行方知れずの恋

1 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月18日(木)22時54分36秒
以前違う板で書いていた者です。
相変わらずの駄文ですが、よろしくお願いします。

カップリングは「よしごま」で、今回は後藤真希の一人称形式を主体に書いていこうと思います。

また、感想や指摘をしてもらえると光栄です。
2 名前:残り火 投稿日:2002年07月18日(木)22時56分53秒
「ねぇ…どうして梨華ちゃんと別れたの?」

2杯目のコーヒーが運ばれて来たことにより途切れた会話の隙を狙って、アタシは核心をついた。

だいたい仕事が終わった後のこんな深夜のファミレスの隅で、さっきからくだらない会話で繋ぎ止めていたのはこの言葉が言い出せなかったからだった。

アタシの言葉によっすぃ〜が一瞬ピクリと反応したのが分かる。

「……いろいろだよ」

よっすぃ〜はアタシの方を見ずに手元のコーヒーカップの中でミルクが螺旋を描きながらコーヒーに溶けこんでいくのをジッと見つめながら呟いた。

「いろいろ…か」
「そう…いろいろ」
3 名前:残り火 投稿日:2002年07月18日(木)22時58分54秒

『いろいろ』
それは話すのが面倒だからとか、話題を変えたいからとかそんなんじゃなくて、他人にはうまく伝えられないから『いろいろ』って言葉になったんだろう。

そう、その『いろいろ』を理解できるのは、恋人同士だけ……よっすぃ〜と梨華ちゃんだけ。アタシには決して踏み込むことのできない世界。

「ごっちん…そろそろ帰ろう」

そんな取り留めの無いことを考えていたアタシに、よっすぃ〜はそう言うと伝票を手にレジに向かった。アタシも仕方なくその後ろを追う。

店の分厚いドアを開け外に出ると、昼間の湿度をそのまま残した密度の濃い空気が冷房で冷えた体にネットリとまとわりつく。
今年の夏は猛暑だと毎日のようにテレビが言っている。今夜も例外無く熱帯夜だ。
4 名前:残り火 投稿日:2002年07月18日(木)23時00分10秒

そんな気だるい夜道をアタシ達は無言で歩いていた。
よっすぃ〜怒っちゃったかな?
そーだよね、関係の無いアタシが『どうして別れたの?』なんていきなり聞いたら怒るのも無理ない。
……アタシの中ではメチャクチャ関係あるんだけどね。

「ごめんね」

アタシはそっとよっすぃ〜の顔を見上げながら謝った。けど暗闇のせいでその表情は全然わからない。

「ん?なにが?」
「さっき…梨華ちゃんとのこと…」
「あぁ、気にしなくていいよ。……もう終わったことだし」

最後のフレーズがいつもより低いトーンになっていたのは、きっとよっすぃ〜自身も気付いてない。
5 名前:残り火 投稿日:2002年07月18日(木)23時01分41秒

「大丈夫だよ。ちゃんとお互い納得して別れたから…今までどおり普通に話せると思う」
「えっ?」

突拍子も無いことを言われて思わず聞き返してしまった。

「だって、ごっちん。それを心配してくれたんでしょ?」
「う、うん。そう。そっか…それなら……安心した」

アタシはシドロモドロになりながらなんとか会話を合わせた。
そっかー、よっすぃ〜はそうふに取ってたのかぁ。
ごめんね。アタシ、貴方が思ってるほど優しい友達じゃない…

こんなアタシに想いを告げる資格はないかな?
――「好き」っていう想いを

朝から何度も頭の中で反芻してきた言葉の真意は、よっすぃ〜には伝わらなかったみたい。
ホッとする気持と残念な気持が50:50の帰り道――
6 名前:残り火 投稿日:2002年07月18日(木)23時02分49秒
  *
7 名前:残り火 投稿日:2002年07月18日(木)23時06分08秒

家に帰ると部屋の灯かりもつけずにアタシはベッドに横になったが、なかなか寝付けないでいた。
歌手は喉が命ということで、熱帯夜でもクーラはつけずに扇風機で我慢している。
しかし寝付けない原因は暑さだけではなく、よっすぃ〜のことが頭から離れなかったからだった。

よっすぃ〜から『梨華ちゃんと別れた』って聞いた時、二人には悪いけどそれを喜ぶアタシがいた。

だけど……アタシがよっすぃ〜の彼女になれる可能性はあるの?

8 名前:残り火 投稿日:2002年07月18日(木)23時06分55秒

自分の持っていないものを持っている、正反対の梨華ちゃんをよっすぃ〜は好きになった。
それなら、自分と似ているアタシを好きになる確率は低くない?

よっすぃ〜が軽い気持で梨華ちゃんと付き合ってたなんてあるわけない。
それなら、よっすぃ〜が当分恋愛しないって思うのもあたりまえじゃない?

しかも私達3人は同じモーニング娘。嫌でも毎日顔を合わす。
そんな状況で、梨華ちゃんと別れたから『はい告白します』なんてできるわけ無い。

そもそも何で二人は別れたんだろう?
どっちから別れ話を切り出したんだろう?
どっちの方が……傷付いたんだろう?

頭の中でネガティブな自問自答がグルグル、グルグル……出口を見つけられずに渦巻いていく。

1年前のことハッキリ憶えてる

1年前、今日と同じ深夜のファミレスで……




9 名前:残り火 投稿日:2002年07月18日(木)23時08分22秒

「ごっちん、私ね梨華ちゃんに告白されちゃった」
「えっ!?…う、そ」

よっすぃ〜の言葉に目の前が真っ暗になる。

「……つきあう…の?」

手元が震えてカップがカタカタ鳴らないように両手で抑えながら訊いた。
声を出すのが精一杯で、目を見ることはできない。

「うん。ほら梨華ちゃんってさ…うちらと比べたら、頼りないっていうか危なっかしいっていうかさ……守ってあげたいんだ」

照れ隠しのように笑いながら、それでも真剣な口調で言う貴方。
アタシの中の『片想い』は音を立てて崩れていく

梨華ちゃん……おめでとう。
少しの勇気で梨華ちゃんは見事によっすぃ〜を振り向かせたんだね。
少しの勇気を出せなかったアタシは―――完敗だね。

あの日

梨華ちゃんにとっては最高の
アタシにとっては最悪の

一日だった



10 名前:残り火 投稿日:2002年07月18日(木)23時09分22秒

それから1年、アタシだって必死に忘れようとした。

仕事に打ち込んでみたり
違う恋を探してみたり
趣味を見つけようとしてみたり

それで、ようやく最近立ち直ったのに……


『梨華ちゃんと…別れちゃったよ』


その言葉がアタシの心の片隅にあった『片想い』の残り火に火を点けた――
11 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月18日(木)23時14分24秒
初更新はここまでです。

なんか冒頭から、いしよしファンの方々を敵にまわしたような…(^^;
決していしよしが嫌いな訳じゃないです!(w

12 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月19日(金)07時17分12秒
応援します!何をってごっつぁんの恋を(w
何で後藤の一人称って切ないんだろう……でも(・∀・)イイ!
13 名前:とみこ 投稿日:2002年07月19日(金)11時35分33秒
ルパン4thさん、お久しぶりです!
いや〜同じ板で一緒に小説を書けるなんてすごい嬉しいです!
さっそく読ませていただきました。
やっぱルパン4thさんはその時の場面をあらわすのがすごく上手ですね!
雰囲気や場面を表現するのはすごく難しいのに^^
さすがです!応援してるのでがんばってください!
14 名前:にゃん 投稿日:2002年07月19日(金)12時39分08秒
ルパン4thさんのよしごまだぁ〜!こんなに早く新作が読めるなんて嬉しいです。ごっちん切ないですね。吉子と梨華ちゃんがどうして別れたかも気になります。更新頑張って下さいね!
15 名前:皐月 投稿日:2002年07月19日(金)21時27分30秒
おおっ!切ない系かな?好きですよ。つーか好みです!!!
がんばってくださいな!
16 名前:すなふきん 投稿日:2002年07月19日(金)23時57分28秒
後藤さん切ないですねー。
新作、頑張ってください!!
17 名前:慕情 投稿日:2002年07月24日(水)02時25分54秒
次の日から楽屋でよっすぃ〜と一緒にいることが多くなった。

今までは梨華ちゃんと一緒にいたよっすぃ〜。
その『恋人』の梨華ちゃんを失ったよっすぃ〜が、『親友』のアタシの所に来るのは当たり前と言えば当たり前のことだった。

「ねぇねぇ、ごっちん。今度このお店行こうよ!」
「あっ、でもこのお店もいいかも。あっ、こっちも」
「こーなったら、全部行っちゃおっか!!」

雑誌を見ながら、らしくないハイテンションで一人はしゃぐよっすぃ〜
いちゃつく二人を見るのも辛かったけど、こんな貴方を見るのはもっと辛い。

確かに梨華ちゃんとは、普通に挨拶や少しの言葉は交わしているけど、お互いまだぎこちなくて吹っ切れてないのが分かる。

現に今だって梨華ちゃんと帰る時間ずらすためにアタシといるんでしょ?
『物分りのいい親友』今はそれでもいい……だけど、いつか『貴方の一番の人』として隣に座りたいよ。
18 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月24日(水)02時26分58秒

「…ごっちん聞いてる?」
「ふぇ?…ごめん聞いてなかった」
「もう、この映画見に行こうって言ったの」
「ん?どれどれ、あっこのアクション映画アタシも見たかったんだぁ」
「マジで?やっぱりごっちんとは気が合うなぁ〜」

あっ、今梨華ちゃんと比べたでしょ?そうだね梨華ちゃんはラブストーリーとかが好きそうだもんね、それで優しい貴方はいつもそれに合わせて梨華ちゃんは最高の笑顔を見せて……そこに幸せ感じてたんだ

ハハ、何言われても何見てもこんな風に考えちゃう…アタシ可愛くないね。

「…うよ!ね?」
「えっ?ごめん、また交信しちゃった…」
「もう!今度のオフの日にこの映画観に行こうって話してたの」
「そっか、うんいいよ。行こう!」

アタシはよっすぃ〜の事を考えて沈みかけていたのを悟られたくなくて、大袈裟なほど明るく言った。
だけどアタシの演技よりよっすぃ〜の勘の方が上だったみたい。
19 名前:慕情 投稿日:2002年07月24日(水)02時28分45秒

「ごっちん、ホントにどうしたの?風邪でもひいたかな?」

不審そうに言いながらよっすぃ〜はアタシの額に手を当てた。

やめ…て、顔が紅くなる。

「だ、大丈夫!ホント何でもないから。アハッ!」

顔が紅くなるのをバレたくなくてアタシは反射的によっすぃ〜の手を払ってしまった。

「…ご、ごめん。なんかアタシ疲れてるみたい。もう終電近いし、帰ろ?」

終電が近いというのは本当のことだった。昼も夜も無いテレビ局に1日中いると時間感覚が麻痺する。
アタシは「?」という顔をしているよっすぃ〜を無理矢理引っ張ってスタジオを後にした。
20 名前:慕情 投稿日:2002年07月24日(水)02時29分41秒
   *
21 名前:慕情 投稿日:2002年07月24日(水)02時30分25秒

「じゃあね、よっすぃ〜バイバイ」
「うん。バイバイ」

駅の改札をくぐるとアタシ達は電車が違うため左右に別れる。
よっすぃ〜は駅に着くまでの間もアタシの事を心配してくれたが、何を言っても無駄だと悟ったのかそれ以上は何も聞かないでくれた。

階段を降りてホームを見渡すと電車が行った後だったのか、酔いつぶれた中年サラリーマンがくたびれた背広を肩までずり落としてベンチで寝ているだけだった。
アタシは変に絡まれても嫌なので、そのベンチから離れた場所に立ち電車を待つ事にした。
22 名前:慕情 投稿日:2002年07月24日(水)02時31分29秒

ハァ〜、何でもっと梨華ちゃんみたく素直に可愛くなれないんだろう?
さっき額に手を当てられた時だって、もっと可愛い態度がとれたはず。例えば……

  『もう、よっすぃ〜照れるじゃん!』とか
  『よっすぃ〜優しい。ありがとう』とか
  『よっすぃ〜の手って暖かいね』とか

いくらでも言えたはずなのに、よりにもよって手を払いのけるなんて……

「…ばかみたい」

15分前の自分を呪う様にアタシはそう呟いた。
今日も溜息にエスコートされる帰り道……とその時
23 名前:慕情 投稿日:2002年07月24日(水)02時32分43秒

「ごっちーーーーん!!」

静まり返った駅に突然アタシを呼ぶ声が響いた。

驚いて声がした方を見ると、向う岸のホームから大きく手を振っているよっすぃ〜の姿が目に入った。

ベンチのサラリーマンもよっすぃ〜の声で酔いが醒めたのか、何事かと辺りを見まわしている。

アタシと目が合うとよっすぃ〜は手をさらに大きく振って叫んだ。

「ごっちーーん!何があったか知らないけど、元気だしてねーー!がんばれーー!!」

よっすぃ〜……
自分だって梨華ちゃんと別れたばかりで、元気無いくせに……
アタシを励まそうと一生懸命悩んだ末の策だろうなと考えると、熱いものが込み上げてくる。
24 名前:慕情 投稿日:2002年07月24日(水)02時33分32秒

「よっすぃ〜!!あり―――」

プアァァーーーン

『ありがとう』って言おうとしたら、ちょうど電車がホームに入ってきてアタシの声はかき消されてしまった。

電車の扉が開くとすぐにアタシは駆け乗って、よっすぃ〜の姿が見える反対の扉まで行き『あ・り・が・と・う』と何度も口パクで伝えた。
アタシの言葉が伝わったのか否かは分からなかったが、よっすぃ〜は電車が動き出すまでずっと笑いながら手を振っていてくれた。
25 名前:慕情 投稿日:2002年07月24日(水)02時34分10秒
   *
26 名前:慕情 投稿日:2002年07月24日(水)02時35分02秒

電車が夜の街を切り裂くようにスピードを上げてからも、アタシのドキドキが止まらなかった。

よっすぃ〜、貴方は知らないでしょう?

いつもは切ない気持ちを抑えてばかりで心が破れそうだけど…
貴方の言葉一つでアタシの心はこんなにも暖かくなるんだよ?

『元気だしてね』『がんばってね』って言ってくれるのはとても嬉しいけど…
本当は元気がないのは貴方のせいだよ?

いまなら素直に想い伝えられそうで、アタシは携帯のよっすぃ〜のメモリを呼び出しては躊躇いを何度か繰り返したすえ、ゆっくりと通話ボタンを押した。

呼び出し音が鳴っている間、ずっとアタシは自分に言い聞かせていた。
――今度こそ素直になろうって。
27 名前:慕情 投稿日:2002年07月24日(水)02時36分25秒

『もしもし?』

5回目のコールでよっすぃ〜は出てくれた。大好きなハスキーボイスは少し笑いを帯びている。

「あっ、よっすぃ〜?」
『うん、どした?』

素直に、素直に…

「あのね…さっき、ありがとう。すごく…嬉しかった。」

その調子、その調子…
28 名前:慕情 投稿日:2002年07月24日(水)02時37分31秒

『ヘヘッ、ちょっと恥ずかしかったけどね。よっかた喜んでもらえて』
「うん。あのね、よっすぃ〜…アタシね」
『ん?』

ここまで来たのに逃げないで…

「アタシ…よっすぃ〜の事……」
『なに?』

子供じみた駆け引きで自分の気持ち偽らないで…

「あの…ね、…そ、の」
『ハハ、どーしたの?なんかごっちん、梨華ちゃんみたい』

…梨華……ちゃん…

『梨華ちゃんもさ、何か大事な事言おうとする時いっつもそうだった』
「…そう……なんだ」

きっと貴方は梨華ちゃんとの事を吹っ切れてると見せたくて、そう言ったのだろうけど…
今だけは彼女の名を……聞きたくなかった―――
29 名前:慕情 投稿日:2002年07月24日(水)02時39分08秒

奮い立たせた勇気は、ロウソクの灯を吹き消す早さで消沈してしまう。

貴方の言葉のタクトに操られて、アタシの心は上へ下へと昇りつめたり転げ墜ちたりの繰り返し…

何故に貴方はそんなにまでも優しい?
何故にアタシはこんなにまでも深みにはまる?

止めることができずに、一人歩きするこの恋は…

貴方しだいの恋
行方知れずの……恋
30 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月24日(水)02時52分58秒
>>17-29更新しました。
18のタイトルを謝ってHNにしてしまいました。正しくは「慕情」です。

>12名無し娘。様
初レスありがとうございます。
どうか、ごっつぁんの恋応援してやって下さい(w

>13とみこ様
オォーー!お久しぶりです!いつも小説楽しく読ませてもらってます。
文が上手いだなんてとんでもないです(汗)他の方の作品を読んで修行中ですよ(w
こちらこそ同じ板で書けて嬉しいです。お互い頑張りましょう!!




31 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月24日(水)03時01分26秒
>14にゃん様
さっそく見つけてもらって嬉しいです!
吉子と梨華ちゃんの別れの原因が明らかになるのは、もうちょっとしてからです。

>15皐月様
切ない系好みですか?
当分ごっちんには切なくなってもらう予定です(w

>16すなふきん様
今回は後藤さんの切なさに焦点を当ててます。
すなふきんさんのよしごま見習いたいものです。

32 名前:ROM 投稿日:2002年07月24日(水)14時51分13秒
またもらい泣き出来ると聞いてやってきました。
作者さんの描く乙女なごっちんが大好きです。
今の内に涙腺にチャ−ジしておきます。
33 名前:とみこ 投稿日:2002年07月25日(木)13時37分10秒
ごっちん切ないです。。。。
おたがいなぐさめあって切ない切ない!!!(壊
まさしく行方知れず恋ですね。。。
34 名前:fGYOqHlg 投稿日:2002年07月27日(土)01時19分51秒
遅いですが、新連載おめでとうございます。
そして、雪板の完結おめでとうございます。 
今作も一読者として楽しませていただきたいと思います。
35 名前:嫉妬 投稿日:2002年07月29日(月)00時38分07秒

最近、胸の中のモヤモヤが晴れずにイライラしてしまう。
そんな情緒不安定は仕事にも影響し、アタシはNGの連発だった。

「ハァ〜…仕事も恋も行き止まり」

アタシは誰もいない楽屋の机に突っ伏して、目の前にある汗をかいた缶ジュースを弄びながら呟いた。

こないだのよっすぃ〜との電話のやり取りを、ボンヤリと思い出してみる。

もう少しで「好き」って言えそうだったのに……
何もあそこで、梨華ちゃんの名前ださなくても…

「…よっすぃ〜のバカヤロー」

悔しさと情けなさが蘇ってきて、思わず悪態が口を渡った。

36 名前:嫉妬 投稿日:2002年07月29日(月)00時39分59秒

「あれ?ごっちん、一人で何してるの?」

急に名前を呼ばれて振り向くと、今一番会いたくなかった――梨華ちゃんがいた。

「…休憩中だから、休憩してんの」

自分でも驚くくらい、ぶっきらぼうに返事をしてしまう。

「そっか…ここ座っていい?」

アタシの口調で機嫌の悪さを悟ったのか、梨華ちゃんは少しオドオドしながらアタシの真向かいに腰を下ろし雑誌をめくり始めた。

アタシは相変わらず缶ジュースをいじる仕草をしながら、そっと梨華ちゃんを盗み見してみる。
37 名前:嫉妬 投稿日:2002年07月29日(月)00時40分51秒

「あれ?ごっちん、一人で何してるの?」

急に名前を呼ばれて振り向くと、今一番会いたくなかった――梨華ちゃんがいた。

「…休憩中だから、休憩してんの」

自分でも驚くくらい、ぶっきらぼうに返事をしてしまう。

「そっか…ここ座っていい?」

アタシの口調で機嫌の悪さを悟ったのか、梨華ちゃんは少しオドオドしながらアタシの真向かいに腰を下ろし雑誌をめくり始めた。

アタシは相変わらず缶ジュースをいじる仕草をしながら、そっと梨華ちゃんを盗み見してみる。
38 名前:嫉妬 投稿日:2002年07月29日(月)00時41分53秒

シャープ過ぎずふっくらし過ぎずの綺麗なラインを描く輪郭
少し濡れたかんじの大きな瞳
艶やかにルージュをのせた唇
……かわいいね。

よっすぃ〜を虜にした梨華ちゃん
よっすぃ〜の元恋人の梨華ちゃん

その瞳は誰も知らないよっすぃ〜を映して…
その耳でよっすぃ〜の甘い囁きを聞いて…
その唇はよっすぃ〜の熱い吐息を知っていて…
39 名前:嫉妬 投稿日:2002年07月29日(月)00時43分07秒

「ごっちん、どーしたの?」

アタシの視線に気づいた梨華ちゃんが、不思議そうに訊ねてきた。

「ご、ごめん。何でもない」

アタシは気恥ずかしくなって、急いで缶ジュースに目を移した。

そんなアタシを見て梨華ちゃんは「変なの」とクスッと笑って雑誌を置くと、今度はアタシをジッと見つめてきた。

「な、何?」
「ううん。ごっちん最近キレイになったなぁ〜と思って」
「はぁ?」

予想もしてない言葉にアタシは間抜けな返事をしてしまう。
アタシがキレイになった?それはこっちの台詞だよ。
40 名前:嫉妬 投稿日:2002年07月29日(月)00時44分34秒

「いいなぁ〜ごっちんは何でも手に入れてるって感じ」
「何それ?」
「歌も踊りも上手いし人気もあるし、ホント羨ましいな」
「そんなことないよ」
「私なんて歌も踊りも下手だし、恋もダメになっちゃったし」

最後のフレーズを、何でも無い様に軽く言ったことに少しムカッときた。

「恋って…よっすぃ〜とのこと?」
「うん。もうよっすぃ〜のことは忘れて、早くいい人見つけるぞー。ってね?」

冗談でも言うかの様な梨華ちゃんに、アタシの中で何かが切れた。
41 名前:嫉妬 投稿日:2002年07月29日(月)00時45分59秒

「…どいよ。梨華ちゃん」
「えっ?」
「酷いよ梨華ちゃん!梨華ちゃん、そんな軽い気持ちでよっすぃ〜と付き合ってたの?」

いきなり怒鳴り始めたアタシに梨華ちゃんは驚いている。
しかしアタシの怒りは止まらない。

「よっすぃ〜はね、傷ついてるんだから!!よっすぃ〜が可哀想だよ、梨華ちゃんにそんな風に思われてたなんて……可哀想だよ!」
「ちが…ちがうの」

梨華ちゃんは俯くと、泣きだしてしまった。

「ちがうの…本当はまだ私……よっすぃ〜が忘れられないの……っぅぐ…でも何かごっちん見てたら…ぇぐ……羨ましくて」
42 名前:嫉妬 投稿日:2002年07月29日(月)00時47分19秒

「何してんの?」

ドアが開く音と共に声がして振り向くと、よっすぃ〜が立っていた。
まさに最悪のタイミング。

よっすぃ〜は梨華ちゃんが泣いてるのを確認すると、アタシを見つめた。
その視線は痛いほど真剣で、アタシは動けなくなってしまう。

「ごっちん……梨華ちゃんに何したの?」

その声はいつもよりも低くて、怒ってるのが分かる。

「ちがう、アタシは何も…」
「もう!嫌っーー!!」

アタシが口を開くのと同時に梨華ちゃんは、泣きながら走って楽屋を出て行ってしまった。
取り残されたアタシとよっすぃ〜の間に重い空気が流れる
43 名前:嫉妬 投稿日:2002年07月29日(月)00時48分46秒

「ごっちん、何があったか話して」

そう言いながらアタシの肩に手を置こうとするよっすぃ〜の手をアタシは振り払った。

「……ない」
「えっ?」
「何もかも手になんか入れてない!本当に欲しいのは一つだけだもん!!」

アタシは無我夢中で叫ぶと、梨華ちゃんとは反対方向に駆け出した。

よっすぃ〜がどっちを追いかけようか躊躇った気配が一瞬したが、アタシの僅かな期待を裏切ってよっすぃ〜の足音は梨華ちゃんの方へと消えて行った。
44 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月29日(月)01時07分09秒
>>35-43更新しました。
37を誤って二重投稿してしまいました。読みにくくしてしまって申し訳ありませんでした。m(_ _)m

>32ROM様
オォー!こっちも読んでくれてありがとうございます。
乙女なごっちん……書き易いですねぇ(w
でも、クールなごっちんも書いてみたい!

>33とみこ様
ごっちんには悪いけど、もっと切なくなってもらいますよ〜(w
行方知れずの恋をさまよってもらいます(w

>34◆fGYOqHlg様
えーっと、文字化けしてしまっていて正しいHNが分からなかったんですが、雪板の方にもレスをして頂いた方でしょうか?
できれば、もう一度レスをくれると有難いです。
今作も楽しんで頂けるよう頑張ります!




45 名前:皐月 投稿日:2002年07月29日(月)16時47分41秒
ごっち〜ん・・・・
ホント切ないっす・・・。つーか吉澤まだ梨華ちゃんに未練が・・。
がんばってくださいね!
46 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月29日(月)18時53分22秒
石川も後藤も切ないなあ…。

 お節介かも知れんが34さんのHNは文字化けしてるんじゃなくてトリップを
使ってるだけだよ。(もしボケのつもりだったらスマソ)
47 名前:とみこ 投稿日:2002年07月30日(火)09時44分00秒
個人的にはよしごまが好きなんですが、やっぱりこの三角関係は欠かせませんね。
48 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月30日(火)21時48分15秒
ていうか34のしとすごい有名人(w
49 名前:慕情 投稿日:2002年08月06日(火)00時31分36秒

「…っぇぐ……ぅっぐ…」

アタシは地下の駐車場で一人声を押し殺して泣いていた。
本当は屋上へ行こうと思ったけど、たぶん屋上には梨華ちゃんが行ったと思ったからやめた。
誰もいない暗く湿った駐車場にアタシの嗚咽だけが虚しくこだまする。

梨華ちゃんまだよっすぃ〜のこと好きなんだ…
梨華ちゃんの涙を見てあんなに怒ったよっすぃ〜もまだ…

今頃、よっすぃ〜は梨華ちゃんを慰めてて……もしかしたら寄り戻しちゃうかもね。

「……もう、つらいよぉ」

何でこんなに苦しいだけの恋なのに、諦められないんだろう?
50 名前:慕情 投稿日:2002年08月06日(火)00時33分17秒

あり得ないと言い聞かせながら、よっすぃ〜が来てくれるんじゃないかと思ってしまう自分がいて、我ながら笑えてくる。

その時ポケットの中で携帯が振動した。
よっすぃ〜からかと急いで取り出したが、ディスプレイに点滅している名前は『圭ちゃん』だった。

「もしもし?」
『ちょっと、アンタ今どこにいるのよ!』
「…あー……えっと」
『とにかく早く帰ってきなさいよ!もう全員集合してるわよ!』

大声で怒鳴られて、思わずアタシは耳から携帯を離した。

「今いくから…」
『速攻で来なさいよ!』

電話を切ると、重い腰をしかたなく上げた。
51 名前:慕情 投稿日:2002年08月06日(火)00時34分24秒

よっすぃ〜梨華ちゃんと一緒に帰ってきたんだ……
アタシのことは心配してないんだ……
アタシ……嫌われちゃったのかな?

その日、よっすぃ〜とも梨華ちゃんとも目を合わせることは無かった。
アタシが避けてるのか、それとも避けられてるのかは分からなかったけど…
胸の中では梨華ちゃんへのジェラシーだけが妖しく熱をもって煌いていた。

52 名前:決断 投稿日:2002年08月06日(火)00時36分09秒

次の日、朝から「梨華ちゃんに謝ろう」と意気込んではいたものの、結局言い出すタイミングが掴めず仕事が終わってしまった。

それぞれが帰り支度をしている賑やかな楽屋を見渡してみるが、梨華ちゃんの姿は見当たらない。
よっすぃ〜は隅で携帯をいじっていたが、まだ気まずくて声はかけられなかった。

『楽屋にいないってことは……屋上かな?』

そんなことを思いつつ屋上の分厚いドアを開くと、華奢な背中が寂しそうにポツンといた。
53 名前:決断 投稿日:2002年08月06日(火)00時37分32秒

「梨華ちゃん」

アタシの声に梨華ちゃんが振り向く。どうやら泣いてはいなかったようだ。
一瞬、気まずい沈黙が流れた。

「梨華ちゃん昨日はごめん!」
「ごっちん、ごめんなさい!」

みごとにお互いの言葉がハモった。

アタシは自分の声で梨華ちゃんが何て言ったのかハッキリ聞こえず顔をあげると、梨華ちゃんも困惑した顔をしていた。

キョトンとした顔で見詰め合ったあと、どちらからともなくアタシ達は笑いだしてしまった。
54 名前:決断 投稿日:2002年08月06日(火)00時38分46秒

「アハ、なんか…ごめん昨日は」

今度はサラリと言いながらアタシは梨華ちゃんの隣に並んで立った。

「そんな、悪いのは私の方だよ。ごっちんの言う通り、あんな言い方は……よっすぃ〜に失礼だよね」

そう言うと梨華ちゃんは、下に広がる街並を見下ろした。
本当は昨日あれからよっすぃ〜とどうなったのか聞きたかったが、俯く梨華ちゃんを見るとそれは禁句のような気がして、アタシも下を見下ろした。

おもちゃの様に小さい車や人が、せわしなく往来している。
世の中でどれくらいの人が自分に正直に生きているのだろう?
きっとほんとんどの人が自分を見失いながら、それでも世間の波は見失うまいとあんなに忙しく歩いているのかもしれない。
55 名前:決断 投稿日:2002年08月06日(火)00時40分06秒

「…ごっちんの好きな人って……よっすぃ〜?」

ボンヤリとビルの谷間を眺めていたアタシは、梨華ちゃんの言葉に面食らった。

「な、何言うかな…急に……アタシがよっすぃ〜を好き?…アハ、冗談きついな…ハハハ」

口数が多くなるのは動揺している証拠。取り繕うとすればする程ボロが出る。

「フフ、ごっちんバレバレだって」
「ハハ……ハ」

微笑む梨華ちゃんには全て見透かされている様で、アタシは力が抜けてフェンスに寄りかかった。

「梨華ちゃん…よっすぃ〜のことまだ好きなんでしょ?」
「…うん、好きよ」

髪を耳にかける仕草をしながら柔らかく微笑む梨華ちゃんを見て、なぜがアタシは一生勝てないかもと思った。
56 名前:決断 投稿日:2002年08月06日(火)00時41分53秒

「昨日ね、よっすぃ〜私を追って来てくれたの…」
「…うん」

そこまでは知っている。その後アタシは一人で泣いたのだから。

「よっすぃ〜ね、ハンカチ差し出して優しい言葉いっぱいかけてくれた」
「うん」
「でもね、付き合ってた頃みたいに抱きしめてはくれなかったの」

梨華ちゃんの瞳に哀しみの影がよぎった。

「思わず私よっすぃ〜に抱きついたんだけどね、『今抱きしめたらお互い傷が深くなるだけだよ』って引き離されちゃった……」
「…梨華ちゃん」
「それがよっすぃ〜の答えなんだよね。」
57 名前:決断 投稿日:2002年08月06日(火)00時43分22秒

アタシは何て言っていいのか分からず言葉を探していた。

「だからねごっちん、私に気使わなくていいよ」
「…え?」
「昨日で本当に吹っ切れたの。だからよっすぃ〜に気持ち伝えなよ、ね?私はダメだったけど、よっすぃ〜はずっと信じていける人だと思うよ」

スッキリした顔でそう言う梨香ちゃんの表情からは、最後の強がりなのか本当に吹っ切れてるのかは読み取れなかった。

「あっ、いけない!保田さんと約束してたんだ!それじゃあね、ごっちん」

戸惑うアタシを残して梨華ちゃんは慌しく屋上を後にした。
58 名前:決断 投稿日:2002年08月06日(火)00時44分42秒

残されたアタシは気持ちの整理がつかず、もう一度街並みを見下ろした。
梨華ちゃんもよっすぃ〜も、ちゃんと自分の気持ちをぶつけてるんだ。
それなのに踏み込むことも諦めることもできないアタシは、ただの臆病者なのかもしれない。

自分に嫌気がさして涙が出そうになった時、背中に誰かの温もりを感じた。

「…何してんのさ、こんな所で……」

背中合わせに立つ少し気まずそうな声の主はよっすぃ〜だった。
59 名前:決断 投稿日:2002年08月06日(火)00時46分01秒

「…べつに」

よっすぃ〜がアタシを探しに来てくれたことが嬉しくて、素っ気無い返事に笑みを隠す事ができなかった。

「ふーん。…あのさ……昨日は…ごめん」

照れた様に小さな声で言う貴方が今どんな顔をしてるのか、見なくても分かる。

「庇って…くれたんだって?……私のこと…」
「………」

少し意地悪をしてみたくなって無反応を試してみる。

「ごっち〜ん、ごめんって許してよぉ」

アタシの反応に引っ掛かったよっすぃ〜は、少し焦った様な口調で今度はアタシの隣に並んだ。
60 名前:決断 投稿日:2002年08月06日(火)00時47分56秒

「わかった、お詫びのしるしにこれあげるから…」

そう言いながらよっすぃ〜は、ジーンズのポケットからゴソゴソと何か取り出してアタシの前に差し出した。
それは、こないだ観に行こうって約束した映画のチケットだった。

「これでもダメ?」と不安そうにアタシを覗きこむよっすぃ〜を見て、アタシは思わず笑い出してしまった。

「しょーがないなぁ、許してあげる!」

そう言ってよっすぃ〜の手からチケットを受け取ると、よっすぃ〜はヘヘッと笑った。
その笑顔は眩しいほどで、アタシはやっぱり諦められそうにないと思った。
61 名前:決断 投稿日:2002年08月06日(火)00時49分17秒

「そーだ、ごっちん?」
「んー?」

楽屋に戻るため階段を下りている時、よっすぃ〜が思い出したように言った。

「本当に欲しいのは一つだけって、あれ何?」
「えっ?」

そーいえば昨日、勢いに任せてそんな事を言ったような……
うわっ、今考えると本人目の前になんて事言ったんだろう……

「ねぇ、ごっちん何?」

一人顔を紅くするアタシによっすぃ〜はなおも訊いてくる。
もぉーー、よっすぃ〜の鈍感!!
62 名前:決断 投稿日:2002年08月06日(火)00時51分42秒

「ないしょ!」
「えーっ!何で教えてよ気になるじゃんかぁ」

理解不能といった顔をしているよっすぃ〜を残して、アタシは一人足早に階段を下り始めながら言った。

「いつか教えてあげる!」

そう、いつかちゃんと貴方に想い伝えるから…
その勇気が持てるまで、今はまだ『親友』の関係に甘えさせて。
63 名前:ルパン4th 投稿日:2002年08月06日(火)01時08分44秒
>>49-62更新しました。

>45皐月様
どうやら、よっすぃ〜は梨華ちゃんの想いを断ち切ったようです(w
お互いがんばって更新しましょう!

>46名無し読者様
丁寧なご指摘ありがとうございました。
ボケでも何でもなく本当に勘違いしてしまいました(汗)
これからもよろしくお願いします。

>47とみこ様
よしごまいいですよねっ!
それなのにごっちん卒業とは……ウァァーーン!

>48名無し読者様
本当にすごい有名な方でした……
こんなすごい人のHN分からないなんてモグリだな自分(鬱)

>34◆fGYOqHlg様
改めてレス返しさせて頂きます。
HNを文字化けなどと書いてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
不快な思いをさせてしまった事を深くお詫びいたします。
今後ともお付き合い、よろしくお願いします。
64 名前:にゃん 投稿日:2002年08月07日(水)07時10分11秒
お〜、吉子がやっと梨華ちゃんのことを吹っ切れたんですね。ごっちん頑張れー!
65 名前:岐路 投稿日:2002年08月13日(火)01時57分18秒

「本格的にソロ活動しないか?」
「…え?」

仕事の後一人事務所に呼ばれて、何の前置きも無しに言われたその言葉を理解するのに時間がかかった。

「それって……娘。を卒業するって事…ですか?」
「そうだ。17歳の誕生日をもってお前はモーニング娘。を卒業し、ソロ活動に専念する。どうだ悪い話じゃないだろう?」
「………」
「なんだどうした?ソロ活動は後藤の夢だったんじゃないのか?」
「…そうです、けど…」
66 名前:岐路 投稿日:2002年08月13日(火)01時58分33秒

そう、決して悪い話じゃない。いやむしろ「夢が叶った」と喜ぶべき話だと思う。
だけど…何故か手放しに喜べない。

自信が無い?
一人が不安?
卒業が寂しい?

ちがう…そんなハッキリした感情じゃない。この胸に込み上げてくるモヤモヤは…

「とにかく、今言った方向で考えてくれ」
「…はい」

煮え切らないアタシの反応に事務所の人は厳しい口調で言うと、ドアに向かった。
67 名前:岐路 投稿日:2002年08月13日(火)01時59分47秒

「そうだ…保田も来春で卒業する。他のメンバーにはまだ言うなよ」
「…圭ちゃん……が?」
「あぁ、もう本人とも話がついてる。だから後藤からも良い返事を期待してるよ」

それだけ言って部屋を出ていった。
一人残されたアタシは今のやり取りが夢のようで、呆然としてしまう。

アタシが卒業…
圭ちゃんも卒業…
二人ともプッチモニ…
……プッチモニ

「…よっすぃ〜……どうなっちゃうの?」

いろんな事が頭を渦巻いているけど、口をついて出たのは自分のことでも圭ちゃんのことでもなく、よっすぃ〜のことだった。
68 名前:岐路 投稿日:2002年08月13日(火)02時02分07秒

フラフラと事務所のビルを出ると、手持ち無沙汰に携帯をいじっているよっすぃ〜の姿が目に入った。

「よっすぃ〜!…何してんの?」
「あっ、ごっちーん!待ってたんだよ」

アタシの声に顔を上げると、よっすぃ〜はニィーと笑った。
その無邪気な笑顔に何故か後ろめたさを感じてしまう。

「ずっと待っててくれたの?」
「うん。ほら明日の映画の時間決めてなかったからさ」
「そっか…ありがと」

もしアタシが卒業したらこんな些細なことも無くなるのかと思ったら急に切なさが押し寄せてきて、アタシは先を歩くよっすぃ〜の腕に寄り添った。
69 名前:岐路 投稿日:2002年08月13日(火)02時04分09秒

「ん、どした?」
「エヘッ、いや?」
「んー、べつに」


ねぇよっすぃ〜、アタシが卒業するの知ったら貴方はどうする?

『卒業しないで』って引き止めてくれる?
『おめでとう』って笑顔で送り出す?

貴方のことだから、たぶん結果は後者だね…
でもアタシには…影で泣き濡れる貴方が容易に見抜けるから――言えないよ

恋人になるどころか…
こんな風に並んでは歩けない二人になるの?

アタシは心の中では溢れる言葉を伝えきれずに、ただよっすぃ〜の存在を腕のぬくもりで繋ぎとめながら歩いていた。
70 名前:ルパン4th 投稿日:2002年08月13日(火)02時17分51秒
>>65-69ちょびっとですが更新しました。

>64にゃん様
一難去ってまた一難、ということになりそうです。(w

せっかく(?)リアルものを書いているので、悲しい事実ですがごっちんの卒業をストーリーに織り込みました。

71 名前:OK牧場 投稿日:2002年08月17日(土)08時47分47秒
わー!!ルパン4thさんの小説だぁー!!
ルパン4thさんの書く、「よしごま」は最高です。
話の背景がリアルでいいです。更新、頑張って下さい。
72 名前: 投稿日:2002年08月17日(土)19時24分42秒
更新お疲れ様です。
いつも楽しみに読ませていただいております。
悲しい事実ですが、ふたりの絆は固いはずと信じて…。

これからどんな展開が待ち受けてるのか、
ドキドキワクワクしながら、お待ちしてます。
73 名前:とみこ 投稿日:2002年08月20日(火)10時02分15秒
ごっちん卒業って本当にさみしいっす・・・。
よっすぃーとはどうなるのかな?期待してます。
74 名前:岐路 投稿日:2002年08月25日(日)20時51分29秒

スッと淡いピンクのグロスを唇に引き終えると、アタシは全体が映る位置まで鏡から遠ざかった。

昨日寝グセがつかないように念入りに乾かした髪
この夏一番のお気に入りの白いワンピース
よっすぃ〜と一緒に選んだピアスとネックレス
少し控えめにつけた甘い香りの香水

「よっし、オッケーかな」

おかしい所が無いか確認し終えると、アタシは鏡の中の自分にOKサインを出した。
75 名前:岐路 投稿日:2002年08月25日(日)20時52分36秒

唯一OKでないのは、眼の下にうっすらとできたクマ…

昨日はあまり眠れなかった
ソロの話をどう返事するか
圭ちゃんの卒業のこと
そして、よっすぃ〜のこと……
いろいろなことが頭を渦巻いて真剣に考えたけど、何一つ答えは出なくて…

そしてようやく出した一つの答えは

『今日1日は何も考えずによっすぃ〜とのデートを楽しむこと』

まぁ、付き合ってないからデートとは言えないかもしれないけど…
今日ぐらいは何も考えずに貴方と過ごす時間に溺れてもいいでしょ?
76 名前:岐路 投稿日:2002年08月25日(日)20時54分05秒


「遅いぞ〜ごっちん」

はき慣れない高いピンヒールの靴を履いたがために、駆け込めば間に合う電車に乗れずアタシは遅刻した。

「ごめん、よっすぃ〜!待った?…よね?」

アタシは両手を合わせて頭を下げながら、そっと上目遣いでよっすぃ〜の顔を覗いた。

「ん…まぁ、いいけど……さ」

上目遣いのアタシと目が合うと、よっすぃ〜は照れた様に視線を逸らした。
あれ?もしかして今アタシにドキッとしてくれた?

「ほら、映画始まっちゃうから早く行こ」

そんなアタシの自惚れを壊すかのように、よっすぃ〜はさっさと前を歩き始めた。

「待ってよ!よっすぃ〜!!」

慌ててよっすぃ〜の背中を追いかけることにさえ嬉しさを感じてしまう。
77 名前:岐路 投稿日:2002年08月25日(日)20時55分12秒
   *
78 名前:岐路 投稿日:2002年08月25日(日)20時56分01秒

外はアスファルトを焦がすかの様な炎天下だと言うのに、映画館の中はクーラーがガンガンきいていて寒い。
映画が始まって1時間と経たないうちにノースリーブを着ていたアタシの体は芯まで冷えてしまった。

うぅ〜寒いなぁ。ヤバイくしゃみ出そう…

だけど、今映画のストーリーは前半の盛り上がりをみせている。
主役の刑事が命の危険冒してマフィアの所に乗り込むのを、恋人が泣きながら止めるシーン
主役は甘い言葉で恋人を宥めて
恋人は泣き腫らした目で見つめて
そして、二人の距離がだんだん縮まって……

「クシュン!」

スクリーンの中の二人が唇を重ねた瞬間、アタシはこらえてたくしゃみが出てしまった。
隣の席のおじさんが嫌味っぽく咳払いをする。
79 名前:岐路 投稿日:2002年08月25日(日)20時57分14秒

ヤバイ…くしゃみ止まらなそう

アタシが2度目のくしゃみをしかけたその時、フワリと肩に暖かいものをかけられた。

それはよっすぃ〜の上着だった。
驚いて隣のよっすぃ〜を見ると、何事もなかった様にスクリーンを真っ直ぐ見つめてる。

「ありがと」

周りの人達に聞こえない様に、よっすぃ〜の耳元でそっと小声で囁いた。

「……ん」

よっすぃ〜はスクリーンから目を離さずに短く返事しただけだったけど、その声は心なしか上ずっている様に思えた。

スクリーンの中では相変わらず主役とその恋人がラブシーンを繰り広げていたが、アタシにとっては今の出来事の方がずっとずっと素敵なワンシーンで、ドキドキが止まらずにその後の映画のストーリーは全然頭に入らなかった――
80 名前:岐路 投稿日:2002年08月25日(日)20時58分20秒


「ちょっとトイレ行ってくるから待ってて」
「うん」

映画が終わったあと、ロビーでアタシはトイレに行ったよっすぃ〜を待っていた。

改めてよっすぃ〜が貸してくれた上着をそっと握り締めてみる。よっすぃ〜の優しい匂いの上にほんのりアタシの香水が移り香として残っているのが、なんだかくすぐったい。

にしても映画のストーリー全く覚えてないのもヤバイなぁ…
よっすぃ〜って映画終わったあと結構ストーリーの話してくるんだよね。
パンフレット買って今のうちにあらすじ読んどこうかな…

そう思って売店に行こうとした瞬間、少し離れた所にいた女子高生らしい二人の話し声が耳に入ってきた。
81 名前:岐路 投稿日:2002年08月25日(日)20時59分23秒

「ねぇ、あれってモー娘。のゴマキじゃない?」
「えっ、どれー?……あぁ確かに似てるかも。でもこんな所にいるぅ?」
「ねね、声かけてみよっか?」
「えー、でも違ったらヤバくない?」
「やっぱ、違うかなぁ」

ヤバイっっ!こんな所で気づかれたら、すぐに囲まれて収拾がつかなくなる…
アタシは反射的にサングラスと帽子を深くかぶり直した。
よっすぃ〜〜!早く戻ってきてよーー!!

「あの…もしかしてモー娘。の――」

女子高生達がおそるおそる話しかけてきた瞬間、アタシは手を捕まれてダッシュで走らされていた。
一瞬の事で何が起こったのか理解できなかったけど、捕まれた手の先には一歩前を走るよっすぃ〜の背中があって、やっとよっすぃ〜が助けてくれた事に気がついた。
82 名前:ルパン4th 投稿日:2002年08月25日(日)21時10分57秒
>>74-81更新しました。
すごい中途半端な所で切ってしまい申し訳ありません。続きは明日にでも更新します。

>71OK牧場様
あっ、よしごま書いてる作者さんですよね?
いつもコソーリ読んでます(w
お互いがんばりましょう!

>72凪様
こちらこそ毎回楽しみに読まさせてもらってます。
>これからどんな展開が待ち受けてるのか…
そうですねぇ、フィクションに『卒業』という事実をどこまで上手く織り込めるか難しいです(^^ゞ

>73とみこ様
ほんと、ごっちん卒業悲しいっす〜!
でもこれからもよしごまを応援し続けます!!
83 名前:ROM 投稿日:2002年08月25日(日)21時39分54秒
ごっちん可愛いっす。よしこかっけ−っす。でも
梨華ちゃんを思うとちょっと切ないっす。
84 名前:なな 投稿日:2002年08月25日(日)22時51分16秒

初めまして。更新待ってましたよ〜!
吉澤さん素敵。後藤さん可愛い。
もうそれしかないです。

明日も更新するそうなので、楽しみです!
バイトも休みだし、パソコンの前にずっと待機してます(w
85 名前:岐路 投稿日:2002年08月26日(月)19時04分41秒

あれからよっすぃ〜の手に引かれるまま、どこをどう走ったのか分からない。
気づけば、幾つかの遊具とベンチがあるだけの小さな公園に辿り着いてた。

繁華街の裏にこんな公園があるなんて知らなかった。
公園は昼間の小さな主を失くして、ひっそりと夕闇に包まれていた。

「ハァ…ごっちん…ハァ…大丈夫?」

肩で呼吸しながら、よっすぃ〜が訊いてくる。
汗で額についた前髪を無造作に掻き揚げる仕草が妙にカッコイイ。

「うん。大丈――痛っ!」

「大丈夫」と言おうとしたら、気が抜けたのか踵に痛みが走った。
踵を見ると皮が一枚ペロリと剥けて血が滲んでいる。慣れない高いヒールの靴で走ったため靴擦れしたらしい。

「あっ、血出てんじゃん。そこのコンビニでカットバン買って来るからそこのベンチで待ってて!」

そう言うが早いかよっすぃ〜は、アタシに遠慮の言葉を言う暇も与えず通りを挟んだ所にあったコンビニに向かって駆け出した。
86 名前:岐路 投稿日:2002年08月26日(月)19時14分34秒

一人残されたアタシは言われた通りベンチに腰掛けて、改めて公園を見渡した。
公園の隅で一人のストリートミュージシャンがギターの弦を調節している。
こんな所で弾き語りをしても誰も足を止めないだろうに…
使い古したアコスティックギターを沈みかけた夕陽がオレンジ色に染めている。

そんな光景をボンヤリ眺めながら、アタシは無意識によっすぃ〜の事を考えていた。
よっすぃ〜はいつもピンチのアタシを助けてくれる。
それは時には言葉であり笑顔であり、時にはさっきみたいに手を捕って導いてくれたり…
そんな貴方はまるで映画のヒーローみたい。

ソロになったらもうこんな風に甘えられないね
でも貴方に「好き」って伝えたいよ
気持ち伝えるだけ伝えておいて、卒業してしまうのはズルイ?
貴方がアタシの気持ちを受け取ってくれなかったら、アタシ達友達にも戻れない?
だって……今みたいに毎日顔合わせられないんだから
87 名前:岐路 投稿日:2002年08月26日(月)19時15分31秒

「ごっちん、お待たせ〜」

アタシが悶々と考えている間にコンビニの袋を片手によっすぃ〜が帰ってきた。

「ありがとう」
「どういたしまして。はい、靴擦れした方の足かして」

そう言ってよっすぃ〜はカットバンを箱から取り出しながら、アタシの足元にしゃがみ込んだ。

「いいって、自分で巻くから」

アタシはよっすぃ〜の手からカットバンを奪おうとしたけれど、あっさり交わされてしまった。

「いいから、いいから。ほらかして」

足元にしゃがみ込まれて、足首をつかまれているのがなんだか気恥ずかしい。
88 名前:岐路 投稿日:2002年08月26日(月)19時16分53秒

「うわっ、痛そう。ごめんね無理矢理走らせちゃって」
「ううん。バレそうになったアタシが悪いんだし…」

本当にボーッとしていたアタシの自業自得。よっすぃ〜が謝る必要なんてないのに…

「よしっ、これでオッケー」
「ありがとう」

傷口を隠すようにカットバンを貼ってくれたよっすぃ〜にアタシは今日何度目かのお礼を言う。

「ごっちん、今日なんかセクシーだね。」

しゃがんだままの格好で見上げられて、アタシの鼓動は一気に早鐘のように早まる。
89 名前:岐路 投稿日:2002年08月26日(月)19時18分06秒

「そ、そっかな?」

いつもアタシは貴方の瞳に見つめられると言葉を失い目のやり場に戸惑って、つい時計に目をやるクセがでてしまう。

「ん?もう帰らなきゃヤバイ?」

そんなアタシの仕草に気づいたよっすぃ〜が訊いてきたが、アタシは何も言えずにただ首を横に振るのが精一杯。

「そっか…あっこれ、喉乾いたでしょ」

さっきコンビニでカットバンと一緒に買ってきたのか、缶ジュースを手渡しながらアタシの隣に腰を下ろした。
90 名前:岐路 投稿日:2002年08月26日(月)19時19分30秒

「…ありがと」

お礼を言ってばかりの自分がもどかしい。
何か話さなきゃ、何か……

「あ…今日の映画、面白かったね」

墓穴を掘るだけと知っていながら、出した話題に思わず苦笑する。

「うん。あの刑事をさ恋人が引き止めるシーン良かったよね」
「うん。感動しちゃった」

本当に感動したのは、そのシーンで貴方がしてくれた行動だけれど。
そっから先のストーリーを言われたらアウトだ。何も覚えてない……
91 名前:岐路 投稿日:2002年08月26日(月)19時20分27秒

「ほんと、良かったよね…あのシーン」

あれ、よっすぃ〜?何でその先の話しないの?
この映画ってラストのどんでん返しが話題になってたのに…
よっすぃ〜真剣に映画見てた…よね?
もしかして、アタシみたいに見てるフリしてた?

アタシからその先の話をできるはずも無く、アタシ達は無言でベンチに座っていた。
先ほどの、ストリートミュージシャンがギターの調節が終わったのか歌い始める。

誰に聞かせるでもない歌声は夕闇にそっと溶けこみ消えて行く
恋人を傷つけ、別れた事を後悔してる歌詞…
その妙に切ない旋律はアタシの心の中にまでも入り込んできて…
92 名前:岐路 投稿日:2002年08月26日(月)19時21分30秒

その時そっとよっすぃ〜が手を重ねてきた。

「…よっすぃ〜?」
「私と梨華ちゃんが別れた理由ちゃんと話してなかったよね」

前方を見つめながら、呟く様に言うよっすぃ〜の言葉にアタシはコクリと頷くことしかできない。

「…私、梨華ちゃんのこと……すごく傷つけたんだ」
「…傷つけた?…よっすぃ〜が?」

そんなの信じられなかった。だっていつも楽屋で仲良く寄り添う姿を、唇かみ締めて見てきたから……

「うん…何回謝っても償えないくらい……傷つけた」
「よっすぃ〜……全部聞いても…いい?」

よっすぃ〜は聞こえてくる哀しいメロディーに耳を傾けていた。
きっとこの歌の歌詞を自分と重ねてるんだ…
少しの間そうしていたけど、俯いて溜息をひとつつくとゆっくり話はじめた。
93 名前:岐路 投稿日:2002年08月26日(月)19時23分20秒

「始めは本当に梨華ちゃんを大切に想ってった……だけどいつからか私の心は違う人に移ってたんだ…」

違う人……じゃあ梨華ちゃんと別れてもアタシの入る隙間なんてなかったんだ…

「だけど私は梨華ちゃんを振る勇気もその人に告白する勇気もなくて……梨華ちゃん気づいてたんだ……だけど寂しさだけで関係繋ぎ止めてて…結局別れ話すら梨華ちゃんに言わせて……」

切れ切れに言うよっすぃ〜はまるで懺悔をしているようで…
「最低でしょ…私」と自嘲気味に呟いた貴方を思わず抱きしめたくなってしまう

「よっすぃ〜…梨華ちゃんきっともう許してるよ」

いつか梨華ちゃんと屋上で話した時の事を思い出した
あの時の梨華ちゃんの哀しい瞳の裏にそんな理由が隠されてたなんて…

でもね、よっすぃ〜…きっと梨華ちゃんは恨んでも憎んでもないと思うよ
だって本当に愛した人を嫌いになんてなれないよ……
それが愛し過ぎた方の弱さだから…
94 名前:岐路 投稿日:2002年08月26日(月)19時25分10秒

「…気持ち伝えなよ……その人に」

ハハ…あの時の梨華ちゃんと同じ台詞
皮肉だね……梨華ちゃんの気持ちがいまさら痛いほど分かる

「うん。私ね梨華ちゃんと別れる時誓ったんだ……梨華ちゃんが幸せになるまで、告白はしないって……それが私にできる唯一の償いだから…」
「そっか…」

よっすぃ〜らしい……
きっと貴方のことだから、自分を責めつづけて苦しんだだね

「でね、昨日梨華ちゃんから電話あって…彼氏ができたからもう大丈夫って……」
「そう……じゃあ、よっすぃ〜も告白できるんだ…その人に」

貴方がまた遠くへ行ってしまう…

「うん。私の好きな人ってね……」

ご丁寧に名前まで教えてくれるの?
そんな事されたら、また嫉妬が心を支配する。
95 名前:岐路 投稿日:2002年08月26日(月)19時26分20秒

「……ごっちんだよ」
「…ぇ……」

重ねられた手を強く握られてたけど、驚きで温もりを感じることもできなかった。
きっと今日のデートのクライマックスは、話題の映画より素敵などんでん返し…

「こんな私じゃ…ダメかな?」

見つめられて言われた言葉に、顔をブンブンと横に何度も振る。

「アタシも…ずっと……好き…だった」

よっすぃ〜と瞳が溶け合い時間が止まりそうな気がした時、そっと唇を重ねられた…

よっすぃ〜の唇は…
優しくて
温かくて
甘くて

いつの間に顔を出したのか、銀色の月光がいつまでもスポットライトを演じてくれていた。
96 名前:ルパン4th 投稿日:2002年08月26日(月)19時35分10秒
>>85-95更新しました。

>83ROM様
>梨華ちゃんを思うとちょっと切ないっす。
さらに梨華ちゃんを切なくしちまった…
でも番外編でここのいしよしも書いてみたいっす

>84なな様
こちらこそ始めましてです。
吉澤さんはもっと格好良く後藤さんはもっと可愛く書きたいんですけど…なんせ文章力が無くて(^^;
これからもヨロシクです

97 名前:ROM 投稿日:2002年08月26日(月)21時43分24秒
恋愛に痛みは付き物ですよね。でも彼氏ができた・・
っていうのは、本当は梨華ちゃんの思いやりなのでは
ないでしょうか。
98 名前:ROM 投稿日:2002年08月28日(水)08時13分06秒
ごめんなさい。何も考えずに生意気なレスを
してしまいました。反省しに逝ってきます。
99 名前:告白 投稿日:2002年09月04日(水)02時20分35秒

「うそ……でしょ」

アタシの話を聞き終えると圭ちゃんは、ポカンとした顔で言った。
その少し間抜けな顔に、アタシは真剣に頷く。

「後藤、本当に卒業するの?」

圭ちゃんは少し身を潜め、誰にも聞こえないように小声で言った。
と言っても、ここは仕事が終わった後のビルの屋上。アタシと圭ちゃん以外誰もいない。

「まだ…迷ってるけど」

よっすぃ〜と付き合うようになって、アタシの『迷い』は大きくなった。
皮肉なものね…届かない時は嫌という程見つめられたのに、貴方に届いたら離れなくちゃいけないなんて。
100 名前:告白 投稿日:2002年09月04日(水)02時21分39秒

「何迷ってるの?ソロはあんたの夢でしょ?」
「うん…そうなんだけど……」

圭ちゃんはさっぱり分からないといった感じで言った。
この迷いをどう表現したらいいんだろう?
そもそも何にアタシは一番迷ってるんだろう?

モーニング娘。を卒業する事
よっすぃ〜と四六時中一緒にいれなくなること
よっすぃ〜を残してプッチモニの二人が辞めること

「後藤、もしかして吉澤のことで悩んでる?」

頭の中で話す事を整理しているうちに、圭ちゃんに先を読まれてしまった。
降参するように、アタシは頷いてみせる。
101 名前:告白 投稿日:2002年09月04日(水)02時22分53秒

「…やっぱりね」

フェンスに寄り掛かりながら、圭ちゃんは空を仰いだ。
夕焼けの空に一番星がひっそりと姿を出している。

「圭ちゃんは心配じゃないの?…よっすぃ〜のこと」
「プッチとしての吉澤のこと?」
「…うん」
「そうね……心配と言えば心配だけど、心配じゃないと言えば心配じゃないわね」
「そんな!」

酷いよ圭ちゃん、圭ちゃんはもっと優しい人だと思ってのに!

「違うわよ後藤、そういう意味じゃないわ」

アタシの怒りが顔にでたのか、圭ちゃんはあっさりと否定した。
102 名前:告白 投稿日:2002年09月04日(水)02時23分51秒

「私が言いたいのはね、私達が抜けても吉澤はちゃんとやっていけるくらい成長したと思うから、心配じゃないってことよ」
「…そっか」
「それにね、これからの吉澤は私達が辞めてプッチのリーダーをやる方が伸びるかもしれないって私は思う」
「…うん」
「それとも何、自分がいなきゃプッチはダメになるなんて自惚れてた?」
「そんなことないもん!」

圭ちゃんの意地悪な言い方に、強く反論したが心のどこかでチクリと痛んだ。
本当は自分がよっすぃ〜を支えてるって自惚れてたのかもしれない…
いや、そう思うことで自分を支えていたのかもしれない…

「それじゃあいいじゃない、安心して卒業すれば。私は吉澤がどう新しいプッチを引っ張って行くかを楽しみに卒業するわ」

私の反論に微笑みながら、今度は優しい口調で圭ちゃんは話す。
103 名前:告白 投稿日:2002年09月04日(水)02時24分59秒

「うん…だけど……」

圭ちゃんのお陰でプッチのことは安心できた。でも、もう一つ不安なことがある。

「何?まだ、なんかあるの?」

そんなアタシに圭ちゃんは怪訝そうに顔を覗きこんでくる。

「圭ちゃん…誰にも言わないでね」
「私は口固いわよ」
「その…私とよっすぃ〜……付き合ってるの…」
「えぇぇ〜〜〜!!」

圭ちゃんは絶叫すると、口を金魚の様にパクパクさせた。

「だから、ソロになったら会えなくなるし……ダメになっちゃったらどうしようって…」

圭ちゃんはしばらく呆然と金魚になっていたが、やがて深い溜息をついた。
104 名前:告白 投稿日:2002年09月04日(水)02時28分47秒

「ハ〜ッ……いつのまにそういう関係になってんのよ。聞いてないわよ、まったく」
「……ごめん」

圭ちゃんはもう一度溜息をつくと、少し呆れた様に話し始めた。

「あんたさぁ、さっきから吉澤に失礼じゃない?」
「えっ?」
「あんたにとって吉澤は、その程度の信頼度しかないの?」
「…そんな」
「もっと信じてあげなさいよ。仕事仲間としても恋人としても」
「信じてる…もん」
「だったらあんたが卒業したって、吉澤の気持ちが変わらないって分かるはずよ?」
「…うん」

言い方はキツイけどそれは圭ちゃんの優しさで、圭ちゃんの言葉一つ一つがアタシの中の不安を埋めて行く。

「確かにね、あんたの卒業を知って一番動揺するのは吉澤かもしれない…でもね、この2年半であんた達が築いてきた関係はそんな事じゃ壊れないんじゃない?」
105 名前:告白 投稿日:2002年09月04日(水)02時29分51秒

アタシ達が築いてきた関係――
始めは先輩と後輩
次第に親友になって
時にはライバルだったこともあって
辛さを分かち合った戦友でもあって
そして今は恋人……とても大切な人

そうだ、アタシ達たくさんの関係を二人で築いてきたんだ。
その中で新しいよっすぃ〜を見つける度にアタシは恋に落ちて行ったんだ…

アタシの中で溢れていた不安がスーッと引いていくのがわかった。

「そうだよね…アタシ何でもっとよっすぃ〜のこと信じてあげられなかったんだろう……」
「後藤、誰でも大きな分岐点に立った時は回りが見えなくなるものよ。」

そう言って、圭ちゃんはポンポンと背中を叩いてくれた。
106 名前:告白 投稿日:2002年09月04日(水)02時31分02秒

「ねぇ、圭ちゃんは何で卒業を決意したの?」
「そうね……自分を見失いそうで…怖かったのかもしれない」
「…え?」
「確かに今のモーニング娘。にいれば曲もそれなりに売れるし、仕事も入ってくる」
「うん」
「加入した当時はねモーニング娘。を成功させるのにがむしゃらだった…」
「うん」
「だけどさ最近分からなくなったのよ……自分から『モーニング娘。』っていう肩書きを取ったら何が残るだろうって…」
「………」
「だから、『モーニング娘。』であるまえに『保田圭』でいたいから卒業を決意したのよ…」
「…そっか」

やっぱり圭ちゃんは大人だなと思った。
だけど、きっと根本的なことはアタシも一緒なんだ…
アタシも13分の1でいるより『後藤真希』としてやれる事をやっていきたい。
やっぱりアタシはソロでやりたいんだ……
107 名前:告白 投稿日:2002年09月04日(水)02時32分00秒

「ありがとう圭ちゃん。アタシ、ソロで頑張ってみる!」
「うん。 頑張れ……じゃなくてお互い頑張ろう、か」
「あは、そうだよ圭ちゃん」

差し出す圭ちゃんの手を、アタシは強く握り返した。
仕事も恋も手に入れようなんて虫が良すぎると他人は言うかもしれない……だけど多くのことを望むのは決して悪い事じゃない。きっとそれが夢を叶える原動力になるから。

その夜、アタシは事務所に卒業とソロ活動の意思を伝えた。
気がかりなのは、よっすぃ〜に卒業の話しをどう切り出すかだった。
108 名前:告白 投稿日:2002年09月04日(水)02時45分12秒
>>99-107更新しました。

>97>98ROM様
>ごめんなさい。何も考えずに生意気なレスをしてしまいました。
生意気だなんてとんでもない!鋭い指摘をありがとうございました。
正直あれはこじ付けぽかったかなと自分も反省してます。
これからも、正直な感想をもらえると勉強になるんでよろしくお願いします。

109 名前:ROM 投稿日:2002年09月04日(水)16時14分33秒
御心遣いありがとうございます。
何気ないレスが作品を乱してしまうこともありえますので
今後は気を付けます。でも、それ位この作品には無心にな
れる引き込まれる魅力があります。
更新楽しみにしています。
110 名前:告白 投稿日:2002年09月11日(水)23時39分42秒

コンサートが終わって、その日泊まるホテルに向かうバスの中は本当に静かだ。聞こえるのは皆の寝息だけ。
今日のバスの中も12人の寝息だけが占領している。そう、今起きてるのはアタシだけ。

隣では、よっすぃ〜が気持ち良さそうに寝ている。
普段はカッコイイのに寝顔はあどけなくてかわいいんだから。繋いだ手が時々ピクッと動く。きっと夢でも見てるんだ。
よっすぃ〜、その夢にアタシは登場してますか?

よっすぃ〜の寝顔を見ながら、そんな事を考えつい口元が緩んでしまう。
しかし視線を窓の外に移し流れる景色を見ていたら、自然と微笑みが溜息に変わった。
111 名前:告白 投稿日:2002年09月11日(水)23時40分47秒

卒業を決めてから10日、アタシは今だよっすぃ〜にその事を言い出せずにいた。
こないだ圭ちゃんが言ったように、アタシが卒業したってよっすぃ〜の気持ちが変わらないことは信じてる。
だけど……心の奥で不安でいっぱいのもう一人のアタシがいる

原因は分かってる……
アタシ達はまだ恋人として結ばれてない。
二人きりになれば、抱きしめてもくれるしキスもしてくれる。
だけど、よっすぃ〜の指がアタシのラインを辿ることはない。

べつに、一人ガッついてる訳じゃない
ただ……確かな絆がほしい。
何があっても離れることはないと、痛いくらい抱きしめて貴方の気持ちを全身で感じさせてよ。
でないとアタシが卒業したら、何かが壊れてしまいそうで……不安だよ。
112 名前:告白 投稿日:2002年09月11日(水)23時44分26秒

「着いたから、皆起きてー!!」

いつのまに起きたのか圭織の声が、アタシの思考を中断させた。
にわかにバスの中が騒々しくなる。

「よっすぃ〜起きて、着いたよ」
「……ん……あれ?…ここどこ?」

寝ぼけてるのかよっすぃ〜は目を擦りながら、キョロキョロしている。

「もう、今日泊まる所に着いたんだってば」
「あっ、そっか」

やっと記憶が繋がったのか、よっすぃ〜は納得したように頷いた。

「うわ〜今日泊まるとこって旅館なんだー!」
「温泉あるかなぁ〜」
「なんか、何も無い所だねぇ」

バスを降りたメンバーが、次々に好き勝手な感想を述べている。

最後にバスを降りたアタシも、辺りを見渡して驚いた。
敷地の広さが取柄の純和風の旅館が、深い夏山に囲まれて佇んでいる。
普段は現地市内のホテルがほとんどだから、こういう所に泊まるのは珍しい
街のノイズに代わって、耳に入ってくるのはうるさいくらいの蝉時雨だった。
113 名前:告白 投稿日:2002年09月11日(水)23時46分06秒
*
114 名前:告白 投稿日:2002年09月11日(水)23時47分19秒

「修学旅行みたい」とはしゃぐ加護や辻達に、旅館から花火の差し入れがあったものだからそのテンションは一斉に高まった。
暗くなるのを待って、夕食もそこそこにメンバー全員が外に集まって花火大会となった。

「こら、辻と加護!花火一人占めしないの!」
「ああ、その花火なっちがやりたいやつだー」
「早い者勝ちなのれす〜」

「ごっちん、花火何がいい?」

そんな花火争奪戦を笑いながら見ていたら、隣で一緒に笑ってたよっすぃ〜が訊いてきた。

「う〜ん。やっぱ線香花火かな!」
「OK!取って来るから待ってて!!」
「えっ、よっすぃ〜大丈夫?」
「大丈夫だって!まかせとけ!」

そう言ってよっすぃ〜はガッツポーズをすると、争奪戦の中に紛れていった。
115 名前:告白 投稿日:2002年09月11日(水)23時48分10秒


「ごっちーん!とってきたよ〜〜!!」

しばらく争奪戦を繰り広げた後、よっすぃ〜は片手に戦利品を持って戻ってきた。
そして、その戦利品を誇らしげにアタシに見せた。
よっすぃ〜の手の中には、くたびれた線香花火が6本握り締められている。

「えらい、よっすぃ〜!」
「へへッ、ごっちんのためならね頑張りますよ」
「あはっ、よっすぃ〜早くやろうよ」
「ん、でもさここじゃ皆の花火で線香花火キレイに見えないよ?」

そう言って、よっすぃ〜は意味ありげにアタシを見た。
その視線に隠された企みはもちろん分かってる。
お互い悪戯をする子供のように笑い合うのが、作戦決行のサイン。

アタシ達は気づかれないようにそっと皆の輪から離れて、手を繋いで闇に隠れた。
116 名前:告白 投稿日:2002年09月11日(水)23時49分47秒

離れたといっても旅館をはさんで、皆がいる前庭から裏庭に周っただけのこと。
それでも、皆のはしゃぎ声はここまで届いてはこない。すぐ側を小川が流れているのか、川のせせらぎだけが、暑い夜に涼を運んでいた。

「よっすぃ〜暗いね。ここ」

旅館から洩れるわずかな灯かりだけが、かろうじで足元を照らしている。
アタシは少し心細くなって、よっすぃ〜の腕に寄り添った。

「ん、恐い?大丈夫だよ、ごっちん」

そう言われたかと思ったら、いきなりよっすぃ〜に抱きしめられた。
急な展開でアタシは戸惑いを隠せない。

「ちょっ、よ、よっすぃ〜!?」
「はぐれないように…ね?」
「ヘヘ……うん」

嬉しくて照れ笑いしかできなかった。
姿がおぼろにしか見えない分、よっすぃ〜の温もりはいつもよりずっと心地良く伝わってくる。
そして、よっすぃ〜の探る様な唇にそっと捕まった。
このまま、この闇に二人で溶け込んでしまいたい……
117 名前:告白 投稿日:2002年09月11日(水)23時51分58秒

「……花火…しよっか」

照れ臭そうに唇を離して、余韻を破ったのはよっすぃ〜だった。

「…うん」

アタシもそっとよっすぃ〜から体を離した。
目が慣れてきたのか、さっきよりも周りがよく見える。

「はい、ごっちんの分」
「ありがと」

よっすぃ〜が線香花火を3本渡してくれた。
それから二人しゃがみこんで、旅館のマッチで一本目に同時に火を点けた。

チカチカと儚い光を放つ線香花火に照らされるよっすぃ〜の顔はとてもキレイで、アタシは花火よりもよっすぃ〜に見惚れてしまいそうになる。
118 名前:告白 投稿日:2002年09月11日(水)23時53分24秒

「あっ、落ちちゃった…」

ポトリと終わりを迎えた線香花火をアタシは名残惜しそうに見詰めた。

「ハハ、ごっちんまだあるから」

よっぽど寂しそうに見てたのか、よっすぃ〜は笑いながら2本目に火を点けてくれた。

「そうそう、ごっちん私さ昨日夢見たんだ」
「夢?どんな?」
「プッチモニの新曲が出る夢でさー。それがウケるから、なんか演歌みたいな感じでさー。もうごっちんと、圭ちゃんと3人で『なんだよこの曲』って爆笑してる夢」

夢を思い出して笑いながら話すよっすぃ〜に、アタシの心はズキリと痛む。

「あっ、ヤバっ落としちゃった。」

よっすぃ〜が笑う度に線香花火がユラユラと揺れるから、まだ大きかった芯が落ちてしまった。

どうしよう今卒業のこと話そうかな……
今なら誰もいないし、チャンスかも……
119 名前:告白 投稿日:2002年09月11日(水)23時54分10秒

「早く本当にプッチの新曲出したいねー。…ごっちん?」
「よっすぃ〜……アタシね…」
「んー?どしたー?」
「驚かないでね?」
「えーっ?何、何?早く言ってよー」
「アタシ……今度の誕生日で…モーニング娘。卒業……するの」
「………ぇ?」

チカチカと線香花火の音だけが沈黙を支配していた。
花火の光を仲間と間違えたのかホタルが一匹迷い込んで来て、線香花火に嫉妬する様に我もとばかりに光って消えるのを見て、アタシはボンヤリと夏の終わりを感じていた――
120 名前:ルパン4th 投稿日:2002年09月12日(木)00時01分59秒
>>110-119更新しました。

>109ROM様
毎回丁寧なレスありがとうございます。
>無心になれる引き込まれる魅力があります。
こんな駄文に魅力を感じてくれてありがとうございます。(^^ゞ
がんばって更新しますよー!(w
121 名前:ROM 投稿日:2002年09月12日(木)00時07分38秒
>がんばって更新しますよー!(w
こちらもがんばって応援します。(リアルタイムで・・
駄文だなんてとんでもない!実は今読んでいて既に
涙目になってマス。うぅ〜っ ごっちん・・(涙
122 名前:名無し娘。 投稿日:2002年09月13日(金)12時30分56秒
ああ〜、遂に後藤さん言っちゃいましたか…
幸せって長くは続かないものなんでしょうかね…(遠い目)
更新ガンバってくださいね、楽しみに待っていますので。
123 名前:告白 投稿日:2002年09月22日(日)00時26分11秒

線香花火の火種が落ちて地面の上でまだオレンジ色に燻っている間も、アタシ達の間に言葉はなかった。

「ハハ……そっか…よかった、じゃん……夢…叶って……サ」
「…よっすぃ〜」

俯いて垂れる髪のせいで、やっと喋ってくれたよっすぃ〜の表情は分からない。
アタシはこの後の言葉が見つからず、ただ意味も無く名前を呼ぶのが精一杯だった。

「…おめ……でとう」
124 名前:告白 投稿日:2002年09月22日(日)00時28分13秒

よっすぃ〜アタシが欲しいのはそんな飾りの言葉じゃないよ?
よっすぃ〜どんな言葉でもいいから貴方の本心を聞かせてよ
そして……いつもの様にギュッと抱きしめて

「よっすぃ〜…アタシが卒業しても……アタシ達何も変わらないよね?」
「……あたりまえ…じゃん」

よっすぃ〜のワンテンポずれた掠れた答えが、すでにアタシ達の距離を離しているように思えて涙が出そうになる。

「戻ろうよ……ごっちん」
「…うん」

来た時のように手を繋ぐこともなくアタシ達は来た道を辿った。
怒っている様にも泣いている様にもとれるよっすぃ〜の背中を、アタシはただ黙って追うことしかできない。
125 名前:告白 投稿日:2002年09月22日(日)00時29分12秒

前庭に戻るとちょうど花火大会もクライマックスだったのか、皆が円をつくって眩い線香を噴出す花火をはしゃぎながら楽しんでいた。
暗闇と静寂に慣れていたせいか、それがまるで異空間の様な錯覚に陥る。

アタシとよっすぃ〜はその輪の中に入ることも二人で外れることもできずに、ただそれぞれの想いを抱えながら中途半端に佇んでいることしかできなかった。
126 名前:告白 投稿日:2002年09月22日(日)00時30分39秒


その晩の部屋割りは、いわゆる中学生組と年上組の二つに分かれた。7人という大部屋に今夜ばかりは救われた気持ちになる。

「みんな寝る場所どこがいい?」

2列に所狭しと並べられた布団を眺めて、陣地取り。

「私、真ん中がいいですぅ」

そう言って一番に真ん中の布団にダイブしたのは梨華ちゃんだった。

「じゃあ、私は石川の隣でいいわ」
「なーんか、圭ちゃん変な事考えてんじゃないの〜?」
「バカ言ってんじゃないわよ!」
「はいはい、じゃあオイラも石川の隣にし〜よおっと」

圭ちゃんに茶々を言いながら、やぐっちゃんも梨華ちゃんの隣の布団に潜りこんだ。
これで3枚に並べられた1列は全てうまった。
あとは4枚に並べれたもう1列の陣地取り。
127 名前:告白 投稿日:2002年09月22日(日)00時33分01秒

正直、今夜はよっすぃ〜と隣になるのは気まずい。

「あぁ私、端っこいいっすか?」
「ん?よっすぃ〜端でいいの?」
「ええ、なんか端の方が落ち着くんですよ」

なっちの質問に軽く答えると、よっすぃ〜はさっさと一番隅の布団に入っていった。

「じゃあごっつぁん、よっすぃ〜の隣にいけば?」
いつもなら嬉しいはずの、なっちの気づかいに今は素直に喜べない。
128 名前:告白 投稿日:2002年09月22日(日)00時34分28秒

「ううん。アタシも端でいいや。アタシ寝相悪いし…アハッ」
「そう…?」

少し不審そうな顔をするなっちを尻目にアタシも、布団に潜りこんだ。心なしかいつもより布団の中がヒンヤリと感じる。

結局アタシとよっすぃ〜の間になっちと佳織が寝る形で、無事陣地取りは終わった。
皆疲れていたのか、電気を消して数分もたたないうちに寝息が聞こえてきた。

だけどアタシは眠れなかった。
よっすぃ〜アタシの卒業のことどう思ってるんだろう…
やっぱり言わなきゃよかったのかな…
アタシ…こんな気持ちのまま卒業していいのかな
129 名前:告白 投稿日:2002年09月22日(日)00時36分26秒

暗闇の中では気が弱くなるのか、アタシの涙がそっと枕に滲んだ。
加護達の部屋はまだ寝ていないのか、笑い声が時折聞こえてくる。
寝つけなくて、何度も寝返りをうつ。

そして、反対側の端からも寝返りをうつ音が幾度となく聞こえてきた。
よっすぃ〜も起きてるんだ。
よっすぃ〜もこの天井を睨みながら、何か考えてるのかな?

両端から寝返りの音が絶えなかった。
アタシ達は言葉を交わすこともなく、一番中ただ暗闇の中に戸惑いを徨わせていた――
130 名前:告白 投稿日:2002年09月22日(日)00時47分24秒
>>123-129少しですが更新しました。

>121ROM様
おっ!リアルタイムで読んでくれてたんですね。嬉しいな♪
皆さんのレスが何よりの更新する励みになるんで、見捨てずに応援してください(w

>122名無し娘。様
はい、ついに後藤さん言っちゃいました。
これから二人の恋はいかに!?って感じですかねぇ(w

それにしても『吉澤後藤推進委員』かっこ良すぎです。

【訂正】
>128 佳織→圭織
>129 一番中→一晩中
です。読みにくくしてしまい申し訳ありませんでした。m(_ _)m
131 名前:ROM 投稿日:2002年09月22日(日)02時12分26秒
うすうす感じてはいたんだろうけど
いざ本人から告白されてみると、
覚悟はしていたつもりでもやっぱりダメージが大きいのでしょうね。
132 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年09月29日(日)21時39分35秒
初めから一気に読ませた頂きました。

先週のハロモニで、ゲームの後、走ってよっすぃ〜に抱きついて行った
ごっちんのことを思い出して、切なくなりました。
現実とオーバーラップして号泣です。
133 名前:本心 投稿日:2002年10月06日(日)01時08分26秒

あの日以来、よっすぃ〜の態度がよそよそしい。

最初はぎごちなくても二人でいる時間があった。
けれどメンバー全員にアタシと圭ちゃんの卒業が告げられると、アタシの周りは慌しくなって……
結局、ゆっくり話す事もできずに二人のミゾは深まるばかりだった。


『絶対、今日こそよっすぃ〜と二人で話す!』

仕事が終わった後、心の中で意思を固めて足早に廊下を歩く。
134 名前:本心 投稿日:2002年10月06日(日)01時09分36秒

「ごっつぁ〜〜ん!今日オイラと一緒に夕飯食べない?」
「あたしも行きたいなー」

そんな意気揚揚と歩くアタシにやぐっつぁんと圭織が話しかけてきた

「ごめん!今日はダメなんだ…」
「え〜、ごっつぁんもうすぐ卒業しちゃうから一緒に食べたいのにぃ」
「そうだよー」
「ごめん!!今度埋め合わせするから」
「うん。まぁ用事があるならしょうがないね」
「ごめんね……ところで二人ともよっすぃ〜知ってる?」
「よっすぃ〜?オイラは知らないなぁ…圭織知ってる?」
「えっとね、さっき楽屋で一人で何かブツブツ言いながらメモしてたよ」
「マジで?朝も一人で同じことやってたよ」

圭織の言葉に驚いた様に、やぐっつあんが言った。
よっすぃ〜……いったい何してるの?
135 名前:本心 投稿日:2002年10月06日(日)01時11分00秒

「吉澤が何してるか知りたい?後藤」

アタシの疑問を読み取ったように、圭ちゃんが後ろから声をかけてきた

「圭ちゃん、よっすぃ〜が何してるか知ってるの?」

アタシの問いに圭ちゃんは小さく頷いた

「吉澤ね……アンタの卒業の時のコメントずっと考えてるのよ」
「…え?」

思いもよらない答えに困惑の色を隠せない。

「ほら、マスコミが必ず『後藤さんの卒業をどう思いますか?』とか『卒業する後藤さんへ一言』とか聞いてくるでしょ?」
「うん」
「その時の言葉考えてるんだって。『自分は口下手だから今から考えとかないと上手く言えないんですよ』なんて笑いながら言ってたわよ」
136 名前:本心 投稿日:2002年10月06日(日)01時12分12秒

うそ……
そんなの全然知らなかった
…よっすぃ〜

「ハハ、吉澤らしい」
「ほんと、ほんと」

一緒に圭ちゃんの話を聞いてたやぐっつぁんと圭織は笑ってた。

だけどアタシには笑えない……だって
それが、よっすぃ〜の精一杯の思いだって分かるから……

「ごめん!アタシよっすぃ〜の所行ってくるね!」
「えっ!?あっ、ごっちん」

いきなりのアタシの行動に戸惑う3人を残して、アタシは楽屋に向かって走った。
137 名前:本心 投稿日:2002年10月06日(日)01時13分15秒

「よっすぃ〜!!」

勢いに任せて楽屋のドアを開けると、よっすぃ〜が驚いて目を丸くしていた。

「ど、どした?…ごっちん?」

そんなよっすぃ〜にアタシは、ずんずんと歩み寄って行く

「よっすぃ〜…アタシ……卒業しても、なかなか会えなくても…ずっとずっとよっすぃ〜が好き」
「……ごっちん」

アタシは何も考えられずに、ただよっすぃ〜に抱きついてた。
よっすぃ〜もギュッって抱きしめ返してくれて……
その腕の強さが心地良くて涙が出そうになる
138 名前:本心 投稿日:2002年10月06日(日)01時14分16秒

「ごっちん……私、最初に卒業の話聞いたとき不安になった」
「うん」
「ごっちんは歌もダンスも上手いし、ソロでもCD出してるし……いつも私はごっちんを目標にしてたんだ」
「そんな、アタシは――」
「ごっちん…聞いて」

優しい眼差しで、言葉を遮られてしまう

「それで、ごっちんが卒業するって聞いて……ごっちんがどっか届かない所に言っちゃう気がして…置いて行かれるみたいで……恐かったんだ」
「…ん」
「でも気づいたんだ……不安になったり、恐がってる場合じゃないって。大事な物を見失わない様に追いかけなきゃいけないって…」
「…よっすぃ〜」
「ごっちん……好きだよ。どんなに離れてもごっちんの心だけは放さない。絶対に……放したくない」
139 名前:本心 投稿日:2002年10月06日(日)01時15分29秒

そう言ってよっすぃ〜は優しくキスしてくれた。
久しぶりに感じるよっすぃ〜の唇はすごく暖かかった。

その日の帰り道は、一つ先の駅までずっと手を繋いで歩いた。
駅についても二人ともなかなか「ばいばい」が言えなくて
お互いの夢の話をたくさん話して過ごした。
140 名前:本心 投稿日:2002年10月06日(日)01時17分15秒


―よっすぃ〜―


『はーい、写真撮るよっ!!』
『あぁ!私目つぶっちゃったもう一枚!』
『もうフィルムないよん』
『えぇ〜マジで?』
『キャハハハ』


―いっぱい―


『もう辻、食べ過ぎだって!』
『だって、おいしいのれす〜』
『アハハ、辻口にクリームついてるよ』
『よっすぃ〜とごっちんにもつけてやるのれす!』
『うわぁ、やめろって!』
『アハッ、やだぁ〜』
141 名前:本心 投稿日:2002年10月06日(日)01時18分40秒


―いっぱい―


『保田さーん、お肉の脂身食べて下さ〜い』
『石川、キショいぞ!』
『えー?やんっ、よっすぃ〜足擦りつけてこないでよぉ』
『してねーよ!』
『だからキショいって石川ー』
『矢口さん、ひどーい!』
『アハハハハ』


―今の思い出を
    つくろうね―
142 名前:ルパン4th 投稿日:2002年10月06日(日)01時33分16秒
>>133-141更新しました。

>131ROM様
>覚悟はしていたつもりでもやっぱりダメージが大きいのでしょうね。
そうですね。現実でもかなりダメージを受けたのではと察しています。
でもそれをバネにがんばってもらいたいです。よっすぃ〜がんばれ!

>132ひとみんこ様
こんな駄文を一気によんで下さってありがとうございます。
>ハロモニで、ゲームの後、走ってよっすぃ〜に抱きついて行ったごっちん…
あれは、かなり萌えました(w
本当に二人は仲がいいんですね♪よしごま最高

さて、現実には後藤真希さん卒業してしまいましたが、小説内では卒業まであと少しです。
たぶん次回あたりがラストになりますので、もう少しお付き合い下さい。
143 名前:ROM 投稿日:2002年10月06日(日)08時31分58秒
悲しい別れじゃないんだって自分に言い聞かせても、やっぱり
涙が止まらない。あの子達はどれだけ涙を流したのだろう。
いつも気丈なよっすぃ〜だから、影での涙も人一倍多いのかな。
144 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月06日(日)09時28分55秒
小説と現実を混同するのは、どうかなと思いますが
リアルタイムはどうしてもオーバーラップして、つらいですね。
ごっちんは本当によっすぃ〜のことを信頼しているのでしょうね。
TV画面の瞬間的なショットでも、ひしひしと伝わります。
現実の世界でも、形こそ違え、同じような心のやり取りが有るのでしょう。

とまぁ、ここまでは私の妄想として
卒業のコメントを一生懸命考えているよっすぃ〜、切ないです。
強くなくってもいいんだよ、ぐずぐずになって甘えていいんだよ。
そんな気持ちでいっぱいです。
145 名前: 投稿日:2002年10月16日(水)01時07分09秒

泣かない
泣きたくない
笑顔で卒業したい

ずっとそう思ってきたけどいざ最後のステージに立つと、いろん思い出が蘇ってきちゃって瞼が熱くなる。

合格者発表の時つんくさんの口から自分の名前を言われた日のこと
緊張で膝をガクガクさせながら、メンバーと始めて顔を合わせたこと
ダンスを覚えきれずに泣き出してしまったこと
プッチモニを結成した日のこと
卒業するメンバーの背中を涙で見送ったこと
始めて後輩と呼べるメンバーを迎えた時のこと
そして……よっすぃ〜と出逢ったこと

数え上げたらきりがないほどのたくさんの大切な思い出達

あんなにきつかった練習も
休憩時間に話しこんだ屋上も
疲れて眠ったロケバスも

今ではなにもかもが―――愛しくてたまらない
146 名前: 投稿日:2002年10月16日(水)01時08分16秒

そして今、モーニング娘の後藤真希に幕が下りた
まだ客席からはお客さんの声援が鳴り止まない
アタシは数え切れないほどの花束を両手に抱えて、コンサートの余韻に酔っていた。

やぐっつぁんや圭ちゃんが泣いてくれてる
けれどアタシといえば、まだ卒業したという実感がなくて……

明日も楽屋のドアを開ければ、12人がいそうで
そして何の違和感もなくアタシもそこで笑っていそうで……

だけど違うんだよね。
明日からは楽屋もロケバスも食事も、全部一人。
もしモーニング娘と一緒に仕事をしても、楽屋は別。

やっぱり――寂しいよ
147 名前: 投稿日:2002年10月16日(水)01時11分32秒

けれどそんな寂しさに浸る暇もなく、コンサートが終わった後のスケジュールは慌しかった。
ホテルでパーティを開いてくれたけど事務所のおえらいさんへの挨拶周りばかりで、メンバーと話すことはできなかった。

そしてやっと全てから開放されて、ホテルの部屋に戻れたのは夜中近くだった。
少し熱めのシャワーで汗を流し、ベッドにひっくり返る。

目を瞑れば、まだ耳に残った『ごっちんコール』が聞こえてくる。
体は疲れているはずなのに、テンションが高ぶって容易に寝つけそうになかった。

その時、ドアがノックされた。
ドアを開けると、よっすぃ〜が立っていた。
148 名前: 投稿日:2002年10月16日(水)01時13分27秒

「ごめん、起こした?」
「ううん。眠れないでいたとこ」
「そっか」
「うん。よっすぃ〜入ってよ」

ホテルの廊下で立ち話も何だから、よっすぃ〜を部屋に招いた。
そういえば、今日よっすぃ〜と二人きりになるの始めてかも。

「今、紅茶でも入れるね」

紅茶と言っても、部屋に備えられているティーバックだ。
アタシは簡易ポットに水を注ぐと電源を入れた。

「…ごっちん」

ティーバックを袋から取り出していたら、急に掠れた声で名前を呼ばれて後ろから抱きすくめられた。
149 名前: 投稿日:2002年10月16日(水)01時14分32秒

「よ、よっすぃ〜?」
「ごっちん……卒業おめでとう」

ギュッと抱きしめながら言うよっすぃ〜の物言いは、すごく優しくて穏やかだった。
その言葉でアタシは始めて『卒業』を実感した。

「ありがと」

アタシも回されたよっすぃ〜の腕にそっと触れる。

「それから……17歳の誕生日おめでとう」
「へへ、ありがとう」

卒業、卒業ですっかり薄れていたアタシの誕生日をよっすぃ〜がちゃんと憶えていてくれたことが嬉しい。
150 名前: 投稿日:2002年10月16日(水)01時15分22秒

「何にしようか迷ったんだけどさ……これプレゼント」

そう言ってよっすぃ〜は包みを差し出した。

「ありがとう。開けていい?」
「ん」

よっすぃ〜の短い返事を待って、包装紙が破れない様にそっとラッピングを解いていく。

「これ……」

中から出てきたのは、アルバムだった。

「指輪とかピアスとかいろいろ迷ったんだけど……今のごっちんに一番ふさわしいプレゼントだと思ったんだ。…気に入らなかったかな?」
「そんなことない。すごく…嬉しいよ」
151 名前: 投稿日:2002年10月16日(水)01時16分27秒

ゆっくりとアルバムを捲ってみる。
そこには出逢った頃からつい最近の写真までが丁寧に順を追って貼ってあった。
どれも二人で撮った写真。

出逢った頃の少しよそよそしい感じの写真
何が楽しかったのかバカ笑いしてる写真
わざと変な顔をして撮った写真
腕を組んで撮った幸せそうな写真

どの写真も二人とも幸せそうで楽しそうで……
その全てがアタシがモーニング娘にいた時間で……
そして――貴方と共に過ごしてきた確かな証
152 名前: 投稿日:2002年10月16日(水)01時17分49秒

「あれ?」

ページを3分の2くらい捲ったところで写真は途切れていた

「よっすぃ〜、続きは?」
「続きは……これから作っていこうよ」
「よっすぃ〜」
「離れても、二人の時間をここに刻んでいこうよ。…ずっとずっと」
「うん」
「じゃあ、さっそく撮ります?」

そう言ってよっすぃ〜はどこに隠してたのか、ポラロイドカメラを取り出した。

「アハッ、うん撮ろう!」

よっすぃ〜に肩を抱かれて、17歳最初の二人だけの記念写真を撮った。
そして、二人一緒に真っ白なアルバムのページにその写真を添える。
153 名前: 投稿日:2002年10月16日(水)01時19分02秒

「ねぇ、よっすぃ〜」
「ん?」

ふとアタシの頭に疑問が一つ湧いた。

「よっすぃ〜、考えてたコメントちゃんと言えた?」
「えっ?何で知ってるの?」
「へへ、圭ちゃんに聞いちゃった」
「ったく…おしゃべりなんだから」

髪を掻き揚げるのはよっすぃ〜が照れてる時のクセ

「ねぇ?言えた?」
「う〜ん。結局あんまし言えなかったかも…」
「じゃあ、今言ってよ」
「え?今…ここで?ちょと待ってよ…」
「いいから!いくよ、よっすぃ〜」

動揺するよっすぃ〜にアタシは拳をマイクに見たててマスコミの口調で質問をする。
154 名前: 投稿日:2002年10月16日(水)01時20分44秒

「吉澤さん、後藤さんの卒業をどう思われますか?」
「そーですねぇ……最初は驚いたし寂しかったですけど、今では心から『おめでとう』って言えますね。彼女の夢が叶ったわけですから」
「後藤さんと保田さんが抜けて新生プッチモニは吉澤さんが引っ張って行くことになるんですが…どう思われますか」
「うーん、二人から教わったことを継承しつつ、新しいプッチモニの色を早く出せるように頑張っていきたいですね」
「二人から教わったこととは?」
「歌とかダンスとか、たくさんありますね。でも一番は絆の大切さですね」
「絆…ですか?」
「えぇ、信じることの大切さを教えてもらいました。特に後藤さんに…」

そう言ってよっすぃ〜はアタシを抱き寄せた。
そしてアタシの耳元でそっと囁いた。

「今なら自信をもって言えますね、『吉澤ひとみはどんなに離れていても後藤真希を信じ、愛し続ける』と」
「…よっすぃ〜」
「ごっちん……大好きだよ」

「アタシも」と言う前によっすぃ〜の唇に捕まってしまった。
155 名前: 投稿日:2002年10月16日(水)01時22分20秒

その夜、アタシはそっとよっすぃ〜の腕の中で少女を脱いだ。
始めて知った世界は甘くて、激しくて……
よっすぃ〜の温もりや眼差しや吐息……その全てがアタシを『愛してる』と言っていた。

そして朝まで、アタシ達はアルバムを見ながら想い出話に華を咲かせては笑いあった。
156 名前: 投稿日:2002年10月16日(水)01時23分33秒


きっとどんなに辛かったことでも、目を細めて懐かしめるのはそこに不安がないから。
不安はいつも未来にばかり付きまとって離れない。

仕事も恋も全てが行方知れずで……弱いアタシは何度も立ち止まっては泣いてしまうだろう。
でも大丈夫、これからもずっと貴方が隣にいてくれるから……
幾度となく訪れる季節を貴方と肩を並べて感じていきたい。

そう、今確かに言えることは……

きっとここからが――アタシ達の第二章


―Fin―
157 名前:ルパン4th 投稿日:2002年10月16日(水)01時43分42秒
>>145-156更新しました
以上で『行方知れずの恋』完結です。
ここまで目を通してくれた方、本当にありがとうございました。

>143ROM様
>いつも気丈なよっすぃ〜だから、影での涙も人一倍多いのかな。
そうですねもちろんブラウン管を通してでの推測に過ぎませんが、ごっちん同様よっすぃ〜も人前で涙を見せるのを嫌がるタイプなのかなと思ってます。
そんな彼女だからこそ影の涙を無駄にせず、これからも笑顔で頑張ってもらいたいです。

更新毎のレスありがとうございました。とても励みになりました。

>144ひとみんこ様
>現実の世界でも、形こそ違え、同じような心のやり取りが有るのでしょう。
もちろん現実の二人に恋愛感情があるとは思えませんが、去る側去られる側どちらも胸の痛みはあったでしょうね

こんな駄文を最後までお付き合い頂きありがとうございました。

158 名前:ルパン4th 投稿日:2002年10月16日(水)02時02分04秒
【あとがきもどき】

後藤真希さんの卒業を知って、これを上手く小説に織り込めないかと考えたのが格闘の始まりでした。
全くのフィクションの中に真実を織り込む。文才も無いくせにすごい事を思いついたなと苦笑してしまいます。
構成の甘さや文章表現など反省すべき点はたくさんあるのですが、何とか完結することができて、内心ホッとしています(w

さて金板の方で今回は「いしよし」にチャレンジしてるのですが、やっぱり自分は「よしごま」好きなのでスレサイズも余っていることだし引き続きこちらで『よしごま短編』を書いていきたいなと思ってます。
ですから、どうかまだこのスレを見捨てないでやって下さい(w

最後になりましたが、読んで下さった方本当にありがとうございました。

Spesial Thanks:感想や励ましのレスを下さった皆さん
159 名前:Jマイルド 投稿日:2002年10月16日(水)15時22分24秒
完結お疲れさまでした。
記者会見の吉澤さんも大きな壁を乗り切った清々しさを感じました。
あの一件で私も変更しなければならず少々困ってます(苦笑
次回作、楽しみにしています。



160 名前:ポンコツろぼっと 投稿日:2002年10月16日(水)17時40分27秒
ずっとROMって見守ってました(最悪)
完結、お疲れ様です。
このラストを読んでると、記者会見でよしこをチラッと見た後のごっちんの涙がオーバーラップして、胸が痛いです(泣
今年の夏〜秋は、切ない季節でしたね。
よしごま短編、ルパン4thさんのペースで頑張って下さい。楽しみにROMってマス(w
(〜^◇^)<書き込めよ!ストーカーかよ!?
161 名前:ROM 投稿日:2002年10月16日(水)18時43分07秒
完結お疲れ様でした。横アリファイナルで大泣きして吹っ切れたと思っていました
がまたあの時のシーンを思いだして涙が出てきました。でもこの作品を読んでいた
からこそ考えられたし、また現実も受け入れられたのだと思います。どこか、自分
とよっすぃーを重ねていたのかもしれません。彼女達の第二章を心から応援したい
と思います。ありがとうございました。

162 名前: 投稿日:2002年10月16日(水)21時04分57秒
完結お疲れ様です!
なんだかうまく感想が言えなくてもどかしいのですが、
このふたりには輝かしい未来と何があっても大丈夫なくらいの絆が
あるんだろうなぁと感じました。
いしよしの方も楽しみにしています、あとこちらでの短編も。
素敵な作品ありがとうございました。

163 名前:名無し娘。 投稿日:2002年10月21日(月)00時38分24秒
最近ネットやってなかったのですが、その間にこちらの作品が終了していることを
知り愕然……としたのですが、よしごま短編と聞いて復活(w
本当に現実のよしごまと被るシーンが多くて、最後は最後であくまで2人らしく。
大好きな作品でした。作者さん、ありがとうございます。
余談ですが、先日発売のCDデータ、よっすぃ〜自らごっちん卒業の日に楽屋で
2人っきりになったと明かしてましたね。よしごまマンセー!!(爆
自分はずっとよしごま応援し続けます。また萌え作品を提供してくださることを
心待ちにしつつ、素晴らしい作品の完結、お疲れ様でした。
164 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月23日(水)15時28分02秒
卒業しても仲の良いよしごまは本物ですね。
次回作もまた期待してます!できればよしごまを…(コソーリ)
165 名前:ルパン4th 投稿日:2002年10月25日(金)02時12分19秒
>159Jマイルド様
>あの一件で私も変更しなければならず少々困ってます
Jマイルドさんもですか(wリアル系を書いてた人はみんな困ったのかな?って思います。
でもJマイルドさんの作品大好きなんで、頑張って下さい。
レスありがとうございました。

>160ポンコツろぼっと様
おおっ、ポンコツろぼっとさんじゃないですか!
ずっと読んでてもらったみたいでありがとうございました。何度かスレ隣同士になりましたよね?なぜか銀板は「よしごま」が多いので緊張しました(w
実は自分もポンコツろぼっとさんの作品ROMってます(wこれからも同じ板でよろしくです。
(〜^◇^)<おまえもかよ!!

>161ROM様
横アリファイナル行ったんですか!?いいなぁ〜羨ましい限りです。
>どこか、自分とよっすぃーを重ねていたのかもしれません
それは自分も同じです(w卒業する後藤さんへの気持ちを、小説の中のよっすぃ〜に代弁してもらったような…そんな気分でした。
初期の頃から毎回レスを頂きありがとうございました。とても励みになりました。
166 名前:ルパン4th 投稿日:2002年10月25日(金)02時33分50秒
>162凪様
>輝かしい未来と何があっても大丈夫なくらいの絆があるんだろうなぁと感じました。
本当に二人には「親友」としての絆があるんだなぁと、最近メディアを通して感じます。
二人の輝かしい未来に幸あれっ!(w
読んで頂きありがとうございました。

>163名無し娘。様
>現実のよしごまと被るシーンが多くて…
できるだけ現実と近く、を心がけたのでそう思ってもらえると嬉しいです。
先日発売のCDデータ……読みましたよ!!
楽屋で名前叫ぶ合うだけで、気持ちが伝わる人なんて滅多にないですよね。自分の中でも「よしごま」は不滅です(w
定期的にレスを頂きありがとうございました。

>164名無し読者様
ごっちんが卒業して、二人の仲の良さを改めて知る今日この頃です(w
次回作ですか?長編2つを同時並行するのはキツイので、しばらく「よしごま」は短編で勘弁して下さい。
レスありがとうございました。

本当にたくさんのレスありがとうございました。みなさんの「よしごま好き」が伝わってきて嬉しかったです(w

ではでは短編スタート!
167 名前:幸せの瞬間 投稿日:2002年10月25日(金)02時35分35秒

「ねぇ、よっすぃ〜」

私が寝っころがているベッドの下で、念入りに乾いたマニュキアの出来をチェックしていたごっちんが、すこし甘えた声で私を呼んだ。

「ん?どしたー?」

私も雑誌から目を離さずに間延びした声でのんびり返事する。
こういう時のごっちんの話はたいした話じゃないことは経験から知っている。

「あのさぁ…よっすぃ〜」
「んー?」

相変わらずごっちんは爪を、私は雑誌を見ながらのやり取り。

「よっすぃ〜の幸せの瞬間て何してるとき?」
「えーっ?」

あまりにも唐突かつ漠然とした質問に私は思わず、突拍子もない声をあげた。
168 名前:幸せの瞬間 投稿日:2002年10月25日(金)02時36分44秒

「ねぇ、何してるとき?」

ごっちんはしつこく聞いてくる。
こうなったらごっちんは私が言うまで諦めない。

「う〜ん。そうだなぁ」

私は雑誌を置いて、天井を睨みながら考えた。
ごっちんがそんな私の隣に寝っころがってきて、答えを待っている。

「やっぱり、ごっちんといる時かな!」

そう言って体ごとごっちんの方を向いて、ごっちんを抱き寄せた。
「あはっ」と嬉しそうに笑うとごっちんも惜しみなく体を摺り寄せてくる。
ホント猫みたいで……カワイイ。
169 名前:幸せの瞬間 投稿日:2002年10月25日(金)02時38分01秒

ごっちん、ここはベッドの上だよ?
それでもって、私達付き合ってるんだよ?
そんな仕草されたら……我慢できないじゃん

「ちょ、よっすぃ〜!?」

そっと体重をかけたら、いとも簡単にごっちんは私の下。
いきなりの展開に戸惑ってるごっちんに優しいキスで誘いかける。

ごっちんの唇の柔らかさを確かめるようなキス
少しだけからかう様な舌の動きにごっちんが僅かに反応し、私の中にごっちんの熱い吐息が広がった。

唇を離して、耳から首筋にかけてゆっくりキスを落としていく。
ごっちんの髪が揺れるたびに甘い香りが鼻をくすぐって、私の理性を狂わせていく。
170 名前:幸せの瞬間 投稿日:2002年10月25日(金)02時39分05秒

「…ごっちんとこうしてる時が……一番幸せ」
「……ゃん…アタシ……も…」

私の低く囁く声に、やっとのことで言葉を返してくれるごっちんが愛しくてたまらない。
そんな愛しさの感情に流されて、ゆっくりと彼女の中に指を沈めていく。

「ぁっ…ん……よっ…すぃ〜」

力が抜けそうなのか、ごっちんは私にギュッとしがみついてくる。

「ごっちん、私だけを……感じて」

耳たぶを甘噛みしながらそう囁いて、締め付けられる指の動きを速めたらごっちんはあっさりとイッてしまった。
171 名前:幸せの瞬間 投稿日:2002年10月25日(金)02時40分30秒


火照った躰を私に預けて、ごっちんはイッた余韻に浸ったまま夢の中へ誘われていった。
腕の中の可愛い寝顔を見て、思わず一人微笑んでしまう。
そして、私も眼を閉じて今日に幕を閉じる。愛しい温もりを身体中で感じながら…

もちろん、ごっちんと一つに溶けあっている時は幸せだよ。
でもね、ごっちん。
私の本当の幸せの瞬間はね…
172 名前:幸せの瞬間 投稿日:2002年10月25日(金)02時41分29秒

夜中ふと目が覚めても、いつでも隣にごっちんがいてくれて。
私は夢うつつの中でごっちんの長い髪を指先に巻きつけながら、ごっちんの唇を探すんだ。
そして唇を重ねることが出来ると私はまた安心の眠りについてしまう……

それが誰も知らない私の――幸せの瞬間

ごっちん、夢の中でもキスを交わそうか?

―Fin―
173 名前:ルパン4th 投稿日:2002年10月25日(金)02時46分10秒
はい。始めということもあり、軽い読みきり短編を書いてみました。

甘いよしごまを書いてみたくて……
でもエロが苦手なんで、中途半端になってしまいました。すみませんm(_ _)m

次回はもう少し長めのものを、と思ってます。
174 名前:ROM 投稿日:2002年10月25日(金)16時51分59秒
余韻の覚めやらぬうちに、こりゃまた激甘でごちそうさまです。
私の幸せの瞬間は、作者様の作品を読んでいる時デス。
175 名前:名無し娘。 投稿日:2002年10月25日(金)23時22分45秒
甘いよしごま、やっぱり好きです。痛いのも切ないのも好きです。(無節操)
作者さんは謙遜なさってますけど、妄想掻き立てるエロ描写ですよ、最高です(w
今夜もよい夢を見られそうだ……ありがとうございます。
176 名前:名無し 投稿日:2002年10月26日(土)17時33分50秒
もっと読みたいです!
よしごまは不滅!ごま卒業してもネタ提供してくれる2人だし(w
177 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時04分14秒

「今紅茶入れるから、そこ座ってて」
「…ごめん……なさい」
「いいから、いいから気にしないでよ」

俯いたままの彼女に努めて明るく言葉をかける。

「そうだ、私ね吉澤ひとみ。ひらがなで“ひとみ”って書くんだ」
「私は…後藤真希。…真実の“真”に希望の“希”」
「そう…素敵な名前だね」

それから私は彼女をソファに残してキッチンに向かった。
キッチンに向かう時そっと彼女を振り返ったら、綺麗なストレートヘアの間から涙が落ちるのが見えて胸がズキリと痛む。
178 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時05分32秒

「…真希……さん、か」

シュン、シュンとやかんが全速力で水を温めている間、私は覚えたての名前をそっと呟いた。
ずっとずっと、知りたかった下の名前…
ありきたりの名前がなんだかとても優しい名前に思えた。

私は4ヶ月前にこのアパートに引っ越して来た。
そして貴女の存在を知ったのはその日の夜だった。





179 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時06分41秒

―9月―

「たんす、どこ置きますかー?」
「あっ、こっちにお願いします」
「このテーブルは?」
「それは……ここに置いて下さい」

もともと荷物はそんなに多くない。
たんすに小さなテーブルとこれまた小さなソファなどの家具類、それとテレビや洗濯機などの電化製品に加えて、ダンボール箱が5,6個……

それが私の全財産ともいうべき荷物だったから、引越しは1時間もかからずに終わった。

「んーー!!ここが今日から我が城か!」

引越し屋さんが帰ったあと、私はノビをしながら改めてお世辞にも広いとは言えない部屋を見渡した。
180 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時10分35秒

風呂なしに共同トイレというボロアパートに嫌気がさして、安月給を切り詰め、切り詰め貯蓄して得た我が家だった。
古い建物だし職場が少し遠くなるけど、鉄筋造りにバス・トイレ付きという言葉に惹かれ思い切ったというわけだった。

少ない荷物だが、新聞紙に包んだ食器を出したり、服を出して整理をしたりとやっていたら、時計は夜中の12時をまわっていた。

「明日も仕事だし、そろそろ寝ますか…」

独り呟いて、シャワーを浴びてベッドに潜り込む。
引越しで疲れたのか、私はすぐに夢の中へと誘われていった。
181 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時11分53秒

…カツン…カツン

どれくらい眠っただろう?
私はハイヒールの足音に目を覚ました。
重い瞼をうっすらと開けて時計を見ると1時を少し過ぎたところだった。

どうやら足音は階段を上っているようだった。

『吉澤さんは2階ですね。3階には女性が一人住んでいるだけですから』

朦朧とする頭に管理人の言葉が蘇る。

今思えばそれが貴女だった。
3階の貴女はいつも夜更けに、ヒールの音を連れて帰って来る。
あまりに静かな夜中なので、貴女の足音に耳を引っ張られ目を覚ますのが習慣となった。
182 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時13分13秒

―10月―

そして初めて貴女に逢ったのはそれから1ヶ月程してから……
いきなりの激しい雨に、街がうたれた日だった。

「いやぁ、まいったまいった…」

屋根のある所を探してはそこまで全力疾走で駆けて行く――を繰り返して、なんとかアパートの玄関まで辿り着いた。

ジーンズは雨を含んで重くなり足にベッタリと貼りつくし、ブラウスも透けるほど濡れていた。
雫がたれてくる前髪を手で掻き揚げ、まるで犬の様にブルブルと頭を振って水滴をはらう。

「ちぇ、天気予報では晴れだったのに…」

絶え間無く雨を降らせる厚い雨雲を恨めしそうに見上げて呟いた。
郵便受けを覗いてみたが、広告のチラシが何枚か入っているだけだった。
183 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時14分14秒

その時、隣で同じように郵便受けを覗く人影に気がついた。
何気なくチラリとその人の郵便受けのネームプレートを見る。

『301 後藤』

すぐに夜中のハイヒールの人と結びついて、ハッとして横を振り返った。

雨で濡れたせいか黒いワンピースが、彼女の細いラインをくっきりと描いている。
緩いウェーブの長い髪が、頬や肩に貼りついているのが艶っぽい。

貴女は目が合うと濡れた髪をかきあげながら、優しくお辞儀をしてくれた。
その仕草がとても優艶で、私の瞼に焼き付いては離れなくなった。

そしてそれ以来、私は夜中のヒールの音に熱い想いを馳せるようになった。

生まれて初めての一目惚れだった。
184 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時15分22秒

―12月―

二度目に貴女に逢ったのは寒い冬の夜だった。

「うぅ〜寒い。」

容赦なく吹きつける北風にマフラーをきつく巻き直しながら、足早に家路に向かう。
 
嫌な上司に運悪く捕まり、今まで残業をさせられていた。
夜中のコンビニで売れ残りの弁当を買って、ついでに買った温かい缶コーヒーで芯まで冷えた体を慰める。

『後藤さん、もう帰ってきちゃったかな……』

本当にバカみたいだ
片思いの人の靴音に、恋心をつのらせる――そんなガラじゃないのに
でも3階の貴方が気になってしかたないのは、すでに隠しようのない事実になっていた。
185 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時16分25秒

その時、少し前を歩くシルエットに私は目をみはった。
それは…紛れもなく貴女の影だった。
聴き慣れた靴音と違うリズムから、貴女が酔っているのだと直感した。

声をかけようか?どうしようか…
一ヶ月も前にアパートの玄関で会釈を交わしたことなど、覚えているわけがない。

意気地の無い私は結局、破裂しそうな心臓を抑えて足早に貴女を追い抜くことしかできなかった。

すれ違いさまにチラリと盗み見すると、貴女は淡いベージュのコートをひる返しながら、壁づたいに酔い足どりで歩いていた。

頬を桜色に染めながら白い息を吐く貴女に妙に女を感じてしまう。

気持ちまで凍りそうな夜更けの帰り道だった。
186 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時17分28秒

―1月―

そして3度目に貴女に逢ったのは今日――

私は学生時代からの親友に呼び出されて、駅前のコーヒーショップにいた。

「でね、彼がさぁ〜……」
「そっか、大変だったね」

親友には悪いが、正直今は人の恋愛話に耳を傾けている余裕がなかった。

あの夜声をかけずに通り過ぎたことを、あれから何度も後悔していた。

『次ぎ逢ったら、今度こそ……』

幾度となく自分にそう言い聞かせているが、すぐ上に住んでいる貴女に逢うことはなかった。
187 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時18分23秒

「――ちょっとトイレ行ってくるね」
「うん」

愚痴を一通り言い終えると、親友はトイレへ席を立った。
小さく溜息をついて、何とはなしにウィンドウ越しに駅に目をやる。

その時、3度目の偶然がおこった。

「ぁ!」

駅の売店の前に佇む貴女の姿を見つけ、思わず小さな声を上げてしまった。

いつもより少しお洒落をした貴女は、待ち合わせをしているのかしきりに時計を気にしながら、電車がホームに着く度に誰かを探している。
188 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時19分45秒

「ひとみ、お待たせ」
「あ、うん」

それから目の前の親友が話す恋人との修羅場よりも、私は窓の向こうの貴女が気になってしかたなかった。


行き交う電車は確実に時間を刻んでいき……
電車を見送る度に、貴女の表情に不安が重ねられていくのが分かる。

そして親友の話が途切れる頃、バックをしっかりと胸に抱きしめ一点を見つめていた貴女の瞳から、綺麗な雫が転げ落ちた……

私の胸が一気に締め付けられる。
もう親友の言葉など耳に届いてはいなかった。

「ごめん!私、急用思い出しちゃった、帰るね!!」
「えっ?ちょ、ひとみ!?」

戸惑う親友を置き去りにして、私は一気にコーヒーショップを出た。

真冬の霧雨の中、何時間も佇む貴女を助けたくて……
待ち人の代わりに、私が貴女の涙を拾ってあげたくて……
189 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時20分54秒

しかし勢いで出たはいいものの、どう声をかけるべきか私は悩んだ。


『後藤さんですよね、2階に住んでる吉澤です』
『あれ?こないだアパートの玄関で会いませんでしたっけ?』
『同じアパートの人ですよね?恋人と待ち合わせ?羨ましいなぁ』


即興で頭の中でシナリオをつくってみるが、どれも演じられる自身はなかった。
だって……もうどうしようもないくらい、貴女に惚れてしまったから

ほんの数メーター手前でためらっている間も、貴女の白い溜息が人混みに消えていく。
私は深呼吸をひとつすると、足を踏み出した。
190 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時21分48秒

「一緒に帰りませんか?……後藤さん」

待ち人だと思ったのだろう最高の笑顔で振り返った貴女の表情が、一瞬にして期待はずれのものに変わった。

「まだ……待つつもりですか」

やり切れない気持ちとは裏腹に、お節介な言葉が口を渡る。

私の言葉に貴女は俯いて、何かを考えていた。
そして小さく首を横に振ると、私の傘の中に入ってきてくれた。
191 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時22分36秒

それから、灰色の雨の街を傘ひとつで歩いた。
貴女はポツリ、ポツリと話をしてくれた……

好きになってはいけない人を好きになったこと
本当は今日、その人と駆け落ちするはずだったこと

辛い恋に泣かされた震える肩を、何度も抱きしめたいと思ってしまう。
貴女を悲しませるもの全てから守ってあげたい。
貴女の笑顔をずっと見ていたい。

けれど心の中では溢れる想いを何一つ伝えることはできなくて、せめて冷たい雨に濡れないように傘を傾けることしかできなかった。





そして今、私の部屋に貴女が存在している
192 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時23分40秒

ピーーーッ

試合終了のホイッスルよろしく、沸騰したやかんが少ない貴女との思い出にピリオドを打った。
私はカップにお湯を注ぐと、白い湯気をくゆらすティーカップを後藤さんの前に置いた。

「…おいしい」

コクリと一口飲んで微笑みながら呟いてくれた彼女にホッとする。

「よかった」

貴女の頬についた涙の跡は見ないフリ。
193 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時24分42秒

「いつか吉澤さんに偶然に会ったよね?」
「…うん」

私を覚えていてくれたことが、なんだか少し気恥ずかしい。

「あっ、よっすぃ〜でいいよ。吉澤だから、“よっすぃ〜”」

少しでも貴女の気を紛らわせてあげたくて、学生時代のあだ名を切り出した。
もう少しましな話題はないのかと、言ってから後悔する。

「フフ、吉澤さ――よっすぃ〜って面白い。じゃあ、私は“ごっちん”だね。後藤だから」

くだらない話題に嫌な顔ひとつせず笑ってくれた貴女に、自分の方が癒される。
それから二人顔を合わせて、照れくさそうに笑った。
194 名前:出逢いのいきさつ 投稿日:2002年11月05日(火)02時25分56秒

ふと外に目をやると、いつの間にか細い雨が粉雪に変わっていた。

『あといくつ偶然を重ねたら、貴女に想いを伝えようか』

振られてきたばかりの貴女を目の前に、不覚にもそんなことを考えてしまった初雪の夜のことだった。

―Fin―
195 名前:ルパン4th 投稿日:2002年11月05日(火)02時38分34秒
>>177-194
『出逢いのいきさつ』として更新しました。

>174ROM様
>私の幸せの瞬間は、作者様の作品を読んでいる時デス。
そんなこと言われると、照れますね(w
自分の幸せの瞬間は……もちろん書き終えた瞬間と、レスがついた時です(w

>175名無し娘。様
>妄想掻き立てるエロ描写です
そう言ってもらえると嬉しいです。エロは自信がないんで……
他の作品読んで、勉強しなければ!(w

>176名無し様
>ごま卒業してもネタ提供してくれる2人だし
確かに。卒業してから二人の仲の良さを再確認できる今日この頃です(w


今回はアンリアルで大人っぽい二人を書いてみました。
街の雑踏の中、偶然ぶつかって恋に落ちる……そんな出逢いもドラマチックですが、垣間見るごとに惹かれていく……そんなシチュエーションも素敵だなと思ってできたストーリーです。
196 名前:ROM 投稿日:2002年11月05日(火)07時59分40秒
恋人に裏切られた失意の中で、よっすぃ〜のやわらかな温もりの
ベ−ルに包まれていくごっちん。2人の部屋は時間でさえゆっく
り流れていくような感じがします。
197 名前:にゃん 投稿日:2002年11月05日(火)19時46分39秒
ルパン4thさんのよしごまは、やっぱサイコーです!
惹かれあっていく姿がいいですね〜。
是非、続きも読んでみたいです。
198 名前:名無し娘。 投稿日:2002年11月10日(日)20時16分14秒
大らかなよっすぃ〜とひっそり泣くごっちん。
しっかり頭の中で映像化されてます!萌えてます!!(w
短編なのに世界観がしっかりしていて、本当にすごいですね。
また次回更新を楽しみにしてます。別な話でも、続編でも。
199 名前:優雨 投稿日:2002年11月12日(火)11時36分14秒
ずっと前から読ませていただいてました!
『あといくつ偶然を重ねたら、貴女に想いを伝えようか』
・・・この部分すごく好きです!胸がきゅーんってなりました。
ルパン4thさんの小説を読んでからよしごまにはまってしまいました。
これからも更新がんばってくださいぃ〜!!
200 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月25日(水)00時22分32秒

街がイルミネーションを着飾っておめかししてる。
行きかう人も心なしかソワソワしていて、あちらこちらに小さな幸せが舞い降りる。

そう今日は12月24日――クリスマス・イヴ

私の片想いといえば……

『あ、こんばんは。今帰り?』
『こんばんは。今年の冬は寒いね〜』

あれからそんな偶然をいくつか重ねるうちに……

『一緒にご飯食べない?』
『今度買い物行こうよ』

しだいに偶然は約束へと変わっていき、私とごっちんは確実に距離を縮め
いつのまにか私の部屋にはごっちんのマグカップや雑誌、CDが幸せと一緒に増えていった。
けれど、ときどき貴女が宙に誰かの面影を探しているのに気づいているから……いまだ気持ちは伝えられない。
201 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月25日(水)00時24分10秒

ケーキとシャンパンを片手に、私も負けじと浮かれ足で家路に向かう。
今日はごっちんと、ささやかなクリスマスパーティをやろうと約束していた。
ポケットに入れたごっちんへのプレゼントを、確かめるようにそっと握り締めてみる。

渡せるだろうか?
受け取ってくれるだろうか?
どんな顔をするだろうか?
気持ちは……伝えられるだろうか?

一日中眠っていた部屋は外と変わらないくらい冷え切っている。
ごっちんが来る前に暖かくしておこうと、急いでエアコンのスイッチを入れる。
時計に目をやると8:30を回ったところだった。
9:00くらいに来ると言ってたから、もうすぐ会えると思うと自然と顔がほころんでしまう。
202 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月25日(水)00時25分32秒

洒落込んでシャンパングラスなどを並べてみたり、ごっちんがこないだ聴きたがってたCDをセットしてみたりとガラにもなく浮かれてみる。
そんなことをしているうちに、聞きなれた靴音が聞こえてきた。

もちろん今夜の貴女の靴音は3階へは上らず、私の部屋に近づいてくる
ほら、もうあと

3歩
2歩
1歩

ピンポ〜ン

今夜も狙いは的中。だけど恥ずかしいから、出逢った頃よりずっと貴女の靴音に敏感になったとはとても言えない。

「いらっしゃい」
「あはっ、お邪魔していい?」
「もちろん」

寒さで頬を薄く染め、ネギが頭を出しているスーパーの袋を持った貴女を招き入れる。
203 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月25日(水)00時27分00秒

ラジオから聞こえるクリスマスソングを鼻歌で歌いながら、野菜をきざむ貴女の横顔に一瞬見惚れてしまう。

「……て?ってよっすぃ〜?」
「え?あ、ごめんボーっとしてた。」
「サラダボール出してって言ったの」
「う、うん。オッケー」
「もう、よっすぃ〜大丈夫?」

不安そうに小首を傾げる仕草にまでも、私の心は躍りだしてしまう。

「大丈夫、大丈夫。…あれ?何だっけ?」
「サラダボールだよぉ」
「あ、そうだった!」
「あはっ、変なよっすぃ〜」

柔らかく笑う貴女の笑顔に、私もつられて微笑んだ。

よかった今日も笑顔で……
時々心配になるんだよ。また貴女が一人で泣いてやしないかと…

ねぇごっちん?私、貴女のためならピエロでもサンタクロースでもなんでもやるよ?
だから、どうか……私の気持ちを受け取って欲しい
204 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月25日(水)00時28分38秒

「できた!ワーッ美味しそう!」
「ほんと美味しそう!」

キレイに盛り付けた皿をテーブルに並べ終えると、二人して感動の叫び声をあげた。

ローストチキンにグリーンサラダにスープ
ごっちんの料理の腕前のお陰で、小さなテーブルの上が見事にクリスマスに変身した。

「それじゃ、いただきます」
「いただき――あっ!」

いきなり叫んだ私に、両手を合わせたまま「なに?」とごっちんが驚いた視線を投げてきた。

「シャンパン持ってくるの忘れた。取ってくるね」
「あはっ、乾杯しなきゃねぇ」

ごっちんの言葉に頷きながら私は、シャンパンを取りにキッチンへ向かった。
205 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月25日(水)00時30分03秒

目当のボトルはすぐに見つかったが、コルク抜きが見つからない。
なんせ普段そんな洒落たものを飲まないから、どこにしまい込んだのか記憶にない。

「あれ?おっかしいなー」

ゴソゴソとキッチンの収納棚を探してみる。
とその時、聞き慣れない携帯の着メロが耳に届いた。

もちろん私の携帯ではない。
けど私が知ってるごっちんの着メロでもなかった。

けれど当然この部屋には二人しかいないわけだから、やはりメロディの主はごっちんの携帯だった。
着メロを変えたのだろうと思い、何気なくごっちんを振り返ってドキリとした。
206 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月25日(水)00時31分07秒

そこには電話に出るわけでもなく、ただ着信者を告げるディスプレイを困惑気味な表情で見つめる貴女がいた。

そんな貴女の表情から私はすべてを悟った。
おそらく――

電話の主は元恋人
彼だけに設定された特別なメロディ
貴女はまだ消せずにいたんだね……

ゆっくりと携帯を耳に当てる貴女の姿を、キッチンから見つめることしかできない。
まるで金縛りにあったかのように動かない体に、途切れ途切れの貴女の声が聞こえてくる。
207 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月25日(水)00時32分34秒

「無理よ……もう会えない」
「ずるいよ…そっちから別れたのに……」
「もう…切る……からね?」

張り詰めた空間にそぐわないラジオの中の陽気なDJが皮肉なクリスマスソングを紹介している。

♪〜雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう Silent night , Holy night
きっと君は来ないひとりきりのクリスマス・イブ Silent night , Holy night〜♪

口では何度も「会えない」と繰り返す貴女だけれど、正直なその片手はコートを握り締めている。

  心深く秘めた想い―――叶えられそうもない
208 名前:ルパン4th 投稿日:2002年12月25日(水)00時46分06秒
>>200-207
『Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 』として更新しました。

>196ROM様
>2人の部屋は時間でさえゆっくり流れていくような感じがします。
実際の吉澤さんと後藤さんの間もマターリしているので、小説内でもそう感じてくれると嬉しいです。

>197にゃん様
久しぶりのレスありがとうございます。
この作品の続編は書いてみたかったので、続編希望嬉しかったです。ありがとうございました。

>198名無し娘。様
> しっかり頭の中で映像化されてます
そう言ってもらえると、安心します(w
こらからも世界観のある小説目指してがんばります!

>199優雨様
ラストの台詞には毎回結構想いを込めて書いているので、そう言って頂けると光栄です。
これからもがんばりますので、よろしくお願いします。

209 名前:ルパン4th 投稿日:2002年12月25日(水)00時50分58秒
何の断りもなく長い間放置して申し訳ありませんでした。
これからもペースは速くありませんが、少しずつ「よしごま短編」を続けていきたいと思っていますのでよろしくお願いします。

また、この続きは明日か少なくとも2,3日中には更新します。
210 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月25日(水)01時49分46秒
更新待ってました!
でも何だかよすぃが切なげですなあ。
何はともあれ、クリスマスによしごま、なんて素晴らしい組み合わせ(w
続き、楽しみにしてます!
211 名前:名無し娘。 投稿日:2002年12月25日(水)14時46分28秒
ちょっと痛めだけど、どこまでも優しくごっちんを見守るよっすぃ〜が素敵です。
ごっちんはよっすぃ〜の優しさに気付くのかなぁ…
212 名前:ROM 投稿日:2002年12月26日(木)13時05分25秒
ごっちん、まだ吹っ切れてはいないのですね。でも
よっすぃ〜には胸に秘めた想いを保ち続けてほしい。
213 名前:にゃん 投稿日:2002年12月26日(木)21時51分37秒
続編待ってました。
ありがとうございます!!
ほんっと、吉子が切ない・・幸せになってほしいですよ。
214 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月28日(土)01時38分10秒

一人では食べきれない夕食と一人では酔えないシャンパンを残して、貴女は去って行ってしまった。

少しだけ濡れた瞳で何度も「ごめんね、ごめんね」を繰り返すから、「行かないで」なんて言えなくてポーカーフェイスで見送ることしかできなかった。

白けた狭い部屋を眺めながら、髪を掻き揚げ「…バカみたい」と呟いてみる。
一気に情けなさと孤独感が押し寄せてきて、食べることも片付ける気にもなれず、クッションを抱きしめながらヘナヘナと壁に寄りかかるように座り込んだ。
215 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月28日(土)01時39分20秒

少しは脈ありなんて思ってた?
よかったじゃん変な勘違いに、告白する前に気がついて……
それとも告白して振られた方が潔かったのかな……

自分の中でいろいろな葛藤が浮かんでは消えたけど、結局最後はそれは涙という形で私の頬を伝った。

体重に任せてゴロリと床に寝っころがって、滲んだ天井をボンヤリと見つめた。


『吉澤、最後まで諦めるな。諦めなかった奴が奇跡を起こすんだぞ』


なぜか急に学生時代のバレー部の顧問の口癖が耳に蘇った。
あの頃は「そんなキレイ事」と笑い飛ばしていたが、今はものすごく名言のように思えた。
216 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月28日(土)01時40分13秒

「奇跡……か」

そう言えば私、ただ想い続けるだけで何もしてないじゃん。
気持ち伝える努力も、彼女を知ろうとすることも。
「分かって欲しい、知って欲しい」だけで自分から動いたこと一度もないじゃん。

ガバッと起き上がって湧き上がってきた勇気が冷めないうちに、急いで私はジャケットとマフラーを身につけて街へ飛び出した。
217 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月28日(土)01時40分57秒

街は文字通り、光の洪水だった。
クリスマスツリーやイルミネーションの光の波の中を、踊るように恋人達が寄り添い歩いている。
その中を私はただごっちんだけを探して闇雲に走った。

相手の名前も知らなければ、二人がよく逢っていた場所もしらない。
ただ「そう遠くへは行ってない」という勘だけを信じるしかなかった。

レストラン
喫茶店
公園


手当たりしだいに探して最後にはホテル街まで足を運んだが、結局貴女の姿を見つけることはできなかった。
218 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月28日(土)01時41分51秒

肩で呼吸をし、痛む足を引きずってしかたなくアパートまで戻ってきた。
トボトボと重い足取りで階段を上る。一歩踏み上るたびに情けない靴音が闇夜に響いた。

そういえば最初に貴女の存在を知ったのは靴音だったっけ…
毎晩夜更けに少し気だるそうなヒールの音を連れて3階を――

3階?まてよ?
私は一番肝心な場所を探すのを忘れていたことに気がついた。私が街に出てからすでに1時間以上経っている。ごっちんが自分に部屋に帰って来ててもおかしくなかった。

僅かな希望を胸に少しだけ足早に3階まで上り、貴女の部屋のドアの前で深呼吸してチャイムを鳴らした。

部屋にいたとしても恋人と一緒かもしれない。
たとえ一人でも迷惑がられるかもしれない。
ほんの数秒がやけに長く感じられたあと、ゆっくりとドアが細く開けられた。
219 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月28日(土)01時42分52秒

「……よっすぃ〜?」

ごっちんは泣き腫らした目をしていたが、思ったより落ち着いていた。

「あ、あのさ……あのあと心配になっちゃって、さ…ハハ」

いざ会えたと思ったら私の方が落ち着きなく、何度も髪を掻き揚げながらぎこちない笑みを浮かべた。

「ありがとう……ごめんね約束破って…」
「いや、約束なんてどうでもいいんだけど……ごっちん、あのさ」
「よっすぃ〜…とりあえずあがって、寒いでしょ?」

私の言葉を遮った代わりに、貴女はドアを大きく開いて部屋へ通してくれた。
220 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月28日(土)01時44分11秒

そういえば、私がごっちんの部屋に入るのは初めてだった。
スッキリと片付けられた部屋だったが、それは殺風景とも違くシックなインテリアでまとめられていて、とても同じ間どりの部屋とは思えなかった。

「キレイな部屋だね」

まずは通り一遍の言葉を言ったが、その後肝心な話題に踏み込めない。
考えてみれば二人の事を何も知らない私が、どんな結果を導いたかなんて聞く権利もなかった。

「…彼にねより戻そうって言われたの、でもねこっちから振ってやった!」

そんな私に気がついたのか沈黙を破るように威勢よく言うと、貴女はアハッと笑って「メモリも消したの」と携帯を私の目の前にかざした。
221 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月28日(土)01時46分01秒

「そっか……ごっちんにはさもっと良い人がいるよ、きっと」

無理やり笑顔をつくって、嘘の励ましの言葉を口にする。

「良い人?私の条件は厳しいよぉ〜。格好良くて、背が高くて、優しくて…それからね、えっと――」
「ごっちん!」

貴女の空元気が見てられなくて、思わず名前を叫んで抱きしめてしまった。
貴女は驚いたが逃げることはせず、真剣な眼差しを向けてくれる。。

「ごっちん、私さ……ごっちんの事が好きなんだ。出逢った時からずっと……ずっと想ってた」

少しだけ目を大きくした貴女に、続けて言う。
この勢いを失くしたら、もう二度と言えないと思ったから。
222 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月28日(土)01時47分32秒

「べつに付き合って欲しいとか…もちろん、できるなら付き合って欲しいけど……気持ち伝えたくて……女同士で気持ち悪いって思うなら、もう二度とごっちんの目の前に姿あらわさない、だから……だから今だけこのままでいさせて――」

伝えようとすればするほど、何を喋ってるのか分からなくなってしまい、気がつけば貴女をきつく抱きしめていた。
貴女の温もり、香り、感触…その全てを体中で記憶するように。

どれくらい時間が経ったかなんて分からなかったが、勢いが失せた私は名残惜しい体をそっと離した。

「ごめんね急に……忘れていいから」

精一杯優しく、ゆっくりと言う

「……いよ」
「えっ?」

貴女の僅かな声を私は聞き取れなかった。
223 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月28日(土)01時48分50秒

「気持ち悪くなんかないよ、だって……だってアタシもよっすぃ〜が好きだもん」

そう言いながら今度は貴女から首に両手を絡めてきた。

「ごっちん……それ、ほんとう?」

あまりの驚きに、私は何ともマヌケな声で聞き返した。
そんな私に貴女はクスッと微笑むと、首筋に顔を埋めて囁いた。

「言ったでしょ?私の条件は格好良くて、背が高くて、優しい人…って。よっすぃ〜以外いないよ。こんなにピッタリ当てはまる人」
「ごっちん……でも女だよ私?」
「それならアタシも女よ?アタシでいいの?」

逆に返された質問に私はやっと我に返って、もう一度貴女をキツクでも優しく抱き寄せ言った。

「世間にどう思われるかより……今この腕の中からごっちんがいなくなる事が一番恐いよ」
「どこにもいかないよ。ずっとよっすぃ〜の腕の中にいさせて…」

それから、そっと唇を重ねた。
まるで傷ひとつないクリスタルに指紋をつけるかのような、どこまでも優しいキスだった。
224 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月28日(土)01時50分24秒

「クリスマス、もうすぐ終わっちゃうね?」

私の腕の中で子供のように言う貴女に、時計を見ると針はすでに23時を指していた。

「大丈夫、あと1時間あるよ……あっそうだ」

「なに?」と顔を向ける貴女に微笑んで、ポケットの中にしまってあったプレゼントを取り出し渡した。

「よっすぃ〜…これ」

ごっちんに渡したのは私の部屋の鍵だった。本当はこれを差し出して告白するともりだった。
225 名前:Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月28日(土)01時51分19秒

「クリスマス終わったら、うちに引っ越しておいでよ。だって……もう離れて暮らすのは不自然でしょ?」
「うん!するー!!引っ越すっ」

想像以上に喜んだ貴女は苦しいくらいに抱きついてくる。

「フフ……アハハ」
「ん?ごっちんどした?」

いきなり腕の中で笑い始めた貴女に私は怪訝な顔をした

「だって、管理人さんどんな顔するかな?って考えたら可笑しくて」

確かにいきなり部屋を引き払って、ひとつ下の2階に住むと言ったらどんな顔をするだろう。
その時の管理人さんの顔を思い浮かべて私も噴出した

「ハハハ、ほんとどんな顔するかねぇ?ハハ」
「フフ、ね楽しみ、アハッ」

それから私達は抱き合ったまま、しばらく笑いあっていた。
226 名前: Silent Night〜続・出逢いのいきさつ〜 投稿日:2002年12月28日(土)01時52分39秒


街の遠くからアヴェ・マリアが微かに聞こえてくる。
0時まであとわずか

今夜奇跡を起こした二人に―――Merry Christmas

−Fin−
227 名前:ルパン4th 投稿日:2002年12月28日(土)02時03分51秒
>>214-226更新しました。
クリスマスストーリーなのにクリスマスまでに更新できず、すみませんでした。m(_ _)m

>210名無し読者様
クリスマスによしごま……一度書いてみたかったんですよ。
短編なので、行事ごとにちなんだ話を書きたいなと思ってます(w

>211名無し娘。様
ちょっと痛め……どうも自分は痛めの話にしてしまう癖があるようで…(w
最初から最後まで甘甘なものも書いてみたいです

>212ROM様
やっとごっちんが吹っ切ってくれました。
やっぱり、ごっちんにはよっすぃ〜でないとね!(w

>213にゃん様
もちろん、最後はハッピーエンドでなくちゃですよね(w
続編希望ありがとうございました。

長い間放置していたにも関わらず、たくさんのレスありがとうございました。本当に嬉しかったです。
次回は久しぶりにリアルものを書いてみたいなと思っていまので、気長に待っててもらえれば幸いです。
228 名前:名無し娘。 投稿日:2002年12月28日(土)03時45分58秒
よかった〜。やっぱりよしごまはこうでなくっちゃ!(w
心配性なよしこと、潔いごっちんの結末、最高でした。
毎回陳腐な感想しか浮かばない自分がもどかしいです・・・
229 名前:ROM 投稿日:2002年12月28日(土)11時11分31秒
最高です!願っていた通りの結末なのに涙が止まり
ません。美しいお話をどうもありがとうございました。
230 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月28日(土)23時38分17秒
クリスマスに相応しい話ですね。ホント良かったです。(^^)v
真希視点からの話もみてみたいんですけど〜
231 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月05日(日)09時15分15秒
よしごまには癒される…
232 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月14日(金)22時22分41秒
マターリ続編待ってますよー
233 名前:別れの夜 投稿日:2003年02月19日(水)02時09分41秒

人影も少ない真夜中の歩道を二人ずぶ濡れで歩いてた
無言をさらに際立たせる雨を心の中で憎んでみる。
なにもこんな夜に降らなくてもいいじゃない……

「……よっすぃ〜」

いつもなら銀色の雫に思える雨も、今夜ばかりは灰色の雨でしかなくて…
たまらない想いで腕に寄り添ってみた

ねぇアタシ達ほんとうにもうお終いなの?
いつしか言葉はすれ違い始め
貴方を解りきれなくて
愛を繋ぎきれなくて
知らず知らずに離れてゆくのか
愛し愛され確かめた人――
234 名前:別れの夜 投稿日:2003年02月19日(水)02時10分26秒

「ごっちん……着いたよ」

いつもよりずっとゆっくり歩いていたはずなのに、気づけばそこはアタシの家の前で。

「じゃあ……また仕事で」
「待って!少し……あがってかない?」

皮肉にも最初に貴方を誘ったのと同じ台詞

「……でも」
「少しでいいから…お願い」
「じゃあ……少しだけ」

断りきれないのが貴方の罪
誘い続けるのがアタシの罪
――どっちの方が罪深い?
235 名前:別れの夜 投稿日:2003年02月19日(水)02時11分12秒

玄関を開けると、待ってましたとばかりにタカが走り寄ってきた。
この姿を見て貴方に似てると笑った日々が懐かしい。

「はい、タオル」
「……ん」

雨に濡れた髪を拭き取る音だけが虚しく響く。
あの頃のアタシ達なら笑いながら拭きあって、冷えた体を温めるように抱き合ったのにね。

「紅茶でも飲む?」
「いや…いいよ。もう……行くから」

そう言ってタオルを置くとよっすぃ〜はなんのためらいもなしに立ち上がった。

「待って、せめて紅茶ぐらい……ね?」

アタシの必死のお願いに、よっすぃ〜は無言で首を横に振った。
そんな貴方にアタシは思わず涙が溢れて抱きついてしまった。
236 名前:別れの夜 投稿日:2003年02月19日(水)02時12分04秒

「……ごっちん」
「っぐ…よっ……すぃ〜…ふぇっ」
「泣かないで、ごっちん」
「ほん…とに…ぇぐ……もうダメ…なの?…アタシ達」
「………」

その問いに答えてはくれなかったけど、アタシの肩に添えられた手に力が入ったのが分かった。

「二人で出した…結論でしょ?」

確かにそう
どちらが悪いとか
何が嫌になったとか
そんなじゃなくて……
ただ何かが音もなく崩れていった
237 名前:別れの夜 投稿日:2003年02月19日(水)02時12分45秒

「よっすぃ〜……最後のお願い…」
「…なに?」
「最後にもう1度……抱い…て」
「…ごっ……ちん」
「おね……がい」

少しの間貴方がためらっているのが分かったけど、そのあと優しく抱き寄せてキスしてくれた。
それから二人もつれ合うようにシーツの波に倒れ込んで、どちらの物か分からないくらい舌を絡めて……

「ぁん…よっ……すぃ〜」

何も変わらないいつもの優しいキス
ねぇ、アタシはいつもそこに永遠を感じていたんだよ?
238 名前:別れの夜 投稿日:2003年02月19日(水)02時13分29秒

巧みな貴方の手でシャツのボタンは開放され、あらわになった胸に貴方が唇を寄せる。

「…っぁん」
「っん…ごっちん」

囁いて、囁いて
愛の言葉は嘘でも素敵だから
ここまできたなら、うわべの優しさ気取ってよ
騙されついでに涙でお返しするからさ

「ひゃっ…ぁん」

急にスカートに手を滑り込まれて、溶けそうなくらい熱を帯びてる秘部を撫で上げられてた。
これからどんな人と付き合っても、きっとこんなに痺れることはないと思う
239 名前:別れの夜 投稿日:2003年02月19日(水)02時14分11秒

「ごっちん……入れるね」
「ん……ああっ!」

溢れる蜜を絡め取るように、ゆっくりと感じさせてくれる。

いつのまに雨が上がったのか、満月がブラインドの隙間から柔らかな光を注いでいる。
お願い照らし欲しいの今宵の二人
優しい光で一つに重なるシルエットを包んでよ

儚くてもいい……一途に愛した人だもの

「ぁああ…ゃん……よっすぃ〜」

貴方が知り尽くしているアタシのイイところを撫でられて、アタシは昇りつめた――
240 名前:別れの夜 投稿日:2003年02月19日(水)02時14分58秒


「……ごっちん」

快感と終わった虚しさが混ざった余韻に浸っていたら、急によっすぃ〜が名前を呼んだ。

「ん?」
「ごっちんはさ、私と付き合ってて……幸せだった?」
「えっ?もちろん幸せ…だったよ」

過去形になるのが酷く悲しい

「そっか……私ねずっと不安だったんだ」
「不安?」

それまでずっと天井を見つめていた貴方がアタシの方に寝返りを打った。
月明かりだけのせいか、貴方の瞳が寂しそうな色をしている。
241 名前:別れの夜 投稿日:2003年02月19日(水)02時15分40秒

「うん。女同士の恋愛に自信をなくしてたんだ」
「…そんな」
「だって、ましてやうちらは芸能人じゃん?メンバーにすら関係言えないし、街中で手繋ぐことも、抱き合うこともできない」
「………」
「いつもごっちんを寂しくさせてるんじゃないかって思って、幸せの形が分からなくなった……」
「寂しくなんか無かったのに……」

確かに普通のカップルみたいに、いちゃついてみたいって思ったことがないと言えば嘘になる。
けれど別れる方が、ずっとずっと寂しいよ
242 名前:別れの夜 投稿日:2003年02月19日(水)02時16分21秒

「よっすぃ〜」

また天井を向いてしまった貴方にアタシはそっと覆いかぶさった

「よっすぃ〜が結婚とかそういうのをアタシの幸せだと思ってるのなら、それはちがうよ?今さら遅いのかもしれないけど……よっすぃ〜じゃないと、抱かれてもこんな幸せ感じないと思うの」
「……ごっちん」

しばらく上と下で見つめあっていた。
そうしたらそっとアタシの腰を引き寄せてくれて……
243 名前:別れの夜 投稿日:2003年02月19日(水)02時17分06秒

「ごっちん、明日うちらが最初にデートした場所でもう1度デートしよっか?」
「え?」
「もう1度そこからやり直せるかな?」
「うん!」

ねぇよっすぃ〜、もしまた別れ話が出たなら
何度でも頬を濡らしながら愛を確かめ合おうよ
それを乗り越えるたびに、きっと絆は深まるから

そしていつの日か『そんな事もあったね』って貴方の隣で笑っていたい――

―Fin―
244 名前:ルパン4th 投稿日:2003年02月19日(水)02時25分55秒
>>233-243
『別れの夜』として更新しました。

>228名無し娘。様
陳腐な感想なんてとんでもない!毎回のレスとても励みになっています。
これからもよろしくです。

>229ROM様
美しいお話だなんて……こんな駄文を(w
いつもレスありがとうございます。

>230名無し読者様
真希視点からの話…なるほど書いてなかったなと気づきました
で、今回は真希視点にしてみました。いかがだったでしょうか?(w

>231名無し読者様
ほんとによしごまには癒されますね〜
でも最近ネタが無い気が…(T-T)

>232名無し読者様
こんなに放置したにも関わらず待っていてくれてありがとうございました。
245 名前:ルパン4th 投稿日:2003年02月19日(水)02時33分30秒
2ヶ月も放置してしまい、申し訳ありませんでした。

今回はどんなに仲の良いカップルでも一度は訪れるであろう『別れ話』をテーマに書いてみました。
はじめは別れの結末を用意していたのですが、やはりこの二人には別れてほしくなくて…(w
以前に書いたものを手直しした作品です。

さて、最近どうもスランプ気味で……
そこで生意気にもリクなんかを受け付けようかなと思っています。
何かこんなシチュエーションがいいとかいうのがありましたら、知恵をお借りしたいなと。
ただし『よしごま』でよろしくお願いします。
246 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月19日(水)12時22分38秒
毎回楽しませてもらってます。
文章からあふれ出すイメージがドラマのワンシーンっぽくきれいです。
それから、ここのよしごまは、少し大人描写なところがいいです。

で、それっぽくなリクエストなんですが 『愛人後藤』でぜひに!
後藤サイドで、ドロドロと(w
最後は、よしが格好よく(悪く?)きめても、このままズルズルでも、ルパン4thさんおまかせで。
つまり結局どうしても離れられない2人みたいな感じで…いかがでしょうか?
247 名前:ROM 投稿日:2003年02月19日(水)19時36分56秒
一度決心した事を覆すのはとても難しいですよね。
みんな素直に自分の気持ちに正直になれればいいのに。
でも別れなくてよかった。リクは名案が思いつかない
のですが、無邪気で可愛いごっちんと、本人は格好い
いつもりのコケティッシュよっすぃ〜が好きです。
248 名前:にゃん 投稿日:2003年02月19日(水)23時04分15秒
いつも読むたびに描写が綺麗で引き込まれます。
雨と後藤さんの気持ちが重なって、すごく切なくて心が打たれました。
最後の結末は手直しして下さってホント良かったです(^O^)よしごまは永遠ですからね。
リクなんですが、ルパン4thさんの書く学園モノが読みたいです。もう遅いんですが…チョコの話とか。
249 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月21日(金)12時18分41秒
川o・-・)b<Goodです。
250 名前:ポンコツろぼっと 投稿日:2003年02月23日(日)13時16分45秒
更新されてる嬉しさで思わず書き込んでしまいました
歯切れの良い描写と、ごっちんの切ない心境がなんだか泣けてきました
素直な『好き』と不安な『好き』とで交わるのは難しいですよね・・・
書き直す前の結末も読んでみたかったり・・・(w
リク・・・しても良いんですかね? ルパン4thさんが書く『痛いよしごま』が見てみたいですね
学園物とかで・・・イジメを受けるよしこさ(略
251 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月22日(土)02時25分33秒
ほぜん
252 名前: 投稿日:2003年04月25日(金)04時10分45秒
hozenj
253 名前:夢売上手 投稿日:2003年05月03日(土)00時59分16秒

ねぇ、よっすぃ〜
貴方は私のために夜が眠れなかったことはないでしょう

だけど私には
恋に犯された熱い額を手でおおい
涙さえ浮かべてしまう
……
そんな夜があるの

254 名前:夢売上手 投稿日:2003年05月03日(土)01時00分08秒

「見て綺麗な色でしょ?」

月明かりを頼りに買ったばかりの真紅のルージュをなぞってみる。

「…ん、似合うよ」

そんな私に貴方は鏡越しに少し困ったように微笑んだ。

そんな顔しないでよ
今夜だけ、今だけは
貴方を私にください

明日の今頃は違うベッドの中で
別の恋を奏でてる貴方だって知ってるけれど
今だけは……
私だけを見つめて欲しい
255 名前:夢売上手 投稿日:2003年05月03日(土)01時00分51秒

「……よっすぃ〜」
「ごっちん……おいで」

夜はいつでもなり振りかまわず、二人を秘密に閉じ込める
“愛してるの”と囁きかければ、二人は優しく噛み合える

256 名前:夢売上手 投稿日:2003年05月03日(土)01時01分27秒


よっすぃ〜に想いを伝えたのは、忘れもしない去年の9月23日。そうアタシがモーニング娘。を卒業した日のホテルでだった。
すでに恋人がいた貴方は優しい言葉を選びながらアタシの想いを遠ざけた。
けれど叶わぬ恋の切なさと逢えなくなる寂しさとで泣きじゃくるアタシを、貴女は困惑しながら抱きしめてくれたっけ。
そしてアタシの口から出た言葉は……


『愛してなくてもいいから……抱いて』


その言葉をどう受け取ったのかは未だ分からないけど、その晩貴方はアタシを抱いてくれた。
それが貴方とアタシの不埒な関係の始まり――
257 名前:夢売上手 投稿日:2003年05月03日(土)01時02分12秒

「なんか、ごっちん今日セクシーじゃん」
「あはっ、惚れなおした?」
「ん…もうぞっこん」
「……ぁん」

甘く囁かれて首筋に落とされたキスに濡れた声が微かに洩れる。

この恋だけは失いたくないと
ただそればかり考えてしまう

哀しい女の弱さ

258 名前:夢売上手 投稿日:2003年05月03日(土)01時03分20秒

「ごっちん一筋にしようかなぁ」

うつぶせで乱れた呼吸をしている背中にキスを刻みながら言う貴方に隠れて噛みしめた唇がとても熱い

その思わせぶりの罪を認めて欲しい
私はその言葉を引きずって進みきれず
貴方を行ったり来たりしているのだから

259 名前:夢売上手 投稿日:2003年05月03日(土)01時04分01秒

「ごっちんは…さぁ」
「ん?」
「何で私と付き合ってるの?」
「そんな……」

急に問いかけられて思わず貴方から視線を逸らす

「だって二股かけてるの知ってて……何でかなって」
「じゃあ…アタシだけ見つめてくれる?アタシだけ愛してくれる?」

どうせ嫌われるなら思い切り嫌われたかった
もう二度と貴方を愛せないように

260 名前:夢売上手 投稿日:2003年05月03日(土)01時05分14秒

「……いいよ」
「えっ?」
「これからは、ごっちんだけ見つめる。ごっちんだけ…愛す」
「うそ……ばっかり」

どうせいつもの飾り文句でしょ?
飾り立てたその優しさよりも
一つの真実が聞きたいのに
甘い夢ならとうに朝を迎えてる

261 名前:夢売上手 投稿日:2003年05月03日(土)01時05分47秒

「ごっちんに告白されて抱いた時、一度きりのはずだった」
「じゃあ何で……関係続けたの?」
「私の恋人、年上でいつも背伸びしてたんだ。だけど、ごっちんといる時はいつも本当の自分でいれた。ごっちんと抱き合うたびに『そのままの自分でいい』って言われてる気がしたんだ」
「そんなズルイよ今さら!ずる…いよ……っぇぐ」

最後の強がりは涙で脆く崩れた
頬を伝う涙を貴方はそっと指で拭ってくれる
262 名前:夢売上手 投稿日:2003年05月03日(土)01時06分30秒

「うん分かってる。ごめんね、こんなに傷つけてから守りたいなんてズルイよね」
「ズルイよ…ぇぐ…けど……好き」
「ごっちん」
「もう2番目はやだ……よっすぃ〜の1番じゃなきゃ…ヤだ」
「うん、これからは幸せにするから。だから…もう一度信じてほしい」

初めて駆け引きなしで感じた貴方の温もりは、とても暖かくて涙がでそうになる。
263 名前:夢売上手 投稿日:2003年05月03日(土)01時08分31秒


ねぇ、よっすぃ〜
貴方は私のために夜が眠れなかったことはないでしょう

けれどこれからは
涙を浮かべてしまうその前に
愛を感じさせてほしい

そして女の私はその度に甘い夢に惑わされ、他愛もない憧れを見てしまう

ねぇ――何故に貴方はそんなにも夢売上手?

―Fin―
264 名前:るぱん4th 投稿日:2003年05月03日(土)01時32分30秒
>>253-263
『夢売上手』として更新しました。

>246名無し読者様
リクありがとうございました。
『愛人後藤』どうだったでしょうか?ドロドロ感が出せなかったのでご期待に添えていなかったら申し訳ありませんm(_ _)m

>247ROM様
無邪気な後藤さん、自分も大好きです。
実際の後藤さんも年頃の様に無邪気に笑ってると思ったら、ハッとするほどセクシーな表情を見せたりと……様々な魅力を持ってる人だなぁと思う今日この頃です(笑)

>248にゃん様
リクありがとうございます。
学園モノ……きましたね(w書きたい書きたいと思ってて何故か一度も書いてないジャンルです。
是非近いうちに書こうと思ってます。

>249名無し読者様
Goodですか(w
ありがとうございます。これからもその一言がもらえるよう頑張ります。

>250ポンコツろぼっと様
あ、別れの結末読みたかったですか?
じゃあ違うストーリーで書いてみようかな……(w

>251>252名無し読者様
保全ありがとうございました。
放置気味なこのスレを見守ってくれてありがとうございます。
265 名前:ルパン4th 投稿日:2003年05月03日(土)01時51分37秒
まず最初にたくさんのリクありがとうございました。貴重な皆さんのリクをもとにマターリ更新していきますのでよろしくお願いします。

さて今回は>246名無し読者様のリクで『愛人』をテーマに書いてみました。
『2nd Love』『不埒な関係』……いろいろ悩んでついたタイトルです。
相変わらず結末を悩んでしまいました。でも愛人のままじゃ可哀そうだろうということで…(w

次回は久しぶりに実年齢に戻って学園モノを考えています。
266 名前:ROM 投稿日:2003年05月03日(土)04時35分17秒
更新お疲れ様です。私的にごっちんの涙は結構痛いです。
最後ちょっと微妙だけど、自分の心の中での愛人という
位置付けを払拭しきれずトラウマ
になってしまったのか
な。また次作を楽しみにしています。


267 名前:ポンコツろぼっと 投稿日:2003年05月08日(木)15時57分58秒
いいですねぇ『夢売上手』!
自分、こんなごとぉさんが大好物です(爆
可愛いですヤッバイヤッバイ可愛いです。ごとぉさん大好きです(壊
こんな事言うとアレですが自分ごとぉさんの涙が大好(ry

( ´Д`)<ぼぉそぉ申し訳。
268 名前:Last Scene 投稿日:2003年05月26日(月)00時31分34秒

プルルルルル
『ドア閉まりまーす。お気をつけくださーい』

乗る人をせかすベルと間延びした声がホームに響いた。

私とごっちん……
二人並んで腰掛ながら『さよなら』切り出せずに何度もこの光景を見送ってる

こんなにそばにいるのに……
届かない想いは車輪の音に遠ざかっていく
269 名前:Last Scene 投稿日:2003年05月26日(月)00時32分35秒

「次で…終電だね」
「…うん」

つないだ言葉が揺れている

数時間前の別れ話を今さら後悔してる
どうしてこんな風になっちゃったんだろう?
愛し続けると何度も誓ったのに…

約束守るどころか傷つけた

「ごっちん…ごめんね」
「なんでよっすぃ〜が謝るの?」

少し首を傾げて優しく微笑む君につられて私も微笑んだ
こんな時強いのは君の方
270 名前:Last Scene 投稿日:2003年05月26日(月)00時33分41秒

「幸せにしてあげられなかったね」
「よっすぃ〜アタシ…すっごい幸せだったよ」
「……ごっちん」
「よっすぃ〜と過ごした時間、今までで一番楽しかった」

私バカだ……
なんでこんなに健気なごっちんを守ってあげられなかったんだろう
大好きだった
心の底から愛しいと思った
それなのに……

――バカだ私
271 名前:Last Scene 投稿日:2003年05月26日(月)00時35分25秒

『3番線に電車まいりまーす。なおこの電車、最終となりますので乗り遅れないようお気をつけ下さーい』

言葉失くして俯く私に代わって駅員の声が響いた
その声を聞いて私は反射的にごっちんの手を握った

「よっすぃ〜?」

驚いたようにごっちんが見つめてくるけど私は手を強く握るのに精一杯で

「……ごっちん」

やっと喉から搾り出した掠れた声は入ってきた電車の音にかき消された

「よっすぃ〜…どうしたの?」
「ごっちん…」
272 名前: Last Scene 投稿日:2003年05月26日(月)00時36分17秒

プルルルルル

別れ際をせかすように発車のベルが鳴る

「絶対幸せになりなよ?…ごっちん」
「うん…よっすぃ〜も…絶対。ね?」
「……うん」

『ドア閉まりまーす。ご注意くださーい』

綺麗な涙を一粒零しながらそれでも微笑むと君は私の手を振り解いた

白いワンピースひるがえして閉まりかけの電車に駆け込むごっちん……

それが私とごっちんのラストシーン
273 名前:Last Scene 投稿日:2003年05月26日(月)00時37分33秒

終電の朱い尾灯が小さくなっていく
あと数時間で新しい朝はやってくるけど
明日の君は私のごっちんじゃない……

きっと伝え残した言葉の数だけ
君の夢をみるし
抱きしめ損ねた数だけ
君を忘れられない

手のひらに残していったごっちんの温もりが暖かすぎて
しばらく私は誰もいないホームで涙を流していた。


―Fin―
274 名前:ルパン4th 投稿日:2003年05月26日(月)00時54分54秒
>>268-273
『Last Scene』として更新しました。

>266ROM様
> 私的にごっちんの涙は結構痛いです。
自分もごっちんの涙は痛いです
でもいつもごっちんを泣かせてしまう自分です(w

>267ポンコツろぼっと様
可愛いですよね後藤さん!!
最近急に大人っぽくなった気がして自分の中では最高です(w
これからもガンガンぼぉそぉして下さい(w


さて今回はちょい痛めの話を書いてみました。
痛いストーリーを良く書く自分ですがアンハッピーな結末は実は始めてだったりして…(w
はじめ学園物を書こうと筆を進めてたのですが急にこの話が思いついちゃいまして、久しぶりに悩まず書けた作品です。
という訳で次回こそ学園ものいきます!(w
275 名前:ROM 投稿日:2003年05月26日(月)21時12分11秒
>でもいつもごっちんを泣かせてしまう自分です(w
そう、痛いけど何故かそういうシーンが合うんです。
電車の窓越しに流れていく夜景を見ながら涙する白い
ワンピースのごっちんが・・・切ないっす。
276 名前:ポンコツろぼっと 投稿日:2003年05月28日(水)18時51分00秒
かなり切ないよしごまですねぇ
こんなよしこさん素敵(え
自分とこのよしこさんもこんな雰囲気になってくれたらなぁ・・・
なんだか自分とこはただただネガなだけみたいで(汗

次回の学園物も頑張って下さい〜
277 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月28日(土)01時05分51秒
ホゼン
278 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月28日(月)00時51分55秒
保全
279 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/18(木) 01:31
ho
280 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/18(土) 01:25
ほぜん
281 名前:Sweet Birthday 投稿日:2003/10/29(水) 01:11

「むぅ〜〜。つまんなぁ〜い!」

携帯からお決まりの留守番コールの声が流れると同時に、アタシは携帯をソファに投げ出した。
口にした言葉が携帯の主に届くはずもなく、だれもいない広いリビングにこだまして虚しく消える。

「つまんない!つまんないっ!つまんな〜〜い!!」

そんな事にさえ寂しさを覚えて、アタシは子供みたいに足をバタつかせてみた。
その音に部屋の隅でうたた寝をしていた愛犬のタカが、耳をピクリと動かして起き上がった。
どうやら餌をくれるのかと思ったらしく、チョコチョコと短い足を動かしてアタシの足元に擦り寄ってきた。

ほんと、少しマヌケなころも誰かさんそっくり。
いつかそう言ったら『よく寝るところはごっちんそっくりだけどねぇ〜』なんて笑ってたっけ。
282 名前:Sweet Birthday 投稿日:2003/10/29(水) 01:11

そんな事を思い出してひとり思い出し笑いをしていたら、タカが餌の催促とばかりに上目づかいにアタシを見上げた。

「ん〜?お腹すいたの?タカ」

そう言って頭を撫でてやったらタカは心地良さそうに目を瞑った。
君はいつもちがうって断言するけど、やっぱりタカは君に似てるよ?
だってタカを見てると、いつも君の笑顔を思い出すんだ。
だから……

だから早く――声を聞かせて、そして会いに来て

だされたドックフードをハグハグと一心不乱に食べているタカの傍で、本日12回目の電話をしてみた。
けれどやっぱり返ってきた言葉はさっきと同じ音声で、アタシは本日12回目の溜息をつく。
283 名前:Sweet Birthday 投稿日:2003/10/29(水) 01:12

今日君が1日中仕事だってことは分かってる。
午前中は2週間分の収録があって、午後は雑誌の撮影のあとボイストレーニングとダンスレッスン……
一年前までアタシだって娘。のメンバーだったんだから、君のスケジュールは自分のことのように把握してるし、そのハードスケジュールが与える疲労も体が覚えてる。

だけど、どうして恋はこんなにも人をワガママにするんだろう?
傍にいないと声が聞きたくなるし
声を聞けば逢いたくなる
逢えば触れたくなって
触れれば愛を囁いて欲しくなる。

愛しい人を求める感情は限りない――
284 名前:Sweet Birthday 投稿日:2003/10/29(水) 01:13

「せめて休憩中くらい電話くれてもいいじゃんねぇ?」

タカに愚痴ってみたけど、タカは知らんぷりでお皿に鼻をうずめている。
今頃なにしてるんだろう?
そろそろレッスン終わったかな?
今日は……会えないのかな?

よっすぃ〜忘れてないよね?
今日はアタシの18歳の誕生日だよ

朝から携帯にはたくさんのお祝いのメッセージがひっきりなしに入るけど、一番嬉しいメッセージは届かなくて……
よっすぃ〜はとても優しい人だけど、時々アタシをすごく不安にさせる

そんなアタシの不安をよそに、食べ終えたタカはさっさと定位置の隅に戻って再び丸くなった

「この裏切り者ぉ〜〜」

つれない愛犬に不満を投げかけたその時、静かなリビングに携帯の着信音が鳴り響いた。
ダッシュでソファに投げ出した携帯を掴みとる
ディスプレイに表示された名前を見て思わず顔が緩んだ。
285 名前:Sweet Birthday 投稿日:2003/10/29(水) 01:13

「よっすぃ〜!」
『もしもし、ごっちん?』
「よっすぃ〜お仕事終わった?」
『うん。ごっちんこれからそっち行っていい?』
「もちろん!」
『ハハ、てかね……実はもうごっちんの家の前にいるんだ』
「うそ!?」

耳を疑うようなよっすぃ〜の言葉に急いで玄関のドアを開けると、携帯を耳に当てたままの貴女が突っ立てた。

「えへへ」

照れ臭そうに笑うよっすぃ〜にアタシは思い切り抱きつく

「うわっ!ごっちん苦しいよ。それに…ケーキが崩れる」

右手でアタシを支えながら、もう片方の手に握られた小さな箱をよっすぃ〜は大切そうに抱えた
286 名前:Sweet Birthday 投稿日:2003/10/29(水) 01:15

「遅くなっちゃったけど、誕生日おめでとうごっちん」

そっと体を離してよっすぃ〜はアタシの前にケーキの箱を差し出した

「あはっ、ありがと」

その後よっすぃ〜を部屋へ通して紅茶を入れた

「どーしてメールくれなかったの?よっすぃ〜が一番にくれると思ってたのに」

さっきの衝撃でいびつな形になってしまったケーキを口に運びながらアタシは少しの不満を洩らした

「だってさ……」
「だって?」

口ごもりながらよっすぃ〜はアタシを後ろから抱きしめる。
287 名前:Sweet Birthday 投稿日:2003/10/29(水) 01:15

「こうしてちゃんと会って伝えたかったんだ『おめでとう』って」

耳元で優しく囁かれてアタシは、どうしようもなく照れてしまいフォークを置いてよっすぃ〜の胸に顔を埋めた。

「ほら、ごっちん口にクリームついてるよ」
「え?どこ?」

慌てて口に手をやる腕を遮られたと思ったらよっすぃ〜の唇に捕まった

「っ…ん」

すぐにクリームより甘いキスに全身が痺れる
途切れる意識の中で部屋の隅に目をやったらタカが『見てられないよ』とばかりにそっぽを向いた

それから日付けが変わるまでたっぷりよっすぃ〜に愛されて、18歳最初の夜はよっすぃ〜の腕の中で眠りについた
288 名前:Sweet Birthday 投稿日:2003/10/29(水) 01:16

  *
289 名前:Sweet Birthday 投稿日:2003/10/29(水) 01:16

私の腕のなかで穏やかに眠るごっちんの髪をそっと撫でて、額に軽く口付ける
愛しい彼女の18歳の誕生日

きっと私は5年後も10年後も20年後も
小さなケーキにロウソクを立てて喜ぶごっちんを見て
幸せを噛み締めるんだ

9月23日には
『おめでとう』より言いたい言葉がある

ごっちんを
この世に降ろしてくれて
廻り合わせてくれた
神様に感謝いたします


−Fin−
290 名前:ルパン4th 投稿日:2003/10/29(水) 01:38
>>281-289
『Sweet Birthday』として更新しました

>275ROM様
そうなんですよ。涙とごっちんって何故かしっくりくるんですよね(w
自分の中のごっちんはカッコイイキャラも女の子キャラもこなしてくれるオールマイティ的な存在なのです。

>276ポンコツろぼっと様
ポンコツろぼっとさんの作品いつも楽しく読ませてもらってます
よしごま小説減りつつあるこの頃ですが、お互いよしごまにこだわり続けたいですねぇ(w

>277-280名無し読者&名無しさん様
放置気味だったこのスレを保全してくれて本当にありがとうございました

さて約5ヶ月ぶりの更新…前回の更新日付けを見て驚きました
本当はごっちんの誕生日に更新するはずだったのに何故か一ヶ月も遅れてしまったこの作品。
可愛いごっちんを書きたくて、ただただ甘く書いちゃいました(w

これからはもう少しペースを上げて更新したいと思ってますので、お付き合い下さいますようお願い致します。
291 名前:ROM 投稿日:2003/10/31(金) 23:03
>作者様
更新お疲れ様です。
とっても甘くて可愛いお話をありがとうございます。
女の子なごっちんと、優しいよっちゃん大好きです。

> ごっちんをこの世に降ろしてくれて廻り合わせて
>くれた神様に感謝いたします

きっと、作者様の作品を読まれている読者全ての方
の気持ちだと思います。  
292 名前:みかん 投稿日:2003/11/05(水) 04:43
よしごま最高ですね!
最近よしごまが減りつつあり非常に残念です(泣)
新作楽しみに待ってます☆
ごま受、吉攻好きなんで気が向いたら書いてください♪
何気にリクエストしてしまいました。すぃません。。
293 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/07(日) 04:01
がんばってください
294 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/25(日) 14:36
楽しみに待ってます
295 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/22(日) 22:53
がんばってください
296 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/10(水) 00:42
楽しみに待ってます

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