インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板

On a Rainy Day

1 名前:jack 投稿日:2002年07月05日(金)10時00分59秒
吉澤主役の痛めの話書きます。
よろしくお願いします。
2 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月05日(金)10時26分08秒
「今、何て言ったの?」
 
 外では雨が降っていた
 まっ黒な雲がウチらの部屋までも
 闇に変えていた

「ワタシタチ」

 まるで昔見た映画のワンシーンみたいに
 すべてがゆっくりとスローモーションの様に動く

「モウ」

 雷の光が一瞬だけ彼女の表情を
 明るく照らし出す
 うっすらと笑う唇
 細く体温を持たない瞳
 
「ワカレヨウヨ」
3 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月05日(金)10時32分20秒
久しぶりに見たあの時の夢は
相変わらずウチを闇の中へと引きずり込む
べットの上で膝を抱えて
部屋中の電灯をつけて
それが通り過ぎて行くのをじっと待つ
いつまでも、いつまでも

部屋の中には水槽のポンプ音だけが響いている
4 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月05日(金)10時55分01秒
あれからすぐ彼女は娘。を辞めて行った
それはとても突然で―
でもウチはその時にはもう
何も考える事なんて出来なかったから
彼女と最後に会ったあの日も
考えていたのは、あの雨の日の彼女の言葉だけで

『辞めるんだってね。』
『うん。』
『捨てるんだ、娘。....も。』

一度も振り返らなかった彼女
見えない顔にあの雨の日の彼女の顔が重なった

リカチャン、ドウシテ

結局言えなかった言葉

そしてウチは
それから彼女の名前を口に出した事は無い
5 名前:皐月 投稿日:2002年07月05日(金)17時59分18秒
うわっ!!!!いたっ!!!!
よしいしですか・・・・かなり期待!
がんばってください!
6 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月06日(土)01時20分53秒
その後ウチは死に物狂いで働いた
彼女への色々な思いが糧になって
どんな仕事もこなした
意地になって
体と心を酷使して
それは娘。が解散した後も続いた

もう日本中でウチを知らない人は
ほとんど居なくなった
バラエティの司会に女優に
ウチの出るテレビ番組は
毎回高い視聴率を取る事が
出来る様になっていた。

そして気が付くと
あれから数年の月日が流れていた

彼女の事を思い出す事は
極端に減ったが
それでも時折見るあの日の夢と
まっ黒な空から降る冷たい滴は
否応無しにウチを
過去へと掬う

早く忘れたい
早く忘れなきゃ

前に進めない
7 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月06日(土)01時37分36秒
今日はあまり上手に笑えなかった
顔が強張っていつもの様に
(笑う)という仮面をつける事が出来なかった
自分を叱りつける

感情を殺せ
心なんて捨てろ
どうせすべてが

ウソ デ デキタ セカイ



8 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月06日(土)02時18分11秒
「吉澤じゃん久しぶり」
その声に一瞬動揺したが
3つ数えてゆっくりと振り向く
「飯田さん。....」
ウチはずっとメンバーとの連絡を避けてきた
誘いもすべて断って、電話にも出ないで
娘。という存在を遠避けてきた

それでも一般人に戻った数人を除くと
他のメンバーはこの世界に残ったから
こうして時々局内で顔を合わせる事もある

「あー、嫌そうな顔してる。」
笑いながら飯田さんが近づいてきた
「復帰おめでとうございます。」
飯田さんは結婚して今は一児の母になっている。
「サンキュー、いやぁ子育てって結構大変でさぁ。」
ウチは二コリと笑って背を向ける
今度はちゃんと笑えた
「あのさぁ、実はカオ、吉澤の事待ってたんだよね。」
腕を掴まれる
「この後暫く暇なんでしょ?」
ちょっと付き合ってよ。と、私の正面に回りこんで
二カッっとあの頃と変わらない笑顔をウチに向けた。
でもその顔が少し引きつっている様に見えたのは
ウチの勘違いだろうか?              

9 名前:jack 投稿日:2002年07月06日(土)02時22分52秒
更新しました。
皐月様、初レス有難うございます。
き、期待ですか。
頑張ります。
10 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月06日(土)05時36分35秒
石の行動が気になりますね…
11 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月06日(土)10時29分52秒
ウチらは取り敢えず自販機の前の
長椅子に腰掛けた
「はい。」
と、飯田さんから缶コーヒーを受け取る
「ありがとうございます。」
それは娘。時代にウチがよく飲んでいた缶コーヒーの銘柄だった

「それにしても吉澤は娘。の中じゃ
 一番の出世頭だねぇ。」
どうして飯田さんに付いて来たのかと
今更ながら後悔する
「そんな事ないですよ、飯田さんだって。」
飯田さんはキャスターとして色々な番組で見かける
「本当はなっちと北海道に帰ろうと思ってたんだけど。」
小さくて優しい人を思い出す
「旦那に会っちゃったから。」
ウチは曖昧に薄く笑う
12 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月06日(土)10時55分43秒
「カオ、いつも思うんだけど、
 人という字はだねぇ、人と人とで成り立ってる
 ってよく言うじゃない?」

 突飛な事を突然喋り出す癖は
 まだ治ってないようだ

「でもそれは本当はとても難しい事だと思うの。」

 ここから確か長くなるんだっけ

「だって一人がすごく重かったら
 もう一人が支えきれなくなるじゃない?」

 こんな時ウチらは決まって苦笑いを浮かべて
 半分聞いて、半分聞いてる振りをしていた

「そしたら二人で倒れちゃうんだよ?」

 飯田さんの声が、心無しか震えてるのに気付いて
 手許にあった視線を上げる
 飯田さんは一点をじっと見詰めたまま
 紅茶の缶を握っていた
 
 その横顔はどこまでも真剣で
 ウチは動く事が出来ずに
 飯田さんの横顔に見入っていた  
13 名前:jack 投稿日:2002年07月06日(土)11時05分00秒
 更新アゲイン。

 >10 名無し読者様
   気になりますか、 
   どうしても石川さんが幸薄いキャラにしか見えないのは
   自分だけでしょうか?
 

 
14 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月07日(日)01時35分57秒
「カオ、偶然見たんだあの子の事」

 心臓が一回ドクンとはねる

「目を疑っちゃったよ、
 昔と全然雰囲気変わってて。」

 ああ、そうだ今日の天気予報は
 雨、だったっけ

「あの子が娘。を辞める時、
 カオは反対しなかったんだ
 あの子が決めた事なら、
 あの子が幸せになれるならって。」

 飯田さんは息を一つ呑む

「でも、どう見ても幸せそうじゃなかった。」

 誰の話をしているんですか?

「私には関係の無い事です。」

 雨が降る前に帰らなければ
 

15 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月07日(日)01時59分46秒
「吉澤変わったよね。」
 ポツリと呟く
「娘。の時代なんかあんまり前に出る方じゃ無かったのに。」
 心の中の信号が赤に変わる
「あの子が居なくなってからだよね。」
 早くここから逃げないと

 ウチは立ち上がりかけた
 でも飯田さんは又ウチの腕を強く掴む

「こうなる事解ってたのかなぁ。」
 飯田さんは、まだ一点を見詰めたまま

「イチかバチか懸けたんだね、きっと。」
 何の話をしてるんですか?

「相手を押して、一人で立たせて。」
 握られた腕に力がこもる

「自分は倒れて。」
 飯田さんはひっそりと泣いていた

「カオ間違ってたのかもしれない。
 あの時、止めるべきだったのかもしれない。」
 早くこの手を振り払わないと

「本当はこんな事、言っちゃいけないの
 あの子が一生を棒に振って決心した事を
 カオなんかが言っちゃいけないの。」
 飯田さんは何を見ているんだろう

「でもこれじゃあ、」

 ナニモ キキタク ナイ

「誰も幸せじゃ、ないじゃない。」
16 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月07日(日)02時03分39秒
飯田さんが一枚のメモ用紙を
ウチに握らせた

ウチはその紙を握りながら
その場所にずっと立ってた

誰かが不信がって
ウチの肩を叩くまで
17 名前:jack 投稿日:2002年07月07日(日)02時04分50秒
更新しました。
18 名前:オガマー 投稿日:2002年07月07日(日)04時44分43秒
読ませて頂いてますー。
最後の2行がとてつもなく切ないぃ。
19 名前:皐月 投稿日:2002年07月07日(日)05時45分45秒
せつないっす・・・・・
石川どうなったんでしょう?
またまた期待&大期待
20 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月08日(月)02時04分36秒
家に帰って部屋中の机の引出しを
ひっくり返して、昔のアドレス帳を捜した
その間も頭の中に色々な言葉が駆け巡る

-何を今更-
-止めようよ、こんな事-

手に汗が滲み出る

-今日の事は忘れるんだ-
-すべては終わった事-

それでも薄汚れたアドレス帳の中に
その名前を見つけると
震える指でダイヤルを押していた

無機質な機械音が数回続いてから
今日2回目の懐かしい声が耳に響く

『誰?』

一瞬、眩暈がした
その声が余りにも昔と変わりなかったから

「吉澤ひとみ、です。」

その時になって初めて、自分が後藤真希の事を
どう呼んでいたか、忘れている事に気付いた




21 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月08日(月)02時22分10秒
後藤真希は解散前に、既にソロデビューを
果たしていた
娘。時代に築いた人気の基盤は
今も続いている

娘。にいた時、後藤真希は親友だった

でもあの後ウチはすべてに壁を造った
親も
友達も
皆最初は不審がった
すべてがウチから離れて行く中
後藤真希だけは最後まで側に居た

でもウチは、結局誰にも心を開こうとはしなかった

もう誰かの所為で傷つくには
嫌だったから
22 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月08日(月)02時38分25秒
後藤真希のマンションは割と
自分のマンションの近くに在って

「適当に座って。」
と、道されたリビングは、ただただ
だだっ広くて
家具は必要最低限の物しか揃ってない

テーブルの上に、ドカっとコーヒーを2つ置いて
後藤真希はウチの向かいに座る

「でっ?何?」
顔が怒っている
当然の事だ

ウチは、クリームも砂糖も入っていないコ―ヒーを
スプーンで掻き混ぜる
自分の顔が歪んで映る

「ウチなんて呼んでたっけ?」

「んあ?」
まだその口癖直ってなかったんだ
そう思った途端思い出した
そうだ、確か、

「ごっちん、だったよね。」
23 名前:jack 投稿日:2002年07月08日(月)02時52分49秒
更新しました。

>18 オガマー様
 読んで頂いて有難うございます。
 レスが付いていると励みになるので
 これからも宜しくお願いします。

>19 皐月様
 2度目のレス有難うございます。
 だ、大期待ですか
 期待に添えるよう頑張ります。




24 名前:jack 投稿日:2002年07月08日(月)03時02分25秒
うわっ!間違えた!
>22の4行目
 道された×
 通された〇

 鬱...

25 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月08日(月)08時22分34秒
「くそ馬鹿ヨシコ!!」
ごっちんは急に立ち上がると、喚き出した
「今まで散々無視しといて来て、突然なんだ!!」
この人も、飯田さんと同じで変わってない
「笑ってないで、何か言えぇぇぇぇ!!」

言われて気付く
自分が笑っている事に

こんな風に笑うなんて、久しぶりだ

「ゴメン。」
自分の口から出た言葉に
自分自身が一番、驚いている
ごっちんも固まっている

もしかしたらウチは、ずっと
笑いたかった?

ソンナコト アルワケ ナイ

ごっちんはギャーギャー泣き出した

コーヒーに映る自分の顔が
とても幼く見えて
もう一度スプーンで掻き混ぜる
26 名前:jack  投稿日:2002年07月08日(月)08時23分49秒
もういっちょ更新。
27 名前:皐月 投稿日:2002年07月08日(月)20時35分59秒
おおっ!?
ごっつあんどうしたんでしょう?
吉澤もしや・・心を開くんでは?
期待っ!
28 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月09日(火)05時05分17秒
「で?本当に何しに来たの?」
少し落ち着いたごっちんは
まっ赤な目をしている
「ごっちんは、知ってたのかな?その....」
名前を出すか、出さないか躊躇う

「梨華ちゃんの事?」

何故か誰かに嵌められている様な気がした

「どうして...」
言葉が続かない
「ヨシコ相変らずだね、自分の事が何一つ分かってない。」

本当は自分の事だけじゃないんだ

「他にゴトーのとこに来てる理由が、思い当たらない。」

ウチは何も言えなかった


 
29 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月09日(火)05時19分25秒
「ちょっとは否定してよ。」
溜息を付いてごっちんが、ソファーから立ち上がる
そのまま開いている窓の方に、歩いて行く

「あー、雨降りそう。」
そう言って窓を閉めた

ウチは堪らなくなって
「知ってるの?」
同じ質問を繰り返す

「ヨシコは何を聞きたいの?
 今、梨華ちゃんがどうしているか?
 それとも―――」

ごっちんは閉めた窓にもたれながら
ウチを見ている

コレ ハ ユメ?

「娘。を辞めた理由?」

雨が降って来た
30 名前:jack 投稿日:2002年07月09日(火)05時35分09秒
何が起こったんだろう
今日、朝起きた時は、いつもと一緒だった
いつもと同じ様に仕事に行った
いつもと同じ様に働いて
いつもと同じ様に一日が終わるはずだった

なのに、飯田さんが話し掛けてきて
今はごっちんの部屋に居て

さっきまで、呼び名も忘れていたのに
向かい合って座って、笑って

「梨華ちゃんが辞めたのは、」

ウチは目を閉じる

「ヨシコの所為だよ。」

ああ、そうだ、久しぶりに
彼女の

ユメ ヲ ミタンダ




   
31 名前:jack 投稿日:2002年07月09日(火)05時41分40秒
更新しました。
 
>27 皐月様
 吉澤さん本当に痛いですね。(と、他人事の様に言ってみる。)
32 名前:オガマー 投稿日:2002年07月09日(火)20時35分23秒
なんか切ない…
でも、もしかしたら梨華たむは吉以上に…??
33 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月09日(火)23時02分35秒
続き楽しみ〜。
34 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月10日(水)05時16分08秒
「見捨てたのは、ヨシコだよ。」

まだウチは夢の続きを見てるんだろうか?

「どうしてあの時、気付いてあげなかったのさ。」

早く夢から醒めないと

「ヨシコの代わりに梨華ちゃんは、辞めたんだよ。」

目を開ける

「思いだしなよ。心当りあるはずだよ。」

夢はまだ、終わっていない
35 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月10日(水)05時34分17秒
ウチはあの当時、仕事に対して
あまりやる気がなかった

飛ばず鳴かずの
駕籠の中の鳥だった

それ以上を望まず
言われた事だけを適当にこなした

名声やお金なんて、これっぽっちも
興味がなかった

彼女さえ存在していれば、それで良かったから

信じてた、ずっと一緒だって
その思い込みに、陶酔してたんだ

ある日、偉い人に言われた

『このままお前の人気が低迷して行ったら
 辞めてもらうかもしれない。』
36 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月10日(水)05時47分32秒
娘。を辞める事なんて
別に恐くなかった
アイドルなんて、どうせ長くは続かない

それに離れていても、彼女とは
やっていけると思っていたから

彼女もきっと、そう思うだろうと
何も心配する事は無いと

自分に言い聞かせていた

そしてその事を
彼女に話した憶えは、無い

でも彼女は、ウチが辞めるかもしれない事を
知っていた?

37 名前:jack 投稿日:2002年07月10日(水)05時56分28秒
更新しました。

>32 オガマー様
  吉澤さん以上に.....。どうなんでしょうねぇ〜。
  (また、他人事の様に言ってみる。) 

>33 名無し読者様
 そう言っていただくと、すごく嬉しいです。  
 
38 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月11日(木)05時14分13秒
「梨華ちゃん、言われてたんだよ、ヨシコと
 ゴトーの穴は、梨華ちゃんで埋めるって。」

そんな話、聞いた事ない

「でも梨華ちゃんはきっと、そんなの望んでなかったんだ。」

部屋がいつの間にか暗くなってた

「ヨシコが、ヨシコさえ側にいれば
 ヨシコさえ幸せなら、それで良かったんだ。」

飯田さんの言葉を思い出す

『イチかバチか懸けたんだね、あの子。』


飯田
39 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月11日(木)05時40分51秒
「なのにヨシコは、自分の事しか考えてなくて....。」
「じゃあウチが辞めれば良かった?」

頬にするどい痛みが走る

「梨華ちゃんも馬鹿だけど
 ヨシコはもっと馬鹿だ!!」

張られた頬にそっと触れてみる
そこは少し熱を帯びていた

「梨華ちゃんが、なんであんなに
 無理をしても頑張れたか、分かってんの?!
 ヨシコと、いつも一緒にいたからだよ?!」

冷めたコーヒーカップを、熱い頬に当てる

「ヨシコの居ないあの世界で、梨華ちゃんが
 生き残れたと思ってるの!!」

ごっちんは吐き捨てるように言った

「でも、それにゴトーが気付いたのは
 ずっと後だったから。」





 

40 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月11日(木)05時46分07秒
チガウ、チガウ、チガウ

飯田さんもごっちんも、勝手にかん違いしてるんだ
彼女が辞めた理由を、ウチの所為にしてるだけなんだ

きっとそうだ

もう帰ろう

家に帰ろう

もとの世界に帰ろう

ナマヌルイ アノ セカイ ヘ

41 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月11日(木)05時59分37秒
「今、梨華ちゃんがどうしてるかは分からない。
 でもあの時、梨華ちゃんは自分が居なくなればって─」
「どうしてそんな事が分かるの!!」
堪らず大声を上げてた

「ヨシコ、何がそんなに不安なの?」

ごっちんがウチの手を柔らかく包む

「本当の事を知るのが恐い?」

ウチの目をじっと覗き込む

「傷付くのが恐い?」

体中が痺れて動けない

「そんな風にこれからも、生きていくの?」

カコ 二 シバラレタママ

ウチはごっちんを突き飛ばして部屋を出た
42 名前:jack 投稿日:2002年07月11日(木)06時02分49秒
更新すますた。

38の最後の飯田さんってやつは忘れて下さい......

43 名前:jack 投稿日:2002年07月11日(木)06時06分50秒
間違えた、『飯田さん』じゃなくて『飯田』の所ですた
分け分からなくてすみません。
44 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月11日(木)12時33分39秒
雨の中を歩いている最中も
さっきのごっちんの言葉が頭の中で
グルグルと回る

『こんな風にこれからも、生きていくの?』

通りを歩く人達が皆、ウチを振り返る
(そういえばウチって有名人だったっけ。)

何故かとても惨めな気分だった

45 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月11日(木)12時44分07秒
これからどうすれば良いのだろう
何もかも無かった事にして
明日から又いつもの様に過ごせばいいのだろうか?

確かめなくて良いの?
本当にこのままで良いの?

でも真実を知ったら
本当にごっちんの言ってた事が正しかったら
ウチは―――

飯田さんから貰った紙を
ポケットから出して広げてみる

『これは、石川の住所です
 もし、吉澤が、あの子の事を
 少しでも気に掛けているなら。』

破滅か
安堵か

どちらにしても、ウチは
楽になりたい
 
46 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月11日(木)12時53分48秒
タクシーを止めて、運転手に行き先を告げる

雨は、降り止まない

どこをどう走ったのかは分からない
ずっと、黒い雨雲を見ていたから

そして気が付くとタクシーは
ボロボロのアパートの前で停っていた
47 名前:jack 投稿日:2002年07月11日(木)12時55分24秒
更新しました。
48 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月11日(木)16時18分16秒
うわぁ、続きが気になる…
49 名前:オガマー 投稿日:2002年07月11日(木)18時41分56秒
ついに会うのかなぁ
ドキドキしながら待ってますw
50 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月12日(金)05時49分35秒
こんな所に彼女が居る筈が無い
飯田さんはきっと、他の誰かと間違えたんだ

彼女はきっと
他の何処かで
幸せに
他の誰かと幸せに―

ギシギシと軋む階段を一歩づつ上がる

その間ウチは、ずっと祈っていた

『石 川』

表札を見た時も
まだウチは祈ってたんだ

ドウカ ユメ デ アリマス ヨウニ
51 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月12日(金)05時56分28秒
ドアの前でうずくまる
どうしてもノックする事が出来ない

逢いたいのか
逢いたくないのか

憎んでいるのか
憎まれているのか
もう一人の自分が問いかける

わからない
ワカラナイ

もう随分前から、考える事を止めているから
思考は、さっき掻き回したコーヒーの様に
グルグルグルグル

間違っていたのは誰?
ウチ?
彼女?


52 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月12日(金)06時13分27秒
彼女が離れて行った直後は
理由なんて知った所でどうしようも
無いと思っていた
彼女がウチの側から居なくなったその事実に
打ちのめされていたから

でも、時がたつにつれて
ウチの中の小さな疑問が
少しずつ膨らんでいっていた

どうして彼女は何も言わなかった?
言えなかった?

信頼していた筈の、仲間まで捨てて

限られた人にしか許されない
あの華やかな世界を捨てて



53 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月12日(金)06時28分19秒
雨の音が全ての雑音を掻き消している
ドアの前で膝を抱えたまま
少し眠ってしまったのかもしれない
夢の中で久しぶりに、笑った彼女を見た気がしたから

どうして立ち上がれないんだろう
雨に濡れた体が、重い所為だろうか?

今、何時なんだ?

もうすっかり辺りは闇に溶け込んでいる

闇に抱かれてる気分になる
それとも闇を抱えてるのはウチなんだろうか?

このまま消えて無くなりたい
この雨に溶けて――



そして、いつの間にか目の前に
傘を挿した彼女が立っていた

54 名前:jack 投稿日:2002年07月12日(金)06時34分07秒
更新しました。

>48 名無し読者様
 読んで頂いてその上続きが気になるなんて
 感無量です。

>49 オガマー様
 とうとう登場しました石川さん。
55 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月12日(金)15時41分31秒
2人のやりとりがどうなるのか気になります
56 名前:オガマー 投稿日:2002年07月12日(金)21時24分31秒
ますますドキドキしながら更新待ちw
57 名前:jack 投稿日:2002年07月13日(土)01時57分38秒
ちょっと今手直ししてるので
今日は更新出来ません

>55 名無し読者様
 ごめんなさい、ごめんなさい。
 完成したらすぐ更新しますんで。
 もう、そりゃあ直ぐに。

>56 オガマ―様
 いつも有難うございます
 明日か明後日に更新しますんで
 もう、そりゃあ頑張ります
  
58 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月14日(日)06時11分19秒
言葉が出ない

彼女はウチを、ただ見下ろしている

二人の周りだけ時間が止まっている

久し振り。

元気だった?

ウチの事憶えてる?

必死で言葉を探す
昔二人で普通に交わしていた言葉を
思いだそうとする

でも昔の彼女を思い出すには
あまりにも変わってしまっている姿

澄んでいた黒目がちの瞳は
光を失い、濁っている
濡れている様につややかだった髪も
染めすぎたのか、赤茶色に変色している

あまりにも残酷な現実を突き付けられて
体中の血液が凍った

「取り敢えず入ったら?」

昔より少し掠れている声
以前はもっと甘い声だったはずだ

ウチは立ち上がった

もう後戻りは出来ない
59 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月14日(日)06時21分09秒
彼女の部屋には生活感というものが
微塵も感じられない
狭い狭い部屋
小さなテレビと、小さなテーブルと、小さな箪笥だけ
ステレオも、本棚も、ソファーも無い

限りなく『無』に近い部屋

こんな所でどうやって生活しているんだろう
こんな所に何時から居るんだろう

「座ったら?」

後ろから声を掛けられ
我に返る
そっと部屋の隅の壁を背に座る

彼女はウチから一番離れた場所に座った
すぐ近くに居るのに
その距離が、とてもとても遠くに感じる
60 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月14日(日)06時29分23秒
お互いに黙ったまま
時間だけが過ぎていく

彼女がタバコを吸い始めた

立ち登る煙を
ウチはただ、ボーっと眺めていた

不思議な位
心は静かで

ずっと抱えていた
重いドス黒い色々な想いは
ウチの中の深い深い所で
今は眠っている
61 名前:jack 投稿日:2002年07月14日(日)06時30分55秒
更新しました。
62 名前:オガマー 投稿日:2002年07月14日(日)22時24分31秒
梨華ちゃん…
会ってなかった間
一体何があったんだろう…
63 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月15日(月)01時56分45秒
ふいに、ジュッと音がして
不快な匂いが鼻に付く

「何か喋ったら?」

彼女は揉み消したタバコを
無造作にコップの中に投げ入れる

その声音は攻撃的で
ウチは彼女にとって、歓迎せざる
客なんだと悟る

「わざわざ何しに来たの。」

うんざりとした口調で言い放つ

寝むっていたドス黒い感情が
目を覚まし始めた

ハヤク ラク二 ナリタイ

「どうして...あの時、娘。を...辞めた...の?」

喉から搾り出した声は
自分の物とは思えない位
震えていた




64 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月15日(月)01時59分46秒
彼女はその何も映さない瞳で
ウチの事を見据えていた

そして、フッと薄く笑う

「そんなのもう忘れた。」

ウソ ダ

彼女はもう一本タバコを取り出した
65 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月15日(月)02時16分17秒
どうして言わない
何を隠しているの
そんなボロボロになって迄
今までどうやって暮らして来たの
何でこんな真夜中に帰って来るの

『どう見ても幸せそうじゃなかった。』

『見捨てたのはヨシコだよ。』

ワルイ ノハ ダレ?

ウチの中で我慢していた何かが切れた
66 名前:jack 投稿日:2002年07月15日(月)02時19分16秒
更新しました。

>62 オガマー様
 う、う〜ん(苦笑)
67 名前:オガマー 投稿日:2002年07月15日(月)04時04分54秒
ぉぉ…
続き期待
68 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月15日(月)06時15分19秒
可憐だった彼女が何で…
69 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月16日(火)04時46分14秒
「ごっちんが言ってた
 ウチの所為で辞めたって
 ウチが辞めさせられそうだったから
 代わりに辞めたって。」

彼女はゆっくりと、煙を吐き出す

「ウチを一人で立たせる為に
 居なくなったって、飯田さんが...。」

煙が少しずつ、部屋の中に充満する

「そうなん...でしょ?」

最後の言葉は、彼女に届いたかどうかさえ
分からない程、小さかった
70 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月16日(火)04時55分50秒
彼女は立ち上がり、窓を開けた

「相変らず続いてるんだ、友情ごっこ。」

白い煙が窓に向かって流れ始める

「そういうのに、うんざりしてたんだよね。」

ナニ? ナニヲ イッテルノ?

「表では私達は仲良しですって顔して
 裏ではお互いの存在にビクビクして。」

煙が彼女の言葉と共に吐き出される

「私の人気が上がって来たからって
 急に態度とか変わっちゃって。」

開けた窓から、彼女はタバコを捨てた

「メンバーの一人からはしつこく付き纏われるし。」

自分の顔が青冷めたのが分かる

「そんなの全部に嫌気がさして辞めた。」

ソンナ ノ ウソダ

71 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月16日(火)05時10分04秒
彼女の表情からは、何の感情も感じ取れない

「嘘だ!!」

震える両手を抑えようと強く握る

「どうしてそんな嘘付くの?!
 もう嘘なんか付く必要なんかないでしょ?!
 ほら、見て?ウチは有名人になったよ?
 一人でちゃんと立ち上がったよ?!
 それとも怒ってるの?
 あの時、ウチがちゃんと気付いてやれなかったから
 謝るよ、許してくれるまで何回も
 だから、だから――」

体中の全ての細胞が悲鳴を上げている

ウチは泣いてた
何が悲しいのか、分からない

ただ
心が震えている

それは昔捨てたはずの
もう一人の
吉澤ひとみの所為なのかもしれない

「お願い、本当の事を...ウチに話して。」


 
 
72 名前:jack 投稿日:2002年07月16日(火)05時15分19秒
更新しました。

>67 オガマー様
 果たしてその小さな「おお」には、いったい
 何が隠されているのか!?続き期待。(嘘です。ごめんなさい)

>68 名無し読者様
 ん、ん〜む...。
 
73 名前:オガマー 投稿日:2002年07月16日(火)08時27分19秒
ぉぉ、は「きれた」ってところに(藁
これは一筋縄ではいきそうにない感じ…?
74 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月17日(水)05時00分17秒
彼女はくつくつと笑い出した
その笑い顔があまりにも自虐的で
ウチは背筋に冷たいものを感じる

「相変らず思い込み激しいんだね。」

彼女はそう言って気怠るそうに乱れた髪を掻き上げた

「そういう所がうっとうしくて嫌だった。」

ホントウ ハ カエリ タ カッタ

「まったく察してよ、そういう事
 人が親切に何も言わないで
 居なくなってあげたのに。」

トオイ キオク ノ ナカ ノ

「それともまだ私に未練があるの?
 そんなに女がいいなら
 後藤真希にでも頼まば?」

アタタカイ ウデ ノ ナカ 二
75 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月17日(水)05時07分45秒
彼女の言葉は、ウチの心臓を
抉り出した

そこから流れる血は
もう止まる事はない

ウチは少し期待していたのかもしれない
もし彼女が、他の誰かと一緒で幸せなら
罪悪感を捨て、前に進む事が出来ると―――

ウチは少し哀願していたのかもしれない
もしかしたら彼女は昔のままで
ウチの事を待ってるのかもしれないと―――

76 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月17日(水)05時15分21秒
『何を今更』

いつもの自分が静かに語りかける

飯田さんとごっちんは間違ってた

ウチは悪く無かった

すべてはウチの望んだ通りじゃないか

これで良かったんだ

彼女は自分の意志で娘。を辞めたんだ

彼女はウチの事なんて愛してさえいなかった

そう

アイシテ サエ イナカッタ

もうここに、用は無い
77 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月17日(水)05時21分07秒
明日も仕事があるから
早く帰って寝ないと

ウチを待つたくさんの人達が居るから
ウチを必要とするたくさんの人達が存在するから

でもウチが必要な人は居ない

モウ イナイ


サヨナラ

リカチャン
78 名前:jack 投稿日:2002年07月17日(水)05時25分50秒
更新しました。
え〜と、後3回、プラ番外編1個で終わる予定です。

>73 オガマー様
 う、本当に答えて頂けるとは.....。
79 名前:オガマー 投稿日:2002年07月17日(水)10時41分11秒
ちょっとかましちゃいましたかね<レス(w
後3回ですかー楽しみにしています!
80 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月18日(木)04時48分34秒
立ち上がった時
少し頭がクラクラした
久しぶりに泣いた所為かもしれない

ここを出たらもとの世界
夢はもう終わり

81 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月18日(木)04時59分50秒
玄関のドアノブに手を掛けた時
ふと、玄関の脇の台所の隅に
この部屋には場違いな物が置いてあるのに気付く

それはピンク色をした伏せられた
写真立てで、少し埃を被っている

後ろを振り向くと、彼女はウチに背を向け
窓の外を見てる

ウチは無意識にそっと、写真立てに手を伸ばす

ゆっくりと手に取り、表にする

そこには

太陽のように笑う彼女と

その隣で、同じ様に微笑む

吉澤ひとみが居た
82 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月18日(木)05時08分18秒
世界がグルグルと回る
全てが、音を立てて崩れた

それを持って立ち尽くすウチを
彼女はゆっくり振り返る

ウチの手にしている物を見て
その顔が一瞬にして青冷めた

その表情で
ウチは全てを理解した

『やっぱり、嘘だったんだ。』


83 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月18日(木)05時10分26秒
気が付くとウチは

彼女の首を

彼女の細い細い首を

両手で絞めていた


84 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月18日(木)05時19分49秒
ウソツキ

ウソツキ

ウソツキ

チガウ ソウ ジャ ナイ

ウチが、全部悪い

ウチがこんな風にしたんだ

ウチが苦しめたんだ

ギリギリと絞める両手に力が入る
彼女の顔が赤みを増していく

もういいよ、もういいでしょ?

考えるのも

思い出すのも

もう何もかも遅い

もう疲れた

辛かったでしょ?

楽になりたいでしょ?

だから

一緒に



キエテ ナク ナロウヨ




85 名前:jack 投稿日:2002年07月18日(木)05時22分10秒
更新しました。

>79 オガマ―様
 いえいえ、嬉しかったですよ。
 取りあえず完結に向けて頑張ります。
86 名前:オガマー 投稿日:2002年07月18日(木)05時33分58秒
オーマイガッ!(氏
ヨシー…
87 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月18日(木)13時15分55秒
うわー。なんか大変な事に・・・。
88 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月19日(金)04時51分09秒
首を絞められている筈の
彼女の表情はとても穏やかで
まるで、すべてを包み込む様な―

ねぇ、どうしてそんな顔するの?
苦しいでしょ?
痛いでしょ?

憎いでしょ?


これでウチ等は開放される

『ナニ カラ?』

これで永遠に一緒に居られるよ

『ソンナ ノ マチガエ テル』


これは、誰の声?


『ヨシザワ ヒトミ』


両手の力が緩む


稲妻が走り
部屋中の電気が消えた
89 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月19日(金)04時55分32秒
緩んだ腕を押しのけて
激しく咳き込みながら

「まだ...間に...合う..から..
早く戻...って...よっ....しぃ...。」

彼女は

梨華ちゃんは言った




90 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月19日(金)05時02分20秒
何処に戻るの?

戻る場所なんてないよ

もう何処にも行けないよ

だって

こんなにも

吉澤ひとみは

梨華ちゃんを


「愛してる。」

91 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月19日(金)05時06分52秒
梨華ちゃんを腕に抱きながら
ウチは声を上げて泣いた

梨華ちゃんも泣いてる

ほら、全然変わって無いじゃないか
泣き虫で
臆病で

ごめんね、気付いてやれなくて
ごめんね、ひどい事言わせて


ゴメンネ
92 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月19日(金)05時14分40秒
いつの間にか雨は止んでて
月の光だけが部屋の中に挿し込んでいた

「梨華ちゃん、タバコは体に良くないよ。」

「さっき吸ったのが始めて。」

「あと、窓からタバコ捨てるのあれ、良くない。」

「後で拾いに行こうと思ってた。」

ウチは笑う
梨華ちゃんも笑う

ウチは月を見ながら
梨華ちゃんの体温だけを感じていた
抱いている梨華ちゃんの肩は
昔よりもずっと細い


「ねぇ、梨華ちゃん?」
 
「ん?」

「二人で、消えて無くなろうか。」

「いいよ。」


月の光は何処までも優しい

93 名前:On a Rainy Day 投稿日:2002年07月19日(金)05時20分07秒
更新しました。
泣いても笑っても、ラスト1回!!

>86 オガマ―様
 あと1回!!あと1回!!

>87 名無し読者様
 微妙に痛いの抜け出しました

94 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月19日(金)09時55分41秒
果たしてどういうラストかな…
良い方にも悲しい方にも転びそうで微妙だ…
95 名前:オガマー 投稿日:2002年07月19日(金)10時49分48秒
94さんの言うとおりですなぁ…
更新待ちw
96 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月19日(金)21時06分41秒
どきどき・・・
97 名前:On a Shiny Day 投稿日:2002年07月20日(土)04時54分35秒
「いや、いや、良い天気だねぇ〜」

間延びした声が、テレビ局の屋上に響く

「んあ〜、カオリ?」
「ごっつぁん久しぶり。」

二人は少しだけ娘。時代の自分達の話に華を咲かせる

「ここ気持ちいいねぇ。」
「ゴトーの秘密の場所だよ。」
「つぅーかただの屋上じゃん。」
「それを言うなぁ〜。」

二人の笑顔には一点の曇りもない
98 名前:On a Shiny Day 投稿日:2002年07月20日(土)05時20分12秒
「ねぇ、所で、ヨシコが失踪したのってカオリの所為でしょ?」

「あぁ、何かすごい騒ぎになってるねぇ。」

「カオリの所為だって、ヨシコの手紙に書いてあったよ〜。」

「あれ?ごつっぁんの所為だって、石川の手紙に書いてあったぞ?」

二人は顔を合わせて吹き出す

「それにしても、外国に逃げちゃうなんてさすがに思いもしなかった。」

「あはっ、ゴトーも。」

「愛の逃避行か。」

「カオリ、古いよ。」


「まぁ、ほとぼりが冷めたら帰って来るっしょ。」

「あはっ、あの二人は犯罪者か?」
99 名前:On a Shiny Day 投稿日:2002年07月20日(土)05時29分06秒
後藤がフェンスから、上半身を乗り出す

「二人共、早く帰ってこぉぉぉぉい!!」

後藤は少しだけ涙ぐむ


この世界の何処かに居る二人を想いながら
飯田は空を仰ぐ

(今迄の分、幸せになりなよね。)


空は高く

どこまでも青い




                    『On a Rainy day』END  
100 名前:jack 投稿日:2002年07月20日(土)05時40分30秒
完結しました。
今迄ヒッソリ、コッソリ読んでくれた皆さん
レスをくれた皆さん、スゲー感謝しています。
この後、番外編が1個ある予定なので、よかったら
読んで下さい。

あ、ちょうど100レス目だ。自分でオメ。

>94 名無し読者様
 ラストどうだったでしょうか?

>95 オガマー様
 毎回レスを頂いて、超感激してます。本当に有難うございました。

>96 名無し読者様
 初小説だったので、自分は毎回ドキドキしていました。
 恐くて他の人の作品が読めなかったっすよ。

それでは、次は番外編で。
101 名前:オガマー 投稿日:2002年07月20日(土)05時45分39秒
完結おめでとうございます!!
番外編も期待w
102 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月20日(土)08時56分17秒
なるほど、そうなったかぁ
ちょっと急な落ちって気もしましたが番外あるなら楽しみっす
103 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月20日(土)09時59分49秒
今までに無い作品といいますか
とても心に残るものでした
無事完結、お疲れさまでした♪
番外編も楽しみにしてます
104 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年07月20日(土)10時16分41秒
完結おめでとうございます♪
ずっとROMってますた。
痛いイタイ作品で、すごくよかったです。
最後は、素直になれてヨカタ^^
同じく、番外編楽しみにしてます。
105 名前:娘。 投稿日:2002年07月20日(土)15時20分36秒
よかった
106 名前:あおのり 投稿日:2002年07月20日(土)22時39分24秒
完結おめでとうございます。
そしてお疲れ様です。
ラスト間近はずっと読んでいて胸が苦しかったです。
最後の最後2人の愛の逃避行・・・・よかったです。
番外編も楽しみにしておりやす。
107 名前:jack 投稿日:2002年07月21日(日)09時46分16秒
うわ〜、結構読んでくれてた
人居たんだぁ。ありがたいっす。

>101 オガマー様
 ヘイッ、有難うございます。

>102 名無し読者様
 う、何も言えないっす(汗

>103 名無し読者様
 心の残るだなんて、そんな(オロオロ)

>104 名無しどくしゃ様
 ROMってたなんて、そんな(テレテレ)

>105 娘。様
 よかったと思ってもらえて良かった(w

>106 あおのり様
 愛の逃避行.....。だが、しかし...。(煽ってみました。)

それでは、番外編行きます。
 
108 名前:jack 投稿日:2002年07月21日(日)10時21分14秒
うわ、すっげー間違い発見しちまった!!
やべっ、やっぱり明日更新します。
(かっこ悪ぃ〜)

109 名前:Prayer 投稿日:2002年07月22日(月)02時20分24秒

“過去を捨てる”


“愛に生きる”


“幸せを求める”


私には許されていない言葉達

110 名前:Prayer 投稿日:2002年07月22日(月)02時27分18秒

ある晴れた日
私達は海へ行った


「梨華ちゃん危ないよ。」

その言葉を無視しして
私はテトラポットの上を
ピョンピョンと跳ねる

「だから危ないって。」

そう言ってよっしぃーも
テトラポットの上に登って来た

「おっ、カニがいる、カッケー。」

こんな時私は、一瞬だけ
昔に戻った様な気分になる

幸せで、優しい時間が流れていた
あの時に
111 名前:Prayer 投稿日:2002年07月22日(月)02時31分26秒

私は飯田さんへの手紙に
少しだけ嘘を書いた

『今、私は幸せです。』


でも、本当は

痛みが消えない

離れていた時よりずっと

胸が痛い

これはきっと、嘘をつき続けて来た

私への罰なんだろう

112 名前:Prayer 投稿日:2002年07月22日(月)02時37分55秒

雨が降る夜は必ず
よっしぃーは泣きながら
飛び起きる

そして私を抱き寄せて


『愛してる。もう何処にも行かないで。』


と、何度も私に懇願する

そんな時私は、何も言わず
ただよっしぃーの頭や背中を
撫で続ける

ずっと、ずっと

よっしぃーが泣き疲れて、再び眠りにつく迄


そしてその後

私も少し泣く



113 名前:Prayer 投稿日:2002年07月22日(月)02時43分03秒

自分のエゴの為に
多くに人を傷付けて

この世で一番愛する人を
裏切った

私はあの時誓った筈なのに

モウ ニドト ヒト ヲ アイシタリ シナイ

それが自分自身にかした

解けない呪い

永遠に続く筈だった

自分への足枷

114 名前:Prayer 投稿日:2002年07月22日(月)02時49分36秒

なのに私は

救いを求めた

神様に祈った

たくさんの人達から

よっしぃーを奪った


今でも思う

伸ばされた手を
どうして取ってしまったのかと

一度触れたら

もう二度と戻る事が出来ないと
知っていて―――




115 名前:Prayer 投稿日:2002年07月22日(月)02時55分10秒

「ねぇ、どうやったら海って
 綺麗になるのかなぁ。」

よっしぃーが悲しそうに呟く

日本から遠く離れたこの海も
ゴミが浮いていて、濁っていて、汚れていて

それはまるで
私の心の中の様で

胸が又、キシリと痛む

「うーん、人間が居なくなるのが
 一番なのかも。」

そう言った私の手をよっしぃーは
強く握る

「そっか。」


116 名前:Prayer 投稿日:2002年07月22日(月)03時00分11秒

ねえ、私が憎くないの?

置いて逃げちゃったんだよ

あなたがどんなに苦しむか
分かっててあの時逃げたんだよ私


「梨華ちゃん、お昼何食べよっか。」


まっ白で、温かくて
不安など微塵も感じさせない
あの頃と変わらない笑顔

たくさんの人達から奪った


ワタシ ダケ ノ アナタ


117 名前:Prayer 投稿日:2002年07月22日(月)03時05分48秒

「ちょっ、梨華ちゃん、何で泣いてるの?!」

カミサマ ワタシ 二

「ごめん、ウチ、変な事言った。」

ドウカ バツ ヲ

「大丈夫、ウチは此処に居るから。」

バツ ヲ アタエテ クダサイ

「ずっと一緒に居るから。」


回された両腕の中で
私は絶望にも似た
祈りを続ける


 
118 名前:Prayer 投稿日:2002年07月22日(月)03時12分23秒

痛みを背負って
過去を背負って


私はこれからも生きて行く


いつか誰かが私達を見つけて
引き離そうとするかもしれない

汚れた私の手を、よっしぃーは
振り払うかもしれない


私に審判が下るその日まで
罪を償わなければならないその日まで


身勝手で罪深い私は
祈り続ける


いつまでも、いつまでも



                        『Prayer』END

119 名前:jack 投稿日:2002年07月22日(月)03時16分31秒
これで本当の完結です。

あえて吉澤さんを、「よっすぃ〜」でも「ひとみちゃん」
でも無く「よっしぃー」にしてみました。

読んで頂いた皆さん本当に有難うございました。
120 名前:オガマー 投稿日:2002年07月22日(月)08時12分06秒
間違えてるのかと思った(爆 なるほどw
梨華たんがそんなに思うことないYO!
ヨシー側にいてやってくれYO!

完結お疲れ様でした。
番外編もジーンときました。
121 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年07月22日(月)09時19分02秒
あぁ、梨華ちゃん切ない(涙
まぢ胸が締め付けられました。イタイ
モット読みたい気もするのですが…(w
ホントにお疲れ様でした。
122 名前:あおのり 投稿日:2002年07月22日(月)15時31分58秒
煽られてしまった・・・(w
本当の終わりお疲れ様です

神様から梨華ちゃんへの罰がず〜っと離れられない二人ですか・・・
二人はそうやって愛の十字架を背負っていくんですね。(←お昼のメロドラマ風表現スマソ
・・・・・萌えます(←大馬鹿
123 名前:jack 投稿日:2002年07月24日(水)02時45分21秒
レスを下さった皆さん有難うございました。
実は本当の完結と言った手前、言いにくいのですが
続きを書くかもしれません。まだ完成していないので
何とも言えませんが、出来上がったら、又、ヒッソリ
コッソリ上げますので、その時は宜しくお願いします。
124 名前:jack 投稿日:2002年07月29日(月)02時12分03秒
続きが長くなりそうなので、出来上がったら
別スレ立てようと思っています。
でも折角立てたこのスレもったいないので
短めのやつをコッソリと上げていきます
又しても痛い系です。それでは。
125 名前:涙の雨 投稿日:2002年07月29日(月)02時23分49秒

買い物の途中
ふと立ち寄った本屋のガラスに

『石川梨華写真集 発売中』

と、いう張り紙が張ってあった
この頃、梨華ちゃんの人気はすごいって聞いた
梨華ちゃんが表紙の雑誌は
飛ぶ様に売れるらしいし
梨華ちゃんの写真集も
ウチ等の中だは一番売れた
それは本当は喜んであげるべき事なんだけど
そう思う反面、ウチの心の中は
不安で一杯だった

126 名前:涙の雨 投稿日:2002年07月29日(月)02時27分44秒

今迄は、梨華ちゃんが隣に居るのが
当たり前だと思っていた

優しい笑顔がウチを安心させてくれた

これからも、それがずっと続くと思っていた


でも、それは違った

127 名前:涙の雨 投稿日:2002年07月29日(月)02時38分07秒

ポケットの中の携帯が静かに振動する
少しの期待を込めて液晶の画面を覗く

『石川梨華』

少し手が震えたのは荷物が重いから
と、自分に言い聞かせて
通話ボタンを押す

『もしもし、よっすぃー、おーい。』

いつもと変わらない、優しく甘い声

「聞こえてるよ。」

本当はすごく嬉しいのに
そんな感情が表に出ない様に
素っ気無く言い放つ

『今何処?お話しても大丈夫?』

足早に本屋を出る

「大丈夫、今買い物の途中。」

梨華ちゃんの周りではザワザワと
たくさんの人の声が聞こえる

「梨華ちゃんもしかして仕事中?」

弾んでいた筈の心が急に萎む

『うん、そう。よっすぃー明日も会えないよぉ〜。』

そう言ったのはウチで何人目なの
梨華ちゃん?

128 名前:涙の雨 投稿日:2002年07月29日(月)02時44分02秒

「しょうが無いじゃん、仕事なんだから。」

ウチは明日もオフだ

ウチは怒ってなんかいない

『えー、ひどぉ〜い。チャ―ミー悲しい。』

ただ不安なんだ

「自分でチャーミーって言うな、キショッ。」

梨華ちゃんが、手の届かない所に
行ってしまう様な気がして

『はぁ〜い、今行きまぁ〜す!ゴメン
 もう行かないと、又電話するね。』

後に聞こえるのは、携帯の切れた音だけ


129 名前:涙の雨 投稿日:2002年07月29日(月)02時48分04秒

耳に携帯を押し当てたまま
顔を上げると
本屋の硝子に自分が映っていた

(ウチ、捨てられた犬みたいな顔してる。)

少しだけ笑ってみる

その顔に一筋の涙が伝う


まるで他人事の様に
暫くその顔を見続けていた


130 名前:jack 投稿日:2002年07月29日(月)02時53分48秒

今日はこの辺で
一応続き物です。
131 名前:オガマー 投稿日:2002年07月29日(月)03時55分43秒
ハケーンw
ちょっと痛めみたいでハラハラ
ヨシの気になる発言が…ハラハラ
132 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月29日(月)06時58分45秒
これは気になる展開…
133 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年07月29日(月)08時05分05秒
続編キター!!
カナリリアルな展開ですな。
痛い系好きなのでキタイしてます。
134 名前:あおのり 投稿日:2002年07月29日(月)19時25分15秒
おう!つづきだぁー!
かなり波乱含みのスタートだ
今後のお話がどうなるのか禿げしく気になります。
135 名前:jack 投稿日:2002年07月30日(火)04時48分57秒
うお〜!ごめんなさい!!
これは続編では無いです。
混乱させてしまって申し訳ない!
130にも書きましたが続きが思ったよりも
長くなりそうなので、出来上がったら、新たにスレ立てます。
これはスレがもったい無いので書いた別のものです。
本当に申し訳ない。思えばタイトルも悪かった。
反省。削除依頼出そうか検討中。
でも取り合えず更新。


136 名前:涙の雨 投稿日:2002年07月30日(火)05時40分32秒

いつ頃からだろう
梨華ちゃんに会えない日を
寂しいと感じる様になったのは

梨華ちゃんが段々ウチよりも忙しくなっていって
別々の仕事が多くなって
一緒に居る事が少なくなって

気付くと
いつも隣に居た筈の梨華ちゃんは
ずっとずっと先を歩いていた

137 名前:涙の雨 投稿日:2002年07月30日(火)05時47分40秒

娘。に入りたての頃
梨華ちゃんはいつも泣いていた

その度に慰めて、励まして
こんなに弱いのに、これから娘。を
やって行けるのだろうかと
心配したのを憶えている

でも梨華ちゃんは、驚く程の強い意志と
人一倍の努力で、少しずつ強くなっていって
いつの間にかウチに泣き付く事も無くなっていた


ウチはもう梨華ちゃんにとって
用無しになったんだ


138 名前:涙の雨 投稿日:2002年07月30日(火)06時01分33秒

でもそれは、ウチの被害妄想なのかもしれない

だって梨華ちゃんは

皆と同じ様にウチにも優しくて
皆と同じ様にウチに接してくれる

何も変わった事なんて無い

始めから梨華ちゃんにとってウチは
メンバーの一人

それ以上でも、それ以下でも無い

それが苦しい

ウチは

梨華ちゃんの


『特別』になりたい







139 名前:jack 投稿日:2002年07月30日(火)06時03分57秒
更新しました。

このまま続けるべきか
仕切りなおすべきか、取り合えず意見待ち。
140 名前:jack 投稿日:2002年07月30日(火)06時09分15秒
135レス目で書いた「130で書きました」っていうの
間違えた。「124レス目で書きました」だったぁ〜。
落ち着け自分!!度々申し訳ない!
141 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月30日(火)07時36分24秒
いや、別に前の話と繋がってなくてもいいんじゃないですか
これはこれで楽しませてもらいますんで
142 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年07月30日(火)08時22分31秒
イイデスイイデス気になさらずに。
作者様の作品が読みたいです。えぇ。
…思えば、こちらの勘違いですよね…すみませんm(_ _)m
つ、続きをキボンヌ!
143 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月30日(火)08時27分03秒
ここの作者は「吉澤人気無い」ネタ好きだね。
これを見ている吉ヲタに喧嘩売ってるんでしょうか?
144 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月30日(火)13時42分43秒
>>143
別に人気ないってわけじゃないでしょう。
喧嘩売ってるってわけでもないし…。
145 名前:PUNK 投稿日:2002年07月30日(火)16時17分59秒
作者さんは一言も「人気ない」なんて書いてないと思うんだけども…

続きを希望します。
146 名前:名無し 投稿日:2002年07月30日(火)16時49分54秒
いつもながらに良い「痛め」加減が素敵です(w
切ない系大好き  続き期待してます!
>>143
嫌なら見ない。 誰にでもできる事ですよ
というか別に人気ないどうのこうのって感じには見えないし。
147 名前:涙の雨 投稿日:2002年07月31日(水)05時51分03秒

今日は久し振りにメンバー全員での収録日
楽屋に着くと、誰よりも先に
梨華ちゃんを探す

梨華ちゃんは楽しそうに
安倍さんと話していた
ウチが入って来た事にまだ
気付いていない

胸がチクリと痛む

二人から一番離れたテ―ブルに
荷物を降ろし、イスに座る

梨華ちゃん少し痩せた?
安倍さんと、何話してるの?

そんな事を考えていると
梨華ちゃんと目が合った

148 名前:涙の雨 投稿日:2002年07月31日(水)06時02分36秒

「よっすぃー。」

嬉しそうに駆け寄って来る

「いつ来たの?」

いつもと同じ他愛無い会話
いつもと同じ無邪気な笑顔

この笑顔が、ウチだけのものだったら


「梨華ちゃん顔色悪いよ?」

そっと梨華ちゃんの額に触れてみる

「ちょっと寝不足かな?
 やっぱりよっすぃーにはバレちゃうね。」

いつも見てるから
でも言わない
言えない

「でも大丈夫だよ。」

そう言って梨華ちゃんは
額に触れていたウチの手を
軽く握ってテーブルの上に置いた

もうウチは、心配もさせて貰えないのかな?

泣きそうになるのを
必死で我慢した


149 名前:涙の雨 投稿日:2002年07月31日(水)06時08分50秒

梨華ちゃんの前ではクールに振舞う
カッコ悪い所なんて見せたくないから

もしウチがこんなに弱いって知られたら
きっと梨華ちゃんはもっと離れて行ってしまう

梨華ちゃんにとって
頼りがいのある人間になりたい

もっともっと必要とされたい

だから強くならないと
誰よりも強くならないと

150 名前:jack  投稿日:2002年07月31日(水)06時17分01秒

更新しました。

なんだか色々と申し訳ない気持ちで一杯っす。
せめてこの作品が良いものとなります様、頑張るっす。
151 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年07月31日(水)09時43分39秒
切ないですけど癒されますな。
マジで毎日楽しみにしてます(w
更新がんばってください。
152 名前:jack  投稿日:2002年08月01日(木)06時17分01秒

>151名無しどくしゃ様
ずみまぜん、今日は更新出来ません。涙が乾くまで待ってください。
153 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月01日(木)09時19分53秒
気持ちわかります。。
154 名前:あおのり 投稿日:2002年08月02日(金)00時12分39秒
おう!続きだ!なんて早とちりやろうで申し訳ありません
ここの悩んでいる吉とても好きです
交信楽しみにしておりますのでガンガン書いちゃってくださいませ。
155 名前:涙の雨  投稿日:2002年08月03日(土)06時06分15秒

収録中ウチは少し上の空だった
今日これが終わったら、梨華ちゃんを誘って
何処かに遊びに行こうと思っていたから
どうやって誘おうかと、ずっと考えていた

そんなだったから休憩中ごっちんに

「ヨシコ、何か今日、変。」

と、少し渋い顔で言われた

「そうかな?」

ウチは言葉を濁す

「んあ〜、調子悪いんだったら今日は帰ったら?
 あとは梨華ちゃんの撮りだけだし。」

それは嫌だ。折角一緒に居られるのに
明日からは暫く別々の仕事で逢えないのに

「大丈夫だよ。」

安心させる為に微笑んでみせる

「あんまり無理しない様に。」

そう言ってごっちんはウチの頭を撫でて
どこかに行った

(無理なんてしていない)

ウチはそう自分に言いきかせた

156 名前:涙の雨  投稿日:2002年08月03日(土)06時19分34秒

梨華ちゃんだけの撮り
皆は楽屋に戻ってて居なかったけど
ウチはなるべく梨華ちゃんを見ていたくて
スタジオの端で立って見ていた
撮りが進むにつれて
段々梨華ちゃんの顔色が悪くなって行くのが
ウチには分かった

(どうして周りの人は気付かないんだ。)

ウチはずっと苛々して見ていた

飛んで行って連れて帰りたい

でもウチにそんな権利は無い

ただ見守るだけ
こんな風に遠くから

これからもずっと?

否、違うウチが強くなったら
きっと何かが変わる筈だ
きっと――
157 名前:涙の雨  投稿日:2002年08月03日(土)06時38分10秒

やっと撮りが終わって
ウチは梨華ちゃんの方へ
足早に駆けていく

取りあえず梨華ちゃんは少し休んだ方が良い
その後で良くなったら、遊びに誘おう
少なくとも、それまでは一緒に居られる

駆け寄りながら梨華ちゃんの名前を呼ぶ

梨華ちゃんがウチに気付いて
一歩足を踏み出した

でもその時
梨華ちゃんの足がもつれて
側にあった機材に体を預けた

そしてそれが

梨華ちゃんに向かって倒れて来た

ウチは手を伸ばす

すべてがやけにゆっくりで

一コマ一コマ、スローモ―ションの様に
画面が映り変わって見えた


その後の事はよく憶えていない


158 名前:涙の雨  投稿日:2002年08月03日(土)06時46分01秒

背中が焼ける様に熱く

顔には冷たい滴が落ちて来ている


(雨が降っているのかな?)


うっすら目を開けると

梨華ちゃんが泣いていて

その涙がウチの顔に雨の様に落ちて来てて

梨華ちゃんは何か叫んでいるんだけど

よく聞こえない

ウチは、そんなに叫んだら
又喉痛めるよって、言おうとしたんだけど

何故か声を出す事が出来なくて

又、目を閉じた

159 名前:jack  投稿日:2002年08月03日(土)06時57分04秒
更新しました。
 
>153 名無し読者様
 有難うございます。

>154 あおのり様
 ガンガン生きます!(あれ?)

大丈夫、泣きながらでもキーは叩ける。頑張ろう...。
160 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月03日(土)12時05分12秒
作者様…つらいッスよね…更新ありがとうございます。
meは作者様の作品を最後にしまッス。
ガンバってください。
161 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月03日(土)16時40分42秒
うぬ…気になる展開…
イイな〜こういう作品好きです。
162 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月04日(日)08時18分11秒

ずっと夢を見ていた

夢の中には梨華ちゃんがいて

昔みたいに落ち込んでて

ウチは一生懸命慰めるんだけど

梨華ちゃんはずっと下を向いていて

ウチの顔を見ようともしてくれない

そうしてるうちに

知らない誰かが

梨華ちゃんに手を伸ばした

梨華ちゃんはその手を取って

その誰かと一緒に

何処かに行ってしまった

追いかけようとしたけど

どうしても動く事が出来なくて

ウチは取り残された暗闇の中で

梨華ちゃんの名前をずっと呼んでいた

163 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月04日(日)08時25分02秒

夢から覚めると
そこはまっ白い部屋の中で
ウチはべットにうつ伏せに寝かされている

(どこまでが夢?)

体を起こそうとした時
背中に激痛が走る

「つぅ....。」

何がどうなっているのか分からない
何でこんなに背中が痛むんだろう

その時部屋のドアが開いた

「ヨシコ!!」

入って来たのはごっちんと矢口さんで
その後ろには白衣を着た男の人が立っていた

164 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月04日(日)08時33分55秒

「よっすぃー大丈夫か?」

何が大丈夫なのかが分からない

「ウチ、一体どうしたんですか?」

ウチの問いに矢口さんとごっちんは
顔を見合わせるだけで何も言わなかった

「ここは病院だよ。」

さっきから黙っていた白衣の男の人が
べットに近づいて来た

「君は背中に傷を負ってる。」

病院?背中に傷?

「ヨシコ、梨華ちゃんと機材の間に
 飛び込んだんだよ。」

それを聞いて思い出した

倒れていく機材
スローモーションの様な光景

泣いていた梨華ちゃん

165 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月04日(日)09時12分42秒

「梨華ちゃん、梨華ちゃんに
 怪我は無かったんですか?!」

激痛を堪えて身を起こす
矢口さんが慌ててウチの体を支えた

「よっすぃー、心配すんな
 石川は大丈夫だから。」

じゃあなんで此処にいない?

「あいつすごい取り乱してて
 ここに来るって聞かなかったんだけど
 連れてこれる状態じゃなかったから
 圭ちゃんに付き添ってもらって家に帰した。」
 
ウチはそれを聞いて安心した
同時にゆっくりとべットに倒れ込む
 
166 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月04日(日)09時23分59秒

「ヨシコ、自分の心配しなよ
 あんた大怪我したんだから。」

ごっちんは泣いてる
矢口さんもなんだか複雑な表情を浮かべている

でもウチは何も言わなかった

梨華ちゃんさえ無事ならそれでいい

「君の背中の傷、少し残るかもしれんよ。」

白衣の男。もとい、お医者さんが
同情を含んだ声音で言った


そんな事大した事じゃ無い


あの綺麗な体が傷付かなくて
本当に良かった


「もう少ししたら親御さんも来るだろう
 それまで眠っていなさい。」

うなずいてウチは目を瞑る


夢は見なかった

 
167 名前:jack 投稿日:2002年08月04日(日)09時28分48秒
更新しました。
 
>160 名無しどくしゃ様
 さ、最後?それはどういう意味なんだろう....。

>161 名無し読者様
 気に入って頂けたら光栄です。
168 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月04日(日)11時36分02秒
。・゚・(ノД`)・゚・。よっすぃ〜
seekの各板に行くのをヤメルとゆうことで…
作者様の作品を最後に…と。
169 名前:オガマー 投稿日:2002年08月04日(日)19時08分14秒
よっすぃ〜
オトコだ!(違
170 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月05日(月)03時04分48秒

鏡で見せて貰った背中の傷は
約10センチ。縫われたその傷口は
まだ赤く腫れていて、少し血が滲んでいる

でもこれならなんとか衣装で隠せる場所だ
うつ伏せに寝ていなくちゃいけないのが
窮屈といえば窮屈だけど
それは仕方の無い事

これ位は我慢しないと

これ位は

171 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月05日(月)03時23分54秒

苦労して体を起こして
お母さんが持って来てくれた
スポーツ新聞を手に取る

『モーニング娘。吉澤ひとみ
 機材に挟まれ大怪我!!』

やけに大袈裟に書いてある
でも梨華ちゃんを庇ってとは
どこにも書いて無い
多分梨華ちゃんの事を想って
それを公表しなかったのだろう
その事に感謝する
それが知れたら、うるさく回りが
騒ぎ出すに決まっている
そんなのは御免だ
梨華ちゃんも迷惑だろう


怪我をした次の日に
梨華ちゃんは一人で病室に来た

その時の事を思い出す

172 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月05日(月)03時44分47秒

青白い顔をして部屋に入って来た
梨華ちゃんは暫く口も訊かずに
べットの側でじっと立ったままだった

目は充血してまっ赤で
一体どの位泣いたんだろうと
心配になって

『どうしたの、うさぎみたいな目して。』

と、声を掛けと
堪えていたのか、堰を切ったかの様に
涙をボロボロと零した

『ごめん..なさ...わた..私の
 せい...で、ご..めん..ね。』

嗚咽を漏らして泣く梨華ちゃんを
出来る事なら抱き締めたかった

その代わりにうつ伏せのまま手を伸ばして
梨華ちゃんのきつく握られた
右手を引き寄せる

『梨華ちゃんの所為じゃ無いよ
 ウチが勝手に転んだだけだよ。』

それでも梨華ちゃんは
中々泣き止まなかった

173 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月05日(月)03時55分47秒

『血がいっぱい出て。』

泣き止んだ後、梨華ちゃんは
ポツリポツリと喋り始めた

『もしかした、よっすぃーが
 死んじゃうんじゃないかと思って。』

ウチは黙って聞いていた

『何回も名前を呼んだんだけど
 全然返事が無くて。』

梨華ちゃんの涙を、雨と
勘違いした時だ

『そのうち誰かによっすぃーから
 引き離されて、気付いたら保田さんと
 飯田さんに抱き抱えられてた。』

梨華ちゃんは苦しそうに言葉を紡いでいた

『梨華ちゃんもういいよ。』

ウチがそう言った後も又少し泣いていた

 
174 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月05日(月)04時04分46秒

(そう、もう終わってしまった事はどうでもいい。)

ウチは読んでいたスポーツ新聞を閉じる
あの事故は確かに偶然だった
でもこの傷は一生消えない
この傷が消えない限り


梨華ちゃんは


ウチの『モノ』

175 名前:jack 投稿日:2002年08月05日(月)04時15分18秒
更新しました。

>168 名無しどくしゃ様
 そんな事おっしゃらずに。自分なんかよりずっと素晴らしい作品は
 たくさんありますよ。

>169 オガマー様
 だがしかし、だがしかし。

思った以上に長くなりそうだなこの話。と、思った今日この頃。
176 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月05日(月)08時57分02秒
おぉ、よっすぃーのキズの痛みが伝わってきそうです。
イタイ系が好きでして、作者様の作品が一番グッときたので。

177 名前:PUNK 投稿日:2002年08月05日(月)14時41分34秒
最後の一文が、なんかもう…

痛いのに、何かとても素敵でした。
178 名前:オガマー 投稿日:2002年08月05日(月)16時59分38秒
ヨシー
そんなこと思ったら駄目だよほ。。
179 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月06日(火)07時54分46秒

ウチは二週間の入院、更に一週間の自宅療養を
今後の予定として聞かされた
病院と事務所が話し合って決めた事だ
それについて特にウチが言うべき事は無い

それよりも毎日梨華ちゃんが会いに来てくれるのが嬉しかった
その日あった出来事、メンバーとの会話、仕事の流れ等を
こと細かに話してくれた
ウチは幸せだった

こんな風に梨華ちゃんとたくさんの時間を過ごしているのは
ウチだけだろうから、そしてこれからもそれは続く筈だ

これは、ウチだけに許された特権
身を呈して大事な人を守った者への
神様からのプレゼント
180 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月06日(火)08時06分30秒

もう強くなる必要は無くなった
強くならなくても
梨華ちゃんはきっと
ウチの側に居てくれる
特別に想ってくれる
自分の為に血を流してくれたと
感謝しているに違いない

そんな事を考えて
心は喜びで震えていた

ウチは今、世界一幸せだと思った
181 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月06日(火)08時30分29秒

退院する前の日の夜
なんとなく病院の屋上に行ってみた

屋上から見える東京は色とりどりのネオンで輝いて見える

光々と光る目下の景色は
何故かウチを不安な気持ちにさせた

大分癒えてきた傷が、ズキズキと痛みだして

ウチは何となく

暗闇の中で

その灯りに向かって

手を伸ばす

でも勿論、何も掴む事は無い

何か言い様の無い寂しさに襲われて

ウチは手を引っ込める


(どうかしてる。)

ウチは夜景に背を向け

静かに自分の病室に戻った

182 名前:jack 投稿日:2002年08月06日(火)08時38分39秒
更新しました。

>176 名無しどくしゃ様
 グッと来て頂いて嬉しいです。だがしかし、だがしかし...。複雑だ。

>177 PUNK様
 ファイト〜、ファイト〜(w

>178 オガマー様
 恋は人をず(ry すみません。嘘です。
183 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月06日(火)08時59分02秒
よっすぃー…ついに退院。ヨカタ。なんか絶妙ですな。
184 名前:オガマー 投稿日:2002年08月06日(火)14時58分27秒
アハハ!レスにワロタ(w
そーかもしんないスー
なんとなく切ない展開の予感??
更新期待w
185 名前:あおのり 投稿日:2002年08月07日(水)00時39分22秒
男前で切ないヨスコが良いです。
お互い一途でも微妙な二人

現実でも更にこの二人に負担がかかっていくのは予想できるので
こんなことがほんとに起こらないことを祈るばかりです。
186 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月07日(水)06時11分55秒

仕事に復期してからは、目の回る様な忙しい日々が待っていた
新曲のレコーディング、遅れている踊りの振り付けなど
メンバーはすでにこれらを終えていたので、一人だけ別行動で活動させられた

でも聞く所によると、ウチの居ない間その穴を埋めようと
メンバーは頑張ってくれていたらしく結構無理もしたらしい

そんな皆に感謝しつつ、一人の仕事をウチは黙々と消化していった

寂しくなかったと言えば嘘になるけど
そんな時は梨華ちゃんに、メールか電話をした

前だったら遠慮して、そんな事は出来なかった
でも今はもう迷ったりしなくてもいい
梨華ちゃんも迷惑がらず、すべてにきちんと応答してくれる
嫌がっている様にも見えない

いつもウチを気遣ってくれた


187 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月07日(水)06時24分01秒

ウチは梨華ちゃんのメールで一杯の携帯を
暇があれば取り出して見ていた


『お仕事頑張ってますか?私は今車で移動中です。』


『ちょっと聞いてよっすぃー、ごっちんが本番中
 眠っちゃって大変だったんだよぉ〜。よっすぃーは
 ちゃんと毎日眠れてますか?』


『明日のオフは買い物に行きます、よっすぃーは
 仕事なんだよね、頑張れ!』


『背中はもう大丈夫ですか?』


顔が緩む

何もかも順調に進んでいる
ウチは背中の傷に感謝する

そう、感謝すらしている

188 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月07日(水)06時34分41秒

梨華ちゃんは誰にもやらない

誰であろうと許さない

梨華ちゃんに必要なのはウチだけだ

ウチが一番梨華ちゃんに近い位置にいる

ウチが一番梨華ちゃんにとっての大事な人

それがすべて

それが真実

これからもずっと

189 名前:jack 投稿日:2002年08月07日(水)06時44分00秒
更新しました。

183> 名無しどくしゃ様
   いつも少しの更新で申し訳無いっす。

184> オガマー様
   『恋は〜』のめっちゃ痛い判という所でしょうか?(違

185>あおのり様
    本当にその通りです。
    
190 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月07日(水)09時52分01秒
イエ、毎日更新ありがたいです。
よっすぃー微笑ましいけどちょとコワイ(笑
191 名前:オガマー 投稿日:2002年08月07日(水)14時03分43秒
読んでていしかーさんに心配されるのって
いいかもと思ったw
どうなってくのかきたいw
192 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月08日(木)07時42分23秒

一人の仕事も一段落して
やっとメンバーと合流して仕事が出来るようになった

勿論梨華ちゃんとも

いくら毎日電話やメールをしているといっても
やっぱり顔を合わせて話す方が何倍も嬉しい

同じ仕事場では、なるべく一緒に居た
仕事中もウチの視線は梨華ちゃんを追っていた
梨華ちゃんの姿が見えないと不安になり
あちこち捜し回った

見つかるまでどこまでも

193 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月08日(木)07時47分20秒

その日もウチは、楽屋から居なくなった梨華ちゃんを捜していた

「吉澤どうしたの?」

廊下をキョロキョロしながら歩いていると
保田さんに声を掛けられた

「梨華ちゃん知りません?」

「ん?石川ならスタジオに居たよ。」

聞き終わらないうちに走り出していた
194 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月08日(木)08時11分19秒

梨華ちゃんはスタジオで、ウチの知らない男の人と
楽しそうに笑い合っていた。きっとウチが猫だったら
間違いなく全身の毛が逆立っていただろう

二人の間に入って、梨華ちゃんの腕を掴みスタジオから出る

「どうしたの、よっすぃー。」

驚いている梨華ちゃんの顔を睨む

「今の人誰?」

「え?」

「だから、今喋ってた男の人、誰?」

ウチは掴んでいる腕に力を込める

「新しいADさんだよ。痛いよ、よっすぃー。」

梨華ちゃんは身を捩った。でも腕は離さない

「もしかしたらその人、梨華ちゃんの事好きなのかも。」

梨華ちゃんはマジマジとウチの顔を見た

「ただ仕事の打ち合わせしてただけだよ?」

梨華ちゃんを引き寄せる

「梨華ちゃんは可愛いから、気を付けた方が良いよ。」

耳元に小声で囁いく

梨華ちゃんは何も言わなかった

ただ黙って、ウチに掴まれている腕を見ていた

195 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月08日(木)08時29分43秒

それからは、梨華ちゃんが他の誰かと話しをしているのを見るだけで
苛々してその間に入っていった。例えそれがメンバーでもだ。

もしかしたら皆は、ウチが少しおかしくなったんじゃないかと
思っているかもしれない。でも今は不安と焦りで回りを見る余裕も無い。

(これが独占欲というものなのかな?)

だとしたら、自分がこんなに独占欲が強いなんて始めて知った
誰かをこんなにも独占したいなんて、今迄思った事が無かったから

このままじゃ前と変わらない、苦しいままだ

ハッキリ聞き出さないと

ウチの事がこの世で一番大事だと

梨華ちゃんの口から

そうしないと満たされない

背中の傷を眺めて、強くそう思った

196 名前:jack 投稿日:2002年08月08日(木)08時35分07秒
更新しました。

>190 名無しどくしゃ様
 更新が日々の楽しみの一つっす。

>191 オガマー様
 あ、それ確かに良いかも(w
197 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月08日(木)08時47分37秒
む、だいぶシリアスな感じにナッテキタ
どうなるんだろうヲタヲタ
198 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月08日(木)09時42分24秒
うん。基本的にマターリな吉澤がこうなってくると展開的に面白いっす
199 名前:ココナッツ 投稿日:2002年08月08日(木)10時02分57秒
おぉぅ…何かよっさんが…(ドキドキ
こういう展開好きです。期待しまくりー!
200 名前:jack 投稿日:2002年08月08日(木)10時09分41秒
200ゲットズザッ
201 名前:オガマー 投稿日:2002年08月08日(木)18時33分57秒
>200
200ゲトーに萌えてるjackさん萌え(爆
ぁゃιぃ展開w
ドロドロですかw
202 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月09日(金)06時36分14秒

自分の部屋から、梨華ちゃんの携帯に電話してみると
電源が切られていて繋がらない

(今迄こんな事なかったのに。)

何度も掛け直したが一向に繋がらない。ウチはべットの上に
携帯を投げつけた。部屋の中を落ち着き無く考えながら歩く

(もしかして誰かと一緒だとか。)

今から梨華ちゃんの家に行こうか迷った

(いや、それは無い。梨華ちゃんがそんな事をするわけが無い
 多分疲れて眠っているんだ、電源を入れるのを忘れて。)

その考えに満足してウチはべットに入る

(大丈夫、いつでも聞き出す機会はある。何なら明日仕事が
 終わったら直接梨華ちゃんの家に行けば良い。)

そんな事を考えながらウチは、ウトウトと眠りについた

203 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月09日(金)06時50分26秒

次の日楽屋入りすると、梨華ちゃんは居なかった。どうやら今日は別行動らしい
何で昨日のうちに連絡を寄越さないんだと、少しムッとした

(まぁいいや。どっちにしろ梨華ちゃんの家に行くのは変わりない
 突然行ったら驚くかな?)
 
驚くだろうがきっと喜んでくれるだろう
そう思うと気持ちが晴れた

早く逢いたい

早く、早く

204 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月09日(金)07時11分04秒

「吉澤ちょっといい?」

仕事を終えて、急いで梨華ちゃんの家へ向かおうとした時
保田さんに声を掛けられた

ウチは心の中で舌打ちする

でも渋々と椅子に座り直す。皆は挨拶をしてゾロゾロと帰って行った
楽屋に残されたのはウチと保田さんだけ

「何なんですか?ウチ急いでるんですけど。」

保田さんはウチの不機嫌な声に、少し驚いた顔をしている

「ごめん、直ぐ済むよ。あぁ〜、実はさぁ、あんたの背中の傷の事なんだけど。」

傷?背中の?それが保田さんにどう関係あるんだ?

「私の知り合いに、その傷治せるかもって人がいて。」

一瞬ウチは体を固くする

「ほら、形勢手術っていうの?その人そういうのを専門にしてるお医者さんでね。」

頭の先から血の気が引いていった
205 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月09日(金)07時20分15秒

ダメだ、それだけは絶体
この傷を消そうだなんて余計な事を

この傷は『印』なんだ

梨華ちゃんとウチが繋がっていられる証なんだ

「だからさ、一度その人と会って話しを...」

「止めて下さい!!」

拳を机に叩きつけてウチは怒鳴っていた

206 名前:jack 投稿日:2002年08月09日(金)07時30分48秒
更新しました。

197>名無しどうくしゃ様
   本当にどうなるんだろう...大分予定外な展開に...。

198>名無し読者様
   これからも面白いと思って頂ければいいんですけど...(不安だ)

199>ココナッツ様
   これからも期待に添えればいいんですけど(ドキドキ

201>オガマ様
   マジで狙ってますた(w
207 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月09日(金)09時09分57秒
200ゲト大いにワラタ(w
てか、よっすぃーホントに恐くなってきた(ガクブル
208 名前:オガマー 投稿日:2002年08月09日(金)17時44分02秒
よしぃ
せつねぇな…
ここまでくると
209 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月10日(土)06時02分28秒


「どうして消さなくちゃいけないんですか?!」


『ひとみは手が掛からなくて楽だわ。』
小さい頃からしっかり者だって言われて
下二人の弟の面倒をよく見て
いつもお母さんに誉められた


「ウチにはこの傷が必要なんです。」


『吉澤さんてその辺の男の子より強いですよね。』
何故か皆に頼りにされた


「この傷が無いと梨華ちゃんが...。」


『お前って一人でも生きていけるタイプだよな。』
昔付き合っていた彼氏は
ウチの事をよく分からないと言って振られた


「離れて行ってしまう。」


『ひとみって悩みなんて無いでしょ?』
友達はいつも上辺だけのウチしか見てくれない

ずっと寂しかった

いつも一人だった

誰も本当のウチを見てくれなかった

そんな日常が普通だった中で

石川梨華に出会った

210 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月10日(土)06時17分53秒

『ひとみちゃん、仲良くしてね。』

今迄出会って来た誰にも似ていない人
自分の悪い所も良い所も全てさらけ出して感情を表現する
ウチとはまるで正反対な人

そんな梨華ちゃんに、少しづつ少しづつ惹かれていった
女の子だとかメンバーだとか、そんな事気にならなかった

梨華ちゃんだったら、本当のウチを受け止めてくれる
ウチの伸ばした手に気付いて、救ってくれるって
そう思った

梨華ちゃんは強いから

暗い穴の中にうずくまるウチを

引きずり出してほしかった

211 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月10日(土)06時30分29秒

「吉澤!落ち着きなさい!」

保田さんに肩を掴まれて揺さぶられている
知らぬ間に立ち上がっていた

「どうしたの?あんたが取り乱すなんて。」

アンタ ガ トリミダス ナンテ

ほら、保田さんだって本当のウチなんて分かってないじゃないか
笑いそうになったのをどうにか堪える

「これが本当の吉澤ひとみですよ。」

そう言ってウチは、荷物を掴んで楽屋を飛び出した


もうウチには梨華ちゃんしか居ない

他の人なんかいらない

212 名前:jack 投稿日:2002年08月10日(土)06時37分00秒
更新しました。
おかしい...予定ではもう終わっている筈なのに。

207>名無しどくしゃ様
   ここのよっさんともども不調っす。ダメダメっす。

208>オガマー様
   夏バテはきついっす。
213 名前:オガマー 投稿日:2002年08月10日(土)09時06分24秒
ほんと、毎日ダルイ…
熟睡できないし…
よっすぃ、やっぱりせつねぇ
214 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月10日(土)10時01分32秒
よっすぃーそんなコトがあったのか…
梨華ちゃん、助けてやらな…(つД`)
215 名前:ココナッツ 投稿日:2002年08月10日(土)14時40分22秒
え?もう終わる予定だったのですか。
ラストはどうなるんでしょう(ワクワク
216 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月11日(日)05時59分46秒

「どうしたの、よっすぃー。」

今日一日顔を見ていないだけなのに、随分長い間会っていない気がする
両手を伸ばして梨華ちゃんを抱き締める
安堵感と疲労感が一緒に体の中に広がる

「ちょっ、よっすぃー、人に見られちゃうよ。」

そんな事どうだっていい、かえってその方が都合がいい
本当は、この人はウチのモノだって大声で叫んで歩きたい

「早く入って。」

急かされて、仕方無く体を離し部屋の中に入る

ウチは後ろ手で鍵を閉めた

217 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月11日(日)06時15分18秒

思えばあの事故が起こってからこの部屋に来るのは初めてだ
お互い忙しくて、いつもヘトヘトで毎日を終えていたし
同じ日にオフを取る事は出来なかったから

「紅茶で良い?」

頷くと梨華ちゃんはキッチンの方へ消えていった

部屋の中を見渡す
棚の上にはメンバー達の写真が並んでいる
雑誌が2、3冊テーブルの下に重ねて置いてある

特に誰かが来た形跡は無い

「何か捜してるの?」

カップを二つ手にした梨華ちゃんが不思議そうに
後ろから見ていた

ウチはそれには答えないで

「昨日携帯の電源切ってたでしょ。」

質問を返した

218 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月11日(日)06時40分24秒

「え?昨日電話したの?ごめんね、なんか最近イタズラ電話多くて。」

話ながら紅茶をテ―ブルに置き、立ったまんまのウチとは反対の場所に座る

「番号変えようかと思ってるんだ。」

ウチも座る、沸々と何かが胸を沸かす

「そんな事言って、本当は誰かと会ってたんじゃないの?」

さっきの保田さんとの会話の所為で気分が高揚している
こんな事を言うつもりは無かったのに保田さんの所為だ

梨華ちゃんは紅茶を口に運んでる最中だった手を止めた

「ねぇ、よっすぃー、この頃少し変だよ?」

紅茶を置いて、真剣な顔をして梨華ちゃんは言った

反対にウチは紅茶のカップを口許に運ぶ

「私が誰かと会ってたなんて、どうしてそんな事聞くの?」

ガチャン、と大きな音を立ててウチはカップをテーブルに置くと
少しだけ中身がこぼれた

219 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月11日(日)06時52分48秒

梨華ちゃんは驚いて固まっている

「心配だからだよ、梨華ちゃん誰にでも優しくて
 可愛いから、皆勘違いして言い寄って来ちゃうでしょ?」

こぼれた紅茶をハンカチで拭き取る

「ウチに心配掛けたくないからって隠す事無いよ。」

梨華ちゃんに微笑んで見せる
でも梨華ちゃんは笑わない

「大丈夫、この位でウチは怒ったりしないから
 だって梨華ちゃんはウチの事......」

「何言ってるの?」

ウチの言葉を梨華ちゃんは遮る

「何を言ってるか分らないよ、よっすぃー。」

赤く腫れ上がった背中の傷を思い出す
その傷がパックリと口を開けて
血が流れ始めた気がした

220 名前:jack 投稿日:2002年08月11日(日)06時58分50秒
更新しました。

213>オガマー様
   夏バテにはウナギ!ウナギっす!(でも俺は食えないんだYO)

214>名無しどくしゃ様
   だがしかし、だがしかし

215>ココナッツ様
   本当は3回で終わる予定でした。しかもまだ終わりません
   前作より長くなりそうな予感が...。あわわわ。
221 名前:ココナッツ 投稿日:2002年08月11日(日)08時44分48秒
き、来たか!?梨華っちはどう出る!?
いやぁ長くなるならなるで、こちらはいっこうに構いません(w
まだ続いて欲しいです。
222 名前:オガマー 投稿日:2002年08月11日(日)10時02分07秒
なんか洋モノの映画を見たからでしょうか…
この緊迫感がものすごく(゚∀゚)イイ!
なんかヤバイ雰囲気がプンプンします
続き期待w
223 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月11日(日)10時44分53秒
ヽ( ゚▽。)ノポッポー
よ、よっすぃー…いったい…ハラハラ
続きに大期待キタイ。更新待ってます。
224 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月12日(月)03時20分17秒

息をするのが苦しい、胸の当りをギュッと掴む

「痛いよ、梨華ちゃん、背中の傷が痛むんだ。」

梨華ちゃんの表情が狼狽に変わる

「お願い、こっちに...来て。」

少し迷う素振りを見せてから、立ち上がってウチの横へ座る
その体に腕を回す

「やっぱり来てくれた。」

梨華ちゃんは動かない

「ウチには梨華ちゃんだけだよ。」

梨華ちゃんの肩に顔を埋める

お母さんに抱かれていた幼い頃を思い出す
そんな気分だった

225 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月12日(月)03時33分35秒

どれ位そうしていただろう
突然両肩を掴まれて体が引き離される

「よっすぃー、その傷治して貰おう?」

ハッキリとウチの目を見てそう言った

「保田さんに聞いたよ、それ手術で治す事が出来るんでしょ?」

呆然として梨華ちゃんを見る

「よっすぃーがおかしいの、その傷の所為だって保田さんが言ってた。」

そういえばさっき
梨華ちゃんは何て言ったっけ?
ウチ馬鹿だから憶えてないや

「このままじゃ駄目だよ、その傷に囚われちゃ駄目だよ。」

ああ、そうだ、思い出した

「一緒にお医者さんの所に行こう?」


『何を言ってるのか分らないよ、よっすぃー。』


両肩に置かれた手首を掴んで
梨華ちゃんを後ろに押し倒した

226 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月12日(月)03時36分52秒

やっぱりウチは一人なんだね

ウチの声は誰にも届かないんだね

涙がボロボロと零れて梨華ちゃんの顔を濡らす


まるであの日ウチの上に降って来た

涙の雨の様に

227 名前:jack 投稿日:2002年08月12日(月)03時44分17秒
更新しました。

>221 ココナッツ様
 まだ続きますよぉ〜。

>222 オガマ―様
 俺も夏バテでヤバイです。

>223 名無しどくしゃ様
 ポッポーって...目が落ちてるし。
   
228 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月12日(月)10時56分17秒
胸が苦しい…よっすぃー…
涙しましたよ。えぇ。
229 名前:オガマー 投稿日:2002年08月12日(月)18時23分46秒
ちょっとだけ今、この状態に萌えた僕は
 人 間 失 格 デスカ?(氏
夏バテ辛いけどがんがりましょうね〜!!
230 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月13日(火)04時04分24秒

「本当の事を教えてあげようか?」

梨華ちゃんが脅えた様にウチを見ている

「この傷がある限り、ウチのモノだって...
梨華ちゃんはウチのモノだって。」


そんな目で見ないで


「一生側に居てくれるって。」


いつもの様に優しくして


「他の誰にも渡さないって。」


それが叶わないなら


「よっすぃー....。」


消えてしまえ


「そんな事考えてたなんて...ひどいよ。」


全部消えてしまえ


「皆だってよっすぃーの事心配してるのに、なのに...」


そしてまっ白い世界だけが残るんだ


「よっすぃー最低だよ!!」


そこにはきっと、痛みも苦しみも無い


231 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月13日(火)04時12分57秒

長い沈黙の後
ウチは掴んでいた梨華ちゃんの手首を離し起き上がった
梨華ちゃんは起き上がらない
ウチの事を下から睨んだまま動かない

フラフラと立ち上がるとゴミ箱につまづく
散らばったゴミの中にカードらしきものが見える


『梨華へ、愛してる』


ウチの知らない誰かからのカード

でも、何の感情も湧かない
ただそれを一瞬見下ろして

部屋を出た

232 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月13日(火)04時22分07秒

どこをどう走っているのか分らない

どこに向かって走っているのか分らない

体中が心臓の鼓動と一緒に痛む

段々呼吸が苦しくなってきた

喉はヒューヒューと悲鳴を上げている

目が眩んで足がもつれる

そのまま道路に転がった

回りの人達が寄ってきてウチに声を掛けている

その声はやけに遠くの方から聞こえた

起き上がってその人達に頭を下げ

又走った


気が付くといつの間にか

見知らぬ歩道橋の上に立っていた

233 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月13日(火)04時26分11秒

もう終わりだ

すべて終わり

もしウチがこの世から居なくっても

世界は変わらない

何も変わらない

少しだけ悲しまれて

少しだけ泣いて貰って

後は忘れられていくだけ

たったそれだけ

234 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月13日(火)04時36分55秒

(こんな事を考えるなんて、ウチは死のうとしてるのかな?)

もし誰かに、死のうとしている理由を言ったら
笑い飛ばされるだろう


『好きな人に嫌われたから』


でも誰も居ないから、一人で笑った
声を上げて笑った

自分の惨めさを、愚かさを笑った

(結局ウチは一人相撲してただけか。)

もう失うものは無い


歩道橋の手すりから身を乗り出して
下を走る車のライトに向かって手を伸ばす

(今度こそ、この光が掴めるかもしれない。)

ウチは目を瞑った

235 名前:jack 投稿日:2002年08月13日(火)04時42分15秒
更新しました。

>228 名無しどくしゃ様
 今回が今迄で一番痛いかと...。

>229 オガマー様
 イエイエ、もっと萌えて下さい。
236 名前:オガマー 投稿日:2002年08月13日(火)07時55分58秒
ぐはぁ!
痛い…
よちぃ…
237 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月13日(火)09時03分31秒
うわぁ、えらいことに…
238 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月13日(火)10時21分32秒
グッときますね…
痛いけど、このシーンが一番好きだなぁ
239 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月14日(水)05時56分01秒

その時、物凄い勢いで後ろに引張られた。
ウチはバランスを崩して、背中からコンクリートの上に落ちる

「痛っ...てぇ。」

痛みで霞む視界の中に、見慣れた顔が映る

「何...やってん..の..この..バッ..馬鹿。」

ゼェゼェと、両手を膝の上に当てながら、肩で息をしている

「保田さん..どうして此処に。」

体を起こして座ったままのウチを、保田さんは手で制する

「ちょっ..と待ち..なさ...。」

そう言って息を整える為に深く深呼吸をした
ウチは訳が分らず、ただそんな保田さんを見上げていた

240 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月14日(水)06時12分22秒

少しして落ち着いた保田さんは、キッとウチを睨んだ

「あんたが石川がどうこう言ってたから、心配で見に来たのよ!」

そう言えば保田さんに傷の話しをされた時
梨華ちゃんの名前を出したのかもしれない
あの時は混乱していて、無意識に出てしまったんだけど

「そしたらあんたが石川のマンションから飛び出して来たから
 此処まで追い掛けて来たのよ。まったく、何処よ此処。」

「どうして、追い掛けて来たんですか?」
 
ここまでどの位走ったのか分らないけど、かなりの距離を走った筈だ

保田さんはツカツカと側に寄ると、いきなりウチの頭をグーで殴った
バキッと鈍い音がする

「だから言ってるじゃない!心配だったからって!」

ウチは殴られた頭を抑えながら立ち上がる

「なんで保田さんに心配されなくちゃいけないんですか
 ウチの事は放っといて下さい。」

背を向けて立ち去ろうとした時
又、凄い力で襟首を掴まれ後ろに引張られる

 
241 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月14日(水)06時21分19秒

「あんた、今ここから飛び降りようとしてたでしょ?」

襟首を掴まれたまま後ろを振り変えると
真近に保田さんの顔があった

「違います。」

目を逸らして体を離し、まっ正面から睨みつける

「嘘を付くな、馬鹿。」

「なっ..。」

言葉に詰まって何も言い返せない

なんでこんな事を保田さんに言われなくちゃいけないんだ

怒りが体を支配していく

242 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月14日(水)06時50分52秒

「何も知らないくせに偉そうな事言うな!!」

ウチは吼えた。でも保田さんは一向に怯んだ様子は無い

「ああ、知りたくも無いね。あんたみたいな卑怯者の事なんて。」

(卑怯者?ウチが卑怯者?)

保田さんの言葉が理解出来なくて、一瞬考え込む

「人の弱みに付け込む人間の事を、卑怯者って言うのよ。」

保田さんが吐き捨てる様に言った

その言葉にウチは激しく動揺する

「あんた、あの事故で作った傷を使って
 石川の事縛ろうとしてたでしょ?」

動揺するウチとは対照に保田さんは落ち着いて淡々と話す

「カッコ悪いね、吉澤。」

ウチは保田さんに掴み掛かり

「違う!違う!違う!」

そして叫び続けた


その声は車の走行音に掻き消されて
虚しく闇へと溶けていった


243 名前:jack 投稿日:2002年08月14日(水)06時59分12秒
更新しました。

>236 オガマー様
 まだまだぁ!!

>237 名無し読者様
 今回も、えらい事になってます

>238 名無しどくしゃ様
 有難う御座います。でも、もっとうまく書けたらといつも悩みますよぉ。

いつか長編用の板にスレ立てたいなぁ....。(この身のほど知らずが!)
244 名前:オガマー 投稿日:2002年08月14日(水)08時01分51秒
卑怯者…
よちこ!もっと純粋に梨華たんを愛したまえ(誰
245 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年08月14日(水)16時43分35秒
吉くん。。。。痛い。
あ〜でも、ヤッスーカッケ〜!!
続き楽しみにしています。ガンガッテください。
246 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月14日(水)17時57分09秒
よかったぁ…落ちなかったのねん。。。
何時か落ち着いたら作者様の作品たくさん読みたいです
247 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月15日(木)11時08分25秒

保田さんは胸倉を掴んでいたウチの両手を握る

「あんただって気付いてたんでしょ、これじゃ駄目だって
 だから苦しいんでしょ?」

ウチの手を下にゆっくりと降ろす

「そんな事で人の心を縛る事が出来るのは、一時だけだよ。」

保田さんの言った通り、本当は気付いてた

「どうして正面から向き合おうとしないの。」

自信が無かった
梨華ちゃんに振り向いて貰う自信が

「誰かに心を開いてほしいなら、まず自分から心を開きなさい。」

ウチが演じていたのはただの偽善者だ

248 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月15日(木)11時26分45秒

今になって沢山の罪悪感がウチを襲う

『よっすぃー、最低だよ!!』

(そうだね、最低だね)

又、涙が出て来た

保田さんがウチの頭を優しく撫でる

「私達は、吉澤が考えてる以上に吉澤の事理解してると思うんだけど。」

驚いて顔を上げると
保田さんは、寂しそうな顔をして笑っていた

「吉澤がおかしいって、最初に気付いたのは後藤。」

病室に駆け込んで来た時、すごく心配そうな顔をしていたごっちんを思い出す

「傷をどうにかして消せないかって相談しに来たのはなっち。」

安倍さんはウチが辛い時、いつも声を掛けてくれる

「あんたはねぇ〜、一人じゃ無いでしょ?」

そしてこうやってウチの為に追い掛けて来てくれた保田さん

「一人で抱え込まないで、もっと私達に頼りなさいよ。」

ちゃんと見えてなかったのはウチだけ

皆が手を伸ばしてくれていたのに

回りを見る余裕もなくて一人で捻くれて

そんな大事な事に、今更気付くなんて

涙が、後から後から溢れてくる


249 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月15日(木)11時44分06秒

「でも、もう遅いんです...梨華ちゃんにも
 嫌われ...ちゃったし。」

保田さんはウチの両手を握る

「あの子は、誰かを簡単に嫌いになったり切り捨てたりしない。
 それは吉澤が一番分ってる事でしょ?」

「だけどウチは、酷く梨華ちゃんを傷付けたから...。」

ふぅ、と溜息を付いて強くウチの手を握る

「一度失った信用を取り戻すのは大変だけど
 まだちゃんと謝って無いんでしょ?」

無言でウチは頷く

「だったらちゃんと誤りなさい、そうじゃないと何も始まらない。」

(ごめんなさい。そして、ありがとうございます。)

言葉にする代わりに、手を強く握り返した
多分伝わったと思う。二カッと満面の笑みをウチに向かって浮かべたから

「さぁ、タクシー拾って帰るわよ!明日が待ってるわ!」

ウチと保田さんは手を繋いで歩きだした

「保田さん...カッケー。」 

「当り前よ!私を誰だと思ってるの!」

やけに大きな声に、久し振りに心から笑った

250 名前:jack 投稿日:2002年08月15日(木)11時50分07秒
更新しました。

>244 オガマー様
 落ち着いて落ち着いて(オロオロ

>245 よすこ大好き読者様
 少年マンガ風熱血ヤッスーって事で...(違

>246 名無しどくしゃ様
 たくさんですか...む〜ん。
251 名前:オガマー 投稿日:2002年08月16日(金)00時45分15秒
カッケー(゚д゚)
よちこ…(ジーン
252 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月16日(金)03時22分25秒

歪んだ感情

これからも続く不安と苦痛

後悔は先に立たないし

過ぎた時間を取り戻す事は出来ない

でも、止まったまま後ろばかり振り向いても

前へは進めない

光には届かない

弱いとか強いとかじゃ無く

ウチは自分一人で立っていたい

誰かに寄りかかるんじゃなくて

自分の力で立っていたい

253 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月16日(金)03時27分19秒

不思議に思う

あれだけ閉ざしていた心が

こんなにあっさりと開かれるなんて

今まで誰の言葉も耳に届かなかったのに

保田さんの言葉はなぜか響いた

それだけウチは弱っていたからなのか

でもきっとそれだけじゃない

今のウチには分からないけど

いつか分かる時が来る

いつか————

254 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月16日(金)03時33分06秒

梨華ちゃんにきちんと話さないと

この傷を治すって

責任を感じる事はないって

すぐには許して貰えないかもしれないけど

これからも一緒に頑張ろうって


どんなに時間をかけても取り戻してみせる

ウチに向けられる

優しい笑顔を


朝日が差し込む部屋の中で
ウチは始めの一歩を踏み出した

255 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月16日(金)03時37分36秒
更新しました。
ラストスパーーーート。ここまで長かった...。

>251 オガマー様
 よっちぃー今迄すまんかった...。
256 名前:オガマー 投稿日:2002年08月16日(金)05時43分53秒
ぉぉ、佳境やないですかぁ〜
がんがってくださいね!
257 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月16日(金)15時53分34秒
アヒャよっすぃー頑張れぇ!ドキドキ
258 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月17日(土)04時57分45秒

緊張しながら楽屋への廊下を歩く
心臓が口から飛び出しそうだ

(落ち着け、落ち着け。)

そう心の中で繰り返してドアノブに手を掛ける

「っはよーーす!すみません、遅れました!」

力一杯ドアを開けたので、凄い音が部屋の中に響く
一斉に皆の視線がウチに注がれた
あまりの恥ずかしさに、顔がまっ赤になるのが分かる

硬直しているウチの所にごっちんが来て、額に手を添えられる

「熱は無い様だ。」

そう言って、何事もなかったかの様に元の場所へと戻って行った
皆の視線も元の位置に戻される

そこでウチはやっと硬直が解けた

(ハハ、カッコ悪ぅー。)

259 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月17日(土)05時06分26秒

部屋の中を見渡すと、保田さんがウチに向かって手招きをしている
ギクシャクと歩いて、隣の席に座る

「その顔じゃ、一睡もしてないわね。」

よく見ると保田さんの目はまっ赤だ

「保田さんこそ。」

保田さんは苦笑いする

「でもそれってウチの所為ですよね。」

そう言うと、保田さんの目がいつも以上に釣り上がる

「あんまりくだらない事言ってると、また殴るよ?」

その優しさに緊張が解れて
体が少し軽くなった気がした

260 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月17日(土)05時21分24秒

「えーと、梨華ちゃんはまだ来てないんですか?」

部屋の中に梨華ちゃんの姿は無い

「あぁ、さっきスタッフに呼ばれてどっか行った
 直ぐ帰って来るとは思うけど...。」

そう言いながらチラッとウチに目配せする

{二人っきりで話すなら今がチャンスだよ}

保田さんの言いたい事が、何となく分かったから

ウチは席を立つ

「ちゃんと正直に話すんだよ。」

少し心配そうな保田さんに
ウチはビッ、っと親指を立ててみせた

261 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月17日(土)05時42分21秒

(正直に...か。あの時もある意味正直だったんだけど。)

そんな事を考えながら梨華ちゃんを捜す
スタジオ、空室、トイレ、色々な所を捜したものの
何処にも見当たらない

(もう楽屋戻ったのかなぁ。それとも...。)

不安の波がウチに押し寄せる

(もしかしたらウチを避けてるの?)

嫌な汗が背中を伝う

(それもそうか、あんな酷い事言う人にはなるべく会いたくないよな。)

奮い立たせた筈の心が萎んでいく

(でもここで諦めたら駄目だ、もう二度と元には戻れない。)


ウチは熱くなった頭と心を冷やす為に

屋上に上がった

262 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月17日(土)05時58分45秒

いつも誰も居ないから、今日も誰も居ないだろうと思っていたら
どうやら先客が居る様だ。開けっぱなしの扉の向こうから声が聞こえる

話の内容は遠けて聞こえないけど、ウチは好奇心に駆られてこっそりと覗く


そこには

後姿だけど梨華ちゃんが居た

そして、後ろ姿の梨華ちゃんの斜め前には

知らない男の人がいる


これは仕事の話をしているんじゃ無いって分かったのは

その男の人が満面の笑みで、幸せそうに梨華ちゃんに話かけているから

ウチに背を向けている梨華ちゃんの表情は分からないけど

きっと同じ様な笑みを浮かべているんだろう

(あの男が...梨華ちゃんの恋人...)
 
リカチャン ノ タイセツ ナ ヒト

263 名前:jack 投稿日:2002年08月17日(土)06時04分42秒
更新しました。

>256 オガマー様
 佳境の入り口ってとこです。

>257 名無しどくしゃ様
 どうなる?!よっすぃー(又やってしまいました..自己煽り。スマソ)
264 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月17日(土)07時37分56秒
えぇ!以外な展開…。
ホントにどうなっちゃうの…よっすぃー
265 名前:オガマー 投稿日:2002年08月17日(土)08時21分25秒
閉じろ!
入り口よ!梨華たんをこっちに引き寄せて閉じろ〜〜(呪@コワ
266 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月18日(日)01時56分40秒

そうだった、自分の事に気を取られて忘れていた

『梨華へ、愛してる』

梨華ちゃんの部屋で見つけたあのカード
あれはきっとあの人から送られたものなのだろう

ザワザワと頭の中を無数の想いが交錯する

悲しみ

くやしさ

敗北感

それら負の想いにさらわれそうになり

涙が出ない様に歯を食いしばる

(どうしてウチだけこんなに苦しい。)

(ウチといた方が梨華ちゃんは幸せになれるのに。)

(ウチが女だから駄目なのか?)

苦しい、苦しい、苦しい


誰か助けて

267 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月18日(日)02時17分32秒

誰に?

誰に助けて貰うの?

最初からウチには誰も居ないでしょ?

(違う。)

最低だって言われたじゃない。

卑怯者だって言われたじゃない。

(だけど...)

もうよしなよ。

人なんてそう簡単に変われないんだから。

だから諦めなよ。

(諦める?何を?)

全部。

そうしたらきっと楽になれる。



「嫌...だ。」


268 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月18日(日)02時45分18秒

戻りたくない

もう二度と梨華ちゃんを傷付けたくない

大事だから

何よりも誰よりも大事だから

この想いが届かなくても

それだけは変わらないから


『あんたはねぇ〜、一人じゃないでしょ?』


そう、ウチは一人じゃない

だから大丈夫


269 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月18日(日)02時49分51秒
更新しました。

>264 名無しどくしゃ様
 中々進まないっす。困った。

>265 オガマー様
 閉じたら終わらないじゃないっすか(w
270 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月18日(日)23時05分07秒
がんばれー
271 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月19日(月)02時00分08秒

悲しみは消えていないけど
それでも二人を憎む気持ちは無い

(謝るのは後からにしよう。)

階段を一段下りた時

「止めて下さい!」

梨華ちゃんの甲高い声がウチの耳へと届く
振り返ると梨華ちゃんが両腕を男に掴まれていて

それを見たウチは後先も考えずに飛び出していた

272 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月19日(月)02時14分37秒

「梨華ちゃん!」

その男は驚いた顔でウチの事を見た

(あれ?この人どっかで見たような...)

記憶を辿る

「確か..新人のADさん。」

前に梨華ちゃんと一緒に居た人だ
その時は二人の間に入って、梨華ちゃんを引っ張って直ぐ離れたから
おぼろげな記憶しか無いけど
確かにあの時の人だ、いつから付き合い始めたんだろう?

驚いて男の力が緩んだんだろう
梨華ちゃんが掴まれていた手を振り払って、ウチの後ろに隠れた

「いくら彼氏だからって、乱暴は止めなよ
 梨華ちゃん嫌がってんじゃん。」

片手を横に伸ばして、後ろの梨華ちゃんを庇うような体勢を取る

「よっすぃー、この人彼氏なんかじゃ無いよぉ。」

梨華ちゃんは、ウチのTシャツの裾を引っ張りながら言った


273 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月19日(月)02時34分02秒

(はっ?)

斜め下に中腰で顔だけ出している梨華ちゃんを見ると
眉を八の字にした困り顔で男を見ていた

(えっ?)

頭の上にハテナマークを飛ばしつつ目の前の男に視線を移すと
男はウチの事を睨みつけている

(何、何、どういう事?)

ウチが混乱していると、男がゆっくりとこっちに近づいて来た

「邪魔ばかりしやがって。」

そう言った男の目は驚く程冷たい

「もうこれ以上付き纏わないで!」

今度はウチの背中にすっぽりと隠れて梨華ちゃんが言った

(付き纏う?...あっ。)


『最近イタズラ電話が多くて。』


「もしかしてこいつがイタズラ電話の犯人?」

梨華ちゃんはコクリと頷いた

274 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月19日(月)02時53分56秒

「な、何で昨日言わなかったの!」

「だってよっすぃーが訳の分からない事言い出すんだもん!」

(そうでした....。)

ウチはうな垂れる

「それに、ちゃんと話せば止めてくれると思って..。」

甘いな、と思いつつそんな所に惚れたのかも、っと不覚にも思ってしまう

「梨華、どうしてそんな事言うんだ、そいつの所為か?」

両手を広げて、男は悲痛に顔を歪める

「電話を掛けても出ない、プレゼントも受け取らない
 何をすれば俺のモノになってくれるんだ。」

『俺のモノ』その言葉にウチの体が反応する

(きっとこれが昨日までの自分)

ゾッとした、ウチもこの男と同じだったかと思うと吐き気がした


275 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月19日(月)03時13分46秒

「俺が一番梨華を愛してる、俺だけが梨華を幸せに出来る。」

頭の中でブツンと音がした

「軽々しく梨華、梨華呼ぶな!!」

男の動きが止まる

「梨華ちゃんは誰のモノでも無い。」

これは、昨日までの自分自身への言葉

「本当に好きなら嫌がる様な事はするな。」

これからは自分に負けない様に

「梨華ちゃんの優しさの付け込むな。」

梨華ちゃんへの謝罪を込めて

「大丈夫、まだ間に合うから。」

願いと希望を込めて

276 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月19日(月)03時33分13秒

男は動きを止めたまま、目だけが泳いでいる
梨華ちゃんはまだウチのTシャツの裾を掴んで背中に隠れている


「もう二度と梨華ちゃんに迷惑かけるなよ。」

男はガクガクと震え出した

「行こう、梨華ちゃん。」

男に背を向け、梨華ちゃんの肩を押しながら出口に向かう

「行かないで...俺を置いて行かないで。」

その言葉に振り向くと、男が何かギラギラ光る物を両手で握っていた

(何だ?)

そう思った時、男がウチ等めがけて突進して来た

ウチはとっさに梨華ちゃんを後ろに突き飛ばす


「いやぁーーーーーー!!」


梨華ちゃんの悲鳴が、屋上と青い空に響き渡った



277 名前:jack 投稿日:2002年08月19日(月)03時36分16秒
更新しました。
あまりの駄作ぶりに眩暈を起こしそうな今日この頃。

>270 名無し読者様
 はい...。ガンバリます。
278 名前:オガマー 投稿日:2002年08月19日(月)08時08分38秒
ぐはっ!
よっちぃ…
279 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月19日(月)10時12分05秒
ギャー!!よっすぃー!ハラハラ…
胸が苦しいっ
280 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年08月19日(月)15時59分50秒
まぢですか〜〜〜〜?
ハラハラしながら続きを待ちます。
281 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月20日(火)05時55分14秒

ポタポタとコンクリートの上に血が滴る

後ろで倒れているであろう梨華ちゃんの方は敢えて振り返らず
両手で受け止め握り締めているナイフに力を込める
ここでもし引き抜かれでもしたら、大流血間違い無しだ

「な、な、な、何で...」

すっかり平常心を失い困惑している男が
脅えた様にウチの血に濡れていく手許を見ている

「あんたねぇー、今ウチを刺そうとしたの?梨華ちゃんを刺そうとしたの?」

男は震えながらウチを見た

どうやら狙われていたのはウチらしい

「まぁ、それなら半分は許す。」

その気持ちが少しは分かるから

今迄のウチだったらきっと同じ事をしていたと思うから

282 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月20日(火)06時26分17秒

「後の半分は、ちゃんと立ち直る事が出来たら許す。」

男はナイフから手を離した
ウチも苦労して指を一本一本慎重に引き剥がす

ナイフが、乾いた音を立てて下に落ちる

(ん?そういえば静かだな、梨華ちゃん。)

後ろを向くと、梨華ちゃんはまだ倒れていた。揚げ句にピクリともしない
もしかしたら打ち所が悪かったのかも、と焦って駆け寄り
呼吸をしているか確かめる

(よかった、生きてる。)

大方、後ろから事の成り行きを見ていた梨華ちゃんは
ウチが刺されたと勘違いして気を失ったのだろう

血が、梨華ちゃんの頬を紅く染めた

(血付けちゃった、何で拭き取ろう...)

そんな事を思案していると
背後から、凄い力で両腕を取られた

283 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月20日(火)06時35分36秒

「偉そうな事ばかり言いやがって。」

耳の後ろで冷たく男が言い放つ

「お前なんかに俺の気持ちが分かってたまるか!!」

ギリギリと両腕が捻り上げられる


(駄目だ、折られる!)


その時、ぼやける視界の中に

何かが矢の様な速さで横切っていった


284 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月20日(火)06時48分47秒

「ごとぉぉーーーパーーンチ!!」

ガコッという鈍い音の後に、ウチの体は自由になり、前のめりに倒れる

その体を誰かが受け止めてくれた

「吉澤!」

昨日の歩道橋の場面とシンクロする

「ハハ、又保田さんに助けられた。」

「何言ってるの、どうなってるの一体?!」

男は、かなりのパンチを喰らったのだろう
白目を剥いて倒れている

「大丈夫!梨華ちゃん気を失ってるだけ!」

かなりのパンチを放ったであろうごっちんは梨華ちゃんを持ち上げた
俗に言うお姫様だっこだ

(あ、ちょっとごっちん羨ましいかも。)

勿論口には出さなかったが


285 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月20日(火)07時12分29秒

「ごっちん、梨華ちゃんの事頼んだ!」

ごっちんが片目を瞑る

「ラジャー!」

(ごっちんウインク、カッケー。)

後姿に見惚れていると、保田さんに頭を小突かれた

「さっ、あんたも病院行くよ。」

そう言われて初めて自分の今の状態に気が付く
手の平からの血が当りに飛び散っているし
両方の捻られた腕も、まだ少し軋む

ウチは保田さんに肩を借りながら立ち上がった

「この人どうしましょう...。」

今もまだ白目を剥いている男を指差す

「後藤が誰かを呼んでくれている筈。」

保田さんに引っ張られながら
もう一度振り返る

(ごめん、助けてあげられなくて。)

胸に痛みを憶えつつ
ウチ等は屋上を後にした


286 名前:jack 投稿日:2002年08月20日(火)07時20分49秒
更新しました。
明日でラストです。

>278 オガマー様
 あと1回!あと1回!

>279 名無しどくしゃ様 >280 よすこ大好き読者様
 ハラハラして頂いて有難う御座います(w
 あと1回気合入れて更新します。
287 名前:オガマー 投稿日:2002年08月20日(火)08時53分39秒
あと一回!あと一回!
ラスト楽しみにしていますYO!w
288 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月20日(火)09時31分29秒
あと一回!ラストワクワク
期待してマス。更新楽しみだぁ
289 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月20日(火)11時01分22秒
ああ、良かった
どうなることかと…
290 名前:ココナッツ 投稿日:2002年08月20日(火)16時51分10秒
ごっちんカッケー!カッケー!!
あと一回で終りですか。ちょっと残念だけど楽しみに待ってます。
291 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月21日(水)06時01分23秒

出血の割に傷はそんなに大した事もなくて
2、3針縫っただけで済んだ

だけど大事を取って2日間の入院を余儀なくされる

事務所と親からは激しく怒られた


「訴えない事にしたんだって?」

お見舞いに来てくれた保田さんは、ウチの為にリンゴの皮を剥いてくれている

「ウチ、難しい事は分かりませんから。」

リンゴの皮は一度も切れる事なく長々と繋がって床に垂れている

「そんな事言って、どうせ自分と重ね合わせて同情したんでしょ。」

その言葉は無視して、皿の上に並べてあるリンゴに手を伸ばす

でも掴もうとした瞬間、保田さんは皿を持ち上げた

何事かと保田さんを睨むと、ニヤリと気味の悪い笑みを浮かべている


嫌な予感がした...


292 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月21日(水)06時18分17秒

保田さんはリンゴに刺さった爪楊枝を摘むと

「あ〜〜ん。」

と、ウチに向けて差し出した

「何の真似ですか?」

本当は聞きたくない、でも聞かずにはいられない

「まっ、人が親切に食べさせてあげようとしてるのに
 何なのよその言い草は。」

「結構です。」

すると保田さんはウチの首に片腕を回して

「いいから、口開けなさいよ。」

と、およそ怪我人に対する態度とは明らかに遠い脅し文句と共に
もう片方の手でリンゴをウチの口許に近づけて来た

「止めろ、ケメ子、キショッ。」

その言葉に逆上したのか、無理矢理ウチの口をこじ開けようとする
ウチも必死で抵抗する


「何、やってるんですか。」


戦いを一時中断し、二人一緒に病室の入り口に視線を移す

そこには、ピンクのチューリップを抱えた

梨華ちゃんが立っていた

293 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月21日(水)06時40分55秒

「あら、石川。吉澤にピンクのチューリップは
 ちょっと似合わないんじゃない?」

ウチの首に回した腕を抜いて
保田さんは持っていたリンゴを一口で食べた
シャリシャリと小気味の良い音が病室内に響く

「花瓶捜して入れて来る。」

リンゴを飲み下した保田さんはそう言って梨華ちゃんからチューリップ
を受け取ると、病室を出て行った

梨華ちゃんは、閉められたドアの前でつっ立ったまま動かない

「ウ、ウチ、チューリップ好きだよ。ま、まぁ座りなよ。」

保田さんがさっきまで座っていた椅子を指差してウチは言った

心無しいつもよりぼんやりとしている様に見える梨華ちゃんは

ゆっくりと一歩一歩確かめる様に歩いてその椅子に座った

294 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月21日(水)06時53分38秒

二人の間に重苦しい沈黙が続く

どこからどう話して良いか分から無い

ウチは梨華ちゃんの顔がまともに見ていられず、ずっと下を向いていた

(まず、謝らないと。)

覚悟を決めて口を開きかけた時


「ごめんなさい。」


か細い声でウチが言おうとしていた言葉を
梨華ちゃんが先に口にした

「へ?何で梨華ちゃんが謝るの?」

思いがけない梨華ちゃんの謝罪に驚いて顔を上げると
梨華ちゃんは、スカートを握り締めてグッと目を瞑っていた

ウチは用意していた言葉も忘れてただ呆然とそんな梨華ちゃんを見ていた


295 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月21日(水)07時10分00秒

「私、よっすぃーに酷い事言った。よっすぃーの事最低だなんて。」

言われて当然の事をしたんだ、梨華ちゃんが謝るのは筋違いだ
そう言おうとした、でも梨華ちゃんは話を続ける

「本当に最低なのは私なのに。」

意味が分からない、どうして梨華ちゃんは自分の事を
そんなふうに言うのだろう

「よっすぃーの傷が..残るって聞いた時、私...」

梨華ちゃんの綺麗な両の瞳から涙が溢れ出した


「嬉し...かっ..たの。」


296 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月21日(水)07時53分04秒

「こんなのは...間違ってるっ..て分かってたの..でも..」

混乱している頭の中でウチは

(人間ってこんなに涙が出るんだ。)

こんな能天気な事を考えていた

「これで、よっすぃー..の側に居られる理由が....出来たって。」

涙で塞がれた梨華ちゃんの視界の中は、今何が映っているのだろう

ウチは静かにべットから降りる

「保田さんに話したら..怒られて..そんなんじゃお互い
 駄目になるって言われて....その通りだって..気付いて。」

どうして保田さんにはこんなに他人の気持ちが分かるんだと
少し腹立たしくなる

「だから..。」

尚も話しを続けようとする梨華ちゃんの後ろに回り込んで
片手を額に当て、ウチの体に引き寄せる。梨香ちゃんは座っているので
立っているウチの調度鳩尾の部分に梨華ちゃんの後頭部が寄りかかる


「もういいから。」


もういいよ、もうこれ以上

苦しまないで

297 名前:jack 投稿日:2002年08月21日(水)08時04分03秒
更新しました。
どうしよう...終わらんかった....(自爆

>287 オガマー様
 ガバッ(土下座)

>288 名無しどくしゃ様
 ずみまぜ〜ん。

>289 名無し読者様
 自分もどうなる事かと思ってました...。

>290 ココナッツ様
 すみません、終わらなかったです(汗

298 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月21日(水)08時35分01秒
いえ、別に構いませんぽ。
次の楽しみがフエタ!続きキタイ。
299 名前:ココナッツ 投稿日:2002年08月21日(水)08時47分40秒
そんな、自分もまったくかまいませんです!
jackさんのペースでがんがってください!
300 名前:オガマー 投稿日:2002年08月21日(水)10時51分10秒
ドキドキしますたw
がんがってください!w
301 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月22日(木)02時43分22秒
みんなかっけー。特に圭ちゃんかっけー。

ドキドキしながら交信待ち中
302 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月22日(木)06時02分50秒

「よくないよ..よっすぃーを傷付けて。なのに又、助けられて。」

包帯を巻いていない左手で梨華ちゃんの目を覆う

「ウチも同じだから。だから泣かないで。」

涙は止め処なく指の隙間から溢れ出す

「背中の傷は治す。手の平の傷は跡が残らないって言われた
 だけどウチは側に居る。」

思えば随分遠回りした

勝手に拗ねて、捻くれて

でも恋ってそんなものなのかもしれない

梨華ちゃんの目から手を離し上から顔を覗き込む

「ひっでぇー顔。」

精一杯の笑顔を梨華ちゃんに向ける


303 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月22日(木)06時15分28秒

梨華ちゃんは立ち上がり、座っていた椅子を脇に避けて
ウチと向かい合い右手を差し出す

ウチは左手をそれに絡める


「こんなに近くに居てくれてたんだね。」


指を絡めたまま、お互いの額を合わせる

「これからもずっと居るよ。」

梨華ちゃんはクスクスと笑う

「よっすぃー、キザだね。」

額から伝わる心地の良い振動が妙にくすぐったくて

「カッケーっしょ?」

照れ隠しに言った

梨華ちゃんは指を解くと、今度はウチの首に腕を回す
ウチも、梨華ちゃんの背中に腕を回した

二人の心臓の音が重なり合う


304 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月22日(木)06時31分02秒

「ウチ、諦めないから。」

いい機会なので宣言する事にした

「何を?」

耳元で梨華ちゃんが甘く囁く

「梨華ちゃんの一番になる事。」

抱いている腕に力を込めようとしたのに梨華ちゃんは
その腕からスルッと抜け、怪訝そうにウチを見た

「ごめん、梨華ちゃんの部屋に行った時見たんだ
 その...カ―ドを。」

どうやら心当たりが無いらしい梨華ちゃんは頭を頻りに捻っている

「ほら、あれ、彼氏からでしょ?『梨華へ、愛してる。』ってやつ。」

その途端、梨華ちゃんの顔がゆでダコの様にまっ赤に染まる


305 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月22日(木)07時01分07秒

「み、見たの?!」

こんなに動揺するなんてよっぽど相手の人が好きなんだ
と、ちょっとガッカリする

(でもヨシコ負けない。)

心の中でガッツポ―ズ

そんな荒れ狂う心中を知る由も無い梨華ちゃんは
ガバッとウチの胸に顔を埋めた

(嬉しいような、切ないような...。)

サラサラの梨華ちゃんの髪を掬いながら撫でる


「あれ......なの。」

ボソボソと梨華ちゃんが何か呟いた

「何?聞こえなかった。」

梨華ちゃんの顔の横に耳を近づける


「あれ、お父さんから..なの。」


聞こえた...でも聞き間違えたのかもしれないので

「お、お父さん?今お父さんって言った?」

確認の為にもう一度聞いてみると

梨華ちゃんは、顔を埋めたままコクリと頷いた

「私のお父さん、たまにああいうの送って寄越すの....。」

もしこれがコントだったらウチの頭にタライが落ちて来た筈だ


306 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月22日(木)07時31分20秒

言われてみればもし本当に大切な人から贈られたものなら
それが包装紙であれカードであれ後生大事に保管しとくで
あろうこの人ならば。ぬかった

「梨華ちゃん...お父さんは..大切にね。」

体中の力が抜けて、梨華ちゃんを抱えたまま
床にしゃがみ込む

ピョコッと梨華ちゃんが顔を上げる

「今も昔も、よっすぃーが一番大事な人だよ。」

思考回路が一斉に停止する

「もうとっくに気付いてると思ってた。」

梨華ちゃんの手がウチの両頬に添えられる

「梨華ちゃん...。」

ウチが顔を近づけ様とした時、添えられた両手におもいっきり
頬を左右に引っ張られる


「いでででで。」

「鈍いにもほどがあるよ。」


梨華ちゃんは、怒った様な呆れた様な顔で呟いた


307 名前:jack 投稿日:2002年08月22日(木)07時49分49秒
更新しました。
今度こそ!....明日で終わりです。(ドキドキ)

>298 名無しどくしゃ様
 はい!明日です!

>299 ココナッツ様
 お言葉に甘えさせて頂きやした。

>300 オガマー様
 300GETおめでとう御座います。(実は忘れていた)

>301 名無し読者様
 カッケー圭ちゃんが好きです。
308 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月22日(木)10時03分50秒
よっすぃーの頬ひっぱる梨華ちゃんイイ!
ついにマジでラスト…ドキドキ…更新待ってます。
309 名前:ココナッツ 投稿日:2002年08月22日(木)14時35分22秒
いやっほい!きたぞーきたぞー!\(^▽^)/
楽しみだなぁ〜!!(壊
310 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月23日(金)02時55分30秒

(酷い...酷すぎるわ吉澤...。)

ずっと部屋の外で立ち聞きしていた私は
衝撃の事実を知って眩暈を覚える

(この後に及んでまだ石川に恋人がいると勘違いしていたなんて。)

流石の私でさえビックリ仰天

石川が吉澤を好きなのも、吉澤が石川を好きなのも
メンバー全員が気付いている

矢口となっちなんて、どちらから先に告るか賭けまでしている

なのに当の本人達はこれだ

(私の苦労って一体...。)

悔し涙ポロリ


311 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月23日(金)03時06分31秒

「圭ちゃん何してんの?」

「ゔっ」

突然の後藤のドアップに仰け反る

「あ、あんた現れるなら予告してから現れなさいよ!
 今ので3分寿命が縮んだわよ!」

早鐘の様にうつ心臓を抑えながら後藤に眼を飛ばす

「あはっ、圭ちゃんチューリップなんか持って本当に地蔵みたい。」

「人の話を聞きなさいよ!」

言ってからハッとする

(いけない、いけない立ち聞きしてたのがバレちゃうわ。)

慌てて口を抑える

「今立ち聞きしてるのバレちゃうって思ったでしょ?」

またしても心臓が跳ね上がった

(とぼけた顔して人の心を読むのね、油断出来ないわ。)

後藤をそんな私をニヤニヤと見ていた


312 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月23日(金)03時26分15秒

後藤は私の後ろを覗き込み

「あの二人は?」

当然本来の目的であろう質問を口にする

「実はね...。」

事の成り行きを語ろうとした時


『よっすぃーなんて、だぁい嫌い!』

『だ、大嫌いぃ?!』


中から甲高い石川の声と、情けない吉澤の声が聞こえた

「どうなってんの?」

後藤がめずらしく神妙な顔つきで私に聞くので
今迄立ち聞きしていた内容を詳しく話してやる

「あはっ、ヨシコらしいじゃん。」

話終わると後藤は、無責任にも笑い出した

「ったく、笑い事じゃないでしょーが。」

私はチューリップを抱えて、頭を抱える

「しょーが無いなぁー、もうひと働きしようよ圭ちゃん。」

やけに楽しそうな後藤は、こそこそと私に耳打ちし始めた


313 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月23日(金)03時45分54秒

作戦会議(?)が終わり病室に乗り込もうとした時
後藤が何かをゴトッと床に置いた

多分...多分お見舞い品だと思われるそれを私は指差す

「そ、それは?」

「んあ?お見舞い。」

間髪入れずに答えられた
少しでも、違うかもしれないと期待した私が馬鹿だった

「でもそれって..植木鉢...よね。」

まさしくそれは植木鉢。
土が落ちない様にであろう、ご丁寧にキチンとビ二ール袋が被せてある

「ほら、花だったら枯れちゃうけどこれなら
 家に持って帰って育てられるし。」

嬉々として語る後藤にまさか入院患者に鉢植えは不吉だから
駄目だとも言えず

「ち、ちなみに何の花が咲くのよ?」

頭痛がしてきて眉間を抑える

「だから花じゃないって。や.さ.い。」

ここが病院じゃなかったらきっと絞め殺していたに違いない


314 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月23日(金)04時21分26秒

病室のドアを勢いよく開けると
腕を組んで仁王立ちしている石川の前を
吉澤がオロオロと行ったり来たりしている

「保田さぁーん、ごっちぃーん。」

今にも泣き出しそうな顔で吉澤が私達に救いを求めた

(かぁー情けない、こりゃ一生石川の尻に敷かれ続けるわ。)

吉澤を無視して後藤の行動を待つ

後藤は人差し指を石川に突きつける

「話は聞いたよ梨華ちゃん、ヨシコの事嫌いなんだって?
 オーケー、オーケー、オーケー牧場。」

後藤の芝居がかったセリフを合図に、私達は吉澤の肩に腕を回す

「吉澤は貰った。」
「ヨシコは貰った。」

後藤と私が同時に吉澤の頬にチューをした


「イヤーーーーダメェーーーー。」


突撃して来た石川から逃げる為、吉澤を残し離れる
モロに抱きつかれた吉澤は後ろにひっくり返る

(あれは痛い。)

同情しつつ私達は急いで病室を出た


「大丈夫かな、あの二人。」

尚も心配そうな後藤

「私達に出来る事はここまで、後は本人達次第よ。」

315 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月23日(金)04時30分20秒

悩んでもいい

カッコ悪くてもいい

泣いてもいい

大切な事にさえ気が付けば

大丈夫、石川も吉澤も自分自身でそれに気付いたから

これからはゆっくり進んで行きなさい


「圭ちゃぁーん、ゴトーお腹減った。」

後藤のお腹からきゅ〜っと音がする

「よっし!今日は何でも私が奢ってあげるわ!」

やったぁー、と喜ぶ後藤と共に
私は揚々と歩き出した


316 名前:涙の雨 投稿日:2002年08月23日(金)04時46分39秒


「梨華ちゃん...ちょっと重い。」


「.....。」


「さっきのあれ、不可抗力だからね。」


「.....。」


「えーとぉ...。」


「.....。」



「大好きだよ?」



「うん。」



そんな会話を
置きっぱなしのチューリップと植木鉢だけが聴いていた



                    『涙の雨』おわり
317 名前:jack 投稿日:2002年08月23日(金)04時54分58秒

完結しました。

下手に長くしてしまったので非常に詰めの甘い作品となってしまいました。
それでもレスを付けてくれた方々や
沈みきったこの作品を読んで下さった皆さん本当に
感謝しています。
318 名前:ココナッツ 投稿日:2002年08月23日(金)05時44分08秒
そんなぁ、楽しめました。詰めが甘いなんて全然。おもろかったです!
ごっちん…野菜って…。
完結おめでとうございます!
319 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月23日(金)05時57分20秒
jackさんの小説は (・∀・)イイ!!
毎朝読んでいて切なくて胸が熱くなっておりました。
これからも痛い系よろしくお願いいたします。
320 名前:オガマー 投稿日:2002年08月23日(金)07時56分01秒
ドキドキドキドキ
小動物のように心臓が高鳴ってますYO!(w
最後のセリフのところいいスねぇー
ニヤけた顔がなおりませんw
完結、おつかれさまでした!!
321 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年08月23日(金)10時55分38秒
イヤー感動モンでしたね。
痛くてよかったです。ラストは甘でw
ラストに涙出てきました。ぅぅっ
完結、更新お疲れ様でした!
322 名前:娘。 投稿日:2002年08月24日(土)01時04分14秒
おもしろかった
323 名前:jack 投稿日:2002年08月26日(月)02時51分15秒

>318 ココナッツ様
 楽しんで頂いてものごっつ嬉しいです。まだまだ力不足の自分ですが
 又どこかで見かけたら読んでやって下さい。

>319 名無しさん様
 毎朝読んでくださり有難う御座います。痛い系ですか..。
 これも本当は最後まで痛い系の筈だったのですが...。

>320 オガマー様
 小動物って...。兎に角今は無事に終わってほっとしています。

>321 名無しどくしゃ様
 いやいや、全然甘くないっすYO毎日更新は楽しいかったけど
 やっぱり大変だった(w

>322 娘。様
 やったぁ〜。

次回は「On a〜」の続編か、もしかしたら新作で...。
それでは。


Converted by dat2html.pl 1.0