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恋情2 〜きっと離れられない二人〜
- 1 名前:うっぱ 投稿日:2002年07月22日(月)02時30分01秒
- 『恋情 〜きっと離れられない二人〜』からの続きです。
安倍さんと保田さん、二人の世界を描いてます。
- 2 名前:細流(プロローグ) 1 投稿日:2002年07月22日(月)02時49分06秒
『 親愛なるなっちゃんへ
今日も向かいの雑居ビルの窓辺に凭れて外を眺めているブロンドの少女を見ながらこの手紙を書いてます。
なっちゃんのいる日本から届いたエアメールを眺めて暮らしてるこの街にも、
そろそろ馴染みの笑顔が増えてきたよ。まだ親密な仲じゃないけど、ほんの少しの友達も出来たよ。
あっ、彼女が微笑んでる。きっと視線の先にいる凛々しい青年が笑ったんだろうね。
ゴメン、話がそれちゃったね。
遠く離れたこの場所にいても、二人を見てるととても懐かしくなってくるんだ。
なっちゃんと逢えない分だけ余計にそう思うのかもしれないね。
でもね、不思議と心に思い浮かぶのはいつもなっちゃんが怒ってるときの顔ばっかり。
だから今度向い合ったら上手く微笑む事ができるのかがちょっと心配、かな?
相変わらず上手く生きていくのはヘタなアタシだから...。
季節はもうすぐ秋に変わるけれど、アタシの気持ちは変わらないから 』
- 3 名前:細流 2 投稿日:2002年07月22日(月)02時57分03秒
久しぶりの晴れ間から射す太陽の光が、さっきまで降っていた雨の残骸を照らしている。
少しだけ薄い生地のカーテンが風に揺れた。
窓の向こうに見える並木道の色合いが、秋色の深みを増している。
「もうあれから一年半近く経ったんだ......」
なつみは手にしているエアメールをゆっくりとテーブルの上に置いた。
そして、傍にいつも置いてある可愛らしいミッキーの絵柄が描かれたクッキーの缶の蓋を開けた。
これで何通目になるだろうか、そこには数十通の国際郵便の封書が眠っていた。
そこに今日届いたばかりの真新しい手紙を一番上にして、そっと蓋を閉じた。
- 4 名前:細流 3 投稿日:2002年07月22日(月)03時01分57秒
- なつみはベランダに出て、乾いた空を眺めた。
太陽の光が周りを覆っていた分厚い雲たちを消し去ろうとしている。
歩道には手を繋いで嬉しそうに歩いている高校生の男女。
恋愛小説にでも登場しそうな初々しさがひときわ輝いて見えた。
人恋しいロマンチックな季節が今年もなつみの元へと訪れたきた。
『恋情 〜きっと離れられない二人〜 3rd Impression』
- 5 名前:某やすなてぃ 投稿日:2002年07月22日(月)17時37分26秒
- 新スレ!
3rd楽しみでっす!
がむばてくらさい!
- 6 名前:本庄 投稿日:2002年07月23日(火)23時57分02秒
- まってました!!
楽しみにしています!!
PS.圭ちゃんへ
親衛隊のプロデューサーとしてのお早めのご帰国お待ちしております。
- 7 名前:お返事 投稿日:2002年07月29日(月)02時53分27秒
- > 某やすなてぃさん
なつみ「やっとと言うかようやくと言うか始まりましたよ!
もうね、なっちはとにかくやるよ!」
みちよ「何を?」
なつみ「えっとぉ……」
みちよ(先が思いやられるわ…)
>本庄さん
なつみ「そうだよ、早く帰ってきてよ」
みちよ「まあまあ、そんな焦らんでもええんとちゃう?
その間はあたしがなっちの…」
なつみ「みっちゃんじゃ役不足なんだもん」
みちよ「シクシク」
- 8 名前:異郷(きざし) 1 投稿日:2002年07月29日(月)03時02分39秒
ヒースロー空港のパーキングを出た途端、冬を思わせるほどの寒さと雨に出迎えられた。
なつみは知り合いから話で前もって聞いていたが、これほどまでとは正直思っていなかった。
パーキングのビルの隙間から覗く九月の空は、灰色のどんよりとした厚い雲に覆われている。
「みなさーん、こっちでーす!」
パーキングの端に止まっているバンの陰から、ショートヘアの三十前後の女性が手を振っていた。
なつみたちが滞在する間、お世話になるコーディネーター兼通訳の女性だった。
俗に言うキャリアウーマンのように、ビシッとスーツを着こなしている。
マネージャーがいち早く挨拶をすべく彼女の方へと駆け出していった。
- 9 名前:異郷 2 投稿日:2002年07月29日(月)03時09分27秒
- なつみは今、ロンドンへと来ていた。
これまで何度か日本を脱出してきたが、そのほとんどが日本よりも温かい国だった。
英語圏である事が唯一の共通点ではあるが、他は一切合切文化が異なる異国の地ロンドンで
なつみは写真撮影のために訪れていた。
「はじめまして。今日から数日の間ですけどよろしくお願いします」
マネージャーと共にこちらへ向かってきた女性はハキハキとした日本語で挨拶を述べて、
スッと握手をするために手を差し伸べてきた。
外国っぽいその仕草に、なつみは少しだけ照れくさそうに応じた。
- 10 名前:NK 投稿日:2002年07月31日(水)04時33分39秒
- みてます。読んでます。待ってます。
またきます。w
- 11 名前:お返事 投稿日:2002年07月31日(水)11時48分03秒
- >NKさん
なつみ「見てます、読んでます、待ってます……良い響き」
みちよ「頑張らないとあかんね」
なつみ「ところでみっちゃん」
みちよ「なに?」
なつみ「なんでみっちゃんがココにいんの?」
みちよ「(シクシク)」
- 12 名前:異郷 3 投稿日:2002年07月31日(水)12時00分56秒
- ロンドンの高級街ニュー・ボンド・ストリートを抜けながら、コーディネーターが
思い出しかのように急に振り返って喋り始めた。
「ホテルはこの先にあります。ウェストベリーというところよ。とても英国的な雰囲気で、
最高級とまではいかないけれど、けっこう格式はある感じね」
なつみはコーディネーターの説明を聞き流しながら、車窓から望むクラシックな街並みを眺めていた。
狭い道路にどれもこれも古い石造りのビル。そしていかにも高級なブティックのウィンドウが建ち並ぶ。
上等な服を上品に着こなしてはいるが、どこか野暮ったい恰好をした婦人や中年の紳士が、霧のような雨に
顔をしかめるようにして行き交っている。
なつみの瞳には黙々として時間が過ぎて行く風景のように映った。
日本のファッション雑誌や音楽雑誌に紹介されているロンドンは、もっと雑多で前衛的だったように思える。
見ると聞くとでは大違いであったことをひどく痛感した。イメージとは恐ろしいものである。
パンクが生まれた都市も、今はそんな風景は一体どこへやら。
ロンドンはなつみに良い印象を与えきれなかったようである。
- 13 名前:異郷 4 投稿日:2002年07月31日(水)12時11分05秒
- やがてバンは灰色のビルの前の狭いロータリーで静かに止まった。
グレーと紺の制服を身に纏い、細長い帽子をかぶったドアマンが車に近づき、麗々しくドアを開ける。
中から出てきたなつみたちにあくまで律儀的な笑みを向ける。
コーディネーターの後に続いてドアを入って行くと、狭いが大理石の床といかにも英国調らしい
花柄のソファーが格式を感じさせるロビーに出迎えられた。
「……凄いお出迎えだな、こりゃ」
正面のレセプションに立っているブロンドの紳士が、鼻に抜けるような英語で丁重に対応する。
コーディネーターも同様に流調な英語で言葉を返していた。
- 14 名前:異郷 5 投稿日:2002年07月31日(水)12時19分00秒
「なんか落ち着かないなぁ、こういう場所って」
空港に着いた時からそわそわした様子を見せるなつみが、ロビー中央でぼうっと立ちながら呟いた。
その横を燕尾服と長い裾を揺らしたイブニング・ドレスに身を包んだ白人のカップルたちが、
ドアマンの開けるドアをくぐって、外に横付けされたロンドンタクシーに乗り込んでいった。
「そのうちイヤでも慣れてくるよ」
「慣れるって言っても1週間の滞在でしょ?無理ですよ」
「ホントは言葉の問題がネックなんじゃないの?」
「あうぅ……」
後ろに控えていたベル・ボーイと部屋のチェックをしていたコーディネーターから鍵を受け取った
マネージャーがなつみの手に部屋のキーを渡しながら核心を突いた。
言い当てられたなつみは、やや弱腰になりながら部屋のキーを受け取った。
- 15 名前:異郷 6 投稿日:2002年07月31日(水)12時27分58秒
- 部屋に入ると更に英国色の強さが目に飛び込んできた。
壁からカーテン、ソファー、ベッド、ベッドカバーまで全て花柄のオンパレードになつみは一瞬たじろぐ。
ベッドの足元に解いた荷物を広げながら再度部屋を見渡してみる。
別に花柄が嫌いという訳ではないし、お洒落だとは思うのだが、ここまで統一してしまっていると
まるでお伽の国にでも迷い込んだような錯覚に陥ってしまいそうである。
「こんなんじゃ慣れるどころじゃないよ……」
綺麗な花柄が既にどす黒いものに感じられる雰囲気になつみは一層落ち着かなくなっていった。
- 16 名前:本庄 投稿日:2002年08月02日(金)23時36分30秒
- おひさです。
ちょっと今あの発表のショックからまだ立ち直れないっす…(大号泣
…でもなっちと圭ちゃんの仲は不滅だい!!!
- 17 名前:お返事 投稿日:2002年08月05日(月)02時06分40秒
- >本庄さん
なつみ「これからお互い離ればなれだね」
圭 「そだね」
なつみ「悲しいけど、ちょっと嬉しいかな」
圭 「なんで?」
なつみ「だって会えない時は辛いけど、その分会った時にいっぱい甘えられるからね」
圭 「なるほど……ってことは今よりもっと甘えん坊さんになるんだ?」
なつみ「あっ、いや、そのぉ……(照)」
圭 (今よりももっとハマりそう……)
- 18 名前:異郷 7 投稿日:2002年08月05日(月)02時25分47秒
- ベッドの上に寝転がり、しばらく花柄にまみれた部屋の天井を眺めていた。
少し眠気が出てきた頃、部屋のベルが鳴り響いた。
疲れた様子で受話器を取ると、ぎこちない英語で応える。
すると聞き慣れた日本語が耳に届いた。
「なっち、元気? 誰かわかる?」
「みっちゃんかい?」
「そうやで、愛しのみっちゃんやでぇ」
「どうしたの? こんな真っ昼間から」
「真っ昼間? ああ、そうか。こっちはもう夜やけど……っていうか緊張したわ。
国際電話って初めてやから、どう言っていいもんか。こんなんなら英会話ぐらい
真面目にやっとけば良かったわ……」
いきなり捲くし立てて喋るみちよの声に、なつみの声質は急に弛緩した声になった。
- 19 名前:異郷 8 投稿日:2002年08月05日(月)02時37分02秒
- 「で、どうしたの? 急に電話なんて」
「いやぁ、今日一日オフやってん。で、な〜んもする事がなくてな、
暇やから遊んでもらおーと思って」
「遊んでって……なっちは東京に居るんじゃないんだよ?」
「知っとるよ」
「いや、その…普通に返されても困るんだけど……」
「なんやなっち、冷たいなぁ。ウチは悲しいわ。
そんなんは冗談として、どうや、ロンドンは?」
「ん〜まだ着いたばっかりだからなんとも言えないけど、いい所みたい」
「へぇ〜いいなぁ、そんなとこに行けて。なんでなっちが行けてウチが行かれへんのかなぁ?」
拍子抜けしたような、それでいて意味不明な事を愚痴るみちよに少し溜息をついた。
- 20 名前:異郷 9 投稿日:2002年08月05日(月)02時56分51秒
- 「みっちゃんさ……」
「ん? なんや急に暗い声して」
「アホだよね」
「んな! ……ひどいぃ〜、国際電話越しにアホ呼ばわりされたぁ〜。
めっちゃムカツクと同時に、めっちゃヘコんだわ」
「へへへ。冗談だってば」
「まあええわ。で、話変わるけど、圭ちゃんには連絡したんかい?」
「ううん。してない」
「なんで? ロンドンから近いんやろ、圭ちゃんが居るトコ?」
「そうでもないよ。それに今はお互いが忙しいから」
なつみはみちよの質問にできるだけ淡白に答えた。
「そっか……あっ、ごめん。あの娘が来たみたいやから今日はこの辺でな」
「あの娘? 誰?」
「そうそう、実はウチな新しい恋に出会ってしまったんよ」
「え〜誰、誰なのさ? 教えてよぉ」
「ま、電話じゃ説明不能やから帰って来たら話したげるわ。んじゃな」
「わかった。またね」
- 21 名前:異郷 10 投稿日:2002年08月05日(月)03時01分26秒
- 受話器を置いた途端にベルが鳴った。
なつみは少し疲れたような動作で再度それを取る。
「電話でもしてました? なかなか繋がらなかったものですから……」
なつみは静かに肯定した。
「着いたばかりでお疲れかと思いますけど、全員で昼食に出かけますので、
ロビーに集合してください」
「あ、はい。すぐに行きます」
なつみは重い腰をベッドの上から起こし、いそいそと身支度を始めた。
時計の針はちょうど一時を半分ほどまわった時だった。
- 22 名前:ゆっちん 投稿日:2002年08月05日(月)15時32分16秒
- んあ!!!
短期の交換留学で日本にいない間にぃぃぃぃ!!
お圭さぁぁぁん・・・・。
ま、芸能界にはいるわけだし。ヨシッ!
つーか、ここでも話が始まってるし!
チェックしていきまっせ〜。
- 23 名前:某やすなてぃ 投稿日:2002年08月05日(月)23時50分43秒
- 更新されてますね〜!
なっちと圭ちゃんの恋の行方も気になりますが、
最近平家さんにはまり中なので、
平家さんのほうも気になってます。
相手が誰だか分かりませんが、平家さん応援してるです!
もちろん、なっちと圭ちゃんも!
- 24 名前:お返事 投稿日:2002年08月09日(金)03時26分16秒
- >ゆっちんさん
なつみ「おかえりなさ〜い」
みちよ「なっち、なんかお母さんみたいやで」
なつみ「そっかな?」
みちよ「そういや圭ちゃんはいつ戻ってくんの?」
なつみ「圭ちゃん……(暗)」
みちよ(ええなぁ〜アタシもこんなになっちに心配されたい〜)
>某やすなてぃさん
みちよ「やったぁ〜これでようやくアタシにも陽の光が」
なつみ「で、相手って誰なの?」
みちよ「知りたいか? ん? んん??」
なつみ「別に」
みちよ「えっ、知りたくないの? ねえ、ホントに?」
圭 「アタシもイイや」
みちよ「ええっ!! そんな、聞いて。ねえ、二人とも」
圭 「みっちゃんの邪魔しちゃ悪いから向こう行こっか、なっちゃん」
なつみ「うん!!」
みちよ「誰か、聞いてぇ〜」
- 25 名前:本庄 投稿日:2002年08月10日(土)23時13分56秒
- おいらは聞くぞ!みッちゃん!!!
誰だ?誰なんだぁぁぁ!!!
なっちは圭ちゃんのものだがそう簡単にみっちゃんは渡さんぞぉ!!!
(酔っ払いの戯言と思ってください)
- 26 名前:本庄 投稿日:2002年08月10日(土)23時15分51秒
- あ、忘れてた。
なっちお誕生日おめでとう♪
- 27 名前:お返事 投稿日:2002年08月11日(日)02時18分32秒
- >本庄さん
みちよ「なっち、お誕生日、オメデトォ!!」
圭 「おめでとぉ、なっちゃん!!」
なつみ「えへへ。嬉しいな♪♪」
みちよ「プレゼントやけど、なっちが好きなものあげることにするから」
圭 「アタシもそうする事にしたからなんでも言っていいよ」
なつみ「んとね、じゃあ……(真っ赤っか)」
みちよ(ん? もしかしてアタシ? アタシが欲しいなんて言ったら……
そんなんやったらどないしよ)
なつみ「圭ちゃんが欲しいなぁ……」
圭 「!!!」
みちよ(シクシクシク)
- 28 名前:ビギナー 投稿日:2002年08月12日(月)10時31分04秒
- お久しぶりですっ。
ごめんなさい、ご無沙汰してました。
遅れちゃったんですが、なっちお誕生日おめでとう。
21歳で、圭ちゃんと同い年ですね。
それでも、カワイイなっちでいてください。
それでは、また来ます。
- 29 名前:お返事 投稿日:2002年08月24日(土)09時16分16秒
- >ビギナーさん
圭 「お久しぶりですねぇ。いつも拝見してますよぉ」
なつみ(終始ニコニコ)
圭 「なっちゃん、なんでそんなにニコニコしてるの?」
なつみ「だってぇ、圭ちゃんと同い年だしぃ、それにぃ〜」
圭 「それに?」
なつみ「ビギナーさんが可愛いって(ポッ)」
圭 「……なっちゃんってエッチだよね(ボソッ)」
なつみ「なんでぇ!?」
圭 (性格は子供だけど、身体は大人……やっぱりエッチだ)
- 30 名前:異郷 11 投稿日:2002年08月27日(火)02時23分17秒
- リージェントストリートという日本の銀座みたいな大きな通りを左に沿ってピカデリー・サーカスに向かって少し歩く。
そしてピーク・ストリートという小さな路地を入っていくと、そこはソーホーと呼ばれる地区で、
いわゆる繁華街らしいごちゃごちゃした雰囲気がなつみたちを迎えてくれた。
ここまでの行き方は説明してもらった通りに覚えたのだか、なにせまだ到着してから数時間も経っていないのだから
どちらの方角に何があるのかさえわからなかった。
しかし、ソーホーの路地は少しだけなつみたちの気持ちを和ませた。
ホテルは聞き取りにくいイギリス英語と花柄が飛び交い、ニュー・ボンド、リージェントといったホテルの近くのストリートは、
シャネルやグッチ、カルティエといった有名どころの高級品が溢れ、どうもなつみたちの心にしっくりとこないものが溜まりつつあった。
それがソーホーに入るなり、チープなアクセサリー、カジュアルなブティック、エスニックなレストラン、そして淫靡なネオン街までもが存在していた。
- 31 名前:異郷 12 投稿日:2002年08月27日(火)02時32分50秒
- パンク・ファッション・ブティックの並ぶカーナビー・ストリートも心を和ませる効果があった。
ブルーやピンクのへヴィメタ風かつらや鎖がジャラジャラと付いた皮製品、とんでもない絵柄の入ったTシャツなどなど。
よくよく見れば原宿にでも溢れていそうな安い品物ばかりであったけれども、そんな風景がホテルのドアマンの顔や
花柄ロビーを一瞬消し去ってくれた。
「渋谷と歌舞伎町が一箇所に集まったみたいなとこだなぁ」
マネージャーが溜息をつくように言った。
だが、彼の視線は妖艶なネオンが点滅する佇まいの方を向いていたのは言うまでもない。
「目先が関係のない方に向いてるけど?」
「ええっ!? ななな何言ってんの、バババカなこと言いなさんな」
「……声、裏返ってるよ」
「ふぇ?」
明らかに挙動不審なマネージャーの態度に、その場にいた全員が冷たい視線を送っていた。
- 32 名前:異郷 13 投稿日:2002年08月27日(火)02時43分47秒
- コーディネーターが案内してくれたのは、ソーホーの一角にある韓国料理屋だった。
化粧の濃い民族衣装を身にまとった女性と焼肉とそして激辛キムチの匂い。
やはりアジアの雰囲気というのは外国に来るとどこか近しいものを感じてしまうようだ。
客も大半が韓国人か日本人らしく、馴染みのある言葉があちこちで飛び交っている。
木彫りの家具が並ぶその場所は、あっという間にロンドンという都市にいることを忘れさせてくれた。
もちろん、滞在中にイギリスならではの食べ物―フィッシュ&チップスとかドーバーソウル(平目)―とかを
挑戦しようという話しも話題に上ったが、正直な所なつみを含め誰もが日本食好きなので、あっさりボツになった。
そんな束の間の時間は、なつみがこっちに来て初めて心が安らいだ時だった。
- 33 名前:異郷 14 投稿日:2002年08月27日(火)02時55分08秒
- 食事も終わりかけた頃に、明日からの日程やスケジュールの確認をするスタッフの横で、
なつみはデザートのフルーツをフォークで突き刺しながら別の事を考えていた。
(この街を圭ちゃんと二人だけで歩けたら、きっと全てが実際より何倍も素敵に見えるんだろーなぁ)
先ほど見た街並みを圭と二人で歩く様を想像してみた。
けれどもそんな理想は簡単に崩れ、現実だけが目の前に立ちはだかる。
(あ〜あ、現実ってこんなもんなんだよね。一人は淋しっ)
どうあがいても叶わぬ理想に、なつみは肩を落とすしかなかった。
- 34 名前:本庄 投稿日:2002年08月27日(火)23時28分42秒
- おぉう!更新されてる♪
なっちと圭ちゃんが二人っきりで尚且つあまあま&ラブラブ〜〜に
イギリスの街をあるける日を夢見てまってます!
圭ちゃ〜〜〜ん!!!はよ戻ってこぉぉぉぉい!!!
- 35 名前:異郷 15 投稿日:2002年08月28日(水)02時27分41秒
- なつみたちは店を出て、来た道を戻っていた。
店内に所狭しと並べられた品々を横目にしながら、なつみは圭の事を考えていた。
(あのブレスレット圭ちゃんに似合いそう。あ、あっちのイヤリングもいいなぁ……
あ〜あ、こういう誰も知らない土地なら堂々と二人で肩を並べて歩けたのになぁ……はぁ〜っ)
行き交う人々の群れにぶつからないように注意しながら歩いていたつもりだったが、
なつみの小さすぎる身体は、壁のようになって立ちはだかる外国人たちの歩く流れに乗り始めていた。
(誰にも邪魔されずにのんびりショッピングだって出来るのにぃ……でもこれって我侭なのかな。
……もぉ、圭ちゃんのバカ、って圭ちゃんに怒ってもしょうがないか、ははは)
高波に飲みこまれていく小さな身体に気付かないスタッフは、どんどん進んでいってしまった。
- 36 名前:異郷 16 投稿日:2002年08月28日(水)02時36分58秒
- 「ふうっ……ん? んん? あれっ」
なつみは自分が徐々にマネージャー達とは違う通りへと流されていたことに気が付いた。
なつみは辺りを見まわして、マネージャーを呼んでみた。しかし周りは白人ばかり。
この混雑した人の群れと飛び交う様々な言葉が、マネージャーの呼び止める声と姿をかき消していた。
「ええ〜、みんな、どこいっちゃったの〜?」
悲しい叫びにも似た声と共に、なつみは完全に流動する荒波に飲み込まれてしまった。
人垣を転々とする小さな日本人はまるでサッカーボールのよう転がっていく。
そしてようやく荒波がおさまった頃、なつみは全く未知も場所へと漂流していた。
- 37 名前:異郷 17 投稿日:2002年08月28日(水)02時43分49秒
- そこはさっきの賑やかさとは打って変わって、物静かなビルが立ち並び、行き交う人々も
どことなく紳士淑女の出で立ちをした人ばかりであった。
そんな静粛そうな場に突如現れた異国の少女に、通り過ぎて行く紳士淑女たちはまるで
野良猫を見るような目でなつみを見渡していく。
その鋭すぎる視線がなつみの身と心を一気に収縮させてしまう。
(ここどこぉ? こ、怖いよぉ)
段々と焦りと不安が募ってくる。
初めて一人で原宿に行った時の淡い経験が、なつみの頭の中を駆け巡っていた。
それが却ってなつみの不安をかき立てる作用を引き起こしてしまう。
日本で道に迷った外国人の気持ちが痛いほどわかった。
- 38 名前:お返事 投稿日:2002年08月28日(水)02時50分02秒
- >本庄さん
なつみ「二人っきりで甘々、そしてラブラブ……(カァーッ)」
圭 「なっちゃん、何一人で想像して真っ赤になってるの?」
なつみ「圭ちゃん、チュウしよう! ね、ね、ねっ!」
圭 「ち、ちょっと、なっちゃん大胆過ぎ!」
なつみ「圭ちゃぁぁ〜ん、チュウしよぉ〜」
圭 (戻ってきて損したかも……)
〜物陰から〜
みちよ「なっちが、あんな大胆な事……う、羨ましぃぃぃっ!」
- 39 名前:Tea Break 投稿日:2002年08月31日(土)02時24分10秒
- 『あなたにヤケドしそう』
なつみ「きゃーっ、ヤケド!!」
圭 「な、なにぃ!!」
ドタバタ、ドタバタ
圭 「だ、大丈夫!?(ギュ〜ッ)」
なつみ「あっ……(ポッ)」
圭 「大変だ!! 手がこんなに赤くなってぇ!!」
なつみ「えっ? ヤケドしたのはテレビの人だよ?」
圭 「へ?」
なつみ「手は圭ちゃんが強く握ってるからだと……」
圭 「あっ……」
なつみ「圭ちゃん……顔、赤いよ?」
圭 「……」
なつみ(ドキドキ)
圭 「でも……なっちゃんじゃなくてよかった(ホッ)」
なつみ「……(カァーッ)」
- 40 名前:ゆっちん 投稿日:2002年09月03日(火)15時41分10秒
- お母さん・・・・・。
はっ!ヤバイヤバイ!!・・・ふ〜。
なんとな〜く、危険な匂いがするわ!
危ないわ!不安だわ!怖いわ!
お圭さん!こういう時こそ、あなたの見せ場!!
・・・・・・カナ?
- 41 名前:本庄 投稿日:2002年09月06日(金)12時49分48秒
- 甘ぁ〜い♪
自分もヤケドしそうです!!
- 42 名前:お返事 投稿日:2002年09月10日(火)04時53分56秒
- >ゆっちんさん
なつみ「お母さん……」
圭 「(ポン!)」
なつみ「???」
圭 「なつみぃ〜ご飯よ〜」
なつみ「えっ、えっ、え〜っ!?」
圭 「宿題やったの〜? 明日の用意したの〜?」
なつみ「お母さぁ〜ん(ギュ〜ッ)」
圭 (これでいいのかなぁ〜?)
>本庄さん
圭 「隊長、貴方がヤケドしたら親衛隊はどうするんですか!?」
なつみ「でも、本庄さんはそれを望んでるかもよ?」
圭 「え゛っ!!」
なつみ「だ・か・ら」
圭 「た、隊長ぉ〜! へ、ヘルプ ミィ〜」
- 43 名前:巡逢(うんめい) 1 投稿日:2002年09月10日(火)05時03分54秒
- やや不審な動きで通りを進んでいると、空模様が急に怪しくなり、やがて霧雨が街並みを濡らし始めた。
「あ〜あ、どうしよう。傘なんて持ってないし、着替えもホテルに置いてあるのに……」
なつみはとりあえず、近くの古い石造りのビルの入口で雨宿りをすることにした。
しばらく天を見上げてみる。気分的にも不快感はさほど募らなかった。
何故か雨模様のロンドンの街並みが妙にお洒落に見えた。
比較的大きめの入口にはなつみと同じように、数人が悪天候によって足止めをくらっていた。
しかし悲観的ななつみとは違い、彼らの表情がどことなく楽しそうであった。
(何だろう、この感じ。雨なのにみんな楽しそうな表情してる。やっぱりお洒落な国なんだなぁ)
妙なところに関心を抱くなつみだった。
- 44 名前:巡逢 2 投稿日:2002年09月10日(火)05時14分07秒
- 不意に少し体格のおっとりした婦人がなつみと並んだ。
婦人はなつみをチラッと垣間見ると、フッと笑って霧雨の中に消えていった。
婦人の一笑いでなつみは現実に引き戻された。
さっきまでの焦りと不安がなつみに重く圧し掛かる。
今居る場所から少し離れた場所へと移動して、雨が上がるのを待つことにした。
(これから先、どうなっちゃうのかな。このまま誰も知らないこの街で一人淋しく夜をさまようのかな。
……ヤダよぉ……圭ちゃん…なっち、どうしたらいいの? 教えてよ、圭ちゃん……)
一人小さくなって悲観的になるなつみとは裏腹に、恰幅のよい紳士たちが爽やかな笑顔で談笑している声が耳に届いてくる。
そんな様子を恨めしく思いながら、なつみは何気なく通りの反対側に視線を向けた。
- 45 名前:巡逢 3 投稿日:2002年09月10日(火)05時24分30秒
- 何気なく見た反対側だったが、なつみの瞳が何かを捉えた。
行き交う車の往来ではっきりとは見えなかったが、視線の先に飛び込んできた正体に
なつみの目が一瞬にして灰色のビルの壁際に釘付けになった。
瞬きをする暇さえも与えず、ましてやさっきまでの焦りや不安でさえも消し去るほど
その瞳に映った映像は衝撃的なものだった。
「う、うそ……」
驚いてその場に固まったままのなつみに、ビルから出てきた初老の紳士が軽くぶつかった。
すぐさま丁重な口調で謝る紳士の言葉に、ただじっと向かいのビルに釘付けのなつみは慌てて日本語で謝り返す。
「ご、ごめんなさい」
突然、日本語で言葉を返してきたなつみに、その紳士は一瞬驚いたが、すぐさま厭な顔一つせずに
笑顔を作ってなつみの肩を軽く叩いてその場を去っていった。
なつみはそんな紳士の後ろ姿を見送った後、再び向かいのビルに視線を戻した。
- 46 名前:本庄 投稿日:2002年09月10日(火)12時55分19秒
- いけぇぇぇ!!!なっちぃ!!
隊長のわしが許す!!
落とせぇぇぇ!!!(壊
- 47 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 48 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 49 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 50 名前:お返事 投稿日:2002年09月11日(水)03時09分18秒
- >本庄さん
なつみ「圭ちゃぁぁん」
圭 「ちょ、待って、待ってぇ〜、み、みっちゃぁぁ〜ん!」
みちよ「ん〜? なんか用でっか?」
圭 「なっちゃんを、なっちゃんを〜(焦)」
なつみ「圭ちゃぁぁ〜ん好きぃ〜」
圭 「なっちゃんを任せた(逃)」
みちよ「えっ、いいの? や、やったぁ〜!」
圭 「くそぉ〜、隊長めぇ〜、覚えてなさい!!(憤)」
- 51 名前:本庄 投稿日:2002年09月12日(木)17時37分57秒
- ありゃぁ…圭チャンなんで逃げる…って!!
なんで怒るのさぁ!なんかめっちゃ怖いっすよぉ!!(泣
あ、ひょっとして照れてる?照れてるのね!!もぉ、恥ずかしがりやさん♪
なっつぃ〜!圭ちゃん連れてトイレにでも篭ってらっしゃぁぁい!!
狭い密室に二人っきり……くす♪(邪笑
あっと隠しカメラの準備しとかなきゃ!!
- 52 名前:お返事 投稿日:2002年09月13日(金)03時36分01秒
- >本庄さん
圭 「フッフッフッ本庄さん(ニヤッ)貴方のお考えは残念ですね」
なつみ「なんでぇ?」
圭 「それはなっちゃんはみっちゃんに預けて…ってなんでなっちゃんがここにいんの!?」
なつみ「えへへ〜。みっちゃんにはちょっと眠っててもらっちゃった」
圭 「みっちゃんに何したの?」
なつみ「えへへ。圭ちゃんにもし・て・あ・げ・る(ぷしゅーっ)」
圭 「ゲホゲホゲ…ホ……Zzz……」
なつみ「これで準備おっ圭…なんちゃって」
〜はたして圭ちゃんはなっちゃんに食われてしまうのか!?〜
- 53 名前:巡逢 4 投稿日:2002年09月13日(金)03時48分28秒
- なつみが飛ばす視線の先には、スレンダーな身体にストライブのお洒落なジャケットを来た日本人がいた。
茶色い髪に淵無しの眼鏡を掛け、なつみと同じ肌の色を持つその人は、なつみと同じように灰色のビルの真下で
衣服に付いた水滴を掃いながら雨宿りをしていた。
なつみはもっと目を凝らして観察してみたが、どこをどうとってもあの人にしか見えなかった。
(嘘だ……嘘に決まってるよ。だってここはロンドンなんだよ? 今はアメリカにいるはずなのに……)
そう思うと同時に、その日本人とバッチリ視線が絡み合った。
どうやら向こうはなつみが向ける熱い視線に気付いたらしく、表情変えることなくレンズの奥の瞳をなつみへと向けていた。
(そんな訳ない。あれは絶対に違う人、そっくりさんだよ。だって世の中には自分と同じ人間が三人もいるって言うじゃん)
そう思い込もうとすればするほど、なつみの中に「確信」という2文字が浮かび上がってくる。
あれはまぎれもなく、自分が愛した「保田 圭」であるという確信が。
- 54 名前:巡逢 5 投稿日:2002年09月13日(金)03時58分35秒
- しばし、お互い視線を絡ませ合う。
すると灰色のビルに凭れていたその人は、壁から身体を起こしてゆっくりとした足取りで
優しく降り注ぐ霧雨の中、通りを難なく渡ってこようとしていた。
雨のせいで比較的スピードを落として走る車を上手く避けながら歩いてくるその人は、
まるでこの地に生まれ育った人間のように落ち着いた雰囲気を漂わせていた。
(これってホントに夢? それとも悪戯?)
石造りのビル郡を背景にしたその人の姿がハッキリしてくるのを、なつみはただじっと
大きなビルの片隅で見守っていた。
通りを渡り切り、雨に濡れたその人がなつみの目の前に立つと、なつみはじっとその人の
澄んだ瞳を凝視したまま口から言葉を吐いていた。
- 55 名前:巡逢 6 投稿日:2002年09月13日(金)04時10分57秒
- 「ど、どうして……どうしてここにいるの?」
「さあ? なんでだろうね?」
「だって手紙にはそんなこと一言も……」
「そうだっけ?」
「だってまだアメリカにいるんじゃ……」
「もう飽きちゃってさ。毎日毎日お肉と脂っこい料理ばかりで
そろそろベジタリアンにでもなろうかな〜って思ってたんだ」
「……」
「あ、ごめん。つまんなかった?」
「……もう完全に治ったの?」
「今、ここに居るんだからそういう事になるかな」
「本当に……本当に治ったんだね? 夢じゃないよね? ドッキリでもないよね?」
「自分で頬でもつねってみる? なんならやってあげてもいいけど」
そう言って少しだけ目を細めて微笑むその顔は、なつみが一年以上も待ち焦がれた最愛の人の最高の笑顔だった。
「け、圭ちゃぁぁんっ!!」
- 56 名前:巡逢 7 投稿日:2002年09月13日(金)04時20分08秒
- こんな異国の地でしかも何十億分の一の偶然過ぎる再会に、なつみは甲高い声で泣き叫ぶように
我をも忘れて圭に飛びついた。その場にいた数人の紳士たちが一斉に彼女たちへと振り返る。
「ちょっとちょっとぉ〜、恥ずかしいじゃない。いきなり抱きついてくるなんてぇ〜」
「うぐっ、えぐっ……だってぇ……だってぇ〜嬉しいんだもん」
「相変わらず変わってないね、なっちゃんは」
「ホントに圭ちゃんなんだね? 嘘じゃないよね?」
「だからさ、自分で頬でもつねってみる?」
そう言って圭はなつみのもち肌のような頬を軽くつねった。
プシュ〜ッと音が出るように泣き顔のなつみが息を漏らす。
「ううっ……こんな所でぇ……逢えるなんて、思っても……えぐっ、えぐっ」
「もう泣かないの。二十歳になったんでしょ?」
「関係ないよぉ……なっちは…なっちは圭ちゃんの前ではまだ子供なんだからぁ」
「ふっ。まあいいか」
久しぶりに人から甘えられた圭は思わず笑みを零していた。
- 57 名前:本庄 投稿日:2002年09月16日(月)00時25分58秒
- おぉぅ!!お帰り圭ちゃん!!
…ってここはロンドン…お帰りであってるのか?
まぁいいや。(いいのかよ!)
なにはともあれ良かったねぇなっち…。
さぁ!それじゃぁ眠った圭ちゃんを好きにしちゃっておくんなまし!
あ、みっちゃんは私が責任もって縛り上げておくから♪(←悪魔)
- 58 名前:お返事 投稿日:2002年09月17日(火)01時37分26秒
- >本庄さん
なつみ「よいしょっと。えへへこれで圭ちゃんはなっちのもの」
圭 「Zzz……」
なつみ「圭ちゃん、起きてぇ〜。チュッ」
圭 「ん、んん〜。あれ、ここどこぉ?」
なつみ「本庄さんが用意してくれたトイレだよ」
圭 「あ、なっちやん。やっとアタシを好きになってくれたんか。嬉しいで」
なつみ「!!! みっ、みっちゃんじゃん! なんでみっちゃんが!?」
みちよ「そりゃなっちが間違えたんやろ。さて早速なっちを…」
なつみ「や、やだーっ!」
〜こうしてドジを踏んでしまったなっちゃん。はたして圭ちゃんは今頃どこで何を?〜
- 59 名前:本庄 投稿日:2002年09月21日(土)16時54分54秒
- 圭ちゃ〜ん、どこいったぁ!!
ま、まさかあっち(銀板)にまだいるのか?
もしそうなら…(妄想中)
やばい!このままではまじで二人に嫌われてしまう!!
なっち!圭ちゃんのピンチよ!!
みっちゃんに捕まってる場合じゃねーのれす!!(誰のせいだよ)
- 60 名前:お返事 投稿日:2002年09月22日(日)06時11分01秒
- >本庄さん
梨 華「そう簡単には保田さんを渡しませんよ」
圭 織「圭ちゃんはアタシたちのもの」
真 里「邪魔してやる、ウケケケケ」
三 人「「「ウヒャヒャヒャヒャ」」」
- 61 名前:本庄 投稿日:2002年09月23日(月)23時31分36秒
- 圭ちゃん!起きろ!!起きてくれぇ!!
ほら!はよ逃げんと邪魔者トリオが…(焦
圭織&真里「「圭ちゃ〜ん♪」」
梨華「保田さぁん、どこにいるんですかぁ♪」
…ん?やばい!!近くまで接近してる!?
あ゛ぁぁどうしよう…(涙
圭ちゃん!!!起きなきゃ君の大事ななっちはオイラの者にしちゃうぞ!!
- 62 名前:お返事 投稿日:2002年09月27日(金)08時55分01秒
- >本庄さん
なつみ「むむっ!圭ちゃんは誰にも渡さない!」
? 「そうはいきませんよ、安倍さん。ここいら辺で眠ってもらいます」
なつみ「誰!?」
〜麻琴があらわれた。どうする?〜
なつみ 1:闘う 2:防御 3:装備 4:呪文 5:逃走
- 63 名前:巡逢 8 投稿日:2002年10月03日(木)02時08分45秒
- 「それより、なっちゃんは何してたの、こんな所で?」
「えっと……」
なつみは自分が置かれていた立場を完全に忘れていた。
けれども先ほどまでの不安などどこ吹く風といった感じで、おどけた表情を見せる。
今、一人ではないという絶対的な自信がそうさせていた。
「…というわけなんだ」
「でも、ホテルの名前は覚えてるよね?」
「う、うん。一応」
「なら大丈夫だね」
「えっ?」
「いや、別に。それより、これから一緒に来てくれるよね?」
「ど、どこに?」
「そろそろ夕食の時間でしょ」
そう言って圭は腕にはめていた時計を見せる。
景色はまだ夜を感じさせなかったけれども、時刻は夕食時になっていた。
- 64 名前:巡逢 9 投稿日:2002年10月03日(木)02時20分05秒
- 「行こっか」
「えっ、あっ……」
圭はそっと後ろ手になつみの手を取り、通りを渡り始める。
なつみは圭に手を引っ張られて通りを渡りながら、彼女の横顔を見つめる。
懐かしい圭の温もりを直に感じながら、なつみは初恋のような気分に戻った気がした。
容姿は日本にいた頃と全くといっていいほど変わっていなかった。
時々横目で見つめてくる眼差しもやはり、なつみが昔から知っている圭そのものだった。
(さっき思っていた事が現実に今起こってるんだ…。まるでマンガの世界みたい)
そう思いながらロンドン市内を歩いているうちに、なつみは少し不思議な事に気がついた。
- 65 名前:巡逢 10 投稿日:2002年10月03日(木)02時31分48秒
- 何もかもあの頃の圭と変わらなかったが、どこかで今までの彼女と違う部分を感じている自分がいた。
一瞬、自分が見知らぬ人に手を引かれている錯覚を覚える。
(なんでだろう。なっちの手を繋いで歩いてるのは、確かになっちが恋してる圭ちゃんなのに…)
現実に起こっている事に今だ半信半疑ながらも、圭といる時間を大切をしたい。
彼女といられる限りは沢山の素敵な時間を過ごしたいと痛切に思っていた。
………。
……。
…。
「…ゃん、なっちゃん?」
「へ?」
「どうしたの?」
「あ、ごめん」
「いきなり無口になるね。着いたよ」
圭の声で我に返ったなつみは、考え事をしている間、ずっと足元に視線を向けていた。
顔を上げると優しい圭の笑みと、狭くて賑やかな路地の一角にあるこじんまりとしたお店が映った。
- 66 名前:巡逢 11 投稿日:2002年10月03日(木)02時37分51秒
「ここでよかったかな?」
圭は目の前に並んだ懐かしい料理を見て、少し恐縮そうに言った。
「大丈夫だよ。こっちに来てまだほんのちょっとしか経ってないけど、もう日本食が恋しくてさ」
「なんで?」
「コーディネーターさんが案内してくれたお店って、なっちには合わなくってね。食べた気がしなくて」
「そうかな? そんなに悪くはないと思うけどね」
「それにさ…」
「それに?」
「周りが全て外国人でしょ? だから居心地が悪くって」
「ここにいる時はアタシたちが外国人だけどね」
「そうなんだけど、やっぱり慣れっていうものがねぇ……」
お漬物を突つきながら、今の状況を身振り手振りで話すなつみを圭はじっと見つめ、聞いていた。
- 67 名前:巡逢 12 投稿日:2002年10月03日(木)02時48分48秒
- 「このお店、どうかな?」
二人が入ったのは、トッテナム・コート・ロードにある日本式の居酒屋だった。
中に入れば、日本語が縦横無尽に飛び交い、白木のカウンターでお寿司や冷や奴などを食することができる。
高級な和食レストランが多い中で、比較的庶民っぽく穴場中の穴場といえそうな店であった。
たまたま知り合いの日本人がロンドンに来ていて、教えてもらったらしい。
庶民的なインテリアで、従業員たちも絣の着物を着ている。
メニューも馴染みのあるものばかりで、冷や奴、ひじき、納豆などといったものから刺身、御寿司などの
高級食材をふんだんに使った料理まで揃っていた。
日本であればそれほど珍しくもない店であるが、ここに来ているお客もかなりきちんとした服装で、
高級フランス料理店でワインを飲むように、日本酒を静かに味わっている様子だった。
- 68 名前:巡逢 13 投稿日:2002年10月03日(木)02時57分39秒
- 「気に入らなかった?」
圭は不安そうに問いただす。
なつみは改めて店内を見渡してから圭に笑顔で答えた。
「全然。そんな事ないよ」
「そう、よかった」
「なんだか安心しちゃったよ。どんなとこ連れていかれるのかわからなかったから。
でも入ったらいきなり日本語で「いらっしゃい」って言われてホッとした」
「そうだね。日本ではなんてことない普通の店だけど、ここって結構高級らしいよ。
まあ、外国じゃ日本食って高級なものらしいからね。こうやって御寿司とか
冷や奴とか食べてるとそんな気は全くしないけどね」
圭は笑いながらキュウリの漬物を箸で摘んだ。
なつみも微笑み返しながら、二日ぶりの白いご飯を味わった。
つくづく日本人でよかったな、と思う瞬間だった。
- 69 名前:巡逢 14 投稿日:2002年10月03日(木)12時49分33秒
- 「ん〜、美味しかったぁ」
「そう? よかった」
店を後にして、両腕を大きく広げて伸びをするなつみを微笑ましく見つめる圭。
なつみはロンドンに着いて初めて心の底から笑い、落ち着いた時を過ごせた気がした。
「ところでさ、なっちゃん。時間、大丈夫?」
「え、あ、ああーっ!! そうだ、なっち迷子になってたんだっけ!?」
「かなり時間経ってるけど、みんな心配してんじゃないの?」
「そうだよ、どうしよぉ。なっちホテルへの帰り方知らないよぉ。それにここどこぉ?」
数時間前に抱いていた不安が三度甦り、慌てふためくなつみ。
そんな彼女をよそに圭は、夜風に髪を泳がせながら普通にしている。
「なっちゃん今どこに泊まってんの?」
「えっと〜何だっけな? ウ、ウエストロベリーだったかな? あれ、違うような……」
「ああ、ウエストベリーね」
「そう、そこ! …ってなんで知ってんの?」
「さあ」
少しおどけた様子を見せる圭に、首を傾げるなつみ。
- 70 名前:巡逢 15 投稿日:2002年10月03日(木)12時57分33秒
- 「行こっか」
「え、どこへ?」
「帰るんでしょ、ホテルに? それとも霧のロンドンの街中をさまよってみる?」
「ん〜、圭ちゃんとだったらいいかなぁ……」
なつみはすり寄って、少し甘えた声を出す。
「ん〜、アタシはパスしとくよ」
「ええ〜っ、なんでぇ!?」
「ロンドンの夜は結構寒いんだよ? 凍死はしたくないなぁ」
そう言ってなつみを先導するように歩き出す圭に、なつみは先ほど感じた不思議な感覚を思い出した。
(なんだろう? なっちの目の前にいるのは紛れもなく圭ちゃんなのに、圭ちゃんじゃない気がする。
ホントに圭ちゃんは圭ちゃんなのかな……)
置いていかれないように圭の背中を見つめながら、なつみはしばしもの思いに耽っていた。
- 71 名前:巡逢 16 投稿日:2002年10月03日(木)13時08分24秒
- 古いレンガの建物に囲まれながら、隙間を縫うように細い路地を歩む二人。
地元の人間以外は絶対に知らないであろう細い路地さえも、圭は迷うことなく軽快な足取りで進んでいく。
時折、鼻歌まじりに聞こえてくる英語のフレーズが、この地にぴったりとはまっていた。
そんな圭とは対照的に、なつみはまだ険しい表情をしていた。
(ホントにどうしちゃったんだろ? 嬉しいんだけど、どっかで素直に喜べない自分がいる。
今、こうして繋いでる手……懐かしいんだけど、前に感じた温もりとは微妙に違う感じもする…)
自然と二人が繋がっている手に視線を泳がすなつみに、聞き慣れた声が届く。
「なっちゃん、着いたよ」
「えっ、あ、ホントだ…」
歩き出してから数分も経たないうちに、どこか見覚えのある大通りに出たなつみの視界には、
自分が宿泊しているホテルが悠々と身構えて、なつみたちを迎えてくれた。
- 72 名前:巡逢 17 投稿日:2002年10月03日(木)13時16分22秒
- 無事に生還して安堵するなつみの耳に、自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
声のする方へと振り返ると、マネージャーが額に大汗を浮かべながらなつみの方へと駆け寄ってくる。
そして間髪いれずに大声を張り上げた。
「ったくどこほっつき歩いてたんだよっ!! 心配しまくってたんだぞ!!」
「ご、ごめんなさいっ!!」
「はぁ、はぁ……でも、生きててよかった。誰かに拉致されたんじゃないかと思って、警察に連絡しようとしてたんだよ」
「ほん〜っとにごめんなさい」
「でも、よく一人で戻ってこれたなぁ。言葉もままならないのに」
「一人じゃないよ。今までずっと圭ちゃんと一緒にいたんだよ」
「??? 何言ってんの? 一人じゃない」
「だってほら……?」
なつみは振り返った。
しかし、そこにいるはずの圭はどこにも居らず、暗い路地が奥まで続いてるだけだった。
- 73 名前:巡逢 18 投稿日:2002年10月03日(木)13時26分26秒
- マネージャーが呆れたように言う。
「夢見る時間にはまだ早いんじゃないの?」
「違うよ、ホンとにさっきまで圭ちゃんと一緒にいたんだって」
「だってどこにもいないじゃない。それに保田は今、アメリカにいるはずでしょ?」
「でも一緒にご飯食べたんだもん…」
「じゃあ、仮に一緒にいたとしようよ。保田は何の為にここにいる訳?」
「そ、それは……」
マネージャーの言う通り、なつみは圭が何の目的でここにいるのかを知らなかった。
偶然に出会えた事に喜びを感じ、数時間も同じ時を過ごしながら、素朴な疑問を問い詰める事をしなかった。
落ち着いて考えれば、そうした疑問点は幾つか浮かんでくるのは当然の事で。
なつみは今更ながら自分の取った行動に愚かさを感じずにはいられなかった。
「ほらね。理由もないのにいるはずないだろ? そうやって誤魔化そうったってダマされないからね!」
まるで囚われた宇宙人の如く首根っこを掴まれ引きずられていくなつみは、幾度となく後ろを振り返る。
しかし何度見てもそこには明るい街灯が照らす道路しか映し出されていなかった。
- 74 名前:巡逢 19 投稿日:2002年10月03日(木)13時38分37秒
- ホテルに戻り、迷惑をかけた周囲の人々からこっぴどく説教されながらも、
なつみは湧き上がる答えのない疑問だけをずっと考えていた。
どのような理由で圭がロンドンにいるのか、何故あれほどまで市内を熟知しているのか、
何故自分の前から忽然と姿をくらましたのか、そして…
彼女は自分が心の底から愛している「本物の保田圭」なのか?
工場の煙突から出る煙のように、なつみの頭の中にも疑問という靄が次々と産まれていく。
ようやく解放された後も、その靄は一向に晴れる気配を見せず、余計に思考回路を難解にしていく。
「あ〜もぉ、訳わかんないよっ!!」
どうやらこんなメルヘンチックな模様の中での考え事はなつみには向かないらしい。
かえって不快感を与えてしまったようで、自棄になったなったなつみは花柄に囲まれたベッドの上に寝そべる。
一つ浮かんでは消えていく疑問。その度に寝返りを打つ。
そして何度かの寝返りの後、なつみの目は静かに塞がっていった。
- 75 名前:ゆっちん 投稿日:2002年10月04日(金)18時07分48秒
- 一夜の夢・・・・。
ん〜。ビュ〜ティホ〜。
なつみさんの願望が現れたのか!?
圭ちゃんの思いが海を越えたのか!?
つーか!!結局圭ちゃんはまだINアメリカなのね。
おいらも会いに行こうっかな〜。
- 76 名前:本庄 投稿日:2002年10月05日(土)13時17分06秒
- お久しぶりっす。
久々に二人の甘甘ぶりにデレ〜としてたら…夢?幻?
はぁ…夢だろうが何だろうが二人の愛は永遠っす!!
…そう。永遠なのに何で小川が出てくるんだぁぁぁぁ!!
圭ちゃん!!あんたどこまで罪作りな奴なんだよほ…(涙
小川にまで触手をのばしたんかい???
なっち!負けるなよぉ!
- 77 名前:お返事 投稿日:2002年10月06日(日)03時49分20秒
- >ゆっちんさん
圭 「一夜の夢、か。ロマンチックだなぁ〜」
なつみ「けぇいちゃん」
圭 「ん、なに?」
なつみ「なっちも一夜の夢、欲しいなぁ(チラッ)」
圭 「……今日だけだよ?」
………。
……。
…。
なつみ「幸せぇ〜」
>本庄さん
なつみ「もぉ、圭ちゃんはどこっ!?」
麻 琴「さて?」
愛 「安倍さん」
あさ美「保田さんは」
里 沙「譲りませんよ」
なつみ「くそぉぉ〜」
四 人「「「「わっはっはっは」」」」
- 78 名前:初陣(たび) 1 投稿日:2002年10月08日(火)19時12分06秒
- 翌日から始まった撮影は、良い意味で緊張感漂う現場だった。
なにしろ今回撮影を担当するキャメラマンは、過去にもデヴィッド・ボウイやシンディ・ローパー、
シーナ・イーストンなど八十年代に一時代を築いた大物アーティストを撮り続けてきた凄腕キャメラマンである。
お陰でなつみをはじめ、日本人スタッフまでもがその肩書きに緊張してしまい、現地スタッフから
「君たちが緊張してどうするんだい?」と言われる始末であった。
そんなこんなで久しぶりの撮影も二日目に入ると順調に進み、予定していた時刻より早めに終わった。
翌日はキャメラマンの都合によってオフになり、残った撮影のスケジュールを確認し、本日の仕事は終了。
徐々に慣れてきた花柄の部屋に戻ったなつみは、シャワーを浴びてベッドの上へと寝転がる。
「ふぅ〜、明日はオフかぁ。何しよっかな? 街にでも出てみようか?」
ベッドから起き上がり、荷物を漁ってガイドブックを取り出す。
何かあったときのためだという口実で、真里が無理矢理持たせてくれたものだ。
しかし、その顔にはしっかりと「お土産」を催促する表情が浮かんでいた事はいうまでもない。
- 79 名前:初陣 2 投稿日:2002年10月08日(火)19時19分59秒
- 「仕方ないなぁ。後でちゃんと請求するからな」
そう言ってガイドブックを開けたが、目の前には大きな白い紙切れが三枚ほど挟まっていた。
うすうす感じていはいたが、もしやと思いゆっくりと開けて見る。
「……やっぱりそうか」
そこには大きな字で『メンバーの欲しいものリスト』と題があり、
メンバーからの希望商品がずらりと並んでいた。
なつみは苦笑しながら、そのリストを読み上げていく。
「なになに、矢口がロンドンブーツで、梨華ちゃんがフェロモンたっぷりの香水?
ごっちんがスモークサーモン? なんだこりゃ?」
のっけからとんでもない商品が羅列されていた。
- 80 名前:初陣 3 投稿日:2002年10月08日(火)19時32分39秒
- 「よっすぃが英国産ベイグルとティラミス(懐かし〜)、加護ちゃんが本場のエビアンの水?(それはフランスじゃん)
辻ちゃんが採れたてのロブスター百匹?(どうやって持って帰るのさ)、高橋がイタリアンジェラート?(だから行かないってば)」
段々と的外れな内容に呆れるなつみ。
「小川がベッカムのサイン入り代表ユニフォーム?(お台場辺りに売ってんじゃないの)、
新垣がクラプトンに会いたい?(そんな事言われても…)、紺野がオックスフォード大辞典??(留学する気か)、
圭織がえっと、UFOがよく目撃されるらしいので証拠写真撮ってきて(……)」
更にリストは続いていく。
「みっちゃんが79年モノの本場赤ワイン(だからフランス行かないってば)、
裕ちゃんがカッコイイジェントルマン???(国際結婚も考えてんだ)」
更にリストは三枚目へと続く。
- 81 名前:本庄 投稿日:2002年10月10日(木)23時56分58秒
- 皆さん、お土産の注文が面白すぎです。
特に辻ちゃん!せめてその1/10の量にしようや…。
マジで笑いすぎて家族に白い目で見られたじゃないっすか!
さて三枚目のリストには何が書かれてるのかしらん???
追伸、保田さんへ。
まさか5期メン全員に手出したんすか???
…犯罪っすよ…(ボソ)
- 82 名前:お返事 投稿日:2002年10月11日(金)02時33分26秒
- >本庄さん
みちよ「なんやみんなえらいもん頼んでたな」
なつみ「もうね、お手上げ」
みちよ「はっはっは」
なつみ「笑い事じゃないよ、みっちゃん」
みちよ「なして?」
なつみ「みっちゃんこそ思いっきり勘違いしてるし」
みちよ「え、あっ、ああ〜っ!! は、ハズかしぃ〜(しゅるる)」
- 83 名前:初陣 4 投稿日:2002年10月17日(木)01時08分22秒
- 「まだある…えっと、彩っぺがドンペリワンケース(そんな大金持ってないってば)、
紗耶香がフェンダーストラトキャスター57年製ビンテージ(自分で買ってよ、それくらい)、
福ちゃんが、青春時代の私って……はぁ〜、頭痛い」
結局リストそっちのけでガイドブックを見ながら、明日の予定を立てることにした。
ふと、リストを横目に見ながらある事を思い出し考えた。
(もし、圭ちゃんがいたら何を頼んでたんだろ? 圭ちゃんにも何か贈ろっかな……)
なつみの頭の中は既に全員のリストのことなど消え、圭に贈るプレゼントの事だけを考えていた。
まるで部屋中の花柄に誘われるかのように、幸せな一時を過ごした夜だった。
- 84 名前:初陣 5 投稿日:2002年10月17日(木)01時16分57秒
- 久しぶりの心地よい朝を小鳥のさえずりと共に迎えた。
伸びをしながら花柄の壁を見渡す。ここでの生活もはや三日目になる。
昨日までは朝早くに起床して、ホテルのレストランであまり美味しくはないイギリス風の朝食を摂り、
撮影現場へ直行し、夕方近くまで撮影。
その間、とにかく英語英語英語……。
撮影現場ではまだ良い方だ。マネージャーや他数人の日本語圏が存在しているから。
それにキャメラマンもこちらの都合を理解してくれ、片言ではあるが日本語で話しかけてくれ、
何となくではあるが話が通じてしまう。実際気持ちいい現場だった。
しかし、その他の場所―レストランやホテルでは、あの鼻にかかった奇妙な発音を聞くたびに、
「もぉ〜日本語喋ってよ!」と思わず憤りたくなるのだった。
- 85 名前:初陣 6 投稿日:2002年10月17日(木)01時25分54秒
- 同じ英語圏でも、アメリカとは違うとこちらに来てつくづく思った。
日本というのは限りなくアメリカの文化を吸収し、それを上手く日本流にアレンジして育ってきた国なのだと思う。
まだアメリカ大陸には降り立った事はないから本当のところは分からないが、二本のテンポは
どちらかといえばアメリカに近いような気がした。
マナーや規則にしてもひどく面食らうほどの違いはない。
それも全て戦後の日本が一時的にアメリカの支配下に置かれていたからであろう。
ところが、イギリスはどうも微妙に違ってくるのだ。
テンポも違うのだが、一番困ったのが言葉である。
英語ならどこも同じだと思っていたが、その違いをまがまがと思い知らされた。
地下鉄は“サブウェイ”ではなく“アンダーグランド”だし、マクドナルドの“テイクアウト”は“テイクアウェイ”である。
いちいち混乱してしまう。
- 86 名前:初陣 7 投稿日:2002年10月17日(木)01時32分30秒
- そんな事を寝起きに思いつつ、なつみは着替えようと私服を漁る。
ふと紙のようなものが潰れる音が微かにした。
(ん? なんだ、今の音)
なつみは辺りを見回してみるが、紙らしきものは姿を現わさない。
次いで漁っていた衣服を無造作に叩くと、ジーンズの後ろポケットに何かが挟まっていた。
少しくたびれた一枚の紙切れを開くと、簡略な住所が書かれていた。
「これってロンドンのどっかの地名だよね? でもいつどこで誰がこんなものを……」
なんの事だか分からないなつみは、メモ片手に数分間格闘し始めた。
- 87 名前:本庄 投稿日:2002年10月21日(月)00時08分23秒
- 彩っぺのドンペリワンケースもおもろいが…やっぱ今回のヒットは
福ちゃんの「青春時代の私」でしょう!!
も〜笑いのツボにストライクっす!!
福ちゃん、あんた最高だよ!!
それにしてもあのメモはなんなんざんしょ…??
う〜む…気になる…。
- 88 名前:お返事 投稿日:2002年10月23日(水)02時52分43秒
- >本庄さん
みちよ「はっはっは。面白いな、福ちゃんは」
なつみ「笑い事じゃないっしょ」
みちよ「青春時代の私が欲しいってことはつまり……(ニヤニヤ)」
バシッ!!
みちよ「あいたっ!」
なつみ「け、圭ちゃん!?」
バシ、バシッ!!
みちよ「はうぅ〜」
- 89 名前:初陣 8 投稿日:2002年10月23日(水)03時01分43秒
- 「……!! そっか、圭ちゃんだ! じゃあここって圭ちゃんが今住んでるトコなのかも?」
思考回路が明確になってくると、無性に圭に逢いたくなった。
そう思うと、これから予定していた買い物の事などすっかり忘れ、メモを頼りに逢いに行くことにした。
顔を洗い、身支度を整えると急いでホテルのロビーに降りていく。
逢いたい気持ちだけがどんどん先走っていたが、すっかり顔馴染になったボーイやフロントマンの
麗々しい挨拶に一時の間、恐縮してしまうなつみ。
「グッモーニン!」
「グ、グッドモーニング」
毎朝の事だか、何故か首筋がもぞもぞしてしまう。し化も喋りはガチガチのままで。
焦る気持ちのまま外へ出ようとした直前に聞き慣れた声がロビーからかかった。
- 90 名前:初陣 9 投稿日:2002年10月23日(水)03時10分27秒
- 「アラ、安倍さん。今日も単独行動?」
「え、まあ。今日はちょっと用事があって……ははは」
コーディネーターはいつもよりもややラフな服装で立っていた。
彼女もなつみたちとここ数日間をこのホテルで過ごしている。
「珍しいわね、貴方が一人で出歩くなんて。マネージャーさんとかはどうしてるの?」
「まだ寝てるんじゃないかな〜」
「そっか、今日はお休みだもんね。こっちへ来てからずっと動きっぱなしだったから
疲れが溜まってるんでしょう。で、安倍さんはどちらへ?」
「ちょっとお知り合いの所へ行こうかな〜、なんて」
少し意味深な物言いに、コーディネーターの目が怪しく光った。
「アララ、ひょっとしてもうこっちで恋人、調達しちゃったの? お若いのねぇ〜」
「なっ…ち、違いますよ。もぉ〜、朝からからかわないでくださいよ〜」
「ウフフ。照れちゃって、可愛いのね」
「……」
- 91 名前:初陣 10 投稿日:2002年10月23日(水)03時18分40秒
- 相手のペースにすっかりのせられてしまったなつみは、真っ赤になりながらもポケットから
圭が今住んでいると思われる住所が書かれたメモを取り出し、訊ねてみた。
「あの、お聞きしたいんですけど」
「ん、何かしら?」
「えっと、ブ、ブリクストンっていう所ってどうやって行けばいいのか判ります?」
「ブリクストン? そんなところに知り合いがいるの?」
「へ? そんな所?」
コーディネーターが一瞬眉を寄せたので、嫌な予感がした。
顔の表情からしてかなりヤバそうな場所なのではないかと、流石に単純ななつみでもわかった。
「ええ。低所得者や一筋縄では行かない連中が沢山住みついてる所で、かなり物騒な街よ」
「ぶ、物騒!!」
真剣な眼差しをなつみに向けながら、コーディネーターは重く頷いた。
- 92 名前:初陣 11 投稿日:2002年10月23日(水)03時29分45秒
- 「何年か前だったかな、黒人と中国人が些細な事で喧嘩があってね。それ以来、東洋人を見ると黒人が
訳もなく襲い掛かってくるって、同業者から聞いた事があるわ。そうねぇ〜ハーレム辺りに似てるかな。
実際行ったことないから判らないけれど、若い人たちがたくさん住んでて、クラブとかもあって
賑やかな所だっていう話も聞くし、最近じゃ日本の学生さんとかもいるらしいからそれほどじゃないかもよ?
まあ、昼間だったら大丈夫じゃないかしら」
腕組みをしながら他人事のように説明するコーディネーターの声は、既になつみには届いていなかった。
(黒人が襲ってくる……物騒……喧嘩……。なんでそんな所に圭ちゃんは住んでるの?
ハッ! もしかして圭ちゃん、なんかとんでもない薬とかに手出してたら……)
なつみの脚は来た道を戻るかのようにエレベーターの方を向いていた。
「…倍…ん、安倍さん?」
「え、あ、は、はい」
「行くのは簡単よ。オクスフォード・サーカスから地下鉄で真っ直ぐ行けばいいの」
「そそそですか。どどどどもう」
呂律が回らないほど、なつみはかなり動揺していた。
- 93 名前:初陣 12 投稿日:2002年10月23日(水)03時37分21秒
- 「気をつけて行ってらっしゃい。私、今日は別件で出ちゃうから、何かあったらホテルにでも電話するといいわ」
「は、はひぃ〜」
情けない返事に苦笑しながら、先に外へと出ようとするコーディネータが、ふと足を止めて振り返った。
そして、追い討ちをかけるように余計な事を喋った。
「もし黒人と目が合ったら、相手を熊だと思って死んだフリするのよ」
「ええーっ!!!」
なつみの絶叫が爽やかなホテルの中を駆け巡った。そして……
なつみの「ぶらり一人旅」が今、始まった。
- 94 名前:本庄 投稿日:2002年10月24日(木)15時08分59秒
- ちょっとちょっとぉ!!!
んな危ないとこになっちが、しかも一人で行くなんて
飢えた野獣にこうさぎ(白色)を差し出してるようなもんじゃん!
…あ、でも野獣なら圭ちゃんもやじ…(ドカッ)
んがっ!!!誰じゃい!!
…………(無言
け、圭ちゃん…みっちゃん殴ってたんじゃ…(滝汗
いや、冗談!It's a ジョークっす!!
- 95 名前:お返事 投稿日:2002年10月26日(土)06時58分05秒
- >本庄さん
みちよ「圭ちゃん、野獣やったんか」
なつみ「ってことはみっちゃんもそうなるよね」
みちよ「ええっ、なんでよ!? アタシ何もしてへんやんか、今回」
なつみ「だってさぁ〜」
みちよ「あたしはむしろ孤独なフェアリーちゃ……」
バシ、バシッ!!
みちよ「イタタ、な、なんでぇ〜」
なつみ「ん〜、なんかなっちも腹立ったからごめんね」
バシ、バシッ!
みちよ「そ、そんな殺生なぁぁ〜」
- 96 名前:初陣 13 投稿日:2002年11月07日(木)02時10分32秒
- なつみの「ぶらり一人旅」は序盤から茨の道だった。
初めて乗る“チューブ”という愛称で呼ばれる地下鉄の切符売り場で、いきなりロンドン市民の脚光を浴びた。
もちろん、彼らの目は軽蔑的な目であったことは言うまでもない。
駅名を選ぶ前に“シングル・アダルト”というボタンを選ぶ事を知らず、自販機の前で数分間格闘したのだ。
お陰で後ろで待っていた老婆に怒鳴り散らされるわ、自分よりも年下であろう女学生に失笑されるわと出だしからてんてこ舞いである。
それだけではない。やっと切符を買ったのも束の間、今度はエスカレーターでは日本にいる時の癖で
左側にぼんやりと立っていたら、後ろからビジネスマンにどやしつけられた。
周りを見ると、急いでいる者は左側を抜け、そうでない者は右側にきちんと身を寄せて立っていた。
とにかくこの国では間違っている事には誰であろうと有無を言わず抗議してくるのだった。
- 97 名前:初陣 14 投稿日:2002年11月07日(木)02時19分41秒
- しかし、なつみも黙ってはいなかった。
段々と自分の間違いを正当化するかのように憤り始める。
「はいはいはい。ど〜せなっちは間違ってるよ〜だ。フン、なにさ、一外国人に向かってムキになっちゃってさ。
なぁ〜にが紳士の国だ。器がちっちゃい人ばっかじゃんか。少しは大目に見てくれてもいいじゃん、べぇ〜だ!!」
今のなつみには怖いものなしといった様子である。
地下鉄車内でもなつみを物珍しそうに見つめる数人の視線にかち合ったが、堂々とした態度で睨み返してやる。
(フンッ!! 矢でも鉄砲でも持ってこいっ!!)
その調子で最寄りのブリクストンの駅に降り立ったなつみだが、コーディネーターの言葉を思い出した途端に、身を縮ませてしまう。
黒人誰もが東洋人を見ると襲ってくるとは思わなかったが、なにしろなつみには初めての場所で、しかもあまり得意ではない英語を話す国の
見知らぬ街に一人でいるのである。
(ホントに鉄砲とか出てきませんように)
- 98 名前:初陣 15 投稿日:2002年11月07日(木)02時32分21秒
- 意を決して歩き始めるが、どうしてもこそこそとした怪しい動作になってしまい、
通り行く人の目が気になって足が徐々に強張ってしまう。
やはりセントラル・ロンドンとは様子が違い、見るからにうらぶれているのが分かる。
アパートはどれも老朽化が進み、窓が割られていたり、時には入口のドアが破れていたりと
人が毎日暮らしているのかどうかも怪しい建物が目立つ。
通りには紙屑や黄ばんだ新聞紙、ファーストフードの紙コップやらが散らばり、
殺伐とした現実がなつみの目の前に広がっていた。
ホテルの周りのビジネスマンが集まるような小奇麗なパブとは違い、いかにも下町的なパブの周りには
ブルーカラーの人々が品租な恰好をしてビールを飲みながら溜まっている。
なつみは密かに自分の今日の服装を見て、少し安心した。
コーディネーターの話を聞いてから一端部屋に戻り、なるべく目立たないようにした。
ヘアスタイルも荒くし、化粧も落とし、ラフ過ぎる恰好に着替えた。
もし、話を聞かずにここへ来ていたら、今頃は…。
そう思うだけで全身鳥肌ものだった。
- 99 名前:初陣 16 投稿日:2002年11月07日(木)02時42分59秒
- (きっと矢口とかだったら絶対にヤラれちゃうだろうなぁ。案外よっすぃとかこういうトコが似合うかも)
そんな無責任な事を考えながら、とある通りの角で立ち止まる。
街灯の柱に寄りかかって話をしている黒人のグループが、じろじろとなつみの方に視線を向けている。
なつみは彼らと目を合わせない様に持ってきた市内地図『世界一人旅 ロンドン編』を開きながらストリートの名前を確認する。
(どうしよ〜、ずっと見てるよぉ。早くここを離れなきゃ、離れなきゃ)
地図を持っている手が震え、その振動が全身に行き渡っていく。
そんな状態のまま、地図片手にうっそうとした街中を歩くなつみに絶え間なく視線が注がれる。
もっとも彼らが送る視線は物珍しいものを見ているといった様子なのだが、当のなつみには
全ての目が敵意を抱いた野獣のようにしか見えなかった。
- 100 名前:初陣 17 投稿日:2002年11月07日(木)02時53分53秒
- 駅に着いてから一時間ほど巡り巡って、ようやく目的の場所に辿り着いた。
なつみは目の前にそびえ立つ建物を見上げた。
「……ここ……人、住んでるの?」
まるでどこかの廃病院のような佇まいをみせる不健康な建物は、日光も当たらず、
湿ったような雰囲気を漂わせ、とてもじゃないが夜は勘弁して頂きたい、そんな建物だった。
恐る恐る中へと歩を進め始めるなつみ。
靴の音だけが妙に響き渡る淋しい廊下は、いつどこから何か襲ってきてもおかしくはなかった。
(絶対に何か出そうだよぉ。うう〜怖いなぁ)
そんな事を考えた瞬間、何かが足元をすり抜けて行った。
「ひぇっ!!」
咄嗟に身を引いた反動で、近くに設置してあったロッカーらしきものにぶつかり、
そのうえに乗っかっていたバケツがなつみの頭を直撃した。
「……痛い…。んもぉ〜、なんなんだよぉ、ここは!」
バケツを蹴飛ばす哀しい音が廊下に響いた。
- 101 名前:本庄 投稿日:2002年11月09日(土)14時06分34秒
- なっちぃ…くれぐれも気をつけておくれよほ。
もしなっちの身になんかあったら…(汗
はぁ、「はじめてのおつかい」見てる気分…。
- 102 名前:お返事 投稿日:2002年11月11日(月)04時16分58秒
- >本庄さん
なつみ「みっちゃんなんで撮ってんの?」
みちよ「いや〜だってはじめてのおつかいを見てる気分になってもらおうかとおもうて」
なつみ「ん〜、じゃあちゃんと撮ってよ」
みちよ「OK。んじゃあ、なっち。自己紹介からいってみよか」
なつみ「安倍なつみで〜す。好きなものはぁ…」
みちよ(よしっ! この調子でどんどんいけば……)
ドカッ、バシッ、ドゴッ!
みちよ「イダッ、だ、誰やね……圭ちゃん!?」
圭 「アタシのいない間になにしてんのさ、みっちゃん!」
みちよ「ご、誤解やって。そんな変な質問してなっちをモノにしようなんて…あっ」
ドカッ、ボコッ、バシッ!
みちよ「ゆ、許してぇ〜」
- 103 名前:初陣 18 投稿日:2002年11月14日(木)01時32分27秒
- 階段がきしむ音が臨場感を漂わせる。
すり足になりながらもようやく目的の五階へと辿り着いた。
塗料がはがれたドアのナンバーを確認してから、なつみは一息いれてゆっくりと呼び鈴を鳴らした。
しばらくそのままドアの前に立ち尽くす。
中からは何の反応もなく、薄暗い廊下の中に一人ぽつんと残されたなつみ。
もう一度呼び鈴を鳴らそうと指を挙げた時、急にドアの開く音が響いた。
が、開いたのは隣りのドアだった。
そしていきなりなつみの視界に入ってきたのは……綺麗な虹だった。
“Hi. Who are you?”
- 104 名前:初陣 19 投稿日:2002年11月14日(木)01時45分33秒
- なつみは自分が何者かを尋ねられている事は分かったのだが、その立派過ぎる容姿に圧倒されていた。
背丈はなつみとほとんど変わらないアジア系の顔つきだが、その頭を七色の虹が覆っていた。
耳には幾つものピアス、露出度の高い服装、そして両腕や胸元に入っている豪華な入れ墨。
――見事な東南アジア系パンク娘がそこに立っていた。
「……アンタ、日本人?」
なつみの容姿を訝しげに眺めながらレインボーちゃん(なつみ命名)が日本語で話しかけてきた。
聞き慣れたその言葉にようやくなつみは我に返り、少し焦り気味に応える。
「そ、そう。日本人」
「ふぅ〜ん。で、何してんの、こんなトコで?」
「あ、あの、ここに、その、保田圭さんて方が、住んでると思うんですけどぉ……」
「ヤスダ…ケイ……ああ、Keiね。今日は朝からセントラルロンドンに出てるよ」
「そ、そうですか……」
- 105 名前:初陣 20 投稿日:2002年11月14日(木)01時56分44秒
- 行き違いになってしまったことに肩を落とすなつみ。
そんな様子を見ていたレインボーちゃんは、腕を組みながらドアに持たれかかり、なつみに問い掛けた。
「アンタ、Keiの友達?」
「え、あ、はい」
「ひょっとしてKeiの恋人?」
「えっ!!」
なつみは突拍子のない問いかけにビックリしたが、次の瞬間には真っ赤になってしまう。
そんななつみの横をすり抜けて、階段の方へと向かう彼女。
そして振り向き様に一言残して階段を降りていった。
「Keiのこと狙ってる連中多いから、獲られないようにしなよ。もちろん、男だけじゃないけど。
頑張ってね、ジャパニーズドールさん」
物静かな建物内にヒールの音を壮大に響かせながら、鮮やかな虹が闇に消えていく。
取り残されたなつみは……。
「それってもしかして……」
備え付けの窓ガラスが窮屈そうな音を立てて揺れている。
そこから吹きこむ冷たい風が、真っ赤ななつみをフリーズさせた。
- 106 名前:本庄 投稿日:2002年11月16日(土)03時11分46秒
- おいおいおいおいおぉぉぉぉい!!!
こりゃどういうこっちゃい!!
圭ちゃん!!お母さん浮気は許しま…
んごぁ!!!
……………………。<手に曲がった金属バッド
け、圭ちゃん……(滝汗
そ、そうよね!まだ浮気してるなんてあの女の人も言ってないわよね♪
そうよねぇ〜〜〜♪♪(…今度こそ殺されるかも…(泣))
- 107 名前:お返事 投稿日:2002年11月18日(月)05時45分09秒
- >本庄さん
なつみ「……(プンプン)」
圭 「なんで怒ってんの?」
なつみ「浮気……(ムスッ)」
圭 「んなわけないじゃん(抱)」
なつみ「……ヤダッ!」
圭 「んもぉ、えいっ!(ツンツン)」
なつみ「ふあぁぁっ!!」
圭 「ほれほれ」
なつみ「あぁぁ〜っ」
………。
なつみ「……ごめん…なさ…い」
圭 「わかればよろしい」
- 108 名前:ビギナー 投稿日:2002年11月18日(月)16時07分07秒
- レ、レインボーちゃん最高です。
なんか捻りなしにそのまま、「レインボーちゃん」
なっちらしいですね。
これから、どんな事が起こるのか、
首を長くして(無理だけど)待ってます。
- 109 名前:お返事 投稿日:2002年11月19日(火)05時36分58秒
- >ビギナーさん
なつみ「なっちにしては最高の出来だったよ。あの名前は」
圭 「じゃあなっちゃんは『みかんちゃん』だ」
なつみ「なんでよ?」
圭 「だって同じ名前のジュースあるじゃん」
なつみ「でも、あのジュースはもっと一杯種類でてるじゃん。
だからその名前は変だよ」
圭 「だったらそれこそなっちゃんが『レインボーちゃん』じゃん」
なつみ「うぅ……」
圭 (ちょっといじめ過ぎちゃったかなぁ)
- 110 名前:Tea Break 投稿日:2002年11月19日(火)05時44分57秒
『思慕 〜貴方の隣りで〜』
「ふぅ〜、今日もやっと終わった。明日は久々のオフだし、帰ってゆっくり寝るか」
取材のインタビューが最後だったアタシは、大きな伸びを一つして楽屋のドアを開けた。
既にメンバーの姿はなかったけれど、窓際に何か黒い塊があるのに気がついた。
少し不安になって、暗闇の中を手探りで灯りを探した。
辺りを一気に照らした室内には誰もいないと思っていたのに……。
「あっ……」
「!!!」
- 111 名前:Tea Break 投稿日:2002年11月19日(火)05時53分11秒
「ハアッ、ハアッ、ハアッ…」
アタシは自販機で購入した二人分のレモンティーを持って、急いで楽屋まで戻った。
部屋の片隅で椅子の上に小さく丸まっていたなっちゃんが、悲しそうな涙を頬に添えながら
振り返って微笑んだ時、アタシは無性に傍にいてあげたくなった。
何も疚しい事などしてはないけれど、なぜかあの潤んだ瞳を見たら、どうしようもなく
一緒にいたいという気持ちだけがあたしを支配していた。
それくらいなっちゃんの綺麗な雫に翻弄されていた。
ドアを開けると、なっちゃんの姿はどこにも見当たらなく、無の空間だけが存在していた。
「……帰っちゃったのか」
「圭ちゃん」
「ん? なっちゃん、どこ?」
「ここだよ」
声がしたのは…少し屈まなければ入れないような長机の下からだった。
そこにはちょこんと畏まったなっちゃんがいた。
- 112 名前:Tea Break 投稿日:2002年11月19日(火)05時59分19秒
- 「なにやってんの、そんなトコで?」
「ちょっとね……考え事」
「……あ、はい。これ」
「ありがと。エヘへ、温かいや」
「でも、なんでそんなトコで考え事してたの?」
「また誰かに見つかっちゃうかなって思って」
「もうほとんど残ってないよ」
「圭ちゃんが待っててって言うから、ここに隠れてたの」
机の下からひょこっと顔を出して微笑むなっちゃんは、どことなくお人形さん見たいで可愛かった。
いつも見ているなっちゃんとは違った、「普通」のなっちゃんを見ることができた瞬間だった。
「どう、落ち着いた?」
「うん。……ありがと」
いつも見せてるスマイルとは違う笑みに、アタシの左胸が高鳴った。
そして少しでもその笑みに近づきたくて、少しでも傍にいたくてアタシは咄嗟にすごい事を口走っていた。
- 113 名前:Tea Break 投稿日:2002年11月19日(火)06時07分21秒
- 「あのさ……アタシもそこ、入ってもいい?」
「えっ、あ……いいよ」
少しの躊躇いもなくニッコリ笑ってスペースを空けてくれるなっちゃん。
なっちゃんより多少背のあるアタシは、頭をぶつけないように小さく丸まって隣に座った。
やっぱりアタシには少し窮屈だったけれど……でも、なっちゃんの香りがして心地良かった。
相変わらずアタシの胸の高鳴りは続いてもいた。
しばらく二人でレモンティーを啜っていた。
その間、アタシはさっきの仕事現場で起こった出来事を思い出していた。
気になってそれとなく訊いてみた。
「あのさ……さっきの事なんだけど……」
「ああ、アレね……なっち、とことん嫌われちゃったみたい。今日はさすがにこたえたよ」
「……ごめんね」
「ヤダなぁ、何で圭ちゃんが謝るの?」
「だって……」
- 114 名前:Tea Break 投稿日:2002年11月19日(火)06時17分54秒
- たまたま取材の合間になっちゃんとふざけてじゃれ合っていたら、急にあの娘が泣き出した。
どうやらなっちゃんとアタシがベタベタしていたのが、彼女には気に入らなかったらしい。
アタシはその時、初めてあの娘に好かれていた事を知った。
「すごい羨ましかったなぁ、見てて。もう圭ちゃんに一途って感じだったし」
「それはさ、あの娘がいっつも寄って来るから……」
「なっち、嫉妬されちゃってるのかな?」
「……」
「な〜んて勝手に思い上がったりしてみたりして、エヘへ」
なっちゃんが冗談半分で笑った。でも、アタシにはその笑い方が気に入らなかった。
なぜなら冗談じゃなく、本気でそう言って欲しかったし、アタシ自身本気でそう思っているから、
少し汚れた床を睨みながら本音を言った。
「……そうだよ」
「えっ?」
「アタシが……あたしがなっちゃんのこと好きだから、だからあの娘、嫉妬したんだよ」
「け、圭ちゃ……ん…」
「アタシはなっちゃんが好きなんだよ」
なっちゃんがアタシの大きな瞳に目一杯映り込んだ。
- 115 名前:Tea Break 投稿日:2002年11月19日(火)06時25分45秒
- 子羊のような可愛い顔でアタシを見つめてくるなっちゃんの頬が、徐々に桜色に染まっていく。
堤防が決壊するようにアタシの中で何かが崩れた瞬間だった。
我慢の限界に達して、思いっきり抱きしめようとした時、ドアが急に開いた。
「誰かまだいんの〜?」
アタシたちの視界からは足元しか見えなかったけれど、声ですぐに矢口だと判った。
「気のせいかなぁ〜」
「「……」」
なぜか二人で息を潜めてじっとしていた。
バレても矢口なら何の問題もなかっただろうけど、あえてじっとしていた。
そのうち矢口が部屋の電気を消してドアを閉めた。
廊下に靴音を響かせながら、誰かと一緒に帰っていく。
「ぷはぁ〜っ」
溜めこんでいた息を思いっきり吐き捨てた。
ふと、夜中に学校に忍び込んだ時みたいなスリルと緊張感だ思い出した。
- 116 名前:Tea Break 投稿日:2002年11月19日(火)06時32分02秒
- 「あっ、鍵閉められちゃったんじゃ……」
「大丈夫だよ。中から開けられるタイプのドアだから」
「ああ、そっか。じゃあ外からは誰も入って来れないね。アタシとなっちゃんの二人っきりってことだ」
「もぉ……バカ」
嬉しさのあまり、我を忘れてなっちゃんをギュッと抱きしめた。
ちっちゃいし、細いなっちゃんの身体はすごく抱き心地がよくて、思わず力がこもってしまう。
ゆっくりと心の中が満たされていくのが気持ちよかった。
「い、痛いよ、圭ちゃん」
「あっ、ごめん」
咄嗟に抱いていた腕を解こうとした時、逆になっちゃんのほうから音が出るくらい抱きつかれた。
自然とアタシも離そうとした腕を再度、包み込むようにしてなっちゃんの身体を抱きしめる。
そして……。
- 117 名前:Tea Break 投稿日:2002年11月19日(火)06時34分27秒
アタシとなっちゃんは一つになれた。
いや、「なれた」んじゃなくて「なった」。
- 118 名前:Tea Break 投稿日:2002年11月19日(火)06時43分31秒
- アタシはふだんの自分からは想像もつかないほど積極的になっていた。
暗闇の中、いつ誰が来るかも分からないこの場所で、アタシは繊細な物を扱うように
そっと、そして優しくなっちゃんの身体に接した。
けれども、一つになった時、なっちゃんは泣いていた。
まだほんのり桜色に染まったなっちゃんの頬を一滴の涙が零れ落ちた。
その涙を見た瞬間、取り返しのつかない事をしてしまったと心底思わずにはいられなかった。
なっちゃんが泣いたんじゃなくて、アタシが泣かせてしまったんだと。
なっちゃんを壊してしまったんだとさえ思った。
けれども、そんなアタシになっちゃんはゆっくりと起き上がって、黙って腕を絡めてきた。
なすがままのアタシはなっちゃんに身を預けるように、グッと引き寄せられていた。
次第にアタシを包む腕に力が込められて、温かくなっていった。
- 119 名前:Tea Break 投稿日:2002年11月19日(火)06時51分46秒
- 「な……なっちゃ…ん?」
「……なっちね、嬉しかった……。すごく嬉しかった。上手く言えないけれど、嬉しいの」
「……」
「なっち、圭ちゃんと一つになれて……ううん、一つになって嬉しい」
「な、なったのかな、一つに?」
「うん。なっちも圭ちゃんと同じ気持ちだから「なれた」んじゃなくて「なった」んだよ」
「そ、それって……」
「なっちもずっと前から好きだったから……だから…ようやく一つになって、なっち嬉しいよ」
「……ごめんね、なっちゃんの気持ちに気付かなくって」
「いいの。自分で蒔いた種がやっと実ったんだから」
そう言って更にきつくアタシの首に巻きついて、嬉し涙を流すなっちゃん。
そんな彼女の匂いに包まれながら、アタシは腹を決めた。
- 120 名前:Tea Break 投稿日:2002年11月19日(火)06時57分22秒
- アタシにはもうかけがえのない大切な人が隣にいる、と明日、はっきりとあの娘に言おう。
あの娘にとってはすごく辛くて悲しい事になるけれど、きちんと受け入れてもらおう。
そして皆からどんなに陰口を叩かれても、どんなに責められたとしても堂々と宣言してやろう。
アタシはなっちゃんを、安倍なつみを心のそこから愛してます、と。
- 121 名前:お知らせ 投稿日:2002年11月19日(火)06時58分09秒
- 次回からまた本編に戻ります。
- 122 名前:お詫び 投稿日:2002年11月19日(火)07時01分35秒
- 「FIN」入れるの忘れてまひた(焦)
ごめんなさいませ(ペコリ)
- 123 名前:本庄 投稿日:2002年11月21日(木)13時45分28秒
- はぁ、暖まりますなぁ。
最近試験続きな上に結果が散々で再試三昧な日々の為かなり心が荒んでたのですが
これ読んで芯から暖まりますた(w
あ、本編も勿論楽しみにまってます。
このお話読むためにネット我慢して試験頑張ってるといっても過言じゃないっす!
- 124 名前:お返事 投稿日:2002年11月25日(月)12時11分03秒
- >本庄さん
圭 「いやぁ〜、そんな風に思っていただけるなんて光栄ですよ」
みちよ「……(カァ〜)」
圭 「あれ、どうしたの、みっちゃん?」
みちよ「圭ちゃん、ようあんな大胆な事できるなぁ」
圭 「は、なんで?」
みちよ「……エロいなぁ」
圭 「……あ、そうそう。みっちゃんの番外編があるらしいじゃない?」
みちよ「えっ、何それ、聞いてへんよ?」
圭 「みっちゃんとあの娘との馴れ初め話」
みちよ「ホント? やったぁぁぁ〜!!」
圭 「あ、でも誰も知りたくなければ載せないって」
みちよ「ええ〜、そんなぁ〜(シクシク)」
- 125 名前:静休(いやし) 1 投稿日:2002年11月28日(木)01時41分47秒
- なつみが寝ぼけ眼で欠伸をしていた頃、一人の女性はリージェント・ストリートに出て、
ピカデリー・サーカスに向かって歩いていた。
東京の銀座のようなその高級街もいつもより人通りが少ないようだ。
歩いているのは圧倒的に観光客が多い。
カメラを下げて、目を踊らせているのは日本のツーリストだけではない。
アメリカ人、インド人、中東辺りの富豪らしい人々も数多いる。
時折通るお馴染みの赤い二階建てのバスでも、二階の部分がオープンになっているタイプがある。
まさにツーリスト用の乗り物で、屋根のない二階部に座って首をあちこちに動かしている人々の姿は
なにやら首の回る人形みたいで滑稽だった。
なにせバスの側面には大きな文字で『SIGHT SEEING』と書いてあるのだから…。
そんな一風景の中に入っていた女性は、ピカデリー・サーカスの交差点にさしかかっていた。
- 126 名前:静休 2 投稿日:2002年11月28日(木)01時50分03秒
- 五本のストリートが集まる広場の中央には、天使の羽をつけた像がある。
そのたもとの階段には、沢山の若者たちが腰をおろしていた。
ある者は人待ち顔であったり、ある者は本を開いたり、ウォークマン片手にリズムを取っていたり、
またある者はただぼんやりと時の過ぎ行くままに頬杖をついている。
仕事を持つ大人たちにとって日曜日は安息日ではあるが、何もする事がない若者にとっては
日曜日という一日は不確かな日々の延長でしかない。
不確かな日々―。明白どころか今日これからする事でさえ決まっていない。
目の前に延々と続く、真っ白な時間の堆積。
その体積の中に意味のある一歩を踏み出すためには、何をすべきなのか、それをただ捜し求めている日々。
女性は若者の姿から視線をハズし、交差点を渡った。
- 127 名前:静休 3 投稿日:2002年11月28日(木)01時55分39秒
- ピカデリー・サーカスを抜けてレスター・スクエアに向かう。
ソーホーの外れにあたるこの辺は、若者が多くて日曜でもかなり賑わっている。
ウィンドウに今月のチャートが張り出されたレコード・ショップでは、
カジュアルな恰好の若者たちが真剣な顔つきでレコードを選んでいた。
大きなハンバーガー・ショップの手前に四角い公園が見えてくる。
レスター・スクエアはごくごく小さな公園とも言えないような代物だが、
一応芝生が生えているベンチも幾つか備えられている。
公園の周りには映画館があり、様々なジャンルがロードショウがかっている。
- 128 名前:静休 4 投稿日:2002年11月28日(木)02時06分05秒
- 女性は躊躇うことなく公園へと足を踏み入れていく。
ベンチは一つを残してカップルや新聞を読む老人、ハンバーガーを頬張っている労働者風の青年が占拠していた。
一つだけ開いたベンチの前では、パンクな恰好をした少年たちが集まって午後の一時を堪能していた。
アメリカにいた時にはかなり周りの状況に敏感になっていたが、ロンドンはそれほど危険な香りがしない。
パンクスはいかにもといった出で立ちをしているが、そんな彼らの傍では身なりの整った老紳士が
普通に新聞を広げて午後の陽を背中に浴びている。
保守と退廃が紙一重なアメリカに比べて、ここではそれらが共存している。
映画館にたむろする人々や、公園内を徘徊する人々を眺めながら空いていたベンチに腰掛けた。
こういう日もたまには悪くないと思う。日本では決して味わえなくなったからだと一人納得する。
ふと昔にもこんな一時があったな、と目を細めながら想いを馳せてみる。
- 129 名前:静休 5 投稿日:2002年11月28日(木)02時13分45秒
あの娘と付き合い始めた頃、彼女の近所にある大きな公園の中央にあった湖。
太陽のような笑顔で乗ろうと誘われて、ゆっくりと水の上を走り出す一隻のボート。
湖の中央辺りまで来て、漕ぐのを止めてしばらく水面の微かな波に揺られていた。
都会の喧騒を忘れ、自然の中に身を投じ、お互い何も喋ることなくじっと時の行方を眺めていた。
「静か、だね」
「そうだね。毎日が嘘みたいに……」
そう言ってボートの上に寝転がった。
普段見えない微かな塵がこの時はっきりと目で捉えてた。
それほど時間がゆっくりと流れていった……。
- 130 名前:本庄 投稿日:2002年11月29日(金)13時14分33秒
- 綺麗な情景描写にまるで行った事もないのに
イギリスの風景が頭に浮かぶようです。
やっぱりうっぱさんの書く文章には暖かさがありますよね。
続きを読むのがとても楽しみです。
…なのにこれから約一週間ネットはおろかPCに触れない日々の続く私…(涙
この続きを読むことを励みに試験がんばります…。
- 131 名前:静休 6 投稿日:2002年11月30日(土)03時31分08秒
- 今はまさにあの時と同じ気分でいた。
少しゆったりとした時が流れ、ふと目の前に座っていたパンクスの一人が
おもむろに女性の元へと近づいてきた。
黒の皮ジャンに擦り切れたジーンズ、頭部はスキンヘッドで、耳には幾つかのピアス。
ここまでの恰好ならば原宿にでも居そうな青年なのだが、問題は顔だった。
顔には入れ墨が彫られていたのだが、対角線上に横切る大きなバッテンという大胆さ、且つ豪快さ。
頬にも何かしらのマークをあしらった入れ墨が彫られていたが、一生涯消える事がなさそうな入れ墨を
顔全体に入れてしまうという度胸に、女性は度肝を抜かれた。
何もかも一切を拒絶するかのようなその入れ墨が、やはりそんじょそこらのパンクスとは訳が違うという事を物語っていた。
女性はその青年の顔を見た途端、久しぶりに身体に緊張が走った。
以前ニューヨークのとあるカフェで出逢った老婦人の言葉を思い出していた。
- 132 名前:静休 7 投稿日:2002年11月30日(土)03時39分43秒
“いいかい、この街だけじゃないけど、悪い奴が近寄って来たら絶対に怖がった態度を取っちゃダメだよ”
そう言って席を離れ、立ち去ろうとする瞬間、
“ヤラレルからね”
と、睨みつけるように言い残して去ったあの老婦人の表情。
この忠告を聞いていなければ、自分は今頃この土地を訪れる事もなかっただろう。
実際、四十二丁目辺りを通り過ぎた時など、なにやら強烈なさっきを感じた。
玲を感じるというのとは類いが違うが、気分的には同じ心境だった。
素人でもイヤというほど分かる冷やかでダークな殺気を今、目の前で感じていた。
- 133 名前:静休 8 投稿日:2002年11月30日(土)03時46分17秒
- 少しだけ身構える態勢を相手に悟られないように取っていく。
「アンタ、タバコ持ってないか?」
青年は目の前に立つとそう切り出してきた。
無表情をした入れ墨顔が女性の緊張感を更に高める。
「ゴメンね、アタシ煙草吸わないから」
「そうか……。邪魔して悪かった」
青年はそのまま集団の輪に戻っていった。
なんとかその場を切り抜けた女性の毛穴からは妙な汗が吹き出ていた。
それほど緊張していたようだ。
フッと一息吐くと、自分に言い聞かせるように言った。
「こりゃ、侮れないね、ロンドンも」
隣に座っていた紳士の捲る新聞の音がまた平和をもたらした。
- 134 名前:お返事 投稿日:2002年11月30日(土)03時54分51秒
- >本庄さん
なつみ「え〜1週間も放置されちゃうの? ヤダよ、なっち淋し〜」
圭 「しょうがないじゃない、本庄さんは勉学に勤しんでらっしゃるんだから」
なつみ「ぶぅ〜ぶぅ〜」
圭 「ほら、なっちゃん。頑張ってる本庄さんのために夜食でも作ってあげなよ」
なつみ「う、うん。(トントントン、シャッシャッシャ、ジャァ〜)」
みちよ「(扉の影から)ええなぁ〜なっちのエプロン姿。目の保養になるわ〜」
- 135 名前:本庄 投稿日:2002年12月06日(金)12時39分48秒
- …やっとこさ帰ってまいりました!!
これで約一ヶ月は自由の身さ!!
さぁ!続きドンと来〜〜〜い!!(偉そうな…)
P.S
なっちぃ!!愛のこもった(?)夜食をありがと〜〜♪
(実際の本庄の夜食は100均で買ったカップ麺でした…(号泣))
- 136 名前:お返事 投稿日:2002年12月07日(土)04時23分33秒
- >本庄さん
なつみ「おかえりぃ〜(ぎゅ〜っ)」
圭 「こ、こらなっちゃん。そんなんしたら本庄さん、鼻血出して倒れちゃうでしょ」
なつみ「なっちの夜食のお陰だね(チュッ)」
圭 「あっ……」
なつみ「なっちも頑張るよ〜(ニコッ)」
圭 (……せっかくむこうが終わってゆっくりできると思ったのにぃ〜)
みちよ「圭ちゃん……」
圭 「なに?」
みちよ「(ポンポン)わかる、わかるぞぉ〜」
- 137 名前:恋着 1 投稿日:2002年12月07日(土)04時36分43秒
- 「はぁ〜、結局逢えなかった……圭ちゃぁん……」
ブリクストンを後にしたなつみは、行き違いからの失望感を背負いながらホテルまで戻ってきた。
カムデン・ロックへと向かうレインボーちゃんから色々と情報は仕入れることができた。
なんでも今日みたいにぶらっと独りで出かけた日は、必ずビッグ・ベンへと立ち寄るのだという。
幸いにも撮影時に立ち寄った場所であったことから、行き方などは把握していた。
けれども今は失望感の方が重く圧し掛かり、気分がすぐれず花柄のベッドへ身を転がす。
壁に描かれている一輪の華。
それを背景にして、圭の微笑む横顔が華の中心部に浮かび上がる。
(圭ちゃん……なっちと逢ったら、どんな顔するのかな? 驚いてくれるかな?
前みたいにカッコよく接してくるのかな? 圭ちゃん……早く逢いたいよ……)
圭の顔が吸い込まれるように消えていく頃、部屋の電話が鳴った。
- 138 名前:恋着 2 投稿日:2002年12月07日(土)04時47分59秒
- 少しセンチな気分のまま受話器を手にすると、今のなつみとは違って爽やかな声が届いた。
「お〜、なっちかぁ? 麗しのみっちゃんやでぇ〜」
「はぁ〜〜っ、相変わらず元気だね、みっちゃんは」
「おうっ! それがアタシであるための必須条件やからね」
「……」
「?? なんや、えらく落ち込んでんねぇ。なんかあったんか、みちよ姐さんに言うてみぃ」
「う、うん……実は……」
なつみは今日までの出来事を事細かに話し始めた。
当然、圭がロンドンにいることも、彼女と偶然に逢った事も、一緒に過ごした時間に感じた事も、
そして彼女に対する幾つかの疑問も、隠すことなく全てをみちよに打ち明ける。
その間、みちよは話しの腰を折らぬように注意しながら、なつみの打ち明け話に専念する。
最初はノロケ話かとも思ったが、なつみの切実な話しに相槌を添えながら聞き入っていた。
- 139 名前:恋着 3 投稿日:2002年12月07日(土)04時58分59秒
- 一通りなつみが話し終わると、しばらくみちよは状況を把握しながらあれやこれやと考えを巡らす。
時折唸り声を上げるも自分では気付いていないほどである。
「ん〜、難しいなぁ〜。悪戯にしちゃ悪質過ぎるし、かと言って圭ちゃんがそんなコトするわけないしぃなぁ」
「うん……圭ちゃんなんだけど、圭ちゃんじゃないような……」
「……なあ、なっちぃ」
「なに?」
「有り得へんかもしれんけど、もう一人の自分ていうやつやないかなぁ?」
「もう一人の自分? 二重人格ってこと?」
「それとはちょっと違うよ。あれって全く別の人格になってしまうやつやんか。
けど、なっちが見た圭ちゃんはそうやないんやろ?」
「う、うん。性格とかは変わってなかったよ」
「じゃあ、ドッペルゲンカーってやつちゃうの?」
「ドッペルゲンカー?」
どこかで耳にしたことのある言葉だが、詳しい事など判らないなつみには?マークだけが頭の中で踊っていた。
- 140 名前:本庄 投稿日:2002年12月08日(日)03時58分53秒
- はぐぅ!!!!
……………(心臓停止中)
圭 「えっ!!ち、ちょっと!本庄さん!?(心臓マッサージ)」
…はっ!!一瞬お花畑が沢山見えたわ…。(そこまで逝ったか…)
で、でもぉ!なっちぃ!!オイラ幸せだぁい!!
ついでにありがとう!圭ちゃん!!
あ、遅れ馳せながら22歳おめでとう!
もうすぐ年おん……はぐぅぅぅ!!!<手にスコップ
圭 「やっぱ助けんじゃなかったかも…」
- 141 名前:お返事 投稿日:2002年12月24日(火)02時42分58秒
- >本庄さん
なつみ「(目を閉じて寝っ転がってる)……」
圭 「???」
なつみ「……」
圭 「なっちゃん、なにしてんの?」
なつみ「……なっちは心臓停止中です」
圭 「……で?」
なつみ「……心マがないと死んじゃいます(期待)」
圭 「どうせなら呼吸困難の方がよかった」
なつみ「???」
圭 「だってさ……(マウストゥマウスできるんだもん)」
- 142 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)02時46分46秒
- 『冬篭 〜炬燵の魔力〜』
はぁ〜。炬燵ってイイよねぇ〜。
なんか日本的で、外国とかの暖炉もいいけど、やっぱり日本人の冬は炬燵だよ。
みかん食べながら外に降る雪とか眺めてると、ちょっと幸せ感じちゃうんだよね〜。
東京に住むようになってからそういう機会なくなっちゃってちょっと淋しいけれど、
今は違った意味で幸せ感じてるんだ。
だってさ、炬燵に足入れてちょっとウトウトしてる大好きな圭ちゃんが目の前にいるから……(ウフッ)
- 143 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)02時48分35秒
- 今日も仕事が終わって二人で一緒にいる。
なんでかっていうと、圭ちゃんが炬燵を買ったことを耳にしたんだ。
折りしもなっちの家の暖房、なんだか調子悪くって今は活動休止中。
偶然過ぎるこのチャンスを逃す手はないと思って、ちょっと強引におねだりしちゃったよ。
炬燵の温かさと……圭ちゃんの温かさが恋しくて出たポジティブな行動。
最初のうちは圭織とか矢口とかも一緒だったんだけど、今はなっちだけ。
ここ数日はずっと圭ちゃんちに寝泊りしてるけど、圭ちゃんは別に嫌がる様子もなく普通にしてる。
だからまるで二人で暮らしてるみたいな雰囲気を味わっちゃってる。
なっちにしてみたらそんなコトがすごく嬉しくて幸せだったり……(ポッ)
- 144 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)02時50分09秒
- 顔を机に伏せて炬燵の温もりに浸ってたら、「ふわ〜」って圭ちゃんの眠そうな声がした。
顔を起こしてみたら圭ちゃん、ゴロンて横になって寝ちゃってた。
「お〜い、寝ちゃったの?」って声掛けても何の返事もない……。
急に誰もいなくなったようにシ〜ンとした部屋になっち一人ぼっち。
なんだかものすごく淋しくて、圭ちゃんの寝顔が見える場所までせっせと移動。
目を閉じてる圭ちゃんはすごく大人の女性に見える。髪伸ばしてるからかな?
なっちと一コしか違わないのにすごく大人びてる圭ちゃん。
同じ大人でも裕ちゃんとは全く違うんだよね。
裕ちゃんは普段は大人なのにプライベートになると子供みたいな時がある。
特に寝顔とかホント可愛いんだよね。
その点、圭ちゃんは逆でプライベートになるとすごく大人っぽい。
まるで仕事ができるキャリアウーマンって感じ。
圭ちゃんがもし男性だったらなっちイチコロだね……(テヘッ)
- 145 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)02時51分59秒
- 寝顔見つめながらそんなコト考えてたら、もっと間近で圭ちゃんの魅力を知りたくなっちゃった。
ちょっと頑張って圭ちゃんの隣りに並んで寝転がってみる。
起こさないように足を炬燵に入れて、ちょっと上目遣いぎみに圭ちゃんが見えるように身体の位置を調節。
あとは……大胆だけど、上になっているほうの腕をそっとなっちの肩に添えてっと。
ちょうどなっちの肩を抱きかかえるような恰好になって、ちょっぴりドキッ。
自分でそうしたのに恥かしいや。
ようやく準備が整って、早速圭ちゃんウォッチング開始。
じっと見つめただけで頬がポッとしちゃいそう。
ってさっきからそうなってばかりだけどね……(エヘヘ)
- 146 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)02時53分08秒
- 猫の毛のように柔らかい髪の毛。
手触りとか良さそうだなぁ、今度じっくり撫でてみよ。
書かなくても十分整った眉毛とちょっと長めのまつげ。
普段大きな瞳だからこうやって目を閉じてると、すごく可愛く見える。
なっちはどっちも好きだけどね。
艶のあるお肌。特にほっぺの辺りなんかすごく柔らかそう。
スリスリしてもらいたいなぁ、このほっぺで。
すっと伸びてる鼻に、弾力のありそうな唇。
前にふざけてほっぺにキスされた事があるけど、すごく気持ちよかったんだよね。
今度はちゃんと唇にしてほしいなぁ〜、なんて……(カァ〜)
- 147 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)02時54分34秒
- そのまま視線を首筋まで落としたら、ちょっとお洒落なペンダントが目に止まった。
あれ、圭ちゃん、ペンダントなんかしてたっけかな?
その鎖を辿ったらちょうど蓋で開く所が襟元から外に出てた。
なっちはその中身に興味津々で、その蓋を開けたくなっちゃった。
ちょっとだけ、ちょっとだけ見てもいいよね?
上目遣いで圭ちゃんを覗く。
目を閉じたまま規則正しい寝息がなっちのおでこの辺りに吹きかかってる。
なんかすごくドキドキしてきた。
圭ちゃんの秘密を知ってるのはなっちだけ、そんな思いが自然と顔に出てたみたい。
口元がニヤついてたよ……(ニヤニヤ)
- 148 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)02時56分35秒
- “パカッ”
蓋を開けてビックリ!!
「あっ……」
思わず声出しちゃったよ。
また視線を上げたけど、まだ寝ててくれたみたい。
ホッとしたのも束の間、なっちはその一枚の写真をじっと見つめる。
ちょっと色褪せてはいたけれど、いつ撮られたのか、見覚えのない笑顔のなっちがいた。
しばらく写真の中の自分を見つめてた。
圭ちゃんてもしかしたらずっと前からなっちのこと見てたのかな?
なっちのこと好きなのかな?
そう思ったらなんだか急に嬉し恥かしくなって真っ赤になっちゃったよ。
だって、ねぇ……(モジモジ)
- 149 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)02時57分53秒
- 蓋を閉めて気づかれないように元に戻そうして上を向いたら……。
「あっ……」
圭ちゃんとバッチリ目が合っちゃった……。
いつの間に起きてたんだろ?ってそんなコトどうでもいいや。
ど、どうしよう、ばれちゃったよ。
圭ちゃん無表情のまま、何も言わないでなっちのこと見てるし。
ちょっと怖い……。
でも、さっきのこともあるし、圭ちゃんと目合わせらんない。
こ、これじゃ余計に怪しまれるじゃん、ってもう十分怪しいか……(トホホ)
- 150 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)03時00分29秒
- しばらくそうやって色んなコト考えて一人旅してたよ。
圭ちゃん、黙ってペンダントを服の中にしまって反対の方向を向いちゃった。
ヤバイよ〜、怒らせちゃったよ、どうしよぉ〜。
もう来んなとか言われたら、もう炬燵にも大人の圭ちゃんにも会えなくなっちゃう……。
なっちのバカバカァ!
と、とりえあず、謝んなきゃ。
身体を起こして背中越しに謝ってみたけど、何の反応もなくて、ますますなっち焦っちゃった。わわわ。
だから圭ちゃんの顔を覗き込むようにして、なっちの笑みを添えて謝ってみた。
そしたらまたプイッて逆の方を向いちゃって、しかも顔まで隠して黙ったまんま。
うぅ〜、顔合わしてくんない……(ヘナヘナ)
- 151 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)03時02分08秒
- そんなやりとりを繰り返してるうちに、ふとあることに気付いた。
よく見たら圭ちゃんの耳がもう真っ赤っか。
あ〜なんだぁ、そういうことだったんだ。
圭ちゃんてば照れてるんだって判ったらなんだか可笑しくて、炬燵に入り直して
圭ちゃんの背中に指で『ゴメンね。でも、ありがとう』って書いてあげた。
そしたら圭ちゃん、咳払いして誤魔化してた。
そんな照れた圭ちゃんが可愛くて今度は『好・き』って背中に書いてあげた。
急に圭ちゃんてば向きを変えて、なっちちょっと驚いちゃった。
でも、なっちを包み込むようにして上になった腕をなっちの肩に回してきた。
なっちもちょっと恥かしかったけど、圭ちゃんの腰に腕を回しちゃった。
上目遣いで圭ちゃんを見たらさっきみたいに寝息をたてて寝てた。
けど、顔から湯気とか出そうなくらいすごく真っ赤っかになってた。
可愛い!と思って身体を密着させちゃったよ……(ムギュ)
- 152 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)03時03分52秒
- ハァ〜、やっぱり炬燵ってイイよね。
雪景色を見ながらマッタリするのもいいけど、こういう一時を味わうのもまたイイもんだよ。
あ〜暖かい。これからは炬燵目的で圭ちゃんに会いに行く必要がなくなっちゃったけど、
炬燵が逃げることないし、今年の冬は暖房要らず。
炬燵で足元暖か、圭ちゃんの温もりで上半身暖か。
今日だけは人肌の温かさが炬燵より勝っちゃってるかな?
ふぅ〜やっぱり炬燵はイイなぁ。ね、圭ちゃん
- 153 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)03時06分33秒
- 『冬構 〜炬燵の魔力〜』
あ〜やっぱり炬燵っていいよなぁ〜。実家にいた頃を思い出すよ。
冬休みとか一日中炬燵に篭って、みかん摘んでたなぁ。
そんな懐かしさが恋しくて、思わず購入した小さな炬燵。
部屋には暖房もあるんだけど、電気代掛かるんだよね。
省エネのこと考えると……やっぱり炬燵の方が良いよ。
炬燵を出してから圭織たちが毎日のように来てたけど、一週間ぐらいで飽きたみたい。
そんな中でただ一人、どんな時でも健気にやって来てはずっと炬燵に入り浸ってるなっちゃん。
まあ、一人ぐらいなら何日泊まってもイヤじゃないし、それになんだかすごく気に入ってくれてるから
嬉しいと言えば嬉しい、かな。
- 154 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)03時08分54秒
- そんなわけで、今宵も飽きずに来て、すっぽりと包まってる。
「はぁ〜、やっぱり炬燵ってイイよねぇ」ってしみじみとした口調でみかんを摘んでる。
なんか年寄り臭いよ、そのセリフ。
でも炬燵布団に頬ずりしてるなっちゃんはとても可愛く見えた。
それにしてもよく飽きもせずこうして来るなぁ、と感心してしまう。
ついこないだも「そんなに恋しいなら自分専用の炬燵買えば?」って言ったら、
置く場所がないからって言ってたっけ。
変だな〜、前に行った時結構スペースがあったと思ったんだけど。
しかも自分でそう言った後、なんだか真っ赤になってモジモジしてたし。
ん〜、なんか人には言えない恥かしい事でもあったのかな?
- 155 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)03時10分40秒
- 長い時間炬燵に入ってたせいで、なんだか瞼が重くなってきた。
時刻はもうすぐ夜中の一時を廻る頃。
あ〜そろそろ寝よっかな。
明日は久々のオフだし、一日ぐらい炬燵で寝ても大丈夫でしょ。
不思議だけど、炬燵で寝てて一度も風邪引いた事ないんだよね。
そんなコトを思いつつ腕を枕代わりにして横になった。
なっちゃんには悪いけど、先に寝させてね。
おやすみぃ……Zzz
- 156 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)03時13分42秒
- ……。
…。
ん〜、なんだか近くでモゾモゾするなぁ。
そう思ってふと目を開けると、なっちゃんがアタシの隣りに寝転がってた。
しかもなぜかアタシの腕がなっちゃんの肩抱いてて、なっちゃんが顔を真っ赤にしてた。
あれ、変だなぁ。今日は飲んでないし……。
なんて考えてたら、なっちゃんが手に何か持っていた。
ん? あっ、ああーっ!
意識がすっかり覚めたのに、身体のほうがお疲れモードみたいで、
瞼が重くて驚いてるのに普通の表情になってた。
うわっ!! またバツの悪い事になっちゃんと目がバッチリ合っちゃったよ。
へ? なんでなっちゃんが目ぇ逸らすの?
そんなにアタシ、酷い顔してんのかな?ってそんなことどうでもいいんだよ!
あの中身、見られたよね、ね、ね?
あちゃぁ〜、もうこうなった以上なっちゃんの顔見れないや。
- 157 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)03時16分06秒
- 恥かしくて反対方向向いて黙ってた。
今のアタシってば耳まで真っ赤だろうなぁ。
ってなっちゃん、顔覗かないでよ。見ちゃダメだって。
変な顔見られたくなくて、何度も向きを変えるけど、その度になっちゃんが覗きこんでくる。
そしたら急に背中を指先がなぞる感触がした。なんだろって思ったら……。
や、やめてよ、そういう反則技使うの。
なんか恥かしくて咳払いなんかしてみた。
こんなんで恥ずかしがってるようじゃまだまだなのかなぁ。
そう思ったらまた背中をなぞる感触がして……。
今度は思わず絶叫しそうになっちゃったよ。
もう、なんでそうやってズルイ事ばかりすんのさ。
そんなん言われたらどうしようもないじゃんか。
もう、知らないからね、どうなっても。
- 158 名前:Tea Break 投稿日:2002年12月24日(火)03時17分56秒
- ちょっと自棄になってなっちゃんと向い合って、腕を肩に掛けた。
あ〜あ、もう耳まで真っ赤になってんだろ〜なぁ。
でもいいや、寝たフリしちゃえ。
ふぅ〜炬燵って暖かいけど、今は違う暖かさなんだよね。
だってさ……なっちゃんてばアタシの腰に腕絡めてるし。
いいのかな〜、こんな展開で告白しちゃって?
でも、中身を本人に見られちゃったし、こうしてお互い抱き合ってるし……いいか。
いいよね、なっちゃん
〜おわり〜
- 159 名前:本庄 投稿日:2002年12月24日(火)23時15分09秒
- イヤん♪素敵すぎ♪♪
圭ちゃんもなっちもキャワいい〜(w
- 160 名前:お返事 投稿日:2002年12月25日(水)04時44分38秒
- >本庄さん
圭 「なっちゃん、あの、あの……」
なつみ「な、なに?(ドキドキ)」
圭 「かわ、かわ」
なつみ「(ドキドキ)」
みちよ「なっちぃ〜めっちゃ可愛いでぇ!!」
梨 華「保田さぁ〜ん、すごく可愛かったですよぉ〜♪♪」
圭&なつみ「(邪魔すんなーっ!!)」
P.S 今日から石川さんもこちらに登場という事で……。
梨 華「頑張って保田さんと○○しちゃいますぅ〜♪♪」
- 161 名前:ビギナー 投稿日:2002年12月26日(木)13時52分25秒
- お久しぶりです。
銀板の方にもレスしたかったんですけど、出遅れてしまったもので。
炬燵、いいですよね。うとうとしてきますもん。
で、気持ちも解放的に、パーッと、なっちゃうものなんですね。
今回の短編も、素敵でした。ありがとうございます。
今年、受験生なんで忙しくてあんまり拝見できないんですけど、
応援してます。うっぱさんの小説で元気になったりしてるんで。
長編もがんばってくださいね。
- 162 名前:本庄 投稿日:2002年12月26日(木)22時22分38秒
- うえ?!り、梨華ちゃん!?
どゆこと!!??
いや、梨華ちゃんは好きなんだが…(汗
邪魔??お邪魔虫なの??(失礼)
お願いだからあの二人はそっとしてあげて…って無理か。
でも大丈夫!!あの二人なら梨華ちゃんだろうがなんだろうが
どんな困難だって乗り切れるさぁ!
大丈夫きっと大丈夫〜♪
- 163 名前:お返事 投稿日:2003年01月06日(月)08時21分55秒
- >ビギナーさん
なつみ「えへへ。褒められちゃった」
圭 「やっぱり炬燵だよ、この季節はね(ヌクヌク)」
なつみ「でもビギナーさん受験生だって。大変だよ、この時期」
圭 「じゃあ、エール送ってあげなよ。喜んでくれるよ」
梨 華「フレェ〜、フレェ〜、チャーミィ。ファイトォ〜、ファイトォ〜、チャァ〜ミィ」
圭&なつみ「「アンタじゃないっ!! ビギナーさん、頑張って合格してくださいね〜」」
>本庄さん
なつみ「圭ちゃん。梨華ちゃん、どうにかしてよ」
圭 「ん〜、どうしたもんか」
梨 華「保田さぁ〜ん(ルンルン)」
圭 「!! 石川さ、ちょっとヤキソバパン買ってきてよ、2個ね」
梨 華「わかりました!(あ〜、保田さんに頼りにされてる。梨華、感激ぃ〜)」
……。
…。
圭 「これで当分ここには来ないと思うけど?」
なつみ「あとは……みっちゃんだけ、か(ニヤッ)」
- 164 名前:恋着 4 投稿日:2003年01月06日(月)08時25分44秒
- 「そう。ちょっと待ってな、確かこの間読んだ本に……おっ、あったあった。えっと、何々……
『ドッペルゲンカーとは、もう一人の自分のことで、一般的には自分で自分を見てしまう場合のことを言う。
特徴として本人が疲労感や頭痛を訴えることが挙げられ、本人の分身が消滅すると治まる。
このことから分身は、本人側から何らかの力を吸い取って出現するものと考えられる。
分身が出現するパターンとして、本人のみならず、本人をよく知る複数の人間に同時に目撃された場合や、
本人に何らかの忠告をする場合、更には現実の女性を刺し殺した場合なども記録に残っている。
また、よく言われている「ドッペルゲンカーを見たものは死ぬ」という噂は、自分が二人存在するという事は、
どちらかが不要であり、別空間に行かねばならないという理屈からそのような噂が流れた。
一方では鳥羽の海女たちの間で流れた「海中で自分を見ると死ぬ」という迷信が混ざったとも言われている。
どちらにせよ諸外国にはそのような死に纏わる噂は存在しない』
って書いてあるわ」
- 165 名前:恋着 5 投稿日:2003年01月06日(月)08時29分16秒
- 「じ、じゃあ、なっちが見た圭ちゃんは……分身だったの?」
「ん〜、アタシも専門家じゃないからなんとも言えへんけど、その可能性も無きにしもあらずってとこかなぁ。
あたしも経験したこと無いからわからへん」
「だよね。滅多に経験できる事じゃないもんね……」
「なんか何もしてあげられなくてゴメンなぁ」
「何言ってるのさ。すごく感謝してるよ、みっちゃんには」
「あ、そう? いやぁ〜、なっちにそう言われると嬉し、アダッ!」
「ん、なに? 誰かいんの?」
「え、ああ。姐さんが泊まりに来ててな、一緒に飲もう、言うときながら先にオネンネや。
今も横で一升瓶抱えながら寝てて、寝返りがてらに蹴られたとこや」
「相変わらず、裕ちゃんの世話がかりなんだね」
「少しはこっちの迷惑も考えてもらいたいわ、ホンマに。もう大変やもん」
哀しそうなみちよの様子が、受話器越しからでも十分過ぎるほど伝わってきた。
- 166 名前:恋着 6 投稿日:2003年01月06日(月)08時31分30秒
- 「何かあったの?」
「前に新しい恋に出逢ったって言うたやろ? そしたらこの人、自分が最近構ってもらえへんからって
アタシの邪魔ばかりすんねん」
「みっちゃんの相手って誰なのさ? 教えてよ」
「イヤや。アタシらはなっちたちみたいに秘密にしてるんやからこればっかりはなっちでも教えられへん」
「でも、裕ちゃんにはバレてんでしょ?」
「あっ……」
「意味ないじゃん。裕ちゃんにバレてたらそれはもう全員に知られちゃってるって」
「そうや、一番知られたらマズイのが姐さんやった。ああ〜、なんてこった……」
依然としてどこか抜けているみちよに突っ込みをいれるなつみ。
「みっちゃんてさ……」
「ん? なに?」
「前も言ったけど、アホだよね」
「んがぁ! またアホよばわりされたぁ〜。しかも国際電話越しに……」
相変わらずノリの良いみちよに思わず笑みが零れてしまう。
- 167 名前:恋着 7 投稿日:2003年01月06日(月)08時33分03秒
- 『ん〜、なんやあ、みっちゃん。さっきっからうっさいなぁ〜。裕ちゃん眠れへんやろぉ〜』
「うっさいなぁ。眠たかったらベッド行ってください」
『え〜、みっちゃぁ〜ん、一緒に寝ようやぁ〜』
「今、電話してるからダメ」
『誰に電話してん。さてはあの娘かぁ〜? みっちゃん、酷いわ、裕ちゃんというフィアンセがおるのに』
「誰がフィアンセやねん!」
『みっちゃぁぁ〜ん、あの夜一緒に誓ったやろぉ〜、愛してるってぇ〜』
「アホかぁ〜! 誰もそんなコト言うてへんわ!」
気だるそうな声でみちよをからかう裕子の声が受話器から聞こえてくる。
しばしみちよと裕子のやりとりを聞きながら、なつみは先ほどみちよが言っていた事を考えてみる。
(なっちが見た圭ちゃんは分身だったのかな? それとも本物だったのかな? 確かめてみなきゃ)
なつみはレインボーちゃんからの情報通りにビッグ・ベンへと向かうことに決めた。
みちよには悪いと思いながら、通話中の受話器を置き、身なりを整える。
ブリクストンへと行った時の恰好から、今度は多少お洒落な服装とメークで決め、部屋を颯爽と後にした。
- 168 名前:恋着 8 投稿日:2003年01月06日(月)08時34分27秒
「……やっぱりここが一番落ちつくなぁ」
テームズ川沿いの広い道路を横切りながら思わず女性は溜息を漏らした。
初めてここを訪れた時の衝撃は今でも忘れられなかった。
夕陽が落ち、薄暗くなったテームズ川の縁に続く石畳の歩道には、川を縁取るように小さな灯りが
連なって飾られていて、川に停泊した船からもチラチラと明かりが揺れていた。
さらに向こう岸には柔らかな照明に照らされ、ロンドン裁判所の堂々とした佇まいが夜の風景に浮きあがっていた。
そして何よりも圭を一番の虜にしたのは、すぐ目の前にそびえ立ったビッグ・ベンの美しさだった。
絵葉書では何度も見た大きな時計塔の姿に間違いなかったが、照明に浮き立った彫刻のような塔と、
ぼうっと光った古風な文字盤の実際の美しさは、やはり見てみないことには分からない。
一瞬にして、何百年もの昔のロンドンの街並みに引き込まれたような錯覚に陥るほどだった。
霧に包まれた街角のどこかから、馬車の車輪の音が響いてくるような……。
- 169 名前:恋着 9 投稿日:2003年01月06日(月)08時36分09秒
- そんな幻想的な風景は夜という限られた時間だけしか姿を現わさない。
「あの時は夜だったからすごく綺麗に見えたけど、昼と夜とじゃ全然違うんだ……」
あらためて川べりを見渡しながら、歩道の下にある川沿いの散歩道に足を運ぶ。
夜ともなれば絶好のデートコースとして数多のカップルが行き交う散歩道も、少し淋しそうだった。
それでもちらほらと口元に笑みをたたえ、しっかりと身体を寄せ合い、歩きながらキスを交わしているカップルもいた。
彼女たちの邪魔にならぬよう、川の手すりに寄りかかりながらいつものように大きな時計塔を飽きもせず眺めていた。
- 170 名前:恋着 10 投稿日:2003年01月06日(月)08時37分58秒
「うっわぁ〜、なまらおっきいべさぁ」
到着して開口一番にその雄大な佇まいの時計塔になつみは思わず、言葉が素に戻って驚いてしまった。
やはり実物を目の当たりにしなければ、本当の凄さは分からないものだという事をあらためて認識した。
しばらく見上げていると、一組のカップルがなつみとぶつかった。
「ご、ごめんなさい」
〈こちらこそ。貴方の旅が幸せでありますように〉
そう言い残して、お互い寄り添いながら去っていった。
そんな二人の後ろ姿をなつみは少し恨めしげに見つめていた。
(いいなぁ。なっちもあんな風に歩きたいよぉ)
異国の街で肩を並べて午後の散歩道を歩いてみたい、ひとつの小さな夢が増えた。
なつみは圭を探すべく歩道の下の散歩道に向かう。
歩きながら数組のカップルと擦れ違ったが、どのカップルも歩きながらキスを交わし、
しっかりと肌を寄せ合って歩くその光景になつみは恥かしげに俯いた。
テームズ川から吹いてくる冷たい風が、熱を冷まそうとするも、一向に効果は現れなかった。
- 171 名前:恋着 11 投稿日:2003年01月06日(月)08時39分54秒
- 仕方なく近くのベンチに腰掛けて、場の雰囲気に慣れるまで落ち着くことにした。
隣にはまだ二十歳ぐらいの女性がブーツの紐をしめ直していた。
なつみと同じ肌の色に少し茶色がかった髪を後ろで綺麗にまとめている。
相手が顔を上げると同時になつみは俯いて、ぼんやりと時の流れに身を置いた。
そんな様子でしばらく経ち、なつみは立ち上がってその場を離れた。
相変わらず甘い雰囲気を曝け出すカップルたちの往来が激しい歩道を一人歩いていた。
すると誰かが駆け足で近づいてくる音が聞こえ、なつみの真後ろで止まった。
「あ、あの、忘れ物ですよ」
声をかけられたことにビックリして思わず
「あっ、ごめんなさいっ!」
と、すかさず頭を下げて謝るなつみだが、日頃の癖でどうしても言葉が日本語になってしまう。
が、少し経って日本語で話し掛けられたことに気付き、ホッと安心する。
日本人観光客であろうと思い、なつみは深々と下げていた頭を上げた瞬間、思いがけない運命に驚愕した。
- 172 名前:恋着 12 投稿日:2003年01月07日(火)10時47分40秒
- 「!! け、圭ちゃん!」
「!! な、なっちゃん!?」
しばし見つめ合う。そして先に口を開いたのは圭だった。
「なんで……ここに……いるの?」
「なんでってなっち、圭ちゃんに逢いたくてぇ……。そしたらある人が圭ちゃんは必ずここにくるって教えてくれて……」
「そういう事じゃなくて、なんでロンドンにいるの?」
「なんでって……もぉ、圭ちゃん知ってるくせにぃ。こんな所まで来てなっちからかわないでよぉ」
おどけて言うなつみの言葉とは裏腹に、圭は全くもって身に覚えがないような表情をした。
「あのさ……アタシ、全然知らないんだけど?」
「え〜、だって一昨日の夜、一緒にご飯食べたじゃん。その後ホテルまで送ってくれたっしょ」
「一昨日の夜? 一緒にご飯? ホテルに送った?」
「その時なっちのジーンズのポッケに住所書いた紙切れ入れたでしょ? そんな手の込んだ事しなくてもいいのにぃ」
なつみがいくら問い詰めても身に覚えのない圭は困惑するばかりで、そんな彼女から意外な応えが返って来た。
- 173 名前:恋着 13 投稿日:2003年01月07日(火)10時51分47秒
- 「あのさ、一昨日の夜のことだけど、友達と二人でクラブにいたんだけど」
「友達ってあのレインボーちゃん?」
「レインボーちゃん? ああ、メイのことね。そう、その子と一緒にずっと夜中まで
“カフェ・ド・パリ”っていうクラブにいたんだけど」
今度はなつみが困惑する番になった。
「でもなんでメイのこと知ってるの? それにあたし住所教えたっけ?」
圭の問いにどう応えていいか分からず、ますます困惑するなつみ。
ふと先ほどのみちよの言葉が脳裏をよぎった。
『ドッベルゲンカー』
そしてそこから妙な疑いが生まれる。
(もしドッペルゲンカーなら、今なっちの目の前にいる圭ちゃんはどっちなんだろう。
分身の方? それとも本人の方? 教えてよ、圭ちゃん、あなたは一体誰?)
しばらく自分の頭の中で問いかけてみたが、その応えは意外な行動で遮られてしまう。
自らの腕が知らぬ間に、目の前の恋人を熱く抱擁していた。
- 174 名前:恋着 14 投稿日:2003年01月07日(火)10時55分39秒
- 「な、なにこんな所で? なっちゃん、大胆過ぎるよ?」
「えっ、あっ……」
無意識のうちに圭を抱きしめていた自分に気が付き、思わず赤面してしまうなつみ。
けれどもそんな気恥かしそうに振舞うなつみに応えるべく、圭は小さな身体に手を回す。
「でもいいか。なっちゃんがここにいることに驚いたけど……今まで逢えなかった分、発散させてもらおっかな」
そう言って圭は、ムギュッと音が出るくらい懐かしいなつみの身体を抱きしめた。自然と顔の表情が綻んでいく。
暖かな温もりに包まれた瞬間、幸せに身体中を満たされていったような感触がいつしかなつみが抱いた
不安の影さえも消え去っていった。
しばらくそのままの恰好でいると、なつみが顔を上げた。
「ねえ、圭ちゃん。せっかくだからどっか行こうよ」
「そうだなぁ。色々聞きたいこともあるだろうから、人目がつかない広々とした所が良いよね。
ロンドンは公園が綺麗だからそこでいい?」
「うん。なっちあんまりわかんないから任せる」
「わかった」
この時二人は、散歩道を賑わう甘いカップルたちと完全に同化していた。
先ほど抱いたなつみの小さな夢があっという間に叶ってしまった。
- 175 名前:恋着 15 投稿日:2003年01月07日(火)10時57分22秒
- 市内でもかなり大きなランド・アバウト(回転交差点)のハイド・パーク・コーナーを地下通路で渡り、
広大な緑地に足を踏み入れると、圭は大きく息を吸いこみながら言った。
「あ〜、ハイド・パークはやっぱり一番気持ちがイイなぁ」
「はぁ、はぁ……」
呼吸を整えるのに忙しいなつみは声さえも出ない。久しぶりにこんなに歩いた、と思う。
ビッグ・ベンの鐘の音を背にしながらここまで散歩してきたのだ。
普段歩くことがあまりなかったなつみは、さっそく脹脛辺りがだるさを訴える。
(運動不足ってことだね、こりゃ)
なつみは、己の体力のなさを痛感した。
「もう疲れたの? じゃあ、ちょっと休もうか」
「そ、そんなコト……ない……よ」
「無理しない、無理しない。顔がもう休もうよ〜って言ってるし」
「ムッ。そんなことないもん」
「いいから、いいから」
芝生の中へと進んでいた圭は、そのまま草の上に腰を下ろした。
- 176 名前:恋着 16 投稿日:2003年01月07日(火)11時01分09秒
- 額にうっすらと汗を掻きながら、圭は公園を見渡した。
視線の先には公園の小道を、乗馬服を来た女性が馬をゆったりと走らせている。
その先では未来のベッカムを夢見て、少年たちが声をあげながらサッカーをしている。
どこにでもありそうな光景が二人の鼓動を徐々に落ち着かせてくれていた。
ふと視界に大きな影が遮った。
見上げると、まるで自分の周りに風が集まっているかのように、なつみが両手を左右に広げていた。
圭は不思議そうな顔つきではにかむなつみを見上げる。
「なにしてるの?」
「飛行機」
「???」
その瞬間、なつみが圭目掛けてダイブしてきた。
「うわっ」
なつみの身体をもろに受け止めた圭は、そのまま草の上に倒れる。
いったん圭の首に手を巻き付けたなつみも、倒れた反動で横へと転がる。
昨日の雨で水気を含んでいた雑草が冷たく頬に張り付いた。
- 177 名前:恋着 17 投稿日:2003年01月07日(火)11時03分04秒
- 「もぉ、いきなり飛び込んで来ないでよ」
「さっきのお返し」
「相変わらず、お子ちゃまだよね」
「そんなコトないもん。なっちは大人だもん」
「大人はそういう事しないんだよ?」
「うぅ……もういいっ。圭ちゃんなんか知らないっ」
膨れっ面になって背中を向けるなつみ。
やれやれといった表情で、近くに生えている野草を摘み、意地悪そうになつみの首筋にそれを這わせる。
「ひええっ!!」
「ぷっ……あはははは」
「もおっ! なっち怒った。絶対に許さないっ!」
「(見栄張っちゃって)ほれ」
「ひええ〜っ……」
「ほれほれ」
「へええ〜、や、やめてよぉ〜、ふああ〜」
人々が慌しい喧騒に飲み込まれてゆく中で、二人の楽しい一時が始まった……。
- 178 名前:野分 1 投稿日:2003年01月17日(金)02時41分39秒
- なつみは初めて『クラブ』という場所へ来ていた。
なつみにとって『クラブ』という所は、一時期ブームになったジュリアナのように
派手な扇子を持ったお姐さんがお立ち台で踊り狂っていたり、
ブランドファッションに身を包んだ人々が高級なお酒を豪勢にたしなむような場所だと思っていた。
しかし、今なつみがいる『クラブ』は、頭の中に描いていた古めかしいイメージとは違い、
自分の想像とかけ離れた空間がそこには広がっていた。
自分と同世代の若者がノンアルコール状態で自由気ままに踊っている。
周りの目を気にすることなく、陽気に流れるダンスミュージックに身を任せ、楽しい一時を過ごしていた。
と同時に、自分の中にも徐々に揺れ動く何かが芽生えていた。
「…ちゃん、なっちゃんてば!」
「へ? な、なに?」
「なにぼ〜っとしてんの? 目が点になってたよ」
「い、いやぁ〜、びっくりしちゃってさ。こういう所初めてだし、なんか圧倒されちゃって……」
「あれ、初めてだっけ? こういうトコ?」
「そうだよ〜。誰と間違えてんのさ」
「それは失礼。まあ、とりあえず乾杯でもしようよ」
- 179 名前:野分 2 投稿日:2003年01月17日(金)02時46分26秒
- そう言って二人はカウンターに腰掛け、カクテルを注文することにした。
圭が軽快な英語で注文している間、なつみは周囲を必要以上に気にしていた。
同じカウンターサイドには、大人のムードたっぷりのカップルが桃色オーラを全開にして寄り添っている。
目のやり場に困って椅子を回転させて、吹き抜けになっている二階から真下を見下ろせば、
大音量で流れる音楽と共に気持ち良さげに踊る人々の群れ。
それを見ていると更に気分が高揚してくる自分がいた。
意外とこういう雰囲気は自分に合っているのだろうと一人納得して向き直った。
すると圭が軽い笑みを浮かべてなつみを見ていた。
「な、何さ〜?」
「いやいや。なんだか嬉しそうにしてるな〜と思って」
「なんかね、なっちには結構合ってるみたい、こういう雰囲気の所」
「あら、そお? でも合う合わないに関係なくこういう所に行ったってことだけで、
日本に戻ってからの話の種にはなるでしょ」
「そうだね。ちょっと皆より大人になった気分かな」
「そりゃ、よかった。あ、ちょっとお手洗い行ってきていい?」
「うん。いいよ」
- 180 名前:野分 3 投稿日:2003年01月17日(金)02時50分31秒
- 圭は何度か訪れているのだろうか、軽快な足取りで店内の奥へと消えていく。
それを見送って、いい気分のままドリンクで喉を潤しながらまた椅子を回転させた時だった。
まっすぐなつみを見ている何者かの視線を感じた。
(……?!)
その視線の主と目が合った途端に厭な予感がしてなつみは目を逸らそうとしたが、
時既に遅く、その黒人はなつみの視線を捕らえるや否や、にぃーという具合に笑いかけたのだった。
(まずいっ!)
そう思うよりも先に仏心を見せてしまうなつみは、思わず引きつった笑みを返してしまう。
それが致命的だった。
カニのような大きなリュックを背負ったその黒人は、救われたような顔をしてなつみのほうへ近づいて来た。
(嘘ぉ〜、来ないで! 来ないでってばぁ。なっちは英語しゃべれないんだって。
日本語とカタカナ以外は受けつけないよぉ〜)
なつみは逃げ出す構えを見せると、その黒人はかえって慌てて、何事かなつみに向かってしゃべりかけた。
- 181 名前:野分 4 投稿日:2003年01月17日(金)02時53分05秒
- 見た目とは違い、綺麗な声質に乗って聞こえる流暢な英語にほぼパニックになるなつみ。
既に泣きそうな顔をしていたなつみの顔を見ていたその黒人も、同じように悲しそうな表情を見せる。
するとそこへ天の助けか、圭が戻ってきた。
すかさずなつみはさっと黒人をかわすと、圭の手を引いて言った。
「い、行こう、圭ちゃん」
「どうしたの、なっちゃん? この人なっちゃんに話し掛けてるけど…」
「いいから、行こう」
圭を挟んでその黒人はどこか悲しげで、途方にくれたような顔で二人を見つめていた。
よく見るとかなり若く、身にまとっているものはとことん洗い込まれて色褪せ擦り切れている。
かと言って浮浪者やドラッグ常用者のような死んだ目をしている訳でもない。
大きなデイ・パックを背負っているところを見ると、かなり長期にわたって旅をしている様子だった。
圭はその黒人を眺めると笑いかけ、大胆にも彼に歩み寄ると、声を掛けた。
“Hi! Can I help you?”
“Would you do me a favor?”
“Yes, if I can”
(……スゴイ、英語喋ってる……圭ちゃん、あなたは何者?)
- 182 名前:野分 5 投稿日:2003年01月17日(金)02時56分42秒
- ……。
数分後、その黒人は満面の笑みを浮かべて去っていった。
なつみはただその笑顔に引きつった笑みを返しただけだった。
「ごめんね、待たせちゃって」
「……あ、あの人と何話してたの?」
「彼ね、ここいら辺でどこか安いホテルがないか聞こうと思ったんだって。
なっちゃんに話し掛けたのは、なっちゃんが観光客に見えたみたい」
「なんだ、そうだったんだ……。でも安いホテルなんて、なっち知らないし……」
「だよね」
「はぁ〜、なっちなんだかすっごく緊張しちゃったよ。ちょっとお手洗い行ってくるよ」
「気をつけてね。迷子になっちゃダメだよ」
「もお、そこまで子供扱いしなくてもいいよぉ」
そう言って席を外したなつみだったが……。
- 183 名前:本庄 投稿日:2003年01月17日(金)11時37分57秒
- お久しぶりっす。
やぁ〜っと試験が終了しました…。
ギリギリだけど何とか卒業できそうっす(安堵
さて、あとは国家試験か…(泣
ってオイラの事はどーでもいいんだYo!
圭ちゃん!あんたすごいなぁ!
やっぱアヤカのおかげ??英語ペラペラじゃないっすか。
かっけ〜〜。
- 184 名前:お返事 投稿日:2003年01月19日(日)04時51分36秒
- >本庄さん
なつみ「圭ちゃんすごいね。英語バッチリじゃん」
圭 「あ、そお?」
なつみ「そんな他人事みたいに……」
圭 「そうだ、なんか本庄さんが卒業できそうって言ってたから
アタシから卒業試験出しちゃおっかな」
なつみ「え、それ何のための卒業試験?」
圭 「さあ? ハイ、では問題です。あの黒人となんて会話してたでしょうか?」
なつみ(……なっち、わかんないや。そっと逃げちゃおっと)
圭 「なっちゃん、逃げちゃダメ(ギュッ)」
なつみ「うええええぇ」
- 185 名前:野分 6 投稿日:2003年01月23日(木)01時53分46秒
- 数分経ってフロアーに戻ると、さっきよりも人が多くなって来た。
これからが本番といった感じのフロアーではなかなか前に進む事ができず、
踊る人々の群れの中へと引きずり込まれてしまう。
そして、知らぬ間に自分よりも背の高い女性や男性が気持ちよさげに楽しんでいるフロアーの中心部にいた。
なつみは目の前に立ちはだかる人の壁をすり抜けるようにしながらも進み、
ようやく少しだけスペースの開いた場所へ出る事ができた。
だが、そこはさっきまで自分がいたお手洗いの前だった。
(また舞い戻っちゃったよ。どうしよう、早く戻らないと圭ちゃん心配してるかも……)
再び意を決して人並みにもまれるなつみ。
ノンアルコール状態でよくここまでハイテンションになれるなぁ、と踊る人々を横目で見ながら
「自分」では前に進んでいるつもりのなつみ。
だが、結果はやっぱり同じで、再度フロアーの中心へと押されてゆく。
- 186 名前:野分 7 投稿日:2003年01月23日(木)02時00分22秒
(どうしてこうなるのさ〜。早く戻んないと……)
何度か同じことを繰り返し、なつみがまた移動しようとすると、急に腕を掴まれた。
その感触になつみは振り返ると、人生で最大の危機感に襲われそうになった。
目の前に聳え立つ白人の男性が、少し酔っ払いながらなつみに笑顔を向けていた。
その時なつみは、サバンナの大草原で百獣の王たちに取り囲まれた白いウサギの気持ちになっていた。
〈やあ、可愛いお嬢さん、オレと一緒に踊らないか?〉
恐怖がなつみに迫ってくる。
だが、よせばいいのに、またも仏心を見せるなつみは、その笑顔に少しだけ引きつった笑みを送ってしまう。
その笑みに引きつられるように白人男性が近づいてくる。
可愛い白ウサギ、絶体絶命!!
- 187 名前:本庄 投稿日:2003年01月23日(木)15時33分14秒
- あぁ!コウサギが!
圭ちゃん!かわいいコウサギが食べられちゃうよほ!
はよ助けんかい!!
- 188 名前:本庄 投稿日:2003年01月23日(木)15時37分54秒
- んが!ageてしまいました…。
ごめんなさい!!
- 189 名前:本庄 投稿日:2003年01月26日(日)14時14分50秒
- うわ!188のレスsageてない…(汗
今頃気付きました!
度々ごめんなさい…。
- 190 名前:野分 8 投稿日:2003年01月28日(火)06時09分10秒
「遅いな〜、何してるんだろ?」
圭はカクテルを飲みながらフロアーを何度も振り返っていた。
さほど危なっかしいところではないとはいえ、やはり言葉がしゃべれない小さなの日本人女性を
一人にしておくのはまずかったかな、と後悔しつつも二杯目を注文していた。
心配になった圭がフロアーに目をやった時、イヤな予感は的中した。
――ヤバイ。瞬間的にそう感じた。
混雑するフロアー内でようやく見つけた小さな白兎は、百獣の王の陰になって見え隠れしていた。
大きな身体の主は、なつみに何かしつこく話し掛け、無理矢理腕を取ろうとしている。
勿論なつみは拒否の意思を全身で示している。
しかし、その主は酔っているのか、なかなかなつみを開放しようとはしなかった。
次の瞬間、圭は立ち上がっていた。
その拍子にバーテンが持っていたまだ一口も飲んでいないカクテルの液体が宙を舞う。
――こ、このヤロー!!
- 191 名前:野分 9 投稿日:2003年01月28日(火)06時12分36秒
- フロアに駆け降りると圭は人垣をかき分け、なつみとライオンに近寄っていった。
踊っている人たちの邪魔をしないように、微かなスペースを掻い潜って前に進む。
ようやくライオンの肩越しになつみを見つけ出すと、白兎が救いを求めている視線を送っていた。
それを受け、ライオンと白兎の間に割って入って、立ち塞がった。
「圭ちゃんっ!」
なつみが歓喜と声と共に怯えながら圭の腕をきつく抱きしめている。
ライオンはライトに照らされて異様な青さになった目を、ぎろりと圭に向けた。
額は汗に濡れ、Tシャツの袖から覗いた腕は、圭の二の腕の倍はあるだろう。
〈しつこいんだよ。離れなさいよね〉
〈なんだオメエは? お前この子の何なんだよ! 邪魔すんな!〉
男は大げさに眉を寄せて睨みを効かせてくる。
しかし、圭は負けじと普段見せた事もないような鋭い目つきで睨み返しながら英語で叫んでいた。
- 192 名前:野分 10 投稿日:2003年01月28日(火)06時17分53秒
- 〈この子に近寄るんじゃないわよ!〉
〈いきなり割りこんできて何だよ? オレはそこにいる可愛い子と話がしたかったんだ。邪魔しないでくれ!〉
〈アタシの恋人に触んないでよね〉
〈恋人? オマエ、女じゃないか。とんでもねえ嘘つくな〉
〈恋愛は別に自由じゃない。人を好きになるのに性別なんて関係ないでしょ!〉
白人に負けず劣らずの迫力でなつみをしっかりとガードする圭に、男は少しずつ引いていく。
〈ホントにお前のなんだろうな?〉
〈しつこいなぁ。さっきからアタシの言ってる事とこの子の態度見ればわかるでしょ?〉
ライオンはそう言われて改めてなつみを見た。
ギュッと圭にしがみつくなつみを見たライオンは、急に戦意を無くしたように大きく肩をすくめると
〈お前の女だったら一人で踊らせておくな!〉と捨て台詞を吐いて離れて行った。
(ぶはぁ〜、なんとか…切り抜ける事が…できた……)
- 193 名前:野分 11 投稿日:2003年01月28日(火)06時22分05秒
- 「大丈夫? 何かされなかった?」
「う、うん……な、何も……されて……な…い」
圭がなつみを心配して見るが、なつみは笑顔を作って見返してはいるものの、まだ足元が萎えていた。
圭はなつみに手を引いて出口を目指した。
途中凛々しい白人にナンパされたが、巧いジョークとハッタリで誤魔化す。
〈ねえ、君たち。一緒に踊らないかい?〉
〈ゴメンね、今忙しいの。それよりあそこの壁に寄り掛かっている女性が貴方のこと見てるわよ〉
〈えっ、どこ? どこにいるんだい? あれっ? お〜い、なんでぇ〜?〉
どこへ行っても男性というのは、単純なのかもしれない、と思う圭だった。
- 194 名前:お返事 投稿日:2003年01月28日(火)06時28分34秒
- >本庄さん
みちよ「ええな〜、子兎なっち」
圭 「可愛いよね」
みちよ「アタシの周りで跳ね回ってほしいなぁ」
圭 「アララララ。爆弾発言だね、それ」
なつみ「圭ちゃぁ〜ん(ピョ〜ン、ピョ〜ン)」
みちよ「はぁ〜、食べたい」
圭 「え゛っ!?」
- 195 名前:本庄 投稿日:2003年02月01日(土)01時21分11秒
- 圭ちゃんかっけ〜♪
ガタイのいいあんちゃんにそこまで強気な態度がとれる娘なんて
そうそういないっすよねぇ。
…やっぱ愛の力??もう、なっちってばぁ愛されてるぅ☆
あ、みっちゃん、なっち食べたら…圭ちゃんに代わっておしおきよ!(古)
なんなら梨華ちゃんでも…そしたら邪魔者一気に減るし…。
…すんごい失礼な事言ってるけど私みっちゃんも梨華ちゃんも大好きっすよ(汗)
- 196 名前:野分 13 投稿日:2003年02月03日(月)02時37分14秒
- それからすぐに二人はその場を退散した。
圭はなんの言葉もかけられずに、ただなつみと並んで歩いていた。
夜気はかなり冷え込んでいて、思わずコートの前をかき合わせてしまうほどだった。
シャッターが下りた高級店が並ぶオクスフォード・ストリートをなつみは迷わずに歩いて行く。
レザーの半コートの下から覗いた形のいい足は、力強く石のペイブメントを蹴っている。
少しだけ伸びた髪と一緒に白い息が夜の風に流れてゆく。
やがて道はリージェント・ストリートにぶつかった。
何世紀にも経た石造りの高いビルディングが夜の空に浮き出ていて、
その裾の路地から今にも馬車が出てきそうな雰囲気だった。
リージェントの大きな交差点で、なつみは不意に立ち止まって、振り返る。
「……勝手だよ。突然なっちの前からいなくなったり、急に目の前に現れたり……」
- 197 名前:野分 14 投稿日:2003年02月03日(月)02時39分44秒
- なつみは今まで耐えてきた気持ちを全てぶつけていた。
一年以上も音沙汰なく、急に目の前に現れた恋人に偶然出会えた事はとても嬉しかったけれども、
何故かその気持ちとは違う言葉が口から出ていた。
「なっち、本当は怒ってるんだから……」
しかし圭は何も言わず、なつみを抱きしめようとするが、なつみが一歩身を引いて拒んだ。
「やめて、絶対イヤッ!」
そう言いながらなつみは冷めた視線を圭に送る。
伸ばした手が一瞬止まったが、その手は再びなつみへ向かい、今度はしっかりと抱きしめあげる。
「や…だぁ……ひどい……よぉ…」
口では抵抗を見せてはいるが、両手は圭をしっかりと抱えている。
圭は人通りの少ない通りに目をやりながら、そこに佇んだまま腕の中にいる最愛の人の温もりを感じていた。
「バカぁ……圭ちゃんの……バカぁ……」
「ごめんね、一人にさせちゃって」
自分にある幾多の過失を素直に認め、圭は申し訳なさそうに謝る。
なつみは圭の腕の中でじっとして、ありのまま言葉を吐き捨てていく。
- 198 名前:野分 15 投稿日:2003年02月03日(月)02時41分55秒
- 「恐かったよね? 不安だったよね? 迷惑かけっぱなしだったよね?」
「圭ちゃんなんて……圭ちゃんなんて、どっか……どっかいっちゃえばいいんだ……どっかに……」
「ほんとに……ごめん。黙ってここに来ちゃったり、あんな危なっかしいところ連れて行ったりして」
「圭ちゃんなんて……どっかに……」
「……ごめん」
圭は自分の仕出かした行動に罪悪感を重く感じているようで、必死に涙を堪えて愚痴るなつみにただ謝ってばかりいた。
「心配掛けて……ごめん」
「圭ちゃん……そんなに謝らなくても……」
微かに震えていた様子のなつみがゆっくりと視線を合わせようとした時、不意に圭がなつみから離れた。
さっきの白人に見せたあの度胸と自信に満ちた目は、すっかり影を潜めていた。
- 199 名前:野分 16 投稿日:2003年02月03日(月)02時45分19秒
- なつみは圭に手を伸ばした。
すると、圭は近づくなつみの手をさらりと交わした。
「!! け、圭ちゃん!?」
「……ごめん」
「圭…ちゃ…ん? 圭ちゃんてばっ!!」
「ほんとに……ホント、ごめ…ん」
そう一言言い残し、圭はその場を立ち去ろうとする。
その瞬間に見せた哀しげな顔、そして何よりも擦れ違い様に光った一筋の涙。
(!!!)
なつみの心が激しく揺れ動いた瞬間だった。
既に見えなくなった圭の後ろ姿を追う事もできずにその場に佇むなつみを思ってか、
ビッグ・ベンの鐘の音がもの哀しげにロンドンの街に響いた……。
- 200 名前:お返事 投稿日:2003年02月03日(月)02時51分51秒
- >本庄さん
梨 華「保田さぁ〜ん、キャアッ!(ドカッ)」
みちよ「イタッ、だ、大丈夫か?」
梨 華「は、はい。あっ、どうも」
みちよ「ちゃんと前方にも注意しないとあかんよ?」
梨 華「は、はい……(ポォ〜)」
みちよ(ん? なんでこの娘、真っ赤になってんのやろ?)
圭&なつみ「「……(ジィーッ)」」
みちよ(っていうか、可愛いなぁ、この娘)
梨 華(平家さん……カッコイイですぅ)
石川さん、一瞬にして恋に堕ちまひた(笑)
- 201 名前:本庄 投稿日:2003年02月07日(金)16時12分55秒
- なっちぃ!圭ちゃん追っかけて!!
ヒサブリの再会なのにこのまま別れちゃダメっすよ!!
そして平家さんに梨華ちゃん。
単純…単純すぎるわ二人とも…。
まぁこれで二人の邪魔をする者はいない…ですよね??
そういえば平家さん年下の彼女が出来たって前に言ってたような…。
まさか梨華ちゃん??
- 202 名前:お返事 投稿日:2003年02月08日(土)18時53分46秒
- >本庄さん
なつみ「また圭ちゃんと離れちゃったよ……(シュン)」
圭 「それがこの小説の狙いだったりして(ニヤッ)」
なつみ「!!! なんでそんな事知ってるの? なんで、なんでぇ??」
圭 「だってタイトルがさ……じゃん」
なつみ「なるほどっ!! でさ、みっちゃんはどうなったの?」
圭 「それがさ……」
みちよ(なんか物凄く背中に熱すぎる視線を感じるんやけど、なにこれ?)
梨 華(平家さぁ〜ん♪ ん〜、やっぱりカッコイイ〜♪)
- 203 名前:初音 1 投稿日:2003年02月10日(月)02時36分07秒
あれから二日。
あの日以来ずっと部屋に篭りっきりで何をしようにも身体が拒絶反応を示していた。
そんな荒んだ心を、一輪挿しの花瓶に添えられたガーベラが、窓際でそっと癒してくれていた。
そして今日もまた夜の灯りが街並みに下りる。
“コンコン”
静まり返った部屋にひときわノックする音が響く。
そしてすぐさまドアが開き、今の圭の心境とはかけ離れた“虹と鋼”が現れた。
〈ハロー、ケイ〉
〈なんだメイとフランクか……。どうしたの、こんな時間に。今日は休み?〉
〈ええ、ちょっとね〉
同じフロアに住むメイとその友人のフランクが入ってきた。
フランクは昔、アメフトをやっていたとかでかなり厳つい男性だが、今は根っからの「女性」になっている。
言葉遣いや仕草も普通の女性と何ら変わりなく、圭も初めて会った時は正直、吐き気を催したほど
かなりのギャップのある男性(?)だ。
そのハーフが色っぽい声で言った。
- 204 名前:初音 2 投稿日:2003年02月10日(月)02時38分25秒
- 〈あのね、今からアタシとメイさ、しばらく旅行に出るんだけど、よかったら一緒に行かない?〉
〈旅行? また、突然だね〉
〈なんかね、フランクがさ、バラエティ番組かなんかの視聴者プレゼントで当たったんだってさ〉
〈どこに行くの?〉
〈香港〉
〈期間は?〉
〈一週間ほどかな? でもその後、メイの故郷にも行こうって事になってるの〉
〈なんかね、フランクがしつこいんだよね。連れてけってさ〉
〈いいじゃない。アタシぃ、アジアって初めてなんだもん。それに今アタシの中で一押しなの、ア・ジ・ア〉
〈…だってさ。どお、一緒に行かない?〉
昨日までの圭ならば、首を縦に振っていただろう。
何度かこの二人とは近場ではあるが旅行はしていたし、この二人となら文句なく楽しいのも事実だ。
だが、今の圭には旅行に行くほどの気力すらも残っていなかった。
とにかく一人で居たい気持ちの方が強かった。
〈行きたいのは山々なんだけどね……色々と問題があってさ。今回は遠慮しとくよ〉
〈アッラァ〜、残念だわ〉
フランクの身体がクネっとしなり、乙女の表情を見せながら淋しがった。
一方のメイはじっと圭を見つめ、思いついたように揺さぶりをかけてきた。
- 205 名前:初音 3 投稿日:2003年02月10日(月)02時39分54秒
- 〈もしかしてあのジャパニーズ・ドールさんの事?〉
〈うっ……〉
〈ジャパニーズ・ドールさん?〉
〈そう。つい二、三日前だったかな? すっごく可愛らしい女の子が圭のこと尋ねてきたの。
もうね、この街に似合わないくらいにプリティな子〉
〈ふう〜ん。その子ってもしかして?〉
〈そう。ケイのガールフレンド〉
〈いやあ〜ん。ケイったらモテモテのラブラブなのねん〉
フランクが一人興奮している。その姿は想像以上に……だった。
圭が項垂れているのを見たメイは、彼女を気遣ってフランクに言う。
〈フランク、ケイはこういう状態だから今回は二人で行こ〉
〈そうね。ちょっと残念だけど…〉
〈……ごめんね、誘ってもらったのに〉
〈気にしないで。その代わり…〉
〈ん?〉
〈ちゃんと、仲直りしなよ〉
〈そして、わたちたちに紹介してよね。抜け駆けは許さないんだから〉
〈……〉
〈じゃあね。あ、そうそう。悪いんだけど、なんかあった時のためにさ、アタシたちの部屋の鍵預かっといてくれる?〉
〈わかった〉
〈それじゃあね、行ってきま〜す〉
フランクの嬉しそうな濁声が静かな建物に響き渡った。
- 206 名前:初音 4 投稿日:2003年02月10日(月)02時41分22秒
また、静寂が戻り始める。まるで無の空間に居るようだ。
しばらく横になって壁に付着した数々の染みを見つめていた。
“コンコン”
落ち着きを取り戻した部屋にひときわノックする音がまた響いた。
くたびれたベッドの上に身を投げていた身体をゆっくりと起こし、音がする方を見つめる。
“コンコン”
再度ノックする音。誰かは判っていた。
「……圭ちゃん、いるんでしょ?」
「……」
「開けてくれないかな? なっち話があるんだけど……」
普段から大きな音がしないこの古びた建物ではなつみの小さな声がよく透る。
部屋の奥に設置してあるベッドにいる圭にも、なつみの声は充分過ぎるほどよく聞こえていた。
- 207 名前:初音 5 投稿日:2003年02月10日(月)02時43分24秒
- 「……ごめんね。なっち、また傷つけちゃって……」
(それは違うよ……なっちゃんは何もしていないんだ。悪くなんかないよ)
「もっとしっかり見てあげてたら……なっち少し、慢心してたみたい……」
(そんなことないよ。自分を責める必要なんてなっちゃんにはないんだ……)
「あの日からずっと一人で頑張ってきて、なっちと楽しそうに接している圭ちゃん見た時ね、
それが圭ちゃんの強さだとなっち思ってた」
「……」
「ううん。出逢った頃からずっと、圭ちゃんは強い人なんだって思ってた」
「……」
「そんな圭ちゃんになっち、また酷いことしちゃったんだよね……」
「……」
「圭ちゃん……ドア、開けてよ。顔見てお話したい……」
そこで明らかに声のトーンが変わった。少しだけ声が悴んでいるように聞こえた。
- 208 名前:本庄 投稿日:2003年02月11日(火)15時41分28秒
- 圭ちゃぁん、素直になろうよ〜。
…でもごめんなさい。今回はフランクが私の心を支配しています…。
見てぇ!生フランクにぜひ会ってみてぇぇぇ!!
たったあんだけの登場でかなり私の興味を惹いています…。
恐るべし…。
あ、梨華ちゃん、みっちゃん。お幸せに〜♪(気が早いでしょうか??)
- 209 名前:お返事 投稿日:2003年02月13日(木)01時31分16秒
- >本庄さん
なつみ「なっちも見たいな、フランクさん」
圭 「そこはホラ、読者様のご想像にお任せします、っていうの?」
なつみ「なるほど……(プっ、クックック)」
圭 「…かなりすごいけど、ね」
みちよ「け、圭ちゃんっ!! た、助けてっ……」
梨 華「へぇ〜けさぁ〜〜ん♪♪」
みちよ「ヒィ〜(逃)」
なつみ「……」
圭 「…お幸せに」
- 210 名前:初音 6 投稿日:2003年02月17日(月)03時43分04秒
- 無理もない。まだ本格的な冬とは言わないまでも、ロンドンは日本と違って位置的にも北にあるためこの時期でもかなり冷え込む。
まして時刻は既に日付が変わろうかという時間帯。
部屋の中と違って廊下はかなり冷たいだろう。
そんな中に一人淋しく立っているなつみのことを思うとすぐさまドアを開けて招き入れてあげたいのだけれども……。
今の圭にはなつみの顔を見る勇気がなかった。
「圭ちゃんが知らない土地でどれだけ悩み、苦しんできたかをなっち忘れてた。
だって圭ちゃん……そういう姿とか見せてくれないし、それになっちに逢った時すごく嬉しそうに笑ってくれてたから……」
「……」
「でも、これからはきちんと圭ちゃんのこと見てる。言葉だけじゃなくて……なっち……これから……は……」
(なんで……なんで泣くのさ? 泣かなくてもいいよ。なっちゃんは何も悪くないんだから……何も……)
今すぐ飛び出して謝りたい。
心配掛けてごめん、泣かせてごめん、一人にしてごめん、と。
だが、足が、身体が震え出し、強く拳を握り、声が出そうになるのを制止する自分がいる。
- 211 名前:初音 7 投稿日:2003年02月17日(月)03時44分54秒
- ドアの向こうからは尚もすすり泣きながら語る声が聞こえてくる。
「なっち……今まで何見てたんだろうね? ずっと圭ちゃんの……傍にいたのに……
気づかなくて……何の力にも……なれなくて……」
(もういいよ……やめようよ……自分を卑下するのは)
「なっち……ダメだよね……好きな人の気持ち……理解ってあげられてないんだもん……
圭ちゃんとまた同じ道歩くのには……役不足だよ……ね」
(やめて、お願いだから……もうこれ以上……)
「なっちのこと……責めてくれてもいいの……怒ってくれてもいいよ……
ひっぱたいてくれてもいいよ……だから……顔……見せてよ」
(ダメだよ! 今のアタシを見せたら余計なっちゃんを悲しませるから……)
しばし沈黙が続く。
いつの間にかドアの傍まで来て、手を伸ばせば簡単に逢えるほどなつみに近づいていた。
だが、どうしてもドアノブに手が引っかかろうとはしない。
やがて疲れたようなか細い独り言にも似た呟きが聞こえてきた。
- 212 名前:初音 8 投稿日:2003年02月17日(月)03時47分33秒
- 「なっち……淋しいよ。圭ちゃんがこんなに傍にいるのに逢えないなんて……逢えないだけでこんなに辛くて淋しいなんて……。
どうしたら、どうやったら圭ちゃんに届くのかな……どう言えば、なっちの心……大切な想い……そっちに伝わるの?」
「……っ」
「なっち……圭ちゃんにとってもう…邪魔なのかな……用済みなのかな? こんな風にされるのも……
迷惑なのかな? こんな事いうなっちは最低なのかな?」
(迷惑だなんて……邪魔だなんて……)
「……教えてよぉ……圭ちゃん……なっちを……中に入れてよぉ……顔見せて……お願い……
圭…ちゃ…ん……圭ちゃ……ぅぅ……ぁ……っ」
「……くっ」
「ず、ずるいよね。なっち……ひっ……へ、部屋の前で……な、泣いたり……して……うぅ……」
(なっちゃん……なっちゃん!)
「も…ぉ……やめ、るからぁ……っ……ゴメ……ゴメン……ぅぅっ」
限界だった。
- 213 名前:初音 9 投稿日:2003年02月17日(月)03時49分59秒
- ドアを勢いよく開けて叫ぶ。
「なっちゃんっ! アタシ……えっ!? うわっ!!」
思い余ってドアを開けた瞬間、その場で一回転するくらい、勢いよく自分の横を通り抜けていったものがあった。
ドアの先には誰の姿形もなく、寒々とした空間だけが佇んでいた。
「……」
とりあえずドアを閉めて、部屋の中に戻るとそこには……。
「エヘへ〜、作戦勝ちぃ〜!」
涙に濡れたなつみ……ではなくて、スーパーの買い物袋を手一杯ぶら下げて、
ハイテンション極まりない普段通りのなつみがいた。
「へへっ、びっくりした? ビックリしたよね?」
瞬きをするのも忘れ、呆然と立ち尽くす圭のコトなどお構いなしに手荷物を下ろし、微笑むなつみ。
- 214 名前:初音 10 投稿日:2003年02月17日(月)03時51分09秒
- 「でもよかった。あれで入れてもらえなかったらどうしようかと思ったよ。ホントに圭ちゃんは優しいよね。
なっちの全てを受け止めてくれるし。受け止める心があるから愛って文字に近づくのかな? えへへっ」
「なっ……!」
「今日は寒いから温かいものでも食べよう。まだ夕飯食べてないんでしょ? たっくさん作ってあげるからね」
そう言ってパフッと抱き着いてくるなつみ。
身体は冷たかったが、心は温かかった、ような気がした。
「なっちといるの……イヤ?」
「べ、別にイヤとは……」
「じゃあ決まりッ!」
なつみは鼻歌混じりに買い物袋を漁りる。
その姿を見つめ、ようやく状況が把握できた圭は心の中で思いっきり落胆した。
- 215 名前:初音 11 投稿日:2003年02月17日(月)03時53分14秒
- 「結局、なっちゃんを部屋に上げちゃったよ……」
シャワーの熱い湯に打たれて自分の脇の甘さを痛感する。
けれども不思議と安心した気持ちが大きく、怒る事などできないでいた。
むしろ、なつみが本当に泣いていたらどうなっていたのだろうと思うと少しだけ心が痛んだ。
浴室から出て、狭いキッチンで楽しそうに料理するなつみを見つめていても、
何を言っていいのか判らず、じっと佇んでいた。
本当は嬉しいはずなのに、本当はこの腕で目の前の恋人を包みこんであげたいのに……。
「あっ、ちょうどいいタイミング。さ、食べよう!」
「……」
「いっただきま〜すっ!」
テーブルの上には温かい湯気が立ち上る食事が並べられている。
中でも二人分にしてはかなりの量ではあるが、冬には定番ともいえる懐かしい「寄せ鍋」が目を引いた。
(また腕上げたんだ……でもどっから仕入れてきたんだろ、こんなの)
「えへへ。ちょっと張りきって作りすぎちゃった。食べ切れるかなぁ」
一応向い合う恰好で座ってみたものの、どうも箸を持つ気がせず、黙って俯いていた。
- 216 名前:初音 12 投稿日:2003年02月17日(月)03時55分06秒
- 「モグモグ……うん、上出来っ! ほら、圭ちゃんも食べて食べてぇ」
温かな手料理と美味しそうな匂い、そして飛びっきりの笑顔のなつみ。
どうも今の自分の気分とは違う空間に入りこめずにいた。
「食べようよぉ〜。う〜ん……あ、そっか」
「……?」
「えへへっ、はいっ」
「!!!」
なつみは自分のおかずを取って圭の口元へ運んでくる。
「あ〜んして?」
(や、やめてよ。は、恥かしいじゃんか)
ようやく圭は箸を手に取り、自分で食べ始めた。
…お世辞抜きで美味しい。
「ちょっと残念だなぁ。圭ちゃんが食べてくれたらなっちもやって欲しかったのになぁ」
「!! ゲホッ、ゲホッ……」
大胆発言をしながら軽い笑みを浮かべ、戸惑う圭の姿を見つめるなつみだった。
- 217 名前:初音 13 投稿日:2003年02月17日(月)03時56分22秒
- 食事が終わった後も黙り込んでいる圭に対し、全く持って普通に話かけてくるなつみは
いつもより明るい表情を見せる。
「どう、美味しいかったでしょ?」
「……うん」
圭は視線を反らしたまま、頷くように答える。
やはりまだ気まずさが先行してしまっていた。
(何やってるんだろ。ちゃんとお礼が言いたいのに……)
「じゃあ、また作ってもいいかな?」
(また? それってどういう意味だろう)
「ダメ?」
「そ、それって……」
「やっぱり……美味しくなかったんだ」
「……そんなこと……ないよ」
「ホント?」
「……うん」
「ホントにホント?」
「……うん」
「無理してない?」
「……うん」
一方的なやりとりにただ「うん」としか答えられない圭。
尚もなつみの質問は続く。
- 218 名前:初音 14 投稿日:2003年02月17日(月)03時59分13秒
- 「満足してくれた?」
「…うん」
「嘘じゃないよね?」
「…うん」
「信じていいんだよね?」
「…うん」
「今日泊まってもいいよね?」
「…うん、あっ」
「えへへ、やったぁ〜」
「そ、そんな…」
「イヤだ、もう決まりなのっ! 今日は圭ちゃんとずっと一緒」
すっかりなつみのペースに乗せられてしまった圭は思わず叫びそうになるも、それを押し殺した。
嬉しそうななつみの笑顔が、目の前に来ていたから。
「なっちもお風呂入ってくるからちゃんと起きててよ?」
(こんな時になっちゃんがいたんじゃ寝られないよ……)
「ちゃんと納得のいくように説明してもらうんだからね。今までのことぜぇ〜んぶ」
そう言って鼻歌混じりに自分の荷物からごそごそと着替えを用意し、ルンルン気分で浴室へと消えていく。
なつみの鼻歌がヒートアップして聞こえてくると同時に、圭はひとしきり大きな溜息をついてうなだれた。
- 219 名前:本庄 投稿日:2003年02月18日(火)17時07分59秒
- いやん♪なっちってば策士なんだからん♪♪
お泊り?お泊りなのね!!
うふふふふふふふ…(怪笑)
あぁ!続きが楽しみぃ!!
…なんですが…
実は受験生な私は現在某国家試験まで間近に迫ってる為
当分の間ネットはおろかPCにも触れない日々が続きます…(泣)
この続きを楽しく読むためも暫く勉学に勤しみますです…(号泣)
うっぱさん、がんがってくだしゃいね!
- 220 名前:澪標 1 投稿日:2003年02月20日(木)01時42分27秒
- ぼんやりとした月明かりが微かに射し込む部屋で、圭はベッドに腰掛け、壁を見つめていた。
所々内装が剥がれかかった壁には、これまでこの部屋に住んできた人たちが残していった痕跡が見える。
いつもなら不思議とその痕跡を見つめているだけで、心が落ち着いていくはずだった。
けれども今日は勝手が違い、どうも身の置き場がない気がする。
「いやぁ〜、気持ちよかったぁ〜」
そう言って頭からバスタオルをすっぽりと被ったなつみが出てきた。
一瞬だけ、圭は目先をそちらに向けるも直に視線を外して俯く。
どうやらいつものように接する事ができない自分がそこにいた。
面と向かって渡り合える自信がまだ甦らない。
そんな圭の気持ちを悟ってか、なつみが圭の目の前にしゃがみ込み、圭の表情を捕えようとする。
「ただいま」
「……」
「もぉ、なんかしゃべってよぉ〜」
「……」
「圭ちゃんてばぁ〜」
- 221 名前:澪標 2 投稿日:2003年02月20日(木)01時44分07秒
- なつみは両手で圭の頬を挟んで自分と向い合うようにする。
しばらくじっとなつみの目が圭の瞳を捉えて離さない。
圭はなんだか気恥ずかしくて、顔を背けようとする。
「ダァ〜メッ。なっちの顔見て」
「……」
「……」
「あ……りがと…」
「圭ちゃん?」
「お礼……言ってなかった……から……その……」
「なっちの方こそ、ありがと。勝手に押し掛けて、追い返されると思ったから」
「そんな……そんななっちゃんを……追い返すなんて……そんな…こと……」
そう言ってまた恥かしそうに俯く圭になつみがギュッと抱き付いた。
「圭ちゃん、かっわいい〜」
「うわっ」
- 222 名前:澪標 3 投稿日:2003年02月20日(木)01時45分16秒
- 勢い余ってそのままベッドに倒れこむ二人。
驚きを隠せない圭の両手はしばらく中を彷徨っていたが、ぎこちない動作でなつみの身体をそっと抱いた。
またしばらく沈黙が続く。
遠くの方で警察のサイレンが微かに聞こえてくる他は何の物音もしない。
月明かりによって見える、無数の塵がゆっくりと宙に舞っている。
風など吹いてこないのに、どこからともなくシャンプーの香りが漂ってくる。
(なっちゃんの匂い……ほんの少ししかしないけど、とっても落ち着く匂い……)
普段からあまり好んで香水等をつけないなつみの自然の匂いが鼻をくすぐる。
飾らない自然体のなつみが自分の懐にいる。
たったそれだけなのに自信がふつふつと沸きあがってくるのを感じていた。
- 223 名前:澪標 4 投稿日:2003年02月20日(木)01時46分24秒
- 「……圭ちゃん」
「な、なに?」
「……もうどこにも行かないから。ずっと傍にいるから。安心して……ね?」
「な、なに言ってんのさ。アタシは別に」
「……毎晩こんなに冷たい……誰もいない独りの部屋で……我慢してたんでしょ?」
「!!」
「誰も知らない街で……ずっと独りで……頑張ってたんだよね?」
「ど、どうしちゃったの、急に?」
「もう、離さないから、ね」
「……」
「何があっても、離れないから。離さないから」
「……うん」
更にきつく圭の身体を抱きしめるなつみ。
心の温かさを感じた圭は、完全に見失っていた自信を取り戻した。
そして「ありがとう」の意味を込めてきつくなつみの身体を抱きしめ返した。
- 224 名前:澪標 5 投稿日:2003年02月20日(木)01時49分17秒
- お互い心の触れ合いに没頭しながらも、ふとなつみは自分が置かれている状況を考えた。
(はぁ〜っ、気持ちいい……圭ちゃんのここって落ちつくよぉ……ん? なんかイイ感触が……
なっちの頬に当たってるのは…多分というかきっと……)
「ど、どうしたの?」
「んと、そのぉ……」
自分から抱きついたなつみは、圭の胸に思いっきり顔を埋めたまま身悶えし、
真っ赤になってやがて固まってしまった。
(ヤダ……なっち、圭ちゃん押し倒してるよ……それに今だって……あ〜、もぉ〜、なんて大胆なコトしてるんだろ)
「あ、あのさ、なっちゃん……」
「え、な、なに?」
なつみが顔を上げると、少しだけ顔を赤らめた圭が言いにくそうにしていた。
- 225 名前:澪標 6 投稿日:2003年02月20日(木)01時50分33秒
- 「なに?」
「いや、その、抱きついてくれるのは嬉しいんだけど、ちょっと苦しい」
「えっ!? ヤ、ヤダ、なっち、何してんだろ」
咄嗟に起き上がって真っ赤になりながら両手で顔を覆うなつみ。
その姿が可愛らしくてフッと笑みを零す圭。
「わ、笑わないでよ……」
「照れるぐらいならそんなコトしなきゃいいのに」
「……もおっ、圭ちゃんのバカぁ」
身構える暇もなくなつみにキスされる。
柔らかくて温かい唇で優しくなぞられる。
不意になつみが身体を離し、おもむろに着ていた衣服を脱ぎ出した。
真っ暗に近い部屋の中でなつみの綺麗な影がゆっくりと蠢いている。
「な、なっちゃん?!」
- 226 名前:お返事 投稿日:2003年02月20日(木)01時56分08秒
- >本庄さん
みちよ「ええなぁ〜圭ちゃん。羨ましいなぁ〜」
圭 「なんか、見事にヤラれちゃったよ、この娘に」
なつみ(ニコニコ)
みちよ「策士といえど、こんな笑顔で迫られたらあたしもヤラれてまうしぃ」
圭 「みっちゃんだって今、あの娘にヤラれそうだけどね」
みちよ「そうなんよ。はぁ〜どないしよ」
圭 「正直、アタシもあの娘だけはちょっと……」
圭&みちよ「「はぁ〜(落胆)」」
- 227 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時41分35秒
なつみ「突然ですが、ここでちょっと一休みして、短編をお届けします」
- 228 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時46分11秒
『癒しの唇』
春のコンサートに向けてのレッスンが続く中、ようやくオフが二日も貰える事になった。
折りしも明日はちょうどバレンタインデーに当たる日で、街中では冬の最終イベントで盛りあがっている。
ようやく本日予定されていたスケジュールを終え、アタシは大きく息を吐いた。
みんな全身から疲労感が浮き出ていたけれど、態度とは裏腹に口からは明日からのオフについて
色々と言葉が飛び交っていた。
そんな忙しない空間から逃れてアタシは一人、自販機の前の長椅子に腰掛けてマッタリしていた。
少々渇き気味の喉に水分を補給すると、なんともいえない爽快感が喉越しから全身に伝わった。
これが俗に言う「束の間に幸せ」ってやつだろうと一人ほくそ笑んでた。
- 229 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時48分04秒
- しばらくそれに浸かっていたら、向こうからなっちゃんがキョロキョロしながらやって来る。
そしてアタシと目が合うなり全速力とも言えるスピードでこちらに向かってきた。
そのままスピードを落とすことなくなっちゃんはアタシに飛びこんできた。
二、三歩後ずさってなんとかそれを受け止める。
「っと、なっちゃん! イキナリ突進して来ないでよ」
「いやぁ〜、捜しててようやく見つけたから、つい嬉しくってぇ」
「さっきまで一緒にいたじゃない」
「今は誰もいないっしょ?だから余計に嬉しいんだもん」
極上ともいえる笑顔を見せつけられて、アタシは何にも言えなくなった。
- 230 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時48分48秒
- こんな事を言っちゃあなんだけど、なっちゃんは非常にヤリ手だとアタシは思う。
アタシが恥かしくなるような言動をくまなく覚えていて、自分の立場がヤバくなると必ず使ってくるし。
他の娘が同じようなことして割りと素直に受け止められるけど、なっちゃんの場合、
あの笑顔がアタシを惑わすみたい。
「ちょっと圭ちゃん、なっちの話聞いてる?」
「え、あっ、ご、ごめん。で、何?」
「んとさ、明日からオフでしょ? お昼頃に圭ちゃんちに行くから空けといてね」
「へ? お昼頃?」
「絶対空けといてよ、約束だからね」
アタシの予定も聞かず一方的に事を決めると、なっちゃんは疾風の如く行ってしまった。
空になりかけた缶を持ったまましばし呆気にとられてた。
- 231 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時49分42秒
- 帰宅して食事、入浴を済ませてすぐに床に就いた。
いつもならそんなに早く寝ないのに、今夜だけは早めに寝ることにした。
掃除などもしなくてはならなかったけれど、夜中にするほど非常識な人間ではない。
だから早めに寝るんだと言い聞かせて見たものの、どっかで明日の事を期待していたのかもしれない。
そんな事を考えながら夜は更けていった。
結局いらぬ事を考えてしまったせいで眠れず、朝を迎えてしまった。
しかたなく布団から抜け、軽い食事をとって掃除を始める。
と言っても先日いらなくなったものを一斉処分した事も手伝ってか、ものの三十分足らずで終わってしまった。
なっちゃんが来るまでまだ二時間以上は裕にある。
ソファーに腰掛けると、朝の日差しが心地良さを運んできて、そのまま夢の世界へ連れていかれた……。
- 232 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時50分28秒
- 再び、日の光を浴びて目覚めた。
まだ意識が完全に覚醒しないまま時計を見たら、既に夕方の四時を回っていた。
「あ〜っ! 寝過ごしたぁーっ!」
慌ててなっちゃんに連絡を入れようとして、ふとメールが届いてることに気付いた。
焦りと不安が入り混じった気持ちでメールを読むと、
『ゴメン、ちょっと遅れそう。三時までには着くから』
と一件目はあり、続いて二件目を読むと、
『ホントにゴメン。後二時間ほど時間を下さい』
そしてついさっき届いたメールには、
『ごめんなさい。今日中には行きますから』
と大雑把過ぎる謝罪のコメント。
「一体何してるんだろ? いいや、こっちから行っちゃえ」
まだなっちゃんが家にいる事を願いつつアタシは夕方の街へと繰り出した。
- 233 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時51分16秒
- なっちゃんのマンションに辿り着いた頃、アタシは携帯を取り出してメールを送ってみた。
そしてゆっくりとした足取りでなっちゃんちの玄関の前まで歩を進める。
ドアの目の前に着いた時、ちょうどなっちゃんからメールが来た。
けれど、それに返事をせずに、インターフォンを押した。
すると中から慌てたような物音が聞こえてきて、ドアが勢いよく開いた。
「やあ」
「!! け、圭ちゃん!?」
「あんまり遅いんで来ちゃったよ」
「だ、ダメだよぉ。待っててくれなきゃ」
「いいじゃん。待ちきれなくてさ」
なんでか追い出そうとするなっちゃんをかわしながら、中へと入ってった。
すると、キッチンの方から甘い匂いが漂ってきた。
アタシは何となくその匂いと目の前にいるなっちゃんの顔に付着したものを見て、何がしたかったのかが判った。
けれどアタシはちょっと意地悪がしたくなって、何食わぬ顔をしてなっちゃんを問い詰めてみた。
- 234 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時52分00秒
- 「何してたの、今まで?」
「えっ、な、何にもしてないよ!」
「だったら約束の時間に来れるはずだよね?」
「えっと、それはその…あ、ちょっとお腹が痛くって」
「ふぅ〜ん」
明らかに嘘がバレバレでしどろもどろになるなっちゃん。
アタシも納得したように見せかけてズカズカと中へ入っていく。
するとテーブルの上に何やら出来たてのチョコが剥き出しで置いてあった。
「何これ、どうしたの?」
「ああーっ! ダメダメ、見ちゃっ!」
アタシを押し退けて、小さな身体全体でそれを隠そうとするなっちゃん。
当然の事ながら顔はさっきからずっと真っ赤。
またまたアタシは知らぬ顔で今度はキチンへ目をつけた。
- 235 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時52分46秒
- 「なんか歩いてきたから喉渇いちゃった。なんか飲み物貰うよ」
そう言いながらキッチンヘ行くと、これまた見事に材料や調理器具やらが散らかってた。
「うわぁーっ! そっちも入っちゃダメだってばぁ!」
頬や鼻の先にチョコを付けたなっちゃんがトマトみたいになってアタシの身体を追い出そうとする。
意地悪はこれ位でいいかなと思ってリビングへとなっちゃんを連れ出し、向い合ってじっと見つめる。
なっちゃんがいつもやってるような笑顔も付けて。
「……み、見つめられると照れるっしょ」
ずっと真っ赤なまま視線を逸らす。
なっちゃんもこういうのに弱いんじゃん、と思いつつもアタシは攻撃の手を緩めなかった。
- 236 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時53分31秒
- 「ねえ、今まで何してたのさ? アタシに言えないこと?」
「えっ……み、見たら判るっしょ」
「わかんないな〜。だってさ、なっちゃんてば隠したり、追い出したりするから」
「はうぅ〜」
「1/4日待ったんだよ?」
「……」
「心配になって来たら嫌がられるし」
「……ごめん」
そう言ってなっちゃんはペタンとその場に座りこんでしまった。
アタシもしゃがんで顔を覗き込むようにして再度尋ねる。
「で、どうしたの?」
「……今日ってバレンタインでしょ? なっち朝から一生懸命作ったんだけど、中々上手くいかなくて。
でも作ったからには上手で美味しいチョコをあげたかったから……」
「そんなに気にしなくてもいいのに」
「だって……だって普段料理作ってるのに、手作りチョコは作れないなんて恥かしかったんだもん」
言い訳するたびにブルーになって落ち込んでいくなっちゃん。
見るに耐えず、そっと手を取ってアタシは赤面しそうなくらいキザな台詞を言ってた。
- 237 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時54分22秒
- 「いいじゃん。料理が出来る人に作れないものがあったってさ。なんでも作れる人なんてそうそういないんだから。
苦手な所がかえって魅力的に見えるんだよ?」
「えっ…」
「美味しくなくても、形が変でもアタシのために作ってくれたっていう誠意と、アタシに対するなっちゃんの
気持ちがきちんと伝わってるから、それだけで十分満足だよ」
言い終ってからアタシのほうが真っ赤になってた。
これじゃあいつもと変わってないなぁ、と思うと今回もなっちゃんに一本食わされたような気分になった。
しかし、困った事にアタシ自身何も用意してなかった。
ここに来るまでこんな展開を予想していなかったアタシは、俯いたままのなっちゃんを見つめながら、
あれこれと考えを巡らした。
貰った以上はお返しというか、アタシからもチョコの変わりのものをあげたいと思う。
- 238 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時55分24秒
- ふと、さっきなっちゃんの顔に溶かしたチョコが付いていたのを思い出した。
かなり気合と勇気がいるけれど、アタシからのバレンタインは「これ」にさせてもらおう。
プレゼントはものよりも気持ちが大事だと思うから。
「なっちゃん、顔にチョコ付いてるよ?」
「えっ、ど、どこどこ?」
「取ってあげよっか?」
「うん。取って取って」
“ぺロッ”
「はい。綺麗になったよ」
「……」
「あれ、怒った?」
- 239 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時56分11秒
- なっちゃんは固まったままアタシをじっと見つけてくる。
お気に召さなかったのかな、と思ったらなっちゃんは急に側に置いてあった出来たてのチョコに手を伸ばす。
なんだか妙に嬉しそうな顔をするなっちゃんとは逆に、アタシの頭の上には?マークを浮かべたまま。
なっちゃんは固まりかけてたチョコを指で掬って顔にチョンチョンと塗り手繰る。
まさか……。
「圭ちゃぁん。取ってぇ〜」
「……」
こうしてアタシたちの貴重過ぎるオフ&バレンタインデーは過ぎていきました。
- 240 名前:Tea Break 投稿日:2003年02月28日(金)03時57分01秒
- 『癒しの唇』 〜FIN〜
- 241 名前:ご報告 投稿日:2003年02月28日(金)03時59分01秒
- 圭 「次回から本編に戻ります」
- 242 名前:ご報告 投稿日:2003年02月28日(金)04時03分34秒
- みちよ「ちょっとエッチなので18歳以上の御方はご遠慮下さい(笑)」
梨 華「ええ〜っ!! いいじゃないですかぁ〜」
みちよ「あかん!」
- 243 名前:ビギナー 投稿日:2003年03月03日(月)15時06分06秒
- お久しぶりでございます。
一応、テストも終わり、ゆっくり戻ってまいりました。
だいぶ、遅くなってしまったんですが、銀板の方お疲れ様でした。
すっごく楽しく読ませていただいてたので、言えなかったのは、
なんとなく心残りで・・・遅れてすみませんでした。
もちろん、花板の方も応援してますので、これからもがんばってくださいね。
- 244 名前:お返事 投稿日:2003年03月07日(金)03時21分02秒
- >ビギナーさん
なつみ「おかえりなさ〜い」
圭 「こちらこそこれからもよろしくお願いします」
なつみ「もうね、読者需要が少ないけど、まだまだ行くよ、なっちは」
圭 「新しいお話がこの後始まるからね」
なつみ「えっ!?」
みちよ「うそぉ!?」
梨 華「ホントですかぁ〜(嬉)」
圭 「(ニヤリ)」
- 245 名前:本庄 投稿日:2003年03月07日(金)18時26分25秒
- 帰ってまいりました!!
長かったわ・・・。
今日でようやく終わったっす。
・・・まぁ結果次第ではこの後も試験はあるんですが・・・。
ようやく一区切りついたんでまたちょくちょく寄らせていただきます(w
- 246 名前:お返事 投稿日:2003年03月09日(日)04時39分11秒
- >本庄さん
なつみ「お疲れさまぁ〜」
圭 「こちらこそご期待にそえるよう頑張りますよ〜」
梨 華「チャーミ―も頑張って保田さんGETしますよ〜」
圭 「あ、みっちゃんだ」
梨 華「!!平家さぁ〜ん(去)」
圭 「……」
なつみ「……ところで圭ちゃん。新しいお話ってどういうこと?」
圭 「続報はメール欄にてお報せってことで」
なつみ「え〜、教えてよぉ〜」
- 247 名前:澪標 7 投稿日:2003年03月10日(月)03時48分20秒
- 月明かりだけがなつみの身体を覆っている。
きめ細くて透き通るようななつみの裸体。
今まで何度か肌を重ねた事はあったものの、なつみの方から積極的にアプローチをされたことはなかった。
圭はただじっと、柔らかく揺れる胸やくびれた腰を見つめていた。
「は、恥かしいね……意外と。そうやって、黙って……見つめられるのって」
ゆっくりと近づいてくる肢体に圭は手を伸ばし、柔らかな感触を掌で感じ取る。
「あ、んっ……」
「柔らかい……し、温かい」
「…う、うん……もっと……感じ…て……傍にいるって…こと」
「なっちゃん……」
「圭…ちゃ……ん…」
円を描くようになつみの白い山を持ち上げ、ゆっくりと揉んでいく。
自分の気持ちを全てなつみに伝えるように感情を込めて。
- 248 名前:澪標 8 投稿日:2003年03月10日(月)03時54分06秒
- 「ふぁ…あぁ、ん……」
「綺麗、だよ……なっちゃん……」
「…ね、ねえ…圭ちゃ…ん」
「なに?」
「なっち、圭ちゃんと、一緒に……気持ちよく……なりたい……」
「……」
「ダ……メ?」
「……わかった」
ぼんやりと月明かりが射し込む圭の部屋。
二人は不思議な感覚に包まれていた。
これほどまで互いが緊張する事は今までなかった。
まるで初恋の人と初めて結ばれるような、そんな気がしていた。
((これが本当の愛なのかもしれない))
二人は同じことを思っていた。
いつもとは立場が逆転しているけれども、そんなコトに逆らう事もなく圭はなつみに成すがままになっていた。
- 249 名前:澪標 9 投稿日:2003年03月10日(月)03時57分52秒
- 生まれたままの恰好になった圭と見つめ合い、ゆっくりと肌が触れ合う。
なつみはふと、見てはいけないものを見てしまった。
「傷……残っちゃってるんだね、やっぱり」
「……しょうがないよ」
「哀しい、よね」
なつみが淋しそうに呟いた。
あの忌まわしい惨劇からまだ浅い年月しか経っていない。
完全に消えるまでまだ長い月日が必要であろう傷跡がなつみを申し訳なさそうにさせる。
「見てて気持ちのいいもんじゃないでしょ?」
「ううん……見せて」
なつみの指がそっと傷跡に触れる。
労わるように……優しく、やさしく撫でる。
「まだ……痛む?」
「ううん。大丈夫だよ」
「大丈夫」――その言葉はいつもなつみを安心させてきた大切なおまじない。
それを聞いて安心したなつみは、そっと傷口に唇を当てる。
母猫が仔猫にするように……そっと触れるだけの口づけ。
優しく触れる感触に圭は身を任せ、身体の力を抜いてベッドに寝そべる。
- 250 名前:澪標 10 投稿日:2003年03月10日(月)04時00分22秒
- なつみがまた圭の瞳を見つめる。
上から覆い被さる恰好のなつみの双山を右手で持ち上げるようにし、左手でくびれた腰周りを撫でる。
その度になつみの髪が揺れ、漂うシャンプーの匂いが、意識まで彼女色へと染めていく。
熱を持ったなつみの双山を触っていた手に力が入り、なつみの身体が一瞬だけ跳ね上がる。
「あっ、痛かった?」
「ううん……気、気持ち…いいの……もっと…して……ほしい…な」
なつみの目が嘘のようにキラキラと輝き潤み、目許がポッと赤く染まって大人の雰囲気と
子供のような笑顔で圭を見下ろしていた。
(こんなに綺麗な瞳だったんだ……可愛いね)
なつみの視線に熱いものが込み上げてきて、ハートの鼓動を一気に加速させる。
ゆっくりと体勢を入れ替えて、今度は圭が上から覆い被さった。
確かめるようになつみが呟く。
- 251 名前:澪標 11 投稿日:2003年03月10日(月)04時02分14秒
- 「ずっと……一緒だよ?」
「もちろん……なっちゃんがもうイヤだって言っても離さないよ?」
「うん。離しちゃヤだよ」
固く手を握り合い、何度目かのキス。
そして……。
- 252 名前:澪標 12 投稿日:2003年03月10日(月)04時03分46秒
- 徐々に激しさを増していく愛撫となつみの反応。
全身が赤みを帯び、腰回りが小刻みに震え、甲高い声を闇に奏でるなつみ。
何度となく訪れる性の極みに握り締めた手に力が込められ、目の端には涙を浮かべている。
「はぁ…あぁ…圭ちゃん、好き。も、もう…離れたくない……」
「アタシだって……なっちゃんを離さないよ」
「ああ、んんっ、あっ、ああ、う、嬉しい…ん、あっ!」
「なっちゃん……なっちゃんっ!」
「あああっ、圭ちゃんっ! もうなっちを離さないでっ!」
「離さない! 絶対に離さない!」
「ああああっ!!」
しっかりと見つめ支える圭の愛を受けて、なつみは昇天した。
お互いに安らぎと温もりを目一杯感じながら……。
二人は長かった道のりを経て、今本当の「愛」という名のもとに結ばれた。
- 253 名前:本庄 投稿日:2003年03月10日(月)17時31分45秒
- ……(放心中)
…素敵☆
二人共素敵過ぎ☆☆
- 254 名前:蛍灯 1 投稿日:2003年03月17日(月)06時22分47秒
- どのくらい夢の中にいたのだろうか?
圭はゆっくりと目を開け、壁に掛かったアンティークの時計に目を向けた。
「まだ、四時前…か」
そしてそのまま反対の方へ向き直り、心地良さそうにスヤスヤと寝息を立てているなつみを見る。
まるで幼稚園児が楽しい夢を見ているかのように寝顔が微笑んでいる。
圭は黙って光沢を帯びるしなやかな髪の毛を撫でながら、その安らかな寝顔を見つめる。
「圭…ちゃ……ん……」
不意に名を呼ばれ、一瞬だけ撫でていた手を止めるも、寝言だと判るとまた同じように撫でる。
「……圭…ちゃ……ん……」
もう一度呼ばれる自分の名。
圭の視線は安らかな寝顔から夜明け前の蒼い空へ、意識は回顧の念に駆られていた。
何十年も前から一緒にいたかのように、様々な日々が走馬灯のように圭の脳裏に甦ってきた。
- 255 名前:蛍灯 2 投稿日:2003年03月17日(月)06時24分18秒
- 初めてなつみの想いに触れた麗らかな春日和。
人それぞれに苦しみを持ち、幾多の辛い日々によって深く閉ざされてしまった笑顔や温もり。
そして夢をも全て誰かに話してしまいたい、そんな積悲に満ちていたなつみの眼差しは、
巡り来る季節の中で次第に微笑へと変わっていった。
壊れそうな瞳をした彼女はいつしか自分の前から姿を消していた。
けれども、あの時見せたなつみの淋しさを忘れる事は出来なかった。
初めてなつみが教えてくれた自らの秘密の場所で過ごした盛夏の夜。
あの時のなつみがほんの少しだけ夜空に近かった気がした。
雲ひとつない夜空を見上げながらこっそりと話してくれた物語はいとおしくも儚い、不幸な結末だった。
何処にいても不安を感じていたなつみを自然と抱き寄せ、どこにいても
気持ちは傍にいると密かに天に向けて誓った。
そしてパノラマに包んでいた星空の下で、自らの心中に新しい神話が生まれた。
- 256 名前:蛍灯 3 投稿日:2003年03月17日(月)06時25分45秒
- 初めて涙にくれた秋霖の晩。
一人になった夜は特別だった。
いつもの自分を保てず、不覚にも悲涙を零した。
けれども同じ時に同じようになつみも感じ、嘆き悲しみの涙を生んでいた。
同じ雨音を聞いて、同じ淋しさを感じながらも、すぐ目の前にある「出会い」には気付かずにいた。
そんな運命の出会いが雪景色の似合う季節の夜に二人を引き寄せる事など誰も知らなかった。
人はいつしか嫌な思い出を忘れようとするけれども、一人きりで過ごした夜はずっと忘れはしないだろう。
初めて恋に臆病になった冬凪の日。
あの時、他の人ならば優しい言葉で包みこみ髪を撫でて微笑むのに、それすら出来なかった。
あの時、他の人ならば流行の台詞で落ち着かせ涙を吹いて口付け交わすのに、それさえも出来なかった。
「ずっと一緒にいてね」と微笑んでたなつみを抱きとめる勇気までも、あの時の自分には失われてた。
何もかもに終止符を打とうと誓ったあの日、なつみの勇気に助けられ、
命を吹き返した自分の心に、新しい始まりが待っていた。
- 257 名前:蛍灯 4 投稿日:2003年03月17日(月)06時27分17秒
- そして……孤独と愛しさが交錯する日々に耐え続けたこの一年余り。
己の身体に刻み込まれた惨劇の痕を見る度に迷走し、腐りかけたけれど、
定期的に送られてくるなつみの筆跡に幾度となく救われた。
自分を信じ待っていてくれる人の存在から来る心地よさとか安堵感とかの感情を少しでも彼女に伝えたい。
「なっちゃんがいてくれたことが心の支えになったよ」って。
そう願いつつ歩んできた茨の道を乗り越えて、再び目の前に現れてくれた彼女……
思い耽っていた意識と共に視線を目の前の彼女に戻すと、腰にはいつの間にか
両手で離さないようにしっかりと抱き、頬をすりつけるような恰好で上目遣いぎみに圭の様子を窺うなつみがいた。
そして腕を抱きかかえながらも、少しだけ全身を震わせていた。
まるで寒空の下で凍えている子犬のように。
- 258 名前:蛍灯 5 投稿日:2003年03月17日(月)06時29分18秒
- 「あ……ごめん……起こしちゃったかな?」
「何、考えてたの?」
「ずっとなっちゃんと出会った日からのこと、考えてたんだ。いろんな事があったんだなって……」
宙を見上げながら語りかけるように、そして自分に言い聞かせるように説いていく。
そしてゆっくりと視線をなつみに戻し、軽く微笑んでみた。
けれども、なつみはじっと押し黙ったまま圭を見つめ続ける。
その代わり、抱きかかえる力が徐々に強くなり、何かに怯えていくように感じられた。
「どうしたの、なっちゃん?」
「……」
「なっ……ちゃん?」
なつみはただ首を振るだけで一言も発しようとはしない。
だが、透き通る瞳だけが何かを物語っているようにも見えた。
- 259 名前:蛍灯 6 投稿日:2003年03月17日(月)06時31分52秒
- 「ど、どうしちゃったの?」
圭は少し態勢をずらし、なつみと向い合うようにし、そっと彼女の顔色を窺う。
視線がはっきりとぶつかった瞬間、なつみの目が潤み出し、やがて一筋の涙が頬を伝う。
その顔を覆い隠すように圭の胸へと飛び込んだなつみは、顔を埋めたまま淋しげな声で呟く。
「なんでもない……」
「なっちゃん?」
「ただ……」
「ただ、なに?」
「ずっと一緒だから……どんな事があっても傍に居るから……」
「そっか……ごめんね、心配かけさせて」
回顧の念に浸っていた自分に不安を覚えたのであろうなつみを気遣い、誤解を解いて聞かせる。
なつみがゆっくりと頷く。その反動で目尻からまた雫が流れる。
一点の曇りのない透き通った雫を綺麗に拭き取ってあげた。
- 260 名前:蛍灯 7 投稿日:2003年03月17日(月)06時33分21秒
「一端は離れちゃったけど、今はこうしてなっちゃんの目の前にちゃんといるから……」
「うん」
「今までも、そしてこれからもずっとずっとなっちゃんの姿をこの目で見続けていくから」
「うん」
「どんなに離れてても側にいて見てるから……」
「うん」
「ずっとずっと見守ってるから……」
ずっとずっと……。
- 261 名前:蛍灯 8 投稿日:2003年03月17日(月)06時36分17秒
『恋情 〜きっと離れられない二人〜』
THE END
- 262 名前:お返事 投稿日:2003年03月17日(月)06時40分28秒
- >本庄さん
なつみ「圭ちゃん」
圭 「なに?」
なつみ「……なんか、恥かしいね」
圭 「……そだね」
なつみ「……(カァ〜)」
圭 「……(カァ〜)」
- 263 名前:本庄 投稿日:2003年03月17日(月)13時05分14秒
- なにも申しません…。
でも一言だけ、
『ブラボー!!』
まじ感動しました。次回作も楽しみにしています!
- 264 名前:ビギナー 投稿日:2003年03月18日(火)10時29分31秒
- 長い間、お疲れさまでした。
途中、すごく切なくなって、思わず涙を流したりもしましたが、
今、すっごく幸せな気分です。
ありがとうございました。
本庄さん同様に、感動してます。
次回作も、ワクワクしながらまっております。
がんばってくださいっ。
- 265 名前:ご報告 投稿日:2003年03月23日(日)05時48分39秒
- え〜、非常に恐縮ですが、ビギナーさん。
貴方が以前『ミニ物語』でお書きになさった
『幸せでしあわせで』の続編を書いてしまいました。
もし、不快でしたら即削除いたしますので、申し出てくださいませ。
真に勝手ですいません。
- 266 名前:幸せでしあわせで 〜 side K Version 〜 投稿日:2003年03月23日(日)05時50分12秒
- なっちゃん知ってた?
アタシは、ずーっと娘。に入った時からなっちゃんが好きだったんだよ。
はじめて逢った時から、「可愛いな」って思ってた。
でも、なっちゃんは裕ちゃんと仲よさそうにじゃれ合ってたし、アタシなんか見向きもしないだろうって思ってた。
それに同性なんて好きになった事もなかったし、あの時はそれどころじゃなかった。
それが急に、仕事で宿泊するホテルの部屋割りを決める時、「圭ちゃんがいい」って言われた時。
正直、アタシは戸惑ったと同時に、嬉しかったんだ。アタシの小さな想いが届いたのかなって。
あの時、紗耶香はちょっと怒ってたみたい。
いつもアタシと一緒にいたから、他の人と同室になるのがイヤだったって後で教えてくれた。
矢口は不思議そうにアタシとなっちゃんを見比べてたけど。
- 267 名前:幸せでしあわせで 〜 side K Version 〜 投稿日:2003年03月23日(日)05時51分34秒
- なっちゃんと同じ部屋にしてもらったのはいいけど、実際アタシの心はめっちゃビクついてて、震えてた。
そんな弱気なアタシに構わず、なっちゃんは嬉しそうに抱き締めてきたよね。
それだけでアタシは目が回りそうで言葉もなく、ドキマギしっぱなしだった。
なっちゃんがさ、「恐がらなくていいよ」って言ってくれたから素直に、「は、はい」って答えたけど、
内心まだびくびくしたままで、正直恥かしかったよ。
なのに、なっちゃんてば抱き締めながら「なっちね、圭ちゃんが好きなんだよ」って。
なんかアタシの気持ちを嘲笑うかのような反則技使うからさ、
無意識的に「私も安倍さん好きです」って告白しちゃったんだよね。
いやぁ、初恋の人に告った時みたいに、乙女になっちゃってた。あははは……
- 268 名前:幸せでしあわせで 〜 side K Version 〜 投稿日:2003年03月23日(日)05時52分31秒
- やっと落ち着いて、そろそろ寝る時間になった頃、なっちゃんが突然、「一緒に寝ていい?」なんて聞くから
一瞬、頭の中で破廉恥極まりない事ばかり想像しちゃったよ。
アタシ変態だよね。さっきまで同性を好きになったことがないって言っておきながらこんな事考えてんだもん。
きっとなっちゃんにも変な後輩に見えたんだろうな。たぶん顔に表情が出てただろうし。
部屋のベッド、結構狭くってアタシは平常心装いながらもなるべく離れて寝ようとしてたのに、
なっちゃんてばアタシの邪まな妄想を煽るように「こっちおいで」って誘ったんだ。
とてもじゃないけど、興奮気味だったアタシは恐れ多くて、ほんの少しだけ動くだけにした。
なのに、「もっとおいでよ」なんて言うもんだから困っちゃったよ。
どうしようって策を練ってたら、なっちゃんがアタシの方に近づいて抱きしめて微笑んでくれた。
もう限界ギリギリだったね、あの時。理性保つのに一杯一杯で言葉も出なかった。
でも、それから普通に「おやすみ」って言ってなっちゃんは先に寝ちゃってくれた。
けれど、その日からアタシの中でなっちゃんしか見えなくなってた。
- 269 名前:幸せでしあわせで 〜 side K Version 〜 投稿日:2003年03月23日(日)05時53分36秒
- そんなこんなで、気付いたらよくお互いの家に行ったり、キスしたり、抱き合ったりするほど親密な関係になってた。
告白っていう告白はお互いしてないかもしれない。夢の中では何度もしてるんだけれども。
でも、今が幸せだからこれ以上、求めちゃいけないのかもしれない。
大好きな人がいて、同じ気持ちをもつ事ができて、同じ時間を過ごす。
そして同じ夢を見ながら、その夢に向かって同じ歩幅で歩み進んでいく。
そんな大きな幸せから今みたいに、同じベッドにいたりする小さな幸せも全部ひっくるめて囁く。
「なっちゃん、好きだよ」
ちょっとだけ口元が上げて寝ているなっちゃんの髪に優しく触れてみる。
ずっと一緒にいたい、という小さな幸せをかみしめながら……。
- 270 名前:言い訳 投稿日:2003年03月23日(日)05時56分48秒
- ホントにビギナーさんに感謝&陳謝しております。
久しぶりに読んでみたら、幾つか続編を勝手に妄想してしまいまして。
自分的にはビギナーさんの作品をカバーしたつもりでいます。
でも、不快でしたら即座に削除しますんで、ホントすいませんでした。
- 271 名前:お返事 投稿日:2003年03月23日(日)06時03分05秒
- >本庄さん
圭 「いやー、無事に終わってよかったねぇ」
なつみ「感動してくれて良かった(ホッ)」
みちよ「なぁ、アタシのサイドストーリーはどうなったんかなぁ?」
梨 華「えっ、そんなお話ありましたっけ?」
圭 「……さぁ?」
みちよ「えっ?」
なつみ「……放置」
みちよ「(ガーン!)」
- 272 名前:お返事 投稿日:2003年03月23日(日)06時07分12秒
- >ビギナーさん
なつみ「幸せな気分になってもらえてなっちも一安心だよ」
圭 「う〜ん、水を差すようだけどね」
みちよ「なんやなんや?」
圭 「実は本来のエンディングはBAD ENDだったらしいよ」
なつみ「そうなの?!」
圭 「でも、容量の問題で急遽変更したの」
みちよ(って事はうちがなっちと……)
圭 「みっちゃん、それは有り得ない」
みちよ「シクシク」
- 273 名前:ご報告 投稿日:2003年03月23日(日)06時10分01秒
- ここからは短編集でいきたいと思います。
ではでは
- 274 名前:ビギナー 投稿日:2003年03月23日(日)10時16分01秒
- いえいえ、こちらこそありがとうございますっ。
ホント、なんかあんな駄作からここまでしていただけるとは・・・
感謝感激でございます。不快とか謝罪なんてとんでもないですよ。
すごく今、嬉しいんです。
圭ちゃんの、緊張感とかすごくリアルに伝わってきて、うっぱさんの
力に脱帽です。
本当にありがとうございました。
こちらこそ何度言っても足りないくらいです。
- 275 名前:お返事 投稿日:2003年03月25日(火)07時06分53秒
- >ビギナーさん
受け入れていただいてありがと―ございます。
あの〜、恐縮ですが、もう2作品ほどやらせてもらってもイイですかね?
どうも続きが気になる作品があったもので……。
- 276 名前:ビギナー 投稿日:2003年03月26日(水)10時08分29秒
- どういたしましてです。
後、2本の方も、全然構いませんよ。
むしろ、お願いします。
それから、ビギナーからもお願いです。
その、続編だったり、逆サイドのお話を、
「ミニ物語2」の方で宣伝しても良いですか?
- 277 名前:恋から恋へ 花から花へ 〜Nightmare Mix〜 投稿日:2003年03月28日(金)08時18分48秒
- 悔しい。
拗ねたような目に負けた自分が悔しい。
今ではさっきの素振りがウソのように、物珍しそうにじろじろと部屋を見まわってるし。
「なんで怒ってんの?」
「だって勝手に付いて来るから」
「勝手ちゃうよ。圭ちゃんがいいって言うたんやもん」
そんな事一言だって言った覚えないのに。
まるでこっちが悪者扱いされてる気分。
誰かさんみたいに満面の笑顔まで添えて近寄んないでよね。
「なあ、いつになったら機嫌直してくれるん?」
「みっちゃんがここを出ていってくれたら」
「ほんなら圭ちゃん、今日一日このままやね」
「なんでよ?」
「だって今日はここに泊まるんやから」
ちょっと!聞いてないよ、そんな事!
こっちの都合も考えてよ。
今日は新作のDVD観ようと朝から楽しみにしてたんだよ。
この日のために、ちょっと高価なワインだって仕入れたのに。
- 278 名前:恋から恋へ 花から花へ 〜Nightmare Mix〜 投稿日:2003年03月28日(金)08時19分56秒
- 「帰ってよ」
「いやや。今日は圭ちゃんと離れたくない。ずっとおる」
「やだ」
「…嘘や」
「なんで嘘つかなきゃなんないのよ!」
「だってこうやって抱き付いててもなんもしないやんか」
当り前じゃん。振り解こうにも、それ以上の力で抱き締めてるんだから。
力がない事知っててやってるから余計、悔しい。
しかも何気に、首筋辺りに息吹きかけてくるし。
「……もう寝る」
「一緒に寝よか?」
「やだ」
「なんで?」
また、さっきみたいな目をする。
普段はそんな目を見せないくせに……卑怯だよ。
年上なのに子供みたいに甘えちゃってさ。
そのくせ、ヘンな所で大人ぶってアタシより上に行こうとするし。
「ええやろ、一緒に寝よ〜」
「……カ」
「何?聞こえへんよ」
「バカっ!」
フン、笑ってなさいよ。
完全にアタシの負けですよ。好きにして。
完璧に負けたけど……なぜか悔しいし、憎たらしい。
それは……相手がみっちゃんだから
- 279 名前:恋から恋へ 花から花へ 〜Nightmare Mix〜 投稿日:2003年03月28日(金)08時21分00秒
Fin
- 280 名前:独り言 〜Daybreak Mix〜 投稿日:2003年03月28日(金)08時22分58秒
- 「んん〜、ふにぃ……」
朝靄がいつもと違う、街の素顔を映し出している、そんな時間に目覚めてしまった。
頭と身体は、休息を欲しているのだけれど目が冴えてしまう。
「へへへっ。気持ち良さそうに寝てる。ほんと、幸せそうだよ」
微かに聞こえる寝息の方へ身体を傾けると、淡い色のパジャマを着たみっちゃんがいる。
普段とは違う、大人とはいえないような寝顔に、ますます愛おしさを感じてしまう。
いつ頃からこんな風に思うようになったのだろうか?
初めて出会った時はお互いに年齢も、精神的にも、子供だった。
あれから何が変わったんだろうか?
あなたという女神が現れてくれてから……
見た目とか、そんなのなしにして、夢とか、考え方とか、嫌いな物とか・・・そして気持ちについて。
二人で笑ったり、鏡越しに見つめ合ったり、一晩中寄り添ったり。
そんな事を楽しんでたっけ。
「ちゃんと、見てるよ。心の目で」
- 281 名前:独り言 〜Daybreak Mix〜 投稿日:2003年03月28日(金)08時24分13秒
- 変わらないもの。
何があってもどんなに時間が過ぎても変わらなかったもの。
殺伐とした現実の中で出逢った事、それを「運命」よりももっと適切な言葉で表せない。
けれど、この心地良さとかヤキモチとかの感情を少しでも伝えたい。
たとえ、ほかのすべてが変わったとしても。
「だから、ずっとなっちの側にいてね」
「ん〜、ん?なんや、起きてたん?」
「目が覚めちゃった」
「そっか……そんならもうちょい寝るわ」
「うん。おやすみぃ」
「Zzz……」
飽きるまで側にいてほしい。
一緒にいる……それだけで好きな気持ちが光りを紡ぐから。
願っても、祈っても、泣いても、喚いても、手に入らないものがある。
そんな世の中で少しでも多く同じ時間を同じ場所で過ごしたい。
あなたを愛しているから……
そんな二人だけの夜明けの独り言……
- 282 名前:お返事 投稿日:2003年03月28日(金)08時30分59秒
- >ビギナーさん
なつみ「ビギナーさんからお願いされちゃったよ〜」
圭 「こちらこそよろしくお願いします。できれば控えめにお願いしますね」
なつみ「納得してくれるかなぁ?」
圭 「なんせRemix版だからね」
なつみ「Remix……かっこいい〜」
圭 「改めてビギナーさん、ありがとうございまひた」
- 283 名前:雲隠 〜貴方は人気者〜 投稿日:2003年03月28日(金)08時40分46秒
- 今日も何事もなく一日が終わろうとしている。
アタシはいつものように自宅への帰路についた。
最近引っ越したばかりだが、この道を歩くのには慣れたもので、迷うことなくマンションに到着。
エントランスを抜けて、エレベーターで五階を目指す。
少しだけ閑散とした廊下を歩き、鍵を使ってドアを開け一言。
「ただいま〜。今帰ったよ〜」
まるで誰かがいるかのように何もない暗闇に向かって挨拶をする。
そして普段通りに部屋の奥へと進んでリビングの電気を点けた。
その時、アタシの目の前に真っ白なドデカい兎が現れ、驚くアタシをよそにそいつはアタシに飛びついて来た。
- 284 名前:雲隠 〜貴方は人気者〜 投稿日:2003年03月28日(金)08時42分22秒
- 「わぁっ!」
勢い余ってソファーに押し倒される恰好になった。
アタシは新手の強姦魔かと思って懸命に手足をばたつかせて、必死に抵抗しようとした。
が、すぐに目の前に現れた馴染みの顔に目が点になった。
「な、なっちゃん!? な、なんて恰好してんの??」
「えへへ〜、ビックリしたぁ?」
「あ、当り前でしょう!」
「どうどう、この着ぐるみ? 可愛くないかい?」
そう言ってなっちゃんが目の前で両手を広げて可愛らしさをアピールしている。
「……」
アタシはその姿を見て正直理性が吹っ飛びそうになった、というか普通はなるだろう。
顔だけ出した兎姿のなっちゃん。たぶん裕ちゃんだったら真っ先に飛びついていただろうと思う。
けれど、なんかその姿を見つめるごとに冷静になっていく自分がいた。
- 285 名前:雲隠 〜貴方は人気者〜 投稿日:2003年03月28日(金)08時44分11秒
- 「あり? ダメだったかな?」
「いや、そんなコトないんだけど……」
「???」
「ていうか、それ、どうしたの?」
「あ、これ? ほら、最近ハロモニで高橋が着ぐるみ着て裕ちゃんや梨華ちゃんと一緒にやってるでしょ?
で、あのコーナーでもう使わなくなった着ぐるみをたまたま貰ったんだ」
「……そんなの貰ってなんに使うの?」
「今使ってるじゃん。こうやって」
そう言って手を広げたまま陽気に踊って見せるなっちゃん。
こんな姿を見たら、ファンの人たちはおろか、彼女を知らない人たちまで惚れるだろうと思う。
「たったこれだけのために?」
「あー、これだけって言ったぁ。せっかく圭ちゃんのために喜んでもらえると思ったのにぃ」
「あ、ごめん」
「なっち、傷ついた」
「ごめんなさい」
「なっち、ショック」
なんだか、兎姿のまま拗ねるなっちゃんがいつもより可愛く見えるのはアタシだけだろうか?
謝りながらそんな事を考えていた矢先の事だった。
- 286 名前:雲隠 〜貴方は人気者〜 投稿日:2003年03月28日(金)08時47分35秒
- 急になっちゃんが着ぐるみを脱ぎ出した。
勿体無いな〜と思いながら見つめていた。
ちょっとだけ汗を掻いて着ぐるみを脱いだなっちゃんは不意にそれをアタシに差し出してきた。
「なに? くれるの?」
「違うよ」
「?」
「着て」
「は?」
「今度は圭ちゃんがこれを着て」
「ア、アタシが着るのぉ!?」
「そうだよ。早くはやくぅ」
「嘘でしょ?」
目を爛々と輝かせながら催促するなっちゃん。いや、ちょっと待ってよ。
いくら背が余り変わらないからって、いくら歳が一コしか違わないからって、
いくら二人きりだからってこれはないでしょう。
仮にもアタシもう二十歳過ぎてるんだよ? 普通の生活してるならもう立派な社会人なんだよ?
そんな大人のアタシがこんな格好できるわけないじゃんかぁ。
- 287 名前:雲隠 〜貴方は人気者〜 投稿日:2003年03月28日(金)08時51分49秒
- 「あのさ、こういうのはアタシじゃなくてなっちゃんや矢口あたりが着るものであって
……そのなんというか、つまり……」
「……」
「その、アタシもう大人だからさ、こういうのはどうかと……」
「……」
「あ、あのなっちゃん?」
「……グズッ…なっち、圭ちゃんのうさちゃん姿…見たいのに……ック……」
「!!!」
「……エグッ……楽しみにしてたのにぃ……」
「いや、だからって何も泣かなくったって……」
「……ヒック……なっちのこと嫌いなんだ……だからそうやって避けるんだ……」
「いや、ちが……」
「……なっちとは遊びだったんだ……」
「……わかった! わかったから、泣かないでよぉ」
「……グズッ……ありがと」
「……だけど今回だけだからね」
なっちゃんはコクリと頷くと目頭に溜めていた涙を拭った。
アタシは仕方なくなっちゃんから着ぐるみを受け取ると、バスルームの方へと足を向けた。
すると背後からなっちゃんが不満そうな声であたしを引き止めてきた。
- 288 名前:雲隠 〜貴方は人気者〜 投稿日:2003年03月28日(金)08時57分36秒
- 「え〜、ここで着替えてくんないの〜?」
「はいっ!?」
「なっちの目の前で着替えてよ〜」
「さ、さすがにそれだけは勘弁してよ、ね」
「なんでなんでぇ?」
「それはさ……その、恥かしいじゃない。人前で着替えるのって」
「え〜だってここ圭ちゃんのお家だよ? なっちと二人っきりだよ?
誰も見てないよ? それに……」
「それに?」
「なっちたち、一緒にお風呂入ったり抱き合って寝たりしてるじゃん」
「わっわっわっ!」
「今更着替えぐらい恥かしくないよぉ」
「えっとえっと……」
「ダメ?」
「……そ、そのさ、楽しみは後に取っておいた方が良いでしょ?」
アタシは苦し紛れの言い訳を残してバスルームへと消えた。
けれど、改めて手渡されたそれを見たら、無性に悲しくなってきた。
いつもは頼り甲斐のあってしっかり者で、縁の下の力持ち的な存在のアタシが、こんな恰好するなんて……。
- 289 名前:雲隠 〜貴方は人気者〜 投稿日:2003年03月28日(金)09時01分32秒
「はぁ〜」
大きな溜息をつきながら、重い動作でなんとかそれを着てみた。
思ったよりも身体に負担かかかる着ぐるみは動き難そうだ。
更に着ぐるみである以上、かなりの熱を発散するのは言うまでもない。
既に額からは汗が浮き出てきた。
ここで待っていても仕方がないので、決意を決めてなっちゃんの元へ現れた。
「ど、ドう、クァな?」
片手を上げて可愛らしさをアピールしてみた。
するとなっちゃんはこの世のものとは思えないほど極上の笑みを添えながらアタシに飛びかかってきた。
「きゃぁーっ! 圭ちゃん、かっわいいーっ!」
「うげっ!」
「うさぎの圭ちゃぁーん! うさちゃぁーん!」
- 290 名前:雲隠 〜貴方は人気者〜 投稿日:2003年03月28日(金)09時05分06秒
- 本日二度目のタックルは必要以上に身体に応えた。
ソファーに押し倒され、身動きが取り難いアタシなどお構いもせずに、
なっちゃんはもうすっかり兎姿のアタシの虜になっている様子で、バンバン手で叩いたりしてた。
「可愛い〜可愛すぎるよぉ」
「そ、そう?」
「もお、写真撮ろう、写真!」
「えっ!ちょ、それはヤメ……」
「しゃしーん!」
「それだけはや……」
そう言おうとした時だった。
「写真」という言葉が合図だったかのように、寝室のドアが勢いよく開き、一斉にフラッシュがたかれた。
「な、なになに?」
- 291 名前:本庄 投稿日:2003年03月29日(土)16時18分30秒
- うさぎぃぃぃ!!!
こ(?)うさぎなっつぃぃぃ!!!!(壊)
はぁ…萌え♪
そしてうさぎの圭ちゃん。
欲しい…二匹とも欲しいっす!!
- 292 名前:ビギナー 投稿日:2003年03月30日(日)23時45分46秒
- 前回一本をふくめ、三本のちっちゃい駄文を
ここまで、大きくしていただけてとても嬉しいです。
ありがとうございました。
平家のみっちゃんが懐かしくなりました・・・
そして、新作。うさぎー、ウサギーッ。
可愛過ぎです。そして、写真?
フラッシュの人物に期待大です。
- 293 名前:雲隠 〜貴方は人気者〜 投稿日:2003年03月31日(月)03時56分19秒
- 「いやぁ〜、圭ちゃんがまさかそんな恰好するとはねぇ〜」
「や、矢口ぃ!?」
「なっち、カオリにも後で写真撮ってよ」
「カオリも!?」
「あ〜、あかん! 圭坊、今日お持ち帰りするでぇ!!」
「裕ちゃんまで!?」
カメラ片手に、三人はニタつきながらフラッシュをたき続けている。
「ちょっと! どういうことよ、これ!」
「圭ちゃん……そんな恰好で怒っても説得力ない……プププ」
「むしろ、何言っても可愛いだけ」
矢口が、カオリがニタニタしながら言う。
そりゃそうだと自分でも思う。
必死になって事情を聞き出そうと身体を起こすも、今度はカオリに抱きつかれた。
「もお、圭ちゃんてば可愛すぎッ!」
「へぶっ!」
「今度カオリのうちにも来てよぉ」
「は、離れろぉ〜」
- 294 名前:雲隠 〜貴方は人気者〜 投稿日:2003年03月31日(月)03時59分10秒
- 顔を埋めてくるカオリとそれを拒むアタシ。
周りは面白がってフラッシュをたいている。
カオリを押し退けると今度は矢口が渾身のタックルで抱きついてくる。
「圭ちゃん、今度プーさんの着ぐるみも着てくれぇ〜!」
「冗談じゃないわよ!」
三度ソファーに倒れ込み、そしてフラッシュ。
どっかの記者会見みたい……と何故か妙な事を想像してしまったり。
「けぇぼぉ〜、チュ〜させてぇな」
矢口を押し退けると年甲斐もなく裕ちゃんが抱きついてきてまたソファーへ。
しかも熱いヴェーセというおまけまで付いて。
「あ〜ずるい。なっちもする〜」
「じゃあ、カオリも〜」
「オイラだって、圭ちゃ〜ん」
そんなことの繰り返しで、着ぐるみを着たアタシは予想以上に体力を削られ、既にヘロヘロ状態。
もう怒る気力すらなくて、意識が薄らいできた頃、ようやくカオリが事情を話し始めた。
- 295 名前:雲隠 〜貴方は人気者〜 投稿日:2003年03月31日(月)04時02分11秒
- 「実はさ、今年圭ちゃんの誕生日、忙しくてお祝いできなかったでしょ?」
「……あ〜、そうだったような……」
「でね、なっちがどうしてもやりたい事があるっていうから付き合うことにしたの」
「……あぁ、そぉ……」
もうどうでもよくなって投げやりな返事しか出来なかった。
「いい絵も撮れた事やし、今宵はパァーッと飲むでぇ!」
「「「さんせーい!」」」
アタシはなんもする気が起きなくて、呆然と宴会の準備をする三人を見てた。
裕ちゃんはここに来る前に仕入れてきたであろうビールを早速飲んでる。
カオリは冷蔵庫に残っていた食材で簡単なつまみを拵えてる。
矢口は……何故か裕ちゃんにパシらされてた。
まあ一番年下だから無理もないけど。
んでもって今回の主犯であるなっちゃんはというと……
- 296 名前:雲隠 〜貴方は人気者〜 投稿日:2003年03月31日(月)04時07分02秒
- 「あ、あのさ、なっちゃん」
「ん〜、なぁにぃ〜?」
「いい加減どいて欲しいんだけど?」
「や〜だっ。どかない」
「アタシ、この恰好じゃ何にもできないんだけど。それに暑苦しくてぶっ倒れそうだし」
「ダ〜メッ。圭ちゃんは今晩この恰好で過ごすの」
「ちょっとぉ〜、勘弁してよぉ〜」
「圭ちゃん可愛いからダメ」
「あたしが倒れたらどうすんの?」
「なっちに抱かれながら倒れるのイヤ?」
「……べ、別に、イヤじゃ……ない…けどぉ」
「じゃあいいじゃん。もうしばらくガマンして、ね」
そう言ってキュッと抱きつき直すなっちゃん。
もお、そんな笑顔でそんな乙女チックな台詞言われたら、何にも言えないじゃんか。
どうでもよくなったアタシは、その場で疲れてしばらく目を閉じていた。
そのうちスヤスヤと寝息が聞こえてきた。
どうやらはしゃぎ疲れて眠ってしまったらしい。
寝たいのはこっちなのに。
- 297 名前:雲隠 〜貴方は人気者〜 投稿日:2003年03月31日(月)04時10分37秒
- でも…こんなチャンス滅多にないからアタシは側でもうほろ酔い気分の裕ちゃんに頼みごとをした。
「ん? なんや圭坊。メッチャ可愛いで、うさちゃん圭坊」
「……もういいってアタシのことは。それより一枚撮って欲しいんだけど」
「ええなぁ、圭坊。ウチも今度やってみようかなぁ」
「いいから早く撮ってよ」
「はいはい、ほないくで」
裕ちゃんの合図でアタシは抱きついて寝ているなっちゃんを抱きかかえたポーズを取った。
後日、出来あがった写真をネタに、裕ちゃんにひどく突っ込まれたけれど、まあいいでしょ。
こうしてアタシの生涯一恥かしい写真は、同時に生涯で一番の記念にもなったのはいうまでもない。
〜FIN〜
- 298 名前:お返事 投稿日:2003年03月31日(月)04時16分43秒
- >本庄さん
圭 「なっちゃん、これ着て」
なつみ「なんで?」
圭 「本庄さんが子兎なっちゃん欲しいって言うから日頃の感謝を込めて」
なつみ「圭ちゃんは着ないの?」
圭 「アタシはなっちゃんが終わった後で(嘘だけど)」
なつみ「わかった。これ着て本庄さんとこ行けばいいんだね?」
圭 「そうそう。まあ可愛がってもらいなさい」
なつみ「行ってきま〜す」
本庄さん、なつみさんを可愛がってあげてください(笑)
- 299 名前:お返事 投稿日:2003年03月31日(月)04時22分15秒
- >ビギナーさん
圭 「みっちゃん、もう過去の人扱いになっちゃってるよ」
みちよ「なにぃ〜、まだまだこれからや!」
圭 「あたしも後ちょっとでそうなるのかぁ〜(しみじみ)」
みちよ「その遠い目すんのやめぇ!」
圭 「あたしたちの未来はどうなるんだろう……」
みちよ「だ・か・ら、遠くを見つめるなぁ〜!!」
- 300 名前:本庄 投稿日:2003年03月31日(月)16時15分57秒
- ふごっ!!!(鼻血&吐血)
…家帰ってみたらなっちがコウサギのかっこでチョコンとお座り…。
えぇ、そりゃ鼻血も出しますよ・・・。
圭ちゃん!!貰っていいの?本当に??
・・・くす♪
さて圭ちゃんの許可もあることだしなっつぃぃ!!(ダッシュ)
- 301 名前:満点の星の片隅で 〜Moonlight Mix〜 投稿日:2003年04月03日(木)03時22分42秒
- 窓の外の澄んだ夜空を飽きもあせずに眺めていた幼い頃。
時折現れては消え行く流れ星に願い事を込めたりなんかして。
そんなロマンティストな乙女心って誰にでもあるよね。
きっといつかはって想いながら……。
- 302 名前:満点の星の片隅で 〜Moonlight Mix〜 投稿日:2003年04月03日(木)03時25分43秒
- 変わりやすい春の雨模様の都会に訪れた束の間の夜空。
今日もどこかで愛を育んでいる貴重な時間を、なっちは誰よりも好きで、たまらなく愛していて、
家族のように愛してる大切な圭ちゃんと一緒に過ごしてる。
「たまにはこういう場所に来るのもいいもんだね」
いつもとは違う雰囲気に、なっちの心はか弱くなって今にも崩れそう。
フッと一瞬手が触れただけでも自然と涙が出ちゃいそうになる。
嬉しいはずなのに可笑しいよね。
でも今のなっちにはこれが正直な気持ちなんだもん。
- 303 名前:満点の星の片隅で 〜Moonlight Mix〜 投稿日:2003年04月03日(木)03時26分52秒
- 誰もいない星空の下、静かに眺めていると何故か街の灯りが霞んで見えた。
「傍にいるよ」
そう言って隣りで天を見上げていた圭ちゃんは、なっちの震える肩をそっと抱き寄せて、
見守るようにキスしてくれた。乾いた唇を温めるように潤してくれた。
触れる唇の感触がそっとなっちの中に染み渡って、痕跡を残していく。
熱くなっていく身体を委ねるように圭ちゃんに寄り添った。
「今日ぐらい、大胆になってもいいよね」
そう言って少しだけ照れ笑う圭ちゃんの唇は光って見えた。
今のなっちの唇も蛍のように綺麗に光って見えるのかな?
- 304 名前:満点の星の片隅で 〜Moonlight Mix〜 投稿日:2003年04月03日(木)03時28分21秒
- 今頃どこかで愛を育む恋人たちも幸せなんだろうね。
絵に描いたような星空が広がる空のキャンパスを背景にして。
手を繋いで歩いていると、イジワルな時間にさらわれそうで、ふと足を止めて目を閉じた。
なっちの中で圭ちゃんと過ごす時間は止まらず動いていた。
「なっちゃん? どうしたの?」
星明りに照らされている景色の中で、圭ちゃんが呼ぶ透き通った声にそっと目を開けて、天を眺めた。
同じように天を仰ぐ圭ちゃんが傍にいることを気にしながら、声をひそめて誓った。
いつまでも圭ちゃんの隣りで寄り添っててもいいでしょ?
幸せよりももっと幸せな気持ちを感じている今、ホッとできる場所をまた胸の奥に見つけました。
- 305 名前:満点の星の片隅で 〜Moonlight Mix〜 投稿日:2003年04月03日(木)03時29分27秒
〜F I N〜
- 306 名前:お返事 投稿日:2003年04月03日(木)03時36分33秒
- >本庄さん
みちよ「圭ちゃん!! なっちはどこや!?」
圭 「なに、どうしたのよ?」
みちよ「なっちはアタシのもんや!! 本庄さんには渡さんでぇ!!」
圭 「あっ、ちょっとみっちゃん……」
みちよ「なっちぃ〜今行くでぇ〜(ドドドドド……)」
圭 「行っちゃった……本庄さん、みっちゃんもお邪魔しますのでヨロシク(笑&逃)」
- 307 名前:本庄 投稿日:2003年04月04日(金)20時14分57秒
- な、なんだよぅ!!みっちゃん!
圭ちゃんが怒るならわかるけどみっちゃんにはかわいい年下の彼女がいるんだろぉ!!
邪魔すんなよぉ!!
この作品どっかで見たことあると思ったら…メル欄みて納得しますた。
- 308 名前:お返事 投稿日:2003年04月05日(土)05時19分22秒
- >本庄さん
圭 「わかっちゃいましたよね。アタシもお世話になってました」
梨 華「保田さぁ〜ん!」
圭 「ん、なに?」
梨 華「へーけさん見ませんでした?」
圭 「みっちゃんなら本庄さんとこ行ってるよ」
梨 華「ええっ!!(まさか平家さんの身に……)い、石川も行ってきまーす!!」
……。
圭 「度々すいません、本庄さん。石川もお邪魔しますんでヨロシク(逃)」
- 309 名前:本庄 投稿日:2003年04月06日(日)16時41分13秒
- ・・・なんかたった数日で随分賑やかになったなぁ・・・(三人を傍観中)
なっちにみっちゃんに梨華ちゃん・・・。
これで圭ちゃんがいれば完璧よね♪(ちょっと期待)
あれ?でも意外と修羅場になったりして・・・(汗)
まぁ楽しそうだしいっか。
つうわけで圭ちゃんのご来店お待ちしています♪
- 310 名前:お返事 投稿日:2003年04月08日(火)01時53分13秒
- >本庄さん
圭 「来店は無理ですねぇ。っていうかここ誰もいなくなっちゃうじゃない。
まあいいや、一人だしする事ないから本でも読もっかな。えっと……
あら、ここに読んだことないやつが二つある。えっと、
『暗闇のラブロマンス(未発表)』と『なんてったってなっちゃん 〜natsumix〜』か。
どっちにしようかな〜、う〜ん……」
- 311 名前:ゆっちん 投稿日:2003年04月11日(金)02時03分11秒
- うっぱさ〜〜〜〜〜〜んっっっっっ!!!
かなりかなりお久しぶりですぅ!(半年ぶりくらい?)
受験生だったもんでパソの前に座れず、その後はネットがぶっ壊れてたもんで・・。
とりあえず、ずっと携帯から見てたんですけどレスできず、叫びたい衝動に駆られる日々を送っておりましたぁ。
で、本編の終了おめでとうございます。お疲れさまでした^^
そして、短編集、「すんばらすぃ」です。
圭ちゃんの理想像、ここにありって感じですね。
大好きだーーーー!!
また寄せさせて頂きます。
- 312 名前:本庄 投稿日:2003年04月11日(金)21時38分14秒
- 圭ちゃん!!今から三人引き連れてそっち行くからその本貸してくれ!
いや、貸してください!!すんげぇ読みてぇっす!!
あ、ゆっくり読みたいから三人のことは圭ちゃんに任せるから(w
- 313 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月12日(土)04時49分17秒
- 今日はレギュラー番組の収録日。
いつものように早めに現場に到着して楽屋に行く途中、学生服の衣装が数着用意されているのが目に付いた。
(なんでだろう? 確かコントは前に撮り溜めしたはずだけどなぁ)
不思議に思いながら楽屋に着くと、既に矢口他数人が来ていた。
普通に挨拶を交わして、いつものように一人の時間を過ごすため、お気に入りの奥の隅へ。
こうして人気の離れた場所で一人考え事や、人間観察をするのが結構好き。
でもそんなアタシの一日の楽しみを奪ったのは一つ年下の可愛いらしい大人……。
珍しく今日はお早いご到着だったようで、いつもよりテンションが高いみたい。
ニコニコしながらアタシの元へやって来た。
- 314 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月12日(土)04時51分04秒
- 「おっはー。ねえねえ今日のハロモニ即席ドラマ対決だって」
「即席ドラマ対決?」
「そう。二人組になって自分たちでショートドラマを作るんだって。台詞とか設定も自分たちで決めるみたい」
「あのさ、さっきここ来る前に学生服の衣装があったんだけど、それって……」
「そう、ドラマで使うんだよ。クジで男役とかも決めるんだってさ」
「ふぅ〜ん。で勝ったら何かあんの?」
「それがね、そのドラマをハロモニのコーナーの一つにするんだって」
「へぇ〜」
「……圭ちゃん、なんでそんなに普通なの?」
「そうかな?」
「そうだよ〜。もしなっちと一緒になったら優勝しようよ。それで一緒にドラマやろ〜よ」
「ん〜、考えとくよ」
アタシはあんまり乗り気にならなかったので素っ気無く対応してた。
まあ、なっちゃんが相手なら頑張ってもいいかな〜と思うけれども……クジ運良くないし、相手によっては
グダグタになる可能性もあるし、二人が男同士、女同士になることも有り得るしね。
そんなアタシにお構いなくなっちゃんは笑顔でこれから始まる創作ドラマの構想を熱く語っていた。
- 315 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月12日(土)04時51分58秒
- 収録時間になって、裕ちゃんのタイトルコールから皆のテンションが上がっていく。
大まかなルール説明を裕ちゃんがしている間、誰かの視線が向けられている気がした。
説明を聞くフリをしながらその視線の主を目で追うと、ちょうどアタシと対称的な位置にいたなっちゃんだった。
いつもなら隣にいるんだけれど、今日は反対側に居た。
(ん?なんかこの並び方……まさか)
アタシが気が付いたと同時に、説明し終わった裕ちゃんがクジを持ちながらアタシたちを見回した。
そして何かを思いついたように喋り出した。
「今から配役を決めようかと思たけど、その必要あらへんな」
「えーなんでぇ?」
「ちょうど上手い具合に男役の似合いそうなのがこっち側に揃ってるやん」
そう言うとアタシの居た側の人間がお互いを見やる。
裕ちゃんの隣からカオリ、アタシ、吉澤、小川、そして飛び入り参加のごっちん。
……確かにどこか男性的な部分をどこかに持ち合わせているメンバーだな〜と思う。
逆に反対側を見ると、なっちゃん、矢口、石川、高橋、紺野。
……文句なく女の子してるメンバーだ。
- 316 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月12日(土)04時52分46秒
- お互いがお互いを見て納得すると、いよいよ組み合わせの時が訪れた。
まずはアタシたち男役の方からクジを一斉に引いた。
アタシは四番だった。ちなみに一番が小川で、順にカオリ、ごっちん、アタシ、吉澤。
次いで女の子役の方のくじ引きになると、誰から引くかで五人がもめていた。
そんな中でもなっちゃんは相変わらずアタシに力強い視線を向けてた。
……ちょっとだけ背中に悪寒が走った。
結局下っ端からクジを引くと言う事で解決したらしい。
その間、アタシたちは誰が誰と組むのが良いかを予想していた。
吉澤は誰と組んでも問題なし。ごっちんも同じ。
小川はやはり同期の結束から高橋、紺野が有力。
カオリは同じユニットだったという事で矢口か石川。
んでアタシはというと、四人が同じ意見だったらしく声を揃えて「なっち」と言われてしまった。
どうやらメンバーはアタシとなっちゃんがベタベタしている印象が強いらしい。
アタシはそうは思わないんだけれども。
- 317 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月12日(土)04時54分37秒
- 数分後、神様が悪戯でもしたかの様な組み合わせになった。
カオリと矢口、ごっちんと石川、吉澤と高橋、小川と紺野、アタシはというと当然……
「やったぁ! なっちの願いが天に通じたのかも」
そう言ってホクホク顔をするなっちゃんがパートナーになった。
ここで一端収録を止め、それぞれ自作自演ドラマの打ち合わせに入った。
アタシは衣装さんから詰襟の学生服を渡され、なっちゃんは今では珍しいセーラー服を手渡された。
「いやぁ〜、なっちセーラー服一度着てみたかったんだぁ」
なっちゃんはよほど気に入ったのかセーラー服に頬ずりしてる。
なっちゃんならまだまだ学生でもいけるんじゃないかと思い、一人で勝手に妄想してみた。
(セーラー服を着て、くるぶしが見え隠れするくらい小さな靴下はいて、両手に鞄を持って微笑むなっちゃん。
背景には桜の花が満開でその花弁が一つ、なっちゃんの光沢を帯びた髪の毛に舞い落ちる。
その花弁を指で摘んでフッと空に吹き上げるなっちゃん……)
……ヤバイ、鼻血出そうになるかも。
- 318 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月12日(土)04時55分47秒
- 「圭ちゃん、早く着替えて設定決めようよ」
「ふぇ? あ、う、うん。そうだね、そうしよう……」
「???」
「アハ、アハハハハ……」
かなりマニアックな妄想に浸ってた。
己の想像力にかなり驚きながらも、疚しい雑念を振り払うようにして着替えに入る。
せっせと着替えたアタシは鏡を見て一人呟いてみた。
「思ったより悪くはない、な」
なっちゃんが着替え終わるのを待つ間、アタシなりに設定を決めてみる。
「今季節は春だから、春といえば卒業、別れ……。でもそうなると重たい感じになるなぁ」
「……い…ぁん」
「かと言って入学だと話題になることなんてほとんどないし……」
「圭ちゃん……圭ちゃんてば!」
「え? うわっ!」
「えへへ〜、お待たせっ」
- 319 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月12日(土)04時56分53秒
- 一人の世界に入っていたアタシの目の前には眩しいくらい輝いたセーラー服姿のなっちゃんがいた。
しかも「なっちのセーラー服姿どう?」なんて言いながらスカートの裾を両手でちょこっと持ち上げてる。
アタシはもう一瞬たりとも目がなっちゃんから離せなくなって、じっと見つめてた。
(可愛いなぁ〜、似合ってるなぁ〜、うわっ、回った! クルって回ったよ、回っちゃったよー!)
よほど興奮していたのか、アタシは知らず知らずのうちになっちゃんの肩に手をかけていた。
なっちゃんもなっちゃんでガクラン姿のアタシに釘付けになっていて、何故か頬を赤くしてた。
そして呟くように言った。
「圭ちゃんのガクラン姿……カッコイイ……好きになっちゃいそう」
アタシはその一言を耳にした途端、意識が完全に途絶えてしまった……。
- 320 名前:お返事 投稿日:2003年04月12日(土)05時04分48秒
- >ゆっちんさん
圭 「どうもご無沙汰してます。そして受験お疲れ様でした。
そうですね、アタシの理想像がようやくここで実を結んだって感じですかね。
また暇なとき顔だしてくださいね、アタシもそっちにお邪魔しますから」
>本庄さん
圭 「……ふう〜、中々面白いわね、この本」
なつみ「圭ちゃぁ〜ん、帰ってきたよ〜(ギュッ)」
圭 「あれ、早かったのね」
なつみ「えへへ〜、なんかねみっちゃんとか梨華ちゃんとかいてさ、
なっち居心地悪くなっちゃって、抜け出してきた」
圭 「ふぅ〜ん。また二人でガンバろーね」
なつみ「うん!(ニコッ)」
- 321 名前:ビギナー 投稿日:2003年04月12日(土)19時21分53秒
- セーラー服って・・・・
やぁ、もうそれだけでOKです。
学欄も、似合ってそうだし。
お似合いなバカップルじゃないですかー。
コントとかなしでも、イチャイチャしてそうで、微笑ましいかぎりです。
- 322 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月13日(日)01時38分22秒
………。
……。
…。
(ん〜、ここはどこだろう?)
あたしは薄目を開けると、視界は眩しかった。
意識がまだ朦朧としてるみたいなんだけど、なんか頬の辺りに違和感があって……。
なんて言うんだろう……まるで挽き肉を手で捏ねるようなそんな感じ。
時折吸い付かれるように引っ張られるし、なんだか重たい感じがする……。
そんな時だった。
「なっち、何寝込み襲っとるん」
「うわあーっ!!」
なっちゃんの雄叫びで目が一気に覚めた。
目の前には今だセーラー服姿のなっちゃんがアタシの上に乗っかってて、非常に重たい。
で、すぐ隣には呆れたような顔をした裕ちゃんがアタシとなっちゃんの顔を覗き込むように立ってる。
- 323 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月13日(日)01時41分19秒
- 「ななななにしてるべさ、裕ちゃん!?」
「アンタこそんな恰好のまま圭坊に何してたん?」
「なななにもして、してないべ、べさ。何も…なに…も」
「あのさなっちゃん」
「なななんだべ?」
「重い」
「へ? わっわっわっ! ごめん、ごめん」
なっちゃんは真っ赤になって素早くアタシから離れる。
アタシは起き上がって何がどうなってんだか判らなかったから、裕ちゃんに事情を聞いた。
アタシがぶっ倒れてしまったので、アタシとなっちゃん抜きでそのまま番組は進行。
各組とも中々の珍(?)演技で甲乙つけ難かった様で、結局裕ちゃんの真似をしたカオリと
素のままで演技した矢口の『やぐちゅ〜愛物語』が勝利を掻っ攫ったそうだ。
けれどもそっから先は何故か含み笑いをしたままで、教えてはくれなかった。
「ねえ、なんでニヤついてんのさ?」
「さあなぁ〜、裕ちゃんもよぉ判らへん。後はなっちに聞き」
そう言って手を振って部屋を出ていこうとする。
去り際になっちゃんの耳元で何かを囁いて、再度アタシにニヤけた後本当に出ていった。
- 324 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月13日(日)01時42分57秒
- アタシはいつまでも赤くなってるなっちゃんを問い詰めるべくなっちゃんを隣に座らせた。
「ねえ、なっちゃん。なんでそんなに赤くなってんの?」
「え、いや、その、な、なんでもないよ。うん、何でもない。き、気にしなくていいよ」
「え〜、教えてよぉ」
「ダメダメ。あの寝言はアタシだけの秘密」
「寝言!?」
「あっ……」
「なんか変な事言った、アタシ?」
「いや……言ってない…べ」
「なんで間が空くの? 気になるよぉ。教えて」
「ダメだべ。あの感触はなっちだけのもん、あっ……」
なっちゃんは面白いように自ら犯した過ちを暴露していく。
- 325 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月13日(日)01時44分42秒
- 「感触!? なっちゃん、一体何したのさ」
「何もしてないっ!」
「教えろ!」
「イ・ヤ・だ。教えないっ」
「ホラ、何かしたんだ」
「あっ……」
「言いなさい」
「い、言えないべさ」
「このぉ、白状しろぉ〜」
「わ〜っ!」
アタシは急に抱きついて、なっちゃんをこの腕の中に捕らえた。
けれども勢い余って二人とも床に転がってしまった。
その拍子に唇と唇が引かれ合うように重なっちゃった。
なっちゃんと「キス」しちゃったよ。嬉しいような恥かしいような……。
♪♪〜初めてのチュウ〜♪♪〜
その時何故かこの詩のフレーズが頭に流れた。
- 326 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月13日(日)01時47分26秒
- 「……」
「キス……しちゃったね」
「……」
「なっちとのキスの味はどんな味?」
「……バカっ」
「えへへっ」
しばらく床に転がったまま抱き合っていた。
セーラー服姿のなっちゃんの体温がいつもよりはっきりと伝わってくる。
……ちょっと気持ちよかった。
ふとなっちゃんが顔を起こして微笑む。
「なに?」
「ごちそうさまでした」
「へ?」
「圭ちゃんのほっぺも美味しかったよ」
ほっぺが美味しい?
あたしは数秒考えてやっとさっきの奇妙な感触の事を思い出した。
つまりあの時、アタシが感じた感触は……
アタシは本日二度目の眩暈を起こして、その場で意識をなくしてしまった。
- 327 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月13日(日)01時49分16秒
〜Fin〜
- 328 名前:お返事 投稿日:2003年04月13日(日)01時53分57秒
- >ビギナーさん
圭 「なんか最近アタシ等ってばカップルみたいだってさ」
なつみ「えーいいじゃん。もっとイチャイチャしよーよ」
圭 「それに最近なっちゃん、コスプレ多いよね」
なつみ「あれから増えたんだよ、今度はプーさん貰っちゃった」
圭 「え゛っ……ま、まさか」
なつみ「またコスプレしよーね」
- 329 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)03時47分59秒
- まだ西の空が紅く燃えていた頃、珍しくレギュラー番組の収録が早めに終わった。
誰もがこれといった予定を入れていなかった事と、季節柄お花見シーズンだった事も重なり、
時間の空いている者を集めて『お花見』をすることになった。
早速裕ちゃんの指示の元、カオリ、よっすぃー、辻、高橋、紺野を買い出し係に。
裕ちゃん、なっちゃん、石川、小川を連絡係、そして残ったアタシ、矢口、加護、新垣は場所取り係になった。
早速アタシたちはこの辺りで結構名の知れたお花見ポイントの公園まで行き、空いてる場所を探した。
所々に運悪く場所取りに命ぜられたサラリーマンが淋しそうに各々時間を潰していた。
園内を歩く事10分ほどでちょうどいい広さのスペースを見つけて確保し、残りのメンバーを待っていた。
しばらく笑談後、みっちゃんにごっちん、メロン記念日に、アヤカとミカちゃんが手荷物を持って登場。
そして買い出し班が戻って来た頃には既に宴は始めちゃってて、カオリが「納得いかない」と言って
仁王立ちのままビール二本を一気に煽ったのには驚いた。
- 330 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)03時50分03秒
- 周りにいた団体さんたちは最初アタシたちの存在に驚いていたけれど、時が経つにつれ
何事もなかったかのよう一緒になって盛り上がってしまった。
特に裕ちゃんやカオリ、辻、加護、紺野は隣りの団体さんの席に乱入し、色々とおもてなしを受けてた。
というよりも勝手に色々と漁っていたといった方が正しいかもしれない。
辻たちは食べ物を、カオリとマネージャーはお酒を、裕ちゃんは勿論○○○を……。
辺りが夕闇に包まれ始めると、外套に明かりが灯され、桜の照明が出来ていた。
こういう風情を楽しむのもまたいいもんだな〜と思っていた矢先、誰かがアタシの背中に抱き付いてきた。
口にしていた桜餅を喉に詰まらせそうなりながらも後ろを振り返ると、石川が顔を真っ赤にして絡んできた。
「やすらしゃぁ〜ん。たろしんれみゃしゅきゃぁ〜? アハハハハ」
「何で酔っ払ってんのよ!? 誰だ、こいつに飲ませたの」
「ごみ〜ん。わらしぐぁ……のみゃせしゃったぁ〜、アハハハハ」
- 331 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)03時51分57秒
- 下の方から声がしたので見ると、石川の腰の辺りにへばりつくように酔ったよっすぃーと、
そのよっすぃーの背中におぶさる恰好で「よっちぃー、しゅき」とうわ言を呟く真っ赤な矢口がいた。
「けーちゃぁ〜ん♪♪」
「うわっ!!」「きゃぁ〜♪♪」
突然、横からごっちんが渾身の勢いでアタシと石川に抱き付いてきた。
アタシは石川を盾にするようにしてギリギリかわすと、ごっちんは石川と共にぶっ倒れてしまい、
起きあがる力もないようでヘラヘラと笑っていた。
それを見ていた石川も笑い出し、二人で勝手に大爆笑していた。
アタシはそんなバカ二人を放っておいて、辺りを見回した。
- 332 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)03時52分53秒
- まずアタシの膝元ではごっちんと石川が未だに大爆笑中。
その石川にへばりつくようによっすぃーがいて、そのよっすぃーにおぶさる矢口。
次いでアタシの右隣では、酔ったみっちゃんがミカちゃんと高橋に自分の身の上話を聞かせてる。
聞かされている二人は既に目が半分も開いてなくて、ほとんど寝ていただろう。
その隣では、小川とメロンの斎藤さんが仲良くオネンネ。
左側に目を向ければ、桜の木に向かってなっちゃんがケタケタ笑いながら喋っていて、
なっちゃんの隣りに座っていた大谷君は逆に泣きながら桜の木に謝って(?)いた。
そしてそんな二人にアヤカが呂律の回らない状態で突っ込んでた。
アタシの後ろでは、柴ちゃんが新垣掴まえてヘッドロックをかましてた。
それを村田さんと紺野がプロレスの中継みたく解説していたけど、意味は全く不明。
そしてすっかりいき統合したお隣さんがいつの間にか観客にまわり、場を盛り上げていた。
更に隣りのシートでは、加護と辻が物真似バトルを繰り広げていて、
カオリと裕ちゃんが二十代のサラリーマン相手にお酌しながら笑談していた。
……こいつ等ホントはおっさんなんじゃないかと思うほど、狂喜乱舞していた。
- 333 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)03時54分27秒
- アタシは静かにその場から離れ、隅の方で淋しそうに花を咲かせていた一本の桜の木に近づいてった。
ちょうど桜の木がよく見える位置にベンチがあったので、そこに腰掛けた。
しばらく外套に照らされた夜桜を楽しんでいた。
時折吹く微風に桜の花弁がチラホラと舞い落ちていく。
その様子はとても儚げに見えたけれども、物凄く綺麗だった。
どのくらいそうしていただろうか、アタシの隣りで白髪のお爺さんが夜桜を眺めていた。
お爺さんは何も言わずに優しそうな目で群れから外れた1本の桜の木を見つめ続けている。
見た所、普通の恰好をしているが、少々肩の辺りが疲れ切っているように見えた。
アタシの視線に気付いたのか、おもむろにお爺さんが口を開いた。
- 334 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)03時55分45秒
- 「お若い方、桜は好きかい?」
「そうですね。見ていて飽きないというか……」
「それはけっこうなことですなぁ」
「なんていうんだろう……生命の息吹を感じるというか。う〜ん、よくは判らないですけども」
「フォッフォッフォッ。生命の息吹を感じるとは、中々風流な言い回しじゃのう」
「とんでもないですよ。アタシみたいな者が風流だなんて」
「イヤイヤ、そんなお若い方には桜の花言葉である『優美』がよく似合う」
「そうですかね? どうもありがとうございます」
アタシは見ず知らずのお爺さんと普通に会話を交わしたけれども、不思議と嫌な気分ではなかった。
むしろ人見知りの激しいアタシの方がいつしか饒舌になっていた。
次々と色々な言葉が浮かんでは声にのって飛び出していく。
- 335 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)03時57分23秒
- そんな多弁なアタシに付き合うようにお爺さんは色々と教えてくれた。
「ソメイヨシノ」という名の桜は元々紅い花を咲かせる桜と、白い花を咲かせる桜の二種類から生まれたとか、
桜の木の下には死体が埋まっていて、そこから栄養分を摂取しながら生きているのだとか
(ちょっと迷信のような気がした)、お花見の習慣は江戸時代に、時の将軍吉宗によって推奨されたとか。
まるで雑学博士のように、事細かに桜のイロハを語って聞かせてくれたお爺さん。
時折お爺さん自身の見解なども混じっていて、聞き手のアタシを飽きさせない上手な講義だった。
ひとしきり講義が終わった所で、率直に感想を言ってみた。
「桜のイロハを聞いたら、今までとは違った桜の見方ができるようになったような気がします」
「そうかい? そう思ってもらえると話したこちらとしては本望じゃよ」
そう言って視線を桜の木へと移し、お爺さんは立ち上がって桜の木の方へと歩み寄っていった。
しばらくお爺さんは立ったままじっと頭上に咲いている桜の花を見上げている。
そしてようやくベンチの方へ戻ってきたお爺さんの両手には、どこから持ってきたのか、紙コップが収まっていた。
- 336 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)03時58分39秒
- 「風流にはちと見えんが、我慢しとくれ」
そう言って片方の紙コップをアタシに差し出した。
礼を言ってそれを受け取ると、コップの中で一枚の桜の花弁が揺れ浮かんでいた。
この時日本人に生まれてきて良かったな〜と心底思った。
「いいなぁ〜。こういうのを風雅って言うんですよね」
「ホッホッホッ。風雅とはお若い方は難しい言葉を知っとるのう」
「そんなことないですよ。単なる知識の受け売りですから」
「ならば、ワシもそれに肖って一つ詠ませてもらおうかのう」
「俳句ですか?」
「イヤイヤ、和歌じゃよ。桜にちなんだ和歌がええのう」
そう言って一つ咳払いをした後、じっと桜を見つめながら一句披露してくれた。
“ 花もちり 人も都へ 帰りなば 山さみしくや ならむとすらむ ”
初めて聞いたけれど、なんとなくもの哀しい印象を受けた。
- 337 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)04時00分06秒
- 「この歌は平安時代に西行という歌人が諸国を放浪中に詠んだ歌でのう。
桜の花が散って、花見に訪れた人々が都へ帰ってしまったら、私はまた一人になってしまい
寂しい思いをするのだろうか、という気持ちが篭った歌なんじゃよ」
「寂しかったんですね、その人。でも、なんでこの歌を?」
「……なんでじゃろうなぁ。ワシには目の前に咲き乱れる桜がそういう風に見えたからかのう。
それともこの桜の木だけ群れから外れ、一人寂しく咲いていたからかのう……」
そう言ったお爺さんはどこかもの悲しそうに桜の木を見つめていた。
アタシは気の効いた事など言えるほど雄弁ではなかったから、思ったことをありのままに伝えてみた。
「……大丈夫ですよ、きっと」
「ん?」
「人が一人では生きていけないのと同じように、植物も自分だけではすぐに枯れてしまいます。
人と人とが支え合って生きているように、この大きな桜の木も太陽や空気といった自然物に支えられて
今こうして花を咲かせてるんです。だから寂しくはないですよ」
「……」
- 338 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)04時02分44秒
- 「それに、今この桜の目の前にアタシたちがいるじゃないですか。アタシたちがこうして桜を見ている事が
桜には一番幸せなんじゃないかなって思います」
「支え合って生きている、か……なるほど。確かにその通りかもしれんのう」
「カッコよく言ってしまえば、お花見って桜と会話をする事なんじゃないかな。
少なくともアタシは今、そうしてるつもりですけれども……」
俯いていた視線を桜の方へと向けた。
アタシの想いが届いたのか、風が吹いて桜の枝がまるで返事をするように音をたてて揺れ動いた。
アタシが喋った内容はかなり論点がずれていたけれども、お爺さんにはアタシの言いたかった事が
十分伝わったみたいで、満足そうに微笑んでくれた。
- 339 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)04時04分15秒
- 「こりゃ一本取られたのう。年寄りがお若い方に諭されるとは、まだまだワシも未熟じゃな、ホッホッホッ」
「あっ、こちらこそ生意気な事言っちゃって……」
「気にする事はない。お若い方の言う通りじゃて。いい事を教えてもらいましたわい。
花見とは桜との会話である、とは蓋し名言じゃ」
「なんか照れますね、そう言われると」
「やはりワシが申した通り、お若い方には桜の花言葉がよお似合う。ありがとう」
お爺さんが「ありがとう」と言ったその時、突然目の前で地面に降り積もっていた桜の花弁が
一斉に舞い上がり、辺り一面が花吹雪に見まわれた。
アタシは身体を引いて、右手で目を覆った。
……。
…。
- 340 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)04時05分29秒
- ゆっくりと視界を開くと、何事もなかったかのように辺りは静まり返っていた。
アタシはすぐさま隣りを見たが、そこにはお爺さんの姿は無く、ただ紙コップが一つ置かれていて、
その中で薄紅の花弁が一枚、気持ち良さそうに泳いでいた。
「……」
しばらくその花弁を覗いていた。
さっきまでのは一体なんだったんだろうか?
夢かそれとも幻か、と一瞬思ったけれども、明らかにそれらは目の前の紙コップによって否定された。
いや、紙コップまで消えていたとしても、アタシは夢だとは思わないだろう。
何故なら、隣りにいたお爺さんに対して不思議と違和感を感じなかったから……。
- 341 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)04時07分17秒
- 「け〜いちゃん!」
「ん、あれっ? どうしたの?」
「圭ちゃんがいなくなっちゃってたから捜しにきた」
「みんなは?」
「完全に酔い潰れてる」
「そう言うなっちゃんこそ、酔って桜の木に話しかけてたじゃない」
「え〜、見てたの〜? 見ないでよぉ〜、エッチィ」
「エッチって……」
「あれ、誰かいたの?」
「えっ、あっ、うん、まあね」
「え〜、誰ダレぇ〜?」
「……桜さん…だよ」
「???」
なっちゃんは不思議そうな顔で横に腰掛けた。
まだほんのり赤みがかった顔を夜風に当てて冷ましているようだ。
- 342 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)04時09分01秒
- 「あれぇ〜、この桜さ、すごく花弁紅いねぇ」
「ん? そうかな?」
「それにさ、なんかこの桜だけ満開で、花弁が全く散ってないじゃん」
なっちゃんの言う通り、確かに先程よりも花全体が赤みを帯びて明るくなったような気がするし、
なによりも地面に花弁が一枚たりとも散り落ちていなかった。
視線をあげると、どことなく桜の木自体が若返ったように生き生きとしていた。
(生き生きしている? まさか……!!)
アタシはお爺さんの言葉を思い出していた。
『そう思ってもらえると話したこちらとしては本望じゃよ』
『ワシには目の前に咲き乱れる桜がそういう風に見えたからかのう。
それともこの桜の木だけ群れから外れ、一人寂しく咲いていたからかのう……』
『支え合って生きている、か……なるほど。確かにその通りかもしれんのう』
『いい事を教えてもらいましたわい。花見とは桜との会話である、とは蓋し名言じゃ』
『やはりワシが申した通り、お若い方には桜の花言葉がよお似合う。ありがとう』
- 343 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)04時10分44秒
アタシは全てを悟った。
目で桜を見つめ、口で桜に喋りかけ、耳で桜の声を聞き、鼻で桜の匂いを感じ、そして全身で桜の持つ雰囲気を感じていた。
五感(触覚は多少意味合いが異なるけれども)を通じてアタシは桜と会話をしていたんだと。
そして、たった今、第六感で全てを感じ取る事が出来た。
あのおじいさんの本当の正体が何だったのかを……。
アタシはベンチから立ち上がって、目の前の桜に歩み寄り、木の幹にそっと手を添えた。
そして心の声ではっきりと呼びかけてみた。
“今、ちゃんと会話できてますよね、おじいさん”
- 344 名前:花雲 〜花守の心を抱きしめて〜 投稿日:2003年04月16日(水)04時16分13秒
〜FIN〜
- 345 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月16日(水)04時20分15秒
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- 346 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月16日(水)04時21分16秒
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- 347 名前:本庄 投稿日:2003年04月20日(日)14時33分00秒
- なっち…先一人で戻るなんてずるいのれす!!
そんなことするとみっちゃん、梨華ちゃん引き連れて突入しますよ(w
そういや圭ちゃん不思議な体験したのね。
マジで意外とそういう経験してそう…と思ったことは内緒です…。
- 348 名前:お返事 投稿日:2003年04月23日(水)20時43分25秒
- >本庄さん
圭 「いやぁ〜、本庄さんの言う通り。不思議体験は結構してるんですよね」
なつみ「え〜、どんなの?」
圭 「夜中に誰かがアタシに抱き付いてキスしてきたりとかですね、
知らない間にアタシの家の本棚に誰かさんのエッセイが置いてあったりとか……」
なつみ「……」
圭 「不思議ですよね〜(ジィー)」
なつみ「……ほ、本庄さぁ〜ん、またお世話になります〜(逃)」
- 349 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月27日(日)04時31分11秒
- 今日はレギュラー番組の収録日。
いつもは遅刻常習犯なんだけど、今日は何でか早めに現場に到着できた。
なんかいいコトありそうな予感。
楽屋に行く途中、学生服の衣装を用意しているスタッフさんの姿が目に付いた。
なんだろ? 確かコントは前に撮り溜めしたような……
不思議に思いながら楽屋に着くと、既に矢口他数人が来てた。
なっちが早く来た事にみんな驚いてたけど、あんまり気にしないで他のメンバーの到着を待ってた。
というよりなっちはあの人を待ってた。一つ年上のとぼけた大人を……。
早く来ないかな〜、今日は遅いのかな〜と思ってた矢先に入ってきた愛しの圭ちゃん。
やや冴えない表情でちょっとお疲れみたい。
よしっ、ここはなっちの元気を分けてあげよう、そう思って近づいてった。
- 350 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月27日(日)04時34分23秒
- ……。
圭ちゃんはあんまりお気に召さなかったみたいで、素っ気無く対応してた。
そんなになっちと一緒に演技するのが嫌なのかな〜って思ったけれども、
意外と圭ちゃんてば役になりきるとそのまま入ってっちゃうんだよね。
二回競演して見て判った事――それは圭ちゃんも役者の資質があるって事。
だからなっちは圭ちゃんの役者気質を考慮しながら、スタッフさんの声がかかるまで
ずっと自作自演ドラマのストーリーを考えてた。
勿論内容は……愛情溢れるラブストーリーだけどね。
収録時間になって、裕ちゃんのタイトルコールから皆のテンションが上がっていく。
大まかなルール説明を裕ちゃんがしている間、なっちはさりげなく圭ちゃんに視線を送っておいた。
絶対になっちと組んで優勝しよーねって。
- 351 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月27日(日)04時35分52秒
- 一通りの説明が終わっていよいよ組み合わせの時が訪れた。
まずは圭ちゃんたち男役の方からクジを一斉に引いた。圭ちゃんは四番。
次いでなっちたちがくじを引く時になると、誰から引くかで五人がもめた。
どうやら矢口たちも自分が誰とペアになりたいかを必死に願ってたみたい。
なっちの予想としては……矢口と高橋はたぶんよっすぃ〜で、紺野は正直ちょっとわかんない。
でも一番気になったのが梨華ちゃんで、視線を送るその先がなっちと同じだったから。
むむむっ、強敵発見。
なっちも負けじと圭ちゃんに熱いラブコールを送った。
なんか圭ちゃん、ちょっとだけ顔が青ざめてたような気がする。
……なんで?
結局下っ端からクジを引くと言う事になった。
ってことはなっち、余りものじゃん! なんでよ!
ちょっと不満に思ったけど、ここは一応冷静を装った。
だってもう大人になったなっちが駄々こねてちゃ、下の者に示しがつかないもんね。
圭ちゃんも駄々こねるなっち見たら呆れると思うしさ。
- 352 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月27日(日)04時38分39秒
- そして訪れた運命の瞬間。
……神様はなっちに微笑んでくれた。
嬉しくって思わず声に出しちゃったせいで、隣りに並んだ梨華ちゃんが恨めしそうな目をしながらなっちに言った。
「安倍さんイイなぁ〜、交替しましょうよぉ〜」
「え〜、それは無理だって。って言うか梨華ちゃんはごっちんとじゃ嫌なのかい?」
「えー、そうなのぉ〜。梨華ちゃん、ごとーの事嫌いなの〜?」
「えっ、ち、ちがうよ! そうじゃないけどさ……」
「じゃあ、なんでぇ?」
「そのぉ…ごっちんはさ、ドラマとかやってたじゃない。だから私じゃ釣り合わないかな〜って思ってぇ……」
梨華ちゃんが苦し紛れに言い訳を言う。
そんな梨華ちゃんを心配したのか、横から師匠がとんでもない事を一言。
「ああ〜そうだよね〜。石川の気持ち、わかるよ。なっちゃんさ、代わってあげたら?」
ええ〜っ!! 何でこの後に及んでそんなコト言うのさ〜!
せっかくなっちは実を削るような思いをして圭ちゃんを引き当てた(実際はそんなコトしてないけど)のにぃ。
梨華ちゃんのネガティブが移ったようになっちも肩を落としてネガティブモードに突入。
- 353 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月27日(日)04時41分40秒
- でもなっちには神様がまだ味方してくれてたみたい。
神様こと、ごっちんが顔をニヤつかせながら圭ちゃんに物申してた。
「けーちゃん、なっちのこと嫌いなのぉ?」
「え゛っ……」
「そんなことないよね〜、最近よく二人で一緒にいるもんね〜」
「???」
「ちょ、な、何言って……」
「それにさ、さっき予想した時さ……」
「!!!」
「圭ちゃんのお相手は…フガフガッ」
「あー! もお、わかった、わかったからそれ以上言うなー」
予想? なんのだろ?
真っ赤になってごっちんの口を塞ぐ圭ちゃんと、それを面白そうにかわしてニヤついてるごっちん。
ごっちんの言いたいことが気になったけど、まあいっか。
ごっちんの助けがあってなんとか元のさやに収まることが出来たしね。
梨華ちゃんには悪いけど、圭ちゃんは譲れないよ。
- 354 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月27日(日)04時42分55秒
- ここで一端収録を止めて、それぞれ自作自演ドラマの打ち合わせに入った。
圭ちゃんは衣装さんから詰襟の学生服を渡され、なっちは今では珍しいセーラー服を手渡された。
「いやぁ〜、なっちセーラー服一度着てみたかったんだぁ」
なっちは学生の頃に憧れてたセーラー服を手に頬ずりしちゃった。
一回でいいからこれ着て、放課後デートとかしてみたいな〜。
な〜んて儚い妄想してたら、横で圭ちゃんがなっちのほう見て固まってた。
どっか意識が飛んじゃってるみたい。
「圭ちゃん、早く着替えて設定決めようよ」
「ふぇ? あ、う、うん。そうだね、そうしよう……」
「???」
「アハ、アハハハハ……」
なんかよくわかんないけど、とりあえず着替えてみよっと。
- 355 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月27日(日)04時45分42秒
- ……思ったよりスースーするんだね、セーラー服って。
着替え終わって、鏡を覗いてみたけど、まだまだ高校生でも十分過ぎるほどハマってた。
……ちょっと哀しかった。
圭ちゃんがいるところに駆け寄ってくと、念仏を唱えるように圭ちゃんがドラマの設定を考えてた。
ほら、やっぱりね。なっちの予想通り、圭ちゃんは役に入りきっちゃってた。
「今季節は春だから、春といえば卒業、別れ……。でもそうなると重たい感じになるなぁ」
「……い…ぁん」
「かと言って入学だと話題になることなんてほとんどないし……」
「圭ちゃん……圭ちゃんてば!」
「え? うわっ!」
「えへへ〜、お待たせっ」
ニッコリ微笑んで圭ちゃんの前に立って、スカートの裾を両手でちょこっと持ち上げて聞いてみた。
「なっちのセーラー服姿どう?」
圭ちゃんてば口をあんぐり開いたまま、でも一瞬たりとも目が離せないって感じで、じっと見つめる。
な、なんか照れちゃうなぁ〜。
ちょっと恥かしくなって後ろ向いて顔に手を当ててみると、顔に熱を感じた。
- 356 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月27日(日)04時46分58秒
- すると後ろから肩に手を添える感触があった。
振り返って見たら、圭ちゃんちょっと男性っぽくメイクしたのか、凛々しくなってた。
その顔見たら一気に身体中に熱を感じて、ガクラン姿の圭ちゃんに釘付けになってた。
そして何の躊躇いもなく呟いちゃった。
「圭ちゃんのガクラン姿……カッコイイ……好き」
はっ! ヤ、ヤダッ、なっち、何言ってんだろ?
ヤダヤダ、どうしよ、顔が熱くなってく。
なんでなんで? こんな時になんで告白してんだろ?
もっとちゃんとした時に言おうと思ったのにぃ〜。
それもこれも全部圭ちゃんがいけないんじゃん。
もお、圭ちゃんてば恥かしいこと言わせないでよ〜、って圭ちゃん?
けぇちゃぁ〜ん!?
いつの間にか圭ちゃんがなっちの足元に倒れてた。
しかも鼻から綺麗な紅い液体を滴らせながら……。
- 357 名前:本庄 投稿日:2003年04月28日(月)19時04分59秒
- ありゃ?なっち??
どしたのさね。今から圭ちゃんとこに向かうとこよ?
そんなすごい勢いで戻ってきたらまたみっちゃんが勘違いするよ?
なっち視点もたのしいっすねぇ。
つうかこの間のハロモニのコントってもしかして…(w
- 358 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月30日(水)02時15分11秒
- ………。
……。
…。
圭ちゃんが倒れちゃったお陰で、なっちは急遽審査員にまわされる事になった。
しかもセーラー服を着たままだったから、ちょっと恥かしかった。
これ絶対、裕ちゃんの仕業だと思う。
みんなは結構色々な趣向を凝らして(?)いい演技してた。
なっち的には以前コントでカップルの役をやっていたごっちんと梨華ちゃんが、
あのままの設定で「卒業」をテーマにしたドラマが一番良かったと思う。
なんだかんだ言って梨華ちゃん、ちゃんとできてるじゃない。
二人とも感情剥き出しで見ているメンバーとかも所々で驚いたり笑ったり、ちょっと泣いちゃったりしてたし。
けれども裕ちゃんの一声で矢口たちに軍配が上がった。
なんだよ〜、なっちが審査員じゃなくてもよかったんじゃん。
- 359 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月30日(水)02時17分39秒
- 結局圭ちゃんが回復しないまま、今日の収録が終わった。
なっちは着替えもせずに圭ちゃんがいる部屋に向かった。
ドアを開けると圭ちゃんは横になったままで、鼻血は止まってた。
椅子を持ってきてちょこんと圭ちゃんの傍に腰掛けた。
なんか幸せそうに寝ている圭ちゃん見てたら、無性に愚痴りたくなって愚痴った。
「もお、圭ちゃんがあんなトコで鼻血出すからいけないんだよ」
「……」
「せっかくなっちが考えたシナリオが台無しじゃん。結構泣けるのにぃ」
「……ン……ンン〜」
「なに?」
「ン〜、す……」
「???」
「……きぃ……」
「す、き?」
「ん〜、へへっ……」
寝言を言いながら笑った圭ちゃん。
誰のどんな夢見てんだろ?
なっちだったらいいな、な〜んて勝手に思っちゃったりして。
- 360 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月30日(水)02時20分45秒
- しばらくじっと圭ちゃんの寝顔眺めて見る。
こう言うと失礼だけど、裕ちゃんのハグとかチュウを一切受けなかった圭ちゃんの肌は結構綺麗だった。
こういうのを穢れを知らないっていうのかな?
あっ、別に裕ちゃんのチュウとか受けたら汚れるって言ってるわけじゃないよ!
一応フォローしつつ、手で圭ちゃんの頬を触ってみた。
“プニプニ”
えへへ。気持ちイイ〜。
気持ち良かったから、なっちは誰も見ていないことを気に、前からやりたかった事をさせてもらうことにした。
圭ちゃんの身体に乗っかって、圭ちゃんの頬に両手を挟むと、グミみたいに手の平に弾力が伝わってくる。
「いいなぁ〜この揉み心地。スベスベのモチモチぃ〜」
今度は、なっちの頬をそのまま圭ちゃんの頬にくっ付けて頬ずり。
圭ちゃんの体温がそのままなっちの頬に伝わってくる。
「いい感じ、いい感じぃ〜」
今度はちょっと大胆に、圭ちゃんのほっぺに……。
- 361 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月30日(水)02時23分24秒
“カポッ”
……吸い付いちゃった。
吸い付いたまま引っ張ってもちゃんと戻るし(当り前か)、もお〜圭ちゃんサイコーだよ。
なっちは今十分過ぎるほど幸せ感じちゃってます。
梨華ちゃんじゃないけど「ハッピィ〜♪♪」て叫びたい。
“チュ〜”
へへっ、ちょっと吸いすぎちゃったかなぁ。
神様、もうしばらくこのまま圭ちゃんに吸い付いちゃっていいですよね?
圭ちゃ〜ん……愛してるよ〜
- 362 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月30日(水)02時25分16秒
「なっち、何寝込み襲っとるん」
「うわあーっ!!」
そんななっちのお願いも虚しく至福の時はすぐに終わっちゃった。
横から掛かった関西弁に思わず情けない雄叫び声あげちゃったよ。
その反動で圭ちゃんがハッとしたように目を覚ました。
いつの間にか呆れたような顔をした裕ちゃんがなっちと圭ちゃんの顔を覗き込むように立ってる。
「ななななにしてるべさ、裕ちゃん!?」
「アンタこそ、そんな恰好のまま圭坊に何してたん?」
「なななにもして、してないべ、べさ。何も…なに…も」
「あのさなっちゃん」
「なななんだべ?」
「重い」
「へ? わっわっわっ! ごめん、ごめん」
- 363 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月30日(水)02時27分22秒
- なっちは慌てて圭ちゃんから離れた。
裕ちゃんがいたってことは完璧に見られたよね?
そう思って圭ちゃんを見たら……ほっぺになっちが吸い付いた跡がくっきり残ってた。
あちゃぁ〜、やっちゃったよ。
なっちは根が単純だから、後のこととか全く考えてなかった。
そりゃあれだけ長い時間、吸い付いてたら跡ぐらい付くよね。
裕ちゃんはそんな圭ちゃんの顔に笑いを堪えながらも事情を説明してる。
「ねえ、なんでニヤついてんのさ?」
「さあなぁ〜、裕ちゃんもよぉ判らへん。後はなっちに聞き」
そう言って手を振って部屋を出ていこうとする裕ちゃんがなっちの耳元で何かを囁いた。
「圭坊のほっぺはどんな味やった? 食べ放題もほどほどにしときや」
そう言って再度、圭ちゃんにニヤけた後、本当に出ていった。
- 364 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月30日(水)02時31分04秒
- 裕ちゃんの一言に固まったままで居たら、圭ちゃんに隣に座るように言われた。
近くで圭ちゃんを見ると、ほっぺの辺りにはなっちの吸引力でできた痕が堂々としてた。
「ねえ、なっちゃん。なんでそんなに赤くなってんの?」
「え、いや、その、な、なんでもないよ。うん、何でもない。き、気にしなくていいよ」
「目、合わせてくれないしさ。何隠してるの?」
(わっわっわっ、そんな不思議そうな目で見ないでよぉ〜。でもその目、すごく可愛い……)
「ねぇ〜、教えてよぉ」
「ダメダメ。あの寝言はなっちだけの秘密」
「寝言!?」
「あっ……」
「なんか変な事言った、アタシ?」
「いや……言ってないっしょ?」
「なんで間が空くの? なんでアタシに聞くの?」
「いや、あの、その……」
「気になるよぉ。教えて」
「ダ、ダメだべ。あの感触はなっちだけのもん、あっ……」
「感触!?」
- 365 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月30日(水)02時32分11秒
- なっちは自ら犯した過ちを自分から暴露してた。
やっぱり根が単純な人って、こういう時損なんだよね。
な〜んて考えてたら、圭ちゃんの怒った顔が目の前に……。
「なっちゃん、一体何したのさ?」
「な、何もしてないっ! ……と思…う」
「…教えろ!」
「イ・ヤ・だ。教えないっ」
「ホラ、何かしたんだ」
「あっ……」
また引っかかっちゃったよ。トホホ……
段々と圭ちゃんとの距離が近づいてって……なんか嬉しいかも。
ってそんな喜んでる場合じゃなかったよ。
「言いなさい」
「い、言えないべさ」
「このぉ、白状しろぉ〜」
「わ〜っ!」
- 366 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月30日(水)02時35分42秒
- 圭ちゃんが急に抱きついて、なっちはいとも簡単に捕獲された。
けれども勢い余って二人とも床に転がって、その拍子に唇と唇が引かれ合うように重なっちゃった。
圭ちゃんとのチュウ……嬉しいなぁ……。
こういうのを棚から牡丹餅って言うんだっけ?
まあいいや、圭ちゃんとチュウできたしね。
「……」
「キス……しちゃったね」
「……」
「なっちとのキスの味はどんな味?」
「なっ!!! 何言ってんの……よ…」
「答えてよ〜、言わないとまたしちゃうぞ〜」
「……からかってるでしょ?」
「圭ちゃん、可愛いっ」
「……バカっ」
「えへへっ」
- 367 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年04月30日(水)02時38分06秒
- しばらく床に転がったまま抱き合っていた。
いいなぁ、この雰囲気、この距離、この抱きゴゴチ。
もう完全に浮かれ気分になっていて、さっき仕出かした過ちなんかどうでもよくなっちゃって勢いで喋っちゃった。
「ごちそうさまでした」
「へ?」
「圭ちゃんのほっぺも美味しかったよ」
「……」
そんなにショックだったのかなぁ?
なっちの台詞に圭ちゃんてば、また倒れちゃった。
でも、今度はなっちが夢に出てくれると嬉しいな〜♪♪
〜Fin〜
- 368 名前:お返事 投稿日:2003年04月30日(水)02時46分11秒
- >本庄さん
圭 「また一人になっちゃった。いいや読書の続きでもしよう。
えっと、今度は『暗闇の〜』方でも読もっかな」
圭 織「圭ちゃん、遊びに来たよ」
圭 「あれ、なんでカオリが?」
圭 織「だって向こう終わっちゃって暇なんだもん。マッタリしよーよ」
圭 「ま、いっか。たまには」
圭 織「やったぁ〜♪♪」
- 369 名前:本庄 投稿日:2003年05月01日(木)18時33分18秒
- あ、いいらさんら〜♪(なぜかのの口調)
つうか圭ちゃん、この間も言ったけどあなたの読んでる本貸してよ〜。
おいらも読みたいのれす!!
- 370 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年05月05日(月)02時17分16秒
(これは当日番組に遊びに来ていたH家Mちよさんから証言を得て再現したものです)
Mちよさんはその日、収録後に中澤さんに誘われて(呼び出されて?)楽屋へ向かう途中だったそうだ。
すると、とあるドアの前で大勢のギャラリーが何かを覗いていたという。
Mちよが近づいてた時、全員は部屋の中で起こっている事の顛末を見守っていたとのこと。
それぞれがそれぞれの見方でもって……。
- 371 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年05月05日(月)02時20分17秒
裕子「あ、なっち! あかん、そんなコトしたら……」
真里「ちょっと裕ちゃん、黙っててよ、いいトコなんだから」
裕子「ああ〜、うちのなっちがぁ〜」
真里「ちょっと、聞き捨てならないぞ、その台詞!」
裕子「ん? おっ! おおーっ!! ぬおおおーっ!!!」
真里「裕ちゃんっ! 叫び過ぎだよ! バレちゃうじゃんか!」
裕子「……もお我慢できん、矢口、チュウさせぇ!」
真里「何言ってんだよ、ちょっと、裕、ングッ……」
圭織「圭ちゃんが襲われてる……羨ましいなぁ〜」
あさ美(えっ! 飯田さん、今なんと!?)
圭織「カオリもあんなキスされてみたいな〜」
あさ美(なるほど、ロマンティストな面も有り、っと)
圭織「いいなぁ〜、カオリも好きな人とあんな風にいちゃいちゃできるかなぁ〜」
あさ美(悩める乙女心も持っている、っと)
圭織「あ〜あ、カオリにはいつ王子様が来るのかしら」
あさ美(妄想指数98パーセント、っと)
- 372 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年05月05日(月)02時23分52秒
梨華「ああっ! 保田さんがあん…キャッ!!」
真希「そこだなっち、そこでけーちゃんにブチュ〜ッと!」
ひとみ「ああー、もお、安倍さんもっと強引に行かないと!」
梨華「痛い、痛いよぉ〜、よっすぃー、ごっちんひっぱんないでよぉ〜」
真希「ヨシッ、そこでガクランのボタンを外して」
ひとみ「違う違う、順番逆、ギャク!」
梨華「痛い〜っ! ごっちん服、脱がさないでよ。よっすぃー胸揉まないでってば!」
真希「うっわぁ〜、なっちってばほっぺに噛み付いてるよ!!」
ひとみ「!! こうなったら一気に責めて責めまくるしかないっすよ、安倍さん!!」
梨華「やっ、ハァン……よっす…ぃ…そこ……ダ…メ」
真希「んぁ? 梨華ちゃん、なにしてんの?」
ひとみ「ん? あーっ、もお梨華ちゃんってばエッチなんだから〜」
梨華(ひ、酷い……二人で散々弄んどいて……)
- 373 名前:Love Berry 〜口唇ネットワーク〜 投稿日:2003年05月05日(月)02時26分44秒
愛 「うわ、うわ、うわっ、み、見ちゃいけないもの……」
麻琴「あ、愛ちゃん、手で隠してても思いっきり見てるって……」
愛 「こ、これが恋に、愛に、チュウ……」
麻琴「あの、愛ちゃん?」
愛 「こ、これが大人の恋愛……」
麻琴「あ、愛ちゃん、鼻息荒いって……」
愛 「こ、これが…これが……」
麻琴「!! 愛ちゃん、鼻血! 鼻血出てるってば!」
Mちよさんは一緒になって騒いでいた中澤さんに歩み寄り、止めるように急かしたそうだ。
だが、中澤さんが渋々部屋の中へと入っていった後、外にいたギャラリーからMちよさんは袋叩きに去れたという。
Mちよさんは現在、通院中だそうだ……。
「なんでこんな扱いされなくちゃならんの〜(泣)」
〜FIN〜
- 374 名前:お返事 投稿日:2003年05月05日(月)02時34分01秒
- >本庄さん
圭 「ん? 今なんか辻の声がしたような……」
圭 織「そうかな? カオリには何にも聞こえなかったよ〜」
圭 「なんか『いいらさんら〜』とか『本を貸せ』とか言う声がしたような……」
圭 織「今日お休みだからね〜、隣りの人が遅くまで起きてるせいじゃない?」
圭 「でも、なんだか恨めしげな視線を感じるんだけど……」
圭 織「ん〜、でも大丈夫だよ。カオリが圭ちゃんのこと守ってあげるから」
圭 「アリガト」
圭 織(圭ちゃんが笑った。カオリ幸せぇ〜)
- 375 名前:本庄 投稿日:2003年05月05日(月)13時24分07秒
- 〜大爆笑中〜
はぁ、腹いてぇ…(涙目)
つうかみっちゃんやっぱ不憫だねぇ…。
みっちゃんいいこなのにね。
つうか圭織ぃ!!
なっち!圭ちゃん捕られるわよ!!
そして圭ちゃんのいぢわるぅ…。
- 376 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月12日(月)02時31分14秒
久しぶりに取れたオフをなつみと共に過ごした日の夜、圭は身支度を整えていた。
傍では普段着にしてはお洒落な恰好をしたなつみが、少し人恋しそうにしている。
「え〜、もぉ帰っちゃうの?」
「でも明日、早いし。今日はこの辺で」
「雨降りそうだよ? 今日は泊まってけば?」
圭が帰るのを引き止めるようとする熱心ななつみ。すると、
“ピカッ”
一瞬、空が閃光に包まれる。
その拍子になつみの身体が膠着し、辺りを警戒し出す。
そんな様子を見ていた圭は不思議そうな顔をする。
“ゴロゴロゴロ〜”
- 377 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月12日(月)02時34分09秒
やや大きな音が室内にも響いた。
「…カ、カミナリ……だ」
「うん、そうだね」
「け、圭ちゃんって、確か、カ、カミナリ苦手だよね? な、何もこんな時に、か、帰らなくてもいいじゃん……」
「なっちゃんこそ苦手なんじゃないの? あれれ、ひょっとして一人じゃ怖いんじゃ…」
「ち、違うもん。な、なっちは大丈夫だもん。怖くなんか……怖く…なんか…」
強がった仕草を見せるなつみだが、声が裏返り、目はどこか泳いでいた。
“ピカッ”
「(ビクッ)」
「おっ、また光った!」
“ゴロゴロゴロ〜”
- 378 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月12日(月)02時36分54秒
閃光が走る度に、なつみの身体が過敏に反応する。今の稲光には圭も少しビクついてしまった。
次第に恐怖感が募り始め、なつみは自分の怖さを悟られないように、わざと圭を抱きつく。
「だ、大丈夫だよ、圭ちゃん。な、なっちが守ってあげるから……」
「そこまでしなくても大丈夫だって。今のはちょっとビックリしたけど、これくらいなら平気だって」
「で、でもすぐに雨が降ってくるよ? もう少し家にいて様子みれば?
ホラ、空がこんなに暗くなってるし、雷も鳴りっぱなしだし」
「大丈夫だって。それに夏だし、濡れてもヘーキだよ。急な雨ならどこかで雨宿りするし」
「でも、でもぉ……」
「それじゃ、また明日ね。お休みぃ」
「あっ…」
気丈に振舞いながらも怯えた様子を隠せないなつみをよそに圭は部屋を後にした。
エレベーターを待つ間、先ほどのなつみの姿を思い出すと、自然に笑みが浮かんできた。
「なっちゃんてばカミナリに弱いんだ……。ちょっとイジワルしすぎちゃった、かな?」
一人苦笑しながら、どんよりとした天気の中を歩き出した。
- 379 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月12日(月)02時39分12秒
一人取り残されたなつみに淋しさが込み上げてくる。
なつみは今更ながら自分の強がりを後悔していた。
(意地張ってないでちゃんと怖いって、一緒にいてって言えばよかった……どうしようこれから……)
“ポツ…ポツ…ポツ…”
「あ〜あ、雨も降ってきたし、圭ちゃん大丈夫かなぁ」
窓越しに真っ暗な空を眺めていると、窓を叩く雨音が徐々に強くなってきた。
それもかなりの勢いで窓を叩きつけてくる。
「た、大変! 圭ちゃん連れ戻さなくっちゃ、ずぶ濡れになっちゃうよぉ!」
なつみは急いで部屋を飛び出し、何処かでずぶ濡れになっているであろう圭を探し始めた。
けれども内心は、圭を連れ戻す口実が出来た事に悦んでいた。
- 380 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月12日(月)02時40分41秒
そんな彼女に雨、風は激しさを緩めることなく執拗に襲いかかる。
同時に稲光のする回数も増えていく。
「う〜、こ、怖いなぁ〜。もういい加減戻ってくればいいのにぃ〜、意地っ張りなんだからぁ」
自分のことを棚に上げながら文句をたれるなつみは、雨宿りが出来そうな所をくまなく探し回る。
“ピカッ……ゴロゴロゴロ〜”
相変わらず空には閃光が走り、雨風共に激しく吹き荒れている。
どこからやって来たのか、タオルがなつみにぶつかる。
「ひえっ! な、なんだ…タオルじゃん。もぉ、早く帰ってきてよ。圭ちゃんてばあんな風に強がってたけどさ、
ホントは自分も怖いくせに……きっとどこかの軒下で震えてるに決まってるんだから」
段々と憤り始めるなつみ。だが天はそんな彼女に天罰を与えてしまう。
- 381 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月12日(月)02時42分35秒
“ピカッ”
「えっ?」
今までにないほど明るい閃光が辺り一面を覆った。そして間髪入れずに、
“ガラガラドォーン!!”
「キャーッ! こ、怖いよぉ…」
予想以上の雷音に、なつみは思わずその場にしゃがみ込んでしまった。
部屋の中にいたときは、遠くのほうで鳴っているとばかり思っていたが、実際はすぐ近くで鳴り響いていた。
一刻も早く、どこかに避難しようと立ちあがった時、
“ピカッ”
「ひっ!」
再度、辺りが真っ白い閃光に覆われる。
“ガラガラドォーン!!”
- 382 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月12日(月)02時43分47秒
落雷に遭ってもおかしくないような凄まじい音に思わず腰が砕けそうになった。
尚も凄まじい稲光はなつみを恐怖へと誘う。
「ヒィーン! もうヤダァ。圭ちゃぁ〜ん」
遂になつみはその場にしゃがみ込んで、動けなくなってしまった。
どうしようもなく一人傘を抱えたまま、小さく丸まって涙ながらに訴える。
「ごめんなさいぃ。もう意地なんて張りませんから、助けてくださいぃ……」
けれどもそんな悲壮な訴えは更に天を逆上させるに過ぎず、稲光と雷音が容赦なく地に降り注ぐ。
成す術のないなつみは、半べそになりながら時の過ぎ行くのをじっと待っていた。
が、急になつみの腕を誰かが掴んで立ち上がらせようとする。
- 383 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月12日(月)02時46分32秒
「!!! だ、誰ぇ!?」
「ったく、こんなどしゃ降りの大雨の中、何やってるの!?」
「け、圭ちゃん!?」
「行くよッ!」
そう言って、なつみを抱きかかえるように走り出す二人に容赦なく稲光が襲う。
“ピカッ……ガラガラドォーン!!!”
「うわぁーっ!」
「キャーッ!」
「ホラ、もうすぐ着くから、我慢ガマン」
「ヒィーン、怖いよぉ〜」
所々で雨宿りを繰り返しながら、なつみの家へと向かう雨も滴るイイ女二人。
しかし、圭はさりげなく自分の身体でなつみを雨から庇う様にしていた。
この時、なつみは自分を雨足から庇う様にする圭の態度に優しさを感じていた。
- 384 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月12日(月)02時48分32秒
なんとか部屋まで戻る事ができた二人。
持っていた傘はほとんど役に立たず、二人とも全身ビショビショだった。
「ふぅ〜」
「はぁぁ〜、怖かったよぉ〜」
「もお、怖いんなら部屋でおとなしくしてればいいのに」
「だって……心配だったんだもん」
バスタオルで髪の毛を拭きながら拗ねたような顔をするなつみ。
「心配」という言葉に髪の毛を拭く圭の手が一瞬止まった。
だが、その仕草に俯いていたなつみは知らない。
“ブ、ブゥ〜ン”
いきなり辺りの景色が暗転して闇が広がる。
一斉に部屋中の電気がシャットアウトしてしまった。
- 385 名前:お返事 投稿日:2003年05月12日(月)02時58分11秒
- >本庄さん
なつみ「ムムムッ!! こりゃイカンべさ。すぐに戻るべ」
みちよ「なんでええやんか。本庄さんとこむっちゃ居心地ええよ?」
梨 華「石川はへーけさんがいればどこでも……キャッ!!」
なつみ「みっちゃんに本庄さん、いい加減離してよ〜」
みちよ「あかん! なっちはうちとここに残るんや!」
梨 華「安倍さん、石川の幸せのためにも残ってもらいますよ!」
(ロープでグルグル巻きにされたなつみさん)
なつみ「けぇーちゃぁーん!! たすけてぇ〜」
- 386 名前:本庄 投稿日:2003年05月12日(月)20時11分21秒
- うわぁい!うっぱさんありがとう・・・って!!
うおぉい!みっちゃんも梨華ちゃんもなにしてんのさ!!
そんな強く巻きつけると痕がついちゃうからもっとソフトに…って違う!!
んなことしちゃダメダ〜メ!!(古!!)
圭ちゃぁん!なっちがいぢめられてるよぉ!!
- 387 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月15日(木)01時19分40秒
部屋には外の不気味な灯りが漏れ、さながらホラー映画に出てくる洋館のような雰囲気を創り出す。
「え〜、今度は何ぃ?」
「停電みたい」
何気なくいった圭の一言が、目の前にいるなつみの恐怖心を煽った。
いまだに外では激しい雨と風が吹き荒れている。
“ピカッ”
何度となく繰り返される閃光がまた走る。
暗闇の中に差し込んだ一瞬の光でなつみの表情が見える。なにやら怯えていた。
“ガラガラッ、ドォーン!!!”
先程よりも威力はないものの破壊力のある音に思わず身を堅くしてしまった。
と同時になつみの悲鳴と何かガラスのようなものが割れる音が部屋内に響く。
- 388 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月15日(木)01時21分06秒
「なっちゃん、大丈夫?」
「う、うん。平気」
「何が割れたの?」
「たぶん……コップだと思う……」
その声を聞いてとりあえず一安心。
だが、ガラスが四方に飛び散ったせいで真っ暗闇の中、うかつに動けない状況になった。
徐々に暗闇に目が慣れて来ると、圭の目はなつみがしゃがんでガラスの破片を集めている姿を捉えた。
充分辺りを警戒しながらなつみに近づいて声を掛ける。
「なっちゃん。危ないから今は触んないほうがいいよ」
「でも…このままだと危ないし、それに……」
なつみがそう言いかけた時、また閃光が走り、間髪入れずに今までで一番大きな破壊音がけたたましく響いた。
どこかに落ちたのが、音だけではっきりとわかった。
「キャーッ!」
悲鳴と共に拾い集めていたガラスの破片が音を立てて再度散らばった。
「なっちゃん! 大丈夫!?」
「も、もうやだぁっ!!」
なつみが急に圭の元へ飛び込んできた。
- 389 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月15日(木)01時22分24秒
目が慣れたとはいえ、咄嗟の事態に反応が遅れた圭はなつみを抱きかかえたまま後ろへ倒れる。
だが運悪く、自分の後ろには粉々に砕けたグラスが未だ無造作に散乱したままだった。
飛び込んで来たなつみを片手で受け止めたが、思った以上に勢いがあり、態勢を崩してしまった。
「痛ッ!」
片方の手をついた瞬間、鋭いもので刺されたような痛みが数回、指先に走った。
けれども、圭の意識は胸の傍で抱きつく乙女のせいで痛みを気にさせなかったようだ。
逆に自分の身体をきつく抱きしめる力のほうが気になっていた。
「こ…怖い……」
「もう大丈夫だから、雨足も弱まってきたから大丈夫だよ」
「う…うん……」
圭の眼下に見えるなつみの小さな頭が軽く上下に動いた。
圭はあやすようになつみを懐に抱え込んでじっとしていた。
- 390 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月15日(木)01時23分39秒
ようやく雷鳴も豪雨も峠を超え、嵐の後の静けさが部屋中に漂う。
さっきから押し黙ったまま、なつみはずっと圭の胸の中にいた。
まだ雷に怯えているわけでもなく、かと言ってこんな状態で寝てしまった訳でもない。
ただじっと圭の背中に手を回して離さない様に抱きしめたまま動かなかった。
「な、なっちゃん……?」
じっとして動かないなつみを呼んでみるが、それでもなつみは何の反応を示さなかった。
けれどもなつみの肌からはちゃんと体温が伝わってくる。
ふと、こんな状況が前にも二回ほど遭ったな、と思い出す。
一度目は真希が加入して初めての夏のツアーだっただろうか。
ツアー先のホテルで真里と同室になった時、激しい雷雨だった。
あの時も今日のように雷雨が止むまで、雷が苦手の真里を懐に抱きかかえてあげていた。
二度目は梨華たちが加入したての頃、ロケ先での突然の雷雨で一緒にいた希美が怖がってしがみついて来た。
あの時も圭は真希や圭織とで怖がるメンバーに寄り添っていた。
まるで母親にでもなったかのような、そんな気持ちを込めながら。
だが、その時とは違って今日はなんだか違和感を感じた。
- 391 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月15日(木)01時24分51秒
今だ復旧しない部屋の中、更に静かな時が流れる。
あれ以来、稲光も強い雨風も完全に止み、圭はまるで水の中にでもいるような感覚に囚われていた。
「なっ……ちゃん?」
再度呼び掛けてみると、ようやくなつみの身体がゆっくりと圭から離れた。
目の前に座ったなつみの目は少しだけ潤んでいた。少女と美女が混ざった瞳だった。
(綺麗だな……)
不謹慎ながらもそんな事を思ってしまった。
なつみの視線が怪我をした圭の右手を掴まえ、そっと手に取った。
そして指先から微かに滲み出ていた紅い傷口を見つめ、それをそっと自らの唇へと導く。
その間、圭は何もせずにじっとなつみの行動を見ていた、というより何もできなかった。
- 392 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月15日(木)01時26分09秒
指先を舐められた時、ほんの僅かに痛みが走る。
普段なら恥ずかしがって手を引っ込めてしまうのだが、今日に限ってそうすることができなかった。
そして指先がそっとなつみの口の中へと含まれる。イヤらしい感触など毛頭なかった。
その後も、掌の部分にできた傷を舌先で舐めるように消毒していくなつみ。
猫のような仕草で癒すなつみに、圭は何の感覚も持てなかった。
しばらく真っ白な時間になる。
なつみの表情が読み取れない圭は、指先からなつみの熱を感じていた。
そしてようやく不思議な感覚から解放されると、なつみが真剣な眼差しで見つめていた。
その視線はまるでギリシャ神話に出てくるメデューサの目のように圭の瞳を捉えて離さない。
圭はその目から離れる事ができずになつみの視線を真っ向から受け止るしかなかった。
そしてゆっくりとなつみの唇が開いた。
微かな声でも、今のこの空間ではとてもよく響いた。
- 393 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月15日(木)01時27分33秒
「圭ちゃんは……なっちの事…好き?」
「えっ…」
突然の告白。
表情はほとんど見えなかったけれども、声はハッキリと聞こえた。
急な事態に戸惑う圭をよそに尚もなつみの口から言葉が連なって出ていく。
「なっちは……圭ちゃんが……好きだよ」
「……」
「傍にいて欲しい……だから今日は帰って欲しくなかった。淋しかった……だから雷雨の中でも捜しにいった。
嬉しかった……濡れないように雨から守ってくれて」
「なっ……ちゃ…ん…」
「それぐらい好きなの……大好きなの……」
「ア、アタシは……」
「圭ちゃんは、なっちの事……好き?」
好き―この一言が圭の心の中にあった「何か」を動かした。
頭の中で「吊り橋の心理」が思い浮かんでいた。
- 394 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月15日(木)01時28分31秒
そっと両手をなつみの頬に添えて撫でた。温かい熱を感じた。
熱に誘われるまま、なつみの表情がはっきりと見えるくらいまで顔を近づけていく。
そして自分を動かした「何か」を言葉にのせて正直に告げた。
「前にもこんな場面が遭ったんだ」
「……ホント?」
「うん。だけど、こんな感じにはならなかった」
「どうして?」
「それは……好きなんて気持ちなかったから」
「じゃあ…今は?」
「好き、だよ」
「信じても、イイ?」
「うん。なっちゃんのことが……なっちゃんが好きだよ」
そう告げた後、自らの唇を優しくなつみのそこに添えた。
優しい感触に酔いしれながらそっと唇を離す。官能の吐息が微かに漏れる。
- 395 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月15日(木)01時29分58秒
「……抱いてもいい?」
「どうして聞くの?」
「……温もりを分かち合うだけで抱くのはダメなことだと思う……から」
圭は嘘をついた。つきたくてついたものではなく、本当の理由を隠すためについた嘘。
今、ここで愛を交わしたとしても、その愛に添える言葉が見つからなかったから。
なつみが俯いたまま身体を圭に預ける。
「圭ちゃんを求めてる気持ち……手放したくないよ」
なつみのうなじに指をすべらせながら、確信した。
愛は言葉を邪魔にして成長してゆくもの―それにやっと気付いた。
そんな二人を窓の外から上弦の月が優しく見守っていた。
- 396 名前:暗闇のラブロマンス 投稿日:2003年05月15日(木)01時31分01秒
〜F I N 〜
- 397 名前:お返事 投稿日:2003年05月15日(木)01時39分00秒
- >本庄さん
圭 「ごめん、カオリ。アタシちょっと私用があるから一人にしてくれる?」
圭 織「ん〜、しょうがないなぁ。これからどうしよっかな〜」
圭 「本庄さんとこにご挨拶でも行ったら?」
圭 織「そうだね、遊びに行ってくるよ、じゃあね(去)」
圭 「さてと……新しいお話書かなくちゃ」
真 里「圭ちゃぁ〜ん、遊びに来たよぉ〜」
圭 (……どうして次から次へと)
- 398 名前:本庄 投稿日:2003年05月17日(土)21時57分57秒
- あら?圭織ちゃんじゃん。いらっさぁい。
・・・ってぇ!なんでけいちゃんこないの??
いや圭織がくんのは嬉しいんだけど・・・。
つうか
>圭 「さてと……新しいお話書かなくちゃ」
って!?え??今までのお話は圭ちゃんが書いてたの??
つうことは・・・これは実話?実話なのね!?
そりゃ某卒コン速報紙に二人のキスショットが載る訳だわ(納得)
- 399 名前:お返事 投稿日:2003年05月18日(日)02時32分33秒
- >本庄さん
圭 「実はあの発言、真っ赤な嘘です。ただちょっと一人になりたくてですね、思わずついた嘘です。
仮に実話だとしたら、恥かしくってここじゃあ発表できませんよ〜」
真 里「圭ちゃん、キスしてたんだ? いいなぁ〜」
圭 「ゴメン。アタシ身に覚えがないし、アタシ自身某卒コン速報紙見てないんだよね。
ちょっと気になるなぁ、その中身」
真 里「圭ちゃんの晴れ舞台のやつなのに?」
圭 「忙しかったからさ、色々……と」
真 里「泣くなよォ〜(泣)」
圭 「アンタじゃん、泣いてんの」
- 400 名前:予告 1 投稿日:2003年05月21日(水)03時42分24秒
- 新作のキャラ設定の後、プロローグを載せたいと思いまふ。
保田 圭
複雑な環境下で思春期を過ごしたせいか、基本的には対人不信症を持つ二浪生。
人より早く社会へ放り出されたため、生きてく中で身につけた知識が豊富で頭の回転も速い。
ひょんな事から同世代のみちよと知り合い、お互い気の許せる唯一無二の関係になる。
そんな孤高の獅子がなつみと出逢い、その日を境に人生の歯車が狂い始める。
安倍なつみ
『金○先生』に憧れ、小学校の先生になることを夢見るちょっと田舎臭い予備校生。
圭織とは高校の頃から縁で、圭織の父の関係で借りた寮にも二人揃って入居している。
圭織には冷静沈着な態度だが、他人にはお人好しで影響を受けやすいほど単純明快。
講義で出逢った圭の性格と考え方、そして淋しさに惹かれ、慕うようになる。
- 401 名前:予告 2 投稿日:2003年05月21日(水)03時45分47秒
平家みちよ
元レディース初代特隊で、圭とはとある事情で知り合い、崇拝するようになる。
脱退後、圭と共に一年浪人生活を送り、W大文学部に合格する。
一見良い人そうに見えるが、街ではかなりの有名人で未だに取り巻きが多数いる。
唯一の弱点は下宿先の管理人の娘、希美で屈託のない笑顔に毎回たじたじのご様子。
飯田圭織
想像力と自己妄想の豊かな自己中のほほん娘。
高校時代には私設のファンクラブがあったほど校内一の有名人だったが、当の本人はその存在すら知らなかった。
高校の頃からの縁で、なつみの一番の良き理解者であり、自称「なつみ大好き人間」でもある。
将来の夢はノーベル化学賞を受賞する事。
- 402 名前:予告 3 投稿日:2003年05月21日(水)03時47分28秒
戸田鈴音
なつみ、圭織と同じ高校の同級生で、現役女子大生。
みちよが住むアパートのお隣さんで、みちよの世話女房であり、なつみ、圭織の良き相談役でもある。
おっとりとした文学少女であるが、実は偽名でティーン向けの恋愛雑誌の一角で毎月連載を持っている。
石川梨華
都内女子校に通う二年生で、真希に連れていってもらったクラブで圭と出会う。
それ以来、執拗に圭を追い掛け回し、同じ喫茶店でバイトし始める。
密かに鈴音が書いている連載小説の大ファンでその影響が災いして……。
後藤真希
優等生の梨華とは対を成す同級生で、事あるごとに何かと話題に挙がるほど有名人。
スチャラカ学生だった(圭がバイトをしていたクラブの常連)がみちよと知り合ってからは一転して優等生に。
それ以来みちよ一筋なため、たまに遊びに来ては邪魔をする希美といつも一波乱起こす。
- 403 名前:予告 4 投稿日:2003年05月21日(水)03時49分16秒
辻 希美
みちよが住むアパートの管理人さんの子供。
みちよ、真希らの悩みの種であったが、圭織と出会って人が変わったようにしおらしく、女の子になる。
何故か自宅よりもりんねの家で夕食をご馳走になることが多い。
村田めぐみ
みちよが所属していたレディースの二代目で、ある人物を目の敵にしている。
特隊の瞳、親衛隊の雅恵と共に、敵対するレディースから恐れられるほど精鋭武闘派集団だが、
普段はいたって真面目に生活を送っている。
なお、雅恵は近所に住む梨華を妹のように可愛がっている。
- 404 名前:予告 5 投稿日:2003年05月21日(水)03時51分04秒
次回の更新からプロローグを載せたいと思いまふ。
- 405 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月21日(水)03時53分46秒
- Hide this story.
- 406 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月21日(水)03時54分23秒
- Hide this story again.
- 407 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月26日(月)15時34分25秒
- 長編になる予定なら新スレで始めてみては?
- 408 名前:本庄 投稿日:2003年06月01日(日)15時13分22秒
- お久しぶりっす!!
んあ!?新作ですか??
いまからめっちゃたのしみっす!!
矢口・・・同期いなくなって寂しいかもしれんけどがんがれ!!
でも圭ちゃんは本庄のもの・・・っじゃなくてなっちのものよ!!
- 409 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時21分15秒
- そろそろ梅雨の時期に入りそうな六月のある日。
なっちは圭ちゃんと一緒に彩っぺのお家に遊びに行くことになった。
今日は平日だけども、街は結構な賑わいを見せてる。
この時期は天候が不安定になりがちだけど、なっちの心は気分爽快だった。
だって……久し振りに圭ちゃんと過ごすオフだから。
本音を漏らせば、二人だけで過ごしてみたかったな〜、なんて思ったりして。
「早かったかな?」
「でももう十時半過ぎてるよ。いくらなんでも起きてるよ」
「でもさ、彩っぺって昔っから夜型だったじゃん」
「あの頃と今は立場が違うでしょ?今ではもう一人前の奥さんなんだからさ、朝寝坊はまずいでしょ」
朝が得意な圭ちゃんが言うとなんか説得力がある。
逆になっちは朝が弱いから、それ以上は何にも言えなくなっちゃった。
- 410 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時22分46秒
- そんな事を考えながら歩いてると、あっという間に彩っぺのお家に到着してた。
チャイム鳴らしてしばらく待ってると、ドアが開いて、何かが飛びついて来た。
「なっちしゃんにけーたん、いらっしゃ〜い」
彩っぺのお子さん、玲夢ちゃんが飛びっきりの笑顔で出迎えてくれた。
遅れてすっかり奥さん業が板についてきた彩っぺもエプロン姿で登場。
軽い挨拶もよそに、彩っぺに来る途中で購入したワイン(圭ちゃんと二人で一時間ほど物色した)を渡す。
そしたら彩っぺに「未成年がワインなんか買っちゃダメじゃん」なんて言われた。
昔っからこの人妻はなっちを子供扱いする癖がある。
彩っぺがまだ一緒に活動してた頃、よく矢口と一緒に子供扱いされてた。
人を外見で判断するのがこの人の得意技だ。
- 411 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時24分16秒
- 「なっちはもう大人だべ」
「でも顔見たら、そう思わないって」
「じゃあ、どうしろっていうのさ?」
「整形でもしたら?」
相変わらずキツイ冗談を言うのも昔っから変わっていない。
何しろあの顔つきで言うもんだから、それが冗談だと判るのに結構時間がかかった。
裕ちゃんでさえ、最初は一歩引いてたくらいだからね。
「相変わらず冗談キツイよね」
「いや、冗談じゃなく本気。二十歳過ぎてもこの顔じゃあ、ある意味犯罪だよ。年齢詐称」
「酷いべさ……。圭ちゃん、なんか言ってやってよ、この毒舌人妻にさ〜」
「え? 何が? 話、全然聞いてなかった」
見ると圭ちゃんは、玲夢ちゃんとまるで恋人同士みたいにイチャついてる最中だった。
- 412 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時26分59秒
- 玲夢ちゃんは圭ちゃんによく懐く。
初めて彩っぺが玲夢ちゃんを連れてコンサートを見に来てくれた時から、いとも簡単に仲良くなってた。
あの時彩っぺが裕ちゃんたちと喋っていても、玲夢ちゃんはずっと圭ちゃんの傍から離れないでぴったりくっ付いてたっけ。
そうそう、思い出したけど、玲夢ちゃんは彩っぺと一緒に活動してたメンバーの事が好きみたい。
その証拠にみんなを「ゆっこしゃん」、「かおたん」、「なっちしゃん」、「けーたん」、「まきたん」って呼んでくれる。
逆に矢口や梨華ちゃんたちはどういう訳か玲夢ちゃんのお気に召さなかったみたい。
矢口なんか裕ちゃんが呼んでるみたいに「やぐちぃ」って呼ばれてるし、ののやあいぼんは「やぐちぃ二号、三号」と
勝手に名前変えられてるし、梨華ちゃんなんか見た目で「ピンクしゃん」なんて言われてた。
一番可哀相なのがよっすぃ〜で、初対面でいきなり「なんでおとこのひとがいっしょにうたってるんですかぁ?」って真顔で言われてた。
あの時はさすが彩っぺの娘!って心底思ったよ。
- 413 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時29分17秒
- 「何しみじみしてんだぁ?」
「うわあっ!」
急に彩っぺのドアップが視界に飛び込んで来た。
顔に似合わず思わず大きな声出しちゃったよ。
ん? 顔に似合わず? なっち、何言ってんだろ。
「そんなとこにいないで上がんなよ」
「へ? あれ、圭ちゃんは?」
「あっち」
すでに圭ちゃんは玲夢ちゃんに引っ張られて奥に消えてた。
ちぇっ、一声掛けてくれてもいいのにぃ〜。
なっちはちょっくら不機嫌です。
「けーたん、あそんでぇ〜」
可愛らしい声でおねだりする玲夢ちゃんに、圭ちゃんもまんざらではないご様子で、終始目尻が下がってた。
最近一緒にいることが極端に減った事もあって、甘える事も出来ない。
だからここしばらく圭ちゃんの砕けた表情を見ることが出来なかった。
そんななっちだけの特権をいとも簡単にやってのけてしまう玲夢ちゃんが羨ましかった。
- 414 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時30分59秒
- ちょうどお昼頃に着いたもんだから、彩っぺが手料理を振舞ってくれることに。
その間、なっちと圭ちゃんは玲夢ちゃんのお相手……なんだけど、なっちはいつの間にか蚊帳の外。
何をどうしても最後はなっちだけ放置。
例えば……
「玲夢ちゃんは可愛いな〜」
「えへへっ、なっちしゃんもかわいいっ」
ぎゅ〜ってしてあげると、玲夢ちゃんも同じようにぎゅ〜ってしてくれる。これは嬉しいんだけど……。
「けーたんもやってぇ〜」
「ハイハイ、いい娘だねぇ〜」
圭ちゃんには玲夢ちゃんから抱き付いていく。それに応えるデレデレの圭ちゃん。
……羨ましい。
だからなっちもしてもらおうとするんだけど……。
「なっちもして〜」
「……うっとおしいから、ダメ」
(シクシク……)
- 415 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時32分26秒
- 例えば……
「なっちしゃん、チュ〜」
「チュ〜」
お互いの頬にキス。これも嬉しいんだけど……。
「けーたんもチュ〜」
「ハイハイ」
何故か唇に可愛らしくキス。
……ズルイ。
だから負けじとなっちもしてもらおうとするんだけど……。
「なっちも、なっちも〜」
「……暑苦しいから、ヤ」
(シクシク……)
っていう訳で、結局彩っぺのお手伝いをすることにした。
その後も二人は終始べったりで、なっちは彩っぺと内輪話で時間を過ごした。
- 416 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時34分00秒
- お昼も過ぎて、辺りに梅雨の谷間の晴れ模様が広がった。
それを見計らったように彩っぺがお買い物へと行く準備を始める。
なっちはぼんやりとテレビくんと睨めっこ。
お出かけの準備が整った彩っぺは圭ちゃんたちに何か話し掛けてた。
「圭ちゃんさ、悪いんだけど玲夢の面倒見ててくれる?」
「何、どっかお出かけ?」
「うん。そんなに遠くへ行かないし、二時間ほどだけどいいかな?」
「いいよ。たまには外で羽でも伸ばしておいでよ」
「ありがと。玲夢、ちゃんとイイ子にしてんのよ?」
「ハ〜イ」
「いってらっしゃ〜い」
やれやれとでも言いたそうな顔でなっちのとこへ来る彩っぺ。
「なっちはどーする?」
そう聞かれてしばらく考えた結果、お供をすることにした。
ここにいてもさっきみたいになっちは蚊帳の外だしね。
- 417 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時39分06秒
- 買い物しながらしばらく昔話に花が咲いた後、自然と色恋沙汰の話題になって、思いついたように彩っぺが切り出した。
「それにしてもLOVEラブだね、あの二人は。見てるこっちが恥かしくなるよ」
「いいなぁ〜」
「どこが? うっとーしーだけじゃん」
「圭ちゃんなんか冷たいんだよぉ。話もろくにしてくれないし、ベタベタすんの苦手みたいだしぃ」
「ふぅ〜ん」
「未だに片思いしてるみたいな気分……はぁ〜、付き合って二年も経つのになぁ〜」
「そんなになるんだ?」
「あ〜、もっとかまってくれないかな〜」
「うざくない? 暑苦しくてダメだわ、私は」
「はぁ〜、なんでかなぁ〜?」
「昔っから淡白で北極のペンギン並みにツーンとしてるからね、圭ちゃんは」
「そんなことないっしょ。そりゃ、圭ちゃんが卒業してからは回数こそ減ったものの中身はちゃんと……」
「んなこと聞いてないって」
「もうねぇ、なっちはいつもメロメロ……」
「……圭ちゃんて上手なの?」
結局、口が滑って圭ちゃんとの愛ある行為暴露しちゃった……。
- 418 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時41分44秒
- 「「ただいま〜」」
二人でお買い物から帰ったら室内はシーンとしてた。
二人ともどっか出かけたのかな、と思ったらベランダの傍で午後の日差しを浴びながら仲良く(?)お昼寝してた。
大の字になって寝てる圭ちゃんにまとわりつく恰好で玲夢ちゃんが寝てる。
寝顔からはこの上ない幸せが滲み出てた。
寝返りを打つ度に、身体の位置を絶妙に調節する二人。
以心伝心ていうのかな、寝ててもべったりだった二人にちょっと妬いてた。
「はぁ〜、噂してる傍からこれだもん。っていうか暑苦しくないのかな、圭ちゃん」
「……いいよなぁ」
「プッ。何妬いてんのさ、うちの娘に」
「や、妬いてないべ。いいよなぁ、って言っただけっしょ」
「目は口ほどにものを言うってね」
「うっ……うう〜」
「……ん? んん〜っ、アレ、なっちゃんに彩っぺ?」
「オハヨ」
「ふあ〜っ、遊び疲れて寝ちゃったよ」
圭ちゃんはまだ夢見心地なのか、しきりに頭掻いたり、欠伸したりしてる。
そんな姿がちょっぴり可愛かったことはなっちだけの秘密。
- 419 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時44分06秒
- 「ん、んん〜っ、ふにっ?」
「ただいま。いい夢見れた?」
「えへっ、うん!」
「ケーキ買ってきたからみんなでお茶にしよっか?」
「ん〜、そう、だねぇ〜」
「圭ちゃん、まだ寝ぼけてんの? しょうがないなぁ」
そう言ってなっちにこっそり耳打ちする彩っぺ。
「(なっち、出番だよ。お目覚めのキッスでもしてあげなよ)」
「(ええっ!)」
「(なに照れてんだよぉ、いつもそれ以上のことしてんでしょ? 遠慮しなくてもいいっしょ。ホラホラ)」
「(う、うん)」
ちょっとドキドキしながら圭ちゃんに近づいたら、なっちの行動を先読みしたように玲夢ちゃんが圭ちゃんに……。
見事に先を越されちゃった。
「けーたん、おきたぁ?」
「……はい」
「(……)」
「(……残念、だったね)」
今日はなんだかおいしい所を全て玲夢ちゃんに持ってかれてる。
- 420 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時45分02秒
- 苺ののったショートケーキをゆっくり美味しそうに食べる玲夢ちゃん。
そんな玲夢ちゃんの口の周りについてる白いクリームを圭ちゃんが指ですくってあげてる。
そんな微笑ましい光景を当の母親である彩っぺが関心したように見て言った。
「なんかこう見てると、圭ちゃんが母親みたいだねぇ」
「そお?」
「変わろっか?」
「へ? アタシが玲夢ちゃんのお母さんになんの?」
「えへへっ、おかあさ〜ん」
極上の笑顔で圭ちゃんに呼びかけてる玲夢ちゃんをなっちは他人事のような視線で眺めてた。
ある時が訪れるまでただじっと、黙ってた。
そして運命の時がやって来た。
玲夢ちゃんに気を取られていて、自分の口元にクリームがついてるのに気付かない圭ちゃん。
すかさず圭ちゃんの隣にすり寄って指でクリームをすくってあげようとしたのに……。
- 421 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時46分17秒
- 「圭ちゃん、自分の口元にクリーム付いてるよ?」
「えっ、どこどこ?」
(ああっ!彩っぺ、余計な事を……)
「けーたん、とってあげるぅ」
「ありがとう」
「えへへっ」
(ああ……せっかくのチャンスが……)
思わず向かいに座る彩っぺに恨みを込めて睨んだ。
「ん?なによ、その目は?」
「だって……」
「……ああ!そういう事か。ったくそんな事くらいで拗ねなくったっていいじゃん」
「???」
「なっちはねぇ……」
「ち、ちょっと、彩っぺってば!」
「うちの娘に嫉妬してんのよ。あまりにも眼前で二人がイチャついてるから。まだまだお子ちゃまだよね〜、なっちは」
「なっちゃん、大人気ないなぁ」
「う〜」
「えへへっ、なっちしゃん、かわいいっ」
玲夢ちゃんに頭撫でられた。これじゃどっちが子供だかわかんないよ。
普段、彩っぺや圭ちゃんの前では大人になれないけど、今日は玲夢ちゃんの前でも大人になれない自分が恥かしかった。
- 422 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時47分37秒
- 彩っぺのお家から戻って、なっちは無理言って圭ちゃんの家に連れてってもらった。
子供の相手疲れか、圭ちゃんは大きな溜息をつきながらソファーにドカッと腰をおろす。
いつもならぴったりくっついて座るんだけど、今日のなっちはちょこんと控えめに座る。
そんな謙虚な態度に圭ちゃんは不思議そうな顔つきでなっちを見つめてる。
「珍しいね。いつもなら必要以上にくっついてくるのに」
「……だってさ、最近やけに冷たいし、今日だってなっちに見せつけてくれるしさ」
なんだか哀しくて泣きたくなってきちゃった。
ちょっと拗ねてそっぽ向いたら、圭ちゃんに身体ごと向きを変えられて正面向かされた。
怒っちゃったかな、なんて思って顔見たら、意外にも笑顔でちょっと紅くなってる圭ちゃん。
- 423 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時49分13秒
- 「き、今日はさ、ホラ、玲夢ちゃんいたじゃん。あの娘の前で、堂々とイチャついたら、教育上よろしくないでしょ。
それにきっと大泣きしちゃうかもしれないじゃん。自分だけ仲間ハズレになったって思ってさ」
「それはそうかもしれないけどさ……」
「けど、なに?」
「なっちだって気持ち的には同じなんだよ?」
またプイってそっぽ向いて拗ねてみた。
圭ちゃんはまたなっちを自分の方に向かせると少し呆れたように言う。
「なっちゃんは大人でしょ? 相手はまだ幼い子供じゃない。感情を抑えることを知らない子供と比べちゃダメじゃん」
「……」
「ま、まあ、ヤキモチを焼くのはわからないでもないけど、場の雰囲気を考えるとさ、ああするのが一番良かったかな〜って、思ったりなんかしたりして……」
なっちが拗ねた態度を取ってるから圭ちゃんは焦ってるみたい。
でも言ってることは正論すぎる正論だったから、何も言えなくなったなっちは黙ったまんま。
あ〜あ、またこれで圭ちゃんのなっちに対する査定が下がっちゃったよ。
今日はイイ事一つもなかったな〜、なんて落ち込んでたら、圭ちゃんにぎゅ〜ってされた。
- 424 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時50分38秒
- 「機嫌、直してくれる、かな?」
「……」
「ダメ?」
「……いいよ」
「よかった」
そう言って圭ちゃんが腕を解いたから、今度はなっちから圭ちゃんに熱い抱擁。
「大人なんだね、圭ちゃんは」
「そうかな?」
「うん。だって……やっぱり言わない」
「??? まあいいけど」
「たま〜に子供みたいな時もあるけど……」
「なっ……」
「そんなところも好き」
「ちょ、くっ付き過ぎだって……」
「照れちゃって、可愛いっ」
「……バカっ」
「えへへっ」
今日は最後の最後にいいコトが見つかりました。
- 425 名前:小さな大人の密かな嫉妬 投稿日:2003年06月09日(月)01時51分26秒
〜FIN〜
- 426 名前:お返事 投稿日:2003年06月09日(月)01時56分23秒
- >名無し読者さん
なつみ「新しいお話かぁ。そうなるとや新スレ立てないとね」
圭 「短編一つ載せたらプロローグ書けなくなってるしね。じゃあ立てようかな」
なつみ「なっちたちも一緒に移動してイイのかな?」
圭 「そりゃ当然でしょ? だってここはもうみっちゃんたちがいるし」
なつみ「そしたらやっと二人っきりだね(ポッ)」
圭 「……バカっ」
- 427 名前:お返事 投稿日:2003年06月09日(月)02時00分36秒
- >本庄さん
なつみ「圭ちゃんは一生なっちのものっ! だから矢口にもあげないっ!」
真 里「え〜、じゃあオイラは誰と一緒になったらいいんだよぉ〜」
圭 「カオリとかどお?」
真 里「カオリかぁ……」
圭 織「矢口……」
真 里「カオリ……」
圭 織「やぐちぃ……」
真 里「カオリぃ……」
以下、エンドレス……
- 428 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月09日(月)02時01分39秒
- !!!
間違えまひた
- 429 名前:恋感染 〜副作用にご注意?〜 投稿日:2003年06月15日(日)03時07分33秒
- 最近仕事が終わってから家に帰るのが怖い。
別に誰かに狙われているとかいう訳ではないし、一人が淋しいからでもない。
何が怖いかといえば、今一緒に住んでいる“ミニデーモン”こと安倍のなっちゃんだ。
この恐怖はなっちゃんがアタシよりも先に帰っている時だけに限る。
最近、なっちゃんはアタシよりも忙しい身なので、大抵はアタシよりも遅いのだけれど、
極たま〜にアタシよりも早い時があって、そういう時は決まって善くないことが起こるのが常だ。
家の前まで来て、鍵穴にキーをさし込む前にまずドアノブを回す。
まるで盗人みたいに思われるかもしれないけれど、いつの間にかそれが習慣になってしまった。
どうかいませんようにと願ってみると……簡単にドアが開いた。
ということはつまり、もう部屋の中にはなっちゃんがいる……と。
アタシは大きな溜息をついて、ドアを開けて中に入った。
「ただいま〜」
- 430 名前:恋感染 〜副作用にはご注意?〜 投稿日:2003年06月15日(日)03時10分16秒
- 部屋の中はやっぱりシーンとしている。
なっちゃんが先に帰っている時はいつも真っ暗でシーンとしていて、アタシを驚かそうとどっかに隠れているのがいつものパターン。
でも今日は部屋も明るくて、なっちゃんの存在がはっきりとわかるくらいケタケタ笑う声もした。
「おかえり〜」
陽気な声がして、久しぶりに平和な夜が過ごせそうだな〜と思ったのも束の間、部屋の奥に入ってアタシは目が点になった。
「……なんて恰好してんの?」
「えへっ、似合うかな?」
なっちゃんの密かな趣味……それはコスプレで、これまでに兎の着ぐるみから始まって、セーラー服、チャイナドレス、
バニーガール、セー○ームーン、う○星や○らのラムちゃん、白雪姫、ピ○チュウと多種多彩なコスチュームを見て(見せられて?)きた。
中でも凄かったのがRPGの先駆けともなった『ドラクエ』、その二作目で登場したムー○ブルクの王女。
マニアなら生唾もののコスチューム(たぶんかなりの値で売れると思う)をどっから仕入れてきたのか聞きたかったけど、
それは企業秘密だとかで教えてくれなかった。
- 431 名前:恋感染 〜副作用にはご注意?〜 投稿日:2003年06月15日(日)03時12分18秒
- なっちゃんのコスプレは嫌いではない。
何を着ても可愛く見えてしまうから、アタシ的には目の保養に十分過ぎるほど役立っている。
だから好きか嫌いかといえば好きだ、けれど……。
自分だけが着るのならまだしも、それをアタシに着るように強要するのは毎回止めて欲しい。
それだけは嫌い。
既に何回か、その恥かしい恰好を連中に見られてるのも事実だ。
今までに裕ちゃん、カオリ、矢口、アヤカ、メロンの大谷君、そしてつい先日りんねにも見られてしまった。
何故かコスプレする日に限って来客がある。
そんな中でも特に裕ちゃんに目撃されることがなぜか多い。
二人で共同してアタシを嵌めているのかと思うくらい、タイミング良く現れる中澤“デーモンキング”裕ちゃん。
でもって今夜も誰か来そうな予感がしてる。
くわばら、くわばら(祈)。
- 432 名前:恋感染 〜副作用にはご注意?〜 投稿日:2003年06月15日(日)03時14分17秒
- なっちゃんの今回の衣装(?)はコスプレの定番ともいえるナース。
しかも本格的にキャップまで頭につけて、白いストッキングも着用してる。
はっきり言ってここまでくると、もう病院ものの連ドラ撮影というよりはAVの世界だ。
聞くところによるとAVのコスプレで一番多いのがナースらしい。(某AV好きのスタッフさん談)
やっぱり心体が弱っている時には、あの白衣が天使に見えるからだろうか?
「そ、それ……また、貰ったの?」
「これ? 違うよ。これは通販で買ったの」
「………」
はっきり言って眩暈がした。おそらく通販の販売担当者も驚いただろう。
今や知らない人なんていないくらいに有名になった安倍なつみが密かにコスプレの趣味があったなんて、と。
アタシは天を見上げて手を額に添えながら、大きな溜息をついてた。
またいつものようにアタシにも着てって言ってくるのだろうと思ったから。
こればっかりは何度やっても慣れる事はなかった、というか慣れたらそれこそ怖い。
- 433 名前:恋感染 〜副作用にはご注意?〜 投稿日:2003年06月15日(日)03時17分03秒
- 「どうかな? 今回の衣装」
「いいと思うよ。似合ってる」
「へへっ、した甲斐があった」
「……」
コメントのしようがないよ、安倍さん。
アタシはご機嫌ななっちゃんをよそに夕食を摂ることにした。
最近現場で支給されるお弁当にハマっていて、余った分を持ち帰ることにしてる。
外食で栄養が偏りがちになるよりは、少しでも栄養バランスの取れたお弁当のほうが健康に良いし、
経済的にも助かるし、何より作ってくれた人たちの申し訳ないと思ったから。
本当なら自分で材料を買って料理するのが一番良いのだけれども……。
お弁当を箸で摘みながら、少し離れた所でテレビを見てるなっちゃんを観察してみた。
ふと、観月ありささんが出演していた『ナー○のお仕事』に新人看護婦役で出ていてもおかしくはないな、なんて思ったりする。
かたや、江口洋介さんが出演していた『救命○棟24時』では無理だろう、なんてことも同時に思ったりなんかして。
- 434 名前:恋感染 〜副作用にはご注意?〜 投稿日:2003年06月15日(日)03時20分37秒
- 一日の疲れをお風呂で癒した後、リビングに戻るとまだナースルックの恰好のままのなっちゃんが寛いでる。
よほど気に入ってるのだろうか、顔が綻びっぱなしだ。
さっきまで白衣の天使に見えていたなっちゃんにちょっと気味が悪くなって探りを入れてみる事に。
「ねえ、なっちゃんさ、どうしてこの恰好のままでいるの?」
「え、いや、ちょっとね〜」
何やら意味深な事を言うナース安倍。
こういう時は大抵、ろくな事が起きやしないと、頭の中で黄信号が灯った。
なのでなるべく刺激を与えないように、関心がないフリをする。
「あっそ。んじゃ、アタシそろそろ寝るから」
そういって寝室へと足を運ぼうとした時、なっちゃんの目が一瞬だけ輝いたのを見逃さなかった。
咄嗟に頭の中で黄信号が赤へと変わった。
自分の身の危険を案じ、なっちゃんに告げておく。
「間違ってもその恰好でアタシを誘わないでよ? いくらなっちゃんでも変なコトしたら怒るからね」
「えっ……そ、そんな事、しない……よぉ」
「絶対だよ!?」
そう言って先に寝ることにした。
- 435 名前:恋感染 〜副作用にはご注意?〜 投稿日:2003年06月15日(日)03時22分26秒
- けれど数分もしないうちにドアが開いて、ナース安倍がコソコソとアタシの寝てるベッドに近づいてくる。
そして……こともあろうに足元から布団の中に潜り込んできた、来やがった。
一瞬で全身に鳥肌が立ちこめ、思わず布団を払いのけてしまった。
「何してんのよ!」
「あ……は、はぁ〜い。や、保田さぁ〜ん、検診のお時間ですよぉ〜」
「ちょっとなっちゃん! 検診ってアタシどこも悪くないわよ」
「怖くないですからね〜。すぐ済みますよ〜」
ナース安倍はイキナリお医者さんごっこを始めた。どうやらアタシは患者役らしい。
ナースの恰好させられなくて良かった、といつもと違う展開にホッとしてしまった。
ってそんな悠長に構えてる場合じゃない、ではないか!
脈をとる真似をしながらイヤらしい手つきで腕の筋肉をほぐすナース安倍。
なんか違う……そう、これは俗に言う「プレイ」だ。
「いつまでそんな恰好してんの!? 明日も早いんでしょ? バカな事してないではやく寝なさい!」
「保田さぁ〜ん、怒ると血圧が上がっちゃいますから落ち着きましょうね〜」
「あのねぇ〜」
「はぁ〜い。リラックスしてくださ〜い。お熱測りますよ〜」
- 436 名前:恋感染 〜副作用にはご注意?〜 投稿日:2003年06月15日(日)03時24分46秒
- そう言ってなっちゃんは自分のおでこをアタシのおでこに当てる。
間近で見るナース安倍は結構というかかなり可愛い。
ヤバイ……体温も血圧上がりそうだ。
アタシはなっちゃんのお遊びに引き込まれていくのを必死にこらえる。
「な、なっちゃん! いい加減にしないと」
「……ダメ?」
「ダメッ!」
「じゃあ、なんで圭ちゃん顔赤いの?」
「え……」
「ホントは期待してたんじゃないの?」
「(ギクッ)」
なっちゃんの鋭い指摘にアタシは真っ赤になって固まってしまった。
「あれぇ〜、お熱がありますね〜。風邪ひいた時は温かくしましょうね〜」
そう言ってキュッと抱きついてくるナース安倍。
そ、そんなコトしたら余計に体温が上がってしまいます……。
アタシは完全になっちゃんの成すがままになっていた。
「どうやら落ち着いたみたいですね〜。ちゃんとナースの言うことは聞いて下さいね〜」
ナース安倍得意のスマイルにアタシはまた白衣の天使を見た。
既にお医者さんごっこにハマってしまったアタシは覚悟を決めて「アタシなり」にとことん付き合うことにした。
アタシなりに……(ニヤリ)。
- 437 名前:お知らせ 投稿日:2003年06月15日(日)03時27分29秒
- 容量が限界なので、新しいスレッドで最初から載せ直しまふ。
中途半端に切れた事、お詫び申し上げまふ。
- 438 名前:本庄 投稿日:2003年06月17日(火)13時52分04秒
- なっち・・・いやなっちさん。
最 高 で す。
あぁ続きが気になる・・・のですが
次のスレはどこなのでしょう・・・?
ご連絡お待ちいたします・・・。
- 439 名前:ご報告&お返事 投稿日:2003年06月18日(水)03時07分14秒
- 同板に新スレ『きみに会えて...』を立てまひた。
お気に召しましたらそちらも可愛がってあげて下さい。
大体のあらすじはまとまってるんで……。
>本庄さん
なつみ「へへへっ、最高だなんて、いやぁ〜、なっち、参っちゃうなぁ」
圭 「……(軽蔑的な視線)」
なつみ「あっ……あの〜、えっとぉ〜(焦)」
圭 「……可愛い顔して、やる事エゲツないよね」
なつみ「あ、あはははは……」
- 440 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月19日(木)01時35分19秒
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