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今を生きる

1 名前:作者 投稿日:2002年08月02日(金)09時32分01秒
腕試しのつもりですので、忌憚のない感想を頂ければ嬉しいです。
「分かりにくい」とか、「読みにくい」とかありましたら、努力したいなと。
ただ「つまらない」ってのは、改善できませんが。
2 名前:pro 投稿日:2002年08月02日(金)09時33分17秒
悪い知らせってのは、いつだって突然で。


明日香の卒業も。
彩っぺの卒業も。
紗耶香の卒業も。
そして、裕ちゃんの卒業も。


お祖父ちゃんが死んだ時。
お祖母ちゃんが死んだ時。

それと同じくらい、衝撃的で悲しくて。
だからきっと、それ以上のショックは、もう無いと思ってた。
3 名前:pro 投稿日:2002年08月02日(金)09時33分55秒
・・・・・・こんなんだったら、裕ちゃんの結婚の方がましだった。


裕ちゃんの笑顔が、そのヒトだけに向けられても。
裕ちゃんの愛が、そのヒトだけに注がれても。

あの柔らかい笑顔を、この目で見ることができたんだから。
あの甘い声を、この耳で聴くことができたんだから。
あの優しい腕を・・・・・・
4 名前:pro 投稿日:2002年08月02日(金)09時34分59秒

今日の朝、裕ちゃんが死んだ。

29歳。裕ちゃんのお父さんと同じ歳だった。
5 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月02日(金)10時43分57秒
やぐちゅーですか?
頑張って下さい。
6 名前:作者 投稿日:2002年08月03日(土)14時29分15秒
5>
やぐちゅー・・・・・・?
まあ矢口さん中心であることは確かです。
頑張ります。
7 名前:1 投稿日:2002年08月03日(土)14時29分47秒
予定時刻になっても、裕ちゃんは現場に現れなくて。
様子を見に行ったマネージャーさんが、第一発見者。
鍵を開けて部屋に入り、寝室で見つけた。


今朝、起きた様子はなく、バスローブのままで。
柔らかい布団に埋もれたまま、眠るように。
きっと眠ったまま、逝ったんだろう。
8 名前:1 投稿日:2002年08月03日(土)14時30分21秒
裕ちゃんの部屋に、精神安定剤の空瓶があったとか。
いつになく、部屋が片付いていたとか。
指先に血液が残ってるから、突然死だとか。
自殺とか、自殺じゃないとか。


そんなことはどうでも良くて。
ただ、よく分からなかった。

何が、今、あたしの周りで起きているのか。
裕ちゃんは、今、何をしているのか。
9 名前:1 投稿日:2002年08月03日(土)14時30分58秒
お姫様みたいに、眠っている裕ちゃんを見ても。
幼げな表情を白い布が、隠していても。
目の前の映像が、何を意味しているのか・・・・・・


周りの慟哭が、あたしに現実を突きつける。


誰かが・・・・・・

涙を堪えきれない。
必死に名前を呼ぶ。
何も言えず、泣いてる。
裕ちゃんの温もりに触れようとする。


いつも笑ってるなっちが。
いつも落ちついてる圭ちゃんが。
カオリが、みっちゃんが、皆が・・・・・・
10 名前:1 投稿日:2002年08月03日(土)14時31分37秒
目の前のヒトは誰?
このヒトは死んだの?


死んだって・・・・・・どういうこと?



「ゆーちゃん・・・・・・」

11 名前:1 投稿日:2002年08月03日(土)14時32分22秒
布を外して、そっと触れる。
見慣れた寝顔のよう。なのに、伝わるのは氷の冷たさ。
触れていても、全然暖かくならないホッペ。

寒い冬の日、暖めてあげた、あのホッペとは違う。
あたしの熱を奪っても、全然暖かくならないんだ・・・・・・


「ゆーこぉ!!」
12 名前:1 投稿日:2002年08月03日(土)14時33分00秒
揺すっても揺すっても、全然目を覚まさない。
ホッペを叩いても、あの声が聴こえない。

寝起きが悪いから、起こしても「うー」とか「あー」とか。
何言ってんだか分かんないコト、唸ってるだけで。
でも、すぐあたしを引っ張り込んで「おはよーさん」って・・・・・・
13 名前:1 投稿日:2002年08月03日(土)14時33分35秒

もう、何も話さない。
もう笑ってくれない。抱きしめてくれない。

裕ちゃんは、死んだ―――そういうことなのか・・・・・・



ふと気付くと、カラスの鳴き声。
東京のど真ん中、もう夜なのに、やけに耳につく。

ヒトが死ぬと、カラスが鳴くってホントなんだ。
カラスって、死神なのかなぁ・・・・・・
裕ちゃんの魂も、持って行っちゃうのかなぁ・・・・・・

14 名前:1 投稿日:2002年08月03日(土)14時34分20秒
「ヤグチ・・・・・・」

気付くと、傍にヒトの体温。
触れ合う腕から、生きてる人間の熱が伝わって。


「なっちぃ・・・・・」


冷たい裕ちゃんを、思い出して。
悲しいとか、寂しいとか、何故とか、どーしてとか。
そんなこと、何にも思い浮かばなくて。
溢れる涙を、なっちの胸に吸い込ませていた。
15 名前:名無し読者。 投稿日:2002年08月03日(土)18時54分55秒
のっけから痛いな(苦笑
16 名前:作者 投稿日:2002年08月04日(日)13時13分50秒
15>
終わった時に、シリアスだったなぁ。
ってのを目指してます。
17 名前:2 投稿日:2002年08月04日(日)13時14分24秒

頬に暖かさを感じて目を開ける。
カーテンの隙間から、強烈なまでの光が差し込んでいた。


「おはよ、ヤグチ」
「あ、おはよ」


どうやら、昨日はそのまま寝てしまったらしい。
周りを見ると、圭ちゃんやカオリ、みっちゃんもいる。
18 名前:2 投稿日:2002年08月04日(日)13時15分10秒
「他のヒトたちは? 帰ったの?」
「うん。裕ちゃんのお母さんは向こうに」


なっちが指差した先は、寝室。
そっか、一緒に寝てるんだ・・・・・

19 名前:2 投稿日:2002年08月04日(日)13時15分41秒
「はい」


差し出されたのは、暖かいミルクティー。

ヒョウ柄のソファーに座って。
ゼブラのクッションを抱いて。
甘く温かい液体が、身体の中を暖める。


・・・・・・いつもの朝。
何度も繰り返してきた、いつもの朝。
20 名前:2 投稿日:2002年08月04日(日)13時16分15秒

「お通夜・・・・・・・・今夜だって」


ただ、裕ちゃんだけが、いなくなった。

21 名前:3 投稿日:2002年08月06日(火)19時12分48秒
怖いくらい静かな庭に、低い読経の声が響く。
対抗してるのは、周りの木々から響くセミの声。
緑濃い森の深さが、この土地の歴史を映しているようで。


真夏の日差しが照りつける、熱い空気の中。
立ち尽くす真っ黒い集団は、冷たい空気を纏って。

突き刺すような太陽の光にも係わらず。
痛みどころか、熱さえも感じられず。
気が遠くなるような眩しさは、愛しい過去を思い出させる。
22 名前:3 投稿日:2002年08月06日(火)19時13分18秒

『ねぇイイの?』
『何が?』
『三十路、三十路って。ムカツクじゃん』


あれは、裕ちゃんが年齢ネタで、いじられてる頃だった。
よりにもよって、辻やら加護やらのコドモに、好き勝手に。
あたしも言うけど、ヒトに言われるのはムカツクっていうヤツだったけど。


『あ〜まぁムカツクけどぉ。それもええかなって』
『三十路が?』
『ちゃう。あんたらより年上なコトが』
『威張れるから?』


そう言うと「あたしはガキ大将か」って、ポカッて。
―――すぐ手ぇ出るし。充分、年上の権力使ってるじゃんって思った。
23 名前:3 投稿日:2002年08月06日(火)19時13分50秒
『あんたらより先に死ぬ可能性が大きいやろ?』
『あんたらの死に顔、見なくて済むやん?』


言った通りになったよ。これで満足?


『でもなぁ、独りで死ぬのは嫌やから、傍におってな』
『え〜?・・・・・・ヤダよぉ』
『何でぇ? 裕ちゃんのコト、キライなん?』
『そうじゃないけど・・・・・・』


何で、そんな悲しい役目、ヤグチに頼むんだよぉって。
裕ちゃんの最期に逢うのなんて、すっごく悲しいじゃんかって。

でもそうじゃなかったよ。
最期に逢えないことが、すっごく悲しいんだね。

―――ヤグチ、約束果たせなかったよ・・・・・・

24 名前:3 投稿日:2002年08月06日(火)19時14分25秒
寂しがりで、小心者で、怖がりなのに。

ごめんね、独りで逝かせてしまって。
ごめんね、傍にいられなくて。


「ごめんね」


柔らかいキレイな髪の。
きめの細かい、白い肌の。
たれ目で、犬っ鼻で、あひる口で。

大好きな顔。大好きな声。
大好きな身体に告げた、それが最後の言葉。
25 名前:3 投稿日:2002年08月06日(火)19時14分56秒
「ごめんね・・・・・」


裕ちゃんの全ては、白い煙になって。
青い空に広がって、見えなくなった。

26 名前:3 投稿日:2002年08月06日(火)19時15分38秒
−−−−−−−−−−−−−−−
27 名前:3 投稿日:2002年08月06日(火)19時16分35秒
「ただいま・・・・」


玄関先で、お塩を撒いて。
ドアを開けると、トコトコ近づいてくる同居人。


「あ、歩けるようになったんだぁ」


お線香の匂いが残る喪服のまま、ひょいっと抱き上げる。

その身体には、白いガーゼが張り付いていて。
甘い匂いの中、消毒液の匂いも混ざっている。
28 名前:3 投稿日:2002年08月06日(火)19時17分07秒
「にゃあ」


あたしに答えるように、一鳴きして。
それは、か細いけれど、でも初めて聴いた鳴き声だった。


「鳴けるようになったんだ!? 良かったなぁ」


小さい身体をリビングに降ろして。
冷蔵庫から取り出した、ミルクを注いでやる。
ぴちゃぴちゃ音をたてながら、お皿に頭を突っ込んでる姿。

―――あの時からは、想像できないよなぁ。
29 名前:3 投稿日:2002年08月06日(火)19時17分45秒
初めて会ったのは、あの日の翌日。
朝日を浴びながら、裕ちゃんの部屋から帰る途中だった。


昨日から、妙にカラスが気に障って。
その時も、細い路地から、カラスの鳴き声が聴こえてきた。

そっと覗くと、黒い身体の陰に、黒い物体が見えて。
黒光りする嘴のそれは、あたしを一瞥して飛び去った。


近づいてみると、それは仔ネコだった。
生後数ヶ月な感じで、身体は真っ黒に薄汚れていた。

小さな身体は、あちこち傷ついていて。
両手に乗せても、縮こまってブルブルと震えていた。
30 名前:3 投稿日:2002年08月06日(火)19時18分16秒
「実は、ゆーちゃんみたいだなぁって思ったんだ」
「ぅーっ」


骨ばった背中を撫でると、小さな唸り声。

―――食事中は手をだすなって?
・・・・・・コドモでも、ネコなんだねぇ。



何か、本番前に震えてた裕ちゃんを思い出しちゃってさ。
普通だったら、絶対連れて帰らないのになぁ。
31 名前:3 投稿日:2002年08月06日(火)19時18分47秒
お医者さんに連れて行って、洗ってもらったら。
実は茶色い毛並みだったコトが判明して。
「弱ってるけど、すぐ良くなるよ」って言われて安心した。


「カラスに感謝しろよ」


・・・・・・裕ちゃんの魂は、カラスが連れて行ったのに。
このコの魂は、カラスのおかげで留まってる。
不思議なもんだねぇ・・・・・・・・
32 名前:3 投稿日:2002年08月06日(火)19時19分26秒
「さーてと。お風呂入ろうっと」


裕ちゃんのいない現実は、実はあまり実感していない。
きっとこれから少しずつ、感じていくのかも知れない。

けど、塞ぎ込んでたって、誰のためにもならないし。
きっと裕ちゃんだって、喜ばないよね。

カラ元気だって、元気! そー誰かが言ってたし。

33 名前:皐月 投稿日:2002年08月06日(火)21時31分24秒
・・・・・・・切ないっすね・・・・
今後めっちゃ気になるんでがんばってくださいね!
34 名前:作者 投稿日:2002年08月07日(水)20時06分12秒
33>
ども、ありがとうございます。
切ない・・・いつまで続くか?<何故疑問?
がんばります。
35 名前:3 投稿日:2002年08月07日(水)20時06分54秒
火照った身体をクーラーで冷まして。
ご飯を食べて、テレビを見て、メールをして。

うん。結構元気。普通にやれてる。

裕ちゃんのお箸とカップを見たときは、ウルッてきたけど。
裕ちゃん用のコーヒーが、苦かったせいで。



「ゆ〜ちゃ〜ん・・・・・・」


ホントに死んじゃったのかよぉ。
どーして死んじゃうんだよぉ。
何でだよぉ。身体悪かったのかよぉ。生きるの嫌になったのかよぉ・・・・・・

心臓止まっても、気合で動かせなかったのかよ・・・・・・
ヤグチに逢いたいって、気合で生き返ってよぉ・・・・・・

36 名前:3 投稿日:2002年08月07日(水)20時07分24秒
『寂しいよぉ』


卒業を決めた時、ヤグチだけに、そっと漏らした言葉。
何だよ、裕ちゃんが迷うなよぉって、バシって背中を叩いてやった。


『泣くなや』
『・・・・・・自分だって泣いてるじゃん』
『あたしはええの。ほらおいで』


グイっと引っ張られて、そのまま腕の中に閉じ込められて。
ギュって抱きしめられたまま、こめかみに唇を感じてた。
37 名前:3 投稿日:2002年08月07日(水)20時07分56秒

洗い立ての裕ちゃんのバスローブは、裕ちゃんの匂いがしない。
感触だけでも感じたくて、泣きながら抱きしめた。
裕ちゃんだと思って・・・・・・抱きしめた。


「ゆ、ちゃ・・・・・」


ヤグチ、また泣いてるよ。
抱きしめにきてよぉ。
しゃあないなぁって。抱きしめてよぉ・・・・・・・・・
38 名前:3 投稿日:2002年08月07日(水)20時08分30秒


「・・・・・・・ぅち」


遠くから、懐かしい声が聴こえる。
あれは・・・・・・・裕ちゃん??

声の行方を探すあたしは、ホッペに違和感。
・・・・・・ざらざらと濡れた感触が動いている。


「っ!?」
39 名前:3 投稿日:2002年08月07日(水)20時09分19秒

―――何だ、おまえかぁ・・・・・・

いつのまにか寝ていたらしい。
柔らかい身体が、あたしの上に乗って、ホッペを舐めていた。


「随分元気になったじゃんかぁ。そーいや名前、何にしよっか」


ペロペロと舐めつづける身体を抱き上げて。
青い瞳を覗きこみながら、名前を付けてないことを思い出した。

青い瞳、茶色い毛。―――ホント、裕ちゃんみたいだ。
40 名前:3 投稿日:2002年08月07日(水)20時10分41秒

「ゆーちゃん。・・・・・・よし、ゆーちゃんにしよっ!」

ね?って見つめると、あたしは確かに見た。確かに聴いた。


手の中の茶色い仔ネコが、小さい顎をクイって上げて。
「とーぜん」ってウインクするのを・・・・・・

41 名前:3 投稿日:2002年08月07日(水)20時11分19秒


・・・・・・ネコってウインクできるのぉ??
ってそーじゃない。それも疑問だけど、そーじゃない。


「おーい。だいじょぶかぁ」


仔ネコを持ったまま、固まってたあたしに聴こえた声。
―――どっから聴こえるんだ?

目の前の仔ネコの口は、確かに動いてたけど。
ぜーったいそんな風には動いてない。

42 名前:3 投稿日:2002年08月07日(水)20時11分50秒

「ちゅーか、降ろしてくれへん」


やっぱり、にゃあって感じにしか動いてないのに。
どーして聴こえるんだ??
それに、関西弁だし、どーも裕ちゃんっぽい。


―――もしかしてヤグチ、悲しくてオカシクなっちゃった?
裕ちゃんに逢いたいがために、幻聴? 錯覚?
43 名前:3 投稿日:2002年08月07日(水)20時12分25秒

「ヤグチぃ?」


心配そうな裕ちゃんの声が―――聴こえる気がする。
目の前のネコの口が動いてようが、ぜーったい信じないけど。

目の前のネコの手が、人間みたいにあたしの目の前で振られてる・・・・・・


―――これって、いわゆる、そーゆーこと?
裕ちゃんがネコになったって言う、ベタな話??


最終的な確認っていうか、いいかげん現状を把握しよう。
呼びかけてみて、答えてくれたら認めよう。
44 名前:3 投稿日:2002年08月07日(水)20時13分08秒
「ゆぅ・・・ちゃん?」


恐る恐る、その名を呼んだあたしに。
胸の上の仔ネコは、軽ぅい感じで、片手を上げて。


「おう」

45 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月08日(木)03時35分04秒
裕ちゃん復活(w
裕ちゃんってよく猫になるな(w
この話で5つめ・・・展開が楽しみです。
46 名前:皐月 投稿日:2002年08月08日(木)13時08分46秒
ゆーちゃんが猫!?
おもしろそう!更新楽しみに待ってます!
47 名前:作者 投稿日:2002年08月08日(木)21時53分01秒
45,46>
姐さんネコを書きたくて始めたモンですから。
・・・・・4つもありました? 知らないかも。
48 名前:3 投稿日:2002年08月08日(木)21時53分37秒
「ゆーこぉ!!」


おう、じゃないよぉ。
何でネコなんだよぉ。

もうオカシクてもイイよ。
ヤグチ、狂っててもイイよ。

逢いたかったよぉ。
悲しかったよぉ。
置いてかないでよぉ・・・・・・



「・・・・・・しぃ・・・ヤグぅ・・・・・くる、し・・・・・・」
49 名前:3 投稿日:2002年08月08日(木)21時54分07秒
腕の中から聴こえる声に、我に返る。
思わず、チカラいっぱい抱きしめてしまった。
怪我の具合を思い出して、慌てて身体を離す。


「あ、ごめん。痛い?」
「痛いちゅーねん。ったく怪我人やねんで?」


怪我人って、ヒトじゃないじゃん。ていうか。


「何でネコになってんの? 死んだんじゃないの?」
「や、落ち着きぃ」


矢継ぎ早な質問に、裕ちゃんは、引き気味になって。
だって、訊きたいこといっぱいあるんだもん。


「えーと何やって?・・・・・・えっ? あたし死んだん?」
50 名前:3 投稿日:2002年08月08日(木)21時54分37秒
「えっ? 死んでないの?」
「へっ? ココにおるやん?」


お互い首を傾げながら。
裕ちゃんも事態が掴めてないらしい。


「だって、ゆーちゃんは死んだって。救急車呼んだけど、連れてってくれなかったって」
「ヤグチが呼んでも起きてくれなかったじゃん」
「触ったら冷たくて、全然暖かくならなかったじゃん」
「だって、だってさ・・・・・・」 


泣きだしたあたしは「ベット行こうや」って誘われて。
―――ネコに誘われるって、ヘンな感じ・・・・・・
51 名前:3 投稿日:2002年08月08日(木)21時55分10秒

横になったあたしの胸に、ポンって裕ちゃんが乗ってくる。
胸元の柔らかい毛並みを撫でると、いつかの裕ちゃんみたいで。
その温もりと僅かな重みは、涙を少しずつ止めてくれた。


「夢を見たんや」


あたしが落ち着いたのを見計らってか、ゆっくりと話し出す。
その声は、あたしの大好きな声で、柔らかい甘い声。


「空を飛んでたんや。前には誰かが飛んでて、追いかけてたんや」
「そしたら、下の方で、誰かが泣いててな。死にそうな声でな」
「アカンがなぁ〜って飛んでったらな。何か、めっちゃ辛くてな」

「そしたらヤグチんチやった。・・・・・・信じる?」


抽象的な夢。現実と交錯してる夢。
意味が分からないけど、その声が裕ちゃんだから・・・・・・
52 名前:3 投稿日:2002年08月08日(木)21時55分48秒

「信じるよ」


そう言って狭い額―――狭くなっちゃったねぇ―――にキスをする。
くすぐったそうに細める目も、前と全然変わってないし。
キスしたがるのは、ネコになっても一緒だし。キスというか、舐めるというか。
でも・・・・・・


「ゆーちゃん、牛乳くさーい」
「牛乳出すからやろぉ」

「でもさ、何でしゃべれるの? ジジみたいだよ」
「あたしは普通に話してるだけやで?」
「そっか・・・・・ま、イイけど」


傍目に見たら、きっとヤグチはオカシイかも。でもイイんだ。
このヒト―――今はネコだけど―――が大好きなんだから。
53 名前:3 投稿日:2002年08月08日(木)21時56分24秒

「ヤグチぃ・・・・・・」
「うん?」


ふざけてた雰囲気が一転して、辛そうな声。
胸元の青い目を覗くと、それは確かに泣きそうになってて。


「あたし、死んだん?・・・・・・」


涙がいっぱい溜まった目。
あたしから逸らした瞬間、ちっちゃい水滴がポロって落ちた。

そのまま、顔を上げないで。
俯いたまま聴こえる声は、震えてるようで。
怪我で切れたちっさな耳も、プルプル震えてた。
54 名前:3 投稿日:2002年08月08日(木)21時56分57秒
「お葬式、今日、やったん?」
「うん。京都で・・・・・・」
「ウチのお母さん、泣いてた?」
「うん・・・・・・」

「そっか・・・・・・・親不孝してもーた、なぁ・・・・・・」
「ゆーちゃん・・・・・」


泣かないでって言っても、きっと泣いちゃうから。
泣いていいよって、抱きしめた。

小さくて壊れそうな身体。
今までより熱い体温、すべすべじゃない手触り―――全然違う。
でも心が、裕ちゃんをちゃんと感じさせてくれて。

涙はいつしか、安らかな眠りへと変わっていった。

55 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月09日(金)00時05分30秒
ゆうこ〜。
56 名前:作者 投稿日:2002年08月09日(金)19時41分39秒
55>
从 ~∀~ 从<なんやぁ?
57 名前:4 投稿日:2002年08月09日(金)19時42分38秒

ピピッ ピピッ ピッ!


狭間で見ていた夢は、携帯のアラームで中断された。
―――何か、楽しい夢だった気がする。

アラームを止めるため、動かした腕が何かに触れた。


「ぅにゃ・・・・・・」


あ・・・・・・ネコ・・・・・・
58 名前:4 投稿日:2002年08月09日(金)19時43分08秒

昨夜の記憶が蘇って、一気に目が覚めた。
あれは夢だったのか、現実だったのか。
つまり、このネコは裕ちゃんなのか、違うのか・・・・・・


ヤグチの横で、未だ眠ったままの仔ネコ。
白いお腹を出して、手で顔を覆って。
―――何か酔っ払いみたいだ・・・・・・


「ゆーちゃん・・・・・」


ピクピクしてる耳元で、そっと呼んでみる。
59 名前:4 投稿日:2002年08月09日(金)19時43分44秒
「ぅな・・・・・・」


返ってきたのは、鳴き声とも唸り声とも判断できない。

・・・・・・どうせ誰もいないんだし。
例えネコ相手に話してたって、ヘンに思われないしね。


「おはよって言って」
「・・・・・・おぁよぉ・・・・・・・」

「―――まだ寝てていーよ」


ベットに裕ちゃんを残して起き上がる。
顔を洗って、お湯を沸かして、紅茶を煎れて。

―――やっぱり夢じゃなかったんだ。
昨日の話はホントーで、裕ちゃんだったんだ。

・・・・・・ネコになっても、寝起きは悪いんだなぁ・・・・・

60 名前:4 投稿日:2002年08月09日(金)19時44分19秒

「ヤ〜グチっ!」
「ぅわぁっ!」


紅茶を飲みながら、ボーっとしていたのか。
当然現れた裕ちゃんに、チカラいっぱいびっくりした。

裕ちゃんは「そんなに驚かんでも」とか言いながら。
膝の上に乗って、あたしを見上げて。
―――ちょーっと可愛いじゃんかぁ。
61 名前:4 投稿日:2002年08月09日(金)19時44分52秒


「まだ時間あるん?」
「ん? まだ大丈夫だよ。今日はゆっくりなんだ」
「ならさぁ、お風呂入りたいねんけど・・・・・・」


お風呂? 傷はだいじょぶなのか?
ていうか、ネコってお風呂嫌いじゃなかったっけ?


「もーなぁ、汚くてな、我慢できへん」
「・・・・・傷は?」
「多分だいじょぶや。あんまし痛くないし」
「ふうん・・・・・・」
「なぁ、洗ってぇな」


―――どーせなら、人間の時に言って欲しかったなぁなんて。
洗ってなんて、言われたら・・・・・・ヤグチどうしてたかなぁ。
62 名前:4 投稿日:2002年08月09日(金)19時46分15秒

「ヤグチ?」
「あ、うん。イイよ。お風呂行こ」


「やったぁ」って上機嫌にしっぽを立てて。
お風呂に飛んでく後姿・・・・・・もうどうでもいいや。

可愛いモンは可愛いし。
現実は変えられないし。

何より、裕ちゃんと、もう一度お話できることが嬉しいから。
63 名前:4 投稿日:2002年08月11日(日)17時21分23秒
浴室に入ると、裕ちゃんは既にシャワーの下でスタンバイ。
今か今かとワクワクしてる様子が伝わってくるけど・・・・・・


「ガーゼ剥がそうよ」
「あ、そやな」


裕ちゃんの毛が抜けないように、慎重に剥がしてあげる。
見ると、傷口は確かに塞がっているみたい。


「痛かったら言ってね」
「おう」
64 名前:4 投稿日:2002年08月11日(日)17時22分25秒

シャワーのお湯を身体一杯に受けて、気持ちよさそう。
目を瞑ったまま、頭とか腕とか動かして、お湯の当たる場所を変えている。
―――やっぱヘンだ。今までのネコの常識を変えてる・・・・・・


「シャンプーしてぇ」


水音の合間から、くぐもった声が聴こえてきて。
―――まいっか。ネコの常識どころか、生死の常識を超えてるしね。


「おっけー」
65 名前:4 投稿日:2002年08月11日(日)17時23分03秒
シャワーを止めて、シャンプーを泡立てる。
傷に響かないように、ゆっくり優しく撫でていく。
茶色の毛は、あっという間に白く変わって。


「なんかスポンジみたい」
「何がや?」
「ゆーちゃん。全身泡だらけで、ちっちゃくて。お風呂洗えそう」
「洗うなっちゅーねん!」

「目、瞑って」


身体の次は、小さい顔を洗う。
―――でも、どこ洗うんだ?

とりあえず、目と鼻と口以外を撫でてあげる。
そーいえば・・・・・・


「ココ気持ちいい?」
66 名前:4 投稿日:2002年08月11日(日)17時23分49秒

耳の後ろをコリコリと撫でてやる。


「ん・・・・・・ええよぉ・・・・・・」


陶酔した響き。
よっぽど気持ちいいみたいで、擦り寄ってくる。


「え〜もっとぉ」


手を離すと、途端に不満そうな声。
―――もっとって・・・・・なんかエッチだ。


「後でね。さ、流すよ」


白い塊にお湯をかけると、現れたのは茶色い塊。
毛が濡れて、ピタってくっ付いてるから、すっごく小さい。
というか、溺れたみたい・・・・・・
67 名前:4 投稿日:2002年08月11日(日)17時24分23秒

「ぅわっ!」

みすぼらしーなぁとか思ってたら、イキナリ飛んで来る水飛沫。
動物お決まりの、ブルブルってヤツ。


「冷たいじゃんかぁ」
「あ、ゴメン。ついなぁ」


幾分大きくなった塊に、今度はリンスをしてあげる。
もちろん、ベッカムにしたのは言うまでもない。
68 名前:4 投稿日:2002年08月11日(日)17時25分04秒

もう1回、ブルブルってされた後、タオルで拭いてやって。
ドライヤーで乾かすと、フワフワの毛並みが現れた。


「痛くなかった?」
「うん。なぁ、キレイになった?」
「うん。めっちゃキレイ。いー匂い・・・・・」


ホカホカでフワフワの身体に顔を寄せる。
柔らかい毛並みと、フローラルな香りが鼻を擽る。
―――あ〜、裕ちゃんの髪の匂いだ・・・・・・
69 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月11日(日)22時38分28秒
か、かわいい…。
70 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月11日(日)23時40分07秒
ほんと、かわいい・・・。
裕ちゃんの猫って、想像できるから、凄く移入しやすい。
ヤグチが大切に扱っている感じも、上手に表現されているし・・・。
名作の予感。
楽しませてください、お願いします。
71 名前:作者 投稿日:2002年08月12日(月)19時11分03秒
69,70>
ありがとうございます。
最近、野良猫を見かけたら観察してしまいます。

とりあえず、楽しみながら書いてます。
72 名前:4 投稿日:2002年08月12日(月)19時11分38秒
「なぁ、鏡見せて」
「鏡?」
「うん。まだちゃんと見てないねん」


ご要望通り、抱き上げたまま鏡に映す。
洗面所の鏡の中には、ヤグチと、手の中に仔ネコ。


「どう?」
「ん〜〜・・・・・・まあまあやね」
73 名前:4 投稿日:2002年08月12日(月)19時12分14秒

一応は、お眼鏡に叶ったらしい。
鏡の中の裕ちゃんは、右を向いたり左を向いたり。
腕を上げたり、腰を捻ったり、脚を上げたり・・・・・・


「目ぇ青いんやな」
「ゆーちゃんみたいじゃん」
「うん。カラコンいらずや。カッコええやん」


どうやら、目の色が一番お気に入りだったらしい。
降ろしてあげた後も、左右で色違いも良かったなぁとか言って。
74 名前:4 投稿日:2002年08月12日(月)19時12分49秒

―――それは結構カッコいいかも。
でも、それじゃ裕ちゃんじゃない気がするなぁ・・・・・・

ヤグチはやっぱり、青かグレーか―――後は薄茶が好きだな。
コンタクト入れてない時のも、結構好きだったんだ。

75 名前:4 投稿日:2002年08月12日(月)19時13分53秒

『色、薄いんだね』
『あん?』
『目。カラコン外したの初めて見た』


青い瞳は、吸い込まれそうで。
キレイって思うのと同時に、畏怖って言うのかな。
捕らわれそうな怖さがあった。

でもその下の、ホントーの瞳は柔らかい色で。
少し垂れてる目と、よく合ってる気がした。


『そーかぁ? 昔から眼鏡も使ってたで?』
『そーだけど』


ヤグチの純粋な感動を、あっさりと聞き流すオトナ。
何で分かんないかなぁって、実はちょっと悔しかったんだ。
76 名前:4 投稿日:2002年08月12日(月)19時14分27秒

『こんなに近くでってコト』


こんなに近くで。
裕ちゃんの腕の中で。
他には誰もいない、2人っきりの空間で。


『そっか。―――ヤグチ』
『ん・・・・・・』


近づいてくる茶色の瞳。
ずっと見ていたかったけど、先に目を閉じたのはヤグチだった。
77 名前:4 投稿日:2002年08月12日(月)19時14分58秒

―――そーいえば、裕ちゃんが先に目を瞑ったのって、あんまりなかったなぁ・・・・・・・・・



「・・・・・チぃ。ヤグチ〜。お腹空いたぁ〜」


いつの間にか、裕ちゃんは浴室から消えてて。
リビングの方から、声が聴こえる。
―――お腹空いた、か・・・・・・ムードがないのは今も一緒か・・・・・・

鏡の中のあたしは、そんな裕ちゃんに苦笑してる。
けど、笑えることに、少しの驚きもあって。
―――そっか、裕ちゃんのおかげなんだね。


お腹空いたぁって迎えに来た裕ちゃんを抱き上げて。
素直に笑って、キッチンに向かった。
78 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月12日(月)22時04分22秒
かわいいですね。
めっちゃネコ好きなんでニヤニヤしてしまいます。

小学校のころノラ猫を餌付けなしで通い詰めてなつかせたことがあります。

中澤さんはネコですよね絶対。

楽しみにしてます。
79 名前:作者 投稿日:2002年08月13日(火)19時31分47秒
78>
餌付けなしで・・・それはスゴイっすね。
姐さんはネコです。当然。気ままなくせに臆病で・・・・・・
80 名前:4 投稿日:2002年08月13日(火)19時32分32秒

「ご飯食べられるの?」
「うん。もー牛乳ばっかで死ぬかと思ったわ」
「なら言ってくれればいいじゃん・・・・・・」


怪我してたし、仔ネコだし。
仔ネコにはミルクって決まってるじゃん。
そんなさぁ、ご飯あげないヒトみたいに言わないでよ・・・・・・

それならばと、買っておいたネコ缶を取り出して。
缶きり・・・・・あ、コレいらないじゃん。


「あ、そんなん嫌」
81 名前:4 投稿日:2002年08月13日(火)19時33分06秒

「あ、そんなん嫌」


プルタブを引っ張ろうとした、正にその瞬間。
シンクの縁に乗ってきた裕ちゃんが、一言。


「はい?」
「だから、そんなん嫌。ヤグチと同じでええよ」

「え? ネコ缶嫌い?」
「そんなん食べたことないもん」


―――そりゃそうか・・・・・・
ネコ缶なんてネコしか食べないモンなぁ・・・・・・


「って、そーゆーモンなの?」
82 名前:4 投稿日:2002年08月13日(火)19時33分54秒
「へ? ちゅーかご飯何?」
「・・・・・・今日は和食にしようかなと・・・・・・」
「やったぁ。味噌汁つけてな」


味噌汁ってネコまんま?―――じゃないよね。
そーゆーモンなのかぁ・・・・・・ま、いっか。

ちょっと待っててねってシンクから降ろして。
レトルトのご飯をレンジに入れる。
味噌汁もレトルトだけど、乾燥ワカメをプラスして。
卵とハムと・・・・・・


「ゆーちゃん、野菜食べる?」
「いらーん」


だと思った。でもヤグチは食べよっと。
―――このレタス・・・・・まだだいじょぶだな。
83 名前:4 投稿日:2002年08月13日(火)19時34分30秒
「ご飯どれくらい?」
「ん〜〜・・・・・普通」
「普通って・・・・・・―――よし、出来た!」


お盆に載せてリビングに行くと、トコトコと付いてきて。
いつもの場所にちょこんと座る。


「届かないんじゃない?」
「・・・・・・乗ってもええ?」


ちょっと行儀悪いけど、テーブルの上に乗って。


「「いただきま〜す」」
84 名前:4 投稿日:2002年08月13日(火)19時35分06秒
「・・・・・・」

こっちもムリか・・・・・・

普通の茶碗によそったご飯と味噌汁。
どうやら深すぎたみたいで、裕ちゃんの顔が隠れてしまう。


「お皿に入れるよ」
「・・・・・そーして」


改めていただきますして。
ヤグチのご飯の前には、裕ちゃんのご飯と―――裕ちゃん・・・・・・
―――何かヘンな感じ。
85 名前:4 投稿日:2002年08月13日(火)19時35分50秒
「美味しい?」
「ぅん―――熱っ!」


味噌汁を舐めた瞬間、裕ちゃんのしっぽはピンっと立って。
どうやら猫舌は、ちゃんとあるらしい。


「だいじょーぶ?」
「ん〜〜アカ〜ン・・・・・」
「牛乳飲む?」
「イヤ! 頑張る」


頑張るって類のモノなんだろうか。
よっぽど味噌汁飲みたかったのかなぁ。
それとも牛乳飲みすぎ?


「ヤグチぃ、見て見て!」
86 名前:4 投稿日:2002年08月13日(火)19時36分21秒

妙に楽しそうな声。
言われるままに目を向けると、裕ちゃんがワカメを爪に引っ掛けて・・・・・


「オモロクない?」


片手をあげて、ぶらさげて見せてくれる。
味噌汁が冷めるの、待ってるのかと思ったけど。
―――何やってんだか・・・・・・


「はいはい。遊んでないで」
「・・・・・せやな」


何か昔と逆の立場。
礼儀とかうるさく言われてたのはヤグチの方だったのに。

87 名前:4 投稿日:2002年08月13日(火)19時37分08秒

『ん〜、・・・・・・・・ん、かぁ・・・・・』
『飲み込んでからしゃべりぃや』


コレはよく言われたなぁ。
ヤグチ、せっかちだからさ。食べてる最中でも、思いついたら待てないんだよね。


『ん。・・・・・ちゃんと食べなきゃダメじゃん』


せっかくヤグチが作ったのに。
何気に除けてるの、気付いてたんだ。
88 名前:4 投稿日:2002年08月13日(火)19時37分42秒

『え〜、だって苦手やねん』
『ゆーちゃん、嫌いなモノ多すぎ』
『キライとちゃうもん。苦手なだけやもん』
『じゃ、食べてね?』


裕ちゃんが弱いねんって言った、ヤグチの上目使い。
じっと見つめてお願いしたら、結局全部食べてくれたけど。
―――食事に関しては、裕ちゃんもワガママだったか、そーいえば・・・・・・

89 名前:4 投稿日:2002年08月13日(火)19時38分16秒
「・・・・・・ヤグチ?」
「ふぇ?・・・・・・あぁ」
「何かめっちゃ遠いトコ行ってたでぇ?」
「あ、ちょっとね・・・・・・」



何か前にも聴いたことがある会話。
―――あぁ裕ちゃんの卒業の頃、言ったんだっけ。

あの時は、裕ちゃんが、収録中に遠いトコ行っちゃって。
それに気付いた圭ちゃんが、「裕ちゃん?」って呼びかけて。
戻ってきた裕ちゃん、めっちゃ素ぅで可愛かったなぁ。

あの後「オーディション受けへんかってなぁ」って話し出したら。
「そこまで遡ってたの?」って、なっちに突っ込まれて。
「あんなぁ」って一生懸命説明する姿は、コドモみたいだなぁとか思ってた。
90 名前:4 投稿日:2002年08月13日(火)19時38分50秒

けど、話す内容は全然コドモじゃなくって。
あたしたちが出会って、一緒に歌って、支えあって。
そして言ったんだ。


『あたしらは逢うべくして、逢ったんやなぁ』って。


一緒にいた、なっちもカオリも圭ちゃんも。
そこにはいなかった、彩っぺも明日香も、他のメンバーも。
みっちゃんもあっちゃんも、そしてあたしも。

運命ってヤツに、今もずーっと感謝してる。
91 名前:4 投稿日:2002年08月13日(火)19時39分21秒

「ヤグチ?」
「何でもないよ」


心配そうに見上げる青い瞳に、ニコって笑って。
食べちゃおうって、小さい頭をクシャって撫でた。
―――きっと、この感触も、運命なんだ。
92 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月14日(水)01時46分07秒
ことば、きれいですよね。
所々、感心してしまう表現があって、なんか凄くいいです。
この小説、好きです。
93 名前:作者 投稿日:2002年08月14日(水)19時35分00秒
92>
アイデアがないので、きれいって言って頂けると、嬉しいです。
あまり固くならず、乱暴すぎず。ってのを心がけて。
94 名前:4 投稿日:2002年08月14日(水)19時36分13秒

ご飯を食べ終わって、出かける準備。
今日は打ち合わせだけだから、事務所だけ。
あ、その前に、雑誌の取材があったかも。
でも収録もレッスンもないから、かなり気楽。


「なぁ、今日の仕事、何なん?」


フローリングの床を、トコトコしながら近づいてくる。
メイク中のあたしは、手を休めずに口だけ動かして。


「今日は、事務所で打ち合わせと取材」
「それだけ?」
「うん。だから早く終わると思うよ」
「ふうん・・・・・・」
95 名前:4 投稿日:2002年08月14日(水)19時36分53秒

鏡越しに視線を感じて、手を止める。

ソファーにお座りしてる裕ちゃんの目線は、床に座ったあたしと同じで。
目が合った青い瞳は・・・・・・・う、何かヤな予感。


「何か考えてる?」
「うん。あたしも行く」


やっぱり・・・・・・・

そりゃあさ、このネコが裕ちゃんって分かったからさ。
ヤグチだって一緒にいたいし、連れてってあげたいけどさ。
部屋にポツンっと置いてくのも、可哀相だけどさ・・・・・・
96 名前:4 投稿日:2002年08月14日(水)19時37分26秒

「でも電車乗るんだよ?」
「だいじょーぶ。隠れてるから」

「事務所で追い出されない?」
「だいじょーぶ。隠れてるから」

「何のために行くの?」


電車で隠れて、事務所で隠れて。
じゃあ何のために行くのさ?


「え〜〜、だってヒマやし」
「ゆーちゃん・・・・・・」
97 名前:4 投稿日:2002年08月14日(水)19時37分56秒
「メンバーならええやろ、見つかっても・・・・・・」


―――もしかして心配なのかな。
一応、裕ちゃんは死んじゃったわけで。
あたしはこんな状況だから、悲しさは少しずつだけど。


「じゃあ・・・・・・ぜーったい見つかったらダメだよ?」
「もちろんや。ヤグチ・・・・・」
「うん?」


少しトーンの下がった声。
何?って振り向いたあたしに、ペロッてキス?

「ありがとぉ」
98 名前:4 投稿日:2002年08月14日(水)19時38分39秒

―――何だよぉ、照れるじゃんか・・・・・・


「口紅塗る前で良かったよぉ」
「ん? 何か言うた?」
「別にぃ」


こーの鈍感ネコ。
ホント、キス魔で鈍感なトコ、変わってない。

「準備しなよ」ってぶっきらぼうに追い立てると。
「おう!」って威勢良く、駆け出したけど。
―――準備って何するんだろう・・・・・・



「ヤグチ〜、歯磨きできへ〜ん」


・・・・・・なるほど。
99 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月16日(金)23時49分07秒
ウチでも猫を飼っているんですけれど、この小説に出会ってから、
「こいつが裕ちゃんなのか・・・」と、妙な気分になっています。
ご飯を食べているとき、丸くなって寝ているとき、
暑いのに何気に身体寄せてくるとき、もう何年も一緒にいるのに、
愛しさが倍増です。
今夜のご飯は、ちょっと奮発して裕ちゃんの好きな鶏肉をご馳走してやりました。
本当はイカにしたかったけれど、猫には毒だから・・・
あー、裕ちゃんを想いながら、ウチの猫の頭を撫でる。
100 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月17日(土)04時29分40秒
辻加護にみつかったりしたら…(w

ps.
そういえばイカって裕ちゃん(人間)の好物でしたよね…
101 名前:作者 投稿日:2002年08月18日(日)13時17分00秒
99,100>
ネコ飼ってるんですか。いいですねぇ。
私も実家に帰って、観察してきました。
イカ、辻、加護・・・・・・
102 名前:4 投稿日:2002年08月18日(日)13時17分39秒

結局、歯磨きガムをちぎってあげたら、気に入ったらしい。
ガムを噛むネコって・・・・・・あ、頭痛が・・・・・・


「なぁ、どれ持ってくん?」


ヤグチの頭痛も知らず、クチャクチャしながら見上げてくる。
クローゼットの中のバックのコトだろう。


「ん〜・・・・・どれがイイかなぁ」


裕ちゃんは小さいから、どれでも入りそうだけど。
ファスナーとか閉めたら、息苦しくないかな?
でも見つかると困るしなぁ・・・・・・
103 名前:4 投稿日:2002年08月18日(日)13時18分09秒

「じゃあコレ、入ってみて」
「うん」


ファスナー付きの黒いバック。
定番だけど、一番見つからなそう。

入った後、ファスナーを閉めて持ち上げる。
うん、ヤグチ的には問題ないけど。


「嫌やぁ〜〜」
104 名前:4 投稿日:2002年08月18日(日)13時18分44秒

・・・・・・裕ちゃん的には問題ありか。
ファスナーを開けて、中を覗くと、裕ちゃんが飛び出してきた。


「どーしたの?」
「暗い〜〜狭いぃ〜〜」


―――あ〜・・・思い出したよ。
裕ちゃん、閉所恐怖症だっけ・・・・・・

狭いのかぁ。ファスナー閉めたらダメってコトだよね。


「じゃあコッチ。上開いてるから怖くないでしょ?」
「よっ!・・・・・・・・・うん。おっけぇや」
105 名前:4 投稿日:2002年08月18日(日)13時19分21秒

とりあえず、トートバックに入ってもらって。
上からタオルを掛ければ・・・・・・


「暑くない?」
「暑い」
「・・・・・・我慢して」


「なら初めっから訊くな」とか聴こえるけど、無視無視。
閉めたら怖いし、タオル掛けたら暑いし、どーしろってゆーんだよ。
とりあえず、見つからないコトを最優先ってね。


「電車の中は涼しいよ、きっと」
「・・・・・・せやな」


納得してくれたみたいだし、それじゃ出かけるかぁ。
106 名前:4 投稿日:2002年08月18日(日)13時19分58秒

リングとブレスレットと時計と携帯とぉ・・・・・・・
ごちゃごちゃ準備してるその横に、ストンって飛び乗る身体。


「えーなぁ・・・・・・」
「何が?」
「あたしも何かつけた〜い」


―――つけたいってどーゆーコト?
いわゆる、ヤグチの腕とか指とかにつけてるコレのコト?
107 名前:4 投稿日:2002年08月18日(日)13時20分36秒

裕ちゃんの耳を触りながら、やっぱりムリそうって思う。
こんな薄い耳にピアスつけたら、重さで垂れそうだし。


「首輪ぁ〜?」
「チョーカーだと思えばイイじゃん」
「・・・・・なるほど。じゃあ買って」
「うん。今日終わったら買いに行こ?」

108 名前:4 投稿日:2002年08月18日(日)13時21分12秒

電車の中は比較的空いていて、結構涼しかった。
降りた後「暑かった?」って訊いたら、「全然」って。
―――ほぉら、やっぱヤグチ、正解じゃん。


でも事務所までの道は、とっても暑くて。
「タオル取ってぇ〜」って、泣きそうな声が聴こえてきた。
―――ちょっと失敗?
109 名前:4 投稿日:2002年08月18日(日)13時21分48秒

「じゃあ控え室入るまで、しゃべっちゃダメだよ」
「分かってるがな。はよ入ろーや。暑ぅ〜〜」


ビルの前で、一応確認。
でも裕ちゃんは、暑さの方が深刻らしい。
なんだよぉ、ドキドキしてんの、ヤグチだけかよ・・・・・・

ちょっとムカツイて、掛けたタオルをギュって押した。
不満そうな声が聴こえたけど、シィーって聞き流す。

―――アホゆーこ。
誰の所為で緊張してんのか、分かってんのかよぉ。
110 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年08月19日(月)15時26分25秒
初めて読みましたが、面白いです。
この先も期待してます。
111 名前:作者 投稿日:2002年08月19日(月)19時14分17秒
110>
ありがとうございます。
面白いですか? よかった。かなり趣味に走ってるんで、ちょっと心配。
112 名前:4 投稿日:2002年08月19日(月)19時14分54秒

幸い誰にも気付かれず、娘。の控え室にたどり着いた。
皆揃ってるかもと思うと、妙に緊張する。
―――ま、あたしが緊張しても仕方ないんだけどね。


「おはよー」


いつもの様にドアを開けると、いつもと違った雰囲気。
いつもだったら、元気良く返してくれる挨拶も、何だか・・・・・・
113 名前:4 投稿日:2002年08月19日(月)19時15分24秒

「おはよ、ヤグチ。眠れた?」


近くにいた圭ちゃんが、真っ赤な目で答えてくれたけど・・・・・

あ、そっか。昨日は裕ちゃんのお葬式だったんだ。
ヤグチはいろいろありすぎて、記憶の彼方だったけど。
―――そっか、皆は・・・・・・


周りを見ると、珍しく全員が揃ってて、なのにとっても静か。
特に、なっちとか圭ちゃんとかカオリとか。
付き合いの長かったメンバーの憔悴がヒドイ。
裕ちゃんを慕ってたコドモたちも、随分と落ち込んでて。


このままじゃ・・・・・・

114 名前:4 投稿日:2002年08月19日(月)19時16分01秒

「あ〜重かった」


ワザとらしく大きな声で、バックを机の上に置く。
このままの雰囲気じゃ、娘。の仕事は出来ないよ。
裕ちゃんは、コレを心配したんだろうか・・・・・・


「さ、イイよ。ゆーちゃん」


「ゆーちゃん」って名前に、皆が反応したのが分かる。
12人の瞳が、一斉に向けられた気がして、ドキドキする。

上に掛けてたタオルを取り出して。
さ、出て来い。裕ちゃん!
115 名前:4 投稿日:2002年08月19日(月)19時16分34秒

・・・・・・あれ?

タオルを取っても、裕ちゃんが飛び出してこない。
バックの中を見ると、寝てるわけじゃない。


「どーしたの?」


声を掛けると、情けなそうな顔で。


「緊張、すんねん・・・・・」―――声は震えてた。
 
116 名前:4 投稿日:2002年08月19日(月)19時17分16秒

って、おい!
・・・・・・いいかげん緊張しぃ治してよぉ。
ていうか、何でメンバー相手に緊張してんだよぉ。


「ネコぉ?」


予想以上に近くで聴こえた声に顔を上げると。
―――うおっ! ごっつぁん。・・・・・・びっくりしたぁ。

いつの間にかあたしの横にいて、同じように覗き込んでくる。
と、バックの中に手を突っ込んで。


「ネコだぁ〜〜」
117 名前:4 投稿日:2002年08月19日(月)19時17分54秒

「ゆーちゃんってゆーのぉ?」


裕ちゃんを抱き上げたまま、ごっつぁんが尋ねてくる。
さっきまで大人しかったコドモたちも、ごっつぁんに群がって。
辻とか加護とかは、玩具を見つけたみたいに、目が輝いている。


「そーだよ」って答えると。
「ゆーちゃん」「ゆーちゃん」って声が、いくつも聴こえた。
さっきまでの暗い雰囲気は、一気にいつもの騒がしさに。

うるさいけれど、これが娘。なんだよね。
ホッとしてるあたしに、こんどはなっちが近づいてきた。


「何でゆーちゃんなの?」


よくぞ訊いてくれました。
訳を知ったら驚くぞぉ。
今度はヤグチがワクワクして。


「実はね・・・・・・」
118 名前:4 投稿日:2002年08月19日(月)19時18分32秒

「嫌やぁ〜〜〜〜〜〜」


話そうとしたヤグチを遮ったのは、絹を引き裂くような声だった。
慌てて声の主を探すと、ごっつぁんの手の中には、もういなくて。
見ると、部屋の片隅で、小さくなって叫んでる。


「バナナ嫌やぁ〜〜〜〜嫌、嫌、嫌ぁ〜〜〜〜」


辺りを見回すと、確かに誰かのバナナがあって。
―――ふうん。バナナはやっぱり嫌いなんだぁ・・・・・・
119 名前:4 投稿日:2002年08月19日(月)19時19分21秒

「ねぇ、やぐっちゃん。ゆーちゃん、何で鳴いてるの?」
「そーやねん。うちら何もしてへんのに」
「すっごい鳴いてますよぉ?」


ごっつぁんの、加護ちゃんの、石川の言葉に我に返ったけど。


―――ええぇ〜?? 裕ちゃんの声、聴こえないの?


隅っこで泣き喚いてるのを、止めることも忘れて。
メンバーを見回しても、誰も裕ちゃんの言葉を理解してる様子は無い。

カオリは?・・・・・・・・・・聴こえないのか・・・・・・
120 名前:4 投稿日:2002年08月19日(月)19時19分53秒

「ヤグチぃ。誰か来ちゃうよ?」
「うん。鳴き止ませないとヤバイっしょ」


半ば呆然としながらも、その通りだと裕ちゃんに近づいて。
泣き止んでって抱きしめた。


「ヤグチぃ、バナナ嫌ぁ。どっかやってぇ〜〜」


裕ちゃんにとっては、バナナの方が大問題なんだろうけど。
ヤグチにとっては、コッチの方が驚きなんだよぉ・・・・・・

「それよりもさぁ」って、皆に背を向けて、小さな声で話し掛ける。
121 名前:4 投稿日:2002年08月19日(月)19時20分32秒

「ゆーちゃんの声、皆には分かんないみたいだよぉ?」
「へっ? そーなん?」
「そーなん?って。・・・・・・ヤグチがオカシイの?」

「ん〜〜〜愛の差やな、うん」
「はい?」
「うん。愛の差や。なぁそれより、どっかやってもぉて、な?」


―――何だよぉ。何でそんなにあっさりとしてるんだよぉ。
ヤグチよりバナナの方が、重要なのかよぉ・・・・・・ちぇっ、見てろよぉ・・・・・・

クルって振り向くと、やっぱり皆の視線が集中。
その中を横切って、誰かのバナナを手にとって。


「ゴメンねぇ。ゆーちゃん、バナナが怖いんだ」


「ほら」ってバナナを裕ちゃんに差し出すと、本気で逃げる。
122 名前:4 投稿日:2002年08月19日(月)19時21分18秒
壁際に追い詰めると、毛を逆立てて、フーって威嚇。


「ちょ、ヤグチ。ホンマ怒るで。・・・・・・・嫌、嫌やぁ〜〜〜〜〜」


あんまり苛めてると、ホントに怒りそうだし。
誰か来たら、マジ困るから、程ほどにしたけど。

―――少しは、ヤグチの気持ちも分かってよね。


「だからさ、バナナ。どーにかしてくれると助かるんだけど・・・・・・」


持ち主は辻ちゃんで、返したらその場で食べてくれた。
でも多分裕ちゃんは、その匂いも嫌だったんだろう。
食べてる辻ちゃんから、一番遠くに飛んでったから・・・・・・


食べ終わったバナナの皮を近づけられて、騒いでるけど。


「嫌ぁ〜〜!!」

「怒ってるぅ〜〜」
「おもしろーい」


楽しそうだから、放っとこう・・・・・・
123 名前:ポン 投稿日:2002年08月19日(月)21時55分26秒
最初が痛かったので読むの止めよーかと思ったけど、進むにつれて
ツボにずっぽりはまりました。姐さんの何気におちゃめなところが
かわいいです。でも辻加護コンビにボロボロにされそうですね。
・・・まさか猫になっても大酒飲(w
124 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年08月20日(火)12時35分38秒
裕ちゃんの声が矢口にしか聞こえないのか・・・。
このままじゃ、猫と話す矢口を見て、他のメンバーから
「裕ちゃんが死んで矢口がオカシクなった」って思われそう・・・。
125 名前:作者 投稿日:2002年08月20日(火)19時30分51秒
123,124>
レスありがとうございます。

最初は無意味に痛かったですかねぇ・・・
まあたまには痛いのも。中味があまりにもアホアホなんで。

>「裕ちゃんが死んで矢口がオカシクなった」って思われそう・・・。

そう思われないようにしたいですが。
まあ姐さんが死んじゃったんなら、オカシクなるのもアリかなぁ・・・<嘘です。
126 名前:4 投稿日:2002年08月20日(火)19時31分22秒
楽しそうだから、放っとこう・・・・・・

いきなり騒がしくなったコドモたち見守りながら。
なっちが、さっきの話の続きを訊いてくる。


「だから、ゆーちゃんって付けたの?」
「う、ん・・・・・目の色とかさ、毛の色とかもさ、ゆーちゃんぽいなぁって・・・・・・」


ホントは中身も裕ちゃんなんだけど。
でも、皆は分かんないみたいだし、余計なコトは言わない方がいいだろうから。

だって、実際名前を付けた時は、裕ちゃんだって知らなかったわけだし。
―――うん。嘘は言ってないもんね。
127 名前:4 投稿日:2002年08月20日(火)19時31分55秒

「ゆーちゃんかぁ・・・・・・」
「確かに、目は青いし、毛は茶色いし。バナナは怖いし、か・・・・・・」


いつの間にか、テーブルの上に陣取ってる裕ちゃん。
その背中を、頭を撫でながら、なっちが寂しそうに呟く。


ふと戻った寂しさに、周りの空気が重くなる。
俯いた加護の、辻の頭を、そっと撫でるカオリ。
向かいでは、ごっつぁんの頭を、圭ちゃんが撫でて。

128 名前:4 投稿日:2002年08月20日(火)19時32分27秒

―――あのさ、裕ちゃんはそこにいるんだよ。
―――裕ちゃんは死んじゃったけど、そのネコは裕ちゃんなんだよ。


そう言えばイイのだろうか。
そう言えば、皆は笑顔を取り戻すのだろうか。

ヤグチは確かに救われてる。
裕ちゃんがネコでも、裕ちゃんを感じられるから。

でも・・・・・・声が聴こえないメンバーも同じように感じるんだろうか。
裕ちゃんなんだって信じて、存在を感じて、救われるんだろうか・・・・・・



「わっ! ちょ、ゆ、ちゃん・・・・・・」
129 名前:4 投稿日:2002年08月20日(火)19時33分01秒

伝えるべきか迷ってたヤグチの思考が、なっちの声で引き戻された。
見ると、裕ちゃんお得意のキスの嵐だ。

泣きそうだったなっちの、唇や顎やら、ペロペロ舐めて。
「なっち、なっち。泣かんといて」って一生懸命慰めている。


ようやく裕ちゃんから解放されたなっちは、いつもの笑顔に変わってて。
そっか、裕ちゃんに任せてたらイイのか、って思えたんだ。



「あ〜、ゆーちゃん、キス魔だから」って言うと。
「へ? そんなトコまで一緒なのぉ?」って、目を丸くしたなっちが可愛かった。
130 名前:4 投稿日:2002年08月20日(火)19時33分40秒

「え〜、ごとーもぉ」って抱き上げられた裕ちゃんは。
「ごっちん、大好きやったよ。泣かんといてな」って・・・・・・


ごっつぁんにも加護にも辻にも。
裕ちゃんは、皆にキスをしながら、一生懸命「ありがとぉ」って言っていた。



「ちょっとぉ、何で止まんのよぉ」

まあ、圭ちゃんの時に躊躇してたのは、お約束ってコトで。


「ねぇ、結局、裕ちゃんにキスしてもらったの?」
「うん。してもらったよ」
「卒業してから? いつ?」
「ナ・イ・ショ♪」


キショって声が周りから。
・・・・・でもそんなコト聴いてないぞ?って裕ちゃんを見ると。
フッと視線を逸らす―――浮気してたな・・・・・・
131 名前:4 投稿日:2002年08月20日(火)19時34分27秒

「でもさぁ、裕ちゃん、天国でもキスしてそーだねぇ」
「あー言えるね。きっとキス魔は健在だ」
「今頃、カッコいいヒト、見つけてんじゃん?」
「可愛いコかも知れないべさ」


テーブルの上をトコトコと戻ってきた裕ちゃんに。
「キス魔健在だって」って囁くと「趣味やねんから、大目に見てや」って。

裕ちゃんを肴に盛り上がるメンバーは楽しそうで。
きっと、こうやって、少しずつ笑えるようになるんだって思った。
132 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月21日(水)00時59分20秒
なんかもぉ、可愛いですね。
猫の姐さんも可愛いし悩んでる矢口さんも…。
これからが気になりますね。

初レスでした。
133 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年08月21日(水)16時01分15秒
みんなも元気が出てきたみたいだし、
なんか、ほのぼのとした展開で良いです。
134 名前:作者 投稿日:2002年08月21日(水)19時36分30秒
132,133>
レスありがとうございます。
こんなヤバイ位突っ走ってる話に・・・嬉しいっす(泣)

可愛いって言ってくれる方、多いですねぇ。
まあ仔猫はもともと可愛いし、それが姐さんならねぇ・・・

ほのぼの展開、もうずーっとこんな感じ?
135 名前:4 投稿日:2002年08月21日(水)19時37分00秒
幸い、雑誌の取材は、裕ちゃんには触れないものだった。
さすがに今、そんな質問されたら、きっと答えられない。
事務所も、たまにはあたしらのコト、考えてくれるんだなぁ・・・・・・・


「ただいまぁ〜〜」


控え室に戻ると、メンバーが思い思いに過ごしてる。
朝よりは雰囲気が明るい気がするのは、裕ちゃんのおかげなんだろーか。
あれ? その裕ちゃんの姿が見えないぞ?


「ゆーちゃんは?」
「あそこぉ」
136 名前:4 投稿日:2002年08月21日(水)19時37分31秒

ごっつぁんが指差したトコは、棚の上。
何してるのかと思えば、どーやら寝てるらしい。
まあヤグチじゃ背が届かないから、教えてもらったんだけどね。


「何であんなトコにいんの?」
「ごとーが戻ってきたら、もーあそこにいたよ」
「涼しいんじゃないですか」


よっすぃ〜の言う通り、そこはエアコンの吹き出し口のすぐ近く。
あ〜〜、裕ちゃん、好きだったもんなぁ。
風邪引くから止めなって、どんたけ言ったことか・・・・・・

137 名前:4 投稿日:2002年08月21日(水)19時38分05秒

『だからさぁ。ちゃんとベットで寝なよぉ』
『だって暑いんやも〜ん』
『毛布なんか、掛けてるからだろぉ!』
『だって気持ちええんやも〜ん』


柳に風ってのはあーゆーコトなんだろうか。
散々言っても、裕ちゃんのお母さんに言われても。
エアコンの真下で、毛布に包まるのはお気に入りだったんだ。


『だってさぁ、身体に悪いよ?』
『ん〜〜じゃあヤグチが一緒に寝てくれたら止める』
『はい?』
『だって2人やったら、ソファーで寝られへんやろぉ?』


あの一言の所為で、夏のお泊りが増えたんだ。
一緒に寝たら、余計暑いの分かってたけど。
文句言いながらも、くっ付いて寝たんだよなぁ・・・・・・
138 名前:4 投稿日:2002年08月21日(水)19時38分44秒
「やぐっちゃん? 大丈夫?」
「あ、うん」


気付くと目の前には、心配そうなごっつぁんの顔。
いつのまにか、ハロプロのメンバーも揃ってて、騒がしくなってた。


棚の上に裕ちゃんを置いたまま、丁度その下にはつんくさん。
「中澤のコトは突然やったけど、あいつに恥かしくないライブにしよーな」って。

―――そうか、明日のライブは、追悼ライブなんだ・・・・・


『がんばってぇ〜〜いきまっしょい』

気合を入れたメンバーの声は、すっごくチカラ強くて。
皆の意気込みが伝わってきた。
139 名前:4 投稿日:2002年08月21日(水)19時39分23秒

でも―――皆の気持ちを受け止めるヒトは、あそこで寝てるんだよねぇ・・・・・・
何だか申し訳ない気分で、見上げると。


「あっ!・・・・・・」


思わず声を上げたあたしは、周りの視線に俯いて。
声を上げさせた張本人は、あたしにも見えるトコ
―――つまり、落ちそうなトコで眠っている。

寝返りだけは打つなよぉって、必死に祈ってた。

140 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月21日(水)23時45分24秒
いつも楽しみに読ませてもらっています。
やぐちの鋭い突っ込みと、裕ちゃんとの甘い想い出話が、すごくいいですね。
これからの展開、期待しています。
141 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年08月22日(木)09時34分01秒
棚から落ちそうな猫(裕ちゃん)の下にはつんく?
まさか・・・。
142 名前:作者 投稿日:2002年08月22日(木)19時51分54秒
140,141>
いつもありがとうございます。

想い出話、突然入るんで読みにくくないかなと思ってましたが・・・よかった。
姐さんの下にはつんくさん・・・面白そうだけど、それは大丈夫そうです。
143 名前:4 投稿日:2002年08月22日(木)19時52分24秒
「あっ!って言うから、なっちも見ちゃったよぉ」
「あ、あたしも」


帰り仕度しながら話し掛けてくるなっちと圭ちゃんに、ごめ〜んって謝って。
でも、ヤグチだってびっくりしたんだもん。仕方ないじゃんよぉ。


「でもさ、どーすんの?」
「どーすんのって?」
「明日」


圭ちゃんの視線を追いかけて、あっ!って気付いた。
144 名前:4 投稿日:2002年08月22日(木)19時52分58秒
今日は大丈夫だったけど、明日は新幹線だし、ホテルだぁ。どーしよぉ・・・・・・


「置いてくの?」
「連れてくよ!」


だって預けられるようなヒト、いないし。
それよりも、置いてくなんてできないもん。


「連れてっちゃえばぁ?」


どーしよーって悩むヤグチに、ノー天気なごっつぁんの声。
145 名前:4 投稿日:2002年08月22日(木)19時53分40秒
「連れてっちゃえばさ。途中で置いてけないじゃん?」
「そーだよ。見つかったら、一緒に謝ってあげるよ」


―――ごっつぁん。なっち・・・・・・ヤグチ、感動だよぉ。
でも、そんな強硬手段、イイのかぁ?


「ダメだよ、そんなの」


ほらやっぱりダメじゃんか。
カオリもリーダーになって、しっかりしてきたんだねぇ・・・・・・ダメなのぉ?
146 名前:4 投稿日:2002年08月22日(木)19時54分11秒

「ちゃんとマネージャーさんに言おうよ」
「―――でも、オーケーくれるかなぁ・・・・・・」
「大丈夫。カオリ、今回だけでもってお願いしてあげるぅ」
「そーそー。裕ちゃんみたいで置いてけないんですって言えば、大丈夫だよ」


―――裕ちゃんみたいかぁ。昨日の今日だもんね・・・・・・
うん。きっと分かってくれるよね。


「皆でお願いすれば大丈夫っしょ」
「・・・・・・ありがとぉ、皆ぁ・・・・・・」


皆の気持ちが嬉しくて、涙が出そうだった。
俯いたあたしの肩に、カオリの手が、ポンって置かれて。
「ゆーちゃんいると、皆元気になれそーだし」って言うから、ホントに泣けてきた。
147 名前:4 投稿日:2002年08月22日(木)19時54分51秒

・・・・・・しかしヤグチらが真面目に考えてるってのに、当の本人は・・・・・・
ノー天気に寝こけてるのを想像したら、何だかムカツク。

いー加減に起きろぉ!ってタオルを丸めて、棚の上目指して投げてやった。


「ぅにゃ・・・・・・なん・・・・・・」
「帰るよ、ゆーちゃん」


寝ぼけ眼で顔を出した裕ちゃんに、手を伸ばして降りておいでって。
よぉ寝たぁって言いながら、降りようとした裕ちゃんが突然止まる。


「どーしたのぉ?」
「・・・・・・ムリ。降りられへん・・・・・・」


へっ??―――高所恐怖症も復活??
・・・・・・だって裕ちゃん、ネコだよぉ? ネコが高いトコ怖くてどーすんのぉ?


「ヤグチぃ〜〜怖いぃ〜〜〜降ろしてぇ〜〜〜〜」
148 名前:4 投稿日:2002年08月22日(木)19時55分42秒

ちっちゃい口を大きく開けて騒いでるから。
その度に見えるちっちゃい牙が可愛いよぉ・・・・・・ってそーじゃなくて。

降ろしてったって・・・・・・はっ、そーじゃん。


「カオリぃ。ゆーちゃん降ろしてぇ?」
「へっ? 降りられないのぉ?」
「うっそだぁ〜〜。だってネコだよぉ?」


あぁ・・・・・・裕ちゃんがバカにされてるぅ・・・・・・
まだコドモだからだよってフォローしたけど。

―――やっぱネコなら、飛び降りよーよ、裕ちゃん。


でも、「カオリぃ、落さんでなぁ」って。
カオリの手に必死にしがみ付く裕ちゃんが可愛くて。
も1回上げちゃおうかな、なんて・・・・・・
149 名前:4 投稿日:2002年08月22日(木)19時56分32秒
数時間ぶりに抱きしめた裕ちゃんは、結構ドキドキしてて、ホントに怖かったみたい。

ごめんね、乗せちゃおうなんて考えて。
お詫びにカッコいい首輪、買ってあげるからね。


「ヤグチ、どっか寄ってこーよ」
「あ〜、ヤグチ、これからペットショップぅ」
「ペットショップ? 何か買うの?」
「うん! ゆーちゃんの首輪」


ねっ?って裕ちゃんを見ると、「うん!」って嬉しそう。
くぅ〜〜可愛いよぉ・・・・・・


「なっちも行っていい?」
「一緒に行く?」
「うん。ヒマだし」
「あっ、ごとーもぉ」
「行く?」
「うん。あべちゃんにお土産ぇ」


よぉーしっ! 皆で行くぞぉ!って気合を入れて。
ごっつぁん御用達のペットショップに向かったのだった。

「何で気合入れてるん?」ってのはムシをして。
150 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月22日(木)21時19分37秒
毎日の更新、ご苦労様です。
楽しませてもらえているので、とてもありがたいです。
「一体いつになったら終わるんだぁ・・・」っていうのは、ちょっと寂しいです。
ふわふわな感じで、エンドレスにつづいてくれたらいいなー。
猫の裕ちゃんと、ヤグチの日常を少しずつ、少しずつ・・・。
優しく柔らかい雰囲気で、長く続いて繰れたらと思います。
この小説に出会ってから、毎日が楽しみです。
151 名前:つかさ 投稿日:2002年08月22日(木)23時47分49秒
どんどん長くしちゃってください♪
心癒されてます(笑)
152 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年08月23日(金)23時25分47秒
裕ちゃんはワガママそうだから、気に入る首輪を探すのは大変そうですね。
153 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月24日(土)14時09分49秒
ぜったい、他のネコとおんなじ首輪はつけないだろうね(w
154 名前:作者 投稿日:2002年08月25日(日)13時16分52秒
レスありがとうございます。

150,151>
いや、話はまだまだ終わりませんが。
ただ予定ではさくさくっと終わりにするはずだったんで・・・・・
もう少しお付き合いください。

152,153>
首輪・・・そんなに反応があるとは。
スイマセン。あんまりこだわってなかったりして・・・・・
155 名前:4 投稿日:2002年08月25日(日)13時17分33秒

「ここねぇ、結構種類いるんだよぉ」


嬉しそうなごっつぁんの後についてくと、ちょっとヒンヤリした暗いトコにでた。


「可愛いでしょぉ?」
「か、可愛くないわっ!」


バックの縁から顔を覗かせていた裕ちゃんは、一声叫んで潜ってしまった。

大きいケースに入っているのは、体長1メートルはありそうなイグアナ。
照明を落とした一角の、ボスのような風格で。


「あいかわらず、こーゆーの好きなんだね・・・・・・」
「なっちはちょっとなぁ・・・・・・」
「え〜〜かわいーじゃんかぁ」


かぶりつきで見つめるごっつぁん・・・・・・・その趣味だけはついてけないよ。
156 名前:4 投稿日:2002年08月25日(日)13時18分09秒

「向こう行こーやぁ〜〜」

バックの中からの小さい声に、素直に従って明るいトコに戻ってくる。
こっちには、仔イヌと仔ネコ。ウサギやハムスター、フェレット・・・・・・ホントいろいろだぁ。



「なぁ、めっちゃ視線感じるんやけど」


ん? 誰かに見られてる? バレタ? 
周りを見ても、そんなに強烈な視線は感じない。

そんなことないよって言おうとしたら、裕ちゃんはじっと一点を見つめてる。
視線を追うと、一匹の仔ネコとにらめっこ。


「何してんの?」
「ガン飛ばしてくんねん・・・・・・」
「ゆーちゃん・・・・・・」
157 名前:4 投稿日:2002年08月25日(日)13時18分44秒

どうやらケースの中の豹柄ネコが、裕ちゃんを見つめていたらしい。
裕ちゃん的には、ガン飛ばされてるらしいけど。でも豹柄、可愛いけどなぁ。
どれどれ―――オシキャット・オス。ふうん男のコじゃん。


「どーしたの?」
「ん? や、ゆーちゃんが見つめ合ってるの」
「どれどれ―――ふうん。気に入ったのかな?」
「一目ぼれ?」
「うん、豹柄だし」


ガン飛ばしあったまま固まってるから、なっちと好き勝手に言わせてもらう。
きっと聞いてたら、んなわけあるかっ!って言われそうだけど。
だってさ、もしかして、オシキャットの方は気に入ってるかも知んないじゃん?

いつまでも続きそうだから、首輪見に行こうよって。
裕ちゃんは黙ったまま、ずーっと視線を逸らさなかった。―――さすがだ。
158 名前:4 投稿日:2002年08月25日(日)13時19分27秒

「どれがいいかなぁ?」
「ゆーちゃん茶色いからさ、目立つヤツがいいんじゃないかい?」
「うーん・・・・・・何かちゃっちいね」
「首輪なんてこんなモンっしょ」


ぶら下がってる首輪はカラフルで、それはいいけど。
なんか素材がイマイチ。高級感もないなぁ・・・・・・
まあ裕ちゃんだって、高級猫じゃなさそうだから―――どー見ても雑種だし。

どーする?って覗きこむと、こんなん嫌!って・・・・・・


「どっかでチョーカー買って、改造してもらう?」
「へ?」
「だってアレ」
159 名前:4 投稿日:2002年08月25日(日)13時19分58秒

なっちが指差す先には『首輪、作ります』って。
『お好きな素材で、あなたのペットに彩りを』


「お好きな素材?」
「うん。作ってくれそーじゃん」
「そっかぁ・・・・・・コレでイイかなぁ?」


今着けてるチョーカーでイイ?ってそっと訊くと「オッケー」って。
・・・・・・てことは、ヤグチからの贈り物ってコト? 何か嬉しいかも。

「10分位だって」って話してるあたしらの間に、突然フラフラしたものが。

160 名前:4 投稿日:2002年08月25日(日)13時20分39秒
「キャッ!」


な、な、何? 何それ? 
びっくりして振り向くと、いたずらっ子顔したごっつぁん。
その手には・・・・・・ネコじゃらし?


「ゆーちゃんに買わないのぉ?」
「あ〜これは必需品だよねぇ」


―――ネコじゃらしかぁ・・・・・・いる?って見ると、プイってそっぽを向いて。
「あたしを何だと思ってんねん。バカにしとるん?」って。

そーだよねぇ、ゴメ〜ン。心の中で手を合わせて。


「遊ばないんじゃないかな?」って遠まわしに。
納得してないごっつぁんは、フラフラと裕ちゃんの目の前で泳がせる。
161 名前:4 投稿日:2002年08月25日(日)13時21分17秒

「え〜遊ぶよぉ―――ほらほら、ゆーちゃ〜ん」
「あ、見た」


うざったそうにそっぽを向いてた裕ちゃんが、その動きを捕らえて。
青い目は大きくなって、ランランと輝き出した。
バックの中のお尻が、微妙に揺れて、身体中がウズウズ。


ヒュッ! 

スカッ!

空を切るネコじゃらし―――と、裕ちゃんの手。


「ほら、遊ぶじゃん。買ってあげるぅ〜〜」
「あっ、ごっち〜ん・・・・・・待ってやぁ〜〜〜」


―――誰だよ、バカにすんなって言ったのはぁ。
あたしを何だと思ってんねんって? チカラいっぱいネコじゃんか。

未だ「殺生なぁ〜〜」って嘆いてる、ちっさい頭を押し込んだ。アホっ!
162 名前:4 投稿日:2002年08月25日(日)13時23分00秒

ヤグチのチョーカーで作ってもらった首輪は黒のレザー。
喉元には、青い石の入った、銀のクロスが光ってる。


「カッコいーじゃん」
「うん。なかなか似合ってるべ」


ごっつぁんとなっちの誉め言葉に、かなり満足気な裕ちゃん。
お礼とばかりに、キスの嵐を浴びせていた。
―――もちろんヤグチも、チカラいっぱい舐められた。
163 名前:4 投稿日:2002年08月25日(日)13時23分30秒

車通りの少ない帰り道。
今日一日、事務所で寝てた裕ちゃんは元気いっぱいらしい。
幾分冷めたアスファルトを、偉そうにトコトコ歩いている。


「ねぇ〜。夕飯、何食べたい〜?」


周りにヒトがいないのを確認して、少し大きな声で。
前を歩く裕ちゃんは、振り向いて「さしみぃ〜」って。

そっか、お刺身かぁ。
裕ちゃん、イカ好きだったもんなぁ。


「イカぁ?」
「そー」


やっぱり。「イーカ、イーカ」って騒ぎながら、楽しそうに歩いてる。
でもネコって、イカ食べ過ぎると腰抜けるとか、お腹を壊すとか・・・・・・
だいじょぶなのかな?―――ま、その時はその時か。
164 名前:4 投稿日:2002年08月25日(日)13時24分01秒

とりあえず、食べ過ぎなければイイかなって、少し買って。
それでもかなり満足したらしく、ご機嫌だった。でも・・・・・・


「ゆーちゃん。お腹パンパンじゃん」
「ん〜〜もー入らーん・・・・・・」


ネコのお腹って・・・・・・伸びるんだぁ・・・・・・
苦しいらしく、仰向けに寝っころがって、あっという間に眠りの世界。

裕ちゃん、お腹丸いよ・・・・・・ってのは心に閉まって。
オヤスミ―――起こさないように、リビングの明かりを消した。

165 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年08月26日(月)16時14分43秒
ネコじゃらしと裕ちゃんの描写に笑いました(w
166 名前:作者 投稿日:2002年08月27日(火)19時47分09秒
165>
心はネコなんで。
从 ~∀~ 从<本能には勝てへんねん。
167 名前:4 投稿日:2002年08月27日(火)19時47分44秒

後片付けを終えて、明日の準備をしていると鳴き声が聴こえてきた。
よく聴くと、ヤグチを呼んでるみたい。

「ココにいるよぉ」って答えると、ドアの隙間から飛び込んできた。
「ヤグチぃ〜〜」って叫びながら。


「どーしたの?」
「目ぇ覚めたら真っ暗やし。ヤグチおらんし」
「ごめんね。寝てたからさ、起こすの悪いなぁって」


拗ねたように、ヤグチにまとわりついてくる。
「ごめんね」って抱き上げると、もぞもぞと潜り込んできた。
168 名前:4 投稿日:2002年08月27日(火)19時48分32秒

「ちょっと、ゆーちゃん?」
「ん〜〜・・・・・」
「くすぐったいんだけど・・・・・・」


Tシャツの中に潜り込んで、ヤグチの顎を押し上げてくる。
顎を上げると、襟のトコからひょこっと顔をだして。


「えーやん。ヤグチ、いなくなってまうし」
「いなくならないって」
169 名前:4 投稿日:2002年08月27日(火)19時49分16秒

いなくなったのは裕ちゃんの方じゃん。
―――そう言いたくなった。


でもきっと困るから。そう言われたら、きっと裕ちゃん困るから。
裕ちゃんが困ったら、ヤグチも困るから。言わないけど。

・・・・・・・でも、こーやって、ずっと傍にいたら、裕ちゃんはいなくならなかったのかな。
あの日、傍にいたら、裕ちゃんはココにいたのかな―――ネコじゃなくて・・・・・・


あ〜〜〜ダメだ。こんなこと考えても仕方ないじゃん。
後悔していいのは、裕ちゃんだけなんだから。後悔かぁ・・・・・・
170 名前:4 投稿日:2002年08月27日(火)19時50分05秒

「ねぇ、ゆーちゃん」
「んぁ?」
「コレしとけば良かったなぁってある?」


突然の質問にも、じっくり考えてくれるのが裕ちゃんで。
黙っちゃったのも、考え中だからだと思うけど。
・・・・・・この体勢、どーにかしない?


考えてる間にシャツの下から引っ張りだして。
顔の高さに持ってくると・・・・・・・寝てる?


「ゆーちゃん?」
「・・・・・・そんなベタなん、せぇへんがな」


・・・・・・めっちゃしてるじゃんか。
これだから関西のヒトは。というかネコだけど。
171 名前:4 投稿日:2002年08月27日(火)19時50分58秒
「後悔はなぁ・・・・・・ヤグチと飲みに行きたかったなぁ。ごっつ美味い店あんねん。
 でな、少しずつ酒の美味さを教えてやなぁ。まあ光源氏計画、酒バージョン?」


延々と続きそうな、裕ちゃんのお酒談義。
ねえ、裕ちゃんの後悔って、そーゆーもんなの?


「夢はあった。希望もあった。でも後悔はない―――カッコええやろ?」


得意そうに話す裕ちゃんを見てたら、何か泣きそうになった。

後悔していいのも、泣いていいのも裕ちゃんだけなのに。
裕ちゃんが、後悔してない。泣いてもいないんだから。


「そっか。ならいいや」


きっと不細工な笑顔だったと思うけど。
裕ちゃんは、何も言わず笑い返してくれた。
172 名前:4 投稿日:2002年08月27日(火)19時52分06秒

明日は早いからってベットに入ると、再び潜り込んできた毛玉。
「暑くないの?」って訊くと、「あんなぁ」って深刻そうな声。


「この身体、まだ仔ネコやん? どーやらおっぱい欲しいみたいやねん」
「おっぱい?」
「うん。ちょーだい」


襟から出してた顔を、そのままバックして潜り込む裕ちゃん。
もぞもぞ動く毛が、くすぐったいんだけど。
―――仕方ないなぁ・・・・・・って、んなわけあるか!


「アホぉ!」


引っ張り出して、ポイって投げる。
放物線を描いた裕ちゃんは、ベットの上で何度か跳ねた。
173 名前:4 投稿日:2002年08月27日(火)19時52分37秒

「び、びっくりするやん。何やねん!」
「イカ食べたヤツが、何でおっぱいなんだよぉ!」
「・・・・・・ちっ!」


ちっ!って何だよ。全く、油断も隙もないんだから。

「もーせぇへんから」って一生懸命謝るから。
「じゃあおいで」って一緒に寝ることにしたけど。


「ぜーったいダメだからね」
「分かってるがな」


いつの間にか、裕ちゃんはヤグチの胸の上で眠っていた。
・・・・・・ま、いっか。
174 名前:5 投稿日:2002年08月28日(水)19時44分05秒
------------------------------------------
175 名前:5 投稿日:2002年08月28日(水)19時44分53秒
早朝の事務所の一室には、張りつめた空気が漂っていた。
目の前にはチーフマネージャーさんが1人。―――や、チーフは1人だけども。
相対するは、ヤグチ・・・・・・何で皆来ないんだよぉ・・・・・・・
昨日のヤグチの感動を返してくれぇ〜〜〜〜〜


「でもなぁ・・・・・・」


なかなかOKをくれないマネージャーさん。
気持ちは分かるよ。ヤグチだって普段はこんなムリ、言わないもん。
176 名前:5 投稿日:2002年08月28日(水)19時45分27秒

「泣いとけ・・・・・・・」


小さな声が聴こえる。
―――泣いたら何とかなるのかよぉ・・・・・・・でも他の手はないしなぁ。


「ゆーちゃん、突然死んじゃって・・・・・・このネコ、ゆーちゃんみたいで・・・・・」


今回だけだからって。怪我が治ったばかりだしって。泣きながら、一生懸命訴えた。
何かホントに悲しくなってきて、マジ泣きそうになってるってのに。
177 名前:5 投稿日:2002年08月28日(水)19時46分05秒

「ぅわっ・・・・・・ははっ・・・・・分かった、分かったよ」


楽しそうな声が聴こえてくるじゃんか。
涙を拭きながら顔を上げると、お愛想振りまく裕ちゃん。
マネージャーさんの顎やらホッペやらをペロペロ舐めて。

人懐っこいその態度に、情をほだされたのか。
「いなくなっても探す時間はないよ」ってOKしてくれた。
178 名前:5 投稿日:2002年08月28日(水)19時46分54秒

「良かったな」って言ってるけど、何か腑に落ちない

「ヤグチさぁ、泣く必要あったの?」
「あったりまえやんか。ヤグチが泣いたら、勝てるヤツおらんもん」
「それって・・・・・・泣く子には勝てないって・・・・・・」


ちょーっと気になって、問いただそうと思ったら、突然いなくなって。
廊下の方から、叫び声が聴こえてきた。

・・・・・・あれは、みっちゃん?


「な、なんやぁ〜〜?・・・・ちょっ・・・・・・なにぃ〜〜?」
「ごめ〜ん。それヤグチの」
179 名前:5 投稿日:2002年08月28日(水)19時47分26秒

みっちゃんの顔を舐めまくる裕ちゃんを引き剥がして。
ちょっとパニくったみっちゃんに、事情説明。
「びっくりしただけやし」って怒られなかったけど。


「何で、イキナリ?」
「ん? 口直しや。だってマネージャーさん、タバコ臭いんやもん」


・・・・・・申し訳ない、みっちゃん。
ま、一応はあなたの悪友なんで―――大目に見てね。

180 名前:5 投稿日:2002年08月28日(水)19時48分00秒
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181 名前:5 投稿日:2002年08月28日(水)19時48分35秒


一昨日も乗った新幹線。

あの時は、何を話して、何を見ていたのか覚えていない。
なっちとか皆もいたはずだけど、話をした記憶がない。
ただ、覚えているのは、真っ黒い色。あたしたちを包んでいた、喪服の色だけ。

―――2日経っただけなのに、何でこうも変わるかなぁ。
182 名前:5 投稿日:2002年08月28日(水)19時49分06秒

「ヤグチさーん。見て見て!」
「そんな大声出したら、アカンやん」


2人とも、声でかいってぇ・・・・・・
シィーって振り向くと、辻と加護が、また何かいたずらしてた。
被害者は、オモチャと化した裕ちゃん・・・・・・


「あ〜〜何てコトしてんだよぉ!」
「ライオン!」
「カッコいいでしょお?」


多分、ワックスかムースだ。
裕ちゃんの毛は、ライオンというかタテガミというか。
コテコテに固められて、パンク状態だった。
183 名前:5 投稿日:2002年08月28日(水)19時50分24秒

「ええ加減にせぇ!!」
「「しぃ〜〜」」


車掌さんに見つからないようにって。
キレた裕ちゃんは2人に口を塞がれて。・・・・・・あ〜〜限界かも。


2人から裕ちゃんを返してもらって、洗面所へ。
・・・・・・あいつら、肉球にまで。


「何やねん。何やっちゅーねん!」
「分かったから。静かにしてよぉ」


宥めながら、肉球のシールを剥がしてやる。
184 名前:5 投稿日:2002年08月28日(水)19時50分56秒
ワックスはぁ・・・・・・ドライヤーないんだよねぇ。
「我慢して?」って言ったら、「あいつら、ケリ入れといて」って。


「努力するよ」
「絶対やで?」


悔しそうに涙目で。
裕ちゃんには悪いけど、可愛いよぉ・・・・・・もちろん言わない。
だって火に油を注ぐようなモンだし、黙ってた。


けど、なっちに「カッコいいよぉ」って誉められたら。
「そーかぁ」なんて、鼻の下のばして。―――何だよぉ、その変わり様・・・・・・
・・・・・・向こうに着いたら、即行洗ってやる!

185 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時10分33秒

裕ちゃんのコトがあってから、初めてのライブがスタートした。

ハロプロのライブだし、触れないわけにはいかなくて。
思い出しては泣いてしまったけど、でも精一杯盛り上げて、最後は皆、笑ってた。
汗と涙でぐちゃぐちゃで、決して美しくはなかったけれど。


楽屋に戻ると、裕ちゃんが飛びついてきた。


「ヤグチぃ、みっちゃんトコ、行きたい」
「みっちゃん?」
「うん」


ヤグチを見上げる青い瞳は真剣で。
あ〜そうか、裕ちゃん聴いてたんだって分かった。


みっちゃんは裕ちゃんとの思い出を話しながら泣いてしまって。
『泣いてしもぉた』って笑った顔が、すっごく切なかった。

ここで聴いてた裕ちゃんにも、きっと分かったんだ。


行こうって抱き上げて、みっちゃんの楽屋に向かう。
186 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時11分51秒

みっちゃんは、鏡の前にいた。タオルで顔を覆って、細い肩を震わせて。
人数の割には静かな楽屋。その中を裕ちゃんは突っ切って行く。
まるでみっちゃんしか見えてないみたいに。


ひじをつくすぐ傍に、トンっと飛び乗った裕ちゃん。
「みっちゃん泣くなや」って、その腕にすりよっている。
顔を上げたみっちゃんは、鏡越しにも、泣いているのが分かった。


「あ・・・・・・やぐっちゃんの・・・・・」
「みっちゃん泣くなや。何も悲しいコト、ないやんか」
「・・・・・・姐さぁん・・・・・・」
187 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時13分00秒

みっちゃんに、裕ちゃんの声は聞こえてないはずなのに。
裕ちゃんの声が分かったみたいに、更に泣き出してしまった。
茶色い毛皮に顔を埋めて、「何で死んでしまったん」って・・・・・・

その言葉に、普段は元気な松浦でさえも泣き出して。
悲しい涙が、ひとつ、またひとつ、こぼれていった。

悲しさが充満してはちきれそうになった頃、均衡を破ったのは怒鳴り声。


「好きで死んだんちゃうがなぁ〜」


裕ちゃんが、チカラいっぱい逆切れした。
188 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時13分34秒

「あたしはタオルとちゃうんやぁ〜〜」


もう一つ怒鳴って、みっちゃんにネコパンチ!
叩かれたみっちゃんは、まさに『ハトに豆鉄砲』・・・・・・


「あたしかて、目ぇ覚めたらネコんなってるし、いつのまにか葬式終わってるし。
 猫舌やからあっついコーヒー飲めへんし。ピアスも指輪も、ちゅーもできへんのやぁ〜〜」


ついには、みっちゃんの腕を抱え込んで、「うにゃにゃにゃにゃ」ってネコキック。
―――気持ちは分かったけど・・・・・・何なの、ちゅーできへんって・・・・・
189 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時14分21秒

「痛っ! ちょっ、やぐっちゃん。何でコレ、怒っとるん?」


突然のパンチ&キックに、別の涙を流しそうなみっちゃん。


「あ〜・・・・・きっと、裕ちゃんだったら、何時までも泣くなぁって怒るよって」
そー言ってるんじゃないかなぁって。一生懸命フォローしてるのに。

「コレって何やぁ〜。ちゅーしたぁい。ビール飲みたぁい」


―――おーい。いいかげんにしてよぉ・・・・・・
190 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時15分05秒

未だキックされてるみっちゃんは、ヤグチの言い訳に納得してくれたのか。
「せやな。姐さん喜ばへんもんな」って。


そんなあっさりしてて、イイのか?って思ったけど。
「分かったで」って裕ちゃんの頭を撫でて笑ったみっちゃんに、皆ホッとして。

そーやって笑えるみっちゃんは、やっぱりオトナなんだなって思った。


「ありがとな」
「んじゃ、ビールな」


―――その約束、聞こえてないよ、多分・・・・・・
191 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時15分52秒


結局、夜の部も泣いてしまったけど、その笑顔はいつものみっちゃんだった。


「大丈夫?」
「うん。ちゅーか、あれ何?」


涙を拭きながら指差す先には、我らがプロデューサーの姿。
その腕には、茶色い塊が、ちょこんと抱えられていて。


「・・・・・・似合わない気が・・・・・・」
「するやろ・・・・・」


後で訊いたら、ふらついてたら捕まったんやぁって。


「羨ましいやろぉ」
「・・・・・どーかなぁ・・・・・」
「何で? 天下のつんくさんやで?」

「ん〜〜嬉しかった?」
「うん?・・・・・・微妙・・・・・・」
192 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時16分38秒
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193 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時17分27秒

汗と一緒に涙も流して、部屋でまったりとしてた。
裕ちゃんも、ベットに寝転んで、テレビを見てる。


「テレビ見えるの?」
「ん〜・・・・・・色が淡いなぁ・・・・・」
「ふうん・・・・・・」


「ねぇ〜〜、何か飲む〜?」
「ぅ゙ぃ〜る゙ぅ〜〜・・・・・・」


歯磨きをし終わって、お茶でも飲もうかなって。
備え付けの冷蔵庫を覗きながら声を掛けると・・・・・・何て言ったの?
194 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時18分12秒
「ゆーちゃん?」


不明瞭な声に、何してんのかと見ると、毛づくろいの真っ最中。
細い足をピン上げて、頭ごと動かして―――柔らかいなぁ・・・・・・


「・・・・・・・・・・・」


感心しながら、ジィーっと見てたら、目が合って。
足を上げたまま、イキナリ叫びだす。


「アカンがなぁ〜〜。舐めてもぉたぁ〜〜〜」


嘆いてるらしいけど・・・・・・どうして?

195 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時19分12秒

「どーしたの?」
「身体、舐めてもぉたぁ〜〜。ヒトとして、舐めたらアカンやろぉ〜〜」


あ〜〜・・・・・つまり、毛づくろいしてしまった自分がショックなんだ。
でも、だからさぁ・・・・・・ヒトじゃないんだよ? 今の裕ちゃんは。


「舐めなきゃいいじゃん。ヤグチがブラッシングしてあげるよ?」
「ちゃうねん。身体がな? 無意識にな?・・・・・・しゃあないんやろか・・・・・・」


―――やっぱりネコとしての本能があるのかぁ。
そうだよね。だってネコじゃらしで遊んじゃうんだもんねぇ。


「仕方ないんじゃない?」
196 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時19分53秒
「・・・・・・せやな。―――舐めた後、飲み込んでええんかな?」


はい?? そんなの知らないよぉ。
でも、一々吐き出してるネコはいないよね?


「イイんじゃない?」
「そっか・・・・・・・・・・・」


もう開き直ったのか、毛づくろいを再開した裕ちゃん。
今度は手を曲げて、肉球とかも舐めている。
・・・・・・・こーして見ると、ホントにネコだなぁ。


ほっとけば、何時までも毛づくろいしてそうな感じ。
一心不乱に舐めてた裕ちゃんだけど、イキナリ動きを止めて。
197 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時20分37秒

「どーしたの?」
「誰か来る」


そー言って、ドアの前に走って行ってしまった。
「すごいわぁ」って、普通は聴こえない音に感動してるみたい。

ドアの前に張り付いて、通路を歩くヒトに耳を澄ましてる。
声が聴こえるみたいで、誰が通ったとか楽しそう。


と、突然、ダッシュでベットに潜りこんだ。


「どーしたの?」

訊ねた声に重なるように、ノックの音が低く響いた。


「おらんって言って」
198 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時21分23秒

小さな声を背中で聴きながら、ドアを開ける。
目の前には、ごっつぁんと辻加護・・・・・・なるほど。


「えーっとぉ?」
「遊びに来たぁ」
「「来ましたぁ」」

「ゆーちゃんいるぅ?」
「えーっと・・・・・」


ごっつぁんの手には、昨日買ったネコじゃらし。
返事に詰まってると、辻加護がすり抜けていった。

―――裕ちゃん、ごめん。


潜り込んでた裕ちゃんは、2人にあっさりと見つけられて。
199 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時22分14秒

「ヤグチぃ〜〜〜」

泣きそうな声が聴こえる。
―――諦めなよ、裕ちゃん。


「じゃん! 遊ぼー?」
「アホか! そんなモンで遊ばんがな」
「ほらほらぁ」


結局囲まれて、ごっつぁんの振るネコじゃらしに興味津々。
遊ばんがなぁとか言いながら、チカラいっぱい反応して。


「ふっ・・・・・・あっ・・・・・・このっ・・・・・・」


空振りするたびに、声が漏れてくる。
聴いてると、結構面白い。
200 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時23分08秒

「楽しそうだねぇ」

「好きでっ・・・・・・やって・・・・・んと・・・・・・ちゃう・・・・・・ねん・・・・・・でっ!」


やっぱり本能だ。自然と動いちゃうんだろーね。

一向に捕まえられない裕ちゃん。
ごっつぁんは、ネコじゃらしを加護に渡して。


「ゆーちゃん、とろいねぇ・・・・・・」


とろいって言葉に反応した、ちびっこのコール。


「「ゆーちゃん、とろい〜。ネコなのに、とろい〜♪」」


―――あ〜〜結構傷付いてるかも・・・・・・
201 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時23分43秒

「や、きっとまだ小さいからだよ」
「そんなモンかなぁ」

「痛っ!」


ごっつぁんにフォローしてると、加護の声が飛び込んできた。
見ると、加護の腕に、裕ちゃんが絡みついて・・・・・・またか。

両手で抱え込んでキックするのを、急いで剥がして。


「大丈夫?」
「うん。赤くなっただけやし」
「何かしたの?」
「ううん。遊んでただけ」

「でもさぁ、ネコってイキナリ興奮するよねぇ」
「きっとぉ。捕まえられなくてキレたんや」
202 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時24分23秒
未だ興奮気味の裕ちゃんを覗き込むと。
「だって、とろいってムカツクんやもん」って。

―――あ、やっぱり傷ついてたんだ。


引っ掻かれても懲りない2人に、再び裕ちゃんは遊ばれて。
「程ほどにしてね」って言ったから、何回かは捕まえられたみたい。


でも3人が帰った後、タオル相手にキックを始めて。


「あ゙ぁ〜〜ムカツクぅ〜〜・・・・・」


相当ストレスが溜まったみたい・・・・・・
でもなぁ、そろそろ寝ないと。もう遅いし。
203 名前:5 投稿日:2002年08月29日(木)19時25分03秒

「ゆーちゃん、寝よ?」
「眠くあらへん」
「そんなコト言わないでさ」


興奮する熱い身体を抱き上げて、ベットの中に一緒に入る。
あごの下を撫で続けると、トロ〜ンと瞼が落ちてきた。

―――あぁ、人間よりも、手が掛からない。


「ゆーちゃん?」
「ん〜〜」
「オヤスミ」
204 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月30日(金)21時54分54秒
ねこの裕たん、かわいい。
205 名前:作者 投稿日:2002年08月31日(土)18時15分04秒
204>
裕たんって・・・・いや、ありがとうございます。
だらだらと、いつまで続くのやら。
206 名前:6 投稿日:2002年08月31日(土)18時15分54秒

夢との狭間で聴こえるかすかな音。ホッペにも何か気配を感じて。


―――何だろう・・・・・?
ぼんやり思いながら目を開けると、裕ちゃんのドアップ!!
触れそうな位すぐ傍で、スゥスゥ眠ってた。

その口がかすかに動いてる。―――この音かぁ。
何かを食べてる夢でも見てるんだろうか。


起こさないように少し離れると、どうやら手もモゾモゾしてる。
・・・・・・これはもしかして?
207 名前:6 投稿日:2002年08月31日(土)18時16分34秒
モゴモゴしてる口に、そっと小指を近づけると、“パクッ”て咥えて。
ヤグチの手には、肉球の感触が、ギュッ、ギュッって・・・・・・


うっわぁ〜〜。おっぱい飲んでんじゃん。
これって、そーゆー夢ってことかぁ。ていうか、裕ちゃんってよりネコの夢だよね。


・・・・・・・・・・・・。

今更ながら、目の前の裕ちゃんは、裕ちゃんとは違うことを思い知る。

裕ちゃんはココにいるけど、でも、もう裕ちゃんじゃなくて。
頭では分かるけど、心が、感覚が混乱しそう・・・・・・
208 名前:6 投稿日:2002年08月31日(土)18時17分06秒

あのサラサラの髪。たれ目。犬っ鼻。すべすべの肌。
不遜な態度。震える肩。真剣な背中。―――想い出すのはキレイな裕ちゃん。

それが今は、ヤグチの指咥えて、寝ぼけてんだもんなぁ・・・・・・



どうして、もう一度、出逢っちゃったんだろぉ。
あの時、そのままお別れしてたら、こんなに戸惑うこともなかったのに。
―――あ〜でも、あのままだったら、まだ泣いてるなぁ、きっと・・・・・・・



ピピッ ピピッ・・・・・
209 名前:6 投稿日:2002年08月31日(土)18時17分37秒

自分の世界に入りこんだヤグチを呼び戻すように。
頭の上にある携帯が、威勢良く鳴り響く。


ドキドキしたまま、アラームを止めて。
ヤグチと同様、ピクッて反応した裕ちゃんに目を遣る。


「シャワー浴びる?」


薄目を開いた裕ちゃんに訊くと、顔を覆ってしまった。
何やら呟いてたから、きっと「寝る」って言ったんだろう。


ねぼすけの動物をベットに置いて、さっぱりしようと起き上がった。

窓越しのすずめが、ウルサイくらいに元気良い。
―――今日も暑くなりそうだなぁ。
210 名前:6 投稿日:2002年08月31日(土)18時18分11秒
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211 名前:6 投稿日:2002年08月31日(土)18時18分43秒

2日目のライブも、何とか無事終えることができた。
相変わらず、裕ちゃんの話になれば思い出すこともいっぱいあるわけで。
でも、抜け出せない悲しさに捕らわれているコは、いなかった。
・・・・・・きっと、皆、少しずつ消化しているんだろうなぁ。



部屋に戻って、お風呂でも入ろうかなって言ったら、「一緒に入る」って。
さすがに湯船には入らなかったけど。溺れたらどーすんねんって・・・・・・

でも洗面台にお湯をはってあげたら、かなり気に入ってた。
仰向けになって、溺れそうになってたけど。一緒じゃん・・・・・
212 名前:6 投稿日:2002年08月31日(土)18時19分17秒

「気持ち良かった?」
「うん。ヤグチと一緒やし」
「な、アホっ・・・・・」


何でそんなコト言うんだよぉ。そりゃあヤグチもイヤじゃないけど。

でもヤグチ的には、今の裕ちゃんの裸見たって、全然ドキドキしないし。
というかそのまんまじゃん。・・・・・・ヒトの見るなよなぁ・・・・・


「顔赤いでぇ?」
「熱いからだよ!」
「ふーん・・・・・・」


ネコのくせして、ニヤニヤしてんのが分かっちゃうのはどーしてだろ。
あーもうムカツクよぉ・・・・・・
213 名前:6 投稿日:2002年08月31日(土)18時20分04秒

「ヤグチ〜、ビールぅ」
「ダメだって。ヤグチ未成年だもん」
「何でぇ? あたしが飲むんやでぇ?」
「だからぁ・・・・・・」


“コン コン!”


不毛な会話を断ち切るノックの音。
感謝しながらドアを開けると、ごっつぁんとよっすぃ〜・・・・・・あ、石川もか。


「どーしたの?」
「お菓子買いに行こーよぉ」


会話が聞こえたのか、いつのまにか足元からも声が聴こえる。
214 名前:6 投稿日:2002年08月31日(土)18時20分38秒
「ビール、買うてきてぇ〜〜」
「ほら、ゆーちゃんも欲しいって」
「えっ?!」


ごっつぁん、もしかして分かったの?


「イカとか、買ってあげよーよ」

・・・・・・あ、そーだよね。
足元から、「ちゃうがな!」って。そりゃそーでしょ。


「分かった、ちょっと待って」


さすがに部屋着じゃ外に行けないし。着替えてる間、3人は大人しく待っててくれる。
・・・・・わけもなく、裕ちゃんが遊ばれていた。ネコじゃらしで・・・・・・
215 名前:6 投稿日:2002年08月31日(土)18時21分12秒

「なっちとかはぁ?」
「なっつぁん、いなーい」
「保田さんも。多分平家さんトコじゃないですか?」
「ふうん・・・・・お待たせ!」


ちょっと息が切れてる裕ちゃんを抱き上げると、「あたし待ってるわ」って。
・・・・・・まあ外行くし、お店入るし、そっちの方がイイか。
散歩したいって言うから、気をつけてねって送り出した。
216 名前:6 投稿日:2002年08月31日(土)18時21分58秒

―――なっつぁんがいない? 圭坊もいない? 平家んトコ? したら、やるコトは一つやろ。
みっちゃんの部屋はぁ・・・・・・お、ビールめっけ。ん〜〜カオリとりんねかぁ。よっしゃ・・・・・・

217 名前:隠れファン 投稿日:2002年08月31日(土)21時55分08秒
連日の更新お疲れさまです。猫好きで姐さんファンの
僕にとっては涙が出るほどたまらない展開です。
しっぽをぴんっと立てて廊下を闊歩している光景が目
に浮かびます。
218 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月01日(日)00時02分02秒
全国の猫好きの気持ちをギュッと掴むような、上手い表現ですよね。
この小説、やぐちゅーファンと猫ファンにはたまらないものです。
「いつまで続くんだろう」なんていわないで、新聞小説のように、
長く続けてください。
お願いします。
219 名前:作者 投稿日:2002年09月01日(日)14時57分44秒
217,218>
励ましてもらってます。

というか、ネコ話を書いてると、妙にオトナ同士の話が書きたくなりまして。
いや、これはちゃんと最後まで終わらせますが。
ネコねーさんでしか遊べない話を、存分に・・・

これからは、念願の飲み会。しばらく続くでしょう・・・・・
220 名前:6 投稿日:2002年09月01日(日)14時58分52秒

「買ってきたよぉ」
「お〜重かったやろぉ」
「ううん。平気ぃ〜」


カクテルやらチュウハイやら、ゴロゴロ入ってる袋を受け取って。
おつまみはスタンバイしとるし。
よっしゃ始めんでぇ。題して『姐さんを偲ぶ会』や。


「ねえカオリ、どこで拾ってきたべさ」
「へ? 何にも拾ってないよぉ」
「でもさぁ、コレ・・・・・・」


娘3人の声に振り向くと、ビールの入った袋から、何やらゴソゴソ。
「にゃあ」って出てきたのは、姐さんと同じ名前のネコやった。
221 名前:6 投稿日:2002年09月01日(日)14時59分32秒

「ちゅーか気づかんモンかぁ」
「違うもん。そっちはりんねが持ってきた方だもん」
「え〜〜そーだっけぇ?」
「まあまあ・・・・・」


関西と北海道の不毛な言い合いを仲裁してると「ヤグチにメールしとくよ」って圭ちゃん。
あー何てしっかりしとるんや。少しは見習いやぁ・・・・・・ってのはおいといて。



「そんじゃあ、酒好きな姐さんを偲んでぇ〜」ってビールで乾杯。
中には、ビールが苦手なのもおるけど、姐さんはビール党やったし。

―――今ごろ何しとんやろ。向こうでもビール、飲めてるんやろかぁ・・・・・・
222 名前:6 投稿日:2002年09月01日(日)15時00分07秒

「みっちゃん、みっちゃん」


肩を叩かれて横を見ると、あっちゃんが指差しながら。
視線の先には、あたしのビール・・・・・・毛玉?


「飲まれてんでぇ」
「おぅ??」
「すごいねぇ〜。ゆーちゃんビール飲むんだぁ」
「さっすがゆーちゃんだねぇ」


―――おい、道産子! そーやないやろ!
ちゅーか、何でこのネコ、ヒトのビール飲んでんねん。
223 名前:6 投稿日:2002年09月01日(日)15時00分48秒
「ちょっ、ヤメぇ」
「ぅ゙ぅ〜〜」
「あ、ゴメン」


・・・・・・めっちゃ怖いでぇ、コイツ。毛ぇ逆立てて怒りよる。
しゃあない。もーそれあげるわ。コップの中の頭をそのままに、新しいコップをもらって。
―――しっかし、飲めてんのかな。


「でもさぁ。ゆーちゃんにビール取られんのって、みっちゃんらしーよねぇ」
「うん。違和感ないね」


ぅおい、ソコ! さり気に失礼ちゃうか? 
さっき誉めたったのに。アヤカも否定せぇ。
224 名前:6 投稿日:2002年09月01日(日)15時01分19秒
「にゃ〜」
「うん? もうええん?」
「うにゃ」
「ちょっ!」

「みっちゃん・・・・・・アホすぎやで」


―――言わんといてーや。あたしかてアホやと思うもん。新しい方も取られてしもた。
何やねん、このネコ。ホンマ姐さんと違うんか?
225 名前:6 投稿日:2002年09月01日(日)15時01分52秒

「まあまあ、じゃあこっち行きましょ」
「そーやね」


さっすがリーダー村田。こばかにしまくるヒトらとは、ちょっとちゃうねんなぁ。
仕入れてきた地酒を一舐めして―――やーっと落ち着いたわぁ。

皆も一息ついたのか、思い思いに姐さん談義。
226 名前:6 投稿日:2002年09月01日(日)15時02分34秒

そや、姐さんを偲ぶんやった・・・・・・ん〜〜姐さんといえば、やっぱ新幹線やな。
未成年にパシらせるってのは―――思えば、めっちゃ悪いヒトちゃうんか? 

まあ整形してます?って訊いたあたしも失礼っちゃ失礼やったけど。
―――ホンマに整形してたらどーなってたやろ・・・・・怖っ!


一緒に飲むようになっても、あたしより飲めるくせに、チカラいっぱい酔っ払ってなぁ。
もう何回介抱したか、数えられへん。ま、ぐだぐだの姐さん知らんかったら、きっと打ち解けられんかったけど・・・・・・



でもなぁ、憎まれっ子は世に憚るんちゃうの? 世の中には、もっと憎まれっ子が居るんやな。
―――性格悪くてもええから、もー少し付き合ったのに・・・・・・

アカン。泣いとるコなんて1人も居らんのに。湿っぽくしてどーすんねん。

227 名前:6 投稿日:2002年09月01日(日)15時03分10秒

「ん?」
「や、漬け物、冷蔵庫に忘れてた」


立ちあがった足元に、絡みつく物体。・・・・・・やっぱり。


「何やねん」

訊いても分からんのに、何で話しかけちゃうんやろな。


「にゃあ」


でも答えるように一鳴きした後、洗面所のドアをカリカリ。
―――入りたいってコトやんなぁ。

「水か?」って開けてやると、便座の上にポンと飛び乗った。・・・・・・これはもしかして。
228 名前:6 投稿日:2002年09月01日(日)15時03分45秒

「ちょお来てみぃ〜」


皆を呼ぶと、わらわらと集まって、視線が集中。


「すっごぉい。トイレできるんだぁ〜」


感嘆の声をあげたなっちに続いて、「初めて見た」やら「耳がぁ〜」とか。

皆が感心しとるっちゅーのに、当の本人は、何が気に入らんのか攻撃態勢。
危なっかしいなぁとか思ってたら、まあ当然ちゅーか、バランスをくずして。


「にゃっ?!」
「あっ!」

229 名前:6 投稿日:2002年09月01日(日)15時04分16秒

瞬間、カオリの長い手が首根っこを掴んだけど。


「あ〜あ・・・・・・」


・・・・・・だっさいなぁ、自分。
引き上げられた長いしっぽとお尻からは・・・・・・水が滴っていた。
その姿が、思いっきり情けなくて、チカラいっぱい笑わせてもらった。



笑いの渦が収まった頃、「どーかしたのぉ」って特徴的な声。お、飼い主が来てくれたでぇ。
人垣が割れて、ひょこっと顔を出したやぐっちゃんに「洗ってあげてや」って渡して。

―――いやぁ、涙も引っ込んだっちゅーねん。

230 名前:ミニマム 投稿日:2002年09月02日(月)03時11分04秒
結構前から読ませて頂いてます。
裕ちゃん可愛いです。
ここの裕ちゃん(猫)読んでると
『魔女の宅急便』のジジ(黒猫)を思い出します。

魔女宅の結末みたいな
主人公と猫の間柄に(切ない)…
ハッピーエンドを期待しながら
今後もこっそり読みたいと思っております。

231 名前:名無し読者。 投稿日:2002年09月03日(火)01時26分09秒
ただただ子猫の裕ちゃんカワイ過ぎです。(w
232 名前:作者 投稿日:2002年09月04日(水)20時10分00秒
人として頑張ってる姐さん。
ネコにしてしまってごめんなさい。

230>
イメージはジジでお願いします。
何をもってハッピーエンドかどうかは難しいですが。
こっそり見守っててください。

231>
カワイ過ぎ裕ちゃん。・・・・・・ちょっと出番が危ういかも・・・・・・
233 名前:6 投稿日:2002年09月04日(水)20時11分23秒
ごっつぁんたちとお菓子を買って、じゃあみっちゃんトコ行こうって。
やっとドアが開いたと思ったら、トイレのドア辺りでたむろってるお姉さんたち。

何かめちゃめちゃうけてるみたいで、爆笑してる。
ごっつぁんと、「何してるんだろうね」って首を傾げて、近づいた。


「どーかしたのぉ?」


声をかけても・・・・・ちょっと皆高い、見えないよぉ。―――あ、みっちゃん、カオリぃ・・・・・・


「何してんの?」
「ゆーちゃん、落ちちゃったのぉ」
「洗ってやった方がいーんちゃう?」


何となく事情が掴めて、視線を移すと、吊られたままの裕ちゃんが暴れてた。
234 名前:6 投稿日:2002年09月04日(水)20時12分01秒
「ちょ、カオリ、放しぃ〜。ちゅーか何で皆見てんねん!」
「ゆーちゃん・・・・・・」
「お、ヤグチぃ。これ放してぇ〜」


情けなくなって、無言で受け取ってシャワーをかける。
しっぽとお尻を泡立ててる間、裕ちゃんは一生懸命言い訳してた。

曰く。皆が見てるから悪いんやと。追い払おうとしたら、ちょっと滑ってしまったと。


「だってなぁ、失礼ちゃう? ヒトの見てんねんで?」

・・・・・・だからヒトと違うじゃんか。

「さすがにトイレシーンは恥かしいっちゅーねん!」

・・・・・・そんなモンなのかなぁ。


あっ! そーだ。
裕ちゃんの愚痴を延々と聞いてたら、伝えなきゃいけないことを思い出した。

235 名前:6 投稿日:2002年09月04日(水)20時12分38秒

「さっきね、電話があったよ。ゆーちゃんのお母さんから」
「お母さん?」
「うん。初七日が終わったら、東京の部屋、整理したいって。でね、時間があったら―――」


「初七日」って呟いたまま、何か考え込んでる裕ちゃん。


初七日―――怖いほどの喪失感を感じたあの日。あれから、もうすぐ一週間。
お通夜、お葬式、初七日・・・・・・少しずつ遠くなるあの日。

きっとお祖父ちゃんの時のように。
きっとお祖母ちゃんの時のように。
少しずつ忘れていく悲しさ。もしかしたら、想い出も・・・・・・?
236 名前:6 投稿日:2002年09月04日(水)20時13分10秒
「ゆーちゃん・・・・・」

ヤグチは忘れないからね。
寂しくなくなっても、悲しくなくなっても、絶対忘れないから。


「ちょっ、何で泣いてん?」
「へ?」


ちょっと情緒が不安定になってるのかも。
勝手に考えて、勝手に悲しくなって。


「へへっ。大丈夫」


笑って見せると、泡だらけのまま飛びつかれて。
ペロってキスされた。
237 名前:6 投稿日:2002年09月04日(水)20時13分40秒

「なぁ、明日行こ?」
「えっ?」
「ウチに。東京戻ったら時間あるんやろ? 渡したいモンあんねん」


渡したい物? ヤグチに?


「お母さんが来た時じゃダメなの?」
「・・・・・・だって、ヤグチに渡せるか分からんやん?」
「そーだね・・・・・・」


裕ちゃんのお母さんは、整理する時、時間があったら来て欲しいって言ってた。
アクセサリー類とか、良かったらもらって欲しいからって。

―――それって形見ってコトだよね・・・・・・
238 名前:6 投稿日:2002年09月04日(水)20時14分14秒

形見・・・・・

裕ちゃんにもらっても形見・・・・・

何か形見って、もらったら、悲しい気がする。
だって形見って、つまりは遺品なわけで。
死んだヒトの代わりに、自分に残る物・・・・・・




「ヤグチぃ・・・・・アカン?」


心配そうな声で、引き戻された。
見降ろすと、泣きそうな青い瞳と、目が合って。


「うん。イイよ。行こ?」
「ホンマ?」
「お願いされちゃあね。じゃあ乾かしちゃお?」
239 名前:6 投稿日:2002年09月04日(水)20時14分46秒

タオルで拭いた後、お尻の辺りをフワフワに乾かして。
長いしっぽの先っぽまで、充分に風を当てる。


「最後やから」

ドライヤーに威勢のイイ音に紛れて、何か聴こえた気がして。

「何?」

「や、そんなええもんとちゃうねんけどって」


―――ホントはちゃんと聴いてなきゃいけなかったんだ。
でも、多分、何も変わらなかったと思うけど。

240 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月04日(水)21時34分04秒
なんだかこれから切なくなる予感。
裕ちゃんの死んだ訳とかもそのうち分かりますか?
つづきとっても楽しみです。

昨日の裕ちゃんのライブすごく良かったです。
2階で観てたら途中から娘。たちが観に来てました。
矢口さんはノリノリで、裕ちゃんに手を振ったりしてました。
愛を感じましたよ(笑)
241 名前:作者 投稿日:2002年09月05日(木)19時10分07秒
>240
切なくなりますかねぇ・・・・・・あんまり考えてないので。
死んじゃった理由・・・・・あったかな?

矢口さん、見えたんですねぇ。いーなぁ。
私もやぐちゅーっぷりを見たかった・・・・・・
242 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時10分39秒

フワフワに乾かしてあげて、トンって床に降ろしてあげると。
「ビールやぁ〜〜」って駆け出していく。


―――何? ビールぅ?・・・・・・まさか飲んだの?


「ゆー・・・・・・??」


ちょっと待ってって呼び止めようとしたら、姿が消えた。
あれ? 今、確かに皆の方に駆けてったはずなのに。
243 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時11分14秒

「いやぁ!!」


ん? 裕ちゃんの声?
何気に嫌そうな叫び声の元を辿ると・・・・・・ごっつぁんだ。


「ゆーちゃん、遊ぼ〜〜」
「あんたは辻加護か! さっきも遊んだやろ!」


どうやら、途中でお菓子を食べてた3人組に捕まったらしい。
裕ちゃんは、ごっつぁんの手の中でバタバタしてるけど・・・・・・
244 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時11分46秒
「ほい、よっすぃ〜」
「どれどれ・・・・・・ほれほれ・・・・・」

「先輩に向かって、ほれほれって何やぁ〜〜!」


ネコじゃらしを受け取って、裕ちゃんの前でフラフラさせるよっすぃ〜。
散々騒いでるけど―――だからさぁ、皆は聴こえないんだってばぁ・・・・・・


「―――捕まえられないね」
「石川ぁ!! どーゆー意味やぁ?・・・・・本気になればなぁ」
「おっ?」

「このっ・・・・だから・・・・・・・・動くなっ!・・・・・アホぉ!!」
「やっぱとろいねぇ・・・・・」
245 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時12分17秒
「じゃあこれは?」


今度はするめにつられて飛び上がる裕ちゃん。
―――やっぱ取れそうにないねぇ。・・・・・ほんとにとろい?


「イカ欲しぃ〜〜。ビール飲むんやぁ〜〜」


―――ビールぅ?・・・・・・助けてあげようと思ったけど止めた。
ビール飲むより、遊んでる方がネコってモンだよ。
246 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時12分57秒

「あんまりいじめないでやってね」
「え〜〜?? ヤグチぃ〜〜〜助けてやぁ〜〜」

「あ〜〜・・・・・・後、あんまり、イカ食べさせないようにね」


ちょっと可哀相だったけど・・・・・・

だってさ、裕ちゃんと遊んでるごっつぁんたち、楽しそうだから。
―――少し遊んであげなよ。・・・・・・どっちかというと裕ちゃんが遊ばれてるか。


「ほらほら。美味しいよぉ?」
「せやっ・・・・・からっ・・・・・くれっ・・・・・てばっ・・・・・・」

247 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時13分28秒

遊ばれてる裕ちゃんを置いて、お姉さんたちに混ざる。
見ると、りんねとあっちゃんは半分夢の中状態で、ベットとお友達になってる。


「何飲む?」
「何飲んでんの?」


訊くと、なっち以外はお酒。日本酒やカクテル、そしてビール。
・・・・・・皆オトナだもんなぁ。でもヤグチは。


「ウーロンちょうだい」
「今日はなぁ、姐さんとのお別れ会やねん」


少しほっぺが赤くなったみっちゃんが、コポコポと注いでくれる。
その言葉に、顔を上げたヤグチに、ニコって笑って。
皆を見ると、同じように笑ってた。
248 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時14分01秒

「そっかぁ。お別れ会かぁ・・・・・・・・」
「うん。裕ちゃんを偲ぶ会なんだってさ」
「偲ぶってねぇ?・・・・・・暴露大会でもしちゃう?」
「ばくろぉ〜〜?」


圭ちゃんの突然の提案、皆びっくり。ヤグチもびっくり。
暴露かぁ・・・・・・面白そうじゃん? そーいや、圭ちゃんとのキスも知らなかったしね。


「いーねぇ。じゃあ初めは?」
「もちろん言い出しっぺの圭ちゃんっしょ?」
「お〜〜じゃあ圭ちゃん。どーぞぉー」

「・・・・・・言わなきゃ良かった」
249 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時14分33秒

ぶつぶつ言いながらも、コップのお酒を傾ける。
一口、二口飲みながら、懐かしむような優しい顔で。


「でも暴露って?」
「はいはい。訊きたいことがあるぅ」
「ん?」
「裕ちゃんとキスしたのはいつ?」


「あ〜〜去年の暮れ・・・・・かな?」
「え〜〜??」


それってヤグチとラブラブの時じゃんかぁ。
―――浮気ってやつぅ?・・・・・・ちょっと裕子ぉ。それってどーゆー・・・・・・
250 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時15分05秒

「やぐっちゃん。そんな驚くかぁ?」
「え、や、その・・・・・」
「大丈夫だよヤグチ。それ以上はしてないから」


―――それ以上って・・・・・・・


「で? 去年の暮れって?・・・・・もしかして誕生日かい?」
「あ〜うん。まあその辺」
251 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時16分34秒

『けーぼー!』
『・・・・・どーしたの。そんなに息切らして』

『あんなぁ。あんた、もうすぐ誕生日やん?』
『そうだね。また年取っちゃうよ』
『年言うな! でな?』

・・・・・・・・・・・

『なっ・・・・・・何?』
『プレゼントや。何やったら、もっとあげてもええけど?』
『ヤグチに殺されるよ?』

『・・・・・・2人の秘密にしよな?』
『どーしよっかなぁ』
『・・・・・・口止め料や』

『・・・・・・秘密ね』

252 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時17分07秒

「また来年なぁって言ったけど。最初で最後になっちゃった・・・・・・
でも、だから忘れないんだ。あの時の温もりとか、裕ちゃんとの会話とか。
―――あ、別にヤらしい意味じゃないからね」


そう言った圭ちゃんは、少し切なそうに笑った。キレイなオトナの顔をして。
―――バカ裕子。何て顔させるんだよ。・・・・・・キスしすぎなんだよ、アホぉ!

253 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時17分39秒

「好き勝手なヒトやなぁ」


しみじみと呟いたみっちゃんに、うんうんって頷く面々。もちろんあたしも。


「自分勝手で、ワガママで。気分屋で」
「うん。ほーんとコドモっぽいトコ、あったよねぇ」


6コも7コも8コも10コも年下のうちらにねぇ。
ここまで言われるオトナって・・・・・・いないね、きっと。


「あったじゃん。ピーターパン症候群だっけ?」

「・・・・・・空飛びたいの?」
「や、ちゃうから。―――あのヒトは、オトナになりたいオトナやったと思うわ」
254 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時18分09秒

ボケボケなっちに突っ込んだ後、真面目な顔で呟いたみっちゃん。
でもちょっと聴いたことない話に、お互い顔を見合わせる。

「分かる?」「分かんない」アイコンタクトが交錯して。


「どーゆー意味?」


代表したなっちに、おでこを撫でながら「アタシが思うにはな?」って話し始めた。


「姐さんは、オトナやったけど、もっとオトナになりたいって。
オトナの年になっても、理想の自分に近づこうと頑張ってたんちゃうかなって。
・・・・・・・きっと最期まで突っ走ってたんやろね」
255 名前:6 投稿日:2002年09月05日(木)19時18分39秒

愛しむような穏やかな声は、あたしの中にスゥーって入って。
きっと皆の中にも、染み込んでいって。

途切れた会話で、後ろからのはしゃぎ声に気が付いた。まだやってたのか。


「・・・・・・・からっ・・・・・もっ・・・・・・くれっ!」

―――今も頑張ってるみたいだけどね。
256 名前:6 投稿日:2002年09月06日(金)19時18分19秒

「カオリもさぁ、オトナ気ないなぁって思ってたの」


コップの縁をなぞりながら、視線を伏せたカオリが、独り言みたいに話し出す。
―――もしかして、初めてしゃべったんじゃないかな。


「合宿の頃さ、何か怖くてさ。普通オトナのヒトって優しいと思うじゃん?」
「あ〜確かに怖かったべさ。彩っぺと2人、絶対ヤンキーだと思った」
「でさ、すぐキレるし。何かコドモっぽいなぁって思ったんだ」


このセリフにも、うんうんって頷くみっちゃんとなっち。
―――2人とも昔を思い出してるんだろうなぁ。

ヤグチらは途中からだから、その頃の裕ちゃんを知らないわけで・・・・・・
ちょっと羨ましいと思う。けど・・・・・・テレビで見たまんまだったんだねぇ。
257 名前:6 投稿日:2002年09月06日(金)19時18分57秒

「カオリのさ、モーニングコーヒーのさパート、テスト受けてたら変わってたじゃん」
「カオ・・・・・・」
「うん。それはもういいんだけどね。でもあの後、結構引きずっててさ」



『落ち込んでんの?』
『・・・・・・』
『ま、えーけど。後ろ向いとると、あたし抜かしてまうよ』



「それだけ言って歩いてっちゃったんだけどね。水戸黄門歌いながら・・・・・・」


―――水戸黄門って、あれか。人生楽ありゃ♪のヤツか。
いや、どっちかというと2番かな? 後から来たのに追越され〜♪ってね。
258 名前:6 投稿日:2002年09月06日(金)19時19分30秒

「ヘンなヒトって思ったわけ。初めは。でも、慰めてくれたんだなぁって。後で思ってさ」


―――裕ちゃんらしいというか。やっぱ言葉が足りないよね。昔も今も。

あの所為で要らない誤解、増やすんだよ。そう言ったもん。ヤグチも。
そしたらさ。「分かってくれるヒトがおればええねん」って。

絶対損してたと思うんだ。
裕ちゃんは美人さんだし、ニコって笑えばイイだけなのに。
・・・・・・・・・人見知りにしても、威嚇しすぎなんだよ。
259 名前:6 投稿日:2002年09月06日(金)19時20分04秒


「ねえ、みっちゃん。ゆーちゃんは何であんなに威嚇してたの?」
「威嚇?・・・・・・ん〜〜初対面のヒトとか?」
「うん。もう少し笑ったら、余計な誤解も受けないのに」


ヤグチさ。ファンのコとかもそうだけど、ガクトさんとかも。
裕ちゃんがガンつけてるとか、怖いとか。
そーゆーの聴く度、結構悲しかったんだよね。

ホントの裕ちゃんは、可愛くて優しくて。
「ホントは違うんだぁ!!」って叫びたかったくらい。


「あれはなぁ、臆病なヒトやからやろ? 自分でも言うてたやん?
臆病やから、ヒトを近づけんよう威嚇すんねん。動物と一緒やな」


―――動物と一緒かぁ・・・・・・・ははっ、今は完全に動物だけどね・・・・・・

260 名前:6 投稿日:2002年09月06日(金)19時20分46秒

それからも話は尽きなかった。
中でも、メロンとの話は意外というか。・・・・・・やっぱ浮気者?


「裕ちゃんって飲むと、ホント甘えたになるよねぇ」って話をしてたら。
顔を見合わせて、うんうんって頷いてるヒトたちが見えて。


「妙に納得してるやん?」
「いやぁ。そーいや思い出しちゃって」


みっちゃんの突っ込みに、大谷さんが笑いながら。
村田さんも、赤い顔をしながら、こっちも笑ってる。

―――一体何があったんだ?
そーいや、村田さんのボケボケがお気に入りだったみたいだけど。
261 名前:6 投稿日:2002年09月06日(金)19時21分35秒
聴くと。
あっちゃんと村田さんと大谷さんと4人で飲みに行って。
いい感じに酔った裕ちゃんは、村田さんに絡んでたらしい。


『リーダー、オモロイなあ』
『ありがとーございます。中澤さん』
『アカン! んな他人行儀。ゆーちゃんって呼んでや』


裕ちゃんのコト、中澤さんとしか呼んだことない2人はめっちゃ困って。
けど、頼みの綱のあっちゃんは、既にダウン―――いっつもじゃん。


『なあ〜あぁ〜・・・・・・呼んでくれんとキスすんでぇ〜〜〜』

『―――どーしよぉ?』
『―――呼ぶしかないじゃん?』
262 名前:6 投稿日:2002年09月06日(金)19時22分14秒

意を決した2人に、呼んでもらった裕ちゃんは。


『え〜ねぇ〜。よっしゃ! ごぼーびやぁ〜〜・・・・・・』



って浴びせまくったんだって。
―――結局するんじゃん・・・・・・セクハラオヤジ。


その後も、大谷さんの背中に圧し掛かって。
リーダーに「大喜利やってぇ〜〜」って無理難題。
見たかったなぁって思うけど、ヤグチがいたら「踊ってぇ」って言われそうだ。

というか、それって甘えたってより・・・・・・酒乱?

263 名前:6 投稿日:2002年09月08日(日)17時15分28秒

「んじゃ、そろそろ、やぐっちゃんの番ちゃう?」
「へっ?」


皆の話で笑いまくってたあたしに、イキナリ振るみっちゃん。
―――えーっとぉ・・・・・・何があたしの番?


「なれ初めとかなぁ」
「はい!」
「ほい、なっち」
「ヤグチは、いつからゆーちゃんが好きだったの? やっぱ恋ダン?」


あぁ・・・・・暴露話はまだ終わってなかったのかぁ。
―――知らないからね、ノロケ話になっても・・・・・・
264 名前:6 投稿日:2002年09月08日(日)17時16分00秒

「初めて意識したのは―――」


昔を想い出しながら、少しずつ、あの頃の記憶が鮮明になって。
目を閉じなくても、あの頃の裕ちゃんが、はっきりと思い浮かぶ。


初めて意識した時の風景は、実は裕ちゃん1人のモノではなかった。

265 名前:6 投稿日:2002年09月08日(日)17時17分11秒

―――あ、彩っぺだ。

この頃は、裕ちゃんよりも、一緒にタンポポをしてた彩っぺに懐いてたから。
廊下で見かけた時も、最初は彩っぺに気が付いた。


ソファーにそっと近づく彩っぺ。
その視線を追って、もう1人いることを知った。


そのヒトは。
後ろから、トントンって肩を叩かれて。
分かってたみたいに、顔を寄せた彩っぺと唇を重ねてた。

いつものことだなぁって、ボーっと見てたあたし。
彩っぺの肩越しに、絡んだ視線。


その瞬間、裕ちゃんは真っ赤になって、彩っぺから離れたんだ。
266 名前:6 投稿日:2002年09月08日(日)17時17分57秒

裕ちゃんがメンバーとキスなんて、それこそ日常茶飯事で。
あたしだって、いっぱいされてた。
でも、その時みたいに、真っ赤になった裕ちゃんは初めてで。

その純粋な反応。怖いリーダーとのギャップ。
今考えれば、きっといろいろな理由が思いつくけど。


その時は。
あの瞳に捕らわれて、あたしは恋に落ちた。―――そう感じた。

267 名前:6 投稿日:2002年09月08日(日)17時18分28秒

それから、追いかけるのは、いつも裕ちゃんの姿。
楽屋でも、コンサートでも、収録でも。
いつでも、あたしの視界には、裕ちゃんが入っていた。

そして、衝撃的な出来事。驚き。戸惑い。悲しみ。―――涙。


『夢は掴むためにある』


そう言って、彩っぺはステージを降りた。


彩っぺを送り出した裕ちゃん。
彩っぺを送り出したヤグチ。
―――2人の距離は、1人分、縮んだ。
268 名前:6 投稿日:2002年09月08日(日)17時19分03秒

そして、その距離が、ゼロに近づこうとしていた頃だった。

いつもみたいに、ヤグチを抱きしめることをせず。
ただ、ヤグチの手を、そっと握って。


『ヤグチ・・・・・・・ホンマに、好きや』


その真剣な眼差しに、ホントに本気の気持ちが伝わった。

きっと、ヤグチも好きだよって言うのを待ってたと思う。
でも、心の中のもやもやがあって。―――即答できなかった。
269 名前:6 投稿日:2002年09月08日(日)17時19分52秒

『訊きたいコト、あるんだ』


真剣すぎて、少し涙目の裕ちゃんを見つめながら。
きっと、ヤグチの目も潤んでたのかもしれない。

そして、ずっと訊きたかったコトを、口にした。
裕ちゃんは、真剣に丁寧に答えてくれた。

270 名前:6 投稿日:2002年09月08日(日)17時20分25秒

『彩っぺ、好きだったでしょ?』
『ん?―――うん。好きやったよ』

『大好きだった?』
『大好きやった』

『誰よりも?』
『誰よりも』

『―――ヤグチよりも?』
『ヤグチよりも』

『―――付き合ってたの?』
『ううん。それはない。一度も』


一つずつ訊いてくうちに、ヤグチの不安に気付いたんだろう。
裕ちゃんは、握ったままの手を、ギュッと強くして。
271 名前:6 投稿日:2002年09月08日(日)17時20分55秒

『なあ・・・・・・誤解せんでな?』


小さいコドモに言い聞かせるような、柔らかい声。
でも、真剣な瞳はそのままに。大切な言葉を伝えてくれた。


『彩っぺは同志やった。支えてくれた、大切なヒトやった』

『でも、支えてやりたいんはヤグチや。誰よりも、ヤグチが好きやねん』

272 名前:6 投稿日:2002年09月08日(日)17時21分29秒

その日から、あたしたちは特別な関係になった。
今までと変わらない関係。今まで以上に近づいた関係。


期間にしてみれば、約2年。
普通の交際期間から言えば、長いのかも知れない2年間。

ほとんど毎日一緒にいた1年間。離れてしまった1年間。
両方足しても、あたしたちにとっては、短い2年間。


もっと続いていきそうな時間だったのに。
ずーっと一緒にいても、きっと毎日ドキドキして過ごせたのに。

ヤキモチ焼きながら、じゃれあいながら。
時にはオトナの会話をしながら、傍にいるだけで安らいで。
キスをして、抱きしめて、泣いて、笑って・・・・・・

273 名前:6 投稿日:2002年09月08日(日)17時22分00秒

「ヤグチぃ・・・・・・」
「・・・・・・大丈夫」


知らず、零れていた涙。
心配そうに見つめるなっちに、ヘヘって笑って。


―――だって、仕方ない。

裕ちゃんが死んじゃったのは、変え様のない現実で。
ヤグチが裕ちゃんを好きだったのも、偽りのない真実で。

2つの間に生れる痛みは、そう簡単に和らぐものでもないんだから。

274 名前:6 投稿日:2002年09月09日(月)19時28分19秒

「しっかしなぁ・・・・・・」


しんみりしちゃった空気を、破ったのはニヤニヤ顔のおっちゃん仕様。

―――何で関西のヒトって、突然オヤジが入るんだろう。
というか、そーゆー関西人が、ヤグチの周りに多すぎるのか?


「何?」

何となく、ヤな予感を覚えつつ、平静を装う。
「分かってるくせにぃ」て顔・・・・・・何かムカツク。


「姐さんが愛想良くなくて、やっぱ良かったんちゃう?」
275 名前:6 投稿日:2002年09月09日(月)19時28分51秒

っ!・・・・・・・・・何だよぉ、イキナリ・・・・・・・

―――その通りだけどさ。
ジャンボさんにも、ボンバーヘッドにも、特に坂本さんにはむかついたよ。
もっと居たけど、多すぎて忘れちゃったぐらいさ。


「そーだよねぇ。たまに泣きそうになってたもんねぇ」
「いや、なまら不機嫌もあったっしょや」
「そーそー。こっちはハラハラしてたよねぇ」

「そーやろぉ? 愛想なくて良かったなぁ?」


―――何かムカツクぞぉ。
おっちゃんなみっちゃんも。楽しそうなメンバーも。
さすがに、アヤカとかは言ってこないけど―――うんうんって頷いてるのも楽しくないぞぉ。


・・・・・・・我慢だ、ヤグチ。こんなの裕ちゃんで慣れっこじゃんか。
276 名前:6 投稿日:2002年09月09日(月)19時29分28秒

「そーなんだよねぇ。みっちゃんとかと飲み行っちゃうしぃ・・・・・・」


イキナリの名指しで、戸惑うみっちゃん。オヤジ仕様は一瞬で元に戻ったみたい。
ヤグチだって、だてに裕ちゃんの相手してないってーの。


「ヤグチ、未成年だから寂しかったんだよねぇ」
「いや、それはな?」

「酔っ払いのゆーちゃんって可愛いしさぁ」
「いや、だからな?」

「抱き付いてきちゃったりさぁ」


口を挟ませないくらい、勢い良くポンポンと。
皆のニヤニヤは、みっちゃんに切り替わって。―――お返しだい。
277 名前:6 投稿日:2002年09月09日(月)19時30分08秒

「せやけどっ!」


おっ? 

押され気味だったみっちゃんが反撃、というか軽キレ?


「せやけど、酔ったら寝てまうし。寝なきゃ絡んでくるし。
手ぇ出るし。ケリ入るし。えーことないっちゅーねん!」


―――あぁ、確かに。
一気に吐かれたその言葉に、妙に納得するうちら。
それに満足したのか、落ち着きを取り戻して。
278 名前:6 投稿日:2002年09月09日(月)19時30分46秒

「まぁ、飽きへんヒトやったけどなぁ」


みっちゃんは、カラカラと笑いながら、楽しそうだけど。
裕ちゃんが聴いてたら、「何やとぉ!」って怒りそうだよなぁ・・・・・・

―――そーいや、裕ちゃんは?って様子を見ようとしたら。



「あっ!!」


なっちが、イキナリ叫んだ。
279 名前:6 投稿日:2002年09月09日(月)19時31分16秒
その直後、何かが飛び込んでくる。車座してる真ん中に・・・・・・


「何やぁ?」


みっちゃんがそれに、手を伸ばして。
手に取った瞬間―――


「あっ!!」


みっちゃんの背後から、もう一つ、影が飛び込んできた。


「アホぉ〜〜〜〜〜〜〜」
280 名前:6 投稿日:2002年09月09日(月)19時31分47秒

その物体は、みっちゃんの背中を踏み台にして。
その姿は、サバンナのチーターか、或いは飛び込みの選手か。

美しい跳躍を見せた裕ちゃんは、向かいのなっちに墜落した。



「・・・・・・何やぁ??」


背中を抑えながら、身体を起こしたみっちゃん。
その手には、フリスビー(ミニモニ印)が握られている。


「大丈夫かい?」
「何でこんなトコおんねん!!」


なっちに抱き上げられながら、叫ぶ裕ちゃん。
―――いや、あなたが突っ込んできたんだから。
281 名前:6 投稿日:2002年09月09日(月)19時32分24秒
「ごめんなさ〜い!!」
「梨華ちゃんですからぁ〜〜」
「ゆーちゃん、取れないんだよねぇ」


口々に騒ぐ張本人たち。
そうか、石川かぁ・・・・・・じゃあ仕方ないねぇ。
―――というか、部屋ン中でフリスビーすんなっ!


「ネコはフリスビー、取らないでしょーが」


圭ちゃんの冷静な突っ込みに。
282 名前:6 投稿日:2002年09月09日(月)19時32分54秒

「おぅ〜〜」


一斉に納得する3人。

―――ぅおいっ! キミたち・・・・・・
普通は犬でしょうーが。というか何でミニモニフリスビーまで持ってるんだよぉ。


「でも何で、ゆーちゃんは追いかけてんの?」


ざわざわしてた空間は、その一言で、一瞬止まった。
・・・・・・もちろん、裕ちゃんも。
283 名前:6 投稿日:2002年09月09日(月)19時33分29秒

「きっと、ゆーちゃんはフリスビー好きなネコなんだよ」
「うん。きっとそーだ」

「そぉかぁ? 動くから追いかけただけじゃん?」
「言えるなぁ。本能で動いてそーやもん」

「え〜〜。きっと犬っぽいネコなんだって」
「したら、キャッチできたの?」
「まだ・・・・・・」
「1回も・・・・・・」

「やっぱ本能じゃん」
「え〜〜。頭いいんだってぇ」


犬みたいに、フリスビー出来るって主張するトリオと。
単なる、動物の本能だって主張するお姉さんたち。
284 名前:6 投稿日:2002年09月09日(月)19時34分10秒


「何でなの?」

ヤグチの膝に移動してきた裕ちゃんに、そっと尋ねたら。
「つい、なぁ・・・・・・」だって。―――やっぱ本能か。


恥かしそうに、頭を掻いてるから。

―――仕方ないじゃん。ネコなんだから。
そんな気持ちで、生ハムをご馳走してあげた。
285 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時49分47秒

ふいに頭を上げた裕ちゃんは、きょろきょろと何かを探し始めた。
そっと手を置いて「どーしたの?」って覗き込むと。


「ビールぅ」


・・・・・・そーきたか。

「ダメだよ」って、無言で見つめると。
―――あぁ・・・・・・拗ねてるの。何で分かっちゃうんだろう。
286 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時50分33秒
「えーも〜ん」


プイって感じで、ヤグチの膝から降りて。
圭ちゃんに、甘えるように擦り寄っていった。

しっぽを立てて、わざとらしく「にゃあ」とか・・・・・・うわぁ、ムカツクぞぉ。
「にゃあ」って・・・・・・何でヤグチにも「にゃあ」って聴こえるわけ?



「何? コレ欲しいの?」
「けーぼぉ〜♪」


圭ちゃんが掲げたビールに、嬉しそうに飛びついて。
何気に、動物とか好きなんだよねぇ、圭ちゃん・・・・・・
287 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時51分07秒

でも、それは嘘っこだよぉ。
その可愛さに騙されちゃダメなんだから・・・・・・

―――う〜〜何かムカツクぞぉ〜〜〜


「はい」
「ん」


てやっ!!


「ぅにゃっ!?」
288 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時51分49秒
何故か、あたしの手から、ぬいぐるみが飛んでって。
美味しそうに、ピチャピチャしてた裕ちゃんに直撃!


「あれ? 何? 今の・・・・・・」
「いやぁ、欲しそうだったからぁ」


のほほんとした声に、隣を見ると、いつのまにかごっつぁん。
「あはっ♪」って・・・・・・


「はい?」
「だって、何か投げたそうだったんだもん」
289 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時52分24秒

―――その通りだけど。・・・・・・よく分かったなぁ。
でも、どーしてぬいぐるみがあんの? それもヤグチじゃん、アレ・・・・・・
どうやら自分が投げたのは、ヤグチ(ミニモニ)のぬいぐるみで。


顔から突っ込んだ裕ちゃんは、それでも両手で拭って飲み干して。


「お〜♪ ヤグチや〜ん♪」


ぶつかったのがヤグチだから、めっちゃ気に入ったらしい。
抱きついて、コロコロしてる。―――抱き枕みたいだ。
290 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時52分55秒


「何で持ってんの?」
「ん〜? もらったのぉ。フリスビーと一緒にぃ」


―――何であげるの? スタッフさん。
というか何でもらうの? ごっつぁん・・・・・・謎だ・・・・・・


「そーだ! コレもあったんだぁ」


そー言って取り出したのは、キューピー人形。あ、それって―――


「ゆーちゃんの?」
「うん。前もらったのぉ」


ねじを巻くと、ウィンウィン動くキューピー。
最近の裕ちゃんのお気に入りで、実はヤグチももらったんだ。
291 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時53分28秒

『ゆーこぉ・・・・・・』
『えーやん。かわえーやろぉ?』
『・・・・・・』
『あ〜? 何か冷たいなぁ、その目ぇ』
『いーけどさぁ・・・・・・』


だってさぁ、ドコで見つけてきたのか。
いつの間にか、キューピー・・・・・・何でだよぉ。


『何やの?』
『・・・・・・これ、可愛いね・・・・・』
『やろぉ?! 何か和むねんなぁ』
『ふうん・・・・・・・』


何でキューピーなんだよぉ。
和むねんなぁって・・・・・・・・ヤグチの立場は、どーなのさ。


『ヤグチは・・・・・・・・・?』
『はぁ?―――あははは・・・・・・。ヤグチぃ。めっちゃ好きぃ』
『―――アホ・・・・・』
292 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時54分03秒

言わなくても分かってくれた。
だって、ちゃんと抱きしめてくれたから。


裕ちゃんは。
いつでも、どこでも、抱きしめてくれた。
好きって言って、抱きしめてくれた。
周りにヒトがいたって、ちゃんと抱きしめてくれた。

あんなヒト、もーいない。
あんなヒト、もー絶対に現れないだろーなぁ・・・・・・


―――ま、イイけど。
だからずーっと、裕ちゃんのコト、忘れないだろうから。
とゆーか、忘れらんないよね。あんな強烈なキャラ・・・・・・・・
293 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時54分35秒


「やぐっちゃん?」
「ん? あ、それ、ヤグチももらったよ。―――ゆーちゃん!」


キューピーを見せてあげようと、声を掛けると。
―――まだ転がってたのか・・・・・・・・・


「ゆーちゃん、おいで」
「ん〜〜」


素直に歩いてくる裕ちゃん。
口でぬいぐるみを咥えて、歩きにくそー・・・・・・
―――てゆーか、自分と同じくらいだぞ? 重くないの?
294 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時55分06秒

「何でそれまで・・・・・」
「やっぱゆーちゃんだからじゃん?」


ゆーちゃんだからって。
何でそれが理由になるのさ、ごっつぁん・・・・・・
とゆーか、何で皆も頷いてるんだよぉ。


「あっ!」
「ぅぎゃっ?!」


こけた。
案の定、ヤグチ(ぬいぐるみ)を踏んで、顔からこけて。
でも、再び咥えて・・・・・・あ、また・・・・・・・・・全然進まないじゃん。
295 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時55分43秒

「なっち、それ投げて?」
「これ? いくよぉ。ホイ!」


放物線を描いたそれを追って、やっと戻ってきた裕ちゃん。
手の中のそれに、すぐさま抱きついて。


「ヤグチぃ〜〜♪」


―――本物がいるのに、何故そっち?・・・・・・すっごく複雑な気分。
う〜ん・・・・・・ヤキモチっぽいな、自分的に・・・・・・。てことで―――
296 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時56分30秒

「ゆーちゃん」


ぬいぐるみごと膝から降ろして。
ごっつぁんの手を離れたそれは、ゆっくりゆっくり動き出す。


それに気付いた裕ちゃんは、ぬいぐるみを手放して。
ジーっと見つめながら、そぉーっと近づいて。


ウィンウィンウィンウィ!・・・・・・ンウィンウ!・・・・・・ィンウィン!
297 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時57分20秒

右手で押さえて。放して、押さえて。放して、押さえて・・・・・・
―――楽しいのかなぁ・・・・・・


ウィンウ!・・・・・・ィンウィン!・・・・・・ウィンウィン・・・・・


ひたすら続ける裕ちゃんをよそに、何やら取り出すごっつぁん。
―――またかよ。好きだねぇ、ごっつぁん・・・・・・
298 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時57分55秒

「ほいっ!」
「うっ?」

「ほいっ!」
「やっ!」

「ほいっ!」
「とぉ!」


・・・・・・ネコだよ、裕ちゃん。
あなた、もう、完璧ネコ・・・・・・
299 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時58分54秒

「ほらほらぁ♪」
「あ〜〜〜! それキライやぁ〜〜〜!!」


キューピーとの間に振られるネコじゃらし。
相変わらず捕まえられない裕ちゃんは、とうとうキレて。


「ヤグチぃ〜〜・・・・・・」


ぬいぐるみを咥えて、膝の上に乗ってくる。

そのまま、抱えて丸くなるから。
スッ!って、ぬいぐるみを取り上げた。


「ヤグチ?」

不思議そうに見上げてきた裕ちゃんを、見つめ返したら。
「かわえーなぁ」って―――分かったらしい。


ぬいぐるみじゃなくて、ヤグチの手を抱えて。
膝の上で寝る裕ちゃんを見てたら、なんだか・・・・・・
300 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)20時59分36秒

「ヤグチ。顔、ニヤケてるべさ」
「やぐっちゃーん。それネコだよぉ?」
「べ、別に、いーじゃん」

「ヤグチがいいなら、いーけどさぁ」
「うん。どーぶつは心に良いんだよ」
「まーなぁ。それも寝てればかわええしなぁ」

「可愛くないのは、みっちゃんにだけじゃない?」
「そーなん? 何でやねん」
「やっぱ、ゆーちゃんだから?」
301 名前:6 投稿日:2002年09月10日(火)21時00分12秒

―――やっぱ、裕ちゃんだから?
そう、裕ちゃんだからね。

幸せそうに寝こける小さな頭をそっと撫でると。
聴こえてないはずなのに、笑っているように見えた。
皆と一緒に、笑っているように・・・・・・・・・


そして。
少しずつ、皆の寝息が重なって。
部屋の中いっぱいに広がる、穏やかな空気。
夜の闇に包まれるように、部屋の灯りもいつしか消えた。
302 名前:7 投稿日:2002年09月12日(木)19時30分54秒

ここに立つのは数日振りだった。
最後に見上げたのは、あの朝日を浴びながら帰った日。
あれから、ほんの数日しか経ってないのに、随分昔のような気がする。


「ヤグチ〜」


マンションの入り口で裕ちゃんが呼ぶ。
さすがに自分じゃ開けられないらしい。
「うん」って答えて、通いなれた裕ちゃんの部屋に向かった。
303 名前:7 投稿日:2002年09月12日(木)19時31分28秒

真昼のマンションはシンとして。
熱い太陽だけが、ジリジリと照りつける。
眩しい空を横目に、暗い通路を歩いて。


カチャ・・・・・・


久しぶりに開けたドアから、重い空気が逃げていった。
304 名前:7 投稿日:2002年09月12日(木)19時32分03秒

「こっちや」


そう言って、ドアの隙間から、寝室に入っていく。
追いかけるように、ドアを開けると、中は真っ暗で。


“シャッ”


カーテンを開けると、強烈な光が差しこんできた。
光に目が慣れると、ベットの上の裕ちゃんが見えた。
305 名前:7 投稿日:2002年09月12日(木)19時32分35秒

「ヤグチぃ」


呼ばれるままに近づくと、見覚えのあるバックが目に入る。
裕ちゃんは、その内ポケットを指差して。


「ここ、開けて」


それは、最近の裕ちゃんが、いつも持ち歩いていたバックだった。

ポケットのファスナーを開けると、中にはリングが一つ。


「それ、良かったら、もらってや」
306 名前:7 投稿日:2002年09月12日(木)19時33分06秒

取り出したリングはシルバー。何か文字が彫ってある。


「ゆーちゃんのポリシー、知っとるか?」
「弱肉強食でしょ?」
「それは座右の銘やん。ポリシーは目標は立てない。今を生きるってな」


―――あ〜〜確かに、そんなコト言ってたね。
というか、そんな生き方だったと思うよ、実際。

いつも、今できる事を精一杯って感じだったもんね。
307 名前:7 投稿日:2002年09月12日(木)19時33分43秒

「貸して?」


言われるままに、手のひらに乗せて見せると。
ちっちゃい爪で、リングを引っ掛けて。


「もらってくれるか?」


断るわけないじゃんか。
ヤグチが、裕ちゃんのお願い、断ったことある?


「ありがと・・・・・・」
308 名前:7 投稿日:2002年09月12日(木)19時34分15秒
結局、裕ちゃんじゃはめられなくて。―――とーぜんだよね。
あたしが自分ではめてるのを、嬉しそうに見つめて。


「それは、まあ、お守りみたいなもんやってん」


お守り?・・・・・・はめたリングからは、ローマ字が読み取れる。
―――カル、ぺ・ディ・・・・・・エ、ム?

どーゆー意味?って顔を上げた時、裕ちゃんの姿が消えていて・・・・・・


「・・・・・・ゆーちゃん? ゆーこぉ!!」
309 名前:7 投稿日:2002年09月12日(木)19時34分59秒

「こっちやぁ〜〜」


・・・・・・消えちゃったんじゃないかって。
恐怖に包まれたあたしに、のんびりとした声。・・・・・・一言、言えってーの!

安堵と怒りとでごちゃごちゃのあたし。迎えるのは尊大な態度。


「まあ、座りぃや」
「イキナリ、いなくならないでよ」
「ん? せやな。ごめん」


思わずこぼれた文句に、素直に謝って。
ソファーに座ったあたしの膝に、もぞもぞと乗ってくる。
小さい頭と柔らかい毛並み。ゆっくりと撫でると、ドキドキは収まっていった。
310 名前:7 投稿日:2002年09月12日(木)19時35分32秒
落ち着いた所で、さっきの意味を訊こうと口を開くと。
ヤグチより先に、裕ちゃんの声が、耳に届いた。



「ウチなぁ。心臓の家系やねん」
「えっ?」
「だからなぁ。何となく早く死ぬ気がしてな。未来よりも今しか考えられへんかった」


・・・・・・静かな部屋。時計の音が、カチカチと、やけに大きい。
311 名前:7 投稿日:2002年09月12日(木)19時36分03秒

「最近、夢見ててなぁ。お父さんが倒れんねん。・・・・・・記憶かも知れんけど」


・・・・・・裕ちゃんの声だけが、霞んでくるような。


「だから、眠んのに薬とかも飲んでたんやけど・・・・・・」


・・・・・・手の中の裕ちゃんが、おぼろげになっていくような。


「でも、何となく予感はしてたんや。そろそろかもって。――――ヤグチ・・・・・」

312 名前:7 投稿日:2002年09月13日(金)19時39分30秒

!!―――名前を呼ばれて、はっきり分かった。

嫌だ! それを聴いたら、きっと、もぉ終わりなんだ・・・・・・
嫌だ! そう言いたいのに、声が出ない。耳を塞ぎたいのに、手が動かない。

ヤグチの耳は、裕ちゃんの声をちゃんと聴こうと。
ヤグチの目は、裕ちゃんの姿をちゃんと焼き付けようと。


「大好きやったよ。ホンマに。ホンマにありがとぉ」


立ち上がった裕ちゃんは、ヤグチの胸に両手を置いて。


「将来の約束。しないままやったな。ゴメンな」
313 名前:7 投稿日:2002年09月13日(金)19時40分09秒
揺らぎはじめたヤグチの視界。
思わず目を閉じると、ほっぺにざらついた感触。


「泣いたらアカンよ」
「・・・・・・だって、ゆーこ・・・・・・だってぇ・・・・・・」
「泣いたらアカンてぇ。だって、今から約束するんやから」

「・・・・・・・」

―――今から? そんなのムリじゃんかぁ。

もう裕ちゃんはいないくせに。ヤグチの傍からいなくなるくせに。
もー逢えないんだろぉ?!―――ヤグチ、分かるんだから。
裕ちゃんのコトなんか、裕ちゃんよりも分かってるんだから・・・・・・・
314 名前:7 投稿日:2002年09月13日(金)19時40分48秒
「うっ、まあ、なんちゅーか」


強い視線で察したのか、ちょっと引き気味になりながらも。
機嫌を取るように、ペロってキスをしてくれて。


「ふつーの約束とはちゃうねんけど」
「・・・・・・・・」
「迎えに来たるよ。約束する」
「えっ?」

「ヤグチが、裕ちゃんよりも幸せになったら、迎えに来たる」


キスしてもらった所為か、少し涙が引っ込んだけど。
突拍子もない約束に、今度は疑問が湧きあがる。


「むかえって・・・・・・?」
315 名前:7 投稿日:2002年09月13日(金)19時41分25秒

不思議そうに訊ねたヤグチに、「うん」って頷いて。
視線を追って外を見ると、そこには一羽のカラス。


「お父さんやねん・・・・・・」
「おと・・・さん?」
「うん。ま、そーゆーこっちゃね? せやから、幸せになるんやで」


―――裕ちゃん。声が震えてるじゃんかぁ。
裕ちゃんが泣いたら、ヤグチまで泣いちゃうじゃんかよぉ・・・・・・
316 名前:7 投稿日:2002年09月13日(金)19時42分00秒

ポロポロ泣き出したくせに。


「幸せになるんやでぇ」って。
「見守ってるからなぁ」って。
「また逢おうなぁ」って・・・・・・


好き勝手なコトばっかり一方的に。
ヤグチは、溢れる涙が邪魔で、何にも言えないのに。
317 名前:7 投稿日:2002年09月13日(金)19時42分31秒

「あの・・・・・・・あのね・・・・・・・・・」


伝えたいコト、いっぱいあるんだよ。
言いたいコト、いっぱいあるんだよ。
聴いて欲しいコト、いっぱいあるのに。

頑張ってしゃべろうとしても、想いが言葉にならないんだ。

逝かないでとか。愛してるとか。
寂しいとか。心配しないでとか。

頭の中にはぐるぐる溢れてるのに、全然言葉にならないんだよぉ・・・・・・
318 名前:7 投稿日:2002年09月13日(金)19時43分21秒

「うん、分かってるから。ヤグチ、ありがとな」
「ゆ、ちゃん・・・・・・・・・・・また、ね・・・・・」
「ん。またな」


そう言った、裕ちゃんの笑顔は、記憶のままで。
不器用なウインクに、自然と笑いを誘われた。



瞬間、ヤグチの視界の端で、何か動いた気がして。
顔を上げると、もうそこに、カラスはいなかった。


慌てて窓を開けると、舞い上がってく一羽のカラス。
それは気持ちよさそうに、青い空を昇っていった。


「ゆーちゃん・・・・・・・・」


ヤグチこそ、ありがとうだよ。
319 名前:7 投稿日:2002年09月13日(金)19時43分59秒

サヨナラを言えるチャンスをくれて、ありがとぉ・・・・・・

今度は傍にいてあげられたよね。
ちゃんと、手を握ってあげられたよね。
独りで逝かせなかったもんね。


今まで、いっぱいいっぱいありがとぉ。
裕ちゃんに出会えて、ホントーに良かったよ・・・・・・


「ゆ〜〜ちゃ〜〜ん。ありがとぉ〜〜〜」


空に向かってチカラいっぱい叫んだヤグチに。
腕の中のゆーちゃんが、「にゃあ」って答えてくれた。

320 名前:7 投稿日:2002年09月13日(金)19時44分42秒
------------------------------------

321 名前:7 投稿日:2002年09月13日(金)19時45分16秒

「しっかし、無茶し過ぎや。いきなりいなくなるなや」
「ごっめ〜ん」
「ま、しゃあないけど・・・・・よぉ覚えてたな、今日」
「うっさかったやん。七日、七日って。初七日言うてや、ちゃんと」
「えーやん、分かったんやし。勝手にいなくなるんが悪いんやろ」


「でもなぁ・・・・早すぎやで、ホンマ・・・・・・」
「しゃあないやん。・・・・・・お父さんと同じやろぉ」
「オレはええねん。ちゃんと子供、残したし」


「お前は子供、産んでないやんか・・・・・・見たかったわぁ、オレの孫・・・・・・」
「えーの。あたしの子供は、あのコらやから」
「ふうん・・・・・・子供だけとちゃうよなぁ?」
「うっさいなぁ。子供も恋人もや」


「―――ありがとぉやって」
「ヤグチ・・・・・・かわええやろぉ」
「ふん。お前のお母さんには負けるがな」
「・・・・・・突っ込みにくいなぁ、それ」
「嘘や。うん、あのコも、ええオンナや」


「幸せやったか?」
「うん。めっちゃ幸せやったよ」
「そか。ほな行こか」
「ん・・・・・・」

322 名前:Epi 投稿日:2002年09月13日(金)19時45分52秒
---------------------------------------------
323 名前:Epi 投稿日:2002年09月13日(金)19時46分25秒

ゆーちゃんはあの日からしゃべらなくなった。
というか、ヤグチにも「にゃあ」としか聴こえなくなった。


ネコ缶を食べるようになったし。
高い所からも平気で飛び降りるようになった。
もちろんビールは飲まなくなったし、バナナも怖がらない。


でも相変わらずシャワーは好きで。
浴室から「ゆーちゃ〜ん」って呼ぶと、飛んできてスタンバイする。
キスも好きで、胸に飛び乗ってきては、ペロって舐める。


そんな行動に、裕ちゃんを思い出すけど、悲しさは減ってきた。
このコと一緒に、少しずつ、前に進んでいるんだろう。
324 名前:Epi 投稿日:2002年09月13日(金)19時46分58秒
あたしは前より、カラスが嫌いじゃなくなった。
あの黒い鳥の中には、誰かの大切なヒトがいて。
きっと誰かを見守っているんだって、思うから。


裕ちゃんより大好きなヒトは、まだ見つけられないけど。
絶対、幸せになってやろうと思ってる。


お守り、そして約束――――薬指のリングが、チカラをくれる。

今、この時を、精一杯生きるんだ!


Fin
325 名前:あとがき、というか感想 投稿日:2002年09月13日(金)19時51分16秒
初めての長編でした。もう書かないでしょう。難しすぎです。
はっきり言って姐さんがネコである必要はないです。
たんにネコを書きたかっただけで・・・・・・

ラストは決まってましたが、途中は・・・難しかったですねぇ。
長編書きの作者さん、尊敬します!

とりあえず完結できたので、後は番外編を一つ載せて終わりたいと思います。
レスをくださった方々、ひそかに読んでくださった方々、ありがとうございました。
326 名前:隠れファン 投稿日:2002年09月13日(金)21時12分14秒
完結お疲れさまでした。痛みも悲しみもあったけど、それ以上にゆ−ちゃん
の可愛さが溢れていました。
327 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月13日(金)23時06分48秒
終わっちゃいましたか・・・
なんかいい終わり方ですね。

ネコ大好き人間にはたまらない話でした。
いいお話でした。
328 名前:猫好き読者 投稿日:2002年09月14日(土)04時16分32秒
あ〜とうとう終ってしまったんですね(涙
密かに更新楽しみに待ってました。
番外編楽しみにまってます。
やぐちゅー大好き!!
329 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月14日(土)18時47分45秒
脱稿お疲れ様でした。
綺麗な終り方に感動しました。
番外編も期待してます。
330 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月14日(土)23時11分33秒
お疲れ様でした。とうとう終わってしまいましたか…
毎晩の楽しみがまた一つ…

番外編の方も楽しみにしてます!
331 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月15日(日)13時34分05秒
お疲れ様でした。
大好きな作品だったので、終わってしまったのは寂しいですが…
本当に、素敵な作品をありがとうございました。
番外編も楽しみにしています。
332 名前:作者 投稿日:2002年09月18日(水)19時29分47秒
こんなダラダラな話を最後まで・・・ありがとうございました。
番外編は、やぐちゅーではありませんが。
もひとつ、おつきあいください。
333 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時31分02秒

人の命の儚さを、ムリヤリ実感させられた日から、1ヶ月以上が経とうとしていた。
あの後、やぐっちゃんらと、姐さんのマンションに行って。

「もらってやって下さい」って、お母さんから指輪をもらった時は、さすがに泣いた。
キレイになった部屋を見てたら、もっと泣けた。

悲しいとか寂しいとか言うより、何か・・・・・・切なくて。
334 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時31分35秒

あれから、アタシの中で何かが迷ってる気がする。

必死に生きて、あっさりと死んでしまった姐さんの人生を見て。
じゃあ自分は、どうしたらいいいんやろうかって・・・・・・


明日、突然終わるかもしれない命だったら、今必死になるコトは必要なんやろか?
それとも、明日終わるかもしれないから、今必死に生きなきゃいけないんか?
335 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時32分08秒

まあそんなコトで、うじうじしてんのはアタシだけで。

やぐっちゃんなんかは、前よりも元気いっぱい頑張ってる。
身体を壊さんといいなぁ、なんて年上面してみたり。

だから頼られたりすれば、喜んで応えてあげたいと思って。
―――姐さんの代わりってわけじゃないねんけどな・・・・・・


で、今も、地方で仕事のやぐっちゃんの代わりに『ゆーちゃん』の面倒なんか、見てるわけで。
336 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時32分39秒

『ホントはね、ちょっと、ゆーちゃんだったんだよ』


いつだったか、こっそりと教えてくれたコト。

その意味は分からなかったけど、やぐっちゃんにとってはそーなんやろなぁ。
なんて、勝手に解釈して納得してたけど。
それって、多分間違ってた気がすんねん。だって・・・・・・・




―――初めは、幻覚と思ったんや・・・・・・
337 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時33分13秒

一人で飲んでるうちに、いつのまにか、うたた寝してもぉて。
ふと目を開けると、テーブルの上の茶色い塊に気づいた。


ボーっと見てると、そいつは、鼻先で皿―――つまみがのってたやつや―――を押して。
ビールに寄せると、今度は缶を倒して、中味を注いで。器用やなぁ・・・・・・ちゅーか。


「あのぉ・・・・・」


ピチャピチャしてたそいつは、ピクっと顔を上げて。


「・・・・・・・・・・・・」


一瞬見つめあった後、弾かれたように逃げ出した。
338 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時34分02秒

・・・・・・そーゆーことかぁ。

ストンとはまった感覚を受け入ながら、逃げ回るのを捕まえる。


「姐さんなんやろ?」


青い目を覗きこむと、意識的に逸らしてるのがバレバレ。
それならばと、腕に抱えたままキッチンに向かう。
冷蔵庫から取り出すのは、あの果物。―――アタシは好きやからね。

腕の中に近づけると、必死になって暴れ出して。
339 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時34分35秒

「ぅ〜〜ぅ〜・・・・・・や、ごめ。うそ。お願いやぁ〜〜」


聴こえた声に、驚きながらも、純粋に感動してしまった。


「―――ほぉ〜〜そーなんやぁ・・・・・・」


声、聴こえるモンなんやぁ。へぇ〜〜。ふ〜ん・・・・・・


「やめぇって!」
「痛っ!」


バナナを持ったまま、感動してたアタシにキレたのか。
抱いていた腕が、カプって噛まれて。
弛めた隙に、腕の中から飛び出してしまった。
340 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時35分14秒

リビングに戻ったアタシを迎えたのは、打って変わって、尊大な態度。
ソファーを陣取ってるから、床に座って同じ目線の青い瞳を覗きこむ。


「久しぶりやなぁ」

「ホンマに姐さんなん?」
「おう!」


片手を挙げて、軽ぅい挨拶。おぉ、ネコやない。
341 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時35分45秒

「やぐっちゃんが言ってた、姐さんだったってのは?」
「まあこーゆーこっちゃね?」

「じゃあトイレに落ちた・・・・・」
「言うなぁ!!」

「・・・・・・ずっとネコやったん?」
「ううん。今さっき、ちょっと借りた」
「はい??」


イマイチ掴めてないアタシに、一応説明してくれる。
結構適当ぽかったけど、何となく分かった。
342 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時36分28秒

「つまり、空飛んでると、ビールが飲めへんと」
「うん」
「つまりは、のりうつってるってコトやな?」
「ん〜〜借りてるって言うてや」


どっちでもええがな。
どっちでもええけど、不思議な感じやなぁ。
やぐっちゃんも、よぉ受け入れたわ、こんなん。


「やぐっちゃんは知ってるん?」
「ううん。もう逢ってへん」
「何で?」


喜ぶんちゃうの?
ちゅーか、見てて楽しいし。
喜ぶっちゅーか、和むっちゅーか・・・・・・えーね。
343 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時37分07秒

「ヤグチはもうだいじょぶやし・・・・・・ケジメつけんと、辛くなるやろ?」
「・・・・・・アタシは?」
「あんたはええの。親友やろぉ?」


話途中のくせに、トンと飛び降りて、冷蔵庫をカリカリ。
―――このヒトはぁ・・・・・・


「なぁ〜〜冷たいのぉ〜〜。あとイカもなぁ〜〜」


結局、ネコ相手に再び晩酌。まあ楽しかったからええか。
344 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時37分44秒

散々飲みまくって、食べまくって。
ベランダに出たいって言うから、開けてやると、黒い物体が・・・・・・


「何やぁ??」
「あたしのや」


姐さんの声が、その黒い鳥から聴こえた。
バサっと羽ばたいた翼に、今まで姐さんだったネコは、一目散に部屋の中に。


「・・・・・・カラス?」
「アホぉ! どこがカラスやねん。目ぇ青いやろ?」


・・・・・・そんな微妙な違い、分からんがな。
345 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時38分20秒

「ほな、またな」
「また逢えるん?」
「どっかでな」


どっかで? ココで? 向こうで?―――今しかないんちゃうか?
アタシの迷い、解決してくれるんは、今、このヒトしかおらんちゃうか? 


「待って!」


今にも羽ばたきそうな背中に呼びかける。
その必死な想いを感じてくれたのか、伸ばした翼をもう一度収めて。


「アタシ、どうしたらええんやろ・・・・・・」
「知らん」
346 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時38分51秒

真剣に訊いたアタシを、スパっと切り捨てる。
まあ、捨てて、すぐに拾うのが、姐さんなんやけど。


「あんたの人生や。好きにしたらええやん」
「せやけど・・・・・・」

「また胸張って逢おうや。気に入らんかったらケリ入れんで?」


好きにしたらええとか言ってるくせに。
気に入らんかったら、ケリ入れるって・・・・・・わがままやなぁ。


でも分かってる。

姐さんが好きな生き方。アタシに求める生き方。
それは、きっとアタシが求める生き方。


「せやな。アタシの人生やな」
「うん。じゃーな」
347 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時39分29秒
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
348 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時39分59秒
季節が巡り、澄んだ空気が冬を告げる。
青い空を見上げると、優雅に羽ばたく一羽のカラス。


「姐さんかなぁ・・・・・・」


ふと呟いた言葉は、誰に届く事もなく、冬の空に溶けていく。


「あったりぃ」
「・・・・・・」


溶けていくはずやったのに・・・・・・
またまたお預かり中の動物が、ヒトの言葉を話し出す。
349 名前:その後 投稿日:2002年09月18日(水)19時40分41秒
「あんた、はよ成仏せぇや。49日過ぎたら生まれ変わる言うてたやん?」
「え〜〜、皆と同じ時がええもん」


―――そっか、せやな。でも、長くないかぁ、それ。

既にテーブルの上にスタンバイしてるのを横目に。
冷蔵庫に常備してあるミニ缶を取り出して、プルタブを開ける。


「ま、飲みや」
「おう」
「今度、升でも買ぉとくわ」


・・・・・しゃあない、腐れ縁ってヤツやな・・・・・・



Fin
350 名前:隠れファン 投稿日:2002年09月19日(木)11時52分33秒
この2人の居酒屋ト−ク、いろんな意味で涙が止まりません。
作者さんありがとう。そしてがんばれみっちゃん!
351 名前:名無し読者。 投稿日:2002年09月25日(水)01時37分01秒
いい作品ご馳走様でした。
次回作めちゃくちゃ楽しみにお待ちしています。
352 名前:作者 投稿日:2002年09月25日(水)19時30分46秒
350,351>
ありがとうございます。

で、密かに続きを開始予定。

いやぁ、終わりとか言っときながらねぇ?
ま、きまぐれなんで、というか思いついちゃったんで仕方ないっすよね。
前回の終わり方には自分的に満足してるんですが、ま、いっか。
でも長編は懲りたんで、長さ的には1/5くらいを目指して。
353 名前:隠れファン 投稿日:2002年09月26日(木)07時16分38秒
是非!熱烈期待!
354 名前:作者 投稿日:2002年09月28日(土)12時19分23秒
言ってること違うじゃんって言われなくてヨカッタです。
まあ、言われちゃってもいいんですけど。
だってね、書きたいのが本音だし。

>353
ありがとうございます。
期待に添えるかどうかは微妙ですけど。

題名も決まったし、再開します。
355 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月28日(土)12時20分01秒
湿っぽい空気の中、白い煙は一層濃く見えて。
立ち昇るというよりも、漂っているようだった。


「いる?―――いないかな」


初夏の緑は、あたしの言葉を静かに吸い込んで。
黒い文字が刻まれた石からは、答えが返ってこなかった。


「誕生日おめでとう」


ヤグチもソロになったよ。今年の誕生日にね。
――― 知ってるかも知れないけど。


高台から見下ろす街並みは、以前と変わってないようだ。
穏やかに、静かに、木々と人々が動いているのが見える。
すれ違うヒトたちの声にも、懐かしさが込み上げて。
・・・・・・・・・ヤグチのふるさとじゃないのにね。
356 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月28日(土)12時20分54秒
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
357 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月28日(土)12時21分29秒
「行ったんだって?」
「えっ?」
「ゆーちゃんチ」
「あ、うん」
「いーなぁ。ごとーも行きたかったなぁ」


グデーっと机に突っ伏して、拗ねてるごっつぁん。
慰めるように、頭を撫でてやると、ニヘって笑う。
その笑顔が何だか可愛くて、自然と頬が緩む。


「夏とか行けたら行こう?」
「うん。絶対だよぉ?」
「うん」
358 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月28日(土)12時22分11秒
今度の夏は、裕ちゃんの三回忌。
今ではもう、裕ちゃんの話題に悲しくなることはない。
ただ、想像するだけで。


例えば、今日みたいなごっつぁんとの仕事。
裕ちゃんが生きてたら、一緒にしてたのかなとか。

ヤグチが卒業した時。
「一緒の楽屋やな」って笑ったかもとか。

ヤグチが二十歳になった時。
やっぱりお酒、飲まされたんだろうなぁとか。


ヤグチが想像する通りの現実が、きっと繰り広げられたんだろう。
それだけ、裕ちゃんの全てが、ヤグチに染み込んでしまってるから。
―――それって、裕ちゃん色ってコトかなぁ・・・・・・
359 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月28日(土)12時22分59秒
「―――ゃん? やぐっつぁん?」


ごっつぁんの声に我に返ると、目の前にドアップ。
で、何となく心配そうな・・・・・・


「だいじょーぶ?」
「えっ?」
「顔赤いし。ボーっとしてるし」
「あれ、そ、そう?」
「うん。まだ調子悪いの?」


熱を測るみたいに、伸ばされる手にそっと重ねて。
大丈夫だよって笑ってみせる。


「ならいーけど。ムリしちゃダメだよぉ」


いつのまにかオトナになった後輩に、少し感激。
よっぽどびっくりした顔してたんだろう。
再び拗ねてしまったごっつぁんに、またまた謝って。
360 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月28日(土)12時23分35秒
「そーいえばさぁ。今日もへーけさんトコ?」


お寿司を奢ることで納得したらしく。―――回転寿司ね。
ピスタチオをポリポリしながら、訊いてきた。


「ゆーちゃん。預けてきたんでしょ?」
「あ、うん。お願いしてきた」


そう。今はごっつぁんとツアー中だから。
さすがに北海道まで連れてくるわけにはねぇ。

預かってあげるって言ってくれるから、ついつい甘えちゃうんだ。
美味しいお土産、買ってってあげよーっと。

361 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月28日(土)12時24分46秒
「ねー、へーけさん、結婚するってホントぉ?」
「うん。そろそろって話」
「大阪のヒトなんでしょぉ?」
「うん」


そーなんだよねぇ。
バックバンドのヒトで、同じ関西人なんだって。
向こうに住むの?って訊いたら、半々くらいって言ってたんだ。
何か寂しいなぁ。最近しょっちゅう会ってたから、何かなぁ・・・・・・


「じゃあさ、これから、ゆーちゃんはどーすんの?」
「あ、そーだねぇ。考えてなかった」
「ごとーが預かってあげるぅ」
「え?」
「だから、ごとーんチ。おかーさんもネコ好きだし」


そっかぁ。ごっつぁん自宅だもんなぁ・・・・・・ってウチもあるってーの。
362 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月28日(土)12時27分34秒
「ま、お願いする時はよろしくね」
「まっかせて!」


ドンって胸を叩くごっつぁんはコドモみたい。
本番前なのに、楽屋の空気は、妙にリラックス。


「行こうか」
「うん」

そして、夢のような時間が、あたしたちを包み込む。
363 名前:隠れファン 投稿日:2002年09月28日(土)21時57分55秒
のっけからいい雰囲気。でもタイトルが、ちと気になったり
してます。
364 名前:作者 投稿日:2002年09月29日(日)13時40分11秒
363>
題名つけるのって難しいんですよね。
今回は、結構悩んでみました。
365 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月29日(日)13時40分44秒

ヤグチの声に、大勢の声援。

ねぇ、裕ちゃん。
ヤグチさ、かなりの幸せ者じゃない?

ヤグチが話せば、多くのヒトが笑ってくれる。
ヤグチが歌えば、多くのヒトが聴いてくれる。
これってさ、充分、幸せだと思うよ。


裕ちゃん以上にはなれないけどさ。
だって、裕ちゃんがいないんだから。

『ほんとに好きだった、あなたがいない』

だからさ。でもね、最後のキスは、もう忘れそうなんだ・・・・・・
366 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月29日(日)13時41分18秒
―――やぐっつぁんは気づいてないのかな。

『ラストキッス』歌う時、めちゃめちゃ切ない顔してるコト。

他の曲は、ホントに楽しそうに歌ってるのに。
あの曲だけは、ホントに切なそうで。ごとー、胸が痛いんだ。



―――やぐっつぁんは気づいてないんだ。

『赤い日記帳』聴いてる時、泣きそうな顔してるコト。


ごとーが歌う時、他の曲は楽しそうにノってくれるのに。
あの曲だけは、ホントに泣きそうで。気づいてないんだろーね・・・・・・
367 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月29日(日)13時41分50秒

『幸せですか? 今のあなたは・・・・・・・』

ねえ、もう訊いてもいいかな? やぐっつぁん・・・・・・
368 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月29日(日)13時42分30秒

「ごっつぁ〜ん。めちゃめちゃ切なかったじゃん。ヤグチびっくりしたよぉ」
「やぐっつぁん、幸せ?」
「へ?」
「幸せだよね?」
「当ったり前じゃん。ヤグチね、めっちゃ幸せだよ」


もうね、死んでもイイくらい、幸せなんだよ。

裕ちゃんも言ってたよね。武道館の夢が叶った時にさ。
だからさ、裕ちゃんと同じ位、ヤグチは幸せなんだよ・・・・・・・
369 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月29日(日)13時43分15秒
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
370 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月29日(日)13時43分53秒

「おかえりぃ」


エントランスに入る直前、聴きなれた声。
視線を移すと、みっちゃんが、手に持ったキャリーをちょっと上げて。


「あ、ただいま。連れてきてくれたの?」
「うん。そろそろちゃうかなと思って」


ゆーちゃんを受け取って、ついでに散歩でもしよっかって。

小さな公園のベンチに座って、月を見上げる。
膝の上のゆーちゃんは、目だけがランランと輝いている。
371 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月29日(日)13時44分29秒

バサッ・・・・・・


暗闇から聴こえた羽音。
目を凝らして見ると、カラスらしき鳥が一羽。

―――裕ちゃん?・・・・・・違うか。


裕ちゃんかと思ったけど、追いかけるようにもう一羽が現れて。
さすがに裕ちゃんも、カラスの友達は作れないよね。
372 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月29日(日)13時44分59秒

「そーいえば、ごっつぁんが、みっちゃんの彼氏、見たいってさ」
「あ、そーいや見せたコトなかったなぁ」
「優しい?」
「まあまあやなぁ」


そう言うみっちゃんの声は優しくて。
とってもいい関係なんだなって、ヤグチまで嬉しくなる。


「やぐっちゃんは、どーなん?」
「へ? あ〜〜そうだねぇ・・・・・・」


一緒に遊んだり、飲みに行ったり。
そういう友達はいるんだけどさ。


「そっか。―――ま、こればっかりはなぁ?」
「うん。そーだよね」
373 名前:約束の行方 投稿日:2002年09月29日(日)13時45分34秒

恋人と呼べるヒトは、まだできない。
だから。まだ? うん。まだ―――なのかも知れないね。


久しぶりのおしゃべりは、小一時間ほど。

柔らかい月の光が、そろそろ帰りなさいって言うから。
眠ってしまったゆーちゃんを、よいしょって抱えて。

「またね」「またなぁ」って、手を振って家路についた。

374 名前:つかさ 投稿日:2002年09月30日(月)03時09分19秒
続いてる・・・・・・
続いてる・・・・・・。
いや、それ以外の言葉はなく。
ドキドキワクワクしながら待ってます。

願わくば・・・・ハッピーエンドを期待して。
375 名前:作者 投稿日:2002年10月01日(火)19時58分34秒
>374
つかささんで気付きました。
私の話には、転がない!・・・・・・まあ、展開は簡単に読めるでしょう。
ハッピーになるのかは・・・・・微妙ですね。
376 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月01日(火)19時59分22秒
「ただいまー」
「にゃあ〜〜」


ドアを開けると、ゆーちゃんが先に入る。
靴を脱いでる間、ちょこんと待ってる。

きっと抱いて欲しいんだなぁって。
ゆーちゃんを、抱き上げて中へ進む。


「ゆーちゃん、太ってない?」
なーんか、みっちゃんトコ行くと重くなるんだよねぇ。


「にゃあ」


覗き込むと、嬉しそうに舐めまくられる。

ヤグチの言葉なんか、分かっちゃいないんだろーな。
これはご飯&遊びの催促なんだ。もぉ分かったもんね。
377 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月01日(火)20時00分03秒
「その前にシャワーね」


ゆーちゃんを降ろして浴室のドアを開ける。
どーする?って少し待ってあげると、リビングに戻って行った。
―――今はそんな気分じゃないらしい。


かといって、イキナリ入りたがるんだよね。
一緒に入った方が、ヤグチ的には楽なんだけどさ。
まあ暴れられると、それはそれで面倒だし。

あの時は大変だったもんなぁ・・・・・・
泡は飛び散るし、濡れた身体で走り回るし。


思い出してたら、ニマニマ笑う自分が鏡に映ってた。
そして、少し痩せた身体・・・・・・ヤバイなぁ。
378 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月01日(火)20時00分35秒
バスタブにつかりながら、自分のお腹あたりを触ってみる。
やっぱり前よりも肋骨とか腰骨とかが目立つ気がする。

―――この間のかなぁ・・・・・・・・・


仕事の疲れかストレスか。
最近、ちょっと体調を崩して、休んだ時期があった。

まあ、こんな仕事をしてれば忙しいのは当たり前で。
不規則なサイクル、偏った食事に少ない睡眠時間。
でも、毎日家に帰れれば、疲労回復になるんだけど。


その日も、何とか家にたどり着いて。
いつものように迎えてくれた声までは覚えているんだけど。
・・・・・・・・・その後がねぇ・・・・・・微妙なんだ。
379 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月01日(火)20時01分13秒
『ただいま・・・・・・』
『にゃ〜〜』


ノー天気な声を聴いたら、身体のチカラが一気に抜けた気がして。
飛び込んできた身体をとりあえず抱きしめたけど、その後が微妙。


ふと気付くと、自分はベットの中にいて。
だるいなぁって感じる頭の上に、タオルが乗ってた。
何か、妙にビチョビチョだったけど。

―――無意識にやったのかなぁって。
ボンヤリ思ってたら、そのタオルが動いたんだ。


何だ?ってジッとしてたら、トンって音がして。
トトトって足音に目を開けると、ゆーちゃんの後姿。
―――タオルを咥えてた・・・・・・・・・
380 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月01日(火)20時02分01秒

しばらくすると、また足音が近づいてきて。
ベチャって濡れたタオルが額に乗っかる。


ゆーちゃんが看病してくれてんのかぁ。スゴイなぁって。
混濁した意識の中、そー思って。

でも次に目を覚ました時、見えたのはみっちゃん。



『あれ? 何でいるの?』
『しつれーやなぁ。自分で呼んだんやろぉ?』


額のタオルはちゃんと絞られていて。
ゆーちゃんは、ヤグチの足元で丸くなっていた。


『明日、病院行ったほーがえーで?』
『あ、うん』


呼んだ記憶はなかったけど、寝ときぃって関西弁が優しくて。
何も考えたくなかったから、そのまま眠ったんだ。

夢だったのかなって思いながら。
381 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月01日(火)20時02分34秒


「にゃ〜〜〜〜」


ちょっと耽っていたらしい。
催促されて急いで上がると、案の定、ドアの前にゆーちゃん。
ヤグチを見上げて、自分のお皿に歩いてく。

美味しそうにネコ缶を食べる背中を撫でて。
自分のご飯も用意しようと、よいしょって立ち上がった。
382 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月01日(火)20時03分05秒
―――いっ・・・・・・まただ・・・・・・


最近、頻繁に襲われる胸の痛み。
でも、この押し潰されるような痛みは、いつも以上だ。
嫌な汗が流れるのが分かる。


ヤグチ・・・・・・
薄れてく意識の中、裕ちゃんの声を聴いた気がした。
383 名前:隠れファン 投稿日:2002年10月01日(火)22時04分23秒
めっちゃ切ない予感・・
384 名前:作者 投稿日:2002年10月02日(水)19時32分58秒
383>
切ない矢口さん、好きなんですかね。私・・・・・
385 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月02日(水)19時33分34秒
目の前が霞んだよう。
ぼんやりした視界がだんだんクリアになって。

・・・・・・・アレはあたし?


無機質な部屋の無機質なベットに横たわるあたし。
それを上から見てるあたし・・・・・・
386 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月02日(水)19時34分16秒
“ガチャ”


乱暴に開かれたドア。
勢い良く駆け込んできたヒト。―――裕ちゃんだ。


「ヤグチ。ヤグチ。ヤグチ〜・・・・・・」


ステージ衣装の華やかさとは裏腹な表情。
あたしに触れていいのか戸惑って。
泣きそうな顔で、布団の端をギュっと握って。


「ヤグチぃ・・・・・・」

ついには涙交じりで。切なさに胸が詰まる。


何でそんなに泣くんだよぉ。
387 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月02日(水)19時34分52秒

「ゆーちゃん。落ち着いて」


後から入ってきたカオリが、震える肩をそっと抱く。


「ヤグチ、死んじゃったみたいじゃん」
「そーだよ。今は眠ってるだけだって」


圭ちゃんとなっち。苦笑してる。
―――何だよ。あたし、死んじゃったのかと思ったよ。
388 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月02日(水)19時35分29秒
「ヤグチ〜〜」


あたしの名前を呼びながら、抱き付くのはなっち。

ちょっと待て! あたしの目の前でそんなコトする?
これは一発殴ってあげないとね。

目を覚まさなきゃ・・・・・・早く・・・・・・
389 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月02日(水)19時36分06秒
真っ先に目に入ったのは、真っ白な天井。
漂う薬品臭。あぁ、小説の通りだなぁなんて、暢気に思った。


今のは夢だった?―――違う。記憶だ。

遠い昔、確かにそこにあった記憶だ。


泣きながら、笑って抱き付いてきた裕ちゃん。
大丈夫かい?って頭を撫でてくれたなっち。
心配そうなカオリ。気遣うような圭ちゃん。


―――ドクン!
390 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月02日(水)19時36分39秒
一瞬大きく打った鼓動。
ベットの端で転寝をする、茶色いサラサラの髪。

震える手で、そっと触れる。
細い髪が、サラサラと流れて。


「・・・・・ちゃん?」


呼んだ所為か、触った所為か。
ピクっと揺れた肩が、ゆっくり起き上がった。
391 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月02日(水)19時37分28秒
「ん・・・・――やぐっちゃん? 起きてたんか?」
「みっちゃん・・・・・」
「平気か?」
「うん」


いろいろと気遣ってくれるみっちゃんに、事情を聴いて。
入れ替わりに入って来たマネージャーさんにも、事情を聴いて。

やっと1人になった時。
涙が、堪えきれなくなっていた。
392 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月02日(水)19時37分56秒
胸が痛い。
泣きたくなるほど、胸が痛い。
身体じゃない。心が・・・・・・痛い。


目を覚ました時、確かに思い出したヒト。

さらさらの髪の毛。金髪で。
細い肩。華奢な背中。白く伸びた腕。


こんなにも似ていたのか。
それとも、もぉ覚えてないのか。

あんなに大好きなあなたを。
絶対に忘れない。そう誓ったはずなのに。

勝手に過ぎ去る時間のせいで。
大切な思い出が、どんどん色褪せていくんだ。


ヤバイよ、裕ちゃん。
忘れたくないのに・・・・・・
393 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月02日(水)19時38分43秒

けたたましくサイレンを鳴らす救急車。
その音を、遠くに聴きながら、病室を覗く。

中には、大きなベットに、小さなコがポツン。
肩を震わせて、パジャマの胸をギュッと握って。


痛いんか? だいじょぶなんか?


ガラス一枚隔てた向こう側。
近くて、めちゃめちゃ遠い距離。
394 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月02日(水)19時39分14秒

あんたの声は、どこにいても聴こえる。
あんたが助けて、言うてくれたら、すぐに飛んでいく。
あんたが何も言わんでも、すぐに飛んでいく。


けど・・・・・・


あたしの声は、あんたには聴こえへん。
あたしの存在も、あんたには分からへん。
あれから、ずっと見てきた。ずっと聴いてきたけど。
・・・・・・もぉ、アカンかも。
395 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月03日(木)21時40分06秒
ゆうたん、頑張ってね。
396 名前:作者 投稿日:2002年10月06日(日)17時29分29秒
>395
从´∀` 从<がんばるでぇ〜〜〜
397 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月06日(日)17時30分00秒

久しぶりの我が家。
予想以上の入院に、恋しくなっちゃって。―――ゆーちゃんがさ。

みっちゃんに預かってもらってるのは分かってるから、安心は安心なんだけど。
あのマヌケな仕草とか、暢気な鳴き声とか、思い出しちゃって。

とりあえずは、自宅に帰っても良いよって言葉に。
待ってましたとばかりに、即行帰ってきたんだ。


「ゆーちゃんは家に置いて来たで」ってみっちゃんの言葉通り。
変わらないお出迎えが待ってるはずだった。けど・・・・・・
398 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月06日(日)17時30分35秒
「ヤ〜グチぃ〜〜〜〜!!」

「ゆーちゃん?」
「ヤグチぃ〜〜〜〜」


駆けて来るイキオイは前と変わらず。でも・・・・・・何て言った?
とりあえず抱き上げながら、青い瞳を覗きこむ。


「ゆーこぉ?」
「ヤグチぃ。だいじょぶなんかぁ??」
399 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月06日(日)17時31分12秒
ヤグチの戸惑いを気にもせず、心配そうな顔で。
「だいじょーぶ? 痛くないん?」って言い続けてるから。


「うん。痛くない。大丈夫だよ」


少し大きくなった頭を、ぐりぐりと撫でてあげる。

「そっかぁ」って安心したように息をついて。
思い出したようにキスをしてくるのは、やっぱり裕ちゃんだった。
400 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月06日(日)17時31分54秒

玄関先で散々舐められて。
抱きつかれたまま、とりあえず一息つく。


「ゆーちゃん?」
「心配したんやでぇ?」
「あ、うん。ごめんね」
「全くや。ホンマだいじょぶなんかぁ?」
「うん。大丈夫だよ」


声とか目とか。
心配そうだから、とりあえず拭ってあげようと。

ヤグチの身体のコト、全部話してあげた。
とりあえず心配ないし。薬ももらったしって。
401 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月06日(日)17時32分39秒
「それに、コレもらったし」
「何それ?」
「マネージャーさん、直通ベルってトコ」


だからさ、ヤバかったら直ぐ連絡すればいいんだし。
そー言ったら、「そか」って納得してくれた風の裕ちゃん。
今度はヤグチの番だよ。―――って何となく分かるけど。


「ゆーちゃん?」
「そーやでぇ」
402 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月06日(日)17時33分14秒
ヤグチのシャツの中に入ろうとする裕ちゃん。
ちょっとぉ、ムリだって・・・・・・


「ヤグチぃ・・・・・・」
「―――分かったよ」


前より大きくなってるコト、実感したらしい。
悲しそうに見上げてくるから、着替えてあげた。

そしたら嬉しそうに入ってきて。
やっぱり顎を押し上げてくる。―――ちょっと苦しいかも・・・・・
403 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月06日(日)17時33分46秒
「で? ずーっといたの?」
「う〜ん・・・・・・まあ、一応この世界にはな」
「じゃあヤグチは気付かなかったの?」


もしかして、ヤグチが気付かないだけで。
あの時から、ずーっと裕ちゃんはココにいたの?


「ううん。ヤグチの前にはおらんかった」
「え?」
「もぉ逢ったら、アカンと思ってん」


―――ホントは、すぐ傍にいた裕ちゃん。
ネコのままでも良かったから、誕生日とか成人式とか一緒にいたかった。
404 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月06日(日)17時34分25秒
「アホ!」
「イテっ!・・・・・・何でや?」
「アホぉ・・・・・・」


アホ、ゆーこ。
何で分かんないんだよ。


「じゃあ何で今更でてくんのさ」
「だって。だって、心配やったんやもん・・・・・・」


声が、だんだん小さくなっていく。
バツが悪そうに、我慢できへんかったんやもんって。
405 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月06日(日)17時35分16秒

あ〜もぉ・・・・・・
ズルイよ、ゆーこ。

もぉ・・・・・・やっぱり好きだよ、裕ちゃん。

勝手に死んじゃって、勝手に行って。
勝手にまた現れて・・・・・・

それでも・・・・・・逢いたかったよ。


「うん。ごめんね。ごめんね、ゆーこ。嬉しいよ」
「あたしな、ヤグチに触りたかった。ヤグチと話したかったんや」


さっきとの情けなそうな顔とは裏腹に。
嬉しそうな顔で、ヤグチを見つめる。
406 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月06日(日)17時35分51秒
待ちきれんばかりに、振られるしっぽが見え隠れして。
ゆっくりゆっくり近づく裕ちゃん。


目を閉じて、受け止める、冷たい感触。
でも―――裕ちゃんだ。裕ちゃんだった・・・・・・


「よし! じゃあ乾杯しよ」
「おう!」


ヤグチもオトナになったしね。
一応あるんだよ、ビール。ミニ缶だけどね。
407 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月06日(日)17時36分30秒
プシュって開けて注いであげると。
「乾杯!」って嬉しそうに舐め始める。

うわぁ。久しぶりだなぁって何だか嬉しくなる。
と、顔を上げた裕ちゃんは、これまた嬉しそうに。


「やっぱヤグチのお酌は最高やねぇ。みっちゃんとはちゃうわ」


―――何ですと? みっちゃん?


「みっちゃん?」
「うん。あのコ、たまに絡んでくんねん」
「ふうん。みっちゃんとは飲んでたんだ・・・・・・・・・」
408 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月06日(日)17時37分19秒
「たまになぁ・・・・・・・・・・・・あ? イヤ、な?」


トーンの下がったヤグチに、やっと気付いたらしく。
ビールを舐めるのも忘れて、必死に言い訳し始めた。

まあね? 気持ちも分かるし?
独りでいるのも寂しかったんだろーし?
―――飲みたかったんだろーし?


「分かったよ」
「ホンマに?」
「うん。もぉイイよ。また逢えたから」


これは本音だよ?
やっぱり逢えたのが嬉しいよ。
それにさ、逢えない間に、ヤグチも少しは強くなれたと思うから。
409 名前:約束の行方 投稿日:2002年10月06日(日)17時38分10秒
「今度はさ、みっちゃんも呼んで飲もうね?」
「うん!」


2年ぶりの裕ちゃんは、相変わらず嬉しそうにビールを飲んでいた。
―――だから、みっちゃんに預かってもらった後は重くなったのかぁ。

410 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月06日(日)19時08分52秒
よかったよかった(w
どうせなら後藤にも預かって欲しい・なっちにも圭ちゃんのも・カオリにも・・・
各家訪問編作って欲しい(w
411 名前:隠れファン 投稿日:2002年10月07日(月)15時27分18秒
このまま、ほのぼのが続けばいいのにな・・・
と願ってみたりして・・。
412 名前:作者 投稿日:2002年10月07日(月)19時44分41秒
410,411>
家庭訪問・・・・ほのぼの・・・・・・
そーっすねぇ、少し脱線しますか。

本編とは離れて、ちょっと番外編を。
「ごっちん編」行きます。<他のヒト編は不明ですが。
413 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月07日(月)19時45分15秒
今日はごっちんチにお泊りや。
何てったって、ごっちんの家は小料理屋さん。
期待してるでぇ。


「ゆーちゃ〜ん。久しぶりだねぇ」
「にゃあ」


やっぱ一応はネコらしくせんとな。
イキナリしゃべったら、ごっちんかてびっくりするやろうし。
414 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月07日(月)19時45分51秒
「じゃあ、久しぶりに遊ぼ!」
「にゃ?」


何? またか?
いやぁ、あれから結構年取ってんねん、こいつ。
あたしもな、あんま動いてへんし・・・・・・っ!


「にゃ!・・・・・・うっ!・・・・・・あっ!・・・・・・」
「う〜〜ん。相変わらずトロイねぇ・・・・・・」


何やとぉ?
あんたなぁ、姐さんの実力見せたる。
後で、びっくりしたかて遅いんやからなぁ。


「ほら! こっち! それ!」
415 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月07日(月)19時46分22秒
「うっ!・・・・・やっ!・・・・・・このぉ!!」


とった!!
とったでぇ!!
どーや、ビビったかぁ?


ネコじゃらしを両手で掴んだまま、ごっちんを見上げると。
―――おぉ、やっぱりびっくりしとるわ。

どや? 裕ちゃんも、まだまだ捨てたモンやないやろ?


「・・・・・・このぉ?―――このぉって言った?」
416 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月07日(月)19時47分02秒
はっ!! しもた!!
あたし、何か言うてしもたか? このって言うたか?


「ゆーちゃん? このって言ったよね?」
「ん〜〜ん〜〜」


否定するように首を振ったけど。
・・・・・・コレってめっちゃ妖しいやんかぁ〜〜アカン。逃げよ。

脚の筋肉に伝達される直前に、ガシっと捕まれる身体。
ちょお、ごっちん。離して〜や。


「ゆーちゃん?」
417 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月07日(月)19時47分33秒
あぁ、ごっちんがジーっと見とる。
ちょっとそんなに見んといてーや。照れるやんかぁ。

フイっと視線から逃げると。
クイっと戻される顔。

またまたジーっと。・・・・・・せやから照れるっちゅーねん。


フイっ!―――クイっ!―――ジーっ・・・・・


ごっちんて、こーゆーの飽きへんタイプやんなぁ。
ちゅーか、やっぱ興味を持ったら一直線!なタイプやな。


フイっ!―――クイっ!―――ジーっ・・・・・


―――あ〜〜参った。参りましたよ。
418 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月07日(月)19時48分16秒

ジーっ・・・・・・


「おう!」


ドテっ!


何やねん。お望み通り、挨拶したったのに。―――それも手ぇ上げてな。
イキナリ手放すことないやろぉ? 腰打ったがな。
419 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月07日(月)19時48分50秒

「ゆーちゃん?」
「おう! 久しぶりやなぁ」
「・・・・・・・ホントにゆーちゃん?」
「おう。ゆーちゃんやで」

「あの中澤裕子?」
「おう。中澤裕子やで」

―――あのって何やねん。

「あの、死んじゃったゆーちゃん?」
「おう。死んでもぉたゆーちゃんやで」

「あの、やぐっちゃん大好きなゆーちゃん?」
「おう。今でも大好きや」

「あの、ビール大好きなゆーちゃん?」
「おう。今日も期待してんで」

「あの、バナナが嫌いなゆーちゃん?」
「おう。近づけんといてな」

「あの、」
「もーええっちゅーねん!」


いつまで続けたいねん!
一応裏拳で突っ込んどいたる。
420 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月07日(月)19時49分27秒

「ごっちん。ゆーちゃんやで? あん時は、泣かせてしもてごめんな」
「ううん。ううん・・・・・・」


あぁ、また泣かせてしもたぁ。
笑いながらも、ごっちんの目から涙がポロポロ・・・・・・・・


「泣かんといてーな。な? ちょお待ってや」


泣き止んで欲しいけど。
今のあたしは、抱っこしてやることができへんし。
代わりに、タオルのひとつでも、持って来たるからな。


「ほら。涙拭いてな?」
「うっ、うん。・・・・・・ゆーちゃ〜ん・・・・・・」
421 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月07日(月)19時50分00秒

―――しかし、何で泣いとるんやろか。
みっちゃんなんか、泣きもせんかったで?
それどころか、バ○ナ押し付けやがってなぁ・・・・・・

何か、思い出したらムカツイてきたで。
あぁ〜〜〜


「みっちゃんのアホ〜〜〜」


うん。スッキリした。


「どーしたの、ゆーちゃん?」


窓を開けて星空に叫んだ後、振り向くとごっちん。
おぉ、泣き止んでるやん。けど、怪訝な顔。
・・・・・・・・ま、そらそーやろな。
422 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月07日(月)19時50分45秒
「や、何でもないねん。落ち着いたかぁ?」


窓を閉めて、座り込むごっちんの膝に飛び乗る。
嫌がることなく、頭や背中を撫でてくれる。気持ちええなぁ。


「ゆーちゃんは、ずーっとネコだったの?」
「ゆーちゃんはな、ずーっと見守ってたんや。ネコじゃなくてな」

「じゃあ今は何でネコなの?」
「う、まあ、いろいろあってな」

「やぐっちゃんは知ってるの?」
「うん。ヤグチは知っとるよ」
「へーけさんも?」
「うん。みっちゃんも知っとるよ」

「他には?」
「他には、ごっちんだけや。他の皆にはナイショやで?」
「どーして? 皆喜ぶよ?」


ごっちんの、きょとんとした顔。
コレって、ヤグチの上目使い並に反則や。

思わず「どーしてやろねぇ」って一緒に首傾げたくなるっちゅーねん。
423 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月07日(月)19時51分31秒
「イヤ、ごっちんみたいに泣くかも知れんやん? もぉ泣かせたくないねん」
「そっかぁ・・・・・・・ごめんね。泣いちゃって・・・・・・・」
「や、いや、ええよ。うん。ごっちんは可愛えしな」


しゅーん。って音がしそうなくらい落ち込むごっちん。
ええのよって慰めると、瞬時に、あはっ!って・・・・・・
あんた、切り替え早すぎちゃうかぁ?


「じゃあ、ゆーちゃん。お風呂とご飯。どっち先にする?」


―――あんた、ホンマに切り替え早すぎや。

お風呂? ご飯? せやなぁ・・・・・・・
とりあえず、ひとっ風呂浴びてから、ビールをくぅ〜〜!!やな。


「お風呂がええな」
「オッケー。じゃあ一緒に入ろうね。ちょっと待って、今準備―――」
424 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月07日(月)19時52分01秒
――― 一緒? ごっちんと一緒かぁ?
ちょっと待ち? 13才にして、色気たっぷりやったごっちんやで?
今幾つになったんや?・・・・・・18か? 19か?・・・・・・


「どーしたの? 行こ?」


ごっちんの腕に抱かれてお風呂場に向かいながら。

ごっちんとお風呂なんて、いつ以来やろぉとか。
鼻血とか出ちゃったら、ティッシュ詰められへんよなぁとか。

およそ、ネコとは程遠いコトを、ボーっと考えていた。
425 名前:隠れファン 投稿日:2002年10月07日(月)22時50分45秒
めっちゃ最高です! 只今嬉しさに打ち震えております。
ゆ−ちゃんもごっちんもかわいい! 
426 名前:作者 投稿日:2002年10月08日(火)21時22分10秒
>425
何か、姐さんのキャラがだんだん変わっていくような・・・・・
427 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月08日(火)21時22分47秒
ちょっと待ってねぇ。
そー言って、あたしを床に降ろして。
ごそごそと脱ぎだしたごっちん。


ちょーっと待ってやぁ!!


慌てて後ろを向いたけど。
―――ちょっと見てしもた。


だってな、下から見上げるアングルってな。
あ、アカン・・・・・・めっちゃ恥かしい。


「どーしたの。後ろ向いちゃって。入ろ?」


うっわぁ〜〜!!
背中に、ごっちんの胸がぁ〜〜。当たってるっちゅーねん。

―――あたし、何でこんなに反応してんねん。
思春期のガキじゃあるまいし。・・・・・・しゃあない。初めての経験やモン。
428 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月08日(火)21時23分28秒
「お湯掛けるよぉ」


腕に抱かれたまま、何やって?って顔を上げたら。


うわわわわわ・・・・・・ちょ、死ぬ・・・・・・


シャワーのお湯が、まっすぐにあたしの顔めがけて飛んでくる。
抱っこされたままやから逃げられへん。

横を向いたら、耳に水入るし。
ネコって口で息できへん・・・・・・らしぃ・・・・・


「ご、ぶぁ!・・・・・やめっ!・・・・・し、死・・・・じゃ・・・・・・・」
429 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月08日(火)21時24分02秒
両手をばたつかせて、必死で訴える。
ちょっと緩んだ隙に、身体を反転させて。


・・・・・・はぁ〜〜〜死ぬかと思ったがなぁ・・・・・・


めちゃめちゃ背中に当たってるけど、これはこれで気持ちええ。


・・・・・・はぁ〜〜〜・・・・・・


「どーしたのぉ?」


水音の合間から、相変わらず暢気な声。
ぜーったいあたしのピンチ、気付いてへんな。


「あんたなぁ―――」


ガツンと言ってやらな!
そー思って顔を上げたら、目の前にごっちんの顎。
・・・・・・ちゅーことはぁ?
あたしが抱きついちゃってる膨らみはぁ・・・・・・?
430 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月08日(火)21時24分40秒
「うわぉ!!」


は?! 手ぇ離してしもたぁ〜〜〜〜


ビチャッ!!


――――――あうぅ・・・・・・またやぁ。腰ぃ・・・・・・


「ゆーちゃん? どーしたのぉ?」
「ヤ、な、何も・・・・・」
「そぉ? じゃあ洗うねぇ」
431 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月08日(火)21時25分11秒
膝の上に乗っけてくれて、シャンプー&リンス。
シャカシャカシャカシャカ。う〜ん。お姫様待遇やぁ。


「ゆーちゃ〜ん」
「何やぁ?」
「また逢えてねー」
「ん〜?」
「うれしーよぉ」
「ん〜」


嬉しいかぁ。そっかぁ・・・・・・
ありがとなぁ・・・・・・・


「ごっち〜ん」
「なぁにぃ?」
「好きやでぇ?」
「ん〜? あ、うん・・・・・・」


ポヤポヤぁ〜してたごっちんは、好きやで言うたら、少し赤くなって。
ま、裸同士でそんなん言うたら、ちょお恥かしいんかもなぁ。
―――ってあたし、全然裸ちゃうがな。
432 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月08日(火)21時25分46秒

「ごめんねぇ。お湯、まだ使うからぁ」
「ええよ。だって毛ぇ抜けるしなぁ」


ちゅーことで、洗面器に汲んでもらってボーっと浸かる。
まあこれなら絶対溺れへんしな、安心ちゅーもんや。

洗面器の縁に顎を乗せて、身体を洗うごっちんをボーっと・・・・・・


「ええ身体してんなぁ・・・・・・」
「ふぇ? そぉ? そーかなぁ」


そーかなぁってそーやで。
あんた前よりも成長してへんか?
何か手足も伸びたし、なんか胸も・・・・・・


「どーしたの? 逆上せちゃった?」
「ん? ヤ。だいじょぶや」


ごっちんの裸に見とれてたなんて言えるかい。

でも、ええなぁ。
あたし、結局あんなん成れへんかったし。
今はこんなんやし・・・・・・ちっ! 後で触ったる。
433 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月08日(火)21時26分29秒

「ふぁ〜〜〜」
「・・・・・・オヤジみたいやで?」
「オヤジはヒドイよぉ」
「じゃあ・・・・・おばちゃんや」

「―――ゆーちゃんにおばちゃんって。何か複雑だぁ」
「えーんやもーん。今はあたしの方が若いでぇ?」
「若いってゆーのかなぁ」


ごっちんの少し納得いかないぞって顔。
一生懸命考えてる顔。―――好っきやなぁ。ホンマ可愛えわ。
でも、お風呂入りながら考えてたら、それこそ逆上せてまうで?
434 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月08日(火)21時26分59秒
「ごっちーん」
「んぁ? あ、何?」
「腹減ったぁ」
「そーいえば、あたしもお腹空いたぁ」


ちゅーことで、バスタイム終了や。
まったりしてて、すっごい気持ち良かったけど。
ま、あそこでずーっと過ごすわけにもいかんしな。

―――ビール♪ ビール♪ ビールやぁ!!


「ゆーちゃん? 出ないの?」
「出る出る。はよ拭いてぇ〜〜」
435 名前:隠れファン 投稿日:2002年10月08日(火)22時18分38秒
久しぶりに叫んでみよう・・『萌え〜〜!』
436 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月09日(水)12時26分38秒
ある意味ゆうごま?最高ッス。
437 名前:作者 投稿日:2002年10月10日(木)19時37分54秒
435,436>
ウチのネコは日射病になってましたから。
きっと逆上せるんじゃないかな・・・・・?

ある意味ゆうごま。そうなのかな?
438 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月10日(木)19時38分47秒

ご飯持って来るから、ちょっと待っててぇ。

そー言ってごっちんが消えてから・・・・3分は経ったな。
遅い、遅い、遅いでぇ〜。

ポッカポッカの身体に、冷たいビールをキュウっとせなアカンのやで。
・・・・・・迎えに行ったろぉ。しゃあないなぁ、特別やで? 


カチャ・・・・・・


ドアをそっと開ける。
よっしゃ、誰もおらん。


トン、トン、トントン・・・・・・
439 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月10日(木)19時39分28秒

階段を降りると、何やら騒がしい声。

ほほぉ。あっちがお店やな。
んで、ごっちんはドコやねん。

・・・・・・・・・・・・・・あっちや。

こんな時、ネコの耳ちゅーのは非常に便利や。
耳を澄ますと、ホンマによぉ聴こえる。


カラッ・・・・・・


『わははははっっ・・・・・』


うお? びっくりしたぁ。
扉を開けた瞬間、おっちゃんの笑い声が直撃!

そっか、店におったんかいな。ごっちんはぁ、どこやろなぁ・・・・・
440 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月10日(木)19時40分04秒
「にゃあ」
「あれ? ゆーちゃん。来ちゃったのぉ?」
「にゃあ」


ごっちん以外のヒトもおるし、さすがにしゃべれへん。
せやから、ボディランゲージや。―――通じるかぁ?


「今ね、お魚もらってたの。好きでしょお?」
「にゃあ」


お魚? 好きやでぇ。でもな、その前になぁ?


「にゃーうぅ・・・・・・」
「ふぇ?」
「にゃーう」
441 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月10日(木)19時40分36秒
「え〜? 分かんないよぉ」


何で分からんの?
―――しゃあない。ちょっと抱っこしてや。
うん。せやせや。


「あんな。ビール飲みたいねん」


抱っこしてもらって、耳元でそっと囁くと。
「あぁ」って、やっと分かってくれたか。

「お母さん、ちょっともらっていい?」って。
―――やったぁ!! 生ビールやんかぁ。

生ビール♪ サーバーから生ビール♪
・・・・・・いつ以来やろぉ。きっと人間やった頃以来やなぁ。


はよ上がろ! 部屋行こ! ビール飲も!!
442 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月10日(木)19時41分15秒

「はい。お待たせぇ。さ、食べよ!」
「おう! 待ってたでぇ」

「「いっただっきま〜す!」」


ごっちんはご飯に。あたしはビールに。


「旨い! 旨いでぇ。ホンマ旨いわぁ」


出来たら、コップ持って流し込みたいねんなぁ。
喉越しっちゅーの? 感じられへんのが残念やなぁ。
443 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月10日(木)19時41分51秒

「美味しい?」
「うん。めっちゃ旨い。ありがとなぁ」
「どーいたしまして。魚も食べてねぇ」


ごっちんの解してくれる魚をツマミに。
生ビール、お代わりして。

―――うわぁ〜〜めっちゃ幸せやぁ〜〜〜〜〜〜
444 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月10日(木)19時42分30秒

ドテっ!!


――――――はぅ?? 何やぁ? ちゅーか腰ぃ・・・・・・


何が起こったんか、よぉ分からなくて。
とりあえずキョロキョロ。
暗い部屋。ん〜〜見上げるとベットの側面。―――なるほど。落ちたんか。


も一回ベットに飛び乗ると、端っこにごっちん。
・・・・・・落ちたちゅーより、ごっちんに落されたんやな。
445 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月10日(木)19時43分13秒
しかし、いつの間にオヤスミタイムやったん?
あたし、ビール飲んでたトコしか、覚えてへんで?
・・・・・・ま、いっか。


目の前には、ごっちんの寝顔。
う〜ん・・・・・・ちょっとはオトナになったんかなぁ。


ちょいちょい・・・・・・


傷つけないように、肉球でホッペを触ってみる。
ん〜〜まだまだコドモやなぁ。

あ、せや。触っとかんとな。忘れてたがな。


もみもみ・・・・・・


おぉ!! やっぱオトナや。
手が埋まってまうがな。―――おぉ!!
446 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月10日(木)19時43分45秒

「ゆ、ちゃん・・・・・・?」


しもた。起こしたかぁ?


「寝よぉ」


ぐぇぇ〜〜・・・・・・苦しい・・・・・・

寝ぼけ眼のまま、ギュッと抱きしめられて。
寝ようって寝られへんよぉ。ごっち〜ん。ちょっとぉ〜〜〜・・・・・・
447 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月10日(木)19時44分22秒
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
448 名前:ごっちん編 投稿日:2002年10月10日(木)19時45分05秒

「ゆーちゃん、眠いの?」
「や、触ったらアカン!」


ごっつぁんチから帰ってきた裕ちゃんは少し眠そうで。
何気なく伸ばした手は、思いっきり拒否されてしまった。


「どーかしたの?」
「や、ちょっと、腰、痛いねん」


腰痛い? 何で?
あたしの疑問をそのままに、オヤスミの体勢。


「オヤスミぃ〜〜」
「あ、うん。オヤスミ・・・・・・」


――― 一体、何してきたんだ? ごっつぁんチで・・・・・・


Fin.
449 名前:作者 投稿日:2002年10月10日(木)19時48分30秒
ごっちん編終了です。
番外編を続けるか、本編に戻るか検討中。
誰かの番外編を書いたら、レス数で収まらなくなりそう・・・
450 名前:隠れファン 投稿日:2002年10月10日(木)20時31分43秒
ごっちん編、まったりしててとても良かったです。
番外続編は熱望ですが、あまり作者さんの負担になる
お願いをするのもつらいので、お任せします。
451 名前:名無し読者S 投稿日:2002年10月11日(金)01時39分47秒
作者さん次第ですが・・・次スレという・・・(w
ハロプロ今度は「ごなっとう」って・・・そこまでやるのかオイって感じですね。
とにかくここは癒しスレ。ほのぼの感がよいですね〜。

関係ないですが、今日猫がくしゃみする瞬間みたんですが・・・猫って風邪ひく生き物ですか?
興味本位なレススマソ。
452 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月13日(日)16時38分10秒
しかしごっちん新ユニット・・・・・・
卒業したんならソロでやらせてあげなよ、ってのは常識ではなかったんですね。
いやぁ、さすが凡人を超える皆様方ですなぁ・・・・・・


450,451>
落ちもないけど、癒し系。そう思っていただけるだけで。
負担を感じたら当然書いてないわけで、何だかんだ言っても書きたいんですね。

ということで、もう少し番外編を。
収まらなくなったら、新しいスレを立せたてて頂こうかと。

で、次は「カオリ編」マイナーですねぇ・・・・・・
453 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月13日(日)16時39分22秒
「一晩だけ頼むよぉ」
そう言われて、預かったゆーちゃん。

とりあえず、カゴから出してあげると、警戒した様子。
ヒクヒクって匂いを嗅ぎながら、キョロキョロしてる。


アタシはそんなゆーちゃんを横目に。

・・・・・・・夕飯は何にしようかなぁ。
ヤグチ曰く、「ゆーちゃんも同じ物、食べるよぉ」だって。
つまり、ゆーちゃんも食べられそうなヤツだよねぇ。

んとぉ〜〜〜あ、そういえばビールないや。
前に飲んでたの見たことあるし、きっと好きなんだろうけど。
・・・・・・牛乳でいいかなぁ。


どうしようかと頭を悩まして。
視線は自然と本人へ。う〜〜ん・・・・・・・・・・
454 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月13日(日)16時41分21秒

―――うっわぁ。相変わらずの雰囲気やなぁ。早速、交信しとるしなぁ。


?? 何? 今の声。


―――黒魔術しそーやなぁ。ちゅーか黒は石川やな。黒いし・・・・・・・・って、ベタベタやん。


微かだった声が、幾分はっきりとして。でも、誰? どこから聴こえるの?


―――ちゅーか腹減ったんやけど、ご飯出てくるんやろかぁ。心配やなぁ


部屋の中には2人しかいない。
アタシの他には、興味深そうに歩き回るゆーちゃんしか・・・・・・


―――朝まで交信されたら、どないしよぉ。せや! 自分で調達すればええやん。


聴こえるのは関西弁。目の前のゆーちゃんはキッチンにトコトコ。


―――何があるかな♪ 何があるかな♪・・・・・・アカン。何もない。


キッチンの中をごそごそ荒らすゆーちゃん。


―――冷蔵庫はぁ・・・・・・・重っ。ムリや。開かん。しゃあない、カオリに戻ってきてもらうか。


冷蔵庫を開けようとするゆーちゃん。
諦めて、アタシの方へ向かってくる。
455 名前:隠れファン 投稿日:2002年10月14日(月)07時20分54秒
飯田さん大好きです。他の人とは違う独特の感性を持っている
と思います。
456 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月14日(月)15時33分21秒
正直蛇足って感じ
457 名前:作者 投稿日:2002年10月14日(月)16時49分08秒
455>
独特の世界を持っていると思われる上での妄想です。

456>
>正直蛇足って感じ

感想ありがとうございます。
多分感覚的に批判されていることは感じるんですが、意味が今ひとつ。
できればも少し詳しく書いていただけると、考え様があるかと・・・・
458 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月14日(月)16時50分57秒
「ゆーちゃん!!」
「にゃ?!」


ぅわぁ?! 何やねん??


部屋に入るなり交信し始めたカオリが、イキナリ、ビシッ!!って。
あたし、笑うセールスマンを思い出したわ。
459 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月14日(月)16時51分36秒
ペシッ!! 


目の前のひとさし指を、とりあえず払う。
指差すなや。失礼やろぉ?


「ゆーちゃんだぁ!!」


ビシッ!!

ペシッ!!


だから指差すなゆーてるやろぉ?

460 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月14日(月)16時52分25秒

「言ってないよぉ?」


あ、ホンマ? それは失礼。でもな、一応常識やねんで。


「そっかぁ、常識か。ごめんね」


うん。分かればええねん。
あんたも随分物分りが良ぉなったなぁ。感心感心。
・・・・・・・・・・・ちょお待て?

何であたしとあんたが会話してるん?
あたし、一言もしゃべってないで?


「でも聴こえるよ?」


へ? 何が?


「ゆーちゃんの声」
461 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月14日(月)16時53分13秒
「――――――聴こえるぅ??」
「あ、しゃべったぁ。やっぱりゆーちゃんだ」

「聴こえるって何やの?」
「え? うん。さっきからね、なんとなく聴こえてたの」


・・・・・・・あんた、やっぱり普通やなかったんやな。
ながーい交信暦はだてやないっちゅーコトか・・・・・・


「ねえ、ゆーちゃんでしょ?」
「おう。ゆーちゃんやで」

「そっかぁ・・・・・・・」
462 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月14日(月)16時53分43秒
おっきい瞳で、ジーっと見つめられて。―――ちょっと怖いがな。
その目が、ウルウルと潤んできて、ついに。


「ゆーちゃ・・・・・・・・・」


ギューっと抱きしめられた。
声は聴こえへんけど、きっと泣いてるんやろーなぁ・・・・・・


「カオリぃ」
「―――ずーっといたの?」


落ち着いた頃、名前を呼んだら、腕を緩めてくれて。
やっとカオリの顔が見えた。―――やっぱ泣いてたんやな。
463 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月14日(月)16時54分54秒

「ずーっと見てたで。皆のこと」


・・・・・・まあ比重にはめちゃめちゃ差があったけどな。


「そっかぁ・・・・・・久しぶりだね」
「うん、久しぶりやな。元気そうやな」
「うん。元気だよ」


そー言って、もう一回、ギュッと抱きしめてくれた。
あぁ、あんたとの空気って、こんな感じやったなぁ。

交わす言葉も、触れ合う腕も、多くはなかったけど。
あんたとあたしは、どこか同じ感覚やったかもなぁ。
464 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月14日(月)16時55分27秒
「ご飯。何食べたい?」


―――ぜーったい違うトコもあるけどな。
唐突の展開が、カオリの中では当たり前なんやもん。


「ずーっと考えてたんだけど、訊いた方が早いもんね」
「せやなぁ。・・・・・めんたいこスパゲティー」
「めんたいこぉ? あったかなぁ・・・・・・」


―――相変わらずっちゅーか・・・・・・変わってへんなぁ。
1人でぶつぶつ言うてるし・・・・・・お?

465 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月14日(月)16時55分57秒

冷蔵庫の前に座り込んでるカオリの横に滑り込んで。
あたしも、ちょっと拝見させて頂きまして・・・・・・アラ??


「ちょっとカオリさん?」
「何?」
「ビールは? ビールないでぇ??」
「だってビール好きじゃないもん」
「へ??」


ちょっと待ってやぁ、カオリぃ。
ビール好きやないのはええけども、あたしの為に1本くらいなぁ?
それが優しさっちゅーもんやないのぉ??
466 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月14日(月)16時56分33秒
「だって、ゆーちゃんがゆーちゃんだって知らなかったんだもん」
「あ? あ〜せやな。―――ちゅーか、考えてるコト、読まんでくれるか?」
「え〜? 分かった。なるべく集中しない」
「うん。頼むわ」


―――集中すると聴こえるもんなんや。


「うん。聴こえる」
「??―――せやから読むなっちゅーねん!」
「あ、そーだった」


疲れるやっちゃなぁ。
―――しかし、カオリは恐山には近づかん方がええな。
467 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時17分32秒
冷凍のでいいよね?って、キッチンに立つカオリ。
あたしはその間、リビングでボーっと・・・・・・

―――静かや。静か過ぎる。


部屋の中には、お湯がグツグツ沸き立つ音と、レンジがグィーンって回る音。
それを、ボーっと待ってるカオリは、ひとっこともしゃべらへん。

部屋の外からは、かろうじて車の通る音。
でもかなり下の方からやから、結構静か。
468 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時18分04秒
・・・・・・寂しい・・・・・・・ちゅーかビールでなくてもええから、何か欲しーなぁ。

てことで、キッチンのカオリの足元に近づいて。
―――うっわぁ、でっかいなぁ。

普通に見上げたら、胸までしか視線が届かへんやん。
もーちょっと上やな。―――よっしゃ、見えた。


「カオリ〜〜」
「なーにぃ?」
「何か飲みた〜い」
「え〜〜?」


めんたいこの皮を剥いていたカオリが、やっと下を向いてくれたけど。
469 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時18分38秒

「ビールでなくても、ええからぁ」
「・・・・・・・・・・」


あたしを見下ろした瞬間、動きが止まった。
どした? フリーズか?


「どしたん?」
「ゆーちゃん。も一回言って?」


止まったままの真剣な表情で。
―――あたし、ヘンなコト、言うたかな?


「せやから、何か飲みたいねん。ビールでなくてええから」
「―――や〜ん。可愛い〜〜〜。ちょっと待ってて?」
「はぁ??」


可愛い? 何が? 
よお分からんけど、待ってるで。何持ってきてくれるんかなぁ・・・・・・
470 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時19分13秒
「お待たせ。も一回言って?」
「はぁ? ちゅーか何でスケッチブックなん? 酒はぁ?」


お待たせ言うて、持ってきたのはスケッチブック。
あたしを見下ろしたまま、イキナリ鉛筆をサラサラと。


「も一回言って。あ、動かないで、見上げたままでね?」
「はぁ?? なぁ・・・・・・」
「だから、顔はこっち見たまま。何かしゃべってってばぁ」


―――ちょお待ち? あたし、いつの間にモデル?
ちゅーか、この姿勢、めっちゃ疲れるんやけど。
471 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時19分57秒
「イヤやぁ。首痛いしぃ。しゃべれ言うたって何しゃべんねん」
「みっちゃんにもらったお酒、あげるから」
「よっしゃ、何聴きたい? 何でもしゃべったるで?」
「オッケー。もーいいよぉ」


―――早っ。もぉええんかい。

とりあえずラフに描いただけで解放してくれたらしい。
ヨカッタわぁ。ホンマ首疲れんねんもん。
472 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時20分28秒
「じゃ、コレ、飲んでて」
「おう」


お皿にもらったお酒をピチャピチャ。
う〜〜ん。さすがへーけさん。グットセレクトやな。


「みっちゃ〜〜ん。ありがとなぁ〜〜」


―――うん。きっと届いたはずや。

しっかし、コレはまた。旨い!!・・・・・酔いそうやぁ・・・・・・・
でも酒だけしかくれへんっちゅーのも、カオリらしいちゅーか。

おかげで、お待たせって戻ってきた頃には、頭ん中はグルングルン。
いやぁ〜〜〜ホンマに酔ってもぉたぁ〜〜〜・・・・・・・・・
473 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時21分01秒

「さ、いっぱい食べてね」
「・・・・・・・多くないか?」


グルングルンしてたって、この違和感はじゅーぶん感じられる。


「え〜〜? カオリと同じだよぉ?」
「せやから多いっちゅーねん!!」


あんたとあたしが同じ量、食べられると思うんか?
どー考えたって、ムリやろぉ?
こんなん食べたら、消化器官にパスタが充満してまうがな。


「じゃあ残していいよぉ」
「・・・・・・残ったらお持ち帰りにしてな」


さすがに捨てるんは良心が痛むしな。
よっしゃ、そんならいただこか。
474 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時21分39秒
いただきますして、パスタを食べ・・・・・・難しい・・・・・

どーやって食べたらええんや?
フォークは使えんし、爪で引っ掛けるんも限界が・・・・・・


「ゆーちゃん? だいじょーぶ?」
「や、ちょっと・・・・・」


あんま大丈夫ちゃうかも。マジ埋もれそうや・・・・・・
あ、はっ、はっ―――


「はくしゅんっ!!」


アカン。めんたいこが鼻にくっついて。
475 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時22分14秒

「はくしゅんっ!!」
「風邪?」
「ちゃう、はっ、くしょ!!」


不思議そうに見つめられても、ちょお待って。
ちょっと落ち着かんと・・・・・・ん? ええか?


「あんなぁ、コレ食べにくいねん」
「へ? あぁそうみたいだね。食べさせてあげるよ。でも―――」


その前にってティッシュで顔を拭いてくれた。
さっきから、まつげと一緒にピコピコしてたのは、めんたいこやったんかぁ。
おかげでスッキリしたわ。
476 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時22分45秒

「はい。あ〜ん」
「あ〜ん・・・・・・・・・ぅんまいっ!」
「そぉ? はい」
「あ〜〜・・・・・・・・・・・ぅん。さすがカオリや」


カオリが食べてる間は、お酒を飲みつつ。
たまに、パスタも食べさせてもらって。う〜ん。最高やぁ!!
477 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時23分22秒
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478 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時24分19秒
カオリが巻いて上げたパスタを、美味しそうに食べながら。
お酒をピチャピチャ飲んでたゆーちゃん。
でも、お皿を覗き込んだまま、動きが止まってる?


「ゆーちゃん?」
「―――――ん〜〜??」
「起きてる?」
「寝てるぅ〜〜・・・・・・」


どうやらもぉ眠いらしい。
上げたヒゲは少し濡れて光ってる。寝てたみたいだ。


「お風呂は? どーする?」
「眠ぅ・・・・・・」


「じゃ、寝た方がいいね」って、ベットに連れてくと。
「一緒にねようやぁ」って―――可愛い・・・・・・でも。


「もう少ししたらね?」
479 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時24分55秒
「え〜〜〜寂しーやんかぁ」


―――甘えん坊だ。まいったなぁ。
後片付けとか、お風呂とか、それにさっきの絵も・・・・・・


「じゃあコレで我慢してて」
「うお? お〜〜ヤグチぃ? 皆もかぁ?」


棚から、ポイポイ出したのはぬいぐるみ。
ちょっと古いけど、前に映画に出たときのキャラクターグッズ。

皆のがあるけど、やっぱりゆーちゃんはヤグチのに抱きついて。
あたしとか圭ちゃんとかのを枕代わりにしてる。
―――ちょっと複雑・・・・・・・・


「寝れる?」
「ん〜〜はよ来てなぁ・・・・・・・」


むにゃむにゃ言いながら、ゆーちゃんは既に夢の中。
あっ、この姿もなかなか・・・・・・・・・・・

480 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時25分26秒
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
481 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時25分59秒
「ゆーちゃん。カオリのトコで、モデルしてきた?」
「あ、うん。よぉ分かったなぁ」


今日から開催されたカオリの個展。
おめでとーって見に行ったら、カオリにしては珍しい動物モノ。

茶色のネコが、一生懸命上を向いて。
ちっちゃい口を大きく開けて。「にゃあ」って、今にも声が聴こえそうな絵。
油絵で、結構ごっつい感じだったけど、でも繊細で存在感があったんだ。


裕ちゃんぽいなぁって思ったけど、やっぱり裕ちゃんだったんだ。
―――てことは?


「ねえ、カオリって仔犬飼ってたっけ?」
「はぁ? おらんかったよ?」
「そーだよねぇ・・・・・・」
482 名前:カオリ編 投稿日:2002年10月15日(火)19時26分42秒

でもね、動物モノの絵はもう一枚あったんだ。

こっちも同じく茶色のネコが描かれた水彩画。
茶色のネコと白い仔犬が、並んでお昼寝してる柔らかい感じの。

二匹は子馬っぽいヤツのお腹を枕にして。
その周りには、ウサギとか他の動物がいっぱいいて。


「仔犬が描いてあったん?」
「うん。仔犬の他にもいっぱい」
「どーせカオリの想像やろ?」
「だよねぇ」


でも、あの絵、ほのぼのしてて可愛かったなぁ。
題名は、確か・・・・・・・『仲間』



Fin
483 名前:作者 投稿日:2002年10月15日(火)19時31分36秒
番外編 カオリ編終了です。続きは・・・未定。

というか、456でレスを下さった方。
私、読解力がないのか、消化不良の感がありまして。

蛇足っちゅーことは、蛇に足。いらないモンってことですよね?
番外編自体が余計なのか、453,454が余計なのか・・・う〜ん・・・
ということで、お返事頂けたら嬉しいです。
484 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月17日(木)18時06分27秒
自分は456ではないし、スレの残りが少ないので、レスするのを躊躇ったんですが…。
この話のほのぼのしたのがすごく好きです。がんばって下さい。
485 名前:つかさ 投稿日:2002年10月18日(金)02時07分54秒
自分も楽しみに待ってるんで・・・・・続きは未定なんて言わないで下さいよ〜(TT)
作者さんの更新スピードに感心して、発想力、文章力ともにすげ〜好きです。
ずっと追っかけて読んでるんで・・・・・・え〜と。
待ってます(何か告白してるみたい・・・・ある意味告白 笑)
486 名前:作者 投稿日:2002年10月18日(金)21時00分42秒
>484
残りは気にしないで下さい。
いっぱいになったら、次立てようとか考えちゃってますから。

>485
や、告白・・・照れちゃいます・・・<あぁ勘違い・・・・

暖かいレス、ありがとうございます。
まあ何だかんだ言って、ヨイショされれば木に上っちゃうわけで。

ただ、456さんのレスによって、少し書き方について考えたんですが。
無駄なのかそうじゃないのかの判断は、所詮は読者さんにしていただくしかないと。
その結果、蛇足だってレスをもらっても直しようがない!
って開き直ったので、あくまで自分のスタイルで書きます。

ですから、直って無くても勘弁してください。
その時は、通り過ぎていただければ幸いです。

で、続きはやっぱり番外編を。
週末には書き始めたいと思います。
487 名前:名無し読者。 投稿日:2002年10月19日(土)02時37分27秒
とにかくこのお話 Love Love です。
癒されちゃうので、番外編も作者さんが書くのいやじゃなかったら、
訳の分からないレスなんか放置でガンガンお願いします。(w
楽しみにしてます。
488 名前:作者 投稿日:2002年10月22日(火)19時34分00秒
容量的には余ってるんですが、記事数がいっぱいなんで新スレ立てました。
月板に、約束の行方−今を生きる2−。めっちゃ分かりやすい題名ですが。

で、番外編 続けさせていただきます。
今度は彩っぺ編です。
先日のラジオで、久しぶりに彩っぺの名前がでてきて、ちょっと興奮。

489 名前:通りすがり 投稿日:2002年10月24日(木)19時40分03秒
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=moon&thp=1035282485&ls=25

新スレアドレス一応貼っておきますね。
もしも難民サンが出たらもったいないもん。

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