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夏の風物詩 2
- 1 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月22日(木)15時08分38秒
- 同『空板』内『夏の風物詩』の続きです。
安易に『2』としてしまう自分は
やはりネーミングセンス欠如してるかも。
とか思ってる作者つなぎ服です。
内容は1の方をご覧下さい。
- 2 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月22日(木)15時10分07秒
- CPができました。
やぐちゅー。ごまなち。K1。
あと諸々と出てきます。
- 3 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月22日(木)15時10分42秒
- 更新
- 4 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月22日(木)15時11分27秒
来た。
そう感じてからすぐ。
部室の扉が音もなく開いた。
入ってきたんは…。
よかったわ、ホンマ。
圭坊や紗耶香ならともかく
なっちや矢口は絶対にアカンわ、これ。
ズル…ズル…ズル……
- 5 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月22日(木)15時13分20秒
なんや、噂と違うやんか。
噂にあった七不思議のそれは
腕を切り取られてしまった女子生徒。
やけど、今アタシら見てるこの生徒らしきモンは
噂通り腕は確かにないけど、右腕だけやし
左腕の変わりに左足の先がなく
その足を引きずってる。
やっぱり七不思議って言うたかて
噂は噂に過ぎへんみたいやな。
背ビレ尾ビレがついて
勝手に変えられてまうんや。
- 6 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月22日(木)15時15分07秒
そうやって考えると
この生徒が美術が得意っちゅうんも怪しい。
左足がなくなってることを思ったら
もしかしたら運動部の期待の選手やったんかもしれへんし。
もしかしたら通り魔なんてモン自体
ホンマはなかったんかもしれへんやん。
その時々の勝手なやつらの都合で話作られて
ありもしない自分の過去ができあがっていく。
それはめっちゃイヤなことやろう。
それに、自分らにはもう
手が出せんところの話やし。
そう思ったら…なんや
可哀想になってきたわ。
- 7 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月22日(木)15時17分00秒
こんな奴らの中には
自分の意思でいるわけと違う奴もおる。
人が流した噂のせいで
念の塊としてできてしもた奴。
自分は逝きたいのに
遺族がなかなか離してくれへん奴。
人々の恐怖の声で
留まることを余儀なくされる奴もおる。
どんだけ頑張ったかて
あの世のモンはこの世のモンに勝てへん。
根本的な力が違うんやし
なにより意思の力が違い過ぎる。
やからきっと
コイツらみたいなんを繋ぎ止めてるんは…。
すまんな。
アホばっかりで。
- 8 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月22日(木)15時18分38秒
(…姐さん?)
(なんや)
みっちゃんが話しかけてきた。
ちゅーても、言葉でやない。
頭の中に響かす、ある種のテレパシーみたいなもん。
(この娘…可愛そうやね)
(…そうやな…)
それが聞こえているであろう後藤は
何のことなんかわからんってぶつぶつ言ってる。
- 9 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月22日(木)15時20分52秒
ごっちんには
まだわからんやろうけどなぁ…。
この娘はきっと
めっちゃ可愛いかったんやで。
けどな、アホどもがいらん噂流し始めてから
その噂にこもった念が
この娘をこんなんに変えてしもたんやで。
って、あぁ…。
そこでアタシは気づいた。
七不思議を消し去ろうとした人らの考えに。
彼らはきっとこの娘らのことを知ってたんやなって。
それと。
アタシも…アホどもと一緒やな…。
- 10 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月22日(木)15時22分28秒
いくら矢口らを助けたいからって
静かに眠ってたコイツらを起こしたんはアタシらや。
どんな理由があるにせよ
コイツらから見たら一緒やんな。
ゴメンな。
気が回らんかった。
お詫びと言っちゃなんやけど
アンタの腕と足、アタシが責任持って見つけたるわ。
やから、寝てるとこ
邪魔したんは堪忍やで?
(…あ……)
(…姐さん、何したんです?)
…別になんもしてへんで?
- 11 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月22日(木)15時24分16秒
目が合ってアタシが心の中でそう呟いた途端
ソイツは踵を返して部室を出て行った。
まるでなにかに納得したかのように。
なぁ、アタシの勘違いかもしれへんけど…
もしかしてあの娘
笑ってへんかったか?
- 12 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月22日(木)15時25分43秒
- 終了
- 13 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月22日(木)15時26分15秒
- 2枚目の初。
- 14 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月22日(木)15時27分01秒
- 短かったかも。
- 15 名前:123 投稿日:2002年08月22日(木)18時24分10秒
- どうも!向こうに居た123です。
またまた久しぶりに来たら2つめに(w
やぐちゅーきましたねぇ。七不思議も続々出てきて…
続きまたまた楽しみにしてますよー!
- 16 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月23日(金)00時51分54秒
- 更新
- 17 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)00時54分12秒
「もう大丈夫やで」
あれが出て行ってからちょっとして
ゆーちゃんはみんなにそう言った。
それを合図にしてみんながため息を漏らす。
けど、ゴトーはそれよりも
気になることがある。
ゆーちゃん、さっき、なにしたの?
- 18 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)00時56分00秒
ゆーちゃんとへーけ先生がしてた会話。
ゴトーはその意味が上手くつかめなくて
なんであれが可哀想なの?って。
問い掛けても
両方ちゃんとした答えはくれなかったし。
なんか、ゴトーだけ
除け者にされてるみたいでイヤだった。
「…なにしたんやろねぇ」
「……いっつも自分1人でやるんだからさ」
って言ったらへーけ先生は笑った。
そやなぁって。
それから
今に始まったことと違うやろ?って。
…そーゆーとこも
ちょっとイヤ。
- 19 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)00時58分29秒
へーけ先生の方がゆーちゃんと組んだのは後なのに
ゴトーの方が先に一緒にしたのに…。
いつの間にかゴトーより
へーけ先生を頼ってるゆーちゃん。
最近はゴトーよりも先に
へーけ先生に話をするゆーちゃん。
なんか、ゴトーは使い捨て?
前にそう言ったら
笑ってこう言われた。
『ごっちんには護らなアカンもんがあるやん』
確かにゴトーには
護らなきゃいけない人がいる。
けど、やっぱり
それとこれとは話が違う。
- 20 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時00分52秒
もっとゴトーのこと頼りにしてほしい。
昔みたいに一番にたよってほしいよ。
ワガママかもしれないけどさぁ…。
「ごっちん、またそんな顔で見る」
思い出しながらゆーちゃんを睨んでたらしい。
ちょっと困り気味に注意された。
だってぇ…。
「前にも言うたやろ?アンタには―――」
「いるよ。でも、へーけ先生にもいるじゃん」
- 21 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時03分14秒
え…?ってゆーちゃんが固まった。
あれ、ゴトー
もしかして爆弾発言しちゃった?
もしかしなくても
これって言っちゃいけなかったの?
あはっ。
ゴメンね、へーけ先生。
「アホ…」
「みっちゃ〜ん?」
そんな人おるんやぁ?って言いながら
ゆーちゃんがへーけ先生に詰め寄って行く。
なんとなく面白そうだからって理由で
いちーちゃんがそれに参戦してた。
んで、けーちゃんが聞き耳立ててる。
いつもと一緒だよね。
よかった、いつもに戻って。
って、まだなんにも解決してないんだろうけどさ。
- 22 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時05分12秒
こんな時でも楽しくなれるこの人たちが好き。
もちろん一番はなっちだけど。
なんか妙に先生らしくないゆーちゃんとか
先生なのに生徒に負けてるへーけ先生とかさ。
キツイくせに
さり気なく気遣ってくれるけーちゃんもいい。
そのけーちゃんを振りまわして
遊んでるいちーちゃんもいい。
んで、隣で笑ってるやぐっつぁんもね。
こんだけ個性派が集まってるのに
大きなもめごとがない…あったけど。
それでも、それでもさ。
一緒に笑っていられるのってスゴイじゃん。
- 23 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時07分48秒
なっちと出会って一緒にいることが運命なら
今、このメンバーで笑ってるのも運命だと思う。
だからゴトーは
この人たちを護りたいよ。
「ね、やぐっつぁん♪」
「…イヤ、意味わかんないから」
そうだねぇ♪
って言ったらアホじゃんって言われた。
いいもん、今のゴトーはキゲンがよいので
そのくらいじゃ凹まないもんねぇ。
- 24 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時09分36秒
今、ゴトーとやぐっつぁんは
部室じゃない所にいる。
んで、今向かってるところも
部室じゃない。
その理由は
ちょっとさかのぼってもらわないとわかんないよぉ。
ま、ついさっきなんだけど。
- 25 名前:回想@後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時11分59秒
『あぁ!忘れ物した!』
急にやぐっつぁんが叫んだ。
それに、部屋の中のみんなが注目する。
そしたらやぐっつぁん、あ、ごめんって。
『なに、どないしたん?』
『…忘れた』
は?ってゆーちゃんが困ってた。
んで、やぐっつぁんの話を聞いてみたら
こーゆーことらしい。
- 26 名前:回想@後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時13分59秒
このところ毎日のようにして
受験のために学校の図書室通いをしてたんだけど。
その図書室ってのが
ムカツクくらいに静かなんだって。
ってか、図書室って
そーゆーもんだと思うけど。
そんな雰囲気に馴染めなかったやぐっつぁんは
早々とそこを退出したんだそうなんだけど…。
その際、あまりにも力を吸い取られ過ぎて
ついつい置忘れをしてしまったんだと。
んで、今、それを思い出したんだって。
つまり、ただの忘れ物発覚なんだけど。
- 27 名前:回想@後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時16分14秒
『なに忘れたの?』
『…全部』
全部。
勉強道具・お弁当箱・プリ張など。
全部が入ったカバンごと忘れて来たと。
やぐっつぁんてへんなとこ器用だよね。
今の今まで気づかなかったってのも、ねぇ…。
明日は学校じゃないから取りに来れないからって
やぐっつぁんは取りに行くってきかなかった。
でも、この状況で取りに行くのはどうかなぁってことになって
当然ゆーちゃんが付いて行くもんだと思ってたんだけど…。
ごっちん、行ってきて。って。
- 28 名前:回想@後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時18分15秒
は?なんでゴトーが?
だって、ゴトーの彼女はなっちだよ?
やぐっつぁんの彼女はゆーちゃんだよ?
なんでゴトーが行くのさ?
?がいっぱい浮かんだ顔で見てたら
ゆーちゃんがイジワルそうな目で言った。
『頼りにしてんで、ごっちん』
面倒くさいって?
ねぇ、それは面倒くさいって言る?
知らないよぉ、後でやぐっつぁんになんて言われても。
ゴトーはちょっとむかついた。
けど、ゆーちゃんが本気で頼ってくれてるってわかるから
上機嫌になっちゃって、いいよって言っちゃった。
- 29 名前:回想@後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時19分55秒
図書室はこっちの校舎だから
“真夜中の校舎”の範囲からは外れるんだ。
でも、この状況で
やぐっつぁん1人ってのはねぇ。
で、それならゆーちゃんかみっちゃんか、ゴトー。
3人のうち誰かが付いてけばいいんだけど。
ゆーちゃんが指名してくれたのが
ゴトーだった。
もちろん自分がついて行くのが一番いいけど
その次って考えて、ゴトーを選んでくれたってのが嬉しかった。
だからもう
気合はいりまくりだよぉ。
- 30 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時21分56秒
もうなにが出て来ても大丈夫ってカンジのゴトーと
なんにも出ないでってカンジのやぐっつぁん。
ゴトーたちは今
図書室の近くまできてる。
思い出に浸ってたゴトーだったけど
やぐっつぁんが話し掛けてきたからストップ。
ちょっと凹んでるっぽいし。
「…なっちと、上手くいってる?」
はぁ?いきなりなに訊くのさぁ。
そりゃあもう
上手くいってるよぉ♪
週末は毎週デートしてるし
学校にいるときでもヒマがあれば電話してる。
お泊まりもそれなりにしてるしぃ。
- 31 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時23分36秒
なっちの可愛い顔を思い浮かべながら
ゴトーがプチ語りに入っていこうとしたら…。
やぐっつぁんが俯いた。
「…ゆーちゃんと上手くいってないの?」
「……ってゆーか…なんか、さぁ…」
なんか矢口の一方通行なんじゃないかなぁって。
やぐっつぁんは
ちょっと悲しそうにそう言った。
いつも見てるやぐっつぁんからは
想像できないくらいにすっごく切なくて、悲しくて
…泣きそうな顔で。
- 32 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時25分26秒
そんなことないよ。
ゴトー、今日知ったばっかりだけどさ。
ゆーちゃんはやぐっつぁんにベッタリだよぉ。
絶対ゆーちゃんは
やぐっつぁんがいないとダメだよ。
「そうかなぁ?」
「そうだよぉ」
でもさぁ、ってやぐっつぁんは言う。
- 33 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時27分51秒
いっつもデートしようって言うの矢口だし
好きだよって言うのも矢口ばっかりだし。
ちゅーだって矢口からしかしないし…
抱きつくのも矢口だよぉ…?
アレだってさぁ………。
あー、そーなんだぁ。
いつでも求めるのはやぐっつぁんで
ゆーちゃんはそれに応えるってカタチなんだね。
うーん…
不安になるねぇ、それは。
- 34 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時30分00秒
ゴトーも昔あったもん。
なっちが恥ずかしがりなのは知ってるけど
いっつもこっちからだとなんか怖くなっちゃう。
わかる、わかるよぉ。
やぐっつぁん。
「ごっつぁん〜」
やぐっつぁんが抱きついてきたから
ゴトーは抱き返した。
おぉ…やぐっつぁんてちっちゃいなぁ。
なっちといい勝負なんじゃない?
あ、でも。
なっちの方が気持ちいいけど。
- 35 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時32分08秒
「幸せものー!」
「あはっ♪」
くっそー、ムカツクー!
とか言いながら、やぐっつぁんが先に進む。
ゴトーはそれに付いて行く。
別館なんて本館の比じゃないくらいに小さい。
部室から図書室までってめっちゃ近いし。
ってことで、とうちゃーく。
へーけ先生から借りたカギの束から
図書室って書いてあるやつを引きぬく。
このカギの束はさっきの家庭科室騒動のときから
ずぅーっと持ってたんだってさ。
返しに行くに行けなくなっちゃったからって。
- 36 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時34分34秒
「…あ、あった!」
やぐっつぁんの探しものは
すぐに見つかった。
多分カウンター当番の娘が置いてくれたんだと思うけど
やぐっつぁんのカバンは入り口のすぐ近くにあった。
やぐっつぁんが
それを抱えて戻ってきた。
「ありがと、ごっつぁん」
「ん〜、全然OK〜」
これで任務は果たしたね。
あ、まだか。
ちゃんと帰さないと。
- 37 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時37分13秒
ゴトーとやぐっつぁんは足早にそこを出た。
なぜならゴトーが急かしたんだよねぇ。
だって、怖かったから。
たぶん怖いって感じたのは図書室じゃない。
けど、なんか怖いなぁって思ったから。
ゆーちゃんから預かってる大切な人だし
ゴトーも面倒なことはゴメン主義だし。
逃げれるなら逃げたい。
そう思って図書室を出た。
そしたら…。
「あ…ねぇ、ごっつぁん」
急にやぐっつぁんがゴトーの腕を引いた。
- 38 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時40分16秒
それから、ちょっと図書室の方に引き返して
その脇の方に寄って行った。
なに?
なんかあるの?
「あっ。ほら、やっぱり!」
やぐっつぁんが嬉しそうに叫んだから
仕方なくゴトーもそこに近づいたんだけど…。
そこにあったのは扉。
今では珍しいだろう片開きの扉があった。
薄汚れてるけど、なんかプレートはかかってる。
けど…けど
待ってよぉ?
やぐっつぁん、ゴトーもの覚え悪いけど
でも、学園の中くらいはちゃんと覚えてるよ?
ゴトーの記憶では
……そこに部屋なんてない。
- 39 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時42分31秒
「なにに使ってるのかなぁ?」
「……」
やぐっつぁんが
どんどん近づいていく。
その度に
ゴトーの中のなにかが言ってる。
止めろって。
行っちゃダメだって。
行っちゃダメなんだよ、そこ。
だってゴトー
かなり気持ち悪くなってる。
空気もおかしいし…。
なにより。
ゴトーにはそこ
歪んで見える。
- 40 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時44分55秒
「…やぐっつぁん、帰ろう?」
「えー?せっかく見つけたんじゃん」
楽しそうじゃん?って。
やぐっつぁんは
その扉に手をかけようとする。
ダメ…!
「やぐっつぁん!」
「っ!そ、そんな怒らなくてもいいじゃん」
怖いよ、ごっつぁん。
ビックリしてやぐっつぁんが後ずさる。
- 41 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)01時47分06秒
やぐっつぁんになんて思われてもいいから
今はゴトーの言うことちゃんときいて。
それに触っちゃダメだよ。
それ、絶対におかしいもん。
ヤバイよ、間違いなく。
ゴトーは焦ってる自分を隠しながら
やぐっつぁんを連れて部室まで帰った。
…あ、空気が変わった。
「おかえりぃ」
「裕ちゃんきいてよぉ」
やぐっつぁんは部室に飛びこんだついでに
ゆーちゃんにも飛びこんでいった。
ゆーちゃんはなんやぁ?って嬉しそう。
よかった、もう大丈夫だ。
- 42 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)02時19分44秒
やぐっつぁんがごっつぁんが怖いんだよぉって
ゆーちゃんに愚痴ってるのが聞こえた。
でも、ゴトーは
他にしたいことがあるんだ。
なっち。
なっち、どこ?
「ごっちん?」
「…なっち!」
狭い部室なのに探すのに一苦労した。
やっと見つけたなっちをぎゅって抱きしめる。
みんなが何してんのって笑ってくる。
- 43 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)02時21分38秒
からかいムードの中で
ゆーちゃんだけは違った。
ゴトーに纏わりつてる空気の残り香からか
イヤなモノを感じ取ったらしい。
「…なにがあったんや」
「…実はさぁ…」
なっちをだっこしたままだったけど
ゆーちゃんはそれでもええからって。
ことの1部始終をゆーちゃんに話したら
ゆーちゃんはへーけ先生の資料を出してきた。
ちょっと読んでから
その中の1つを指して言った。
「たぶん、これやろ」
- 44 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)02時23分40秒
それは3つ目の資料だった。
ゴトーたちが呼んだのは2つ目の“真夜中の校舎”まで。
それ以降はゆーちゃんたちが心配で読めてない。
それを読んでなかったゴトーたちが帰って来れたのは
不幸中の幸いだったんだろう…。
- 45 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月23日(金)02時25分23秒
- 終了
- 46 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月23日(金)02時26分45秒
- PCが不機嫌みたいです。
- 47 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月23日(金)02時28分29秒
- 中途半端なんですけどねぇ。
すいません。
- 48 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月23日(金)02時30分40秒
- > 123 さま
>続きまたまた楽しみにしてますよー!
またおいでいただいて嬉しい限りです。
フリーズするPCに悩まされながら頑張ります。
- 49 名前:名無しです 投稿日:2002年08月23日(金)02時40分46秒
- すっごい面白いです!
読みながら鳥肌が(w
毎日更新されているので、毎日くるのが楽しみになってます^^
これからもこのペースで(無理はせずに…パソコンにも(w)頑張って下さい〜
- 50 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月23日(金)14時20分43秒
- 更新
- 51 名前:七不思議〜4〜 投稿日:2002年08月23日(金)14時22分14秒
- 異次元教室
- 52 名前:異次元教室 投稿日:2002年08月23日(金)14時23分02秒
学園には開かずの間と言うのがつきものである。
その開かずの間が実は先生たちの密会室だったり
校長先生の趣味の部屋だったりするのは関係なくだ。
この学園にも、開かずの間はあるはずだった。
- 53 名前:異次元教室 投稿日:2002年08月23日(金)14時23分50秒
- 夏のある日だった。
夏休みにも関わらず
数人の生徒が残っている図書室。
そこにいるのは大概3年生か
クラブでへばった下級生だった。
それともう1つのグループ。
カウンター当番。図書委員会の仕事。
せっかく仲のいい友達と一緒にしてもらっても
お喋りが出来ないのではあまり意味がない。
そんな風に思っているこの生徒たちには
少しばかり気持ちのいい空間ではなかったのだ。
- 54 名前:異次元教室 投稿日:2002年08月23日(金)14時24分28秒
適当な理由をつけて図書室を退出した生徒たちは
噂になっている『開かずの教室』でも探さないかと話した。
先ほど3年生が話しているのを偶然にも聞いてしまったため
なんだか興味をそそられてしまったのだろう。
生徒たちは手分けしてその教室を探した。
- 55 名前:異次元教室 投稿日:2002年08月23日(金)14時25分02秒
『ねぇ、ここは?』
ほどなくして、それと思われる教室は見つかった。
それは生徒たちが出て行った図書室のすぐ脇にあった。
扉は1枚の片開き。
教室にかかったプレートは見えない。
生徒たちは怖くもあったが
楽しみでもあった。
もしかしたら
先生たちの秘密が詰まった部屋かもしれない。
もしかしたら
なにか宝が眠っているのかもしれない。
生徒たちにそう思わせるには充分過ぎるほどに
その教室は細々と存在していたから。
- 56 名前:異次元教室 投稿日:2002年08月23日(金)14時25分55秒
扉には埃がかぶっていて、あまり触れたくなかった。
生徒の1人がハンカチを取り出して
ゆっくりとドアノブを回した。
随分と薄汚れているわりに
その扉は易々と開いてしまった。
内開きの扉に吸い込まれるかのようにして
生徒たちはその教室に招き入れられた。
『…別に、なにも変わってないよね』
- 57 名前:異次元教室 投稿日:2002年08月23日(金)14時26分26秒
教室の中はいたって普通の教室だった。
少し狭いのは扉の外観からして予想できたし
普通の教室じゃないだろうなって言うのもわかってた。
しかし、なにがそんなに普通じゃないのかと聞かれれば
そんなに変わらないとしか答えられないのも事実。
少し小さな部の部室としてはよくある部屋。
なにもおかしなことなどないのだ。
少し安心した生徒たちは
本格的にその部屋の調査を開始した。
- 58 名前:異次元教室 投稿日:2002年08月23日(金)14時27分02秒
部屋の中にあるロッカーや机など
備品は全て漁ってみた。
しかし、先生の弱みどころか
紙切れ一枚すら出てこないのだ。
出てくるのはザラザラの砂だけ。
興味をなくしてそろそろ出ようかと思ったときだった。
棚を調べていた生徒が
あるものを発見したのだ。
他の生徒が見に行ってみると
そこには落書きのようなものがあった。
- 59 名前:異次元教室 投稿日:2002年08月23日(金)14時27分43秒
『…“外に出ればわかる”?』
たった一言。
わけのわからない言葉が書きこまれていた。
生徒たちはそれぞれに考えてみたが
なんのことなのかはわからないままだった。
それ意外は特に変わったものも…というか
本当になにもなく骨折り損のくたびれ儲けだね
と言って生徒たちはその扉を開けた。
その先にはよく見知った学園の廊下があった。
『外に出ればわかる』
この言葉の意味さえ
生徒たちにはわからなかった。
- 60 名前:異次元教室 投稿日:2002年08月23日(金)14時28分15秒
- ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
- 61 名前:異次元教室 投稿日:2002年08月23日(金)14時29分27秒
『…さん?もう、どこに行っちゃったのかしら』
図書室を出てすぐの廊下で
図書担当の教師は少しイラついていた。
トイレに行ってきますと言って出て行ったきり
図書委員が帰ってこないのだ。
1人や2人ではなかっただけに
サボっているのだろうと諦めて図書室に帰って行った。
しかしその図書委員たちは
もう2度と帰っては来なかった。
- 62 名前:異次元教室 投稿日:2002年08月23日(金)14時30分05秒
図書室のすぐ隣で埃まみれのハンカチは見つかったのだが
生徒たちの行方は何故だかつかめなかったのだ。
生徒のものだと思われるハンカチの奥には
少しだけくすんだ壁があるだけだった。
謎のまま終わってしまった生徒行方不明事件は
そのまま誰も知る由のないこととして片付けられた。
- 63 名前:異次元教室 投稿日:2002年08月23日(金)14時30分36秒
それからと言うもの、誰が流したのかは知らないが
『異次元教室』なるものが七不思議に加わった。
夏休みに学園に来て、校内探索をしている途中で
不意に見つけた、いつもは見ないその教室。
扉を開けてしまえばもう…
- 64 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)14時32分48秒
- 「……あそこ…?」
「…止めて正解じゃん」
青ざめてるやぐっつぁんと
妙に安心したゴトー。
危ないところにいたんだねぇ。
よかったよ、ちゃんと止めて。
ゴトーの感も大したもんじゃん。
「ごっちん…」
ん?なに、なっち?
そんな心配そうな目で見なくても
ゴトーはちゃんとここにいるよぉ?
ちゃんとなっちのために帰って来たじゃん。
なっちを抱きしめに、さ。
- 65 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)14時36分42秒
そんなこと言わないけど
なっちにはきっと伝わってる。
その証拠になっちはもうって笑った。
やっぱりなっちが一番だよねぇ。
ついつい気が緩んじゃって
ゴトーはちょっとヤバイことを言っちゃった。
目ざとくなっちが突っ込む。
- 66 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)14時39分07秒
「ごっちん…なっちの他に抱きしめたの…?」
え、あ、や…。
そのぉ、成り行き上、ちょっと…。
「…誰?」
に、睨まないでぇ、なっちぃ。
ゴトー浮気したんじゃないよぉ?
なっちが一番だよぉ?
「なんやぁ、ごっちん浮気かぁ?」
ニヤニヤしながらゆーちゃんが突っ込む。
- 67 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)14時41分26秒
違うって言ってるじゃん!
だいたい、抱きしめるだけで浮気なんだったら
ゆーちゃんは超浮気魔じゃん!!
ゴトーは一生懸命叫んだ。
けど、そんなこと言ったってゆーちゃんには利かなくて
なんか、更に自分を追い詰めてるらしいです。
- 68 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)14時43分59秒
「ごっちん、なっちの質問に答える」
「…はい」
正直に言います。
ゴトーなっち意外の人を抱きしめちゃいました。
でも、その人のことは友達だと思ってるし。
なによりその人にも彼女がいるんだよぉ。
って、いい訳じみたゴトーの言葉は
あっさりとかわされてしまった。
お説教付きで。
- 69 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)14時45分42秒
なっちが聞きたいのは、それは誰なのってこと。
そう言われてごめんなさいってまた言って
それからちゃんと名前を言った。
「……やぐっつぁん…」
「へっ、矢口?」
でもね!ホントに浮気じゃないんだよ!?
さっきやぐっつぁんが抱きついてきて
なんかつい抱きしめ返しちゃっただけなんだよぉ。
ゴメンねなっち。
怒らないでぇ。
必死に弁解してるゴトーと対照的に
なっちはほけってしてる。
状況が飲み込めないってカンジで。
- 70 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)14時47分23秒
でも、なっちよりも敏感に反応した人がいた。
「ちょっと待ち。矢口を抱きしめたってどーゆーことや」
あーもー、今出てこないでよぉ。
やぐっつぁんのことだから
ゆーちゃんが気になるのはわかるけどさ。
でも、今はなっちの誤解を解くほうが先!
そう言って逃れようとしたのに
ゆーちゃんはしつこく迫ってくる。
矢口になにしてんとか。
怖い顔できいてくる。
- 71 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)14時49分12秒
するわけないじゃん!
ゴトーはなっち一筋なんだよぉ!?
やぐっつぁんよりなっちの方が可愛いもん!
火に油だった。
- 72 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)14時51分05秒
「矢口の方が可愛いやんか」
「…なっちだよぉ」
矢口の方が可愛いって。
ゆーちゃんはゴトーに力説する。
でも、ゴトーだってこれは譲れない。
やぐっつぁんも確かに普通より可愛いと思うけど
なっちの方がそれよりも可愛いじゃん。
なっちが一番だよぉ。
って、ゆーちゃんに反論した。
でも、譲れないのはゆーちゃんも同じらしくて。
ゴトーがこう言えばあー言うって状態。
- 73 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月23日(金)14時53分02秒
それに終わりが来たのは
それぞれのパートナーが動いたとき。
「ごっちん、もういいから」
「裕ちゃんも、大人気ないよ」
でも、でもさぁ?
なっちが一番じゃん?
誰よりも可愛いじゃん?
ゆーちゃんそれを認めないからぁ。
「いいよ、ごっちんが知っててくれれば」
…そう?
うん、ならいいや。
なっちぃ、大好きだよぉ。
- 74 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月23日(金)14時53分41秒
- 続けて。
- 75 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)14時56分15秒
「なんやねん、ごっちんのアホ」
まだ言ってるよ、この人。
さっきごっつぁんと裕ちゃんがケンカした。
ケンカってゆーか、言い合い?
ちっちゃい子がよくやる、無限ループのケンカ。
オレの言い分の方が正しいんだぞ!
ボクの言ってることが本当だもん!
こんなカンジのやつ。
んで、大抵両方とも矛盾点がいっぱいあるんだよね。
ちっちゃい子がやるからそれは
いいなぁ、可愛くてぇで済むんだよ。
高校生とその高校生の担任がやるかねぇ。
- 76 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)14時58分16秒
…なぁんて言ってますけど。
矢口、すんごく嬉しいんだよぉ。
「裕ちゃん」
ケンカの名残でまだぶつぶつ言ってる裕ちゃんに
矢口は嬉しいのを隠さないで抱きついた。
- 77 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時00分22秒
だって、だってぇ…。
あの裕ちゃんがさぁ、矢口のこと可愛いって!
矢口が一番やろ!って人とケンカしてくれたんだよ?
あの裕ちゃんがだよぉ?
矢口が好きだよって言っても
あ、うん…とかって返事も返してくれない人が。
甘えても甘えても
全く襲ってくれないような人が。
矢口のことで人とケンカなんて。
信じらんないよぉ。
もぉ、すごく嬉しいよぉ。
- 78 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時03分50秒
目の前の裕ちゃんはいつもみたいに戸惑ってるけど。
さっきの人とは別人みたいだけど。
それでもいい。
さっきの裕ちゃんは本物だし。
矢口のこと可愛いって言ってくれたから。
「…裕ちゃん?」
「………」
- 79 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時05分38秒
さっきまでオドオドしてたかと思ったら
急に真面目な顔してこっちを見てる。
それから、なにかを決心したらしい。
「…や…やぐ、ち…?」
なに?って訊こうと思った矢口の唇は
信じられないけど。
裕ちゃんによって塞がれてしまった。
その唇はすぐに離れてしまったけど。
けど、確かに、してくれた。
- 80 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時07分22秒
いま…いま、裕ちゃんからキスしてくれた…?
うそ…裕ちゃんが、矢口に…?
うそ…うそっ…?!
「…ゆぅ…ちゃん?」
「……」
突然、思いがけない行動に出た張本人は
真っ赤っ赤になって俯いてしまった。
でも、その反応は矢口に真実の自覚を持たせた。
矢口に裕ちゃんがキスしてくれた。
初めて裕ちゃんからキスしてくれた。
うわぁ…もぉ…っ、メッチャ嬉しい…!
- 81 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時08分57秒
「…もいっかい…して?」
「……アカン…絶対ムリ…」
下向いてる裕ちゃんをムリヤリ見あげる。
得意のおねだり上目遣いで
なんとか2回目を手に入れたい。
裕ちゃんからのキス、もっとほしいよ。
けど、裕ちゃんはそれ以降してくれなかった。
だから、今度は矢口がしてあげる。
- 82 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月23日(金)15時09分59秒
- まだいきます。
- 83 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月23日(金)15時11分08秒
ユデダコみたいになってると思われるアタシ。
自分でやったことやけど
ちょっと後悔してる。
恥ずかしかった。
とにかくそれしか言われへん。
なんであんなことしたんやろ…。
- 84 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月23日(金)15時13分25秒
「んっ…」
アタシが自分からしたことで
やっぱり矢口の気持ちを昂ぶらせてしもた。
キスしてきた矢口はいつもと違う。
一番始めが長いのが特徴やのに
短く終わって、どんどん次って言ってる。
短い間隔でされるキスって
…矢口とは初めてかもしれへん。
なんや、こんなキスもできるんやなぁなんて
自分の立場忘れてぼやっと考えた。
で、飛んで逝きそうになってる思考を呼び戻したら
ここは部室なんやったよなぁって…。
…前と同じオチやなぁって。
でも、前と違うんはここからや。
- 85 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月23日(金)15時16分13秒
さっきまでやったら逆らってたんやけど
なんか、今はそんな気が起こらへん。
アタシから矢口を求めたせいかもなぁ。
ちゅうか、いまも求めてるけど。
「…裕ちゃん?」
「……矢口…」
自然と腕が矢口の首に回る。
驚いた顔しとった矢口やけど
嬉しそうに笑って、キスしてきた。
アカンやん、アタシ。
なに、誘っとんねん…。
- 86 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月23日(金)15時16分48秒
- 昨日のお詫びとして。
- 87 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時18分44秒
初めて、初めて裕ちゃんが誘ってきた。
可愛く甘えながら矢口のことほしいって。
…ほしいって言ってないけど、行動とかが……と思う。
ってゆーか、さっきのキスで
矢口の理性はブレーキごとぶっ飛びました。
ので、もう止まれないってことで。
- 88 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時20分49秒
「…あのー…」
なんだよぉ、紗耶香ぁ。
なに?いちーたちいるんですけどって?
知らないよ。見たくないんなら出てけば?
「…いや、間違ってるから」
みっちゃんがなんか言ってるけど。
悪いんですが、今の矢口
裕ちゃん意外見えません。
よって、この状況に不快を感じる方。
並びに邪魔をされる方は退場してください。
てゆーか、消えて。
- 89 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時22分56秒
「…汚れるよ?」
は?なにが?汚れるって…床?
それは仕方ないじゃん。
汗もかくし他のモノだって…♪
いいじゃん、ここ矢口たちの部室だし。
明日休みだからちょっと残って掃除くらいするし。
- 90 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時24分15秒
「違う、裕ちゃん」
「…裕ちゃん?」
圭ちゃんが床を指差しながら言う。
その床には…一面に広がった埃と砂。
これじゃ、床に倒したら大変なことになる。
裕ちゃんの服とか髪についちゃう。
それはマズイじゃん。
かと言って
裕ちゃん抱き上げてやるなんて…
裕ちゃんよりちっちゃい矢口にはムリだって。
汚れちゃったら
裕ちゃん可哀想だし…。
でも、このチャンスを逃したら
もう2度とないかもしれないんだもん…。
こんなに裕ちゃんが素直なことなんて…。
うぅ…どうしよぉ……。
- 91 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時25分59秒
「…どうするの」
くっ……。
くっ…くそぉ…。
今日は厄日だぁ…。
ムカツクぅ。ムカツクけどぉ…。
矢口のしたいことは状況的にできないし
目が合った裕ちゃんが不安そうだし。
これじゃ、矢口が悪ものみたいじゃんかよぉ。
もぉ…。
ムカツクなぁ…。
- 92 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時27分47秒
「…矢口ぃ、ゴメンなぁ?」
あぁ、もぉ。
なんで謝るの?
裕ちゃんは全然っ、全くっ、悪くないよ。
頑張ってくれたんだから
誉めるのが本当なんだよぉ。
今日はね
きっと運がなかったんだ。
だから行いのいい矢口もダメだったし
素直になった裕ちゃんも失敗になっちゃったんだね。
だから
誰も悪くないんだよ?
「ホンマ?」
「うん。だから、泣かないでね」
- 93 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時29分59秒
大丈夫だよぉ、矢口なら。
ちゃんと我慢できるよ、裕ちゃん。
だけどほら
この労いは期待してもOK?
「…頑張って…みる」
「裕ちゃんありがと〜!」
OKOK!
矢口は全然OK!
今日みたいな裕ちゃんがフルバージョンで見れるなら
このくらい我慢するのなんて苦にもならないって♪
- 94 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時34分36秒
ねぇ?って裕ちゃんに抱きついたら
えっ…あ、うん…って黙り込んじゃった。
可愛いよねぇ?
こんな裕ちゃん見ちゃったら
ぎゅーってしてあげなきゃ気が済まないじゃん?
もちろん、矢口は裕ちゃんを強く抱きしめた。
眼の先に止まった耳を少しなめたら
裕ちゃんが小さく唸った。
これ以上は
矢口の精神状態に悪い。
だから暫くただ抱きしめてるだけだったけど
不意に裕ちゃんの身体が重くなった。
あれって思って覗き込んだら…。
- 95 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時36分35秒
「……寝てる…」
どーなんだろう
寝ちゃうって。
さっきまでかなり危ないって言ってたのに
今の状況は大丈夫なんだろうか。
矢口には今とさっきの違いが
よく分からない。
ただ、なんとなくだけど
さっきよりも空気が軽いような気がする。
軽いって言うか、キレイ?
さっきはもう吸いたくないよぉって思ってたけど
今はもっと吸い込んでもいいかもって思ってる。
多分、今は大丈夫なんだろう。
- 96 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時38分37秒
「寝てはるんですか?…ま、ええけど」
みっちゃんが苦笑いでそう言った。
大丈夫なんだよねって訊いたら
今日はもう大丈夫そうやからって。
そう言った後、帰るわって。
荷物を取りに職員室戻るって言って
みっちゃんは部室を出て行こうとした。
けど、何かを思い出したらしく
扉の前で振りかえった。
「姐さんに伝言や」
美術室の方があたしが何とかします。
やけど、家庭科室の方ははお願いします。
みっちゃんはそう伝えてって言って
今度こそ出て行った。
なんかよくわかんないけど
頑張ろとか言ってたかも。
- 97 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時40分33秒
んで、残されたのは6人。
この状況で頼れるのって本当は圭ちゃん。
だけど、状況が普通じゃないので今回は別の人。
ごっつぁん?
大丈夫なんだよね?
「うー…多分。気持ち悪くないから」
でもねぇってごっつぁんは笑う。
ふにゃって。
それからなっちの方に倒れたかと思うと
耳元でなんかボソボソ言った。
んで次の瞬間…寝てる。
矢口たちがなっちに訊いたら。
「眠いから寝るって」
- 98 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時42分22秒
苦笑いしながらそう言うなっちだけど
口調が嬉しそうなのがいいよねぇ。
視線の先にいるごっつぁんは
気持ちよさそうに膝枕で爆睡中。
ほのぼのしてるよねぇ。
んで、ここには
もう1組のカップルがいるんだけど。
「…圭ちゃ〜ん♪」
「……わかったわよ」
幸せそうななっちと矢口たちを見て
紗耶香が半ば強制的に圭ちゃんにねだった。
仕方ないって口では言ってるけど
圭ちゃんだってまんざらじゃないのはわかってる。
なんだかんだ言ったって
好き同士だから。
- 99 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時44分33秒
それぞれのパートナーを膝枕して
その顔を眺めながら、ちょっと雑談。
「寝顔って…」
「可愛いよねぇ…」
矢口の言った言葉の後をなっちが繋いだ。
2人でね―って笑ってたら
ちょっと珍しいものが目に入った。
圭ちゃん頷いてる。
つまり、紗耶香の寝顔が可愛いってこと?
そんなこと言う人だっけ、圭ちゃんて。
- 100 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時47分10秒
なんだよ圭ちゃん
紗耶香が聞いてないと素直なんだ。
「調子に乗るからね、こいつ」
「…あー、確かに」
圭ちゃんと紗耶香がラブラブになってたら
今頃、矢口たちは紗耶香から逃げてる。
こいつの自慢話はムカツクから。
昔1回だけ聞いたことがあるんだけど
そのとき矢口、キレました。
んでそのあと裕ちゃん家に泊まっちゃったから大変。
やつあたりしまくって
裕ちゃんを怖がらせちゃった。
それ以降紗耶香がゴキゲンなときは
矢口たちは逃げてる。
- 101 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時49分02秒
「迷惑だったんだろうねー」
「躾ちゃんとすればいいじゃん」
嫌味っぽく圭ちゃんに笑ったら
それ以上にスゴイ反撃が返ってきた。
圭ちゃんて
もしかして2重人格?
「矢口はちゃんと躾てるんだ?」
躾って…
裕ちゃんは紗耶香じゃないもん。
紗耶香みたいに手が早いこともないし
ダメだよって言ったら次からは絶対しないもん。
矢口が躾る必要性なし。
紗耶香と違って
頭いいんですぅ。
「…そこまでじゃないと思うんだけど」
「えー?落第ギリギリが?」
- 102 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時50分20秒
矢口の追求に
圭ちゃんは悔しそう。
んで、なんとか逃げ道を探そうとしてる。
あ…見つかっちゃったみたい。
圭ちゃんの目が
蚊帳の外だった2人に向けられた。
ちょっとズルイなぁって思ったけど
それはそれで楽しいからいいか、って。
- 103 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時51分46秒
「それに、後藤よりはマシだし」
「えぇ?!ごっちん、そんなに悪いべさ?!」
あれぇ、なっちは知らなかったんだ?
でも、ごっつぁんの場合は
紗耶香とは違うかも。
だから、あんまり
心配は要らないかもしれないよぉ。
紗耶香は明らかに
点数が足りなくて落第ギリギリ。
でもごっつぁんは
出席日数が足りなくてだから。
ちゃんと
勉強はできるみたいなんだけどねぇ。
…うーん。
紗耶香よりも注意が必要?
- 104 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時53分43秒
「ちゃんと言っといてよ」
「もぉ、ごっちんダメだべさぁ?」
ごっつぁんは寝てるのに…
寝てる人に話し掛けてるなんて…。
なっちらしいよねぇ。
圭ちゃんと笑ったら
なっちがなんだべさぁ?!って。
- 105 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時55分58秒
なんか、このメンバーで話すのって久しぶり。
なっちはもう卒業しちゃったし
圭ちゃんは担任じゃなくなっちゃったし。
裕ちゃんから話は聞いてたんだけど
やっぱり自分で話す方が楽しい。
「んじゃ今日はこのまま…」
「夜更かしして暴露大会といくべ!」
実はほとんど朝に近かったんだけど
それでも矢口たちは話した。
矢口と裕ちゃんの出逢いとか
なっちとごっつぁんの告白とか。
真剣な話で今日のこととかも。
- 106 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月23日(金)15時57分55秒
矢口は裕ちゃんがあーゆー力持ってるの知ってた。
けどなっちと圭ちゃんと紗耶香は知らなかったから。
矢口も今日みたいなのは
初めてだったけどね。
ねぇ、裕ちゃん。
明日はちょっと疲れてると思うから
明後日は外にデートに行こうね。
晩ご飯も朝ご飯も矢口が作って上がるからさ♪
- 107 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月23日(金)15時58分31秒
- 終了
- 108 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月23日(金)15時59分47秒
- >49 名無し読者 さま
>毎日更新されているので、毎日くるのが楽しみになってます^^
毎日来てくださってるんですか?ありがとうございます!
- 109 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月23日(金)16時01分08秒
- 次は番外編。
- 110 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月23日(金)16時02分11秒
- PCがキゲン直してくれたみたいです。
- 111 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年08月23日(金)17時46分38秒
- 2度も、おあずけをくらってる矢口が少し可哀相(w
しかし、矢口をキレさせる市井の自慢話っていったい・・・?
- 112 名前:3105 投稿日:2002年08月23日(金)19時16分15秒
- お初です!毎日の更新すごいっすねぇ。
読む側としてはかなり嬉しいんでこれからも頑張って続けて下さい。
- 113 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)01時07分23秒
- 更新
- 114 名前:番外編 1 投稿日:2002年08月24日(土)01時09分58秒
- 平家先生の告白
( `◇´)<初の番外編やでぇ。
从#~∀~#从<息抜きも必要やもんなぁ。
- 115 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時10分58秒
やぐっちゃんたちに帰るわって言った後
あたしは同じ別館の中のある教室に来てた。
そこは、美術室。
姐さんがなんかやって出て行ったあの娘。
あの娘を救ってやりたいって気持ち。
姐さんの分もあたしが持つ。
- 116 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時11分32秒
「…さてと…どこやろ」
美術室に入ってすぐ
あたしはある物を探し始めた。
探してるんは、あの娘の腕。
そこにあるなんて保証はなかったけど
長年の感と美術室の気配がそう言ってる。
どっかにあるはずや。
この教室のどっかにある。
探し出して、ちゃんと成仏さしたる。
あの娘は好きでこっちのおるんやない。
多分いらん噂のせいで向こうに行けんのや。
- 117 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時12分18秒
言葉の念って怖いんやで。
その証拠に悪口が広がったらみんな困るやろ。
それはその言葉が持つ負の念が強いからや。
人間はそれを知らんと好き勝手に使う。
やからイジメなんていらんこと起こるし
それがなくならへんのもそうや。
1回負の念にとりつかれたら
なかなか元には戻れん。
負の念は気持ちいい人には最高らしい。
その味を知ってしまったらもうアカン。
後戻りはできへんようになってる。
- 118 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時13分12秒
それでも、この世の人間が同じ世界の奴らにするから
まだ辛うじてなんとか耐えれるんや。
それがもっと弱いもん。
例えばあっちの世界のもんとかは
縛り付けられて動けんようにまでなる。
あの娘がその1つや。
「んー……」
ほぼ教室の中を見終わった。
後は…。
「あそこだけか…」
教室の一番奥のところにある
ちょっと段差の上に作られた場所。
そこは外が見えるようになってて
主に写実画を描く生徒が利用するんやとか。
ちょうど、あの娘みたいな生徒がな。
- 119 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時13分51秒
うん、間違いなさそうやな。
そこに近づくに連れて
ある種の悪寒が背中を突き抜ける。
けど、怖いとかそんなんやない。
こっちに存在してたらアカンもんがある。
ただそれだけのことや。
「…ビンゴや」
そこにはペンを持って放そうとしない手。
もちろん、一般人には見えへんけど。
ちょっと赤くなってるんは
きっと血なんやろなぁ。
- 120 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時14分49秒
可愛そうに、とかは思わへんからな。
そう思ったらその念がまた、あんたを苦しめて
こっちから抜けられんようにするんやから。
大丈夫やで。
あたしはこれでもそこそこの腕やねんから。
任しとき。ちゃんとしたる。
- 121 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時15分34秒
『…画が描きたいの…』
どこからともなく聞こえてきたその声は
メチャメチャ可愛い女の子の声。
別に探すつもりなんかないから
そのままその声に語り掛ける。
描いたらええやん。
『…だって…手がないもの…』
あるやんか、ここに。
- 122 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時16分21秒
『…それは…使えないよ…』
そんなことないやろ?
あんたが探してたんはこの手やろ。
探しまわってたんはこれやろ。
他の人のもんやない、自分の手やろ。
『…だってもう…動かないよ…』
大丈夫やって言うたやろ?
ちゃんとこの手は動く。
あんたの望む通りに動いてくれるで。
- 123 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時17分33秒
手、貸し。
『…できるの…?』
あったりまえやろ?
あたしは平家のみっちゃんやで。
可愛い娘にうそなんかつかん。
よう見ててみ?
―――――……ほらっ。
『…ついた…よ…』
ちっちっち。甘いなぁ。
ついただけと違うねんでぇ。
ちゃんと動くんやから。
ほら、この筆持って、描いてみ?
『…描けるよ…描けるよ…』
そやろぉ?描けるやろぉ?
- 124 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時18分21秒
『…でも…噂は消えない…』
それについても心配は要りません。
今回のことでちょっと噂が再発しただけで
放っとけば七不思議は消えるから。
やから、今回のことは許したって。
姐さんも悪気があってしたんと違うねん。
あの人には護りたい人がおってん。
『…護りたい…人…』
そうや。やから、堪忍やで。
- 125 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時19分52秒
『…あの人も…言ってた…』
は?姐さんがなんて?
堪忍やで、ってか?
なに、なにがそないに面白いの。
この言葉?関西弁って言うんやけど?
変わってるやとぉ?!失礼な!
めっちゃ愛嬌あってええやんか!
『…うん…あの人に…あってる…』
………。
さっきから姐さんのことよう言いはるけど。
もしかして…?
『…あの人…好き…』
- 126 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時20分32秒
あ、アカンでぇ。
さっきも言うたけど
あの人には大事な人おるから。
は?わかってるって?
あの女の子、ちっちゃくて可愛いもんね。ってか。
ちっちゃくて可愛いってやぐっちゃんやんなぁ。
『…でも…生まれ変われたら…頑張る…』
あ、そうですかぁ…。
姐さんがモテルんは人も幽霊も変わらんって?
ええねぇ、可愛い娘ばっかりで。
え?あぁ、気にすな独り言や。
- 127 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時21分10秒
…うん、そやな。そろそろ。
『…お礼に1つ…』
知ってるはずだけど
七不思議の全ては本当じゃない。
そしてその中には
私みたいに自分の意思とは関係なしに
どうしようもないって子もいる。
だから、助けてあげて。
- 128 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時22分17秒
彼女はそう言って消えていった。
助ける?
誰をやねん。
操られてる子がおるっちゅーことか?
んーって悩んだけど答えなんか見つからへんから
あたしは次の目的を果たしに行くことにした。
ある意味、そっちの方が勇気がいる。
- 129 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時23分55秒
ピンポーン
「…はぁい?どなたですかぁ?」
「……平家、ですけど…」
インターホンに名前を言った途端
家の中であたふたし始めたお嬢さん。
ドタバタやばそうな音が聞こえてるけど…。
大丈夫なんかい?
あたしの心配をよそに
その娘はあっという間に出てきた。
「おっ!おはようございます!」
「………」
- 130 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時25分42秒
あたしかっておはようって
ちゃんと言いたかったけどやなぁ…。
せめて寝癖くらい直してくるとか…。
てゆーか起きとけよ。もう11時やで。
「…あ、あのぉ…どぉしたんですかぁ?」
んー…ええねぇ、その語尾の延び。
可愛いし、あんたらしい。
ん、せっかくテンション上がってるし。
消えん内に言うてまうか。
- 131 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時27分35秒
「なぁ…好きやで……松浦…」
「……ホントぉですかぁ?!」
ホンマホンマ、うそと違います。
この娘は松浦亜弥ちゅーてあたしのクラス。
こいつとはへんな縁やったんやけどなぁ。
好きなるとは思ってへんかったわ。
- 132 名前:回想@平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時28分44秒
松浦との出会いは最悪やった。
入学式の日に初めて会ったのが体育館の裏。
しかも堂々と入学式をサボっての昼寝中。
アホかこいつはって思ったわ。
『自分なにしてん?』
『…サボってますぅ』
そんなん見たらわかりますって。
あたしが訊きたかったんはなんでここにおんのよ。
なんで入学式でてへんのよってことや。
そう言うたら松浦がいきなり…。
- 133 名前:回想@平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時30分37秒
『あのぉ、先生のお名前はぁ…』
『あ?あぁ、平家先生やで』
それじゃあ平家先生!松浦と付き合って下さい!
……。
誰がそんなん即座に反応できんねん。
サボリの新入年生を見つけたら名前きかれて
そんで教えたら告白されましたって。
どこのドラマにあるんや。
『アホか、そんなん言うてんと体育館、入り』
『入ったら付き合ってくれますかぁ?』
- 134 名前:回想@平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時32分42秒
後はわけわからん会話の繰り返しやったなぁ。
それから松浦があたしのクラスやってわかって
そらもう、どないしよって思ったわ。
あたしがやれって言うこと全部に対して
それをしたら付き合ってくれますか?って。
なに考えとんねんこいつ。
- 135 名前:回想@平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時34分27秒
この時期の子供にはよくある憧れやと思った。
やから適当にあしらっとったんやけど
半年が経っても松浦はずっとその調子やった。
ことあるごとに好きですって。
それにあたしは応えることなく逃げてきた。
自分の気持ちが揺らいでることにも気づいてたけど。
それでも逃げきってた。
けど…
- 136 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時36分44秒
「好きや」
自分の気持ちをごまかすんはやめた。
相手の気持ちから逃げるんもやめた。
素直になったらこんだけ楽しい。
めっちゃスッキリした。
それに、松浦が腕の中にいてくれる。
これだけでも充分、勇気出した甲斐があるわ。
- 137 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時38分44秒
「…先生ぇ?」
「……あぁ、悪い…」
アカンなぁ、あたしは何でこないにタイミング悪いかなぁ。
そらさっきあんだけ力使ったで。
やけど、こないな時に来る必要なんかないやん。
せっかく両想いやでって言ってあげれたのに…。
アホ…。
「…先生…大好きですぅ」
うん、あたしも好きやでぇ…。
- 138 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時40分30秒
- ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
- 139 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時42分21秒
次にあたしが目覚めたんは
全く知らんベッドの上やった。
…は?
え、なに、どーゆーこと?
天井は見たことない色やし
起きあがって見たら部屋、知らんもんだらけ。
あたしが置きもせん家具とかあるし。
もうわけわからんようになって
メチャメチャ混乱してるあたしに
聞き慣れた声が聞こえてきた。
- 140 名前:平家先生の告白 投稿日:2002年08月24日(土)01時44分36秒
「あ、やっと起きてくれたんですねぇ」
「……松浦…?」
ってことは…ここは松浦のベッドかぁ?
「…平家…さん」
「え…」
あの…いきなりそれでいいんでしょうか…?
って、あの…もう1ついいですか?
なんで、あたしが下なんですか?
「平家さん…可愛いぃ…♪」
「や、あの…松浦ちゃーん?」
松浦は可愛く亜弥って呼んでくださいって言うて
あたしの服を脱がしていく。
あたし、姐さんのこと笑えんやん。
- 141 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)01時48分02秒
- >読んでる人@ヤグヲタ さま
>しかし、矢口をキレさせる市井の自慢話っていったい・・・?
さぁ、どんな話をしたんでしょうね?
でも矢口さんは市井さんと違って誰にも秘密でしたので
その辺のストレスなどからキレたのではと推測されます(w
- 142 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)01時49分52秒
- >112 3105 さま
>読む側としてはかなり嬉しいんでこれからも頑張って続けて下さい。
読んでいただいているのなら頑張らせていただきます!
- 143 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)01時50分57秒
- 番外終了。
- 144 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)01時52分30秒
「………ふぁ…」
差し込む朝日でアタシは目が覚めた。
ポケーとしながら腕時計に目をやると
午前6:30分過ぎ。
…んー?
頭になんや柔らかい感触を感じて
起きあがって見てみたら…。
可愛い顔して、矢口が寝てた。
- 145 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)01時55分14秒
「……あぁ…?」
イマイチ状況がわからん。
アタシが思うに
たぶん矢口が膝枕してくれてたんや。
それは別にかまへん。今まで何回もあった。
問題は目の前で寝こけてるこれや。
- 146 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)01時56分45秒
アタシの目の前には
同じような体勢で寝てる4人。
片方がもう片方を膝枕しながら
首だけ曲がって…苦しそうやなぁ。
なんやねん、コイツら。
誰も突っ込み入れられへんから
アタシが突っ込んだ。
そしたらなんや知らんけど笑えてきた。
- 147 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)01時58分25秒
「…おっ…?」
可愛い寝顔やなぁとか
突っついたらどーするやろぉとか考えながら
暫くその空間を楽しんでたときやった。
部室の前に、昨夜見た顔が現れた。
けど、昨日とは違う。
……みっちゃん、か…。
- 148 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)02時00分20秒
『…みっちゃん…?』
ん?あぁ、たぶんアンタを助けてくれた人や。
んーっとなぁ。
髪の毛が茶色くってぇ、ほっそい娘。
確か白のスーツ着てたんと違うかったかなぁ?
『…うん…その人…』
そうか、よかったな。
…んで、みっちゃんがちゃんとしてくれたのに
なんでアンタはまだここにおんの?
その手、繋げてくれたんやろ?
『…うん…』
- 149 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)02時01分53秒
あぁ、もしかして、動かへん?
みっちゃんはまだ詰めが甘いからなぁ。
そらすまんかったな。
みっちゃんの尻拭いっちゅーんはイヤやけど
アンタのためやったら一肌脱いだるわ。
手ぇ、貸し?
『…大丈夫…動くよ…』
動くんかい!
『…ふふっ…うん…動くよ…』
お?面白かったんか?
そうかそうか♪
やっぱりアタシのツッコミ最高やなぁ♪
アンタやっぱりええ娘やなぁ?
めっちゃ可愛いし。
- 150 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)02時03分32秒
『…可愛い…?』
可愛い可愛い!めっちゃ可愛いで!
やっぱりアレやなぁ、文化部って色白いし
ほっそりしてる娘とか多いんやなぁ。
アンタ美術部やったんやろ?
その手、めっちゃキレイやなぁ。
筆とか似合いそうやん。
…ん?なんや?
なんか言いたいことでもあるんか?
- 151 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)02時05分43秒
『…先生は…』
ちょい待ち、先生?アカンでぇ。
そんな呼び方せんといてぇや。
アンタはもうここの卒業生やねんから
先生なんて呼ばんでええねんよ。
気軽に裕ちゃんでええ。
ほい!裕ちゃんって呼んでみ?
『…ゆう……ゆう…ちゃん…』
はい、よろしい!
『…ふふ…面白い…人…』
そらどうも。誉め言葉やねぇ。
ほな、親しくなったところで話きこか?
- 152 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)02時07分06秒
『…どうして…助けてくれたん…ですか…』
助けたんはみっちゃんやろぉ?
アタシはここで寝こけてただけやん。
みっちゃんが頑張ってくれたんやんか。
『…あなたも…同じことをしようと…した…』
んー…まぁなぁ〜?
どうして?
うーん、そうやなぁ…。
アタシ、昔っからこんなことやってきててなぁ
理由があるとすれば、半分くらい癖やからかなぁ?
なんや、アンタらみたいなん見掛けると
手ぇ出さずにはいられへんっちゅーかなぁ…。
- 153 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)02時08分44秒
アタシの主張としてやなぁ
世の中のことには全部、意味があるねん。
自分が産まれてきたことにも。
自分が死ぬことにもや。
もちろんやけど、アンタと会ったことにも。
こないな力持ってるんもきっと意味がある。
んで、アタシなりに考えた意味がこれ。
この力で誰かを助けていけって。
そないにたいそうなこと言うてるんと違うよ。
ただ、他人にはできへんことで自分にはできるから
それをやるのが自分の義務なんと違うかなぁって。
- 154 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)02時10分46秒
『………』
イヤ、そないに真剣に聞かんでも…。
その他に理由がいるんやったら…。
そうやなぁ…後は趣味や。
こーゆーことしてると
アンタみたいな娘に会えるやろ?
イヤなやつまで助けるほどお人好しと違うからな。
アタシの好みに合わんかったやつは
悪いけど強制成仏さしてるし。
- 155 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)02時12分50秒
『…好み…?』
そう、好み。タイプ。
アタシの好みはアンタみたいに可愛い娘。
純粋そうで一途に好きになってくれそうな娘。
ちょっと派手な娘も可愛いと思うけどな。
ちゃんと話ができて
説得の通用する相手や。
とりあえず、ガリベン君やオヤジはアカン。
あーゆー類いのやつらは人の話をきかん。
自分の主張だけして理解してもらえんと怒りよる。
やから、アンタみたいな娘がええ。
- 156 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)02時14分25秒
『…私のこと…好きですか…?』
ん?そうやなぁ…
どっちかって訊かれたら好きやで?
ちゃんと話聞いてくれるし
聞き分けもええしな。
なにより…
笑ってる顔、可愛いもんなぁ。
『…私…―――です…』
……ちょ…ちょい待ち?
なんやって?
ちょっと聞こえへんかったんやけど…。
- 157 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)02時16分56秒
『…私…あなたが…好きです…』
………え?
好きって…は…?
アンタが、アタシを好きやって…?
え…あ…だから…えーっと…?
『…生まれ変わったら…頑張ります…』
…あー…はい。
……え…?なに?
ちょ…?!なにす…っ!!
『…ありがとう…』
………。
その娘は消えていった。
朝日があそこまで似合う幽霊なんか初めて見たわ。
- 158 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)02時18分54秒
「……触れた…やんなぁ…」
確かに触った感触があった。
アタシは呆然としながら
彼女が最後に触れていった場所を触った。
昨日からずっと取っていなかった口紅が
ほとんどその機能を果たさず薄く残る、そこを。
アタシ…どこまで弱いねん…。
ちゅーか…あぁ、もぉ…。
なんでこないな時だけ見られんねん。
ゴメンナサイ、矢口さん…。
- 159 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)02時20分55秒
「…今回は特別。あの娘、逝っちゃったし」
最後の思い出くらい、許すよ。
ホンマ?ありがとぉ。
やっぱり矢口は優しいんやなぁ。
アタシ、そーゆーとこ好き。
言われへんけど。
- 160 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月24日(土)02時22分07秒
「裕ちゃん…」
「ん?…………」
あの娘も柔らかかって気持ちよかったけど
やっぱりアタシには矢口が一番や。
なぁ、アンタ。
生まれてくるんやったら
矢口とは別の時代にしてな。
矢口、大好きやから。
- 161 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)02時23分39秒
- 終了
- 162 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)02時25分38秒
- 次は立て続けに番外編3つ。
- 163 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)02時26分30秒
- 順番はお楽しみってことで。
- 164 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月24日(土)03時07分21秒
- ワーオ、
こんな時間に更新されてるとは思ってなかったので、
なんか得した気分 w
- 165 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)12時53分12秒
- 更新
- 166 名前:番外編 2 投稿日:2002年08月24日(土)12時55分31秒
- 後藤の休日
( ´ Д `)<あはっ♪
(●´ー`)<楽しむべさ♪
- 167 名前:後藤の休日 投稿日:2002年08月24日(土)12時56分39秒
8月4日(日) PM 12:25
今日ゴトーはなっちとデート♪
待ち合わせして、お買い物して…。
お泊りして学校行くんだよぉ。
でも、ゴトーは今ちょっと困ってます。
待ち合わせの時間はPM 12:00ジャスト。
只今の時間は先に表示PM 12:25…26だね。
わかるかなぁ?
ゴトー、遅刻決定してます。
……なっちゴメンーーー!!!
- 168 名前:後藤の休日 投稿日:2002年08月24日(土)12時57分12秒
「はぁはぁはぁ…!」
ゴトーは走りました。
運動会でもこんなに走ったことない。
んで、普通なら最短距離でも10分かかる道を
その半分の5分で到着したんだよぉ。
スゴイっしょ?
ゴトーはやればできるんだよ?
ただ、授業とか出るの面倒くさいし
行事とか手伝うのもダルイんだよねぇ。
面倒くさいのやだもん。
そう言ったら昨日なっちに怒られたけど。
- 169 名前:回想@後藤の休日 投稿日:2002年08月24日(土)12時58分06秒
『ごっちん、ちゃんと授業いくべさ』
『え〜面倒じゃん』
土曜日になっちの家に泊まれなかった。
なのにその上、お説教されてしまった。
迷惑なことに圭ちゃんがバラしたんだって。
くそぉ…。
『今度サボったらもうデートしないべ』
『えーっ?!』
いくらなんでもそれはないよねぇ。
- 170 名前:回想@後藤の休日 投稿日:2002年08月24日(土)12時58分49秒
ゴトーはテストの点はいいんだよぉ。
でも授業に出てないから成績は悪いけどぉ。
確かにこれ以上はヤバイらしいけどぉ。
でもぉ、なっちとのデートは別問題じゃん?
ゴトーにとってそれは地獄だよぉ。
お願いだからそれはやめてー。
『…ちゃんと出るべ?』
『……う〜…頑張る』
曖昧にしたらなっちが怒った。
なんとか機嫌を直してもらおうと
ゴトーなりに頑張ったんだけどさぁ…。
ちょっとヤルことが違ってたらしくて…
なっちはもっと怒っちゃった。
それからはちょっと酷すぎた。
- 171 名前:回想@後藤の休日 投稿日:2002年08月24日(土)12時59分31秒
今日のデートもなくなりそうだったし
キライって言われちゃったし。
それでゴトーが落ち込んだら優しくしてくれたけど。
んで、ムリヤリ約束させられた。
『授業は出る』
『…は〜い』
怒ったなっちが可哀想だったから
もう怒らせないようにしようって思ったんだ。
- 172 名前:後藤の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時00分42秒
…ゴメンねぇ、なっち。
「…あれ〜…?」
待ち合わせ場所…あってる。
待ち合わせ時刻……過ぎてる。
…あれ〜?
- 173 名前:後藤の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時01分41秒
焦って行ったのに
そこになっちはいなかった。
もしかして怒って帰っちゃたのかなぁ…。
それともなにか急用でもできたぁ…?
どーしたんだろぉ。
ゴトーはもう一度見まわした。
そしたら、いた。
待ち合わせ場所からちょっと離れたところに
なっち……と、その腕を掴んでる男も。
…なっちに触るなっ。
- 174 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)13時03分18秒
- 視点が変わります。
- 175 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時04分35秒
「…っめて…ください!」
今なっちの目の前には3人の男の人。
ムリヤリ連れてきたイヤな人達。
- 176 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時05分39秒
待ち合わせ時刻から遅れること30分。
まだごっちんは現れない。
でも、なっちは怒らないよ。
遅刻はいつものことだから慣れてる。
…それになっちも遅れたから。
でも、今日はちょっと…。
ごっちんが遅刻魔だってことに腹が立った。
『ねぇ、1人?』
これで3組目だっけ。
確かにここは目立つけど
他にも女の子はいるっしょ。
ワザワザちっちゃいなっちに声かけなくても…。
- 177 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時06分38秒
最近はごっちんと一緒の時にされることはあったけど
なっち1人の時には少なかった。
だから、対処に困った。
そんななっちのことを勘違いして
照れてるよぉなんてバカみたいなこと言ってる。
軽い人ってキライ。
『ねぇねぇ、おれらと遊ばない?』
『…待ち合わせしてるんで』
そう言ったら女の子?って。
女の子だよ?
でも、キミ達より全然カッコイイ。
だから、キミ達なんてお断りだべさ。
- 178 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時07分35秒
プイってしてたら腕を掴まれた。
そのまま引きずられるようにして
勝手に連れて行かれた。
こんな時、誰も助けてくれないのが都会だよね。
どんなに叫んでも誰も手を出さない。
みんな見て見ぬフリで歩いていく。
都会の人って冷たい。
1部の人を除いて。
もぅ、ごっちんのバカ。
今度からは遅刻も許さないんだから。
- 179 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時09分52秒
「…放しなよ」
カッコイイけど。
- 180 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時10分30秒
「ねぇ、放しなって」
「…お嬢ちゃんも一緒に遊びたい?」
あ、この人達やっぱりバカだ。
ごっちんがムチャクチャ怒ってるの
あの表情とか目とか見てもわかんないなんて。
無言でなっちの方に近づいて来るごっちんは
手を伸ばしてなっちを掴まえた。
それからそのまま引っ張ってそこを抜けようとした。
けど、そうはいかないらしい。
3人のうちの1人がごっちんの前に出て
いやらしい顔してごっちんのことを見てる。
…この人、ムカツク。
- 181 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時11分55秒
「退いてよ」
「そうはいかねぇよなぁ」
いい身体してるなぁって言いながら
ごっちんの肩に触れようとした。
ごっちんはその手を払った。
それから触らないでよって低い声で言った。
たぶん、すごく怖い顔しながら。
そしたらその人がビクッて。
密かになっちは笑ってしまった。
そのときの彼の顔が面白くて。
だって、ビックリしたって言うより
本気で怖いって顔してたから。
さっきまでの威勢はどこへやら?
ナンパしてくる男ってこんなもんだよね。
口先ばっかりでさ
めちゃめちゃ怖がりなんだよ。
カッコ悪い。
- 182 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時13分35秒
「…んだぁ、ガキのくせに!」
あ、それ言っちゃダメだよ。
ごっちん、子供扱いされるの嫌うから…。
知らないよー。
- 183 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時14分40秒
「…だからなに?あんたらよりマシじゃん」
うわぁ、すごい。
3人に向かってそう言ったごっちんは
なっちの手を放して彼らを睨みつけてる。
……カッコイイ。本気で。
場違いだけどそう思っちゃった。
「やるっての?男相手に?」
「関係ないじゃん」
- 184 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時15分30秒
えっ、ちょっと待ってごっちん。
確かにごっちんはケンカ強いの知ってるけど
相手は男の人3人だよ?!
いくらなんでも不利だって!
「…なっち、大丈夫だよぉ」
え、うん、大丈夫だと思うけど…。
いやいや大丈夫じゃないべさ。
ごっちんの笑顔に騙されかけたべ。
ケンカなんかしたら怪我しちゃうし
ごっちん学校のこと考えなきゃ。
ケンカなんかバレたら退学だよ?
それはダメだって。
- 185 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時16分43秒
こーゆー時は警察に電話しましたからって言うのが…
「やっちまえ!!」
「なっち下がって!」
あぁ!あぶないべさ!!
反射的に目を瞑ったなっちの耳に
神様からの救いの声が聞こえてきた。
- 186 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時18分15秒
「なーにしとんのやぁ」
独特の関西弁は本当は愛嬌があるはずなのに
そのときはドスが利いてて怖かった。
なっち達が連れこまれた細い路地の入り口に
両手を腰に当てて立ってる人影。
なっちもごっちんもよく知ってる人。
裕ちゃんだった。
あ、隣に矢口もいる。
裕ちゃんは笑ってたけど…怖かった。
- 187 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時19分52秒
「あ、あんたまさか…?!」
「その娘ら、アタシの知り合いやねんけど?」
彼らが何かに気付いて縮こまったのを見て
裕ちゃんはそう言った。
近づいて来る裕ちゃんに
彼らが固まっていくのがわかった。
なんなんだろう、裕ちゃんって。
てゆーか、後ろのお兄さん達は誰なのさ。
- 188 名前:安倍の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時21分43秒
「なんか用やったん?」
裕ちゃんがさっきよりも笑顔を怖くして
彼らの前でニコニコ笑った。
したら、逃げた。
なんかよくわかんないけど
裕ちゃんもカッコイイよねぇ。
「ごっちん、ケンカはいかんのと違う?」
「だって〜」
だってやないのって怒られてる。
学校の外でまで先生の裕ちゃんを見てると
なっちは楽しくなっちゃうんだけど。
あんまり長いこといると矢口が怒るので
裕ちゃんはアカンよって言ってデートに戻っていった。
苦労かけます。
- 189 名前:2人の休日 投稿日:2002年08月24日(土)13時23分29秒
「…なっちも怒ってる?」
「……怒ってないよ?」
怒ってたけど、もういいや。
遅刻してきてヤな目にあったのは怒るけど
助けてくれたごっちんはカッコよかったから。
±0で許してあげる。
あ、でも。
代わりに、今日の夕飯はごっちんが作ってね。
「まっかせてよぉ!」
「うん。楽しみにしてるよぉ」
- 190 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)13時25分51秒
- >>164 名無し読者 さま
>こんな時間に更新されてるとは思ってなかったので
こんな時間に来られるとは思いませんでした(苦笑)
- 191 名前:番外編 3 投稿日:2002年08月24日(土)13時26分46秒
- 圭ちゃんのヤキモチ
ヽ^∀^ノ<ヤキモチ?
( `.∀´)<…。
- 192 名前:圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時27分27秒
……キョロキョロしないでよ。
「うーん…」
さっきからなに捜してるのよ。
って、どーせ可愛い女の子なんでしょ。
あんたが考えてることくらい…。
どうしてどうでもいいことだけわかって
本当に知りたいことはわかんないのよ。
なんで…。
- 193 名前:圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時28分49秒
「違うなぁ…」
私の隣でさっきから何かを探してる紗耶香。
自分からデートしようって言ってきたのにこれだ。
私のことなんて知らないって顔してる。
私と紗耶香は一応、付き合って…
えっと、そろそろ1年になるのかな。
出会ったのはちょっとした偶然だった。
- 194 名前:回想@圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時29分40秒
昨年度、私は2年生を持ってた。
そのクラスには矢口がいたんだけど。
そいつのせいでもある。
矢口の部は演劇部なんだけど
その部となぜか交流があったのが…
なぜか紗耶香の所属してる軽音部だった。
なんの繋がりがあるんだろうって思ったけど
どうやら昔の部長同士のせいらしい。
- 195 名前:回想@圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時30分11秒
同じような系統だった部長さん同士が
なにかの拍子でばったり意気投合。
それ以来、両方の部に差し入れまでする仲にって。
『類は友を呼ぶ』
聞いた話では両方落第ギリ。
補習もほぼ一緒だったらしい。
あんまり誉められた話じゃないけど。
- 196 名前:回想@圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時31分07秒
『矢口ー?』
『先輩だろぉが!』
HRが終わった教室にかけ込んできた
先輩を先輩とも呼ばない後輩クン。
私が紗耶香を見たのはそのときが初めて。
確かに、なんか私の部にいそうなタイプとは思ったけど
まさか本当に私が顧問してる部にいるなんて…。
『あれ?保田先生じゃないっすか』
『……なんで知ってるの?』
気づかなかったってのに問題があるけど
なにもその場で叫ぶことないじゃんって思ったよ。
ヒドイ!私とあなたの仲なのに!って。
- 197 名前:回想@圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時31分44秒
それがどんだけ波紋をよんだと思ってんのよ。
私は連日職員会議の議題だったんだから。
裕ちゃんには禁断の恋かぁってバカにされ
誰や?ってクラスまで見に行くし。
でも、あの頃って…
裕ちゃんも同じだったんじゃん。
苦労はわかってくれてたんだよね。
- 198 名前:回想@圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時33分17秒
それで私が紗耶香に気づかなかったのには
それなりにちゃんと理由がある。
なんと言っても軽音部はとんでもなく人数が多い。
だからバンドを組んでなかったら練習はできないし。
組んでても1週間に1回ってことになってた。
その練習に顧問がついてることなんて…。
ほとんど記憶にない。
副顧問が行ってるのも見たことないし
もちろん私も行ってない。
大きなコンサートイベント意外では
部員との会話なんてないに等しかった。
- 199 名前:回想@圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時34分13秒
後ろめたさがあったのは事実。
『これからは見に来てくださいね』
『……毎週、水曜日だっけ?』
だからちょっとはって思ったのと…。
その当時は可愛いって思えた紗耶香の笑顔。
それに私は騙されてしまった。
今ならわかる。
あーいう顔するときの紗耶香は
バカみたいなことを考えてるんだって。
- 200 名前:回想@圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時36分21秒
だけど、あの頃はそんなこと知らなくて
紗耶香に言われるまま、水曜日には部に出た。
水曜日しか出なかったから
他の曜日の娘たちのことはあんまり…。
人数が多いと困るんだよね。
他の部は足りないって言うけど。
- 201 名前:回想@圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時37分36秒
『聞いててよ!?』
『は?』
初めて行った部活の時。
不敵に笑って紗耶香は言った。
かと思うと、いきなりギターを弾き始めた。
なんでも自作の詩と曲だったらしく
試しに聞いてくれる人を捜してたんだって。
けど、それが問題作。
音楽をちょっとかじってた私にとって
それは騒音意外のなにものでもなかった。
- 202 名前:回想@圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時38分26秒
でも、それが育つのを見るのも楽しかった。
それ以来、暫く通い続けてる内に
紗耶香は私のことを“圭ちゃん”と呼ぶようになった。
これも矢口のせいらしいけど。
それなりに色んなこと話すようになって
…プライベートもたまにちょっとだけ話した。
私もやっと顧問だって思えたある日。
- 203 名前:回想@圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時38分59秒
『圭ちゃんはさ、付き合ってる人とかいないの?』
紗耶香は私にその質問をしてきた。
私はいないって即答した。
正直、なにが訊きたいのかわかってたけど
そんなこと訊かれても当時は困るだけだったから。
それ以上に追求があるなら逃げようとしてた。
けど、紗耶香はバカだから…。
『んじゃさ、市井を候補に入れといてよ』
『………なにバカなこと言ってんのよ』
- 204 名前:回想@圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時39分42秒
なんにも考えないでストレートに言ってきた。
それに私は冗談でしょ?って返した。
だって、それ以外に思いつかない。
紗耶香は生徒で、私は教師で。
立場を考えると当然だと思ったし
紗耶香のことだからいつもの冗談だと思った。
でも…
なぜだか気持ちのことは出てこなかった。
それも、今ならわかるけど。
あの時すでに私は紗耶香が好きだった。
だから気持ちのことで言い逃れは出来なかったんだ。
だって、好きって感じてた。
- 205 名前:回想@圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時40分23秒
『バカじゃないよ。正直なだけ』
『…バカ正直って言葉、知ってる?』
あ、そうかって紗耶香は笑った。
告白なんかなかったみたいに。
だから私も本気にしなかった。
本気になんてできなかった。
なのに紗耶香はその笑顔でこう言った。
『絶対、いちーに夢中にして見せるから!』
いちーの腕をなめんなよって。
私は、はいはいって冷静に受け止めてたけど…
ううん、冷静になってるフリをしてたけど…。
涙が出そうなくらいに嬉しかった。
- 206 名前:回想@圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時43分22秒
私の気持ちは決まってたから
紗耶香が本気できたら逃げられなかった。
すぐに捕まって、本音を言ってしまった…。
そのせいで今、こうなってるんだけど。
- 207 名前:圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時43分52秒
そのおかげでにするか。
「……おっかしいなー…?」
でも、こいつは手が早い。
それは学園内でも外でも関係なく。
この1年でイヤってほどよく知った。
そのせいでイヤな感情も思い出した。
“ヤキモチ”とか。
- 208 名前:圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時44分22秒
「なに捜してるのよ」
「…んー?ちょっとねぇ…」
可愛いウェイトレスさんのいる喫茶店?
キレイなレジ係のいるコンビニ?
どっちにしても
見つかり次第、私は帰るわよ。
誰とデートしてると思ってるのよ。
バカな所はかわんないんだから。
鈍感正直バカ。
「…あった!」
よかったわねぇ。
それじゃ、バイバイ。
……なによ?
- 209 名前:圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時45分17秒
紗耶香が進む方向とは逆に進もうとしたら
急に腕を掴まれて引き止められた。
振り向いたら泣きそうなバカ。
なんでそんな顔してるのよ。
私が泣かしたみたいじゃない。
「なんで帰るの…」
「…捜しものは見つかったんでしょ?」
見つかったよ?
だからってなんで帰るの?
いちー、圭ちゃんのために探したんだよ?
- 210 名前:圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時45分48秒
そんな嬉しいこと泣きそうな顔で言われたら
なんだか私が悪いみたいに思えるわよ。
待って、それより紗耶香、なんて言った?
…私のため?
紗耶香の捜しものは私のため?
なに…一体なにを捜してたの…?
- 211 名前:圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時46分34秒
「前にさ、欲しいって言ってたよね?」
紗耶香が指差した先には
私が好きそうな出で立ちの店。
名前からするにたぶんアクセサリーの専門店。
しかもブランドとかじゃなくて
誰でも気軽にってカンジの雰囲気の。
確かに言った。
ピアスが欲しいって。
けど、それは何ヶ月も前の話で…。
なんで今頃になって…。
「探すのに苦労しましたよ!」
圭ちゃん好みのお店で
圭ちゃんに似合いそうなピアスってのは。
- 212 名前:圭ちゃんのヤキモチ 投稿日:2002年08月24日(土)13時48分34秒
紗耶香は楽しそうに笑った。
昔と変わらないあの笑顔で笑った。
なによ、もう。
あんたが考えてることなんてわかんないよ。
…それでも……わかんなくてもいいよ…。
こうして形にしてくれるから。
「似合うかなぁ?」
「…似合うわよ…」
紗耶香が似合うって思うんだったら。
- 213 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)13時50分45秒
- 3つ目いきます。
- 214 名前:番外編 4 投稿日:2002年08月24日(土)14時07分05秒
- 頑張れ裕ちゃん!
从#~∀~#从<意味深やなぁ…。
(〜^◇^)<そうだねぇ♪
- 215 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時09分07秒
「裕ちゃーん!ご飯ないじゃん!」
裕ちゃんの家にきて1発目。
矢口は叫んだ。
そりゃ叫びたくもなるってもんだ。
いつものことだけど冷蔵庫は空っぽ。
そこらじゅう開けたけどお米もなし。
今まではこれでもまぁいっかって思ってたけど
今日はもう黙ってられない。
これじゃ裕ちゃん、身体壊すよ。
「どーやって生きてるのさ」
「コンビニ弁当と人の奢り」
当然なことをきいた矢口に
裕ちゃんはそんなん簡単やろって。
- 216 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時09分51秒
コンビニ弁当はまぁ許そう。
けど、人の奢りってなに。
裕ちゃんは矢口意外の誰かと
飲んだり食べたりしてるんですって?
それはしていいことだと?
裕ちゃんに詰め寄ったら
あっさりゴメンナサイって。
それでいいのか、年上のお姉さん。
- 217 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時10分22秒
「いつも通り買いに行くしかないね」
「…ゴメンナサイ」
いいよ、全然。
代わりにこれ、貰うから。
そう言って矢口は
裕ちゃんの首に腕を回す。
ビックリしてる裕ちゃんをムシで
いつものようにチュって。
これで半分は許してあげる。
もう半分は帰りの荷物、よろしく。
「………」
「行くよぉ?」
本当に頑張る気はあるんだろうか。
- 218 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時11分07秒
実は矢口かなり期待してます。
今日の朝てゆーか昨日夜に言ったセリフ。
あれで期待するなって方がムリなんだって。
あの後なっちたちにからかわれたけど
真っ赤になった裕ちゃんに負けて逃がしてくれた。
それから2人で裕ちゃん家まで帰ったんだけど。
帰ってるときの裕ちゃんはいつもと一緒。
矢口が腕組もうとしたら恥ずかしそうに逃げるし
ちゅうしてって言ってもしてくれなかったし。
なんか、矢口だけ盛りあがってない?
「…矢口ぃ、なにつくんの?」
矢口の考えてることなんて
全然わかんないんだね。
- 219 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時11分49秒
なに作るって?
裕ちゃんの食べれるもの。
裕ちゃんが文句言わないもの。
「ほな湯豆腐しよ」
「…夏に?」
一体どんな感覚してるんだろう。
この暑いのに湯豆腐なんて…。
暑いからええねんって?
裕ちゃんアホだよ。
頭沸いてんじゃない?
「なんやねんイヤなんかい」
「……いいけどさ」
ちょっとむぅって顔して訊かれたら
矢口に反論なんてできない。
- 220 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時12分25秒
どーせなに言ったってきかないんじゃん。
好き嫌いが多すぎるっての。
矢口まで偏食になっちゃったよ。
「けどさぁ、湯豆腐って料理する必要ある?」
矢口、晩ご飯作る気できたんだけど
料理のしようがないことない?
お豆腐洗って切って。
お湯沸かして。
ポイって放り込んでおしまいだよ。
なんか、料理のできないお嫁さんみたいじゃん。
- 221 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時12分58秒
「簡単でええやん」
…いいよ、別に。
反対しなくなった矢口を見て
裕ちゃんはレジまで嬉しそうに歩いてく。
そんな裕ちゃんを見てると
矢口まで嬉しくなってきちゃう。
いっか別にって思えてくる。
いいんだよ、料理とかそんなのはさ。
問題はもっと違うところだって。
今夜はどーするんですか。
「……あれ…」
- 222 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時13分30秒
ちょっとボーっとしてた矢口の前から
突然、裕ちゃんの姿が消えてた。
さっきまでそこにいたのに。
おかしい…。
んぅ、落ち着け矢口。
確かに裕ちゃんは嬉しそうに歩いてた。
んで、その先にはレジがあるのはわかる。
ならどうして消える?
晩ご飯の材料持ってどこ行くっての?
普通なら真っ直ぐ目の前のレジに……
そこで、矢口はあることに気づいた。
レジのすぐ手前にはもう1つ商品コーナーがある。
そのコーナーの上にはプレートが。
『ワイン ビール 日本酒』
……待てこら。
- 223 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時14分23秒
慌てて矢口はそこにかけ込んだ。
そしたら、案の定。
ビールを手にとってる裕ちゃんがいた。
「あ、矢口…」
矢口に気づいた裕ちゃんは
手の中のビールをカゴに入れる。
そのまま日本酒まで入れようとする。
……こんにゃろう。
ちょっと頭にきた矢口は
裕ちゃんの前まで早足で近づいた。
そしてカゴの中のお酒類を手に取り
どんどん元の棚に返していく。
- 224 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時14分59秒
それを見て裕ちゃんが声をあげる。
「ちょ…なにしてんよっ」
「見てわかんない?返してるの」
そうやなくて!って。
裕ちゃんが最後の1本を持った矢口の手を止めて
なんでそんなことするんって訊いて来た。
ふーん、覚えてないと。
矢口が前に裕ちゃんとした約束を
裕ちゃんは覚えてませんと。
それでいいと思ってるんだ?
いいわけないじゃん。
許さないよ。
- 225 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時16分58秒
「前に言ったよね」
「…今日くらいは許してや…」
ダメ、絶対に許さない。
約束覚えてるのに許されるって思ってる?
前に裕ちゃんと約束した。
矢口が泊まるときは呑まないって。
理由は簡単なんだけど
呑んだら裕ちゃん寝ちゃうから。
矢口としては非常に困ります。
暫くまもってたから大丈夫だって思ってたけど
どうやらまだまだダメみたいだね。
「だってそんなん…矢口ズルイやん…」
- 226 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時17分28秒
態度を変えない矢口に
消えそうな声で裕ちゃんが訴える。
彼女が言ってるのはたぶん
この約束をしたときの状況のこと。
この約束をしたのは実は……中。
我慢できなくなってる裕ちゃんにイジワルして
約束できないならしてあげないって。
直接的なおねだりじゃなかったから
裕ちゃんはすぐに折れた。
- 227 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時18分08秒
うん、ズルイとは思うけど仕方ないじゃん。
そうでもしないと約束しないもん。
ただでさえ偏食で健康とか気を遣ってるのに
そのうえ酒豪ってどうなんだよ。
不健康人間まっしぐらじゃん。
「なぁ1本だけぇ」
必死に頑張ってるけど、ダーメです。
お酒をムリヤリ元に戻して
足の重くなってるアホを連れて行く。
レジでお会計してもらってても
裕ちゃんはまだ文句言ってる。
買い物袋を抱えて帰るときでも
裕ちゃんは矢口と目を合わさない。
そんな裕ちゃんに怒りを通りこして呆れてしまった。
- 228 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時21分24秒
どーしてもお酒が呑みたかったらしい裕ちゃんと
どーしても呑んでほしくなかった矢口と。
微妙な空間がいたかった。
「………」
お互い無言のまんまでのご飯。
本当は楽しいはずのご飯も
裕ちゃんがこんなんじゃつまないよ…。
作ってる最中も作り終わった後も
裕ちゃんはずっと矢口のこと怒ってるみたいで
なんにも言ってくれないしムシしてるようにも見える。
そんな裕ちゃんに矢口は素直になれなくて
話し掛けることをしなかった。
てゆーか、矢口が悪いの?
確かに裕ちゃんはお酒がすっごい好きだけど
どんな状況であれ矢口との約束だよ?
なんかさ、こんな言い方すると更にムカツクんだけど…。
矢口よりお酒の方がいいわけ?
- 229 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時23分12秒
「…片付け、やるよ」
なんかそうやって考えちゃうと腹が立ってきて
さっきよりももっと不機嫌でそう言った。
裕ちゃんはなんにも言わない。
その態度もムカツク。
ちょっと乱暴に食器とかを流しに置いて
お鍋を取りに行こうとしたら裕ちゃんが持ってきてくれた。
ありがとうって言ったけど
笑ってなかった。
裕ちゃんの顔が見れなくて
洗いものにムリに集中しようとしたら…。
- 230 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時24分33秒
後ろから抱きしめられた。
「…裕ちゃん?」
「……ゴメン…」
へ…?今、ゴメンって言った?
矢口の肩に頭を乗せて
裕ちゃんはぎゅって抱きついてくる。
その腕の力は弱々しくて…
なんか、可哀想に思えてきちゃった。
だから矢口は振り返って
裕ちゃんの顔を覗きこんだ。
「謝るくらいならするな」
「……ゴメンナサイ…」
泣きそうな顔でそう言った裕ちゃん。
ちゃんと反省してるみたい。
なんか可愛いぞぉ。
- 231 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時26分31秒
別に約束破ろうとしたことに対して
矢口は怒ってるんじゃなかったんだけどなぁ。
矢口とお酒とどっちが大事?
そうやって訊いたらどう答えるかな。
なんかちょっと気になるかも…。
けど答えてくれるのかなぁ…。
いいや、訊いちゃえ。
「矢口よりお酒の方がいい?」
「……矢口の方がいい…」
顔は見せてくれなかったけど
裕ちゃんは小さな声でそう言った。
- 232 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時27分24秒
素直でよろしい。
けど、それだけで終わると
簡単に許しちゃうことになる。
だから、ちょっとイジワル。
「じゃ、なんで言うこときけないの?」
「………」
あらら、黙り込んじゃった。
いつものことだから慣れてる矢口です。
これくらいじゃ騙されない。
なんか理由があったんでしょ。
じゃなきゃ矢口の言うこときかないで
ムリヤリお酒買おうとなんかしないもん。
あら、ちょっと自惚れすぎ?
- 233 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時28分09秒
「……ゃもん…」
ちゃんと聞こえなかったけど
裕ちゃんはなんか言った。
たぶんそれは、矢口の予想外の言葉。
聞こえなかったよって催促すると
難しそうな顔してからもう一度言ってくれた。
「……勢いが…欲しかったんやもん…」
勢い?は?
「…なんの?」
「……約束の…」
約束って…。
なんだよぉ…頑張る気はあるんじゃん。
ただ、ちょっとやり方が問題だけど。
- 234 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時29分06秒
お酒の力を借りないとできないってのはって思うけど
裕ちゃんは裕ちゃんなりに頑張ろうとしてた。
それを知っちゃった矢口としては
なんか手助けしてあげたくなっちゃうじゃん?
可愛いよねぇ…もぉ。
「なに?裕ちゃんはどーしようとしてたの?」
「……やから…その…」
逃げようとして裕ちゃんがいい訳つけてるけど
今日の料理器具で即座に洗う必要があるのはなし。
逃げるための口実はないよぉ。
裕ちゃーん、どーするの?
昨日の夜みたいにして誘ってくれるの?
それとももっと過激にいく?
矢口としてはねぇ…
そーだ。いいこと考えちゃった。
- 235 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時30分37秒
「…ねぇ、今日は裕ちゃんはしてよ」
「へっ?!」
うん、その反応で決定。
今日は裕ちゃんがすること。
いいねいいねぇ。なんか嬉しい。
あれじゃん、ほら。
抱かれたのは矢口が初めてじゃなくてもさ
今日してくれたら抱いたのは矢口が初めてじゃん。
それいいじゃん。ねぇ。
1個でも裕ちゃんの初めてになれるって嬉しい。
やっぱり約束はちゃんと果たしてもらうってことで
今日は裕ちゃん頑張って下さいな?
- 236 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時31分51秒
「ア、アタシがするって…や、ムリやって!」
「大丈夫だよぉ。矢口がリードしてあげるから♪」
矢口、これにかけては自信あるから。
実績がメチャクチャあるもん。
あ、相手は全部、裕ちゃんだけど。
はいはい、決まったら覚悟を決めましょう。
ほら、裕ちゃんこっち来て。
ベッドルームはこっちだからねぇ。
いつもならシャワー浴びて
先に浴びた矢口がベッドに入ってるんだけど。
今日はそんなことしてたら
裕ちゃんが逃げちゃいそうだし。
いいよね、大丈夫だよ。
それに、どーせ汗かくんじゃん。
- 237 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時33分14秒
「や、やぐち…ちょっ…」
いいからいいから。
はいこっち来る。はい座って。
- 238 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時35分12秒
ベッドの端に2人で座った。
服はどうしようか悩んだけどするの裕ちゃんだし
初回サービスってことで脱いであげた。
もちろん脱がしてあげたし。
オロオロしてる裕ちゃんを抱きしめてから
キスしてベッドに押し倒す。
裕ちゃんを見つめた後…。
ながーいキス。
はなれてもう1回。
それからどんどん回数を増やして
間隔を短くしていって。
開かせた唇に割って入る。
- 239 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時36分30秒
ここまではいつもと一緒。
ここからは裕ちゃんに頑張ってもらう。
「…んっ…やぐち?!」
キスしたままじゃやりにくかったから
仕方なしに1回だけ離れた。
それから裕ちゃんに抱きついて
クルって回ってお互いの身体を反転。
上下を入れ換えた。
うわぁ…初めてする体勢かも。
- 240 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時37分46秒
裕ちゃんが上になってて
矢口の背中にベッドがある。
なんかすっごい違和感がる気がする。
見上げる視線はけっこう日常ではあるのに
こんな時になると気分がかわっちゃう。
なんか、ぼぉってなる。
「大丈夫だよ…」
わかんなかったら矢口みたいにすればいいから。
いつも矢口が裕ちゃんにしてるみたいに…。
そう言ったら裕ちゃんが真っ赤になった。
どうやらいつものことを思い出したらしい。
…アホだ。
- 241 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時40分11秒
けど、真っ赤になりつつも
ちゃんと矢口の言うことはきいてる。
チュってキスしてきてくれて
そのまま首筋をなぞられる。
鎖骨からゆっくりと肩の方に移動して
肩にかぷって噛みついてきた。
うん。矢口のこと覚えてるねぇ。
矢口みたいにしていいよっていったから
とりあえずやるだろうとは思ってた。
違うことされてもムカツクじゃん。
矢口がやったことそのままやってくれてる。
そんな裕ちゃんが可愛くなっちゃった。
- 242 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時41分47秒
「…ぅふ…そ…だよぉ…」
うん…いいカンジだよぉ…。
矢口の胸の突起を裕ちゃんが口に含んでる。
もう片方は手でしてくれてる。
昔、数えるくらいだけど
試しに裕ちゃんにしてもらった。
それ以来の感覚。
なんか久しぶりに感じる気持ち良さ。
てゆーか、矢口、実は初めてだよ。
意外とか言うなよ、そこ。
- 243 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時43分03秒
裕ちゃんに出逢ったのが高校2年生で。
うちの学校って鉄壁の女子校。
男の子との交流なんてなかったもん。
んで、やっとできた恋人さんは臆病者で
なかなか手を出してくれなかったし。
高校3年生で初めてって珍しいよ、今は。
あ……っ。
「…やぐち?」
「…いい…大丈夫…」
芯に触れられた瞬間、強張った身体。
裕ちゃんの心配そうな声で
しっかりしなきゃって思った。
……どっちが抱いてるんだろう…。
- 244 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時43分47秒
「…んぁ…っ…」
裕ちゃんがゆっくりと入り口を撫でる。
たぶん矢口がやってる通りなんだろうけど…。
かなりじれったい…かも…。
これで裕ちゃんはよく耐えたもんだ。
矢口よりも経験があるはずの裕ちゃんが
これでよく矢口のイジワルに付き合えたねぇ。
マジに感心します。
…けど…矢口は欲張りだから。
- 245 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時44分29秒
「矢口…?ここ…?」
「う…ん…そうだよ…」
初めてのことに震える裕ちゃんの肩。
矢口はそこに抱きつきながら
裕ちゃんの指に先を急かす。
矢口とは違う素直な裕ちゃんは
矢口の催促に従ってくれた。
「…あっ…!」
矢口の身体に鈍い痛みが走る。
捕まる腕に強く力が入る。
泣きたくなんてないのに涙があふれる…。
- 246 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時45分09秒
う…そぉ…めっちゃ痛いじゃん…。
なんで裕ちゃん…これで感じれるのさ…。
矢口、かなりヒドイことしてたんじゃない?
痛みのせいでちょっと弱気になった矢口に
裕ちゃんは心配そうに触れてくる。
その優しさが伝わってきたから
鈍い痛みなんて感じなくなってきた。
そしたら、今度はもっと厄介なものが生まれた。
……あ…?
…な…に…これ?
裕ちゃんの指がゆっくり動いてるところから
動きに比例するように広がる感覚。
胸がギュッとなって…
さっきとは違う痛みみたいなものがある。
心臓が…破裂しそう…。
- 247 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時45分55秒
「……そろそろ…?」
訊くな、アホ。
抱きつくってゆーよりはしがみつくように
矢口の腕は裕ちゃんの身体に回される。
早くなってくる動きに
目が回って視界が歪んできた。
うん…そろそろヤバイ。
- 248 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時46分31秒
「矢口……好きやで?」
「んんんぅ…っ…あっ…!」
全身が強張って…緩んだ。
ゆっくりと裕ちゃんが横に寝転がる。
だけど矢口は裕ちゃんの方を向けない。
情けないけど…動けない。
…やっぱり。
やっぱり、技術より愛情だよ。
初めはあんなに痛かったのに
裕ちゃんの顔見たらなくなっちゃったもん。
- 249 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時47分11秒
裕ちゃんは最後の最後まで弱くって
イク前に聞いたセリフもきっと“?”がついてる。
抱いてもらってるのにリードして。
でもまぁ、気持ち良かったし
裕ちゃん頑張ったしね。
今回はこれくらいで許してあげるか。
- 250 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時48分30秒
「……なんで裕ちゃんが真っ赤なの」
「…や、だって…」
薄い夏用の掛け布団に丸まってる裕ちゃんは
小さな照明でもわかるくらいに真っ赤。
これじゃいつもと一緒じゃん。
よし、矢口は決めたぞ。
今回はこれで許してあげるけど
裕ちゃんが慣れるまでは続けよう。
ほら、矢口も味を知っちゃったし…。
ゆっくりでいいからせめてさ
終わった後にキスくらいできるまでにはなろうね。
- 251 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時49分42秒
- ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
- 252 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時50分16秒
「なーにしとんのやぁ」
「……あーもぉ…」
裕ちゃんと外でデートするとこれだからイヤだ。
- 253 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時51分25秒
次の日のお昼頃。
場所はカップルたちの待ち合わせの名所。
矢口と裕ちゃんはそこを通りすぎて
その先にある雑貨屋さんに行こうとしてたのに。
途中で裕ちゃんの悪い癖。
女の子が2人、絡まれてる。
細い路地に連れこまれて逃げられないみたい。
けど、周りの人はなんにもしない。
こんな状況になると
裕ちゃんはお節介になる。
……好きだけど、そーゆーとこも。
- 254 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時52分59秒
矢口は遠巻きに見てようと思って
路地の入り口付近で立ってることにした。
で、そこから見えた女の子たち。
…あ、ごっつぁんとなっちじゃん。
「あ、あんたまさか…?!」
裕ちゃんもそれに気づいたらしい。
楽しそうに知り合いになにすんのって口調。
そこでやっと裕ちゃんの正体に気づいたアホが
焦りながらビビッてる。
それを合図に他のアホも小さくなる。
完全に相関図が浮かびあがった。
- 255 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時54分25秒
きっとアホどもが怖がってるのは裕ちゃんだけじゃなくて
後ろに体格のいいお兄さんたちがいるからもある。
あの人たちより裕ちゃんの方が強いけど。
「なんか用やったん?」
上下関係ハッキリした上での笑顔。
ムチャクチャ怖いって。
あ、逃げた。
- 256 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時55分45秒
アホたちは勝てないってわかって逃げてきた。
ちょうど路地の入り口に立ってた矢口の脇を通る時
スンマセンって必死に謝ってきた。
いや、矢口に謝られても…。
処分は裕ちゃんが決めることだし。
- 257 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時57分24秒
「ごっちん、ケンカはいかんのと違う?」
「だって〜」
奥の方でさっきまでとは違う争い。
裕ちゃんにごっつぁんが怒られてる。
学校外での先生の裕ちゃんは
正直矢口はあんまり好きじゃない。
だから、早く返してよって思ってたら
意外に早く裕ちゃんが帰ってきた。
裕ちゃんなりの気遣いらしい。
- 258 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)14時59分05秒
「ゴメンなぁ?」
「いいよ、全然」
ちょっと申し訳なさそうな裕ちゃんに
矢口はニコッて笑いかける。
裕ちゃんの気遣いが嬉しかったのと
あーゆー時に助けれる優しさと勇気が好きだから。
今日は裕ちゃんえらいね。
もちろんそれだけじゃないけど…。
「今日は優しくしてあげるね♪」
「えっ?!」
- 259 名前:頑張れ裕ちゃん! 投稿日:2002年08月24日(土)15時01分30秒
今まであんまり優しくなかったから
それに対する矢口なりのお詫び。
それと、昨日のお礼もかねて♪
んでちゃんと実行するのが矢口のいいところだよ。
なんかもぉ、メチャクチャ優しかったじゃん。
だって裕ちゃんが泣かなかったもん。
…別の意味では泣いたけど?
んー、たまにはしてあげた方が良さそぉ…。
そんなことを実感する日曜日でした。
- 260 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)15時03分07秒
- 終了
- 261 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)15時04分48秒
- なかなか疲れましたね。
- 262 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月24日(土)15時06分13秒
- 次からやっと文化祭ムード。
- 263 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月25日(日)00時19分35秒
- 更新
- 264 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時20分26秒
今日のあたしは
ちょっとキゲンがええ。
「おはようございますぅ」
「あ、おはよう…」
朝からこんなんでええんかって言われたら困るけど
嬉しいもん、どーしようもないやんか。
- 265 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時21分04秒
あたしは今、夏休み恒例の登校日のため出勤中。
でも、今までとはちょっと違う。
隣には可愛い可愛い
あたしの……恋人さん…♪
別に松浦と登校するのは珍しくない。
だって、毎日のように待ち伏せされてたから。
今までは先生と生徒やったけど
今日からは違うもんなぁ。
もう、行動の1つ1つが可愛いねんて…!
「…あ、そや松浦」
「なんですかぁ?」
小躍りでもしそうになってたあたしやけど
あることを思い出した。
アカン、忘れるところやったわ。
浮かれすぎはアホになるなぁ。
- 266 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時21分38秒
あたしは登校途中の生徒たちにバレへんように
松浦をちょっと隅の方まで連れてきた。
それから1つだけ約束させた。
学園では今まで通りにすること。
「…なんでですかぁ…」
「あ、いや、だからなぁ?」
途端、泣きそうになった松浦に焦る。
- 267 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時22分15秒
そらあたしかって学園では他人のフリやなんて
そんなんイヤでしゃーないよ?
けど、うちの学園って恋愛禁止やん。
しかもあたしと松浦って先生と生徒やん。
両方、女やし。
そらあたしは気にせんけど
なかなか禁断の恋やと思わん?
「…お弁当ぉ…一緒に食べたいですぅ」
ぐっ…。
松浦はそのままの表情で近づいて来る。
見上げた視線。
伸びた言葉。
甘えた仕草と声。
…平家さんにどう頑張れと?
- 268 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時22分52秒
「それくらいなら…大丈夫やから」
「はいぃ!中庭がいいですぅ!」
中庭?人、多いなぁ…。
いや、全然ええよ…中庭大好き。
はいはい…迎えに来るって?
わかりました、大人しく待ってます。
「それじゃあまたぁ♪」
「はいはい…」
つ…つかれたぁ…。
本当に嬉しそうに走っていく松浦。
それ見てたらこっちまで嬉しくなってきた。
…やっぱりごっつ可愛い…
- 269 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時23分34秒
松浦とわかれた後すぐ
職員室に入ったら姐さんに捕まった。
「ズルイことないか?」
「…なんのことです」
惚ける気かいってすごまれて
そんな気はありませんって言うた。
姐さんが言うてるんは家庭科室の窓とかやろ。
- 270 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時24分13秒
美術室はどうにかするから
家庭科室の方はお願いします。
そう頼んだんは金銭的な問題が絡んでくる。
だって美術室やと自分が疲れるだけやもん。
でも家庭科室やとお金かかるやん。
いや〜ありがとうございました。
「…まぁええわ。それより…」
姐さんがそう言ったとき、目の端に映ったんは
自分の机から立って向かってくる圭ちゃん。
いやな笑いかたしてるし。
「…みっちゃんの好みはあれかぁ♪」
「意外だったわね」
…やっぱり見られてたか。
- 271 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時24分50秒
いや〜な視線を感じてはいたんやけど
松浦がおったから放っとかれへんかったし…。
このぶんやと一緒に登校してると思われる
やぐっちゃんと紗耶香も知ってるなぁ…。
やぐっちゃんと紗耶香なぁ…。
なんや初日からあたし、ヤバイやん。
あの2人にバレてもうたら…。
顔面蒼白になってたんやと思うあたしに
姐さんが苦笑いで言うてきた。
- 272 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時25分28秒
「大丈夫やって」
「2人ともちゃんとわかってるから」
アタシらみんな立場、一緒やねんからって。
あぁ、そうやったね。
姐さんも圭ちゃんも先生で
やぐっちゃんも紗耶香も生徒やったわ。
なんや、仲間いっぱいおるやん。
そう思ったらめっちゃ気が楽になった。
それから色んなこと突っ込まれたけど
職員会議があるからってなんとか逃げきった。
- 273 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時26分08秒
3人で笑ってたら不意に誰かが扉を開けた。
そのとき入って来た夏の朝日に
なにかが反射してあたしらの目に映った。
それを先に見つけたんは姐さん。
「圭坊、そのピアス…」
「あ、ホンマや、新しいやん」
圭ちゃんの耳に飾ってあるピアス。
見たことなかったからたぶん新品やろ。
それにしても…
よう似合ってますやんか。
どこで買ったん?
- 274 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時26分40秒
「…昨日…ちょっとね…」
……あっつー…。
曖昧に濁した圭ちゃんに
2人でお決まりのリアクションをとってみる。
こーゆー時の圭ちゃんは
必ず紗耶香が絡んで照れてるだけ。
きっと、紗耶香が見つけてくれたお店やろう。
昨日2人で買いに行ったんや?
さすがやねぇ、紗耶香。
男前なことしてるやんか。
- 275 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時27分16秒
「なによ、裕ちゃんだってキゲンいいじゃん」
「…そ、そんなことあらへんで…」
およ?どないした?
週明けの月曜日はいっつも辛そうやん。
日曜はやぐっちゃんが手加減してくれへんからって。
そーいえば今日はまだ
身体痛いねんって聞いてへんなぁ。
なんやぁ?
やぐっちゃんもなんかしたんか?
「…うっさいわ…」
あーはいはい。やめます。
これ以上やったらやぐっちゃんに怒られる。
- 276 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時27分47秒
圭ちゃんは初めて見る姐さんに驚いて
これ、本当に裕ちゃん?って訊いて来た。
毎週見てきたあたしも
こんな姐さんは初めて見たわ。
なんやこの週末は忙しかったみたいやね。
自分を取り巻く環境はどんどん変わってるけど
職員会議はいつでもかわらへん。
けど、今日の議題にはちょっとビックリした。
- 277 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時28分55秒
「最近“恋愛禁止”を守れていない…」
“恋愛禁止”
その言葉が出た途端、ビクって動いてしもた。
隣の姐さんも、向かいっ側の圭ちゃんも。
いつもは聞いてもいない職員会議やけど
今日だけはさすがに耳がダンボになってた。
朝から身体に悪いわ。
- 278 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時30分37秒
そんな調子でやっと終わった朝の行事の後
あたしは気になってたことを訊いてみた。
「…姐さん、演劇部のことなんですけど…」
- 279 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時32分34秒
そうや、演劇部のことはまだ片付いてない。
確かにあの娘のことはなんとなかったけど
呼び覚ましてしもた七不思議はまだ6つもある。
しかも、最後の1つはまだわからん。
どうするんやろ。
この状況で演劇部に続けさせるんは
あんまり共感はできへんねんけど。
「…やらすよ」
「…ええんですか?」
矢口があそこまで頑張ってるし
そろそろ時間もなくなってきてるし。
大丈夫やって。
アタシもみっちゃんもおるから。
そう言って姐さんは笑った。
- 280 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時34分22秒
確かに姐さんがおってあたしがおって
頼めばきっと後藤も来てくれる。
完全に護れる体制ではあるけど…。
もしかして姐さん…。
「…大丈夫やって」
自信があるのかないのかわからない顔で
姐さんは体育館に向かってしまった。
あたしはそれを眺めてるだけ。
- 281 名前:平家みちよ 投稿日:2002年08月25日(日)00時35分53秒
……信じよ。
姐さんが言うことすることなら
ある程度は大丈夫なんやから。
自分を納得させて後を追う。
「んー…今日も暑いなぁ」
学園祭まで後11日か?
- 282 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月25日(日)00時36分34秒
- この調子で。
- 283 名前:市井紗耶香 投稿日:2002年08月25日(日)00時38分18秒
え〜、夏休みもそろそろ終わりを迎える頃。
学園祭に向けていちー所属の部も
捲け!捲きで行け!って状態になってきてる。
バンドだけで演奏する軽音部でも
これだけ忙しいんだから。
ブラスバンド(吹奏楽)とか
ストリングオーケストラ(弦楽団)とかはヒドイ。
んで、中でも最も忙しいのが…。
演劇部だよね…。
- 284 名前:市井紗耶香 投稿日:2002年08月25日(日)00時41分51秒
「矢口ー遊びに来た…んだけど…」
目の前には殺風景な部室だけ。
あれって思ってちょっと考えた。
…あ、そうだ。
思い出していちーは体育館へ行く。
最近は自分の部で手一杯だったから
こっちの部の予定までは把握できてなかった。
演劇部はここ何週間かは体育館での練習だ。
通しのリハーサルも
そろそろ連絡が来る頃。
文化部のみんなは
部室と体育館を往復する毎日。
いちーたちの部の体育館練習は
もうちょっと後だけど。
- 285 名前:市井紗耶香 投稿日:2002年08月25日(日)00時44分22秒
「お、来たなぁ」
「…なんかムカツクなぁ」
体育館に入ってすぐのところに
裕ちゃんと平家先生が並んで立ってた。
裕ちゃんの言い方がなんか腹が立ったから
そのまま言葉にしたらアホって言われた。
…いちーアホじゃないっす。
「落第寸前やろぉ?」
「…ちょっとヤマが外れたんだい」
そう言ったら裕ちゃんたちが笑った。
いちーはそれにも腹が立っちゃって
ふんって2人の横を通り過ぎて行った。
- 286 名前:市井紗耶香 投稿日:2002年08月25日(日)00時46分09秒
なんだよ、ちょっとくらい悪くたってさ…。
ぶつぶつ文句言ってるいちーの耳に
聞き慣れた声が飛びこんできた。
ただ、いつものように明るくはないけれど。
「どうすれば許してくれるの…っ」
「…許さない…」
うわ…矢口、こわっ。
- 287 名前:市井紗耶香 投稿日:2002年08月25日(日)00時48分00秒
あの事件から大分経つけど
あれ以来なにも不思議なことは起こってない。
だから裕ちゃんは演劇を続けることを許可した。
前後関係を知ってるのは
2年生以上のメンバーだけだし。
加護たちには怖がらせるだけだからって
あの事件については話してない。
うん、このままなら大丈夫。
矢口も加護も、いい演技できてるし。
- 288 名前:市井紗耶香 投稿日:2002年08月25日(日)00時49分51秒
ほっと安心したとき。
いちーの目に、なにか変なものが映りこんだ。
白くて…なんだろ…あれ。
「どないした?」
「あ、裕ちゃん…あれ…?」
いつの間にか隣に来てた裕ちゃんが
いちーの目線を追って舞台の方を見る。
けど、なんもないでって。
なんだ、いちーの勘違いか。
- 289 名前:市井紗耶香 投稿日:2002年08月25日(日)00時51分44秒
「とうとう目までおかしぃなったか?」
「なっ!失礼な!!」
目までって。
他にもおかしいみたいじゃん。
いや、目もおかしくなってば、別に。
ケラケラ笑いながら裕ちゃんは舞台の方へ。
後ろからもう1人の先生がきて
姐さん飽へんねぇって笑った。
たくもう。
裕ちゃんのバカ。
- 290 名前:市井紗耶香 投稿日:2002年08月25日(日)00時53分36秒
「いちーちゃーん?練習するよぉ」
「ん、おー今行く」
そーいや休憩時間抜けてきたんだった。
呼びに来た後藤にそう言って
いちーは体育館を抜けた。
軽音部の部室に行くと
10人くらいの生徒がいた。
演奏を聴きに来たんだって。
この暑いのによくこれるよねぇって。
そんなことこのいちー様が言うかっての。
そこはにこって笑って
ありがとうって言えばそれでいいんだよ。
もちろんやったさ。
そしたら黄色い悲鳴と共に気絶者が…。
フッ…モテルって辛いねぇ。
- 291 名前:市井紗耶香 投稿日:2002年08月25日(日)00時55分25秒
「練習しましょう」
「…紺野、もうちょっと愛想よくいこう」
真面目な表情で言ってきた1年生に
いちーはガクってなりながら言う。
ただでさえうちのバンドは愛想がないんだから
育ててなんとかなるやつはしたいじゃん。
いちーだけステージで笑ってるのって
すっごいバカみたいなの知ってる?
笑おうよ、後藤、紺野。
「市井先輩!」
「頑張って下さい!」
ん?おう!
惚れ直すくらいの演奏するから
学園祭の人気投票よろしく!
- 292 名前:市井紗耶香 投稿日:2002年08月25日(日)00時57分15秒
「明日香、いこう」
ドラムの明日香に声を掛けて
ハイハットの4拍子のリズムの後
それぞれの音がいいカンジで響き始めた。
残暑はまだ暑いけどまだまさ。
いちーたちがもっともっと暑くしてやる。
秋だろうと汗かくくらいにね。
学園祭まであと10日だ!
- 293 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月25日(日)00時58分25秒
- 今夜のラスト。
- 294 名前:加護亜依 投稿日:2002年08月25日(日)01時00分38秒
夏休みも終わり夏も段々と冷えてきた頃。
ここからが追いこみなんやで。
「加護、今の所は…」
「はい、すいません…」
演技指導と演出を掛け持ちしてる矢口さんから
うちの演技に対してキツイ指導が入る。
うちの演技は大概ギャグやねんけど
そんなん関係ないねんで。
どんな演技やろうと演技は演技やから。
それがギャグやろうと
悲劇に泣き崩れるもんやろうと
1つの劇の中の演技には違いないねんから。
がんばるでぇ!
- 295 名前:加護亜依 投稿日:2002年08月25日(日)01時02分27秒
「おー頑張っとるねぇ」
「もちろんです!」
いつものように突然顔を出した中澤先生に
素早く新垣ちゃんが反応する。
元気がよろしいって笑った後
中澤先生は集合をかけた。
なんだろう。
いつもはそんなことしない先生だから
先生らしいところを見るとへんな気がする。
失礼やねんけどな。
「他の娘には内緒やで?」
差し出された袋の中には…!
うちの大好きなアイスじゃないですか!
- 296 名前:加護亜依 投稿日:2002年08月25日(日)01時04分10秒
大興奮してるうちの隣で
愛ちゃんも新垣ちゃんも同じことしとる。
2人とも好きなもんがあったって。
なんや中澤先生よぉ覚えてるやん。
いつやったか忘れたけど
中澤先生に好きなもんはって訊かれた。
そのとき答えたもんがある。
差し入れとして持ってきてくれたんや。
先生、粋な計らいやねぇ。
「…あ、矢口さん」
忘れとった…矢口さんおるやん。
- 297 名前:加護亜依 投稿日:2002年08月25日(日)01時04分54秒
後ろを振り返ったうちの目には
ちょっと怒り気味の矢口さんの顔。
中澤先生の気遣いには感謝するけど
今はちょっと状況が悪いかもしれへん。
夏休みも終わってついに来ました学園祭シーズン。
華やかなムードとは裏腹に
出演クラブは毎日が地獄になってる。
時間はない。
でも余裕もない。
その状態でサボったら…。
学園祭が終わり次第ヤキが入るやろぉなぁ…。
- 298 名前:加護亜依 投稿日:2002年08月25日(日)01時05分41秒
我が演劇部ももちろん同じや。
追い込み追いこみの毎日やのに
差し入れで一息なんて言ってたら…。
矢口さんの雷が落ちるわな…。
「……ゴメン…邪魔したみたいやね…」
「…差し入れは…ありがとうございます」
逸早くその空気を感じ取った先生と
社交辞令みたいな挨拶だけして
矢口さんは練習を再開する。
それにうちらはなす術もなく従う。
- 299 名前:加護亜依 投稿日:2002年08月25日(日)01時06分14秒
…あ、中澤先生、落ちこんでる。
目の端にそんな先生が見えたから
ちょっと可哀想になった。
頑張って欲しくて持ってきたのに
邪魔してしもたことが随分堪えてるらしい。
…ちょっと可愛い…。
「加護!」
「ぅあはい!?」
矢口さんに怒られてしまった…。
ショボンってなりながらも
うちは大体仕上がった劇の詰めを始めた。
- 300 名前:加護亜依 投稿日:2002年08月25日(日)01時06分48秒
演劇の内容は変わらずに
七不思議を探す演劇部員に起こる怪奇現象の話。
けど、ちょっとだけ矢口さんがアレンジして
最後に部員たちは全員助かるってことになった。
そうしないと学園祭での発表はムリだからって。
その通りやわ。
最後はみんな死んでしまいました。お終い。
これで終わってしもええわけあらへん。
そんなん学園祭で発表する演劇でしたら
うちら演劇部の評価ががた落ちや。
やから中澤先生も加わって
久しぶりに活動したってカンジ。
初めての学園祭で完全燃焼できそうやわ!
- 301 名前:加護亜依 投稿日:2002年08月25日(日)01時07分30秒
密かにガッツポーズを決めたうちに
その気持ちを揺るがす声が入った。
「あいぼーん」
「…なんやぁ、のの」
のの…頼むからその声やめてぇ。
部室に乱入してきたんは
いつものようにバレー部のメンバー。
大会盛沢山の本番である夏がすぎ
運動クラブは最近は結構ヒマらしい。
終わるのも早いからこうしてよく来るようになった。
- 302 名前:加護亜依 投稿日:2002年08月25日(日)01時08分06秒
それは別にええねん。
けどののが来たらすぐに帰ろうって言うから
延長居残りのうちとしては気分的によくないんや。
あんまりうるさいと矢口さんが怒って
ムリヤリ帰らされてしまうし。
うちも帰りたいわって言いたくなるし…。
学園祭よ早くこーい。
学園祭まで後9日やなぁ…(泣)
- 303 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月25日(日)01時08分42秒
- 終了
- 304 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月25日(日)01時09分27秒
- カウントダウンです。
- 305 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月25日(日)01時10分20秒
- 次も3人で。
- 306 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月25日(日)18時25分14秒
- 更新
- 307 名前:小川麻琴 投稿日:2002年08月25日(日)18時26分14秒
「麻琴ちゃん?」
「あ!紺ちゃん!」
大会が一段落した私はほとんど毎日
こうして紺ちゃんを迎えにきてる。
初めは市井先輩たちにからかわれたけど
最近は飽きちゃってやってこない。
子供みたいだ…。
って、それどころじゃないから。
今、私は大変なことにチャレンジしようとしてる。
- 308 名前:小川麻琴 投稿日:2002年08月25日(日)18時26分51秒
私たちの学園の学園祭では
最後の日に後夜祭としてフォークダンスがある。
普通は前夜祭であるんだろうけど
代わりにちょっとした有志の出し物があるらしい。
それはコントだったり
軽音楽部意外のバンドのライブだったり。
軽音部もやってたけど…。
とにかく盛りあがるものならなんでも可なんだって。
さすがは自主性を尊重する学園だ。
でもなんで恋愛は禁止なんだろう…?
よくわかんないけど、いいや。
- 309 名前:小川麻琴 投稿日:2002年08月25日(日)18時28分50秒
それよりも!小川は今、頑張ってます!
後夜祭のフォークダンス。
絶対に紺ちゃんをパートナーに!
そのまま告白するんだ!なんて…。
告白はできればしたいなぁ程度だけど。
- 310 名前:小川麻琴 投稿日:2002年08月25日(日)18時30分54秒
「…どうかしたの?」
いつかみたいに寮への帰り道。
私は紺ちゃんを引き止めて道の脇に入った。
当然のように不思議がって
紺ちゃんが訊いてきた。
大丈夫だ、落ちつけ小川麻琴。
ちゃんと頑張ってアピールしてきたし
紺ちゃんも前よりも優しい。
告白じゃないんだから…。
フォークダンスに誘うくらい…。
できる!
- 311 名前:小川麻琴 投稿日:2002年08月25日(日)18時31分29秒
「あ…ああ…あのっ」
どもってる。どもってるよ。
前の二の舞はイヤだって。
紺ちゃんの前での恥はあれだけでいいって。
マジ、ちょっとお願いだから。
なんとか動いてって願った私の思いは
どうやら、なんとか届いてくれたらしい。
ちゃんと紺ちゃんの目を見ながら
パートナーになって言えた。
それを聞いて紺ちゃんは一瞬固まった。
…えぇ?!固まったっ!?
ヤバイ…これって困ってる?
もしかしくても迷惑がられてる?
- 312 名前:小川麻琴 投稿日:2002年08月25日(日)18時32分58秒
うわー…どーしよー。
小川、努力の甲斐なく撃沈ですか…?
「…私でいいの…?」
「……は…?」
私でいいの…?
私でいいのって…他にいないって。
…じゃなくて!
これはもしかしてOKってこと?!
紺ちゃん、私のパートナーになってくれるの!?
「…麻琴ちゃんがいいなら…」
「いい!全然OK!問題なしだから!」
- 313 名前:小川麻琴 投稿日:2002年08月25日(日)18時35分02秒
やったー!!嬉しい!!
やった!やったよー!
やりましたよ!吉澤先輩!
私はここがどこなのかも忘れて
思う存分飛びあがって叫んだ。
紺ちゃんが止めに入るまで
それは終わることなく続いた。
ゴメンね紺ちゃん。
それと、ありがとう。
学園祭まで後8日♪
(後夜祭まで後9日!)
- 314 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月25日(日)18時35分41秒
- ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
- 315 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月25日(日)18時36分20秒
「…音、外れましたね」
「……」
紺野に指摘されてしまった。
ゴトーたちは今、練習中です。
は?なにがって決まってるでしょ。
学園祭で演奏する曲。
さっきか何度か音合わせはしてるんだけど
どうしても誰かが外しちゃう。
- 316 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月25日(日)18時36分54秒
1回目はいちーちゃんがギターミス。
2回目もいちーちゃんがボーカルミス。
3回目はドラムの福田さんが外した。
アレンジでごまかしたけどダメだっていちーちゃんが。
で、やっと最後までいけるかってカンジになったんだけど
最後の最後でゴトーがコーラスを外しました。
はい。ごめんなさい。
ここまでで4回は合わせてるけど
暑さのせいでみんな集中できてない。
なんせ摂氏38度。
……体温越えてるって。
紺野がミスらない方が不思議だと思う。
- 317 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月25日(日)18時37分32秒
「…もっかいいくか…」
いちーちゃんのダルそうな声で
福田さんが5回目のリズムを刻む。
けど、ちょっとだけ叩き方が荒いかも…。
ゴトーが思ってるくらいだから
当然いちーちゃんも思ってるわけ。
ギターが始まる前に止められて
もうちょっと優しくいこうよってアドバイス。
福田さんはゴメンって。
- 318 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月25日(日)18時38分06秒
あーゆー素直なところって見習いたいよね。
あ、ゴトーじゃなくて
3年生の人と先生数名がってこと。
ゴトーはいつでも素直なので。
「後藤…ニヤついてないで始めるよ」
「いちーちゃん失礼だよぉ」
ニヤついてたんじゃなくて
思い出し笑いしてたんだよぉ。
なにって、なっちのこと。
それ意外にいないって。
- 319 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月25日(日)18時38分37秒
ゴトーが素直だとねぇ
なっちが可愛いんだよぉ♪
「…明日香ー」
「はいはい、いくよ」
あ、始めちゃったし。
なんだよぉ、ヒドイなぁ。
ゴトーはただ正論を述べただけじゃん。
なんでシカトされるのさ。
そう思っていちーちゃんを眺めてたら
不意に目があってビックリした。
そのままなんか言いたそうにしてる…。
- 320 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月25日(日)18時39分12秒
なにぃ?ん〜…?
って訊いてもいちーちゃん唄ってるし
両手はギターで使えないしねぇ。
なぁんて余裕でいちーちゃん見てたら
急に演奏がストップしちゃった。
すぐにゴトーはいちーちゃんに睨みつけられた。
- 321 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月25日(日)18時39分43秒
ねぇ、知ってる?
ゴトーのパート。
いちーちゃんのリードボーカルのハモリ。
…あはっ。
「ごーとーおー…っ」
「違う違う。ご・と・うだから」
間違ってるから訂正してあげたのに
きっちり殴られてしまった。
- 322 名前:後藤真希 投稿日:2002年08月25日(日)18時41分01秒
んで、ゴトーが正しくハモった6回目。
お約束のように紺野がミスった。
やっぱあれだね。
紺野だって人間だよ。
機械じゃないから暑いんだ。
秋ってなかなかこないねぇ。
学園祭まで後7日。
- 323 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月25日(日)18時41分50秒
- ○ ○ ○ ○ ○
- 324 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月25日(日)18時42分38秒
「10分休憩!」
「はい…」
先輩の一言でみんながしゃがみ込む。
吉澤もつかれました…。
大会は毎度の如く全国大会出場。
でも、今年は優勝できなかった…。
それを見に来てたOGの諸先輩方が
あまりにも情けないって嘆いて
今日は強化特訓に来てくれた。
……来なくても…。
いや!思ってないっす!
先輩の直接指導、大歓迎っす!
- 325 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月25日(日)18時44分25秒
「先輩!頑張りましょうよ!」
「…小川…」
2、3日前から小川がイヤに元気だ。
…なんとなく理由はわかるんだけど。
小川のキゲンが変わるときって
絶対に紺野が関わってる。
いいねぇ、若いって。
そう呟いたら
急に目の前に影が…。
なんだろうって上を向いたら
そこにはこわぁいバレー部専属コーチ…。
- 326 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月25日(日)18時45分00秒
…なんすか…。
吉澤、なんもやってないです。
練習も真面目にやってます。
怖い顔して睨まれる覚えがありません。
「…あんた歳いくつよ」
「……17です」
当然じゃんってカンジで答えられないから
なんとなく見上げる視線で答えた。
いきなりなにを訊くんだろう。
吉澤は今、高校2年生です。
4月が誕生日なので17歳です。
…なんで睨むんですか…?
- 327 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月25日(日)18時45分40秒
「おばちゃんみたいなこと言うなって」
「……若いくせに…?」
そう言ったら更に睨まれた。
若いくせにって言ったのがダメだったらしい。
それじゃあたしは若くないみたいじゃんかって
やたら力強く言われた。
…コーチ、既婚者じゃないすか。
既婚者が若いだのなんだのって…。
子供までいるくせに…。
「女性はいつでも若くありたいの!」
「……そうすか…」
- 328 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月25日(日)18時46分13秒
勝手に言い捨てて行ってしまった。
……いつものことだけど。
ポカーンてしてたら小川が隣に座った。
それから、コーチって結婚してたんですかって。
知らなかったんだ?
「確か旧姓は…石黒…だっけ?」
「石黒ですか?」
そう…確か石黒さんだったと思うよ。
旧姓はフルネームで石黒彩さん。
なんでか彩さんって呼ばないと怒るんだ。
- 329 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月25日(日)18時47分03秒
あ、そーいえば。
この前職員室で見かけたとき
中澤先生たちと楽しそうに話してたっけ。
なんかすっごい仲良さそうだったんだよね…。
後で彩さんに訊いてみたら
昔ちょっとねってはぐらかされた。
なんだろ…どんな繋がりだったんだろ。
彩さん、鼻ピアスとかしてるし
中澤先生、金髪にカラーコンタクトだし。
2人とも訳あり人生歩いてそうなんだよね…。
なんかそ〜と〜カッケーかも。
- 330 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月25日(日)18時47分57秒
「練習始めるよ!」
「あ、先輩、始まるって…」
そうだよなぁ…
あの2人ってカッケーじゃん。
吉澤もあんな風になりたいなぁ…。
なぁ小川、なりたくない?
「や、先輩、練習…」
うーん…よし!決めた!
吉澤はあの2人を足して割ったような人になる!
- 331 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月25日(日)18時48分56秒
中澤先生みたいにいつも強気で
彩さんみたいにいつもシャキっとしてる人。
あ、でも。
あんまり怖くはなりたくないかなぁ…。
「吉澤ぁ…」
…この顔は怖いじゃん?
って、心の中だけで言うつもりが
素直なのでつい口にしてました。
- 332 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2002年08月25日(日)18時50分03秒
鬼のような顔で彩さんがこっちに来る。
吉澤のすぐ前にたったら
吉澤にだけ聞こえる声でこう言った。
「いい度胸してるねぇ?」
「……どうもっす…」
…彩さんが臨時コーチするのって…
……確か学園祭までだっけ…。
…頑張ろう。うん。
学園祭まで後6日…。
- 333 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月25日(日)18時50分50秒
- ● ● ● ● ●
- 334 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月25日(日)18時52分26秒
- 終了
- 335 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月25日(日)18時53分27秒
- 次は保田さんで。
- 336 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)02時23分29秒
- 更新
- 337 名前:保田圭 投稿日:2002年08月26日(月)02時24分36秒
「けーぼーー」
「…なによ」
職員室で読書してたら
いきなり裕ちゃんに呼ばれた。
職員室で圭坊って…。
けっこう恥ずかしいんだけど。
今更だけど。
なんて言う、私の呟きなんか1つも聞かないで
裕ちゃんは用件だけを手短に言おうとする。
まぁ、用件って言うか…
この場合はただの苦情かもしれない。
悪かったわよ。
- 338 名前:保田圭 投稿日:2002年08月26日(月)02時25分34秒
「…注意してきてや?」
「……今すぐ?」
当たり前やろぉって。
裕ちゃんはイジワルそうに笑う。
確かに裕ちゃんの言う通り
軽音楽部の演奏が大き過ぎるのはわかる。
他の部の娘がぶつくさ言ってるのも見た。
けど、昼からずっとこの音量よ?
なんで夕方になって言うのよ。
- 339 名前:保田圭 投稿日:2002年08月26日(月)02時26分04秒
「だって…なぁ?」
さっきのままの顔で
裕ちゃんは問い掛けてくる。
その問いの理由がわかってるだけに
他に言われるより倍ムカツク。
知っててやってるから
更に倍増ってカンジ?
「……わかったわよ…」
顧問って言うことになってるし
注意を促されたら仕方ない。
- 340 名前:保田圭 投稿日:2002年08月26日(月)02時26分43秒
私は足早に職員室を出る。
背中に裕ちゃんの楽しそうな視線と
みっちゃんの気の毒そうな視線を受けて。
帰ってきたら…。
考えるだけでダルイわよ。
- 341 名前:保田圭 投稿日:2002年08月26日(月)02時27分33秒
軽音部の部室に近づくにつれて
音量がおかしいくらいに大きいことを知った。
これじゃ苦情が出なかったのが不思議なくらいだ。
扉の前まで来た時には
思わず耳を覆いたくなるほど。
…軽音の娘って耳おかしいの?
…耳鼻科、連れて行った方がいいかも…。
苦情が出ることも心配だけど
そっちの方が心配よ。
- 342 名前:保田圭 投稿日:2002年08月26日(月)02時28分15秒
ちょっと真剣になったんだけど
ギターに乗った歌声に我に返った。
そして頭に浮かんだバカを
慌てて振り払った。
私は注意をしに来たんだから…。
息をすぅって吸い込んで
思いきりよく部室の扉を開いた。
「うるさい!」
「…マジッすか?!」
けっこう大きな声で言ったつもりだったけど
それよりも大きい声で返事が来た。
マイクを通したから余計に…。
やっぱり連れていこう。
- 343 名前:保田圭 投稿日:2002年08月26日(月)02時28分54秒
目の前のやけにハイテンションなバカを見て
私はさっきの決意を更に強めた。
私の気持ちなんか知る由もなく
バカ+居眠り常習犯はケラケラ笑ってる。
その隣では優等生が困ってるし。
あんまりにも紺野が可哀想だったから
うるさい2人の耳を引っ張って黙らせた。
「いたたたっ!」
「けーちゃん体罰!」
うるさい、バカコンビが。
- 344 名前:保田圭 投稿日:2002年08月26日(月)02時29分27秒
いつもなら明日香が注意してくれんだけど
今日は予備校とかで来てなかった。
こうなると常識人は紺野だけ。
ほんと、ゴメンね。
そう言ったら大丈夫ですよって。
いつも偉いね、紺野は。
隣でじたばたしてる先輩にも見習わせてよ。
- 345 名前:保田圭 投稿日:2002年08月26日(月)02時30分06秒
「一曲聴いてく?」
耳を放した瞬間、バカが言う。
今さっきなのに、反省もなにもない。
あんたの学習能力はサル以下か。
「聴いてくよね?」
「……騒音なら帰るわよ」
冷たく言ったのに楽しそうに笑う。
それから大きく胸を張って
いちーの曲だよ!?絶対いい!って。
- 346 名前:保田圭 投稿日:2002年08月26日(月)02時30分56秒
無邪気に笑うくせに
演奏し始めると真面目になって。
…その顔…見せたくないかも。
学園祭まで後5日だった?
- 347 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)02時32分05秒
- ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
- 348 名前:辻希美 投稿日:2002年08月26日(月)02時32分53秒
最近あいぼんと帰ることが少なくなった。
学園祭までもう何日かしかなくて
演劇部だから遅くなるのは知ってたよ。
でも、待ってれば一緒に帰れるって思ってたのに。
「遅いから帰り?」
ちょっと前に中澤先生に言われた。
日が暮れるのが早くなってきたから
関係ない人たちは帰宅を急かされる。
寮は近くだから
安全と言えば安全なのに。
- 349 名前:辻希美 投稿日:2002年08月26日(月)02時33分39秒
やっぱりあいぼんもバレー部にすればよかったんだ。
そしたら毎日一緒に帰れたし
大会だって一緒に出れた。
あいぼんがセッターやって
ののがリベロのタッグ、組みたかったなぁ。
よっすぃ〜がアタッカーなら最高!
絶対、強かったと思うのになぁ。
「…ま、いっか」
劇してるあいぼん楽しそうだし
矢口さんとかいろんな友達できたし。
- 350 名前:辻希美 投稿日:2002年08月26日(月)02時34分28秒
今日のご飯はなんだろな〜って
のの作曲の歌を唄いながら帰ってたら。
前にも見掛けた2人組。
楽しそうにお喋りなんかしちゃって…。
ののは邪魔したくなりますね。
- 351 名前:辻希美 投稿日:2002年08月26日(月)02時35分09秒
「こーんのちゃん♪」
「……辻ちゃん…また…」
ののが声をかけたのは紺野ちゃんだったのに
隣のまこっちゃんが反応した。
しかも残念そうに。
まこっちゃんはいつでもそう。
ののが声をかけると嬉しくなさそう。
だからののは紺野ちゃんに声をかけるんだ。
まこっちゃんに言ってもきいてくれないから。
- 352 名前:辻希美 投稿日:2002年08月26日(月)02時36分11秒
なんでのののこと嫌いなんだろ。
なんにも悪いことしてないよ?
バレー部では普通に話してくれるじゃん。
なのになんで休み時間とか
こんな時には嫌がるの?
まこっちゃんてへんだよね。
「どうしたの?」
「…あいぼんいなくてヒマだから」
紺野ちゃんの質問に素直に答えたら
なんでかわかんないけどまこっちゃんが怒った。
ののはうそついてないのに。
- 353 名前:辻希美 投稿日:2002年08月26日(月)02時36分53秒
なんでまこっちゃんは怒るの?
のの、正直に答えたよ?
素直な子供はいい子だって言われたよ?
正直なのは可愛いって言われたよ?
なんで?
「ののちゃんはねーー!!」
「麻琴ちゃん、落ちついて…」
荒れ狂ってるまこっちゃんを
妙に落ちついてる紺野ちゃんが止めてる。
- 354 名前:辻希美 投稿日:2002年08月26日(月)02時37分48秒
けっこう面白い…。
なんて余裕持ってられたのもそこまで。
まこっちゃんが掴みかかってきそうになったから
慌てて後ろに引いたら転んじゃった。
「…ったーい!」
すっごく痛かったから叫んじゃった。
手をついた拍子に捻挫したかもって思って
手首を動かしてみた。
…大丈夫みたい。
- 355 名前:辻希美 投稿日:2002年08月26日(月)02時38分28秒
ほって一息ついたら目の前に手。
ののが起き上がるのに手を貸してくれるみたい。
この状況から考えて
この手は紺野ちゃんだよね。
なんの疑いもなくそう思って掴んだ。
で、起きあがって一言。
「ありがとー、紺野ちゃん」
「……」
- 356 名前:辻希美 投稿日:2002年08月26日(月)02時39分12秒
返事は帰ってこない。
へんだな〜って思って見たら…。
「…まこっちゃん」
「……だけど…」
ののが掴んでる手はまこっちゃんだった。
クラブ中に何度も触った手だった。
- 357 名前:辻希美 投稿日:2002年08月26日(月)02時39分55秒
なんで?なんで助けるの?
まこっちゃんはののが嫌いなんだよね?
嫌いな子のこと助けるの?
まこっちゃんてやっぱりへんだよ。
大丈夫って訊いてくる2人に答えて
ののは先に帰るからって走った。
- 358 名前:辻希美 投稿日:2002年08月26日(月)02時40分36秒
まこっちゃんはキレると怖い人。
紺野ちゃんといる時は怖い人。
ついでにやっぱりへんな人。
まこっちゃんはそうインプットされました。
- 359 名前:辻希美 投稿日:2002年08月26日(月)02時41分11秒
「…だ…ぁ……」
…なんか言ってるし。
大きな声で叫んでるから聞こえちゃう。
え、なに…?
学園祭まで後4日?
- 360 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)02時42分08秒
- ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
- 361 名前:紺野あさ美 投稿日:2002年08月26日(月)02時42分59秒
「ゴメンね」
「…いえ、いいんです…」
私がクラブに出ようと扉を開けたら
市井さんと知らない女の子がいました。
そのとき聞こえてしまった会話は
最近はよく耳にするものでした。
- 362 名前:紺野あさ美 投稿日:2002年08月26日(月)02時44分19秒
市井さんは本当にモテます。
この数日で何人の生徒がこうして
私の隣を俯きながら歩いたでしょう。
さっきの人と入れ違いに部室に入った私は
市井さんと目が合いました。
市井さんはニコッて笑って
後藤と明日香は今日こないからって。
そのとき髪をかきあげる仕草まで
とても市井さんらしくってカッコよかったです。
- 363 名前:紺野あさ美 投稿日:2002年08月26日(月)02時45分08秒
ちょっと見惚れてたんですけど
市井さんにん?って顔されました。
ちょっとビックリしました。
そしたら市井さんがおもいだしたように。
「紺野は決まった?」
市井さんが突然してきた質問。
先輩にこんなことは言っちゃいけないんですけど
主語がないのでわかりませんよ?
- 364 名前:紺野あさ美 投稿日:2002年08月26日(月)02時46分18秒
とは、さすがに言いませんでしたけど。
無難になにがですかって。
後輩らしく訊きました。
そしたら市井さんはなにがってって。
「この時期は…ってそうか、1年生だ」
あんまり普通に話ができるんで
同学かと勘違いしちゃったよ。
市井さんはそう言って苦笑いしました。
…そんなに老けてますか?
- 365 名前:紺野あさ美 投稿日:2002年08月26日(月)02時47分20秒
ちょっと頭の隅に浮かんだ不安。
それに市井さんは気づいたらしくって。
「気にすんなよ?いちーが悪かったからさ」
そう言ってくれました。
全校生徒が好きだという笑顔で。
- 366 名前:紺野あさ美 投稿日:2002年08月26日(月)02時48分14秒
確かに魅力的です。
でも…どうしてなんでしょう?
私はみんなのように
キャアキャア言うほどではないし。
微笑まれて倒れることもありません。
1年生にしては
なかなか珍しいと言われます。
- 367 名前:紺野あさ美 投稿日:2002年08月26日(月)02時49分14秒
「…市井さん、質問…」
「ん?あ!ゴメンゴメン」
そうだったね、ってまた笑いました。
やっぱりちょっと見惚れてしまいました。
市井さんの質問の内容は
前夜祭と後夜祭のフォークダンスのことでした。
私は麻琴ちゃんと約束していたので
それを言いました。
そしたらそれ、後夜祭?前夜祭?って。
麻琴ちゃんは前夜祭でもあることを知らなくって
私は後夜祭に誘われてますって。
それを聞いたら市井さんが
とんでもないことを言ってきたんです。
「紺野!前夜祭パートナーになって!」
「………」
- 368 名前:紺野あさ美 投稿日:2002年08月26日(月)02時50分18秒
文字通り呆然としました。
私の返事もきいてないのに
市井さんはよかったぁって。
よかったって?
「あー、あのね…」
市井さんの話を簡潔にまとめると。
- 369 名前:紺野あさ美 投稿日:2002年08月26日(月)02時51分07秒
あまりにも多くの人から申し込みがあって
とてもじゃないけど選べなくなっちゃった。
それで誰を選んでも不公平が出る。
そうなると後々面倒なことにもなるかも。
だから一生懸命考えて出した案が
できるだけいい訳のできる人でって。
そんな訳で後夜祭は後藤さんらしいです。
ちょっとビックリしましたけど
それならいいですよ。
- 370 名前:紺野あさ美 投稿日:2002年08月26日(月)02時51分42秒
そう言ったら嬉しそうに。
「持つべき者は優秀な後輩だね♪」
そんなこと言われたら嬉しくなっちゃいます。
あ、でも…。
麻琴ちゃん、何て言うかな。
学園祭まで後3日です。
(前夜祭まで後2日です…)
- 371 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)02時52分29秒
- 終了
- 372 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)02時53分00秒
- ハロモニ。はよかった。
- 373 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)02時53分51秒
- 抱きつくやぐちゅー。
祐ちゃんを見つめるごっちん。
- 374 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)02時56分47秒
- >>373
祐ちゃんてなに。アホ。
眠いならこんな時間にやるなっての。
突っ込まないで下さい。お願いします。
- 375 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)12時33分09秒
- 更新
- 376 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月26日(月)12時34分12秒
「今年は参加できへんねん」
「そーなんですかー?」
「ざんねーん!」
クラスで耳にしたちょっとムカツク会話。
この時期、捜すって言えば1つ。
後夜祭と前夜祭のパートナーしかない。
全校生徒が校内を走りまわり
大体の場合は上級生が下級生に申し込む。
それで成立すれば、はい、よかったねって。
下級生から申し込む場合は
憧れの先輩のパートナーにってのが多い。
そのいい例が紗耶香だけど。
- 377 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月26日(月)12時35分04秒
でも、紗耶香はちゃんと圭ちゃんって相手がいるから
去年は前夜祭は矢口がムリヤリ付き合わされた。
尊敬してる先生と
仲のいい親友ってことで。
あの頃って圭ちゃん無名だったから
なかなか掟破りだったよねぇ。
今年は紺野あたりが餌食だなぁ。
可哀想に〜。
…小川も。
- 378 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月26日(月)12時35分46秒
「残念だな〜、先生たちはむりだって」
「ねー。狙ってたのに〜〜」
矢口の座ってる近くに
さっきの2人が戻ってきた。
2人とも矢口の方に来る。
それから律儀にもさっきの報告。
「今年は防犯のため教師は参加不可」
「前夜祭も後夜祭も見回りだって」
ご報告ありがとう。
でも矢口は知ってるから。
もっと早い情報くれる人がいるから。
- 379 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月26日(月)12時37分09秒
「狙ってたんだよ〜」
「私も〜〜」
揃ってそんなこ言うもんだから
訊いてあげなくちゃって思うでしょ?
矢口はそうなの。
お決まりのように誰がって訊いたら
予想通りの答え。
「中澤裕ちゃん先生!」
「去年はくじ外れたんだもん!」
あぁ、そうってそっけなく答える。
…上手くできたかな?
- 380 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月26日(月)12時38分19秒
なんか伝統らしいんだけど
人気ある先生のパートナーはくじ引き。
んで、裕ちゃんは来たときからそうなんだって。
最近はどうも圭ちゃんとか
みっちゃんとかも加わったらしいけど。
矢口が1年生の頃は確か…。
裕ちゃんの相手は前夜祭がみっちゃんだった。
後夜祭は知らない生徒だったけど。
めちゃくちゃヤキモチ妬いたの覚えてる。
矢口もくじ引きしたんだけど
外れちゃったから…。
ま、後でデートしたけど♪
- 381 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月26日(月)12時38分55秒
それに…。
「矢口はいいよぉ?」
「去年したから!」
えへへ〜、そうなんだよねぇ。
去年は矢口の強運が勝って
裕ちゃんと踊っちゃったんだよぉ。
って、ヤバイ。
危うく顔が緩むところだった。
- 382 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月26日(月)12時39分34秒
なんとか平静を装って
2人の友人に別にどーでもいいじゃんって言った。
でもそれ以上は保ってられる自信なかったから
じゃねって言って教室を出た。
向かった先は、校舎の隅。
そこに行けば、逢えるから。
矢口の思った通り裕ちゃんはいた。
いつもみたいにちょっと陰に隠れながら。
- 383 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月26日(月)12時40分21秒
「…ゴメンな、どうしてもアカンねんて」
さっきの友達2人に言うのとは違う
もっと優しい声で、裕ちゃんは言った。
ゴメンなって言葉までくれた。
矢口はそれだけで嬉しい。
確かに去年、2人で約束した。
来年はフォークダンス参加しないで
2人だけで校舎の中で躍ろうって。
けど、蓋を開けてみたら裕ちゃんは参加不可。
そりゃ、それなりにムカツクし
なんとかなるならそうして欲しかったけど。
ならないならそれはそれで納得するしかないし。
- 384 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月26日(月)12時40分55秒
第一、矢口は裕ちゃんと踊りたかったんじゃなくて
矢口意外の誰かと踊らないでほしかったんだけなんだもん。
今年は目的はちゃんと果たしてるから。
「許してあげるよ?」
「……どーも…」
あら、なんか納得いかないって顔してます?
イジメるつもりで裕ちゃんに詰め寄ったら
思いがけないこと言われてしまった。
「…2人きりには…なれるで…?」
- 385 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月26日(月)12時41分39秒
矢口から視線は外してるけど
そんなこと言われるなんて夢にも思わなかった。
でも、なんでそんなことできんのって思って
裕ちゃんに訊いてみたら…。
アタシ、フォークダンスの時間に見回りやから…。
矢口おらんかったら…フォークダンスつまらんから…
前後両方その時間にしてもらったんやけどぉ…。
そんなことチラチラこっち見ながら言われたら
裕ちゃんの矢口はノックアウトです。
- 386 名前:矢口真里 投稿日:2002年08月26日(月)12時42分17秒
うーん、でもなぁ…。
最近の裕ちゃん、反則が多い。
ちょっと矢口は悔しいんですけど。
「…矢口?」
……可愛いからいっか。
学園祭まで後2日。
- 387 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)12時42分55秒
- △ △ △ △ △
- 388 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時44分09秒
「授業終了。んでもってぇ準備開始!」
「「おーー!!」」
勢いよく飛び出して行った可愛いアタシの生徒たち。
怪我とかせんように気ぃつけなぁ。
今日はとうとう学園祭前日。
授業は午前で終了して午後は準備になっとる。
準備が終了したクラス、クラブから帰宅。
その後4時くらいから再集合してから有志の出し物。
ちゅーても一時帰宅やからほとんどが残ってるけど。
- 389 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時44分48秒
文化部は終わりなんかないし
クラスもほとんどが出し物の仕上げしてるしな。
前夜祭らしく賑ってる。
そんな学園の中で一際うるさい一団。
黄色い悲鳴が尽きることなく続いてる。
そこは軽音部の練習場。
今日の有志でいくつか発表するらしいけど
その中にあのバンドがあるんやって。
本番体育館でもやるくせになぁ。
「圭坊、モテルな」
「…私じゃないわよ」
- 390 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時45分26秒
そんなんわかってるわ。
アンタの相方のあのアホや。
ここに彼女おるくせに
なんであの娘は手が早いんやろ。
裕ちゃんにはちょっとわからんわ。
なんせ裕ちゃん矢口一筋やから。
「…バレンタイン、山のようにチョコ…」
圭坊、裕ちゃんのイメージがあるやろ?
そこは、そうだねって合わせといたらええねん。
世の中長いものには…やで?
- 391 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時46分25秒
それに裕ちゃん偉いもん。
矢口意外のチョコ食べてへんもん。
これは気持ちの現れやろ。
「…矢口には言わないんだ?」
「………」
- 392 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時47分07秒
言わない…言えない…。
矢口を目の前にすると
妙に恥ずかしくなってもうてなぁ…。
矢口にだけは弱いねん。
アタシが矢口にだけ弱いみたいに
圭坊は紗耶香にだけ素直やんか。
お互いさまやろ?
イタイとこは突つかんとこや。
「……あ、始まった…」
あ、ホンマや。リハか?
って、おいこら圭坊。
なに自分、逃げとんねん。
- 393 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時47分54秒
一応はそんな風に言うてみたけど
ホンマに追求するつもりもなかったから
圭坊と一緒にリハしてるのを見に行った。
アタシらが特設ライブステージついたら
とんでもないことになってた。
同じ制服着た娘らの人、人、人。
人の波もええとこや。
普段は緩んだ顔で見てるその光景も
さすがにここまでになるとちょっと怖い。
黄色い悲鳴が余計に…。
バーゲンに群がるおばはんみたいやなぁ…。
- 394 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時48分54秒
「きゃー!市井せんぱーーい!!」
「ごっちんカッコイイーー!!」
んー…。
紗耶香4割、後藤3割くらいかぁ。
やっぱ、愛想がええ分紗耶香の方が人気は高いか。
しっかし、ごっちんがカッコイイって…。
あれやねぇ、やっぱり。
実態を知らんっちゅーんは可哀想やなぁ。
なっちに甘えてるごっちん
1回見せたりたいわ。
- 395 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時49分52秒
「あやや〜可愛い〜〜!」
あややぁ?あややて誰やねん?
……あれかいっ。
大きな声援に手を振ってるその娘は
ほんの何日か前にみっちゃんの隣におった娘。
松浦亜弥やからあややか。
関西人には呼びにくそうやなぁ。
あやややんかぁ、って…“や”が3つも続くと
さすがになに言うてんのって思ってまうわ。
そーいやのののモノとかって
辻も“の”が3つ続いてたけど…。
余計なとこ、舌回るよなぁ。
- 396 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時50分42秒
「紺野ちゃーん!」
「福ちゃん面白い!」
お、紺野はもうファンがついたん?
見たカンジ、同学が多いかぁ。
明日香は相変わらず上下両方やなぁ。
でも、そうやって考えると
このバンドってなかなかバランスええやん。
- 397 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時51分28秒
紗耶香は上下どこでも人気があるけど
それは愛想がええ…イヤな言い方すると手が早いから。
で、同じ傾向のモテ方をする明日香は
どっちかって言うと頼り甲斐があるから。
つまりは、引っ付いてくる人種が違うんや。
優等生系は明日香に。
ちょっと軽い系は紗耶香につく。
けど、その2人に全員が惹かれるわけと違う。
そこで登場するのが
ごっちんらや。
- 398 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時52分11秒
ごっちんはぽけっとしてるところが
なんにも干渉しないクールな人って印象らしい。
紗耶香みたいにくだらんことやって
周りの笑いを誘うようなことはせんし。
いつでも無関心なところがええんやて。
かと思ったらステージでは飛びまわったりする。
そのギャップもカッコイイって。
授業をサボったりする
ちょっと不良みたいなとこも。
ごっちんはそっち系の娘たちのカリスマやねんて。
教師からしたらちょっと困るけどなぁ。
- 399 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時52分55秒
「…やっぱ、松浦にベースって似合わないよね」
「……あ?そうかぁ?」
1人ずつ観察していってたら
不意に隣の圭坊が声をかけてきた。
松浦にベース?
なかなかええんちゃう?
一生懸命なところが可愛いって話やし。
そう言ったら誰から聞いてるのよって。
そら企業秘密ですぅ。
ま、実は黙ってても情報は入ってくるんやけど。
- 400 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時53分44秒
なんせ裕ちゃん、人気あるから
どの学年からも色んな話きかしてくれる。
んで、その中で気になったのがこの娘やった。
1年生に可愛い娘がいるですよって。
可愛いのにバンドでベースなんですよって。
初めて見たときは小学生にランドセル。
その言葉がピッタリやんかって思ったわ。
確かに一生懸命に頑張ってるのとか
けっこう可愛いやんとか思ったけどな。
圭坊と話したら
なんか可愛いよねって。
アタシや圭坊が惹かれたんやから
松浦はきっと年上にモテルタイプなんやろ。
ほら、みっちゃんも年上やん。
- 401 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時54分20秒
「あ、紺野がミスった」
聞こえてきた不協和音。
緊張し過ぎてミスったか…。
見上げたステージの上では
紺野が紗耶香たちに謝ってる。
気にすんなって紗耶香は言ってるんやろうけど
それよりも周りの声が大きい。
1年生の方からの声。
年上にモテル松浦の逆をついて
同学年に人気がでてきたんが紺野や。
あののほほんとした空気が
知らんうちに癒してくれるって。
アンタらいくつやねんって突っ込んだけどなぁ。
- 402 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時55分01秒
こんだけ個性派が揃ってても
仲悪いって話は1回も聞いたことない。
面倒見のいい紗耶香と明日香。
紗耶香にはなぜか懐いてるごっちん。
控えめな紺野と松浦。
最強やろ?
その上、演奏もなかなかやし。
オリジナル曲も作ってる。
このバンドで人気が出ん方がおかしいやろ。
「なぁ?」
「…そうね」
- 403 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時55分39秒
関心なさそうに言うた圭坊やけど
目はしっかりと1人を追ってて。
素直やないところ
アタシと似てるよなぁって。
思わず圭坊の肩を叩いてしもた。
そしたら圭坊がなにって。
そら当然やけど。
アタシは別になんでもないでって答えて
ステージの逆に歩き出す。
- 404 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時56分09秒
「どこ行くの?」
「面倒くさい見回りですぅ」
後ろ手に手を振りながら
アタシは校舎の中へ進んで行く。
後ろの方で聞こえてる紗耶香の声が
気持ちいいくらいに耳に届いた。
- 405 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)12時57分09秒
- ▲ ▲ ▲ ▲ ▲
- 406 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時58分00秒
体育館裏、校門前、校舎の裏。
とにかくこの学園は広いのに
その全てを見回るのは大変な仕事や。
当然、いくつかのグループで
担当範囲を決めて見回るんやけど…。
- 407 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時58分30秒
アタシの感がこっち来いって。
アタシはその感に逆らわんと歩いてきた。
そしたら校舎と校舎の間にある
ちょっと広めの中庭に出た。
でも、まだ足を止めることはない。
中庭から進んでいって、ちゅーか奥に入って行って
どんどん学園の隅の方に向かう。
- 408 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)12時59分07秒
こないなとこ案内図にも載ってへんわ。
やっととまった先は
そう思わせるには充分な場所。
人が通りにくい南館の
そのまた裏側。
小さなビニールハウスがあった。
- 409 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時00分22秒
…ビニールハウス、な。
みっちゃんからもらった資料。
確かその中にあったなぁ。
- 410 名前:七不思議〜5〜 投稿日:2002年08月26日(月)13時01分03秒
- 『好きな薔薇』
- 411 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時01分39秒
運動部と違って文化部はよく廃部する。
よくその被害にあってしまうのが
写真部だったり合唱部だったりする。
なかでもその第一候補は園芸部だろう。
学園にその施設がなければなくなるし
すすんで花の世話をしようとする生徒は
年々減少しているのは確か。
この学園もそうだった。
- 412 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時02分38秒
『学校行ってくる』
1人の生徒がそう言って家を出た。
それはいつもの光景のように思われたが
実はちょっと困った事態だった。
そのとき列島には台風が上陸していて
とてもじゃないが外なんか歩けなかった。
当然、学校も休み。
なのにその生徒は向かった。
月明かりの燈る暗い中を。
- 413 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時05分55秒
生徒は学園で唯一の園芸部だった。
誰も世話をしなくなって
しおれてしまった花。
それを見つけたのはその生徒だけ。
その当時、園芸部はすでに廃部していたが
世話をするだけなら誰でもよかったのだ。
生徒は友達と話す時間を割いてまで
花たちの世話をした。
生徒にとっては
花がなによりも大切だったのだろう。
だからその生徒は走った。
嵐の中を走り、大切なものを護ろうと。
- 414 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時06分30秒
その生徒が学園について目指したのは
学園の隅に追いやられたビニールハウス。
原型をなんとか留めている。
そんな表現が似合いそうなくらい
そのビニールハウスはボロボロだった。
しかしその生徒はそんなこと気にする様子もなく
真っ直ぐにそこに入っていった。
- 415 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時07分16秒
『よかった…』
激しい風に飛ばされそうになりながらも
中の花たちは無事に咲いていた。
それを見て生徒は安堵した。
けれど、それも長くは続かない。
不意にビニールハウスの屋根が揺れた。
その震えに見を強張らせた生徒に
襲ってきたのは突風だった。
生徒はなんとか身体を低くして
その突風から逃れようと足掻いた。
- 416 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時07分48秒
人間の心理として。
飛ばされないようにしようとすると
自然と周りの人や物にに掴ってしまう。
それは生徒も同じだった。
生徒は周りにあるもの全てに掴った。
そうすることで何とか飛ばされるのを防げた。
しかし、それは悲劇の始まりだった。
- 417 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時08分18秒
顔を上げた生徒の目に飛び込んできたのは…。
無残にも薙ぎ倒された無数の花と
己の手でむしってしまった大切な木々。
『…あ…あぁ…』
生徒は声にならない声をあげ
その場でうずくまってしまった。
そのまま生徒はこう呟いた。
- 418 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時09分04秒
私なんかが助かるために
大切な花たちをダメにしてしまった。
私は花たちを護らなければいけなかったのに。
どうして非力なこの子たちを盾にして…
どうして私は助かろうとしてしまったのか…。
- 419 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時09分59秒
生徒は泣いて泣いて…。
ついには涙が出なくなるまで泣いた。
けれども自分自身が許せなかった生徒は
生き残っている花たちを集めて
自分がその花の盾になった。
私は死んでもいいから
この子たちは助かってと。
- 420 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時10分45秒
皮肉にも生徒の願いは
その日のうちに叶ってしまった。
バキバキバキ…
すっかり老朽化したビニールハウスに
生徒と花を守る力はなかった。
無常にも生徒と花を呑み込んで
ビニールハウスはその姿を消した。
- 421 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時11分26秒
翌日帰ってこない生徒を心配し
昨夜から捜しまわっていた警察が
後者の端で生徒を発見した。
しかし、そのときすでに
その生徒は息をしてはいなかった。
死因はビニールハウスの鉄の棒による
胸部圧迫のための窒息死。
生徒の手にはしっかりと
花が握られていたんだとか。
- 422 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時12分06秒
生徒のお葬式も終わり
ビニールハウスには慰霊碑が建てられた。
しかし、そこはしょせん
誰にも気づかれることのない校舎の端。
その事件を知ったものがいなくなると
生徒のことも自然と忘れ去られていった。
生徒の噂が消えてから数回目の夏。
今度はこんな噂が立った。
- 423 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時12分41秒
学園のどこかにビニールハウスがあって
そこに入ると女の子がいるんだって。
どうしたのって話し掛けたら
ゆっくりと立ちあがってくるんだ。
そしてこう訊いてくる。
『ねぇ…あなたはなに色が好き?』
女の子の手には
“赤、青、白”の薔薇の花。
- 424 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時13分20秒
“赤”と答えれば
園芸用の鎌で首を切られて血まみれ。
“青”と答えれば
1週間以内になんらかの水害で死ぬ。
“白”と答えれば
鉄の棒が倒れてきて窒息死。
- 425 名前:好きな薔薇 投稿日:2002年08月26日(月)13時14分17秒
夏の暑い時期に涼むため
生徒たちは校舎の中の避暑を探す。
けれどどうしてか。
誰も校舎の隅の方には行かないのが
その夏からは慣習になっていた。
だってみんな、怖いから。
もし彼女に会ってしまったら…。
- 426 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時15分13秒
あぁ…やっぱりおったんや。
ビニールハウスに入ったアタシが見たのは
しゃがみ込んで花を眺めている生徒。
花に触れようとするその手は
とても優しくて愛情に満ちていた。
アタシがあの娘に触れるみたいに…。
- 427 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時15分46秒
ぼんやりと考えていたら
不意に彼女が立ち上がった。
そしてアタシの方に歩いてくる。
その手には、噂通りに3色の薔薇。
- 428 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時16分28秒
「ねぇ…あなたはなに色が好き?」
赤。青。白。
どの薔薇もキレイに咲いてる。
きっとこの娘が世話したからや…。
- 429 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時17分17秒
「ねぇ…なに色が好き?」
事情を知らんもんにとっては
ホンマにメッチャ可愛い笑顔やと思う。
けど、アタシは違うから。
アンタのその笑顔の下に隠れてる
本物の泣き顔を知ってるから。
その質問には、答えられへん。
- 430 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時18分11秒
アタシは彼女の質問に答える代わりに
逆に彼女に質問した。
「アンタは…なに色が好きや?」
- 431 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時18分46秒
きっと問われたことがないんやろう。
彼女はさっきの笑顔のまま
固まってしまった。
一瞬。
ほんの一瞬やけど
薔薇を持つ彼女の手が震えた。
きっとそれは
彼女からのサインや。
- 432 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時19分25秒
「ねぇ…なに色が好き?」
やけど。
彼女は再び問う。
「…そうか、薔薇は好きと違うんか」
でも、アタシは彼女の質問には答えへん。
涼しい顔して新たに質問する。
- 433 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時19分57秒
ならどんな花が好きや?
あ、別に樹ぃでもかめへんで?
ここには植物があふれてるんやから…。
わざとらしくそう言ってみた。
そしたらさっきよりも強い反応。
目を大きく開いてアタシを見据える。
思わず後退りそうになるくらいに強く。
- 434 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時20分38秒
彼女が反応したのはきっと
植物があふれてるんやからって言葉。
だって、ここにはなんもないから。
植物はおろか
植木鉢すら見当たらん。
やから彼女はきっと…怒ってる。
大切なこの場所を花を
バカにしたように言ったアタシに。
花なんかみんな一緒やろって
そう言ったアタシの軽い口調に。
怒ってるはずや。
- 435 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時21分11秒
『…あなたは……どんな花が好きなの?』
よっしゃ。
初めて彼女から聞いた
なに色が好き?意外のセリフ。
こっちのペースに巻き込まれてきてるって証拠や。
ここからは慎重にいく必要はない。
思った通りを直接的に
彼女の中に放り込んでやればええ。
アタシは彼女の方に向き直った。
- 436 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時21分46秒
「アンタはどんな花が好きや?」
『………』
なんや、まだアカンのか。
しゃーないなぁ…。
ちょっと危険やけど…。
アタシは1つの賭けに出た。
彼女が自分の本音を言わへんのやったら
こっちから切り出すしかないんやから。
「アタシはな…」
- 437 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時22分21秒
大切にしてやりたいって思える花が好きや。
いつでも傍にいてほしいって思える花が好きや。
それからなぁ…。
自分のことを大切やって思ってれる花。
護ってあげたいって思ってくれる花。
これがアタシの好きな花や。
そうやなぁ…ちょうど……。
- 438 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時22分57秒
そこで言葉を止めて
アタシは彼女の手を取る。
そして手の中の薔薇を取り
彼女に差し出した。
「コイツらみたいに」
『……』
アンタはコイツらを犠牲にして
自分が助かったんが悔しかったんやろ。
でもなぁ。
コイツらはそんなん思ってへんねんで。
アンタのこと助けれて嬉しいって。
やっと役に立てたって。
メッチャ喜んでるやん。
- 439 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時23分58秒
『…うそ…よ…』
「うそちゃうよ」
その証拠に、ほら。
彼女がビニールハウスの中を見回すと
そこにはキレイに咲いた色とりどりの花壇。
バラ、ひまわり、百合。
チューリップ、アサガオ。
キンモクセイ、カサブランカ。
数もすごいけど
その種類もすごいやろ。
コイツらみんな
アンタのためにおんねんで。
- 440 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時24分37秒
『…うそ…』
うそなわけないやん。
誰が好き好んで大切でもないやつのために
数十年の時間を一緒に過ごすねん。
大切やない限り
そんなことできへんやろ?
- 441 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時25分07秒
『…あり…がとう…』
彼女が花壇の前にしゃがみ込んで
誰にでもなくそう言った。
よかった。
ここには元から
こないに素晴らしい花があった。
けど、それを彼女が否定してきたから
あるわけないと決めつけてきたから。
だから彼女には見えへんかったんや。
- 442 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時25分57秒
足元にはいつでも
支えてくれる大切なモンがあったこと。
自分がやったことは
間違いなんかじゃないってこと。
それを認めさせる大切な花たちが
彼女には見えへんかったんや。
けど、もう大丈夫や。
- 443 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時26分36秒
『…ありがとう…』
「どういたしまして?」
アタシはなんにもしてへんけどな。
そう言って笑ったら
彼女が笑い返した。
その笑顔。
きっと一生忘れへんわ。
- 444 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)13時27分39秒
- ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
- 445 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時28分21秒
「あ、裕ちゃん」
「姐さん、どこ行ってはったんです」
広い…ひろーい学園の端から
無事に生還したアタシに
みっちゃんたちが駆け寄ってきた。
近づいた途端
みっちゃんは顔をしかめる。
「また1人で…」
「ええやん、気にすな」
ちゃんと終わってんから。
- 446 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月26日(月)13時28分54秒
さー、こっからが本番やで!
明日からはやっと学園祭が始まる。
賑うのもええけど
限度知らんアホは止めなアカン。
忙しなるでぇ!!
学園祭まで後1日!
- 447 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)13時30分57秒
- 終了
- 448 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)13時31分27秒
- 七不思議も残すところ後2つ。
- 449 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月26日(月)13時38分13秒
- けど、残りのことを考えたら
ちょっと入るかなぁって思ってます。
なので、1つ提案します。
1:このまま文化祭を入れる(途中で切れるかもだけど)
2:別にスレッドをたてる→ここは関係ない短編集をやる。
3:それ意外(他にあれば書いてください)
意見を聞かせていただけたらと思います。
- 450 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年08月26日(月)17時04分43秒
- 2:別にスレッドをたてる→ここは関係ない短編集をやる。
に一票。
- 451 名前:名無し 投稿日:2002年08月26日(月)22時42分01秒
- 自分も2に一票
- 452 名前:ななし 投稿日:2002年08月27日(火)01時20分14秒
- 別にスレ立てしてこの話しを完結させてから
短編集を始めるってのはダメですか?
ずっと楽しみに読んでたので…最後まで読みたいです。
- 453 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)00時28分12秒
- >読んでる人@ヤグヲタ さま
それの方向でいきます。
ご意見、ありがとうございました。
- 454 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)00時29分26秒
- >451 名無し さま
答えていたただきありがとうございます。
これからもごひいきに。。。
- 455 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)00時30分54秒
- >452 ななし さま
>別にスレ立てしてこの話しを完結させてから
短編集を始めるってのはダメですか?
それも1つの手ですね。ちょっと検討してみます。
- 456 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)00時32分41秒
- 別スレ立てます。
ちょっと考えてみてこれからの短編とか検討します。
ここには1つくらいはとは思ってますが…。
- 457 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月16日(月)01時50分58秒
- 約束の短編。
- 458 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)01時51分38秒
- 「…矢口?」
「………」
今日はハロモニ。の収録。
だから、本来なら矢口は絶好調のはず。
けど…。
「…矢口ぃ?」
「……」
こら。ムシかよ。
- 459 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)01時52分34秒
朝からキゲンが悪かったらしい矢口。
原因なんてきっと…
絶対にあの人なんだろうけど。
私までムシされる必要ってないでしょ。
「…聞いてる?」
「…」
そーゆー態度とるかい。
これじゃ私が被害者じゃないの。
ちょっとぉ。
責任とってよぉ。
矢口になにがあったかは知らないけど
私まで巻き込まれるいわれはないし
私には私の事情がある。
- 460 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)01時53分11秒
これ以上つきあってたら
私の方もヤバイんだ。
…あぁ、怒ってる?
「…違うわよ」
「知ってます。でも…」
人の話はなにも聞いてくれないくせに
愚痴だけは言いたがる矢口。
おかげで私は動けない。
そうなると気にかかることが増えるし
後々のことが面倒になる。
どうやら勘違いはしてないみたいね。
ま、そこまで子供じゃないか。
- 461 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)01時54分08秒
「矢口さんばっかり…」
前言撤回。
こいつまだ子供だわ。
抱きしめてあげないと
今にも泣き出しそうだったから
私は優しくその肩を抱く。
いつもは嬉しそうに抱き返してくるのに
今日は妙に大人しくなってる。
背中に回ってくる腕も
心なしか弱いような気がする。
はぁ…。
いつまでたっても
この娘のネガティブは治らないわね。
- 462 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)01時54分54秒
「仕方ないじゃない?」
矢口が落ち込んでたら
支えてあげなくちゃダメでしょ?
落ち込んで…。
いや、今回のは違うかもだけど。
それでも仕方ないじゃない。
唯一の同期なんだし。
「…仲直りすればいいんですか?」
「え?まぁ、そうかな…?」
そう言ったら楽しそうにじゃあ考えます♪
って言ってどこかへ行ってしまった。
…ちょっと待ってよ。
- 463 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)01時55分33秒
仲直りすればいいんですか?
…なにがいいんですか。
……。
私もしかして
ちょっとヤバイ?
- 464 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)01時56分16秒
なにをしでかすのかと思って
ちょっと気にしてたんだけど…。
まさか収録中に、とは。
「……火に油じゃないの」
「大丈夫ですって♪」
今日のハロモニ。のゲームは
辻が喜びそうな味覚勝負。
そのゲームの最中
不意に石川に耳打ちされた。
けど、それでいいのか。
- 465 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)01時56分51秒
石川の言ってることはどう考えても
今の矢口には火に油だ。
確かに1回キレちゃえば
簡単にことは進むとは思うけど…。
「アッツイなぁ?」
「…あっそ」
人が悩んであげてるのに…。
- 466 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)01時57分24秒
休憩の時間に話し掛けてきたのは
私の時間を奪っている片割れ。
石川の行動を見て
イジワルしに来たらしい。
「…仲直り、したら?」
「……イタイとこ突くなぁ」
できたら苦労せんっちゅーねん。
本当に悔しそうに
子供みたいにぼそっと呟いた。
- 467 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)01時57分55秒
やっぱり仲直りしたいんだ。
…そりゃそうよね。
2週間に1回の収録で。
チビとかもいるから2人にはなれなくて。
せっかくなれても
けっきょく数分間だけで。
お互いに痩せ我慢が好きよね。
- 468 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)01時58分25秒
「…早めにした方がいいわよ」
「なんやねん、それ?」
あの娘が暴走する前に
自分達の力で何とかした方がいいわよ?
私も怖いし。
「うー…」
…ムリね。
- 469 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)01時58分58秒
「!!!」
あんのバカっ!
よりにもよってなんてことを…!
- 470 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)01時59分38秒
「……圭ちゃん…」
「…なによ…」
私に文句言われてもムリよ。
あいつが勝手にやったの。
確かにショック療法って言ってたけど…。
やりすぎよ、バカ。
「…階段とこ来いっていっといて」
「……どっちに?」
……アホに…。
そう言って矢口はスタジオを出て行った。
それを私は静かに見送った。
背筋が凍りつくのを感じながら。
- 471 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時00分28秒
あの娘も大概だけど
あの人もよね。
今日な久しぶりに血の雨が降るわ。
少々投げやりな気持ちになりながら
とうの本人を見てた。
どうやら彼女もヤバイことに気付いたらしく
終了の声と同時に駆け寄ってきた。
「…矢口は…?」
- 472 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時01分30秒
これを顔面蒼白と言うのだろう。
いつも真っ白でキレイなその顔が
今日は更に真っ白になってる。
彼女の同様と戸惑いを受けて
私もさっきの怖さが蘇ってきた。
本気で血の雨ね。
- 473 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時02分06秒
「階段だって」
「…ありがとぉ…」
語尾が小さくなっていくお礼。
今の彼女には精一杯。
その言葉と同じように
すぐに小さくなっていった彼女の背中に
私は一言だけ激励をした。
生きて帰っておいでよ。
日常生活で使うには程遠いけど
あの2人には何度か使った。
本気の意味で。
- 474 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時02分48秒
怒られる人のことを思って
ため息が自然と出てくる。
なんだっけ。
自然と重ねるのは歳だっけ。
歳の分だけセクシーになるって。
それなら苦労しないわよ。
「上手くいきそうですか♪」
なにを勘違いしてんのよ。
- 475 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時03分24秒
楽しそうに駆け寄ってきた
今回一番の被害者になるかもしれないバカ。
自分の作戦が上手くいくって信じて
かなり自信を持っちゃってる。
知らないわよ。
裕ちゃん死んだらあんたのせいよ。
「……怒ってます?」
「…そうね、怒ってるかも」
- 476 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時03分58秒
どんな台本があったか知らないけど
抱きつかれて嬉しそうにしちゃってさ。
それだけならまだしも。
やり返されるのわかってて
裕ちゃんに抱きつくなんてね。
…台本でもムカツクわ。
大体なんなのよ。
今日の裕ちゃんはおかしいでしょ。
最初っからカミカミだし。
やたら紺野に絡むし。
いつもの矢口溺愛ぶりはどうしたのよ?
- 477 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時04分30秒
あーっもーっ!
裕ちゃんが余計なことするから
こっちまでペースが崩れちゃったわよ!
「…保田さん?」
「…いいから」
ちょっとだけ大人しくしてなさい。
「はい…」
- 478 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月17日(火)01時00分17秒
- 突発短編。
- 479 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月17日(火)01時01分03秒
- 無事に(?)終了。
- 480 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月17日(火)01時01分42秒
- 途中で寝た。ヲイ
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