cocktails2.

1 名前:nishi 投稿日:2002年08月10日(土)02時36分52秒
あの…同じ森板の『cocktails』の2枚目です。
あと1レスなのに、前スレに入り切れず…超カコワルイ。

それでは、気を取り直して。(苦笑
2 名前:<Grass Hopper> 投稿日:2002年08月10日(土)02時37分53秒
ねぇ。こんな、あたしたち。
あなたは「青臭い」って笑うかな。

でもね、わかってるよ。
ほんとは、ちょっと、ウラヤマシイんでしょ?
甘々なチョコレート、嫌いな人、実はそんなにいないよね。

ねぇ?

Grass Hopper―――終わり。
3 名前:nishi 投稿日:2002年08月10日(土)02時49分28秒
と、こんな(内容もスレの具合も)微妙な切れ方で、
3杯目<Grass Hopper>完結です。あは(汗
お付き合い頂いた方々、どうもありがとうございました。

>230:名無し娘。さん。
今作は自分もテンションをあげて、かなり軽めのノリで書いたつもりですが、
まさか笑って頂けるとは…いわれてみれば確かに、平家さんのキャラはヤバかったっすね。
えと、西の人間としては、光栄です(w

>231:名無し読者さん。
大好きって、そんな…(アワアワ。ありがとうございます。
後藤さん、さくっと暴走して貰ったワケですが…イヒ(ヲイ
4 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月10日(土)16時34分33秒
新スレ、おめでとうございます!!
開き直ったごっちん、確かに強そうだ。よしこより遥かに強そうだ(w
実はマジ寝できなかった吉澤さんに少し萌え〜。
相変わらず、読んでいて顔がにやける話ですね。作者さん最高です。
5 名前:すなふきん 投稿日:2002年08月10日(土)20時28分02秒
いやぁ、3杯目ごちそうさまでした。
まさか、よしこが受けとは…(w
吉後、2人の会話の節々に散りばめられたエロさが、なんとも言えずツボでした。
もうすでに、4杯目を心待ちにしている自分です。
6 名前:kattyun 投稿日:2002年08月10日(土)21時19分54秒

3杯目、ごっつぁんです(w。
7 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月11日(日)01時11分44秒
新スレおめでとうございます。
グラスホッパーの甘さを通り越して、カルアミルクくらいまでいった気配。
深夜に酒を飲みながらニヤニヤしながら自分がいます。
今日は照葉樹林。題材にしづらい味ですよね。次のカクテルはなんだろー。楽しみにしてます
8 名前:nishi 投稿日:2002年08月15日(木)19時09分35秒
レス、ありがとうございます。今日はお返事だけ…。

>4:名無し娘。さん。
実は「弱よっすぃ」が、自分の中でひそかにブームだったり。(w
だから3杯目では、思う存分後藤さんに…
振りまわされ、尻に敷かれ、翻弄され、そのあげく組敷かれ(略

>5:すなふきんさん。
…エロかったですか?ニヤソ(w
自分は直接的な萌えエロは書けないので、
例えば耳の後ろがかゆくなるような系統のエロを目指してます。(微妙だ。

>6:kattyunさん。
お粗末さまです。m(_ _)m
4杯目、まだイケル余裕ありますか?(^^;

>7:名無し読者さん。
確かに、ホワイトカカオを入れすぎた感じです。(汗
照葉樹林ですか…飲んだことないなぁ。今度探してみますね(知らない酒だ、ワクワーク
3杯立て続けに甘いお酒が並んだので、そろそろジン系でもいってみたいのですが…。
9 名前:<Campari&Soda+××××>0. 投稿日:2002年08月16日(金)20時45分30秒
<Campari&Soda+××××>0.

『めっちゃカッコよくて、でもかわいくて、なのにビビリでヘタレでタラシで優柔で
 好きキライ激しいコドモなくせにエロオヤジで、かと思えば妙なトコ繊細で―』

それでも。
『最高に素敵な人』

そう。最高に、素敵やわ。
誰にも『違う』なんて言わせへん。

…ちゅうか、さっきから、ナニ?なんか、ガッチャガッチャうっさいわぁ…。
人がせっかく、昔の思い出に浸っとんのに。
でも、なんやろ、どっかで聴いたことあんなぁ。…なんの曲やったかなぁ―――
10 名前:<Campari&Soda+××××>1. 投稿日:2002年08月16日(金)20時46分46秒
<Campari&Soda+××××>1.

オーディオから流れる音楽に叩き起こされ、やっと現実の世界へと引き戻される。
寒色系の遮光カーテンの隙間から漏れる日差しに室内は薄青く照らし出され、
それは毎朝目覚めた時に目にする、いつもの風景…なのだが。
視界への違和感から、平家はふと自分の目に右手をやる。

「…ッ…泣いとったんか」
そのままグイッと両目をぬぐい、ベッドを離れ窓辺へとゆっくり歩く。
――昨日後藤に、あんな話したからやろか…。
両手でカーテンを開けば、刺すような日差しが目に痛い。

まぶしそうに顔をしかめ、それでも窓から空を見上げる。少し斜めから。
11 名前:<Campari&Soda+××××>1. 投稿日:2002年08月16日(金)20時47分27秒
いつの頃からか、この体勢が癖になっている――彼女を、思い出すときの。

――なんでやろ。青空が似合う、とか、そんなワケやないのに。
試しに、目に焼き付いた彼女の自身満々なしたり顔を青空に思い浮かべてみる。
「…微妙」
平家は小さく肩をすくめ、同じく小さく首を振った。そして溜め息をひとつ。
「ちゅうかあたしも、朝から何を…」

ちょうどアルバムの3曲目が終わった。そろそろ仕度を始める時間だ。
12 名前:<Campari&Soda+××××>1. 投稿日:2002年08月16日(金)20時47分57秒
軽めの食事を摂り、シャワーを浴びる。夏用のスーツを着込み、その姿を鏡に写す。

『せんせぇのスーツ姿ってぇ、なんかえっちぃことありません?』
『…はぁ?』
『普段見慣れてへんからやろか。授業ぉんときはいっつも、白衣着てはりますもんね』 
『なぁ平家…普通、ゆうたら白衣姿のがえっちぃことないか?』

苦笑いしている彼女の顔が浮かぶ。
思えば全ての始まりは、あの人のスーツ姿に心動かされた高校2年のあの夏の日。
13 名前:<Campari&Soda+××××>1. 投稿日:2002年08月16日(金)20時48分38秒
平家が自分の気持ちを自覚したのは、もっとずっと後の話。
それでも、確かに惹かれていた。あの人に。
新任のくせに、やけに堂々とした立ち居振舞い、あの強い眼差しに。

――アタシは、あの頃のあなたと、同い年になりました。…やっと。
鏡の前に立ち尽くし、平家は思う。
――ねぇ。アタシは、あなたのこと、追いか…

「アホらし…」
近くにあったクッションをつかみ、鏡へと放る。
14 名前:<Campari&Soda+××××>1. 投稿日:2002年08月16日(金)20時49分13秒
ぼすっと音を立てて床へとおちるクッションを見届けてから、平家は軽く頭を振った。
「別に、追っかけて教師しとるんとちゃうわ…」

あらかじめセットされたタイマーに従いオーディオの電源が落ちたのに気付き、
時計に目をやる。家を出る時間…。

「…っしゃ」
短く気合を入れて、平家は部屋のドアを開けた。今日も、暑い日になりそうだ。
15 名前:nishi 投稿日:2002年08月16日(金)20時53分50秒
4杯目、突入です。どこが『そろそろジン』なんだ。
…5杯目に<Gimlet>を持ってくる予定です(ポソリ

またお付き合い頂ければ幸いです。
16 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月17日(土)09時32分18秒
みっちゃんの一人舞台も新鮮でいいすねえ。
4杯目、楽しみにしてました。どんな展開になるか、ドッキドキです(w
+××××が気になるなあ……
17 名前: 投稿日:2002年08月18日(日)00時00分15秒
照葉樹林は、グリーンティリキュールとウーロン茶の簡単なカクテルです。
今回はカンパリソーダですか。これもまた微妙な味わい。
楽しみにしてます。頑張ってください〜。
18 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月18日(日)15時42分49秒
9のレスを見てなかよしかとドキドキしたアフォと言って誰かわかるかな?(w
へけさんでしたね。
酒の味がわからないのが残念ですが、楽しく読ませていただこうと思います。
頑張ってください。
19 名前:<Campari&Soda+××××>2. 投稿日:2002年08月20日(火)19時22分02秒
<Campari&Soda+××××>2.

「んなら、平家は教育大かぁ」
平家と向かい合わせに腰掛けるのは、教員2年目にしてクラスを任された中澤。
「はい」
「アンタやったら、心配いらんやろな。特にここんトコ、エライ頑張っとるみたいやし」

開け放された窓から入る秋の風が、ときおり平家のもとへと中澤の香りを運ぶ。
そのほのかに甘い香りに、じわりじわりと追い詰められるような気がして。
…ゆっくり、ゆっくり。そう。もうかれこれ、1年以上もかけて。

手もとの進路希望調査票に落としていた目を、中澤がふいに上げる。
「どした。なんか、思い詰めたような顔して」
その真剣な眼差しに、最後のとどめをさされた――そんな、気がした。
20 名前:<Campari&Soda+××××>2. 投稿日:2002年08月20日(火)19時22分37秒
「あ…」
「…ん?」
先を促すように、中澤の目が柔らかくなる。

「好きな、人が、おるんですけど…」
「ほぉ」
進路相談が一転して恋愛相談に。中澤は椅子の背もたれに体をあずけ、
右手を自分のあごに、左手をその右肘に、幾分和らいだ雰囲気で続きを待つ。

「その人…女の、人、で。しかも、年上…で」
平家は俯きながら、それでもちらりと中澤の表情を盗み見る。やはり幾分か驚いた顔。
――そら、驚くわ。

でも。
21 名前:<Campari&Soda+××××>2. 投稿日:2002年08月20日(火)19時23分09秒
『そんなん、男も女も関係あれへん。人を好きになんのは、大切なことや』
まぁ、そんな類のことを言ってくれるに違いない。『教師』としての立場から。
別に嘘でも、単なる建て前でも構わない。
――ただ、アナタの口から、アナタの声で…肯定の言葉が欲しいんです。

中澤の目が、すっと細められる。そしてなにか悪巧みをしているような笑み。
――ああ、このカオやわ。アタシの心を捕らえて離さへんのは。
「平家…」
「は、はいっ?」
唐突に呼びかけられて、感情を読まれたのではないかと居心地が悪くなる。

「ちょお、耳貸し。ええこと教えたる」
それでも中澤は相も変らぬ調子で、机に両肘をついてぐっと身を乗り出してくる。
22 名前:<Campari&Soda+××××>2. 投稿日:2002年08月20日(火)19時23分39秒
「はぁ…」
――どうせ教室にふたりっきりやのに、なんで耳打ちやねん。
やめて欲しいわぁ。無駄にドキドキさせられるだけですやん。

「あんな…」
ぼそぼそと囁かれた言葉に、平家は一瞬自分の耳を疑う。
「…ハァッ!?」
勢い良く頭を上げたために、思わず頬と頬がぶつかってしまう。
そのはずみに自分の耳元へと近づけられていた唇が軽く触れたような気がして、
平家は自分の顔が一気に火照るのを自覚した。

中澤はといえば、平家の赤面の理由が今の自分の言葉にあるとでも思っているようで、
また右手をあごに、ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべたままである。
平家もこのときばかりは、目の前の人の鈍感さ加減に感謝した。
23 名前:<Campari&Soda+××××>2. 投稿日:2002年08月20日(火)19時24分19秒
その中澤のにやけ顔がふと真剣な表情になる。
「でもな、相手が本気で嫌がってへんかを見極める、それだけはメッチャ大事やで」
平家もつられて―まだ赤い顔のままではあるが―真剣な表情になる。
「ま、アンタのことや。それも心配いらんやろ」
にっこりと微笑まれて、平家はたまらずに目をそらす。

そんな平家の様子を目に、中澤はまた例の表情に戻って。
「いやぁ…アンタみたいなカワイイ生徒からそんな真っ赤なカオして迫られたら、
 さすがの裕ちゃんやって、ほだされそうやわぁ。…頑張りやぁ」

しかしその励ましの言葉に、平家の表情は複雑なものになって。
――そんな軽口叩けるっちゅぅことは、やっぱ全然相手にされてないねんなぁ…。
平家の心へと、軽い切なさが落とされる。
24 名前:<Campari&Soda+××××>2. 投稿日:2002年08月20日(火)19時25分07秒
無言で少々呆け気味の平家を見て、中澤はまたずれた解釈をした模様で。
「あ、平家、誤解すんなや!?いくらあたしやって、生徒に手ぇ出すほど節操なくないで?」
その慌て振りがおかしくて、平家は思わず笑い出す。

「そやったら、生徒やなかったら、手ぇ出しはるんですか?…卒業生とか」
この際だから、冗談に交えて訊いておく。その質問に中澤は少し考えこむ様子で。
「まぁ、なぁ…。もう卒業したら、教師と生徒やなくて、人と人の付き合いやからなぁ」


25 名前:<Campari&Soda+××××>2. 投稿日:2002年08月20日(火)19時25分39秒
「女の人相手にやったらなぁ…相手その気にさして抱いてもらうより、
 こっちが抱いてその気にさす方が手っ取り早いて思うわ、アタシは」

その言葉に慌てた後藤が水を吹き出すが、構わずに続ける。
「ムリヤリ、っつーのは言語道断やけどな、強引にっちゅーくらいやったらアリやろ」

――そうやんなぁ…こんなんイキナリ教師から言われたら、その反応が普通やんなぁ…。
げほげほと咳き込む後藤を見ながら、平家は思わずニヤニヤとわらってしまう。
――あんときあの人から言われたアタシも、そうやったもんなぁ。

「あぁ、でもその爪じゃぁ…」
さらに後藤の顔が赤くなるのを見て、平家はまた笑う。
26 名前:<Campari&Soda+××××>2. 投稿日:2002年08月20日(火)19時26分52秒
「で、よしこはぁ…」
後藤が落ちついた後は中断されていた食事を再開しながら、
ほぼ後藤のひとり舞台とでも言えるかのような吉澤談義に花をさかせて。
授業中の様子からは想像もつかない活き活きとした表情で話す後藤を、
平家は穏やかな笑みとともに見守っていた。

「でも…ほんとみっちゃんの言動って、教師の常識超えてるよねぇ」
吉澤話に一区切りついて、後藤はどこか感心したようにもらす。
「そうか?」
「うん。スゴイよ、その平家ワールド。さすがみっちゃん、って感じ」
最後の水を一口飲み干すと、後藤は言った。
27 名前:<Campari&Soda+××××>2. 投稿日:2002年08月20日(火)19時27分45秒
少しの沈黙のあと、平家が言葉を返す。
「…そんなこと、あれへんよ」
「そう?」
「ん。実は、平家ワールドにはな、原作者がおんねん」
――ゆうたら、『中澤ワールドver.平家』ちゅうトコか。

「原作者ぁ?」
平家の瞳の色にわずかに混じる切なさに、後藤が気付くことはなかったが。
――なぁ。人体の7〜8割は水分やっちゅう話ですけど…
  そしたら、ねぇ…。アタシの7〜8割も、いまだにアナタでできとるんです。

「ほな、帰ろか」
「ん」
バッグの中を探りだす後藤に、平家は笑って声をかけた。
「あ、ええよ。今日はアタシのオゴリや」
28 名前:nishi 投稿日:2002年08月20日(火)19時37分04秒
更新です。
…平家さんの行動が「そりゃ姐さんだろっ」だった理由の種明かし…。

レス、ありがとうございます。

>16:名無し娘。さん。
3杯目のまま平家さんを「エロ教師」で終わらせるのも、と思いまして。(w
+××××…甘いお酒は、好きですか?(ニヤリ

>17:7さん。
なるほど…照葉樹林、吉後の味ではなさそう(w。…楽しみです。
えぇと…あの微妙な味に、勝手にも一つ混ぜさせて頂く予定です。

>18:名無し読者さん。
こちらこそ、お世話になりました。わからないわけがないです。
例の品(?)、<Guiness>というタイトルで準備中(のはず)です。
随分と企画段階(?)の話からは、違うものになりそうですが(汗。
29 名前:<Campari&Soda+××××>3. 投稿日:2002年08月24日(土)12時32分30秒
<Campari&Soda+××××>3.

卒業式からはや半年が過ぎようとしている。
日曜日の昼下がり。1年前のあの頃と同じ、窓から流れる秋の風が肌に心地よい。

ただあの頃と違うのは、ここは教室ではなく中澤の自室であって。
その中澤はといえば、平家と向かい合って腰掛けるスーツ姿の担任ではなく、
ラフな私服で平家にもたれてくつろぐ、ひとりの女性で――。

「あの…恋人や、思うて、ええんですよね」
どこか弱々しい平家の声に、中澤の視線が上がる。が、その言葉には応えず。
すっと右手が伸びてきて、ぱちん、と左頬にあてられる。
「…なんちゅう目ぇしてんの」
30 名前:<Campari&Soda+××××>3. 投稿日:2002年08月24日(土)12時33分06秒
その右手にそっと左手を重ねて、平家は呟く。
「先生の、せいです」
――こんなにもアナタを隣に感じるのに、アナタをそばには感じないから。

その言葉に、一瞬中澤の表情が曇る。が、すぐにその色は消えて。
右手の親指と人差し指にぐっと力を込めながら、中澤が言う。
「その『先生』ゆうの、いい加減やめ」

頬をつままれたまま、中澤の顔をみやる平家。
「なんかアタシが、元教え子に手ぇだしたとんでもないエロ教師みたいやんか」
「…なんか違ぉてます?」
31 名前:<Campari&Soda+××××>3. 投稿日:2002年08月24日(土)12時33分38秒
しっかりと平家の頭をひと殴りし、中澤は笑いながらぼすっとソファに身を沈める。
「でも…アンタがあんな押し強いとはなぁ…」
「驚きました?」
隣に座る中澤の肩が揺れている。何を思い出して笑っているのか、少し憂鬱になるが。

「先生が、教えてくれはったんですよ」
中澤の視線が平家へと戻る。その細い肩を、両手でソファへと押し付けて。
「年上の女落とすなら強引に行け、そんでも自分は、生徒にはよぉ手ぇ出さん、て」
――それを自分なりに、応用してみただけなんです。そう、アナタに。

「卒業したと同時に、人変わったもんなぁ、アンタ」
自分に組み敷かれているというのにまだ余裕の笑みを崩さない大人に、少し腹が立つ。
32 名前:<Campari&Soda+××××>3. 投稿日:2002年08月24日(土)12時34分14秒
「ほんま、優秀な教え子やわ」
中澤の両目がすっと細められ、またその右手が平家へと伸びてくる。

ゆっくりと頬をなでられる感触に浸りながらも、平家は1年前の中澤の言葉を思い出す。
『でもな、相手が本気で嫌がってへんかを見極める、それだけはメッチャ大事やで』
――あの言いつけだけは、守れとるんか自信ないんですけど。
目の前の人が、自分に比べてあまりに大人過ぎて。その真意が、見えてこないから…。

「せん…」
平家の左頬にあてられていた中澤の右手が少しだけ滑り落ち、親指が唇へと触れる。
そのまま軽くなぞられ、平家の身体は小さく揺れる。
33 名前:<Campari&Soda+××××>3. 投稿日:2002年08月24日(土)12時34分54秒
「やから、『先生』は、やめぇて」
唇へと置かれた親指は、そのまま平家のあごへと降りて。
「『裕ちゃん』、て、呼んでみぃや…」
にやけるでもなく、茶化すでもなく、静かに言い放たれたその言葉に、
平家は抗う術など知るはずもなく。

「ゆう、ちゃ…ん」
思いのほかかすれた自分の声を、目の前の人の瞳の強さの所為にして。
その顔がくしゃりと微笑むのを目に、ゆっくりと自分の上体を落とす。

段々と曖昧になってゆく意識の中、平家は静かな中澤の声を聞いた気がした――。


34 名前:<Campari&Soda+××××>3. 投稿日:2002年08月24日(土)12時35分25秒
今日は月曜日。後藤の補習、6日目。

『なぁ、アタシがエロ教師やとしたら…アンタは、何なん?』
今なら、あの言葉が聞き間違いではなかったのだと、確信がもてる。
『エロ教師に振りまわされとる、イタイケな元女子高生ですわ』
そんな冗談の一つでも飛ばせていれば、あの人の気持ちは軽くなったのだろうか。

自分が教師の立場に立ってみると、よくわかる。
教壇の上で、熱のこもった視線を受ける、やはりそんなこともしばしばで。
――先輩に憧れる、教師に憧れる…思春期にありがちな感情やんな。
その子達の気持ちを軽んじる、そんなつもりは微塵もないけれど。

自分よりも大人を相手にただ焦って、周りが見えなくなっていたあの頃の自分。
しかし彼女にも―大人には大人の、葛藤なり、不安なりが確実にあったはずで。
35 名前:<Campari&Soda+××××>3. 投稿日:2002年08月24日(土)12時36分22秒
――大人っちゅうか…なってみれば、23・4て、そんなオトナでもあれへんなぁ。
コドモの熱病のようなものかもしれない、それを自覚しつつもそれごと受け入れる―
そう、それほどには…。思わず、苦笑いがこみ上げる。

そんな煮え切らない相手につのる不安に耐えきれず、関係に終止符を打った自分。
――そうやわ。もう最後の方はあの人を見つめるのも怖くて、空ばかり見上げとった。
今も変わらず空を見上げている自分に、苦笑いが嘲笑へと変わりそうになる。

強そうな瞳、自信に満ち溢れたような外見とは裏腹に、
「人一倍、臆病な人やったのに…」

カラカラと音を立て窓を開けてみても、秋の風にはまだ程遠く。
36 名前:<Campari&Soda+××××>3. 投稿日:2002年08月24日(土)12時36分54秒
「みっちゃん、おはよぉぉっ!」
「おっ…おはようございますっ!」
唐突に会議室へと飛びこんできた生徒2人の声に、想い出の世界から引き戻される。
「お、おはよ…て、後藤に…吉澤も?ちゅうかどした?まだ15分もあ…」

「いつもの時間だったら、よしこ部活遅れちゃうからっ」
「職員室行ったら、もうこちらだって聞きまして…」
妙にテンションの高い後藤、いつも通り穏やかながらどこか落ちつかない吉澤に遮られる。
――なんやねん、コイツら。

少々困惑気味の平家の目前に、耳まで真っ赤になった後藤が両手の甲を突出す。
「ハァッ!?」
視線だけで吉澤に解説を求めてみても、相変わらず目を泳がせて…こちらも顔が赤い。
37 名前:<Campari&Soda+××××>3. 投稿日:2002年08月24日(土)12時37分24秒
もういちど、後藤の両手へと視線を戻す。
「あ…。爪…?」

平家の言葉に2人そろってびくりと肩を揺らし、後藤はゆっくりと両手を下ろす。
そのまま無言で固まる3人。その沈黙を打ち破るが如く、後藤が早口でまくし立てる。
「あのっやっぱみっちゃんには報告しなきゃかな、って、だから…っ」
「って言いますか、『ひとりでみっちゃんのニヤニヤには耐えれないぃ』って、ごっち…」
「ちょっ…よしこっ」
「は、はいぃぃ」
また、唖然とする平家。それでも、自分の表情がジワジワと緩んでくるのがわかる。

両手を2人の首に回して、そのまま自分の肩までぐっと引き寄せる。
「幸せ、つかんだらな…もぉ、離すな」
両手両肩に伝わる動きで、2人がしっかりとうなずくのが感じられる。
その表情は見えないが、2人とも笑顔に違いない―穏やかな笑みに、へらっとした笑み。
38 名前:<Campari&Soda+××××>3. 投稿日:2002年08月24日(土)12時38分06秒
その後慌てて吉澤を部活へと送り出し、後藤の自習を見守って、また吉澤を迎えて。
少しだけ照れくさそうな表情で手を振る2人を、平家は笑顔で見送った。

なんだかとても大切なことを教え子から教わった、そんな気がする。
――ねぇ。やっぱおもろいですわ、教師って。
誰もいなくなった会議室の窓から、再び空を見上げる平家の表情は、どこか清々しくて。

自分も元教え子として、思い知らせてやらねばならないことがある―あの、ヘタレ教師に。
――いまだに、どんだけ、アタシの想いが強いモンか、っちゅーことを…ね。
大事に大事に胸の中に仕舞ってきた大切な想い出。
それを塗り替えてみようか、そんな勇気をくれたのは、他でもないあの2人。

平家は携帯電話を取り出し、もう1年だか2年だか…随分と使わずにいた
―それでも、決して消すことの出来なかった―メモリーを呼び出し、通話ボタンを押す。
…空を、見上げながら。

「…あ、もしもし?」
39 名前:<Campari&Soda+カルピス> 投稿日:2002年08月24日(土)12時39分22秒

ほのかに甘くて、なのにやっぱり苦くて苦くて。
それでも後をひいて仕方がない、そんな、アナタとの大切な想い出。

でもねぇ…やっぱ正直、もぉちょい甘い方が、好みやったりするんです。
ね…悪いコト言わんから、カルピスでも混ぜてみましょうや。
きっと、キレイな淡いピンク色になったりしますよ。

え?そんなん、ウチらの柄と違うって?
そんなこと、気にせんと行きましょう。
どうせウチらしか、おらんのやから。ねぇ?そないに照れんで…。

Campari&Soda+カルピス―――終わり。
40 名前:nishi 投稿日:2002年08月24日(土)12時45分17秒
…イイのかなぁ…こんなんで(w。

4杯目、以上で完結です。
お付き合い下さった方々、どうもありがとうございました。

言い忘れてたんですが(お分かりだとは思いますけども)
4杯目は、3杯目のサイドストーリーだったりします。ハイ。
自分で書いててナンですが、高校生の平家さんはイメージできんわ…(ニガ。

カンパリカルピス、実際結構イケますよ(w。甘いけど。
機会があれば、お試しください。

それでは、また。
41 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月25日(日)02時15分28秒
4杯目、おいしく頂きました。
あー、みっちゃんみたいな教師がいてくれたら、自分もなにか変わってたかも…とか思ってしまった。
高校時代なんて遥か彼方…ハァ

甘めの酒は苦手なんですけど、よしごまは甘い方がいいすね(w
裕ちゃんメインで「カミカゼ」とかもありすか?
42 名前:18 投稿日:2002年08月25日(日)17時05分50秒
カンパリカルピス、乙でした。
もうこういう話を読むと顔がニヤけてニヤけて(w
みっちゅーでもなんら問題はありませんですよ。

>「なんかアタシが、元教え子に手ぇだしたとんでもないエロ教師みたいやんか」
そう、こういうのが姐さんの真骨頂!と一人で大興奮してしまいました(w
次回作以降も楽しみにさせていただきます。
43 名前:nishi 投稿日:2002年08月28日(水)22時34分13秒
レス、ありがとうございました。お返事をば。

>41:名無し読者さん。
そう言って頂けると嬉しいです。平家さんが教師だったら…毎日学校行きますね。(w
中澤さんに「カミカゼ」!!似合いますね…ヤバイ、イイです!
自分なりの解釈をねじ込んでもOKなのでしたら、その内に書きたいです。

>42:18さん。
真骨頂ですか!ありがとうございます。(w
ニヤけて頂ければ、バンバンザイです。ハイ。
…いろんな姐さんを書いてゆければ良いなぁ、と。
44 名前:<Gimlet>0. 投稿日:2002年09月03日(火)20時56分20秒
<Gimlet>0.

―――あの話が、私たちメンバーに知らされた日。

「だいじょうぶだよ、あたしいなくっても。
 よっすぃには、梨華ちゃんとかさ、同期だっているんだし」

そう言って曖昧に笑うあなたに、無性に腹が立って――
あなたの笑顔が私の涙でかすみはじめる前に、あなたを壁に抑え付けた。
両手に感じたあなたの肩の小さな震えを、今でも鮮明に覚えてる。

有無を言わさず口付けて、
女のコを襲うなんて、めったにない経験だ…なんて、場違いなことを思った。
45 名前:<Gimlet>0. 投稿日:2002年09月03日(火)20時56分55秒
自分の舌に激しい痛みを覚えたのは、その直後。
…噛まれたんだよね、思いっきり。
それでも、私の血で赤く濡れたあなたの唇は、

キレイで
扇情的で
オカシイくらいに―――
46 名前:<Gimlet>0. 投稿日:2002年09月03日(火)20時57分26秒
―――あの話が、メディアを通じて世に出た日。

「よっすぃ、ちょっと、イイ?」

別にね、抵抗しようと思えば、できたんだ。でも何故だろう、私は…。
あなたは、無言で、私を抱いた。
肩に感じたあなたの両手の小さな震えを、今でも鮮明に覚えてる。

ただ唐突に組み敷かれて、
女のコに襲われるなんてのも、めったにない経験だ…なんて、また場違いなことを思った。
47 名前:<Gimlet>0. 投稿日:2002年09月03日(火)20時57分58秒
あなたの目に射すくめられたのは、その直後。
…泣いてるのかと、思ったんだ。あなたが。
そこに涙は光ってなかったけれど、それでもあなたの目は、

悲しくて
狂ってて
オカシイくらいに―――

48 名前:nishi 投稿日:2002年09月03日(火)21時04分04秒
5杯目<Gimlet>です。ひとまずプロローグだけ。
過去4杯とはかなり違う路線の酒ですが、お付き合い頂ければ幸いです。
49 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月08日(日)01時25分50秒
いつになくキツめの酒ですね。
出だしの雰囲気からもかなり濃い目を期待してます。楽しみッス〜
50 名前:<Gimlet>1. 投稿日:2002年09月08日(日)22時32分09秒
<Gimlet>1.ウソツキ。

珍しく早々に仕事から解放され、自宅へと戻る。
久々にゆっくりと家族と言葉を交わしながら準備されていた温かい夕食を摂り、
ふと時計に目をやれば、8時まであと7分と少し。

テレビのリモコンを手に取りながら、吉澤は思う。
――今ごろ、すっごい緊張してるんだろな…。

その緊張をほぐしてあげる立場に居ない自分、その事実にやりきれなさを感じるが。
これからは、それが普通のことになってしまうのだから。
彼女は、一人で歩き始めることを、選んだのだから。
俯き加減に少しだけ笑って、テレビの電源を入れる。
51 名前:<Gimlet>1. 投稿日:2002年09月08日(日)22時33分02秒
「大丈夫だよ。ごっちんなら、やれる」
生放送のオープニングを見ながら、そんな言葉が吉澤の口をついて出て。
テレビの前でひざを抱え、高くも低くもないテンションのまま進む番組を見守る。

カメラが後藤の表情を捕らえた瞬間に思わず両手をぐっと握り締めれば、
右手につかんだままだったリモコンが小さな音をたてた。
彼女の卒業に合わせて、番組では過去のOAの特集が組まれていた。

後藤デビュー当時の映像を見ながら、どこか複雑な表情を浮かべる吉澤。
――この頃は、まさかごっちんと友達になるなんて…思ってもなかったな。
52 名前:<Gimlet>1. 投稿日:2002年09月08日(日)22時34分02秒
「ごっちん、若けぇ〜〜〜」
誰に話しかけるでもなく、ひとりごちて。
が、画面がプッチの映像に切り替わった瞬間、なんとも言えない感情が押し寄せる。
――市井さんが抜けて、あたしが入って…また、2人が…。

しかしそんな考えも、一瞬のうちにかき消される。
……画面の右下に小さく映し出された、一瞬表情の消えた後藤を目にしたから。
――ねぇ。何が、アナタに、そんな顔させてんのかな?…それとも、「誰が」?

その質問に答えてくれる声は得られずとも、
あの―後藤の―顔を目にした時に取るべき行動だけは、吉澤の中に鮮明に浮かぶ。
53 名前:<Gimlet>1. 投稿日:2002年09月08日(日)22時34分49秒
体重が増えた減ったと笑い転げる後藤の声を耳に、吉澤はその行動を実行に移す。
「おかあさぁ〜ん。今日これから、ごっちんとこ行くから」
このところ後藤の家に泊まることが極端に多くなった娘の言葉に、母親は怪訝そうな顔。

「ごめん、言うの忘れてた。けど、約束してたんだ」
――これは、ウソだけど。
「ごっちん、今タイヘンな時期だから…少しでも一緒に居てあげたくて」
――これは、ホント…。

「…どっちが、一緒に居てもらってんだかね…」
吉澤の困ったような表情を目に、母親は軽く溜め息をついて。
「あんまり、ご迷惑にならないようにしなさいよ」
しかしそれでも許してくれるのは、あの日大泣きしている吉澤を目にしたからか。
54 名前:<Gimlet>1. 投稿日:2002年09月08日(日)22時35分22秒

後藤の家までの最寄駅に降り立った瞬間、吉澤の携帯が震える。

「もしもし?」
『あ、よっすぃ?今家に着いたよ』
いつもよりも抑揚のない声に、吉澤はやはり自分の考えが正しかったと悟る。
「おおぅ。お疲れ〜ぃ」
精一杯の明るい声で応えるが、電話の相手のテンションは変わらずに。
『今から、来てよ…』
「…うん。すぐ行く…」
『ん。じゃね…』
そんな1分足らずの通話を切り、吉澤は後藤の家へと歩調を速める。
夜空に浮かぶ星たちの光が、なぜか空々しい――そんなことを、思った。
55 名前:<Gimlet>1. 投稿日:2002年09月08日(日)22時35分59秒

インタフォンの呼び出しボタンをゆっくりと押す。
『はぁーい』
「あ。あたしー」
『よっすぃ!?』
バタバタと玄関越しに物音が響いて、勢いよくドアが開く。

「えへ…。さっき電話もらったとき、ちょうど駅に着いたトコだったんだ」
「え…」
後藤の少し驚いたような表情を目にしたのが嬉しくて、そのままおどける吉澤。
…これからのことを考えれば、とてもそんな気分ではないけれど、胸を張って。
「オイラはぁー、ごっちんの考えてることなら、なんでもわかっちゃうのさっ」

しかしその言葉を耳にした瞬間に、後藤からは驚きの表情さえ消え失せて。
「…ウソツキ」
そのまま無言で吉澤を家へと引っ張り込む後藤に、抗う術もなかった。
56 名前:nishi 投稿日:2002年09月08日(日)22時40分19秒
更新です。遅くなりまして…。

>49:名無し読者さん
レス、ありがとうございます。
ギムレット、バーテンさんの腕前が一発でわかっちゃう酒ですね。
この話も、作者のヘタレっぷりが一発で…(苦笑。
57 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月09日(月)01時13分04秒
おぉ?ごっちん、どーして無言なのぉ?気になる。
よく「鈍感」と言われる自分は、この時のよしこの気持ちが手に取るように…(w

自分はギムレットを頼むことってほとんどなくて、腕の違いなぞわからないので
今度飲んでみます。昔はジン好きだったんだけど、最近はもっぱらウォッカ。
58 名前:<Gimlet>2. 投稿日:2002年09月12日(木)22時46分54秒
<Gimlet>2.

夜半過ぎ、ふと目を覚ました吉澤。
カーテンの隙間から射し込む月の光が、ただ部屋を青く照らし出している。
隣で眠る後藤を起こさぬように、吉澤はそっとベッドを抜け出して。

無造作に椅子へとうち掛けられていた後藤のパーカーを勝手に着込む。
夏の終わりとはいえ秋の風も吹きはじめたここ数日、夜は少しだけ冷える。
乱暴に床へと脱ぎ捨てられた2人分の衣類をそっと拾い上げ、
音を立てないようにゆっくりと椅子に掛けて。

ふっと溜め息をつきながらベッドへと振りかえれば、そこにはただ静かに眠る後藤。
そのままベッドへの脇と歩みより、ひざまずいてその穏やかな寝顔をのぞきこむ。
59 名前:<Gimlet>2. 投稿日:2002年09月12日(木)22時47分27秒
「なにやってんだろね、あたしたち…」
小さな小さな声で、呟く吉澤。
「付き合ってるワケでも、ないのにさ…」
後藤の顔にかかる長くて茶色の髪を、そっと払う。
それでも特に抵抗もなく後藤を受け入れてしまう自分の身体が少し疎ましいけれど。

痛々しいほどに感情的な、無表情―そんな表現がぴったりくる―で自分を抱く後藤。
まだどこかあどけない表情で眠る目前の後藤。
どちらが本当の後藤なのか。果たして2人は同人物なのか…それすら不安になる。

『オイラはぁー、ごっちんの考えてることなら、なんでもわかっちゃうのさっ』
『…ウソツキ』
――そうだね…。今のあたし、ごっちんがなに考えてんのか、全然わかんない。
60 名前:<Gimlet>2. 投稿日:2002年09月12日(木)22時48分14秒
「ゴメン…」

身体を陵辱されているのは自分。それでも心を陵辱されているのは、後藤…
なぜだかそんな気がして、後藤と同じベッドの上に戻ることがためらわれた。
そのまま床に座りこみ、ベッドの上で両腕を組んでそこに突っ伏せば、
パーカーへと移った後藤の香りに包まれて…吉澤はそのまま目を閉じた。

眠りへと落ちる間際に、後藤が静かに笑う声を聞いた気がする。

朝が来れば、そこにはまたいつもの後藤が居るのだろう。
自分のとなりで笑顔とともに仕事をこなす、いつもの後藤が。
2人がこうなってしまったのは、いつからだったろう…。
61 名前:<Gimlet>2. 投稿日:2002年09月12日(木)22時48分56秒
◇ ◇ ◇

「よっすぃ…」
「ん?」
それはまだ、夏が始まる前のこと。

「あたし、さ…」
「…うん?」
セミの鳴き声は、もう響き始めていただろうか。

「卒業、するんだ」
「…ハァッ?」
あぁそれとも、まだカエルの鳴き声が響いてた?

「娘。、辞めるの」
「……」
自分は声の出し方を忘れたのかもしれない…そう、吉澤は感じた。
62 名前:<Gimlet>2. 投稿日:2002年09月12日(木)22時49分36秒
地方での公演を終え、明日は午前中の便で東京へ。そんな夜の出来事。
吉澤の部屋を訪れた後藤が我が物顔でベッドに腰掛け、
吉澤は冷蔵庫から買ってあったドリンクを取り出して…そんな瞬間の出来事。

吉澤は無言でドリンクをベッドサイドに起き、後藤の隣に腰掛ける。
それを期に、後藤が再び口を開く。
「みんなにはね、まだ当分言わないんだ」
「でも、よっすぃにだけは、先に言っときたいなぁって」
「…なんか、ゴメンね。共犯みたくなっちゃうねぇ。あはっ」
多少無理をしているかのような、後藤の陽気な声だけが室内に響く。

吉澤はそんな後藤の表情を確かめるのがひどく怖くて、
後藤の俯いた顔を隠す茶色の髪を、ただ見つめていた。
63 名前:<Gimlet>2. 投稿日:2002年09月12日(木)22時50分12秒
「じゃ、あたし…部屋に戻るね」
またしても沈黙を破ったのは、後藤。立ちあがる彼女の腕を、反射的に掴む吉澤。
しかし振り返りざまの後藤の目が一瞬だけ不安げに揺れたのを目にして、
吉澤はその手をゆっくりと離した。頭の中で、何かが警鐘を鳴らしている。

「…おやすみ」
吉澤がかすれた声でその言葉を発するのに、ゆうに10秒は費やしただろうか。
そんな吉澤を後藤もまたどこか困惑したような表情で見下ろして、言う。
「うん、おやすみ…」

後藤が立ち去った後の部屋は、気味が悪いほどに静かで。
いつもならば気にもとまらない隣室からの壁越しの音が、いやに耳につく。
64 名前:<Gimlet>2. 投稿日:2002年09月12日(木)22時51分04秒
遠くから誰かの笑い声が響いた瞬間、吉澤は呟く。
「ごっ…ち…」
その名を口にした瞬間に、こらえていた涙が溢れてきて。

あの笑顔があまりにも近くにあり過ぎて、失うことなんて考えもしなかった。
彼女が卒業したからといって、2人の友情が壊れるわけではないけれど。
それでも。

「あ…っは。今日、シングルルームでよかったよ…ほんと、よか…っ…」
流れ出る涙をそのままに、吉澤は無理矢理に笑う。
あの掴んだ腕を離さなければ、今ごろ後藤に泣きすがっていたかもしれない。
それどころか彼女を責めて、その決意を否定する言葉を浴びせていたかもしれない。
65 名前:<Gimlet>2. 投稿日:2002年09月12日(木)22時51分36秒
自分を振り返ったときの後藤の目、それを吉澤は思い出していた。
まだ心のどこかで、気持ちが固まりきっていない―そんな目。

――行かないでよ。もっと一緒に笑ってたいよ。ねぇ、置いてかないで。
そんな言葉を投げかければ、あるいは―そんな目。

「あり得…ない」
これは彼女に訪れた、大きな転機。それを潰す権利が誰にあるというのか。
そもそも彼女の意志を曲げるほどの力が、自分の言葉にあるというのか。
――あたしがわめいたって、ごっちん困らすだけだよ…。

目線をベッドサイドに戻せば、そこには先ほど取り出したドリンクが汗をかいており。
その表面に浮かぶ小さな水滴が、いくつか集まって次々に下へと垂れていく。
「はっ…一緒に、泣いてくれてんの?」

東の空が白み始めるまでその水滴を見つめながら、吉澤は一つの決意をした。
66 名前:nishi 投稿日:2002年09月12日(木)22時55分21秒
更新です。段々文章が湿ってきてイヤな感じです。(ニガ

>57:名無し読者さん。
レス、ありがとうございます。
後藤さんの無言の理由…彼女にも彼女の葛藤があると言うことで…
(答えになってませんが w)

67 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月12日(木)22時58分24秒
リアルタイムキター!
あんまり感想をどうこう言うのは止めましたので、簡潔に。
読んでます、ずっと。
応援してます、頑張ってください。
68 名前:すなふきん 投稿日:2002年09月15日(日)01時00分57秒
なんか、2人のギリギリな関係がゾクゾクする感じで期待大!
69 名前:名無し読者。 投稿日:2002年09月23日(月)18時00分19秒
胸の奥がギュッと締め付けられるような
切なさを感じさせるストーリーですね。
これからの展開が楽しみです。
70 名前:<Gimlet>3. 投稿日:2002年09月26日(木)05時00分41秒
<Gimlet>3.

2時間も眠れぬうちに、それでも朝は待ってはくれず。
冷水と温水を交互に使って、なんとか朝食の時間までに目の腫れは引いた。
昨夜からベッドサイドに置かれているドリンクを手に取り、一気に飲み干す。

そのペットボトルをごみ箱に投げ捨てて、吉澤は自分の表情を引き締める。
これから自分に残された後藤との時間、自らの決意を全うするために。

『笑顔で、送り出す』

カードキーを抜き取りながら、入り口に設置されてた鏡へと視線を走らせる。
鏡の中の自分にコツンと軽いパンチを入れて、吉澤は部屋を後にした。
71 名前:<Gimlet>3. 投稿日:2002年09月26日(木)05時01分12秒
部屋を出て右手に進み、念入りに清掃されているのだろうこぎれいな廊下を歩く。
右へ一つ、左へ一つ曲がった先のエレベータホールからは、聞き慣れた声が響く。
保田と矢口の声に加え、なんという偶然か…そのなかに混じる、後藤の話し声。

最後の門を曲がる前に一度足を止め、軽く深呼吸する。

「おはよーございまーす」
しっかりと後藤を見据えて―まるで側にいた2人が目に入っていないかのように。
振りかえりながら口々に挨拶を返す他の2人の笑顔とは対照的に、
後藤だけは、どう接して良いのかわからないといった困惑気味の表情を浮かべる。

吉澤はそんな後藤の側に歩み寄り、その顔をのぞきこむ。
そのまま目前で、へらぁっと笑ってみれば、思わずつられた後藤もなんとなく笑う。
72 名前:<Gimlet>3. 投稿日:2002年09月26日(木)05時01分55秒
「ちょっとそこッ。なに朝っぱらから2人でニヤニヤしてんの?」
「しかもそんなすみっこで無言でさぁ…ちょっとキショいっつーの」
その場にいあわせた年長組2人が、その独特の雰囲気にたまらず口を挟む。

「ごぉっちぃ〜ん、うちら、キショいってぇ〜〜」
「キショッ。あは〜」
しかしその言葉も後藤と吉澤の笑いを更に誘うだけであり。

しばらくいぶかしげな顔で後藤と吉澤を観察していた矢口だったが、
やっときたエレベータへと乗りこむ瞬間に、すっと吉澤を引き寄せる。
右手の仕草だけで吉澤に「耳を貸せ」と伝え、吉澤もきょとんとしながらもそれに応じる。
「はい?」
「…もしかして、ついにごっつぁんのコト、オトしちゃった?」
73 名前:<Gimlet>3. 投稿日:2002年09月26日(木)05時02分40秒
「…は、はいぃ?!」
矢口の耳打ちに過剰な反応をとってしまった吉澤に、乗り合わせた人々の視線が集まる。

「しっ失礼しましたっ。ちょっと、朝からなんて声あげてんのッ」
慌てて保田が周囲の人々に謝り、そのまま小声で吉澤を叱る。
「すみません…」
吉澤はバツの悪そうな顔で誰にというわけでもなく軽く謝り、エレベータは下降を始める。

「矢口さぁん…イキナリなんてこと言うんですかぁ…」
一連の出来事以来、吉澤はますます矢口に頭が上がらない。
「なぁんだ…違うのかぁ。だよねぇ…全然そんな雰囲気でもないもんねぇ…」
「ちょ…全然、って」

お約束のように少し拗ねた表情を作った吉澤を見上げながら、矢口は続ける。
「なんかさ、感じ、違うような気がして。2人の…」
74 名前:<Gimlet>3. 投稿日:2002年09月26日(木)05時03分12秒
矢口には本当にやられっぱなしだ―そんな思いが吉澤の頭を過ぎるものの。
「そんなこと、ないですよ」
少しだけ切なそうに笑う吉澤を目に、矢口もそれ以上の詮索を止める。
「ま、ならいんだけどさ」
ぽんぽん、と軽く吉澤の腕を叩く。それに吉澤も軽く微笑んで返す。

エレベータの隅でこそこそとそんな会話を交わす2人を、後藤は逆の隅から見やる。
その後藤の複雑そうな表情に気付いたのは、隣にいた保田。…胸に一つの心当たり。
「アンタ…あの子に…?」
視線だけで素早く吉澤を指す保田に、後藤はゆっくりと頷いて。
「ん…」

少しだけ首を傾けながらふっと溜め息をついて、保田は後藤の頭をくしゃりとなでる。
後藤が口の端だけで笑おうとした瞬間に、エレベータは目的の2階へと到着した。
チェックアウトのために1階へと向かう他の乗客をよけて、エレベータを降りる4人。
75 名前:<Gimlet>3. 投稿日:2002年09月26日(木)05時03分49秒
エレベータを降りた後藤の前に唐突に広がる、見慣れた左手。
「ごっちん、行こっ」
振り向いてその手を差し出している吉澤に、後藤もなんとか笑顔つくり右手を伸ばす。

しっかりと繋がれた2人の手。
少々無理をしているかのような吉澤のはしゃぎ具合。
そんな吉澤にひっぱられ気味ではあるが、どこか戸惑いの隠せない後藤。

そこに小さな小さな歪みが生じはじめていたこと。
年長組2人はおろか、当人達でさえも、気付けずにいた。


76 名前:nishi 投稿日:2002年09月26日(木)05時23分13秒
更新です。とんでもない間を空けてしまい、申し訳ないです。
申し遅れましたが、<Gimlet>は<抹茶&Malibu>の設定を
ベースにしています。よろしければ、1杯目のほうもどうぞ。

レス、ありがとうございます。
>67:名無し読者さん。
応援…ありがとうございます。素直に嬉しいです。
えぇと、66での自分のレスに、他意はありません。(^^;
お好きなときにお好きなことを書きこんで頂ければありがたいです。
>68:すなふきんさん。
ギリギリな2人を書きながら、自分がギリギリだったりします(w。
酒の選択を間違えた、かもしれません。が、手を出した以上は、飲み干します。
>69:名無し読者。さん。
自分で書いておいてなんですが、(あり得ないんで心配ないけど)
現実の2人にはこんな苦い酒は飲んで欲しくありません(w。
ただ敢えてこの酒を選んだのは…恒例(?)最終レスでの酒語りにて。(^^;
77 名前:67=18 投稿日:2002年09月27日(金)02時23分37秒
いや、自分が勝手に書き方を変えただけのことです。
気にしないで下さい。
わざわざ気を使わせてすみません。

で、今回も簡素に。
次回更新まで抹茶マリブを飲みながら(読みながら)マターリと待ってます。
がんがってくらさい。
78 名前:<Gimlet>4. 投稿日:2002年09月29日(日)10時56分54秒
<Gimlet>4.

シャッフル、レギュラー番組の収録、そして娘。としてのテレビ出演…仕事は際限なく続く。
仕事があるのはありがたいこと…そんな世界であることはわかっていても、疲労は溜まる。

後藤から卒業を告げられて以来、吉澤の注意はますます後藤へと注がれていた。
間近から見ていても、このところの後藤の振る舞いは完璧であるように吉澤には思える。
彼女が『卒業』の2文字を胸に秘めているなんて、他の誰が気付くだろうか。

――ごっちんから言ってくれなかったら、あたし、気付けてたかなぁ…。
そんなことを考えていると、メンバーと雑誌片手に談笑していた後藤と唐突に目が合った。
しばしの間無言でみつめあっていると、後藤の表情にわずかな不安げな色が混じる。

このところ、この表情を目にする機会が多いような気がする。
唯一本当のことを打ち明けている自分へ、無意識に心を許しているのだろうか。
――だったら、むしろ嬉しいんだけど。
79 名前:<Gimlet>4. 投稿日:2002年09月29日(日)10時57分44秒
他のメンバーが不信に思う前に、吉澤はそこで思考を打ちきりテンションを一気に上げる。
「いっやぁ〜ん。ごっちん、そんな見つめないでよぉ。よしこ、照れちゃう〜〜」
わざとらしくしなをつくり、流し目でまばたきを繰り返しながら少しもだえてみせれば、
そんな吉澤を目に、後藤は手に取っていた雑誌を閉じながら豪快に吹き出す。
「あはっ。よっすぃ〜〜〜、それちょっと、オカマっぽい!」

後藤の的確な突っ込みに、周囲で笑いをこらえていたメンバーも同じく吹き出す。
「ねぇッぇ〜〜ん、のんッのぉ〜〜」
「なぁに〜〜ん、あいぶぉ〜〜〜ん?」
ここぞとばかりに便乗する2人。もちろん、半ば意味不明な振り付きで。

「なにみんな、オネェ言葉んなってんの」
苦笑いを浮かべながら言った保田に、居あわせたメンバーの期待の視線が集まる。
80 名前:<Gimlet>4. 投稿日:2002年09月29日(日)10時58分23秒
「なっ…なによッッ」
急に慌てふためく保田に、さらに笑いが誘われる。
「もぉ〜圭ちゃん、ノリ悪いなぁ〜〜」
そう言って笑いながらも、吉澤の視線は声をあげて笑う後藤に固定されたまま。
――そう、ごっちん。もっと笑って。あなたが笑顔でいてくれれば、あたしはそれでいい。

多少申し訳なくは思うけれども、他のメンバーのことなんて二の次で。
残された娘。としての時間を、後藤が楽しく過ごせるように―頭にあるのは、ただそれだけ。
――ねぇ、ごっちん。あなたが笑ってられるなら、あたしはなんでもするよ?

ハードスケジュールの中空き時間にまで道化を演じるのは正直かなりの負担だけれど、
それも後藤を想うがゆえ。いつしか吉澤からは、否定的な言葉が全く消えていた。
81 名前:<Gimlet>4. 投稿日:2002年09月29日(日)10時59分03秒
それから数日。もちろんそんな吉澤を目に、心配するメンバーがいないわけではなく。
控室の片隅で仮眠をとる後藤に目を奪われ表情を失っている吉澤に、矢口が気付く。
「よっすぃ?」
「はい?」

瞬時に作られた吉澤の笑顔に、矢口は逆に不安を煽られる。
「よっすぃ、なんか…や、疲れたら、ちゃんと休まなきゃだよ?」
心配そうに見上げてくる矢口を見下ろし、軽く微笑んで吉澤はおどけてみせる。
「なぁ〜に言ってんすか、矢口さぁ〜ん。ヨシザワ、まだまだ頑張れますよぉ〜!」

そのとき入ったスタンバイの指示に妙なステップで後藤を起こしに行く吉澤の背中に、
矢口はポツリと呟いた。
「だから…だから、心配なんだよ。よっすぃが、頑張る子だから…」
82 名前:<Gimlet>4. 投稿日:2002年09月29日(日)10時59分42秒
その日の収録を終え部屋へと戻った吉澤は、ドアを閉めると同時に肩で息をつく。
「やっと、ひとりだ…」

笑顔を保つこと、その難しさを、吉澤は改めて痛感していた。
家族を含め周囲は誰一人として事情を知らない。メンバーにさえ頼ることは出来ない。
矢口の言うこともよくわかる。実際、肩に力の入りすぎている自分を感じるから。

それでも。
矢口に心配をかけても、例え他の何を犠牲にしても、守りたい笑顔があるから。
吉澤はふと顔を上げ、バッグから携帯電話を取り出す。
リダイアルを探しながら、収録中から考えていた嘘に矛盾はないか、もう一度考える。
83 名前:<Gimlet>4. 投稿日:2002年09月29日(日)11時00分31秒
通話ボタンを押し、待つこと数秒。
「もしもしー、こんな時間にすいません。今、大丈夫ですか?」
「ありがとうございます」
「はい。あの…お昼のことなんですけど…」
「やー、実はぁ…最近、なんかちょっと、ヤバめなんです」
「え?…てか、ごっちん見てると、そのォ…」
「あは…まぁ、ぶっちゃけちゃえば、そうゆうことです」
「あー、ごめんなさい。やっぱヒイちゃいますよね?こんな話」
「…ありがとうございます。こんな相談できるの、矢口さんだけっていうか…」
「はい。アタシがホンキでごっちん好きだって、多分他の人は気付いてないでしょうし」
「ですよねぇ。まさか本人に言うわけにも…さすがのごっちんでも、ヒクだろうし。あはっ」

「あー…ほんと、フォローとかしてもらえると、マジ助かります」
「はい。ごっちんには、内緒にしといて下さいねぇ…」
「ありがとうございます。ほんとに」
「はぁい…じゃぁ、おやすみなさい…」
84 名前:<Gimlet>4. 投稿日:2002年09月29日(日)11時01分04秒
通話時間の表示されたディスプレイを見ながら、電源ボタンを押して電話を切る。
携帯を閉じてぎゅっと両手で握り、本人には言えない謝罪の言葉を口にする。
「矢口さん、ゴメンナサイ…」

それでも。大切な先輩を騙してでも、守りたい笑顔があるから。

机の上に携帯を置きながら、その正面に貼ってある後藤との写真に目をやる。
「ばーか…」
写真の中の2人は、心底楽しそうな、何の曇りもない笑顔を浮かべていて。
「ごっちんのおかげで、どんどんウソばっか巧くなるじゃんか…」
その写真を指でパチンとはじきながら、吉澤は思わず鼻で笑う。
「なぁにが『欲情』だぁ…そんな余裕、今のあたしにはねぇっつの…」

それでも。自分の恋心を汚してでも、守りたい笑顔があるから。
85 名前:nishi 投稿日:2002年09月29日(日)11時08分01秒
こんな時間に更新してみました。

>77:67=18さん。
ありがとうございます。頑張ります。
そろそろ、話の筋が見えてきた感じです。(ヲ
86 名前:名無し読者。 投稿日:2002年10月09日(水)22時26分02秒
なんか、よっすぃ〜が切ないよ…
続き、楽しみに待ってます。
87 名前:名無し読者。 投稿日:2002年10月14日(月)00時55分40秒
更新、まだかなぁ…
88 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月20日(日)23時56分18秒
そろそろ復帰予定ですかね?マターリがんがってくらさい
89 名前:nishi 投稿日:2002年10月28日(月)00時53分41秒
復帰が非常に遅れまして、お待ち頂いている方には大変申し訳なく思っております。
ネットに繋がり次第更新しますので、ご理解頂ければ幸いです。すみません。
90 名前:<Gimlet>5. 投稿日:2002年10月31日(木)23時12分16秒
<Gimlet>5.

「あ、ごっちん、おはヨーグルト!!」
後藤が楽屋へと顔を出した瞬間に発せられた吉澤の言葉に、一瞬周囲が凍りつく。
そんな室内の沈黙を破るのは、まだドアに手をかけたままの後藤。
「あはっ。よっすぃ、なにそれ!?」

その声を皮切りに、それぞれが口を開く。
「…吉澤、アンタホントに85年生まれ?」
「なに?圭ちゃん、今のギャグに心当たりでもあんの!?いやぁん、歳がばれちゃう〜」
「ちょっ!そうゆう矢口だって、知ってるからそゆこと言うんでしょ!?」

勝手に盛り上がるメンバーたちを一瞥し後藤へと視線を戻した吉澤は、
彼女の笑顔が真顔へと戻る―もしくは、表情を失う―瞬間を目にし、息を飲む。
吉澤の突飛な行動に後藤が率先して反応し、瞬時に楽屋が喧騒を取り戻す―
そんな日常の風景が、ほんの少しだけきしむ音をたてはじめるのを感じて。
91 名前:<Gimlet>5. 投稿日:2002年10月31日(木)23時13分14秒
「ねぇ、よっすぃってさ…」
わずかな空き時間にぽつりと話しかける後藤。隣に腰掛ける吉澤は黙って続きを待つ。
「あたしのこと、好きだったんだっけ?」
初めて後藤の口から飛び出た自分の気持ちを嘲るかのような言葉に
思わず後藤を振り返った吉澤が目にしたものは、後藤のなぜか自虐的な笑み。
その表情に、憤りを感じる間もなく吉澤の頭の中は真っ白になる。

言葉を失っている吉澤に対して、その表情のまま鼻で笑うように続ける後藤。
「ねぇ?確か、そうだったよねぇ」
「ごっちん…?」

困惑気味の吉澤へと視線を走らせ、それをすぐにそらして後藤は溜め息をつく。
「ゴメン…どうかしてる」
そう言い残し後藤はその場を立ち去り、残された吉澤は静かに両手を握り締めた。
92 名前:<Gimlet>5. 投稿日:2002年10月31日(木)23時13分52秒
後藤の卒業がメンバーに告げられたのは、その日の終わりのミーティングにて。
そこでは同時に保田の卒業、ユニット改編、ハロプロ全体としての動き等、
後藤に関しての覚悟は決まっていた吉澤ですら知らない事柄が矢継早に告げられた。

驚く者、涙する者、それぞれにショックを隠しきれないメンバーたちの中、
ひとり天井を仰ぐ吉澤。その表情は、場違いにも思えるほどに穏やかで。
周囲に気を配る余裕のある者がいたならば、その姿は放心にも見えたかもしれない。

ふと誰かの視線を感じて吉澤が顔を戻してその主をたどれば、そこにいたのは後藤。
彼女はすでに吉澤からは視線を外し、複雑な表情を浮かべてメンバーをなだめていたが。
93 名前:<Gimlet>5. 投稿日:2002年10月31日(木)23時14分24秒
なんとか収集が付きメンバーがそれぞれの部屋へと散っていったのは、夜半過ぎのこと。
吉澤の部屋のドアがノックされたのは、それから10分も経たぬころ。
その来客の正体をなんとなく悟った吉澤は、ゆっくりとドアを開け、後藤を招き入れる。
ごく普通に部屋の奥へと進む後藤の後姿に、吉澤は静かに声をかける。

「お疲れ。今日は大変だったね」
その声に振り向き、後藤は軽く微笑んで応える。
「まぁね」
ベッドのところで立ち止まる後藤のもとへ吉澤が追いつくかっこうで、2人並んで腰掛ける。

「よっすぃは、ちょっと、ホッとした?」
「ん?」
「だって、ほら、よっすぃだけじゃん?知ってたの」
「あぁ…」
94 名前:<Gimlet>5. 投稿日:2002年10月31日(木)23時14分58秒
吉澤は伏し目がちに応える。
「ホッとしたっていうより…なんか、ひとつひとつ、近づいてるのかなぁ、って」
「…卒業に、ってこと?」
「うん。ほんとに、卒業しちゃうんだなぁ、とか思って」
――なんかやっぱ、寂しいかも…。
思わず飛び出そうになった最後の言葉だけは、かろうじて飲みこんで。

「けど、あたしは恵まれてるなぁ、とか」
ぬぐいきれない寂しさを打ち消すために、吉澤は自分自身に言い聞かせるように続ける。
「ごっちんが、教えてくれたから。…覚悟、キメる時間がいっぱいとれて。うん、恵まれてた」
「…覚悟?」
「うん。ごっちんを、見送る覚悟」

その吉澤の言葉に、後藤の表情がわずかに動く。
95 名前:<Gimlet>5. 投稿日:2002年10月31日(木)23時16分02秒
顔を伏せ、脚を軽くばたつかせながら、後藤が言う。
「そっか…。も、できてんだ、覚悟」
吉澤はそんな雰囲気を吹き飛ばそうと、明るく笑い飛ばして。
「あははっ。けっこームリヤリに、だけどねぇ」

しかしふと顔をあげた後藤の切羽詰った表情に、吉澤は空笑いを止める。
「ムリヤリ、じゃないよ。平気だよ」
「…え?」

「だいじょうぶだよ、あたしいなくっても。
 よっすぃには、梨華ちゃんとかさ、同期だっているんだし」
後藤の曖昧な笑顔を目に吉澤の思考は止まりかけ、
それでもなぜか昼間の会話が急に頭を過ぎる。
『ねぇ、よっすぃってさ…あたしのこと、好きだったんだっけ?』
96 名前:<Gimlet>5. 投稿日:2002年10月31日(木)23時16分46秒
――ねぇ、わかってて言ってんだよね?
目の前の後藤は、すっとベッドから立ちあがり、ふらふらとドアの方へと歩こうとしている。
――あたしがごっちん好きだって、わかってて、なんでその言葉が出てくんの?
吉澤は―いつかもそうしたように―立ち去ろうとする後藤の腕を掴む。

後藤を失うことへの不安、気を張りっぱなしだったこのところに溜め込んだストレス、
抑え続けてきた後藤への想い―後藤の言葉をきっかけに、それらが一気にこみ上げる。
吉澤は自分でも驚くほど客観的に、自分の感情が決壊する瞬間を悟った。

あの時のように手を離しはせず、かわりにそのまま壁へと抑えつける。
後藤の体がこわばるのを感じたが、感情にまかせ強引に口付けて。
97 名前:<Gimlet>5. 投稿日:2002年10月31日(木)23時18分30秒
依然として後藤が硬直したままなのをいいことに、深く、浅く、何度も口付ける。
されるがままであった後藤が、しかし突然抵抗を見せ、吉澤の舌を強く噛む。
それを合図のようにして、吉澤はゆっくりと後藤を解放する。

「そっか…そ、だったんだ…」
ぽつりと呟く後藤に、どこか空を見つめていた吉澤が焦点を合わせようとする。
「演技、また巧くなったんだね。…騙されるトコだったよ」
しかし自分の血で赤く光る後藤の唇に吉澤の注意は惹きつけられ、言葉は頭を素通りする。
「あはっ…」
その唇が自嘲的な笑みを形作った瞬間に、やっと吉澤は少しだけ冷静さを取り戻して。

――違う…あたしが見たかったのは、そんな笑顔じゃないよ…。
それでも皮肉なことに、目の前で今にも泣き出しそうな顔で笑う後藤は、
ここ数日の間に吉澤が見てきたどの後藤よりも、感情豊かに感じられた。
どんなに楽しそうに振舞っていた後藤よりも。どんなに吉澤が苦心して笑わせた後藤よりも。
98 名前:nishi 投稿日:2002年10月31日(木)23時24分46秒
約1ヵ月ぶりの更新となります。ほんとに申し訳ないです。
レス、ありがとうございました。

>86:名無し読者。さん
こんな状態からどう甘く持ってくかが、勝負でしょうか(w

>87:名無し読者。さん
返す言葉もございません。お待たせ致しました。

>88:名無し読者さん
…当初の予定より2週間も遅い復帰となりました。

またよろしくお願い致します。
99 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月31日(木)23時34分10秒
ついにキター!
復活おめでとうございます。
マターリマターリでいいんで頑張ってください。
100 名前:名無し読者。 投稿日:2002年11月02日(土)16時20分09秒
待ってましたよ!
これからも頑張ってくださいね。
101 名前:名無し読者。 投稿日:2002年11月18日(月)21時19分05秒
またーり待ち。
102 名前:<Gimlet>6. 投稿日:2002年12月03日(火)19時12分12秒
<Gimlet>6.

◇ ◇ ◇

肩を揺らされる感触に吉澤がゆっくりと目を開ければ、そこには後藤の不機嫌な顔。
眠っていたのはほんのひとときだったようで、依然窓からは青い月光が射し込む。

「あ…ゴメン、パーカー、勝手に借りちゃった」
「別にいいけどさ。なんでそんなトコで寝てんの?カゼひくよ」
後藤の仏頂面は自分への心配が原因だと気付き、吉澤は曖昧な笑みを返す。

2人の間に流れる穏やかな雰囲気。
さっきまでのこと、今の夢、全て自分の思い違いではないかという気さえしてくる。
それでもベッドから上半身を起こす後藤のあらわな肩に、全て事実であると思い知らされる。
103 名前:<Gimlet>6. 投稿日:2002年12月03日(火)19時13分07秒
初めて後藤が吉澤を抱いたのは、ハロプロ改編が公に発表された日―8月1日。
かれこれもう1ヶ月以上も、だらだらと微妙な関係が続いていることになる。
吉澤がそんなことをぼんやりと考えていると、その手を唐突に後藤が引いた。

「こっち来て、寝よ。一緒に」
促されるままに、再びベッドへと潜りこむ。

暗い部屋の中隣で何度も寝返りを打つ後藤に、吉澤は静かな声をかける。
「…眠れない?」
長い沈黙を挟み、押し殺したような声がかえってくる。
「誰のせいだと思ってんの」
どこかで聞いたセリフだと、吉澤は苦笑を禁じえない。
「ってことは、あたしのせい、なのかな」
104 名前:<Gimlet>6. 投稿日:2002年12月03日(火)19時13分46秒
その言葉を聞いた後藤は、布団の中でもそもそと動き、吉澤の上へと這い上がる。
どこかけだるそうな表情で自分を見下ろす後藤を目に、吉澤は思わず息を詰める。
その瞳にはいつもの張り詰めた感情的な部分がない。代わりに漂うのは軽いあきらめ。

そんな後藤がゆっくりと上体を落としてくるのをぼんやりと目で追いながら、
言葉には出せない精一杯の謝罪を後藤に向ける吉澤。

――ゴメンね。ほんとに、わかんないよ。
ごっちんが何考えてんのか。ごっちんが、何をあたしに求めてんのか。

首筋に後藤の唇を感じ、直後に軽い痛みも覚え。
これが恋人への愛情からなされる行為ではない、それがわからないほど子供でもなくて。
105 名前:<Gimlet>6. 投稿日:2002年12月03日(火)19時14分35秒
吉澤は観念したように肩に入っていた力を抜き、そのまま目を閉じる。
自分が今の後藤に差し出せるものといえば、これしかないのかもしれない。
全て、彼女の意のままに…本当は、泣いて抗議したいほどに切ないけれど。

「ねぇ。なんでなんにも言わないの?」
唐突に投げかけられた言葉に、吉澤はゆっくりと目を開ける。
「抵抗とか、さ。…しないわけ?」
後藤は目をあわさずに、吉澤の左手を取る。

「あぁ…もしかしてよっすぃ、こうゆうの、好きとか?」
その左手の指一本一本に唇を這わせながら、後藤はわざとらしい笑みを浮かべて。
その言葉に、思わず吉澤の左手に力が入る。
106 名前:<Gimlet>6. 投稿日:2002年12月03日(火)19時15分09秒
「こうゆうのって、何?」
抑揚のない吉澤の声に、後藤が目線をちらりと走らせる。
「愛のない…セックス?それとも、まるでオモチャみたいに扱われること?」
吉澤の左手は、わずかに震えている。

「抵抗、して欲しいの?ごっちんが望むんなら、あたしはなんだってするけど?」

ベッドに横たわる吉澤にまたがり、その左手をとった後藤―その姿勢のまま無言で見詰め合う。
その均衡を先に破ったのは、後藤で。またしても緩慢な動作で、吉澤の隣へと横になる。

「なにそれ。信じらんない」
「…ごっちん?」
「よっすぃ、オカシイよ」
107 名前:<Gimlet>6. 投稿日:2002年12月03日(火)19時15分44秒
またしても重苦しい沈黙が2人を包む。室内に響くのは、時計の秒針が進む音だけ。
後藤が、ふぅっと溜め息をひとつ。

「そろそろさぁ…殴っても、イイ頃かな。…全力で」
「…は?」
「よっすぃが、あたしに告白してくれた日…」
「…ん」

そこでいったん言葉を切った後藤は、のそのそと起き上がり、吉澤を見下ろす格好で座る。
「あの次の日に、あたしが言ったこと、まだ覚えてる?」
つられて吉澤も起きあがり、ベッドの上で後藤と正対するかたちで座る。
「…忘れるわけないじゃん」

なんとなく長い話になりそうだと悟った吉澤は、手近にあったシャツをとり、後藤の肩にかける。
後藤がその袖に腕を通すのを見つめながら、吉澤は続ける。
「あたしが、ごっちんのそばにいてもいいんだ、って。そう言ってくれた」
108 名前:<Gimlet>6. 投稿日:2002年12月03日(火)19時17分14秒
ボタンをとめる後藤の指が、ふと止まる。
「違うよ。あたしは、よっすぃに、『そばにいて』欲しい、って。…そう言ったの」
「あと、さびしい思いさせちゃったら、あたし全力で殴られんだよね」
『その約束を果たせなくなりそうなのは、一体誰のせいなのか』
そんな思いが吉澤の脳裏を過ぎるが、口には出さず。

「大切な人がね、最近、本音で接してくれないの。あたしに、嘘ばっかつくの」
後藤は目も合わせずに、静かに語り始める。
「最初は、嘘だなんて気付かなかった。なんか突き放された感じして、さびしかった」
あまりの話の飛び方に、吉澤はかるく眉をひそめる。

「でも1ヶ月くらい前にあたしがヒドイコト言ったら、その人怒ってた。ムリヤリ、キスされた。
でも、その人の本音が見えた気がして、ちょっとだけ嬉しかった」
「ごっ…」
「もっとヒドイコトしたら、また怒って本音見せてくれるかな、って、その人にホントヒドイコトばっかした」
109 名前:<Gimlet>6. 投稿日:2002年12月03日(火)19時17分49秒
言葉を失っている吉澤を一瞥し、後藤は続ける。
「でもね、その人、怒らないんだよ。今度こそほんとに突き放されたみたいで、さびしかった」
吉澤は何も言えないまま、ぐっと後藤の左手を握り締める。
「ほんとはね、わかってるんだ。なんでその人が嘘つくか。…全部、あたしのため」

「でも…」
「ごっちんッ!!」
吉澤はたまらずに、後藤を正面から抱き寄せる。後藤はその背中に両腕をまわして。
「でも、さび…しぃ、よォ…」
吉澤は後藤の涙が自分の左肩を濡らすのを感じながら、自分もまた目の奥が痛くなってくるのを感じ。

東の空が白み始める頃、やっと吉澤が口を開く。
「ごっちん…」
「ん?」
向かい合って抱き合った姿勢のまま、後藤が目だけを上げる。
110 名前:<Gimlet>6. 投稿日:2002年12月03日(火)19時18分39秒
「ゴメン、ちょっとトイレ」
後藤は一瞬だけぼかんとした表情を見せ、すぐに破顔して吉澤にまわした両腕を解く。
「もぉナニ、よっすぃ、ムードなさ過ぎだからッ」
「ゴメン、ちょっとだけ待ってて」
涙に濡れながらも心からの笑顔に、吉澤は安心し、そして自分も少し笑いながら返す。

「すぐ戻るぜ、ハニィ」
そう言い残し、部屋を出る。

洗面所の鏡に泣きはらした自分の顔を映しながら、吉澤は思い起こす。
後藤が自分の前で涙を見せたのは、いつぶりだろうか。
自分が後藤の前で声を上げて泣いたのは、いつぶりだろうか。
そしてあんなにも自然な後藤の笑顔を目にしたのは、いつぶりだろうか。
111 名前:<Gimlet>6. 投稿日:2002年12月03日(火)19時20分00秒
素直じゃない女を追いかけるのは、本当に疲れる。
素直じゃない自分にも、本当に手がやける。

それでも、仕方がない。だって好きだから。
自分を振りまわす、彼女のことが。そして彼女に振りまわされる、自分のことが。

吉澤はいつかのように鏡へと軽くパンチを入れ、ニヤッと笑いかけ。
「ほんと懲りないね、君も」
112 名前:<Gimlet> 投稿日:2002年12月03日(火)19時20分43秒
初めて飲んだギムレットは
ジンの辛さとライムの苦味がきいて、痛烈な味。

でもね、安心してよ。
ギムレットには、何種類もレシピがあるんだって。
誰が作るかによっても、随分味が変わるんだって。

だから次にふたりでつくるギムレットは、
極上の甘々にするって決めてあるんだ。
甘すぎて、他の人には飲めないくらいにさ。

ね?いい考えでしょう?
113 名前:nishi 投稿日:2002年12月03日(火)19時23分38秒
以上で、5杯目<Gimlet>完結となります。
お粗末様でした。悪酔いされた方、スイマセン。

更新頻度、後藤&吉澤の心理推移、終わり方、
ツッコミドコロ満載ですが…。m(__)m
114 名前:nishi 投稿日:2002年12月03日(火)19時29分12秒
>99:名無し読者さん
いまだお付き合い頂き、ありがとうございます。
お言葉に甘えすぎ、マターリしすぎてしまいました。

>100:名無し読者。さん
またまたお待たせしてしまいました…。
復活直後のこの放置っぷり…申し訳ありません。


>101:名無し読者。さん
…返す言葉もございません。
待っていて頂いて、光栄でした。


あり得ない更新頻度で…ほんとにすみませんでした。
お待ち頂いていた方々に、ここでお詫びします。
そんでお待ち頂いた挙句、このラスト… m(__)m
115 名前:nishi 投稿日:2002年12月03日(火)19時31分39秒
あぁぁ。
112のラストに、
「Gimlet―――終わり。」
と入れ忘れました。…かなりどうでもいいトコですが。
116 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月04日(水)12時17分25秒
待ってました。
よかったですヨ、よしの「まだまだ、これからだぞ!」という思いが伝わってきて。

作者さんの作風が、含みと言うか余韻を持たせるような感じですが
……ぶっちゃけ、ただのよしごま好きとしては
「なんでそこをとばす!その行間が知りたいよー」な所もありました。
でも作者さんの、よしごまが読めるだけで幸せだから
また思うように書いて下さい
117 名前:nishi 投稿日:2002年12月07日(土)14時52分23秒
>116:名無し読者さん
…筆力の及ばないシーンはさくっと飛ばす、それが信条です(ヲ
正直、こういうぶっちゃけレスは嬉しいです。「読んで頂いてる」感じがして。
優しいお言葉、ありがとうございます。m(__)m

さて、年が明けないうちに、6杯目<Guinness>を始めさせて頂きます。
お時間・お心に余裕のある方、またしばしの間お付き合い願います…。
118 名前:<Guinness>0. 投稿日:2002年12月07日(土)14時53分13秒
<Guinness>0.

一目見て、怖そうな人だと思った。
ちょっとナルシスト系かも、なんてことも思った。

そんなこんなで、正直、第一印象はサイアク。
でもあたしは今、彼女のことが気になって仕方がない。
119 名前:<Guinness>0. 投稿日:2002年12月07日(土)14時53分52秒
彼女について、あたしが今知ってること。
…容姿、声、名前、年齢、そしてあの雰囲気、のみ。

どうかしてる。ほんとにどうかしてる。
でも、そろそろ認めざるを得ない感じなんだ。
…これが、「恋」なんだって。
120 名前:<Guinness>1. 投稿日:2002年12月07日(土)14時54分43秒
<Guinness>1.

「あれ、よっすぃーじゃん!」
帰宅を急ぐ駅前の人込みのなか、その喧騒をなお突き破る甲高い声が響く。
後藤と肩を並べて歩いていた吉澤は、その声に振りかえる。

自分を「よっすぃー」と呼ぶ人間にはほんの一握りの心当たりしかないが、
日暮れの早い冬のこと、駅前のライトだけを頼りに人を探すのは容易ではない。
なおかつその声から察するに、思い当たる目当ての人物は、とてつもなく小さいはずで。

吉澤があちらこちらと視線を走らせているうちに、
並んで立ち止まっていた2人の前に、ひょこっと小柄な金髪の女性が顔を出した。
「よっすぃー、こっちだよッ」
121 名前:<Guinness>1. 投稿日:2002年12月07日(土)14時55分15秒
「あ、ヤグチさぁ〜ん。ちっちゃいから、ヨシザワ、わかりませんでしたよぉ〜」
「オィッ。久々に会った瞬間、ソレかよッ」
大型犬にじゃれつく子犬、そんな雰囲気を醸し出す2人に思わず後藤が笑みをこぼす。

「あ、ゴメン!お友達といっしょだったんだね」
少し決まり悪そうな顔で、矢口―ヤグチと呼ばれたその女性―が後藤に軽く頭を下げる。
「あ、はじめまして。ごとーです。『ヤグチさん』、ですよね」
「ごとー…あぁ!もしかして、『ごっちん』!?よっすぃーから聞いてるよ。ヤグチです、よろしくっ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

初対面とは言え、吉澤という共通の友人を持つ2人は、すぐに打ち解けた様子で話も弾み。
122 名前:<Guinness>1. 投稿日:2002年12月07日(土)14時56分26秒
「やー、でも…見たとき、すぐわかりましたよ〜、ヤグチさんだって」
「そ?」
「はい。よしこから、聞いてたんで。初めて会ったときのこと」

後藤の言葉に、矢口は鋭い視線を吉澤へと向ける。吉澤は半ば苦笑気味にそれに応え。
「だって…あのときヤグチさん、
メールでただ一言『周り見て、いちばんちっちゃい金髪があたしだから』って、それだけ…」
その言葉に、後藤も思わず思い出し笑いする。

「なんだよー。ヤグチは今まで、それでメル友との待ち合わせに失敗したことないんだよッ」
がうっと噛み付く子犬に、またしても後藤と吉澤は笑い転げる。
123 名前:<Guinness>1. 投稿日:2002年12月07日(土)14時57分23秒
その笑いが落ちついたころ、矢口が感心したように後藤を見上げる。

「うわー…でもごっちんさぁ、超カワイイじゃん。こりゃよっすぃーが彼女作んないのもわか…」
「ちょっ、ヤグチさんッ。妙なコト言わないで下さいよぉ。ごっちんは、ともだちですってば」
「わーかってる、わかってるよー」
それでもまだニヤニヤとしている矢口に、吉澤は情けない顔で続ける。

「あとー…その話は、ほんとごっちんにしか言ってないんで…。その、彼女とか…」
「あ、わかってるよ。噂のごっちんに会えて嬉しかっただけ。ゴメンゴメン。だいじょぶだから」
子犬にヨシヨシと頭をなでられる大型犬、その構図に、またも後藤の顔がほころぶ。
124 名前:<Guinness>1. 投稿日:2002年12月07日(土)14時58分20秒
「そうだ!ふたりともさぁ、これからヒマ?」
何かを思いついたように表情を変えた矢口に、後藤と吉澤の視線が集まる。
「これから仲間と遊ぶんだけどさ。よかったら、ど?」

矢口の言う『仲間』の意味をしばし考え、吉澤はちらりと後藤に視線を走らせる。
当の後藤はといえば、そんな吉澤を気にも留めない様子でさらりと応え。
「あぁー…あたし、今日は課題がたまってるんですよねぇ…。よしこ、行って来なよ!」
「え、でもごっち…」
「だぁーいじょうぶ、寮母さんのことはうまくゴマカシとくから!」
吉澤に喋る隙も与えずに、後藤はすばやくウインクをひとつ。
125 名前:<Guinness>1. 投稿日:2002年12月07日(土)14時58分58秒
「ヤグチさん、ゼヒ今度、遊んでくださいね〜」
矢口に挨拶をすませると、後藤はそのまま駅へと向かう人込みに紛れ。

「あ、行っちゃったぁ…。もしかして、迷惑だったかな?」
少しだけ申し訳なさそうな表情を見せた矢口に、吉澤は柔らかく微笑み。
「いえ、あれ、ごっちん流の気の利かせかたなんです」
課題やったことなんて無いくせに、よく言うよ…続く吉澤のそんな言葉に、矢口も笑う。

「いいルームメイトなんだね」
「はい。…で、最高の親友です」
「あぁ〜、でもやっぱ、超カワイイじゃん」
「手ぇ出しちゃダメですよ〜。ごっちんは、カレシ持ちなんですからぁ」
126 名前:<Guinness>1. 投稿日:2002年12月07日(土)14時59分47秒
2人で後藤について話しているところに、前触れもなく矢口の携帯が鳴る。
矢口は一瞬だけ身体を揺らしながらも、すぐに携帯を開いて通話ボタンを押して。
「あ、着いた?」
「今ねぇ、南口の、銀行の前あたりにいるんだけど…」

駅前に立つ時計が示すのは18時5分。
矢口の電話の声を片耳に、吉澤は冬の暗い寒空を見上げ、両手をコートのポケットへ。
吐き出す白い息が空へと溶けていくのを眺めながら、ぼんやりと明日の天気を思う。

そんな吉澤の目の前を、携帯を片手にした明るめの茶髪の女性がすっと横切る。
127 名前:<Guinness>1. 投稿日:2002年12月07日(土)15時00分36秒
「アンタ、ほんとちっこいからわからんわぁ」
突然に発せられた声、そしてその内容に驚いた吉澤が素早く振りかえると、
たった今目の前を横切った女性もまた、吉澤の動きに驚いて振りかえるのが目にうつった。

自分に対して訝しげな視線を送る目前の女性が、矢口の言う今日のメンバーのひとり、
そんなことを一瞬置いて悟った吉澤は、慌てて頭を下げる。
「あ、はじめましてっ。あたし、ヤグチさんのともだちのっ…」
自ら『よっすぃー』などと名乗るのは少々気が引ける。
しかし全く面識のない、どんな人かもわからない相手に本名を名乗るのもためらわれる。
――ヤグチさんのお友達だし、別に変な人じゃないだろうけど…。

「よっすぃーだよ」
そんな吉澤の葛藤を察したかのようなタイミングで、矢口が笑いながら後をとる。
128 名前:<Guinness>1. 投稿日:2002年12月07日(土)15時01分20秒
「こんばんはっ」
大きく頭を下げ、おそるおそる姿勢を戻せば、さっきの訝しげな表情は消えていて。
すっと目前に右手を差し出される。なぜだか周囲の喧騒が、遠く感じられる。
「中澤です。よろしく」
なんのためらいもなくなされた簡潔な自己紹介、そしてそのスマートな仕草に、
どこか冷たい雰囲気をまとった人、吉澤は彼女からそんな印象を受けた。
駅のライトを反射するその色素の薄い両目は、自分をにらんでいるかのようにも感じられる。

それでも吉澤は、その手を右手で―さらに反射的に左手も軽く添えて―握り返した。
「こっ、こちらこそ、よろしくお願いしますっ」
129 名前:nishi 投稿日:2002年12月07日(土)15時05分51秒
はい。
こんな感じから、6杯目<Guinness>、始めさせて頂きます。
新しい試み、そしてそれにハマリそうな自分…(w
130 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月07日(土)16時34分59秒
何も言いません。
がんばってください。
131 名前:名無し読者。 投稿日:2002年12月07日(土)19時40分36秒
前作はとても好きな作品のひとつになりました。
そして今回は今まさに自分がハマッてるCPの予感!!!
続きがすごく楽しみです。
132 名前:名無しです 投稿日:2002年12月08日(日)14時40分49秒
僕も大好物っぽい予感です。
ガッツポーズ体勢のまま続きを待たせて頂きます。
133 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月27日(金)20時29分46秒
マターリ保全
134 名前:名無し読者。 投稿日:2003年01月03日(金)23時29分17秒
マターリ保全 2
135 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月21日(火)13時51分57秒
待ってるよ
136 名前:<Guinness>2−1. 投稿日:2003年02月07日(金)20時34分33秒
<Guinness>2−1.

「ただいまぁ〜」
左手でドアを開けながら入ってくる吉澤に、テレビを見ていた後藤が振り返る。
「あれ?よしこ、早かったじゃん」
21時台の番組がちょうど終わったところで、門限まで10分弱ほど残っていた。

「ん〜…ちょっと、みんなテンション凄くってさぁ。先に帰って来ちゃった」
吉澤は着込んでいたコートを脱ぎながら、後藤に軽く苦笑いしてみせる。
その言葉に後藤は床に座ったまま上体をひねりながら吉澤を見上げる。
「このよしこがヒクってさぁ、よっぽど凄かったんだねぇ…」

「それ、どうゆう意味っスか後藤さぁん?」
吉澤は方眉を上げ、脱いだばかりのコートを後藤の頭から被せる。
「ぅわっ!!」

137 名前:<Guinness>2−1. 投稿日:2003年02月07日(金)20時35分15秒
突然視界を遮られ慌てた後藤がそのコートから顔を出すと、吉澤と目が合う。
視線を合わせたまま吹き出す2人。吉澤はまだも笑いながら、後藤の隣に座る。
頭に引っかかったままになっていたコートを外す後藤が、ふと言葉を漏らす。
「…あ、イイニオイ。よしこのコロンとは違うよね」
「ん?」
吉澤は首を右に傾げつつ、しばし考えるような素振りを見せる。

「あ〜…多分、中澤さんのじゃないかなぁ」
「ナカザワさん?」
「うん」
「……」

138 名前:<Guinness>2−1. 投稿日:2003年02月07日(金)20時35分53秒
「ごっちん?」
黙り込む後藤に吉澤が視線を戻せば、後藤は意味ありげな笑みを浮かべており。
「ち、違うってば!ごっちん、なに笑ってんの!!」
後藤はなおさらニヤニヤと、さも面白そうに笑う。
その右手は、左手に抱えられた吉澤のコートのジッパーをいじっている。

「それ、お店で脱いだときにさ、中澤さんのコートの近くに掛けててさ。
 だからそんで香り移ったんじゃん?」
いつになく早口で言い訳めいたことを口にする吉澤に、後藤はさらに笑う。
「ん?別にあたし、なにも言ってないよ?」

瞬間固まって顔を赤くする吉澤を目に、後藤は言う。
「あはっ。よしこってわかりやすいなぁ。ナッカザッワさぁ〜〜ん」

139 名前:<Guinness>2−1. 投稿日:2003年02月07日(金)20時36分36秒
手近にあったクッションを抱きしめ勝手に盛り上がる後藤に、吉澤はうなだれる。
「や…だから違うってば。ホント、ごっちんが期待してるみたいなんじゃないから」
「う〜…違うの?」
「違うって。マジで、近くにコート掛けてただけ」

「なんだぁ。つまんないのー」
少し膨れながら、後藤はクッションごと背中からベッドへぼすっと倒れ込む。
それを目に吉澤は、やれやれ、とばかりに肩をすくめ、立ち上がる。
床へと置いてあったコートを手にとり、それをハンガーに掛けながら言う。
「でもさぁ…その、中澤さんって人が、すっごかったんだよね。
 もーなんつーか、ついてけないっていうか。ナニモノ?っていうか」
クッション越しに、後藤が視線を向ける。

140 名前:<Guinness>2−1. 投稿日:2003年02月07日(金)20時37分12秒
『やぁーぐちぃぃぃ』
『うわぁぁぁ!やめろよ裕子!!』

『かわえぇなぁ〜〜』
『あほっ!ドコ触ってんだよっ!!』

先ほどまで目の当たりにしていた壮絶な光景が、吉澤の頭を過ぎる。

「どう凄かったの?」
黙り込んでいた吉澤は、後藤の言葉で我に返る。
「あ…。なんていうか、超セクハラ大王でさ。矢口さんとか、総攻撃されてた」
吉澤の説明に、後藤は思わず吹き出す。

141 名前:<Guinness>2−1. 投稿日:2003年02月07日(金)20時37分54秒
「そんで、先に帰ってきたんだ」
「そ。あのノリは、あたし無理だわ」
言いながら、吉澤は室内のミニキッチンでケトルにお湯を沸かす。
後藤に目だけで訊ね、うなずいて2人分のマグを取り出す。

「最初会ったときは、マジで超クールな人かと思ったんだけどさぁ」
後藤には背を向けたまま、紅茶のパックも2人分を箱からつまみ出す。
「お酒が入ったとたん、いきなりキス魔になんだもん。びっくりしたよ」

「…キス魔ねぇ」
「ま、あたしは無事だったんだけどね」
紅茶のパックを開いて、それぞれのマグに入れながら呟いた吉澤に、
後藤は目を向ける。

142 名前:<Guinness>2−1. 投稿日:2003年02月07日(金)20時38分29秒
「そうなの?矢口さんもだけどさ、よしことかってソッコーで絡まれそうじゃん」
ミニキッチンのシンクに両手をついたまま、吉澤が肩越しに振り返る。
「いやー、ないでしょ。中澤さん、超人見知りだったっぽいもん。
しかも29だしね。さすがに犯罪っしょ、あたしに手ぇ出したら」
それだけ言って吉澤は姿勢を戻し、沸騰したケトルのお湯をマグに注ぎ始める。

「ふぅん…」
かすかな笑いを含んだ後藤の声。
「なんだよー、ごっちーーん」
作業の手は休めずに、不満そうな声をあげる吉澤。
そのまま2人分のマグを持って、後藤の方へと歩み寄る。
「はい」
「ありがと」

143 名前:<Guinness>2−1. 投稿日:2003年02月07日(金)20時39分02秒
右手でマグを受け取り左腕にはクッションを抱えたまま、後藤はベッドから降り、
そのベッドの脇にもたれて座った吉澤の右側へと自分も腰をおろしてくっつく。
そんな後藤を吉澤はちらりと見やって、ため息混じりに言う。
「だから、何」
「いやいや…」

吉澤がマグに口をつけるのを見計らって、後藤は言葉をつなぐ。
「なーんか、手ぇ出されたかった、みたいな口ぶりだねぇ」
「あ…っっち!!」
紅茶を思いのほか多く口に含み火傷しそうになった吉澤は、
慌ててマグごと目の前のローテーブルに置く。それを後藤は楽しげに眺め。

144 名前:<Guinness>2−1. 投稿日:2003年02月07日(金)20時39分34秒
「も…ごっちん、なに言ってんのぉ」
半ば涙目の恨みがましい視線を送っても、膝にクッションを抱えたままの後藤は
両手でマグを抱え込み、ニヤニヤと笑うだけで。

「だーからぁ、違うってば。変なこと言うから、ヤケドしそうになったじゃん」
膝を抱えてぶつぶつと文句を言う吉澤に、後藤は「ふぅん」と返事を返すのみ。
「12コも上だっつーの。今うちらから12コ下って、5歳だよっ!?」
「5歳だねぇ…」
「しかも29とかいって、髪とかほとんど金髪だしさぁ」
「へぇー」
「眼も!あれ、カラコンだよっ!?」
「そりゃずいぶんキアイ入った29歳だねぇ…」
「…ま、なんか不思議とそれが似合ってんだけど」
「ならいーじゃん」

145 名前:<Guinness>2−1. 投稿日:2003年02月07日(金)20時40分14秒
言い訳のような言葉をつらつらと並べ立てる吉澤を
やる気のない、しかし生き生きとした目で観察していた後藤がふと遮る。
「ねぇ、よしこ。…イッコだけ、イイコト教えてあげる」
「ん?」

すでに空になっていた自分のマグをローテーブルに置き、吉澤に正対する。
「気付いてる?よしこ、帰ってきてからね…ナカザワさんの話しかしてないよ」
満面の笑みでそう言われ、吉澤は固まる。自然と左手は口元に。

「あはっ。素直になんなよ〜」
そんな言葉とともに右手で頭をなでてくる後藤を放置気味に、
吉澤はローテーブルに置かれたままだった自分のマグに手を伸ばす。
先ほどは火傷しそうに熱かった紅茶は、すでに冷め切っており。
「ありえない…ってば」
吉澤はぽつりと呟いて、ぬるい紅茶を一気に飲み干した。

146 名前:nishi 投稿日:2003年02月07日(金)20時56分21秒
前回更新から約2ヶ月でしょうか。あり得ない間を空けてすみません。
お待ち頂いていた方、申し訳&ありがとうございました。
引き続き、<Guinness>をアゲさせて頂きます。m(__)m
この<Guinness>と次作<Kamikaze>までは放棄しませんので、
またお付き合いいただければ、と思います。

130:名無しさん さん
あい。頑張ってみます…どこかよしごま風味が抜けませんが(苦
せっかくなので貴方様の作風とは少しだけ違うものを目指してます。

131:名無し読者。 さん
前作、好きといって頂いてありがたいです。ちょっと実験作だったので…。
初めて時代(流行CP)の潮流に乗ってみる予定だったんですが、
更新が大幅に遅れてやっぱり潮流には乗り遅れた模様です。(^^;

132:名無しです さん
大好物ですか。自分も大好物だったりします(w
ガッツポーズ…遅くなって申し訳ないっす。両腕プルプルですね。(^^;

133:名無し読者 さん
134:名無し読者。 さん
135:名無し読者 さん
保全、ありがとうございました。お待ち頂いて、光栄です。
今後は心を入れ替(ry
147 名前:名無しです 投稿日:2003年02月07日(金)23時36分57秒
うわぁっあがってる!!
と、素で喜びました。
やばい。中澤ヲタなのに吉澤に萌える。
148 名前:<Guinness>2−2. 投稿日:2003年02月12日(水)01時21分17秒
<Guinness>2−2.カオリ。

目覚し時計のけたたましい音に促される、決して爽快とは言い難い目覚め。
普段ならば携帯の小さなアラームでこれよりも30分ほど早く起床する吉澤は、
この騒々しい音に叩き起こされることに、いまだ多少の抵抗を感じる。
完全に覚醒した状態でこの音を聞くのと、この音に起こされるのではワケが違う。

なんとか手を伸ばして時計の音を止め、向かいのベッドを見やれば、
布団がごそごそと動き出すのが目に入った。おそらく後藤も起きたのだろう。
「ごっちん、毎朝こんな音で起きてんだ…」
朝からぐったりとした声で呟く吉澤を、半分寝ぼけた後藤がゆっくりと振り返る。

「…よしこがまだベッドの中って、珍しいね」
「…だよね」
149 名前:<Guinness>2−2. 投稿日:2003年02月12日(水)01時22分00秒
『気付いてる?よしこ、帰ってきてからね…ナカザワさんの話しかしてないよ』
昨夜の後藤のこんな言葉に吉澤は明け方まで寝付けず、
その結果が今朝の目覚まし時計による目覚めである。
ひとまずベッドの上で上体だけは起こした吉澤は、小さく苦笑いをひとつ。

緩慢な動作でベッドから降り、カーテンの隙間から空をのぞく。見事な冬晴れ。
こんな雲ひとつない青空の朝は、放射冷却によりとりわけ冷え込むのが常だ。
「ごっちーん、今日は寒そうだよ」
「ん…らじゃー」
毎朝の天気チェックは、いつのまにか朝に強い吉澤の役割となっていた。
150 名前:<Guinness>2−2. 投稿日:2003年02月12日(水)01時22分39秒
ツインルームとなっている各部屋にバス・トイレを備えたこの寮のつくりは、
毎朝登校前のこの時間帯、寮生が一斉に身支度を整えるのに都合がよい。
後藤と吉澤の2人も室内で交互に洗面等を済ませ、部屋を出る時刻となる。
荷物も全て持ち、後は食堂で朝食を摂って学校へと向かうのみ。

「よしこー、出れるー?」
「うん、完了―」
ドアの付近に掛けてあったコートを手にとる後藤に、吉澤も続いてドア付近へ。
少々薄手のコートと、昨夜も着ていた厚手のコート。
吉澤は少し考えながらカーテンが開かれた窓から空を見やり、厚手のものを手にする。

「うぃっし、行きますかぁ〜」
「うーぃ」
151 名前:<Guinness>2−2. 投稿日:2003年02月12日(水)01時23分18秒
キャラクターにビジュアルをも備えた名コンビとして名高い2人は、それなりに友人も多い。
複数の寮生たちと軽く朝の挨拶を交わしながら、朝食を摂る。
その中の数人が、たまに吉澤を気遣うような言葉を掛け、その度に吉澤は
「あぁ〜大丈夫、ちょっと寝不足なだけだよ。ありがと」と笑顔で対応する。
ひとつにはこのような人当たりの良さも、彼女の顔の広さの所以であろうか。

向かい合う格好で席に付き、ヨーグルトのふたを開けながら物言いたげな後藤。
薄々は何を言われるかを察しながらも、吉澤は一応声を掛ける。
「…ごっちん、何」
後藤はわざわざ立ち上がり、テーブル越しに吉澤の耳元へと身体を乗り出して。
「コイのヤマイ…」

わざとらしく声を落として耳打ちする後藤に、吉澤はまたしてもうなだれる。
152 名前:<Guinness>2−2. 投稿日:2003年02月12日(水)01時23分49秒
「だぁから、そんなんじゃないってば!」
吉澤もヨーグルトのふたを開けながら、努めて冷静に応戦する。

「昨日も言ったけど、超わけわかんない人だし。
 しかもさぁ、あたしあの人の、何知ってるわけでもないんだよ?」
中澤裕子、29歳。そのど派手な外見とは裏腹に、意外に優しい響きの声を持つ。
昨夜つかんだ彼女に対するイメージは、それくらいのもの。
正直中澤のテンションに引き気味だった吉澤は、彼女とほとんど言葉を交わしていない。

それは明け方までかかって導き出された、ひとつの結論。
「…つーかどんな人かもわかんないのにさ、好きになるわけないじゃん」
153 名前:<Guinness>2−2. 投稿日:2003年02月12日(水)01時24分28秒
「でも正直、気になんでしょ?」
のんきにヨーグルトを乗せたスプーンを口に運びながら、後藤が言う。
吉澤は瞬時に目をそらし、自分のヨーグルトにスプーンを突っ込む。
「そりゃ…あんな人、初めて見たもん。『どんなヤツだよ』って興味は普通でしょ…」
そのままぐるぐるとヨーグルトをかき混ぜる。

確かに『コレもひとつの社会勉強』と、呆れながらも中澤のことを観察していた自分。
そんな自分に気付き、こちらが瞬間見惚れるほどに柔らかい微笑みをくれた中澤。
事実、あの笑顔には、心底驚いたけれども…そんな回想が吉澤の頭を過ぎる。
「普通に、びっくりしただけだよ…」
なんとなく、ゆっくりとヨーグルトを混ぜる手が止まらない。
154 名前:<Guinness>2−2. 投稿日:2003年02月12日(水)01時25分19秒
「ぶっぶー。よしこ、食べ物で遊んじゃだめー」
「……」
後藤に指摘された吉澤は、顔を赤らめながらどろどろになったヨーグルトを一気に口へ。

「そろそろ行こっか」
「ん…」
立ち上がり、椅子の背もたれにかけてあったコートを羽織る。
その瞬間、慣れない香りに包まれる。コートにほのかに残る、中澤の香り。

「…よしこ?」
我に返って後藤を見れば、すでにコートを着込み、朝食のトレイを手にしている。
「あ…や、なんでもない。行こ…」
「うん?」
155 名前:<Guinness>2−2. 投稿日:2003年02月12日(水)01時25分49秒
学校までの道のりを、自分のものではない香りに抱かれて歩く感覚。
どこか落ち着かないのは、そう、この香りによる違和感。ただの、違和感。
それでも…。

それでも吉澤は、午前中の授業時間全てを机の下の携帯を睨みながら過ごし、
昼前にようやく一通のメールを送信した。
『件名:昨日はお疲れ様でした。
 本文:二日酔いとか大丈夫ですか?昨日お会いした吉澤です。(^o^)
 てゆうか、私のこと覚えてます?(^^;よければ、また遊んでくださいね〜)

――恋じゃない。これはただの、『違う星の人』への好奇心。そう、恋なんかじゃない。
誰にでもなく、ほかでもない自分自身への言い訳。彼女にもう一度会うための、理由。
156 名前:nishi 投稿日:2003年02月12日(水)01時30分19秒
更新です。動きのないどうでもいいシーンがだらだらと…。
妙に鋭い後藤さんと、意地っ張りな吉澤さん。

>147:名無しです さん
中澤ヲタですか。…気が合いますね(ポソリ。
当方吉後書きではありますが、一押しは姐さんだったりします(w。
吉澤さんに萌えて頂いた、と…誉め言葉として受け取っておきます(ニヤリ。
157 名前:名無しです 投稿日:2003年02月12日(水)11時52分40秒
いいとこで切りますねぇ。
ヨーグルトをかき回す吉澤さんに
口許が緩む僕はなかよし末期症状が
出てるみたいです。
(ニ、ニヤリングされちゃったし…。
158 名前:130 投稿日:2003年02月12日(水)12時21分59秒
出遅れた―――――――(´・ω・`)――――――――――!!!
フカーツおめです。
ああ、これが「萌え」なんだなぁ(感涙
続き楽しみにしてます、マターリ頑張ってください。
159 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月13日(木)23時40分36秒
よしごま風味のなかよし発見!!
めっちゃ続きが気になります。
160 名前:<Guinness>3. 投稿日:2003年02月25日(火)02時25分41秒
<Guinness>3.

寒色のカーテン越しに射し込む陽光に、薄明るい緑色に照らし出される室内。
隙間から漏れる光は、うつ伏せのままベッドに埋もれる中澤の髪を明るい金色に染める。
時を止めたような静かな部屋に、メールの着信音が唐突に鳴り響く。

それまで微動だにしなかった中澤が、その音に少しだけ反応する。
着信音が一定のフレーズを刻み終えたころ、ようやく起き上がろうと両手を付くが。
「いっ…」
その努力も空しく、両腕は力なく折れ曲がり、再びベッドへと突っ伏す。
「…ったぁ〜〜〜」

うつ伏せのまま顔を右に向け、ベッド脇のカーテンを右手で少しだけめくる。
「なんや…アホみたいに晴れてんなぁ…」
その青空の眩しさに軽く顔をしかめながら、ぼそぼそとひとりごちる。
161 名前:<Guinness>3. 投稿日:2003年02月25日(火)02時26分28秒
そのまま顔をゆっくりと左に向けたところで、ちょうどキッチンへと続くドアが開く。
「あ、裕ちゃん。目ぇ覚めたの?」
「…ん」
姿を現したのは、髪を濡らしたままの矢口。
「シャワー、勝手に借りちゃったよ。タオルも」
「…ん」

矢口はタオル片手に呆れ顔で、そのままベッドまで歩み寄ってくる。
「…二日酔い?」
「…ん」

ベッドに軽く腰掛けながら、右手を中澤の額へとそえる。
そんな矢口を中澤は体勢も変えずに目だけで見上げる。
「飲み過ぎだよ、普通に」
「…自覚してます」
162 名前:<Guinness>3. 投稿日:2003年02月25日(火)02時26分58秒
矢口はため息を付きながら立ち上がり、今来た道を引き返す。
「まぁーた、記憶ないんでしょ」
「…途中からな」
中澤はまだ枕に顔を押し付けているのだろう。その声はくぐもっている。

キッチンに置いてある冷蔵庫からミネラルウォータのボトルを、
そしてラックからグラスを2つとり、またベッド脇まで戻ってきた矢口は笑う。
「裕ちゃん、その内やらかしちゃうよ?」
ベッドに腰掛けた矢口がグラスに水を注ぐ音を耳に、中澤もやっと上体を起こす。
頭を抱えながらそのグラス受け取りつつ、掠れ気味の声で問い返す。
「やらかすって、何を…」

矢口は自分の分のグラスにも水を注ぎながら、わざと重々しい口調で答える。
「朝起きたら、隣に知らないオンナノコがまっぱで寝てました、とか」
163 名前:<Guinness>3. 投稿日:2003年02月25日(火)02時27分31秒
「アホか。そんな節操なくないわ」
言いながら中澤は、ゆっくりとカーテンを開ける。部屋に光が満ちてくる。
「よっくゆーよ。酒入ったら、超セクハラなクセに…」
「あれは別に…ただのスキンシップやんか」
そういってやや不機嫌な顔になる中澤を目に、矢口は人の悪い笑みを浮かべる。
「ま、裕ちゃんヘタレだもんねぇ…知らないコベッドに連れ込むなんて、できるわけないか」

「うっさ…ぃぃぃっつ…」
それに勢いよく反論しようとした中澤は、またしても頭を抱え込む。
それを見てひとしきり笑った矢口は、ローテーブルへと視線を落とす。
「あ、携帯光ってるよ。着信じゃん?」
矢口は手を伸ばして中澤の携帯をつかみ、
中澤の右手の中で既に空になっていたグラスと引き換えに手渡す。
164 名前:<Guinness>3. 投稿日:2003年02月25日(火)02時28分01秒
「あ、すまん」
そういえば、メールの着信を知らせる音で目が覚めたのだった。
ベッドに腰掛けたままの矢口の背中を見上げつつ、片手で携帯を開きながら横になる。
室内には12時を回ったばかりの時計の秒針の音、
そして中澤がカチカチと携帯をいじる音だけが、ただ穏やかに響いていた。

「あぁ…吉澤って、アンタが連れてきたコやんなぁ。目がおっきい…」
その静かな空気を最初に破ったのは中澤、瞬間の間を置いて矢口が声を上げる。
「そうだけど…なに?メール、よっすぃーから!?」
勢いよく振り返った矢口に、中澤は携帯で自分の頭を指しながら顔をしかめて訴える。

自分が驚いて発した声が二日酔いの中澤の頭に響いたのだと気付き、
矢口は慌てて声のトーンを落とす。
「ナニ、いつの間に携帯交換してたワケ?」
165 名前:<Guinness>3. 投稿日:2003年02月25日(火)02時38分58秒
必要以上に目を輝かせて自分を見下ろす矢口を、仰向けのまま胡散臭げに見上げる中澤。
しばしの間矢口を視線をかち合わせたまま考えていた中澤ではあったが。
「…さぁ?いつやろ。覚えてへんわ」
矢口は軽くうなだれて、体勢を元に戻す。
「あぁごめーん。聞いたアタシがバカでした」

中澤はなにか気になったらしく、しばらく昨夜の履歴を調べていた。
そこには2分ほどの間に立て続けに3〜4件の不在着信や自己紹介メールが残っており。
「なんや、裕ちゃん結構人気モンやんか。何人かメモリ増えとるもん」
人見知りの中澤が初対面の人間とメアド交換…酒の威力は凄いと素直に思い頷く矢口。

「あ…でも、正直、どれが誰やろ。わからんわ…」
しかし最後の中澤の言葉は聞き逃さない。
166 名前:<Guinness>3. 投稿日:2003年02月25日(火)02時39分30秒
くるっと、再び尻尾をはやした犬のように矢口が中澤を振り返る。
「なに?じゃどうしてよっすぃーのことはわかったの?」
唐突な質問に、まだ横になったままの中澤はしばし考える。
「…さぁ?でもなんか、コイツのことは名前と顔が一致してん」

その言葉に、またしても矢口の目が輝き始める。
「で?で??よっすぃー、なんだって???」
「あぁーもう、ベッド揺らすな!!頭に響く」
はしゃぐ矢口にたまらず大声を上げた中澤は、自分の声にまた頭を抱えるが。

「別に…また遊んでくれ、て。…ただのアイサツやろ」
それだけ答えて手早く返信メールを打ち始める中澤を、矢口は楽しげに観察していた。
そんな、穏やかな午後の始まり。
167 名前:nishi 投稿日:2003年02月25日(火)02時46分12秒
更新途中にPCが落ち、データも軽く飛んだので驚きました(ニガ。

>157:名無しです さん
ヨーグルト吉…カワイラシイ感じを感じ取って頂ければ。(w
末期症状、推奨です!

>158:130 さん
「萌え」て頂けましたか。本望です。(w

>159:名無し読者 さん
発見直後に更新が遅れますた…。申し訳ないっす。
168 名前:名無しです 投稿日:2003年02月26日(水)01時22分56秒
頬の筋肉が緩むなぁ…(悦
中澤に萌える体勢は整いました。
あとは作者さんの供給を待つばかりです。
169 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月15日(土)07時57分30秒
がんがって!
170 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月05日(土)23時49分01秒
待ってるよ
171 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月27日(日)10時03分19秒
保全
172 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月22日(木)02時24分18秒
173 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月09日(月)00時16分03秒
174 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月06日(日)15時01分41秒
hozen
175 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月02日(土)01時40分41秒
176 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月07日(日)01時37分51秒
177 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/15(月) 00:44
178 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/05(日) 06:05
保全
179 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/04(火) 03:30
hozen
180 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/07(日) 05:47
がんばってください

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