インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板

黒い風

1 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年08月09日(金)17時59分56秒
初めまして。初めて書くものです。読みにくいかも・・・。
黒い物語を書こうと思ってます。
2 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年08月09日(金)18時02分48秒
『愛』




『愛』って何?





人を愛することなんてもう一生しないと誓った





私を裏切った人に出会ってから







私の心は傷ついた






ボロボロでズタズタに切られた心





・・・・・・・
3 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月09日(金)18時17分37秒
「・・・・・・別れよう」





終わらしたのは私だった





そして始まらしたのも私だった
4 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月09日(金)18時23分37秒
「え・・・・・」




その後の声が聞こえてこないのもいつも通り



「・・・別れよう・・・」




もう一度言う



「え・・・」




驚きのあまり大きい目をそれ以上に見開いて私を見るあなた






初めから愛してない





「何で・・・」





問いに答えずに席を立つ



横を通りかかったと気に入った


「・・・・・もう、終わったんだよ」




一人泣いている彼女を置いていつものファミレスから出る

5 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月09日(金)18時26分03秒
すいません。
4の10行目「横を通りかかったと気に入った」を「横を通りかかったときにいった」
でした。
すいませんでした。
6 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月10日(土)16時52分09秒
いつものファミレスを出て早足で歩く




100mほど歩くとコンビニが見えてきた


そこには黒いスポーツカーが止まっていた

「早かったな・・・」


独り言のようにつぶやくと歩く足のスピードをちょっとはやくして黒いスポーツカーに近づく



コンコン


窓ガラスを軽く叩くと返事のように車のロックをはずす音が聞こえる


それが合図のようにドアを開け車に乗り込む
7 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月10日(土)17時00分12秒
乗り込むと運転席には見慣れた少女が座っていた


「ごっちん、今日は早かったね」


「そうかな?よしこ手間取ってたんじゃないの?」

「ハハハ。ごっちんにはお見通しって訳ですか」

「そう、この後藤様に嘘をつくなんて千年早いわ」



ごっちんと呼ばれた少女はふにゃっと笑った

ごっちんこと後藤真希、私の仕事仲間で一番中の良い友達


「そろそろ帰ろうよ、報告とかしなきゃいけないんだよ」

「そうだね」

ごっちんはそう言うとアクセルを踏んだ






8 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月11日(日)11時45分53秒
すごい勢いでコンビニを向けていくスポーツカー


「思うんだけど・・・早いよね・・・」


「へ?何が?」


「車のスピードが!速いよ!」


「そーかな?」


なおもぐんぐんスピードを上げていく車


「あ・・・ボスがよしこ呼んでたよ」


「うん。わかった・・。あー・・・報告とかめんどくさいし・・」


「そんなこと言わない言わない」


ふにゃっと笑ったごっちんはそれから無言のまま運転し続けた










キイイイッ


9 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月11日(日)11時55分47秒
音を立てて車はオフィス街のあるビルの前で止まった



「さんきゅ、ごっちん」


車のドアを開けて降りながらお礼を言う


「いえいえ。また後でね」


そう言うとごっちんの運転する黒いスポーツカーはすごいスピードで走って行った



「ふう・・・」


軽くため息をつきビルの中へ歩き出す




他のビルとは変わりないビルに・・・




中に入ると一人の黒いスーツを着こなしたじいさんが出迎えてきた


「おつかれさまです。ひとみ様、ボスがお呼びです」


じいさんが指差した方向には椅子に座って新聞を読む一人の女性が座っていた




私は軽くじいさんに頭を下げると女性の方に歩き出した




「お呼びですか?ボス」




ボスと呼ばれた女性は新聞から目を離し私を見た


「吉澤か・・・仕事はどないや?」


言いながら新聞を片付け向かいの椅子に座るように私を指図する


「はい。順調です。ターゲット、高橋愛、終わりました」



「そうか」



そうこの人が私たちのボスで、中澤裕子



「他に用件があるのでしょうか?」



沈黙を破り私はボスに言った
10 名前:名無し 投稿日:2002年08月11日(日)21時35分26秒
何かおもしろそうですね^^
続き期待してますのでがんばってください!
11 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月13日(火)14時08分20秒
名無し様・・・レスありがとうございます!続きがんばって更新します!
12 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月13日(火)14時14分43秒
ボスは顔を上にあげて私を見た


ボスの目は青く、そして黒い・・


「仕事はこれからはない、ゆっくり休んどき。又仕事が入ったら後藤に連絡させるから」


言い終わらないうちにボスは去っていった




「久しぶりの休みか・・・」


ぼそっと独り言のようにつぶやいて私は座っていた椅子から立ち上がる







ガチャ


部屋のカギを開け中に入る


何度見ても豪華だ・・・
高級ホテルのスイートルームみたいだ・・




部屋の中は何も置いてない


部屋にいる時間は少ないから
13 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月13日(火)14時25分25秒
部屋の中を靴のまま横断して冷蔵庫を開ける



コーラ−を取り出し一気にラッパのみする


「―っは!」


渇いたのどを潤しベッドにダイブする


ぼすっ


携帯をポケットからだし横に置いてある机に置く


「ふぁー・・・」



「つかれた・・・」










私は組織で仕事をしている

組織は2つの仕事をもっている

1つは殺し

1つは騙し


私が仕事として選んでいるのは騙し

騙しとは簡単で組織が用意したターゲットをナンパして付き合ってプレゼントとして高価なものをとり取れるだけとったら捨てる・・・

簡単なことだ

その騙し取った高価なものはボスがオークションで裁く


その落とされた値段の1割が報酬として渡される


簡単に仕事して大金を儲ける


それが組織のやり方
14 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月13日(火)14時39分18秒
殺しも簡単


ターゲットを見張って、一人になったとたん針を心臓に刺すだけ


それだけで1億や2億の大金が手に入る


私の専門は騙し。でも殺しの人数が少なかった時は狩り出される。


ここの組織にいる人間は10歳から働かされる

たとえ未熟であろうとも、死の確率が高いであろうとも働かされる

















いつのまにか私は寝ていた




チャラ〜ン



携帯をとり通話ボタンを押す

「ふぁい・・?」


『あー・・よしこ?寝てたの?』

「あ・・・ごっちんか・・。寝てた・・」

『あ・・そうそう。よしこのターゲットの子からとった腕時計、3億で落とされたんだって』

「あ・・。愛ちゃんの?」

『そう。よしこの仕事は明日殺しだから。じゃーね』

「あ・・」



私が言い終わらない携帯はきれていた


「殺しか・・・」
15 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月15日(木)12時00分40秒
殺しはそんなに好きではない


頼まれてするほどで自分からするということは絶対しない



ボスから「筋がいい」と言われてから殺しの仕事は増える一方


1週間に3人は殺す





重たい体をベッドから上げて今日入る金を取りに行く



「今日は外食でもしようかな・・・」



いろいろと考えながらエレベーターに乗り込む


「あ・・・矢口さん」



エレベーターには先客がいた


「おう!よっすぃ〜じゃん!何?給料?」


「ええ」



矢口さんは一緒の組織の人間で殺しを主として仕事している


私と仲の良い人だ


「矢口さんも給料ですか?」


「うん。3人分ね」


「へえ・・・すごいですね・・」


「あ・・よっすぃ〜さ今日暇?今日皆で食事に行くんだけど・・」


「ええ。行きます」




チーン



エレベーターを降りる



「じゃ。今日は6時にあの居酒屋ね」


「はい」



矢口さんは右に私は左に曲がっていった
16 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月16日(金)22時04分29秒
左に曲がってすぐにあるドアを開けてはいる



そこにはすでに一人の黒ずくめの男がいた

「金は?」


余計なことを喋らない

それが私の仕事の時の約束


「ああ・・これだ」


黒ずくめの男は持っていた黒い鞄を私に差し出した

「ども」

男から鞄を受け取り中身を確認する

「3億・・・ちょうど」


鞄のチャックを閉め持ち立ち上がる


「じゃ」


そう言ってドアを開けて出て行く



「ふぁ・・・」


エレベーターに乗り込み自分の部屋に戻る


カギを開け椅子にかばんを置く

「3億は重たいな・・」


クローゼットを開け中から金庫をとりだす


カチャ


金庫を開け鞄から2億を取り出し入れる


「1億ぐらいあればもつよな・・・」



金庫を閉めクローゼットにしまう
17 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月19日(月)01時49分35秒
3億てジュラルミンケース3つ分。
とてもこんな簡単に持ち運べる量じゃないが。
18 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月19日(月)18時48分35秒
名無しさん様・・・レスありがとうございます。
         そうですよね・・・。すいません。
19 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月21日(水)20時13分00秒
金庫に金をしまいこんでふと時計を見る




4:35


思ったよりも時間がかかったようだ


「それにしても・・・どーしよーかな・・・」


これといってすることはない


「買い物でもいこっかな・・」


久しぶりの買い物にちょっとウキウキする自分


まだちゃんと16歳の女の子だって事がわかる瞬間・・・・




部屋のカギを閉めてエレベーターに乗って1階まで降りる



人気の少ないロビーを通り抜けようとした時だった


「よしこー!」


私を呼ぶ声が聞こえた


周りを見渡すと椅子に座って私に向かって手を振ってるごっちんの姿が・・・


「ごっちん!!」


笑顔で手を振ってるごっちんに近づく


「どーしたのさ?」


「んー?6時まで時間があるし寝ようかなーって思って」


「寝るって・・・ここで?」


「んあ?そーだよ。ここ寝心地いいしさ」


罪悪感の感じられないくったくの笑顔で言うごっちん


「よしこはどーしたのさ?」


「んー?ちょっと用事」


「そうなの?じゃ、又後でね」

「うん」



会話をおわらしまた一人で歩いていく

20 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月23日(金)12時18分49秒
一人で電車に乗っていつもの居酒屋のある原宿で買い物をする





時計を見ると5:30


いつもの居酒屋に向かって歩き出した所だった


横断歩道をはさんで向こう側に一人の人を見た


その少女は涙を流していた


その姿は綺麗でそして少しさびしく感じた


涙を拭こうともせず歩き続ける姿をじっと見ていた


その少女の周りだけは時間が止まっているような感じがした



21 名前:第一章     吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月23日(金)20時48分54秒
その少女を見つめたまま私は動けなかった



いや・・・動けなかった


目を離すことが出来なかった


あの少女から







「よっすぃ〜?」


不意に名前を呼ばれ振り返る



「は・・はいっ?」


驚きのあまり声が裏返ってしまった


「ははは、何だよー。そんなに驚くことないじゃん!」


振り返るとそこには矢口さんが笑って立っていた

「矢口さん・・・・」


「ん?何見てたの?」


「あ・・・いえ。何でもありませんから・・」


慌てて少女から目を離し歩き出す


「行きましょうか?」


「そーだね」

22 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月24日(土)20時18分39秒
第一章 吉澤ひとみはここで終わります。
つぎは石川さん視点で行きます。
23 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月24日(土)20時24分26秒
私は時間が来るのを待っていた







4:00


やっと待っていた時間が来た

すでに用意してあった鞄とケータイを持って家を出る



あの人の家に・・・・・・




家から20分かけて電車で行き、そこから30分かけて歩く


いつもの距離が今日はやけにしんどい





高級そうなマンションに入りあの人の家を探す


「保田圭」


あの人の部屋を探し出して合鍵で中に入る

24 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月24日(土)20時28分23秒
入った瞬間に強烈なお酒の匂いがした


急いでポケットからハンカチを出して鼻と口をカードする


靴を脱ぎカギを閉め中に進んでいく


リビングに入り唖然とした


そこにはたくさんの缶チューハイの空き缶が散乱していた


「うわぁ・・・」


やっとのことでソファーの所まで来てそこに鞄を置く
25 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月24日(土)20時33分07秒
そばにあったゴミ箱を持ち缶チューハイの空き缶を次々と入れていく



その数35本


どうせあの人とでも飲んでいたのだろう


いつものことだ



キッチンに行き買っておいたデパートのお惣菜を皿に盛り付ける


「ふぅ・・・これで口実が出来た・・・」



皿を机に並べてあの人の帰りを待つ

どうせ今日もあの人と帰ってくるだろう










26 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月24日(土)20時38分17秒
保田さんとは付き合っている




それは私が高校1年生の時


ドールショップで働き始めた時お客さんとして来てくれたのが保田さんだった


初めてのお客さんだったから覚えてる




その後何回も保田さんは来てくれた


それも私のバイトの日だけに・・・・


最初は人形の好きな人かな―って思ってた


でも、保田さんが来始めてから3ヶ月目に告白された


「あのさ・・・・好きなんだ・・・」




その時は私も保田さんのことが好きだったから付き合い始めた
27 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月25日(日)20時34分27秒
保田さんと付き合い始めて3ヶ月が過ぎた頃

私は中澤さんと出会った


最初は仲のいい酒飲み友達としか考えなかった


でも、違った


中澤さんは保田さんの事が好きだってことが分かった


いくら鈍感な私でも分かった





中澤さんはその日から保田さんの家に住み着いている


飲んでは泊まり
飲んでは泊まり



その繰り返し




28 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月25日(日)20時38分36秒
私は嫉妬というのもを知った




それはつかの間だけで今は感じられない



あの日から・・・・




あの日も中澤さんは保田さんの家に泊まった


気分が悪いという中澤さんをトイレに連れて行ったときだった


「石川・・・・あんたに大人の恋は早過ぎる」


それだけ言って私をトイレから追い出した





何が大人の恋?



何で


なんで私に言われなきゃいけないの?






それを考えてる間に夜は過ぎて私は眠れないまま夜を過ごした


29 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月25日(日)20時41分30秒
その日から私は嫉妬を感じなかった



中澤さんと保田さんがくっついているのを見ても何も感じなかった


ただ保田さんへの悪意が感じられた


何でおこちゃまの私に告ったの?


何で誰にでも優しいの?


何で怒らないの?


何で私じゃなくて中澤さんに告らなかったの?

30 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月27日(火)22時19分31秒
ベッドの中で一人涙を流していた


理由はわからない


涙が出た







31 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月27日(火)22時28分37秒
広い部屋で一人いる



どうせ


もうすぐうるさくなるんだから




静かな部屋で耳をすませていた




カツン

カツン



2人分の足音が聞こえてくる



ガチャ



今度はカギを開ける音



「ただいまー」


ほら、保田さんの声


私が来るのを待ってるんでしょ?



急ぎ足で玄関に向かった


「おかえりなさい」


とびきりの笑顔をつけて


保田さんもニコッと笑う


横には保田さんにもたれかかるようにして立っている中澤さんの姿が・・・



「あ・・・中澤さん、お帰りなさい」


また笑顔を作る


あなた達の前ではいい子を演じないといけない


なんでも言うことを聞く物分りのいい子として・・・


「悪いけど、石川、祐ちゃんベッドに連れて行ってくれない?」


「はい」


中澤さんの右脇に入りよちよちな中澤さんをベッドに連れて行く


「大丈夫ですか?」


ベッドの横のテーブルに水を置き尋ねる


中澤さんは少し顔をゆがめる


「水、おいときますね」


そう言って部屋を出た
32 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月28日(水)21時24分08秒
ドアを閉めてため息をつく


「はぁ・・・・」



「そろそろ・・・か・・・」




リビングへ続くドアを開け中を確認する


「保田さん、中澤さん寝ましたよ」


テーブルに置いてある料理とにらめっこしている保田さんに言う

「んー・・・これ、食べていい?」


すでに手には箸が握られている


「ええ、いいですよ」


無理に笑顔を作る




保田さんの隣りに座る


「おいしいですか?」


「んー・・・」


手を早々と動かし続ける保田さん


「保田さん・・・・聞いてください」


重い口をあけ保田さんに言う


保田さんは箸を置いて私を見る


「何?どーしたの?」
33 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月28日(水)21時30分47秒
「あの・・・」



「うん」



「別れましょう?」



「へ?」


「別れましょう・・」





「え!?ちょっと待って、何で?」


「私はもう疲れたんです、背伸びして大人の恋をするのは疲れたんです」



保田さんは俯いて私の言葉を聞いてる



「背伸びして、背伸びして、保田さんに似合う様にがんばったんです。でも、ダメだったんです」


「中澤さんと言う人がいたから・・・・」



「・・・・・祐ちゃんが言ったの?」




つぶやく様に保田さんが言った


「いいえ、私が考えて出した言葉です」



「・・・・・そう」




34 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月30日(金)20時49分16秒
私たちの間の歯車は音を立てて崩れていく・・・・・・・・・





保田さんは何も言わなかった


ただ下を向いて座っているだけ




「最近思うんです・・・・・今背伸びしなくてもいいじゃないかって思うんです」




「疲れたんです、保田さんの知ってる‘石川梨華’を演じるのはもう疲れたんです。何でも言う事を聞いて、気もきいて、優しい石川梨華を演じるのは・・・」




「・・・・石川はそれでいいの?」




つぶやくように小さい声で保田さんは言った


「・・・・・はい」



「石川がしたいようにしたらいい・・・・」




やっと顔を上げた保田さんは泣いていた


目を真っ赤にさせて泣いていた・・・・・






「何で怒らないんですか!」




私の中の怒りが一気に爆発した

35 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年08月30日(金)20時56分40秒
「え・・・?」




「何で怒らないんですかっ!わがまま言う私を何で怒らないんですか?
 そういう所がイヤなんですよ。何でも分かっているようにするの。
 前も私が保田さんの大切にしていたお皿を割っちゃいましたよね?
 そのときも‘また買えばいいんだし’って言いましたよね。
 怒ればよかったじゃないですか。何で怒らないんですか?」



「・・・・・・」



保田さんは何も言わなかった


ただ私を見つめているだけ


何も言わずに無表情で私を見るだけ・・・・・・

36 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年09月01日(日)14時40分08秒
「・・・・・・合鍵・・置いていきますから」



あらかじめポケットに入れておいた合鍵を机の上に置く


「さようなら」




感情も愛情も何にも入ってない声で別れを言う





「待って!」



2歩歩いた所で保田さんに呼び止められた


無表情の顔で振り返る


「なんですか?」




「・・・・・カギ・・・持っててよ」



私の前に差し出される合鍵




「・・・・・・いいです。もう、必要ありませんから・・・・」




そう言ってまた歩き出す





涙が出そうになるのを必死に止めながら・・・・・

37 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月02日(月)00時08分07秒
オモロイ
38 名前:とみこ 投稿日:2002年09月02日(月)19時09分03秒
いいですねぇ!
39 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年09月02日(月)21時22分14秒
名無しさん様・・・レスありがとうございます^^
         おもしろいですか?それはよかったです。これからがんばります!
  


とみこ様・・・レスいつもありがとうございます^^
       イイデスカ。それはよかったです^^これからもがんばります!
40 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年09月02日(月)21時28分17秒
もう入ることもない部屋を早足で出て行く



こうした方が思い出が残らないで済むから・・・・・





マンションを出た瞬間

我慢していた涙がいっせいに込み上げてきた





涙は止まらない



止まることを知らないように流れ続ける

41 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年09月03日(火)21時10分57秒
涙を流しながら歩き続けた



保田さんのマンションを出て曲がった所の横断歩道をはさんで向うに私を見ている人を見た



「・・・・誰?」




聞こえないのに声を出した



私のそばを通る人は皆私を見ていく





そんなに涙を流すのはいけない?





涙を拭かないのはいけない?






あの人だけは違った



私を優しい目で見ている



黒い服できめた人は男か女か分からないけど優しい目をしていた。





風で帽子が取れたとき私は息を呑んだ
42 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年09月03日(火)21時13分01秒
あの時会った人に似ていた




いや、あの人だ。





あの優しい人だ・・・





・・・・・・・・

43 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年09月04日(水)22時13分55秒
私が中澤さんに「大人の恋はあきらめ」といわれた日だった



あの時


私は部屋を出た





服もそのままで部屋を出て行く先も無いのにいつもいくデパートの近くの公園に行った





外は夜だというのに人は少なくて、シーンとしていた



私の足音が響く




公園に入り近くのベンチに座る




ふと空を見上げた




空は東京では珍しいほど星が綺麗に輝いていた



「きれー・・・・」




自然と声がもれる

44 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年09月06日(金)20時21分54秒
夜空に吸い込まれるように見ていると背後から声がかかった



「綺麗だね・・・・星・・・」



声の低いハスキーな声


聞いていると落ち着いてくる・・・・



ハッとして振り返る



そこにはさっきまでの私と同じ様に夜空に吸い込まれるようにしている男の子・・・・



いや・・・男の子の格好をした女の子・・・・

45 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年09月07日(土)14時51分24秒
「あなたは・・・・?」



考えていた事が口から漏れる



男の子のような格好をした女の子は視線を夜空から私に変えた


「・・・・名前?」


ちょっと考えてから私の顔を覗き込むようにして聞いてくる


「・・・そう」


「・・・ひとみ、あなたは?」


「私・・・・?梨華・・・・」


簡単な自己紹介にもならない自己紹介。


ただそれだけなのに何故か嬉しい


「・・・隣り・・・いい?」


搾り出すように聞いてくるひとみ



あ・・そっか・・・ベンチ私一人で占領しちゃってたんだ・・・・



そんなことを考えながら座っていた場所から人一人分座れるように右に寄った


「ありがと・・・」


ひとみはすっと滑らかな動きで私の横に座った

46 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年09月08日(日)12時12分15秒
ひとみが座ったときに香水の甘いような切ないような香りが漂ってきた



ひとみはまた夜空に吸い込まれるように夜空を見上げている


「ねぇ・・・」



「何?」


顔は空を見たまま返事をするひとみ


「いつも・・・・見にきてるの?」



「・・・・うんん・・・今日特別に綺麗だったから仕事サボって見に来た」



「梨華ちゃんは・・・ケンカした・・・?」



さっきまで空を見ていたひとみの瞳は私を見ている


ジッと私だけを見ている


「・・・・まぁ・・・そんなものかな・・・」


心を見透かされたような感じになって思わず目線をそらして嘘を言う


「そっか・・・・。ホント今日は綺麗だね・・・星」


ひとみは又目線を夜空に向けていた


「・・・・あのね・・・」


私は思った



ひとみになら相談してもいいかな・・・・


そう思った




ひとみなら私の悩みを聞いてくれる



そう思った




まだ誰にも話してない思いを・・・・・
47 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年09月09日(月)20時58分19秒
今ひとみは私だけを見てくれている



ひとみの眼には私だけしか映ってない・・・・



「何?」


優しい声


綺麗なハスキーボイスが心地よい


ずっと聞きたい・・・・





「あのね・・・私、死んじゃいたいと思った」


ひとみは何も言わず私だけを見て聞いてくれてる


「付き合ってる人がいるんだけど、その人大人なんだよね。で、その人と仲のいい人が
 その人を好きで、私に言ったんだ、‘子供は子供の恋をして、大人の恋をしなくていい’って・・・」
48 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年09月10日(火)20時13分29秒
「その時、死んじゃいたいと思ったんだ。なんで私がつらい目に会わなきゃいけないんだろうって」




「・・・めだよ」



ひとみが吐き出すように小さく呟いた



ホントに小さい声で暗い夜の静寂に飲み込まれた


だから、私は最後しか聞き取れなかった



「え・・・?」



ひとみは私を真っ直ぐな瞳で見つめて言った


「死ぬ・・・・なんて簡単に言っちゃダメだよ」



その眼は訴えるような、そして悲しい色を持っていた
49 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年09月13日(金)20時43分16秒
「人間いつ死ぬか分からないんだよ。だから、死ぬまで一生懸命に生きるんだよ。」


私の目を真っ直ぐに見てまた話しだす


「いつ死ぬかわからないから、一日一日を大切に過ごすんだ。
 今日だって、こんなに綺麗な星がいつ見られるか分からないから今のうちに見ておくために来た
 死ぬのは明日かもしれない、1年後かもしれない。
 この綺麗な星が見えるのも、今日が最後かもしれない、私が死んだ後かもしれない
 だから、今。今日見にきたんだ」
50 名前:第二章  石川梨華 投稿日:2002年09月21日(土)15時24分41秒
「だから・・・どんなにつらいことがあっても自分から命を絶つということはダメだよ」


優しい瞳


でも、どこか暗黙を持っている瞳


暗黙の中に吸い込まれそう・・・・


「とてもつらくて我慢が出来ないようなら、その人と別れたらいい、梨華ちゃんのことをわかってない人だと思うから・・・」


ひとみは私に笑いかける


どこかさびしいような顔で・・・
51 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月18日(金)15時58分52秒
続き待ってます。
52 名前:通りすがり 投稿日:2002年10月21日(月)14時05分51秒
亀レスですが、3億はW38xH30xD30、宅配便で言う100サイズで
重量は約30Kg、大型のバッグ及びトランクに入ります。
充分一人でもてますが、何か?

ジュラケース3個って、3億円事件じゃないんだから。

Converted by dat2html.pl 1.0