無題
- 1 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月28日(金)06時23分24秒
- 中澤さんが居なくなって2ヶ月が経った。
当初、大騒ぎをしていたマスコミ、各メディアも最近は少し落ち着いてきている。
失踪した当時は色んなマスコミが「私」たちのところまで何かのコメントを求めて
連日、押しかけてきていたが、ここ2、3週間でそれも潮を引くように去っていった。
中澤さんの家族、
当時、付き合っているのではと噂されていた青年実業家、
そして「私」たちメンバー全員、
つんくさん、事務所の関係者などあらゆる接触があった人たちは
毎日の取材攻勢に合っていた。
- 2 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月28日(金)06時24分20秒
- ある日のワイドショーでは飯田さん、保田さん、後藤さんが泣きはらした目のまま
テレビに向かってこう言っていた。
「裕ちゃんはぁいっつも自分で先に決めちゃってカオたちにはぁ、あんまり相談とかしてくれなくて…。
でも、カオたちはぁ、そんな薄い繋がりじゃなかったでしょ。裕ちゃん、カオ淋しいよぉ…」
「裕ちゃん、これ見てくれてるかなぁ。
もしかして裕ちゃんの新しい道を見つけて歩き出したのかもしれないけど…。
それでも何の連絡も無いのは淋しいよ。心配だよ。
これ見たら連絡ちょうだい、メールアドレスは変えてないから」
「ぅうっ…。ゆぅちゃ…。帰ってきてよぉ。…ごとー、さみし…うっうぅ…」
最後に後藤さんが泣き崩れたところで映像は切り替わった。
美しいメンバー愛を画面に収めた事でマスコミも満足した様だ。
- 3 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月28日(金)06時32分48秒
- それに飽きると今度は色んなゴシップが流れ始めた。
付き合っていた青年実業家が他の人と婚約して捨てられたから失踪した、とか
本命は別にいてその人の子供を身篭って身を隠したのだ、とか
本格的に歌の勉強をする為に海外へ脱出したのでは、とか。
だが、そのどれも裏づけを取れるものではなくて噂は下火になり
いま現在の静けさが漸く戻ってきた。
- 4 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月28日(金)06時41分26秒
- 中澤さんの家族、事務所の双方から捜索願が出され警察によって
自宅マンション、京都の実家、事務所にまで捜査が及んだにも関わらず
何の手掛かりも得られなかった。
血痕、争った形跡も無く携帯電話の着信履歴、パソコンのメールなどからも不審な人物は浮かんでこなかった。
- 5 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月28日(金)06時45分26秒
- その結果、やはり自分の意思で失踪した、
警察がそう結論付けて捜査は一旦打ち切られた。
三日前の事だった―。
- 6 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月28日(金)07時06分11秒
- それを聞いたメンバーたちの落胆は大きかった。
安倍さんは何が起こったのかわからないくらい泣いて
後藤さんに抱き締められていた。
後藤さんも泣いていたけれど。
飯田さんは目を閉じて両手を組んでいた、祈りを捧げる様に。
「裕ちゃんにテレパシーを送るんだ。裕ちゃん、カオの声聞こえるよね
聞こえたら返事して」
保田さんは何かを考え込む様にずっと天井を見上げていた。
矢口さんは案外、冷静だった。
ある意味、冷淡とも取れるくらい。
「ほら、裕ちゃんの事だから、ひょっこり帰ってくるよ!
ね!だから元気だそうよ、みんな!」
それに対して石川さんは必死になって言い返していた。
「矢口さん、冷たいです!あんなに中澤さんと仲良かったのに…。
矢口さんは心配じゃないんですか?」
抱き合って泣いていた辻さんも加護さんもそうだと言うように矢口さんを見た。
「私」たち新メンバーも肩を寄せ合いながら矢口さんを伺った。
- 7 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月29日(土)10時10分25秒
- 矢口さんは、くそっと小さく叫ぶと床を蹴った。
きゅっと厚底靴が床を擦って嫌な音を立てた。
「そんなの…!心配しない訳ないじゃん!
でもみんながこんな状態じゃどうなんの?
私達はプロなんだよ!明日からミュージカルの練習も始まるんだよ
このまま練習に身が入らなくてミュージカル失敗したらどうなるの?
娘。が空中分解しちゃうかもしんないじゃん!
そんなこと、裕ちゃんが喜ぶと思う?」
矢口さんは一気にそれだけ言うとずるずると床に座りこんで泣き出した。
大声で人目も憚らず。
保田さんがそっと矢口さんに寄り添って抱き締めて頭を撫でていた。
飯田さんはふっと我に返ったように言った。
「そうだね、私達はプロなんだ。ミュージカルを成功させるのが
今の私達の一番大事な事。失敗なんかさせないよ。
裕ちゃんが返ってこれる様に」
安倍さんが鼻をぐすぐすさせながら言った。
「そうだね。私達が頑張らなきゃ。
もしかして裕ちゃん、ミュージカル見に来てくれるかもしれないし…」
- 8 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月29日(土)10時31分19秒
- 『見に来てくれるかもしれない』
その言葉は空気の様にその場に伝わった。
『見に来てくれるかもしれない』 『成功させなきゃ』
皆は呪文の様に繰り返しながら次第に泣き止んで行った。
保田さんは 「よしっ!」と矢口さんを立たせると言った。
「そうと決まったら泣くのはもう今日で終わり!」
飯田さんがその後を次いで言った。
「じゃあ、気合入れるよ!明日からミュージカルの練習が始まります。
みんな、涙は見せずに!ミュージカル成功する様に!
頑張っていきまっ」
「「「「「しょい!!!」」」」」
なんだかこれで本当に中澤さんが帰って来てくれる様で
みんな誰彼と無く微笑みを交し合った。
「私」はその様子を見て
『あぁ、中澤さんはみんなから愛されてるんだな』と思った。
- 9 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月29日(土)10時49分58秒
- 翌日から本格的なレッスンが始まった。
先輩達と違ってミュージカルが初めての「私」たち、5期メンは
歌う時とは少し違う発声練習に戸惑ったり照れたりしたけど
先輩達の真剣な様子にすぐに「私」たちも真剣に打ち込んで行った。
- 10 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月29日(土)16時53分45秒
- 1週間もすれば先輩後輩問わずみんな体の何処かが軋み始めていた。
「はい、今日はここまで!おつかれ!」
「「「おつかれさまでしたーっ」」」
「私」と理沙ちゃんは帰りの挨拶を交わすと違う階でレッスンしている
あさ美ちゃんと麻琴ちゃんのところへ行った。
こっちはまだ終わってなくて「私」と理沙ちゃんは30分ほど
言葉を交わすでもなくぼんやりと待っていた。
漸くレッスンが終わって何やら挨拶を交わした後
あさ美ちゃんと真琴ちゃんは真っ直ぐ「私」と理沙ちゃんのところへ
やってきた。
「あさ美ちゃん、おつかれ…」
「あー!愛ちゃんたち、待っててくれたんだぁ」
私の声をさえぎる様に真琴ちゃんが大声を出した。
「待ってたよぉ。もう真琴ちゃん、声大きい」
苦笑する私に向かって真琴ちゃんはぺろっと小さく舌を出して見せた。
そんな真琴ちゃんを理沙ちゃんは眩しそうに見てる、
誰にも気付かれない様にこっそり。
私は気付いてるんだけどね。
- 11 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月29日(土)17時38分54秒
- 「駅まで一緒に帰ろう」
そう言うと真琴ちゃんはあさ美ちゃんと理沙ちゃんの腕を強引に組んで歩き出した。
あさ美ちゃんは強引に引きづられながら私の方をちらっと振り返ってにっこり微笑んだ。
私は肩を竦める振りをしながらみんなの後をついて行った。
駅までのたった10分の道を4人で話しながら帰るのが最近の楽しみだった。
駅に着くと私とあさ美ちゃんは真琴ちゃんと理沙ちゃんと別れた。
逆方向なのだ。
反対側のホームで真琴ちゃんが大きく手を振る。
「明日も頑張ろうねー。学校も頑張ろうねー。
明日、終わったら何か食べに行こうよー。あと、あと…」
真琴ちゃんは思いつく限りの事を叫んでいるようだ。
私とあさ美ちゃんは顔を見合わせて苦笑しながら何か言葉を
返そうとしたけどちょうど滑り込んできた電車に遮られた。
私たちは急いで電車に飛び乗ると窓から真琴ちゃんたちに手を振った。
電車の中で大声は出せないのでクチパクで
『また明日』 『ばいばい』とさっきの返事をした。
程なく電車は動き出し私たち二人を運び出した。
- 12 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月29日(土)18時04分06秒
- 無言のまま私はあさ美ちゃんを乗せた電車は降りる駅へ着いた。
私とあさ美ちゃんは駅前のファーストフード店で今日の夕飯を買った。
「なんか美味しいものが食べたいね」
私の言葉にあさ美ちゃんはふっと困った様に笑った。
「愛ちゃん、それはお店の人に失礼だよ」
「えー、そうかなぁ」
「そうだよ。一生懸命作ってくれてるんだから」
「そっかぁ。そうだよねー。お店の人、ごめんなさい」
私がそう言うと、あさ美ちゃんはふふっと笑って私の腕に自分の腕を絡ませてきた。
あさ美ちゃんのそのふくよかな感触に私はどきっとする。
その横顔をそっと盗み見る。
大きくてぱっちりした、憂いを含んだ瞳。
何を見てるんだろう。
最近、塗り重ねられるようになったグロスが街の明かりに照らされてる。
綺麗だな。
家までの道を特に会話もせずに歩いていく。
あさ美ちゃんとなら無言でも気まずくなく時間が過ぎて行く。
- 13 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月29日(土)18時04分59秒
- 実は私とあさ美ちゃんは同じマンションに住んでいる。
私が504号室であさ美ちゃんが305号室。
以前は休みの日になるとよくお互いの家に行き来していた。
でも最近、あさ美ちゃんは休みの日になると真琴ちゃんと良く遊んでるみたい。
そのせいではないけど私は家に篭もりがちだ。
あさ美ちゃんは私に気を使ってか、最初の頃は声を掛けてくれたが
私が断り続けてるうちにそれも無くなった。
そんな事を考えてるうちに家までもう少しになった。
あさ美ちゃんがふと立ち止まった。
『どうしたんだろ。この沈黙に耐えられなかったとか?
ちょっとは話しをした方が良かったのかな』
だけどあさ美ちゃんは思いがけない事を言った。
「ねぇ、愛ちゃん。中澤さんは生きてるのかな」
「え…?」
- 14 名前:ウルフ 投稿日:2002年06月30日(日)00時40分12秒
- こっからsageたいんですけど…。
しばらく待ったらsageれるんですかね…。
とりあえずsage待ち…。
- 15 名前:やぐちゅ〜みっちゅ〜狂患者 投稿日:2002年06月30日(日)11時41分25秒
- ウニャ!?(>w<)
何なんだろ、紺野の意味深な発言は!?
続きが気になる!
sage倒しだ〜。
- 16 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月01日(月)18時00分53秒
- 中澤さんが居なくなってから、中澤さんが生きているのか死んでいるのか
という疑問を口にしたのは私の知ってる限りあさ美ちゃんが初めてだろう。
いや、あさ美ちゃんは『生きてるのかな』って言ったのであって
『死んでるのかな』とは言ってないんだけど。
私にはそう言う風に聞こえた。
何か知ってるのだろうか?
「何か知ってるの?」
私の問いにあさ美ちゃんは 「うぅん」 と肯定とも否定とも取れる
頷き方をした。
「ねえ、愛ちゃん。わたしたちは中澤さんの事を
そんなに知ってるわけじゃないけど仕事には凄く厳しい人だったよね…」
また過去形だ…。
「そんな人が事務所にも連絡しないまま2ヶ月も経っちゃった…
絶対、おかしいよ」
「んー。何か急に嫌になったんじゃない。仕事とか色々…」
あさ美ちゃんは私の適当な相槌には答えずに続けた。
- 17 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月01日(月)18時20分40秒
- 「それにね…。実はわたし、中澤さんが居なくなった日に会ってるんだよね…」
そんなこと初めて聞いた。
「あの日ね、矢口さんの行きつけの美容室にまた連れて行ってもらったの…」
あぁ、そういえば、あさ美ちゃんの髪の色が最近赤っぽく見えるのは
ヘアマニキュアをしたからなんだ。そのうちピアスとかもしちゃうのかな。
「そしたら中澤さんもそこに居て矢口さんと話してた…
わたしはそのままシャンプーにいったからあんまり聞こえなかったんだけど…」
あさ美ちゃん、盗み聞きは良くないよ。
「矢口さんが食事に誘ってたみたいだけど
中澤さんはこれから人に会う予定があるからって言ってた…」
あさ美ちゃん、しっかり聞いてるじゃん。
「そしたら矢口さん、『浮気モノー!』って中澤さんの首絞めて…
あ、もちろんフリだけどね…」
ここであさ美ちゃんはジェスチャー付きで矢口さんの声色を真似して見せた。
あさ美ちゃん、モノマネなんかするようになったんだ。
- 18 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月01日(月)18時31分03秒
- 「そしたら中澤さん、凄く真剣に違うって…」
今度は中澤さんみたいに眉間にしわを寄せている。
「わたしはその相手の人が今度の事に関わってると思うの。
その人が直接、何かをしたとかじゃなくても
行き先ぐらいは知ってるかもしれない…」
ふぅん、あさ美ちゃんは何でわたしにこんな話しをするんだろ。
それよりせっかくのチキンが冷めちゃうよ。
「でもさ…。そうだったらもう警察の人が調べてるんじゃないの?」
あさ美ちゃんはまた 「うぅん」 と曖昧に頷くと言った。
「矢口さん、このこと警察の人に言ってないみたい
言っちゃダメって口止めされたから」
そのわりに私にペラペラ喋ってるけどね。
「きっと矢口さんはその相手の人のこと探してると思うんだ…」
私は次にあさ美ちゃんが言うであろう言葉を予感した。
「だからね、わたしたちも矢口さんのお手伝いをしない?」
- 19 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月01日(月)18時42分37秒
- >やぐちゅ〜みっちゅ〜狂患者様
レスありがとうございます。
紺野の発言はああいう意味でした。
たいして意味深でなかったらごめんなさい。
さて、こっから本格的にsageていきます。
たぶん木曜ぐらいに更新…。
- 20 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月01日(月)18時52分59秒
- 続き楽しみ。頑張ってください!
- 21 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月04日(木)01時28分14秒
- 自分の返事次第ではこれからの私の将来に関わるような事が
待ち受けてる気がした。
「手伝うって、何を?どんな風に?」
私はあさ美ちゃんに、この質問が肯定とも否定とも取れぬように
慎重に答えた。
手伝うなんて簡単には答えられないよ。
「あのね、さっきも言ったけど矢口さんは、中澤さんが人に会う
予定があった事を警察の人には言ってないと思うの。
という事はどう言うことだと思う、愛ちゃん?」
うーん、わかんないよぉ、そんなの…。
「わたしはね、もしかして矢口さんは、中澤さんが最後に会う約束
をしてた人に心当たりがあるんじゃないかなと思うの。
そして矢口さんにも面識のある人…
だけどそれが誰なのかはまだ分からない…
だからこそ探してる…
もしかして何か手がかりを見つけたのかもしれない…」
あさ美ちゃん、推理小説とかも読むのかな?
ていうか、最後の方はあさ美ちゃんの推理でしょ。
私はあさ美ちゃんの発想に感心した。
- 22 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月04日(木)01時44分50秒
- ちょこっと更新。
明日、も少しアップできればと思います。
>20 名無し読者様
レスありがとうございます。
頑張ります。
- 23 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月04日(木)12時09分07秒
- あれ?だけど一つ疑問が。
「だけどさ、中澤さんが知ってる人で矢口さんも知ってる人って
ことは、たぶん、お仕事関係の人だよね…。
ってことは私たちが知ってる人って可能性もあるんじゃ…」
私が言うとあさ美ちゃんは、あっ、という感じで肩を震わせた。
無意識とはいえ知ってる(かもしれない)人を疑うようなことを言って
きっと罪悪感を感じてるんだろう。
「それにさ、警察が調べても(捜査線上に)出てこなかったような人なんて、
かなり危ないよ。
それに矢口さんがその人を調べてるって決まったわけじゃないでしょ。」
私が早口で言うもんだから、あさ美ちゃんは段々小さくなりながら
「う、うん」 と頷いた。
「じゃあ、決まり!明日からそれとなく矢口さんを見て、矢口さんが
中澤さんの相手の事、本当に調べてるみたいだったら
矢口さんにお手伝いの事、言ってみよう!ね、あさ美ちゃん」
「あ、ありがとう、愛ちゃん…」
あさ美ちゃんは少し声を詰まらせながら頭を下げた。
- 24 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月04日(木)13時02分04秒
- その時だった、俯いて少し乱れた髪の間から耳が見えて。
ほんの一瞬、その耳元が光った。
「あ、あさ美ちゃん、それ…?」
あさ美ちゃんは、ん、と首を傾げて髪の乱れを直した。
「これ…ピアス。みんなには言わないでね。補欠のイメージじゃないし…」
あさ美ちゃん、まだ補欠にこだわってるんだ。
ミュージカル、すごく良い役貰ってるのに。
「あさ美ちゃん!誰もあさ美ちゃんのこと、補欠だなんて思ってないよ。
まだ、そんな事言ってるの!絶対、補欠なんかじゃないから!
今度、自分の事、そんな風に言ったら絶交だからね!
それに…ピアス、すごく似合ってるよ」
私は冗談ぽく怒りながら言った。
「ありがとう、愛ちゃん。うん。冗談だよ。もう言わないから。
愛ちゃん、わたしね、絶対、中澤さんを見つけてあげたいの。
中澤さん、わたしの顔見るたびに『紺野は補欠じゃない』
『紺野は紺野でええんや』って言ってくれて。
ケガしたときも色々、いっぱい言ってくれて…」
「あー。私たちもすごく心配したのにぃ…」
私がわざとむくれて言うと、あさ美ちゃんは少し照れた。
- 25 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月06日(土)03時10分25秒
- 「早く中澤さん見つかるといいね、あさ美ちゃん」
よし、とりあえずこの話しは終わった?
「うん。急にこんな話ししてごめんね、愛ちゃん」
「うぅん。大丈夫。…さぁ、帰ろ。チキン冷めちゃうよ」
ウィィーン。
エレベーターの無機質な少し苛つく音が私たちを運んでく。
3F。
「ね、ねえ、愛ちゃん。わたしの部屋で食べてく?
ほら、一人で食べても美味しくないし…」
「んー…。いや、今日は…。早くお風呂入りたいし…」
「あ、そっかぁ。ごめんね、わたしが引き止めたから…」
そうして、あさ美ちゃんはエレベーターを降りて自分の部屋の前で
こちらを向いて手を振って消えて行った。
- 26 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月06日(土)03時30分28秒
- 「ふぅ…」
わたしはエレベーターのボタンを5階へと操作すると溜め息をついた。
何だろう、みんな、中澤さん、中澤さんって…。
そんなに騒いだら帰りたくても帰り辛いじゃん。
私は玄関の鍵を用心深く閉めると声を掛けた。
「ただいまー」
部屋の奥から 「くぅぅー」 と声が返ってきた。
私は荷物を置くと真っ直ぐベッドのすぐ横にあるケージの元へ行った。
「ごめんね、おそくなって。ちょっとあさ美ちゃんと話してたから…」
「ふぅぅー」
私は少し、いやかなり大きめのケージの中に自ら入ってその首輪を引き寄せた。
そして、口輪を外してやる。
昼間、一人で留守番をさせてるせいで、このコはよく鳴く。
だから少し可哀想だけど口輪。
口輪のベルトを外して一緒にボールを出してやる。
ボール付きの口輪にまだ慣れないのか、大量の涎とともに大きな息をつく。
「あぅぅ…ぐぅ…」
あごが痛むのか私に向かって何かをねだる。
- 27 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月06日(土)03時49分40秒
- 私は優しくあごをさすってあげる。
「なぁに。淋しかったの?ホントにだめなコ…」
「んっ…、ぐぅぅ…」
だめなコ、と言うとよだれを垂れたまま少し声音を変えて抗議する。
金色の毛がたなびく。そんなとこまで可愛い。
「そんな声しても怖くないですよぉーだ」
私はくすくす笑いながらその金色の毛を指で梳かしながら涎を舐め取ってやる。
「あ…。くぅ…」
くすぐったいのか目を細めて肩をすくめる、このコが愛しくて仕方ない。
絶対、手放したくない、内緒のペット。
- 28 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月07日(日)01時15分18秒
- 高橋の内緒のペットって………、やっぱり……?
続き、待ってます。がんばってくらさい。
- 29 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月10日(水)12時25分20秒
- 私も待ってます。
普通の?ミステリ系かと思ったら…。
すっごい先が気になる。
- 30 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月11日(木)16時47分10秒
- パソコンの調子が悪くて変なところで切ってしまいすみませんでした。
>28 名無し読者様
>高橋の内緒のペットって………、やっぱり……?
そうです。やっぱり...です。
がんばります。
>29 名無し読者様
>普通の?ミステリ系かと思ったら…。
う〜ん。なに系になるんでしょう?
飼育系?(ボソ)
では少しですが更新します。
っが、ここからは「監禁、飼育」です。
エグいことはしませんが苦手な方はこの先、読まないで下さい。
でわ、いきます。
- 31 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月11日(木)16時48分55秒
- もちろんペットは禁止だけどバレなきゃいいんでしょ。
だっていまさら、このコを追い出すなんて出来ない。
見捨てるなんて出来ないもの。
思わずぼんやりしてたのか、あのコが心配そうに私の顔を見上げてた。
「ん?大丈夫だよ。絶対…捨てたりしないから、ね」
そう言ってやると安心した様に「んん…」と目を細める。
目を細めるのはこのコのクセらしい。
可愛いなぁ。溜め息が出るよ。
まだ涎が零れてるんだけどね。
その全てが可愛い。
「ほら、涎が出てる。ふふ、じっとしてて…」
私は両手であのコの頭を抱えると涎で濡れたところを顎といわず首といわず
その胸元まで舐めまわしてやった。
- 32 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月11日(木)16時50分29秒
- 「ん…くぅ…はぁあ…」
途端に甘い声で鳴き始める。
その刹那、残酷な衝動に駆られる。
「誰が感じて良いって言った?」
首筋のちょうど、動脈の当たりに思いきり噛み付いてやった。
「ぃつっ…ぐっ…ぃやぁっ!
ご、ごめ‥なさ‥」
あのコの目にみるみる涙が浮かんでくる。
潤んだブルーの目で怯えた顔を私に向ける。
その目が、はっと私の胸を打つ。
「ごめん!ごめんね!また怖がらせちゃったね。ほんとにごめん…」
優しくしてあげたい、そう思うのについやってしまう。
私は慌ててあのコの首輪を引き寄せると抱き締めてあげた。
「ううっ…ひくっ…うっうっ…」
私の肩に顎を乗せてひっくひっくと泣いてたけど背中を撫でてあげてるうちに
少しずつ落ち着いてきた様だ。
しばらく、その背中のすべすべした感触を手の平で楽しんだ後、
あのコの肩を掴んで体を離してその顔を覗きこんでやった。
すると、まだ涙のたまったままの目で恥ずかしそうにふいっと目を背けた。
くぅーっ!可愛いなぁ、もう!
- 33 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月11日(木)18時53分17秒
- むー、やっぱりパソコン調子悪し。
中途半端ですがいったん切ります。
期待してくれてる方、こんな内容です。
すみません。
続きはまた明日。
- 34 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)02時22分37秒
- パソコンの調子どうっすか?
楽しみにしてます。
- 35 名前:やぐちゅ〜みっちゅ〜狂患者 投稿日:2002年07月14日(日)04時37分22秒
- ここでも、ユウタカ来たー!
と、思ったらこんな展開とは・・・
裕ちゃんは弱くて受けの印象があるけど、
ここまできちゃうとは・・・
しかも、新メンに・・・
ああ・・・あの15人にやられるなんて事は、
間違っても考えたくない(>w<)
- 36 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月15日(月)20時47分17秒
- 作者さんの思う通りに書いて下さい。
早くパソの具合が良くなることを願ってます。
- 37 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月20日(土)03時00分42秒
- 完全ではないですが何とかパソコンが復旧しました。
っが、まだキーボードに不具合が(汗)
というわけで今日はレスだけ。
もう少しsageたいので火曜ぐらいから更新したいと思います。
34 名無し読者さま
>パソコンの調子どうっすか?
最 悪 で す 。
楽しみにして頂いてるのにこんなんで申し訳。
35 やぐちゅ〜みっちゅ〜狂患者さま
>ユウタカ来たー!
こんな展開です・・・本当に申し訳(略)
加入からそろそろ1年経ちますが新メンとは、此れ如何に(w
>ああ・・・あの15人にやられるなんて事は、
間違っても考えたくない(>w<)
激しく同意!
36 名無し読者さま
はい、思う通りに書かせて貰います。
ありがとうございます。がんばります。
- 38 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月21日(日)22時58分43秒
- 遂に復活っすね。あー楽しみです。
- 39 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月23日(火)15時04分15秒
- 最初、捕まえた時はこのコがこんなにもかけがえなく愛しい存在に
なるとは思わなかった。
だって最初はただ、弄んでぼろぼろにして捨ててやろうと思ってたから。
最初はただ、憎かった、目障りだった、目の前から消えて欲しかった。
だから、およそ、あの強いフリしてるこの弱い人間には
耐えられないだろう屈辱を与えて写真でも撮って脅せば芸能界から
消えるだろうと単純に考えて、とりあえず捕まえた。
あ、そうそう、このコは捕まえたんだよ、この部屋で。
それは案外、簡単だった。
『相談したいことがあるんです。人に聞かれたくないので
私の部屋に来てくれませんか?』
同じハロプロのメンバーとはいえ日頃あまり接触の無い私の言葉に
中澤さんは驚いた顔をしてたけど(そうだ、あの日までは中澤さん
と呼んでいた)すぐに目を細めて柔かく笑うと『ええよ』と頷いた。
私は念の為に『中澤さん、有名人だから変装忘れないで下さいね』
とおどけた調子で付け加えるのを忘れなかった。
どうやら可愛い女の子が好きらしい中澤さんに多少なりとも気に入ら
れているのは分かってたのでそれぐらいで気分を悪くしたりしないだ
ろうという計算の元で。
- 40 名前:ウルフ 投稿日:2002年07月23日(火)20時12分35秒
- そして中澤さんは、目深に帽子を被ってサングラスというベタな
いでたちで私の部屋にやって来た。
『うん、綺麗にしてるな、合格や』
そう言いながら一通り部屋を見渡してベッドの横に置いてある大きな
ケージを見てぎょっとしたように声を上げた。
『何や、ペットでも飼うんかぁ?』
『はい。淋しくって』
私は紅茶の用意をしながら後ろを振り向かずに答えた。
いや、振り向けなかった、今からのことを考えると。
知らずに体が震え出す。
『そっか、淋しいよなぁ。でも世話とか大変やで、大丈夫かぁ?』
『はい、頑張ってお世話しますから』
私はポケットの中で「アレ」のロックを解除すると
中澤さんの隣に座って紅茶を出した。
自然と手が震えて紅茶を零してしまった、これも計算通りだけど。
『すいません、そこのティッシュ取ってください』
恐縮して言うと中澤さんは苦笑しながらずるずると這いながら
ティッシュを取りにいった。
『何や、自分、大丈夫かぁ?』
『すいません、ちょっと緊張しちゃって…』
- 41 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月25日(木)17時18分00秒
- 毎度気になる展開だ…。
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月28日(日)14時54分38秒
- 続きが非常に気になって・・・・ガムバッテ!!
- 43 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月01日(木)18時14分39秒
- 「そんな緊張せんでも捕って食わへんて」
中澤さんは余裕でくつくつと笑いながら、殆ど寝転んだ姿勢で
よっ、ほっとか言いながらティッシュに指を伸ばしてる。
「くーっ!届かん…」なんて足をばたばたさせてるさまに
私は不覚にも可愛いと思ってしまった。
しかし…。
いくら大先輩とはいえ初めて訪れた後輩の家で寝っ転がって
ティッシュ取ってるってどうよ?
それだけ私に気を許してくれてるってこと?
ま、そうだとしても、もう、どうでもいいけどね。
無防備な背中はこちらに向けられたまま。
どくん―。
心臓の鼓動が一瞬、強くなる。
いま?
やるなら、いま、だよね。
私はいつの間にか、からからに乾いてしまった唇を舐めると
ポケットの中の「アレ」を握り締めて中澤さんの背後に立った。
死角からその肩辺りに手を近づけていく。
あと3cmというところで手が止まる。
『あっ、中澤さん、ジャケット着たままじゃん
脱がせるの大変そうだな。自分で脱いでもらおっと。
時間はまだまだ、あるもんね…』
- 44 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月01日(木)18時19分41秒
- 皮のジャケットは細身の彼女にフィットしていて脱がせるのは骨が折れそうだった。
私がポケットに手を納めたと同時に中澤さんがティッシュを掴んで
振り向いた。「うわっ!びっくりした!なんや、自分!?どないしたん?」
音も立てずに真後ろに立っていた私によっぽどびっくりしたのか
中澤さんは大声を上げた。
思わず飛び上がった私に中澤さんはすまなそうに声を潜めた。
「あ、ごめん。つい、びっくりしてしもて…」
「あ、いえ…。なんか大変そうだったから自分で取ろうと思てえ」
あ、最後のトコ、訛ってしもた…。
中澤さんは一瞬、ん、という顔をして、それから柔らかく笑った。
「ほんま、かわええな、自分」
そう言ってティッシュを2、3枚取るとテーブルに零れた紅茶を拭った。
「ん?どないしたん、座りぃや。ってうちの家ちゃうけどなぁ」
ははっ、と笑うその顔はやっぱり可愛らしい少女の様で。
私、いま絶対、顔真っ赤だ。
普段、怖いと思っている分、さっきのような柔らかい優しい表情を
見せられると自分の感情が乱れるのが分かる。
- 45 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月01日(木)18時30分17秒
- でも、もう戻れないよ。
止める気なんて無いから。
私は知ってるんです、あなたのもう一つの顔。
「で、相談て何や?」
中澤さんは、真っ赤になってる私のことをさらっと流して単刀直入に聞いてきた。
「あ、えっと、それはぁ…。その前に上着脱ぎません?」
「ん、そやなぁ…」
もぞもぞと、やはり脱ぎにくそうに袖を抜くと、ほいっと投げて寄越した。
受けとってハンガーに掛けながら私は口を開いた。
「実はですねぇ、前に麻琴ちゃ…あ、小川さんと喧嘩してもたときが
あってぇ…。一応、仲直りはしたんですけどぉ、んーと…何ていうか…
まだ、なんか壁を感じるっていうか…」
嘘だった。
喧嘩したことはあったけど、とっくに仲直りして前より親しくなったくらいだ。
もし、私と麻琴ちゃんの間になにかわだかまりがあるとしたら、
それはもっと別のことが関係している。
- 46 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月01日(木)18時39分41秒
- 38 名無し読者さま
なんとか復活です。楽しみにして頂いてるのにヘタレです。
41 名無し読者さま
毎度気にして頂いてるのにこんな展開…。
42 名無し読者さま
非常に気にして頂いてるのに・・・・ガムバリマス
ほんとに遅筆で、その上、毎回更新量少なくてすみません。
- 47 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月02日(金)04時36分54秒
- 更新待ってました。
作者さんのペースでがんばって下さい。
- 48 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月15日(木)22時08分33秒
- かなり続き楽しみにしてます
- 49 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月19日(月)00時22分30秒
- 首を長くして待ってます。
- 50 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月21日(水)11時42分42秒
- それから中澤さんは私の愚痴とも相談ともつかない話を色々聞いてくれた。
『そやけど喧嘩できるちゅうことは、ええことやで』とか
『それは意見の押し付けって言うか小川ちゃんが高橋ちゃんにも
同じ気持ちでいて欲しいって気持ちでそういう言葉になったんかもな』とか
『まぁ、そんなけ小川ちゃんが高橋ちゃんの事、ええライバルと
思ってるってことや』とか
相槌を打ちつつ時々、前髪をかきあげながら私の求めていた答えを
次々と並べてくれた。
私から一瞬も目を逸らさずに。
なんか、かっこいいなぁ。
こういうのを大人の余裕というのだろうか。
色んなことを知っていて、自分の考えを言葉にする術を持っている。
私には出来ない。そこが大人と子供の違いだろうか。
こんな人になりたい、なれるだろうか。
思わずその横顔に見惚れていたら視線に気付いたのか紅茶をズズと啜りながら
「ま、まぁ、あれや、大事なんは、これからのことや、な。」
と、照れた様に頭を掻いた。
- 51 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月21日(水)11時47分37秒
- 可愛いな。
素直にそう思った。
綺麗で、かっこよくて、それでいて可愛くて、強くて、芯が強くて
でもホントは矢口さんや安部さんが、たまに話してる様に
ヘタレで緊張しぃで泣き虫なんだろうか。
そんな中澤さんも見てみたい。
ぼんやり、そんなことを考えてると今度は中澤さんが
私の顔を覗きこんで、じっ、と見つめていた。
「おぅわー!!な、何ですかぁ?」
「何って、自分が何ですかぁ、やで。どっかイってたやろ、いま」
クスクス笑いながら頬杖を付くと更にニッと笑って見せた。
「ほんで?」
「はぃ?」
「はぃ?や、あらへんやろ?何か他にも話が有るんちゃうん?
なんや思い詰めた顔してるで、自分」
こわ…。何でわかるんだろう。
そんなにヤバい顔してるのかな、いまの私。
何だか、可愛いと思ったり、ほんの少しトキメイタ心に
一気に水を差された気分になった。
そうだよ、なにトキメイテるんだ、私。
今日、いまから、この人を、狩っちゃうんだよ、私。
「え‥そ、それはぁ…」
「なんや、恋の悩みか?それやったら裕ちゃんに任しとき!」
そう言うと中澤さんは勝手にうんうんと頷くと嬉しそうに私を見た。
- 52 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月22日(木)06時09分39秒
- そっか。じゃあ話そうかな。
このままじゃ埒があかないしチャンスもない。
私は、何で分かったんですか、という顔を作ると
「じ、実はそうなんですぅ」と恥ずかしそうに言った。
中澤さんは、やっぱりなー、と笑うと
「ほんで?告白したいんか?相手は誰なん?裕ちゃん、協力するで〜」
同級生か、いや、もしかして芸能界の男の子かな〜?
と一人で盛りあがり始めた。
私は小さく深呼吸した。
「実は、私、吉澤さんが好きだったんです」
「え……」
ほんの一瞬、中澤さんの目が泳いだのを見逃さなかった。
「そ、そおかぁ。吉澤かぁ…。あいつオトコマエやからなぁ
気持ちわかるわぁ…」
それで、どうするん?告白するんか?
そう聞きながら落ち着き無く煙草を取り出すと一本咥えた。
「あ、煙草ええか?」
ライターでも探してるのか、せわしなくバッグを漁りながら
私と目を合わさなかった。
「あ、いいですよぉ。はい、これ、どうぞ…」
灰皿無いんですみません、と空き缶をテーブルに乗せた。
「おっ、すまんなぁ。そうやんな、高橋の部屋に灰皿あったらヘンやんな」
ハハハと笑った声が虚しく響いた。
広くない部屋が沈黙に包まれた。
- 53 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月22日(木)06時23分51秒
- 「それで?」
最初の一口を深く吸い込むとゆっくりと煙を吐き出しながら
小さく呟いた。
「あ、それでぇ、実は告白したんですよ、前の人と別れたって聞いたんで」
私は出来るだけ淡々と話した。
「でも最初は断られたんです、別れたばっかだからって…」
中澤さんは二本目の煙草を手にしていた。
ペース速いですよ、中澤さん。
歌手なんだから喉を大事にしなきゃダメですよ。
「それでも諦められなかったんです…
だから私、聞いたんです、吉澤さんに…
待ってても良いですかって…
私にもチャンスありますかって…そしたら…」
「そしたら、吉澤は何てゆうたん…」
掠れた声で中澤さんは聞いた。
私はその質問には答えずに全然違う事を聞いてみた。
「中澤さんは浮気って何だと思います?」
中澤さんは私の唐突な質問に、ん、と顔を上げてこっちを見たけど
すぐに目を逸らして、それでも答えてくれた。
「ん…、心が動いたら、かな…」
「でも誰でも心が動くときってありますよね
じゃあ、食事はどうです?ご飯を一緒に食べたり、
お酒を飲みに行ったりするのは?」
- 54 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月22日(木)06時28分40秒
- 「んん…。高橋の考え方やったらセーフなんかな」
「じゃあ、ホテルに行くのは?」
中澤さんは苦しそうに唇を湿らせると唸る様に言った。
どうしたんだろ。
「そら、完璧に、アウトやな」
「そうですよね。すいません、ヘンなこと聞いて。
えっと、どこまで話ましたっけ…。
あぁ、そうそう。吉澤さんが何て言ったか、でしたよね」
中澤さんは黙ってた。
「そしたら吉澤さん言ったんです、いまは誰も好きになれないって…」
「そうか…」
中澤さんは天井に向かって煙を吐き出し短くなった煙草を空き缶に落すと
すぐに次に煙草を咥えた。
だからペース速いですって中澤さん。
「私、聞いたんです、どうしてですかって…
そしたら吉澤さんは言いました。
ずっと前から好きな人がいるって…」
だから、ごっちんともダメになっちゃった―。
あたし、ごっちんのことすごく傷つけちゃったんだ。
だから、あたしには他の誰かを好きになったり付き合ったりする資格無いんだよ
- 55 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月22日(木)06時35分07秒
- そう言って吉澤さんは自嘲気味に笑った。
私は、その時の吉澤さんの顔を思い出した。
本当に淋しそうな何かを堪えるような、らしくない笑顔。
だから私は聞けなかった、吉澤さんの好きな人が誰なのか?
まぁ、聞いても教えてくれなかったと思うけど。
でも、それは暫らくしてすぐにわかった。
もっとも、それがわかったのは私だけだと思うけど。
吉澤さんとそんな話をした数日後、ハロモニの収録があった。
久しぶりにみんな揃ってゲームだった。
私たち13人がスタジオに入り、少し遅れて中澤さんが入ってきた。
- 56 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月22日(木)17時01分28秒
- 今日はじめて読みました。
すごくおもしろくて、更新が待ち遠しいです。
- 57 名前:名無しるーしー 投稿日:2002年08月23日(金)15時53分00秒
- 来ちゃいました!
うを!吉が・・・?
なんか、なかざーさんの仕草の描写とかすげーいいっすねぇ!
タバコ吸うなかざーさんに萌え(なぜ?)
よくわからんツボですみません。
楽しみに楽しみにしときますです。
- 58 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月25日(日)05時28分37秒
- あああああ…。
レスお返しするの思いっきり忘れてました。
すみません。
最近ボケボケなんです。
と、言い訳しつつ…。
お待たせしてすみませんでした。
47 名無し読者さま
かなりマイペースですがお付き合いください
48 名無し読者さま
ありがとうございます。頑張ります。
49 名無し読者さま
首伸びちゃいませんでしたか? すいません。
- 59 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月25日(日)05時32分43秒
- 「おはよーさーん」
「おはようございます!」
「おはよー、裕ちゃん」
「遅いよー、裕子」
皆、それぞれに挨拶を返す。
その時、あれって思ったんだ。
たくさんの声に混じっていつもより少し高めのあの人、吉澤さんの声。
何て言うか半オクターブ高め、いつもよりちょっぴり上ずった様な声。
もしかして―。いや、まさか、ね。
考え過ぎだよね。
馬鹿げた考えだと、打ち合わせに集中することにした。
それでも無意識に吉澤さんと中澤さんを交互に目で追ってしまってたみたいで
石川さんに注意された。
「ちょっと高橋、集中してよねー。今日は絶対負けられないんだから」
「あ、すいません…」
何で負けられないんだろう。
- 60 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月25日(日)06時20分40秒
- 「まぁた、吉澤さん、見てたんでしょう。結構しつこいよね、愛って」
後ろから声が掛かる。
麻琴ちゃんだった。
ふふっ、と意地悪っぽく笑いながら強引に私に肩を組むと
耳元に口を寄せて内緒話をする様に小声で言った。
「なんかさ、賭けてるらしいよ。
こっち(のチーム)が勝ったら石川さんの家に吉澤さんを呼ぶんだって」
そう言って吉澤さんチームを見る。
麻琴ちゃんも吉澤さんチームなんだけど。
向こうでは吉澤さんと後藤さんが額を付き合わせて何やらクスクス笑い合ってた。
別れた、傷つけちゃった、って言ってたのにあんなに普通に接する事が
出来るなんて。
私にはわからない。
それに後藤さんの笑顔は何だか痛々しくて私は見ていられなかった。
後藤さんにあんな笑顔をさせるほどの吉澤さんの好きな人って誰だろう。
結局、思考はそこへ行きついた。
私がそれを知ったところでどうにもならないけど。
「あーい!なに、ぼーっとしてるんだよぉ」
「べつにぼーっとなんかしてないよ。
それより勝手に呼び捨てにしないでよね」
- 61 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月25日(日)06時25分53秒
- 「いいじゃん、別に。あたし、愛のことが好きだもん」
「な、何言って…!そんなのあさ美ちゃんが聞いたらヘンに思われるよぉ」
「なんでさー、別にいいじゃーん
て言うか何であさ美ちゃんがでてくんの?」
「もう、知らないっ」
そっぽを向いた私の顔を覗きこんで、
愛ちゃーん、あーいー、あいごろー、なんて言ってるから加護さんが
こっちを見てる。
目が合った麻琴ちゃんは、加護さんにエヘヘと笑って
手を振りながらまた小声で言った。
「ねぇ、あたしたちも賭けよっか、あさ美ちゃんのこと…」
「な、なに勝手なこと言ってんの!?
あさ美ちゃんの気持ちはどうなるのさ!?」
「じゃあ、あさ美ちゃんが良いって言ったらいいワケ?」
「だ、誰もそんな事言ってない…それに私は吉澤さんが…」
「そっか。じゃあ、あたしがあさ美ちゃん貰ってもいいんだね」
「あさ美ちゃんはモノじゃないし…」
良いも何も訳分からないこと言わないでよ、麻琴ちゃん。
「なに?呼んだぁ〜?何の話してるん?」
加護さんが泳ぐように私と麻琴ちゃんの間に入って来た。
「あのですねー、愛ちゃんと賭けをしてるんですよ」
なにっ!乗るって言って無いってば!
- 62 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月25日(日)06時30分18秒
- 「へぇー、何賭けてるん?」
「お互いの好きなものです」
「えー、何やろ?あ、ちょっと待ってや。当てるから…
まこっちゃんの好きなもんはカボチャやろ…甘いモンやろ…
愛ちゃんは何やっけぇ? んー…」
「はい、時間切れでーす。残念でしたー」
「うわっ、ずっるー。モーニング娘で隠し事はあかんねんでぇ」
「じゃあ、賭けが成立したら教えてあげます」
絶対やでー。ところでカボチャと加護ちゃんって似てるよなー。
と言いながら加護さんは去って行った。
「もうっ、麻琴ちゃんっ…」
そう言って抗議しようとしたときだった。
スタジオの片隅で台本のチェックをしていた中澤さんが声を上げた。
「あれぇ、ここはどうなってんの?
なぁ…?なぁって!うぉーい、誰かぁ…。無視せんといてーな」
保田さんがちらっと矢口さんを見たけど矢口さんは安倍さんと話してて
気付いてないみたいだった。
すると吉澤さんが後藤さんからすっと離れて中澤さんのところに行ったのだ。
「あぁ、すまんなぁ、吉澤。あのな、ここのとこな…」
「あぁ、これはですねぇ…」
何だろう、やっぱり吉澤さんの声、上ずってない?
- 63 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月25日(日)06時36分36秒
- 何となく二人の様子を見ていたら吉澤さんが台本に指で字を書き出した。
中澤さんは一文字、一文字、うんうんと頷きながら見ていた。
吉澤さんが最後にくねくねと何やら書くと中澤さんは、こらっ、と
げんこつを作りこつんと叩く振りをした。
なんだか、すごくなごやか。
そんな二人を周りの人は気にしない。
いっつもこんなだっけ?
んー、それにしてもやっぱり、もしかして吉澤さんの好きな人って…?
だけど、それからすぐに収録が始まって私はそれ以上考えるのを辞めた。
スタッフの始まりの声に皆わたわたと所定の位置に散って行く。
今日はもうすぐ始まるミュージカルの練習の間の分を撮り溜めする為に
一日中、カンヅメだ。集中しなければ。
そして、何本かのゲームとコントを撮り終えて昼食、休憩、衣装替えを兼ねて
2時間ほど空き時間が出来た。
2時間空いたら何をする?
私、高橋愛は寝ます。
慢性的な疲れも有るけれど午後からはゲームやクイズがてんこ盛りだった。
体力は自信有るけど(なんてったって若いし)頭も使う。
- 64 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月25日(日)06時41分38秒
- それに今日は初っ端から吉澤さんと中澤さんに気を取られて石川さんに
注意されるし、麻琴ちゃんにはあさ美ちゃんのことでヘンな絡まれ方を
するし何となくヤな感じ。
コントは相変わらず緊張しまくってすでにくたくただった。
さっそく、ガヤガヤと控え室に戻って冷えた仕出し弁当を広げる。
「こーんの、このシュウマイいらないんだったら1個ちょうだい」
あっ、安倍さんってば。箸突き刺しながらちょうだいって言われたら
あさ美ちゃんも、どうぞって言うしか無いじゃないですか。
「あさ美ちゃん、いらないんだったら、このお豆ちょうだいね」
って、麻琴ちゃん、あさ美ちゃんはいらないんじゃなくて
食べるのが遅いだけだよぉ。
それでも、あさ美ちゃんはニコニコ笑って、うん、いいよぉ
なんて言ってる。
私は無言で麻琴ちゃんを睨むと自分の分からあさ美ちゃんの方に
甘ーい豆をばさっと入れてやった。
もうっ!あさ美ちゃんヒト良すぎ。
理沙ちゃんは、せっせと麻琴ちゃんに自分の豆を分けてあげてる。
麻琴ちゃんはオーバーに、サンキューなんて言いながら理沙ちゃんに
ヘッドロックかけてる。
どういう感謝の仕方だろ。
理沙ちゃん、喜んでるし。
- 65 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月25日(日)06時46分40秒
- 辻さんは、いいなぁ、辻も豆欲しい、なんてポッキーをカリカリしながら
(つまり、もうお弁当を食べ終えたのだ)それを見てるし、
加護さんはあさ美ちゃんの食べ方を観察(?)してる。
そんなこんなで慌しく昼食をかきこむと皆、机に突っ伏して仮眠をとったり
お喋りしたり、モノマネしたり、雑誌を読んだりとめいめいの休憩に入った。
私も即効、寝ようと思ったけどその前にトイレに。
控え室のすぐ前のトイレと廊下の一番奥に有るトイレと、
私は奥の方を選んだ。
私たちの控え室から3つほど隣に
中澤さんの控え室が有りその奥が私の目的地。
その前を通った時だった。
「…っあ…あぁっ…」
低く噛み殺したような呻き声が聞こえた気がして私は立ち止まった。
目の前は中澤さんの控え室。
思わず耳を澄ます。
それは確かに聞こえた。
「…ん…あぁっ…っく…」
中澤さんの声だ。
まだ仕事中だというのに、こんな時間にこんなところで、こんなことを。
相手は誰なんだろう。
覗きなんて見つかったらどうなるのか、
そう思いながら15歳の好奇心には勝てなかった。
私はドアに手をかけた。
- 66 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月25日(日)06時50分40秒
- なんか、ただひたすらだらだら続いてます(汗
ここまでをまとめると
中澤裕子が行方不明になった。
マスコミ各社は大々的に報道し取材も過熱気味だった。
色んなゴシップも流れた。
中澤さんの家族、事務所から捜索願が出され
熱心に捜査されたが、結果、疑わしい事も無く捜査は打ち切りに。
捜索打ち切りにメンバー達は落胆したが
ハロプロ、モーニング娘。としての大仕事、ミュージカルの練習が
始まるという事で、中澤が観に来てくれることを信じて一致団結する。
そんな練習の続いたある日の帰り道で紺野あさ美が中澤さんについての
新たな事実を知る。さらにそれについて何か知ってるらしい矢口を
手伝わないかと誘われるが高橋は危険だと紺野を諭す。
しかし紺野の思いを知り条件付で手伝う事にする。
そして、今の状況は高橋にとってかけがいの無いペットを胸に抱きながら
そのコを手に入れたときのことを回想中―。
で、さらにそのきっかけになる出来事を回想中―。
つまり回想しながら回想中―。
分かりにくくてすいません。
つまり―。
まだ一日終わって無いわけで…(冷汗
すいません。
キリキリ進めます。努力します。
でも予定は未定で(略
- 67 名前:ウルフ 投稿日:2002年08月25日(日)07時02分55秒
- 56 名無し読者さま
ありがとうございます。
更新、がんがります。
57 名無しるーしーさま
吉、登場です。
なかざーさんいいっすか!?
萌えて頂いてありがとうございます(w
あ、あまり楽しみにしないでください(ぼそ
送信履歴、怖くて見れない(w
- 68 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月30日(金)02時31分41秒
- 黒たかイイ!
サイコなたかが新鮮です。
- 69 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月30日(金)12時36分22秒
- 全然わかりにくくないですよ。むしろ読みやすい。
5期メンの関係も気になってくるし・・・ちょっと前に出てた、(メール欄1)って、
(メール欄2)のことだったんだ。
- 70 名前:やぐちゅ〜みっちゅ〜狂患者 投稿日:2002年09月08日(日)17時20分36秒
- PCの調子いかがですか〜?
黒愛、ヒットですよ〜
それにしても裕ちゃん、何故にラブリーの言いなりに?
- 71 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月24日(火)16時50分19秒
- えっと、待ってます。がんばって下さい。
- 72 名前:ウルフ 投稿日:2002年09月26日(木)17時27分14秒
- 1ヶ月以上も更新停めてしまいました。
すいません。
PC入院&個人的にごちゃごちゃありまして(ボソボソ
と、ごちゃごちゃ言い訳は止めて明日、更新します。
レスありがとうごいます。
正直、見捨てられてるかもと思ってたので嬉しいです。
レスのお返しも明日させて頂きます。
- 73 名前:ウルフ 投稿日:2002年09月27日(金)18時19分53秒
- 鍵は掛かってなかった。
細く空けたドアの隙間から中を窺う。
一番奥の壁際に置かれたソファに二人はいた。
相手は誰だろう。
中澤さんの控え室に入れるという事は業界の人だろうか。
誰にしても中澤さんの彼氏には違いないんだろう。
皮張りのソファがぎしりと軋む。
ソファに咲く中澤さんの紅いスーツ。
タイトなミニスカートは腰の上まで捲くれ上がり
ジャケットは床に放り投げられた。
その周りに乱雑に脱ぎ捨てられた紅いハイヒール。
左の足首にはストッキングとショーツが引っ掛かったままだ。
中澤さんは足を大きく広げさせられ、自分の両腕で顔を隠していた。
「ゆうこ、手、どけろ。顔見せろよ」
「なぁ、もう堪忍してぇな…衣装が皺になってしま…あっ‥んっぅ」
ソファの横には床に座りこんで中澤さんの胸を鷲掴みにし
下腹部を弄んでいる人物。
身間違えるはずは無い、あれは…。
- 74 名前:ウルフ 投稿日:2002年09月27日(金)18時24分53秒
- 矢口さん。
凄い。
本物のレズだ。
中澤さんと矢口さんは本物だったんだ。
私は、自分も同性である吉澤さんに熱を上げているのも忘れて
興奮していた。
中澤さんの吐息一つ聞き漏らさない様に聞き耳を立てる。
「なぁ、お願いやから、も‥やめ…やぁ…」
「ヤダよ、止めない。ゆうこ、こんなに感じてんのに。
ねぇ、矢口に見せてよ、ゆうこの感じてる顔」
矢口さんは、さして抵抗もしない中澤さんの両手を
あっさり外すと片手でソファに押さえつけた。
反対の手は中澤さんを弄んだまま。
くちゅり、と淫らな蜜の音が響く。
「ほら、聞かせてよ…ゆうこの声、もっと」
「あっぁあ…ん‥いやぁ…誰か来るよぉ…」
普段は聞いたこともない矢口さんの低い声。
中澤さんの熱っぽい声。
「いいじゃん、聞かせてやれば。アイツとか…」
矢口さんはくすくす笑いながら手の動きを早める。
アイツ?
「んぅっ…く、ぁあ…それはいや。・・・だけには‥」
「バレるの怖い?ゆうこはいっつもそうだよね。
矢口といてもアイツのことばっかり…」
矢口さんは悲しそうに言うと中澤さんに顔を寄せて
口付けようとした。
でも、中澤さんは顔を背けてそれを避けた。
- 75 名前:ウルフ 投稿日:2002年09月27日(金)18時29分04秒
- 「ちっくしょう…!何でだよ!なんで矢口じゃだめなんだよ!」
矢口さんは小さく叫ぶと中澤さんを大きく突き上げた。
何度も、何度も。
その度に中澤さんの体は、腰は大きく跳ね上がる。
「あぁっ…や、やぐちぃ…くっ‥…もう‥ぃく…いかせて…」
「まだだよ。まだ、だめだよ、ゆうこ。
ほら、立って。こっち来て…」
矢口さんは中澤さんを立たせると無理矢理、鏡の前に連れてった。
そして顎を掴んで顔を上に向けさせる。
「ほら見ろよ、ゆうこ。イヤラシイ顔しちゃって…
これが、ゆうこのホントの顔なんだよ。
ほら、目を開けてちゃんと見ろ!」
「うぅっ…いやぁ‥もう、いや…お願い…許して…」
矢口さんは中澤さんのお願いなんか無視して
スカートを捲り上げると下半身に手を進めた。
「なぁ、もう言えばぁ、アイツに。
ゆうこは、こうやって矢口に抱かれてますってさぁ…」
「あぁぁぁっ…んっ‥いやぁぁっ」
一際高い中澤さんの声。
すんげぇ。
どうやったらあんな声出るんだろ。
昔、友達と見たビデオもあんなんだっけ。
- 76 名前:ウルフ 投稿日:2002年09月27日(金)18時30分13秒
- 「いやじゃないだろ。ゆうこのココ、こんななってるよ、ほら…」
矢口さんはその手を中澤さんの目の前にかざすと
次に自分の鼻先に持っていった。
「んん…ゆうこの匂い…ほら‥」
くんっと匂いを嗅いだ後、また中澤さんの顔の前にその手を
持って行って鼻先に擦り付けた。
「んぅぅ…いやっ」
中澤さんはイヤイヤと首を振る。
そんな事をしてる間にも矢口さんの手はまた、中澤さんの下腹部を
弄ぶ。
身長差が有るせいでちょうど中澤さんの腰の辺りを
矢口さんが抱え込む様にしてるのでどうなってるのかは分からないけど。
「あぁっ…ん、くっ‥はぁぁ…も、あかん…っちゃいそぉ…」
中澤さんの声が途切れ途切れにますます高くなっていく。
「いきそう?ゆうこ、いきそうなの?」
もう声も出せずにかくかくと頷くだけの中澤さん。
いく?
いくってどんな感じ?
初めて見る他人のセックス。
しかも女同士の。
私は思わず身を乗り出して半歩前に出た。
早く。早く…。
見たい、聞きたい。
- 77 名前:ウルフ 投稿日:2002年09月27日(金)18時31分58秒
- 動悸が激しくなり手の平は汗びっしょりだった。
最早、肩で息をする、そんな私の肩を誰かが突然掴んだ。
思わず飛び上がり声を上げようとするその口を塞ぐと
誰かは私をやすやすと抱え上げると運んで行った。
やばい。
見つかった。
覗きを見つかった。
私、モーニング娘なのに。
まだ15歳なのに。
見つかってしまった。
どうしよう。
じたばたと暴れる私を誰かは無言で運んで行く。
その背中に中澤さんの細く高い断末魔のような声が刺さった。
誰かは一瞬、ぴくりと立ち止まって、でもそのままずんずん歩いて行く。
誰?
誰なんですか?
私をどうするつもりなんですか?
このままマネージャーのところに連れて行かれて全て
バラされるのだろうか。
そんなことになったら辞めさせられる…。
後悔と動揺と混乱に乱れた頭で必死に考えても涙しか出てこない。
だが、誰かはすとんと私を降ろすとごく真剣な顔でこう言った。
「覗きなんて良くない趣味だよ、高橋」
- 78 名前:ウルフ 投稿日:2002年09月27日(金)18時54分25秒
- 68 名無し読者さま
ありがとうございます。
ここの高橋は黒いです。
サイコですね、確かに。
69 名無し読者さま
読みやすいですか。
ありがとうございます。
>5期メンの関係…
そうです。メール欄の通りです。
70 やぐちゅ〜みっちゅ〜狂患者さま
PCの調子、なんとか治ったようです。
黒愛ヒット…。<ありがとうございます。
>何故にラブリーの言いなりに?
それは追々…。
71 名無し読者さま
ずいぶん、お待たせしました。
すいません。
頑張ります。
来週、また更新できればと思います。
从 ~∀~ 从<出きればじゃなくて、やれっ!
- 79 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月01日(火)17時53分53秒
- わーい、更新待ってましたっ。
手に汗握る高橋の描写が何かリアルでいいなぁと。
- 80 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月14日(月)18時33分49秒
- 冒頭部で姐さん失踪に、各メンバーの反応が出ているが
よしこがいないのはなぜ?
何か意味があるのだろか?
気になる、気になる
- 81 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月25日(金)03時03分48秒
- 期待sage。
がんばって下さい。
- 82 名前:166 投稿日:2002年11月03日(日)19時40分18秒
- 聞きなれた声。
スタッフの誰かでは無かった事に安心すると同時に
脱力してその場に座り込んでしまった。
安堵の涙が溢れる。
「ご、ごめんなさい、吉澤さ…」
「ちょっ…高橋、ここトイレだよ。座ったら汚い…」
吉澤さんは私を立たせようとするけれどいくら吉澤さんでも
腰の抜けた状態の私では無理だった。
「ごめんなさい。私、覗くつもりじゃ無くって…
そんなんじゃなくって…声が聞こえたからつい…ぅっく…」
吉澤さんは少し眉をひそめると吐いて捨てる様に言った。
「声…?あぁ、声ね。すっげーよな、はは‥」
吉澤さんらしくない投げやりな言い方。
普段から言葉使いは良い方じゃ無いけどもっと違うものを含んでた
悲しみや怒り、嫉妬、蔑み、
私なんかがまだ味わった事の無い様な感情が入り混じった声。
歳は近いけど吉澤さんは私より大人だ。
こうして色んな感情を飲み込むことが出来るようになれば
大人になれるんだろうか?
だったら私は大人になりたくないな。
まぁ、今はそんなことどうでもいいけど。
それよりこの場をどうやって切り抜けるか、そっちのが重大だ。
いつしか吉澤さんが頭を撫でてくれていて私の涙は止まってた。
- 83 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)19時44分34秒
- 「ん…ちょっとは落ち着いた?」
「はい、すみません…」
吉澤さんは私を手洗い場に連れて行くと顔を洗うように言った。
冷たい水で顔を拭うように洗う。
頬から鼻にかけてじっとりと脂ぎっていた。
あんな場面を見ちゃったから。
さっき見た事を思い出してまた、動悸が激しくなる。
私は今更ながら自分のした覗きという行為が恥ずかしくなった。
しかも見つかるなんて。自分が情けない。
「どした?ハンカチ忘れたの?」
顔を拭きもせず固まってる私を不思議そうに覗き込んで
ハンカチを貸してくれた。
「ちょっとさ、風にでも当たって頭冷していこうよ」
洗って返しますと言う私からぐっしょり湿った
ハンカチを取り返すと吉澤さんはニッコリ笑った。
「うぉー、いい天気だー」
屋上に出ると吉澤さんは大きく伸びをした。
私もつられて伸びをする。
ほんと気持ち良いな。
スタジオに篭もってると今が朝なのか夜なのかわからなくなる。
だからこういう瞬間は貴重だ。
しかも吉澤さんと二人きり。
- 84 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)19時48分03秒
- 振り返ると吉澤さんは煙草を取り出し火を点けたところだった。
「なっ…吉澤さん、なぁにしてるんですか!?」
「んー、食後の一服。だいぶ時間経っちゃったから食間か…。
高橋もいる?」
あっけらかんと言う吉澤さんに驚いてると逆に返された。
「何だよ、真面目だな高橋は」
「だってアイドルが煙草なんて…」
すると吉澤さんはにやりと笑った。
「そう?誰かさんよりマシだと思うよ」
誰かさんが私だというのは聞くまでも無い。
何だろう。
もしかして、こうやって悪ぶってみせて
私の罪悪感を薄れさせてくれてるのかなってのは良く考えすぎ?
あ、でも煙草は元から持ってたわけだし。
「ぶつぶつ言ってないでここ座ろうよ」
吉澤さんはフェンスの前に腰を降ろして隣を指差す。
ニ人で並んで青空を仰ぐ。
- 85 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)19時56分57秒
- 「あの、すみませんでした。私、ほんとに、その…」
「もう良いじゃん。それに謝るならあたしに、じゃないでしょ」
「はい、すみません。あ…」
「気にしない、気にしない。でもさぁ気を付けなきゃ駄目だよ。
見つかったのがあたしだからいいけど男のスタッフとかだったら
ヤバイかもよ。どっか連れこまれて覗きを黙っててやるから
服を脱げとか言われたらどうするよ」
「はぁ、洒落になんないですね…」
あり得ないとも言いきれない例えに私は間の抜けたことを
言ってしまった。
吉澤さんは声を上げて笑うと私の頭をポンポンと軽く撫でた。
「まぁ、気を付けてね。
それと、さっき見たことは誰にも言っちゃ駄目」
「は、はい…」
言えるわけないっす…。
それにしても吉澤さんは知ってるんだ、中澤さんと矢口さんの関係。
- 86 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時01分53秒
- 「はぁー、気持ち良いなぁ、このまま寝ちゃいたいくらい」
吉澤さんはもう一度大きく伸びをすると
そのままごろりと横になった。
綺麗な横顔。
でも眩しいのか腕を顔に伏せてしまったから見えなくなってしまった。
もっと見たかった。せっかく吉澤さんとの時間を独り占めなのに。
つまんない。
何か話しましょうよ。
思ったより叱られなかったことで気が緩んで
私は口が軽くなってしまった様だ。
「でもあの二人って付き合ってるんですね、私びっくりしました」
「……」
吉澤さんは何も答えてくれない。
「楽屋であんなこと…しかも女同士で…」
それでも答えてくれない苛立たしさに私は更に続けて言った。
「はっきり言って気持ち悪…」
- 87 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時03分27秒
- 「そんなにオカシイかな、女同士って」
そこでようやく吉澤さんは腕を上げてこっちを見た。
さっき私の頭を撫でてくれたあの優しい顔は何処にも無い。
不機嫌極まりない表情で呟いた。
「女だからって何がイケナイの?それが何か高橋に迷惑かかった?」
「だって仕事中なのに…」
怒らせてしまった。
私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
「今は休憩時間じゃん。
休憩中に何をしようが個人の自由じゃないの?」
「す、すみません…」
「こういうことはさ、その人のアイデンティティーに関わる事だと
あたしは思う。誰かを好きになるってさ…。
そうじゃない?高橋は違う?」
吉澤さんの言ってる意味が分からなくて私は俯いた。
「世の中には同性しか愛せない人もいる。
たまたま好きになった人が同性だっただけかもしれない。
それにそのことで悩んでるかもしれないんだよ。
まぁ、ホントのとこはあたしには分からないけど…」
吉澤さんは置きあがって私の手を掴んで話し続ける。
痛、痛いです吉澤さん。
- 88 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時05分49秒
- 「そういう人達を否定するようなこととか
気持ち悪いなんて言うのはあたしは許さない」
唇を噛んで俯いた私にきつく言い過ぎたと思ったのか吉澤さんは
ふっと表情を緩めると小さく謝った。
「それにさ、好き同士なら欲しくなるもんじゃないの。
時間とか場所とか関係無く…。
まぁ、確かに楽屋でってのはあたしもアレだとは思うけど。
ま、高橋には刺激が強かったかもしれないけど忘れるこった」
「はあ…そうですね…」
またもや間の抜けた声を出した私に吉澤さんはウィンクしてみせた。
「まぁ、中澤さんも安倍さんも大人だし
その辺は気を付けてもらうように 言ってみるさ。
だから高橋もこのあとの収録はいつも通りにしててね」
へぇ、吉澤さんって中澤さんとそんな話し出来る関係なんだ?
どんな風に言うんだろ。
鍵くらい掛けてくださいよ、とか。
声は控えめに、とか?
何か想像すると笑える。
吉澤さんに注意されて逆ギレしそうな中澤さん。
- 89 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時08分37秒
- て言うか安倍…さん?
何で安倍さん?
さっき私が見たのは矢口さんだった筈。
「さー、そろそろ戻ろうか。っとその前にもう一服。高橋もどう?」
懲りずに煙草を勧める吉澤さんから一本受け取ると呆然としたまま
ライターを借りる。
「あーぁ、高橋を悪の道に誘いこんでしまったぁ。
吉澤、責任重大!」
おどけてみせる吉澤さんの声もそぞろに一口、吸いこんでみる。
思いっきり深く。
からい、にがい、くるしい。
「うっ…げほっ、げほっ…」
「ちょっ…大丈夫!?もうやめときな。
高橋、ほんとに吸ったこと無かったんだね」
自分が勧めたくせに慌ててそう言うと私の口から煙草を取り上げて
遠くに放り投げた。
「うぅっ…ごほっ…げほっ…」
「ごめん、ほんとにごめんね。あたしが勧めたから…
大丈夫?このあとの収録いける?」
一生懸命、背中を擦ってくれる手が暖かい。
- 90 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時12分12秒
- 「あの…」
「んっ、なになに?大丈夫?ヤバイ?」
「あ、はい、もう大丈夫です。死ぬかと思ったけど…
でも…」
「ん?なに?煙い?ごめんね」
吉澤さんは私から慌てて体を離した。
2、3歩、後ろずさるとこちらを向いて懲りずに煙を吸いこんでいる。
離れれば大丈夫かなってなもんか。
こういうのニコチン中毒っていうんだろうな。
「あの…さっき中澤さんと安倍さんって吉澤さん言ったけど
付き合ってるのって中澤さんと矢口さんじゃないんですか」
「えっ…?」
驚いて大きく見開かれた目。
吉澤さんってほんとに目が大きいな。
半開きの口から火の点いた煙草がポロリと落ちる。
落ちた煙草は吉澤さんの手の甲にバウンドして地面を転がってった。
「ぅ、あっちぃー!あちっ、あち、あち…!
あ、はは…そう!そうだった!中澤さんと矢口さんだった!
な、何、勘違いしてるんだろう、あたし…」
言い繕うもののその顔には余計なことを言ってしまったという
焦りがありありと浮かんでいた。
その顔に私は確信した。
吉澤さんは中澤さんが好きなんだ。
今日、散々浮かんでは打ち消してきた疑問が解けた。
- 91 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時14分23秒
- 「もしかして中澤さん、二股、ですか」
吉澤さんはこっちを軽く睨みつけて言った。
「だったら何だよ…!それが高橋に何の関係があるの?
誰と誰が付き合ってようが関係無いじゃん。
女同士のことなんて興味無いんじゃなかったっけ」
案の定、噛み付いてきた。
そりゃ好きな人の悪口みたいなことを言われたら腹が立つだろう。
本気でキレかけてる。
吉澤さん、怒った顔も綺麗。
「ありますよ。高橋は吉澤さんが好きだから。
前にも言ったじゃないですか。
高橋はいつも吉澤さんのこと見てますよ。
でも吉澤さんの好きな人は…」
「言うなっ!言うなぁっ!そんな筈無いよ…」
皆まで言わせずに叫び最後は弱々しくがっくりとうな垂れた。
「もしかして中澤さん、みつ…」
「お願いだからそれ以上言わないで…
そんなんじゃないよ…そんなはずない…」
ふらふらとよろめく吉澤さんをしっかり支えると抱き締めた。
吉澤さんのココロを捕まえるなら今しかない。
- 92 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時18分10秒
- 「大丈夫です、吉澤さんには高橋がついてますから」
これから収録の続きがあるから泣くのを我慢してるんだろう、
吉澤さんは唇を噛み締めて空を仰いでいた。
こんな時でさえ凛々しい。
背中に廻した手でそっと撫でてみる。
吉澤さんはしばらくじっとしてたけど不意に私の手をほどいて離れた。
「ごめん、かっこ悪いとこ見せたね。
高橋のおかげで落ち着いたよ、ありがとう」
そう言って私の前髪を掻き揚げて額にキスした。
そして突然のことに真っ赤になる私にデコピンして笑った。
「感謝のシルシ。高橋がいなかったら泣いてたカモ」
いや、私がこんなことを言わなければ吉澤さんが苦しむことは無く
吉澤さんの勘違いで済んでた筈なんだけど。
それは言わないでおこう。
「あっ、やべーっ!もう行かなきゃ!リーダーに怒られる
説教は嫌だー!」
吉澤さんは腕時計を覗くと大慌てで私の手を掴んで走り出した。
「高橋、しっかりついてこい!やべーぞ」
「やべーっすね」
けらけら笑い合いながら必死でスタジオに滑り込むと皆もう集合してた。
っと、中澤さんだけがまだ来てない。
- 93 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時19分41秒
- きょろきょろしてたら飯田さんと目が合ってしまった。
おいで、と手招きされる。
やべーっ、説教かな。
ちょっと眉間に皺を寄せた感じで綺麗な人がこういう顔をすると怖い。
のろのろと飯田さんに歩み寄ろうとしたとき
吉澤さんが私の前を横切って飯田さんに近づいた。
「はい、ハニー遅れてすまなかったね」
「もう、ダーリン、かおり待ちくたびれたわ
かおりを待たせるなんて罪な人」
「ごめんよ。ハニーのこと考えてたら時間の経つのが早くって」
「そんなこと言ってどこかで浮気してたんじゃないの。かおり悲しい…」
いきなり始まる小芝居。
こ、これが噂に聞く…。
何か見ててこそばゆい感じ。
でも吉澤さんのおかげで飯田さん、説教のこと一瞬で忘れたみたい。
助かった。
- 94 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時23分22秒
- こっそりその場を離れようとしたところを後ろから
安倍さんに呼び止められて飛び上がった。
「なぁに、そんなに驚かなくていいでしょー。
あ、そうそう裕ちゃん見掛けなかった?」
「い、いや、知らないです。矢口さんの方が知ってるんじゃないですか」
あっ、めちゃくちゃ余計なことを言ってしまった…かも。
吉澤さんの肩がびくりと反応した。
普通にしようと思ってたのにいきなり話し掛けられたせいで
絶対挙動不審だ、私。
だけど安倍さんはあっさり向こうへ行って矢口さんに話し掛けた。
吉澤さんの肩がほーっと下がる。
「やぐちぃ、裕ちゃんは?さっき楽屋に行ったんでしょ?」
「ん?あぁ…裕子は、寝てたよ」
矢口さんは全く表情を変えずに答えた。
「えー、寝てたのぉ?じゃあ矢口、何してたのさぁ?」
安倍さんの声のトーンは変わらないけどナニをしてたか?の核心に
触れる会話に吉澤さんの肩がまたびくんと上がる。
- 95 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時25分55秒
- 矢口さん何て答えるんだろう。
修羅場?
血を見る?
「ナニしてたと思う?」
矢口さんは声を潜めるとにやりと笑った。
えっ、マジ?
矢口さんもしかして言っちゃうんですか。
「裕子の…」
「あーっ!や、矢口さん元気ですか?いぇーい!」
吉澤さんが割って入る。
「ちょっと、よっすぃーうるさいよ。
矢口、いまなっちと話してるんだから」
「でもっ…」
「でもじゃないでしょ。人の話の腰折らないの」
「はい…」
矢口さんは吉澤さんをあっさり黙らせると言った。
「裕子の…持ってきたエロ本読んでましたー」
「マジで?もう裕ちゃん、やだぁ。そんなの持ってくるなんて」
あははと笑い合う二人は全然普通で。
安倍さんは矢口さんのこと一点も疑って無さそうな顔をしてる。
とりあえずほっと胸を撫で下ろす。
吉澤さんと目が合う。
『ヤバかったねぇ』
唇で会話する。
その唇の動きにさっきのキスを思い出して顔が熱くなってきた。
あぁ、ヤバい。ニヤけそう。
- 96 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時27分11秒
- 「ちょっと愛ちゃん、顔真っ赤やで。何かニヤけてるし…やらしいなぁ」
いつのまにか加護さんが隣にいてにやにやしてる。
恥ずかしい。加護さんはいつもこっそり人のことを観察してる。
油断ならない。
いや、加護さんのことはかなり好きなんだけどね。
「ニヤけてないよぉ、加護ちゃんの方がニヤけてるよー」
「嘘やぁ、いま絶対、愛ちゃんエロ本に反応してたわ」
あさ美ちゃんもエロ本に反応したのか向こうで麻琴ちゃんと肘を突付きあってる。
そこへようやく中澤さんがやって来た。
「何か楽しそうやな加護ちゃん。何の話し?」
「えーと、中澤さんのぉ…」
「ん、うちのこと?何やの、教えて高橋」
えーっ、私に聞かないでくださいよぉ。
「えっと…」
- 97 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時29分05秒
- そこへ安倍さんが飛んで来た。
「もう、裕ちゃん遅いよぉ。何してたのさぁ?」
「ん、ちょっと歯が痛くてな…」
「で、寝てたの?」
「え…あぁ、そう。歯が痛くて寝てた…」
「もう、裕ちゃん、いい加減歯医者行かなきゃ駄目だよ
歯が痛かったら寝るに寝れないでしょ。
あ、そうだ!なっちが通ってる歯医者さん、連れてってあげる!
ね!行こ!今日行こ!はい、決りィ!」
そう言って安倍さんは中澤さんの腕にぴょんと掴まると
ぶら下がるようにして嬉しそうにニコニコと中澤さんの顔を見上げた。
年上の女性にこんなこと言うと失礼かもしれないけど
安倍さんのこういう仕草ってすごく似合う。
二十歳過ぎてると思えない。
中澤さんもそんな安倍さんの笑顔につられて笑ってる。
優しい笑顔。
中澤さん、こういう顔して笑うんだ。
ふーん…。
- 98 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時30分14秒
- 「んー、でも、ほら歯医者って予約せなあかんやん。
だから今日は無理やろ」
「大丈夫だよ、初診は予約無しでもいけるよ。
あっ、裕ちゃん、もしかして怖いんでしょ!
もう子供なんだからぁ。
なっちがついて行ってあげるって言ってるでしょ。
だから行こう、ね!」
「わかった、わかった。なっちには敵わんなぁ」
押しまくる安倍さんに苦笑しながらくしゃっとその頭を撫でる
中澤さんの眼差しは本当に愛しいものを慈しむような柔らかくて
暖かいもので私は訳がわからなくなった。
中澤さんの好きな人は安倍さん?
二人は付き合ってるみたいなことを吉澤さんは言ってた。
否定してたけど。
だけどさっきは矢口さんとあんなことを…。
中澤さんは嫌がってたぽいけど。
それに吉澤さんのあの取り乱した様子。
吉澤さんとも何かあるみたいだ。
中澤さんってどういう人?
- 99 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時31分10秒
- それにしてもさっきの矢口さんもそうだったけど中澤さんも
安倍さんと話してても全然表情が変わらない。
もし本当に中澤さんと安倍さんが付き合ってるとして動揺が微塵も
見られないというのはかなりの演技派だ。
何も知らずに笑ってる安倍さんが少し可愛そうになってきた。
てゆーか怖い、二人とも。
中澤さんも矢口さんも。
ほどなく収録が始まったけど私の頭の中は中澤さんのことで一杯で
相変わらずコントもクイズもゲームもぐだぐだだった。
- 100 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時33分05秒
- 収録が終わり5期の皆と帰りのエレベーター乗り
動き出したところで私は忘れ物に気付いた。
「あ、忘れ物した。取りに行ってくる」
前に立つあさ美ちゃんの肩越しに次の階のボタンを押す。
「あ…」
なぜかあさ美ちゃんが顔を赤くして俯いてしまった。
え、なに?
言いかけて気付いた。
一瞬、あさ美ちゃんを抱き締める形で腕の中に閉じ込めたことに。
「あ、ごめん…」
「うぅん。あ、ついて行こうか、忘れ物…」
「いや、いいよ。下のロビーで待ってて」
「ん、わかった」
あさ美ちゃんが顔を赤らめたままだから、ついぎこちなく話す私を
麻琴ちゃんはにやにや笑ってみてる。
やばい、何か言いそうな顔だ、あれは。
- 101 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時34分28秒
- と思ったらやっぱり言った。
「愛ってさ、気が多いよね」
「なっ…!ちょっと麻琴、変なこと言わないでよ…」
抗議しようと思ったけどエレベーターが着いてしまった。
まだ言い足りない私を里沙ちゃんが押し出す。
「はいはい、愛ちゃん、下で待ってるから早く行ってきてね」
「もう、里沙ちゃん…」
扉が閉まり始めた瞬間、麻琴ちゃんが私の腕を掴んだ。
体を半分乗り出して私の耳元に囁いた。
「さっき、休憩の時、吉澤さんと何してたの?
今度教えてよね」
はい?
やだ絶対、教えない!いーっだ!!
思いきりあかんべーをする私に悪戯っぽく手を振る麻琴ちゃんの
後ろで私を見つめるあさ美ちゃんと目が合った。
あさ美ちゃん絶対誤解してるよ。
違うって言いかけた私の前で再び扉は閉まった。
- 102 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月03日(日)20時35分32秒
- 何が違うっていうんだろう。
わからないまま階段の方に向かった。
仕方ない。
早く降りてってとにかく誤解を解かなければ。
階段を5、6段駆け上ったところで話し声に気付いた。
「だからぁ、今日は約束があるんだよ…」
「誰と…?」
すぐ上の踊り場で吉澤さんと。
「だ、誰だっていいじゃん。
なんでそこまで梨華ちゃんに言わなきゃいけないの…」
「何でって…」
何か声が湿っぽいけど石川さん?
よっすぃ、最近冷たいよ、なんて涙声になってる。
えっと…。
何か込み入ってるみたいだしここはスルーした方が良さそうだ。
そう思って踵を返した瞬間、
「あっ、高橋!探してたんだよ」
吉澤さんに見つかった。
んん?探してた?
「じゃあ、梨華ちゃん、そういうことだからごめんね
今度、また付き合うから!」
そう言うと吉澤さんは階段を降りてきて私の手を取って
物凄い勢いで走り出した。
「ちょっと、よっすぃ…!」
不満そうな石川さんの声を振りきっていつもと違う玄関から
出たところでようやく吉澤さんは止まった。
- 103 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月04日(月)00時54分09秒
- なんか気になる・・・
紺野のことの高橋の様子もw
吉澤と石川も・・・
- 104 名前:ウルフ 投稿日:2002年11月04日(月)11時58分24秒
- 1ヶ月以上の放置申し訳ありませんでした。
多めに更新しましたがその割に内容がぐだぐだです。(冷や汗
レスのお返しです。
>>79 名無し読者さま
高橋、リアルでしたか。
そう言って貰えると嬉しいです。
>>80 ひとみんこさま
>冒頭部で姐さん失踪に、各メンバーの反応が出ているが
>よしこがいないのはなぜ?
あまり深い意味は無いかもしれませんが、また違う場面で書くつもりですので。
思わせぶりですいません。
>>81 名無し読者さま
>期待sage
ありがとうございます
>>103 名無し読者さま
レスありがとうございます。
気になることが一杯だw
こんなにややこしくして収拾つくんでしょうか
从#~∀~#从 <自分で言うてたら世話無いな。
川’ー’川 <…だな。
- 105 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月19日(火)02時00分00秒
- ぬぉーーおもしろい(w
続き待ってます
- 106 名前:77 投稿日:2002年11月21日(木)13時38分31秒
おもしろい!!
ミステリアスでまだまだわからない事だらけですね〜。
続き、かなりきになっているんで更新頼みます。
- 107 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)23時25分44秒
- ひっそりと期待・・・
- 108 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月02日(木)20時03分41秒
- 続きがきになる〜。
中澤さんはこれからどうなるの〜!?
再新まってます〜。
- 109 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月01日(土)16時25分18秒
- 続きまだかな〜?
- 110 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月16日(日)19時17分58秒
- そろそろ続きを・・・。あきらあめないで(笑)待ってます。
- 111 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月19日(水)16時20分01秒
- 保全
- 112 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月07日(金)18時59分43秒
- 続きが読みたいです
- 113 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月21日(金)15時31分50秒
- 保全
- 114 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月02日(水)13時28分28秒
- age
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月23日(水)16時56分16秒
- 保全
- 116 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月14日(水)11時10分55秒
- 保全
- 117 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月24日(土)19時14分02秒
- 118 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月03日(火)02時17分58秒
- 119 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月12日(木)00時25分00秒
- 120 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月22日(日)01時30分06秒
- ♫
- 121 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月27日(金)23時45分18秒
- 続きは期待しても無駄なのでしょうか・・・
- 122 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月21日(月)10時54分01秒
- 保全!
- 123 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月05日(火)15時30分32秒
- 続き期待 保全
- 124 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/09(火) 03:22
- hozen
- 125 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/25(木) 15:02
- 保全
- 126 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/14(日) 22:04
- 保全
- 127 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/06(火) 15:07
- 保全
- 128 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/30(金) 21:34
- 保全
- 129 名前:ウルフ 投稿日:2004/02/08(日) 07:07
- あぅ。。。
長いこと放っといてごめんなさい
冠婚葬祭その他悲喜こもごもありまして・・・
もし許して貰えるなら続きを書きたいと思います
- 130 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/12(木) 22:38
- 読みたいです。続き気になります。
いつまででも待ってますから、作者さんの
ペースで書いてください。がんばってください。
- 131 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/13(金) 02:05
- >>129
待ってたよ。マイペースに書いてください。
- 132 名前:始まりのこと 投稿日:2004/02/17(火) 11:33
- 「裕ちゃん、わたしね、やっぱり結婚したい」
あの日、仕事の帰りにいつものように彼女の部屋へ行き
いつものようにシャワーも浴びずに抱かれたあと
いつものように私の髪を撫でながら彼女はそう言った。
別れ話だとわかりすぎるほどの直球に私は力なく笑った。
「そんなん、女同士で結婚できるわけないやん…」
「わたしは真剣に話してるんだよ、茶化さないで真面目に聞いて」
ふぅ…。
大きく息を吐くと私は固く目を閉じた。
彼女の次の言葉は想像がつく。
はたして彼女は言った。
「わたしね、やっぱり子供が欲しいの」
ほら、やっぱり―。
女の私にこんな残酷な願望を話しながら
彼女はなおも私の髪を愛しくて仕方ないように撫で続けた。
- 133 名前:ウルフ 投稿日:2004/02/17(火) 11:41
- 一見無関係な話から再開――。
頭をほぐすためにこういう感じで。
正直1年ぐらい前から娘に関しては時間が止まっています
TVもほとんどチェックできなかったし
6期はいまだに顔と名前が一致しな(ry
田中は覚えましたが。
なので読んでくれる人も時間が巻き戻ること請け合いw
- 134 名前:ウルフ 投稿日:2004/02/17(火) 11:43
- レス忘れました
>>130-131
ありがとう頑張ります
- 135 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/26(木) 12:07
- 復活ですか?!
待ってました!!
- 136 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/27(火) 22:36
- まってます
- 137 名前:七誌さん 投稿日:2004/07/04(日) 19:42
- 更新待ってます。
作者さん、ガンバ!!
- 138 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/18(日) 02:47
- お待ちしております。
Converted by dat2html.pl v0.2