たとえどんなアナタでも

1 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時26分27秒
短編というほど短くもないのですがレスいっぱいにする自信がないので
このレスに何個か話を載せたいと思います。
2 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時27分51秒


タマシイとねがいごと

3 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時28分36秒

なんだか最近おかしいんだよね。


誰かに呼ばれてる・・・そんな気がする。
暇なとき探し回っちゃうんだ。

よくよく考えるとさぁ・・・
誰だかわからないのにみつけることなんてできないじゃん。




「おぅっやっときたか。」

4 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時29分07秒

え?
誰?

こんなとこにいるわけないかと思いつつも開けた勝手口の戸。
家のうらの祠の前にぐだっと寝そべってるヒトがいる。


・・・・・・ヒト?
じゃないじゃん!!


しっぽ・・・
ふさふさした白いしっぽが・・・


なんていうんだろ・・・着物っぽいの着てる。

でも矢口がよくしってるかんじのじゃない・・・
神主さんみたいの・・・でもそこまで堅苦しくない感じ。




で・・・

「何者?」

5 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時29分41秒

「・・・失礼な。祠の主に向かってそれはないやろ?」

むぅってアヒル口ですねてる。


「ほこらのヌシ?」

「そやで?いやしかし間に合ってよかった。
 力きえるとこやったやんか。」


ふわっと立ち上がってしっぽをユラユラゆらしながら
矢口のところへ来る。

「んじゃさっそく。」

ヌシは鼻歌を歌いながらうれしそうに矢口の上着のボタンを・・・


「・・・ってこら!!なにすんだよ!」

「え?」

そんな不思議そうな顔で聞き返されても・・・


「なにするの?」

「ちょっとタマシイをもらおうかと・・・」

6 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時30分32秒

はぁっ?

どんって押して突き放す。

「お?なんでや?」


ちょっとって?
タマシイ取られたら死んじゃうよ?


「痛くせえへんから・・・ちょっとだけ・・・な?」

そんな目して頼んでもダメだよ・・・


「矢口は死にたくない。」

「はぁ?なんで死ぬの?」


・・・違うの?


「アザあるやろ?」

あっアレのこと?
最近できた左の鎖骨のとこの動物の足跡みたいなアザ。


「アザのあるヒトのタマシイしか食べれへんねん。
 そのアザはアタシのごはんっちゅう印しや。
 むかしアンタの血族のもんと約束したしな。」


そんなことしらないよ矢口。

7 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時31分14秒

「ってことで・・・いっただっきまぁ〜す!」

「まって!!まだ納得してないんだってば!!!」

「うっさいなぁ腹へっとんねん。
 あれから食べてへんねんって・・・じっとしとき!」

ヤバッ・・・身体が動かないよ。





「どこやったかなぁ?」

楽しそうにボタンをはずしきって指で矢口の身体をなでる。


その手はヒトの手の形をしてるけどヒジと手首の真ん中ぐらいから先が
白色い毛で覆われていてツメは細くとがった獣のツメだった。


うぅっ・・・怖いよ・・・


「・・・たっ!」

肌にツメが当たって赤い糸ができる。


「あっごめん。」

ぺろってなめられると自分の意志では動かない身体がピクッと動く。

どうして?


「・・・かわええなぁ。」

矢口の戸惑いさえも楽しんでるのが感じ取れる言葉の響き。

8 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時32分04秒

うぁっ・・・ムカツク!!
コイツは矢口の反応をたのしんでるんだ・・・


「ヤだって・・・だいたいここって外だよ?」


「誰もこんよ。結界はってるもん。ゆうたやろ主やって。
 ・・・ここやったなぁ。もっとええとこにあったらええのに。」


ええとこって?




ぺろっ


やめてよ・・・


「ねぇ・・・ホントに死なない?」

「ん?マリは死にたい?」

ニヤッてわらいながら聞いてくる。


むかつくコイツ・・・身体が動いたら絶対なぐってる。



「死にそうな気分にはしてやれるで?」

くくくってわらいながら妖しげに目を細める。


うあぁ・・・エロいぞコイツ!!
ヤダよぉ・・・やっぱりヤバいじゃん。

逃げたいのに立ち尽くしたまま身体は動かない。


「冗談は置いといてっと・・・いっただきまぁ〜す!」

「イヤぁ〜!!」

9 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時32分41秒


アザに唇が触れる。



え?!

そこから矢口の身体のなかになにかが入り込んでくる。
身体の内側を舌でなぞられるような感覚。


「ヤッ・・・なにこれっ・・・」

身体が震える。
あいかわらず矢口の意志以外でなら動くらしい。


外側からの刺激と比べ物にならないほど・・・気持ち・・・いい?
ヤバいって・・・マジで!

あれ?
これはじめてじゃ・・・ない?

内側からの直接の絶妙な・・・ほんとだったらありえない摩擦。


・・・やっぱり気のせいかな?
こんなのはじめてだよね?


10 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時33分41秒


傷つけられることはないんだってことがわかる。
やさしくやさしく触れてくるから。


大丈夫なんだ・・・


「っ・・・んっ・・・ぅんっ・・・」

ヤダ・・・身体が動いちゃうよ。

はじめは平気だった刺激も矢口自身の心の変化のせいで
耐えがたいほどの甘い眩暈を感じさせる。


「・・・ねぇ・・・っ・・・ちゃんと抱きしめてよぉ・・・」

あ・・・なにいってんだろ。

でもホンネなんだ。
触れてるのがアザの部分だけなんて・・・つらい。



座り込んでひざの上にのっけてギュッて抱きしめてくれる。

こうしてくれなきゃ内と外のギャップで
どんどん不安になっちゃうじゃん。

11 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時34分37秒

腕の中で安心しきってしまった身体に与えられる刺激。
それは簡単に矢口を追いつめる。

背中がゾクゾクしてときおり駆け上がるなにかに勝手に声をもらしてしまう。


「んん?!」


突然のはっきりした感覚に鳥肌がたつ。
指が背骨を数えるようにゆっくりゆっくりいったりきたり。

ダメだって・・・




イヤがってたくせに感じてる矢口がはずかしい。

はじめっから矢口がこうなっちゃうことを
見透かされてたみたいに思えて・・・



・・・・・・ヤなんだ?

やらしい子だって思われたくないんだ?

どうして?


12 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時35分34秒

まぁいい・・・そんなことどうでもいいよもぉ。
うぅ・・・熱いよぉ・・・

身体の奥に生まれた熱がどんどんひどくなって呼吸を速く浅くする。


ちょっと待って・・・なんでこんな・・・
・・・こわいよぉこんなの。

「んっ・・・ダメぇ・・・ねぇ・・・やめっ・・・」


なんだよこの声・・・
これじゃ矢口さそってるみたいじゃん。


背中をいったりきたりする指のところで
身体の外と内からの感覚がぶつかって徐々に意識を白濁させる。

もしこの手がもっと敏感な場所を触ったら・・・

・・・・・・なに考えてんだろ矢口。

もしかして欲しいの?

・・・もっと・・・もっと・・・


13 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時36分35秒

「・・・っ・・・んぅ・・・」

こんなとこでこんな声。
ねぇ・・・はずかしぃから聞かないでよ。

お願いだから矢口をなでるのやめて?
これ以上されたら矢口・・・・・・

ねぇダメだよぉおかしくなっちゃうよ。


アザのほうへ身体の中をなにかがズルズル引きずられていく。

それをじゅるって音を立ててのみこまれたとき
ストンと記憶がとぎれた。


14 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時39分32秒
更新終わりです。

しょっぱなからなに書いてるんでしょうかね。
かわいい感じのが書きたくなって・・・
15 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時42分21秒
でこれかよって突っ込んでください。

この話は3つの話しからできてます。
とりあえず1話目はじめました。
16 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月28日(水)23時43分04秒

ではまた週末に。
17 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月29日(木)05時43分21秒
矢口さん可愛い!
続きが楽しみです。
18 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月29日(木)12時03分04秒
ちぃさんの新作キター!!
待ってました(w
19 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月29日(木)15時20分24秒
ちぃさんの新作ぅ〜♪
嬉しいです!!
20 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月31日(土)21時51分46秒

更新します。
21 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月31日(土)21時52分28秒


『お母さん。このキツネさんの絵なぁに?』

びっくりしたような安心したような顔。

『あぁそれ?それはねうちの家をキツネさんが守ってくれてるって印しなの。』

『どうして守ってくれるの?』

『昔・・・ずっと昔にねうちのご先祖さんが約束したんだって。
 タマシイをわけるかわりにいうこときいてもらうって約束。』

『ふ〜ん・・・いうこときいてくれるんだぁ。いいねぇその約束。』

お母さんは複雑な顔でわらった。


22 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月31日(土)21時53分06秒

「・・・大丈夫かぁ?」

ん?
なに?

フワフワしたものが矢口のほっぺをなでる。
目を開けると心配そうな顔。


「・・・誰のせいだとおもってんの?」


自分のせいじゃん。


「ごめん。腹へってて・・・でも加減したんやで?」


すぐ目の前には申し訳なさそうな顔。
そのむこうでしっぽがゆれてる。


白い・・・キツネ?


「キツネなの?」

「そやで。」


しっぽの先でほっぺをくすぐられる。

さっきのってこれだったんだ。

23 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月31日(土)21時53分42秒

「イヌっぱなのくせに?」

眉をピクって動かしてしっぽの動きを止める。
でもそのあと唇の端をキュッとあげて意地悪そうにわらう。


なにさ?


「かわいい声で鳴くようになったなぁ・・・」

くくくっと目を細めてうれしそうにわらう。

なっ!!!


「めっちゃうまかった。そんなよかった?」

味を思い出してるのかペロッと唇を舌でなめる。


「よかったって?」

「気持ちいいとふわってなるやろ?
 そうやって離れたタマシイをいただくわけやから
 量が多くて味がよかったらそれだけ・・・」


急いで手で口を押さえる。

もぉいい。
その先は聞きたくない。

感じてたことバレてんじゃんしっかり。
はずかしぃよぉ・・・

24 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月31日(土)21時54分17秒

矢口の手をやんわりとはずして苦笑いする。

「わるかった。せやな・・・あんまりはっきりゆうと恥ずかしいわなぁ。」



ギュッとうでに力を入れてほおずりしてくる。


「もう大人やなぁ・・・大きさかわらんでも抱き心地がちがう。」


大きさかわらないってなんだよ!って思ったんだ。
でもそんなこといえそうになかった。

だってね・・・すごく寂しそうな声だったんだもん。
これではっきりした。


やっぱりしってるんだ矢口のこと。

さっきからいろいろ引っかかることあって・・・


最近できたばっかりのアザの場所。
矢口の下の名前。
ちいさい頃の矢口の抱き心地。

会ったときからしってたんだ。

25 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月31日(土)21時54分53秒

でも矢口はしらない。

アザがごはんの印しってこと。
このヒト・・・違うか・・・このキツネの名前。
抱っこしてもらってたこと。


そんなの寂しいよね。
矢口だったらヤだ。

忘れられちゃうなんてヤだもん。


「ねぇ前にも矢口のタマシイ食べた?」

「あ?うん。いまよりちっこい頃にな。
 あんな時期に食べたんはじめてやったけどうまかった。」

いまよりちっこいって?
あんな時期って?

自慢じゃないけど中学校の頃からほとんどおっきくなってないんだよ?
ってことはその前ってことなの?


「タマシイって身体の成長に関係する?」

もしかして矢口が小さいのって・・・

「あぁ〜だからぁ〜ごめん。」


コイツのせい?!

26 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月31日(土)21時55分32秒

カプッ

「いたっ!」


うでに噛み付いてやった。

いいじゃんこれくらい。
だってもぉとりかえしつかないんだもん。

おねがいしておっきくなることもできなくはない。
けど・・・そんなの矢口じゃないもん。

急におおきくなったらどういいわけしていいかもわかんないしさぁ・・・



すねてうつむいてみても
この腕の中から抜け出してやろうって気にはなれないのはどうしてかな?

小さいころもこうやってこの腕の中にいたのかな?


しっぽの先で矢口の機嫌をうかがってくる。
おそるおそるほっぺに触れたり離れたり。

やっぱりはじめてあったんじゃないんだなぁって思う。
どうしてかわからないけど矢口の機嫌はよくなってきたから。

どうすれば矢口の機嫌がよくなるのか矢口よりしってるっぽい。

27 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月31日(土)21時57分15秒

しっぽを手で捕まえるとビクッとして逃げようとする。


ダメだよぉ逃がしてやんない。
両腕に抱きかかえるとフカフカできもちいい。

首筋をくすぐられてわらっちゃって・・・そしたら目があった。
安心したようなやさしい目。


身体の奥でトクンと音がした。


なんてこどもっぽいことやったんだろって後悔してしまった。
はずかしくなってしっぽを腕から逃がす。


「ん?」

不思議そうな顔。

きっと顔赤くなってんだ。
肩にすり寄せるようにして顔を隠す。

身体を預けると当たり前のようにちゃんとギュッてしてくれる。

それが・・・すごくうれしかった。
28 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月31日(土)21時58分33秒

このへんで更新終了です。
29 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月31日(土)22時00分17秒

読んでくれるヒトがいるというのはいいことですね。

30 名前:ちぃ 投稿日:2002年08月31日(土)22時00分48秒

では次回はまた水曜あたりに。
31 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年09月01日(日)01時54分32秒
ちぃさんの新作待ってました
水曜楽しみにしてます
32 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月01日(日)14時18分37秒
新作待ってました!
水曜日が待ち遠しいです
33 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月01日(日)14時53分15秒
キツネ・・・ですか。
34 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時27分41秒

更新します。
35 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時28分26秒


「そうだ・・・名前は?」

「ん?昔みたいにキツネさんでええんちゃうん?」


矢口は・・・・・・覚えてないよ。

ねぇ昔の矢口はどんなだった?
こんなにいじっぱりだった?
それとも素直だった?

仲良かったの?


「そっか覚えてへんよな。」

黙り込んだ矢口のこと覗き込みながらいう。


どうしてそんな困った顔してるの?

チュッ


え?

思わず手で唇を覆ってしまう。



なにわらってるの?

36 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時29分04秒

「おんなじヒトともっかい
 はじめてのチュウができるってのはええかも。」

なにいってんだよ・・・もぉ・・・

「立ち直りはやいよぉ・・・」

はじめてだけどはじめてじゃない。
やっぱり矢口もしってるような気がする。





なんか眉間にしわ寄ってるよ?
たぶん考えごとしてるだけなんだろうけど・・・ちょっと怖いかも。



「んぅ・・・名前かぁ〜名前なぁ。そんなんないわ。
 なんか・・・微妙なとこやねん。」

「なにが?」

「自分自身。」


なに?
どういうこと?


37 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時29分39秒

「・・・妖やないから妖孤ちゃうんよなぁ。」





「あやかし?ようこ?」


「どっちかゆうたら幽霊みたいなもんやから・・・
 あえてゆうなら幽孤っちゅうんかなぁ?」




うぁ・・・よりによって・・・・・・幽霊?
矢口そういうの苦手なんだけど・・・


「どないした?」


矢口の戸惑いに気づいたらしい。

・・・その理由にも。



抱っこしてた腕をといて離れようとしてくれる。


・・・あれ?

無意識に服のすそをつかんでた。


38 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時30分09秒

「なんや?・・・怖いんやろ?」

ちょっとさみしそうな顔してる。



・・・・・・

「大丈夫。」

だから・・・矢口を離さなくてもいいよ?


「ほんまに大丈夫?怖ない?」

これじゃあそっちのが怖がってるみたいじゃん。


キツネの幽霊かぁ・・・幽孤・・・ゆうこ・・・


うん。
このキツネはゆうちゃんだね。


39 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時30分43秒

「ほんとに大丈夫だよゆうちゃん。矢口怖がってないよ?」


もう一回そっとゆうちゃんにもたれる。
ゆうちゃんのしっぽがピクンって動いたのが見えた。



「ゆうちゃんって?」



いい反応してくれるねぇゆうちゃん。
そこだよ矢口が反応して欲しかったところ。


「イヤ?」

「イヤやない・・・・・・名前・・・はじめてもらった。」


ギュゥって抱きしめられてほおずりされた。

「ありがとうな。」


なんだよぉ・・・てれるじゃん。



ん?

でも・・・

40 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時31分26秒

「普通のキツネの幽霊でもないんでしょ?」

キツネの幽霊じゃ矢口にはみえないし触れないよ?


「そやで?あとちょっとで妖になれるちゅうときに
 コロッと死んでもていじけて悪さしてたらアイツに怒られてなぁ・・・
 アイツのほうがよっぽどキツネっぽい人間やったわ。」


あっ・・・その話しって・・・
じゃあアイツって矢口のご先祖さん?

「そのヒトと約束したの?」


「そうや。タマシイ分けて力やるかわりにゆうこときけゆうてな。
 しかも他のヤツからタマシイとんなって食魂能力まで制限しよってから・・・」

あっ・・・それってやきもちっぽい。
だってあの行為は食事というよりもむしろ・・・ねぇ?

そっか矢口のご先祖さんって・・・

あれ?
でも矢口たち子孫が残ってるってことは結婚してこどもつくったんだよね?

だからそんな顔してるの?

41 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時32分23秒

「好きだったの?」

「あぁ?なにゆうてんねん。アイツのせいでアイツの血族に縛られただけや。
 アザはその血筋にしかできんかったから・・・」


ウソだね・・・荒れたでしょ?


「わかってないねゆうちゃん。ほんと・・・バカキツネ!」

「なんでやねん?」


わけがわからないって顔してるね。
ほんとにわかってないんだ・・・


「ご先祖さんはねゆうちゃんのために
 アザのあるヒトを代々残す必要があったんだよ。」

「はぁ?」

ゆうちゃんが固まってる。

42 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時33分17秒

そうでしょ?

「じゃないとここにゆうちゃんいないよ?」

いてもただのキツネの幽霊じゃん。
なんで矢口にすぐわかることがゆうちゃんにわかんないの?


「はじめてあったときにはもうあの子には・・・
 ちゃうかあれはあの子にあったあとやったっけ?
 じゃあなんで一緒にいてくれへんかってん・・・
 別にあの子がいたら力なんて・・・」


あぁなんだろ?
胸の奥になにか大きな塊ができたみたいに息苦しくなる。


「ゆうちゃんが鈍感だからでしょ?」

声がどうしても尖ってしまう。

ヒトじゃないものを愛してしまって望むままにタマシイを分けつづけた。
でもその相手はそれがどういうことかわかってなくって・・・

「辛いじゃん。」

なのに自分がいなくなったら力を失う相手を気遣って・・・

「バカ・・・このバカキツネ・・・どうして言葉で伝えてあげなかったのさ。」


43 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時34分01秒

尖った爪が当たらないように指の腹を使って矢口のほっぺをなでる。


「なんで泣いてんねんな。しゃあないやろ?
 言葉なんて使い慣れてへんかったんや。ただのキツネやってんから。」


ゆうちゃんはうなだれてる。

そうか・・・そうだよね。
いきなり複雑なヒトの心理を理解しろっていっても無理だよね。



「じゃあさ・・・矢口がねがってあげる。
 ゆうちゃん矢口のご先祖さんにあってきてよ。」

いまのゆうちゃんの目でみておいで?
いまならきっとわかるよ。


「へ?」

「ほらっねがい叶えてくれるんでしょ?」

「あっああ・・・」

矢口がゆうちゃんのひざから立ち上がると
ゆうちゃんは一生懸命身なりを整えてる。

44 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時34分43秒

なんだよぉ矢口とあったときは地面に寝そべってたくせにさぁ。


「どっかおかしいとこない?」

「大丈夫。かわいいよ?」

「ほんま?」

うれしそうにわらう。
・・・お世辞じゃなくてほんとにかわいかったんだよ。


「じゃいってくる。」

そのままなんの躊躇もなくなんの余韻も残さずスッと消えてしまった。

45 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時35分21秒


・・・いっちゃったよ。
ごめんねお母さん・・・うちの家もう守ってもらえないや。

なんだろ。
ぽっかり穴があいちゃった感じ。

実際にタマシイ食べられちゃったから仕方ないんだけどさぁ。


・・・これでよかったんだよ。

もうここには用はない。
ゆうちゃんはもういないんだもん。

部屋に・・・戻ろ・・・

意に反して崩れるようにしゃがみこんでしまう。



へんだねぇ視界がゆがんじゃうよ?
どうしてこんなに苦しいの?


ダメだよぉゆうちゃんお腹へってたからって
たくさんタマシイ食べたんでしょ?

矢口は小さいんだからさぁ・・・
苦しくって苦しくって仕方がなくなっちゃうじゃん。

ゆうちゃんのバカ。
どうしてくれんだよ・・・


46 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時36分03秒

更新終了です。
47 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時40分07秒
キツネじゃないといけないわけですね。
そこからできた話しなので。

そっからぐいぐいと話しを広げて・・・
この話考えたのは実はまえの話しの途中くらいで
Do it Now!の出るまえなんです。
48 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月04日(水)23時43分08秒
だからここの矢口さんのアザの場所と唇シールの場所が同じで
ちょっとわらってしまいました。

矢口さんのセクスィーアピールポイントです。
49 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月05日(木)10時35分32秒
あ、新作始まっていたんですね!
今回の作品もまた面白いです。
続き楽しみにしてます。
50 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月06日(金)17時59分10秒
このはなしはここで終わりですか?
51 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月07日(土)23時39分39秒
更新します。
52 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月07日(土)23時40分18秒


「たっだいまぁ〜!!!」


はいっ?

矢口の心の中とは正反対の能天気な声が響く。


あわててそででぬぐってから振り返ると
これまた能天気な顔でわらってるゆうちゃんがいた。


・・・どうして?




「なんや?ちょっとの間も待たれへんのか?辛抱のできん子やなぁ。」

ゆうちゃんが苦笑いしてる。


53 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月07日(土)23時41分09秒

ねぇ・・・呆れてる?
矢口も自分で呆れてる。


矢口が言い出したことだもんね。
ご先祖さんに会ってきてって・・・

気づいてなかったんだよ自分で。
ゆうちゃんと離れるのがこんなに苦しいってこと。


それにあんなにあっさり消えちゃったとこみるとさぁ・・・
かけよって抱きつきにいけるほど矢口は強気でいられない。


「どうして?どうして戻ってきたの?」

「なにゆうてんの?戻らな誰にタマシイもらうんや?」

「ご先祖さんは?」

「昔の自分がおるやん。」

当たり前のこと聞くなって感じでこたえてるけど
矢口はゆうちゃんについてしらないことがいっぱいあるんだからね。


54 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月07日(土)23時41分56秒

「・・・ちゃんとわかったんや。
 あの子はつらいときでもいっしょにおってくれたんやってな。」


・・・のろけかよ。
おかしいなぁ胸の痛みがひどくなる。


「だいぶ変わったらしいで。丸くなったって。」

「ふ〜ん。」

わざと興味のなさそうな声を出す。


「いい子やなぁありがとうゆうといてって。」

いつまでも近寄ってこない矢口のほうに
ゆうちゃんが機嫌よさげにしっぽをユラユラさせながら歩いてくる。


そのまましゃがんで矢口の頭に手を置いてのぞきこんでくる。

なんだよぉ・・・



「なめんなよ?もうただのキツネとちゃうんやからなぁ。」


55 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月07日(土)23時42分29秒

わっ!

ゆうちゃんはわらいながら矢口を抱き上げる。

思わずしがみついてしまって我に返ったとき
ゆうちゃんの顔が近くてドキドキした。


「腹減ったらまたもらうで?」

はぁ?
なに勝手なこと・・・

でもその目がスッと妖しく細められたとき
矢口の心なんてとっくに見透かされてることに気づいたんだ。

そうだよ・・・悪かったねぇ。

さっきまでの胸の苦しさなんて融けてなくなっちゃった。
どうせ矢口は・・・


「バカ!このバカキツネ!」

腕の中でジタバタ暴れてみる。


「かわいらしいなぁもぉ・・・」

よけいにギュウってされて・・・
胸にふんわりと大きな花が咲く。


56 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月07日(土)23時43分04秒

ちょっとまって・・・タマシイを食べられるって
もともとそういうことなんじゃないの?

離れてるだけで苦痛に感じる。
ゆうちゃんから逃げるなんてこと考えることもできない。
そんなふうにしたのゆうちゃんでしょ?

きっとご先祖さんも気がついたんだ。

でも自分じゃ気づいてないんだよね。
ほんと・・・

「バカ。」

「なんでやねん。」


矢口・・・食べられてんじゃん小さい頃に。
いままでのアザの持ち主の中で一番早い時期から食べられてんでしょ?

それって他の誰よりも深くはまってるってことじゃん。


でも・・・そんなこと絶対教えてやんない。


「ゆうちゃん?」

「なんや?」

「これから矢口がイヤがること1つでもしたら
 もう一生タマシイやんないからね。」


「え?」

なに固まってんの?


「それはねがいごと?」

バーカ・・・甘いよ。

57 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月07日(土)23時43分51秒

「命令。」

「うあっ・・・なんでそんな偉そうに・・・」

「立場の確認しようね。ゆうちゃんは?」

「ねがいを叶えるんやろ?」

「はいそこ間違ってる。」

「えぇ?」


ほんとはそれも正解なんだ。
でもそれじゃ矢口の立場が弱いじゃん。

だから・・・


「矢口がおねがいしなかったらどうすんのさ?」


ものすごく真剣な顔で考え込んでるゆうちゃん。
ふいにピクって眉が動く。

わかった?

「ゆうちゃんは?」

「タマシイをもらう。」


よしよし。


「じゃあ矢口は?」

「タマシイをくれる。」


はいよくできました。

58 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月07日(土)23時44分38秒

「そうだね。どっちが上かな?」

・・・・・・
しばらく沈黙が続く。

なにかいいたそうに口を開こうとして
けっきょく一文字に結んでしまう。

そうでしょ?
矢口が欲を出さない限り矢口のが上でしょ?


「ちっちゃいくせに・・・」

キロッとにらむ。


「んっごめん。謝るからくれへんてゆわんといて?」

「どうしよっかなぁ?」


これが精一杯の強がり。
これ以上は無理。

弱気なゆうちゃんがかわいくってしかたないもん。


チュッ


ビクビクしてるゆうちゃんにキスをする。

くすぐったそうに肩をすくめてる。


「いいよ。またあげる。」

ゆうちゃんはうれしそうに矢口にほおずりしてくる。

言葉より行動で感情を表すことが多いのは
ゆうちゃんが動物だから?


矢口が欲しくなる前に欲しいっていってね?
じゃないと立場が逆転しちゃうから。

59 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月07日(土)23時45分16秒


「ねぇゆうちゃん。ここじゃなくって矢口の部屋においでよ。」

「それはおねがい?」

そうきたか・・・
でもまだ矢口のほうが強いね。


「違うよ?これは・・・矢口からのお誘い。」

・・・・・・

ゆうちゃん顔赤いよ?


「んじゃいく。」

ふ〜ん・・・
ゆうちゃんにも通用するんだ上目遣い。

これはかなり有利かも。


「で?いつまで抱っこしてるの?」

「このままがええんやけど・・・アカンか?」

首をかしげながら聞いてくる。


「・・・しかたないねぇゆうちゃんは。」

ほんとよくいうよ矢口。



むふふってわらいながらゆうちゃんは上機嫌で
しっぽをイヌみたいに振ってる。

ダメだよゆうちゃんそんなに素直に態度に出しちゃ。

60 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月07日(土)23時45分51秒

「ねっ部屋おいで?」

矢口もゆうちゃんに引きずられて素直になっちゃうじゃん。


「うん。」

ゆうちゃんはこどもみたいに無邪気な顔でわらってうなずく。


あぁ・・・先が思いやられる。
まぁでもよろしくね。

矢口のキツネさん。




おわり


61 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月07日(土)23時47分49秒
はい更新終わりです。

これで1話目は終了です。
プロローグ的な話ですがこの先はないのでここまでが本編です。
62 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月07日(土)23時52分37秒
>>50
終わりだと思いました?
この話の中の矢口さんもたぶん終わりだと思ってっぽいので
そう思ってもらえてたらうれしいですね。

なんかつらそうなところで終われないんです。
話の中とはいえ泣かしたままでは自分がつらい。
63 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月07日(土)23時57分39秒
2話目はこの本編に出てこなかった部分の話です。

ではまた。
64 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月10日(火)23時58分40秒
更新します。

ちょっと長いのですが二話目全部載せようと思います。
65 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月10日(火)23時59分17秒


再会


66 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時00分03秒


「彩?」

「なに?」

怪訝そうな顔で振り返る。

あぁ・・・会いたかったヒトや。
もう会えへんと思ってた。


「久しぶりやな。元気か?」

「なにいってるのあなたさっき・・・」

言葉をきって固まる。


「言葉・・・普通にでるの?あなた・・・違うヒト?」

「いや・・・違うことないけどいまからずっと先の時代から来たんや。」


あ・・・びっくりしてる。
表情がでるとすごいかわいいんよなぁこの子。


67 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時00分46秒

「そうなの・・・ちょっと変わったわね。性格丸くなった? 」

そんな尖っとったか?
自分じゃわからんなぁ・・・

「ねぇ・・・・・・触っていい?」

んぅ?
なんでそんなこときくんや?

「かまへんよ?いつもしてるみたいにしたらええ。」


手でほっぺたをなでられる。
くすぐったくって思わず目を細める。


「あぁでも・・・変わってない。」

ふふふって安心したようにわらってもたれられると
しっぽが勝手にユラユラとゆれてしまう。


「どうやってきたの?」

「会ってこいって。彩に会ってくることがその子のおねがい。」

びっくりするよなぁほんま。
あんなあっさりゆわれたら・・・こっちがさみしいわ。


「そんなことねがう子がいるんだ。私にはできないよ・・・いい子だね。」

「うん。」

そやな・・・あの子のおかげでもっかい会えたんやもんなぁ。


68 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時01分16秒

2人して黙り込んでしまう。
でもその沈黙は決して嫌なもんじゃなくて・・・すっごい落ち着く。


穏やかな風・・・虫の鳴き声が聞こえるほど静かな空間・・・

そっかこの頃の時間ってこんなにゆっくり流れてたっけ・・・
なんでこんな環境でカリカリしとったんやろ?

まぁしゃあないか・・・余裕なかったもんな。

彩の長い髪を指で梳かす。


「そんなことするんだ?私のあなたは・・・」

途切れる言葉。


「そうやな。もうあんたのと違うんやな・・・」

69 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時01分48秒

ギュッと服をつかまれる。

「ねぇどうして?どうしていまなの?」

なんや?

「一番頭に残ってるから。」

「そう・・・いまが残ってるの・・・」


“いま”なにが起こってるんや?
なんでそんな顔すんの?


彩の背中をなでる。

胸に詰まってるもん追い出さんと苦しいやろ?


「ゆうてみ?ちゃんと理解できるから。」

涙のたまった目で見上げてくる彩なんて・・・みたことなかったなぁ。
いっつも落ち着いてて甘えさせてくれてた。


しらんかった・・・しるほどの余裕もなかった。
頼れへんよなぁ・・・この頃の自分じゃあ。


守ってあげたかったのに。
こんな顔させたくなかったのに。


70 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時03分09秒


「・・・私ね・・・子供ができてからもあなたに会いつづけたの。ずっと・・・
 だって・・・私・・・あなたと・・・離れるなんて・・・」

彩の言葉が途切れる。



そっと抱きしめる。


「がんばって全部吐き出してしまい。・・・待つから。」

しばらく彩の背中をとんとんってしとく。
しがみつくようにして嗚咽を漏らす彩はものすごく頼りなげにみえた。

ほんま・・・アホやなぁ・・・
こんなくるしんどったのに気づきもせんって・・・


しばらくすると落ち着いたのかもういっかい見上げてくる。
その顔は小さい子が親に助けを求めるような表情やった。

「・・・物の怪と通じる者は家においとけないって・・・」


そっか・・・こどもと引き離されたんか。

この子には自分しかおらんなったってことか?
そら事情しらんでも記憶に残るはずやな。


「ごめんなぁ・・・つらいやろ。悪いな。」

71 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時03分50秒

彩はまた泣きそうになりながら首をふる。

「違うの。こどもよりもあなたを選んだの・・・ダメな母親なの。」

「そんな責めたらアカン・・・
関わらんかったらこんなならんかったんや。
 彩はやさしいから苦しい目にあってしもたんや。」

「違うっ!やさしくなんか・・・」

あぁまた・・・頼むから泣かんといてぇや。
こんなに弱い子やったんか?


無理させてたんやな。


でもどうしたらええんやろ。
この状況。


・・・・・・そっか


指で涙をぬぐったあと彩のあごをちょっとあげて
ゆっくりくちづける。

「彩が悪いって思うんやったらそうかもしれん。
 でも1人だけ悪いんとちゃうで?
 2人とも悪いんや。だから・・・ごめんな。」

耳元でささやく。

そやろ?
彩だけが悪いんとちゃう。


あとはギュッとしながら落ち着くのをじっと待つだけ。


72 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時04分35秒


身体がもう震えてない。
泣きやんだ?


はぁ〜

彩がゆっくりと深いため息をつく。


もう大丈夫なんか?


「ありがと。・・・・・・謝るのねあなたも。」

「なんや?悪いことしたらごめんなさいしなさいってゆうやろ?」

彩がクスクスわらう。



「それ私の言葉よ?」

そやっけ?


「私のあなたは謝らないのに・・・ちゃんと覚えてるの?いい子ね。」

頭をなでられる。


そやったなぁ・・・いっつもこうやってこの子にはこども扱いされてて
それがくやしくて・・・でもうれしくて・・・


73 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時05分20秒


「こうやってずっと一緒にいられたこの時期が一番記憶に残ってる。」


彩がふいっとうつむく。

「いられなくなるの?」


あ・・・しまった。


「そっか・・・しかたないね。」

さみしそうに・・・でも淡々と事実を受け入れた声でゆう。

冷たいと思うやろこの反応。
でも違うねんこの子は・・・


あれや・・・あの・・・そう・・・

「ドライアイスやな彩は・・・」

「どらいあいす?」


そっかこの時代にはないなぁ・・・
初めてそれをしったときなんでかしらんけど似てるとおもったんや。


「冷たすぎて触ると火傷する氷でな・・・
 融けると後になにも残らんの。不思議なもんやろ?」

あれ?
反応なしか?


74 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時06分07秒

「そうなの・・・なにも残らないのね。」

彩はふわっとわらった。
その目にはなにか強い決意がみえた。


「なんや?」

「あなたにはわかるんじゃないの?」


あっ!!

『残さず食べて?』

彩の最後のおねがい。

「ずっといっしょよ。あなたを1人にしないから。
 ・・・私とあなたの罪なんだから。」

頭をなでてくれる。


・・・・・・

「ありがとうな。いっしょにいてくれてたんやな・・・忘れてた。」

「なに?忘れてたの?」


あっ・・・ちょっと怒ってる?

75 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時06分41秒

「アホやなぁ覚えてたらつらすぎるやろうが?
 彩が・・・大好きやってんから。」


「そう・・・なの?」

やっぱりしらんかったんか?
言葉で伝えられへんかったからなぁ・・・


「好きやったんやで?」

ギュッと抱きしめてほっぺたをすり寄せる。


「これ・・・そういう意味だったのね。」

彩がうれしそうにわらう。



「なぁ・・・おねがいするときにしばらく忘れとくようにって
 付け足しといてくれるとうれしいな。」


「そうね。いいわ。・・・はじめてねあなたのおねがい。」

「あぁそうやな。」

76 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時07分39秒

ガシガシッ

戸をたたく?音がする。


「あれって?」

「あなたね。戸なんて開けなくても入ってこれるのに・・・おかしな子。」


・・・本人目の前にしてゆうか?
まぁええけど昔のことやし。


「ほな帰るわ。」

「あっ・・・ありがとうって伝えてくれる?」

「ええよ。じゃあまたな。」

彩が目を細めてわらう。



「バカね・・・私はあなたの中にいるわ。」

「あぁそやったなぁ。でも・・・もうしばらくはかわいがったってな?」

「しょうがないなぁ・・・」

彩の顔が明るい。
会いにきてすぐとはちょっと顔が変わったかな?

だてに長くヒトと向き合ってないっちゅうねん。
何事も経験ちゅうことやな。


よかった・・・役に立てて。


ガシガシッ

戸の音がせかす。


「ほなな。」

「うん。」


77 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時08分20秒


視界がゆがむ。


ちっこい後姿が目に入る。

ん?
しゃがんでるん?

よけいちっちゃくみえるやんか。


はっはーん・・・もうさみしいなったんか?


「たっだいまぁ〜!!!」

驚く顔を予想しながらおっきな声でゆうと
予想通りびっくりして振り返ってくれる。


ただ予想外やったんは目が赤かったこと。


「なんや?ちょっとの間も待たれへんのか?辛抱のできん子やなぁ。」

78 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時08分57秒

こっちはアンタに会うまでどんだけ待ったと思うってるんや?
やっと会えたおもったらまたしばらく我慢せなアカンかったし・・・


泣いてくれたんか?
そんなさみしがってくれたん?

・・・・・・なんかうれしいなぁ。


大丈夫やで・・・もうさみしい思いさせへんから。
もう昔と違うんやから。

ちゃんとわかってあげられる。



この子やったらゆうてくれるかな?

一番ゆうて欲しいおねがい。

最後の最後に・・・
『いっしょに来て?』って・・・




おわり

79 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時12分11秒
更新終わりです。

どうやら4話完結になりそうです。
落としどころを探してるうちにもう1話必要だという結論になりました。
80 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時15分28秒
いつかこのヒトの話を書いてみたいなぁと思ってたんです。

どうでしょねぇ?
ちゃんとらしくできてます?
81 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月11日(水)00時17分50秒
このヒトこそキツネっぽい。
結構好きだったんですよ。

ではまた週末。
82 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月11日(水)12時15分10秒
矢口とはまったく正反対って感じで大人なヒトだ・・・。
83 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時28分46秒
更新します。
84 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時29分17秒


もういちど出会うために


85 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時29分49秒


しかし・・・あの子はちっちゃいなぁ。

やっぱりアカンかったんやろか?

でもしかたなかったんや。
ほんまに力消えるとこやったんやもん。

アザ持ったヒトがおらんなってもぉ100年近くたってたんやで?

こっちかてギリギリまで我慢したんや。

かってに食べたらアカンもん。
タマシイはねがいごとの代償や。

だから・・・話せるようになるまで待とうって・・・
それでもまだまだ早かったんやなぁ。


ごはんが目の前にあんのに1年半近く『待て』状態やで?
頭おかしなるわほんま。

はよなんかおねがいしてくれんかなぁってずっとあの子の側にいた。
物心つく前からみてるから全然こわがらんとよってくるんは都合よかった。


86 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時30分27秒


でもな・・・

ちゃんと目が見えてへん頃に指をキュって握られたり
やっとできるようになった寝返りを繰り返して頑張って近寄ってきたり
わざわざはいはいで近寄ってきて自慢げにヨチヨチ歩きをみせてくれたり
気持ちよさそうにしっぽの上でお昼寝したり


そんなんされたらつらいやろ?


だからタマシイもらえへんかわりにいっぱいチュウしたった。
いつのまにかマリからもしてくれるようになったけど。




『だっこ。』

一番初めのおねがい。


卑怯やなって思ったで自分でも。
こんなおねがいにタマシイをかけるやつはおらん。
でもマリにはかけさせてしまった。


もう我慢の限界やった。


87 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時31分03秒

うまかった。


ヒトの中に意識を侵入させることすら久しぶりで・・・
抑えなアカンのはわかってたんやけど

久しぶりに味わう感覚と味に酔ってしまった。


だから気がついたときには腕の中のマリはぐったりしてて
あわてて力を使ってマリの意識を呼び戻した。

でもそのあとマリのお母さんがマリの様子がおかしいのに気づいて・・・


あのあとしばらくマリをみかけへんかった。

マリのお母さんとお父さんがしゃべってんの聞いてしったんやけど
びょういんににゅういんしてたって。


びょういんってヒトが生まれたり死んだりするとこやろ?
イヤやで・・・あの子おらんなったらまた1人やんか。


88 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時31分37秒

そばにおって我慢できひんなんのが怖くてマリが呼んだとき以外は
昔のアザの持ち主が成功のお礼ゆうてつくってくれた祠にいることにした。


どっからどんなちっちゃい声で呼ばれてもわかる。

機嫌がいいとおっきく手を広げて腕ん中に飛び込んできてくれる。
でそのままよじ登ってきてほおずり。


うれしそうにわらう顔がみたくて
ぷぅってすねてる顔がみたくて

優しくしたり意地悪したり・・・



キツネさんキツネさんゆうてなついてくれてるのがうれしい。

でもほんまはそんなにやさしないねんで?
そのタマシイが欲しいだけなんや・・・

だからそんなカワイイ顔でよってこんといてぇな。


最近おかしいんや。

力消えそうでもないんやけど・・・お腹すいてもないんやけど
マリのタマシイが・・・・・・欲しい。

・・・なんやろなぁ?


89 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時32分11秒


「ウソじゃないもん!キツネさんはいるんだもん!!」

家のほうから怒ってる声がする。

勝手口の戸が開いて勢いよくちっちゃい子が飛び出してきて
そのまま一直線に駆け寄ってくる。


「マリ?」

「キツネさん!」

勢いを殺さずボスッと腕の中に飛び込んでくる。


「ほらっ!うそじゃないじゃん!」


おいかけてきたお母さんに誇らしげに話し掛けてる。
でもお母さんは不思議そうな顔してる。


まぁな・・・


「・・・みえないの?」

「みえへんよ。」

しらんかったかなぁ・・・みえへんこと。


「どうして?」

マリはすがるような目でみあげてくる。


「あのヒトにはアザがない。」

ただそれだけのこと。



90 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時32分46秒


マリは着てる服のエリをぐいっと引っ張って
アザのあるところを露にする。


「キツネさん・・・タマシイあげるからみえるようにしてよ。」


ん?

「それはおねがい?」

マリは大きくうなずく。


「マリ?なにいってるの?タマシイをあげるって?」

マリの後ろで動揺した声が聞こえる。


それはそうやわなぁ。
自分の幼い娘が急にそんなんいい出したらびっくりするわ。

まっそんなこと自分には関係ない。


「じゃいただきます。」

マリをひざにまたがらせてアザのところへ唇をよせる。


ついでに味付けのために背中にまわった手で
できるだけやさしくなでる。

中に入り込んだ意識で内側からも・・・・・・おいしくいただくために。


「・・・ぅっ・・・んっ・・・」

タマシイの一部がふわっと離れたところをアザのところから
じゅるって音をたてて飲み込む。


「んぅ・・・ごちそうさまでした。」


・・・なんかちょっとずつ量が増えてきてるような?
いいことやけど。


91 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時33分20秒


マリの後ろのヒトは固まってた。

あ・・・ヤバいかも。
マリは気まずくないんか?

親にあんな声聞かれて・・・

まだそんなこともわからん年頃かな?


「ほらっはやくぅ・・・かなえてよ。」

ちょっと力が抜けてるのか甘えてるのかもたれながらせかしてくる。


だから・・・気まずいねんって。


視線を逸らしながら姿がみえるように力を使った。


「っ!!」

息をのむ気配がする。


緊張からかしっぽがかってにソワソワ動いてしまう。
マリがそのしっぽを捕まえてうでに抱っこする。


「いるでしょ?マリのキツネさん。」

それでもしっぽの先はピクピク動いてマリのほっぺたをなでる。


「くすぐったいよぉ。」

こっちの気もしらんと無邪気な顔でわらってる。


92 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時33分55秒


・・・・・・

チラッとマリのお母さんに視線を投げる。

うぁ・・・真っ青な顔してる。

怯え?
怒り?

・・・両方か。


「マリ!離れなさい!」

「どうして?」

マリはびっくりしたような怒ったような顔してる。


こうゆう状況を経験したことは何度もある。
これで離れていったアザの持ち主も結構いたから。

・・・やっぱりこの子も離れていくんやろうか?


「そんな得体のしれないものと一緒にいちゃいけないの!!」

「ヤダ!マリはキツネさんといるの!!」


登りついてきて首の後ろに腕を回してギュッとくっついてくる。

・・・かわいい子やな。


93 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時35分57秒


「ダメよ!・・・あなたもあなたです!
 こんな幼い子になんてことするんです!!
 マリが倒れたのはあなたのせいでしょ?!」


やっぱりそうなんかなぁ?

マリの腕をほどく。


「ヤダ!マリはヤダ!離れたくないよぉ!!」


必死に訴えてくるマリの姿に胸が痛んだ。


「なぁ・・・ちょっとええか?」

マリのお母さんに話し掛ける。


「なんです?!」

そんな怒らんでも・・・


「あんなぁ・・・この子がタマシイくれんとこのままでいられへんねん。
 ねがいを叶えるかわりにタマシイをもらう・・・それしかないねん。
 そんなふうにしたんはこの家のご先祖さんなんや。
 文句あんねやったらご先祖さんにゆうてんか。」


別に誰のタマシイでも取れたんやで本来は。
でもアイツが自分の血族のみに縛り付けたんや。


「わかるか?誰でもええんやないねん。この子やないとアカンねん。」

話をするのに集中してるとマリはギュッてくっついてきてた。


94 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時36分50秒
「ただこっちもこの子がおらんなったら終わりやから・・・」

マリの髪をなでる。

ん?
なんでそんな不安そうな顔してんの?
そんな顔せんといて?

怖いことせえへんよ?


わらいかけるとマリもいつもの笑顔をみせてくれる。

「しばらくは我慢する。そやな・・・とりあえずアザを消しとこか?
 力が弱くなってきたら抑えきれんでまたアザが浮き出てくる。
 この子の生命力が力を上回ったら・・・・・・」

マリのお母さんのほうをみる。


「もらうこと許してくれるか?」


あんまり話の意味はわかってないみたいやけど
なんか感じ取ってるのかまたマリの笑顔が消えてる。


ふぅ〜

おっきなため息をつくお母さん。




「マリ?キツネさん好きなの?」

「うん!大好き!」

えへへってわらいながらこたえてる。


「そうなの・・・」

複雑な表情を浮かべる。



95 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時37分40秒

この子がなつきすぎてて困ってんねやろ?


「ええよ・・・アザが消えたら忘れるようにしとくから。
 そしたらなんの問題もないやろ?」

「マリ・・・キツネさんのこと忘れちゃうの?ヤダ・・・そんなのやだよ!!
 タマシイでもなんでもあげるからそんなこといわないでよ!!」


なんや・・・うれしいことゆうてくれるやん。


「大丈夫や。マリが強い子に育ったらまた会える。」

忘れてもいいやん。
またそんとき一からやり直そうや。

かまわんよ?
ヒト待つことにはなれた。

マリに会うまで100年近く待ったんや
マリが強く育つまでなんて短いもんやで?


「マリが忘れてもちゃんと覚えとくから心配せんでええよ。」

「絶対?」

「絶対。」

忘れるわけないやろ?
誰のタマシイもらってる思ってんの?

「約束だよ?」

「うん。」


チュッ

マリからチュウしてくれる。


「マリはキツネさん大好きなんだからね。」

あぁ・・・かわいらしい顔やなぁ。
そうやで・・・そうやってわらっといてな。


「ありがと。」

96 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時38分47秒

マリのエリをちょっと引っ張ってアザを露出させる。


「んっ!」

右手の人差し指でアザをマリの身体の奥へずずずっと押し込む。

マリは腕の中に崩れ落ちた。


「マリ!!」

心配そうな声。


「大丈夫。寝てるだけや。目ぇ覚めたらもう忘れてるわ。」


・・・しばらくお別れやな。

腕ん中にいる子を抱きしめてほおずりをする。


かわいい寝顔やなぁ・・・


「元気でな。」


そのままマリを抱えてお母さんのとこへ歩み寄る。
少し腰が引けながらも逃げずにマリを取り戻しにくる。

「じゃあな。」

力をゆるめて姿を消す。

97 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時39分25秒

こうなれば力の無駄遣いは極力避けなアカン。
しばらくはもう食べれへんから。


「ありがとうございます。」


マリのお母さんが礼をゆうてマリを家ん中に連れて帰る。


なんにも礼をゆわれることしてへんがな。

あっちからみえへんでも
こっちからはみえんねんし。


あぁでも・・・目の前にいるのにタマシイを食べられへんのはつらいかも。
我慢せなアカンと思うとお腹すくの早そうやな・・・



別に一人になるんやないんや。


だからさみしくなんかない。

・・・さみしくなんか。




おわり

98 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時40分47秒
はい更新終わりです。

もう3話目まできてしまいました。
次で終わりです。
99 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時47分24秒
読んでるヒトが面白かったっていってくれる話にしたいですね。

自己満足の世界&現実逃避の世界ですので・・・
100 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月14日(土)21時48分09秒
次回は水曜日に。
101 名前:つかさ 投稿日:2002年09月14日(土)23時32分10秒
もっと読みたい・・・・・・ってマジで思うんですが。
いや、読みながらめちゃニヤニヤしてしまいます。

矢口さんの「お誘い」ってセリフに。
いや〜、さすが矢口さんって思ってました。
ふらふらついてく姐さん狐・・・・・・かわいすぎ、とか(笑)
やっぱちぃさんの作品好きだな〜。
102 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月15日(日)12時33分48秒
私も「お誘い」の台詞やられました。
矢口さんが言うと 可愛くきこえる…。
103 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月15日(日)20時59分58秒
ちっちゃい頃の矢口カワイイ〜!!
104 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月18日(水)23時58分37秒
更新します。
105 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月18日(水)23時59分13秒


どっちの誘惑?

106 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月18日(水)23時59分46秒

ゆうちゃんがベットの下で丸くなって寝てる。
こっちを向いてないから白い背中が見える。

不機嫌そうにしっぽをパタンパタンさせてる。


このところあげてない。
そのせいかゆうちゃんはいまキツネさん。

元の姿なんだろうねこれ。
お腹すいてるときはこっちのほうが楽なんだっていってたなぁ。


キツネってイヌより華奢だよね。


白いキツネだって聞いたから
目は赤いのかと思ってたのにグレーなんだよねぇ。

へんなの。


矢口の視線に気づいたらしいゆうちゃんは
少しあごを上げて肩越しにこっちをちろっとみる。


「なんだよぉ・・・なんか文句ある?」

自分が悪いんでしょ?



なっちにキスしたもん。

なっちにはみえないからっていってもねぇ・・・
矢口にはみえてるの。

107 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時00分38秒


ゆうちゃんは小さくため息をついてまた顔を伏せる。


ん?

しっぽの動きが止まってる。


一回ごろんと上を向いてから体の向きを変えるゆうちゃん。


なに?


まだぐたっとしたままだけどちょっと口の端が上がってる?
またしっぽが動き出した。

こんどは機嫌よさげにパタパタ。


「そんなにイヤやったん?」


キツネの姿でしゃべんないでよ。


って・・・

「なにいってんの!!そんなんじゃないもん・・・」

「じゃあなんやねん。」


まだニヤニヤしてる。


だって・・・・・・負けを認めるみたいで悔しいもん。
もうわかってんでしょ?

108 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時01分13秒

「マリのイヤがることしたからくれへんねんやろ?」


・・・やっぱり・・・

「じゃあすんなよぉ。」


恥ずかしくなってベットにねっころがって枕に顔をうずめる。
たぶん耳まであかい。


あんなことで妬いてるってことに気づかれちゃった。


でもなんで?
今まで気づかなかったくせに・・・



ベットに矢口以外の重みが加わる。


あ・・・

優しく頭をなでられる。


なんで急にヒト型になってんのさ?

「して欲しいんやったらそうゆうたらええのに。」

109 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時01分56秒

なっ!!

「誰もそんなこといってないじゃん!」


ガバッて起きてゆうちゃんをにらむ。




だけど・・・あっさりゆうちゃんのひざの上に乗っけられてしまった。


「じゃあなんで唇さわってたん?」


へ?

さわってた?
・・・だからバレたの?


ゆうちゃんが矢口の唇を指でさわる。

「なんで我慢すんの?」



意識が指の感触に集中してしまう。

不用意にみあげた視線の先にゆうちゃんの目があった。


うぁ・・・

ふいに絡み合った目線をあわててそらすと
ゆうちゃんがギュッて抱き寄せてくる。

110 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時02分37秒

「なぁ・・・もぉせえへんから・・・だから・・・」

矢口の唇にギリギリふれないところで
言葉をつむぎだすゆうちゃんの唇。

その吐息にさえ矢口の心はかき乱される。

ゆうちゃんが指でアザをなでる。

勝手に身体がピクンって動く。
矢口の身体はそこから与えられる感触をしってる。


ダメ・・・流される・・・


「ふふふ・・・だからマリ好き。」

目をつぶるとゆっくり重ねられる唇。
そのままベットに押し倒される。


ゆうちゃん・・・好きなんだよ?
だからなんだよ?

ちゃんとわかってね。


食事が始まってしまえば主導権は完全にゆうちゃんに奪われる。
だからいつもギリギリまであがいてしまう。

111 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時03分16秒

繰り返されるふれるだけのキス。

甘い摩擦が起こりやすいようになんども角度を変え
ときおり下唇だけで矢口の唇をなぞる。

ゆうちゃんはこうやってゆっくりゆっくり矢口を追い詰める。

そのうえ欲しいものはくれない。
だから・・・


「ん?」

意識がはっきり残ってるうちに
ゆうちゃんの肩をぐいっと押して身体を離す。


「はい終わり。」


掠れないように気をつけながらいって
目をみられたらすぐにバレルから顔を枕にうずめる。


「えぇ〜そんなんアカンって。こんなんで納得できひん。」


・・・だよね。

ゆうちゃんは矢口のタマシイが欲しいだけだもんね。
たったそれだけのこと。

112 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時03分51秒

「なぁ〜もぉ我慢できひん・・・」

ゆうちゃんが泣きそうな声でつぶやいた。


あ・・・しばらく食べてないって計算に入れてなかった。
あんまりじらすとかわいそうだね。


「なぁ・・・なんでや?まだ怒ってんのか?」

ゆうちゃんが矢口の服を引っ張る。


もぉ・・・

ゆうちゃんのほうを振り返ると期待を込めた視線にぶつかる。


うぁっ・・・しっぽまでふっちゃって・・・


タマシイはねがいごとと引き換えなんでしょ?

「じゃあさ・・・なにしてくれる?」


ぱっとうれしそうな顔になって矢口にのしかかってくる。

「続きいいん?」

「・・・なにしてくれるの?」


照れ隠しに軽く無視をしながらもう一度聞く。


113 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時04分32秒


「お菓子かなんか出そか?」


はぁ?!

ちょっと・・・
矢口をなんだと思ってるのさ・・・


「・・・もう子どもじゃないんだよ?
 なんか他のことにしてよ。」


「う〜ん・・・」

ゆうちゃんは眉間にしわを寄せて固まる。


そんなに考えることなのかな?

ゆうちゃんっていつもねがいをかなえる立場だからねぇ・・・

なにかをして欲しいって頼まれることはあっても
こういう聞かれかたってしたことなかったのかもね。


しばらくおとなしく待ってあげよう。



ふ〜ん・・・
ゆうちゃんの身体ってそんなに重くないんだね。
心地いい重みだったりして・・・

ゆうちゃんの肩に額をすりよせてみる。

なんだろ・・・安心する。



ふと感じた視線。

ん?
もぉ決まった?



ゆうちゃんが痛いのを我慢するようなそんな顔でわらう。


なに?

114 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時05分07秒


ゆうちゃんが身体を起こそうと矢口の腕をとく。

そのときになってはじめて自分がゆうちゃんに
ギュッて抱きついてたことに気がついた。


うぁ・・・なにやってんだろ・・・


矢口の横にすわってからゆうちゃんは頭をなでてくれる。

どうしたのさ急に?

ん・・・でも気持ちいい。

目を閉じてその感触をたのしむ。



「・・・・・・いいこと・・・したろ。」


ふいにこぼれ落ちてきたゆうちゃんの言葉。


え?

びっくりしてゆうちゃんをみあげる。

115 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時05分38秒

・・・間違いじゃないの?
やさしくわらいながらいう言葉じゃないじゃんそれ。

ってゆうかどういう意味だかわかってるの?

起き上がってゆうちゃんの目を覗き込む。



「ちゃんとわかってる?」

「ん?わかってるよ。」


矢口の服に伸びてくるゆうちゃんの手をつかむ。


これは似てるけど食事とは違うんだよ?
そこんとこちゃんとわかってなきゃヤダよ?


「ほんとにわかってるの?」

「なんや?信じてへんの?」

だって・・・離れるタマシイの量が増えておいしくなるからでしょ?
ゆうちゃんがゆうちゃんのために矢口を抱くんじゃん。

それは単なる食事の延長上の行為でしょ?


矢口は『なにをしてくれるの?』ってゆうちゃんに聞いたんだよ?
ゆうちゃんのためじゃ意味ないじゃん。


「じゃあいい。」


・・・やめちゃうの?
それもなんか・・・・・・ヤダ。

116 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時06分09秒

「・・・今日はタマシイいらん。」


我慢できないんじゃないの?


「かわりにマリが納得するまで・・・な?」

え・・・

チュッ

ゆうちゃんはわらってからやさしくキスをして
するするっと矢口の服を脱がしていく。


あ・・・・・・

ちゃんとわかってる・・・
ゆうちゃんはわかってるんだ。


117 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時06分57秒


ちょっと待って
一人だけ脱ぐなんて恥ずかしいよ。


「ゆうちゃんは?」

脱がないの?


「ん?この身体自体作りもんやからなぁ・・・
 元に戻ったら・・・獣姦やで?」

ニヤッてわらうゆうちゃん。

な!


「このエロギツネ!!」

「そっか・・・ある意味それも・・・
 ふ〜ん・・・いつか襲ったろっかなぁ・・・」


はぁ?

え〜っとゆうちゃんはオス?
どっちかわかんないなぁ・・・

そっか・・・身体自体作れるんなら
別に性別がどっちだって問題はないのか・・・


「都合のいい身体だね。」

「まぁな・・・どんなねがいごともかなえてきたからな。」


・・・・・・

118 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時07分55秒


じゃあ・・・いままでにゆうちゃんは誰かと・・・

抱いたの?
抱かれたの?


一気に心の中が冷たくなる。
さっきまでポカポカ温かかったのに・・・


・・・ヤダ。




「おねがいしていい?」

「ん?・・・タマシイなしで?」

うん。
これは矢口のわがまま。

わかってるけどきいて欲しい。


「・・・しゃあないなぁ。特別やで?」


ゆうちゃん・・・わがままな矢口を許してくれる?

119 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時08分31秒

脱がされてあらわになった身体をわざとすりよせる。

ゆうちゃんの目がフラフラと宙を泳ぐ。
しっぽもフラフラ・・・


ふ〜ん・・・ちゃんと意識してくれてるの?
うれしいね。


「じゃあね・・・矢口のこと抱いたらもぉいままでのヒト忘れて?」

抱いたり抱かれたりしたヒトのこと全部。


チュッ

ゆうちゃんの尖った爪に・・・

チュッ

ゆうちゃんの手のひらに・・・


なぁに?
そんなに驚かなくてもいいじゃん。


チュッ

固まったまま動かないゆうちゃんの唇に・・・
そのままゆうちゃんをみあげる。


120 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時09分03秒

ふぅ〜

ゆうちゃんはため息をついて目を閉じてしまった。



・・・矢口じゃダメ?
ほかのヒトのほうがいい?


しばらくして目を開けたゆうちゃんは困った顔してた。


「ええよ。ちゃんとそのねがいかなえたる。
 ・・・そっちこそわかってんのか?特別やねんで?」


ん?

ギュッて抱きしめられる。


「はじめてやで?特別扱いは・・・」

耳元でささやかれる言葉。


はじめて・・・
特別・・・


胸がキュウッてなる。
その痛みは甘く矢口の欲を目覚めさせる。


・・・もっと・・・もっといってよ・・・

ゆうちゃんにしがみつきながら心の中でつぶやいた。


でも・・・

121 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時09分36秒

「当然だよ。特別早くタマシイ食べられたんだよ矢口。
 それくらいしてくれなきゃ許さないよ。」


口から出るのはギリギリの強がり。


矢口のタマシイが欲しかったら・・・
ちゃんとくれるものくれなきゃダメだよ?


・・・くれたら矢口はゆうちゃんのもの。
ゆうちゃんが欲しいだけ・・・好きなだけあげるよ。




「マリは火そのものやな。
 さわるとやけどするところは・・・いっしょか。」

ゆうちゃんが苦笑してるのがわかる。


なに?
なにといっしょなの?

・・・聞きたいけど・・・聞きたくない。


自分であきれる。
なんてせまいんだろうね矢口の心。


ゆうちゃんは・・・ゆうちゃんだけは誰にも譲れない。


122 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時10分17秒


「こんだけ長く時代をみてきたんや。
 ここで焼き尽くされて終わるのも別に悪いことやないな。」


耳元に落ちてきた言葉。
それが胸に響く。

「矢口が・・・ゆうちゃんを・・・」

焼き尽くしてもいいの?


・・・しらないよ?
そんなこといって・・・

ゆうちゃんの背中に回った手でギュウってする。


くくくっとのどの奥でわらうゆうちゃん。


本気なのかどうかよくわからない言葉。

それでも別にいい。
ゆうちゃんがそういうんだから。



123 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時10分52秒



「さてと・・・」


ん?

ベットに転がされる。


・・・ゆうちゃんは?
すわったままなの?

ゆうちゃんのほうに腕を伸ばすと
手をキュッと握ってくれたけど近寄ってきてくれなかった。


「そんな・・・かわいいく誘うなよ。」


だって・・・離れてるとゆうちゃんにみえちゃうじゃん。

ねぇ・・・はずかしいよ。
そんなにみないで?


勝手に身体が熱くなってくる。

「なんや?顔赤いで?」

もぉ・・・意地悪。


124 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時11分33秒

「ねぇ・・・みてるだけ?」


みてるだけなんて・・・ひどいよ・・・


チュッ

ゆうちゃんは視線をからめながら矢口の指に唇でふれる。


ただそれだけでのどがカラカラ。
でも・・・そんなんじゃ足んないよ。


満足そうに細まる目は妖しい色をしてた。



ねぇ・・・もしかして罠に落ちたのは矢口?

これは矢口が望んだこと?
だよね?


「ゆうちゃん?」

・・・どうして抱っこしてくれないの?
ねぇ・・・やさしくしてよ。

125 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時12分06秒

「ん?せっかちやなぁ・・・ゆっくりゆっくり味あわせぇや。」


いつもそう・・・

矢口が欲しいものを出し惜しみするように
少しずつしかくれないの。


だから欲しいものをもらったときには
それじゃ満足できないようになっちゃってる。


矢口を欲張りにさせてるのはゆうちゃん。




ゆうちゃんはうれしそうに
矢口の手のひらの線を指でなぞってる。


もぉ・・・子どもじゃないんだから・・・


あ・・・れ・・・?


身体がゾクッてした。


126 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時12分41秒


なんなの?


「悪いようにはせんよ・・・」

ゆうちゃんは手のひらにキスをして
そのまま唇を滑らせて・・・


やっと抱きしめられたときそれだけで涙が出そうになった。



「どうしたん?」

少し身体を離して聞いてくる。

身体が震えたのに気づいたの?


「ううん・・・なんでもない。」

「そうか?」


やさしいキスが降ってくる。
なんどもなんども・・・


少しずつ少しずつ意識がとけて身体の力が抜けていく。

127 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時13分15秒

「好きやなぁ・・・」

ゆうちゃんがクスクスわらう。


好きだよ?
悪い?

にらもうとしたけど・・・自分でわかる。
視線に力がない。


「なんやその目?」

ゆうちゃんの声が掠れてる。


「そんな風に誘うんや?・・・悪い子やな。」


いいもん悪い子で。
それでゆうちゃんのこと捕まえられるんなら・・・


「ねぇ・・・悪い子に・・・お仕置しないの?」

ちょっと焦点をむすびにくくなった目でみつめながら
ゆうちゃんのほっぺをなでる。


「・・・・・・ほんまに・・・悪い子や・・・」


そのわりにうれしそうににやけてるよ?


「好きな・・・くせに・・・」

「まぁな・・・悪い子大好きや。」


矢口の好きなとろけるような笑顔。


チュッ

128 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時13分48秒

「お?」

・・・好きだよゆうちゃん。

ゆうちゃんの目の妖しい色が濃くなる。


その色に囚われる。


・・・・・・


やさしいキス。


「んんぅ・・・」

でもね・・・これじゃもぉ足りないの。

ふれるだけのキスの合間にゆうちゃんの唇をなめて催促すると
待ってたみたいにゆうちゃんは深いキスに変えてくれる。


「っ・・・」

ゆうちゃんの手が矢口の肌の上をはいまわる。
それもやさしくて・・・足りないの・・・


身体が熱くってさぁ・・・
もぉ・・・ヤバイ・・・のに・・・

129 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時14分22秒


キスをやめてゆうちゃんがわらってる。


意地悪しないでよぉ・・・


「ゆぅ・・・バカ・・・」

「・・・お仕置きやもん。」


アカンのかって目でいってる。
・・・こんな顔してるときのゆうちゃんは止められない。

別に・・・止めようとは思わないけど。



「ぅんっ?」

ゆうちゃんが指で矢口の胸をつんつんって・・・
そのまま・・・


なんか赤ちゃんみたいだよゆうちゃん。

あ・・・うそ・・・

130 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時14分55秒

「・・・ぁんっ・・・っ・・・」

ゆうちゃんがうまいのはキスだけじゃないんだ・・・
しらなかった・・・

ゆうちゃんの頭を胸に抱きしめてしまう。

与えられる刺激を抗わず受け止めると
身体の熱がどんどんひどくなる。


「っ・・・ねぇっ・・・あつぃ・・・」

身体の奥の熱が矢口をとかす。

とけたものがあふれ出るのがわかってひざをとじてごまかす。
でもそれは止まるどころか・・・

ダメじゃん・・・
ゆうちゃんにバレちゃうよ・・・


ゆうちゃんがすっと矢口の腰をなでる。

ひざが緩みそうになるのを必死で耐えると身体が震えてしまう。

131 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時15分30秒


「我慢せんでええのに・・・まぁそこがかわええんやけど・・・」


抵抗できないようにして奪ってくれたら楽なのに・・・
矢口が自分で認めるまで待ってるんだもん・・・ズルイよ。


ゆうちゃんが矢口のひざをなでるから
ひざが緩んでしまわないように身体を固くする。


「ん?こわいんか?」

片方の眉をキュッと上げて少しわらいを含んだ目でみてくる。

なに?!
そんなんじゃないもん!

ただ・・・

ゆうちゃんの目をみないですむように顔をそむける。


「恥ずかしぃ・・・だけ・・・」

「・・・別にイヤってわけじゃないんやろ?」


確認しないでよそんなこと・・・


「なぁどっち?やっぱりイヤ?」


もぉ・・・

「・・・いいこと・・・してくれるんでしょ?」

132 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時16分02秒

イヤならそのときにイヤっていってるよ。
矢口をこんな風にしたくせにいまさら聞かないでよ・・・



「そやったなぁ・・・」


ゆうちゃんが身体を起こして矢口のひざに手をかける。
もぉ・・・抵抗はできなかった。


「ひゃぁっ・・・ちょっ・・・ゆぅ・・・」


ピチャピチャ音がする。


身体がはねそうになるのを
ゆうちゃんがギュッと押さえ込んで・・・


「んっ・・・んんっ・・・ヤぁっ・・・」


与えられる刺激に早まる呼吸。
ゆうちゃんを押し返すように動く身体。

ねぇ・・・おかしいよ?
身体がへんなの。

ゆうちゃんのせいで身体を震わせることはできても
恥ずかしくて仕方ないのにひざを閉じることも・・・
ゆうちゃんの肩を押してを突き放すことも・・・できないの・・・


それどころか・・・声を漏らしながら・・・


133 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時16分42秒


かすむ視界の中でゆうちゃんのしっぽがユラユラゆれてるのがみえる。

・・・なんでそんな余裕あるんだよぉ。
こんな風になってるの矢口のほうだけ?


「あっ・・・やぁっ・・・ぅんっ・・・」

誘うような声が・・・いやらしい水音が・・・矢口の心を責める。

そうだよ・・・
矢口はいやらしい子なの・・・

しられたくなかったけど・・・しって欲しかった。
おねがいだから・・・嫌わないでね?


「っ・・・ねぇ・・・」

こっち来てギュッてしてよ・・・さみしいよぉ・・・
ねぇ・・・ちゃんと抱いて?


「ん?・・・うん。」



ひざの裏に添えられた手は矢口のひざを身体に押し付ける。

「気に入ってくれるかな?」

ちょっと不安そうな顔をするゆうちゃん。


ちょっと・・・もぉ・・・なにいってんだよぉ・・・

「・・・バカ・・・」

134 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時17分15秒

ゆっくりゆっくりゆうちゃんで満たされる。


「っ・・・ふぅ・・・」


あ・・・

ゆうちゃんにしがみつくとほおずりされた。


・・・いいのかな・・・こんなのも・・・

「ゆぅ・・・」


声に反応したゆうちゃんの唇を指でなぞる。

「ん?」

ゆうちゃんはいつでも矢口のねがいをかなえてくれる。

少しずつ切り崩されてくわずかに残る意識。
もぉ怖いとは思わなかった。

失っていく感覚さえいいものにおもえた。


135 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時17分48秒

「・・・ぁっ・・・っ・・・」


キスに夢中になってるうちに動き出したゆうちゃんに
眩暈のような感覚をおぼえる。

身体の中で起こる摩擦に鳥肌が立つ。


・・・好き。
好きなの・・・ゆうちゃん。


高い高い所へ押し上げられるような・・・そんな感覚。

くらくらするもん。

でも・・・もぉ意識を手放してしまいたいの。
だって・・・いいけど・・・つらい。


「っ・・・ねぇ・・・・・・」

気がついたら一生懸命しがみついてゆうちゃんに訴えてた。

ゆうちゃん・・・もぉいい?
楽にしてくれる?


「・・・っ・・・かまへんよ。」

からんだ視線に含まれた疑問は伝わってた。


136 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時18分22秒

わざとゆっくりになるゆうちゃん。

うそ・・・
どうして?

もぉ・・・

「いじわるぅ・・・」


最後の意識が崩れていくのを
イヤというほどゆっくりゆっくり感じさせられる。


意識をひとかけらひとかけら手放していく・・・
その間に味わい続ける快感。

それは・・・ぜんぜん悪くなかった。


ゆうちゃんが矢口にくれたのは最高のいじわる。

137 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時18分56秒



矢口の身体になにかがふれてる。

「ん?起きた?風邪ひくかなぁって・・・」

あ・・・お布団か・・・
そうだね矢口まだなにも着てないし・・・


ゆうちゃんが腕枕してくれてる。

はぁ〜

思わずもれるため息。


「どうや?満足?」

「・・・・・・そんなこと聞かないの。」

ペチッてゆうちゃんの額をたたく。


「たっ!なんやねん・・・」

ゆうちゃんは文句をいいながらも抱きしめててくれる。
腕の中に納まりながら身体に残る感覚にちょっとだけ浸る。

ダメだぁ・・・ベタ惚れじゃん。
ゆうちゃんに。


138 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時19分39秒

「ん?」

ゆうちゃんのアゴのラインを指でなぞる。


チュッ

ふふふ・・・ゆうちゃんが矢口にしかみえなくて良かった。
自分からゆうちゃんにキスできるのは矢口だけってことでしょ?




「なんかなぁ・・・わかった。」

ゆうちゃんがつぶやく。
矢口のほうをむいてすっとやさしく目を細める。

そのままゆっくり頭をなでてくれる。


「なにが?」

「あんなぁ前は100年近くタマシイ食べんでも平気やったんや。
 それが・・・マリに会ってからはそんなもたへんねん。
 自分でも不思議やってんなぁ・・・」

そうなの?

いわれてみればそっかな?
今回一週間あいたのが長いほうだもん。


「じゃなんで?」

その原因がわかったんでしょ?

139 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時20分13秒

ふふふってわらうゆうちゃん。

なんだよぉ・・・

「タマシイが欲しいんやなくてなぁ・・・マリが欲しいねん。」

!!!!

なんだよ・・・


「めちゃめちゃ好きなんや。こうゆうふうにふれてたい。」


矢口の身体を抱きしめる腕の力を少し強めてふわってわらう。



「なぁ・・・好き。好きやで?」


そのままほおずりしてくる。


ゆうちゃん・・・いいの?
心と身体を矢口にくれるの?

身体がプルッと震えた。

胸がいっぱいで・・・
なんか鼻の奥がツンッとする。

ヤバイと思ったときには遅かった。

140 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時20分45秒

「っ・・・矢口も・・・っ・・・」

ゆうちゃんにしがみついて泣いた。


いいよ。
矢口もあげるよ・・・ゆうちゃん。

ゆうちゃんが欲しいだけ矢口をあげる。
タマシイでも身体でもなんでも。


「なんで泣くんや?」

ゆうちゃんはほっぺにも額にもまぶたにもキスをくれる。



この腕の中だとすぐに涙も止まってしまう。

で・・・満足した心に芽生える次の欲。

141 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時21分17秒


「ねぇ・・・ずっと一緒にいて?」


ゆうちゃんの尖った爪をいじりながらいう。
ちゃんと顔みていうのは無理だよ。

だって・・・イヤだったらわかっちゃうもん。
ゆうちゃんの心は目にでやすいから・・・


「そんなんゆうてどっかいくんはそっちのほうなんやろ?」

ゆうちゃんが寂しそうな声でつぶやく。


・・・・・・あれ?

ゆうちゃんを見上げると泣きそうな顔してた。


なんでそう思うの?

ゆうちゃん置いていったらまた誰かにキスしちゃうでしょ?
矢口以外の誰かに・・・

矢口はそんなの許さないよ?



「死んでもだよ?ずっとずっと離れちゃダメなんだよ?」


ゆうちゃんがびっくりした顔で矢口の顔を覗き込んでくる。

142 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時21分52秒

「それほんまか?」

「イヤ?」

「アホかそんなわけないやん!!
 あぁこんなときどうやって表現したらええんや?」

困った顔しながらもゆうちゃんは
自分の胸の辺りをとんとんってしてた。


「どうしたの?」

大丈夫?


「なんやわからんけど・・・くるしい。」

不思議そうに首を傾げるゆうちゃんをギュウッて抱きしめる。


「くるしいのはゆうちゃんだけじゃないよ? ・・・矢口もだから・・・」


「なぁ・・・これ大丈夫なん?」

なんにもしらないんだねゆうちゃん。
そんな不安そうな顔しちゃって・・・

143 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時22分27秒

ゆうちゃんはどうかわからないけどね・・・

「矢口は痛くもくるしくもない幸せなんて欲しくないよ?」


想うだけで胸が痛くなる。
でも・・・甘くもあって心を蝕む様な・・・

そんな幸せ。


失うときっとおかしくなってしまう。




ずっと一緒。

一緒にいこうね?


それが矢口の一番の・・・・・・ねがいごと。


かなえられるのはちょうどタマシイが尽きるとき。
その瞬間タマシイとねがいごとがつりあうの。




おわり


144 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時23分19秒
更新終わりです。

本編はここまで伸びました。
145 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時25分18秒
こっから先1話だけ番外編を考えております。
それが終わればキツネさんとはお別れです。

読んでくださった人に感謝です。
146 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月19日(木)00時26分39秒
ちょこっと時間がかかるかもしれません。
早ければ今週末。遅ければ来週水曜です。

ではまた。

147 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
川o・-・)ダメです…
148 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月19日(木)14時15分36秒
大量更新お疲れ様です。
今回の話は甘々で、凄く良かったです!
次回の話も期待してます。
149 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月21日(土)21時55分28秒
とけちゃいました。
大量更新に大感動です。
150 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月24日(火)23時57分07秒

更新します。
151 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月24日(火)23時57分42秒


大丈夫?


152 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月24日(火)23時58分15秒


あぁ・・・しかし失敗やった。

こうぎってヒマやからかわいい子いいひんかなぁって
マリのそば離れたんが悪かったんやなぁ。

気がついたらどうやって戻ってええんかわからんなってしもた。

ここどこやろ?


同じような廊下がずっと続いてるからどっから来たんかもわからん。
落ち着かん・・・外にいこ。


ヒトどおりの少ない木の茂ってるところを探してねっころがる。


ふぅ〜

アカン・・・なんか疲れる。
休憩しよ休憩。


153 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月24日(火)23時58分46秒


・・・・・・

−ゆうちゃんどこ?!−

眠りに入りそうになった頭に響く声。


ん?
マリが探してる。


−外や。人のおらん木の多いとこ。−


さて・・・どっからくるんかな?



「もぉ!ゆうちゃん居なくならないでよ!」

視界の端っこからふいに現れるマリ。


へぇ・・・この建物ってそんなとこにも出口あったんか。

ん?
誰やそのにいさん。

154 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月24日(火)23時59分18秒

「しつこいの。なにかいってよ。」

あ〜きっつい顔やなぁよっぽどイヤなんや・・・


「なになに?誰と話してるの?」

・・・軽いセリフやなにいさん。


「なにゆうてくんの?」

「付き合えって・・・」


なに!!!

マリがこいつと付き合ったら・・・・・・

・・・またか。


「ゆうちゃん?」

「・・・・・・付き合うん?」


「バカ!!」

大きな声とともに降ってきたちっちゃい手。


・・・そんなんゆうたかて・・・不安やん。
いっつも置いてかれてた身としては・・・弱気に・・・なってまうんや。


「じゃなんのためにゆうちゃん探してたと思うの?」

ちっちゃい声でつぶやくのが聞こえる。


155 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月24日(火)23時59分52秒

んっそうか!!

了解!


ちょっと力を使って後ろのにいさんにもみえるようにする。


「うぁっ!!」

・・・そりゃね。
それくらいビビってもらわんとなぁ。


しっぽもこれみよがしにふってみせる。


んっそや。

マリの肩を抱く。
不思議そうにみあげるマリのアゴに手をかけてゆっくり唇を奪う。

びっくりするマリに満足しながらにいさんに向き直る。


「かわええやろ?」

マリは恥ずかしそうに顔を隠す。

ん?
無反応か?


「やらんぞ・・・お前には。」

勝手に口の端がキュッと上がる。

156 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時00分25秒

おぉ・・・震えとる震えとる。

当たり前や・・・手ぇ出そうとしたんやからなぁ。
むかしの自分やったらここでとまらへん。


思い出したら鳥肌が立った。
ちゃんとケモノやったころの自分。

自分のナワバリを荒らされたとき感じた感情。



血が・・・騒ぐ。

二度と近づけんように・・・



・・・殺してやろうか?


157 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時00分59秒


腕をひっぱられて我に返る。

「ゆうちゃんもういいよぉ。」


ん?
ええんか?


「手ぇ出したらどうなるか・・・わかるな?」


壊れたおもちゃみたいに首をガクガクふってる。


「わかったら立ち去れ。」

にいさんはあわてて走り去った。



マリが後ろから抱き付いてくる。

「・・・やりすぎだよ。」


そんなんゆうて・・・引き下がってくれへんかったら
マリをとられるやんか。


158 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時01分30秒

「なんだよぉ・・・ついさっきまで弱気だったくせに・・・」


それをゆうなよ。

マリの腕を解いて自分から抱きしめておでこをくっつける。

「誰にもやらん。」


くすぐったそうに目を細めるのがかわいかった。


チュッ

ほおずりをする。


しっぽが勝手にパタパタゆれる。


怖いのはマリがいいひんようになることだけやもん。
側におってくれたらこわいことひとつもあらへんもん。


159 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時02分56秒


「ゆうちゃん姿けして。」

「ん?うん。」


なんや?


「矢口みっけ!もぉいきなり消えたら心配するっしょ?」


・・・なっちかぁ。
かわいいよな・・・なんか抱き心地よさそうで・・・


ペシッ

たっ!!


なっちに駆け寄る前にはたいていきよった。

160 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時03分32秒

なっちと一緒やったら大丈夫やんなぁ。
買い物いくんやろ?

人ごみしんどいし・・・


楽しそうに話す2人に近づいてマリの頭をなでる。

「さき帰っとく。」

・・・そんな目すんなよ。
なっちが変に思うやろ?


「どしたの矢口?」


ほらな?


「ううん。なんでもない。」

あわててなっちに視線を戻してごまかしてる。


この間に・・・

161 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時04分02秒

てっ!!

しっぽをつかまれた。


振り向いたらマリはしらん顔してなっちと話してる。


しっぽをプリプリ振って振り切ろうとしたら
逆にギュッてひっぱられて痛い思いをしただけやった。


わらいながら歩く2人の横をしっぽをひっぱられながらついて歩く。


しかしなんや・・・イヌの散歩よりひどいで?

ほんま失礼な。
かりにも祠の主やで?


もう一回強くしっぽを振ってみる。

イタタッ!!


マリがさみしそうにこっちをチラッとみる。

162 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時04分45秒



あ・・・

・・・・・・ごめん。

・・・・・・


「なぁ。歩きにくいねん。しっぽやなくて手ぇつなご?」


・・・無視すんなよ。
信じてへんな?


「逃げへんよ?ちゃんとマリの側にいるから・・・な?」


やっと自由になる。

しっぽの分だけマリに近づいて指を絡めるように手を握る。


なんとなくマリの機嫌がよくなってくるのがわかる。

・・・かわええなぁ。


しかし・・・なんでやねん。
自分と違ってマリには一緒にいてくれるヒトが他にもおんのに。

なんで一緒にいて欲しがるん?
うれしく・・・なってしまうやん。


頭をなでていい子いい子したる。

163 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時05分30秒

「ねぇ矢口へんだよ今日。」

「えぇ〜どこがぁ?」

そんなんゆうていまめっちゃにやけとるがな。


「さっきさぁ・・・誰かと一緒にいたっしょ?」

「・・・なっちの気のせいだよ。」


手のひらが少し汗ばんでる。

まぁしゃあないか。
ウソついてるもんなぁ。


「ちゃんとなっちに紹介するんだよ?」

なっちが丸い目を細めてわらう。



「ん・・・・・・そのうちね。」

マリがチラッとこっちをみてからうつむく。


あれ?
耳あこうなってないか?

164 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時06分05秒


「あぁ〜やっぱり誰かいたんだぁ・・・」

にやってわらうなっち。


ほぉ・・・なかなか策士やなぁなっちさん。


「そのうち・・・そのうちちゃんと話すってば。」


あぁやっぱり・・・顔まっかやん。


「どんなヒトってくらいいいんでないの?」

「う〜んヒトっていうか・・・ケモノ。」




なっちがあかくなった。


「え?あっそういう意味じゃないよ?」

「もぉ・・・矢口エッチィ〜!!」


ペチッとしばかれとる。


「なんでこうなるんだよぉ!!もぉ!!」

165 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時07分51秒

なんやねん。
・・・なんかムカつくなぁ。


手をキュッとしてマリの注意を引く。
意識がこっちに向いたのを確認してから耳たぶをペロッとなめる。


「ケモノでなにが悪いねん。」


おぉ・・・耳を手でガシガシしながらまっかっか。

完全にこっちに背を向けてしまう。



「なっち・・・訂正。ケダモノだケダモノ。
 ヘタレのくせにへんに強気でさぁ・・・浮気性で・・・
 でもやさしくて・・・すっごいエロいの。」


・・・なんちゅういわれようや。
なっちの目が点になっとるやないか。


「・・・・・・矢口じゃないとダメなんだって。」


・・・・・・まぁな。

166 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時08分30秒

「大丈夫?矢口はちゃんと幸せ?」


・・・なんでそこでだまんねん。
幸せやないの?

ゆうたらなんでもしたるで?


肩越しにマリの顔を覗き込む。
視線があうとふわって笑顔になる。

そのままの笑顔でなっちにも・・・


「幸せだよ?」

「そっか。矢口は幸せかぁ・・・」

2人でうれしそうにわらってる。


ふ〜ん・・・かわええなぁ2人とも。

167 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時09分00秒


また違う話を始める。
あんまり内容がわからんからボーっとしながらついて歩く。

たまにはこうやってマリにひっぱられてタラタラ歩くのもええな。


ときどきチラッと視線を投げてくる。

ちゃんとついてってるよ。
心配せんでええ・・・一緒にいるから。

大丈夫やで。


いつでもマリのねがいかなえたる。

そしたら・・・最後もこうやってつれてってくれんねやろ?

約束やで?




おわり

168 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時10分18秒
更新終わりです。
えぇ・・・一応これで完結です。
169 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時13分32秒
キツネな中澤さんとタマシイを食われた矢口さんでした。

いつか書こうと思ってたヒトの話も
ちょろっと入れることもできてよかったです。
170 名前:ちぃ 投稿日:2002年09月25日(水)00時18分17秒
秋ですねぇ・・・ちょっと憂鬱な・・・体調もようないし・・・

というわけで10月頭までお休みします。
そのときはまたお付き合いください。
171 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年09月25日(水)00時45分25秒
ちぃさんの作品はいつ見ても
心が安らぎますねぇ
次回作を楽しみに待ってます
172 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月25日(水)15時09分07秒
脱稿お疲れ様でした。
ヒトとキツネのお話、面白かったです。
次回作も期待して待ってます。
173 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時21分59秒
更新します。
174 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時22分36秒

―いっしょ―<矢口>

175 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時23分07秒

・・・ごっつぁんいっちゃった。

なんか裕ちゃんのときとまたちょっと違った喪失感。
あとから入った人が抜けるのはじめてだから?

矢口よりも大きくて矢口よりクールにみえるごっつぁん。
でも年齢相応にはしゃぐことも甘えることもあるんだよね。

・・・いくらでも寝ちゃえそうな一人の楽屋は・・・居心地いいのかな?

こっちは12人でもさみしいよ?



「やぁ〜ぐちっ!」

ん?
裕ちゃんの声だっ!!

どこ?
どこっ?

思わず立ち上がってしまう。


「つぅかまぁえた〜!!」

矢口の後ろからひざカックン気味にひざをとられる。
勝手にのけぞってしまう身体。


「「いやぁ〜!!」」

裕ちゃんをまきこんでたおれる。


176 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時23分37秒


・・・・・・

「なにやってるのさ!このアホ裕子!!」

裕ちゃんの頭をはたく。

下敷きになってくれちゃって・・・
ケガしたらどうすんだよ。


「・・・ごめん。」



「はぁ・・・なにやってんだかねぇ。ほんとこりないね。」

圭ちゃんのあきれた声。


「えぇやん別にぃ。スキンシップやスキンシップ。
 アタシの本能が命令してくんの。さからえへんやろ?」

「本能?」

「そやで?母性本能並みに強い本能や。」

「すごいねそれ。」

「すごいやろ?」

圭ちゃんがわらってる。

177 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時24分16秒

矢口が立ち上がるのをまって裕ちゃんも立ち上がって
2人してパタパタとホコリをはらう。


並んですわる。

ほんとは裕ちゃんのひざの上がいいんだけど・・・
辻加護が横取りしにくるんだもん。

だから最近は2人のときだけ。


「う〜ん・・・矢口が立ってるうちにと思って焦りすぎたか・・・」

ん?

「なにしようとしたの?」

「ん〜?いつも抱っこする前にみつかるから
 今日はみつからんようにってな。」

だからってなんで足にくっつくんだよぉ・・・

「わっけわかんない。」

いいじゃん別に。
矢口が先に気づいてもギュッてしにきてよ。

178 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時24分56秒

「矢口も下から来るとは思わんかったやろ?」


なに得意げな顔してんの?


「もぉ・・・どうしてそんなアホなことするんだよ・・・」

「ん?矢口がさせてくれるんやんか。」


どうゆうこと?



チュッ

あっ・・・


「すきは逃さんで。」

機嫌よさそうにわらってる。


でも・・・わかんないよ?
裕ちゃんはどうして・・・アホなことするの?


「・・・なんで怒ってんの?裕ちゃんのチュウは嫌いか?」


嫌いじゃないよ?
でもわかんないんだもん。

179 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時25分31秒

「なぁ圭織ぃ・・・矢口怒ってんねん・・・どぉしよ?」

「えぇ〜圭織に聞かないでよぉ。いま忙しいところなの。」

「そっかぁ・・・がんばりや。」

「うん。」


・・・なにもしてないじゃん?
ってかなんで圭織に聞くのさぁ・・・


裕ちゃんの服をひっぱる。

「ん?」


チュッ

へへへ・・・やっぱされるの恥ずかしいの?


「裕ちゃん?矢口のことわかんないんでしょ?」

「うん。」

ん〜素直だねぇ。
わかんないのは矢口もいっしょ。

裕ちゃんがどうしてアホなことするのかなんて
裕ちゃんにしかわかんないじゃん?

180 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時26分23秒

だから・・・

「わかんなくていいんだよ裕ちゃんは。」

「ふ〜ん・・・わからんでええんか・・・難しいなぁ矢口は。」

眉間にたてジワ。
でもすぐにそれは消えてやさしい笑顔にかわる。

なんでそんなふうにわらえるの?
矢口こどもみたいなこと言ったよ?

・・・怒んないの?
やっぱりわかんないじゃん・・・


矢口には・・・裕ちゃんのことがわかんない。



「・・・裕ちゃんだって・・・」

「ん?」

あっ・・・ついぽろっと・・・

181 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時27分04秒

「・・・アタシはなんもむつかしないで?
 アホやからアホゆうてくれる人といると安心する。それだけのことや。」

横から身体をギュッと抱きしめられて・・・
ちょっと・・・ちょっとだけ・・・まだまだ足りないけど・・・
ほんの少しだけ・・・満足した。

裕ちゃんはまだ矢口のことわからないまま?
ふふふ・・・


「お?なにわらってんの?」

「しらなくていいの裕ちゃんは。」


あっ・・・また眉間にたてジワ。
今度はすぐには消えない。

「さっきからそればっかりやん。なんかおもろない。」

もしかして・・・すねてる?
かわいいね裕ちゃん。


「あとでね・・・あとで面白くしてあげる。」

指で裕ちゃんの唇をなぞる。


「そうか?」

裕ちゃんがにやっとする。

「ほな楽しみにしとく。」


・・・もぉ

「アホ。」


裕ちゃんがこどもみたいにうれしそうにわらった。

182 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時27分53秒

でも・・・裕ちゃんは矢口のことわかんなくていいの?
ねぇ・・・いいの?

「アホ・・・裕ちゃんのアホ。」


ん・・・

裕ちゃんが矢口の頭をなでる。

「ふ〜ん・・・やっぱり不安定やな。」


あ・・・


いわれてみれば今日の矢口はいつもよりも感情が・・・不安定。
だってさぁ・・・ごっつぁんが・・・


「自分で気づかんかった?矢口いつもよりちっこくみえんで?」

「こらっ!ちっこいゆうな!!」

おもわず突っ込む。

からかうように細められた裕ちゃんの目がやさしかった。


なんだよぉ・・・矢口より矢口のことわかってんじゃん。



「ひひひ・・・アホでもみるとこみてんの。」

もぉ・・・どうして?
やっぱり全部わかってんじゃん。

へらへらわらってる裕ちゃんが・・・・・・好きだなぁ。
そっか圭ちゃんも圭織もちょっといっぱいいっぱいなんだ。

183 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時28分52秒

あっ・・・

「なっちは?なっちは大丈夫?」

「あぁ・・・大丈夫やで?さっき・・・」

そっか・・・

ん?
ちょっとまって・・・

・・・さっきなにしたの?
なっちいまスタジオでしょ?

矢口のいないとこでなにしたの?


「こらっ・・・なんの心配や?アホやなぁ・・・」

裕ちゃんは苦笑いしながら矢口の背中をとんとんってする。


・・・ほんとにアホだよ矢口。
信じて落ち着いていられないんだもんね。


「矢口もアホだね。」

「そうか・・・裕ちゃんといっしょやな。」


目を細めてわらう裕ちゃんの肩にもたれる。

もうちょっと・・・年下組みがくるまでは・・・

184 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時30分03秒

自分で自分の感情をどうにかしないとって考える年上組み。
だってそうじゃないと年下の子達を支えらんないもん。

だから・・・・・・ありがと裕ちゃん。


「おっ?お疲れ矢口か?」

「ちがうよ・・・・・・」

裕ちゃんの手をとると不思議そうな顔で覗き込んでくる。
視線を絡めながらきれいに彩られたその爪の裏に・・・

チュッ


あれ?
裕ちゃんなにかたまってるの?

なんかいってよ・・・


「・・・そうゆうのは・・・誰もおらんときにしてくれな・・・・・・
 裕ちゃんがつらいやろうが・・・」


裕ちゃんの頭がコツンとあたる。

「矢口のアホ。」

そうだよ?
矢口はアホなんだ・・・

裕ちゃんといっしょ。




「「あぁ〜!!矢口さんずっるぅ〜!!!」」

おっきな声とともに現われる矢口の大事な妹たち。

でもね・・・いまは・・・いまだけは・・・じゃましないでよぉ!!!




おわり


185 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時31分01秒
はい更新終わりです。

なんとなく今回のことに触れてみたくて書いてみました。
186 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時33分45秒
たぶん慣れるまではつらいんでしょうね。
でも中澤さんが「仲間」っていってましたからねぇ・・・

大丈夫ですよねきっと。
187 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月02日(水)22時39分16秒
次はまた変わった設定の話を考えてます。
2〜3個あるんでどれがいいかなぁなんて贅沢な悩みでしょうか?

できれば短いほうが楽なんですがどれも落としどころが難しくて・・・
少し考える時間をとって次は来週の水曜か来週末です。
188 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月03日(木)17時41分14秒
久々のリアル系やぐちゅーですね。
なんかほのぼのとした展開で良かったです。
次はどんな話なのかな〜?
楽しみに待ってます。
189 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月09日(水)23時41分11秒
更新します。
190 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月09日(水)23時41分46秒

−教えてあげよう−<保田>

191 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月09日(水)23時42分18秒

用もないのにうちに来るなんて珍しいね。

なにするでもなく一人で紅茶を飲んでるから
こっちも話をするでもなくメールチェックしてる。

ふと気がつくとすぐ後ろに人の気配が・・・


「パソコン教えてください。」

え?
声のほうに振り返る。

「教えてください。」

どうした?
そんな真剣な顔して・・・


「急だね・・・」

「だって・・・保田さん・・・」


石川さん?
目うるんでますよ?

192 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月09日(水)23時42分57秒

「まだ先の話でしょ?」

「・・・時間は過ぎていくんです。
 そのときが来てからじゃダメなんです。」

うつむいてしまう。

あのねぇ・・・
死ぬわけじゃないんだし・・・


「パソコンなんて触ってるうちに慣れるものよ?
 教えるなんてことしなくても・・・」

「イヤなんですか?」

遮るようにつぶやかれる言葉。

イヤというわけでは・・・

・・・・・・


「やっぱり石川は迷惑ですか?」


また?
大人になったらって・・・

193 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月09日(水)23時43分32秒

石川が見上げてくる。


「石川はもう一人でがんばれます。」


・・・そう
・・・・・・よかったね。


「じゃあもう・・・」

必要ないねぇ・・・私。

え?

両手をつかまれる。
・・・前にもこんなことが・・・


「でも・・・石川には保田さんが必要です。」



「いらないよ。」

「いります。・・・ください。」


くださいって・・・
そんな真剣な目でいわれたら・・・


「どうして私なの?」

「そんなことわかりません!」

そんなもんなの?
で・・・どうして怒ってるの?

194 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月09日(水)23時44分08秒

「・・・イヤですか?」

・・・・・・なによその顔。
ちゃんと大切なんだよ。


でもこの気持ちはアンタのと違うかもしれないじゃない?
それでもいいの?


「わかってるの?返却は不可能よ。」




ギュッ


「いいんですか?」

しがみついてくる力は強いのにその声は弱い。


「なによ・・・いらないの?」


ギュゥッ

うぁ・・・苦しい。

「わかった・・・わかったから・・・」


やっと離してくれる。

195 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月09日(水)23時44分42秒

ふぅ〜

「パソコンを教えてあげればいいんだね?」

・・・・・・不満そうだね。
ごめん・・・ちょっと意地悪した。

「それだけじゃイヤです。」

相変わらず・・・自分の欲求に素直だね。

ふ〜ん。


え?

腕をひっぱられて石川の横に・・・


ってなんで私が押し倒されてるの?


「いままでみたいに教えてください・・・石川のしらないこと・・・」

人の上に乗っかっていうセリフ?

196 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月09日(水)23時45分19秒


「じゃあまずひとつ。」

コロッと転がして身体の位置を入れ替える。


「そこは私の場所。」

あっ・・・なに赤くなってるの?
しらないよ?


導火線に火をつけたのはそっちだよ?

動き出した気持ち。
自分じゃ止められないからね。






おわり

197 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月09日(水)23時46分34秒
はい終わりです。

なんかやっつけ仕事っぽくないですかね?
大丈夫かなぁ?
198 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月09日(水)23時48分13秒

これだけ読むとちょっと意味わからんかも・・・
199 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月09日(水)23時49分30秒
ちょっと忙しいので新しい話しを始めるのはしんどくて・・・
次回は来週末です。
200 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月10日(木)18時32分17秒
またやぐちゅー書いて下さいね。
楽しみにしてます。
201 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月20日(日)16時17分44秒
どんな話書くんもかってやろとか思った自分は心が狭かったです。
いまは大丈夫ですけど・・・

いや大丈夫どころか・・・期待してもらってうれしかったりもする。

忙しいと人は刺々しくなるもんですね。
恐ろしいもんだ。

では更新します。
202 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月20日(日)16時18分19秒

いつかこの空を・・・

203 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月20日(日)16時18分59秒

朝か・・・
いつも憂鬱だよ。

自分の背中をなでる。
はぁ〜どうしてだろ・・・みんなにあるものが矢口にはない。

机の上のペン立てにささってる大きくて白い羽。

これだけなんだよねぇ・・・
お父さんのせいかなぁやっぱり。


急にドアが開く。

「お〜い!矢口起きやぁ!!」


・・・・・・

「起きてる。」


シーツをひっぱって身体を隠す。

「なんや残念。」

なんだよ・・・起こしに来て残念って?


204 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月20日(日)16時19分32秒

「みせて?」

「え?」

「ほら・・・背中。」

「あっ・・・うん。」



裕ちゃんに背中を向ける。

「変わりないなぁ。まぁ急に変化するわけないか・・・」

そうだよね。

物心ついたころから朝になればいつか
みんなと同じになってるんじゃないかって思ってた。

目覚めてすぐに背中を触るくせ。
自分で悲しくなっちゃうよ。


「はいもうええよ。」

裕ちゃんのほうに向き直る。


「ねぇ・・・学校行きたくない。」

「またか?気持ちはわからんでもないけど。」

裕ちゃんがベットにすわって頭をなでてくれる。

205 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月20日(日)16時20分14秒

裕ちゃんだって小さいころ味わったでしょ?

不吉だって騒がれてそれなりに孤独を生んだ・・・
白衣によく映える光を吸収する色。

でも今は違う。

誰もが手に入れたがる・・・漆黒の翼。


「矢口には・・・居場所がないんだもん。」


有翼人の社会はすべて翼があることが前提なんだよ?
翼がない矢口は存在してないのといっしょなんだ。


「居場所・・・あるで?」

「どこに!!」

どこにあるっていうのさ・・・


裕ちゃんが抱きしめてくれる。

「あるやろ?ここに。」

そのやさしい笑顔が矢口を寂しくさせてるってしってる?

206 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月20日(日)16時20分44秒

だってね・・・矢口には愛を伝える術がない。
証として差し出す羽がないもん。

元々存在しないのといっしょだもん人を愛する資格なんかない。

裕ちゃんの背中にまわした手でその羽に触れてみる。

これをもらえるのは誰なんだろうね。



「どしたん?」

「・・・きれいな色だね。」

「えぇ?真っ黒やで?」

「違うよ。光の当たり方で色が変わるの。」

「そうなん?ようみぃひんからわからん。」


そうか・・・背中だもんね。


「翼って重い?」

「んにゃ・・・別に。」


そうだよね。
生まれたときからあるんだもん。

あって当たり前だから重いとかそんなのないんだよね。


バカなこといっちゃった。

207 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月20日(日)16時21分28秒

「なぁ・・・アタシは好きやで?矢口の背中。」


裕ちゃんの手が矢口の背中をなでる。

あっ・・・


「すべすべしてて気持ちいいもん。」


「ダメ。やめてよ。」

背中はイヤだ。
突きつけられる現実に耐えられない。

「・・・ごめんな。」

裕ちゃんが背中から手を離す。


どうせモルモットだよ矢口は。
それだけ珍しいんでしょ?


目の前でしゅんとしてしまってる裕ちゃん。

矢口こそごめんね。
裕ちゃんには矢口の気持ちがある程度はわかるんだ。

裕ちゃんだってそれなりに珍しい翼の持ち主だったから
むかしは矢口側の立場だった。

だからこそうちの家族も矢口をこの研究所に預けたんだよね。

208 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月20日(日)16時22分10秒

目が合うと裕ちゃんはわらってくれる。

「まぁええわ。今日は裕ちゃんの手伝いしてくれるか?」

「うん。」


結構手伝うの好きなんだよねぇ・・・

なにやってるかよくわかんないけど
いわれたとおりにやると裕ちゃんはほめてくれるんだ。


なによりこうやってときどき甘やかしてくれる裕ちゃんが好き。

209 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月20日(日)16時22分42秒

「ほなはよ服きぃや?」

裕ちゃんがにやっとわらった。

もぉ・・・

「しってて寝起きのとこへ来るんじゃん。」

「ん?毎朝の健康チェックやん。
 預かったときお母さんから頼まれたことやしなぁ。」

もっと遅くってもチェックくらいできんじゃん。

「なにふくれてんの?」


なにって・・・


チュッ

あっ・・・

「食堂で待ってるからな。」

裕ちゃんは手をひらひらと振りながらドアの向こうへ消えた。


なんで?
なんであんなことするの?

ヤダよぉ・・・あんなことされたら
裕ちゃんが他の人に羽をわたしたとき平気じゃいられなくなるよ?

わかってない。
裕ちゃんにはやっぱりわからないんだ。


そりゃそうだよね。
裕ちゃんには翼があるんだから。



・・・・・・急ぐか。
遅いと拗ねるもんね裕ちゃん。

210 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月20日(日)16時25分50秒
はい更新終了です。

今回も設定説明なんかはすっ飛ばします。
読み進んでいってもらうとわかるようには努力します。
211 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月20日(日)16時27分58秒
だいたい8話くらいで収まる予定です。
212 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月20日(日)16時29分13秒
ではまた次は来週末くらいに。
213 名前:名無し読者。 投稿日:2002年10月20日(日)17時23分01秒
わーいやぐちゅーだ。
ちぃさんのほのぼのやぐちゅーダイスキ。
214 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年10月21日(月)02時21分39秒
来週末を楽しみにしてます
ちぃさんのやぐちゅー良いっす!
215 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時21分57秒
更新します。
216 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時22分28秒


「ゆうとくけど所長には内緒やで?
 今日はよう手伝ってくれたからちょっとだけな?」

「うん。」

神妙な面持ちでうなずく矢口。

ほんまは勝手に部外者にデータみせたらアカンねんけど・・・
この子の場合部外者ゆうより当事者やもんなぁ。

しりたいやろ?
自分のこと。


「これみて?」

ライトのところへ2枚のX線写真を差し込んで
その前のイスに並んで座る。

「右が矢口。左がアタシ。」

まぁアタシのほうは別の誰かでもよかったんやけど
『こっちが普通の人』って表現イヤやしな。


「へぇ〜裕ちゃんの資料まだ残ってんだね。」

「まぁな。」

せっかくとったデータやし。

217 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時25分13秒


「それよりわかる?」

「うん。なんか違う。」

「そうやな。違うなぁ。」


大きさはともかくこの構造がなぁ・・・


「矢口の骨は中が空洞なんや。病気とちゃうで?
 トリの骨といっしょやねん。」


「トリ?」

「トリも翼もってるやろ?でもそれだけやったら飛ばれへんねんで?
 身体が軽ないとアカンし翼を動かす筋肉の発達も不可欠や。」

わかるかな?

ん〜難しい顔で首を傾げてる。

「今現在のアタシらの身体やと自力で飛ぶことはできひんよな?
 それは翼の小型化だけが原因やないんや。」

矢口に背中を向ける。

がんばって翼を動かしてみるとパタパタ動く。

「動かすことはできるけどこんなんで飛べへんやろ?」

「そうだね。」

矢口が苦笑いしてる。

218 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時26分13秒

なんやそんなおかしかった?

まぁええわ。


「羽の構造からみてもそうやで?真ん中に筋が入ってるやろ?
 これで浮力を生むことはできひん。飛べへんトリの羽と一緒や。」

矢口も真剣な顔で確認してる。


「ほんとだ。矢口の羽と形が違う。」

「そやろ?矢口が手に持って生まれてきたんは飛べるトリの羽と一緒なんや。」

矢口が持ってる1枚だけの羽。
それはアタシらの羽と違うんや。

う〜ん・・・もぉゆうても理解できるやろか?

「むかしは飛べたんやって。」

「へ?そうなの?」

「遺跡から出てきた人骨の中は空洞やった。」

「・・・矢口と一緒?」

大きくうなずいてやる。


「たぶん矢口のお父さんは下の世界におりた有翼人の子孫やな。
 むかし翼を持たん子が生まれると下の世界におろす習慣があったんや。
 この社会を無翼で生きるのは・・・つらいしな。」

「じゃなんで・・・!!」

「まぁちょっと待ち。ちゃんと説明するから。」

不満そうに見上げてくる矢口の頭をなでる。

219 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時26分52秒

「翼にこだわりすぎた有翼人は
 自らの遺伝子の多様性を失わせる方向で歴史を歩んできたんや。
 その結果がこれや。」

背中を指す。

「翼は小さくなって・・・骨も重くなって・・・
 翼を動かす筋肉もうまく発達せえへん。翼はただの飾りになったんや。」


そのくせ社会的な役割は増していった。


「わかるかな?矢口は翼がないのだけが珍しいんやないねん。
 むかしの人の特徴を持ってる。」


なんてゆうたらわかるかな?

220 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時27分22秒

「矢口のお父さんの中にむかしの有翼人の遺伝子が
 スイッチOFFのまま保存されてるって考えるとええんや。」

そうゆう遺伝子の中にいまの有翼人の持ってないもんが
含まれててもおかしくはない。


「それがお母さんの遺伝子と混じったことで 
 スイッチONになって本来の姿を現したってことやな。」


むつかしすぎるかな?

アカンか?
矢口は固まってる。



アタシが疑問に思うのは翼が生える時期やねんなぁ・・・

ほんまは十分な筋肉の発達を待ってからが正しいんやないやろか?
・・・変異してんのはアタシらのほうちゃうやろか?

翼を大事にしすぎてより早く生える子を優先的に残してきた。
その結果がこれなんちゃうかと。

矢口には翼がないから筋肉の発達も妨げられてない。
だからもしアタシの考えが正しかったら・・・


221 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時28分00秒


「・・・ぅちゃん・・・裕ちゃん?」

いかんいかん研究モードに入ってた。


「なんや?」

あれ?
呼んどいてうつむくんかいな?


「・・・・・・生える?矢口にも翼生えてくる?」

あ・・・


「それだけは・・・誰にもわからん。」

「なんだ・・・期待させないでよ。」


手で白衣をひっぱりながらコツンと肩におでこをあずけてくる。
そのちっちゃい身体がもっとちっちゃくみえる。



ごめんな?
変な期待させて。

でも・・・もし生えたら・・・矢口は飛べるはずなんや。
可能性を持ってるのは矢口だけなんや。

222 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時28分36秒


「ゆぅちゃんの・・・バカ・・・」

見上げて来る矢口の目が・・・

あぁ・・・そんなに落ち込ませてしもたか。
泣かんといて?



「ほれっこっちおいで?」

矢口の腕をひっぱる。

ん?
なんで抵抗するん?


「ヤダ。白衣って薬品くさいもん。」

くわっ・・・わがままな・・・・・・

少し攻撃的な顔をした矢口。

感情がうまく整理できひんの?
まぁそやな・・・つらいわなぁ・・・

一番気にしてることやもんな。
わかってたけどそろそろしっとかなアカンかなぁって思ったんや。

どうなるか薄々わかってるくせに過剰なストレスを与えたのはアタシやし。

・・・・・・はぁ。

223 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時29分09秒

白衣のボタンをはずすと自分から
ひざの上にあがりこんでくっついてくる。

ギュッと耳をひっぱられる。

「痛いって・・・」

「バカ。」

ペチペチとほっぺたをたたかれる。

うぅっ・・・バカってゆうなよ・・・
そりゃあ悪かったと思うで?

でもアタシはアンタのこと考えてやなぁ・・・


「裕ちゃんのバーカ・・・」

身体に回した手で器用に思いっきりつねってくる。


だから痛いって!


なんや・・・ほんまに・・・どうにかならんかなぁこのクセ。
自虐癖がなくなっただけましやけど・・・



・・・・・・精神的に不安定なんはしゃあないんかもな。

翼がないってことでいろいろゆうヤツもいるし
常に変なプレッシャーがかかってるんやろうなぁ・・・


でもなぁ・・・アタシだけにあたるんはなんで?
なんでなん?

224 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時29分42秒


しばらくして気が済んだのか
たたいたりつねったりしたところをなでてくる。


「もうええんか?」

「・・・うん。」


チュッ

「んぅ・・・もぉ・・・」



今回は結構早く落ち着いたなぁ?
だんだん感情をコントロールすんのうまくなってきてるんか?

少しづつ大人になってるんやなぁ。



「欲しいなぁ・・・。」

アタシの羽を触りながらつぶやく。


へ?!
あ・・・自分の翼な・・・びっくりした。
アタシの羽が欲しいゆうてるんかと思った。

頭をコツンとくっつける。

翼なんかなくても十分かわいいのに。

225 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時30分16秒

「・・・ごめんな?」

「なんで謝るのさ?」


なんでって・・・そんなに落ち込ませるつもりなかったんやもん。
矢口にはわらってて欲しいやん?


「ねぇ・・・なんで?」


・・・なんでゆうたらへんねやろな?
ゆうたらどんな反応する?

「なんでもええがな。」

すねてぷぅっと膨らんだほっぺた。

なんやそれ・・・・・・新手の拷問か?
そんなんされたらなんでもしゃべってしまいそうや。

226 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時30分46秒

これ以上矢口の顔をみんですむように
ギュッと抱きしめる。

「あっ!またそんなことするぅ・・・もぉ・・・」

そういいながらその腕はアタシの身体にまわされてる。

反則や反則。


はぁ〜

あのなぁ生物はな自分と違うもんに惹かれるようにできてあんねん。
無意識にやけど生き残る可能性を広げるためにな。

矢口は・・・まったく自分と違った存在やから・・・
興味があるんは研究対象やからってだけとは・・・な?



227 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時32分24秒
はい更新終了です。

今回はなんでしょうねぇ・・・難しくないですか?
わかるでしょうか?

忙しさのあまり頭の切り替えがうまくいかなくて・・・
228 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時34分57秒
設定が設定だけにあんまりウソっぽくなるのがいやで
なんとなく難しいことをゆうてそれらしく・・・
229 名前:ちぃ 投稿日:2002年10月26日(土)23時36分36秒
次回はやっぱりまた週末に。
230 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月27日(日)13時29分34秒
新作始まっていたんですね。
不覚にも気が付きませんでした・・・。

また今回も面白い設定ですね。
この先の展開も期待してます。
231 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月03日(日)16時22分21秒
更新します。
232 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月03日(日)16時22分57秒


こそこそこっちみてなにかを話し合ってるクラスメイト。
それでも矢口と目を合わせることはしない。

矢口はいないのと一緒。
翼がないんだもん。

・・・ほんとはここにいるのにね。


うぅ・・・

みんな大キライだ!
いなくなっちゃえばいいんだ。

先生もクラスメイトも・・・みんなみんな・・・



ん?
それじゃ裕ちゃんも消えちゃうか・・・

それはダメだね。

233 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月03日(日)16時23分31秒

・・・・・・矢口に翼が生えればいいんだよ。
みんなが欲しがるくらいに大きくてきれいな翼が・・・

欲しがっても誰にもあげないの。
裕ちゃん以外の誰にも・・・

・・・裕ちゃんは欲しいっていってくれる?
裕ちゃんは矢口が欲しいっていったら・・・くれる?


はぁ〜

・・・だったらとか・・・ればとかって話しばっか。
情けないなぁ・・・



チャイムがこの憂鬱な拘束の時間の終わりを告げていた。


はやく帰ろう。
あの腕の中が矢口の居場所なんだ。


234 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月03日(日)16時24分30秒


・・・ヤダな

街を歩いてても人の視線が突き刺さる。
人の気もしらないで好き勝手にささやかれる噂。

こんな無神経な人になるくらいなら翼なんかいらない。


・・・・・・ウソ。
ウソです。

やっぱり翼は欲しいです。



「・・・・・・黒い翼の・・・」


へ?
裕ちゃんの話?

立ち話をしてるおばさんの横で立ち止まる。


「なに?裕ちゃんがどうかしたの?」


おばさんが振り向いて固まる。

「あ・・・あなた研究所の・・・」

235 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月03日(日)16時25分05秒

「なに?」

イヤな予感でキュッと身体が締め付けられる。


「ねぇっ裕ちゃんになにかあったの?」

おばさんの腕をつかむ。


「あっ・・・あぁ・・・ケガしたって・・・」


ケガっ?!

「どんなケガなの?大丈夫なの?」

ダメだ・・・人に聞くより帰ったほうが早い。



一生懸命はしった。

236 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月03日(日)16時25分39秒


神様ごめんなさい。

矢口が悪いこと考えたから・・・
みんないなくなれって・・・

翼もいらないなんてウソもついた。


だからって矢口の居場所を・・・裕ちゃんをとらないでよ!


研究所のドアを開ける。


「裕ちゃんは?!」

事務のお姉さんに聞く。

「先生なら病院から戻られて・・・」


「ありがとう!!」

いるんだ。
帰ってるってことは大したことないんだね?


「裕ちゃん!!」

裕ちゃんの研究室の戸を勢いよく開ける。

237 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月03日(日)16時26分15秒

「おっおかえり。・・・ちょっとまってて?」

部屋の中には裕ちゃんともう一人・・・男の人?
誰?


「せやから・・・・・・ゆうてるやろ?」

「でも・・・は・・・で・・・・・・」

「だからそこが間違ってるゆうてんねん。
 ええ加減にしとかな・・・アタシもしまいにキレるで。」

ふだん出さない怒気を含んだ低い声で静かにいい放つ裕ちゃん。
その冷たい視線を受けて男の人は黙り込んでしまう。

珍しく本気で怒ってるんだ。
どうしたんだろ?

おとなしく待ってたのに男の人に睨まれた。

どうして?


「このままですむと思うな。」

矢口の横を通り抜けるときに囁かれた言葉。

それって・・・どういう意味なの?


238 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月03日(日)16時26分49秒

「矢口ぃ!おかえり。」

背中からすっぽり腕の中。
裕ちゃんの腕にほっぺをすりよせる。

なんだったんだろあの予感は?

おばさんたちの噂話はほんとに裕ちゃんのケガの話だったの?
・・・みんなでなにか矢口に隠してることあるの?


「ケガは?」

「ん?あぁ指きってしもてな・・・ほらっちょっとだけ縫ってん。」

裕ちゃんがみせてくれる。

・・・・・・

「ほんとに?」

「なんで疑うんや?スライド用の切片きる機械に指はさんでなぁ・・・
 けっこう血ぃ出たからあせって事務の子が救急車呼んでえらい騒ぎやった。」

「大丈夫?」

「しばらくは動かしたらアカンゆわれたけどまぁ大丈夫やろ。
 自分の指のサンプル作ってしまうとこやったわ。」


裕ちゃんは能天気にわらってる。

いつもならわらってる裕ちゃんをみて安心するんだ。
でも今日は違う。

239 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月03日(日)16時27分27秒

身体が・・・イタいの・・・

裕ちゃんのほうに向き直って胸の辺りに顔をうずめる。


「どうしたん?」

裕ちゃんはギュッと抱きしめてくれる。


どうしてかな?
イタいよぉ・・・

でも心配させちゃダメだよね。

「なんでもないよ。」

なにかがいつもと違う。
矢口のしらないところでなにかが動いてる。


「そうか?」

心配そうにのぞきこんでくる裕ちゃん。


「・・・・・・裕ちゃん。」

「なんや?」

「いなくならないでね?」

「どうしたん急に?どっこもいかへんで?」


コツンと額をくっつけてくる。

240 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月03日(日)16時27分57秒

「ほんとに?」


チュッ

あっ・・・もぉ・・・

ギュッと抱きしめられる。


「矢口こそおらんならんでや?」

抱き寄せられる前に一瞬チラッと見えた裕ちゃんの瞳。
不安そうに揺れてた。


どうして?
矢口の居場所はここにしかないのに。


241 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月03日(日)16時28分43秒
更新終了です。

242 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月03日(日)16時32分42秒
2人の世界を見る目は違います。

歳をとるにつれてある意味嫌なとこも見えてくるもんで・・・
世界は広がるのか狭くなるのかどっちでしょね?
243 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月03日(日)16時38分20秒
ちっちゃいころものすごく長く感じた夏休み。(季節外れ)
ものすごく遠くまで出かけたと感じた遠足。

いまじゃ短く近く感じてしまう。

そのかわり人間関係も幅広くなって
自分で切り開いていくような楽しみはある。

どっちがいいんでしょう?

ではまた来週末に。
244 名前:つかさ 投稿日:2002年11月03日(日)23時26分47秒
自分は自分でいれる今の環境が好きです。
無限の可能性を信じれた頃は確かに懐かしいけど・・・・・
戻りたいとは思わないな。

後悔するならやって後悔しろ。
後悔したならその時後悔しない道を考えろ。

場違いレスだったらごめんなさい。
生き方全てが自分の責任になる歳はつらいっすよね(遠い眼)
245 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月04日(月)21時52分28秒
矢口の知らないところで、何か大きなコトが動いてるようですね。
246 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月05日(火)00時28分53秒
>つかささん。

確かに無限の可能性ってのは魅力的ですが
混沌としてて大いに迷いますし不安も大きいですよね。

とりあえずどっかに向かって走り始めると
可能性は無限ではなくなりますが地に足が着く感じで少し安心します。

ちっちゃい頃に戻ったら戻ったで面白いでしょうけどね。

分岐点で違う選択していまの自分とまったく違う自分になる。
でもね・・・たぶんそれも自分ですよ。

なにをやってても本質は変わりそうにないです。(自分の場合は)


余談になりますが誰かが歌ってますよね?

「階段を上がるなら そういまじゃない いまはアンバランス」

自分は間違いやと思うんです。(自分はですよ)
アンバランスなうちに動き出さんと動かれんようになる。

欲があるうちは・・・自分がもうええって満足するまでは
しんどくても階段あがっていかんと。

誰のためでもない自分のためやしね。

自分から思いっきり話しをずらしてしまいました。
読んでる人が不快に思ったら申し訳ない。
247 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時31分36秒
更新します。
248 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時32分10秒

ベットのはしに腰掛けてシーツにくるまって眠る矢口を見下ろす。
いつもの無防備な寝顔じゃなくて・・・どこか苦しそう。

矢口は勘のいい子やからなぁ。
なんか気付いた?

矢口を下の世界へおろそうって計画を
止めてるんはこの研究所だけやもんなぁ。


何回説明しても理解できひんみたいや。

一見すると翼がないから有翼人やないって思うかもしれん
でも誰よりも空を飛べる可能性を持ってるんやで?

この世界の人誰もが夢みることやろ?

自力で空を飛べるようになりたいからってこの研究所ができたんやろ?
せやったらそんな計画白紙に戻さんとなぁ?


249 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時32分43秒

誰も喜んで研究材料になりに来るんちゃうんや・・・

少しでも外見・能力に異常がある子供をみつけ出して
親から引き離してこの研究所に閉じ込める。

ほんで調べるだけ調べて遺伝的異常者のラベルをはってから
自分たちの満足のために偽善的に社会へ送り返す。


怖いんやで?
特に矢口やアタシなんかはみた目でわかるからな。

今度は下の世界におろすやて?
なめたらアカンちゅうねん。

そんな勝手なこと許せへん。


250 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時33分19秒

「う〜ん・・・」

寝返りを打った矢口の背中に目がいく。

あれ?
赤い?

気のせいか?

そっと背中に触れてみるといつもより温かい気がする。
そういえば具合悪そうにしてたもんな。

風邪でもひいたか?


「・・・ゆぅちゃん・・・」

「なんや?」

って寝言か・・・寝言に答えたらアカンねやんな?


251 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時33分50秒

「・・・イヤ・・・」

は?
なんの夢や?

アタシがなんかした?
うなされるようなこと?

・・・・・・ショックやわ。


矢口がもう一回寝返りを打って
背中を触ってたアタシの手を抱え込んでしまう。

「ヤダよぉ・・・」


わからん。

自分からくっついといて『ヤダよぉ』?
なんでそんな辛そうな顔してんねんな・・・

思わずもう一方の手でほっぺたをなでる。


252 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時34分21秒


矢口が急にぽかっと目を開ける。
ぼーっとこっちをみてる。


「ゆぅ・・・ちゃん?」

「どした?」

ん〜って両手を伸ばしてくる。


「だっこ?」

大きくコクンとうなずくのがかわいい。
そんな怖い夢やったんか?

矢口をシーツでくるんでやってからひざの上に抱っこしてやる。


こんなんいつ以来やろ?

ここ来たばっかりの頃・・・寝られへんゆうて部屋に来た矢口を
こうやって寝かしたもんやなぁ。

「ん〜・・・」

眠たそうに唸りながらほっぺたをすり寄せて
しっかり開けられないトロンとした目でみあげてくる。

・・・まぁなんや・・・大人になったなぁ。
ちょっとドキッとする。


253 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時35分02秒


「しんどいん?」

「ううん・・・抱っこしてもらったから平気。」

そんなんいいながらギュッと抱きついてくる。


・・・照れるやんか。


チュッ

おでこにキスすると急にうつむいてしまう。


「ダメだよ・・・そんなことしたら。」

「なんで?」

イヤなん?


「・・・矢口には人を愛する資格も愛される資格もないんだよ。
 裕ちゃんのこと好きになったらどうするんだよ?」

自嘲気味につぶやく。

254 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時35分43秒

はっ?!
ちょっと待ち!!


「やめて・・・そんな寂しいことゆわんといて。」


抱きしめる腕の力を強くする。


なんやこの子。
翼がないってことで逆に誰よりも翼に縛られてるんか?


「だって・・・」

まだゆうか?

「アカン。そんなんゆわんでいい。」

矢口は不思議そうに・・・涙をためた目で頼りなさげに
こっちの顔をうかがってる。

なんでわからへんの?

アンタが愛されてへんわけないやろ?

255 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時36分16秒

「アホやなぁ・・・」

ほっぺたをなでると安心したように目を閉じて
両手をアタシの手に重ねてくる。

ぅん?


ふぅ〜

ふいにもれた矢口のため息。
その唇から目をはなせんようになってしまった。

矢口が目ぇ開けてんでよかった。
いまの表情はあんまりみられたくない。


安心しきって腕の中に納まってる矢口をびっくりさせたらアカンよな?
でもちょっとだけ・・・ちょっとやったら・・・


チュッ

いつもの冗談っぽくやってるのと同じ。
ほんまはいつも本気やけどな。


「ん〜」

薄目を開けて拗ねたように唇を尖らせる。


あれ?
もう涙はひっこんでる。

もうひと押しか?

256 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時37分06秒

「なぁ・・・」

「なぁに?」

眠気を少しだけ含んだやわらかい声。


ふ〜ん・・・思いつめた感じも取れてる。

「なんで矢口はここにいるん?」

「え?」

質問の意図がわからんらしい。
矢口の頭の上に?が浮かんでる。


「矢口のお父さんは下の世界の人やろ?
 はじめっからあらへんで翼なんて。」

登山家のお父さんが偶然この世界に迷い込んでお母さんに出会った。
翼がないからってゆうてたら矢口はおらんやろ?


「資格があるとかないとか関係ないやろ?」

ちゃうか?


矢口は固まってる。

考えたこともなかった?


257 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時37分44秒


「ゆうたやろ?翼なんかなくったってアタシは矢口が好きやって。」

あ・・・赤くなってきた。

なんや?
もぞもぞとひざの上から逃げ出そうとしてる。


「おいっこら逃げるな!」

逃げれへんように腕の中に閉じ込める。


「やっ・・・ちょっと恥ずかしくなってきちゃった。」

なんや?

腕の中で一生懸命ちっちゃい身体をもっとちっちゃくしてる。

あぁ・・・そうか・・・
そういう好きって受け取ってるん?

アタシの気持ちがそうやからそう伝わるかなぁやっぱり。

258 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時38分21秒

「なぁ・・・好きやで?」

目をみつめながらゆうてみる。

すっごい恥ずかしいそうな顔をするくせに視線をはずすことはない。


・・・大丈夫なんか?
イヤじゃないん?

チュッ

「もぉ・・・」


ほぉ・・・ええ顔でわらうやないの。
もう怖い夢はみいひんやろか?


「ほなもぉ寝ぇや。」

「うん。」


ベットに転がる矢口。

さてと自分の部屋に帰るかぁ。

259 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時38分55秒



クイッと手をひっぱられる。

「寝るまでここにいてくれる?」

「ええよ。」

頭で考える前に答えてた。

しゃあないわなぁ・・・好きやもん。


ベットの側のイスに座る。

「へへへっ・・・おやすみ。」

つないだ手をそのままにして満足そうにわらってる。

「はいおやすみ。」

260 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時39分39秒


しばらくすると今度は無防備な寝顔と寝息。

よかった。


アタシはアンタがどっか連れて行かれるんちゃうかって不安に思う。
もうこの寝顔がみられへんのちゃうかってな。

だからいっつも夜寝る前に顔を見に来るし
朝も一番にちゃんとここにいるのを確認しに来る。

わらってるアンタを確認せな不安でしゃあないんや。

アンタはしらんやろ・・・そんなこと。

261 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時40分16秒

更新終わりです。

262 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時42分18秒

今回は余計なこと言わんとすっきりおわっとこ。

263 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)12時42分51秒

次も来週末に。
264 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月10日(日)13時50分31秒
なんか、いつのまにか一気に更新されてました
こーゆー設定は、けっこう好きなんです
265 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月10日(日)23時53分27秒
あ・・・あの今日始めて投票とかやってたことに気付きました。
なんですかねぇ・・・読んで気に入ってくれたはる人がいるってのがうれしい。
こればっかりは好みの問題ですからね。

レス返すのとか不得意で愛想なしなんで
うれしいってことだけは伝えておきたくて。

ではまた。
266 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月11日(月)13時24分38秒
う〜ん・・・水面下でそんな計画が進んでいたんですか・・・。
裕ちゃんは矢口をそんな計画から守りきれるのかな?
267 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月16日(土)23時32分20秒
更新します。
268 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月16日(土)23時32分51秒


目が覚めたとき裕ちゃんがいた。
ベットの横に座ってベットにもたれるようにして寝てる。

ずっと一緒にいてくれたの?

窮屈な姿勢で眉をしかめてる。


ベットにほおづえをついて裕ちゃんの寝顔を眺める。

なんかいいなぁこんなの。


起こさないように音がしないようにゆっくり近づいて
気をつけながらほっぺにキスをする。


昨日の話し・・・ほんとなの?
矢口のこと好きなの?

信じていい?


うぅどうしよぉ・・・こんなに幸せでいいの?

思わず足をバタバタさせてしまう。


「んんぅ・・・?」


あっ起きた?

269 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月16日(土)23時33分31秒

「おはよう裕ちゃん。」


「ん〜おはようさん。って・・・あれ?なんでアタシここにいるん?」


寝ぼけて目をこすってる。
視点が定まると急にでれっとした顔に変わる。


「イヤンもぉ〜矢口やらしっ!」

え?
あっ!

あわててベットに突っ伏す。


「んっふっふっ・・・朝からええもんみた。」


あぁ〜もぉ〜恥ずかしい。


「ほな背中みせてもらお。」


シーツをぐいっと引っ張られてあらわになった背中をなでられる。
いつもの朝の健康チェックがなぜかいつもよりはずかしい。


270 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月16日(土)23時34分10秒

「・・・やっぱり気のせいかなぁ?
 最近どっかおかしいことないか?」

「なに?」


「昨日しんどそうやったから・・・」


あ・・・気付いてくれてたの?


「そういえばときどき身体が熱かったり痛かったりするときがある。」

「そうか・・・」


それっきり黙りこんでしまう裕ちゃん。
振り返ると難しい顔してた。


研究モードだね。
でも・・・ちょっとうれしかったりもするんだよ?

裕ちゃんの研究対象は矢口だもん。


「ん〜ホルモンバランスが変化し始めてるんか?
 とゆうことは身体が・・・・・・ふん・・・わからんな・・・」


ほらこんな真剣な顔で矢口のこと考えてる。

271 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月16日(土)23時34分46秒

あの・・・でも・・・もぉそろそろ手を止めてくれるとうれしいかも。


「いつまでなでてるの?」

「ん?あっ・・・ごめん。気持ちいいからついな。」


あわてて手を離す裕ちゃん。

シーツを首のあたりまで引っ張り上げる。


「なんやねん・・・そんなイヤやったんか?」

裕ちゃんのすね気味の抗議。


「別にイヤってわけじゃ・・・」


裕ちゃんがニヤッとわらう。

はっ・・・ダメじゃん。


「ふ〜んほな今度から触りまくったろ。」


・・・・・・

「エロ裕子。」

「せやで?裕ちゃんはエロいの。」

なんでそんなに得意げなのさ?

272 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月16日(土)23時35分18秒

ふと目に入った裕ちゃんの翼が朝日に透かされて
裕ちゃんの好きな紫色にみえた。

この羽は矢口のものだって思っていいの?


ゆっくりゆっくり裕ちゃんが近づいてくる。
その目はやさしくて・・・気がついたら目を閉じてた。


チュッ

「ふふっ・・・かわええなぁ矢口は。」


目を開けると裕ちゃんがわらってた。

軽いめまいを覚える。


「ん?どした?」

「なんでもない。」

「そうか?・・・なんかあったらゆうんやで?」

「うん。」


頭をなでられる。

「ほなアタシ1回自分の部屋帰ってから食堂行くから。」

「じゃ矢口もちょっとだけゆっくりしてから行くよ。」


裕ちゃんは手をひらひらさせて戸の向こうへ消えた。

273 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月16日(土)23時36分14秒

・・・そういえば今朝は自分で背中を触らなかった。
なんでかな?

裕ちゃんがいたから?
そっか・・・裕ちゃんがいれば翼は要らないのか。

そうだよね・・・翼がなくっても矢口はここにいていいんだよ。


裕ちゃんずっとあのかっこで寝てたのかな?
今日いちにちきっと裕ちゃんは身体が痛むんじゃない?

ねぇ・・・その痛みで矢口のこと思い出してくれる?

なんかいいね。
今日はなにがあっても楽しく過ごせそう。


もうそろそろ食堂へ向かう準備しなきゃ。


274 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月16日(土)23時37分13秒

更新終わりです。
275 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月16日(土)23時40分08秒

はぁ・・・寒くなりましたねぇ。
風邪気味です。

風邪薬と栄養ドリンク飲んで寝るべ。
276 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月16日(土)23時40分46秒

ではまた来週末に。
277 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月17日(日)20時22分31秒
何か事件が起こりそうな予感・・・
278 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時35分26秒
更新します。
279 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時36分01秒

あの日から身体の調子がいい。

ゲンキンなもんだね人の身体って。

誰がなにをいってようと気にせずにいられる。
もぉ心の中まで冷たくなることはない。

矢口はここにいてもいいんだ。
周りの人が矢口をみようとしなくても矢口には裕ちゃんがいる。

裕ちゃんさえいてくれたらそれでいい。
一緒にいられるなら・・・



学校から帰ろうとすると門のところに黒い車がとまってた。

280 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時36分38秒

なんだろう?

いいようのない不安がつのる。


横を通り過ぎようとしたとき男の人がおりてきて矢口のほうへ来る。

あれ?
この人しってる。

そうだ・・・あのとき裕ちゃんと話しをしてた・・・

久しぶりに身体にイタみが走る。
前にも感じたイヤな予感。


「いっしょに来てもらおうか。」

腕をつかまれる。
背中に冷や汗が流れた。


周りを見渡しても生徒や先生が遠巻きにこっちをみて
ひそひそ話しをしてるだけだった。


・・・たぶん・・・誰も助けてはくれない。


281 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時37分25秒


「どこにいくの?」

「どうってことないさ。いるべき場所に返してやるだけだ。」

イヤなわらいをみせる。


いるべき場所?
返す?

それって・・・

「いますぐ?いますぐじゃないとダメなの?」


・・・このまま会えなくなっちゃうの?

ヤダよ・・・そんなのヤダ!!


ちゃんと声に出して拒否したいのに展開が突然すぎて
自分の身体が自分のじゃないみたいにいうことをきかない。

それだけじゃない・・・この人が怖い。


引きずられるように車に連れて行かれる。


「我々はこれでも長い時間待ったんだよ。
 翼を持たないものに我々の社会を平然と歩き回られては迷惑なんだ。」

翼を持たないもの・・・

「彼女が君をかばうのはただの哀れみだよ。
 自分より弱いものをかばうことで自分の価値を見出したいだけなんだ。
 誰も君なんかを本気で愛してないんだ。」


「ちがう!!」

裕ちゃんは・・・裕ちゃんは・・・

282 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時38分10秒


押し込まれた車の中には研究所の所長さんがいた。


「裕ちゃんは?裕ちゃんはしってるの?」


所長さんが困った顔をする。

「中澤君はしらないよ。
 君に関しては研究者としての冷静な目を失っている。
 だから彼女には外れてもらった。」


ウソ・・・信じてたのに。
矢口も裕ちゃんもこの人のこと信じてたのに。


車が動き出す。


「裕ちゃん・・・裕ちゃんに会わせてよ!!!
 最後のお願いくらい聞いてくれてもいいじゃん!!」

助手席に乗り込んでるさっきの男の人に訴える。


「黙るんだ!立場を理解していないようだな。
 君の要求をのんでやる気なんてさらさらない。
 命があるだけでもありがたいと思うんだ。」


目にみえない圧力で押しつぶされそうになる。

全然ありがたくなんかないよ?
命があったってもぉ裕ちゃんにあえないじゃん!


イタい・・・身体がイタいよぉ・・・

283 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時39分11秒

車が信号で止まった瞬間おもいっきり暴れる。


「大人しくしろ!!殺されたいのか!!」

「殺せよぉ!殺せばいいじゃん!!命なんかいらないよ!」


ドンドンッ

車の窓をたたく音がする。

車の中の空気が凍りつく。


裕ちゃんっ!!

汗だくになって息を切らしてる裕ちゃんがいた。


男の人は舌打ちをしてから窓を開ける。

284 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時40分06秒

裕ちゃんが男の人のネクタイをギュッとつかむ。


「おぅこらっ・・・なに勝手なことしてくれてんねん?
 どうゆうことや?説明してもらおうか?」

「うぅ・・・説明ならそこの所長さんにさせてもらった。」

「所長?!」


裕ちゃんはようやく矢口のとなりにいる人に気がついた。


「どうしてここがわかった?
 君には話さないようにと口止めしておいたはずだが?」

「所長が出てすぐに事務の子がおしえてくれましたよ。
 それよりなんでですか?なんでコイツとつるむんです?」

「我々の研究は尊いものだ。有翼人の夢がかかってるんだ。
 翼を持たないものをかばって倒れることなどあってはならないのだよ。」


裕ちゃんが怖い顔してる。

285 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時41分00秒

「ツバサ翼って・・・アホか己ら!!
 そうやって人の心失ったもんに翼も飛ぶ力も必要ないわ!
 誇りとプライドに押しつぶされて地面を這いつくばっとったらええんや!!」

「「ぁっ・・・」」


車内にいた矢口以外の人は重しがのしかかったように
シートにギュッと押し付けられてる。

???


「おいで矢口!」

裕ちゃんに急かされて車を出る。



すぐ後ろにつけてあった裕ちゃんの車に乗り込む。


「とりあえず研究所によって必要なもんだけ持って・・・どこいこう?」

こんなふうになっても矢口たちの帰るとこはあそこしかないんだね。
でももうあそこにすらも長くはいられない。


「どこでもいいよ。いっしょなら。」

「そっか?かわええヤツやな。」


裕ちゃんがわらってる。

あ・・・もう身体イタくない。

286 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時41分51秒


車を運転してる裕ちゃんはなんか吹っ切れた顔をしてる。


「さっきの・・・なに?」

「なにって?」

「みんな苦しそうだった。」

「あぁ・・・あれな。あれは重力のコントロール能力や。
 空中にいると身体のバランスが崩れやすいやろ?
 それ補うために有翼人がもともと持ってる力や。」

「じゃあ矢口にもある?」

「さぁどうかなぁ?翼の色を決める遺伝子の近くにあってなぁ・・・
 色が濃いほど力が強いんや。」

「・・・そうなんだ。」

矢口の持ってる1枚だけの羽は白かった。
ってことは能力はほとんどないってこと?


「アタシは色の遺伝子に変異があるからその力が異常に強いねん。
 そのせいで怖がって誰も近寄ってこうへんかったけどな・・・」

そういう寂しそうな・・・きれいな横顔。

287 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時42分32秒

そうか・・・この人は一人だったんだ。

矢口には裕ちゃんがいたけど裕ちゃんには誰もいなかった。
一人で生きてみんなに欲しがられるくらいの存在になったんだ。

でもいまは・・・一人じゃないじゃん。

「ねぇ・・・矢口がいるよ?」

「そやな。」

裕ちゃんがわらった。



研究所につくと事務のお姉さんが荷物をまとめてくれてた。


「ありがとう。気ぃきくなぁ。」

「先生・・・力使いました?」

「なんでしってんの?」

「警察から連絡が・・・」

「そっか早いな。」

288 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時43分10秒

ん?
どうして?

「ねぇ裕ちゃん?どうして警察から?」

「アタシがこの社会で普通にくらすための条件は力を封印することや。」

「じゃあなんで?!」

なんで使ったの?


「先生急いでください。」

「あ・・・そやった。」


荷物を持って矢口の手をとって車に戻ろうとする。


でももう車は警察に押さえられてた。
また建物の中に隠れる。

「おもったより早かったなぁ・・・
 矢口・・・事務のお姉さんとこ戻り。」

「裕ちゃんは?」

「警察の人といっしょに行く。」

なんで?

「ヤダ!!いっしょにいるの!」

「アカンて。警察にいってから自分の力をほんまに封印する代わりに
 矢口の身柄を保護してもらう・・・半分脅してな。
 アタシはもう・・・帰ってこれへんけど。」

裕ちゃんが寂しそうにわらう。

289 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時43分41秒

イタい・・・

ヤダよぉ裕ちゃん・・・矢口を一人にしないで。


裕ちゃんはギュッと矢口を抱きしめて頭をなでる。

「大好きやったで?たぶんアタシの力は矢口を守るためにあったんや。
 あんとき初めて翼が真っ黒でよかったって思った。
 誰よりも強い力を持っててよかったってな。」

「裕ちゃん・・・」

「最後にチュウさせて?」

「ヤダ!!最後なんていわないでよ!」

これからも・・・なんどでもしてよ。

裕ちゃんは矢口のアゴに手を添えて少し上を向かせる。


「なんだ君たち・・・やっぱりそうなのか?」

あの男の声。

290 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時44分21秒

「うっさいなぁ・・・最後くらいゆっくりさせてくれてもええやん。」

「私が羽を差し出しても受け取らなかったのはそいつのせいなのか?」

え?
裕ちゃん?


「そっか・・・忘れてた。矢口これもらって?」

裕ちゃんが自分の羽をプチッと抜く。

いいの?

矢口の手の中にある漆黒の羽。

「アタシの気持ちや。もうあえへんけどな。」

もう戻ってこないつもりなの?


「バカバカしい・・・返す羽も持たないヤツにこの私が・・・
 こんな屈辱うまれて初めてだ。」

男の人の声は震えてる。

その声を無視するようにやさしい口付けが落ちてくる。

「矢口のためやったらこの社会なんか捨ててもええって思った。」


裕ちゃんは窓の外を眺める。

「こんだけ早いってことはアンタが警察呼んだんやろ?」


別れを惜しむように裕ちゃんは男の人のほうをみることもなく
ずっと矢口の頭や背中をなでてる。


「アタシはアンタのもんにはならへんよ。」

291 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時45分37秒

矢口の顔を覗き込んでくる。

「ごめんなぁ・・・いっしょにいてあげられへん。」

「ヤダ・・・許さない。一人にしないでよ。」

ギュッとしがみつく。

涙が溢れ出してしまう。


「そんなんゆわんといて?」


イタいよぉ裕ちゃん。
身体が熱くてイタいの。

裕ちゃんは矢口の腕を解いてしまう。

裕ちゃんが・・・裕ちゃんがいっちゃう・・・
ねぇ・・・誰かとめてよ!!


いつもみたいに手をひらひらと振りながら
なんでもないように矢口から離れていってしまう。

外に出た裕ちゃんはあっというまに
警察の人に取り囲まれてみえなくなっちゃった。

292 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時46分14秒

やっぱりダメ・・・イヤだよ!!
せっかくみつけた矢口の居場所を奪わないで!!

もらった羽を握り締めて裕ちゃんを追って外に飛び出す。

たくさんの大人の男の人が矢口の行く手を阻む。

小さい身体を生かして人の腕をすり抜け
足の間をくぐりぬけ一生懸命まえに進む。

「裕ちゃんを・・・矢口の裕ちゃんを取らないで!!
 ジャマしないでよ!!」

なんとか人垣を通り抜けると裕ちゃんが車に乗せられてるのがみえた。

走った。

身体のイタみはどんどんひどくなる。

でもそんなこと気にしてられない。
裕ちゃんが矢口を置いていっちゃうんだ。

もぉあえなくなっちゃうんだよ?
身体が壊れたっていい・・・裕ちゃんのとこへ行くんだ!!

気を失うかと思うほどイタみがひどくなった次の瞬間・・・
すぐ近くでトリの羽ばたきのような音を聞いた。

293 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時47分25秒
はい更新終わりです。

うぅ〜長かった。
実は次で終わりです。
294 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時52分12秒
話しをあげるときの切る場所が微妙に気に食わんなぁ。
失敗しました。

この話しが終わればしばらく3〜4ヶ月くらい
話しをあげるような時間がありません。

現実世界も大切ですからねぇ。
295 名前:ちぃ 投稿日:2002年11月24日(日)02時57分18秒
現実がうまく成り立たないことにはここ自身存在しないですから。
次の話しはなんとなく出来てるんでたぶん帰ってくるとは思います。

ではまた来週末。
296 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月24日(日)16時38分59秒
ドキドキする展開ですね。
次回の最終話が楽しみです!

この話が終ったら、3〜4ヶ月くらいの間、ちぃさんの作品に会えないんですか・・・
寂しいですが、現実の生活を充実させるコトが何よりも大切だと思いますからね、我慢します。
ただ、「たぶん帰ってくる」じゃなくて、絶対に帰って来てください。
297 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月25日(月)22時02分26秒
このお話といい、前回のきつねさんのお話といい、
ちぃさんの作品に、非常に惹かれます。
文体も大好きです。
そして、最後につけてくれる「ではまた・・・」に、
気持ちそわそわの楽しみ一杯でした。

次回更新で、しばらくお休みだそうですが、
「ではまた・・・」を、待っています。


そして、
298 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月25日(月)22時03分51秒
297の そして、 はミスです。

ごめんなさい。
299 名前:つかさ 投稿日:2002年11月28日(木)00時21分56秒
週末が来て欲しいようで、来て欲しくない・・・・・・複雑っすね。

複雑な気持ちは置いといて(笑)
矢口は姐さんを取り戻すことができるのか?
ってか、ハッピーエンドで終わってくれることを期待してます♪
300 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時08分17秒
更新します。
301 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時08分56秒


「なんだあれは?」

運転席にいる警察官がバックミラーを見ながらつぶやく。


なんやねん。
なんでもええやん。


「あれは?!」

「止めろ!!車を止めるんだ!!」


なんや?

急ブレーキのかかった車の横を白いものがスッと通り過ぎた。

それはフワッと空へ舞い上がってくるっと方向転換をして・・・
ボンネットの上に着地した。

涙でるれた顔のアタシの大好きなかわいいかわいい矢口。


「裕ちゃんを返してよ!矢口から裕ちゃんをとらないで!!」


そう叫ぶ矢口の背中に・・・誰よりも大きくて白くてきれいな・・・


302 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時09分30秒

・・・飛んだ?
さっき飛んでた?!

「矢口!!」

呆然としてる警察のおっちゃんを押しのけて車の外へ出る。


「裕ちゃん!!」

ボンネットをけってフワッと飛ぶ。

あ・・・空中でフラッと・・・

思わず自分の力を使って矢口の身体を支えてやる。


両手を広げて飛び込んでくる。


・・・いつもと違う。
背中に手ぇまわせへん。

腰の辺りに腕を回してギュッてすると
矢口が胸に顔を押し付けるようにしがみついてくる。


「離れたくないよ。裕ちゃんいっちゃヤダ。」


・・・なんちゅうかわいいことゆうてくんのこの子は。
でもそんなわけにはいかんやろ?

「矢口が裕ちゃん連れて逃げる。」

見上げてくる目はすごく力強くて・・・うれしくなる。

303 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時10分16秒

矢口は強い子。
でも・・・だからこそ・・・


「アカン。」

「どうして!」

「せっかく誰にもなんもゆわれへん・・・
 それどころかうらやましがられるような翼を手に入れたんやで?
 わざわざコソコソくらさなアカンような道を選ぶことない。」

そやろ?

で・・・なんでにらむんや?


「ヤダ。」

は?

矢口がアタシをしっかり抱いたまま羽ばたきはじめる。
そのせいで少し身体が軽くなる。

なんでや?
なんでゆうこときかへんねんな・・・

もぉ・・・

304 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時10分55秒


「・・・わかった。好きにしぃ。」

ズルいなぁアタシ・・・
ほんまは自分も一緒にいたいくせに。


矢口の負担を軽くするために自分からも抱きついて
かかる重力を一気に減らしてやる。



「「うぁっ!!」」

スコーンと風を切って空高く・・・


しまった・・・羽ばたく力そんな強かったんか?

「ねぇ!!裕ちゃん前見えない!!」

はぁ?
ちょっとまって・・・

矢口にしがみつくようにしながら身体を少しずらす。


こわっ!!
めっちゃ高いやん!!

さっきまで乗ってた車がタバコの箱くらいに見える。

矢口は自分で飛べるからええやん。
アタシの場合微妙やもん。

ケガせんように落ちれるってだけの話し。

305 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時11分30秒

ふとみると矢口がうれしそうにわらってる。

「なんや?」

「お姫さま抱っこ。」


・・・・・・なにゆうねんな。
なんか恥ずかしぃて矢口のほうをみれへんなるやん。


「・・・なんや・・・空は広いなぁ・・・」


チュッ

アホ・・・なにしてんの・・・こんなとこで。

なんやの?
急に積極的になってへんか?


「・・・とりあえずありがと。」

頭をなでると目を細めるのがかわいい。


「でもちゃんと話ししよ?」

「うん・・・わかった。」


矢口は大きく旋回して研究所の屋上に降りると腕を解く。
ここやったらなか通ってこなアカンししばらくは時間稼げる。

306 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時12分20秒

ふぅ〜


「なんでため息つくのさ・・・」


なんや不満そうに・・・
ため息ついたらアカンの?

あ・・・矢口のせいやないで?


「・・・アタシ高いとこ怖いもん。」

「そうなの?」

ゆわんかったらよかった・・・

そんな意外そうな顔をされると困るっちゅうねん。
アタシにも出来んこと山ほどあんねんで?


「まぁいっか。矢口が抱いて飛んであげるんだから。
 怖かったら目つぶっててもいいんだよ?」

・・・あげるってなんやねん。
別に頼んでなんか・・・

ってそんなちっちゃい子みるみたいな顔で
アタシの頭なでながらやわらかくわらうんはやめて。

アタシはそこまでヘタレとちゃうで。


・・・なでられるのは好きやけど。

307 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時13分07秒

「なにすねてんだよぉ。」


すねるぐらいええやん。
アタシの勝手やろ?

「自分かて一人でバランスとれへんくせに。」

「裕ちゃんが得意なことなんだから矢口に出来なくてもいいの。」

そんな問題か?


「なんだよぉ文句ある?矢口だって飛ぶの初めてだったんだから。」

ってそうや!!
翼や翼。


「みして?」

「いいよ。」

翼を大きく広げる。

うぁ・・・

「すごいなぁ・・・」

アタシらのんと違って身体と同じくらいの大きさ。
自分の意思でここまで動かせるってことは
運動神経が末端まで届いてるんやなぁ。

308 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時13分37秒

それにしても・・・

「きれいやなぁ。」

ん〜なんかホレボレする。

さわってみるとわりと軽くて手触りがいい。


矢口が翼をバサバサ動かす。

「なんや?」

「くすぐったいよぉ。」

ふ〜んそんな敏感なんか。
アタシのなんかほとんど感覚ないのになぁ。




「いいよ?」

へ?
なんや?

309 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時14分20秒

矢口がうつむいてる。

耳赤い?


「これのお返し。」

矢口の手の中で光る黒い・・・アタシの羽。

そや・・・渡したんや。


「たぶんめっちゃ痛いで?」

アタシのんと違うから。


「いい。我慢するから。・・・それとも矢口のなんかいらない?」


そういいながら見上げてくる矢口はなんか・・・
めちゃめちゃ不安そうで・・・


「アホか・・・欲しいに決まってるやん。」

っちゅうかこんなんゆうてるアタシのほうがアホやん。
こんなこと自信満々にゆうことちゃうのに。


「じゃどうぞ。」

照れわらいに変わる矢口。


「ほな・・・」


チュッ


「って違うだろ!」

あ・・・つっこまれた。
いいやん別に。


矢口かてめっちゃわらってんで?
あぁ・・・もぉ・・・


「ダメぇ・・・あとで。」

なんやねんなもっかいくらいええやん。
・・・あとでやったらいいんか。

310 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時14分53秒


「じゃ我慢してや?」

「うん。」


プチッ


「ったー!!!」

うぁっ・・・おっきい声。

痛みをこらえるためにジタバタ足ふみをしてる。

ふ〜ん。
そんな痛いもんやったんか。

そうかぁ・・・羽を差し出す意味ってそれなりにおっきいわけや。
アタシらみたいに痛くなかったら誰にでも差し出せるもんなぁ。

抜いたあとに滲み出た血をなめると矢口の動きが止まる。

「ん?くすぐったい?」

「・・・・・・うん。」


なんやその微妙な間は?


311 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時15分26秒

ガチャガチャ

屋上の扉の鍵をいじる音がする。


鍵ってことは所長か?

矢口を自分の後ろに隠す。
ってゆうても前と違って隠し切れへんけど。


「いつでも飛べるようにしといて。」

「わかった。」


所長と・・・あの男。

思わずにらみつける。



「中澤君。もう大丈夫だよ。」


312 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時16分10秒

・・・・・・は?

所長は穏やかな顔でわらってる。


なんや?
どうゆうこと?


「もう彼は君たちに手出しはしない。」


男は矢口を一度見たきり唇をかんで下向いてる。
まるでオモチャが手に入らんかったのを悔しがるみたいに。

そうなんや。
こいつは子供。


所長は・・・?
もしかしてはめられた?!

ここまで見越しての行動やったん?

313 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時16分45秒

コイツは自分より劣ってるって決め付けたもんを弄ぶのが好きな子供。
そのかわり優れてると認めたもんには手出しできん子供。

この世界で唯一空を飛べるんや。
認めんわけにはいかんよな?

チラッとアタシの手の中にある矢口の羽をみて苦々しげにわらう。

「約束だ。」

舌打ちしながら屋上から去っていった。

なぁ・・・ほんまに欲しかったらそんなとこで引くもんちゃうやろ?
そんな中途半端な気持ちやったらいらんで。

ほんま・・・アホな子。


314 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時17分21秒


「なんでゆうてくれはらへんかったんです?
 わかってたら痛い目にあわさんですんだのに。」


力一杯やってしまった。

「敵を欺くにはまず味方からというだろ?」

「だからってあれは結構つらいもんでしょ?」


あの力が危険やと判断したんは所長。
人に対して使ったらアカンって禁止したんも所長。

どんなもんかも一番ようしってるくせに。


「そこはあれだよ・・・いち研究者としての興味だ。
 君はふつうの状況では使わんだろ?
 だから君の力を自分で感じる最初で最後のチャンスだったんだ。」


はぁ・・・

いい歳していたずらっ子みたいな顔で満足げにわらう所長。

さっきまでとなりにいた男とは別の意味で
・・・いい意味で子供やな。

そやった。
この道に進もうって決めたんはこの人のこの顔やったんや。


315 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時17分59秒

「裕ちゃん?」

振り向くと矢口の頭の上にたくさん?が浮いてた。


「もう大丈夫なんやで?さっきのはぜんぶ所長さんのお芝居や。」

「え?!」

まだアタシの後ろに隠れたまま
顔だけチョコッと出して所長のほうをうかがう。


「悪かったね。君にはひどいことをいってしまった。」

ほんまにすまなそうな顔。


「もぉっ・・・ひどいよぉ所長さん!
 矢口ほんとに・・・ほんとにびっくりしたんだから!!」

ボロボロと涙を流し始めた矢口を抱きしめる。

さっきの涙とは違う。
たぶんこれは安堵の涙。


所長はその涙におろおろしてる。

「彼は本気で矢口君を下の世界に下ろそうとしてたんだよ。」


言い訳のようにつぶやかれる言葉。

316 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時18分45秒

そうやろな。
それはわかる。

わかるけど・・・

「危ない橋渡りすぎとちゃいますか?」


うまくいったからええけど・・・
矢口もアタシもボロボロになるとこやったやないですか。


また子供の顔にもどる所長。
しかも得意げな顔。

「私には勝算があったのだよ。」

「なんです?」

「彼女が不調を訴えるのには一定の法則があったんだ。」



涙のひっこんだ矢口もわからんって顔してる。


「君の不在。君との別離の予感。
 第三者の私には簡単に気付けたんだよ。」

矢口がうつむく。

あれ?
確か学会とかで出かけてるとき矢口のデータとってたん所長か。


「その不調も君の推測どおり体の変化を促す
 ホルモンの仕業だろうと考えられた。
 ゆっくり待ってもよかったんだが・・・」

「アイツが勝手に動き出そうとした・・・でしょ?」

所長がうなずく。

「時間がないなら逆にその動きを利用してこっちの都合のいいように
 コントロールするという方法しか残っていなかったんだ。」


確かにうまくこの状況を演出せんかったら
今回みたいにいかんかったかもしれん。

317 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時19分22秒

「一気に身体を換えるために・・・多量のホルモン分泌を促すために
 出来るだけ短時間に何度も精神的なストレスが必要だったんだよ。」


わざわざ学校で待ち伏せせんでも矢口は研究所に帰ってくる。
それを待って連れ出したほうがリスクも少ないしスマートな方法や。


それをさせんかった所長の勝ちやな。

緊張の連続やなくて間にうまく緩和が入ってるぶん
刺激に慣れるどころかストレスは強くなる。

はぁ・・・この人にはかなわんなぁ。


「さぁもうこんなところにいる必要はない。
 中でみんなが待ってるよ。」


あ・・・そうか。

矢口の手を握る。


「いこっか?」

「うん。」



「あぁそうだ。あとで私にも翼をみせてもらえるかな?」

「いいよ?あとでみんなにみせてあげる。」

「本当かね?じゃあ先にいってしらせてくるよ。」


オモチャをもらう約束をした子供みたいにご機嫌に去っていく所長。
そんな反応に照れくさそうにわらう矢口。

318 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時19分57秒

よかった。
ほんまによかった。


「あれ?裕ちゃん?」

「ん?」

振り向いた矢口が不思議そうにほっぺたを触ってくる。


「なんでいまごろ泣くのさ?」

へ?

そういえば目が熱い。
のどから嗚咽が漏れそうになってあわてて押し殺す。

アカン。
意識するとよけいに・・・


あぁでも・・・ほんまによかった・・・


「・・・泣き虫裕子。」

グイッとひっぱられるままに身体を傾けると
ほっぺたをなめてくる。

アンタほんまにイヌみたいやなぁ。
離れようとしても離してくれへんし・・・


「なぁそんなんしてんと・・・もどろ?」

「・・・うん。」

しぶしぶ返事する矢口。


319 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時20分32秒


アタシが差し出したはずの手。
でも逆に矢口に手を引かれながらみんなの待つところへ戻る。

・・・なんや・・・幸せやなぁなんて思ったりする。


「裕ちゃん?あとで部屋に来てね?」


こそっとささやかれた言葉。

びっくりして矢口のほうをみると照れくさそうな後ろ姿。
落ち着きなく翼が動いてた。


翼の生えた矢口。

アタシの研究対象であることには変わりない。
まぁ・・・別の意味で精神分析も重要なポイントになったけど。

たぶんアタシはずっとこの子の研究をするんや。
どうやって幸せにしてやろうってな。




おわり
320 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時23分57秒
はい更新終了&完結です。
これも長かったですねぇ。

これのネタってのは実はたった2文の作文でした。
笑いのネタになるような。
321 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時30分26秒
しかしあれですね・・・書けへんね。
根っからの悪人。

しかも最後にはやっぱり・・・ねぇ?
期待にそえたかなぁつかささん?
322 名前:ちぃ 投稿日:2002年12月01日(日)00時33分55秒
これから少しお休みします。
いつも読んでくれてた人すいませんね。

へへへ・・・あんまりうれしいことゆわんといてください。
じゃあ帰ってきます。

しかも早めに。


次回は矢口さんの誕生日に。
・・・ではまた。
323 名前:寒太郎 投稿日:2002年12月02日(月)19時28分01秒
脱稿お疲れ様でした。
ちぃさん、天才!
毎回、読み終わった後心が温かくなったような気がします。
某サイトの某企画も楽しみにしてます。
(自分は8段アイスと豚足を頂いて読者になろうかと・・・)
では、次回作も楽しみにしています。
324 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年12月04日(水)22時46分02秒
脱稿お疲れ様でした。
自分が想像していたよりもハッピーエンドで、
読んでる自分もハッピーな気持ちになりました(w
では次回作、矢口の20歳の誕生日まで首を長〜くして待ってます。
325 名前:つかさ 投稿日:2002年12月12日(木)00時01分08秒
遅レス失礼しますっっ(ぺこり)
めちゃめちゃハッピーエンドっすよ。
ってか、どうせなら、もう一話くらい続けて欲しいくらい・・・・。
いや、腹八分がいいんですよね・・・・でも、読みたい、くらいな勢いで(笑)
ちぃさんの話読んでると、すげ〜、情景が浮かんできます。
それって凄いな〜と。
次は来年ですね。
気長に待ってます^^
326 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時05分37秒
お久しぶりです。
えぇ本日は1月20日ってなわけで更新です。
327 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時06分10秒

―ハタチ。―<矢口>

328 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時06分42秒


「約束やんな?」

裕ちゃんが矢口の顔を覗き込んでくる。

もぉ・・・なんて顔してんのさ?


「そうだね。ハタチになっちゃったもんねぇ。」

裕ちゃんの首に腕を回すとギュゥッて抱きしめられる。


「矢口ぃ・・・」

消え入りそうな特徴のある細い声。


そんな声だすくらいなら約束なんかしなきゃいいんだよ。


「バーカ。」

頭をなでてあげる。


矢口だって気持ちは一緒なんだよ?

誰にもあげたくないんだ。
矢口の裕ちゃんなんだもん。

329 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時07分18秒

でも・・・でもね・・・
周りの人・・・特にうちの家族を悲しませて自分たちだけ幸せになるってことは無理。
裕ちゃんもそれを痛いほどわかってるから無理はいってくれない。

それでも・・・裕ちゃんが矢口を連れてどこかに行くっていってくれたら・・・
迷うことなくついていくのにさ。

やっぱりバカなんだよ裕ちゃん。
矢口が欲しいのは裕ちゃんだけなんだもん。

他の人は手放し難いだけ。
そんなわがまままで大切にしてくれちゃって・・・

矢口にしがみついて小さい声で何度も名前を呼んでる裕ちゃん。

不思議だね・・・
取り乱す姿をみて逆に気持ちが落ち着いていくんだ。

裕ちゃんがこんな風になってしまうのは
それだけ矢口のこと大事だって思ってくれてるからなんでしょ?

・・・矢口おかしいかな?

うれしいんだ。
この人が・・・たまらなく愛しい。

330 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時08分31秒


しがみついてる裕ちゃんの背中をなでると
頼りなげにみあげてくる。


大丈夫だよ?

「大好きだからね。」

「・・・うん。」


なんだよぉその目・・・かわいいぞ?

もぉ・・・


チュッ


「ん・・・」

いつまでたってもされるほうは慣れないんだね。
それもさぁ・・・かわいい。


いいよ裕ちゃんが落ち着くまでなんどでもしてあげる。



331 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時09分11秒

はぁ〜

なんど目かわからないキスのあと
裕ちゃんがついたおっきなため息。


もぉ落ち着いた?

バツの悪そうな顔。
さっきのこと後悔してるんでしょ?


「ごめん・・・悪かった。」


やっぱりね。

謝ることなんてないよ?
だってさぁ・・・矢口うれしかったんだもん。


「・・・いいよ別に。」



「あぁそや・・・誕生日おめでとう。」

裕ちゃんがやわらかくわらう。


「ありがと。」

矢口のほっぺをなでる裕ちゃんの手をつかまえてそっとキスをすると
裕ちゃんがくすぐったそうな顔をする。


「ねぇ・・・ちゃんと幸せにしてよ?」

「ん?あぁ・・・まかしとき。」


おっ自信ありげな顔。

「なんだよぉじゃあ始めっからそうやってわらってろよ。」

332 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時09分46秒

あ・・・また情けない顔。

はぁ〜

なんなのさ?
そのおっきなため息。

「ため息ばっかりついてると幸せ逃げてっちゃうよ?」

「へっ?・・・それは困る。」

あわてて口をキュッと結んでしばらく黙り込む。

あのねぇ・・・別に話をする分にはかまわないんじゃないの?


はぁ〜

・・・また。

矢口の肩の上に頭を預けてくる。

「なぁ・・・なんでそんな強いん?」

「・・・裕ちゃんが弱いから。」

「うぅ・・・」


だってそうでしょ?
裕ちゃんが矢口の分まで泣いてくれるから。

そうじゃなきゃ不安に押しつぶされてるよ・・・きっと。

333 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時10分31秒


「じゃあさ・・・矢口が泣いたら裕ちゃんはどうする?」


・・・・・・どうしてくれる?

「ん・・・・・・そやな。」

裕ちゃんは身体を起こしてかわりに強引に矢口にもたれさせる。

頭をぐりぐりなでられる。

裕ちゃんの手。
裕ちゃんのぬくもり。
裕ちゃんの甘い匂い。

なんか安心するんだよね。

目を閉じてほっぺでスリスリしてみる。


「ん?どした?」


ねぇ・・・矢口だってイヤなんだよ?
誰にもとられたくないんだよ?

「裕子は矢口の。わかってんの?」

「・・・矢口もアタシのんやからな?」

334 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時11分02秒

矢口の誕生日。
改めて一緒に歩いていくって決めた日。

「うまくだませるのかな?」

旦那さんにも親にも世間にも・・・
みんなに秘密にしなきゃいけないんでしょ?

「そんな考えることないんちゃうか?
 もうアカンってなったらどっか行ったらええやん。
 どこでもつれてったるよ?」

タイがええかなぁ?シンガポールも・・・とかっていいながら指を折ってる。


・・・そうだよね。
矢口は一人じゃないんだ。

なにかあってもそれは2人の問題で・・・
2人で考えていったらいいんだよ。


335 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時11分37秒

「ねぇ裕ちゃん。」

「なんや?」

「よろしくね?」

「・・・こちらこそ。」

どちらからともなくわらって・・・それから・・・
時間がとまる。


ねぇ裕ちゃん・・・なんでそんな目してるの?


その目に引き寄せられるように裕ちゃんをじっとみあげる。

背中をゆっくりとすべる手。


「ん・・・」

ダメだよ・・・力が抜けちゃう。

それでも裕ちゃんの目をみていたくて・・・


裕ちゃんの唇の端っこがキュッと上がる。

そんなとこも・・・好き。


指でその唇をなぞると大好きな目が細まる。



チュッ


誰もみてない・・・誰にもみせない・・・
そんな誓いのキス。

お互いの痛みと引き換えに手にはいる・・・
そんな幸せ。


それでもかまわない。
・・・そのほうがいい。

矢口の胸が痛むのは裕ちゃんのせい。

いつでも裕ちゃんを感じていられる。
いつだって裕ちゃんを追いかけていける。

336 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時12分11秒


「・・・好きだよ?」

「うん。」


じゃ・・・うんじゃなくってさぁ・・・もっとちゃんと・・・


急にギュッてされる。
服のなかに忍び込んでくる手。

吐息がかかるくらいに耳元ちかくで・・・


「ちょうだい・・・」

もぉ・・・いまさら・・・
そんなちいさい子がお菓子ねだるみたいないいかたしてさぁ・・・

初めて触れるわけじゃないのにおそるおそる動く裕ちゃんの手。

裕ちゃんがそんなだから矢口だって・・・

「いいよ・・・あげる。」

いつも緊張する。

ふと顔を上げると覗き込む裕ちゃんと目があった。

ほんとは言葉なんていらないんだよ。
この目が全部教えてくれてるもん。

337 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時21分29秒

チュッ

やさしいキス。


でもね・・・今日はこんなのじゃダメなんだよ。

「ねぇ・・・」

「ん?」

「壊して・・・矢口を壊してよ。」


裕ちゃんが固まる。


はぁ〜

ゆっくり長く吐き出されるため息。

「・・・しらんで?」

掠れた声。
跡の残らないギリギリくらいの甘噛み。
服のボタンをはずす手。

ゾクッと肌が粟立つ。


裕ちゃんが困った顔をしてる。

自分の気持ちをもてあますように・・・
矢口の反応に戸惑うように・・・

338 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時22分06秒

「怖い?」

裕ちゃんのほっぺをなでながらわらいかける。

「・・・うん。ちょっと。」

なんだよそれ?

「矢口は丈夫だっていわなかったっけ?
 ・・・・・・もう触らせないよ?」

「・・・アホ。」

裕ちゃんの目が隠しきれない気持ちがうかぶ。

ほら・・・簡単に挑発に乗るんだ裕ちゃんは。
アマノジャクだもんね。



矢口がハタチになった夜に願ったこと・・・
それは元に戻らないくらいに心の一部を壊されること。

人を騙す罪悪感なんか感じることも出来ないように。


それを裕ちゃんにやらせるなんてひどいよね。
でもね・・・これ裕ちゃんにしか出来ないんだ。


大人になった矢口は・・・

裕ちゃんよりズルいんだよ。




おわり

339 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時23分52秒
はい更新終了です。
しかしここでなにやってんだ自分は・・・

いつのまにこんなに大人になったんでしょうねうちの矢口さん?
う〜ん・・・まだ子イヌだった頃がなつかしくおもいだされる。

340 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時24分25秒

基本的にイヌ科は相手軸、ネコ科は自分軸。
なにげに矢口さんは相手に合わせるほうらしいですから。


わがままに見えるときはたぶんそうして欲しいと相手が望むからなんですよ。

そう考えると現在かわいい矢口さんを目にすることができるのは
誰かさんがそう望んだからと思われるわけで・・・・・・感謝。

341 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月20日(月)00時26分34秒

あっ・・・最後に誕生日おめでたいです。

矢口さんが子供のように熱い心を持ったまま
素敵な大人になってくれたらいいなぁと願わずにはおれません。

あぁ・・・えぇっと次回は・・・
2月半ば過ぎに新しい話を乗っけられればなぁなんて思います。
ではではまた。
342 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月20日(月)00時33分46秒
待ってました。
いつも素敵な話をありがとうございます。
343 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月09日(日)15時54分45秒
少しずつ寒さが緩みすごし易くなってきた今日この頃ではございますが
気の緩みも伴うため身体にもお気をつけいただきたいと・・・・・・

って何の挨拶でしょう?
どうもなんか久しぶりに続き物を載せたいと思います。
344 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月09日(日)15時55分29秒


箱の中にあったもの

345 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月09日(日)15時56分26秒


なんやろうなぁ・・・

たまたまフリーズしたパソコン。
たまたま壊れてるなんかのファイルを修復せんかっただけのこと。

たぶん初期化したらもう・・・
そうやこれがどっかおかしいだけなんや。

「どうしたの裕ちゃん?」

「ん?なんもないで?」

パソコンの画面に向かって答える。

「なんでもないって感じじゃないよ?矢口にはいえない?」

心配そうな・・・でも眉をひそめて不満そうな顔。

いえへんよ。
アンタがいつ消えるか考えてたって・・・

もとから普通のメールソフトと違ったんはしってる。

アレやな。
ちょっとむかし流行ったピンクのクマの・・・女の子版?

会社のツテで男友達の名前で買ったせいで
おまけについてきた非売品。

いらん気ぃまわしよってからに・・・わけわからんやん。
他に持ってるヤツおらんかったら使いようないっちゅうねん。


そうや・・・使いようなかったはずやねん。

346 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月09日(日)15時56分58秒


「やっぱり変だよ?」

「ん・・・いや・・・矢口に触ってみたいなぁって・・・」

矢口が寂しそうにわらう。

こっちに背を向けてぺたぺた画面の奥に移動する。


「もぉ・・・無理いうんじゃないよ。」

そうつぶやいてベットにもぐりこむ。

例のメールソフトにはまってた友達につくってもらった部屋。
久しぶりにつくるゆうてたけどなかなかの出来で・・・

あんときはうれしそうにわらってくれてた。

たまたま置いてあったプーさんをえらく気に入って
しばらくはずっと腕に抱えたままやったなぁ。


カーソルでつついてみる。

「なんだよっ!」

あ・・・怒ってる。
出てこうへんの?

347 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月09日(日)15時57分38秒

「裕ちゃんさぁ・・・欲張りだよ。」

矢口らしからぬ沈んだ声。


「ん〜なにが?」

「触れないのは裕ちゃんだけじゃないでしょ?矢口だって・・・・・・
 矢口なんてさ服もいっしょだし・・・それに・・・・・・ここだけだよ?」


・・・・・・そやな。

矢口が起き上がってカーソルに触る。

「ねぇ・・・裕ちゃんこんな硬くないよね?」

・・・悪い。
アンタのほうが辛かったんや・・・

矢口がカーソルを抱きしめる。

「いつか・・・・・・裕ちゃんに会えなくなるのかな?なんて
 考えるだけで・・・頭おかしくなりそうだよ。」



「・・・ごめん。」

アタシがいらんことゆうたから・・・


でもいわんかっただけで矢口はこんなこと考えてたってことやんな?


・・・なんでこんな話になったんやろ?
いつもはもっと普通の・・・?

普通の・・・なんや?

もしかしてアタシばっかりしゃべってたんか?

348 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月09日(日)15時58分28秒

「やぁ〜ぐち?」

「なに?」

まだ暗い顔してんなぁ。

「もっと前来て?」

「ん?」

ベットからでてトテトテ歩いてくる。

うぅ・・・

「かわええなぁ・・・」

「なにいってんだよもぉ。」

おっ赤くなってる。
初めてかわいいってゆうたときその言葉の意味すらしらんかったくせに。


アカン・・・おかしいな。
なんで始めのころばっかり思いだすんやろ?

いつの間にかこの世のヒトでないものに心惹かれてた。
いつか失うとわかってる・・・一生触れることの出来ないものに。

349 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月09日(日)15時59分10秒

「好きやで?」

「えへへっ矢口も。」

あぁちゃんとわらってる。
よかった。

「んじゃもう寝るわ。」

「うん。おやすみ。」

矢口が自分で動くようになってから電源を落としたことない。
いま思えば矢口がなにも覚えへん間に再起動なり初期化なりしとけば・・・

そうしとけば辛い思いすることなかったんやで。

矢口も・・・アタシも・・・

ほら。
こんなちょっとの心の揺れでさえ伝わる。


「なんやな?いつもみたいにわらってぇや。」

「じゃあ裕ちゃんもそんな顔しないで。」

すねたようにゆう。

そうやな。
悪いんはアタシのほうや。

350 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月09日(日)15時59分41秒

「なにゆうてんねんなぁ〜裕ちゃんの顔はいつでもかわいいやん?」

「あぁもぉわかったからさっさと寝なよ。」


うっ・・・
なんやその投げやりないいかたぁ。

「むぅ〜寝る。寝たらええんやろ。」

「そうだぞ!おとなしく寝ろぉ!」

なんや・・・ほんまに・・・えらそうやなぁ。

・・・・・・



・・・

「ほなおやすみ。」

「おやすみぃ〜」


矢口にキスを投げてからパソコンをスタンバイ状態にする。

なんやあの子?
さっき一瞬泣きそうな顔してた。

嫌やなぁ。
あんな顔させたぁないのに。

いらんことゆうたからか?
なんやろ?

351 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月09日(日)16時00分12秒

はぁ〜

自然にもれたため息で我に返る。


「はよ寝よ。」

誰にゆうでもなくゆうて気分を変える。

そうや。
寝たらスッとするかもな。



そう思いこみたかったんや。




おわり


352 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月09日(日)16時05分02秒
はい更新終了です。

今回のは展開が見えそうな気もしますが。
展開読まれてもかまいませんそこからが勝負です。
なにゆうてんねやろ?
353 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月09日(日)16時06分56秒
たぶんまた忙しくなったりするとブツッて消えたりしますが
始めた話は終わらせますから。

354 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月09日(日)16時07分46秒
ではまた来週末に。
355 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月09日(日)16時31分30秒
ちぃさんの書かれる話すきなんですよ〜。
再新まってました。
隠れながら、読ませてもらっています。がんばってください。
356 名前:つかさ 投稿日:2003年02月10日(月)00時41分48秒
おかえりなさいっ♪
いや、二月後半か〜、まだだよな〜と思ってたら。
触れ合えない二人のもどかしさ。
何か新鮮かも。
357 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月11日(火)23時37分08秒
やっほっほい!
「ちぃ」さんの、「ではまた・・・」が復活してくれましたね。
非常に楽しみです。

2003年も、やぐちゅーを沢山沢山、読ませてください。
よろしくお願いいたします。
358 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2003年02月12日(水)00時15分31秒
ちぃさん、お帰りなさい。
今年も、seekでの作品を楽しみにしてます
359 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月16日(日)00時40分02秒
更新します。
360 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月16日(日)00時40分40秒

やっぱりなぁ・・・しってたんやで?
いつまでもずっとあんなふうに一緒にいられへんってのはな。

でもこんな形で終わるとは思わんかった。



仕事から帰って家の鍵開けようって思ったらもう開いてたんや。
間違いなくアタシは閉めてから出かけた。

手がカタカタ震える。


アタシの頭が出した結論・・・

それは・・・・・・


空き巣。


361 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月16日(日)00時41分23秒


少しだけ戸を開けると
一瞬で恐怖が全身を包んだ。

見慣れた部屋が見慣れない情景に変わってること
それはアタシの思考能力をしばらく停止させるのに充分やった。


遅い時間じゃなかったから同じ階の顔見知りのおばさんが通りかかって・・・

それからいっしょに警察に電話したり
事情聴取されたり

で・・・


「なにか大切なものでなくなったものはありませんか?」

聞かれんでもわかってた。
しっててんで?

けど認めたくなかった。
それだけ。


「・・・・・・わかりません。」

まぁな。
人にはわからんやろうし・・・わかりたくもなかったから・・・


「ではまたなにかあれば連絡よこしてください。」

「はい。」


警察の人が帰ったあとでおばさんが
うちに泊まったら?ってゆうてくれたけど断った。


うすうす今日は普通でいられへんのわかってたから。

362 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月16日(日)00時41分57秒

静かになった変わり果てた自分の部屋を
人事のようにみわたす。

視線があるところで固まる。

コンセントに足引っ掛けたんか?

床に転がってる・・・ただの箱になってしまったもの。
イラついたんかご丁寧に踏みつけられてた。



それが意味すること。
それは・・・


なぁ・・・消える瞬間ってどんな気分やった?
痛なかった?苦しなかった?


「っ・・・うっ・・・・・・」

うぁ・・・どうしよ・・・色んなとこが痛い。


「はぁ・・・っ・・・」

普通に息ができひん。
アカン・・・身体に力いれたら声と涙が止まらんなる。

できるだけ力を抜こうとすると
座っていることも出来なくて床に突っ伏してしまう。

泣いたかてもう戻ってこうへんのに・・・
それでもしばらく嗚咽はとまってくれへんかった。


363 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月16日(日)00時42分46秒

ぼーっと床にねっころがる。
涙は止まったけど胸の辺りにポッカリ穴が開いてる。

けっきょく矢口ってなんやったんやろ?

あんなふうにわらって・・・すねて・・・泣いて・・・怒って・・・
いまさらなかったことになんかできひんで?

いろんな顔してる矢口がアタシの中にいるんやもん。

あぁ・・・なんやこれ。
めっちゃしんどいな。

でももう矢口はそんな感情すらもたれへんねやな。


そういやバックアップデータ残してなかったっけ?
職業病でデータを残す癖ついてるからな。

あぁでもあれアカンかったんやな。
他のパソコンで立ち上げても無理やったもんな。


矢口が自分の意思で動いたんはこの転がってる箱の中でだけ。


「なぁ矢口?アンタはどこ行ったんや?」


矢口・・・


364 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月16日(日)00時43分23秒


ちょっとまって・・・・・・おかしいで?

なんでや?

なんでメールソフトのキャラクターにあんだけの情報が入ってんねん?

メモリー機能とかオートメーション化とか・・・
もしかしてはじめっからプログラムの裏に隠してあったんちゃうの?

たまたまアタシが設定した条件を満たしたせいで
裏のプログラムが・・・?

そうやろ?
あれはメールソフトの形をとってたけどその目的では使えん。

じゃあなんや?
なんで作られたんや?

矢口には教えんでもはじめっから持ってたものがある。

矢口真里ってゆう名前。
特徴のあるわらい声。
ころころ変わる表情。

・・・なにをもとにしたデータや?


あれって誰が作ったんや?
作ったやつはなにを考えてたんや?

めっちゃ気になる。




たぶんそのことだけを考えてたら胸にあいた穴のこと
少しの間忘れていられるからやったんやけどな。




おわり
365 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月16日(日)00時49分50秒
はい更新終了です。

いつかこうなると思われるなら早めにやってしまおうってことで。


366 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月16日(日)00時55分27秒
この先どうなるかはいくらでも想像できそうでしょ?
この状態が好きなんです。

ただちょっと展開が早かったかも。
367 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月16日(日)00時58分46秒
先日「今年からは手加減しないから」と宣言されたので
ここの更新どうなるか・・・

まぁでも時間があればコツコツためて書いていきたいとおもいます。
どうやら現実逃避も立派な精神安定剤らしいのでね。

ではまた来週末に。
368 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2003年02月17日(月)00時44分27秒
あぁ〜先がよめない、このもどかしさ。
やっぱ、ちぃさんの作品すばらしいッス
来週末、待ってます。
369 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月22日(土)13時36分02秒
もー、続きが楽しみでしかたありません。
更新楽しみです!!
370 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月24日(月)00時11分11秒
更新します。
371 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月24日(月)00時12分49秒

「すいませんもぉ忘れてくださいよ。お願いしますよ。」

「なんでですのん?アレをおまけでつけはったのはそちらでしょ?
 誰がつくらはったかくらいええやないですか?」

しったところでどうするんやって突っ込み自分で入れながら・・・
でも気になって気になってしゃあないねんもん。


「いや・・・だからその・・・アレは非売品なんですよ・・・」

なんや歯切れ悪いなぁ?

「お付けしたのは手違いなんですよ・・・こちらとしてもアレはなかったことに・・・」

「なかったことには出来ません!」

あっ・・・しまった。
おっちゃんびっくりしてる。

「・・・すいません。」

「いえいえ。こちらこそ勝手なこと申しました。
 なにか不具合でもございましたでしょうか?ぜひわが社のほうで・・・」

そうとるか・・・
そうやなそのことで怒ってるみたいに聞こえるよなぁ。

「不具合おこすようなソフトやったんですか?」

「はぁ・・・プログラム上おこってもおかしくないものでして。」

なんや?
詳しいんかおっちゃん?

372 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月24日(月)00時13分41秒

おっちゃんがここまで歯切れが悪いんは珍しいな。
いつもやったらうまく乗せると機嫌よく教えてくれんのに。

あっ・・・

「その人なんかしはったんですか?」

ほんでゆわれへんとか?

おっちゃんが頭を抱えてなにか考えてる。

図星か?

「なにをしたんですかその人?」


おっちゃんがハンカチで額を拭きつつ意を決したように視線を合わせる。

「・・・・・・絶対人にいわないでくださいよ?」


「いいません。絶対にいいません。」

だからはよ教えぇや。

「アレつくったのは私の部下だったんですが・・・
 ストーカーまがいのことをしてデータを集めてたらしくて・・・
 つい最近警察に捕まったんですよ。」


・・・・・・

373 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月24日(月)00時14分20秒

えっ?
いまなんて?

・・・・・・

「はぁ?!ストーカー?!」

なになに?
どうゆうこと?
データ集めるって?

「もちろん普通はそんなことしませんよ? 私たちはまっとうな仕事を・・・」


ちゃうねん!
アタシが反応してんのはそことちゃうねんって!

「実在するんですか?」

「はい?」

はい?っとちゃうやん。

「だからモデルがいるんですか?」

「はぁ・・・部下はその子が好きだったとかなんとか申しておりましたから・・・」


ほんまなん?
矢口はほんまにおるんか?

「もういいですか?他のところへまわる予定がございますので・・・
 なにかございましたらお申し付けください。これで失礼します・・・」

「あっちょっと・・・」

こらっ!おっさん逃げんなよぉ・・・
小走りに遠ざかる後姿に心の中で毒づいてみた。

374 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月24日(月)00時15分12秒

しかし・・・えらいこと聞いたなぁ・・・

でもどこにおるんかもわからんし・・・
おうたかてアタシのしってる・・・アタシのことしってる矢口と違うんやろ?


・・・そうやんな。
しったかてどうしようもないやん。

でもころころ変わる表情も柔らかそうな唇も髪も・・・ほんまなんやろか?
身体の大きさってどれくらいなんやろ?

ベットがだいぶあまってたしやっぱりちっちゃいんやろか?

矢口に会えたら触ってみるくらいはかまへんかな?

わらってる矢口の頭をなでたくて・・・
すねてる矢口を抱きしめたくて・・・
照れてる矢口に・・・・・・・

はぁ?
いまなに考えた?

っちゅうかなんでもう会えたらってこと考えてんねんなアタシ。

375 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月24日(月)00時15分48秒

「・・・中澤さん。仕事してくださいよ。」

「あっ?」

しまった。

「すいません。」


いかんいかん。
仕事せんかったら自分が生きて行かれへんなるわ。


胸に開いた穴は相変わらずやけど
矢口に会えないわけじゃないってゆう現実が痛みを和らげてくれた。






おわり

376 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月24日(月)00時16分44秒

はい更新終わりです。

377 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月24日(月)00時17分51秒
今日はなんかパソコンの機嫌が悪いみたいなのでこのへんで。
378 名前:ちぃ 投稿日:2003年02月24日(月)00時18分28秒

ではまた来週末に。

379 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月01日(土)20時34分02秒
更新します。
380 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月01日(土)20時34分51秒

あれから家にパソコンを置いてへん。
あると思い出すやろうし・・・立ち上げると探してしまうやろうし・・・
かといって仕事中にしかメールチェックできひんのはこまんねんなぁ。

データ持ち帰って処理するとかも出来ひんし。

ノートパソコンぐらいやったらええかな?
形も大きさも前とまったく違うやつ。


最近仕事おわって家に直行することもない。
家帰ってからの時間は矢口との会話の時間やったから。

まぁそれも慣れるまでの問題やな。

でも今日みたいな休日はどうしようもないよなぁ。
普段いかへんとこへ出かけてもすることもないし・・・

こうやってぼーっとコーヒー飲みながら
駅から出てくる人にの波を眺めるだけ。


381 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月01日(土)20時35分22秒

でもこれって・・・
けっきょく実在してるって聞いた矢口を探してるってことか?

ストーカー男の住所。

なんとなく・・・
なんとなくだけおっちゃんに聞いた。
ちゃんと教えてくれへんねんもん。

心配せんでもええのに。
パソコンの恨みで人を脅したりせんって。

そんなキレやすそうにみえるんか?
失礼やわぁ。


ストーカーするんやったら
行動範囲がどっかで矢口とかぶるんやろうなぁって。

そう思っただけやのに。


382 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月01日(土)20時35分54秒


・・・・・・

・・・・・・だけやて?
ウソやなそんなん。
きっちり行動してるやん。


アホやわアタシ。
そんなに気になるん?

ほんまはあんなんちゃうんかもしれへん。
所詮はストーカー男が創りあげた偶像やであれは。

人のこと平気でアホってゆうやつかもしれへんよ?
あんがい下ネタ好きやったりするかもわからん。

それでもええん?

へんやなぁ・・・
好きやった男のだらしない姿みたりするだけでスッと冷めるのに・・・

矢口やったら別にかまわんの?

おかしいなぁ。

383 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月01日(土)20時36分52秒

あの矢口を失った悲しみと
実在の矢口に触れられるかもしてへんって期待が共存してる。


可能性はかなり低い。
会えんと終わる人生かもしれん。


それでもかまへんねん。
矢口が生きてるってゆうんがうれしいんや。

あの箱ん中で消えてしまった矢口。

あの子がほんまにそのままやったら悲しすぎるもん。
箱ん中に閉じ込めておくには惜しすぎるもん。

あの子はいろんな人に愛されるべきやから。


だからたぶん会えたとしてもその横に
矢口を愛する人・・・矢口に愛される人がいるんや。

そこまでわかってんのにまだ探してみたい自分がいる。


へんやなぁ。




おわり

384 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月01日(土)20時40分24秒
はい更新終わりです。

385 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月01日(土)20時42分52秒
ちょっと短いですね。
もうそろそろ出てきてもらおうと思います。
なんでしょうね・・・2人そろってないと話が膨らまん。
386 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月01日(土)20時43分26秒
ではまた来週末に。
387 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月01日(土)22時34分24秒
2人そろって出てくるのが楽しみです!!
やっぱり2人セットでないと・・・寂しいです。
来週末たのしみです。
388 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時32分18秒
更新します。
389 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時33分03秒

疲れた・・・もう帰って寝るだけ。
そう思ってもちょっとだけ遠回りをして家へ帰る。

いつも行かへんところ。
いつも通らへん道。

もしかしたらいるんちゃうかって思って。

2ヶ月近くたったかなぁ?
そんだけたてば習慣になってくる。


こんな一途やったっけなぁ・・・

もうすでに他の人のものかもしれんのに?
アタシだけのアタシしかしらんあの矢口とは違うのしってる癖に?

390 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時33分35秒

まぁそれだけやないな。
外へ出かける楽しみってゆうんかな?

そんなものを思い出した。

時間がたてば痛みを忘れるわけじゃないけど慣れてはくる。
ちょっと宝探しっぽいかな?

むこうがじっとしてへんしちょっと難しいけどそれはそれで・・・
たぶん何事も楽しんだもん勝ちやねん。


「やぁぐちぃ〜出てこぉ〜い・・・」

ちっちゃくちっちゃくつぶやく。


391 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時34分13秒

ほぉ・・・ゲームセンターかぁ。
いってみよ。


矢口っていくつなんやろ?
見た目からするとこんなとこ出入りしてる年頃やんな?

あっそうか・・・
ズレもあるんやんな。

実物とアタシのしってる矢口が同い年とはかぎらへん。


あっ!

プーさんのUFOキャッチャーや。
そういえば好きやったなぁ。

あれって本物がプーさん好きやからやろか?


しかしゲームセンターってうるさいなぁ。
色んな方向から色んな音がする。


うぅ・・・ちょっと気分が・・・

疲れてるときに来るとこちゃうわ。
やっぱり帰ろっかなぁ。


392 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時34分48秒

透明のアクリル板ごしに見えるいろんな顔したプーさん。

矢口のプーさんはわらってたなぁ。
抱っこされても・・・引きずられても・・・八つ当たりされても・・・

あっ・・・この子似てるわ。
そうそうこんな顔してた。

・・・・・・


「うぁ〜!!プーさんだぁ!プーさんプーさん!!」

へ?
この声?

393 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時35分26秒

思いっきり勢いよく振り返ったら背の高い子にごつっと当たって
そのままはじかれてこけてしまった。

イタタ・・・


「もぉ〜いいかげん落ち着きなよぉ。圭織ついてけないよ。」


・・・・・・


「ちょっと圭織・・・なにしたの?人がこけてるよ?」

「え?・・・ほんとだ。」



・・・・・・矢口や。

一生目にすることないかもしれんって思ってたのに・・・
・・・やっぱりちっちゃいんやぁ。


アタシのんと違う矢口。

2つにくくってないんやなぁ。
ちょっと大人。

394 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時36分01秒

「あの・・・大丈夫ですか?どこか打ちました?」

矢口が手をかそうと差しだしてくる。

あれ?
こうゆう顔みたことあるかも・・・


「あぁ大丈夫です。すんません。」

普通のふりを装いながらその手を握る。
ずっとずっと触りたかった矢口。

こんな形で実現するとはなぁ。

身体を起こすと近くのイスまで手をひっぱって行ってくれた。
背の高い子がハンカチを渡してくれる。


へ?
ハンカチ?

「なんで?」

「涙。」

短い答え。
申し訳なさそうな顔。

指で自分のほっぺたに触れると確かに濡れてた。

395 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時36分37秒

「ごめんこれはちゃうねん。別に痛かったわけと・・・」

言い訳の声が途切れる。
アカン呼吸が・・・

なんやアタシ・・・
全然冷静ちゃうやん。


「大丈夫?」

背中をなでるちっちゃい手。

アカンって・・・
そんなことされたらとまらへん。
変な人やと思われるやん。


「いいから・・・気にせんといて・・・」


「そんなこといわれても気になるじゃん。」

矢口が心配そうにのぞきこんでくる。

396 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時37分52秒

あぁやっぱり。

『なにかあった?矢口にはいえない?』

あのときと同じ表情。


「矢口?」

「なに?」

「この人・・・矢口の彼氏と微妙に似てる。」


あ・・・やっぱりいるんや。

「今そんなの関係ないじゃん。」

気まずそうな顔。

うぅ・・・こっちかて気まずいわ。

いつの間にか止まってる涙。
・・・別の感情が割り込むからやな。

397 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時38分23秒

「ごめんじゃましたな。アタシは大丈夫や。2人とも遊んで来てぇや。」

「え?」

矢口の顔が曇る。

なんや?

「心配だよ。」

なんやねん。
アタシちっちゃい子ちゃうで?

「『ねぇ・・・名前なんていうの?』」

これ聞いたことあるセリフや。


「中澤裕子ゆうんや。」

「『じゃあ裕ちゃんだね。』」

うれしそうに綻んだ口元も細められた目も。

・・・いっしょやな。

398 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時38分56秒

「そっちは?」

2人の顔を見る。
片方はもうとっくにしってるけど。


「圭織は飯田圭織。」

そうかぁ圭織ってゆうんか。
目ぇおっき子やなぁ・・・

背ぇ高いし矢口と並ぶとまたこれ・・・

服をツンツンと引っ張られる。


あ?
なんやすねてんの?

聞かんでもしってるもん。
そういえば・・・すねてる顔こんな近くでみんのはじめてやん。


399 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時39分39秒

・・・・・・

お返しに同じように服をツンツンと引っ張る。


「教えて?」


へへってわらう顔がかわいい。

「『矢口はねぇ真里っていうんだよ。』」


なんや・・・ほんまに・・・
ええ仕事しとるなぁストーカー男。


「そっか。矢口と圭織なぁ。
 ほんまにアタシ大丈夫やから遊んでおいで?」


「裕ちゃんは?」

矢口が首をかしげる。

あ・・・この顔もしってる。

400 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時40分16秒


「アタシは帰る。」

もう矢口みつけたからな。


「どうして?遊びに来たんじゃないの?」

矢口がアタシの服のすそをつかむ。


「アタシは学生さんやないもん。お仕事帰り。疲れてんの。」

そんなかわいらしい仕草みたら・・・
お持ち帰りしたくなるやん。

だから・・・はよ帰らな・・・


「じゃあどうしてここにいるの?」


401 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時40分46秒

・・・圭織・・・アンタ痛いところをサクッとついてくるなぁ。

「人を探してたんや。」

そう・・・人探し。
箱の中で消えた子を探して現実の世界をふらふらとな。


「みつけたの?」

「うん。」

あの矢口はこの矢口の中にいる。

ちょっと大人やけどその表情に・・・
その言葉に見え隠れするアタシの大好きやった矢口。

やっぱり人のもんやったけど。


「じゃあな。」

これで忘れよう。
矢口にはいい友達も愛してくれる人もおるんや。

それでええんや。

それで。


402 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時41分19秒

「じゃあ裕ちゃんケイタイ教えてよ。」

「へ?」

いつの間にか矢口の手にはケイタイ。

「へ?じゃないよ。ほらっケイタイの番号。」

「あ・・・うん。」

「圭織にも。」

「・・・うん。」


・・・なんやこの流れは?


「よしっ!じゃ遊んでこよっか圭織!!」

「おっけ!」

「「じゃあまたね裕ちゃん!!」」


2人して手を振りながら去っていった。

・・・なんじゃあの凸凹コンビ。




けっきょく・・・忘れさせてくれへんのやね。




おわり
403 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時42分18秒
はい更新終了です。
404 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時44分44秒
凸凹コンビです。
やっぱり好きですねぇ最近きれいなお姉さんっぽいこの人も。
405 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月09日(日)02時47分07秒
来週ちょっと忙しくなりそうなんで
できたら来週末に無理ならもう一週後にとゆうことで。
ではではまた。
406 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月09日(日)07時29分43秒
あぁ〜これかららの展開がきになるぅ(>_<)
裕ちゃん、矢口と会えて良かったね☆
407 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月10日(月)22時39分23秒
消えてしまった(?)矢口のほうもきになるんですよね。
408 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月15日(土)23時34分50秒
更新します。
409 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月15日(土)23時35分31秒


『・・・・・・なんだよ。おかしいでしょ?』

「ん?ちょっと待って矢口の彼氏とアタシはそんな似てんの?」

『ん〜そっくりとかじゃなくって・・・矢口的にはってことじゃないの?』

は?
どうゆうこと?

『矢口の趣味って決まっちゃってるからね。』

「趣味?」

『色白でどっちかっていうと華奢でかっこかわいいの。』

「ふ〜ん。」

『裕ちゃんも当てはまるでしょ?』

「へ?」

410 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月15日(土)23時36分03秒

なにゆうんや。
ドキッとするやんか。

『うんとねぇ・・・なんていうんだろ。
 圭織のことじゃないからはっきりいえないけど・・・
 矢口の反応からするとたぶん気に入ったんだよ裕ちゃんのこと。』

「そうなん?」

『矢口はさぁ積極的にアプローチするんだっていってたもん。
 ほらケイタイの番号聞くの忘れなかったでしょ?』

「そんなもんか?」

『あぁ!!!!』

うわっ!
思わずケイタイから耳を遠ざける。

「なんやなんや?」

『明日提出のレポートあったんだぁ!!やっばいよぉ〜!!』

「そっかぁ学生さんは大変やなぁ。ほな切ろか?」

『ごめんねぇ裕ちゃん。じゃあまたね。』

「ほなまたなぁ。」

411 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月15日(土)23時36分35秒

プッ


ふいに静けさが訪れる。
この瞬間が好きじゃない。

まえは案外平気やったのになぁ。


部屋の隅に移動させた壊れたパソコン。

この箱の中にあったのはなんやったんやろう?
矢口がほんまにプーさん好きやったみたいに・・・


はぁ〜


「アホなこと考えたらアカン。」

412 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月15日(土)23時37分12秒

なんかあれやなぁ・・・
見つけんほうがよかったかなぁ?

人のもんや。
あの矢口とはちがう。
アタシだけの矢口は・・・消えてしまったんやから。

蓄積されたデータを元にしたデジタルな存在。
データが壊れたらもうおわり。

そうやで?
あの子はもういいひんねん。
あきらめな・・・



はぁ?


なにをあきらめるんや?
アタシなに考えてんねやろ?



『好きやで?』

あの好きは・・・?



おわり


413 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月15日(土)23時39分00秒
はい更新終わりです。

なんかちょっと時間が取れなかったもんで短めです。
414 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月15日(土)23時42分39秒
ぼーっとする時間が欲しい今日この頃。
どうにかならんもんか・・・
415 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月15日(土)23時43分10秒
ではまた来週末に。
416 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月21日(金)08時14分40秒
この後、2人がどうなっていくのか楽しみです☆やっぱ、やぐちゅーは最高!!
続き楽しみにしています♪これからも頑張って下さい。
417 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時10分06秒
更新します。
418 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時10分38秒

『いまから行っていい?』

急にかかってきた電話。

珍しいことかも。
いつも会うのは外やったから。

土曜日やし別に明日でもってゆうてもきかへんから
一番近い駅教えて迎えに行った。

そしたら駅の階段に矢口がポツンって座ってて・・・
なんか消えてしまう前の矢口みたいに思えてギュッて抱きしめたくなった。

まぁでもそんなんしたら変な人やし我慢して代わりに頭をなでといた。
ほんまにサラサラやったんやぁって妙な感動を覚えながら
たぶんこの感触忘れることはないんやろうなって思った。

それから他愛のない話をしながら家まで帰ったのに・・・
家についてからぱったり会話がなくなった。

419 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時11分10秒

で・・・なんで黙ってお茶飲んでんの?

まぁ話したくなるまで待ったらええか。
考えてみたら矢口が部屋にいることはそこまでおかしなことやない。
実物やなかったとしても矢口はここにいるんが当たり前やったし。

なんか落ち着く。

・・・むかいっかわの矢口はそうでもないらしいけどな。

お茶を飲みながら目はキョロキョロ物珍しそうに部屋の中をみてる。

はじめは遠慮がちにしてたくせにいつの間にか
積んである雑誌をペラペラめくったりしはじめた。

あの・・・アタシがいること忘れてへん?

いいか別に。
気が済むまでほっとこ。

なんか面白いなぁ。
こんだけ堂々と部屋を探られるってのがおかしいわ。

420 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時11分44秒

矢口の視線があるところで固まる。

なんや?


あ・・・手帳か。
そんなもんに興味あるんかいな?

アタシのなにがしりたいん?


ふと周りを見渡した矢口と目が合う。

「あっ・・・」


って・・・アンタ誰もおらんかったら読むつもりやったん?
ほんまに忘れてたんかいアタシがいること。


「もぉ!いるんなら止めてよぉ!!」


え?
逆ギレ?

421 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時12分14秒

「・・・ごめん。」

あぁなんで謝ってんねんなアタシ。
だいたい部屋から出るそぶりすらみせてへんがな。
気配消したつもりもないし。

勝手にアタシの存在無視したんそっちやん。


矢口は真っ赤になってうつむいてる。

なんやの?
今度は落ち込んでんの?

うぅ・・・かわいい。
かわいいっちゅうねん。

怒る気失せる。

422 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時12分48秒

「どうしたん?」


矢口がテーブルにぺたんと顔を伏せる。

返事はなしかい?

・・・・・・


「・・・怒んないの?」

ん?
なんや?

ほんま強気やったり弱気やったっり忙しいやっちゃなぁ。
矢口の頭をなでてやる。


「なんやの?なにがしりたいの?」


手を跳ね除ける勢いで矢口がガバッと急に身体を起こす。

・・・・・・

423 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時13分20秒

視線をガチッと合わしたくせになんで無言?
いいたいこと出てこうへんの?

へなへなとまたテーブルに突っ伏してる。

なにをしてんねんな?


「なんでも聞きぃや。答えんで?」

矢口の頭にコブシで痛くないようにコツコツする。


「じゃあ聞くけどさぁ・・・・・・」


・・・また止まってる。


「ん〜なに?」

矢口の髪を指に絡めてみる。
あぁやっぱりこの感触好きかも。


「裕ちゃんって付き合ってる人いるの?」


え?

424 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時13分56秒

・・・・・・

「あぁっ!!!!」


さっき矢口の視線を一身に集めてた手帳を手に取ってパラパラめくる。

一ヶ月半前くらいにしてた会う約束。
きれいさっぱりすっぽかしてる。


ちょっとまって?
そういえば電話もあったっけ?

ちょうどそのころそれどころやなくって・・・

うわっ・・・ありえへん。
そんなんありか?


キョトンとしてる矢口と目が合う。


「・・・・・・忘れてた。」

「はぁ?なんだよそれ?」


わらいだす矢口にこっちも苦笑いしてしまう。

425 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時14分27秒

・・・誰のせいや思ってんのほんまに。


「アタシもともと遠距離は無理やねんもん。
 身体の距離は心の距離ってとこかな。」

むこうもそうやったんかもな。
もう連絡もこうへんし。

「まぁそんだけの縁やったってことやな。」

ええわ別に。
う〜ん・・・ちょっと悪いことしたかもな。




「身体の距離かぁ・・・こうすると心の距離もなくなる?」

矢口がテーブルを回ってとなりへ来てアタシにもたれる。


!!!!!

426 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時14分59秒

なんや?


「どうしたん?」

とりあえず平気なふりしとかな。


「わかんない。」

矢口が泣きそうな顔で見上げてくる。


アタシの側でそんな顔せんといて。
不安になってしまうやん。

この矢口が消えたらもうどこ探しても見つけられへん。


気がついたらギュウッて抱きしめてた。


ふぅ〜

矢口が腕の中で大きなため息をつく。

「どうしてかなぁ・・・落ち着ける。」

ん?
落ち着いたらアカンのかいな?

「どうしたん?」

「・・・わかんない。」

「そればっかりやな。」


ゆっくりあやすように背中をトントンってする。

427 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時15分39秒

「だってわかんないもん矢口。自分でもよくわかんないよ。」

「そっかぁ・・・じゃあわかるまでゆっくり考えたらええんちゃう?」

「うん。そうする。」

・・・?
矢口はなにしにきたんやろ?
考えにきたんか?


「ねぇ裕ちゃん家ちょっと遠くない?」

「なにが?」

「あのゲーセンからけっこうあるね。」

「あぁ・・・うん。」

「そんなに大切な人だったの?」


なんの話や?

428 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時16分20秒

「探してたんでしょ?」


あぁその話か。

「そやで。」

「付き合ってる人のことは忘れちゃうのに
 その人のことはあんなとこまで探しに行くんだ?」

そうかおかしいなぁ。


でもそのおかげで・・・
ちゃんとこうやって腕に感じていられる。
触れたかった矢口に触れていられる。


「身体の距離は心の距離なんでしょ?」


・・・確かに。
どんだけ離れてるかなんて考えもせんかった。

どれだけ距離があるかわからんかったのに・・・それでも探してた。

う〜ん。
やっぱり・・・・・・?

429 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時16分51秒

いきなり眉間をつつかれる。

あ・・・シワよってたか?


矢口が得意げな顔でこっちを見上げてる。

「裕ちゃんも矢口といっしょじゃん。わかんないんでしょ?」

「矢口といっしょか?」

「いっしょだよ。」


なんか自然と顔がゆるむ。

「そっか・・・わからんもんどうしやな。」

「そうだね。」

矢口を抱っこしたままソファーにもたれる。

ん〜確かに落ち着くかもな。
今度は矢口もリラックスしてる。

430 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時17分23秒

「ねぇ・・・きょう泊まっていい?」

「ん?」

「ダメ?」

「かまへんけど・・・」

「けど?」

「抱っこして寝るで?」

「・・・抱き枕かよ!!てゆうかなんで宣言なのさ?!」


ずっと抱っこして寝たかったんやで?
おやすみゆうても寝んのアタシだけやったから。

「アカンの?」

「・・・いいよ。どうせもう決まってるんでしょ?」

「ぃやった!!」


チュッ

431 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時17分56秒

矢口がほっぺた押さえて真っ赤になってる。

あ・・・しまった。

「なにすんだよぉ・・・もぉ・・・」


ああぁぁぁぁ・・・どうしよぉ・・・・・・
かわええぇ・・・

「わかんないね・・・裕ちゃんって。」

「なにが?」

「抱っこして寝るのうれしいの?」

「うん。」

「・・・へんな人。」

ええやん別にぃ・・・

矢口がわからんってゆうんならわからんでかまわん。
ゆっくりゆっくりわかったらええんや。


矢口もアタシもな。




おわり
432 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時19分39秒
はい更新終了です。

もうそろそろここがいっぱいになりそうです。
いっぱいになったら新しいの立てようと思います。
433 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時23分16秒
あの・・・いまさら気付いたんですが1番はじめのとこまちがってますよね。

レスってお前・・・スレやろうが!!
うわぁぁぁぁ!!!はずかしいぃ!!!!

あぁいまさら気付くぐらいなら一生気付かんかったほうがよかった・・・
434 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月22日(土)23時28分04秒
見つけた瞬間一気に冷や汗が吹き出ましたがどうすることも出来ず
間違いのあまりの寒さにひとりしばし放心してしまいました。

でもまぁ軽く記憶を閉じ込めて・・・

ではまた来週末に。
435 名前:マコト 投稿日:2003年03月22日(土)23時43分51秒
どーも、初めまして。
ちぃさんの作品大好きです!
来週末楽しみにしてます。
436 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月23日(日)13時22分02秒
レス・・・言われるまで気づきませんでした。
やっと2人一緒に出てきてくれました(喜
来週末楽しみにしてます。
437 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月23日(日)18時01分25秒

すみませんageってしまいました・・・。
438 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2003年03月24日(月)13時01分09秒
忙しくてしばらく名作集に来れなかったんですが・・・
ちぃさんが復帰していて良かった♪

かなり萌える展開ですが、なんか起こりそう・・・。
439 名前:名梨 投稿日:2003年03月25日(火)16時13分41秒
久しぶりに来てみたら…
更新キタ━━━(゚∀゚)━━━!
次回更新楽しみにしています。萌え萌え。
440 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月29日(土)23時24分02秒
更新します。
441 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月29日(土)23時24分47秒

一晩中抱きしめてたぬくもりが消えたのに気がついて
いつもの日曜日より早く目が覚めた。

コーヒーの匂いがするせいで朝の空気がいつもより柔らかい。


「・・・夢とちゃうんや。」

あれ?
コーヒー豆の置き場所教えたっけ?
キッチンの中探したんか?

まぁええか。

待ってたら起こしに来てくれるやろうか?


なんでかしらんけどニヤケてしまう。

ん〜?
なんでかなぁ?

まだ脳が休息を求めてるせいでなかなかうまく回転せぇへん。
そんなとこが微妙でまたわらえる。

とりあえずわかることは朝から珍しく機嫌がいいってこと。

でも少しずつまぶたが重くなってくる・・・

まだいいよなぁ?
もうちょっと寝てもかまわんよなぁ?

言い訳ししてる間にもうすでに閉じてしまってるまぶた。

そのままベットに残る矢口の匂いにくるまって
あたたかく柔らかい泥に溶けるようにゆっくり意識を手放した。

442 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月29日(土)23時25分19秒

息苦しさに目を開けるとすぐ目の前に笑顔の矢口がいた。

「目ぇ覚めた?」


あぁ・・・矢口がのっかってるからしんどかったんかぁ。
金縛りかと思うやんか・・・


微かにコーヒー味。


「おはようさん。」

目をこすってから伸びをする。


で・・・なんでどいてくれへんの?
身体が伸ばしきれへんやん。

前髪をかきあげられて思わずおでこを押さえる。

「どうしたの?」

「・・・おでこみられんのイヤ。」

デコぴんしたくなるってゆわれたことあるからなぁ・・・
矢口もはたいたりしてきそうやもん。

ほらぁ絶対悪巧みしてるってぇあの顔。

443 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月29日(土)23時26分00秒


「ダメぇ〜矢口にみせなさい!」

「イヤやぁ〜!」

ジタバタ暴れてみても上に乗っかってる矢口が
うまく体重を使ってアタシの両手をベットに押し付ける。

ちょっと・・・これ・・・


「・・・かわいいねぇ裕ちゃん。」

矢口?


「目ぇ閉じなよ。」

小さくささやく声がしっかり聞こえるほどの距離。
なんでかしらんけどいわれるがままに目を閉じてしまう。


チュッ

ってなんでおでこやねん!!


目を開けるとニヤニヤわらってる矢口。

「なぁに?裕ちゃん期待しちゃった?」


なっ!!
444 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月29日(土)23時26分36秒

くそぉ・・・遊ばれた。

油断してる矢口をグイッと引っ張って身体の位置をいれかえる。


「なんだよぉ・・・」


なににらんでんの?

ふ〜んまだ強気でいられるんや。
でも真っ赤やん。

アンタが悪いんや。
大人をからかうからやで?


チュッ

あれ?
コーヒーの味がする。

力を緩めた瞬間矢口が腕から抜け出して
振り返らずにドアのとこまで走っていってしまう。

なんや?
怒ったん?
嫌やったんか?

ドアを開けるだけ開けてこっちを振り返る。

なんや心配してそんした。
めっちゃ笑ってるやん。

445 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月29日(土)23時27分11秒

「どうしたん?」

「裕ちゃん待ってるの。早く来ないと全部のんじゃうよ?」

かわいいなぁ矢口は。
こんな朝・・・ええなぁ。


「ふ〜ん全部飲めるんか?」

意地悪なわらいが口元に浮かんでしまう。

「うっ・・・」

あ・・・やっぱり。
いままで飲んでるとこあんまり見たことなかったしなぁ。


「じゃ全部流してやる!」

「えぇ!アカンもったいないって!」

急いでベットを出て矢口にとこまでいく。
ついでにギュッて抱きついてみたりして・・・


なんとなくわかってきたかもしれん。
矢口を必死で探した理由。

箱ん中にいた矢口にはできんかったこと・・・
触りたかったんや。




矢口といっしょにリビングでじゃれながら
朝ごはんを食べる。

それは思ったよりも幸せやったから。





おわり

446 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月29日(土)23時28分31秒
はい更新終わりです。

447 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月29日(土)23時31分15秒
なんも書くことないのでさっぱりと。
448 名前:ちぃ 投稿日:2003年03月29日(土)23時31分51秒
ではまた来週末に。
449 名前:つかさ 投稿日:2003年03月29日(土)23時37分21秒
ちぃさんワールド炸裂っすね・・・・・
何かこの中澤さんと矢口さんごっつ好きですわ。

二人のほんわかした雰囲気がすげ〜伝わってきます。
すげ〜な〜(マジ惚れ惚れ)
450 名前:読者 投稿日:2003年03月29日(土)23時49分18秒
更新ありがとー。。
最近いらいらしっぱなしの私としては
最高のカンフル剤です。。
来週楽しみにしてます。。
451 名前:マコト 投稿日:2003年03月30日(日)03時32分53秒
だんだんやぐちゅーになって行く過程がすごく好きです!
ちぃさん頑張って下さい!!
452 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2003年03月30日(日)06時11分19秒
マータリと幸せそうな雰囲気がイイですね。
453 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2003年03月31日(月)03時54分00秒
いつ見ても、ちぃさんの、やぐちゅーいいッスね
続き期待して、待ってます
454 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月03日(木)13時19分34秒
ほのぼのしてていい感じです。
なんか、2人共しあわせそうです(w
続き楽しみに待ってます。
455 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月05日(土)23時39分39秒
更新します。
456 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月05日(土)23時40分12秒

飲み屋さん特有の陽気なざわつきがひどく遠くに聞こえる。
いつもやったら自分もその中にとけ込んでるはずやのに。

「かおりぃ・・・」

「どうしたの?裕ちゃん元気ないね。」


だってなぁ・・・・・・

「今日あんま飲んでないね。」

「・・・うん。」

・・・嫌われたよなぁ矢口に。


「なにかあったの?」

「・・・うんにゃ。」

いわれへんわ。


「もぉ〜圭織だけじゃ不満?」

圭織がグラスを持って正面からアタシの横へ移動してきて
うつむいてジョッキをいじってるアタシの頭をこづく。

457 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月05日(土)23時40分54秒

「ちょっとした悩みくらいなら聞いてあげられるよ?」

「・・・うん。」

ん〜難しいなぁ。
会う前のことから全部ゆうわけにはいかんし・・・

アタシだけの矢口はアタシの生活の一部やったけど
知られたくないことは隠しとくことができた。

いまの矢口には・・・

ゆうたところで・・・あんな反応するとは思わんかったんやもん。


あそうか。
圭織の反応はどうなんやろ?


「・・・あんなぁ前付き合ってた人が久しぶりにうちの家きてん。
 別れたってゆうか自然消滅みたいなもんやってんけど・・・」

「それで?」

「別に嫌いになって別れたわけじゃないから・・・
 これで最後にしようって・・・そのぉ・・・」

「したんだ?」

ぅ・・・そんなはっきり・・・

「・・・うんまぁ。」

「それで?」

「そんだけ。」

「へ?」

圭織がきょとんとしてる。

そうやんなぁ?
ふつうやんなぁこんくらいのこと。

458 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月05日(土)23時41分33秒

「でも・・・」

聞かれたこと正直に答えただけやのに・・・
あんなふうにゆわれると思わんかった。

圭織の肩に頭を預けるとよしよしってなでてくれる。

「裕ちゃん後悔してるの?」

「ううん。あの人のことはもうええねん。」

「じゃあ・・・?」

「『裕ちゃんなんて大っキライ!もぉいっしょに寝てあげない!!』やって。」

「え゛?」

圭織の手が止まる。


ん?
なんや?

あっ・・・・・・

「あの・・・あれやで?抱っこして寝るだけやで?別に・・・」

「・・・裕ちゃんだったんだ。そっか。」

は?


459 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月05日(土)23時42分45秒

「あぁ〜!!なにやってんだよぉ圭織ぃ!!」

え?
矢口?

今日デートやってゆうてなかったっけ?

べりっと圭織から引き離されて矢口のほうへもたれかかる。

「なんやの?」

「もぉっ!裕ちゃんはほっとくと誰かにくっつくんだから!」


なっ!

「失礼なことゆうな!アタシは誰でもええんちゃうわ!」

そんなでっかい声で誤解を生むようなことをゆうなっちゅうの。


「だって・・・だって裕ちゃん・・・」

うぁ・・・なんで泣きそうやの?

「圭織ぃどうしよぉ・・・ってなんでそっち戻ってんの?」

いつの間にかとなりにいた圭織が正面にいる。


「矢口が怖いから。」

へ?

460 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月05日(土)23時43分36秒


「だからぁ〜矢口・・・」

「だぁぁぁぁぁ!!!」

矢口がいきなり叫ぶ。

なんやねん?
さっき泣きそうやったくせに。

「ダメだっていってるじゃん!いわないって約束でしょ?!」


その勢いを普通に受け流しながら圭織がふふふってわらう。

「ほら怖いでしょ?」

なんやねん。

・・・・・・?
んなわけないよな。


横から矢口を抱きしめて肩にアゴを預ける。


「なぁ矢口?」

「なんだよぉ・・・」

461 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月05日(土)23時44分18秒

うぁ・・・なんでそんな低い声やねん。
初めて聞いたでそんなん。


チュッ

矢口の耳にキスする。


「そんな怒らんといて?」

キライってゆわんといて?
またいっしょに寝て?

口に出されへん言葉は心の中で。



「ね?どう思う?」

矢口がアタシを無視して圭織に聞く。


「うん。わかる。」

「ダメだよ!」

矢口がガウぅってうなる。
圭織は相変わらずわらってる。

「なぁなんやの?アタシだけ話しわからんやんか。」


「「裕ちゃんはいいの。」」


なにきれいにハモっとんねんこの凸凹コンビが・・・
なんやねん2人して人をのけもんにしよってからに。

ええもん。

462 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月05日(土)23時44分56秒

「矢口ぃお持ち帰りする。」

「ヤダよ。」

即答かい。
むぅなんや反抗的やな。

そんな嫌やったんか?
・・・・・・


「落ちつかへんもん。」

いつもと違う匂いの部屋じゃ落ち着いて寝られへん。


「・・・ヤダ。自業自得じゃん。」

うぅ・・・それゆわれたら・・・


せやけどこどもじゃないんやからアンタ・・・
こっちも一生懸命折れてんねんから。


「矢口が嫌なら・・・」

「ダメっていってるじゃん!!」

まだなんもゆうてへんがな。

別に圭織にきてってゆおうとしてたなんてことは・・・
ないとはいえへんけど。

圭織も黙ってやれやれって肩をすくめてる。

463 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月05日(土)23時45分30秒

「やぐちぃ?」

「わかったの。矢口はもうわかったんだよ。」

・・・・・・

「だからヤなんだよぉ。」

・・・・・・


「あのさ矢口?とりあえず今日は素直に裕ちゃんと帰りなよ。
 裕ちゃん家でちゃんと話ししたほうがいい。」

矢口も圭織も真剣な顔して・・・
裕ちゃんさっぱりわからんわ・・・・・・てウソ。

アタシもそこまで鈍感ちゃうしな。
なんとなくわかる。
ただはずれるのが怖くて。

はぁ〜
期待させんなよぉ・・・




おわり



464 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月05日(土)23時49分18秒
はい更新終わりです。
465 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月05日(土)23時50分00秒
こんななってしまいました。
466 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月05日(土)23時50分50秒
ではまた来週末に。
467 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月06日(日)01時30分59秒
ついに矢口さん・・・!!
やっぱり好きだな〜、凹凸コンビ(笑)
来週末がすごい楽しみでしかたないです。
468 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2003年04月06日(日)06時28分28秒
なんかこの3人の絡みいいなぁ・・・。
469 名前:マコト 投稿日:2003年04月08日(火)02時05分27秒
これから矢口さんと中澤さんどうなるんでしょう・・・?
凹凸コンビ、自分も好きっす!!
470 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時38分27秒
更新します。
471 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時40分22秒


風呂から上がってくると部屋の隅っこに体育座り状態の矢口。


ぅ・・・あぁ〜もぉ・・・かわいらしいがな。

怒ってるくせに素直に先にお風呂入るし。
首からプーさんのタオル下がってるし。
湯上りホカホカ状態やし。


で?
なんでそんなとこにおんねん。


「なにしてんの?」

・・・・・・

無視?無視かぁ?


「うぉ〜い・・・そこのお嬢・・・反応せんかい。」

っ・・・・・・ギッて睨まれた。

うぅ視線がいたぁい。
怖いってぇ・・・

矢口の目が少しずつその厳しさをなくしていって
かわりにこぼれそうに溢れてくる涙。

うわっ!うわわっ!!
なんでなんで?!

あわてて近寄って抱っこしようと腕を伸ばすとペシッとはたかれた。

472 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時43分16秒

「・・・なんでやねん。」

なにがそんなに気に入らんねん。
あぁもぉ・・・やめて泣かんといて・・・



嫌がって低い唸り声をあげて腕の中でジタバタ暴れる矢口を
これでもかってゆうほど強く抱きしめる。

暴れたって離さへんで。離したらへん。



しばらくして矢口の抵抗がなくなる。


「バカ!アホ!鈍感!!不感症!!」

今度は言葉の攻撃かいな。
ちゅうか不感症てなんやねん?

アタシはちゃんと気付いてんで?
ときどき矢口がアタシにチュウしてること。
どうゆうつもりか知らんかったけど。


こんなふうにでっかい声で人のこと責めてくる矢口が
かわいらしぃてしゃあない。

もういいやんな?
アタシの思い上がりちゃうやんな?
欲張ったからって消えたりせんよな?

473 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時44分19秒

「矢口?」

「なんだよぉ!!」

抵抗できんようにギュッと壁に押さえつけるようにしてから
不機嫌そうにしかめられた目を覗き込む。

「な・・・に?」

「誰が鈍感やて?」

チュッ

おでこにキスする。


「ん?ゆうてみぃや。誰が鈍感なんや?」

「・・・え?だって・・・」

なんや?
ホケッと口あけて固まってる。


「どしたん?」


手を離したらさっきまでの抵抗がウソみたいに
自分から距離を詰めてくる。


「・・・気付いてるの?」

うぅ・・・そんな目で見上げんといて。


「ねぇダメ?」

なんやほんまに。
どっちが鈍感やねん。

でも・・・

474 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時45分02秒


「アカン。」

アタシは人と共有できるほど心広くないもん。


「・・・どうして?じゃどうして・・・しってるよ矢口・・・」

矢口の手がアタシのアゴを触る。

ん?なんや?


「え・・・っ・・・」

ふいをつかれて簡単に侵入を許してしまう。

首にまわる腕。
柔らかな舌の感触。

人のもんのはずや。
アタシのものになるはずのない矢口。

違ったっけ?
じゃあ・・・なんやこれ?

えっと?


475 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時46分01秒

ギュッと押し戻すと矢口はうつむいてしまう。

「いつも・・・起きてたんだよ?」

え?
ほなバレてるんや。
アタシの気持ちも・・・聞こえてた?


「なのになんだよ・・・なんで他の人とするのさ・・・
 となりに寝てくれる人なら誰でもいいのかよ?」

ボコボコ肩の辺りを殴ってくる。
イタいって・・・


「だからゆうてるやん・・・あの人とはあれが最後やって。
 別に誰でもええってゆうてないやん。」


顔を上げた矢口にキッと睨まれる。

「・・・信用できない。今日だって圭織にくっついてたし・・・」

うっ・・・


476 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時46分47秒

ってなんやこの会話。
さっきからなんでアタシが責められてんねんな?
付き合ってもないのになんで痴話ゲンカしてんねんな?



「そんなんゆうて矢口は・・・」

「別れた。」


は?
今日デートやって・・・・・・え?

ちゅうかなんでそんなブーたれた顔してんねん。


「別れてきたよ?だって裕ちゃん1人にしとくと・・・」

「だからちゃうってゆうてるやん!」

「じゃあなんでさ!ヤダもん!裕ちゃんは矢口のだよ!!」


!!!

477 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時47分27秒

「・・・・・・矢口?」


「なに?」


・・・しまったって顔をしてるくせに
強気な姿勢はあえて崩そうとせえへんねやな。


「アタシは矢口の?」

怒った顔のままコクンとうなずく。


そうなん?

え?
まってまって・・・てゆうことはなに・・・


「矢口・・・アタシの?」

微妙に赤くなりながらもう一度コクンとうなずく。


「アタシの?アタシだけの?」

いいの?
いいのか?

「しつこ〜い!!」

ゴツッ

いたたっ・・・なんで頭突きやねん。


アタシのや。
アタシの矢口や。

ちっこい身体をギュウって抱きしめる。

478 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時48分37秒

「アホかアンタ!なんでもっとはようゆわへんの。」

「なんだよぉ。矢口のせいかよぉ。」

「当たり前やろ?人のもんに手ぇ出せるかいな。」

・・・・・・

なんの沈黙やの?

腕を緩めて矢口の顔を覗き込む。


「・・・そんなことだと思わなかった。」

はぁ?

罰の悪そうな顔をしてる。


「そんなこと気にしない人だと思ってたの。」

「なんで?」

そこがわからんねん。
矢口の中でのアタシはどんなヤツやねん?


479 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時49分28秒

「だって初めて泊まったときからいっしょに寝ようって・・・
 そういうことに慣れてるのかなぁって思うじゃん。」


そんなはじめのところからつまずいてるんかいアタシ。
でも・・・

「抱っこして寝てただけやん。」

「うん。でもそれが居心地よくって・・・・・・」


目を逸らしてアタシの肩をぽんぽんって叩くその顔は赤い。

勝手にはまってくれたわけや?
むぅ・・・しかし一回そう見えたらもう印象変わらんのか?


視線が戻ってくるんかと思ったらそのままうつむいてしまう。


「あんなことされたら・・・誰でも勘違いするじゃん。」

ん?
あんなことって・・・・・・チュウか?


「なのにさぁ・・・前付き合ってた人とも・・・・・・」


・・・どんだけひどいヤツやねんアタシ。


「矢口・・・ヤダよそんな人。」


うん。アタシもそんな人いや。

ってアタシ?!

480 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時50分01秒

あわてて顔を覗き込むと身体ごと向こうむいてしまう。

え?なんで?


「だったはずなんだけど・・・・・・なんか違うみたい。」


はぁ〜

でっかいため息やな?


「そりゃ・・・仕方ないよね。」

あ?
なに勝手に1人で納得してんねんな?


向こうむいてる矢口を抱きしめて肩にアゴをおく。


「なぁ・・・またいっしょに寝よ?」

「・・・いいよ。1人にしとくと他の誰かと・・・」

「あのなぁ・・・」

481 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時50分35秒

腕の中で矢口がごそごそ向きをかえて下から見上げてくる。

「だってそうじゃん。裕ちゃん1人で寝るのヤなんでしょ?」


え?
・・・そんなことないはずなんやけど?

アタシずっと1人暮らしやし。
1人でいても平気なほうやったはずやで?


でも・・・確かにおかしかった。
アタシ自身あの人とは終わったつもりやったから。


じゃなんで?

部屋の中が静かになるのが嫌やったからか?

いつの間にか苦手になってた人がいいひんなった直後の静けさ。
はじめっから1人やと割と大丈夫やのに。

前は平気やった。


・・・いつから?


「ねぇ・・・もう大丈夫だよ?」

下からギュッと抱きしめられる。
で存在を誇示するかのようにほっぺたでスリスリ。

「矢口は裕ちゃんを1人にしない。」


その言葉は胸にストンと落ちてきた。
パズルのピースみたいに。

482 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時51分13秒

「・・・ほんまに?」

かってに転がりでた言葉。


あれ?
もしかしてそうやったんか?

さみしかったん?


「なんだよぉ〜矢口を信じなさい!」

「・・・うん。」

「よしよし。わかればよろしい。」

ちっちゃい手で頭をぽんぽんってしてくる。

なんやそれ?
偉そうに。

まぁええかぁ・・・かわいいし。


さすがアタシの矢口なだけはある。


483 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時52分07秒

ふいに涙がこみ上げてきた。

ヤバイと思ったときにはもう遅くて・・・

「なに?どうしたの?」

「・・・っ・・・わからん・・・」


なんかわからんけど悲しくて悲しくて・・・
自分でどうしようもなくて・・・


矢口が背中をなでてくれる。


「どっか痛いの?」


痛い?
・・・そうかも。

胸の奥がギュウって痛い。


指の隙間から砂が滑り落ちていく感覚。
手の中の砂がなくなれば悲しいとゆう気持ちさえ失ってしまう。

そんな気がする。
だから悲しいうちに泣いとかなアカンような気がした。


今日失ったなにかのために。

それくらいしかしてあげられへん。


けっきょくその日はいつもと違って
矢口に抱っこされて泣きつかれて寝てしまった。




おわり

484 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時54分00秒
はい更新終わりです。

もうすぐココがいっぱいになりそうなんで次は新しいとこで。
この話しももうすぐ終わりです。
485 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時55分08秒
話が終わればまたちょっと休みます。
すぐ帰ってきますがね。
486 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月12日(土)23時56分25秒
ではまた来週末に。
487 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月13日(日)01時00分00秒
裕ちゃん、おもいっきり勘違いされてたんですね(苦笑)
なんか、やっと気持ちが通じ合ったかんじで良かったです。
来週末、楽しみに待ってます。

488 名前:マコト 投稿日:2003年04月13日(日)04時36分05秒
やっと二人が結ばれましたねぇ。
これから甘くなっていくことを願います!
489 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時21分40秒
更新します。
490 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時22分35秒

うぅしまった・・・目ぇはれた。


「ほらっ。」

「あぁありがとう。」

でろーんとソファにねっころがったまま受け取る。

・・・なんも聞かんの?
まぁ聞かれても答えられへんけど。

腫れぼったい目にひんやり冷たいタオル。


「気持ちい?」

「うん。」


矢口がソファの横に座り込む気配。


「ねぇもう大丈夫なの?」

「うん。たぶん。」

手の中にあった砂は落ちきってしまったみたいやからな。

491 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時24分06秒
うわぁしまった!!
新しいところ立てるつもりやったんや。
492 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時24分42秒
ってことで仕切りなおしさせてください。
493 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時25分47秒
続きは「たぶんきっと」です。
ではそちらでお会いしましょう。
494 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/18(火) 21:05
休むと宣言しといてなんなんですが
風邪引きで休んだもんで久々に短編っぽいのをこっそり。

では更新します。
495 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/18(火) 21:05

―大人の女―<矢口>
496 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/18(火) 21:06

『どうして女の人はいい匂いがするのですか?』

確かに大人の女の人はいい匂いがする。

ボディソープ?
シャンプー?

どれもあたり。
でもそれだけじゃないでしょ?
だって同じもの使った矢口と匂いが違うのおかしいじゃん。


「なにしてんの?」


あっ・・・

「なんでもない。」

「なんでもないことないやろ?
 はなちゃんみたいやで?」

497 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/18(火) 21:06

「うぅ・・・うるせぇぞ。裕子のくせに。」


ギュッ

背中から抱きついてみた裕ちゃんの身体は
お風呂上りでいつもより温かい。


アタシはのび太くんかってぶつくさいいながらもわらってる。


「裕子のバーカ。」

「はいはい。」

軽く受け流されるから悔しい。
もっとドキドキしてくれたらいいのに。


密着した分だけ自分と違う匂いを近くに感じてしまって・・・

こっちがドキドキしてどうすんだよぉ。


498 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/18(火) 21:07

「なぁどうしたん?今日おかしいで?」

「別に。」

なんでもないように答えてそっと肩にあごを置く。
わざとむすっとした顔までつくって。

いえるわけないじゃんか。



!!

すりよせられたほっぺ。

「機嫌直して?な?」


・・・なにすんだよぉ。
だいたいなんで裕ちゃん矢口の機嫌とるの?

もぉ・・・嫌だなぁ。
自分の子供っぽさが改めて突きつけられる。

499 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/18(火) 21:08

「機嫌なんか悪くないもん。」

はぁ〜またやっちゃったよ。

・・・・・・


頭をぽふぽふされる。

くそぉ〜


その手にぐりぐり頭を押し付ける。

「んっふっふ。かわいいなぁ矢口。」


うぅ・・・早く大人の女になりたいなぁ。

ドキドキさせてやるんだ。
矢口がドキドキしてるみたいに。

待ってろ裕子!




おわり

500 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/18(火) 21:11
はい更新終了です。

こっちが残ってるもんでちょっとずつでも埋めようかと思います。
501 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/18(火) 21:18
この前のハロモニについて少し。

小川さんがキモがられてましたが平気だといってた人。
もちろん矢口さんと安倍さんですが、たぶん慣れているのではと。
中澤さんもかまって欲しいとき似た動きじゃないですかね?

「アホォだよ。」「寂しいんだよねぇ。」
これらの言葉にそれぞれの反応が見えたりしてわらえた。
502 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/18(火) 21:24
まぁすべて推測です。
見る人によってはかわいく見えるとゆうことで。

またぽこっと短い話ができたらここにあげます。
次回はいつかはわかりませんので期待せず待っててください。
ではでは。
503 名前:211 ◆.IqEwJes 投稿日:2003/11/24(月) 22:08
>>321
同意

ところではなし変わるけど、携帯ゲーム機"プレイステーションポータブル(PSP)

 久夛良木氏は,“PSPはゲーム業界が待ち望んだ究極の携帯機”として説明。「ここまでやるかと言われるスペックを投入した」という。
 発表によれば「PSP」は,曲面描画エンジン機能を有し,3Dグラフィックでゲームが楽しめる。
7.1chによるサラウンド,E3での発表以来,クリエイターたちにリクエストが高かった無線LANも搭載(802.11)。
MPEG-4(ACV)による美しい動画も楽しめるという。これによりゲーム以外の映画などでのニーズも期待する。
 外部端子で将来,GPSやデジタルチューナーにも接続したいとする。
また,久夛良木氏は,繰り返し「コピープロテクトがしっかりしていること」と力説。会場に集まった開発者たちにアピールしていた。
 さらに,ボタン設定なども明らかにされ,PS同様「○△□×」ボタン,R1・L1,アナログスティックが採用される。

この際、スク・エニもGBAからPSPに乗り換えたらどうでしょう。スク・エニの場合、PSPの方が実力を出しやすいような気がするんですが。
任天堂が携帯ゲーム機で圧倒的なシェアをもってるなら、スク・エニがそれを崩してみるのもおもしろいですし。かつて、PS人気の引き金となったFF7のように。

いきなりこんなこと言い出してスマソ・・・
GBAと比べてみてどうなんでしょうか?(シェア以外で)
504 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/17(水) 00:37
更新されてるの気づかなかった‥‥
長編も好きですが、こういう短い短編もいいですね。
矢口さんは十分大人だと思うけど、中澤さんと一緒だと子供っぽくなってて
二人の間に信頼・安心感があるからなんだなーとか思ったりして。
505 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/15(木) 00:42
みっけ(w
まさか更新されてるとは(w
ちぃさんの作品全部好きですが・・・人間同士のやぐちゅーも久々にいいですね(w
506 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/19(月) 00:59
更新します。
507 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/19(月) 00:59

―旅立ち―<飯田>

508 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/19(月) 01:00

いなくなっちゃう。
なっちものんちゃんもあいぼんも。

これから誰が圭織の樹に水をくれるの?

ねぇ枯れちゃうよ。

509 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/19(月) 01:00

「かぁおり!また交信?」

「・・・なによぉ悪い?」

交信くらいいいでしょ?
なっちなんか・・・いなくなっちゃうくせに。
そんなふうにわらわないでよ。



「泣いてよ。」

え?


あんまり温かい笑顔だからちゃんと理解できなかった。
なっちのいった言葉が。


「寂しいって泣いて?泣いてる圭織みせてよ。」


・・・・・・

そういうところすごくなっちだね。
他の子にはすごくやさしいのに圭織にはいつだってガチンコ。

510 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/19(月) 01:01

「なっちのために泣くの。」


ほらこうやっておっきな傷をつけるの。
でもそれはなっちの弱さ。わがまま。

もちろん圭織だって弱い。

だから・・・


「やぁだ。のんちゃんとあいぼんがいなくなるから泣くの。」


べぇ〜だ。


「むぅなんだべさ。絶対泣くくせに。ボロボロボロボロ・・・」


思わずわらってしまう。


511 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/19(月) 01:02

そうだよ。
こうやって強くなってきたんだ。


「なっちはね・・・がんばるよ。」

「圭織だってがんばるもん。」

「なっちはね・・・太陽になるんだべ。」


それこそ太陽みたいに明るくわらう。

だからうまく言葉を返せなかった。
なのになっちは追い討ちをかけるんだ。


「大きな樹が立派に育つようにね。」


気がついたら視界が歪んでた。
あとからあとからあふれてくるから・・・


ちょっと悔しかった。

またなっちに負けちゃったね。




おわり


512 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/19(月) 01:09
こっそり更新です。

見つけた人だけのお楽しみとゆうことで。ね?
そういえばレスを付けにくいとの声がありましたが
自分が意図的にそうしてしまってるのかなぁと。

はしゃいだ感じのレスが苦手だとゆうこともありまして・・・
あぁでもネタバレせずに落ち着いたコメントって難しいですよね。
513 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/19(月) 01:16
雰囲気を壊さないようにと考えてくれてはることはありがたいです。
大丈夫ですよ?自分は自家発電なんでレスなしでも平気です。

こっちは短編を単発で載せるつもりなんで
今度いつになるかわかりませんがまたいつか。
514 名前:名無し 投稿日:2004/01/20(火) 23:32
卒業ネタっすか・・・・ちょっと切なかったです。
来週、ゲストで安倍さん来ますねぇ。どうなるんだろ、と思いつつ。

>自家発電なんで
ほんとすいません。向こう、レスつけてないんですが。
頑張って下さい、楽しみに待ってます。
515 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 22:14
もう一個卒業ネタいきます。
516 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 22:15

―旅立ち―<安倍>

517 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 22:15

視線の先に目をぐしぐしこすってるやぐち。

「だめだよ?腫れちゃうって。」

「ん゛うぅ・・・」

それでもやめないからギュッと手を押さえる。

真っ赤に充血した目。
今日のオオカミさんはウサギさんらしい。
さみしいと死んじゃう?

たぶんなにをしても無駄なんだよ。
もうね時間は止まらないの。

それをしってるからやぐちは何もいわない。
嗚咽の合間にウサギさんの目でじぃっとなっちをみるだけ。


心がイタいね。

518 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 22:16

圭織とは戦友。

胸張ってちょっくら行ってくるよって。
後は頼んだよって。


じゃなっち達よりちょっとだけ遅れて娘。になったやぐちは?
どうしてこんな気持ちになるの?


ギュッ

ごめんね?
置いてっちゃってごめんね?
1人にしちゃってごめんね?

そう思ったらノドの奥がキュッて痛くなって・・・

「もぉ・・・泣かないでよぉ・・・なっちだって・・・」


バカ!なっちだって我慢してたんだよ?
このバカやぐち!!


519 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 22:16


グイッ

え?


「んっとに・・・この小動物コンビはわかってないね。」

顔を上げると思ったより近い距離で
さっきなっちが泣かした圭織がわらってた。
正面にはビックリして口がぽかんと開いてるやぐち。


「矢口と圭織は最強なの。」


なに?

「だって圭織1人じゃ負けちゃうけど矢口がいたら圭織の勝ちだもん。」

いや説明になってないし。


「・・・それって圭織の勝ちじゃなくて矢口の勝ちじゃん。」

やぐちのツッコミはもっともだと思う。

520 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 22:17

「違うよ。なっちと矢口だけじゃ勝負つかないもん。」

うっ・・・

得意げな圭織にやぐちも苦笑いしてる。


「だから矢口と圭織は最強なの。」


つまり・・・
心配するなってこと?



「んじゃ・・・よろしく。」

「うん。」

満足そうな圭織。

521 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 22:17


「なに?何の話だよ?」

不満そうなやぐち。

2人でぐりぐり頭を撫でる。


「あ〜!もうやめてよぉ!せっかくちゃんとしたのにぃ!!」


ちゃんとわらえてる・・・いつのまにか。

これはやっぱり

圭織の勝ちだね。



おわり

522 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 22:25
はい更新終わりです。

安倍さんって矢口さんのコメントのとき我慢できてませんよね。
辻さんのときもそうでしたけど・・・
それでできた話しです。

辻さんくらいになると年が離れすぎて気持ちとか
もう想像するのが難しいもんで今回の話しは矢口さんのみで。
ではまたいつか。
523 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:25
更新します。
524 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:25

―朧―<矢口>

525 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:26

うぅ〜って唸りながら横むいてひざを抱えて寝転がってた。
身体が熱くてお腹が痛くて記憶が飛びとびで・・・


名前を呼ばれた気がして目を開けた。


あ・・・

じわって涙が出た。


くしゃくしゃの髪を指でとかしてくれる。
撫でるようなその指の動き。


「・・・痛いよぉ。」

なんで?どうしてオイラだけ?

布団の中に入ってきた手がお腹に触れる。
不思議なもので痛みが少しだけ和らぐ。


526 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:26


「しってる?人の手には力があるらしいで。
 むかしはこうやって病気を治したから手当てってゆうんやって。」

それで治らなかったらどうするんだろう?

思ったことが顔に出たらしい。

あいまいな笑顔でごまかされた。

あ・・・そうか。
死んじゃうんだ。

よかった。
いまで。

クスクスわらわれた。

きっとまた顔に出たんだ。


痛みが遮ってた眠気。
お腹に触れた手に呼びおこされる。

「いいよ。いっぱい寝て身体にも休みあげや。」

その言葉を聞き終わる前に瞼が落ちてきた。

527 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:27

で次に目が覚めたら誰もいなかった。

なんだよぉって思ったけど身体が少し楽になってて頭もスッキリ。
けっこう長い時間寝てたんだって気付いた。

でも考えてみるとおかしいんだ。
完全看護だから時間外の見舞いは基本的にダメ。

夢・・・だったのかな?

だったらすごいね。
あんなに細かいところまで覚えてる。

それともほんとに来たの?
あんな時間に?



聞いたらわかるんだよたぶん。

どうやって聞く?

『もしかして夜に見舞いにきてくれた?』って?

もし夢だったら・・・絶対調子乗るじゃん。
なんやぁそんなに会いたかったん?とかって。

ヤダなぁそれ。


もういいやあのときのことが夢でも現実でも。
お腹に触れた手の感触を覚えてる。

それでいい。


早く治さなくちゃね。
もうちょっと寝よっかな。





おわり

528 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:29
はい更新終わりです。

今回の入院のことに触れてみました。

感染性腸炎だそうで。
矢口さんの場合は過度のストレスによって免疫力が低下したところ
便秘かなんかで増加した腸内の悪玉菌にやられたと見るのが妥当です。
便秘の原因にもストレスはかかわってきます。
緊張状態の身体はふつう消化器官の働きをおさえていますからね。
リラックスした状態に戻らないと食べた物の消化吸収だけじゃなく
いらない物を外に出すこともで難しくなるんですよ。
女の腸は男の腸よりも長い傾向にありますし女の人のほうが心配ですな。

人事ではありませんよ?
もともと身体の中にいる菌でも抵抗する力を失うと大変なことに。

気をつけましょう。

529 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/22(月) 23:19
なっち卒業とか色々ありましたからね。
矢口さんは全部自分で背負い込むタイプですし、
無理せずしっかり身体を休めて欲しいです。
530 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/24(水) 23:45
追記
本当の矢口さんは入院中もお母さんと一緒だったみたいですね。
ほんまに1人暮らしできなさそうな人やな。

完全にとは行かないまでも元気にしてはるそうで一安心です。
531 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:36
更新します。
532 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:36

Stable Triangle

533 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:37


「ありがとうございましたぁ〜!!」


カランカランッ



ふぅ〜今日もそろそろ終わりだね。


「裕ちゃん裏返しとく?」

誰かさんに聞かれないようにこっそりと。



「あ〜お願い。」

こっそり返ってくる答え。

顔を見合わせてニシシッ。


カランッ

よいしょ。

ガチャ

鍵も閉めて。

よ〜し。これでもうジャマはされない。

裕ちゃんが抜け駆けしないように急いで戻る。

534 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:37

「なんだべさ!」

あ!
くそぉ裕子のヤツ!


厨房に入ると片付けの途中で捕らわれの身になってるなっち。

ジタバタジタバタ手足を動かして・・・


「やだぁ〜離してよぉ!」

あっこれオイラにはできない。

ギッと睨んで裕ちゃんを牽制しながら
ふ〜んってイヤイヤするかわいいなっちを堪能する。

裕ちゃんがはっと気付いてぱっと手を離す。


「ズルいで!」

「なんだよぉ裕ちゃんが先にズルしたんじゃん!!」


ダン!!

振り返ると流しに打ちつけた拳をプルプルさせてるなっち。

ちょっと痛かったんじゃないの?
目に涙うかんでるよ。


「いいかげんにしなさい!片付け終わるまであっち行ってて!!」


535 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:38

自分たちの持ち場を軽く片付けて
2人してブーたれた顔。

大人しく2階でなっちの帰りを待つ。


・・・・・・


「裕ちゃんのせいだよ。」

「いやいやあれは矢口のフォローがなかったからやで。」

「オイラのせいかよ!」

「そやろ?ちゃうん?2対1やねんしなんか持っていきかたあるやん。」

「はぁ?そんなの打ち合わせなしじゃ難しいってぇ!」

「はん。アドリブのきかんやっちゃなぁ。」


言い合いしてるうちに近づくからなぜか沈黙。


むぅぅ・・・


536 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:39

チュッ

ついでにヒザに上がりこむ。


「ごめん。」

「オイラもごめん。」


ギュ〜ってしながら反省会。

537 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:39

カチャッ


「うあっうあっ!なにしてるべさ!」


ん?

ほっぺがピンク色。
アタフタして手で視界を遮ってる。


「なに想像してんねんな。」

「なっちや〜らすぃ〜!」

「うっ・・・そっちこそなんだべ?さっきまでケンカしてたくせに!」


あっまた怒ってる。


裕ちゃんに頭をナデナデされる。

「せっかく仲直りしたのになんで怒んねんな。なぁ?」

「そうだよ。」

裕ちゃんの手に頭をぐりぐり押し付ける。

538 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:40

あれ?
いまムッとした?

プンッてしてなっちがキッチンに行ってしまう。


「「なんで?」」

追いすがるハーモニー。

べたっとキッチンのドアに張り付く。


ガチャ

無常な鍵の音。


なっちのこだわりのプライベート用の要塞。
へたに入るととっても危険だ。


ダンッダンッ

中から聞こえるストレス発散気味の調理音。

「・・・こえぇ〜」

「なんであんな怒るんや?」

539 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:40

ドアにもたれてもう一回反省会。

「なんか悪いことしたかなぁ?」

「うぅ〜思いつかんけどなんかしたんやろな。」


ドア越しに聞こえる音はトゲトゲしさをなくし
軽やかな音に楽しそうなハナウタも。


「もう忘れてるね。」

「あぁたぶん。」

「かわいいよねぇなっち。」

「なんちゅうかあれで自分のこと普通に大人やと思ってるしな。」

「子供だよ子供。なんでもなっちが一番じゃないとヤなんだもん。」

「あ〜そっか。それやな。」

ん?

540 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:41

「なにが?」

横からギュッて抱っこ。


「気にくわんねやろ。仲良すぎると。」


えぇ〜なんだよそれ?


「ケンカしてたら怒るくせに?」

「うん。」


どんなワガママなんだよなっちは。


「しょうがないよねぇ〜好きだもん。」

裕ちゃんの肩にほっぺをスリスリ。


「裕ちゃんも矢口好き。」

えへへ。

541 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:41

「でもかわいいねぇなっち。」

「あれはお姫様気質やな。」

「ん〜女王様気質じゃなくって?」

「はははっ!あんな丸こい女王様おらんやろ?」

「なんでぇ?かわいいじゃん。
 オイラすすんで女王様!!って呼んじゃうよ。」

「女王様とおよ・・・女王様!!って?」

「そうそう。」



ガチャ

あっ鍵開いた!なっち!!

裕ちゃんがドアを開ける。


542 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:42

「ごはんできたよぉ〜持ってくの手伝って?」

すっかりご機嫌になってる
そんななっちに口元がゆるんでしまう。


「うあっ・・・こんないっぱい作ったん?」

「あ〜ちょっと多かったかな?」


っておい!
確実に作りすぎだろ?

「まかないも食べたのにこんなに食べるの?」


オイラたちを太らせてどうしようってんだまったく。

運ぶついでにタッパーも一緒に持っていく。
これだけあれば明日まかない作らずにすみそう。


「これって先詰めたらいい話しちゃうの?」

ごもっともな意見。
それオイラも思った。


「ヤダ!盛り付けにだってこだわりがあるんだからぁ!」

変なとこでプロ意識発揮するんだよね。


・・・そんなとこも好きだよ。

543 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:43


「「いっただっきまぁ〜す!!」」

「はいどうぞ。」

なっちお母さんみたいだよ。

んでまたこれがうまい!
あんま好きじゃないんだけどねぇ野菜とか。

でもねなっちが作ったのは裕ちゃんと取り合い。

裕ちゃんだってほっとくとなにも食べないで
ビールのみなんてことだってありえるのに。

「矢口っご飯粒。」

ん?

ヒジをクイッと引っ張られて・・・ほっぺをかすめる唇。


なになに?
大胆だねぇ。

チラッとみると裕ちゃんがぼぉ〜っこっちをみてる。

544 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:43

うらやましいだろぉってわらってやるとビールをあおってる。

なっちがグイッと肩を組んでくる。


「うらやましいっしょ?」

「ん〜べつに。」


あっ手酌だ手酌。

「なんだよ裕子。妬いてくれないの?」

グラスにビールをたっぷたぷについでニヤニヤ。

「そうやってると2人ともめっちゃかわいい。」


う・・・なんかほっぺあつい。

あっ!
なっちもまっかっか。

そろそろと離れてもそもそとご飯を食べ始める。


545 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:44

くっそぉ・・・なんか悔しい。

「裕ちゃん飲みすぎ!」

「いいやんお仕事終わりやもん。」

「ダメ!接客中だって飲んでるべ?」

おっいいぞなっち。

「勝手におごってくれるんやもん飲まな悪いやん。」

「なんだそれぇオイラにおごってくれようとする人に勝手に断るクセに!」

「だって矢口酔っ払ったら仕事にならへんやん。」

うっ・・・それは・・・



「ズルいなぁ・・・なっちなんて・・・」

「なっちはダメ!」「なっちはアカン!」

あれは人にみせちゃダメ!!ぜぇったいダメ!!!


546 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:45

「なんだべ。なっちだってお客さんにおごってもらってもいいべ?」

そんな拗ねた顔してもダメだよ。


「あれは門外不出やって。」

「そうだよ。一子相伝級の必殺技だって。」

「なんだそれ。裕ちゃんと矢口はみてるくせに。」


う・・・だからみせたくないんだってば。


「裕ちゃんはなっち免許皆伝やしええねん。」

「オイラも。」

なっちのほっぺがプクッ。


「・・・バカにしてるぅ。いま絶対なっちのことバカにしたぁ!」


うるうる涙目。


こいつぁまずい。


「あ・・・わかった。こんどなっちの好きそうなカクテル作るからさ。
 お得だよ?なっちのためにだけだよ?」

「そやなぁ・・・もう夏のメニュー決まった?
 なんかリクエストあったら食材手配すんで?」


それぞれ精一杯のご機嫌取り。

547 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:45

「それ約束だよ?」

にっこにこのなっち。


・・・なんだこれ?
謀られた?


「さぁ片付けるべ。」

・・・・・・

548 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:46

あまったおかずは冷蔵庫。
食器は流し。

2人並んで台の上。
後ろでタオルを持った裕ちゃんが待機。

オイラがあわあわにしてなっちに渡すと
なっちがキレイに流して裕ちゃんに。

みんなでやれば早く済むしなによりも一緒にいられる。


「はい終わりぃ〜!オイラきょうシャワー一番だよ?」

「そやっけ?」

「はいはいっ!2番目なっち!」


びっと手を上げるなっち。


「アタシ最後かぁ〜はよしてな。」

「「はぁ〜い!」」

549 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:46

ふとみた窓の外は薄明るくなってる。
すっかり夜行性だなぁ。

仕事に向かう人達が動き始めるころ一緒に眠りにつく。

でもなんか・・・
楽しいよ。




おわり

550 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:49
はい更新終了です。

こんなとこあったら通いつめますよ。
手土産もって。

思いつきです。
そういえば3人がっつり一緒の話しって書いてないなぁって。
ちなみに続きはありません。
551 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/13(火) 21:58
ではまたいつか。
552 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:11
向こうで忙しいってゆうたばっかりなんですがなんか我慢できんので短編を。
精神安定剤なもんで書かないとイライラするんですよねぇ。
待ってくれてはるヒトがいるとうれしくもあり申し訳なくもあり。
てなわけで短編ならいいやんって自分にいいわけして・・・

更新します。
553 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:12

―大切な時間―<矢口>
554 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:12

目の前にペッコリへこんでるヒト。
頭抱えてうんうん唸ってるけど大丈夫?

「どしたの?」

「うぅ・・・やだ・・・カオ泥棒さんになりたくない・・・」


はぁ?
泥棒さん?


「だって・・・始まりでしょ?」

まって!
話しが見えてこないから。

助けてよぉなっちぃ・・・オイラにゃ難しいってば。

555 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:13

でも期待を込めた視線がオイラのちっこい背中をプスプス。

あぅ・・・


「わかったよぉ・・・ここはオイラが・・・」

「じゃ美貴はよっちゃんと梨華ちゃんのフォローにまわりますから・・・」


振り返り交わす会話にお互い苦笑する。


「うん。よろしく。いい子だねぇミキティ。」

「もぉほんとに・・・いっぱい褒めてくださいよ?」


背伸びをして頭を撫でる。

「ヨシヨシ。」

「あ・・・ティッシュティッシュ・・・」


鼻をかみながら行ってきますってわらった目が
潤んでたことは突っ込まないでおこう。


556 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:13


で・・・

圭織のほうに振り返るとおっきな目でじぃっとこっちをみてた。


「矢口は・・・キレイに咲ける?」

はぁ?
なんですかさっきから・・・


「咲くってオイラが?」

「そう。」


あぁ・・・もぉ・・・わかんないや。



「そうだねぇ・・・咲くかどうかわかんないけど
 咲くんなら思いきしキレイに咲きたいね。てかキレイに咲いてやる!」

なぜか胸を張って断言。

圭織はわらってた。

「すごいねぇ矢口は。」

褒められた。
いい答えだったの?

「圭織は?」

「あ・・・うん。」


・・・・・・

557 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:14

なんの沈黙?

「だってカオうそついちゃったみたいなもんだし・・・」


はぁ?

いや待てよ・・・あ〜そっか。

ウソ
泥棒さん
始まり


どんな思考回路だよ。

それに・・・

「あれはウソじゃないじゃん。」

一緒にいてくれるつもりだったんでしょ?


肩をペシッとたたく。

「大丈夫。」

だからそんな不安そうな顔しないの。


「そうかな?」

「そうだよ。」


・・・・・・

なんだよまた沈黙?

558 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:15

ふふふっ・・・てなにわらってんのさ?

「とうとう一輪挿しだ。」

ん?


「矢口はキレイな花束つくらなきゃね。」


・・・うん。
はっきりはわかんないけどなにが言いたいうのかはうっすらわかる。


でさぁなんでオイラが圭織元気付けてるのさ。


この場合駄々こねてジタバタしていいのはオイラのほうだろ?

だよね?

559 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:15


「みんなしてヒトを置いていきやがって・・・」

寂しいよ。
寂しいに決まってんじゃん。

ぶわっと涙がこみ上げそうになる。


「咲くからには?」

うっ・・・


「思いきしキレイに咲いてやるぅ!!」

思わず握りこぶし。


もぉ
ズルいよ圭織。



「杉本さんって罪な男だね。裕ちゃんでしょ〜カオでしょ〜あと矢口。」

ね?ってわらう。


「どうすんだよ杉本さんの紹介のセリフもらっても
 周りにヒトがいたらオイラどこにいるかわかんなくなるじゃん?」

ツボッたらしい圭織は机をバンバンたたいてわらってる。

いいんだけどさ。
自分で話をふったんだけどさ。

そこまでわらわれると


「圭織ムカつく!」

げしげし蹴ってみる。

560 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:16


コンコンッ


「「は〜い?」」


カチャッ

覗き込むちっちゃい頭2つ。


「「いい?」」

「いいよ。」


なんとなくわかる。
居づらいんだろうねこの2人も。


「やぐちさぁ〜ん!お菓子もってきました。」

「ほら!」

じゃんって擬音をつけて取り出しながら屈託のない顔でわらう。


だから逆に思うわけさ。
大人になったんだなぁってね。


「矢口ばっかかまってもらってズルい。」

お・・・大人・・・?


そっからわいわいといつもどおりの空気。
でもいまはそれが少し不自然で。

胸がチクチク。


561 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:16

コンコンッ


「は〜い?」


カチャッ

あ・・・梨華ちゃん。
ミキティよっすぃ〜も。


「他の子は?」

「帰しちゃった。」

あそっか。
明日も早いか。


「じゃあうちらも帰る?」

「「えぇ〜!!」」


なんだ辻加護うるさいぞ?

「そうだよ。せっかくこっち来たのにぃ〜もうちょっといいでしょ?まりっぺ。」

「キショ!まりっぺゆうな!」


みんながわらうから一緒になってわらう。
こうして過ごす時間がとても大切に思える。


だから


「もうちょっとだけだよ?」

562 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:17


そう。
もうちょっとだけなんだから。




おわり

563 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:31
はい更新終わりです。
どうしても触れたいことだったので。

本人達は変わり行くものだと割り切るのは難しいでしょうね。
でも自分は毎回おもいます。悪いことではないんちゃう?って。
しんどいと思うよ?けどそれは決して悪いことじゃない。

社会にでて働く年齢のヒトならそれなりの波を乗り越えるべきです。
独りで歩いたり、周りをまとめたりそんな立場を経験することが大切でしょ?
学生さんはどう思うかは知らんけど自分はそれが当たり前だと考えます。
厳しさも優しさの1つだと思いますよ。母性愛じゃなくて父性愛的なね。

居心地のいい場所を自分で抜け出すのは非常に難しいことです。
だからその意味ではつんくさんはいいお父さんだとおもいますよ。

あ・・・急いでプレゼンの準備せな。
ではまたいつか。
564 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:51
そうそう。
ここで5.6期を省いてしまったのは忙しかったからだと思ってください。
彼女達の心中を察するには少しばかり努力が必要になるもんで。
何せ年が離れると想像するのが難しくなるんです。

できなくはないけど今回は頭ん中が他の事でごちゃごちゃで
下手に触るとよくないなぁとおもってやめときました。

言い訳満開です。すいません。
565 名前:つかさ 投稿日:2004/06/07(月) 01:08
>居心地のいい場所を自分で抜け出すのは非常に難しいことです。
>だからその意味ではつんくさんはいいお父さんだとおもいますよ。

学校時代というものを経験できない娘。さんたちにとって居心地のいい場所を抜け出す
辛さが卒業だとしたら、そう言う意味ではつんくさんはいいお父さんだろうな、と思います。

ちぃさんの作品を読むと仲間っつ〜か友達とか当たり前のように側で笑っててくれる
連中を凄く愛しく感じます。
今回のもツボでした。
のんびり待ってます。
566 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/19(土) 16:17
更新します。
567 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/19(土) 16:17

おしごと

568 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/19(土) 16:18

あっまたちっこいのか。

相手も同じことを思ったらしい。
一瞬眉がしかめられた。

ただ一瞬だけ。


しゃあないもんなぁ。
これはアタシらの意思に関わらず起こること。


ちっこい小人さんにささやく。

「やぐち・・・」


「裕ちゃん・・・」

お返しのささやき。

ゆっくり口付けそのまま押し倒す。


「ダメだよっ・・・ここじゃ・・・」

少し焦った声。


ここはどこ?


うぁ!
なに考えとんねん。

569 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/19(土) 16:19

「いいやん別に。」

口から出る言葉。


いいわけないっちゅうねん。
楽屋ちゃうの?


周りにはたくさんの小人さんたちの興味津々の目。


・・・ありゃ本気やね。
自分に組み敷かれたちっこい小人さんの焦り具合も本気。


ごめんな。
アタシが悪いんちゃうねん。


手は勝手にボタンをはずしていく。
たぶん思いっきり楽しげな表情のはず。
口の端っこが意地悪く上がってる感覚があるから。

ヤバイなぁ・・・
またあとでこの子に怒られる。


「しらん人にみられるよりいいやろ?」

ああぁぁ!!
なんやこのセリフ・・・

570 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/19(土) 16:19


「・・・ヤダよぉ・・・裕ちゃん以外にみせたくない。」


いやん。なにそのセリフ。


チュッ

「かわいい子。」


あっいまのなかなかいい。
いいタイミングやね。

ほんまかわいい。


「そのかわいいとこみたいの裕ちゃんは。」


・・・S?

ちっちゃい小人さんのほっぺたは桜色に染まる。

「もぉ・・・バカ・・・」


ギュッと抱きつかれてほっぺたにあたるやわっこいものが心地いい。

571 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/19(土) 16:19

「「ありえねぇ・・・」」

思わず小さくボソッとつぶやく声が重なる。


あ・・・やっぱり?
そう思いながらやってるよな?


「でもダメッ・・・ちっちゃい子もいるんだよ?」


ちいさい子?
ん・・・目を輝かせてこっちを覗き込んでる子には比較的若い子も含まれる。


その目の前でアタシは・・・

「性教育ってヤツ?」

こんなセリフ。


あ・・・本気で睨んでるやろ?
へらへらわらってるであろう自分が申し訳ない。

それどころか・・・止まる気はないのね?

572 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/19(土) 16:20

「んっ・・・ヤッ・・・」

とうとう・・・

ん〜でもあれやね。
こうなってしまうとこっちも楽しくなってくる。

このあと思いっきり怒られるけど。


チラチラ周りの気配を気にしながら
でもアタシの手の動きに少しずつ息を乱していくこの子は・・・いい。

「・・・ぃヤ・・・だって・・・」

「そうか?いつもより敏感やん。」


う・・・なんちゅうことを・・・
怖いよぉ・・・



いつの間にかお馴染みになった行為。
重ね重ねしつこくゆうけどそこに自分たちの意思はない。

「ごめんな?」

その耳にそっとささやいてみる。
それは紛れもない自分の言葉。

「許さない。」

小さなその声もたぶん。

573 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/19(土) 16:21

でもほんとのところこの人悪気はないと思う。
自分の手つきがひどく優しい。

大切な宝物のようにみつめ扱う。
場所は問題やけど。


「矢口のいいとこみんなにみてもらおうな?」

っておい!
問題ありすぎやろうが!!


「ヤダ!そんなのヤダ!!」


あ・・・本気の拒否。

周りの小人さんたちに見せ付けるようにわざと唇を奪い
手であらわになった身体をなでる。

・・・そのとき


574 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/19(土) 16:21

「すいません。もうそろそろです。お願いします。」

大きく響く声。

そこで身体は自由を取り戻す。

身体を起こすと組み敷いてた子の上着の前をかきあわせてやる。
すぐ側にいる小人さんたちもため息をつく。


「あともう少しだったのにぃ〜」

ぼそっとこぼす声が聞こえた。


「なんだとぉ!こっちの身にもなれっつうの!」


キャーキャーいいながら楽しそうに小人さんは散らばっていく。
それぞれのお手伝いの場所へ。


2人だけがポツンと残される。

ゲシッゲシッ

いててっ

575 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/19(土) 16:22

「なんやもぉ・・・」

「バカ!!」

そんなんゆわれても・・・

「ごめん。」

「ヤダ・・・許さない。だいたい謝られるのいちばんヤなんだけど。」


プリプリ怒りながらボタンをとめる手がおぼつかない。


「とめたろか?」

「触んないで!!」

振り払われた手。

そんな嫌いか?
悪いなぁ。そんなヤツに抱かれたないやろ?

576 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/19(土) 16:23

「あの・・・ほんとはわかってるから・・・」

そうか?
ほんまに?


「なんだよその顔。仕方ないよ。
 オイラたちは働く小人さんなんだからさ。」

そうゆうて苦笑を浮かべながら持ち場へ。


そうやなぁ・・・仕方ないよな。

まだましなんかもしれん。

毎日食べ物を粉々に砕いてるだけの小人さんや
身体の隅々まで栄養を配って歩く小人さんに比べたらな。
そう思うから自由なときはみんな手伝いに行く。
アタシは現場待機やけど。

最近この人ちょっと欲求不満やね。
現実やとでけんことを頭ん中でポコポコ想像するから
矢口な小人さんに嫌われたやん。

どうしてくれんねん!



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

577 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/19(土) 16:23


バカバカバカバカバーカ!

そんなイヤイヤオイラに触んじゃねぇよ。
わかってんだよおしごとだもんね。

全部おしごとなんだよね。

ほんとヤダよ・・・ごめんってなんだよ・・・

そんなこといったら全部ウソになるじゃん。
あのささやきもあの行為も。

ヤダよそんなの。
だから絶対許してやらない。




おわり


578 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/19(土) 16:29
はい更新終わりです。

中澤さんの誕生日ですねぇ。めでたい。

むかぁ〜しちっちゃい頃にもってたんです子供向け人体図鑑。
小人さんたちが一生懸命働いてました。

皆さんの頭の中にもいるでしょ?なんてね。

ではまた。
579 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/16(月) 00:12
明日から仕事やだな
580 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/23(木) 22:43
久々の更新します。
581 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/23(木) 22:43

―ツナガッテル―<矢口>
582 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/23(木) 22:44

裕ちゃんがへこんでる。
空元気もだんだん限界に近づいてるんじゃないの?

心配だよ。


オイラもなっちのことは色々考えてるよ。
でもね・・・裕ちゃんのことだって考える。

力なく下げたなっちの頭をペシンとはたいて「アホッ!!」って。
あとでぎゅって抱っこしてボロボロ涙をこぼしてた裕ちゃん。


オイラはしってるから。

裕ちゃんいつだってなっちを心配してたこと。

一緒にモーニングにいたときだって
裕ちゃんが卒業した後だって
なっちがソロになったときだって

ちょっと妬いちゃってたけどなんかわかる。
ほっとけないんだなっちって。


583 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/23(木) 22:45


いいんだけどさ。

オイラとなっちは違うってこともしってるから。


584 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/23(木) 22:45


「おい裕子!」

「ん〜?」

覇気のない返事。

ムカつく。
仕方がないんだけどさぁやっぱムカつくんだよ。

「なんだよ! バ〜カ!
 自分だけが不幸な目にあったみたいな顔すんなよ!!」

ほっぺを両手でグニッと広げてやる。


オイラなんかなっちと裕子両方の心配しなきゃなんないんだぞ?



「い゛たた・・・ちょっ・・・イタイって!!」

のけぞった裕ちゃんにくっついて後ろに転がす。


「なんやのもぉ・・・」


あ・・・今日ずっと一緒にいてやっと目があった。


585 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/23(木) 22:46

・・・・・・


「・・・悪かった。」

「わかったらよろしい。」

裕ちゃんは苦笑い。


その腕がオイラを引き寄せるから首筋に鼻先をうずめる。


「ごめんな。」

「うん。」

裕ちゃんの手が柔らかく背中を撫でていく。
気持ちいいからそのまま目を閉じる。

586 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/23(木) 22:47


「ふふっ・・・目はウサギさんやし鼻はトナカイさんやな。」

「誰のせいだよぉ。」


身体に直接伝わる笑い声。
なにがそんなにうれしいんだか。



「やぐちぃ?」

「なにぃ?」


・・・・・・



「ありがとうな。」



おわり
587 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/23(木) 23:17
はい更新終了です。
こっちはほんとに久しぶりですね。
え〜と安倍さんの件について色々考えたんですが
文章にするとなんか納得できなくてしばらくもやもやしてました。

自分は、自分で自分好みのものを作りあげるのが楽しいわけで。
それが他人発の感情や言葉だと意味がないと思うんですよ。
ここみたいに仕事でなく遊びで同人的な小説を書くにあたってもね。

だから意味がわからへんのですよね。ほんまにわからん。
正直、早く帰ってきて笑顔をみせて欲しいとかいいにくい。

嫌いになったわけではないんですけどね。
588 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/23(木) 23:24
当の本人が納得いくまでへこんでへこんで考えて考えて
歩く道を決めはったらいいと思います。

どうせ辛いんなら好きなことするべきですしね。

誤解を招きかねない文章ですが
批判的な気持ちで書いたわけではないです。
あしからず。
589 名前:つかさ 投稿日:2004/12/24(金) 00:50
自分は物書きで、他の作品読んで作品のインスピレーション沸いたり、とかあるんで。
最初聞いた時は「?」で。
ただあそこまでそっくりだと逆に苦笑いしてしまいましたが。

何でなっちがそんなことしたんか自分もわかないし。
なっち自身もわかってなかったのかもしれない。

ただ、自分は。
なっちには早く戻ってきて欲しい、と思いますね。
そして。
なっち自身の言葉で説明して欲しい。
謝罪が欲しいわけじゃないから。
謹慎で全てを流す気にはなれないから。

・・・・・批判したいわけじゃないけど文章で表現するのはやっぱ難しいっす(苦笑)

ちぃさんの話読んでほのぼのできました。
やっぱちぃさんの書くやぐちゅー、大好きです。
590 名前:ちぃ 投稿日:2005/01/17(月) 23:54
更新します。
591 名前:ちぃ 投稿日:2005/01/17(月) 23:54

―旅行社の社員さん―<中澤>
592 名前:ちぃ 投稿日:2005/01/17(月) 23:55

あぁ〜ムカつく。
なんでやねん。

なんで矢口ごっちんのほう行くねんな。


せっかく・・・せっかくおいしいもん一緒に食べれんのにぃ。


「裕ちゃん?」

「なんや?」

どないしてんな圭織。


「顔ヤバイよ。」

ぬぁ?

視線を向けるとみんな微妙に強張ってる。

593 名前:ちぃ 投稿日:2005/01/17(月) 23:55


「あぁごめん。なんでもないから。」

どんな顔してたんやろとか思いながら自分のほっぺたを撫でていると
圭織によしよしって頭を撫でられる。

石川が苦笑してる。


「なッ・・・なんやねん。そんなかわいそうな子みるような目でみんといてぇ。」


裕ちゃんはかわいそうな子ぉやないで!
チャーミーのクセに生意気な。

ビビンバ好きやのになぁとか
大人の女になるんやったら和な物もいいのにとか

ちょこっと思っただけやん。

・・・うぅ

あほぉ。
矢口のアホォ。


594 名前:ちぃ 投稿日:2005/01/17(月) 23:56


「中澤さぁ〜ん。お腹すきましたよぉ。」

ん〜そうかそうか。
小川のまこっちゃんは腹ペコか。
えへへってわらいかけてくるキャメイさんもね。

ラブリーは・・・満足げに。

相変わらずマイペースやね。
アタシももうそろそろデザートかなって気分やけどさ。



ん〜確かにすねててもしゃぁないね。
あほらしなったわ。

あとでうまかったぁ〜って自慢したろ。

アホやなぁ裕ちゃんとこ来たらおいしいもの食べれたのにぃってな。

ふふん

「さぁみんな頑張っておいしいもん食べてや?」





おわり
595 名前:ちぃ 投稿日:2005/01/18(火) 00:00
はい更新終了です。

15日も過ぎはげしく今更ですが
あけましておめでとうございます。

相変わらず愛想なしな自分ではありますが
今年もよろしくお付き合いください。
596 名前:ちぃ 投稿日:2005/01/18(火) 00:09
個人的にビビンバ、抹茶のババロア、カニ>ラーメン、ケーキ、しゃぶしゃぶです。
ガイドさんの贔屓目ナシにして。肉より魚介類が好きなもんで。
あぁ〜おいしいもんが食べたい。

あちらのほう新しい話しができてはいるんですが文字に起こす時間が・・・
てなことでもうしばらくお待ちいただきたい。

そしてこちらではまたネタができたときに。
597 名前:ちぃ 投稿日:2005/04/15(金) 01:03
今回は更新じゃなくてぼそぼそと・・・
一瞬ガセかと思いましたが本当でしたね。

頑固者ですからケジメなんでしょうか。
卒業でも結婚でもおめでとうって言ってあげられますけど
脱退は悲しいですよ。もっとうまいやり方はなかったのかね。

でも彼女も22歳のいい大人です。
自分の人生を考える上で色々悩んだんじゃないですかね。
一個人としての幸せとアイドルとしての夢の板ばさみ。
今回のことでちょっとだけ肩の荷が下りたかもしれません。

ん〜この手の話しはねぇさんのほうが早いと思ってたのに。
矢口さんが結婚したらたぶん中澤さんもすぐに結婚しそうやな。
なんて独り言でした。
598 名前:ちぃ 投稿日:2005/05/08(日) 20:22
更新します。
599 名前:ちぃ 投稿日:2005/05/08(日) 20:23

―モヤモヤ―<後藤>

600 名前:ちぃ 投稿日:2005/05/08(日) 20:24

「裕ちゃん。」

「ん?」

ゴロンとコーヒーを吐き出す自動販売機。


「うぁっ失敗した。これあったかいやん。」


最悪やなぁこれっていいながら取り出してる。


「なんかあった?」

「やぐっつぁんは?」


あぁそれかって小さくつぶやいた。

「控え室。」


そうなんだ。


601 名前:ちぃ 投稿日:2005/05/08(日) 20:24

裕ちゃんはなんだか落ち着かない様子で缶コーヒーを一口飲むと
ふぅって大きくため息をついてチラッとこっちをみる。


「ごっちんもなんか飲む?」

「んにゃ。」

「で?」

あっやっぱりわかるんだ。


「しってたの?」

「・・・しらんと思う?」


じゃあなんで


裕ちゃんの目がキュッと細まる。


「止められへんよ。」


どうして?

う〜んって唸ってからやわらかくわらうから困る。

602 名前:ちぃ 投稿日:2005/05/08(日) 20:25

「まぁ初代リーダーとしては・・・ね。矢口も怒られたかったやろうし。」


違う。
そんなこと聞きたいんじゃないよ。



頭をぽふぽふってされる。


「すねんでいいやんか。もぉごっちんは・・・」


むぅ?


「結果としてどうあれアタシは矢口がかわいい。大好きやねん。」


しみじみいうからどんな顔していいかわからなくなる。


「矢口に嫌なことする人が増えると困るけど
 大切にしてくれる人が増える分にはかまへんやろ。」


そういわれればそうかもしれない。
でも・・・でもね

後藤にはやっぱりわからない。


603 名前:ちぃ 投稿日:2005/05/08(日) 20:25

「裕ちゃ〜ん?」

廊下の曲がり角から駆け寄って来る人。


「おっ噂をすればやな。」

「・・・なんの噂?」

「ごっちんゆうたらアカンで!」


裕ちゃんの勢いに押されてうんうんってうなずく。

「もぉなんだよぉ!もうそろそろだよってしらせに来たのに。」

裕ちゃんの腕をクイクイ引っ張ってるやぐっつぁん。



やぐっつぁんも裕ちゃんもちょっとだけ無理をしてる。
だから後藤もいっしょに無理をする。


誰かいわれたわけじゃなくて2人を大切に思うから。

604 名前:ちぃ 投稿日:2005/05/08(日) 20:26

駆け出して振り返る。

「お〜い!先いっちゃうよ!」


「あっ!ちょっと待ってよ!」「え〜!置いていかんといてぇや!」

答える声にわらいがもれてしまう。



後藤は2人が大好きだから。





おわり



605 名前:ちぃ 投稿日:2005/05/08(日) 20:42
はい更新終了です。

賛否両論あるとは思いますが自分はやっぱり矢口さんが好きです。
実際はどうだかわかりませんがみんな仲が良ければいいなぁと思います。
仲良く見せる振りをしていたとしてもコロッと騙されていたい。
コレに関しては平和ボケ万歳です。

あっもうひとつのほうもノロノロとですが書き続けます。
ではではまたヒマができたときに。
606 名前:ちぃ 投稿日:2005/05/14(土) 04:41
なんかなんですかねぇ。
もうちょっと夢見してくれてもええのになぁ。
607 名前:ちぃ 投稿日:2005/05/14(土) 14:04
一眠りしたら、いやいやそれも楽しみのひとつだろうとおもえた。
話し合いが必要なんはこういうもんも含んでやったんかね。
608 名前:ちぃ 投稿日:2005/06/03(金) 19:33
更新します。
609 名前:ちぃ 投稿日:2005/06/03(金) 19:34

―アイかわらず―<保田>

610 名前:ちぃ 投稿日:2005/06/03(金) 19:34

「で・・・最近どうよ?」

「んぅ?」

ちっこい背中がピクッと動いてゆっくりこっちを振り返る。


「でた。圭ちゃんのお得意のセリフ。」

ニシシッてのん気にわらってる。


ということは・・・?
安心していいのかね。


「心配性だね圭ちゃんは。」

「そんなこといったってさ・・・」


私の第二の家族だよ?

ギクシャクしてたらうまくいくように仲介するし
悩んでたら話しぐらい聞いてもいい。

遠慮なんていらない。
You are welcome. It’s my pleasure.


これは私のためでもある。

611 名前:ちぃ 投稿日:2005/06/03(金) 19:34


「あぁこの前ね裕ちゃん泣かした。」

「そうなの?」

「でも心配ないよ?お互い様だから。」

「ふ〜ん。」


どうやら私の出る幕はなさそうだね。

いいことだ。


「きぃ〜てよ!裕ちゃんスネてるの。」

「そりゃねぇ。」


まぁしかしうれしそうな顔だね矢口。


612 名前:ちぃ 投稿日:2005/06/03(金) 19:35


「だから抱いてあげた。彼のやり方で。」

「うわっなにやってんの。」

「したらね。泣いちゃった。」


ムフフッって・・・この小悪魔め。

はぁ〜

「違うってば。オイラが苛めたからじゃないよ?」

「じゃなんで?」

「いつもよりよくってそんな自分がヤダってメソメソしてた。」



はぁ〜

613 名前:ちぃ 投稿日:2005/06/03(金) 19:35


「バカだ。」

「でしょ?」

「いや。アンタも。」

「え〜!なんでさぁ!!」


だってバカでしょ?アンタ達。

確かに安心するけどもだ。


いいのか私?
こんなヤツラが第二の家族で。



おわり

614 名前:ちぃ 投稿日:2005/06/03(金) 19:48
いいのかコレで?ってとこですけど。
こだわると失うものも許容して繋がりを持ち続けることが可能なときも。
人に迷惑かけちゃいかんのだろうけど手放せないときもあるね。
615 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/07(火) 00:00
おもしろい
616 名前:ちぃ 投稿日:2005/06/15(水) 02:21
ありがとう
617 名前:ちぃ 投稿日:2005/07/23(土) 02:00
更新そます。
618 名前:ちぃ 投稿日:2005/07/23(土) 02:02
そますって・・・おいおい大丈夫か自分。
って自己処理しつつ改めて更新開始。
619 名前:ちぃ 投稿日:2005/07/23(土) 02:02

―やけこげル―<中澤>

620 名前:ちぃ 投稿日:2005/07/23(土) 02:03


「矢口さん矢口さん。」

「なんですか中澤さん。」

「・・・なんでもありません。」

「なんでもないなら呼ばないでください。」


くっ

なんやねん。
そんな怒らんでええやん。

あんな本気で突き飛ばさんでええのに。
頭打ったっちゅうねん。


ちょっとした出来心。

そのくらい許してもらいたい。


621 名前:ちぃ 投稿日:2005/07/23(土) 02:03


はぁ〜


「何そのため息。」

「・・・すいません。」


ため息もアカンのか。
厳しいな。


ご機嫌ナナメでちっちゃい背を向けてるから
ぐりぐり頭を撫でて髪を乱してやる。


「い〜やぁ〜だ!もぉ最悪!」


やっとこっち向いた。

そんな睨まんでも・・・


622 名前:ちぃ 投稿日:2005/07/23(土) 02:04

ぃって!!

「しばかんといてぇや。」




・・・・・・


なんでやねんな。しゃあないやろ?



あぁやばい。

滲みそうになる視界に急いで矢口に背を向ける。


「裕ちゃん?」


うわうわ。
ちょっとコレ。

必死に目をつむって眉間をもんでゆっくり息を吸ってゆっくり吐く。
目の奥の熱さを・・・喉の奥の痛みをなかったことに。


ふぅ

623 名前:ちぃ 投稿日:2005/07/23(土) 02:05


ギュッ

ん?


背中に暖かな感触。


「裕ちゃん。」

「なんや?」

「・・・なんでもない。」


なんじゃそりゃ。


まぁなんや。わかってるつもりなんやほんまわな。


よいしょ。

腕をといて向き直る。


「ごめんな。裕ちゃんが悪かった。」

「反省してる?」


コクンと精一杯大きくうなずく。


「仕方ないから許してあげる。」


ようやく機嫌が直ってきたらしい矢口に
んって腕を広げるとすっぽり収まりにくる。


624 名前:ちぃ 投稿日:2005/07/23(土) 02:06


「だいたいさぁわかるでしょ?裕ちゃんも女なんだしさ。」

「や。でもほら最近チャンスないもん。」

「だからって生理中はヤダ!」


むぅ
やっぱりか。

うん。わかってた。
でもねぇ・・・



チュッ

あれ?なにわらってんの?
さっきまで怒ってたくせに。


625 名前:ちぃ 投稿日:2005/07/23(土) 02:06


「ねぇ矢口は手離さないよ裕ちゃんのこと。」

へ?

「だから焦んなくていいよ。」


・・・バレたんか。

だってしゃあないやん?
妬かせてくれてもいいやろヤキモチくらい。


「エロ裕子。」


うっ




おわり


626 名前:ちぃ 投稿日:2005/07/23(土) 02:19
はい更新終了です。
しょっぱなおかしなことになってますが処理済ですので許したってください。
ズルいなぁと思うのはこうなるの待ってたっぽい自分がいることです。
時間がないくせにこっちの短編ばっかりネタが浮かんでしまいまして
あちら側がほりっ放しになっています。すいません。

ではまたヒマができたときに。
627 名前:名無飼育さん。 投稿日:2005/07/23(土) 23:26
おつかれさまです。
ちぃさんの作品好きです。
628 名前:ちぃ 投稿日:2005/08/20(土) 22:04
更新します。
629 名前:ちぃ 投稿日:2005/08/20(土) 22:05

−イタチゴッコ−<矢口>
630 名前:ちぃ 投稿日:2005/08/20(土) 22:05

鼻先にある寝顔。
絡みついたままの腕。

くっそぉ〜

やられた。


「うぅ・・・ケホッ・・・」

喉がイガイガする。

デレデレした顔してほんとちっとは加減しろよ。
このごろ運動不足だとはいったけどさぁ。

声は仕事で使うんだよ。掠れたら困るって。


「バ〜カ。」

肩に擦り寄るとゆっくり裕ちゃんの手が背中を撫でるから
ついカチンと来てしまう。眠ったままのくせにって。
無意識でも優しくしてくれちゃうから・・・はがゆい。

631 名前:ちぃ 投稿日:2005/08/20(土) 22:06

裕ちゃんは隠してないからいいって。跡を残していいっていうんだ。
でも彼はしらない。だから裕ちゃんは絶対に跡を残さない。

ありがたいことなんだよ?でもムカつく。
わかってる。わかってるんだ無茶いってるって。

でも物分りがよすぎるって裕ちゃんは。

はぁ〜



身体を起こそうとしたら逆にギュッとされる。
それでも腕を解いて強引に起き上がる。


「ぅな・・・あ?」

眠い目をぐしぐしこすってる。

あっかわいいなんて思ってしまった自分にイライラ。


632 名前:ちぃ 投稿日:2005/08/20(土) 22:07


ガシッ

「んが?」


ベットに押し付けてもまだ全く危機感のない目でみあげてくる。

いつか。いつだっけ?
この感じしってる。


「どうしたん?」


起きて来ないように身体で押さえつけながら
右肩を裕ちゃんの口元までもっていく。


「噛んで。」

「・・・なにゆうてんねんな。」

「なんでもいいじゃん。噛んでよ。」

「矢口?」

633 名前:ちぃ 投稿日:2005/08/20(土) 22:08


違うってば!

背中をポンポンってしてくる手を乱暴に払う。


・・・・・・



少しだけ身体を起こすと困惑した目の裕ちゃん。


あぁ・・・


「ごめん。」

「・・・」

ふっと顔を背けてしまうけどその肩が震えてるような気がする。

それでようやく安心するんだ。


634 名前:ちぃ 投稿日:2005/08/20(土) 22:09


ダメだね。
ひどいことするよねほんと。


「ごめんね裕ちゃん。」

ギュウギュウ抱きつく。


「はぁ〜ほんま頼むでぇ。あんまりイジメんといてや。」

「だって裕ちゃんが悪いんじゃん。」

「なんでやねん。」

「悪い子にはこうしてやる。」

635 名前:ちぃ 投稿日:2005/08/20(土) 22:09

完全に動けないように押さえ込むと
恥ずかしそうなくすぐったそうな顔をする。

だぁ〜もぉ

チュッ


「ん〜もっと。」

「どうしよっかなぁ?」


額をくっつけてクスクスわらいあう。
ほらもういつも通りだ。

大丈夫。


泣きたいくらい大事なものを持ってること。
それは幸せと不幸せを連れてくる。





おわり
636 名前:ちぃ 投稿日:2005/08/20(土) 22:27
はい更新終了です。

残暑お見舞い申し上げます。
まだまだ暑いですね。温暖化ですか?そうですか。
身体に気をつけて片付けられるとこから片付けていきましょう。

ではまたヒマができたときに。
637 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:23
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。

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