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〜雪の世界〜

1 名前:せつな 投稿日:2002年08月10日(土)18時16分14秒
はじめまして。せつなというものです。
初心者なもので、読みにくいことがあると思いますがよろすきおねがいします。
いしよしを主に書きたいと思います。
2 名前:プロローグ 投稿日:2002年08月10日(土)18時26分10秒
雪が降った


季節外れの雪はあの人を思い出させた


3 名前:せつな 投稿日:2002年08月10日(土)18時33分05秒
ふと見上げる


青く澄み切った空


雲ひとつない空






あの時もそうだったっけ・・・





あの季節外れの雪が降った日はこんな空だったっけ・・・






ぼんやり空を見上げる私




「こらー吉澤!」




怒鳴り声でびくっと体を震わせ振り向くと案の定怒りに満ちた顔をして私を睨んでいる上司が見えた


「なんですか?保田さん」


「なんですか?じゃないわよ!何回呼んでると思ってるのよ!」


「はあ・・・」


簡単に返事をしながらコーヒーを入れにキッチンに向かう
4 名前:せつな 投稿日:2002年08月10日(土)19時24分04秒
こぽこぽ


コーヒーをカップに入れながら保田さんの説教を聞く


「だいたいねアンタ、バイトやる気あるの?まあ見た目がカッコよかったから
 受け入れてあげたのよ?
 ホントに・・・。ってちゃんと聞いてるの?
 吉澤ー!!!」

「はい。聞いてますって」


コトンとカップを保田さんの前に置く


向かい合わせの椅子に座りコーヒーを飲みながら説教を聞こうと耳を傾けているとつぶやくような声が聞こえてきた


「石川が・・・消えてから・・・1年経つのよね・・」


「ええ・・」







私の前からあの人が消えたのは1年前の今日だった


あの日は今日と同じ様に青く澄み切って、雲ひとつない空だった


季節外れの雪が降ってあの人が待つ家に帰ったらあの人は家にいなかった


手紙を置いて





「ひとみちゃんへ
 
 ごめんなさい、急にいなくなって。
 
 ひとみちゃんがいやになったわけじゃないの


 探さないで下さい

 いつか会えるから・・・」

5 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月11日(日)14時04分58秒
期待してます
6 名前:せつな 投稿日:2002年08月13日(火)15時40分38秒
名無し読者様・・・レスありがとうございます。がんばります!
7 名前:せつな 投稿日:2002年08月13日(火)15時50分00秒
手紙を見た私はそのまま床に座り込んだ





なんで・・・






なんで・・・





体中に力が入らなくてただ座っていることしか出来なかった


立つことも


話すことも


動くことも


出来なかった





ただ頭の中に浮かんでくるのは梨華ちゃん


梨華ちゃんの笑顔


唇をかみ締めた顔


泣きそうな顔






何度も何度も繰り返されていく




バイトの時間になっても動けなかった


動かなきゃって思っても力が入らなかった


心配した保田さんが家に来てくれて様子のおかしい私の話を全部聞いてくれた


話を聞いた保田さんは「ウチにおいで」って言ってくれた


このアパートは石川が戻ってきたら一緒に住めばいい
だからその間はウチにいなさいって・・
8 名前:せつな 投稿日:2002年08月13日(火)15時53分36秒
保田さんに抱きかかえられるように私は家を出た


梨華ちゃんと一緒に過ごした部屋を・・・









梨華ちゃんと出会ったのはバイトだった


高校に入った私は親を強引に納得させ親戚のお姉さんの保田さんのレンタルショップに働くことにした
9 名前:せつな 投稿日:2002年08月13日(火)17時10分15秒
一緒の日にバイトし始めたのが梨華ちゃんだった



年が近かったし、一緒の日に入ったから私たちは仲良くなった


学校の話をしたり、バイトの話をしたり・・・





いつしか私たちは親の反対を振り切って一緒に暮らし始めた



でも・・・1週間後には梨華ちゃんは消えた
10 名前:せつな 投稿日:2002年08月15日(木)13時10分35秒
「・・・ざわ」





「吉澤!」



保田さんの怒鳴り声



「吉澤・・大丈夫?」



「あ・・・はい」




気がつくと私は部屋のベッドに横たわっていた


「どーしたんすか?」



頭に置いてあるぬれたタオルを取りながら保田さんに言った


「アンタ覚えてないの?倒れたのよ・・」



頭をかくと後ろの方に激痛が走った


頭を打ったらしい


「・・・覚えてないんですよね・・・。梨華ちゃんのことを考えてました・・」


「そう」


保田さんは軽く言うと私の頭をなぜた


「たんこぶが出来てるわね・・。大丈夫?今日店出れる?」


「あ・・・はい。大丈夫です」



「じゃ。先行くけど、無理しないのよ」

保田さんはそう言うとあわただしく部屋を出て行った
11 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月16日(金)02時17分59秒
面白くなりそうな予感・・・。
続きも楽しみにしてます〜〜!
12 名前:せつな 投稿日:2002年08月16日(金)21時57分14秒
名無し読者様・・・レスありがとうございます!続きですか・・・。
         更新は遅くなるかもしれませんががんばります!
13 名前:名無しちゃん 投稿日:2002年08月19日(月)01時50分01秒
続き期待してます!!!
14 名前:せつな 投稿日:2002年08月19日(月)20時50分50秒
名無しちゃん様・・・レスありがとうございます!がんばります!
15 名前:せつな 投稿日:2002年08月19日(月)21時03分01秒
保田さんのいなくなった部屋を見渡す


一人では広すぎるほどの部屋だ

もともとは客室用だったらしいけど私の部屋がなくて客室を壊して私の部屋にしたらしい




時計を見て時間を確認する

「そろそろ・・行こっか・・・・」


ベッドから降りクローゼットから適当にシャツを掴んで着替える


「いてっ・・」


たんこぶに服があたり激痛が頭に走る



ばたん


ドアを閉めて部屋から出る

人気のないリビングを縦断し玄関まで歩く



カチッ

カギを閉めて家を出る




数分歩くとレンタルショップが見えてきた

入り口ではごっちんが掃除をしていた


ごっちんの前まで歩く

「おはよー」


「んあ?あ・・よしこ、おはよー」


ふにゃっと笑うごっちんは安心を与えてくれる

「また後でね」


忙しそうに掃除をするごっちんの横を通り裏口から中に入る


「ちぃわっす」


挨拶をして中に入る


ロッカールームに入り自分のロッカーを開けエプロンを取り出しかける





16 名前:せつな 投稿日:2002年08月19日(月)21時06分17秒
「おはよーございます」



店に入り先にきていた保田さんに挨拶する


「あ・・・おはよー。大丈夫なの?」


「ええ」


ビデオを並べながら答える


「そっか・・・後藤心配してたわよ」


「・・・」

17 名前:せつな 投稿日:2002年08月19日(月)21時12分18秒
1年ぶりのバイトだった





梨華ちゃんが消えてから来てなかった


ここに来ると思い出してしまいそうだったから



あの笑顔を・・・・




「吉澤ー!!!」



はっとして返事をする

「はいっ!」



保田さんが手を休めて私のそばに来る


「また・・・考えてたの?」


「ええ・・・・」
18 名前:せつな 投稿日:2002年08月20日(火)21時33分32秒
「よっ!」


後ろから背中を押され前に倒れかかる


「うわっ!」



後ろを向き押した人を確認する

大体は想像はついてるけど・・・


「いちーいさんっ!」


「ぃよっ!」


市井さんは兵隊のように敬礼をして私の前に立つ


「おはよーございます。あれっ?今日水曜日じゃ・・・」


「あー。吉澤が休んでる間毎日きてもらってるのよ」

保田さんが説明してくれる

「ま、休んでばっかりだけどね」


「一言多いよ圭ちゃん!まぁ。おはよー今日もよろしくっ!」


市井さんはそう言うとまた敬礼をして嵐のように去っていった。


「嵐・・・」


ぽつんと独り言のようにつぶやいた
19 名前:せつな 投稿日:2002年08月21日(水)21時35分40秒
「はい。そろそろ店開けるよ」


私の横から立ち上がりながら言う保田さん


私にニコッと笑いかける

「さあ。吉澤。1年分働いてもらうわよっ!」


「は・・・はあ・・・」


保田さんの変な勢いに押されながら返事をする






がらっ


ドアを開けるとそこにはお客さんの行列が・・・


「や・・・保田さん!どーしたんすか?こんなにも・・・」


「あー・・吉澤が復帰するって宣伝しちゃった」

あはっと笑う保田さんに怒りも失せ何もいえなかった
20 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月22日(木)00時37分55秒
果たして、石川はどこに…
21 名前:せつな 投稿日:2002年08月23日(金)22時15分11秒
名無し読者様・・・レスありがとうございます!
         石川ですが・・・内緒です(笑。
22 名前:せつな 投稿日:2002年08月25日(日)11時35分45秒
いつもなら保田さんを馬鹿にし始める市井さんやごっちんは妙に苦笑いをしている




それもつかの間


お客さんの行列で店の中はぐちゃぐちゃ


てんてこ舞いだよ・・・・



1年間分ぐらいは軽く働いた頃ちょうど交代の時間が来た


「じゃ、お疲れ様です」


私とごっちんと市井さんはそう言って店を後にした


「よしこー今日は疲れたねー」


私の腕にくっつきながらふにゃっと笑うごっちん


「そーだね、軽く1年分は働いたよ」

「ははは、まぁ、2〜3日続くだろうな」


人事のように笑う市井さん


「ひどっ!」


「何だよそれ、人が悪のも見たいないい方して・・・」





楽しい時間は早く過ぎるもの・・・


あっという間に市井さんとごっちんと別れる場所に来た


「じゃ、また明日な」


「じゃーねー」


「うん」

23 名前:せつな 投稿日:2002年08月25日(日)11時37分49秒
2人と別れ一人で帰り道を急ぐ



急に1人になるとさびしいのもだなぁ・・・




そんなことを考えている間に家に着く


「ただいまぁー」


誰もいない部屋にこだまする自分の声


なんだかさびしい・・・・
24 名前:せつな 投稿日:2002年08月26日(月)21時16分42秒
一人部屋でぼーっとする。




何もする時間がない






時間があると考えてしまう



梨華ちゃんのことを





何をしてるの?


今何をしてるの?






脳に焼きついた梨華ちゃんの顔が浮かんでくる



泣いた顔



笑顔





唇をかみ締めてる姿



上目遣いで私を見てくる姿





・・・・・・・


25 名前:せつな 投稿日:2002年08月26日(月)21時20分13秒
忘れたはずなのに




あんなに泣いたのに






いろんな顔が繰り返されていく





思い出したくもないのに


勝手に思い出されていく





心の奥に封じ込めたはずなのに


カギを閉めたはずなのに


鎖までかけたのに






簡単にはずされて思い出されていく



26 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月27日(火)19時23分36秒
うーん重症ですね吉澤
27 名前:せつな 投稿日:2002年08月27日(火)22時30分20秒
名無し読者様・・・レスありがとうございます!重症ですね、吉澤さん。これからどうなるんでしょうかね。。。
28 名前:皐月 投稿日:2002年08月27日(火)22時35分52秒
枯れたはずの涙の湖も水が沸き溢れていく



それは止まることを知らないように・・・・











何時間泣いただろう



目線を窓にやる


青く澄み切っていた空は青黒く濁っていた




部屋の中も闇と静寂が占領していた


それは私という存在を消してくれるように私を包み込んでいく





29 名前:せつな 投稿日:2002年08月27日(火)22時38分09秒
少し時間がして携帯が鳴る



手探りで携帯を探し電気をつける



ディスプレイを見る


そこには愛していた人、私の前から姿を消した人の名前がでていた


「石川梨華」と・・・・

30 名前:せつな 投稿日:2002年08月30日(金)21時43分46秒
その名前を見たとたん苦しくなる


手がしびれてくる


呼吸もしにくくなる





たしか前もこんなことあった?






意識がもうろうとする


目がかすんでくる


頭がずきずきする





「もう・・・・だめ・・・・」




手の力がなくなり持っていた携帯が落ちる



カタンッ




次に足の力がなくなる



私の体は崩れるようにして床に倒れこむ



バンッ




痛みが感じられない




起き上がろうとしても力が体に入らない





もうろうとする意識の中鳴り続ける携帯を見つめる








眠りに落ちるように意識は私からとんだ
31 名前:保田さん視点 投稿日:2002年09月01日(日)14時48分33秒
いつもの様に店の戸締りをして家路に着く


今日は吉澤が来てくれたおかげで大盛況だったわ





そんなことを考えながら家路を急ぎ足で歩く





マンションの長い廊下を歩く


今日はヒールだから音が響くわ




カツン


カツン





やっと、部屋の前に着きカギを差し込んで開けようとしたときだった



カタン



何か落ちるような音が部屋から聞こえてきた


「吉澤?」



玄関から声をかけても返事はない



それにいつもなら着いてるはずの吉澤の部屋の電気もついていない




不審に思いながら玄関で靴を脱ぎ始めた時




バンッ



何か大きなものが落ちる音がする


「・・・・吉澤?」



吉澤の部屋のドアをノックする



音が聞こえたのは吉澤の部屋だった・・・・



・・・・・・・・



32 名前:保田さん視点 投稿日:2002年09月03日(火)21時48分48秒
・・・・・昔・・・・




「ただいまー」




かたん




何か落ちる音がして急いで部屋に入る


「吉澤?」



リビングに行くと吉澤が大の字になって倒れていた




「っ!吉澤!?」



そばには携帯が転がっていて何か声がする


携帯を拾って出てみる


「もしもし?」



「え・・・保田さん?」



携帯からは甲高いアニメ声

33 名前:保田さん視点 投稿日:2002年09月03日(火)21時54分10秒
「・・・石川!?」



「保田さん!?」



「何?何があったの?」



「あ・・・あの・・・ちょっと・・・」



「吉澤が倒れたのよ!何があったの?」



「え・・・よっすぃ〜が・・・?」




よっすぃ〜・・・?



そのとき私は疑問に気がついた



呼び方が変わってる・・・・



「石川、切ってもいいわね?」


「あ・・・はい、さようなら」



ぴっ



携帯を切って吉澤を見る


「吉澤?」


耳元で呼ぶ


「ん・・・・」



何とか意識はあるようだ


「んっと・・・」



吉澤を担いで部屋まで行く



「よっと・・・」



吉澤をベッドに寝かせて氷で冷やしたタオルを額に乗せて看病する

34 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
35 名前:せつな 投稿日:2002年09月06日(金)20時32分04秒
名無し読者様・・・レスありがとうございます!
         微妙なとこなんですけど気づいてくださってありがとうございます^^
         HNですか?HNは「せつな」だけですよ。
         どなたと間違えてらっしゃるんでしょうか?
36 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
37 名前:せつな 投稿日:2002年09月07日(土)15時24分51秒
名無し読者様・・・あ〜・・・「皐月」さんですか。。。
         「皐月」は姉のHNなんですよ。姉の使った後のPCで小説を書くと「皐月」のままで書いちゃうことになるんです。
         本当にすいません。今後、気をつけるようにします。
         私は「せつな」だけですから。
38 名前:保田さん視点 投稿日:2002年09月07日(土)15時37分30秒
1時間もしないうちに吉澤は目がさめた


「吉澤?大丈夫?」


覗き込むようにして吉澤を見る


相変わらず吉澤は苦しそうにしていたが幾分顔色は良くなった


苦しそうに口をパクパクさせて話そうとする吉澤


「いい・・・・無理して話さなくても」


吉澤はビックリしたようだったが理解したのだろうか、首を縦に振った


「そっか・・・・大丈夫なんだね。石川・・・心配してたよ」


吉澤は「石川」と言う言葉に反応した


ビックリしたような、不安をもったような、怯えた顔をしていた


それを私は見なかったことにして話し続けた


「電話・・・してあげれば?石川、きっと罪悪感感じてるよ?」


吉澤はまだ怯えた顔をしていた。


「じゃ・・・もう大丈夫そうだから、部屋戻るわね。おやすみ」


一方的に話して終わらして、部屋を出た。





吉澤の顔を見るのがつらかったから。
39 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月07日(土)16時44分08秒
兄弟ですか(w
凄いっすね〜。しかもお二人ともいしよし…(w
続き期待してますね
40 名前:せつな 投稿日:2002年09月08日(日)12時23分44秒
名無し読者様・・・レスありがとうございます!
         恥ずかしながら兄弟です。2人ともいしよし好きですから。。。
         更新できるだけがんばりたいと思います!
41 名前:兄弟なんだ 投稿日:2002年09月08日(日)13時51分58秒
でも、同じ言葉を間違って使ってますね。
「終わらして」ってあんまり聞かない気がする。
42 名前:せつな 投稿日:2002年09月09日(月)21時06分45秒
兄弟なんだ様・・・レスありがとうございます。
         「終わらして」って?
43 名前:保田さん視点 投稿日:2002年09月10日(火)20時08分06秒
リビングで一人ソファーに座り込む


「はぁ・・・」




吉澤のあんな顔を見たのは初めてだった



苦しそうな顔




その時私は悟った



「別れた」



別れたんだなぁ〜・・・って。



別に吉澤がしたいようにしてけばいいのに


なぜが向きになってしまう私がいる




私と同じ様にさしたくないから・・・・・?

44 名前:保田さん視点 投稿日:2002年09月12日(木)21時48分18秒
私が吉澤と同じだったから。



だから吉澤の苦しい気持ちも良く分かる。





もう、封印した過去が出てきそうになる




それをまた、心の奥深くにしまいこむ


もう、出てこないようにするために・・・




・・・・・・


45 名前:保田さん視点 投稿日:2002年09月12日(木)21時49分09秒
ここで、保田さん視点終了です。
次はまた吉澤さん視点です。
46 名前:せつな 投稿日:2002年09月13日(金)21時03分32秒
体中が痛む



頭が冷たい





変な感触が私を覆う






私の目の前は真っ暗で先が見えない



そこに一筋の光が入ってきて

私の目の前に人がいることを確認する



その人は笑顔を浮かべていて

口をパクパク動かしている



その人が言っていることは私には聞こえない



だんだんその人の目が悲しみの色に染まっていく


そして




涙が流れた





私に謝っているよう・・・・




誰・・・・?



47 名前:せつな 投稿日:2002年09月14日(土)21時21分31秒
「・・・・澤・・・」




「吉・・・・」





「吉澤」




私を呼ぶ声がする



目をあける




そこには心配そうに私の顔を覗き込んでいる保田さんがいた



「・・・・・」



あれ・・・?





声が出ない・・・



「・・・・・・」



また呼んでも口をパクパクするだけ



保田さんはニコッと微笑んだ

「無理して話さなくてもいい」



優しい保田さんの声で涙が出そうになったけど唇をかみ締めてこらえる


「じゃあ・・ゆっくり休みなよ」


保田さんはそう言って部屋から出て行った

48 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
49 名前:せつな 投稿日:2002年09月17日(火)21時20分38秒
誰もいなくなった部屋



音と言うもののない部屋


「梨華ちゃん・・・・」



愛しい人の名前を呼ぶ


呼んだって返事が返ってくることも無い


だけど、切なくなる




いなくなってしまったあの人



理由は何?




今すぐあの人にあって聞きたい




でも、聞けるほど勇気の無い私



でも、聞きたい




こんな私どうすればいいですか?

50 名前:せつな 投稿日:2002年09月18日(水)10時03分09秒
ボーっとベッドに腰掛けて携帯を見つめる


その画面には愛しいはずの人の名前が映っていた


「石川梨華」と・・・・




何分、いや、何時間そんなことをしていただろう。

ただ何の感情も無く携帯に映る愛しい人の名前を見る




リビングからは何の音も聞こえない


たぶん保田さんは寝たんだろう


で、明日になれば「具合が悪いから休みなさい」って言うに決まってる


ねえ・・・


保田さん


なぜそんなにも私にかまうのですか?


それは興味?


それとも心配?





その気持ちは嬉しいけど私はもう一人で歩けるんです


羽を持って空を飛べるんですよ・・・・?

51 名前:せつな 投稿日:2002年09月18日(水)21時44分56秒
ふと壁にかけてある時計を見る


11:45


「もう・・・こんな時間・・・」


誰に言うわけでもなく独り言を言う


あの人が消えてから独り言が多くなったのは気のせい・・・?


電気を消して布団にもぐりこむ


寝る気があるわけでもなくただ寝転がってるだけ


微動すらせず死んだように寝転がる







あの人・・・・いや、梨華ちゃんがいなくなって生きている意味もなくなってきたよ





ねぇ

梨華ちゃん、どうすればいいの?

私は・・・・?

52 名前:よしよし 投稿日:2002年09月21日(土)14時21分53秒
速く読みたいです
きになるーう
53 名前:せつな 投稿日:2002年09月21日(土)16時27分56秒
よしよし様・・・レスありがとうございます!
54 名前:せつな 投稿日:2002年09月21日(土)16時32分58秒
知らずのうちに寝てしまったみたい。


目を覚ますとカーテンから太陽の光が少し漏れていた


「ん・・・・」


ベッドから重い体を起こし座る


壁にかけてある時計を見る


「そろそろ・・・」


独り言を呟くように口にし、ドアの方をジッとみる





ガチャ


ドアが開く


ドアの隙間から保田さんがちょっと顔を覗かせる


「吉澤?起きた?」


私が起きていることを確認した保田さんはドアを開け中に入ってきた


手には朝食だろうか、パンが入った皿と、牛乳が入ったコップを持っていた


「あ、おはようございます」


かすれた声が私ののどから出てくる
55 名前:せつな 投稿日:2002年09月22日(日)17時14分14秒
「おはよう」

保田さんは私に微笑みながらそう言うと私の座っていたベッドの横にある机に持ってきた皿とコップを置いた


「どう?気分は?」


置き終わった保田さんは私を見ていった


「ええ、少し気分が悪いけど大丈夫です」


分かってたよ


この言葉の意味も


そしてこれからのことも・・・・


「そう、今日は大事をとってバイト休みなさい。皆には上手く言っておくから」


ほら


やっぱり、そう言うと思った。


私が頷くのを見た保田さんは優しい声で言った


「・・・・石川に電話してあげなさい。あの子心配してると思うから・・・」


ほら、梨華ちゃんの事が出てきた


「・・・・はい」


「じゃあ、私出かけるから、ゆっくり休むのよ?」


そう言って私の頭をくしゃっとすると保田さんは部屋を出て行った

56 名前:せつな 投稿日:2002年09月24日(火)20時52分44秒
少しすると玄関のドアが閉まる音とバタバタ走っていく音が聞こえた


座っていたベッドから立ち上がり、クローゼットを開ける


服を手にとっては戻し、手にとっては戻しをして30分ぐらい立っただろうか?


私の手は黒いシャツで止まった


黒一色で統一された服


迷いも無く私は着ていた服を脱ぎ、黒のシャツに着替えた


57 名前:せつな 投稿日:2002年09月25日(水)21時21分55秒
黒のシャツは今の私の心


真っ黒な雲が私の心を覆う


中が見えないように・・・・


58 名前:せつな 投稿日:2002年09月25日(水)21時32分52秒
部屋を出てリビングに向かう


長い廊下は冷たくて、私を孤独の波に飲み込む


ふと足をとめて耳を澄ます


音の無い世界


それはこのようなことを言うのだろう


何も聞こえない


ただ聞こえるのは自分が息をする音と自分の動いている心臓の音


カチカチカチ


少しすると時計の音が聞こえ始めた


「ふぅ・・・」


なぜか知らないがため息をついてまた歩き出す


孤独の波に飲み込まれながら・・・
59 名前:せつな 投稿日:2002年09月26日(木)21時23分58秒
リビングについてソファに倒れこむようにして座る


そして見たいわけでもないTVをつけて適当にチャンネルをまわす


今私の心を占めているのはあの人・・・


石川梨華

と言う人物


笑顔がかわいくて


困った顔がかわいくて


泣いた顔がかわいくて


すねたような顔がかわいくて


・・・・




瞳を閉じれば何度も繰り返されていく梨華ちゃんの顔


笑顔・・・すねた顔・・・困った顔・・泣き顔・・・


何度も何度も繰り返されていく


新鮮に色あせないまま・・・




ずっと・・・
60 名前:せつな 投稿日:2002年09月27日(金)22時00分23秒
何時間立っただろう


つけていたお笑いのテレビはいつの間にかニュースに変わっていた


ふと、冷蔵庫を開けてみる。
中からミネラルウォーターを取り出しコップに入れて飲む

すぐ横にあったビンを手に持ってみる
そこには何種類かの栄養剤が置いてあった

そして、その横に紙が置かれていた

紙を手にとって見る

「吉澤
 どうせ、食べれないと思うから栄養剤だけでも飲みなさい」


「・・・わかってる振りして・・・」


口から出てきた言葉


それはいつも思うこと。



栄養剤のビンから数粒ずつ取り出して口に放り込んでいく
大量の水で飲み込む


味は何もしない


感触も無い



ロボットみたい



全部の栄養剤を飲み終わり携帯をいじりだした時だった


あの人から電話があった。


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