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アイドル・サイボーグ

1 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時11分11秒
「辻…みんなに会えてしあわせだった…

ね?こんのちゃん…辻…しあわせのまま

       …消えていってもいいですか?」
2 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時12分30秒





アイドル・サイボーグ_





3 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時13分33秒
辻さんの「音」

―てへへ〜やったね!こんのちゃん!

辻さんの「音」

―辻イイコですよね?

辻さんの「音」

―お…お菓子食べてないですよ!

辻さんの「音」

―うっそぴょ〜ん!

辻さんの「音」

―いがないでくらしゃい!

辻さんの「音」

―タスケテ…

辻さんの…
4 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時14分43秒





         声




5 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時16分11秒
私達はサイボーグです。
いくら働いてもいくら眠らなくても
いくらでもお金を稼ぐ事が出来ます。

もちろん新旧機能は違いますが
その旧型の味が良いという人もいますし
新型の魅力をどんどん追って行く人もいます。

ASAYANで企画を発動させたのもドキュメント性で
真実を隠そうとしたから。
製造されたのちにもオーディションを開き
サイボーグという事は隠して審査を行うんです。
6 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時17分17秒
私は選ばれるはずの無いスクラップ行きになるはずの
サイボーグでした。

しかし私は選ばれました。

モーニング娘。に。

上の方々はおおあらわです。
私、製造番号「5684345」番はもうスクラップ表に並んでいたほどの
おちこぼれだったんですから。
なにも知らないつんく♂さんが選んだ私。

サイボーグ・紺野あさ美はサイボーグアイドル軍団モーニング娘。に
加入する事になりました。
7 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時18分32秒
「ひゃ〜あっちあっち!
こんなんじゃオイラオーバーヒートしちまうよ〜!」

くすくすと笑いながら矢口さんがシャワー室へ入って行きます。
もちろん私達はシャワーなんか浴びません。
シャワーの個室で自分をメンテナンスするんです。

「あさ美ちゃん、あいたよ〜」
「あ、ありがとう」

愛ちゃんに言われて私はそそくさとシャワー室に
潜り込みました。

女性スタッフが来て怪しまないようにシャワーを開け
私は水がタイルに叩きつけられる音を聞きながら
自分の腕を思いきり引っかきました。
8 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時19分45秒
「っ!」

痛みの信号…脳の中にフラグを389個立てました。
私達サイボーグにはちゃんと痛みや心地よさを
感じる神経が作られています。
しかしそれはただの0と1の2進数であって感情では
ないんです…

でろりと剥がれた肌色の塩化ビニル。
その下には無数の配線と基盤が並んでいました。
私は目を瞑ると剥がれかけたビニルに力を入れ
ずるりと剥き下ろしました。

「……っ…ぁ!!!」

また信号が体の中を駆けずり回ります。
痛みの信号にブルブルと身体を振るわせながら
私は導線の奥のほうに隠れているボタンを押しました。
9 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時20分29秒
「……」

全ての神経への電源供給はシャットアウトされ
私は放心状態になります。

(ああ…いたくない…いたくない…)

安心するまもなくすぐに今日得たデータを
携帯電話を改良した記録媒体に保存します。
そうして使い終わったデータを削除して
明日からのデータを媒体からローディングします。
あまりに膨大な量のデータなので簡単に転送は
できず、こうやって手作業で更新するほかないんです。
10 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時21分48秒
乱暴に剥かれた腕の塩化ビニルの穴に手をつっこみ
ポートに携帯電話を繋ぎました。
やはり人間らしくをモットーとしていますから
こんな所にしか外部と接続する機器を取りつけることは
出来なかったのでしょう…

データをやりとりしているうちに私は肘から手の先までの
ビニルを全部剥いて新しいビニルを用意しました。
手袋のようなビニル。
11 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時23分48秒
なぜか空しくなりました。

この空しいという気持ちすら0と1の塊。

サイボーグ、所詮中身は二進数。

水がタイルを打つ音しか聞こえないシャワー室。
ぴこんと転送完了の電子音がなりました。
12 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時25分53秒
***

某所研究室

「な〜…辻のことスクラップにでけへんの?」
加護は意地悪そうな目つきで整備員を睨んだ。
横にいる偉そうな人。きっと重役なのだろう。
あわあわして加護をなだめている。

「か…加護ちゃん…それは…」
「できひんならうち辞めさしてもらうわ〜
あんなうざったいサイボーグと一緒にやっていけへんもん」
そう言って加護は手をひらひらさせる。

「か…勘弁してよ〜今加護ちゃんに止められたら
モーニング娘。の人気がた落ちだよ〜」
必死に食い下がる偉そう。
じっと加護を見る整備員。
「せやろ!?ならあのチビブタなんとかせいよ!」
加護の目は本気だった。
13 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時26分32秒
「し…しかし…辻は…」

「なんや!?あんな役立たず早くぶっつぶしちまえばええんや!」

走り去る加護。
追いかける偉そう。
整備員は近くにあったバッテリーに腰掛ける。

溜息

「やっぱり…うまくいかないな…屈強な最強のアイドルを作ろうとすれば
するほど人間で言う『性格』は破綻して行く…」

整備員は帽子を取った。
疲れたような少したれ気味の二重だった。
14 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時27分34秒
「最高の人間を作っても最高のアイドルにはならない…
ただ…希美…俺はおまえに期待していたんだけどな…」

疲れた目をした作業員はただうなだれていた。
15 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時28分29秒
****

「加護」と「辻」は同時に生まれたサイボーグ。
しかし「辻」は「加護」の副産物。
正確に言うと辻は加護のプロトで不完全なまま産まれてきた。

産まれてきた当初は二人をセットに売り出していた事務所。
しかし改良の出来ない”おちこぼれ”の辻を事務所は煙たがり始める。
16 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時29分12秒
ある時から完全な「加護」を事務所は推し始めた。
俺が止めるのも振りきり少しでも多くの完璧な
アイドルとしての要素を「加護」に埋めこんでいった。
どんどん冷たい目になっていく加護。

俺は胸が痛くなった。
辻と笑って手を繋いでいた加護はもういない。

しかし皮肉な事に改良に改良を重ねるにつれ露出もどんどん増えて行った。

それを「辻」はにこにこと笑ってみていた。
17 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時29分46秒
俺は一度聞いたんだ。
「加護を恨んでいるか?」
辻はきょとんとした小首を傾げた。
少ししてああと漏らしにっこりと笑う。
「つじ、あいぼんのことらいすっきですよ!」
そうして寂しそうな目をして俺を見たんだ。
「うらむなんて…いわないでください…かあいそです」

俺は辻を抱きしめた。
むくむくとした身体は冷たかった。
18 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時30分40秒

同時に産まれた小さなサイボーグ。

一人は最強のアイドルサイボーグに。

一人は天使の心を持ったおちこぼれサイボーグに…

19 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時31分54秒
***

「はい、新しいプログラムをローディングできましたね?
じゃあ一度通してみるよ〜」

私達はCPUから手や足に命令が行くまでのジョブスケジューリングを
何度か練習して組みたてなければいけません。
一体一体パーツもCPUも違うのでやはり遅れる人も出てきます。

あ…それは私なんですけど…

一応私のCPUはほかの機体より良いもののハズなのにな…
う〜ん…やっぱり足のタスクより腰のタスクを…

「こんのちゃん、大丈夫?」

「あ…辻さん…」

目の前には辻さんがいました。
にこにこと笑っています。
20 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時32分38秒
辻さんは研究所でも有名なおちこぼれサイボーグです。
加護さんのプロトとして過大に卑下されている事は
解かっていましたが…

しかしこんなに緊張感が無いと確かに噂どおりかと思ってしまいます。

私はどうしても辻さんをアイドルサイボーグと見ることが出来ませんでした。
正直…辻さんのようなアイドルサイボーグにはなりたくないなぁと…

出きればですね…私はモーニング娘。になったからには
後藤さんのような素敵なアイドルになるんです!
ずっと憧れていたアイドルサイボーグ…

はっと気がつくと辻さんはこそっと私に耳打ちしました。

「あのね…」

優しいハミング。
胸が熱くなりました…

え…私…サイボーグなのに…!?
21 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月06日(火)23時33分37秒
「スプールファイル、もう一回見なおしてみた方が良いよ?」

え…?

頭の中を覗く。
あ…イニシエータの動き…こっちよりこっちの方が…
そっかそっか…ジョブの選択が問題だったんだ…

「辻さん、ありがとうございます」
「こんのちゃん、しっ!」

急に辻さんは真面目な顔になって私に詰め寄りました。

「?」

「つじにありがとうなんていっちゃだめですよ」
「え?」
私は小首を傾げました。

「つじはおちこぼれですから」

「そんなおちこぼれにありがとうなんていっちゃだめです!」

切なく笑う辻さん。

また胸が熱くなりました。
22 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)01時07分27秒
私達の生活は淡々と過ぎて行きます。
本当の女の子ならいろんなことを感じるのでしょうが
サイボーグの私達にそんなことを感じろというほうが
無理な話でしょう。

色、高さ、色、温度、速さ、距離、高さ

情報は感情ではありません。
冷酷なほど事実でしかないんです。

ミュージカル

唄って踊って感動させて?
ただの人形劇なのに?

私達は操り人形の学芸会を見せるためにこの場所にいるんです。
お金を生み出す大切な人間様のために…

ああ…いけない…サイボーグがこんな事を考えちゃ…
考える?いえ…考えるわけじゃないですね…

感情が無いんですから…

サイボーグ、所詮中身は二進数
23 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)01時08分27秒
***

みなさん入れ替わり舞台に出ていきます。
真っ暗な世界に射しこむ一縷の光。
その先にはウソをつくための大舞台が用意されています。
私ももう飛びこまなくては…
そう思って足を動かしたその時…

ピー―プー−−−−−−―−−−−−−

!?

え…警告音…う…うそ…こんな時に!?

どうして…

混乱

え?いかなきゃ…

動かない!?

止まる

いや

止まる

やめて

止まる

止まる

止まる

止まる

・・・・・・・・・・・・・
24 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)01時09分05秒
「早くいきな、もう出番だよ」

はっと気がつくと私の腕には新しいビニルが取りつけてありました。
目の前には微笑む飯田さん。
これ…飯田さんが…直してくださったんですね!?

「はい!ありがとうございます!」

私は光の中に飛び込みました。
25 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)01時10分31秒
***

「いいらさん!いいらさん!」

聞こえてきたのは「辻の音」だった。
甘ったるくて少し間の抜けた音。
大好きな「辻の音」だ。
かおり辻が大好きだから。
かおりサイボーグだけど辻のこと好きなのは良くわかる。
好きって言うのはよくわからないんだけどね…
かおり辻が大事。辻が大好き…

「いいださんたら〜!また交信してるのですか!?」

大好きな「辻の音」…
あ!!…いけない、いけない…かおりったらまた無限ループに…

「どうしたんだ?辻」
辻の出番は終わっているという情報が頭に飛び込んだ。
それじゃ、と頭を撫ででやると嬉しそうな表情を作る辻。
うん。かおりはこれだけでいいな。
かおりも辻もサイボーグだからなにも生まないけど
この辻をみるだけでかおりはなんか許せるな。
26 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)01時11分50秒
そのままの表情を作っていた辻がふるっと頭を振った。
撫でていた手に辻の髪の毛が当たった。

「こんのちゃんが大変なの!助けてあげてください!」

「紺野が?」

駆けつけてみるとそこには横たわる紺野と
おろおろしている新垣。
どうしたの?と問いただしても新垣は握った手を
頬にもっていっていやいやと首を振っているだけ。
時間が無い。
そう判断した私は圭ちゃんを呼びにいった。

圭ちゃんはサイボーグじゃない。
私達をさりげなくサポートするための
アップフロントエージェンシィの社員だ。
かなり頭が良いらしくかなりのお金で契約させられているらしい。
一緒に舞台に立っていなければ管理しきれない所もでてくる。
そんな所まで計算している会社なのだ。
27 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)01時13分08秒
「大丈夫…ちょっとビジー状態になっただけみたい…
人間で言う緊張による失神みたいなものね…」

そう言いながら圭ちゃんは紺野の腕のビニルをするっと外した。
いつもながらにこんなにキレイにはどうすれば剥がせるのか
悩んでしまう。
カオリね、いっつもびりびりってやるんだよ?
んで、いたたたたってなっちゃってさあ…

「カオリ!交信しないの!」

はっと気がつくと紺野の網膜には沢山の文字が映し出されていた。

「大丈夫だったみたいだね」

私達は向かい合って笑った。
辻は頭の上に?をたくさん並べていた。
28 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)01時14分19秒
***

「危なかったね〜もう少し遅かったら間に合わなかったかもね。
さすがリーダーだわ」
圭ちゃんは笑った。
かおりは笑った顔って好きだな。うん、なんかいいもん。

「さすがはうちの天使様に言ってね?」
私が目を移した先にはぽーっとしている辻。
圭ちゃんはくすくす笑うと辻の頭を撫でた。
辻はまた嬉しそうに笑った。

本当に…眩しかった…

だからかおり、辻がもうすぐスクラップになるなんて考えないことにしたよ。
29 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)18時16分34秒
私は倒れたためにいま大きなプールの中に浮かんでいます。

ちょっとずつ身体が力で満ちていくのがわかります。

ゆうらゆうらと青い水の中。

目を瞑ったら海の夢が見ることができるかも…

こぷこぷとどこからか気泡が浮かぶ音がして…

音?

音?

ちゃん…

ちゃん!

こ…の…ちゃ…!

「こんのちゃん!」
30 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)18時17分22秒





ツジサン ノ オト…




31 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)18時29分35秒
ざばああああああああっ!

「ひえええええええええええ!?」

目の前には水をかぶって呆けている辻さん。
その水を私がかけてしまった事は火を見るより明らかでした。

「ご…ごめんなさい!」

勢い良く頭を下げると髪についていた水が
ばたばたと辻さんの足元に落ちました。

「つじはだいじょうぶですから〜それよりこんのちゃん
もうだいじょうぶ〜?あたまいたくないですか?」

そういって私の濡れた額に手をあてました。
深爪した小さな冷たい手…
なんだかいい匂いがした気がします…
32 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)18時30分34秒
ぼうっとしてたらなんだか恥ずかしくなってしまって
私はばしゃっとまた青い水に顔を埋めました。

「ありゃりゃ〜?」

透明なプールの壁面。
歪んだ辻さんの顔。
笑っている。
なにか言ってる?

こぷこぷと気泡の音。

辻さん…なんて言ってるのかな?

…あれ?水と空気では音の聞こえ方が違ったはず…

じゃあさっきはなんであんなに鮮明に音が聞こえたんだろう…?
33 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)18時31分41秒




……



…!!



アガレナイ…!?



「なにやってんの〜〜〜!?」

ざばっ!




34 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)18時32分57秒

おぼれかけた私を助けてくれたのはまこっちゃんでした。
あ、すごい変な所に水いっぱい入ってる…どーしよ…
私は頭を横にしてごんと頭を打ちました。

どうしておぼれたのかな?

「あさ美ちゃんはホントぼーっとしてるね〜!」

ケタケタと笑うまこっちゃん。
その後ろには愛ちゃんと理沙ちゃんもくすくすと笑って
立っていました。

「はい」
理沙ちゃんはビーバーみたいな顔で笑って私にバスタオルをくれました。

「はやくいがないど〜集合遅れちゃうよ〜?」
酷く訛った愛ちゃんの声。
私はきょろっと周りを見渡して小首を傾げるとまこっちゃんに向かって
聞きました。

「辻さんは…どこにいったんですか?」
35 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)18時34分44秒
訝しげな顔で三人は見つめ合っています。

「なにいってんの?ここにあさ美ちゃんがいるから呼んできてって
言ったのは楽屋にいた辻さんだよ?」

「え…?」

じゃあ…さっきの辻さんは…?
36 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)18時36分04秒
***

後藤さんと保田さんがモーニング娘。を脱退すると聞いたのは
その不思議な出来事があってから二日後でした。

「やだぁ…」

真っ先に素直にそう言ったのは辻さんでした。

後藤さんはもっとカスタムアップされて売り出されるらしいです。
保田さんの話では平家さんのログを
全て後藤さんに移植する計画があるらしいです…
そのため平家さんはもうこのプロジェクトには参加できなく
なってしまうそうです...

確かに最高のアイドルサイボーグが作れるかもしれない。

でも

それって正しいのかな?

それって私が憧れた大好きな後藤さんが
いなくなっちゃうってことですよね?
37 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)18時37分08秒
保田さんはモーニング娘。での功績が評価され
もっと上の研究に携わることができるようになったそうです。

私達は第3研究室にいました。
私は障害を何度か起こしたので
こうやってメンテナンスされて話す時間が持てたんです。

「おめでとうございます」
「ふん、相変わらず融通のきかない子だね〜」
保田さんは笑いながら私の頭を
ぐりぐりと撫でました。

吸う?とタバコを差し出され私は頭を振りました。
豪快にあははと笑われます。
「わかってる。ちょっと困らせてみたかったんだ。
こんなことして困ってくれるのあんたと辻くらいだから」
タバコをくわえると保田さんは上を向きました。
38 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)18時38分24秒
研修室は薄暗く青白い培養液の光りだけがちらちらと
舞っていました。
培養液というには弊害があるでしょうか?
蓄電されている液体なのですが私達にとっては
培養液といっても大差ないでしょう…

ゆっくりと煙が回ります。

それを夢のように私は見つめていました。
保田さんともう話す時間が無くなってしまう事も
どう考えても夢のようです…

「あんたさ…」
「はい?」

保田さんはふうっと長く煙を吐き出しました。

「辻と仲良くしてやってよ…」
「え?」

こぽっと培養液から気泡の音がしました。
39 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)18時39分20秒
「辻は…劣等感の塊なんだよ…あんなに馬鹿みたいに
笑ってるけど…心で…」
保田さんは頭を振りました。
私は顔を覗きこみました。
「…泣いてるって言いたいんですか?」

ふふと笑い声。

「偽善ぶるつもりは無い…ただ…」

思い立ったように私を見る保田さん。
私は小首を傾げました。

「いや…なんでも無い…」

私達は煙の匂いと培養液の微かな動きの音に包まれ
ぼうっとそこに座っていました。

その時間が永遠のように…
40 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)18時40分22秒
***

「ごとうさん…いかないでくらさい…」

「辻…無理言わないで、手離して」

「やだ!手離したらどっかいっちゃうもん…」

「ごとーずっと辻のこと忘れないよ?」

「ほんとれすか?」

「うん、約束」

「じゃ…げんまん」

差し出された小指
深爪した小さな指

笑ったゴトウマキ。

「うん…げんまん」

消え入りそうな辻の「音」

「うそつき…どっか…いっちゃうのに…」

その時、辻の瞳から大粒の雫が落ちた。

41 名前: 投稿日:2002年08月08日(木)09時41分55秒

>>40泣きました。( TДT)
42 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月08日(木)14時06分10秒
世界観がいいですね。
43 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月09日(金)23時29分02秒
「あはは〜またころんじゃいました〜」
「まあ〜たこんなにしちゃって〜ののは
最近ぼーっとしすぎでないかい?」
「ごめんなさい…」
「ん、ちゃんと圭ちゃんとこいって治してもらってきな?」
「あい!」

安倍さんと笑っているのは腕のビニルが
ぼろぼろになった辻さんでした。
安倍さんに頭を撫でで貰った後手を引かれて
保田さんのところに向かいます。

なにか嫌な感じ。


44 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月09日(金)23時29分37秒
だってその傷があったのは左腕で明らかに
辻さんの電源を剥きだそうと掻き毟ったあとだったんですから…
安倍さん…気づいてないのかな…?

保田さんももういなくなっちゃうのに…
なんだか心配です…

(「辻と仲良くしてやってよ」)
その言葉がずきっと頭に響きました。
なんだか…変…ただの文字の羅列ですよね…
そうですよね…?

そうだ…辻さんに冷たいジュースを買って来てあげよう。
そうしてなにがあったか聞いてみよう…
サイボーグだけど私達はちゃんと味覚もあるし食物を
エネルギーに変えることができるんです。
45 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月09日(金)23時30分35秒
なにがいいかな?
確か楽屋には炭酸系がなかったからファンタにしようかな?
あ…ここの自動販売機だと炭酸はCCレモンになっちゃうな…

いつもの悪い癖。
ぼうっと考え事。
私はサイボーグなのにこういうところが上手く働かないんです…

ちゃりん…

「あ…」

自動販売機の前で私は小銭を落としました。
ころころと転がる円を目で追うとぱたと誰かの足元で止まりました。

上を見上げると知っている顔。

加護さんでした。

「あ、すいません」

加護さんはしかたないという顔で百円玉を拾い
私の方につと手を伸ばしました。
46 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月09日(金)23時31分37秒
その時の手。

「!!」

私は思わず加護さんの手を掴みました。

「な!?なにすんねん!」

加護さんに手を思いきり降りきられます。
降りきった勢いで百円玉は飛び、かんと壁は音たてました。

私はその時どんな顔をしていたんでしょう?
加護さんは怒りと共に明らかに怯えの表情を浮かべていました。

加護さんの爪になにかこびりついていたんです。
肌色で…
柔らかそうな…
ビニルのような…

「加護さん…その爪…」

はっと加護さんは手の先を見てぱっと手を後ろ手に隠し
私の横を駆けて行きました。
47 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月09日(金)23時32分39秒
「…まさか…」

(「あはは〜またころんじゃいました〜」)

「辻さん…まさか…」

私は保田さんと辻さんがいるはずのいつもは無人の医務室に
足をむけていました。

走れ!走れ!走れ!

息が切れる。

正確に言えば動きが前準備無しに活発すぎて身体がオーバーヒート
しそうになっているだけ。
今私がばらばらになってしまったってすぐに辻さんのもとに
誰よりも早く行かなくては…

頭ではずっと辻さんの笑い声とサイボーグなのに生々しい
吐き気が起きるような気分の悪い傷をヘビーローテーションさせ
足を前へと進ませました。
48 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月09日(金)23時35分12秒
>>41 辻の素直さと後藤のやさしさがでてるといいなと。

>>42 世界観重視デスね…ていうよりそれしかセールスポイントなんか…(泣

ちなみにこの小説は辻メインではなく「辻贔屓こんのの」です。
49 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月09日(金)23時36分41秒
「あんた…また…」
私は思わず溜息をついた。
まただ。これで5回目。犯人はわかっている。
でも「だれにもいわないでくらさい!」だそうだ。
本人がそういう手前証拠も無い事だし私は手当てをするしかなかった。

「…辻、ちょっと転んだだけなんですよ?
ただ、おばちゃんが直すのへたっぴいだから〜…」

「はいはい…」

足をぶらぶらさせ身体をよじりイスを回しながら辻は笑っていた。

「痛い?」

「ちびっと」

辻はウインクしながら顔の前で人差し指と中指で
1センチくらいの隙間を作ってみせた。
私はふふと笑った。
辻も笑っていた。
50 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月09日(金)23時38分54秒
本当はモーニング娘。に私はいたい…
この仕事はやりがいやお金の理屈以前にとても
愛がある仕事なのだ…
反抗する娘、甘える娘、頼ってくる娘、叱ってくる娘…
その一つ一つがいとおしい…
それを強く感じるのは1期、2期メンバーといるときと
やはりこの小さな天使といる時だろうか?

この「ツジノゾミ」という天使は馬鹿で大食らいで…
そりゃアイドル・サイボーグとしては最低点だ。

でも近くにいればわかる。
この娘は天使なんだ。

天の使い。

可愛くって良い顔してるなんていう夢物語の天使じゃなく
殊更に素直で、残酷で、欲深で、だけど愛されて…

無償の愛を与える天使

51 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月09日(金)23時40分36秒
***

「辻」

「なんですか?」

「私のこと好き?」

「おばちゃんのこと?」

「こら」

「へへ」

辻は小突くと八重歯を出して目を細めた。
唇に指を当て上を見ている。

「んー…」

「どうなのよ!?」

「んー…けっこう、いっぱい大好き」

「ぷっ…!」

私は思ったより豪快に笑ってしまった。
さすが天使様。
その素直さは胸に響く。

本当に響く…

ああ…痛い…痛い…痛い…
52 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月09日(金)23時41分59秒
「ど…どうしたんですか?やすださん!?」

うずくまった私に辻はぴょこぴょことまとわりつき
おろおろとして私の背中をさすった。

「ふふ…あんたと一緒…食べ過ぎちゃったかな…?」

涙声で笑った。

「あ…あの…お薬、いりますか?」
俯いたまま私は首を振った。

その言葉が人間にとっての薬なんて
サイボーグにはわからないのかな?

ああ…痛い…痛い…居たい…ここに…

53 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月11日(日)16時21分03秒
泣きますた・・・。
54 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月12日(月)00時06分22秒
***
「ほら、だしな?」
「な…なにがですか?」
「手」
新垣は困ったように手に握っていた小さな部品を安倍に渡した。

安倍は感心したように小さな部品を蛍光灯の光にすかした。
「ふーん…これ電磁波出るやつだ〜なっち初めて見たよ〜」
新垣はがたがたと震えていた。

「紺野がさあ…舞台の途中で倒れた事あったっしょ?」

「ち!ちがますよ!私じゃありません!」

安倍はふっと目を落とした。
また目を上に戻し部品をすかす。

「…なにいってんだ〜?あれは圭ちゃんの整備不良って
みんなに言ってたでしょや?
ま、混乱を避けるためだったんだけどね〜」

部品から新垣へと安倍は目を移した。
55 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月12日(月)00時07分39秒
「紺野が誰かの所為で倒れたなんてだーれも思わないよ?」

「誰かがこんなの使ってなんかしたんじゃなきゃね?」

新垣は安倍につかみかかる。

「違うんです!加護さんが!加護さんが言ったんです!
あさ美ちゃんをスクラップにしないとお前をスクラップに
するって言ってこれで私の腕を!あさ美ちゃんは辻さんと
仲がいいからだって!だからこれであさ美ちゃんを…!」

はっと新垣は顔を覆った。
安倍はにっこりと天使のように微笑む。

「加護?」

「い…いえ…」

おどおどおとうつむく新垣を見て安倍は床に小さな部品を落とし
力いっぱい踏みつけた。

「心配しなくても辻はもうスクラップ行きだべ。
でもなっちがそんなこと絶対させない…絶対に…」
56 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月12日(月)00時09分27秒
背中で喋る安倍を見て新垣は泣いた。
涙は出なかった。
サイボーグだから。
わかっていたから。
新垣は人一倍モーニング娘。が大好きだったから…

誰も壊したくない…
誰も失いたくない…

しかし

それは自分もという意味。

自己防衛を選んでしまった自分。

恥ずかしくて情けなくて…

崩れた新垣がオーバーヒートしたのは
そんな気持ちからだった。
57 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月12日(月)00時12分49秒
>>53 まだひっくり返す要素が残っているので卒業ネタ以外でも泣かせます!

24時間テレビ…なんだか死ぬほど期待大な噂が…
こんのの…こんのの…(ぶつぶつ)
58 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月12日(月)21時47分20秒
***

加護の握っている手の中でぱとぱちと音がした。
その手は辻の額に当てられている。

「死ね」

辻は寂しそうな顔をする。

「あいぼん…死ねなんていっちゃだめなんですよ?
みんな生きるために生まれて来るんだから…」

「あ、そう。じゃあ壊れろ」

「あいぼん…」

加護は舌を打つ。

「うっさいな…あいぼんてなんやねん。
うざいんだって、おちこぼれ」

「辻は…辻は…どうなってもいいけど…
あいぼんを助けたいって思って…」

加護は目を見開き辻の頬を叩いた。

「うるさい!うるさい!うるさい!
なにが助けるや!なにが!ウチは完璧なんや!
おちこぼれのお前なんかになにを助けてもらうんや!」
59 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月12日(月)21時48分31秒
***

ウチはいつもののと一緒に居た。
ののはものすごく優しかった。
みんなウチがたくさん贔屓されとるのしっててひいてたから
あんまり仲良くしてくれへんかったけど
ののはいっつもウチにお菓子を持ってきてくれた。
すごくそれが嬉しかった。

ののが持ってくるお菓子はいつも美味しい。
サイボーグの癖に頬が蕩けてしまうと思ってしまうこともあった。
ウチがののに持っていって二人で食べてもすごく美味しかった。

「お誕生日〜おめでと〜う!」

ののがウチが造られた日に大きな箱を担いできた。
そこには真っ白いクリームと真っ赤なイチゴがたっぷり乗った
大きくて丸いケーキが入っていた。
チョコレートのプレートの字は汚い字で
「あいぼんおめでとう」って書いてあった。

ののが誕生日に作ってくれたケーキは胸が詰まるほど美味しくて
ウチは無我夢中でかぶりついた。
ののは笑ってた。
うれしいれす〜って舌ったらずな声で笑っていた。
ウチはいつのまにか泣いていて鼻の頭にクリームと涙がついてた。
でもこれはオーバーヒートしかけてるCPUを冷やす為の蒸留水が
表面へ浮き出てきただけのこと。涙じゃないんだ…
でもな…ウチは涙だと思ってる。
60 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月12日(月)21時49分17秒
誕生日を祝ってくれたのはののだけやった。
ウチが生まれてきて嬉しいって言ってくれたのは
ののだけやった。

ウチはここにいていいんだと思った。

ウチは幸せだった。

ずっとずっと妬まれて…
ウチなんかいないほうがいいって思って辛くて…

でもののは「あいぼん!らいすっき!」舌足らずな声で
いつもいつもそういってウチのところに来てくれた。

でもいつからかな…
うちはあんまりにもいろんなこと詰めこまれ過ぎて人間らしさって
いうもんをどんどん消されていったんや…
61 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月12日(月)21時55分36秒
***

メンテナンスが終わってののからまたいつものようにお菓子を貰った。
その日はおいしそうなあげぱんだった。
ののはあげぱんが大好きだったからにこにこしていた。
ウチは幸せだった。

「「いっただっきまーっす!」」

ウチらは笑顔で向き合っていただきますしたあとあげぱんにかぶりついた。

「!!」

…な…なんやこれ…

「?」

…ウソ…ウソや…

「どうしたんですか?あいぼん…?」

…味が…

「あいぼん!?」

ウチはいつのまにかかじったあげぱんをだらしなく口から零していた。
目の焦点はまったく合っていなかった。
ただ横目におどおどしているののが居た事だけは覚えている。

「味が…しない…」
62 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月12日(月)21時56分26秒
***

あいぼんはお菓子が食べれなくなりました。
そしたらあいぼんはおこりんぼになりました。
あいぼんはいっぱい辻のこと叩きました。

でも仕方ないって思いました。
だって辻もあいぼんみたくお菓子食べれなくなったら
きっとうがーっていらいらしますから。

でもあいぼん…
お菓子食べれなくても辻と遊べば楽しいですよ?
なにしましょうか?
追っかけっこしても楽しいですね?
おばちゃんをからかいにいきましょうか?

ねえ?あいぼん…

あいぼん…

あいぼん…

キライ ニ ナラナイデ…
63 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月12日(月)21時58分12秒
***

のの…ゴメン…本当にゴメン…
もうウチ、加護じゃないんや…
一緒にお菓子食べてた加護はもうどこにもおらんのや…

ののと遊びたくても頭が勝手にアイドルには必要ないって
決めてのののこと除者にするんや…

すごい嫌なんやで?

信じてや?

本当にのののこと大好きなんや…

こんなことしとるけどウチのののことおちこぼれなんて思ってへんで。
どんなサイボーグより立派なサイボーグやと思う。

ウチなんかとちがって…

本当はたくさん助けてもらったな…
ごめんな…
本当にゴメンな…ウチ最低やな…

ののに嫌われてもしゃーないわな…

「あいぼん…」

「なんや!まだくだらない事言う気か!?」

ののが首を振った。

そう、もうなにも言わんといて。
なにかいったらきっとウチの身体はこのボタンを押してしまう。
そしたらののは居なくなってしまう…

ののは笑った。
うん、もうどっかにいって…
そうして…ウチのことを誰かに言って止めてもらって…

「辻、あいぼんに嫌われてもあいぼんのことらいすっきれすよ?」

「ばかああああああああああああああああっ!!」

ばちばちばちばちっ!
64 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月12日(月)21時58分56秒
***

目の前には横たわるののが居た。

「なにが…なにがらいすっきや…」

ウチはののの背中を打った。

「うちのことなんも知らんくせに!」

もう一度。

「うちが…ずっと同じこと言いたかったなんてしらんくせに!」

もう一度。

「馬鹿!ばかぁ…」

ウチはののの身体に崩れた。
きゅーんと音がした。

ののはウチのこと救ってくれる…
その通りやったな…
この部品を新垣にももたせたからそのうちここに誰かが来る。
ここにこうやって居ればウチがののを伸したのは一目瞭然。

楽になれる。

ウチは自分の胸に小さな部品を抱くとボタンを押した。

次起きたらののと一緒にあげぱん食べるんや…
ああ…そんくらいウチが奢ったるから気にせんでもええで。
ののがびっくりするくらいたくさん買って来てやるから。

そしたらちゃんと言うから…

「のの、大好き!」

65 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月13日(火)19時59分32秒
***

私が目を離したのがいけなかった。
そもそも今こんな所を修理しようとしなければよかった。
でも辻を見ておきたかったんだ、サイゴに。
がたんと工具が足元に落ちる。
私が目にしたのは倒れこんでいる二人の姿。

加護の手には私達が暴走したサイボーグを緊急にスクラップに
する時使う小型放電気。
大方脳脂肪たっぷりの馬鹿な上の偉そうが加護のゴネに負けて
渡したものだろう。

でも二人はとても幸せそうに身体を寄せ合っていた。

それが永遠であるように

止まっていた。

「おつかれさま…小さな天使たち…」
66 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月13日(火)20時00分11秒
廊下からぱたぱたと足音が聞こえた。

「けーちゃ〜ん?これ落とした…」

ドアーの前には小型スパナを持った矢口が居た。
しかし私の影の物体を見るとみるみる表情を変えた。

「なに…それ…」

かたんとスパナが落ちた。
私は俯いて二人をベットに引きずった。

「ねえ?二人とも死んじゃったんじゃないよね?」

矢口の目はまったく笑っていなかった。

「前もあったもんな?そこの二人っていっつもオイラ達
馬鹿にしてくるじゃん?」

「いえ〜い!っていって起きあがるんでしょう?」

私は目頭が熱くなった。

「けーちゃんまでグルかよー!?」

目から蒸留水を止めど無くながす矢口。
そうしてふらふらとベッドに寄っていった。

「お前ら馬鹿だなあ…ほんっとムカツクほど馬鹿だよ…」

ばたばたと二人の身体に雫が降り注ぐ。
67 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月13日(火)20時00分58秒
「…」

「お前らが居なくなったら…本当にオイラの周りに
誰もいなくなっちゃうじゃん?」

雫はとどまる事を知らない。

「おい!聞いてんのかよ!?なあ?
なんでみんなおいてくの!?ごっつあんもけーちゃんもさあ!?
なんで?ねえ、なんで!?」

二人に掴みかかろうとする矢口を保田は背中から
抱え込んでとめた。

「あんたまでオーバーヒートしようとしてどうするのよ!」

矢口は一度保田を睨んだ後糸が切れたように
ぐしゃっと顔を歪めた。

「…う…だって…だって…みんないなくなる…う…
だって…わかってるけど…みんな…オイラの前から…
ウソだって…ウソって言って欲しい…」

「わけわかんないよ…」

小さな身体を保田はぎゅっと抱きしめた。
冷たかった。

胸が痛んだ。

二人で泣いた。

二人で。

だって今日は加護から感情をまったく排除する日で
辻から命を奪う日だったから…
68 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月13日(火)20時01分50秒
***

神様…どうして時を止めてくれないんですか?

オイラ達はこれ以上を求めたりはしないのに…

オイラ達がサイボーグだからですか?

オイラ達が生きていないからですか?

離れたくないよ…みんなと…

ずっと笑っていたいよ…

ああ…神様…お願いします…

オイラはずっと日陰者でもいいです。

みんなを支えていきたいから。

だから…

お願いです…

時を止めてください…

ごっつあんもけーちゃんも

辻加護も

みんなみんなどこにも行かないでください…
69 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月13日(火)23時02分23秒
***

「お、こんちゃん!」

いつもは呼ばない名で急に安倍さんは私を呼び止めました。
私はしゅうしゅうと音を立てる身体を庇いながら
ゆっくりとその場に止まりました。

「どうしたんだ?なんか急いでるみたいだけど?」

「あの…辻さんのところに…」

安倍さんの顔が笑顔から急に凍ったような顔になりました。
私は一瞬びくっとして手を握り締めました。
でもすぐに笑顔になってああ〜といつもの雰囲気で私に笑いかけました。

「ののはね〜今けーちゃんと研究所の方にいってるはずだよ?」

「…」

「ん?さっきからどうしたのさ〜?」

私は意を決して安倍さんを真っ直ぐ見て言いたてました。

「あのっ!辻さんの腕の傷は加護さんが…
加護さんがやったと思うんです!さっき加護さんの爪に
多分…多分ですけど…何かが引っかかっていて…その…」

良く考えてみればあれが辻さんの腕の傷をつけたから
なんで保証は無かったわけで…
言葉の最後になると私は自信がなくなり肩をすくめてごもってしまいました。
70 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月13日(火)23時03分09秒

「こんちゃん」

安倍さんはちょっと寂しそうに笑っていました。

「こんちゃんが加護のことうたがったらののは悲しむべさ?
だからやめとこ?もし…仮にそうだったとしても
ののはそれを暴いて仕返ししたりして喜んだりするこじゃ
ないでしょや?な?」

私は安倍さんを見上げながら頷きました。

そうですよね…
結果が正しかろうがそうでなかろうが疑ってしまう事自体
辻さんが喜ぶわけないんですから…

「だから大丈夫!なっちだって誰かからされたんじゃないかって
すっごく聞きたかったけどさ〜…」


「でもなっちそれを聞かれるのをののは望まないと思うんだよ。
優しい子だからさ…それを隠そうとするに決まっているんだからさ…」

不器用な子だよねと言って笑うと安倍さんは私とすれ違おうとしました。

でもぴたっと止まるとああと漏らして私の方を向きました。

「新垣がそこの部屋に居るんだ。ちょっとオーバーヒート
しちゃっててさ…圭ちゃんが研究所から帰ってくるまで
みててくんないかな?なっち出番なんだわ」

「はい」

辻さんの事もわかったし私は理沙ちゃんのところに行く事にしました。
71 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月13日(火)23時04分30秒
***

みんな変わって行っちゃうね。

なっちずっとみんなと一緒にいたい。

みんな変わらないで欲しい…

変わらないなんて無理だってわかっているけど

変わらないで居たいと思いながら変わっていく。

きっとなっちが一番変わったかもね。

初めは誰を蹴落としてでも生き残ろうと思っていたから。

でも今は

誰も離したくない。

なっち我侭なのは変わらないね?

72 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月13日(火)23時05分48秒
あ〜あ…

あすか?いちーちゃん?あやさん?ゆーちゃん?

そしてけーちゃん、ごっちん?

なっち変わりたくないなあ…

きっと変わったらなっち皆みたく一人でいられるだろうけど

なんか嫌だなあ…

なんかヤダなあ…

あ〜あ…

また壊れたかな…?

こんなに目から水が出るのは

紺野が辻のことあんなに心配してくれてて安心したからだな…

なっちが寂しいからなんかじゃないよな…

そうだよな…

あ〜あ…
73 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月15日(木)22時34分10秒
「…」

なるべく音を立てないようにそっと部屋に入りました。
理沙ちゃんは眠っていました。

私は溜息をつきました。

(でもやっぱり辻さんにあっておきたかったなあ…)

「あさ美ちゃん」

「あ、愛ちゃん?」

そこには愛ちゃんが居ました。
はあはあと息を(している振りを)してごくっと喉を鳴らしていました。

「理沙ちゃんが倒れったって聞いてぇ〜
びっくりして急いで走ってきたんだよお?」

そう早口で捲くし立てると愛ちゃんは細い身をするりと揺らし
私の横まで来て理沙ちゃんの腕を撫でました。

「わだし…理沙ちゃん…なんか怯えでたから心配してたんだ…」

「怯えてた?」

私が小首を傾げると愛ちゃんはうんと頷いて理沙ちゃんを
見ました。

「うん、私はそんなヘマしないけど…
理沙ちゃんは案外臆病だからね…」

理沙ちゃんは怒られたり追い詰められたりすることが
異常に嫌なようでいつも人の顔色を伺っています。
もっともっと怖がらないで笑えばいいのに…
私はそう思う場面によく出会いました。
74 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月15日(木)22時38分01秒
「こんなふうに安倍さんにばれたりしたらぁ…
困っちゃうでしょう?加護さんも…そんで私もの」

愛ちゃんはすっと私に腕を差し出しました。

「え?」

「理沙ちゃんが「みゅーじかる」んときにあさ美ちゃんこと
スクラップにしろって加護さんに言われててぇ
んだけど理沙ちゃんスクラップするまで出来なくって」

「え…」

何言ってるの?愛ちゃん…
それって…

にやりと笑った愛ちゃんの形のいい唇が見えます。

「んだから、わだしがあんたを壊します」

ウソ…

「な…何言ってるの?」

私は頭に浮かんだ事をそのまま口にしました。
喉がごくりと鳴りました。

いつも支離滅裂な話をする愛ちゃん。
でもこれは…いくらなんでもこれは支離滅裂というより…

「んだから、スクラップ行きってことですよ」

「…スクラップ…?」

すくらっぷという言葉が気味悪く私の喉を転がりました。

頭がぐらぐらしてきました。
私が一度は入り口を垣間見たもの。

スクラップ

ああ…どうしたら…
75 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月15日(木)22時39分10秒
「あさ美ちゃんは必要ないです。はい。
そう加護さんが言ってました。
それと辻さんと仲良しだから壊せって言われたんです。」

辻さん…

どうして…

そうだ…辻さんに会わなきゃ…

違う…

あれ?

私…何考えてたんだっけ…?

「いい加減にしな、高橋」

低いトーンの音が耳に転がり込みました。

「ご…後藤さん…」

「壊すとか壊さないとか…何言ってんの?」

「…失礼しますっ!」

愛ちゃんは後藤さんの横を滑り込んで走って行きました。
廊下からばたばたと反響した音が聞こえてきます。

やれやれと後藤さんは言って私の横のイスに座りました。
76 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月15日(木)22時42分26秒
「あ、紺野だ」

今気づかれたんですか…
まあいいです、そんなマイペースで片想いなところも
後藤さんの好きな所ですから…

「あのさあ、加護、加護知らない?あいぼん、あいちん、あいじぞー」

そんなにいろいろ言って頂かなくても大丈夫です…

「え?…ん…と…わかりません…」

私は首を振りながらも後藤さんを見て答えました。

珍しいな…
後藤さんが人を探すなんて…
あんまり他人を探してまで何かする人じゃないと思ってたんだけど…

つい後藤さんをまじまじと見てしまう私…
俯いた長い睫。
先の丸い鼻。
女の子らしい唇。
ふんわりとした頬。

「そか…紺野、ごめんね」

後藤さんは俯いていました。
あまり明るくない部屋にきらりとなにかが光った気がします。

「なんでもない」

ぱっと後ろを向いて後藤さんはドアーに駆けこんで行きました。
77 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月15日(木)22時44分01秒
今日はなんなのだろう…?
なんでみんなこんなにいろんなことごちゃごちゃやってるんですか?
もうわからない…

あ、お芋食べたい。
ん?今夏ですよね…じゃあ暖かいものより…

「ん…」

ああ!かき氷がいいかもしれません!
辻さんが食べたいってさっき言ってましたね〜
じゃあ一緒に買いに行きましょう!

「あ…あれ…あさ美ちゃん…?」

ふふ…練乳…

!!

「ごっ!?ごめん!理沙ちゃん!?」

私は意識を取り戻しいきなり理沙ちゃんの顔に迫りました。
どうしてこういう癖が変に緊張している時に…

反って私を避けようとした状態から理沙ちゃんは
なにかに気がついたように目を見開きました。

「…私…見たの…」

「?」

78 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月15日(木)22時46分13秒
焦点の定まっていない理沙ちゃんの目。

「さっき…」

「??」

ゆっくり私の方に目を落としてきました。

「見たの…」

「???」

口をずっと開けっ放しにして私をじっと見ます。

「さっき…」

「あの…なにを?」

はっとまた身を震わせて理沙ちゃんは周りをきょろっと見ると
私に耳打ちしました。

「辻さん」

「え?」

見たっていっても…

「私…加護さんが辻さんの腕を掻き毟ってる所見ちゃって…
なんか気持ち悪くなっちゃってトイレに行ったら…
そこにいたの…辻さん…腕…怪我してなくって…」

え…?

胸がどくんという心臓の動きに似た信号を伝えました。
理沙ちゃんはぽろぽろと涙を零しています。

「それで…訳わからなくなって…元のところにいったら
安倍さんがいて…それで…そこにやっぱりビニル破かれてて…
それ見てて…加護さんのことばれたら…私があさ美ちゃんのこと…」

79 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月15日(木)22時47分59秒
そう言って俯いていた理沙ちゃんは私の方を驚愕した表情で見て
あたふたとして目線を泳がせていました。

「…いいよ…愛ちゃんから…聞いたから…」

なだめるように私は言いました。
実際あの時はなんとかなりましたし、私は自分が悪いと思っていたので
まあ、知らぬが仏です。
私はそれより辻さんがどうして二人も居たのか…

そういえば…

私が治療を受けていた時に…

二人…

「うわああああああああ!」

ずんと衝撃。
理沙ちゃんが私に抱きついてきました。

「私…私…違うの!ああっ…ごめん!でも…ああ…
怖くて!怖くて!怖くて!違う…ああ…!違う…怖い…!」

「落ちついて!ね?」

私は肩をがっとつかんで理沙ちゃんを引き剥がすと
無理矢理笑顔を作りました。
80 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月15日(木)22時48分49秒
本当は

辻さんが気になって気になって

仕方なくて

笑ってなんかいられない…
81 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月15日(木)22時49分45秒
「安倍さんが…教えてくれたの…辻さん今日スクラップになるんだって…」

頭になにかがぶつかった。

「加護さんの改良と同時に…辻さんも新しくするんだって…
今、保田さんや後藤さんがいなくなるから…ごちゃごちゃしてて
わかりにくいから丁度いいみたいって…」

ぐわぐわとなにかが回っていた。
なべのフタかな?
あ、鍋いっぱいのクリームシチュー
辻さんと食べたい…

「きゃあああああああああああああ!」

金切り声。
私ははっと状態を元に戻しました。
あの声は…まこっちゃん!?

がたん!

「まこっちゃん!?」

私は廊下に出た。

そこには遠目にだけど倒れこんだまこっちゃんが見えた。

「まこっちゃん!?まこっちゃん?」

私は半ば叫びながらそこに駆けて行った。

そこに駆けつく前に吉澤さんと石川さんがまこっちゃんに
駆けよって体をゆすっていた。
だらだらとまこっちゃんの腕が揺れているのが見えた。

どうして…!?
82 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)17時09分00秒
***

「やった…やったぁ〜!!」

ぴょんと跳ねて愛ちゃんは喜んでいました。
私は手を握り締めわなわなと音が出るほど力を入れました。

「どうして…どうして…」

「ごめん!私達まこっちゃんを保田さんのところに…」

そう言った石川さんの前に愛ちゃんはまた嬉しそうに立ちました。

「残念でした〜保田さんは今居ないんですよ?
加護さんと辻さんを研究所に連れてってますから」

「ウソ…」

吉澤さんの背中に背負われたまこっちゃんの肩を掴んでいた
石川さんは愕然としたように呟きました。

「だって…すぐに見せなきゃ」

「はい、おだぶつです」

石川さんは顔を歪め口を開けっ放しにしています。

「愛ちゃん…どうして…?」

吉澤さんはまこっちゃんを背負いながら言いました。
83 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)17時09分36秒
「加護さんが言ったんです。辻さんと仲いいやつはみんな敵って。
だって辻さんはおちこぼれでしょう?
あだしなんとなく意味がわかって理沙ちゃんもうんっていって
辻さんと辻さんの周りの人を…」

がん!

ぐうと愛ちゃんは言って壁に叩き付けられました。
細く華奢な首には吉澤さんの手が食い込んでいます。
ずり落ちそうなまこっちゃんを石川さんが必死に支えています。

「なんだって…辻のこと…なんていったああああああああああ!!」

ぎりぎりと吉澤さんの手に力が入っています。
愛ちゃんはその手を引き剥がそうとします。
そしてうっすらと苦痛の表情を浮かべそれを振りきったように
吉澤さんを可笑しそうに一瞥すると満面の笑みを浮かべました。

「おちこぼれ!!」

「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!」

「やめてください!」
84 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)17時10分20秒
私は愛ちゃんを向こう側に突き飛ばしました。
縦の力には横…

難なく愛ちゃんは廊下に転がりました。
それにしてもさっきからこんなに騒いでいるのに
どうして誰も来てくれないのだろう?

このスタジオの建物…なんか変…

「辻はおまえなんかより何倍も…何百倍も努力家で優しくて…
どんなサイボーグより可愛いんだからな!」

はあはあと肩を揺らしている愛ちゃんに向かい吉澤さんは
顔を真っ赤にして言いました。

「なにがおちこぼれだよ!なに言ってんだお前!?
お前辻のなにみたんだよ!?なに見てそんな事言ってんだよ!?
言ってみろよ!?」

吉澤さんは逆上して訳がわからないのか涙をぽろぽろ
流しながら叫びつづけました。

「加護が衣装壊した時、加護より謝ってた辻見た事あんのかよ…
うちらが10人祭で愚痴ってる時、沢山居て楽しいからって
笑った辻の笑顔見た事あんのかよ…
飼ってる犬が仕事にくる前具合が悪くて心配して泣きついてきた
辻の泣き顔見た事あんのかよ!?」
85 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)17時11分36秒
肩で息をする吉澤さん。
石川さんがこらえきれずに口を開きました。

「よっすぃー!まこっちゃんが!」

「そうだ…圭ちゃんに電話して…」

「大丈夫です…」

愛ちゃんは立ちあがるとがちゃっと小さな部品を踏み潰しました。

「致命傷にならないようにしておきました…
ていうか、そうしろって加護さんに言われてるんで…」

よろよろと愛ちゃんは壁伝いに奥に歩いて行っています。
一度止まり私達のほうを振りかえりました。

「うちら、理沙ちゃんと私、加護さんに脅されてます。
理由は…言えません…言えるわけない…だから辻さん壊します…
でも…」

「ゴメン…」

前をまた向くとさっきより少ししっかりした足取りで歩きはじめました。

86 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)23時27分00秒

***

「…あ、紺野ちゃん…」

その時後ろから放られた「音」

「え…」

降り返る。
目の前に居たのは。

「なにしてるんですか?」

辻さん。

八重歯、アーチ、笑顔。

あ、そうだかき氷とシチュー
87 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)23時28分04秒
***

私は大事な事を忘れていました。
愛ちゃんはまだ辻さんを壊すとそうはっきり
言ったのを忘れていました。

「あんたが新しい辻さんですか!?」

「えっ…!?」

愛ちゃんの言葉に石川さんと吉澤さんは私の方を向く。
私の後ろには辻さん。

辻さんに視線を戻すと小首を傾げて皆を見比べていました。

「あ…まこっちゃんが…」

辻さんが小さく呟くと愛ちゃんは私達のほうに向かって走り出しました。

「壊す!壊す!壊さねとうちが次は壊されんだぁ!」

「辻さん!逃げましょう!」

「えっ!?」

私は辻さんの手を引き走り出しました。
少しでも距離を取れば愛ちゃんも冷静になるでしょう。

88 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)23時28分58秒

廊下の奥に追い詰められ私達は階段のドアーを開け
中に潜り込みました。
ここは一階です。
上に行くしかない。
私達は走りました。

2階のドアー

「あ…あかない……」

かんかんかんと愛ちゃんが走ってくる音。
壊すと叫ぶ音がどんどん近くなります。

辻さんの手を引くと私達はまた階段を駆け上がり始めました。
いつもの辻さんよりもぜいぜいと息が切れるのが早い気がします。

3階のドアー

「また開かない…どうしよう…」

かんかんかんかん…

壊す!許さない!許さない!

「行こう!紺野ちゃん!立ち止まっちゃダメだよ!」

辻さんに引かれ私はまた階段を駆け上がり始めました。

次のドアー


がちゃん




89 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)23時29分54秒
「開いた!…!?」

身を倒すようにドアーの向こうに滑り込むと
そこは最上階…屋上でした。

「…どうしよう…」

風がびゅうびゅうと吹いています。
隠れようにも影になる場所がありません。
浄化水槽に上る梯子もありません。

「どうしよう…」

私はがちがちと震えました。
どうしよう…
私のせいでもし辻さんが…

でも待って…
今愛ちゃんはあの変な道具を持っていないはず…
それなら距離を保って話し合えばなんとかなるかもしれません…

「あさ美ちゃん」

愛ちゃんがドアーの向こうから肩を揺らして屋上に着ました。
ポニーテールがばさばさと風に揺れました。
私と辻さんは屋上のドアーから一番離れた端に居ます。
90 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)23時31分43秒
「辻さんを壊さなくちゃいけないでの」

辻さんは私の影に隠れぎゅっと私の服の袖を掴みました。

「理由を」

じりじりと寄ってくる愛ちゃんを制止する為
私は叫びました。

ネオンの光で真っ暗とは言えないと言っても
愛ちゃんは黒い塊に近く見えました。

「理由を教えてください」

「言えね」

「言ってもらわないと…」

「あさ美ちゃんには関係ない!」

ビックリするほど取り乱して愛ちゃんは叫びました。

「あいぼんのせいですか?」

私の後ろから辻さんはふらふらと出て行きました。
足取りは重くぜいぜいと息をしてゆっくりと
愛ちゃんに近づいて行きます。
91 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)23時33分06秒
「あいぼんは…えらいひとと友達だから…
たくさん歌えるから…だから約束したんでしょう?」

愛ちゃんの顔は見えません。
でもなんとなくどんな顔をしていたかわかる気がしました。

「あいぼんのゆーこときいたら…友達にたのんで…
けほっ…いっぱい歌わせてあげるって約束したんでしょう?」

「違う!違う!違うっ!」

「でもあいぼんはみんなのこと壊せってゆったから…
やだったから断ろうとしたら…あいぼんは…
あいちゃんとりさちゃんをやめさせるってゆったんだよね…?
だから…」

「違うっていってっぺや〜!!」

愛ちゃんは辻さんを鉄格子に叩き付けました。
私は二人に駆け寄りました。

「やめなよ!愛ちゃん!」
92 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)23時34分06秒
「あいちゃん…」

腕をぶるぶると震わせながら辻さんの肩を掴む
愛ちゃんに辻さんは微笑みかけました。

「だいじょうぶです。あいぼんいいこなんです。
そんなことしませんよ?だから安心してよいことしてください」

「辻さん!?あんた〜あの人に殺されかけてんだよ!?」

愛ちゃんは素っ頓狂な声で言いました。

「でも…あいぼんはいいこだもん…」

愛ちゃんは大きな瞳をもっと大きくして息を深くすうと
ははんと笑いを漏らしました。

「…わかった…そういうことですか…
辻さん、あなたわだしに壊されたくなくて
加護さんはイイ人っていってんだな?」
93 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)23時36分42秒
辻さんは?を顔に浮かべました。

違う!
間違ってる!
辻さんが危ない!

「イイヒトなわけないべや!?
わだしとりさちゃんあの人にだまくらかされて
ドンくらい苦労してんだと思ってんだぁ!?」

「ごめん…」

辻さんは寂しそうに俯きました。

「もう信用でぎね!誰も信用できね!もうヤダ!
…わあああああああああああああ!!!!!」

「ごめんね…あいちゃ…」

がしゃん!!
94 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)23時37分47秒

ゆっくりと辻さんが崩れて行く。

崩れて行く。

愛ちゃんが笑った。
小さくああ…助かったと…

私は手を伸ばそうと思った。
でもその前に頭に流れた信号。

95 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月16日(金)23時39分37秒

ツジサン ハ サイボーグ

イノチ ヲ モタナイ

死ナナイ

マタワラエル

マタイッショニワラエル

96 名前:本庄 投稿日:2002年08月17日(土)03時25分43秒
せつねえ…せつないっすよ〜〜〜〜っ!!!!
…マジ涙でてきますた…(T▽T)
97 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月17日(土)13時48分18秒
>>96 ここでみんなで壊れた辻を直してハッピーエンドにはなりません。
   もう一度くらい泣かせてみたいのですが…

そろそろ佳境に入ってきました。
背景設定がめちゃくちゃなのはご愛嬌。
本人わかっていてしかたなく&あえてやっていますので
背景のつっこみはなるべくご容赦ください。
98 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)16時02分38秒
ほんのちょっとの躊躇で手を伸ばすのが遅れました。
そうして辻さんはみるみるうちに小さくなっていきました。

耳に残った辻さんの「音」

「タスケテ…」

大丈夫ですよ。
また笑いましょう?
仮に記憶が無くなっても私は辻さんと仲良しです。

「辻!?」

「保田さん…?」

そこには青ざめた顔の保田さん。
99 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)16時04分06秒
「あ…あんた…」

保田さんはみるみる顔を真っ赤にしてぱんと愛ちゃんの頬を打ちました。

「な…なにするんだぁ!?」

「あんたこそなにしてんのよ!辻はね…!」

嫌な予感。

なんだろう…

なんだろう…

私の足は勝手に動いていました。

「紺野!?」

「あさ美ちゃん!?」

私は階段を駆け下り始めました。
保田さんの制止の声が聞こえました。

100 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)16時05分04秒
ぐるぐるぐるぐるぐる…

螺旋階段は私の動悸を早くします。

いえ…動悸という名だけのファンの動きですけど…

ばんと空いたドア。

ぱあっと車のヘッドライトが私を照らしました。

そのヘッドライトは辻さんをも照らしました。
101 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)16時06分40秒
***




胸がずきっと痛みます。

近寄るとなにか嫌な匂い。

手に触れる。

36.2度

ゆるい

濡れる

血液
102 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)16時08分29秒
頭がクラとした気がします。

暖かい…

血液…

それが意味していること。

サイボーグに血液は流れていない。

サイボーグ、所詮中身は二進数。

二進数…
103 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)16時10分27秒



辻さんはサイボーグではない。

つまり

辻さんは人間。


104 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)21時23分38秒
***

辻さんは人間でした。

私はサイボーグでした。

辻さんは死んでしまったのでしょうか…?


105 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)21時25分13秒
辻さん?
どうしたんですか?
どうして笑ってくれないんですか?
またからかってるんでしょう?

やだなあ…二回も同じ手で引っかかりませんよ?

「うっそぴょーん!」
そういって早くぴょんって私に抱きついてくださいよ。

「こんのちゃんはすぐだまされますねえ…」
仕方が無いから今日は笑って許してあげます。
わかってました〜なんて言わないであげますよ?

「ごめんね?」
そう謝まってくれないともうかまってあげませんよ?

「早く…笑ってください…ね?」

目がおかしい…
なんだかじんじんしている。
目がおかしいのに手や心臓や…色々な所のフラグが
予想しない組み合わせで立っている。
106 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)21時25分58秒
―辻さんの「音」が聞きたい…

なんなのだろう…
もう…辻さんのせいですよ!
アイスクリームなんかじゃ誤魔化されませんからね!

でも頭に羅列される言葉

―辻さんの「笑顔」が見たい…

私はその場に座りこんで辻さんの手を握りました。
ちいさなちいさな手。
私の額に当ててくれた手。
差し伸べてくれた手。

どうしてこんなに暖かいことに気がつかなかったんだろう…

ぬるぬると私の腕を伝う辻さんの血液。

私は額に辻さんの手を持ってきて祈りました。
ずちっと重い音がして固まりかけた血液が私達の手の中で
擦れあいました。
107 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)21時26分42秒
優しかったのに…
暖かかったのに…
どうして気がつけなかったのかな?

腕がぶるぶると震えました。
辻さんは目を閉じたままです。

「どうして目を開けてくれないんですか…」

頬に泥をつけて辻さんは眠っています。

「早く『うっそぴょ〜ん!』って…いっつもみたく…
笑ってくださいよ…もう…」
私は笑いました。

がぶっ!

「!?」

私の頬に生暖かい液体。
辻さんの顔は真っ赤に染まっています。
辻さんは血を吐き出しました。
肺を強く打ったのでしょう。
そんなことにも気が付けないほど私は錯乱していました。
108 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)21時27分30秒

「早く!早く笑って!辻さん!早く笑ってください!
笑わないと死んじゃいますよ!辻さん!早く笑ってください!
笑って…ウソだって言ってください!」

血液は辻さんを口、顎、首、胸と規則正しくじわじわと汚していきます。
それはまるで死が辻さんを蝕むようで…

「いやだ!やだああああああああ!」

私は辻さんの頬についた血液を手で擦りました。
落ちない…血が落ちない…
怖い…怖いよ…
辻さんが…辻さんがいなくなっちゃう…

「やめて!辻さんを持って行かないで!やだ!」

目の前がぐにゃりと歪みました。
身体中のバスがおかしい信号を送っています。
どこかで身体ががたがた言っています。
でも構いません。
辻さんは目を閉じています。
109 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)21時29分07秒
「あっちいって!死なないんだから!辻さんは死んだりしないんだから!」

じゃりじゃりと泥と混じった血液を何度も擦りました。
辻さんは目を閉じたままです。
血は落ちません。
それは辻さんを着実に死に追いこんでいるようで…

「やだ…やだ…とれないよ…やだ…やだ…」

意味の無い行動。
感情の無いサイボーグの私にはわかっていました。
わかっていたけれど止めることは出来ませんでした。

「辻さん…辻さん…」

ぽつと私の手に雨が降りました。

音がしました。

ああ…辻さんが助かる音だ…

ぴいぽおぴいぽお

辻さんが助かる音

よかった…

「辻さん…だいじょぶですよ…救急車きましたよ…」

110 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)21時30分33秒
呆然としていると保田さんと愛ちゃんが私達のところに着ました。
それと同時に回る赤い光も近寄ってきます。
握った手を見ると周りが赤く光っているせいか血液が
熱く熱く感じました。
私は真っ赤な町並みを夢を見ているような気分で
ぼーっと見つめていました。
そうか…これ夢か…
辻さんも…壊れちゃいないんだ…

夢だと…いいな…

私は水を瞳から流していました。

111 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)21時31分19秒
ツジサンノオト…

二人でやった宿題…でも殆ど私がやったっけ…

―てへへ〜やったね!こんのちゃん!

ツジサンノオト…

私が落とした100円玉…拾ってくれてただ一言…

―辻イイコですよね?

ツジサンノオト…

そうそう…私が残してたお菓子。ここにあったもの知らないって言っただけだったのに…

―お…お菓子食べてないですよ!

ツジサンノオト…

倒れたとき体を揺すったら言って欲しかった言葉…

―うっそぴょ〜ん!

ツジサンノオト…

後藤さんと保田さんに顔をくしゃくしゃにして言った…

―いがないでくらしゃい!
112 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)21時33分36秒

ツジサンノ…

―タスケテ…紺野チャン…








         声




ツジサンノ…

―タスケテ…紺野チャン…








         声









113 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月17日(土)21時34分33秒

ツジサンノ…

―タスケテ…紺野チャン…








         声






ああ…痛いよう…
ツジサンノオトが聞こえるよう…

ごめんなさい…
114 名前:本庄 投稿日:2002年08月20日(火)00時21分01秒
胸が痛いです…。
マジせつねぇぇぇぇ!!!
115 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)19時39分37秒
>>114 2度目のレスありがとうございます。ちょっと破滅的過ぎたでしょうか?

学校の休みがそろそろ終わってしまうので
今日の夜中には完結しそうです。
もともとまとめて書いていたものなのでリアルタイムさが
なくて物足りないかもしれませんがもし良ければ
お付き合いください。
116 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)19時40分55秒
***

病院の中。
機械の規則正しい音だけがぴんと鳴いています。

その微かな高い音は辻さんの命のようです。

「辻さん…」

手を握りました…

温めてあげたかった。

もっともっと。

私に体温は無いけれど

感情は無いけれど

愛は無いけれど

117 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)19時42分25秒





辻さんを暖めてあげたい…




118 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)19時43分27秒
「こんのちゃん…」

思わず振りかえりました。

「…つ…辻さん…!?」

ぽつんと小さな少女が病室のドアーから顔を出していました。

「辻じゃないですよ…本物の希美はその子です…」
そう言いながらもう一人の辻さんは私の方に歩いてきました。
そしてその後ろにいる男。
あの人は…私達を作った人!?
「この子はサイボーグです…私は…希美のためにこの子を作りました」

「え?」

隣にいる辻さんはまた困ったように笑いました。
八重歯も同じ。
でも辻さんじゃない?
119 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)19時45分25秒
「希美はもう長くなかったんです。
どんな方法を使っても年を越すことは出来ない…
二年前に二年後…今年の冬は越せないと…」
私はベッドに横たわる辻さんに目をうつし体を折ると
包帯の巻かれていない柔らかそうな頬にそっと触れました。

温かい…

私は冷たい唇を噛みました。目から雫が零れました。

「私はおわかりの通りアイドルを作り出す仕事をしています。
私はよく希美をを研究所につれていったものです。
体の弱い希美の楽しみだったんですよ。
そのときのきらきらとした希美の表情といったら…
本当に可愛かった…本当に…」

そういって彼は目頭を押さえました。
120 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)19時46分26秒

「希美はいいました。
私もアイドルになりたい、オーディションをうけたいと。
そこで私は気持ちだけでもと希美そっくりのサイボーグを作ったんです。
受かる筈もなくそのサイボーグはスクラップ行になるはずだったのですが…」

横にいた辻さんは俯きました。
口が小さくごめんなさいと呟いています。

「つんく♂さんはなにを思ったのかスクラップ表から自分の意思で
一体のサイボーグを選びました。」

「それが希美でした」

二人の辻さんを見比べ、そして私はじっと彼を見つめました。

「病室でブラウン管に映る自分を希美は嬉しそうにみていました。でも…」

「血を吐いた日。希美は私に泣きながら最後の…
最後のお願いを口にしたんです…」
121 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)19時48分19秒





「一日だけでいいからモーニング娘。になりたいと…」





122 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)19時50分03秒

「今まで我が儘も言わないで泣きながらも病院に閉じ込められていたのに…。
学校にいけなくても…友達ができなくても…ずっと…ずっとずっと…
最後何て言葉を口にしてまで…しかしそれは希美の命を縮めたことにしかならなかった…」

「俺は…なんて愚かなんだ…!」
彼は泣き崩れました。

私はベッドに横たわる辻さんに目を移しました。
包帯でぐるぐると固定してある頭、腕、足…
痛々しい姿…

彼の顔は涙でくちゃくちゃになっています。
サイボーグの辻さんがおろおろとハンカチを顔に当てようとしています。

「随分自分勝手ですね…」

顔を覆っていた手をはとしたように放し彼は上を見上げました。

私は彼を睨みました。
寂しそうな彼の目は辻さんにそっくりでした。

「まだ辻さんは死んでないじゃないですか!
あなたの横にいるのは辻さんじゃないんですか?
あなたは…あなたは一体辻さんの何を見ていたんですか!?」

うう…と唸り彼はまた顔を手に埋め嗚咽を漏らし始めました。
123 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)19時51分08秒

「おとーさん…こんのちゃん」

辻さんは小さく呟くとにっこりと笑いました。

「大丈夫、本物の辻はちゃんといるんだから…
だからもう私はいなくてもいいんですよ?」

「希美…」

彼はもう一人の辻さんに手を伸ばしました。

「そんなこと言わなくていいんだ…おまえは希美だからな?
なあ?お父さんと一緒にお家に帰ろう?」

辻さんはハンカチを彼の頬に当てると笑いながら首を振りました。
揺れるツインテール。

「らって…辻は本物の辻のぴんちひったーなんでしょう?
お家に帰れないなんてわかってます…
また研究所のとこに並べられるんです…知ってます…」

いつもの笑顔。
この優しい笑顔は辻さんが変わらなく持っていたもの。

私が今日初めて会った「本物の」辻さんも…

「希美…希美…笑わないでくれ…もう…もうお父さんを
許してくれ…なあ…」
124 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)19時52分24秒
違うんですとまたおろおろして辻さんは彼の背中を撫でている。
顔を覗きこんで困ったように、でもにっこりと笑いました。

「辻…みんなに会えてしあわせだった…」

ふっと私の方に顔を向ける。

「ね?こんのちゃん…」

太陽のような笑顔。
眩し過ぎて目の前が眩んでしまうような
切なく優しい慈悲の笑顔。
そこにすうっと雲が陰って夕立が降るように
辻さんの頬に雫が走りました。
125 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)19時53分43秒






「しあわせのまま…消えていってもいいですか?」






126 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)19時57分19秒
次の更新で多分完結します。
誰にも期待されていないのに本気出して
更新してる自分って一体…
127 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月20日(火)20時06分07秒
めちゃめちゃまってっるて!
128 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)22時33分11秒
>>127 めちゃめちゃ待ってもらってしまってるなんて(泣
    こりゃがんばらねば…

展開が急でちょっと読みにくいかもしれないですけど
許してください。
129 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)22時34分24秒
***

「あかん、なにゆっとるんや?せっかく俺が
選んだ金の卵やちゅーのに?」

降り返るとそこにはサングラスをかけたつんく♂さんがいました。

「見舞いに来たんだけど…紺野、辻。
この花、花瓶探して生けてきてくれるか?」

「「はい」」

私は花を抱え辻さんと廊下に出ました。

もうだいぶ時間がたっていたのか外は白白として
夜が明けかかっていました。

130 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)22時42分37秒
***

「辻さん、俺がなにしてるか知ってますか?」
希美が寝ているベッドの横のイスにつんく♂さんは座った。
私は、はあと疑問を顔にあらわにしながらもう一つあったイスに座る。
「ミュージ…シャン…?」
「えぇ…
あとちょっとした趣味であるものを横流ししたりもしているんですよ」

男はにっこりと笑った。
私は眉をひそめて彼をみた。

「横流し…?」
「そう。今人造人間ってつくれてしまうんですよ。」

「人造…!?人間…」

男は面白そうに笑う。
だからなんだ?人造人間が作れるから自分達が作った
サイボーグを全部壊したいとでもいうのか!?

「それでですね、今回の辻希美の件、
こっちにもかなり落ち度があったと思いますわ。」
131 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)22時43分19秒
私は唇を噛んだ。
そんなことを飄々と言ってのけるこの人を
殴ってしまいたかった。
でも昏睡している希美から声が聞こえたきがしたんだ…

―おとーさん…やめて!―

「そこでなんやけどこの研究所の人造人間の中味と希美の中味いれかえて
生きかえらそう思うんすわ。」

「え!?」

私は耳を疑った。

「そ…そんなこと…できるんですか!?」

私は震えていた。

「そりゃ人道上、表に出せない事ですけどね。
ちょうど海外での人工内臓の移植成功のレポを読んでたとこなんすよ。
要するに心臓移植とかの体内全部バージョンとでも言うべきでしょうか?
ちゃんと記憶の管理もしておきますから安心してください。」

色々な感情でくらくらとした。
でももう助からない希美が戻ってくるかもしれない…
元気になって楽しい人生をやり直させてやれるかもしれない…

私はよろしくお願いしますと頭を下げていた。
彼は嬉しそうにそうですかと零した。

「それともう一つ…」

132 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)22時44分00秒

***

「花瓶なんてないですよ〜?」
「じゃあこの大きいコップでいいかな…」
「そうだね」

私は蛇口を捻りました。
静かな部屋にばたばたと水の音が響きました。
辻さんはがさがさと花の包装を解いています。

「ね、紺野ちゃん…」
「なんですか?」

「実は辻…紺野ちゃんの記憶がないんです…」
「えっ…」

私は辻さんの方を向きました。
辻さんはもくもくと花に向かっています。

「辻の記憶…ぜんぶ希美ちゃんにあげました…」
「…そんな…!?」

じゃあ一緒に遊んだ事やお寿司食べたこと
勉強した事も喜んで抱き合った事も
全部全部…

なくなっちゃったんですか…?

133 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)22時45分14秒
「…紺野ちゃん!?」

花を抱えた辻さんは花をそっと流しに置くと
私の肩を抱きました。

「どうしたんですか…?」

辻さんは寂しそうに心配した目で私を見ていました。

「辻ね…大人になったんです…
みんなのこと忘れて辛い事忘れて…大人に…」

「だから…いいんです…だから…」

「もう泣かないで…」
134 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)22時46分21秒
私は泣いていました。

これは絶対に涙。

そう言いきる自信があります。

だって…だって…

大好きな辻さんがいなくなっちゃったんだから…

私達はサイボーグ。

命を持たない。

所詮、中身は二進数。

でもね?

でも…
135 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)22時47分39秒





一生忘れない…





136 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)22時48分42秒
「ごめんね…ごめんね…」

辻さんは私をぎゅっと抱きしめてくれました。

「ううん…ごめんなさい…」

私は辻さんをぎゅっと抱きしめました。

温もりなんかある筈がないのに私は辻さんが暖かくて仕方なくて
ぎゅうぎゅうと抱きしめてしまいました。
痛いよと辻さんは笑いました。
ごめんなさいと私は言って力を抜くと辻さんの肩で泣きました。

「辻のはじめてのいい思い出は紺野ちゃんの涙ですね」

その言葉で私は救われた気がしました。

夜は明けていました。
137 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月20日(火)22時50分51秒
もう少し練ったら最後の話をアップ(っていうのかな?)します。
ちなみにあれ?これはどうなったの?っていうところが
いくつかあると思うんですが伏線を書く為にワザと残している
所があるので気にしないでやってください。
138 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)00時14分22秒
伏線張りすぎたらなんだか最後がやけに短い…
やっぱり自分張りきっているな…
アイドル・サイボーグ本編最終話(?)です。
139 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)00時15分39秒
***

「希美〜知ってる?今日転校生くるんだって〜?」

「ま〜ずぃ〜でぇ〜〜!?」

「まっじ〜!」

三人の女の子は机を囲んで笑っていた。

希美は養生も兼ねて北海道の小さなそれほど偏差値の高くない
高校に入学し、ささやかながらも確実な幸せを精一杯生きていた。
内臓を移植した後、整形手術をうけ(口顎と頬を中心に)
モーニング娘。ではない辻希美になった。

モーニング娘。は後藤と保田がいなくなり穴が開いたようだったが
ちょっと大人になった辻加護と5期メンバー、特に紺野は淡々と仕事をこなしていた。

それを希美はちょっと不満に思って見ていた。

希美はブラウン管に口を突き出して言った。
小さく寂しそうにこんなの紺野ちゃんじゃないんだよ、と。

140 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)00時16分34秒

「どんな子だろうね?」

「面白い子だといいれすね〜」

「希美以上面白い子なんてめったにいないから安心しな」

「なんですと!」

「あははは!」

希美は幸せだった。
それが普通でも
普通だからこそ心の底から笑えるこの生活が
沢山の純粋な犠牲を払った生活がいとおしかった。
141 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)00時18分13秒
***

今日転校生が来るそうです。
東京から来るんだって。
辻も転校生だから仲良くしようと思います。

東京かぁ…そういえば…
紺野ちゃん…なにしているのかなあ・・・?
最近テレビで見る紺野ちゃんなんだか怖いから…

あの時の手をぎゅっと引いてくれたよね…
サイボーグだから温かいなんてあり得ないんだけど

とても暖かかったです…

あの暖かさ
142 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)00時19分13秒






一生忘れない…






143 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)00時20分29秒
「席につけー」

みんなわらわらって席に座りました。
お友達がまたあとでって手を振って自分の席に座りました。

あ〜先生また寝癖ついてる〜

「今日はみんなもうそわそわしているが転校生がこのクラスで
一緒に勉強する事になった。紺野、入ってくれ」

隣の席の子がどんな子かな?って耳打ちした。

辻の身体は「コンノ」って聞いてびくんてなって
その言葉は耳に入ってなかった。

辻の…モーニング娘。の辻の記憶がばあっと
頭の中を駆け巡りました。

紺野ちゃん…?

ガラッ
144 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)00時22分09秒
辻は胸が詰まりました。

顔は違ったんですよ。
鼻とかかな?
シャープな感じの子で。

でもあの目は絶対に忘れない…

私達は目が合いました。

紺野ちゃんは笑ってくれたんです。

私も笑っちゃいました。

「紺野あさ美です。よろしくお願いします」

うん…知ってるよ…

ずうっと前から知ってるよ…

ずうっと前から待ってたよ…

紺野ちゃん…
145 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)00時23分26秒
***

「それともう一つ…紺野をくれませんかね?
あ、紺野の記憶や感情、って意味でですよ?」

「実は俺がスクラップ表からサイボーグを選んだのは無機物から有機物を…
つまりサイボーグの記憶や感情から完全な人間ができるか実験したいから
だったんですわ。ちゃんといわんとすいませんね。
人間で言う感情の部分に割り当てられているプログラムが尋常じゃなく辻と紺野に
多くてこのことを思い立って上の方に提案したら食いついてきまして…」


「だから紺野をこっちにくれませんかね?
絶対にちゃんとした人間としてあなたの元にお返しします。」
146 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)00時25分40秒
***


どんな未来が訪れても

それがかなり普通でも…




147 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)00時27分09秒





立ち止まりたくない…

END
148 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)00時30分15秒





           アイドル・サイボーグ

            お疲れ様でした

          メインプログラムを終了します




149 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)09時56分12秒
いきなりですが残っている謎のアナザーストーリです。
こんののじゃないことが多いです。
まあお気になさらず。
150 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)09時57分43秒





アイドル・サイボーグ@ゴトウマキ_






151 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)09時58分25秒

ごとーソロデビューするんだ。

だから

ごとーね、今度いちーちゃんのそばに行けるんだ。

152 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)09時58分59秒
今日聞いたんだ。
辻が新しくなるんだって。
加護がもう感情のプログラムに新しいアイドルの要素のプログラムを
上書きするから感情がなくなっちゃうんだって。

ごとー酷いけどどうでもいいって思っちゃった…
だってごとーもごとーじゃなくなるから
誰かが一緒ならまあ逆にいいかなってさ。

ほら、他の人が不幸だと自分が幸せな気がするじゃない?

ごとー平家さんのデータ放り込まれて結局新しい
アイドル・サイボーグに生まれ変わるんだってさ。

わーい。わーい。
153 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)09時59分49秒
辻が嫌がってたな…
どっかいっちゃうって言って…

うん…そうだね…
ゴトウマキはどっかいっちゃうね…
辻、意外と鋭いじゃん。
もっともっと話が出来れば良かったかも。

そしたらごとーペンギンかぶらなくても
笑えたかもしれない。

辻みたく純粋に笑えたかもしれない…

なんちゃってね。
だまされた?

わーい。わーい。
154 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)10時00分36秒
んあ?そういやどして加護を探していたかって?

だって加護やけになっちゃってさあ…
自分が自分でなくなるなら皆を壊してやるって
暴走しはじめちゃったからさ…
あ、うちらって師弟関係あるサイボーグ同士緊急事態に備えて
思ってることとか身体に入ってきたデータとかを
転送出来るようになってんの。
いちーちゃんのときもたまにあったよ。
だから暴走状態の加護の記憶とかがゴトーの方に転送されて来たんだよ。

「タスケテ、ウチ、死ニタクナイ」

ごとーの頭んなかにこれいーーーーーっぱい入ってきた。
何回も何回も。

ごとーそれ来る度結構泣いた。

ごとーもそう思ってたんだもん。

155 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)10時02分00秒
「ノノ ナラ ウチ ヲ スクッテクレル」

「ノノ ヲ キズ ツケタクナイ ヨォ…」

「ノノ ウチ オトナ ニ ナンテ ナリタクナイ…」

「ノノ ウチ ヲ トメテ」

「ノノ キライ ニ ナラナイデ…」

「ノノ ゴメン…」

「ノノ ゴメン…」

「ノノ ゴメン…」

「ノノ ゴメン…」

「ノノ ゴメン…」

「ノノ ゴメン…」

「ノノ ハヤク ウチ ヲ コワシテ」

ねえ…加護…なんでごとーの名前は一度も出ないの?
加護は私の弟子じゃん?
一回くらいごとーが出てもイイじゃん?

なんで…いちーちゃんと同じで…

ごとーのこと呼んでくれないの…?

156 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)10時02分45秒
「ヤダ」

「モウ ヤダ」

「ヤダ」

「ヤダ」

「モウ ステゴマ ハ ヤダ」

「ヤダ」

「モット メダチタイ」

「モウ ステゴマ ハ ヤダ」

「ナンデ ワタシ ジャ ナイノ?」

「ヤダ」

「モウ ヤメタイ…」

ねーいちーちゃん…

辞めたいって言う前に…
どうしてゴトーの名前出してくれなかったのかな?

ごとー何回も耳ふさいだりしたんだけど全然意味なくってさ。
まあ…頭つながってるから仕方ないんだけどね…
でも結局ぜーんぶ目を通しちゃったんだよ…
だって次にゴトーの名前出るかもしんなかったじゃん…
でも結局一回も出てこなくってさあ…馬鹿みたい…
頭にいらない文字いーっぱい並んじゃってわんわん泣いちゃったよ。

ごとーだってヤダったよ…
やだったんだ…
いちーちゃんの力になりたかったのに…

157 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)10時03分40秒

だから悔しくて悔しくて
ごとー加護のことぶっ壊してやろうって思った。
加護にばれないように怒りを抑えてぶっ壊してやろうと思った。

そのためにスタッフの人とかみんな帰しちゃった。
さすがに加護を追っかけまわしてぼこぼこにしてるの見つかったら
大騒ぎになっちゃうじゃない?
ごとーが機嫌損ねて一個番組飛ばして大騒ぎした事あったからさ
触らぬごとーにタタリなし。
みんな結構あっさり帰っちゃった。

いちーちゃんのことぶっ壊してやろうって思った時とおんなじだった。
158 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)10時04分33秒
でもさ、加護の行動無理矢理読み出して加護のこと探してて
たまたま高橋と紺野に会ったの。

「あさ美ちゃんは必要ないです。はい。
そう加護さんが言ってました。
それと辻さんと仲良しだから壊せって言われたんです。」

それ聞いた時ごとー思い出したんだよね。

ダンス上手く出来た時にいちーちゃんが
頭にぽんって手置いてくれたの。
なんか暖かくてどきどきしてほわーんとして…
いちーちゃんなんか言ってた。

え?いちーちゃんなんていってんの?

なんでこんな事を思い出したかよくわかんない。

でも気がついたら高橋を止めに入ってた。

んで、紺野に加護の居場所聞いてた。

そんで、なんか泣いてた…

159 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)10時05分27秒





もう一回居場所をサーチしたら加護はもう研究室に行ってた。

加護はもう居なくなっていたんだ。





160 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)10時06分51秒


ごとーはソファの上でねっころがった。
なんかよくわかんないな…

必要…

高橋の言葉のそれが引っかかった。
なんだっけ?
紺野が必要ない…
ん〜?

…ZZZZZzzzz…

161 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)10時08分19秒
夢を見た。
サイボーグなのにね。

いちーちゃんとけーちゃんと三人でダンスレッスンしてた。
あ、プッチモニか〜

まる・まる・まるまるまる

へへっ…
なんかおもしろい。

「さすが若いだけあるね〜」

けーちゃんこの頃からもうおばさんぽかったよな〜
でもおばさんよりおねーさんて感じか…

優しいもん…けーちゃん…

「ゴトー!」

あっ!いちーちゃんだ!いちーちゃんだ!

「やっぱゴトーと練習するとなんかいいんだよね。」

笑ってる。
頭にぽんって手を置いてくれた。
あれ?これって…

「私にゴトーは必要なんだよ?」

笑ってる。

いちーちゃん照れながら笑ってる。
私も照れて嬉しくて笑ってる。

ああ…そっか…

こんな簡単な事だったんだね…
162 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月21日(水)10時09分14秒


ごとーソロデビューするんだ。

だから

ごとーね、今度いちーちゃんのそばに行けるんだ。

そしたら今度は私から言うね。

「ごとーにいちーちゃんは必要なんだよ」

END
163 名前:本庄 投稿日:2002年08月24日(土)01時22分46秒
はぁ…感動しました…。
辻も紺野もみんなみんないい娘だ!!!
164 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月24日(土)22時18分29秒
お疲れ様でした。
結構、紹介して回ったりしたんですけどね。
あまり、感想レスがない。。。

ストーリーは好きでしたが、敢えて言うなら、
サイボーグではなく、ヒューマノイドではないかと。。。
それだけが、納得行かなくて。
165 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月25日(日)00時27分17秒
伏線のストーリーがなかなか上手く推敲できていません…
今しばらくお待ちを…(まってるのかなあ2)

>>163
3度目のレスだ〜(嬉泣)
こんののは良い子たちだ〜!紺野が辻の血を拭うシーンは
自分で泣ける唄をかけて泣きながら(馬鹿)書きました。
思い入れは強いので感動という言葉が聞けてとても嬉しいです。

>>164
紹介!?そんな大それた物じゃないので(ブルブル)
えっと今回のこのサイボーグの表記なんですが
アンドロイド=ヒューマノイドでありそれらは人型ではありながら
定義的には感情がないと学んだんですよ。
逆にサイボーグは兵器であろうが人型だろうが感情があるもの。
精神や心というものが存在するのがサイボーグと心得てます。
音やイメージでは確かに「ヒューマノイド」が近いのかも知れませんが
サイボーグの話でこの話を思いついたのでここはちょっと譲れませんね(笑
あとなんとなくあややがアイドルサイボーグと呼ばれていたのも
イメージとしては関係しているかも…

ど…どこに紹介されているのか必死で探しています…(おどおど…)
166 名前:名無し 投稿日:2002年08月26日(月)21時29分29秒
森板で知って一気読みさせてもらいました。
人とサイボーグの違いは何なのでしょうね。
日常生活において紺野達の様なサイボーグがいても自分は何も気付かないと思います。
本当の涙が流せるのが人間?血が流れるのが人間?それとも真の愛を知っているのが人間?
人間とサイボーグの優劣等決めたくないんですが考えさせられてしまいました。
でも「人間」と言う言葉のほうが純粋なのなら、この小説に出ている紺野や辻達は人間だと思います。
長レスすいません。
167 名前:ある読者 投稿日:2002年08月26日(月)22時00分02秒
はじめまして。
本日初めから一気によみました。
私は特にののヲタこんヲタというわけではありませんが、
すんげー感動しました。
なんか久々にええ話読ませてもらいましたわ。
168 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月28日(水)13時32分46秒
森の最初のときから応援してますが、素晴らしい作品ですね。
感動しました。これからもヒソーリと応援してます。
169 名前:いい名無じ。。。 投稿日:2002年08月29日(木)11時29分06秒
感動しました
泣いてしまいました

あいぼんのその後が気になります・・・
170 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月29日(木)14時23分35秒
レス135はDo itの歌詞からとってるんですよね。
そういえば、紺野が一番好きなところっていってたな…。

作者さんのメンバーたちへの愛情を感じます。なんか好感です。
171 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時28分12秒
>>166
人間が人間であるということを考えることに近いかもしれませんね。
人間が人間である故はどこにあるのか。
感情が感情でありそれは何を定義しているのかと考える事と近くて
結局答えの出ないことなんだと思います。
私は花にもパソコンにも感情はあると思います。
だからサイボーグにも感情があると思います。
ただ純粋という言葉を持ち出すのなら無機物の感情のほうが純粋であるように感じます。
人間と動物と無機物と…哲学の世界ですね。

>>167
当方こんののヲタなのであ〜他メンファンから総スカン食らうかな〜
とか思っていたのですがファン以外の人にも楽しんで頂けて嬉しいです。
感動という言葉は本当にもったいないですけどとっても嬉しいです。
ありがとうございます。

172 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時29分24秒
>>167
当方こんののヲタなのであ〜他メンファンから総スカン食らうかな〜
とか思っていたのですがファン以外の人にも楽しんで頂けて嬉しいです。
感動という言葉は本当にもったいないですけどとっても嬉しいです。
ありがとうございます。

>>168
「桜」の頃から!?
ひゃ〜ありがとうございます!お得意様ですね(笑
ヒソーリでよいので読んでやってください。
狂気乱舞で喜びますので!

>>169
な…泣かないで!?いや…狙っていたのでかなり嬉しかったりしますが…
あいぼんは…
ね?

>>170
その通りにドゥイナから取りました。
公式サイトで紺野ちゃんが言ってましたモンね〜
愛、というより憧れが強いのかもしれません。
それと近所のおばちゃん的な感情とか…お菓子食べな!ってね?

みなさん本当にレスありがとうございます。

173 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時30分07秒





アイドル・サイボーグ@ツジノパパ_






174 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時30分56秒

くだらない世の中になったもんだ。
俺が始め期待して入った会社は純粋なアンドロイドを作る
会社ではなかったんだ。

がちゃこがちゃこと不器用に動いてわくわくするような
アンドロイドを作りたかっただけなんだ…

人間が人間を作るなんて馬鹿げているだろう?

175 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時32分22秒
それでも俺には家族がいたから懸命に働いた。

そしてその玩具達は国民的アイドルとなった。

自分が造ったものが評価されブラウン管に映るのはそれほど
気分が良いものでもなかった。

そんなもの眺めるよりこの胸の中にいる天使を眺めるほうが
どんなに暖かくて幸せなんだろう…

「希美…」

生まれつき心臓に病を抱え生まれてきた希美。

でも大丈夫だ…お父さんが守ってやるからな…
176 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時34分11秒
***

希美のサイボーグを作ってやったぞ。

だから…死んじゃだめだぞ…

そしてサイボーグの君。初めまして。

そう、おまえは希美。

ああ…そんなに駆け回って…バッテリーもったいない…

ほら、チョコレートついてるぞ。

あはは…わかったわかった!くすぐったいから!

あ〜…希美が元気になって病院から抜け出してきたみたいだよ…


177 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時35分13秒
***

「うわ〜…本物だあ…」
俺は希美をこっそりとスタジオに連れてきた。
蓄電液に浸る紺野を希美はじっと見つめている。

俺はサイボーグにちょっとだけ希美と同じ感情をもってしまい
罪悪感でなんとなく希美に謝りたくてこんな罰則まで犯して
希美の願いを叶えてやった。

希美は嬉しそうだった。
サイボーグと同じように輝いていた。

俺は上に呼ばれた。
慌てて希美を蓄電液の水槽の影に押しこむとその部屋を出た。

帰ってすぐにわき目も振らず希美の手を引いて希美を
車に乗せた。やっぱり悪い事は出来ないもんだ…

引いてきた希美の手はなぜか濡れていた。

178 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時36分31秒
***

ある日。

加護は完璧なアイドルサイボーグになった。

そしてついにサイボーグの希美を壊す時が来た。
新しい希美の作業も着々と進んでいる。
俺との思い出が消えるわけじゃない。
なにも変わらない。
ただちょっと食いしん坊じゃなくなって
唄も上手くなって
ダンスもちょっと上手くなって…

でも…

笑顔で駆けまわるサイボーグの希美の笑顔と
水槽を幸せそうな顔で見つめる希美が重なった。
179 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時37分54秒
辻はとことこと俺の元に歩いてくると大きな声で言った。

「辻の記憶を希美ちゃんにあげてください」

サイボーグの希美は俺を見て言った。

「そんなことしたら…」

サイボーグの記憶を視覚的に、催眠によって断片的に
人間に移植することは可能だった。
ただしその催眠に必要なプログラムを組むには感情のプログラムも
取り出さなければいけない。
感情のプログラムはバックアップできない。コピーガードが付いている。
しかも少しずつ書きかえられランダムにプログラムは作られ
同じプログラムは二つとない。
サイボーグ間でのやり取りはチップを埋めかえるだけだが
人間に移植してしまうと完全にプログラムは消滅してしまう。

つまりもう今ここに居る希美は死んでしまう…

「馬鹿じゃん?」
180 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時41分33秒
声の主は加護だった。
俺が希美のサイボーグを作る時に人間の感情のバランスを
見るために作った「試作品」
表向きには希美が副産物だったが本当の副産物は加護だったのだ。

「あんたの食いものばっかの頭スカスカの記憶なんて必要なわけないじゃん」

「加護!」

加護は希美に詰めよりはんと笑った。

「そんな偉そうな事いわんでさっさと壊されればえーやん。」

俺は気が付いた。

加護は泣いていた。
181 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時44分14秒
加護の腕を無理矢理剥き下ろしプラグを繋いで
直接プログラム回路を見てみる。

上書きされたはずの感情のプログラムは断片的に残っていて
互いに集まってちいさな原始的なプログラムを作り上げていた。

入出力の領域を表示させると…

「ノノ ヲ ケサナイデ」

加護には感情が残っていた。
ガベージの中に隠れて加護の良心として。

憎まれ口の端々に辻への愛を沢山詰め込んでいたのだ。

俺は思った。

この心達を消してはいけないと…

182 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時45分02秒
***

希美に催眠をかけた。

「お前はずっと元気だったんだ。北海道に来たのはお父さんの仕事の都合」

「お前には大事なお友達が居るんだ。

加護亜衣ちゃんと

紺野あさ美ちゃんだ。

まず亜衣ちゃんはあいぼんと呼ばれていて…」
183 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時46分56秒
***

今ステージ立っている紺野はつんく♂さんのプロジェクトによって
リセットされた紺野だ。

そして辻加護は感情がなくなった。

表面では最強のアイドルサイボーグになった二人。
でも俺はこっそり二人の記憶を繋いでおいたんだ。
希美の記憶もその場だけ論理的に消去してあとで戻しておいた。
淡々と過ごしているようだけれどいつでも二人は内緒話をしている。

だれにも邪魔されない楽しい内緒話を…
184 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時47分56秒
『ジュース ノモ〜! キリリ モライ!』

ぷしゅっ…

「…」

『ズルイ! ソレ ウチ ノ ヤッタノニ!!!!!』

「ごく…ごく…」

『ヘッヘ〜ン!モウ クチ ツケチャイマシタ〜!』

「…」

がさっ…

『アアアアアアアアアア!!ツジ ノ プリッツ!?」

ぽきっ

『アア〜…ウ・マ!』

『キーーーーーーーーーッ!!!』

185 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時49分37秒
***

少女達は成長して行く。
それは表にはわからないかもしれないけれど
ゆっくりと着実に…

『ナア』

『ナンデスカ?』

『ノノ ダイスキ!』


台本を読んでいた辻は加護の方を向くと
ふっと笑った。

加護も笑った。

それは誰も気がつかないけれど。

END
186 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)23時51分16秒
かなり雑な作りになってしまいました…
なんでだろう…しかも最後は辻パパでなく辻加護だし…
これでもかなり練ったんです…いまではこれで限界です…
あまりにもいろいろ詰めこんでしまったからかな…
自分のサイトで改訂版を出すつもりなのでその時までには
考えをまとめたいですね。
187 名前:オガマー 投稿日:2002年09月02日(月)03時36分22秒
今日、はじめて読みました。
私は頭が悪いので、機械のなんたら〜ってところではところどころ?が浮かびましたが(笑)
よかったです。
コンのの、それからあいのの(辻加護)やさしい気持ちになれたし、ジーンときて
最後は少し泣きました。
完結お疲れサマです。
188 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月03日(火)23時28分33秒
>>187
情報関係の話題を出したのは作品の雰囲気を出す為だったので
取りたてて気にしなくても大丈夫ですが不可欠なものでした。
こんのの、辻加護はとてもよいです。うん(恍惚
多分思い入れしているメンバーの違いで泣く所はいろいろかもしれませんが
楽しんでもらえたなら光栄です。
完結しましたが伏線をもう少し書くつもりです。
189 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年09月04日(水)15時06分39秒
ここでHPの宣伝でもしたらどうですか?
190 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月04日(水)18時15分15秒
あ、やっぱり「桜」書いてた方なんですね。
名無しになってたんで違うかと思ってたんですが…

僕もHPのアド知りたいです。
191 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月04日(水)20時00分33秒
思い切って初レスです。
完結お疲れ様です。
泣きました。
やっぱり作者さんのこんののはやっぱほのぼのしてていいですね。
他の小説も全部よんでます。
なんかどの登場人物も大人びてなくて、みんな等身大ですごくいいです。
そして何気>>186のメール欄に・・・
192 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月04日(水)23時07分44秒
あいぼんの名前が違う!?
ぎゃあああああああ!!

>>189
なんとなく雰囲気を壊したくなかったのですが…
でも回りくどくしてしまったようでごめんなさい。

>>190
「桜」書いてました。
はじめのうちは短編こんのののイメージを打ち消して読んでもらいたくて
一応名無しにしてみたんですが「風」の宣伝したのであんま意味ないかもですね。
まあ、こっちから読んだ人の先入観を…ということで…

>>191
思い切って下さい。とっても嬉しいので。
こんののは不思議な力があると勝手に考えています。
野心がありそうでないのがまた…
他のも読んでくれていてなおかつ泣いていただけだとは…
カテキョのような泣きものを目指していたので…
あ〜…感無量…
辻はボケキャラ、紺野は切れ者キャラがおおくて食傷ぎみなんで
まあ、普通なんだぞってとこが私のこんののの売りかもしれません。

さりげなく出していたのですが…
殆ど小説倉庫になりそうですがよかったらどうぞ。
「こんののほっぺ」
http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Keyboard/7441/
193 名前:名無し 投稿日:2002年09月07日(土)16時48分07秒
完結お疲れ様でした。
あいぼんが涙を流せてよかった。
そして自分も涙を垂れ流してた。
これからも応援してます。がんがってください。
194 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月07日(土)22時34分15秒
>>193
この話での涙の定義って結構微妙なんですよね…
でも最後に加護が流した涙はちゃんとした涙なんですよ。
そしてまた泣いて頂けたと…
うわあ…作者が感動しています…(笑
これから…があるかは予定は未定で。どうかなあ…

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