愛は蜜の中
- 1 名前:すなふきん 投稿日:2002年07月14日(日)00時45分26秒
- 図々しくも、また書かせて頂きます。
カップリングは『よしごま』。
内容は暗くて痛めなので、この手の話を好まれない方は
読まれない方が良いかも…。
というわけで、sageで更新したいと思います。
ペースとしては週1,2回を目指して。
- 2 名前:愛は蜜の中 投稿日:2002年07月14日(日)01時11分04秒
「ひとみ…探したよ…。」
真夏の太陽は汚れたアスファルトを容赦なく照らして、全てのものを
熱気で包もうとする。
どうせなら、あの時葬り去ったあの想いも。
全て、もう跡形もなく焼き焦がしてくれたら。
………終わったと思ったのに。
「どうして…。」
あたしの問いにも彼女は目を細めて笑うだけ。
例えようもない恐怖と、これ以上ない甘い感覚があたしを蝕んでいく。
目の前に現れた真希は昔と何も変わってなくて、この蒸し暑い街の中
汗の一つも流していなかった。
- 3 名前:第1話 投稿日:2002年07月14日(日)01時20分03秒
あの日、あたしは梨華ちゃんとの約束があるにも関わらず、まんまと寝過ごしてしまい
普段は通らない、その殺伐として広くもない路地を久しぶりに走った。
5月も終わりだと、空気が少し湿って感じる。
この前、夏用に買ったノースリーブのシャツを着てきて正解だった。
走りながら携帯を取りだし、梨華ちゃんの名前を探し出してから発信ボタンを押す。
自分の呼吸の音がうるさくて、鬱陶しい。
コールが3回鳴ったところで彼女が出た。
- 4 名前:第1話 投稿日:2002年07月14日(日)01時23分28秒
「あ、梨華ちゃん!?あの、あたしだけど…。」
『あ、よっすぃー?今どこ?』
やっぱり、その声は携帯越しでも高くて、あたしは密かに羨ましがったり。
「それが、ゴメンっ!!寝坊しちゃって…。」
『寝坊?よっすぃーが、寝坊なんて珍しいねー。』
ちょっと皮肉混じりのその言葉に、もちろんあたしは言い返せるはずもなく。
走りながら苦笑い。
「ゴメンね、後20分くらいで着くと思うから。」
『ふふっ、ゆっくりでいいよ。気を付けてね。』
まぁ、最後の気遣いがなんとも彼女らしい。
あたしは素早く電話を切って、バッグに押し込んだ。
一学年上の彼女とは中学のときに知り合って以来、付かず離れずの関係が続いている。
- 5 名前:第1話 投稿日:2002年07月14日(日)01時25分03秒
部活を止めて、途端に何もすることがなくなったあたしは
度々こうして梨華ちゃんを誘っては暇を潰していた。
あぁ、この言い方じゃ梨華ちゃんに悪い。
暇なあたしにわざわざ付き合って貰ってるんだ。
そんなわけで、昼前のこんな時間に必死こいて走ってるのは、どこを見てもあたしだけ。
当然、梨華ちゃんと約束してた映画の時間に間に合いそうにないのも、あたしが走る理由。
そうでなくても、ここは幾分居心地が悪いんだ。
- 6 名前:第1話 投稿日:2002年07月14日(日)01時31分14秒
夜のお店や、少しヤバ目の小さい古びたビル。
少し目を凝らせば、地下に続く階段が見える。
そんな類の建物が左右にバーッと並んで、日付が変わってから賑わい出すような場所だ。
元来、面倒なことはあんまり好きじゃない。
こんなとこ通ったって、良いことは絶対に起きないと本能的に知っている。
あの時だって……
2年ほど前。
夏の暗くなり始めたとき、中学3年生で受験生だったあたしは、塾の帰り暗い道を通るのが
少し恐くて、明るく賑わうここを制服で帰っていた。
そしたら、後ろからずっと付いて来てたのか。
酔っぱらったハゲオヤジに痴漢紛いのことをされたのが
どうもトラウマになってしまって…。
- 7 名前:第1話 投稿日:2002年07月14日(日)01時34分32秒
- あの時は本当に恐くて、もうどうしようかと思ったけど。
今思い返してみるとムカムカと腹立たしく、思いっきり顔面の一発でも
殴ってやれば良かったと思う。
(多分、酔っぱらってベロベロになっていたあのオヤジには勝てた)
だけど今は、そんなこと言ってる場合じゃない。
全く、こういうときに寝坊なんてするかなぁ…。
セットしていたはずの目覚ましが鳴らないで、あたしが起きたのは
丁度家を出るはずの時間。
そこは昼前の時間帯で、店はどこも閉まっている。
チラホラ人影が見えるくらい。
だけど、今日はそうとう運がないのか、走り続けたあたしの前方に運悪く、道を塞ぐように
トロトロ歩く柄の悪そうなお兄さん達が4,5人。
うわ…。
自分で顔が険しくなるのが分かった。
- 8 名前:第1話 投稿日:2002年07月14日(日)01時36分47秒
…しょうがない。
心の中でチッと舌打ちして、追い越せそうもないその集団から少し離れ、速度を緩めた。
あー、梨華ちゃん待ってるだろうな…。
時計を気にしながら、待ち合わせの喫茶店でストローを弄ぶ姿が容易に想像できる。
イライラした気持ちを抑えて歩いていたら、後ろから肩をポンポンと
軽く誰かから叩かれて、あたしは思わず振り返る拍子にその手をパンと払ってしまった。
(だって、痴漢にあったときもこんな風だったから)
「あ…。」
足を止めたあたしの目に映ったのはイヤに色っぽい女。
払ってしまった右手を彼女は再びあたしの肩に乗せた。
肩に置かれた手がすごく冷たい。
すぐに、支えがないと立っていられないんだ、と分かった。
顔の半分は、俯いているせいでカーテンのように掛かった髪で隠れてしまっている。
一応の化粧も真っ青な顔と汗ばんだ肌では台無しで、代わりにスリットが大胆に入った
黒いワンピースがあたしの目を惹いた。
「あの、なにか…?」
- 9 名前:第1話 投稿日:2002年07月14日(日)01時40分59秒
出来れば、こういう人とは関わりたくない。
ただでさえ今は急いでいるのに…。
言い訳めいたことを必死で考えるあたしの頭の中を、グラグラと何かが揺さぶった。
目の前にある、やつれた表情に目を奪われる。
あ、れ……?
視界がボンヤリと暗くなって、周りが段々見えなくなってくる。
その暗い濁った視界の真ん中に映ってる彼女はただジッと、こっちを見ていて
ノイズ混じりにユラユラ揺れる。
どっかで響くクラクションの音、さっき前にいた男達の下品な笑い声。
街の音が全て遠くて、あたしの耳には。
リフレインするように、聞き慣れたはずの声が響く。
「…………。」
こめかみの汗がツーッと頬を流れて、背中の汗が一気に滲んだ。
暑いせいじゃない。
心臓の音が急激に激しくなって、呼吸が苦しい。
頭の奥が熱くなるような感覚。
- 10 名前:第1話 投稿日:2002年07月14日(日)01時44分10秒
あまりの変貌振りに気づかなかった。
これ以上もなく愛した真希。
忘れられるはずなんてない。
これは本当に只の偶然。
いや、これから始まる皮肉な運命。
どちらにしろ、あたしは彼女と堕ちていくことになる。
- 11 名前:すなふきん 投稿日:2002年07月14日(日)01時45分21秒
- 今日はここまでです。
- 12 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)02時07分55秒
- すなふきんさんのよしごまキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!
冒頭から惹きこまれました。
痛めの話好きです。続き期待しておりますので頑張って下さい。
- 13 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月14日(日)17時00分37秒
- おおおすなふきんさんの新作だあ!!!!
かなり期待させてもらいますっ☆
- 14 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月14日(日)19時47分02秒
- ワーイ!すなふきんさんの新作だぁ!!
これで楽しみが一つ増えた(w
さっそく続きが気になります。頑張って下さいね。
- 15 名前:第2話 投稿日:2002年07月14日(日)22時01分38秒
元々あたしの希望としては家から一番近い、平均的な偏差値の普通高校に行きたかった。
当時、仲の良かった友人達も揃ってそこを受験するし、制服も結構カワイイ。
だから自分としてはその高校を受験するのが当然で、すっかりその気でいたのに。
幸か不幸か。
昔からなぜか勉強は出来る方で、一応上位に食い込んでいた。
そのとき担任だった先生がどうしても、と両親まで説得するもんだから
自宅からかなり遠い、有名女子校を受験する羽目になってしまった。
(制服が可愛かったのが救いだ)
そして、気づいたときには予想以上に掛かっていた期待を裏切るわけにもいかず
必死に勉強した末、何とか合格発表の日には笑うことが出来た。
- 16 名前:第2話 投稿日:2002年07月14日(日)22時08分26秒
まず一年生の間は、自学自習のスタイルを徹底的に染み付けさせるため、全員が
学校敷地内にある寮に入ることになる。
慣れ親しんだ地元を離れるのはすごく寂しかったけれど、週末や長期休暇中には
届け一つで帰れるし、我が儘が通るわけでもないので素直にその規則に従った。
前に来た学校説明会のときもお母さんと2人で驚いてたけど、私立だからなのか何なのか。
とにかくこの学校はよく言えばとっても綺麗で、悪く言えば
どうでもいいところにまで金が掛かってる。
築10年と聞かされている寮は各部屋にそれぞれユニットバスが付いて8帖ちょっとの
2人部屋には冷暖房完備。
家具も一通り揃っている。
しかも、妙に内装が凝ってたりして。
まるで1人暮らし。
あ、相部屋だから2人暮らし?
でもまぁ、環境が良いに越したことはないし、予想してたより
学校の雰囲気は穏やかで過ごしやすそうだ。
部活動だって自由に出来る。
(あたしにとって今のところ、これが一番重要だ)
考えてみれば結構良いこともあるじゃないか。
そう思うことで、無理矢理自分を元気づけることにした。
- 17 名前:第2話 投稿日:2002年07月14日(日)22時12分02秒
形式だけのHRが終わり、さっそく出来た友人と寮に戻ったあたしは、一人2段ベッドの
下に着慣れない制服のまま寝転がって、これからの学園生活に胸を膨らませた。
けどさすがに入学式当日とあって、それなりに緊張していたらしい。
柔らかいシーツの感触に、ウトウトし始めた頃だろうか。
ガチャッと入り口のドアが開く音。
その音で、パッと目が覚めた。
相部屋の子だ。
勢いよくと身を起こして(危うく頭を打ちそうになった…)
反射的に入り口を覗くと、綺麗なロングヘアの清潔そうな雰囲気の子が立っていた。
靴を脱ぎ揃えながらあたしの方を見て、少し驚いた顔。
- 18 名前:第2話 投稿日:2002年07月14日(日)22時17分08秒
「初めまして。」
ゆっくりニコリと笑って挨拶された。
テレビで見るワンシーンのように、一連の動作は絵になっていた。
第一印象は最高に良い。
「あ、は、初めましてっ!」
慌ててあたしも立ち上がってから、頭を下げた。
随分落ち着いている彼女に比べて、マヌケな姿だったと思う。
大人びた顔の作りが印象的なその子は、あたしのそんな姿を見てクスクス笑いながら
「後藤真希です。ヨロシク。」
笑った顔は印象と違って、子供っぽさが幾分前面に押し出される。
――― かわいいなぁ。
あたしは一瞬、その可愛らしい笑顔に見とれて、息を飲む思いをした。
- 19 名前:第2話 投稿日:2002年07月14日(日)22時18分10秒
葉桜が覗く窓辺。
これが真希との出会いだった。
- 20 名前:すなふきん 投稿日:2002年07月14日(日)22時33分07秒
- 今日はここまでです。
ストックが幾分あるので、中盤辺りまではスムーズにいくと思います。
>>12 名無し読者さん
レスありがとうございます!
痛め好きですか?
自分も大好きです(w
特に、後藤さんが痛いのは。
( ´ Д `)<んあー…ごとーこれから、大変だぁ……
>>13 名無しさん
レスありがとうございます。
はい、久々に書かせてもらうことにしました。
まだまだ未熟者ですけど、宜しくお願いします!
>>14 ルパン4thさん
おー!!お久しぶりです♪
随分、痛めになる予定ですけど、読んで下されば幸いです。
- 21 名前:シューヤ 投稿日:2002年07月14日(日)22時44分38秒
- すなふきんさんの新作だッッ♪
痛めも暗めも大歓迎です。
凄い嬉しいですー。この感動を書き表せない国語力が恨めしいです(w
期待しております。
- 22 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月15日(月)00時26分24秒
- 二人には一体どのような過去があったのか…。
続きが凄く気になります。
次回の更新も楽しみにしていますので頑張って下さい。
- 23 名前:凪 投稿日:2002年07月15日(月)01時04分42秒
- お待ちしておりました。
すなふきんさんのよしごま大好きです。
痛め暗め大好きなので楽しみにしてます。
- 24 名前:第3話 投稿日:2002年07月15日(月)23時45分09秒
相部屋な上にクラスも同じ。
最初は些かぎこちなかったけど、あたし達はそうそう時間を掛けずに誰よりも仲良くなった。
「もうすぐ学祭か…。」
「んー。」
カリカリとシャープペンの音がシンとした部屋に響く。
もちろん真希が今日の復習、明日の予習しているから。
もう見慣れた光景。
あたしは下のベッドでゴロゴロと雑誌を読む振りをしながら、真希が
勉強机に向かっている姿を目で追う。
真希はそれを知ってか知らずか全然振り向きもしない。
これはもう2人で部屋にいるときのスタイル。
「真希、クラス委員だし大変だよねー。」
雑誌を枕の側に閉じて、あたしはゴソゴソとシーツを被った。
(高いところが苦手なあたしは一段目のベッドを使っている)
そんなもう寝るだけのあたしに気を遣っているのか、真希は部屋の電気を豆電球にして
机のライトだけを付けて毎晩勉強する。
- 25 名前:第3話 投稿日:2002年07月15日(月)23時47分18秒
「どうにかなるよ。」
この学園生活を送り始めて、もうすぐ6ヶ月目。
いよいよ学園祭が開かれる時期に差し掛かっていた。
ここの学祭は体育祭と文化祭が一緒に開かれる為、もの凄い盛り上がりを見せるらしい。
そうなると、首席でこの学園に合格した彼女は色々と大変だという。
生徒会のお手伝いやら、学級委員長の仕事やら。
なるほど、優秀な人間は常に忙しい。
「わ、余裕だ?」
あたしのからかいに、真希はクルッと首だけこっちを振り返って
「まぁね。」
口の端だけで笑う。
あたしは真希らしい冗談を聞いて嬉しくなり、バフッと枕に顔を埋めた。
- 26 名前:第3話 投稿日:2002年07月15日(月)23時49分22秒
真希との他愛のない会話は心地よかった。
もちろん、地元の友達といた頃も日々は楽しかったし、今でも心の支えだ。
ただ、真希と過ごす時間のような安らぎを感じられたかと言えば、あたしは疑問に思う。
初めて。
こんな経験。
真希との時間はフワフワとあたしを包んで。
時間の流れが切り取られたように、ゆっくりに感じる。
無駄なことなんか何一つなくて、一緒にいるだけで良い。
取り繕うための会話なんて、2人の間には意味のないものに思えた。
あたしは、そんな不思議な感覚に囚われてしまう。
だからこそ気づいたことがある。
いつでも一緒にいたからこそ、見えてくるモノがある。
- 27 名前:すなふきん 投稿日:2002年07月16日(火)00時02分37秒
- 短いですが、取り敢えず更新。
これから先は学園内での話が結構長めに続きます。
>>21 シューヤさん
お久しぶりですっ!
いや〜、青板、いつも楽しく読ませてもらってます。
もうすぐラストとのことで。
頑張ってくださいっ。
自分は、これからがスタートなんで頑張って「暗め痛め」を(w
>>22 名無し読者さん
( ´ Д `)<うちらの過去……よっすぃー知ってる?
(0^〜^)<んー…結構酷いらしいけど?
( ´ Д `)<ふーん…作者の趣味か……
(0^〜^)<だね……
ということで(w
>>23 凧さん
銀板読ませてもらってます。
三角関係はやっぱり萌えますね(w
なかなか素直になれない後藤さんがツボということで。
こっちの後藤さんには、可哀想な役に徹してもらいますけど(w
( ´ Д `)<……ふぅ
- 28 名前:第4話 投稿日:2002年07月17日(水)21時33分09秒
「真希ちゃん、また一番だってー。」
二学期の中間テスト順位。
教室の真ん中で、真希は取り巻きに囲まれて
あれやこれやと誉められては、羨ましがられていた。
あたしの前に座って、その光景を同じように眺めていたあゆみが
少し呆れたように言い放つ。
「凄いよね…真希ちゃん。性格もイイしさ。可愛いし。彼氏とかいないのかな?」
「…………。」
品行方正、成績優秀。
俗に言う「良くできた人間」。
けど、これだけ一緒にいるあたしにも言わないのだから、他の人にも言ってないだろう。
- 29 名前:第4話 投稿日:2002年07月17日(水)21時34分41秒
「それが、分かんないんだよねぇ。」
頬杖を付いて、視線を机の上に落とす。
あゆみはそんなあたしを覗き込んで、
「えー?仲いいじゃん。」
と不思議そうな顔を見せた。
なるほど。
人から見てもそうらしい。
間違ってはいないから、良いんだけど…。
「んー…、なんつーか…真希あんま自分のこと話したがらなくて…。」
妙な惨めさがあたしを覆った。
単に仲がいいだけの関係なんて、いやに薄っぺらくて。
そうでないことを頭の隅で願う。
「へぇ…あーでも、そう言えばそうかもねぇ。」
「んー…。」
「謎めいてるのも、魅力のひとつってか…。」
そのセリフに皮肉が込められているのか、いないのか。
どっちにしろあたしにとって、真希の過去などは興味の惹くところではなかった。
- 30 名前:第4話 投稿日:2002年07月17日(水)21時36分14秒
「そーいう、柴田さんはどーなんですかぁ?」
嫌みったらしく顔を覗き込んでから、片手に持っていた缶ジュースを奪って一口貰う。
そうすることで、気を紛らわそうとするあたしは狡いだろうか。
その程度しか、自分を守る術を知らない。
「え…?あ、あたし?えっとぉ…」
慌てるあゆみ。
本当にウソがヘタなんだから。
「…なーんだ。いつのまに。」
あたしはカコンと机にジュースを置いて、深くイスに座り直した。
「へへ…ごめんねー?」
照れくさそうに顔の前で両手を合わせる。
確かにあゆみは色白で顔も整ってるし、性格は明るくて付き合いやすい。
女のあたしから見ても、本当にカワイイ子だなと思う。
「べっつにー。」
「何、怒った?」
あたしは軽く笑って
「今日のお昼、奢ってねー。」
「え…。」
昨日お金がないと嘆いていた彼女。
きっとあゆみの彼氏は、こんな険しい顔をして
ジュースを飲む姿でさえも、可愛く見えるんだろうな。
- 31 名前:第4話 投稿日:2002年07月17日(水)21時45分13秒
- その日の放課後。
あたしは部活で疲れきった体を引きずって、ゆっくりと寮まで歩いて帰っていた。
「ひとみー。」
後ろから声を掛けらて振り返ると、真希が少し笑いながら走り寄ってくる。
軽く揺れる茶色い髪は薄暗い夕日を浴びて綺麗。
その髪をなびかせながら、あたしの隣を歩く真希。
最初はあまりに堂々としているから地毛かと思っていたけど、真希本人に聞いたところ
自分で染めているとのこと。
根本を染めるのを手伝わされて、あたしがブツブツ文句を言っていたのは最近のことだ。
- 32 名前:第4話 投稿日:2002年07月17日(水)21時47分31秒
「何?残ってたの?」
「うん、そっちは部活?」
あたしは笑って頷く。
部活はバレー部に入った。
中学の頃からそれなりに頑張ってやっていたから
高校でも絶対にバレー部に入ると決めていた。
ここはそんなに強いチームじゃないけど、体を動かして
汗を流すのは単純にストレス発散になって気持ちいい。
勉強だけをして学園生活を送るなんて意志は毛頭なかった。
一回、真希とあゆみを誘ったけど、あゆみは吹奏楽部に入るから。
真希からは特に理由もなく、やんわり断られた。
だから部活をしていない真希が、暗くなったこの時間まで残っているのは珍しい。
(勉強をしていて残っていたとしてもだ)
- 33 名前:第4話 投稿日:2002年07月17日(水)21時53分07秒
「それが、担任に呼ばれてさ。」
「へぇー、悪いことでもしたの?」
あたしはニヤニヤしながら真希の顔を覗き込む。
こんな単純なやりとりが、自分の小さい頃を思い出させるようで楽しい。
「イヤ、何か学祭のことで。」
真希は相変わらずの、冷めた顔で答えた。
「なーんだ…。」
ワザと面白くなさそうに歩みを緩める。
真希は悪戯っぽい表情を見せて、笑いをかみ殺しているようだった。
そして、柔らかに笑いながら、クルッとトロトロ歩くあたしの方に振り返った。
「ねぇ、公園行かない?」
- 34 名前:第4話 投稿日:2002年07月17日(水)21時54分01秒
真希はとにかく、自分のことを語らない。
真希の謎は聞いてはいけない。
触れてはいけない。
まるで禁猟区。
- 35 名前:第4話 投稿日:2002年07月17日(水)22時08分42秒
あたし達は学校からすぐ近くにある、小さな公園に来ていた。
薄暗い公園には2人の息づかいと、時折吹く風の音しかない。
公園の周りを囲うように植えてある木が、カサカサと寂しげなメロディーを奏でている。
特に何も喋らない真希に何も言うことなんかなくて、あたしは黙ってブランコを漕いでいた。
気まずさがなかったわけでもないが、こういうとき下手に何か喋っても
余計に雰囲気が崩れることは知っていた。
真希の前で慌てても無様な姿をさらすだけだ。
このときにして、すでに真希の人並み外れた賢さを
垣間見てきたあたしの思いを感じ取ったか。
隣で同じようにブランコに座っている真希が、何かを確認するように
唐突に話し掛けてきた。
「風、気持ちいいね。」
「え?あ、うん…。」
- 36 名前:すなふきん 投稿日:2002年07月17日(水)22時12分29秒
- 急用が入ったのでちょっと、一旦ここで切ります。
すぐに続きを載せたいと思いますので。
- 37 名前:第4話 投稿日:2002年07月17日(水)22時48分25秒
何、緊張してんだろ…。
あたしは、疲れた体のことなんか気にもならないくらい緊張していた。
真希の声は暗くなり始めた公園の中で、良く通った。
耳の中で、そう高くもない声がリフレインする。
あたしは何となく、彼女の様子を窺うことしか出来ない。
ボーっとブランコに座ってる真希。
軽く地面を蹴っては、揺れを足で止める。
その繰り返し。
一体何を考え、何を感じてるのか。
大体、真希が他人に興味を持つことなどがあるんだろうか。
チラッと真希の方を見たら、同時に向こうもこっちを向いたみたいで一瞬目が合った。
自分が盗み見ていたことを知られたようで、一瞬カーッと恥ずかしくなったけど
その目が奇妙なほどに冷たくて。
あたしは何度か見たことのあるガラス玉のようなそれによって、冷静を取り戻し
やっぱり直視することが出来なかった。
- 38 名前:第4話 投稿日:2002年07月17日(水)22時53分08秒
「もう、遅いし帰ろうよ。」
まるで、取り繕ったようにしか話せない自分が、酷く格好悪い。
真希はあたしの言葉にキョトンと顔を上げて、捨て犬のような表情を見せた。
眉が少しだけ下がって、綺麗な目が例えようもなく寂しさを訴えている。
何も知らない、純真無垢な瞳。
それはもうさっきの無機質な瞳ではなくて、少し心の中でホッとした。
「ほら。」
あたしは手を差し出して、真希をブランコから立たせる。
ちょっとだけ嬉しそうに笑った。
一体どっちが本当の真希なんだ。
あたしには、ずっと分からないのかもしれない。
真希の手は、この季節だというのに随分冷たかった。
- 39 名前:すなふきん 投稿日:2002年07月17日(水)22時53分50秒
- 今日はここまでです。
- 40 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月17日(水)23時37分03秒
- 初レスです。
見つけた瞬間、にやりと顔が緩みましたよ、すなふきんさんの新よしごま(w
吉澤の一人称好きです。ああ、嬉しい……
- 41 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月18日(木)22時02分39秒
- 品行方正、成績優秀なごまって割と珍しい設定ですね(w
次回の更新も楽しみにしています。
- 42 名前:第5話 投稿日:2002年07月19日(金)22時38分42秒
昼休み、教室のベランダに座り込んで売店で買ったパンを食べていた。
何処にいたって熱いんだから、日陰で風通しが良い分、ここの方がマシだ。
真希はモソモソとまるでカロリーを摂取するのが目的のように、淡々と
袋から出したメロンパンを食べては、ペットボトル入りのジュースでそれを流し込む。
確か、もうちょっと美味しそうに食べなよ、とあゆみから言われていた。
そのとき真希は不思議そうな顔してたっけ。
口元が笑ったまま、あたしはんーっと伸びをして。
「はぁー……。模擬店かぁ。めんどくさーい。」
「まぁ、結構面白いんじゃないの?」
真希は苦笑しながらモソモソと食べ続ける。
「でもさぁ…。あ、サボって寝てよっかな。真希、色々と忙しいんでしょ?」
「んー、午前中は。でも午後から時間出来ると思うよ。」
あたしは渋い顔をして、真希を見た。
- 43 名前:第5話 投稿日:2002年07月19日(金)22時41分01秒
真希は相変わらず整った笑顔で受け流す。
「あゆみもいるし、イイじゃん。ひとみ友達多いんだから。」
その言葉が、なぜか自嘲気味に聞こえた。
誰とだって真希は上手くやってる。
彼女は笑って、普通に言っただけなのに。
「真希がいないんじゃ楽しくないよ。」
何に触発されてなのか、自分でもよく分からなかった。
ただ、それはいつも思っていることだし、どこにも嘘はない。
本当にただ、そう思った。
それだけ。
未だに広がる小さい入道雲を見て。
予想通り、真希の目はあの虚無の世界が広がっている。
もちろん、その目に慣れはしないけど。
真希は小さく呟くように言った。
「……何それ。」
「何だろ…。」
あたしの方なんか見ずに、真希はあの冷たい目で青い空を見ていた。
茶色い髪はサラサラと風に揺らされて、薄く光っている。
真希が好きだ。
- 44 名前:第5話 投稿日:2002年07月19日(金)22時43分00秒
あたしが自分の気持ちに気づいたところで、何も変わるはずはなかった。
しかも、真希に対する好きという感情が、今までに何度か味わったそれらとは
随分違う気がして、困惑していたし。
もちろん、真希だって何も変わらない。
普通に話して、普通に笑って。
変わるはずなどなかった。
彼女が誰かに影響されるなど、考えられないことだったから。
そもそもあたしの気持ちは、答えなど欲してはいないのかもしれない。
ここにある。
それだけで充分。
真希とこの日々を消化していくだけで、あたしは幸せになれる。
これは、真希に何かを求めれば、目の前からいなくなってしまうという、あたしだけの
妄想に怯えていたからかもしれない。
それとも、本当にこれだけで満足するほどあたしが純真だったというのか。
- 45 名前:第5話 投稿日:2002年07月19日(金)22時45分33秒
「ひとみー。」
教室に入ってきたあゆみが窓の外をボンヤリ眺めているあたしに
爽やかな水色の便せんを渡してきた。
「何、これ?」
「さぁ?」
要領を得ない会話。
こういうのは好きじゃない。
あたしが手紙を見つめたまま、些か不愉快な顔をすると
「だって、3年生が『吉澤さんに渡して』って、無理矢理押しつけてくるんだもん。」
「…………。」
あゆみはあたしの前の席に座っている真希に、英語の予習を見せてと頼んでいる。
柔らかに笑いながらノートを渡す真希。
その光景を目の端で追いながら、溜め息を吐いて便せんを開けた。
- 46 名前:第5話 投稿日:2002年07月19日(金)22時49分26秒
中からは少しだけ文字の書かれた白い紙。
手紙なんて貰うこと自体、久しぶりであたしはこれが変な
悪戯なんじゃないんだろうか、と疑いまでした。
手紙には、これが自分に向けられてると思うと恥ずかしくなるような「好きです」という言葉と
携帯の番号、アドレスが書かれていた。
- 47 名前:第5話 投稿日:2002年07月19日(金)22時53分12秒
「真希ー…。」
「何?」
夜、ノートに向かってサラサラとペンを走らせる真希を、あたしは隣にある同じ様な型の
机に顔を伏せたまま呼んだ。
いつまで経っても喋らないあたしに気を遣ってくれたのか。
「どうしたの?数学、分かんないとか?」
ノートも出していないあたしに、真希らしい冗談。
しかも数学が苦手なのを知っている辺りに、真希の悪戯心が含まれている。
「違うよぉ…。」
でも、いつものようにそれを笑える余裕が今はない。
いや、ここ最近、上手く笑えてない気がする。
真希との時間は唯一の安らげる場所じゃなかったのか?
- 48 名前:第5話 投稿日:2002年07月19日(金)22時55分19秒
「じゃ、何なの?」
顔を真希の方に向けてから、ほっぺをひんやり冷たい机に付けてまた黙り込む。
「…………。」
真希は大人びた横顔を、少し困惑した表情に変えてこっちを見た。
「ひとみ…。」
「告白された。」
ジッと、その飄々としている表情を見ていた。
一体どんな顔するのかな、と思って。
けどやっぱり真希は
「なぁんだ、もう…。変な声出すから心配したじゃん。」
クスクス笑って、他人事のよう。
部屋に再びサラサラとペンの走る音。
「何ー、格好良かった?」
- 49 名前:第5話 投稿日:2002年07月19日(金)22時57分03秒
こっちを見もしない。
そんなに勉強しなくったって、充分頭イイくせに。
「だから、違うってばぁ…。」
あたしの声は自分でも、弱々しいと感じるくらいしゃがれていた。
誰かにこの行き場のない混沌とした思いを、聞いて欲しいだけだったのかも。
でも、それを真希に求める事自体が間違っている。
それだったら、あゆみの方が全然向いているし、きっと適切なアドバイスをくれる。
ワケが分からなくなってきて、何だか泣きたくなってきた。
「何が違うの?」
真希はまたこっちを向いて、呆れたように溜め息を吐いた。
「…………。」
「もう…。あたし寝るからねー。」
真希は、また黙り込んでしまったあたしに痺れを切らしたのか、イスから立ち上がって
パタパタとノートやら教科書やらを片付ける。
それでもあたしはイスから動けなくて、ジッと真希がいなくなったそこを
見てるしか出来ない。
- 50 名前:第5話 投稿日:2002年07月19日(金)22時59分15秒
だって、こんなことそうそう簡単に言えないよ…。
後ろで二段ベッドへ登る、ギシギシという音が響いた。
「真希ぃ…。」
「ほら、もうひとみも寝たら?明日起きれなくなるよ。」
あたしは勢いよく体を起こして、布団に入ろうとしている真希を見つめ、声を絞り出した。
「…女の子、から告白された。」
絶対今、泣きそうな顔してる…。
「…え?」
そのときはさすがの真希も随分驚いた顔をして、あたしを見下ろしてくれた。
豆電球だけが点いた部屋で、真希の顔は余計に大人びて見える。
「…女、の子?」
「…ん。」
数十秒の沈黙がこれ以上もなく重い。
どうして、こんなこと真希に言うの?
あたしは真希に何も求めてはいけない。
深くを知ってはいけない。
なのに、どうしてあたしは真希に…。
- 51 名前:第5話 投稿日:2002年07月19日(金)23時01分26秒
「ふーん…。」
「真希…。」
真希は暫しの沈黙の後、向こうに顔を向けて布団の中に入ってしまった。
「別、あたしはいいと思うけど。」
壁にぶつかって、あたしの耳に届く少し低い声。
言ってる意味が分からなかった。
あたしは冷たいフローリングに立ったまま、誰も見ていないのに少し首を傾げる。
「女同士とか、今更珍しくもないんじゃない?」
いつもは良く通る真希の声が、濁って聞こえる。
ピリピリと頭の奥が沸騰してしまうような羞恥心。
「何…言ってんの……。」
「何って、そのままの意味だけど?」
ねぇ、真希は知っていた?
そのセリフを投げ付けられる大分前から、あたしが女である真希のことを好きだって。
- 52 名前:第5話 投稿日:2002年07月19日(金)23時03分43秒
冷たくそう言い放ったのは他でもない真希。
馬鹿にされことが悔しいんじゃない。
まるで自分には関係ないみたいな言い方をされたのが、無性に悲しくて腹立たしくて。
あたしの想い、それだけじゃない。
半年以上友達やってたこの関係さえも、無意味なものに思える真希の態度。
でも実際、これは自分の勝手な独り善がり。
いくら腹を立てたところで、確かに真希には関係のないことだし
どう感じようと彼女の勝手。
きっと真希はもう寝てる。
あたしは彼女が壁側を向いていてくれたことに、皮肉ながら助けられた。
- 53 名前:第5話 投稿日:2002年07月19日(金)23時07分55秒
頬を伝う涙をゴシゴシと乱暴に拭いて、自分もさっさとベッドに入る。
女々しく涙を流すなんて…。
自分がこれほどまで不甲斐ないとは。
これが真希じゃなかったら多分、笑ってかわせた。
どちらかといえば、感情のコントロールは上手い方だと思う。
だけど、なぜか今この瞬間はそれが上手くいかない。
思いっきり怒鳴りたいのに、言葉にも出来ない。
自分自身に対して、酷い憤りを感じる。
嗚咽なんて出なかったけど、どうにも涙が止まらないんだ。
ベッドの中で泣くなんて、一体いつ振りだろう。
でも、泣くと楽になるというのは本当らしい。
あたしは泣き疲れてもいないのに、モヤモヤした気持ちを抱えたまま
暫くしてすぐに眠りについた。
- 54 名前:すなふきん 投稿日:2002年07月19日(金)23時31分45秒
- 今日はここまでです。
>>40 名無し娘。さん
レスありがとうございます。
吉澤さんの1人称、自分も好きです♪
( ´ Д `)<………良かったね。
(;0^〜^)<う、うん…。
( ´ Д `)<…………。
(0^〜^)<……拗ねてる?
Σ(; ´ Д `)<ち、違うもん!!
>>41 名無し読者さん
そーですね。
前作は全くの逆だったんで、書いていて何か新鮮ですね(w
( ´ Д `)<…………。
(0^〜^)<どーしたの?
( ´ Д `)<…ごとー、そんなにバカに見えるのかなぁ…。
(;0^〜^)<え?…そ、そんなことないよ。
( ` Д ´)<別、いいもん!(よっすぃー、どもった!)
(;0^〜^)<あ…怒った?
( ` Д ´)<全然っ。
(;0^〜^)<(ふぅ…どーしよ…)
- 55 名前:シューヤ 投稿日:2002年07月20日(土)17時00分33秒
- 長めの更新、お疲れ様です。
うあー…ベッドの中で泣いてるよしこさんが可愛いっスー。
レスの顔文字が好きです。拗ねてるごとーさん…v
- 56 名前:ジョニー 投稿日:2002年07月21日(日)20時24分36秒
- 同じく、更新お疲れ様です。
レスしてなかったけど、ずっと読んでましたよw
ここのよすぃ子、大好きです!
- 57 名前:カム 投稿日:2002年07月23日(火)03時50分24秒
遅ればせながら…飼育復活(?)おめでとうございます!
またこうやって師匠の長編を読めると思うと嬉しくて小躍りしそうです(w
序盤から謎めいた雰囲気で、ガッツリ引き込まれてますよほ。。。
次回更新が楽しみっす。がんがってくださいっ!
- 58 名前:第6話 投稿日:2002年07月23日(火)22時30分40秒
「ねぇ…どうしたの?」
朝から一言も会話を交わさないあたしと真希の間で、あゆみはオロオロ。
昼休み一人でベランダにいるあたしの隣。
いつの間にか真希の席になっていたそこに、あゆみが座っていた。
「ケンカ、したの?」
「別に…。」
当てつけのようにモグモグとパンを頬張る。
「別にって…もう。」
あたしはゴクンと口の中のものを飲み込んで、ブーッとほっぺを膨らました。
あゆみは呆れながら、ブシューとそれを人差し指で潰してしまう。
「真希ちゃんが怒るなんて…一体、何したの?」
体育座りで黙りこくるあたしの視界に、相変わらず優しい目のあゆみが映る。
「何もしてないよ…。」
「うっそ。」
「ウソ、じゃないよっ!」
苛立ちが爆発してしまった。
- 59 名前:第6話 投稿日:2002年07月23日(火)22時34分07秒
大きな声を出してしまったあたしに、あゆみが驚いてポカンとした顔を見せた。
何、感情的になってんだろ…。
あゆみに当たったってしょうがないのに…。
「…ゴメン。」
「いや、いいんだけど。…何かさぁ、2人とも変だよ?」
……変?
「何、ムキになってんの?真希ちゃんもひとみも。」
あたしはともかく、真希のどこが?
ワケが分からなくて、あゆみの方を見た。
そんなあたしにあゆみはフーッと溜め息を吐く。
「あのねー、気づかないの?」
「…何が?」
あゆみはピッと人差し指を立てて、博士のような口調で言った。
「あんなに誰にでも優しい真希ちゃんが、ひとみだけを露骨に避けてる。」
今日の空は昨日の青空と違って、ドンヨリ暗い。
雨、降りそう。
あたしも真希もあゆみも、きっとこの空みたいな顔してる。
- 60 名前:第6話 投稿日:2002年07月23日(火)22時37分10秒
「私、前から思ってたんだけど…。」
あゆみはちょっとバツの悪そうな表情をして、コンクリートの床に座り直した。
「うん…。」
「真希ちゃん、誰にでもああやって、いい人してて疲れないのかな?って。
最初の頃は、そういう人だって思ってたんだけど…。
…でも、考えてみたら、それが一番楽なんだよね。」
あゆみは暗い空を、真剣な目で見つめて続けた。
「みんなに嫌われることなんてないし。
多分、あれだけ器用で利口な真希ちゃんだからこそ、出来るんだろうけど…。」
…………。
なんともマヌケな。
あゆみに言われて初めて気づいた。
何で今まで気づかなかったんだろう。
あぁ、あゆみは心理学の勉強したいって言ってたっけ…。
「真希ちゃんに何があったのか知らないけど、誰にでも同じ態度なのはいい人だから
とかじゃなくってさ。
……みんなに興味がないから。関心がないから…。」
「…………。」
- 61 名前:第6話 投稿日:2002年07月23日(火)22時39分52秒
「けど、その真希ちゃんが…ひとみにだけは人間らしい接し方してる…。」
あたしがたまに見るあの冷たい目こそが、本当の真希。
あの子犬のような物悲しい目が、本当の真希…。
どちらも真希が抱えて、隠し続けている闇だ。
あれはあたしに突き付けられた、真希の謎。
「何、偉そうなこと言ってるんだろ…。」
あゆみは苦笑しながら、肩を竦めて見せた。
「もう、2人の間で、ご機嫌取るの疲れるんだからねっ。」
「…うん。」
このとき本当にあゆみが友達で良かったと思った。
- 62 名前:すなふきん 投稿日:2002年07月23日(火)23時06分52秒
- ちょっと少ないですけど、今日はここまでです。
>>55 シューヤさん
( ´ Д `)<よっすぃー、かわいいってさ。
( *^〜^)<う、うん。
( ´ Д `)<…………。
(0^〜^)<…………でも、ごっちんの方が…。
( *´ Д `)<え……そ、そんなことないもん…。
(;0^〜^)<(ふぅ…段々読めてきたぞ)
ということで(w
>>56 ジョニーさん
ここの吉澤さん、結構人気みたいですね(w
嬉しいっす♪
なるべく、普通の女の子を目指して書いていくつもりです。
( ´ Д `)<いいねぇ…よっすぃー人気で…。
(;0^〜^)<あ、ありがと…。
( ´ Д `)<…………。
(;0^〜^)<(困った…何も思いつかない…)
( ´ Д `)<…………。
(;0^〜^)<…………。
( ;´ Д `;)<…ウッ…ヒクッ…。
Σ(;0^〜^)<え!?
- 63 名前:すなふきん 投稿日:2002年07月23日(火)23時07分34秒
- >>57 カムさん
どーもです♪
そうですねー、久々に載せるとなると、結構緊張してしまいます(w
なるべく多くの人に読んで貰えるよう頑張りますので、ヨロシクお願いします。
( ´ Д `)<そーだね、頑張らないとねぇ。
(0^〜^)<うん、そうだよね(お!珍しくごっちんがヤル気だ)
( ´ Д `)<………今、珍しいって思った?
(;0^〜^)<え?そ、そんなこと…。
( ´ Д `)<あるでしょ?
(;0^〜^)<……ご、ゴメン…(やっぱ、ごっちんって奥が深いや…)
( ´ Д `)<……フッ。
- 64 名前:第7話 投稿日:2002年07月27日(土)11時55分48秒
部屋はなんとも気まずい雰囲気だった。
相変わらず終了時刻が遅い部活から戻ると、真希はお風呂に入っていて、
バスルームから戻って来たと思ったら、こっちも見ないで机に向かうし。
ちょっとくらい隙を見せてくれても良いのに…。
こういうとき、真希の優等生振りが発揮されているなんて。
何て話し掛けようか、そのことばかりが頭の中を巡る。
「あ、あのさ。」
ベッドの橋に腰を下ろして、猫背な背中を見ては目を逸らす。
意外と、あたしは臆病なのかも…。
「………ゴメン。」
あー…マヌケ。
何だよ、ゴメンって…。
唐突すぎるだろ。
どれだけ有名な進学校に通っていても、こういうときに頭が働かないようじゃ意味がない。
あたしは頭をかきながら、必死に次に何を言おうか考えた。
多分、受験の面接より焦ってるかも。
- 65 名前:第7話 投稿日:2002年07月27日(土)12時03分35秒
「そ、そのさなんつーか…昨日は、あたしもおかしくて…。
ただ聞いて欲しかったっていうか…。
…でも、真希は全然そんなの興味なくて。
と、とにかく!…明日その子と会ってくるから。」
相変わらず真希は優等生を通して、ペンを止めない。
「ちゃんと断ってくるよ…。
えっと、そーいうことだから。…当たっちゃってゴメン。」
イライラしていた原因のひとつに
真希への気持ちに気づいたから、ということは黙っていても良いだろう。
ピタッと小気味よい音が止まった。
ガタンとイスが動く。
自分の体が変に硬直するのが分かった。
- 66 名前:第7話 投稿日:2002年07月27日(土)12時09分07秒
鎖でグルグルに繋がれたみたいだ…。
とにかく今はこの体にまとわりつく重い空気をどうにかしたかった。
もしかしたら、また真希は関係のない顔できついセリフを吐くのか。
それともいつものように、あの見惚れるような笑顔で許してくれるのか…。
あたしの予想は大体当たるはずなんだけど、今回はどちらも外れて
クルッとこっちを見た真希は泣いていた。
「…真希?」
呆気にとられる。
真希の頬が蛍光灯に照らされて、ツヤツヤと光った。
目が真っ赤だ。
もしかして、お風呂から上がってずっと泣いていた?
感情的な真希を見たのが初めてだからというより、あたしは何故真希が泣いているのか
という疑問の方が大きくて、ボーっと座ったまま固まっていた。
真希はそんなあたしに大股でどんどん詰め寄ってきて、ガバッと痛いほどに抱きついてきた。
- 67 名前:第7話 投稿日:2002年07月27日(土)12時12分24秒
思い掛けない真希の行動についていけないあたしは、全体重を掛けてくる真希に
あっさりバランスを崩してベッドに押し倒される。
「えっ!?ま、真希ってば!」
慌てて体を起こそうとするけど、子供のように抱きついて離れない。
見た目の割に以外と体力のあることは前々から知っていたけど、現役でバレー部のあたしが
押し倒されて動けないなんて…。
少し強く肩の辺りを押して体を離そうとするするけど、やっぱりダメだった。
どうしていいのか分からずに変に焦る気持ち。
それに比例するようにジワジワとあたしのTシャツに
涙の染みが出来て、直接肌に冷たさを感じる。
なんで、泣いてんのさぁ…。
あたしの胸で静かにシクシクと泣く彼女は、16という年齢より随分と幼く見えた。
- 68 名前:第7話 投稿日:2002年07月27日(土)12時16分38秒
一時間近く真希の下敷きになっているしかなくて。
気づけば真希はスースーと寝てる。
何なんだよ、これ…。
何だか腑に落ちないままだったけど、いったん冷静になってみると
クヨクヨしていた自分がバカバカしく感じる。
ふとそう思った途端、今までの不安とかムカツキとか。
スーッとなくなって、妙に晴れ晴れしい気持ちになった。
あぁ、もう単純な奴。
さっきまであれほど鬱いでいたくせに。
「寝ちゃってる…。」
あたしは真希を起こさないように、そっと体をずらした。
健やかに寝息を立てる彼女は、なんとも愛らしい。
そこで、実は真希の寝顔を見るのがこれで初めてだと気づく。
半年も一緒にいたのに、真希はあたしにまで隙を見せなかったということだ。
「…真希。」
可愛らしくも、あたしの着ているTシャツの端を細い指で握っていた。
目を閉じてはいたけどやっぱりその顔は綺麗で、改めて見つめると
少しの間忘れていた恋心がじんわり高揚する。
- 69 名前:第7話 投稿日:2002年07月27日(土)12時17分39秒
無防備で純粋で。
あの影のある笑顔より、こっちの方が全然似合ってる。
涙の後があたしの心を少し締め付けたけど、親指の腹でそれを拭って
あたしも真希の隣で眠りについた。
- 70 名前:すなふきん 投稿日:2002年07月27日(土)12時19分07秒
- 今日はここまでです。
- 71 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月28日(日)02時04分20秒
- そのまま寝ちゃうところが後藤さんらしいなあ(w
オロオロしている吉澤さんが目に浮かびます。
段々二人のやり取りに温かみが出てきた感じで、自然と頬が緩みますね。
現実の二人とリンクしてしまう……
- 72 名前:第8話 投稿日:2002年07月28日(日)16時34分30秒
真希がこの学園を去ってもう半年が経とうとしていた。
どうして真希が学校をやめたのか。
誰もが真希と仲の良かったあたしに聞いてきた。
クラスのみんな、部活の同級生。下手すると顔見知りの上級生まで。
ハッキリ言ってもうウンザリ。
そんなのこっちが知りたいのに、興味半分で面白そうに聞かれたって…。
あの日、真希があたしの前で泣いてからの一週間、全てが上手くいっているように思えた。
心配してくれたあゆみも、あっさり仲直りしたあたし達に嬉しそうな顔を見せた。
なのに、その一週間後。
クラスへの挨拶もなしに真希は姿を消してしまった。
- 73 名前:第8話 投稿日:2002年07月28日(日)16時41分13秒
その日は2月で肌寒い空気の中、カラッと空が晴れていて過ごしやすそうな日だった。
目が覚めるともう真希の姿はなかったけれど、優秀な彼女のことだから、もう教室で勉強でも
しているんだろうと呑気に考えてあたしはいつものように時間ギリギリに教室に入った。
おかしな事に、真希の姿は見つからない。
それでもあまり物事を深く考えないあたしは、それほど気にもすることなく
クラスメイトと談笑していた。
そして、朝のホーム。
担任が、家庭の事情で真希が退学届けを出した、とだけ簡潔にクラスのみんなへ告げた。
─────── 真希?
- 74 名前:第8話 投稿日:2002年07月28日(日)16時43分13秒
その日1日、あたしは激しく動揺してしまって、震えるような気分の悪さを覚えた。
2時間目に気分が悪いからと担任に告げて、寮へ戻るとそこには
相変わらずの風景が広がっていて、なんともやるせなくなる。
真希にとっての自分は恐らく、その他大勢と変わらない気がして。
一体、なぜ真希がこの学園を去らなければいけなかったのか。
原因が万が一、自分にあるなら、今すぐにでも土下座して謝りたかった。
真希との時間が戻ってくるんだったら、それくらい造作もないこと。
それほど、あたしにとって真希の存在は大きかったのに。
けれど、考えても考えてもそれらしい原因は分からず、時間ばかりが過ぎていく。
やはりあの日涙を流した真希の真意は、ただ平凡な人間というだけのあたしには
知ることが出来ないのかもしれない。
そう思うことで、取り残された惨めな自分を慰めるしかなかった。
あの涙までが、真希の仮面から流れたものだと信じたくはなかった。
どっちにしろ真希に対する感情は日に日に大きく膨らんで、暇さえあれば彼女のことを
考えるようになったし、度々、夢にまで出てくるようになった。
重症だ。
- 75 名前:第8話 投稿日:2002年07月28日(日)16時46分52秒
真希のいない日常はもうあたしにとって意味のないもの。
あれほど大好きだったバレーもやめた。
そこそこの日常。
愛想笑い。
無気力。
そんなあたしにあゆみは心配そうな顔をしたけど、あたしの中に占める真希の割合がどれだけ
大きいか知っている唯一の人物だった彼女は、励ますというようなことはしなかった。
そんなあたしだったけれど、いもしない人に恋心を抱くのは苦痛でしかなく。
他の恋を見つければ真希のことを考えずに済むかもしれない。
そう思って、その時期に丁度告白してきた他校で一つ年上の男子と付き合ってみた。
背も高くて、顔もまぁまぁだったし、何より優しい人だった。
若気の至りというか、事の成り行きというか。
そのときあたしにとって体なんてものは、それほどの意味を感じてなくて、真希と
一緒に時間を過ごすことだけが最も重要なことだった。
使い捨てのこの身なんて。
真希に取り残されたあたしなんて。
- 76 名前:第8話 投稿日:2002年07月28日(日)16時48分32秒
簡単に押し倒されて、揺れる自分の体と天井の染みが滑稽で笑いがこみ上げてくる。
とにかく、その彼とどんなに甘い時間を過ごそうと、あたしは
真希のことを考えないときはなかった。
いい人だった。
けど、あたしがあの人に愛情を捧げることはなかった。
結局は向こうから丁寧に別れようと告げられて、あたしはあっさり首を縦に振った。
多分、いつも上の空の自分に呆れたんだろう。
- 77 名前:第8話 投稿日:2002年07月28日(日)16時50分05秒
ただ、これで分かった。
真希への想いは、他の何かで埋めるなんて出来ない。
あたしの心はぽっかりと空虚な穴が空いたまま。
真希のことを考えて、目を閉じるたびにそのブラックホールのような隙間は
あたしから全てのものを奪い去る。
もう答えはひとつ。
真希のことは「忘れる」。
彼女のことは記憶から消し去るしかなかった。
こんな苦しい恋、しない方がマシ。
助かったのは、あの2人で過ごした部屋からもう学校に通わなくて済むこと。
2年からは希望で入寮できる。
もちろんあたしは一年間過ごしてきた寮を去って、実家から通うことにした。
通学に少し時間が掛かるけど、あの思い出が詰まりすぎてる部屋に一人でいるくらいなら
どれだけこっちの方がマシだろう。
あたしは真希と出会ったあの部屋に別れを告げて、真希のことも忘れようと決めた。
- 78 名前:すなふきん 投稿日:2002年07月28日(日)16時57分53秒
話が急展開しましたけども。
一応、これで第一章、終了です。
えっと、第二章は柴田さん編。
暫くは学園生活の回想という形で物語が続きます。
まだ先の話ですが、本格的に暗くなっていくのは後藤さん編から。
ストックが大分あるので、更新ペースをあげていきたいと思います。
ご感想、ご指摘のレスいつでもお待ちしていますので。
- 79 名前:すなふきん 投稿日:2002年07月28日(日)17時04分44秒
>>71 名無し娘。さん
レス、ありがとう御座います♪
吉澤さん視点は思っていたよりも、柔らかい感じになりました。
( ´ Д `)<…ゴトー編は?
(;0^〜^)<結構、痛いらしいね…
( ´ Д `)<…………
(;0^〜^)<だ、大丈夫だって!ね?
( ´ Д `)<…………zzz
(;0^〜^)<!?
- 80 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月28日(日)18時38分41秒
- かなり引き込まれる話です。
真希に何があったのか…気になります。
更新がんばってください!
- 81 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月02日(金)20時51分47秒
- ごっちんのキャラが好きです。
つづき、楽しみです。
- 82 名前:第9話 投稿日:2002年08月06日(火)16時58分05秒
出会うべくして出会った。
それくらいひとみと真希ちゃんの、お互いを引き合う力というものは
尋常ではありませんでした。
単に、仲がいい。クラスが一緒。相部屋。
一緒にいる時間が多いから。
そんな理由では、到底築ける関係などでは。
特に真希ちゃんのひとみに対する一種の絡みつくような視線は、第三者から
見ても常軌を逸していましたから。
甘い青春などという、年相応の表現の仕方では表せない。
常に2人はギリギリのところで、お互いのことを想い苦しんでいたのかもしれません。
恐らく、それに気づいていたのは、クラスでも私だけでしょう。
- 83 名前:第9話 投稿日:2002年08月06日(火)17時00分12秒
だって、真希ちゃんは本当に完璧な程優等生で、それがどこか
みんなを近寄りがたくしていたんです。
一方、ひとみはサバサバした性格で、みんなの人気者でした。
見た目の割にひょうきんでドライな性格は私を含め、みんな取っ付きやすかったようです。
ただ、浅く広く交友関係を築いていた彼女の、小さい変化に
気づく人もそうそういませんでした。
そういう点で、あたしは周りのみんなよりは特殊な立場に立っていたように思います。
(これに気づいたのは後々のことです)
- 84 名前:第9話 投稿日:2002年08月06日(火)17時01分59秒
入学試験、首席。
真希ちゃんの存在位置は、それだけで確定しました。
周りの優等生に対する待遇というのは、大凡決まってるんです。
私の目から見て、それは随分窮屈そうに見えましたが、今思えばあれはきっと彼女が
そう望んでいた環境だったように思います。
常々彼女から感じる違和感を、最初は一種独特の雰囲気だと思いこんでいました。
真希ちゃんはそれくらい、女の私でも惚れ惚れする不思議な魅力を持ち合わせていましたから。
けれど、彼女を見ていて気づくのは、全く人間味を感じないということです。
(これは私の目から見た勝手な意見にすぎません)
なにかマニュアルでもあるかのように、完璧で落ち度がない。
他人に興味をもたず、まるで人形でも見るよう。
注意深く見ていればいるほど、私はそれを確信するしかありませんでした。
ボンヤリと濁った目の色を見て、私には計り知れない闇を抱えている気がしました。
きっと、絶対に理解し得ない…。
- 85 名前:第9話 投稿日:2002年08月06日(火)17時03分47秒
確かに私はひとみほど仲良くはないけど。
ただのクラスメイトなのかもしれないけど。
真希ちゃんは私にとって大切な友達に変わりはなく、少しでも
助けになればと心の内で思うしかありませんでした。
その頃です。
ひとみが時々、とても疲れた顔を見せるようになったのは。
すぐに予想が付きました。
あぁ、真希ちゃんのことだな、と。
ひとみ自身は全く気づいてないようですが、他人にそれ程執着しないひとみが、チラチラと
真希ちゃんの様子を窺う回数が増えていたのには、本人も気付いていなかったはず。
可愛い。
不器用なひとみの態度に、思わず目を細めました。
それはきっと恋心とも違う、微妙な感情だったように思います。
- 86 名前:第9話 投稿日:2002年08月06日(火)17時06分52秒
だけど、ひとみは真希ちゃんの何に、それ程まで惹かれていたんでしょう。
確かに、真希ちゃんはすごく綺麗だし、性格も頭も良いけれど…。
どこか、人間味の欠ける彼女に、あのひとみが惹かれる要素がいまいち分かりませんでした。
外見だけで、恋愛感情を持つような人間とは思えなかったんです。
それとも、私が知らないだけで、ひとみと真希ちゃんの間には
2人だけで理解し合える何かがあるのでしょうか。
もしかして…。
ボンヤリと思ったんです。
真希ちゃんは自分でも気づかないうちに、心を許しているのかも…。
どちらにしろ、すっかり私の中で彼女は感情を持たない機械のような人間として
定着しつつあったので、つまらない授業を少し猫背で真面目に受ける真希ちゃんを
見ては、自然に口元が緩んでしまいました。
- 87 名前:第9話 投稿日:2002年08月06日(火)17時10分46秒
私の悪い癖は時に、人間というものへ興味を持ちすぎるところです。
他人の心の内を、知らず知らずのうちに探ろうとしている。
それは自覚しながらも、もう殆ど無意識の下で行われていました。
別に相手の悪意をついてやろうとか、そういう意があったわけではありません。
人間、少なからず醜い感情というものは持ち合わせているものですし。
当時、心理学を学びたいと考えていた私ですから、それが相手によって
酷い不快感を与えてしまうとは考えもしませんでした。
まぁ、教室でそれほど会話を交わさない2人ですが、一緒にいるときの
雰囲気というのはいつも穏やかで、見ているこっちも
(それは2人のもどかしい想いを知っている私だけでしょうけど)
気持ちのいい溜め息を吐きだしてしまいそうになるんです。
- 88 名前:第9話 投稿日:2002年08月06日(火)17時11分39秒
- それなのに、その日は朝から2人とも一言も会話を交わさない上に、ひとみの
露骨な態度と言ったらもう…。
真希ちゃんは、ピリピリしているひとみとは違って、その辺上手く心得ているらしく
相変わらずの優等生振りを発揮していました。
さすが、ゴマキ。
ひとみはそんな真希ちゃんをチラチラ盗み見ては、恨めしそうにしていました。
なんとも微笑ましかったのは、2人とも驚くほどに頑固だったことです。
ひとみが元来負けず嫌いで、譲らない性格なのは知っていましたが、あの真希ちゃんまでもが
ひとみに負けず劣らず(今になって、彼女のことを何も知らない自分に気づかされます)。
爽やかな笑顔で全くひとみの存在を無視している様は、どこか笑いを誘いました。
- 89 名前:第9話 投稿日:2002年08月06日(火)17時14分16秒
昼休みのベランダは2人の特等席になっているというのに、今、陣取っているのはひとみだけ。
確かに見ていて、飽きの来ない冷戦状態の2人でしたけど、やはり普段の穏やかな空気の方が何百倍も良いに決まってます。
見かねた私は、どこかへ姿を消した真希ちゃんの席に、暫しお邪魔させてもらいました。
腰を下ろしながら、膨れっ面のひとみに話し掛けました。
「ケンカ、したの?」
「別に…。」
これ見よがしに、菓子パンをモソモソ食べるひとみの姿が頭の中で、真希ちゃんの
食事風景と重なってしまいます。
「別にって…もう。」
軽く溜め息を吐くと、ひとみは小さい子供のように眉間に皺を寄せたまま
ほっぺを小さく膨らませました。
照れ屋なひとみの、精一杯な感情表現と私は捉えます。
- 90 名前:第9話 投稿日:2002年08月06日(火)17時16分17秒
「真希ちゃんが怒るなんて…一体、何したの?」
体育座りをして膝に顔を埋めている彼女は、まるで悪戯をしてしまった
子供のように小さく感じ、いくらかの心痛を誘いました。
「何もしてないよ…。」
「うっそ。」
その場の雰囲気を軽くするために、ワザと戯けて言ったつもりだったのに。
こんなやりとりは、ひとみとはしょっちゅうしていたし、まさか
「ウソ、じゃないっ!」
なんて、大きな声で怒鳴と思ってなかった私は本当に驚いて、思わず息を飲んでいました。
こんな感情的になったひとみは見たことがなく、どう反応して良いのか態度に
出さないまでも、明らかに困惑してしまいました。
でも、それはひとみも同じだったようで。
ハッとした顔をして、すぐに
「…ゴメン。」
バツが悪そうに、掠れた声で謝罪してきました。
温厚なひとみが、あんなカッとなるほど、真希ちゃんに惹かれているとは。
気持ちは聞かなくても、分かりました。
- 91 名前:第9話 投稿日:2002年08月06日(火)17時18分28秒
「いや、いいんだけど。…何かさぁ、2人とも変だよ?」
遠回しなセリフなど、聞く耳を持たないひとみ。
いつも彼女は直球勝負。
ちょっとサバサバし過ぎている感もありますが、それこそひとみの魅力なんです。
などと、偉そうなことを言ってる私もどちらかと言えばストレートな性格なので、この際
ハッキリ言うことにしました。
「何、ムキになってんの?真希ちゃんもひとみも。」
私の言葉に一瞬、大きな目をパチッと開いて「え…?」と、まるで無意識に漏らしたひとみ。
あれだけ一緒にいて、真希ちゃんの態度に気づかないなんて。
私は鈍感なひとみに、苦笑しつつ。
「あのねー、あんなに一緒にいるのに気づかないの?」
「…何が?」
「あれだけ誰にでも優しい真希ちゃんが、ひとみだけを露骨に避けてる。」
ひとみは曇り空だというのに、眩しそうに目を細めてグッと口を結びました。
- 92 名前:第9話 投稿日:2002年08月06日(火)17時21分08秒
「私、前から思ってたんだけど…。」
ここからは私の憶測にしか過ぎませんが、きっとひとみの真希ちゃんに対する
不満の解決にはなるはずです。
ポツリポツリ。
私が話し終わる頃、ひとみはボーっと視線をコンクリートの床に落としていました。
真希ちゃんには少々悪いと思いながらも、私はどこか迷いの取れたひとみの
雰囲気にホッとしてしまいました。
- 93 名前:第9話 投稿日:2002年08月06日(火)17時21分50秒
2人の間に割ってはいる気などは、これっぽっちもありません。
けれど、3人でいてたまに味わう疎外感みたいなものは、あまり心地の良いものではないし。
でも、やっぱり2人には2人しかいなくて…。
どうにも、こうにも。
「何、偉そうなこと言ってるんだろ…。」
ひとみは少し泣きそうな目で、こっちを見ました。
あーぁ、せっかくの男前も台無し。
(そのことを本人は酷く気にしているから、言ったらきっと怒るでしょう。)
「もう、2人の間で、ご機嫌取るの疲れるんだからね。」
このとき、思いの外柔らかい口調で喋る自分に、驚きさえ覚えました。
なるほど。
私はただ、単純に2人のことが好きみたいです。
「…うん。」
ちょっと照れたような仕草のひとみは、ギュッと抱きつきたくなるほど
可愛く私の目に映りました。
- 94 名前:すなふきん 投稿日:2002年08月06日(火)17時45分46秒
- フゥ…今日の更新はここまでです。
>>80 名無しさん
レス、有り難う御座います♪
後藤さんの謎は彼女視点に切り替わってから徐々に…(w
( ´ Д `)<まだ教えないよぉ…
(;0^〜^)<ごっちん…
>>81 名無し読者さん
レス、有り難う御座います♪
( ´ Д `)<………。
(0^〜^)<ごっちんのキャラ好きだって。やったじゃん♪
( *´ Д `)<う、うん…
さて、後藤・保田がモーニング娘。を卒業するわけですが、ニュースを
聞いた当初は自分も激しく鬱になりました。
でもまぁ、気持ちの整理もついた今、こうやって更新などをしているんですが。
なんというか…ハロプロに残るということで、姐さんの前例もあり、吉後の絡みが
全くなくなるということではなさそうなので、今まで通りモーニング娘。、吉後の2人
を応援していくつもりです。
というわけで、一応の報告でした。
- 95 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月06日(火)21時47分38秒
- 同じく激しく鬱状態ですが、すなふきんさんのHPの続けていく宣言を読んで
ホッとしました。
好きな作家がいなくなってしまうのは本当に寂しいので…。
これからも引き続き楽しみに読ませていただきます。更新がんばってください!
- 96 名前:ジョニー 投稿日:2002年08月07日(水)20時50分14秒
- 自分も、この悲劇を知って一晩泣きっぱなしでした…。
でも!すなふきんなんのサイトが続行ということを知って、
かなり安心しました。
同じく、更新頑張ってください!
- 97 名前:なな 投稿日:2002年08月08日(木)13時39分13秒
私も今回、ほんとに落ち込みましたよ…。
でもすなふきんさんのHPを見るようになって、吉後をますます好きになった私としては
サイトの方をこれからも続けるということで、かなり嬉しく思っています。
もちろん私もやめません。すなふきんさんがHPでおっしゃっていたように、
このCP話は私たちの願望でしかないなら、二人が離れ離れになっても関係ないんです。
HPの掲示板の方には過去一回しか書き込みしてないんですが(たしか)、
これからはどんどんお邪魔させてもらいます。吉後について語りましょう!
では、雪板の方に私の駄文もあるんですが、今度お暇なら見てやってください(w
長くなって申し訳ないです。
- 98 名前:すなふきん 投稿日:2002年08月14日(水)00時06分10秒
放課後。
外はパラパラ小雨だというのに、私は上機嫌でした。
部活中、同じフルートパートの子に、訝しげに顔を覗かれるくらい。
「あゆみ、ニヤニヤ笑ってどーしたの?」
小首を傾げながら、不思議そうに問いただす友達を無視して、私は調子よく練習を続けました。
(ちょっと失礼な、その子に対する反抗でもあります)
練習が終わる夕方6時過ぎになると、外の雨は驚くほど激しさを増し、バケツを
ひっくり返したような土砂降りに。
音楽棟のピロティーにある楽器庫に道具を片付けながら、思わず溜め息を漏らしました。
これじゃ、せっかくの晴れ晴れしい気持ちも台無し…。
その上、しっかり傘を忘れてきてる…。
しょうがないので、傘を持ってきていた吹奏楽の友達に、帰るときは
入れてもらおうと決めました。
- 99 名前:第10話 投稿日:2002年08月14日(水)00時21分45秒
片付けるのが一番最後だった私が、さっさと鍵を掛けて友達のところに戻ろう、という時。
激しい雨音の中、はっきりとローファーのゆっくり刻む音が聞こえてきたんです。
「ん?」
反射的にそっちに目をやると、透明なビニール傘を差したまきちゃんが
こっちをジッと見ていました。
「真希ちゃん?」
私の声は雨音に掻き消されたのでしょうか、真希ちゃんはただこっちを見ているだけで。
もしかして、人違いなのかな?と思って、その姿に目を凝らしてもみましたけど
やっぱりそれは真希ちゃんで、他の誰でもない確信がありました。
「真希ちゃん!」
ピロティーのギリギリまで行って、声を掛けても真希ちゃんはそこから動きませんでした。
そして、気付いたんです。
なぜかその目が私を睨みつけている、と。
一瞬体が強張って動けなくなるような感覚。
- 100 名前:第10話 投稿日:2002年08月14日(水)00時25分46秒
暑いわけでもないのに、背中に汗が流れる。
段々と真希ちゃんの表情には、怒りが滲み出してきて、私は思わず一歩後退りました。
あんな、冷たく刺すような視線を受けたのは初めて。
狂気を多分に含んだ視線。
まるで、全てを見透かされているようで、顔が熱くなりました。
どうして、あんなに真希ちゃんが怒っているのか、あの時の私には分かりませんでした。
困惑して、動けない私を余所に、真希ちゃんはそのまますぐ、寮の方へ消えていきました。
今になってあの時の真希ちゃんの気持ちが、ぼんやり分かる気がします。
きっと真希ちゃんは自分の余計な部分まで見つめてくる私に
酷い不快感を覚えたのでしょう…。
そして、何よりひとみと仲の良かった私ですから。
- 101 名前:第10話 投稿日:2002年08月14日(水)00時32分06秒
真希ちゃんの剥き出しの感情に触れたのは、それが最初で最後。
それから一週間後、真希ちゃんはひとみにさえ別れを告げず学園を去っていきました。
後々聞いた話で、あの当時想像も及ばなかった現実に彼女が身を
沈めていたことを知って、知らず知らず私は涙が溢れてしまいました。
当時、その事実を知ったところで、真希ちゃんを受け止められる勇気が
私にあったのでしょうか?
そう思うと、事態は決して良い方へ向いていたとも思えませんが…。
それでも、きっとひとみなら…。
彼女なら、それが小さな光だとしても、必ず真希ちゃんの暗闇を灯してくれていたでしょう。
ひとみはそういう人間なんです。
だからあの真希ちゃんも、ひとみには惹き付けられた。
そうとしか思えません。
でも、もう気付くには遅すぎる事実。
今あるのはただ、大きな後悔ばかりです。
- 102 名前:第10話 投稿日:2002年08月14日(水)00時33分46秒
- 柴田編終了
- 103 名前:すなふきん 投稿日:2002年08月14日(水)01時06分32秒
- ちょっと少ない更新でした。次は吉澤編です。
>>95-96 名無し娘。さん、ジョニーさん
レス有り難う御座います!
サイトの方にも足を運んで頂いてるみたいで。
更新、頑張っていきますんで、応援宜しくお願いします。
( ´ Д `)<んあー、ホントにやる気あんのぉ?
(;0^〜^)<ごっちん…。
>>97 ななさん。
レスどうもです♪
雪板読んでますよー!
後藤さんの登場に大喜びです(w
サイトの方のカキコ、お待ちしてますんで、バシバシどうぞっ!
( ´ Д `)<よっすぃー…ホントはやぐっつぁんのことが…
(;0^〜^)<え…??(な、なんのこと…?)
( ´ Д `)<いいよ…どうせ、ゴトー一人だし…
(;0^〜^)<だから、なんのこと??
( ´ Д `)<……フゥ。ノリわるいなぁ…
(;0^〜^)<!!……ゴメン…。
- 104 名前:シューヤ 投稿日:2002年08月14日(水)22時08分07秒
- 柴田さん編、お疲れ様です。
何か柴ちゃんってこんな感じで喋るんだろうなぁーって暖かい感じの語り口調で、
内容が過去に及んで暗くなっていっても、ほんわかするのは偏にすなふきんさんの
お人柄なのでしょう。尊敬です。
吉澤編も楽しみに待たせて頂きますv
- 105 名前:カム 投稿日:2002年08月15日(木)02時04分17秒
師匠、更新お疲れさまですた〜。
ごっちんの身に一体何が起きたんだ!?(驚
もう気になって気になって、柴ちゃんを小一時間ほど問い(略。
シューヤさんも仰ってますが、語りの感じが絶妙です。
何かとお忙しいようなので、次回更新マターリ待ってます!
- 106 名前:第11話 投稿日:2002年08月16日(金)02時02分56秒
目の前に、蒼白な顔をして立っている真希。
「真希…なんで…。」
「ひとみ…。」
真希は本当に嬉しそうに目を細めたか、と思うとグラリ、あたしの方に倒れ掛かってきた。
問うまでもなく、真希がこのままだと危ないのは、誰の目にも顕著だった。
異常に細い腕。
艶のなくなった茶色い髪。
目の下の黒ずんだ隈。
こんなにも暑いというのに、真希は汗一つかいてなくて、顔は真っ青だった。
あたしは何も言わず、どうにか真希を背中に負ぶって、近くにあったネオンが
まだ点ってない安っぽいラブホテルに入った。
- 107 名前:第11話 投稿日:2002年08月16日(金)02時11分31秒
負ぶっているときにダラリと、顔の横に垂れてきた左腕。
確認しなくとも想像できたことだけれど、あたしの目を惹いたのは
青黒く痣にまでなっているクスリを打った後。
一瞬、このまま病院に連れて行こうかという考えが
頭を過ぎったが、連れて行ったら、クスリをやっているのがバレてしまう。
そうじゃなくても、真希のことだから、きっと病院から逃げ出してくるだろう…。
こんな廃人一歩手前の姿でも、あたしは真希が愛おしい。
場所が場所だけに、女の子を負ぶっているあたしを変な趣味の男とでも思ったのか。
予想に反して、案外すんなり入ることが出来た。
あたしは適当に選んだ部屋のベッドに、そっと真希を横たわらせ、冷蔵庫から
適当に飲み物を取り出した。
上がった息が落ち着いたところでハッと思い出し、今度は梨華ちゃんに電話を掛ける。
「あ、梨華ちゃん?」
「ん?よっすぃー、もう着いた?」
「それが…。」
- 108 名前:第11話 投稿日:2002年08月16日(金)02時22分02秒
梨華ちゃんは、理由も言わずあたしが必死に頼み込むと、不思議そうにしながらも承知してくれた。
少しくらい責められた方が気が楽ではあったけど、その辺がまた梨華ちゃんらしい。
ただ、その間もあたしはチラチラ真希の方を窺って、気になってしょうがなかった。
梨華ちゃんの声がどこか遠く聞こえる。
あたしはただ、携帯越しに謝るだけだった。
- 109 名前:第11話 投稿日:2002年08月16日(金)02時24分28秒
寝ているのか、ただ目を閉じているのか。
そんな真希の横で暫く項垂れていたら、真希が小さく咳をしてうっすら目を開けた。
学園生活を送っていたときの真希は確かに痩せてはいたけど、それは
健康的な細さで、どちらかといえば年の割に大人っぽい体つきをしていた。
なのに、今の姿は…。
食欲が失せるほどクスリに走る真希は、一体に何から逃げていたというのか。
剥き出しの腕にいくつも咲く青い痕を、横目で眺める。
「真希、起きれる?」
ベッドに腰掛けたまま、シーツと真希の背中の間に腕を差し込んで、優しく抱き起こした。
真希は少し眉根を寄せただけで、特に嫌がる様子はなかった。
そして、負ぶったときと同様、その軽さに息を飲む。
手にはゴツゴツした背骨の感触が残るだけで
一瞬人形を相手にしているような錯覚を覚えた。
あの晩、抱きついてきた真希の
心地よい感触を味わえないと思うと、なんとも虚しい気分になる。
うっすらと開かれている目は、ボンヤリしていてどこか焦点が定まっていない。
度々見た冷めた視線など、面影もなかった。
- 110 名前:第11話 投稿日:2002年08月16日(金)02時29分30秒
「何か、飲みたい?」
真希は無言で小さく首を振る。
小さく溜め息を吐いて、ジュースの入った瓶から
グラスに移し替え、零さないよう手にとった。
あたしがソッと口元に寄せると、真希は嫌だというように、反射的に顔を逸らした。
また小さく溜め息を吐いて
「飲みたくないの?」
真希は返事の変わりに、やつれた顔を顰めた。
「あのねぇ…。」
一体、何日食べ物を口にしてないんだろう。
せめて、飲み物くらい…。
「飲みたくない…。」
掠れた声。
しょうがないから、オレンジジュースのグラスは置いて
氷と水の入ったグラスを手に取り、縁を唇に付けて、少し傾けた。
- 111 名前:第11話 投稿日:2002年08月16日(金)02時33分18秒
今度はちゃんと口に入れてくれた。
けどやっぱり、3分の1程飲んだところで、真希はあたしの手を握って
「もういい…」と言った。
角張った手はひんやり冷たい。
真希は息をするのもやっとみたいで、ハァハァときつそうに
あたしの肩に寄り掛かってくる。
痛々しくて、目も向けられないような有様だ。
「ねぇ、一体…」
「ひとみ…。」
こんなになるまで、何してたの?そう聞こうと思ったのに。
遮った真希の声にあたしは、黙り込む。
真希は上擦ったように
「ひとみ…ひと、み…。」
繰り返しあたしの名前を呼んだ。
- 112 名前:第11話 投稿日:2002年08月16日(金)02時37分16秒
抱きつくようにして、あたしの胸に顔を埋めた真希は、嗚咽を漏らして泣いていた。
あの時、ベッドで泣き付いてきた姿が浮かびはするけれど、どうしても重ならない。
「真希…。」
「ひとみ、一緒に…いて。…お願い、一緒に…。」
「いるからっ、大丈夫だから。」
震えるように泣く真希。
あたしはこんな状況にも安っぽいことしか言えなくて、そんな自分が情けなくなる。
それでも、真希には充分だったみたいで、その言葉に安心してか、あたしに抱きついたまま
スーッと眠りについた。
- 113 名前:第11話 投稿日:2002年08月16日(金)02時44分17秒
もしかして、これは夢?
本気でそう思う。
この腕の中に、真希がいるなんて。
気持ちがていたのは、あたしも同じだった。
あんなにも、あたしの心を奪った真希が、今ここにいるのだから。
すぐ近くに真希の寝息を聞きながら、フワフワしてた感情が
段々と落ち着いてきたあたしは、ジワジワ目の奥が熱くなる。
泣くつもりなんて、これっぽっちもなかったのに。
終いには嗚咽まで洩らす始末。
「真希…っ…。」
腕の中で目を閉じている真希を、ギュッと抱きしめた。
目を覚ますかもしれないと思ったけど、どうにも抑えることが出来なかった。
真希を忘れるわけなんてない。
できるはずもない。
どれほど、好きだったか。
「真希ぃ…ッ……真希…。」
涙が止まらない。
けど、頬を伝うそれを拭くのに
真希から手を離すのが勿体なくて、あたしは時間ギリギリまでそうしていた。
- 114 名前:すなふきん 投稿日:2002年08月16日(金)03時25分22秒
- 今日はここまで。
やっと吉澤さん編。
えっと、言い忘れてました。柴田編で2章終了。
吉澤編から3章です。
>>104 シューヤさん
柴田さん、書き慣れてないせいか、口調などは全くの想像で(w
まだまだ拙い文章で、お恥ずかしいです(照
( ´ Д `)<柴っちゃんって、カワイイよねぇー
(0^〜^)<う、うん……
( ´ Д `)<…………
(0^〜^)<…………
( ´ Д `)<…ゴメンね?怒った?
>>105 カムさん
ごっちんの身の上話、もうちっと待ってください(w
( ´ Д `)<んぁ…ゴトーいつまで待てばいいのぉ?
(;0^〜^)<も、もうちょっと、ね?
( ´ Д `)<柴っちゃん終わったと思ったら、よっすぃーだしさぁ…。
もう、待ちくたびれちゃったよぉ…。もぉ、帰るっ!
Σ(;0^〜^)<ご、ごっちん!?待ってよぉ!!
( ´ Д `)<…………
(;0^〜^)<え?……
( ´ Д `)<zzZ…
(0^〜^)<…………
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月16日(金)21時36分05秒
- 謎は深まるばかり。
それでもひしひしと迫り来るこの切なさはなんでしょうか。アアア
- 116 名前:吉澤ひと休み 投稿日:2002年08月19日(月)01時28分21秒
- ごっちん・・・(泣)
よっすぃ〜、ごっちんを救ってあげて〜!
作者さん、がんがってくらはい!
しかし、睨みのきかせたゴトーさんは怖そう・・・
( V Д V)<・・・・・・・ケッ
(0;^〜^)<怖いよ・・・
- 117 名前:すなふきん 投稿日:2002年08月26日(月)00時36分29秒
- >>113の上から4行目はミス入力で
気持ちがていたのは、あたしも同じだった
になっていますが、正しくは↓です。
気持ち昂っていたのは、あたしも同じだった。
- 118 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)00時40分17秒
真希から自宅の場所を聞き出すのは、意外にも簡単だった。
「家、どこ?」
最初、真希は無言でどこかをボーっと見つめていたけど
2度目の問いにボソボソと答えた。
驚いたのは、あたしの家から、2駅程度しか離れていない所に住んでいたこと。
アパートの裏には淀んだ堀があって、大きな老樹の葉が窓辺を隠すようにしていた。
風が吹けば葉はざわめき、窓辺に映った影は揺れる。
あれほど悩んだのに、意外すぎるほど近くにいた真希を知って、少し疎ましく思った。
動けないほど弱っている彼女を負ぶって、汗だくでそこへ向かうと
1人暮らしらしかった。
まぁ、それは何となく予想できていたことだけれど…。
学園時代、真希から家族の話を一度も聞いたことがない。
驚くほどあっさり住所を教えてくれたということは、真希があたしに
何も隠す必要がないということだ。
家族と住んでいるなら、こんな状態の真希を放っておく訳がない。
ここにいない家族。
気にはなったけど、聞くことはしなかった。
- 119 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)00時43分11秒
そこは年頃の女の子が住む環境にしては、あまりに異様だった。
受け取った鍵で、何とか軋むドアを開けると一般的な1人暮らしの部屋。
1DKくらいの広さで、建物自体は少し古い程度。
ただ、部屋が驚くほどに素っ気なくて。
小さいタンスとフローリングに敷きっぱなしの布団、後はキッチンに
少しの食器などといった、必要最低限のものが並んでいるくらいだった。
「なんだ…ここ…。」
あまりの生活感のなさに、荒んだ生活を思い浮かべるしかない。
けど、そういうことを考え始めると、なぜだか
無性に自分が恥ずかしく思えて、すぐに止めた。
- 120 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)00時48分08秒
取り敢えず、真希を布団に寝かせて、一旦部屋を出る。
台所の隅にあった小さめの冷蔵庫を開けて中を覗いたけれど、中には
ミネラルウォーターくらいしかなくて、食料らしいものが見あたらなかった。
真希が一瞬慌てたように布団から身を出して、こっちを見る。
あたしは真希の慌てように苦笑しながら
「大丈夫、すぐ戻ってくるから。」
そう言い残して、スーパーへ向かった。
まぁ、簡単な料理なら出来る。
きっと、お粥なら食べれるだろう。
そう思って、近所のスーパーで色々と買い込んでから部屋に戻ると、真希は
あたしが部屋を出たときのまま上半身を起こしていて、ドアを開けた音に
気づいたのか、泣きそうな目でこっちに振り返った。
- 121 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)00時50分17秒
「真希、寝てなきゃ…。」
「どこ、どこ行ってたの?」
泣き付くような真希の声に、あたしは内心動揺していた。
学園時代を過ごしたときは、こんなにも弱い真希を見たことなかった。
いつも、どこか冷めてて、どこか寂しげで。
時折刺すような強さがあった気がする。
だけど今の真希は、暗い渓谷の上に一本張られたロープをつたっているような脆さ。
ちょっとでも刺激を与えると、あっと言う間に谷底へたたき落とされ、壊れてしまう。
それくらい、今目の前にいる真希は小さな子供のような目で、足下に縋ってくる。
あたしは小さく笑って、冷たい頬に手を添えた。
軽く添えた手に、細い真希の指が怖々と絡む。
そのか細い指を壊れないように、優しく握り返した。
間近で見る真希の顔。
そういえば、髪伸びてる…。
髪の色は記憶よりも黒く感じた。
不覚にも、じんわり心が熱くなってしまう。
相変わらずの自分に笑い出しそうになった。
- 122 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)00時58分12秒
「買い物。あんたの部屋、何にもないんだもん。冷蔵庫くらい置けっつーの。」
冗談っぽく笑って、空いた方の手で
ポンポンと頭を撫でたら、酷く嬉しそうな顔を見せてくれた。
真希…あたしがどれだけ、この時を待ったと思う?
真希は、あたしの作った上手くも不味くもないお粥と
簡単な付け合わせまで全部たいらげた。
作っている間は布団に入ったまま、台所に
立っているあたしをジッと見て、あれこれと話し掛けてきた。
「部活…どう?」
「部活?あぁ…もうやめたよ。」
「やめたの?」
さすがに驚いたのか、真希は意外そうな顔を見せた。
「…うん。」
苦笑するあたしに真希はポカンとして見せ
「そっか…。」
それ以上を聞いてこようとはしなかった。
「ねぇ、学校…楽しい?」
「学校ねぇ…うーん…まぁそこそこ。」
こんな風に、先に進むわけでもない会話が、ただ繰り返されるだけだったけれど。
それでも、あたしにとってはやっと真希のまともな声を聞いた気がして、内心嬉しかった。
- 123 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)01時03分07秒
「ほら、出来たっ。ちゃんと食えよぉー。」
明るい声でも出さないと、真希がこのまま何も口にしてくれない気がして、あたしは
戯けたように、ついでに作った自分の分と一緒に料理を運んだ。
スプーンとお粥の入ったお椀を差し出すと、、少し疲れたような笑みを浮かべて
モソモソとそれらを食べ始めた。
随分会ってなかったけど、真希の食べ方はどこも変わってなくて、あたしは思わず口元が緩む。
「おいし?って、大したもんじゃないけどさ。」
「ん…おいし。」
真希が大真面目に返してくるもんだから、苦笑するしかなかった。
木陰が揺れる窓辺から、オレンジ色の夕日が差し込んでくる。
あたしはカチャカチャと食器を洗いながら、この後は一体どうしようか悩んだ。
(はっきり切り出せない自分が情けない…)
真希の居場所は、これで分かったわけだけれど。
一緒にいなきゃ、意味がない。
しかも、真希はあんな状態だし…。
- 124 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)01時04分43秒
あたしの中に変な不安が渦巻く。
確か、これはあの学園時代にも感じていたはずだ。
このまま真希が何も言わず、またどこかへ消えてしまうんじゃないのか。
また、あの時みたいに自分だけが置いて行かれて、そして。
もう二度と会えなくなる。
イヤだ、そんなのイヤだ。
- 125 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)01時08分05秒
「ひとみ、泊まってってよ。」
ボーっとしていたあたしに、後ろから真希がそう言った。
「え?」
急な真希の声に、少しビックリして
現実に戻されたあたしは、ビクッと小さく背中が跳ねた。
それを見られたのかと思うと、ちょっと恥ずかしい気もしたけど、きっと真希は
そんなのどうでもよくって、そういう奴だから。
焦って振り返ると、真希は眠そうな目で
「泊まってって。」
と繰り返した。
「え、あぁ…うん。」
あまりに真希が普通に言うもんだから
そういうもんなのかなって、こっちも普通に返事をしてしまった。
何だ、こんなにあっさりな会話で済むくらいなら、自分から切り出せば良かった。
昔も今も、あたしは真希に押されっぱなしだ。
「何、笑ってんの?」
「いやぁー、別に。」
大丈夫、真希はどこへも行かない。
その頃にはあたしの贔屓目からかもしれないけれど、真希の顔色は随分良くなって見えた。
- 126 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)01時10分27秒
夜、部屋にあったクローゼットから、Tシャツとジャージを借りた。
クローゼットの中は想像していたよりも、ずっと沢山の洋服がかけてあって、そのとき
異様に大人っぽい服が何着か目についたけど、無視した。
どうせ過去のこと。
聞いたって何が変わるわけでもない。
そんな風にワザと冷静な自分を見せようとするのが、酷く滑稽に思える。
さっさとシャワーを浴びてから、すでに浴び終えて窓の外を眺めている真希の横に並んだ。
昼間はあんなに暑かったのに、夜になって弱々しく吹いてくる風はひんやりと冷たい。
下にある堀の方からは、虫の鳴き声が程良く響いていた。
「もう、上がったんだ。」
「うん。」
髪をタオルで拭きながら、横目で真希を見る。
真希は気づいてないのか、気づいてない振りをしているのか
夜風で揺れる葉っぱを飽きもせず、目で追っているようだった。
そして、あの時は考えもしなかったことが、あたしの頭の中をチラッとよぎる。
- 127 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)01時12分48秒
乾ききってない濡れた髪。
痩せて細くなってしまった首や腕。
それでも消えない、真希の不思議な魅力。
自分の段々と早く鳴る心臓が喧しい。
「ひとみ?」
「あ、えっ?」
「ぼーっとしてたから…。」
真希の表情が心持ち沈んだ。
こんなにもコロコロ表情を変える子だったっけ?
ただ、その分真希の知らなかったところを垣間見ているようで
嫌らしくもあたしの心は弾んでいた。
「ご、ごめん。何か、その…。」
「…その?」
「夢みたいだなって…。」
そのセリフに、これ以上もなく照れていたのはあたしの方で、誤魔化すようにして
ちょっと強引に真希を抱きしめた。
- 128 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)01時14分19秒
網戸越しに項垂れた枝葉がざわめく。
窓際に置いていた真希の細い手がそこから離れ、あたしの背中を撫でた。
「ひとみ、痛いよ。」
「…………。」
肩に顔を埋めて呟く真希の声が、麻薬のようにあたしの感覚を麻痺させる。
- 129 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)01時17分49秒
女の子とのキスなんて生まれて初めてのことだったけど、自分の中での抵抗は全くなかった。
(それは真希に恋をしたときにも感じられなかったから)
すぐそこにあった白い壁に、真希を抱きしめたままゆっくり追い詰めると
吸い込まれるようにして、トロンとしている真希の瞳の中を覗いた。
自分でもよく分からないドロドロとした感情が溢れてきて
心臓の鼓動がドクドクと早まる。
これは未経験の緊張なのか、それとも誘う果実を手に入れる喜びからなのか。
きっと顔なんか、真っ赤になってるんだろう。
「真希…。」
優しく頭の後ろに手を回した。
少し痛んでいる髪が指に絡みつく。
高鳴る心臓の音と、熱っぽい顔。
それほどの自覚もないまま、ゆっくりと真希のそれに唇を近づけた。
一瞬、拒まれたらどうしようという考えが、頭の中を過ぎったけれど
あたしの理性はもう殆ど存在を消していた。
- 130 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)01時25分19秒
フワッと重なる真希の唇は、想像していたよりずっと柔らかくて
あたしは触れたその瞬間、壊れてしまいそうな真希の体を
手放さないよう、強く抱きしめた。
真希は一瞬拒むように背中から手を離して、あたしの腕を掴んだけど
本当に一瞬のことでしかなかった。
あたしはその手をとって、ギュッと握りしめる。
指と指の間に、真希の細い指が絡んできた。
頭の奥が、痺れそう…。
「んっ…。」
自然と開いた唇の間に、舌を滑り込ませてみた。
真希の中は暖かく、触れ合っているその部分が溶けるんじゃないかと、本気で思った。
そんな、半分意識が飛んだままで、歯列を軽くなぞって、真希の舌を探す。
生暖かい唾液がどっちのか分からないくらい混じり合ったけど
不快な気分になんてならなかった。
寧ろ、真希を自分の中に取り込んでいるようで、妙な快感さえ覚えた。
- 131 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)01時27分14秒
刺激されたあたしは、真希を誘うようにして、ゆっくり甘く口付ける。
それに答えるよう次第に真希の舌がゆっくりとあたしの舌に重なって、お互い
甘く貪り噛みつくようなキスに変わった。
「ふっ…。」
「んぅ……。」
口の間から荒い呼吸が漏れる。
目を閉じて感覚だけで味わうそれは、不安よりも心地よさの方が大きかった。
もう、どっちの声なんて分からない。
そっと首にまわされた真希の腕の感触。
淫靡な唾液の音。
あたし達は舌を絡め合って、熱い息を吐く。
- 132 名前:第12話 投稿日:2002年08月26日(月)01時35分05秒
チラッと薄く目を開けたときに見えた、少し赤くなった頬と、酷くエロスな表情。
耳に届く、喘ぎにも似た苦しそうな声。
それを見て興奮したあたしは、一層激しく口づけ、体は少し強引なくらいに
壁との間で真希を挟むようにして抱きしめていた。
一晩中でもそうしていたかったけど、元々具合が悪かった真希は息苦しくて
口を離した少しの間に、ジッと抱きしめていたあたしの腕の中で小さな寝息を立て始めた。
無防備なその姿は、たまらなくあたしの中の感情を揺り起こす。
なぜか分からないけど、火照っていた熱が急に冷め、興奮よりも
これ以上ない愛おしさが湧き上がってきた。
起こさないように布団にそっと寝かすと、さっきまでの感触が残る自分の唇に触れてみる。
真希とキス…。
一緒に寮生活をしていたときは、こんなことこれっぽっちも考えなかったのに。
あのときはあくまで、真希の傍にいられればそれで良かった。
それが、久々に出会った夜にこんな…。
そんな自分が、少しだけ汚れてる気がした。
- 133 名前:すなふきん 投稿日:2002年08月26日(月)01時50分48秒
- 今日はここまでです。
ストックが約半分を消化しました。
早く先、書かなきゃなぁ……。
>>115 名無し読者さん
そう言って頂けてると、やる気にも火が点きます!!(w
(0^〜^)<謎……
( ´ Д `)<んぁー
(0^〜^)<それは…
( ´ Д `)<ふぁ…
(0^〜^)<なぜごっちんが…
( ´ Д `)<…………
(0^〜^)<こんなにも眠るのか、ということだ
( ´ Д `)<zzZ…
>>116 吉澤ひと休みさん
はい、有り難う御座います♪
後藤さんの悲しさがどれだけ書ききれるか。
これからの課題です。
( ´ Д `)<ていうかー、まだなの?ゴトーの出番。
(;0^〜^)<…………
- 134 名前:ごまごま 投稿日:2002年08月27日(火)22時57分22秒
- あーなんか、すごく好きな感じです。
目を離すといなくなってしまいそうな、儚い雰囲気のごっちんがイイ!
今すごく楽しみにしてる作品です。がんがってください。
- 135 名前:名無しごまたん 投稿日:2002年08月29日(木)23時18分12秒
- 痛く切ないごっちんが大好きなんで、凄くいいです。
ごっちんの空白の期間が、気になる…。
- 136 名前:ポンコツろぼっと 投稿日:2002年08月30日(金)13時07分37秒
- ども、銀板に居るヘッポコよしごま書きのポンコツろぼっとです。
いつもはROM派人間なんですが、居ても立ってもいれなくてカキコします。
なんか・・・こぉ・・・痛くて切なくて、それでもどこか可愛らしいごっつぁんが
大好きなんです。
謎の空白期間が凄く気になる!!
すなふきんさんのよしごま大好物なんで、がんがって下さい!!
- 137 名前:なな 投稿日:2002年08月31日(土)14時23分44秒
- ごっちん…一体何があったというのか…。
切ないです。胸が痛いです。
やっぱりすなふきんさんの吉後は素晴らしい、と再確認。
今後もマターリでいいので更新頑張って下さい。
楽しみに待ってます。
- 138 名前:115 投稿日:2002年09月02日(月)22時26分47秒
- 切ない…その言葉に、偽りはありません。
が、同時に不健康ごまに激しく萌えてしまう自分は…鬼畜入ってますか?
- 139 名前:第13話 投稿日:2002年09月06日(金)23時38分44秒
目が覚めてもなお意識が朦朧とする中、なんとなく寝返りを打とうとして
背中に何かが当たった。
───── え?
身を起して振り返ると、あたしのTシャツを掴んでいる真希の姿が目に入る。
一瞬、心臓が跳ね上がるほど、真希が横たわるその光景に驚いた。
「あ…っ。」
そっか、泊まったんだ…。
何、ボケたこと言ってんだろ。
未だ軽く跳ねている鼓動を落ち着かせるように
溜め息を吐いて、真希の手をそっと解いた。
カーテンを避けて外を見る。
朝靄がかかって、まだ空が薄暗い。
夜は明けきっていないかった。
振り返って時計を見ると、まだ朝5時。
- 140 名前:第13話 投稿日:2002年09月06日(金)23時43分18秒
開けた窓から部屋に入り込んでくる風が気持ちよくて、あたしはフラフラと真希の横に戻る。
普通の広さの布団に、雑魚寝するよう寝ていた体は、あちこちが軋むような鈍い痛みを感じたけど
一時でも多く真希の側にいたかったあたしは、そんなことを気にすることはなかった。
そして、眠りに戻る前、真希の寝顔をチラッと覗いて気づいた。
驚くほど、寝汗をかいてる…。
確かにもう6月だし、昼間は信じられないくらい暑い日もあるけど
今は夜も明けきらない時間だ。
開け放った窓から、冷たいくらいの風も入ってきている。
半袖を着ている分寒いくらい。
それなのに、隣にいる真希は額に汗粒を浮かべ、まるで真夏のように汗をかいている。
- 141 名前:第13話 投稿日:2002年09月06日(金)23時47分28秒
霧掛かっていたあたしの意識は、一気にそれで目が覚めた。
「……ちょっと、真希?」
表情が些か険しい。
呼吸も苦しそうに見える。
着ている白いTシャツは、襟元や背中の色が変わるほどに汗を吸っていた。
「ねぇ、真希ってば。」
あたしが揺り起こそうとする前に、真希は「ひっ!!」と
怯えたような声を出して、ビクッと体を震わせながら飛び起きた。
辺りをキョロキョロと、荒い呼吸を繰り返しながら見渡している。
あたしなんて、まるで視界に入ってはいないようだった。
まるで、物音を察知した野生の動物のような目に、その動き。
その光景はあまりにも奇妙で、あたしはただポカンと真希を見つめているしかなかった。
- 142 名前:第13話 投稿日:2002年09月06日(金)23時52分23秒
「たまに…発作みたいな感じで、変なの、見えるんだ…。」
コップ一杯の水を渡すあたしを見上げながら、疲れたように笑って真希は言った。
クスリを止めてから、フラッシュバックのような症状に悩まされているらしく
度々不気味な幻覚を見たり、激しい動悸に襲われるらしい。
これでも回数的には減って、楽になったんだ。
真希はポツリと付け加えた。
まるで他人事のようにそう言ったけど、ダラリと下げられた指先が
小さく震えているのをあたしは見逃さなかった。
「…………。」
「打ったの、何回かだけなんだけどなぁ…。」
呟くように言った真希の横顔。
ドラッグ───────
どうして、救えなかった
- 143 名前:第13話 投稿日:2002年09月06日(金)23時56分58秒
頭の奥深くが、鈍く痛み出しそう。
無意識に強く噛み締めた奥歯が、ギッと音を立てる。
妙な不安と焦燥。
何に対してなのか、どうしてなのか、自分でも分からない。
言いようのない不快な感情がドクドクと自分の中で脈打つ。
項垂れる真希を見て、あたしが何も言えないのは分かり切っていた。
- 144 名前:第13話 投稿日:2002年09月07日(土)00時02分01秒
その日、あたしは日が暮れるまで真希と過ごした。
真希はあんな姿を見られたことを気にしているみたいで、酷く落ち込んでいた。
「大丈夫だよ。」
膝に顔を埋めたまま、こっちを見ようとしない。
あたしはその隣で、日が昇るのを横目で追う。
「もう止めたんでしょ?」
真希の頭が小さく頷いた。
「だったら、悔やんでもしょうがないよ。
あたしは…真希の言葉を信じるだけだし。」
「ん…。」
口から出る綺麗事。でも、そう思っているのは実際事実だった。
それから特に会話らしい会話はしなかったけど、不安な気持ちになどはならなかった。
真希と一緒にいるだけであたしの心が満たされるのは
根底的な部分で、今も昔も変わりはしないみたいだ。
そんな自分になぜか安心した。
- 145 名前:第13話 投稿日:2002年09月07日(土)00時07分59秒
ただ、時間は確実に過ぎていって。
もちろん、いつまでも一緒にいたいのはこっちも同じ。
(真希よりあたしの方がそれを願っている気がする)
だけど、明日は学校だし、2日連続での外泊となると、後々面倒なことになる。
現実問題として、あたしは真希と過ごす時間を正確に捕まえておく必要があった。
どれだけ、安易に真希と一緒に過ごせるかが問題なのだ。
「帰るの?」
口元を少し歪めて、目を潤ませる。
右手を緩く掴む冷たい手を振り解くなど、できるわけがない。
その手を優しく撫でて顔を覗き込むと、ちょっと安心したのか
幾分表情が柔らかくなった。
そして、あたしは真希の手の感触に少しだけ緊張する。
「学校終わったら、すぐ来るから。ね?」
「うん…。」
「じゃ、帰るね。」
ダラダラ居座ると、自分でも
気持ちが揺らいでしまいそうで、ワザとあっさりそう告げた。
玄関に座り込んで靴を履くあたしの背中に、暖かい感触が襲う。
当然、それは真希以外の何者でもない。
- 146 名前:第13話 投稿日:2002年09月07日(土)00時10分58秒
「絶対だよ?待ってるから。」
耳元で響く真希の声。
小さい子供のそれと、何ら違いが感じられない。
耳元に柔らかく掛かる息で
真希の唇の感触を思い出して、体中が疼くように熱があがった。
「絶対来るって。」
一時的に出来た2人の空白。
それは、ほんのつかの間でしかない別れでも、余りに辛く感じさせた。
あたしは真希へ、慰めるような軽いキスをして駅へ向かった。
- 147 名前:すなふきん 投稿日:2002年09月07日(土)00時36分47秒
- 今日の更新はここまで。
気付けば随分間を空けてしまっていて、反省(苦笑
ただ、これからちょっと忙しくなるので、次の更新も遅れるかもしれません。
>>134 ごまごまさん
ここ最近、グーッと後藤さんの人気が伸びてきました(w
随分彼女の役回りには頭を悩ませてるので、そう言って頂けて嬉しいです♪
>>135 名無しごまたんさん
どうしてか彼女には、こういう役がハマってしまいますよね。
これから先、益々痛く切ない後藤さんが出てくるのでご期待下さい(w
>>136 ポンコツろぼっとさん
どーもです♪
銀盤、読ませて頂いてますよっ!
石川さんと後藤さんの意外な展開に、ちょっとドキドキです(w
後藤編はこの吉澤編の後にきますので、その時
後藤さん自信から昔話でもしてもらうことに(苦笑
それにしても彼女は辛い役をさせるほど、妙な輝きを放つ気がします。
- 148 名前:すなふきん 投稿日:2002年09月07日(土)00時37分24秒
- >>137 ななさん
どーしても、後藤さんに痛い役をさせたくなる自分。
吉澤さんには、至って普通の女子高生でいてもらいたい。
この差の扱いは一体なんだっ!?ってね(w
本当にマターリな更新になってきてますが、どうぞ最後までお付き合い下さい。
>>138 115さん
同じく自分も。
敢えて、そうだと認めてしまうのもいいかもしれませんね(w
顔色の冴えなさに比例して、変な色気を醸し出すような彼女がステキなんです
(救いようがないですね…
今回、こんなに沢山のレスを頂いて、本当にビックリしました。
本当に有り難う御座います。
毎回恒例になってる自己満足AAは、忙しさに目を回して
冴えなくなった頭で書いてもしょうがない、と思い今回はお休みに。
次回、暇があればまた下らないネタでもやろうか、なんて思ってます。
- 149 名前:すなふきん 投稿日:2002年09月07日(土)00時39分01秒
- あ、ageてしまった…。
- 150 名前:ごまごま 投稿日:2002年09月08日(日)00時46分12秒
- 別れ際の、この妙に切ない感じは何だろう…。
私も薄幸そうなごっちんに萌えてしまいます(w
ホント、こういう役が似合うんですよね。
- 151 名前:第14話 投稿日:2002年09月14日(土)23時39分40秒
それは、真希と何度目かの週末を過ごした頃。
憂鬱な月曜日が来ると、週末の土日までがもどかしくてたまらない。
暑い風が舞い込む授業中、頭の中を巡るのは真希のことだけだった。
詰まらない授業が、より一層不必要に感じる。
嫌いな数学は勿論のこと、本を読むことが好きだったあたしが
唯一好きだった現代文の授業さえ、真希と逢えない時間にはかわりなくて苛立つだけ。
今、ここでこんな無駄な時間を過ごしている自分が、もの凄くイヤだった。
学校が終わるとすぐに駅に向かって、真希の家へ駆け込む。
このときばかりは、部活をしていないことが役に立った。
電車に揺られている時間さえ、勿体なかった。
窓の向こうで、目まぐるしく変わる町並みを見ながら毎回思う。
きっと、真希はあの部屋で寂しそうに、壁際に蹲っているに違いない、と。
- 152 名前:第14話 投稿日:2002年09月14日(土)23時41分57秒
渡された合い鍵を使って、中に入ると真希はこっちに背を向けて
冷たいフリーリングの上でペタンと座り込んでいた。
殺風景な部屋から、ただジッと窓の外を眺めているみたいだ。
あたしはここに来るたび、真希が
この部屋にいてくれることに、とてつもない安堵を覚えた。
そして今は、同時に違和感が広がる。
その日はなぜか、いつもと真希の様子が違った。
いつもなら、ドアの開く音で玄関まで駆け寄ってきてくれるのに、真希は相変わらず
座り込んだままでこっちを向こうともしない。
別にそれに不満があるわけじゃない。
ただ、あたしは怖くなる。
これまで見てきた真希の脆さを知っているから。
- 153 名前:第14話 投稿日:2002年09月14日(土)23時44分39秒
無意識に首を傾げながら、真希のすぐ後ろまで歩み寄った。
ここ一ヶ月で真希はあの痩せ細った痛々しい姿から、一緒に
学園生活をしていたときのような、グラマラスな体つきへ徐々に戻りつつあった。
(あまりに分かり易い真希の変化に、少し戸惑うけれど…)
半年前の面影をちらつかせる背中に、抱きつきたくなる衝動を抑える。
そして、相変わらず真希は全然あたしに気づかない。
「ねぇ…。」
肩に手を掛けて、顔を覗き込もうとしたとき
「触んないでよっ!!」
パンッと手を払い除けられた。
払い除けられた右手は、ふわり宙を舞う。
「……え?」
本当にビックリした。
突然の大きな声と、じんわり残る腕の痛み。
何が何だか分からずに呆然と立ち尽くしていたら、サッと立ち上がった真希に
容赦なく、思いっきり突き飛ばされた。
ガツッと白い壁に、背中をぶつける。
制服のスカートが足の付け根まで捲り上がった。
- 154 名前:第14話 投稿日:2002年09月14日(土)23時49分12秒
見上げた真希の顔は、憎しみに溢れている。
血走った目と、眉間に寄せられた皺。
口は醜く歪んでいた。
いつもこの部屋で見る真希の表情は穏やかで、聖母のようだったのに。
この有様は…。
「ど、どうしたの。」
戸惑うあたしに真希は喚き散らす。
「知ってんだからっ!何で、黙ってたのっ!?」
「な、何が?」
「惚けないでよっ!」
要領を得ない真希のセリフ。
全く意味が分からない。
壁に打ち付けた背中が、今更鈍く痛み出す。
「…何、言ってんの?」
いくらか、怪訝な顔をして尋ねた。
なんで、何もしていないのに、あたしがこんなに目に遭わなきゃならないんだ。
真希の一方的な態度に不条理さを感じた。
真希はそんなあたしを見て、ビクッと体を揺らす。
そしてあっと言う間に、ワンワン泣き崩れた。
- 155 名前:第14話 投稿日:2002年09月14日(土)23時51分55秒
結局このことは、真希が一向に喋り出そうとしないので、有耶無耶にしたまま終わった。
「言いたいことがあるなら言いなよ…。別に怒ったりしないから…。」
夕日が舞い込む窓辺の壁に、寄り掛かっていたあたしの肩に項垂れるようにして
頭を預けている真希の髪を撫でながら言う。
真希の髪はいつのまにか、根本までキレイに、明るめの茶色で染められていた。
指の間をサラサラ抜けていく感触。
その頃にはもう真希の涙は止まっていて、ボンヤリ床を見つめているみたいだった。
真希は小さく首を振って
「ゴメン、いいんだ。忘れて。」
髪を撫でていたあたしの手を取って、首に腕を巻き付けてきた。
腕に残っていた赤い跡はもう殆ど確認できなくなっていたけど、素直に喜べない自分がいた。
- 156 名前:第14話 投稿日:2002年09月14日(土)23時56分31秒
「ねぇ…。」
「もう、いいから…。」
遮るように、ふっくらとした真希の唇があたしのそれに触れて
ギュッと体を押しつけてくる。
真希の細いけれど肉感的な温かさと心地よさに、一気に体の温度が上がる。
「んっ…。」
薄い舌が、唇をなぞる。
緊張で自分の体がビクリと強張るのが分かった。
真希はフッと一旦体を離して、小悪魔のように笑った。
「ふふっ、ひとみ…。」
真希は体をずらして、座ったままでいるあたしの太股の上に跨ると
少し身を屈めて顔を覗き込んできた。
赤いキャミソールの肩紐が少しずれて、ブラの黒い肩紐があたしの目を惹く。
気まずくて、格好悪く視線を泳がせていたら、真希はこっちの気も知らずに
体勢を前屈みにして、大きく開いている胸元から、白い胸の谷間を覗かせた。
- 157 名前:第14話 投稿日:2002年09月14日(土)23時57分32秒
「ま、真希、ちょっと…。」
何となくこの怪しい雰囲気に我慢できなくなって、真希を下ろそうとすると
真希は再び少々強引に唇を重ねてきた。
熱い吐息が鼻先を掠める。
さっきまで目を惹いていたあの豊かな胸が、自分の胸元に押しつけられる感触と
真希の唇の柔らかさに恥ずかしくなって、あたしは慌てて体を離そうとした。
「っ!ちょっ、待っ、…てって。」
どうにか無理矢理唇を離す。
ツッと透明な糸が、お互いのそれを繋いで切れた。
- 158 名前:第14話 投稿日:2002年09月14日(土)23時58分52秒
「何、照れてんのぉ?」
艶やかに濡れた唇でニヤリ笑った真希の顔は、異常なほど大人びて見えた。
「べ、別に…。」
どこか余裕を感じさせる真希の態度に、あの頃の記憶が蘇る。
そう、いつだって真希は冷たく笑っていたじゃないか。
その余裕がこんなにもあたしを焦らせてるなんて、真希は絶対に気づいてないんだろうな。
あぁ、きっと真希は、もう…。
頭の中に、嫌らしく男と体を交える真希の姿が浮かんで
あたしは地の底まで自己嫌悪に陥りそう。
「ハァ…。」
「…どうしたの?」
「真希、あの頃と変わんないなぁって。」
「えー?」
真希は目を細めて笑いながら、あたしの背中に腕をまわして、ゾクゾクするような
優しい手付きでずっと撫でていた。
- 159 名前:すなふきん 投稿日:2002年09月15日(日)00時06分21秒
- はい、吉澤さん編はここまでです(更新、少なくてすみません…(汗
次回からはやーっとの後藤編(w
大分暗い話になりますけど、これからもどうか読んでやって下さい(苦笑
>>150 ごまごまさん
レス、どもです♪
次回からは幸薄い(w)後藤さん視点。
救いようのない話になりそうですが、そんな後藤さんをじっくり楽しんで下さい(w
( ´ Д `)<なんかさぁ、やっと出番きたのはいいけど…
(;0^〜^)<…………
( ´ Д `)<別、いいけどさ…
- 160 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月15日(日)00時08分56秒
- リアルタイムですた。ワーイ。
いいねぇ〜。ここのごっちん、いいスねぇ〜。
- 161 名前:駄作屋 投稿日:2002年09月16日(月)12時24分10秒
- おもしろいですねぇ、これ(感嘆)。
最近、黒いキャラが好きなんでツボです。
文章もうらやましいくらいお上手だし。
楽しみにしてますんで、がんばってください。
- 162 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月16日(月)23時05分37秒
- 真希はなにを考えているんでしょうか?なぞだらけです
次が真希視点ですね〜待ちに待ったって感じです(^O^)。
楽しみに待ってますね
- 163 名前:77 投稿日:2002年09月24日(火)08時59分03秒
- 初めてレスします。ここまで一気に読みましたが本当におもしろいです!
早く続きが読みたいので作者さん頑張ってください。
- 164 名前:すなふきん 投稿日:2002年10月03日(木)23時36分29秒
- もう長いこと、更新できずにいます。
申し訳ありません(汗
私生活が忙しいのと、この後連載する「後藤編」の内容に
自分自身が今ひとつ納得できないので、今現在手直し中です。
もう少し待って頂きたく思います…(ごめんなさい…
>>160 名無し読者さん
リアルタイム、ありがとうございます♪
ここの後藤さん、何かと人気で作者としては非常に嬉しく思っております(w
( *´ Д `)<ん、んあ…
>>161 駄作屋さん
いやー、まさか駄作屋さんからレスを頂くとは…(お恥ずかしい
青板、毎回チェックさせてもらってます(駄作屋さんの書く後藤さん大好きです
ほんと、あの更新速度と全く落ちない内容の濃さに驚くばかり。
自分も負けないように頑張ります(w
( ´ Д `)<つーか、その前にさっさと更新したらぁ?
(;0^〜^)<…………
- 165 名前:すなふきん 投稿日:2002年10月03日(木)23時37分02秒
>>162 名無し読者さん
そう言って頂けて、うちの後藤さんも喜ぶはず。
いや、マジで後藤さんのキャラに頭を悩ませてばかりいます(w
次回からの後藤さん視点、どうにか皆さんの目を
惹き付けられれば良いんですが…(苦笑
( ´ Д `)<どーせ、後藤あんま良い役じゃないんでしょー?
(;0^〜^)<ご、ごっちん…
( ´ Д `)<よっすぃー、ずるーい
(;0^〜^)<…………
>>163 77さん
いやー、ありがとうございます♪
そう言って頂けてると、ほんと励みになります(涙
なので、頑張って早めの更新目指しますので、もう少し待ってて下さいっ!
(言い訳、ごめんなさい…
( ´ Д `)<やっと後藤の出番なのにぃ…。
(;0^〜^)<…………
- 166 名前:14話 投稿日:2002年10月06日(日)12時26分50秒
ねぇ、お母さんどうしてあたしを捨てたの?
待ってたんだよ?
ずっと、ずっと─────
- 167 名前:15話 投稿日:2002年10月06日(日)12時30分31秒
もう顔さえ覚えていない父は、あたしがちょうど小学校1年生の夏休みに入る少し前
会社の倒産を期に蒸発してしまい、あたしは母と途方に暮れることになった。
夏の蒸しかえるような暑さの中で、母はただ泣いているだけだった。
背中に張り付くブラウスの感触と、湿った畳の匂いは今でも思い出せる。
それまで優しくておっとりしていた母は、溺愛していた父のとった事実を
受け入れることが出来なかったのか。
母は心から父に依存し、縋っていた。
ろくに喋りもせず、薄暗い家の中でただ泣き続ける母の後ろ姿を、部屋の隅から
眺めることしかあたしにはすることがなかった。
- 168 名前:15話 投稿日:2002年10月06日(日)12時32分44秒
3日程だったのか、もっと短かったのかもうよく覚えていないけれど
どこからそんなに涙が出るのかというほど泣き続けた母は、ようやく
落ち着きを取り戻したみたいで、掠れた声で
「真希…遠くに行こうか?」
と何日かぶりに声を掛けられた。
それまで、家の冷蔵庫にある冷えきった固いご飯しか口にしていなかったあたしは、やっと
温かい母の手料理が食べれると思って、大きく頷いた。
今思えば、収入のなくなった親子にそれまで住んでいた家を維持できるはずもなく
家賃の安いアパートへ移り住むだけのことだった。
- 169 名前:15話 投稿日:2002年10月06日(日)12時37分22秒
築何十年かと問いたくなるようなボロボロの木造アパートには、木造裏側に
隠れるようにして大きな堀と、まるで幽霊でも出そうな柳の木が
ひっそりと佇んでいるようなところだった。
ひんやり冷たいようなそんな印象だったけど
特に気に食わない、というようなこともなく、2人での生活が始まった。
親族もなく、17であたしを産み落とした母は、当時まだ20代の働き盛りで
すぐに仕事を見つけたみたいだったけれど、ただそれは寝付くあたしを確認してから
こっそり外へ出掛けていくような職場でもあった。
思っていたより眠った振りをするのは、これ以上もなく難しいことだった。
歯の奥をきつく噛み合わせて、寂しくて叫び出しそうになるのをギュッと堪える。
シーツを握りしめていた手は、もうビッショリ汗ばんで気持ちが悪かった。
母はそんなあたしの顔を覗いて、毎回
「真希、行ってくるね。」
と優しく声を掛け、キィキィ鳴るドアを
出来るだけソッと閉めてから、静かに鍵を掛けていった。
母の優しい声がずっと耳に残り、あたしは
やっとヒクヒク嗚咽を漏らして泣けるのだった。
- 170 名前:15話 投稿日:2002年10月06日(日)12時40分48秒
死ぬほど寂しい夜だったけれど、慣れない転校先の学校から
くたくたになって帰ってきたあたしを、母が笑って出迎えてくれるのは、すごく嬉しくて
きっとそれがあったから耐えられたんだと思う。
学校でどんなイジメを受けようと、母と2人であの狭いアパートで
笑って暮らせれば、それだけでよかった。
あの時のあたしには本当にそれだけだった。
「真希、学校楽しい?」
「うん。」
靴に泥を入れられたって、筆箱を隠されたって、友達が出来なくったって。
お母さんさえいれば。
あたしは誰よりも母を愛して、ずっと守り続けるつもりだった。
守るのはお母さんだけ。
この静かな生活だけ。
お母さん、大好きだったのに…。
- 171 名前:15話 投稿日:2002年10月06日(日)12時43分56秒
- 母がいない夜、最初は一人で泣いてばかりだったけど、いつからか過ごし方というのを見つけた。
鍵の閉まる音が聞こえると、あたしはゴソゴソ布団から這い出し、部屋に唯一あるある窓辺へ
安物の簡易なイスを運び、その上にやっとの思いで座ってはジッと外を眺める。
それがどうしてなのかあたしには分からなかったけど、夜の闇と孤独は
これ以上もなく嫌いなのに、静かに虫の声が聞こえてくるその光景は愛着さえ湧くのだ。
きっと、同じものを見つけたのかもしれない。
あたしだけが抱いていた不安を、ドンヨリとした例えようのない空気が
ゆっくりと優しく中和してくれる。
母の代わりに、一緒に過ごしてくれる相手を見つけたようで
あたしは前ほど寂しさを感じることもなくなった。
垂れ下がった柳の葉が揺れる。
キラキラと月を反射する、のっぺりとした灰色の水面。
母の声を思い出しながら、眠くなるまで
風が吹き込んでくる窓辺から、そこを眺めていた。
- 172 名前:15話 投稿日:2002年10月06日(日)12時49分39秒
その日もあたしはただ何をするでもなく、じっと揺れる葉を目で追ったり
水面に映る欠けた月をボンヤリ見ていた。
だから、いきなりドカドカと乱暴にドアがノックされたときは、ビクッと
大きく体が震え、悲鳴さえ挙げそうになった。
『おい、いるんだろっ!』
『開けろよっ!出てこい!!』
野太い男の声。
体は硬直したまま動くはずもない。
例えようもない恐怖だった。
- 173 名前:15話 投稿日:2002年10月06日(日)12時53分12秒
もし、あの古びた茶色のドアが壊れて男が進入してきたら、あたしはきっとぶたれるんだ。
ものすごく痛くて、血が出ちゃったらどうしよう…。
母の名前を呼び続ける濁った大声を聞きながら、本気でそう思った。
恐らくは、店で知り合った母を付け回していたんだろう。
どれくらいあの怒鳴り声を聞いていたんだろう。
やっと男が去った時には、小さい背中に流れるほど冷や汗をかいていた。
男の罵声を聞きながら、あたしはただジッとイスに掴まって
去ってくれるのを待つだけだった。
冷たい背凭れを握る手が震えて、止まらない。
夜が明ける前、疲れ切って帰ってきた母にあたしは泣き付いた。
とてもじゃないけど、あのまま寝付くことなどできなかった。
母は驚いたことだろう。
こんなことは初めてだったから。
- 174 名前:15話 投稿日:2002年10月06日(日)12時53分57秒
母から優しく頭を撫でられながら
「真希、どうしたの?イヤな夢でも見た?」
と、どんなに尋ねられても絶対に理由を話さなかった。
知らない男の人が来たなんて言ってしまったら、母はあたしを置いて
その知らない人と一緒にどこかへ行ってしまうと思ったから。
それまでだって、母の負担にならないよう必死で頑張ってきたけどあたしは
母に捨てられないように、今までよりもただ必死に「いい子」になろうとした。
- 175 名前:15話 投稿日:2002年10月06日(日)12時56分41秒
学校の帰り道、算数のテストで
100点をとったあたしは、お母さんの喜ぶ顔が目に見えて嬉しくて嬉しくて…。
だから、重いランドセルを揺らしながら走って帰った。
「おかーさんっ、ただいまー!」
立て付けの悪い扉を開けても、母の姿はなかった。
「おかぁさん?」
「どこぉ?」
「今日ねぇ、テスト100点とったよ…。」
「ねぇ……おかぁさん……。」
日が暮れて、暗い闇が訪れてもあたしはただ待つだけだった。
買い物に行っているのかも知れない。
なにか、急用が出来たのかも知れない。
悪い考えをかき消すように無理矢理色んなことを考えては
全く姿を現さない母の姿に理由を付けた。
けれど、一人取り残されたそこには置き手紙の一つもなくて…。
- 176 名前:15話 投稿日:2002年10月06日(日)12時59分14秒
────────捨てられた。
あっと言う間の幸せ。
神など、いはしないのだ。
- 177 名前:すなふきん 投稿日:2002年10月06日(日)13時04分32秒
今日はここまで。
やっと突入した後藤編です(w
- 178 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年10月07日(月)10時34分20秒
- おお!ついに後藤さん編ですね。
と思ったらせつない。。。涙。
- 179 名前:吉澤ひと休み 投稿日:2002年10月12日(土)14時46分16秒
- つ、辛すぎる・・・・ごち〜ん・・・・
作者さん、秋の夜長また〜り頑張って下さい。。。
心に刺さる作品になりそうな予感・・・
- 180 名前:すなふきん 投稿日:2002年10月21日(月)23時01分59秒
もちろんすぐに施設に渡されたあたしは、設備も整った小綺麗で
清潔なその場所で同じ様な境遇の子供達と一緒に育てられた。
あの貧しい生活に比べれば、ここにいた方が全然マシなんだろうけど…。
あれほど信じていた母から裏切られた傷は、なかなか塞がってはくれない。
守るべきもの、愛する人をなくした傷は思ったよりも深くあたしに根を下ろしていた。
あの暗く淀んだ窓辺で、母の声を聞いて眺めているだけで良かったのに。
それだけの幸せも、あたしには与えられはしないのか。
ポッカリ空いた喪失の穴。
お母さんはいないのに、どうしてあたしはここにいるのか。
あたしには誰もいない。
どうせ捨てられるなら、どうしてあたしは生まれたのか。
たった独り。
いつの間にか「笑う」ことを忘れていた。
- 181 名前:すなふきん 投稿日:2002年10月21日(月)23時05分21秒
いつも無表情で、他人と付き合いたがらず、引きこもりがちなあたしは
何度か精神科に連れて行かれ、簡単なテストとカウンセリングなどを
受けさせられた結果、ショックからくる軽い鬱と診断された。
診察が終わると、掛かり付けの若い先生がアメ玉をこっそり3つくれて
あたしは小さな声でお礼を言うけれど、別に嬉しいと思わなかった。
施設の先生(他の孤児院ではどうかしらないが、そこではそう呼ぶ)たちは皆
こんなあたしにも優しかった。
ただ、幼いあたしにも針のように突き刺さるのだ。
同情と言う名の視線が。
もしかしたら、あの当時にして大分捻くれていたあたしの勝手な
思い込みなのかもしれないけど、どちらにしろそう感じたのは事実。
人という生き物に、これ以上もなく敏感になってしまっていた自分がいた。
- 182 名前:すなふきん 投稿日:2002年10月21日(月)23時07分55秒
けれど、時間というのは恐ろしいもので。
根底には確かにベタ付くタールのような感情があるものの、あたしは段々と
社交的にもなったし、その場に合わせて笑えるようにもなった。
それは諦めと言えばいいのか。
幼い頃のあたしを知る先生達が、随分と明るくなったあたしへ嬉しそうに
声を掛けてくることがあったが、その度に愚かだと思わずにはいられなかった。
薄い粘膜のようなものを何枚も重ねて、無意識のうちに
母の記憶を閉じこめようとする。
それは誰にも触れられたくない、酷く化膿した傷口のような扱いだった。
そんな風にして、母のことを思い出す回数は歳を重ねるに連れてグッと減っていった。
それに比例するように、どこか冷めていく
自分の感情にも、上手いこと折り合いを付けていた。
世の中を理解しようなどとは微塵も思ってなかった。
上手に利用して、見返してやるくらいにか。
- 183 名前:すなふきん 投稿日:2002年10月21日(月)23時10分15秒
施設にいい子ばかりいるはずもなく、派手な色に染めた髪の毛の子達何人かで
夜中抜け出しては補導され、先生達を困らせるなんてこともあった。
何度か一緒に行こうと誘われたけど、あたしは曖昧に全て断った。
そのグループの中に、自分のことを特別な目で見ている男子がいるのを
知っていたし、何度か迫られたこともあったから。
掴むはずの未来の為にも、面倒なことは関わりたくない。
そう言い聞かせているだけかもしれないけれど…。
────────
- 184 名前:すなふきん 投稿日:2002年10月21日(月)23時13分24秒
夜、人気のない施設の裏側に呼び出され、白い息を吐き出しながら行くと
何度か会話を交わしたことがある男子が待っていた。
こんな所に呼び出されるのは、当然いい気はしなかったけれど
同室の子からお願いされ、渋々足を運んだ。
好きだ、とか何とか遠回しに言われたけれど、あたしは彼が言っている
安っぽい言葉よりも、12月の寒さの中、薄着で出てきてしまったことに後悔していた。
「おい、聞いてんのかよ?」
「あぁ…うん。」
気付けば、さり気なく縮められている距離。
あたしは露骨に顔を歪めた。
「…………。」
「なんだ、お前もう付き合ってるヤツいんの?」
卑猥めいた、視線。にやつく口元。
「関係ないじゃん、もう戻る…。」
「おっと、待てよ!」
グッと引っ張られた左腕。
大きく傾く自分の体。
垣間見たそいつの目はなぜか嬉しそうに細められていた。
- 185 名前:すなふきん 投稿日:2002年10月21日(月)23時16分14秒
心臓が大きく鳴った。
全身を駆け巡るように鳥肌が立つ。
ただ、怖いと思った。
何とかバランスを保って、握られた腕を振り解く。
その時、大きく振り払ったあたしの手が彼の目元に当たってしまい、反射的に
目をおさえたその隙をついて走って逃げた。
なんだか後ろで喚いていたけれど、そんなことに気を向ける余裕は殆ど残っていなかった。
息を上がらせて部屋に戻ると
「あ、真希たまには一緒行かない?」
妙な笑みを浮かべたままアイラインがやけに目立つ化粧をした、同じ部屋の子が
夜の溜まり場へ遊びに行こうと誘ってきた。
もうどうやら、あたしがどんな目に遭ってきたのか知っているらしい。
そういえば、呼び出されるときもこの子を通してだったと思い出す。
「…あぁ、ゴメン。あたし、いいや。行って来なよ。うまいこと言っとくからさ。」
背中がじっとりと汗ばむ。
自分でも引きつった笑いで、目が完全に泳いでいると思った。
「そ?ゴメンねぇー。」
慣れたように窓から抜け出すその姿を、羨ましいなんて思わなかった。
- 186 名前:すなふきん 投稿日:2002年10月21日(月)23時17分59秒
いくら抑え込んでも、どこかで期待していたのかもしれない。
いつか母が迎えに来てくれるのだと。
有り得ない幻想にいつまでもしがみついている。
だから、いつまで経っても「いい子」がやめられないんだ。
狂ってる
─────────
- 187 名前:すなふきん 投稿日:2002年10月21日(月)23時19分43秒
中学を卒業すると同時に、こんな腐ったような所なんか絶対に出てやると決めていた。
誰も自分の過去を知らないところへ行こう。
あたしは何とか母への愛情から抜け出そうと、藻掻いていた。
あんな昔の記憶に囚われているなんて、明らかにおかしいと分かってはいたんだ。
レベルの高い学校だったけれど、女子校だし寮もついてる。
取り敢えず、勉強だけはできたあたしは、難なくそこへ入学することができた。
この新しい環境であたしは過去を拭い去らなければいけない。
あの蜘蛛の巣のようにベタベタまとわりつく、母の思い出を捨てるために。
- 188 名前:すなふきん 投稿日:2002年10月21日(月)23時22分25秒
───────────────
──────────
「…真希、大丈夫?」
「……え…?」
あぁ、また……。
頭がうねるように痛むのは、7月の暑さのせいだけではない。
ひとみと出会ってから、変な夢を見るようになった。
「ねぇ、大丈夫……?」
泣きそうになってるひとみの顔を抱きしめた。
絹のような髪が指に絡んで、くすぐったそうな吐息が首筋に触れる。
抑えようもない、愛しい温もり。
無意識のうちに口元が綻ぶ。
「うん、大丈夫。ちょっと変な夢見ただけ。」
何を恐れる
あたしにはひとみがいる
そう言い聞かせ、あたしは作り上げた虚像で自分を覆い尽くそうとする。
ギュッと目を閉じて、ひとみを強く抱きしめる。
けれど、あたしは知っていた。
絡まった蝶が、そこから逃げ出せるはずなどないと。
- 189 名前:すなふきん 投稿日:2002年10月21日(月)23時34分21秒
- 今、気付いたんですけど「第16話」を入れるの忘れてました……(涙
くだらなすぎるミスに自己嫌悪…。
というわけで、今日の更新はこんな感じで(w
ほんと、ヤバイくらい更新ペースが遅いにも関わらず
読んで下さっている皆様には感謝するばかり。
これからもよろしくお願いします。
>>178 名無し募集中。。。さん
はい、やっと後藤さん編にはいったのに、この内容(w
いや、悪いとは思ってるんですけどね(^^;
( ´ Д `)<別、いーけどさぁ…。
>>179 吉澤ひと休みさん
秋の夜長。
改めて言われてみると、なんだか趣がある季節だなぁ、なんて。
だからといって、ゆっくりしているとまたまた
更新が遅くなりそうなので、常に自分を急かしてはいるんですけどねー(w
( ´ Д `)<読書の秋より、食欲の秋だよ。
- 190 名前:名無し娘。 投稿日:2002年10月24日(木)15時56分57秒
- 更新されてるー♪
痛めな話は読んでいて辛いんですけど、すなふきんさんの話だと引き込まれて
抜け出せません(w
現実のよしごまも相変わらず一緒に遊んでいるようで、安心の日々です。
- 191 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月05日(火)20時20分26秒
- まってまーす
- 192 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月09日(土)01時10分20秒
- 痛くて切ないけど大好きです、この話。
運動会で違うチームなのによしごま仲良くしていたらしいですね。
やっぱりよしごまは不滅だと再確認しつつ、コソーリ更新待ち(w
- 193 名前:77 投稿日:2002年11月21日(木)12時54分19秒
更新を、いつまでも気長に待ちます。
痛い話だけれど後藤の持つ妙な雰囲気に飲み込まれます・・・
すなふきん様は文章力もありますしね。
これからも頑張ってください。
期待しています!!
- 194 名前:第17話 投稿日:2002年11月23日(土)00時33分01秒
今思えば、ひとみとの出会いは薄っぺらいものだった。
少し寝癖のついた頭を押さえて、慌てて起きあがる様は苦笑するしかなく。
どこか嘘くさく部屋に注いでくる淡い光の中で、ぎこちない愛想笑いがなぜか印象的だった。
黙っているとそれこそ、一昔前の少女マンガに出てくる美少年のような
爽やかだけれど、どこか淫靡な雰囲気を受けたのに対し、ひとみは
ごく普通の16歳の少女で、見た目のイメージは本当にイメージでしかなかった。
神経質そうだと思ったのに対し、割りかし奔放な性格で、本人もそれを
少し気にしているようだったけれど、まさかあたしがそんな自由な彼女に
密かな憧れを抱いていたなんて、ひとみは知らなかっただろう。
- 195 名前:第17話 投稿日:2002年11月23日(土)00時35分15秒
暖かい愛情の中で真っ直ぐに育てられたんだと、誰が見ても分かるような素直さ。
あたしに接してくる人は、何かしらの見返りや同情や、時には妙な羨望だったりを
前提としていたけれど、ひとみのただ純粋な優しさは春の日射しのように
何の不平等もなく、あたしにまで注がれた。
きっと、それは彼女が生まれついたときから授けられたもので、これは運命と思いたかった。
純粋で涼しい優しさに満ちたその瞳。
二度と信じないと決めた神にもう一度だけ祈る。
いや、ずっと祈っていたかった。
何かに縋りたかった。
このあたしが、日の光を見た気にでもなっていたのか。
- 196 名前:第17話 投稿日:2002年11月23日(土)00時37分03秒
「おい後藤。」
「あ、はい…。」
「今日の放課後、生徒会室。」
「……分かりました。」
首席という立場はあたしが望んだ物ではなかった。
勉強しかできないあたしが、受験で手を抜くと言うことはなくて。
入学後は普通の生徒と変わりなく、学園生活を過ごしていくつもりだったのに
休み時間は生徒会室で上級生と一緒に年内行事の説明を受けたり、山のような
印刷物を片手に忙しく駆け回ったり。
そんな周りの生徒とはちょっと異なった生活。
そして、そこから生まれた異常な事実。
思えば、あの人があたしを捨てなければ、こういうことにもならなかったし。
ここに来ることもなくて。
こんなことにも、ならなくて…。
ほんの少し、歯車が噛み合わなかっただけのこと。
ねぇ、お母さん。
これは貴女を忘れようとする、あたしへの罰ですか?
- 197 名前:第17話 投稿日:2002年11月23日(土)00時39分19秒
カチャンッ…。
鍵を開けて、出ていく担任の姿。
ノイズ混じり。ぶれる映像。薄暗い視界。
まるで深夜のテレビを眺めているようだった。
バタンと閉められるドアの音は随分と部屋に響いた。
ソファーに付着して鈍くテカるどちらともつかない体液に
うっすら混じる、柔らかい赤。
淡い淡い赤。
それは隠しようのない事実。
それはさっきまであたしの中を脈々と流れていた血。
あたしの血液。
あたしの分身…。
乱れた服装のまま、鞄から取り出した白いハンカチで
「赤」を拭いて、ゴミ箱に捨てた。
あっと言う間だったような気もするし、地獄のように長かった気もする。
抵抗したのはほんの最初だけだった。
何も失う物がないあたしが、彼に与えてやれる物などなくて、この行為は
「無」だと思ったから。
- 198 名前:第17話 投稿日:2002年11月23日(土)00時45分04秒
不思議と、憎しみや悔しさは全くと言っていいほど湧いてはこなかったけれど
いつか感じた脱力、絶望、焦燥をごちゃ混ぜにした感情にすっかり支配されてしまった。
「…フッ…フフッ。」
処女喪失の痛みを、担任に奪われるなんて。
「…アハッ…アハハハハハッ!」
部屋中に、響き渡る自分の笑い声がまるで他人のものに聞こえる。
そうだよ。
どうして気付かないの。
あたしは「いい子」にしてたから、ひとみに出会えたんだ。
- 199 名前:第17話 投稿日:2002年11月23日(土)00時46分46秒
あたしはフラつく足で、汚れていると称されだろう行為が果たされた
その場所を、押し出されるように出て下駄箱まで歩いた。
少し離れた体育館が丁度向かい側にあるそこから見える。
無機質な蛍光灯が照らす白い廊下に座り込んで、誰1人いない下駄箱から
ひとみが周りの子と本当に楽しそうに笑いながら出てくるまで、ずっと待っていた。
鈍く痛む下半身はひとみのことを考えると、なぜか気にならなくなった。
ひとみが出てくるとあたしは小さく息を吸って、駆け寄った。
さっきのまでのことが嘘みたいに、純粋に笑える自分を信じて。
- 200 名前:第17話 投稿日:2002年11月23日(土)00時51分09秒
「何?残ってたの?」
「うん、そっちは部活?」
ワザとらしい。
ずっと見てたくせに。
「てか、どうしたの?こんな時間までさ。珍しいじゃん?」
「それが、担任に呼ばれてさ。」
──────…。
今度、あの部屋に呼ばれるのはいつだろう。
頭の隅で過ぎる黒い黒いもの。
「へぇー、悪いことでもしたの?」
ひとみはさも楽しそうにあたしの顔を覗き込んで、少し意地悪そうに笑う。
あたしは上手く笑えているだろうか。
そうだね。そうかもね。
あたしはいつでも「いい子」でなきゃね…。
───────ひとみ?
あたし、どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
- 201 名前:すなふきん 投稿日:2002年11月23日(土)00時54分12秒
- とりあえずはここまで。
更新遅くなってすみません(汗
今日はちょっと眠いので、レス返信は明日にさせて頂きます。
段々と痛い展開になってきましたが、内容としてはこのまま突っ走っていくつもりです。
苦手な方には、本当申し訳ないですが…(苦笑
- 202 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月23日(土)01時50分32秒
- 更新お待ちしておりましたが・・・痛い・・・
でも読むことを止める事ができそうにありません。
musical boxを思い出します・・・
次回更新を心待ちにさせて頂きます。
- 203 名前:77 投稿日:2002年11月23日(土)16時39分19秒
- こ・・これは痛い・・
後藤さんの秘密が段々明らかになっていきますね。
更新楽しみに待っていました。
無事完結するまで見守っていようと思います!!
- 204 名前:すなふきん 投稿日:2002年11月25日(月)00時18分12秒
- >>190 名無し娘。さん
お返事遅れてすみません。
痛い目、書き手としてはちょっと癖になりそうなくらい楽しくてですねー。
ポンポンアイディアは浮かんでくるんですけど、まとめきれず終い、と。
意味ないよなぁ…。
( ´ Д `)<んあ…。
>>191 名無し読者さん
ほんと更新遅くてゴメンなさい(汗
しようとは思うんですが、ストックをチェックするたび気に入らない所が
出てきて結局消したり書いたりの繰り返しで、全然先に進まないという…。
て、言い訳でした。
多分、正月になれば暇でぼちぼち更新すると思います(w
>>192 名無し読者さん
お返事、遅れてすみません。
HPチェックしてもらってるみたいで、嬉しいです。
現実の2人、相当仲良いみたいですね。うん、良いことだ(w
( *´ Д `)<…よっすぃ
>>193 77さん
お返事、遅れてすみません。
今回はどちらかというと後藤さんの方に力を入れて書いてるので
(決して吉澤さんが手抜きと言うわけではなく(w)
そう言って頂けると嬉しいです。
これから、妙に心惹かれる後藤さんを出していけたらなぁと思ってます。
- 205 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月01日(日)19時16分58秒
- ごっちん・・・(;□;)
- 206 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月03日(火)15時40分16秒
は、はやく続きを・・・(´д`)
- 207 名前:すなふきんさんLOVE 投稿日:2002年12月05日(木)15時47分02秒
ごっちんの過去が・・・
痛すぎるっ!!よしこはこれからどうするのか!?
続きに期待しながら待ってます。
- 208 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月24日(火)12時38分27秒
続き待ってます
- 209 名前:紗耶香 投稿日:2002年12月25日(水)13時14分49秒
- 続き、
かなり期待してます。
- 210 名前:第18話 投稿日:2002年12月30日(月)15時05分24秒
- 突如公園に行こうと言い出したあたしに、部活で疲れているはずのひとみは
二つ返事でついてきてくれた。
ただ思いついたのがこの公園ってだけで、別にどこでも良かった。
誰にも邪魔されず、ひとみと二人っきりになれれば。
いつまで経っても喋り出さないあたしに
ひとみが動揺しているのは手に取るように分かった。
ひとみの傍にいれば、自分までもが浄化された気になってしまう。
あたしは汚れた身を涼やかな風に晒しながら、ひとみの隣でブランコを適当に漕いでいた。
あんなこと、どうってことない。
ほんの数十分の出来事だ。
あんなことくらいで、あたしが汚れるわけじゃない。
ひとみと紡いできた関係は変わりはしない。
どこか自分に言い聞かせていた。
- 211 名前:第18話 投稿日:2002年12月30日(月)15時07分14秒
あたしがこれ程までに、ひとみによって支えられていると本人は分かっていないだろう。
それでいい。
チラッとひとみの方を見たら、ひとみが心配そうな顔でこっちを見ていた。
目があったことが恥ずかしかったのか、ひとみは少し顔を赤くして慌てたように顔を逸らして
「もう、遅いし帰ろうよ。」
と、努めて平静を保とうとする。
あたしはそのことがヤケに嬉しくて、大きく頷いて手を取った。
- 212 名前:第18話 投稿日:2002年12月30日(月)15時09分56秒
ひとみの特別な愛情が欲しいとか独占したいとか、特別そういうことは考えていなかった。
ただ、今までみたいにひとみの傍にいたいだけだった。
あたしはこれ以上もなくひとみを愛してはいたけど、それと同じ分だけの見返りを
期待などしていなくて、しないように努めていた。
一度捨てられたあたしはできるだけ昔の傷が開かないよう
秘やかでしかこの気持ちを抱く術を知らなかった。
だから、ひとみの正直な気持ちがあたしには意外で。
大きすぎて
暖かくて
────── 怖かった
- 213 名前:第18話 投稿日:2002年12月30日(月)15時12分14秒
「真希がいないんじゃ楽しくないよ。」
それは昼休みいつものように、ベランダでパンを食べていたとき。
ひとみが見たこともない表情で拗ねたように、口にしたその言葉。
体温が急速になくなっていくような感覚。
ドクンと大きく心臓が鳴った。
大凡、直接的な感情の言葉とは言いにくいけれど、その目に冗談なんて文字は
含まれてなくて、ただあたしに対する痛いくらい純粋な
ひとみの気持ちが存在しているだけだった。
一方的なひとみの想いが。
そして、それは恐らく……。
あたしは、ひとみの真っ直ぐな視線から目を逸らした。
その奥を見ていたら、全てを見透かされそうで怖くなったから。
この期に及んで、ひとみの純粋な思いを受け止めることが出来ない。
- 214 名前:第18話 投稿日:2002年12月30日(月)15時15分04秒
「……何それ。」
やっとで言えたセリフ。
声が震えてないか、頭の中で何度も確かめた。
むせ上がってくる羞恥にも似た感情。
そして、ひとみに対する拒絶。
ほっといて
あたしのことなんか
みんな、勝手に現れて
勝手に消えてく
どうせみんな
みんな、あたしのことなんか捨てるんだ
- 215 名前:すなふきん 投稿日:2002年12月30日(月)15時38分19秒
- ほんとこんな短くてすみません(汗
近いうちにまた更新しますので。
>>202 名無し読者さん
返信遅れて申し訳ありません。
散々待たせといて、この量…。
不甲斐ないです。
更新する度に後藤さんの身に不幸が降りかかってる気がしますけど(苦笑
これからも読んでやって下さい。
>>203 77さん
返信遅れて申し訳ありません。
まだまだ完結の予定は立っておりませんが
今のところ楽しく書かせて頂いてるので、そう言って貰えると嬉しいです。
- 216 名前:すなふきん 投稿日:2002年12月30日(月)15時39分12秒
- >>205 名無し読者さん
( ´ Д `)<ハァ…いい加減この役も疲れたよ
(0;^〜^)<…………
>>206 名無し読者さん
( ´ Д `)<おせぇよ、更新
(;0^〜^)<…………
>>207 すなふきんさんLOVEさん
ど、ども。有り難う御座います(照
( ´ Д `)<そんな奴より、後藤にしときなよぉ。ね?
(;0^〜^)<あ、あたしは…?
>>208 名無し読者さん
( ´ Д `)<出番、一ヶ月待ちなんですけどぉー
(;0^〜^)<…………
>>209 紗耶香さん
( `.∀´)<チャキチャキしなさいっ!!
(;0^〜^)<…………
- 217 名前:77 投稿日:2002年12月31日(火)09時12分39秒
こ、更新来たーーーーーーーーーーーーーーーーー(○´ー`○)!!!
更新乙です!
待ってました!スナフキン殿。
後藤さんはなんだかこの時、性格がひねてしまっているようですね・・
よしこが救ってあげるのを期待しています。
次の更新待ってます。
- 218 名前:すなふきんさんLOVE 投稿日:2002年12月31日(火)19時50分27秒
更新まってました!!
マターリでいいので、頑張って更新してくださいね。
いつまでも応援しています!
- 219 名前:すなふきんさんLOVE 投稿日:2002年12月31日(火)19時51分07秒
す、すいません・・上げちまいました。
- 220 名前:第19話 投稿日:2003年01月03日(金)23時35分57秒
誰かが言った。
「後藤さんて何でもできて、世の中にはいるんだねー。完璧な人間ってのがさ。」
どうして、こんなあたしが完璧に見える?
あんなに醜い生き方をしてきたこのあたしが。
激しい風で幽霊の髪のように揺れる、柳の木。
誰もいない暗い部屋、濁った目でそれを見つめている自分。
…忘れろ。
昔のことだ。
でも。
…でも。
こんなあたしを、ひとみは受け止めてくれるの…?
ひとみといれば、そんなはずないのに自分までが幸せの中にいる気がした。
ひとみが笑いかけてくれるだけで、あたしの腐敗した記憶は浄化され
生まれたての赤ん坊に戻ることができる。
あたしはひとみの傍にずっといたかった。
もう、捨てられたくない。
ひとみへの強い執着。
自分でも知らないうちにどんどん膨張していく愛情。
だから、あたしは醜い姿を晒すわけにはいかないのだ。
「何だろ…。」
苦笑いで肩を竦めるひとみ。
きつく奥歯を噛み締めた。
空は痛いほど青くて、あたしは…。
- 221 名前:第19話 投稿日:2003年01月03日(金)23時42分25秒
──────────────────
その日は、担任から生徒会室に呼び出された日だった。
もう、何ヶ月も続いている担任との関係に、あたしは抵抗するということを諦めていた。
ただ、向こうは一度もいい顔をしないあたしにどことなく苛立った様子を見せ始めて
ここ最近行為自体が乱雑で暴力的なものになってきているように感じた。
恐怖なんてものはとっくに通り越して、不快なだけ。
無理矢理受け入れた腰の辺りが変に重くて、イライラする。
ひとみより早く寮に着いて部屋に入った瞬間あたしはブレザーを反射的に脱ぎ捨て
ひとみが戻ってくる時間まで、今まで堪えてきたものに我慢できず備え付けの
ユニットバスのトイレでずっと吐いていた。
- 222 名前:第19話 投稿日:2003年01月03日(金)23時43分06秒
「告白された。」
夜、ひとみは意を決したようにあたしにそう言ったけど、あゆみが手紙を渡すのを
チラッと盗み見た時から何となくそうだろうなぁ、て思ってた。
なのにわざわざ知らない振りをしたのはどうしてだろう。
あたしは相変わらず、慣れた作り笑いを浮かべるしかできない。
泣きそうになってるひとみを突き放すことで、やっとあたしの心はバランスを保っていた。
なんて最低の人間。
ひとみはいつだって、あたしの傍にいてくれて、優しく手をとってくれたのに。
- 223 名前:第19話 投稿日:2003年01月03日(金)23時44分58秒
けど、我慢できなかった。
あたしの救いはひとみだけ。
醜い記憶も、汚れた体も、ひとみがいてくれるからあたしはやっとで生きていける。
あたしだけの。
あたしだけのひとみが、誰かの手によって汚されるなんて嫉妬で狂いそう。
そして、そんな自分が、こんな汚れたあたしがひとみを汚してしまうようで、怖い。
女子校とは言っても、表立った噂はそうそう聞いたこともなくて、だから
あたしと同じ「女」から手紙をもらったと聞いて余計に驚いた。
それ以上に、背中が泡立つほどの怒りを覚えた。
軽はずみに近付くなんて。
許せない。
寝たふりを決め込んだ後、ひとみはあたしの態度に納得がいかなかったみたいで
乱暴に下のベッドに潜り込んだようだ。
- 224 名前:第19話 投稿日:2003年01月03日(金)23時47分45秒
───────── ひとみは誰にも渡さない
次の日の朝、あたしはひとみが起きるはずの時間よりも1時間早く起きて
ひとみの鞄の中から水色の封筒の中身を取り出して勝手に見せてもらった。
手紙の字は思っていたよりも綺麗で、手紙の最後に『矢口真里』と記されている。
そう珍しいわけでもなく、どこかで聞いたことあるような名前。
ひとみが起きないようにそっとバッグの中にそれを戻して、冬の澄んだ朝に
似つかわしくない酷く濁った気持ちで部屋を出た。
クラスの子に学年とクラスを聞き出す。
「3年1組…。」
この学校では1組が特進クラスということになっている。
なんだ…聞き覚えがあると思ったら生徒会の人間か。
役員の仕事を手伝わされたときに何度か見かけた、派手で小さいギャルだ。
見た目の割に頭のキレがよくて、会計だったけどポジション的に
もったいないなぁ、なんて思ったんだっけ。
「ふーん…。」
あたしは薄く笑って、放課後彼女を呼びだした。
- 225 名前:第19話 投稿日:2003年01月03日(金)23時48分44秒
- 今日の更新はここまで。
- 226 名前:第19話 投稿日:2003年01月04日(土)00時00分23秒
- >>217 77さん
はい、ここの後藤さんはお年頃でなかなか扱いづらいといいますか…(w
( ´ Д `)<んあ?
>>218 すなふきんさんLOVEさん
お正月休み、寝て過ごすだけでは芸がないと更新などしてみました。
( ´ Д `)<嘘つけ。結構焦ってるくせに
(0^〜^)<(コクコク)
- 227 名前:すなふきん 投稿日:2003年01月04日(土)00時16分39秒
- 明けましておめでとう御座います。
まだまだ完結の目途も立ってない上に更新も怠惰気味ですけど、
今年も頑張っていこうと思ってますので宜しくお願いします。
- 228 名前:すなふきんさんLOVE 投稿日:2003年01月04日(土)14時54分55秒
明けましてオメデトウ御座います。
おおぅ!!
後藤さん、怖すぎる・・。
矢口逃げろ!!
- 229 名前:名無し読者202 投稿日:2003年01月04日(土)18時10分04秒
- すなふきん様、明けましておめでとうございます!
年末年始に更新頂いて嬉しいです!
今年も後藤さんを心配し、心痛めながら見守らせて下さい。
「なんとかしたれよ、よしこ」ってw
次回更新をお待ちしております!
- 230 名前:名無し娘。 投稿日:2003年01月07日(火)21時47分14秒
- 開けましておめでとうございます。
新年早々ダークな展開、それもまた好きなよしごまヲタ(痛め)でございます(w
この作品、よしごまな話なのでしょうが、後藤さんのキャラが強過ぎて、話が進む
ごとに吉澤嬢の印象が薄(ry
( ´ Д `)<てゆーか後藤が主役だし
(; ^〜^)<………ゴチーン…
こんなイメージでしょうか(ワラ
- 231 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月07日(火)23時35分27秒
- 痛すぎるが故逆に目が離せません。
すなふきんさんのよしごま、本当に人を惹き付けますね〜
- 232 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月29日(水)12時10分02秒
- 続き待ってるよ。 保全
- 233 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月12日(水)22時48分22秒
- まだっすか?
待ってるよ〜
- 234 名前:すなふきん@怠惰作者 投稿日:2003年02月13日(木)23時07分56秒
- 御免なさい、もうちょっと待ってください(汗
ストックはあるんですがまだ手直しが済んでません。
放置するつもりは全くないので、それだけは取り敢えず。
- 235 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月16日(日)22時44分41秒
- 放置はないんですね?良かったぁ〜〜〜
いつまでも待ちますよ。
- 236 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月17日(月)15時09分57秒
- 楽しみに待ってます
気長に焦らず頑張って下さいね
- 237 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月24日(月)10時59分03秒
- きっと作者さんも事情があるんですよ。
私達は好意で楽しませてもらってるわけですから。
この作品大好きなんです。
だから楽しみに待ってます。
作者さんのペースで頑張って下さいね
- 238 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月25日(火)01時14分42秒
- >237
お願いですから、ageないで下さい。
更新されたかと期待しちゃいました。
- 239 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月03日(月)17時16分28秒
- >>238
ごめんなさい
ここのシステムを知らなくて
- 240 名前:20話 投稿日:2003年03月12日(水)00時22分16秒
あ、…え?…吉澤、さん…?
ひとみなら屋上で待ってますよ。矢口先輩連れてきてとか言って。
そっか…。
なんか、嬉しそうにしてました。
う、うん。…ねぇ、後藤さんだよね?前、役員の仕事で会ったの覚えてる?
覚えてますよ。会計されてましたよね?
あ、よく覚えてるねっ。さすが学年トップ。
矢口さん目立ってたから。
あははっ、あのときより大分髪の色落ちたっしょ?
ははっ。あ、もうすぐですよ。
屋上?あれ…?ここってさぁ使用禁止じゃなかったっけ…?
ひとみが待ってますよ。
- 241 名前:20話 投稿日:2003年03月12日(水)00時26分58秒
首を傾げながら、先輩は殆ど壊れかけの錆び付いたドアノブを回す。
ドアの白いペンキは半分ほどが剥がれ落ちていて、暗くて細い階段は独特の湿気臭さが立ちこめていた。
手が悴むほどの寒さはここに来て余計に増して感じる。
ドアはギギッと嫌な音を立てて、向こう側へ開く。
さっきからポツポツ降り始めた小雨。
予想していたよりも強い風が吹き込んできた。
先輩は、スカートの裾と髪の毛の乱れを気にしながら外へ出る。
随分と寒そうだ。
少しだけ険しい顔でキョロキョロひとみの姿を探しているようだけれど、当然ここにいるはずもなく。
- 242 名前:20話 投稿日:2003年03月12日(水)00時30分26秒
「…えっと、吉澤さんどこ?」
心細いとでもいうような表情。
あたしは心の中でせせら笑った。
「ひとみならいませんよ」
「…え?」
「ひとみは来ませんって」
だって、昼休みここに来てボロボロの鍵を壊したのはあたしだもん。
古くさく錆びてしまっていたそれは力一杯の体当たりにあっさり開いたんだ。
それにしてもこんなに簡単に騙されるなんて。
面白くないなぁ。
「後藤さん?」
怪訝そうな顔をして聞き返してくる先輩に、あたしはゆっくりと近づいて明るい色の髪を優しく撫でた。
思っていたよりも指通りの良い髪に目線をやりながら、あたしは
「ひとみ、女となんかできませんよ?」
何の抵抗もなく言い放つ。
- 243 名前:20話 投稿日:2003年03月12日(水)00時36分47秒
あたしの突然の行動に、先輩は小さい体を強張らせて驚いたように目を見開いた。
そんなことに構うつもりはない。
「見た目あんなだけど好きな男いるみたいだし」
「…………。」
「せっかく、お手紙出したのにねぇ?」
クスクス笑うあたしに小柄な彼女はキッと顔を上げ、涙が溢れそうな黒目がちの瞳で睨んでくる。
あたしは笑うのを止めて
「許さないから」
これは当然の罰。
ひとみは注がれる暖かな愛を受けて、ただ美しく花を咲かせてくれればいい。
今まで一度も綺麗な花を見たことのないあたしが、綺麗なつぼみを守るのは予め決められていたのかもしれない。
柵の中に入ってきたものは排除しなければならないのだ。
喜んでその役回りを受けようと思う。
- 244 名前:20話 投稿日:2003年03月12日(水)00時40分38秒
あたしは先輩の両手首を固く掴んで、キスをした。
細い手首。
捻っただけで折れそうだな、なんて思った。
優しい口付けなんて嘘臭くてこの場に似つかわしくない。
冷たい空気が全身を撫でていく。
強引で痛いくらいの口付け。
自慢気だったその金色の髪に手を埋めて後頭部を引き寄せる。
彼女は必死の抵抗をしているようだったけど、まるで話にならなかった。
きつく閉じられた瞼。
触れた瞬間ビクッと揺れた先輩の唇にあたしの歯が当たって切れた。
「っ…」
止めない。
口の中にじんわりと広がる鉄の味。
舐めとるように味わった。
興奮なんてこれっぽっちも。
予想に反して血の味に欲情なんてしない。
なんの役にも立たないと思ってた。
自分なんか、ただここにいるだけで。
そのあたしが守ってる。
ひとみを。
「んぅ…、んっ…」
意外にも、彼女が藻掻いたのはほんの一瞬だった。
あたしが舌を滑り込ませようとすると、すんなり唇を開いて嫌らしく舌を絡ませてくる。
易々とそんなことをする彼女に怒りを覚えた。
そして、やはりあたしの判断は正しかったのだ、とも。
- 245 名前:20話 投稿日:2003年03月12日(水)00時45分59秒
どこか獣じみたキスの間に感じた頬の冷たさは他でもない、彼女が流した涙だった。
絡み合うようにして、体のそこら中をまさぐる。
外気に晒された屋上だというのに、躊躇いはなかった。
気づけば2人とも半裸の状態でチェックの短いスカートは霰もなく下着が見えるくらい捲り上がっている。
紺のブレザーと斜めにストライプ模様が入ったネクタイは足下にぐったりと脱ぎ落とされていた。
先輩のはだけたシャツから手を入れて押し倒す。
手足に触れたコンクリートは酷く冷たかった。
「っん、ヤダッ!!」
彼女は我に返ったように暴れたけど、素早く馬乗りになって体を押さえた。
改めて体格の差を感じる。
「ひとみはあんたのことなんか見てないよ」
「離してっ!離してよっ!!」
顔を真っ赤にして泣き叫ぶように。
あたしはそんな彼女を見て、益々押さえていた手に力を込める。
きっと取り返しのつかないことをしているんだろう。
だから?
それだけだ。
涙を流し嗚咽を漏らしながら、こんな奴に抱かれる気持ちなんてこれっぽっちも分からない。
─────いい気味
- 246 名前:20話 投稿日:2003年03月12日(水)00時49分06秒
小さな雨音も次第に大きくなって、髪から雨水が滴る。
自分のすぐ下で喘ぐ彼女を、あたしはただ他人事のように見ていた。
捲れたスカートを直そうともそうともしないで、先輩は行為の後雨に打たれながら泣いていた。
ただ、その上気した顔には淫らな余韻がまだまだ残っている。
同情なんて湧くはずもなく。
制裁
横たわる先輩を見つめて、言い捨てた。
「もう、ひとみには近づかないで下さい」
「…………。」
反応はない。
「今度近づいたら、殺してやるから」
あたしはすぐさま立ち上がって、胸元まで開いていたシャツのボタンを閉める。
モノクロの視界に打ちつける雨。
あたしは、どうにもカラーに戻らない、その沈んだ世界を虚ろに眺めて屋上を後にした。
- 247 名前:すなふきん 投稿日:2003年03月12日(水)01時02分04秒
- 今知ったんですけど、二ヶ月ぶりなんですね(苦笑
すみません、お待たせしました。
そして、レスして下さった皆さん、遅れての返事も重ねてお詫びします。
>>228 すなふきんさんLOVEさん
逃げ切れなかった矢口さんはあっけなく…
>>229 名無し読者202さん
吉澤さんはどうやら自分のことで手一杯のようです(w
>>230 名無し娘。さん
あたしの心理が随分反映されてるようで、後藤さんがズイズイと前へ出てきます。
普通の吉澤さんはどうしても狂人後藤に負けちゃいますね(w
>>231 名無し読者さん
有り難う御座います。
皆さんが離れていかないうちにチャキチャキ更新しなければ…
>>232-239
お待たせしました。
短いですけど、どうかこれで。
- 248 名前:すなふきん 投稿日:2003年03月12日(水)01時03分26秒
- 取り敢えずAAは卒業します
- 249 名前:すなふきん 投稿日:2003年03月12日(水)01時04分31秒
- ( ´ Д `)(0^〜^)
- 250 名前:タモ 投稿日:2003年03月12日(水)07時33分31秒
- 更新お疲れ様でした!!
やはり予想通り痛い展開ですね。
後藤が吉澤を狂うくらい愛しているのはわかります。
が、吉澤さんの方はどうなのでしょうか?
気になります。頑張ってください!
- 251 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月12日(水)13時01分17秒
- 川o・-・)ノ< 復活おめでとうございます。待ってましたよ。
- 252 名前:ポンコツろぼっと 投稿日:2003年03月12日(水)14時50分33秒
- 更新お疲れ様です。復活を心待ちにROMってましたよー(w
なんだか、悲しいくらい後藤さんが吉澤さんを愛してるのがなんか痛いですね(泣
この後の展開、凄く気になります。 頑張って下さい。マターリROMってるんで(w
- 253 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月23日(日)17時38分41秒
- ホゼン(O^〜^(´Д`*)ホゼン
- 254 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月14日(月)03時44分10秒
- hozen
- 255 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月03日(土)09時30分03秒
- 保全
- 256 名前:21話 投稿日:2003年05月05日(月)23時56分11秒
あゆみと出会したのは、その後すぐのこと。
覚醒しないままの頭で大雨の中を帰っていたら、音楽棟のピロティーで
あたしを呼んでいるあゆみを見つけた。
あぁ、あいつも……
芽を出したばかりの妙な感情が、あたしの理性を掻き消してしまう。
全てを知ってるかのようなあゆみの目。
前々から気に入らなかった。
あたしの過去を見透かそうとしてる。
あたしの汚い記憶を探って、笑おうとしてる。
どうしてみんな、あたしの大切なものばっかり奪っていくんだろう…
あたしはただ、ひとみのことが好きなだけなのに。
どうして、みんな邪魔ばかりするんだ…。
こんな時ばっかり、余計なヤツらが群がってくる。
- 257 名前:21話 投稿日:2003年05月05日(月)23時58分30秒
延々と降り続ける雨水がビニール傘を鬱陶しいくらいにうるさく打つ。
モヤモヤとした気持ちの悪い何かが、胃からこみ上げてきそう。
ジッと見ていたあゆみが少し強張ったような表情を見せてたことで
何とか我に返ることが出来た。
───────クソッ
- 258 名前:21話 投稿日:2003年05月06日(火)00時00分49秒
おかしい。
前とは比べ物にならないくらい、人目が気になってる。
あたしは母と暮らしていた頃の自分と、今が重なって立ち眩みを覚えた。
ずっと良い子を演じてきた小さな自分。
落書きだらけのノートを必死で隠したあの頃のあたし。
何でも出来る賢い子でなければ、母を守れないと本気で思っていた。
あたしは未だにあの頃の思い出を引きずってる…。
いもしない母の幻想にずっと踊らされているんだ。
例えようのない気分の悪さを覚えて、あたしはすぐにその場を去った。
- 259 名前:21話 投稿日:2003年05月06日(火)00時05分13秒
部屋に戻ると、ひとみはまだ部活から戻ってきていなかった。
正直、ホッとする。
ひとみの微妙な態度の変化から、2人の間には薄い膜のような物が張っているようで
どこか余所余所しさがあった。
それが昨日のひとみとのやりとりで決定的に。
ハッキリとすれ違いが生じてしまった。
あたしは濡れて冷えた体を暖める為バスルームに向かった。
シャワーを浴びながらぼんやりしていたせいか、ひとみが帰ってきたことに全く気付かなかった。
一瞬ドキリとしたけれど、あたしは頭の中に渦巻く不気味なもう一人のあたしに
思考を飲み込まれないよう、必死で平常を保った。
教科書を開く手が震える。
バクバクと心臓が異常な早さで脈打つ。
- 260 名前:21話 投稿日:2003年05月06日(火)00時09分40秒
「あ、あのさ。」
すぐ後ろのベッドに腰掛けていたひとみからの声は、薄い膜を通してのように聞こえて
あたしの思考を止めるまでにはならなかった。
もういい加減、忘れろ。
たった一人、生きてきた。
『おい…声、出せよ……。』
─────ズキンッ
他の誰よりも頑張ってきた。
『おい…声出せって……。』
─────ズキンッ
今までだって、これからだって、他でもない自分で掴んでいくんだ。
『感じてんだろっ?え?』
─────ズキンッ────── ズキンッ……
あたしは、あたしは人並み以上の未来を掴めるはずなのにっ…!
どうして……こんなに頑張ってるのに…
誰も助けてくれない…。
誰も、誰も!!!
わああああああああーーーーー!!!!!!!!!!!
- 261 名前:21話 投稿日:2003年05月06日(火)00時13分01秒
ひとみを押し倒すほどの勢いで抱きついていた。
あのまま一人で考え込んでいたら、とてつもなく不気味なものに食いちぎられてしまう気がして。
抱きしめたひとみの体温は、想像以上に心地良いものだった。
ひとみ───── ひとみ────……
大好きなの、ほんとにそれだけ。
だから、あたしのこと忘れないで……。
忘れないでよ…。
- 262 名前:21話 投稿日:2003年05月06日(火)00時14分48秒
きっと、あたしはこういう運命なんだ。
だって、もうそう思うしかないじゃん。
こんな汚れた体でさ、あんなに真っ直ぐなひとみを愛するなんて
どう考えたって許されないことなんだよ。
きっとあたしには決められた生き方がある。
あたしにあった道が。
虫のように地の底でも這って、生きればいい。
その日の明け方前に寮を出た。
身の回りの荷物だけを持って。
- 263 名前:21話 投稿日:2003年05月06日(火)00時16分42秒
もう耐えられない。
ひとみを想いながら、救われた気でいた。
けれど、それ以上に自分の汚さに気付かされていた。
ひとみと同じ時間を過ごしたからと言って、あたしの過去が消えるはずないのに。
きっと夢を見ていたんだ。
誰もいない歩道橋から見た美しい日の出は、ただあたしを苛つかせるばかりだった。
- 264 名前:すなふきん 投稿日:2003年05月06日(火)00時39分35秒
- >>250 タモさん
この後暫く後藤さん視点が続くので、吉澤さん視点は今のところストックなしです。
なので、吉澤さんの気持ち、作者も予想不可能です
>>251 名無し読者さん
( ´ Д `)ノ< ありがとぉ
>>252 ポンコツろぼっとさん
相変わらずの更新ぶり、申し訳ないです。
変質的な後藤さんは書いていて楽しいですよ(w
>>253-255
保全、有り難う御座います
- 265 名前:すなふきん 投稿日:2003年05月06日(火)00時43分39秒
- 取り敢えず、後藤学園編はこれで終了。
もう少し後藤さん視点が続き、吉澤さんはあまり姿を現しませんが、その辺はどうか。
次回はあの人も出てきますので。
あぁ、ストック直さなきゃ…
- 266 名前:すなふきん 投稿日:2003年05月06日(火)00時45分09秒
- 流し
- 267 名前:タモ 投稿日:2003年05月08日(木)18時36分16秒
- 更新お疲れ様でした。
あの人って誰ですか…?気になります(w次回も期待です。
- 268 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月11日(日)19時48分53秒
- 更新キターッ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
seek内で一番注目しております。
ここの後藤さんキャラが大好きなもので。。。
また、マターリと更新をお待ちしております。
- 269 名前:すなふきん 投稿日:2003年05月12日(月)00時40分13秒
- えっと、さっきちょっと読み返してみたんですけど、バカみたいな間違いが
あちこちにあって自分でもビックリしました。
12話なんかはアホ丸出しです。
冷蔵庫はあるんだってば!と。
投稿する前にもうちょっとチェックしておけばよかった、なんて今更後悔してます。
視点が変わると混乱するみたいで、真希が学校を出る時期など微妙にずれてますけど
その辺は目を瞑ってくださると有り難いです。
話自体には影響しませんので。
レスは次回更新時にまとめて書かせて頂きます。
タモさん、名無し読者さん有り難う御座います。
- 270 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月26日(月)20時09分18秒
- 間違いなんて誰にでもあります。
更新楽しみに待ってますね〜
- 271 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月12日(木)19時06分04秒
- 期待して待ってるでー。
- 272 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月01日(火)01時59分49秒
- 現実世界も妄想世界もよしごま不足保全。。
- 273 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月04日(金)17時54分52秒
- すなふきん様、いつまでも待っておりますよー(w
- 274 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月18日(金)18時56分07秒
- 待ってます。保全
- 275 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月03日(日)14時54分53秒
- この話大好きです。
待ってまつ
- 276 名前:22話 投稿日:2003年08月04日(月)19時51分05秒
とにかくその頃のあたしには、一人で生活していけるだけの金が必要だったし、
何かしていないと色々と余計なことを考えそうで怖かった。
けれど、どうして良いのかも分からず、たまに声を掛けてきた中年のオジさんと
ちょっと前に流行った援交のようなことをしては、いくらか手に入れ適当な安いホテルに泊まった。
心身ともに疲れ、その日暮らしの生活を続けて一ヶ月近くになろうとしていた。
「ちょっと、君カワイイねぇ?」
トントンと肩を叩かれて振り返ると、
パッと見30前半くらいで少しくたびれたスーツを着た男の人が立っていた。
正直「またか…」とウンザリした。
その日泊まっていたホテルを夕日が沈む頃に出たのは、この前声を掛けられて知り合った
若いサラリーマンが、1時間自分の相手をしてくれれば小遣いをくれると言うので、待ち合わせ場所に出向くためだった。
「予定、あるから。」
もうホテルを出てこれで2人目。
ネクタイをしていないのが気になったが、面倒で無視して歩き出すと強く肩を掴まれた。
「ねぇ君、お金欲しくない?」
- 277 名前:22話 投稿日:2003年08月04日(月)19時52分28秒
「ふーん…。」
大きな目が光って、睨まれたような気がした。
その部屋は驚くほど簡素で、事務用のグレーの机が一つと革張りのソファーが2つ。
ソファーの間にはガラス板の小さなテーブルが置かれている。
六帖程度の広さの部屋は、無機質なグレーっぽいようなクリームの色調。
来るまでに見てきた光景とあまりに違っていて、わざとなのかとも思った。
- 278 名前:22話 投稿日:2003年08月04日(月)19時55分36秒
半ば強引に連れてこられたのは、風俗店のような怪しい店ばかりが並ぶところ。
日も暮れかかったそこは、どこか下品なネオンが眩しいくらいに並んで輝いていた。
その中に違和感なく陳列された、大きくもない箱形の建物の入り口一階は
建物の下まで開かれていて、何個もの店の看板が派手な色と共に並んでいた。
奥の方にはこぢんまりとしたエレベーターと、暗い階段が見える。
怪訝な顔をして入り口近くに突っ立ていたら
「なぁーに、最初は戸惑うもんだよ。慣れれば簡単な仕事さ。」
ニコニコしているのか、ニヤニヤしているのか分からない。
やんわり肩を押されて、狭いエレベーターに入る。
「いやー、実は最近2人辞めちゃってさー、店長さんも困ってたんだよ。」
「はぁ…。」
「君みたいな美人だったら、あっと言う間に稼げるようになるさ。」
チーンッと三階で軽快な音が鳴ると、「ここだよ」と言うその男と共にエレベーターを降りた。
- 279 名前:22話 投稿日:2003年08月04日(月)20時20分30秒
視界は薄暗いそこに引き込まれる。
性の薫りがそこかしこに充満していた。
入り口にいた黒の制服を着た受付の人に、2人で通されたのは一番奥の部屋。
行く途中には派手な色の内装に、小部屋が数個並んでいた。
まだこんな時間だというのに部屋のあちこちから大袈裟な喘ぎ声。
全身を撫でるようにゾッと鳥肌がたった。
自分だって同じ様なことをしてきたくせに。
一瞬ここに来たことを後悔したけれど、次の瞬間には
小さく吐き出した溜め息と共にどうでもよくなっていた。
ひとみのことはなるべく考えないようにした。
どうしても会いに行きたくなるから。
きっとあたしも2,3日後、いや明日には同じようなことをしてるに違いない。
最低だと頭では分かっていても、溺れていく身体を鬱陶しく思いながら。
- 280 名前:22話 投稿日:2003年08月04日(月)20時24分17秒
「ここに店長いるから。まぁ、面接みたいなもんだよ。」
男は相変わらずこの場には相応しくない笑みを浮かべて、2回軽くノックした。
はい、という返事は女の声。
(…女の人?)
何だか余計に怖い気がしたが、あれこれ考える時間は与えて貰えなかった。
「連れてきましたよー。」
男の後に続いて中にはいると、中で事務机のパソコンから顔を上げた
セミロングのその女性は思ったよりずっと若かった。
釣り気味の大きな目。
いかにも気が強そうだ。
「その子?」
「えぇ、可愛いでしょ。」
ジッとこっちを見るその人と目があった。
あたしは反射的に目を逸らす。
「…えーっと、名前は?」
「後藤真希ちゃん、だよね?」
ヘラヘラ笑う男は馴れ馴れしくポンポンとあたしの肩を叩く。
一瞬嫌そうな顔をしたら、小難しい顔をした女性がフッと鼻で笑った。
「あんたはもう帰っていいよ。ご苦労様。」
彼女は事務机から一万円札を何枚も出してそれを片手で男に手渡した。
男はニヤッと笑って「毎度ありー」と巫山戯た声を出しながら、
それをパッと受け取ってヒョコヒョコとこの部屋を出ていこうとする。
- 281 名前:22話 投稿日:2003年08月04日(月)20時25分31秒
横目でそれを眺めていたら、張り付いたような笑顔で
「頑張ってね」
通りざまポンと肩を叩かれ、どこか軽蔑したような眼差しでそう言われた。
後ろでガチャッとドアが閉まる。
まるで冷たい牢屋の中に閉じこめられたみたいだ。
- 282 名前:22話 投稿日:2003年08月04日(月)20時32分23秒
あたしは事務机の斜め前に立ったまま。
壁に掛けられた時計から秒針の音と、カチャカチャとキーボードを叩く音。
この部屋の空気。
居心地が悪いと思った。
そのとき、その人は手を休め、あたしの方を見る。
「あんた、どーしてこんな所、ついてきたの」
「…?」
「知ってるんでしょ?ここがどーいうとこか」
鋭い声。
部屋に静かに響いた。
「あぁ、はい…」
「別に説教するつもりはないけどね…
中途半端にされてもこっちも仕事だからさ」
「…………」
「そこら辺のバイトより稼げるわよ。
でもね、すごいきついわよ。体は勿論、…こっちもね」
その人は親指を立てた右手でトントンと胸の上あたりを指した。
時計の針の音がどんどん大きくなっているような気がする。
「後悔、しない?」
「……はい」
「そう。自己紹介まだだったね。私、保田圭」
その人はきつそうな目を緩めて、下手くそに少しだけ笑った。
どんなことにも耐えてきた。
大丈夫、これぐらい平気だ。
- 283 名前:すなふきん 投稿日:2003年08月04日(月)20時52分40秒
>>267 タモさん
お返事遅れて申し訳ありません
この人でしたw
>>268 名無し読者さん
お返事遅れて申し訳ありません。
有り難う御座います。
後藤至上主義なもんでw
>>270-275
有り難う御座います。
夏休み中はなるべく多く更新するつもりですが…(汗
- 284 名前:すなふきん 投稿日:2003年08月04日(月)20時53分59秒
- 流し
- 285 名前:すなふきん 投稿日:2003年08月04日(月)20時54分29秒
- 流し
- 286 名前:すなふきん 投稿日:2003年08月04日(月)21時00分11秒
- 流し
- 287 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月04日(月)23時25分11秒
- 旅から帰ってきたんだね!すなふきんs!
- 288 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月05日(火)20時45分56秒
- おぉお!!!(喜)
お帰りなさいませ。マジで待ってました。
ついにあの人も登場しましたか…とゆーかやっすーはまりすぎ(w
更新静かにお待ちしてますよ。焦らずすなふきんさんのペースで頑張って下さいね
- 289 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月07日(木)03時44分35秒
- キタ━━━━━(´Д`(○≡(・∀・)≡○)´Д`)━━━━━!!!!
待ってましたよすなふきん様〜〜〜!
嬉しいっす。無理せずマターリがんがって下さい。
- 290 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月03日(水)22時25分56秒
- 保全
- 291 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/27(土) 22:04
- 保全
- 292 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/12(日) 14:51
- 痛いけど、この話すごい好きです。
頑張って下さい。
- 293 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/03(月) 04:26
- 頑張って!!!
- 294 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/11(火) 02:39
- 保全
- 295 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/15(土) 02:12
- 待ってるよ~
- 296 名前:みかん 投稿日:2003/11/23(日) 03:50
- 早く帰って来て!!
何時までも待ってるから!!
- 297 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/18(木) 22:48
- 保全
- 298 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/01(木) 14:30
-
明けましておめでとうございます!
ずっと待ってますよ。楽しみに。
- 299 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/25(日) 20:44
- まだかなまだかな〜♪
( ´ Д `)< すなふきんさん、待ってるよっ!
- 300 名前:dusk 投稿日:2004/02/10(火) 20:23
- 一気に読ませて頂いた者です。
すごく面白いですね!
私も待っております。
- 301 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 23:44
- 楽しみに待ってます。
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