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Gardens
- 1 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時30分46秒
- seekでは初小説です。
元ネタというか、好きな小説の影響をもろに受けています。
知ってる方すみません、先に謝っておきます。
暇つぶしにでも読んでくれれば幸いです。
かっけーよっすぃ〜を書くことと、週1以上の更新を目標にがんばります。
それではよろしくお願いします。
- 2 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時32分56秒
この街は光が途絶えることはない。
車のヘッドライト、繁華街のネオン、コンビニの電灯。
そんな街の繁華街の先にある深夜の公園。
すぐ横の通りには、ピンクや赤の怪しいネオン。
公園の周りには、二車線の道路をひっきりなしに通る車。
無機質な都会建造物達に囲まれた公園は今日も眠ることはない。
そんな公園の黄色いベンチに座る一人の少女。
そしてその少女のひざの上で寝息を立てる学生服姿の少女。
ベンチに座る少女は、寝息をたてる少女の茶色い髪をゆっくりとなで、口を開いた。
「ごっちん・・・・・寝すぎだって」
このお話はそんな二人と、この公園で出会う仲間達との、
現実とは思えないような、うその話である。
- 3 名前:シグナル@第一話〜make a Garden〜 投稿日:2002年06月24日(月)00時35分38秒
Gardens
第一話 make a Garden
- 4 名前:シグナル@第一話〜make 投稿日:2002年06月24日(月)00時36分28秒
「ようこそ!あたしのリトルガーデンへ」
なんて言っても意味わかんないよね。
とりあえず自己紹介。
あたしの名前は、吉澤ひとみ、ごっちんには『よっすぃ〜』って呼ばれている。
ごっちんっていうのはあたしのひざを枕にして寝ている女の子のこと。
名前は後藤真希あたしは『ごっちん』って呼んでる。
二人とも16歳の高校二年生。
三週間前の衝撃的出会いから、二人の間には友情よりも強い絆がある。
友情よりも強い絆・・・かっけーでしょ
- 5 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時37分23秒
リトルガーデンっていうのは、今いるこの公園のこと。
言ってみればあたしの庭みたいなもの。
公園っていってもブランコなんて危ないものはない。
なぜ危ないのかは、そのうち分かってくるはず。
あるのは公園の真ん中にある大きな噴水と、
それを中心に広がるタイル張りの円形広場に、木製のベンチが十数個あるくらい。
そしてあたしが座る黄色い木製の大きなベンチ。
この公園にひとつしかない黄色く塗られたベンチ。
ここがあたしの指定席。
このベンチはこの公園を治める王様のいす。
今そのいすに女のあたしが座っている。
- 6 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時38分19秒
なぜこのいすにあたしが座っているか、それは1ヶ月前の金曜の夜だった。
その日は母親と大喧嘩をしたあたしは、学生服に、学校指定の革靴で家を飛びだした。
この公園には昼にくることはあっても、夜に来るのは初めてだった。
だからこの公園の夜のルールなんて知るはずない。
あいていたベンチに座った、ただそれだけだった。
- 7 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時39分29秒
ルールその1、王様(キング)になりたければ王に一対一を申し込み、
力で勝つこと。
勝てればこの公園と、武闘派ボーイズギャング、『イエロー守護神(ガーディアン)』、
のヘッドの座がもれなくついてくる。
そんなこと知らないあたしは、王様専用の黄色のベンチにどっしりと座った。
- 8 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時40分20秒
そりゃ座るよ、ほかのベンチには、肩や足をギリギリまでだした服を着た女の子達が、
金色や南国の鳥みたいな色の頭をした男にナンパされてるんだもん。
男たちは円形の広場をぐるぐる回って、ベンチに座っている女の子をナンパしている。
ナンパが成功すれば公園を出て行く。
カラオケ、居酒屋、ラブホテル、この公園の近くにはなんでもあるから。
そんな公園にひとつだけ誰も座ることのないベンチがあった。
だからあたしは座った。
そのことが友達も少なく、つまらない毎日を送っていたあたしの運命を大きく変えた。
- 9 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時41分40秒
ベンチに座ると、公園にいる人の目が、いっせいにこちらを向き、
公園全体がざわつき始めた。
あたしはそんなこと気にせず、
公園近くで売っていたベーグルにかぶりついていた。
そのうち数人の男達がベンチに座っているあたしを取り囲んだ。
男達はそろえたように、黄色のバンダナを首や腕に巻いている。
取り囲んだ男達は何をするでもなくあたしを見ている。
中にはニヤニヤ笑いながらこっちを見ているやつもいる。
あの笑いはあたしが一番嫌いな笑いだ、女だからと言う理由で笑っている笑いだ。
おとこおんなのひとみがきたぞー!みんなにげろー!
遠い昔の、残酷な子供達の声が頭の中にひびいた。
- 10 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時42分52秒
そのうちに、あたしを取り囲んでいた人の壁が、あたしの目の前で2つに割れ、
3人の男があたしに近づいてきた。
壁みたいにでかい男が二人。
その後ろに一人の男が二人に守られるような形で、歩いてくる。
あたしの目の前で止まると2人の後ろから一人の男が出てきた。
五月の季節に似合わない黒い肌。
日焼けサロンで焼いたであろう黒い肌を、見せ付けるように胸を大きくはだけている。
耳と鼻にはいくつものピアス。
左耳には三つのピアスが三角形を作っていた。
ピアスの男はあたしの感情を逆なでするようにニヤニヤ笑いながら口を開いた。
「ヒュ〜♪王様(キング)のイスに女が座ってら〜」
ピアスの男はへらへら笑って、明らかにあたしを馬鹿にしている。
「このいすに座る意味分かってる?それとも俺の夜の相手にでもなってくれるの?」
そういいながらあたしの横に座り肩に手を回してきた。
周りで笑いや歓声が上がる。
- 11 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時43分40秒
「汚い手で触らないでくれる」
そういってあたしはピアス男の髪を右手でつかみ、立ち上がった。
ピアス男を屈辱的に上から見下ろす。
「なめたまねしやがって」
ピアス男も立ち上がると、あたしを殴ろうとこぶしを振り上げた。
しかし後ろにいた壁のようにでかい男のうちのひとりが、
ピアス男の腕をつかみあたしに聞いてきた。
「キングに挑戦するんだな?」
低い声でそう聞く大きな男にあたしはわけも分からず頷いた。
ルールその2、王様(キング)との戦いは噴水の前でおこなうこと。
- 12 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時45分17秒
噴水前には大勢の若い男女で円形の闘技場ができていた。
ざわつく噴水前でピアスの男は手を上げた。
するとさっきまでざわついていた周りの人たちが急に静かになった。
「この勇気あるお嬢さんに拍手〜」
ピアスの男がふざけた声で拍手を求めた。
周りから拍手が起こる。
母親との親子喧嘩で負けて、いらついていたあたしの怒りはもう限界だ。
「どうでもいいけどさ、さっさとはじめない」
そんなあたしの声をあおるように周りから声が上がる。
「いいだろう、しかし女のあんたと、俺じゃあ話にならないだろ、
ハンデとして俺は右手しか使わない」
そういってピアスの男は十円玉をあたしに投げた。
この十円玉を投げて地面に落ちた音がゴングらしい。
ピアスの男は余裕の笑みでニヤニヤしている。
まあ女の子相手に、本気になる男はそうはいないけどね。
けれどもそれが運のつき、分けあって吉澤ひとみ、喧嘩には自信あり。
- 13 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時46分58秒
イライラが頂点のあたしは受け取ると、すぐに10円玉を暗い空に向けて投げた・・・。
しかし10円玉はあたしの指に挟まれたまま右手にある。
見物に来ていた周りの少年少女は暗い空を見上げている。
それはピアスの男も同じだった、まぬけに上を向いた瞬間、
右手の指にはさんだ十円玉を指からはなす。
そしてピアス男に向けて体重の乗った、伸びのある自慢の右ストレートをはなった。
チャリーン
十円の音と同時に「え?」と声を上げピアスの男の顔がこちらを向いた。
グチャ
作戦どおり
ピアスの男は鼻から血を出し、空を見ながら倒れた。
- 14 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時48分22秒
「はぁ〜すっきりした」
そういいながら静まり返った公園をぐるっと見回した。
「なめやがって・・女だと思ってゆだんした」
倒れていた男が鼻を手で押さえながら起き上がろうとしている。
さすがは元キング
けれどあたしはあせることなく、学校指定の黒い皮靴で、
肋骨の一番下の骨を狙いつま先蹴り。
ドス
けりが入ると元キングは、わき腹を押さえながら地面を暴れまわっている。
あたしの足にはキショイ音が伝わっていた。
みごとに折れたようだ。
- 15 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時49分55秒
そのうちに壁みたいにでかい男の一人が、元キングの片足をもち、
地面をのたうちまわる彼を、引きずりながら公園を出て行った。
あたしを取り囲んだ大勢の少年少女は、静まり返ったままだ。
「勝ったのはあんただ、この公園のキングは今からあんただ」
壁みたいな男のもう一人がそう言って握手を求めて、手を出した。
「キングってなに?」
その時、あたしは腹の立つヤローをぶっ飛ばしただけだ。
この公園のルールことなど知らないのでそう答えた。
説明を受けても、あたしはこの公園のことなど興味がなかったので断った。
しかし次のことを言われてあたしは引き受けた。
「あんたベーグル好きなんだろ。
この公園を守るために多少だが金を集めている。
ここに来ればいつでも食えるぞ」
何の迷いも無く笑顔でがっちりと握手した。
- 16 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時50分44秒
「けどあたしでいいの?さっきの人、あなた達の仲間でしょ?」
握手をしながらあたしが聞くと、
「ただ強いだけじゃみんなはついてこない、ここと、ここがないと」
そう言って男は自分の頭と胸を、人差し指でノックした。
そのあと「それに俺はあいつが嫌いなんだ」と付け加えることを忘れなかった。
「新しいキングの誕生だー!」
男がそう叫ぶと周りから大歓声が上がった。
あたしがキング・・・・かっけ〜かも
- 17 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時53分08秒
そんなこんなであたしはこの公園を縄張りとする、
イエローガーディアンというボーイズギャングのヘッドになった。
そしてあたしは、土曜と日曜の朝をこの公園のベンチで、
迎えるようになっていた。
高校に友達のいなかったあたしには、明日もあさっても、
学校しか予定のない毎日だった。
しかしそんないつもの毎日は終わり、週末はいつも公園のベンチにいた。
公園に来れば気の会う仲間がいたし、何かとすることがあった。
こちらから行かなくても、ただ座っているだけで、
何かは向こうからやって来てくれたから。
- 18 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時54分19秒
キングになった次の日は、あたしを倒そうとする人たちで公園はいっぱいだった。
新しいヘッドは女、しかもだまし討ちで勝った、という事になっていた。
そのせいで誰でも勝てると思ったらしい。
あの時、千円でも金を取っていたら半年は、
ベーグルに不自由しなかったと、今でも後悔している。
その日は一人をねじふせると、ほとんどの人達は、挑戦をあきらめた。
相手は耳に隙間がないくらいのピアスをつけ、腕に偽タトゥー(シール)
を貼ったどう見ても中学生くらいの男だった。
いくら耳にピアスを付けてようが、中学生があたしの相手になるわけない。
相手のパンチを避け続け、相手のスタミナが切れたところを、
かるいステップでいっきに間をつめ右ストレート。
その男は、手加減なんて失礼なことできないあたしのパンチを受け、
二メートルほど吹っ飛び噴水で、すこし早い水泳をすることになった。
- 19 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時54分53秒
そして次の週の金曜日の挑戦者が、あたしのひざの上で寝ている美少女だった。
けれどもそのときの話はまた今度、何か問題が起きたみたいだから。
「キングー!」
ほらね、もう行かないといけない。
あたしの強さの秘密もそのうち分かると思うから。
- 20 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時55分53秒
「キング、バスターミナルで女の奪い合いです。
よそのチームとけんかになりそうです」
肩で息をしながら黄色いバンダナを首に巻いている男がいう。
「分かった、すぐ行くから」
あたしはごっちんを起こそうと声を掛けるが、
この公園の姫はなかなか起きない。
あたしはごっちんの頬をペチペチと叩きながら声をかけた。
「ごっちん、ごっちん」
「・・ん・・んあ〜、おはよ〜、今なんじ〜」
目を閉じたまま、暗い空の下、朝のあいさつをする。
「もう11時過ぎてるよ」
「んあ〜6時くらいだから・・・あは!5時間くらい寝たね〜」
「ごっちん寝すぎだよ」
「へへへ・・で、なに〜?」
「ケンカだって」
そういうとごっちんはベンチに座り、
大きくあくびをしながら立ち上がった。
- 21 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時56分37秒
「ねえ、よっすぃ〜」
「なに?」
「あたしここ大好きだから」
「は?」
「ううん、なんでもない、先に行ってるね」
そういってごっちんは、公園に隣接しているバスターミナルへ走っていった。
あたしは噴水の前までゆっくり歩いて行きこの公園をぐるっと見回してみた。
噴水の向こうでは、ダンサーのチームが、
ラジカセから出る音に合わせてかっけー踊りを踊っている。
その横のほうではストリートミュージシャンたちが、
ギターを弾きながら楽しそうに何かを叫んでいた。
そんな風景を横目にあたしはケンカの場所へ向かった。
- 22 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時57分39秒
ここには大人と呼ばれる人達はいない。
ここにいるのは大人になりたくない子供と、
子供のままでいたい大人がいるだけ。
そんな人たちが集まってできたこの国に、縛るものなど何もない。
大人の理屈も大人の矛盾もない。
みんな自由だ、そんな夢の国にあたしはいる。
そしてそんな夜の公園を、みんなはこう呼んだ。
『リトルガーデン』と。
そしてあたしは、大人たちの入れない小さな庭の王様だ。
「いいでしょ、あたしの庭」
- 23 名前:シグナル 投稿日:2002年06月24日(月)00時58分21秒
-
to be Continued
- 24 名前:イエローシグナル 投稿日:2002年06月24日(月)01時02分22秒
- 一話全部載せたんでストックが・・・
私の信号は早くも黄色くなってます。
しかも失敗しまくってるし・・・
とりあえずsageでいきたいと思います。
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月24日(月)03時28分09秒
- かっけ〜ヨスイの新作ハケン。
それもよしごまテイスト。
期待、大です。
- 26 名前:名無し娘。 投稿日:2002年06月24日(月)20時37分57秒
- いい感じな文章。早くも次の展開が気になります。
作者さん、がんがってください!
- 27 名前:シグナル 投稿日:2002年06月26日(水)00時34分58秒
- あわわわわ、レ、レ、レスがついてる。
どうしよう、どうしよう。
>>25 名無し読者様
初レスです。
ほんとにありがとうございます。
こんな駄作に期待だなんてもったいないお言葉です。
期待はあまりしないほうがいいかもしれません、暇つぶし程度に読んでください。
何かお礼がしたいくらいうれしいので「この小説にだせ」と、
いわれれば出します、もう書くなといわれればやめます、
更新しろといわれれば更新します。
なのでたまにで良いんで見てください。
>>名無し娘。様
二番目レスありがとうございます。
文章いい感じですか・・・うれしいです(涙
先ほども書きましたが「だせ!」とレスもらえればだします。
このレスをはげみにがんがります。
ながながとレスしちゃいました、次からは短くします。
次回更新は明日の今頃になると思います。
では次回予告、みたいなものを・・・
- 28 名前:シグナル 投稿日:2002年06月26日(水)01時07分32秒
―─深夜の公園に響く声
「よっすぃ〜こっち〜」
「ん〜とりあえず黙らしといたけどあれでいいの?」
――男は王に牙をむく
「キングだかなんだか知らねーけどな、女がえらそうにし」
「あれ痛んだよねー」
――???
「痛いの痛いのとんでいけー」
「心が・・・痛いんだって」
――彼女は夜の空を見上げながらつぶやく。
「吉澤はそういう人見ると放っておけないでしょ」
「あなたのこと男だと思ったままなのよ」
この街は眠ることを知らない。
コンビニやラブホテルのネオンが壁となって、
夜の闇からこの街を守っているから……
次回 『Gardens』
―― 第二話 ガラスの靴
次に登場する方は、よしゴマの敵?となる人と、最近漫画に目覚めた方です。
残念なお知らせですが、この話はよしごまテイストではないかもしれません。
なぜなら作者はベタという言葉が好きだからです。(w
レスくれた方がよしごまが好きなようなので、甘くはないですが、
よしごまテイストだしたいと思います。
- 29 名前:シグナル 投稿日:2002年06月26日(水)23時04分33秒
『リトルガーデン』―――都会のど真ん中にある公園の夜の名前。
その公園は週末の夜は、若い男女であふれかえる。
ダンサーのチームやストリートミュージシャンのチーム。
公園に隣接している芸術劇場前の広場には、
どこからか持ってきたバスケットゴールで、
3on3の賭けバスケをしているバスケのチーム。
その隣ではMBXやボーダーのチームが、技の競い合いでバトルをしている。
公園にある公衆トイレはマーケット、2〜3人のルーズッソクスのコギャルが、
サングラスをつけた男と一緒にトイレに入り、1分もしないうちに出てくる。
そして次の客、この繰り返し。
この不況の世の中あたしの庭の売人は大繁盛のようだ。
こんなところだからトラブルも起こる。
女の取り合い、金がらみのけんか、他のチームからの襲撃。
その他いろいろ。
それを沈めるのがあたしのチーム、イエローガーディアンの役目。
公園の中を獲物を狙う鷹のように、黄色い少年達が歩き回る。
彼らはトラブルが大好物。
そして今日もトラブルがやってきた。
- 30 名前:シグナル 投稿日:2002年06月26日(水)23時05分11秒
Gardens
第二話 ガラスの靴
- 31 名前:シグナル 投稿日:2002年06月26日(水)23時06分23秒
「よっすぃ〜,こっち〜」
バスターミナルに向かうあたしの耳に、ごっちんの声が聞こえた。
声はターミナルのバス停からだった。
ターミナルのバス停のあたりには、すでに人が集まっている。
その人だかりの前でごっちんが大きく手を振っていた。
最終便の終わったバスターミナルは、近くの町からナンパ目的に来る車が、
駅前のタクシーのように列を作り、のろのろ流している。
男たちは自慢の車を見せながら声を掛けるのだ。
「俺らの車に愛乗りしない?」
こんな風に……。
一人で世界を回ってろ……
- 32 名前:シグナル 投稿日:2002年06月26日(水)23時08分22秒
人だかりに近づくとあたし達二人に気づいた人達が、道を作ってくれた。
人の壁が二つに割れて道ができる。
あたしってかっけー
できた道をごっちんと二人して騒ぎの中心へ足を進める。
やじ馬の中心には男が二人。
たがいに襟首をつかみにらみ合っている。
一人の腕にはあたしのチームのシンボルカラーの、黄色いバンダナ。
その後ろには同じく黄色い服や,バンダナを身につけたメンバー数人が、
ギラツク眼で二人を見守る。
もう一人はナンパ目的で着た男のようだった。
すぐそばにある車の中からは、男の仲間が車から身を乗り出すようにして、
二人をあおっている。
「なにがあったの?」
あたしは腕に黄色いバンダナを巻いた男に近づきながら聞いた。
- 33 名前:シグナル 投稿日:2002年06月26日(水)23時10分37秒
聞くと、ナンパ男が嫌がる女の子を、無理やり車に乗せようとしたのを、助けたらしい。
「その子どこにいるの?」
まだ首の襟をつかんだまま、にらみ合っている二人を引き離しながら聞くと
あたしのチームの男がバス停のほうを指差した。
指の差すほうを見ると、バス停のベンチに学生服姿の女の子が見えた。
その隣には黒く長い髪の女性。
「飯田さん…かな?」
顔は見えないが確かに飯田さんだ。
「ごっちん、こっち任せるね」
あたしはそう言って、近くでボーっとしていたごっちんの肩をぽんと叩いた。
「んあ、よっすぃ〜、任せるって言うけどうしたらいいの〜?」
「え〜と、ややこしかったら、とりあえず黙らしといて」
そういってあたしは飯田さんのいるベンチへと向かった。
- 34 名前:イエローシグナル 投稿日:2002年06月26日(水)23時14分38秒
- 今日の更新終了です。
もう少しでわたくしの信号も青になると思います。
青になればスムーズに進むと思います。
更新短くてすみません。m(__)m
- 35 名前:イエローシグナル 投稿日:2002年06月29日(土)23時11分03秒
――――
飯田さんとは2週間くらい前に、ごっちんと公園近くのデパートの本屋で、
立ち読みをしていたときに出会った。
絵画集コーナーの前で、きょろきょろと、
周りを気にしている怪しい女性をごっちんが見つけた。
それが飯田さんだった。
飯田さんが何をしようとしていたかと言うと、万引きだった。
しかし飯田さんの万引き方法はすごかった。
まず一冊の大判の画集を手に取る。
そして画集を胸に抱いてそのままレジの前を、
走って出て行くという荒技をやってのけた。
- 36 名前:イエローシグナル 投稿日:2002年06月29日(土)23時11分44秒
そしてそれを見ていたごっちんとあたしは、彼女を捕まえるため店を出た。
別に捕まえて店に突き出そうなんて考えはない。
目的は夕飯をおごってもらうことだ。
そして、ちょうどこの公園まで逃げてきた飯田さんを捕まえた。
二人で飯田さんの両腕に仲良く腕をからめ、近くのファミレスで豪華なディナー。
飯田さんの名前は飯田圭織、北海道出身の20歳。
この町の美術大学に通っている。
なんでも、黄色い花の大好きな画家の画集が欲しかったが、
お金のない彼女は仕方なく万引きしたらしい。
――密着24時!あなたは見た!女子大生の万引き現場!
結果、お金のない飯田さんに夕飯をおごってもらえるわけがなく、
あたしとごっちんで、飯田さんの食べた、ハンバーグセットを、おごることになった。
- 37 名前:シグナル 投稿日:2002年06月29日(土)23時12分53秒
――そして次の日
あたし達はいつものように、リトルガーデンのベンチに座っていた。
もちろんごっちんは、あたしのひざを枕にして熟睡。
そこに飯田さんが静かにやってきた。
あたし達の前に、自分で持ってきた座椅子を置くと、静かに座った。
なぜ座椅子?
そんなあたしの疑問を無視するかのように黙ったままスケッチブックを開け、
あたし達の方をちらちら見ながら絵を描き始めた。
途中でごっちんも目を覚ましたようだったが、飯田さんが絵を描いているのに気づいたようで、
あたしのひざの上でじっとしていた。
絵は15分ほどで完成した。
しかし飯田さんの絵を受け取ったあたしとごっちんは、言葉を失った。
- 38 名前:シグナル 投稿日:2002年06月29日(土)23時13分28秒
絵はとてもうまかった。
さすが美大に通っているだけのことはあった。
しかし・・・・
鉛筆のみで描かれた絵には、とびっきりの笑顔の飯田さんが描いてあった。
あたし達を見ながら自分の顔の絵を描いた飯田さん。
絵をもらったあたしは、一流芸術家は変わり者が多いという言葉を思い出した。
飯田さんは間違いなく超一流になれると思った。
- 39 名前:シグナル 投稿日:2002年06月29日(土)23時14分08秒
その絵は昨日の夕飯をおごってもらったお礼だということだった。
ちなみに絵は、飯田さんが帰った後ごっちんとあたしで、どちらが持つかでもめた。
もちろん二人で取り合ったわけではない。
その絵は、たまたま近くを通りかかった人に渡された。
その絵を手に入れたのは、賭けバスケチームのリーダーのシン君だった。
それから飯田さんは、あたしのベンチの横で、
飯田さんお気に入りの座椅子に座り、絵を描くようになった。
そして飯田さんは、あたしとごっちんの仲間になった。
- 40 名前:ブルーシグナル 投稿日:2002年06月29日(土)23時16分17秒
- 更新終了。
がんばれれば明日更新かも。
- 41 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月30日(日)13時28分37秒
- 自分の絵を書くとは飯田さんらしい(w
元ネタはドラマも小説も大好きでした。
文章もストーリーも自分好みです。これからも頑張ってください。
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月30日(日)18時46分17秒
- すごく面白いです。
かっけーよっすい〜がいい!
続き、楽しみにしてます。
- 43 名前:シグナル 投稿日:2002年06月30日(日)23時11分11秒
それにしてもシン君は、飯田さんの絵どうしたんだろう?
なんて考えながら飯田さん座っている、バス停のベンチへ歩きはじめた。
そうすると後ろからナンパ男の声が聞こえた。
「キングだかなんだか知らねーけどな!女がえらそうにし」
ゴチン
鈍い音で男の話は途中で切られた。
後ろを振り向くとナンパ男は額を真っ赤にして、大の字になって倒れていた。
ごっちん必殺の頭突きがでたようだ。
男の額を見るとあたしもあの痛さを思いだした。
あれ痛んだよねー
痛くもないおでこをさすりながら、バス停のベンチに近づくと、
学生服の女の子が飯田さんの横で、震えながら泣いているのが分かった。
- 44 名前:シグナル 投稿日:2002年06月30日(日)23時13分06秒
「痛いの痛いのとんでいけー」
ベンチの前まで行くと飯田さんがそう言いながら女の子の頭をなでていた。
飯田さん、小学生ならまだしも、
その女の子はどう見ても高校生なんですけど……
そんなツッコミ、言える分けないあたしはやんわりと聞くことにした。
「飯田さん、その人けがしてるんですか?」
あたしは飯田さんに話しかけながら、下を向いている女の子の方を見た。
黒い髪と白のハイソックス、学生服は薄茶のブレザーに、チェックのスカート。
彼女の横には、ぶあつい学生カバン。
深夜のこの公園には、あきらかに場違いな格好だ。
「あ、吉澤じゃない、元気だった?」
飯田さんの明るい声。
けれども飯田さんとは昨日もあっている。
「元気だった?って、飯田さんとは昨日も会ったじゃないですか?」
「そう?かおりは過ぎたことは気にしないの、だからあまり気にしないで」
「は、はぁ…」
飯田さんは今日も元気なようですね…。
- 45 名前:シグナル 投稿日:2002年06月30日(日)23時19分48秒
「ところでその人どこか怪我してるんですか?」
あたしが聞くと飯田さんは夜の空を見上げながらぽつりとつぶやいた。
「心が…痛いんだって」
――飯田佳織の深夜も交信中…
こうなったらしばらくは放っておくしかない。
飯田さんに聞くのはあきらめて、自分で何とかすることにした。
女の子の隣に座り、うつむいている女の子に声をかけた。
「大丈夫?」
「…あ…はい」
暗く小さい声だがハイトーンのかわいらしい声で返事が返ってきた。
「どうしてこんなところ来たの?
夜遅くにこんな所に来ちゃダメだよ」
見たところ、あたしやごっちんと同じくらいの年だが、
こんなところに来るタイプの子じゃない。
「…すみません…でも」
そう言って顔を上げた彼女の顔は女の子を絵にかいたような顔だ。
肩ほどまでに伸びた髪、切れ長の目。
雰囲気からして「お嬢様」って感じの女性。
しかし赤くなった目がそんな彼女をだいなしにしている。
よっぽど怖かったのだろう手に持っているハンカチが、
涙でぬれているのが分かった。
- 46 名前:シグナル 投稿日:2002年06月30日(日)23時21分09秒
「…い…いや…」
おびえる彼女の高い声。
「いや?なにが?」
突然口にした彼女の拒否反応、明らかにあたしを見ておびえている。
「いやーこないでー」
彼女の大きな叫び声。
そして横にあった学生鞄を持つと、ベンチから立ち上がり後ずさりを始めた、が…。
みごと飯田さんの足につまずきお尻から派手にこけた。
片一方の靴が脱げ、重そうな学生鞄からは教科書やノートが
飛び出ている。
「だいじょうぶ?」
あたしはそう言って靴を拾い、彼女のほうを見る。
しかし彼女の姿はすでになく、遠くのほうに片足が靴下のまま、
人ごみの中に消えようとしている人が見えた。
「お姫様ー、ガラスの靴を落としましたよー」
もういなくなった彼女の靴を手に持ったまま、彼女に向かって言ってみた。
- 47 名前:シグナル 投稿日:2002年06月30日(日)23時22分13秒
「よっすぃ〜あの人になにやったの?」
振り向くと、ごっちんがあいかわらず眠そうな目で、あたしのすぐ後ろにいた。
「ごっちん、さっきはありがとね」
「ん〜とりあえず黙らしといたけどあれでいいの?」
「OK牧場、ここでは何でもありだから」
「ふ〜ん、であの人どうして逃げたの?」
「それがよく分かんないんだよね」
腕組みをして黒い夜空を見上げ考える。
けれど逃げられる理由なんて思いつかない。
「彼女、男性恐怖症だって」
さっきまで交信中だった飯田さんが突然しゃべりだした。
- 48 名前:シグナル 投稿日:2002年06月30日(日)23時24分06秒
「あ!カオリンいたんだ」
「おう、ごとーも元気か」
「ごとーはいつでも元気だよ〜」
ごっちんは笑顔で難なく飯田さんと会話を交わし、世間話をしている。
飯田さんと何の苦労もなく長話をできるのはおそらくごっちんだけだ。
しかし二人の話をゆっくり聞いているときではない。
「男性恐怖症だったら何で逃げるんですか?」
「男が近くにいたからに決まってるじゃない」
飯田さんはあたしの質問に簡単に答えてみせた。
そう言われて辺りを見回してみたが、それらしき人はいない。
「そんな人いませんよ?」
そう言うあたしにごっちんは、自分の格好見てみれば、と言ってくる。
吉澤ひとみ、夜のファッションチェーック!
まずズボンは使い込んだブラックジーンズ
黒のTシャツの上に茶色のスウェードのベスト
腕には黄色いバンダナを巻き
靴は少し底の厚い鉄板入りの黒い革靴
髪の毛は後ろでくくって黒のニット帽の中
Pーコさんお手柔らかにお願いします、ちなみにあたしは女です。
- 49 名前:シグナル 投稿日:2002年06月30日(日)23時25分17秒
「もしかしてあたし、男に間違われた?」
「知らない人がよっすぃ〜のこと見たら男と思うかもね」
そう言いながらごっちんと飯田さんは面白そうに笑っている。
スカートをはいた、ボーイズギャングのヘッドなんて絵にならない。
あたしはそう思い、ここにくる時はなるべく男っぽい服で来ている。
しかし今日はそれが裏目に出たようだ。
- 50 名前:シグナル 投稿日:2002年06月30日(日)23時28分51秒
「ところでよっすぃ〜、手に持ってる靴どうしたの?」
ごっちんはあたしの手にある黒い革靴を見ながらいった。
「これ?さっきの人の落とし物だけど、どうしよう?」
「あたしが返しとこうか?」
「へ?ごっちんさっきの人知ってるの」
「知らないけど、あの人ごとーの学校の生徒だよ」
ごっちんの制服を見て、あの子とごっちんが着ている学生服が、
同じことに今さらながら気づいた。
彼女がヘアースタイル変えても、気がつかない鈍い男みたい…。
「ごっちんの学校の人なんだ、じゃあ返しといて」
そう言ってごっちんに靴を渡そうとしたら、飯田さんの手に止められた。
「吉澤、あなたも返しに行きなさい」
「あたしも?…ですか」
「あの子はごっちん一人じゃ大変よ。
それにあなたのこと男だと思ったままなのよ、それでもいいの?」
「男に間違えられたのも良くないですけど、
それより大変ってどういうことですか?」
あたしがそういうと、飯田さんは座っていたベンチの下からノートを拾い上げた。
そして拾ったノートを黙ったままあたしに渡した。
- 51 名前:シグナル 投稿日:2002年06月30日(日)23時42分51秒
ノートには鉛筆やボールペン、マジックなどで、文字が書かれてあった。
バカ・ガッコウヤメロ・ウザイ……
ノートにはそんな言葉が何ページにも渡って書かれている。
悪口の下には丁寧な字で書かれている文字たちが、苦しんでいるように見えた。
表紙の名前を書く場所はマジックで塗りつぶされ名前すら分からない。
「これって、さっき彼女が落としたノートですか?」
「そうよ…彼女いじめにあってるわ」
「そうですか…で、あたしも一緒に行けというわけなんですか?」
「そういうこと、吉澤はそういう人見ると放っておけないでしょ」
飯田さんは小さくウィンクをしながら言った。
「はい、分かりました」
気持ちよく返事をした。
ごっちんが言うには、頼まれごとを断れないのがあたしのいい所らしい。
まさにそんな頼みごと、飯田さんもそれが分かって言ってる。
べつに嫌なわけじゃない。
困っている人を助けるのは普通のことだと思うから。
あたしだって困ったら誰かに助けてもらうから。
あたしの事をよく知ってる人が二人もいるからね。
- 52 名前:シグナル 投稿日:2002年06月30日(日)23時44分53秒
「かおりんってすごいねー、どうしていじめられてるのが分かったの〜」
ごっちんはいじめの事より飯田さんのことに興味しんしんのようだ。
「かんたんよ、さっきこけた時に太股やお腹の辺りに、青アザがあったし、
腕の内側にカッターで切ったような傷があったからね」
いつもは、なにも考えてないように見えるけど、すごい観察力だ。
いつもはぶっとんでいる飯田さんの意外な一面。
「な〜んだ、ごとーは、ちょーのーりょくだと思ってたのに〜」
「いくら圭織がすごいからって、超能力は使えないぞ。
できるのは呪いをかけるくらいかな」
「すごーい、かおりん、呪い、あたしにも教えてよ〜」
二人は楽しそうに話しているのだが、あたしはついていけない。
あたしはポケットから真新しい携帯を取り出した。
携帯のディスプレイには月曜の文字、時間はもう0時を回っていた。
「ごっちん、あたしもう帰るよ」
日曜の夜は、次の日に学校があるので早めに帰る。
「そうだね〜、明日学校あるし帰ろうか」
「それじゃあ吉澤、後藤、ノートと靴、頼んだわよ」
飯田さんはそう言ってあたしとごっちんの肩をポンッと叩いて、
明るい夜の街に消えていった。
- 53 名前:シグナル 投稿日:2002年06月30日(日)23時48分21秒
この街は眠ることを知らない。
コンビニやラブホテルのネオンが、
壁となって夜の闇からこの街を守っているから。
いつまでも明るい街の中、あたしとごっちんは並んで駅へと歩き出す。
あたしの家は公園から徒歩5分ほどの駅前の商店街にある。
ごっちんの家はあたしの家の近くの駅から、二駅先にあるらしい。
歩きながらあたしとごっちんは、他愛のない話を始める。
「飯田さん、スケッチブック持ってなかったけど、何しに来たんだろ?」
「友達の家からの帰りなんだって」
「へ〜飯田さんあたし達のほかに友達いるんだ」
「よっすぃ〜失礼だよ」
ごっちんはそう言いながらあたしの頭を叩いた。
「痛いって、ごっちん力強いんだから叩かないでよ」
「いいの、かおりんの悪口いったんだから」
「だってそう思ったんだもん」
「かおりんに失礼でしょ」
そう言うとまた背中をバシバシ叩いてきた。
そこからは、人ごみの中を駅まで二人で鬼ごっこ。
二人で走る夜の街はどこか軽く、
ごっちんと一緒なら空も飛べるような気がした。
to be Continued
- 54 名前:シグナル 投稿日:2002年07月01日(月)00時14分06秒
見てくれてる人がいるってうれしい。(涙
<<42 名無し読者様
原作好きですか、ごめんなさい、こんなヘボ作者が元ネタにしてしまい、
申し訳ないです。
作者も、ドラマも小説も大好きです、ドラマは配役が気になってましたが、
キングかっけー、トーベルマンぴったし、果物屋の息子OK牧場、てな感じでよかった。
正直な所、ストリートで起こる問題は、小説で出てきているので作者困ってます。
似たような話にならないように、学校の事なんかを入れていきたいと思ってます。
文章が好みと言ってもらえて、よかったです、人が増えれば視点が
変わるかもしれませんが、ながーい目で見てやってください。
<<41 名無し読者様
<すごく面白いです。
うれしいです、ホントにうれしいです。
作者ちょっとくじけてたんですが、そう言ってもらえるとうれしいです。
期待に答えられるかどうか分かりませんが、続きは気合を入れて、
書かせていただきます。
更新は週末ではなく平日中心にしていきたいと思います。
- 55 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月02日(火)13時31分45秒
- ごっつぁんのポジションが気になる…
吉澤&後藤&飯田の、CM限定トリオがかなりいい感じですね。
- 56 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時36分27秒
私立M女子高校――この高校の卒業生のほとんどは有名大学に進学することで
有名なお嬢様学校だ。
そんな高校の正門にあたし、吉澤ひとみはいる。
勘違いしてもらっては困る、あたしがこの高校に通っているのではない。
こんな良い子しかいないようなお嬢様学校こっちからお断り。
決して中学の進路希望を書いた時に、担任の先生から、
『寝言は寝て言え』なんてことを言われて、
M女子高校をあきらめたわけではない…。
だけどここの制服かわいいんだよね…。
そう、ここに通っているのはリトルガーデンの眠り姫こと、
ごっちんだ。
けれどもあたしは今でも嘘だと思っている。
『この学校を選んだ理由?ん〜近いから』
『成績はいつも十番以内だよ〜』
こんなことを言うごっちんは、うそつきなのだ…きっと。
- 57 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時37分32秒
Gardens
第三話 友達の数え方
- 58 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時39分16秒
長く高い壁に囲まれた白一色の校舎。
校舎からは圧迫感のような息苦しささえ感じる。
あたしはその学校の正門前のガードレールに腰掛けた。
「なんか病院みたい」
素直な感想。
チャイムが鳴り下校の時刻を告げた。
学校からは、同じ服を着た女の子たちがゾロゾロと出てくる。
下校する女子高生はあたしのほうをじろじろ見ては、
近くの子に耳うちしている。
あたしは昨日の失敗(男に間違われた)もあるため、
今日は学校の制服を着ている。
決して目立つ服装ではないはずなのにじろじろ見られてる。
オリの中の動物そんな気分。
- 59 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時41分01秒
最後に鳴ったチャイムから20分近くたった。
学校から出てくる生徒もほとんどいなくなって、
あたしの待ち合わせ相手の声がやっと聞こえた。
「よっすぃ〜ごめ〜ん」
ごっちんが、うすっぺらの鞄を脇に抱え走ってくる。
どうやらごっちんがこの学校に通っているのはホントみたい。
「ごっちん!おそーい!」
「いや〜六時限目おわったら寝ちゃって」
あたしの横に座り、ごっちんは頭をかきながら照れたように笑う。
口の端を上げて力なく笑うあたしにごっちんは楽しそうに笑いかける。
よく見るとごっちんの頬には、枕代わりのノートの跡が線になって残っている。
聞くと6時間目が終わって今まで寝ていた所を、
知らない人に起こされたらしい…。
頭、痛くなってきた…。
- 60 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時41分44秒
「はぁ…で、例の人は見つかった?」
「例の人?なにそれ?」
ごっちんは頭に「?」マークをつけて聞いてくる。
「昨日の靴の持ち主のことだよ」
「あ〜、この人?」
そう言いながらごっちんは、うすっぺらの鞄に手を突っ込むと、
黒い靴とノートを出した。
「そうだよ、その人見つかった?」
そう聞くあたしにごっちんはキョトンとした顔で答える。
「よっすぃ〜なに言ってるの?今から探すんじゃない」
「は?まだ探してないの?」
「うん、よっすぃ〜と一緒に探そうと思って」
そう話すごっちんはとても楽しそうな顔をしている。
- 61 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時42分16秒
すでに太陽は校舎に隠れ、昼の終わりと夜の始まりが、
すぐそこまでやってきているのが、時計を見なくても分かった。
「でもさあ、もう帰ったんじゃないの?」
学校から出てくる生徒が少なくなっているのに気づいたあたしは、
ごっちんに聞いてみた。
「だいじょうぶだよ〜、まだ学校に残ってるよ〜」
「どうして分かるの?」
「だって靴、片方しかないんだよ、帰れないじゃない。
だからまだ残ってるよ」
真顔で答えるごっちんにあたしは心の中でため息をついた。
ごっちん…その人は今日、裸足で学校に来たのかな?
ごっちんのボケっぷりには、慣れたつもりでいたあたしも、
今日のごっちんにはついていけない。
- 62 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時43分42秒
「どうしたの〜よっすぃ〜、なんか元気ないね」
ごっちんのボケっぷりにグロッキー状態のあたしが元気なわけがない。
「ううん…なんでもないよ。それよりどうやって靴の持ち主探すの?」
「かんたんだよ、靴が片一方しか入ってない靴箱見つけたらいいじゃない」
自信満々。
「そ、そうだね…だけどさ、あたしは違う方法で探すからさ、靴貸してよ?」
ごっちんはあたしに靴を渡すと、正面にある玄関に走っていく。
全校生徒700人を超えるこの高校の靴箱を一人で探す気らしい。
しかしそれ以前にある問題を、ごっちんは気づいていない。
ファイト…ごっちん。
たぶん見つからないと思うけどがんばれ!
あたしは、遠くなって行く背中にエールを送った。
- 63 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時46分04秒
靴を受け取ったあたしは、何か手掛かりはないかと、靴を見る。
新品の靴なのか、まだぴかぴかしてる。
ぐるっと靴の周りを見た後、中をのぞく。
石川梨華
靴の底に名前が書いてあった。
「はぁ」
ため息しか出ない。
やっぱりごっちんがこの学校に通っているのはうそだ…絶対…
「見つける気あるのかな?」
あたしは小声でごっちんに言うと玄関に向けて歩き出した。
- 64 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時46分59秒
学校の玄関に行く途中、遠くのほうから部活中の生徒の声が聞こえてきた。
近くの体育館からはボールの弾む音が、女の子の掛け声とともに聞こえる。
あたしは右手を振り上げ力いっぱい振りぬく。
ブン
その音にあたしは少し強く唇をかんだ。
学校の玄関に入ると、ごっちんが難しそうな顔で、
一つ一つ靴箱を開けているのが見えた。
それを見たあたしは小さく笑ってごっちんに近づいた。
- 65 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時48分12秒
難しい顔のまま、しゃがんで靴箱を開けているごっちんは、高校生というより、
始めて使う靴箱に戸惑っている、なりたての小学生みたい。
「ごっちん、見つかった?」
「ん〜ん、見つかんない」
そういいながら、ごっちんは靴箱を順番に開けていく。
「名前分かったよ」
「うそ、分かったの?」
ごっちんは手を止めてパタパタと音をさせあたしのそばに近づいてきた。
「どうやって調べたの?」
「中に書いてあったよ」
ごっちんに靴を渡す。
開けっぱなしの靴箱を見ると、靴箱に名前が書いてあるのに気がついた。
「ごっちん、この靴箱はどんな順番に並んでるの?」
「ん〜、クラス順に並んでるよ〜」
靴を覗きながら答える。
- 66 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時49分21秒
クラス順なら見つけるのは簡単。
あたしは靴箱に書いてある名札を順番に見ながら歩く。
「ねえ〜何してるの?」
ごっちんは、左手をブレザーのポケットに入れたまま、
人差し指で靴をくるくると回しながら、だるそうに聞いてくる。
「名前分かったんだから、靴箱の名札で教室どこか調べるの」
「お〜よっすぃ〜頭いいね〜」
ごっちんの方法より速く見つかるのは確実。
その時、ごっちんの人差し指で、くるくる回っていた靴が指から外れた。
バシ
靴がごっちんの鼻のあたりに直撃した。
「いた〜い」
鼻を両手で押さえその場に座り込む。
「ぷっ、なにやってるの?」
「もう笑わないでよ〜」
笑うな、なんていうけど、面白いものは仕方ない。
あたしは笑いながらも、また靴箱の名札を見はじめた。
- 67 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時50分38秒
池田…石田…いしのだ……ない。
次の列…池内…池川……次。
「よっすぃ〜、速く見つかりそうだね〜」
靴箱の名札を見ながら移動していると、
靴箱に手を掛けて、靴を脱ぎながらごっちんが聞いてくる。
「そうだね〜、ごっちんの方法だったら見つかんないからね〜」
「え〜なんで?」
「だって、学校に来るのに片足だけ裸足で来るわけないじゃない。
家に代わりの靴があるでしょ」
「あは!そうか〜」
笑顔で照れたように頭をかいているごっちん。
「ふう」
出るのはためいきだけ。
- 68 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時51分42秒
石井…石川…石川梨華…あ、あった。
「ごっちん、あったよ」
名札に靴に書いてあった名前を見つけた。
ごっちんはすぐ横で、「後藤真希」と書かれた靴箱に、
靴を入れ終わった所だった。
「名前あった〜?」
「見つかったけどさあ…この靴箱って、
ごっちんのクラスじゃない?」
ごっちんは靴箱を見て一言。
「あは!」
つかれる……。
- 69 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時52分46秒
靴箱を開けてみると靴がある。
まだ帰ってはいないみたい。
けれどあった靴は片方だけ。
取り出して靴の中を見ると、「石川梨華」と書いてあった。
あの子の靴だ。
「よっすぃ〜、靴片方しかないよ〜」
「そうだね、昨日あれから家帰らなかったのかな?」
「まだ校内にいるみたいだから、探そうよ。
ごとーが、学校案内してあげるよ」
そう言ってあたしの返事をまたずに腕をつかむと、学校の中に引っ張っていく。
「ごっちん、あたしここの生徒じゃないんだからやばくない?」
「へーき、へーき、ばれなきゃ大丈夫だよ〜」
ごっちんはへにゃっと笑うと、あたしの手をつかんできた。
そして強引に手をつなぐと、笑顔のまま校内を案内し始めた。
- 70 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時53分40秒
学校を案内するごっちんの口もとは、さっきからずっと緩んでいる。
「ごっちん、嬉しそうだけど、どうかした?」
「ん〜、ごとー学校に友達いないから、
こうやって手つないで歩いてみたかったんだよね〜」
そう言った後、ごっちんはあたしの手をほんの少し強く握ってきた。
しばらく歩くとごっちんが1つの教室の前で止まった。
2年−A組
「ここがごとーの教室だよ」
ドアを開け中を覗くが教室には誰もいない。
放課後の誰もいない教室は、不自然な静けさでいっぱいだった。
「やっぱりいないね〜、ごと〜を起こしてくれた人も、
もう帰っちゃったみたいだね〜」
そう言ってごっちんはあたしの手を握ったまま歩き出す。
- 71 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時54分29秒
静かな放課後の廊下、二人の足音が響く意外に音はない。
窓からはうすい夕陽色が、廊下を照らしている。
「ごっちんさー、ホントに友達いないの?」
廊下に響く質問にごっちんは「うん」と一言だけで答える。
そしてポケットから真新しい携帯を取り出した。
「ほら〜、友達少ないよ」
そう言ってごっちんはあたしに携帯を渡した。
携帯電話のディスプレイにはメモリーナンバーが移っていた。
No.001よっすぃ〜 090−・・・・
No.002かおりん 090−・・・・
二件だけのメモリーナンバー。
「ね、少ないでしょ」
ごっちんは笑顔で言う。
けれどもごっちんの目は、悲しみと寂しさをごちゃ混ぜにした色に見えた。
- 72 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時55分17秒
そんなごっちんにあたしも携帯を出し、ごっちんに言った。
「そう?あたしも同じだよ」
あたしの言葉にごっちんは少し驚いていたが、
あたしが携帯を見せると「あはっ」とうれしそうに笑った。
No000リトルガーデン 090−・・・・
No001後藤 真希 090−・・・・
No002飯田 圭織 090−・・・・
二人の大切な友達と大切な居場所のメモリーナンバー。
「ね、同じでしょ」
そういって見たごっちんの目には、
さっきまでの色はなく透き通る様な黒でいっぱいだった。
そして二人で顔を見合わせ小さな声で笑った。
- 73 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時56分13秒
しばらく廊下を歩いているとごっちんが口を開いた。
「そうだ!昨日かおりんに、呪いの掛け方習ったんだよ〜」
「ふ〜ん、そ」
「ふ〜ん、って信じてないでしょ〜、ならごとーが掛けてあげる」
ごっちんはそう言って、あたしの正面に立つと目を閉じた。
そしてあたしの頭に手を置くと、いきなりでっかい声で叫んだ。
「えーーーーーい!」
学校中に響くごっちんの声。
あたしの耳は耳鳴りが、うるさいくらい聞こえている。
- 74 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時57分06秒
「ごっちん、うるさいって」
耳に指を突っ込んでぐりぐりするが、耳の中はまだおかしな感じがする。
「えへへ、けどこれで呪いが、かかったからね」
小悪魔の笑み。
「で、呪いが掛かったらどうなるの?」
「不幸になる」
またえらくおおざっぱな。
そんなことを思っていると後ろの教室のドアが開く音がした。
「誰だ!廊下で大きな声を出しているのは!」
男の大きな声であたしとごっちんは振り返った。
教室の名前は職員室。
- 75 名前:シグナル 投稿日:2002年07月03日(水)23時58分20秒
そこには半そでの白いTシャツに青いジャージのズボンをはき、
首からストップウォッチをぶら下げている人がいた。
顔は黒く日焼けをしていて、輪郭は角のとがっていないサイコロのように四角い。
「体育教師でしょ」
あたしがごっちんにそう言うと、ごっちんは、ピンポ〜ン、と言っている。
おそらく日本全国の体育教師はこの格好だろう。
「どこの体育教師もおなじ様な格好してるね」
「んあ〜、そうなの〜」
そんな話をごっちんとしていると、四角い顔があたしを見て、
どこの生徒だと、叫びながら近づいてくる。
「あ〜あ、見つかったじゃん、ごっちんがあんなでっかい声出すから」
そういったあたしの横でごっちんは、うれしそうに笑いながら、
「呪いが効いたー」、なんて言って喜んでいる。
「じゃあ後で電話するから」
あたしはごっちんにそう言ってその場から走って逃げた。
- 76 名前:925 投稿日:2002年07月04日(木)00時15分26秒
- 更新お疲れさまです。
よっすぃ〜&ごっちんのキャラがいいです。すごく好き!!
本当におもしろくて、次の更新が待ち遠しいです。
- 77 名前:シグナル 投稿日:2002年07月04日(木)00時20分33秒
更新終了。
>>55 名無し読者様
レスありがとうございます、うれしいです。
気になりますかごっちんのポジション。
このスレが長く続けば、おさまる所に、おさまる予定です。(w
第四話で終わる予定でしたが、読んでくれている人がいるようなので、
何話か続けようかと思います。
今回の話は最終回の布石なので会話しかないです。
なのでかっけーよっすぃ〜が好きな方は面白くないかも?
次の話でかっけーよっすぃ〜&ごっちんを書くので、
見捨てないでください。
- 78 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月04日(木)00時42分24秒
- >リトルガーデンの眠り姫
ぴったりですねえ(w
更新速度も早いし内容も面白いので、毎回楽しみに読ませてもらってます。
現実のよしごまのホノボノ具合を連想して、かなり頬がにやけます
(それじゃただの危ない人だ)
- 79 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月04日(木)08時39分16秒
- お嬢様学校の後藤、新鮮だ・・・
- 80 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月05日(金)05時05分16秒
- ここのよしごま(・∀・)イイですねぇ。
楽しみにしてますので、四話と言わずどんどん続けて
欲しいです。
- 81 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時08分38秒
後ろから追いかけてくる黒い顔の体育教師。
足は速くないけれど、あたしは廊下を靴下で走っているから速く走れない。
階段を上り、滑る廊下を走るうちに、体育教師とあたしの距離は少しずつ離れていった。
階段を上がって最初の教室にあたしは逃げ込んだ。
鍵を掛け、しゃがんでドアにもたれたまま、じっと息を潜める。
静けさが耳に大きな音となって聞こえてくる。
ふいに廊下を走る音がドアの向こうを通り過ぎていった。
「ふ〜」
深呼吸をして薄暗い教室を見回した。
教室というより部屋といったほうがいいくらいの狭い部屋。
大きめの机と、その周りにいくつかのパイプいす、
そして黒板代わりの移動式ホワイトボード。
その後ろには、大きなソファーがカーテンの引かれた窓のほうを向いている。
壁際にある棚には[生徒会]と書かれたファイル。
それを見つけここが何の教室か分かった。
部屋の奥にあるカーテンからもれるオレンジ色。
あたしはカーテンを開けるため、薄暗い部屋を歩いて窓に向かった。
- 82 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時17分09秒
シャッ
カーテンを開けると部屋全体が一瞬のうちに夕陽の色に変わった。
ガラス越しの窓からは、遠くの高層ビル群に赤い太陽が沈んでいるのが見えた。
ソファーに座ろうとして振り向くと、ソファーで何かが動いた。
びっくりしたあたしは窓に背中を張り付ける格好になる。
かなりまぬけな姿。
三人座ればいっぱいになるソファーの上に、
女の子が小さく丸まってソファーに頬をつけ寝息をたてていた。
この学校には良く寝る人しかいないの?
そんなことを考えながら顔をよく見ると、昨日の夜、靴を落していったあの人だった。
- 83 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時26分52秒
彼女は昨日の夜と同じ制服で、同じように厚い学生鞄を、
ソファーの横に置いている。
「お母さん…」
突然の消えそうな彼女の声。
彼女の声にびっくりしたが、どうやら寝言のようで、
彼女はまだ寝息を立てていた。
けれど小さな声だが確かに彼女が言った言葉だった。
そして彼女の目から夕陽色の涙が流れた。
けれどもその涙には悲しみが無いように思えた。
あたしはソファーの前にしゃがむと、指で涙の通った後を消していった。
あたし何してるんだろ。
無意識に出た指。
ふいに彼女の手があたしの手を取る。
しかし彼女が起きることはなく、あたしの手を握ると、また寝息を立て始めた。
そんな彼女の左腕の内側には、カッターで付いた浅い切り傷がいくつもある。
左腕だけについた傷跡。
この傷は…自分でつけてる……。
彼女に手を握られ動くに動けなくなってしまったあたしは、
携帯を取り出し、ごっちんに電話を掛けた。
- 84 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時27分54秒
プルルルル…プルルルルル
何度も聞こえる呼び出し音。
絶対寝てる…
あたしの第六感がそう告げている。
『…んあ〜?もしもし〜』
「ごっちん?おはよう」
『んあ〜おはよう〜』
やっぱり寝てた。
「探してた人見つかったよ」
『どこにいたの?』
「たぶん生徒会室だと思う」
『分かった、そっちに行くから待ってて〜』
そう言ってごっちんは電話を切った。
- 85 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時29分20秒
外はもう夜の色。
さっきまでの赤色の夕陽は影も形もなくなっていた。
代わりに白い月が淡い光を弱々しく放っていた。
暗い部屋の床に座り、ソファーにもたれてボーっと、
窓から見える夜の空を眺める。
右手は今も彼女の手の中。
コンコン
ドアをノックする音。
「よっすぃ〜いる〜?」
いつもと変わりないごっちんの声が静かな生徒会室に響く。
彼女の手をとり自分の手を彼女から離すと、ごっちんのいるドアへ向かった。
鍵をはずしてドアを開けると、あくびをしているごっちんがいた。
目には涙がたまり、眠そうにとろ〜んとしている。
「ごっちん眠いの?」
「ん〜さっき寝たからだいじょうぶだよ〜」
ごっちんはそういいながら部屋に入ると、
電気を点けソファーのほうに歩いていった。
- 86 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時31分46秒
「ねえ、ごっちん電気点けてもだいじょうぶなの?」
「誰か来たってあたしが何とかするよ」
それがあたしは心配だ。
ごっちんは靴とノートを机の上におき、ソファーの近くまで向かうと、ソファーに目をやる。
「あ!」
ごっちんが、寝ている彼女を見て声を上げた。
「なに?どうかしたの?」
「探してたのこの人なの?」
「そうだよ」
「いや〜教室で起こしてくれたのこの人だ。あは!」
ごっちんの頭にあたしのチョップが入った。
「だはっ」と笑っているごっちん。
あたしは、笑えない。
「ね〜よっすぃ〜、起こさないの?」
「気持ちよさそうだからもうちょっと待ってようよ」
あたしは近くにあったパイプいすに座り、眠っている彼女を見ていた。
ごっちんもソファーの側で彼女を上からじーっと見ている。
そしておもむろに彼女のスカートをめくり上げた。
- 87 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時35分40秒
ピンク…じゃなくて
バシッ
言葉より先にごっちんの頭を叩く。
「いた〜い」
ごっちんは両手で頭の頂上を押さえ肩をすくめる。
「痛いじゃないよ、なにやってるの!」
「え〜ただスカートめくってただけだよ〜」
頬を膨らませ別に悪いところなど何もないといった表情。
「よっすぃ〜だって見たでしょ〜」
「そ、そりゃ見たけど、あたしは見たんじゃなくて見えたの」
「ふ〜ん…けどさ、ホントだったね」
ごっちんの暗く低い声。
「なんかさ…やだね」
ポツリとつぶやいたごっちんの顔は、いっさいの感情が消えていたように見えた。
「いや?何が?」
「え?よっすぃ〜も見たでしょ、この人のアザ」
「アザ?…あ〜見た見たアザね」
ごっちんがスカートをめくったのは、彼女のピンクの下着を見るためではなく、
いじめの跡を見るためだったみたい。
「あはっ、よっすぃ〜顔赤いよ〜、なに見たの〜」
「な、なに見たって、なにも見てないよ」
急にふられて言葉を詰まらせてしまった。
そんなあたしを見てごっちんはケタケタ笑っている。
- 88 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時37分38秒
「ん〜〜」
あたしとごっちんが、言い争っている下から声が聞こえた。
二人の声で目を覚ましてしまった。
「んあ、おはよう〜」
まだ目をこすり、寝ぼけている彼女に、ごっちんが朝のあいさつ。
「え?あ、は、はい、おはようございます」
あわててソファーの上に正座で座り、深々と頭を下げる彼女。
まだ寝ぼけているみたい。
「ぷっ、アハハハハ」
あたしはソファーの上で深々と頭を下げる彼女の姿がおかしくて笑ってしまった。
その笑い声に彼女はあわてたように前髪を耳にかけながら辺りを見回す。
彼女はごっちんのほうを見るとゆっくりと会釈した。
ごっちんは笑顔で手を振る。
次に彼女はあたしのほうを見て顔を傾かせた。
そしてあたしの足先から頭までをゆっくりと見たあと、
目を泳がしながら聞いてきた。
「あの……あなたは…どなたですか?」
昨日の夜よりも少し元気な声。
- 89 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時39分13秒
「あたし?あたしは吉澤ひとみ、よろしくね」
「吉澤…さん…あ、は、はじめまして、私は」
「石川梨華さん、でしょ?」
あたしの答えに石川さんは目をぱちぱちさせて驚いている。
豆をぶつけられたハトみたい。
「私のこと知ってるんですか?」
石川さんは昨日の夜、バス停で声を掛けた人があたしとは思ってないみたい。
あたしは机の上においていた靴を手に取り彼女に見せた。
「これ石川さんの靴でしょ?」
「あ、はい、そうです、わたしのです。
…昨日無くしたのに…どうして吉澤さんが持っているんですか?」
靴を石川さんに渡して石川さんの目をじーっと見る。
「この顔見たことない?」
そう聞いたとたん、石川さんは顔を赤くして目をそらした。
- 90 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時42分00秒
「も〜よっすぃ〜、そんなにじっーと見たら、石川さん照れちゃうでしょ〜」
隣でおとなしく聞いていたごっちんがニヤニヤしながら言ってくる。
「なんで?」
「なんでって、よっすぃ〜に見つめられちゃうと、だれだって照れちゃうよ〜」
…なんですと。
こんどはごっちんに向けて、よっすぃ〜ビーム。
ごっちんの目を見つめる。
ごっちんは急に下を向きそのままあたしの肩をバシバシ叩いてきた。
「や〜だ〜みないでよ〜」
照れたように笑いながら、何度も叩いてくる。
「ごっちん痛いって、お願いだから叩かないでよ」
腕をまくってごっちんの叩いてきた腕の辺りを見る。
かわいい手形が、真っ赤になって腕についている。
相変わらずものすごい力。
どうしたらこんなに力がつくのか教えてもらいたいよ。
- 91 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時45分55秒
腕に付いた赤い手形をさすりながら石川さんとの話に戻る。
「あたしの事、ホントに覚えてないの?」
そういうと石川さんはもうしわけなさそうに顔を縦に振る。
眉はハの字になっている。
「石川さん、昨日の夜、公園の近くにあるバス停のベンチで泣いてたでしょ?」
「え…あ、はい」
「その時、ものすごくかっけー人が横に座ってこなかった?」
自画自賛。
「あ、はい、女性みたいな声だったんですけど、
見たら怖い感じの男の人だったんで逃げました」
「はは…怖かったんだ…」
見事に玉砕。
力なく笑うあたしの横ではごっちんが声を出さずに大爆笑している。
「その怖い感じの男の人…あたしなんだよね」
おもいっきり落ち込んだふりをして答えてみた。
「え!…あ、あ、あのごめんなさい」
石川さんはあたふたしながら何度も頭を下げている。
あわてた姿がとてもかわいい。
- 92 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時49分46秒
それから石川さんはずっと謝ってばかり。
別に怒っているわけでもないのに何度も謝ってくる。
「別に怒ってるわけじゃないから、もう謝らないでよ」
「だめです!石川、吉澤さんのこと男の人だとおもってたし、
…怖い人って言っちゃって…ごめんなさい」
「男の人に間違われるのはよくあるから、気にしないでよ」
「だめです〜、石川が悪いんです、女の人を男の人と間違うなんて…」
石川さんは眉毛を八の字にして何度も謝ってくる。
なんだか謝られているこっちが謝りたくなってきた。
ごっちんに助けてもらおうと目を向けるが、ごっちんはわざとらしく、
「トイレに行ってくる〜」なんて言って教室を出て行った。
ごっちんはあたしが困るのを見て楽しんでいるみたい。
あたしはもう梨華ちゃんの横でおろおろするばかり。
生徒会室には、謝り続けるマイナス思考の女の子と、
男に間違えられた女の王様が二人きり。
お姫様、あたしにどうしろと言うんですか?
はやく話を変えないと、石川さんが「死んで謝ります」なんて言ってきそうだ。
- 93 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時50分54秒
とりあえず話を変えるため質問する。
「ところで石川さんはここで何してるの?」
「え…それは…あの…」
さっきまでの謝っていた勢いは影をひそめ、
石川さんは俯いたまま何も話さなくなった。
「昨日から家に帰ってないよね?」
そう言っても答えは返ってこない。
「まあ、嫌なら無理して話さなくてもいいけど」
その言葉に石川さんは俯いたまま「すみません」と小さい声で答えた。
「よっすぃ〜もう帰ろうよ〜」
ドアを開ける音とごっちんの声が聞こえた。
部屋の壁にかかっている時計の針は7時を目指して進んでいた。
- 94 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時53分26秒
「そうだね〜もう帰ろうか。
石川さんも一緒に帰るよね?」
あたしは立ち上がって石川さんを見ながらいった。
けれども石川さんはソファーに正座したままフルフルと顔を横に振る。
「は?どうして?家に帰らないの?じゃあどこで寝るの?」
その質問に石川さんは小さな声で「ここ」と言った。
「はぁ?ここって、ここで?寝るの?」
「…はい」
「いや、「はい」じゃなくて家には帰らないの?」
「…帰りたくありません」
そういった石川さんの肩は小刻みに震えていた。
「どうしてここなの?
家に帰りたくなかったら、友達の家とかに行くとかあるじゃない」
「…いません…友達」
彼女はそういうとひざの上に置いていた手の甲に涙を落とした。
「じゃあさ〜、うち来る?」
ごっちんがあたしの横に来て、眠そうな目で、かるくそう言った。
- 95 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)00時58分21秒
「え、いいです…そんな、悪いですし…」
予想どうりの反応、あいかわらずネガティブな人。
あたしと正反対の性格、ちょっと苦手なタイプ。
「気にしなくてもいいよ〜、今日ごとー起こしてくれたしさ〜」
「そうだね、ごっちんの家ここから近いからね」
「え…でも」
乗り気でない石川さんを、ごっちんは強引に立ち上がらせ、
鞄を持たせると、教室から連れ出していった。
梨華ちゃんみたいな人には、ごっちんのマイペースな強引さがちょうどいいのかもしれない。
あたしには無い物。
ちょっとうらやましい。
「ごっちん、ちょっとまってよ〜」
そう言って机の上においてあったノートを手に取り鞄に入れると教室を出た。
暗い廊下には、窓から降る街の明かりで、光の水溜りがいくつもできていた。
- 96 名前:シグナル 投稿日:2002年07月06日(土)01時22分43秒
- 更新終了。
>>76 925様
作者もごっちんとよっすぃ〜のキャラは好きです。(w
なのでこんな感じで続きます。
>>78 名無し娘。
>(それじゃただの危ない人だ)
いえいえ、普通のひとですよ(w
作者はテレビで娘。を見るとにやけっぱなしですから。(危
>>79 名無し読者
頭のいいごっちんは、あまり見ないですからね。
しかーしごっちんが頭いいので、よっすぃ〜は…
>>80 名無し読者
>ここのよしごま(・∀・)イイですねぇ。
ありがとうございます。
よしごまは甘甘にはならないかもしれませんが、
甘口くらいの関係で行きたいです。
皆様レスありがとうございます。m(__)m
ストック0です。スネ毛も抜けて鼻血も出ません。
更新は来週半ばになります。
- 97 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月08日(月)23時31分39秒
- sage進行だったんですね、よかった〜気がついて(w
ここのよしごま、やっぱり好きです!マイペースで。(マイペース過ぎ?特に後藤)
ネガティブ石川も、最近あまり見なくなってきたんで逆に新鮮でいいっすね。
次回の更新が楽しみでしょうがないです。
- 98 名前:シグナル 投稿日:2002年07月09日(火)00時08分54秒
- >>97 名無し娘。様
毎回のレスうれしいかぎりです。
>sage進行だったんですね
いや〜作者が上げるの忘れてただけです。(あはっ
読んでもらえるなら、ageでもsageでもどっちでも良いです。
「うたばん」のよっすぃ〜を見て、「かっけ〜くない…かわえ〜よ〜」と思い
かっけ〜よっすぃ〜が、書けなくなってしまいました。
色々と言われてるが、たて巻きロールの髪よっすぃ〜かわえ〜。
レスもらうとやる気が出てくるのでがむばります。
水曜くらいには更新したいです。とりあえずageます。
- 99 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月09日(火)00時16分21秒
- もしやリアルタイム!?と慌てて開いてみたら、見事騙された(w
毎回楽しみに読んでます、とりあえず水曜辺りに更新してくださるということで、
嬉しいです。
>たて真希ロ〜ルのよっすぃ〜
…私のPCだと、こんな風に変換されます。よしごまマンセー!!(爆
- 100 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月10日(水)01時00分55秒
- 明日の更新が楽しみだ・・・
- 101 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時10分58秒
学校を出て空を見上げた。
夜の空には都会の光に負けないように必死に輝いている星が、
いくつか見えるくらい。
月の輝きでさえ都会の光が邪魔している。
どこの世界も輝くことは大変みたい。
「後藤さん…ホントにいいんですか?」
正門を出たところで、石川さんが申し訳なさそうに聞いてきた。
「ごとーはいいよ〜。
それとさ『ごっちん』って呼んでよ、ごとーも『梨華ちゃん』って呼ぶからさ〜」
「え、でも…」
「いいよ、ごとーは梨華ちゃんと、友達になるって決めたんだから」
ごっちんはそう言って石川さんの腕にくっついた。
「あたしも梨華ちゃんって呼んでいい?」
後ろからごっちんと梨華ちゃんの間に入り、二人と腕を組みながら聞いてみた。
その質問に梨華ちゃんは「うん」と言って俯いた。
薄暗い道でよく見えなかったけど、梨華ちゃんが俯いたまま少し顔を赤らめて、
照れながら笑っていたように見えた。
- 102 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時12分12秒
「じゃあさ〜携帯の番号教えてよ、ごとーのも教えるから」
「え、携帯電話ですか?」
梨華ちゃんは少し困ったように口をにごす。
「あ…あの石川…携帯電話持ってません」
消えそうなほど小さい声。
「「え〜!」」
二人の声が見事にはもった。
「友達のいないごっちんでも持ってたのに、梨華ちゃん携帯持ってないの?」
「よっすぃ〜ひど〜い。
よっすぃ〜だって友達いないじゃん」
「あたしにはごっちんと飯田さんと梨華ちゃんがいるからいいもんね〜」
「あたしもよっすぃ〜とかおりんと梨華ちゃんがいるからいいもんね〜」
二人で笑いながら口げんか。
「あの…喧嘩…しないでください」
困ったように言う梨華ちゃんを見て二人でまた笑った。
そんなしょうもない話をしながら、あたしを真ん中に、
三人で腕を組み歩いていく。
なんかいいよね、こういうの。
- 103 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時13分37秒
学校を出て5分もしないうちに一軒の居酒屋の前に着いた。
「ここが、ごとーの家だよ〜」
赤いちょうちんに木製のドア、中からは笑い声と暖かい光がもれている。
紺色ののれんに、白い文字で「ごとー」。
正直これはどうかと思った。
ごっちんは「玄関こっちだから」といって店の横にある階段を上っていく。
店の二階に行くと、玄関で座って靴脱いでいるごっちんの後ろに、
タオルで頭を拭く、風呂上りのごっちんがいた。
「姉ちゃん俺のプリン食ったろ」
ごっちんよりも低い声。
男の人?
「え〜?なんのこと〜」
口元がにやけながらごっちんが返事をする。
「ちょっと来い」
そういって男ごっちんが、ごっちんの襟の後ろを持ち引っ張って行く、
ごっちんはお尻で廊下を滑りながら奥へ連れて行かれた。
引きずられながらもごっちんは笑顔をたやさない。
奥からは言い争っている声。
その後から、ドタバタと誰かが暴れる音が聞こえてきた。
- 104 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時14分26秒
あたしと梨華ちゃんがその場から動けずにいると、
ごっちんが廊下から顔を出した。
「さっきの弟だから」
そう言いながらにっこり笑うその顔からは赤い血。
「ごっちん鼻血出てるよ」
あたしがいうと上を向き鼻に手を当て確かめる。
血を手で拭き取ると、にっこり笑顔。
無邪気に笑う彼女の拳は、ほんのり赤いピンク色をしている。
なにやってるのこの姉弟……。
血を流すまでの姉弟喧嘩なんてあたしは初めて見た。
- 105 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時15分56秒
あたしの後ろではそれを見た梨華ちゃんがおびえている。
「ごっちん、梨華ちゃんは、あたしの家に泊めるから」
「え〜なんで〜」
「梨華ちゃん、恐がってるよ」
「あ〜そっか、梨華ちゃん男の人苦手だったね〜
ごとーの家、弟いるからだめだね〜」
「それだけじゃないと思うけど……まあいいや、じゃあねごっちん」
「うん、バイバ〜イ、じゃあね〜梨華ちゃん、
よっすぃ〜に襲われないように気をつけてね〜」
「え、あ、は、はい、気をつけます」
梨華ちゃんがこちらをチラッと見て、ごっちんに返事をした。
「ごっちん変なこといわないでよ!梨華ちゃんが誤解するでしょ!」
「冗談だよ〜怒らないでよ〜」
そう言って笑いながら手を振るごっちん。
しかし鼻からはまた血が流れ始めていた。
- 106 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時19分14秒
階段を下りて大きく深呼吸をする。
店の前を通る車の排気ガスと、店からでるタバコとお酒の匂い。
あたしは少しせきこんだ。
かっこわる。
ごっちんの家から駅へは歩いて10分とかからなかった。
あたしは駅の自動の改札口を通るときいつも思う。
大人と子供の違いはどうやって調べてるのか?
子供の切符で大人が通ってもばれないんじゃないの?
だって相手は切符を切るだけの機械なんだから。
今日も考えながら改札口を通った。
駅のホームで電車を待つ間に、梨華ちゃんが落していったノートを鞄から出す。
「これ梨華ちゃんのだよね?」
鞄から出したノートを見た梨華ちゃんは、黙ったまま受け取り鞄に入れた。
無言の重圧、彼女が傷だらけに見えた。
「困ってるなら力になるよ」
そっと言ったあたしの言葉に、梨華ちゃんは目に涙を浮かべてあたしを見た。
梨華ちゃんの目はあたしを睨んでいた。
「軽々しく言わないで!
あなたなんかに、私の何が分かるの!」
電車のいない駅のホームに、梨華ちゃんの声は良く響いた。
- 107 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時23分31秒
近くの人や、反対側のホームからもOLやサラリーマンの目が集まる。
「今日あったばかりなのに、友達みたいなこと言わないでよ!」
梨華ちゃんは声を小さくすることをしなかった。
「そうなの?あたしは友達だと思ってたのにな〜」
あたしは表情を変えることなく、反対側のホームを見たまま言う。
「あなたバカじゃないの、友達なんて、
しょせんうわべだけの付き合いの人ばかりなのよ、
後藤さんだって自分の都合が悪くなれば、あなたから離れていくわ」
そう言った梨華ちゃんに、あたしはゆっくりと顔を向け、静かに言う。
「ごっちんはそんなことで離れたりしないよ。
あたしも都合が悪くなったくらいで、ごっちんから離れたりはしない」
「うそ!うそよ、そんなこと言っても、きっとあなただって離れていくわ」
そう言った後、梨華ちゃんは、あたしから目をそらし、あたし一人に言った。
「私は…友達なんかいらない」
- 108 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時24分16秒
「うそ」
「うそなんかじゃない!」
あたしの「うそ」に梨華ちゃんは間を空けることなく答えた。
「じゃあさ、あたしの目を見て同じ事もう一度言える?」
あたしの言葉に、梨華ちゃんはあたしの目を見て口を開けた。
けれど梨華ちゃんは何も言うことなく俯いた。
それから梨華ちゃんは、下をむいたまま何も言わなくなった。
向こうからは待っていた電車が光と一緒に迫ってきていた。
電車に乗って二人並んで席に座る。
電車に乗ってからも梨華ちゃんは下を向いたまま、何も話そうとはしなかった。
- 109 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時25分47秒
梨華ちゃんは心を開いていない…ちがう、心を閉ざしているのが正しいと思う。
人に踏み込まれたくない領域。
それを見つけられてしまうのが怖いから。
閉ざされた心が開かないかぎり、梨華ちゃんのことはなにも分からない。
だから考えた。
出た答えはとっても単純、あたしも見せる。
そうすれば梨華ちゃんも扉から顔ぐらいは見せてくれるかもしれないから。
あたしは「ふぅー」と、ひと息入れ、重い扉を開けた。
- 110 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時27分21秒
「あたしの父親、ボクシングが大好きで、
小さい頃、よく近所のボクシングジムに連れて行ってくれたの」
急に話し始めたあたしに梨華ちゃんは顔を上げてこちらを見る。
「ジムに行って、ジムの人の休憩時間のときに、
父親と二人でサンドバックを叩いたりするの。
そんなあたしを見る父親はすごく楽しそうだったな。
けれどね、父親はそんな時必ず言うの、「ひとみが男だったらな」って。
父親は自分の子供をプロボクサーにしたかったみたい。
それでも小さな頃のあたしは、父親といる時はすごく楽しかった。
だけど、あたしが五歳の時に弟が生まれて、あたしの楽しみはなくなった」
電車が止まると空気の抜けるような音がしてドアが開く。
たくさんの人が乗り込んで、ドアが閉じると電車は走り出す。
梨華ちゃんは今もこっちを見たまま。
- 111 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時29分11秒
「弟が生まれたら父さんがジムに行くことが無くなった。
弟が生まれたのと、仕事が忙しくなって行けなくなったの。
別にあたしのことが嫌いになったわけでもないのに、
あたしは嫌われたのかと思ってた。
弟は男の子だから、あたしより弟の方が大事なんだって…。
だから一人でボクシングジムに行ってボクシングをずっと一人で見てた。
そして仕事から帰ってきた父親にそのことを話すの。
そうしたら父親はそれを嬉しそうに笑って聞いてくれた。
だからかな、父さんと話しをしたくて毎日の様にボクシングジムに通ったのは…。
ジム通いは小学校に入っても続いた。
同級生は塾やピアノの習い事に通い始めていた。
そんな中あたしはボクシングジムの会長さんから、
お遊び程度のボクシングを習ってた」
あたしの正面に座っているコギャル達が、
ジャングルの鳥みたいな高い笑い声を上げた。
けれども梨華ちゃんは何も聞こえてないかのようにこちらをじっと見ている。
不思議な目。
すいこまれそう。
- 112 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時34分13秒
「学校には普通に友達もいたんだよ。
だけどボクシングをやってると男の子からはバカにされたりもした、
ボクシングは男がやる格闘技だからね。
小学校高学年になったあたしは、友達の女の子が上級生の男の子に、
いじめられていたのを、助けようとしたんだ。
その時に相手が手を出してきて……その後はあまり覚えてない。
気がついたら、相手の男の子が鼻から血を流しながら謝ってた。
お化けでも見るような目であたしを見てた。
いじめていた子も、助けた女の子も…。
それからはもう、誰も何も言ってこなくなった。
同級生も、友達も、助けたその子も、みんな…。
それからかな、学校に友達がいなくなったの…」
電車の窓から見えるぼんやりとした遠くのビルを、じっと見つめながら話した。
「中学生になってバレーがやりたくてバレー部に入ったんだけど、
小学校の事を知っている人がいて…そのことを聞いたみんなが怖がっちゃって…。
…結局辞めちゃった…。
こんなかんじかな、あたしの傷は…」
梨華ちゃんに笑顔を見せ電車の天井を見る。
心を見せるのはすごく怖かった。
けれどもなんだか気持ちよかった。
- 113 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時35分28秒
「…あの…なんでそんな大事なこと、私に話すんですか?」
ぼんやりと、電車の吊り革を見ていたあたしの隣で、
梨華ちゃんは心配そうな目をしてあたしを見ていた。
「なんでかな?
ごっちんにも話したことないのに……
…たぶん梨華ちゃんのこと、もっと知りたいと思ったからだと思うよ。
それに梨華ちゃんだけつらい話しをするのは嫌でしょ?」
車内広告に目をやりながら、イスに体重をあずけた。
隣からは何の反応もない。
「…あたしじゃ無理かな」
髪の毛をかきあげながら、誰にも聞き取れないくらいの声で呟いた。
目的の駅に電車が止まり、あたしと梨華ちゃんは電車から降り、
あたしの家に向かった。
あたしの家は駅の正面にあるアーケード商店街の中にある。
- 114 名前:シグナル 投稿日:2002年07月10日(水)23時49分42秒
- 更新終了。
>>99 名無し読者様
騙してすみません。(w
>立て真希ロール
作者ツボでした、笑いました。
>>100 名無しさん様
100レスゲットおめでとうございます。
何かさし上げたいんですが、何もありません。
この娘。(ハロプロメンバー)だせ!
と言っていただければ出せるよう努力します。
ちなみに新メン以外の娘は出したいなと思っています。
なんとか水曜に更新できました。
次回は金曜に更新したいです。
それにしても使い古されたシナリオだ……もう少しひねらなくては。
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月11日(木)08時08分58秒
- いしよしになりそうな予感…?
ここへきてそれは酷かも…でも読んでしまふ…
- 116 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月11日(木)21時12分24秒
- >>115
いや、作者さんは最初からよしごまとは言ってへんで(w
みんな仲良くまたーりキボン
- 117 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月12日(金)09時17分51秒
- 確かに言ってない。
しかもベタ(いしよしのこと?)が好きだとも・・・。
正直、いしよしは苦手だけど、どうか最後までガンガってください。
- 118 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月12日(金)16時32分21秒
- 恋愛ではなく大切な仲間の話だと思いますが。It's COOL.
- 119 名前:シグナル 投稿日:2002年07月12日(金)23時45分18秒
交通量の多い駅前の道路は、いつもと同じように光の列を作っている。
横断歩道の信号待ち。
信号を待っているあたし達の後ろを、
黄色いバンダナを着けた少年達が歩いて行く。
彼らはあたしを見つけると、腰から90度、体を曲げて、
きれいなお辞儀をする。
あたしは彼らのお辞儀よりきれいなお辞儀を見たことがない、
この街の大人も含めて。
あたしが小さく頷くと、何事もなかったようにまた歩き出す。
この街で一番きれいなお辞儀をする、街一番の嫌われ者達。
信号が青に変わりあたしは一歩踏み出した。
しかし、青信号を合図にしたように、
後ろから梨華ちゃんの声が聞こえて来た。
「私…お母さんのこと何も知らないの」
突然の言葉に、踏み出した足の行き場をなくしたあたしは、
その場で立ち止まり振り向いた。
- 120 名前:シグナル 投稿日:2002年07月12日(金)23時47分52秒
「私、お母さんのこと何も知らないの」
俯いて言葉を繰り返す梨華ちゃんの手が、少し震えているように見えた。
「ゆっくりでいいよ」
そう言って梨華ちゃんの手をとると彼女の手は小さく震えていた。
商店街の店のほとんどはシャッターが下り、人通りもすくない。
震えの止まらない手をつないだまま、
街灯の光しかない商店街を二人で歩く。
「私、お母さんの顔、写真でしか見たことないの」
落ち着いた声で話す梨華ちゃんの顔は、まっすぐにあたしを見ていた。
「私が生まれてすぐにお母さん死んじゃったから…
お母さんのことなにも知らないの。
そのことで小さい頃から嫌なこともあったし、
友達もなかなかできないこともあったよ。
だけど学校が嫌だなんて思わなかった。
小学校も中学校も楽しかった……。」
そう言って梨華ちゃんは顔を伏せた。
- 121 名前:シグナル 投稿日:2002年07月12日(金)23時49分52秒
「高校に入って一年間は何もなかったの。
だけど二年になってから急に始まったの、
最初はクラスでよく話していた友達が離れていって、
そのうちノートや机に落書きがされるようになって…。」
梨華ちゃんが足を止め、顔を上げたのと、
目から涙が流れたのはほとんど同時だった。
「もう辛いよ……どうして私なの?」
あたしをまっすぐに見る視線。
とても悲しい目。
梨華ちゃんの涙はあたしの心の深いところまで届いた。
- 122 名前:シグナル 投稿日:2002年07月12日(金)23時54分13秒
あたしはつないでいた手を、少し強引に引き寄せ彼女を軽く抱きしめる。
髪の毛からシャンプーのいい香り。
あたしなにやってんだろ。
人通りの少ない夜の商店街で抱き合う女二人。
ホント、なにやってんだろ。
ふと頭に浮かんだ思いも、梨華ちゃんの髪の香りの中に溶けていった。
あたしは背中に回した手で梨華ちゃんの背中を、少し強めにポンポンと叩いた。
「大丈夫、これからはあたしとごっちんがいるから。
だから、もう一人でがんばらなくてもいいんだよ」
あたしがそう言うと、梨華ちゃんは静かに泣き始めた。
梨華ちゃんはあたしが助ける。
だからもう泣かないで。
あたしは心の中で梨華ちゃんに優しく言った。
- 123 名前:シグナル 投稿日:2002年07月12日(金)23時56分10秒
梨華ちゃんも言っていたけど、この思いを偽善という人もいるかもしれない。
けれど、偽善だって持ち続ければ、
それはそれで、きっと大切なものに変わるとあたしは思う。
だからといってこの思いが偽善だなんてあたしは思わない。
けれどもあたしは、この思いが自分のどこから来たのか分からないでいた。
正義感?それとも似たような苦しみを持っているから?
あたしは1つの謎にぶつかりながらも、彼女の力になりたいと思った。
- 124 名前:シグナル 投稿日:2002年07月12日(金)23時57分17秒
落ち着いた梨華ちゃんを体から離すと、
彼女は悲しみでいっぱい目をあたしにむけた。
涙でいっぱいの目。
まだ梨華ちゃんは、悲しみの底を見せていない。
そんな気がした。
梨華ちゃんはさっきから動くことなくじっと、あたしを見つめている。
「行こう、あたしの家すぐそこだから」
まだあたしを見たまま固まっている梨華ちゃんの手を引き、
家へと向かった。
- 125 名前:シグナル 投稿日:2002年07月12日(金)23時59分35秒
「ここが吉澤さんの家?」
「そうだけど。
吉澤さんはやめてよ、友達なんだからさ」
梨華ちゃんは「うん」と言って力強く頷く。
その顔にはさっきまでの涙はない。
「でもなんて呼べばいいの?」
「好きに呼んでいいよ。
よっすぃ〜でも、吉澤でも、ひとみでも良いよ」
そう言うと、梨華ちゃんは空を見て考える。
梨華ちゃんの見ている空は、20メートル位の高さで、
ビニールでできている。
名前ってそんなに悩むことかな?
少なくとも、あたしは人の名前を呼ぶのにこんなに時間を使ったことはない。
「…じゃあ…『ひとみちゃん』って呼んでもいい…?」
臆病な声と、あまり呼ばれたことの名前。
「ひとみちゃん…って呼ぶの?」
あたしの不満そうな声に、理華ちゃんの眉はハの字になる。
この顔は泣く時の顔。
ひとみちゃんなんて呼ばれると、照れるけど…まあいいや。
「いいよ、梨華ちゃんの好きなように呼んでよ」
あたしの答えにほっとしたような顔を見せた梨華ちゃん。
けれどもあたしはまだ彼女の笑顔を見ていない。
- 126 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)00時01分23秒
ひとみちゃん……か。
そうだ、小さな頃、一人だけこの名前で呼んでくれた人がいた。
あたしが通っていたジムの近所に住んでいた歳の離れたお姉さん。
黒ぶちのメガネと黒く長い髪を三つ編みにしてたのがとても印象的だった。
あたしは『祐姉ちゃん』って呼んでたっけ。
遠くの大学に行くためこの街を離れたんだ。
懐かしい思い出が頭を通り過ぎていく。
「ひとみちゃん?」
ふいに隣から聞こえた心配そうなアニメ声。
「ん?なに?どうかした?」
「ひとみちゃん、ぼーっとしてたから」
「そう?ひとみちゃんなんて、年上の人からしか呼ばれたことないから、
ちょっと照れちゃって」
そう言ったあたしを、梨華ちゃんは暗い顔で見る。
「私…ひとみちゃんより年上だよ…」
俯いて話しているけど、たぶん眉はハの字。
「そうなの?だけど高校、ごっちんと同じクラスだよね?」
「高校受験の日にケガで受けられなくて……
だからごっちんと同じクラスなの…いやだよね、そんな人が友達なんて…」
あ〜なんかいらいらしてきた。
なんで梨華ちゃんはこんなにマイナス思考なんだろう?
- 127 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)00時02分39秒
「梨華ちゃんは、あたしが高校受験に落ちて、
高校に通ってないって言ったら友達やめちゃう?」
少し怒った口調で言う。
「やめない、ひとみちゃんは学校に行ってなくても友達だよ」
「でしょ、だから自分のこと、いやな人だなんて言わないでよ」
「…うん」
梨華ちゃんは目に涙をためたまま頷いた。
「話してたら、おなか減っちゃったね、早く家入ろうよ」
あたしはそう言って、二人の前にある閉じられたシャッターを、
勢いよく持ち上げた。
- 128 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)00時04分16秒
あたしの家は、この商店街の中にある一軒の肉屋。
外見は、さえないふつーの肉屋。
隣にはこれまたさえない店が軒を連ねる。
最近は近所にできた大型デパートに押され気味なのか、
シャッターが下りたままの店も多い。
名前は……教えない。
普通すぎて、かっけーなんて言えないから。
家の近所にある肉屋の、名前のところを、吉澤にすればたいてい合ってるよ。
肉屋の名前なんてそんなにないからね。
シャッターをくぐり、薄暗い店内を奥に見える光に向かって進む。
「ただいまー」
返事はない。
母さんは何かに集中すると周りの見えない人。
マンガを読み始めると返事しない人と同じ。
たぶん今も店の帳簿をつけてる。
- 129 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)00時05分20秒
店の奥にあるひざくらいの段差があたしの家の玄関。
廊下を進んで最初にある部屋は居間、その向こうに台所。
居間にあるのはテレビとちゃぶ台、タンスが一個、隣には母さんの部屋。
母さんはテレビの着いた部屋で、廊下に背中を向け、店の帳簿をつけていた。
その横には、弟二人が口を開けテレビにくぎづけ。
口を開けている二人のまぬけな顔に、姉であることがたまに嫌になる。
「ただいま」
「お帰り、遅かったわね」
声をかけても母さんの目は帳簿にむいたまま。
弟たちもテレビの前でまぬけ顔。
「ごはんある?」
「残り物しかないよ」
母さんはあたしの言葉にそう返すと、立ち上がりながらこちらを振り向く。
「誰、その人?」
振り返るなり驚いた顔で聞く。
「友達」
その言葉にまたも驚く母さん。
「うそでしょ?
あんたの友達は真希ちゃんしかいないじゃない」
母さんは一言そう言って台所に向かった。
失礼な母親、あたしには他に、二人も友達がいるのに。
- 130 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)00時08分01秒
台所のテーブルには、お皿に盛られたメンチカツと山盛りのキャベツ。
このメンチカツは、昔から店で作っているお惣菜のあまり物。
夕ご飯には良く出るメニュー。
毎日のように食べた時もあった。
だからあたしは肉が嫌い。
毎日食べて飽きないのは、ベーグルとゆでたまごだけってことを、
身をもって知っている。
あたしはごはんと細く切られたキャベツだけを口に入れていく。
「ひとみちゃん、お父さんいないみたいだけど、お仕事なの?」
梨華ちゃんはごはんを少しずつ口に運びながら聞く。
ご飯だけで食べ終わるのに15分はかかりそう。
- 131 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)00時09分31秒
「父さん?父さんは母さんの部屋にいるよ」
あたしはキャベツを口にいれて、居間の向こうの母親の部屋を箸でさした。
その先には、ろうそくを前に、笑っている父親の写真。
写真を見た梨華ちゃんはちょっとしたパニックになっている。
「あ、あたし…ごめんなさい」
「いいよ、謝らなくても」
「でも…」
「中学三年の時にね、事故で死んじゃった」
「事故?」
「そう、犯人に刺されて死んじゃった」
「犯人?」
梨華ちゃんは食べるのをやめ、茶碗片手に聞いている。
「そうか梨華ちゃんには言ってなかったね。
うちの父親は警察官だったんだ」
最後のキャベツを口にいれた、やっぱりキャベツには醤油が合う。
- 132 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)00時11分34秒
食器を流し台に持っていき蛇口をひねる。
茶碗が水でいっぱいになる。
「さてと、あ、そうだ。
梨華ちゃんお風呂はいるよね、ご飯終わったら入りなよ」
「え、あ、…でも着替え持ってないから…」
「使ってない下着でよかったらあげるからさ、遠慮なんかしないで」
「うん、ほんとにありがとう」
急にまじめな顔で梨華ちゃんはあたしを見る。
あたりまえの事で感謝してくる梨華ちゃんを見ると、
少し胸のあたりが痛くなった。
「お礼なんかしないでよ、友達なんだからさ。
あ、でも下着ピンク色じゃないけどいい?」
「あ、うん、何色でもいいよ」
梨華ちゃんはすぐにそう答えたが、またすぐに聞き返してきた。
「どうしてひとみちゃんは、私の好きな色知ってるの?」
「だって今日の梨華ちゃんの下着ピンク色だっ」
そこまで言って、あたしはあわてて自分の口を、自分の手で塞いだ。
しかし時遅く、梨華ちゃんは赤い顔をしてかたまっていた。
耳まで真っ赤。
「さ〜て、部屋片付けてこよ〜っと」
人は気まずくなると、どうでもいい事を口にするらしい。
あたしは逃げるように階段を登って自分の部屋に入った。
- 133 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)00時18分33秒
ガラス越しに聞こえるシャワーの音。
自分の部屋を、かたずけ終えたあたしは、梨華ちゃんの着替えを持って、
お風呂場のドアの前にいた。
「梨華ちゃ〜ん、シャワー使い方分かる?」
ふざけて、お風呂のドアを開けながら梨華ちゃんに聞いた。
「だめ!見ないで!」
梨華ちゃんは少し叫ぶように言いながらお、風呂場のドアを勢いよく閉めた。
梨華ちゃんのあわて様に少し驚いたけど、
梨華ちゃんには、誰にも見られたくないものがあることを思い出した。
胸が痛い…。
「着替え、カゴに入れとくから」
「うん、ひとみちゃんありがとう」
お風呂のガラス越しに聞こえた声は、少し震えているようにも聞こえた。
梨華ちゃんがこれ以上苦しむ姿は見たくない。
心からそう思った。
- 134 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)00時19分28秒
あたしは梨華ちゃんの着替えを脱衣所のカゴに置いて、ふと横の洗濯カゴを見た。
目の先にはピンクのブラジャー。
言い訳するんじゃないけど、その時どこからか、声が聞こえたんだ。
「カモーナッ!」
って声が。
周りに誰もいないことを確認して、ブラジャーを手に取り自分の胸に着けてみた。
Tシャツの上から着たのにぶかぶかのブラジャー。
あたしはやせてるんだ。
心の中で自分にそう言い聞かせ、ブラジャーを洗濯籠に乱暴に投げ込んだ。
- 135 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)00時21分40秒
居間では母さんが一人で帳簿と向き合っていた。
時間はもう9時になろうとしている。
廊下から母さんに話しかける。
「梨華ちゃんさあ、今日、母さんのところに寝させてあげてよ」
帳簿を書いていた母さんの手が止まる。
「どうして?……あんたのイビキがうるさいから?
それとも、あんなかわいい子が隣で寝てたら、手だしそうなの?」
背中しか見えないけど、ぜったい笑ってる。
「母さん、後ろから刺すよ」
そう言うとは母は笑いながら一言。
「そんな事したらあんたを店のショーケースに並べるよ」
特価!吉澤ひとみ100g68円
牛ミンチと逢引ミンチに挟まれるあたし……もう生意気なこと言いません。
- 136 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)00時24分16秒
「梨華ちゃんの母親、梨華ちゃんが生まれてすぐ死んだんだって、だからさ」
「わかったわ」
母さんはあたしの言いたいことが分かったみたい。
話の途中であたしの言葉を止めると、母さんは帳簿をタンスにしまい、
自分の部屋にもう一つ布団を敷き始めた。
感謝。
「あの…お風呂あがりました」
そう言ってバスタオルで濡れた髪を、丁寧に拭きながら、
梨華ちゃんがあたしの隣に来た。
「梨華ちゃん、今日は母さんの部屋で寝てね」
「え!わ、私、そんな」
梨華ちゃんはあわてたように何かを言っている。
「あたしイビキうるさいからさ、下で母さんと寝てよ。
さーて、お風呂お風呂」
あたしはそのまま梨華ちゃんを残しお風呂に直行した。
お風呂から上がると、母さんの部屋の電気はすでに消えていた。
「おやすみ」
あたしは静かにそう言って自分の部屋へ向かった。
- 137 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)00時25分06秒
ベッドの上に寝転んで、天井をボーっと眺めていると、
梨華ちゃんの言っていた言葉を思い出した。
『もう辛いよ……なんで私なの?』
梨華ちゃんの泣いた顔。
寝ぼけた顔。
怒った顔。
困った顔。
あわてた顔。
出会って数時間しかたってないけどいろいろな顔を見た。
けれども梨華ちゃんの笑った顔をあたしはまだ見ていない。
「明日は見れるよね」
そう言ってあたしは携帯を手にとり電話を掛けた。
- 138 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)00時25分57秒
「もしもし、ごっちん?」
「起きてたの?」
「店の手伝いしてるの?ごめんね電話しちゃって」
「あのさ、ごっちんさ、高校の制服もう一つ持ってるよね?」
「うん、ある?じゃあさ〜………」
to be Continued
- 139 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)01時14分35秒
- 更新終了。
>>115名無し読者様
作者はこれを書こうと思った時、CP作るつもり無かったんですが、
長く続くと、カップリングができるような内容になるかもしれません。
はっきり言って作者も分かりません。
CP作るなら……どうしよう。
>>116名無し読者様
ハイ、よしごまとは言ってないです。(w
最初にCP言っておいたほうがよかったのかな?
けれどもCPできるのはずっと先なんで、そこまで続くかどうか、
分からなかったんです。
反省反省です。
>>117名無し読者様
いしよしにがてですか……。
いしよし(仮)になるかどうか分かりませんが、
それまで見てくれればうれしいです。
CPが作れる話まで続けばの話ですが……。
>>118名無し読者様
CPできても恋愛をメインにするつもりはないです…たぶん…。
あくまでIt's COOLに行きます…たぶん…。
よっすぃ〜のキャラが壊れてきたような…It's COOL…たぶん。
- 140 名前:シグナル 投稿日:2002年07月13日(土)01時23分36秒
512制限引っかかりまくり。
皆様レスありがとうございます。m(__)m
金曜更新、まにあいました……よね。(w
次回更新は火曜日あたりにしたいです。
もう一回頭の中をまとめなおします。(CP作るか作らないかも含めて)
読んでくださっている方々は、いしよし苦手な方が多いようですね。
どうしよう、どうしよう。
しばらくは、「いしよしごま」をお楽しみください。
- 141 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月13日(土)02時00分39秒
- 更新お待ちしてましたー(w
自分はいしよし好きですけど、CPなしでも好きです。
この話はCPより友情話って感じで凄くなんかいいっす。。
いじめにあってた子が居たときを思い出しました。
頑張ってください。
- 142 名前:オガマー 投稿日:2002年07月13日(土)08時54分36秒
- どうも、初レスです。
元ネタっぽいドラマも好きだったけど、この話もいいですね〜
引きこまれました。
私もいしよし大好きですが、ハッキリとしたCPなくても面白いとおもいますよ〜♪
- 143 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月13日(土)15時31分00秒
- よしごま推奨派ですが、別にいしよしでもいしごまでもOKです。
もちろん、CP無しでもいいと思いますよ。COOLでさえあれば!
- 144 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月13日(土)16時54分29秒
- いしよし大好き派ですが、何か?
殆どいしよし小説しか読んでない人間です。
あとはとにかく面白い小説。どっちにも当てはまるので読んでて楽しめます。
作者さんの好きなようにされるのが一番かと。
文句なんてないです。だって面白いから。これからも頑張って書いて下さい。
- 145 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月13日(土)18時39分50秒
- >>144
文句ないと言いながら猛烈ないしよしプッシュに見えますが(w
いしよし派とよしごま派は合い受け入れ難いですからね。
ここは無理にCP作らず作者さんが書きたかったCP無し路線が
良いのかと・・。
- 146 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月14日(日)03時54分01秒
- 既にキャラが生きてるから、きっと自然に物語が出来ていくのだと思います
・・・圭織を忘れないで下さいね(^-^;
「ひとみちゃん」と呼ぶ姐さんが何か良いですな
- 147 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月15日(月)21時57分25秒
- ここで反論、本当に申し訳ないです。
というか、スレ汚しごめん!が、どうしても言いたいので・・・
>>145
そんなつもりで書いてないです。いや、マジで。
いしよし大好きですが、面白いものであればどんなCPでも読みます、
って事が言いたかったんですよ。別にいしよしにしろって意味ではないです。
ってわけなんですよ、作者さん。これだけは誤解しないで下さい。
- 148 名前:シグナル 投稿日:2002年07月15日(月)23時18分57秒
ジリリリリリリ――
ねむい〜…
うるさいよ〜…
ジリリリリリリ
ガチャン
目覚し時計を、乱暴に叩き、黙らせる。
眠い目をこすり時計を見る。
6時30分
家から、あたしが通う学校までは歩いて10分。
いつもは7時起床、8時を過ぎてから家を出ている。
けれども今日はいつもより30分早く目覚ましがなった。
どうしてだろう…
ベッドの中で考える。
……梨華ちゃんだ。
ようやく頭が働いてきた。
ベッドから飛び起き、学生服に着替える。
あたしは勢いよく部屋のドアを開け、一階への階段を駆け下りた。
- 149 名前:シグナル 投稿日:2002年07月15日(月)23時20分03秒
Gardens
第四話 Friends
- 150 名前:シグナル 投稿日:2002年07月15日(月)23時21分31秒
一階の居間では、朝ごはんの用意を弟二人がしている。
台所を見ると、学生服にエプロン姿の梨華ちゃんと母さんが、
流し台の前で二人並び、朝食の味見をしながら楽しそうに話をしている。
なんかホントの親子みたい。
楽しそうに母さんと話している梨華ちゃん。
あたしが入る隙間も無いように見える。
「梨華ちゃん、おはよう」
二人の話を邪魔しないように、タイミングを計り声をかける。
「あ、ひとみちゃんおはよう」
「よく眠れた?」
「うん、昨日はありがとう」
梨華ちゃんはそう言って、台所の窓から入る朝日の中、
やわらかい笑顔を見せた。
初めて見た笑顔。
笑っている梨華ちゃんは、昨日よりずっときれい。
- 151 名前:シグナル 投稿日:2002年07月15日(月)23時22分36秒
「お礼なんか言わないでよ。
言ってくれれば母さんなんて、いつでも貸すからさ」
あたしがそう言うと、梨華ちゃんの横にいた母さんの声が飛ぶ。
「ひとみ、バカな事いってないであんたも手伝いなさい、
梨華ちゃんは、早起きして朝ごはん作るの手伝ってくれたのよ」
母さんは梨華ちゃんに笑顔を見せ、あたしにはきつい目を見せる。
あたしは母さんの目より、いつの間にか「梨華ちゃん」と、
自然に呼んでいる母に、少し驚いた。
一夜を共にすればこんなにも仲良くなれるのかな?
ごっちんのことなんかつい最近まで後藤さんだったのに。
少しオヤジのような事を思いながらも、
あたしは、大好物がテーブルの上にあることを見逃さなかった。
- 152 名前:シグナル 投稿日:2002年07月15日(月)23時23分36秒
「いつもは食パン焼いただけの朝食なのに、
梨華ちゃんがいるからって、はりきりすぎじゃないの?」
あたしは、台所のテーブルの上に置かれた、ゆで玉子を手に取りながら言った。
「梨華ちゃんの前で、そんなこと言わなくていいのよ」
朝から母さんと口げんかをしていると、横で梨華ちゃんが
くすくす笑いはじめた。
「ほら、ひとみがバカなこと言ってるから梨華ちゃんに笑われたでしょ」
母さんはそう言って、食器を持って台所を出て行った。
「ごめんね、朝ごはん作るの手伝わしちゃって」
「ううん、あたしこういうことしたこと無いから、楽しかったよ」
梨華ちゃんはさっきからずっと笑顔。
笑っている梨華ちゃんを見ると、あたしまでうれしくなる。
- 153 名前:シグナル 投稿日:2002年07月15日(月)23時25分02秒
「いってきま〜す」
いつものようにそう言って、店を出る。
店を出ると、商店街は通勤や通学の人で、駅方向への流れができていた。
「ちょっとまちなさい」
店の中から母さんの声。
「なに?」
あたしは店から出てきた母さんに言う。
「あんたに用があるんじゃないの、梨華ちゃんに用があるの」
そう言うと母さんは梨華ちゃんのほうを見た。
「いってらっしゃい」
母さんはそう言って笑顔を見せた。
梨華ちゃんは照れたように笑顔を見せると、
「いってきます」と嬉しそうに言った。
いい所を、全部母さんに持っていかれた気がする…。
- 154 名前:シグナル 投稿日:2002年07月15日(月)23時34分18秒
駅は、学生やサラリーマンであふれていた。
歩いて学校に行っているあたしには、耐えられない光景。
駅に着くと梨華ちゃんは少し寂しそうな顔をする。
別れは誰だって辛い。
行きたくない場所へ行くのなら、なおさら辛い。
「じゃあね梨華ちゃん」
「うん、ありがとう、あの…また泊まりに行ってもいい?」
少し声を小さくして言う。
「いつでもいいよ、母さんも梨華ちゃんのこと気にいったみたいだからさ」
あたしがそう言うと、梨華ちゃんはうれしそうに返事をする。
「うん、じゃあもう行くね」
「そだね。
あ、そうだ、あたし週末は、最初に梨華ちゃんと会った公園にいるからさ、
会いたくなったらいつでも来てよ」
「うん、携帯電話買ったら、会いに行くね。
その時はひとみちゃんの電話番号教えてね」
そう言って梨華ちゃんは駅へと歩いていく。
とちゅう梨華ちゃんは軽やかにターンを決め、「いってきます」
とあたしに笑顔で言った。
今までで一番の笑顔。
- 155 名前:シグナル 投稿日:2002年07月15日(月)23時35分51秒
今までで、一番の笑顔を見せた梨華ちゃんは、
そのまま人の波へと消えていった。
「さ〜て、あたしも行きますか」
気合を入れ、あたしも梨華ちゃんの後を追い、
人の波にまぎれて駅へと向かった。
- 156 名前:シグナル 投稿日:2002年07月15日(月)23時54分27秒
- 更新終了。
皆様嘘ついてすみません。m(__)m
火曜更新なんて言っておいて今日更新しちゃいました。
皆様レスありがとうございます。
作者うれしいです。
>>141名無し読者様
更新待っていてくれて、ありがとうございます。
女の友情って恋愛が絡まなければなんか良いですよね。(w
>>142オガマー様
あわわわ、小説書いてる人からレスきちゃった。
レスありがとうございます。
読んでますよ、「恋はきっと人をずるくする。」(間違っていたらすみません)
もう一つのほうも読みました。(特に二つ目(ニヤリ
この先どうなるか分かりませんが、お暇な時にでも見てください。
>>143名無し読者様
COOL……え〜よっすぃ〜壊れるかもしれません。(w
けれど決めるとこは決めてくれるので、
なんとかCOOLになると思います…たぶん。
- 157 名前:シグナル 投稿日:2002年07月16日(火)00時26分47秒
- >>144 名無し読者様
作者もいしよし好きですが何か?(w
おほめの言葉ありがとうございます。
レスもらえるとやる気が出てきます。
>>145 名無し読者様
いしよしとよしごまは、バイクでいうと2ストと4スト、
ゲームで言うとFFとDQみたいなもんですね。(w
分からない方すみません。
>>146 名無し娘。様
>キャラが生きてる
ありがとうございます、作者かなりうれしいです。
>・・・圭織を忘れないで下さいね(^-^;
(゚Д゚;)……わ、わ、忘れてませんよ決して。
もしこの話が長く続けば圭織でサイドストーリー書くつもりです。
>>147 名無し読者様
スレ汚しなんてとんでもないです。
レスは見てくれている、印のようなものだと作者は思っているので、
名無し読者様が、少なくとも二回のぞいてくれたことになるのでうれしいです。
- 158 名前:シグナル 投稿日:2002年07月16日(火)00時34分28秒
え〜と、CPの事で、ご意見たくさんありがとうございます。
CPの事なんですが、話の流れに任せるということにしました。
早い話が、どうなるかわかりません。
まだ作る気はありませんが、長く続けば作るかもしれません。
なので、よしごまなのかいしよしなのか、
もしかしたら、よしなか…はないかな。(笑
CP読みたい方は、長く続くことをお祈りください。
娘。&ハロプロメンバーは、出せるだけだしたいので、
どうなることやらです。
次回更新は火曜、明日できれば更新します。(できなければすみません)
- 159 名前:オガマー 投稿日:2002年07月16日(火)01時33分09秒
- 早速読みますたw
知っていただけたみたいで光栄ですw
CPのこと、それが一番いいと思います!
続き期待w
- 160 名前:シグナル 投稿日:2002年07月16日(火)23時50分01秒
「ごっちん、どう?にあう?」
「んあ〜、よっすぃ〜さっきからそればっかりだよ〜」
「いいじゃん、この制服着たかったんだから」
「じゃあこの学校入ればよかったじゃん」
「う……い、いえの家計が苦しかったからあきらめたの」
「ほんとに〜」
「もーそんなことどうでもいいじゃん、それよりにあう?」
「あ〜にあってるよ〜、胸の部分のダボダボ感なんかさいこ〜だよ、あはっ」
「ごっちんが大きいだけであたしは普通なの!」
「まあまあおこらないの、あ、教室ここだよ」
「別にあたしは怒ってないからね」
「あ〜はいはい、教室入るよ〜」
- 161 名前:シグナル 投稿日:2002年07月16日(火)23時51分46秒
ガラッ
教室のドアを開けると、化粧と香水の強烈な匂いと、
女の子の話声があふれてくる。
あたしは化粧品の匂いに、教室に入ろうとしていた足を止めた。
共学の高校に通うあたしには、この匂いは少しきつい。
あたしの隣にいるごっちんは、そんなことおかまいなしに教室に入っていく。
「あ!梨華ちゃ〜ん、おはよ〜!」
ごっちんが教室に入るなり梨華ちゃんに声をかけ手を振る。
その声に教室は沈黙に包まれ、生徒の視線は、
ごっちんと梨華ちゃんに集中した。
この学校ではあってはいけない事。
そんな雰囲気が教室の空気を通じてあたしに伝わった。
そんなこと気にする様子もなく、ごっちんは梨華ちゃんの席へと向かう。
クラスの女の子達は、友達の耳元で何かをささやき始めた。
- 162 名前:シグナル 投稿日:2002年07月16日(火)23時52分54秒
「ハァーイ、梨華ちゃん!」
あたしはテンションをできるだけ上げ、教室の入り口で、
1回転ターンをして、ドアに片手をつき、もう片方を腰にあてポーズを決めた。
教室の目はあたしに集中した。
「ひとみちゃん!」
梨華ちゃんはイスから立ち上がり大きな声であたしの名前を呼んだ。
けれどもクラスの目が梨華ちゃんに集まると、
あわてていすに座り、俯いてしまった。
あたしは教室に入り梨華ちゃんのいる机に向かって歩いていく。
周りから聞こえる小さな声が、何を言っているかは分からなかったけど、
あたしの頭の中ではザラリとした感触が、動き始めたのが分かった。
- 163 名前:シグナル 投稿日:2002年07月16日(火)23時53分53秒
あたしが梨華ちゃんの隣の席に座ると、梨華ちゃんが声をかけてきた。
「ひとみちゃん、ここでなにしてるの?」
「きちゃった」
「きちゃったって、学校は?」
「休んだ」
「いいの?休んでも」
「へいきへいき、一日くらい。
それに学校に行く時の梨華ちゃんが、元気なかったのが気になって…
もしかして迷惑だった?」
あたしがそう言うと梨華ちゃんは黙ったまま首を横に何度も振った。
「梨華ちゃん、だまされたらだめだよ〜
よっすぃ〜は、ここの制服着たかっただけなんだから」
梨華ちゃんの机の前でごっちんがニヤニヤしながら言ってくる。
「そんなことで友達の学校に来たりしません」
「え〜よっすぃ〜ほんと〜?」
「ホントです〜」
こんなごっちんとあたしの会話を、梨華ちゃんは笑いながら見ていた。
- 164 名前:シグナル 投稿日:2002年07月16日(火)23時56分23秒
「よっすぃ〜、もうすぐ一時間目始まるよ、これからどうするの〜?」
「どこか適当なところで時間つぶすよ」
あたしが席を立つとごっちんがある提案をした。
「なんだったら授業受けていけば?」
突然のごっちんの提案。
「出席とるでしょ?」
「ここの先生は顔見て出席とらないからだいじょうぶだよ」
「席は?」
「今座ってる席の人は、たいてい休んでるよ」
ごっちんが学年順位10位以内の学校の授業。
やってやろう。
COOLがうり(?)のあたしに火がついた。
- 165 名前:シグナル 投稿日:2002年07月16日(火)23時57分44秒
一時間目――数学終了後
「いや〜あたしグラフから答えを見つける問題苦手だから、大変だったよ」
「んあ〜その問題は答えをグラフに書くんだよ〜」
「……あ、そう……」
二時間目――英語終了
「やっぱり教科書ないと英語は難しいね」
「ひとみちゃん、今日先生が読んでいたのは配ったプリントだよ」
「う、うんそうだね…」
三時間目――国語終了
「あたし徒然草あんきしてるよ」
「あはっ、何もわかんなかったんだね〜」
四時間目――自習中
「………」
「よっすぃ〜泣いてるの〜?」
「ちがうよ、あくびしたら涙が出てきただけだから」
そして昼休み。
- 166 名前:シグナル 投稿日:2002年07月17日(水)00時01分19秒
昼休みになると、教室からいっせいに人がいなくなった。
あたしは机につっぷして、午前の悪夢を忘れようとしていた。
「よっすぃ〜、ごとーと梨華ちゃんは、売店で昼ごはん買ってくるけど、
よっすぃ〜はどうする?」
顔を上げると、手をつないだごっちんと梨華ちゃんがいた。
あたしはつながれている手を見てごっちんの顔を見る。
ごっちんは、照れたような顔をして笑っている。
二人の邪魔しちゃ悪いからね。
「あたし、お腹へってないからいいや」
あたしはそう言ってまた机に突っ伏した。
「じゃあ、行こうか、梨華ちゃん」
ごっちんは梨華ちゃんの手を引き、教室を出て行った。
あたしは机につっぷしながら授業を受けたことを、
激しく後悔しながら、もう少し勉強をがんばろうと心に決めた。
やっぱりなれないことはするもんじゃない。
- 167 名前:シグナル 投稿日:2002年07月17日(水)00時08分16秒
- 更新終了。
>>159 オガマー様
レスありがとうございます。
あまり期待しないでください(w
最近かっけーよっすぃ〜が書けなくなってしまって、
困ってます。
次あたりから、かっけーよっすぃ〜書くので、今回のだめよっすぃ〜
は見逃してやってください。
次回更新はストック無いので、金曜or土曜です。
- 168 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月18日(木)01時41分14秒
- 自信喪失のよっすサイコー(w
更新待ってます。
- 169 名前:シグナル 投稿日:2002年07月19日(金)00時14分44秒
「ねぇ…ねぇ…」
お花畑の中を、笑顔で走っていたあたしを、現実に引き戻す女性の声。
「んあ?」
ごっちんのマネ。
顔を上げると茶色い髪の女性が机の前に立っている。
ごっちんと同じくらいの身長。
体型はデブとグラマーの間をさまよってる感じ。
「ねぇ、石川は?」
「今、昼ごはん買いに行ってる」
机の前に立っている女性に言うと、髪をさわりながら、
少しいらついたそぶりを見せた。
「じゃあ、あんた言っといてよ、屋上に来いって」
ピシッ
頭の中が冷えていく音が聞こえる。
「何かあるの、屋上に?」
分かっている、なにがあるか。
「あんた知らないの?」
あたしは知っている。
「とにかくあの子には、かかわらないほうが良いよ」
そう言ってその女性は教室をでていった。
あたしは屋上へ向かうため席を立った。
- 170 名前:シグナル 投稿日:2002年07月19日(金)00時18分21秒
「あれ〜、よっすぃ〜どこ行くの〜」
あたしが席を立つと、ごっちんと梨華ちゃんが教室に戻ってきた。
「え?別にどこにも行かないけど」
イスに座りなおし、ごっちんと梨華ちゃんに笑顔を見せる。
作り笑顔。
「ひとみちゃん、これ食べて」
梨華ちゃんは自分の机に座ると、あたしにベーグルサンドを渡してくれた。
「よっすぃ〜、ゆで卵好きだよね」
梨華ちゃんの机の前に座っているごっちんも、
えへへと笑いながら、ゆで卵を渡してくれた。
「いいの?」
「うん、ホントとは、ひとみちゃんおなか空いてるでしょ?」
「…実はおなか空いてる」
あたしは受け取ったベーグルサンドとゆで卵を、一口ずつ食べた。
しなびたレタスのベーグルサンドも、かたよった黄身のゆで卵も、
なぜかいつも以上においしく感じたあたしは、
ゆっくりと時間ををかけて食べることにした。
なぜなら、その味をずっと覚えていたかったから。
- 171 名前:シグナル 投稿日:2002年07月19日(金)00時20分22秒
あたしはベーグルサンドとゆで卵を食べ終え、一息つく。
「あ、そうだ、梨華ちゃんに、屋上で待ってるから、
来てほしいって、女の人が言ってたよ」
あたしの言葉に、梨華ちゃんは一瞬すべての動きを止めたように固まり、
返事をした。
「あ…うん…分かった、二人はここで待っててね」
つぶやくようにそう言って席を立つ。
うつろな目、自分の手を胸の前で握っている。
震えを隠している様に見えた。
「すぐ戻ってくるから」
梨華ちゃんはあたしとごっちんに笑顔でそう言った。
無理やりに作った笑顔。
胸が苦しい。
「あはっ!愛の告白かな〜、ごとーも行きたいな〜」
ごっちんは笑いながらそういう。
「ごめんなさい、一人で行くから」
梨華ちゃんは、あたし達に背中を向けてそう言った。
「うん、分かった」
ごっちんは笑いながら返事をした。
けれどもごっちんの目に感情は無かった。
ごっちんも気づいてるみたい。
「一人で行くの?」
あたしの言葉に、梨華ちゃんは背中を向けたままうなずくと、教室を出て行った。
- 172 名前:シグナル 投稿日:2002年07月19日(金)00時22分35秒
梨華ちゃんの背中が見えなくなると、
あたしはごっちんに借りているブレザーを脱ぎ、イスにかけた。
「ごっちん、行こう」
そう言ってごっちんのほうを見ると、ごっちんは俯いている。
「ごっちん、行かないの?」
「ごとーは梨華ちゃんのこと友達だと思ってる」
あたしの言葉にごっちんは間を空けずにそういった。
「さっきも、梨華ちゃんに何かあったら、
ごとーとよっすぃ〜が守るからって言ったんだよ。
だけど…梨華ちゃんなにも言ってくれなかったよ、
やっぱりごとーのこと友達と思ってないのかな?」
そう言ったごっちんの声はとても弱々しい。
こんなごっちん初めて見た。
- 173 名前:シグナル 投稿日:2002年07月19日(金)00時26分12秒
「大丈夫だって、そんなことないよ」
「ホント?
ごとーのこと友達だと思ってくれてたら、悩みとか話してくれると思うよ」
ごっちんは下を向いたまま元気の無い声で話す。
まるでどっかの誰かみたい。
「梨華ちゃんは、ごっちんのこと友達だと思ってるよ」
「そうかな〜」
「そうだよ、ごっちんが梨華ちゃんについていくと、
ごっちんに迷惑かかると思って、あんなふうに言ったんだよ」
「…迷惑なんかじゃないよ。
ごとーはこの学校に友達ができてうれしかったんだよ、
友達なんだからもっと頼って欲しかったよ」
ごっちんの声は消えるように細い。
「じゃあさ、梨華ちゃんに言いに行こうよ、『もっと友達を頼れ』ってさ」
あたしがそう言うと、ごっちんは顔を上げて大きくうなずいた。
ごっちんの目がきらきら光っていたのは、悲しみの涙のせいなんかじゃなくて、
ごっちんの心が、目の中から見えたのだと思えた。
それくらいきれいに光っていた。
- 174 名前:シグナル 投稿日:2002年07月19日(金)00時28分51秒
「ごっちんとあたしって、ぜんぜん似てないよね?」
屋上に向かいながらごっちんに聞く。
廊下ですれ違う生徒たちはいつもと変わらない昼休みを過ごしている。
「そうだね〜、性格なんか、かなり違うよね〜、でもどうしたの急に?」
「ごっちんさー、梨華ちゃんの事守るって言ったんでしょ?」
「うん、そーだよ」
「実は、昨日あたしも同じようなこと言ったんだよね」
「あはっ!よっすぃ〜も言ったんだ」
「なんかさ、あたしとごっちんって似てるよね」
「あはっ!そうだね〜」
あたしとごっちんは笑顔で屋上へと続く階段を上る。
階段の上には古びた赤い扉。
あたしの目には扉の赤が血の色に見えた。
屋上へ続く扉の向こうで、
梨華ちゃんが笑っていることが無いことも分かっていたし、
ましてやこの扉が天国への扉ではないことも知っていたから。
- 175 名前:シグナル 投稿日:2002年07月19日(金)00時39分56秒
- フライング金曜更新終了。
>>168 名無し娘。様。
だめよっすぃ〜良いですか。
かっけーよっすぃ〜を書くはずだったんですが、
完ぺきな人間はいない、ということで書いてみたんですが。
……どうなんだろう?書かないほうがよかったのかも。(w
次回更新は未定です。
来週はテストですけど、週一更新はできると思います。
作者はテストよりこっちが大事ですから。(笑
どうして、うちのガッコはこんな時にテストなんだー。
- 176 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月19日(金)23時24分40秒
- 僕にはわかる・・・ダメな部分があってこそ
かっけーよっすが魅力的に見えるという事が・・・
隙の無い格好良さは人形の格好良さに過ぎないという事が
僕にはわかる・・・
- 177 名前:皐月 投稿日:2002年07月21日(日)14時25分02秒
- かんどーしました!
続き大期待!
作者さんがんばってくださいな!
- 178 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時31分28秒
ガチャ
キィーー
ごっちんが扉を開けた。
扉の中は光でいっぱいだった。
光が消えると、扉から少し離れたところに、人が集まっているのが見えた。
緑色をした屋上の地面は、芝生みたいに広がっている。
その屋上を囲むように立てられている、事故防止用のフェンスに、
梨華ちゃんは追い詰められているように、もたれかかっていた。
その梨華ちゃんを囲むように女の子達がいる。
前に1、2、3人。
その後ろに1,2,3人。
6人に囲まれた梨華ちゃん。
ここから見ても、梨華ちゃんが笑ってないのが分かった。
その光景を見た瞬間。
冷たく、ざらざらした感覚が頭の中で動き始めた。
頭の中では本能だけが、獲物を狙う冷血なヘビのように、
ゆっくりとそして正確に、あたしの目を通して、屋上の光景を見ている。
今のあたしの頭の中は、店にある業務用の冷凍庫より冷たくなっている。
- 179 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時33分05秒
梨華ちゃんを三人の生徒が囲み、その後ろの三人が笑いながら見ている。
マエノヤツラジャナイ。
頭の中で声が響く。
後ろの三人を見る。
三人の両脇にいる二人は、明らかにほかの人とは体格が違う。
一人は飯田さんより背が高いかもしれない。
もう一人は背もあたしくらいあるけれど、横にはもっと大きい。
二人とも、髪が女と分かるぎりぎりまで短い。
たぶん何かのスポーツをやっている。
そう思った。
その二人に守られるようにして挟まれている女性は、
ブレザーのポケットに手を入れて笑っている。
アイツヲヤレ
頭の中で、声が繰り返される。
あたしは少しいらつきながら髪をかき上げる。
そのとき梨華ちゃんを囲んでいた3人のうちの一人が、
ブレザーのポケットから何かを取り出した。
太陽の光を反射して、きらりと光るそれは、
梨華ちゃんの黒い髪の毛に向かっていた。
「ごっちん行くよ」
そう言ってごっちんを見たときには、ごっちんはすでに歩き始めていた。
- 180 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時34分54秒
ごっちんはスローモーションのように、ゆっくりと歩いて行く。
あたしの声にごっちんはゆっくりとあたしの方を振り向いた。
歩きながらあたしを見るごっちんの顔には、一切の感情が感じられなかった。
ごっちんと目が合う。
髪の毛の間から見える目の奥に、蒼く光る冷たさが見えた。
『背筋が氷る』、その言葉はこのためにあると思った。
ニゲロ
頭の中の声もそう言っている。
あたしは怒るとバカみたいに冷静になれるんだと思う。
ごっちんは逆、怒るとバカみたいに熱くなる。
外見は氷より冷たくなれるのに。
やっぱりあたしたちは似ていない……。
- 181 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時35分57秒
ごっちんがこうなったからには、あたしまでが、
頭の声の言うことを聞くわけにはいかない。
下手をすると2〜3年ベーグルなしの生活が待っている。
「ごっちん」
あたしの呼ぶ声に反応することなく、梨華ちゃんに向かって歩いていく。
「しょうがないなぁ」
ため息交じりのグチを言って後を追う。
おそらくこの場でごっちんを止められるのはあたしくらいだ。
まあ、梨華ちゃんを助けられるなら、誰がどうなろうとかまわないけどね。
- 182 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時37分42秒
梨華ちゃんに近づいていくと、一人の女性があたし達に気づいた。
「ここは立ち入り禁止なんだけど!」
梨華ちゃんの前にいる女性が声を上げる。
その声に、その場にいた6人と、梨華ちゃんが、あたしとごっちんを見る。
「ごっちん、ひとみちゃん!」
梨華ちゃんは、今にも泣きそうな目で、あたしとごっちんの名前を呼んだ。
その声にリーダーらしき女性が反応した。
「あんた、まだ友達いたんだ」
薄く笑いながら、甘い声でそう言った。
あたしが目線を送ると、その女は口の端を吊り上げて笑う。
死ぬほど後悔させてやる。
リーダーらしき女に、無言のメッセージを投げつけ、
あたしも口だけでうすく笑った。
- 183 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時39分19秒
「なに見てんだよ!」
大きな女の声。
見ると梨華ちゃんのそばにいた女性の一人が、ごっちんに正面から近づいている。
犠牲者1号。
彼女は、これから卒業までの学校生活を、
ごっちんから隠れながら、過ごさないといけなくなるはず。
彼女はよゆうの表情でごっちんに近づいていく。
その顔には笑みもある。
この学校で一番力のあるグループだからかもしれない。
近くに強い力があれば自分も強くなった気になれるから。
それとも、ただ止まれないだけかもしれない。
一度振り上げた拳を下ろすのが難しいように。
もしかしたら、彼女もこんな事をしたいわけじゃないかもしれない。
けれども彼女は止まれない。
すでに一人の人間に拳を振り下ろし、傷つけてしまっているから。
- 184 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時40分39秒
けれどもその女性は、ごっちんの前で立ち止まり、
凍りついたように動かなくなった。
たぶんごっちんの目を見たんだと思う。
なんとかに睨まれたなんとかは、ヘビとカエルだけの話じゃない。
人だって動物だから分かるんだろう、下手に動くと大変なことになることが。
ごっちんは、女性が止まると、まるで握手でもするかのように、
ゆっくりと右手を前に出した。
「グッ」
女性の声にならない声。
ごっちんが、固まっていた女性の首を、右手でわしづかみにした。
その次の瞬間、彼女の足は、屋上の地面から離れた。
彼女は、ごっちんの右手一本で、宙に浮いている。
この女性はものすごい着太りする人で、
じつは体重は10kg未満なんだ…きっと…。
目の前の非現実的光景を見ながら、自分にそう言い聞かせる。
持ち上げられた女性は、顔を苦痛にゆがませ、
苦しそうに足をじたばたさせている。
「ごっちん、梨華ちゃんが見てるよ」
ごっちんの右肩に手をおいて言う。
- 185 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時41分59秒
あたしの声に気づいたごっちんは、ゆっくりと顔をあたしの方に向けた。
目が合う。
目が冷たさを放っている。
背中にじっとりとした汗が、浮かんでくるのが分かった。
怖い、逃げたい。
あたしは心の中の自分の声も無視してごっちんを見る。
ヤラレル
ニゲロ
頭の声もそう言っている。
けれどもあたしは無視して、ごっちんの目をじっと見る。
ごっちんの目は氷が溶けるように、だんだんといつもの暖かさが戻ってきた。
ドサッ
ごっちんの手から力が抜け、
宙に浮いていた女性は地面に倒れてせき込んでいる。
ごっちんは、あたしに、へにゃっと笑顔を見せると梨華ちゃんのいるほうを見る。
「梨華ちゃ〜ん、だいじょうぶ〜?」
いつもの声で言いながら、梨華ちゃんの側に走って行く。
ごっちんが梨華ちゃんに近づくと、梨華ちゃんの周りにいた女の子達は、
ごっちんから逃げるように離れた。
犠牲者は一人ですんだみたい。
- 186 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時45分47秒
さっきまでの狂気はどこへいったのか、
ごっちんは心配そうな顔で、梨華ちゃんと話しをしている。
落ち着いたあたしの背中を、冷や汗が流れる。
身震いをしてあたしもごっちんの後を追い、梨華ちゃんの側に行く。
「梨華ちゃん、ごとー心配したんだよ」
泣きそうな顔のごっちん。
「ごっちん、ひとみちゃんも、こんな所に来ちゃだめだよ」
あたしが梨華ちゃんの側に行くと、梨華ちゃんはあたしとごっちんを見ながら言う。
目にはあふれそうなくらいの涙。
「私と仲がいいところ所見られたら、ごっちんまでいじめられちゃうよ。
私一人がガマンすればすむんだから………だから…こないでほしかった…」
言葉の最後のほうは消えそうなほど小さい。
梨華ちゃんは一人で耐えて、すべてを抱えこもうとしていた。
あたしはごっちんの言葉を待った。
あたしもごっちんも、言いたい事は同じだと思ったから。
- 187 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時46分51秒
ごっちんは涙をためた目で梨華ちゃんをじっと見ている。
「ほら、梨華ちゃんに言いたいことあるんでしょ」
あたしは、ごっちんの背中をポンと叩いた。
ごっちんは、あたしを見ながら「うん」と頷くと、梨華ちゃんの両肩を持つ。
「ごとーと、よっすぃ〜は、梨華ちゃんの友達だよ、
だからあたし達のこと頼っていいんだよ」
ごっちんは、少し潤んだ目で、梨華ちゃんの目をまっすぐ見ながら言った。
梨華ちゃんはごっちんの言葉に、涙をぽろぽろとこぼして、何度もうなずいた。
そしてゆっくりとごっちんの肩に顔をうずめた。
ごっちんは、優しい顔で梨華ちゃんの髪をゆっくりとなでている。
ごっちんの不思議なところ。
こういう時にかぎって、ごっちんは大人の顔になる。
梨華ちゃんはごっちんの肩に小さな声で「ありがとう」って何度も言った。
涙で震えた小さな声で。
- 188 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時48分34秒
パチ、パチ、パチ
後ろから間の空いた拍手が聞こえた。
振り返ると一人の女性が手を叩いている。
肩より少し長い髪が目に写った。
「下手なドラマ見てるみたいで面白いね」
3人の真ん中にいる、リーダーらしき女性が笑いながら言う。
それにつられて横の二人も笑う。
最悪。
「よっすぃ〜、ごとーあの人嫌い」
ごっちんがあたしの横に来て言う。
「あの両脇の二人をどうにかすれば黙るよ」
「じゃあ早くしよーよ。
ごとー、梨華ちゃんが泣くところ見るのやだよ」
後ろを見ると、梨華ちゃんがハンカチ片手に、目を赤くさせていた。
あたしもやだ。
考えは一致した。
- 189 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時51分20秒
「じゃあ横に大きいのと、たてに長いの、どっちがいい?」
前にいる三人を見て言う。
「どっちでもいいよ、早くやっつけようよ」
「じゃあ、前にいる人で良い?」
あたしはそう言って背の高い女を見た。
短く黒い髪。
少し縦長の顔、痩せてるのか、えらが張ってるのか分からないくらい。
指の節が見るからに太いのが分かった。
殴りなれている指。
格闘技、たぶん空手だ。
「いいよ、ごとーは強いから」
ごっちんは悪戯っ子のように笑いながら言う。
あたしはごっちんの言葉を聞き一歩前へ出る。
それに続いてごっちんも一歩前に出た。
「ひとみちゃん、ごっちんも何するの?」
後ろから梨華ちゃんの心配そうな声。
「すぐ終わるから心配しないで」
顔だけを後ろに向けて笑顔で言う。
「そうだよ、ごとーとよっすぃ〜は見かけより、ぜんぜん強いから」
ごっちんも顔だけ振り向き、肩越しから梨華ちゃんにピースサイン。
けれども梨華ちゃんは眉をハの字にしてあたし達を見ている。
- 190 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時55分23秒
「あなた達、私に逆らうと、どうなるか分かってるの?」
真ん中にいる女性が腕を組んだまま声を上げた。
怒っている声じゃない。
バカにしたような甘い声。
彼女の茶色く長い髪は、風に乗って揺れている。
「ねえ、ごっちんどうなるの?」
始めてきた学校の、初めて会った人が言うこと。
あたしは知るはずがない。
「んあ〜?ごとーはあの人、知らないから、分かんない」
「ごっちんの学校でしょ?」
「え〜だって知らないもん」
ごっちんは頬をふくらませて言う。
ホントに知らないみたい。
「あの人は、この学校の理事長の娘さんなの、だからみんな……。
それにあの横にいる二人は、空手と柔道で、全国大会に出てるの、
ひとみちゃんもごっちんも、おねがいだから無茶なことしないで」
後から梨華ちゃんの泣きそうな声。
- 191 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時56分39秒
「なるほどね、逆らうといろいろあるわけだ。
じゃあ、あたしはこの学校とは関係ないから、あたし一人でやるよ」
あたしは三人をにらみ、こぶしを握る。
「え〜だめだよ、ごとーもやる!」
一人でやる気だったあたしに、ごっちんは横から文句を言ってくる。
あたしは、ごっちんのことを心配して言っているのに、
ごっちんはやる気十分の様子。
- 192 名前:シグナル 投稿日:2002年07月23日(火)23時59分24秒
「ごっちんはこの学校の生徒なんだよ。
もしかしたら、退学させられるかもしれないよ」
「いーよべつに、ごとーは、友達がいじめられてるの見てるくらいなら、
学校やめたほうがいいもん」
ごっちんは、前を向いたまま、あたしではなく、梨華ちゃんにむけて、
さらっと言ってのけた。
なんか、かっけ〜。
「ごっちん、かっけ〜」
「えへへへ」
ごっちんは頭をかきながら笑っている。
子供みたいな顔。
「よし、じゃあ行こうか、ごっちん」
「…うん」
そう返事したごっちんの目が変わったのを、あたしは見逃さなかった。
そしてあたし達は前の三人を見た。
空は今日も青い。
この空を次に見る時は、たぶん梨華ちゃんも一緒だ。
そう願いあたしは始まりを待った。
- 193 名前:シグナル 投稿日:2002年07月24日(水)00時13分18秒
- 更新終了…。
>>176 名無し娘。様
毎回レスありがとうございます。
作者はうれしいです。
よっすぃ〜のことを、そう言ってくれるとうれしいです。
>>177 皐月様
レスありがとうございます。
感動なんてもったいないお言葉ありがとうございます。
皐月さんの作品読んでます、青の世界好きなんでがんばってください。
あ〜やっと、かっけ〜ごっちん書けた…。
あれ?主役はよっすぃ〜だったような…。(゚Д゚;)
かっけ〜よっすぃ〜は…どこ行った?
- 194 名前:名無し読者。 投稿日:2002年07月24日(水)00時17分04秒
- よっすぃ〜、充分格好いいっす!
でも、次回はますます格好良くなりそう?
- 195 名前:シグナル 投稿日:2002年07月24日(水)00時25分18秒
あと、桃板でこの小説を紹介してくれた方、本当にありがとうございます。
いしよしのシーン、あまりないのにありがとうございます。
紹介してくれた方の顔に、泥を塗るようなことの無いようにがんばります。
いしよしのシーン増やそうかな…。
は〜だめだ、話が無駄に長くなってる気がする…。
は〜ほかの人の作品読んで自信なくした…。
グチ言ってすみません。
原因は、作者がヘイヘイヘイの録画失敗したからです。
なので見てないです、だからもうだめです。
次回更新は来週になると思います。
はぁ〜だめだ。
- 196 名前:なっなし〜 投稿日:2002年07月24日(水)02時25分23秒
- ごっちんとよっすぃ〜カッケ−!
そして健気な梨華ちゃん、かあいいです。
桃板の紹介を見てここにきたのですが、情景の描写やテンポが物凄くツボです。
これからも応援しています。
ちなみにHEY×3、私も見逃しました。ヽ(`Д´)ノ
- 197 名前:オガマー 投稿日:2002年07月24日(水)10時59分05秒
- カッケー!!
そして最後の3行に感動!
- 198 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月24日(水)23時29分30秒
- 『凍れる焔』後藤真希・・・。
よっすぃすら怯えさせる虚無の渦巻く瞳が格好良すぎ♪
こんな後藤を手懐けたよっすぃは一体何者なんでしょうか?(^-^;
そんな二人の出会いもヒジョーに気になる今日この頃でした。
- 199 名前:シグナル 投稿日:2002年07月29日(月)23時44分05秒
「先…行くから」
横からいつもより少し低い声。
あたしが横を向くとごっちんはもう相手に向かって走り始めていた。
「ちょっと、ごっちん!」
あたしの声に止まることなく、ごっちんは太った女性に向かって走っていく。
「はぁ」
あたしはため息をつく。
今日の相手は格闘技経験者。
格闘技素人のごっちんには、少し辛い相手かもしれない。
そう思って、ごっちんにアドバイスでもしようかと思っていたのに、
横を見ても、もうごっちんはいない。
ごっちんの心配するのやめようかな…。
半分あきらめながら、あたしもゆっくりと、背の高い女性に向かって歩き始めた。
- 200 名前:シグナル 投稿日:2002年07月29日(月)23時46分06秒
ごっちんはスピードを上げて、太った女性のほうに走って行く。
太った女性は、両手を肩より少し上のあたり構えている。
柔道の構え。
近づいてきたごっちんを、投げるつもりなんだろう。
ごっちんは、スピードを落とすことなく、女性に向かって走っていく。
そして右のこぶしを引いて見せた。
走って勢いをつけた、力任せの右て手のパンチ?
たぶん、ごっちんを見ていたみんなが、そう思ったはず。
けれども、それを見た太った女性が、少し口の端を上げて笑ったのを、
あたしは見逃さなかった。
ごっちんのパンチを避けて、その手をつかんで投げ技。
頭の中にイメージが浮かぶ。
「ごっちんだめ!」
あたしは無意識のうちに声を出していた。
- 201 名前:シグナル 投稿日:2002年07月29日(月)23時48分09秒
けれどもごっちんが太った女性に投げられることは無かった。
ごっちんは予想外の行動をする。
それを忘れていた。
ごっちんが太った女性を殴ろうとしたのはフェイクで、
ごっちんは太った女性の少し前で、走り幅跳びのように、
屋上の地面を蹴ってジャンプした。
そして空中で両足を女性のほうに向け、ひざを少し曲げた。
ごっちんは、そのまま太った女性めがけて曲げたひざを力いっぱい伸ばし、
胸のあたりを蹴った。
ドス!
体重とスピードの乗った、ドロップキック。
太った女性は、ごっちんの攻撃をまともに受け
緑の屋上の地面を、サッカーボールのように転がっていった。
ごっちんは空中で体をひねり、手と足をついて地面にきれいに着地した。
ビューティフル。
プロレスラーも見とれるような、きれいなドロップキック。
ごっちんはすぐに立ち上がると、転がって行った女性に近づいて行く。
ごっちん、かっけ〜。
あたしがごっちんを見ながら、そんなことを思っていると、
横からこの学校の上履きが、顔に向かって近づいているのが見えた。
- 202 名前:シグナル 投稿日:2002年07月29日(月)23時49分27秒
ブン
あたしの前髪をかすめていくハイキック。
反射的に顔を引いて何とか避けた。
まさに間一髪。
あたしはバックステップで距離をとり、ファイティングポーズをとる。
「ボクシング?
蹴ることのできない格闘技じゃ私は倒せないわよ」
背の高い女性は、空手の構えのまま、バカにしたように笑う。
戦いはもう始まっている。
冷静さを失った人ほど闘いやすい相手はいない。
相手は挑発のつもりみたいだけど、ストリートで生きているあたしに言わせれば、
そんなの挑発なんて言わない。
「防具をつけないと、顔の殴れないルールの格闘技は、格闘技って言うの?
スポーツのほうが正しいんじゃない?」
背の高い女性は、あたしの言葉を聞いて、眉をぴくぴくさせ、あたしをにらんだ。
単純。
怒った相手は、声を上げてあたしの顔めがけて正拳突きをはなってきた。
ホントに単純。
顔を殴れないルールをバカにしたら顔を殴ろうとするなんて…。
- 203 名前:シグナル 投稿日:2002年07月29日(月)23時51分44秒
あたしは相手のパンチを、小さなサイドステップでかわし、
それと同時に小さな素早いパンチを相手の顔めがけて出した。
バチッ
相手の鼻の辺りから、乾いた音がした。
警告ついでのあいさつ。
まあこれでKOなんてことは、思ってない。
けれども相手は女の人、しかも顔を殴られることのないルールの格闘技、
初めて受けた顔の攻撃に少しはショックを受けるはず。
そう思った。
けれどもそれが間違いだった。
背の高い女性は倒れることも、ひるむことなかった。
鼻から流れる血を拭うこともせずに、
あたしの顔に向かって右のハイキックを放ってきた。
「ウソ!」
あたしは両腕を顔に密着させてガードする。
そっか、空手でも顔面への蹴りは反則じゃないんだ。
そう思った次の瞬間、強い衝撃があたしの頭を突き抜けていった。
- 204 名前:シグナル 投稿日:2002年07月29日(月)23時53分10秒
ゴツッ
両腕から伝わる衝撃と、骨がきしむ音が耳に入る。
直撃はまぬがれたが、自分より背の高い人の体重の乗ったハイキックは、
あたしの腕にダメージを与えるのには十分な威力をもっている。
「いった〜」
ハイキックの衝撃に、少しふらつきながら距離をとる。
油断したよ。
相手は殴られることになれてる。
「ねー、空手のルールは、顔面の攻撃は禁止してるんじゃないの?」
腕をさすりながら聞いてみた。
蹴られたところが真っ赤になっている。
「毎日試合やってるわけじゃないの。
それに試合以外では顔を殴っても反則なんてとられないから」
相手は鼻から出る血を手で拭きながら言った。
なるほど、練習で殴られることはあるわけだ。
相手の力を甘く見ていた。
そう思い、気を引き締め、相手をにらんだ時だった。
- 205 名前:シグナル 投稿日:2002年07月29日(月)23時55分11秒
「よっすぃ〜ダサーイ」
ごっちんの気の抜けるような声。
はぁ、せっかく気合入れて、これからだって時に…。
声のするほうに目をやると、倒れている太った女性の前で、
ごっちんが、手でメガホンを作って声をかけてくる。
あたしと目が会うと、ごっちんは満面の笑みを送ってきた。
しかもVサインのおまけつき。
くやしい。
別に競争してたわけじゃないけど…なんか悔しい…。
ごっちんを見てそう思った時、ごっちんの後ろで倒れていた女性が、
動いたのが見えた。
「ごっちん、後ろ!」
あたしがそう叫んだのと同時に、ごっちんは後ろから腰の辺りに手を回された。
そしてそのままごっちんは軽々と持ち上げられ、バックドロップ。
柔道では裏投げって言うんだけど…。
そう思った時には、ごっちんが背中から屋上の地面に落ちていた。
ドスン
背中から地面に落ちたごっちんは、苦しそうにせきこんでいる。
- 206 名前:シグナル 投稿日:2002年07月29日(月)23時57分57秒
早く倒して、助けに行かないとだめかなぁ。
そんなことを考えながら、
あたしは背の高い女性の顔に素早いジャブをいくつも打つ。
相手は、あたしの攻撃にひるむことなく、
ハイキックやミドルキック中心の攻撃をしてくる。
けれどもあたしは、素早いフットワークで相手を中心にして、
円を書くように動きながら、素早いパンチを、相手の顔に向けて撃つ。
あたしのパンチが、相手の顔に当たるたびに血が飛び散る。
次々とあたしのパンチがヒットする。
けれども、相手が倒れることは無い。
このままだと時間がかかる…。
そう思った時、ごっちんの声が屋上に響いた。
- 207 名前:シグナル 投稿日:2002年07月30日(火)00時01分51秒
「いったーい!」
ごっちんの大きな声。
大声を上げたごっちんのほうを見ると、ごっちんが地面に寝転がって、
足をじたばたさせているのが見えた。
太った女性が、ごっちんの右腕を持ち、胸と首の上に伸ばした足で、
ごっちんを完全に押さえ込んでいる。
そして太った女性は右腕を持ったまま後ろに倒れこもうとしているのが見えた。
太った女性は、腕挫十字固を、ごっちんにかけようとしていた。
ごっちんは、技にかかるぎりぎりで、何とかこらえている、そんな感じだった。
ごっちんが危ない。
助けないと腕が折れる。
そう思いごっちんの助けに向かおうとした時、
あたしの前に背の高い女性が立ちふさがった。
「あんたの相手は私よ、たすけに」
バチ
話の途中で、あたしは背の高い女性に、左ジャブを打ち込み話をさえぎった。
「話しする暇があったら、さっさと勝負つけようよ」
そう言ってあたしはジャブを打ち続ける。
けれども背の高い女性はなかなか倒れない。
気持ちだけが焦る。
- 208 名前:シグナル 投稿日:2002年07月30日(火)00時04分25秒
「そんなパンチじゃあたしは倒せないわよ」
血のついた顔で、少し笑いながら言う。
後ろではごっちんが足をじたばたさせているのが見える。
こうなったらダメージ覚悟で、接近戦をいどむしかないか。
顔、殴られるのは痛いけど、ごっちんを助けるためならそんなこと関係ないや。
そう思ってごっちんのほうを見ると、横からごっちんに近づいていく人が見えた。
「梨華ちゃん!?」
さっきまで、ハンカチ片手に泣いていた梨華ちゃんが、
ごっちんと太った女性に向かって走って近づいていく。
「ごっちんを離してー!」
梨華ちゃんは、そう言いながらごっちんの腕を持っている女性の背中を、
ポカポカ叩き始めた。
けれども太った女性は片手で、梨華ちゃんを簡単に突き飛ばした。
「キャッ」
梨華ちゃんは小さく悲鳴を上げて、屋上の地面に倒れこんだ。
- 209 名前:シグナル 投稿日:2002年07月30日(火)00時06分01秒
その様子を見て、あたしの前にいる女性が言った。
「バカじゃないのあの子、さっさと逃げればいいのに。
いまさら助けようとするなんて、ホントにバカね」
背の高い女性はそう言って笑った。
バカジャナイノ
サッサトニゲレバイイノニ
イマサラタスケヨウトスルナンテ
ホントニバカネ
あたしの頭の中を、冷たい言葉が渦巻いていく。
あたしは相手に向かって歩き始めた。
早くでもなく、ゆっくりでもなく、そう、普通に歩き始めた。
- 210 名前:シグナル 投稿日:2002年07月30日(火)00時08分42秒
背の高い女性は、少し驚いたような顔をした後、
すぐにあたしの顔を狙い、右足でハイキックをはなってきた。
顔へ近づいてくる足。
今のあたしの目には、スローモーションよりもゆっくりに見える。
あたしは、顔に近づいてきた相手の足のスネを狙って、右フックを撃ち抜いた。
ゴツッ
背の高い女性の足は、殴った勢いで、もとあった場所へ戻った。
表情はまったく変わらないけど、右足を少し地面から浮かせ、
足をかばっているのが分かった。
あたしは止まることなく進んでいく。
次に相手は顔に向けて正拳突きを打ってきた。
あせることなく左のショートフックを相手の手首のあたりに合わせた。
パチンッ
相手の右手が跳ね上がり、あたしの髪を軽くなでて行った。
その後、背の高い女性の顔が、恐怖の色に染まっていたのは、
たぶんあたしの見間違いじゃないはず。
- 211 名前:シグナル 投稿日:2002年07月30日(火)00時14分47秒
そのまま背の高い女性に近づき、至近距離から左ジャブを顔に一発。
バチッ
パンチの勢いであたしの顔に、相手の血がまとわりつく。
相手は鼻を押さえて、少し俯いたような姿勢になった。
少し低くなった女性のあごへ、ノーモーションで素早くアッパーを当てる。
ガキッ
歯と歯があたる音。
あたしの顔に血が飛び散ってきた。
女性はひざから崩れ落ちていく。
あたしの前をおちて行く顔。
- 212 名前:シグナル 投稿日:2002年07月30日(火)00時15分48秒
あたしは両手で落ちていく女性の襟をつかんだ。
女性の目は空を泳いでいる、意識と一緒に。
右手で女性の顔を殴る。
一発、二発。
二発目で女性は気がついた。
「もう一回言ってみなよ。
もう一回梨華ちゃんのことバカにしてみなよ」
女性の顔に向かって冷たく言う。
「あなたに独りで耐える辛さが分かる?
梨華ちゃんは、いつもいじめられている人からごっちんを助けようとしたのよ。
それがどれだけ勇気がいることか分かる?」
女性はあたしを見ておびえている。
けれどもそんなこと関係ない、友達をバカにするやつは許さない。
「どうする?続ける?続けるならあたしは止まらないからね」
女性をにらみなが言う。
あたしと女性の間には、冷たい空気が漂っている。
その空気に耐えかねたのか、相手は弱々しく首を横に振った。
- 213 名前:シグナル 投稿日:2002年07月30日(火)00時17分04秒
襟から手を離す。
女性はその場にゆっくりと倒れこんだ。
上から女性を見下ろすあたし。
女性の顔は鼻から流れた血で赤くなっていた。
あっ!ごっちん忘れてる。
そう思い出したのと同時に、頭の中が暖かくなるのが分かった。
ごっちんのことを思い出したあたしは、急いでごっちんのいるほうを見た。
ごっちんは、足をばたばたさせ、腕だけでなんとか、
太った女性の体重を支えているように見えた。
助けに行こうと、一歩踏み出そうとした瞬間だった。
さっきまでじたばたしていたごっちんの足が、ピクリとも動かなくなった。
うそ。
そう思った時だった、ごっちんに技をかけていた太った女性が、立ち上がった。
- 214 名前:シグナル 投稿日:2002年07月30日(火)00時19分09秒
違う。
正しく言うと、太った女性がごっちんの腕を持ったまま、
動くことなくごっちんの上に立ち上がったように見えた。
「は!?」
たぶん屋上で見ていた人みんながそう思ったはず。
昔テレビで見た、キョンシーが棺桶から起き上がるシーンみたい。
けれども立ち上がったはずの女性は、ごっちんの上で止まることなく、
ごっちんの腕を持ったまま、反対側の地面に向けて、顔から倒れていった。
ゴチ
屋上の地面に響く鈍い音。
太った女性は、まぬけにお尻を突き出して動かなくなった。
何が起こったのか、さっぱりわからない。
たぶんごっちんが、片手で太った女性を持ち上げて、力任せに地面に叩きつけた、
そんな感じだろう。
たぶん…。
確実なのは、ごっちんのほうも終わったって事。
それだけ。
- 215 名前:シグナル 投稿日:2002年07月30日(火)00時21分09秒
ごっちんは黙ったまま立ち上がり、辺りを見回している。
あ〜あ、目がすわってるよ。
ごっちんの腕が折れるよりも、キレルほうが早かったみたい。
ごっちんは、辺りに人がいないのが分かったのか、
腕を押さえると、半べそになり、「いた〜い」なんて叫びながら、
梨華ちゃんのいるほうに走って行った。
あたしは無視なの?
一緒に戦ったあたしは二の次で、
ごっちんは梨華ちゃんに腕をさすってもらっている。
その顔は、幼い子供そのもの。
ホントにごっちんは不思議だ。
大人の顔や子供の顔。
いろいろな表情を持っている。
ホントに不思議。
- 216 名前:シグナル 投稿日:2002年07月30日(火)00時24分09秒
あたしは屋上を見回した。
風が頬をくすぐっていく、空はホントに青い。
屋上の緑の地面に、赤い血だまりを作り、倒れている人が二人。
その向こうにごっちんと梨華ちゃんがいる。
さっきまでいた数人の女子生徒は、影さえ残していない。
ただ、フェンスに弱々しくもたれかかっている女性一人を残して。
あたしがその女性に近づくと、その女性はあたしを見て、小さく震え始めた。
逃げられないように、女性の顔の両側に手をつく。
カシャン
「ヒッ」
女性は小さく悲鳴を上げた。
顔は白一色。
- 217 名前:シグナル 投稿日:2002年07月30日(火)00時28分53秒
「仲良くしろとは言わない。
ただ、仲良くする気が無いなら、梨華ちゃんには近づかないでもらえる?」
女性の目をじっと見る。
目までが小さく震えていた。
涙は出ていない。
女性はあたしの目を見たまま、何度も顔を縦に振った。
「それとリトルガーデンって分かる?」
女性はうなずく。
「あたし、あそこでキングやってるの。
もし友達が退学になるようなことがあったら、本気出すよ」
そう言ってにらむ。
白かった顔がまた白くなる。
「理事長の娘の力は、この学校の中だけって事覚えといたほうが良いよ」
そう言った後、あたしは笑顔を作る。
大きく一度深呼吸をする。
「分かった?」
「は、はい」
「じゃあ握手」
コチコチになっている女性の手をとり、握手をする。
「そうだ、あなた早く友達作ったほうが良いよ」
笑顔でそう言ってあたしは振り返った。
友達のいるほうへ。
- 218 名前:シグナル 投稿日:2002年07月30日(火)00時45分47秒
- 押入れから、虫の羽音が聞こえる今日この頃。
更新終了です。
<<194名無し読者。様
今回のよっすぃ〜はどうだったでしょうか。
なんとか、かっけーよっすぃ〜書けたと思うのですが。
<<196ななっし〜様
桃板からわざわざありがとうございます。
情景描写やテンポがおかしくなり始めたら、遠慮なく言ってください。
作者は迷走しながら書いてるので、ご指摘お願いします。
<<197オガマー様
作者は感動的な情景描写なんかできないので、
そう言ってもらえるとうれしいです。
<<198名無し娘。様
<『凍れる焔』後藤真希・・・。
いいですね。(w
いただきです。
ごっちんとよっっすぃ〜の出会いは、考えてあります。
ただいつ載せようか迷ってます。
長く続くならもう少し後、この話で終わりなら、
終わった後で載せます。
- 219 名前:シグナル 投稿日:2002年07月30日(火)00時47分16秒
次回更新は木曜になります。
では、あちゃちゃやばばじんじん。(w
- 220 名前:娘。 投稿日:2002年07月30日(火)00時58分46秒
- ヨッスィーカコイイ!
- 221 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月30日(火)03時35分56秒
- この話で終わりならなんて寂しすぎです
長 編 キ ボ ン ヌ
- 222 名前:とみこ 投稿日:2002年07月31日(水)14時47分29秒
初めまして。
一時間ほど前からこの作品を読み始めました。
ひとこと、あなたは神様です。(まじででじまで
読んでるうちに、小説に吸い込まれそうでした。
場の雰囲気や人の感情を表す文才がすごいです。感動です。
私も同じ小説を書いているものですが、足元にも及びません。
すごいです。これからも読ませていただきます。
本当に感動しました!!!
- 223 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月01日(木)15時43分51秒
- 後藤の卒業・・・
俺にとって、この作品が飼育最後の小説になりそうです。
がんばってください。
- 224 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)19時48分44秒
ごっちんと梨華ちゃんは、二人で楽しそうに話しをしている。
こっちを見てもいない。
あたしが、ごっちんや梨華ちゃんのことを思って、フォローしているのに、
二人は気にもしていない様子。
まちがってるよね、絶対…
ため息混じりに、ごっちんと梨華ちゃんのいるほうに、向かって歩いて行く。
ごっちんがあたしに気づいて手を振る。
「よっすぃ〜お疲れ〜」
幼い子供のように、へにゃっとした笑顔。
いつもこの笑顔でやられる。
文句のひとつでも言おうと思っていたけど、あの笑顔を見ると、
あたしは何も言えなくなってしまう。
「はぁ」
文句の代わりに出たのはため息だけ。
- 225 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)19時50分44秒
「ごっちん、腕だいじょうぶだった?」
「んあ〜、まだ痛いけど動くから大丈夫」
ごっちんは右腕を動かしながら言う。
あたしは、ごっちんの横にいる梨華ちゃんを見た。
目が合う。
あたしと目が合うと、梨華ちゃんは体をビクッと震わせた。
「梨華ちゃん、どうしたの?」
梨華ちゃんに近づきながら聞く。
けれども答えは返ってこない。
その代わりに梨華ちゃんは、あたしから逃げるように後ずさりを始めた。
カシャン
梨華ちゃんは、後ろの金網にぶつかっても、あたしから離れようとしている。
「梨華ちゃん?」
あたしが手を伸ばすと、梨華ちゃんは手で頭を抱え込み、
その場にしゃがんでしまった。
怖いお化けを見た子供のように。
- 226 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)19時52分00秒
「だいじょうぶ、梨華ちゃん?」
梨華ちゃんの異変に気づいたごっちんが、梨華ちゃんの側にかけよった。
梨華ちゃんは、かけよって来たごっちんに、助けを求めるように抱きついた。
しゃがんだまま、ごっちんの首に手を回し、そのまま肩に顔をうずめた。
あたしはその場に立ち尽くすしかなかった。
「梨華ちゃんどうしたの?よっすぃ〜だよ?」
ごっちんの声に、梨華ちゃんはゆっくりと顔を上げ、あたしを見た。
どこかで見たことのある目。
昔…どこかで…。
「…こわい…」
梨華ちゃんはそう言って、またごっちんの肩に顔をうずめた。
梨華ちゃんが言ったのはその一言だけだった。
- 227 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)19時53分44秒
『こわい』
あたし…こわいんだ…。
梨華ちゃんのおびえた目が、あたしを見つめる。
そっか、梨華ちゃんの目は、小学生の時に助けた、
いじめられていた女の子と同じ目なんだ。
また、だめなのかな…?
自分に聞きながら、もうすぐ梅雨なのに、バカみたいに照り付ける太陽をにらむ。
「よっすぃ〜、顔に血がついてるよ」
ごっちんの心配そうな声。
その声に中指で頬の辺りを触ってみる。
ぬるりとした感触が指と頬の間にあった。
中指には、赤い血がついていた。
梨華ちゃん怖がるのも無理ないか…。
あたしから少し離れた場所で、
ごっちんがブレザーのポケットからハンカチを出した。
梨華ちゃんはまだごっちんの腕の中。
- 228 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)19時56分24秒
「よっすぃ〜、ハンカチ」
右腕で梨華ちゃんを抱きしめたまま、ごっちんはハンカチを、
あたしにわたそうとしてくれた。
しゃがんだままおびえている梨華ちゃん。
その梨華ちゃんを抱きしめている、少しさびしそうな顔のごっちん。
その時、あたしと二人の間に、壁があるように思えた。
「いいよ、ハンカチよごれるから」
「でも……」
「ありがと、ごっちん。
でもあたし行くから」
そう言ってごっちんに笑顔を見せた。
ねぇごっちん、あたしうまく笑えてる?
「よっすぃ〜…」
ごっちんは心配そうに、小さい声で言った。
作り笑いは大失敗したみたい。
- 229 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)19時59分11秒
「梨華ちゃん、あたし帰るね」
そう言っても、梨華ちゃんは、ごっちんに抱きついたまま。
「これからはごっちんがいてくれるから、何かあったらごっちんに相談するんだよ」
わざと明るく言う。
この時から、あたしは泣いていたのかもしれない。
けれどもあたしは話を続けた。
話を止めると、涙で言葉が流されてしまうと思ったから。
「でも、ごっちんに頼ってばっかりもだめだからね。
分からないことや嫌なことは、自分が動かないと、何も変わらないよ」
あたしの言葉が梨華ちゃんに届いたかは分からない。
けれども、これから学校が、梨華ちゃんにとって、
嫌な場所でなくなるならそれでいい。
あたしの役目はこれで終わり。
梨華ちゃんなら、友達もすぐできると思うし、
何よりごっちんがいるからだいじょうぶ。
そーだよ、最近がうまく行きすぎていただけ、
ごっちんや飯田さんと、友達になれた事だって、
あたしにとってはすごい事なんだから、うまく行かない事だってあるよね。
だから…。
だからさ…。
だから…泣かないでよ…吉澤ひとみ。
- 230 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)20時00分27秒
バイバイ梨華ちゃん。
ごっちんに、抱きついた梨華ちゃんを見るのは辛かった。
だから、緑の地面と、自分の靴を見ながら別れを言った。
「じゃあねごっちん、制服は洗って返すから」
あたしは目を伏せたまま、ごっちんの返事を待たずにその場を離れた。
校内への扉のドアノブに、手をかける。
一人で開けるには少し重い扉。
その扉を開けたところで後ろから声がした。
「よっずぃ〜!」
ごっちんの、涙で震えた声。
どうして…?
怖がられているのはあたしなのに…。
梨華ちゃんと会えなくなるのはあたしなのに…。
どうしてごっちんも泣いているの?
- 231 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)20時03分09秒
「よっずぃ〜!
梨華ぢゃんは、よっずぃ〜のごと、ぎらいになんか、なっでないからねー!」
なんで…。
なんでそんなこというの?
涙が止まらなくなるじゃない…。
「りがちゃんも、よっずぃ〜も、ごとーのどもだちだがらねー!」
ごっちんの大きな涙声。
バカ、ごっちんのバカ。
あたしは、ごっちんが友達でいてくれれば、それでじゅうぶんだなんだから。
だからね…。
ありがとう…
「ありがとね、ごっちん」
あたしは振りむくことなく、自分に聞こえるくらいの声でそう言って、
屋上の扉を閉めた。
扉は、あたしの背中に冷たい音をあびせかけた。
今のあたしの顔は、冷たい血と温かい涙でいっぱいになっている。
- 232 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)20時06分04秒
屋上から、学校の玄関へどうやって行ったかは覚えていない。
気がついたら、玄関のガラスドアに映っている、自分の顔を見ていた。
あたしの顔には、自分以外の血が、所々爪あとのように尾を引いている。
血のついた顔。
こんな顔、誰が見ても怖いよね。
梨華ちゃんが怖がるのも無理ないや。
肩を落としてため息をつく。
何度見ても、あたしの顔には、血がまとわりついている。
暴力。
あたしがした事は間違いなくそれだと思えた。
梨華ちゃんを助けるためかもしれない。
けれども、あたしの血のついた顔からは、暴力以外何も見えない。
話し合いで解決できたかもしれない。
けれども、あたしはいじめの理由も聞かずに、力で払いのけた。
あたしは小学生の頃から、何も成長していないのかもしれない。
あのころから、何も変わっていない子供のままなんだ。
- 233 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)20時06分44秒
「はぁ」
もう一度ため息をついて歩き始める。
外に出れば優しい風が、あたしを包んでくれて、
嫌なことを忘れさせてくれるかもしれない。
そんなこと考えて外へと向かった。
やっぱりあたしはまだ子供だ。
- 234 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)20時08分35秒
外に出ても優しい風なんか吹くことは無かった。
少し曇り始めた空からは、風すら吹いていない。
校舎の横のグラウンドでは、五時間目の授業が始まっていた。
グラウンドに集まっている生徒達。
あたしはグラウンドの横にある水道の蛇口をひねった。
蛇口から出る水に頭を突っ込む。
水を頭からかぶり、涙と一緒に、顔についた血を洗い流す。
目を開けると、水で薄まっている血が、排水溝へと吸い込まれていくのが見える。
梨華ちゃんの目が、流れている水に、映ったような気がした。
顔を上げ、ハンカチで顔を拭いていると、
横を体操服姿の二人の女の人が通りかかった。
「ねぇ、あたしの顔怖い?」
びしょぬれの顔で、力なくあたしは聞いた。
二人は顔をあわせた後、首を横に振った。
「ありがとう」
そう一言いって、あたしは学校を後にした。
- 235 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)20時09分59秒
学校近くの駅で、キップを買うため、券売機に並ぶ。
出てきたおつりと一緒に、キップを手に取った時、
梨華ちゃんに言ったことを思い出した。
『分からないことや嫌なことは、自分が動かないと、何も変わらないよ』
あたしは、おつりを券売機に入れ、小人のボタンを押してキップを買った。
あたしも少し変わってみようと思った。
平日の昼間の駅は、朝がうそみたいに空いていた。
自動改札にキップを入れる。
カシャン
道は開かれた。
『あなたは子供よ』
機械もそういった。
鼻で少し笑って通る。
キップを取ってホームへ向かおうと思った時だった。
- 236 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)20時10分43秒
「すみません」
少し歩いたところで後ろから呼び止められた。
ピシッとした、真新しい駅員の制服を着た若い男性。
ピッカピッかの一年生。
そんな感じ。
「お客様、正しい料金を払っていただけますか?」
礼儀正しい口調で言う。
けれどもあたしが逃げないように、ホームのあるほうに、
立っている。
「どうして分かったの?」
あたしの質問に、駅員が説明してくれた。
自動改札口に子供用のキップを通すと、自動改札についているランプが、
点灯するらしい。
自動改札の隅に駅員がいるのは、子供か大人かを見分けるためにいるらしい。
機械は子供、大人はあたしを、大人と判断した。
機械のほうが正しいかもしれない。
そう思った。
- 237 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)20時11分55秒
その場は、もう一枚買っておいたキップをわたして事はすんだ。
家に帰って、何をしたかなんて覚えていない。
ただ、他校の制服を着て家に帰ったから、
母さんがあたしをにらんだのは覚えている。
けれどそれ以外は何も覚えていない。
なぜならその日は何もしなかったから。
- 238 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)20時13分44秒
…更…新・・・終…了・・・。
今日の更新内容なんかおかしい、なんでだろ?
なんかおかしい…。
皆様レスありがとうございます。
これだけが今の作者の心の支えです。
>>220娘。様
かっけーですか。
ありがとうございます。
うれしいです。
…はぁ。
>>221名無し読者様
長く書こうと思っていたんですが…。
ねぇ…。
>>222とみこ様
紙だなんてとんでもないです。
とみこさんの作品は、ずっとROMっていたので、レスもらえてうれしいです。
線香花火、終わった時にレス書こうかと悩んだのですが、
へたれなのでできなかったんです。
なので、お疲れ様でした。
とみこさんの書く、市井ちゃん好きなんです。
作者は、某レストラン小説を、書いていた方のさやまりと、
とみこさんのさやまりが大好きなんです。
>>223名無し読者様
あ…えっと…。
分かりますその気持ち。
作者も……。
けれども最後がこんな作品でいいのでしょうか…?
- 239 名前:シグナル 投稿日:2002年08月01日(木)20時16分38秒
次回更新は、作者の心が癒された時…です。(何書いてんだか…。
2,3日中にできればと思っています。
とりあえず次でおしまいの予定です。
これ貼ってたらなんか辛くなってきた。
今日貼ったのは、31日の昼に書き終えて、
その日の夜、例のことを知ってしまいました。
よっすぃ〜の立場を、ごちーんに変えて書き直し、ひそかな抵抗を、
しようかとも思ったのですが、今日は何もする気になれませんでした。
これ書いてて、ごちーんが作者の、娘。ランキング、急上昇だったのに、
これです…。
なのでしばらく、情報化社会から隔離された山にでも引きこもろうと思います。
詳しいことは次の更新で。
長々すみません、作者、もう分け分かりません。
う〜ん、やっぱり今日の内容なんかおかしい…。
- 240 名前:とみこ 投稿日:2002年08月01日(木)21時24分18秒
- お疲れ様です。
なんてゆーか・・・やっぱり文の才能をしんしんと感じます。
私は「あ、これ書いたら無駄かな・・・」っていうのを書かないんですけど、
作者様は気持ちを全部書いてて、それが決して無駄じゃなくて、
すごいいいです。私も見習いたいです、ホントにでじまで(何
お互い頑張りましょう!
ps 線香花火読んでくれたんですか?嬉しいです!!!
今は青の方で新作やってます。シグナル様を目指してがんばってます!
- 241 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月02日(金)01時55分41秒
- わかるなぁ
自分の胸にもなんだか穴が孔いたみたいで・・・気持ちの行き場が無いみたい
よしこの孔を埋めるのも、やっぱりごっちんなのかな
立ち直れる事を祈ります
- 242 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年08月02日(金)07時07分54秒
- 一気に読ませて頂きました
クールな吉澤
あまりいい言葉じゃないけどアウトローの男の美学
カッコイイですよね
徐々に込み上げてくる一抹の寂しさと悔しさ
今は何も手につかない状態です
- 243 名前:EAGLE@(0^〜^)つ◎ ベーグルぅ 投稿日:2002年08月04日(日)22時34分10秒
- >シグナルs
ちゃーっす。おはこんばんにちはぁ。久しぶりにseekに来たっす。
んで今、全部読みましたよ。ええですねぇ、これ。オレのツボですよ。
オレ、こーゆーの好き。このよっすぃ〜はかっけぇ〜。
でも時々かいま見れるかっけく無いよっすぃ〜も好きっす。
むしろ、かっけくない方が好きかも(w
オレじゃあこんなに文才が無いッスから同じように書こうとしてもボロボロ(w
シグナルsかっけぇっす。ネタも細かいネタがあるし、出来る事なら続きが読みたいと思ったッス。
今日はこんぐらいで。
あちゃちゃばばじじ。←スペルあってる?
- 244 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時05分11秒
「あの技は、ごとーが弟に試した時はよけられちゃったから、
フェイントいれてみたんだ。」
あの日からなんとなくすごして、今日はあれから最初の金曜日。
いつものようにリトルガーデンのベンチで、ごっちんと飯田さんと一緒にいる。
ごっちんは眠ることなく、あたしの横に座ってから、
間を空けることなく話し続けている。
たぶん、あたしに梨華ちゃんのことを聞かれないように。
あたしの座っているベンチの横では、飯田さんがお気に入りの座椅子に座り、
あたしの知らない誰かを描いている。
優しい笑顔の女性、天使みたい。
「あの子さぁ、どうなったの?」
あたしの視線に気づいたのか、飯田さんはこちらを見ることなく、
絵を描きながら言った。
- 245 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時06分27秒
「梨華ちゃんの事ですか?」
「そう、石川さん」
飯田さんは鉛筆を止めない。
「解決しましたよ、ちょっと暴力的になりましたけど、
もういじめられることはないですよ」
「そっかぁ、うまくいったんだ」
「…はい」
飯田さんはあいかわらず、あたしを見ることなく手を動かしている。
横ではごっちんが黙ったまま、悲しそうな目でこっちを見ていた。
そんな目しないでごっちん。
軽く笑いながら、目で優しく言う。
「じゃあさ、どうして吉澤はそんな悲しそうな顔しているの?」
飯田さんの鉛筆の動きが止まった。
けれどあたしの顔は見ていない。
まっすぐに公園の真ん中にある噴水を見ている。
「見なくても分かるんですね」
「吉澤より少し長く生きているからね」
飯田さんはまだあたしを見ようとしない。
- 246 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時07分48秒
「だけど、あの子がいじめのこと、よく吉澤に話したわね」
飯田さんはようやくあたしを見た。
「まぁ、あたしも考えましたから」
軽く笑って、言って見せた。
たぶんへんな笑顔。
「かおりはね、もう少し時間が、かかると思ってたんだぁ」
「最初は、なかなか話してくれませんでしたよ。
だけど、あたしも人に話したくないこと、言ったら話してくれました」
あたしがそういうと、飯田さんは目をパチパチさせた後、言った。
「吉澤って、見かけによらず、えげつない事するのね」
えげつないって…。
「そ、そうですか?」
「気づいてないの?」
飯田さんは、少し首をかしげながら続ける。
「例えばさぁ、吉澤はどうしても言いたくないことがあるの、分かる?」
「それくらい分かりますよ」
「もしかおりが教えてって言っても、言わないでしょ?」
「まぁ、そうですね」
飯田さんは、まっすぐにあたしを見ている。
だいじょうぶ、今のところは何とか会話になっている。
- 247 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時09分20秒
「そこでね、かおりが、実はかおりのお父さんは、すごい酒乱で、多額の借金作って、
女と一緒に出て行って、そのことがショックで母親が病気になって、
入院費を稼ぐために、昼は風俗、夜はキャバクラで働いてる、っていったらどうする?」
飯田さんは、息つぎなしに言った。
「びっくりします」
飯田さんの質問にそう答えたあたし。
けれども、その答えに飯田さんはため息をつき、
やれやれ、といった表情で首を振っている。
今日はいつもと逆みたい。
「ねぇ、あたし変なこと言った?」
横にいるごっちんを肘でつつき、小さな声で聞いてみた。
「ん〜ん、ごとーもびっくりするもん」
小声で話すあたしとごっちんにはおかまいなしに、飯田さんは続ける。
- 248 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時11分10秒
「そこで、かおりが言いたくないこといったんだから、
吉澤も言ってよ、って言ったらどうする?」
「え〜そんなのひきょうじゃないですか、
そんな事いわれたら、あたしも言わないといけないじゃないですか〜」
のんきにそう言ってあたしは気づいた。
梨華ちゃんに同じことしてる。
もしかして梨華ちゃんは言いたくなかったのに、
あたしが無理やり言わせてしまったのかもしれない。
あたしは肩を落として、ベンチの背もたれによりかかった。
「飯田さ〜ん、あたし梨華ちゃんに、ひどい事したんですか?」
飯田さんを見ながら、情けない声で言った。
「そんなことないわよ」
飯田さんは笑顔でそう言う。
「吉澤は、石川さんに言えって言ったんじゃないでしょ」
「まぁ、そうですけど」
「それにさぁ、それを聞いて、石川さんの力になってあげたんだから」
そういうと飯田さんは、スケッチブックを開き、新しいページに絵を書き始めた。
- 249 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時12分25秒
「かおりはねー、吉澤のこと頼りにしてるんだよ〜」
そういった飯田さんの顔は優しい。
「後藤もだけど、吉澤は自分よりも、人のことを先に心配するじゃない、
そういうのさ、かおり好きだよ」
飯田さんは絵を描きながら言う。
飯田さんの鉛筆が止まることはない。
心地よい音をさせて紙の上を滑って行く。
飯田さんの手は、紙でできた氷のリンクの上を滑る、スケート選手だ。
- 250 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時16分33秒
あたしはごっちんを見て聞く。
「梨華ちゃんさ…元気?」
ごっちんの顔が暗くなる。
「うん…元気」
その後、少し間が空く。
飯田さんの鉛筆の音と、車の音。
ナンパ待ちに集まってきた、コギャルの話し声が、夜の始まりを待つ公園に響く。
「梨華ちゃんさ、あたしのことなにか言ってた?」
ごっちんに聞いてみた。
ごっちんは、俯いたまま首を大きく横に振る。
「そっか」
そう言って、ビルと空の間をじっと見る。
それからしばらく、あたしもごっちんも話をしなかった。
公園の横の道路を、パトカーがけたたましい音を立てて通り過ぎていく。
公園の周りに立つビルには、さまざまな看板が張り付いている。
今売り出し中の人気アイドル歌手、松浦亜弥が、笑顔であたしを見ている。
彼女のように笑えたらいいのになぁ。
そう思って空を見た。
空は、ちょうどあたしの上で、青とオレンジに別れていた。
- 251 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時18分24秒
「ごっちんさ〜、夕ご飯賭けて勝負しない?」
ベンチに体をあずけて、自分の真上にある、暗くなりかけた空を見て言う。
「ん〜、何の勝負」
「今日、ここに梨華ちゃんがくるかどうか」
そう言ってごっちんを見ると、ごっちんはきょとんとした顔であたしを見ていた。
「ごっちんはどう思う?」
「ごとーは…来ないと思う」
意外な答え。
あたしは、てっきり「来る」って言うと思ったのに。
「よっすぃ〜はどう思うの?」
「あたしも…来ないと思う」
たぶんホントの気持ち。
あたしは小学校のころから変わってないから。
梨華ちゃんのあの時の目は、小学生のころ助けた女の子と、同じ目をしていたから。
だから来ないと思う。
来ないと思ったのはホントだよ…たぶん。
- 252 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時19分26秒
「よっすぃ〜は、どうして来ないと思うの?」
ごっちんが少し悲しそうな声で言った。
「ん〜なんとなくかな、ごっちんは?」
「ごとーは、今日学校で梨華ちゃん誘ったんだ。
だけど大事な用があるって…ことわられた」
公園の地面を見ているごっちんの顔は、今のあたしより暗い。
「そっか…来ないんだ」
どうしてごっちんが悲しいの?
「うん…来ない」
ごっちんは学校で、梨華ちゃんとお話しできるんでしょ。
「じゃあ賭けにならないね」
だからそんなに悲しい顔しないで。
「うん…できないね」
お願いだからごっちんは笑ってよ。
それから、あたしもごっちんもどこかうわの空。
二人の間に会話はない。
重い空気。
- 253 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時21分06秒
「飯田さんはどう思います?」
あたしは重い空気を払うように、明るい声で言った。
「かおりも賭けていいの?」
飯田さんは、こちらを見ることなく、絵を描きながらゆっくりと言う。
「いいですけど、「来る」って答えしか残ってないですよ?」
「いいよ〜、かおりは来ると思ってるから」
飯田さんは手を止めて、あたしの顔を見ながら、ゆっくりと答えた。
そのあと、飯田さんは公園の中央にある、噴水のほうを見た、
そして、なにかを想いついたのか、飯田さんは白のトートバックから、
64色の色鉛筆を取り出し、絵に色をつけ始めた。
「どうして来ると思うんですか?」
飯田さんは鉛色の鉛筆と、茶色の色鉛筆を起用に片手で持ち、
絵に色をつけていく。
「かおりには見えるの」
絵に色をつけながら、笑顔で答えた。
- 254 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時22分11秒
はじまっちゃった。
さっきまでうまく話せていたのに……。
「かおりには見えるんだ」
飯田さんは、もう一度言ってあたしを見た。
「髪の毛を茶色にした石川さんが、携帯電話の袋を持って、
おろおろしているのが見えるの」
「なんですかそれ?」
あたしが飯田さんに聞くと、飯田さんは、フフッと笑い、
また絵を描き始めた。
なんだろう、さっぱり分からない。
今日は、飯田さんとうまく話せていたと思っていたのに、
やっぱり長い間は話せない…。
あたしはベンチにもたれかかり、空を見た。
暗くなり始めた空に、月が一人ぼっちで浮いている。
あの月よりはいい夜だと思う。
だって、あたしは一人ぼっちじゃないからね。
でもなんでだろう?
一人でいる時より、ずっとさびしいのは…。
- 255 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時24分00秒
「あー!梨華ちゃんだー!」
ごっちんの大きな声。
ごっちんを見ると、さっきまでベンチにうなだれて、元気のなかったごっちんが、
ベンチから立ち上がり、目を大きく見開いて、
公園の中央にある噴水のほうを見ていた。
あたしは、ごっちんの視線を追うようにして、噴水のほうを見た。
噴水の向こう側に、髪の毛を茶色にした、学生服姿の梨華ちゃんが、
携帯電話会社の袋を持って、
近くを通る人達を気にしながら、おろおろしているのが見えた。
心臓が大きく跳ねた。
胸の辺りにある血液が、一気に頭に流れるような感覚。
あたしは視線を自分の足元に落とした。
よかった。
何がよかったのかなんて分からない。
あたしに会いに来てくれた、なんて思ってもいない。
ごっちんに用があってきたのかもしれない。
ただ、梨華ちゃんがこの公園に来てくれたことがうれしかった。
梨華ちゃんが「こわい」って言った、あたしがいるこの公園に。
- 256 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時25分46秒
「梨華ちゃーん!」
ごっちんの大きな声と、走って行く足音。
顔を上げると、ごっちんが手を振りながら、梨華ちゃんに近づいて行くのが見える。
ごっちんに気づいた梨華ちゃんも、ごっちんに近づいて行き、二人で話し始める。
「梨華ちゃんがいるの知ってたんですか?」
飯田さんを見ながら言った。
「気づいたのは、賭けに乗ってからよ?」
そう言って飯田さんは、描いていた絵をあたしのほうに向けた。
茶色い髪の女性が笑っている。
4日ぶりに見た彼女の笑顔は、笑顔を初めて見せた朝のように、光って見えた。
- 257 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時27分27秒
「あ〜あ、飯田さんには勝てないや」
ベンチに座ったまま、笑顔で伸びをして言った。
「吉澤より、少し長く生きてるからね」
笑顔でそういう飯田さん。
「それ、かっけーですね、使ってもいいですか?」
「いいけど誰に使うの?
年下の人にしか使えないよ」
「あ、そっか、じゃあ使えないですね」
「もう、吉澤ったらしっかりしてよね」
「飯田さんより、生きてる時間短いんですから、許してくださいよ」
のんびりとした会話。
あたしの心の中は、ちょっとしたお祭り騒ぎなのに。
二人で笑っていると、あたしの前に、近づいてくる人がいるのが分かった。
- 258 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時28分43秒
あたしの前には、俯きかげんの梨華ちゃんが、一人立っている。
ごっちんは飯田さんの横にしゃがんで、飯田さんの絵を見ている。
梨華ちゃんはあたしの前に立ったまま何も話さない。
横からごっちんと飯田さんの笑い声が聞こえる。
「なにかよう?」
黙ったままの梨華ちゃんに言う。
冷たく言ったわけじゃないのに、自分で言った言葉が、
少し冷たいように聞こえた。
「あ、あの…」
梨華ちゃんは、何かを言いたそうに口を開けるが、言葉が出てこない。
飯田さんとごっちんも、黙ってあたしの横から梨華ちゃんを見ている。
梨華ちゃんはまだ黙ったまま。
噴水の向こうから、シンガー達がギターのチューニングをする音が聞こえ始めた。
公園のベンチでは、ナンパ待ちの女の子が携帯片手に、
隣に座る女の子とおしゃべりをしている。
- 259 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時31分01秒
「今日は大事な用があったんじゃないの?」
あたしは、ごっちんの言っていたことを思い出し、
黙ったままの梨華ちゃんに言った。
「うん、だからここに来たの」
梨華ちゃんはそう言うと、あたしのほうを見て続ける。
「私、今日はひとみちゃんに謝りに来たの、助けてもらったのに、
あんなひどいこと言っちゃって…」
梨華ちゃんはあたしをじっと見ながら言う。
「立ってないでさ、座りなよ」
座っているあたしの隣を、手で軽く叩きながら言った。
「いいの?
あたしひとみちゃんにひどいこと言っちゃって、ひとみちゃんのこと…」
「いいよ、あたしはそんなこと気にしないタイプだから」
下手なりの演技をしながら言った。
横でごっちんと飯田さんがくすくす笑っている声が聞こえた。
「でも私」
「いいよ、友達なんだからさ」
梨華ちゃんの言葉を途中で止めて言った。
梨華ちゃんの目に涙が浮かぶ。
- 260 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時34分00秒
「ひとみちゃん言ったよね」
梨華ちゃん立ったままゆっくりと話し始めた。
「自分で動かないと…。
自分が変わらないと、何も変わらないって、言ったよね」
そう言うと梨華ちゃんは、少し照れたように耳の後ろの方の髪の毛を、
手で触りながら続けた。
「にあうかなこの色」
彼女の栗色の髪の毛は、6月最初の、ゆっくりとした風に揺れている。
「いいんじゃない、にあってるよ」
自然と笑顔で答えていた。
あたしの答えに、さっきまでの照れはなくなり、梨華ちゃんも笑顔になった。
あたしの横でごっちんと飯田さんも笑っている。
「携帯電話も買ったの、ひとみちゃんの番号教えてもらおうと思って」
携帯電話の入った袋を見せながら、梨華ちゃんはあたしの横に座る。
あたしの横に梨華ちゃんが座ると、ごっちんも梨華ちゃんの横に座った。
- 261 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時36分54秒
「ごとー、今すっごくうれしいんだ。
また友達が増えてすっごくうれしい」
そう言ってごっちんは梨華ちゃんの体を、自分の体全部つかって抱きしめる。
梨華ちゃんは、ごっちんに抱きつかれて、体をあたしのほうに倒してきた。
あたしは梨華ちゃんに押されてベンチから落ちそうになる。
「ちょっとごっちん、あたしベンチから落ちそうなんだけど!」
「ん〜ごと〜は気持ちいいからいいの〜」
梨華ちゃんに抱きついて、幸せそうに目を閉じているごっちんが見える。
「梨華ちゃんも何か言ってやってよ」
ベンチから落ちそうなのを、何とかこらえながら言う。
「ごっちん、私も苦しいよ〜」
「ごとーはきもちい〜」
「ギャー落ちるー」
「よっすぃ〜うるさいよ〜ごとーは気持ちいいんだから〜」
さっきまでの暗い空気は街の明かりに溶けていった。
あたしの周りは、いつも以上に光っている、いつもに戻っていた。
- 262 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時38分21秒
「ごとーも吉澤も、いつまでもバカなことやってないで、早く行くよ」
ギャーギャー騒いでいるあたし達の前に、飯田さんが来て笑いながら言った。
「どこ行くんですか?」
あたしの言葉に飯田さんは、にっこり笑って答えた。
「ごとーと吉澤に、夕ご飯ごちそうしてもらうの。
ねっ、石川さん」
そう言って飯田さんは、梨華ちゃんにウィンクをした。
「よ、よーし、今日はごとーとよっすぃ〜が、夕ご飯奢ってあげるよ」
そう言ってごっちんは、梨華ちゃんの手を握って立ち上がった。
「よ、よーし、あたしも梨華ちゃんと飯田さんに、ご飯を奢りましょう」
あたしもそう言って、梨華ちゃんの手を握り立ち上がる。
「何言ってるの?
かおりは石川さんを信じて勝ったんだよ。
ごとーと吉澤はここに石川さんがこな」
「あー!ごっちん走ろうよ、あたしおなかすいた〜」
大声で飯田さんの言葉をさえぎった。
- 263 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時39分53秒
「じゃあ走るよー」
そう言って、ごっちんとあたしは、梨華ちゃんの手をつないだまま走り始めた。
もちろん飯田さんの手をあたしがつないで。
公園と繁華街の間に架かる横断歩道。
信号は青の点滅。
あたしたちは止まることなく走って行く。
四人で、手をつないで走る夜の横断歩道は、街の光で白く輝く橋の様にも見えた。
- 264 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時40分52秒
世の中には、目で見えているものより、見えないことのほうが多いんだと思う。
人と人とのつながりだってそう、友達だったり恋人だったり、仲間だったり。
決して見えることはできないけれど、今のあたしには、それがはっきり分かる。
だってさ、あたしが泣いてる時に、自分のことみたいに泣いてくれたり、
年下で頭の良くない、あたしのことを頼ってくれたり、
勇気を出してまで、あたしに会いに来てくれたりするんだよ。
だから今のあたしには見える。
ちがう、あたし達には見えてる。
今、つないでいる手のように、四人の間にある、見えないつながりが。
手を離しても、消えることのないつながりが、あたし達の目には、
はっきりと見えている。
- 265 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)02時47分18秒
今回のお話はこれで終わり、けれどあたし達の物語はまだ始まったばかり。
この街にあたしがいるかぎり、あたし達の物語は続く。
そうだ、勘違いして欲しくない事がひとつある。
変わるって事は、外見が変わるって事とは違うからね。
梨華ちゃんは外見が変わっただけだ、って言いたいなら、どうぞごかってに。
でもさ、みんなも初めて髪を染めた時はどうだった?
おしゃれな男性店員や、きれいにメイクした女性店員に頼む時、緊張しなかった?
今まで一人だった梨華ちゃんには、とっても勇気のいることだったと思うよ。
変わるってさ、きっとそういうことだよ。
家から出るのがいやな人は、親が寝た後、
こっそり家を抜け出してみるのもいいかもしれない。
学校で、いつも一人で昼ご飯を食べてる人は、昼ご飯の時、
誰かに声をかけるのもいいかもしれない。
夜の公園で、誰も座らない黄色のベンチに座るのも…。
これはあまりおすすめしない。
だけどあたしに会いたければいつでもどうぞ、あたしは何時でも相手になるよ。
負けたって大丈夫、あたしはいつだって歓迎するよ。
「ようこそあたしの庭へ」ってね。
- 266 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)03時00分21秒
- 更新終了。
>>240 とみこ様
レスありがとうございます。
>気持ちを全部書いてて
そうなんですけど、正直なところ読者の皆様がうざくないかと心配しています。
ニュースで、○わ○えの花火大会で、ひき逃げがあったと聞いた時、
とみこさんは無事か(作者はただのアホです)
と思いましたが、青板更新しているようなので無事みたいですね。(笑
>>241 名無し娘。様
毎回のレスホントにありがとうございました。
最後の方はいしよしになってしまってごめんなさい。
よしごま好きの方には、もっとよしごま出せ!っていわれそうですね。(笑
7.31事件の傷は回復するのはまだまだ時間がかかると思います。
けれども一番辛いのは卒業する本人であって、その次に辛いのは、
メンバーの方々だと思い暮らす毎日です。
ホントに毎回のレスありがとうございました。
- 267 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)03時07分46秒
- >>242 むぁまぁ様
初レスありがとうございます。
>アウトローの男の美学
作者はよっすぃーのキャッチコピーは「孤高のアウトロー」と思いながら、
書いていたのですが、最後はぜんぜん違う方向に行ってしまいました。
>>243 EAGLE様@ベーグルおいちー>(^〜^○)
ここでは初レスありがとうございます。
久しぶりにseekに来たのに、このような作品に、
目を通していただきありがとうございます。
これからもHPではお世話になると思いますがよろしくお願いします。
それでは最後に、あちゃちゃやばばじんじん(笑
- 268 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)03時11分27秒
「きゃっ!ひとみちゃん携帯電話がかってに動いたよ」
「それは、マナーモードになってるからだよ」
「そうなの?動いてもいいの?」
「あはっ、梨華ちゃんっておもしろいね〜」
「ほんと石川はおもしろいよね。
そうだ、かおり、さっき石川の絵、描いたんだよ、
だからあたしの描いた絵、プレゼントするよ」
「ホントですか、石川うれしいです」
「よっすぃ〜…もしかしてさぁ」
「うん、たぶんそうだよ」
「はいこれ、かおりが描いたんだよ」
「ありがとうございます……。
あの…これ…飯田さん…ですよね」
「そうだよ、上手でしょ」
「「やっぱり」」
and that’s all…?
- 269 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)03時18分02秒
- 最悪だ…失敗した…貼るの忘れてた…。
最後の最後になんだよもう。
オイラのバカバカバカ。
この話は、これで終わりではないのですが、今日から里帰りをするので、
定期的な更新ができなくなります。(実家にPCはありますが、プリントごっこになってます
なのでこれで一応の終わりとさせていただきます。
この話の続きは、皆様が許していただけるかぎり、書いていこうと思います。
今回は石川梨華編終了と思ってください。
次の話は、このスレがあればこのスレに、なければ新しいスレ立てようと思ってます。
なので、よろしければ感想やリク、(出して欲しい人)
ください。(スレサイズは余ってますので
今までに出た方はこれから出てきます。
今まで出てきた方は以下の人達です。
いしよしごまかおり、中澤裕子、安倍なつみ、松浦亜弥。
この方達は出演予定です。(なっちは名前出てないですけど。
9月に入る前には始めたいと思っています。
それでは、今まで読んでくれた皆様ホントにありがとうございました。
まだまだ駄文ですが、よろしければ次回も、お付き合いの方よろしくお願いします。
- 270 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)03時20分12秒
- 落ち隠し。
さきほど書き上げたばかりなので、誤字脱字あると思いますが申し訳ございません。
- 271 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月06日(火)03時21分03秒
- シグナルさんお疲れさまでした。
感想を書きたいんですが、胸がいっぱいでうまくまとまらないので一言だけ
名作をありがとう
- 272 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)03時24分04秒
- 落ち隠しその2
脱字ハケーン
>>260
× 梨華ちゃん立ったままゆっくりと話し始めた。
↓
○ 理華ちゃんは立ったままゆっくりと話し始めた。
- 273 名前:シグナル 投稿日:2002年08月06日(火)03時30分30秒
- リアルタイムで返レス。
>>272 名無し読者様
こんな遅い時間にありがとうございます。
>名作
こんな作品にそんなありがたい言葉はもったいないです。
迷作でじゅうぶんです。(事実なので
作者は読んでいただけるだけでうれしいです。
またの時にもお付き合いよろしくお願いします。
- 274 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月06日(火)03時42分32秒
- コウシンキタ━(O^〜^O)━( O^〜)━( O^)━( )━(^ )━(▽^ )━(^▽^)━!!!
続くんですね?続けてくださるんですね?続けていただけるんですね?
次の更新までマターリまってます、がんばってください。
(願わくば作者さんの心の傷が早く治りますように)
- 275 名前:オガマー 投稿日:2002年08月06日(火)04時22分02秒
- 名作です。
好きです。
ほんと、よかったです。
今は、現実がこういう状態なので、こんな友情ものは
更に嬉しいです。
ありがとうございますた。
- 276 名前:オガマー 投稿日:2002年08月06日(火)04時24分05秒
- 連レスすみません。
続き禿しくキボンヌです。
特に松浦編。たのしそうですw
マターリ待ってますね〜w
- 277 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年08月06日(火)08時13分14秒
- 何か泣けますた
>最後はぜんぜん違う方向に行ってしまいました
いやいやこれでいいんですよ
ハッピー!じゃなくっちゃね
お帰りになるまでマターリとほぜんしやす
- 278 名前:とみこ 投稿日:2002年08月06日(火)10時17分55秒
- 更新されてるvvしかもハッピー遠藤だYO!!!
すごいいい作品でした。あまりの文才に、
小説に吸い込まれそうになったところをズームインスーパーの福沢さんに止めてもらいました。
感動をありがとう。
- 279 名前:EAGLE@(〜^◇^〜) <くちぃ? 投稿日:2002年08月06日(火)15時01分15秒
- >シグナルs
おっつです。「感動した!」ッスよ。流石ッス。
里帰り、転けないように気をつけてくださいね。(スピード出しても転ける事はないと思うけど(w
新作来るまではマターリと引き籠もります(爆
seek来てまだこれしか読んでないし時間が有れば他を読むのかな?オレ?
わかんねーや(ww
まっ、自分の書きかけで半放置を書くなり新小説書くなりなんなりして待ってまっせ。シグナル兄貴。
>これからもHPではお世話になると〜
こちらこそヨロです。兄貴が居ない間はウチは放置状態かも(苦笑
あちゃちゃやばばじんじん!
(↑目指せ!流行語大賞!)
- 280 名前:なっなし〜 投稿日:2002年08月06日(火)15時16分43秒
- 更新ごくろうさまです。
面白い作品をありがと〜ございます!!
あれ?もうお終いなの…と思いきや!続くんですね。
ふふふ、嬉しいです。
個人的には新スレで始めた方が良いかと思いますが…どうでしょう?
新シリーズ、今から楽しみです。
- 281 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月07日(水)07時19分46秒
- おつかれさまでした!4人の友情がほのぼのしてて良かったです。今度はやぐっつぁんも出してください。先輩やぐっつぁんに逆らえない吉子みたいな感じで。
- 282 名前:223 投稿日:2002年08月07日(水)11時31分15秒
- 娘。内の微妙なバランスが好きだ。
後藤が卒業すると俺は後藤に対して感情移入出来なくなると思う。
市井や中澤に今、感情移入出来なくなってしまった様に。
俺の中では、いしよしごまの3人なんですよ。
この3にんの誰かが欠けたら飼育で新しい小説を探す意味がないんで。
最後に素適な作品をありがとう。 This is COOL.
- 283 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月10日(土)11時33分22秒
- 足掻く主人公吉澤、感じるままに生きる後藤、全てを包み込む飯田・・・
みんな魅力的です。
きっと何かのきっかけがあって今の彼女たちが在るのだと思います。
だからGardensの石川はこれからなのでしょう。
でも八の字眉毛の困り顔は忘れないで欲しいな(w
- 284 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月10日(土)11時52分00秒
- ・・・「毎回のレス」と言われて心苦しいので告白します。
146レス以前の名無し娘。は自分ではなかったりします(^-^;
それ以降も毎回じゃないかも(^-^;;
だから別に吉後じゃなくても平気です・・・ていうか恋愛話じゃないですよね(w
・・次の物語を待ってます。
- 285 名前:七誌 投稿日:2002年08月12日(月)20時57分06秒
- 一気読みさせていただきました。
終始読み手をあきさせない滑らかな文に脱帽しました。
茶色い髪の女性が笑っている。この文を見たとき一気に涙がこぼれました。
今回語られなかった後藤と吉澤の出会いなどを読んでみたいので続き期待します。
この小説は最高だ!いや、最強だ!!
- 286 名前:シグナル 投稿日:2002年08月12日(月)23時51分21秒
みなさまこんなにもたくさんのレス、ありがとうございます。
作者ちょっとびびってます。(w
>>271名無し読者様
遅い時間に読んで下さいまして、ありがとうございます。
これからもがんばりますので、よろしくおねがいします。
>>274名無し読者様
もう少しの間、続けさせていただきます。
次話はもう少しお待ちください、少し苦戦していますが、
がんがって書いていますので。
>>275->>276オガマー様
>現実がこういう状態なので、こんな友情ものは更に嬉しいです
作者も少しへこんでますが、娘。の友情の話を書いていたのも何かの縁だと思って、
娘。(ハロプロ)の友情の話を、しばらくの間書いていきたいと思います。
松浦編は、小説内の時間が夏休みになれば出てきますので、
それまで少し長いですが、もうしばらくおまちください。
- 287 名前:シグナル 投稿日:2002年08月13日(火)00時42分24秒
>>むぁまぁ様
>いやいやこれでいいんですよハッピー!じゃなくっちゃね
そう言っていただけると、作者も一安心です。
作者はハッピーエンドしか書けないようなので、話も読めてしまうと思うのですが、
精一杯がんばっていきます。
次話も、おひまな時にでも見てくださればうれしいです。
>>とみこ様
>ハッピー遠藤だYO!!!
ハッピー遠藤でしたでしょうか。(w
おほめの言葉ありがとうございます。
とみこさんに言われるとうれしさ倍増ですよ。
青板のほうも順調のようで、影ながら応援しています。
おたがい、がんがりましょう。
>>EAGLE@(〜^◇^〜) <くちぃ?
>シグナル兄貴
兄貴ですか。
こんな兄貴持つと苦労しますよ。(w
あちゃちゃやばばじんじん、流行ったら流行語大賞もらえるのは、
やっぱりなつ姉さん?
おっはー、の時のように言った者勝ちなら、もらえるのはおいらか…(ニヤリ
無理だと思いますが、あちゃちゃやばばじんじん。(まだいってる
- 288 名前:シグナル 投稿日:2002年08月13日(火)01時17分35秒
>>280なっなし〜様
もうしばらく続けさせていただきます。
よろしければこれからも、おつきあいよろしくおねがいします。
新スレにしようかと思っているのですが、200kbyteが微妙なんで…。
とどけ200kbyte、新スレ立てるならどこにしようかなぁ。
>>281名無し読者様
読んでいただきありがとうございます。
やぐっちゃんですが、リクに答えられるようなキャラになると思います。
登場まで少々お待ちください。
>>282 223様
最後なんでしょうか?
読者様の意向をどうこう言える立場ではないのですが、
ほかにもいい作品はたくさんあると思いますし…なまいき言ってすみません。
作者は、これからもThis is COOLと言われるように、書いていきたいと思います。
新シリーズは、お暇な時にでも読んでいただければ光栄です。
- 289 名前:シグナル 投稿日:2002年08月13日(火)01時49分47秒
>>283 >>284 名無し娘。様
もうしわけございません。
作者はseek初心者でして、半年ROMってから投稿したものですが、
もうしわけございません。
>足掻く主人公吉澤、感じるままに生きる後藤、全てを包み込む飯田
作者がぼんやりと目標としていたものが、言葉で表現された。
このレス読んだ時にそう感じました。
おそらく「凍れる焔」と命名していただいた方だと思われるのですが、
どこかの作者様なのでしょうか?
梨華ちゃんですが、彼女はこれからです。(次の話でも少し触れますが、これからです
今いるメンバーも(いしよしごまかお)、これから加わるメンバーも、
もしかしたらこれからなのかもしれません。
人は出会いによって大きくなる、そう思います。(みんなまだ育ち盛りですから
ちなみに石川さんの眉はハの字になるようにしていくつもりです。
それと、吉澤後藤推進委員の名無し娘。様申し訳ありません。
同じ方だと思っていた作者がアホです。
許していただけるなら、お暇なときにでもみてやってください。
- 290 名前:シグナル 投稿日:2002年08月13日(火)01時51分15秒
- >>285七誌様
>今回語られなかった後藤と吉澤の出会いなどを読んでみたいので続き期待します
ごちーんとよっちの出会いは、主要メンバーがそろった時にでも、
お話したいと思います。
ただ、あまり期待しないでください。
「やっぱりね」、っていわれそうなストーリーなので…。
- 291 名前:シグナル 投稿日:2002年08月13日(火)02時07分35秒
次回更新(新スレ)は来週あたりになると思われます。
ただ、黄色いTシャツを着た、娘。を見れば、そのとき更新なんてことも。(w
基本的に週2〜3更新の通常更新に戻るのは、9月に入ってからになると思います。
新ストーリーは少し物足りないかもしれません、けれどもそれは、
手を抜いたりしたわけでもありません、それは作者の力不足だと思ってください。
最後に、200kbyteに届いてないのに、新スレを立てようとしているこの愚か者に、
お仕置きをお与えください。
さぁ〜て新スレどこに立てようかな。
どこが空いているんだろ。
以上、レス返し&新シリーズについてでした。
- 292 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月13日(火)20時22分30秒
- 「大きなイチョウの樹の下で」は同じ作者さんの作品なのでしょうか?
- 293 名前:シグナル 投稿日:2002年08月13日(火)21時16分46秒
>>292名無し読者様
キャーー、その話は…。
人というのは触れられたくないことがいくつかありまして…。(笑
答えとしては、YESです。
Kさんが帰ってくる場つなぎのつもりで書いていた物でして…。
自分に合った書き方を、模索しながら書いた時の物なので、はずかしいです。(苦笑
- 294 名前:シグナル 投稿日:2002年08月22日(木)01時10分22秒
- ここまで読んでいただいてありがとうございます。
新スレは金板です。
ここ↓
http://m-seek.net/gold/index.html#1029944087
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