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いちかばちかのダイブ!!
- 1 名前:New 投稿日:2002年08月24日(土)19時57分28秒
- Newです!こないだ「雨は冷たく、時には暖かい」というのを
書いた者です。2回目の投稿です。今回はいちなちを中心にイロイロと・・・・。
何かとダメな部分が出るかと思いますがよろしくお願いします!
- 2 名前:New 投稿日:2002年08月24日(土)20時07分20秒
- 今日も暑いなぁ。っていうかもう夏終りだし。
でもちゃんと宿題終わってるし、海にも行ったし、花火もした。
今年はなかなかよろしい夏休みだったな〜。
「暇ー暇ー」
私は市井紗耶香。珍しく宿題もすでに終わって今日はバイトも
ないので暇な1日を過ごしていた。
もうすぐ夏休みも終り、あと5日ぐらい。ちなみに1人暮らしで
ここから近い浅北女子高等学校に通ってる高校2年生。
携帯を取り出して誰かに電話しようとした。
- 3 名前:New 投稿日:2002年08月25日(日)00時26分25秒
- 私は友達である矢口へまず電話してみた。
プルルル・・・・・・。
『はい!矢口です〜』
「うーっす、紗耶香です」
『なんだよ〜、オイラ忙しいんだよー』
「何に忙しいんだ?暇なんだよー」
『暇ぁ?』
「うん、マジ暇。死にそう〜」
『だったら適当に女誘えばぁ?紗耶香モテるでしょ。じゃぁね!』
ガチャ、ツーツー。
・・・・つ、冷たい・・・。
最近矢口がつれない。どうしたんだろーか。
自分で言っちゃぁなんだけど、私はモテる方だ。今まで何回も
告白された事がある(全部女だけど)。まぁ何人かは付き合って
たけど、本気じゃなかった。
矢口もその1人だった。
- 4 名前:New 投稿日:2002年08月25日(日)00時42分36秒
- 矢口と出会ったのは去年の入学式。私も矢口も1年生。
私はしょっぱなから遅刻をしてしまい屋上でサボっていたら
矢口に声をかけられた。
「1年生ですか?」
私は矢口の背の小ささに驚いてすぐ反応できなかった。
「あの!」
「あぁ・・・うん。1年生です」
「じゃぁ、同じだ。遅刻?」
「遅刻、めんどいから屋上でサボり」
「オイラも遅刻〜、やっぱ教室入りづらいよねぇ」
矢口とは同じクラスでいつも一緒にいた。そして去年の夏休みに
告白されて、OKしたのだ。
・・・・・だけど、冬。私たちは別れた。
原因は私だ。
「紗耶香って、マジでオイラと付き合ってんの?」
「なんでそんな事聞くんだよ」
「こないだ、他の人とデートしたんだって?」
「あれは友達だよ」
「ウソ!友達とキスするんだ!?オイラ見てたんだから!」
「・・・・え?」
「やっぱマジじゃないんでしょ?もう・・・別れよ」
矢口は泣きながら私に言った。その頃は矢口以外の人と遊んだり
していた。あの矢口の涙が未だに忘れられない。
- 5 名前:New 投稿日:2002年08月25日(日)14時17分02秒
- あれから、矢口と別れてからは誰とも付き合ってはいない。
自分のやっていた過ち。やっとそれに気がついて。
────涙が怖くなった。
矢口が流した涙は私のせいで。誰かが泣いてるのをみると
それを思い出してしまう。その度に心が痛くて───。
今、2年生の私と矢口の関係は単なるクラスメイト。
別れてから3ヶ月ぐらい私と矢口はお互い避けていた。
でも1ヶ月前に。
「紗耶香、もう普通に戻ろうよ」
と矢口から声をかけてくれた。
そして今に至る。
- 6 名前:New 投稿日:2002年08月25日(日)14時31分08秒
- 「あぁ〜、暇だなぁ・・・」
私はベットの上に寝転がりグダグダしていた。
するとメールが届いた。
<学校にくれば?ダンス部やってるよ。矢口>
「あー、そっか、部活やってんだ」
ちなみに矢口はダンス部。私は何もやってない。
どうせ暇なので学校へ行く事にした。
家を出て歩いて10分。学校へ到着した。
「おーやってるやってる」
体育館へ向かうと中ではバスケ部やバレー部が部活動をしていた。
ステージの上ではダンス部がいた。
「うーす、矢口」
「あ、紗耶香」
矢口はステージから下りて私の方へ走ってきた。
「やっぱり、来ると思った」
「呼んだのはそっちじゃんか」
「・・・・あれから誰とも付き合ってないの?」
「うん・・・まぁね」
「ふーん」
私の足元にバレーボールが転がってきた。
「すみませーん!」
私はボールをとって部員の人に渡した。渡す時に頑張ってと
声をかけた。するとその部員の人は嬉しそうにはい!と答えた。
「モテるのにね。紗耶香」
矢口はそう言ってステージの方へ歩き出した。
私もその後についていった。
- 7 名前:New 投稿日:2002年08月25日(日)15時17分20秒
- 適当にステージの隅に座ってダンス部の部活動を眺めていた。
矢口も他の部員も楽しそうに踊っている。ちょっとだけ羨ましくなった。
ふぁ〜とあくびをして、寝転がった。身体を大の字のようにして体育館の
天井を見上げた。
・・・・・なんか夢中になる事ないかなぁ・・・・。
目を瞑ってあれこれ考えていた。すると誰かに声をかけられた。
「寝てるんですか?」
今までに聞いたことが無い声だから知らない人だ。
目をゆっくり開けるとそこには可愛い顔の女がいた。
「あ、いや。別に寝てるワケじゃないっス」
私は起き上がって立った。
「私ね、2学期からこの学校に転入するんだ」
「あ、そうなんですか」
「あなたは何年生?私は2年生」
「2年です」
私は緊張した。よくわかんないけど心臓が早かった。
「名前───私は安倍なつみ」
「市井紗耶香です」
安倍さんはずっとニコニコしてて、こっちまで笑顔になっちゃう
勢いだ。
- 8 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月25日(日)20時40分23秒
- 新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
作者さん、ガムバッテください!
- 9 名前:New 投稿日:2002年08月27日(火)16時30分45秒
- 8さん>ありがとうございます!頑張ります〜。
「市井さんかぁ・・・あ、私はなっちでいいよ」
「なっち・・・・私は呼び捨てでもかまわないよ」
「じゃぁ紗耶香ね!」
その後私となっちは適当に体育館内を眺めていた。
なっちは今日は学校の見学に来たんだって。
「紗耶香ぁ〜!!」
矢口がトコトコとやって来た。
「んにゃ?誰?」
なっちの方をじ〜っと見て次に私を見た。
「2学期から2年に転入してくる安倍なつみさん」
「へぇ〜、じゃぁオイラ達と同じクラスになるかもね!オイラ矢口!」
「矢口さん?私はなっち」
「了解!なっちね!」
矢口は元気よく言った。
体育館内はいつのまにかさっきよりは静かになっていた。
バスケ部がいなくなってバレー部だけになっていた。
- 10 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月01日(日)21時45分39秒
- パソコンが壊れてしまいやっと今日直りました。今日から更新
していくのでよろしくお願いします!
私はステージから下りて転がっていたバスケのボール
を拾った。ダムダムとドリブルし、シュートする。
ボールは綺麗に入った。
「わ〜上手いね〜」
なっちが拍手しながら言う。
「紗耶香、バスケ上手いのに。入部すればいいじゃん」
矢口が呆れ口調で私に言った。私はもう1度ボールを拾った。
「ん〜、その内、ね」
と言いながらもう1回シュート。ボールはさっきと同じく綺麗に
入る。私はボールが落ちていくのを見ていた。そして矢口となっちの
方へ向いた。
「帰るね」
私はそう一言だけ言って体育館を出ようとした。
- 11 名前:New 投稿日:2002年09月01日(日)22時20分50秒
- <なっち視点>
紗耶香かぁ・・・・。なんか気になるなぁ。
結構かっこいいんだなぁ。彼氏っていうよりも彼女がいそう。
でも・・・・あんまり笑わないんだね。
紗耶香は笑うけど、なんっていうか苦笑いしてる感じに見えるよ。
「なっちは何部入る?」
「え、あ、まだわかんないかな〜」
「そっかー、是非ダンス部に入ってもらいたいよ」
「まだ入るかもわからないし・・・考えてみる」
矢口さんは可愛いな。さっき初めて会った時は小さくてびっくり
したけど。いつも笑顔だし。
「矢口さんは彼氏いる?」
「矢口でいいよ。・・・・前にいた。今はいないよ。部活一筋!」
矢口さん・・・じゃないや、矢口はガッツポーズをしながら言った。
「へぇ〜、前に・・誰?って・・・私にはわかんないか」
「なっち知ってるよ。さっきまでここにいた人。ダスケ部じゃないのに
バスケしてた人」
「え・・・・?まさか・・・・」
紗耶香?
- 12 名前:New 投稿日:2002年09月01日(日)22時22分50秒
- ありゃ・・・ダスケ部になってる・・・・。
バスケ部です・・・間違えました(焦
- 13 名前:New 投稿日:2002年09月01日(日)22時31分51秒
- 「紗耶香・・・・?」
「うん、そう。あの市井紗耶香」
矢口は適当に踊りながら言った。私はびっくりして、何を言えばいいか
わからなくなって、何も言えなかった。
「去年の夏付き合い始めて冬に別れたんだ。原因は紗耶香の浮気」
「え・・・!?」
またまた驚いてしまった。浮気?紗耶香が?
「でもさぁ、今思えば何で別れたんだろうって思うよ・・・。
オイラが一方的に別れ話して終わっちゃったんだから。
紗耶香の話もまともに聞かないで・・・でも浮気は浮気なんだけど。
忘れられないんだよね・・・・紗耶香の事がさ」
矢口は踊るのをやめてその場に座り込んだ。体育座りをして
下を向いて小さくため息をついていた。
私は矢口をただ見ていた。何も言わなかった。
- 14 名前:New 投稿日:2002年09月02日(月)16時45分51秒
- 「オイラと別れてさ。紗耶香は誰とも付き合わなくなった。
ホント驚いた。そんでさ・・・・なんか笑わなくなったんだ。
前はくだらない事で爆笑してた紗耶香が今はクールな感じで
・・・・いつも寂しそうな顔してる」
矢口の声は震えてた。私は矢口の側に座って矢口の頭をなでた。
「あ〜ごめん。なっちに話してもわかんないよねぇ・・・」
「いいよ。紗耶香は変わったんだね」
「そうなんだ・・・・オイラのせいかなぁ・・・」
「・・・そんな事ないよ」
それから矢口は部活で私は家に帰った。家は私1人で住んでいる。
別に寂しいとかないけど・・・・不安はあるし、期待もある。
「・・・・矢口と紗耶香かぁ・・・」
私はソファに座って小さく呟いた。
- 15 名前:New 投稿日:2002年09月02日(月)16時59分31秒
- <紗耶香視点>
あっという間に5日間は過ぎていき2学期スタート。
私は5日間何をしていたかというとバイトと新しいゲームに
はまっていた。
「おはよー!」
「おはよう」
クラスメイトが私に挨拶する。私も簡単に挨拶をする。
私の席は窓側の1番後ろの席。1番いい場所。寝てても気づかれないから。
「ふぁぁぁぁ〜」
「でかいあくびー」
あくびをしてたらいつの間にか矢口が私の側にいた。
矢口の席は私の前。
「昨日ちゃんと寝たのー?」
矢口は席につきながら私に言った。
「別に・・・・ちゃんと寝たよ」
「ふ〜ん。嘘でしょ?」
「・・・・ゲームしてた。朝の5時まで」
私は机にうつぶせになった。すると先生がやってきてさっきまで
騒がしかった教室が静まりかえった。
「今日は転入生がいます。入って来てー」
教室に入ってきた転入生。その人は5日前に知り合った人だった。
「あ、安部なつみです。よろしくお願いします」
なっちは緊張しててしゃべり方がぎこちなかった。
なっちの席は私の隣になった。ちょうどそこが空いていたからだ。
私は眠かったので1時間目の英語は寝ていた。
- 16 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月02日(月)17時10分31秒
- ちらっとなっちを見ると真面目に授業を聞いていた。
前を見ると矢口も一生懸命ノートとっていた。
・・・・よく頑張るねぇ。
もう1回あくびをして眠る体勢に入った。
───休み時間。
「わかんない事あったら矢口に聞いてね」
「うん、ありがとう」
矢口となっちが仲良さげに話していた。私はまだ眠気がとれないまま。
「紗耶香も何かしゃべろー」
矢口が私の頭をたたいた。私は顔を上げ、矢口を無視してなっちに
話しかけた。
「どう?緊張してる?」
「うん、してるよ。でも矢口と紗耶香と同じクラスでよかった」
「そりゃよかった」
「こら!矢口を無視すんな!なっち〜放課後部活見る?」
「うん、そのつもり」
「じゃぁ矢口達が案内してあげる!」
「ありがとうー」
ん?・・矢口達・・・・?
達っつーことは私も入ってんの?
「ねー、紗耶香」
「勝手に決めんなよな。ま、いいけど」
「じゃぁ決まり!」
矢口ははしゃぎながら自分が入ってるダンス部について
なっちに語っていた。
- 17 名前:New 投稿日:2002年09月02日(月)17時35分59秒
- 放課後。約束どおりなっちをご案内する。
「校庭ではソフトボール・陸上が主にやってる。テニスコート
があってテニス・ソフトテニス部。水泳もあるよ。
そんで体育館ではバレー・バトミ・バスケ・ダンス。
他には弓道・剣道。文系は演劇とか美術・情報処理などなど」
矢口は楽しそうになっちに説明しながら部活を案内する。
私は後ろからついていく感じで何もしゃべりはしなかった。
ここは体育館。今日はバスケとバトミが部活動をしていた。
「どう?決まりそう?」
「うーん、まだわかんないや」
「そっかぁ・・・・あ!オイラ部活の方ちょっと顔出してくんね!
紗耶香よろしくぅ!」
矢口は元気よく走り去って行った。なっちと2人にだけになった。
「座ろっか」
「うん」
なっちと私は体育館の側にあるベンチに座った。空はまだ青くて
夕方の気配はない。
「聞いたよ。矢口と付き合ってたって・・・」
「え?あー、うん」
「変わったんだね、紗耶香」
「そーかな、・・・そーかも」
「矢口・・・・後悔してるよ」
「へぇ・・・・」
「誰とも付き合ってないんだって・・・?」
「まぁね」
私は空を見上げて言った。
- 18 名前:New 投稿日:2002年09月02日(月)17時45分45秒
- 「なんで?」
「・・・・矢口にはひどい事した。傷つけた。
また誰かと付き合えば傷つけるんじゃないかって。
もう涙は見たくない。・・・・失ったものは大きくて
・・・・じゃぁ、失いたくなければ求めなきゃいい。
それだけだよ・・・・」
「紗耶香・・・・」
なっちは悲しそうに私を見ていた。
今まで誰にも話さなかった事を話して、私は身体の力が抜けた。
そう。
失いたくなければ、求めなきゃいい。
涙はもういらない。
矢口のあの涙は。
私の罪だから。
雨でも洗い流せない罪だから───。
「なんでなっちが・・・・」
なっちが泣いていた。
「・・・紗耶香・・・それ悲しいよ。寂しいよ・・・」
なっちは泣きながらそう言ってた。
あぁ。まただ。
どうしてもなっちが矢口に見えてしまう。
私の心は苦しくなっていく。締め付けられる。
「・・・求めないと・・・手に入らないんだよ・・・?」
なっちは私の頬に手を当てて言う。
「・・・・失うのが怖くて逃げてたら何も手に入らないよ・・?」
私は何も言えなかった。
- 19 名前:New 投稿日:2002年09月03日(火)17時49分57秒
- なっちはずっと泣いていて、私はどうする事も出来なくてさ。
ただ矢口のあの涙ばかり思い出してて。なっちの涙を止める事は
出来なかった。
それからどれくらいたっただろう?
多分そんなに時間はたっていないと思う。
空はやっとオレンジ色になりかけていた。なっちを見ると
なっちは泣いてなくて空を見上げていた。
「・・・・なっち・・・私はそういう風にしか生きていけないんだよ」
ポツリと呟いた。なっちからの返事はない。別に期待してなかったけどさ。
数分後矢口が帰ってきた。
「なんか暗いよー?2人共」
「そんな事ないよー」
なっちが笑顔で矢口に言った。私は何も言わなかった。
「もう帰ろうか?」
「そうだね」
こうしてなっちの学校生活1日目が終了した。
- 20 名前:New 投稿日:2002年09月03日(火)18時02分20秒
- 翌朝。いつも通り目覚まし時計で起こされて学校へ行く支度をする。
・・・なっちとしゃべれるかなぁ。無理だろうな。
歯みがきをしながら昨日の事を考えていた。
制服に着替えて家を出る。
「さて・・・行きますかね」
今日も青く澄んだいい天気の中私は学校へ向かった。
教室にはまだなっちも矢口も来てなかった。
ちょっとラッキーと思いつつ席へつく。するとクラスメイトが
私に寄って来た。
「あの〜、クッキー作ったんだけど。食べない?」
どうやら作ったクッキーを私にくれるという話だ。
まぁ・・・朝ご飯食べないし。ちょうどいいや。
「ありがとう。いただきます」
私はクッキーを1枚もらって早速食べた。
「どう・・・?」
「おいしいよ」
「やったぁ〜!!」
多分、まだあんまりしゃべった事ないよね。このコ。
「あのさ、名前・・・」
「あ!石川梨華です!」
へぇ・・・声が面白いなぁ。
そして石川さんは残りのクッキーもくれて、満足げに自分の席へ
帰って行った。
私はクッキーを食べながら今後なっちとどうしようか考えていた。
- 21 名前:New 投稿日:2002年09月03日(火)18時13分29秒
- 「何食べてんの?」
「うわぁ!びっくりしたぁ〜」
いつの間にか矢口が席についていて不思議そうに私を見ていた。
「あ、・・・クッキー。貰ったから」
「へぇ〜。相変わらずですね。っで誰から?」
「石川さん」
「梨華ちゃん?ほぉー」
「上手いよ、食べる?」
「いらない、紗耶香が貰ったんでしょ。残さず食べなよ?」
「わかってるよ」
矢口がちょこっと不機嫌になったのがわかった。私には何で不機嫌に
なったのかわからなくて、まぁいいやと思い残りのクッキーを食べた。
クッキーが食べ終わった頃なっちがやって来た。
「なっち、おはよー!」
「おはよ、矢口、紗耶香」
「・・・おはよ」
意外にもなっちは普通に挨拶してきた。別にそれでもいいか。
そして私は眠いながらも矢口となっちが話している光景を見ていた。
- 22 名前:New 投稿日:2002年09月03日(火)18時21分47秒
- 求めないと手に入らない。
失うのが怖くて逃げてたら何も手に入らない。
わかってるよ、わかってる。
未だに矢口のあの涙が忘れられなくて。
雨の日は好きじゃなかった。思い出すからさ。
多分もう人を好きになる事なんか、ない。
きっとまた傷つけてしまうだろう。
そんなの嫌じゃんか。
もう涙はいらないんだ。
もう誰も愛す事はないんだ。
もう・・・同じ事繰り返したくないんだ。
失いたくないんだ。
だから、求めない。
数学の授業を受けながら私は思った。
- 23 名前:New 投稿日:2002年09月05日(木)13時46分39秒
- 「あ、雨だぁー」
休み時間矢口が窓の外を見ながら言った。
「ホントだー。さっきまで晴れてたのにね」
なっちが数学の教科書をしまいながら言った。
・・・・なんで雨ふるかなぁ。
私はふってくる雨をうざそうに見つめていた。
「紗耶香?」
「え、あ、何?」
「顔、怖いよ」
矢口が私の顔を覗き込んだ。なっちも不思議そうに見てる。
「なんでもないよ。傘忘れたーって思って」
私は無理やり笑ってみせた。
「じゃぁ、オイラの傘に入る?」
「いいよ。帰り道が違うじゃん」
「濡れて帰ったら風邪ひくよ?」
「なっち、大丈夫だって。それぐらいで風邪ひくもんか」
こんな雨の中一緒には帰れないよ、矢口。
なっち、心配してくれてありがとう、風邪ひかないから。
- 24 名前:New 投稿日:2002年09月05日(木)18時15分33秒
- <矢口視点>
紗耶香は相変わらず雨の日は怖い顔をする。
その度にオイラは「どうしたの?」とか言うんだけど紗耶香は
いつも「なんでもないよ」って言うんだ。
きっと何か思い出してんだろうなって思うんだけどそれが何かは
オイラにはわからない。
雨は強さを増していくばかりで全く止む気配はない。
そんなこんなで放課後。今日は部活はないから暇。
「紗耶香ー、やっぱ一緒に帰ろうよ。濡れるって」
「いいって。矢口に悪いしさ、じゃぁねー」
6時間目が終わるとさっさと紗耶香は帰ってしまった。
「なっちは傘持ってる?」
「うん、持ってるよ」
なっちに聞いてみるとなんと家が近い事がわかった。
なので一緒に帰る事にした。話題は紗耶香の話になった。
- 25 名前:New 投稿日:2002年09月05日(木)18時26分35秒
- 「全く、紗耶香は何考えてんだか・・・」
「そうだね、・・・人の気持ちは簡単にはわかんないよ」
「思うんだけどさぁ、なっちは紗耶香の事どー思う?」
「え・・・!?」
オイラは何気なく聞いてしまった。でもなんとなくなっちは
紗耶香の事好きなんじゃないかって思ってたんだ。
「どーなのさ?」
「・・・・・・」
なっちは黙ってしまって、オイラは聞くんじゃなかったと後悔
してしまった。でも・・・。
「・・・なんか気になるよ。紗耶香の事。急に消えちゃいそうで
・・・いなくなりそうな紗耶香。ほおって置けない感じかな」
「へ、へぇ〜・・・・そうなんだ」
なんかショック。よくわかんないけどさ。
「矢口はどーなのよ?」
なっちは突然聞いてきた。オイラは・・・・。
「・・・オイラは・・・好き。・・・忘れらんない」
そうだ。まだ忘れられない。
好きなんだよぉ、紗耶香が。
「そっか・・・じゃぁ、私らはライバルなのかな?」
「え・・・?」
オイラはなっちの顔を見た。いつもと同じの笑顔だった。
「・・・負けないよ」
「・・・オイラだって、負けない」
いきなし2人の宣誓布告。
それからオイラは走って家へ帰ったんだ。
- 26 名前:New 投稿日:2002年09月05日(木)18時34分27秒
- <なっち視点>
「・・・・紗耶香は罪な人だね」
矢口が走って行ってしまった後私は呟いた。
私は紗耶香が好き。体育館で会った時から。
そして矢口もまだ好きって事がさっきはっきりわかった。
なんか宣誓布告しちゃったし。明日からどうなるんだろう?
・・・問題は紗耶香。
こないだ言った言葉。
失いたくなければ求めなきゃいい。
きっと私と矢口が告白しても紗耶香はどっちも選ばない。
でもね、私は諦めたくないよ。
雨の中決心をしながら家へ帰った。
- 27 名前:New 投稿日:2002年09月05日(木)18時40分16秒
- <紗耶香視点>
「へっくしゅん!!!」
私はずぶ濡れで家に帰ってすぐにお風呂に入った。
さっきからくしゃみが止まんなくて困ってます。
「あ〜、もう。誰か噂してんな」
そのくしゃみが風邪のせいではないと自分にいいきかせながら
お風呂から出た。
適当に着替えて携帯を見るとメールが2通。
<大丈夫?風邪ひくなよ! 矢口>
<帰ったらちゃんとお風呂入って身体暖めてね なっち>
「やっぱあれだな、こーゆーのは性格が出るね」
と言いながら2人に返信メールをしていた。
あの2人の間に何がおきたかなんてしらない私だった。
- 28 名前:New 投稿日:2002年09月06日(金)20時17分56秒
- ピピピピ・・・・。
翌朝、起きたらなんかだるいから体温計で熱を測ってみた。
「げ・・・37度?」
さてどうしようか?休むか?それともガッコ行くか?
・・・・無理して熱上げるのはダメだね。
私は学校を休む事にした。
<矢口視点>
学校に来てみると紗耶香はいなかった。まぁ結局風邪ひいたって
事だと思うけど。・・・今日はキツイなぁ。
だってなっちと2人じゃん?宣誓布告の次の日にこれって・・・。
オイラはため息をつきながら席へついた。なっちはまだ来てない。
「・・・・・はぁ〜」
オイラとなっちが告白したら紗耶香はどちらを選ぶだろうか?
オイラ?
それとも・・・・。
- 29 名前:New 投稿日:2002年09月06日(金)20時27分18秒
- 休み時間に紗耶香を訪ねて(多分告白だろう)来たけど紗耶香
が休みだと教えると残念そうに帰っていった。
やはりモテるね。
「矢口ー。次の授業なんだっけ?」
「え、えーと。確か国語だよ」
「ありがと」
なんでこの人は普通にオイラとしゃべるんでしょうか?
この笑顔の裏には何が隠されてるの・・・?
そんなこんなで放課後。
なっちが話があるって言うからこうして約束の場所へ来たわけだ。
なっちはちょっと用事があるからオイラは先に来た。
「ふぁ〜いい天気ー」
昨日とは愕然に違う今日の空。青々としててひじょーに気持ちよい。
誰もいない屋上。去年はよく紗耶香と来てたっけ。
うわぁー、切なくなってきた。
「矢口ー」
やっとなっちがやって来た。急いで来たのか息が上がってる。
「話って何?」
早く部活に行きたいからオイラは単刀直入に本題へ入った。
- 30 名前:New 投稿日:2002年09月06日(金)20時34分02秒
- <なっち視点>
今日は紗耶香がお休み。だから矢口と2人でいた。
朝会う時どう矢口に接しようか悩んだ。でも変にしゃべらないのは
嫌だから普通にしゃべった。向こうも最初は戸惑ってたけど
次第に普通になってったよ。
そして私は放課後矢口を屋上に誘った。
この事を言おうか悩んだ。
ずっと悩んでた。紗耶香のあの言葉を。
放課後矢口と紗耶香が部活を案内してくれた時。
紗耶香が今まで誰にも話した事がない話。
これを言うのはちょっと卑怯かもしれない。
これを言えば矢口は身をひいてくれるだろうか?
私は用事をすませて屋上へ走った。
- 31 名前:New 投稿日:2002年09月06日(金)20時43分07秒
- 「あのね・・・」
私はこの前紗耶香が言っていた話を矢口に話した。
「・・・・・紗耶香が・・・」
矢口は呆然としてた。
「・・・・失いたくなければ求めなきゃいい・・・?」
そう小さく呟いてへたりと屋上の床に座った。
私はそんな矢口から目をそらしてずっと空を見ていた。
これからどうなるんだろう?
紗耶香の気持ちを知ってしまった私と矢口。
その事を知らない紗耶香。
<紗耶香視点>
「だぁぁぁ〜!!!!」
1人寂しく格闘ゲームをしていた私。
もちろん圧勝しまくり。
熱もだいぶ下がって明日は学校行けそうだ。
でも・・・・まさかこんな事になってるなんて。
思いもしなかったんだよ。
- 32 名前:New 投稿日:2002年09月07日(土)18時21分31秒
- 夜には完全に風邪は治った。明日は学校へ行けそうだ、良かった。
うだうだとソファに寝転がってたらメールが届いた。
<風邪大丈夫?熱下がった? なっち>
「お〜なっちからだ」
<風邪は治ったよ!明日は行くから 紗耶香>
「これでよし!送信!」
なっちへメールを返信した。
翌朝、学校へ行く。
昨日は早く寝たから全然眠気はなかった。
「あ〜もう秋なのに・・・暑いなぁ・・・」
季節はとっくに秋。涼しくなり何するにも絶好のチャンスの季節。
・・・なのにこの微妙な暑さ。身体もついていかないワケだ。
と思うつつ学校へ到着。
下駄箱で履き替えていると、突然声をかけられた。
「もう風邪、平気なの?」
・・・この声は・・・あ、石川さんか。
「うん、もう治ったし」
「そう、良かった〜」
下駄箱で会った石川さんと教室へ向かう。石川さんは昨日の
授業は何処まで進んだとか、宿題は何とか詳しく教えてくれた。
・・・全然勉強する気はないんだけどなぁ。
「そうそう、昨日ね、市井さんを訪ねて来た人が3人ぐらい来てたよ。
矢口さんが風邪だって教えるとみんな寂しそうに帰ってたけど」
「へぇー」
どうせ告白か何かだろうなと私は思っていた。
- 33 名前:New 投稿日:2002年09月07日(土)18時28分42秒
- 「市井さんは好きな人、いるの?」
「へ?」
思いがけない石川さんの質問に変な声を出してしまった。
「・・・・石川さんはどーなのさ?」
まずは相手の事を聞いてみることに。まぁいるんだろうな。
「いるよ、1年の吉澤ひとみって知ってる?」
「ん・・・あぁ、バレー部の?」
「そう、その人。・・・でも結構ライバル多くて。こないだ
クッキー上げたの。あ、ほら市井さんにも上げたクッキー」
石川さんは急に明るくなったり暗くなったりする人なんだと思った。
「あ、あぁ。あれね。おいしかったよ」
「ちゃんと食べてくれたか心配で・・・・」
私の話は無視かよ!と突っ込みたかったがやめておいた。
そしてやっと教室へついた。
ガラっと扉を開けて中へ入る。だいぶ人は集まっていた。
するとすでになっちと矢口がいた。隣では石川さんが吉澤の
話を楽しそうにしていた。
- 34 名前:New 投稿日:2002年09月07日(土)18時39分03秒
- 「でね、ひとみちゃんのスパイクはかっこよくて〜」
「ちょっとかばん置いてくるからさ」
「あ、うん」
楽しげな石川さんをちょっと置いといて私は自分の席にかばんを
置きに行った。
「あ、紗耶香ー大丈夫?」
「ホント熱下がったの?」
「大丈夫だよ、と」
かばんを机に置きながら2人に言ってすぐに石川さんのとこへ
戻る。石川さんもかばんはすでに置いていた。
「・・・石川さんじゃぁなんか他人行儀で嫌だから梨華ちゃんでいい?」
「うん、いいよ!」
「私のことは紗耶香でいいしさ」
「わかった、紗耶香ね」
そのあとも飽きずに梨華ちゃんは好きな人の話をしていた。
「あ!忘れてた。紗耶香の好きな人!誰?」
・・・なんで覚えてんだよ。しかもさっきはいるの?だったのに
誰?になちゃってるよ!・・・まぁ、いいか。
「・・・わかんないかな」
「そっか〜。結構モテるよね、紗耶香」
「う〜ん、どうでしょ」
「かっこいいもん」
「じゃぁ、梨華ちゃんは可愛いね」
「きゃ〜、ダメだよ。私にはひとみちゃんが・・・」
あー、面白いね梨華ちゃんは。一緒にいると楽しいや。
なっちと矢口の事は忘れつつ梨華としゃべっていた。
- 35 名前:New 投稿日:2002年09月07日(土)21時58分49秒
- <矢口視点>
・・・なんだよぅ、紗耶香のやつ。急に梨華ちゃんと仲良くなってさ。
オイラ達は心配してたのに一言ですましやがってさ〜!!!
「良かった、紗耶香元気で」
オイラの思ってる事はなっちは思ってないみたいだ。
「・・・そうだね」
ちょっと声のトーンを落として言う。するとなっちがどうしたの?
と聞いてきた。
「別に」
やはりとげとげしくなってしまうが仕方ない事だ。
なっちはそんなオイラに不機嫌にならず、「そっか」
と言って1時間目の準備をしていた。
・・・あ、梨華ちゃんと会話終わったのかな。
紗耶香はこっちに向かって来た。なんだか表情が穏やかだ。
オイラはちょこっと無視する事にした。
「なっち、1時間目何だっけ?」
「英語だよ」
「サンキュ」
紗耶香は英語の教科書とノートを取り出した。
- 36 名前:New 投稿日:2002年09月07日(土)22時07分52秒
- <紗耶香視点>
なんか矢口不機嫌だなぁ。どうしたんだろ。
まぁいっか、1時間目は英語かぁ。
にしても今日は暇だなバイトだって夏休みだけだったし。
何しようか・・・・ゲームやるにしろ相手が欲しいよ。
「・・・・部活入るか・・・」
私は英語の授業(さっぱりわからん)を真面目に受けながらも
この暇をどうするか考えていた。
何に入る?・・・バレーやバトミは似合わないだろ。
ダンス?・・・嫌だ。あとは・・・やっぱバスケか。私には。
懐かしいな、中学ん時は毎日やってたからなぁ。バスケ。
真面目に受けていた授業もそっちのけでバスケに懐かしむ。
・・・あいつどーしてるかな。
- 37 名前:New 投稿日:2002年09月07日(土)22時13分53秒
- 『いちーちゃん!はい!タオル!』
『お、さんきゅう。後藤』
『ねぇ、毎日やって疲れない?』
『そりゃ疲れるよ。でも、楽しいんだ』
『もうー、バスケもいいけど、後藤の事忘れないでよ?』
『わかってるって』
懐かしい声。
懐かしい笑顔。
懐かしい名前。
出来ることならばもう1度。
もう1度逢いたいんだ。声が聞きたいんだ。
何処いっちゃたんだよ、後藤。
何で何も言わずに離れたんだよ。
・・・寂しいよ。後藤。
- 38 名前:New 投稿日:2002年09月07日(土)22時20分53秒
- 昼休みの時間。私は矢口となっちで屋上でゴハンタイム。
「ゴトウって誰?」
唐突になっちが聞いてきた。矢口は今、飲み物買いに行ってた。
「さっき紗耶香、なんかそう言ってた」
「そうだっけ?」
誰にも言った事がない話が2つある。1つは矢口の事。
もう1つは・・・後藤の事。
だけど・・あんま言いたくないな。寂しくなっちゃうじゃん。
「あー、あれかな、ゲームのキャラの名前。最近格闘ゲーム
やってるからさ」
「・・・・嘘だ」
「何で」
「紗耶香、嘘つくと私の目見ないもん」
何でこんな数日間で私の特徴がわかるんでしょーか?
なっちには嘘がつけないのか。
私は手に持っていたお茶を一気に飲み干した。
- 39 名前:New 投稿日:2002年09月07日(土)22時31分22秒
- 「後藤はね、中学ん時の後輩。私、バスケ部に入ってて、
後藤はマネージャーだったんだ」
知り合ったのは中2の時。いつものように体育館でバスケ
してたらずっと後藤がこっち見てた。毎日毎日。
だから声かけてみたんだ。
『何やってんの?1年だよね?』
『あ、はい!あたし後藤真希って言います!』
『・・んな自己紹介されても・・・まぁいいや。私市井紗耶香』
『・・・』
『バスケ好きなの?』
『・・・まぁ、はい』
『じゃぁやる?』
『・・運動苦手なんで』
『・・・』
『あの!・・・好きです!』
『はぁ?』
『・・・市井さんの事、好きなんです!』
「ホント突然の告白でさ、びっくりした。
最初は断ったんだよ、でもさあいつ諦めなくて
マネージャーになって毎日私の側にいるわ、その内には
休み時間にも隣にいるわで、・・・いつの間にか好きになってた」
私はしゃべり続けた。矢口の時と同じようになっちに話した。
ごめんね、なっち。
- 40 名前:New 投稿日:2002年09月08日(日)12時50分16秒
- 「でもさぁ・・・あいつ突然いなくなった。急に引っ越して
後藤の家いったら・・・からっぽだった。結構仲良く付き合って
たのにさ、何も言わずにいなくなった。突然出てきて告白してきてさ
突然サヨナラも言わずにいなくなって・・・勝手なやつ」
なっちは私の話を笑わないで聞いてくれた。あの時のように。
「・・・紗耶香は後藤さんがすごく大切だったんだね」
「私、必死に捜した・・・・学校休んで、5日ぐらいかな。
ありこち思い当たる所行ってみたけど、全然ダメ・・・
それから3日間ぐらい寝込んだ。市井紗耶香をこんなまで
したやつ、後藤が初めてだよ」
「・・・そっか」
「結局、後藤には逢えずで。ここに来て高校へ入学、今に至る」
私は涙が出そうになった。後藤との思い出が次々と頭の中に
描かれたから。でも必死にこらえてなっちには見せないようにしたんだ。
- 41 名前:New 投稿日:2002年09月08日(日)12時58分51秒
- <なっち視点>
紗耶香は懐かしそうに後藤さんの事を話しつづけた。
・・・・すごく大切なんだね・・・・・。
話終わった時の紗耶香は泣きそうな感じだった。でも泣かなかった。
多分、私に見せたくなかったんだろうな。
「あ、矢口来たよ」
ちょうど矢口が購買から帰って来た。
「も〜超混んでてさぁ〜。やっと買えたんだよ〜」
「そりゃ大変だったねぇ。おつかれ」
私はさっきの雰囲気を矢口に気づかれないように明るく振舞った。
紗耶香は黙ってる・・・と思ったら。
「・・・矢口、それ牛乳じゃん。いつから好きになった?」
と不思議そうに言った。
「え・・・?えええ!?あれぇ!?ボタン間違えたのかな〜?
ショックー」
「混んでたから気づかなかったんだろ、ほら、交換して上げるよ」
紗耶香はもう1つ持っていたお茶を矢口に渡して牛乳をとった。
「いいの?」
「だって矢口飲めないでしょ、いいよ」
「ありがと・・・」
矢口はすごく嬉しかったのかな、照れたようにお礼を言った。
- 42 名前:New 投稿日:2002年09月08日(日)16時26分36秒
- <紗耶香視点>
矢口から受け取った(っていうか取った)牛乳を飲んでいる。
とりあえず涙は止まった、良かった。
あー、私は矢口も後藤も忘れられてないんだ。笑っちゃうねぇ。
「紗耶香、今日一緒に帰んない?」
なっちが私を見て聞いてきた。別に暇だからいいか。
「うん、いいよ」
「待って、オイラも」
矢口が険しい顔して言ってきた。怒ってんのかな?
ちょっとなっちが嫌な顔したんだけど・・・何か2人あったのかな?
「いいんじゃない?ね、なっち?」
「え、あ、うん」
うわー複雑な顔してるよ、なっち。
その時、5分前のチャイムがなって私達は屋上を後にした。
- 43 名前:New 投稿日:2002年09月08日(日)16時33分46秒
- ──放課後。
3人で一緒に帰る。私が真ん中で両脇になっちと矢口がいる。
なんか・・・やりづらいなぁ。
だって2人共しゃべんないし、空気重いし。
はぁとため息が出ちゃうよ、こんなんだと。
廊下を歩いて右に曲がると階段がある。曲がろうとした時──
ドカッッ。
ドテ。
「いってぇー・・・」
「ご、ごめんなさい!」
「紗耶香、大丈夫?」
「2人共げがない?」
どうやらぶつかったのは私だけらしい。ぶつかった相手を見る。
「大丈夫?ごめんね」
と私は立ってその子に手を差し伸べた。
「あ、すみません・・・・」
ん?・・・この声・・・・。
「ホントごめんなさい・・あたし前見てなくて・・・」
「・・後藤?・・」
私はその子の顔は見れなくて下を向いたまま言った。
「え?あ・・・い、いちーちゃん」
やっと見つけた。
私の大切な人。
- 44 名前:New 投稿日:2002年09月08日(日)21時57分15秒
- 後藤は私の名前を呼んで後ずさりしていた。私はすぐに後藤の手を
掴んだ。力を込めて。
「・・いちーちゃん、ごめん・・・ごめん」
「なんで謝るんだよ、なんで逃げようとすんの」
「だって・・・あたし、いちーちゃんに何も言わないで」
後藤の言葉が終わる前に手を引き寄せて抱きしめた。
「・・・いちーちゃん・・?」
「良かった、心配したんだぞ」
私がそう言うと後藤は抱きしめ返してくれた。そして泣き出した。
沈黙が流れた、ただ後藤の泣き声だけが廊下に響く。
私はずっと後藤を抱きしめた。もう離れないように、力強く。
「・・・紗耶香」
はっと気づいた。そうだなっちと矢口がいたんだ。なっちは
後藤の事知ってるけど矢口は知らないから驚いてんだろう。
- 45 名前:New 投稿日:2002年09月08日(日)22時04分12秒
- やっと後藤を離して、矢口達の方へ振り返る。何を言おうか悩んだ。
そしたらそこへ梨華ちゃんが通りかかった。
「あれ?紗耶香に矢口さんに安部さん。何してるんですか?」
「いや・・・」
私が言葉を濁していると梨華ちゃんは私の腕をがしっと掴んだ。
「ちょっといい?」
「え、あ、」
階段の隅のほうに連れてこられた。何が何だかわけわかんないよ。
「今から、私、告白しようと思うの」
「へぇ、吉澤に?」
「うん、・・・勇気なくて」
「んな大丈夫だって、上手くいくって信じなきゃ叶わないよ?」
「そう・・だよね!ありがと!行ってくるね!紗耶香大好き!」
梨華ちゃんは大声でそう言うと体育館へ向かって行った。
上手くいけばいいなぁ。・・・とさてこっちをどーにかしなきゃ。
私はあの3人の下へ戻った。
- 46 名前:New 投稿日:2002年09月08日(日)22時11分22秒
- <矢口視点>
何?誰?この子。紗耶香の知り合い?友達?
何で抱き合ってたの?
オイラはわけがわかんないまま2人の光景を見ていた。
急に梨華ちゃんが出てきて紗耶香はどっかいっちゃうし。
なっちもその子も黙ってるし。
「ねぇ、あなたが後藤さん?」
突然なっちが口を開いた。
「・・・はい、そうです」
「そっか・・・」
なっちの表情は哀しそうだった。何でかはわかんなかったけど。
ん?何でなっちそんな事聞くの?その子知ってるの?
オイラだけ知らないの?
すると紗耶香が帰ってきた。
「ごめん、ごめん。・・・・」
「紗耶香、矢口にもちゃんと話した方がいいよ?」
「うん・・・そだね、なっち」
何だよ、何の話?オイラさっぱりわかんないよ。
とりあえず教室に戻ることにした、夕方だから誰もいないだろう。
- 47 名前:New 投稿日:2002年09月08日(日)22時20分32秒
- <紗耶香視点>
うわ〜緊張するな。横には後藤がいるし(なんか怯えてる)、
なっちは哀しそうだし・・・矢口は怒ってるし。
教室の中へ入って自分の席につく、みんなも適当に近くに座った。
「で?紗耶香、ちゃんと話してよ」
「う、うん」
矢口がキツイ口調で言うもんだからちょっと怖いよ。
「あのね───」
私は全て矢口に言った、昔後藤と付き合っていた事を。
「・・・そうだったんだ、知らなかった・・・」
矢口はさっきの怒りは消えて泣きそうになってた。
「や、矢口・・・?」
「泣いてなんかないもんね」
いや・・・めちゃくちゃ泣いてるじゃん。
私は泣いた矢口を久々に見てしまったからおろおろしていた。
また泣かせてしまった。どうしよう。
ええい!しっかりしろ!市井!
また心が痛い・・・締め付けられていく。逃げ出したいよ。
だけどダメだ逃げたりしたらダメ。っていうか逃げれないよ。
「矢口・・・・泣くなよ・・・」
「・・・うん、わかってるよ・・・」
矢口は涙を手の甲で拭った。
- 48 名前:New 投稿日:2002年09月10日(火)21時22分41秒
- 「あの・・・いちーちゃん、ホントごめんね?突然いなくなって
突然出てきちゃって・・・ここの学校にしたのはいちーちゃんが
通ってるって聞いて、どうしても逢いたくて。でもいざとなると
怖かった・・・いちーちゃん怒ってんじゃないかって・・・」
後藤は静かに言った。
「もういいんだよ、逢ってくれてありがとう」
私はそう言ってとりあえず後藤を帰した。矢口はまだ少し泣いてるし
なっちはずっと黙ってるし。あ〜どうしよう。
この時なっちが私を好きだなんて、未だに矢口が私を好きだなんて
ホント知らなかった。それを知ったのは翌日だった。
- 49 名前:New 投稿日:2002年09月11日(水)19時12分51秒
- 「矢口、・・・・」
私はまだ泣いている矢口を呼ぶ。
「・・・ごめん。なんかオイラ何も知らなかったんだなぁって思って・・」
「いや、私が矢口に教えなかったからさ、教えるべきだったよね、ごめん」
「・・いいよ、そんな謝らないで。オイラ帰るね」
矢口は教室を出て行った。なっちと2人きりになった。
まだなっちは黙っている、私はすごく緊張した。
「な、なっち・・・・?」
「ん?何?」
「いや・・・なんかずっと黙ってたから・・・」
「あ〜、何言えばいいかわかんなくて」
「そっか、・・・帰ろう」
「うん」
そして教室を出て、家へ帰った。
- 50 名前:New 投稿日:2002年09月11日(水)20時22分28秒
- <なっち視点>
ホントに何言っていいかわかんなくて。
ずっとずっと黙ってた。
後藤さんはまだ紗耶香の事好きなのかな?
矢口はこれからどうするのかな?
私は想いを伝えていいのかな?
次々と疑問は浮かんできて、どれも答える事は出来なかった。
でも・・・やっぱり好きだから。
後藤さん、矢口が紗耶香が好きでも。
私は諦めたくないんだ。
ごめんね。
明日、言おう、紗耶香に。
私の想いを。
- 51 名前:New 投稿日:2002年09月11日(水)20時34分30秒
- <紗耶香視点>
「ふあぁぁ〜もう寝るかぁ」
明日の英語は確実に当たるので久々にちゃんと予習していたら
もう時計はすでに夜中の2時。
まぁ始めたのが1時ぐらいだからしょーがないんだけど。
明日は・・・ってもう今日か。どうなっちゃうんだろ。
とりあえず後藤とちゃんと話しよう。
でももう後藤とやり直す気はないよ。
「・・・臆病者だから、さ」
近くにあった鏡を覗き込みながら言った。
もう同じ事は繰り返したくない。
もう傷つけたくない。
「これで、いいんだ」
そうこれでいいんだ。
電気を消してベットで眠りにおちた。
- 52 名前:New 投稿日:2002年09月11日(水)20時42分27秒
- 翌朝。2時に寝たせいで長く眠れなかった。
やはり眠いと不機嫌になる。でも学校に行かなきゃ。
重い身体を無理やり起こして支度をする。
さぁ今日も1日頑張りますか。
家を出て学校へ向かった。
「ふぁぁぁぁ〜」
登校中何回あくびしたんだろ?誰かに見られてるよなぁ〜。
1時間目は・・・国語か。寝る事に決定。
にしても天気悪いなぁ、雨ふるかな?
さっきから雲が多くなってきていた。
- 53 名前:New 投稿日:2002年09月13日(金)23時33分38秒
- のんびりしてたら遅刻しそうになって教室にチャイム、ギリギリ
に入った。息が上がって苦しかった。
授業中はずっと窓の外を見ていた。もう夏は過ぎ去って秋に
なりかけている曇り空。今日は少し寒く感じた。
なっちがちらちら私を見ている事に気が付いた。
何なんだろう?
矢口は1度も私を見ない。
何でだろう?
昼休みになっちに話があると言われて
いつもお決まりの屋上へやってきた。風が少し冷たくて
半そでのシャツでは肌寒かった。
なっちは中々しゃべってくんない。話って何だろう?
「・・・・・・あのさ」
5分くらいたってなっちが口を開いた。
「うん、何?」
私は優しく言った。なっちの方を見る。
「わ、私ね・・・・」
「・・・・」
「えっと・・・・」
緊張してるのかな、言葉が上手く出せないようだ。
- 54 名前:New 投稿日:2002年09月13日(金)23時40分57秒
- 「私、紗耶香が・・・好きなの」
なっちはたった一言そう言ってまた黙ってしまった。
「え・・・・」
ちょっぴり予想してた事が的中しちゃって私は呆然とした。
沈黙と冷たい風が流れる。
「・・・・わかってる、紗耶香言ってたもんね。
もう誰かを好きにはならないって、でも私諦められないよ。
・・・後藤さんや矢口には悪いけど」
「・・・・」
何も言えなかった。
「今日、放課後この屋上で待ってるから、紗耶香の返事待ってるから。
じゃぁね・・・・」
なっちは屋上を出て行った。
何でこの時「NO」と言えなかったんだろう、自分でも不思議だった。
だってもう人を好きになることはないのに。
だって誰かを愛すことは出来ないのに。
- 55 名前:New 投稿日:2002年09月13日(金)23時45分11秒
- はい、更新です。やばいです・・・前作より全然ダメに
なっちゃいました(泣)まだ前作の方がマシですね(^−^;
そろそろ終わりです。やっぱ小説は難しい・・・・。
はたまたモテいちーちゃん。
もし読んでくださっている方いるのならありがとうございます。
最後まで頑張ります。
- 56 名前:New 投稿日:2002年09月14日(土)19時31分56秒
- なっちと入れ替わって次に矢口が屋上へ来た。
「今、なっちに会って・・・泣いてたよ?」
「・・・そっか」
「座ろ?」
近くにあったベンチに矢口と座る。
「紗耶香は好きな人いる?」
「・・・・わからないよ」
「矢口は紗耶香が好き、忘れらんない」
矢口は私に抱きついてきた。私は腕を回さない。
「ねぇ・・・もう1度付き合おうよ・・・・ダメかな」
「・・・・」
「きっと上手くいくよ、オイラ頑張るからさ。ねぇ・・・」
「矢口、ごめん。私は・・・・」
矢口の抱きしめる腕が強くなる。矢口はすごくあったかくて
冷たい私を暖めてくれる。だけど私は何も出来ない。
「嫌だよ・・・紗耶香、強く抱きしめてよ、前みたいに」
「ごめん・・・本当にごめん」
私は矢口を離した。矢口の頭を撫でてみた。
「私は・・・・ダメな人間だよ。臆病者なんだよ」
チャイムがなる。もうすぐ授業が始まる。
「矢口、授業始まるよ」
「・・・紗耶香は・・?」
「サボるよ」
矢口は走って屋上を出て行った。
- 57 名前:New 投稿日:2002年09月14日(土)19時48分45秒
- どーして次から次へと・・・・・。
ため息が自然に出てしまう。
「・・・わけわかんねぇー・・・・」
空を仰ぎながら小さくめんどくさそうに呟いた。
その時、携帯がなった。メールだ。
<いちーちゃん何処にいるの?>
久しぶりに後藤からメールが来た。
<屋上>
短く返事をした。まぁどーせ授業だから来るとは思わないけど。
すると1分後・・・。
「いちーちゃん!」
おいおい・・・。
「お前、授業は?」
「保健室行くふりした〜」
「何で・・・」
まぁサボリ癖をつけたのは私のせいだけどさ。
「なんか、いちーちゃんに会いたくなって」
ふにゃと後藤が笑う。そんな理由でいーのかよ?
「空、曇りだねぇ」
突然何を言うかと思った。後藤は空を見上げていた。
「そうだね」
短く返事をした。
「雨、今にもふりそう」
「ふるんじゃない?」
「何かいちーちゃんみたい」
「はぁ?」
「今にも泣きそうだよ?いちーちゃん」
いつもならふにゃっと笑っている後藤が真顔で言ってきた。
すごく動揺っていうか、戸惑った。
そんな顔してんの?
鏡がないからわかんない。後藤が真顔に言うんだからそうだと
思うけどね。
後藤が私の手を優しく握った。
- 58 名前:New 投稿日:2002年09月14日(土)20時18分18秒
- 「安部さんと矢口さん、いちーちゃんに告白してきた?」
「・・・うん」
「そっか・・・後藤まだいちーちゃんこと好きみたい」
「・・・・」
キツイな。なっちに矢口に次は後藤。
後藤は大切な人だ。本気で好きな人だった。
だから、後藤の言葉は嬉しいはずなんだけど。
なんかひっかかるな。
「・・・いちーちゃん」
「後藤の事好きだよ・・・」
「・・・違うよ、いちーちゃん」
「・・・」
「今、いちーちゃんが見てる人は誰?後藤じゃないよ、違う人だよ」
「・・・今、見てるのは後藤だけど」
「そうじゃなくて、心の中にいる人は誰?」
後藤は手を離した。
- 59 名前:New 投稿日:2002年09月14日(土)20時31分08秒
- 「・・・・私は・・・」
私の心の中に誰がいる?・・・でも私は誰かを愛す気はない。
「いちーちゃん、ホントに後藤の事好き?」
「・・・ごめん」
「じゃぁ、さっきの質問。答えて」
「・・・私の心の中には・・・誰もいない」
突然雨がふってきた。
「もう・・愛す気はないんだ。もう失いたくない、傷つけたくない」
雨は強くなる。
「後藤の気持ち嬉しいけど、ダメなんだ」
痛くて、痛くて。でも涙は見せない。
失うものがどれも大きくて。怖くなって。
愛す気がないんじゃないくて愛せなくなった。
「もう何も求めないんだ」
「いちーちゃん、何言ってんの?そんなの相手の事考えてる
んじゃないじゃん!傷つけたくない?自分が傷つきたく
ないんでしょ!?怖いからでしょ?でもそんなんじゃ
何も手に入んないよ!」
後藤の叫び声が雨の中屋上に響いた。
- 60 名前:New 投稿日:2002年09月14日(土)20時51分28秒
- 『紗耶香・・・それ寂しいよ・・・・。求めなきゃ
手に入んないよ・・・?』
いつかなっちが言ってた言葉を思い出した。
こんなにも臆病な自分の話を。
なっちは優しく聞いてくれてたんだ。
バカな自分。
「いちーちゃん、あたしが好きないちーちゃんは
こんな弱気じゃないよ・・・・」
「・・・後藤・・・」
「・・・笑わないいちーちゃんなんか大嫌いだよ。
いつも寂しそうな顔して・・・」
「・・・・」
「ねぇ・・・泣きたいなら泣けばいいんだし。
もっと笑えば楽しいし。・・・」
後藤は泣いていた。
バカな自分。
何やってんだよ。何カッコつけてんだよ。
こんな自分いい加減捨てろ。
「後藤!・・・・ありがと」
私は笑ってそう言った。
後藤も笑ってくれた。
「・・・こんな自分いい加減捨てるよ。笑うことすら
出来ないなんて・・・」
「それ・・・その笑った顔、早くいちーちゃんの心にいる人に
見せてあげなよ」
「・・・ごめんな」
「あは、いいって。後藤も新しい恋するし」
「そうか」
雨の中、2人でバカらしくずっと笑っていた。
- 61 名前:New 投稿日:2002年09月14日(土)21時01分29秒
- もう授業は終了していた。後藤はこのまま帰ると言って
帰って行った。私はこのまま教室へ戻った。
教室には人がまだいた。ずぶ濡れの私を見てみんな驚いていた。
「・・・紗耶香、あんた・・・」
矢口が驚いていて、少しおかしくて笑っちゃった。
なっちはいなかった。
「矢口・・・ごめん。矢口の気持ちは嬉しいけど、
私はその気持ちに応えられない」
「・・・理由は?」
「好きな人がいるから、もう失うのはごめんだ、絶対手に入れるよ」
もう3度も大切な人を失いたくない。大丈夫、頑張ろうよ。
「そっか。・・・いいよ、久しぶりに紗耶香笑ってくれたから!
もう弱虫になんなよな!」
「おうよ」
「っていうかまた風邪ひくよ?」
「まだやること残ってるから、行かなきゃ」
「そう、頑張れよ!」
私は幸せなやつだ。
こんなにさ、私を想っていてくれる人がいるんだ。
心配してくれる人がいるんだ。
泣いてくれる人がいるんだ。
笑い合える人がいるんだ。
「おし!行くか!」
雨は急にやんでもうすぐ夕日となる太陽が出てきた。
屋上へ向かう。もう弱い自分はいない。
- 62 名前:New 投稿日:2002年09月14日(土)21時06分31秒
- はぅ〜、緊張すんな。
この階段を上れば屋上だ。そこにはなっちがいる。
もしかしたらいなかったりして・・・。
「何言ってんだ、弱気でどーする自分!」
でも・・・怖くないっていったら嘘かも。
また後藤みたくいなくなったり・・・・。
矢口みたくふられちゃったり・・・・・。
2度あることは3度ある・・・・。
いやいやいや!頑張んなきゃ!大丈夫!行こう!
階段を上って屋上へ。
- 63 名前:New 投稿日:2002年09月14日(土)21時17分48秒
- 屋上になっちがいた。
とりあえずホっとする。深呼吸をしてなっちの元へ歩く。
なっちは私に背を向けている。気づかないのかな。
告白って結構緊張すんな。
いつもされてたからわかんなかったよ。
怖い・・・・でも。
勇気を出して言わなきゃ。
いちかばちか。
思い切ってダイブしてみよう。
そしたら。
新しい自分のスタートだ。
「な、なっち」
なっちはゆっくりと振り返った。
私は勇気を出して・・・・。
「なっちの事が好きだ。・・・失いたくない。
隣にいて欲しい」
下を向いてなっちの答えを待った。
いちかばちかのダイブ。
ふと私の頬にやわらかい感触が。
「なっちも好きだよ」
なっちの顔が目の前にあってびっくりした。
2人で笑った。夕日がオレンジ色に光って眩しかった。
新しい私がここにいる。
前の弱気な私はもういない。
それはみんなのおかげだ。
本当にありがとう。
- 64 名前:New 投稿日:2002年09月14日(土)21時24分54秒
- いちかばちかのダイブ。
それは新しい自分に出会う為のスタートライン。
それを1番目に気づかせてくれたのは。
なっちだったね。
もう失わないよ。
ずっとずっと求めるよ。
いつだって笑うし、泣きたいときは泣くよ。
それがいいんだよね。
だからなっちも笑って泣いてね。
新しい私のスタートだ。
終わり。
- 65 名前:New 投稿日:2002年09月14日(土)21時52分50秒
- はい、終わりました〜。いい加減な小説なってしまい
申し訳ないです。あ〜最後とかぐちゃぐちゃで・・・。
ご感想ありましたらお願いします〜。
でわ、また。
- 66 名前:New 投稿日:2002年09月16日(月)21時57分01秒
- スレッドを立ててしまい申し訳ありませんでした。
雪板の方でやっと理解出来ました。皆様方に迷惑をかけました。
これからは気をつけていきたいと思います。お仕置きはちゃんと受けます。
本当に申し訳ありません。では、失礼します。
- 67 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月17日(火)13時10分02秒
- >>66
じゃあ雪板の方、削除依頼出した方がいいよ。
削除依頼はどこでしたらいいのかは分かるよね?
- 68 名前:New 投稿日:2002年09月17日(火)20時19分16秒
- 67さん。ありがとうございます。今、削除依頼を出しました。
- 69 名前:New 投稿日:2002年10月19日(土)21時01分43秒
- この前はスレッドを立ててしまい本当に申し訳ありませんでした。
反省し、これからはこのスレッドを使い小説をやらせていただきます。
管理人さん、みなさん、ご迷惑をおかけしました。
これから小説を書いていきますが、前以上、良いものを書けるように
頑張ります。
- 70 名前:New 投稿日:2002年10月19日(土)21時16分36秒
────独りがいいんだ。
───誰も傍にいなくていい。
もう二度とあんな思いはしたくない────。
『永遠期間』
- 71 名前:New 投稿日:2002年10月19日(土)21時22分49秒
- 「あー寒くなって来たー」
良く晴れている空の下、私は黙々と通学路を歩いていた。
もうすぐ冬、身体の暖かさが奪われてしまう季節。
私はこの季節が別に好きではないし、かといって嫌いというワケではない。
ただ『哀しい』と思う。
もうすぐ学校が見える。
- 72 名前:New 投稿日:2002年10月19日(土)21時26分04秒
人と付き合うのはめんどくさい。
色々と、あるからだ。
だから私は止める事にしたんだ。
別になんともない。
独りでいる事なんて。
生きることに不自由はしない。
高校1年、春にそう思ったんだ。
- 73 名前:New 投稿日:2002年10月19日(土)21時58分36秒
- まだ誰もいない教室。
私は自分の席へつく、窓際の1番後ろ。先生に当てられない最高の場所だ。
太陽の日が差し込んで、暖かい。
「ふあぁぁぁぁ〜」
眠いので、眠る事にした。机に突っ伏した。
・・・あ〜誰もいないっていいね。
うるさくないし、気分が落ち着く。ここは女子校だから休み時間は
異常にうるさい。いや、それは私だけが思っている事なのか。
ガラッ。
教室の扉が開いた音がした。
・・・あれ?まだ誰も来ない時間じゃ・・ま、いっか。
私は入ってきた人を見ないでそのままでいた。
その人は自分の席についたようだ。
「・・・・あのーおはよう?」
・・・ん?私に言ってるのか?
その人は急に遠慮がちに挨拶をしてきた。
私はまぁ一応挨拶されたし、挨拶しとこうと思って顔を上げた。
「・・・おはよう」
適当に挨拶をし、相手を見た。
・・・あぁ、この人か。
誰かと思えば、この2年1組の委員長さんではないか。
このクラスじゃ人気者だ、明るく素直な性格。
いつもクラスの中心にいて笑っている───。
名前・・・・?・・・・え〜と、何だっけ?
別にいいやと思って人の名前もろくに覚えなかった私。
- 74 名前:New 投稿日:2002年10月20日(日)14時11分01秒
「吉澤さんって何で1番に教室来るの?」
委員長さん(名前がわからないので委員長さん)は私に近づいてきて
不思議そうにそう言った。
・・・別にどーでもいーじゃん。
私は正直うざくてしょうがなかったけど、一応答えておこう。
「・・・人たくさんいんの好きじゃないんだよね、だから」
委員長さんを見ずに窓の外に視線を向ける。
「へぇー、そうなんだぁ」
甘ったるしい声が私を苛立てていく。まぁ、落ち着こう。
沈黙が続く、するとクラスの人達が教室に来だした。
委員長さんはその人達の方へ行った。
吉澤ひとみ、ただ今高校1年生。
もうすぐ2年生になる。
友達はいない、独り暮らし。
- 75 名前:New 投稿日:2002年10月20日(日)14時29分09秒
- 再び、眠ろうと机に突っ伏す。
・・・1時間目はー、数学か。
周りがだんだん騒がしくなってきた。やっぱり、うるさいと感じてしまう。
時間になって数学の先生が教室に入って来て授業が始まる。
「えー今日は教科書の・・・・・」
だるい授業が始まった。とりあえず、ノートはちゃんととる。
真面目に授業は受けている、成績はそんな悪くない。
「じゃー、石川、問5をやってみて」
「はい」
・・・ん?あぁ、朝声かけてきた委員長さん。
石川・・・あ!石川梨華ね、思い出したよ。
石川さんは黒板に問題の答えを書いていく。さすが委員長、頭いいね。
私は問5の問題をノートに解いていた。
- 76 名前:New 投稿日:2002年10月20日(日)19時31分58秒
- ───昼休み。
私はあんまり人が来ない屋上へ来ていた。私にとってとても都合がいい場所。
何故人が来ないのか、確か───何年か前にここで自殺があったとか。
だから本当は屋上は入っちゃいけないのだ。私はかまわずここで昼食をとる。
「ん〜、おいすぃー」
お気に入りのお店のベーグルが私のお昼ゴハン。あと家で作ったゆで卵。
・・・にしても1日って長いなぁ・・・。
青い空を見上げながら思った。1日は長いし、毎日同じことの繰り返しだ。
それは仕方ないし、変えようが無かった。
私はフェンスに手をかけて、下を見た。
「・・・・うわ〜高けぇー。落ちたら即死だよね」
すぐさま下を見るのを止めた。すると昼休みが終わる5分前のチャイムが
鳴り響いた。
- 77 名前:New 投稿日:2002年10月20日(日)19時48分32秒
- 放課後になって帰宅の時間となった。
・・・さて、帰りますかね。
私はカバンを持って騒がしい教室を出た。廊下には部活に行く人、
ワケもなく友達としゃべっている人、帰宅する人、さまざまだ。
・・・あ、石川さんだ。
私が下駄箱に行くと石川さんがいた。
「あー、吉澤さん、帰るの?」
「・・・うん、まぁね」
「私、今から部活行くんだ。テニス部」
だから何だよ、と突っ込みたかったが止めておいた。
石川さんはじゃねーと言ってテニスコートへ向かって行った。
私は自分の家へ帰ろうと歩く。
・・・今日は天気いいから駅まで歩くか。そんで店でベーグル買おう。
あとは・・・あ、卵もう無かったかな。
黙々と考えながら歩いてたら、電柱にぶつかりそうになった。
- 78 名前:New 投稿日:2002年10月20日(日)19時54分28秒
- ・・・・そーいえば、石川さんって私の事嫌いじゃなかったけ?
何か・・・睨まれたような感じがしたことあったなぁ。
「・・・ま、どーでもいーか」
駅の近くにあるお気に入りの店へ向かう。そこはベーグルがとてつもなく
おいしいのだ。小さな店で店長さん1人で働いているのだ。
店長さんの名前は安倍なつみさん。何度か店でベーグルを買うから
ちょっと親しくなったのだ。・・・向こうが積極的に話しかけてきたんだけどね。
- 79 名前:New 投稿日:2002年10月22日(火)21時11分19秒
- 駅の近くのお店へ入った。いい匂いが漂っている。
「あ!いらっしゃい!」
「・・・・どーも」
棚にはずらっとパンが置いてある。この店はパン屋とちょっとした
喫茶店がある。私はベーグル5個セットの袋をとってレジへ向かった。
「ま〜た、ベーグル?好きだねぇ」
安倍さんはニコニコ笑顔で言ってきた。
・・・・どうしてこんな笑顔でいられるんだろう?
私は不思議で仕方なかった。あぁ、営業スマイルというやつか?
「えーと、300円です!たまには他のパンも買ってよねー?」
「はい・・・」
財布から300円を取り出して渡した。ベーグルを受け取る。
「あ!そうそう、今度から1人バイト雇うことになったんだ」
安倍さんは奥の方の部屋に行ってしまった。
少したって安倍さんとバイトの人が来た。
私は見た瞬間に。
固まった。
- 80 名前:New 投稿日:2002年10月22日(火)21時18分11秒
- 「はい!こちらがバイトの市井紗耶香です〜」
「どーも、市井ッす」
市井紗耶香。
名前を忘れたことなんて1度もない。
忘れたたまるか。
私の大切な人を奪ったやつだ。
「確か、紗耶香と同じ学校だよね?」
安倍さんの言葉ではっと我に返る。ほんとだ同じ制服だ。
「あぁ・・・そうですね」
「紗耶香、こちらがここの店の常連さんの吉澤ひとみさんです〜」
私は動揺しまくってて何を話せばいいかわかんなかった。
- 81 名前:New 投稿日:2002年10月22日(火)21時23分28秒
- 私には中学3年の時に付き合ってる人がいた。
でも・・・冬に別れた。もうすぐ1年たつだろうか。
『ごめん・・・受験が大変でさ・・・別れよう?』
受験なら仕方ないと思った。
でも・・・・。
『いちーちゃん!』
『おう、後藤』
学校の帰りに仲良くやっている2人を見た。
キスしてるとこも見た。
哀しかった、絶望だった。
だから人と付き合うのはもう止めようと思ったんだ。
- 82 名前:New 投稿日:2002年10月22日(火)21時27分52秒
- 多分・・・あの人は未だに気づいていないと思う。
あなたの嘘が私にバレていないと言う事を。
・・・私、知ってるんだよ?全部知ってるんだよ?
哀しいよ・・・・。
私の大切な人、後藤真希ことごっちん。
同じ学校に通ってるけど、違うクラスだから全然会わない。
それがせめてもの救いだった。
- 83 名前:New 投稿日:2002年10月25日(金)22時07分08秒
- 「学年1年かぁー、んじゃぁ後藤と同じ学年だな」
『後藤』という言葉が出てきたときまた哀しくなった。
はぁー、やっと忘れられると思ったんだけどなぁ。
私は心の中でため息をついた。
安倍さんは奥の部屋の方へ行ってしまった。目の前には市井さんがいる。
「吉澤ねぇ・・・結構有名人じゃん」
「へ・・・?」
「学校でモテてんでしょ?」
「・・・は?」
「知らない?吉澤、かなりモテてんだよ?」
「・・・別に興味ないですよ」
「もったいねーなぁ」
市井さんは笑ってそう言った。
私も一応笑っておいた。
- 84 名前:New 投稿日:2002年10月25日(金)22時13分57秒
- あれからすぐに店を出た。市井さんとはもう一緒にいたくなかった。
「・・・・何なんだよ・・・ったく」
歩きながら舌打ちをして帰り道を歩く。もう卵を買うことなんか頭に
なかった。あるのは・・・ごっちんと市井さんが笑っている姿。
「あー!もう!」
周りに誰もいなくて、私は大声で叫んだ。
ちょっとだけ気分がすっきりした。
- 85 名前:New 投稿日:2002年10月25日(金)22時23分41秒
- 翌朝、今日もいい天気だ。朝食を食べて、制服に着替えて
いつも通り、家を出た。
もうあの店にはなるべく行かないようにしよう・・・。
あの店には市井さんがいる。行って下手すりゃごっちんに会ってしまう
可能性があるからだ。安倍さんには悪いが、もう行けません。
教室を入る・・・1番だと思ったら何やら騒がしい。
まだ授業開始まで30分もあるのに生徒は集まっていた。
「あー!吉澤さん、おはよぅー」
昨日聞いた声がまた今日も聞こえた。
「・・・どーも」
「はい、クジひいてね」
「・・・は?」
石川さんは私に箱を見せた。私はわけがわからんと思った。
「忘れちゃったのー?ほら、席替えだよー。昨日言ったじゃん」
昨日・・・・?あぁ、そーいや、そんなこと言ってたなぁ。
私は仕方なくくじをひいた。
「・・・16番って何処ですかねー?」
「あ!私の隣だよ!窓際の1番前!その隣が私」
・・・うわ、最悪。こんな明るい人の隣だなんて・・・。
暗い表情で言われた席についた。
- 86 名前:New 投稿日:2002年10月25日(金)22時33分04秒
- 席替えをしてから石川さんは何かと私に話しかけてきた。
それから他のクラスメイトの人も話しかけてくるようになった。
「ひとみちゃん」
石川さんはいつの間にか私をそのように呼ぶようになった。
他の人はよっすぃーと呼ぶのに・・・・。
「よっすぃーってね、人気あるんだよ」
ふと後ろの席の人が教えてくれた。前に市井さんに教えてもらった。
すると他の人もこの話題に入ってきた。
「んー、学校全体でかなり人気あるよね」
「そうそう、特に1年ね。ほら、2年には市井先輩がいるしさー」
・・・ん?市井さんも人気あるのかぁ。
「よっすぃー、最近急上昇してんだよ。市井先輩抜いちゃうぐらい」
「あれだよねー、よっすぃー笑うようになったし、無口だったのに
話すようにもなったし」
・・・へぇ、そうなのか。知らなかったなぁ。
まぁ、確かによくカバンに手紙が入ってたり廊下には異様に人が集まってるし。
少しずつ私は変わり始めたんだと実感した。
- 87 名前:New 投稿日:2002年10月25日(金)22時42分39秒
- 梨華ちゃん(本人がそう呼んで欲しいのでそう呼ぶことにした)に
会って私はしゃべるようになったし、笑うようになった。
私は絶対嫌われていると思ったのに、梨華ちゃんは全然そんな気は
ないようだ。
安倍さんの店は未だに行っていない。ちょっと安倍さんに会いたく
なってしまった。でも・・・市井さんにゃ会いたくない。
「・・・・まぁ、ちょっとだけ」
私の足はあの店へ向かっていた。
すぐに店へはついた。窓越しから中の様子を伺う。
・・・・おーし、やつはいないな・・・・。
ちゃんと確認してから中へ入ろうとした、扉のドアノブに手をかけようと
したその時。
「あれ?吉澤じゃん」
「いいい市井さん!?」
肩をポンと叩かれ後ろを振り返ると市井さんがいた。
「何驚いてんの?あ、そうそう中にさ、後藤もいるんだ」
「ええ!?・・・・あ、私帰ります!」
ダッシュでその場から逃げた。
走って走って、目的もなく、ただその場から遠くへ離れたかった。
「はぁはぁはぁ・・・」
さすがに立ち止まった。近くの自販機でジュースを買う。
・・・良かったー、入らなくて。
ごくごくとジュースを飲みながら安心していた。
- 88 名前:New 投稿日:2002年10月26日(土)20時03分50秒
- 「だぁ〜・・・疲れた」
やっと落ち着きを取り戻した私はからっぽになった空き缶を
ごみ箱に向けて投げた。綺麗に空き缶は入った。
家に帰ることにした。
家に帰って、ソファに倒れこむ。
すると携帯がなった。
「誰だよ・・・・」
携帯なんてたいして使ってない、着信がくることなんか
あまりなかった。
「もしもし?」
名前も確認しないで出た。
『もしもーし?ひとみちゃん?』
「あぁ・・・どうしたの?」
『別にー、用事もないんだけど』
「・・・あ、そう」
私は用事もないのに電話かけてくんなよって思うはずなのに
今は自然とそんな気はしなかった。
『あ、そうそう今日ねー市井先輩を見かけたんだよね。そしたら!
なんか彼女らしきな人がいたんだよね!もう大変だよぉ〜』
・・・ごっちんのことだろうな。
「へぇー・・・」
『・・・ひとみちゃんって恋愛に興味ないの?』
「んー?・・・さぁ」
『さぁって・・・もしかして好きな人いるとか?』
「・・いないよ」
『ふーん、あ、じゃぁ、付き合った経験ある?』
「・・・・1回だけ」
『えー!?ほんと?』
それから1時間以上も梨華ちゃんとしゃべるはめになった。
- 89 名前:New 投稿日:2002年10月26日(土)20時18分47秒
- 気づけばもうすぐ9時になる。私はさっさとお風呂に入って
寝ようと思っていた。早く眠りたかったのだ。梨華ちゃんとの
長電話はさきほど終わった。私はお風呂に入った。
・・・好きな人かぁ。
忘れたなんて言ったら嘘になる。まだ私は・・・好きなのかなぁ?
ごっちんと別れて、普通の友達に戻ってごっちんは一生懸命市井さん
と付き合っていることを隠していた。
「はぁ・・・」
キュッとシャワーを止めた。固く目をつぶった。
もう忘れよう。
心の中でそう決心した。再び目を開けて、シャワーを出した。
- 90 名前:New 投稿日:2002年10月26日(土)20時32分15秒
- それから数日後。ある出来事がおきてしまった。
私は最近よく梨華ちゃんとお昼を食べるようになった。今日も屋上で
一緒にいた。
「いいの?梨華ちゃん、ここホントは立ち入り禁止なんだよ?」
私はベーグルを食べながら梨華ちゃんに言った。
「大丈夫、ここってあんまり見つかりにくいから。教室だと
うるさいでしょ?ひとみちゃんモテるしさー」
梨華ちゃんはお茶を飲みながら言っていた。ちょっと拗ねたように
見えるのは何故だろう?
それから色々話していた。私はだいぶ人としゃべるのが好きになってきた。
「でね、そのお店にー」
梨華ちゃんは気に入ったお店の話をしていた。
「今度、ひとみちゃんも一緒に行こうねー」
「うん、いいよ」
「わーい、約束だよ?」
「うん、約束ね」
梨華ちゃん嬉しそう、良かった、私も嬉しくなるよ。
その時、屋上に誰かが来たようだ。私は珍しいなーと思い相手を見た。
「あ・・・・」
ごっちんだった。
- 91 名前:New 投稿日:2002年10月26日(土)20時41分04秒
- 私は気づかないふりをして梨華ちゃんとしゃべった。
ごっちんが近づいてくる・・・一体屋上に何の用だろう?
「・・・・よっすぃー?」
私の後ろまで来たごっちんは私に声をかけた。ゆっくりと振り返る。
「・・・ごっちん」
懐かしい声、懐かしい笑顔。私の大好きなごっちん。
「いやー、よっすぃーここにいるかなーって」
「・・・あ、そうなんだ」
「なんかさぁー、高校入ってから会ってないじゃん?」
「・・・うん、そうだね。クラス違うし」
や、私が避けてたりしてたんだけど。
「久しぶりによっすぃーとしゃべりたくなったんだよね」
ごっちんは私の目の前に座った。梨華ちゃんは不思議そうな顔をしてた。
「あ!もう昼休み終わっちゃうし、また今度話そうよ!」
「・・・うーん、わかった。じゃぁメールするからー」
「うん、わかった」
「じゃぁねー」
ごっちんは笑顔でその場から去って行った。
- 92 名前:New 投稿日:2002年10月27日(日)22時23分58秒
- 「はぁー・・・」
「ひとみちゃん?今の誰?」
「え?あぁ・・・トモダチ、後藤真希っていうんだ」
さすがに元恋人なんて言えないからトモダチと言った。
あー!もう、会いに来ないでよ・・・ごっちん。
まだあなたは気づいてない。
あなたの嘘がバレていることを。
必死に隠したって無駄だよ。
私は知ってるんだ。
知っちゃったんだ。
「ひとみちゃん?変だよ?」
梨華ちゃんが心配そうに私を見ていた。それがなんかおかしくて
つい笑ってしまった。
「なんで笑うのー?ひどーい」
なんか梨華ちゃんといると明るい気持ちになれる。
そりゃ・・ごっちん時もそうだった。
「あはは、ごめん。帰ろうか?」
「もうー」
2人で教室に戻った。
- 93 名前:New 投稿日:2002年10月27日(日)22時36分12秒
- 教室に戻ると私の机の中に1つ手紙が入っていた。
「ん?・・・」
またいつものかと思いながら、でもそのままにするのはかわいそう
だと思って手紙を読む。
吉澤ひとみさんへ。
突然の手紙ごめんなさい。
どうしても私の気持ちを聞いて欲しいんです。
放課後、体育館裏で待ってます。
1−3 柴田あゆみ
「・・・柴田さん?確かこないだも・・・」
私はこーゆーのにはちゃんと会って告白だったらいさぎよく断る。
あんま期待させちゃあれだし、かといって冷たくしてもねぇ・・・。
最近は優しく断る、例えば「他にいい人がいるよ」とか。
だけど、その優しさがダメなのか、柴田さんみたくしつこいというか
積極的な人もいる。困ったもんだ。
私はため息をつきながら手紙をしまった。
- 94 名前:New 投稿日:2002年10月27日(日)22時48分22秒
- 放課後───。
「ひとみちゃん?帰るの?」
梨華ちゃんが帰り支度をしながら話しかけてきた。
「んー?用事あるんだ」
「お、よっすぃー何の用事なの〜?」
後ろの席の人がニヤニヤしながら話しかけてきた。
すると他の人も話題に入ってきた。
「・・・なんか手紙があって、放課後会いたいっつーからさ」
「うわぁーモテモテだねぇ」
冷やかしながらみんな帰っていく。梨華ちゃんは不安そうな顔してた。
「梨華ちゃん?」
「・・・もしさ、もしだよ?その子が可愛かったらOKするの?」
「・・・は?何言ってんの。断るよ、別にそんな気ないし」
私はカバンに教科書をしまいながら言った。梨華ちゃんはまだ不安そうな
顔だ。何でだろう?
「じゃ、部活頑張ってね」
私はそれだけ言うと教室を出てった。
- 95 名前:New 投稿日:2002年10月27日(日)23時03分59秒
- 体育館裏。ここは暗くて人気が全くない。だからよく私は
この場所に呼び出されていた。告白の場所にゃもってこいだからだ。
「まだいないかなー・・・・」
私は周りをキョロキョロ見回す。まだ柴田さんは来てないようだ。
前に見た柴田さんは・・・うん、確かに可愛いなぁ。そんな感じ。
大人しそう、スポーツやってなさそうだな。
「あ!吉澤さん」
あ、来た。
「ごめんなさい、待たせちゃいました?」
「ううん、今さっき来たとこ。あのさ、敬語やめない?」
私は息を切らしている柴田さんに言った。
「あ、・・・そうですね・・じゃなくてそうだね」
「っで?話って何?」
私は単刀直入に本題へ入った。
「えっと・・・あの、やっぱ好き。忘れられないよ・・・・だから」
柴田さんは下を向きながら顔を真っ赤にさせて言った。
「・・こないだも言った通り、私は柴田さんと付き合えないよ」
「なんで!?理由・・・・は?」
柴田さんが顔を上げて私に聞いてきた。
- 96 名前:New 投稿日:2002年10月27日(日)23時14分21秒
- 理由?・・・・私は怖いんだ。
ごっちんが嘘をついたこと、私に本当のことを言ってくれなかった。
またそんな事が起きてしまう気がする。
また独りぼっちになってしまう。
そうだ────私は独りじゃなきゃいけないんだ。
意地じゃない。
私は独りが似合ってるから。
「もう・・・嫌なんだ」
「え・・・?」
「・・・あんな思いはしたくないんだ」
涙が溢れてきそう。柴田さんは不思議そうに見ていた。
「ごめん・・・ごめん・・・」
私は繰り返し言っていた。するとなんか抱きしめられた。
「・・・私は吉澤さんのこと大好きです。過去に辛いことがあったのかは
知らないけど、私は辛い思いなんかさせないよ」
初めて言われた言葉だった。嬉しかったんだ、正直。
「柴田さん・・・」
私は柴田さんの顔を見た。柴田さんも私を見ている。
顔が近づいてくる、あと数センチで唇が触れ合う。
その時。
ボールがこちらに向かって飛んできた。
「あー!取ってください!」
聞いたことがある声。毎日、聞いている声。
梨華ちゃんだ。
- 97 名前:New 投稿日:2002年10月27日(日)23時21分23秒
- 私らはすぐに離れた。梨華ちゃんがこっちへやってくる。
体育館の横にはテニスコートがある・・・・けど普通ここへ
ボールがくるかな?どんな打ち方をしたんだろう?
「あー、ひとみちゃん。・・・あゆみ?」
「梨華・・・」
どうやらこの2人は知り合いのようだ。
「何してんのー?」
「いや、別に・・・・あ、吉澤さん、返事は今度で、じゃ!」
柴田さんは走って行ってしまった。はぁー、あぶねーもう少しで
キスしちゃうとこだった。やばいやばい。
「・・って!あゆみ!部活!」
「・・・ありゃ、柴田さんってテニス部?」
「うん、今日は用事あるからって・・・え?まさか」
「・・・そのまさか」
「ふーん」
私は梨華ちゃんが深く突っ込んでこないなと不思議に思った。
ま、いいか。明日からどうなるんだろう、私。
独りじゃなきゃ・・・・独りがいいんだ。
私は梨華ちゃんに何も言わず歩き出した。
- 98 名前:New 投稿日:2002年10月27日(日)23時24分56秒
- 翌日、私は誰ともしゃべらなかった。
柴田さんに会ってやっと気づいた。独りじゃなきゃいけないんだ。
ごっちんと同じようなことになるなんて2度とごめんだ。
それが恋人であっても友達であってもだ。
だから独りがいいんだ。
それでいいんだ。
- 99 名前:New 投稿日:2002年10月28日(月)19時49分42秒
- 「ねぇー、ひとみちゃん。どうしたのー?」
昼休みの屋上、梨華ちゃんは私についてくる。私は無視し続けた。
「私何かした?したんなら謝るからぁ」
梨華ちゃんは泣きそうな顔で私の前へ立った。
・・・・何で・・・ほっといてよ。
「ひとみちゃん・・・」
「・・・ほっといてよ。別に梨華ちゃんが何かしたんじゃないから」
冷たく放つように言った。そして梨華ちゃんに背を向けた。
「・・・昨日、全部聞いてたんだ。実は」
梨華ちゃんが言った。私は振り返らなかった。
「後藤真希って言う人が原因なの・・・?」
つい梨華ちゃんの方へ振り返ってしまった。
- 100 名前:New 投稿日:2002年10月28日(月)19時57分35秒
- 「・・・・ねぇ、そうなの?」
「何でわかったの?」
「だって・・・ひとみちゃん、その人と会った時すごく哀しそうだったから・・」
梨華ちゃんはもう泣いていた。
「・・・・はぁ、そうだよ。その人が原因だよ」
私はもういいやと思って梨華ちゃんに全て話そうとした。
ごっちんと付き合っていたこと、別れたこと。
「えっと・・・話すと長くなりそうなんだけど・・ま、座ろ?」
私は座ってその隣に梨華ちゃんが座る。
- 101 名前:New 投稿日:2002年10月29日(火)20時18分56秒
- 私は1回深呼吸をして、梨華ちゃんを見た。
梨華ちゃんは真っ直ぐ私を見ていた。もう泣いてはいない。
「前ね、中学生の時・・・・後藤真希、ごっちんと付き合ってた。
中1の時から仲良くて、中3から告られて付き合い始めたんだ。
最初は戸惑ったよ、親友がいきなり恋人になったから。
どうしていいかわかんなくて、ごっちんのこと友達以上で見ることなんて
出来なかった。でも・・・私はだんだんごっちんにひかれていった。
そして、両想いの関係が続いたんだ」
ふぅと息を吐く。空を見上げた。
「・・・だけど、中3の冬、いきなりごっちんが別れ話をしてきた。
理由は・・・・受験が大変だから」
私は言葉につまった。涙が出てきそうだ。
「受験ならしょうがないんじゃないかなぁ・・・?」
梨華ちゃんが言った。
「違う!ホントの理由はそんなんじゃなかった!ホントは────」
歯をかみ締めて目をつぶった。
「他に好きなヤツがいたから・・・・・受験が大変だからなんてのは
嘘で・・・・。ごっちんはあれから必死にバレないようにしてた。
でも、私は見たんだ!市井さんと・・・ごっちんがキスしてる所を」
涙が溢れ出した。
- 102 名前:New 投稿日:2002年10月29日(火)20時28分49秒
- 「・・・でもさ、後になって思ったんだ。ごっちんは中3の夏ごろから
変わった・・・よく市井さんの話をするようになった。・・・邪魔なのは
私だった。嘘をつかせたのは私のせいだ」
涙がずっと流れてくる。空を見上げたまんま話を続けた。
「・・・悲しかった───。もう嫌なんだ、あんな思いしたくない。
だから、ほっといてよ」
私は涙を拭って立ち上がった。
「何それ・・・・あとで悲しくなるのが嫌なの?じゃぁ、今独りでいて
悲しいのはいいの?」
梨華ちゃんも立ち上がって怒った顔して言った。
「・・・いいの」
「よくないよ!!!」
「だって!・・・・どうしようもないよ・・・」
また涙が溢れた。
「私は・・・ガラにもなくその恋が永遠に続けばいいと思った───」
「ひとみちゃん・・・・」
泣いている私を梨華ちゃんは優しく抱きしめてくれた。
- 103 名前:New 投稿日:2002年10月29日(火)20時38分35秒
- 午後の授業はさぼって屋上に梨華ちゃんと一緒にいた。
「・・・放課後に、後藤さんとこ行こうよ。それでもう嘘のこと言おうよ。
私は知ってるんだって・・・」
梨華ちゃんが優しく言ってくれた。
「私さ、今までなんか人とうわべだけしか付き合ってなかった気がする。
・・・ひとみちゃんに嫉妬してたかも」
「・・・・へ?」
「私は───独りでいる勇気も無いし、人とちゃんと付き合う勇気も無いの」
「・・・」
「それってどっちもダメじゃん?・・・変わるなら2人で変わろうよ。ね?」
何かが変わるのだろうか?
ごっちんに言って変わるのだろうか?
「・・・うん」
私は小さく頷いた。
- 104 名前:New 投稿日:2002年10月30日(水)18時28分52秒
- 授業の終了チャイムが鳴り響いた。これから放課後となる。
その時、携帯がなった。メールだった。
<放課後空いてる〜?遊ぼーよ! 後藤>
「・・・ごっちんからだ」
私は戸惑って梨華ちゃんを見た。梨華ちゃんは真剣な顔して頷いた。
私も頷いて、メールの返信をし始めた。
<空いてるよ。 吉澤>
メールを送り返し、数秒後メールが届いた。
<じゃぁ、教室で待ってる〜。 後藤>
「・・・・梨華ちゃん、その・・・一緒に・・・」
「一緒に行くよ、でも言うときはいないからね?」
「うん」
2人で屋上を出た。
- 105 名前:New 投稿日:2002年10月30日(水)18時34分20秒
- 階段を下りる。ごっちんに何て言おうか考えてたらすべりそうに
なった。梨華ちゃんを見たら笑ってた、ちょっとムッときたけど
緊張が和らいだ気がした。
ごっちんのいる教室へ向かう。距離が近づくにつれ心臓がドキドキ
してきた。
「じゃ、行ってらっしゃい」
「うん、行ってくるよ」
私は深呼吸して教室の扉を開けた。
- 106 名前:New 投稿日:2002年10月30日(水)19時23分28秒
- 放課後の教室には机に突っ伏して寝ている人と私以外誰もいなかった。
静かで、暖かい陽が差し込んでいて、かすかに寝息が聞こえてきた。
なんか時間がゆっくりと進んでいるみたいだった。それはあの寝ている
人のせいなのだろうか?
私は歩いて寝ている人のとこまで近づいた。その人は私に全然気づかず
寝ている。ちょっとだけ髪をねでてみた。
これから私が言う事にあなたは驚くだろうか?
それとも悲しがるだろうか?
いつもみたく笑ってごめんねって言うだろうか?
ねぇ、どうなんだろ?
「・・・・ごっちん」
愛しいあなたの名前を口に出した。
「・・・ん?・・・よっすぃー?」
ごっちんは微笑ながら私を見た。
- 107 名前:New 投稿日:2002年10月30日(水)19時34分34秒
- 「よっすぃー、会いたかったよ〜」
ごっちんはふにゃっと笑いながら私に抱きついてきた。
ごっちんの匂いがした。懐かしかった。
「ごっちん・・・あのさ、話があるんだ」
「んー?何〜?」
私は抱きついてるごっちんを離した。一旦目を閉じてよし!と心で言い
ゆっくりと再び目を開けた。
「私、知ってるんだよ」
「何を?」
「ごっちんが嘘ついたこと。受験が大変じゃなくて、他に───市井さんが
好きになったから、私と別れたんでしょ?」
私はなるべくゆっくり言った、ごっちんは驚いていた。
「・・・悲しかったよ・・・別れたことよりも、嘘つかれたことが・・。
ホントに・・・市井さんとごっちんが楽しそうにしてるとこ見てたら
なんか・・・むしょうに悲しくて、やるせなくて・・・」
私は下を向きながら言った。それから沈黙が流れた。
またゆっくりと時間は流れる。
「・・・ごめんね、よっすぃー・・・」
ごっちんを見たら、悲しそうに微笑んでいた。
私は教室を出た。
- 108 名前:New 投稿日:2002年10月31日(木)17時01分42秒
- 「あれ・・・?」
教室を出た私は周りをキョロキョロ見渡した。
───梨華ちゃんがいない。
私は早歩きで廊下を行ったりきたりした。それからダッシュで走り
階段を上って他のとこも見たけど、梨華ちゃんは何処にもいない。
───嫌だよ、梨華ちゃん。何処にいんの───?
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・お、屋上・・・・」
私は屋上の扉の前にいた。なんとなくここかなと思ったから来てみた。
扉に手をかけ、ゆっくり開けてみる。
「・・・・いた」
梨華ちゃんはテスリに手をかけ、青い空を見上げていた。
それがとても綺麗に見えた。
私は梨華ちゃんのそばへ歩いていった。
「・・・梨華ちゃん」
私の声に反応して梨華ちゃんがこちらを向いた。笑ってた。
「・・・よっすぃー」
梨華ちゃんが私の名前を呼んだ。
- 109 名前:New 投稿日:2002年10月31日(木)17時21分57秒
独りだった私をあなたは救ってくれた。
いつもそばにいて笑いかけてくれたのはあなただった。
人としゃべる楽しさを教えてくれたのはあなただった。
勇気をくれたのはあたなだった。
いつも私のそばにいてくれたのは。
梨華ちゃんだった。
- 110 名前:New 投稿日:2002年10月31日(木)17時28分14秒
- 「・・・梨華ちゃん、急にいなくなんないでよ・・・」
「だって、長いんだもん。廊下じゃ寒いし。ここも寒いけど」
風が吹いた、冷たかった。
「───梨華ちゃん!」
たった1つだけ聞きたいことがあるんだ。
「・・・これからも一緒にいてくれるかな・・・?」
いつの間にか愛しく思ったあなたともっと笑いあいたいんだ。
「・・・・そんなのもちろんだよ!よっすぃー」
私とあなたの永遠期間。
ずっとずっと一緒だよ?
END
- 111 名前:New 投稿日:2002年10月31日(木)17時32分07秒
- 終了しました、『永遠期間』。よしごま→いしよし。
これから番外編を書きたいと思います。続編といってもいいでしょうか。
まだよっすぃーは柴田さんに返事をしていません!
梨華ちゃん→よっすぃー←柴田さんってとこでしょうか・・・。
でわ。
- 112 名前:New 投稿日:2002年11月03日(日)19時34分28秒
- 永遠期間の続編です。
『優しさ』
あれからごっちんからメールはないし、話しかけてこなかった。
やっぱ気まずいんだろう。私は別にごっちんを避けてはいない。
向こうが私を避けてる。私はごっちんを許してるし、いつだって
親友に戻る気はある。ただ・・・その関係に戻るには時間がかかりそうだ。
「ひとみちゃん、優しすぎるよ」
梨華ちゃんに言ったらそう言われた。んー、優しさっていう問題なのかな?
確かに私は優しくなっていると感じる。前は何が友達だとか思ってたけど
みんなとしゃべるのは楽しい。それに告白って勇気がなきゃ出来ない、
それは私自身、知っている。以前の時より、告白される回数が増えた。
みんな一生懸命、想いを伝えてる。私は以前は「別に、そんな気ないし」
と素っ気なく答えていた。でも今はみんなの気持ちがわかるから、それに
私には大切な人がいるから、断るのは痛いけどちゃんと言うんだ、
「大切な人がいるから」って。
- 113 名前:New 投稿日:2002年11月03日(日)19時46分41秒
- ある日、体育から戻ってくるとガバンの中に手紙が2通入っていた。
1つは見覚えのある便せん・・・・ピンクの便せん。
もう1つはブルーの便せん。こっちは初めて見た。
ピンクの便せんをあけた。
吉澤ひとみさんへ。
覚えてる?前に告白した柴田あゆみです。
返事、そろそろ聞かせてくれない?
放課後、あの体育館裏で待ってます。
1−3 柴田あゆみ
「あ〜!!!」
私は大声で叫んでしまった。みんながこっちを注目する。
「どうしたの?よっすぃー」
クラスメートが手紙をのぞこうとする、急いで隠した。
「な、何でもないさ〜?」
私は席についてもう1つのブルーの便せんをあけた。
吉澤ひとみさんへ。
突然のお手紙ごめんなさい。
私は中等部の3−1の高橋愛です。
どうしても気持ちを伝えたいんです。
今日の放課後、屋上で待ってます。
中等部 3−1 高橋愛
「・・・高橋?聞いたことないや・・・」
はぁー、どうしよう、どっちも放課後かぁ。
とにかく早くどっちか終わらせないと・・・・。
あ!柴田さんなら昼休みでOKだよねぇ。3組だし。
おし、そうしよう〜。
- 114 名前:New 投稿日:2002年11月03日(日)19時49分42秒
- 〜登場人物の紹介〜
吉澤ひとみ
石川梨華
柴田あゆみ
高橋愛
市井紗耶香※
後藤真希※
※はたまに出てくる人です。
- 115 名前:New 投稿日:2002年11月03日(日)19時58分23秒
- ちなみに、この学校は高校と中学の校舎が合体している
とても大きな学校で、結構迷う人もいるらしい。
体育の後の化学は寝て、お昼休みとなった。
「梨華ちゃん、ごめん。今日は他の人と食べて?」
「え?何で・・・・」
梨華ちゃんが悲しそうな顔をする。わー、そんな顔しないでー。
「ちょっと用事あるんだ、ごめんねッ!」
私は教室を出て、3組へ向かった。廊下を歩くと周りからキャーキャー
言われる。早足で3組へ向かった。
「ここだ、いるかな〜?」
3組の教室をのぞいてみる、やっぱみんな私を見る。私は柴田さんを
さっさと見つけた。
「あ、いた。柴田さん〜、ちょっといい?」
「え、うん・・」
柴田さんは顔を赤らめて私のとこに来た。
「えーと、ここじゃなんだし。屋上行く?」
「・・・うん」
私らはあの立ち入り禁止の屋上へ向かった。
- 116 名前:New 投稿日:2002年11月03日(日)20時06分12秒
- 屋上はやっぱり誰もいなかった。もうすぐ冬の空は高くて綺麗だった。
風が少し冷たかった。
「寒いかな?」
「ううん、大丈夫」
「そっか、座ろ?」
私らはベンチへ座った。
「・・・・えーと、返事しにきたんだ」
柴田さんは何もしゃべらなかった。暫く沈黙が流れる。
「・・・私には大切な人がいる・・・だから、柴田さんとは付き合えない
んだ。ごめんね」
出来るだけ傷つけないように私は言葉を選んで言った。
柴田さんは何も言わない。泣いちゃったらどうしよう?
「・・・・覚えてる?」
柴田さんが急に聞いてきた。
「え?何を?」
「・・・・私達が入学し始めた時の頃」
えーと、入学・・・?何かあったっけ。
「・・・私は吉澤さんに助けられたんだよ?」
柴田さんは笑顔で言った。
- 117 名前:New 投稿日:2002年11月03日(日)20時16分54秒
- ───入学当日。
「やべー、遅刻するかも・・・」
吉澤ひとみこと、私は学校の入学式へ急いでいた。
まぁ、独り暮らしだし、しょーがないよ、などと勝手に理由を
つけながら早足で歩く。
「ん・・・?」
前方の方に倒れている人を発見した。足から血が流れてて、横には
自転車が転がっていた。私と同じ、制服。
どうやら自転車ごと転んだらしい。私は良い遅刻理由が出来たと考え、
入学式をギリギリでいくよりも、この人を助けてそれを遅刻理由に
しようと考えた。
「あのー?大丈夫ですか?」
その言葉は事務的な言い方だった。
「・・・あ、・・・はい」
「立てますか?」
私はその人に手を差し伸べた。その人がつかまってふらつきながら
立ち上がる。私はタオルを取り出して、その人の足から血が出てるところを
縛った。
「自転車はかぎかけてここに置いていきましょう。しょーがないから」
「すみません・・・」
私とその人は学校へ向かった。
- 118 名前:New 投稿日:2002年11月03日(日)20時24分08秒
- 私はその人と保健室へ行き、保健室の先生に事情を説明した。
それから担任の先生が来て、遅刻は許してもらえた。
あれからその人会っていない。
「あ〜、あれ柴田さんだったんだ」
私はやっと思い出した。
「・・・吉澤さんのこと、友達に聞いて。でも友達は冷たいとか
言ってた・・・でも私は吉澤さんは優しいって知ってたんだよ」
や、あれは・・・遅刻理由なんだけど・・・・ごめんね。
「私はその時から、ずっと好きなんだもん・・・そんな大切な人が
いるからって諦めきれないよ・・・」
柴田さんはぼろぼろ泣き始めた。私はオロオロしていた。
「・・・嫌だよぉ・・・」
「柴田さん・・・」
私は柴田さんを抱きしめた。
- 119 名前:New 投稿日:2002年11月03日(日)20時34分04秒
- 「泣かないで・・・」
柴田さんの髪を優しくなでる。やっと柴田さんは落ち着いてくれた。
「・・・吉澤さん・・・」
「ん?」
「・・・ダメかな・・?好きなの・・・」
柴田さんは私を強く抱きしめ返した。
私は何も言えなかった。そして昼休みの終わりのチャイムがなった。
5時間目は2人でさぼった。
私は柴田さんをあゆみと呼び、あゆみは私をよっすぃーと呼ぶことにした。
それは同学年だしということで。
「・・・少しだけでいいから、1度だけでいいから。私と付き合って・・?」
あゆみはそう私に望んだ。それで忘れるならと私は了解した。
私とあゆみは手を繋いで屋上で空を眺めていた。
梨華ちゃん怒るかな・・・でもあゆみを傷つけたくない・・・。
優しさは難しい。
「・・・私の大切な人知ってる?」
「梨華でしょ?」
「うん・・・梨華ちゃんはじめ誰にも私達のことは気づかれたくないんだ
いいかな?」
「うん・・・わかったよ」
あゆみは微笑んで私に寄りかかってきた。
- 120 名前:New 投稿日:2002年11月03日(日)20時39分33秒
- 5時間目が終わって、私らは教室へそれぞれ戻った。
「ひとみちゃん!何処行ってたのよ」
う・・・やっぱ怒ってる・・・。
「ごめん・・・さぼってました」
「誰と?」
「え・・・あ、・・・」
私は嘘がつけないタイプだ、嘘をついてもすぐバレてしまう。
「他のクラスの友達・・・」
まぁ、嘘はついていないよね。
「もぅ〜、ダメじゃない」
「だって、話が盛り上がってさー」
適当なことを言いながら席へつく。
6時間目はあゆみのことで頭がいっぱいだった。
あ、高橋さんのこと忘れてた。放課後、屋上だよね。
まさか、あゆみ一緒に帰ろうなんて言うんじゃ・・・・。
冷や汗が流れた。
- 121 名前:New 投稿日:2002年11月04日(月)15時38分06秒
- 放課後、私はすぐに帰り支度をして、屋上へ行こうと考えていた。
「よっすぃー!!!」
あぁ・・・あと少しだったのに(泣)
教室の扉にあゆみが満面の笑みで私に手を振っていた。
隣にいる梨華ちゃんが私の顔を見て驚いている。
「え・・?どうゆうこと・・?」
ずかずかと梨華ちゃんが私に近づいてくる。顔は驚きから怒りへ
変わっていた。あゆみも教室へ入ってきた。
「ひとみちゃん?」
右腕を梨華ちゃんに掴まれた。
「えーと・・・あの・・」
「よっすぃー、帰ろうよ」
左腕をあゆみに掴まれ、身動きが出来ない。
「何であゆみがひとみちゃんに馴れ馴れしくしてんのよ」
「いいじゃん、私とよっすぃーは仲いいんだもん、ね?よっすぃー」
「あ、あのさ!私用事あんの!」
私は力づくで2人から脱出し、屋上へ走った。
後ろから2人の言い合いが聞こえてきた。
あゆみ・・・変なこと言わなきゃいいけど・・・。
- 122 名前:New 投稿日:2002年11月04日(月)15時47分21秒
- 屋上へ扉を開けて入る。高橋さんという人を捜した。
「あ、あれかな・・・?」
黒いストレートの髪の後ろ姿が視界に入った。
「高橋さんですか?」
私が声をかけるとその人はゆっくりと振り返る。
「吉澤先輩・・・・」
「手紙、読んだよ」
「・・・あの!私、吉澤先輩のこと好きです。付き合ってください!」
「・・・・ごめん、大切な人がいるんだ」
大切な人・・・梨華ちゃん。そうだ、私が大切なのは梨華ちゃんなんだ。
あゆみとは早く終わらせなきゃ。
「そう・・・ですか」
「ごめんね」
「いえ、いいんです。気持ちだけでも伝えたかったから・・・」
高橋さんは泣きそうな感じなのに無理に笑顔を作って言った。
「吉澤先輩・・・失礼します」
走って高橋さんは出て行ってしまった。私には泣いてるようにみえた。
- 123 名前:New 投稿日:2002年11月04日(月)15時57分59秒
- 疲れる・・・毎日毎日、告白する人にいちいち断るのはもう嫌だよ。
・・・無視することなんて出来ないし。あー、中学ん時より大変だよ。
あの2人はどーしてんかな。
ふと梨華ちゃんとあゆみのことを思い出した。
教室につくと、誰かいる気配がした。
「あ・・・」
「・・・・よっすぃー」
あゆみがいた。
「部活は?」
「休んだ」
「何でー」
「よっすぃーと帰るから」
「梨華ちゃんは・・・」
「・・・大丈夫だよ、梨華には友達って言ったから。それで納得した
みたいだよ」
「そう・・・」
私はカバンを持って、あゆみに近寄った。
「・・・私が大切に想ってんのは梨華ちゃんだから」
あゆみに言った。
「あゆみはそれでいいの?」
「・・・・いいわけないよ・・・」
「じゃぁ、もうやめようよ?こなんじゃみんな傷つく」
「・・・やだ!絶対離れたくない!」
「あゆみ・・・」
「私頑張るからぁ、梨華には絶対バレないようにするから・・・
だから、離れていかないで・・・?」
やばい・・・そんな事言うなよ。そんな顔すんなよぉ・・・。
「・・・わかったよ・・・帰ろう?」
「うん」
私の心は暗くなっていった。
- 124 名前:New 投稿日:2002年11月04日(月)16時08分22秒
- それから数日後。普通に日々は過ぎていった。
あゆみは休み時間に私を訪ねてきた。
梨華ちゃんは完全に私とあゆみが友達ということを信じてる。
これじゃ・・・ごっちんの時と立場が逆じゃんか。
私は急に怖くなった。それは、あゆみがキスを求めてきたからだ。
梨華ちゃんと帰る時は当り前のようにやってるけど、あゆみとは
キスはしていなかった。
「・・・あゆみ、できないよ」
「何で・・・?」
「だって・・・私は」
「私の事、嫌いなの・・・?」
「そんな事言ってないよ」
「・・・じゃぁ、してよ?」
「もう、やめよう?」
「よっすぃー・・・」
「あゆみがこのままじゃ傷ついちゃうよ・・・私は見たくないよ」
「・・・・」
「あゆみ、友達でいようよ。私はあゆみを友達以上として見れない」
「・・・よっすぃー。じゃ、それでいいから。最後に・・・思い出として
キスして・・・?」
暗い公園で私は目を閉じて待っているあゆみを見た。
私はゆっくりあゆみに顔を近づけた。
もう少しで唇が重なる。
お互いの距離がゼロになった。
- 125 名前:New 投稿日:2002年11月05日(火)20時02分36秒
- 私はあゆみに軽くだけキスをし、顔を離した。
「・・・よっすぃー、数日間だったけど楽しかったよ。ありがと」
「あゆみ・・・ごめん」
「いいよ、無理させちゃってごめんね?」
「・・・ううん」
「じゃ、行くね。・・・私達、友達でいいんだよね?」
「うん」
「良かった、じゃね、バイバイ」
あゆみは泣き笑いで去っていった。私は複雑な気持ちであゆみの後姿を
見えなくなるまで見ていた。
「・・・これで、いいんだよ」
誰にともなく独り言を呟いた。
- 126 名前:New 投稿日:2002年11月05日(火)20時13分45秒
- それから休み時間、あゆみが来ることは無かった。
でもたまにメールが来たりしていた。
ただ今、梨華ちゃんとランチの時間。
「あゆみ、最近来ないねぇ」
「え?あ、・・・そうだね」
「どーしたんだろ?」
「まぁ、向こうも色々あるんじゃない?」
「うーん、そっか」
私は心臓をバクバクさせながらゆで卵をもぐもぐ食べていた。
「ひとみちゃん、あゆみと何かあった?」
「うえぇ!?」
「だって・・・変だもん」
「そんな事ないって、何もないから」
「ふ〜ん」
梨華ちゃん・・・ごめんなさい。これからは梨華ちゃんだけ見ます。
っていうか今までもちゃんと見てたよ?
あゆみとは友達。
ごっちんとは時間がかかりそうだけど友達に戻ってみせるよ。
こんなに優しくなれたのは梨華ちゃんのおかげなんだよ?
あなたは知ってるかどうか知らないけど。
あなたは私に優しさをくれた。
暖かい、優しさを教えてくれた。
冷たかった私は、あなたのおかげであたっかくなったんだ。
ありがとう。
私、吉澤ひとみは梨華ちゃんが大好きです。
END
- 127 名前:New 投稿日:2002年11月05日(火)20時17分18秒
- 『優しさ』終了しました。なんだか・・・わけわかんなくなっちゃって
ごめんなさい(泣)
今度は戦いモノでもやってみようかなと思っています。
主役は・・・・ごっちんか、よっすぃーかどちらかです。
でわ、また今度。
- 128 名前:New 投稿日:2002年11月07日(木)20時44分30秒
- うーむ・・・・悩んでます。どんなのを書こうかと。
色々書きたくて・・・・。
とりあえず、痛く、切なくしていきたいです。
- 129 名前:New 投稿日:2002年11月07日(木)20時57分59秒
- 最近、身体が訛ってる。
「ん〜、暇。暇〜」
とりあえず、そこら辺を散歩。今日もいい天気。
足は散歩しながらあるとこへ向かっていた。
ちょっと風が吹いた。
第一章 『不思議な力』
ある場所へ入った。まだ誰もいなかった。
ここはとあるビルの一室。っていっても高いビルじゃない。
ソファに腰を降ろす。
「あ、早いじゃん」
私は扉を開けてやってきた人物に言った。
「・・・別にいいじゃん」
相手は素っ気無く返事をして奥の休憩室に行ってしまった。
普通の人ならなんだよこいつ、と思うかもしれないけど、
私は相手の性格が十分わかってるから、それにいつもの事だから
気にして無い。
「にして・・・みんなまだかなぁ〜」
集合時間はAM 8:00 ただ今の時刻AM 8:05
たった5分だけだけど、私にとってはみんな遅いと感じた。
- 130 名前:New 投稿日:2002年11月07日(木)21時03分16秒
- 「あ、おはよ」
次に現れた人物が私に挨拶をしてきた。
「おはよー、遅いよ」
「まだ5分しかたってないじゃん」
「遅刻は遅刻」
「全く、固いんだから」
相手は笑いながら私の向かいがわにあるソファに座った。
それから20分たってやっとみんな集合。
おっと、リーダーがまだ来てなかった。
「遅れてごめん!」
扉をバンッとリーダーのお出まし。
「おっそいよ!みんな来てるよ〜」
「ごめん〜」
やっと、集合だ。
- 131 名前:New 投稿日:2002年11月07日(木)21時08分33秒
- 「えーと、今日はー、良いお天気で・・・」
リーダーの話は長い、でも説教の時はもっと長い。
だから朝の話は大抵聞き流す。
「はい、では、今日の仕事依頼ですが、護衛の件が1つあります。
それは、誰がいいかなぁー」
リーダーはこーゆー時はっきり決められない性格。
「じゃぁ、私が行きましょうか?」
護衛の仕事は案外楽だし、暇つぶしにもなる。
「じゃ、決まり。これに情報が書いてあるから」
リーダーは私に1枚の紙を渡した。
- 132 名前:New 投稿日:2002年11月07日(木)21時14分09秒
- ここにいる私達には不思議な力がある。
私・・・・吉澤ひとみにもある。
力、つまり属性というものがそれぞれあって私の属性は
『風』
風の属性は風を自由自在に操れる力がある。
それを知ったのは、ある日、学校へ行く途中風がめちゃくちゃ
強くて、私は苛立ちながら歩いていた時だった。
『もう〜、何この風!いい加減やめよ!』
そしたら・・・不思議とぴたっと風はやんでしまったのだ。
『な、何だ・・・?』
そして、意外にも近くに仲間がいることが判明した。
っで今に至る。
- 133 名前:New 投稿日:2002年11月09日(土)17時30分46秒
- 「よっすぃー、楽したいんでしょ?」
「え?あぁ、まぁ」
私に話しかけてきたのは安倍なつみさん。初めて『力』を持った人と
出逢ったのは安倍さんだった。安倍さんの属性は『火』。
安倍さんはここのビルを紹介してくれた。そして一緒に仕事することに
なったのだ。
「えーと、何々・・・今日の午後2時に駅の北口付近・・・・で、
とりあえずここに連れてくればいいわけか。簡単だなぁ」
「よっすぃー、護衛といえども注意するように!」
「はぁーい、行ってきます」
私はマフラーとコートを着て、ビルを出た。
- 134 名前:New 投稿日:2002年11月09日(土)17時38分17秒
- ちなみに、ここの仕事仲間の紹介。
安倍なつみさん(安倍さんと呼んでいる)属性『火』いつも笑顔を
絶やさない、思いやりのあるいい人。
飯田圭織さん(飯田さん・リーダーと呼んでいる)属性『水』
不思議な人、気が付くと交信したりしてるがしっかりしている人。
後藤真希(ごっちんと呼んでいる)属性『重力』
いつもぼーっとしてて、寝てることが趣味らしい。興味を持ったもの
しか積極的に行動しない。ごっちんとは年が近いので結構仲がいい。
紺野あさ美・小川麻琴(紺野、小川と呼んでいる)
この2人はバイトの子。主に電話受け付けをやっている。
飯田さんの知り合い。力のことは知っているがさほど興味がなさそうだ。
以上、紹介でした。
- 135 名前:New 投稿日:2002年11月09日(土)17時53分42秒
- 駅まであと少し歩く。ビルからは駅は少し遠いのだ。
なので、仕事や力について詳しく説明しよう。
仕事は主に護衛をしたり会社の秘密情報をフロッピーに盗んできたり
反対に、秘密情報を守ったりあとは、探し物を探したり・・・・・
まぁいわゆる「なんでも屋」。なんでもします。
結構、多額のお金が入る。
力は属性についてはさっきの通り。
風・火・水は出したり、消したりさまざなことができる。基礎が出来てれば
応用の技が使えたりする。私はまだまだ応用は出来ていない。
ただ・・・ごっちんの重力。これは珍しく重量の属性の人はあまりいない
らしい。重力は気圧や圧力を自由自在に操れる。
他にも属性はいろいろあるらしいが私のとこはこれだけ。
「ふぁー、眠い・・・・」
あくびをしながら歩いて、やっと駅に到着。
さて・・・何処だろ?
人がいっぱいでよくわからん、どうして待ち合わせをこんなとこ
にしたのだろうか?
私はキョロキョロしてると、誰かが話しかけて来た。
- 136 名前:New 投稿日:2002年11月09日(土)21時02分14秒
- 「あのー・・・護衛の方ですか?」
「え、あ、はい」
話しかけて来た相手は控えめな感じだった。年は私と近いかな。
「遅れて申し訳ありません。今回あなたの護衛をさせて頂きます
吉澤ひとみと申します」
リーダーの飯田さんは言葉遣いにうるさいので丁寧に私は言った。
「・・・わ、私、石川梨華っていいます・・・・」
「石川さん、ですね。では、行きましょうか。こちらです」
私は手を右側出し、道をあけた。
・・・・あー、おなかすいたなぁ。
私は歩きながら朝から何にも食べて無い事に気づいた。
ベーグル食べたい・・・・、しかし石川さんってどんな用件で
護衛をつけたんだろ。
「ここです」
私は営業スマイルをしながら石川さんに言った。
ビルの中へ入った。
- 137 名前:New 投稿日:2002年11月09日(土)21時16分33秒
- ビルの1階は特に何も無い。前は小さなコンピューター会社
だったらしいが倒産して誰も使っていなかったと飯田さんが言ってた。
エレベーターに乗って7階のボタンを押した。ここは7階建てだ。
1番上の7階がリーダーの飯田さんがいるオフィスなのだ。
依頼者はそこのオフィスに通される。
ウィィィィィン。
「・・・・・緊張してるんですか?」
「え?あ、いえ・・・・」
何となく石川さんの周りの風の波長が震えてる気がした。
でも本人は違うと言ってる。
「着きました、どうぞ」
エレベーターが7階に到着、先に石川さんが出る。
長い廊下を真っ直ぐに歩いたとこにオフィスはある。
ガチャと扉を開けた。
「ただ今戻りました。さ、どうぞお入りください」
「はい・・・」
私と石川さんが中に入ると飯田さんが迎えてくれた。
「よっすぃー、ご苦労でした。石川梨華さんですね?お待ちして
おりました。どうぞ、こちらへ」
飯田さんが石川さんを接待室へ通した。
ちなみにここは事務室という場所。他に休憩室、接待室、リーダー室
がある。事務室にはそれぞれのデスクがある。
「よっすぃーお疲れ」
安倍さんがコーヒーを差し出してくれた。
- 138 名前:New 投稿日:2002年11月09日(土)21時29分05秒
- 「しっかし、仕事になると変わるねぇ。言葉遣いとか」
「そりゃそうですよぉ、飯田さんうるさいから」
「あはは、そうだねぇー」
ソファに座ってコーヒーを飲んだ。眠っていた脳みそがやっと
目を覚ました。
「ごっちんはまだ寝てるんですか?」
「うん、寝るのが趣味みたいなもんだしねー」
安倍さんは自分のデスクについて、コンピューターを起動させた。
みんな自分のデスクにコンピューターがある。私はあんま触んないけど。
「あ、吉澤さん。お疲れ様です」
「おっす、紺野。小川は?」
「まこっちゃんなら、コピーとってます」
紺野は穏やかな笑顔で言ってデスクに向かった。
このビルは機械だらけだ。私もわかんないぐらいに。
1階はロビー、2・3・4階は機械だらけ、コンピューターなど
色々ある。5・6階は部屋。たまに徹夜や仕事が忙しくなると
そこへ泊まるのだ。
ガチャと接待室の扉が開いた。
「よっすぃー、ちょっと」
「はい」
私は立ち上がって接待室へ向かった。
- 139 名前:New 投稿日:2002年11月10日(日)15時49分14秒
- 接待室に入っていくと、ソファには石川さんが座っていた。
数分後、誰かが入ってきた。
「遅れて申し訳ない、仕事の都合で遅れてしまいました」
40代ぐらいの男の人だった。
「よっすぃー、こちら石川さんのお父さん」
「梨華の父親です」
「あ、・・・吉澤ひとみです」
飯田さんは石川さんのお父さんをソファに進めた。
向かい側のソファに飯田さんと私が座った。
「では、詳しく聞かせて下さい」
飯田さんがはっきりとした口調で言った。
- 140 名前:New 投稿日:2002年11月10日(日)16時01分28秒
- 話の内容はこうだ。
石川さんには妹がいて、亜衣というらしい。
重い病気を持っていてすぐにアメリカの病院へ行かなければならない。
だが、石川さんはここに(日本に)残りたい。
っで預かって欲しいわけだ。
「・・・・何故梨華をここに預けたいというとですね・・・実はみなさんと
似たような不思議な力を持っているんです」
「一体、どんな?」
「・・・・生命(いのち)です」
お父さんは静かに言った。石川さんはずっと黙っていた。
「つまり・・・癒しの力。うまくいけば生き返らせることも可能・・・
非常に珍しい力です。今まで、梨華は何回もこの力を手に入れようと
組織に連れさらわれたりしました・・・1人で残しておくには心配で
・・・どうか梨華を・・・頼みます・・・・」
お父さんは深く頭を下げた。石川さんも同じようにした。
・・・生命の力。ごっちんの重力の力以上に珍しいといわれている。
「どうか、頭を上げて下さい」
飯田さんが笑顔で言った。
- 141 名前:New 投稿日:2002年11月10日(日)16時09分46秒
- 飯田さんは護衛の件をOKした。お父さんは何度も頭を下げていた。
「お父さん・・・ありがと」
「いいや、あまり梨華はわがままを言わないから。私は嬉しかったんだよ。
梨華がこっちへ残りたいといった時。でも、心配だから独り暮らしは
ダメだけどな・・・」
「ううん、ありがと、亜衣の手術上手くいくといいね」
「あぁ、じゃぁもういかないと。失礼しました」
お父さんは帰って行った。
「じゃぁ、石川さん。こっちへ来てー」
飯田さんが事務室の方へ呼んだ。
- 142 名前:New 投稿日:2002年11月10日(日)16時14分09秒
- 「みんなー、新しく仲間が出来ましたー」
飯田さんが石川さんについて説明していた。そして各自自己紹介となった。
「リーダーの飯田圭織です」
「安倍なつみです〜」
「・・・後藤」
「吉澤ひとみです」
「紺野あさ美です・・・」
「小川麻琴です!」
最後に石川さん。
「石川梨華です、よろしくお願いします」
新しく仲間(?)が加わった。
- 143 名前:New 投稿日:2002年11月10日(日)16時23分29秒
- 第2章 『チーム名:マテリア』
飯田さんに聞くところ、石川さんの力は計り知れないほど大きいらしい。
まぁー、この仕事メンバーはあんまり傷つかないから癒しの力なんて
必要ないかもしれない。
「ここが部屋だよ」
安倍さんが石川さんの部屋に案内をしている。私もついていった。
私の部屋の隣が石川さんの部屋だ。ここは6階。
一応、今回の護衛の仕事は私なので、私の隣らしい。
「これから必要なものは入れていくからさ」
「ありがとうございます・・・」
「いやいや〜、そんな固くなんなくていいよー。なっちは仲間が
増えて嬉しいんだべさ〜」
安倍さんが訛る時は嬉しい時とか、怒ってる時とか、感情が沸き起こると
訛るらしい(飯田さん曰く)。
「私は隣の部屋だから、なんかあったら聞いてね」
私はしばらくこのビルに泊まる。
「はい」
あ、笑った。
石川さんが初めて笑った。
なんか嬉しいな〜。
- 144 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月10日(日)19時48分58秒
- 続きが楽しみです!!
- 145 名前:New 投稿日:2002年11月11日(月)20時41分55秒
- 144さん>ありがとうございます!読んでくださっているととても
嬉しいです。では、更新します。
そして石川さんが加わったメンバーで日々が過ぎていった。
石川さんの仕事は小川・紺野の仕事と同じく電話受け付け。
あとは接客、最近は安倍さんがコンピューター関係の事を教えている
らしい。
「梨華ちゃんは上達が早いべな〜」
「ありがとうございます」
だいぶ石川さんは仲間と打ち明けてきたようだ。・・・私とはあんま
しゃべらないけどね。
今日の仕事伝言板
リーダー飯田 出張〜北海道行ってきますーお土産買ってくるね。
後藤 仕事。
吉澤 例の企業の件で出かけきます。
「ただ今戻りましたぁ〜」
夕方、やっと仕事が終わって私は戻ってきた。
コートを脱いでばさっとソファに投げた。事務室には誰もいなかった。
出欠伝言板を見てみると。
飯田 出張
安倍 帰宅
後藤 仕事
吉澤 仕事
小川 帰宅
紺野 帰宅
私は仕事とある自分の所を帰宅カードに変えた。
- 146 名前:New 投稿日:2002年11月11日(月)20時55分23秒
- ガチャっと扉の開く音がした。
「あ、お帰りなさい。ご苦労様」
「え、あぁ、ただいま・・・・」
いきなりの石川さんの登場に戸惑ってしまった。
石川さんはコーヒーを入れて私に渡してくれた。
「吉澤さん」
「あ、よっすぃーでいいよ。みんなそう呼んでるし」
私はコーヒーを口に運びながら言った。
「あ・・・じゃぁ、その・・・石川さんって呼ぶの・・・その、
年も近いし・・・えっと・・・」
石川さんは下を向いて恥ずかしいのかぶつぶつ言っていた。
私はそんな石川さんが可愛く思えてつい笑ってしまった。
「わかったよ、梨華ちゃん」
私がそう言うと梨華ちゃんはとても嬉しそうで、こっちまで嬉しくなった。
「梨華ちゃん、聞いていい?」
今日はこのビルに泊まるので私らは6階、部屋にいた。ちなみにここは
梨華ちゃんの部屋。
「何?よっすぃー」
「んとねー、梨華ちゃんの力、詳しく知りたいんだ」
護衛していくわけだし、やっぱちゃんと聞いておかないとっていうのは
理由だけど、本当の理由は違う。
梨華ちゃんのこともっと知りたいから、興味があるからだ。
「いいよ、っていっても私もよく知らないんだ」
梨華ちゃんがゆっくり話し出した。
- 147 名前:New 投稿日:2002年11月11日(月)21時12分30秒
- 「えーとね、この『生命(いのち)の力』っていうのは代々受け継がれて
いくものなの。私のお母さんがその力を持ってたんだ・・・・・」
「へぇー、初めて知ったよ」
ソファに座って話していた。
「でも・・・この力は珍しいし、偉大な強さを持っているからよく
狙われるの・・・お母さんは必死に小さい私を守りながら戦ってた。
もちろん、お父さんも、お母さんと私を守ってくれた。でも、
私が5歳ぐらいの時、お母さん、私と引き換えにお母さんさらわれちゃった
んだ。・・・・今は生きてるかどうかもわかんない」
梨華ちゃんは最後のとこは泣き始めていた。私はそっと梨華ちゃんの肩を
自分の方に引き寄せた。
「ごめん・・・辛いこと思い出させちゃったね」
私はまさかそんな事を聞くわけないと思ってたから、意外な事実に
驚きと悲しみがわきあがった。
「ううん、大丈夫。この力はね、私、まだ未熟だから自分でやろうとして
も出来ないの。こう・・・なんていうか、無意識に出来ちゃうの。
傷ついた人を私の癒しの力で治す。力がもっともっと強ければ
生き返らせることも可能・・・・」
「ん、ありがと。もういいよ、十分わかったから」
- 148 名前:New 投稿日:2002年11月11日(月)21時19分05秒
- 「今度は私がなんか話そうかなぁ・・・」
窓の外を見ながら私は行った。
「あ!私らのチーム名知ってる?」
「ううん、知らないよ」
「『マテリア』って言うんだ。私らみたいなチームは他にもいるから
ぶつかる時もある。戦うこともあるんだ」
「・・・けがしたりするの?」
梨華ちゃんが心配の表情を浮かべながら聞いてきた。
私は優しく微笑んだ。
「まぁー、かすり傷程度。ここのチームはみんな強いからねぇ」
「そう・・・良かった」
梨華ちゃんは安心してるみたい。梨華ちゃんのまわりの風の波長が
とても穏やかだったからだ。
それから他愛も無い話をして、それぞれ眠りにおちた。
- 149 名前:New 投稿日:2002年11月12日(火)17時56分53秒
- 翌朝、起きて窓のカーテンをあけた。今日もいい天気だ。
着替えて、部屋を出て、エレベーターへ向かった。
すると後ろから梨華ちゃんがやってきた。
「おはよう、よっすぃー」
「おはよ、梨華ちゃん」
一緒にエレベーターに乗って事務室へ向かった。
現在時刻 7:15
事務室にはまだ誰もいなかった。
「コーヒー入れるね」
梨華ちゃんが入れてくれたコーヒーで完全に目を覚ます。
そーいや、最近なんか・・・平和だなぁ。
最近、大きな仕事がなかった。大きな仕事というのはまぁバトル
することだ。それはそれでいいんだけど。
「あ、そうそう。飯田さんがね、今度見学に行ってこいって」
「見学?」
「みんながどんな風にやってるのか、邪魔にならない程度にって」
「へぇ、まぁそんなたいしたことないけどね」
私と梨華ちゃんがしゃべってると安倍さんやごっちんが来た。
「おはよー、よっすぃーに梨華ちゃん」
「・・・・おはよ」
相変わらず正反対な2人だ。安倍さんはニコニコ笑顔24時間やってます!
って感じなのに、ごっちんはまぁ・・・朝が弱いからしょーがないんだけど
ものすっごい不機嫌そうに見える。
- 150 名前:New 投稿日:2002年11月12日(火)18時22分36秒
- 第3章 『バトルスタート』
お昼頃になってみんなでお昼ご飯をどうしようか考えていた。
今日は特に仕事もなく、のんびり過ごせている。
「なっちはー、スパゲティが食べたい」
「・・・・賛成」
「いいですね」
「食べたいです」
っというわけで近くのおいしいスパゲティ屋さんへ行くことになった。
みんな出かける準備をしていた。
その時。事務室の電話がなり響いた。
「はい、こちら『マテリア』です。・・・はい、少しお待ちください」
電話を耳から話して小川が「安倍さん」と言った。
「はい、お電話変わりました。・・・はい、至急ですね。・・・はい
・・・はい、すぐにお伺いします。30分ぐらいで、・・はい。失礼
します」
ガチャっと安倍さんは電話を置いた。
「仕事だよ!すぐに駅の近くにある、ビルに行くよ。どうやら敵が
攻め込んでくるみたい。よっすぃーとごっちん、私が行くから。
あとの人はここで待機。終わったらすぐ電話するね」
安倍さんは早口で言った。
「あ、あの!・・・・私は?」
梨華ちゃんが安倍さんに手を上げて言った。
- 151 名前:New 投稿日:2002年11月12日(火)18時36分30秒
- 安倍さんは梨華ちゃんが行くことを許可した。ただし、私が梨華ちゃんを
危なくなったら助けることが条件。
タクシーをつかまえて、すぐに駅の近くのビルへ向かう。
「あの、駅の近くのビルって・・・かなりでかいとこですよね」
私は隣にいる安倍さんに聞いた。
「うん、そうとうでかいね。だから敵の方もレベルは上のはず。
みんな、気をつけてね。1番、最上階にデーターが入ってる
コンピューターがあるから。とりあえず、お偉いさんと打ち合わせ」
「もう敵は向かって来てるんですか?」
「ううん、来るのは夜。でも大きな企業となれば、そういうこともわかっちゃうんだよ」
30分くらいで到着。
ビルの中へ入ると、社員が忙しそうにしていた。
「あのー、『マテリア』というものですが・・・」
安倍さんがロビーの受け付けの人に話していた。
「あ、お待ちしておりました。最上階へどうぞ」
エレベーターに乗って最上階へ向かう。なんにしろここのビルは高い。
エレベーターに乗っている時間が長い。
「・・・・長い」
「まぁ、仕方ないですよ」
すばらくしてエレベーターは最上階へ到着した。
- 152 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月12日(火)22時39分04秒
- いいですね〜
読んでるのでがんばってください!!
- 153 名前:New 投稿日:2002年11月13日(水)18時39分29秒
- 152さん<ありがとうございます!なかなか上手くまとまらない
文章ですが・・・頑張ります。
オフィスの中へ入ると、社長さんが迎えてくれた。
黒い大きなソファに座って打ち合わせスタート。
「今日の夜、来るようです。どうか守って下さい」
社長さんはゆっくりとした口調で言った。社長さんの隣には秘書らしき
人がいた。
「・・・聞いてもよろしいですか?」
安倍さんが口を開いた。社長さんは「どうぞ」と真剣に言った。
「何故、今日の夜、来るとわかるんですか?」
そういえば、さっき安倍さんが『大きな企業となるとわかる』
って言ってた。私はてっきり何かシステムがあるのかと思っていた。
・・・が、そうでもないらしい。
「・・・こうゆう事は言いたくないのだが、どうやらこの会社に
スパイがいるらしくてな、そいつが会社の情報を誰かに報告してるとこを
この、隣にいる私の秘書が聞いてしまったんだ」
社長さんの話が終わると安倍さんが『やっぱり』と小さく言った。
- 154 名前:New 投稿日:2002年11月13日(水)18時51分31秒
- 1時間がたち、打ち合わせは終了。
敵が来る時間は日にちが変わる0:00らしい(秘書さん曰く)。
とにかくデーターを守ること。
「みんな、多分、バトルになると思う。なるべく『力』で会社内を
荒らしちゃダメだよ。あと、敵のレベルも上だからけがには気をつけてね」
帰りのタクシーで安倍さんが真剣に言った。
「・・・なっち、スパイって・・・?」
珍しく、ごっちんがしゃべった。
「あぁ・・・なっちも最近知ったんだけど。大きな企業の情報を手に入れる
為に、そこの社員になって、いろいろやってるらしいよ」
「ふーん・・・」
ごっちんは興味が冷めたのか、ひと言そう言った。
「あの〜・・・」
はっ、そーいえば梨華ちゃんがいったんだった。
「梨華ちゃん、何?」
「なんか・・・すごいなぁって」
「そうでもないよ、いつもと同じ」
「だってー、私こんなこと初めてだし」
話しているうちにタクシーは私達のビルへ到着した。
- 155 名前:New 投稿日:2002年11月13日(水)19時39分47秒
- いろいろ梨華ちゃんに聞いてたけど、どうやら梨華ちゃんは学校に
行ってないらしい。『力』のせいって言ってた。
私も行ってない。でも理由は違う。
ただ単にめんどくさかった。それにこの仕事してればお金にはまず困んないし
これが私のやりたいことだし。
ごっちんも同じくそうだった。
バイトの紺野・小川は中学校へ行ってるけどね。
「それではー、10時にあの会社に行きます。敵が攻めてきたらとにかく
追い出すこと!データー奪われないようにね」
飯田さんがいない時の安倍さんは何かはりきってる。
いつもと気合が違うのだ・・・。
「っというわけで、お昼にだべさ〜」
こうして少し遅めのお昼ごはんとなった。
- 156 名前:New 投稿日:2002年11月13日(水)20時59分42秒
- はっ・・・155のなっちが「お昼にだべさ〜」
じゃなくて「お昼だべさ〜」です。間違えました(焦
- 157 名前:New 投稿日:2002年11月13日(水)21時20分19秒
- お昼ごはんの後は各自、自由時間。あの件の仕事までは誰も
仕事はなかった。
私は休憩室にあるテレビを使ってゲームをしていた。
ごっちんがすぐそこのソファで寝ている。
「こんなやつ〜余裕で勝てるねぇ♪」
ゲーム(RPG)のボスキャラに向かって言う。
すると、休憩室に安倍さんと梨華ちゃんが入ってきた。
「おー、よっすぃーやってるねぇ」
安倍さんが私の隣に座った。梨華ちゃんはごっちんが寝ているソファの
向かいにあるソファに座った。
「よっすぃー、ゲーム好きだね」
「面白いですよ、ゲームは」
「ゲームかぁ・・・」
テレビ画面にはキャラ達が魔法や攻撃をボスキャラに向かって
容赦なく攻めていた。
「・・・私らも同じことしてるんだよねぇ・・・」
安倍さんのひと言で私は止まってしまった。
「・・・安倍さん・・・?」
隣にいる安倍さんの顔を見た。ひどく悲しい顔をしてテレビ画面を見ていた。
休憩室の中は何か重たい空気が流れていた。
いつの間にかテレビ画面はゲームオーバーになっていた。
- 158 名前:New 投稿日:2002年11月13日(水)21時27分29秒
- 「あっけなく死んじゃうのあかなぁ・・・ゲームみたいに」
ぐさっとその言葉は私の胸に突き刺さった。
「あの・・・安倍さん?」
私は安倍さんの顔の前で手を振った。
「そんなの・・・嫌だよ・・・嫌だ・・・ねぇ・・・死にたくないよ・・・」
安倍さんの様子があきらかにおかしい。
だんだん身体が震え始めて、息が荒い。目から涙が出てきている。
「安倍さん!?」
私は今までに見たことが無い安倍さんに驚いていた。
「嫌・・・嫌ッ!こないで・・・・」
梨華ちゃんを見ると、びっくりしていた。ごっちんはこんな状況でも
まだ寝ていた。
「安倍さん!!」
「よ・・すぃー・・・嫌だよ・・・ねぇ・・助けて・・・?」
安倍さんが私にすがり付いてきた。私は安倍さんを抱きしめた。
「安倍さん、大丈夫です。落ち着いて下さい、私がいますから」
「よっすぃー・・・」
そして安倍さんは気を失った。
- 159 名前:New 投稿日:2002年11月13日(水)21時34分57秒
- 安倍さんを私の部屋のベットに寝かせた。ほんとは安倍さんの部屋に
いくはずなんだけど、鍵がなかった。
「・・・どうしたんだろ・・?」
「安倍さん・・・何か昔にあったのかなぁ・・?」
梨華ちゃんが心配そうに言った。
「・・・なっち、たまにこうなるんだよ」
ごっちんが眠たそうに言った。あれから私が無理矢理起こした。
(だからちょっと不機嫌)。
私がこの仕事をやる前にすでに安倍さんとごっちんはこの『マテリア』
にいた。私は後から入ってきた者だ。
「そうだったんだ・・・」
私は何だかショックだった。安倍さんは私が初めて心を見せた人だった。
信頼してたし、信頼されてた。
知らないことなんてないと思ったんだ。
「んじゃ、私上行くね」
ごっちんはそう言って部屋を出て行った。
- 160 名前:New 投稿日:2002年11月13日(水)21時44分23秒
- 「あ、梨華ちゃんも上行ってていいよ。安倍さんは私が見てるし」
「・・・ううん、ここにいる」
梨華ちゃんはベットの横まで来た。そして手を安倍さんの頭の上にかざした。
「・・・?」
私は梨華ちゃんが何をするかわからなかった。
梨華ちゃんは目を閉じた。
すると、梨華ちゃんの手から白い光が溢れ出した。その光は安倍さんを
包み込んだ。私はその光が暖かく感じた。
それから数秒後、光は消えた。
「・・・ん?・・・」
「あ、安倍さん!?」
なんと安倍さんが目を覚ましたのだ。梨華ちゃんはにっこり微笑んでいる。
「あ・・れ?私・・・・」
安倍さんはゆっくり身体を起こした。
「安倍さん、倒れたんですよ」
「確か・・・よっすぃーがゲームしてて、隣でそれを見てて・・・
あれ?記憶がないや」
どうやら錯乱していた時のことは覚えてないらしい。
「あ、そうそう、さっき梨華ちゃんが・・・ってあれ?」
部屋には梨華ちゃんはいなかった。
「よっすぃー?」
「・・・いえ、何でもないです」
何で梨華ちゃんいなくなったんだろう?
- 161 名前:New 投稿日:2002年11月13日(水)21時45分49秒
- 今日の更新終了です。
安倍さんの過去があきらかに・・・。
梨華ちゃんは何故いなくなったのか・・。
謎ばっかです。自分もてんてこまい(泣)。
- 162 名前:New 投稿日:2002年11月14日(木)17時37分39秒
- 「よっすぃー?」
私の腕を安倍さんがポンポンと叩いた。私はそれで我に返った。
「あぁ、もう大丈夫ですか?」
「うん・・・ねぇ、聞いてくれる?」
「はい、何ですか?」
安倍さんは何をためらっているのか、なかなか言い出そうとはしない。
私は安倍さんがしゃべるまで待った。
「・・・なっちね、たまに記憶がなくなるの。なんか・・・よくわかんないん
だけど、昔の事なのかなぁ・・・それを思い出すと、わけわかんなくなって
気づいたらベットの上っていうことが何回かあって」
「昔の事?」
「なっちもよくわかんないんだ。でも昔の私が見えた」
安倍さんはそこまで言うとうつむいてしまった。
「安倍さん、大丈夫ですよぉ。このよっすぃーがいるじゃないですか」
私は明るく安倍さんの顔を見ながら言った。そしたら安倍さんも笑顔に
なった。
「ありがと、よっすぃー」
「いえいえ、どういたしまして」
時計を見ると午後の3時だった。
- 163 名前:New 投稿日:2002年11月14日(木)17時45分58秒
- 安倍さんと一緒にエレベーターへ乗って上へ向かう。
「安倍さん・・・あの、今日の仕事休んだ方が」
「何〜言ってんの、なっちが行かなきゃ、君らだけじゃ危ないでしょ〜?」
私は不安だった、また安倍さんが倒れてしまうんじゃないかと。
また・・・昔の事を思い出すんじゃないかと。
「だって、ごっちんとよっすぃーだと暴走するっしょ?梨華ちゃんがかわいそう
だし、なんっていったって一応サブリーダーですから」
エレベーターが7階へついた。
安倍さんはご機嫌な様子で先を歩いていった。
事務室に入ると小川と紺野がしゃべっていた。
「安倍さん、大丈夫ですかー?」
小川が安倍さんを見つけると立ち上がって言った。
「うん、大丈夫〜、心配かけてごめんねぇ」
「良かったぁー」
安倍さんは自分のデスクに座ってコンピューターを起動させた。
私は休憩室に入った。
- 164 名前:New 投稿日:2002年11月14日(木)17時55分30秒
- 休憩室にはごっちんが寝ていた。
「・・・また寝てるし」
やれやれと思い、すぐそこにあった毛布をかけてあげた。
ごっちんの規則正しい寝息が聞こえてきた。
私はさっきやっていたゲームを片付けて、ごっちんが寝ているソファの
向かい側のソファに座った。
・・・・一体、安倍さんに何があったんだろう?
ごっちんに聞いてみるか・・・いや、飯田さんの方がいいかなぁ。
「・・・・うーむ」
「何唸ってんの」
「わっ!?ごっちん起きてたの・・?」
ごっちんがむくりと起き上がった。
「私がこのチームに入るきっかけは飯田さんに勧誘されて、
まだ作りたてのチームだった。安倍さんもその時に入った」
ゆっくりとごっちんは話始めた。私は驚きながらも真剣に聞いていた。
「・・・でも、安倍さん。このチームに入る前にも別のチームに入って
たんだって、私はそこまでしかしらないよ。あとは圭織にでも聞くんだね」
ごっちんは再び寝始めた・・・と思ったらまた起き上がって私を見た。
「・・・毛布ありがと」
そうひと言だけ言って寝た。
- 165 名前:New 投稿日:2002年11月14日(木)19時20分26秒
- 私もごっちんと同じく寝ようと、ソファの上に寝転がった。
ちょっと伸びをして、目をつぶった。疲れていたのかすぐに眠りについた。
───ん?なんだ?
真っ暗で何も見えない。
走っても、走っても出口がない。
ごっちん!安倍さん!小川!紺野!飯田さん!
───梨華ちゃん!!
どんなに大声で叫んでも誰も返事がない。
しんと静まり返る、暗闇。
はぁはぁ・・・・なんだよ、ここは。
ん?なんか光が見えるぞ。
小さな光のもとへ走る。
そこには扉がひとつあった。
キィと扉を開けてみる。
───え?
真っ赤だった。
ごっちんが、安倍さんが血を流している。
小川と紺野が泣きじゃくっている。
飯田さんはいない。
り、梨華ちゃんは!!?
───あ、いた。
梨華ちゃんは誰かに連れ去られていた。
待ってよ!梨華ちゃんから離れろよ!
ちょっと────
- 166 名前:New 投稿日:2002年11月14日(木)19時31分41秒
- はっと目を覚ました。
「はぁ・・・はぁ・・・なんだよ、今の夢は」
全身汗だくで、それは冷や汗だった。
ごっちんと安倍さんが血を流していて。
小川と紺野は泣いていて。
飯田さんがいなくて。
梨華ちゃんが連れ去られていた。
「・・・ったく、嫌な夢」
私の機嫌は最高に悪かった。
「ん?」
気づくと私に毛布がかけられていた。向こうのソファを見るとごっちんが
いなかった。
「今、何時だ?」
休憩室の時計を見るともうすぐ6時だった。
私はとりあえずシャワーを浴びようと6階に備えつけてあるお風呂場へ行こうと
した。(6階にはお風呂場と洗面場、トイレがある)。
ガチャと扉を開けて、休憩室から出た。
「あ〜よっすぃーおはよ、っていっても午後6時だけどね〜」
安倍さんが笑顔で言った。悪いが今、その笑顔に笑顔で答えられない。
「・・・シャワー浴びてきます・・・」
「どうしたの?」
安倍さんがソファから立ち上がって私のほうへ来た。
「汗かいてるね・・・」
「何でもないです、ただ嫌な夢みただけですから」
夢が嫌な夢だけにどうしても冷たい口調になってしまった。
- 167 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月14日(木)20時07分57秒
- 夢の内容も気になりますね―――
続き頑張ってください
- 168 名前:New 投稿日:2002年11月15日(金)17時57分21秒
- 167さん<ありがとうございます〜。よっすぃーの夢は一体・・・
って感じですよね(^−^; これから徐々にわかると
思います。では、更新です〜。
- 169 名前:New 投稿日:2002年11月15日(金)18時05分28秒
- 6階に来て、部屋へ向かう。自分の部屋から着替えを持ってお風呂場へ
向う。私は梨華ちゃんの部屋の前で立ち止まった。
「・・・・いるかな?」
トントンと扉をノックしてみる。
「はい・・・」
梨華ちゃんが出てきた。なんか顔が暗い顔をしていた。
「梨華ちゃん、どうしたの?顔色悪いよ」
「ううん・・・大丈夫。さっきごめんね、いなくなちゃって」
「いや・・・いいけど。何かあった?あ、『力』・・・」
「うん、あれが私の『力』。あのね、初めて自分の意思で出来たの」
「ほんと!?すっげー、良かったね♪」
私は笑顔で梨華ちゃんに言った、でも梨華ちゃんは暗い。
どうしたんだろ・・・?疲れちゃったのかなぁ。
「・・・よっすぃーは・・・その・・・」
「ん?何?」
「安倍さん・・・のこと・・・好きなの?」
「へ?」
つい変な声を出してしまった。
- 170 名前:New 投稿日:2002年11月15日(金)18時13分54秒
- 梨華ちゃんはうつむいて、黙っていた。
好き?安倍さんのこと?そりゃ・・・好きだけど?
「・・・えっと、好きだよ?安倍さんだけじゃなくて〜ごっちんも
飯田さんも小川も紺野も〜もちろん梨華ちゃんもね♪」
「・・・え?」
「さっきから梨華ちゃん変だよぉ〜?じゃ、私シャワー浴びてくるね〜」
私は手をひらひらさせながらお風呂場へ向かった。
「・・・そーゆーことじゃないんだけどなぁ・・・」
梨華ちゃんの呟きは私には届いてなかった。
「・・・夢・・・」
シャワーを浴びながら、さっき見た夢を思い出していた。
いや、そんなこと絶対ないっ。っていうか、させない。
私が守るんだ。
「ふぅ〜・・・」
もうすぐ仕事だ。仕事に集中しないと。
私はシャワーを止めてお風呂場から出た。
- 171 名前:New 投稿日:2002年11月16日(土)00時29分42秒
- 着替えをすませて、上の階へ行く。
「・・・9時か・・・」
10時にあのビルへ行かなければならない。私は腕時計をつけながら
エレベーターへ乗った。
事務室へ行くとみんな準備していた。
私はソファに座って、目を閉じ集中力を高めた。
事務室は静かだった。バトルする前はみんな静かだ。
『力』を使うには集中力が大事なのだ。少しでも欠けていると『力』は
十分に発揮されない。
────現在時刻 PM9:30
タクシーを使ってあのビルへ向かう。
なんかみんな緊張してるみたい。風の波長が張り詰めている。
特に───安倍さん。
今日のお昼にあんなことがあったから私も心配だ。
・・・・上手くいくといいな。
タクシーの窓の外を見ながら私は思った。
- 172 名前:New 投稿日:2002年11月16日(土)00時31分39秒
- 今日の更新終了です。
これからバトルが始まります。上手く書けるかどうか不安ですが・・・。
頑張って書きます(^−^;
- 173 名前:New 投稿日:2002年11月17日(日)15時37分37秒
- 夜のビルは暗くてやっぱり気味が悪かった。
「寒い〜・・・・」
暖房が効いていないビルの中は寒かった。私はぶるっと身体を震わせた。
現在時刻 PM 10:00
あと2時間で敵は来るらしいがいつ来るかはわからない。
私の腕をがしっと掴んでぴったり梨華ちゃんはくっついていた。
ごっちんは顔が怖くなっていた。バイトルの時はいつもそうだ。
- 174 名前:New 投稿日:2002年11月17日(日)20時19分31秒
- とりあえず、エレベーターに乗って上へ向かう。
普通なら残業の人とかいるんだろうけど、今回の件でみんな帰ったんだろう。
「・・・安倍さん、大丈夫ですか?」
「うん・・・ちょっと緊張してるみたい」
安倍さんの手が震えてるのがわかった。その手をさりげなく優しく自分の手で
包んだ。安倍さんは私の顔見て「ありがとう」って言ってくれた。
その時、梨華ちゃんが私の腕を掴む力が強くなった気がした。
「静かですねぇ・・・」
足音だけが廊下に響く。
最上階のオフィスの中へ慎重に入る。まだ敵は来ていない。
「これか・・・」
ごっちんが情報がびっちし入っているコンピューターを見た。
私は今日ここに来た時に座った黒いソファにまた座った。梨華ちゃんも。
「わぁー、月が綺麗だべさぁー」
安倍さんが窓の外を見ながら言った。
見てみると、ホントに月が綺麗に輝いていた。月の光は窓から差し込んでいた。
このオフィスの暗い中で月の光だけが頼りだった。
「・・・・なんか、こう綺麗だと何かありそうだよね」
ごっちんが腕を組んで言った。
- 175 名前:New 投稿日:2002年11月17日(日)20時27分44秒
- 「何かありそうって・・・あるじゃん」
私は立ち上がってごっちんの方へ行った。
そう────バトルがある。
「そうじゃなくてさ、そんなのいつもの事じゃん。違う何か、だよ」
「何かね・・・」
私は腕時計を見た。
現在時刻 PM 10:56
まだまだ時間はある。
私はふと『あの夢』を思い出した。
梨華ちゃんが連れ去られる。
それはあってはならないことだ。
それに───その夢は、負けを示している。
私は今までに負けた事がなかった。
負けるわけがない。
負けたくない。
「ごっちん・・・」
「ん?」
「負けた事ってある・・?」
「ん〜、多分、無いかな。覚えてないや」
「そっか・・・」
私は窓の外の夜空に輝いている月を見た。
- 176 名前:New 投稿日:2002年11月17日(日)20時32分45秒
- それから時間は過ぎていき、現在時刻 PM 11:58
「あと・・・2分」
「みんな、慎重にね」
「わかってますよ」
「・・・怖いね」
梨華ちゃんの肩は震えて今にも泣きそうな感じだった。
大丈夫だよっと私が言おうとした時───。
「「「「!!!?」」」」
「何か強い・・・ものすごい強い」
「これは・・・今までのじゃ全然比べ物にならないね」
「こっからだと・・・窓から来ますね」
「・・私にもわかるよ。すごく強い『力』のエネルギー」
ものすごいエネルギーが感じられた。
- 177 名前:New 投稿日:2002年11月17日(日)20時43分47秒
現在時刻 PM 0:00
バリィン!!!と窓が割れた。
月の逆光のせいで顔はよく見えなかった。
「・・・チーム『マテリア』ね」
敵のうちの1人が言った。
「まぁ、レベル高いほうだね」
「早くやっつけちゃいましょう」
「・・・・・やろう」
その時、オフィスの電気がついた。
「チーム名は?」
安倍さんの表情は穏やかでなく厳しかった。
「チーム『ソード』。よろしく」
どうやらこの人がリーダーのようだ。
「・・・・まさか、私らが来るのをこの会社がわかってたとはね・・」
金髪のかなり小さい人がため息まじりに言った。
「・・・・矢口・・?」
安倍さんがさっきとは違う顔、驚いた顔で呟いた。
「あ、なっち・・・・」
向こうも驚いているようだ。
- 178 名前:New 投稿日:2002年11月17日(日)20時56分31秒
- それからリーダー同士の話し合いで屋上に来た。
どちらのチームも会社内は荒らしたくないとのこと。
「・・・安倍さん、私が行きます」
私は自ら申し出た。とにかく身体を動かしたかった。
一歩前へ出る。
向こうもあの金髪の人が前へ出た。
「名前は?」
「吉澤ひとみ。あなたは?」
「矢口真里、よく覚えておきな」
私は矢口さん(一応さんをつけておこう。年上っぽいし)を鋭く睨み付けた。
向こうも同じだった。
私は手を前へ出し、風を創った。髪が乱れる。
「風か・・・・」
「───行きますッッ!!」
高くジャンプをして、風を矢口さんに放った。
ドゴォンと音がした所には大きく穴が空いていた。
───いない。
矢口さんの姿はいない、上手くかわしたんだろう。
私は休まずに新たに風を創りだす。
バチッッ!!!!
「痛ッッ・・・・」
何かを右腕にもろにくらった。
膝をついて、右腕を抑えながら矢口さんを捜した。
- 179 名前:New 投稿日:2002年11月17日(日)21時07分42秒
- 「・・・雷」
「その通り、オイラの属性は『雷』」
矢口さんの手のひらには雷の玉がバチバチと音を立てながら浮いていた。
おそらく私はそれをくらったんだろう。
だったらこっちだって───。
私はすばやく風を放った。
「うわっ!!?」
矢口さんの左手から血が流れた。
そう、さっきとは違う攻撃だ。風を剣のように鋭くさせ、放つ。
それをくらえば、カッターで引き裂かれたように血が流れる。
私の右腕は痺れて上手く動かすことが出来ない。
でも、負けてらんない。
私は最初創った風よりももっと大きい風を創った。
向こうも雷の玉を大きく創っていた。
・・・大丈夫。やれる。
同時に高くジャンプをし、放った───。
ドガァァァン!!!!
眩しい光が出てお互いが見えない。
強い衝撃をくらって、落ちた。
「・・・ちくしょー・・・」
冷たいコンクリートに身体が叩きつけられた。
- 180 名前:New 投稿日:2002年11月17日(日)21時20分20秒
- 「よっすぃー!!?」
安倍さんの声が聞こえた。
「安倍さん・・・?大丈夫ですよ」
私は安倍さんに抱きかかえながら言った。
「・・・なっち、次私が行くよ」
ごっちんが静かに言った、その言葉には怒りがこめられていた。
第4章 『地VS重力』
ごっちんはゆっくり歩いて行った。
「・・・次は誰?」
「んじゃ、私が行こう」
「名前は?」
「普通自分から名乗れよ、・・・市井紗耶香」
「後藤真希」
2人は静かに睨み合い。まだ動かない。
私はごっちんが怒っているのがすごくわかった。
ごっちんが手を大きく振りかざした。
ドガァンと大きな音が響く。
市井さんはそれを上手くかわして、ごっちんに攻撃をしかけた。
立っているコンクリートがはがれてごっちんに向かって突っ込んできた。
ごっちんは重力を上手く使い、それを砕いた。
「・・・やるね」
市井さんは休まず攻撃してくるが、ごっちんは全て砕いていく。
- 181 名前:New 投稿日:2002年11月17日(日)21時25分18秒
- そして、お互い疲れが出てきたのか、動きが鈍くなった。
すると2人共攻撃を受けるようになってしまった。
ごっちんも市井さんも血を流し、苦しそうだ。
私は視界をちょっと下に向けた。
矢口さんが倒れていた。誰かが矢口さんの傍で手当てをしていた。
その時。
ドガァァァン!!!
「・・・ごっちん・・?」
市井さんは倒れ、ごっちんはなんとか立っていたようだ。
- 182 名前:New 投稿日:2002年11月17日(日)21時33分29秒
- 「・・・くっ、・・後藤、お前強いな」
「・・・当り前」
「・・この市井をこんなにまでしたやつ、お前が初めてだよ」
「あっそ」
ごっちんは私達のもとへ戻ってきた。
その途端倒れた。
「・・・ごっちん!!?」
「・・・ちょっと無理した・・・」
私も結構限界にきている。吐血もしていた。
もうダメかと思った時。
白い光に包まれた。
見ると、梨華ちゃんが目を閉じて『力』を放っていた。
・・・梨華ちゃん・・・ありがと。
暖かい光に包まれながら、私は心の中で思った。
「ん・・・」
傷口がみるみる治っていく。
ごっちんも同じくそうだった。
「何あれ・・・・」
向こうのチームがポカンとこっちを見ていた。
・・・まだ戦える。
私は再び立った。ごっちんも立った。
安倍さんも戦う気らしい。梨華ちゃんが後ろに立つ。
まだ、『マテリア』は戦える。
- 183 名前:New 投稿日:2002年11月17日(日)21時41分40秒
- 第5章 『バトル終了、そして新たな力』
あれから向こうのチーム『ソード』は「出直す」と言い残し
逃げて行った。こうして仕事は無事、完了。
でも、私は暗く落ち込んでいた。
まさか、あんなに強いなんて思わなかった。
ごっちんは勝ったのに、あんなに強い相手に。
自分は・・・・・そりゃ向こうも倒れてたけど・・・。
安倍さん、矢口さんと何かあるのかな・・・驚いてたし。
「・・・ちくしょー」
ベットの上で帰ってきてからうだうだやっていた。
このビルに帰ってきたのはAM 2:00ぐらい。
みんなこのビルの部屋に泊まるらしい。
「・・・なんで・・・もっと力があれば」
結構悔しくて、悲しくて。
そのまま眠りにおちた。
- 184 名前:New 投稿日:2002年11月17日(日)21時54分44秒
- ここでちょこっとチーム『ソード』について。
保田圭 属性『光』ソードのリーダー。普段は厳しいがとても優しい人。
市井紗耶香 属性『地』明るい面もクールな面もある性格。結構プライドが
高い人。
矢口真里 属性『雷』ソードのサブリーダー。そしてソードのムードメーカー
的存在でもある。過去になっちと何かあったらしい。
辻 希美 属性『氷』よく食べ、よく動き、よく寝る。とにかく無邪気
で、緊張感の無い人。
高橋愛・新垣里沙 ソードの事務的なバイトをしている子。
こんな感じです・・・。
なっちと矢口に一体何が・・・。
よっすぃーはどーなるのか・・。
梨華ちゃんの力・・・。
あの夢・・・。
謎だらけ・・・私もこんがらがってます。
ひとつひとつ、徐々にわかっていくと思います。
ではでは。
- 185 名前:New 投稿日:2002年11月18日(月)21時26分45秒
- 「・・・ん?今何時・・・」
私は重い身体を起こして時計を見た。
現在時刻 PM 2:00
「うわ・・・やべ、こんなに寝てたか・・・」
仕事に行く気なんて正直なかった。それに起こしに来ないのなら私に
仕事は無いだろう。
私はとりあえず上に行った。
・・・遅刻か、安倍さん怒るかなぁ。
事務室の扉を開け、中へ入る。
「すみません、遅刻しましたー・・・」
「お、よっすぃー、おはよう」
安倍さんは全然怒ってなくて、むしろ穏やかだった。
私は呆然としていた。事務室にはみんな集まっていて、いつもと同じ
光景だった。
みんなの視線が私に集まる。
「・・・よっすぃー」
安倍さんは私のシャツを掴んだ。
「はい?」
「血・・・ついてる」
「あ」
私が着ている白いシャツには生々しく赤い血がついていた。
そのままで寝てしまっていた事に気がついた。
- 186 名前:New 投稿日:2002年11月18日(月)21時44分01秒
- 私は昨日のバトルを思い出した。
ギリギリで勝ったバトル。こんなの初めてだった。
・・・・ちくしょう。
自然に拳を強く握りしめ始めた。
チーム『ソード』一生忘れない。またバトルしたら余裕で勝ってやる。
そのためにはもっと強くなんなきゃ。
今の私はまだまだなんだ。
「・・・安倍さん。休暇とらせて下さい」
「え?」
「3日ぐらいでいいです、お願いします」
「・・・何かあるの?」
「はい、やらなきゃいけない事があるんです」
私は事務室を出て行こうとした。
「ちょ、よっすぃー待って!!」
安倍さんが慌てて私を止めた。
「よっすぃーは梨華ちゃんの護衛っていう仕事がちゃんとあるんだよ!?
忘れてちゃダメだよ」
・・・あ、そうだった。・・・でも。
「・・・私が変わるよ」
ごっちんがソファから立ちながら言った。
「よっすぃーの気持ちわからないでもないしね」
・・・ごっちん、ありがとう。
私は事務室を飛び出した。
- 187 名前:New 投稿日:2002年11月19日(火)17時09分57秒
- <ちょっと視点を変えます。梨華ちゃん視点>
よっすぃーが急に休暇をとりたいって言って出て行っちゃった。
護衛の事は別にいいんだけど、・・・よっすぃーがいないのは
嫌だな。寂しいよ。
「・・・・」
しゅんとなってソファに座っていた。
「梨華ちゃん?ごめんねぇ、よっすぃー、梨華ちゃんの護衛ほっぽり
だして」
安倍さんが申し訳なさそうに私に言ってきた。
「いいえ・・・いいんです。ただ・・・寂しいなって」
「そうだねー、人数少ないから1人でもいないと寂しいよね」
「なっち、仕事行ってくんね」
後藤さんがコートを着ながら安部さんに行っていた。
あーあ・・・よっすぃーどうしちゃったんだろ。
今日は何回もため息をついた。
- 188 名前:New 投稿日:2002年11月19日(火)17時20分56秒
- <よっすぃー視点>
私は手早く着替えて、ビルを出た。コンビニに寄って軽い食事を
買い、歩きながら食べた。
・・・まずはあそこだな。
私が向かっている場所はとある図書館。普通の図書館と違い、並んでいる
本は『力』についてのものばかりだ。
私は勉強とか嫌いだったからあまりこの図書館には来なかった。前によく
安倍さんに無理矢理何回も連れてこられた。
小さな古いお店らしきなとこへ入る。ここが図書館だ。
あのビルから歩いて5分くらいのとこにある。
「こんにちはー・・・・」
「あー、いらっしゃい。珍しいじゃん、吉澤が来るなんて」
本棚を整理しながらその人は出迎えてくれた。
名前は石黒彩さん。
「裕ちゃーん!珍しいお客さんだよー!」
「なんや・・・彩っぺ。あ、吉澤やないか、久しぶりやなぁ。
なっちは今日はいないみたいやなー」
この関西弁をしゃべってる人は中澤裕子さん。
この2人はここの図書館の管理人さんだ。でも『力』は持っていない。
『力』を研究している人達だ。前はよく実験台にされたもんだ。
でもそれは2人を信頼しての事だし、向こうも私を信頼してくれている。
- 189 名前:New 投稿日:2002年11月19日(火)17時34分01秒
- 「今日はどんな用事?」
石黒さんは本を持ちながら言った。
「あ・・・えーと、『力』の技の応用力について知りたくて」
私は戸惑いながら言った。
「吉澤が自ら調べにくるとわな、裕ちゃん感心したわー」
中澤さんは奥の部屋に私を入れてくれた。
青いソファに座り、待っていると石黒さんがお茶を入れて差し出してくれた。
「っで、どうして知りたいの?」
私の座っているソファの向かい側のソファに石黒さんが座った。
そして中澤さんがやってきて石黒さんの隣に座った。
「・・・・この前、仕事でバトルがあったんです。圧倒的に今までバトル
してきたチームよりも強かったんです・・・私らのチームはギリギリで
勝ちました。・・・もっと強くなりたいんです。ギリギリで勝ってちゃ
ダメなんです。お願いします、教えて下さい」
私はこないだのバトルの事を詳しく2人に伝えた。
「『ソード』か・・・裕ちゃん知ってる?」
「・・・知っとるわ、圭ちゃんがいるとこやろ?」
「え?知ってるんですか?」
「まぁなぁ・・・昔、なっちが色々あったとこやしな」
「安倍さん!!?・・・どーゆー事ですか?」
そーいえば、安倍さん何か意味深だったもんなぁ。
- 190 名前:New 投稿日:2002年11月19日(火)17時40分30秒
- 「そーゆー事はなっちから直接聞きいや。ちょっと待って」
中澤さんは立ち上がって本棚のある方へ行った。
「そーいえば、不思議な『力』の子がまた入ったんだって?」
石黒さんが目を輝かせながら私に聞いてきた。まさかまた実験・・・。
「・・・はい、梨華ちゃんっていうんです」
「どんな『力』?」
「・・・生命(いのち)の『力』です」
「・・!?うわぉ・・・すごいじゃん。・・・え・・?マジ?」
石黒さんはすごく驚いていた。
「マジですよ、癒しの『力』はすごいですよ」
「・・・・これは・・最強だな・・・」
「・・・何か?」
「い、いや、・・・っでその『力』は最大限のとこは見た?」
「いえ、・・・多分最大限では無いです」
「そっか・・・うーむ・・・」
石黒さんは怖い顔して考え込んでいた。一体何なのか私はさっぱり
わかんなかった。
- 191 名前:New 投稿日:2002年11月19日(火)17時52分18秒
- 「あったでー、これやこれ♪」
中澤さんは1冊の古そうな本を持ってきた。
ソファに座って私に本を差し出した。
「この本はな、吉澤の属性『風』について書かれたものや」
私は1ページめくってみた。
「基礎の方は出来てるんやろ?」
「あぁ・・・はい、とりあえずは」
「なら、これに挑戦してみいや」
中澤さんは目次のとこに指をさした。
そこには『竜巻』と書かれていた。
「・・・竜巻・・?」
「そや、応用で使う技や」
私は『竜巻』のページをめくった。そこにはあらゆる『竜巻』の技について
書かれていた。
・・・・これが出来たら、強くなれる。
「あとは努力次第やな、彩っぺ頼むで」
「了解、裕ちゃん」
これから私はこの技をみにつけるために修行をしなければならない。
前はすっごく嫌だったけど今は違った。
石黒さんが一緒に来てくれるみたいだ。
- 192 名前:New 投稿日:2002年11月19日(火)18時03分42秒
- <ちょっと視点変えます、石黒さん視点>
「ちょっと・・・裕ちゃん」
吉澤と修行に出かける前に私は裕ちゃんを部屋に呼んだ。
「なんや?」
「・・・吉澤に聞いた、新しく入った子について」
「それで?」
「生命(いのち)の『力』だって」
「な、なんやて!!?」
「・・・まだ最大限に『力』は出てないみたい」
「そっか・・・」
「『アルテマ』の技は危険だよ。危険すぎる」
「でもなぁ・・・」
「それに、その子の事を他のチームに知られたらやばいよ?
生命(いのち)の『力』は傷を治せるし、毒だって治せる。
生き返らせる事も上手くいけば可能・・・でも・・破壊力も
1番すごい。最強の『力』だから・・・どのチームも欲しくなる」
「・・・わかった、吉澤のチームのとこ今度行かなあかんな。
研究者として教えなければならんな」
「うん、そうだね」
「彩っぺ、吉澤を強くしたってな」
裕ちゃんが私のほっぺに軽くキスをした。
「わかってるって、じゃ、行ってきます」
私は吉澤とともに出て行った。
- 193 名前:New 投稿日:2002年11月20日(水)21時50分23秒
- <中澤さん視点>
「・・・さて」
私は彩っぺと吉澤を見送ると、図書館を閉めて出かける準備をした。
向かう先はチーム『マテリア』のビル。
その場所はすぐそこ、歩いて5分だ。
ビルの中に入り、エレベーターへ乗り事務室へ向かう。
ガチャと扉を開けた。
「ど〜も〜」
「あ、裕ちゃん」
なっちがソファに座ったままこっちを見た。
「なんや、暗い顔して」
私はなっちの隣に座った。小川と紺野がお茶を出してくれた。
「・・・よっすぃーがいきなり休暇とりたいって行って・・・
どっか行っちゃったんだよぉ・・・」
なっちが泣きそうな顔して言った。
「なんや、そんなことかいな」
「そ、そんなことってないべさ!私は」
「わかった、わかったから落ち着いてや」
私はなっちの肩をポンポンと叩いて落ち着かせた。
「吉澤はな、強くなるために彩っぺと出かけたで」
「えー!!!?」
・・・なっち、お願いだから耳元で大声出さんといて。
「・・・どおゆうことだべさ!!?」
「・・・ま、吉澤が帰ってくるのを待つんやな」
それよか、新人さん見せてな。
私は事務室をぐるっと見わたした。
お、おったでー、なんや暗い顔やないか。
- 194 名前:New 投稿日:2002年11月21日(木)16時59分54秒
- 「なっち、あの子が新人さん?」
「一体何のためにさぁ・・・え?あ、そうだよ。梨華ちゃんおいで〜」
なっちはその梨華ちゃんとかいう子を呼んだ。
「はい・・何でしょうか?」
「こっちの方は中澤裕子こと裕ちゃん、『力』についての図書館の
管理人さん」
「あ、そうですか・・・私、石川梨華です」
「梨華ちゃん、よっすぃーすぐ帰ってくるべさ、元気だして」
なるほど、石川っちゅー子は吉澤がいなくて暗いんやな。
・・・んー、この子が『生命(いのち)の力』を持ってるんかぁ。
そーは見えへんけどなぁ・・・。
「・・・聞いたけど、『生命(いのち)の力』持っとるんやって?」
「うん、そうだよー。梨華ちゃんってすごいんだよ」
「・・・わかっとる、その『力』はものすごい力や」
私はお茶を飲みながら真剣に言った。
- 195 名前:New 投稿日:2002年11月21日(木)21時22分11秒
- 「裕ちゃん、何か怖いよ」
「なんやと?・・・」
「や、そーゆー意味じゃなくて、何か真剣な顔だったから」
「・・・研究者としてあんたらに教えなければならないことがあるんや」
「何?」
「・・・それは吉澤と彩っぺが帰ってきてから全て話すわ。じゃ、帰るわ〜
お茶、ごちそーさん」
「え、ちょ、裕ちゃん?」
私はなっちの呼び止める声にも無視してビルを出て行った。
- 196 名前:New 投稿日:2002年11月21日(木)21時26分34秒
- <よっすぃー視点>
・・・キツイ・・・。
「吉澤っ。もっと集中しな」
・・・石黒さん怖い・・・。
「大きな風を創るんだ」
私は石黒さんに車で(何時間も車を走らせた)何も無い草原に
連れて来られた。前の修行の時もここだった。
「・・・落ち着いて、焦ったらダメ。風の波長をしっかり感じ取れ」
「はい」
ゴォォォォと風の音だけが聞こえる。
- 197 名前:New 投稿日:2002年11月22日(金)18時44分31秒
- 私に与えられた時間は3日間。3日間が終わったらすぐに帰らなければ
ならない。仕事があるからだ。
それまでに・・・『竜巻』をモノにしなきゃ。
「・・・よし、今日はここまで」
「はぁ、はぁ、はい。ありがとうございました・・・」
やっぱり集中力を今まで以上に使う分、疲れた。
結局今日は出来なかったけどあと2日間ある。
『焦らずやろう』
石黒さんの言葉を思い出した。そうだ、焦ったら何も出来ない。
ゆっくりやろう・・・。
草原に小さな小屋が建てられている(おそらく石黒さんが作った)。
私と石黒さんはそこで寝泊りする。
夕食をとって、お風呂に入り(しかもお風呂つきの小屋)寝る。
「明日も早いから、寝るよ」
「はい、お疲れ様でした。おやすみなさい」
「おう、おやすみ〜」
電気を消してベットの中へ入った。
- 198 名前:New 投稿日:2002年11月22日(金)18時54分40秒
- ・・・ん?
・・・真っ暗だ。嫌だな・・この前と同じか。
まさか、また?
私の目の前に扉がある。
嫌だ・・・開けたくない。
<ダメです、ちゃんと開けて見て下さい>
だ、誰!!?
私の知らない声が真っ暗な中響く。
<これは警告なんです、近いうちこうなるかもしれないんです>
な、何でそんなことわかるんだよ!?
・・・お前は誰だよ?
<・・・お願い・・>
この夢はお前が見せてる?
一体何の為に、だいたい、何で梨華ちゃんが・・。
<・・・おねいちゃんを・・・助けて・・>
おねいちゃん?
<・・・危ないの・・・おねいちゃんは最後の『力』だから・・>
え?どーゆー事?
梨華ちゃんが何なの?お前は梨華ちゃんの妹?
<・・・・お願い・・>
おい!答えてよ!
そこで夢は終わった。
- 199 名前:New 投稿日:2002年11月22日(金)19時00分38秒
- 「吉澤ー?起きろ〜」
「えっ・・?あ・・・おはようございます」
「大丈夫?うなされてたけど」
「・・いえ、何でもないです」
今日は2日目。なかなか上手く集中出来ない。
梨華ちゃんの事ばっか考えてる。
だから石黒さんに説教をくらった。
「吉澤!いい加減にしな、こんなんじゃ出来ないよ!」
「はい・・・」
そうだよ、しっかりしろ吉澤ひとみ。
大丈夫、出来るって。
自分に言い聞かせながら風を創っていく。
目を閉じると、あの光景が浮かんできた。
梨華ちゃんが連れさらわれる。
知らない人に。
みんなが傷ついている。
私は何も出来ずに立ち尽くしている。
そんなの────嫌だっ。
ドゴォォォォォン!!
ものすごい爆発音に近い音が響いた。
- 200 名前:New 投稿日:2002年11月24日(日)13時33分54秒
- 私はおそるおそる目を開けてみると、目の前には大きな
『力』の跡があった。
「・・・吉澤・・・すごいよ、出来たよ」
石黒さんはすごく驚いていた。
私は一瞬何が起こったか理解出来なかった。自分の手を見て、かすかに
残っている熱を感じ、あぁ出来たんだと実感した。
「やった・・・出来た・・・」
「すごいよ!2日間だけだよ?それだけで出来ちゃうなんて」
「・・・はい、ありがとうございました」
「いいって、さぁ早く帰ろう。これで『竜巻』の技はもう吉澤のもんだよ」
「・・はい!」
こうしてたった2日間の修行は幕をおりた。
車で来た道を帰って行った。
そんな途中石黒さんと夢の話をした。
「・・・うーん、謎だねぇ」
「そうなんですよ、謎なんです」
「・・・でも、気をつけた方がいいよ。あの子には」
「へ?梨華ちゃんですか?」
「うん、・・・その夢が、警告があたるかもしれないよ」
石黒さんの表情は真剣そのものでからかってるようには
思えなかった。
- 201 名前:New 投稿日:2002年11月24日(日)18時30分54秒
- 警告か・・・・。
そう思うと、一刻も早くビルへ帰りたかった。
「・・・おし、裕ちゃんとこ帰る前に、寄って行くかっ」
石黒さんがそう言うとハンドルを右へ回した。
「え・・?あ、すみません」
「いいって、時間はたっぷりあるんだから」
石黒さんはニカっと笑って白い歯を見せた。
やっとビルについて慌てて私は車からおりた。
走ってエレベーターに乗って上へ向かう。
「・・・梨華ちゃん」
エレベーターが最上階について走って扉を開けた。
現在時刻 PM 6:15
「あ!よっすぃーだぁ!」
安倍さんが笑顔で叫んだ。
「ホントだぁ〜、あれ?明日まで休みじゃん」
ごっちんが珍しく起きていてちょっと驚いた。
・・・そうじゃなくて。
「よっすぃー、お帰りなさい」
そうこの声。
この声が聞きたかったんだ。
「あ〜〜〜・・・良かった」
私はホッとしてその場へずるずると座り込んだ。
「おい、吉澤。私を置いていくなよな」
「あ、石黒さん、すみません」
石黒さんは「まぁいいけどね」と言いながら事務室へ入ってきた。
- 202 名前:New 投稿日:2002年11月24日(日)19時21分09秒
- 「あ、彩っぺ。何で?」
「何でって・・・ひどいなぁ。ごっちん」
石黒さんはずかずかと入って来てソファに座った。
紺野が入れたコーヒーを飲む。
「なっち〜可愛いねぇ」
おいおい、口説くなよ。
「彩っぺ、裕ちゃんに怒られるよ?」
とわ言いつつも嬉しそうじゃないですか?安倍さん。
「吉澤、休んだら裕ちゃんとこ行くからな」
「あー、はい・・・」
「よっすぃー大丈夫?」
梨華ちゃんが手を差し伸べてくれた。その手を握って立ち上がる。
「へぇー、その子が梨華ちゃんか・・・」
石黒さんは梨華ちゃんをまじまじと見ていた。
そーいえば、気をつけた方がいいって言ってたっけ。
石黒さん、何か知ってるのかなぁ。
「・・・可愛いね」
真剣に何かを考えてるのかと思いきやこの発言。
おい!と突っ込みたくなる。
梨華ちゃん何か赤くなってるし・・・。そりゃあの石黒さんの爽やか
スマイルだし・・・。
「ところで、昨日裕ちゃんが来たんだよ」
「あぁ・・・」
石黒さんは再びコーヒーを飲んだ。
- 203 名前:New 投稿日:2002年11月24日(日)19時43分38秒
- 「・・・さてと、行くか。吉澤、もぉいいっしょ?」
「え、あ、はい」
「ちょ、彩っぺ?話途中なんだけど・・・」
「それは明日来るから、その時にね」
石黒さんは紺野に「コーヒーありがとう」と何故か紺野の頭を撫でながら
言った、 紺野の顔がみるみる赤くなるのがはっきりわかる。
あの・・・片っ端から口説くのやめてくれませんか?
「よっすぃー行っちゃうの?」
「あ、うん。ごめんね」
梨華ちゃんが私のコートのそでをひっぱりながら上目遣いで見る。
うわ〜、可愛い・・・やばいよ。
「吉澤、行くぞ。梨華ちゃんまたね〜」
半ば無理矢理引っ張られて私は梨華ちゃんから離れた。
「・・・吉澤、ホントにあの子が『力』持ってんの?」
「はい、そうですけど・・・いいんですか?タバコ」
石黒さんは確か中澤さんにタバコは禁止されてるはず。
「・・・たまにはいいっしょ」
「気づかれても知りませんよ」
こうして車はあの図書館へとついた。
「裕ちゃんー、ただいまぁ」
「おー彩っぺ、吉澤。成功したんやな」
「はい、おかげさまで」
「そーか、良かったわぁ。・・・・ところで彩っぺ?」
「へ?何?」
中澤さんの表情が怒りになっちゃってる。
- 204 名前:New 投稿日:2002年11月24日(日)19時49分36秒
- 「どーしてタバコの匂いがするんや?」
「え?・・・吸ってないよ〜」
「いーや、吸ったやろ!裕ちゃんは騙されへんで!罰として図書館の掃除や!」
「え〜!?そんなぁ・・・」
あーあ、だから止めたのに。
「まぁ、吉澤。どうや?技が出来て」
「はい、とても嬉しいです」
「そう、あれは結構高度な技やから、破壊力・攻撃力が高いんや
使う時は気をつけて使ってな」
「はい、ありがとうございました」
私はお礼をして図書館から出た。
- 205 名前:New 投稿日:2002年11月24日(日)19時50分54秒
- はい、やっとよっすぃーの修行が終了です。
これから梨華ちゃんが危なくなってきます。
もうすぐ期末なんで更新が遅くなると思います。
では。
- 206 名前:ちっぷ 投稿日:2002年11月25日(月)03時45分48秒
- なんか読んでてドキドキしましたよぅ☆
梨華ちゃん仔猫みたいでかわいいですね〜危なくなるのか・・
強くなったよっすぃ〜の活躍マッタリ待ってますんで
期末がんがって下さいね。
- 207 名前:New 投稿日:2002年11月29日(金)17時07分50秒
- ちっぷさん>ありがとうございます〜!期末、1日目終了しました。
バージョンアップしたよっすぃーを上手く書けるかどうか
不安ですが頑張ってみます!では更新しま〜す。
- 208 名前:New 投稿日:2002年11月29日(金)17時20分49秒
- 第7章 『癒えない傷跡』
私は走ってビルへ戻った。
一刻も早く梨華ちゃんに、何故かよくわかんないけど会いたくて。
エレベーターに乗って上へ向かう。
エレベーターが開くと同時にダッシュして事務室の扉を開けた。
「ただ今戻りました〜」
「おかえり、よっすぃー」
「ただいま、梨華ちゃん」
最初に梨華ちゃんが笑顔で迎えてくれたのがすごく嬉しかった。
「じゃ、護衛よっすぃーだからね」
ソファに寝転びながらごっちんが言った。
「ありがと、ごっちん」
護衛っていっても、梨華ちゃんが出かけたいときについていくだけ。
私が出かける時にも梨華ちゃんはついていきたがるけど。
「よっすぃー、心配したんだべさ」
「ごめんなさい、安倍さん」
「まぁ、いいけどねー」
そういえば、安倍さんとあのチーム『ソード』。
どんな関係があるのか?
聞いてもいいのかなぁ・・・・。
- 209 名前:New 投稿日:2002年11月29日(金)17時27分29秒
- 飯田さんはまだ出張から帰って来ないし(ホントはもう帰ってる。
だけどついでに里帰り中らしい)、ごっちんはそんな知らないし。
そしたら本人に聞くしかないよなぁ・・・。
「あの、安倍さん。ちょっと・・・」
「何さ?」
私は安倍さんの腕をがしっと掴んで休憩室に行った。
バタンと扉を閉めて、ソファに2人並んで座った。
「よっすぃー?」
「あの・・・その、こないだ戦ったチーム『ソード』となんか
あったんですか・・・?や、言いたくないならそれでいいですから。
ただ、どうしたのかな〜って思って・・・えーと、心配で」
「よっすぃーは優しいべさ」
あたふたしている私を安倍さんは笑顔で見ていた。
「いえ・・・」
「じゃぁ、よっすぃーに聞いてもらおうかな。ちょっと長くなるかもだけど」
安倍さんはゆっくりと自分の過去について語ろうとしていた。
- 210 名前:New 投稿日:2002年11月29日(金)17時37分45秒
- 「なっちは前にチーム『ソード』にいたんだ。でも・・・その頃はそんな
強くなかったし、上手くいかなくて。だからバトルしても負けちゃって」
安倍さんは苦笑いで話していた。私は安倍さんの手を優しく握った。
「・・・で、もう嫌になっちゃって。バトルすると血が出たり、けがとか
するっしょ?苦手になって、矢口達が傷ついてるの見てられなくなった。
なっちはいつも守られてるって感じで、それが辛くて。
・・・『ソード』をやめて、東京から北海道に戻ったんだ。
半年ぐらいたって・・・圭織と出会ったの。圭織が東京でこの仕事を
やるって言ってて・・・私は『あぁ、これしかないんだよな』って思って
圭織と一緒にまた東京へ来たの。それで・・・ごっちんやよっすぃーと
出会って、今一緒にいる。なっち・・・多分、こないだのゲーム見てた
だけでも、・・・思い出しちゃうんだよね。弱かった自分を。
あの頃は・・・ホント弱くて」
安倍さんはとうとう泣き出してしまった。
- 211 名前:New 投稿日:2002年11月29日(金)17時49分37秒
- 「・・・矢口達はなっちを守って、傷ついて。守られているだけの自分が
すごく情けなかった。だから・・・それを思い出して、混乱しちゃって。
記憶が混乱していた時のことは抜けてて。・・・ん、なんか上手く話せない
ね、ごめん」
「いえ・・・話してくれてありがとうございます」
「・・・圭織とこの『マテリア』始めて、頑張って強くなったよ。
それは『力』だけなんだ、心は全然強くなくて・・・あの頃のまま。
はは・・・ダメだよね・・・私」
「そんなことないですよ」
「ううん、いいの。本当の事だし」
安倍さんの心はきっと傷ついてて、まだ癒えてないんだろう。
優しい笑顔の裏にはとても悲しい表情があった。
私は何を言えばいいのかわかんなくて。ただ安倍さんの手を握ることしか
できなかった。
でもこれだけは言える。
「安倍さん、・・・大丈夫です。過去の事が忘れられなくても、弱い心が
あっても、みんないるんです。みんな安倍さんの事が大好きなんです。
だから、1人で苦しんだりしないで下さい。安倍さんは1人じゃない」
『1人じゃない』といい終わると安倍さんは涙を流して少しだけ笑って
『ありがとう』って言ってくれた。
- 212 名前:New 投稿日:2002年11月29日(金)17時58分26秒
- 「よし、元気でたよ。ホントありがとね、よっすぃー」
「いいですよ、これからも頑張りましょう」
「うん、そうだべさー」
いつもの安倍さんに戻った。私達はワケもなく笑っていた。
(はたから見れば怖いけど)。
それからごっちんと梨華ちゃんが来て、今日の晩ご飯について
話し合った。
「あれだよねー、ビルにさキッチン欲しい」
「でも、しょうがないよ。もとは普通の会社だったんだから」
「外食だと結構飽きちゃうよねぇ」
「圭織に頼んでみる?」
「お、いいねー。それ」
「どうですかね・・・そんな簡単じゃないし」
私と安倍さんとごっちんで盛り上がって話していた。
- 213 名前:New 投稿日:2002年11月29日(金)18時06分26秒
- 第8章 『生命(いのち)の力』
安倍さんはあの話をしてすっきりしたのか、前よりも気合が入っている
ような気がした。
あれから晩ご飯をみんなで食べに行って、それぞれ家に帰った。
私もかなり家に帰ってなかったから、今夜は梨華ちゃんを連れて
家に帰った。
「ごめんねー、汚いかもしんないけど・・・」
「ううん」
現在時刻 PM10:15
ビルから約10分歩くとこに私の家(マンション)がある。
ガチャガチャと鍵で扉を開ける。
「どうぞ、入って〜」
「お邪魔しまーす」
リビングへ行って電気をつける。思ってたほど汚くなくてほっとした。
でも・・・掃除しなきゃ。ほこりがたまってる・・・。
私はもうすぐに掃除機をかけたかった。でもお客様(梨華ちゃん)が
いるし、夜だし。
とりあえず、私の部屋へ行く。
- 214 名前:New 投稿日:2002年11月29日(金)18時15分20秒
- 「綺麗にしてるんだね」
「そぉ?でも、ここんとこ帰ってないから、ほこりが・・・」
自分のカバンを机に置いて、タンスをあさり始めた。
「はい、今夜はこれ着て寝てね」
まだ着てないパジャマを渡した。まぁ、前にごっちんに貰った
ものだ。
「ありがと・・・ごめんね迷惑でしょ?」
「そんなことないよ〜、1人暮らしって寂しいよー。だから梨華ちゃんが
いてくれると嬉しいしさ」
自分のジャージを出しながら私は言った。
それからお風呂を掃除して、お湯をはった。
「梨華ちゃん、はいってきなよ」
「いいの?」
「もちろん、いいよ」
梨華ちゃんがお風呂にはいっている隙にどうしてもやりたかった
掃除をした。掃除機でリビングや部屋を掃除した。
「おし、綺麗になった」
綺麗になったリビングを見て、かなり満足していた頃梨華ちゃんが
お風呂からあがってきた。
「お、じゃ私、はいるね〜」
「うん」
今度は私がお風呂へはいった。
- 215 名前:New 投稿日:2002年11月29日(金)18時20分22秒
- お風呂からあがるとソファで梨華ちゃんは寝ていた。
ドライヤーが手に握られていた。
「おーい、梨華ちゃん風邪ひくよー」
よほど疲れているのか全然起きる気配なし。ごっちんみたいだ。
私は梨華ちゃんを抱き上げて(驚くほど軽かった)自分の部屋の
ベットへ運んだ。
寝顔があまりにも可愛くて、ついつい見とれてしまった。
気が付くともう0時まわっていた。
そろそろ寝るか・・・。
私は違う部屋から毛布を持ってきて、ソファで寝た。
- 216 名前:New 投稿日:2002年11月29日(金)18時40分12秒
- 翌朝、携帯の着信音で目覚めた。
メールが届いたようだ。
<なんか裕ちゃんが話したいことがあるんだって。今日はお昼集合
だったけど、早めに来て下さい。10時くらいに。 なっち>
「あー、そういや・・・そうだっけか」
のそのそと起き上がるとキッチンから何か音がしているのに気づいた。
おそるおそるキッチンに向かうとエプロン姿の梨華ちゃんがいた。
「り、梨華ちゃん!!?」
「あ、よっすぃーおはよ。昨日はごめんね、私がベットとっちゃって」
「いや、いいけど・・・何してんの?」
「え?朝ご飯作ってるの。あ、あと服勝手に借りちゃったんだけど・・」
よく見るとパジャマではなく服を着ていた。
「いいよ、そんなん。それより私がやるって」
「ダメー、よっすぃーはちゃんと着替えて顔洗ってきなさーい」
なんか梨華ちゃん楽しそう・・・ま、それでいいか。
私は部屋に行って、着替え、洗面所で顔を洗った。
再びキッチンへ行ってみると、すでに朝食ができていてた。
「よっすぃー、さ、食べて?」
「う、うん。ありがとう・・・いただきまーす!」
朝食は焼き魚にご飯にお味噌汁などといった朝食の定番メニューだ。
- 217 名前:New 投稿日:2002年11月29日(金)18時45分51秒
- もぐもぐ・・・ん?
お味噌汁が微妙な味・・・・中にワカメが溶けた感じで・・・。
梨華ちゃんって料理下手・・・?
「どう?おいしい?」
「え・・・あ、うん。おいしいよ」
私は意地で全部食べた。
今度からは私が作ろうと思った。
「あ、そうそう。中澤さんが話あるから10時に行かなきゃ
いけないんだ」
「そうなの?なんだろうね・・・」
時計を見ると8時50分。まだ余裕はあった。
朝食も終わり、テレビを2人で見ていた。
- 218 名前:New 投稿日:2002年11月30日(土)00時38分16秒
- 時間が過ぎていきもうすぐ9時半になる。
「そろそろ行こうか」
私は立ちながら言い、テレビの電源を消した。
「うん、そうだね」
2人は出かける準備をして、家を出た。
鍵をちゃんと閉めて、マンションを出る。
「なんか、楽しいね」
梨華ちゃんはすごく嬉しそうに私に言った。
私の腕に絡んでくる。
「そうだね、今度の休みにどっか行く?」
「え?ほんと〜?」
「うん、行きたいとこない?」
「じゃぁね〜、海!」
「海?こんな寒いのに?」
「私、あんまり海行った事なくて・・・しかも小さい頃だったから
全然覚えてないの」
「・・・わかった、じゃ、海行こう!」
「やったぁー」
いろいろしゃべってるとビルにあっという間についた。
- 219 名前:New 投稿日:2002年11月30日(土)00時46分14秒
- 「おはよーございまーす」
「おはようございます」
私はコートを脱いでソファにかけ、カバンを置いた。
時刻はもうすぐ10時だ。
「お、よっすぃー梨華ちゃん。おはよう」
「安倍さん、中澤さんは?」
「まだだよぉー。おいしょっと・・・」
安倍さんは手に書類やらファイルやら持って、自分のデスクに
どんっと置いた。そしてコンピューターを起動させながらその書類らに
目を通していた。
梨華ちゃんがいつの間にかコーヒーをいれてくれた。
それを飲みながら待っていた。
「おはよ〜」
やっとごっちんが来た。ただ今の時刻10時半。
相変わらず遅刻するごっちん。
「おはよう、ごっちん」
「おはよー、よっすぃー」
今日はあんまり機嫌は悪くないらしいごっちん。
梨華ちゃんからコーヒーを受け取り、向かい側のソファに座る。
- 220 名前:New 投稿日:2002年11月30日(土)16時50分07秒
- 「安倍さん、仕事ですか?」
私は立って自分のデスクのイスを引きずって安倍さんの隣にイスを
置いて座った。
「いや、ちょっとね・・・」
「なんすか、気になる」
「いやいや、いいから、いいから」
「ちぇ・・・」
仕方なく諦めて自分のデスクへ、イスに座ったまま戻った。
なんとなく自分のコンピューターを起動させた。
ウィィンと機械的な音が響く。
「・・・ん?」
メールがきてるか見ると1通だけきていた。
開けてみた。
<吉澤ひとみへ。 生命(いのち)の『力』を持つもの
石川梨華をすぐに我々のチームに譲って欲しい。護衛をやっているのは
知っている。メールで返事を待っている。
藤本より>
「なんだ・・・これ。藤本・・・?」
こんなヤツ、私は知らない。
梨華ちゃんを譲って欲しい?誰が譲るかよ。っていうか
梨華ちゃんはモノじゃねぇーぞ。
・・・なんか嫌な予感がする。
一体何だろう?この気持ちは・・・。
悪いことが起きる。
例えば、そう、あの夢みたいな。
これは・・・やばい。
- 221 名前:New 投稿日:2002年11月30日(土)16時57分10秒
- 「ただいま〜!!」
私が困惑している時に何だか元気な人が帰って来た。
「あー、圭織。おかえり」
「はい、お土産だよ〜」
飯田さんはたくさんのお土産をソファに挟まれているテーブルに
置いた。ごっちんが飛びつく。
「いやー、私がいなくて寂しかったでしょ〜?」
「ううん、大丈夫だよ」
にこやかに安倍さんは飯田さんの絡みをかわした。
飯田さん、落ち込む。
・・・そんなことより、このメールだ。
一体何故梨華ちゃんが欲しいんだろう?
とりあえず、NOの返事を送る。
<藤本へ。 誰だか知りませんが、譲ることは出来ません。
石川さんは私達のチームの大切なメンバーです。
なので、お断り致します。 吉澤 >
「これでよし・・・っと」
ポチっとクリックをして送信した。
その時、中澤さんと石黒さんが来た。
- 222 名前:New 投稿日:2002年11月30日(土)17時09分13秒
- 飯田さんの出張話が永遠に続きそうな感じだった。
そこへ中澤さんらが来て、みんな安心してるようだ。
「みんなに聞いてもらいたいことがあるんや」
いつになく真剣な中澤さん。
みんなも真剣な表情になる。
私は壁に背を預け、腕を組みながら聞いていた。
安倍さんとごっちんはソファに座って、向かいがわに中澤さんと
石黒さんが座った。梨華ちゃんは私の隣。
「・・・単刀直入に言うわ。そこの石川っちゅー子についてや」
・・・は?
何で梨華ちゃんが?
「・・・梨華ちゃんが持っている『力』。今どれほどなのか知らないけど。
危険な『力』なんだ」
今度は石黒さんが話し始めた。
「生命(いのち)の『力』。傷は治せる、毒だって治せる。
上手くいけば生き返らせることも可能。かなり低い確率だけどね。
まぁ、こーゆーのを『聖華』って言うんだ。
でも、癒しの力だけじゃないんだ。他にも・・・・攻撃力、破壊力
共にすごい威力なんだ。傷を治せることだけじゃなく、攻撃も出きる」
「この攻撃のことを『アルテマ』っちゅーんや」
中澤さんが梨華ちゃんを見た。
- 223 名前:New 投稿日:2002年11月30日(土)17時17分00秒
- 「っで、この『力』は最強。そんなやつがいればどのチームも
欲しくなることや」
・・・・なるほど。もう早速きてるんだけどね。
私はさっきのメールを思い出していた。
「だから、気をつけたほうがいい。多分、今は全ての『力』を
出し切れていないと思う・・・けどそれがいつ爆発するかわからない」
「そうなんだ・・・」
安倍さんが呆然としていた。
私はちょっとその場を離れて、自分のコンピューター画面を見た。
またメールが届いていた。
<吉澤へ。 はいそうですか、と簡単には諦められません。
一度、お会いできませんか?
今日の12時に、駅の近くにあるレストランで待っています。
藤本より>
・・・ふざけんな。
絶対渡さない。
私は返事のメールを送信した。
<了解。 吉澤>
会うには会うけど、絶対渡さない。
「あ・・・もう12時になる」
私はいそいでコートを着た。
- 224 名前:New 投稿日:2002年11月30日(土)17時18分44秒
- 「よっすぃー?何処行くんや?」
「・・・ちょっとある人に会いに」
私の顔は多分怖い顔になっているだろう。
私は走って事務室を出た。
- 225 名前:New 投稿日:2002年12月04日(水)16時27分07秒
- 私は走って言われた駅の近くにあるレストランに行った。
レストランに入り、店内をキョロキョロ見回すと、奥のテーブルに
座っている女が手を上げた。私はそこへ向かった。
「あなたが、吉澤ひとみさんね?」
「はい」
私は彼女の向かい側に座り、コーヒーを注文した。
「私は藤本美貴」
「っで、何ですか?」
「・・・・どうしてもダメかしら?」
きっと梨華ちゃんのことを言っているのだろう。
そこへ注文していたコーヒーが来た。私はコーヒーを一口
飲んで、答えた。
「どうしても、ダメですね」
「石川梨華さんの『力』はご存知ですか?」
「もちろん」
「なら、どのチームも欲しい『力』というのはお分かりですね?」
「まぁ、そうでしょうね」
私は藤本さんとは目を合わせないでいた。
「吉澤さんのチーム・・・『マテリア』」
藤本さんは自分のカバンから書類を出し、読み始めた。
「どの方達もレベルはかなり高いですね。特に・・・後藤さん。
めったにいない、『重力』の持ち主」
書類を私に渡した。その書類には私らのチームについてあらゆる事が
書いてあった。安倍さんの過去の事も、何もかも、全て。
- 226 名前:New 投稿日:2002年12月04日(水)16時41分16秒
- 「・・・このぐらいの情報は簡単に手に入るんですよ。
っで、こんなにも強いチームじゃ、石川さんは必要ないじゃ
ないですか?」
藤本さんは微笑みながら言った。
「・・・そーゆー問題じゃないんですよ。『力』が強いとか
弱いとか、んなことどーでもいい。一緒に戦うっていうのが
大切ですから」
私は営業スマイルを絶やさずに言った。
「・・・最初からわかっていましたよ。何が何でも断ることを。
でも・・・上から言われてるんですよ」
藤本さんは立ち上がって私の隣に座った。
カバンから何かを取り出した。
「・・・ホントはこんな事したくないんですけど」
素早く私の首に何かをつけた。カチッと音が聞こえた。
───何!?
とっさにそれに触ってみた。冷たく感じ、すぐにそれが首輪だと
いうことがわかった。窓越しに自分を見た、銀色っぽい首輪だ。
- 227 名前:New 投稿日:2002年12月04日(水)16時52分04秒
- 「明日の午後4時に、ここへ来て下さい」
と、小さな紙切れを渡された。場所はここから比較的に近い。
「・・・・その首輪には爆弾が仕込まれてます。明日の午後5時に
爆発します、もちろん即死。鍵は私が所持しています」
「なるほど・・・逃げられないってわけか」
「下手に外そうとしても無駄ですよ。4時からバトルスタート
1対1です。1時間のうちに相手を倒すことができれば、
鍵ゲット。ダメだったら、石川さんは私達のチームに入ってもらい、
鍵もゲットできません。つまり負ければ死にます」
私はただ黙って聞いていた。この首輪を付けられた以上、このバトルは
逃げられない、仮に逃げたらきっと梨華ちゃんはさらわれ、私は死ぬだろう。
「じゃ、以上です。ここは私が奢りますね」
藤本さんは笑顔で伝票を持って行ってしまった。
私は、首輪を触りながら、藤本さんを見送っていた。
- 228 名前:New 投稿日:2002年12月04日(水)16時59分29秒
- それから数分後、私はレストランを出た。
これ・・・どうしよう。
この事はあまり他のメンバーに話したくない、だがこの首輪を
見れば、何があったか聞かれるに決まっている。
事務室に入ると、もう中澤さんたちはいなかった。
「・・・ただいまー・・・・」
小さな声で言った。
「あー、よっすぃー。いきなり出て行くから心配したべさ」
安倍さんが少々怒り気味に行った。
ごっちんは「何か面白いことあるの?」と興味津々に聞いてきた。
適当に相づちを打ちながら、私は梨華ちゃんを探した。
「・・・あれ?梨華ちゃんは」
事務室には梨華ちゃんの姿が見えなかった。
- 229 名前:New 投稿日:2002年12月04日(水)17時05分19秒
- 「梨華ちゃん?部屋に行ったよー、まぁ・・・私らも梨華ちゃんの
本当の『力』には驚いてるから、本人もそーとー驚いてるんじゃない?」
「そっか・・・」
「っで、その首にあるのは何?」
「え・・・?」
ごっちんが私が付けている首輪を触って言った。
私は思った。
言わないでおこう。
言ったら、梨華ちゃんの耳にきっと入るから。
そしたらきっと不安がるから。
「ちょっとね」
「あー、わかった。よっすぃーのファンの子に貰ったんでしょ?
結構いるじゃん、よっすぃーモテるし」
「う、うん、まぁねー」
私は動揺しながらも、そうゆう事にしておいた。
- 230 名前:New 投稿日:2002年12月04日(水)17時20分02秒
- 私は梨華ちゃんの部屋に行き、ノックした。
「はーい・・・あ、よっすぃーおかえり」
梨華ちゃんは部屋に入れてくれた。
「私ってさ・・・最後の『力』みたい」
「え・・・?」
「もう他にいないんだって、『生命(いのち)の力』持ってる人」
「そうなんだ・・・」
だからどのチームも梨華ちゃんを見ているのか。
「大丈夫だよ、このよっすぃーが守ってあげるから」
「・・・ホント?」
「うん、もちろんだよ。護衛を任されているのはこの私なんだから」
だけど、もし他の人に梨華ちゃんの護衛を任されているとしても
私は梨華ちゃんを守ろうとしただろう。
何だろう?この気持ち。
「よっすぃー・・・ずっとそばにいてね?」
梨華ちゃんは不安そうな顔で言った。今にも泣き出しそうだ。
私はそんな顔を笑顔にしたいって思った。
「うん・・・そばにいるよ」
私は力強く、梨華ちゃんを抱きしめた。
大丈夫、そばにいるよ。
絶対、守るからね、梨華ちゃん。
- 231 名前:New 投稿日:2002年12月04日(水)17時33分46秒
- 梨華ちゃんの匂いがした。
とっても心が落ち着いて、心地が良かった。
「よっすぃー、覚えてる?」
「ん?何?」
梨華ちゃんを抱きしめたまま聞いた。
「海行くって約束・・・」
「もちろん、覚えてるよ。明後日、休みだから行こう?」
「うん!約束だよ?」
梨華ちゃんが少し離れて私の顔を覗き込みながら言った。
こんなに近くで梨華ちゃんを見たのは初めてで、なんか心臓が早くなった。
「約束ね」
私は笑顔で言った。
お互いが、目が離せなくなっていた。
見つめ合ったまま、時間は過ぎていく。
開けた窓から風が入り、カーテンを揺らす。
そして、お互い顔を近づけて。
ゆっくりと唇が重なる────。
『約束だよ?』
約束するよ。
海に行こう。
それと────ずっとそばにいるよ。
- 232 名前:New 投稿日:2002年12月04日(水)17時49分04秒
- 第9章 『あなたを守りたいから』
翌朝、珍しく目覚まし時計よりも早く起きた。
「・・・・キスしちゃったんだよなぁ・・・」
昨日、梨華ちゃんとキスをした。
今、思い出すとかなり恥ずかしい。
やっと気付いたんだ。
私は梨華ちゃんが好きだってことを。
なんで梨華ちゃんといると落ち着くのか。
なんで梨華ちゃんを守りたいのか。
なんで梨華ちゃんのそばにいたいのか。
好きだからだ。
- 233 名前:New 投稿日:2002年12月05日(木)17時17分05秒
- 手早く着替えて、部屋を出る。
・・・梨華ちゃん、起きてるかなぁ。
腕時計を見るとAM6:30。起きてるわけがない。
私の足はエレベーターの方へ向かった。
ガチャと事務室の扉を開けた。まだ誰も来てはいなかった。
「・・・今日か・・・」
今日は昨日藤本さんに言われた場所に行かなくてはならない。
首輪の事もあるし、梨華ちゃんの事もある。
負けるわけにはいかない、絶対勝たなきゃ。
決戦はPM4:00。まだ時間には余裕がある。
「ふあぁ〜、やっぱ早く起きすぎたかなー」
暇つぶしにゲームでもやろうと休憩室へ入った。
・・・あ!?
ソファに安倍さんが寝ていた。テーブルには書類やら、紙が散乱していた。
「安倍さん、こんなとこで寝たら風邪ひきますよ」
私は安倍さんの肩を揺すって言った。
一向に起きる気配なし、どうやらかなり疲れてるようだ。
・・・それにしても・・・この書類の量は・・・。
一体何を調べてるんだろうか?
「・・・ま、いいか」
安倍さんも色々あるんだろうと納得して急いで自分の部屋から毛布を
持ってきて安倍さんにかけてあげた。
- 234 名前:New 投稿日:2002年12月05日(木)17時32分04秒
- ゲームするのは諦めて、安倍さんが寝ているソファの向かい側のソファに
座った。安倍さんの寝顔が可愛くかった。
それからいろんな事を考えた。
今日バトルする適はどんな属性なのだろうとか。
どう攻撃をしかけようとか。
今日のお昼は何を食べようとか。
明日は何処の海行こうかとか。
そういえば・・・梨華ちゃんは私の事どう思ってるんだろうとか。
キスした時嫌な素振りはなかった。
でも動けなかったとか?
私は一体、梨華ちゃんの何なんだろう?
ただの護衛?
だから・・・・護衛は私だからそばにいて欲しいの?
梨華ちゃんの気持ちが知りたい。
まず、自分の気持ちを伝えなくては。
- 235 名前:New 投稿日:2002年12月05日(木)18時07分25秒
- 「よっすぃー?おーい?」
「え、あ、安倍さん。おはようございます」
「毛布、よっすぃーのでしょ?ありがと」
「いいえ、でもちゃんとベットで寝たほうがいいですよ」
「そうだねー、何か色々やってたらさ、止まんなくなっちゃって」
「安倍さんらしいですね」
安倍さんはテーブルの上の書類らを片していた。
私も手伝ってあげた。
「何調べてたんですか?」
「え、・・・」
「何か、私にできる事とかあればと思って」
「・・・・実はさ、よっすぃー今日出かけるでしょ?夕方に」
安倍さんは遠慮気味にしゃべった。
「え?・・・何で・・・」
「ごめんね、昨日、よっすぃーの様子おかしかったし急に出て行くし
変な首輪つけてるし・・・何かあったんだと思って、よっすぃーの
パソコン勝手に開けて、メール見たんだ。したら、何か梨華ちゃんのこと
書いてあるし、・・・・心配で、藤本さんについて調べてたの・・・・。
本当にごめんなさい!勝手なことしちゃって・・・・ごめん・・」
安倍さんは私に頭を下げた。
私はふっと笑った、いや、微笑んだといった方が近いだろう。
- 236 名前:New 投稿日:2002年12月05日(木)21時21分01秒
- 「いえ・・・ありがとうございます。こんなに一生懸命に
調べてくれたんですね。メールを勝手に見た事は全然怒ってないし、
私が言わなかった事が悪いし。安倍さんは普段そんな事しませんから」
「よっすぃー・・・」
「私は今日の夕方にバトルしてきます。この首輪には爆弾が仕込まれていて
今日の午後5時に爆発します。午後4時がバトルスタート。
1時間のうちに倒さないと、この首輪の鍵もとれず、梨華ちゃんも
連れ去られます」
安倍さんの顔がみるみる泣き顔になっていくのがわかった。
私は安倍さんの髪を優しくなでて「大丈夫です」と言った。
「なっち・・嫌だからね?よっすぃーが死んじゃうなんて嫌だから・・・」
「はい、私もですよ」
「だから・・・だから絶対勝手ね?」
「はい」
安倍さんは私に抱きついてきた。
今までそれは何回かあったけど。
なんだか、昨日の梨華ちゃんを思い出してしまう。
「よっすぃー、・・・絶対いなくならないで・・・・」
「安倍さん・・・」
「もう・・・失いたくないの。なっちの大切な人を・・・」
私は震える安倍さんの背中を抱きしめたかった。
- 237 名前:New 投稿日:2002年12月05日(木)21時29分49秒
- でもそれはいけないような気がして、できなかった。
ただ安倍さんの髪をなでていた。
その時、扉の向こうからガタッと音がした。
なんだろう・・・・?
安倍さんもその音に反応を示した。私は扉を開けてみた。
「・・・あ!?」
梨華ちゃんがそこに驚いた顔して座り込んでいた。
「・・・よっすぃー・・・今の話ホント・・・?」
どうやら全部聞かれてたみたいだ。
私はゆっくり頷いた。
「そんな・・・私のせいで・・・」
「違う、梨華ちゃんのせいじゃないよ」
私は梨華ちゃんの目線に合わせてしゃがんで言った。
「梨華ちゃんのせいじゃない」
もう1度強く言った。
「そうだと思ったんだよね」
また違う声がした、ごっちんだ。梨華ちゃんの後ろにごっちんが立っていた。
コートを脱ぎながらごっちんは言った。
「よっすぃーは普段から指輪とかつけないし、ファンから貰っても
つけない人だから、その首輪変だと思ったんだよね」
ごっちんにもお見通しだったわけか。
- 238 名前:New 投稿日:2002年12月05日(木)21時38分50秒
- 「よっすぃー、圭織も知ってるんだ。なっちが話したの」
はは・・・そっか、みんな知ってるのか。
このメンバーじゃ隠し事はできないんだろうなぁ。
「私も行くよ。向こうが1対1でやりあうなんて信じれない」
ごっちんが私に言った。
「・・・いや、1人で行くよ」
私はすくっと立ち上がって梨華ちゃんに手を差し伸べた。
梨華ちゃんはすぐその手をつかんで立ち上がった。
「あの・・・藤本さんの目は、何処か悲しそうだった。
私に首輪をつけた時、・・・・だから、信じてみたい。
何かあるんだよ、何かが・・・・」
「よっすぃー、死んだらどうすんの」
「ううん、私は死なないよ。約束は守らなきゃ、ね、梨華ちゃん?」
「え・・・あ、うん」
「おし、じゃぁ集中力でも高めるかな〜」
ちょこっと背伸びをしながら事務室の窓側の方へ歩く。
「・・・ふぅ」
ホントの事いうと怖い。
でもそれは考えちゃいけない。
勝つと信じてるから。
- 239 名前:New 投稿日:2002年12月05日(木)21時45分36秒
- ごっちんと安倍さん、飯田さんは仕事へ行き。
いつもと同じ、日常が流れていく。
「吉澤さん、お茶飲みますか?」
「あ、うん。ありがと、紺野」
いつもと同じ会話。
何も変わらない、今もそしてこれからも。
「あ、よっすぃー、見て。これ可愛いー」
梨華ちゃんが雑誌を見せながら言った。指をさされたとこには
梨華ちゃんが好きそうな、指輪があった。
「うん、梨華ちゃんに似合いそう」
「ホント?買っちゃおっかなー」
隣にはいつも梨華ちゃんがいて笑顔をくれる。
でも本当の気持ちを私は知らない。
梨華ちゃんの気持ちを。
- 240 名前:チップ 投稿日:2002年12月06日(金)21時39分23秒
- よっすぃ〜愛の為に戦うなんて・・・王子ですか?
藤本さんと梨華ちゃんの気持ちも気になります。
安倍さんは私くしが抱きしめておきますんで
よっすぃ頑張って〜!
- 241 名前:New 投稿日:2002年12月06日(金)22時16分36秒
- チップさん<はい、よっすぃーは王子です(^−^
もうよっすぃーは梨華ちゃんしか見えておりませんv
よっすぃー頑張れ〜(私も応援)。
- 242 名前:New 投稿日:2002年12月06日(金)22時26分57秒
- 「あ、あのさ、梨華ちゃん」
「ん?何〜?」
「そのぉ〜、・・・・」
私は梨華ちゃんに自分の気持ちを伝えようとした。
けど、緊張と後ろで仕事してる紺野と小川が気になったから
なかなか言えずにいた。
「はい、お茶ですー」
その時、紺野が2人ぶんのお茶を出してくれた。
「あ、あぁ、ありがとう、紺野」
「紺野さん、ありがとう」
とりあえず、お茶を飲んだ。
「っで、何?よっすぃー」
「えーと、その、あ!ちょっと休憩室に行こう」
と梨華ちゃんを半ば引きずりながら休憩室に入った。
沈黙が流れる、梨華ちゃんが不思議そうな目で見てくる。
「えっとさ、つまりね・・・私は梨華ちゃんの事が好きなんだ」
私は決心して言い切った。
「ほら・・・その、梨華ちゃんはどう思ってんのかなぁって・・・」
私は梨華ちゃんを見ると、梨華ちゃんは顔を真っ赤にして下を向いていた。
・・・え、えぇ!?もうしかして・・・ダメかなぁ。
ただの護衛の人でしか見てくれてなかったのかなぁ。
私の心はずどーんと暗かった。
- 243 名前:New 投稿日:2002年12月06日(金)22時34分50秒
- 「・・・・私も」
「え?」
「私も好き、よっすぃーのこと」
梨華ちゃんは顔を上げて、笑顔で言った。
それからみるみる私は笑顔になった。
「梨華ちゃんを絶対守るから、守りたいんだ」
「うん・・・ありがと、よっすぃー」
嬉しくて、嬉しくて。
私は梨華ちゃんを抱きしめていた。梨華ちゃんも私の背中に腕を
回してくれた。
「よっすぃー、苦しいよぉ」
「あー、ごめん、ごめん」
幸せな時間が流れた。
- 244 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月07日(土)08時57分00秒
- プリンス”ひとみ”、プリンセス”梨華”の為に、白い馬に乗って、出陣だ!
行け! 愛のために!
- 245 名前:New 投稿日:2002年12月07日(土)16時21分13秒
- ひとみんこさん<白い馬に乗り、よっすぃーいざ出陣です!
そう、それは他の誰でもない梨華ちゃんの為に!
さぁ、よっすぃー行きます!
- 246 名前:New 投稿日:2002年12月07日(土)16時30分21秒
- 楽しい時間というものはあっという間に過ぎていくものであり、
決戦の時間が迫ってきた。
「じゃ、行ってくるね」
私はコートを着て、みんなの方へ振り返った。
「絶対、勝ってこいよぉ」
ごっちんが私の肩をポンと叩きながら言った。
「よっすぃー、頑張ってね」
安倍さんが心配そうな表情ながらも笑顔をつくって言ってくれた。
「よっすぃーだもん、大丈夫、自信持てよ!」
飯田さんが力強く応援してくれた。
「「頑張って下さい!!」」
小川と紺野が声を合わせて言った。
ふと横を見ると梨華ちゃんが下を向いていた。
「梨華ちゃん・・・」
「・・・よっすぃー、頑張って」
梨華ちゃんは顔を上げて真っ直ぐに私に勇気をくれた。
「・・・うん!じゃぁ行ってきます!」
私は元気よく言って、ビルを後にした。
- 247 名前:New 投稿日:2002年12月07日(土)16時41分25秒
- 第10章 『悲しい結末』
私は指定された場所へ急いで行った。場所はビルからそんな遠くない
倒産して使われていないビルの屋上だった。
「ここか・・・」
とりあえず裏口から入って、エレベーターに乗ろうとしたけど
使われていないから動くわけがなかった。仕方なく階段で屋上へ
向かう。
「はぁ・・・はぁ・・・っつーか、何回まであんだよ・・・」
結構高いビルだから階段をのぼるのに体力を使う。
長い事、階段をのぼりやっと屋上へついた。
ガチャと屋上への扉を開くと、人がいた。
藤本さんだ。
「どーも、ちゃんと時間通りに来ましたよ」
現在時刻PM4:00。
藤本さんは黙って私を見ていた。
『よっすぃーが会った、藤本っていう人はごっちんと同じ重力。
結構強いよ、チームのリーダーがかなりの強さらしい。
これ以外に情報は見つかんなかった、ガードが固くてさ』
安倍さんが調べてくれた事を思い出した。
重力か・・・・。
「さて、始めましょうか、藤本さん?」
「・・・そうですね」
バトル開始────。
- 248 名前:New 投稿日:2002年12月07日(土)17時08分32秒
- 私はとりあえず様子をみようと、いつもと同じに攻撃をしていた。
だが藤本さんは全部、綺麗にかわしていく。まるで戦う気なんて
無いみたいに見えた。
「───戦う気あるんですかッ!!?」
私は攻撃しながら聞いてみるが、返事は無し。
まぁ、いいや。さっさと終わらせよう。
風をさきほどよりも何倍にも大きくしていた。
『竜巻』の技を使おうとしているのだ。
「────いっけぇぇ!!!」
そして大きく振り切った。
ドゴォォォォン!!!!
大きな音だけが響いて、消えた。
「藤本さん!!?」
おそらく藤本さんはまともにあの技をくらっただろう。
私は急いで藤本さんの数メートル離れている方へ走った。
藤本さんは倒れていて、私はとっさに上半身を抱き上げた。
「どうして・・・なんで!逃げなかったんですか!?私に攻撃
しなかったんですか!?」
「はぁ・・・はは・・・・私ね、もう嫌なの・・・」
肩で息をしている藤本さんは弱々しい声で言った。
「もう嫌なの、私のチームのリーダーは・・・支配しようと
してる・・・この『力』の世界をね」
『彼女』の息がどんどん小さくなっていく。
- 249 名前:New 投稿日:2002年12月07日(土)17時22分23秒
- 「それには石川さんが必要で・・・あの人はどうしても手に入れたかった
・・・でも私は嫌なの・・・支配とかそーゆーの・・。
でもね、この『力』がある限り、逃げられないの・・・。
私の命はあの人の手の中にある・・・だからあの人の命令通りに
動かなきゃいけない・・・もう限界なんだ・・・。
こんな意味の無い戦い・・・もうやりたくない。
吉澤さん・・・お願い、あの人を止めて・・・・もう私には無理・・・
止めないと・・・メチャクチャになっちゃう・・・。
ごめんね・・・こんな事押し付けて・・・でもあなたしかいないの。
・・・お願い・・」
そして彼女は静かに息を止めた。
オレンジ色の夕日の中、私は彼女の顔をずっと見ていた。
瞳から涙が少しだけ流れていて、とても綺麗だと思った。
こんなにも彼女を追い詰めたのはどんなヤツだろう?
支配───、それだけの為に多くの犠牲者が出るだろう。
そんなくだらない事の為に。
今、たった一つの命が奪われた。
- 250 名前:New 投稿日:2002年12月07日(土)17時29分38秒
- 彼女の手には小さな鍵が握り締められていた。
私はその鍵を使い、首輪を外した。
────止めなくちゃ。
このままだと、また犠牲者が出る。
そして梨華ちゃんも危険な目にあう。
「・・・大丈夫だよ、藤本さん。きっと止めてみせるよ」
私は冷たく、動かない彼女に向かって言った。
これはひどく悲しい彼女の決断。
今までにないほど悲しい結末だった。
彼女は白い光に包まれて。
オレンジ色の空へ消えていった───。
その時、彼女の声でこう聞こえた。
『ありがとう』
- 251 名前:New 投稿日:2002年12月07日(土)17時44分50秒
- 私はこのビルを後にして、歩いた。
その足取りは重くて、今にも立ち止まりそうだった。
それでも私は歩いた。
立ち止まったら涙が出そうだったから。
彼女の決断した事がひどく悲しくて、残酷だったから。
もし、あの時攻撃しないで話し合えたのなら。
もっと違う行動が出来たかもしれない。
『死』を選ぶ事はなかったかもしれない。
───でももう彼女はいない。
泣くな、自分。
彼女がお願いした事があるだろう?
彼女が残していったものがあるだろう?
それは私の『依頼』だ。
そしたら、泣いてないで、やり遂げるんだ。
彼女の為に。
みんなの為に。
梨華ちゃんの為に。
────自分の為に。
- 252 名前:New 投稿日:2002年12月07日(土)17時56分17秒
- ビルに帰って、エレベーターに乗り、上へ行く。
事務室へ向かう、廊下を歩いていると、笑い声が聞こえた。
みんな待ってるんだよね。
私は扉を開けた。
「ただ今戻りましたー」
いつもと同じように、言った。
「おー、よっすぃー!勝ったんだね!」
「そりゃそうだもん、我らがよっすぃーだからね」
「お疲れ様〜」
「よっすぃー、やったね」
みんなが笑顔で私に言ってくれる。
言わなきゃいけない事がある。
でも、『この事』を巻き込んでいいのだろうか?
私、1人で戦えるんじゃないか。
「よっすぃー、変だよ」
「よっすぃーはいつも変だよ」
「それ失礼だよ、ごっちん」
「おーい?よっすぃー?」
私は・・・・どうしたらいいんだろう?
- 253 名前:New 投稿日:2002年12月08日(日)13時34分23秒
- どうすればいいんだろう?
言っていいのだろうか?
・・・・・わからない。
「・・はは、何でもないですよ〜。梨華ちゃん、もう大丈夫だからね!」
私は笑顔を無理矢理つくって言った。
そして、みんなそれぞれの仕事へ戻って行った。私は自分のデスクで
コンピューターを起動させて、調査をし始めた。
・・・うーん、わかるのは藤本っていう名前だけか。
私は『力』に関係しているサイトを見ていた。
「・・・・ん?何これ」
1つ、気になるモノを発見。
ランキングみたいな表があった。
第1位 後藤真希
第2位 吉澤ひとみ
・
・
・
・・・・どうやら、強さのランキング、か。
知らない名前もいくつかあった、8位に藤本さんの名前が載っていた。
あとは・・・。
私は『情報』というとこをクリックした。
「・・・・!?」
<情報を買いたい。
『石川梨華』について知っている者はこちらに情報を売って欲しい。
高額な値で買う事を約束しよう。
連絡は以下のメールアドレスで連絡して欲しい。>
- 254 名前:New 投稿日:2002年12月08日(日)13時45分45秒
- しばらく私は呆然としていた。
コイツじゃないか?藤本さんのチームのリーダーは。
他のサイトにはこんなの無かったし(ちなみにパスワードが無いと
『力』関係のサイトは入れない事になっている)。
こんなに早く会えるとは思わなかった。
「・・・・」
拳が自然に力が入ってギリギリと握り締めている。
今にも何かを壊しそうな気分だった。
「よっすぃー?」
後ろから声がした。私は慌てて、振り向いた。
「な、何?梨華ちゃん」
驚いたので声が少し裏返ってしまった。
「怖い顔してたから、何見てたの?」
「あ、ダメ!!」
梨華ちゃんが画面をのぞき込んで見ようとしてたから急いで
電源を落とした。
「あ!何でよー、見ちゃいけなかった?」
「え・・・まぁ、うん」
「変なの」
私は苦笑いしながら、梨華ちゃんをなだめていた。
梨華ちゃん、ご機嫌ななめのようで、ちょっと困った。
「どーしたら、機嫌なおしてくれる?」
「えー、どうしよっかなー」
梨華ちゃんは何やら楽しげにしながら、休憩室へ入っていく。
私は慌てて、追いかけた。
- 255 名前:New 投稿日:2002年12月08日(日)14時06分22秒
- 「梨華ちゃん〜、ごめんよぉ」
「許さないよ〜、よっすぃー見せてくれないんだもん」
梨華ちゃんは多分怖い顔だと自分では思ってるんだろうけど全然怖くない。
むしろ、可愛かったりした。
ぷいっと梨華ちゃんは向こうを向いてしまった。
ありゃりゃ・・・。
「梨華ちゃんってばー、私困っちゃうよ」
「知らない」
私は梨華ちゃんを後ろから抱きしめた。
「きゃっ」
「もう機嫌なおして?」
「もぉ・・・しょーがないな」
梨華ちゃんの顔がみるみる笑顔になっていく。
私はそれが見れただけで幸せな気分だった。
「梨華ちゃん、キスしていい?」
「・・・いいよ」
後ろから抱きしめたまま、私は梨華ちゃんに軽くキスをした。
- 256 名前:New 投稿日:2002年12月09日(月)18時23分18秒
- 第11章 『守れない約束』
次の日、私と梨華ちゃんは海へ行く為、支度をしていた。
「梨華ちゃんー、まだー?」
「ちょっと、待って〜」
私はもう準備が出来てるのに、梨華ちゃんはバタバタしていた。
ピアスはどれにしようとか。
コートはどれにしようとか。
何か色々悩んでいるみたいで、最終的には私に聞いてくる。
「うん、それ似合ってるよ」
そのひと言で全て決まっていく。
やっとビルを出れたのは午前10時ぐらいだった。
電車に乗って、海へ向かう。
海なら何処でもいいらしいので1番近い海へ向かった。
「楽しみ〜」
「そうだね」
私らは手をずっと繋いでいた。
私はいつもより、しっかりと握っていた。
だって、これが最後かもしれないから。
梨華ちゃんと一緒に過ごせるのは
最後かもしれないから。
- 257 名前:New 投稿日:2002年12月09日(月)18時42分07秒
- お昼を少し過ぎた時、やっと海へ到着した。
梨華ちゃんはすごく嬉しそうで、はしゃいでいた。
「よっすぃー、綺麗だねー」
「うん、寒くない?」
「全然!わぁー、海だぁ〜」
冬の時期だから浜辺には誰もいなくて2人だけだった。
空は快晴。
風は穏やか。
とても静かで、心地がいい。
「うーん、いいね。海って」
「そうだね」
それから1時間くらい海辺を散歩して。
駅に行って少し遅いお昼ご飯を食べた。
現在時刻 PM3:15。
「あー、見て見て」
駅周辺を歩いていたら、急に梨華ちゃんが私の腕を引っ張った。
何かと思って見てみると、小さな古そうなお店があった。
梨華ちゃんが中に入りたいと言うので入ってみると店内はレトロ
な感じで、指輪やピアスなど小物をあつかったお店らしい。
「わぁー、綺麗」
梨華ちゃんはもうくぎ付けで色々見ていた。
その中でも、梨華ちゃんがじっと見ていた物があった。
こないだ雑誌で見ていた指輪と似たような感じの指輪があった。
私はさりげなく梨華ちゃんが他の物を見ているすきに、それを買った。
- 258 名前:New 投稿日:2002年12月09日(月)18時53分09秒
- 「今なら、文字いれますけど」
「え〜・・・えーと、R&Yでお願いします」
「はい、かしこまりました」
店員さんが今日の日付とR&Yと文字をいれてくれた。
小さな袋に入れてもらいすぐにポケットにしまう。
「よっすぃー?何してるの?」
「え?いや、何でもないよぉ〜」
そしてお店を出た。
それから色々遊んだけど、夕方になって梨華ちゃんがもう1度
海を見たいって言うからまた海辺に来た。
「夕日で海が綺麗〜」
オレンジ色の夕日が海を照らしていた。
私は藤本さんのバトルを思い出した。あの時も夕方だったから。
ちょっとだけ悲しい気持ちになった。
「よっすぃー?」
「え?あぁ、どうした?」
「ううん、何かね・・・よっすぃーがどっか遠くにいっちゃいそうな
気がして・・・」
梨華ちゃんはそう言いながら、腕にぎゅっとしがみ付いてきた。
私は、一瞬ドキっとした。梨華ちゃんの言った言葉に。
気付いているのだろうか?
「ねぇ、よっすぃーずっと一緒だからね?」
梨華ちゃんは瞳をうるうるさせながら私を見て言った。
「・・・・・うん」
守れない約束を私はしてしまった。
どっちにしろ梨華ちゃんを悲しませてしまう事だった。
- 259 名前:New 投稿日:2002年12月09日(月)20時46分23秒
- 梨華ちゃんをそっと抱き寄せて、腕の中に包み込んだ。
2人でくっついてると暖かくてお互い幸せな気持ちになれた。
私は明日、行きます。
長い旅になりそうです。
でもどうか悲しまないで下さい。
私は必ずあなたの所へ帰ります。
ずっと一緒にいる約束は守れないけど。
けど・・・必ずあなたの所へ帰ります。
だから信じて待って下さい。
あなたを守りたいから、私は行きます。
そして帰って来た時には、笑顔で。
『おかえり』って言って下さいね。
私は心の中で梨華ちゃんに伝えた。
- 260 名前:New 投稿日:2002年12月09日(月)20時56分05秒
- 「梨華ちゃん、右手出して」
「ん?」
梨華ちゃんは右手を私に出した。私はそっとその手を掴みポケットから
指輪を取り出してつけてあげた。
「・・・!?」
「梨華ちゃんにあげるね」
「・・・ありがとう。よっすぃー・・・」
梨華ちゃんは泣き笑いで私に言った。
あなたはいつ気付くかな?
私とあなたのイニシャルが指輪に刻まれていることを。
もし・・・・もしね?
かなり低い確率で。
あなたの所帰れなくなったとしても。
この指輪を見てくれれば。
私を思い出してくれるかなぁって。
思っちゃったんだよね。
「さ、帰ろうか」
「うん」
夕暮れの海を後にして、私らは歩いた。
電車の中で2人共疲れて眠ってしまった。
でもちゃんと手は繋いだまま。
- 261 名前:New 投稿日:2002年12月09日(月)21時09分28秒
- 帰りに夕食をとって、ビルへ着いたのが午後9時ぐらいだった。
事務室には飯田さんと安倍さんがまだいた。
梨華ちゃんは部屋に戻って行った・・・私が仕事あるからと一緒に
寝るのを断ったら、嫌だって言って私の手を離してくれなかった。
でも、今日一緒に寝てしまったら絶対あなたと離れられなくなるから。
ごめんね、梨華ちゃん。
「よっすぃーも残業?」
「まぁ・・・そんなとこですよ」
「少なかったらさ〜圭織の仕事ちょっと手伝ってくんない?」
「こら!圭織、自分の仕事は自分で!リーダーが何言ってんの!」
「だってー、すっごいあるんだもん・・・」
「里帰りだ何だとか言って、出張ずっと延ばしてんのが悪いべ!」
「はぁ〜い・・・・」
私はそんな光景に微笑みつつ、コンピューターを起動させる。
あのサイトへ行って、ヤツにメールを送った。
<石川梨華の事を知っています。 吉澤>
数秒後すぐにメールは帰って来た。
<電話で直接話がしたいので、お手数ですがこちらにお電話して下さい。
090・・・・・ 松浦>
- 262 名前:New 投稿日:2002年12月09日(月)21時19分45秒
- 早速、携帯を出してかけてみた。
トゥルルル・・・・・。
『はい、松浦です』
「さっきメールを出した、吉澤という者ですけど」
『はい、お待ちしてました。ところで石川梨華さんの何を知って
るんですか?』
「全て、ですかね」
『・・・・・全て、ですか?』
「はい」
『そうですか・・・会えますか?』
「はい」
『何処に住んでますか?』
「東京」
『そうですか・・・こちらは北海道にいるんですけど』
「じゃぁ、行ってもいいですよ」
『ホントですかぁ!?いやー助かります。では───』
簡単に会う場所と時間を確認して、電話は終わった。
「よっすぃー、電話?」
「あぁ、はい」
「誰とー?仕事?」
「・・・・まぁ、一応『依頼』はあるんで仕事ですね」
「へぇー、頑張るねぇ」
「圭織!しゃべってないで仕事片付けるべさ!」
「はぁ〜い・・・・」
私は部屋に戻った。
- 263 名前:New 投稿日:2002年12月09日(月)21時23分53秒
- 私は夜、みんな宛ての手紙と梨華ちゃん宛てに手紙を書いた。
そして、眠りについた。
翌朝、こっそり事務室に入る。
誰もいなかった。
テーブルの上に手紙を置いて。
最後に自分のデスクのイスに座って。
目を閉じた。
そして立ち上がって、ビルを後にした。
梨華ちゃんの部屋のドアの下の隙間に手紙をはさんでおいた。
- 264 名前:New 投稿日:2002年12月09日(月)21時33分07秒
- <梨華ちゃん視点>
目覚めたのは朝の9時だった。
疲れてたからちょっと寝坊しちゃったなぁ。
早く、よっすぃーに会いたいな。
私は早く着替えて、顔洗いに行こうとしたらドアの下に何か
はさんであるのに気付いた。
「何これ・・・?よっすぃーの字だ・・・」
手紙をあけてみると、よっすぃーからの手紙だった。
梨華ちゃんへ。
もうこれを読んでいる時に、私はいないでしょう。
ごめんね、約束守れなくて。
昨日、海、一緒に行って楽しかったね。
また行こうね。
私は必ず、梨華ちゃんのとこに帰るから。
待ってて下さい。
梨華ちゃんに会えて良かった。
梨華ちゃんを好きになれて良かった。
でも、もし。
私が帰れなかったら。
その時は、心のどこかに私をいれておいて下さい。
吉澤ひとみより。
「・・・いやぁぁぁぁ!!!!」
私は泣いて、叫んだ。
嫌だよ、よっすぃー。
なんで・・?どうして・・・?
また修行?
ずっと一緒って言ったじゃない!
よっすぃー・・・・。
- 265 名前:New 投稿日:2002年12月09日(月)21時43分57秒
- これは嘘だよね?
冗談でしょ?
事務室にいけば、いつも通りよっすぃーは仕事をしていて。
『おはよう、遅いよ』
って優しく言ってくれるんでしょ?
ねぇ、よっすぃー。
・・・・お願い、そこにいて。
バンっと扉を開いた。
肩で息をしながら中にはいった。
みんなが悲しそうな目で私を見ている。
「よ・・・よっすぃーは!?」
「・・・もういっちゃったみたい・・・」
安倍さんが手紙を見ながら言った。
私はその手紙を見た。
みんなへ。
自分勝手な行動、本当にごめんなさい。
私は今日、このチーム『マテリア』を辞めます。
迷惑かけて本当にごめんなさい。
私はある人物に会って来ます。
それは梨華ちゃんを守る為に行きます。
相手はすごく強いと聞いてます。
でも、必ず勝ってみませます。
・・・・かなり低い確率で。
私がいなくなるかもしれないけれど。
精一杯頑張ります。
また会える事を信じています。
吉澤ひとみより。
「そんな・・・・」
私は涙が止まらなくて、ずっと泣いてた。
そんなのいいのに。
守らなくていいから、そばにいるだけでいいから。
・・・よっすぃーのバカ。
- 266 名前:New 投稿日:2002年12月09日(月)21時53分14秒
- 「ホント・・・バカだね。よっすぃーは」
後藤さんが言った。
「みんな、行こう。これは『マテリア』の仕事だよ」
「・・・?」
「私さ、よっすぃーが変なの気付いてたんだ。だから勝手に
コンピューターいじって、そしたらサイト見つけた、
梨華ちゃんの情報知ってる人はくれっていうサイトがあった。
よっすぃー、そいつに会いにいったんだよ。詳しくは知らないけど。
・・・・よっすぃーひとりの仕事じゃないでしょ?よっすぃーは
何でもひとりで背負い込むから・・・でもよっすぃーはひとりじゃない。
そうでしょ・・・?」
「そうだよ、よっすぃーはひとりじゃないんだよ」
「うん、行こう!圭織も賛成だよ!」
みんなの気持ちがひとつになった。
よっすぃー、絶対行くから。
私、絶対行くから。
- 267 名前:New 投稿日:2002年12月10日(火)18時49分30秒
- 第12章 『独りじゃない』
<よっすぃー視点>
あれから一旦、家に帰って荷物の支度をした。
そして空港へ向かい、飛行機で北海道へ向かう。
タクシーで空港へ向かっていた。もうすぐ9時になる。
「・・・・・」
窓越しに自分の顔を見た。なんだか悲しそうな顔してた。
・・・こんなんじゃ、ダメだよ。
私は顔を引き締めて、空港へ着くまで眠りにおちた。
「お客さん、着きましたよ」
やっと空港へ着いて、運転手さんにお金を払いタクシーから下りた。
そこで携帯に着信があった。
『梨華ちゃん』
「・・・・・ごめんね」
私は着信を切って、そのまま電源も切った。
きっと心配してるんだろうな。
みんなの事はよく知ってるから。
・・・・ごっちん。
きっと冷静に装ってるけど、怒ってんだろうな。
勝手に私のコンピューターいじってたりして。
・・・・だったら全部消してからいけば良かったな。
- 268 名前:New 投稿日:2002年12月10日(火)21時27分21秒
- まぁ、今更だし。
どうせ、私が行く場所はわかんないだろうしね。
私は空港の待合のイスに座っていた。
あと少し時間があった。
「・・・・」
松浦さんとの待ち合わせの時間は午後8時。
夕食を一緒にしましょうと向こうが言ってきた。
松浦さんは藤本さんが死んだ事を知っているのだろうか?
いや、知らないだろう。
私は席を立った。
- 269 名前:New 投稿日:2002年12月11日(水)16時00分47秒
- <梨華ちゃん視点>
「・・・・・」
私は電話を切った。
よっすぃーに電話したけどダメだった。切られたし、電源も
切っちゃったみたい。
「梨華ちゃん、どうだった・・?」
「ダメです、電源も切られました・・・」
「そんな・・・」
私はがくっと肩を落とした。安倍さんが私を支えてくれていた。
後藤さんと飯田さんはよっすぃーのコンピューターをいじりながら
何か情報を探している。
「裕ちゃんのとこにも電話してみようか・・・」
安倍さんは自分の携帯を取り出して、電話をかけた。
「あ、裕ちゃん?うん・・・あのね、そっちによっすぃー来た?
・・・来てない?そっか・・・うん・・・そうなんだ・・・。
朝、ビルに来たら手紙あってさ・・・うん、わかんない。
わかった・・・・ありがと。うん、じゃね」
安倍さんは大きなため息をしながら携帯をしまった。
「裕ちゃんとこ来てないって・・・裕ちゃん達、今から来てくれるって」
「そうですか・・・」
中澤さん達のとこには来てないんだ・・・・。
よっすぃー、あなたは今、何処にいるの?
私は今にも泣き出しそうだった。
重たい空気が事務室の中に漂っていた。
- 270 名前:New 投稿日:2002年12月11日(水)16時16分26秒
- それから数分がたって、中澤さん達が来た。
「全く、吉澤はバカやな。何でもかんでも自分で全部やろうとして」
中澤さんはひどく怒っていた。
「そこが、吉澤の優しさだよ、裕ちゃん」
石黒さんが一応フォローしていた。
後藤さん達が中澤さん達のもとへやって来た。
「どうやった?」
「あ〜、そんなに情報なかったよ。でもひとつだけわかった事があるんだ」
飯田さんが言った。
「多分、よっすぃー北海道に行ったんだよ」
後藤さんが腕を組みながら言った。
「なんで?」
「よっすぃーが連絡とってた松浦っていう人のチームは
北海道にいるから」
「へぇー、よーわかったな」
「まぁね」
「私、北海道に知り合いいるから今から電話で聞いてみるね〜」
そういえば、飯田さんは北海道出身だったんだよね。
私はよっすぃーがくれた指輪を触っていた。
よっすぃーがくれたあの時から私はずっと肌身はなさずこの指輪を
付けていた。
「お、梨華ちゃん、指輪付けてるね」
安倍さんが私を明るくさせようとしてくれていた。
「あぁ・・・はい。これは・・・よっすぃーがくれたんです」
「あ〜・・・そうなんだ。いいねぇー」
安倍さんは笑顔で言った。
- 271 名前:New 投稿日:2002年12月11日(水)20時58分08秒
- 電話を終えた飯田さんがやって来た。
「松浦さんのチームはかなり向こうじゃ有名らしいよ。
チーム名は『シャル』・・・・よっすぃーはそこに
行ってるんだと思うよ」
「私・・・・行きます」
私は静かにそう言った。
「でもさ・・・梨華ちゃん、危ない目にあうかもしれないんだよ?
だからこそ、よっすぃーだって1人で行ったのかもしんないし・・・。
したら、なっち達だけで行った方が・・・」
「私は絶対行きます。その人達は私が欲しいんでしょう?
だったら、私が会って、きっぱりと断ります」
私は今までで1番はっきりと言ったかもしれない。
だから安倍さんは驚いていた。
「・・・決まりやな。もう石川は絶対行く気や。なっち、諦めた方が
ええよ」
「・・・わかったべさ。なら、一刻も早くよっすぃーに会わなきゃ!
みんな、行くよ!」
「「「はい!」」」
中澤さんと石黒さん、小川さんに紺野さんはビルに残って
お留守番。私と飯田さん・安倍さん・後藤さんはよっすぃーの
暴走を止めるべく、北海道へ向かう。
- 272 名前:New 投稿日:2002年12月11日(水)21時10分53秒
- <よっすぃー視点>
北海道に着いて、まだ時間に余裕があったのでそこら辺で暇つぶし。
そしてとりあえず、喫茶店でお茶を飲んで約15分が過ぎた。
「あの、お一人ですか?」
急に後ろから声をかけられた。
「え・・・ええ、はい。そうですけど」
声をかけてきた人は嬉しそうに私が座っているカウンターの
隣の席に座った。
一体何だ?この人っといった感じで私はその人を見ていた。
でも何処かで会ったことがあるよーな・・・。
「いやー、あのですね、ちょっと仲間とはぐれちゃって・・・」
金髪に、小さい背。
「あー!!!!矢口さんですよね?」
「え?・・・あぁー!吉澤ひとみ!?」
・・・・フルネームで呼ばないで下さい。
「うわー、偶然ー。何?どしたのさ?」
「待ち合わせしてる人がいて、でもまだ時間じゃないんで
暇つぶしですよ」
「へぇー、何?恋人?」
「違いますッ!」
私は大きな声で言った。
- 273 名前:New 投稿日:2002年12月11日(水)21時28分42秒
- 「もぉー、怒るなよ。冗談でしょ、冗談。
オイラはさー、とりあえず仕事で来て、終わって、遊んでたら
辻が迷子になっちゃって、圭ちゃんと紗耶香とオイラで探してたら
どうやらオイラもはぐれちゃって、疲れたから休憩」
矢口さんは最後にはぁーとため息をついた。
「矢口さんも迷子ですか」
「迷子言うなぁ!はぐれたんだよ」
そーいうのを迷子って言うんですよ、矢口さん。
矢口さんは紅茶を注文して、それからケーキもついでに注文していた。
「吉澤って何て呼ばれてんの?」
「まぁ・・よっすぃーです」
「よっすぃーね。よっすぃーのおごりね」
「はぁ!?」
「だってさ、オイラのカバン、紗耶香が持ってて、財布そん中
なんだよ。ね?いいでしょ」
なんで矢口さんのカバンを市井さんが持ってるんですか?
そして誰でもいいから声かけておごらせようとしていたんですね。
「・・・わかりましたよ」
「わーい、やったぁ」
矢口さんは子供のように笑って、この前のバトルで見たときのあの
真剣な眼差しはなかった。
- 274 名前:New 投稿日:2002年12月11日(水)21時39分23秒
- 隣を見ると嬉しそうにケーキを食べる矢口さん。
私はそれを見ると何の為にここへ来たのか考えてしまう。
「・・・・あの、矢口さん。松浦っていう人知ってますか?」
「・・・もぐもぐ、ん?松浦?あぁ、知ってるよ」
「ホントですか?知り合い?」
「うん、まぁね」
「へぇー・・・」
「何?松浦と会うの?」
「そうです」
やっと本来の目的を思い出せそうだ。
「あいつにゃ気をつけな、気に入った人見つけると、とことん
つきまわるから。よっすぃーあいつのタイプっぽそうだし」
「・・・はい、気をつけます」
矢口さんの話で今までの中で聞いといて良かったと思えた。
その時、バンっと喫茶店の扉が開いた。
「いた〜・・・矢口!」
「圭ちゃん!」
「何ケーキなんか食べてんのよ!こっちは必死だったんだから!」
保田さんは怖い顔をしていた。
「紗耶香は?」
「辻と一緒にいるわよ、もう早く行くわよ」
「えー、せっかくよっすぃーと会えたのに」
やっと私の存在が出てきた。
- 275 名前:New 投稿日:2002年12月11日(水)21時44分48秒
- 「ん?あぁ、吉澤。何やってんの」
「よっすぃー、松浦と会うんだって」
「松浦?何しに・・・もしかして石川梨華のこと?」
「まぁ、そうです」
「そう、まぁ別に関係ないわ。じゃ、矢口行くよ」
「えー・・・わかったよ、じゃねよっすぃー」
「え、あぁ、はい」
矢口さんは保田さんに引きずられながら去って行った。
・・・・・・あぁ!おごらされてたんだった。
保田さんに言えば良かった・・・・。
私はしぶしぶ矢口さんの分も払い、喫茶店を出た。
- 276 名前:New 投稿日:2002年12月12日(木)21時35分00秒
- やっと約束の時間が来た。待ち合わせ場所は駅の近くにある公園
のベンチ。自販機で買った暖かいコーヒーを飲みながら待っていた。
ベンチに座って空を眺めた。
いくつかの星が輝き始めていた。
あ〜・・・梨華ちゃんに見せたかったなぁ。
きっと彼女はあの海を見たときのように
『綺麗』
と言うんだろうな。
そして公園の入り口にタクシーが一台とまった。
ドアが開いて、誰かがおりて来た。
ちょっと駆け足で、私の方へ向かって来た。
「吉澤さん、ですか?」
「はい、松浦さん」
「そうですか、じゃぁ行きましょうか」
松浦さんは満面の笑みで、タクシーを指差した。
- 277 名前:New 投稿日:2002年12月12日(木)21時42分55秒
- 連れて来られた所は、高級そうなホテルだった。
何故ここなのか?と聞くと、ゆっくり話がしたいからだそうだ。
エレベーターに乗って、部屋へ向かう。2人共黙ったままだった。
部屋について中へ入る。
窓の向こうは綺麗な夜景が広がっていた。
「じゃ、食事にしましょうか」
松浦さんはそう言って、部屋にある電話を使っていた。
数分後、男の人が食事を運びに来た。
私はコートを脱いで、大きなテーブルのイスに座った。
そして夕食は始まった。
「・・・・唐突ですけど、藤本さん知ってますね?」
私は赤ワインを飲んで、一息つき話始めた。
「・・・はい、知ってます」
「じゃぁ、亡くなられたのは?」
「え・・・?」
沈黙が流れる。
松浦さんは驚いた表情で私を見ていた。
- 278 名前:New 投稿日:2002年12月12日(木)22時05分25秒
- 「・・・・順を追って話ましょう。私は数日前に藤本さんに
会いました。私のチームの仲間、石川梨華が欲しいと言いました。
バトルをして───彼女は最後に言いました。
止めて欲しい、と。あなた達のチームのリーダーを止めて欲しい。
・・・・彼女は追い詰められていた。限界だった」
「やめて・・・!!聞きたくない・・・」
「彼女は私の攻撃をまともにくらい、私に『お願い』を言い、
静かに目を閉じた───」
「やめてッ!!!」
松浦さんは耳を塞いで大きく叫んだ。
「・・・・・松浦さん、あなたは何が目的なんですか?」
私は背筋を伸ばして、真正面にいる松浦さんに問いかけた。
「・・・リーダーの命令通りに動く事、です」
とても小さな声で、今にも消えてしまいそうな声で松浦さんは言った。
「───あなたはどうしたいんですか?」
「──ッ!私は!与えられた命令に従って動くだけです!」
松浦さんは立ち上がって大きく叫び、涙を流した。
「・・・じゃぁ、何故泣いてるんですか?」
私は静かに問いかけ、立ち上がった。
- 279 名前:New 投稿日:2002年12月12日(木)22時12分43秒
- 「本当はやりたくないんじゃないですか?
あなたの意思は何処にあるんですか?」
ゆっくりと松浦さんに近づき、松浦さんは後ずさりしていく。
「私は・・・私はただ命令に従うだけよ!!」
混乱し大きく叫び、倒れる松浦さんは、私にはひどく悲しく見えた。
私は松浦さん優しく抱き起こした。
その時、ぐらっと視界が揺れた。
「・・・うっ・・・」
なんだ・・・?今の目眩・・・・。睡眠薬!?
私は松浦さんを離し、その場に倒れた。
「・・・でも、あの人を私は裏切れない・・・だから従う」
この言葉を聞いて、私の記憶は途切れた。
- 280 名前:New 投稿日:2002年12月12日(木)22時24分49秒
- 目覚めた時は大きなダブルベットの上だった。
・・・赤ワインに睡眠薬か。気をつけとくべきだった。
どれくらい時間がかかっただろう?
私は起き上がり、周りを見回した。
時計───AM2:30
松浦さんはいなかった。
・・・失敗か。
とりあえず、出ようと思って立ち上がった。
「無駄ですよ」
シャワールームから松浦さんが出てきた。
どうやら、お風呂に入っていたらしい。バスローブを来ていて、
出てきた。
「言っときますが、石川梨華は渡しません」
「どっちみち、来ますよ」
「・・・?」
「ここへ来ます」
「・・・何故?」
「あなたがここにいるからじゃないですか?」
松浦さんは笑って、言った。
そして私に近づいてきた。
「・・・でも、私、吉澤さんの事気に入っちゃったみたいです」
私の首に腕を回してきた。
- 281 名前:New 投稿日:2002年12月12日(木)22時35分41秒
- 「どうです?私のチームに入りませんか?」
私は松浦さんがどうしても強がりに見えた。
笑ってるけど、それは本心じゃなくて。
本当は震えてるんじゃないかと。
心では泣いてるんじゃないかと。
どうしてもそう思えて仕方なかった。
こんなにもか弱いのに。
どうしてそこまで頑張るんだろう?
泣く事は許されないのだろうか。
誰かに甘える事はしてはいけないのだろうか。
かわいそうだよ・・・・。
私はそっと松浦さんを抱きしめた。
一瞬ビクッと松浦さんは身体を震わせた。
「・・・・今だけ、いいんじゃないかな」
「・・・え?」
「泣いてもいいんじゃないかな、甘えてもいいんじゃないかな。
そりゃ・・・私なんかじゃ頼りにならないかもしれないけど」
私の言葉が終えた同時に泣き声が聞こえた。
「・・・ほん・・とは悲しいよ・・・・ひっく、美貴ちゃんが・・・
死んだなんて・・・思いたくない・・・・一緒に頑張ろうって
・・・言ってたのに・・・・」
子供のようにすがりつき、泣きじゃくる松浦さん。
私はしっかり抱きとめるように聞いていた。
- 282 名前:New 投稿日:2002年12月12日(木)22時46分19秒
- 『力』。
私は今ほどこの『力』を恨んだ事はなかった。
この『力』は必要ないモノだと思った。
この『力』さえなければ、支配とかそんなくだらない事なんて
なかっただろうし。藤本さんや松浦さん、梨華ちゃんだって
悩む事はなかったはずだ。
松浦さんに添い寝をしていた。
ずっと松浦さんは私の手を握っていた。
私は松浦さんが眠りにつくまでずっと髪をなでてあげた。
翌朝。
松浦さんは昨日とは表情が違った。
なんか、穏やかな表情になった。
私に心を開いてくれたのだろうか。
「吉澤さんて何て呼ばれてるんですか?」
「よっすぃーかな」
「じゃぁ、そう呼びます。よっすぃー」
昨日の大人びた所はなくなり、子供のように笑っていた。
- 283 名前:New 投稿日:2002年12月12日(木)22時58分09秒
- その時、部屋のドアの向こうが騒がしく感じた。
『鍵かかってるべさ・・・監禁!!?』
『何言ってんの、普通鍵ぐらいかけるでしょーが』
『ねぇ、ピンポン押そうよ』
『よっすぃーはここにいるんですか!?』
どうやら、見つかっちゃったらしい。
ピンポーン───。
「・・・・なんか、仲間が来ちゃったみたい」
私は苦笑いで言った。
「私が出ます」
松浦さんはドアの方へ行き、鍵をはずして開けた。
「よっすぃー!!?」
安倍さんの声が聞こえた。
それから何かごちゃごちゃと言い争いが聞こえて来た。
「よっすぃーならあっちにいます」
松浦さんが言った。
ずかずかとみんな入って来て、私を見つけた。
「よっすぃー!!」
「もぉー、捜したんだからね!」
「全く、暴走するんだから」
「よっすぃー・・・・良かった」
私の仲間は涙を浮かべて喜んでいた。
私は松浦さんの方へ向いた。
- 284 名前:New 投稿日:2002年12月12日(木)23時08分57秒
- 「・・・松浦さん、あなたが仲間を裏切りたくない気持ちはわかります。
でも、梨華ちゃんは渡せません。・・・もし、戦うなら正々堂々と
私は戦います。あと・・・泣く事も必要です。だから、無理は
しないで下さい」
「・・・・はい、この場は石川さんの事は諦めます。
昨日は、ありがとうございました。よっすぃー、あなたに
会えて良かった・・・・」
「いや〜たいした事はしてないし」
急に右腕に何かに掴まれた。
見ると、梨華ちゃんが怒っていた。
「帰ろうよ」
「梨華ちゃん・・・」
「・・・そこのあなた、言っときますけど私はあなたのチームなんかに
入りません!絶対に絶対に入りませんから!」
梨華ちゃんがはっきりと言った。ちょっとびっくりした。
「手強いですね、・・・・よっすぃー?」
「まぁね」
「私、昨日言った『気に入った』って言葉、本当ですから」
「!?よっすぃー、どうゆう事!?」
「だから、諦めません。いいでしょ?」
・・・・・・怖い。
隣の人が怖いです。
- 285 名前:New 投稿日:2002年12月13日(金)18時38分10秒
- 「聞きたいことがひとつ・・・ふたつあるけどいいですか?」
私は微笑みながら言った。
「どうぞ」
「まずひとつ、あなたのリーダーの名前、教えてくれませんか?」
「・・・平家さんです」
「ふたつ・・・後悔しませんか?」
「───しません」
松浦さんは満面の笑みでそう答えた。
私は隣にいる梨華ちゃんと後ろにいる安倍さん、飯田さん、ごっちんを
見て「出ましょう」と言った。
松浦さんは何も言わず、私達を見送っていた。
ホテルから出て、飯田さんが私の名前を呼んだ。
「吉澤!あんたねー、一体どんだけ心配したか知ってるのぉ!?」
いきなり飯田さんは怒っていた。
「そうだべさ!あんな手紙残して!」
安倍さんも同じく。
「よっすぃー・・・何かいなくなっちゃいそうだったよ・・・」
梨華ちゃんが今にも泣き出しそうだ。
「・・・よっすぃー?」
ごっちんがいつになく穏やかな口調で言った。
「よっすぃーはさ、独りじゃないんだよ?仲間がいるんだよ。
何でもかんでも独りで背負い込まないでよ」
ごっちんは笑顔で私を見ていた。
- 286 名前:New 投稿日:2002年12月13日(金)18時42分37秒
- 独りじゃないんだよ?───・・・・・。
あぁ、そうか。
忘れてたよ。
全部独りでやろうと思ってた。
けど、私の周りには仲間がいた。
一緒に戦ってくれる仲間が。
いるんだ。
ありがとう、みんな。
梨華ちゃんを守る事しか見えてなかったんだね。
今、やっと気付いた。
これからも、一緒に戦ってくれますか?
- 287 名前:New 投稿日:2002年12月13日(金)18時50分51秒
- 「よし!せっかく北海道来たんだし!旅行して行こうよ!」
「ちょ、圭織!?圭織まだ仕事残ってるっしょ!?」
「いいの、大丈夫。吉澤が手伝ってくれるみたいだし?」
「え〜!?マジ?」
「もぉ〜・・・リーダーがこんなで大丈夫かなぁ・・・」
「なっち、気にしない、気にしない。さて、カニ食べ行こう〜」
「ごっちんはそればっかだね」
「あの〜・・・・」
「何?梨華ちゃん」
「・・・・私、一緒にいていいんですか?」
梨華ちゃんはとても不安そうな顔で聞いてきた。
「だって・・・私、なんか狙われてるし・・・みんなに迷惑かけちゃうし・・」
「何言ってんの!梨華ちゃんは大切な仲間!今更、チーム辞める
なんてこのリーダーが許さないよ!」
「そうそう、大丈夫だべさ」
「ねぇー、早く行こうよ。おなかすいたぁ〜」
安倍さんと飯田さん、ごっちんは歩き出した。
梨華ちゃんはもう泣いていて、私は梨華ちゃんに手を差し伸べて、
「梨華ちゃん、行こう!」
と元気よく言った。
- 288 名前:New 投稿日:2002年12月13日(金)22時02分28秒
- 第13章 『楽しい時間』
そして、私達は温泉の旅館に一泊する事になった。
大きな畳の部屋に通されて、みんなのんびり過ごしていた。
もうすぐお昼になるだろう。
「・・・あ、裕ちゃん?うん・・・あのね、こっちで一泊して
帰るから・・・うん、大丈夫。ビル閉めちゃっていいよ。
うん、ごめんね・・・ありがと、じゃね」
飯田さんが携帯で東京にいる中澤さんに電話していた。
ピッと切る音が聞こえた。
「あ〜畳いいねぇ〜・・・・」
ごっちんが畳の上でごろごろしていた。
安倍さんと梨華ちゃんはお茶を飲んでいた。私は窓から
外を眺めていた。とても綺麗で、すぐそこには川が流れていた。
「露天風呂あるらしいべさ」
「いいですね」
「星とか見えるかな〜」
ここの温泉旅館のマニュアルを見ながら、みんな楽しそうだ。
止める・・・か。
私は支配しようとしている人を止められるだろうか。
いつか、また梨華ちゃんは狙われるだろう。
・・・・不安、だ。
- 289 名前:New 投稿日:2002年12月13日(金)22時13分13秒
- 「よっすぃー、ラーメン食べに行こう!」
「わーい、ラーメン♪」
・・・・ま、みんないるし。大丈夫かな。
「やっぱ、ラーメンは味噌ですね」
「よっすぃー!ラーメンは塩だよ」
「圭織、味噌だよ」
「私は醤油かな〜」
「味噌が好きです」
ラーメンの話をしながら私達は歩き出した。
歩いている途中に見つけた小さなラーメン屋さんを見つけて
そこでお昼にした。
「味噌3つに、塩1つ、醤油1つですね、かしこまりました」
「わぁーい、ラーメン」
ごっちんが割り箸を持ちながらはしゃいでいた。
それからラーメンが運び込まれてみんなで食べ始めた。
結構、おいしかった。
- 290 名前:New 投稿日:2002年12月13日(金)22時20分58秒
- なんだか・・・上手く書けなくて(焦)。
そろそろ梨華ちゃんが本当に危険な目にあいます。
・・・ラーメンは私は味噌が好きです(笑)。
では。
- 291 名前:New 投稿日:2002年12月14日(土)17時34分11秒
- それから色々遊んで、旅館に帰って来た時刻はもうすぐ
午後5時をまわろうとしていた。
みんなくたくたになって、しばらく部屋でくつろいでいた。
「もぉ〜動けない・・・」
「そりゃ、あんだけはしゃげばね・・・」
私は畳の上に大の字になって寝ていた。
「よし!露天風呂行こうよ〜」
飯田さんが元気よく立ち上がって言った。
そしたら安倍さんもごっちんものり気で「行く行く!」と言った。
え〜・・・疲れたよぉ。
私はかなり疲れていて、くたくたと言うよりはぐったりと
いった感じだ。
「さぁ!よっすぃー、行くよ」
「私はいいですから・・・みんな行って来て下さい」
「えー!何で〜?」
「疲れたの・・・」
私は目を閉じたままみんなに言っていた。
とにかくもう動きたくなかった。
「わかったよ〜、じゃ、私ら入ってくるね!」
安倍さんが私に言うと同時に私は片手を上げて「いってらっしゃい」
と言った。
- 292 名前:New 投稿日:2002年12月14日(土)17時41分44秒
- ・・・あれ?
・・・梨華ちゃんは?
私はさっきから梨華ちゃんの声がしないのに気付いた。
むくっと上半身だけ起こすと。
「きゃぁ!!」
と梨華ちゃんの悲鳴が聞こえて、見ると梨華ちゃんは隣にいた。
「何してんの・・・露天風呂は?」
「よっすぃーの顔見てた・・・よっすぃーが心配だったから・・・」
梨華ちゃんは正座をして下を向いて言った。
・・・そっか、心配してくれたんだ。
私は笑って、梨華ちゃんを抱き寄せた。
「よ、よっすぃー?」
「・・・ありがと」
「うん・・・」
それからしばらく抱き合って、お互いの存在を感じていた。
あぁ、やっぱ好きなんだなぁ。
私は心底、梨華ちゃんが自分にとってものすごく大切なんだって
改めて感じていた。
「ねぇ、よっすぃー」
「ん?何?」
「あの人とは何でもないんだよね・・・?」
あの人?あぁ・・・松浦さんの事か。
「別に何でもないよ」
確かに、抱きしめたりはしたけどそれは友達とかそうゆう感じで
恋愛感情は持っていない。
- 293 名前:New 投稿日:2002年12月14日(土)17時52分28秒
- 「・・・梨華ちゃん?」
私は梨華ちゃんが黙りこくっていたのでちょっと話して
梨華ちゃんの顔を覗き込んだ。
「・・・じゃぁ、何でいつもと違う匂いがするの?
よっすぃーの匂いじゃない、他の人の匂い・・・・」
え?あぁ・・・なんだ、そーゆー事か。
「大丈夫、梨華ちゃんの匂いを今からつけるから」
そう笑顔で言って、さっきよりも強く抱きしめた。
梨華ちゃんも抱きしめ返してくれた。
そして、どちらからともなくキスをした。
午後6時30分ぐらいに飯田さん達が帰って来た。
私と梨華ちゃんは夕食が終わったら露天風呂に行こうとした。
「あ〜、おなかすいたー」
「なっち、あんなに食べたじゃない」
「お風呂であんだけはしゃげばおなかもすくよ」
ごっちんが私の後ろに来て、いきなり抱きしめられた。
「なんかあった?」
私にだけしか聞こえない声でごっちんは言った。
「え?何が?」
「だからー、梨華ちゃんと何かあった?」
「べ、別に、何も、ないよ」
「あやしい〜、絶対あったでしょ。キスはもうした?」
「ご、ごっちん!」
私はごっちんを無理矢理離した。
するとごっちんはすぐに逃げて行った。
・・・・お見通しかよ・・・。
- 294 名前:New 投稿日:2002年12月16日(月)17時34分48秒
- <松浦視点>
───後悔しませんか?
どうだろう。
あの時はとっさに出てしまった言葉。
『しません』
・・・・わからない。
美貴ちゃん、何で死んじゃったの?
悲しいよ・・・・。
嫌だよ・・・・・。
私は、どうしたらいいの?
このまま命令通りに動けばいいの?
でも・・・よっすぃーは言った。
『支配』
あの人が本当にそれをしようとしてるの?
ねぇ・・・教えてよ。
───教えてよ、美貴ちゃん。
- 295 名前:New 投稿日:2002年12月16日(月)20時41分49秒
- よっすぃーと仲間のみなさんが部屋から出た後、私は
なんだかむしょうに熱い物が込み上げてきて、思いっきり泣いた。
何の為に涙を流しているのかはわからない。
この涙の理由は私は知らない。
ただ涙は頬を伝う。
「うっ・・・ひく・・・」
私は今まで、泣く事は許されないと思ってた。
どんなに辛い事があっても、悲しい事があっても。
絶対泣かないって決めてた。
それは美貴ちゃんが隣にいたから。
だから頑張れた。
でも私の隣にはもう美貴ちゃんはいない。
私は、限界だったのかもしれない。
昨日、よっすぃーに言われて、やっと泣く事が出来た。
その涙は、きっと美貴ちゃんの為のもの。
「・・・・美貴ちゃん・・・」
今は何で泣いてるのかわからない。
心にポッカリ穴があいたようだった。
- 296 名前:New 投稿日:2002年12月16日(月)20時50分09秒
- <よっすぃー視点>
夕食をすませて、私と梨華ちゃんは露天風呂へ向かい、
他の3人は部屋でくつろいでいた。
「わぁー、広い〜」
人は私と梨華ちゃんだけだった。
私はさっさと服を脱いで、入っていった。梨華ちゃんは中々恥ずかしがって
来なかった。
とりあえず、髪と体を洗って、お湯の中へ。
「わぁ〜、気持ちいね〜」
梨華ちゃんも早く来ればいいのに。
すると梨華ちゃんがやっとやって来た。髪と体を洗って、
私のもとへ来た。
「はいんなよ〜?」
「う、うん」
梨華ちゃんは何かギクシャクした感じで、面白かった。
それから、外にある露天風呂に入った。
夜空を見上げると、星がとても綺麗で2人共見惚れていた。
ものすごい数の星が輝いていた。
「綺麗だね・・・」
「うん・・・」
またこうやって見れるかな?
梨華ちゃん、どう思う?
きっと笑顔であなたは言うだろうな。
『きっと、見れるよ』
ってね。
- 297 名前:New 投稿日:2002年12月16日(月)20時59分36秒
- 部屋に戻った時間はもう9時ぐらいだった。
部屋に戻ると修学旅行みたく、布団がしかれていた。
綺麗に5つの布団が横に並べられていて、奥の方からごっちん、
飯田さん、安倍さんがもう既に寝転んでいた。
ごっちんは布団に入って、もう夢の中にいってるみたいだ。
「2人共〜おかえり〜」
「長かったねー、星見えた?」
安倍さんが起き上がって言った。
「はい、すごく綺麗でしたよ」
私は部屋に備え付けられている冷蔵庫からジュースを取り出して
飲んだ。
ちなみにみんな部屋にあった浴衣を着ていて、私だけジャージを
着ていた。
安倍さんの隣の布団に梨華ちゃん、その隣が私になった。
それから今日の出来事を話していた。
私は藤本さんの話をした。
- 298 名前:New 投稿日:2002年12月16日(月)21時11分40秒
- 「・・・藤本さんと松浦さんのチーム『シャル』のリーダー、
平家という人はこの『力』の世界を支配しようとしています・・・。
私は藤本さんにその人を止めてと頼まれました。しかもその人は
梨華ちゃんをも狙っている・・・」
「そうだったんだ・・・・」
「なんか、悲しいね」
私達の持っている『力』は悲しいモノなのかもしれない。
でもそれは悪事に使ってはいけない。
どんな事があろうとも悪事には使ってはいけないんだ。
誰かを守る為に使うんだ。
何かを守る為に使うんだ。
「さ、もう寝よっか?」
飯田さんが電気を消して、私達は眠った。
- 299 名前:New 投稿日:2002年12月16日(月)21時24分16秒
- 私は夜中にふと目が覚めた。
時計を見ると、AM2:00だった。
私はそっと起き上がって、部屋から出た。冷え切った廊下を
歩いて非常階段の方へ行った。
階段に座って、はぁーとため息をつく。
「・・・・・ふぅ」
「眠れないの?」
「うわっ!?ご、ごっちん!!?」
いつの間にか後ろにごっちんがいた。
ごっちんは私の隣に座った。
「全部、聞いてたよ。藤本さんの話」
「え・・・寝てたんじゃなかったのか」
少し微笑むごっちんは綺麗だった。窓から差し込む月の明かり
がごっちんを照らしていた。
「よっすぃー」
「ん?」
「・・・・」
「え?あ、ごっちん?」
ごっちんは私の肩によっかかって来た。
「こーしてると、何か、安心する・・・」
「ごっちん・・・・」
私はただごっちんに肩を貸していた。
- 300 名前:New 投稿日:2002年12月16日(月)21時31分59秒
- ごっちんは普段、冷静で、適当で。
誰かに甘える事はしなかった。怒る時は静かに怒ってて睨み付ける。
今のごっちんは今まで見た事がなかった。
安心して目を閉じてるごっちん。
私はとても心が落ち着く。
「・・・・よっすぃーは」
「ん?」
「よっすぃーは死んじゃダメだよ」
「・・・?」
「私は・・・生きてて欲しいから」
「ごっちん、ごめんね、心配かけて」
「梨華ちゃんはよっすぃーが守んなきゃね」
「うん、・・・・」
「(よっすぃーが守るべき人は梨華ちゃんなんだ。私は1人でも
大丈夫・・・・)」
私はいつの間にか涙を流しているごっちんを見て、
驚いたけど何で泣いてるのかは聞かなかった。
そして優しく、ごっちんの肩を抱いた。
私はごっちんのような親友を持てて、とても幸せだよ。
- 301 名前:New 投稿日:2002年12月16日(月)21時40分13秒
- 私とごっちんはしばらく階段にいて、数分後部屋に戻った。
「よっすぃー、ありがと」
「ううん、いいよ」
暗闇の中、小さな声で会話をする。そしてそれぞれの布団へ入った。
・・・・!?
なんと、私の布団に梨華ちゃんが寝ていた。
・・・どーしたんだろ・・・?
「・・・ん?よっすぃー?」
「あぁ、ごめん起こしちゃったね」
「一緒に・・・寝よ・・?」
「うん、いいよ」
私はそっと梨華ちゃんの隣に横になった。
梨華ちゃんはさっきのごっちんのような安心した表情だった。
私は梨華ちゃんの髪をなでて、梨華ちゃんは私に抱きついていて。
そのまま、眠った。
- 302 名前:New 投稿日:2002年12月17日(火)14時11分25秒
- 翌朝、ごっちんはいつも通りだった。
やっぱり、寝起きは悪い。昨日の涙なんか嘘のように
冷静で、ホントいつものごっちんだ。
まぁ・・・大丈夫かなぁ。何かあれば言ってくるだろうし。
私は自分を納得させた。
飛行機で東京へ帰る。
中澤さん達にお詫びのお土産をたくさん持って。
「・・・・」
私は松浦さんがあの後どーなったのか気になっていた。
最後に見た表情が笑顔だったけれどとても悲しそうに見えた。
だけど、これ以上自分はどうしてやる事も出来ない。
それは敵同士だから、だ。
「なんやねん!吉澤ぁ!あんたなぁ、ちゃんと報告してから
行きーや!ったく、どんだけ心配した事か・・・・」
「あ〜ごめんなさい、ホント迷惑かけました」
私はビルに帰ったとたん、中澤さんの説教をくらっていた。
飯田さんの話より長いから困ったもんだ。
「・・・わかったか?」
「あぁ、はい。十分わかりました」
「なら、よし!っでお土産は?」
中澤さんは北海道のお土産に目がいった。
- 303 名前:New 投稿日:2002年12月17日(火)14時26分30秒
- 第14章 『現実になった悪夢』
この日からまた仕事付けの毎日に変わった。
最近、うちのチームの強さを聞きつけたのかやたらと
依頼が多かった。なのに、私達はのほほんと旅行をしていた。
だから、すごく忙しい・・・。
飯田「よっすぃー!ちょっとこれやって!」
吉澤「あ!はい、わかりました」
安倍「圭織、依頼が来たから行ってくるね」
飯田「うん、行ってらっしゃい」
後藤「よっすぃー、この書類間違ってない?」
吉澤「ん?あー!ホントだ、やっべー。サンキューごっちん」
小川「後藤さん、電話です」
後藤「わかった、まわして」
もう、みんな大忙し。
梨華ちゃんも頑張っていた。
────で、仕事が終わったのは午後9時。
っていっても全部は終わってはないんだ、今日の仕事はひとまず
ここまで。
「腹減ったぁ〜」
私はソファに倒れこんだ。ごっちんも向かい側のソファで
同じ事をしていた。
「みんな、お疲れ様〜、じゃぁ、今日はみんな頑張ったという事で
焼肉に行こう〜!」
飯田さんが言った。
「マジー?やったぁ」
ごっちんが目を輝かせながらソファから起きた。
そして私達は近くにある焼肉屋さんで夕食にした。
- 304 名前:New 投稿日:2002年12月17日(火)21時37分53秒
- 飯田さんがお酒を頼むと珍しく安倍さんもお酒を頼んだ。
当然のごとく、未成年なのにごっちんも私もお酒を頼んだ。
小川と紺野はもう夜遅いので帰った。
「梨華ちゃんも飲む?」
私は隣に座っている梨華ちゃんにお酒のメニューを見せた。
「え・・・私、飲んだ事ないし・・・それにまだ二十歳じゃないし・・」
「んー、まぁ、そうなんだけどさ。じゃ、私の半分こしようか」
それから注文されたお酒がきて、私は少し飲んでから梨華ちゃんに
グラスを渡した。最初は拒んでいた梨華ちゃんもついには少しだけ
飲み始めた。
見ると、安倍さんはもうすでに顔を赤くしていた。
飯田さんとごっちんはお酒が強いので楽しく飲み比べしてた。
私はどちらかというとお酒は強い方だ。
「・・・ん?あ、梨華ちゃん?」
「ん〜、なんか、あったかい・・・」
梨華ちゃんはお酒は弱いみたいだ。
目がトロンとしていて、顔が赤い。よっすぃーやばいっす。
「よっすぃーもっと飲め!」
飯田さんが次々と私にお酒を勧める。今日はいつもより飲んでる量が
多い。明日の仕事に響かなきゃいいけど。
- 305 名前:New 投稿日:2002年12月17日(火)21時46分37秒
- 夜10時をまわり、お店を出た。
安倍さんはもう眠りに入ってるし、ごっちんは意味もなく
何か笑ってて怖いし、この2人は飯田さんに預けて私は
ふらふらしてる梨華ちゃんを連れて、今日は私の家へ帰った。
途中コンビニに寄って、色々買った。
家に帰って、梨華ちゃんを自分のベットへ寝かした。
私はリビングのソファに座って、テレビを見ながらさっきコンビニ
で買ってきた音楽雑誌や、マンガをパラパラと見ていた。
それからお風呂に入って、明日の予定をチェックし、歯をみがいた。
「さて・・・寝るか」
ソファで寝るのだが、梨華ちゃんが気になって自分の部屋に行った。
見ると梨華ちゃんは気持ちよさそうに寝ていた。
私はそれを見て、部屋を出て、ソファで眠りについた。
- 306 名前:New 投稿日:2002年12月18日(水)14時20分02秒
- ───ん?
またこの夢か・・・・。
<気を抜いちゃダメです>
なんだよ?気なんか抜いてない。
<近いうち適は現れます>
・・・・。
<お願いです、お姉ちゃんを守って下さい・・・>
私は暗闇の中、1人の女の子を見つけた。
多分、その子がさっきから聞こえる声の主だろう。
とても悲しそうな顔だ。
<私は・・・もうダメだから>
何言ってるの?
<もう、私はお姉ちゃんのそばにはいられないから>
・・・・・。
<だから、最後にあなたに頼んでいるんです>
<約束して下さい、お姉ちゃんを守ると>
・・・・わかってるよ。約束だ。
私がそう答えるとその子はにっこり笑って消えていった。
そーいえば・・・梨華ちゃんの妹ってアメリカで手術うけてんだよなぁ・・・。
ダメって・・・死ぬって事?
まさか・・・。
そこで私は夢から覚めた。
- 307 名前:New 投稿日:2002年12月18日(水)14時29分55秒
- 時計を見ると朝の7時だった。
私は梨華ちゃんを起こしに部屋へ行った。
「梨華ちゃ〜ん、起きてー、朝だよ」
「ん〜・・・いたっ・・・頭が痛いよぉー、よっすぃー」
「昨日、飲んだからね。二日酔いだね」
梨華ちゃんは辛そうに起き上がって、私は梨華ちゃんを支えた。
「あのさ・・・梨華ちゃんの妹ってさ」
「え?あぁ、写真あるよ、えっと・・・」
自分のカバンを開けて、梨華ちゃんは写真を1枚取り出した。
「これ、私の妹の亜依」
見せてもらった写真は梨華ちゃんと妹さんが写っていた。
・・・同じだ。
私は夢で見た子と写真の子が同じなのを確認した。
そんな・・・、この子はもう生きられないの・・?
「生まれつき身体弱くて、心臓が特にね・・・今頃どーしてるかなぁ」
梨華ちゃんは写真をニコニコしながら見ていた。
私の心は痛かった。
私は知っている、この子はもう生きられないんだと。
でも・・・まだ事実ではない。
夢であって欲しい、妹さんが死ぬのも、梨華ちゃんが連れ去られるのも。
- 308 名前:New 投稿日:2002年12月18日(水)14時37分47秒
- 「梨華ちゃん、頭痛くないの?」
「え?・・・あ、思い出したら・・痛い・・・」
「水持ってくるね」
私は部屋から出て台所に行った。
・・・・もし、本当なら、真実なら、今日連絡が入るかな・・・。
グラスに水を注ぎながら考えていたら、もう少しでグラスから水が
溢れ出しそうになった。
支度をして、家を出て、ビルへ向かう。
「今日も忙しいんだろうね」
「そうだねー、でもいい事だよ」
仲良く手を繋いで歩く。
私は梨華ちゃんの笑顔を見る度心が痛くて。
だって・・・きっと悲しむよ、絶対に。
大事な妹を失ったりしたら・・・。
「おはよーございます」
「おはようございます」
「お、2人共早いねぇ」
飯田さんが既にもう来ていた。
2つのソファには安倍さんとごっちんが占領してた。
どうやら2人共、二日酔いらしい。
梨華ちゃんは薬飲んだら良くなったけど。
「もぉ・・・飲みたくないべさ・・・」
「私も・・・・」
弱々しい2人の声が聞こえた。
- 309 名前:New 投稿日:2002年12月18日(水)14時39分16秒
- これからパソコンが使えるかわからないので更新は当分
ありません。ごめんなさい。
でも放置は絶対しません。なるべく早く復帰したいと思います。
では。
- 310 名前:New 投稿日:2002年12月21日(土)18時04分52秒
- 復帰しました。もし、読んで下さっている方がいるのなら、
大変お待たせしました。更新します。
- 311 名前:New 投稿日:2002年12月21日(土)18時15分49秒
- 私は普通に仕事をこなしていた。
そりゃ、夢の事は気になる。だけど、所詮、夢だ。
だから、信じない事にした。いや、信じたくないんだ。
それでいい。
絶対、そんな事ないって。
自分にずっと言い聞かせた。
プルルルル!
電話が鳴るたびに反応しちゃうんだけど。
それは、仕方なくて。
「はい、『マテリア』です」
小川が対応している。
「え・・?あ、しばらくお待ちください」
受話器を離して、小川は梨華ちゃんを見た。
え・・?まさか・・・まさか・・・。
「石川さん、電話です」
「あ、お父さん?」
「はい、そうです」
「何だろ・・・・」
梨華ちゃんは小川から受話器を受け取った。
「もしもし?お父さん、どうしたの・・?」
それからしばらくして、梨華ちゃんの瞳から涙が溢れた。
「・・・なんで・・?嫌だよぉ・・・」
梨華ちゃんは力なく電話を切った。
「梨華ちゃん!?どうしたべさ?」
安倍さんが駆け寄り、梨華ちゃんの顔を覗き込んだ。
「亜依が・・・妹が・・・死んだって・・・」
「え・・?」
事務室が静まりかえった。
- 312 名前:New 投稿日:2002年12月21日(土)18時25分00秒
- とりあえず仕事は一旦打ち切り、みんなで休憩室にいた。
梨華ちゃんの妹、亜依ちゃんは手術には成功したが体力が
弱まり、亡くなったそうだ。
梨華ちゃんは泣きながら話していた。
みんな何も言えなかった、かける言葉が見つからなかった。
飯田さんがみんなに「今は1人にさせてあげよ」と小さく言い、
出て行った。安倍さん、小川、紺野は飯田さんの後をついって行った。
私は中々、動けずにいた。ただ突っ立ってるだけだった。
梨華ちゃんは声を殺して泣いていた。私はたまらなく梨華ちゃんの
そばまで行って、抱きしめた。
「思いっきり泣きなよ・・・私はそばにいるから」
「・・・ひっく・・・」
梨華ちゃんは声を上げて泣いた。私はしっかり抱きしめた。
・・・本当になった・・・。
本当の夢なんだ、現実の夢なんだ。
じゃぁ、次に何が起こる?
───梨華ちゃんが危ない。
- 313 名前:New 投稿日:2002年12月23日(月)00時12分51秒
- 梨華ちゃんはもう仕事が出来ない状況にあったので、中断し
部屋に帰った。私も飯田さんから「石川のそばについててあげて」と
言われ、梨華ちゃんと共に部屋へ帰る。
梨華ちゃんは泣き止んだけど、しゃべらなかった。
私は最初は何も言わなかったけど、梨華ちゃんに話しかけた。
・・・・返事はないけど。
「何か飲む?買って来ようか?」
私はコンビニに行って来ようと立ち上がって「何が飲みたい?」
と梨華ちゃんに聞こうとした。
やっぱり何も返事はなくて、私は諦めて部屋から出ようとした。
・・・お茶かなんかがいいかな・・・。
ドアノブに手をかけた時。
後ろから抱きつかれた。
「り、梨華ちゃん?」
「・・・いかないで・・・離れていかないで・・・お願い・・・・」
梨華ちゃんは強く私を後ろから抱きしめていた。
切ない梨華ちゃんの声は私の心を切なくさせた。
私は振り返って、梨華ちゃんを抱きしめた。
- 314 名前:New 投稿日:2002年12月23日(月)00時24分19秒
- 「大丈夫、何処にも行かないよ」
「よっすぃー・・・・」
優しく、笑顔で私は梨華ちゃんを見つめた。
次第に梨華ちゃんの顔が穏やかになっていった。
それから、梨華ちゃんは当分の間、仕事を休んでいた。
私はさすがに休めないのでちゃんと仕事していた。
でも、仕事が終わったら梨華ちゃんの部屋に行き、そばにいてあげた。
毎晩、一緒に寝る。梨華ちゃんが眠りにつくまで髪をなでる。
梨華ちゃんが不安にならないように。
梨華ちゃんが泣かないように。
「ふぁぁぁ〜・・・」
「あくび多いね」
「うるさいよ、ごっちん」
「や、冗談事じゃなくてさ。ホント多いよ?ちゃんと寝てる?」
「寝てるよー、でも熟睡はしてないかな・・・」
「そうなの?なんで?」
隣にごっちんが寄ってきた。
「んー、梨華ちゃんが寝付くまで起きてるからかなぁ」
私は眠そうに目をこすりながら答えた。
すると、紺野が気をきかせてコーヒーを出してくれた。
「・・・でもさ、それじゃよっすぃー辛いじゃん」
「そうでもないよ、梨華ちゃん不安にさせたくないし」
コーヒーを飲む、すると眠りがちょっと遠のいたようだ。
「さ、仕事開始!」
そう言って、コンピューター画面を見た。
- 315 名前:New 投稿日:2002年12月23日(月)00時34分07秒
- 第15章 『初めて知った気持ち』
<ごっちん視点>
・・・よっすぃー、このままじゃ身体が壊れちゃうよ。
いつもよっすぃーは梨華ちゃんを1番に考えてる。
でも・・・自分の事も考えなきゃダメだよ。
他人ばっか気にかけてたら、いつか自分が辛くなるんだよ。
私は、よっすぃーが心配だよ。
「吉澤〜、あの資料出来てる?」
「あぁ、出来てますよ。はい、飯田さん」
「ありがとう」
「よっすぃー、なっちのファイル知ってるだべか?」
「あぁ、それならさっきそこにありましたよ」
「あ!あった、ありがとだべさ〜。良かったぁ」
よっすぃーは頼りにされてるから、何でも引き受けちゃう。
そこも、好きなんだけど。
何より、優しいんだよね。
だから、自分の事が見えなくなるんだよね。
「よっすぃー、何か手伝う事ある?私、ひと区切りできたから」
「お、助かる〜。じゃ、これ頼む」
「おっけぇ〜」
よっすぃーの為に出来る事はこれぐらいしかなかった。
他に何も見つかんない。
- 316 名前:New 投稿日:2002年12月23日(月)00時39分13秒
- 「ねぇ、よっすぃーちょっと寝てきなよ」
さっきからよっすぃーはふらふらしてた。
「大丈夫、まだあるし」
よっすぃーは笑顔でそう言う。その度に私は不安にさせられるばかりだ。
「私やるし、身体がもたないよ?」
「・・・ん、わかった。ごめんね、ちょっと休んでくる」
よっすぃーはやっと私の心配に気づいたのか、立ち上がって休憩室へ。
私は自分の仕事もあったけど、よっすぃーの分も全部頑張ってやった。
- 317 名前:New 投稿日:2002年12月23日(月)13時20分01秒
- <よっすぃー視点>
ごっちんがかなり心配してるみたいだから、お言葉に甘えて私は
少し休憩を取る事に。休憩室のソファに倒れこんで眠りにつこうとした。
・・・まぁ、そぉいや最近梨華ちゃんの事ばっか考えてる。
だから、自分の身体の事なんか全然気にしてなかった。
「・・・めちゃくちゃねみぃー・・・・」
私は深い眠りについた。
「・・・ん?あ、やべ!寝すぎた!?」
気が付くともう午後の4時。1時間だけ寝ようとしたら
6時間も寝てた。私は飛び起きて急いで休憩室を出た。
そこにはごっちんしかいなかった。
「あ、ごっちん。ごめん、寝すぎた」
私はごっちんの後姿にお辞儀をした。するとごっちんはイスに座ったまま
くるっと振り返った。
「いいよ、疲れてたみたいだし。仕事、やっといたから」
「・・・マジ?ごめんね、ありがと」
ごっちんは立ち上がって、コーヒーを入れに行った。
私のカップにコーヒーを注いで、渡してくれた。
「はい、コーヒー」
「ありがと」
「もう、よっすぃーは頑張りすぎなんだよ」
ごっちんはため息をつきながら言った。
- 318 名前:New 投稿日:2002年12月23日(月)13時33分49秒
- ・・・はは、何も言い返せないや。
私は苦笑いしながらコーヒーを飲んだ。
冬は陽が落ちるのが早いから、もう空はオレンジ色に染まりつつあった。
窓から夕日が差し込んでごっちんと私を照らしていた。
「・・・ねぇ、もっとさぁー、何ていうか・・・自分も大切にしなよ?」
「わかってるよ、でも今は梨華ちゃんが」
「だからって!だからって・・・よっすぃーが倒れたらどうすんの・・・」
「や、それは大丈夫、私は倒れない」
「そんなの!そんなん、無理だよ」
「なんでごっちんがそんな事言うのさ、大丈夫っつーんだから
大丈夫なんだよ」
私はちょっと声を強めで言ってしまった。
「よっすぃーの大丈夫はあてになんない!」
「はぁ!?本人がそう言ってんだからいいじゃん!」
「でも!限界っていうもんがあるんだよ!?」
「限界?そんなピーク越せばどうってことない」
「そんなの絶対無理!」
「ごっちんなんかにわかんないよ!」
「わかるもん!」
2人の怒鳴り声は事務室に空しく響く。
「あんた達、うるさいよー、すぐそこまで聞こえてるよ」
飯田さんが仕事から帰って来た。
私とごっちんは黙り込んだ。
- 319 名前:New 投稿日:2002年12月23日(月)13時48分37秒
- 「珍しいね、よっすぃーとごっちんが喧嘩なんて」
飯田さんはそれを言うと「じゃね〜」と帰っていった。
沈黙が流れる。
「・・・ごめん」
私はため息をつきながら言い、ごっちんに背を向けた。
「・・・何でさ、そんな私に気にかけるの?」
窓を開けて、外の空気を吸いながら聞いた。
ごっちんは黙ったままだった。
「・・・だってさ、前はそんなの自業自得だぁーとか言ってたじゃん」
空の夕焼けが綺麗だった。鳥が何羽か飛んでいた。
「ごっちん・・・変わったね。前より、優しくなった・・・・
や、前も優しかったよ?でも、何ていうか・・・・・・・」
私は一人であたふたしていた。
「・・・優しくなったのは、よっすぃーのおかげだよ」
「え?」
私は振り返ると、ごっちんは泣いていた。
「私・・・よっすぃーに会った頃は、そんな笑わなかったし
みんないたけど・・・いつも一人でいようとした。
でも、よっすぃーはそんな私のそばにずっといてくれた!
返事さえもしない私にずっと笑いかけてくれた!
私は・・・いつの間にかによっすぃーが好きになってた。
だから、心配なんだよぉ・・・」
- 320 名前:New 投稿日:2002年12月23日(月)13時58分13秒
- こんなにも泣き崩れるごっちんを私は今まで見たことがなかった。
「ごっちん・・・」
初めて知ったごっちんの気持ち。
最初にごっちんに会った時、ごっちんはホント無愛想で。
それでも私はごっちんに話しかけていた。
すると、ごっちんはよく笑うようになっていった。
私はすごく嬉しかった。
「・・・・よっすぃー・・・わかってる、よっすぃーが
好きなのは梨華ちゃんなのに・・・ずるいよね・・・私」
「・・・ずるくないよ・・・ごっちん」
私はごっちんを見て言った。
「私、ごっちんの気持ちなんか知らないでひどい事言ったね」
ごっちんは走って私に抱きついてきた。
「ダメかなぁ・・・?私はダメ・・・?」
「ごっちん・・・・」
私は「1日だけ考えさせて」と言って、事務室を出て行った。
- 321 名前:New 投稿日:2002年12月23日(月)15時02分28秒
- はぁ、まさかごっちんが私を好きだなんて・・・。
「ただいまー」
梨華ちゃんの部屋に帰る、挨拶は「ただいま」と決まっていた。
「おかえり、疲れた?」
「ううん、大丈夫」
私は梨華ちゃんに軽くキスして、にっこり微笑んだ。
いつもの習慣だ。
「私ね、そろそろ出ようかと思ってるの」
梨華ちゃんはお茶を用意しながら私に言った。
「え?大丈夫?」
私はのんきにテレビを見ながら言った。
「だって、いつまでも休んでたらダメじゃない」
「でも・・・」
「大丈夫、亜依の事はちゃんと受け止めてる。私がこんな暗かったら
亜依、悲しむと思うから」
「そっか、でも無理しないでね?」
「うん」
ごっちんもこんな気持ちだったのかなぁ・・・。
梨華ちゃんは私が座っているソファの隣に座った。
私は梨華ちゃんの肩に手を回し、自分の方に寄せた。
「梨華ちゃん、好きだよ」
「・・・うん、私も。好き」
ごめん、ごっちん。
やっぱ、梨華ちゃんが好き。
梨華ちゃんが愛しいんだ。
- 322 名前:New 投稿日:2002年12月23日(月)15時40分34秒
- うわ・・・警告。これがお仕置きなんですね。
残りのレスで、この話はちゃんと完結させようと思います。
つまらないと思いますが、私はちゃんと終わらせたいので。
・・・・今思えば、なんであんなバカな事したかと思うと
めちゃくちゃ悔しくてたまらないけど、お仕置きだから。
うわー・・・なんだろ、この気持ちは。
まぁ、それは置いといて。なるべく早く完結させます。
では・・・。
- 323 名前:New 投稿日:2002年12月24日(火)17時36分22秒
- 翌日、梨華ちゃんは仕事復帰、何かやけにはりきってる。
お昼の休憩の時間、私はごっちんを呼び出した。
休憩室には他に人がいるから人が来ない接待室に向かった。
「・・・あのさ、・・・ごめん」
ソファに座ってお互い向かい合った状態。ごっちんは俯いていた。
「・・・わかってたよ」
「へ?」
急にごっちんが顔を上げて、ふにゃっと笑いながら言った。
ごっちんは立ち上がって出ようとした。
「ねぇ」
「ん?」
「・・・これからも親友だよね?」
「・・・あったりまえじゃん!」
「ん、ありがと」
パタン。
ドアが閉まる音が聞こえた。
<ごっちん視点>
わかってたんだけど、やっぱ辛いなぁ。
接待室から出て、はぁ〜とため息をついた。
やばっ・・・・涙が出そうだよ。
「・・・っ・・・」
ちょっとどっかで泣いて来ようかな。
そうすれば、また頑張れる気がするから。
私はそっと気づかれないように事務室を後にした。
- 324 名前:New 投稿日:2002年12月24日(火)17時57分05秒
- 第16章 『さらわれた彼女』
<よっすぃー視点>
ごっちんに返事をしてから数日が過ぎた。
相変わらず毎日忙しい。何も変わらない日常。
そう、私はこの時────夢の事を忘れていた。
あまりにも平和な日常すぎて、幸せすぎて。
あの夢の事が現実になるなんて思わなかった。
でも、それは突然やって来た。
「じゃ、出かけてきます〜!」
私は丁度この日、出張があった。正午の時間ビルを出た。
でも、何か嫌な予感がした。胸騒ぎってやつだ。
ん〜、なんだろ・・・嫌な予感・・・。
私はそれでも、気のせいだと思って仕事に向かったんだ。
今、思えば、何でこの時引き帰して梨華ちゃんのそばにいなかったんだろう?
私は早く仕事が終わったので、それが嬉しくて早足でビルへ帰った。
「ただいま戻りました〜!」
勢いよくドアを開けた。
あれ・・・?いつもなら、「おかえり〜」って・・・。
「・・・・!!?」
みんなが倒れていた。
安倍さんとごっちん、飯田さんが血を流して倒れていた。
事務室内はめちゃくちゃに荒らされていてコンピューターが倒れたてたり
紙がバラバラに散らかっていた。
- 325 名前:New 投稿日:2002年12月24日(火)20時35分11秒
- 私は呆然と立ち尽くしていた。
窓のガラスが割られていて、風が吹き込む。
しばらくそうしていたら誰かの泣き声が聞こえた。
おそるおそる、その声がする方へ向かう、休憩室だ。
ガチャとドアを開け、そ〜っと中を覗いた。
「ひっく・・・ひっく・・・」
「紺野!!?」
そこには紺野が座っていて、小川を抱きかかえて泣いていた。
私はすぐに紺野と小川の方に駆け寄った。
「どうした!?何があった!?」
「吉澤さん・・・ひっ・・・」
紺野は私を見ると更に泣き出した。私は紺野と小川を抱きしめた。
「もう、大丈夫だから。私が来たから・・・」
「・・・まこっちゃんが・・・私をがばって・・・刺されて・・・」
見ると小川の腹部あたりから赤い血が流れていた。
「うん、わかった。紺野はけがないんだね?」
小さく頷く紺野。
「よし、とりあえず。みんなのけがの処置からだ。手伝ってね」
私は紺野から小川を受け取り、抱きかかえて休憩室を出た。
- 326 名前:New 投稿日:2002年12月24日(火)20時52分10秒
- みんなを下の部屋に連れて行った。みんな結構けがしてて
病院に行った方がいいのか迷った。
ここは6階の1番大きい部屋。私は止血をしたり包帯を巻いたりしていた。
紺野は出来るだけ多くタオルを集めたり、熱いお湯を用意したり。
呼吸はある、呼吸の乱れはなく、意識がない。
けがの方もそんなに多く血は出していない。
「おし・・・けがの方はなんとかなったね。あとは目を覚ますのを
待つだけだね」
「はい・・・」
「病院に行くかは様子を見よう・・・それと梨華ちゃんは・・・?」
「・・・吉澤さんが出かけて約1時間後。知らない人がいきなり来て
石川さんを無理矢理引っ張って行きました・・・安倍さん達、戦った
んですけど、・・・ダメでした」
「そっか・・・」
やっぱり行くべきじゃなかった。
仕事だろうが何だろうがそんなの蹴っ飛ばして。
梨華ちゃんのそばにいるべきだった。
護衛として・・・・恋人として失格だ。
────守れなかった。
「ちくしょー・・・・」
「吉澤さん・・・」
私は気づいたら、泣いていた。
- 327 名前:New 投稿日:2002年12月24日(火)21時02分44秒
- ごしごしと涙を拭った。紺野は心配そうに私を見ていた。
「・・・紺野、ここお願いね。私は上の方、片してくるから」
「はい・・・」
私は部屋を出て、エレベーターに乗った。
「ひでーなぁ・・・」
散らかった紙を集め、コンピューターを元の位置に戻し、
ガラスの破片を集めていた。
「・・・いてっ」
ガラスの破片で指を切ってしまった。赤い血が流れた。
・・・こんな痛み、みんなの痛みよりよっぽどマシだよ。
見ると、生々しくみんなの血の跡が残っていた。
私はとりあえず、窓が割れていたのでビニールシートで風が入らない
ようにした。
ほとんど片付け終わった。
「ん・・・?」
私はキラリと光るものを見つけた。
それは指輪だった。私が梨華ちゃんにあげたものだ。
その証拠にR&Yって入っている。
梨華ちゃんは今、どんなに不安だろう?
どんなに怖い思いをしてるんだろう?
・・・待っててね、迎えに行くから。
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