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GardensU
- 1 名前:シグナル 投稿日:2002年08月22日(木)00時34分47秒
- 新スレ立てちゃいました。
前スレは紫板にあります。
ジャンルはアンリアルで、よっすぃ〜主役です。
今のところCPはありません。(いずれできるかもしれません)
今回もかっけーよっすぃ〜を書くことと、週1以上の更新を目標にがんばります。
それではよろしくお願いします。
- 2 名前:シグナル 投稿日:2002年08月22日(木)00時38分39秒
今夜もまたそれはあたし達のいる公園にやってきた。
今度のそれは、梅雨入り前の、とてもよく晴れた金曜の夜にやってきた。
突然あたしの前に現れ、台風のようにあたしを巻き込んだかと思えば、
あたしのひざの上にちょこんと座り、あっという間に過ぎていった。
ただ、夏にやってくる台風と少し違ったのは、今もまだあたしの周りを二人して、
てけてけと走り回っていること。
一人はごっちんの言うことしか素直に聞かずに、いたずらばかりしていて、
もう一人は飯田さんのひざの上で、お菓子を食べている。
とうぜん二人ともあたしの友達。
「師匠〜!今日もピスタチオ買ってきたで〜」
「いいらさ〜ん!おかしいっしょに食べるれす〜」
- 3 名前:シグナル 投稿日:2002年08月22日(木)00時40分07秒
Gardens
第五話 二人ぼっち
- 4 名前:シグナル 投稿日:2002年08月22日(木)00時40分57秒
みんなはあの事件を覚えているだろうか?
あたしとごっちんが、梨華ちゃんを助けた例の事件。
街ではたいした話題にもならなかった。
せいぜいあたしのチーム「イエローガーディアン」のメンバーの中で、
笑い話になったくらい。
けれどもあの事件以降、この街にある学校では、おかしな噂が流れた。
「リトルガーデンのキングが、一人で学校にのりこんだ」
確かに一人だったけど、普通に玄関から入ったよ。
「屋上でいじめられていた生徒を助けるため、一人で二十人を相手にした」
ごっちんもいたし、人数増えてる。
「キングが帰った学校の屋上は、血の海になっていた」
血の海って…。
こんな感じ。
- 5 名前:シグナル 投稿日:2002年08月22日(木)00時42分42秒
だからかな?
金曜の夜、ベンチに行くと手紙がいくつか置いてあることがある。
内容はこう。
「いじめられてます、助けて」
「となりの高校の人達に目をつけられている、助けて欲しい」
「好きです、付き合ってください」
これはちがった。
「学校に行きたくありませんどうしたらいいですか?」
あれから、こんな内容の手紙が、時々あたしの座るベンチに置かれるようになった。
ここは子供電話相談室じゃないっての。
だいたい会いにも来ないで「助けろ」なんて、調子がよすぎると思わない?
自分は何もしないのに、助けてくださいなんてのはお断り。
あたしも、助けないなんて言ってない。
ただ、本人が変わらないかぎり、何も変わらないってこと。
梨華ちゃんみたいにさ。
- 6 名前:シグナル 投稿日:2002年08月22日(木)00時47分44秒
リトルガーデンはこの街にある公園の夜の名前。
噴水を囲む円形の広場は、夜になるとあたしのチームの人達のたまり場になる。
その他にもシンガー、MBX、ボーダー、ダンサー、バスケット、
なんかのチームが、この公園にはあり、それをあたしがなんとかまとめている。
けれどもそこは、大人達が足を踏み入れることを、とまどうくらい鋭くて、
ギラギラしているように見える場所。
けれどもそこにいる人達は、悪い人ばかりじゃない、
熱くて、まっすぐで、ちょっとだけ不器用な人達ばかり。
いつもの金曜日、あたしはいつものように一人で学校から帰ると、
いつものように顔を見ないと女性と分からないくらいの服装で、
いつもより少し早く公園へと向かった。
- 7 名前:シグナル 投稿日:2002年08月22日(木)00時50分17秒
公園はまだ昼の顔。
オレンジ色には、まだ少し遠い空と、
光ることのないデパートの看板や、ラブホテルのネオン。
それだけで公園の雰囲気はずいぶん違っていた。
携帯電話で話をしながら歩くサラリーマンや、
あたしの通っていた中学校の制服を着た四人組みが、
公園を横切っていくのさえ新鮮に見える。
そこはいつもと少し違ったリトルガーデンだった。
「少し早かったかな?」
黄色くカラーリングされたベンチに向かいながらつぶやく。
「キング、早いっすね」
後ろから男の声。
振り向くとバスケットボールを脇に抱えた、男がいた。
肩に触るか触らないくらいに伸びた金色の髪と、青一色といっていいほどの服装。
青のハーフパンツに、上半身はフード付きの青いスウェードのベストを着ているだけ。
スウェードの下の肌は健康的に白い。
首にかけたシルバーのチェーンの先にあるアクセサリーがきらりと光った。
- 8 名前:シグナル 投稿日:2002年08月22日(木)00時51分51秒
「シン君早いね」
「キングがミーティング早くやるって言うから、早くきたんですよ」
シン君はこの公園にいる、賭けバスケのチームのリーダー。
この公園ではめずらしい現役の大学生。
シンというのはニックネームで、行方不明の父親の名前だとか…。
リトルガーデンではたいていの人がニックネームで呼ばれている。
もちろん、あたしやごっちん、それに飯田さんも。
「今日は、ごっちんさんや、かおりんさんは一緒じゃないっすか?」
あたしがベンチに座ると、シン君は公園の敷石の上に腰を下ろした。
「もうすぐ来るとおもうよ、ごっちんも飯田さんも。
それよりさ、地べたに座ってないでここに座ったら、お尻汚れるよ」
そう言いながら、自分の横にあるスペースを見た。
けれどもシン君は立ち上がることなく言う。
「何言ってるんですか、王様の横に座れるのは、女王だけっすよ」
- 9 名前:シグナル 投稿日:2002年08月22日(木)00時56分24秒
「女王って彼女とかのこと?」
あたしは、シン君の指の上で回るバスケットボールを見ながら言う。
「女王っていうのは例えですけど、今までのキングの横に座っていたのは、
だいたいがそうっすね」
そう言われて、自分の横に男が座っているのを想像してみた。
どう見てもあたしがおまけ。
あたしには、ごっちんと梨華ちゃん、それに飯田さんのほうがいい。
「あたしの横は、友達が座ってるけどいいのかな?」
いまさらながら聞いてみた。
「友達ならいいんじゃないっすか?」
「じゃあさ、どうしてシン君やほかのメンバーは、
あたしの横に座ろうとしないの?」
あたしがそう言うと、シン君は当然のように答える。
「王様の隣に、家来が座るなんて聞いたことないっすよ」
シン君は笑いながらそう言った。
家来…。
「…そうなんだ」
あたしは小さく暗い声でいう。
「そうっすよ」
シン君は大きく明るい声でいった。
それ以上は何も聞かなかった。
それよりも、ごっちんや飯田さん、それに梨華ちゃんが早く来ないかと、
夜が迫っている空を見ながら考えていた。
- 10 名前:シグナル 投稿日:2002年08月22日(木)01時06分43秒
- 更新終了。
管理人さんすみません、200KBに完全に達してないのに新スレ立てちゃいました。
次回更新は未定です。
正直なところ、話が書けません、ストックもほとんどありません。
自分を追い込むつもりで新スレ立てたので、週一更新になるかもしれません。
更新が少なくなれば怒ってください、へたれなので書くと思います。(w
では。
- 11 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月22日(木)04時00分51秒
- うぉぉ〜ん!! 待ってました!登場人物も増えたぞい!
またまた かっけーよっすぃーに期待なのれす。
- 12 名前:オガマー 投稿日:2002年08月22日(木)06時51分00秒
- ワクワクしてきました!
がんがってくださいねー!
- 13 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年08月22日(木)07時51分26秒
- 新スレおめ! マターリいきまっしょい
吉澤は「イエローガーディアン」の支配者なんですよね・・・
- 14 名前:EAGLE@( ´ Д `) んぁー 投稿日:2002年08月22日(木)18時44分34秒
- http://fukuoka.cool.ne.jp/black_eagle/aitan6292.jpg
新スレおめですねぇ、
マターリとで構いませんよ。マターリとで。
- 15 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年08月23日(金)12時30分54秒
- 前スレ教えてください!
- 16 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月23日(金)15時19分01秒
前スレ
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=purple&thp=1024846246&ls=50
- 17 名前:EAGLE@雷が大好き(w 投稿日:2002年08月23日(金)23時47分41秒
- >14が見れない。何故か知らんが。
よってこっちを↓(中身は同じなんだけどね。)
http://fukuoka.cool.ne.jp/black_eagle/omedeto.htm
- 18 名前:七誌 投稿日:2002年08月25日(日)18時15分36秒
- おう!今回はどうやらあの二人が出てくるようですね。
だんだん増えてくる出演者とその展開にこれからも期待してお待ちします。
- 19 名前:シグナル 投稿日:2002年08月27日(火)03時45分57秒
夜が近づくにつれて、集まってくるあたしのチームのみんなは、
楽しそうに話をしながら、ナンパ待ちの女の子達に声をかけている。
オレンジ色をした空に、ギャル達の声がよく響く。
けれども、あたしの周りは防音設備でもあるように静か。
聞こえてくるのは、あたしの前にいる、シン君の声だけ。
ギャル達の声でさえ、遠くのほうで聞こえるような気がする。
「そういえば、最近よく見る、あのかわいい子が、例の事件の子ですか?」
シン君がそう言った時、横から長めのハーフパンツをはいて、
だぶだぶのユタ・ジャズのユニフォームを着た、高校生くらいの女性二人が、
近づいてくるのが見えた。
シン君は持っていたバスケットボールを、乱暴に二人に渡すと、手でおいはらうそぶりを見せた。
二人はあたしに頭を下げた。
あたしが頭を軽く下げると、二人は喜んだように声を上げて、
芸術劇場のほうへ走って行った。
「あいつらキングのファンなんですよ。
チームに入ったばかりのやつが、キングと話そうなんて調子がよすぎるっす。
まったく、なにしにうちのチームに入ったんだか」
シン君は、グチのようにそう言うと、また梨華ちゃんのことを聞いてくる。
- 20 名前:シグナル 投稿日:2002年08月27日(火)03時47分52秒
「あの子、かわいいですけど、彼氏とかいるんですか?」
「梨華ちゃんのことだよね?」
そういうと、シン君はあたしを食い入るように見ながら、顔を縦に何度も振った。
まぁ、シン君の気持ちも、分からなくもないか。
「いないと思うよ。
梨華ちゃん、男の人と話したりするのが、苦手だって言ってたから」
「男が苦手なんすか」
「そうみたいだよ」
そう言って、公園の真ん中にある噴水の吹き上がる水に目をやる。
崩れてはまた吹き上がる噴水を見ていると、
噴水の近くを三人が並んで歩いてくるのが見えた。
いつものように学校の学生服を着て、二人の真ん中で笑っているごっちん。
その横には、長袖のTシャツをひじの辺りまで捲り上げ、深い海の色のジーパンを穿き、
肩には白のトートバック、左手でお気に入りの座椅子を持っている飯田さんが見えた。
そしてその反対側には、長袖の薄いピンク色のTシャツに白いワンピースを重ね着して、
栗色の髪を風邪に揺らしながら、控えめな笑顔の梨華ちゃんが見えた。
- 21 名前:シグナル 投稿日:2002年08月27日(火)03時49分11秒
「よっすぃ〜!」
あたしの視線に気づいたのか、ごっちんが大声であたしの名前を呼びながら走ってきた。
後ろで梨華ちゃんが、ごっちんをつかまえようと手を伸ばしたが、
ごっちんは梨華ちゃんの手よりも早くあたしに向かって走ってきた。
梨華ちゃんは例のごとく眉をハの字にしている。
何か困ったことがあるんだろう。
ごっちんはあたしの横に座ると、幼い子供のような笑顔のまま話し始めた。
「梨華ちゃんね〜、こないだ男の人に告白されたんだって〜」
ごっちんは、きゃっきゃと笑いながら言う。
けれども特別おどろくこともない。
梨華ちゃんくらいきれいで、おとなしい人なら、告白くらいされるだろう。
そう思った。
あたしの目の前にも、飯田さんと一緒に歩いている梨華ちゃんに、
のんきな顔で手を振りながら見ている人がいるし…。
- 22 名前:シグナル 投稿日:2002年08月27日(火)03時50分48秒
「それでさぁ、梨華ちゃんどうしたと思う?」
ごっちんは笑顔のまま聞いてくる。
「梨華ちゃんのことだから断ったんじゃないの?」
「それがさぁ〜、梨華ちゃん走って逃げたんだって〜」
ごっちんはそう言ってまた笑う。
あたしは告白されて、走って逃げる梨華ちゃんを想像してみた。
あたしもなんだかおかしくなって、ごっちんと二人で笑う。
ごっちんと二人して笑っていると、梨華ちゃんがあたし達の前にやって来た。
「恥ずかしいからひとみちゃんには、言わないでっていったのに…」
梨華ちゃんはそう言って、少し赤くなった顔であたしをチラッと見る。
あたしと視線が合うと赤い顔をさらに赤くして俯いた。
「あはっ!ごめんね〜、も〜言わないからさ〜、梨華ちゃんも早く座りなよ」
笑いながら梨華ちゃんを見ているごっちん。
梨華ちゃんは、なんだか少し困ったようにため息をついて、あたしの横に座った。
きっと梨華ちゃんも、ごっちんの笑顔で怒る気がなくなったんだと思った。
- 23 名前:シグナル 投稿日:2002年08月27日(火)03時52分38秒
「顔もかわいいですけど、声もチャーミングですね」
地面に座っているシン君が、梨華ちゃんを見ながら言う。
「あ、ありがとうございます…」
おびえて小さくなったような声。
あたしの横に座った梨華ちゃんの左手が、あたしの服の端を、
遠慮がちにつかんだのが分かった。
横を見ると、梨華ちゃんは黙ったまま俯いている。
髪で隠れている額に、うっすら汗が浮いているのが分かった。
今日はそれほど暑くはないはず…。
「ほら、シン君もこんなところで話してないでさ、
ほかのチームのリーダー呼んできてよ、今日集まり悪いよ」
あたしがそう言うと、シン君はゆっくり立ち上がり、お尻の辺りを2〜3回叩く。
「そうだ、これから梨華さんの事なんて呼べばいいっすか?」
シン君は、ポケットから携帯電話を取り出しながら梨華ちゃんに聞く。
- 24 名前:シグナル 投稿日:2002年08月27日(火)03時57分54秒
「え、あ、な、なんでもいいです」
梨華ちゃんはまだ俯いたまま。
シン君は少し困ったように梨華ちゃんを見ながら、
携帯で誰かに電話をかけ始めた。
「じゃ〜、チャーミングだからチャーミーさんってことでいいっすか?」
「え!?チャーミー?」
梨華ちゃんは驚いたような声を上げてシン君をみる。
「やっと前みたっすね、下ばかり見てると、きれいな顔がだいなしっすよ、
あ!もしもしケータ?今どこよ?は!?平家さんの店?
なにぬけがけしてんだよ、一人で行かない約束だろ」
シン君は小さくあたしに頭を下げると、梨華ちゃんに笑顔で手をふりながら、
繁華街の方へと歩いていった。
「梨華ちゃん大丈夫?」
あたしの服をつかんだままでいる梨華ちゃんに聞く。
梨華ちゃんは、何も言わずにあたしから手を放した。
梨華ちゃんの向こうで、座椅子に座っている飯田さんと目が合う。
落ちかけた太陽のオレンジと、公園の明るい雰囲気の中で見る梨華ちゃんは、
とても弱く見えた。
- 25 名前:シグナル 投稿日:2002年08月27日(火)03時59分20秒
「んあ〜、チャ〜ミ〜だって、なんだか洗剤みたいな名前だね〜」
ごっちんの、のんきな声が少し重くなっていた空気を軽くする。
「そういえばさぁ〜、昨日のお昼ご飯、梨華ちゃんと手作りのお弁当、
とっかえっこしたんだよね〜」
あたしの横でごっちんが、ゆらゆら揺れながら、
ライトアップされたばかりの噴水のほうをボーっと見ながら言った。
「それ言っちゃだめ!」
横から梨華ちゃんの高い声。
さっきまで黙ったまま俯いていた梨華ちゃんが、
顔を赤くしてベンチから立ち上がり、手を胸の前で合わせてごっちんを見ていた。
ごっちんはそんな梨華ちゃんを見て、ダハッと笑うと話を続ける。
- 26 名前:シグナル 投稿日:2002年08月27日(火)04時00分50秒
「なんだかさ〜、微妙な味なんだよね〜、例えるならさぁ」
「ごっちん、言っちゃだめ〜」
梨華ちゃんは、そういってごっちんの口をふさごうと手を持っていくが、
ごっちんは梨華ちゃんに捕まるより早く、ベンチから立ち上がり、
広場の中央に向かって走っていく。
ごっちんは噴水の近くまで行くと、振り向いて両手でメガホンを作り叫んだ。
「梨華ちゃんの焼きそばは、トイレの芳香剤の味がするんだよ〜」
公園の視線がごっちんに集まった。
ギャル達の会話も、シンガー達のギターの音も止まる。
ダンサー達の使っているラジカセの音と、噴水から吹き出る水の落ちる音が、
街全体に響いているようだった。
あたしの横では、眉をハの字にした梨華ちゃんが、
目を潤ませてぼうぜんと立っていた。
梨華ちゃんを見ていると、梨華ちゃんと目が合う。
目が合うと梨華ちゃんは、顔を赤くして下を向いた。
- 27 名前:シグナル 投稿日:2002年08月27日(火)04時03分11秒
「追いかけなくてもいいの?
ごっちんまだ話すかもしれないよ」
あたしがそう言うと梨華ちゃんは顔を上げてごっちんを追いかけ始めた。
ごっちんは走ってくる梨華ちゃんを見てふにゃっと笑うと、
噴水の周りを「キャー」なんて大げさな悲鳴を上げて、
梨華ちゃんから楽しそうに逃げ始めた。
「吉澤も残酷なことするわね」
飯田さんがくすりと笑いながら言った。
「残酷?なにがですか?」
「また吉澤はきづいてないの?」
飯田さんはいつかの様なリアクションをする。
「石川の事みんな知らないんだから、追いかけなかったら、
焼きそば作ったのばれないじゃない」
「あ……ほんとだ」
あたしがまぬけな声で言うと飯田さんが笑う、それに続いてあたしも笑った。
噴水のほうに目をやると、さっきまで追いかけごっこをしていた二人が、
噴水のヘリに座り話しをしていた。
二人の後ろで吹き上がるライトアップされたれ噴水の水が、
いつもよりきれいに見えたのは、たぶん気のせいなんかじゃないと思った。
- 28 名前:シグナル 投稿日:2002年08月27日(火)04時14分46秒
- 分け合ってこんな時間に更新終了。
まだ出てこない二人…話が進まないよ〜。(涙
娘。以外のオリジナル?キャラを出したのですが、とくに意味なしです。
モデルは某ゲームの主人公です。ヒント(シン、球技、父親行方不明、っす。
>>11 名無し読者様
お待たせして申し訳ありません、新シリーズは少し物足りないかもしれませんが、
ながーい目で見てください。
登場人物はこれからもどんどん増えていく予定です。
>>12 オガマー様
励ましのお言葉ありがとうございます。
ワクワクするような話を書きたいのですが…難しいです。
今回も気合を入れて行きたいと思うので、
お暇な時にでも見てやってください。
- 29 名前:シグナル 投稿日:2002年08月27日(火)04時35分10秒
>>13 むぁまぁ様
>吉澤は「イエローガーディアン」の支配者なんですよね・・・
そうです、支配者です。
少し分かりにくいところがあったようで、もうしわけございません。
次回辺りに、この説明も出てきます。
この先も分からないところなどあれば、質問やご指摘お願いします。
>>14 EAGLE@( ´ Д `) んぁー様
どもです。
html化ありがとうございます。
放置なんてことないように書いていきますので、
マターリ待っていてください。
>>15 ヒトシズク様
前スレへの誘導、できていなくて申し訳ありません。
こんな作者ですが、よろしくお願いします。
>>16 名無し読者様
読んでいただいている上に誘導まで、ありがとうございます。
助かりました。
こんごともながーい目で見てやってください。
>>18 七誌様
出演者はどんどん増えていく予定ですが、話はなかなか進みません。(w
これからの展開は、あまり期待しないでください。
作者も迷走していますので、どうなることやらです。
皆様レスありがとうございます。
作者うれしいです。
次回更新も未定です。(ごめんなさい
では。
- 30 名前:EAGLE@ナチュラルハイなわけで 投稿日:2002年08月27日(火)05時10分50秒
- ブラーボォ!!
走ってフェードアウトしていく石川…
激しくワラタ
八の字も出てきたし、ってチャーミーそのうち胃に穴が空きそうやな(w
やはりあの人の名前が出てきたのが感激。
登場するのが待ち遠しい♪
>マターリ待っていてください。
放置されても忠犬ハチ公のごとくじっと待ってます(爆
- 31 名前:EAGLE@追伸@連続ですんまそん 投稿日:2002年08月27日(火)05時14分42秒
- 登場人物紹介を作ったんでよろしくぅ!
http://fukuoka.cool.ne.jp/black_eagle/gardens.htm
まぁ、文章はシグナル兄貴が作った文だからオイラはな〜にも仕事って仕事やってないっすけど(ww
- 32 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年08月27日(火)07時48分38秒
- 石川さん、もしかしてもしかするのですかぁ?
>作者様
すみません、なんか誤解を与えてしまったようで。
吉澤は「イエローガーディアン」の支配者なんですよね・・・って書いたのは
吉澤とシン君の会話で自分がここの支配者なんだってことに改めて思い知らさ
れた感じだったのでしょう。
其れ見てあっしもあそうだったと思い、書いてみたって訳です。
- 33 名前:オガマー 投稿日:2002年08月27日(火)11時06分10秒
- ワクワクするっすYO!
無理しないでも充分ワクワクしてるんでw
余計楽しみな展開になっちゃったかも???
- 34 名前:七誌 投稿日:2002年08月31日(土)18時56分38秒
- ここの飯田さんが一番頭がきれていてイイ!!
「吉澤も残酷なことするわね」
このセリフがツボ。
- 35 名前:シグナル 投稿日:2002年09月03日(火)00時44分57秒
「後藤はホントにすごいよね〜。
あれだけ暗くなってた石川が、あっというまに明るくなるんだから」
あたしの横で座っている飯田さんが、噴水のへりに座って話している二人を見ながら言う。
確かにそうだ、ごっちんの言葉は、夜明けの優しい太陽のように、人の心を柔らかくさせる。
「そうですね、あたしもごっちんにはいつも驚かされますよ」
あたしが噴水に目をやると、梨華ちゃんが携帯電話を取り出しているのが見えた。
「それにしてもあの二人はホントに仲がいいよね」
「まぁ、二人とも同じ学校に通ってますからね」
飯田さんにそういった後、なんだか二人に取り残されたよう気分になった。
そして、そんな自分が少し卑しくも思えた。
「さびしい?」
あたしの心を見抜いたように飯田さんが言う。
飯田さんの声はいつも優しいが、心臓に悪い。
- 36 名前:シグナル 投稿日:2002年09月03日(火)00時45分57秒
声をかけた飯田さんは、自分の持っていたトートバックの中を、
あさるように何かを探している。
例のごとくあたしのほうは見ていない。
「ん〜、なんだかあの二人仲いいな〜って思って」
あたしは横にいる飯田さんに言う。
飯田さんはバックから大きめの手帳くらいの本を取りだした。
「さっき後藤が言ってた、石川が男に告白された話聞いたでしょ?」
「はい、走って逃げたんですよね」
「あれみたいよ、いじめの原因。
石川に告白した男の彼女が、例の理事長の娘なんだって」
あきれた。
ふられた男の腹いせに、梨華ちゃんをいじめていたなんて…。
「そんなことで梨華ちゃんをいじめていたんですか?」
あたしは、ため息まじりに聞く。
- 37 名前:シグナル 投稿日:2002年09月03日(火)00時46分56秒
「そうだよね、くだらないよね。
でもさ、あたしや吉澤にとってはそんなことかもしれないけど、
その娘にとっては大きかったんじゃないのかな?
それにさ、いじめの原因に納得のいくものなんてあると思う?」
そう言って飯田さんはあたしの目を見つめる。
飯田さんの言葉は、いつもあたしの深いところまで届く。
梨華ちゃんにとっては気づかないくらい小さな事。
でもその人にとっては、いじめることくらい大きなことなのかもしれない。
けれどもそれがいじめの理由になんてなるはずない。
あたしの中で居心地の悪い風が吹いた。
- 38 名前:シグナル 投稿日:2002年09月03日(火)00時49分05秒
「でさぁ、いじめの原因を後藤が調べてくれたんだって、石川いってたよ」
飯田さんはそう言って持っていた本を開けた。
本の題名は「家庭菜園の作り方」
飯田さんはアパートに住んでいるはずなのに…。
飯田さんのアパートには庭があるのだろうか?
そんなことを考えながら飯田さんの話を聞く。
「後藤が、学校中の人に聞いて調べてくれたんだって、石川が喜んでたよ。
後藤もなんだかんだ言って、石川の作った焼きそば、全部食べたって言ってたしね」
飯田さんは視線を本からあたしに向ける。
けれどもあたしと目が合うと、視線を本へと戻し、クスッと笑う。
「なにがおかしいんですか?」
あたしが不機嫌にそう言うと、飯田さんはにやっと笑う。
この前見た、テレビドラマの女優みたいな笑み。
愛人役のその女優は、不倫相手の男の家に、電話をかける。
電話のボタンを押していくたびに、女の顔には悪戯な笑みが浮かぶ。
- 39 名前:シグナル 投稿日:2002年09月03日(火)00時50分32秒
「吉澤はホントに寂しがり屋だね、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。
なんだったらかおりのひざにでも乗る?」
飯田さんは笑いながら自分のひざを軽く叩いた。
あたしは、自分の中のモヤモヤしていたものを飯田さんに言い当てられ、顔の温度を上げた。
「か、からかわないでくださいよ」
声が少し裏返った。
それを聞いて飯田さんはさらに笑う。
「もういいです!」
あたしはそう言ってベンチから立ち上がり、目を細め、
手を叩きながら笑っている飯田さんを見る。
「あははは、ごめんね、なんだか吉澤がかわいかったからさぁ」
からかうように笑う飯田さん。
考えてみたら、こんなに笑う飯田さんを見るのもはじめてかもしれない。
今日はいつもと違う夜になるような予感がした。
- 40 名前:シグナル 投稿日:2002年09月03日(火)00時52分37秒
「そうだ、吉澤は石川の男が苦手な理由知ってる?」
飯田さんの視線は、噴水のへりに座って携帯を覗き込んで入る二人に向けられている。
あたしもすぐに目で二人を追っていた。
あたしは飯田さんの言うとおり寂しがり屋なのかもしれない。
「いえ、あたしは聞いてませんけど、どうかしたんですか?」
「ん〜、あのおびえ方は、普通じゃなかったから、気になっちゃって…」
飯田さんが心配そうに言う。
あたしは、梨華ちゃんのつかんでいた、自分の服の端を見た。
その部分だけが、深いしわになっているのがわかる。
この服をつかんだ時の梨華ちゃんは、なにを思っていたのだろうか?
それよりも、あたしは梨華ちゃんの何を知っているのだろうか?
知っているのは、震えた声で話してくれたほんの少し過去と、ピンク色…。
余計な事を知っているのも問題なのかもしれない。
いろんな思いがあたしの頭を回る。
梨華ちゃんの後ろの噴水が、ちょうどピンク色で吹き上がっていたからなのかもしれない。
- 41 名前:シグナル 投稿日:2002年09月03日(火)00時54分02秒
そんなことを考えていたあたしのポケットの中で、携帯電話が鳴った。
見ると、梨華ちゃんからメールが入っている。
『おなかへった〜、ご飯食べに行こうよ〜』
どう見てもごっちんからのメール。
2人のほうを見ると、梨華ちゃんが手を顔の前で何度も横に振っているのが見えた。
その横ではごっちんが、へら〜っと笑っている。
『平家さんの店に行くから何か買ってくるよ』
メールを送ってすぐに、ごっちんが手で大きな丸を作った。
横で梨華ちゃんも頷く。
「今から平家さんの店行きますけど、飯田さんはどうします?」
振り返って飯田さんに聞く。
飯田さんは読んでいた本をひざに置いた。
「吉澤一人で行くの?
吉澤一人なら圭織は行かないよ」
「どうしてですか?」
「吉澤と二人きりで歩いてると、吉澤のファンに石投げられそうだからやめとく」
飯田さんはフフッと笑うと、また本に目をやる。
アパートに住んでいるのに、「家庭菜園の作り方」の本を読んでいる飯田さん。
…やっぱり分からない。
- 42 名前:シグナル 投稿日:2002年09月03日(火)01時08分36秒
- 更新終了。
皆様レスありがとうございます。
>>30 EAGLE様
調子悪くてなかなか書けなかったのですが、なんとか調子戻ってきました。
これからぐりぐり進むと思うので、これからもよろしくお願いします。
>>32 むぁまぁ様
なんだか作者が誤解していたようで申し訳ありません。
正直な所、あのシーンでは、むぁまぁさんが書いてくださったことを書きたかったので、
このレスもらったときはうれしかったです。
>>33 オガマー様
>余計楽しみな展開になっちゃったかも???
まじっすか、期待に答えられるような展開になるようがんばります。
>>34 七誌様
実は最近、飯田さんがお気に入りになっている作者です。
よっすぃ〜との会話が、最近のお気に入りです。
- 43 名前:シグナル 投稿日:2002年09月03日(火)01時11分46秒
- なんとか週一更新は守れました。
次回更新は未定ですが、近いうちにしたいです。
少し書けなくなっていたのですが、がっこが始まったので何とかなりそうなのです。
週一更新目標に、がんがります。
- 44 名前:オガマー 投稿日:2002年09月03日(火)03時47分43秒
- いいらさんカッケー!!
いしとごまがなかいいのに、よしこと同じくヤキモチを妬いてみたりして…(笑
更新お疲れさまです。
週一更新がんがってくださいw
- 45 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年09月03日(火)12時27分12秒
- 話してる内容とは裏腹にマターリと時間が流れてる感じがスゴクイイ
>作者殿
飯田ヲタとして嬉しい限りです
- 46 名前:とみこ 投稿日:2002年09月07日(土)11時59分04秒
- 飯田さんがカッコイイですねぇ^^よしこもいいです!
もちろんごっちんと梨華ちゃんもそれぞれいい味出してますね!
やっぱりシグナルさんは天才だ〜!!
- 47 名前:七誌 投稿日:2002年09月07日(土)15時35分34秒
- 飯田さんとよっすぃ〜のなんか探偵と助手みたいな感じの会話がイイ!
そんな感じの話も見てみたいなと無理を言いながら(w
更新お待ちします。頑張って下さい。
- 48 名前:シグナル 投稿日:2002年09月07日(土)23時20分13秒
あたしは、久しぶりに一人で夜の街へと出た。
月の出始めた街は、いつもどおり足早に流れている。
デパートの明かりや、原色だらけのネオン、車の雑音と人の声で、
今日も街はぎゅうぎゅう詰め。
「映画とか興味ない?」
「きれいな肌してるね、エステに通えばもっときれいになるのに……」
あたしはそんな声を無視して歩いて行く。
いつもなら聞こえない事も、一人なら自然と耳に入ってくる。
たまには一人で歩くのも悪くないのかもしれない。
歩道の端に座り込み、大声で話しをしていたギャル達が、あたしに向かって手を振ってきた。
彼女達が飯田さんの言っていた、あたしのファンの人達。
名前も分からない人に手を振るのは、
変な誤解の元だからやめた方がいいって、飯田さんが言ってた。
名前も分からない人に、手をふるのはやめた方がいいのかな?
あたしはそう思いながらも、彼女達に向かって手をふる。
キャーと小さな歓声が上がる。
けれども彼女達が手を振っている相手は、キングであって、吉澤ひとみではない。
それくらい分かっている。
やっぱりこの街を、一人で歩くのは少しさびしい。
- 49 名前:シグナル 投稿日:2002年09月07日(土)23時22分24秒
公園を取り囲むようにあるビルの1階の店舗に、目的の店はある。
若い女性店長の考える、オリジナルベーグルサンドが人気のベーグルショップ。
特に、レアチーズベーグルサンドがあたしのおすすめ…。
…少し走ろう。
自動ドアが開くとあふれてくる女性達の声。
7時を前にして、店の中にいるのは、女子高生や仕事帰りのOL、
遊び疲れたギャル達が、店内の机の上でへばっている。
「平家さんいる?」
あたしはレジカウンターにいた、バイトの女の子に声をかけた。
女の子は店の奥に向かって声をかける。
「どしたー?」
中から関西訛りの返事が返ってきた。
「お客さんです」
「はいよー」
爽快な返事に続いて、店の制服に身を包んだ平家さんが現れた。
- 50 名前:シグナル 投稿日:2002年09月07日(土)23時24分23秒
「お!よっすぃ〜来たか。
あれ?今日は石川はおらんの?」
「もう梨華ちゃん来ませんよ。
平家さんがお尻触るから、あの後泣いて大変だったんですからね」
レジカウンターの女の子の横で、平家さんが乾いた声で笑る。
年下のあたし達にも、いつも気さくに話しかけてくれる平家さん。
こういう所も店の人気の1つなのかもしれない。
「ここはあたしがやるから休憩しといで」
平家さんが、横にいた女の子にそう言うと、その女の子はあたしをチラッと見て、
隣にいた女の子と手を合わせて喜び始める。
「あいかわらずよっすぃ〜は、モテモテやな〜」
平家さんが横ではしゃいでいる、二人の女の子を見て言う。
「あたしがモテモテですか?」
あたしの言葉に、平家さんはお客さんで満員のフロアを指差した。
- 51 名前:シグナル 投稿日:2002年09月07日(土)23時29分22秒
あたしが平家さんの指差すほうに振り向くと、フロアが一瞬ざわめく。
制服姿の女子高生が、あたしを見ながら隣の女の子に耳打ちをしはじめ、
疲れた表情でへばっていたギャル達は、あたしに向かって手をふり始める。
「ほら、手ふってくれてるやん、よっすぃ〜も手ふったり」
そう言って平家さんは、カウンター越しにあたしの手首をつかむと、つかんだ手を左右に振る。
「近所の店は、値下げしたり、クーポン券配ったりしてるけど、ウチの宣伝広告は、
効果は絶大やからな〜、ほれ、笑顔笑顔」
そう言って平家さんはあたしの顔を見て笑う。
- 52 名前:シグナル 投稿日:2002年09月07日(土)23時32分36秒
「どうしてあたしが、女の子に笑顔で手をふらなきゃいけないんですか」
「ええやん、減るもんちゃうし、それによっすぃ〜も、いつも手ふってるやん。
それに見てみ、かわいいお尻…ちゃうわ、かわいい女の子がいっぱいや、
よりどりみどりやで」
平家さんはニヤニヤ笑いながらあたしを見る。
「あたし女ですから、よりどりみどりでも困ります」
少し強めの口調で言うと、平家さんはフフッと笑う。
「まぁーなー、よっしーは女やしな、女の子に迫られたら困るわな。
それに、女の夢は、結婚やもなー」
平家さんはそう言うと、レジカウンターにひじを付き、左手の甲をあたしに向けた。
ひらひらさせている左手で、何かが光った。
- 53 名前:シグナル 投稿日:2002年09月07日(土)23時35分40秒
シルバーのリングに付いた大粒のダイヤモンド。
「それどうしたんですか?!」
あたしの驚いた声に、平家さんは満面の笑みで答える。
「いや〜ついにあたしも幸せつかんだんよ〜。
相手はな〜、大企業のお偉いさんの息子やねん、玉の輿や玉の輿。
それに顔も、けっこーいけてんねんな〜、これが…」
平家さんはうっとりとダイアを眺めながら言う。
平家さんの口の端から、よだれがたれてるのは…たぶん気のせいだろう…。
「それで結婚式はいつのなんですか?」
あたしの質問に、平家さんは口の端のよだれを、あわててぬぐいながら答える。
「予定は今年の11月や。
海の見える教会で式あげて、都内の豪華ホテルで披露宴、
そしてそのまま海外へハネムーン…ええわ〜、なんてすてきなんやろ」
どこか遠くを見つめながら、あたしの言った1つの質問に、10の答えを返す平家さん。
恋は盲目。
そのお手本がいま目の前にいる。
今の平家さんを見てれば、この言葉は誰でも思いつくんじゃないかな?
そう思った。
- 54 名前:シグナル 投稿日:2002年09月07日(土)23時37分38秒
「でな〜、ウチとダーリンが出会ったんは―」
それは、平家さんが遠くを見つめながら、婚約相手との出会いを語ろうとした時だった。
後ろの自動ドアが開く音に続いて、聞こえてきた関西訛りの大きな声と、
少しおびえたような、したったらずな声。
「ウチにまかせてたら大丈夫、ののは心配しすぎや」
「でも、あいぼんはキングは怖い人だってしってるれすか?」
「だいじょうぶやって、ゆうこときかんかったらウチがキングなったんねん」
これがあたしと2人との最初の出会い。
この時は、この2人があたし達の仲間になるなんて少しも思わなかった。
ましてや、あたしのチームのみんなを動かすことになるなんて、予想もしなかった。
- 55 名前:シグナル 投稿日:2002年09月07日(土)23時50分08秒
- 更新終了。
>>44 オガマー様
最近いいらさんがおきになので、いいらさんがカッケーくなってます。(w
>>45 むぁまぁ様
マターリしてたのは、作者が本編がなかなか書けなかったので、
マターリさせてみました。(w
>>46 とみこ様
いい味出てたでしょうか。
あまり、ほめないでください、てれます。(w
>>47 七誌様
探偵と助手ですか。
これから色々とあるので、そんな感じのシーン出てくるかもしれません。(w
今日はキリがよかったので少し短いですが終了です。
次回更新は近いうちに。
- 56 名前:EAGLE@ヘーケさんのお相手は誰なんやろ… 投稿日:2002年09月08日(日)00時04分30秒
- 誰なんやろ?気になんなぁー…
どもです。
久々の登場です。
学校が始まって毎日のように外に干されてます。
そろそろ干涸らびます(苦笑
ナンダカンダで疲れて帰ってそっこーで寝る生活が続いたんで此処に顔出せなくてすまそ。
htmlの方も暫く更新が停滞するかと、、、
兄貴、すんまへん。気長に待っとって下さいな。
ではでは、
- 57 名前:オガマー 投稿日:2002年09月08日(日)03時53分22秒
- あいののキター!
平家さんの尻フェチキター!
またまたワクワクw
- 58 名前:七誌 投稿日:2002年09月08日(日)15時17分27秒
- キター!辻加護!!
キター!平家さんの尻さわり!!
っていうかー!オガマーさんとほとんどレス一緒だ(w
<やっぱりこの街を、一人で歩くのは少しさびしい。
もしよっすぃ〜がキングになっていなかったらどうなっていたんだろう。
出会いはやっぱ大切ですね。
- 59 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年09月08日(日)18時50分22秒
- 複雑やね
でとうとう暴れん坊が登場かぁ 愉しみ
- 60 名前:シグナル 投稿日:2002年09月09日(月)04時08分49秒
聞きなれない声に、あたしと平家さんが入り口のほうを見ると、2人の女の子が店に入って来た。
そのうちの1人の女の子と目が合う。
黒目がちな大きな目、まとまった黒い髪の毛が、頭の上のほうで、
2つのお団子になっている。
2人とも、この街でよく見る中学校の制服を着ているので、中学生だとすぐに分かった。
けれども、ランドセルを背負わせれば小学生にも見える。
1年生になり立てなんだろう。
目の合った少女は、睨むようにあたしから目をそらすことなく近づいてくる。
そしてあたしにぴったりと体を近づけると、少し見上げるようにしてあたしを見る。
上目遣いとは、ほど遠い目、けれども怖さはひとかけらもない。
眉間に作ったシワがぴくぴく動いている。
この子は、あたしを睨んでるのかな?
無理して睨んでいる姿は、怖さよりもかわいさのほうが勝っている。
- 61 名前:シグナル 投稿日:2002年09月09日(月)04時11分18秒
「なんかようか?」
口を尖らせて言う、ドスを利かせた幼い声。
「別に用はないけど」
「あっそ」
あたしの答えに、お団子頭の女の子は、そっけない返事をして、平家さんの前へ行く。
なんだ?
そしてその後ろを、てけてけと、黒い髪の毛を頭の横でしっぽの様に結んでいる女の子が、
あたしを気にするように、じっと見ながら、お団子頭の後を付いていく。
「いらっしゃいませ、お持ちかえりですか?」
平家さんは、いつものように女の子に聞く。
「え〜とな、キングが好きなベーグルサンドちょうだい」
「「は!?」」
お団子頭の元気で的外れな答えに、あたしと平家さんの答えが重なった。
あたしの好きなベーグルサンド……全部好きだ。
あたしの好きなベーグルサンドはどれなんだろう?
- 62 名前:シグナル 投稿日:2002年09月09日(月)04時13分48秒
「せやから、キングの好きなベーグルはどれ?」
「キングって……あのキングか?」
平家さんは、言葉の間で1度あたしを見た。
そしてゆっくりと確かめるようにお団子頭に聞く。
「そうや、この街で1番強くて、1番クールでかっこええ女のキングや!」
お団子頭の女の子は、早口でそう言う。
強くてクールでかっこいい……。
いや〜てれるなぁ〜。
知らない人からでも、ほめられるのはやっぱりうれしいもんだ。
あたしは自然と笑みを浮かべ、少してれながら、頭の後ろをかく。
「なんやこの1人でニヤニヤしてんのは、頭おかしいんちゃうか?」
上機嫌になっていたあたしの横から、お団子頭の女の子の声。
見るとあたしを睨むように見ている。
カウンターの向こうで、平家さんが口とおなかを押さえて笑っていた。
……。
がまんだ…ここはがまんだ、プロのボクサーが素人相手にけんかをすれば、
免許剥奪…ガッツ師匠、あたしがまんします。
- 63 名前:シグナル 投稿日:2002年09月09日(月)04時16分37秒
「なぁ、はよ教えてや。
ウチ知ってんねんで、キングがこの店でベーグル買ってるってこと」
お団子頭の女の子は、腰に手を当てて、得意げにそう言って鼻で笑う。
あたしの事など、まったく気にする様子もない。
ガッツ、ガッツ、ガッツ。
あたしは心の中で、尊敬するガッツ師匠の名前を、唱える。
こうすればなんだか心が落ち着いてくる。
あたしが心を落ち着かせていると、得意げに笑うお団子頭の向こうで、しっぽ頭の女の子が、
レジカウンターにあごを乗せたような格好で、メニューに写っているベーグルサンドに、
目を輝かせているのが目に入った。
そのうち、あたしの視線に気づいたのか、メニューに向けていた目をあたしに向ける。
少しおびえているような目。
けれどもそらすことなく、不思議そうな顔をして、あたしをじっと見ている。
なぜだか、少し前までの梨華ちゃんの目に、とても似ていると思った。
- 64 名前:シグナル 投稿日:2002年09月09日(月)04時17分48秒
べ ー グ ル 好 き ?
あたしが口パクでそう言うと、しっぽ頭の女の子が、不思議そうな顔で大きく頷いた。
ベーグル仲間の誕生だ。
あ た し も 好 き。
もう1度口パクでそう言って笑顔を見せる。
しっぽ頭の女の子は、あたしの口パクを理解したのか、ニマ〜と笑う。
なんだか、平家さんと言い争っているお団子頭の女の子の上を、
あたしとあの子の、音のない言葉が通っていくのが、心をくすぐるみたいで楽しかった。
- 65 名前:シグナル 投稿日:2002年09月09日(月)04時30分50秒
- 分けあってこんな時間に更新終了。
>>56 EAGLE様
気にしないでください。(w
なぜなら出てこないからです。(w
>>57 オガマー様
平家さんのしりフェチは大人気ですね。(w
そのうち魔の手はよっちぃにも。(w
>>58 七誌様
出会いは大切です。
よっちぃだけに限らず、梨華ちゃんやごっちんもどうなってたんだろう。
>>59 むぁまぁ様
>複雑やね
よっちぃのことですよね?
もし分からないことがあれば何なりと言ってください。
あばれます。
とりあえずあばれさせます。(w
次回更新は今週中にします。
次回は、いきなり視点が変更したりしますので、読みずらいかもしれません。
申し訳ありません。
- 66 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年09月09日(月)12時28分50秒
- 目の前でニヤニヤしてる少女がキングだと知ったときお団子頭の反応は如何に!?
>作者殿
相変わらず言葉足りずでずびばぜん
吉澤の心中、複雑だろうなと思いまして
でも吉澤のこと理解してる仲間がちゃんといるんだから・・・
- 67 名前:EAGLE@火ぶくれ、火ぶくれ 投稿日:2002年09月09日(月)17時24分12秒
- 「ガッツ、ガッツ、ガッツ。」
心が落ち着く…
ツボやな、ヘーケさんが口とおなかを押さえて笑ってる姿も激しくワラタ。
しっぽ頭はいいとしてお団子頭はどーなるんやろ?見物やな。
- 68 名前:シグナル 投稿日:2002年09月10日(火)01時33分23秒
「なー、ええやろ、なんで教えてくれへんの?
うち、これからキングに会いにいくんやから、時間ないねん」
「だから、キングはここのベーグル全部が好きやゆうてるやろ!」
あたしと、しっぽ頭の女の子が、話をしている真ん中で、関西弁の言い争いが起こっていた。
「うそや!うちをだまして、お金使わそうとしてるやろ!
うちはだまされへんで、関東人がなんぼのもんや、関西人をバカにするなー!」
左手を腰に当て、右手の人差し指を平家さんに向けて言う。
「あーもう、分からん子やな、それなら本人に聞いたらええやろ!」
半分けんか腰の平家さんが、あたしを見る。
それに続き、あたしの横にいるお団子頭の女の子があたしを見る。
つぶらな瞳があたしをしたから覗き込む。
上目遣い。
幼い顔の中にある大人の色気が見えた。
「よっすぃ〜は、うちのメニューで好きなんはどれ?」
平家さんのキツイ目があたしを見る。
2人の視線があたしに突き刺さる。
あたしはなにも悪いことしてません。
- 69 名前:シグナル 投稿日:2002年09月10日(火)01時34分20秒
「はぁ?
何でうちが、こんな色白でおかしな服装をした人のこと聞かなあかんねん」
お団子頭の女の子の顔が変わる。
さっきまでの上目遣いは消え、唇を尖らしてあたしを見る。
「うちが知りたいんは、キングの好きなベーグルや。
なんでこんなおかしな格好した人の好きなメニュー聞かなあかんねん」
お団子頭は叫ぶように言う。
色白でおかしな服装をそうした人……。
別に怒っているわけじゃない。
こんな子供相手に、切れるなんてことはしない…。
そう、あたしはクールが売りのキングなんだから…。
だから…だから落ち着け…あたし。
「吉澤、怒ったらあかんよ」
後ろから平家さんがあたしの肩に手を置いて言う。
いつの間にか、大きな袋を手に持ち、レジカウンターからあたしの後ろへ移動していた。
「はは、なに言ってるんですか、あたしが子供相手に怒るわけないですよ」
そう言って平家さんに笑いかけた。
「吉澤、顔がひきつってる」
…あたしは嘘がつけない正直な人間なんだ…きっと。
- 70 名前:シグナル 投稿日:2002年09月10日(火)01時35分38秒
あたしは平家さんから、ベーグルの入った大きなビニール袋を受け取る。
袋の中からベーグルの匂いと、あたたかさが伝わる。
「誰が子供や!うちは中学生や、子供ちゃうわ!」
あたしの後ろからお団子頭の声がする。
あたしはその声を無視する。
子供の言うことなんか気にしなければいい。
そう、言わせておけばいいんだよ、子供の言うことなんか。
「今日は後藤のピスタチオは、いくつ入れとこ?」
「今日はいいです、ほかの人に買ってもらいますから」
そう言って後ろにいるお団子頭をチラッと見る。
「なるほどね」
平家さんも納得したように口で笑う。
あれだけ言われたんだ、このくらいはしてもらわないとね。
「え〜と、チキンとベーコンと、サーモンにレアチーズが2個ずつ入ってるから」
平家さんはレシートを見ながら読み上げる。
するとあたしの後ろから声がした。
「あんた、もしかして…」
お団子頭の驚いたような声。
後ろを振り向くと、口をパクパクさせて、あたしを指差している。
どうやらやっと気づいたみたい。
- 71 名前:シグナル 投稿日:2002年09月10日(火)01時37分14秒
「あんた、キングのファンやったんか!」
「「………ハァ」」
お団子頭の答えに、あたしと平家さんはため息をつく。
体がとても重く感じた。
「平家さん、あたしもう行きますね」
「そやな、それがええわ。そや、これ石川に渡しといて」
平家さんが制服のポケットから、手のひらくらいの大きさの紙を2枚取り出した。
「なんですかこれ?」
「それな、この店の商品のタダ券、石川に渡しといて。
それで彼氏とでも一緒に食べに来いってゆっといてや」
「梨華ちゃんだけなんですか?あたしにはないんですか?」
「その引き締まったお尻を触らしてくれるなら、いつでもあげるで」
平家さんはニヤニヤと笑う。
「いいです。お金払います」
あたしはそう言って笑い、出口へと向かった。
- 72 名前:シグナル 投稿日:2002年09月10日(火)01時38分31秒
「まいどあり〜」
後ろから平家さんの声、それに続いてお団子頭の声も聞こえてくる。
「なぁ〜早く教えてや〜、キングの好きなベーグルはどれなん?」
「しゃ〜ないな〜、いまキングはベーグルよりもこのピスタチオが好きなんやで」
「ホンマに!じゃぁそれ1000円で買えるだけ、ちょうだい」
そんなやりとりに、あたしが振り向くと、平家さんがおつまみ用のピスタチオの袋を、
手に取っているのが見えた。
お団子頭の女の子のは、レジカウンターにもたれてピョンピョン跳ねている。
その横では、しっぽ頭の女の子があたしをポーっと眺めていた。
ま た ね。
あたしが口パクでそう言うと、しっぽ頭の女の子は小さく笑いながら、小さく手を振る。
あたしも女の子に手を振る。
幼い笑顔と、ニーッと笑った口の端から見える、白い八重歯がとても印象的だった。
- 73 名前:シグナル 投稿日:2002年09月10日(火)01時43分41秒
- 分け合って更新終了。
今日、ネタ帳見ていて、昨日の更新分がまだあまっていたことに気づきました。
すいません。なので急いで書いて載せました。申し訳ございません。
レスは次の更新の時に返させてもらいます。
- 74 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月10日(火)12時16分08秒
- 更新お疲れさまです、どこまでも天然な加護(笑
この二人がどんな嵐を巻き起こすのか楽しみです。
- 75 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年09月10日(火)12時25分41秒
- >「あんた、キングのファンやったんか!」
これにはワロタ
いいなぁ加護最高!
- 76 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月11日(水)04時12分27秒
- ぐはあ!
しっぽ頭との音のない会話。可愛すぎる!!!
彼女のにこーっとした顔が浮かびます。文章だけで癒されます。
続き超楽しみに待ってます。
- 77 名前:オガマー 投稿日:2002年09月14日(土)10時26分07秒
- かわいいなーw
めちゃめちゃかわいい。
生意気なあいぼんも。
やっぱり天使みたいなののたんも。
続き期待w
- 78 名前:とみこ 投稿日:2002年09月14日(土)11時23分57秒
- ののちゃんカワエエ!!関西弁のあいぼんもいいですね!
がんばってください”
- 79 名前:七誌 投稿日:2002年09月14日(土)17時06分31秒
- あいぼんの暴走振りがイイ!何か波乱をもってきそう。
しかしシグナルさんの書くののはかわいいなぁ。
- 80 名前:シグナル 投稿日:2002年09月14日(土)23時35分51秒
なんでや、どうしてや?
ウチは奈良県出身の15歳。好きなタイプの男性は勇之助くんの加護亜衣やで。
どうしてあかんねん。
「だから、ファーストフードの店で値引きなんかできるわけないやろ」
「うそやー!この近くのハンバーガー屋は、おまけにポテト付けてくれたわー」
ウチがそうゆうと、レジの向こうで腕を組んで難しい顔してた店員が、
目を見開いて、おどろいたんがわかった。
「うそやろ。そんなことできんの?」
「うそやないよ。メニューにスマイル0円ってなめたこと書いてあったから、
スマイルお持ち帰りで4つ頂戴ってゆうたら店長出てきてポテトおまけにつけてくれたんや」
そうや、ウチのこの可愛い笑顔にかかれば、あの全国チェーンのハンバーガーショップも、
ポテトのおまけが付いてくんねん。
「アハハハ、ほんまに?それおもろいなぁ。
わかった、あんたら2人にもタダ券あげるわ」
店員はひと笑いした後、ポケットからタダ券を取り出した。
- 81 名前:シグナル 投稿日:2002年09月14日(土)23時36分30秒
「ほんまにくれんの?え〜と…」
名前のわからない店員。
ネームプレートを見ると、『平家』の名前の上に店長の文字。
けっこう若いのに店長なんかな?
「ありがとう、平家さん」
「ええよ、おもろい話聞かせてもらえたし」
そうゆって平家さんは、ウチらに雨上がりの青空みたいな、
気持ちのいい笑顔を見せた。
なんかええなぁ、うちらもあんなに笑いたいなぁ。
なぁ、のの。
- 82 名前:シグナル 投稿日:2002年09月14日(土)23時37分38秒
千円で買えるだけ買ったおつまみ用のピスタチオ。
平家さんはビニール袋と一緒にタダ券をうちに渡してくれた。
「はい、そっちのおちびさんも」
うちの横でメニューを見ていたののにも、ニッコリ笑って渡す。
「ありがとう」
ののは声は小さかったけど、ちっちゃい猫みたいに、ニッて笑って、
平家さんの手からタダ券をうけとった。
こんなののの笑顔、久しぶりに見た気がする。
やっぱりこのひと、ええひとや。
「なぁ、平家さんはキングに会ったことあるの?」
ののに笑いかけていた平家さんに、聞いてみた。
「あるよ、それがどうかした?」
「うちらな、キングのチームは入りたいねん。
入れてくれると思う?」
何でこんな事、平家さんに話したのかはうちもわからん。
ただ誰かに聞いて欲しかっただけかもしれないし、
平家さんにそういう力があったんかもしれん。
なんやウチもようわからん。
- 83 名前:シグナル 投稿日:2002年09月14日(土)23時39分10秒
ウチは平家さんの目をじっと見た。
平家さんの茶色い目は、暗闇の中でじっとしている猫の目みたいに、うちを見る。
怖さはない。けど、背中の裏まで見られてるような、何でも見透かすような目をしていた。
ウチは耐えきれなくなって、隣にいるののを見た。
ののは、レジカウンターの上にあるメニューと、
自分の手に握られたタダ券を、こうごに睨んでる。
もう使うの?少しは我慢やで、のの。
- 84 名前:シグナル 投稿日:2002年09月14日(土)23時41分34秒
「そやなー、キングはクールに見えて、ぬけてるとこあるしなぁ〜。
それに誰にでも優しいから、だいじょうぶやと思うよ」
ののを見てたウチに、平家さんがレジカウンターに片肘をつきながらゆう。
優しい目。
こっちのほうがうちは好き。
「せやけど、どうしてガーディアンに入りたいの?」
平家さんは優しい目のまま、ゆっくり聞いてきた。
「ウチら…2人ぼっちやから…」
ウチはそうゆって、やめた。
考えてみたら、平家さんも大人やし…。
ウチは…大人はあんまり好きやない。
平家さんはウチの顔を見て、それ以上何も聞かなかった。
ウチ、そんなに顔に出るんかな?
「まぁええわ、話したくないことは話さなくていいよ。
もしチームに入れてもらえなかったら、姉さんに話し、キングに言ったげるから」
「うん、わかった。ありがとうな平家さん」
「ええよ。お客さんは神様です、ってね」
平家さんはそうゆって、うちとののにウィンクして笑いかけてくれた。
平家さんの笑顔は、ピカピカに光る店の照明よりも、光って見えた。
なんか…ええなぁ。
- 85 名前:シグナル 投稿日:2002年09月14日(土)23時45分05秒
「なぁ、なんで平家さんは、ウチらにこんな優しくしてくれるの?」
ウチは、レジカウンターに片肘ついて、左手を見つめながら、
あくびをしてた平家さんに聞いてみた。
「べつに、2人にだけ優しくしてるわけやないよ。
いつもこんな感じやから…どうして言われてもなぁ」
頭をかきながら困った顔の平家さん。
なんやウチらもお客の1人なんや…。
危うく常連の1人になるとこやった、商売人やな。
まぁそうやな、こんな子供相手にするわけないよな。
大人は…。
そんなこと思いながら、横でタダ券を睨んでいるののを見る。
「のの、行こうか」
「あ、うん」
ピスタチオの袋の入ったビニール袋を持って、出口へ向かう。
途中、店の机の上にあるトレイを片付けている店員がおじぎをした。
「ありがとうございました」
ウチとののは、そんな当たり前のあいさつをかわして、出口へ向かった。
- 86 名前:シグナル 投稿日:2002年09月14日(土)23時46分34秒
「またおいでや」
後ろから平家さんの声。
ののは振り返って手をふってる。
「またくるでぇ」
ウチは、振り返ることなくそうゆって、後ろ手で、平家さんに向かって手を振った。
ののと並んで、店を出ようと自動ドアの前に立つ。
開いて行く自動ドアに、さっきみたいな笑顔で手をふる平家さんが映ってた。
なんや、やっぱり平家さんってええ人やん。
- 87 名前:シグナル 投稿日:2002年09月15日(日)00時00分25秒
- 更新終了。
>>66 & 75 まぁむぁ様
読者様に気を使わせる作者で申し訳ありません。
加護のキャラは、こんな感じで行こうかと思います。
こんな感じでいいのかな?(w
>>67 EAGLE様
お団子頭は…どうしましょ。(w
期待はしないで。(w
>>74 名無し読者様
たいした、嵐は起こせないかもしれませんが、精一杯書きたいと思います。
おそらく桃板の感想スレにカキコしていただいた方だと思います、ありがとうございます。
違っていたらすみません。
>>76 名無し読者様
>文章だけで癒される。
ありがとうございます、そう言っていただけるとうれしいです。
どうやら、よっちぃ好きの辻推しがばれてしまったみたいですね。(w
- 88 名前:シグナル 投稿日:2002年09月15日(日)00時18分03秒
- >>77 オガマー様
かわいいですか、ありがとうございます。
オガマーさんのいしよしに比べればまだまだです。(w
>>78 とみこ様
なんだか、ののちゃん大人気みたいです。(w
これからもがんばるのでよろしくお願いします。
>>79 七誌様
暴走する( ‘ д‘)、期待にそえるような、波乱になるかどうか分かりませんが、
がんばって書いていきます。
これからもののちゃんは、可愛く書いていくつもりです。(w
皆様レスありがとうございます。はげみになります。
次回更新は、来週中です。
今回は視点変更してみたのですが…。
よっすぃ〜視点だけの方がいい!という方は遠慮なく言ってください。
なんだか話の展開が、マターリしてきたので、次回からさくさく話を
進めて行きたいと思ってます。
- 89 名前:オガマー 投稿日:2002年09月15日(日)02時05分35秒
- (* ^▽^)<キャッ!
かわいいいしよし作家目指してがんがります(w
なんか、かわええー
かわええYO!
あいぼむの子供故のピュアな表現がかわいいです。
- 90 名前:74 投稿日:2002年09月15日(日)02時45分26秒
- >おそらく桃板の感想スレにカキコしていただいた方だと思います
ハイそうです、僕です、当たりです、ブッチギリです。
更新されるたびにキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !! の連発です
てか見られてたんですね・・・アヒャ
- 91 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月15日(日)03時38分53秒
- あいぼん視点もイイですね!
自分も癒されている一人です(w
- 92 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 93 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年09月15日(日)15時11分54秒
- いい! 平家も加護もいい!
いやぁいろんな人の視点を見たいんで今のままがいいっス
- 94 名前:七誌 投稿日:2002年09月15日(日)19時30分40秒
- あいぼんがいちいちののに確認をとってるのがキャワァイー!
ののが一方的に頼ってるのではなくてあいぼんにも
やっぱりののが必要なんだなと思いました。
- 95 名前:EAGLE@久しぶりの登場 投稿日:2002年09月16日(月)21時55分33秒
- >兄貴
おばんです。
やっと更新が追いついたっす。
更新してて気づいたのが第5話が長いっすね。
第2部は1話編成?って思わせるぐらい(w
オイラには先の事はわからないっすけどね。
Gardensはおもろいから何してもOK、保田圭なんすけどね(爆破
これから時間がある限り読んでいくんでヨロシク、機械犬。ワンワン。
追伸:
ポップコーンラブ - if stories -
スタートさせました。村雲sも言ってたけど、久しぶりの選択タイプっす。
言われるまでオイラはスカーリ忘れてました(w
暇だったら読んでみて下さいな♪
内容はいつものヘタレっすけど(苦笑
- 96 名前:シグナル 投稿日:2002年09月19日(木)02時35分41秒
梅雨前とは思えないような軽い風が、ビルの間を縫うようにゆっくりと走って行く。
空には月と少しの星。
さらさらと肌を流れていく風が、あたしの背中を押すように吹いている。
公園にあるケヤキの緑の葉も、うれしそうに手を振っている。
六月の天気にしては上出来だと思う。
機嫌が悪いのは、街の光に負けている半分の月くらいだ。
「キングー、遅いっすよー」
公園では、ごっちんや梨華ちゃんの座っているベンチの近くに、
6〜7人の男達が集まっていた。
イエローガーディアンのNo2のケータ。
シンガー、ダンサー、バスケ、ボーダー、MBX、それぞれのチームのヘッドが集まっている。
この街にあるすべてのチームは、一応あたしがまとめていることになってる。
それが、キングと呼ばれている理由。
今日は、チームの定例ミーティングの日。
ミーティングといっても特に何をするでもない、この街で何かが起こらないかぎり。
- 97 名前:シグナル 投稿日:2002年09月19日(木)02時39分32秒
「吉澤!あんたが早く始めるって言ったのに、本人が送れてどーすんのよ!」
リーダー達の集まっていたあたりから、大きな声が風を押しのけて飛んできた。
この人の声なら、台風さえ逃げていくような気がする。
それぞれが黄色い物を身につけているリーダー達の中に、
黒のパンツスーツに白のYシャツ、そしてその格好に不釣り合いな、
白いノーブランドのスポーツシューズをはいた女性がいた。
彼女は、この公園に自由に出入りできる数少ない大人。
この公園に、隣接して立っている芸術劇場のすぐ裏にある、警察署の少年課の刑事。
名前は保田圭。
彼女の猫のような大きな目からは、どんなねずみだって逃げられない。
猫のような目をした刑事さん。
なにも、おまわりさんが犬でないといけない理由はない。
彼女の目はあたしの知っている限り、この街の大人の中で1番まっすぐな目をしている。
保田さんの目を最初に見た時、生きている大人を久しぶりに見た気がした。
この街の少年少女が、一番恐れているのは、この人の目なのかもしれない。
- 98 名前:シグナル 投稿日:2002年09月19日(木)02時41分23秒
保田さんは腕組みをして、ふきげんそうに足でリズムを取っている。
保田さんがここにくる理由。
それは、この公園にいるボーイズ&ガールズの監視のため。
この街で、毎日のように起こる事件の半分近くは、
ここにいる少年少女が、何かしら関わっている。
ナイフと金、興奮と幻想の白い煙、父親と娘の年の差カップル…etc。
そんな、ボーイズ&ガールズの集まる場所を警察が黙って見ているわけがなかった。
警官による公園の見回り強化と、一方通行の職務質問。
圧力はいつも一方的に上からかかる。
結果、上からかかった圧力によって公園の力は横へ逃げた。
街へあふれた少年少女によって、犯罪件数は右肩上がり……あれ?左肩だったかな?
- 99 名前:シグナル 投稿日:2002年09月19日(木)02時43分57秒
大人はもう少し頭を使ったほうが良いと思う。
上から圧力をかけられれば、力は横へ逃げる。
そんなことあたしでも知っているのに…。
もしかしたら、大人は上から押さえつけることしか知らないのかもしれない。
家でも学校でも社会でも…。
そして警察は、この街を元に戻すために公園から手を引くことになった。
こうして公園は、元の少年少女の溜まり場へと戻ることになった。
ただ、警察も野放しにするわけにはいかないらしく、
監視を付けるということで決着がついた。
これが数年前の話。
そして今年の始めから、ここの監視役になったのが、
少年課に配属になったばかりの保田さん。
監視と言っても、特に何をするわけでもない。
ただこうやって、月に2回ほど行われる定例ミーティングに、
保田さんが顔を出すくらい。
警察は、あの子達を見守っていますとでも言いたいんだろうか?
大人は言い訳がせこい。
- 100 名前:シグナル 投稿日:2002年09月19日(木)02時47分48秒
保田さんは、いつもイライラした様に足でリズムを取っている。
ごっちんが言ってたけど、保田さんの怒った顔は、狛犬にそっ
「吉澤!私を見ながらなにニヤニヤしてるのよ!
なんか変なこと考えてるでしょ!」
あたしの心を読んだように、保田さんがあたしを睨みながら、叫ぶ。
「なに言ってるんですか。
あたしは、保田さんは今日もカッケーな〜って思ってたんですよ」
あたしは笑いながら保田さんに言って、
ごっちんと梨華ちゃんのいるベンチへと向かった。
どうやら刑事は人の心を覗けるみたいだ。
「よっすぃ〜遅かったね」
あたしがごっちんに、ベーグルサンドの入った袋を渡すと、
ごっちんが眠そうな目で聞く。
「平家さんと少し話してたから、遅くなっちゃった」
そう言って、ごっちんの横にいる梨華ちゃんが、
ごっちんに、ぴったりくっつくように座っているのに気づいた。
梨華ちゃんのひざに乗っている手は、筋が見えるほど服をギュッと握っていた。
近くには、こわもての男達が数人。
- 101 名前:シグナル 投稿日:2002年09月19日(木)02時52分16秒
「ごめんね。怖い人達が集まっちゃって。
だいじょうぶ?」
俯きぎみになっている梨華ちゃんに言う。
「うん、だいじょうぶ、それよりあの人達は、ひとみちゃんのお友達なの?」
梨華ちゃんがリーダーズのほうを見て言う。
梨華ちゃんの視線に気づいた何人かが、梨華ちゃんに手を振る。
「まぁ、そんなとこかな…はは」
あたしは、梨華ちゃんの質問に頭をかきながら、
半生の笑いを梨華ちゃんに見せた。
梨華ちゃんは、そんなあたしを見て、くすくす笑う。
ひざに置かれた指は、まっすぐに伸びていた。
「そうだ、平家さんが、これ梨華ちゃんに渡せって」
あたしは、ポケットに入れておいた、タダ券2枚を、梨華ちゃんに渡した。
- 102 名前:シグナル 投稿日:2002年09月19日(木)02時59分24秒
「彼氏といっしょに、食べにきてだってさ」
そう言うと、梨華ちゃんは2枚の紙を見る。
「私…彼氏いないし…ひとみちゃんにあげる」
そう言って、梨華ちゃんは2枚の紙をあたしに向ける。
ラッキー!…あたしは、口から出そうになったその言葉を、飲み込んだ。
何もあたしはベーグル第一なわけじゃない。
ガマンするところは…ガマン…できる…。
「だーめ、これは梨華ちゃんの物だし、彼氏ができた時に行けばいいんだしさ」
そう言って、差し出された紙を、梨華ちゃんの手をもって、軽く押し戻した。
少し冷たい梨華ちゃんの手は、あたしの手よりも小さくて、
ほんの少しだけ震えているようだった。
- 103 名前:シグナル 投稿日:2002年09月19日(木)03時00分44秒
「じゃ…じゃあ、彼氏ができなかった時は…ひとみちゃんが一緒に行ってくれる?」
梨華ちゃんは、そう言って上目づかいであたしを見る。
潤んだ目。
さっきのお団子頭の女の子なんて、やっぱり子供だ。
けれどもあたしには、どこかおびえているようにも見えた。
「いいけどさ、あたしでいいの?」
梨華ちゃんは1度頷くと、そのまま俯き、小さく深呼吸する様に息を吐いた。
ひざに置いた手が服をぎゅっと握っている。
あたし何か怖がられるようなこと言ったかな?
- 104 名前:シグナル 投稿日:2002年09月19日(木)03時03分26秒
「んあ〜、よっすぃ〜、やっぱりピスタチオがな〜い。忘れてきたでしょ〜」
梨華ちゃんと話をしている横で、袋を覗き込みながらごっちんが言う。
顔は、少しふくれている。
「ピスタチオはあとで届くよ」
「あとで届く?」
ごっちんは、不思議そうな顔で聞く。
あたしが、平家さんの店での事を話そうとした時、後ろから大きな声が背中を襲った。
「吉澤!早くしなさい!!」
保田さんの大声が公園に響いた。
公園は時が止まったように、数秒だけ沈黙する。
聞こえるのは、車と街から出る雑音だけ。
数秒の沈黙の後、公園はいつもの声に戻る、ナンパ師とギャルとの攻防戦。
保田さんは、大声で犯人捕まえているのかもしれない。
- 105 名前:シグナル 投稿日:2002年09月19日(木)03時04分58秒
「今行きます」
そう言いながら振り返えると、保田さんの目が合った。
石になるかと思った。
ベンチから少し離れた場所で、こわもての男達に混ざっている保田さんが、
腕を組んでこっちを睨んでいた。
保田さんは目で犯人を捕まえているみたいだ。
「私はこの後も仕事があるのよ。キリキリ始めなさい!」
今日の保田さんは特に機嫌が悪いみたいだ。
「先に食べててよ、あたしチームのミーティングがあ…」
視線を、梨華ちゃんに戻しながら言った言葉が、途中で止まる。
そこで見たのは、すでにベーグルに噛み付いて、目をぱちぱちさせていたごっちん。
食べよとして口を開けた所で、あたしと目が合って固まった梨華ちゃん。
飯田さんは、今も何事もなかったかのように、包みを開けて食べ始めている。
誰もあたしを待とうという人はいないようだ。
「レアチーズは残しといてね」
不機嫌な声でそう言って、みんなの座っていたベンチから離れた。
この街では、おひとよしは生き残れない。
でも梨華ちゃんまで、食べることはないんじゃないの?
- 106 名前:シグナル 投稿日:2002年09月19日(木)03時06分15秒
- 更新終了。
>>89 オガマー様
可愛いいしよし作者めざしてがんがってください。
私は、かわいいあいぼむ作者…私もかわいいいしよしを…。(w
>>90 74様
実はいしよし小説総合スレッドしか見てなかったのですが、
とある親切な方に言われ気づきマスタ。
これからは毎日桃板見ます。(w
>>91 名無し読者様
これからも、あいぼむ視点はちょこちょこ入れて行きたいです。
いけあいぼん、目指せ癒し系!?(w
>>93 むぁまぁ様
基本はよっちぃ視点ですが、これからも別の人の視点も、
入れて行きたいと思います。
無意味に視点変更して、だらだら長くならないようがんがります。
- 107 名前:シグナル 投稿日:2002年09月19日(木)03時07分42秒
>>94 七誌様
あいボンは、かわゆく書けているでしょうか。
ただの生意気な女の子に、なっているようだったので心配でしたが、
大丈夫みたいですね。(w
>>95 EAGLE様
第二部は長くなります。
いま、まとめられなくて少し後悔してます。(w
前回の更新で、サクサク進めると言っておきながら、なかなか進みません。
すみません。
今回更新分と、次回更新分の話に、本編の話とは関係ない話を詰め込みすぎて、
だらだらと長くなるという事態に陥り、力の無さを痛感しております。
次の話しも本編とは関係ないところでダラダラ長くなってます。
なのでもう少しまとめて、短くしたいので、次回更新は来週になると思います。
(0`〜´)<いいわけするなYO!
- 108 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年09月19日(木)08時33分43秒
- おお猫のおまわりさん じゃなくってヤッスー刑事登場だぁ!(お約束のボケ?)
相変わらずキリキリしてまんなぁ
>作者殿
どんなに長くなっても結構ですよ
それだけこの作品を読める時間が長くなるんですから
- 109 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
- 川o・-・)ダメです…
- 110 名前:オガマー 投稿日:2002年09月19日(木)14時49分17秒
- ドキドキしますた(w
かわいいいしよし作者目指してくらさいw
- 111 名前:七誌 投稿日:2002年09月19日(木)20時51分46秒
- キター!!メドューサ保田(w
サブストーリーも色々な相互関係が見れておもしろいです。
更新マターリお待ちします。
- 112 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月20日(金)02時37分32秒
- 更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
ヤッスーもキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
マジおもしろいです!
更新、ドキドキしながらお待ちしてます
- 113 名前:EAGLE@MINERVA 3回目プレイ中(w 投稿日:2002年09月20日(金)18時24分20秒
- キターーーーーーーーーーーーー!
顔面き…
ごぱぁ(吐血
昔の呼び名は書いたら間違いなく殺られるな(w
今は昔とは違うんだしね。
さあ〜て、来週のGardensは〜
「梨華、再びお尻を触られる」
「真希、ピスタチオ来なくて破壊神に」
「ひとみ、狛犬に噛まれる」
の3本です。
ぐふふふふふ(違
アホなネタやな…
こんなんやってる暇あったら更新せいっちゅう話やな。
兄貴、すんまそん。
- 114 名前:とみこ 投稿日:2002年09月21日(土)16時11分30秒
- ポーッ!よかとよかと!!(どこ弁や
いいっすねぇ、やっぱり最高です!!
カワイイカワイイごっつぁんにピスタチオ1年分送っちゃいたい!!(壊
がんばってくださいね!
- 115 名前:シグナル 投稿日:2002年09月26日(木)23時18分06秒
ベンチから少しはなれたところに集まった男達。
目を閉じている人、じっと話を聞いている人、
互いをけん制するように睨み合っている人。
みんながみんな仲がいいわけじゃない。
チームによっては、よく思ってないチームもある。
それをまとめるのがあたしで、その間で起こるいざこざを止めるのが、
あたしのチーム『イエローガーディアン』の役目。
この公園にトラブルはつきない。
「じゃあ、ほかに報告ある人。何もなければ終わりです」
司会進行をしているケータが言う。
気がつけば定例のミーティングはもう終わり。
内容なんてほとんど覚えていない。
好物の、レアチーズベーグルサンドを横に、何をしろというのだ。
- 116 名前:シグナル 投稿日:2002年09月26日(木)23時19分37秒
「そうだ。最近この辺りで、妙な女がキングのこと探ってるみたいっす」
地べたにしゃがんで、みんなの話をボーっと聞いていたあたしを、シン君が見ながら言う。
あたしは、ゆっくり立ち上がりながら、今日会った二人を思い出した。
上目づかいのお団子頭と、笑顔に見える八重歯のしっぽ頭。
「ちびっ子2人でしょ?」
「ちがうっす。金髪のコギャルっす」
「金髪のコギャル?」
「そうっす。金色の髪の、ちっちゃなギャルっす」
シン君がそういった後で、あたしは考えてみた。
金髪の小さなギャル。
あたしの学校に金髪の人はいない。
この街には……この街では、まっ黒い髪の毛のギャルを探すほうが、
難しいのかもしれない。
あたしは、白い曇りガラスの用に光る、暗い空を見て考えた。
けれども何も思い出せなかったので、その場でクルクル回ってみた。
それでも何も思い出さなかった。
- 117 名前:シグナル 投稿日:2002年09月26日(木)23時20分52秒
「な、なにやってるんですかキング?」
横からケータの声がする。
「何って、考え事だけど?」
回るのを止めて返事をする。
周りにいるみんなが、キョトンとあたしを見ていた。
そんな中、保田さんだけが、ため息をつきながら笑いを見せていた。
「あんた達も大変ね」
そう言って、隣にいたダンサーのヘッドの肩に手を置き、くすぐったそうに笑った。
「その人、あたしの知らない人だから、これから気をつけるね。
みんなも、それらしき人がいたら気をつけといて」
それで今回のミーティングは終了。
終了と同時に、集まっていたリーダーズも解散し始める。
「そうだ、今日2人の中学生の女の子が来るけど、
あたしのお客だから、声かけたりしないでよ」
解散しかけていたリーダーズの背中に言う。
その声にリーダーズが振り向く。
ミーティングの時とは違う、いつものぎらぎらした目が、宙をただよう。
恐ろしく変わり身の早い男達。
- 118 名前:シグナル 投稿日:2002年09月26日(木)23時22分49秒
「その2人、キングの知り合いですか?」
シンガーのヘッドが、あたしよりも長い髪の毛をかき上げながら言う。
「知り合いじゃないけど、ちょっとね。
それに…もしかしたら挑戦者になるかもしれない」
そう言ったとたん、リーダーズの間に緊張が走ったのが分かった。
全員の視線があたしに集まる。
「大丈夫だって。中学生になったばかりの女の子にあたしは、負けないよ」
「でもキング、ごっちんさんの事もありますし…」
横でケータが言う。
それを合図にしたように、みんなであたしの後ろにいるごっちんの方を、ゆっくりと見る。
ごっちんは、最後のひとかけらを、口に入れた所であたし達と目が合った。
「んあ?」
キョトンとした目であたし達を見回す。
ペットショップにいる、小動物みたいな目の動き。
『あは、あはははは』
リーダーズのみんなが、作り笑いをしながら、小さく手を振る。
さっきまでのぎらぎらした目は、これっぽっちもない。
恐ろしく変わり身の早い男達。
- 119 名前:シグナル 投稿日:2002年09月26日(木)23時24分39秒
「吉澤ちょっときて、話があるから」
それぞれの居場所へ戻るリーダー達の中、保田さんがあたしを呼ぶ。
保田さんはにぎやかな公園の輪から離れるように、
少しはなれた、人気のない街灯の下へ歩いていく。
保田さんの足からは、いくつものうすい影が、いろんな方向に伸びていた。
この街の明かりは、影さえも照らす。
「話ってなんですか?」
あたしの前を歩く保田さんの背中に聞く。
振り返った保田さんの顔は、さっきよりもずっと鋭く見えた。
上にある街灯の明かりのせいじゃない。
仕事の顔。
「ここに警察が入らない理由分かるわよね」
少し乱暴な声。
目はあたしの行動を見逃さないように、細かく動いている。
何をか試されているのかもしれない。
- 120 名前:シグナル 投稿日:2002年09月26日(木)23時26分01秒
「ええ、分かりますよ。
いろいろとメンバーから聞きましたから」
「今年の春の異動で新しい署長がきたわ。
今度署長になったのは、キャリア組の人間よ」
そう言って、保田さんが鋭い目であたしを見る。
6月最後の涼しい風がいっそう涼しく感じた。
「キャリア組ってなんですか?」
「キャリア組って言うのは、あんたの嫌いな頭の良い人の事よ」
あたしの質問に、保田さんは口の端を上げて笑いながらいった。
「別に嫌いなわけじゃないですよ。ごっちんや梨華ちゃん頭いいけど嫌いじゃないし…。
で、その署長がどうかしたんですか?」
「ここに興味を持ってる」
腕組みをして、あたしを睨みながら保田さんは言った。
保田さんを照らす水銀灯の光が、少し強さを増したような気がした。
- 121 名前:シグナル 投稿日:2002年09月26日(木)23時27分50秒
「キャリア組の人間は、手柄を上げるためには、何でもする人間よ、
ここをどうにかして、手柄を立てることを考えているかもしれないわ。
あんたも気をつけときなさい」
そういった後、保田さんの顔が変わった。
あたしの知っている保田さんから、感情の見えない刑事の保田さんへ。
「いや〜ん、保田さん心配してくれてるんですか〜?
保田さん、やさすぃ〜」
おどけるようにあたしがいうと、
保田さんはやれやれといった表情で手を額に当てて、首を振る。
「あんたね、少しは心配しなさい。のんきすぎるにもほどがあるわよ。
最悪の場合、あんた達がこの公園から追い出されるのよ?」
少し荒い口調でため息をつきながいう。
その口調から、保田さんが本気でここの心配してくれていることが分かる。
けれども、そんなこと初めから分かっている、保田さんはいい人だって。
- 122 名前:シグナル 投稿日:2002年09月26日(木)23時30分17秒
「させませんよ。あたし今のここが好きですから。
ここには自分の居場所が無かったり、1人でいたくない人がたくさんいるんです。
そんな場所が、1つくらいあってもいいじゃないですか」
あたしは、ダンサーの踊る曲や、シンガー達のギターの音を耳に受けながら、
保田さんを見た。
保田さんの視線とあたしの視線が絡み合う。
ピンと張り詰めるような空気。
街のノイズが聞こえる中、耳鳴りがひどく鳴っているような気がした。
そして、保田さんが何か話そうと口を開いたところで、
携帯電話の着信音がそれを邪魔した。
松浦亜弥の桃色片思いが、保田さんのポケットから夜の公園に鳴り響いた。
「ぷ、ぎゃはははは、保田さんかわいい着メロですね」
あたしが笑いながら言うと、保田さんはあわてたようにパンツスーツのポケットから、
携帯電話を取り出す。
「う、うるさいわね、好きでこんな可愛い曲にしてるんじゃないわよ。
ホントは、きよしがよかったのよ」
そう叫ぶようにいって、保田さんは電話に出る。
顔を見られたくないのか、保田さんはあたしに背を向けて話し始めた。
- 123 名前:シグナル 投稿日:2002年09月26日(木)23時31分24秒
「キング、例の2人組みが来ました」
携帯電話で話している保田さんを見ながら、ニヤニヤしていたあたしの後ろで声がした。
振り向くと、黄色のバンダナを頭に巻いた男の人が、立っている。
「わかった。ありがとね」
そういうと、その人は公園の入り口のほうに歩いて行く。
あたしは、携帯電話で話している保田さんを置いて、みんなのいるベンチへと戻った。
とうとう、小さな2人の女の子は、夜のジャングルに足を踏み入れた。
それを聞いたあたしは、少しうきうきしているのかもしれない。
何か、とてもいいにおいのする風が吹いたような気がしたから。
あたしは、すぅーっと大きく深呼吸するように、街の風を吸い込んだ。
- 124 名前:シグナル 投稿日:2002年09月26日(木)23時42分23秒
- 更新終了。
>>108 むぁまぁ様
そう言ってもらえると、ものすごくうれしいです。
次の話からは、サクサク進めると思います。
長いお付き合いのほどよろしくお願いします。
>>110 オガマー様
かわいい、いしよし作者…なれるかな?(w
私には無理のような気がします。
オガマーさんの作品をパク(ry
ごめんなさい(w
>>111 七誌様
マターリまっていただけるとうれしいです。
これから少し更新ペース落ちるかもしれませんが、がんがって書きます。
>>112 名無し読者様
え〜と、メール欄見たとき爆笑しました。(w
あのような物を読んでいただけたとは、ありがとうございます。
正直うれしいです。(w
- 125 名前:シグナル 投稿日:2002年09月26日(木)23時55分22秒
- >>113 EAGLE様
予告で落ちを当てたりしないように。(w
実はごちーん暴れさせようかとも考えた。(w
>>114 とみこ様
かわいいごっつぁんになってるでしょうか。
かわいいごっつぁんを書かれている人から言われると、なんだかてれます。(w
え〜と、なんとか週一更新に間に合ったでしょうか?
次回更新も遅くなる可能性が…あります。すいません。
週一更新は守っていきたいのですが…。
すいません。
- 126 名前:EAGLE@なっちサイコー 投稿日:2002年09月27日(金)15時23分29秒
- >兄貴
更新キタ---------------
>落ち
えっ?まぢっすか!?
当たりっすか?
ネタのつもりが…すんまそん。
- 127 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月28日(土)06時41分16秒
- 小動物みたいなごっちんイイ!
作者さんのペースでマターリがんばってください
- 128 名前:とみこ 投稿日:2002年09月28日(土)14時09分48秒
- いーっすねぇ!!乱闘シーンそろそろ見たかったり・・・(w
がんばってください!
- 129 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年09月28日(土)20時28分18秒
- はじめまして。
楽しく読ませていただいております。
ここの、よっすぃ〜は、かっけ〜ですね。
これからも更新を楽しみにしています。
- 130 名前:kattyun 投稿日:2002年09月28日(土)20時47分33秒
- っつか、お団子頭ちゃんは思いっきりキングを
あの人と…。面白いです。
- 131 名前:七誌 投稿日:2002年09月28日(土)21時44分51秒
- お〜金髪のコギャルがでてくるのか
なんかバトルの予感。
- 132 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年10月01日(火)15時16分01秒
- さていよいよ対峙の時ですか?
ご対面後の加護のリアクションに興味津々なのだ
- 133 名前:たっくん 投稿日:2002年10月02日(水)23時23分30秒
- はじめまして高2の男です。
かなり楽しませてもらっております〜♪
金髪のギャル・・・やっぱ僕の大好きなやぐっつぁんですかね〜?
次も楽しみに待ってま〜す
- 134 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月03日(木)09時35分16秒
- 写真集の皮ジャン姿のよっすぃ〜を思い浮かべて読んでます。
早く続きが読みたいで〜す!
- 135 名前:シグナル 投稿日:2002年10月04日(金)04時50分53秒
ベンチへ戻ると、ごっちんが梨華ちゃんの膝を枕にして、熟睡していた。
食べてすぐ寝ると牛になるぞ、ごっちん。
あたしは梨華ちゃんの横に座り、ベーグルの入ったビニール袋を覗く。
中には、ベーグルサンドが3つ。
あたしのベーグルサンドが2つと、もう1つ残っている。
横にいる梨華ちゃんを見ると、ベーグルサンドの包みを手に持っていた。
「食べてなかったの?」
「うん、ひとみちゃんといっしょに食べたくて」
梨華ちゃんはそう言って、恥ずかしそうに笑う。
「吉澤」
ベンチの横に座っている飯田さんの声。
振り向くと、飯田さんがジュースの缶をあたしに投げた。
あたしは、ゆっくりと飛んできた缶ジュースを、両手で受け取った。
- 136 名前:シグナル 投稿日:2002年10月04日(金)04時52分24秒
「かおりのおごり」
飯田さんは一言そういって、本へと目を戻す。
冷たい缶ジュースを手に、あたしは飯田さんを見る。
飯田さんと会って最初のころは、会話もかみ合わなかったのに、
梨華ちゃんの1件があってから、少しだけ飯田さんに近づけた気がする。
「ありがとうございます」
あたしが言うと、飯田さんは本を伏せ、あたしに笑顔を見せた。
あたしといっしょに、ベーグルサンドを食べるために、待っていてくれた梨華ちゃん。
あたしがいない間に、ジュースを買ってきてくれていた飯田さん。
それにくらべ、ごっちんは…。
- 137 名前:シグナル 投稿日:2002年10月04日(金)04時53分40秒
あたしは、飯田さんからうけとったジュースをベンチに置き、
梨華ちゃんのひざの上で寝ている、ごっちんの頬を少し強くつまみ上げた。
「んふぁ〜」
ごっちんは、眉の間にしわを寄せ、うなされているように声をあげる。
「ひとみちゃん、ごっちんにいたずらしちゃだめだよ」
梨華ちゃんは、そう言いながらもくすくす笑っている。
「いーのいーの、さっさと食べて、寝ちゃってんだから」
そう言って、ごっちんの頬を持った手をぐりぐり動かす。
「んあ〜…んふぁ〜」
梨華ちゃんは、自分のひざで寝ているごっちんの顔を、覗き込みながら、
クスクス笑っている。
あたしは、プニプにしているごっちんの頬をつまみながら、梨華ちゃんと一緒に笑った。
- 138 名前:シグナル 投稿日:2002年10月04日(金)04時55分45秒
昼よりも暗く、夜の中で明るく光る今日の公園は、いつもよりにぎやかだった。
あたしと梨華ちゃんの笑い声も、ナンパ待ちのギャルや、
シンガーの周りで座っている人達の笑い声と混ざりあい、暗い空へと昇り、溶けていく。
街のノイズよりは高く昇れたんじゃないだろうか。
2人が、手をつないであたしの前に現れたのは、あたしがベーグルサンドを1口食べた時だった。
お団子頭を前に2人が手をしっかりとつなぎ、
2人で、まわりをキョロキョロ見回しながら、やってきた。
その様子は、ジャングルの中をさまようちびっ子探検隊だ。
あたしに気づいた団子頭がしたことは、予想どうりの行動だった。
「ああぁぁーーー!」
夜の公園にひびくお団子頭の声。
お団子頭はあたしを指差して叫んだ。
うしろをついてきている、しっぽ頭の女の子は、お団子頭の後ろに隠れながらも、
あたしに向かってニーっと笑顔を送ってくる。
平家さんの店で見た笑顔。
街から出る汚れたの明かりの下でも、青い空に1つだけ浮かぶ白い雲みたいに、
はっきりとした純粋さが見えた笑顔だった。
- 139 名前:シグナル 投稿日:2002年10月04日(金)04時58分29秒
「ななな、なんであんたがここにおんの?」
お団子頭がそう言いながら、あたしのたちのいるベンチへ近づいてくる。
手は、ピスタチオの入ったビニール袋と、しっぽ頭の女の子の手を、
しっかりとにぎっている。
「ごっちん、ピスタチオがきたよ」
あたしがそう言うと、梨華ちゃんのひざの上で寝ていたごっちんの目がパチリと開き、
すごい勢いでその場に立ち上がった。
「うわ、なんや?」
お団子頭は、急に立ち上がったごっちんにおどろいて、声を上げた。
そのごっちんは、あたしや梨華ちゃんを見ながらピスタチオを探しいるようだった。
「ねぇ、よっすぃ〜ピスタチオどこ〜?」
「ここだよ」
そう言って、あたしがお団子頭の持っているビニール袋を指さすと、
ごっちんは、二へ〜っと笑ってお団子頭に近づき、目線を合わせるように、
ゆっくりと体を曲げた。
- 140 名前:シグナル 投稿日:2002年10月04日(金)05時00分32秒
「ごとーのために、おつかいありがとね」
ごっちんは、優しくそう言ってお団子頭をなでた。
えらいえらいのおまけつき。
ごっちんはお団子頭を何歳だと思っているんだろう?
それよりも、あたしは子ども扱いされたお団子頭が、
関西弁で怒り出すだろうと思っていた。
子ども扱いすんなー!うちは子供ちゃうわー!。
けれどもお団子頭は、えへへと笑いながら、てれたように俯いていた。
この子は何歳なんだろう?
そんな、お団子頭の手から、ごっちんがピスタチオの袋を、取りベンチへと座る。
袋を取られたお団子頭の頭に?マークがついた。
お団子頭の後ろでも、しっぽ頭の女の子が、頭に?マークをつけてポカンとしている。
あたしの隣にいる梨華ちゃんも、見たことのない2人に?マークを頭につけていた。
- 141 名前:シグナル 投稿日:2002年10月04日(金)05時03分31秒
「あーー!もしかして、あなたがキングなんですか?!
私、もっと怖い人かと思ってました」
お団子頭は、ごっちんに向かって言う。
ついさっきまで、関西訛りで話していたのに、お団子頭が突然標準語、
しかも敬語で話し始めた。
この子は、あたしがキングだとわかったら、どういう反応を見せるんだろう?
なんだか楽しみだな。
「えと、そのピスタチオは、キングの大好物だって聞いてたんで買ってきたんです」
えへへと、幼い笑顔をごっちんに見せながらお団子頭は言う。
あたしの事を、「変な格好のした奴」よばわりした子とは思えないほどの、かわいい笑顔。
演技のできる子供は怖い。
- 142 名前:シグナル 投稿日:2002年10月04日(金)05時07分53秒
「んあ?ごとーよくわかんないんだけど?」
ごっちんが、ピスタチオの袋から取り出したピスタチオを、口に入れながら言う。
「え?あ、え〜と、私は朝比奈中学3年の加護亜衣っていいます。
えと、こっちは、同じクラスで友達の、辻希美って言います。
え〜と、キングのチームのイエローガーディアンに入れてもらいたくてここに来ました」
お団子頭はそう言って、ごっちんに向かって、ペコッと頭を下げた。
- 143 名前:シグナル 投稿日:2002年10月04日(金)05時09分48秒
加護愛と辻希美。
2人がここに来た理由は、あたしのチームへ入るため。
そのために、この夜の公園へ2人でやってきた。
中学生の女の子が、あたしのチームに入りたいなんていうのは、
とくにめずらしいことでもない。
イエローガーディアンの中にも、それぞれ小さなチームがあり、
その中には、女性だけのチームだってある。
年齢だって10歳〜20代までいるから問題なんかない。
けれども、ここに来る人達や、あたしのチームに入りたいって人は、
たいてい何かを抱えていたりする。
不安、挫折、逃避、涙。
あたしは、この2人が何を抱えているのか、少し気になった。
関西弁と、あいきょうのある笑顔を見せる、お団子頭の加護亜衣ちゃんと。
夏のひんやりとした朝の空気のように、澄んだ笑顔を見せる辻希美ちゃん。
2人はなにを抱えているのだろうか?
- 144 名前:シグナル 投稿日:2002年10月04日(金)05時23分04秒
- 更新終了。
>>126 EAGLE様
気にしないでくださいな。
向こうで言った通りですので。
>>127 名無し読者様
これから少しづつスピード上げて行きたいです。
おひまな時にでも読んで下さい。
>>128 とみこ様
ごめんなさい。今回は平和的に終わるかも…。
ごめんなさい。m(__)m
>>129 ななしのよっすぃ〜様
ありがとうございます。これからもおひまな時に見てやってください。
最近、かっけ〜ことが少なくなってきていますが、お許しください。
- 145 名前:シグナル 投稿日:2002年10月04日(金)05時34分59秒
>>130 kattyun様
レスありがとうございます。
これからもがんがって書くのでよろしくお願いします。
>>131 七誌様
でますよ。金髪の小ギャル。(w
登場するのになんにもない…分けないですよね。
登場はもう少し先になりますので、しばしお待ちを。
>>132 むぁまぁ様
加護はまだ気づいていません。(w
さてどうしてやろう。(w
>>133 たっくん様
はじめまして、こんな時間に更新しているアホな作者です。
楽しんでいただけているでしょうか?
金髪のギャルは、もう少し後で出るのでそれまでお待ちください。
>>134 ひとみんこ様
作者は、それ見て書こうと思って、書き始めたんですよ。
早く続きが書ければいいのですが…。
とにかくがんがります。
- 146 名前:シグナル 投稿日:2002年10月04日(金)05時38分53秒
- 皆様レスありがとうございます。
そしてごめんなさい。m(__)m
週一更新の目標が…。
次は守りますので、どうかお許しを。
次回更新は、土日のどちらかに一度したいと思います。
それでは。
- 147 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月04日(金)05時48分11秒
- 更新お疲れさまです。
あいかわらず加護ちゃん暴走してますね〜(w
- 148 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月04日(金)06時03分36秒
- 早起きはサーモンの得。シャケノコトデスカ?>(^〜^0)
土日期待してお待ちしております!
- 149 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月05日(土)10時12分38秒
- (0^〜^)<あいぼん、チームに入れてやるよ。
@ノハ@
( `д´)<じゃかわしー! 何でおまえがゆうねん、ヘタレはだぁっとれ!
(0^〜^)<へっ.へっ.へたれー? へタレって言うな! 気にしてるんだから。
( ´ Д`)<あいぼん、よしこがキングだよ。
@ノハ@
( `д´)<へっ? ち、違うわぃ! こんなヘタレがキングな訳ないわい!
(0^〜^)<またヘタレって言った! グーで殴るぞ!
@ノハ@
( `д´)<キング!助けてください、ヘタレが殴るゆうてます。
(0^〜^)<はぁ〜 もう〜 好きにすれば!
- 150 名前:EAGLE@( ´ Д `) んぁ? 投稿日:2002年10月05日(土)15時03分13秒
- つままれても起きないごっちん激しくワラタ。
土or日の更新って事は今日、明日か。
楽しみだ。
- 151 名前:七誌 投稿日:2002年10月05日(土)18時06分49秒
- さすがの加護ちゃんも師匠には頭があがらないんだな(w
明るそうな二人の闇の部分が気になります。
- 152 名前:シグナル 投稿日:2002年10月07日(月)00時08分09秒
「え〜、いいじゃん、加護ちゃんが入りたいって言ってんだからさ〜」
「だめ〜、理由も聞いてないのに、チームに入れたりするのはダメなの。
あたしは、好き勝手に入れてるんじゃないんだから」
「え〜だってよっすぃ〜は何もしてないじゃん。
チームの事やってんのはケータ君でしょ?」
梨華ちゃんを間に、あたしとごっちんの会話が続く。
そのたびに梨華ちゃんは、顔を右へ左へ動かしている。
そんな中でも、飯田さんだけは、まったく興味がないのか、本を読み続けていた。
三者三様の行動。
なんだか、まとまったばらばら感が心地よかった
- 153 名前:シグナル 投稿日:2002年10月07日(月)00時10分52秒
「どうしてあんたが口出しすんねん。
うちはキングに頼んでんの。あんたは関係ないやろ」
怒ったようにそう言って、お団子頭はすぐにごっちんのほうを見る。
その顔は、もう笑顔になっていた。
テレビドラマの女優になれるんじゃないだろうか。
「ん〜、ごめんね加護ちゃん。
よっすぃ〜がダメだって言うから、チームには入れないんだって」
「なんで?何であのおかしな服着た人が出てくるんですか?
この街で1番なのは、キングなんでしょ」
お団子頭の目に力が入る。
肩に力をいれ、腰の辺りにある両手のこぶしを、ギュッとにぎったのがわかった。
その後ろでは、辻ちゃんがお団子頭を心配そうに見ている。
「加護ちゃんさ〜、なんか勘違いしてるよね?
ごとーはキングなんかじゃないよ。
キングはね、そこにいるよっすぃ〜だよ」
ごっちんがそう言ってあたしを見たのと、
お団子頭がすごい勢いであたしを見たのは、ほとんど同時だった。
- 154 名前:シグナル 投稿日:2002年10月07日(月)00時13分38秒
人間がホントに驚いた時にとる行動は、あんがい単純なものだった。
お団子頭がとった行動。
それは「考える」というものだった。
お団子頭は、あたしを見たまま、ゆっくり3秒ほど動かずに、ただじっとしていた。
まばたきもせず、呼吸さえも、していないかのように見えた。
1 2 3 。
お団子頭の、長い3秒間で出した答えは予想通りのものだった。
ごっちんの前からあたしの前へと、とことこと歩いてくると、
あたしの前に、ちょこんとしゃがみ、頭のてっぺんから足元までを、
ゆっくりと見ながら言った。
「うわ〜かっこいい服ですね〜。
モデルみたいやわ〜。」
そう言い終わった後、お団子頭はしゃがんだまま、少し顔をかたむけ、
きらきらの目で、下から覗き込むようにあたしを見る。
めいいっぱいのスポットライトを浴びて光るアイドルの目。
けれども、目の前にいる小さなアイドルは、ガラスでできた天使のように笑っていた。
うそみたいにもろい天使の笑顔。
小悪魔かな?
それにしても、この子供はどこでこんな技を、覚えたのだろうか。
- 155 名前:シグナル 投稿日:2002年10月07日(月)00時15分09秒
「えへへへ」
あたしの目の前で、小さくしゃがんで笑っているお団子頭。
あたしも、笑いながらお団子頭に顔を近づける。
「エヘヘヘ」
「えへへへ」
目を合わせて笑う2人。
きらきらに光る小悪魔の目は、近くで見るほど深く、とても澄んだ透明の黒だった。
そんな目を見てあたしの中の何かが、グラリとゆれた。
ふっ、と吹いただけで壊れそうな、もろい笑顔をする中学生を「さよなら」だけで、
この夜の街に追い返すわけにはいかない。
あたしは、お団子頭の頬を、両手でつまむと、痛くない程度に引っ張って言う。
「いまさらそんな事言っても遅いの〜。わかったか〜?」
「ふぇやかて、ふぁいしょにふぁった時なにも言うてなふぁったふぁら」
あたしが口を引っ張ったままでも、お団子頭は続ける。
「ふぁってふぁってふぁって」
だって、を何度も言う目には、涙が浮かんでいるように光って見えた。
泣くの?泣くの?
- 156 名前:シグナル 投稿日:2002年10月07日(月)00時20分19秒
「ひとみちゃん、いじめちゃだめだよ。加護ちゃんが泣きそうになってるよ」
お団子頭の頬を引っ張っているあたしの横から、梨華ちゃんが言う。
その向こうでは、ごっちんが、辻ちゃんにピスタチオをあげているのが見えた。
ごっちんの手から、辻ちゃんの口に、ごっちん手から、辻ちゃんの口に…。
その時、あたしの両手がつかまれて、外側へ引っ張られた。
お団子頭の頬から、手が離れた。
見ると、お団子頭があたしの手首をつかんでいる。
目は、梨華ちゃんのほうへ向いていた。
「うるさい!うちは、もう子供やないねん。泣いたりせーへんわー!」
怒ってる。
声だけで、すぐにわかった。
少し肩を上下に揺らし呼吸している。
言われた梨華ちゃんは、少し顔がこわばっていた。
「こら、梨華ちゃんがびっくりしてるじゃん。
加護ちゃんのこと、心配してるんだから、怒っちゃだめだろ」
「うちのこと子供扱いするからゆうただけや」
「そう言う風にすぐ怒るのは、子供のすることだぞ。
ほら、梨華ちゃんに謝るの」
そう言って、手を掴もうとすると、加護ちゃんは足を一歩下げて、
あたしから距離をとった。
- 157 名前:シグナル 投稿日:2002年10月07日(月)00時22分10秒
「キングに…キングに勝てば、キングになれるんやろ?
…入れてくれんのやったら、こうするつもりやったし…勝負しよう」
加護ちゃんは、俯いたまま静かに言う。
辻ちゃんがなにか言いたそうに、加護ちゃんを見た。
目と目がつながり線になる。
加護ちゃんは、辻ちゃんを見て1度だけ小さく頷き、あたしを見た。
目が、割れたガラスのように鋭く光る。
この時、加護ちゃんは泣いていたのかもしれない。
「ひとみちゃん」
横で、梨華ちゃんがあたしの服の袖をつかんでいた。
梨華ちゃんと目が言う。
苦しそう。助けてあげて。
こんな事を、人に言ったら、ただのバカだと思われるけど、あたしはそう思いたい。
だってさ、梨華ちゃんだよ?
- 158 名前:シグナル 投稿日:2002年10月07日(月)00時32分05秒
- 更新終了。
うそつき作者のシグナルです。
皆様レスありがとうございます。そしてごめんなさい。
>>147 名無し読者様
加護ちゃんの暴走もそろそろ終焉です。
とにかくごめんなさい。
>>148 名無し読者様
朝早くから、このような物を読んでいただき、ありがとうございます。
サーモンですか?私はサーモンがないので、回らないすし屋には行きません。(貧乏
ほんとにごめんなさい。
>>149 ひとみんこ様
すてきなAA劇場ありがとうございます。
とりあえずごめんなさい。
- 159 名前:シグナル 投稿日:2002年10月07日(月)00時38分23秒
- >>150 EAGLE様
うそつき作者のシグナルです。
楽しみだと言っていただいているのに、このざまです。
まじでごめんなさい。
>>151 七誌様
そろそろ闇の部分にはいります。
どんな闇にしよう。(w
信じられないくらい、ごめんなさい。
え〜と、私、うそをついてしまいました。ごめんなさい。
日曜に更新すると言いながら、このありさまです。ごめんなさい。
次回更新は、週末あたりにしたいなと思ってます。ごめんなさい。
- 160 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月07日(月)01時06分19秒
- CDTVも実際は日曜なんだし問題ナッシング
続きが気になって夜も眠れぬ日々です、更新がんがってください
- 161 名前:EAGLE零式 投稿日:2002年10月07日(月)07時41分59秒
- 兄貴、ちゃんと日曜に更新されてるやないすか。
オイラはテレビ局やラジオ局と同じで30時間が基準っすから何の問題も無いッスよ。
朝のウチに巡回しといてよかった。v
まぁ、昨日だったら寝る前に来てれば読めたのにw
オイラも宣言こそしてないけど週1更新やってみてわかったっす。
キツイw
週1のペースが難しいのに今更ながら気づいたッス(遅
兄貴、これからも更新がんがって。
- 162 名前:七誌 投稿日:2002年10月07日(月)12時48分14秒
- 更新の事については全く気にすることはないと思います。
こっちはかってにしかもタダでこんな良質の小説を読まさせていただいているんですから。
加護ちゃんの登場によってよっすぃーが意外と大人だということに気づいた秋。
- 163 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月07日(月)16時50分14秒
- 作者さんがなんで何度も「ごめんなさい」って
梨華ちゃん状態になってるのか分かりませんでしたが
日曜更新のことだったんですね。
作者さんこういう時は梨華ちゃんに、なっちゃいけません。
よしこならこんな時「そんなこと言ってたかな〜」と、とぼけます。
よしこになって下さい。
- 164 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年10月09日(水)12時14分07秒
- やっと気づいたか
さて吉澤はどうするのかな?
- 165 名前:とみこ 投稿日:2002年10月12日(土)10時20分22秒
- 加護かわええな。
吉澤の行動が気になりまんねん。
期待。
- 166 名前:シグナル 投稿日:2002年10月14日(月)02時23分52秒
「加護ちゃんさ〜、そんなことしなくても、よっすぃ〜に理由を話せば入れてくれるよ」
ごっちんがそう言っても、加護ちゃんは首を横に振るだけ。
「言えないような理由なの?」
「言いたない」
加護ちゃんは、ぼそっとそう言ってまた黙った。
その声は、にぎやかな公園の音に呑まれ、地面に溶けていく。
「辻ちゃんは知ってる?」
ごっちんは、心配そうに加護ちゃんを見ている辻ちゃんに聞く。
辻ちゃんは少しためらった後、口を開く。
「え〜とぉ、あいぼんは…」
「ののは関係ないやろ!だまってろ!」
加護ちゃんは、強い口調で言う。
けれどもすぐに、しまったと言う顔をして、下を向いた。
加護ちゃんが下を向いた原因。
それはあたしにもすぐに分かった。
辻ちゃんの目が、急速に潤んで街頭の光を反射する。
- 167 名前:シグナル 投稿日:2002年10月14日(月)02時25分25秒
「う…ぐすっ……うっ…あいぼんが……あいぼんが…」
「あ〜、辻ちゃん大丈夫?ピスタチオあげるから泣かないで、ね」
辻ちゃんの横にいたごっちんが、あわててあやし始める。
けれども辻ちゃんが止まることはなかった。
「うっ……ヒック……あいぼんが…あいぼんがおこった〜」
手で、目を押さえ、肩を震わせて泣き始める。
あたしは、うつむいたままの加護ちゃんを見る。
悪いと思っているんだろう、下を向いてはいるが、
辻ちゃんのほうを、チラチラ見ている
「加護、辻ちゃんが泣いちゃっただろ」
あたしが言うと、加護ちゃんはすぐに顔を上げる。
熱い目から流れる涙、その跡を、加護ちゃんは腕でゴシゴシと拭う。
「うっさい、キングがうちと勝負せんからや!!」
「子供相手に、勝負してもしょうがないだろ」
「うちは子供やない。子供やないわ!」
わからない。なぜそんなに子供にこだわるのか。
ただ、あたしを見る加護ちゃんの目は、子供の目をしてはいなかった。
- 168 名前:シグナル 投稿日:2002年10月14日(月)02時29分43秒
「…グスッ…グスッ…う〜……ひっく…」
「あ〜、辻ちゃん、目こすっちゃダメだよ。はい、ハンカチ」
「……あいぼんが…ひっく…あいぼんが…」
辻ちゃんは、舌足らずな言葉でそう言いながら、
ごっちんから渡されたハンカチで涙を拭く。
「ひっく…うっ…ひっく……」
「あ〜どうしよう。ね〜、よっすぃ〜、辻ちゃん泣き止まないよ〜。どうしよう〜?」
ごっちんは、辻ちゃんの頭をなでたり、手を握ったり、
辻ちゃんを泣き止まそうとおろおろしながらも、がんばっている。
でも、辻ちゃんって中学3年生だったよね…。
「辻ちゃん。かおりの所おいで」
さっきまで、興味なさげに本を読んでいた飯田さんが、辻ちゃんを呼ぶ。
「ほら、アメあるよ、辻ちゃん食べる?」
そう言って飯田さんは、自分のバックからアメの入った袋を出す。
辻ちゃんは、それを見ると、てけてけと飯田さんの前まで歩いて行く。
そして飯田さんは、辻ちゃんをひざの上に乗せると、あたしに言う。
「吉澤、あの子は吉澤が何とかしなさいよ」
ウィンクする飯田さんのひざの上では、辻ちゃんが笑顔で頬を膨らませていた。
- 169 名前:シグナル 投稿日:2002年10月14日(月)02時33分49秒
目の前にいる加護ちゃんは、あたしをじっと見ている。
まっすぐで、折れることのないなにかが、あたしに刺さり胸を打つ。
あの小さな体をささえるその気持ちは、どこから来るのだろう?
作られた笑顔を簡単に見せ、強がりを見せ続ける加護ちゃん。
あたしは、あの子のホントの笑顔を見たくなった。
「加護ちゃんは、友達を泣かせてまであたしのチームに入りたいの?」
「ちがう。…ののは関係ないから…」
「じゃあ、怒っちゃダメじゃん?」
「でも!でも…」
「でもじゃないよ、加護は子供じゃないんだろ?
なら、ちゃんと謝らないといけないだろ」
「うちは…うちは…」
加護ちゃんはそう言って、下を向き静かになった。
- 170 名前:シグナル 投稿日:2002年10月14日(月)02時36分30秒
「加護ちゃんが、どうしてあたしのチームに入りたいかは、分からないけどさ、
今日はもう帰ろうよ…」
その時、加護ちゃんが、ぶつぶつなにかをつぶやいているのに気づいた。
加護ちゃんがスカートのポケットに手を入れる。
「言えないような訳を持ってる人を、うちのチームに入れる訳にはいけない。
それに、友達を泣かせる人を仲間にしたくない。
だから勝負も出来ない」
そう言った所で、加護ちゃんのつぶやいている声が少し大きくなった。
「子供やからあかんのやろ?うちに力ないから勝負してくれんのやろ?
子供やからあかんのやろ?うちに力がないから勝負してくれへんのやろ?
子供やからあかんのやろ?うちに力ないから勝負してくれんのやろ?」
- 171 名前:シグナル 投稿日:2002年10月14日(月)02時42分20秒
「うちが子供やからあかんのやろ!うちに力がないから勝負してくれんのやろ!!」
さっきまでつぶやいていた声が急に大きくなり、加護ちゃんが叫んだ。
音が聞こえるくらいに顔を上げ、グッとあたしをにらむ。
目が涙で赤くなり、頬にある涙が流れた跡が光る。
加護ちゃんの顔は、怒っているというより、泣いているふうに見えた。
- 172 名前:シグナル 投稿日:2002年10月14日(月)02時45分24秒
そして加護ちゃんは、ゆっくりとポケットから手を出した。
ポケットから出した手には、100円ショップで売っている様な、
細身のカッターナイフが、握られていた。
「ちょっ!加護ちゃん!!」
あたしが立ち上がり、声を上げたのと同時に、加護ちゃんの手から音がする。
カチカチカチカチ
加護ちゃんは、つぶやきながら後ずさりをして、あたしから距離をとる。
「う、うちは子供やない。うちは子供やない」
震える右手を、自分の左手で押さえ、手をめいいっぱい前に伸ばし、
カッターの刃をあたしに向けた。
手にあるカッターは、光ることなく震えながらあたしを見ている。
震えているのは手だけではなく、体全部が震えているようだった。
その時、あたしは加護ちゃんの笑顔が、遠くの方に見えた気がした。
彼女の心がむき出しになり、夜空の下で震えていた。
うその笑顔よりも、少しだけホントの気持ちが、あたしの前にある。
加護ちゃんのホントの笑顔は、この中にあるのかもしれない。
- 173 名前:シグナル 投稿日:2002年10月14日(月)03時06分41秒
- 更新終了。
>>160 名無し読者様
続きは…早く書きます。次こそは早く書きたいです。
最近は週一目標がビミョウです。
>>161 EAGLE様
30時間なんですか。(w
次は早く書きたいです。
夜のうちに更新したいです。ハイ
>>162 七誌様
そう言っていただけると、うれしいですはい。
大人なよっちぃを書きたくなった秋。けれどもそのうち…。
>>163 ひとみんこ様
べ〜グルくれーでないと書きません。
これではただのアホ作者ですね。(w
>>164 むぁまぁ様
なんだか急な展開ですがお許しを。
この先どうなることやら。(オイ!
>>165 とみこ様
よっちぃの母は警察官ですか。こんなところで言うな!(w
近いうちに、とみこさんの所にレスします。(w
- 174 名前:オガマー 投稿日:2002年10月14日(月)03時31分54秒
- 相変わらずすごいです。
シグナルさんの、最後の数行。
こぉ、心に響きますわ。
- 175 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月14日(月)09時39分53秒
- (0^〜^)<シグナルさん、ベーグル、買ってきたよー、はい、どうぞ。
@ノハ@
( #`д´)<キング! ウチのこと忘れてるやろ。
(0^〜^)<ごめんごめん、はい、続きをどうぞ。
- 176 名前:七誌 投稿日:2002年10月14日(月)15時22分55秒
- 加護ちゃんには重たすぎる武器を、
加護ちゃんには重たすぎる心と一緒に取り除いてあげてよっすぃー!
- 177 名前:EAGLE@罪悪感の塊 投稿日:2002年10月14日(月)15時43分03秒
- 更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
小刀w持った加護をよっすがどう料理するか見物だぞ、っと。
- 178 名前:とみこ 投稿日:2002年10月15日(火)22時23分22秒
- ところどころに笑える文が入ってるところがイイ(・∀・)
加護がどうでるか、楽しみです^^
- 179 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年10月16日(水)08時13分25秒
- 少女の行動の裏には何があるのか
子供という言葉がキーワード・・・
ある意味排他的な大人社会がもたらしたものなのか
俺もそんな大人社会の一員なのだな
- 180 名前:たっくん 投稿日:2002年10月19日(土)22時56分09秒
- おぉ、なんかかなりリアルっすね〜
まじかっけぇ〜♪
続き楽しみに待ってま〜す♪
- 181 名前:名無し娘。 投稿日:2002年10月19日(土)23時06分08秒
- 「ふたりぼっち」って何だろうと、ずっと考えていた。
この世界には二人しか居ないと言う孤独感?
二人で居ればそれで充分という完結した幸福感?
加護は鏡の中の吉澤なのかなぁ、なんて思ったりしました。
- 182 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月20日(日)02時36分02秒
- マターリから一気に修羅場へ
続き楽しみに待ってます
- 183 名前:シグナル 投稿日:2002年10月26日(土)04時19分33秒
「キャーーー!!」
加護ちゃんの近くを歩いていた、ナンパ待ちのギャルが、かすれた声で悲鳴を上げた。
公園に、一瞬の沈黙と、その後にわきあがるようなざわめき。
悲鳴に呼ばれたように、ナンパ待ちのギャルや、ナンパ師達が集まってきた。
けれども、誰よりも速く飛んできたのは、黄色のボーイズ&ガールズだった。
血の匂いを嗅ぎつけたサメのように、加護ちゃんの周りに群がるチームのメンバー。
血の匂いを見つけるのは、サメもよりも得意なのかもしれない。
加護ちゃんは、目を大きくして、集まって来た人達を、キョロキョロと見まわし始めた。
はなれた位置からでも、呼吸が荒くなっているのが分かった。
恐怖で混乱しているように見えた。
そして、あたしと、涙で震える加護ちゃんの視線が、人の壁でとぎれた。
- 184 名前:シグナル 投稿日:2002年10月26日(土)04時22分03秒
「みんなは何もしないで。
これはあたしと、あの子の問題だから」
少し声を張り、加護ちゃんに群がっている、やじうま達に言う。
あたしの言葉に反応するように、壁がわれ加護ちゃんが見えた。
人でできた壁は、1列では納まりきらないくらいに、ふくれあがっていた。
怖いのも無理はない。
あたしは、加護ちゃんへ近づくため、足を進めようと踏み出した。
が、あたしの手を、後ろから誰かがつかむ。
「ひとみちゃん、危ないから行っちゃだめ!」
梨華ちゃんの声が聞こえたのと同時に、あたしをつかんだ手に力が入った。
手をつかんでいたのは、ベンチに座ったまま、いつものように眉をハの字にした梨華ちゃんだった。
「大丈夫だよ。カッターだもん、危なくなんてないよ」
「でも、私……加護ちゃんは?加護ちゃんとケンカするの?」
「ううん、加護ちゃんを傷つけたりはしないよ。
…あたしさ、決めたんだ、もう誰にも怖いなんて言われないようにするって」
そう言って、へへっと笑って見せた。
大丈夫かどうかなんて分からない、とりあえず笑ってみただけ。
そうでもしないと梨華ちゃんは、手はなさないんだもん。
- 185 名前:シグナル 投稿日:2002年10月26日(土)04時23分48秒
「ひとみちゃん…」
梨華ちゃんは、小さな声でそう言って、手を離した。
けれども、あたしの見ている梨華ちゃんの目が、わずかに潤う。
え!うそ!あたしなにかした?
「リ、梨華ちゃん?あたしなにか悪いこと言った?」
そう言うと、梨華ちゃんはうつむき、首を何度も横に振る。
「ううん、ひとみちゃんに怖いって、言っちゃった私が悪いの。
それに私、ひとみちゃんが、加護ちゃんとけんかすると思ってたからうれしかったの」
そう言って梨華ちゃんは、ハンカチで目を押さえた。
……マイナス思考、ネガティブな性格、どの言葉もあてはまるけど、これは重症のような気がする。
- 186 名前:シグナル 投稿日:2002年10月26日(土)04時27分06秒
「あ〜あ、よっすぃ〜が、梨華ちゃん泣かせちゃった〜」
ごっちんがイスから立ち上がり、梨華ちゃんを見ながら言う。
「しょうがないな〜。
加護ちゃんのことは、ごとうにまかせて、よっすぃ〜は梨華ちゃん見てなよ」
さらっとそう言って、ごっちんはあくびをしながら両手で伸びをした。
「だめだよ。ごっちんは加護ちゃんと」
「関係あるよ…。ごとー加護ちゃんにピスタチオもらったし…。
それにさ、加護ちゃん見てると、なんだか少し前までの自分見てるみたいなんだもん。
よっすぃ〜もそう思わない?」
ごっちんは、加護ちゃんをまっすぐ見ながら言う。
- 187 名前:シグナル 投稿日:2002年10月26日(土)04時29分15秒
そっか…あの子はあたしなんだ。
ごっちんや飯田さん、それに梨華ちゃんに会う前のあたしに似てるんだ。
「ね、にてるでしょ?」
「そだね。加護ちゃんは、あたしやごっちんだね」
「うん、自分がなんなのか分かんなかった時のごとーだよ」
「そうだね、意地はって、強がってた時の吉澤だね」
2人して加護ちゃんを見る。
加護ちゃんは、そんなごっちんを見ようもとせず、じっとあたしだけを見ていた。
額が、水に反射した光のように、小さくひかっている。
震えの無くなった幼い顔。
けれども、鈍く光る目だけが、ひどく大人びて見えた。
- 188 名前:シグナル 投稿日:2002年10月26日(土)04時31分24秒
「じゃあ、ごっちんにまかせてもいい?」
「うん、まかせといて。そのかわり、あとの事はよっすぃ〜にまかせるからね」
ごっちんは、あたしの肩をポンと叩き、笑顔を見せた後、目を細め歩きはじめた。
あ、ごっちん本気だ。
「ごっちん!手、出しちゃだめだからね」
ごっちんは、ブレザ−のポケットに手を入れたまま、あたしに答えるように後ろ手に手を振る。
ホントに分かってんのかな?
あたしは、少し心配になりごっちんの後に続くことにした。
だってさ、ごっちんがキレた時は誰が止めるの?
- 189 名前:シグナル 投稿日:2002年10月26日(土)04時36分32秒
光ることの無いカッターの刃の向こうで、加護ちゃんの目に力が入る。
あたしをじっと見る目は、イチゴシロップがかかったように赤い。
「加護ちゃん、そんな物持ってたら、ごとー怖くて話できないよ。
ね、だからカッター渡して?」
「……」
加護ちゃんは、ごっちんの言葉が聞こえないのか、ピクリとも動かない。
目だけが、ガラス玉のように光り、あたしから離れようとしない。
「ごっちん、やっぱりあたしが」
あたしが、そう言い終わる前にごっちんが動いた。
加護ちゃんの手で、小さく震えているカッターに向かって、進んで行く。
赤くなった目が、ごっちんをとらえた。
「くるな!」
加護ちゃんは一言そう言って、ごっちんに合わせて、後ずさりを始める。
涙でぬれたその声は、風にのって公園によくひびいた。
ごっちんはその声に足を止めたかと思うと、加護ちゃんの持つカッターにすばやく手を伸ばし、
加護ちゃんの手からでているカッターを、手でつかんだ。
加護ちゃんと、ごっちんの手で、カッターが隠れた。
- 190 名前:シグナル 投稿日:2002年10月26日(土)04時38分46秒
「あっ!」
加護ちゃんは、カッターの刃を握っている、ごっちんの手を見て小さく声を上げた。
「だめだよ加護ちゃん、こんな物もってたら、話も出来ないじゃない」
優しく笑いながらごっちんが言う。
加護ちゃんは、カッターを握る手から目を離すことなく、震え始めた。
「ごっちん、手!」
「よっすぃ〜は、黙っててもらえる?ごとーは平気だからさ」
ごっちんは、加護ちゃんから目を離すことなく、じっと見続ける。
あたし達を囲んでいるやじうま達は、いつもと違う雰囲気のやりとりを見て、
すっかり静かになっていた。
- 191 名前:シグナル 投稿日:2002年10月26日(土)04時40分00秒
「加護ちゃん、だいじょうぶだよ。
こんな物持たなくても、怖くなんかないよ」
カッターをにぎっている手を、ボーゼンと見ていた加護ちゃんが、
ごっちんの声に顔を上げた。
上がる顔とは逆に、涙が頬をつたう。
顔を上げた目には、さっきまであった力強さは微塵も残っていなかった。
かろうじて、ごっちんをとらえている。
そんな風に見えた。
「こんな物を人に向けてると、傷つけちゃうよ。
加護ちゃんは、人を傷つけたくないでしょ?
大丈夫、怖くないよ、だから……ね」
ごっちんの声は、優しく、静かに、夜の公園に広がる。
広がっていく声は、水面をゆらす波のようにひびいて、心地よかった。
- 192 名前:シグナル 投稿日:2002年10月26日(土)04時41分07秒
声が消えると、加護ちゃんの肩から、力が抜けていくのが見えた。
肩を落とし、ごっちんから目をそらすように下を向く。
しぼんでゆく風船みたいに小さくなって行く。
なんだ、あたしの出番ないじゃん。
そう思って一息つく。
その時、加護ちゃんのお団子頭が、横に何度も振られた。
何かを振り払うように。
「…もういやや」
空気に溶けてしまいそうなくらい、小さな声でポツリと言って、加護ちゃんは顔を上げた。
顔を上げた加護ちゃんの目に、この街と同じ光が見えた。
「う、うちは、こわくなんかない!
それに人を傷つけるくらい何ともない、平気や!」
ごっちんをにらむように見る。
真っ赤な目から、涙とうそがひとすじ流れた。
そして、また加護ちゃんの視線は、下を向いた。
- 193 名前:シグナル 投稿日:2002年10月26日(土)04時42分25秒
「ふーん。そうなんだ。平気なんだ」
加護ちゃんの声に、ごっちんが静かに答えた。
静か?…ちがう、深い海の底のように冷たく暗い声。
だめ、止めないと。
そう思い、あたしが動こうと思った時、白く光る目が、あたしを見た。
街灯の光を、氷のように鋭くはねかえす。
ごっちんの視線は、あたしの視線を押しのけて突き刺さる。
呼吸が止まり、心臓が大きくうつ。
動けない。
どこかから、ゴクっと、のどのなる音が聞こえた。
ゆっくりとあたしから目がはなれ、加護ちゃんを見る。
加護ちゃんは、カッターをにぎっているごっちんと自分の手を見たまま、動こうとしない。
そして、ごっちんが動いた。
- 194 名前:シグナル 投稿日:2002年10月26日(土)05時17分49秒
- 更新終了。
みなさまレスありがとうございます。
まじうれしいです。
>>174 オガマー様
相変わらず更新遅いです。
もうやだ。
>>175 ひとみんこ様
忘れてはないですよ。
ただ、更新が遅いだけです。
>>176 七誌様
短編終了ご苦労様です。(ちがってたらすみません)
私の話はいつ終わることやら…。
>>177 EAGLE様
ごめん、よっちぃの出番まだです。
かっけ〜よっちぃかけるかな〜。
>>178 とみこ様
3日続けて更新…やってみたいな〜。(w
さて加護どうしましょ?(w
- 195 名前:シグナル 投稿日:2002年10月26日(土)05時18分44秒
>>179 むぁまぁ様
キーワードの言葉は、今回の話のテーマでもあるかもしれません。
たいしたことはかけないと思いますが、子供の頃の思いを、
少しでも思い出してもらえるように、書いていきたいです。
>>180 たっくん様
かっけ〜でしょうか。
続きは…え〜…しばしお待ちを。
>>181 名無し娘。様
「二人ぼっち」の意味は、そのうちに出てきます。
でも、まぁ、期待はしないでください、大体そのような意味ですので。
>加護は〜
ノーコメントで。(w
>>182 名無し読者様
修羅場もいまいちぱっとせず…。
更新も遅くてごめんなさい。
レスありがとうございます。非常にうれしいです。
プチ放置を体感した作者です。
とくに、病気でも忙しいわけでもないのに、更新できませんでした。
ふとしたことで、更新できなくて、それからずるずると…。
次回更新は、木曜あたりにでも。(できるかな
- 196 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月26日(土)08時24分06秒
- 緊迫感、良く伝わってますよ。
ここのごちん、かっけーです、くーるです。
No.2にこういうタイプ多いですよね。
チャミさま、重症ねがてぃぶですな、泣き虫チャミさま、素敵です。
- 197 名前:七誌 投稿日:2002年10月26日(土)19時28分35秒
- 後藤さんと加護ちゃんの距離感がいいですね。
だんだん心も近くなればイイナ〜。
- 198 名前:EAGLE@从‘ 。‘从 いっただきまぁ〜す 投稿日:2002年10月26日(土)20時39分25秒
- ごっちんコワっ!
よー出来るなぁ。オレやったらややわ。
痛いしw
- 199 名前:とみこ 投稿日:2002年10月27日(日)09時46分08秒
- 加護切ないっすね・・・。よっすぃーも優しいし。
そしてなにより、ごっちんコワッ!!
- 200 名前:名無し娘。 投稿日:2002年10月27日(日)15時49分51秒
- 後藤は何をしようとしてるんでしょう。
考えただけで背筋がゾクゾクします(^^;
- 201 名前:kattyun 投稿日:2002年10月27日(日)21時00分15秒
- ごっちんのカッケー所みたいっす。
優しいね…。でもこわっ!
- 202 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年10月28日(月)08時20分41秒
- 後藤さん動きましたか
本当のやさしさって何?
そんなことを考えさせられる作品ですね
- 203 名前:シグナル 投稿日:2002年11月03日(日)05時08分15秒
光る街灯や街の明かりが、2人の真ん中で動く、ごっちんの手をてらした。
カッターを包んでいるごっちんの手にゆっくりと力が入る。
ギュッと、カッターをにぎった手から、玉になった血が公園の敷石に落ちた。
1滴……また1滴。
点滴のようにゆっくりと落ちる。
「あ……あ…あ…」
加護ちゃんは、下へ下へと落ちる血を見て、小さく声を上げる。
小さく手が震え始め、顔が白くなっていく。
けれども、加護ちゃんがその場から動くことはなく、落ちていく血を震える目で見つめていた。
「ちょっ、ごっちん、血が出てる!」
あたしがごっちんに言っても、ごっちんは加護ちゃんをじっと見たまま、ピクリとも動こうとしない。
ごっちんの手を引っ張っても、加護ちゃんの手を引っ張ってもだめ。
ごっちんが手をはなさないと…。
「ごっちん!」
あたしが声を大きくしても、ごっちんは無言のまま加護ちゃんを見つめていた。
変化なし。
- 204 名前:シグナル 投稿日:2002年11月03日(日)05時18分06秒
けれども、加護ちゃんはちがった。
あたしの声に誘われるように、ごっちんの手からゆっくりと視線を上げる。
手から肩、肩から顔へ、おそるおそる視線を上げていく。
そして加護ちゃんは、ごっちんの目を見て、一瞬のうちに固まった。
加護ちゃんの頬を汗がすべる。
体をこわばらせ、視線をはずすことなく小さく震える。
静まり返った公園の街灯は、変わることなくいつものようにあたし達をてらしていた。
- 205 名前:シグナル 投稿日:2002年11月03日(日)05時20分00秒
「どう?……平気?」
感情の入っていない冷たい言葉が、加護ちゃんに向けられる。
けれども、加護ちゃんに当たった言葉は返ってこない。
2人の間に、ピンとはりつめた緊張が漂う。
動けない、ううん違う、動いちゃいけない。
これは、2人のことだから。
音が無くなったように、あたしの耳に耳鳴りしか聞こえなくなった時だった。
スッと、音も無く影が動いた。
動いたのは、ごっちんの左手。
無言のプレッシャーで動けなくなった加護ちゃんの顔に、ごっちん手が近づく。
カッターをにぎったまま加護ちゃんと一緒にある右手は、小指のつけ根の辺りから、
血をゆっくりと流し、白い公園の敷石に、混ざり合うことのない赤い点をつけていた。
ゆっくりと近づいていくごっちんの手が、加護ちゃんの顔をつかむように広がる。
加護ちゃんは、目をギュッと閉じアゴをひいて構えた。
だめ!
あたしは、ごっちんにつめより、加護ちゃんに近づく手をつかもうと、手を伸ばした。
- 206 名前:シグナル 投稿日:2002年11月03日(日)05時21分38秒
広げられたごっちんの細い指が、加護ちゃんの顔を隠す。
けれども、ごっちんの手は加護ちゃんの顔を通りすぎ、
二つに結ばれているお団子頭を、ポンポン、と優しく叩いた。
「おどかしちゃってごめんね。加護ちゃんも痛かったよね」
ゆっくりで、どこか温かいごっちんの声。
加護ちゃんはその声に、ギュッと閉じていた目をゆっくりと開ける。
「よかった。加護ちゃんが痛みの分かる子で」
そう言って、ごっちんはニッコリと笑う。
ごっちんの笑顔は固く凍った心を溶かしていく。
やわらかい笑顔のごっちんが微笑んでいる中、あたしの右手だけが、行き場も無くさまよっていた。
力を入れた手でにぎられていたカッターから、加護ちゃんの小さな手がはなれる。
そして加護ちゃんは、へなへなと崩れ落ちるように、敷石の上にペタンと座り込んだ。
- 207 名前:シグナル 投稿日:2002年11月03日(日)05時22分46秒
「ごっちん!手、だいじょうぶ?」
まだカッターをにぎったまま、加護ちゃんの前で立っているごっちんに聞く。
「え?あ、ちょっと痛いけどだいじょうぶ。
カッターの先で少し切っただけだから、へいきへいき」
「でも血が…」
「だいじょうぶ、カットバンでも貼っとけば治るよ」
そう言いながら、ごっちんは手に持ったままのカッターをあたしに向ける。
「はいこれ」
「あ、うん」
ごっちんから受け取ったピンク色の細いカッター。
刃先には、赤い血がクモの巣のようにはり付いていた。
- 208 名前:シグナル 投稿日:2002年11月03日(日)05時27分09秒
あたしは、ポケットからハンカチを出してごっちんの手に巻きつける。
「ちょっ、よっすぃ〜ハンカチ汚れちゃうよ」
「痛くない!」
「え?」
「痛くないって言ってんの」
少し怒ったようにそう言いながら、ハンカチで傷口を押さえる。
「ハンカチが汚れたって、あたしは痛くないんだから!」
ハンカチが手から落ちない様に結び、ごっちんを見る。
ごっちんは黙ったまま、手に巻かれたハンカチを見ていた。
「もう、無茶はしないで。わかった?」
そう言うとごっちんは、手を見ていた視線をあたしに向ける。
「うん、わかったもう無茶しない」
ごっちんは、気がぬけるほどすんなりと返事をする。
ほんとに分かってんのかな?
「ん〜、このハンカチ洗ってかえすからね」
返事をしたごっちんがポツリとつぶやいた。
「いいよ、洗っても落ちないだろうから、捨てちゃってよ」
「じゃあ、ごとーがもらってもいい?」
「いいけど、どうするの?」
「宝物にする」
そう言って、とびきりに明るい笑顔を見せた。
心地のよい、こそばさ。
ただ、照れてるだけなのかもしれない。
でも悪くない。
それにしてもごっちんは、ホントに不思議だ。
- 209 名前:シグナル 投稿日:2002年11月03日(日)05時28分35秒
「…ウッ…グスッ……ウッ」
ふいに、あたしとごっちんの下から、爆発寸前の泣き声が聞こえてきた。
2人で視線を落とすと、公園の敷石に、学制服のスカートを広げて座っている加護ちゃんがいた。
目に涙をいっぱいにため、口をギュッとつぐんでいる。
うわ、泣いちゃうよ。
そう思い、ごっちんを見ると、ごっちんと目が合った。
「あ〜、ごとー疲れちゃったな〜。
じゃあ、あとはよっすぃ〜にまかせるからね」
ごっちんは、そう言って、あはっ!と笑いながら回れ右をしてあたしの肩に手を、ポンと置く。
よっすぃ〜、バトンタッチ。
そう言いたげな笑顔のまま、ごっちんは飯田さんの方へ走っていく。
「か〜おり〜ん、カットバンちょ〜だ〜い」
あ!ごっちん逃げた!
- 210 名前:シグナル 投稿日:2002年11月03日(日)05時47分52秒
- 更新終了。
皆様レスありがとうございます。
>>196 ひとみんこ様
テレビでのチャミさまには、ネガティブのかけらも見れないのは、
私の気のせいでしょうか?(w
ネガティブのほうが素敵なんですが・・・・。(w
>>197 七誌様
後藤さん大活躍です。
これで何とか近くなるでしょう。
>>198 EAGLE様
あまり怖がらないように。(w
私もいやです。(w
>>199 とみこ様
よっすぃ〜は、誰にでも優しいのです。かっけーよっすぃ〜書くはずなのに・・・。
ごっちんを怖がらないで〜。(w
- 211 名前:シグナル 投稿日:2002年11月03日(日)05時48分33秒
- >>200 名無し娘。様
たぶん何も考えてないので、こんなことになりました。
ごちーんを怖がらないで。(w
>>201 kattyun様
かっけーごっちんは書けたかなと思います。
よっすぃ〜はまた次の時に・・・。
>>202 むぁまぁ様
ホントに優しさ。
今回の話が終わった時、その答えをひろえる事を願ってます。
そんな話を書いてみたい。
次回更新は、金曜あたりにでも・・・。(あくまで目安です)
更新予告しといて、更新しなくてすいません。
更新量減ってるし、更新回数も減ってる…がんばろ。
- 212 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月03日(日)08時54分06秒
- これだけクールなごちんが認める、「キング」よしこって
どれだけすごいんでしょうか?
ぞくぞくします!
- 213 名前:七誌 投稿日:2002年11月03日(日)17時16分56秒
- クールなごっちんとやわらかいごっちんの違いがカッケー!
更新マターリお待ちします。
- 214 名前:名無し娘。 投稿日:2002年11月03日(日)21時55分58秒
- 後藤はどれほど人の痛みを感じてきたのでしょう。
どうしてそれを知ったのでしょう。 謎が多い分魅力的です。
だけど、よっすはごっちんをもっと信じましょう(w
今回は格好良さ減点ですね(w
- 215 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年11月05日(火)12時40分49秒
- 後藤よくやりましたね
あとは吉澤、君の出番だ
- 216 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年11月05日(火)12時43分09秒
- >シグナル様
答えを逃さす見つけられるようにより一層、心して読ませて頂きます.
- 217 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月05日(火)19時43分15秒
- よっすぃーの『痛くない』って台詞がいいです!
格好良いっす。
私も、ごっちん同様そのハンカチは宝物にしますよぉー。
- 218 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年11月05日(火)20時46分32秒
- シグナル さま
更新、お疲れさまです。
最近、小説を買わなくなりました。
だって、ここのよっすぃ〜とごっちんはかっこいいし、梨華ちゃんは可愛いし言うこと無しです。
良質なお話しに感謝です。
では、続きを楽しみに待っています。
- 219 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月05日(火)21時28分11秒
- この話に、『金髪のコギャル』がどう絡んでくるのか楽しみ。
- 220 名前:シグナル 投稿日:2002年11月14日(木)03時03分52秒
この街から溢れ出るノイズは、数えきれやしない。
人の足音、車の排気音、呼び込みの生暖かい声。
そして、あたしの目の前にも1つ。
「ウワーーーン!!」
つぶらな瞳からあふれる涙、小さな口をいっぱいに開け、大音量の泣き声で夜空をゆさぶる。
あたしは、ゆっくりと深呼吸をしながら回りを見渡す。
さっきまで、あたし達を囲んでいた人間の壁は、嘘のように消えていた。
みんながみんな、いつものようにそれぞれに動いている。
携帯片手にベンチで声を上げているギャル。
渡り鳥のように、ベンチからベンチへと渡って行くナンパ師達。
シンガー達の周りには、いつも以上に人が集まっていた。
公園はいつもと何も変わっていないようだった。
- 221 名前:シグナル 投稿日:2002年11月14日(木)03時05分15秒
後ろのベンチでは、ごっちんが手にカットバンを貼っていた。
ベンチの横で、飯田さんのひざの上にいる辻ちゃんと目が合う。
目が赤い。
泣いてたの?
辻ちゃんは、あたし達の方をぼうぜんと見ていた。
何も言わずに、ただじっと。
そんな辻ちゃんを、後ろから飯田さんが優しく包み込むように手で抱きしめた。
辻ちゃんも、それに答えるように、飯田さんの腕を手でギュッと握った。
あたしは、視線を戻し加護ちゃんを見る。
夜にひびく泣き声は、あたしの中で小さな波になって、心の奥のほうまで伝わってくる。
この子には何が必要なんだろう?
あたしは、その言葉を頭の中で繰り返し、加護ちゃんを見る。
- 222 名前:シグナル 投稿日:2002年11月14日(木)03時08分02秒
なにがどうなれば、加護ちゃんが笑顔になり、辻ちゃんが泣かなくてすむのだろう?
答えなんてすぐには見つからない。
でもあたしは決めたんだ、加護ちゃんの笑顔を見るって。
泣き続ける加護ちゃんからは、止まることなく涙があふれていた。
怖かったのかな?
それとも、中にたまった何かが、あふれ出しているだけなのかな?
あたしは、加護ちゃんにハンカチを渡すためにしゃがもうとした。
その時、あたしの横を影が通り過ぎた。
茶色い髪の毛があたしの肩にふれた。
影は、公園の敷石にペタンと座ると、加護ちゃんの背中に腕をまわし、ギュッと抱きしめた。
「大丈夫だよ、ひとみちゃんなら何とかしてくれるから…ね、泣かないで」
涙声の高いアニメ声。
ごっちんから渡されたバトンは梨華ちゃんに奪われた。
でもさ、どうして梨華ちゃんまで泣いてるの?
- 223 名前:シグナル 投稿日:2002年11月14日(木)03時11分12秒
あたしは、さっきよりも大きな声で泣き始めた加護ちゃんと、
だいじょうぶだよ、だいじょうぶだよ、と何度も言いながら、
一緒になって泣いている梨華ちゃんを残し、黄色いベンチへと戻った。
「あはっ!梨華ちゃんにいいとこ取られちゃったね〜。
よっすぃ〜の見せ場だったのにねぇ」
ベンチに座って、少しにやけながら、ピスタチオを食べているごっちんが言う。
ハンカチのまかれた右手は、ピンと伸びて空を指している。
「よく言うよ、さっきは一番に逃げたくせに」
「逃げたんじゃないよ〜、よっすぃ〜に見せ場を譲ったんだよ」
「まぁいいけど。ところで、手なんか上げて何してるの?」
「ん〜、かおりんが、手を心臓より高く上げろっていったから上げてるの」
ごっちんは、ひざの上に置いてある袋から、左手でピスタチオをつまみ口へと運ぶ。
「あのぉ、あいぼんはどうなるんですか?」
細く小さな声が、飯田さんのいるほうから聞こえる。
見ると、辻ちゃんがあたしを見ている。
つながった視線の先には赤い目。
- 224 名前:シグナル 投稿日:2002年11月14日(木)03時12分34秒
「あいぼんは、どうなるんですか?」
あたしを見ながら、くり返し聞く。
目には、これ以上にないくらいに涙がたまっている。
「だいじょうぶ、どうにもならないよ」
「ほんとれすか?あいぼんは殴られたりしないれすか?警察に捕まらないれすか?」
辻ちゃんの目から、星のように光る涙が1つ流れた。
「あいぼんは悪くないれす。悪いのはののれす」
辻ちゃんはそこまで言うと、今までガマンしていた涙をあふれさせた。
涙は辻ちゃんの頬をつたい、セーラー服のスカートに落ち跡をつけた。
雨よりも澄んでいて、星よりもきれいに光る涙は、あたしの中にも跡を残した。
- 225 名前:シグナル 投稿日:2002年11月14日(木)03時16分13秒
「加護ちゃんも辻ちゃんも、吉澤をたよって来たんだから、力になってあげれば?」
静かに泣いてる辻ちゃんを、飯田さんが優しく抱きしめながら言う。
いつもより、ずっと優しい顔。
「はあ」
生返事をするあたしの視線の先で、梨華ちゃんがゆっくりと立ち上がった。
それに続いて、梨華ちゃんに手を引かれ、加護ちゃんが立ち上がる。
加護ちゃんは、何度か梨華ちゃんにうなずくと、両手で梨華ちゃんの手を握った。
公園の敷石を渡ってくる2人は、とても近く、とても暖かく見えた。
梨華ちゃんの手を両手で握った手と、加護ちゃんの赤い目から流れた涙。
加護ちゃんが向けたカッターでつながったごっちんの手と、その手から流れた赤い血。
たぶん、そんなに代わらないんじゃないかな?
- 226 名前:シグナル 投稿日:2002年11月14日(木)03時26分18秒
- 更新終了。
>>212 ひとみんこ様
たぶんキングよっちぃ〜は、たいした事ないですよ。(w
>>213 七誌様
別名「アメとムチ」とも言いますが。(w
>>214 名無し娘。様
ごちーんの謎もそのうち書きたいと思います…。
ちゃんと更新してから言え!ですね。(苦笑
>>215 むぁまぁ様
よっちぃの出番は…。確か、かっけ〜よっちぃを書く話のはずですけど…。
- 227 名前:シグナル 投稿日:2002年11月14日(木)03時44分04秒
>>217 名無し読者様
よっちぃは確かに痛くないんですよね。(w
私もハンカチはた(ry
>>218 ななしのよっすぃ〜様
ほめても何も出ませんよ、その上更新遅いし、更新量少ないし…。
でも、うれしいです、ありがとうございます。
私も読者の皆様に感謝です。
>>219 名無し読者様
ごめんなさい。更新速度、更新量、どちらもダメでごめんなさい。
その上「金髪のコギャル」は今回出ないのでごめんなさい。
予告しといて更新できない自分が嫌い。
近いうちに更新します。
読んでくださっている皆様、レスしてくださった方々、
ありがとうございます。
ミニ物語の作者のビギナー様、ほんとにごめんなさい。
謝りのレスしようかとも思いましたが、スレ汚しになると思いしませんでした。
読まれることないかもしれませんが、ここで謝らせていただきます。
ごめんなさい。
- 228 名前:七誌 投稿日:2002年11月14日(木)20時48分32秒
- 更新お疲れ様です。
あくびが移る様に涙が移っていくのはみんなが優しいからですね。
加護ちゃんが解き放たれて良かった。
シグナルさんにとって、この小説を書く事が義務になってなきゃいいな。
余計な心配すいません。
本当にいつまでも待つんで、ゆっくり頑張ってください。
- 229 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年11月14日(木)22時47分11秒
- シグナル さま
更新、お疲れさまです。
『最近、小説を買わなくなりました』は本当ですよ。
本当に楽しく読ませていただいております。
キング、よっすぃ〜の活躍を期待しつつ、次の更新を待ってます!
- 230 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年11月15日(金)12時35分11秒
- 最後の4行は心にズシーンと来ましたね
このような作品が読めるのなら時間は惜しくないですよ
だから作者殿のペースで続けられたらよろしいかと私は思います
- 231 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)02時56分59秒
「グスッ……グスッ…」
あたしとごっちんの間から聞こえてくる涙声。
加護ちゃんは、ベンチに座った梨華ちゃんのひざの上で、ハンカチを目に当てている。
その加護ちゃんを、ひざに乗せている梨華ちゃんは、あふれる涙をハンカチで拭いていた。
そんな梨華ちゃんに、ごっちんが言う。
「あのさ〜、なんで梨華ちゃんがそんなに泣いてるの〜」
梨華ちゃんは、ハンカチを目からはずし、ごっちんを見て言う。
「だって…グスッ…加護ちゃんが泣いてるの見てたら、なんだか悲しくて」
「ふ〜ん」
ごっちんは、話しに興味がないのか、あいまいな返事をかえす。
泣いてる人を見て泣く梨華ちゃん。
涙は流れ、思いと一緒に人に伝わり、また流れていく。
思いと涙は人から人へと巡って行く。
- 232 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)02時57分38秒
それからは、誰が話すことなく続く沈黙。
あたしは、横で泣いている2人(ホントは梨華ちゃんだけ)を気にしながらビニール袋を覗く。
ベーグルサンドが2つ。
あたしは、食べかけのベーグルサンドを、かたづけることに専念することにした。
- 233 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時01分56秒
6人が座る公園の一角は、幕の下りた舞台のように静か。
時おり聞こえるピスタチオを探すごっちんの音と、
1口食べるたびに、包み紙の音が聞こえるあたしの手の中。
そんな音も公園の中では、小さすぎた。
後ろから聞こえるバスケットゴールの揺れる音と男の声。
円形広場を囲むベンチからは、ジャングルの鳥のように高いギャル達の声。
ギャルの達の声は、エコーがかかったように、街によく響く。
- 234 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時03分04秒
梨華ちゃんの向こうで、ごっちんが、しびれを切らしたのか言う。
「ね〜、なんでみんなだまってるの〜?」
ケガをした右手を上に向けたまま続ける。
「加護ちゃんもさ〜、何かあるからここに来たんでしょ?
言いにくいかもしれないけどさ、言ってみなよ。
よっすぃ〜も力になってくれるって」
それを聞いた加護ちゃんは、ごっちんのほうを見た後、振り向くようにして後ろを見る。
朝露に濡れたような視線が梨華ちゃんと繋がる
梨華ちゃんの声は、涙のせいかとても優しい。
「私ね、少し前まで学校でいじめられてたんだよ。
でもね、ごっちんやひとみちゃんに助けてもらったんだ。
だからね、きっと加護ちゃんも、私みたいに笑えるようになるよ」
梨華ちゃんはそう言うと、加護ちゃんにニッコリと微笑みかける。
いい笑顔。
梨華ちゃんの笑顔は月の光よりも優しい。
- 235 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時03分54秒
加護ちゃんは、梨華ちゃんに向けていた視線を前に戻してうつむく。
あたしの横にいた辻ちゃんは、じっと加護ちゃんを見ていた。
加護ちゃんが言う。
「あんな…うちの通ってる中学校な、今年からテストの点数で、
クラスが分けられるようになってん」
少しテンションの落ちた声は、夜の空気にのって耳によく響く。
「うちらの学校な、A〜F組みまであんねんけど、学年末テストの点数の上位40人がA組、
41位〜80位がBクラスって決まんねん…。
…そうやってクラス分けされてな、あまった人がF組み…うちらのクラスになんねん」
それを聞いてピンときた。
出る杭と、低い杭はいつでも攻撃の的。
その上、人間は上よりも下を攻撃したがる。
- 236 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時05分13秒
「そっか…それで他のクラスから、加護ちゃん達のクラスがいじめられてるんだ」
あたしは、下を向いている加護ちゃんの横顔を見ながら言った。
けれども、加護ちゃんは下に向けていた顔を、横に何度も振ってあたしを見る。
そして、静かに話し始める。
「それもあんねん。
…でもな、バカにしてんのはうちのクラスの人で、バカにされてんのは…」
そう言って、また下を向き黙る。
ひざのうえに置かれた小さな手に、ギュッと力が入り筋がうき上がる。
バカにしているのは、クラスメイト。
バカにされてるのは、加護ちゃんの知ってる誰かで、ここに来たのは2人。
たぶん加護ちゃんじゃない。
そんな気がした。
あたしは、加護ちゃんから視線をはずさなかった。
- 237 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時06分35秒
「そっか〜、辻ちゃんがバカにされてんだ〜」
梨華ちゃんの向こうから、ごっちんのゆっくりとした声が聞こえた。
加護ちゃんは、うなだれたままゆっくりとうなずく。
それを聞いて梨華ちゃんが言う。
「どうして、どうして辻ちゃんがバカにされるの?
クラスのみんなもバカにされてるんでしょ?」
力のこもった言葉が、少し早口になっていた。
もしかして、梨華ちゃん怒ってる?
加護ちゃんは、あたし達を見ることなく、下を向いたまま言う。
「最初はな、他のクラスの人が、うちらのクラスのことバカにしてた…。
けどなそのうち、クラスメイトがののの事バカにし始めて…」
加護ちゃんは、何かを言いにくそうに言葉をにごす。
力が入っているからか、手が小さく震えていた。
- 238 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時08分29秒
黙っていた加護ちゃんの手に、梨華ちゃんが手をかさねる。
小さく震える手を、梨華ちゃんの手は優しく包み込む。
加護ちゃんは、振り向くように梨華ちゃんを見た後うつむいて言う。
「…うちがな、そんなんおかしいってゆうたら、うちの事も、のけものにして…。
…それからは、ずっとののと二人ぼっち…」
ポツリと言った言葉の最後は消えそうに小さい。
加護ちゃんは、少し声を大きくしてあたしに言う。
「でもな、ののはなにもしてへんねんで、ただ点数が低いだけなんやで。
そんなん…おかしいやろ?」
「そんなのおかしいよ、なんでののちゃんがバカにされるの?」
加護ちゃんの後ろから、強気なアニメ声。
梨華ちゃんはさっきからしゃべりっぱなし。
いつもの泣き虫梨華ちゃんはそこにはいない。
- 239 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時10分29秒
けれども、一時の感情は、冷静な答えに黙らざるをえなかった。
あたしの横から、感情の消えた、でも、どこかあきれたような飯田さんの声。
「簡単よ、歌でもあるじゃない。
弱い者達がさらに弱い者を叩くって」
辻ちゃんをひざに乗せた飯田さんは、街の光を見ていた。
けれども、その目はどこか遠い。
飯田さんが言う。
「人間はね、自分より下がいないと不安なのよ。
自分達が下になればその中で下を作る。
ただ…それだけよ。
石川だってあるでしょ、テストで悪い点数取ったときに、
クラスに自分より低い点数の人がいて安心した事」
そういった後、飯田さんはあたしを見る。
「それは……」
小さな声をもらし梨華ちゃんはうつむいて黙る。
あたしだって何も言えやしない。
あたしの通う高校なんて、せいぜいDかE組みで、その中で他人を気にしてるんだから。
- 240 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時12分11秒
「あのさ〜、ごとー思うんだけど、そうやって順番つけてクラス分けてどうなるの?」
ごっちんは、いつものように興味なさげに飯田さんに聞く。
けれども、ごっちんの言う事はいつも真ん中をわしづかみにする。
飯田さんはしっとりと濡れた声で言う。
「競わせるのよ。
順番をつけて、エリートと落ちこぼれとを分けて、勝者と敗者の違いを教えるの」
そう言った飯田さんの声は、いつもの数倍冷たい。
けれども、そういった後で、笑顔を見せ言う。
「なーんてね。
ジョーダンよ、みんなそんな怖い顔しないの。
クラス分けするのはね、同じレベルの人達が一緒に勉強したほうが、効率がいいからよ。
海外なんかでは当たり前にやってる事よ。
なんでもすぐに憶えちゃう人と、二回三回で憶える人が一緒に勉強すれば効率悪いでしょ。
勉強の分からない人は分かるまで教えてもらえるようにするために、
同じくらいの理解力の人を集めてクラスを作るのよ」
明るく軽い声。
飯田さんが明るく言ってたからかもしれないけど、
あたしには、最初に言っていたほうが本気に聞こえた。
- 241 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時14分11秒
勝者と敗者は大人の世界だけでなく、義務教育でも流行っているらしい。
けれども思う、この世界にどれほどの勝者がいるのだろう。
ウィークリーCDランキングみたいに、ころころと入れ代わる勝者に何の意味があるのかな。
そもそも、生きていくうえで勝者と敗者に何の意味があるの?
あたしのひがみ?
いいよ。
どうせあたしは大手デパートに押されている、負け組み商店街に住んでる肉屋の一人娘だ。
あたしは、飯田さんの言葉に、力を失いうなだれている加護ちゃんに聞く。
「先生に言ってもダメなの?」
「先生にゆったら、良い点数取って見かえせば良いだろうって…」
先生に100点。
大正解だ。
でも、良い点が取れるなら、バカにされる事はないし、2人もここにはいない。
誰も好き好んで悪い点数を取るわけじゃない。
やっぱり大人は分かっていない。
ちがった、忘れている。
凶悪な犯罪者も〜みんなみんな子供だったね〜♪
- 242 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時15分34秒
「それで、加護ちゃんはあたしのチームに入ってどうしたいの?
バカにしている人達に復讐でもするの?」
「ちがう!
うちは、ののとみんなが、前みたいに仲良くなったら…それでええ」
加護ちゃんは、下に向けていた顔を上げ、少し大きな声で言った後、またうつむく。
辻ちゃんが、バカにされないようにする方法は、いくつかあると思う。
加護ちゃんの言うように、あたしのチームに友達の加護ちゃんが入れば、いいかもしれない。
梨華ちゃんの時のように、あたしが行くのもいいかもしれない。
けれども、見えない力は、予想外の広がりを見せることがある。
それに、ホントに動かないといけないのは、加護ちゃんじゃないと思うしね。
- 243 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時17分05秒
「なぁ、うちら全部話したから、キングのチームに入れてくれるやろ」
あたしの横で加護ちゃんが言った。
おそるおそる、といった感じ。
あたしは加護ちゃんの目をじっと見る。
おくびょうに見えて、芯の通ったような目。
あたしは加護ちゃんから目をはなし、少し遠くで光るビルの光を見ながら言う。
「だめ」
「なんで?なんでなん。
うちら全部話したやん、キングは話したら入れてくれるって言うたやん」
少し熱を持っていた赤い頬が、さらに赤くなる。
そして、それを押すように梨華ちゃんが言う。
「そうだよ、加護ちゃん困ってるんだよ、どうして助けてあげないの?」
「だってさ、辻ちゃんが勉強して良い点取れば、誰も辻ちゃんのことバカにしなくなるよ。
やっぱりさ、できることは自分の力で解決しなきゃいけないと思う」
あたしの横から、辻ちゃんと飯田さんが笑いながら話をして
いるのが聞こえた。
加護ちゃんが、悔しそうな顔をしてうつむく。
こんな事を言うあたしは冷たいのかな?
でもさ、どの世界でだって、自分の足で立つことが大事なんじゃないかな?
社会でだって、ストリートだって、学校だって。
- 244 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時19分06秒
「それが無理やから頼みにきたんや」
あきらめたようにうつむいていた加護ちゃんが、ポツリと言った。
「むり?なんで?」
そう言ったあたしに、加護ちゃんは何かを言おうとしたが、
あたしの向こうを見て口ごもった。
あたしの向こうには、辻ちゃんをひざに乗せた飯田さんと、
飯田さんのひざの上で澄みきった笑顔を見せている辻ちゃん。
あたしは、クラスメイトからバカにされているのに、
こんなに澄みきった笑顔を見せる辻ちゃんが、不思議でしょうがなかった。
あたしは、横で飯田さんと笑いながら話をしている、辻ちゃんに言う。
「辻ちゃんは勉強嫌い?
「ううん、嫌いじゃないですよ」
「でもテストの点数悪いんだよね?」
「はい、悪いです」
辻ちゃんは、はにかむように笑う。
「悪いってどのくらい悪いの?」
「え〜と、中間テストの5教科の平均点は0点でした」
さっきと何も変わらない澄みきった笑顔。
おかしいのはきっとあたしの耳だ。
「え〜と、何点?」
「0点です」
「はぁ?!」
「んあ?」
「えぇ!?」
「…」
- 245 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時20分01秒
あたしに続いて、ごっちんと梨華ちゃんもおどろきの声を上げた。
飯田さんも声には出していないけど、目を大きく開いたまま辻ちゃんを見ていた。
あたしの横にいる梨華ちゃんが、あたしの耳元で言う。
「ひとみちゃんは0点とった事ある?」
「んーん、ない」
0点なんて、ドラえもんの世界で、現実世界ではまず見ることなんてない…。
それより梨華ちゃん、どうしてあたしに聞くの?
- 246 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時22分25秒
それぞれが、おどろきで黙ってしまった中、加護ちゃんが言う。
「あんな、ののは、小学3年の時から、中学2年の冬まで、
学校行ってなかってん」
うつむいたままの加護ちゃんはそう言ってだまる。
静かなまま少し間があって、飯田さんが加護ちゃんに聞く。
「辻ちゃんはテストに何も書かないの?」
「ううん、テスト前にうちが教えたりしてるから、答えは書いてる。
でもな、簡単なかけ算で間違ったり、答え方間違えて、0点やった」
加護ちゃんは飯田さんを見ることなく、ずっとうつむいていていた。
けれども、辻ちゃんはそれを聞いても、悪びれた様子もなく、
てれたように頭をかきながら笑っていた。
白い八重歯と、黒いしっぽのような髪の毛が、あたしの目に光ってうつる。
「じゃあ、テストは白紙じゃないのね」
「え?あ、うん」
加護ちゃんの答えに、飯田さんは何かを思いだしたように、頬をつかって小さく笑う。
そんな飯田さんのひざの上で、辻ちゃんが不思議そうな顔をして、ゆっくりとゆれていた。
- 247 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時24分25秒
飯田さんは、辻ちゃんを、後ろからのぞきこむように見ながら言う。
「辻ちゃんは、どうしてそんな嘘つくの?」
飯田さんは、時々とんでもなく遠い事を言う。
話が見えない。
辻ちゃんが言う。
「うそ…ですか?」
「そうだよ。
どうして辻ちゃんは、うそついてまで0点なんかとるの?」
ゆっくりとした飯田さんの声は、遠くのほうまで広がって行く。
「うそなんかついてないですよ」
辻ちゃんはそう言って、眉をしかめたかと思うと、
そのまま飯田さんから視線をはずし、体を前に向ける。
わかりやすい。
でも、あたしにはウソと0点の意味が、分からない。
あたしは、辻ちゃんの、頭を見ている飯田さんに聞く。
「ウソってどういうことですか?」
「かおりが思うにはね、辻ちゃんはわざと0点とってるのよ」
ますます分からない。
どこの世界に、0点をとりたがる人がいるのだろうか。
少なくともあたしの通ってる高校にはいない。
負け組みも負け組みなりにもがいている。
- 248 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時27分43秒
飯田さんを見ていたあたしの横から、加護ちゃんの大きな声が、前を通り過ぎる。
「そんなわけない!
ののはクラスのみんなにバカにされてんねんで」
けれども飯田さんは、加護ちゃんの声が聞こえてないかのように、辻ちゃんに言う。
「ねぇ、どうして辻ちゃんは0点なんかとってるの?」
「さっきうちがゆうたやろ、ののがわざと0点なんかとるわけな」
「ごめんね加護ちゃん。
かおりは、辻ちゃんに聞いてるの、少し黙っててもらえる?」
加護ちゃんの言葉を、飯田さんは少し冷たい口調でさえぎった。
加護ちゃんは、グッと唇をかみ締めるようにして、体を小さくしてうつむく。
飯田さんは背中を、まっすぐに伸ばして座っている、辻ちゃんに言う。
「ねぇ、辻ちゃんはどうして0点をとるの?」
- 249 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時29分28秒
あたしには、全然分からない。
どうして飯田さんは、それをウソだと言えるのか。
けれども、辻ちゃんがウソをついていることだけは分かった。
たぶん、飯田さんの言ってることはホントで、辻ちゃんはわざと0点を取っている。
だから余計に分からない。
おどされている?誰かに頼まれた?
そんな答えならあたしにでも思いついた。
けれども、答えはもっと簡単で、とても暖かった。
それは誰もが持ってる心の1つで、
辻ちゃんは、それが人より少し大きくて、透きとおっているだけだった。
- 250 名前:シグナル 投稿日:2002年11月28日(木)03時48分27秒
- よりこのラジオを聴きながら更新終了。
>>228 七誌様
本人は楽しんで書いてます。
でもここに書き込んだかぎり、最後まで書くことが義務だと思っているので、
むりでもがんばります。(w
>>229 ななしのよっすぃ〜様
よっすぃ〜の活躍は・・・がんばって書いていきます。(w
>>230 むぁまぁ様
作者ペースでは、大変な事になってしまいます。(w
少し自分に厳しく,これからもがんばります。
皆様レスありがとうございます、やっとの事で更新です。
言い訳を1つ。
ホントは辻ちゃんの謎を書いて更新したかったのですが、
あまりにも更新してなかったので、載せました。これからもがんばります。
関東ではIWGP(再)やってましたが、見ないでください。(もう遅い
これから、似た話が出てきても気にしないでください。(w
- 251 名前:七誌 投稿日:2002年11月28日(木)13時45分26秒
- ここは天国じゃないんだ かと言って地獄でもない
いい奴ばかりじゃないけど 悪い奴ばかりでもない
このGardensはまさにそんな場所かもしれません。
辻さんの行動の真意が人間の最も純粋で単純な気持ちでよかったです。
ちなみにIWGP(再)は残念ながら深夜まで起きて見続けてしまいました。
最後に一言
「モーニング娘。にキングはいらねぇーんだよ!!」
- 252 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年12月03日(火)08時24分14秒
- 「競わせるのよ。
順番をつけて、エリートと落ちこぼれとを分けて、勝者と敗者の違いを教えるの」
これが全てのような気がする
辻はなして0点を取るんだろうか?
そこから子供社会の何かが見えるのかもしれない
>>251
激しく同意
- 253 名前:名無し娘。 投稿日:2002年12月08日(日)11時06分04秒
- まだ1週間ちょいしか経ってないんだと解っているのに
この恋しさは何なのでしょう?
待つ身を長く感じるのは、とても幸せな事なんだよね。
- 254 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年12月16日(月)08時19分49秒
- ほぜん
- 255 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時32分38秒
ビルの間を、流れるようにゆっくりと吹く風が、飯田さんの髪をゆらす。
飯田さんのひざの上では、辻ちゃんが緊張しているかのように、
小さな背中をピンと伸ばしていた。
「飯田さん。辻ちゃんがわざと0点取ってるってどういうことですか?」
あたしは、緊張したように固まった辻ちゃんを、じっと見ている飯田さんに言った。
飯田さんは、そんなあたしを見て、少し楽しそうに頬を上げて笑いながら言う。
「どういうことって、辻ちゃんがわざと0点を取ってる、それだけよ」
「じゃあ、どうして飯田さんは、辻ちゃんが、わざと0点取ってる、なんて分かるんですか」
「ん〜、そうね〜」
飯田さんはそう言いながら、長い人差し指を顎にあてるジェスチャーを見せる。
不思議少女キャラを気取る女性タレントが、テレビの中で作るようなしぐさ。
けれども飯田さんだと、どこか大人っぽい。
- 256 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時34分44秒
「例えば、2択問題100問で100点が取れる人は、0点も取れるってことよ」
うっすらと見えてきた。
辻ちゃんは答えが分かるから、0点が取れるんだ。
でも、肝心なところはやっぱり分からない。
答えが分かるのに、分からないふりをする辻ちゃん。
やっぱりわからない。
あたしは飯田さんに聞く。
「じゃあ、辻ちゃんは100点が取れるんですか?」
「それはちょっとちがうわね。
辻ちゃんは、分かるとこだけわざと間違えてるのよ。
ね、辻ちゃん」
飯田さんは、ひざの上で小さくなってうつむいている辻ちゃんに言う。
けれども、辻ちゃんは黙ったまま。
そんな辻ちゃんに代わって、加護ちゃんがあたし達に向かって叫ぶように言う。
「そんなことない!
ののはわざと0点なんてとってへん!
うちといっしょに勉強して、良い点取るって約束したもん」
加護ちゃんは、梨華ちゃんのひざの上からぴょんと飛び、飯田さんの前に立つ。
- 257 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時36分14秒
そして、飯田さんをにらむように見ながら言う。
「ののは小学校の時から学校行ってないねんで!
小学校の勉強してへんから、点数悪いん当たり前やろ!
それに、あんたはのののこと、なんも知らんやろ!」
目にグッと力をいれ、飯田さんを見る。
まっすぐで、感情のこもった目。
加護ちゃんの目の奥に見える光は揺るぎもしない。
そんな中、飯田さんは上から見下ろすような加護ちゃんの視線に、少しの間目を合せたあと、
後ろから辻ちゃんを、覗き込むように見ながら言う。
「辻ちゃんのお母さんは、お仕事してないでしょ?」
「え?辻のお母さんですか?」
急に聞かれた辻ちゃんが、飯田さんに聞き返す。
2人の目の前にいる加護ちゃんは、唇をかんで、2人のやり取りをじっと見ていた。
「そうだよ。辻ちゃんのお母さん昼間はなにしてるの?」
「辻のお母さんは、仕事してないですよ。
家で、掃除したり、洗濯したりしてます」
「そっかぁ、じゃあ学校行ってなかった時も、一緒だったんだ」
「はい、いっしょでした」
辻ちゃんは、うれしそうに笑いながら飯田さんに返事をした。
- 258 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時39分39秒
飯田さんは、そんな辻ちゃんを見て、ニッコリと笑顔を見せ言う。
「じゃあ、小学校の勉強もずっとお母さんに教えてもらってたんだね」
「はい、ずっとお母さんと一緒に勉強してました」
辻ちゃんはそう言い終わると同時に、ハッとした表情で口を手でふさいだ。
あたしは、辻ちゃんの前にいた加護ちゃんの目から、光が消えるのを見た。
辻ちゃんもそれを見たのか、あわてるように言う。
「あ、ち、ちがいます。辻は勉強なんかしてません」
けれども加護ちゃんは、光のない目で辻ちゃんを見ながら言う。
「…もうええよ」
「ちがいます。辻は」
「もうええゆうてるやろ!」
加護ちゃんの悲鳴にも似た大きな声が、辻ちゃんの声を止めた。
辻ちゃんの体が、加護ちゃんの声に小さくはね、固まる。
叫んだ加護ちゃんは、辻ちゃんをじっと見ながら言う。
「うちかてアホやないよ…。
うちが教えてるときは問題とけるのに、テストで0点なんはおかしい思うてたけど…」
そこまで言って加護ちゃんは、口まで出てきた言葉を噛みしめるように、
グッと力を込め、口を結んでうつむいた。
加護ちゃんがうつむいたのと、涙が落ちたのは、ほとんど同時だった。
- 259 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時40分58秒
加護ちゃんの涙が、公園の敷石に跡をつける。
「…うちはな、ののにウソついたことなんかないよ。
奈良から引っ越してきて初めて出来た友達やし…。
大事な友達やから、信じたいで…。
…でもな…でも…ののがウソついてたんやったら…うち…もうのののこと…」
そこまで言って、加護ちゃんの言葉が止まる。
あたしの横にいる、梨華ちゃんとごっちんも、静かに2人を見ていた。
辻ちゃんが、加護ちゃんに答えるように、今にもあふれそうな涙を、
必死にこらえながら言う。
「あいぼん……ごめん…なさい」
涙に流されかけた小さな辻ちゃんの声。
その声に加護ちゃんは、はじけるように顔を上げ、叫んだ。
「のののアホ!」
大きな声で叫ぶと、加護ちゃんは辻ちゃんに背を向け、
ボーイズ&ガールズでごったがえす公園を、まっぷたつにするような勢いで走り始めた。
- 260 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時41分52秒
次に気がついた時、あたしは走り始めていた。
飯田さんの胸に、よりかかる様に顔をうずめた辻ちゃんを見て、
あたしは、公園の白い地面を勢いよくけっていた。
「吉澤!」
飛び出したあたしに、後ろから飯田さんの声。
振り向くと、辻ちゃんを胸に抱いた飯田さんが言う。
「ごめん。かおりちょっと熱くなってた。
加護ちゃんのこと考えずにやっちゃった。
加護ちゃんにあやまっといて」
飯田さんは、肩を少しすくめて、目を細めた顔の前で、手を合わせていた。
「はい」
あたしは、笑顔でそう言って、まばらな人ごみの中、遠くなっていく加護ちゃんを追いかけた。
このまま2人を放ってなんかおけない。
あたしには、辻ちゃんがなんの意味もなく、ウソをついているとは思えなかったし、
加護ちゃんが辻ちゃんのことを、嫌いになったように思えなかった。
それにさ、みんなだって分かってるでしょ?
あたしは、頼まれごとを断れない性格だってこと。
- 261 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時42分49秒
すれ違うたびに鼻につくような匂いをさせるナンパ師達や、
携帯片手に、甘すぎるフルーツの香りをふりまくナンパ待ちのギャルをかわし、
あたしは加護ちゃんを追って、公園の出口へ向かった。
週末の人ごみから、1人で人を探すのは、プールに落ちたコインを探すより難しい。
公園から出る前に捕まえなければ、加護ちゃんは街の中深くに沈んでしまう。
あたしは消えた小さな背中を追いかけた。
けれども、消えた小さな背中は公園と繁華街を分ける道路の歩道で、
しりもちをついて固まっていた。
ピカピカにみがかれた、ワインレッドカラーのマウンテンバイクに乗った、女刑事ににらまれて。
「急に飛び出すとあぶないでしょ!あたしでなきゃ、はねられてたわよ!」
保田さんの声に、通り過ぎる人達は振り向きながらも足を止めることはない。
公園の周りを、血の匂いを探しながらだらだらと流すガーディアンのメンバーも、
そんなやりとりを、遠くからながめているだけだった。
- 262 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時44分15秒
「あれ?保田さんこんなところでなにしてるんですか?」
あたしは、歩道におしりからぺたりと座り、固まっている、
加護ちゃんに駆け寄りながら、保田さんに言う。
「どうもこうもないわよ。事件で急いでるっていうのに、この子が急に飛び出してきたのよ」
あたしを見ながら言った保田さんの眼が、加護ちゃんの方に動いた。
「この子、吉澤の知り合いなの?」
「ええ、まあ」
「中学生でしょ?
もう学生服でうろつく時間じゃないわよ」
保田さんは、それだけ言うと自転車のべダルに足を乗せた。
あたしは、加護ちゃんのすぐ横で保田さんに言う。
「大きな事件なんですか?」
「変態ヤローが出たのよ」
保田さんは、それだけ言うとマウンテンバイクのペダルを踏み込んだ。
あたしは、スピードに乗って離れていく保田さんに言う。
「保田さーん!車の免許はやく取ったほうがいいですよー!」
保田さんはMT仮免試験を2度落ち、現在AT車でがんばっているらしい。
保田さんのマウンテンバイクが奇声を上げた。
「吉澤!公務執行妨害で逮捕するわよ!」
- 263 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時46分36秒
ラブホテル街へ続く、人通りの多い公園横の歩道を、縫うように走って行く保田さんの背中を見送り、
あたしの隣で、座り込んでうつむいている加護ちゃんを見た。
公園の白い敷石の地面に、紺色のスカートが広がり、きれいな円を作っている。
地面に座り込んだままうつむいている加護ちゃんに言う。
「だいじょうぶ?立てる?」
そう言って、あたしは加護ちゃんの前に手を出す。
加護ちゃんは黙ったまま、イチゴシロップのような目であたしを見た。
そして、加護ちゃんの目の前に出したあたしの手を、払いのけた。
「もうええやろ!キングとは、もう関係ないやん!」
あたしを見たまま、加護ちゃんが叫んだ。
- 264 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時47分59秒
「関係ないわけないじゃん。
こっちは、カッターナイフ向けられて、ごっちんはケガまでしたんだよ」
「あ…それは…」
口ごもりながら、加護ちゃんの顔が下を向く。
あたしは、加護ちゃんの前にしゃがみ、目線を合わせるようにして言う。
「それに、このまま帰っていいの?
辻ちゃん、友達なんでしょ?」
「…友達や思うてたよ…。
でもな…うち、のののこと、なんも知らんかった。
ののがテストで0点なんは、勉強してなかったからや思うてた…けど…」
そう言って、加護ちゃんは少しためらいながら、あたしを見た。
目には、街の光をはねかえす涙。
黒目がちな目は、光を反射してまぶしいくらい。
- 265 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時50分10秒
加護ちゃんは、今にも涙が落ちてきそうな目で言う。
「…うちよりな、ののが座ってた髪の長い人のほうが、ののの事、ずっと知ってた。
うち…ののの友達やのに……何も知らんかった…」
片方の目から涙があふれて、加護ちゃんのスカートに落ちた。
歩道を行き交う人達の中、加護ちゃんはあたしを見たまま涙を落とし始めた。
あたしは、加護ちゃんの頬をつたう涙を見ながら言う。
「友達のことってさ。
なんでも知ってないとダメなのかな?」
「…え?」
加護ちゃんは、少しおどろいた顔で返事をした。
親友にだって、知ってほしくないことや、言えない事があると思う。
あたしだってある。
それに、少なくとも、あたしにとって飯田さんは謎だらけだ。
- 266 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時51分04秒
「せやけど!勉強できないふりして、うそついてたんやで。
うちは…ののにウソついたことないもん!!」
「うん、そうだね。
でもさ、友達って言っても、1日中一緒にいるわけじゃないし。
それに、友達だから言えないことだって、あるんじゃないかな?」
「言えないこと?」
あたし達の周りを急ぐ人達を前に、加護ちゃんは光る目を傾ける。
足音と車の出す音を耳にしながら、話すひととき。
あたしはしゃがむのをやめて、加護ちゃんの横にお尻を下ろし、あぐらをかいて座った。
- 267 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時52分54秒
足音と話し声の流れるアスファルト。
地面から湧き上がってくるような音を耳に、あたしは言う。
「そうだよ。
加護ちゃんが友達だから言えないこと。
例えば、誰かから脅されてるとか、頼まれたとか」
そこまで言うと、加護ちゃんはあたしにつかみかかる様に迫り言う。
「それホンマなん?!
ののは誰かに脅されてんの!」
「だから、例えばの話しだって。
あたしだって、今日初めて辻ちゃんと会ったんだよ。
そこまでは分かんないよ。
でも、辻ちゃんにだって言えない理由とかあったんじゃないかな?」
迫るようにあたしを見る加護ちゃんは、標的を見つけたら今にも飛びかかりそうな勢い。
「加護ちゃんだって、辻ちゃんのこと嫌いになったわけじゃないでしょ?
ホントは、戻りたいんでしょ?」
「でも…ののはうちのこと嫌いなんかもしれん。
ず〜っと、うちにウソついてたし……」
加護ちゃんは、あたしから目を離さずに言うと、目のはしを力なく下げた。
- 268 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時53分54秒
あたしは、おとなしくなった子犬のように、シュンとなった加護ちゃんから目を離し、
あたし達の前を歩いて行く人達を見ながら言う。
「辻ちゃん泣いてたよ。
加護ちゃんをバカにしようと思ってる人が泣くと思う?」
それを聞いて、あたしの方を見ていた加護ちゃんが、うつむいた。
そして、何度もグスッと鼻を鳴らし、加護ちゃんは光る粒をひざに落とし始めた。
「…うち…ののに…酷いことゆった…グスッ…アホってゆうてしもうた…」
そこまで言って、加護ちゃんはあたしの肩に抱き着くように、顔をうずめた。
加護ちゃんが泣き止むまでの数分、あたしは肩の重みが、少し心地よかった。
- 269 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時55分26秒
少し落ち着いた加護ちゃんに、あたしは言う。
「辻ちゃんにちゃんと謝るんだよ」
「…うん。
でも……キングは…ののがうちのこと許してくれると思う?」
加護ちゃんは、あたしの肩から顔を上げる。
少し軽くなった肩はまだ暖かい。
あたしは閉店時間のせまった、デパートの光を見ながら言う。
「友達なんでしょ?
だったら大丈夫だよ」
あたしがそう言うと、加護ちゃんは楽しそうな声で言う。
「グスッ…へへ……キングの…アホ」
「なんでやねん」
あたしはそう言って、加護ちゃんを見る。
笑顔の赤い目と目が合った。
目が合ったあたし達は、2人とも吹き出し、声を上げて笑った。
そして、2人で笑いながら、公園の敷石にひっくり返るようにねっころがり、
明るい夜空を見上げた。
背中からは、夜の空気を含んだ冷たさ。
夜の空には、半分になっても輝く月と、何とか見える一等星。
地面から伝わってくるように聞こえる、加護ちゃんの呼吸のリズム。
隣でねっころがっている加護ちゃんは、まっすぐに夜空を見ていた。
こんなに楽しい夜空を見たのは、初めてかもしれない。
- 270 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)21時57分14秒
この街の地べたに寝転んで、空を見ていたのは、数分かもしれないし、数十秒かもしれない。
いつもより、ずっと下から見た街はいつもと違い、全部が大きくて全部が騒がしく感じた。
アスファルトの隙間や、公園の植え込みの大きく枝を伸ばす木の下で、
自由きままに生きる、雑草になった気分。
下から上を見あげるのも悪くない。
何でもかんでも上が良いのは間違いだ。(たぶん)
あたしは、固い敷石の地面から根っこを剥がすように、ゆっくりと立ち上がり、
まだ寝転んでいる加護ちゃん顔の前に手を出す。
加護ちゃんは、あたしを見て恥ずかしそうに笑いながら、あたしの手を両手でしっかりとつかんだ。
たぶん、あたしができる事は、こうやって手を伸ばして、立ち上がるのを少し手伝うくらい。
立つのは本人の気持ちしだい。
手伝いすぎるのは、良くない事って言うのは分かるけど、少しくらいは良いんじゃないかな?
だって、人って、いつも下から空を見上げている雑草ほど、強くない気がするし。
- 271 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)22時00分19秒
「なぁ、キングってホンマに強いの?」
あたしの横を、ぴったりとくっつくように歩く加護ちゃんが、
あたしの顔を下から覗き込むように見ながら言った。
あたしは言う。
「どうかな?
でも、たぶん強くはないよ、1人じゃ何もできないと思うし」
「ふ〜ん。
ようわからんけど、うちの頭、ポンポンってしてくれた人のほうが強そうやもんな。カッコよかったし」
いたずらな笑顔で、加護ちゃんはそう言って、明るく笑う。
辻ちゃんとは違う、まぶしさのある笑顔。
- 272 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)22時01分42秒
あたしは、加護ちゃんの頭に手を置いて聞く。
「あたしは、かっけーくない?」
「えー、だって、キングなんかへなちょこりんやし、
かっけーとか使うから、アホっぽいもん」
「なんだよ、アホってー」
「アホは関西では、ほめ言葉なんやで」
「じゃあ、へなちょこりんってなんだよー」
そう言って笑いながら、横を歩く加護ちゃんの頭をわしゃわしゃなでる。
込み入った円形広場には、腕を組んで歩くカップルや、ナンパの成功した男女。
カップルばかりの公園を、小さな女子中学生と並んで歩く。
夏に向かってゆるやかに坂を下り始めた季節と、くっつくように腕を組んで歩く人達。
急ごうとしているのは季節だけじゃない、人も夏に向かって色々と忙しいみたい。
夏に向かって、みんなが走り始めた中、あたしの横にいるのは、赤く目を腫らした女の子。
あせる必要なんてないよ…たぶん。
- 273 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)22時02分53秒
急に、となりを歩いていた加護ちゃんの足がゆっくりになり、止まる。
加護ちゃんは、その場にうつむいたまま黙り込んでしまった。
「どうしたの?」
あたしが言うと、加護ちゃんは何も言わずに、黙ったままゆっくりと顔を上げ、前を見た。
あたし達の前を、ゆっくりと通り過ぎる人達の向こうに、飯田さんと辻ちゃん。
そのすぐ側には、しゃがんでいる梨華ちゃん。
横のベンチでは、ごっちんが心配そうに辻ちゃんを見ていた。
あたしは、加護ちゃんの背中を押すように叩く。
「ほら、謝るんでしょ?」
「…うん…でも、のの許してくれるかな?」
「ほめ言葉なんでしょ?」
「え?」
「え?って、アホはほめ言葉なんやろ?
さっき加護がゆうたやろ?」
あたしは使ったことのない関西弁を使って、加護ちゃんに言った。
加護ちゃんの顔がパーッと明るくなる。
「へへへ、あかんな〜キングは。
全然なってないわ。関西弁使うなんて100年早いで」
「そうか〜?うちは、けっこう、いけてるおもうけどな〜」
加護ちゃんと2人、笑顔で辻ちゃんの所へいくための足は、とても軽い。
- 274 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)22時04分22秒
辻ちゃんは、飯田さんのひざの上で、だっこされるようにして座り、
力なく肩を落としてうつむいていた。
飯田さんは、そんな辻ちゃんの頭を優しくなでている。
あたしと加護ちゃんが、飯田さんの前まで行くと、辻ちゃんがあたし達を見た。
けれども、加護ちゃんを見つけると、またすぐに下を向いてしまう。
近くでしゃがんでいた梨華ちゃんが、立ち上がりあたし達に駆け寄る。
「辻ちゃん、さっきから黙っちゃって、何も言ってくれないの」
梨華ちゃんはあたし達に、心配そうな顔でそう言って、加護ちゃんを見た。
あたしは、加護ちゃんの背中を軽く叩いて言う。
「ほら」
加護ちゃんは、一瞬あたしに不安げな顔を見せた。
けれどもすぐに一度だけあたしにうなずいて見せた。
加護ちゃんが辻ちゃんを見ながら言う。
「ごめんな。うち言い過ぎた。…ホンマにごめん」
加護ちゃんの言葉は、短くて簡単だった。
でも、あたしには、加護ちゃんが謝ってるのが伝わったし、なにより加護ちゃんらしいと思った。
- 275 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)22時06分34秒
加護ちゃんが謝って、すぐに辻ちゃんの顔が上がった。
辻ちゃんの目からはもう涙があふれ、頬を流れている。
口は、漏れる嗚咽をこらえようと、奥歯を噛みしめているのが分かった。
辻ちゃんの口がゆっくりと動き、かすれるような声をしぼりだす。
「…ごめんなさい。…うそついてごめんなさい」
それだけ言うと、辻ちゃんは、泣き崩れるのを必死にこらえるように、口元に力を入れた。
辻ちゃんの顔は、今にも涙で崩れそう。
あたしの横でも、梨華ちゃんが涙をためてガマンしていた。
- 276 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)22時07分22秒
- 加護ちゃんは、辻ちゃんの言葉を聞くと、回れ右をして辻ちゃんに背を向けた。
加護ちゃんはあたしのすぐ横で、顔を少し上に向け、辻ちゃんと同じように、
奥歯を噛みしめ、口をとがらせていた。
加護ちゃんは、泣くのを見られたくないみたい。
なんだか、加護ちゃんのホントの姿が見えた気がした。
加護ちゃんは、とがらせた口で言う。
「なんやねん。うちが謝ってるのに、なんでののがあやまんねん」
背中を向けていても、辻ちゃんに聞こえるくらいの大きな声。
あたしは、にやけながら加護ちゃんを肘でつっつく。
加護ちゃんは、あたしを見上げるように見て、あたしがにやついているのに気づくと、
ムッとした顔で、あたしの背中に、平手を力まかせに叩きつけた。
- 277 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)22時08分33秒
バシッ!!
「いってー!!」
乾いた音があたしの体を通り、夜の空へと昇っていった。
加護ちゃんは、あたしが背中を押さえている間に、あたしの横から逃げるように、
辻ちゃんの前に行き言う。
「うちかて秘密くらいあんねん。
せやから…べつに気になんかしてへんよ」
加護ちゃんは、近くにある街灯の明かりを見るように、上を向き、鼻の頭をかきながら言った。
精一杯のてれ隠しが、見ているだけでよく分かった。
加護ちゃんの言葉に、辻ちゃんがゆっくりと立ち上がる。
辻ちゃんの顔は、今にも泣き崩れそう。
立ち上がった辻ちゃんが、ぽつりと言った。
「…もうウソつきません。
だから…だから…友達でもいいですか?」
そう言って辻ちゃんは、手で目を押さえ、ためらうことなく声を上げて、泣き始めた。
急に泣き始めた辻ちゃんに、加護ちゃんが言う。
「なんでそこで泣くねん。うちまだなんもゆうてへんやんか」
「…らって…らって」
手で目を押さえ、涙を拭きながら、辻ちゃんは舌足らずな声で言う。
飯田さんもごっちんも、2人のやりとりをじっと見てるだけ。
ただ、となりで泣いている梨華ちゃんは、小さく声を上げて泣いていた。
- 278 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)22時09分40秒
加護ちゃんは、泣いている辻ちゃんを見て困ったように言う。
それに合わせて、加護ちゃんの顔が、いろんな方向を向く。
「うちは…友達やめたおぼえないで。
せやから…ええんちゃう?」
どこか、遠くを見ながら、加護ちゃんは言う。
辻ちゃんは少しの間のあと、まぬけな声を上げる。
「…ふえ?」
辻ちゃんはそう言って、泣くのをやめ、目を押さえていた手の向こうから加護ちゃんを見る。
「せやから、うちらは友達やろ」
「ウ、グスッ…あいぼ〜ん!」
そう言って辻ちゃんは、加護ちゃんに勢いよく抱きついた。
「ちょっ、のの。いきなり抱きつくと危ないやろ」
「らって、あいぼんが〜」
辻ちゃんは、抱きついた加護ちゃんの肩で、声を上げ泣き始めた。
抱きつかれた加護ちゃんは、少しとまどいながらも、しっかりと辻ちゃんを受け止めていた。
- 279 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)22時10分43秒
「だいたいののがあかんねんで。
うちに黙ってまで、0点なんかとってたんやから」
少し落ちついた辻ちゃんに、加護ちゃんが言った。
辻ちゃんは、そう言った加護ちゃんに、少し強い口調で言い返す。
「グスッ…らって…あいぼんやクラスの友達が、ビリになったのを見るのが、辻は1番嫌れす。
みんなには、笑っててほしいれす。」
辻ちゃんが、泣きながらそう言うと、あたしの周りからは、辻ちゃんの小さな声以外は、
しばらく聞こえてこなかった。
飯田さんもごっちんも、梨華ちゃんだって辻ちゃんの言葉に驚いて、静かになっていた。
あたしだって同じ。
だってさ、どこの世界に、友達やクラスメイトが嫌な思いをしないように、
自分から0点をとる人がいるの?
少なくともあたしは、テストを受ける時、他人のことを考えたことなんて1度もない。
でも、考えてみると、おかしいのは辻ちゃんじゃなくて、
数字を見て、いばったり、妬んだりしている、あたし達の方なのかもしれない。
- 280 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)22時11分47秒
辻ちゃんの泣き声しか聞こえてこなかったあたしの耳に、最初に聞こえたのは、
加護ちゃんの小さな涙声だった。
「なんでや…もっと自分のことだけ考えてたらええやん…。
クラスのやつは…のののことバカにしてんやで」
「…でも、辻は笑顔が好きです」
「…アホ…ののの…アホ…」
小さくて聞き取れないくらいの声で加護ちゃんはそう言い。
辻ちゃんをギュッと抱きしめた。
あたしは、涙で目のまえがぼやけてきた。
- 281 名前:シグナル 投稿日:2002年12月20日(金)22時12分48秒
- 更新終了。
辻加護は来年高校生…この話しでは中学生にすら見えないな。
>>251 七誌様
IWGP(再)やっぱり見ちゃいましたか…。
似てる話についてはスルーしてくださいね。(w
それにしても更新遅いですねこの作者。
>>252 むぁまぁ様
>これが全てのような気がする
作者は分かりません。なので肯定も否定ましません。(ズルイ
でも、私の時は分かる人が分からない人を教えてたんですよね。
これからは、上は上、下は下、になるのかなぁ。
>>253 名無し娘。様
21日と約19時間(適当)たってしまいました。
ごめんなさい。100年の恋も冷めますね。(w
こんなことの無いようこれからがんばります。
言い訳は、この話が終わったあとします。
べつに忙しいわけでも、病気でもありません。
少しは走れ自分。
今年中に終わらせたかったのに・・・。
- 282 名前:七誌 投稿日:2002年12月21日(土)01時48分08秒
- 実は自分池袋在住の人間なのでTVでIWGPがやっていた時は西口公園にアホが増えてむかついていたタチです。
しかし池袋の知っている所などが出てくると嬉しかったり、西口公園に行って窪塚を見た事は内緒です。
あと3回で終わってしまうのは悲しい気もしますが楽しい事には終わりがあるからこそ楽しいんだ!と
心に決めこれからも読ませて頂きます。
- 283 名前:名無し娘。 投稿日:2002年12月21日(土)11時25分39秒
- 恋、未だ冷めやらず(w
「ふたりぼっち編」の結末を静かに見つめましょう。
- 284 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年12月21日(土)12時33分52秒
- こころにぐっとくるな
>分かる人が分からない人を教える
これって普通のことだと思ってました、最近までは
今の世の中って何が普通で何が異常なのかわからないくらい
オレは神経が麻痺しちまったようです
- 285 名前:自称エリートのはしくれ 投稿日:2002年12月31日(火)04時21分41秒
- >>「競わせるのよ。
>>順番をつけて、エリートと落ちこぼれとを分けて、勝者と敗者の違いを教えるの」
国内での競争に勝ち抜きエリートとなった者には、世界中のエリートとの競争が待っている。
資本主義経済が自由競争を基本としている以上、これは避けられない。
だから教育の現場で「競争」を教えることは絶対に必要。
じゃあ具体的にどうすれば良いかというと…
ごめん。俺にも名案はない。
- 286 名前:名無し娘。 投稿日:2002年12月31日(火)17時53分26秒
- 競争して勝ち負けがあって嬉しいとか悔しいとか
それはきっと大事だと思うんだ
だけど勝った人が負けた人を馬鹿にするってのは
それは何だか違うよね
勝ち負けだけがあって、それでも敬意を払い合えたなら
辻ちゃんだって0点取ったりしなかったんじゃないかな?
- 287 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年01月04日(土)07時04分20秒
- シグナルさま
新年明けましておめでとうございます。
昨年中は、かっけ〜よっすぃ〜を楽しませていただきました。
今年もよろしくお願いいたします!
- 288 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月20日(月)19時09分29秒
- あげ
- 289 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時09分26秒
いつもの公園のにぎわい。
いつもの街の光。
いつもの暗い空に、少なめの星の数と月の光。
少しちがうのは、横にいるお団子頭としっぽ頭の女の子。
「後藤さん、M女子高校なんですか?
その制服かわいいですよね〜」
ベンチに座っている梨華ちゃんのひざの上で、ごっちんに質問をしている加護ちゃん。
「飯田さんは、美術大学生さんなんですか?
辻も絵は得意ですよ」
座椅子に座っている飯田さんのひざで、抱っこされるように座っている辻ちゃん。
時々、後ろを振り向くように見て、飯田さんと話をしている。
あたしは、人でぎゅうぎゅうのベンチの端に深く腰をかけ、夜の街に目を走らせていた。
「ひとみちゃん、なにがおかしいの?」
公園の敷石の上を、ゆっくりと流れるように歩く人達を見ていたあたしに、
ベンチの真ん中で、加護ちゃんをひざに乗せている梨華ちゃんが言った。
- 290 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時11分01秒
「へ?あたし笑ってた?」
あたしは、横にいる梨華ちゃんを見る。
笑顔の梨華ちゃんが言う。
「うん。笑ってたよ。なに考えてたの?」
「ん〜、なんかさ、ワクワクしてんだよね。
こうやって人と知り合って行くのってさ、なんだか楽しくない?」
そう言ったあたしに、梨華ちゃんは少し不安そうな顔で聞いてきた。
「私の時も…ワクワクした?」
ひかえめでちいさな声。
でも、どこか強い声。
「梨華ちゃんの時?
あ、うん、そうだね。
したよ…ワクワク」
すごく前のようで、最近のこと。
思い返して思った。
人とのつながりは、たぶん時間なんかじゃない。
梨華ちゃんはあたしの答えに、てれたように笑い、
隠れるように、加護ちゃんとごっちんの話しに加わった。
- 291 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時12分39秒
「で、吉澤はこれからどうするつもりなの?」
梨華ちゃんと話していたあたしに、あたし達より一段下の公園の地面に座る飯田さんが言った。
飯田さんのひざの上から、辻ちゃんもあたしを見上げている。
「どうするって?なにがですか?」
「辻ちゃんのことよ。
まだ何も解決してないじゃない。
辻ちゃんのテストの点数は、まだ0点のままなんだから。
それに、次のテストまで一ヶ月近くあるのよ。
辻ちゃんをこのままにしておくの?」
飯田さんに言われて気がついた。
そうだ、まだ何も解決してなんかいない。
辻ちゃんのテストの平均点は0点のままで、クラスメイトは点数でしか自分達を比べられない。
教室で煽る大人たちの答えは、流れることはなく、クラスメイトの中で今にもあふれそう。
流れたのは、辻ちゃんと加護ちゃん、それに梨華ちゃんの涙と、ごっちんの赤い血。
あたしはまだ何もしていないのかもしれない。
- 292 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時14分19秒
「そんなんかんたんやん。
うちがイエローガーディアンに入ったら、誰もうちらのことバカになんか、
せーへんゆうてるやん」
飯田さんと話していたあたしに、梨華ちゃんのひざの上から加護ちゃんが言った。
あたしは言う。
「それはだめ。さっきからそう言ってるじゃん」
「なんであかんの?べつにええやん!」
「ダメって言ったらダメなの」
梨華ちゃんのひざに乗っている加護ちゃんは、少しあたしを見下ろすように見ている。
とがらせるように出した唇は健康的な濃いピンク色。
あたしも負けじと加護ちゃんを見る。
「何であかんねん!
後藤さんとか、ここにいる人は、みんなチームに入ってんねやろ!」
加護ちゃんは、わめき散らすようにそう言うと、ごっちんの方を見る。
「んあ?ごとー?
ごとーはよっすぃ〜のチームには入ってないよ。
梨華ちゃんやかおりんだって、イエローガーディアンには入ってないよ」
ひざの上においたビニール袋の中で、手を動かしながらごっちんは答えた。
視線は袋の中。
殻の割れる音とごっちんの笑顔。
- 293 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時15分28秒
「えっ!?じゃあ後藤さんはキングのチームとは関係ないんですか?」
「うん。
ごとーも、梨華ちゃんも、かおりんも、チームとはなんの関係もないよ。
よっすぃ〜に入っちゃダメって言われたもん」
ごっちんがそう言うと、加護ちゃんが肩を落とすのがわかった。
けれども、すぐに笑顔であたしを見る。
作られた笑顔。
目には街の光だけがひかっていた。
「じゃあ、うちやののと一緒に、ごとーさん達もチームに入れるってのはどう?
ここにいる人達みんなで入ったらええやん」
加護ちゃんが、そう言い終わるか終わらないかのうちに、あたしは言う。
「だーめ。
さっきから言ってるだろ、チームには絶対にいれないって」
「なんでや!なんであかんの?
うちが子供やから?それとも女やから?!」
さっき作った笑顔が一瞬で壊れ、とたんに怒ったような顔になった。
コロコロ変わる笑顔は、どちらも作られた顔。
あたしはころころと変わる怒った顔に言う。
「両方」
加護ちゃんはまだ子供だし、普通の女の子。
理由はそれで十分だと思う。
ストリートは子供には厳しすぎるし、普通の女の子にとっては危険すぎる。
それに、大きな力は大きな責任を負う。
- 294 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時16分38秒
加護ちゃんは肩を落としグチるように言う。
「キングかて大人ちゃうやん。うちと年そんなに変わらん高校生やし」
「そうだよ、あたしはまだガキだよ。
でも…たぶん子供じゃない」
あたしはそう言って加護ちゃんを見る。
加護ちゃんは少し驚いたような顔。
そんなに驚くことかな?
驚いた顔の加護ちゃんの向こうから、ごっちんが言った。
「加護ちゃんさ〜。
年が上なら大人、って考えがまだ子供なんだよ〜」
ビニール袋の中から、ピスタチオの殻を割る音と満足そうな顔のごっちん。
加護ちゃんは、口をとがらせると、うつむいて黙ってしまう。
ごっちんに言われ元気をなくす加護ちゃん。
あたしは、加護ちゃんをからかう様に言う。
「そうそう、加護ちゃんはまだまだ子供だよ。
大人はこんな所でカッター振り回したりしないよ」
そう言ってあたしは、加護ちゃんの横にいるごっちんのひざにある、ビニール袋に手を伸ばした。
- 295 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時17分31秒
「そうだよ〜、よっすぃ〜の言うとおりだよ。
加護ちゃんは、もうちょっと大人にならないとね〜。
あ!ちょっと、よっすぃ〜何やってんのー、かってにごとーのピスタチオ食べないでよ」
「いいじゃん少しくらい。
それに、これはあたしが買ってきたようなものなんだから」
「だめだよ、これは加護ちゃんがごとーに買ってきてくれたんだから」
加護ちゃんの前を通り、あたしは、手をごっちんのひざに置かれたビニール袋の中に入れる。
「よっすぃ〜!ダメだって言ってるでしょ!」
「すこしくらい、いーじゃんか」
「ぜったいにダメ!」
ごっちんの手があたしの手首をつかむ。
骨がきしむ音が聞こえるかと思うくらいの力。
そして、あたしの手が、袋の中からはじかれるように引っ張り出された勢いで、
ビニール袋が、ごっちんのひざの上から滑り落ちた。
公園の敷石に広がる、たくさんのピスタチオの殻と、かるく跳ねる硬い音。
- 296 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時18分24秒
公園の白い地面に広がった、たくさんのピスタチオの殻。
それを見たごっちんは、ベンチから立ち上がり、あたしをにらみながら言う。
「もー、全部落ちちゃったじゃない!
よっすぃ〜べんしょうだからね!」
あたしもベンチから立ち上がり言う。
「ごっちんが、ちゃんと持ってないからいけないんでしょ。
あたしのせいにしないでよ!」
「どうしてよっすぃ〜が怒るの!?
もー!よっすぃ〜のバカー!」
「なんだとー!」
「なによー!」
加護ちゃんと梨華ちゃんの上で、あたしとごっちんの顔が近づく。
ごっちんは両手を腰に当て、頬を少し膨らますようにして、あたしをにらんでいる。
あたしも負けじとにらみ返す。
そうやって、にらみ合いをしている、あたしとごっちんの下から、
加護ちゃんのつぶやくような声がした。
「子供はどっちや」
- 297 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時19分39秒
「「なんか言った?」」
あたしとごっちんの声が重なり、2人で加護ちゃんをにらみつける。
「い、いえ…なにも」
あたしとごっちんにおどろいた加護ちゃんは、そう言って梨華ちゃんのひざの上で、
ぴんと背を伸ばし、凍ったように固まった。
そのうしろで、梨華ちゃんが少し怒ったように言う。
「もう、加護ちゃんおどろいちゃったよ。
2人とも、子供みたいだからやめようよ」
「だってー、よっすぃ〜がごとーのピスタチオかってに食べようとしたんだよ。
悪いのはよっすぃ〜だもん」
「ごっちんが1人で全部食べようとしたのが悪いんでしょ。
あたしのせいにしないでよ」
言い合うあたしとごっちん。
梨華ちゃんの顔は、あたしとごっちんを行ったりきたり。
眉はとうぜんハの字になっている。
にらみ合うあたしとごっちん、その間でおろおろとしている梨華ちゃん。
加護ちゃんは、まだ固まったまま。
- 298 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時20分18秒
そんな中、飯田さんがあたし達に聞こえるくらいな大きな声で、辻ちゃんに言う。
「辻ちゃんは、あんな高校生になっちゃだめだからねー。
なるんだったら、石川みたいな高校生になるんだよ」
「はい。辻はもっと大人の女子こーせーになります。
食べ物でケンカするのは子供だと思います」
「そうだよねー。
辻ちゃんは、吉澤や後藤みたいな高校生になっちゃだめだよー」
そう言うと、飯田さんの目が細くなり、あたしとごっちんをとらえる。
背中をゆっくりと這う冷気。
飯田さんの目は氷でできた刃のように鋭く冷たい。
あたしはごっちんに言う。
「いやーごっちんごめんねー、ピスタチオ落としちゃって」
「ん〜ん、全然いいよ〜。あげなかったごとーも悪いんだしさ〜」
「「あは、あは、あははははは」」
あたしとごっちんは、笑いながらベンチへと身を沈めた。
飯田さん怖すぎ。
- 299 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時21分48秒
「うちら、もう帰るわ」
あたし達が、ベンチに座るのにあわせたように加護ちゃんが言う。
ゆっくりと、梨華ちゃんのひざの上から降り立つように、
加護ちゃんは公園の大地に足を落とす。
それと同時に梨華ちゃんが言う。
梨華ちゃんの言葉は少し熱を持っていた。
「加護ちゃんはそれでいいの?」
「え?」
「何も解決してないよ。
それでいいの?」
キョトンとした顔で聞いていた加護ちゃんは、少し怒ったように言う。
「良くなんかない!
うちら、学校ではずっと2人なんや!
そんなん!…そんなん…ずっと2人ぼっちなんて…嫌や…」
最後のほうは、消えそうなほどに小さい。
あたしの中で何かが心臓の鼓動を早めた。
高鳴る心臓の音といっしょに梨華ちゃんの声がする。
「じゃあ、だめだよ!ここで帰っちゃだめ」
「せやけど…」
そう言って加護ちゃんはあたしを見る。
深く暗い海に浮かぶ月のように光る目。
このまま、この街のジャングルにほうっておくことは出来なかった。
- 300 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時23分04秒
飯田さんのひざの上から、辻ちゃんはあたしを見上げていた。
あたしは辻ちゃんに言う。
「辻ちゃんは?辻ちゃんもやっぱり嫌?」
「ふぇ?辻ですか?辻は…」
そう言うと、辻ちゃんはあたしから目をはずし、広場の噴水を見る。
行き交う人など気にもしない強い視線。
辻ちゃんの目の奥には揺るぎない光。
「辻は…辻は平気です。少しくらいバカにされても平気です」
辻ちゃんはハキハキとした口調でそう言って、広場の真ん中にある噴水に、視線を送ったまま、
口を強く結んだ。
視線の先には、吹き上がる水と、笑いっぱなしのボーイズ&ガールズ。
あたしは辻ちゃんを見ながら言った。
「辻ちゃんは平気なの?」
そう聞いたあたしに、辻ちゃんはあのゆるぎない笑顔をあたしに向け答えた。
「はい、平気です、あいぼんがいるから…2人だから、きっと平気です」
光る目と、熱をもった言葉。
辻ちゃんの笑顔は、あたしの中に火をつけた。
- 301 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時23分42秒
誰に怒ってるいかなんてわからない。
汚れを知らない笑顔を笑うクラスメイト。
点数でクラスを分ける大人達。
成績で人格を決める社会。
全部そうかもしれないし、全部違うかもしれない。
もしかしたら、社会から外れてしまいそうな女子高生の、ひがみなのかもしれない。
どうせあたしは、ごっちんや梨華ちゃんの学校の授業には、ついて行けない。
- 302 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時24分34秒
「わかった。
加護ちゃん、ガーディアンに入っても良いよ」
あたしは、ベンチから立ち上がり自分の左腕にまいてあった黄色いバンダナを手に取った。
「え!ほんまに!」
梨華ちゃんの前で、加護ちゃんはあたしを見上げる。
「でも、正式なメンバーじゃないからね」
「え?どうゆうこと?」
横で加護ちゃんは首をかしげてあたしを見る。
頭のお団子についた、ピンクのプラスチックの玉がカチリと音をだした。
「一週間後。来週の金曜日に、ここに来てよ。
その時に、ガーディアンに入りたいかどうか聞くから。
それまで加護ちゃんは(仮)のメンバーだからね」
「えー、(仮)ってかっこ悪いなぁ。
そんなん待たんでも、答えいっしょやで、うちガーディアンに入りたいもん」
「だめ。
来週の金曜に聞くから、それまでしっかり考えるんだぞ」
そう言ってあたしは、手に取った黄色いバンダナを、加護ちゃんに渡した。
- 303 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時26分05秒
「へへへ、ありがとう、キング」
そう言って加護ちゃんは、いたずらな笑顔を見せる。
「でも、これ見せただけで、うちのクラスの人ガーディアン入ったって分かるかな?」
「あーそっか…じゃあ、来週の月曜日、学校にあたしが迎えに行く、それでいいでしょ?」
「ほんまに!
みんなびっくりする顔が、目に浮かぶなぁ、うひひひ」
加護ちゃんはにんまり笑いながら、あたしの渡したバンダナを見ていた。
あたしは加護ちゃんに言う。
「じゃあ、はやく帰りな、九時すぎちゃうよ」
「うん、わかった。のの行こ」
加護ちゃんはそう言って飯田さんといる辻ちゃんを見る。
「あ、うん」
辻ちゃんは、加護ちゃんに返事をすると、飯田さんを振り返り言う。
「あの、飯田さん、えーと」
「ん?どうしたの辻ちゃん?」
「あ、なんでもないです。えと、お菓子美味しかったです」
辻ちゃんは言葉に詰まりながらそう言って、飯田さんのひざからゆっくり立ち上がった。
- 304 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時27分09秒
「じゃあ、後藤さんまた来ますね」
「んあ。またね加護ちゃん」
ごっちんは、そう言いながら笑顔で加護ちゃんに手を振る。
そんなごっちんに、加護ちゃんも笑顔で手を振りかえしている。
加護ちゃんはごっちんのことが気にいったみたい。
ふいに、加護ちゃんがあたしを見る。
黒目がちな目は、黒い大きな月の浮かぶ白く狭い空。
「キングも…ありがとうな」
加護ちゃんはそう言うと、恥ずかしそうに下を向く。
少し赤くなった頬と、地面を泳ぐ視線。
「加護ちゃん、もしかして照れてる?」
「え、ち、ちがうわ!
照れてなんかない!ちょっと熱がでただけや!」
加護ちゃんは顔をさらに赤くして、辻ちゃんの手をとる。
「いこ!のの」
「え、え、あいぼんゆっくり歩いてよ〜」
先に歩きはじめた加護ちゃんに、引っ張られるように辻ちゃんがついて行く。
辻ちゃんは、加護ちゃんに引っ張られながらも振り返り、あたし達に笑顔を見せた。
「ありがとうございます」
少し張り切った辻ちゃんの声。
あたし達は手を振って2人の背中を見送った。
- 305 名前:シグナル 投稿日:2003年01月28日(火)05時46分13秒
- 何事もなかったごとくさらっと更新終了。
>>282 七誌様
おお、ブクロ在住かっけー!
今度東京行くので、IWGPに行ってやる。
とりあえずごめんなさい。
>>283 名無し娘。様
冷めましたよね?(w
こうやって数少ない読者を失くしていくんだなぁ。
ホントごめんなさい。
>>284 むぁまぁ様
現実に、成績でのクラス分け、やるみたいなようです。
なんだか大変な世の中ですよね。
そしてごめんなさい。
>>285 自称エリートのはしくれ様
完全な答えなんて無いですよきっと。
でも、自分なりの答えは出してみるつもりです。
ごめんなさい。
>>286 名無し娘。様
作者もそう思います。
でも子供って、そういうのわかんない時期ありますよね。
ごめんなさいませ。
>>287 ななしのよっすぃ〜様
あけましておめでとうございます。
今年もなにとぞよろしくお願いします。
あけましてごめんなさい。
>>288 名無し読者様
ありがとうございます。
そのうえごめんなさい。
- 306 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月28日(火)13時50分39秒
- 連載当時からひそかにコソーリコソーリROMってますた。作者さんの爽やかな世界観が
めっさ好きです。これって他の作家さんにはないかっけーカラーだと思います。
マターリ常に待っているので、頑張ってください。でわ、またコソーリを再開します。
- 307 名前:七誌 投稿日:2003年01月28日(火)14時53分53秒
- >社会から外れてしまいそうな女子高生の、ひがみなのかもしれない。
この言葉が一番自分が見えている証拠だと思います。
自分の足場も見ずに周りの景色の変化ばかりを気にする人がいるのは少し危険な事だと思います。
大地に足をつけなきゃ進む事も出来ないし戻る事も出来ない、そんな簡単ができる人は今は少ないのかも知れません。
自分だって本当に此処に居るという自身が有る訳ではありません。
簡単な事を簡単にやってしまう吉澤さんは素晴らしい。
- 308 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年01月29日(水)12時56分56秒
- 生けとし生けるもの全てに優劣なぞありはしない
そういう価値判断を下しているのは人間だけ
其の人間の価値判断は晩年若しくは死後に行われるものであって10代に行うべきではない
思春期は人生でも生きる過程のほんの序曲だから
と偉そうに書いてしまいましたがこの作品は普段考えないことを思い起こさせてくれる
貴重なものです
吉澤の今後の活躍に今年も期待する所存でございます。
- 309 名前:名無し娘。 投稿日:2003年01月29日(水)23時30分46秒
- 人の想いはビックリ箱のように簡単に出たり入ったりはしない。
(陸奥A子)
ちゃんと毎日更新をチェックしてましたよ(w
展開が難しいとこですが、わくわくしながら待ってます。
- 310 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月30日(木)02時17分50秒
- 更新、お疲れ様です。
ホントにこの小説は素敵ですね。
外見的なものでなく、登場人物の内面自体がとても「カッコ良い」です。
うまく言えないのですが・・
社会がどんなに荒廃して、物質的な支配が進んだとしても、キングみたいな
人間がいてくれれば、まだまだ捨てたもんじゃないかなって勝手に思ってます。
次回更新、期待してます。
- 311 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年02月01日(土)17時07分52秒
- シグナルさま
更新、お疲れさまです。
テストのできよりも大切なことはたくさんあると思います。
ここに登場するよっすぃ〜・ごっちん・梨華ちゃんたちは分かっていそうです。
ちょっとぐらい馬鹿なことしても、かっけ〜よっすぃ〜でいて欲しいです。(笑)
では、次の更新も楽しみに待ってます!!
- 312 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時32分25秒
さわがしい人の声。
けど、街の人ごみとは違って、笑い声や楽しく話す人達の声ばっか。
昨日のドラマの話しとか、どうでもいいゲームの話し。
六時間目が終わった教室は、笑顔とおしゃべりしかない。
窓から見える空は、梅雨の雨上がりの灰色。
今のうちも、そんな空とおんなじで重かった。
- 313 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時33分18秒
廊下と隣り合わせに座ってるうちの席からは、教室全体がよく見えんねん。
せやから見たないもんまでよう見える。
ほらな、また男2人してののをいつもみたいにバカにして…。
おまえらも頭悪いやろ!
「おい辻。おれら今日塾があるから、そうじ当番代わってくれよ」
「どうせ辻は塾なんか行かないんだろ?」
へらへら笑いながら、2人の男子はののを見下ろしてる。
教室の真ん中にあるののの席は、1番目立つのにだーれも、なーんも言わん。
ふつう誰か注意するやろ、世話好きの女子が、男子に向かって、
辻さんがかわいそうや、とか掃除さぼるな、とか。
それやのに教室の中はさっきとなーんも変わらん。
楽しそうな話し声は見向きもしてない。
うちは、スカートのポケットの中に手を入れて、中にある黄色いバンダナを、ギュッとにぎった。
そして、イスから立ち上がって、ののと2人の男子がいるとこへ、机を避けながら向かった。
- 314 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時34分28秒
ののは特におどろいた顔もせずに机の前にいる2人をほえ〜っとした顔で、見上げてる。
うちが近づくと、男子の1人が気づいて、じゃまくさそうに顔をしかめた。
「なんだよ。加護には関係ないだろ。
おれらは辻に言ってるんだから」
うちが言う前に、男子はうちをにらむようにして言った。
うちはスカートのポケットの中に入れた手に力をこめて言う。
「うちの友達やもん、関係あんねん」
うちも男子に負けないくらい、にらみつける。
今日は、もっとゆったんねん。
うちには、これがあんねやから。
「どうせあんたらも、塾なんかいかんねやろ。
いっつもそうじをののに押し付けて、そうじくらいやって帰れ!」
「なんだとぉ」
「なんや!」
少し声を大きくして、うちは言い返した。
けど、男子はすぐに、へらへらした笑いでうちとののを見ながら言う。
「おれ達は、辻のせいで他のクラスからバカにされているんだよ。
辻がクラスの平均点下げてんだから、これくらいしてもらってもいいだろ?」
めっちゃはらたつ。
ののがどんな思いで0点とってるかしらんやろ、このうすらボケが。
- 315 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時35分48秒
「あの〜」
へらへら笑う男子と、それをにらむうちの横で、ののがひかえめに声をあげた。
でも、おびえてるようでもなく、いつもみたいにポーっとした顔で、うちらを見上げてた。
「あのぅ、言ってもいいですか?」
ののの前にいるうちと男子の顔を交互に見ながらののは言った。
そや、ののも2人に言ったれ。
ののは何にも言わんうちらに言う。
「えと、辻は1人なので、1人分の掃除しかできません」
「そうや、ののは1人しかおらんねん、1人分のそうじしかできへんねん、ってなんでやねん」
うちは、ののの机を叩いて、男子に向けてた視線をののに向けた。
「ちゃうやろ!1人分とかそんなん関係ないねん」
うちが言うと、ののは、うちが叩いた机の音におどろいたのか、
目を少し大きくしてうちを見てた。
「なにやってんのこいつら?」
「バカじゃねーの、行こうぜ」
男子2人は、うちがののと話してるすきに、腹たつ言葉と、へらへらした態度を残して、
騒がしい教室にある、いくつかのグループに、溶けてくみたいにまざっていった。
- 316 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時37分36秒
うちはのののボケにのっただけや、それをバカじゃねーの、でかたずけやがって。
うちはそう思いながら、教室をぐるっと見回す。
6人くらいのグループは、窓際に集まってドラマの話し。
ののの後ろでは、女子のグループが次の休みの買い物の話をしてた。
なんや、うちらは無視か!
「ごめんねあいぼん。
そうじしなくちゃいけなくなっちゃった」
教室を見回してたうちに、ののが言った。
ののは、机の上に置いた学生カバンに、教科書を詰めてた。
特に何事もなかったようにいつものように帰るしたくしてる。
「そんなん別にやらんでもええやん。
男子がかってにゆったんやから」
「だめだよ、2人が掃除しないと教室が汚れちゃうもん」
「はぁ?ずるしてんのは男子2人やん。
ののがやることないねん、それにキングが迎えに来てくれるんやで」
「だめ。辻は掃除して帰ります。
あいぼんは先にキングさんと帰っててよ」
ののは、さらっとそう言ってうちにニコッて笑いかけた。
- 317 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時38分48秒
「はぁ?なんでののがそうじ当番でもないのにそうじすんねん。
そんなんほっといたらええのに」
ため息をつきながら、うちがポツリと言うと、ののは机の上にある学生カバンを閉じながら言う。
「お母さんが言ってたんだもん。
誰かがさぼると、それを他の人がしないといけなくなるって。
だから辻がするの」
わからん。なんでののがやんねん。
自分から損するほうばっかり進んで行って。
うちはさっきよりも深いため息をついて言う。
「わかった。キングに待ってもらうように頼んでみるわ」
「え?いいの?」
「ののが一緒やないと意味ないやろ」
うちがそういい終わるのを待ってたように、教室のドアが開いて先生が入ってきた。
- 318 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時40分23秒
「早く席につけ。ホームルーム始めるぞ!」
男の先生の低い声にクラスの人達は、石投げて驚いた魚みたいに、いっせいに散っていく。
うちも、ののの机から、乱雑に並んでる机をかわして、自分の席に戻り、
音がするくらい乱暴にイスに座った。
あ〜あ、どうしよ。
キングになんてゆったらええやろ。
掃除してるから待ってて、なんて言えへんしなぁ。
…でもまぁええか、キングってけっこう優しそうやし、
ヘンな関西弁使うへなちょこりんやしな。ウヒヒ。
「加護!」
急な先生の大声。
「は、はい」
うちは、あわてて立ち上がって返事した。
そんなうちに先生は言う。
「なにニヤケてる。話し聞いてるか?」
先生の怒った声と、その後に聞こえるクラスの人の小さな笑い声。
教室の真ん中あたりでは、ののがニーって口を横いっぱいに広げて、うちを見てた。
なんかはらたつわー。
- 319 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時42分35秒
「来月になれば、すぐに夏休みだが、受験のあるお前たちには休みなんてないと思え」
長々と続く先生の話を左から右に聞き流して、先生から見えへんように、
スカートのポケットからキングからもらったバンダナを取り出した。
ハンカチみたいに、たたんである黄色いバンダナ。
昨日、おばあちゃんにゆって、アイロンかけてもうたんや。
へへ、なんかええわ。うちもキングの仲間なんや。
せやけどキング、うちらを迎えに来るってゆうてたけど、キングが来ても、
みんなはキングのこと知らんし、どうするんやろ。
キングが来ても、だれもキングのこと知らんかったら意味ないしな。
うちがそう思いながらひざの上に置いた黄色いバンダナ見てたら、
急に教室がざわつき始めた。
顔を上げて教室を見回してみると、窓際の人達が開いている窓から、
覗き込むように外を見て、前の席の人となんか話してる。
窓から見えるんは、グラウンドと、その先にある学校の正門くらい。
なんかあったんかな?
「おいそこ!静かにしろ!」
先生が、騒がしくなった教室をいかくするように声を上げた。
けど、教室はぜんぜん静かになることはない。
逆に騒がしくなった。
- 320 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時43分40秒
ついに先生は、窓際はへ歩きながらいつもの大声で吠えた。
「おまえらいいかげんに…」
けどそれも途中で止まり、そのまま教室の入り口へ走っていく。
「みんなは教室から出るな」
先生はそれだけゆうと、教室から出て行った。
先生が出て行ったのを合図にして、クラスのみんながいっせいに窓際へ移動する。
上履きの音とみんなの話し声。
机に残ってんのは、うちとののだけ。
ののもうちと同じように、クラスの人でいっぱいになった窓のほうを見てる。
なんかあんのかな?
うちがそう思ってイスから立ち上がったとき、窓際にいる誰かが、興奮したように言った。
「あれってイエローガーディアンじゃねーの?」
ようわからんけど、それ聞いたら体の奥から熱くなってきて、いつの間にか窓のほうへ走ってた。
- 321 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時45分02秒
クラスの人をかき分けるようにして、アルミでできた銀色の窓枠に、手をついて外を見た。
外にはうすい赤茶色の狭いグラウンド。
けどそのグラウンドの半分から向こうは、黒や灰色の服着た人達がいつもの景色の色を黒に変えてた。
でも、そんな黒い地面の中に、チームカラーの黄色いバンダナが、ぽつぽつと目立ってた。
それにしても人いっぱいおるなぁ。
100人じゃたりへん。
200人くらいはおる。
「おいなんだよこれ、誰かガーディアンにケンカ売ったのか?」
「襲撃とかシャレになんないよ」
うちがその光景をボーっと見てたら、周りから怖がってる声が聞こえてきた。
そりゃ怖いわな、この街で1番のカラーギャングが中学校に突然きたんやから。
うちかてびっくりしたもん。
窓から出した顔で横を見ると、隣の教室の人達も騒いでる。
うちは、外を見るのをやめて、教室の真ん中で座ってるののを見る。
「のの!キングがきてくれたで!」
うちはそうゆって、ほとんどの人が窓際へと移動した教室の真ん中で、
まだ自分の席に座ってるののに手招きをした。
- 322 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時46分09秒
「うわ〜」
クラスのみんなが驚きや怖さを口々にゆってるのに、ののは喜んでいるような驚きの声を上げた。
「あいぼん、すごいね〜。お花が咲いてるみたいだよ〜」
うちの横で、ののが言ってうちも思った。
校庭のグラウンドには、黒やグレイの服装の人達の地面。
そこにガーディアンのチームカラーの黄色が、まばらに力強く咲いてた。
うん、小さいけど元気に咲いてる花みたいや。
「ほんまや。タンポポみたいやなぁ」
「うん。タンポポだね」
先生が教室出てって、大きくなる一方のクラスの人たちの声の中、
うちはグラウンドにいる人達の中からあの人を見つけた。
黒いダボダボのジーパンに、少しおっきめの黒い服、頭にある黄色のサンバイザーと、
腕にまいた黄色のバンダナは黒い地面の中でよく目立ってた。
- 323 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時47分11秒
うちは、体を窓から思いっきり出して、手を振りながら叫んだ。
「おーい!キングー!!」
うちの声は、外を吹いてる少し重い風に乗って、どこまでも飛んで行く。
前髪を揺らす風がなんか気持ちよかった。
そんなうちの大きな声に、さっきまで騒がしかったぎゅうぎゅうづめの窓際が、
きゅうに静かになった。
横を見ると、隣にいる教室の人達も、うちを見てる。
うちが、急に静かになった周りを見回してると、誰かがうちの肩をつかんだ。
窓から出してた体を、教室の中に引き戻すように引っ張る強い力と、男子の声。
「バカ!なにやってんだ!
お前だれに手を振っているのか、分かってるのか?」
うちの肩をつかんでたんは、ののに掃除をおしつけてた男子やった。
でもその顔は、ののに言ってた時の、へらへらしたよゆうはない。
なんか本気で言ってるみたいやった。
- 324 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時48分30秒
うちは、肩をつかんでる男子の手を、払いのけながら言う。
「知ってるよ、イエローガーディアンのヘッドやろ。
うちキングとは友達やもん」
うちがそう言うと、周りが少しざわついた。
でも、すぐにうちの前で、ののをバカにしてた男子が、へらへらした顔で言う。
「キングと友達?
バカじゃねーの、そんなうそだれが信じるんだよ」
男子がそう言ったあとに続く、クラスのみんなの笑い声。
笑ってないのは、うちとののくらい。
なんやねん、めっちゃはらたつ。
でも、うちにはこれがあんねん。
うちはポケットから黄色いバンダナを出して言う。
「うち、ガーディアンのメンバーやで。
これキングからもらったし」
そう言って、うちはバンダナをみんなに見えるように、頭の上でひらひらさせた。
消える笑い声。
うちらを囲んでたクラスの人達が、離れるように一歩だけあとずさりした。
それとほとんど同時に、うちのポケットで携帯電話が震えた。
- 325 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時49分10秒
携帯電話には見たことのない番号。
「もしもし?」
おそるおそるでたうちの耳に、聞いたことのある声がした。
でも、金曜日とはぜんぜん違う。
ずっと静かで冷たい声。
『誰だかわかるよね?』
ゾクっとするような低い声。
「あ、うん、キングやろ」
『むかえに来たよ。辻ちゃんと一緒に降りてきなよ』
「うん、すぐ行くな」
うちがそうゆうと、電話は一方的に切れた。
なんか、金曜日とはぜんぜん違う人と話してるみたいやった。
キングって、ほんまは怖い人なんかな?
- 326 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時50分09秒
「のの、キングが迎えに来てくれたから帰ろ」
クラスの人達が、うちを見て固まってる中、ののだけは校庭に広がる光景を窓から見てた。
ののはうちを見てゆう。
「うん、あ!でもそうじ当番」
「そんなんほっといたらええやん」
「でも〜、辻がしないと他の人が…」
ののは、こんな時でもそうじ当番のこと気にしてる。
ののは、へんな所きっちりしてるからなぁ。
でも、そこがのののええところなんやけど。
せやけどなぁ、キング来てくれてるし…。
そっかキングきたんやし、ちょっと脅したら男子も言うこと聞くやろ。うひひ。
うちは、ののにそうじをおしつけた男子2人をにらんで言う。
「うちとのの、帰らなあかんねん。
せやからそうじは、あんたらがやっといてや」
うちの声に、男子2人は顔を縦に何度も振った。
うひひ、やっぱりキングはすごいなぁ。
- 327 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時50分46秒
「のの行こう!」
「うん」
うちとののはそうゆって、迷路みたいにぐちゃぐちゃになってる机をよけながら、
机においてたカバンを取って教室を出た。
だれもいない廊下を、うちとののは走る。
他の教室もうちらの教室と同じように、みんな窓の所で、校庭を見てた。
階段を2段飛ばしで降りて、1階の廊下も全力で走った。
教室やポスターがどんどん流れていく。
いつもよりずっと速く走れてる気がした。
- 328 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時51分58秒
玄関のコンクリート地面を蹴って、校庭に飛び出す。
「キングー!」
うちは、大声でキングを呼びながら、走った。
やっぱりどっかふわふわした感覚で、足が浮いてるみたいに早く走れる。
キングとの距離は、どんどん近づいていった。
キングのすぐ後ろには、2人のおっきなひとが、張り付くようにぴったりくっついてた。
うちがすっぽり入りそうな、黒いダボダボのズボン。
長いコートみたいな服は、膝の所まである。
うちとののが、肩車してぴったりな長さ。
サングラスしてるけど、視線はうちに向いてるのはよくわかった。
うちは、2人の壁を見ずに、肩で息をしながら言う。
「ありがとうキング。
うちが、ガーディアン入ったってゆったら、クラスの人びっくりしてた」
うちがそう言うと、キングは表情を崩さずに言う。
「そっか。辻ちゃんは大丈夫そう?」
「あ、うん、もう平気。
のののことバカにしてた男子なんか、びっくりしてなんも言えへんかったで」
「そっか。じゃあ、帰ろうか」
キングの声は短くて、さっきと同じで表情を変えへんかった。
こないだとは全然ちがう静かで重い声。
チームの人の前やから、かっこつけてんのかな?
- 329 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)04時53分29秒
「キング、なんか今日かっこつけすぎやで」
うちがキングにそう言うと、キングはやっと笑顔を見せた。
でも、小さくて、ちょっとしかない笑顔やった。
そんなうちに、キングの周りにいる人達から、鋭い視線が飛んできた。
ふるえるヒマもなく固まったうちにキングは言う。
「じゃあ、あたしは帰るから、2人も早く帰るんだよ」
そう言って、キングはさっさとうちらに背を向けた。
え?うそやろ?帰るってどういうこと?
うちがそんなこと考えてる間にも、キングはどんどん遠くなっていく。
うちは、ほとんど見えなくなったキングの背中に向かって叫んだ。
「キングー!」
振り返るガーディアンの人達。
けど、キングから返事はなかった。
残ってんのは、ゆっくり歩きながら、冷たい視線を向けるメンバーの人達と、
うちの後ろで、おびえてるののだけ。
「ねぇあいぼん、今日のキングさん、少し怖かったね」
ののがうちの後ろで、帰っていくメンバーの人達を見ながらゆった。
「うん」
うちは、それしか言えんかった。
なんかちがう…今日のキング…なんか……へん。
- 330 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)05時16分26秒
- 更新終了、書きたいことは書けた。
>>306 名無し読者様
コソーリ読んでいただきありがとうございます。
これからもコソーリでいいので、お付き合いよろしくお願いします。
>>307 七誌様
なんだかすばらしいお言葉ありがとうございます。
この娘。(0^〜^)も喜んでると思います。
>>308 むぁまぁ様
吉澤さんの活躍は…次は活躍させます。
期待薄でお待ちください。(w
>>309 名無し娘。様
うれしです。毎日チェックだなんて…。(涙
こんな展開でしたがどうでしょうか?私にもっと情景描写の力があれば…。
- 331 名前:シグナル 投稿日:2003年02月13日(木)05時17分16秒
- >>310 名無し読者様
ありがとうございます。
かっけーよっすぃ〜書けてるか不安だったのでうれしいです。
>>311 ななしのよっすぃ〜様
ちょっとくらい、おバカでもよっすぃ〜はいいんです。
(0`〜´)<バカって言うなYO!
え〜と、まず、発案者の方ごめんなさい。
そして、あの祭りを成功へと導いた桃板の管理人さんと板住人の皆さん、ごめんなさい。
こんなやつが、ネタとして使ってしまいました。
横アリDVD見てたら使いたくなったので使っちゃいました。ごめんなさい。
次回で終了ですので、なるべく早くうpしたいと思います。
- 332 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月13日(木)09時44分10秒
- 最高によっすぃーがかっこよくて素敵です(^^)
横アリの祭りも書かれてて。
辻ちゃんが救われるといいな。
- 333 名前:七誌 投稿日:2003年02月13日(木)14時30分42秒
- う〜む、鳥肌が立った。
- 334 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年02月15日(土)08時31分04秒
- すげー クールでかっけー
- 335 名前:名無し娘。 投稿日:2003年02月16日(日)01時47分04秒
- いよいよ『ふたりぼっち』は佳境を迎えるのでしょうか。
辻の強さには憬れるけども、加護みたいに考えるのが普通かも。
そんな訳で、吉澤には漢を見せてもらいたいものです。
- 336 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年02月18日(火)20時32分13秒
- シグナルさま、更新お疲れさまです。
いつも楽しく拝見しています。
>>(0`〜´)<バカって言うなYO!
ごめんね、よっすぃ〜。可愛いけど、かっけ〜けど、クールで強暴だけど、でもアフォなよっすぃ〜がいいんだYO
!!
梨華ちゃんはかっけ〜よっすぃ〜にメロメロ(死語)だと思うけど...。
ちょっと雰囲気の違うよっすぃ〜。カラーギャングの本領発揮でしょうか?
続きも楽しみに期待して待ってます!!!
- 337 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月19日(水)10時53分04秒
- 一気に読んでしまいました。おもしろい!!なんかハマってしまいました(^O^)
続き待ってまぁ〜す☆
- 338 名前:EAGLE@(0^〜^) Ъ ビシィッ! 投稿日:2003年02月25日(火)03時01分25秒
- 読んだっす!!
やっぱ兄貴はすげー。いつものように続きが気になる。
団子頭と尻尾頭がどうなるか、だなぁ…
ポッキー食いながら待ってようかなw
それと、
兄貴、すんません。
受験は終わってたんすけど…
今日、じっくり腰を据えて読もうと思って空板の方を1話書き上げてから読み始めたら…
こんな時間だ。笑えない(汗
最後に、
何げにセリフに声入れやったら「ののの」の部分が言いにくそ、って思ったオイラはやっぱりアホですかね?w
- 339 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月28日(金)23時26分19秒
- うおおっ!よっす漢だなぁ…
なんかここのよっすに男(違)惚れしてしまいそうですw
- 340 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時31分33秒
約束の金曜日は、梅雨のじっとりと降る雨を吹き飛ばすような晴天だった。
昨日まで降っていた雨も上がって、するどいひざしを、
ビルのガラス窓に乱反射させている。
まとわりつくように重い空気と、真夏なみの気温のせいで、
公園を歩く人もどこか元気がない。
黄色いベンチに座っているあたしの横で、飯田さんはいつものように、
座椅子の上でスケッチブックを開いている。
学校が終わって、制服から着替えることなく公園に向かったあたしを、
飯田さんはいつもの場所で待っていた。
どうやら飯田さんは、辻ちゃんと加護ちゃんのことが、気になってるみたい。
- 341 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時32分36秒
「今日はあついっすねー」
学校指定のYシャツの胸元をパタパタさせ、Yシャツの中に風を送りながら、あたしは言う。
「そうね」
あたしの横で、絵を描きながら一言そう言った飯田さんは、汗1つかいていない。
茶色い皮のブーツに、紺色のジーパン。
白いTシャツの上に薄手のパーカー、首にはタオルを巻いている。
だれが見ても薄着とは言わない。
「首にタオルなんか巻いてて、暑くないですか?」
「ん?これ?
暑いよ〜。でも日差しが強いと日焼けしちゃうからね」
飯田さんはそう言うと、やっと傾き始めた太陽を、眩しそうに見上げた。
- 342 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時33分43秒
公園を歩く人の中に、学生服が目立ち始めたころ、あたしのポケットで携帯電話が鳴った。
ディスプレイにはごっちんの名前。
「もしもし」
『あ、よっすぃ〜?今どこにいる?』
「リトルガーデンにいるけど、どうしたの?」
『んあ〜、今ね、梨華ちゃんと平家さんの店にいるんだけど、
今日、集まるの平家さんの店にしようよ〜。
外暑くて、ごとー溶けちゃいそうだよ』
ごっちんは、泣きべそをかいているような声で言う。
6月の暑さで溶けるなら、8月ごっちんは蒸発して消えてなくなってしまう。
「はいはい。いま飯田さんといるから、飯田さんにも言っとくね」
『うん、おねがいね〜。
あ、そうだ!
聞いてよよっすぃ〜、梨華ちゃん好きな人ができたんだって〜』
そこまで言って、ごっちんの声は梨華ちゃんの悲鳴に似た声と、
さわがしいくらいの雑音でとぎれた。
梨華ちゃんの半べその顔が頭に浮かぶ。
- 343 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時34分25秒
「だれから?後藤?」
飯田さんの声は、湿った空気を気にすることなく、いつもと同じようにひびく。
でも、顔はいつものように、スケッチブックの上をすべる手を、かすかに追っている。
「ごっちんが、暑いから平家さんの店で集まろうって言ってました」
「ふ〜ん。そう」
「飯田さん、先行っててください。
あたし、今日人と会う約束してますから」
そう言うと、飯田さんの手が止まる。
けれども、またすぐに紙の上をすべるように動き始める。
紙の上では、細い線がいくつもつながり、大きな花を作っている。
「待ち合わせしてるのって、辻ちゃん達でしょ?」
「はい、そうですけど」
「じゃあ、圭織も待ってる。
辻ちゃんと加護ちゃんのこと気になるし」
飯田さんはそう言うと、スケッチブックを両手で、自分の前に立てるように持った。
鉛色で描かれた花は、沈んだ色で、とても重く見えた。
でも、太陽のように光っているようにも見えた。
そんなひまわりだった。
- 344 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時35分19秒
「飯田さんは、辻ちゃんが家でお母さんと勉強してたのなんて、どうしてわかったんですか?
学校休んでいるって言ったら、いじめと思いつくのが、普通じゃないですか?」
自分の書いた絵を見ながら、苦い笑みを浮かべていた飯田さんに、
あたしがそう言うと、飯田さんは、あたしを見て頬を上げ小さく笑う。
ガラス玉みたいな目。
蒸し暑い空気も軽くなるような笑顔。
太陽はまだ落ちる様子もない。
飯田さんは公園を囲むに建っている、低いビルを見ながら言う。
「いじめを受けて学校に行けなくなった人は、辻ちゃんみたいには笑えないわ」
そう言って飯田さんは笑顔を崩し、どこか寂しげで痛々しい表情を見せた。
飯田さんは言う。
「心に傷ができるとね、笑顔だって嘘になっちゃうの。
傷はずっと残るし、笑顔だって前みたいに笑えるかどうか……」
「飯田さん、誰かそういう人知ってるみたいですね」
言葉をにごす飯田さんに、あたしがそう言うと、飯田さんは口だけで笑顔を作った。
- 345 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時36分41秒
「かおりを変えてくれた笑顔だったの。
なっちの笑顔は、辻ちゃんの笑顔にとっても似てたから、だから気になっちゃって」
そう言う飯田さんの横顔は暗い。
「だからね、辻ちゃんはいじめや病気で学校を休んでいたんじゃないって思ったの。
そう考えたらあと残ってるのは、学校へ行かなくても良い人って事になるでしょ?
けっこう多いのよ、ホームスクールって言うんだけど。
家で勉強して学校に通ってない人」
飯田さんの言うことは、ほとんどがあたしの知らないことや、分からないことだらけ。
けれど、ひざの上のスケッチブックを見つめる飯田さんの表情は、まだ暗いまま。
「でも、ホームスクールなんてほとんど知られてないからね。
今は、まだ辻ちゃんが特別なのかな」
「へぇー、そうなんですかぁ。
飯田さんって、何でも知ってるんですね。
ホームスクールなんて、あたし初めて知りましたよ」
あたしが言うと、飯田さんは首を静かに横に振る。
「ううん、かおりも始めから知ってた分けじゃないよ。
またあの笑顔が見たくて…がんばったの」
飯田さんの視線は、街のビルを通り越し、青く澄み切った街の狭い空に向かった。
- 346 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時37分32秒
空を見つめたまま、目を細めて小さく笑う飯田さん。
そんな、飯田さんの横顔を見て、辻ちゃんの、あの陰のない笑顔が浮かんだ。
たぶん飯田さんも、辻ちゃんの笑顔を思い出したんだと思った。
透き通る純粋さと木漏れ日の様な暖かさ。
嘘のない笑顔はなぜだか人を笑顔にする。
「戻るといいですね、飯田さんの大切な人の笑顔」
そう言ったあたしに、なにも言わず、笑顔のまま街の青い空を見つめる飯田さん。
あたしも、飯田さんのマネをして街の晴れた空を見上げる。
先週よりもいくらか強くなった太陽の光は、だれにでも同じ強さで照りつける。
青々と茂るケアキの葉、座り心地の悪いベンチ、タバコや空き缶の転がる公園の敷石。
そして、暑さでちょっと元気のない、植え込みの小さな花と街の人達。
太陽はすべてに平等で無料。
いったい太陽はだれと競争しているんだろうか?
- 347 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時39分41秒
2人で空を見ながら過ごす、明るい夕暮れまじかの午後の公園。
湿った暑さは公園の敷石に、へばりつくように沈んている。
それを押しのけるように吹き始めた風と一緒に、2人はやってきた。
「いいらさ〜ん!」
あたし達を見つけた学生服の辻ちゃんが、舌っ足らずな声をあげ、走ってくる。
いつか見たやわらかく幼い笑顔。
辻ちゃんの笑顔には、太陽のひざしも、優しくてりつけている様に見えた。
けれども、そんな辻ちゃんの後ろを、学生服姿の加護ちゃんは、
少しうつむきながら歩いていた。
辻ちゃんは、飯田さんの前に立つと、少しはにかむように笑って言う。
「あの、飯田さんのおひざの上に乗ってもいいですか?」
飯田さんはなにも言わず、笑顔で太股のあたりをぽんぽんとたたく。
それを見た辻ちゃんは、ニーっと口で笑う。
八重歯の見える幼い太陽みたいな笑顔に、あたしも、飯田さんも笑顔になった。
- 348 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時42分03秒
飯田さんと明るい声で話す辻ちゃん。
飯田さんは、自分のトートバックから、大量のお菓子を取り出している。
明るい笑顔と楽しい会話、そんな2人の横で、あたしは暗い顔の加護ちゃんと向かい合っていた。
少し俯いて、公園の地面を見つめて動かない加護ちゃん。
いつものように、束ねられたお団子の髪の毛につけられた白い綿毛のボンボンだけが、
風でゆらゆら揺れていた。
あたしの横で聞こえる2人の声は、とても楽しそうに聞こえる。
その時、公園に集まり始めた人達の中から、1人の男が近づいてきた。
白のキャップからはドレッドヘアがはみだし、ダボダボのTシャツの袖は肩まで捲り上げられている。
穴だらけのブラックジーンズと、はだしで履いたサンダル。
そして腕には、剣に刺さったドクロのタトゥーと黄色のバンダナ。
いつ夏になってもOKな格好そんな感じ。
顎のぶしょうひげのせいで、年齢はよくわからなかったけど、
あたしよりは確実に上だと思った。
ドレッドヘアーの男は、加護ちゃんを少し気にしながら、加護ちゃんの横に立つ。
加護ちゃんは、俯いたままその男を横目に見ていた。
- 349 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時43分10秒
「キング、さっき保田さんが、連絡を欲しいって言ってました」
「保田さんが?なんだろ?何か聞いてる?」
あたしは、首だけを横に向け、加護ちゃんを見下ろしているドレッドヘアの男に聞く。
ドレッドヘアの男は、覗き込むように見ていた加護ちゃんから、視線をあたしに向ける。
「先週起きた、レイプ事件のことじゃないですか?」
先週の金曜日、ちょうど加護ちゃん達と会った、あの日に起きた事件。
高校生を辞めた元女子高生が、薬で眠らされた後に暴行を受けた。
そして目が覚めた時には、病院のベットの上で、傷だらけの手の甲や腕を見て、
ひどくおびえて、話もできないとのことだった。
売春(ウリ)の噂が絶えなかった元女子高生のレイプ事件は、
週刊誌や、お昼のワイドショーには、もってこいの、いい餌だった。
「そっか、ありがと、あとで連絡してみる」
あたしがそう言うと、ドレッドヘアの男は、頭を少し下げ、公園にいる人達の中に、溶け込むように消えていく。
そして、あたしの前に残ったのは、元気のないお団子頭の女の子。
- 350 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時43分53秒
ゆるやかな風でふわふわと揺れる、お団子頭にある白い綿毛のボンボン。
それまで黙っていた加護ちゃんが、顔を上げてあたしを見る。
黒目がちな大きな目は、先週と変わらない。
けれどもその顔に笑顔はない。
どこか元気のない顔。
辻ちゃんとは正反対の表情に、あたしは言う。
「どうかしたの?まだ辻ちゃん学校でバカにされてるの?」
そう言うと、加護ちゃんは首を大きく横になんども振る。
「じゃあどうしたの?」
あたしは、優しく加護ちゃんに聞く。
加護ちゃんは、少し上目遣いに言う。
「…キング…ひざ…乗ってもええ?」
- 351 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時44分28秒
「うちな、うち、ずっと考えてん」
あたしのひざの上に座った加護ちゃんは、後ろを見ることなく前をじっと見ている。
見えるのは、加護ちゃんのお団子の髪の毛と、白い綿毛のボンボン。
ひざにかかる重さと、公園に吹き始めた生ぬるい風が、なぜかここち良い。
「あんな、なんでキングが、うちをチームに入れてくれへんかったんやろうって、
なんで今日まで(仮)なんやろうってずっと考えててん」
横にいる飯田さんは、辻ちゃんと楽しそうに遊んでいる。
公園には、学生や仕事中のサラリーマンの変わりに、
ズボンの裾を引きずりながら歩く人たちが目立ち始めていた。
「キングゆったやろ、今日会った時、ガーディアンに入りたいかどうか聞くって。
やっとな、わかってん…」
加護ちゃんはそう言うと、スカートのポケットから黄色のバンダナを出す。
先週加護ちゃんに渡した黄色いバンダナ。
加護ちゃんは、じっとバンダナを見たあと、肩を落として言った。
「これ…返すわ」
- 352 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時46分45秒
隣で楽しそうに話す辻ちゃんとは違い、加護ちゃんは公園の地面を見ながら。
ポツリポツリと話し始めた。
「うちらの学校にキングが来た日から、のののことバカにする人おらんなってん。
せやけどな、べつにのののことバカにしてなかった男子とか、女子がな、
うちらのこと怖がって…。
やっぱり、うちらまだ2人ぼっちやねん」
大きすぎる力は、いろんなところで思わぬことを起こす。
あたしは言う。
「そっか、じゃあ、クラスの人の誤解を解かないといけないね。
加護ちゃんはチームと関係ないって」
そう言うと加護ちゃんは、落とした肩に力をいれ、首を横に何度も振る。
あたしは加護ちゃんに聞く。
「今のままでいいの?」
「ちゃうねん。うちな、がんばってみよう思うねん。
キングに頼りっぱなしはようない思うし…。
せやから、ののとがんばってみる」
「そっか…じゃ、がんばれ」
あたしはそう言って、加護ちゃんのお腹の辺りに手をまわした。
加護ちゃんは、何も言わずに1度だけ大きくうなずいた。
- 353 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時47分38秒
さっきまで、前だけを見ていた加護ちゃんが振り向いて言う。
「キングは友達いっぱいおるん?」
「え?」
あたしがそう言うと、加護ちゃんは前を向く。
そして肩を落として頭を下げる。
「うちな、中二の時、親が離婚してん。
それでこっち引っ越してきて、それで最初に出来た友達がののやってん。
ののな、最初学校来てなくてな、うちと遊ぶようになってから、学校に行き始めてん。
せやからな、うち、ののしか友達おらんねん…せやから、うち、わかんねん」
加護ちゃんの声は地面をはうように暗い。
けれども、弱々しくて小さな声は、あたしの中にしみこむ様に届いてくる。
今、加護ちゃんの言ってることは、心の声だと思った。
- 354 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時48分54秒
さっきまで、下を向いていた加護ちゃんの顔が、前を向く。
噴水の周りでしゃべっている、チームの人達を見ていると思った。
そして、加護ちゃんはまたあの心の声で言う
「うちな、こないだ学校来てくれた時、キングって、一人ぼっちみたいな気がしてん」
やっぱり加護ちゃんの声は心の声で、あたしの中にしみこんで来る。
心の声は、相手の心までちゃんと届く。
あたしは、一瞬ドキリとしたのを押さえるように、冷静な声で言う。
「どうしてそう思ったの?」
「だってな、あの時のキング、いつものキングやなかったもん。
なんかな…まわりのチームのみんなに、かっこつけてるみたいに見えてん…。
それに、さっき来た変な髪の毛の人、年上やのに敬語使ってたし…」
あたしは、加護ちゃんを子供に見すぎていたのかもしれない。
加護ちゃんは、あたしの中を見透かしているように思えてきた。
完璧な人間なんているわけない。
短所があるから長所がある。
王様なんて、嘘でできていて、いつも1人ぼっち。
だって、敬語で話かけてくる年上の人を、友達だなんて呼べないもん。
- 355 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時49分39秒
「せやから後藤さん達はチームに入ってないんやろ?」
加護ちゃんが振り向いて聞いてきた。
さっきより、ずいぶんマシになった顔。
でも笑顔はない。
あたしは言う。
「まあね。
ごっちんや飯田さんは家来じゃないからね」
そう言うと加護ちゃんは、前を向きなおして小さな声でつぶやいた。
「キング…うちは…どっちなんかな…?」
あたしは、確実に傾き始めた太陽をじっと見て言う。
「キングじゃないやろー?友達なんやから」
そう言うと加護ちゃんは、勢いよく振り返る。
無表情に近い顔。
けれども、黒目がちな大きな目には、あふれそうな、涙。
そんな加護ちゃんに、あたしが笑いかけると、加護ちゃんは、前を向いて俯いた。
- 356 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時50分21秒
「あれ?加護ちゃん泣いてる?」
あたしが言うと、加護ちゃんは少し大きくなった声で言う。
「ちゃうわ…キングのヘンな関西弁で、笑い泣きしてんねん」
「だから、キングじゃないだろ。加護」
そう言って、加護から返された黄色のバンダナを、加護の手の上に乗せる。
加護は黄色のバンダナで目を押さえ言う。
「ありがとうな…よっすぃ〜」
あたしはひざの上で涙を流す友達の頭を、ポンポンと軽くなでた。
公園にはギターケースをかついだ人や、海にでも行くような服装のギャル達、
サンダルであるく薄着の男の人達が、群れになっている。
あたしは、ひざの上の友達が泣きやむまでの数分、目の前で起こる日常をゆっくりと目で追った。
いつもと何も変わらない日常。
けれどもその数分は、短い人生で1番、暖かくなれた。
- 357 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時50分55秒
「あんな、昨日ののと話してん。
次のテストがんばろうって。
ちゃんと受けて、良い点取ろうって」
加護ちゃんはそう言うと、辻ちゃんのいるほうを見る。
「うちもな、ののがおるからビリはないって思って、勉強してなかってん。
せやからな、次のテストはののと2人で、勉強がんばるって、決めてん」
加護は下唇をギュッと噛むようにむすぶ。
1週間で人はこんなにも大人になれる。
- 358 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時51分38秒
「うち、帰るわ」
そう言って、加護はあたしのひざの上から、ぴょんと飛び降りた。
振り向いた加護の目は赤い。
でも、太陽にも負けない笑顔。
最初に見たときより、少し大人になったように見えた。
あたしは笑顔の加護に言う。
「帰るの?
今からごっちんのとこ行くんだけど、一緒に行かない?」
「ん〜ホンマは行きたいけど…。
そう言うと、加護は飯田さんと辻ちゃんのほうを見て言う。
「今日な、ののの家で夕ご飯食べんねん」
そう言って加護は、少し恥ずかしそうに笑う。
あたしの横で飯田さんといる辻ちゃんも笑顔だ。
- 359 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時52分51秒
「飯田さん、お菓子ありがとうございました」
辻ちゃんが、そう言ってぺこりと飯田さんの前でおじぎをする。
飯田さんが言う。
「じゃあね辻ちゃん、今度のテストはちゃんと受けるんだよ」
辻ちゃんは、元気よく返事をして八重歯を見せる。
そんな中、あたしの前にいる加護ちゃんは、どこか落ち着きなくそわそわしている。
あたしは、きょどうふしんの友達に言う。
「加護、どうかした?なんかきょどってるけど。」
「え、あ、んーと、えっと、また…来ても…」
加護の声は終わりに行くほど小さくなる。
「え?なに?」
「あ…えっと…ご、後藤さんによろしくゆっといて、それだけ」
加護は早口でそう言うと、ぷいっと横を向く。
ほんとに言いたいことじゃないことは、良くわかった。
「加護、あんまり怒ると、かわいい笑顔がだいなしだぞ」
あたしがそう言うと、加護の顔が見る見る赤くなる。
あたしは、加護をからかうように言う。
「あー顔が赤くなってるー」
「う!べつに赤くなんかない!」
「加護、もしかして、てれてる?」
「う、うっさい!!のの!はよ帰ろう!」
赤い顔のまま、加護は公園の出口へ向かって歩きはじめた。
- 360 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時53分34秒
「ねぇ、あいぼんまってよー」
こぶしをグーにしてずんずん歩いていく加護ちゃんを辻ちゃんは追いかけていく。
あたしは離れていく加護の背中に言う。
「加護!テスト、がんばれ!」
急に止まる加護に、辻ちゃんがぶつかりそうになった。
少し遠くで止まった2人のちびっ子中学生。
2人の周りを通る人は、場違いな2人を気にもしない。
あたし達と2人の間を通る人もまばら。
その時、辻ちゃんがあたし達のほうに振り向き、手でメガホンを作った。
- 361 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時54分52秒
「いいらさ〜ん、また来てもいいれすか〜!」
舌足らずになった声で、辻ちゃんは大きく声を上げた。
「いいよー、またおいでー!」
飯田さんは、辻ちゃんにそう言って、辻ちゃんの笑顔に向かって、ニッコリと笑う。
その時、急に加護が振り返り、辻ちゃんと同じように、手でメガホンを作り声をはる。
「よっすぃ〜!」
そう言うと加護ちゃんは、横にいた辻ちゃんと顔を見合わせ、2人で小さく笑う。
そして辻ちゃんも、手でメガホンを作り、2人で大きく息を吸い込み言う。
「「アホー!」」
2人は、あたしに向かって、はにかむように笑い、大きく手を振る。
「いつでもおいでー、あたしはここにいるから!」
そう言って、あたしと飯田さんは、笑いながら手を振る2人に向かって、手を振った。
- 362 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時56分48秒
競う事は決して悪い事じゃない。
負けて泣いて、勝って笑って。
そうやって人は伸びたりもする。
けれども忘れちゃいけない。
あたし達が競争している相手は、大勢で、自分と同じ人間。
泣いたり、笑ったり、へこんだり。
傷ついたりもする。
それを忘れちゃいけない。
優しすぎる?
でもさ、そこがあたしの良いところだって、みんなはわかってるよね。
それに2人がこのままで終わるわけないよ。
これからいろんなことが2人を変え、2人がいろんな人を変えていく。
- 363 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時57分25秒
あたし達に背中を向け、高い声で笑いながら歩く2人のちびっこ中学生。
加護の頭にある綿毛のようなボンボンが、風に吹かれてふわふわとゆれる。
ふーっと吹けば、優しさと暖かさと一緒に、この街の風に乗り飛んでゆく。
勝ち負けや、数字で傷つけあうクラスメイトにも、いつか深い根をはる日が来るんじゃないかな?
だって、あたし達と2人をつなげる根は、もう大きすぎるくらい。
きっと、強くて、優しく黄色に光る花が咲くんじゃないかな。
いつかきっと、タンポポのように強く光る花が。
- 364 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)04時59分47秒
「なぁのの?りかちゃんの「り」てどんな字?」
「「り」ですか?「り」は「なし」って言う字れすよ」
「は?「なし」?」
「へい、食べる「梨」れす」
「は?なにゆうとんねん、ナシは昔からカタカナやで」
「……辻は、漢字であいぼんには負けません」
「あ!なんやそれ!ののになんか負けるか!!」
and that’s all…?
- 365 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)05時25分40秒
- しゅ〜りょ〜!!終われた…。(涙
>>332 名無し読者様
横アリのDVDは泣けますよね。
こんなやつがネタになんかしてしまって申し訳ないです。
>>333 七誌様
レスホントに感謝してます。
>>334 むぁまぁ様
クール…じゃないですけど、どうでしょう?(w
>>335 名無し娘。様
更新遅いので、まとめ読みをお薦めします。(もう遅いですね
>>336 ななしのよっすぃ〜様
本領はっきする前に、終わっちゃいました。(w すみません。
>>337 名無し読者様
ハマってもらえたなんて、うれしいかぎりです。
>>338 EAGLE様
ごめん、今日からオフライン生活なんで、辻加護の紹介文しばらく書けないかも。
必ず書くから、待っててください。
>>339 名無し読者様
男惚れは良いんじゃないですか?女ですけど。(w
- 366 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)05時33分18秒
- 皆様レスホントにありがとうございます。
2回ほど放置を決意した(1ヵ月更新なかった時etc)こともありましたが、
皆様のレスがちゃんと終了まで導いてくれました。
ホントにありがとうございます。感謝感謝です。
当初この話しは、ドタバタのコメディーで書いていましたが、
中学の時の同級生と会うことになり、その頃のころを思い、こんな物を書いちゃいました。
ホントはこれの半分くらいの長さだったんですが…このスレで終われてよかった。
それでは次回まで……あるの?
- 367 名前:シグナル 投稿日:2003年03月04日(火)05時34分09秒
- 落ち隠し。
落ちなんてないですけど。
- 368 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月04日(火)05時49分56秒
- とりあえず?お疲れさまです
途中、本気で放棄だと思ってました
気が向いたらまた続き書いてください
- 369 名前:七誌 投稿日:2003年03月04日(火)21時52分27秒
- シグナルさんの話には毎回なんらかのメッセージを
勝手に受け取り、勝手に解釈していました。
またぎこちない受けてでもいいのならシグナルさんとキャッチボールがしたいです。
今はコレを返すのがせーいっぱいです。
お疲れ様でした。
- 370 名前:EAGLE 投稿日:2003年03月04日(火)22時26分42秒
- >兄貴
おっつです。
とりあえず終了すか…
何か勿体ないなぁ…
まぁ、オイラは気長に待てるタイプみたいなんで、
また書き始めたり、紹介文書いたらウチにも顔出してください。
オイラはたぶんいつでも暇ですから仕事を持ってきてくださいなw
取りあえず、お疲れさまです。
- 371 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年03月04日(火)23時11分06秒
- シグナルさま、更新&脱稿お疲れさまです。
勉強もそうですが、本人がやろうとする意欲が一番大事なのではないでしょうか?
加護ちゃんと辻ちゃんは自分の力でやろうと決めました。これからの成長は、見ることはできませんがきっと充実したものになると思います。
孤独を癒す存在がどれほど大切か考えさせられました。
素晴らしい作品をありがとうございました。次回作も期待して待ってます!!!
PS:続編も楽しみにしていいですか?(笑)
- 372 名前:とみこ 投稿日:2003年03月12日(水)17時27分36秒
- お久しぶりです。雪板のほうも完結したので久々に見ました。
いやぁ、目が離せませんね^^
金板スレ数が少ないのでもしかしたら次作は金板に立てるかもしれません。
そのときはよろしくお願いします。
- 373 名前:シグナル 投稿日:2003年03月18日(火)17時25分44秒
- >>368 名無し読者様
ホントにすいません。これからは放置なんてことのないようにします。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
>>369 七誌様
すごくうれしいです。
私は鮮やかな情景描写も、読み手を飽きさせないような文章表現も持ってません。
なので、そう言っていただけるとホントにうれしいです。
最後までありがとうございました。
>>370 EAGLE様
辻加護は終わりです。
紹介文ごめん、四月までには書きます……たぶん。(w
最後まで読んでくれてありがとう。
四月からまたよろしく…たぶん。
>>371 ななしのよっすぃ〜様
ごめんなさい。飼育での次回作の予定はとりあえずありません。ごめんなさい。
で、続編のほうを期待薄で待っていてください…たぶん。
読んでいただきありがとうございました。
>>372 とみこ様
びっくりしたよ。終わったなぁって思ってたら、金板で書いてるんだもん。
最後までありがとうございました。
- 374 名前:( ´ Д `) 投稿日:2003年03月19日(水)00時34分22秒
- 続編・・・僕も期待してます
というか吉澤と後藤の出会い これが一番気になってるんです
せめてこれだけでも・・・
- 375 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年03月19日(水)08時06分15秒
- お疲れ様でした
優しすぎる・・・いいじゃないですか
最後まで泣かせるいい作品でした
- 376 名前:シグナル 投稿日:2003年03月27日(木)00時24分31秒
- >>374 ( ´ Д `)様
次の話が終われば、それを含め短いのを書こうと思っています。
次の話が終われば…まず始めないといけませんね。(w
>>375 まぁむぁ様
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
次の話しも、気合入れて書かせてもらいます…いつになるかはわかりませんが。(w
- 377 名前:シグナル 投稿日:2003年03月27日(木)04時03分29秒
- 次回予告とか書いてみたりして。
―――それが正しかったのか、まちがっているのか、あたしにはわからない。
―――なぜなら、あたしは他人を愛したことがないから。
――闇の中で、走るようにすぎていくネオンの街で出会ったのは、4人の天使。
「じゃあ、ごっつぁんによっすぃ〜、それと…アゴン!!」
「…やだ…だめ……かってに部屋に入ってこないでよ!!」
「始めまして、ユウキです」
「アヤでーす、よろしくおねがいしまーす」
――闇に潜むのは赤い目をした悪魔。
「おねがい、ひとみちゃん早く来て!!」
――闇はいつでもあたし達のそばにある。
「あたし…分かった気がします」
世の中すべてが、ハッピーエンドでできていれば、こんなにも悩むことはなかった。
愛は、はてしなく難しい。
次回『Gardens』第6話
Angel cage
終われるようなら、スレ立てます、終われないようなら……じゃあ次回予告なんか書くなよ。
- 378 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月27日(木)06時23分43秒
- 果てしなくキターイ!
- 379 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年03月27日(木)18時33分56秒
- 感動しました!
次もめちゃめちゃ期待しています!
がんがってください!
- 380 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月27日(木)18時48分36秒
- シグナルさんキタ━━━(゚∀゚)━━━!!
予告もキタキタ━━━(゚∀゚)━━━!!
がんがってください。
応援してまふ。
- 381 名前:七誌 投稿日:2003年03月27日(木)22時54分34秒
- 自分もキターイ!
- 382 名前:娘。 投稿日:2003年03月27日(木)23時20分40秒
- ヨコクキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
- 383 名前:EAGLE@明日はシュリオネアに出演してきますw 投稿日:2003年03月27日(木)23時37分35秒
- 予告、
キタ━━━川‘皿‘)||━━━( ´ Д `) ━━━(O^〜^O)━━━\(^▽^)/━━━( `.∀´)━━━( `◇´)━━━(●´ー`●)━━━(〜^◇^〜)━━━从‘ 。‘从━━━!!
↑長っ!!
何はともあれ、復活の予感。
やったね、次回のbirdcage(ぇ
第06話「天使籠」マターリ待ってます。
- 384 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年03月30日(日)13時30分26秒
- おお自作予告じゃぁ!
何時までも待ちますぞ
- 385 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年04月23日(水)21時36分16秒
- シグナルさま
第6話の予告、ありがとうございます。
更新を期待して、待ってます!
- 386 名前:シグナル 投稿日:2003年05月18日(日)18時03分03秒
- >>378〜>>385のみなさま
期待していただきありがとうございます。
なんとか終われそうな話になってきたので、そろそろはじめたいと思います。
遅くなってすみません。
短い返レスですが、ご了承ください。
終わってから、もうすぐ二ヶ月……。
できれば来週あたりから、また始めたいと思います。
その時は、お付き合いのほど、どうぞよろしくおねがいします。
- 387 名前:七誌 投稿日:2003年05月18日(日)21時59分35秒
- 来週まで寝れない!!
- 388 名前:EAGLE 投稿日:2003年05月22日(木)22時39分48秒
- また〜り行こう。
気長に待ってまっせ。
- 389 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年05月24日(土)12時41分08秒
- じっくりまってますので
- 390 名前:たけトラマン(o|o)/ 投稿日:2003年05月25日(日)04時55分00秒
- シグナルさんおひさです
新作、がんがってください
- 391 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)02時07分11秒
- ここまで読んでいただきありがとうございます。
次も金板です。
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/gold/1029944087/
- 392 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)02時10分44秒
- ↑上間違いです。
すげーまちがい。なんだかすごく笑える。(w
早く寝よう。
ここがほんとの引越し先です。
お手数かけます。ごめんなさい。
GardensV(金板)
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/gold/1054053694/
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