしいような。
個人的には裏でグチグチ言われるよりは直接の方がいいので、
感想や意見、質問等ありましたらカキコなりメールなりでどしどしどうぞ。
>>284 名無し読者 さま
ありがとうございます。これからもよろしくです。
長いって娘。小説ではまだ上はいますから。でも誉めてもらったようで嬉しいです。
リクエストどもです。なっちの話も書きたいのですが今のところアイディアが無くて…。
>>285 Strong Four さま
ありがとうございます。人力工房読んでましたよ。
自転車欲しくなったけど、お金無くて(笑
今度のパリダカにはバタネンとビアシオンが出ますよ、と言ってみる。
- 287 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年12月15日(日)00時24分27秒
- それから質問のDTMアコードの件ですが、参戦しているシリーズは2000年からの新生DTMです。
この新生DTMはそれ以前のDTMと違う規定になっています。下のリンクをご覧下さい。
ttp://www.mercedes-benz.co.jp/motorsports/dtm/machine.html
トランスミッションの項にオーガナイザー規定ミッションとディファレンシャル(デフ)とあります。
これはコスト削減のために参戦車両すべてのミッションとデフを統一しているからです。
そのため、駆動形式はメルセデスやアウディなど参戦車両すべてRWD(FR)になっています。
当然DTMアコードもFRになっているわけでして。これならドーナッツいやベーグルもこれで楽勝かと。
ここはもうちょっと詳しく書こうかとも思ったのですが、結局割愛しまた部分でして。
やっぱりきちんと書いておけば良かったと反省。
これ以外にも何か疑問等ありましたらぜひぜひどうぞ。
私も適当に書いている部分もありますので、ツッコミ歓迎です。
- 288 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年12月23日(月)00時57分56秒
- 琢磨ジョーダンじゃないのか琢磨…。
とりあえず再来年があるさ琢磨気を落とすなと言いたいです。
でも再び日本人のいないシーズンが訪れるわけで、ちょっとさみしい。
んで、本題の話のほうですが、このところまったく進んでおりません。
待っていらっしゃる方々、申し訳ありませんです。
で、何をしているかというと、こんなのを書いてました↓
http://m-seek.net/pacifico/index.html#1039964148
ついでにその前後の作品読んで感想を書いたりとかしてまして。
べつにパリダカ編を放棄したわけじゃないので、ご安心下さい。しばしお待ちを。
…でも年内完結はムリポです。スマソ。
- 289 名前:砂漠の雌ライオン-56 投稿日:2003年01月05日(日)02時43分39秒
-
◇
こちらへ向かってくる砂煙。それも3つ。
速い。すぐにすれ違う。日産ワークスのピックアップが3台、コンボイを組んでいた。
すれ違うということは、自分か相手のどちらかが間違えているといこと。
相手はワークス、日産チームを信用してターンしようとスピードを緩めた。
が、今度は三菱ワークスの3台が中澤を追い抜いていく。
一瞬状況がわからなくなる。どちらも信用できないのだ。
と思うとカミオンが前方を横切っていく。
混乱する中澤たち。日産と三菱の両ワークスが間違っている可能性も。
ルートマップと格闘するノノリオール。焦りが出ていた。
2ヶ所目のマラソンステージ、その初日。
難易度の高いコースに迷う参加者が続出していた。
中澤ペアも位置をロスト、車内はクエッションマークで埋め尽くされていた。
- 290 名前:砂漠の雌ライオン-57 投稿日:2003年01月05日(日)02時44分56秒
- この日のステージは主催者が一番過酷だと断言したルート。
距離こそ約600kmと長くはない。しかし与えられたルートマップはたったの4ページ。
しかも途中に設置されている3カ所のCPを通過しなければペナルティだ。
序盤の砂丘越えは無難にこなしたものの、その後のサバンナ地帯が曲者。
そこここに散在するブッシュが視界を遮り、同じ景色が延々と続き方向感覚を狂わせる。
わずかに残るわだちも知らぬ間に分岐したり消滅したり。信用できない。
しかもナビのみでなく、路面にも気を使わなくてはならない。
スタックの可能性は小さいが、ギャップや穴そして岩などは多い。
ヒットすればフロントや足周りを壊すだけでなく、最悪転倒の可能性も。
ブッシュも無視できない。ものによっては針のように固いものもある。
そんなのにまともに当たればラジエターを壊すことも。
実際に中澤もここまで2回ほどヒット、幸いにバンパーが歪む程度で済んでいた。
- 291 名前:砂漠の雌ライオン-58 投稿日:2003年01月05日(日)02時45分55秒
- しかし、バンパーなどはどうでも良かった。
今直面しているのはルートの問題だった。
砂丘まではハシノを含む数台と一緒だったが、サバンナでのミスコースではぐれてしまう。
しかも、そのまましばらく走ってしまいルートから大きく外れてしまった。
何とかルートに戻ろうとするも、そのうちにGPSとラリーコンピュータ(ラリコン)の現在位置が一致しなくなる。
GPSとラリコンは単独でも動作するが、お互いを補完して最大の威力を発揮するもの。
その二つが連携できなくなるのは大きな損失だった。
そしてとどめは2ワークスとの遭遇。完全に自信を無くした。
クルマをいったん止める中澤。ノノリオールも申し訳なさそうにしている。
見失ったルートに何とかして戻るか、あるいは方位を頼りにCPを目指すか。
素速く判断を下す。GPSとラリコンが一致しなくなった今、ルートに復帰するのは難しいと思われた。
ルートを無視し、方位を頼りに走ると決断、マシンを発進させる。
- 292 名前:砂漠の雌ライオン-59 投稿日:2003年01月05日(日)02時46分42秒
- ノノのはじき出したCPの方角は日産ワークスの向かった方向と同じだった。
自然と3台を追いかける感じになる。しかし、前方にクルマの影は認められない。
わずかに漂う砂埃がここを走っていったクルマの存在を知らせる。
貴重な前走車のわだちをトレースするように進むが、全面的に信用できないのがつらい。
中澤は焦っているのに気づき、落ち着こうと深呼吸する。
しかし不安は増すばかり。
もしこの方角でなかったら。そしてGPSが故障したら。
非常事態に備えて救助信号を発信する機器は搭載されてるが、それも作動しなかったら…。
広大なアフリカ大陸でただ一台取り残されたクルマ。
延々と続く景色、照りつける太陽。水も食料も尽きた。
不用意に動くこともできず、ただじっとしていることしかできない。
そして、その先に待っているのは…。
そんな想像に身震いしてしまう中澤。
あわてて横を見ると、ノノも緊張で顔をひきつらせていた。
「…マジで洒落にならへんやんか」
どちらともつかない汗を拭い、中澤はつぶやいた。
- 293 名前:砂漠の雌ライオン-60 投稿日:2003年01月05日(日)02時47分36秒
- そんな雑念が頭の中をぐるぐると駆け回り、集中が乱れ始めた中澤。
大きな岩をきわどいところで回避し胸をなで下ろすと、今度はギャップを避け損なう。
遅かった。車体の右側が持ち上げられて、ウィンドウに映る空の面積が増える。
全身を締めて衝撃に備え、同時にマシンの無事を祈る。
衝撃。際どいところでコントロールを取り戻しマシンを立て直す。
幸運にも無事に切り抜けたようだ。
『いったん落ち着きましょう!』
ノノが切迫した声で叫ぶ。中澤だけでなく、二人して冷静さを失いかけていた。
ネガティブ思考に陥っていた。大丈夫と自分に言い聞かせ再び深呼吸。
アクセルを緩める。気分転換にドリンクを口に含み、ノノの取り出したビスケットも一枚つまむ。
見失いかけたわだちを辿る。今度ははっきりしている。
クレスト(丘)越えのブラインドコーナーに進入。
が、進入してからライン上の丸いものに気づく。
余裕を持っていたつもりだったが、それでも遅かった。フルブレーキング。
ランクルは派手に砂煙を上げながら丸い物体を跳ね上げ、それから止まった。
- 294 名前:砂漠の雌ライオン-61 投稿日:2003年01月05日(日)02時48分17秒
- 「ノノっ、見たか!」
『見ました。ヘルメットれした。それも日産の…』
中澤の目には、日産のロゴが描かれたメットが宙を舞うのがはっきり見えた。
ノノリオールも同じように見えたようだ。見間違いではない。
通常、競技中のクルーはヘルメットを脱ぐことは無い。
そのヘルメットがコース上に置くということは、それだけ重大な何かがあるということだ。
最悪の事態を覚悟する中澤。
砂埃がおさまり、視界が戻るのがもどかしい。
ウィンドウの向こうに少しずつ見えてきたのは、下面をさらけ出したマシンだった。
それもランクルの目と鼻の先。ブレーキが遅れれば接触していたかもしれない。
どうにか多重クラッシュは避けられたようだ。
それにしてもひどいクラッシュだ。
まき散らされた破片や吹き飛んだタイヤが衝撃の大きさを物語る。
そして転倒しているのは日産ピックアップ。
なんと、ワークスカーだった。
- 295 名前:砂漠の雌ライオン-63 投稿日:2003年01月10日(金)02時42分49秒
- その傍らに呆然と佇む人影。ベテランのタナカ・ミサッコだった。
駆けつけた中澤とノノに気づいたミサッコは、スクラップになったマシンを示してまくし立てる。
ミサッコ自身もこめかみから血を流し、左肩を痛そうに押さえていた。
中澤が落ち着かせようとするも半ばパニック状態でなかなか要領を得ない。
「中澤しゃんっ!まらナビが車内にぃ!」
車内を覗き込んでいたノノの切迫した叫びに、中澤も顔色を変える。
ルーフを横にした車内からはナビのフカザの微かな声が。
ドアが開かず、ハーネスも外せないために閉じこめられているのだった。
「らいじょうぶれす。意識ははっきりしてるみたいれすね。まら、わからないれすけど…」
様態を確認したノノが顔を上げる。
とはいえ、緊急事態なのは変わらない。
一刻も早く車内から救出する必要がある。
テキパキと指示を出すノノ。中澤は発煙筒を焚いて後続車両へ知らせる。
転倒したクルマを起こさないと救出は難しいと判断したノノ、しかし人手が足りない。
- 296 名前:砂漠の雌ライオン-64 投稿日:2003年01月10日(金)02時45分43秒
- 「他のドライバーは助けへんのかい!」
わだちを見たところ、少なくとも他に2台のマシンが一緒に走っていたはずだ。
しかし姿は見えない。走り去ったのだ。
「ワークスは勝利が第一れす。救助はサポートカーにまかせたのれしょう」
ノノが冷静に言う。それを中澤もわからないわけではない。
しかし人命がかかってるのだ。それを見捨てるような行為は許されることだろうか。
混乱する中澤をよそに、数台の参加者が通過する。
ノノや中澤が止まるように合図しても無視して走り去ってしまう。
「しょうがないれすね…」
諦め始めたノノ、なんとかしようとしはじめた。
しかし、参加者の精神を信じたい中澤はまだ粘っていた。
これが最後と思って見えた白いクルマに手を振るが、止まる気配はない。
通過する白いマシンの巻き上げる埃に思わず顔を伏せる中澤。
が、そのまま走り去らないで急停止する。
思いがけない反応に驚く中澤。そしてマシンを見てさらに驚く。
その白いマシンはどこかで見覚えのあるランクル。
ハシノだった。
- 297 名前:砂漠の雌ライオン-65 投稿日:2003年01月10日(金)02時49分06秒
- ハシノがミサッコへ駆け寄る。ノノもチィリに協力を仰ぐ。
事態を把握したハシノの表情がこわばる。
とはいえ、女4人男1人で1トン以上あるマシンを起こすことは無理だ。
最後の手段はクルマを使うしかない。
牽引ロープでサイドから引っ張り、横転させるように起こすのだ。
決まれば行動は早い。ノノが牽引ロープを準備し、ハシノがマシンを動かすことに。
しかし、一気にマシンを起こすと着地のショックが怪我を悪化させるかもしれない。
なのでゆっくり引っ張ってドアを開けられるところまで起こして救出する。
準備は整った。ハシノがエンジンを始動、ゆっくりとマシンを動かす。
ミサッコが合図を出し、ノノと中澤そしてチィリが救出の準備。
たるんでいたロープに張力がかかり、やがてピンと張る。
ミサッコが手でゆっくりと進めと合図する。それに合わせて車体が少しずつ持ち上がる。
車体が軋む音が耳につき、緊張感が増幅される。
- 298 名前:砂漠の雌ライオン-66 投稿日:2003年01月10日(金)02時52分26秒
- ドアが開きそうなくらい持ち上がったところで、ノノが車体に取り付く。
同時にチィリがジャッキをつっかえ棒のようにして車体を支える。
中澤もノノとともに潜り込み、ドアを開けようとする。
CFRPのドアはペナペナな質感とは裏腹に、衝撃でボディにしっかり食い込んでいた。
工具を使ってこじ開けるノノ。中澤も力を貸す。
ジャッキをかけ終えたチィリも加勢してようやく開く。
「中澤しゃん頭を!」
クラッシュの衝撃で頸椎を損傷してるかもしれない。
座席に手を伸ばしたノノの声に気がついて、両手でフカザの頭を支える。
ノノが体を支えながらハーネスを外し、ゆっくりと引っぱり出す。
静かに地面に下ろし、ドライビングスーツをゆるめる。
呼吸もしっかりしていて意識もあるが、痛みが走るのか表情は険しい。
- 299 名前:砂漠の雌ライオン-67 投稿日:2003年01月10日(金)03時04分57秒
- 救助信号を受信したスキューヘリが間もなく到着。続いてオフィシャルカーも駆けつけてきた。
ドクターがフカザを診察しコルセット装着の指示を出す。
手早く行われる処置に一同はただ見守るだけしかできない。
その間わずか数分。ヘリコプターはフカザを乗せて飛び立つ。
手際の良さに呆気にとられた一同に、無線を手にしたオフィシャルがフカザの様態を伝える。
怪我は軽く命に別状はないとのこと。
とはいえ心配な点もあり検査が必要で、メディカルセンターへと搬送されるのだという。
そして、適切な判断を下したクルー達を称えるとドクターが言っていたとも。
オフィシャルも改めて彼らの勇気を称えると、達成感と安堵が彼らを包む。
しかし、それも束の間。ハシノと中澤はまだラリーの最中なのだ。
再び競技に戻るべくマシンへと戻ろうとする4人のクルー達。
それを、オフィシャルが制止した。
- 300 名前:砂漠の雌ライオン-68 投稿日:2003年01月10日(金)03時12分25秒
- 事態がつかめない中澤。それはノノやハシノも同じだった。
オフィシャルは特例だがと前置きしながらルートマップを取り出した。
なにをするかと見ていると、印を付けて次のCPの位置を教えてくれた。
加えて周辺の状況も付け足し、最後に集落を抜けるときは気をつけろとアドバイス。
中澤の顔がほころぶ。ハシノも同様だ。
「グッドラック!」
太い親指を豪快に突き上げて、勇気あるクルー達を送り出す。
気合い十分で中澤とハシノ、2台のランクルが再び走り出した。
- 301 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月15日(水)04時11分38秒
- 更新・・・気がつきませんでした。
パリダカって本当に大変なレースなんですね。
- 302 名前:砂漠の雌ライオン-69 投稿日:2003年01月16日(木)23時48分54秒
- 連なってサバンナを駆け抜けていく中澤とハシノ。
抑えていることもあり、両者ともほぼ互角のスピード。
ナビゲーションも先のオフィシャルのアドバイスがあるため問題なしだ。
砂埃を跳ね上げながら突き進む中澤の視界に集落が見えてきた。その中に目指すCPが。
『スピード落としてくらはい。40km/h制限れす』
すっかり忘れていた。ノノの声にあわててアクセルを緩めて集落へ進入。
「これがさっきの気をつけろ、だったんやな」
『そうれす。スピードガンでチェックして、オーバーならペナルティれす』
どこにオフィシャルが隠れているかわからない。スピードメーターに気を配りながら走っていく。
- 303 名前:砂漠の雌ライオン-70 投稿日:2003年01月16日(木)23時51分29秒
- 街道には住民が鈴なりになっていた。手を振り何か口々に叫ぶが意味までは分からない。
放し飼いのニワトリを蹴散らして進むと中心の広場にCPが設置されていた。
「早いぞ!ワークスだって三菱とシュレッサーだけだ!」
埃まみれで待っていたオフィシャルが叫んだ。
「日産やBMWは?」
「まだだ。ミサッコは転倒リタイヤだし、みんな苦戦しているようだぜ」
通過のスタンプを押しながらオフィシャルは軽口をたたく。
「あんたは初めてなのによくやってるぜ。さっきもミサッコを助けたそうじゃないか!」
ロードブックを返しながらオフィシャルが叫ぶ。
「偶然通りかかっただけやって」
「期待してるぜ。砂漠のライオンよ!」
ヘルメットから覗く金髪を示しながら笑うオフィシャル。
「ああ、ゆっくり走ってるけどな」
中澤も笑って答えた。
- 304 名前:砂漠の雌ライオン-71 投稿日:2003年01月16日(木)23時53分16秒
- この日は主催者の”一番過酷なコース”の宣言通り、参加者は大いに苦しんでいた。
ワークス勢だけでも日産のミサッコのほかVWの計2台がリタイヤ。
BMWもトラブルとルートミスが重なり大きく遅れていた。
それ以外のプライベーターでもマシントラブルやミスコースが続出。
夜になっても半分以上のマシンが帰ってこないという事態に。
これではラリー自体が成立しなくなってしまう恐れがあり、明日の予定を変更することに。
スタートの時間を遅らせるとともに、競技区間も短縮すると決定。
この決定は、この日を順調にゴールした中澤には恵みの裁定に。
翌朝をゆっくり過ごし、マシンの整備も十分に行うことができた。
明日までマラソンステージ。マシンの整備や修理はクルーしかできない。
そのため、徹夜でマシンに掛かりきりだったクルーも少なくない。
スタートまでに帰ってくることができず、タイムアウトで失格になったマシンも。
休息日を経ているとはいえ、参加者の疲労度は早くも高まっていた。
それでも容赦なくラリーは進んでいく。
朝日が輝く中、スタートの時間が訪れる。
- 305 名前:砂漠の雌ライオン-72 投稿日:2003年01月16日(木)23時56分12秒
- 中澤はこの日も長いつき合いになっているハシノの後ろからスタート。
コースはサバンナ主体とした砂丘越えを含むハイアベレージな設定。
こうなると中澤が有利。スタートしてすぐにハシノの後ろ姿を捉える。
残りの距離も少なくなってきている。ハシノも懸命にスピードを上げて逃げる。
中澤もさらに攻める。とはいえ余裕を残した上でのペースアップなのだが。
「くぅ…見えへん」
舞い上がる埃が視界を遮り、まるで目隠しされたまま走っているかのよう。
必要以上に接近するのは危険な状況だ。
『焦ることはないのれす。路面が良くなるのを待ってもいいのれす』
「けどな、いつまでもおつきあいしてるわけにはいかへん」
『そのためにはルート外れないとれすよ』
サバンナの一本道でルートを外すのはリスクが大きい。
しかしこのまま視界の効かない埃の中を走るのも、それなりのリスクはある。
『もう少し待ちましょう。抜けるところがあるはずれす』
「…わかった」
- 306 名前:砂漠の雌ライオン-73 投稿日:2003年01月16日(木)23時58分03秒
- CPを同タイムで通過して、今度は砂漠地帯へ突入。
比較的起伏の少ない砂丘が続き、越えるというよりは飛ぶ感じで走っていく。
とはいえ、基本は同じ。路面を確かめながら慎重にかつ迅速に。
砂丘の高さや形はジャンプには適当だが、思いっきり飛ぶのは避ける。
ここまでマシンに蓄積されたダメージが一気に現れるかもしれないからだ。
追いつめる中澤、逃げるハシノ。とはいえ間隔はほぼ一定。
道が無いぶんラインは自由だが、両者とも最短距離を走るためになかなか差は縮まらない。
膠着状態のままルートを消化していく。2つ目のCPも同時に通過。
『焦る必要はないのれす』
「でもな、前に出たいんや!」
見ればハシノもかなり攻めた走りをしていた。
ラリーも終盤、そろそろ順位を考えながら走っていた。
- 307 名前:砂漠の雌ライオン-74 投稿日:2003年01月16日(木)23時59分38秒
- 『しゃーないのれす。思い切り走っていいれすよ』
焦る中澤を見て、ノノリオールはついにアタックの許可を出した。
道の狭まるサバンナに入ったらペースを抑えるという条件付きではあるが。
それを受けて攻める中澤。後半入って初めてのマージンを残さない走り。
エンジンがうなりをあげてボディが風を切る。
景色が猛スピードで流れていき、ペースアップしたことがノノにも容易に伝わる。
ハシノの砂煙を受けないように斜め後方から迫る中澤。
純粋なスピード、そして駆け引きはサーキットレース出身の中澤の方が上手だった。
何度か揺さぶりをかけた後、裏をかくように切り返して並ぶ。
もちろん路面を先読みして取ったラインだ。
ハシノの取ったラインの先には砂丘が。減速を余儀なくされる。
この間に前に出る中澤。鮮やかに抜いていく。
「よっしゃ!」
『やったのれす!』
拳を振り上げる中澤、ノノも歓喜を上げる。
- 308 名前:砂漠の雌ライオン-75 投稿日:2003年01月17日(金)00時01分47秒
- 前に出るとハシノを突き放すべくペースアップ。
ハシノも放されないように鞭を入れる。一度は並びかけるが中澤も譲らない。
前の中澤のほうが有利だった。少しずつ差を広げていき、ついに振り切ることに成功。
道の狭いサバンナに入ると、中澤がさらに有利に。
ノノリオールもせっかくのリードを失わないよう、ナビに熱が入る。
その先は順調だった。窪地や岩などの数々の罠を無事にくぐり抜けていく。
それでも途中木の枝をヒット、フロントグラスにヒビが入るも大勢に影響無し。
久々の全開走行を思いっきり楽しんでゴールした。
なんと、中澤はこの区間でクラス最速のタイムを叩き出してのゴールだった。
- 309 名前:砂漠の雌ライオン-76 投稿日:2003年01月17日(金)00時03分55秒
- ビバーク地へ帰ってきた中澤はマスコミの取材攻めにあう。
それも日本だけではなく、フランスやスペイン、ドイツやイギリスなどからだ。
トップタイムを出した中澤の走りは、”砂漠のライオン”の異名をとったアリ・バタネンを彷彿させるものだった。
加えて、染めたとはいえ中澤はバタネンと同じ金髪。
マシンのクラスも順位も比較にならないのに”砂漠の雌ライオン”と呼ばれる始末。
それとともに他の参加者も中澤を気にかけるようになる。
初めは付いてくるのがやっとのヒヨッコ。
が、いまでは立派なラリーストになっていたのだ。
ふと気づく中澤。
”砂漠のライオン”は、バタネンの強さと、金髪をライオンのたてがみに見立てたもの。
しかし中澤は同じ金髪だが、雌ライオンはたてがみが無い。
「…ウチのどこがライオンなんやろうか」
それでも、そんなふうに呼ばれるのは満更でもないのだが。
- 310 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2003年01月17日(金)00時08分25秒
- あけましておめでとうございます。今更ですが(笑。
不定期更新なここ最近ですが、話の方はスローペースながら順調に進んでおります。
リアル世界でのパリダカゴールである19日までに完結できれば、と思っています。
が、どうもスレ容量が足りないようでして。
引っ越し警報はまだ出ていませんが、次回更新では新スレ立てるつもりです。
そのときは改めてリンク張ったり上げたりするのでよろしくです。
>>301
はい。こっそりひっそり更新してました。
砂や食事、体力にクルマのことなど、パリダカには大変な部分がたくさんあるそうです。
そんな苦労が表現できれば、と思って書いております故、伝わってるようでうれしいです。
本やテレビからの知識と想像で書いているので、実際とは違う部分ばかりでしょうけど(笑。
- 311 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2003年01月20日(月)00時26分25秒
- 新スレ立てました。
続きはこちら↓で。
”フォーミュラー・娘。” Rd.4
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/purple/1042988047/l50
一気に完結させるつもりです。よろしくです。
Converted by dat2html.pl 1.0