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作者フリー 短編用スレ 一集目
- 1 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)00時15分25秒
- このスレッドは作者フリーの短編用スレッドです。
どなたが書かれてもかまいませんが、以下の注意事項を守ってください。
・アップするときはあらかじめ“完結”させた上で、一気に更新してください。
・最初のレスを更新してから、1時間以内に更新を終了させてください。
・レス数の上限は特にありませんが、100レスを超えるような作品の場合、
森板(短編専用)に新スレッドを立てることをお薦めします。
なお、レス数の下限はありません。
・できるだけ、名前欄には『タイトル』または『ハンドルネーム』を入れるようにしてください。
・話が終わった場合、最後に『終わり』『END』などの言葉をつけて、
次の人に終了したことを明示してください。
・後書き等を書く場合は、1スレに収めてください。
・感想、感想への返レスはこのスレに直接どうぞ。
- 2 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)00時21分08秒
- 記念すべき一本目書かせていただきます。
タイトルは「嵐の後で」です。
- 3 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時22分23秒
- 「お昼はあんなに晴れてたのに」
傘も差さず見上げた空からは、少女の呟きをかき消すほどの雨粒が、立ち尽くす
二人の思い出を洗い流すかのごとく降り注いでいた。
小高い丘の閑静な住宅街。しかし、夕方から降り始めた雨によっていつもの眺めは
望むべくもなかった。伸ばした手の先さえ見えなくなる大雨は、大切な言葉すら
奪ってしまい、二人はいつまでたってもその言葉を口にすることができそうに
なかった。
「なんで……なんでいきなり転校しちゃうんだよ!」
少女に掴みかからんばかりに叫ぶ少年の目からは、この大雨の中でもはっきりと
悲しみの色をたたえる涙がとめどなく伝っていた。
「だって……それは、パパのお仕事が……」
少年に肩を掴まれながら、消え入りそうな声で応える少女の瞳にもまた少年の
それと同じ色をした涙がたたえられいた。
- 4 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時22分55秒
- ―――――――――
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―――――
人を愛するのに“十分な年齢"が必要だろうか?
幼すぎる愛は罪だろうか?
二人が出会ってしまったことは不幸だったのだろうか?
答えはすべて否である。
これは、恋が始まってしまった時が早すぎた少年と少女の悲しい物語ではない。
確かにこの時の二人は、互いの傍で愛を語り合うことすらできないほどに
非力だった。しかし、それは二人にとって決して大きな障害ではない。
そう、この物語は、ほんの少し不幸で、とても幸せな二人の人生を
ほんの少し切り取った、そのかけらである。
―――――
―――――――
―――――――――
- 5 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時23分53秒
- 「え〜、一学期ももう少しで終わりだが、転校生を紹介する。」
それは、少年との別れから数えて、ちょうど10回目の梅雨だった。
最近ようやく貫禄が出始めた若い担任の声が響くここは、少女が通う高校の教室。
そして、この教室にあって男は担任だけ。そう、つまり、ここは女の園、
女子高である。
「ねえ、梨華、転校生だって、どんなこかな。」
「さあ。」
友人の問いかけに、少し小首をかしげて、さえずるような声で応える少女。
多くの年頃の少女たちがの中でも、彼女はひときわ輝いている。
窓の外の梅雨空とは、まるで対照的な爽やかで、透き通るような笑顔は、同性の
友人たちをも惹きつけてやまない。
- 6 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時25分02秒
- しかし、みなが期待を込めて見つめる扉が開き、本日のヒロインが登場した瞬間、
梨華の顔からその微笑が消えた。
なぜかは分からない、しかし、梨華の中で何かが引っかかるのだ。
気付くと、担任に連れられて歩く転校生を睨みつけるように凝視していた。それは、
決していつもは他人に見せることのないような厳めしい表情だった。
「それでは、みんなに自己紹介して。」
担任に促され、その転校生が一歩進み出たその時、今まで我慢していたものが
溢れ出すように空から大粒の雨と雷鳴が響き渡った。
- 7 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時25分48秒
- 「ひーくん?」
雷雨の音が、教室の中にも響いていたが、梨華が思わず立ち上がってつぶやいた
言葉は、はっきりとした音を持ち、転校生の胸に届いた。
それは、あの日と同じ、嵐のオーケストラが、眠っていた梨華の心の底の方から
引き出した叫びだった。
「りかちゃーん!」
あの頃と“まったく変わらぬ"声。
背は伸び、スカートをはいていても、目の前の屈託のない笑顔は、まぎれもなく
梨華が少女だった頃に愛を誓い合ったあの少年のそれだった。
- 8 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時27分30秒
- ―――――――――
―――――――
―――――
ただのご都合主義か、それとも想いの力か、はたまた、運命のいたずらか。
なんにせよ、二人は時間を越えて出会った。
しかし、ここで今一度言おう。
ここは女の園、女子高である……
―――――
―――――――
―――――――――
- 9 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時28分18秒
- 「どうしてさ?!」
人気のない放課後のカフェテリアに、怒声が響き渡る。
向かい合うように座り、両手をテーブルに叩きつけているのは先日の転校生。
そして、怒鳴られている相手はもちろん梨華だ。
「どうもこうもないでしょ。ひとみちゃんは女、私も女、これ以上どんな
説明がいるって言うのよ。」
大声を出されたことをまったく気にするでもなく、しれっと応える梨華からは、
普段のお嬢様然とした愛らしさはなく、むしろ、年の割には経験値の高い、
ちょっとスレた少女のような雰囲気をかもし出していた。
その日は、ひとみと呼ばれた転校生が、ようやく移動教室にも迷わなくなった、
そんな頃だった。
ひとみは、新しい学校にも慣れ、ファーストネームで呼び合うクラスメートもでき、
順風満帆の転校生活をエンジョイしているはずだった。しかし、一点だけ、
いやその一点がどうしても納得できない。
- 10 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時29分02秒
- 梨華が冷たい。
後にも先にも、これが何より重大だ。
もちろん自分から積極的に話しかけたし、お昼休みは必ず隣をゲット、掃除当番も
同じになるように、転校生ながら裏工作までしたほどだ。
しかし、梨華はというと、ほかの生徒がいるときは、積極的とは言わないが、
楽しそうに相槌をうったりしてくれるのだが、二人になるとまるで無視、
しかも昔の呼び名「ひーくん」ではなく、ほかの女友達のように
「ひとみちゃん」と呼ぶ始末。
そして、とうとう我慢できなくなったひとみが、帰ろうとする梨華を捕まえ、
強引に話し合いの席につかせたのだが、帰ってきた応えは至極当然でありながら、
ひとみには天地がひっくり返るほどショッキングなものだった。
- 11 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時29分55秒
- 「そんな……だって、あの頃は絶対結婚しようねって言ったのに。」
「だから!それは、子供のときの話でしょ、それに、私は言ってない、
言ってたのはひとみちゃんでしょ。」
「覚えてるくせに……」
「なんか言った!」
先ほどとは立場逆転。教室では決して見せることのない梨華の迫力に、
小型犬のように、何も言い返せず、恨めしそうに見上げるひとみ。しかし、
その哀れな子犬の上にご主人様は更には畳み掛ける。
「それと、このこと教室で言ったらただじゃおかないからね。」
「それは、昔の話、それとも梨華ちゃんが……」
「どっちもよ!」
わずかな抵抗すら許さない梨華の剣幕に完全無条件降伏のひとみ。
そして、勝者は悠々と戦場を去るのだった。
- 12 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時30分33秒
- そんなことがあってからというもの、一途に梨華のことを思い続けて、
ついに探し出した梨華のために転校までしてきたひとみは、ショックのあまり
寝込んでしまった……
などということもなく、次の日からも、元気に相変わらずだった。
「梨華ちゃーん。一緒におひるしよ。」
「……いいわよ。」
ほかの友人たちには気付かれないように、ひとみサイドのこめかみだけを
ひくつかせながら、応える梨華。器用なものである。
- 13 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時31分21秒
- (「この前言った意味ちゃんと分かってるんでしょうね!」)
梅雨の晴れ間。屋上から見える空は、未明まで降っていた雨が嘘のように
鮮やかな文字通り空色だった。
そんな青空の下、食事を取り終わった梨華とひとみ以外の面々は、バレーボールに
興じていて、二人だけが少し離れた場所に取り残されているといった風だった。
そして、梨華は時折手を振る友人たちに、抜群の笑顔を振りまきながら、
聞き分けのない子供を問い詰めている真っ最中だった。
(「何でそんな小さい声なの?」)
(「みんなに聞こえると困るからでしょ。」)
(「あんまり自分つくらない方がいいよ。」)
「うるさい!」
- 14 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時31分52秒
- ぬかに釘、暖簾に押し腕。
何を言ってものらりくらり、行き着くところは「梨華ちゃんが好き。」
まるで話にならない上に、痛いところ突かれた梨華は、思わず立ち上がって、
ひとみを怒鳴りつけていた。
驚いたのは友人たちである。あのおとなしく、可憐で虫も殺さぬような梨華に
何があったのか。みな怖いもの見たさの面持ちで二人に近づくのだが、そこは
さすがというべきか、彼女たちが二人の方に近づこうとしたその瞬間には、
すでに梨華はパーフェクトスマイルを作り上げていた。
- 15 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時32分28秒
- 「どうしたの?」
目元はかわいらしく、口元は少し恥ずかしげに。そんなはじけそうな笑顔で
尋ねられては、自分たちの方が何か間違った錯覚を見たのではと信じてしまう。
すっかり、梨華のイリュージョンにだまされた友人たちは、「いや、べつに」とか
何とかもごもご言いながら、ひとみを連れて風のように立ち去る梨華を
ただ見送ることしかできなかった。
- 16 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時32分54秒
- 「ねえ、なんでそんなにキャラつくるの?
今いいチャンスだったのに。ちゃんと本音で付き合ったほうが絶対……」
「うるさい!!
……されたいのよ。」
「えっ、何?」
「愛されたいのよ。
悪い?みんなに嫌われたくないのよ、かわいい梨華ちゃんとして
ちやほやされたいのよ。」
無人の踊り場に梨華の怒声が響く。
いつの間にか、ひとみを睨みつけるその目には、なみなみと悔しさの塊が
たたえられていた。
- 17 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時35分42秒
- 「もう二度と……もう二度と喪失の悲しみには耐えられない。」
最後は消え入りそうな声で。
倒れこむようにひとみの胸にすがる梨華は、まるで子どものようだった。
「梨華ちゃん。」
突然のことに一瞬とまどいながらも、梨華の方に優しく手をかけようとしたその時、
ひとみの腹部を鈍痛が襲う。
「なんて言うとでも思ったの?
つまんないこと考えてないで、ちゃんと人の言うことは聞きなさい。」
うずくまるひとみを尻目に、トットッと小気味いい足音を残して階段を下りていく
梨華に、ひとみは声をかけることさえできず、ただ心の中でつぶやくだけだった。
(梨華ちゃん……ナイスパンチ)
- 18 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時37分05秒
- それから、数日は、小康状態が続いた。
あの日以来、しつこいくらいに付きまとっていたひとみが、ぷっつりとりかに話しかけなくなり、梨華が疑問を感じ始めた時には、すでに運命の歯車は回り始めていた。
「え〜、突然だが、吉澤が今週限りで転校することになった。」
非常に言いづらそうに話す担任に、全員の目が珍しく釘付けになる。
梅雨と共やってきて、梅雨とともに去っていく転校生。そんな話誰も
聞いたことがない。
「実は、転入の際にそういう話だったんだが、本人のたっての希望で
こういう形に……」
驚きの沈黙にさらされながら、もごもごと話す担任の声だけが静かに響く教室で、
梨華も驚きを隠せず、ぽかーんと大きな口を開けて、必死に状況を飲み込もうと
していた。
- 19 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時38分14秒
- 「どういうつもり、いや、なんで言わなかったの?!」
「だって、言ったら怒ると思ったから。」
「言わなくても怒るに決まってるでしょ!」
こうして梨華に問い詰められるのは、この短い間で何度目だろうか。
目を見開いて怒鳴る梨華とは対照的に、怒りの根源であるひとみは
のんきなものである。
「外国に引っ越すんだ。
家族はもうあっちにいて、わたしもむこうが夏休みの間に引っ越して少しでも
生活に慣れるつもりだったんだけど、ちょっとだけわがまま聞いてもらった。」
いつものように、屈託のない笑顔で淡々と話すひとみは、梨華にはまるで
宇宙人のようだった。
「何を言っているの?」のど元まで出かかる言葉を、作り物の梨華がさえぎる。
- 20 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時38分51秒
- 「そう、じゃあ当分帰ってこないんだ。元気でね。」
言葉と心が梨華の意思とは関係なく、どんどん離れていく。
違う、わたしが言いたいのはそんなことじゃない。
しかし、心の叫びは、ただ胸を締め付けるばかりで、決してその形を
成そうとはしない。
「ううん。たぶん、もう帰ってこない。
いや、旅行とかでは"来る"かもしれないけど、ちょっと親の仕事が複雑でね。
だから、わたしも高校、大学、就職、全部向こうでするつもり。」
どうしてそんなに楽しそうに話せるの?
これから始まる新しい生活を、語るひとみを見ていると、さらに感情が暴れ始める。
あなたのその未来わたしの居場所はあるの?
- 21 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時39分26秒
- 「ふーん、でもひとみちゃんあんまり勉強できないんだから、
英語分かんなかったら教えてあげるから、電話くらいしておいでよ。」
つながった。
ぎりぎりのところで、梨華はかろうじて、想いの片鱗を歪んではいるが、
形にすることができた。
しかし、一度できた歪は想像以上に大きい。
「ありがとう。
でも、いいよ。なんかわたし梨華ちゃんにあんまり好かれてないみたいだし、
そうやっていい人キャラつくらなくていいよ。わたしだけは、ホントの
梨華ちゃん知ってる人でいたいから。だから、連絡先は……」
- 22 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時39分59秒
- 「違う!」
最後の引き金を引いたのは、皮肉にも求められていた相手に繰り返してきた否定を、
自らが受けたことだった。
限界まで内圧を高めた感情が、制御不能の波となってあふれる。
「違うの。嫌なの。
だって、ずっと、だから、わたしもう何も失いたくなかった。
それに、次にあったときにもまた好きでいてほしかった。
けど、ひとみちゃんが女の子で、それでも好きな自分が怖くて。
だけど、ひとみちゃんは昔のまままっすぐだし、わたしかわいくない子だし。」
「全部知ってた。」
濁流のようにすべてを吐き出そうとする梨華を、ひとみは
これ以上零れ落ちないようにそっと抱きしめる。
「ごめんね、遅くなって。」
- 23 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時40分33秒
- 一瞬が永遠にも感じられるような抱擁は、二人の欠けていた時間のピースを
静かに埋めていく。
そして、小刻みに震えていた梨華の肩が、落ち着きを取り戻すと同時に、
その振動が、今度は胸の中に伝わる。
動悸に従うように見上げると、そこにはずっと待ち焦がれていた、
あのころと変わらぬ笑顔が、優しく待っていてくれた。
「ひーくん。」
呼び名に応える笑顔が、自然と梨華の瞳を閉じさせる。
温め続けてきた想いが通い合い、愛以外に何も存在しなかった
あのころと同じ空間が、時間を越えて二人を包む。
そして、二人の呼吸が一つになろうとしたその時。
- 24 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時41分06秒
- 「ちょっと、ひとみちゃん、どういうつもり!
さっきあんまりにもおかしいから担任問い詰めたら……
何してるの二人とも?」
運命の死神は、ひとみが転入してからずっと面倒を見てくれていた委員長。
今では、梨華の次に大切な友達だ。この瞬間までは。
「どういうこと?」
いまだ半分ほど夢の世界から抜け出せない梨華が、ひとみに抱きしれめられたまま
たずねるが、ひとみはというとすでに脱出の体勢を取ろうとしていた。
「いや、だから、誰もやりたがらない体育祭の応援団長と引き換えにあんな狂言を、
って……ちょっと梨華ちゃんどうしたの?!」
「ぶっ殺してやるー!!!」
- 25 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時42分04秒
- ―――――――――
―――――――
―――――
こうして無事、想いを確かめ合えた二人、しかも、梨華は、
めでたくカミングアウトまで成功。
ここで今一度問おう。
人を愛するのに“十分な年齢"が必要だろうか?
幼すぎる愛は罪だろうか?
二人が出会ってしまったことは不幸だったのだろうか?
そう、答えはすべて否である。
いかなる障害があろうとも、それは、ほんの少しの誠実さと
あふれんばかりの愛で乗り越えることができるのだ。
そして、これは、そんな小さな奇跡を起こした二人の物語。
さて、この物語はここまで。
次の嵐は、また別の話。
―――――
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―――――――――
- 26 名前:嵐の後で 投稿日:2002年07月25日(木)00時43分38秒
- ■おしまい■
- 27 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)00時49分13秒
- □あとがき□
すごい久しぶりに恋愛もの(?)、そして、いしよし(w
目指したトーンはずばり、一昔前のラブコメ少女漫画+少年誌の連載前にある
読みきりみたいな感じ……になってたかなぁ??
まあ、一本目ということで(←言い訳)肩に力の入らないものをと……(苦しいなあ)
では、このスレに幸多かれと願いつつ
- 28 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月25日(木)01時21分51秒
- スレ立て&1本目乙!
楽しく読ませてもらいました( ^▽^)
石川さんのみぞおちパンチ、「ぶっ殺す」発言にワラタ
このスレの発展を願って初レス。
さ、私もなんか書くかな…
- 29 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)02時16分06秒
- 先週の『バス来る』が頭に浮かんだ。
(0^〜^)ノ<カメルーンッッ!!
ラブコメ王道 一直線でかなりツボでした。
- 30 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)03時35分43秒
- いしよしキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!
可愛いラブコメに萌え&笑かせていただきました。
黒い石川さん、素敵です…
クソ短いののかお小説書いてみたので、
僭越ながら2本目をコソーリ置いていきます。
- 31 名前:小さな生き物 投稿日:2002年07月25日(木)03時37分18秒
- 小さな生き物だと思う。
丸い腰や浮き出た鎖骨がわずかに成長の兆しを覗かせるけど、
それを差し引いたとしても彼女はあまりにも幼い。
私は出会ってから数年経った今でも、彼女を“小さな子供”だと認識している。
- 32 名前:小さな生き物 投稿日:2002年07月25日(木)03時38分00秒
- 「のんちゃん、つめ」
出来るかぎりの優しい声を出して注意したのに、やっぱり辻の表情は強張ってしまった。
カリカリと神経質そうに爪を噛むのは、何かに行き詰まった時に出てくる癖。
それを知っているからこそ、咎めるような響きは出したくなかったのだけど、
どうにも上手くいかない。
「……ごめんなさい。」
俯いた辻は、今まで噛んでいた左手の親指を逆の手で包み、その爪のカーブを
何度も繰り返しなぞった。
如何にもしょぼくれた様子だったので、私の胸はいっぱいになってしまった。
かわいい。なんてかわいいんだろう。
- 33 名前:小さな生き物 投稿日:2002年07月25日(木)03時39分11秒
- 悩んでいる所に更に追い討ちをかけた気もして、心の容量をどんどん埋めていくのは、
辻に対する愛しさと罪悪感。
「のんちゃん」
ごめんね。怒ったつもりじゃないんだよ。
口に出そうとした言葉は、のどの所で引っかかって、そのまま奥に押しやられた。
「ごっ…どめんなさい……っ」
辻がまた謝り出したのだ。それも嗚咽まじりに。
なんで。頭が真っ白になる。
爪を噛むのを止めさせるのなんて些細な事で、日常の中、幾度もあったはずだ。
まして、泣き出してしまう程きつく注意したわけでもない。
- 34 名前:小さな生き物 投稿日:2002年07月25日(木)03時39分47秒
- 「の…のんちゃん、どうしたの?どっか痛いの?」
愚かな質問をしている自分が嫌になる。
とにかく辻も自分も落ち着く必要がありそうだと思い当たって、
本格的に泣き出した辻の頭を、自分の胸の方に引き寄せた。
辻がか細くしゃくりあげる度に起こる振動が痛かった。
無理に理由を聞き出すのは可哀相に感じられて、とりあえずこの振動が治まるまでは
待っておいておげよう、と思った。
- 35 名前:小さな生き物 投稿日:2002年07月25日(木)03時40分30秒
- ねぇ、のんちゃん。
私はのんちゃんがつめを噛んでるのを見たらいっつも注意するけど、
本当はね、のんちゃんのつめ、すごい好きなんだよ。
まるっこくて、ちっちゃくて、生まれたての赤ちゃんみたいなつめ。
可愛くて、大好きなんだよ。
辻の小さな背中を擦りながらとりとめもない事を考えていたら、何故だろう、
ふと涙が出そうになった。
軽く癖を咎められただけで、必死で耐えていたものが溢れ出す。
そんな彼女の幼さが好きだ。丸い爪は幼さを象徴している。
やっぱり小さな子供なのだ。
- 36 名前:小さな生き物 投稿日:2002年07月25日(木)03時41分18秒
- 何時の間にか、胸の中の振動は止まっていた。
今は時おり、すん、と洟をすする音が聞こえてくるだけだ。
私は再び、出来る限り優しい声を出そうと努力して彼女の名前を呼んだ。
「のんちゃん、……」
おわり。
- 37 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)03時47分12秒
- うわ誤字が!
誤字ってゆうかなんつうか…。
>>34の
待っておいておげよう、と思った。
は、
待っておいてあげよう、と思った。
の間違いです。は…恥ずかしい…。
国語辞典で殴られて逝って来ます!!
- 38 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)05時22分54秒
- 3本目いかせていただきます。
暗めですがよろしく。
- 39 名前:M 投稿日:2002年07月25日(木)05時26分57秒
- 〜M(マリア)〜
ずっと好きだった・・・。
二つ上の彼女、名前は矢口 真里。
私が高校入学して、偶然出会った・・・まさに一目惚れだった。
1年間思いを伝えられないまま、彼女は卒業式を迎えた。
悔しかった、彼女の前では言葉もまともに話すことができない。
顔がほんのり赤くなって、上がってしまう。
何度心の中で、「気づいてくれ!!」と叫んだことか・・・。
もう、彼女は卒業してしまう。
せめて、せめて思いをうち明けよう、それで結果が駄目でもスッキリするさ。
駄目もとの告白・・・。
彼女が『はい』と答える。
小さな身体がさらに縮こまって顔は赤くなってた。
- 40 名前:M 投稿日:2002年07月25日(木)05時30分29秒
私のことを、好きだという女性がいる。
彼女の名前は石川 梨華。
同級生で同じクラスの彼女は、いつも大人しくて可愛い子。
友達から聞いた話だから、それが本当かは本人に聞かないとわからない。
それよりなにより私は、梨華の事はなんとも思っていない・・・。
そうただの友達・・・。
私には、真里という好きな人がいたからだ。
- 41 名前:M 投稿日:2002年07月25日(木)05時32分27秒
私は、真里と付き合うことになった。
年が二つ上で背がとっても低い彼女。
歩いているだけでも可愛いらしい、仕草のひとつひとつが微笑ましい。
本当に大好きだった・・・。
彼女といるときは、本当の笑顔でいれた気がする。
そう心から笑顔で・・・今じゃ・・・信じられないぐらい。
付き合って2年が経った・・・。
彼女とはなにをするにも一緒にいた。
一緒に泣いたり笑ったり、ケンカもした・・・ほんの些細なことで。
でも、別れるなんてこと考えたこともなかった・・・。
私は彼女を愛していた。
- 42 名前:M 投稿日:2002年07月25日(木)05時34分41秒
- 彼女は音楽が大好きだった。
「ねえねえ!よっすぃ〜、浜崎あゆみ超カッコ良くない?私好きなんだ詩がとってもいいの!」
「そういえば、最近ファッションもあゆっぽくなった気がする」
「よくぞ分かった!!私はハマッたら形から入る方だからねっ!キャハハハ!」
可愛らしい笑顔で私に話しかけてくる。
この時が私の中で一番好きなとき・・・。
彼女が笑っている姿がなにより好きだった。
「今度ねえあゆの新しい曲出るんだよぉ!!」
「どんな曲?」
「題名がね『M』って書いてマリアだって!よっすぃ!わ・た・し・の名前は?」
「真里・・・マリ?なるほどねっ!」
「正解!なんか運命っぽくない?マリア!なんてどうせならマリにしろっ!って感じじゃない?」
「はいはい!分かった分かった!」
「なによぉ!その言い方ぁ」
真里がぷう〜っと頬を膨らます。
この仕草もまた可愛いんだ・・・。
- 43 名前:M 投稿日:2002年07月25日(木)05時37分17秒
「今度、カラオケ行こう!!早く覚えて歌いたいだ!『マリア』 」
「そうだね!今度ひさぶりに行こうっか!」
・・・でも、真里は歌ってくれなかった。
いや、歌うことができなくなった・・・。
真里は・・・本当に聖母(マリア)になっちゃった・・・。
真里が乗っていたタクシーが衝突事故を起こした。
聞いた話によると真里は・・・ウォークマンを聞きながら眠ってたんだって・・・。
昨日まで微笑みかけてきた彼女が突然いなくなるなんて・・・。
- 44 名前:M 投稿日:2002年07月25日(木)05時39分51秒
今でもどこかにいるようで。
「ウソだよ〜!」って笑顔で抱きしめに来てくれるようで・・・。
気持ちがぐちゃぐちゃになって心にぽっかり穴が空いたようで・・・。
わけわかんないよ・・・。
バカ、一回もマリア唄ってくれないじゃんよ。
唄ってくれなくてもいいから、、、起きてっていっても目を覚ましてくれない。
ジョークの塊っつーかほんと冗談ばっか言ってたから・・・起きてくれるって思ってた。
一ヶ月経った今も、夢に出てくる。
彼女は、淋しそうな顔して私に「ごめんね、ごめんね」って・・・。
それで目覚めるんだけど、出るもんは出ちゃうよね・・・。
目は腫れ放題だよ。
- 45 名前:M 投稿日:2002年07月25日(木)05時42分17秒
- 学校・・・今日も私は自分の机で何をするわけもなくただふさぎ込む。
「元気だしなよ・・・ひとみ」
親友の柴田あゆみが私を気遣う・・・。
「ありがとう・・・でも・・・」
「もう一ヶ月でしょう?そろそろ前を向かなきゃ・・・ね?」
「・・・うん」
「あの子じゃ駄目なの?」
あゆみはそう言うと視線をあの子に向けた。
そう、梨華だ。
落ち込んでいる私になにかと気遣い、話しかけてきてくれる。
何度か一緒に帰ったり食事したりしてる。
「・・・そうだね」
私の言葉を受けてあゆみは、座席に座っている梨華の元へと歩み寄る。
「石川さん!ひとみがね・・・今日一緒に帰ろうって・・・」
ま〜た、あのお節介が・・・。
まっ!あゆみらしいか。
- 46 名前:M 投稿日:2002年07月25日(木)05時44分25秒
放課後。
「今日、ありがとう。私すごい嬉しかった」
下校途中、梨華が笑顔で私に言う。
「そう?よかったね・・・」
すこしひどい言い方だったかも知れない・・・。
でもこんな態度しか今の私はとれない。
「あの、その、、、良かったら今日、ご飯でも食べにいかない?」
もじもじとした感じが可愛らしい・・・。
真里とは正反対だけど、告白したときはこんな感じだったなぁ。
「・・・・・・あの」
「あっ!ごめんごめん、それでなんだっけ?」
ついつい真里のことを考えてしまう・・・。
- 47 名前:M 投稿日:2002年07月25日(木)05時46分25秒
「あの、、、食事の事」
「ああ、ごめん今日は無理。バイト行かなきゃ」
真里とのデート資金のために始めたバイトだった・・・。
よく考えたら、もうする必要ないのかも・・・。
「そう・・・あのさ、吉澤さん」
「なに?」
「あの、元気だしてほしい・・・」
「・・・・・・・・・」
「つらいと思うけど、、、その、私じゃ駄目かな?」
「・・・どういう意味?」
いくら鈍感なわたしでもだいたいの事は分かっていたが一応聞いてみる。
「もうすぐ卒業だし、思いは伝えたかったから・・・勇気をだして、言います」
梨華は立ち止まって身体ごと私の方へ向く。
「吉澤さんの事ずっと好きでした・・・今でもその思いは変わりません」
- 48 名前:M 投稿日:2002年07月25日(木)05時49分58秒
顔を赤らめて一生懸命に梨華は私に伝えている。
その姿が2年前の私の姿を見ているようでつい見とれてしまう。
「・・・じゃあ付き合おうか?」
「え???は、、、はい」
梨華は少し不思議な表情で私を見たがそのあとさらに顔を赤らめて下を向いた。
はあ、私って最低だ・・・なにも彼女のことなんか思ってもいないのに、どうしてこんなこと言ってしまったのだろう。
真里のことを忘れるため? ううん、忘れたくない・・・。
遊び? ・・・そうなのかもしれない
頭の中で色々な思いが駆けめぐる・・・。
- 49 名前:M 投稿日:2002年07月25日(木)05時53分17秒
ねえ、真里・・・。
私はどうすれば、楽になるのかな?
教えてよ・・・ねえ。
ホント最低だね・・・私って・・・。
ねえ・・・
・・・真里
私、、、幸せになれるかな・・・。
終わり
- 50 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)05時57分10秒
- 以上です。
ほんと暗く暗く書かせていただきました。
最後強引に幕を閉じたのは、読者の方々に色々と想像を膨らませていただけたら・・・。
なんて思いあえてこんな形にしてみました。
機会があればまた書きたいなと思っております。
その時は明るめで(笑)
- 51 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)13時22分58秒
- >M
よかったです!暗めだけどしっかりまとまってるっていうか・・・
スレ立って5時間で3作品か・・・みんなこの勢いで頑張りましょう!
- 52 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)15時27分23秒
- 四人目いきます。
- 53 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)15時28分12秒
- 「時には失敗したビデオ操作のように」
- 54 名前:3 〜終幕〜 投稿日:2002年07月25日(木)15時30分08秒
- こうして、悪の化身チャーミー姫を倒した剣士ヒトミとユウコ姫は、末永く幸せに暮らしましたとさ。
- 55 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)15時30分41秒
- あれ?いかんいかん。
- 56 名前:1 〜激動〜 投稿日:2002年07月25日(木)15時32分19秒
- 昔々、あるところに、ヒトミとリカという、それはそれは仲のよい夫婦がおったそうな。
・・・
END
- 57 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)15時34分50秒
- いっぺんやってみたかったんです…。
とんでもないものうpしてスマソ。
- 58 名前:皐月 投稿日:2002年07月25日(木)16時44分04秒
- 初めて書いてみます。
読みにくいかもしれませんがよろしく。
タイトルは「ビー玉」です。
- 59 名前:皐月 投稿日:2002年07月25日(木)16時52分01秒
- ビー玉・・・・・
幼かったあの頃の私とあなたは一緒にゆかた祭りに行ったよね
あなたは水色の浴衣を着て、私はピンクの浴衣を着て行ったよね
一緒に手をつないで歩いた夜店・・・・
あなたは一軒の「ビー玉屋さん」で立ち止まったよね
「梨華ちゃん、ピンクのビー玉あるよ」
「ホント!?うわーい!あっ!よっすい〜!水色のあるよ」
「ホント!」
ホントに楽しそうに騒いだよね
あなたはピンクのビー玉を、私は水色のビー玉を買ったよね。
- 60 名前:皐月 投稿日:2002年07月25日(木)17時25分43秒
- いつしか時がたちあなたが引っ越す日が訪れた・・・
あの日私はずっと泣いてばかりであなたを困らしたよね。
あなたは私の前でおろおろしてたよね。
でも何か思いついたように私にハンカチを差し出しながら言ったよね
「梨華ちゃんのことが好きです。梨華ちゃんの笑顔が好き。だから笑って?」
笑えなかった
あなたはビー玉を差し出しながらこう言ったよね
「ウチはこのピンクのビー玉で梨華ちゃんを思い出すから、絶対。梨華ちゃんのことを忘れたとしても・・・。
梨華ちゃん・・・もう・・・ウチのこと忘れてもいいよ、それで梨華ちゃんがずっと笑っていてくれるなら
忘れてもいいから・・・。」
あなたは忘れられることが一番怖いって何度も言ってたのに・・・・
私の返事も聞かないままあなたは行ってしまったよね
私のあなたへの「好き」って言葉を・・・・
いつの日かあなたに会えるなら私は笑顔でそしてビー玉を差し出しながら言うよ
「よっすい〜が好き」
飛び切りの笑顔で言うよ。
- 61 名前:皐月 投稿日:2002年07月25日(木)17時27分45秒
- [あとがき]
本当に読みにくい文章ですいません。
今度書くことが出来る時はもっと勉強してから書きたいと思います。
呼んでくださった方々本当にありがとうございます。
- 62 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)21時28分25秒
- いかしてもらいます。短く・・・
- 63 名前:純白 投稿日:2002年07月25日(木)21時29分00秒
- そういえば、あの時から加護はずっと子供だったんだ。
初めて加護と会った時、本当に無知なガキだった。
仕事場だというのにはしゃいで、もともと子供が苦手な私は
こっちからは決して近寄る事もなく、殆ど無視していた。
でも、加護はこっちを常に気にしていた。
時たま感じる視線。けれど、それに気がつかない振りをして。
加護が近寄ってこようとしているのを感じるとあえて私は移動したりした。
関わりたくなかったんだ、はっきり言って。
馴れ馴れしく先輩にあたるメンバーに喋っているのにも
私はその場では何も言わなかった。
教育係。子供には子供をつけておけばいい。
後藤にまかせた。
一番何を教えたらいいか身をもってわかっているはずだ。
後藤につける。これは私と極力関わりを無くす手段の1つでもあった。
- 64 名前:純白 投稿日:2002年07月25日(木)21時29分32秒
「中澤さん。」
「…なに?」
仕事でもう数日一緒に過ごし始めたいつか、
加護が1人で話し掛けて来た。
体をモジモジと動かし、緊張しているのが目に見えてわかる。
私は言葉少なく返事をした。
「…あっ…。」
私の口調が怖く感じたんだろう。続く言葉がない。
私は黙って言葉を待ったが、一向にでてこなさそうだったので、
「…なんも用ないんやったら行くで。」
と言って、返事も聞かずに加護の前から姿を消した。
思えばあの時から。
加護は1人では私に話し掛けて来る事はなくなった。
辻と2人でつるんで私をからかうことはしても、
1人では何も関わってこない。
私が卒業する頃、収録以外の時、
私はメンバーの対応に必死だった。
加護以外のメンバーの。
- 65 名前:純白 投稿日:2002年07月25日(木)21時30分06秒
- ある収録の時、二人っきりで話をしなくてはならなかった。
ステージで待つ加護。
「加護ちゃんやないのぉ。」
私の声は優しく聞こえてますか?
「さっきはごめんなさい。」と謝る加護の顔は強張っていて。
私は笑ってごまかしていた。
終始ずっと。
大きなキティーを貰って、
私は笑っていた。
加護と思えと言われて、
私は笑っていた。
どうやら本当に私は加護が苦手らしい。
最後の最後まで。
本当にずっと子供の、加護が。
TVのままの加護が。
あの純粋さを、私の手で汚してしまいそうで。
私は加護が苦手なんだ。
- 66 名前:純白 投稿日:2002年07月25日(木)21時30分40秒
- ソロとなって、もう仕事で会う機会も減って、
ますますあまり話さなくなった。
それでよかった。
家に帰ると、他のメンバーに貰った物と一緒に
キティーが私を待っている。
そのキティーに、私は触れたことがない。
一つの汚れもない美しい白い顔がこっちを見ている。
何も言わず、ただじっと。
加護、ちゃんとあんたの言う通り、
キティーをあんたやと思ってるで。
だから汚れず、まっさらなままでおりや。
ちょっとでも汚れたら、私は壊してしまいたくなるから。
〜End〜
- 67 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)21時31分15秒
あえてすごく曖昧に書いてみました。
ありがとうございました。
- 68 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)22時17分17秒
- >小さな生き物
細かい描写と目をつけたポイントが好き。
けど、タイトルの“生き物”って(w
>M
>時には失敗したビデオ操作のように
>ビー玉
内容に関しては、特に感想なし。(「時には〜」はちょっと惜しい気もした)
構成として、無駄な行間は読みづらい。(Mとビー玉)
>純白
もう少し愛憎葛藤みたいな部分を深く見たかったかな。
それと、“苦手”から“汚したい”は、ちょっと飛び過ぎかも、その汚したい
心理の裏側に歪んだ愛情が……とか言うのがあれば、読みやすかったかも
- 69 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時13分53秒
- 「後藤!」
そう呼びかけられて反射的に振り返った後藤真希の頬に、パシンッと
乾いた音をたてて市井紗耶香の手の平が叩きつけられた。
「痛ったいなぁ。なにすんのさ、いきなり」
レコーディングスタジオのロビーで缶ジュースを片手にぼんやりと
ソファに座っていた後藤は、市井の突然の凶行に対しても、
打たれた頬を軽くおさえながら、先ほどまでと何ら変わりない
ぼんやりとした表情で薄いリアクションを返した。
うつむきがちの視線を床に落として、市井と目を合わせようともしない。
「何じゃない。わかんないとか言い出したら、もう一発殴るよ」
「今のって、殴るじゃなくて、叩くじゃない?」
あいかわらず目を合わせようとしないまま嘲笑するようにつぶやく
後藤を見下ろしながら、
「じゃあ、今度は殴る」
と、市井は拳を握った。
- 70 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時14分37秒
- 「殴る殴るって、イチーちゃん乱暴だね。女の子でしょ。
そういうのやめた方がいいと思うな」
「何、その態度?」
「べつに。いつも通りと思うけど。──それよりさ、なんで
いきなり叩かれたんだか、ぜんぜんわけわかんないんですけど」
やはり後藤は目を合わせようとしない。
斜に構えたまま、床に向かってしゃべっている。
「言ったろ。わかんないって言ったら殴るって」
「ふーん。じゃあ、イチーちゃん、またあたしのこと殴るんだ。
アイドルの顔をさ。仲間なのにね」
「仲間だからなおさらよ。あんたの性根、叩き直してやる」
「おお〜、怖わぁ〜」
「ふざけるのもいいかげんにしな」
「だから、いつも通りだって言ってんじゃん。イチーちゃんの方こそ
いいかげんにしてよね。なに怒ってんだか、わかんなさすぎ」
「あ、そう。あくまでもシラきるつもり? じゃあ言うわ。あんたの方から
謝れば許してやろうと思ってたけど、もう何言っても許さないからね」
「どうぞ。早く教えてよ、怒ってる理由とかいうやつ」
からかうような、挑発的な口調で答える後藤の横顔を
鋭く睨みつけたまま、市井は小さく息を吸いこんだ。そして、
- 71 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時15分42秒
- 「あんた、また私が持ってきたカップラーメン勝手に食べたでしょ!」
と、握った拳に力をこめて、言い放った。
「何それ? 知らないよ、そんなの」
後藤はやはり飄然と答える。その表情からは何も窺い知ることができない。
「じゃあ誰が食べたって言うのよ。プッチのメンバーは誰?
圭ちゃんと、 あんたと、私。で、その中で、断りもせずに
勝手に他人の物をいただいちゃう輩は誰? 圭ちゃん?」
「べつにプッチにこだわんなくてもいいでしょ、そんなの。
あたしでも圭ちゃんでもないんだったらさ、他の人に決まってんじゃん。
スタッフさんとかさ、楽屋泥棒みたいのとかさ、イチーちゃんの
ストーカーとかさ。なんでそこですぐあたしのせいってなるかな?」
- 72 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時16分20秒
- 「だから、私、さっき何て言った?
また、って言ったの。また。わかる?」
「そんなの2回だけでしょ。それに、もうしないって
ちゃんと約束したじゃん」
「4回中で2回だ。確率は?」
「ん〜。50パー?」
そこでようやく、後藤は小首を傾げながら市井と目を合わせた。
市井の睨みにもまったく動じた様子がない。
逆に市井の方が呆れきった様子で、深いため息をついてから、
ガックリと首をうなだれさせた。
「あんたね、初めてやりやがったときにも注意したよね。
勝手に他人の物を食うなって。食べるにしても、一言断るか、
あとで謝りなって」
「うん。聞いたことあるような気がする」
後藤のとぼけた調子にカチンときながらも、市井は無視して説教を続ける。
- 73 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時19分19秒
- 「で、次のときはちゃんと言うこときいておとなしくしてたと思ったら、
その次、私が持ってきたオニギリ勝手に食べたでしょ。しかも3個全部。
スタッフさんの差し入れがあるにも関わらず、わざわざ私のバッグの
中から取り出して」
「だって、おいしそうだったんだもん。っていうか、イチーちゃん、
差し入れあるのにどうして食べる物もってくるの?」
その日むしょうに食べたくなるものってーのがあるんだよ、
と以前にも言って聞かせた気がする言葉を呑みこみ、
市井はやはり無視して説教を続ける。
「しかも! そのとき、とぼけて知らんぷりしてごまかそうと
したでしょうが。あんたの記憶力はニワトリレベルか。それで、
今度こそ、もう絶対にしないって約束したよね。前のレコーディングの
ときは言う通りにしてたよね。そして、今日」
「改めて聞いてみるとさ、なんかケチくさい話だね」
「いいから聞けよ、魚顔した鳥頭のお嬢さん。
バツ、マル、バツ、マルっていう法則できたら、次の答えは?」
「意外とマル?」
「殴る。たとえあんたが犯人じゃなくても、殴る。決めた」
- 74 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時25分11秒
- 「ちょっとさぁ、たとえばだよ、たとえばあたしがイチーちゃんの言う
犯人だったとしてもさ、だからっていきなりビンタはないんじゃない?
たかがラーメンとかオニギリぐらいでさぁ」
「たかが? 私がどれだけ楽しみに……ほんのささやかなシアワセを
得ようとしていたかも知らず、それを、たかがだと?」
ギュッと握った拳をわなわなと震わせる市井を見て、後藤は少しひるむ。
ここまでの一連のやり取りの中で一貫していた後藤の態度が、
わずかとはいえ初めて崩れた。
それほどまでに市井の静かな怒りには迫力があったということだ。
「私の身になればわかるよ。ささやかでいいと思いつつ願うシアワセを
奪われたことに対する、このとてつもない憤りが。
その口惜しさたるや如何ばかりか!」
サムライ?──
- 75 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時25分46秒
- 「そんなささやかなシアワセを求める謙虚な私に比べて、
あんたは暇さえあればバクバクバクバク食いまくって、
今じゃ顔だって パンパンじゃないかさ」
「ちょっ! それとこれとは話が別でしょ。あたしの顔が膨らんだのは
イチーちゃんのカップラーメン食べたからじゃないでしょ。
今日の話とぜんぜん関係ないでしょ」
「ある! あんたには自制心が足りないんだ。それを修正しない限り、
あんたに明日はない!」
「そんなの決めつけないでよ。明日は誰にでも平等にやってくるとか、
たぶん誰かそんなふうなこと歌ってんじゃん」
「シャラップ! 黙れ! いいから座れ、ボニー」
「ボニー?──さっきからずっと座ってる」
- 76 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時26分30秒
- 「これからあんたに、とってもタメになる話を聞かせてやる。聞け」
「いいよ。いらない」
「昔々あるところに──」
市井は再び無視を決めこむようだ。
「いらないって言ってんじゃん」
「──とっても食いしん坊で、ヒトの言うことをぜんぜん
聞こうとしない魚がいました」
「さかな? まあ、魚だったら人のいうことなんて聞けないよね」
いらないと言いながら、結局、後藤は話に食らいついてきた。
「ある朝、魚は、店のおじさんとケンカして、海に逃げこんだのさ」
「のさ?」
「初めて泳いだ海の底はとっても気持ちがいいもんだったけれど、
未熟な魚はエサを得ることができずに、お腹をすかして──」
「ああ、わかった。はい、はい。えーと、誰だっけ?
シモン……達夫だっけ?」
「そんなところに突然目の前に舞い降りてきたエサに、
なんの注意も払わず食らいついた魚は、釣り人に釣り上げられて、
その場で食べられてしまいましたとさ」
「生? 生だよね? 内臓がアンコとかじゃないよね?」
- 77 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時27分20秒
- 「さあ、このお話から得られる教訓は?」
「キョークン?」
5歳児のごとくきょとんとする後藤に、市井は何のリアクションも返さない。
「えーとね……。目指せ500万枚!」
と、後藤は右手を高々と掲げてガッツポーズ。
瞬間、市井の右手の平が後藤の頭をクリーンヒットして、
スパンッと小気味いい音が鳴り響いた。
「痛ったいなぁ、もう。何さ、また叩いて。──イチーちゃんは
500万枚売り上げたくないの? すごいじゃん、シモン達夫。
っていうか、すごすぎ」
後藤は掲げていた右手を下ろして頭をさすりながら、
ふてくされた表情で口を尖らせる。
「もうね、呆れて何も言えないよ、私は」
「そう? じゃあ、怒るのもやめようよ。カップラーメンの話は
なかったことに。もちろん、あたしが食べたんじゃないけど」
- 78 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時28分06秒
- そこで市井は不意にどこか遠くへと視線を向けながら、
「なあ、後藤」
と、つぶやくように呼びかけた。
「ん?」
「私はとっても悲しいよ」
「なんで?」
「私はね、後藤真希っていう女の子は、もうちょっと大人なやつ
だと思ってた」
「あたし子どもだよ。だからそれはイチーちゃんの勘違い」
「うん。そうだったみたいだね。ほんと、ヒトの話をちゃんと
聞かなかったり、ろくに謝ることもできないような、とんでもない
クソガキだったみたいだよ。残念ながら」
「あ、ちょっとムカツク。っていうか、かなり」
「よし。うん。わかった。もういい。あんたはあんたの
やりたいようにさ、そうやって生きてけばいいよ。私はもう
あんたに干渉しないし、怒りもしない」
遠くを見つめていた市井は、ふっと目を閉じ、うなだれ、
腰に両手をあてがいながら、ふるふると首を振った。芝居がかっている。
- 79 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時28分57秒
- 「何それ? なんかそういうのってムカツク。そう。いいよ。
じゃあ、あたしもわかった。イチーちゃんがあたしを信じないって
言うんならさ、殴っていいよ」
後藤は立ち上がり、目を閉じてうなだれる市井を睨みつけた。
「何さ、カップラーメンぐらいでさ。いいよ。あたしが食べたんだと
思うなら殴りなよ。あたしが嘘ついてるんだって思うなら殴りなよ!」
すると突然、市井は顔を上げ、睨みつける後藤と視線を合わせた。
そして、「うん、わかった、殴る」と、己の眼前で拳を固めた。
- 80 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時29分41秒
- 「え? なに? ちょ、ちょっと待ってよ。
少しはチューチョするでしょ、フツー」
市井の変わり身に、後藤は狼狽して一歩二歩と引く。
「あんたの嘘なんか透けて見えるんだよ。私にはあんたの嘘がわかるんだ」
「何それ。そんなわけないじゃん。イチーちゃんエスパー?
エスパー市井?」
「いいか、教えてやる。あんたはね、嘘つくと目が離れるんだよ。
ミョーンって!」
背景にカミナリでも背負っていそうな勢いで言い放った市井は、
後藤の眉間をずいっと指さした。
- 81 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時30分12秒
- 「んなわけないじゃん!」
後藤はムキになって言い返してから、自分の眉間に指をあててみた。そして、
「あ……」
ぽかんと口を半開きにして、市井を見た。
市井は表情を緩めて、ニヤついた。
「バーカ」
ゆっくりと振り上げた手で、後藤のひたいをぺんと叩く。
「痛たっ!」
「騙されんなよ。ガキ。目ぇ離れる人間なんているわけないだろ。
妖怪か、あんたは」
「イチーちゃんの嘘つき! 詐欺師!」
「あんたの言うセリフか……」
市井は、笑っているのか怒っているのか呆れているのかわからない
複雑な表情をつくる。推定の比率は3:2:5くらいだ。
- 82 名前:いちいのてのひら 投稿日:2002年07月26日(金)00時31分09秒
- 「じゃ、そういうことで、さっさと200円払いなさいよ」
「えっ、200円? 高い! 暴利だ! ボッタクリだ! 訴えてやる!」
某上島竜平なみの迫力で叫ぶ後藤に対して、市井は、
「300円にする?」
と、クールに方眉を吊り上げてみせた。
「いや、あの、200円でお願いします……」
これまた某上島竜平ばりの勢いで、後藤はしゅんと小さくなった。
「ったく、世話の焼ける。──ああ、それと」
「ま、まだ何か?」
「さっきの、子門真人な」
「へっ? シモン? 何が?」
それと、市井のラーメン、260円だったんだけどな。
・おわり・
- 83 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月26日(金)00時33分31秒
- >>69-82
『いちいのてのひら』
出演 : 市井紗耶香・後藤真希
第7回短編集「嘘」でお蔵入りにしたモノ。
- 84 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月26日(金)00時36分51秒
- >いちいのてのひら
あんまり面白いんで、リアルタイムで追っかけてしまいました。
情景描写が少ないにもかかわらず、楽しい場面がどんどん浮かんできて
面白かったです。
- 85 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月26日(金)05時00分11秒
- 凄い。圧倒された。
会話だけで状況説明して、その会話さえも面白い。
個人的に忘れられない作品になりました。
- 86 名前:lou 投稿日:2002年07月26日(金)17時35分50秒
- 名前晒しときます。
ここで感想クレクレ言っていいのかわかりませんが、思うことがあったら言って下さい。
タイトルは「あるひとコマ」。
- 87 名前:あるひとコマ 投稿日:2002年07月26日(金)17時37分06秒
- 生暖かい風が頬を撫で、通り過ぎる。
すっかり葉桜と化した桜の木を少し揺らしながら通り過ぎた風に、柔らかな夏の香りが見え隠れする。
人気のない公園。
鳥のさえずりも、自動車のエンジン音も聞こえない、防音された個室のような空間に、安倍は一人たたずんでいた。
音のない個室の静寂を打ち破るであろう訪問者を、一人静かに待っていた。
時間を確かめるために、安倍は時計に目を落とす。
訪問者は、すでに少し遅刻をしている。
呆れ気味に視線を上げると、公園の砂場に小さな砂嵐が起こっていた。
渦を巻き、ほんの少しだけ流れる砂。
砂嵐と呼ぶほどの代物ではないけれど、ほかの呼び方はわからない。
- 88 名前:あるひとコマ 投稿日:2002年07月26日(金)17時37分57秒
- 約束の時間を十分過ぎた。
未だ、訪問者のくる気配はない。
安倍は腰掛けていたベンチから立ち上がり、砂場へと足を向けた。
先ほど起きた砂嵐の所為か、いびつな丘が出現している。
安倍はそっと、砂場を手でならした。
ふと、背後に気配を感じて安倍は立ち上がった。
そのまま視線を向けると、その先には待ちわびた訪問者。
いたずらがばれた時のような笑みを浮かべ、腕組みをして。
目を見張るほどの綺麗な足首が、砂場にわずかに埋まっている。
飯田は短く謝り、安倍の手を取った。
- 89 名前:あるひとコマ 投稿日:2002年07月26日(金)17時38分49秒
- ベンチに並んで座った二人の間では、会話は長く続かない。
邪魔をしない程度に吹いたはずの風でも、安倍と飯田は動きを止め、会話を止める。
腹立たしいほど静かな空間は、二人の望んだものだったのだろうか。
無意識のうちに二人に浮かぶ笑顔。
嬉しさの欠片も見られない笑顔。
沈黙を破ったのは飯田。
安倍の名を呼び、その小さな頭を引き寄せた。
引き寄せられた安倍の、のどのなる音が聞こえた。
今まで気ままに吹いていた風も、空気を察したか、金縛りにあったかのように動きを止めた。
音のない空間、二人が浮き彫りになっている。
- 90 名前:あるひとコマ 投稿日:2002年07月26日(金)17時39分50秒
- 自然の力をも動かし、音を無くした空間を作り上げた二人の元から嗚咽が漏れた。
安倍も飯田も、涙の中に相手の名前を溶け込ませている。
二人が溶け込んだ涙は、何も知らない地面に吸い込まれていく。
安倍も飯田も、空気中に相手の名前を振りまいている。
二人のちりばめられた空気が、公園の濁った空気と混ざり合った。
時間が経つと共に、二人の体も離れる。
悲しみの線を顔に色濃く残した二人は、力を振り絞って笑った。
悲壮な笑顔。
突然吹いたよろめきそうなほどの突風に、木々が笑った。
木々も泣いた。
- 91 名前:あるひとコマ 投稿日:2002年07月26日(金)17時40分43秒
- 覚悟を決めた飯田が立ち上がった。
覚悟を決めた安倍は立ち上がらなかった。
しっかりと相手を見つめながら、お互いがお互いに手を差し出す。
強く握られたお互いの手は、十秒ほど繋がっていた。
十秒後、安倍と飯田をつなぐ一本の橋が、静かに崩れ落ちた。
飯田が去って、安倍一人となった公園。
木々は静かに安倍を見守っている。
先ほどまで晴れ渡っていた空は、いつのまにか暗い幕を引き始めている。
勢いをつけてベンチから立ち上がった安倍は、ひとつ大きく背伸びをした。
泣き出しそうな空を一瞥しながら、歩を進める。
やや早足で、それでもしっかりと地に足をつけて。
ベンチの足元、飯田と安倍の座っていた部分には、小さな砂嵐が巻き起こっていた。
- 92 名前:lou 投稿日:2002年07月26日(金)17時45分49秒
- 以上です。
タイトル通りあるひとコマなのですが、どんなひとコマかは皆様の想像次第です。
こういう説明の一切ない文は嫌われる傾向が強いのでしょうが、自分にはこれしかありません。
短編バトルではここまで徹底できなかったので、投稿させてもらいました。
それでは。
- 93 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月27日(土)03時12分11秒
- >いちいのてのひら
小気味良いテンポが秀逸。うまい!!
- 94 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月27日(土)10時39分40秒
- >いちいのてのひら
ほとんど、会話だけで話をつないでいく技術はスゴイ!!
もしあったら、自スレ公開キボーン。
>あるひとコマ
雰囲気はある。この作品は好みが分かれると思う。自分は、安倍と飯田が誰かを失って悲しんでいるんだろうなということは分かったが、それ以上は・・・。
直接的な描写ではなくとも、もっと読者が”察する”ことのできるヒントがないと、物語に感情移入は出来ないのではないかと思った。
- 95 名前:どっかの作者。 投稿日:2002年07月27日(土)20時02分59秒
- 初めまして。musume−seekに久しぶりにきた者です。
久しぶりですが投稿してみようと思います。
題は「あなたという優しさの隣で・・・」
たかこんでいきます。よろしく!
- 96 名前:「あなたという優しさの隣で・・・」 投稿日:2002年07月27日(土)20時06分12秒
- あなたは優しい
誰にでも?
それとも私だけに?
そう思うほど優し過ぎる
でも・・・私には心地良いんだ
あなたという
- 97 名前:「あなたという優しさの隣で・・・」 投稿日:2002年07月27日(土)20時11分36秒
- あなたという優しさが・・・・
あなたの声
あなたのふいんき
あなたのなまり方・・・・
全部
全部
私には心地良いんだ
高橋愛というすべてが・・・
この心地よさをずっと味わいたいから
あなたの隣でずっといてもいいですか?
とりえもない
オチもない
こんな私があなたのそばにいてもいいですか?
- 98 名前:「あなたという優しさの隣で・・・」 投稿日:2002年07月27日(土)20時12分37秒
- [END]
- 99 名前:TACHIBANASI:TACHIHIROSHI 投稿日:2002年07月29日(月)01時46分22秒
- ある時私は言いました。
「梨華ちゃんって肌黒いよね。」
ある時私は言いました。
「飯田さんって人で態度変えてそうですね。」
ある時私は言いました。
「安倍さんって顔かわりましたよね。」
ある時私は言いました。
「矢口さんってすっごく顔変わりましたよね。」
ある時私は言いました。
「ごっちんって実は暗そうよね。」
ある時私は言いました。
「辻加護って区別つかないよね。」
ある時私は言いました。
「圭ちゃんって昔からキモキャラですよね。」
ある時私は言いました。
「よっすぃーって影薄いよね。」
そしたら、
そしたらこう言い返されました。
「あさみって知名度0だよね。」
おしまい
- 100 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月29日(月)01時47分05秒
- ちょっと動きが止まったようなので…
懲りずに1レス短編。
これで最後にします。ごめんくさい。
- 101 名前:天晴 投稿日:2002年07月29日(月)14時51分02秒
- 私が今いるこの場所は決して雨の降ることない、一年中が青空の地である。
窓から見える景色は、遙か彼方まで青い地平線が続き、地球が本当に丸いことを私に思い出させてくれる。
そして、この空間は光に満ちている。すべての物体がくっきりと、その輪郭を浮かび上がらせている。
私の親友だった、あの3人にもこの景色を見せてあげたかった。
私より、はるかに優秀でありながら、この景色を見ることが許されなかった、あの3人に。
- 102 名前:天晴 投稿日:2002年07月29日(月)14時53分27秒
- 目の下の青の海原に5頭の銀の鯨がゆっくりと泳いでいる。私の任務は、あの銀の鯨を狩ること。私に与えられた鯨狩りの銛は十八試局地迎撃戦闘機“震電”。鯨の本当の名前はB29。
伝説に白い鯨、モビー・ディックに挑んだ年老いた男の気持ちはどんなだったろう。今の私の気持ちに近かったろうか。
自分の技量に対する矜持と相手の力に対するおびえ。大物を仕留められるという喜びと引き替えに、賭ける己の生命。高い賭け金かどうかは分からない。
高度1万メートル。成層圏と言われる空間では気温はー50℃、気圧は地表の十分の一しかない。飛行服に電熱線をはわせた保温服を着込み、酸素マスクは必需品である。それでも、低気圧のために体の血管が開き、全身がむくんだようになっていく。B29の乗員は与圧されたキャビンの中で普段通りの日常行動がとれるというのに。
- 103 名前:天晴 投稿日:2002年07月29日(月)14時54分26秒
- 日本とアメリカの工業力の差と言ってしまえば簡単だが、こちらがやっと上ってきた高みに彼らは悠然と存在している。この戦争が勝てる戦であるとは、前線にいる人間として、もはや信じていないが、自分は自分に与えられた任務を果たすのみである。
《この空間は光に満ちている。
超絶的な何者かに(神と呼ぶなら呼べばいい)祝福された空間だ。》
私は操縦桿を押し倒して、B29に機首を向ける。
- 104 名前:天晴 投稿日:2002年07月29日(月)14時55分39秒
- 私に与えられた、ポセイドンの三叉銛、“震電”は、生鈍な刃物ではない。
まず、ジェット機と見まごうばかりの、空力学的に極めて抵抗の少ない、流線型のフォルム。
一万メートルまで15分で駆け上り、8500メートルでの巡航速度750kmのレシプロ機としては破格の速度。
六本羽根のプロペラを後ろに配置するという、エンテ式を採用することにより、機首前面に30ミリ機関砲という、破壊力の強い兵器を搭載することが可能となったという設計思想の先進性。超高速・強力な兵器を先頭に搭載するというコンセプトは、その後の世界中のジェット機の設計思想に受け継がれる。大日本帝国の航空産業が生んだ最後の仇花だ。
私に与えられた、日本空軍の最後の輝き。
- 105 名前:天晴 投稿日:2002年07月29日(月)14時56分45秒
- 一機のB29がこちらの存在に気づいて、猛然と機関銃掃射を仕掛けてくる。
(そんな、へろへろ弾に当たるかよ。)
わずかに操縦桿をひねり、機体を横にずらして避ける。こちらの速度についていけないらしく、機銃はあさっての方向を撃ちつづける。
(はん。)
照準器の中のB29の姿が大きくなる。射程距離に入った。
慎重にスロットルと操縦桿を操る。本当に、この飛行機は自分の手足のように動いてくれる。まるで羽根の先まで自分の血管が走っているようだ。
照準を合わせて、燃料タンク目がけて30ミリ機関砲を一射だけした。B29の燃料タンクには防弾処理が施されているが、30ミリ機関砲の弾の前には段ボール紙ほどの効果もあるまい。10発ほどの弾は全て白い残影を残して“銀色の鯨”の体内に吸い込まれていった。
一機目の獲物と高速で十字にすれ違い、機首を素早く上にあげて、高速離脱する。思った通り、B29は燃料タンクに引火し、搭載した爆弾にも誘爆したのか、一拍おいて大爆発して、ばらばらと飛行機の残骸を四散させながら真っ赤な火の玉となり地上界に堕ちていく。
- 106 名前:天晴 投稿日:2002年07月29日(月)14時58分22秒
- 《この空間は光に満ちている。
超絶的な何者かに(神と呼ぶなら呼べばいい)祝福された空間だ。》
(祝福された空間から堕ちていく者に幸あれ。)
大爆発して火の玉となった一頭の“銀色の鯨”に巻き込まれるようにして、もう二頭の鯨が爆風に押されてバランスを崩し、爆発物をその体に当て無惨な穴を胴体に開けて、地上界へと相次いで堕ちていく。途中で、やはり火の玉になるのが見えた。遙か下界で爆発音がする。
(God bless you.)
本来なら一機がやられても、その巻き添えを食わないように互いに十分距離を置いて飛行する事が鉄則なのだが、日本空軍の防空能力をなめて密集陣形で巡航しているから、そういう目に遭うのだ。
残りは、あと二機。
- 107 名前:天晴 投稿日:2002年07月29日(月)14時59分50秒
- いったん待避した高々度から再び、銀色の鯨の待つ海原へと降りていく。機関銃による反撃が厳しくなった。一瞬して3機の友軍機が堕とされているのだ。不安感と恐怖感に身が焼き焦がれるようになっているのが、手に取るように分かった。
(戦場では相手に呑まれて時点で、もう負けなんだよ。)
激しくは撃ってきているが、全く有効打とはいえない。ただ、弾幕を作っているだけだ。
(噴進弾を使うか。)
基地を飛び立つ前に、横須賀の空技敞からやってきた技術者に、もし機会があったら使ってくださいと言われて二発だけ搭載したものだ。
噴進弾とは今の言葉で言うなら、空対空ミサイルである。しかし、赤外線ホーミングもついてない非常に原始的なものだ。撃ったら撃ちっぱなし。しかし、機銃よりは破壊力と射程距離が長いというメリットもある。
- 108 名前:天晴 投稿日:2002年07月29日(月)15時02分07秒
- 発射ボタンのカバーを上げて、撃てる体制にする。
照準を合わせる。機銃に比べて初速が早いので、やや上向きに見越し発射してください。むしろ直線上に目標を置くぐらいでいいですという、技術者の言葉を思い出す。まあ、初めて使うが何とかなるだろう。
銀色の鯨の横腹を目がけて、ジャパン・ネイビーグリーンに塗られた矢が放たれた。ロケットの炎を吹き上げてほぼ一直線に目標に向かって飛んでいく。
当たった。
2、3秒ほど遅れて、腹底に響くような着弾の衝撃音が伝わってきて、銀色の機体はまっぷたつに折れた。体内に搭載された爆弾が誘爆する。これまた火の玉と化す。
(生き残るには、あんたの信じる神の恩寵が足らなかったな。)
残るは一機。
- 109 名前:天晴 投稿日:2002年07月29日(月)15時03分42秒
- もう諦めたのか、残る一機は逃げの体制だ。弾倉を開いて爆弾を捨て始めた。少しでも身軽にして、逃げ足を早くしようとする腹だ。
(逃げられる訳ないだろ。)
冷笑する気分だ。
(いや、絶対逃がさない。)
B29に挑んで、悔し涙を飲んだ先輩、そしてアイツのためにも日本の国土に侵入してきたB29は一機も逃さない。
泡を食って逃げだした最後のB29の背後から追尾する。機銃掃射は相変わらず激しい。
(はん、弾を無駄使いしてるな。)
進路を上に取り、鳥瞰の体勢を取れるように持っていく。自分より上を飛べる飛行機はないと油断しているのか、上部の防御は手薄だ。噴進弾はあと一発残っている。
(噴進弾で片を付ける。)
急降下をする。噴進弾発射。雷撃の際の魚雷発射の要領と同じだ。
急速離脱。
背後で爆発音がした。
(God bless you)
空間は、また再び静けさを取り戻した。
- 110 名前:天晴 投稿日:2002年07月29日(月)15時05分02秒
- 無線機のスイッチをいれて、連絡を入れる。
「紺野上飛曹。B29を5機撃墜。今から基地に帰還いたします。」
私の名は紺野あさ美。厚木基地の首都圏防空隊302空所属の飛行機乗り。
他人はB公落としの紺野なんて呼ぶが、ただ、自分はただ悪運が強くて生き残っただけだ。自分より、もっと優秀なパイロットはいた。あの3人のように。
霞ヶ浦の学校では、自分はいつも落ちこぼれだった。でも、あの3人がいたからこそ、自分はパイロットになれた。嬉しいときも、悲しいときも、悔しいときも一緒にいた4人。
この景色を4人で見たかった。
- 111 名前:天晴 投稿日:2002年07月29日(月)15時07分29秒
- 《この空間は光に満ちている。
超絶的な何者かに(神と呼ぶなら呼べばいい)祝福された空間だ。》
高橋。4人の中では一番優秀でリーダー格だった奴。最後までなまりが抜けなかった。海軍飛行兵の憧れの空母乗りになったけど、一番早く、南の海で空母と共に死んでしまった。今頃は南の蒼い海の底で眠っているだろうか。
新垣。ちゃっかりしていたところもあったが、どこか憎めないお調子者。故郷の沖縄本島守備戦の防空支援に自ら志願して赴き、敵の圧倒的な鉄の雨に打たれて死んでしまった。今頃はふるさとのさとうきび畑か、それとも、ふるさとの海のサンゴ礁に抱かれているんだろうか。
小川。クールでいてホットな男気のある奴だった。帝都防空戦で1万メートルをゆうゆうと飛来してくるB29に、上昇高度性能に劣る雷電で立ち向かい、最後はB29に体当たりして運命を共にしてしまった。帝都の土に還ってしまった奴にこそ、この震電に乗るのがふさわしい。
願わくば、3人の魂が私と共にあるように。
3人の魂が祝福されていますように。
《任務終了》
- 112 名前:海野コバルト 投稿日:2002年07月29日(月)15時10分43秒
- 夏の空を見ていたら、こんな話を書きたくなりました。
題名は“あっぱれ”じゃなくて“てんせい”です。
本当の航空機のプロが見たら変なところが多いと思うけど、そこはそこといういうことで。
それから、紺野以外の5期メンファンには申し訳ない。勝手に殺してしまいました。でも、おいしい役だと思うんで受け入れてください。
銀で中澤姐さんが、なぜかロシアの諜報機関につけねらわれるという変な話を書いてます。よろしければ、そちらのほうものぞいてみて下さい。
- 113 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月29日(月)15時16分13秒
- >天晴
久しぶりにこの手の作品を読めて面白かった。
気になったのは英語使うなよ〜ってこと(w
このジャンルでは青倉庫「パイロット紗耶香」なんかお薦め。
- 114 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月29日(月)18時46分33秒
- 次よろしいでしょうか?
タイトルは「夏の記憶」です。
お目汚しですが…
- 115 名前:夏の記憶 投稿日:2002年07月29日(月)18時47分23秒
えっ?
…恐い話?
あるよ。
っていうか〜
なっちはっきり覚えてないけどさ〜。
恐い話っしょ? あっ、でもあんまり恐くないかな〜。
えっとね、もう随分昔の頃だからなっちよく覚えてないんだよね〜。
ほら、子供のときの記憶って、色々と脚色しちゃったりするっしょ?
だからね〜
でもね、随分昔から気になってて…
あんまり気持ちいい話じゃないから、何時もは忘れてるんだけど…
- 116 名前:夏の記憶 投稿日:2002年07月29日(月)18時48分07秒
子供の頃の話なんだけどさ。
ほら、なっちって子供のころ室蘭に住んでたっしょ?
周りは海と山ばっかしで…
そりゃあ自然に囲まれてのびのびと育っていいんじゃない?って意見もあるんだけどさ、
なっち、どっちかというと都会の暮らしにあこがれてたんだわ〜。
お母さんの雑誌なんかに乗ってる都会の人って、なんかすんごくかっこよくって、
なっち、幼稚園に入る頃からず〜っとそんな都会っ子になりたかったんだ。
そんな頃だったのかな?
東京から一人の女の子がやってきたんだ。
- 117 名前:夏の記憶 投稿日:2002年07月29日(月)18時48分46秒
夏?
夏休みだったのかな〜。
その子、どっか親戚のうちに遊びに来たんだと思う。
名前がね〜
覚えてないんだわ、これが。
ただ、室蘭に居る子とは全然違うというか、おしゃれでさ、
やっぱ東京の人は違うな〜と思ったのは覚えてるんだな。
でさ、やっぱりそういう子って苛められるんだよね。
えっ?なっち?
なっちは苛めないよ〜。
逆に一生懸命かばったりしてさぁ〜。
ねぇ、ちゃんと聞いてる〜?
もぉ〜
でね、なっちその子とすんごく仲良くなったんだ。
もう、毎日なっちの秘密の場所で遊んでたんよ。
- 118 名前:夏の記憶 投稿日:2002年07月29日(月)18時49分24秒
初めはさ、その子綺麗な服着てたから、一緒に泥だらけなんかならなかったんだけど、
そのうち、そんなのお構いなし!って感じで泥だらけになって一緒に遊んでたんだ。
でもね、その子絶対財布だけは、すごく大事にしてたんよ。
それがさ、小さなバッグ!見たいな感じで、真っ赤な皮に、キラキラ輝く金の鎖の取っ手。
それと、こんなチョコンとしたやっぱり金色の留め金。
すんごくかっこよかったな〜。
今考えると、あれやっぱりブランド品だったんかもしれないね〜。
なっちが初めて見たブランド品だったのかも!
なっちなんか、そのころ財布どころかお金すら持ったことなかったんよ。
だから、すっごく欲しかったんだ〜。
でもさ、人のもの取っちゃいけないってことは、もうその頃分かってたし、
その子も絶対汚さないように、無くさないように大事に大事にしてたんで、
なっちも見せてもらうだけで我慢してたんだ。
もちろん、家に帰ったらお母さんに思いっきり駄々こねて強請ったんだけどね。
でもさ〜、そんなものあのころ室蘭にあるわけないし、札幌でも見たことなかったね。
あの頃は
- 119 名前:夏の記憶 投稿日:2002年07月29日(月)18時50分15秒
でさ、その子が帰る前の日だったのかな?
もう一回だけ、その財布を見せてもらおうと思ったんよ。
でね、何時もの場所で、その財布を手にとって眺めていたら、
どうしてもなっちその財布が欲しく成っちゃって…
財布がさ、なっちと一緒にいたいよ〜って言ってるのが聞こえてきてさ。
そっからの記憶がなんかさ〜
わかんないんだよね〜。
えっ?
その子?
帰ったんじゃないのかな〜。
でも、死んじゃったって聞いたような…
うん。それだけの話だよ。
- 120 名前:夏の記憶 投稿日:2002年07月29日(月)18時51分03秒
でもね、なんか時々なっち思うんだ〜。
子供のころ、忘れちゃいたいほど恐いことがあったような気がするんだ。
それが何なのか、わかんないんだけどね。
何時もあの子と遊んでいた池…どっちかというと沼かな?
…ひょっとしたらなっち…
ううん、なんでもない。
なんでもないよ。
はい、おしまい。
つまんなかったしょ?
ごめんね〜。
- 121 名前:夏の記憶 投稿日:2002年07月29日(月)18時52分54秒
(でもさ、こないだ実家に帰ったときに見つけたあの財布…あれって…)
〜夏の記憶〜 END
- 122 名前:あとがき 投稿日:2002年07月29日(月)18時53分38秒
この話は作者の記憶を元にしました。
といっても、作者の場合出てきたのは財布ではなく、右手の取れたウルトラマンの
人形でした。もちろん、都会のその子は生きているとのことです。
たぶん…
- 123 名前:どっかの作者さん 投稿日:2002年07月29日(月)19時48分42秒
- 「夏の記憶」 なんともいえないほどいいです。てゆーかこれは怖い話なんですかね?
ほら、最初に怖い話って書いてあったから・・・・・・
私も書いてみようと思います
タイトルは「トライアングル」です。
- 124 名前:「トライアングル」 投稿日:2002年07月29日(月)19時53分37秒
- いつ頃からかな
あなたに隠れて紺野と会ってるのは・・・・
「梨華ちゃん、帰ろ」
いつものパターン
でも違うのは
「ちょっと待ってて」
そういう私だった
それから紺野のいる控え室に行くの
「紺野・・・今日・・・又会えるかな?」
するとあなたはすごい嬉しそうに微笑むの
「はい。よろこんで、ではまたあの公園で待ってますから・・」
「うん。じゃ・・」
- 125 名前:「トライアングル」 投稿日:2002年07月29日(月)20時02分21秒
- そういい残して私はよっしぃ〜が待ってる楽屋へ急ぐの
バンッ
ドアを開けると矢口さんと楽しそうに話しているあなたの姿が見えた
「あ・・梨華ちゃん、どこ行ってたのさ。帰る用意した?」
「ごめん。ちょっとトイレ行ってた。ちょっと待ってて」
あなたは分かったという代わりにまた矢口さんと話し始めた
「よっしぃ〜。終わったよ。帰ろ」
「うん」
「「お疲れ様でした」」
帰る途中私達はたわいも合い話をして楽しんだ
「ねえ・・・梨華ちゃん。今日泊まってもいい?明日朝早いから・・・」
「うん。いいよ、よっしぃ〜も大変だね。電車乗って30分でしょ?」
「まあね。梨華ちゃん夕ご飯食べた?」
「へ?いや・・・まだ」
「じゃ。ひとみ特製カレーを作って差し上げましょう」
「何それ?」
- 126 名前:「トライアングル」 投稿日:2002年07月29日(月)20時14分56秒
- 私達はお腹を抱えて笑った
でもね・・・その笑顔は本当じゃないの・・・
家に帰ってひとみちゃんがカレーを作ってる
「ねえ・・・まだ時間かかる?」
「う〜ん・・・あと20〜30分ぐらいかな?」
「じゃ・・・お風呂先はいってもいいかな?」
「ん?いいよ」
あなたはカレーに夢中で私なんか見てない
今日だけじゃない
ずっと・・・
上着から携帯を取り出してお風呂場に急ぐ
「もしもし?紺野?」
『石川さん!?どうしたんですか?こんな時間に・・・。吉澤さんと一緒じゃ・・』
「今、お風呂に入るって電話かけてるの。紺野の声が聞きたくなって・・・・」
『今日会えるのに・・・・』
紺野の声はなにか嬉しそうだった
「紺野〜・・・・会いたいよ・・・・」
『石川さん・・・・』
「梨華ちゃんーーーー!!!カレーできたよ!」
「やばっ!」
『石川さん・・・・又後で・・・』
「うん・・・」
ピッ
切ない
私は即行お風呂に入って出た
ふう・・・・・
- 127 名前:「トライアングル」 投稿日:2002年07月29日(月)20時23分27秒
- お風呂場から出てよっしぃ〜の待ってるリビングに急ぐ
「あ!梨華ちゃん!カレーすごい上手く出来たよ!食べてよ」
「わあ・・・おいしそう・・・じゃ・・いただきまーす」
パクッ・・・もぐもぐ・・・
「ん!おいしい!」
「ほんとー!よかった!」
「よっしぃ〜も食べてみなよ」
「うん」
はあ・・・・
ため息が出る
あなたはすごい幸せそうな顔をしながら私を見てくる
「おいしいけど、こっちの方がおいしそう」
そう言ってあなたは私の横に座る
「ねえ・・・」
分かってるよ・・・・
眼を閉じてあなたが口付けるのを待つ
「ん・・・・」
そんな熱っぽい目で見ないでよ
私は心ここにあらずといった感じだった
あなたが行為を犯している間・・・
ずっと・・・・・
- 128 名前:「トライアングル」 投稿日:2002年07月29日(月)20時34分34秒
- あなたのリズム正しい寝息が聞こえてくると私はそっとあなたの腕から抜けた
はあ・・・・
綺麗な寝顔で寝ているあなたを見てため息
服を着てそっと物音をさせないように部屋を出て行く
ごめんねよっしぃ〜
こんな罪な女で・・・・
紺野にあえると思ったら自然にスキップをしていた
待ち合わせの公園に着くと紺野はブランコに乗っていた
悲しそうな瞳で星空を見上げているあなた
胸がきゅんと鳴った
ゆっくり紺野に近づく
私に気がついたのか紺野はさっきの顔とは違って嬉しそうな顔をして私を見つめた
「石川さん」
ブランコに乗ったまま呼んでくるあなた
私もあなたの横のブランコに乗った
「ごめんね。遅くなっちゃって・・・」
「いいですよ。・・・・久しぶりにブランコ乗れたから・・・」
「うん。私も・・・・」
- 129 名前:「トライアングル」 投稿日:2002年07月29日(月)20時40分53秒
- きぃ・・・・
音がして紺野はブランコから下りて私の目の前にたった
「石川さん私はあなたが好きです。ずっと・・・・これからも・・・」
「うん・・・」
私は紺野に抱きついた
紺野は優しく抱き返してくれた
「紺野・・・・・」
私達は口付けた
時間を忘れるように
「石川さん・・・・あなたを独り占めしたいです。我慢なんてしたくない。自分だけの物にしたいです」
紺野は泣きながら訴えた
私はただ頭を撫ぜてあげる事しか出来なかった
自分が無力だと一番感じた
- 130 名前:「トライアングル」 投稿日:2002年07月29日(月)20時52分05秒
- あれから私達は帰った
私はよっしぃ〜の元へ・・・・
仕事場に行って雑誌に目を通し始めた頃だった
「あの・・・石川さん、吉澤さん・・・ちょっといいですか?」
紺野から言って来た
控え室でよっしぃ〜が来るのを待った
紺野は何かぶつぶつ言っててじゃまできなかった
バン
「紺野・・話って?」
すっと紺野が立ち上がる
「私は石川さんが好きです。でも石川さんはあなたと付き合っている。
私はじゃましません。あなた達の中を壊そうなんて考えません。
私は正々堂々勝負します。
あなたが石川さんを泣かしたら私がもらいますから・・・」
紺野は一気にそう言ってよっしぃ〜のほうをキッと睨んでいる
「・・・・夜中に梨華ちゃんが出て行ってるのを知ってる。悔しかった・・・
ウチは今のままがいい・・・・ずっと・・でもさ・・・・梨華ちゃんの気持ちは
紺野の方にあるんだよ・・・だから・・・私は友達でいい・・・梨華ちゃんのそばに入れるだけでいいから・・・」
- 131 名前:「トライアングル」 投稿日:2002年07月29日(月)20時58分33秒
- 紺野は睨んでいた眼をふっとやわらかくしてほほえんだ
「石川さんは私と吉澤さんの間で揺れてます。勝負ですよ」
「そうだね・・・勝負か・・・」
「そうよ・・・勝負よ!誰が私を取るのでしょう?」
笑いが戻った
私の好きな紺野の笑顔
私の好きなよっしぃ〜の笑顔
いつか・・・いつか・・・
この関係が壊れる日が訪れても笑い会えるよね・・・
ずっと・・・・
- 132 名前:「トライアングル」 投稿日:2002年07月29日(月)21時00分35秒
- END
[あとがき]
久しぶりに書いたので読みにくい点があると思います
申し訳ありません。
また勉強してからここで書きたいと思います(笑
では、またいつか・・・(笑
- 133 名前:最高の快楽 投稿日:2002年07月30日(火)14時47分03秒
…目の前には安らかなる美少女が、真っ赤なじゅうたんの上に横たわっていた。
「………」
安らかなる表情。閉じられた瞳。ただ眠っているかのような姿。
この世のものではないかというぐらい彼女は美しく、そして何より清らかだった。
真紅の海は今もなお辺りを飲み込むように広がっていく。
私の純白のドレスもその飛沫が舞い散る。
非現実的な光景、それでも否定できない現実。
もしかしたらずっと前からこうなることを望んでいたのかもしれない私。
…私は、あなたを殺したいほど愛していました…
- 134 名前:最高の快楽 投稿日:2002年07月30日(火)14時48分40秒
- どれぐらいの時が過ぎたのだろう。
彼女の顔からは血の気が引け、青白いにも関わらず今だ美しい。
まるで別世界のような、感覚と時間が流れる中、彼女だけはただ静かに紅い血の海に
静かに漂っていた。
「……」
呆然としているようで、私の感覚は嫌に研ぎ澄まされている。
この光景から目も離さず、逃げ出したい気持ちさえも浮かばずただ一人冷静に
瞳に映していた。
…私の瞳は既に灰色か。彼女の姿を時が止まったように映し出すこの力の抜けた
瞳は黒とも白とも着かない色。
…体がけだるい。そして一番右手の平が重い。
まるで私の周りだけ地球の重力が二倍になったように、私の体は重くけだるかった。
数多の感覚からたった一つだけ体の中を蠢かし探るとそれは自然と今さっきも
述べた右手へと向かった。
- 135 名前:最高の快楽 投稿日:2002年07月30日(火)14時49分59秒
- 鉄の塊、比喩ではなく本当に鉄の塊を私の右手は掴んでいる。
そして人差し指はその場から離れない。
気のせいかそれとも自意識か、周りの空気が暗くよどんできたように思える。
私一人、この世の全ての物から置いていかれたような、排除された気分に陥る。
時の流れが私の周りだけ遅い事は明らかに事実だった。
血の気が引いていた体に徐々に血の気が戻り始める。それは意識的にすることではなく
体が、脳が自然と働き始めているだけのこと。
ドクンドクン…
鼓動は例えば日本の伝統の太鼓のように、私の体を強く叩きつけるが
私の体を動かしまではしない。
ずしりと思い鉄の塊はさらにその重さを今まさにこの瞬間倍近くに重量を変えていた。
…重い
持っていられないぐらいに重い。それもこれも全て私のせいか。
- 136 名前:最高の快楽 投稿日:2002年07月30日(火)14時51分46秒
- 「……」
綺麗な顔。その閉じられた瞳。
私の大好きな寝顔。安らかなる寝顔。
真っ白で、この世のものとは思えないほどに美しい…。
ねぇ、知ってる…?
私はあなたを愛していました。
あなたが私を好きな気持ちとは比べ物にならないほどに、私は深くあなたを
愛していました。その存在が狂おしいほど、あなたを愛していた。
私の存在はあなたなしでは語れない。今まであなたと出会っていなかった私の
16年間の人生、私がどう過ごしてきたのかさえも不思議でたまらないくらい。
どうしてこんなに不安定な自分になってしまったのか…
もしかしたらあなたに出会わなければ私はこれほど狂わなかったのかもしれない…
でももう遅い…私はあなたと出会ってしまった。あなたも私と出会ってしまった。
そしてあなたを私を裏切った。
だからこれは報復…
あなたは私の想いにこれっぽっちも気づいていなかった。
これほど狂おしいほどに愛した私の愛に…
そして、私も二度とあなたに会えない。これが…あなたの私への報復…?
- 137 名前:最高の快楽 投稿日:2002年07月30日(火)14時52分55秒
- 「………」
自分の右手がまるで機械人形のようにゆっくりと重力に逆らい動いていくのを
人事のように感じながら、私は彼女の姿から瞳を離さないまま一つ瞳から
何かが頬を伝ったのを感じた。それはとてつもなく熱く不思議なことに片方の
瞳からしか溢れなかった。
愛は人を救います。癒します。優しさで包みます。素敵な感情です。
でも時に理性ではとても止められないほどに狂い始めます。壊れます。憎みます。
知ってますか…?トランプの表でいう愛は裏は憎しみだということ。
何かのきっかけでそれは簡単に憎悪に変貌します。
私の愛はもしかしたらその変化の最中だったのかもしれません。
- 138 名前:最高の快楽 投稿日:2002年07月30日(火)14時54分05秒
パシュ――
意外にあなたの倒れた場面は瞳に熱く焼きつきました。
映画やドラマの演出なしでは、意外に人の体は死ぬ時呆気ないですね。
あなたの体が一瞬で後ろに反動をつけて倒れていったのを覚えています。
その動きはまるで自然の災害。雨による土砂崩れ、雪山での雪崩。
いったん勢いを感じたと思ったら目を見張る暇もなく一気に崩れていったのです。
殺したいほど愛してた。
憎いほどあなたに溺れてた。
そして私もまた、あなたに殺されたいほど愛に溺れていました…
愛しい人を殺した私の存在。
私の右手。そしてかけられた人差し指。
憎いといった感情は私の体から生み出される事はなく、ただ私の中には
名状しがたい一つの感覚だけが確かに残る。
最高の快楽。
愛しい人を自らの手で美しいままとどめておく術はこれほどにも
快感なことなのか。
END
- 139 名前:名無しで 投稿日:2002年07月30日(火)14時59分56秒
- [あとがき]
お目汚しになるのは確実に分っていたんですが勉強のためにもと
勢いで書いてしまいました…。
企画に誘われて載せちゃいましたがやっぱりやめとけば良かったかな…。
内容はありがちだし文章も全然ですし…鬱。
登場人物を明かしますと石川さん視点で書いたつもりです。
相手の人は…一応決まってますがあえて読んだ方のご想像に…?
それでは、お目汚し本当に失礼しました。
- 140 名前:どっかの作者さん 投稿日:2002年07月30日(火)20時20分11秒
- 相手は吉澤さんかな?
一気に読みましたがちょっと分かりにくい部分もありましたね。
悲しく、切ない気分になりました。
勉強がんばってくださいね。
- 141 名前:名無し男さん 投稿日:2002年08月02日(金)00時43分39秒
- 一通り見たけど、おもしれーよ!
カミングアウトぜひしてほしいんだけど・・・。
- 142 名前:オモイ 投稿日:2002年08月02日(金)06時59分24秒
- ねぇよっすぃー?
そんなに無理しなくてもいいんだよ?
- 143 名前:オモイ 投稿日:2002年08月02日(金)07時00分05秒
- 最近ごっちんとべったりしてなかったのもワケがあったんだね、やっと気付いたよ・・・・・
私がよく「ごっちんともっと仲良くしたい!」って言ってたのを叶えてくれたんだよね?
ごっちんにはもう娘。での時間が少ないことを知ってたんだよね?
ごっちんと仲良かったもんねよっすぃー・・・・・
- 144 名前:オモイ 投稿日:2002年08月02日(金)07時00分41秒
- 残された時間が少ないことを誰よりも知ってたごっちんは優しかったよ――可愛くて――綺麗で――
私とごっちんの2人で話してたときのよっすぃーは寂しそうだったね・・・・・
それでも、私のお願いを叶えてくれるために気を使ってくれてたよね・・・・・
無理してあいぼんと関西弁ネタとかやっちゃって・・・・・
それ、精一杯の強がりだったんだよね?
- 145 名前:オモイ 投稿日:2002年08月02日(金)07時01分14秒
- もう私のことなんかいいんだよ?
私のこんないまさらのお願いなんかどうでもいいんだ・・・・・
自分の大切な人と残り少ない時間を共有する――それが大事なんじゃないかな?
ごっちんも多分――ううん、絶対それを望んでるよ?
私はもうじゅうぶんに嬉しかったよ――よっすぃーの気遣いも、ごっちんの優しさも――
- 146 名前:オモイ 投稿日:2002年08月02日(金)07時01分45秒
- 今なら胸を張ってごっちんを送り出せる気がする
胸を張るって言っても、やっぱり泣いちゃうかも知れないけど――ううん、泣くのはわかってるけど――
気持ちの面ではだいぶ落ち着いたよ
だから――卒業のその瞬間まで涙はとっておくよ――
- 147 名前:オモイ 投稿日:2002年08月02日(金)07時02分23秒
- よっすぃーも早く素直になりなよ?
私はもう本当にいいからさ?
そんなに無理しなくていいんだよ?
―――終わり――――
- 148 名前:オモイ 投稿日:2002年08月02日(金)07時08分04秒
- 「あとがき」
この作品はもともとは、不治の病に侵された後藤の命が残り少なくて――みたいな話で、
石川が主人公になってました。本来はそのはずでした・・・・・・・
今回の卒業会見で感銘を受けました。
今の段階ではコメントがまったく見えてこない石川吉澤にはこういう気持ちがあるんじゃないか?
と思い、手直しを加えアップしてみました。
騒がれてる中、こういうのを題材にするのは気が引けましたが、言うなれば悔し紛れです。
賛否両論あるでしょうが、私はこれを書いて多少すっきりしました。
- 149 名前:名無し読者。。。 投稿日:2002年08月02日(金)08時07分54秒
- 朝から、泣かすなよ・・・・・・
- 150 名前:オモイ―加護― 投稿日:2002年08月02日(金)08時47分36秒
後藤さん?
- 151 名前:オモイ―加護― 投稿日:2002年08月02日(金)08時48分13秒
今なら分かる気がするよ、市井さんが卒業した時の後藤さんのキモチ――
- 152 名前:オモイ―加護― 投稿日:2002年08月02日(金)08時49分03秒
後藤さんが入って1年も経たない内に卒業していった市井さん・・・・・・・
それに加えて、私みたいな業界のしきたりとか言葉遣いから何まで知らなかった私の教育係・・・・・
私がうまくやれなくて、後藤さんに注意された時は素直に聞いていたつもりだったんだけどね?
心の中ではいつもどこかで「うるさい」とか思ってたんだ・・・・・・
それを表に出すことはなかったけど・・・・・かなり失礼な新メンバーだったよね?私・・・・・
今となってはそれもいい思い出だよ――
- 153 名前:オモイ―加護― 投稿日:2002年08月02日(金)08時49分40秒
市井さんが卒業していったあと、後藤さんしばらく落ち込んでたよね?
みんなに励まされて、マネージャーさんとかにも怒られて、つんくさんにも励まされて――
しばらくしたら、ホントにいい笑顔で接してくれるようになったよね――
- 154 名前:オモイ―加護― 投稿日:2002年08月02日(金)08時50分15秒
「市井ちゃんと約束したの、――後を頼んだよ――って・・・だからいつまでも落ち込んでられないっしょ?」
後藤さんは強いよね・・・・・
私もそうやって立ち直れるかなぁ?――多分ムリ――
何気なくつけてたラジオから矢口さんのANNSが流れてきたから、つい聞き入ってしまった
その放送は、気丈にも元気に放送する矢口さんの声が流れていた
ラジオから“ごっちん”という名前が聞こえてくる度――涙が込み上げてくる――
- 155 名前:オモイ―加護― 投稿日:2002年08月02日(金)08時50分46秒
生放送というにも関わらず、矢口さんは泣いた――
寂しいのは私だけじゃないんだよね?
矢口さんがタンポポやミニモニ。にどれだけ思い入れがあるかは十分知ってるよ
気丈に振舞っていた矢口さんの涙――私なんか泣き通しなのにね――
- 156 名前:オモイ―加護― 投稿日:2002年08月02日(金)08時51分20秒
今まで私の“お姉ちゃん”であってくれてありがとう――
願わくば、これからも――ずっとずっと永遠に――
- 157 名前:オモイ―加護― 投稿日:2002年08月02日(金)08時51分52秒
卒業していく人を惜しむのは初めての経験じゃないけど、それでも辛すぎるよ・・・・・
―――終わり―――
- 158 名前:オモイ―加護― 投稿日:2002年08月02日(金)08時57分33秒
- 「あとがき」
個人的に加護には思い入れが強かったんで、書いてて泣きそうになりました。
やっぱりこういう事態になると、悲しむ人がいる・・・・・そんなことを考えて書きました。
でもやっぱり、そういう姿を想像して書くのは辛いですね・・・・・・・
辛いなら書くな、って話ですが、悲しみのはけ口ってことで勘弁を・・・・・
>>149さん
寂しいですよねやっぱり・・・残された人のことを考えると・・・・・
ヘタするとみんなの話書くかも知れませんが、あまり気にしないでください。
- 159 名前:名無し読者。。。 投稿日:2002年08月02日(金)09時28分27秒
- また泣かされた・・・
- 160 名前:名無しで 投稿日:2002年08月02日(金)18時02分14秒
- >>140:どっかの作者さん
実は相手は後藤さんなんです…。
もう少し相手の描写を浮き立たせた方が良かったなと後で思いました。
それにしても何も知らない前に書いたのに何だか微妙な話になってしまって。。
- 161 名前:どっかの作者さん 投稿日:2002年08月02日(金)19時17分34秒
- >>名無しで
そうなんですか。すいません。微妙な話ですか?いえいえ。よかったですよ。
勉強がんばってくださいね!
- 162 名前:オモイ―辻― 投稿日:2002年08月03日(土)06時57分01秒
今思い出しても楽しかったね――
- 163 名前:オモイ―辻― 投稿日:2002年08月03日(土)06時58分02秒
一緒にゴハン食べにいったり、遊園地に行ったり、ツアー行った時に氷投げ合ったり――
- 164 名前:オモイ―辻― 投稿日:2002年08月03日(土)06時58分39秒
- 変に楽しい思い出しかないから別れるのが辛いのかなぁ?
ごっちんはどう?寂しい?
- 165 名前:オモイ―辻― 投稿日:2002年08月03日(土)06時59分15秒
- 娘。に入って一番最初に仲良くしてくれたのがごっちんだったよね・・・・・
私が甘える、ごっちんがそれを優しく受け止めてくれる――
飯田さんや矢口さんにはない、まったく別の温かさを持ってる人――
- 166 名前:オモイ―辻― 投稿日:2002年08月03日(土)07時00分01秒
- 急に卒業を知らされてかなり驚いたよ?
会見でも、声にならない声を発してたでしょ?情けないよね?
でもそんな私に楽屋で声をかけてくれたごっちん――
「まだあと50日もあるんだからさ?今からもっともっと遊びに行こ?」
と言って頭をポンポンと撫でてくれた
ダメだよごっちん、私また泣いちゃうよ?
- 167 名前:オモイ―辻― 投稿日:2002年08月03日(土)07時01分00秒
普段は美味しいはずの楽屋でのケーキも、今日は塩味しかしない――
―――終わり―――
- 168 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時29分55秒
- 気が付くと永遠と先の見えない廊下に立っていた・・・
廊下の片側には一定の間隔をおいてドアが並び、そのドアが廊下と一緒に
まっすぐと果てなく続いている・・・・・・・・・・・
それから暫く目的の場所目指してゆっくりと歩いている・・・
目的の場所が一体何処なのかはわからない、
だだ自分はそこに行かねばならないという意思だけで、歩を進めている・・・
歩きながらも、横目で規則的にならぶドアをみる。
何のへんてつも無いただのドア・・・・
1つ違うのは、一つ一つのドアの脇に「○○様 控室」と印刷された紙が張り付け
られている事ぐらい・・・・・・
- 169 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時31分03秒
- いくつか知っている名前もあったが、特に気にとめることもなく、
進んでいたが、やがて1つのドアに目が止まる・・・・
他のドアとは全く変わらないのだが、何故かそのドアの向こうが、
自分の目的地だと感じる・・・・・
暫くして目的地のドアの前に立つ。
ふとドア横の「モーニング娘。様 控室」というの張り紙を目に止め、
何故ここに向かっていたかという疑問は晴れると同時に、
大きな違和感が生まれた・・・・
だがその違和感を無視するように、体はかってにドアノブを回し始めていた・・・
- 170 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時33分20秒
- 「えっ!マジ!!・・・後藤っ!!!」
「かーーー!ごっつあんなんかーーーー!?」
「はずしたね!裕ちゃん!」
「・・・・・・・・・・・」
そこに待っていたのは、懐かしい顔の4人・・・・
「えっ!なんで市井ちゃんと裕ちゃんとあやっぺが・・・?
・ ・・・・それに福田さんまで・・・・・・・・?
どおしてここにいんのー!!!」
と叫んでみたものの、4人はあたしを無視してしゃべり続ける。
「いやーごっちんやとは、思えへんかったわー。
うちはてっきり次は圭ちゃんかカオリやと思っててんやん・・・」
「でもほんとに後藤?なんかあたしの知ってる後藤とイメージだいぶ
違うんだけど・・・・・」
「だからゆうたやろ!ごっちん妙な色気でてきとったって!」
「まあ、あやっぺの知ってる後藤はまだ子供だったからねー!
でもこんなに大きくなってくれて、かあさん嬉しいよ」
「・・・・・・・・・・・」
「みんなあたしの事、無視してない?・・・・」
- 171 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時35分08秒
- ちょっと悔しくなって、冷ややかにつっこんでみると・・
「ああー!すまん、すまん。せやったな・・・・・
じゃあ、皆いくで!」
「「「「せーのーー!!」」」」
「「「「モーニング娘。卒業おめでとーー!!!
あんど、おつかれさーーん!!!!!」
「えっ!・・・みんなごとーの卒業の為に集まってくれたの・・・・
・・・なんかうれしーよー!!」
卒業しても娘。の仲間として集まってくれる皆のあったかさに
感動して、涙腺が緩み掛けた時、
「・・・ちゃうで。」
「うん!違うよ。」
「ったく、そんな訳ないだろー」
「・・・違います・・・・」
「えっ!?・・・・」
- 172 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時35分44秒
- なあ、ごっちん。・・・今のうちら見ててもなんもわからんか?」
「・・・うん。・・・」
「ほんま鈍い子やでー。まったく!
ほんなら、紗耶香教え・・・・・」
「なんで?あたしが?」
「あんたごっちんの教育係やったやろー。せやから・・・」
「わかったよ。裕ちゃん・・・」
それから市井ちゃんはあたしに向き直り、ゆっくりとやさしく話かけてきた。
まるで、娘。に入った当初教育係だったときの様に・・・
それがなんだか懐かしくも嬉しくもあった。
「ねえ、後藤。あたし見て何か気がつかない?・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・若い。・・・」
「他の三人は?・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そう言われて、目の前の市井ちゃんからゆっくりと、そして落ち着いて
三人を見わたす。
- 173 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時36分16秒
- 今よりも金髪で少しショートの裕ちゃん。
写真誌でみたヤンママっぽいのとは違う、若若しいあやっぺ。
福田さんにいたっては、娘。加入以前にテレビで見たまま。
そして、目の前の市井ちゃん。
武道館で卒業した時のままの姿の市井ちゃん・・・・・・
「・・・・みんな、卒業した時のまんまだ・・・・・・・」
そう呟くあたしの肩に市井ちゃんはやさしく手を置いて、
「そう・・・ここは、“卒業した”娘。の楽屋なんだ・・・・」
- 174 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時36分49秒
- あたしはなんだか悪い夢でもみてるみたいに、ただ
「・・・・なんで。・・・・何此処・・・・」
呟やく・・・・・
「落ち着いて!後藤!ちゃんと説明するからさ・・・」
市井ちゃんの声がすごく遠く感じていた。
「まあ、しゃあないで紗耶香・・・始めは誰かてそうなる・・・・」
ゆっくりと裕ちゃんは立ち上がってそう言いながら近づいてくる。
「そうだよね。裕ちゃん始め来た時泣いてたもんね。・・・・」
あやっぺもそして福田さんも近づいてくる。
「それを言うなちゅうてんねん・・・」
恥ずかしそうに顔をそむける裕ちゃん。
「ねえ、後藤。あたし達がここにいて解かったことを
全部教えるからさ、理解できないかもしれないけど・・・・・
・・・・・・聞いてね。」
とやさしく問い掛ける市井ちゃんに、あたしは黙ってうなずくしかなかった。
- 175 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時37分27秒
- 「ってゆうことは、ここは解散・引退したかあるいは亡くなったアーティストや
アイドル達の楽屋が続いてるってとこなの?・・・」
車座になって聞いていたあたし思わずもらした言葉でこの状況の説明は途切れた。
「そうや。置かれている状況と場所は解かったようやな・・・・」
途中から引き継いだ裕ちゃんがそう言って話を締めた。
「じゃあ福田さんはもう何年も此処にいるの?・・・・・・」
そう言うと、ここでのはじめましての自己紹介をさっき済ませた福田さんが
「ここは時間の流れなんて、無いの・・・・皆年取ってないでしょ。」
と此処に来て初めて見る笑顔をみせた。
なんか少し切ない笑顔だったけれど・・・
- 176 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時38分05秒
- 「うちは結構気分良いけどな。絶対三十路には成れへんし!」
「でも相変わらず一番年上じゃん!」
「うっさいわ!ボケっ!!」
懐かしい裕ちゃんと市井ちゃんの会話に此処に来て初めて笑うと、
それを合図にしたように皆で笑いあった。
変わらないやさしさにふれて、少し安心すると
ふと1つの疑問が浮かんできた。
「じゃあ、あたしが会ってた卒業した皆は誰なの?・・・・・」
「それはな後藤。“娘。じゃなくなった”あたし達だよ・・・・・」
「意味分かんないよ。あたしが会ってたのは偽者の皆だったの?」
市井ちゃんは困ったようなそぶりで、頭を掻き始める。
- 177 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時38分43秒
- 「なんなの?わかんないよ?せっかくこれから頑張ろうと思ってたのに!
もう帰りたいよ。帰してよ・・・・・・・・・・・・」
「落ち着き!ごっちん!・・・・せやな推測でも教えたらなあかんわな」
それから裕ちゃんが話した話はあたしの理解を超えたものだった。
裕ちゃんの話は頭のあまり良く無いあたしにとって、すごく難しかったけど
市井ちゃんがあたしを抱きしめて頭を撫でてくれ、落ち着かせてくれてたので、
なんとか理解してきた。
一番ショックだったのは、あたしが本当の後藤真希ではないということ。
- 178 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時39分15秒
- 此処は現実の世界じゃなく、誰かのいや、
果てしなく続いている楽屋から推測するに、多くの人達の“記憶”の中かも
しれないという事・・・・・・・
そうなれば、時間が流れない事も、果てしなく続く廊下も納得できる。
娘。を卒業したあたしが此処にきたことも・・・・・
現実ではいないグループやアーティストを留めている場所・・・・・・
- 179 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時39分50秒
- 「でも、此処ってあたし達を閉じ込めておく為の“檻”なんじゃないの?」
そう言うあたしに市井ちゃんは、
「違うよ。後藤。・・・あんたは卒業後のあたし達も見てきたんだろう?」
「うん。でも・・・・・・」
「卒業してもあたし達はちゃんと自分達の道歩いてたんだろ・・・・」
「でも。・・・・じゃあ今のあたしは?
一体何者なの?・・・・・・・・・・」
すると市井ちゃんはあたしの頭をポンとたたきながら、
微笑みながら遠くを見つめる顔していた。
あたしが憧れていた顔で・・・・・・
- 180 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時40分28秒
- 後藤。あたしは・・・ううん。あたし達はこう考えているんだ。
・・・此処はあたし達を忘れたくないって人達が作ってくれてる場所・・・
・ ・・あたし達は・・・そう。娘。として頑張って輝いてた時を・・・・・・
・・・・・・・・・思いだしてくれる為に存在している・・・・・・・・・・・
つまり思い出がかたちになってとどまっているもの・・・・・・・・・・・」
「でも、それだけの存在なんて・・・・・・悲しくない?」
「そうかな?忘れられるほうが悲しいよ。
此処にいるってことは皆があたし達の事忘れてないってことなんだよ」
「思い出なんていつか忘れちゃうよ・・・・・・・・・」
- 181 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時41分34秒
- なにいってんの!後藤が卒業しても、娘。は頑張っていくんでしょう?
明日香やあやっぺやあたし、そして裕ちゃんが卒業しても娘。はずっと娘。
だったでしょう?後藤の場合もそう。・・・・・・・・
誰かがいなくなってダメになったなんて言われないように、もっと頑張る。
それが娘。でしょう。そんな娘。があるかぎりあたし達は消えない!
後藤だってそれが分かってるから、自分自身の新しい夢にむかって
卒業したんでしょう。」
「・・・うん。」
「じゃあ、仲間達と応援してくれた人達、これからもあたし達の事を
忘れないでいてくれる人達の事を信用しなさいっての!わかった。」
「うん!・・・・分かった」
「うん、うん。それでこそ我が弟子。我が妹だよ」
そういって頭をなでてくれる市井ちゃんになんか気恥ずかしくて、
あたしはテレ笑いした。
そうだね。あたしは頑張ったから、みんなが忘れられないくらい頑張ったから
此処にきたんだよね。
- 182 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時42分33秒
- あのー?お取り込み中悪いんだけど、うちらのことさっそく忘れてませんかー?」
「せやで!二人でいい雰囲気かもしだしてからに・・・・」
「まあまあ、裕ちゃん・・・」
此処には此処のしきたりちゅーもんがあることを新参に教えたるわ・・・フフフ」
裕ちゃんの不敵な笑いを聞いて、市井ちゃんはパッとあたしから離れ、
思い出したかのように同じ笑みを浮かべ、三人の中に加わる。
裕ちゃんがこういう時、ろくなことは無い・・・・・
娘。加入の時だって・・・・・・・
- 183 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時43分08秒
- あたしが戸惑ってると、裕ちゃんが
「さて、ごっちんは何で娘。やめたんや?」
と案外まともな問い。
「あたしはソロに専念する為に・・・・・・・」
といい終わらないうちに、
「「「「ソローーーーーーーーー!!!」」」」
「すごいですね!・・・・・」
「裕ちゃんとは違ってなんか風格あったもんね!」
「ほっとけや!・・・・・・・でも娘。ん時もやっとったけど・・うん!いよいよか」
「すげえな!市井としてはちょっと複雑だけど・・・・」
「ちょっとまってよ!市井ちゃんだって・・・・」
と又いい終わらないうちに、
- 184 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時43分54秒
- 「ちょいまち!フフフ・・・そっからが本題やねん!」
と裕ちゃん。
「うちらが一番知りたいこと、それはうちらのその後や!」
結局自分のことかい!って思ったけど、そうだよね。やっぱそれが気になるよね・・・
「えっと、福田さんとあやっぺは復帰はしてない。・・・あやっぺは・・」
「結婚したことはうちがゆっといたで!そんときのあやっぺの顔ときたら・・」
「もう!いいじゃんその話は!・・・いつまでも笑ってないでよ!裕ちゃん!」
「・・・くくっ。すまん、すまん・・・でうちは?」
「うんとねー、裕ちゃんはハロモニとかの司会でしょ。それから・・・」
「おお!まだハロモニでれんのかい!・・・んで?・・・・・・・・・」
「それからねー、んっと、・・・・・・女優!」
「女優!!くうー!聞いたか?女優やて、女優!!・・・なーはっはっはっはっ!!!」
- 185 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時44分36秒
- なんか機嫌良いからこのへんでやめとこう・・・・
主演女優じゃないけど、一応女優だしね・・・・・
「あと、なんか本とかも書いてた・・・・・」
「作家!!くうー!聞いたか?うーん多才やねー!!!なーはっはっはっはっ!!!」
あたしも童話とか書いたけど・・・・・・・・
言うのはやめとこう・・・・・・・・・・・・
最後に市井ちゃんに向き直った。
市井ちゃんは目を閉じてあたしの言葉をまってる。
「市井ちゃんは再デビューしたよ!」
「ほんと!やったー!!シンガーソングライター市井誕生だーー!!!」
と両手を高々とあげてガッツポーズした。
ほんとはたいせいさん達と組んでのユニットデビューなんだけど・・・・
言うのはやめとこう・・・・・・・・・・・・
福田さんとあやっぺには写真誌の件があったけど、
これもだまっておいた・・・・・・・・・・・
- 186 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時46分20秒
- 「ねえ?娘。のことは聞かないの?・・・・・・」
「おお!せやった!自分の事に浮かれてて忘れてたわ・・・」
「今、何人なん?」
「あたしの卒業時には・・・・・・・・・13人・・」
「多っ!!ぶわっはっはっ!多っ!!!」
「市井ちゃん!笑うこと無いじゃん!」
「「なんか、・・・・・すごいね・・・・・・・」」
「・・・・なんか、カオリや圭ちゃんやなっち・矢口に悪い事してしもたんかなー・・」
「いや、大丈夫だったって!!確かにカオリは胃薬と牛乳が絶えないっていってたけど、
圭ちゃんもおばちゃんキャラになってたけど、・・・・・・・・・・・
・ ・・楽屋がすごい事になってたけど・・・・・・・・・ちゃんとうまくやってたって!」
「なら、ええんやけどな・・・・・」
- 187 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時46分53秒
- ねえ!後藤!娘。や後藤達の曲教えてよ!!」
「うん!聞きたい、聞きたい!」
「あたしも聞きたいです」
「せや、ごっちんやったれや!うちん時までは全曲教えたったんけどな」
「・・・・・ミニモニ。も・・・・・・・・」
あたしがそう聞くと、裕ちゃんをのぞく三人が微妙な笑顔で笑った。
裕ちゃんは自身満々の笑顔だった。
裕ちゃんのミニモニ。・・・・・あんま見たく無いかも・・・・・
それからあたしは、裕ちゃん卒業後の娘。の曲や自分のソロ、
プッチやタンポポ、シャッフルまで全部振り付で歌った。
三人祭や恐竜音頭まで・・・・・・・
・・・・・・・・・結構楽しいかも・・・・・・・・・
そしてあたしは此処の住人となった・・・・・・・
- 188 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時47分39秒
- 此処の生活は結構快適だった。
おなかがへったら大好物はいつの間にか目の前にあるし、
太る事もないらしいので安心。
だから基本的に裕ちゃんとあやっぺは宴会状態だ。
それにずっと市井ちゃんともいれるし・・・・・
こんな良いとこ早く皆もくればいいのにって思っちゃう。
でも、とりあえずは皆いっぺんにきちゃだめだよ!
ゆっくり一人ずつ来てね!そうでないとあたし達も消えちゃうかもしんないからさ。
あっでも、よっすぃーはあたし的には早くきてほしいかも・・・・・あはっ。
ふと疑問が出来て、となりでギターの練習をしてる市井ちゃんが話かけた。
- 189 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時48分32秒
- 「ねえ、市井ちゃん!ごとー気になる事があるんだけど。いい?」
「なーに?いってみな」
「此処楽屋でしょ?皆なにを待ってんのかなーって思って」
「ふふんっ!知りたい?」
「なーにー?もったいぶらないで教えてよーー!」
「みんながあたし達の事思い出してくれるのを、待ってんだよ」
「そっかー、だから楽屋なんだね。ごとー納得したよ!」
「再デビューかー!だから最近頻繁に呼ばれんだなー!!
・ ・・くうーー!シンガーソングライターか!頑張れ!あっちのあたし!」
「・・・・・・・・・・・・・」
「ねえ、後藤?」
「んあ?なーに?」
「後藤が此処来たのって、いつ?」
「えーっと、2002年9月23日だよ」
「それって後藤の誕生日じゃん!」
「えへへー、そうなんだー!」
「じゃさ、自分の誕生日に娘。卒業してソロになったんだなー
かっこつけすぎだぞ!このっ!!」
「いいでしょ!結構気にいってんだなー、これが!」
「自慢すんなって!このっ!!」
「いったーい!そんなことすると次誰くるか教えてあげないから・・・
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ!やばっ!」
「えっ!なに?後藤もうしってんの?」
- 190 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時49分44秒
- 「うーん、ええっと、内緒!楽しみが減るでしょ!」
「なんだよ、まったく!まあ此処は時間の流れなんてないし、気長に待ちますか!」
「そそっ、そうだよ。のんびりとってね!」
「でも、その話裕ちゃんにはしないほうがいいぞ・・・・・・
酔っ払うといつも「ヤグチーはよこいー」ってうるさいから・・・・」
「・・・うん・・・わかった・・・・・」
圭ちゃんが来るまで後、向こうの時間で約半年・・・・・
三人そろって「ちょこラブ」もいいかもしんない・・・・
<END>
- 191 名前:in Room・・・ 投稿日:2002年08月03日(土)09時57分59秒
- あとがき
発投稿ゆえの乱文お許し下さい。
今回の事件に対する愚者の自己憐憫だと思って下さい。
以上、スレ汚し申し訳ありませんでした。
- 192 名前:for you 投稿日:2002年08月03日(土)15時20分15秒
- ごめんね。
最後まであなたのやさしさに甘えちゃってごめんね。
此処は本当に居心地がよくて、
何よりもあなたの側に居ることが幸せで、
今更、旅立たなければならないなんて思ってもいなかった。
このまま、此処に、あなたの側にいたかった。
でもそれは許されないことなんだって。
この場所に留まり続けることは出来ないんだって。
私たちの想いに関係なくこの世界は動き続けているから。
不安に押しつぶされそうで、
あなたにだけは打ち明けずにはいられなかった。
それが、こんなにもあなたを苦しめるなんて思わなかったから。
まるで笑い方さえ忘れてしまったかのようなあなたを見るのは
本当に辛かったけれど・・・
ごめんね、少しだけ嬉しかったんだ。
そんなになるほど私を想っていてくれたことが。
そして今、私のために笑顔をみせるあなたの瞳に
これまで以上のやさしさを感じることが出来るから
離れていても、もう大丈夫。
私たちはいつまでも一緒だね。
- 193 名前:for you 投稿日:2002年08月03日(土)15時21分46秒
ごめんね。
最後まで支えてあげられなくてごめんね。
ここが安住の地でないことも、
いつかは旅立つ日が来ることも
ずっと前から判っていたはずだったのに。
キミがいなくなるって考えただけで
それまで輝いて見えた世界が色褪せてしまった。
いつだって、ウチがキミを守ってあげるなんて、
格好ばかりつけていたけれど
いままで支えられてたのはウチの方だったんだね。
ウチらの気持に関係なくこの世界は動き続けているから。
身勝手な大人達が敷いたレールの上を
歩き続けるしか、今は出来ないなら、
ウチはもっともっと強くなる。
どんな未来が待っていても笑顔でキミを迎えられるよう。
まるでらしくない作り笑いを浮かべるキミを見るのは
本当に辛いけれど・・・
ごめんね、今は泣いたりしないよ。
ここからが本当の始まりだから。
そして今、旅立ちを前に流すキミの涙に
今までのような迷いを感じることが無くなれば
離れていても、もう大丈夫。
ウチらはいつでも一緒だよ。
- 194 名前:for you 投稿日:2002年08月03日(土)15時22分56秒
・・・END・・・
- 195 名前:for you 投稿日:2002年08月03日(土)15時28分36秒
- 初投稿ですので、至らない点はお許しを・・・
- 196 名前:どっかの作者さん。 投稿日:2002年08月03日(土)20時19分11秒
- 号泣!久しぶりに泣きました。
作者さん本当に初投稿ですか!?
申し分のない作品でした。
- 197 名前:for you 作者です。 投稿日:2002年08月03日(土)23時47分23秒
- >>196
レスありがとうございます。
記者会見でのよしごまを見て、思いつくままに書いてみました。
私の作品で泣いていただけるなんて・・・
私も現実のふたりをみていると涙が出てしまいます。
- 198 名前:Please smile again ... 投稿日:2002年08月05日(月)14時14分10秒
ちょっと待ってよ、って言葉届かない。
闇に消えていく背中に必死に叫ぶ自分はどこか荒れ狂っていた。
ねぇ、この世の中に、どうする事も出来ない出来事って存在するの?
運命は自分で切り開く物でしょ?いや、運命って言葉は後から付いてくるものでしょ?
話をしてくれなくてもいい。無理して笑ってくれなくてもいい。
ただ、側にいて欲しいだけなんだ。
側で一緒に同じ時を過ごしてくれているだけでいい。
そんな願い事も、儚く消えていってしまうの…?
「うっ…っ……うぅ……」
お願い。泣かないで…。
あなたの涙は見たくない。受け止めてあげたいけど受け止められるほどに
納得してない。
ずっと一緒だって確信していた夜。
同じ星の下で同じ時を過ごしたあの日々。
あなたの笑顔は永遠に側にあるものだと確信していた。
平凡な日々ほど簡単に壊れる物はないんだね。
平和ボケしすぎて身近な幸せをほんの少しだけ見失っていたみたい。
私は、あなたの隣で同じ空気を吸えているだけでいいんだ――
- 199 名前:Please smile again ... 投稿日:2002年08月05日(月)14時15分55秒
ねぇ、どうして…?
ずっと一緒にいるって約束したじゃん!!
ずっと…みんなはこれからも先ずっと一緒だって言ってたじゃん…!
なのに…それなのに……………どうして……。
君がいたからがんばってこれた。
君の存在は決して欠かす事の出来ない存在。
君がいなくなったら私は息を吸うことも出来ない。
別れは…一度だけでいい。
同じ時間を、より一緒に過ごしてきた君の存在は、何よりも私の中で大きかった――
現代は迷宮のラビリンス。
あなたは私の空気だった。水だった。全てだった。
時の流れは非情なほど残酷で、悲しみにくれることも出来ない。
『がんばるから』なんて、当分言えそうにもない。
END...
- 200 名前:名無し 投稿日:2002年08月05日(月)14時20分32秒
- [あとがき]
最初の文は一応吉澤さん視点の後藤さんへ、二つ目は矢口さん視点の保田さんへ
の内容になってます。
必死に押さえつけてる本音、みたいな物は…こんな感じなのかなと思いつつ
書いてみました。
お目汚しすいませんでした。
- 201 名前:どっかの作者さん。 投稿日:2002年08月05日(月)19時30分21秒
- 自然ですね・・・
いい感じです。私的にはですけど・・・
- 202 名前:復讐ハ誰ガ為ニ? 投稿日:2002年08月05日(月)21時30分44秒
『また戻ってくるからね』
って、市井ちゃんが私の前から去った。
すっごく悲しかった。
ステージの上だけど、たくさんの人の前だけど、それでも大泣きした。
だって悲しいもん。
悲しいから。
胸にぽっかり大きな穴が出来た。
悲しみのどん底につき落とされた。
- 203 名前:復讐ハ誰ガ為ニ? 投稿日:2002年08月05日(月)21時32分51秒
しばらくして、市井ちゃんの居ないプッチモニに、吉澤ひとみが入ることになった。
『ライバルは後藤真希ちゃんです』
まだオーディションに受かってもないクセに、大言壮語を吐く同い年のそいつが、私はとっても嫌いだった。
そいつはとても幸運なことに、オーディションに合格して、モーニング娘。の一員になりやがった。
そしてよりにもよって。市井ちゃんの居ないプッチモニの一員になったんだよ?
浮かれたように私に振り付けを教わりにきたり、いっしょに昼食に行こう、って誘ってきたり、まとわりついてくるそいつが、私は嫌でうっとおしくて仕方がなかった。
- 204 名前:復讐ハ誰ガ為ニ? 投稿日:2002年08月05日(月)21時34分30秒
こいつのせいだ。
『天才的に可愛い』んだかなんだか知らないけど。
こいつのせいで市井ちゃんは居なくならなくちゃいけなかったんだ。
だから、私はとっても大きな計画を立てた。
市井ちゃんがいなくなって、どんなに悲しいのか、そいつに分からせてやる。
私の建てた大きな計画。
- 205 名前:復讐ハ誰ガ為ニ? 投稿日:2002年08月05日(月)21時35分46秒
私のとっても大きな計画。
お前のせいで市井ちゃんは居なくなったんだ。
モーニング娘。に居れなくなったんだ。
そうじゃないと、市井ちゃんが私のこと、置いていくわけないもん。
市井ちゃんがいなくなって、どんなに悲しいのか、分からせてやるんだ。
- 206 名前:復讐ハ誰ガ為ニ? 投稿日:2002年08月05日(月)21時37分54秒
-
・
・
・
私が粘り強く事務所と交渉した結果、遂に、私はモーニング娘。を脱退し、ソロでやっていくことになった。
そして、 記者会見。
「嬉しいです…」
そう。
嬉しいよ。
もしかしたら、先にソロになった市井ちゃんといっしょにユニット組めるかもしれないし。
私はもう、モーニング娘。の後藤真希じゃないし。
私と市井ちゃんの前に弊害はないんだもん。
嬉しいよ。私は…。
- 207 名前:復讐ハ誰ガ為ニ? 投稿日:2002年08月05日(月)21時38分31秒
ね。
思い知ったでしょ?
市井ちゃんが私の前から居なくなった時の悲しさ、寂しさ、思い知ったでしょ?
あんたがどれだけ無粋な奴だったか、思いしったでしょ?
- 208 名前:復讐ハ誰ガ為ニ? 投稿日:2002年08月05日(月)21時40分11秒
私は後ろを振り返った。
彼女はとても、優しい笑顔をむけていた。 今にも泣き出しそうで。
でも、とても柔らかい微笑みを。
- 209 名前:復讐ハ誰ガ為ニ? 投稿日:2002年08月05日(月)21時41分23秒
- ・
・
・
むかし とっても むかし
わたしが ようちえんの ころでした。
わたしは すなばにおとしあなを つくりました。
わたしは だいすきだった せんせいを よびました。
こっちにきてよ。
いまおもうと ばればれです。
そこに おとしあなが つくられていることは。
でも せんせいは そこまで やってきました。
せんせいは おとしあなに まんまと はまりました。
でも せんせいは わたしたちを おこりませんでした。
わらいながら おこりました。
わらいながら…
・
・
・
- 210 名前:復讐ハ誰ガ為ニ? 投稿日:2002年08月05日(月)21時42分10秒
笑いながら…
彼女はとても、優しい笑顔をむけていた。
今にも泣き出しそうで。
でも、とても柔らかい微笑みを。
その微笑みを見た時に、私は涙を零した。
堪える暇も無かった。
ただ、前のめりになって、涙に濡れた顔を見せることを拒むことしかできなかった。
わたしって、 ばかだよね…
わたしはばかだ。
もうその微笑みに甘えることが出来ないことを、今更気付いて、私は泣くしかなかった…
悲しかった。
私の胸にまたひとつ、大きな空洞が出来た。
そして私は知った。
私ハ独りになったんだ。
おわり。
- 211 名前:復讐ハ誰ガ為ニ? のあとがき 投稿日:2002年08月05日(月)21時44分38秒
- あとがき
と、言うか、謝罪。 細かくレスを区切ってすみませんでした。
一応、よしごま書きの隅っこのはしくれに置かせてもらっている者なりの
希望的解釈でした。 お目汚しでした。それでは失礼しました。
- 212 名前:復讐ハ誰ガ為ニ? のあとがき 投稿日:2002年08月05日(月)21時49分08秒
- 失敗… 205と206の間に
「 許される限り、そいつとプライベートもいっしょに過ごして、収録でも許される限り、そいつの隣をキープしたり、どれだけ私がそいつと仲が良いか、吹聴した。」
という文章を上げるの忘れた… かっこわるい。
- 213 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月06日(火)15時21分16秒
- >復讐ハ誰ガ為ニ?
泣きました。そらあ酒も飲みたくなるわなあ・゜・(ノД`)・゜・
- 214 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)16時24分52秒
- >復讐ハ誰ガ為ニ?
やば…。めちゃめちゃ泣けてくるんですけど…
- 215 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)19時30分12秒
- >復讐ハ誰ガ為ニ?
題名だけ見たら人死にもんかよ〜、って思ってたら…。
思いっきりヤラレタ!!
- 216 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年08月08日(木)21時10分12秒
- はじめまして!
いしごまを書きたいと思います。
- 217 名前:「感情」 投稿日:2002年08月08日(木)21時15分05秒
- 『感情なんてなければ・・・』
何度も思ったこと
感情なんてなければあなたを失うさびしさや悲しさなんて感じられずにすんだのに・・・
何度も思う
『感情を持たなかったらどれだけ楽か・・・』
こんな感情なんてなければあなたを思って泣くことも
あなたを思って嫉妬したり
あなたを思って悔しい思いをしなければすんだのに・・・
そして今、
苦しい思いをしないのに・・・・・
- 218 名前:「感情」 投稿日:2002年08月08日(木)21時16分15秒
- すいません。初投稿でして・・読みにくいものでした。
本当に申し訳ありません。
お目汚ししてすいませんでした
- 219 名前:ループ 投稿日:2002年08月10日(土)13時34分13秒
- 広がる暗闇。
それを引き裂き、轟音を轟かせ、電車が駅に入ってくる。
時刻はすでに回っており、これは今日の終電車。
くたびれたサラリーマン風の男性や、旅行帰りだろうか、大きなリュックを背負った男性が、大きなあくびをしながら、それぞれ電車に吸い込まれていく。
その光景は、一日の終わりにふさわしい。
僅かながらも、電車を必要としてくれた人々を飲み込み、本日最後の仕事をしようとドアを閉め始めた電車。
その時、空気音を上げ、今にも閉まらんとするドアに、一人の女性が滑り込んできた。
漆黒のスーツに、黒いハーフのスカート。
やや低めのヒールをつけた足元が、がくがくと振るえている。
落ち着いた印象の服装とは対照的に、派手に呼吸を乱していた。
まるで、何かから逃げてきたかのように。
- 220 名前:ループ 投稿日:2002年08月10日(土)13時34分49秒
- 突然のことに、乗客の視線はみな、彼女に向けられる。
だが、彼女はそんな視線を気にする事無く、チラチラと電車内に目を凝らし始めた。
空いている席を探しているわけではない。
現に、彼女の目の前は空席なのだから。
すると突然視線を止め、にっこりと笑みを携えた。
お目当てのおもちゃを見つけた子供さながら、ニコニコしながら、彼女は歩みを進める。
一歩、また一歩進んだところで、彼女を足を止めた。
「矢口さん」
あからさまに嫌そうな顔をしている私に向かって、相変わらず能天気な声で私を呼んだ。
- 221 名前:ループ 投稿日:2002年08月10日(土)13時35分50秒
- と、ここまで書いたところで、安倍は筆を止めた。
ペンを置き、一つ大きく背伸びをして、軽く首を振る。
仕方なく、席を立ち、台所へコーヒーを取りに向かった。
安倍は参っていた。
味も素っ気もなくいえば、ネタ切れだ。
恋愛小説界の大御所であり、若干二十二歳にして、小説界においてその名を知らぬものはいないといわれる超有名作家である。
今まで出した作品はすべて爆発的なヒットを記録し、「アベレージヒッター」の名を欲しいままにしてきた。
ところが、どれだけの腕を持つ作家であれ、安倍とて人間である。
無限の資源が存在しないように、安倍の頭の中でこんこんと流れてきたアイデアも、ついに涸れはじめていた。
似たような話が幅を利かせつづけている恋愛小説界は、作家の寿命が短いのだ。
- 222 名前:ループ 投稿日:2002年08月10日(土)13時36分29秒
- ぴんぽーん
悪いほうへ悪いほうへ向いていた安倍の思考を、インターホンが変えてくれた。
何事かと思い、ドアののぞき穴から外を見てみると、見覚えのある顔が見えた。
「なっち〜、はかどってるか〜?」
嬉々としてドアを開けた安倍に、安倍よりひとつふたつは背が高い女性が声をかけた。
安倍の古くからの友人である飯田だ。
その手には、安倍の大好きなケーキを売っているケーキ屋の箱が握られている。
- 223 名前:ループ 投稿日:2002年08月10日(土)13時37分15秒
- と、ここまで書いたところで飯田は筆を止めた。
大きくため息をつき、時計を見やる。
その針は、七時を指していた。
飯田は感じていた。
これは大作だ、ミステリー界の常識を覆す作品になるに違いないという感触を。
今まで鳴かず飛ばずだった自分に、ついに脚光を浴びる瞬間がきたことを。
体の内からふつふつと湧き上がってくる喜びに耐え切れず、飯田は咆えた。
苦難の人生だった。
肌に合わない会社を辞め、小説を書いて一生を過ごそうと思い立ったのが二年前。
それからはひたすらに小説を書き、賞に応募、出版社に持ち込みの毎日。
その行為は、ただただ無になっていた。
- 224 名前:ループ 投稿日:2002年08月10日(土)13時38分15秒
- 「ありきたり」
文章力は認められたものの、ミステリーの命であるトリックが面白くない。
まるで打ち合わせでもしたかのように、編集部の人間は言った。
それはつまり、ミステリー作家として光は見えない、と言われているに等しい。
でも、これなら、このトリックなら、やつらをあっと言わせられる。
前人未到の密室ループ。
終わりのない密室。
二重?三重?鼻で笑えるね。
天から与えられた最高の贈り物を手に、飯田はゴールへ向かっていた。
ゴールはつまり、新進作家としての華々しいデビュー。
しかし、ここで飯田は立ち止まった。
天の示した試練、ちょっとした神のいたずら。
この密室、いつ終わらせればいいんだ?
- 225 名前:ループ 投稿日:2002年08月10日(土)13時39分19秒
- 「だめだぁ」
書きかけの原稿用紙を荒々しく引っつかみ、吉澤は破り捨てた。
すでに原稿用紙の海と化している床に、また新たな仲間が加わる。
いくらなんでもムチャクチャだ。
小説を書いてる小説家を書いた小説、なんて、よく考えたらできるはずもない。
さっきの話じゃないけれど、いつまでたっても終わりゃしない。
ひたすら小説家を登場させて、人類全員出場するか?
世界一、六十五億ページの新作、なんてね。
「あほらし…」
まぁしかし、なかなか魅力的なテーマであったことは確かだ。
いったい小説にとって、「終わり」とはなんなのか?
作者がENDマークをつけたところが終わり?そうじゃなくて。
いったい作者は、どこでENDをつけるかってこと。
- 226 名前:ループ 投稿日:2002年08月10日(土)13時40分05秒
- たとえばミステリーなら、事件解決して、探偵が一人で何かを振り返って終わり。
恋愛小説なら、カップル誕生、そのあとは、することして終わり。
それでいいの?
某作者じゃないけれど、それで読者は満足してるの?
もっとこう、まったく違った作品を見てみたいとは思わない?
まぁ、それができないから小説が廃れないわけだし、小説家が四苦八苦するんだけど。
「とりあえず、終わらせないとね。
締め切りも近いし…」
仕方なく、吉澤はまた机に向かった。
- 227 名前:ループ 投稿日:2002年08月10日(土)13時41分04秒
- ─
「ていう台本を考えてみたんだけど、どう?
今度の二十四時間テレビに」
「あんたねー、相変わらず突飛な事考えるわね」
「えへへ、ありがとー、けーちゃん」
「ただねー、残念なことにどっちもすでに(娘。小説で)使われてるのよねー」
「へ?どっちもって?」
「メンバーが書いてたってオチと、ドラマの台本の打ち合わせだったってオチよ。
まったく、(娘。小説界も)浅いようで深いんだから」
「?何いってんのかわかんないんだけど」
「大体これだってパクリみたいなもんじゃない。
みんな怒るわよ、時間割いて読んでこれじゃあ」
- 228 名前:ループ 投稿日:2002年08月10日(土)13時41分42秒
- 「???けーちゃーん…」
「難儀なモンよね。
作者会心の作が丸パクだなんて言われたら。
言っとくけど、丸パクはダメよ!自分で考えろ自分で!」
「…けーちゃん、大丈夫?」
「あとね、もっと私にスポット当てなさいよ!
いしよしやいちごまばっかじゃない、さやけいとか書け!
やすいしも悪くないけどさやけい書け!」
「けーちゃーん…」
END
- 229 名前:ループ 投稿日:2002年08月10日(土)13時42分40秒
- 「とこういう作品はいかがでしょう?」
「紺野、間違ってるぞ」
今度こそEND
- 230 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月10日(土)13時50分40秒
- 「ループ〜作者の苦悩:ごめんなさい:小説家の小説の小説家〜」でした。
こんなに好き勝手書いて匿名てのは卑怯でしょうか?
ともかく読んでくださりありがとうございました。
- 231 名前:伝えたい事 投稿日:2002年08月11日(日)02時30分42秒
「…梨華ちゃん?」
2002年もあと数日を残すだけになった12月のある日。
東京の街角で、あの頃と変わらない笑顔のあなたに出会った。
「ごっちん…」
その笑顔はやっぱりキレイで、なんだか少し切なかった。
- 232 名前:伝えたい事 投稿日:2002年08月11日(日)02時31分35秒
あの日、あなたがモーニング娘。から卒業していったあの日、
ほんとはね、伝えたい事があったんだ。
だけど、言えなかった。
あなたの泣き顔を見ると言えなかったんだ。
またすぐ会えると思っていたしね…。
- 233 名前:伝えたい事 投稿日:2002年08月11日(日)02時32分11秒
でもあなたは卒業してすぐに倒れてしまった。
そして、しばらくの間休養を取るために芸能活動を休止した。
すごく心配したんだよ。…ほんとに。
でも、あなたに会いには行けなかった。
私も忙しかったし、今会えば何かが壊れてしまいそうだったから。
だから…怖かったんだ。
そして今、久しぶりに会うあなたは、
あの頃と同じ笑顔だった。
- 234 名前:伝えたい事 投稿日:2002年08月11日(日)02時32分42秒
「少し背がのびたんじゃない?」
「そうかな…、ずっと会ってなかったからね」
「少し…大人びて見える…」
「へへ…、梨華ちゃんもちょっと変わったよね」
「そう?」
「うん」
こうしてあなたと話していると、あの頃の気持ちが甦ってくる。
言えなかった事が…
- 235 名前:伝えたい事 投稿日:2002年08月11日(日)02時33分13秒
いつぐらいに復帰できるの?」
「う〜ん、来年の春ぐらいかな」
「そう…待ってるよ」
「うん!待っててね」
そう言って、あなたはまた笑顔を見せた。
「ごっちん…」
「ん?」
ほんとはね、伝えたい事があったんだ。
ずっと言いたかった事があるんだ。
私は…、ずっと……
- 236 名前:伝えたい事 投稿日:2002年08月11日(日)02時33分43秒
「どうしたの?」
ずっと…ごっちんの事が……
―――――――
―――――――
「ん〜ん、なんでもない」
「なんだよ〜」
「なんでもないって、じゃあね」
そう言って私は歩き出した。
“―ずっと、好きだったよ―”
- 237 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月11日(日)02時36分06秒
- すいません。
もうこのネタはいいだろ!って感じなんですが…
ほんの出来心で書いてしまいました。
- 238 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年08月11日(日)11時13分01秒
- いいんじゃない?
- 239 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月12日(月)00時21分23秒
- >in Room
この作品はつぼにはまった。今回の事件をこういう切り口でくるのは新鮮。
人の記憶の中の控え室かぁ。
作者さんは初投稿ということですが、もっと作品を書いて、見せてください。
- 240 名前:ごっちん脱退で泣いた人 投稿日:2002年08月15日(木)20時52分42秒
- はじめまして。ここで、ちょっと書きたいと思います。
初投稿なので読みにくいかもしれませんが・・・。
いしごまで、吉澤さん視点です。
- 241 名前:「最後・・・」 投稿日:2002年08月15日(木)20時58分57秒
- どうして好きになったんだろう
こんなにも
悲しいほど
苦しいほど
どうして愛してしまったんだろう
いとおしいほど・・・・
もう終わりなのに
終わりに近づくほど好きになっていく
終わりに近づくほど愛していく
自分が傷つくことわかっているのに
愛して愛して愛す
自分が泣くことわかっているのに
最後まで好きでいるの
‘あなたの夢を壊したくない’
分かっているのに
最後まであなたを困らせた
あなたはゆっくりと私をなだめてくれた
あなたも分かってたんだと思う
もう終わりに近いことを・・・
元の2人には戻れないことを・・・
- 242 名前:「最後・・・」 投稿日:2002年08月15日(木)21時04分13秒
- だからゆっくりと私が納得いくまで何度も何度も言ってた
‘私の夢なの・・・’
その時のあなたの瞳はさびしそうで、悲しそうで
今にも泣きそうな瞳だった
あなたを困らしたくない
分かっているのに
分かっているのに
最後だと思うと涙が止まらなくて
止まらそうと思っても
余計に出てくるだけで止まらなかった
これが
これが
本当の最後のワガママだから
だから
涙が止まるまで隣りにいて?
ただ
隣りにいてくれるだけで良いから
それだけでいい
いてくれるだけでいいの
これで最後だから
- 243 名前:「最後・・・」 投稿日:2002年08月15日(木)21時05分53秒
- あなたの前で涙を流すのは
本当に最後の時
笑顔でいられるように
今だけだから
あなたの前で涙を流すのは・・・
- 244 名前:「最後・・・」 投稿日:2002年08月16日(金)20時53分30秒
- END
- 245 名前:かくれんぼの結末 投稿日:2002年08月18日(日)02時53分26秒
- 「遊び行ってくる!」
玄関に置きっ放しの麦わら帽子を手に取り、あいはサンダルを履いて飛び出した。
「気ぃつけるんやで!」
背中越しに祖母の声を聞いたが、あいの心は既に抜けるような青空に吸い込まれてしまっていたため、何の返事もせずに夢中で坂を登っていった。
所々に不恰好につけられたスピーカーがある。急ぎで取り付けられたのがぱっと見でわかるほど粗末なものだ。しかし田園の風景に不似合いなそれも、あいの瞳には映ってはいなかった。
―――この坂の向こうに、ののが待ってる。
その思いだけが、あいの心の中を占めていたのだから。
- 246 名前:かくれんぼの結末 投稿日:2002年08月18日(日)02時54分00秒
- 「あっ、あいぼん!」
あいに気付いたのぞみが、大きく手を振りながら満面の笑みであいに呼びかける。
それにあいも笑顔で応える。
あいには同年代の友達がいなかった。あいの住む村には子供がいないのだ。
そんなところに、のぞみは疎開してきた。
あいとのぞみはすぐに仲良くなり、毎日のように遊ぶようになった。
「ねぇあいぼん、今日はなにするんれすか?」
「かくれんぼしよっ!」
舌足らずなのぞみの言葉も難なく聞き取り、あいはのぞみの手を引いて駆け出した。
- 247 名前:かくれんぼの結末 投稿日:2002年08月18日(日)02時54分46秒
- 「もういいかぁい?」
じゃんけんの結果鬼になったのぞみは、樹に寄りかかるようにしながら大声を張り上げる。
返事は返ってこない。もういちど声を張り上げようとした時、風を切り裂くような音がした―――。
続いて耳障りな警報音と人の怒号。
―――あいぼん。
のぞみは辺りを見渡したが、とてもあいがいる場所など見当もつかない。
事実、かくれんぼをする度にのぞみはあいを見つけることが出来た事はない。
大抵、のぞみがべそをかきだした頃にあいがひょっこりと現れるのだ。
けれど今はそんなのを待っている暇は無い事は、のぞみもわかっていた。
―――見つけなきゃ。
- 248 名前:かくれんぼの結末 投稿日:2002年08月18日(日)02時55分16秒
- 「…もういいかぁい!」
あいは使われなくなった防空壕の中で伏せながら、のぞみの声を聞いた。
あいはなぜかそれを聞き流し、二度目が聞こえたら返事をしようと考えた。
しかし、のぞみの声を待つあいの耳に届いてきたのは舌足らずな声ではなく、泣き叫ぶようなサイレンと、誰かのぞっとするような叫び声だった。
なにが起きたかは容易に想像できた。
―――のの。
あいは防空壕を出るために起き上がろうとしたが、爆音と衝撃がそれを阻んだ。
それに耐えるためにあいは目をきつく閉じて歯を食いしばる。
爆音が途絶えると、あいはようやく目を開け、状況の把握に努めた。
足が燃えるように熱い。
それを不思議に思ったあいが首だけ振り返って自分の足を見たとき、信じたくない光景が、あいの目に飛び込んできた。
大きな岩が足の上に乗っている。そして、その隙間から真っ赤な血が、静かに流れ出ていた。
あいはほとんど本能的に死を感じ取った。
―――このまま死ぬんか。
冷静に物事を受け止めようとする大人ぶった自分と、
―――嫌や。死にたない。
頑なに事実を拒む自分との間の葛藤が、あいを余計混乱させた。
- 249 名前:かくれんぼの結末 投稿日:2002年08月18日(日)02時57分00秒
- 入り口は先ほどの爆撃で塞がれてしまい、辺りは真っ暗だった。
「もうい〜よぉ、もうい〜よぉ、もうい〜よぉ…」
あいはうわ言の様に呟いた。
のぞみはどうしただろうか。無事だろうか。自分を探す事は、諦めてしまっただろうか。
あいは自分が一人だけ取り残されたような錯覚を覚えた。
思えば、ずっとそうだ。あいは冷めた気持ちで振り返る。
おとんは戦争に行って、帰ってけえへん。
おかんはうちをばあちゃんとこ預けたきり、どっか行ってしもた。
そして今度はののや。
みんな、みんな、いなくなってしもた。
- 250 名前:かくれんぼの結末 投稿日:2002年08月18日(日)02時57分46秒
- ―長い、永い時間だった。
いつまで続くのか、終わりの見えない孤独に、あいは泣き出した。
「…っく、嫌やぁ…」
嗚咽交じりにあいは言葉を吐き出す。
「誰かぁ…誰かぁ…ののぉ…」
「あいぼん、見〜つけた!」
不意に聞きなれた声を聞いて、あいは顔を上げた。
「のの…?」
「今度はあいぼんが鬼れすよ。ののを見つけてくらさい」
涙で滲んだ視界の中に、あいはのぞみの姿を認めた。
いつもの笑顔で、八重歯を見せて笑っている。
「ののぉ」
あいが安堵しきった声でのぞみの名を呼んだとき、入り口を塞いでいた岩が誰かの手で退かされ、光が差し込んでくる。視界が光で満たされていくと、のぞみの姿は見えなくなった。
「あいっ!」
「いたぞぉ!」
薄れていく意識の中で、あいは聞きなれた祖母の声と知らない誰かの声を聞いた。
- 251 名前:かくれんぼの結末 投稿日:2002年08月18日(日)02時58分16秒
- 「もうだいぶよくなったな」
あいの足を見ながら、祖母は言った。
「うん。なぁ、ばあちゃん、明日になったらもう外で遊べる?」
「あいは毎日そうやな。なんかあるんかいな?」
その問いにあいは満足げに笑って、
「またののと遊ぶんや。今度はうちが鬼やねん」
「…あい」
いつもとは違う祖母の声のトーンに、あいは首をかしげた。
「ののちゃんは、消えてもうた」
やかましく鳴く蝉の声が、嫌にうるさく感じた。
あいは祖母の言う事が理解できずに、動揺して喚くように言った。
「なんでやねん!うちを見つけてくれたんはののやないか!」
「…あい、信じたないのはわかる。でもな…」
「じゃあ誰がうちを見つけたんや!」
祖母の声を遮って、あいは叫んだ。
祖母は嫌な顔一つせず、諭すような目であいを見つめながら、
「ばあちゃんや。ののちゃんはおらんかった。今も、見つかっとらん」
- 252 名前:かくれんぼの結末 投稿日:2002年08月18日(日)02時58分53秒
- 足も治り歩けるぐらいになった頃、あいは最後にのぞみの姿を見た防空壕に行った。
自分の血の後が、うっすらと残っている。
―――あのとき、たしかにののがいたんや。
のぞみの笑顔が、あいの脳裏に蘇る。
「今度はうちが鬼か…。やっぱり、うちを見つけてくれたんはののやったんやな…」
あいは何もない黒い壁に向かって、囁きかけた。
「待っててな。すぐに見つけたるで。ののの隠れる場所なんてお見通しや」
あいの言葉に応えるように、どこかから、のぞみの笑い声が聞こえた気がした。
〜end〜
- 253 名前:後書き 投稿日:2002年08月18日(日)03時00分15秒
- お目汚し失礼しました。
- 254 名前:「アイス」につかれた彼女 投稿日:2002年08月19日(月)22時45分04秒
- 「私が死ぬときは、伊勢で津波に飲まれてますか?」
彼女の遺品を整理していると、こんな言葉が出てきました。
隣には、彼女が愛読していた小説。
そのあるページに、しおりが挟まれていました。
「ねじれた頭脳を持つ男」。
しおりの挟まったページには、そんな言葉が書かれていました。
彼女へ、多大な影響を与えた、紙の上の人間のニックネームでした。
- 255 名前:「アイス」につかれた彼女 投稿日:2002年08月19日(月)22時45分38秒
- 私に悲報が届いたのは、二週間前でした。
私の大事な彼女が、伊勢神宮で首吊りをしたというのです。
もちろん信じられなくて、伊勢まで飛んでいきました。
でも、本当に信じられなかったのか、今では分かりません。
私はもしかしたら、彼女が自らの命を絶つことを予測していたかもしれないからです。
- 256 名前:「アイス」につかれた彼女 投稿日:2002年08月19日(月)22時46分23秒
- ─
伊勢へと向かう電車の中、私は彼女の特異な体質を思い出していました。
年上の彼女でしたが、幼くて、守ってあげたくなるような雰囲気を持った彼女。
そんな身なりだからでしょうか、彼女は、「アイス」が大好物でした。
付き合い始めて二年が経っていましたが、彼女がアイスを食べない日はありませんでした。
いつみても、小さな手にバニラアイスを抱え、嬉しそうに、おいしそうに食べていた彼女。
それも、すべては偶然だったんです。
彼女の大好物がアイスだったことも、全巻読破したときは頭が割れるかと思ったほどの大長編小説に出会ったことも。
そこで「アナグラム」という言葉を見つけたのも、きっと、偶然だったんです。
- 257 名前:「アイス」につかれた彼女 投稿日:2002年08月19日(月)22時47分07秒
- 「ねぇ」
いつだったか、夏の日でした。
蒸し暑くて、クーラーの中二人でアイスを食べるような、そんな日でした。
「アイスってさぁ、愛すだよねぇ」
彼女は唐突に言いました。
今から考えれば、それは単なるきっかけにしか過ぎませんでしたが。
「それにさぁ、アイスはよっすぃーにもなるよ」
彼女はとても嬉しそうでした。
新たに発見した遊び道具は、見事に彼女の心を掴んでしまったのです。
私には意味が分からず尋ねると、
「アイスだよ、で、そこに点々をつけたらアイズ。
アイズは目だよね、で、目からひとみ、ね」
私には何故彼女がそんな事を言うのかサッパリわかりませんでした。
その時は、私のことを考えてくれているんだ、などと恥ずかしい勘違いをしていたものでしたから。
─
- 258 名前:「アイス」につかれた彼女 投稿日:2002年08月19日(月)22時47分52秒
- 伊勢に着き、示された警察に言ってみると、冷たくなった彼女と会うことが出来ました。
バニラアイスのように冷たく、白くなっていた彼女。
それは、現実離れした美しさでした。
だからでしょうか。
そのとき私の目から、涙がこぼれる事はありませんでした。
私の感覚も、バニラアイスのように冷たく凍り付いていたのです。
- 259 名前:「アイス」につかれた彼女 投稿日:2002年08月19日(月)22時48分38秒
- ─
彼女と最後に会ったのは、二週間と一日前。
彼女が、この世のものでなくなるたった一日前でした。
その時も、彼女は自慢の「アナグラム」を披露してくれました。
「アイスってさ、英語だとICEじゃん。
これってイセって読めるんだよね」
「あとさ、なっちの名前。
これはなつみを入れ替えてツナミ、どう?」
私にはこのときも、「アナグラム」がどういうものか分かっていませんでした。
彼女が言う事はすべて言葉遊び、悪く言えばダジャレにしか見えなかったのです。
でも、その旨を彼女に伝える事はしませんでした。
それは、彼女がとても楽しそうだったからに他なりません。
恋人のその顔は、私の一番好きな顔でもあったからです。
それでもやはり、何か一言言うべきだったのです。
─
- 260 名前:「アイス」につかれた彼女 投稿日:2002年08月19日(月)22時49分16秒
- 伊勢湾を一望できる旅館に部屋を取って、私は体と心を休めていました。
突如襲ってきた最愛の人の死。
それも自殺。
やはり、少なからず疲れがあったからです。
そして、静かな部屋で、日本に近づいてきている台風の影響か、大きくうねりを上げている伊勢湾を眺めているうちに、私の神経が変化を起こしました。
時間を置いたら、溶けてきたのです。
氷のように固まっていたはずの神経が。
溶け出したら止まりませんでした。
雪解け水のように、際限なく涙が流れてきました。
心が芯から熱くなってきて、涙を後押ししているように感じました。
- 261 名前:「アイス」につかれた彼女 投稿日:2002年08月19日(月)22時50分17秒
- 伊勢湾は相変わらずうねっていました。
ようやく水が溶けきったようで、涙は一段落していますが、まだまだ打ちひしがれていました。
彼女の顔が浮かんでは消え、浮かんでは消え。
今更ながらに、彼女が自殺なんて…という思いも頭を掠め始めました。
そのとき突然、私の頭の中に彼女の声が聞こえた…気がしました。
もちろん、死んだ人間が話をするわけはありませんから、幻聴に決まっています。
それでも、突然ひらめいたこの言葉は、彼女の気持ちを嫌と言うほど表したいたのでは、と今でも思っています。
「つかれたよ」
彼女は、そう言った筈です。
- 262 名前:「アイス」につかれた彼女 投稿日:2002年08月19日(月)22時51分17秒
- それはきっと、私が始めて理解した「アナグラム」。
いや、言葉遊びでした。
疲れたよ
憑かれたよ
彼女は疲れていたんでしょう。
きっと、「アナグラム」に憑かれた所為で。
そう思うと、枯れたはずの泉に水が潤う感覚が分かりました。
厄介な事に、この泉は水漏れしているらしく、また涙になって流れてきました。
もういいよ、もういいよ。
彼女は、もう戻ってこないんだから。
なんで、なんで津波が来るまで待ってくれなかったの。
そうすれば、私は貴女を力づくで止めたのに。
私の涙はまだ、止まりそうにありませんでした。
- 263 名前:余談 投稿日:2002年08月19日(月)22時52分18秒
- 余談になりますが、彼女の特異な体質について説明していませんでしたね。
彼女には、エバミルクをこよなく愛するという特徴がありました。
イチゴやカキ氷だけでなく、バニラアイスやスイカまで。
おいしいとは思えなかったのに、彼女はちょくちょくやっていたのです。
それはもちろん、「アナグラム」…。
- 264 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月19日(月)22時55分07秒
- 以上れす。
ちなみに冒頭の小説は清涼院流水です。
中三の時読んだら、本気で頭が壊れるかと思いました。
- 265 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月25日(日)02時44分01秒
- (・e・)ノ<ここまで読んだ…ラブラブ
- 266 名前:雨の日は。 投稿日:2002年08月27日(火)03時14分10秒
- 今日は野外ライブなのに生憎の雨。
夜中から聞こえていたアスファルトに叩きつける激しい音。
うるさいのに、何故だか今日は落ち着けた。
ひとりの時は怖くて淋しくて泣きそうになるのに。
「・・ん・・んぁ・・」
ごっちん。
それってやっぱ隣で眠るごっちんが居るからかな。
ツアー先のあまり良くも無いホテルで少しでも体を休めようと奮闘してる時。
ドアをノックする音が聞こえて来た。
「誰ー?」
「ごとー。」
いきなりの訪問者はごっちんで、枕を持って立っていた。
- 267 名前:雨の日は。 投稿日:2002年08月27日(火)03時15分18秒
- 「どしたの?」って聞いたら
「雨の音キライ」って言って私の返事も待たずに入って来た。
「雨怖いの?」
「んー怖くないけど、なんか淋しくなんない?音ばっか大きくてさ、
なんかひとりぼっちなんだって思い知らされる気がするの。」
「そうかな・・・」
いや、私もいつも思ってた。
なんだ、みんなそうなんだ。
「なに、じゃあここで寝る気?」
「うん、駄目?」
またまた私の返事を待たないでごっちんは勝手に布団へと入って行った。
「あ、ちょっと!」
声を掛けたらごっちんはもう眠ってて、・・・それで今もまだ眠ってるってわけだよね。
ごっちんのおかげなのかな?私も淋しくなかったし、まぁ、良いのかな。
・・・・ちょっと窮屈だったけど。
てゆーか寝すぎ!
気持ちよさそう・・・。
- 268 名前:雨の日は。 投稿日:2002年08月27日(火)03時16分10秒
- 「んぁ・・あ、おはよ・・。」
「あ、起きた?良く眠れたみたいだね。」
「んあー!!」
「ひぃっ」
な、なに??
「・・・ふぅ。おはよ。」
「?なに?今の」
「んあ?雄たけび。」
「はぁ???」
「朝からこれやるとね、気持ち良いよぉ。あ、それじゃごとー部屋帰るね、ありがと〜」
ごっちんは訳のわからないことを言い残してさっさと自分の部屋に戻って行った。
「・・・あっ!よだれ・・・。」
その日からツアー先やどこかに泊まることになったとき、
雨が降ると決まって部屋にやってきたごっちん。
雨が降った日の行事のように、当たり前のことのようにそれは続いた。
- 269 名前:雨の日は。 投稿日:2002年08月27日(火)03時17分06秒
- 「あ、・・・雨か。」
今日は明日が早朝出勤ってことで事務所の仮眠室に泊まるんだっけ?
今日も来るね、ごっちん。
「よしこー今日もよろしくー。」
思った通りにごっちんはやってきた。
どこかからかMY枕を出してきて、いつものようにすぐ眠りについた。
でも、私はなかなか寝付けなかった。
何故なら今日は雨の音が遠すぎたから。
外は雨だけどここはかなり奥まった場所にある仮眠室。
地面や天井に叩きつける雨の音はほとんど聞こえない。
聞こえているのは、すぐ隣で眠るごっちんの微かに聞こえる寝息と、私の、心臓の音。
今まで何気なく見ていたけどごっちんの寝顔はとんでもなく可愛かった。
枕にしがみついて眠るその姿は、安倍さんじゃないけど天使みたいだった。
「・・・ちょっと触っても良いかな。」
ぷにぷに ぷにぷに
柔らかいごっちんに頬っぺたに触れてなんかしんないけど感動した。
唇も柔らかくて、なんか筋肉質に見えるごっちんの体はちゃんと女の子で、柔らかかった。
「・・・可愛いな。」
あ、私、ごっちんのこと好きなんだ?
そうなんだろな。なんかドキドキするし。
ごっちんはどう思ってるのかな。
- 270 名前:雨の日は。 投稿日:2002年08月27日(火)03時17分57秒
- その日から私は雨が降る日を楽しみに待った。
待って、待って、雨乞いもしたけど全然降らなくなった。
雨は降らないけどたまには泊まりにおいでよって言うくらい大丈夫かな?
そう思って何も考えずにごっちんに言った。
「――え?」
「あ、だから雨じゃないけどさー久しぶりに泊まりに来ないかなって。」
「あー・・・それは出来ないよー。」
「どうして?あ、今日はひとりで寝たい気分?」
ライブを終えて着替えながら誘っていた。
「違うよぉ。雨の日だけしか駄目なの。」
なに言ってるかわかんない。
ごっちんが何を言ってるか。
雨の日しかってどゆこと?
「何が駄目なの?」
「雨じゃない日はなっちと一緒だから。」
「・・・えっ?」
- 271 名前:雨の日は。 投稿日:2002年08月27日(火)03時18分49秒
- 「雨が降るとねーなっちがいつもよりメルヘンチックになっちゃって相手してくんないの。
だから淋しいんだー。」
「それってどういう?安倍さん?」
「ん?あれ?知らなかったっけ?ごとーなっちと付き合ってるんだよー。」
「そっ・・・そうなんだ。知らなかった〜。じゃあ駄目だね、安倍さんに怒られちゃう。」
「そうなの。だからごめんね。」
「ううん。・・・あっ、でも雨の日うちに来てること知ってるの?」
「もちろんだよ。なっちああ見えて嫉妬深いんだからちゃんと言っておかないとね。」
そのあと、ごっちんはノロケなのかなんなのか分からないけど安倍さんの話をし続けて、
嬉しそうに笑ってた。
なんて言ってたかわかんない。
何も聞こえなかったから。
聞きたくなかったから。
ごっちんは、最初から私じゃなくても良かったんだ。
たまたま隣の部屋だった、話しやすい私を部屋を借りる相手に選んだだけ。
矢口さんでも梨華ちゃんでも誰でも良かったんだ。
なんだ、なんだ、そっか、そうなんだ。
- 272 名前:雨の日は。 投稿日:2002年08月27日(火)03時19分33秒
- そのあと、ライブが無くてほんっと良かったと思う。
泣くつもりなんかないのに勝手になんか出てきてたから。
いっぱい泣いて、いっぱい愚痴って、・・・吹っ切ろうと頑張った。
そんで・・・
「よしこ、今日もよろしくー!」
相変わらずごっちんは雨が降ると私の部屋にやってきた。
たまに話すことはあってもほとんどはすぐにごっちんは眠り、私はいつも眠れないでいた。
雨の日だけやってくる、そんなごっちんが大好き。
都合良いし、勝手だけど私はごっちんが大好き。
私は勝手に思ってる。
雨の日だけの恋人。
私だけの特権だと。
いつか晴れの日も隣に居るごっちんを夢見て今はそれで良いと、思っている。
- 273 名前:雨の日は。作者 投稿日:2002年08月27日(火)03時21分05秒
- わけわからん話ですいませんm(__)m
よしごまを書きたかったんですが(汗
終わりです。
- 274 名前:名無し。 投稿日:2002年08月28日(水)20時14分43秒
- 今さらですが、前回のオムニバス短編集に出し損ねたモノを書かせてください。
書き換えようかとも思ったのですが、あまりにテーマが『青』なので諦めました。
そしてあまりにオーソドックスな『青空』という罠
ではよろしくです。
- 275 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時15分30秒
- お空は青い、青いって言うけど―――――
―――――――青ってどんな色なの?
私は分からない…。
私の名前は安倍なつみ、14才。
色って何?
それが私にはわからない。
だって私に光はないから。
青なんて色…、見た事ない。
空なんて言っても私からすれば全部同じ。
曇り空でも青空でも…。
- 276 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時18分11秒
- 私は小さい頃から施設で育った。
当然だよね。
他の人と同じように暮らせるわけない。
一人で何かをする事もない。
いつも誰かがついててくれた。
そう、私は一人じゃ何も出来ない…。
今日も施設でラジオを聞いてる。
『いい天気ですねぇ〜。雲一つない青空ですよ!』
だから青空って何?
晴れって事でしょ?
雨が降らないって事でしょ?
青なんて言わないで!
私には分からないの!
今までそんな事気にしてなかった。
周りには私と同じような子もいたし、他の人も気を使ってくれてたから。
でも、この前養護学校の子との交流会があった。
そこの子も私と同じく、体が不自由だったり、重い病気を持ってたりした。
同じ立場―――の人間だった。
一人じゃ何も出来ない。
でも、私とは違う事があった。
みんな色を知っている。
青空を見た事がある。
- 277 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時19分12秒
- 同じのはずなのに…、どうして?
どうして私には分からないの?
その日から日常の中には私の知らない『色』という物が溢れている事に気付いた。
耐えられなかった…。
知りたかった…。
でも…、分からなかった。
私の知らない『色』に囲まれた時間は無常にも過ぎていく。
何一つ『色』という物が分からなくても…。
そのうちにまた交流会の日がやってきた。
私は行きたくなかった。
でも同じ盲目の子達は楽しみにしてる。
何故…?
平気なの?私達は知らないんだよ?
『青空』なんて見た事ないんだよ?
どうしてそんなに嬉しそうにできるの?
- 278 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時20分07秒
- 私はみんなが楽しそうに話している時も、誰とも話さず一人でいた。
話したくなかった。
私の知らない『色』の事を聞きたくなかった。
その内に一人の女の子が話しかけてきた。
「こんにちは。」
本当は無視しようかと思った。
でもその子の声が、なんかとっても優しい感じで…思わず、
「こ、こんにちは…。」
その子はまた優しい声で話しかけてきた。
「なんだ、しゃべれるんじゃん!私てっきり話せないのかと思った。」
そう言って笑っている。
「なんてね。私吉澤ひとみ。よろしくね。」
「あっ、安倍なつみ。よろしく…。」
その子はスゴク明るい子だった。
私より四つも年下なのに、ずっとしっかりしてる感じがした。
- 279 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時21分08秒
- 「ねぇ、吉澤さん。」
「そんな堅苦しい呼び方やめてよぉ〜。」
「じゃ、なんて呼べばいい?」
「なんでもいいよ。もっとこう…かっけ〜のがイイ!」
「か、かっけ〜?じゃ…、よっすぃ〜…?」
「おっ、それかっけ〜!」
「じゃ、よっすぃ〜。よっすぃ〜はどこが悪いの?」
「…わたしはね、心臓が悪いんだ。いつ止まっちゃうか、わからないんだって。」
「え…?」
「だから普段は病院にいるんだけど、調子いい時はたまにココにお邪魔してるんだ。」
「そうなんだ…。」
―――――いつ止まるかわからない?
そんな…、死んじゃうかもしれないって事?
よっすぃ〜まだ小さいのに、そんな辛い事と闘ってるの…?
私なんて『青空がわからない。』そんな事で悩んでたのに…。
私はバカだ…。
こんなに元気なのに…。
- 280 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時21分55秒
- 私がそんな事考えて黙り込んでいたら、よっすぃ〜なんか焦ってて
「あっ、そんな気にしないでよ!やだなぁ〜、別に大丈夫!元気だから。」
そう、また明るくて優しい声で言った。
強い子だなぁ…。
私には真似できないよ…。
どうしてそんなに強くなれるの?
思ったのと同時に声に出ていた。
「どうして?どうしてって…。別に強くなんてないけどなぁ〜。そりゃ私だっていつ止まっちゃうか?なんて考えたら恐いし…。でもさ、私から言わせりゃ、なんで弱くなる必要があるの?弱くなってどうするの?どうしてほしいの?って感じ。弱気でいたって仕方ないかなぁ〜って。」
「やっぱり強いよ…。」
「そうかな?」
そう言ってよっすぃ〜はまた笑った。
- 281 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時22分39秒
- 「なっつぁんは何か悩んでるんだ?」
「え?なっつぁん?」
「いや、ダメかな?なんかなっちゃんとかじゃ、普通すぎるかなぁ〜、と思って…。」
「ううん。いいよ。」
「で、何をお困り?」
よっすぃ〜の優しい声。
「た、たいした事じゃないんだけどね…。」
「うんうん。」
よっすぃ〜は次の言葉を待っているみたいだった。
「…私ね、目が見えないから、何もわからないの…。みんなが普通に見えてるものが、私には見えない…。」
一度話し始めたら、よっすぃ〜の返事なんて聞きもせずに話しつづけた。
「でもね、見えなくてもイイ。見えるようにならない事はわかってる。でもね、知りたいの…。」
「知りたい?」
「うん…。みんなが見ている空…。青が知りたい…。」
「青…。」
よっすぃ〜の声が少し悲しそうだった。
よっすぃ〜の方がずっとツライはずなのに、初めて会った私の気持ちを理解してくれているようで、なんか…、嬉しかった。
- 282 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時23分27秒
- すると、よっすぃ〜が急に強気な声で言った。
「よぉ〜し!じゃ、教えてあげる!」
「え?」
何?どういう事?って思った。
そしたらよっすぃ〜は続けて言った。
「そのかわり、しばらくその事は考えないで遊ぼう!」
「え?その事って…?」
「空の事。青がどんなものなのかって事!イイ?」
「え?うん…。」
なんかよっすぃ〜に任せてみよう。
そう思えるぐらい、よっすぃ〜の声は力強かった。
その後は、私が考えない様に心がける事必要なんてなかった。
よっすぃ〜に引っ張られる様に、その事を忘れて遊んだ。
久しぶりに思いっきり笑った。
気持ち良かった。
- 283 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時24分19秒
- 交流会も終りにさしかかった頃、私はそれでもよっすぃ〜や他のみんなとおしゃべりしてた。
そしたら、よっすぃ〜が小声で言った。
「なっつぁん。」
「ん?何?」
「どう?楽しかった?」
「うん。とっても。」
「気持ち良かった?すがすがしかった?」
「うん。久しぶりに羽をのばしたって感じ。」
「そっか。よかった。でね、それが青!空の色!」
え…?コレが?
今の今まで、よっすぃ〜が『青空の色』を教えてくれるなんて事忘れてた。
「青空…?」
「そう。今のなっつぁんの気持ち、私の気持ち…。これが青空の色。」
- 284 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時25分18秒
- 泣きそうになった。
なんか青が分かった気がした。
だって、私の心は晴々していたから。
だから青空を晴れって言うんだと思った。
つまり今の私の心が『青空の色』なんだと…。
そしてよっすぃ〜も自分の心が『青空』だと言ってくれた。
それを聞いて、私の心はもっと雲一つない青空になった。
ありがとう。よっすぃ〜…。
その時、私は涙をこらえるのに必死でお礼が言えなかった。
だから心の中で何度も言った。
その日はそのままお別れになったけど、次の交流会でお礼を言っていっぱいお話しよう。
そう思っていた。
でも、次の交流会によっすぃ〜は来なかった。
そりゃお休みの日もあるよね。
今日はあんまり具合が良くなかったのかな?
でも、よっすぃ〜は『大丈夫!』って言ってたし。
そう、きっと大丈夫。
次は会える。
- 285 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時26分03秒
- でも、その次の交流会にも来なかった。
だから私は聞いた。
「あの〜、吉澤さんは来ないんですか?」
すると、養護学校の先生が言った。
「うん。吉澤さんね、最近ずっと調子が悪いらしくて、ずっと来てないの。」
そんな…。だってよっすぃ〜は大丈夫って言ってたよ…。
でも、その次もよっすぃ〜は来なかった。
私はよっすぃ〜の入院してる病院を教わった。
そして多分、生まれて初めてお母さんにお願いをした。
今まで、自分から『ここに行きたい!』って言った事はなかったと思う。
でも、お願いした。
- 286 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時26分45秒
- 病院は相変わらずイヤな匂いがした。
私は昔からこの匂いが嫌い。
お母さんに連れられてよっすぃ〜の病室に入ると、よっすぃ〜が声をかけてきた。
「なっつぁん?!」
思ったより元気そうな声で安心した。
私も「お久しぶり!」そう言って声のした方に駆け寄った。
久しぶりに沢山お話をした。
本当はよっすぃ〜の声がすごく弱々しかった事に気付いていた。
でも、それは言わなかった。
「元気そうで良かったよ。」
そう言った。
私は明るく振舞った。
よっすぃ〜心が青空になる様に。
目が見えない事は良かったのかもしれない。
もしかするとよっすぃ〜は、痩せこけていたかもしれないから。
それが見えちゃったら、元気付けてあげられないかもしれないから。
だから最後まで私は明るく話せた。
帰る時も明るく言った。
「また来るね。」
- 287 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時27分18秒
- でも、よっすぃ〜から返事はなかった。
「よっすぃ〜…?」
するとよっすぃ〜は静かに言った。
「あのね…、私今度アメリカに行くの…。だからもう会えないかもしれない…。」
会えない…?どうして?
「アメリカ?」
「うん。手術するんだ。日本じゃ出来ないくらい難しい手術らしくて…。」
「そっか。じゃ、また会えるね。」
「え?」
「だって、病気を治してくるんでしょ?だからまた会える。」
「なっつぁん…。」
「だから大丈夫!」
- 288 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時28分09秒
- よっすぃ〜はきっと不安だったんだと思う。
難しい手術だから、失敗する可能性も高いんだと思う。
私は最後までよっすぃ〜の心の中の、不安という雲を拭いきれなかったかもしれない。
でも、曇り空にならない様に、少しでも多くの青空が広がる様に、声をかけた。
「私もずっと願ってる。だから…、大丈夫!」
根拠なんていらない。
思いは叶うから。
それから一週間後、よっすぃ〜はアメリカに行った。
結局お礼は言えなかった。
でも、いいんだ。
次によっすぃ〜に会った時に言うから。伝えられるから。
私はそう思い、今日も交流会でみんなの中心となって騒いだ。
あの時のよっすぃ〜の様に。
その日も雲一つない『青空』だった…。
- 289 名前:Blue sky 投稿日:2002年08月28日(水)20時30分02秒
- ■□■終了■□■
- 290 名前:あさ美・麻琴の『カップリング★ばんばん』 投稿日:2002年09月04日(水)19時39分47秒
- 朝、目覚ましが壊れたせいでセットしていた時刻より2時間も早く目が覚めた。
「絶対なんか変だって」
寝坊するなら分かるけど、早く起きるってコレどーよ?
おかしくない?
でも、もっとオカシイのは、
「あっ、麻琴ちゃんオハヨ〜」
別段 驚いた様子もなく挨拶をした この人だと思う。
「……お、おはよう」 鳩が豆鉄砲をくらうって きっとこんな感じ。
この人…あさ美ちゃんは、畳に几帳面に正座をしてテーブルの上にノートを広げて何か書き込んでいる。
- 291 名前:あさ美・麻琴の『カップリング★ばんばん』 投稿日:2002年09月04日(水)19時42分05秒
- 「夏休みの宿題?」
何故か怯えたように訊いた私に、あさ美ちゃんは、
んなわけねぇだろ?(私にはそう見えた)
と言わんばかりにノートから顔を上げた。
「どうしても 上手い組み合わせがないのよ」
「あ、あぁ、そうなんだ…」
遺伝子組み換えの勉強かな?
気になってノートを盗み見る。
…うわっ、あさ美ちゃんと目ぇ合った。
チョー気まずい。
こんなんなら のんびりTVでも見てから来れば良かった。
早く行けば一番のりで石川さんに会えるかも…なんて 期待して来た単純思考の自分が情けない。
たんじゅんタンジュン単純です…な私。
- 292 名前:あさ美・麻琴の『カップリング★ばんばん』 投稿日:2002年09月04日(水)19時43分18秒
- だって まさか あさ美ちゃんがいるとは思わないじゃない?
「あの…あさ美ちゃん今日は早いね」
「オマエもな」
……もう帰りたい。 自他共に認めるヘタレな私の目には涙が溜まってきております。「うそ、うそ、冗談だよぉ。ごめん。泣かないで〜」
泣きの気配を悟ったあさ美ちゃんは慌てて謝る。
だったら最初から言うなよ。
「あのね、私たちのキャラ確立について考えようかと思って 早めに来たの」
そう言って あさ美ちゃんは、ノートに書かれた 私たち五期メンバーの大まかな特徴を見せてくれた。
- 293 名前:あさ美・麻琴の『カップリング★ばんばん』 投稿日:2002年09月04日(水)19時44分41秒
- 「……何コレ?良く分からない…って、嘘です。ごめんなさい」
瓦割りのポーズとらないでよ、恐いなぁ。「もう一年経つのに
これといった名作も出てこないのよ。困ったわ」
何が困るのかは置いといて…コレ本当に分からないんだけど…。『小川麻琴:
五期メンバーの中では男役タイプ(?)。
性格は わりと普通に書かれる。ヘタレ。
固定したカップリングはなし』
って 何よ?
そりゃ 私は他メンバーに比べたら普通なキャラだ。
男役って?
カップリング?
頭に?マークをぐるぐるさせてノートを読む私に あさ美は話しを続ける。
- 294 名前:あさ美・麻琴の『カップリング★ばんばん』 投稿日:2002年09月04日(水)19時45分47秒
- 「組み合わせももう固定しちゃってるからダメなのよね。冬コミどうしよう」
「はぁ…そうっすか…」
バッグからミニペットを取り出しゴクリ。 今日の あさ美は変人に磨きがかかってるなぁ。
早く誰か来ないかなぁ…石川さんとか、石川さんとか、石川さんキボー。
「麻琴ちゃん」
「は、はいぃ!」
やばっ、今 少しジュース吹き出したわ。 ティッシュ、ティッシュ!!
「石川さんのこと どう思う?……きゃっ!汚いなぁ!ジュース飛ばさないでよ」
「だ、だ、だって」
あさ美ちゃんが変なこと訊くんだもん。
「で、どうなの?」
- 295 名前:あさ美・麻琴の『カップリング★ばんばん』 投稿日:2002年09月04日(水)19時46分51秒
- ジュースまみれの顔をハンカチで拭きながら あさ美ちゃんは質問の手を緩めようとはしない。
それどころか、腰を引いた私に ずいずいと近づいてくる。
「麻琴ちゃん次第では新なる世界が広がるのよ。好き?大好き?愛してる?」
なんなの?なによ?なんなのよ?
あさ美ちゃん必死だな…。
命の危険を感じて
私は咄嗟に首を縦に振って、
「好きです!大好きです!愛してますぅ!」
いつの間にか叫んでいた。
ドアの傍に石川さんと吉澤さんが立っていたことも知らずに…。
- 296 名前:あさ美・麻琴の『カップリング★ばんばん』 投稿日:2002年09月04日(水)19時48分41秒
「そうだったの?」
「知らなかったなぁ」
石川さんと吉澤さんは声をそろえて言うと、唖然とする私に 何かを納得したように頷いた。
「おはようございますっ!今日は『いしよし』出勤なんですね♪」 あさ美ちゃんは憎たらしいくらい普通に挨拶。
「?おはよー。ごめんね、邪魔しちゃって」「梨華ちゃんフロアにでも行こっか。…ごゆっくり」
そして、そのまま出ていってしまった。
あぁ!!激しく誤解している。
待って石川さん!私が好きなのは……
「やったわ!ナイスよ麻琴ちゃん!石川さんについに告白しちゃったわね!」
一人はしゃいじゃっているコイツではありませぬ。
- 297 名前:あさ美・麻琴の『カップリング★ばんばん』 投稿日:2002年09月04日(水)19時49分45秒
- こうゆう時は、はしゃいじゃってよくないと言ってやって下さい、松浦さん。
「どうすんの あさ美ちゃん!?石川さんも吉澤さんも誤解しちゃったじゃない!」
「『おがいし』それとも『まこりか』どれがいいかしら?
ねえ、麻琴ちゃんは?」
聞いてないし…。
しかもなんかノートに書いて悩んでるし。「そんなんどーでもいいよ!私と あさ美ちゃんが付き合ってるって勘違いされちゃったよ!」
頭にきて あさ美ちゃんをこっちに向かせるつもりで腕を引っ張ったら はずみで倒れ込んできた。
- 298 名前:あさ美・麻琴の『カップリング★ばんばん』 投稿日:2002年09月04日(水)19時51分41秒
- 「…イッターイ!麻琴ちゃんのバカ力っ!」「ご、ごめん」
「あっ…」
「えっ…?」
互いの近さに気付いて言葉を失う。
鼻先が触れ合うくらいの距離。
絡み合う視線。
あさ美ちゃんてこんなに可愛かったっけ? こんなに華奢だったっけ?
なんだか…胸がドキドキする。
やっぱ単純だな私。
「……『おがこん』もありかも…」
そう呟いて あさ美ちゃんは目を閉じた。
〜Fin〜
- 299 名前:あさ美・麻琴の『カップリング★ばんばん』あとがき 投稿日:2002年09月04日(水)19時53分30秒
- 『おがこん』不足な故に書かせていただきました。
- 300 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月05日(木)16時17分48秒
- 黒なかよしです。
不快になられる方が居られるかも知れませんので、注意してください。
- 301 名前:ただ真っ直ぐに 投稿日:2002年09月05日(木)16時20分24秒
- 風船の割れるような音とともに、頬に鋭い痛みが走った。
ひっぱたかれたらしい。
目の前では、顔を真っ赤にして目に涙を浮かべたごっちんが、肩で息をしながらこちらを見つめている。
時計の秒針の音が響くほどの静寂。
二人しかいない楽屋の中で、悪者は私らしかった。
「…最低」
極限まで鋭利に研ぎ澄ました刃物のような言葉を、ごっちんは差し向けてきた。
私に深い傷を負わせるために。
けれど私は、かすり傷さえ負うことはない。
「なんで?」
穏やかな口調で返した。
やりあう気はない、という意思表示のつもりだった。
けれどその言葉が、ごっちんの繊細な神経に浅くはない傷をつけたらしい。
白い肩をわなわなと震わせ、やがて、絞り出すような声で言った。
「なんで、なんで裕ちゃんなの…」
- 302 名前:ただ真っ直ぐに 投稿日:2002年09月05日(木)16時21分35秒
- 規定重量をオーバーした涙が、ごっちんの頬を伝う。
しゃくりあげることなく、強い態度でこちらを見返してくるごっちん。
その姿は、哀れで汚らわしかった。
強がってまで二本足で立っている事に意味はない。
辛いなら、手をついてしまえばいいのに、ひざまずいて四つん這いになればいいのに。
「好きだから、ごっちんの何倍もね」
突き放した。
立ち直れないくらいに。
「裕ちゃんなんて…」
弱弱しくこうべをふり、ごっちんが小さく呟いた。
何を言ってるのか聞き取れないほどの声。
もう、争う気は失せたみたいだった。
「裕ちゃんなんて、やぐっつぁんとも、なっちとも付き合ってるんだよ…」
と思ったら、今度は中澤さんを批判し始めた。
私の胸の中に、言いようのない不快感と嫌悪感が広がる。
自分が振られた腹いせに、私の大事な中澤さんの悪口を言うなんて、信じられなかった。
二年半の付き合いの中では気づけなかった、本当のごっちんが見えた気がした。
- 303 名前:ただ真っ直ぐに 投稿日:2002年09月05日(木)16時22分34秒
- 「それがどうしたの」
やりあわないつもりだったのに、内臓のいくつかがふつふつと音を立てるのが聞こえ出した。
目が充血しているかもしれない。
握り締めた右手の指は、圧迫されて白くなっている。
「ごとーなら、よっすぃだけを好きになれるよ。
ごとーなら…」
「うるさいよ!」
私の変化に気がついたのか、ごっちんが気持ち悪い猫なで声を出した。
それが無性に鼻を突いて、せっかくの我慢が無に帰してしまった。
けれど、もう黙っていられなかった。
「ごっちんならなんなの?
ごっちんならウチをどうできるの?
まさか幸せにできるなんていわないよね?
そんなセックスとシックスの区別もつかない幼稚園児みたいなこと言わないでよね!」
- 304 名前:ただ真っ直ぐに 投稿日:2002年09月05日(木)16時23分31秒
- 止まらない。
ごっちんの表情がだんだんと変わっているのに、口は動きつづける。
中澤さんを侮辱されたこと、ごっちんのいかにも偽善な態度、いろいろなことが頭の中で混ぜられて、すべてが「怒り」に名を変える。
「中澤さんが矢口さんや安倍さんと寝てたらなんなの?
ごっちんには不都合でもなんでもないでしょ。
ウチだって何にも文句なんてないの、知ったかぶりしないで!」
ヒステリックにわめき散らす。
それでも、脳は意外と冷静に次の指令を出した。
その脳の指令に合わせて、自然と口は動くことをやめ、顔には微笑が浮かんできた。
その微笑は、シャロン・ストーンみたいな背筋も凍る悪魔的な笑いだったかもしれない。
「…ごっちんには出来るの?」
「へ?」
「ごっちんは中澤さんみたいな、自分が壊れちゃうんじゃないかと思うほど気持ちいいセックスをウチにしてくれるの?」
- 305 名前:ただ真っ直ぐに 投稿日:2002年09月05日(木)16時25分01秒
- この時のごっちんの表情は、形容しがたいものだった。
見たことないものを見たような目をして、口をパクパクさせて。
今顔の横についている二つの耳が本当に自分の耳なのか、それが信じられないといった感じだった。
私に失望したのかもしれない、それならそれでよかった。
「中澤さんのように、一晩中ずっと私のナカをかき混ぜ続けてくれる?
中澤さんみたいに甘い声で、聞いたウチがそれだけでイッちゃうような卑猥な言葉を聞かせてくれる?」
そんなの無理だよね、だって、それが出来るのは中澤さんだけなんだから。
魔法のように淫らな言葉を口にするのも、差し出された指を黙って咥えるのも、すべては中澤さんだから。
「ごっちんに心配されなくても、ウチはすごく幸せなの。
ただただ中澤さんのことだけを考えて、キスして、セックスして、抱き合って眠るのが幸せなの。
一週間に一回しか会えなくても関係ない、その一日で、一週間の憂鬱すべてが吹き飛ぶの。
わかる?芸能界で成功するより、中澤さんの口の端についたマヨネーズを指で拭い取るほうが何倍も幸せだっていうこの気持ちが」
「…そんなのわかんないよ」
ごっちんは寂しそうにそう言った。
- 306 名前:ただ真っ直ぐに 投稿日:2002年09月05日(木)16時26分41秒
- 「違うね、わかんないんじゃない、わかりたくないんだよ。
そこまで人を好きになったことがないから、そこまで人を好きになってるウチの気持ちをわかりたくないんだよ。
所詮ごっちんのウチを好きだって言う気持ちなんて、そんなもんなんだよ。
そんな中途半端な気持ちで人に告白するなんて頭がおかしいんじゃないの?
相手に迷惑がかかるってことはほんの少しも考えないの?」
「…」
ごっちんは何も言い返してこない。
言い返せるはずがない、全部正論なんだから。
そんなところも、ごっちんは子供だ。
都合が悪くなると、すぐにだんまりを決め込む。
「…帰るね」
これ以上ここにいてもしょうがない。
私を荷物を肩にかけた。
そのままくるっと九十度回転して、楽屋のドアを開けた。
- 307 名前:ただ真っ直ぐに 投稿日:2002年09月05日(木)16時27分24秒
- 「お疲れ様」
皮肉のつもりで言ったわけじゃなかった。
決まった挨拶だ。
「かわいそう…」
私が楽屋のドアを閉めようとした瞬間、ごっちんの声が聞こえた。
哀れむような、蔑むような、挑発するような、そんな言い方で。
もちろん私の手が止まることはなかった。
カワイソウ?
ごっちんのがよっぽどかわいそうだよ。
中澤さんとセックスを知らないなんて。
- 308 名前:ただ真っ直ぐに 投稿日:2002年09月05日(木)16時28分15秒
- 途中、自販機の前を歩いていた私の元にメールが届いた。
「今日逢おうな」
たった六文字のメール。
それなのに、私は目の前がぼぅっとなるのを感じた。
同時に秘部が濡れるのも感じてどうしようもなくなり、思わず目の前のベンチに倒れこむように腰掛けた。
今日、中澤さんに逢える。
ほんの少し前に確定したばかりの事実が、私の周りを薄い霧のように包み込む。
その霧の匂いがあまりに現実離れしていて、テレビ局だというのに果ててしまった。
- 309 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月05日(木)16時29分11秒
- 以上です。
うーん、ちょっと説明不足過ぎたかな…。
わかりにくかった方はごめんなさい。
- 310 名前:やめないで 投稿日:2002年09月17日(火)20時02分09秒
- 『やめないで』
- 311 名前:やめないで 投稿日:2002年09月17日(火)20時02分49秒
- 後藤の心はゆれ動いていました。
- 312 名前:やめないで 投稿日:2002年09月17日(火)20時03分21秒
- 「ごっち〜ん、やめないでよー」
「そんなの悲しすぎる……」
「ごっつぁんがいなくなったら、オイラたちどうすればいいんだよ」
「私、後藤さんが目標だったのに……」
- 313 名前:やめないで 投稿日:2002年09月17日(火)20時03分55秒
- こんなに悲しんでくれる仲間たちがいる。
いつまでもみんなとやっていきたい。
後藤は「卒業」するのをやめることにしました。
- 314 名前:やめないで 投稿日:2002年09月17日(火)20時04分33秒
- 「ごっちんがいないなら、わたしもやめる」
「よっすぃ〜がやめるなら私もやめる」
「オイラもやめてやる」
「私もやめます……」
- 315 名前:やめないで 投稿日:2002年09月17日(火)20時05分15秒
- みんな「卒業」したので、モーニング娘。は後藤一人になったということです。
- 316 名前:やめないで 投稿日:2002年09月17日(火)20時06分03秒
- おしまい
- 317 名前:すき 投稿日:2002年09月24日(火)16時08分00秒
好きなの。
大好きなの。
誰にも渡したくないの。
もう、止められないの。
「ごめん、ウチ…ごっちんが好きなんだよね。てゆーか、付き合ってるんだ。」
知ってたよ、そんな事。あなたの事ずっと見てたから。
「梨華ちゃんの事も好きだけど…そう言う好き、じゃないんだ。」
「…わかった。ごめんね、よっすぃー。今、わたしが言った事は忘れて。」
これは嘘。
せめて『友達』の立場は死守したいわたしの、最後の悪あがき。
本当は、忘れてほしくなんかない。
わたしがあなたを想ってるって、忘れないでほしい。
でも…
あなたの側にいられなくなるよりマシ。
「ありがとう、梨華ちゃん。それじゃウチ、約束あるから。」
よっすぃーはあからさまにホッとした顔をして、わたしのもとから去って行った。
…ごっちん、かぁ…。
わかってた事だけど…やっぱりショックだよ。
わたしは涙をぬぐって、ため息をひとつ。
そして、前を向いて歩き出した。
- 318 名前:すき 投稿日:2002年09月24日(火)16時08分34秒
あの告白から、一ヶ月が経った。
よっすぃーとは普通に接してるし、よっすぃーも忘れたように振舞ってる。
何事もなかったかのように。
『辛い、なんて思っちゃ駄目。側にいられるだけで十分。』
この一ヶ月間、毎朝起きると同時に自分に言い聞かせて、無理矢理納得してる言葉。
そうでもしないと…行き場のない想いと嫉妬で、狂いそうになっちゃうから。
「おっはよーございまぁ〜っす!!」
勢いよく扉を開けて、叫ぶ。
部屋の中には…飯田さんと保田さんと矢口さん…それに、ごっちんと…よっすぃーがいた。
そこで、気づいた。
ごっちんとよっすぃーは、昨日と同じ服。
「おお、おはよー石川。」
「今日も元気だね〜。」
「はいっ!!ネガティブ卒業ですから!!」
「なんじゃそりゃぁ。」
飯田さん、保田さん、矢口さんの輪の中に入って、ひとしきりはしゃぐ。
…わたし、ちゃんと笑えてるよね…?
- 319 名前:すき 投稿日:2002年09月24日(火)16時09分24秒
よっすぃーとごっちんが、前日と同じ服で仕事に来たあの日以来…よっすぃーの行動が変。
最初は、『両思いになって浮かれてるのかな?』とも思ったけど…それともちょっと違う。
…なんてゆーか…
わたしに、べたべたと密着して来るようになった。
そんな事を考えつつ楽屋でぼーっとしていたら、当のよっすぃーがこっちへスキップして来た。
「梨華ちゃ〜ん、何食べてんの?」
そう言って来るよっすぃーの手は、わたしの肩に回されてる。
「あ、飴だけど…」
困惑しつつ答えると、よっすぃーは顔をわたしに近づけて来た。
「いいなぁ〜!ヨシコにもちょーだい♪」
「…い、いいよ。」
静まれ、心臓!!ドキドキしてるのがよっすぃーにバレちゃう!!
ちょっと震えてる指先で、飴を取り出そうとしたけど…うまくいかない。
「はやく〜。」
「ごめん、ちょっと待って。」
焦るわたしに、よっすぃーはますます顔を近づける。
「ん〜、待ちきれませんね〜。それじゃあ手っ取り早く…」
「へ?」
ぐいっと顔を持ち上げさせられて、わたしは驚いて目を見開く。
- 320 名前:すき 投稿日:2002年09月24日(火)16時10分00秒
- すると、よっすぃーの顔が…目前に迫っていた。
「ちょ、ちょっと…」
「いただきま〜す♪」
そう言うとよっすぃーは…
唇を、わたしの唇に重ねた。
「…ん…ッ!?」
声を上げたいくらい驚いたんだけど、唇がふさがれてて声が出せない。
そうこうしてるうちに、よっすぃーの舌が…わたしの唇を割って入って来た。
「ん…んんん…っ!!」
右側のほっぺの方に入っていた飴が、よっすぃーにとられる。
飴を取ってしまうと、よっすぃーは唇を離した。
「いただき♪」
「・・・・・・。」
わたしは、唖然とするしかなかった。
今、よっすぃーは何をしたの?
椅子にもたれてぐったりしたまま、正気にもどる。
「…な…!?」
「梨華ちゃん、言葉になってないよ。」
「何するのよ!?」
- 321 名前:すき 投稿日:2002年09月24日(火)16時10分33秒
- 「何って…梨華ちゃんの口から、ダイレクトに飴もらったんだけど?」
平然と言ってのけるよっすぃーに、こっちの顔がかぁぁぁぁっと熱くなる。
「あ、赤くなってる。可愛いね〜梨華ちゃん。」
「こ、んな事したら…ごっちんが傷付くじゃない!!」
わたしの目から、涙がこぼれ始めた。
嬉しくないわけじゃない。
このまま死んでも良いくらいに嬉しい。
だけど…怒りがこみ上げて来て止まらない。
「ごっちんと付き合ってるんでしょ!?それなのにわたしと、こんな…こんな事して!!」
ごっちんの顔が頭に浮かんで、怒りは更に増す。
でもわたし、別にごっちんの為に怒ってるわけじゃない。
わたしの気持ちをすごく馬鹿にされたみたいで…それで怒ってるんだ。
そんな自分に自己嫌悪までわいて来る。
「そんな節操のないよっすぃーなんて…大ッ嫌い!!」
嘘。
例えどんな節操無しでも…愛してる。
するとよっすぃーは、すっごく真面目な顔でわたしに近づいて来た。
「ごっちんとは、別れた。」
- 322 名前:すき 投稿日:2002年09月24日(火)16時11分07秒
「…え…!?」
一瞬、よっすぃーが何を言ったのかわからなかった。
「この間一晩かけて、ごっちんと話し合ったんだ。もうごっちんとは付き合って行けないって。
そしたらごっちんも、他に好きな人ができたんだって。それで、別れた。」
「な、んで…!?」
するとよっすぃーは…いきなりぎゅっとわたしを抱きしめる。
「梨華ちゃんがいけないんだ。」
「わたし!?」
「梨華ちゃんがあんなに可愛く、ウチの事好きだとか言うから…」
よっすぃーの腕に、更に力が入る。
「頭の中が、梨華ちゃんでいっぱいになっちゃって…忘れられなくって…。」
「…嘘…」
「気付いたら、ごっちんよりも好きになっちゃってた。」
「嘘!!」
わたしはよっすぃーの肩を思い切り押した。
- 323 名前:すき 投稿日:2002年09月24日(火)16時11分42秒
- 「嘘よ!!」
「嘘じゃない。」
「だって、あの時…告白した時、あんなに迷惑そうだったじゃない!!」
「戸惑ってたんだ。…梨華ちゃんが、あんまりにも可愛過ぎるから。」
よっすぃーは、わたしの目をのぞきこむ。
「…今は、ウチ…梨華ちゃんが好きだ。」
目頭が熱い。
これは夢?夢じゃないよね?
「…わたし…信じるからね?
後になって『やっぱりごっちんの方が好き』とか言っても、絶対別れないからね?」
「もちろん。」
そして、今度はわたしからよっすぃーにキスをした。
よっすぃーの唇は…すっごく甘かった。
その甘さに酔いながら、わたしの目はまた新たな涙を流し始めた。
おわり
- 324 名前:十字架 投稿日:2002年09月24日(火)16時12分41秒
あとがき
うわぁ〜。なんかよくわからなくなってしまいました(汗)。
いしよし命です。
これからもいしよし書き続けます。
- 325 名前:吉右衛門 投稿日:2002年09月26日(木)18時24分06秒
- 良いですな! 「よしりか」!(私的には「いしよし」では無い)。
他のカップルでは、絶対に出来ない特別な世界。
新作、待ってます。
- 326 名前:独占欲 投稿日:2002年09月29日(日)16時14分40秒
- 「どうしてよっすぃーは皆に…わたし以外の女の子にも優しくしちゃうのよ!?」
「どうしてって…そりゃー、頼られれば手を貸すのが人の道ってヤツでしょ!?
じゃあ何!?梨華ちゃんはあたしに、困ってる人を見捨てろって言うの!?」
「そうは言ってないわよ!!
わたしが言ってるのは…親切ついでに、何で『ほっぺにちゅー』までしなきゃなんない
のかって事!!」
「バレー部のカラーなんだからしょうがないじゃん!!
それに、ほっぺだよ!?口にしたワケでもないのに、そんな…」
「この間、矢口先輩には口にしてたじゃない!!」
「うぐっ…だからぁ、深い意味はないんだってば!!」
「…もう、嫌い!!誰にでも簡単にキスしちゃう、尻軽なよっすぃーなんて大ッ嫌い!!」
「し、尻軽だとぉ!?
…あーあーそうですか!!あたしだって、細かい事でうじうじうじうじ悩む梨華ちゃん
なんか大ッ嫌いだ!!」
「「ふんっ!!」」
き〜んこ〜んか〜んこ〜ん♪
お互い、顔を背けたその瞬間。昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
そしてわたし達は、顔をそむけたままそれぞれの教室に帰って行ったのだった。
- 327 名前:独占欲 投稿日:2002年09月29日(日)16時15分11秒
胸の痛みと言うモノは、後からジワジワと来るモノらしい。
放課後、幼なじみの柴ちゃんと教室でポッキーを食べつつ雑談をしてる最中に、ものす
ごい胸の痛みを感じた。
「…む、胸が痛いの…!!」
「ハイハイ。恋煩いね。ご苦労様。」
「ちょっと、柴ちゃん!!もっと真面目にきいてよ!!」
「柴田はいつも真面目ですよ〜。」
「もうっ!!柴ちゃんのばかぁ!!」
「梨華ちゃんはアホだよね。」
「・・・・・・。」
何も言い返せない自分が悲しい…。
「幼なじみの私相手なら、『梨華ちゃんの大嫌いは、大好きと言う意味』って事はわかっ
てるから、連発しても大丈夫だけどさぁ。
出会って一年、付き合い始めてまだ半月の吉澤さんに言っちゃマズいんじゃないの?」
「…わかってるわよ、そんな事…。」
ポッキーを一本取って、一口食べる。
- 328 名前:独占欲 投稿日:2002年09月29日(日)16時15分43秒
- 「それに、吉澤さんモテるからね〜。ファンクラブとかあるらしいよ?
最近の活動内容は『石川梨華』って紙を貼り付けた藁人形に、五寸釘を打ち込む事らし
いよ。あっははははははは!!」
「笑い事じゃな───────────────────────────────いッッ!!
な、なにソレ!!そんな事されてたの!?わたし!!」
「そりゃまぁ、この学校の『王子様』をGETしちゃったんだからさ。恨まれて当然って
ヤツよ。
…それにしてもさ〜、梨華ちゃんもアレだよね。
あんな温厚なヒト、どうやったらそこまで怒らせられるワケ?」
「…誰にでも優しくする事と、誰にでもキスしちゃう事を責めれば、怒るわよ。」
「へ〜。原因はそれかぁ。」
柴ちゃんは、ポッキーをかじりつつしみじみと言う。
「梨華ちゃんって、昔から独占欲強いからね〜。
覚えてる?幼稚園では、私が他のコと遊ぼうとすると烈火のごとく怒って…」
「覚えてないもんっ!!知らないもん、そんな事!!」
自分の顔が赤いのが、自分でわかるわ…。
- 329 名前:独占欲 投稿日:2002年09月29日(日)16時16分14秒
- 「小学校の時は、私が他のコと帰ろうとすると泣いちゃってさ〜。」
「覚えてない覚えてないっ!!」
「中学では、私が彼氏作るのを必死こいて止めたんだよね。『わたしよりも男の方が良い
って言うの!?』とか言って。」
「そんなの知らない────────────ッ!!」
結局その日は、何も解決しないまま帰る事になった…。なんかからかわれただけのよう
な気がするわ…。
ホントにもう、柴ちゃんは…相談相手には向かないわっ!!
- 330 名前:独占欲 投稿日:2002年09月29日(日)16時16分44秒
翌朝。
いつも通りの時間に起きて、いつも通りに家を出たわたしの足は、ものすごく重い。
…よっすぃーと決めた、毎朝の待ち会わせ場所。
そこに行くのが、気が重い。
よっすぃーは、来てくれてるかも知れない。…それはそれで気まずい。
よっすぃーは、来てくれないかも知れない。…それはそれで悲しい。
もー、どーしろって言うのよー!!
…でも、本音を言っちゃえば…
多少気まずくても、来ててほしい。
そしたらわたし…きっと、素直に『ごめんなさい。大嫌いなんて嘘。大好き。』って言
える…気がする。
待ち会わせ場所の、街路樹が見えて来た。その下には…
よっすぃーの姿があった。
- 331 名前:独占欲 投稿日:2002年09月29日(日)16時17分15秒
喜びで、涙が出そうになる。
「…よっすぃー!!」
思わず、叫んで駆け寄る。
「…梨華ちゃん…。」
戸惑い気味のよっすぃーの胸に、飛び込む。
「来てくれたんだね!!…嬉しい…わたし、すっごく嬉しい!!」
ぎゅっと抱き付くと、よっすぃーもわたしの背に腕を回してくれた。
「ごめんなさい、昨日は…。大嫌いなんて、嘘なの!!大好きだよ、よっすぃー!!」
言えた…。
でも、はずかしくってよっすぃーの顔は見られない。
「…梨華ちゃん、本当にあたしで良いの?」
「え?」
いきなりのよっすぃーの言葉に、わたしは思わず顔を上げた。
「梨華ちゃん、本当は柴田さんが好きなんじゃないの?」
「何言ってるの!?」
よっすぃーの顔は、すごく辛そう。
「…昨日の放課後…ウチ、梨華ちゃんの教室行ったんだ。
そしたら…幼稚園の頃の事とか小学校の頃の事とか…中学時代、柴田さんに『わたしよ
りも男の方が良いって言うの!?』って言ったって言うの、聞いちゃって…。
梨華ちゃん、本当は昔から柴田さんの事が好きなんじゃないかって…。」
- 332 名前:独占欲 投稿日:2002年09月29日(日)16時17分47秒
- 「馬鹿な事言わないでよ!!」
わたしはまた、ぎゅっとよっすぃーにしがみつく。
「わたしが好きなのは、よっすぃーだもん!!
幼稚園とか小学校の時は…わたし、男子によくいじめられてて…それでいつも柴ちゃん
にかばってもらってたから、いなくなると不安だっただけだし…
中学時代、柴ちゃんにそう言ったのは…そ、それは…先越されるのが悔しかっただけな
んだもん!!
柴ちゃんは幼なじみで恩人ってだけで、それ以上じゃないもん!!」
ああ、柴ちゃん。
わたしはやっぱり柴ちゃんの言う通り、アホだわ…。
だから、大好きな人に『先越されるのが悔しかった』なんて大暴露しなきゃいけなくな
るのね…。
「…本当に?」
「本当だもん…。」
は、恥ずかしい〜…。
そう思って、よっすぃーの胸に顔をうずめてると…よっすぃーはぎゅっとわたしを抱き
しめてくれた。
- 333 名前:独占欲 投稿日:2002年09月29日(日)16時18分17秒
- 「…っはははは。梨華ちゃんってば、負けず嫌いで意地っ張りだからね。」
「う、うるさいなぁ。」
「で、梨華ちゃんの『大嫌い』は『大好き』なんでしょ?」
「・・・・・・な…なんでそれを…。」
「昨夜、柴田さんが電話で教えてくれた。」
「…柴ちゃんってばぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「でも、梨華ちゃんがあんなに怒った理由もわかった。」
「へ?」
するとよっすぃーは、すこし照れくさそうな顔で言った。
「…ウチ以外の人と、楽しそうにしゃべってる梨華ちゃん見て…あたしも、『あたし以外
のヤツと口きくなーっ!』って言いたくなっちゃったし。」
わたしは…迷わず、よっすぃーの唇にキスをした。
- 334 名前:独占欲 投稿日:2002年09月29日(日)16時18分48秒
- 最初は驚いてたよっすぃーだったけど…だんだん、激しいキスへと変化して行く。
唇を離した後、わたしは言った。
「…わたし、よっすぃーが他の人とキスするの…やっぱり許せない。
だから、他の人にするくらいだったら全部わたしにして。…だめ?」
するとよっすぃーは苦笑して、こう答えた。
「それじゃあウチ、二十四時間梨華ちゃんの事離せなくなっちゃうよ?」
「んもう!!馬鹿ぁ!!大嫌いっ!!」
終わり
- 335 名前:十字架 投稿日:2002年09月29日(日)16時19分55秒
…また、書いてしまいました…。しかもまたいしよし。(吉右衛門様いわく、『よしりか』)
梨華ちゃん視点いしよし、大好きです。
また書きたい〜♪
- 336 名前:タイトル 投稿日:2002年09月29日(日)19時33分25秒
- 『それはお気の毒に』
- 337 名前:それはお気の毒に 投稿日:2002年09月29日(日)19時33分59秒
揺れる水面に微かなざわめきが生まれる。
少女がそこにいた。
金糸を編みこんだような髪に深い闇色の瞳の少女。
少女は微笑むと、幻のように消えた。
闇天の空には赤銅色の月が浮かんでいた。
- 338 名前:それはお気の毒に 投稿日:2002年09月29日(日)19時34分51秒
血のように赤い月が深淵の闇を照らす真夜中、
誰もいないはずの湖のほとりに白い影が浮かんだ。
淡い栗色の髪に白い肌の少女。
神々の光もいまや届かぬ暗闇が、
私の幼稚な悪戯心を湧き立たせる。
私は、そっと彼女の前に降り立った。
静かな水面に緩やかに波紋が広がる。
少女は、私を見ると微笑んだ。
私はその場から姿を消した。
- 339 名前:それはお気の毒に 投稿日:2002年09月29日(日)19時35分41秒
あの人は誰だろう?
闇夜に現れた夜の精霊。
私の命を刈る、美しい死神。
それでも私は、もう一度会い。
- 340 名前:それはお気の毒に 投稿日:2002年09月29日(日)19時36分22秒
あの少女は何故笑ったの?
湖のほとりに佇む、光の妖精。
少女の姿が頭から離れない。
魅入られたのは私のほうだ。
- 341 名前:それはお気の毒に 投稿日:2002年09月29日(日)19時37分02秒
あの日から夜毎、私は湖を訪れた。
闇色の少女と出会うために。
闇を纏った少女は、いつも突然訪れた。
そして私を驚かそうとする。
私はいつも驚いたふりをする。
そうすると、彼女は嬉しそうに笑うから。
その少女の名は『ひとみ』といった。
- 342 名前:それはお気の毒に 投稿日:2002年09月29日(日)19時37分48秒
その少女は『真希』と名乗った。
彼女は近くの白い建物に住んでいた。
長年胸を患っており、その治療の為にここにいた。
闇に紛れる事を恐れ、必死に生にしがみつく。
彼女の存在は不可解であり、魅力的でもあった。
死は、私にとってあまりにも近く、遠い存在なのだから。
- 343 名前:それはお気の毒に 投稿日:2002年09月29日(日)19時38分30秒
その夜、私は外に出る事が出来なかった。
激しい圧迫感で胸が破裂しそうだ。
医者に何だか分からない注射をされ、
延命の為の呼吸器が取り付けられる。
薄れゆく意識のなか、
隣の病室のバイクで事故った青年を思い出した。
青年が熱く語っていた、とても悲しい物語。
あれは、確か……。
- 344 名前:それはお気の毒に 投稿日:2002年09月29日(日)19時39分13秒
お気の毒な真希。
彼女が望んだわけでもなく
その生涯を終えようとしている。
光の神々はあまりにも遠く、
深淵の闇はあまりにも近い。
彼女を生かすことは容易い。
私には永遠を授ける事ができるのだから。
だけど彼女は太陽の下で生きる事を望んだ。
私には理解できなかった。
- 345 名前:それはお気の毒に 投稿日:2002年09月29日(日)19時40分06秒
永遠に変わらないものほど、無価値なものは存在しない。
失う物が無い代わりに、成長もしない。
それは、初めから無いのと同じだ。
死ぬのは怖い。
だけど、生きるって事は、
ただ命があればいいって事じゃないはずだ。
失うのは怖いけど、だからこそ、得られた時の喜びは計り知れない。
あなたと出会えた時のように。
- 346 名前:それはお気の毒に 投稿日:2002年09月29日(日)19時40分50秒
私はなんと悍ましく醜い生き物なのだろう。
永劫の闇の中、呪われた生にしがみつき、
ただ年月を無機質に生きるだけの存在。
本当に可哀想なのは私だ。
光を失った影はただ沈むだけの闇でしかない。
深い闇のそこにあるのは虚無だけだ。
既に破滅した生命に縋り、悠久の闇を生きる。
それでも私は生きたい。
- 347 名前:それはお気の毒に 投稿日:2002年09月29日(日)19時41分23秒
- END
- 348 名前:モーニング。クローン 投稿日:2002年10月01日(火)15時23分00秒
- それは、送られてきた。人間ひとりは楽に入る箱だった。
オレは大喜びで箱の包装をほどいた。
ところが、箱には、「ケメコ・クローン」と書かれていた。
開けてみると、箱の中には見たことのある、ヒョウの格好の
ケメコが眠るように、収まっている。
オレは思わず、カッとなって、すぐさまUFAへ電話をかけた。
「てめえッ!ふざけるなァ!オレはチャーミーのクローンを
頼んだんだゾ!何で、ケメコが送られてくるんだー!!」
「それは、どうも失礼しました。当方の手違いです。」
「ふざけるなァ!手違いですむかァ!オレがどれだけ払ったと
思ってんのか!一千万だゾォ!これだけ貯めるのにオレが
どれだけ苦労した事か・・・」
「それはどうも。調べました所、あなたの注文した、チャーミーの
クローンですが、注文が殺到しておりまして、一年後でないと送れ
ません。それでケメコを送りました。お詫びとして9割引の百万円
でのご奉仕にします。あしからず。」
9割引か・・・なら良いか。オレはブツブツ言いながら、説明書を
呼んだ。
- 349 名前:モーニング。クローン 投稿日:2002年10月01日(火)15時59分40秒
- 『このクローンは、本人の細胞を使った、100%本人そのままです。
頭脳は、本人に合わせて必要な記憶をインプットしております。
なお、動かすには、口から直接息を吹き込んでください。』
オレは、これがチャーミーだったら良かったのにと、ケメコの
口に息を吹き込んだ。
すると、いきなりケメコはオレを抱きしめると、強くオレの息を
吸いかえした。散々オレの息を吸ったあと、ケメコは立ち上がった。
「ふ〜、若い男の精気は美味しいわ〜。あら、あなたが私のご主人ね。
よろしくね〜」
「こ、こちらこそ、よろしく・・・」
「じゃあ、さっそくやることを、やっちゃいましょうね・・・」
と言ってオレをベッドへ引っ張って行く。
「ちょっと、待ってくださいよ〜、早いですよ〜、これから、
あなたは僕のものなんでしょ・・・」
「あら〜、知らないの、私はレンタルなのよ。これから24時間だけ
私はあなたのものなのよ〜」
「そんな〜、聞いてないですよ〜」
「そうなの。知らないあなたが悪いのよ」
そんな〜、しかしチャーミーならともかく、ケメコじゃ、仕方ないか。
- 350 名前:モーニング。クローン 投稿日:2002年10月01日(火)16時18分26秒
- 「ところで、あなたは何年か前に、モーニング。を卒業したはず
ですよね・・・」
「そうだけど、最近モーニング。の人気がガタ落ちなので、私たち
ベテランの出番になったのよ。ゆうちゃん、あつこさん、みっちゃん
と私で、モーニング。30(サーティ)を結成したのよ〜」
「・・・でも、クローンなのに、よく知ってますね」
「そりゃ、必要な情報はインプットされてますのよ〜」
「ところで、その格好はなんなのですかァ」
「あァ、このヒョウの格好ね。それはあなたの好みに合わせて
このスタイルなのよ〜」
「すると、チャーミーだったら、ウサギだったのか。見たかった・・・」
「さあ、さあ、夜は短いのよ〜、たっぷり楽しまなくちゃネ。」
- 351 名前:モーニング。クローン 投稿日:2002年10月01日(火)16時39分29秒
- 「あのー、僕、初めてなんですゥ・・・」
「あら〜、ますます、楽しみだわ〜。よし、よし、ワシが筆おろしを
してあげるからの〜、久しぶりじゃ、お爺さんとしてから、何十年
ぶりかの〜。」
「あの〜、ケメコじゃなくて、保田ババアになってますけど・・・」
「あら〜、ごめんなさい。今夜はたっぷりと昇天させてあげるわよ〜」
「あれ〜、そんなことぉ・・・・・・・」
翌朝、ケメコは男の子からふんだくった、百万円を数えながら、
家を出た。
「さて、次の男の家はと・・・クローン人間のふりをするのも、
結構、大変なのよ〜。チャーミーのクローン人間ですって?
そんなのあるわけないじゃないの〜。ホホホッホォ〜」
終わり。
- 352 名前:クローン・マリー 投稿日:2002年10月01日(火)21時31分48秒
- 「鈴木さん!宅配便です。」
「はい、今開けます。」
彼女がドアを開けると、紺の制服と帽子を深くかぶった、とても
背の低い配達員が立っていた。
「鈴木アミさんですね・・・」
「はい、そうですが」
「中身を確認してくれと言われてるんです。」
渡された小さい箱には、自分の名前と、送り先にはUFAと
書かれている。箱を開けて見ると、中は空っぽだった。
「これは?・・・」
「確かに、受け取りましたね。」
「受け取るも、なにも・・・」
突然、配達員は帽子を取り、制服を脱ぎさった。
あざやかな金髪がふわ〜と広がり、華やかなミニドレスを着た、
可愛い女の子が現れた。
- 353 名前:クローン・マリー 投稿日:2002年10月01日(火)21時55分20秒
- 驚くアミを尻目に、その彼女は自己紹介をした。
「は〜い。私がご注文のクローン・マリーです。」
「ええェ!?、あなたは、あのモーニング。のマリーさん・・・」
「違います。私はクローン・マリーです。」
「・・・そうなんだァ、でも、ソックリだわ、マリーと」
「ええ、本人の細胞から生まれましたから・・・」
「で、これからどうなるの・・・」
「私はレンタルでして、これから24時間、あなたのどんな
要望にもお答えします。では、さっそく・・・」
と、マリーはアミの手を引いて、ベッドへ向かう。
「ちょっと、待って、どういうこと・・・」
「おいらは、女の子専門なのよ〜。たっぷりと可愛がってあげるゥ」
- 354 名前:クローン・マリー 投稿日:2002年10月01日(火)22時23分22秒
- クローン・マリーとアミは、まっぱになるとベッドに入った。
軽く、じゃれ合う程度に汗をかいた後、アミはマリーに切々と
訴えた。アミは男と失恋したばかりだった。
「ホント、近頃の男はダメなヤツばかりよ。あなたの気持ちは
よくわかるわ。やはり女の子同士が一番よ〜」
「ああ〜、マリー、私の悩みを聞いてくれてありがとう。嬉しいわ。
やっぱり、女の子の気持ちは女の子が一番よくわかるのね・・・」
「さあ、夜はこれからよ。楽しまないとね・・・」
マリーは、存分にテクを使ってアミを何度も昇天させる。
アミは息も絶え絶えになって言う。
「あ〜あン。モーニング。のマリーも好きだったけど、
クローン・マリーはもっと好きよ〜」
- 355 名前:クローン・マリー 投稿日:2002年10月01日(火)22時43分40秒
- 何度も昇天したアミは、やっと一息つくと、言った。
「ねえ、クローン・マリーさんは知ってるかどうか、わからないけど、
モーニング。のマリーさんは、卒業するって聞いたけど・・・」
「それが、何でも、オバサン連中が帰ってくることになって、
ゆうちゃんとか、ケイちゃんとか。それで、マリーは若い子組に
なって残ることになったそうよ・・・」
「良かったわね。ねえ、24時間だけじゃ、ものたりないわ。
延長できないの・・・」
「そうですか、延長料金として、一日10万円で一週間だけ
延長出来ます。」
「そう、じゃあ、そうするわ。でもどうして一週間だけなの?」
「残念だけど、それ以上はダメなの。ツアーが始まるから・・・」
「え?、ツアーって何なの・・・」
「いえ、いえ、なんでもないわ。気にしないで・・・。
それより、それまで、楽しみましょう・・・」
「アハ〜ン・・・」
終わり。
- 356 名前:さりな調理法 投稿日:2002年10月03日(木)20時50分55秒
- 『さりな調理法』
- 357 名前:さりな調理法 投稿日:2002年10月03日(木)20時51分29秒
- 「こんなことになるなんて……」
ひとみは愕然とした。
もちろん本気じゃなかった。
ただ、修学旅行の気分を味わいたかっただけなのだ。
ナイナイの岡村さんがお膳立てをした。
テレビの収録やコンサートの合間を見つけて、娘。たちに修学旅行をさせてやろうという企画だった。
ひとみは枕投げを希望した。
中学生のときを思い出した。
だんだん楽しくなってきて、ひとみは夢中になった。
気がつくと、鈴木さりなの首があらぬ方向に曲がっていた。
- 358 名前:さりな調理法 投稿日:2002年10月03日(木)20時52分04秒
- このままでは破滅だ。
死体をなんとかしないといけない。
- 359 名前:さりな調理法 投稿日:2002年10月03日(木)20時53分16秒
- ひとみは死体の両足を抱え、ひきずった。
厨房の台に乗せ、包丁で各部所を切断した。
煮えたぎったお湯の中に放り込み、塩とこしょうを少々。
隠し味に化学調味料。
腿のところはお湯にさっとひたして表面だけに火を通します。
血はソースに使えるのでとっておきましょう。
肝臓は食べやすいように薄くスライスしまう。
余裕があれば、胃や胆のう、食道のところを鉄板で焼いてみましょう。
- 360 名前:さりな調理法 投稿日:2002年10月03日(木)20時53分53秒
- 一口飲み込んで、裕子は顔をしかめた。
真里が笑いながら見守っている。
「なんかなー。見た目はおいしそうやったけどなー」
「キャハハ。まずいのか」
「えー、そうですかー?」
梨華とひとみが不服そうに近よった。
「梨華ちゃん、何か変なの入れなかった?」
「入れてないわよー」
「わたしが食材取りにいってるときにさぁ……」
- 361 名前:さりな調理法 投稿日:2002年10月03日(木)20時54分31秒
- おしまい
※筆者の記憶が著しく混乱していることを深くお詫び申し上げます。
- 362 名前:フリーザーのの。 投稿日:2002年10月04日(金)23時28分54秒
- その夜、シンヤとあやの夫婦が自宅に帰り、あやが、さて、
夕食を作ろうかと、冷蔵庫を開けた瞬間だった。
のの「ジャジャーン、呼ばれて飛び出て、のので〜す!」
いきなり冷蔵庫の中から、エプロンをつけた女の子が飛び出て来た。
あや「ひええええええ〜ェ。」
シンヤ「何だ、何だ!!、君は何だ??」
のの「あたしが、ご注文のクローンのので〜す。」
あや「そ、そんな女の子注文した憶えはないですゥ」
のの「あれ?、ここ、和田さんとこですよね・・・」
あや「違いますゥ」
のの「ありゃりゃ、どこで間違えたのかな〜」
シンヤ「ところで、君はエプロンの下はまっぱだかじゃないか・・・」
のの「そのほうが、良いかな〜て・・・」
シンヤ「まあ、良かったりして・・・」
あや「あなたッ!!」
のの「では、帰りま〜す。」
と、ののは冷蔵庫の中へ入って行く。
シンヤ「あれま、冷蔵庫の中へ消えちゃったよ」
あや「あなたッ、冷蔵庫の中の食べ物が空っぽよ〜」
終わり。
- 363 名前:ウエディングのの。 投稿日:2002年10月05日(土)13時21分32秒
- 司会「それでは、新郎新婦による、ウエディングケーキの入刀です。」
新郎新婦がケーキにナイフを入れた瞬間、
のの「ジャジャジャ〜ん。呼ばれて飛び出てのので〜す。」
中から、ケーキまみれになりながら、エプロン姿の女の子が現れた。
新婦「ヒエエエエエエぇ〜ん」
新郎「何だ、何だ!!君は何だ??」
のの「あたしが、ご注文のクローンのので〜す」
新婦「そ、そんな女の子、注文した憶えはありません」
のの「あれ?ここ、和田さんとこでは、ないみたい・・・、
ありゃりゃ、また間違えた。」
客「何だか、知らないが、面白いアトラクションじゃないか」
客「まあ、Hね。あの女の子エプロンの下はまっぱだかですわ・・・」
のの「お腹がすいたので、ご馳走になりま〜す」
ののは客のテーブルにつくと、猛烈に食べ始める。
テーブルの食べ物をあらかた、食べ尽くすと、
のの「では、帰りま〜す」
むき出しの可愛いお尻をプリプリさせながら、またウエディングケーキ
中へもぐり込もうとする。ついでにケーキもほおばる。
怒った司会者がのの、のお尻を掴まえようとするも、ののはケーキの
中へ消えていった。
終わり。
- 364 名前:オール・ア・なっちング。 投稿日:2002年10月07日(月)02時19分07秒
- クローン人間となった、モーニング娘。が大活躍する、
「モーニング。クローン」シリーズ、第五回です。
「オール・ア・なっちング」
マナブが自宅のアパートに帰り着いて、ドアを開けた。
なっち「あなた、お帰りなさい。」
マナブ「ただいま・・・」
そこで、マナブは、ハッと我にかえった。
マナブ「失礼、部屋を間違えたみたい・・・」
外へ出てみたが、確かに自分の部屋だった。
マナブ「貴女は、いったい誰なんですか・・・?」
彼女は、白いエプロンをつけていた。もちろん下には服を着ている。
なっち「あの〜、私・・・」
マナブ「あれえ?、あなた、なっちによく似てるけど・・・」
なっち「はい。私がご注文のクローンなっちです。」
マナブ「やっぱり、そうですか・・・」
なっち「夕食出来ました。それともお風呂になさいます。
それとも・・・・・」
マナブ「も、もちろん、ご飯にしてください・・・」
なっち「良かったぁ。暖っかいシチューを食べてね。」
マナブはテーブルについて、シチューを食べた。
- 365 名前:オール・ア・なっちング。 投稿日:2002年10月07日(月)02時44分55秒
- そのシチューは、北海道の新鮮なミルクと、雄大な大地から
出来た、ジャガイモの味がすると、マナブは思った。そして、
なぜか、とても懐かしい味だと思う。
なっち「お味はどうですか・・・」
突然、マナブは泣き出した。
マナブ「本当に美味しいよ・・・、女房と子供に逃げられて、
夢も希望も無くなっていたけど、あなたみたいな優しいひとに
こんな美味しいものを食べさせてもらえるなんて・・・・」
なっち「良かったァ。なっちも嬉しいですゥ」
なっちは、心が洗われるような笑顔を見せて言った。
マナブが風呂から上がると、なっちはもじもじしながら言った。
なっち「私は24時間レンタルです。その間、あなたのどんな
要望にもお答えします。」
そう言って、チラッと、向こうに敷いている布団を見る。
マナブもチラッと布団を見たが、笑顔でなっちに言う。
マナブ「明日は休みだ。一晩中、ゲームでもして遊ぼうか・・・」
なっち「はい!、そうしましょうか。」
なっちは、嬉しそうな笑顔で言った。
終わり。
- 366 名前:ピーチ・のの太郎 投稿日:2002年10月07日(月)14時19分23秒
- 「モーニング。クローン」第6回。
ピーチ・のの太郎
昔、ある所にお爺さんと、お婆さんがいました。
お爺さんは、山へしばかりに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。
すると、川の上流から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこ、と
流れてきました。その桃を家へ持ち帰り、おじいさんと
一緒に、桃を包丁で切って見ました。すると、
のの「じゃじゃじゃ〜ん!呼ばれて飛び出て、のので〜す。」
またまた、エプロン姿の、ののが現れた。
婆「ひえええええええ〜ぇ!?」
爺「なんじゃ、なんじゃ、おまえさんは誰じゃ」
のの「あたしが、ご注文のクローンのので〜すって、ありゃありゃ
ここは、和田さんとこじゃないですね〜またまた間違えた〜」
爺「おお、可愛い子じゃ、ワシらの子にしよう
名前は、のの太郎にしようかの〜」
のの「勝手に決めないでよ〜、のの帰りま〜す。」
と、また大きな桃に入ろうとしたら、何と!、
おばあさんがその桃を全部食べてしまっていました。
- 367 名前:ピーチ・のの太郎 投稿日:2002年10月07日(月)14時32分34秒
- のの「ひゃあ!これじゃあ、帰れないよう〜」
ということで、のの太郎となったののは、ここで、暮らすことに
なりました。ところが、のの太郎の大食いのせいで、家の家計は
火の車になってしまい、お爺さんとお婆さんは相談して、
鬼が島で、金銀財宝を持って棲んでいるという、猛任具娘。という
12人の鬼を退治するためにのの太郎を行かせることにしました。
さて、のの太郎の活躍は、おとぎ話でご覧下さい。めでたし、めでたし。
終わり。
- 368 名前:親指あいぼん 投稿日:2002年10月08日(火)12時04分03秒
- 昔、昔、お婆さんが川で洗濯をしていました。
すると、上流からお椀がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。
よく見ると、なんと、お椀の中には可愛い女の子が乗っていました。
お婆さんがその親指ぐらいの小さな女の子を手のひらに乗せました。
婆「あれまあ、あんたは一寸法師かいの〜」
あいぼん「違います。私は親指姫あいぼんです。ちょっと待って
元の大きさに戻ります。チチンプイプイ、アダブカダブラ。」
すると、白い煙が上がり、白と黄色のエプロンドレスの可愛い
女の子が現れた。
あいぼん「は〜い。あたしは、本当はクローンあいぼんで〜す。」
婆「ひええええ〜ぇ、驚いた〜」
あいぼん「お婆ちゃん、あたしはある女の子を捜しにきたの。
ののっていって、あたしぐらいの女の子よ。知らないかしら。」
婆「それって、のの太郎のことかいな・・・」
- 369 名前:浦島あいぼん 投稿日:2002年10月08日(火)12時23分10秒
- あいぼん「そうよ、その子、のの太郎はどこにいるの。」
婆「それがじゃ、今、のの太郎は竜宮城に行っとるんじゃ」
あいぼん「ええぇ〜、竜宮城って、あの乙姫様がいるところですか」
婆「そうじゃ、ある日のの太郎がいじめられている亀を助けての。
フン、どうせ、あの大食いの、のの太郎のことだからその亀を食べよう
としてたのに決まっておるがの。ところが大きな亀がやってきての、
のの太郎を竜宮城へ連れて行ったのじゃ」
ということで、あいぼんも、行方不明になったののを捜しに竜宮城へ
行く事にしました。
- 370 名前:浦島あいぼん 投稿日:2002年10月08日(火)12時37分30秒
- さて、どうやって竜宮城へ行こうかとあいぼんが考えていると、
海岸に小さな亀がとことこ歩いています。
よし、いいところに現れたとばかり、あいぼんはその亀を、
てめえ〜、このやろ〜、とばかり踏んだり、蹴ったりと
いじめていると、
すると、海の中から、大きな亀が現れてきて、
「これ、これ、そこの女の子、亀をいじめてはいかんじゃないか。」
それを見た、あいぼん、「ヨッシャアー!」とばかりその亀の背中に
飛び乗った。
あいぼん「さあ、竜宮城へ連れて行きなさいよ〜。のの〜、あいぼんが
助けに行くから、待ってるのよ〜」
さて、あいぼんの活躍は、おとぎ話をご覧下さい。めだたし、めでたし。
終わり。
- 371 名前:クローン・ラブリー 投稿日:2002年10月14日(月)12時04分52秒
- モーニング。クローンシリーズ、第8回。
クローン・ラブリー
あいぼんの大活躍で、無事ののを竜宮城から連れ帰ることに成功
した、クローン・モーニング。たち。
また新たな注文が舞い込む。今度の相手は、ちと手強い。
裕子「てめえ〜、ふざけやがって!どいつもこいつも、三十路、
三十路と言いやがってヨ〜!」
今日もまた、独り身の寂しさをまぎらわすため、へべれけに
酔っ払って自分の部屋帰って来た、裕子だった。
玄関口に、ドアを開けたままダウンした裕子。すると、
「セーラー服を脱がさないで〜♪」と歌いながら、セーラー服の
女の子が入ってくる。
そして、裕子を起こしながら、
紺野「アノ〜、あなたはボケですか、それともツッコミ?・・・」
裕子「このボケ〜!!、ツッコミに決まっとるやんけ〜」
- 372 名前:クローン・ラブリー 投稿日:2002年10月14日(月)12時54分52秒
- 紺野「ゴメンなさい、私がご注文のクローン・ラブリーです」
裕子「なんやて、そんなヤツ注文した憶えはあらへんよ〜」
紺野「でも、あなたは写真写りだけがいい、中澤裕子さんでしょ」
裕子「なんやて!ワレはうちを舐めてんのか〜!」
と、ラブリーの首を締める。
紺野「苦しいですゥ、ゴメンなさい・・・」
裕子「うちが注文したのは、クローン・マリーやんけ〜」
紺野「あの〜、マリーさんは今、いそがしくて、それで私が
来ました」
裕子「何でやねん、クローン・マリーが来たら、本物では、
出来ないことをいっぱいしてやろうと、楽しみにしてなのに・・・」
- 373 名前:クローン・ラブリー 投稿日:2002年10月14日(月)13時12分52秒
- 紺野「私で、すみません・・・ほら、こんなとこで寝ていると
風邪をひきますよ」
ラブリーは、裕子をかかえて、ベッドへ連れて行く。
紺野「お水を持ってきましょうか・・・」
裕子「冷蔵庫から、ビールを持ってきてんか」
紺野「また飲むんですか、体に悪いですよ・・・」
ラブリーは裕子の服を脱がせて、シーツをかけてやる。
裕子「・・・あんた、優しいんだね・・・」
紺野「はい、お水です。みんな、あなたのことを心配してますよ」
裕子「ウソやん、誰も、うちを見てくれる人なんかおらへん・・・」
紺野「そんなことないです。本物のラブリーさんは、一番尊敬する
人は裕子さんだって言ってます・・・」
- 374 名前:クローン・ラブリー 投稿日:2002年10月14日(月)13時25分39秒
- 裕子「ほんま、優しい子やわ〜、ウソやとわかってても嬉しいわ。
ねえ、今夜は泊まってくんやろ・・・」
紺野「はい。私は24時間レンタルです。その間あなたのどんな
要望でもお答えします。」
裕子「それやったら、早よう、こっちへ来てな〜」
ラブリーは、しばらく考えていたが、意を決して、服を脱ぐと、
ベッドに入って行く。
紺野「あのー、今日の私は美人ですかァ〜」
裕子「あたり前やん。めっちゃ美人やで〜」
ラブリーは、身を震わせながら、裕子に身をまかせるのだった。
終わり。
- 375 名前:クローン・ラブリー 投稿日:2002年10月14日(月)17時40分40秒
- あれ?、ラブリーって愛ちゃんのことだったけ?
まあ、いいか。セリフに紺野って入れてるし、
誰も読んでないだろうし・・・・。
- 376 名前:モーニング娘。である事の意味 投稿日:2002年10月16日(水)12時27分50秒
- 「なっちぃ」
「ん?」
カオリの声に、私は読んでいた雑誌から顔を上げた。
二人しかいない楽屋は声がよく通る。
いつもの雑多に馴れているからなおさらにそう感じるのかもしれない。
「いや、なんでもないや」
「なんだよぉ、それ」
カオリは相変わらず先の読めない行動をする。
人を呼ぶだけ呼んでおいて、雑誌を開いてしまった。
私は少し不機嫌になりながら、再度雑誌に目を落とした。
最近、楽屋に二人でいる回数が少し増えた。
改編のせいでカオリがタンポポを抜けたのが大きいのだろう。
けれど、私は余りこの時間が好きではない。
どうしても楽屋が静まり返ってしまうからだ。
- 377 名前:モーニング娘。である事の意味 投稿日:2002年10月16日(水)12時28分56秒
- 「飲む?」
カオリが嫌いとか、話しづらいとか、そんなことは一切無い。
けれど話す事は何も無い。
体格の違う二人ではファッションの話は合わないし、和食派の私と洋食派のカオリでは食べ物の話も合わない。
必然と話す事は無くなって、それは同時に私が気を使わなければならないと言う事にも繋がってくる。
口をつけたばかりのお茶のペットボトルを差し出しながらカオリに聞いた。
「もらうね」
カオリは上半身だけ屈めて、私の手からペットボトルを抜き取った。
カオリは案外、この静かな空間を気に入っているフシがある。
音も立てずお茶を飲みこむ姿を見て思った。
それなら、私が気を使う必要などどこにも無い。
「サンキュ」
元の場所である私の手元にペットボトルが帰ってきた。
「お構いなく」
それでも私はこの空間が苦手で、結局大して意味の無い言葉を発してみたりする。
- 378 名前:モーニング娘。である事の意味 投稿日:2002年10月16日(水)12時29分28秒
- 「なっちぃ」
「なに?」
しばらく無言のまま雑誌を読みふけっていると、さっきと同じようにカオリが声をかけてきた。
カオリの方に向き直ると、カオリは雑誌から目を上げてはいなかった。
「卒業したらさ、カオリ北海道に帰ろうかと思うの」
「はぁ?」
未だ雑誌とにらめっこをしたまま、カオリはこともなげに言い放った。
けれどその言葉は余りに唐突で、私はすぐに反応できなかった。
そしてようやく出てきた言葉も、とても間抜けな響きだった。
「北海道でね、絵を描きながら過ごそうと思うの。
歌もやめて、芸能界には残らないで、そうだな、アルバイトでもしながら」
カオリはようやく顔を上げて、ばっちりと視線が合った。
その目は笑っていなかった。
冗談を口にするとき、強がりを言うとき、決まって揺れるはずのカオリの視線が、今はただ真っ直ぐだった。
- 379 名前:モーニング娘。である事の意味 投稿日:2002年10月16日(水)12時30分05秒
- 「本気で言ってるの?」
本気で言ってる事は私にも十分わかったが、敢えて聞いてみた。
今まで、たとえ二人きりになったとしても、カオリが卒業なんて言葉を口にする事は無かった。
カオリの考えがわからなくて不安になった。
一人だけ取り残される、カオリにおいて行かれるような不安が、急に私の周りを包み始めた。
「本気だよ」
カオリの答えは決まっている。
私はただそれを確かめただけだ。
それでも、自分の想像以上に落胆している自分がいた。
「卒業するって言ってるわけじゃないよ、卒業したらってことだよ」
フォローするようにのんびりとした口調でカオリが言う。
けれどそんな言葉が何の意味も持たない事は、カオリにも十分わかってるはずだ。
「そうだよね」
私達にもついに順番が回ってきた。
少し前に聞いた六期メンバーの加入、それはカウントダウンの始まり。
覚悟しておけと言う無言の圧力。
- 380 名前:モーニング娘。である事の意味 投稿日:2002年10月16日(水)12時30分41秒
- 「でさ」
私は辞めたくないと思っている。
できる事ならば、ずっと歌を歌っていたいと思っている。
そしてそれはカオリも思っている。
歌を歌いつづけていたいと思っているに違いない。
「たぶん卒業するときは二人一緒だと思うんだ」
けれど、娘。を卒業する時が来たら。
その時には、歌いつづけたいなんて気持ちは薄れているに違いない。
モーニング娘。じゃなくなった私達に何の価値があるというのだろう。
私達のいなくなったモーニング娘。が活動している影で、ひっそりと歌いつづけるなんてことが出来るわけが無い。
力の問題ではない、知名度の問題でもない、プライドの問題だ。
「そしたらさ、二人で北海道帰ろうよ」
迷う事など何も無い。
「そうだね」
私は力強く頷いた。
- 381 名前:モーニング娘。である事の意味 投稿日:2002年10月16日(水)12時31分15秒
- 「なっちならそう言ってくれると思ったよ」
ようやくカオリの表情が柔らかくなった。
ファッションの趣味は合わないし、食べ物の話も合わないけれど、私達は同郷で、五年以上もほぼ毎日顔を合わせてきた。
話す事は無くても、通ずるものはある。
「なっちに稼いでもらって、カオリは一日中絵を描きつづけてればいいなんて幸せだよ」
「ちょっと待て、カオリもいっしょに働くっしょ、バーとかで」
「えー?なんでバーが出てくるの?それじゃなっちはどこで働くのよ?」
「カオリくらいスタイル良ければ一ヶ月でかなり稼げるべ、なっちは適当にコンビニとか」
「なんかなっち軽いセクハラだよ、それ」
「いいんだって、それでなっちはコンビニから適当に食べ物を貰ってくる、完璧っしょ」
すごくバカらしい会話で、妙に現実的な会話。
もしかしたら、一年後くらいには実現しているのかもしれない。
「案外楽しいかも」
「ね」
明るい未来かどうか、それはわからないけれど。
楽しい未来には間違い無いと思う。
- 382 名前:後書きと言うか愚痴 投稿日:2002年10月16日(水)12時36分38秒
- 僕は他面ヲタですが、かおなちの二人がいなくなったら純粋小説ヲタになることと思います。
そう思ったらふと、卒業後には二人には芸能界を引退して北海道で仲良く暮らして欲しいなぁ
というキモイ考えが浮かびました。
脳内妄想ぶちまけ型の話で恐縮ですが投稿させていただきました。
それでは。
- 383 名前:ごまっとう夜話 投稿日:2002年10月16日(水)16時02分49秒
- ごまっとう第一夜。
今は昔。京の都の市にて一人の男有りけり。
道の上にむしろを敷きて商いをせり。
その男語るに、
「後藤某の打ちたる刀は鬼神の速さにて、いかなる兜も盾も切り裂き貫き、この世に敵わぬ武具はなし。いかなる武芸達者や呪者といえども防げる道理はあるまいぞ。買わねば損をする。」
後藤某は音に聞こえし刀鍛冶にて、その打ちたる刀は海を切りて道を作り、風を切りてかまいたちを起こしけり。
また、その男語るに
「松浦某の作りたる兜は強固にして柔軟、いかなる刃物も通さず防ぎけり。呪者の唱えたる火や水やかまいたちの呪文をも通じず。買わねば損をする。」
松浦某は音に聞こえし兜造りにて、その作りし防具は天竜の鱗よりも固く、地獄の業火をも防ぎけりと伝う。
- 384 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月16日(水)16時03分59秒
- また、その男語るに
「藤本某の編み出したり秘伝の呪法の巻物は地獄の業火よりも熱き炎を呼び、この世に鬼神を召還し、いかなる刃物も防具をも敵うものはなし。買わねば損をする。」
藤本某は音に聞こえし陰陽師にて、遠き過去未来を見通し、閻魔大王をも式神として使役し、1000の齢を重ねたりと伝う。
その口上を聞きたる、ある男子言いて曰く
「その刀、兜、呪法を揃えし二者が戦いし時に、いずれが勝つや。」
物売りの男、答えること能わず。
- 385 名前:ごまっとう夜話 投稿日:2002年10月16日(水)16時19分55秒
- ごまっとう第二夜
プリンが3個あった。
何ということのない、スーパーとかで3個でワンパックになって売っているプリンだ。お姉ちゃんが1つ、わたしが1つ食べて、残りはもう一個。
どうしても欲しかった。
子供の頃は、実につまらないものにすごく固執する時がある。
わたしは、その一個のプリンをなんとしても食べたかった。
お姉ちゃんがいう。
「恨みっこなしで、じゃんけんで決めようよ。」
「いいよ。一発勝負だよ。負けても、もう一度はないよ。」
わたしは答えた。
でも、確実に自分も勝たなくちゃあ駄目だ。
勝つ方法を必死で考える。
お姉ちゃんは、最初に何を出すだろう?
頭が考えすぎて熱くなる。
- 386 名前:ごまっとう夜話 投稿日:2002年10月16日(水)16時22分13秒
- そうだ!!!
お姉ちゃんが、どんな手を出しても勝つ方法を思いついた。
「じゃんけん、ほいっ。」
わたしの出した手は万能だ。
親指と人指し指でチョキを作る。中指薬指小指は握ってグーだ。しかも手のひらはパーの形になっている。一つの手でグー・チョキ・パー全てが出せる。
「ずるいよ。そんな手が通用するわけないじゃん。」
お姉ちゃんが猛烈に抗議する。
「一つの手で、グー・チョキ・パーを出すなんて都合が良さ過ぎるよ。出すときはひとつひとつにしなくちゃ駄目だよ。」
(いい考えだと思ったんだけどなぁ。)
結局、じゃんけんはやり直しになりました。
- 387 名前:ごまっとう夜話 投稿日:2002年10月16日(水)16時23分48秒
- ごまっとう第三夜
「ねえ、おじいちゃん。この世で一番強い動物はなぁに?」
「そうだねぇ。百獣の王ライオンかね。」
おじいちゃんは僕をひざの上に乗せながら答えた。
「虎は?虎とライオンがもし戦ったらどちらが勝つ?」
「虎も強いねぇ。どっちが勝つかな。おじいちゃんには分からないなぁ。でも、虎もライオンも毒蛇には、恐れて決して近寄らないっていうから、蛇も案外に強いかもしれないね。」
「蛇?蛇って強いの?」
「うん。コブラなんかの毒蛇に、がぶって咬まれたらどんな生き物もすぐ死んじゃうよ。それに遠い外国には長さが何メートルもあって太さがおじいちゃんの体くらいある大蛇がいるらしいよ。ライオンだって虎だって、そんなのに巻き付かれたら、キュウっていって死んじゃうよ。」
僕は、おじいちゃんの言うような大蛇を想像して怖くなった。
- 388 名前:ごまっとう夜話 投稿日:2002年10月16日(水)16時26分06秒
- 「蛇には、なんか苦手な動物はいないの?」
「蛇はナメクジが嫌いだっていうねぇ。」
「ナメクジ?お庭の植木鉢の下にいるナメクジが嫌いなの?」
僕は信じられなかった。あのグネグネしたナメクジを蛇が怖がるなんて。
「ナメクジのねばねばした体を食べると、どんな大蛇も死んじゃうんだってさ。それにナメクジには蛇の毒は通じないっていうよ。」
「ふーん。じゃあナメクジには怖い物はないの?」
「ナメクジはカエルが怖いね。カエルはナメクジが好物でぱくぱく食べちゃう。ナメクジの毒もカエルには通じない。」
「蛇はナメクジが怖くて、ナメクジはカエルが怖い。じゃあカエルは何が怖いの?」
「カエルはやっぱり蛇が怖いだろね。蛇ににらまれたカエルという言葉もあるし。」
訳分からなくなっちゃった。
蛇はナメクジが怖い。
ナメクジはカエルが怖い。
カエルは蛇が怖い。
じゃあ、誰が一番強いの?
蛇とナメクジとカエルと一つの壺に入れたら、最後に残るのは誰なんだろう?
- 389 名前:ごまっとう夜話 投稿日:2002年10月16日(水)16時28分15秒
- ごまっとう第四夜
(さっきからついてるなぁ。)
配られたカードを見てわたしはほくそ笑んだ。
既に手の中にエースが3枚ある。
後一枚エースがあれば完璧だ。
大貧民というゲームはとことんえげつないルールがある。大富豪は大貧民から、その手の中の一番いいカードを2枚強制的に巻き上げる事が出来るのだ。そして、大富豪は逆に糞カードを2枚大貧民に押しつけられる。富んだ者はより富み、貧しい者はより貧しくなるわけだ。
ここ数ゲーム、わたしはずっと大富豪を連続して務めていた。
このゲームもいただきだ。
「ねえKちゃん、はやくカードをちょうだい。」
わたしは大貧民のKちゃんに催促する。Kちゃんは逆にさっきから貧乏くじを引き続け、大貧民に固定されていた。
- 390 名前:ごまっとう夜話 投稿日:2002年10月16日(水)16時29分45秒
- 「ああ、ちょっと待ってGちん。」
Kちゃんは2枚手の内からカードを抜き出して、裏返しにしてすっと私のほうに滑らした。
わたしもクラブの2とハートの4をKちゃんにあげる。
Kちゃんのくれたカードをめくって見てみた。
やった。エースだ。これでわたしの勝ちは確定した。
ほかの持ち札もほとんど絵札だから負けるはずがない。
一巡目が始まった。
Nっち、Kおりんとカードを出して、Kちゃんの番になった。すでにカードの数字は10になっており、Kちゃんの持ち札では出せるかどうか微妙なラインだ。
Kちゃんは、しばらく思案した後に、一言
「革命。」
と言って、2を4枚揃えて場に出した。
「うええぇ革命かよ。」
富豪のNっちが叫ぶ。
- 391 名前:ごまっとう夜話 投稿日:2002年10月16日(水)16時31分57秒
- 革命とはローカルルールかも知れないが、一番弱い屑札の2を4枚揃えて場に出すと革命が起きて、大富豪が一夜にして大貧民に転落し、大貧民が大富豪になる下克上ルールだ。
つまり、わたしは大貧民に落とされ、Kちゃんは大富豪になったということになる。
「せっかく、エースを4枚そろえたのになぁ。」
わたしは未だに革命が信じられず愚痴る。
そんなわたしの顔を見て
「屑札には、屑札の使い道があるってことさ。さっきは2をくれてありがとう。Gちん。」
そう言って、Kちゃんは笑った。
- 392 名前:ごまっとう夜話 投稿日:2002年10月16日(水)16時33分27秒
- 終わり
読み方は読者さんにお任せします。
- 393 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月16日(水)19時16分57秒
- ごまっとう夜話、堪能しました(w
どのようになるのかたのしみですね。
- 394 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月21日(月)11時17分03秒
- http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/white/1035166194/
新スレ立てました。
- 395 名前:なんとなく纏めてみた 投稿日:2002年10月31日(木)15時01分24秒
- >>3-26 嵐の後で
>>31-36 小さな生き物
>>39-49 〜M(マリア)〜
>>53-56 「時には失敗したビデオ操作のように」(53-) 3 〜終幕〜(54) 1 〜激動〜(56)
>>59-60 ビー玉
>>63-66 純白
>>69-82 いちいのてのひら
>>87-91 あるひとコマ
>>96-98 「あなたという優しさの隣で・・・」
>>99 TACHIBANASI:TACHIHIROSHI
>>101-111 天晴
>>115-121 夏の記憶
>>124-132 「トライアングル」
>>133-138 最高の快楽
>>142-147 オモイ
>>150-157 オモイ―加護―
>>162-167 オモイ―辻―
>>168-190 in Room・・・
>>192-194 for you
>>198-199 Please smile again ...
>>202-210 復讐ハ誰ガ為ニ?
>>217 「感情」
>>219-229 ループ
>>231-236 伝えたい事
>>241-244 「最後・・・」
- 396 名前:間違ってたらごめんよう 投稿日:2002年10月31日(木)15時02分24秒
- >>245-252 かくれんぼの結末
>>254-263 「アイス」につかれた彼女(254-262) 余談(263)
>>266-272 雨の日は。
>>275-289 Blue sky
>>290-298 あさ美・麻琴の『カップリング★ばんばん』
>>301-308 ただ真っ直ぐに
>>310-316 やめないで
>>317-323 すき
>>326-334 独占欲
>>336-347 それはお気の毒に
>>348-351 モーニング。クローン
>>352-355 クローン・マリー
>>356-361 さりな調理法
>>362 フリーザーのの。
>>363 ウエディングのの。
>>364-365 オール・ア・なっちング。
>>366-367 ピーチ・のの太郎
>>368-370 親指あいぼん(368) 浦島あいぼん(369-)
>>371-374 クローン・ラブリー
>>376-381 モーニング娘。である事の意味
>>383-392 ごまっとう夜話
- 397 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月31日(木)18時27分13秒
- >>395-396
激乙です。これでネタバレスレが盛り上がってくれればいいんだけど。
作者降臨待ってます。
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