インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板

夏の風物詩 3

1 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)00時36分26秒
『夏の風物詩』3つ目のです。

ここでは本編よりも番外編の方が中心になると思います。
長さは今までよりも短いのでその後は…
無関係の短編でもやれればなかって思ってます。

よろしくお願いします。
2 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)00時37分31秒
   更新
3 名前:安倍なつみ 投稿日:2002年08月28日(水)00時38分23秒

 うぅ〜〜…。



「ゴメンなっち!」
「行くべさ!」


 もぉ、ごっちん遅いっしょ!
 矢口たちの劇、始まっちゃうべさ!

 あれだけ遅れないでって言ったのに
 どうして遅れちゃうんだべ!?



「いちーちゃんが反省会って…」
「もー紗耶香のバカ!!」


 紗耶香とかごっちんはいいよ。
 リハーサルで見ちゃってるんだから。

 でも、一般参加のなっちは見てないの。

 遅れちゃったらどーしてくれんだべ?

4 名前:安倍なつみ 投稿日:2002年08月28日(水)00時39分03秒


 文句言ってるヒマがあったらって。
 なっちとごっちんは走った。

 席はカオがとってくれてる。
 走ればまだ間に合う。

 それだけの条件があれば
 なかなか幸運な方かもしれない。


 この学園の演劇は毎年好評で
 1時間も前に席取りをしてる人もいるくらい。

 座って見れるだけならじゃなくて
 見れるだけでもいい方っしょ。


 だからごっちん。

 見れなかったらそれはそれで
 実は仕方ないですんだりするんだよ?

5 名前:安倍なつみ 投稿日:2002年08月28日(水)00時40分06秒


 でも、なっちは見たいからね?
 わかる?見たいんだからね?


6 名前:安倍なつみ 投稿日:2002年08月28日(水)00時40分55秒


「お、セーフじゃん!」


 …なんで先に来てるのさ。


 開演2分前でギリギリにかけ込んだのに
 目の前にいたのは紗耶香だった。

 ごっちんと一緒にいたはずなのに。
 ごっちんと反省会してたはずなのに。

 どうして紗耶香がいるの。

 なんでちゃっかり座っちゃってるの。


 ぼーぜんとしてたら
 ご丁寧にも説明してくれた。

7 名前:安倍なつみ 投稿日:2002年08月28日(水)00時42分01秒


 実は体育館までの道は最短で2分。
 でも、普通はみんな5分かかる。

 校舎の陰の方に
 通行禁止の渡り廊下がある。

 そこを渡れば2分。
 規定通り渡らないと5分。


 …紗耶香がまもるわけないか。



「んじゃ席は?」
「席?これはねぇ…」


 最後まできく前に
 なっちはもういいよって言った。
8 名前:安倍なつみ 投稿日:2002年08月28日(水)00時42分40秒

 ごっちんと紗耶香は不満そうにしてたけど
 そんなにきかないくてもわかるべさ。

 どーせファンの娘に…。


 紗耶香はズルイべ。


 要領がいいって言えばそれまでだけど
 やっぱりちょっと腹立つよぉ。

 正統派だもん、なっちは。


9 名前:安倍なつみ 投稿日:2002年08月28日(水)00時43分20秒


「よっ、さすが元副会長!」
「紗耶香ー!!」


 ちょっとヒートアップしてきたところで
 体育館の照明が全部落ちた。

 そして、アナウンス。

 よく聞いてた可愛い後輩の声。
 ちょっと高目だけどそれも特徴。


 真っ暗な体育館の中で
 閉じられた緞帳がよく見えない。

 けど、確かにそこにある。
 その後ろにはあの娘たちがいる。


 …頑張れ。



10 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)00時43分52秒
   ★   ★   ★   ★   ★
11 名前:新垣里沙 投稿日:2002年08月28日(水)00時46分52秒

 私は今、舞台の袖で待機中。

 舞台の上では矢口さんと加護ちゃんが
 怪談にはふさわしくないギャグをやってる。



「あははっ!!」
「可愛いぞーー!」


 ほっ…。


 私は時々聞こえてくる笑いに
 かなり安心している。

12 名前:新垣里沙 投稿日:2002年08月28日(水)00時48分15秒

 この演劇をやってるとき
 私は説明不可能の気持ち悪さを持つ。

 それがだんだん不安に変わって
 明らかになったのはつい最近。


 最終打ち合せのとき
 部室の窓にへんな影が映った。

 私意外は誰も気づかなかったみたいだけど。


 それ以来、私は怖かった。

 もしかしてこの演劇は呪いが…とか
 そんな非科学的なことも考えた。

13 名前:新垣里沙 投稿日:2002年08月28日(水)00時49分09秒


 そしてその考えは
 いまでも続いている。

 何故なら…。



「堪忍な、新垣…」
「え…」

14 名前:新垣里沙 投稿日:2002年08月28日(水)00時50分35秒


 不意に目の前が真っ暗になって
 気がついたらさっきまでの不快感はなくなってた。

 演劇を見てもなにも感じない。


 …やっぱり勘違いだったんだ…。


 あ、そんなこと言ってる場合じゃない。

 次、私の出番だ!

15 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)00時51分28秒
   @   @   @   @   @
16 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)00時52分33秒

「みっちゃん…」
「わかってます…」


 舞台袖で青ざめてた新垣を見て
 アタシは危険を感じた。


 すぐに新垣のところへ行って
 悪いけど力を奪った。

 人よりもちょっと強い新垣の力を
 “ヒトガタ”と呼ばれる木片に詰めた。

 そしてそれを封印する。

17 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)00時53分30秒


 これで新垣はもう見ることはない。

 半分透けた人間や
 足だけのハイヒールを。


 新垣にとってよかったんかは知らんけど
 アタシにはこれ意外はできへん。

 それに…。


 今この情況を理解できるやつが多いと
 アタシらはちょっと困る。


18 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)00時54分10秒


「…やっぱり、やぐっちゃんやな…」


 舞台袖に上がってきたみっちゃんが
 舞台上の矢口を見て言う。

 いや、ちゃうな。

 みっちゃんの目は
 矢口ではなく、その背中に注がれてる。

 矢口の背中に乗った
 黒い念を持つ、白い塊に。


 アタシはみっちゃんを
 逆側の舞台袖へ向かわせる。

 クライマックスを迎えている舞台の演技に
 客席だけじゃなくて演劇部員も見入ってる。


 今なら、なんとかできる。

19 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)00時54分46秒


 みっちゃんが見えるようになったら
 2人で呪詛を唱えはじめる。

 しばらくして
 2人同時に意識が途絶える。


 ここからは真剣勝負や。

20 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)00時59分05秒
   終了
21 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)00時59分35秒
明日は長いやつをあげます。
22 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)01時01分05秒
でも案外短いかも知れないですけど。
23 名前:読者 投稿日:2002年08月28日(水)01時55分00秒
更新速度に乾杯!(w
やっと今追いつきました。。。マジで凄い!
しかもつなぎ大好き。後藤に市井にみっちゃんまで(w
最高です。
24 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)17時57分59秒
   更新
25 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)17時59分01秒

 次に視界が開けたとき
 アタシとみっちゃんは浮いてた。

 空気に慣れれんと浮いてると違うで。
 ホンマに宙に浮いてるんや。

 矢口たちが演技してる
 ちょうどその真上くらいにいる。


 これがよく聞く
 幽体離脱っちゅーやつや。

 なかなか難しいんやけど
 アタシとみっちゃんなら問題ない。

26 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)17時59分37秒


 そこから客席の方を見たら
 ごっちんと目が合った。

 呆然としながらパクパクって。
 アホやなぁ、あの娘。



『姐さん、あれ』


 ごっちんとクチパクで話してたら
 みっちゃんにちょっと強引に引っ張られた。

 指差す先を追ったら…。

27 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時00分16秒


 なにしとんねんな。


 他人の大事な人に抱きついて
 意のままにコントロールしようやなんて
 そんなん許されると思ってるんか?

 しかもそれ、アタシのやで?

 とっとと離れてもらいましょうかぁ。


 強制成仏の体勢に入ったら
 突然、舞台の袖から異様な空気。


 なにしたんや…っ!?


28 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時01分06秒



『あそこや!!』


 舞台の袖では何人かが座りこんでる。

 1年生の娘もおれば
 3年生もおる。

 ただ、共通してることがある。


 あの娘らみんな
 劇中の七不思議で死んだ娘や!


 つまりあの霊が親玉で
 他の霊を操って殺そうとしてるってこと。

 周りから見たら
 不思議でしゃーない事態や。



 …七不思議まんまか。


29 名前:七不思議〜6〜 投稿日:2002年08月28日(水)18時01分46秒
    『主役は一人』
30 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時02分43秒


 一口に文化部と言っても
 実はその範囲は多彩である。

 派手なパフォーマンスをする軽音部。
 半端じゃない音量で迫力を出す吹奏楽部。
 キレイなコーラスで魅了する合唱部。

 もちろん音楽系だけではない。

 思わず立ち止まってしまう写真を撮る写真部。
 未来の博士が出るかもしれない科学部。
 時代の最先端を行く服を創作する家庭科部。

 確かにまだまだ文化部はある。

31 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時04分05秒


 しかしどうだろう。

 文化部といえばまず出てくるのは
 なんだろうか。

 物語と聞けば
 思い出すのはなに部であろうか。


 多くの人はきっと演劇部ではないだろうか。


32 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時04分48秒

『主役は誰がいいと思う』


 演劇部の名物と言えば
 まずは役の争奪戦だろう。


 主役やそれに相当するような役は
 3年生がやることが必然。

 1年生は照明や大道具
 かなりよければチョイ役がもらえる。

 どの文化部、運動部でも
 1年生なんてその程度の扱い。


 だけど、ここの演劇部は違った。

33 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時05分21秒


 完全実力制で
 学年なんか関係ない。

 実力と練習量が足りていれば
 たとえ1年生だろうと主役ははれる。

 逆に言えば
 3年生であろうと大道具は大道具。


 その伝統が実を結んで
 学園祭には大勢のお客さんが来てくれる。

 それが演劇部員たちにとって
 なににも代えがたい誇りとなっていた。


34 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時05分58秒


『推薦は挙手でお願いします』


 役の決め方は簡単に多数決ではなく
 練習時間1回分を潰しての推薦会議方式。

 無記名での投票で決めるのでは
 裏でなにをされていてもわからないからだ。

 全員で話し合う事でそれをなくす。


 だから、このような事も起こる。


 会議で決定した今回の主役は
 1年生の生徒だった。

 努力が認められて
 3年生からの推薦で。

 生徒は喜び勇んで台本を受け取った。


35 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時06分36秒


 それからと言うもの。

 その生徒は夜遅くまで残って
 それこそ何度も何度も練習した。

 勉強もおろそかになるほどに
 主役の大役を嬉しく噛み締めた。


 それを見ていた同級生も
 初めは面白くなかった先輩も。

 いつしか生徒を応援するようになった。


 そしていよいよ本番。


36 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時07分06秒


『行ってきまーす!!』


 学園祭当日の朝。

 その生徒は勢いよく
 緊張しながらも飛び出して行った。


 初めて観客のいる舞台で
 初めて自分の演技ができる。

 生徒の心は躍っていた。


37 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時07分36秒




 ……舞台に立つまでは…。



38 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時08分19秒


 舞台に立った途端
 生徒の頭の中は真っ白になった。

 一生懸命になって覚えたセリフも。
 頑張って確認した振り付けも。

 全部が消えてしまった。


 もしもの時ようにスタンバイしていた
 黒子の役割の生徒が慌てる。

 冷たい観客からのブーイングが飛ぶ。

 先輩たちの心配そうな目が刺さる。

39 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時08分57秒


 結局その舞台は中断。

 演劇部は今までにない屈辱である
 途中退場というレッテルを貼られた。



『大丈夫だよ』
『誰もキミのせいだなんて言ってない』


 慰めてくれる同級生たち。
 でも、その後ろから先輩の声。

 1年生に主役を任せたことで
 こんなことになってしまうなんて。

 そんな冷たい会話。

40 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時09分51秒


 生徒はその場から逃げ出した。

 先輩のさげずみから逃げたのではなく
 情けない自分から逃げたくて。


 いつしか生徒は屋上にいた。

 足を向けるつもりなんてなかったのに。


 だって今、屋上になんか来たら…。
 そう思っていたから。

 けれども。

 生徒の意思とは関係なく
 足はどんどん前に進んで行く。
41 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時10分37秒

 先には壊れかけたフェンス。


 そのフェンスはいとも簡単に
 生徒の力で崩れ落ちた。

 その後に続いて
 生徒の身体も空に消えた。


42 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時11分31秒



 その翌年からと言うもの
 演劇部ではイヤな噂が舞った。


 学園祭で演劇をやると
 彼女に取り憑かれて死んでしまう。


 誰が流したのかもわからない噂だったが
 生徒を知っている世代だったので
 ついつい避けてしまったようだ。

 先代がそうしていると
 無意味に受け継いでしまうのが部活の性。

 学園の演劇部は
 立て続けに演劇を中止。

 ついには一時廃部してしまった。


 しかし噂が忘れ去られた頃
 演劇部は発足された。

 もちろん学園祭での演劇も再開。
 遠退いていた客足も戻った。

43 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時12分08秒


 ただ、奇怪な現象は増えた。

 どうしてなのかは知らないけれど
 学園祭が近づくにつれて増える不思議な現象。

 今日に至ってはもう
 イタズラですんでしまっている。


 道理で納得がいかないことが起こる。
 それが演劇部の陰口の元である。


44 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時12分47秒

 部員たちすら知らない
 怪奇現象の真相。

 ここ数年は学園祭での演劇は続いている。

 そして昔のように
 演劇中に不可思議現象が起こることも
 何年か前からなくなっている。


 それが何故なのかは誰も知らない…。



45 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時13分57秒

 誰も知らない…か。


 教えたろ。
 アタシが来たからや。


 アタシがここに来てからは
 演劇中に悪さするやつはとっ捕まえてた。

 やから演劇部のへんな噂は
 ここ何年かはなくなってたんや。

 けど、今回は…。


 下っ端を掴まえるだけじゃ
 ちょっと許されへん。

 あまりにも目にあまるものがあるし
 いい加減、親玉つぶさなって思ってたから。


 残念やったなぁ。
 取り憑いたんが矢口で。

 その娘は殺させるわけにはいかんねん。

46 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時14分48秒


『みっちゃん!あの娘ら頼む!』
『姐さんは?!』


 アタシはあいつを潰す。


 そう言いきって降りる。

 みっちゃんに雑魚ども任せて
 アタシは矢口の頭上に立つ。


 みっちゃんがおらんから強制は無理や。

 ほなら説得…
 できるんやろうか…。


 できんことはないんやって言い聞かせて
 矢口の上に乗ってるモンを引っ張る。

 途端、鳥肌が立った。

 それから聞こえてきた声に
 久しぶりにホンマの寒気がした。


47 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時17分51秒


『放して』


 …はいそうですかって?
 ……アホか、ムリやわ。


 目の前には1人の女の子。

 制服はどうやら昔のうち学園のや。
 えらいリアリティ出るやん。


 なぁ、ちょっと話しようや。


48 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時28分30秒


『いやよ。みんな殺してやるんだから』


 そー言いなや。
 ちょっとでええから。

 それにその娘ら
 殺されたら困るねん。



『知らない。殺す』


 なんで殺したいん?

 アンタは別に
 殺されたわけと違うやろ。


 なんで殺したいんや?


49 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時29分06秒


『私の舞台に立つから』


 はぁ?

 私の舞台やって?
 冗談やあらへんで。

 ここは今この娘らの舞台や。

 アンタの舞台は
 だいぶ前におわっとる。



『終わってない。私はここにいる』


 終わってるよ。
 ついでにアンタはもうおらんの。

 そこにいるアンタは
 念が創り出したニセモンや。

 身体はもうない。


 知ってるやろ?


50 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時29分42秒


『私はここにいる』


 おらへんねんて。

 その証拠にアンタが舞台上におっても
 誰もなんとも言わへんやろが。



『違う、勘違いしてるからだ』


 勘違いしてるぅ?

 アンタがここにおるのが
 演劇の演出かなんかやってか?

51 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時30分17秒


 おっし、ええやろ。

 そこまで言うんやったら
 ちょっとした賭けでもやろうや。


 アンタがもしここに存在するんなら
 なにかセリフを言えば観客に伝わるはずや。

 そやな?



『……』


 今からそれを試す。

 アンタがセリフを口にして
 観客の過半数が反応すればアンタの勝ち。

 アタシはこれ以上
 アンタのことに文句は言わん。


 やけど、もし。
52 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時30分50秒

 アンタのセリフに対して
 反応がなかった場合はアタシの勝ち。

 アンタは素直におるべき場所へ逝く。


 ええな?



『…わかった』


 よし。破るなや。

 これは約束と違うで、契約やからな。
 ちゃんとした、黒の契約やで。

 破ったらどうなるかくらい
 アンタでも知ってるやろ。


 わかったら、大人しくしぃや。



『………』

53 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時31分30秒


 ほならゲームスタートや。

 アンタが口にできるんは一言。
 内容は別になんでもかまへんけどな。

 それ以上を口にしようとしたり
 関係ないことしようとしたら
 その時点で契約違反とみなすで。


 さぁ、なんでも言い。



『……』


 どないした?

 せっかく目立つチャンスやんか。
 ほら、好きなこと言いやぁ。


54 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時32分04秒



『……ムダだよ…』

『…私は…いないから…』

『…存在して…ないから…』


55 名前:主役は一人 投稿日:2002年08月28日(水)18時32分35秒


 はいよくできました。


 彼女は泣き出してしもた。

 近づいて手を差し伸べてやったら
 通り越して抱きつかれた。

 アタシの肩に顔を埋めて
 彼女は大粒の涙をこぼした。

56 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時34分51秒


 知ってた。

 アタシはちゃんと知ってた。

 彼女が自分のことを理解してることも
 本当に悪いんはこの娘やないことも。

 やけど、この娘が自分で認めんと
 アタシにはどうすることもできへんかったから。


 ゴメンな。辛かったな。


57 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時35分26秒


『…これで成仏できる…?』


 できるで、大丈夫や。

 ここから先は
 アタシはついて逝かれへんけど。

 ちゃんと案内してくれるやつが
 居るはずやから。


 自分の路を
 しっかりと進んで逝き。


58 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時36分01秒


『ゴメンナサイ…』


 アホか。

 こーゆーときは
 ありがとうでええんですぅ。



『ふふ…ありがとう…』


 よろしい。


 笑った彼女は
 光の中で消えて逝った。

59 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時36分37秒


 これでもう引っ掛かりはない。



『みっちゃん』
『…はいなぁ』


 彼女の手下にされてたやつらがいなくなって
 みっちゃんもアタシの隣に来た。

 2人で一点を見つめる。
 ちゅーか、睨む。

60 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時37分10秒


 そこにいるのはわかってんねん。

 自分で出てくるか
 引っ張り出されるか。

 好きなようにしたらええわ。


 どっちにしたって
 アタシらはもう待つ気はない。


61 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時37分41秒



『今 我等の名に於いて 命ずる』
『汝 己の御魂 在るべき場所へ逝け』


 強制成仏は面倒くさい。

 どーでもええような呪詛を
 しっかりと唱えんと話にならんとは。

 自分で言うてて訳わかってないねんで。
 アタシもみっちゃんも。


 けど、これが1番効くんやなぁ。


 物陰で蠢いてたそれが
 明らかに苦渋の念を持ち始める。

 後ちょっとや。


62 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時38分23秒



『輪廻天昇 詔を以って』
『神命天帝 勅を以って』

 ―――汝に安らかなる安息を―――


63 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時39分08秒


 その言葉と共に
 とんでもない悲鳴が上がる。


 もうちょっと静かに逝け。静かに。


 毎度のことやけどアタシは不思議や。

 最後の言葉は“安らかなる安息を”やで?
 やのに苦しそうな悲鳴上げて消えられたらなぁ?


 安息ってなんやねん。
 ってツッコミも入るっちゅーねん。


64 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時39分44秒



『姐さんっ!!』


 なんやねんて言うよりも先に
 アタシの腹部あたりに激痛が走った。

 見れば黒い塊。

 それが刺さってるところから
 徐々に染み出てくる赤い液体。


 うそやろぉ…。
 この裕ちゃんが…?


 …ホンマかいなぁ……。


 幽体離脱したアタシが消えるのと同時に
 ムカツクアホも消えた。

 皮肉なもんやなぁ。


65 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時40分14秒



「…アカンなぁ…」


 身体に戻って一言。
 それ意外は口にできへん。

 ホンマもんの身体が傷つくよりも
 霊体の方が痛いしダメージが大きい。

 思った以上に効いてる…。


 こら…ヤバイんと違うかぁ…?

 まさかこの歳で三途の川なんや
 見ることになるとはなぁ…。

 矢口〜アイラブゆぅ〜。

66 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時40分50秒


 身体中の生気が抜けていって
 頭がしっかりと働いてくれへん。


 こんなときはって教えられてんけどなぁ…。

 役に立たんやんけ。


67 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時41分26秒



『大丈夫ですか?』


 のた打ち回ってたアタシの頭に
 聞いたことない女性の声。

 何とか目を開く。


 …アカン、全然知らん。


 白衣を着込んでるその女性は
 なりからして保健室の先生やろなぁ。

 片手にカルテみたいなもん持って
 よくありの格好してるもん。


 ここまで例題通りでええんかい。


68 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時42分02秒



『あらあら、お腹を怪我してますね』


 そう言って彼女は
 アタシの腹部に触る。

 見えるはずのない霊体の傷から流れる
 触れることも叶わない血液を見る。

 わかるはずのない傷に触れる。


 アホな…。


 そう思えたのも束の間やった。



「…いっ!」
『あら、ゴメンなさい?』


 確かに彼女がアタシに触れた。
 間違いなく霊体のアタシに触れた。

69 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時42分38秒


 うそやろぉ…。


 アタシの困惑なんや気にもとめんと
 彼女はアタシの腹部を撫でる。

 身体に触っているように見えるけど
 確実に霊体の傷に触れてる。


 信じられへん…。

 この人…なんで触れんねん。


70 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時43分16秒



『私は保健室の先生です』
「あ…はぁ…」


 初めは彼女が言うてる意味が
 アタシの中で消化できへんかった。

 そこでアタシは思い出した。


 そうや、みっちゃんの資料。


 みっちゃんの持ってきた七不思議の中に
 確かに保健室関係があった気がする。


 “保健室の先生”

 うん、そうや。
 それで間違いないわ。


71 名前:七不思議〜7〜 投稿日:2002年08月28日(水)18時44分02秒
    『保健室の先生』
72 名前:保健室の先生 投稿日:2002年08月28日(水)18時44分33秒


 保健室。

 そこはサボリの生徒にとっては
 なによりも勝る憩いの場であろう。

 そしてそこにいるのは
 いつでも白衣の保健室の先生。

 そんな先生にも癒されるのだろうけど。

73 名前:保健室の先生 投稿日:2002年08月28日(水)18時45分18秒

『センセーしんどいんですーー』


 保健室にくる生徒の役半数が
 サボリ目的だと言う常識があった。

 あながち間違ってはいない。


 サボリでくる生徒。
 本当に病気でくる生徒。

 相談しにくる生徒。
 ただお喋りにくる生徒。

 そのどれもが
 保健室の先生にとっては
 可愛くて仕方がない生徒たち。

74 名前:保健室の先生 投稿日:2002年08月28日(水)18時45分49秒


 ここにも1人。

 毎日保健室に来るのが楽しみで
 出勤の足が弾むと言う先生がいた。

 誰からも信頼を得ていて
 人気も高かった保健室の先生がいた。


 生真面目なくせに
 どこか暖かくていい先生。

 敬語を使わなくても怒らない
 生徒のような先生だった。


75 名前:保健室の先生 投稿日:2002年08月28日(水)18時46分32秒



 夏休みに入って少しした頃。

 校内で不審人物が目撃されたらしく
 教師たちは校内の警備を始めた。

 保健室の先生は
 それには参加していなかった。


 先生はいつものようにして
 保健室の扉を開けた。

 そこにはすでに来客。

 頭まで布団をかぶっているので
 初めはちょっとビックリしたけど。

 布団の端から出ているのが
 学園の制服のスカートだった。

76 名前:保健室の先生 投稿日:2002年08月28日(水)18時47分02秒


 それに先生は安心した。



『クラブのサボりかぁ?』


 暑くてイヤなのはわかるけど
 ちょっとだけにしとけよぉって。

 いつものように
 気軽に生徒に声をかけた。


 暫くして。


 生徒が返事を返さないので
 先生は生徒のベッドに近づいた。

 そしてもう一度。

 明るい口調でサボリかと。

77 名前:保健室の先生 投稿日:2002年08月28日(水)18時47分33秒


 生徒は今度は反応した。

 真っ白な布団が揺れて
 うんうんと頷いてるのがわかる。

 大丈夫かと声をかけると
 さっきと同じように頷く。

 気分が悪くなったのかと
 ちょっと心配していたらしい。


 先生は生徒の頭をポンポンと叩き
 机に向かって仕事を再開した。


 そのまま静かに時は流れた。

78 名前:保健室の先生 投稿日:2002年08月28日(水)18時48分18秒


 不意に息苦しさを感じた先生が
 生徒に暑くないかと尋ねた。

 生徒は頷く。

 それを見て先生は
 生徒の近くの窓を開けようと
 机から立ちあがって行った。

 そしていつものように窓を開けた。


 すると。

 視界の端に
 いつもはないものが写った。

 それは黒くて
 小さく丸まっていて
 見た瞬間はわからなかったが…。

79 名前:保健室の先生 投稿日:2002年08月28日(水)18時48分54秒


 動いて初めて
 人だと認識できた。



『…に…逃げなさいっ!』


 先生は今だにベッドで寝ている生徒に
 出来るだけ大きな声で呼びかけた。

 それには生徒も飛び起き
 自分たちの状況を確認した。

 そして、動けなくなった。


 先生と生徒の動揺を見透かして
 黒いものは窓をよじ登った。

 その手には
 刃渡り20センチほどのナイフ。


 充分、人は殺せる。

80 名前:保健室の先生 投稿日:2002年08月28日(水)18時49分26秒


 窓から這いあがって
 黒いものは2人を見た。

 そしてそれは…。


 先生を刺し殺した。



『だ…誰か…呼んで来て…!』


 最後の力を振り絞って
 先生は生徒にそう言った。

 が、生徒はなにも言わない。

 先生が最後に見たのは
 無言で保健室を飛び出して行く生徒だった。

81 名前:保健室の先生 投稿日:2002年08月28日(水)18時50分06秒


 その後すぐに教師一同と
 通報で駆けつけた警察がきた。

 しかし、先生は亡くなっていた。

 後でわかったことなのだが
 その生徒は言葉が話せなかった。

 障害者だったのだ。


 保健室の先生には
 なにか勲章が贈られたが
 先生はもういない。

 誰がそれを喜んだだろうか。

82 名前:保健室の先生 投稿日:2002年08月28日(水)18時50分41秒


 暫くしてから
 新しく保健室には先生が来た。

 けれども…。


 保健室の先生は
 2人存在するようになった。

83 名前:保健室の先生 投稿日:2002年08月28日(水)18時51分11秒


 勲章を贈られた先生が最後に見たのは
 無言で駆け出して行く生徒の姿。

 自分を見殺しにした
 可愛くもない生徒の姿。

 クラブもサボって
 偉くもない生徒の姿。


 だから先生は
 そんな生徒を殺して歩くのだと。

 白衣の下には
 血まみれの服を着ているのだと。


 噂の出現と同時に
 学園でのサボリはいなくなったらしい。


84 名前:保健室の先生 投稿日:2002年08月28日(水)18時51分59秒

 夏休みの保健室ほど
 快適な場所はないのに。

 この学園では無人なのが当たり前。

 いるのは保健室の先生だけ。


 そう。


 保健室の先生だけ…。


85 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時52分47秒

 アホんだら。

 なにが怖い先生やねん。
 なんで殺されるやねん。

 めっちゃええ人やないか。



『噂は捻じ曲がりますから』
「……ホンマ、すんません」

86 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時53分27秒


 彼女が触れている部分が
 目に見えて治っていく。

 彼女の治癒能力は素晴らしいわ。


 七不思議とは全くの正反対。

 彼女は霊体や精神など
 外見ではわからんとこを治してくれる
 アタシらからしたらかなりスゴイ人やった。

 人の怪我を治すだけでもスゴイのに
 この人は霊体を治せる。


 スゴイで、ホンマに。


87 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時54分10秒



『はい、終わりです』


 そう言われて傷口を見る。

 確かにさっきまでの赤い液体はなく
 肌にはなんの後も残ってない。


 やっぱ、傷とか気になるやん。
 たとえ霊体とは言うてもな。


 心持ち疲れがとれてる身体は
 思ったよりも簡単に起き上がった。

 彼女のおかげやろう。

 諸々の意味をこめてお礼を言ったら
 彼女がお互いさまですって。


 お互いさまです?


88 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時54分46秒


『誤解を解いてくれましたから』


 誤解、ですか?


 訳がわかってないアタシに
 彼女は簡単に話してくれた。

89 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時55分36秒


 人の噂は捻じ曲がってしまう物です。

 けれど、中には限度を越えて
 私たちを怒らせてしまうものもあります。

 いい例が美術室の彼女です。

 あの霊は悪くもないのに噂にされて
 そのせいで出来上がってしまいました。

 可哀想な生徒でした。



『あの娘も、ありがとうございました』

90 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時56分09秒


 いや、そんな…。


 こない会話したん初めてやから
 ちょっと緊張してもうてる。

 同い年くらいやから特に。


 世間話の要領で
 アタシは彼女と話した。

 彼女は面白いくらいに話しくれた。

91 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時56分43秒


 校内にはまだまだそんな子たちがいる。
 きっとここだけじゃないでしょうし。

 少しでも捻じ曲がった噂を戻し
 ちゃんと修正してくれる人がいて
 私たちはとっても助かってるんです。

 それに、と。

 私なんか治癒が本業なのに
 いつの間にか殺人者にされてたし。


 少しイタズラっぽい笑顔で
 彼女はアタシに話してくれた。

 それから最後に。


 ありがとう。
 これからもよろしくと。


92 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時57分18秒


「…なんや、変な気分やなぁ」


 殺されそうになったんは
 七不思議のせいで。

 けど、助けてくれたんも
 七不思議のおかげで。

 複雑やなぁ。


93 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時57分56秒



「姐さん!大丈夫なんですか?!」
「おう。見ての通りや」


 やっと移動してきたみっちゃんに
 あのくらいで死ぬかいって言うてみた。


 実際は死にかけたけども。


 ホンマに大丈夫なんですかって
 みっちゃんがあんまりにもしつこいから。

 治してもらったばっかりの傷口を見せた。


 うん、キレイに治ってる。



「うそやん…」
「うそちゃうよ?」


 保健室の先生が治してくれてん。
94 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時58分26秒


 そう言うたら案の定
 みっちゃんはえぇって。

 メチャメチャ驚いてた。

 そのときのみっちゃんの声が
 ちょっと大き過ぎた。

 近くの演劇部員たちに怒られた。


 それでやっと舞台袖やったことを思い出して
 2人して静かに袖を抜けた。

 それからちょっと外に出て
 保健室の先生について正しく話した。


95 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月28日(水)18時58分57秒



「ええ人ですやん」
「やろぉ?」


 しかもかなりの美人さんやったし。


 そう付け加えたら
 みっちゃんに苦笑いされた。

 姐さんは口だけやからって言われて
 アンタよりマシやって言い返した。


 …あー、やっと終わった。


 これでやっと七不思議の謎から
 アタシらは開放されたんや。

 めっちゃ嬉しーー。

96 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)18時59分33秒
   終了
97 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)19時00分38秒
>23 読者 さま

 >更新速度に乾杯!(w
 ありがとうございます。
 これくらいしか誇れるものはないですね(汗)
98 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月28日(水)19時01分42秒
今日は大きな失敗をしてしまって
本当にほんとーに申し訳ありませんでした…。
99 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月29日(木)00時37分42秒
   更新
100 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月29日(木)00時38分55秒
 こうしてアタシらの
 戦いとも言える数週間は終わった。


 加護が見つけてきた
 演劇部の古い台本に始まり。

 その加護とみっちゃんが危くなり
 アタシが大損害を被った家庭科室の鏡。

 矢口を捲き込んでしもた
 無限ループの真夜中の校舎。

 ごっちんの感が冴えて助かった
 迷いの異次元教室。

 噂に縛られてしまった
 可哀想な美術室の天才少女。

101 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月29日(木)00時39分32秒


 自分の非力さを呪って
 大切なものを見失ってしまった生徒。

 心の弱さにつけ込まれて
 なにもわからずに騙されてした演劇部員。

 実は噂とは正反対で
 めちゃめちゃ優しい保健医さん。



 なんや、並べると大したことなさそうやけど
 かなりのハードスケジュールやったで。

 めっちゃ疲れたわ…。


102 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月29日(木)00時40分12秒



「お疲れさんです」
「お互いさまやろぉ」


 そう言うてみっちゃんに凭れる。


 アカンて。

 まだ文化祭、終わってないし。
 教師は見回りしなアカンねんし。


 ……アカンて。


 起きなアカンって言うてる
 アタシの理性に反して
 睡魔は近づいてくる。

 目の前でその睡魔が
 立ち止まったかと思うと…。


 アタシの瞼は落ちてた。

103 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月29日(木)00時41分49秒


 ゴメンなぁ、矢口…。

 今はちょっとだけ…。

 人の肩で寝るの、許してな。

104 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月29日(木)00時43分40秒
 ――――――――――― ――――――――――― ――――――――――
105 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月29日(木)00時44分24秒

 後日談になるんやけど。


 どうしても事情を聞きたいって
 矢口たち数人が譲らんかったから
 アタシとみっちゃんで話したった。


 実は矢口に乗ってたんやで。

 ホンマは台本読んでる時から
 矢口に取り憑いてたんやで。

 矢口の行動が時々おかしかったんは
 知らんうちに操られたからやって。


 したらお決まりのように
 なっちは気絶するし、辻は泣くし。

 元々このメンバーって
 怖いのアカン人がほとんどやん?

 一時大混乱やったね。


106 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月29日(木)00時45分36秒


『舞台にいたからビックリした』


 1人だけ冷静に話してたごっちん。

 ビックリした言うてるけど
 あんまりそんなカンジは受けへんかった。

107 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月29日(木)00時46分12秒


 それと、勘違いのないように
 ちゃんと言うとくけど。


 演劇部の舞台には
 元からかなり強いやつがおったんや。

 そいつがたまに邪魔をして
 演劇部員が怪我してたことが多い。

 こないだの彼女は
 そいつにそそのかされて操られてただけや。


 んで、その延長で矢口もって。


 やからアタシとみっちゃんが
 最後に強制成仏さしたんはそのアホ。

 根源から断たんとなぁ?
 やっぱり悪いのはなくならんやん。


108 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月29日(木)00時46分42秒


『その娘、どこにいたって?』


 矢口が自ら地雷を踏んだ。

 このときは言うかどうか悩んだけど
 矢口に言われたらうそつかれへん。


 たまにはうそついた方が
 ええかもしれへんって思ったけど。

109 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月29日(木)00時47分15秒


 本当のことを聞いた矢口は
 バタンキューって。

 そのまま放っといても回復せんから
 アタシが連れて帰ることになった。

 矢口は小さくて軽いんやけど
 アタシは非力やからちょっと…。


 言うても誰も助けてくれへんから
 ちゃんと1人で連れて帰りましたけど。

110 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月29日(木)00時47分45秒


 って、いろんなこと思い出してたら。



「ゆうちゃーん?」


 ついさっき連れて帰ってきた娘が
 もう元気にお風呂なんか入ってるし。


 回復はやっ。


 なんやぁって返事したら
 顔を覗かせて一緒に入ろうよぉって。

 可愛い悪魔の微笑で。

111 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月29日(木)00時48分17秒


 一緒に入ろうよぉ?

 矢口、アタシに言うてんの?



「ペナルティーだよぉ」
「…ペナルティー?」


 なんでやねん。

 アタシなんも反則してへん。



「違うもん」

112 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月29日(木)00時48分53秒


 こないだからのお仕置き分でしょ。
 演劇最後まで見てなかった分でしょ。

 それと、みっちゃんの肩で寝た分と
 後ねぇ、こないだからのぉ…


 言いながら1つ1つ指を折り
 楽しそうに数えていく矢口。

 不意にそれが止まったかと思うと…。



「これだけあれば充分じゃん?」


 ……そーですねー。

113 名前:中澤裕子 投稿日:2002年08月29日(木)00時50分43秒


 さっきの笑顔のままの矢口に
 完璧に負けてしまったアタシは
 矢口の待つバスルームへと向かう。

 楽しそうに笑って
 矢口が手招きしてる。


 ……ま、ええか。


 疲れが倍増しそうやけど。

 幸せかみしめてるから。


114 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月29日(木)00時51分51秒
   終了
115 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月29日(木)00時52分33秒
これにて本編は終了です。
116 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月29日(木)00時56分28秒
次からはその後のお話というカンジで
短編がいくつか続いております。

今までお付き合いくださった読者のみなさまや
レスをくださった方々に心からのお礼を申し上げます。
本当にありがとうございました。

その後があるんでまだ終わってないんですけどね(w
117 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月29日(木)01時09分40秒
本編、ご苦労様でした。
できれば、短編時になちごまがあれば・・・。

石・吉・高・新の4人って話の中で出てきたのは、
ちょこっとですよね?
118 名前:123 投稿日:2002年08月29日(木)02時05分12秒
どうもです!
久々です。見てみたら3つ目に(w
今ネット出来なくなってて携帯からで上手く見れません…(T▽T)

本編終わったそうで、ネットが出来るようになりましたら一気に読ませてもらいます(wそれまで番外編も楽しみにしてます(w

まだ全部は見てませんが本編お疲れ様でした!

はぁ…携帯は見にくいです(泣
119 名前:名無し 投稿日:2002年08月29日(木)10時49分58秒
自分も117さんといっしょで
なちごま希望です。
つなぎ服さんの書くなちごまは甘甘なんで大好きなんです。
120 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年08月29日(木)12時27分48秒
本編脱稿お疲れ様でした。
自分はやぐちゅーのその後に期待してます。
121 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月30日(金)00時57分02秒
   更新
122 名前:その後の話 @ 投稿日:2002年08月30日(金)01時02分25秒
    『意外な結末』


( ^▽^)<初めは私たちです。

( ゜皿 ゜)<そうらしいね…。

川’―’川<先輩…。


123 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時03分16秒


「飯田さん?」
「……」


 隣で映画見てたはずの石川が
 こっち向いて呼び掛けてきた。

 無言でそっちの方を向いたけど
 ちょっと気まずい。


 実は今日は石川に誘われて
 2人で遊びに来たんだけど…。

 石川がおかしい。

 待ち合わせからおかしい。
 ううん、昨日の電話からおかしいかった。

 だからきっと今日は…。


124 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時03分51秒



「映画、見てました?」
「うーん、適度に」


 映画を適度にってのはおかしい。
 これは自分で認めるよ。


 でもね、カオはそんなに強くないんだよ?

 石川のこの雰囲気を感じて
 いつも通りになんてできない。

 あの決意に満ちた目で見られたら
 ついつい逸らしちゃう。



「ま、いいからさ」
「……そうですか?」

125 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時04分33秒


 2人で映画館を出て
 ちょっと遅目の昼食をとる。

 石川はなんとか話題を作りたいみたいで
 さっきの映画のことを話そうとした。


 けどカオはさっきも言ったように
 ほとんど見てないんだけど…。

 なんか言われても答えられないって。


 話にならないんじゃないかなぁって
 ちょっと可哀想かもしれないけど
 ため息をついた。
126 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時05分06秒

 けど、そんな心配いらなった。

 話をはじめて数分後
 石川は黙ってしまった。


 ……あったり前か。


 だって石川も、映画なんて見てない。

 ずっとカオの方見てた。
 見ながら何か考えてたの知ってる。

 2人ともちゃんと見てなかったのに
 どうすれば感想なんて言えるんだろう。


 石川、やっぱりおかしいね。


127 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時05分40秒


「…あ!そうだ!」


 映画のことを話せなくなってから
 どうしようか一生懸命に考えたらしい。

 石川は思い雰囲気を和ませようと
 ゲームセンターに行こうと言い出した。


 …景気づけ?


 密かにそんな風に思ったことは
 優しいカオは内緒にしておく。

128 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時06分14秒


 それからちょっと歩いた先に
 プリクラがメインのゲームセンターに着いた。

 そうなれば当然プリクラに並ぶ。

 そこはなかなかの穴場だったらしく
 人はまばらで順番も早い。



「次はどれにします?」
「んー、あれなんか良さそうじゃん?」


 かなりの量を撮ったけれど
 まだまだ撮りたい気分だったから
 石川と一緒に奥の方のプリクラに向かう。

 そこは人が少なくて
 なんかちょっと、うーんって思った。

129 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時06分46秒


 …カオ、失敗したかも。


 そう思ってられたのも束の間。

 カオが今日は一番避けたかった事態が
 ついに起こってしまおうとしていた。



「…飯田さんは…」

130 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時07分18秒
「カオさぁ、最近悩んでるんだよね〜」


 なにか言おうとした石川の言葉を遮って
 ムリヤリに言葉をつなげた。


 ゴメンね石川。

 カオは石川の気持ちには応えられない。
 カオには大切な人がいるから。

 だからせめて
 告白しちゃう前に…。


 昨日、石川に誘われてから
 必死になって考えた作戦だった。

 想いを伝えられる前に
 ダメなんだってわかってもらう。


 ゴメンね。


131 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時08分08秒


「…どうしたんですか?」


 ちょっとムリヤリな笑顔を作って
 石川は話を聞こうとする。

 それにはさすがに良心が痛んだけど
 そうも言ってられなかったし。


 カオは話した。


 自分には好きな人がいて
 その人とは付き合ってるってこと。


132 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時08分58秒



「……付き合ってる…人?」
「うん。それでさ〜…」


 放心状態の石川に気づかないフリで
 悩んでることを話す。


 本当は、半分うそ。


 確かにカオは好きな人がいるし
 その人とは付き合ってる。

 けど、冷たいことなんてないし
 それ意外でも悩んでなんていない。


 けど、諦めてもらうためには
 なんとか話題に出さないとダメだし…。



「なんかアドバイスない?」
「…石川には…むりですよぉ?」


 石川、付き合ってる人いないですから。

133 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時09分44秒


 石川はそう言った。

 そのとき見た石川の顔が
 泣きそうになって歪んでた。

 カオの涙腺も緩みそうになったけど
 それはなんとか我慢した。


 ここで泣いちゃダメだ。

 痛いのも苦しいのも石川なんだから。
 泣くのは石川の特権なんだから。


 ゴメンねって心の中だけで謝って
 なんでもないフリで話を終わらせる。

134 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時10分40秒



「あ、そうだよね」
「…そうですよぉ」


 今度は笑った。

 もちろんキレイになんて笑えてない。
 半分以上、悲しそうに。


 でも、不意に何かに気づいたらしく
 カオの腕を引っ張って言った。


「あ、カウント始まってますよ!」
「あっ?!ヤバイ!」


 画面には5・4…と数字が並んでる。

 何のキメポーズもしないままプリクラ撮ったのって
 かなり久しぶりだった気がする。
135 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時11分22秒

 できあがったそれを見て
 2人でやっぱりキープしない方が良かったねって
 普通の友達としてちゃんと笑えた。

 仲良くはさみで等分して
 貰った欠片を見てまた笑った。


 うん、大丈夫。

 石川はこう見えても強いんだ。
 カオなんかよりもずっと。

 だから大丈夫。


 自己満足かもしれないって思ったけど
 そうでもないかもしれない。



「飯田さん!また遊びましょうね!」


 そう言って笑った石川は
 かなり可愛い女の子だったから。

136 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時11分55秒


 その背中を見送りながら
 あの娘のことを思い出した。

 石川を支えることになるだろう
 可愛い可愛い1年生。


 任せたからね。
 ちゃんと頑張れよ?


 かなり無責任かもとか思って苦笑したら
 カオのケイタイがうるさく鳴った。


 雰囲気を壊すバカは誰だ。


137 名前:意外な結末 投稿日:2002年08月30日(金)01時13分52秒


「……タイムリー…」


 ケイタイの表示は
 石川のライバルだった人。

 さっきまでの重かった気持ちが
 ちょっとだけマシになった。


 ほんと、タイミングが良いのか悪いのか。



「…もしもし?なに、吉澤…」


138 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月30日(金)01時15分49秒
いつぞやリクエストとしていただいた
三角関係のお話でした。

これはリクをいただいた後に急遽作らせていただきました。
それから触発されてその後の話がどんどんできあがったんですけどね(w
139 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月30日(金)01時18分18秒
>>117 名無し読者 さま

 >石・吉・高・新の4人って話の中で出てきたのは、
  ちょこっとですよね?
  だったので今回はピックアップしてみました。
  どうでしょうか?大丈夫ですか?(謎)
140 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月30日(金)01時22分19秒
>>118 123 さま

 >今ネット出来なくなってて携帯からで上手く見れません…(T▽T)
  あ、大変ですよね?私はPCオンリーなんですが知り合いが文句…イエベツニ。

 >それまで番外編も楽しみにしてます(w
  お楽しみにしてくださっている番外編1つ目を上げました。
  もうちょっとあるんで待っててくださると嬉しいです。
141 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月30日(金)01時25分02秒
>>119 名無し さま

 >自分も117さんといっしょで
  なちごま希望です。
  なちごまですか?短編の方で?今回の番外の方でもあるんですけど…。
  考えておきます。てかネタがあればできると思います。
142 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月30日(金)01時26分33秒
>>120  読んでる人@ヤグヲタ さま

 >自分はやぐちゅーのその後に期待してます。
  その後ですか?もちろんありますんで!
  まぁ、期待に沿えるものかどうかは別として…(汗)
143 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月30日(金)01時27分28秒
レスに感謝と夕方の更新ができなかったので。
144 名前:その後の話 A 投稿日:2002年08月30日(金)01時30分20秒
    『色々な相手』


( T▽T)<シクシク…。

川’―’川<先輩…泣かないでください…。

145 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時31分08秒


 そっか、そうだよね…。


 私はついさっき失恋した。
 相手はお世話になってた先輩。

 すっごく美人で世話好きで
 学園にいた頃には迷惑ばっかりかけてた。


 色んなことがありましたが
 最後までお世話になりました。


 先輩が卒業するときに言った
 私の精一杯のお祝いの言葉だったけど
 今も同じ言葉を言いたい。

 意味は違ってるけど
 きっとピッタリ。


146 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時31分56秒



「あーぁ…」


 なんで私って
 こんなに不幸なんだろう。


 好きになった人には
 必ず誰か付き合ってる人がいて。

 それがいないからラッキーって思ってたら
 好きな人ができたからって相談されて。

 そんなことの繰り返し。


 もぉ、やだよ…。



147 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時32分35秒


 誰に言うでもなしにつぶいやいた独り言に
 聞き慣れたメロディーが答えた。

 ディスプレイには
 見慣れた後輩の名前。



「…もしもし?どうしたの?」


 電話の先の後輩は
 ひどく緊張しているみたいで
 わけがわからないけど優しい口調になった。

 そしたらちょっと安心したらしく
 ちゃんと会話してくれた。

148 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時33分11秒


 話題は、今の私には痛かった。


 好きな人ができたんだけど
 告白ができない。

 でも、今日は思いきって言おうとした。

 それで家に電話してみたら
 今日は他の人と出掛けてますって。

 それでちょっと沈んだんだけど
 頑張ろうって思いなおしたんだって。


 …私に関係あるの?



『先輩ならどうしますか?』


 なにがって訊いたら
 更に痛いことが話題になった。

149 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時33分48秒


 相手に好きな人がいたら
 先輩なら告白しますかって。


 私は…しない。

 今までもそうだったけど
 きっとこれからもそうだと思う。

 私にはそんな勇気なんてない。


 けど、この娘なら大丈夫。

 可愛いし真っ直ぐだし
 振り向かせられると思う。


 だからちょっと嘘をついた。
 嘘も方便ってね。


150 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時34分37秒



「告白するよ?好きなら」
『……じゃあ、頑張ってみます』


 うん、頑張れ。

 私みたいに不幸になるなって
 祈りを込めて頑張れって言った。

 その後しばらく沈黙があって
 どうしたんだろうって思ってたら…。



『好きです。付き合って下さい』
「………え…?」


 好きな人って…私?

151 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時42分01秒


 一瞬で混乱した私に
 更に後輩は言葉を続ける。



『友達からでもいいんですっ』


 友達からでもって…。

 私はあなたのこと友達だと思ってるのに
 友達からお願いしますって言われても……。

 確かに可愛いし真っ直ぐだし
 くりっとした目がいいなぁって思うけど…。


 どうしよう…。


152 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時42分54秒


『頑張れって言ってくれたんでっ!』


 言ったよ?言ったけど…。


 失恋したばっかりで
 告白になんて応えられない。

 だから今はムリだよ。


 そう言ったらいつもの声で頑張りますからって。

 ライバルがいなくなったなら
 これからはアタックしますからって。

 元気いっぱいの声で
 宣言してくれた。


 私はその勢いにおされて
 いつの間にかは言って答えてた。

 弱いなぁ…。



『それじゃ!また明日!』
「あ、うん。またね…」

153 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時43分44秒


 告白してダメだよって言われたのに
 どうしてあんなに元気なんだろう。


 疑問だらけの気持ちを整理するように
 私はゆっくりと目を閉じた。

 よく見てる元気いっぱいの笑顔が
 閉じた瞼の裏に浮かぶ。


 まだまだ傷は深いけど
 あの笑顔と一緒なら乗りきれるかもしれない。

 不意に笑いがこみ上げてきた。
 だけど私は緩む口元を隠さずに歩き始めた。


 真っ赤だった夕日が消えて
 少し肌寒い秋と夏の間の夜の中
 私は足早に帰宅した。

 家に帰って最初に電話したのは
 同じ部の先輩。

 告白されたんですよぉって報告したら
 前向きに考えてやれよってアドバイス。
154 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時45分09秒


 私には色んな相手がいる。

 面倒を見てくれる人。
 おしゃべりしてくれる人。

 好きな人。
 失恋した人。

 好きだといってくれる人。

 みんなみんな、大切な相手。


155 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時46分03秒
  ―――――――――――――― ―――――――――――――――
156 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時46分47秒

 可愛い後輩の告白から
 そろそろまる2ヶ月が経つ。

 その後の私とあの娘との関係は…。



「ごめんなさい!」
「遅刻はデート代の奢り♪」


 先輩のアドバイスと
 後輩の頑張りのおかげで
 嬉しい変化を与えてくれた。

157 名前:石川梨華 投稿日:2002年08月30日(金)01時47分44秒


 私にはこうして
 大切だと思える相手ができた。

 大切だと思ってくれる相手ができた。

 それだけでもいい。


 でも、私にはもっとたくさんの相手がいる。

 迷惑をかけてくれる人。
 ギャグに笑ってくれる人。

 ライバルだった人。
 頑張ってくれた人。

 好きだといわせてくれる人。

 みんなに言いたい。
 ありがとうって。


158 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時48分33秒


「あ、飯田先輩…」


 あー、ほんとだね。


 待ち合わせをしているらしい飯田さん。
 いつものことだけど、相手は遅刻らしい。


 っていうか、相手の人。

159 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時50分10秒


 私が飯田さんの相手を訊いたのは
 つい先日のことなんだけど。

 飯田さんの相手は
 私の同学年で友達だった。


 色々事情があったのはわかるけど
 なんで言ってくれないかなぁ。

 そう思ったことは、内緒にしておいた。

160 名前:色々な相手 投稿日:2002年08月30日(金)01時51分21秒


 だって2人のおかげで
 私たちは幸せを捕まえたんだから。



「行くよ〜」
「待ってください!」


 色んな人がいる。

 だから私はここが好き。

161 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月30日(金)01時52分32秒
   終了
162 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月30日(金)01時53分05秒
今回はレスが多くて嬉しい。
163 名前:つなぎ服 投稿日:2002年08月30日(金)01時54分46秒
あとちょっとで番外は終わります。
164 名前:123 in ネットカフェ 投稿日:2002年08月30日(金)17時44分48秒
HN通りネットカフェっす(泣
がんばって読みましたぁ!
番外編もよかったっす。
高橋石川も何はともあれ幸せになれてよかった(w
おがこんもどうなったのかな〜?(w
楽しみです。続きの番外編お待ちしてます
165 名前:やぐちでしょう。 投稿日:2002年09月03日(火)22時50分33秒
面白いです。
裕ちゃんと矢口がらぶらぶで幸せです。
何回も読み直しました。裕ちゃんと矢口の部分だけ(w
で、2,3疑問点が?
1.裕ちゃんが矢口を意識しだした場面で矢口はなぜ泣いていたのか?
2.ごっつぁんとなっちがからまれているとき、裕ちゃんの後ろにいた
  体格のいいお兄さんたちとは何者?
3.矢口が1年生の頃、裕ちゃんの後夜祭と前夜祭のパートナーに やきもちをやく
  矢口さん> ま、後でデートしたけど♪ と言っているがこのときはまだ
  つきあっていないはず。
166 名前:やぐちでしょう。 投稿日:2002年09月03日(火)23時01分08秒
以上、七不思議に満たない三不思議ですが。
1はずっと気になってたんですが、矢口とほかの人のCPが出てきそうで、
質問を自粛してましたがどうやら裕ちゃん一筋のようなので、安心してきけます。
2はあんまり意味なさそうですが、ちょっと気になったので。
3は何か矢口がたくらんでいそうで面白そう。

167 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月05日(木)00時55分42秒
>>164 123 in ネットカフェ さま(w

 >おがこんもどうなったのかな〜?(w
 もうちょっと待ってください…。悩み中です。。。
168 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月05日(木)00時58分01秒
>>165 166 やぐちでしょう さま

 >質問
 えっと…1,2,3それぞれに理由はあるんですけど…。
 やっぱり過去の話は書いた方がよろしいですかねぇ?
 てか、書かないと説明できないっすよね(苦笑)
169 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月05日(木)00時59分16秒
   更新
170 名前:その後の話 B 投稿日:2002年09月05日(木)01時02分12秒
    『自由な鳥』


从#~∀~#从<やっとアタシらやて。

(〜^◇^)<ラブラブできるの?
171 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月05日(木)01時02分53秒


 グチャグチャとややこしい時期も終わり
 テストも終わった静かな休日。

 こんな日は決まってデート。

 矢口が真っ先に電話かけてきて
 アタシの休日は拘束される。


 別にいやちゃうけど。

172 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月05日(木)01時03分30秒


 ただ、今日は珍しく矢口が遅刻してる。

 なんでも目覚ましかけたのに
 朝になったら止まってたらしい。


 ただ単に電池切れやろうけど。


 デートで矢口が遅れたことって少なくて
 アタシは新鮮な感覚になる。

 嬉しくなって気分も盛り上がる。



「…お?」


 そんなアタシの目に入った
 なかなか珍しい光景。

173 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月05日(木)01時04分50秒


 あれは石川やんなぁ。
 誰かと待ち合わせしとんのか?

 お…誰か来たやん。


 ポツンと立ってた石川に
 1人の女の子が駆け寄った。

 誰やろうと思ってちょっと覗く。

174 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月05日(木)01時05分47秒


 あれは……高橋…?


 確かに部の先輩である矢口から
 高橋が石川に告白したってのはきいてた。

 けど、それ以降は全くやったから
 今日はなかなか運がええらしい。


 うわっ、メッチャ楽しそうやん。

 なんやねん石川。
 ちょっと前までカオリやったくせに。

 いや別にええねんけど。


175 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月05日(木)01時06分55秒



「若い娘は切り替え早いなぁ」


 ま、カオリには他におるねんから
 諦めへんかったツライだけやしなぁ。

 せやけど高橋に石川て…。

 なんやよぉ絡まれそうやねぇ。


 可哀想に思って2人の方を見たら
 2人は他の方を見て話してる。


 なんや?


 つられて目線を追うと…。



「…はっ」


 思わず鼻で笑ってもうたわ。


176 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月05日(木)01時07分29秒


 そこには誰かを待ってるカオリ。
 相手なんて知ってるけどなぁ。

 運動部のくせに遅刻しとるあたり
 カオリの指導不足やろぉ。

 って、そんなことを話してるんかは知らんけど
 石川たちは楽しそうに笑ってる。


 ふーん、よかったやん。

 失恋した相手のこと
 あんな風に見れるんやったら。

 ちょっと心配してたことやったけど
 問題にはなりそうになりなぁ。


 かなり安心した。
177 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月05日(木)01時08分24秒

 それから2人+1人の様子を
 影から覗いてた。

 これがなかなか楽しい。


 待たされてるのにボーっとしてるカオリ。
 それを見ながらアホみたいにじゃれてる2人。

 からかいの種になることを探すには
 充分過ぎるくらいに楽しい。


 そうこうしてる内に来てしもた。

 息を切らしながら
 かなり走ってきたらしい。


178 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月05日(木)01時09分19秒


「…ださんっ……せん!」


 ここまで聞こえるような大声で
 吉澤はカオリに謝ってた。

 それには観察者の3人の方がビックリして
 それぞれに苦笑いした。


 アホや。

 けど、素直で可愛い。

179 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月05日(木)01時28分01秒


 あの2人を見てると
 いつの間にか笑ってる自分がいる。

 きっと石川たちもそうなんだろう。
 2人が笑ったのが見えた。


 ホンマ、アタシの生徒たちは可愛いわぁ。

 もっと可愛いのもおるけどなぁ。

180 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月05日(木)01時28分34秒
   終了
181 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月05日(木)01時29分15秒
話はまだ終わってません。
182 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月05日(木)01時29分56秒
忙しいのでごめんなさい。
183 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月05日(木)10時49分06秒
やぐちゅーキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
と思ったら矢口が来てない(w
184 名前:123 投稿日:2002年09月10日(火)23時20分35秒
ネット復活ーーー!!(w
来てみたら・・・やぐちゅーキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
でもまだなのね…続き待ち?(w
いしたかとかおよしも密かにあるのが(・∀・)イイ!!
185 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月16日(月)02時06分37秒
他2枚と共通。
186 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時09分17秒

 裕子のアホ。


 昨日あんなこと言うから
 今日は調子が出なかったじゃんかよ。

 いつもみたいに裕子に絡めなかったし。
 ぴょ〜ん星人も空元気になっちゃったし。

 なんだよ、アホ。


 そのくせ自分は紺野に絡んで。
 いつもは放置のくせに…。

 確かに裕子の好きそうな
 のほほん系の娘だけどさ…。

187 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時10分40秒


 もしかして。


 もしかして、矢口に飽きた?
 新しい刺激が、欲しくなった?

 矢口じゃダメに…。



「……っ」


 うぁ…。

 ヤバイ。泣く。


 どーしよ、マジなのかなぁ…。

 マジだったら…
 矢口、捨てられちゃう?


188 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時11分31秒



「…裕子ぉ…」


 紺野に絡んでもいいし。
 石川に抱きつかれてもいい。

 けど。

 矢口にしか見せない笑顔で。
 矢口しかしらない裕子で。

 笑い掛けないで。

 話し掛けないで。

189 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時12分14秒


 子供の独占欲で縛ったら
 怒ってくれていいから。


 抱きしめてくれる腕を。
 囁いてくれる言葉を。

 なくしたくない。

 失いたくない。



「……ふぇ…」


 誰かにここまで依存したのって
 産まれて初めてだよね。

 好きな人があれだと
 かなり苦労する。

190 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時12分51秒


 ある意味、初恋だと思う。


 些細なことでも気になるし。
 素直になりたくて、なれないし。

 周りの冷やかしだって
 なんだか嬉しくて恥ずかしい。

 大好きだけど。
 大嫌いにもなる。


 でも、本当は好き。

191 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時13分27秒


 だからヤキモチだって妬くし
 今日みたいなことがあれば不安にもなる。

 もうお互いにそんな歳でもない。
 そんな時期も過ぎたはず。

 それでも。

 逢いたくて逢いたくて
 眠れない夜だってあるんだ。


 ねぇ、裕子は?

 裕子はそんなことないの?


 矢口がいなくて寂しいとか
 逢えて幸せだとか言ってくれるけど。

 本当はどうなの。
 なんて。

192 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時14分02秒


 疑うこと自体が不毛。
 そんなことわかってる。

 何度も疑って。
 何度も泣いた。

 その度に裕子は優しくて
 矢口はそれに甘えることができた。


 子供だけど…。

 でも、ちゃんと恋してる。

 矢口は裕子が好きなんだって
 胸を張って叫んでやれる。



 子供だから、かな…。

193 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時14分37秒
 矢口のアホ。


 なにを気にしてるんかは知らんけど
 あの徹底的なムシはなんやねん。

 いつもみたいにじゃれついて来んし。
 ミニモニ。もイマイチやったし。

 可愛いかったけど。


 調子でも悪いんかと思ったら
 吉澤なんかと盛りあがっとるし。

 確かに吉澤って矢口の好きそうな
 可愛い系のボケやけど…。

194 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時15分24秒


 まさか。


 まさかとは思うけど、飽きたか?
 やっぱり若いのがええんか?

 裕ちゃんはアカンか…。



「……はぁ…」


 あぁ…。

 アカン。ため息出る。


 やっぱ歳の問題かなぁ?

 矢口が若いのがええんやったら…
 アタシ、捨てられてまうんと違う?


195 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時15分58秒



「…矢口…」


 吉澤と笑いあってもええし。
 加護と遊んでもええよ。

 けど。

 アタシしか見たことない顔で。
 アタシしか経験ない態度で。

 見つめんとって。

 触らんとって。

196 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時16分41秒


 情けない欲望が暴走したら
 その手で止めて欲しい。


 抱きしめる権利を。
 安らぐ声を。

 奪わんとって。

 攫わんとって。



「……くそっ…」


 誰かにここまで縛られたんて
 産まれて初めてかもしれん。

 好きな人が人気あると
 なかなかしんどい。

197 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時17分17秒


 経験のない、初恋みたいや。


 ちょっとしたことも気になる。
 だけど、素直すぎる自分が怖い。

 暑いなぁとか言われても
 ほっとけって言い返せる権利が好き。

 愛してるけど。
 言葉にできない。


 大好きや。


 重い言葉を避けて歩いて
 自分だけ楽して不安にしてる。

 19なんてまだまだ子供やから。
 付き合ってる期間なんかアテにならんから。
198 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)02時17分51秒

 やから。

 逢いたいって言われたら逆らえへん。
 ずっと傍に居ってやりたくなる。


 なぁ、矢口?

 アンタはちゃんとわかってるんか?


 アンタが居らんと淋しいで。
 一緒に居れたら幸せやねんで。

 本気やってわかってる?
 知ってるか?

199 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月16日(月)03時03分07秒


 疑われたら悔しい。
 またやってもうたって。

 何度もアホなことして。
 何度も涙を拭って。

 後悔の償いに優しさをわけて
 矢口を安心させてやることができた。


 子供なんやで…。

 だから、恋愛してる。

 みんなに言いたいって思ってるのは
 アンタだけと違うんや。


 2人とも、子供や…。


200 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月17日(火)00時52分52秒

 矢口に呼び出された階段で
 うずくまってる小さい子供を見つけた。

 その背中が見るに耐えなくて。


 小さな身体を
 包み込むように抱きつく。



「……アホ…」
「…矢口もな」


 そう言うたら腕の中で反転して
 いつものように腕が回る。

 首に感じる。
 腕に感じる。


 アタシの特権。

201 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月17日(火)00時53分26秒


 権利と義務は同時に発生する。
 そんなことを昔習った気がする。

 アタシにとっては10年近く前の話。
 矢口にとっては聞いたこともない話。


 アタシと矢口は違う。

 歩んできた世界が違う。
 覚えてきた知識が違う。

 知ってることも知らないことも
 これから共有していく。

202 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月17日(火)00時53分59秒


 権利と義務。


 アタシが持ってる権利は
 なかなかええモンばっかりや。

 矢口を抱きしめられる。
 傍に居れるし、好きやって言える。


 アタシが背負ってる義務は
 案外簡単かもしれんモンやろ。

 矢口を泣かしたらアカン。
 傍におらなアカンし、好きやって伝えなアカン。


 大歓迎やろ。


203 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月17日(火)00時54分53秒



 なぁ、矢口。

 アンタにどんな権利があって
 どんな義務が発生してるかは知らんけど。

 アタシと一緒やったら
 歩いていける気がせん?

 アンタと一緒やったら
 進んでいける気がすんねん。


 逃げてもええ。

 けど。

 逃げるんやったら一緒な?


204 名前:ハロモニ。 投稿日:2002年09月17日(火)00時55分45秒


「…置いてかんとってな…」
「…裕子がじゃん…」


 アタシは29で。
 この娘は19で。

 2人ともキリの悪い数字やけど。
 2人してきりの悪い数字やな。


 いっぱい泣かすし
 いっぱい不安にさせるやろうな。

 でもいつか言わして。


 愛してるって。


205 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月17日(火)00時56分24秒
終了。
206 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月17日(火)00時57分28秒
>読んでる人@ヤグヲタ さま

 >やぐちゅーキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
  と思ったら矢口が来てない(w
 お待たせしてます?すいません。
207 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月17日(火)00時59分02秒
>123 さま

 >ネット復活ーーー!!(w
  でもまだなのね…続き待ち?(w
  いしたかとかおよしも密かにあるのが(・∀・)イイ!!
 復活おめでとうございます。
 もう少し待っていただけたらと思います。
208 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月21日(土)10時07分28秒
   更新
209 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月21日(土)10時08分06秒


 思い出したら
 気になってしまう。

 ケイタイを取り出して
 まだかぁって言おうと思った。



「矢口ぃ?まだかぁ?」
「……もう着いたよ、アホ」


 電話の向こうでしてるはずの声が
 すぐ後ろでも聞こえた。

 ビックリして振りかえったら
 やっぱり矢口がいた。

210 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月21日(土)10時08分54秒


 自分なんやねん。

 着いてるんやったら
 なんか声かけぇや。



「だって…」


 そう言って矢口は目線を移した。

 その先には2組のカップル。


 …あれが何?


 言いかけた言葉を飲み込んで
 あぁそうかと納得した。



「矢口が一番やで?」
211 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月21日(土)10時09分45秒
「……知ってるけど…」


 知ってるんやったら
 ヤキモチなんか妬かんでも…。

 まぁ、妬いてくれた方が嬉しいけどなぁ。


 機嫌が悪くなった矢口に
 行こうやって言うて歩き出す。

 俯き加減やった矢口の顔が上がって
 ぼそっと呟いた。


212 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月21日(土)10時10分21秒



「…やっぱり鳥じゃん…」


 鳥。鳥類。


 矢口はよく
 アタシを鳥やって言う。

 鳥は捕まえ難くて
 いつでも飛んで行ってまいそうで
 すごく不安になるんやって。

 それを聞く度に
 アタシは心でツッコミをいれる。

213 名前:自由な鳥 投稿日:2002年09月21日(土)10時11分05秒


 ほなら籠にいれて
 ずっと捕まえといたれええやんって。

 籠に入れといたら
 逃げるなんてできへんやろって。


 矢口の手にはいつでも
 アタシを捕まえれる籠がある。

 小さな小さな
 矢口だけの籠があるんやからって。


 そんなことにも気づかへんやなんて
 やっぱり矢口はアホやなぁ。


 そう思ってたら
 矢口が耳タコの言葉を吐いた。



「アホ裕子」
「…お互いさまや」


214 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月21日(土)10時13分24秒
   終了
215 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月21日(土)10時15分04秒
散々待たせてこれか!とか言わないでください…。
更新したくても色々とあってできなかったんです。
216 名前:つなぎ服 投稿日:2002年09月21日(土)10時18分40秒
これからは短編か中編を書くと思います。
読んでくださっていた方がいらっしゃるのならありがとうございました。

また会う日が来るかは未定で。
それでは。
217 名前:名無し 投稿日:2002年09月24日(火)00時08分56秒
お疲れさまでした。
最初の頃から楽しく読ませていただいてました。
またお会いできる日を心待ちにしておりますm(_ _)m
218 名前:123 投稿日:2002年10月20日(日)04時12分29秒
お久しぶりです
忙しくて久々に来ました。
あの後短編書いていたんですね。
今読みました。とてもいいです
また読める日をお待ちしております〜!
219 名前:つなぎ服 投稿日:2002年10月27日(日)00時01分18秒
あ〜久しぶり。
220 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時02分07秒

 矢口、ちょっと機嫌悪し。


 今日は裕ちゃんとデートで
 朝から気合は入りまくりだった。

 けど、いざ待ち合わせ場所に着いてみたら
 裕ちゃんは楽しそうに後輩観察。

 矢口に気付きもしないで。

 そこは矢口も大人になって
 ちょっとだけ待ってみることにしたんだ。

221 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時03分13秒

 いつ気付くかなぁ?
 気付いたらなんて言おう?

 いつもみたいにアホって言って
 それからちょっと拗ねてるフリして
 近づいてきた裕ちゃんに抱きつく。

 うん、いいじゃん。


222 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時04分10秒


 ワクワクしながら
 矢口は裕ちゃんを待った。

 いつ振り返ったりしてもいいように
 準備万端で待ってた。


 結局、気付いてくれたのは
 それから随分と後だったけど。



223 名前:回想@矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時05分36秒



『…やっぱり鳥じゃん…』


 前にも言ったことがある。


 裕ちゃんは鳥みたいで掴めない。

 どこへでも好きなときに飛んで行っちゃうし
 好きなところへ遊びに行く。

 そんな裕ちゃんが好きだけど
 たまには捕まってほしい。


224 名前:回想@矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時06分21秒


 ちゃんと捕まえることができたら
 きっと一生籠に入れておく。

 裕ちゃんがなんて言っても
 誰が文句つけてきても
 矢口はきっと籠を開けたりしない。


 はぁ…できればいいのになぁ。



225 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時07分00秒


「お、可愛い服あるで♪」


 人の気も知らないで
 裕ちゃんはショッピング。

 さっきから自分好みの服を見つけては
 やたらと矢口に着せたがる。

 可愛いけどね。



226 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時07分51秒


「これなんかどうや?」
「んー、いいんじゃない?」


 裕ちゃんが持って来たのは
 矢口にはちょっと大人っぽいかもしれない
 豹柄のキャミだった。

 嬉しそうに持って来たそれを
 試着してってせがむ。


 ちょっと抵抗あったけど
 裕ちゃん、豹柄好きだし…。

 気に入ってくれるならいっか。


 そう思って試着室に入る。

 早速ドキドキしながら
 豹柄のキャミを胸にあてがう。


 うーん…やっぱちょっと大人っぽすぎ。


227 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時08分41秒


 裕ちゃんに合わせて背伸びしてるけど
 矢口はまだ18なんだよねぇ。

 しかもスタイルのいい大人な18ならともかく
 中学生くらいに見られることもあるような
 幼児体型+身長だからなぁ。



「…どーしよっかなぁ」


 異様に気に入ってたしなぁ。

 ムリヤリにでも
 頑張ってみよっかなぁ…。


228 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時09分49秒


 ちょっと矢口が悩んでたら
 試着室の外から声がした。



「矢口?どないやぁ?」


 矢口はどう答えようか迷う。


 大人っぽいとは思うけど
 こーゆーのもアリだよねぇ。

 裕ちゃんが選んでくれたんだし。

 でもなぁ、似合わないって言われたら…。

 うー…どーしよぉ。



「矢口?」


229 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時10分24秒


 そうだ!いい手があるじゃん!



「ね、裕ちゃん見てよ?」
「へ?見るって?」


 返事を待たずに扉を開ける。


 裕ちゃんが選んでくれたんだから
 裕ちゃんが見てくれればいいんじゃん。

 それなら矢口は悩まないで済むし。


230 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時10分59秒


「……」
「どう?」


 質問してるのに
 裕ちゃんは答えてくれない。

 答えるどころか
 呆然として会話もできない。


 しっかりしてよ。



「裕子ぉ」
「……はっ!」


 アホ裕子。


231 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時12分16秒


 やっと気がついたらしい裕子は
 さっきよりも矢口を見つめる。

 その視線があまりにも真剣で
 矢口が恥ずかしくなっちゃった。


 なんでそんな真剣なんだよぉ。

 なんか、メッチャ恥ずい…。
 そんなに見つめるなってばぁ。


 あまりにも恥ずかし過ぎて
 矢口が扉を閉めようとしたとき。

 いきなり裕子が入ってきた。



「ちょ!裕ちゃん!?」


 入った裕子は扉を閉めて
 律儀にカギまでかける。


 なんでカギなんてついてんだよぉ…。


232 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時13分12秒


 それから矢口の方を向いて
 更に見つめてくる。


 な、なんなんだよぉ。



「…なに?」
「や、似合うてるなぁって…」


 は?


 1人用の試着室の中で
 裕ちゃんと2人きりになっちゃった矢口は
 それなりに焦ってたんですよ。

 なのに、裕ちゃんはなに。


 似合ってるって?
 それは素直にありがとう。

 だけどこの状況で言う?
 ってか、それだけのために入る?

 なに考えてんの。


233 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時13分49秒


「近くで見たかってんもん」
「…あっそ」


 ならこんだけ近くで見たんだから
 文句ないでしょ?


 そう言ったら嬉しそうに
 そうやなぁって。

 そのときの裕ちゃんの笑顔が可愛くて
 矢口のスウィッチが入りました。

 とゆーわけで。


 ちょっと暴走します。



「…えっ?」

234 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時14分42秒

「動かないでよ?」


 え?え?って繰り返してる裕ちゃんを
 試着室の壁に押しつける。

 軽く爪先立ちして
 そのまま裕ちゃんにキス。


 いつも通りに長いやつを1回。
 でもちょっと工夫をした。



235 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時15分25秒

「…っ!?」


 いつもなら初めは軽いやつなんだけど
 今日は変えてみました。

 ディープに♪


 んー、裕ちゃん可愛い。
 思いっきり焦っちゃってるぅ。

 でも焦って当然だよねぇ。

 ここ、外だし。
 しかも、試着室だし。


236 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時16分07秒


 状況を知ってるから
 更に裕ちゃんは慌てはじめた。



「んぅ…んんっ!!」
「んーーー♪♪」


 それを当然の如くムシして
 矢口は更に攻める。

 裕ちゃんの首に腕を回して
 どんどん裕ちゃんの中に入って行く。


 歯の裏側をゆっくりなめて
 今度は表に回って。

 そのまま上下の唇を触る。

 舌を抜いても休むことなく
 唇で同じようにして柔らかく挟む。


 そうこうしてる間に
 裕ちゃんの身体は矢口よりも下にある。



237 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時16分52秒


「は…ぁっ…」
「あんまり声出しちゃダメだよ?」


 以前にもしたような優しい囁きで
 裕ちゃんを説き伏せる。

 矢口の言うことは絶対なので
 大人しくなった裕ちゃん。


 素直で可愛いよね♪


238 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時17分27秒


 それから唇に触れてたそれを
 顔中にくっつける。

 色んな所にチュってしてたら
 裕ちゃんの身体が震えた。



「……っ…」
「我慢、ね?」


 耳にキスされて
 裕ちゃんは真っ赤になった。


 弱いんだよね、ここ。

 息吹きかけられるだけでもダメだし
 指で撫でられるのもダメ。

 舌なんて…。


 知っててやってる矢口は
 けっこう性格悪いかもしれない。



239 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時18分03秒


「ぁ……あっ…」
「ダメだって。聞こえちゃうよ?」


 わざと弱いところに囁く。

 矢口の優しい忠告の息すら
 裕ちゃんには不安材料でしかないらしい。

 緩く抵抗をし始めた腕。

 矢口の肩を掴んで
 押し戻そうと頑張ってる。


 全く意味ないけどね。

240 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時18分42秒


 力の入ってない手を放っておいて
 矢口は先に進む。

 背中に手を回して
 手慣れた調子でブラを外す。

 パチって音が響く。



「!!!」


 その音を聞いて
 ビクッて裕ちゃんが強張る。

 これは別に外だからじゃない。

 裕ちゃんはいつでもこう。
 ビクビクしてて時々怖くなる。


 矢口、悪いことしてるのかなって。

241 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時19分24秒

 確かに裕ちゃんは矢口のこと好きだし
 矢口は裕ちゃんしかいないと想ってるよ。

 けど、たまにさ。

 忘れかけた不安とかが
 フッと蘇ってくるんだ…。



 だからなのかなぁ。

 裕ちゃんに当たっちゃうのは。



「ちょ…っ、ここで…?」


242 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時20分04秒


 …あぁ、ごめん。


 裕ちゃんに指摘されて
 やっと気付いた。


 矢口、本気でヤりかけてました。


 えっと矢口はイジワルですけど
 鬼畜ではないので。

 外で大事な人をヤッちゃうほど
 アホではないのです。

 ってゆーか、なりたくない。



「あ、あほ…」
「ごめんて」


 裕ちゃんの服を整えて
 矢口たちは試着室から出た。


 豹柄の服は買って貰いました♪

243 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時20分41秒

 んで矢口たちはそのまま家に直行。
 …しませんでした。


 戸惑ってる裕ちゃんを拉致って
 入りましたここ。

 ホテルです。



「初めて使うんだけど!」
「いや、使わんでええやん」


 ダメだめぇ。

 これは今日のメインイベントじゃん。


244 名前:回想@矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時21分31秒

 矢口がこの約束に扱ぎつけるまで
 なかなかの努力が要ったよ。


 矢口は文化祭のあるイベントで
 紗耶香たちと賭けをしてた。

 対象は文化祭の人気投票。
 商品は温泉ペア宿泊券。


 高校生の矢口たちには
 あんまり魅力はなかったんだけど
 相手が欲しがっちゃってさぁ…。

 結局はみんなマジ。


245 名前:回想@矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時22分12秒


 矢口だってペア宿泊券は欲しかった。

 だって勝てば裕ちゃんと旅行だよぉ!?

 温泉はどうでもよかったんだけど
 湯煙の中の裕ちゃん…。

 想像しちゃったらもぉ…
 譲れるかってことになるじゃん!



『のった!』
『おっしゃ!』


 ってことで演技指導にも熱がこもるわけ。

 加護が怖がってたのも知ってるけど
 矢口のためだ、我慢しろって。


246 名前:回想@矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時23分02秒


 参加者は矢口と紗耶香とごっつぁん。
 それとなぜか松浦もいた。

 裕ちゃん経由でみっちゃんが知って
 それでどうやら参加したみたいだった。


 で、それだとどう考えても
 矢口意外の3人が有利なわけ。

 何てったって軽音部だよ。
 しかもあのバンドだよ。

 演劇部じゃ勝てない。


 だから矢口は
 勝つことは諦めてた。


 代わりに。



247 名前:回想@矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時23分46秒


『勝てなかったら1ついい?』
『頑張ってもアカンかったらな』


 ちょっとズルイかなぁって思ったけど
 約束をしてもらった。

 勝てなくても頑張ったなら
 その労いとして1つだけ
 矢口のお願いきいてくれるって。

 だから矢口は
 頑張ってるフリをした。


 うーん、さすが演劇部♪


248 名前:回想@矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時27分42秒


 あ、結果はきかなくてもわかるけど
 軽音部が1位だった。

 けど3人とも同じバンドにいるから
 どうすんのって話になって
 ジャンケンしてた。

 んで強運が強いのは当然。



『ゴトーの勝ち♪』
『くっそーー』
『あぁ〜〜』


 ってことで温泉旅行は
 なっちとごっつぁんがゲット。

 でも矢口は別に悔しくないし♪

 おかげで裕ちゃんと…はあとはあと



249 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時28分20秒

 ホテルって使ったことなかったから
 矢口のお願いはそれ。

 はじめは渋ってたけど
 矢口に勝てるわけないんで。

 観念しました。


 で、今いるんだけど。

 矢口はさっきも言ったように
 初めて使うのでよくわかりません。

 裕ちゃんよろしく。


250 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時28分56秒


「…連れて来といて…」
「いいからぁ♪」


 はいはいって言って
 裕ちゃんがボタンを押す。


 なるほど。

 聞いたことあるけど
 ホントにあれだけでいいんだ。


 アホなことに感心してたら
 裕ちゃんに置いて行かれそうになった。



「行くで?」
「待ってよぉ!」


251 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時29分43秒
――――――――――――
252 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時30分36秒

 …暗い…
 …そして面白い…。


253 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時31分29秒


 部屋に入っての感想はそれ。

 なんと言ってもこの暗さはなんだ。

 ギリギリまで落とされてる照明と
 対照的に派手な飾り付けの室内装飾。


 …ん?

 あぁ、なんだ。
 裕ちゃんの部屋と一緒じゃん。



254 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時32分06秒


「…アタシの部屋にこれはない」


 あからさまに不機嫌な顔をして
 裕ちゃんはベッドを指差す。


 ベッドならあるじゃん。


 そう思ってベッドに近づく。

 と、ちょっと変わった物があることに
 矢口はビックリした。


 …おぉ?
 …もしや…。


255 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時32分42秒


 ベッドの側面についてるそれは
 明らかに電源“ON”“OFF”の表示。

 素直に押してみた。


  ウィィィ…



「おぉっ!!」


 ベッドが動いた!
 期待通りに動いたよ!


 楽しくなっちゃって
 そこにあるボタンを押しまくった。

256 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時33分13秒

 ベッドは左右どちらにも回転するし
 速さまで調節できたりした。

 後は照明が明るくなったり暗くなったりとか。

 普通っぽいなぁとか思って
 別のボタンを押してみたら…。


 うぉっ!?


 勝手にベッドが振動した。

 まるでジェットコースターで
 頂上まで昇る時みたいなカンジで。

 これにはさすがに
 耳年増の矢口もマジでびびった。


257 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時33分55秒


「…1通り遊んだ?」
「……ホテルってすごいねぇ…」


 なんか言ってることがなっちみたい。


 扉のすぐ近くで立ってる裕ちゃんは
 矢口のことを可愛いなぁって目で見てる。

 もちろん矢口は
 可愛いでしょって目で応える。

 そしたらフッて笑われた。


 あ、なんか余裕?



「先使う?」
「…いいよ」


258 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時34分50秒


 ほならお先って言って
 裕ちゃんはシャワーへ行く。

 その後姿を眺めながら
 矢口はちょっと悩む。


 かなり悔しい。

 確かにこーゆー所に来たことないけど
 でも主導権は矢口でしょ?

 なんであんなに余裕なのさ。

 ちょっとこれは
 なんとかなしないと…。


 くっそーって唸ってたら
 シャワーの水音が聞こえてきた。



「……いいじゃん♪」


 思い立ったら吉日。
 即実行が矢口のいいとこ。


259 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時35分39秒


「裕ちゃん?」
「!!?」


 矢口がバスルームへ入ったとき
 裕ちゃんは身体を洗おうとしてた。

 んで、それは見逃せない。

 イタズラ大好きな矢口なので
 チャンスは活かしてなんぼです。



「洗ったげる〜♪」
「やっ!こらっ!!」


 洗ったげるなんて言ってるけど
 いきなりチュってしちゃった。


260 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時36分12秒


 だって、ほら。
 裕ちゃんキレイじゃん。

 ちょっとだけ赤くなってる肌とか
 隠そうとする手とかさ。

 可愛くて仕方ないわけ。



「こ、こんなとこでせんでも…っ」
「いいのいいの」


 別に今日は
 1回とか言ってないし。

 心配しなくても
 向こうでもしてあげるから♪

 安心して大人しく。ね。



「…ぁああっ!」

261 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時36分53秒
――――――――――――――――
262 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時37分25秒


「…大丈夫?」


 心配して聞いてあげたのに
 裕ちゃんはあほぉって。


 ヒドイじゃん。


 矢口は矢口なりに
 悪かったなぁって思って
 ちゃんと謝ろうとしたのにさ。

 確かにさっきのはって思うけど
 仕方ないって言えばそれまでなんだって。


 可愛い裕ちゃんが欲しいって思っても
 それは正常な矢口なんだって。

 それがまぁ、今回はちょっとね。

 度を過ぎたって言うか。
 ヤり過ぎたって言うか。


263 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時38分00秒


 バスルームでのイタズラは
 イタズラで済む領域をちょっと
 ほんのちょっとだけ、いきすぎた。

 のぼせるからって言う裕ちゃんを
 矢口はムリヤリ3回も…。


 んで、もちろんのぼせて
 2人して今まで死にかけてたの。



「ごめんってばぁ?」
「………」


 もぅ、謝ってんのにぃ。


 ちっともこっちを見てくれないから
 仕方なく矢口が移動する。

264 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時38分38秒

 裕ちゃんの顔が見える位置までいって
 裕ちゃーんって声をかけてみた。

 そしたら裕ちゃんが…
 さっきよりもずっと小さい声で。

 矢口の大好きな音程で。



「……しんどいって…言うたやん…」


 そのとき見上げてきた目には
 うっすらと涙が…。


 ……あー…。

 裕ちゃんにはその気はないのかもだけど
 その表情とか、非常にヤバイかも。

 のぼせててしんどいし
 キツイのはわかるんだけどね。


 我慢って身体に悪いじゃん?


265 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時39分17秒


「…や…イヤや…」


 何されるか理解した裕ちゃんは
 身体を起こして逃げる。

 そんなことで諦めたりしないから
 裕ちゃんの腕を掴む。

 力入らないだろうって思ったんだけど
 案外そーでもないらしい。


 なんだ、大丈夫じゃん。


 罪悪感と心配があったから
 ちゃんと動けることには安心した。


266 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時39分58秒


 喉のつっかえもなくなったので
 矢口は本格的に動く。

 裕ちゃんを引っ張って
 頭をぎゅって抱き込んじゃう。

 耳にちゅってキス。



「ひゃっ…」


 肩をすくめる。

 気にしないで何回も
 ちっちゃい耳に口付ける。

 その内に裕ちゃんは
 ちゃんと声をあげるようになった。


 けど、腕が邪魔だよぉ。

267 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時41分13秒


 いい声で鳴いてくれてるのに
 押し返そうとする腕。

 いつもよりも頑固だから
 ちょっと…。



「……なんで?」
「…矢口、イジワルやから」


 知らなかったの?


 矢口はイジワルだって
 今更なこと言ってもダメだよ。

 矢口は止まる気なんてないし
 裕ちゃんだってもう困るじゃん?

 お互いさまだよ。



「あっ…はぁ……っ」


268 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時41分54秒


 バスルームの時よりは低いけど
 どんどん上がっていく体温。

 比例して赤くなる身体。

 その中でも一際紅く可愛いそこに
 キスして、それからぱくって。

 跳ね上がる身体を押さえつけるのも
 実はかなり楽しかったりして。


 んぅ……。

 固くなってきてる…。



「…は…ぁ……」


 いい声…。


269 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時42分41秒


 漏れ出した声のする方へ
 矢口は手を差し出す。

 その手を取って
 裕ちゃんは愛撫を始める。

 矢口の、手に。


 はじめは掌にキスしてくれて
 それから今度は甲に。

 そっと両手で支えて。

 それぞれの指の先に
 優しくキスしてくれる。

 それは爪だったり指の腹だったり。

 包み込んでくれるみたいに
 優しく、切なげに。


 胸の奥がぎゅってなる…。


270 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時43分26秒


「…ん……」


 トンって指先で触れると
 裕ちゃんの唇がゆっくりひらく。

 ちょっとだけ上に引き上げられて
 柔らかい感触が伝わる。


 …気持ちいい…。


 1番長い中指から口に含んで
 全体を撫でてくれる。

 関節の溝ができてる所では
 それに合わせて横向きに動く。

 なぞり終わったら
 下にさがっていって…。

 同じ繰り返し。

271 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時44分04秒


 指の付け根まで来ると
 指と指のその間をぺろって。

 舌の先だけが微妙に触れて
 くすぐったいような感覚になる。


 でも、ぞくってする。



「ん…ん……ぅ…」


 そのまま任せてると
 矢口がもっていかれちゃう。

 だからイジワルする。


272 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時44分52秒


 大事に扱ってた可愛い果実を
 味見でもするように噛む。

 痕がつかない程度に。



「んぅっ!!」
「っ…」


 痛みが走った。

 さっきまでは優しかったのに
 今度は噛み付かれた。


 矢口が悪いんだけどね…。


 ちょっと見上げると
 裕ちゃんの申し訳なさそうな顔。

 いつも以上に力が入って
 強く噛んじゃったみたい。

 血が滲んでた。


 あー、泣きそう…。


273 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時45分26秒


 なんで裕ちゃんが泣くんだって
 思ったけど言わない。

 代わりになめといてって。



「イタイことない?」
「…治るんじゃない?」


 なめると治るって言うじゃん。


274 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時46分22秒


 昔の人が言ってた格言なのに
 裕ちゃんはアホって。

 でも素直に再開。

 矢口はしばらくそれを見てたんだけど
 不意に顔を持ち上げた。


 傷を癒すみたいに頑張る裕ちゃん。

 そんなの見てたら
 指じゃもったいなくなる。


 引き抜かれたのを不思議に思って
 顔を上げた裕ちゃん。

 視線が絡む。

 両手を腕から放して
 近づく矢口を支えてくれる。

 ほっぺたに添えられた掌は
 矢口よりも冷たい。



275 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時47分10秒


「……ふ…っ」


 あ…血の味だ…。


 いつものように柔らかいそれは
 いつもはない味がした。

 鉄くさくて
 あんまり好きじゃない味。

 矢口にも裕ちゃんにも
 生きてる証拠として流れてる
 紅いジュースの味。


 へんな気分…。

 矢口ってやっぱり
 ちょっとヤバイ人かも?


 心の中だけで苦笑いして
 うっすら目を開ける。

 そこには切羽詰まってる大人。


 …あぁ…。


276 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時48分08秒

「…ゴメンね?」


 自分の手が動いてたこと。

 息継ぎができないくらいに
 激しくしっかり求めちゃってたこと。

 それに対しての謝罪。


 なめてもらった右手は胸を
 左手は拗ねたのか裕ちゃんの弱点を
 楽しそうに弄んでいたらしい。

 苦しくて辛くて
 でもしがみ付く意外できなくて。


 ゴメンね?


 無意識のイジワルをお詫びして
 素直に要求に従う。

277 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時48分48秒


 胸にあった手を下に下に
 身体に沿わせながらさげる。

 肋骨あたりとか脇腹とか
 触れるたびに裕ちゃんが震える。

 敏感すぎるくらいに。

 重ねあってる舌と身体に
 ビクッて反応が返ってくる。



「…んっ…んぁ…っ」


 くちゅって音がするそこを
 焦らすつもりでゆっくり撫でる。

 撫でながら、探す。

 小さくて可愛い蕾を。
 触れて欲しいはずのそこを。


 ……ん、かわい…。


278 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時49分29秒


 見つけた蕾にかるく触れる。

 するといきなり押し上げられて
 おぉって思ってる内に
 唇に逃げられた。



「…裕ちゃーん」
「…はっ…ぁあ…!」


 …しゃーないか。


279 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時50分02秒


 唇に逃げられちゃったから
 顔中にキスした。

 手も動いてたから
 裕ちゃんは激しく動く。

 そして差し出された白い喉。

 ちょっとだけ浮きあがってる骨に
 かぷって噛みついて
 舌で突つく。


 いいねぇ…。


 裕ちゃんが声を発するたびに
 声帯が振るえるのがわかる。

 時々引っ掛けたみたいに
 引きつった叫びが喉の奥で鳴ってる。

 それすら可愛い。


280 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時50分37秒


「…力…抜いてよ…?」
「……んっ…」


 一応、言ってみた。

 それはつまり社交辞令みたいなもんで
 たぶん意味は果たさない。


 …だろーね…。


281 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時51分10秒


 予想通りというか、まぁ…
 やっぱりそうなっちゃうわけで。

 抜いてって言ったのに
 全く逆のことをしてる裕ちゃん。

 力いっぱい構えてる。

 それじゃ痛いしやりにくいって
 自分がよく知ってるくせに。


 アホなんだから…。



282 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時52分23秒


「…あっ…あっ、ぁあっ」


 動かしはじめたけど
 動きにくくって…。


 なんだろ…。
 どーすればいいのかなぁ。

 いつもは放っとくんだけど
 今日は優しくしてあげたいし…。

 お詫びだし…。


 考えて…もうちょっと考えて…。

 で、結論をだした。



「ねぇ…裕ちゃん?」


283 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時53分16秒


 聞こえてないかもとか思いながら
 耳元に囁いてみる。



「…矢口……イタイよ…?」
「……ふっ…ぇ…?」


 お、聞いた。


 嬉しかったので
 そのまま話してみる。


284 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時53分53秒



「力抜いてくれないと…指…」
「…あ…あっん…」


 矢口、男じゃないから
 絞めつけられてもイタイだけだよ?

 なかなか奥に進めないし。

 裕ちゃん涙まで流して
 つらそうにしてるじゃん…?

 泣かないでよ…。



「……ね?」
「やっ…やぐち…」


 ……ちょっとだけ…待って?

285 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時54分47秒


 言われた通りに待つ。

 そしたら裕ちゃんが深呼吸して
 必死に息を整えてる。


 …あーんまり変わってないけどね…。


 不意に目を見つめてきたかと思うと
 左手を強く握られた。

 同時に左腕で抱き寄せられる。



「……裕子…?」
「…やさしく…してな…?」


 ………はい…。



「あ…」


 やさしく…。
 やさしくね…。


286 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時55分29秒


 裕ちゃんの中から1度抜ける。

 それからニコって裕ちゃんに笑いかけて
 大丈夫だよって。


 うん、ニコってゆーか。


 ……ニヤリ?



287 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時55分59秒


「―――っ!!」


 裕ちゃん甘いよぉ。

 基本的に矢口はイジワルだって
 忘れちゃいけないって。

 なんてーの?

 ほら、昔の人の格言で…
 あ、あれだよ、確か嘘も方便?

 格言をバカにする奴は
 格言に泣くってね。


 …違ったかな?

 ……ま、どうでもいいか。


288 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時56分46秒


「あぁ!!」


 押し入って来たのは
 プラス1の指。

 さっきまでとは違う圧迫感に
 裕ちゃんが叫びまわる。


 …可愛い…はあとはあと


 最後まで見てようと思って
 体制を整えようとしたんだけど…。

 右手は裕ちゃんの中で
 左手は捕まえられてる状態。

 普通にムリだ。

 どーしようか考えてたら
 視界が揺らいだ。


 おぉ…?!


289 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時57分19秒


 気がついたら
 かなり回りが見えにくい。

 どうやら裕ちゃんが
 思いっきり抱きしめてくれたらしい。


 でもこの状態じゃダメじゃん。

 顔は見れないキスはできない
 肩に噛みついたら痕が残っちゃうし。

 くそ、考えたな裕子。



「はぁっあっ!」


 …いいかも…。


 耳のすぐ近くで声が聞こえる。

 ピッタリ身体がくっついてるせいで
 中まで言葉が響いてくるカンジ。


 これはこれでアリかもしれない…。


290 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時58分01秒


 悠長にニヤケてたら
 裕ちゃんの声が変わった。


 あぁ、そろそろ?


 いつもの調子で速くしたら…
 今日はちょっと天罰かもしれないけどね。



「ちょっ…もぉ…あぁぁああっ!!」
「わっ―――!!」


 イッちゃう時に声が大きくなるのは
 裕ちゃんもだけど当たり前のはず。


 けどね、ちょっとさ…。


291 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時58分36秒


 抱きしめてくれてるのはいいけど
 そーすると当然なんだけど
 矢口とは顔が隣接する。

 んで隣でそんな大きい声出されたら…
 ちょっと困っちゃうよねぇ…。


 …でもなぁ。

 こればっかりは抑えとか
 絶対に効かないことだもんねぇ。

 …今回は矢口が悪かったってことで。


 ゴメンね?

292 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時59分47秒
――――――――――――――
293 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)01時00分24秒

「…大丈夫ですかぁ」
「………」


 さわやかな気分でシャワーからあがって
 なぜか敬語で話し掛ける。

 聞こえてるけど
 答えたくはないらしい。

 ベッドで丸まったまんま。


 よっぽど騙したのが
 気にくわなかったらしい。

 あれからずっと見てもくれない。


294 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)01時00分59秒


 可愛い嘘じゃん。

 あれくらい大きな心で許せよ。



「裕ちゃーん、裕子ぉ」
「……うっさい…」


 お、答えた。

 しかし矢口に向かってうっさいって…。
 なかなかスゴイことしてますよ。


 なんだとぉって言いながら
 裕ちゃんの上にダイブ。

 下でへんな音がしたけど
 あんまり気にしない。


295 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)01時01分33秒

「ゴメンね?」
「…思ってへんくせに…」


 あらバレた?



「もぉ…矢口のあほぉ……」


 んー、可愛いね。

 言ってることとやってること
 全く逆なところとか。


296 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)01時02分08秒


 アホとか言ってるくせに
 しっかり抱きついてきちゃう裕ちゃん。

 ゴキゲンがかなーりよいので
 よしよしってなでてあげる。

 そしたらまたアホって。


 …こらこら。


297 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)01時03分05秒


「今度言ったらもう1回するよ?」
「…そしたら明日、歩かれへんで…」


 …歩けない。

 裕ちゃんが矢口のせいで
 歩けなくなると…。


 うーん…。
 うぅーーん…。


 やっちゃっていいよね。



298 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)01時03分42秒

「うわっ!ちょっ!!」
「…あ!ここじゃダメじゃん!」


 そうだよ、ここじゃダメだ。


 今ここでやっちゃったら
 きっともう歩けなくなるでしょ。

 そしたら家まで連れて帰るの?

 いくら裕ちゃんが軽いったって
 矢口には運べる限度があるわけで…。


 帰ってからにしよ♪


299 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)01時04分39秒


「んじゃ帰ろう!」
「…動けへんわい!」


 えぇ?!

 しばらく待ってって?
 もーしょーがないなぁ。

 やっぱり裕子、歳だぞぉ。



「ムチャクチャやっといて言うなー!」

300 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)01時06分17秒
――――――――――――――――
301 名前:矢口真里 投稿日:2002年10月27日(日)01時06分48秒


  キ〜ンコ〜ン…



「今日は中澤先生がお休みのため…」


 あ、やっぱり?


 ん?なんでって?
 それは訊いちゃいけないよぉ。

 矢口と裕ちゃんの幸せライフ。
 邪魔しちゃダメだよぉ。


 もちろんとーぜんだけど。


 これからもね!



END
302 名前:つなぎ服 投稿日:2002年10月27日(日)01時10分54秒
>217 名無しさま。

 >またお会いできる日を心待ちにしておりますm(_ _)m
 一応、再登場いたしましたが…。
 いかがでしたか?
303 名前:つなぎ服 投稿日:2002年10月27日(日)01時12分28秒
>123さま。

 >また読める日をお待ちしております〜!
 掲載しようかどうか悩んだ末の番外編でした。
 今回のも楽しんでいただけたらと思ってます。
304 名前:つなぎ服 投稿日:2002年10月27日(日)01時13分43秒
これにて本当に終了。

昨日のMステやMUSIXなどネタはつきませんなぁ。
また書ける日が来るだろう。いつかは。
305 名前:竜之介 投稿日:2002年10月28日(月)01時10分10秒
戻って来られるのをお待ちしておりました!!
>これにて本当に終了。
えっ!まじですか?このシリーズの設定・人間関係が大好きなのに・・・
特に今回の更新分の二人のチカラ(笑)関係が。
168でおっしゃっていた過去の話が読みたいです!!
このシリーズで「冬の風物詩」も書いていただきたかった・・・
つなぎ服さんの「いつか書ける日」を楽しみにお待ちしております。

306 名前:つなぎ服 投稿日:2002年10月28日(月)23時59分14秒
>305 竜之介 さま。

 >168でおっしゃっていた過去の話が読みたいです!!
 えぇっとぉ…?ちょっとその話はまた長くなるので時間のあるときに…。
 年末で、それが終わるとちょっと試験とかで忙しくなっちゃうんで…。

 >「冬の風物詩」
 冬の風物詩ってなんですかね?
 鍋とかスキーとかクリスマスとかお正月とか…。
 ちょっと考えてみます。頑張ります。気付いてくださったんで。
307 名前:123 投稿日:2002年11月25日(月)16時50分24秒
本当に終わっちゃうんですかぁ?
オガコンの行方も気になります〜〜!
マータリお待ちしてますねw
308 名前:つなぎ服 投稿日:2003年01月13日(月)16時14分10秒
お久しぶりです。
まずはレス返しから。

>123 さま。

 >オガコンの行方
  あぁ、スイマセン、これに関しては…(爆) 
  代わりにと言っちゃえばってカンジなんですけど。


矢口さんの誕生日にここで小話を載せます。
もちろん『夏の風物詩』の設定です。

ではでは。1月20日までさようなら。
309 名前:つなぎ服 投稿日:2003年01月20日(月)23時25分15秒
てことで、更新。
310 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時25分54秒



 1月20日        
              
              
 私にとって大切な日。 
                   
 大切だと言ってくれる人たちがいる。
                   
 一緒に笑ってくれる人たちがいる。
                   
                   
 だから私は、幸せだと思う。
                   


311 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時26分42秒


「ハッピィバースディ♪」
「おめでとー!」


 1月20日。



「Presents for you」
「……なんで英語なのさ、圭ちゃん」


 みんなからのお祝いの言葉が
 むず痒くて嬉しい。

 ありがとう。


 心の底から伝えたい。



「ついに二十歳だよぉ」
「見えないけどね」


 …素直にそう言えないやつもいるけど。

312 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時27分24秒

 今日は矢口の誕生日。
 みんなでパーティしちゃってます♪

 ここは実は人の家なんだけど…。

 入っちゃってます。
 てゆーか、入れちゃうんだもん。



「合鍵だってさ?」


 はい。そうです。

 そんなの何年前の話だよ?


 さぁ?忘れちゃったべさって
 ニコニコ笑いながらなっちが言う。

 それにつられるようにしてみんなが笑う。


 ここは矢口の家じゃないけど
 でも、矢口の家なんだよね。

 
313 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時27分59秒
 

「…で、本人は?」
「……んー、出張らしいんだよねぇ…」


 ここの家の主は不在。
 つい3日前から北海道に出張です。


 なにもこんな日に…。

 矢口の誕生日に帰ってくるとか…
 でも間に合わないかもとか…。

 そんな危ない賭けしなくてもいいじゃんかよ。


 ……アホ…。



「まぁまぁ、帰宅を信じて待ちましょう!」
「そうそう。私たちもいるんだし?」


 うん、わかってるよぉ。


 今日は思いっきり騒いじゃいましょー!

 一応、ご近所に迷惑じゃない程度でお願いします。



「うっす!!」

314 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時28分29秒


 紗耶香のその声を合図に
 みんなが持ち寄った袋を開ける。

 中から出てくるのはもちろんお菓子。


 紗耶香の袋からはポッキーとかビスケット。
 まぁ、紗耶香にしては普通だと思う。

 カオの袋からはポテチとかオーザック。
 ……なにが違うんだろう…。

 なっちの袋からはジュース類。
 さすがなっちだね。気が利く!


 ………はぁ…??



「……これはおかしくない?」

315 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時29分21秒


 圭ちゃんの袋からお酒の肴。
 これは百歩ゆずって納得できる。

 でもねぇ…。

 ごっつぁんの袋からも同じようなもの。
 ピスタチオに…バタピーに…なんなんだこれは。

 一般的な大学生だからとは思うけど
 これはちょっとねぇ…。


 オヤジくさいよぉ。



「あ〜講義受けてるからじゃない?」
「………あのねぇ…」


 あの人の講義受けてるからって
 どうしてオヤジくさくなるんだよぉ。

316 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時29分59秒


 …いや待て。
 突っ込むのはそこじゃない。

 オヤジくさいってなんだよ。

 確かにちょっとそう思うことはあるけど
 そこまでオヤジ化してないもん。



「えー?」


 えーって…失礼なっ。

 確かにお風呂上りのビールでプハァとか言うし。
 すぐにセクハラまがいのことするけど。

 ……するけどぉ…。



「…矢口の前でだけは可愛いし?」
「そうだ!それ!」


 オヤジの特徴にそれはないだろ!?

317 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時30分35秒


 ちょっと甘えたいなぁとか思ってるんだけど
 自分からはなんともできなくて迷ってる顔とか。

 酔っちゃうとすぐ寝るんだけど
 束の間の可愛い仕草とか。

 弱々しく矢口の腕に掴るとことか…。


 それはオヤジにはない!
 裕ちゃんだからできることだ!


318 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時31分20秒



「そんな力説してると…」
「あーなんだっけ?噂をすれば?」


 噂をすれば影がさす?


「 ただいまぁ!! 」


 ……マジすか…。


 ―――どだだだだだっっ……



「矢口ぃ!ごめんなさい!!」
「……おかえり…」


 入って来るなりゴメンナサイって…。
 どーしてこうなんだろ…。

319 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時31分51秒


 矢口たちの目の前には
 本当に焦ってきました!って姿の裕ちゃん。

 あーあー、ほらっ。

 髪の毛ぐしゃぐしゃになってるし。



「…怒ってへん?」
「なにを?」


 出張に都合付けろって言ってもどうしようもないじゃん。
 どうにもならないんじゃねぇ?

 ここで裕ちゃんに当たっちゃうと
 それこそ矢口が悪い人なっちゃうもんね。

 怒ってないから。

320 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時32分28秒


 怒ってないからこっち向いて?



「…誕生日、おめでとうな…」
「うん、ありがとう」


 目を細めて笑った裕ちゃんに
 3日ぶりのキスをした。

 突然の、しかも人前でのことに
 裕ちゃんはいつも以上に慌てふためいてくれた。


 やっぱ可愛いねぇ。
 お決まりのように顔は真っ赤だし♪

321 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時33分05秒


 裕ちゃん帰ってきたけど…
 紗耶香たちはどうするんだろ…。
 気を利かせて帰るのかなぁ…?

 矢口はこのままみんなでパーティもいいけど
 できれば裕ちゃんと2人でって…。

 いやいや。
 それは自分勝手だ。


 やっぱ、みんなでやろう。



「いや、帰るし」
「お邪魔したくないもん」


 えぇ?!ごめん!!

 さっき思ったことなら訂正するから
 みんなでやり直そうよぉ。


 泣きそうになってる矢口の横を
 圭ちゃんたちはすり抜けていこうとする。

 その先には裕ちゃん。

 だったら矢口のとる手段は1つ。

322 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時33分44秒



「裕ちゃん、止めて」
「うぇ?!あっ、はいっ!」


 素直に矢口の言ったことに従う裕ちゃん。

 脇をすり抜けていった圭ちゃんたちを
 猫掴みして引き止めてる。


 …ま、いっか。


 ちょっと可哀想な光景だったんだけど
 逃げられちゃうよりはマシだしね。

 説得しましょう。


323 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時34分14秒


「みんなでやろうよぉ」
「だって邪魔じゃん!!」


 邪魔になんかしてないじゃん!

 確かにちょっと思ったけど
 それはそれ!もう改心したから!


 そう言ったら今度はなっちが
 でもねって言葉を続けた。


 でもねじゃなくってさ!

 今日の主役の矢口が
 みんなでやりたいって言ってるんだよぉ。

 だからさ!やろう?


324 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時34分50秒



「けどさぁ…」


 なっちの次はごっつぁん。
 んで、カオも熱弁し始めて…。

 それに対して矢口が反論する。


 そんなこんなで数分。



「…さっきから何の話?」


 この状況が理解できていない人。
 裕ちゃんが声をあげた。

325 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時35分23秒


 …何の話って…。

 これから矢口の誕生日パーティを
 裕ちゃんも含めたみんなでやり直そうって
 矢口は説得してるんだよぉ。

 でも圭ちゃんたちは悪いからって。

 だからさ、裕ちゃん。
 矢口の味方になってよ。



「…もちろんやん」


 そうそう。ありがとうね。


326 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時37分02秒



「自分らここおりぃや」
「え、でもさぁ…」


 だから、邪魔になんてならないってば。



「アタシら出ていくし」
「え…?」


 そうそう。出ていくし。

327 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時37分39秒


 ……誰がっ。

 ちょ、ちょっと裕ちゃん?!
 誰が誰と出て行くって!!



「アタシが矢口と」
「なんで?!」


 ま、ま、ええから。


 軽い口調でそう言って
 裕ちゃんは矢口の腕を掴んだ。

 そのまま、あっという間に玄関を出て
 予告通りに家から出てきてしまった…。


 …圭ちゃんたち放置だよ…。

 いや、本題はそうじゃないんだけど。



「ん?なに?」

328 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時38分16秒


「…どうかしたの?」


 裕ちゃんが強引になってる。

 あの裕ちゃんが。


 気がつけば矢口は裕ちゃんの車の中で。

 なんだかわからないけど
 いきなり車は発進してるし。

 裕ちゃんは隣で真剣だし。


 もぉ矢口、意味わかりません。


329 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時38分55秒


「…どうもせんよ?」


 うそだよぉ。

 なんかあったんでしょ?
 じゃなきゃありえないってば。



「あったっちゅーか…」


 なに?話してみてよ?
 裕ちゃんの支えになりたいんだよ?

 矢口にできることならなんでもするから。


 ……裕ちゃん…?

330 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時39分31秒


 不意に目に入った裕ちゃんの横顔は
 真っ赤に染まってた。

 月明かりしか差し込まない
 薄暗い夜の車の中でもわかるくらいに…。



「…なに?」
「……ん?…やから、その、な……」


 話しにくそうに言葉を詰まらせて
 一生懸命なにかを伝えようとしてる裕ちゃん。

 その姿は矢口の心を
 身体ごと全部、切なくする。

331 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時40分05秒


 …矢口じゃダメ…?



「もうちょっと、待って?」
「…うん…」


 裕ちゃんが話せるようになる日まで
 矢口はちゃんと待つ。

 矢口はこー見えても
 待つのは慣れっこなんだよぉ。

 仕事で帰宅時間のわからない裕子を待って
 ご飯作ったりしてたんだからなぁ。


 忍耐力には自信あり!


 …特殊な場合を除いて…。
332 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時40分41秒

「…で、どこに向かってるの」


 車で走ってすでに数十分。

 裕ちゃんの運転するコイツは
 本当に裕ちゃんの意見を聞いているんだろうか。

 どんどん山奥に入って行く。
 おかしな話だろぉ。


 こんな時間の山道なんて
 すっごく危ないって聞くし
 この先になにがあるんだよぉ。

 裕子ぉ、大丈夫?

 道に迷ったなら携帯で連絡して…。



「着いたで…」
「え?着いたってどこ……っ!!」

333 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時41分13秒


 矢口たちが登ってきたのは
 やっぱり夜の山道で。

 その先にあるのはどう考えても
 なんにもないただの山頂。

 そう思ってたけど。

 今、目の前に広がってるこれは
 そんな素っ気無いものじゃない…。



 暗闇に浮き霞む光たち。

 こんな時、都会もいいと思う。



334 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時41分43秒



「キレイやろ?」


 うん…キレイ…。



「よかったぁ、矢口に見せれて」


 これを見せる為に?

 こんな夜の山道を?

 出張がえりで疲れてるのに?



「…矢口の…お祝いの日、やから」


 どうしても見せたくて。
 でも、どうしても2人きりがよくて。

 だから、ごめん。

 圭ちゃんたちにゴメンと。
 強引にしたことにゴメンと。


335 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時42分13秒


「………」


 裕子って…
 すごく可愛い大人だ。

 いつもは矢口よりしっかりしてて
 色んな人に頼られる存在なのに…。

 でも矢口の前では弱くって。


 そのくせ、結構強がりも多い。

 だからいつも矢口は心配で
 だからいつでも裕子は独りじゃなくて…。


 手のかかる大人。
 けど、しっかりしてる小人。

 だから可愛い大人。


336 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時42分51秒


「…たまには強い裕ちゃんもええやろ?」


 いつもは言わないセリフ。
 いつもはないカッコイイ笑顔。

 大好きだ。

 弱くて可愛い裕子と
 強くて素敵な裕子。

 大好きだ。


 裕ちゃんはいつでも矢口の心に
 白と黒の気持ちを置いて行く。

 その両方が好き。

 白い気持ちも黒い気持ちも好きだ。
 裕ちゃんのことを好きだから。

 好きだから生まれてくる気持ちだから。


337 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時43分25秒



「………」
「……」


 矢口の誕生日に
 裕ちゃんから贈られたプレゼントは
 キレイな景色と意外な本音。



338 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時43分55秒


 ――― 裕ちゃんは ―――


『ホンマはな…思ってるんよ?

 もうちょっと強引に…
 ちゅーか、積極的になりたいなぁって。』



 ――― 景色しか見てないけど ―――



『矢口ばっかり引っ張ってくれて。

 アタシは自分が情けないて
 ちゃんと、わかってるんやで?

 周りに散々言われてるけど
 そんなんアタシが1番よくわかってるねんっ。』



 ――― 矢口を見てないけど ―――
339 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時44分29秒



『……けど…なぁ…?

 裕ちゃん小心者やからな…
 めっちゃ難しいねん…。』



 ――― 見てくれないけど ―――



『でもな?

 今日で矢口も二十歳やし、大人やし。

 アタシがおらんでも、きっと
 これからも頑張っていけると思うねん。』



 ――― でも、今までとは違うよ ―――

340 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時45分03秒



『…やから、アタシも頑張るねん。
 これから先、矢口がアタシから離れんように。

 矢口に“アカン大人“やって思われて
 捨てられんようにするねん。

 これから裕ちゃん頑張るから。

 やから…お願いやから…。』



 ――― 強い意思がある ―――



『 捨てんといて…? 』



 ――― 例えそれがなんであれ ―――


341 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時45分33秒



『アタシ、矢口のために頑張るで?
 矢口のためだけにやで?

 メールも電話も毎日するし
 手もつなぐし腕も組むようにするし
 キスも裕ちゃんからするように努力するから…。』



 ――― 裕ちゃんにとっては ―――



『矢口がして欲しい言うたら
 なんとか頑張ってみるし
 できるだけ応えるつもりやし。』



 ――― 大きな一歩なんだろう ―――


342 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時46分03秒


「…だから、少々は許してあげるよ♪」
「…なにが??」


 本当なら、突っ込むけどね。

 例えば“努力するから”っておかしい。
 “なんとか頑張る”ってのもどうかと思うし。

 なんか矢口が裕ちゃんに
 無理強いしてるみたいじゃん?



「…そぉ…やなぁ…」
「こらこら」


 ゆっくり笑ってみせる。

 宣言・決意表明のすぐ後なのに
 裕ちゃんは今までの弱気のままで。

 さっきのは意味あったんだろうか。
 なんて思ってしまう。


343 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時46分44秒


 矢口と裕ちゃんの気持ちにあるズレは
 きっとそんなに大きくない。

 埋めるのに時間は掛かるかもしれないけど
 埋まっちゃうのは案外簡単で。


 要は、やっぱりはじめの一歩だと思う。


344 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時47分20秒



「…で?」
「ん?頑張るんでしょ?」


 その一歩を矢口はサポートする。


 まず積極的といえばこれでしょ♪

 なんと言ってもこれが1番の難所だし
 矢口も今、すっごいそーしたい気分だし。


 場所は車の中しかないんだけど
 それでも矢口には十分で。

 かるく裕ちゃんを引っ張り込んで
 あっという間に後部座席に押し倒す。



「ちょっ!!いきなりっ?!」


 はい、いきなりです。

345 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時47分55秒


 裕ちゃんの服を一機に脱がせて
 晒された胸にそっとキスする。

 こんな刺激でも敏感に反応する裕ちゃんは
 ビクッて肩から震えて、腕を矢口に絡めてくる。


 おっ?おぉっ??


 いつもは絶対にしないこと。

 絡めた腕の先から伸びたキレイな指先で
 矢口の耳を愛撫しはじめる。

 あまりにも優しく触れられて
 一瞬、矢口がもっていかれそうになる。


346 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時48分25秒



「矢口………好き…」


 うぁ、それ、もぉ。
 裕子さん可愛すぎですっ。

 頑張った裕ちゃんにご褒美として、すっごい甘い囁きと
 気が遠くなるくらいに気持ちいい時間をあげちゃうっ。

 矢口を、感じてね?



「…うん」

347 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時48分59秒


 素直に返事をした裕ちゃんの首筋に
 いつもは決してつけたりしない痕を残す。

 今日はダメだ。
 裕ちゃんのせいで上手くいかない。
 自分が制御できない。

 頭ではやっちゃダメだとわかってることを
 どんどん裕ちゃんにしちゃってる。



「…いっ…イタッ…ちょっ…っっ」


 まだまだ準備のできてない中に
 どうしても入りたくなった。

 痛がってる裕ちゃんを見て
 やっぱり泣き顔が1番可愛いかもとか…。

 矢口、ヤバイって。


 自分で自覚はあるけど、止まらない。



348 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時49分32秒

 好きな人はいた。
 けど、こんな人はいなかった。

 毎日会ってるのに満足できなくて
 1番近いはずなのにまだまだ傍に行きたくて
 身体中が足りないって叫んでる。


 裕子を好きになって初めて知った。

 人を愛するってことの意味の深さを知った。

349 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時50分05秒


 苦いとか切ないとか言われてるけど
 本物はもぉ、そんなんじゃ言い表せないくらいに
 たくさんの気持ちが溢れて、止まらなくなる。

 自信は持ってるけど不安になって
 やつあたりして、後になって後悔して。

 恋は人をバカにする。

350 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時50分40秒


 ねぇ、裕ちゃん。

 人を愛するってことは
 自分を認めるってことなのかもしれない。

 弱い自分を。強い自分を。

 嫌いなとこも好きなとこも全部。

 全てを見せたりはしないんだろうけど
 それでも見せない部分を自覚してる私がいる。

351 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時51分15秒



 私は、強くなった。
 けど、弱くもなった。

 認めることで強くなって
 さらけ出すことで弱くなって。

 そんな気がする。


352 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時51分45秒


「…あ…」
「……ん…?」


 デジタルの数字が夜明けを告げて
 矢口の特別な日、1月20日は終わった。

 でも、まだまだ続く。

 だって矢口の誕生日は来年もある。
 もちろんその次だってある。

 だから、まだ続く。
 まだまだ、続いていくんだ。

353 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時52分20秒


 矢口の特別な日。

 誕生日だけじゃない特別な日。
 きっとそれは1年が全部。

 だって矢口には他の人にはいない仲間がいる。
 大切な家族だっている。

 みんながみんな唯一無二の存在。

 支えてもらって、支えて。
 一緒に泣いて、笑って。


 ただ、少し違うのは…。



「矢口?」
「…目、閉じる。マナー違反だよ?」

354 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時52分51秒


 裕ちゃんは特別中の特別。

 超ファーストクラスだってことくらい。

355 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時53分22秒
―――――――――――――――――――――――――――
356 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時54分13秒

『 なぁ、矢口。

 アタシは強くなるから。


 その時には、ちゃんとした言葉と

 もっと大きな愛を添えて

 もっと矢口に似合う指輪を贈るから。


 今は、気まぐれでもいいから

 アタシに矢口の未来を託してくれへん…? 』

357 名前:特別な日 投稿日:2003年01月20日(月)23時54分49秒
 矢口の指にすっぽりサイズの
 仮・婚約指輪を見るたびに
 裕ちゃんが言ってくれた言葉を思い出す。


 今はただ、待つだけ。
 そして、思うだけ。





 本物はダイヤモンドでありますよーに♪
358 名前:つなぎ服 投稿日:2003年01月20日(月)23時55分29秒
終了です。
359 名前:つなぎ服 投稿日:2003年01月20日(月)23時57分30秒
危なかった…ギリギリいっぱいでしたね。

以上で、矢口さんの誕生日を祝う企画は終了です。
そしてこの板も、同時に終了とさせていただきます。

今までお付き合い頂いた読者のみなさま、ありがとうございました。
360 名前:つなぎ服 投稿日:2003年01月20日(月)23時59分29秒

では、最後に。

矢口さん、お誕生日おめでとうございます。
中澤姐さん、これからも矢口さんを大切にしてあげてください(違)




最後にちょっとageてみたり(w
361 名前:つかさ 投稿日:2003年01月21日(火)00時06分34秒
違わないっす(さらに違う)<矢口さんを大切に

待ってました。
お疲れ様です。
これで心置きなく寝れる・・・・・・(笑)

この板は終わり、ですよね?
な〜んて・・・・もし次回作があるなら楽しみにしてます。
ありがとうございました。
362 名前:竜之介 投稿日:2003年01月23日(木)00時29分03秒
夜景を見ながらの裕ちゃんの言葉のあたりから
何だか泣いてしまって…悲しい物語じゃないのに…
やっぱり好きです、つなぎ服さんが・このシリーズが!!
某所での某企画も読みました!!あそこでのHNは違いますが私も入院患者です☆
リクエストした身として、こんなに嬉しいことはありません!!
この板が終わるのは寂しい限りですが、また逢える日を楽しみにしています。
最後に 愛すべき二人が幸せでありますように。
363 名前:つなぎ服 投稿日:2003年01月26日(日)01時09分10秒
>つかさ さま。

 >これで心置きなく寝れる・・・・・・(笑)
  またまたそんな嬉しいこと言ってくれちゃって(笑)
  某所の方では良い作品をありがとうございました♪
  もちろんこれからも頑張って下さいね?(強制)

>竜之介 さま。

 >あそこでのHNは違いますが私も入院患者です☆
  同じく入院患者のつなぎ服です。まだ申告で来てないんですけど…。
  私の作品なんかで泣いていただけるなんて…あなたは感受性豊かな人なんですよ…。
  これからも2人の愛が続く限りいつかどこかでお会いしましょう(笑)

Converted by dat2html.pl 1.0