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メロンな日々。

1 名前:sairenn 投稿日:2002年08月29日(木)20時23分09秒
 登場人物。

広 主人公、大学生

のぞみ 広の従妹 女子高生

なつみ 広の従姉 大学生

裕子  広の伯母、なつみ、のぞみの母 

圭織  広の母 裕子の妹


プロローグ

7月の暑い日だった。

ジリジリと照りつける日ざしの中を歩いていると、全身に
汗がふきだしてくる。家に帰りついて、すぐシャワーを
浴びたくなり、風呂場へ向かった。
2 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年08月29日(木)20時46分45秒
風呂場のドアを開けると、そこは脱衣所で、ガラス戸を
開けると浴槽がある。

ガラス戸の向うで水音が聞こえ、すりガラスに白い影が
映っていた。
午後に映画に行く約束をしていたので、てっきり、のぞみ
だとばかり思い込んだのが、そもそもの間違いだった。

なぜ、あんなことをしたのかと言うと、ちょっとした
いたずらというか、驚かしてやるつもりで、従妹の、
のぞみがシャワーを使っている、浴槽へのガラス戸を
開けた、つもりだった。

最悪だった。

中にいたのは伯母だった。
3 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年08月29日(木)21時56分54秒
白い裸身に、水が糸をひいて流れ落ちていた。

さすがというか、伯母の反応はす早かった。さっと、
シャワーの蛇口をひねり、勢い良く水が噴出した、
射出口を僕に向けた。

バカみたいにポカンと立ちすくんでいた、僕は
頭を冷やすには十分過ぎるぐらいの、冷たい水を
頭から胸のあたりまで浴びてぐしょ濡れになって、
あわててガラス戸を閉めた。

中で、伯母の笑い声がひびいた。

やっと、ドアを開けて風呂場を出た。
このまま、この家から逃げ出したかった。

気がつくと、キッチン兼食堂の椅子に、
ぐしょ濡れのまま座り込んでいた。

今年、大学に受かって田舎から、この東京近郊の
町にある伯母の家に下宿するについて、一抹の
不安を感じていた。

4 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年08月29日(木)22時49分43秒
アパートを捜そうかと思ったが、伯母の言葉、
「女、三人だけで無用心だから、ちょうど良かったわ
家に来なさいよ」

それに、つい甘えてしまい、下宿することになった。
魔がさしたのかもしれない・・・。

伯父は仕事で、長く外国に行っていて、いない。
従姉の、なつみは二十歳の大学生。
従妹の、のぞみは十五歳の高校生。

僕の母の圭織は、今年で四十歳になるはずだ、
その姉である、伯母は当然それ以上になるはずだが、
髪を茶髪に染めていて、非常に若く見える。

伯母の、透き通った白い肌の裸身がまだ、頭のすみに
こびりついている。

バタンッと、ドアを閉める音がして、廊下を歩いて
来る足音が近づいてくる。
5 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年08月29日(木)23時34分26秒
落ち着くんだと、自分に言い聞かせようとした。何、あやまれば
すむはずなのだ、相手が伯母でなければ・・・。

もし、のぞみだったならば、もう少し違った展開になっただろう。

伯母がキッチンの入口に姿を現した。バスタオルを体に
まきつけただけだ。

完全に浮き足立ち、椅子から腰を浮かしかけた僕に、伯母は
足早に近づいてくるや、いきなり両肩を掴まえられ、引き
寄せられ、抱きすくめられた。

息がつまりそうだ、厚手のタオル地を通して、柔らかい
感触を楽しむ余裕などあるはずがない・・・。
6 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年08月29日(木)23時59分59秒
伯母は僕の濡れた髪を撫でた。

裕子「可哀相な、坊や。こんなに濡れてしまって・・・」

伯母の裕子は僕を離すと、腰を落として僕の顔をのぞきこんだ。
面白がっているような眼をしている。

裕子「悪い子ね。なぜ、あんな事をしたのかな・・・、
もしかしたら、ママが恋しくなったのかな、ママのオッパイが
欲しくなったのかしら・・・」

まさか、はいそうですとは、言えない・・・。

裕子「何んなら、ママのかわりになってあげてもいいのよ」

何も言えない僕を見て、伯母の眼がすっと細くなり、
口もとを引きしめて、詰問口調になってきた。

裕子「そうでないなら、どういうわけなのか、
聞きたいもんだわ・・・」

口ごもってしまって言葉が出てこない。
生半可な言いわけが通用する相手ではない。
7 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年08月30日(金)00時34分04秒
裕子「あなたに、その趣味があるとは思えないけど、
あたしが今まで、変質者と一緒に住んでいたことに
気がつかなかった、ということでなければいいの
だけど・・・」

広「・・・もし、そうだとしたら」

うろたえて、バカなことを聞いてしまった。

裕子「そうね、そういう輩(やから)をのさばらせて
おくと、後々ろくなことはないわ。世のため、人の
ために、生かしてはおかないわ・・・」
と、ぶきみな笑みをうかべる・・・。

時々、伯母は冗談みたいなことを本気で言うから、
恐ろしい・・・。
伯母は自分をからかっているだけなんだと、思い
たかったが、思えなかった。
つい、本当のことを言ってしまった。

広「・・・中にいるのは、のぞみだとばかり思って
いたんです」

伯母は、僕から離れて一度背をむけてから、腕を
組みながら振り返った。

裕子「あなたたち二人が、今でも一緒にお風呂に
入るほど仲が良いとは、気がつかなかったわ・・・」

たしかに、僕とのぞみは前に一緒にお風呂に入った
ことがある。しかし、それは僕が八つ、のぞみが
五つの、十年前の昔の事だ。
8 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年08月30日(金)01時07分13秒
ここまでくると半ば、ヤケッパチな気分になってきた。
もうどうにでもなれというところ。

現在、15歳の従妹と一緒に風呂に入るにしろ、
伯母の入浴をのぞき見したにしろ、どう転んでも
助かりそうにない。

意外なことに、助け舟を出したのは伯母のほうだった。

裕子「つまり、兄妹みたいな気安さから、何気なく
あいさつでもするつもりで、戸をあけてしまった
というわけなのね・・・」

何か、魂胆があるにちがいないのだが、とにかく、
うなづいておくことにする。

裕子「そういうことにしておくわ。でも、あなたは
間違いを仕出かしたわ、それは認めるわね」

しかたなく、うなづく。

裕子「それじゃ、あなたはつぐないをしなくては
いけないわ・・・」

そら来たと思った。

裕子「まず、今日一日あたしのお供をすることね。
実をいうと、ちょっとしたパーティーに招待されて
いたのよ、でも相手が見つからなくて弱っていた
ところなの、1人で行ってもつまらないのね・・・」

広「そのー、どういうパーティーか、聞いても
いいですか・・・」

裕子「行ってからのお楽しみ・・・」

伯母は器用に片眼をつむって見せた。
いかにも楽しそうだ・・・。
9 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年08月30日(金)18時53分57秒
伯母は、デザイナーなのだ。おもに革製品をデザインしている。
国内よりも外国で名を知られている。
それで、時々外人だけのパーティーに出かけていく。

とすると、どんなパーティーに連れて行かれるか、
わからない。とにかく、無駄な抵抗とは思うが、
試みてみる。

広「そのー、今日はのぞみと約束しているんです。
一緒に映画を見に行くと・・・」

伯母は急に眼を光らし、歯をむき出しにする。

裕子「まさか、あたしの言うことが聞けないなどと、
抜かすんじゃ・・・」

僕はあわてて首を振った。僕にすっぽかされたと知った、
のぞみが怒り狂うのが、眼に見えるようだ・・・、しかし
とても伯母にはさからえそうもない。

伯母は満足そうにうなづいた。

裕子「それじゃ、すぐに仕度をすることね。上だけでなく
下半身のほうにもシャワーを浴びてくればいいわ」

意味ありげに聞こえる。
自分の部屋に行くために階段を上りはじめた伯母に
声をかける。

広「どんなパーティーか知らないけど、着ていくものが
ないんだけど・・・」

裕子「たしか、あなたはチェックのブレザーを持って
いたわね、それを着ていきなさい。」

伯母は、命令口調で言うと、階段を上がっていったが、
下から太ももの奥が見えそうになり、思わず、視線を
そらした。
10 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年08月30日(金)19時31分33秒
自然にため息が出てくる。どうにも、伯母には
さからえないのだ。伯母が嫌いなわけではない。

伯母の、好き嫌いのはっきりした態度。歯に衣着せぬ
辛らつさに辟易して、伯母を敬遠するひとも多いが、
のぞみの言葉を借りれば、

のぞみ『他人(ひと)がママのことをどう思っているか
知らないけど、私にとってママは、いつだって優しくて
すてきなママなのよ。広さんにとってもそのはずよ・・・』

伯母は独特の優しさで接してくれる。
自分が伯母に弱いのは、色んな意味で伯母が好きな
せいかもしれない。

シャワーを浴び、着替えていると、伯母が降りてきた。
足首まである黒のロングドレス、大きくカットされた、
こぼれるような透き通った白さの胸と、黒のドレスの
コントラストに、思わず見とれてしまう。

伯母は、見るたびに胸が高鳴る笑みをうかべながら、
近づいて来た。

裕子「・・・中身を思い出しているようね・・・」

僕は首を振った。

伯母は手をのばしてきて、ネクタイを直しながら言う。

裕子「嘘つきは、狼に食われちゃうわよ・・・」

広「思い出したりなんかしてないですよ。この眼に
はっきりと焼きついてるから・・・」

伯母はヒヤリと手の平を僕の頬に当てながら言った。

裕子「悪い子ね・・・」

子羊の心境がわかる・・・。
11 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年08月30日(金)20時05分35秒
伯母は、ヒヤリとする手の平を僕の頬に当てながら
言った。

裕子「悪い子ね・・・」

子羊の心境がわかる・・・。

伯母は先に外に行った。
時計を見ると、のぞみとの約束の時間を過ぎている。

これで、多少の言い訳がつくと思った。
のぞみは、気性のさっぱりとした娘だし、陰険に根に
もったりしないはずだ。それなりのつぐないをすれば。

しかし、伯母と二人で、あやしげな(まだわからないが)
パーティーに行ったと知ったら、どうなるか・・・。
外で、クラクションが鳴ったので家を出る。

伯母は、くすんだ草色のミニ・クーパーで待っている。
車があることに気がついていれば、こんなハメに
あわなかったのにと、今さらくやんでも遅い。
助手席に乗り込む。

裕子「この車に乗るのは初めてね」
うなづく。

裕子「だったら、しっかりとつかまっていることね」

伯母は、ミニ・クーパーを動かして、道路に出すと、
いきなりアクセルを思い切り踏み込んだ。

ミニ・クーパーは尻を振りながら、腹の底にひびく
轟音を上げて急発進をして行く。

シートに背中を押しつけられる。
これでは、ミニ・クーパーではなく、ミニ・クーガーだ。

これではこの先、どうなるか、不安になってくる。
反面、期待も大きいわけだ。
前方に夕焼けが赤く燃えている。


12 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年08月31日(土)00時40分57秒
6月。

眼がさめて、すぐに今日が日曜日だと気づいて、また
寝ようと思ったが、結局、起きることにする。

階下に降りて、キッチンに行く。
従姉のなつみさんが、フライパンを使って卵を焼いていた。
テーブルについた僕にコーヒーをついでくれる。

広「のぞみちゃんはどうしたの」

なつみ「まだ起きてこないのよ、今日は陸上の大会があると
言ってたのに・・・」

時計を見ると九時少し前だった。

広「よし、僕が起こしてくるよ」

なつみ「あ、私が行くわ・・・」

広「ほら、目玉焼きが焦げてるよ」

なつみさんが目玉焼きに気をとられているすきに、
トットッと階段を上っていった。途中で振り返って
見ると、なつみさんはフライパン片手に何か言いたげに
僕を見上げている。

フム、何かある、とばかり勇んでのぞみの部屋の前に立った。
コンコンとドアをノックしたが、返事はなかった。
ドアにカギはついていない。

そこで、のぞみが眼をさまさないように(?)そっとドアを
開けた。
13 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年08月31日(土)01時08分42秒
のぞみの部屋には何度かきたことがあるが、女の子の
寝姿を見られるというのは、またとない機会ではある。

のぞみは、うつ伏せになって眠っていた。うつ伏せに
なるというのは、欲求不満の表れだなと思いながら
ベッドの上で、顔をこちらに向けているのぞみの
寝顔をのぞき込む。とても可愛い。

部屋はわりとかたずいていた。机の前の壁にタンポポの
ポスターが貼ってある。横にはミニモニ。も貼ってある。
意外な感じがする。

そろそろ起こそうと、のぞみのほうを見たら、のぞみが
眼をあけていることに気がついた。

広「オハヨウ、朝だよ・・・」

出来るだけ、さりげない風をよそおう。

のぞみはのろのろと頭をもたげ、重そうにまぶたを
半分明けて僕を見ている。

のぞみ「朝?・・・」

広「そうだよ・・・」

寝起きはあまりよくないみたい。

14 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年08月31日(土)18時03分33秒
のぞみ「何時?」

ひろし「九時過ぎてるよ」

のぞみ「フウン・・ねえ、そのTシャツを取って」

見ると、机の前の椅子に黄色のTシャツがかかっている。
それを手の取って見ると、少し大きめのTシャツだった。
Tシャツを渡そうと振り返って、思わず眼をみはってしまう。

のぞみは起き上がって、ベッドに腰掛けていたが、注目
すべきなのは、腰のあたりに白いものをつけているだけで
ほかに何も身につけていなかった。

のぞみの体全体が影になって見えるのは、まだカーテンを
閉めているせいで、部屋が薄暗いせいだけでなく、のぞみの
肌が黒いためだ。

感心したのは、形、大きさとも十分観賞にたえるバストも
体の色と大して違わないことだった。

15 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月31日(土)23時44分49秒
官能のにほひ……
期待してます。
16 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月01日(日)15時03分53秒
とにかく、感心している場合ではない、気を取り直して
のぞみに近づいてTシャツを差し出した。

のぞみはTシャツを受け取ると、それを頭から被って
首を出すと、チラリと僕を見やって言う。

のぞみ「ところで・・・何しに来たの」
と、物憂げに言う。

広「その、起しに来たんだよ。もちろん・・・」

Tシャツはまだバストの上にひっかかっていて、
そこだけはピンク色の乳首が僕を見上げている。

Tシャツを下まで下げると、のぞみは両腕を伸ばして
可愛いしぐさであくびをもらした。

風向きが変わらないうちに退散することにする。

広「今日は陸上の大会があるんだろ。姉さんが下で
待ってるよ」
のぞみは、高飛びの選手なのだ。
ドアを開けて出て行こうとしたら、

のぞみ「ねえ、いつから私を見ていたの・・・」

と、核心をついて来た。

広「・・・つい、さっきだよ」

何気ない風をよそおう。

のぞみ「フウン、アッ、忘れてた、お、は、よ、う・・・」

のぞみに小さく手を振ってから、部屋を出て、ドアを閉めた。
17 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月01日(日)15時43分32秒
ドアの外で、思わず吐息が出てしまう。

もちろん、女の子の裸を見たくらいでおたつくような
ウブではないつもりだが、それにしてもほとんど裸で
寝ているなんてね・・・。

下に降りて、キッチンのテーブルにつく。

なつみ「起きた?」

そう言いながら、ぬるくなったコーヒーを替えてくれる。

広「うん。じきに降りてくるよ・・・あ、焦げた目玉焼き
僕が食べるよ」

なつみさんは僕の視線を避けるように、背を向けた。

なつみ「いいのよ、のぞみに食べさせるから・・・」

広「・・・・」

女子大生のなつみさんは、いかにもとっても優しいお姉さん
という感じで、一人っ子の僕としてはこんなお姉さんが
いればいいなァと常々思うのだが。

キッチンの入口からは階段が見えるが、降りてくる足音が
したので振り返って見ると、のぞみが見えたが着ている
大き目のTシャツは、きわどくのぞみの腰のあたりを隠して
いる。
その下から見える褐色の足はすんなり伸びて格好いい。

なつみ「おはよう、お寝坊さん」

キッチンの入口から首を出したのぞみに、なつみさんが
声をかけた。

のぞみ「シャワーを浴びてくるわ」

のぞみはそう言って首をひっこめた。
18 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月02日(月)01時12分44秒
広「あのTシャツは、お父さんのか何か?」

なつみ「え?、あぁ、のぞみの着ているのね、あれは
のぞみが買ってきたの。男物だけど、パジャマのかわり
にしているみたい」

広「あんまり、パジャマのかわりには、なっていない
みたい・・・」

なつみ「え?・・・」

広「いや、何でもないよ。ところで伯母さんはいつ
帰ってくるの」

なつみ「多分、月末には帰ってくるとおもうわ」

広「伯父さんは・・・」

なつみ「わからないわ、年末には帰ってくると思うのだけど」

伯母は先週から、伯父は僕がこの家へくる前から、仕事で
外国へ行っていていない。

のぞみがタオルを使いながら、キッチンに入ってきた。
首のあたりの素肌に拭き残しの水滴を光らせている。

のぞみ「ジュース、ジュースはどこだ・・・」

と言いながら冷蔵庫を開ける。
19 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月02日(月)01時41分43秒
何げなく見ながら、コーヒーを口に含んだ時、のぞみが
ジュースの入ったペットボトルを取り出そうと、前かがみに
なった拍子に、Tシャツが捲くれ上がって、のぞみのお尻が
ほとんど見えた・・・。

プリッと、割れたお尻にはくっきりと白く、下着の跡が
ついていた。

ぶおォー!!、とばかり、こらえ切れずに、口に含んでいた
コーヒーがあたり一面に飛び散った。

なつみさんも、尻を丸出しにしたのぞみを見て、絶叫する。

なつみ「のんちゃァーん!!??」

その騒ぎに、振り返ったのぞみは、気がついて片手をお尻
に当てながら、ぺロッと舌を出した。

のぞみ「アハッ、パンツはくの忘れた」

20 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月03日(火)16時46分43秒
僕は、ドッとテーブルに突っ伏した・・・。

気を取り直して顔を上げると、のぞみはコップのジュース
を美味しそうに飲んでいる。

なつみさんは、飛び散ったコーヒーを拭きながら、
しきりに僕の様子を気にしている。

のぞみは、どこふく風とジュースを飲み干して、
コップを置くと僕に近づいて来て、顔を寄せてくる。
吐く息が甘い。

のぞみ「ねえ、見えた・・・」

と、声をひそめて言う。

広「見えたって、何が?」

と、とぼけたら、

のぞみ「女の子のいちばん大事な、と、こ、ろ・・・」

そこで、

広「見、え、た・・・」

と、のぞみの耳に掌を当てて、ささやき返したら、

のぞみ「キャッ!、どうしよう・・・」

と、嬉しそうに(?)、はしゃぐ。こぼれた歯が白い。

21 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月03日(火)17時43分19秒
なつみ「朝ごはん、食べないの・・・」

ため息をつきながら、なつみさんが言うと、

のぞみ「時間がないから、いらないわ」

そう言うと、キッチンを出て階段を上がっていく。
振り返って、のぞみを『下』から見送りたいという
衝動を、ぐっと堪えた。

後は、テーブルの目玉焼き、トースト、野菜サラダを
平らげるのに精を出す。

やがて、のぞみが降りてきた。トレーナーを着て、
スポーツバックを持っている。

なつみ「はい、お弁当。サンドイッチ多めに入れといたわ」

のぞみ「ありがとうォ、なっち大明神様ァ〜。」

と、手をあわせる。

のぞみ「いけない、遅れちゃう」

広「何時から始まるの?」

のぞみ「九時半からよ」

今、九時二十分だから、完璧に遅れてる。

広「大会はどこであるの」

のぞみ「市営グランドよ。じゃあ、行って来ますゥ」

僕は立って、玄関まで見送りにいく。ついでに、バターを
たっぷりぬったトーストを持っていく。
大食いの、のぞみが昼までとても、もたないだろうと
思ったのだ。

のぞみにそれを見せたら、可愛いく口を開けたので、
トーストを口にはさんでやる。

のぞみ「あんがと・・・」

一口噛むと、それを片手で持って、思わず食べちゃいたくなる
ような笑顔を見せる。
22 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月03日(火)18時12分08秒
広「重力に負けないように、飛び跳ねてくるんだよ」

のぞみ「まかしといて、ただ今絶好調ォ!」

と言って片足をポーンと跳ね上げて見せてから、のぞみは
出て行った。

のぞみが出て行った後、少しの間玄関にたたずんで、
のぞみの仕草を思い出していた。まだまだ、子供なんだな
と思う。

キッチンに戻ると、なつみさんは流しで食器を洗っていた。

広「手伝うよ・・・」

なつみ「ありがとう。いいのよ、すぐすむから」

後片付けをしている後姿を見ると、なつみさんは
エプロン姿がよく似合うなあと思う。料理も
うまいし、彼女と結婚する男は幸福だなと思う。

のぞみはといえば、姉妹なのに違うものだと思わざるを
えない。でも、あれで案外良い嫁さんになるかも
しれない。責任はもてないが・・・。

23 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月05日(木)00時29分57秒
なつみ「コーヒー、まだあるわよ、飲む?」

後片付けをすませた、なつみさんの声にうなづいて、
カップに注いでもらう。
なつみさんは僕の向かいに腰掛けたが、何かもじもじと
落ち着かぬ様子。

なつみ「広さん・・・ごめんなさい」

広「え?・・・」

なつみ「広さんと一緒に住むからには、行儀よくして
あまり変な格好で家の中を歩かないでと、よく言い聞かせて
いたのに、あんな・・・ビックリしたでしょう」

広「何でもないですよ。それに、のんちゃんにも白い
部分があるってことがわかったし・・・」

なつみ「・・・・」

のぞみのあざやかな白さのお尻をおもい出した。
胸まで黒いから、てっきり全身黒いのかと思って
いただけに何か、新鮮な驚きだった。

なつみ「起しに行った時、もしかしたらのんちゃん、
裸で寝ていたのじゃないの?」

広「そうだったみたい・・・」

突然気がついた、起しに行った時、のぞみは白い下着を
つけているように見えたが、あれは下着の跡がそう見えた
ので、実はのぞみは、生まれたままの姿だったかもしれない。

これは重大な発見・・・でもないか。

24 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月05日(木)00時50分55秒
なつみ「広さん・・・」

広「え?・・・」

なつみ「・・・何を考えていたの」

広「なんでもないよ」

なつみ「のぞみのことじゃないの・・・広さんだって、
のんちゃんは少し変わっていると思うのじゃないの・・・」

広「そんなこと無いよ・・・僕だってパンツひとつで
寝ているよ。それに・・・」

のぞみは、自分を飾らないし、自然な自分の気持ちに
正直なのだと思う。

なつみ「他人が、ママや私達をどう思っているか気に
してないわ」

もちろん、僕は他人ではない。

なつみ「ママはもう大人なんだし、今さらどうこう言っても
もう、どうしようもないわ・・・」

同感。

なつみ「のんちゃんはとっても良い子よ。だから、もっと
女の子らしくしてほしいのよ」

広「でも、今のままの自由奔放なところが、のんちゃん
らしいと、僕は思うよ」

なつみ「そうかしら・・・」
25 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月05日(木)01時57分47秒
こうしてなつみさんとゆっくり、話をする機会は今まで、
なかったので、のぞみのことで聞いてみたいことがあった。

広「一度聞いてみたいと思っていたのだけど、伯母さんや
なつみさんは色が白いのに、なぜ、のんちゃんだけは黒いの
かな・・・お尻は白いところをみると、地が黒いわけでは
なさそうだけど・・・」

なつみ「小さい頃は白かったのだけど・・・」

広「じゃあ、やっぱり日焼けなんだね。でも女の子で
あれだけ日焼けしているのも、珍しいのじゃないのかな」

まさか、日焼けサロンに行っているとは、思えないが・・・。

なつみ「・・・あれは、のんちゃんが小学校の三年の時
だったと思うわ。夏休みだったわ。

よく、化粧品のポスターで、 真っ黒に日焼けしたモデルが
載っているのがあるでしょ。それを見たのんちゃんが、
私もあんな風に日焼けしたいと言い出したの。

そのときは私も、なにげなく聞いていたのだけど、
それから少したって、みんなして、海に行くことに
なったの。

こんなことは珍しいのよ。ママは混雑したところは嫌いなの。
でも、のんちゃんがどうしても行きたいと言って、結局
行くことになったの。

そしたら、あの子、泳ぎもしないでほとんど一日中、
砂浜に寝ころがって、日光浴、それも素っ裸でよ・・・」

広「ウ〜ン・・・」

なつみ「
26 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月05日(木)02時20分58秒
なつみ「それがいけなかったのよ。その年の夏は特に
日ざしが強かったわ。そのカンカン照りの下で一日中
肌を焼いたおかげで、大変な事になったの・・・、
どうなったと思う?」

広「う〜ん、もしかして大火傷・・・」

なつみ「そうなのよ。まだ子供で皮膚が弱かったかも
しれないわ。もう、全身火ぶくれで三日三晩、熱を
出して寝込んでしまったわ。ほんとに、死んじゃうかと
思ったわ・・・、それで、懲りるかと思ったのよ・・・」

広「懲りないんだね・・・」

なつみ「そうなのよ・・・」

なつみさんは、ため息をつきながらうなづいた。

なつみ「あの子は言い出したら、きかないのよ。それで、
今度は考えたらしく、きれいに日焼けをする方法を
調べて来て、それからは家のベランダで少しずつ日光浴
をするようになったの。
それも、一糸まとわずにやるから、何とか言い聞かせて
下だけは、つけさせたわ。」

それで、お尻だけは元の白さをとどめているわけだ。
27 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月05日(木)02時49分24秒
なつみ「あれから、ほとんど毎日、一年中どんな寒い日も
陽が照っているかぎり、オイルを塗って肌を焼いているわ。
本当に感心するわ」

何だか、すごい執念みたいな・・・。

なつみ「小学校の頃は、天気が良いとすぐ服を脱ぎたがる
ので困ったわ。そのことで、学校で大変な問題を起こした
ことがあるわ。のんちゃんの通っていた学校で、
『人魚騒動』と言って、今でも語り草になっているそうよ」

広「どんな事・・・」

僕は身を乗り出した。

なつみ「あれは、あの子が五年生の時だったわ。
のんちゃんのクラスが学校のプールで水泳をする
ことになったの。担任の女の先生、保田圭先生と
いうのだけど、その保田先生が生徒を集めたら

どうも、女の子がひとり、たりないと思ったそうよ
おかしいと、今度は男の子を数えたら何とひとり
多いのよ・・・。

その『男の子』は、のんちゃんだったの。あの子は
男の子がはくような海水パンツだけをつけていたの。
もちろん、上は無しよ・・・。

28 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月05日(木)23時34分21秒
その頃、のんちゃんはかなり日焼けしていたから、保田先生も
間違えたみたい。

それで、保田先生は、
『女の子は、そんな男の子のはくような海水パンツを
はいては、いけません!』
と、強く叱ったそうよ。

すると、のんちゃんは、
『ハーイ、わかりました』
と言って、いきなり海水パンツを脱いじゃったそうよ・・・。

そして、保田先生が悲鳴を上げるのにかまわず、そのまま
全裸でプールに飛び込んだそうよ」

広「・・・・」

なつみ「そして、プールの中をすいすいと泳ぎながらみんなに、
『みんなもいらっしゃいよ。まるで、《人魚》になったみたいで、
とっても気持ちいいわよ』
と、声をかけたそうよ。

のんちゃんは、気性がサッパリしているせいか、女の子達に
とても人気があるのよ。それで、のんちゃんと一番仲が
良かった亜依ちゃんが、のんちゃんの声を聞いて、自分も
水着を脱いで、プールに飛び込んだそうよ・・・。
29 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月06日(金)00時02分05秒
それを見た仲の良い、まこっちゃんや愛ちゃんも水着を
脱いで飛び込んで、それを見たクラスのほとんどの女の子
たちも、次々に裸になってプールに飛び込んじゃったの・・・」

広「ハァー、女の子ってのは怖いね・・・ところで、
男の子たちはどうしたの」

なつみ「何でも、隅っこに固まって震えていたそうよ・・・」

広「その気持ちはよくわかるよ・・・」

なつみ「それから、大変な騒ぎになってしまって、
保田先生は、女の子たちが裸で、キャア、キャア言って
泳ぐのを見て、叫びすぎて、泡を吹いて失神してしまうし、

騒ぎを聞きつけた先生たちや、他の生徒が大勢見物に
駆けつけて、大変だったらしいわ。遅れて、《人魚》たち
を見そこなった先生なんか、地団駄踏んで口惜しがったそうよ」

広「僕もその可愛い人魚たちを、見たかったな・・・」
30 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月06日(金)01時00分23秒
可憐な少女たちが、生まれたままの姿になって次々と
プールに飛び込むのを見て、女教師は失神し、男の子
たちは怯える中を、少女たちが喜々として、あたかも
人魚のように泳ぐのが眼に浮かぶようだ。

地団駄踏んだ先生は、さぞくやしかっただろうな・・・。

しかし、そんな大騒動になったのは、やはり真っ先に
素っ裸になってプールに飛び込んだ、のぞみなんだけど、

何を考えていたのか・・・のぞみらしいと言えば、言える
ことなのだろうけど。

なつみ「その後が大変だったわ。ママなんか面白がって
いるだけなのよ。それで、私が学校に呼び出されて、
張本人の、のぞみ共々、散々しぼられたわ。

後で、のんちゃんにわけを聞いたら、
『いっぺん、プールで裸になって泳いでみたかったの』
なんて、ケロッとして言うんだから」

今日の、のぞみを見る思いだな。

31 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月06日(金)01時26分12秒
なつみ「それからは、あまり外ではバカなことはしなくなった
のだけど、あれ以来近所で大変な評判になって、私なんか
恥ずかしくてしばらく外を歩けなかったわ。」

広「一躍名をとどめたわけだ。それにしても、それほどまでに
して、肌を黒くするというのはどういうわけなのかな。
日焼けしたほうが、健康的だといわれてるけど、そんな殊勝な
考えだとは思えないけど・・・」

なつみ「一度、そんなに真っ黒になってどうするのって、
聞いたのだけど、あの子、はっきりとしたことは言わないのよ」

上京してこの伯母の家に下宿して、二ヶ月ちょっとになるが、
のぞみのことは、知れば知るほどわからなくなる。

陽気で活発な、可愛い娘であれば、誰だって好きになると
思うが、もちろん僕だって例外ではないけれど。

彼女の深い小麦色の体の中で、お尻のあざやかな白い部分が
のぞみというものを、表わしているような気がする。
32 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月06日(金)17時49分12秒
今頃は元気よく飛び跳ねている頃だな。
のぞみはハイジャンプの選手なのだ。

広「市営グランドって、どこにあるの?」

なつみ「一度、駅に出て基督教大行きのバスに乗って、
市営グランド前で降りればいいわ。ここからそんなに
遠くないわ、行ってくれば・・・」

広「今日はヒマだし、ちょっと行って見ようかな」

なつみ「そうすればいいわ。じゃあ、洗濯物出しといて。
それから、お部屋掃除するから・・・」

広「うん、ビニール本なんか片付けておくよ」

なつみ「・・・・」

僕は、はずみをつけて立ち上がった。

広「よしッ、出かけるか。あ、朝食とコーヒーとっても
美味しかったよ」

なつみさんは、とても嬉しそうな笑顔を浮かべた。

33 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月07日(土)00時22分23秒
歩いて十分ほどの駅について、K大行きのバスに乗り込む。

乗った時は空いていたが、走ってるうちにだんだん混んで来た。
そのうち、女子高生らしい、制服の女の子が僕の前に立った。
バスのシートは、ベンチ式だった。

ちょっと可愛い娘(こ)だった。
持っているバックのネームが、G・MAKIと読み取れた。

しばらくして、フト顔を上げたら前の女の子が険しい顔を
していることに気がついた。
眼は窓の外に向いていたが、彼女、マキの意識は別の所に
向けられているようだった。

そのうち、マキはいきなり片手をパッと後ろに回し、自分の
スカートを押さえた。
それで、ピンときた。誰かが後ろでマキのスカートを持ち上げて
いるらしい・・・。

どうも、痴漢のようである。
34 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月07日(土)00時54分57秒
どうしたものかと思うが、怖い顔をして窓の外をにらみつけて
いるマキを見ると、なかなか気の強い子らしい。

それで、後ろにいるらしい痴漢にちょっぴり同情をおぼえてくる。
と、またもマキのスカートが捲くれ上がるのが見えた。

とうとうマキの堪忍袋の緒が切れたらしく、顔をこわばらせて、
スカートを押さえると同時に後ろを振り返った。

とたんにマキの表情がくずれた・・・。

そこには三歳ぐらいの男の子が無心にマキのスカートを
つかんでいた。

マキは表情を和らげて、男の子の頭を撫でながら、優しく
男の子の手からスカートを離した。

そばにいた母親らしい女性が男の子の手を取った。
どうやら、男の子はママだと思ってマキのスカートを
引っぱったり持ち上げたりしていたようだ。

意外な結末に、良かったような、残念なような・・・。

35 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月07日(土)01時12分11秒
前を向いたマキは自分の誤解が可笑しかったのか、ひとりで
笑っている。僕もつられて笑ったら、マキと眼が合った。

マキはちょっと恥ずかしそうに頬を染めた。

それにしても子供は得なものだ。女性になにをしても
笑ってすませられるのだから。

子供には邪心がないと思われてるが、わからないと思う。
さっきのあれも、ことによると女子高生のスカートの
内部を探求しようとしてたかもしれない。

おバカなことを考えているうちに、バスは市営グランド前に
着いた。

そこは、市営グランドとは名ばかりで、観客席もない広い
運動場といったところ。
36 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月07日(土)13時35分24秒
うまくグランド内に入れたので、あたりを見回して高飛びの
バーのある方へ行ってみる。

そこには何人かの女の子がいたが、のぞみを見つけるのは
簡単だ。陸上をやっている子は大抵色が黒いが、その中で
ひと際黒いのがのぞみだ。

その、のぞみが助走路へ向かうのが見えた。
僕はのぞみの斜め後方にいたので、彼女からは見えないと
思っていた。

のぞみは助走路に立つと、腕を伸ばしたり、膝を曲げたり、
そのうちニ、三度飛び上がったり、片足をポーンと頭の
上まで跳ね上げた。

いかにも、おかしな動きだった。そのうち、こちらを
チラッと見たような気がしたので、さてはと思ったら、
案の定、のぞみはスタートを切ったがバーの方ではなく
振り返って僕の方へ向かって走ってくる。

一瞬、これはマズイと逃げたくなったが、まさかそんなこと
は出来ないので、観念して待つほかはない。

周りの者がのぞみが見当違いの方向に走り出したので、
何事かと僕の方へ注目してくる。

のぞみは、白い歯を覗かせながらスピードを上げて
近づいて来て、弾ませながら体をぶつけてくる。

よろけそうになるのをグッと堪えてのぞみの弾力の
ある体を抱き止める。
近くの、砲丸を持った男子選手が口を開けて見ている。

37 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月07日(土)13時51分52秒
のぞみ「ワアー、きっと広さんが来てくれるような
気がしてたの・・・」

のぞみは僕の腕の中で体を弾ませながら、いかにも
嬉しそうな笑顔で言った。

女の子にこう言われて、嬉しくない男がいたら
お目にかかりたい。

広「どう、地球に負けないように頑張っているかい?」

相好をくずして言ったら、のぞみはちょっといたずらっぽい
目で僕を見上げた。

のぞみ「エヘヘー、じゃあこれから行って飛んでくるからね」

無邪気にそう言うとのぞみは手を振ってから走って行った。
白いパンツが褐色の足によく似合っている。

再度、助走路に立ったのぞみは少しの間、静かに佇んでいた。
38 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月08日(日)17時38分40秒
僕はバーの近くへ歩き出した。

のぞみは片手を高く上げてから、スタートを切った。
ゆっくりとした、それていて流れるような足の運びだった。
バーの前で右足で踏み切ると左足を大きく跳ね上げて飛んだ。

意外にも、ベリーロールだった。

かろやかにのぞみの肢体は空中を舞って、見事に越えたかに
見えた。しかし、のぞみの体がマットに落ちた後、バーは
ブルブルッと震えたかと思うとゆっくりと落ちていった。

それを見た僕は、思わず「惜しいッ」と声に出た。
そして、バーの方へ向かおうとした時、嫌な予感がして
立ち止まった。

のぞみがなかなか起き上がってこないのだ。
のぞみはマットの上に仰向けになって横たわっていた。

いっこうに起き上がってこないのぞみに、何人かの人たちが
走って行く。

僕も走り出した、心臓が早鐘のように鳴り出していた。
まさかとは思うが、頭から落ちたようにも見えた気がする。

かがんで見ている人の中に割り込んだ。
のぞみは、目を閉じて身じろぎひとつしない。

教師らしい者が振り返って、「君は何だッ」と言った。
思わず、兄です、と言ったが正確には従兄だが、今は
それどころではない。

彼はうなづくと、多分脳震盪だと思うと、不安そうに言った。

39 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月08日(日)18時07分49秒
どうにもならない、いらだちと不安感で身が張り裂けそうな
思いで、のぞみを覗き込んでいた時、一瞬、のぞみが瞬きを
したように見えた。

なおも見つめていると薄目を開けているのがわかった・・・。
顔を近づけると、眼を閉じた・・・。

僕は、腕を伸ばしてのぞみの鼻を掴むと、思いきりねじ上げて
やった。

のぞみ「ギャアッ!?、痛よう〜!!。何すんのよう〜・・・」

のぞみはバネ仕掛けのように跳ね起きると、喚いた。

周りのものは口をあんぐりと開けて、のぞみを見つめた。

のぞみは僕の腕にすがりつくようにしてその場を逃れる
ように、歩き出した。

僕はのぞみの首を思いきり絞めてやりたい気分だった、
(このッ、タヌキめッ!)

広「ひとりで歩けないのかい・・・」

のぞみ「足を捻ったみたい」

広「捻ったのは足じゃなくて、顔だろ・・・」

のぞみ「どうせ、あたしはヒネタ顔をしてますようだ・・・」
頬っぺたをふくらませて言う。

二人は腕を組みながら歩いて行き、ひと気のない木陰に
腰をおろした。

40 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月09日(月)23時55分03秒
広「なぜ、あんな事をしたのかい・・・」
僕はちょっと詰問口調で言った。

のぞみ「・・・わざとじゃないわ。落ちた時一瞬目の前が
真っ黒になったのよ。それに、すごく悔しかったのよ。
すぐに起き上がる気になれなくて、そしたらみんなが
騒ぎ出して、引っ込みがつかなくなってしまって・・・」

そう言って舌をペロリと出す。

僕もこれ以上は何も言えない。
のぞみは、芝生の上に長々と寝そべった。

広「惜しかったな・・・もう少しで飛べたのに。でも、
ベリーロールで跳ぶ人なんて、少ないんだろ」

のぞみ「私は好きよ。ベリーロールで二メートルを
飛んだ女の人もいるのよ。」

広「僕の見たところ、この辺がジャマになったようだな・・・」

つい、いたずらっ気を起こして、やってしまった。
のぞみの胸のあたりを指でチョンと突っついた。それが、
偶然にも乳首をヒットしてしまった。

とたんにのぞみに素早い動きで手首をつかまえられてしまった。
41 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月10日(火)00時21分06秒
しまったと思った。

ところが、のぞみはつかまえた僕の手を自分の胸に
ギュッと押し付けた。
ぐにゃりとした柔らかいものが手のひらにあふれた・・・。

のぞみ「どうせ触るなら、みみっちいことしないで
これぐらい触ったらどう?」

と、半身を起こし僕の顔を覗き込みながら、のたまう。

広「・・・あれ、ブラジャー着けてないの・・・」
動揺を隠してそう言うと、

のぞみ「うん。いつも着けてないの、面倒で窮屈だから」

広「そのうち、垂れてくるぞ」

のぞみ「フウン。ねえ、垂れてた?」

広「え?・・・」

のぞみ「フフ、見たくせに・・・」

広「・・・・」

のぞみ「ああ、お腹がすいちゃった。ねえ、今何時頃?」

広「もうお昼だよ」

のぞみ「ヤッホー!、もうペコペコで何だってかぶり
つきたくなっちゃう」

そう言うと、いきなり僕の腕をつかまえると、ガブリと
噛みついてきた。

広「イテテテッ!、コラッよせ!?」

まったくもう、オレはのぞみの昼飯か!・・・。

のぞみは、僕の片腕をつかんでブラブラさせながら言う。

のぞみ「ねえねえ、お弁当一緒に食べようよ・・・」

広「僕の分、持ってきてないよ・・・」

のぞみ「私の半分あげるわ。じゃあ、お弁当取ってくる
から待ってて」

そう言うと勢いよく駆け出して行った。
42 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月10日(火)00時52分06秒
そんなのぞみを見送りながら、ため息が出る。

噛みつかれた腕が痛み出してくる。
もう、ホントに噛みつくんだから、アイツは何にを考えてるんだ。

しかし、こんな人の大勢いるところで、乳繰り合ってるのを
見られたらどう思われるか・・・。
いったい僕はここへ何しにきたんだろう・・・。

しばらくして、のぞみは自動販売機で買ったらしい、紙コップ
に入った飲み物と弁当の入ったバスケットをさげて戻って来た。

のぞみ「はい、広さんはコーヒーね。さあさあ、食べようよ。
オッ、さすがなっちだわ。こんなにサンドイッチを
詰め込んじゃって」

のぞみはいかにも楽しそうにバスケットを開けてはしゃいでいる。
見ると、ハムやカツをはさんだ旨そうなサンドイッチがぎっしり
と詰まっている。

のぞみはそれらをおう盛な食欲で次々と平らげていく。
43 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月12日(木)20時51分09秒
ふと、僕が見ていることに気がつくと、

のぞみ「ほら、ひろくんも食べなよ。美味しいよ」

おいらは、ひろくんかよッ・・・。

のぞみ「そうだ、食べさせてあげる。アーン・・・」

と言いつつ、自分も口をアーンと開ける。

広「よせったらッ、・・・ピクニックに来てるんじゃないぞ!」

のぞみ「アハハ、照れてやんの」

いったい僕はここへ何しに来たんだ・・・。
 
何やかやとあって、弁当をすますとのぞみは満足そうに
伸びをした。

のぞみ「さあ、これからひとっ走りしなくちゃ。リレーが
あるんよ。あたしアンカーなの」

広「一年のくせに、アンカーで走るの?」

のぞみ「うちの学校、トロいひとばっかなの」

のぞみから見れば、誰だってトロく見えるかな・・・。

44 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月12日(木)21時12分36秒
広「それで、勝てそうかい」

のぞみ「ダメかも、よその学校にとっても速い子がいるのよ。
だから、うちの学校は勝てそうもないわ」

そう言うと、のぞみは立ち上がった。

のぞみ「さあ、行かなくちゃ。ねえ、途中まで一緒に行こっ」

のぞみは僕の腕に自分の腕をからめてきて、二人は
腕を組んで歩き出した。

途中、さっきの砲丸投げの選手の男の子が僕を見つめている
ことに気がついた。
その視線には、明らかに殺意が込められているような・・・。

広「ねえ、あいつを知ってるかい・・・」
 あごで指し示す。

のぞみ「え?、ああ、知ってるわ。中学の時、一度話した
ことがあるわ」

広「ふうん。ねえ、砲丸投げの砲丸って、当たったら
痛いだろうね・・・」

のぞみ「痛いなんてものじゃないわ。当たったら、
死んじゃうわ。きっと・・・」

広「ふうん、死んじゃうか。やっぱり・・・」
45 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月12日(木)21時35分19秒
その砲丸投げの選手は、投てきを行ったがこちらに気を
とられたのか、砲丸はとんでもない方向に飛んで行き、

危なく当たりそうになった女子選手が悲鳴を上げて
逃げ惑った。

僕たちは足早にその場を離れた。
のぞみのことは、早く忘れたほうが身のためだぞ。
彼のためだけでなく、自戒をこめて思った・・・。

のぞみは他人の目などいっさい気にしないで、僕の腕に
すがりつきながら、脳天気にしゃべり続け、やがて
晴れやかな笑顔で手を振りながら走って行った。

後は、ブラブラと競技を見て回った。やがてリレーが
始まった。

オリンピックでもそうだけど、陸上の花形はやはりリレー
だと思う。あの興奮と熱気は何ともいえない。

四人の選手がスタートを切っていた。
46 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月12日(木)22時06分37秒
我校の選手を応援する少女たちの黄色い声援がグランド中に
響き渡る。

のぞみに負けないくらい色黒の選手がトップに立つ。
「りかちゃん!頑張ってェ〜!」

と、声援が飛ぶ。

三人の選手は、ほぼ一団となって進み、1人離されて
いるのが、のぞみの学校の選手のようだ。

やがて、レースは進み先頭の選手がアンカーにバトンタッチ
を行った。

三人の選手はバトンタッチをして走って行ったが、
のぞみはポツンと立ち尽くしてバトンの来るのを
待っている。

やや遅れて、ちっちゃい女の子が、それでも一生懸命に
のぞみに向かって走ってくる。

のぞみ「マリちゃ〜ん!!、頑張ってェ!」

と、のぞみはマリちゃんに大きく両手を振りながら
声援を送る。

僕も思わず、「マリちゃん、頑張れ!」と声援を送る。
47 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月12日(木)22時32分39秒
ようやく、のぞみはマリからバトンを受け取ると走り出した。

我校の選手を声援する女の子たちの叫び声で耳が痛いほどだ。

先頭の方を見てみると、ひとりの女の子が抜け出して、
他の選手をぐんぐんと引き離しはじめた。

どうも、この子がのぞみの言う速い子らしい。

後ろを見ると、三番手の選手にのぞみが迫っている。
よしッ!そこだ!、と見ているほうも思わず力が入る。

のぞみの、全力疾走で全身の筋肉が躍動する感じが
とても素晴らしい。

のぞみは先行する二人の選手を、四コーナーを回った
ところで捕らえにかかった。

そして、直線なかばで一気に抜き去った。
しかし、トップの女の子はすでにゴールインしていた。
48 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月12日(木)22時52分16秒
のぞみもゴールインすると、その女の子に両手を広げて
駆け寄ると抱きついた。

二人の抱擁はしばらく続いた。それを見た、周囲の
拍手が鳴り響いた。

さすがにのぞみだと思った。感動の場面を演出するなんて・・・。

二人に近づいて行くと、のぞみも気がついて、その女の子の
手を引っぱりながら駆け寄って来る。

僕は、のぞみの頭を撫でてやりながら言った。

広「よくやったな。最後のラストスパートはすごかったな、
感動したよ・・・」


49 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月13日(金)00時44分59秒
のぞみは笑顔でうなづくと、僕を女の子に紹介した。

のぞみ「この人、あたしのお兄さんみたいなひとよ。
これでも、W大生なの」

これでもっていうのはどういう意味だよ・・・。

のぞみ「この子、あさ美ちゃんよ。今は学校は違うけど
小学校の時からの仲良しなの」

そう言って、ちょっと顔がふっくらした感じだけど、
なかなか可愛い、その子の肩を抱いて見せる。

もしかして、プールで『人魚』になって一緒に泳いだ
仲だったりして・・・。

のぞみが近づいて来て、顔を寄せてきて、ささやいてくる。
汗の匂いがまじわった甘酸っぱい体臭が鼻をくすぐる。

のぞみ「あたしたちね、愛し合っているの・・・」

広「・・・なるほど」

何にが、なるほどなんだか・・・。


50 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月13日(金)01時18分16秒
のぞみ「ねえ、着替えてくるからちゃんとここで待ってるのよ」

そう言ってのぞみは、愛人の手を引いて駆け出して行った。

のぞみとあさ美の後ろ姿を見送りながら、愛に形はないと、
誰かが言っていたなと思う。

さっき、のぞみはあさ美に僕を、お兄さんみたいな人と
言ってたけど、なぜ従兄だと言わないのだろう・・・。

のぞみたちが見えなくなるのを見はからうように、トレーナー
を着た男が近づいて来た。

吉澤「やあ、ちょっといいかな・・・」

広「・・・何にか用ですか」

吉澤「その、私は陸上部の部長をやらせてもらっている
吉澤というものですが、のぞみクンについて、話したい
ことがあるのだけど・・・失礼だが、君とのぞみクンの
間柄は・・・」

広「従兄妹ですよ」

吉澤「なるほど・・・その、遠くから見させてもらったけど、
てっきり・・・」

広「ボーイフレンドだと思った・・・」

吉澤「そのとおりだけど、そうではないとしても、
君たちは仲の良い従兄妹どうしみたいだね」

広「だとしたら、どうなのですか」

何んなんだ、こいつは・・・。
51 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月13日(金)01時41分17秒
吉澤「つまり、その・・・のぞみクンは陸上の選手として
まれにみる素質を持っていると私は思う。彼女が中学の
頃から目をつけていたんだ。磨きをかければ、インターハイ
や全日本はおろか、オリンピックも夢ではない」

広「・・・それはけっこうなことですね。それで、のぞみ
共々オリンピックを目指しているわけですか。」

吉澤「そこだよ、君。問題はのぞみクンが部活に熱心じゃ
ないんだ。朝練にも顔を出してくれないし、」

朝、弱いもんな・・・。

吉澤「この大会も拝み倒して、ようやく引っ張り出した
始末なんだ」

広「そこを何とかするのが部長の役目でしょうが・・・」

吉澤「そう言うが、君も従兄なら、のぞみという娘が
どういう性格か、わかると思うが・・・」

それはもう、イヤというほど・・・。
52 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月15日(日)23時52分20秒
吉澤「私もあの子をどうしたらいいのか、弱っているんだ。
スパルタをやって言うことを聞くような玉じゃないし」

玉かよッ。

広「わかりましたよ。悪い虫がくっついているのがいけないと
言うわけでしょ。あんまり仲良くするなとおっしゃるのでしょう」

吉澤「いやいや、そんなつもりはないよ。そんなことで、
良くなるとは思えんね。そこで、君に頼むのだが、あの子に
オリンピックを目指して、部活に身を入れてくれるように
君から説得して欲しいのだが、何とか頼まれてくれないかな」

その時、のぞみが近づいて来るのが見えて、吉澤は、何とか
頼むよ。と言い残して走り去った。

近づいて来たのぞみは、トレーナーではなく、白い上着に
白いショートパンツ姿で現れた。
身長はそれほど高くないが、均整が取れたスタイル、長い
脚。その褐色の肌と白いパンツが眩しい。

走り去る部長の姿を見たのぞみは、

のぞみ「よっすぃーは何にを吹き込んでいったの・・・」

あいつは、よっすぃーかよッ。

53 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月16日(月)00時17分11秒
広「部長さん、のぞみと一緒にオリンピックに行くんだと
張り切っていたよ」

のぞみ「どうせ、そんなこったろうと思ったわ。・・・、
今はオリンピックなんて興味ないわ。だいいち、このあたしが
オリンピックなんて行けるわけ無いじゃない」

それはそうだけど、でも、のぞみを見ていると何か未知数なもの
を秘めているような気がしてくる。

広「さあ、もう帰ろう」

のぞみ「ねえ、ねえ〜、せっかく来たのだから、どこか
寄って行こうよォ〜」

そう言って、僕の腕をつかんで振りまわす。

広「寄るって、どこにだよ・・・」

のぞみ「そうだッ、踊りに行こう!」

広「やれやれ、一日中飛び跳ねてたり走っていたりしてたのに、
まだ足りないのかい」

のぞみ「ねえねえ、ディスコに行きたいの。お願いだから
連れてって。そうだ!、ジュリアナ東京に行こうよ」

広「何、バカな事を言ってんだい。ジュリアナなんて当の昔に
無くなっているよ・・・」

のぞみ「ふうん、でもディスコのひとつやふたつは知らない
わけじゃないでしょ。」

広「そりゃまあ、心当たりが無いこともないけど・・・」

のぞみ「やったァ!じゃあ決まりね」
54 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月16日(月)00時40分18秒
広「やれやれ・・・それはそうと、さっきの愛人の女の子は
どうしたの」

のぞみ「あ、あの子ね、あの子にはあたしこれからデートが
あるからって言って、帰したわ」

広「デートねェ・・・、でも、デートなんて言ったら、彼女
焼いてるんじゃないの・・・」

のぞみ「でもないわ。あの子あたしが他の女の子と仲良くしてると
ふくれてるけど、男の子相手だと平気なの。ヘンなの・・・」

ヘンなのは、そっちでしょ・・・。

それで、電車で大学の近くの踊れる所に行った。
そこでのぞみは、熱狂的、かつ、精力的に踊りまくった。
圧倒されてしまう。

もちろん電話は入れてあるが、あまり遅くなっては、なつみさんに
心配かけるので、しぶるのぞみを電車に乗せるのに一苦労だった。

駅に着くまで、のぞみはずっと黙っていて、今日一日の余韻に
浸っているみたいだった・・・。
55 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月16日(月)19時34分53秒
中央線のA大近くの駅で降りて、家まで十数分だった。
大型スーパーの横を抜けて行って、近道の神社の中を
歩いて行く二人は、自然と腕を組んでいた。

時刻は夜の9時過ぎだった。

家に近づいて行く。

のぞみ「・・・わたしたち、恋人どうしみたい」

ごほ、ごほッと、思わず咳き込んでしまう。

家に着いて、門のなかに入る。

立ち止まる、のぞみ。

のぞみ「恋人どうしなら、こう言うところね・・・、送って
くれてありがとう。もう帰っていいわ・・・」

広「・・・僕の家もここなんだけど・・・」

僕を無視してのぞみは、

のぞみ「バイバイする前に、おやすみのキスをして・・・」

と、眼を閉じて、あごをツンと上へ向ける。

早く家に入りたかったこともあるけど、つい、挑発にのってしまい、
ほんの軽く、のぞみの唇に僕の唇が触れた。

すると、のぞみは眼を開けると、突然僕の首にしがみついてくる。

のぞみ「そんな、小鳥がするようなキスじゃダメ!、もっと、
いっぱいして!・・・」

僕らは、強く唇をかさねた。

のぞみの唇からは、熟しきらない果実のような香りがした。
・・・などと、その場の雰囲気に溺れたため、後でエライ
ハメに落ちいった・・・。

56 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月16日(月)20時34分21秒
ふと、戸をしめるような音がしたので、のぞみの唇から離れて
そっちを見ると、灯かりのついたキッチンの窓が見えた。

まだ、陶酔しているのぞみの手を引っ張って家に入る。

玄関に入ると、なつみさんが出てきた。
「ただいまッ!」

のぞみが元気のいい声を出した。

なつみ「お帰りなさい・・・」

のぞみ「エヘヘ、遅くなっちゃった。」

なつみ「・・・シチューを作ったの。今、温めているとこよ」

のぞみ「わあー、ビーフシチュー?いい匂い・・・」

のぞみは無邪気にはしゃぎながらキッチンに入ると、テーブルに
ついた。僕も続いた。

なつみさんは、シチューを二人の深皿につぐと、自分のにも
ついで、テーブルについた。

僕らが帰るまで食べないで待っていてくれたのかと思うと、
何だか申し訳ないような気がする。

その時、小さい犬が、のぞみの足にじゃれついてくる。

のぞみ「あら〜、メロンちゃん!久しぶり〜!」
と、犬を抱き上げるのぞみ。

なつみ「今日、動物病院から連れ帰ったの・・・」

その、ミニチュア・ダックスフンドは二、三日前病気で
動物病院に預けていたのだ。

のぞみ「う〜ん、メロンちゃん、直って良かったでちゅネ〜!
愛してまちゅ〜です」

と言って、メロンとキスをするのぞみ。
57 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月16日(月)21時06分00秒
メロンとキスをするのぞみを見て、変な気持ちになる。
のぞみはいったい、どんなつもりで僕とキスをしたのだ・・・。

まさか、犬のメロンと同じだったりして・・・。

後は食べながら、今日一日の事をひとりでしゃべり続けるのぞみ。

のぞみ「後は、ヒロくんにあちこち連れってもらって、とっても
楽しかったわ。ねえ、ヒロくん・・・」

ヒロくんでした・・・。

食事がすんで、二人で後片付けをしながらまだしゃべっているのぞみ。
そんな二人を見ながら、何だか今日は早くベッドに入りたい感じ。
気疲れというやつだな・・・。

広「じゃあ、僕は疲れたか先に休ませてもらうよ・・・」

のぞみ「子供は早く寝なさいよ〜」

はいはい、わかりました・・・。

なつみ「おやすみなさい・・・」

なつみさんは皿を拭きながら、向うをむいたまま言った。

58 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月16日(月)23時01分17秒
自分の部屋に入って、ベッドの上に腰を降ろす。

部屋は綺麗に片づけられていて、チリひとつない。
ベッドの上には洗濯された物がきちんとたたまれて乗っている。

出来るだけ片づけるようにはしてるけど、つい、おっくうに
なるので、なつみさんがいてくれると本当に助かる。

ふと、帰ってから、なつみさんが一度も僕の顔を見ようとも
しないことに、気がついた・・・。
少し、気になるが・・・僕の思い過ごしかもしれない。

服を脱いで、お気に入りのマンガ本を持ってベッドに入る。
本は好きで、幼い頃から何でも読んできたが、なんといっても
マンガに限りますな。

女性ばかりのこの家で、今読んでいるのはのぞみの部屋から
失敬してきた少女マンガなのだけど、少女マンガなんか読むと
目の玉が腐るなどと、言う人もいるけど、けっこう面白い。


59 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月16日(月)23時21分37秒
何か、予感めいたものがなかったわけではない。

今日の事を思い出していた。いきなり朝から、のぞみのヌードを
見てしまうし、白いお尻も、バッチリ見たし、自分の意思では
ないとは言え、のぞみのオッパイをモミモミしてしまうは、
挑発に乗ってしまい、のぞみとディープなキスをしてしまうし、

あまりも色々な事が有りすぎる。それも全部、のぞみがらみだ・・・。
もう、気やすく、のんちゃんと呼べない気がする。

しばらく本を読んでいて、疲れからウトウトしかけた時だった。
家の中は静かで、なつみさんものぞみも寝たものと思っていた。

小さく、コンコンとノックの音がしたような気がした・・・。
60 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月16日(月)23時51分36秒
今、思えばこの時、返事をするべきではなかった。

広「誰れ?・・・」

ドアがゆっくりと開いて、薄暗い中にのぞみが姿を現した。

例のTシャツだけを身につけている。
いっぺんに眼が覚める。

のぞみは部屋の中に入って来て、ベッドの横に立った。

広「何に・・・」

のぞみ「ちょっと、お話ししたいの・・・」

自分の部屋に帰れと、言うべきだった。

広「いいけど・・・」

いきなり、のぞみはTシャツをパッと脱いでしまう。
あまりのことに言葉も出ない・・・。

その下には、腰に白いショーツだけを身につけている。
すぐに、のぞみはそのショーツに両手をかけた。

広「そ、それは脱がなくていい・・・」
アワを食って言ったが・・・。

のぞみ「それって、これのこと・・・」

と、脱いだショーツを指でつまんで、ヒラヒラさせる。 
61 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月17日(火)00時16分01秒
のぞみはそれを後ろにポーンと放ると、べっドに腰を降ろす。

のぞみ「寒いから、中に入れて・・・」

6月とはいえ、この真夜中に、真っ裸なのだから寒いに決まってる・・・。

しかし、入れてと言われても・・・。

のぞみ「早くして・・・」

しかたなく、シーツを上げたら、スルリとベッドの中に
入って来て、気がついたら、のぞみは僕の腕の中に
スッポリとおさまっていた。

広「・・・で、どんな話があるの・・・」

ここは何としても、理性を保たなくては。

のぞみ「おバカさんね。こんな格好でどんな話をすると言うの・・・」

格好・・・僕はパンツひとつで、腕の中の、のぞみはまっ裸・・・。
62 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月18日(水)22時27分21秒
僕は、こう見えても高校の時、結構遊んだ口で、こういう場面、
生まれたままの姿の女の子と一緒にベッドの中にいるというのは、
何度かある。

しかし、ここは伯母の家なのだ。そして、僕の腕の中にいる、
生まれたままの姿の女の子は、伯母の娘である、従妹(いとこ)なのだ。

いくら、僕だって常識は知っている。理性だって、まだ保っている
はずだと・・・思う。

のぞみ「ねえ、決心はついた・・・」

そう言って、体をピッタリとくっつけてくる。のぞみの粘りつく
ような肌が全身にからみついてくる・・・。

どんな決心なんだ・・・このまま男の本能のままにまかせて、
行くところまで行ってしまえば、考えるだけで恐ろしい・・・。

半ばヤケクソで、ガバッとのぞみを強く抱きしめてやる。
のぞみは、なすがままだ。そのはずで、敵はその気なのだから・・・。

広「きっと、寂しいんだな。このまま髪を撫でていてあげるから、
安心して、眠るといいよ・・・」

と、赤ん坊をあやす要領で、髪を撫でてやる。

のぞみ「いつまで、そうしてられるかしら・・・」

63 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月18日(水)23時12分02秒
 抱いて・・・。

 あのね・・・僕は男の三悪を背負っているんだ・・・・。

 何によ、それ。

 包茎・早漏・短小・・・。

 可哀相。病気なのね・・・。

 どっちが病気なんだか・・・。

 大丈夫。わたしが直してあげる。

 おまけに、マザコンのうえにロリコンなんだ。

 わたしがママになってあげるわ。
 もうひとつは、あたしで我慢して・・・。

 僕らはいとこどうしなんだよ・・・。

 「いとこどうしの結婚は鴨の味」っていうのを知ってる?

 どこで、そんな言葉を聴いてきたんだよ・・・。

 もう、おしゃべりはたくさん・・・・。
 
64 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月18日(水)23時29分14秒
「いとこ同士の結婚は鴨の味」という言葉について。

それほど、味が良くて、良いものだと昔から言われているそうです。
理由は不明ですが、何となくわかるような気もしますが・・・。
65 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月19日(木)00時04分05秒
夜明け前、のぞみは寝ている僕の肩に歯を当て、噛んだ。

痛みで、目が覚めると、のぞみは起き上がってベッドから降りる。

のぞみ「広さんは、病気じゃなかったわよ・・・」

そう言い残して、部屋を出て行った。

病気は・・・そっちです。

後は、また眠りに落ち込む。


「広さん・・・」

その声で、眼がさめて飛び起きる。眼をこすりながらドアのほう
を見ると、なつみさんがドアを少し開けて、首を出していた。

なつみ「ノックしても、中々起きないから・・・今日はどうするの
起こして悪かったかしら・・・」

広「ありがとう・・・出なくちゃいけない講義があるんだ」

なつみ「じゃあ、朝食出来てるわ」

なつみさんが行った後、起き出して服を着る。
ふと、床に白いものが落ちていることに気がつく。

指でつまみ上げてみると、それは昨夜、のぞみが脱いでいった、
ショーツだった・・・。

広「あいつ・・・またパンツはくの忘れてる・・・」
66 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月19日(木)00時48分36秒
キッチン兼食堂に入って、高校の制服を着てテーブルについている
のぞみを見て、一瞬ドキリとする、なんだか制服姿の、のぞみが、
やけに幼く見えたからだ・・・。

のぞみ「おはよう。ねぼ助さん・・・」

何事もなかったかのような明るい声だ。小麦色の肌が
輝いて見える。

テーブルについた僕の表情をうかがうように、チラッチラッと
視線を送ってくる。

なつみ「のんちゃん、もう行かないと・・・」

のぞみ「いけないッ、遅れちゃいそう」

と、のぞみはカバンを手にしたが、なつみさんが背を向けている
すきに、僕の頬に唇をさっとつけてから、

のぞみ「行ってきま〜す」

と元気よく出て行った。

なんだか、頭が痛くなってきた・・・。
もう、今日はサボりだ。外に出かける気がしない。

部屋に戻って、服を脱いでまたベッドの中にもぐりこむ。

ベッドの中には、のぞみの残り香がほのかにただよっている。

のぞみの、しなやかな肢体、なめらかでいて粘りついてくる
ような肌を思い出してしまう。
67 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月19日(木)20時37分28秒
思わず、起き上がって頭をかかえた。

もしかしたら、自分は犬のメロンより劣る人間かもしれない。
飛び込んできたのは、向こうかもしれないが、やはりこの責任は
自分にある。

のぞみのことを自分はどう思っていたのだろう・・・。
こうなってみると、やはり愛していたのかもしれない。
今後、どういう結果になろうとも、責任をとるつもりだ。
結婚するにしても、まだ先の話だろうが・・・。

そう思うと、多少気分も晴れて、また眠りに落ちた。

ひとつ、肝心なことを忘れてるというか、考えないように
しているというか・・・。

眼がさめたのは、午後をだいぶ過ぎていた。
部屋を出たが、まだ、なんだか頭が重い。

浴室から、洗濯機をまわす音がする。なつみさんの姿は
見えないが、今日は出かけなかったようだ。

キッチンに入って、コーヒーを入れるため湯をわかそうと、ケットル
を火にかける。

テーブルについて、ボンヤリとのぞみのことを考える。
68 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月19日(木)21時13分12秒
のぞみは、僕が見たいと思っていたから、生まれたままの姿を
見せたのだし、僕が触れたいと思ったから、乳房を僕の手に
あずけたのだし、僕がキスしたいと思ったから、キスしたのだし、

僕が、抱きたいと思ったから、抱かれたのだと思う・・・。

ピーッ!という音で、湯が沸いたのでコーヒーを入れる。
なつみさんは、ドリップを使って本格的にコーヒーを入れて
くれるが、それも面倒なのでインスタントですます。

なつみさんが僕の行為を知ったら、僕のことを軽蔑して、
二度と口も利いてくれないかもしれない・・・。しかし、
誠意をもって必死に訴えたら、許してくれるかもしれない。

問題は、あのひと・・・伯母がこのことを知ったら・・・。

たとえ、土壇場に引き据えられて、打ち首になったとしても、
文句を言える立場ではない・・・。

もし、伯母が外国に行っていなくて、家に居れば、こんなことには
ならなかっただろうに・・・。
伯母がいなくて、良かったのか、悪かったのか・・・。

69 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月19日(木)21時38分59秒
考えてみれば、伯母とのぞみは親子とはいえ、よく似ている。

立居振舞、言動、色んなことで人の度肝を抜くところなどそっくりだ。

違うところと言えば、伯母は抜けるような白い肌で、のぞみは小麦色に
日焼けしているところだ。この違いは何だか意味があるような気がする。

それにしてもだ、
「伯母がいたら、大変なことになっていたな・・・」
知らず知らずのうち、声になっていた。

裕子「あたしがいたら、どうしたって?」

その声に、ギョッとなって、振り向いたら、そこに伯母がいた・・・。

心臓が口から飛び出しそうになり、思わず立ち上がる!?

広「いつ、いつ帰ってたんですかァ・・・」

裕子「さっきよ。あたしがいない間、いい子にしてた・・・」

とても、いい子なんてものじゃ・・・。

伯母はいつものように、ひそやかな笑みをうかべながら
近づいてくる。

知らず知らずのうちに、後ずさりしていた・・・。


 この項、終わり。
70 名前:メロンな日々。 投稿日:2002年09月19日(木)21時57分31秒
話は前後しますが、続きは、1、の7月の項になります。

ヒロインの、のぞみのモデルは一応、辻希美さんですが、現在の
辻希美、ののちゃんのイメージとはかけ離れていますが、

一年か、二年して美しく成長した辻希美さんをイメージして
書きました。

この後は、なつみとのぞみの姉妹のことを書きたいと思っています。
71 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月21日(土)16時23分36秒
第二項、「マロンの思い」 

 7月

 のぞみは家に帰り着くと、あわただしく家の中へ入って行ったが、
案の定、誰もいなかった。

ため息をついてキッチンの中をのぞいて見ると、テーブルの上に
折込広告の裏に書いた置手紙がのっていた。それには、

『のぞみ、ゴメン。急用が出来たんだ。来週には必ず
うめあわせをするから。 ヒロ。』

ふ〜ん、どんな急用なんだか・・・と、つぶやきながらのぞみは
置手紙で紙飛行機を折ると、それを壁に向かって飛ばす。
グシャリッと紙飛行機は壁にぶつかって下に落ちた。

それを拾うと、二階の自分の部屋に入った。紙飛行機を
広げて壁にピンでとめると、それに投げキッスをして、
来週を楽しみにしておるゾ、とつぶやく。

のぞみは、服を脱ぎ、下着も何かも脱ぎ捨てると、
まっぱのまま、シャワーを浴びるため下に降りる。
72 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月21日(土)18時13分04秒
 土曜日の夕方・・・やがて夕やみがせまってきて、あたりが
暗くなっても誰も帰ってこなかった。

ママは遅くなると言っていたし、ヒロはいつ帰ってくるのか
わからない。姉の、なっちも何の連絡も無い。

ママは携帯電話を持ってない。それにならったのかどうか、
なっちも持ってない。ママになぜ持たないのか理由を聞いたら
束縛されたくないのだそうだ。

のぞみは、どうしても必要だと、何とか持たせてもらっている。
ヒロも持ってないし、相手が持ってないのでは連絡の取りようが無い。

仕方ないので、キッチンに入って夕食の仕度にとりかかる。
ママは、もちろん料理なんかしない。なっちにすべて任せてる。

わたしだって、なっちがいない時は自分で作るしかない。
カレーとか、うどんとか、焼き飯とかレパートリーは少ないけど。

冷蔵庫を覗いてみると、材料は揃っているようだ。
今夜は何んにしようかなと、考えていた時、外で車の音がしたようなので
キッチンの窓を開けて見ると、タクシーが止まっているのが見えた。
73 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月21日(土)18時44分03秒
急いで、玄関から外に出て見ると、門の所になっちが立っていた。

なつみ「のんちゃん・・・悪いけど、タクシーのお金が少し
たりないの・・・」

のぞみはうなづくと、自分の部屋へとって返して、サイフを
持って来る。足りるかどうか心配だったが、なんとか足りた。

料金を払って玄関に入ると、なっちはまだ玄関にボンヤリと
佇んでいた。

のぞみ「どうしたの・・・顔色が悪いわ。気分でも悪いの・・・」

なっちの額に手をやって見ると少し熱があるようだ。これまで、
タクシーで帰るなんて、めったになかったのに・・・。

なつみ「何でもないわ・・・少し疲れてるだけよ」

そう言って、靴を脱ごうとした時に、ふらついて倒れそうになる、
あわてて抱き止める。

のぞみ「本当に変よ。どこか悪いの?お医者さんを呼ぼうか・・・」

なつみ「・・・大丈夫、ちょっと目まいがしただけよ。休んでいれば
直るわ・・・」
74 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月21日(土)19時33分57秒
のぞみは、なっちの肩を抱きかかえて部屋に連れて行こうとした。

なつみ「大丈夫、ひとりで行けるわ・・・」

と、危なっかしい足取りで階段を上って行く。

のぞみはキッチンに戻ったが、なっちのことが気になって
何にも手につかない。体のこともだが、近頃、何だか
元気がなかったし、今朝のこともある。

朝、珍しくママと広が早く家を出た後、なっちはのぞみに、
言いにくそうにこう言った。

『のんちゃん、お金を貸して欲しいの・・・』

のぞみが、いくらぐらいと聴いたら、一万円と言う。

そんな大金、今ののぞみにあるはずがないのだが、なっちのために
何とかしたいと思って、のぞみはキッチンに行くと、ある引き出しを
開けた。

そこには、何か代金が必要な時のために、いつもお金を入れてある。
お金を取り出して数えると、二万円ほどあった。

のぞみはそのお金を全部、持って行って、なっちの手に握らした。
なっちは、なぜかそのお金をどうしたのかと聞きもしないで、礼を
言うと、家を出て行った。どこか、変だった。

もちろん、そのお金はのぞみが勝手に使っていいものではない。
実は、のぞみは前にも一度、二千円ほど借りたことがあった。
75 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月21日(土)20時04分51秒
もちろん、すぐに返しておくつもりだった。ところが、運の悪いことに、
その夜、ママにわかってしまった。

ママは、ほかの事は、おう揚なのにお金のことだけは厳しかった。

ママは、有無を言わせずに、冷酷にのぞみに言い渡した。

『あなたは、これから三ヶ月間、お小づかいは無しにするわ・・・』

のぞみは呆然としたが、否応も無い。
まだ、中学生だったから、バイトも出来ない。どうしょうもないから、
なっちに泣きつくしかなかった・・・。

これまで、なっちがのぞみにお金を貸してくれと言ったことなど、
一度たりと無い。のぞみがいつも借りぱなっしなのだ。

そんな、なっちがお金を貸してくれなんて、よほどの事があるに違いない。
のぞみとしては、何とかなっちの役に立ちたかったのだ。

二千円で三ヶ月の小づかい無しだから、二万円も使い込んだのが知れたら、
三年間は小づかい無しかもしれない・・・。

二万円も返す当てなどあるわけがない、バイトをするにしても、
一ヶ月はかかりそうだ。今度はヒロに泣きつくしかないと思う。
76 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月22日(日)02時45分14秒
のぞみは、やはりなっちのことがどうしても気になるので、
エプロンを外すと、姉の部屋へ行って見ることにする。

ドアを開けて見ると、なつみはハンドバックを床に投げ出したまま、
ベッドの上に、外出着のままで、うつ伏せに倒れこんでいた。

いつもは、何事もきちんとしないではいられないのに・・・。

のぞみはベッドのわきにひざまずくと、なつみの肩に手おいた。

のぞみ「苦しいの?・・・何か、薬でも取ってこようか・・・」

なつみ「・・・出てって、ひとりにして・・・」

ベッドに顔をつけたまま、くぐこもった声で言う。

のぞみ「どうしちゃったの・・・いつもは出て行けなんて、
意地悪は言わないのに・・・」

いつもは綺麗に梳かしてツヤツヤと輝いている、なつみの長い髪も
乱れきっていて、パサパサして汚れたように見えた。

のぞみ「やっぱり、お医者さんを呼ぶわ・・・」

なつみ「イヤッ!!」

そう言って、イヤイヤをするように首を強く振る。

のぞみは、なつみのその強い口調にとまどいを隠せなかった。
そんな、なつみにしばらくそっとしといてあげた方が良いと思い、
部屋を出て行こうとした時、

なつみ「のぞみ・・・」

と、なつみが呼んだので、戻って来てベッドのわきにひざまずいた。

のぞみ「何〜に?」

 
77 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月22日(日)03時14分33秒
なつみは、腕を伸ばしてのぞみの手を握りしめてくる。

なつみ「ひとりにしないで・・・お願いだから、側にいて・・・」

思わず、のぞみは笑みをもらした。

のぞみ「ホントにおかしいゾ。出て行けって言ったと思ったら、
今度は出て行くな、ひとりにしないで、なんて言うし、
いったい、何にがあったの・・・」

なつみ「今日・・・病院に行ったの・・・」

のぞみ「病院?、やっぱりどこか悪いのね、で、何て言われたの?」

突然、なつみの両眼から涙があふれ出した。

握りしめている、のぞみの手を自分の頬に押し付けて、声をころして
泣いているなつみを見ていると、のぞみは胸を締めつけられるようだった。

のぞみ「何にがあったのか話して・・・かわいい妹にも話せない
ことなの・・・」

なつみ「わたし・・・おろしたの・・・」

のぞみ「おろした?・・・」

最初、のぞみは何んのことだか、わからなかった。

なつみ「赤ちゃんを・・・堕したの・・・」
78 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月22日(日)03時45分36秒
赤ちゃんを、堕した・・・。

のぞみ「ウソよ・・・」

ウソや冗談でないことは、なつみを見れば、わかりすぎるほど、
わかっているのだけど・・・。

なつみ「さみしかったの・・・。それで、その男(ひと)に
ついて行ったの。ホテルに入った時怖くなったの・・・
戻ろうとしたの、でも、出来なかった・・・」

のぞみ「・・・・」

なつみ「一度だけだったの、後で自分が間違っているとわかったわ。
それっきりそのひととは会っていないわ。そのうち、生理がこない
ことに気がついたの・・・」

のぞみは、その意味がわかって、唇をかみ締めた。

なつみ「妊娠しているとわかった時、どうしていいかわからなかった、
どうしたらいいのか・・・」

なぜ、自分やママに言ってくれなかったのかと、喉まで出かかったが、
堪えた。自分がその立場なら、果たして、姉やママに言えたかどうか
わからないと、のぞみは思った。

79 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月24日(火)22時22分22秒
なつみ「考えた末に、あの男(ひと)に会いにいったの。正直に
話したわ・・・あのひとに何かしてもらうつもりはなかったわ。
あのひとの言うとおりにするつもりだったの・・・」

のぞみ「何て言ったの・・・」

なつみ「私がバカだったのね・・・あのひと、ひどいことを言ったわ。
どこの誰の子供だかわからないものに、責任はもてないって・・・、
そして、結局お金が目当てなんだろう、これしか無いって言って、
私に一万円札を投げてよこして、もう二度と会いたくないって言って
逃げて行ったわ・・・」

のぞみ「まさか、そのお金を使ったんじゃ・・・」

なつみは首を振った。

なつみ「・・・トイレに流したわ」

のぞみはため息をついて、うなづいた。

なつみ「私にはとても、生めなかったわ。あのひとをどうしても
好きになれなかったし、今、このまま赤ちゃんを生めば、生まれて
くる赤ちゃんが可哀相だと思ったの。
それで、堕すつもりでいたのだけど、中々決心がつかなくて・・・
それが、今朝、吐きそうになったの。それで、思いきって大学の
近くの病院へ行ったの・・・」
80 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月24日(火)23時20分31秒
のぞみ「その男の名前はなんていうの・・・」

なつみは顔を上げてのぞみを見た。のぞみの顔は、まるで能面の
ように表情がなくて、今まで見たことがないような顔をしていた。

のぞみ「男の名前よ・・・」

なつみは小さく首を振った。だんだんのぞみの顔が紅潮してきて、
それとともに、険しい顔になってくる。

のぞみ「まさか、名前もわからないような、どこの馬の骨か
わからない男を相手にしたんじゃないんでしょ!?」

なつみは、怯えたように首を振る。

のぞみ「なぜ、黙っているの!さあッ!男の名前、住所、電話番号を
教えて!、どうしたの?あたしの言うことがわからないの!?」

なつみは、のぞみの剣幕にただ首を振るだけだった。

のぞみ「あたしは、なっちをこんなひどい目にあわせて、自分は
のうのうとしている男を、絶対に許さない・・・なっちをおもちゃに
しといて、誰の子だかわからない、お金が目当てなんだろうと、
よくも、よくも言えたもんだわ・・・・」

のぞみは完全に形相が変わっていて、歯噛みをしながら、なつみに
詰め寄った。

のぞみ「あたしはね!、そんな男が今この世に生きて、空気を吸って
いるのさえ、我慢出来ないわ!!」

のぞみは、なつみの首をあたりを両手で掴まえて揺さぶった。

のぞみ「さあッ、早く男の名前と住所を言って!、たとえ、
なっちが許しても、あたしは絶対に許さない・・・これから
行って、そのド畜生の首を絞めてやる・・・・」
81 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月25日(水)09時48分41秒
なんか新鮮でおもしろいです。
期待してますのでガンバッテください。
82 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月25日(水)12時26分20秒
81 さん、ありがとうございます。
   ものすごく励みになります。

文章以前の問題で、誤字脱字が多くて弱っています。
何とかしたいと思ってはいるのですが・・・。
83 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月25日(水)13時22分20秒
錯乱した、のぞみはなつみの首を締めていた。

なつみ「のんちゃん・・・苦しいわ、離して・・・」

のぞみは、ハッと我にかえって、なつみの体から手を離した。

二人は少しの間、息をはずませていた。 やがて、なつみが
おずおずと口をひらいた。

なつみ「のぞみの気持ちはとても嬉しいけど・・・もう、
すんだことなのよ」

のぞみ「なにがすんでいるの、現になっちはこんなに
苦しんでいるのに・・・」

なつみ「・・・もういいのよ。私も悪かったのだから。
思い出したくないわ・・・早く忘れたいの」

のぞみ「・・・・」

なつみは腕を伸ばしてのぞみの手を取ると、それを両手で
包み込むようにしてはさんだ。

なつみ「ありがとう。のんちゃんにみんな話してしまったら、
気分が晴れたわ。本当にありがとう」

のぞみはさっきまでの、たかぶった気持ちはどこかへ行って
しまい、気が抜けたようになつみを見つめた。

なつみ「さっきは、とても怖かったわ」

のぞみ「え?・・・」

なつみ「のんちゃんよ・・・まるで、仁王様だって
絞め殺しそうな勢いだったわ」

のぞみ「こいつメッ」

のぞみはそう言って、なつみの額を指先でつっついた。

なつみはようやく、笑顔を見せた。
84 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月25日(水)17時35分30秒
のぞみ「いけない、夕食を作らなくちゃ。食事、すぐ出来るわ
食べる?」

なつみ「食べたくない・・・」

のぞみ「そう。・・・お腹、痛くない?」

なつみは小さくうなづいた。

のぞみ「そう。じゃあ、ゆっくり休めばいいわ。パジャマに
着替えたら」

のぞみは、立って、パジャマを出してくると、手伝って
外出着を脱がせ、パジャマを着せる。
なつみはちょっと恥ずかしそうにしてパジャマを身につける。

のぞみ「ちょっとまって」

のぞみはブラシを持ってきて、ベッドの上に正座している
なつみの後ろにまわると、乱れた髪を綺麗に梳いてあげる。

のぞみは、髪を梳いてあげながら言った。

のぞみ「なっちって・・・あんな男の言いなりになるなんて、
どうしようもない、おバカさんよ。・・・でも、そんな、
おバカさんが大好き・・・」

のぞみは、なつみの首に両手をまわして、背中にもたれかかる。

ふと、なつみの肩がふるえていることに気づく。

のぞみ「どうしたの・・・寒いの?」


85 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月25日(水)18時10分54秒
のぞみが腕を離して聞くと、なつみは小さく首を振りながら
振り向くと、ベッドにすわっているのぞみの膝にすがりついてくる。

のぞみはそんな、なつみの髪を指で撫でながら言った。

のぞみ「フフ、どちらがお姉さんなのかな・・・甘えん坊さん」

すると、なつみは顔を上げると、のぞみに抱きついてくる。
二人はベッドの上に重なり合って倒れこんだ。

なつみは、のぞみの目を覗き込みながら言った。

なつみ「みんな、嫌い、大嫌いッ!・・・好きなのは、のぞみだけ。
のぞみが一番大好き!・・・」

のぞみ「・・・わたしも、なっちが一番好きよ・・・」

なつみ「広さんよりも・・・」

のぞみ「・・・もちろんよ!、なっちはわたしの一番大切な
ひとよ・・・」

なつみの顔が近づいてきて、唇と唇が触れる。
のぞみも、なつみの背中にまわした手に力をこめて、応えた。

86 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月26日(木)20時06分18秒
やがて、なつみはのぞみの腕の中で寝息をたてはじめた。

のぞみはベッドから降りた。なつみの、どこか痛むせいなのか、
背中を曲げている寝姿は苦しげに見えて、のぞみは胸が痛んだ。

なつみの、『さみしかったの・・・』という言葉がのぞみには、
こたえた。この頃、アイツのことが頭の中をしめていたことは
事実だったし、それを知ったなつみの気持ちを考えていなかった
ことを、のぞみは思い知らされた。

唇には、まだなつみの唇の感触が残っている。二人だけの姉妹、
幼いころ、夜、二人で布団の中にもぐり込んで、行った秘めやかな
遊び。唇をかさね合い、お互いの体をまさぐり合った行為は、
二人だけの秘密だった。

それは、今ののぞみにとって遠い昔の出来事のように思えて
いたのだが・・・。 なつみにとっては・・・。

のぞみはキッチンに入って、夕食の仕度にかかる。遅くなったので、
簡単なもの、といっても簡単なものしか作れないのだが、
炊き込みご飯にする。

野菜と肉をきざんで入れ、味醂、醤油、調味料を入れて、
炊き込めば、OKというわけだ。
なつみのために別にお粥を作っておく。



87 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月26日(木)21時11分35秒
夜は、深まっていくというのに、誰も帰ってこない。

のぞみは、なっちが具合が悪いというのに、今だに帰らない
ママと広が恨めしかった。まさか、二人が一緒にどこかの
パーティーに行っているとは、思いにも至らなかった。

のぞみは一人ぼっちで、味気ない夕食をぼそぼそとすますと、
自分の部屋に入る。

ベッドに寝ころがって、なっちのことを考えていると、また、
怒りがこみ上げてくる。どこのどいつか知らないけれど、相手が
なっちでよかった。このあたしが相手なら、今頃はこの世の空気
は吸えなくなっていたところだ・・・。

夜半過ぎ、胸騒ぎがして、なっちの部屋へ様子を見に行って、
なっちが、うめき声を上げながら苦しんでいるのを見たのぞみは
ちゅうちょなく、医者を呼ぶために電話をかけた。

医者は、直ぐに車をとばして駆けつけてくれた。

のぞみ「先生・・・こんな真夜中にすみません・・・」

つんく「そんなことより、なつみさんは・・・」

医者はなつみの部屋へ上がっていった。

医者はのぞみたちの小さい頃からのかかりつけだった。
本名は別にあるのだけど、のぞみたちは、つんくさんと
呼んでいた。

年齢は四十前後で、前髪のあたりを茶髪に染め、診察の時以外は
サングラスをかけていて、どこか変わっている医者だった。
しかし、腕は確かで、ママも信頼している。
88 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月26日(木)21時47分02秒
少しして、医者は下に降りてきた。

つんく「・・・のんちゃん、なつみさんが苦しみ出した原因の
心当たりが、もしあったら教えてもらいたいんだ。そのほうが、
治療しやすいからね」

のぞみはうなづくと、はっきりと言った。

のぞみ「なっち、姉は、今日妊娠中絶をしてきたそうです・・・」

医者、つんくは少し驚いたようだったが、

つんく「・・・よし!、わかった。」

そう言って、つんくは上へあがって行った。

待つ間、のぞみはイライラと落ち着けなかった。

ようやく、つんくが降りてきた。

つんく「今、注射を打って眠ったところだよ。少し内出血して
いたけど・・・大丈夫だ、安心していいよ」

のぞみ「良かったァ・・・ありがとうございます」

のぞみは感謝の気持ちでいっぱいになって、深々と頭を下げた。

つんくは、内科医だったが、いつものぞみたち姉妹を親身になって
診てくれた。のぞみとは、友達つき合いをしている。
89 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月28日(土)20時48分06秒
つんくが煙草をくわえたので、のぞみは灰皿をさし出す。

つんく「しかし、あのなっちが・・・驚いたな・・・」

のぞみ「あたしも・・・」

つんく「もっとも、のんちゃんだったら、こうは驚かんがね・・・」

のぞみ「アーッ!先生、それどういう意味なのよ!」

のぞみは、キッとなって、コブシを振り上げるマネをする。

つんく「いけん、かんにんや、つい口がすべってもうて、
こらえてや・・・」

つんくは、のぞみとしゃべるとなぜか関西弁になる。

のぞみ「もうォ、あたしの事そんな風に見てたの・・・」

つんく「ゴメン、ゴメン。かんにんしてや、その、それだけ
のんちゃんが魅力的やさかい、男が放っとかんということや」

のぞみ「ふ〜ん、なら、いいけど。なんか、ごまかされたみたい」

つんく「そんなことあらへん。のんちゃんファンの僕が言うんやから」

のぞみ「へえ〜、つんくさん、あたしみたいな子供がいいんだァ」

つんく「・・・のんちゃんは、もう15歳だ。子供じゃないよ・・・
結婚はまだ早いが、その気になれば、男性と愛し合うことも出来るし、
子供だって、生める・・・」

のぞみ「・・・・」

つんく「このことは、冗談じゃなくて、本当のことだよ・・・」
90 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月28日(土)21時32分30秒
つんく「のんちゃん・・・これから、ちょっと説教めいたことを
言うけれど、聞いてくれるかい」

つんくが真剣な顔になったので、のぞみは素直にうなづいた。

つんく「のんちゃん、妊娠中絶、つまり堕胎がどういうものか
知っているかい・・・」

のぞみ「あんまり、よくは知らない・・・」

つんく「私も専門医じゃないからくわしくはないけれど、簡単に
言えば、女性の体の中、子宮内で育ちつつある胎児を医者が器具を
使って、掻き出すことなんだ。掻爬(そうは)とも言う。

受胎した母体は胎児を育て、出産するため色々な準備をしているんだ。
それを中断して、掻爬することが自然の摂理に反することだし、
それが、どんなに母体の生理を狂わし、悪影響を及ぼすか、わかって
欲しいんだ・・・」

のぞみは黙ってうなづいた。

つんく「掻爬をする医者のなかには、良くないものがいると聞いている。
なつみさんの場合もそうだとおもうけど、事後処理がまずくて、体を
悪くしたり、中には死ぬような目にあった女性もいるようだ。」

つんくは、医者がどうやって掻爬するかを話した。
その話は、のぞみにとってもショッキングなことだった。

なっちが、のぞみの手を自分の頬に押しつけて、声をころして、
泣いていた姿を思い出して、のぞみは胸が痛んだ。
91 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月28日(土)22時00分14秒
つんく「古いと言われるかもしれないけど、私はのんちゃんのような
若い女の子は将来、幸福で健康な状態で、元気な赤ちゃんを産んで
もらいたいんだ。

しかし、好きなものどうしが愛し合うことは、自然なことだし、
それを若いというだけで、反対するのもどうかと思う。昔は
十四、五でお嫁の行ったんだ。ホラ、童謡の赤とんぼで、「姉やは、
十五で嫁に行き〜」と歌われているだろ。もっとも、昔は貧乏な
家が多かったから、口べらしの意味もあったんだけどね・・・。

だいたい、今の学校の性教育は、純潔や、性病の怖さばかり教えて
なぜ、避妊の重要性を取り上げないのか、なってないな。
つまり、しっかりした避妊をして、愛し合ってもらいたいな。
ところで、のんちゃんは避妊の種類がどれだけあるか、知ってるかい?」

のぞみ「さあ、ピルとか、マイルーラぐらいしか・・・」
92 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月29日(日)01時59分27秒
つんく「まず、女の子の場合は、のんちゃんの言ったピル、(経口避妊薬)
だね、昔と違って今は手に入りやすくなったね。そして、事前に膣に
入れる、フィルムのマイルーラ。これは膣の中の精子を殺す薬剤だよ。
これは、今は製造を中止しているらしいよ。

精子を殺す薬剤は、ほかにゼリーと錠剤があるんだ。錠剤は膣内で
溶ける時、熱を出すんで、女の子が思わずアッチッチ!と飛び上がったり
するそうだ。」

のぞみ「へえェ・・・」

つんく「若いひとには向かないけど、リング、ペッサリーなど子宮内に
入れる避妊具など。ほかに、基礎体温とオギノ式がある。これらは、
毎日体温を測って排卵日推定したり、月経開始日から排卵日を推定して
計算したりして、危険な日と安全な日を選ぶんだ。」

のぞみ「・・・安全な日に、やっちゃうんだァ・・・」

つんくは、思わず笑いながら言った。

つんく「この安全な日を計算する方法は、個人差があって、非常に失敗率
が高いそうだから、止めたほうが良いよ。」

のぞみ「・・・・」
93 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月29日(日)02時32分31秒
つんく「男の場合は、代表はコンドームだね。スキンとも言うね。
昔は、良いゴムが無くて、魚の浮き袋などを代用したらしいよ。
男の子は、避妊について無知なヤツが多いから、女の子がいつも
ハンドバックに入れてたほうが良いよ・・・。それと、膣外射精。」

のぞみ「何ですか?そのチツガイ・・・」

つんく「その・・・男性がその瞬間、外に出すわけだ。その・・・、
そういうビデオで、男優がよくやる・・・」

のぞみ「ふ〜ん、先生はそんなエッチなビデオを良く見るんだァ」

つんく「その・・・ごくたまにだよ・・・。それと、避妊について
妙な俗説があるけど、何人もの男に続けて抱かれたら妊娠しないとか、
後でコーラで洗うと大丈夫とか、言われてるけど、これは何の根拠も
無い、うそッパチだから、絶対に止めたほうが良いよ。

しかし、とても女の子に話すようなことじゃなかったかな・・・」

のぞみ「いいえ、大変勉強になりました・・・」
94 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月29日(日)05時51分29秒
何の小説だかわからん。
95 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月29日(日)18時01分29秒
>94さん はじめまして。

ようするに、1人の男(広)を4人の女性たち、
伯母の裕子。 いとこのなつみ、のぞみ。母の圭織がよってたかって
食い物にしちゃおうという、ストーリー展開を予定しています。

そして4人の女性たちの相姦関係もこれから展開して行く予定です。

あまり期待しないで、お読みください。ありがとうございます。
96 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月30日(月)01時48分13秒
つんく「まあ、のんちゃんはしっかりしているから、安心して
いるけど、ところでのんちゃんにも、もういい男(ひと)がいる
んだろう・・・」

のぞみ「ええ、まあ・・・」

つんく「そうだろう、思ったとおりや・・・」

のぞみ「先生・・・あたしはヘマはやらないわ。」

つんく「わかっているよ。だがね、気がかりなのは男の子たちだ。
実際、あまりにも無知な男の子が多すぎるんだ。私たち男が、第一に
女の子のことを考えてやらなければいけないんだ。
だから、相手の男の子とよく話し合って、わかってもらうことが
大切なんじゃないかな」

のぞみはうなづいた。

つんく「なつみさんに何にがあったのか、私からなにか言える立場
ではない。だけど、なつみさんのことはよく知っているつもりだ、
私もえらそうな事は言えないんだが、女の子を自分の身勝手で、
苦しめるようなヤツは、人間としての価値も無いし、男として最低だ。」
97 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月30日(月)02時15分09秒
つんくは、吐き捨てるように言うと、なつみの様子を見るために
二階は上がって行った。

少しして、降りてくる。

つんく「よく寝ているよ。さあ、そろそろ失礼するよ。お母さんは
まだ帰らないようだけど・・・」

のぞみ「ええ。・・・仕事で遅くなっていると思うんだけど」

広も帰ってこない・・・。

つんく「大丈夫だとは思うが、また何にかあったら直ぐに電話を
するように」

のぞみ「はい。本当にありがとうございます。」

つんくは玄関で、振り返った。

つんく「私が来た事は、いずれお母さんに知れると思うのだが・・・」

つんくはちょっと言葉をにごした。

のぞみ「はい・・・このことはあたしからは何にも言えないんです。
今まであたしにも黙っていたんです・・・。ママに話すかどうか、
姉さんが決めることだと思います。」

つんく「よし、わかった。お母さんには私からは、適当に言っておくよ」

のぞみ「すみません・・・」

のぞみは頭を下げた。

医者のつんくが帰った後、のぞみは自分の部屋から毛布と枕を
持ってきて、なつみの部屋に入った。

かすかに消毒薬の匂いがする。なつみは静かに寝息をたてていた。
顔色は青白く見えたが、表情は大分和らいでいた。
98 名前:マロンの思い。 投稿日:2002年09月30日(月)14時35分09秒
側にいき、顔を近づけて広い額にそっと唇を当てる。

ベッドの側に、毛布をかぶって横になる。いまだに帰ってこない
ママと広が恨めしい。なっちがこんなに苦しんでいるいるという
のに・・・。しかし、二人は何も知らないのだと、思い直す。

広とのことを考える。

医者のつんくの言葉を思い出していた。 もし、あたしが妊娠したと
したら、広はどうするだろう・・・。

車の音がしたと思って起き上がる。
その特徴のある音から、ママの車とわかる。いそいで、下に降りる。

待っていると、カギを開けてママが入ってきた。お帰りなさいと
言おうとした時、後ろから広しが入ってきた。

広は、のぞみの顔を見て、足を止めた。ママは、そんな二人を
一瞥(いちべつ)すると、さっさと中へ入って行く。

少しの間、二人は無言で向かい合った。

広「遅くなってしまって・・・仕方なく伯母さんと出かけることに、
なっちゃって・・・行きたくなかったんだけど・・・」

のぞみ「なぜ、言い訳を言うの!?・・・どうして?」

のぞみは、そう言うと足早に中へ入って行った。


この項、終わり。
99 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年09月30日(月)15時08分09秒
 パープルの誘惑。

伯母の裕子は、広を助手席に乗せてミニ・クーパーを走らせる。

前方に、自転車に乗った中年のおやじふうな男が、明らかに
フラフラと蛇行しながら走らせている。

突然、その自転車はミニ・クーパーの前に倒れかかってくる。
伯母は急ブレーキを踏んだ。

ミニ・クーパーは左ハンドルだった。伯母は窓を開けると、急ブレーキ
に驚いて自転車ごと横倒しになった、おやじを怒鳴りつける。

裕子「この、クソったれッ!!」

裕子は窓を閉めると、何事もなかったかのようにまた走り出す。

環八から、第三京浜に入る。

広「どこに行くんですか・・・」

裕子「横浜よ・・・」

車は快調に飛ばして、他の車をすいすいと追い抜いてゆく。
どうも、このミニ・クーパーはただのミニではないようだ。
明らかにどこかを、チェーン・アップされてるみたいだ。

100 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年09月30日(月)15時25分52秒
広「このミニは、えらい速いですね・・・」

裕子「・・・あたしの知り合いに車の専門家がいてね、あたしの
性格にあわせて、車を改造してくれたの」

伯母の性格にあわせて・・・・。

車は、横浜市街を抜けて郊外の方へ行く。

やがて、広大な邸宅に着く。中に入ると広い庭にはプールがある。
まるで、日本ではないみたいだ。

邸宅の中も広かった。大広間に入る。

広間にはすでに大勢の人がいた。ほとんどが外国人だった。

僕はこれから起こることへの、不安と期待で身が引きしまる
感じがする。
101 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月02日(水)19時59分51秒
伯母は流ちょうな外国語を駆使して、外国の人たちと話している。
何人かに僕を紹介したが、何だかその人たちの僕を見る目つきが
気になる。

この家の、イタリア人らしい主人夫妻がやって来て、伯母と話し
始める。その主人の、いかにも好色そうなひげの感じが気になる。
それはイタリア人の男に対する僕の偏見かもしれないのだけど。

伯母は、ブランデーのグラスを片手に広間をまわってゆく。

裕子「あなたも何か飲みなさいよ。」

広「お酒はあまり好きじゃないんですよ。」

裕子「しょうがないわね、もう子供じゃないんでしょ。」

伯母は通りかかった、ウエーターに言った。

裕子「この坊やに、ミルクをあげて・・・」

伯母は英語で言ったので、さすがに僕でもわかる。

広「やめてくださいよ。恥ずかしい・・・」

しかたないので、ワインを飲む事にする。
102 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月03日(木)10時17分24秒
広の運命はいかに?!気になる〜
更新楽しみに待ってます。がんばってください。
103 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月03日(木)18時20分10秒
>102さん 
ありがとうございます。 頑張ります。
104 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月03日(木)19時34分08秒
裕子「そうよ。酒の飲めない男なんて、男じゃないわよ。
ただ、アレをぶら下げてるだけの男じゃ、ダメよ・・・」

何のことだか・・・まさか、僕を酔わせて何かたくらんでたりして・・。

人だかりのするところへ行って見ると、日本人らしい男が喋っていた。
どこかで見た顔だと思うが、伯母に聞くと、『シュウゾウ』と、
答えた。

思い出した。近頃よく名前を聞く、ファッションデザイナーの
『マツオカ・シュウゾウ』だった。
彼は英語で喋っていた。

マツオカ「男と女の性(セックス)は物質を曲げ、肉体を折り、目を
盗まれ、時には形而上を捕らえて行くのです。アダムとイヴは、
官能の海に沈み、イヴは禁断の木の実を産み、官能の海に浮遊して、
快楽を追ったのです。」

何にを言ってるのか、サッパリわからん・・・。彼の英語が下手
なのか、僕の英語の理解力がないのか・・・。

シュウゾウ氏は、伯母の姿をみとめて近寄ってくる。

マツオカ「これはこれは、ユウコさんではないですか。」



マツオカ「
105 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月03日(木)20時09分20秒
シュウゾウ氏は一同に向かって言った。

マツオカ「皆さん、この女神(ビーナス)の化身ともいうべき美女が
今、Risaブランドの靴をデザインして評判の「ユウコ」さんです。」

そして、伯母に向かって言う。

マツオカ「お会い出来て光栄です。あなたの、官能の海から、浮遊した
イヴの化身のごとく、エロスの女神のようなこうごうしい姿に、私は
恋の盲しいとなりました。」

アホか。いちいち、言う事が大袈裟なヤツだ・・・。

伯母の「ユウコ」は、クックッと笑いながら言った。

裕子「それはそれはどうも、あたしも貴方のうわさは聞いてますわ」

マツオカ「ほお〜、どんなうわさでしょうか・・・」

裕子「貴方は、まだ磨かれていない宝石の原石みたいだとか・・・、
まあ、あたしに言わせれば・・・」

伯母は、ここでブランデーをひと口すすってから、言い放った。

裕子「原石と言っても色々あるけど、あんたは、石炭ね。芯まで
真っ黒い石炭よ。せいぜい磨いてることね・・・」

石炭をいくら磨いても、石炭でしかないでしょうね・・・。
106 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月03日(木)23時30分16秒
シュウゾウ氏は目をむいたが、伯母はかまわず歩き出す。

シュウゾウ氏は鼻の下にヒゲをたくわえていたが、いかんせん、
東洋人特有のちょぼヒゲで、ここの主人のイタリア人のヒゲには
とてもかなわない。

裕子「あのせんせい、アチラのほうがお盛んのようだけど、ま、
あたしの趣味ではないわね・・・」

伯母がブランデーをおかわりして口にはこんでいると。
こりずに、シュウゾウ氏が近づいて来る。

マツオカ「先ほどは失礼しました。確かに私は石炭ですが、これでも、
いったん火がつけば、真っ赤に燃え上がってみせますよ・・・」

シュウゾウ氏は、いち礼すると去って行った。

裕子「あのせんせい、けっこうカワイイところがあるじゃない・・・」

伯母はさもおかしそうに笑う。

さっきから、気になることが起こり始めた、広間の照明が
少しずつ消えてゆき、あたりが薄暗くなっていくのだ・・・。
107 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月05日(土)00時15分48秒
伯母は窓際に行き、新鮮な空気を吸っていた。

薄暗くなるのも気になるが、さっき、シュウゾウ氏が言った事を
伯母に聞いてみたかった。

広「あの、Risaブランドの靴ってどんなのですか?」

裕子「・・・あたしの知り合いの娘さんに里沙っていう子がいてね、
その子、12、3歳だけどあるアイドルグループの一員なの。その子、
食べちゃいたいぐらい可愛いの。着ているものも、センスがあってね、
素敵なんだけど、ところが、履いてる靴が、ズック靴みたいなセンスの
ない靴なの。

それで、その子に合う素敵な靴をデザインしようと思ったの。
その靴が、ヨーロッパでけっこう人気になってね、最近は日本でも
輸入されるようになったらしいわ。」

広「ああ、そう言えば、のんちゃんがリサの靴が良いらしいって
話してたような気がしますよ。あれが伯母さんのデザインした靴だ
なんて、素晴らしいですね・・・」

裕子「もう、その話はいいわ・・・そろそろ、ひと休みしましょう」

伯母は奥へ向かって歩き出す。また、照明が消えてますますあたりが
薄暗くなる。
108 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月05日(土)10時12分54秒
広「アッ、ごめんなさい・・・」

誰かに、足がぶつかり、つまづいたのだ。よく見えないが、
二人ほど、床に重なり合ってころがっているようだ・・・。
きっと酔っ払ったのだ。そうにちがいない・・・。

広「どこへ行くんですか・・・」

裕子「すぐそこよ・・・」

伯母はどんどん奥へ入って行き、居間らしい部屋へ入った。
ソファーに一組の男女が体を寄せて腰掛けていたが、何と、
金髪の女性は上半身、裸だった・・・。

白く巨大な乳房がモロに見える。彼女は、通りかかった伯母に
顔を上げると軽く手を振る。伯母もそれに答えて手を振りながら
奥のほうへ入って行く。

多分、外国ではこんなことはよくあることなのだろう。気にしては
いけないと思う。しかし・・・。

伯母は立ち止まり、前のドアを指し示した。

裕子「この部屋よ・・・」

部屋に入って、灯かりを点ける。床にはフカフカとした絨毯が
敷き詰めてある。ところが、部屋の向こうに嫌なものが見えた。

どでかいベッドが、でんとあるのだ・・・。
109 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月06日(日)23時46分19秒
伯母は、真っ直ぐにベッドへ向かっていって、ベッドの上にどんと
腰を下ろした。

裕子「そこで、何してるの・・・いらっしゃい。」

ドアの前で突っ立っている僕に向かって言う。

広「ちょっとォ、待ってくださいよォ。ここで何にをするんでかァ」

思わず、声が上ずってしまう。

裕子「おバカさんね。ひと休みするだけよ・・・」

どうだか・・・・。

伯母は、グラスのブランデーをぐびりとひと口飲むと、

裕子「少し、飲みすぎたかしら、酔っちゃいそうよ・・・」

ウソだ!、ウソに決まってる。伯母は「ヤマタノオロチ」も
真っ青になるほど、酒豪で有名なのだ。

裕子「さあ、こっちへいらっしゃいな。疲れたでしょ・・・」

広「疲れてなんか、いないですよ・・・」

裕子「いいから、ここへ来るの・・・」

そう言って、脇のベッドの上をトンと叩く。
110 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月07日(月)00時37分49秒
裕子「ちょっと、お話をするだけよ・・・」

のぞみも、似たようなことを言っていたな・・・。
しぶしぶと伯母の脇に腰をおろす。

裕子「大丈夫。取って食おうって何て思ってないから」

お決まりの文句だな・・・。
いきなり、伯母は僕の手をつかまえた。思わず、身構えてしまう。

裕子「あのね、あなたに言っておくことがあるわ。」

僕の眼を覗き込みながら言う。

裕子「あたしとあなたは、伯母と甥としてではなく、男と女として、
人間として対等なのよ。あなたがあたしを束縛できないように、
あたしも、あなたを束縛できないのよ。わかった?」

伯母を束縛出きる人なぞ、いないと思う・・・。
でも、考えて見ればここにいるこの女性は、僕の伯母なのだ。
多少、変わっているところはあるが・・・。

広「わかりました。」

裕子「わかってくれた」

伯母は笑顔を見せると、くるりと、僕に背中を向ける。

広「・・・?」

裕子「背中のジッパーを下ろしてちょうだい・・・」

広「えェー!?」

思わず、飛び上がるように立ち上がる。

111 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月07日(月)21時51分39秒
広「ど、どういうことですかァ・・・」

裕子「どうって、ドレスを脱ぐのよ」

広「でも・・・」

裕子「言っとくけど、あたしがドレスを脱ぐのは、リラックスする
ためよ。何も別のことをするために服を脱ぐとは、限らないのよ。
わかった?」

広「はあ〜、・・・」

裕子「あたしは気分を落ち着かせるためにドレスを脱ぐの。あたしと
あなたは対等だということをわかってるわね」

広「あの・・・脱ぐのはドレスだけですしょ、もちろん・・・」

裕子「全部、脱いで欲しいの?」

広「冗談はよしてくれませんか、本当に・・・」

裕子「いいから、ジッパーを下ろしてちょうだい」

ジッパーを下ろすと、白い背中が現れてくる。

裕子「それから、部屋の灯かりを消してちょうだい」

ベッドの枕もとの灯かりを点けながら言う。

広「なぜですかァ」

裕子「暗いほうがくつろげるものよ」
112 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月07日(月)22時13分41秒
しかたなく、立っていってドアのそばのスイッチを押す。

振り返って見ると、暗い中、スタンドの明かりでベッドの付近が
浮き上がって見えて、そのベッドの上には、ドレスを脱いだ伯母が
黒のスリップ姿で寝そべっている・・・。

頭がくらくらしてきた。黒の下着は娼婦のしるしだと、どこかで、
聴いたことを思い出す。

広「・・・あのー、外に出てもいいですか。」

裕子「あたしと一緒に居るのが、そんなにイヤなの・・・」

そう言う伯母の顔が何だか、とても悲しそうに見えた。

広「そんなことはないですよ。何だか、落ち着かないんです。」

裕子「そんな所に突っ立ってるからよ。こっちへいらっしゃい」

側に行って、ベッドに腰掛けると、伯母は半身を起こして僕の肩に
手をかける。

裕子「あたしたちは、対等なのよ・・・」

こればっかり・・・。
113 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月07日(月)22時54分24秒
裕子「大きくなったわね。いくつになったの」

広「十八になりました。」

裕子「そう。圭織に男の子が出来たと聞いた時は自分のことの
ように嬉しかったわ。圭織の子供なら、あたしの子供同然よ」

普通は、その子供同然のものを取って食おうなんて思わないはず
なのだけど・・・。

裕子「うちの女の子たちとは仲良くしてる。」

広「ええ、まあ・・・」

のぞみとは特に・・・。

裕子「もう、何人もの女の子と遊んだんでしょ。」

否定出来ないところが、何とも・・・。

裕子「どんなタイプの女の子がお好みかしら・・・」

広「それは・・・色々ですよ。」

114 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月11日(金)09時41分28秒
おぉ〜これからどうなるんだ!!!
続きが禿しく気になります!
更新楽しみに待ってますがんがって!
115 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月12日(土)00時08分49秒
裕子「男って、案外悪女に引かれるものだけど、あなたは
ジュリエットと言う名前から何を連想するかしら・・・」

広「そりゃ、清純な乙女という、イメージですね。シェークスピア
のジュリエットでしょ。」

裕子「じゃあ、もう一人のジュリエットを知ってるかしら。」

広「まさか、『サド』のジュリエットじゃないでしょうね・・・」

裕子「そうよ。やっぱり読んでいたのね。」

このサドの書いたジュリエットは、「悪徳の栄え」という小説の
ヒロインなんだけど、この女はとんでもない女なのだ・・・。

ジュリエットは、実の妹を死に追いやり、実の父親と寝た上に
殺してしまうし、自分の産んだまだ幼い娘を、愛人に犯させた上、
燃えている暖炉に投げ込んで、娘が火だるまになって死ぬのを
愛人と一緒に平然と眺めている始末。

肉親でもこの調子だから、他人にはもっと残虐非道なことをする。
そのほかにも、女を、下は幼女から、熟女まで、片っぱしから犯して
殺して、食っちゃうという!、とんでもない男も登場する。何でも、
毎日、女の肉を食ってるから、精力絶倫なんだって。ホントかいな。

この「悪徳の栄え」という小説は、あきれるくらい、とんでもない
小説なんだけど、昔は発禁になったけど、今は読めます。
さすが、サディストの本家本元、マルキド・サドが書いた小説なの
だけど、ちなみに、SMというけど、Sはサドで、Mは、マゾッホと
いう、マゾヒストの本家の小説家がいます。
116 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月12日(土)00時48分25秒
広「サドのジュリエットに較べれば、メドウサのほうがまだ、
かわいいですよ・・・」

裕子「何に?、そのメドウサというのは・・・」

広「あれ、知らないんですかァ、ギリシア神話に出てくる、
髪の毛一本、一本が蛇で、その姿を見た者を石に変えてしまうと
いう、妖怪女のことですよ。」

裕子「フウン、すごいのねェ。でも、あたしだって男の体の
一部分を石のように硬くすることは出来るわ・・・」

思わず立ち上がりたくなるのを、ぐっと堪えた・・・。

裕子「それじゃ、あたしはどんな風に見える・・・」

広「それは・・・・」

伯母と、ジュリエットやメドウサを較べるわけにはいかない。
いい勝負だなんて、言えるわけがない・・・。

裕子「・・・あたしは、確かに男が好きよ。良い男を見ると
歯止めがきかなくなっちゃう・・・」

ついに、本性を現した・・・。
117 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月12日(土)01時08分28秒
裕子「でも、ただそれだけで、弱くてダメな女よ。あたしより、
よっぽど圭織のほうが強いし、悪女的かもしれない・・・」

僕の母、圭織についての伯母の言葉は意外だった。
母は優しいけれど、平凡でもの静かな普通の女としか、僕には
見えなかった。

広「母さんが、悪女的だなんてとても信じられないですけど・・・」

裕子「それは見方によるかもしれないけど、でも圭織は昔の
事を話してくれないの?」

広「一度も聴いたことはないですね。ぜひ、昔の母さんの話を
聴きたいですね。」

裕子「あたしのことは聴きたくないの・・・」

広「伯母さんのことも・・・」
118 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月12日(土)01時37分18秒
裕子「じゃ、話してあげるからこのベッドの上に来るのよ。
もちろん、服は脱いでちょうだい・・・」

伯母の言われままに、上着を脱ぎ、下着だけになってベッドへ
入る。

裕子「意外と良い体をしているのね・・・あなたとあたしは
対等だけど、あなたは罪のつぐないをするためにここへ来た
のよ。あたしの言うことを聞く義務があるわ。」

忘れてた・・・。

裕子「あたしのことを好きか嫌いか、本当のことを言いなさい。」

広「・・・・好きです。」

裕子「嬉しいわ。取りあえず、キスして・・・」

言われるまま、唇をかさねる。

裕子「・・・憎らしいほど、キスが上手だわ。ちょっと、
向こうをむいていて。」

良いと言われて、振り向くと伯母は黒の下着をすべて脱ぎ、
全裸になっていた。 透けるような白い肌だった。
119 名前:パープルの誘惑。 投稿日:2002年10月12日(土)02時07分05秒
伯母の裕子は、僕の首に両腕をまわしてくる。肌の感触がのぞみに
似ている。裕子の術中にはまり、ただの一匹の雄と化していた。

裕子「あなたは、圭織になにもかもよく似ているわ。あたり前ね、
親子だもの。あたしがこの世で一番愛しているのは、圭織よ。
あたしたち姉妹は心はひとつだけど、残念なことに、圭織は
体は許してくれなかった。」

僕は、母の身代わりなのか・・・だけどそれはどうでもいいことに
思える。今は、一匹の雌と化した、裕子が欲しかった。

裕子が、母や自分の事を話してくれたのは、愛し合った後だった。

この項、終わり。
120 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月12日(土)23時46分28秒
 片想いのスケッチブック

裕子の語り。

あたしの父親は、言うなれば成金ね。よくは知らないけどかなり
あくどいことをやって、しこたま儲けて、どでかい家を建てた
ようね。

母親も一緒に仕事をしていることもあるけど、亭主にべったりで、
二人とも夜遅くまで帰らないこともしばしばあったわ。

妹の圭織と二人だけで、家政婦のおばさんの作ってくれる夕食を
食べることがほとんどだったわ。

あたしが17歳で、圭織が14歳の頃だったわ。

だだっ広い家で、寒々とした食事を食べるのが、たまらなく嫌だった。
だから、深夜喫茶や盛り場を遊びまわって朝帰りはおろか、数日、
家に帰らない事もしばしばだったわ。

お金は、バカ親父に、言えばいくらでも貰えたから不自由しなかった。

悪い仲間ともつき合っていて、典型的な不良少女ね・・・。
家で一人で寂しい思いをしている、圭織の気持ちを考えもしなかった、
そんなどうしょうもない、姉だった。

121 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月13日(日)00時28分51秒
そんなあたしに、転機が訪れたの。

学校は、公立のなんのとりえもない高校だった。勉強も嫌いだしね。
留年しない程度に学校には行っていたわ。

同級生に、美貴っていう子がいてね。どういうわけだか、あたしに
なついていてね。ある日、美貴が家に遊びに来いと言ったの。

気まぐれに、行く気になったの。

行って見ると、小さな借家なんだけど、美貴には両親と、そんなに
年の離れていない姉が4人もいるのよ。女だらけの家ね。

そのうち、親父が帰って来たけど、まあ、こいつがスケベ親父でね。
平気で、娘の尻を触るわ、抱きつくわで、とんでもない親父よ。
あたしは、美貴ちゃんに守ってもらったけどね。思わず、蹴りを
入れようかと思ったくらいよ。

そのうち、夕食になって、帰ろうかと思ったけど美貴がどうしても
食べていけと言ってね。

大きなちゃぶ台の真ん中に、大皿に山盛りのオカズがあって、それを
みんなで囲んで食べるの。

もう、大変な騒ぎよ。みんな大きな声で喋りながら食べるし、
親父は、相変わらず、側のお姉さんのお尻を触ろうとするのを
箸で叩いたりと、にぎやかなものよ。でも、楽しかった・・・。

122 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月13日(日)01時01分52秒
食事が終わって、帰ろうとしたんだけど、また美貴がお風呂に
一緒に入ろうと言い出したの。

美貴「あたし達、いつもお姉ちゃん達4人と一緒に入るの。」

まさかって思ったけど、お姉さん、長女のめぐみ、次女の瞳、
三女の雅恵、四女のあゆみ。そして、末の美貴ちゃん、そして
あたしの6人で入ったの。

湯船は多少は大きかったけど、4人の女の子でギュウギュウだし、
交代でお湯に浸かるの。そして、6人で、学校、職場、男の子のこと、
食べ物のことなど長々とお喋りするの。もうにぎやかなものだった。

ひとりが、のぼせて、もう上がるって言い出したら、みんなでその子の
手を引っ張って止めるの。
しばらくして、別の子が上がるって言うと、またみんなで止めるの。
本当に楽しかった・・・。

そのうち、スケベ親父が風呂場のガラス戸をガラっと開けたのよ。

親父「コラッ!!、お前らッ、いつまで入っとるんじゃあ!?」

この親父だから、のぞきに来たのに決まってるんだけどね。

そこで、みんなで悲鳴を上げながら、洗面器でお湯を親父に
ぶっ掛けてやったら、大あわてで逃げてく親父が面白くて
みんなで大笑いしたものよ。
123 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月13日(日)01時27分49秒
お風呂から、出て、美貴があたしの手を掴まえて、泊まってけって
言うの・・・。

でも・・・ここはあたしの家じゃないわ。またみんなで、騒ぎ
ながら寝るのは、どんなにか楽しいことかと思ったわ・・・。

でも、美貴の手を振り払うようにして、帰ったわ・・・。

やがて家に帰りついて、バカでかい家の、圭織の部屋だけに
ポツンと灯かりが点いていたわ。

それを外から見ていて、ぞっとするほど寒気がしたわ。
そして、その中に居る圭織の気持ちを考えたの。

美貴と4人の姉達、狭い小さな家だけどとても仲の良い姉妹達。

あたしにだって、圭織という妹がいることをどうして忘れていた
のだろうかと思ったわ。




124 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月14日(月)22時31分48秒
その頃の妹の圭織は、ほとんど部屋に閉じこもっていて、本を読んだり、
詩を書いたり、絵を描いたりして自分のからに閉じこもっていたわ。

あたしは、そんな圭織を何とか外に連れ出そうと思っていたの。

その年のクリスマスの日のことだったわ。友達の家でパーティーを
やることになって、圭織も行くって約束をさせていたの、ところが、
当日になって、圭織が行かないって言い出したの。

もとは言えば、あたしがしぶる圭織を無理やり約束させたのだけど、
あたしは、思わずかっとなって、何で行かないのかと聞いたのよ。

圭織「今日、どうしても読みたい本があるの・・・」

そう言って、詩集か何かの本を見せたの。

それを見たあたしは、ぶち切れてしまったわ。
嫌がる圭織から、その本をひったくると表紙を引き千切って、
床に叩きつけて、言ってやったわ、

裕子「こんな本なんか読んで、いったい何になるの!何のために
読むのか、気がしれない!」

圭織は、目に涙をためてあたしを睨みながら言ったの・・・。

圭織「明日のためによ・・・・」
125 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月14日(月)22時50分24秒
圭織はそう言うと、泣きながら部屋へ駆け込んでいったわ・・・。

あたしは、明日の事など考えた事もなかったし、昨日のこともすぐに
忘れたし、ただ、今日だけを刹那的に生きていた。今日、今、この
瞬間だけが楽しければいいと思っていた。

そんな自分をイヤというほど思い知らされたわ。

引き千切られた本を拾い上げて、思ったわ。あたしと圭織の関係は
この本みたいなものみたいなものだって・・・。

その日から、圭織はいっさいあたしと口を聞かなくなって、ますます
自分のカラに閉じこもってしまったわ。
126 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月14日(月)23時22分46秒
あたしはあたしで、どうにもならない焦燥感で気が狂わんばかり
だった。

圭織のことを必死になって考えたわ。あたしにとって、圭織という
存在は何なのか、ただの血をわけた妹だけではなく、この世で一番
大切な人間だったし、この世で愛しているのは圭織だけだって、
わかったわ。

それで、あたしは決心して、ある日の夜遅く圭織の部屋の前に立ったの。

圭織をこれほどまでに頑なにさせたのは、あたしだし、すべてあたしが
悪いのだから、謝って、許しを請うつもりだったわ。

ドアに手をかけた、いつもは鍵がかかっているのに、不思議にその日
は開けるとすんなり開いたの。もしかすると圭織も待っていたのかも
しれないと思ったわ。

部屋に入ると、圭織が起きる気配がしたわ。圭織は待ってなんか
いなかった。あたしに気がつくと、言ったわ、
出て行け・・・すぐにここから出て行けって・・・。
127 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月17日(木)17時06分44秒
あたしは思わずかっとなって、ベッドの上にあがり、シーツを
まくって圭織の上に馬乗りになったわ。

圭織が小さい頃からこれがないと眠れないという、古いウサギの
ヌイグルミを無理やりひったくると、ベッドの下へ放り投げて
やった。

あたしたちは、つかみ合いになって、もみ合っているうちに圭織は
泣き出したわ・・・。打ちひしがれた悲しそうな顔で涙を流して
いる圭織を見て、なんて自分はなさけなくて、イヤな人間だと、
気づいたの・・・。

ふと、圭織が不思議そうな顔で見ていることに気がついたわ。
圭織の顔に何かがポタポタと落ちているの、それはあたしの涙
だったの。あたしは気がつくと、大きな声をで、わんわんと
泣き声をあげていたの・・・。
128 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月17日(木)17時30分08秒
あたしはこれまで、決して人前で涙を見せなかった。圭織の
前でもめったに泣かなかった。

不思議そうに見ている圭織を見て、今だと思ったわ。

あたしは泣きながら、圭織に訴えたの。何て言ったのか、今、
正確には憶えていないけど、「圭織を大好きだ、この世で一番
愛している」って言ったような気がする。

事実、心の底からそう思っていたし、あれほど、愛していると告白
したのは、後にも先にも、あの時だけだった。

それから、あたしのしたことを謝ったわ。もし、あたしの気持ちを
圭織がわかってくれなかったら、すぐ部屋から出て、首を吊って死のう
と、本気で思ったわ。こんな、なさけない人間は生きていてもしかたが
ないと思っていた・・・。
129 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月17日(木)17時45分52秒
そのうち、圭織が腕を伸ばして、あたしの涙を手でぬぐってくれたの。

その手が、ぐしょぐしょになるほどだったわ。今まで、出さなかった
分の涙がどっと出て来たみたいだった。

圭織は優しい目をしたいた。それが嬉しくて、ついやってしまったの。
思わず、圭織の唇にキスをしてしまったの。

圭織は少し驚いたみたいだけど、唇を受け入れてくれた。

圭織のことだから、今まで誰ともキスなんてしてないはずよ。
初めてのキスを、バカな姉に奪われた感想を聞いておくんだったわ。

130 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月17日(木)18時15分18秒
 裕子の語り

あたしは、思いのたけをすべて吐き出して、そして泣きつかれて
圭織のベッドで眠ってしまっていたの。

朝が来て、あたりが明るくなって目がさめて、まぶたを開けようと
した時、わかったの。圭織があたしを見つめている事に・・・。

本当に好きなひとに、見つめられながら目をさますというのは、
とても素敵なことだったわ。

まぶたを開けると、思ったとおり圭織の顔がそこにあったわ。

圭織は優しくほほえんでいた。
あたしは嬉しくなって、腕を伸ばしてまたキスをしようとしたの。

でも、圭織はスルリとあたしの腕からぬけ出した。
恥ずかしそうに頬を染めていたわ。

その日から、あたしたち姉妹は少しずつだけど、また心を通い合わせる
ことが出来るようになったの。
131 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月17日(木)18時40分41秒
もう、あたしは夜遊びをいっさいやめて、学校が終わるとすぐに
家に帰り、圭織と居る時間を出来るだけ長く過ごしたわ。

でもまだ、あたしたち姉妹の間に、わだかまりがまったく
無くなったわけではなかったの。

そうして、やがて8月8日がやって来た。圭織の15歳の誕生日よ。
あたしは、ある贈り物を用意していたの。

その前のあたしの誕生日には、圭織はあたしの絵を描いて贈って
くれた。あたしにはもったいないくらい、美人に描いてくれて、
素敵な絵だった。

両親は、仕事で帰ってこなくて、誕生日の夜はあたしと圭織の
二人だけの、ささやかだけど心あたたまる、誕生パーティーだった。

あたしが買って来たケーキのロウソクを吹き消した、圭織に
おめでとうを言いながらあたしは、リボンをかけて包んだ
贈り物を差し出したの。

圭織「ありがとう。何かな・・・。」

裕子「いいから、早くあけて見て・・・」


132 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月18日(金)02時10分11秒
圭織はリボンを解いて、包みを開いた。中身は本だった。
表紙が変わったものだった、けげんな顔であたしを見ながら
ページを開いて見て、その本がどういうものか、圭織は気が
ついた。

圭織「お姉さん・・・ありがとう。こんな贈り物、生まれて
初めてよ。とっても嬉しい・・・」

圭織は、その本を胸に抱きしめながら言った。

その本は、いつかのクリスマスの日、あたしが圭織から取り上げて
表紙を引き千切った、詩集だった。

あれから、苦労して自分で修復したの。表紙を作り、貼り付けて、
下手だけど心をこめて絵を描いたものだった。

裕子「そんなに喜んで貰えて、嬉しいな・・・、せめてもの
つぐないが出来たわ。許してくれる・・・」

あたしが、圭織の肩に手をおきながら言うと、

圭織「お姉ちゃん、許すもなにも・・・」

圭織は、あたしの胸に顔をうずめ泣き出した。

そんな妹を抱きしめながら、今やっとあたしたちの心がひとつに
なったような気がしたわ・・・。
133 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月22日(火)00時27分11秒
ある日、あたしたちはデートを楽しんだわけ、映画を見に行ったの。

「風と共に去りぬ」だった。あたしたちはその映画で、二人の
女性に魅かれたの。あたしは「スカーレット・オハラ」に、
圭織は、「ヴィヴィアン・リー」に。

その頃から、圭織は演劇に興味を持つようになったわ。
そして、よく二人して映画や舞台を見に行ったわ。

あの頃が、二人の蜜月というのか、毎日とても楽しかった。
でも、その幸せは長くは続かなかった・・・。

ほどなく、父さんが亡くなったの・・・。

毎日、脳天気にやっていたあたしたちはまったく知らなかったけど、
父さんの経営する会社は、火の車だったわけ。

父さんが亡くなって、残ったのは借金だけだったの。

バカでかい家も何もかも、抵当に入っていて、あたしたちは
すぐに家を出ることになったわ。

かろうじて、父さんの生命保険の一部でアパートを借りて、
姉妹二人、食べられるくらいのお金を残してくれたわ。

134 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月23日(水)18時37分07秒
父さんが亡くなって、一番ショックだったのは、母さんだった。
ずっと一緒に仕事をしていただけに、葬儀が終わった後は、
いっぺんに老け込んだようになって、そのまま実家へ帰った
のだけど、まもなく父さんの後を追うように亡くなったわ。

あたしたち、姉妹の二人だけになったけど、二人の絆は、
いっそう強くなっていたし、あたしとしては、圭織の高校
だけは、続けさせたいと思っていたのだけど、

ある日、圭織がある劇団に入ったと言ったの。聞いてみると
名前も聞いたことないような劇団で、公演をするのでも、
チケットを団員が走り回って売りさばいて、舞台も地下の
劇場で、せいぜい二、三十人が見に来るような劇団らしい
けど、圭織の好きなようにさせることにしたわ。

もちろん、圭織は学校をやめてアルバイトをするようになったわ。
135 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月25日(金)00時33分38秒
そうこうするうちに、あたしが、ヨーロッパへ行く事になったの。
あるフランス人とよろしくなって、国へこないかという話になったの、

あたしもデザインの勉強をしたいと思っていたし、渡りに船って
いうわけ。問題は圭織のことだったけど、話して見ると、圭織は
賛成してくれたし、圭織も芝居という生きがいを見つけて、毎日
充実した日を送っていたし、大丈夫と思ったの。

最初は、半年か一年ぐらいと思っていたのだけど、三年も帰らない
ことになるとは、思わなかったわ。

そしたら、あちらである日本人と知り合いになったの。その人は
新進の建築家なのだけど、あたしと妙に馬があったの。すぐに、
男と女のつき合いになったわ。彼との生活は楽しかったわ。

ところが、あたしが大変なドジを踏んでしまったの。
妊娠してしまったの・・・。
136 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月25日(金)00時47分47秒
彼とは、結婚なんて考えてなかったし、産むわけにはいかなかったし、
堕ろすつもりだった。

彼には黙っているつもりだったの。ところが、ある日、ポロリと
洩らしてしまったの。 彼、どうするつもりかと、聞いてきたので、
堕ろすつもりだと言ったら、いきなり、横っ面を殴られたの。

あっけにとられていたら、あたしの手を取ってこれから日本へ
帰って結婚しようと言われて、あたしも何だか、どうでもよくなって、
一緒に帰ることになったの。

三年ぶりに帰って来て、まず思ったのは圭織のことだった。
圭織のことは、三年間、ひと時も忘れることはなかったわ。

前のアパートは引っ越していたけど、劇団の名前は憶えていた
から、すぐに圭織の住まいは見つかったわ。
137 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月26日(土)20時49分58秒
なんとか、圭織の住むアパートを捜しだして、会いに行ったの。

見るからに、安アパートで、生活を切りつめている感じだった。
ドアを開けて、あたしを見た圭織が何と言ったと思う・・・。

圭織「あら・・・お帰りなさい。」

これだもの、ちょっとその辺で買い物をして、帰ってきたみたい
だった。遠い外国から、三年ぶりに帰ったのに何か拍子ぬけしたわ。

部屋に上がって見たけど、およそ、20歳の女の部屋とはとうてい
思えないほど、何にも無い部屋だった。テレビだけはあったけど、
どっかその辺で拾ってきたみたいのだけど。

それに、布団、せんべい布団だけど、それが何組も積みあげてあるの。
どうも、劇団の仲間が何人も泊まりにくるみたいだった。
138 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月26日(土)21時29分19秒
劇団は相変わらず、貧乏劇団のままだったし、圭織たち劇団員は、
色んなアルバイトをして食いつないでいたわ。

圭織の着ている物も、安物のTシャツ、すり切れたGパンをはいていた。
でも、圭織の瞳は輝いていた。自分の生きがいを見つけて、充実した
毎日を送っている者だけが持つ輝きがあったわ。

泊まることにしたのだけど、安い材料を圭織が最高に料理をした、夕食
をすませ、共同トイレで、風呂も無いから、二人で銭湯に行ったの。

少し遠い銭湯まで、歩きながら圭織は演劇のことを話してくれたわ。
帰って、せんべい布団を並べて床についても圭織は遅くまで話続けた。

ようやく、圭織は眠りについたのだけど、あたしは中々眠れなかった。
自分の中に何か、拭いきれないものがあったの。

圭織を三年もほったらかしにしていた、負い目があったし、圭織は
それには、ひと言も触れなかったけど、またそれもあたしにとって、
寂しい気がしたの。もう、圭織にはあたしなんて必要ないのかと思うと
何だか、少し悲しかったわ。

139 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月26日(土)21時46分16秒
やっと、うとうとしかけた時だったわ。

圭織が、あたしの布団に入って来たの・・・。

圭織が泣きながら、お姉ちゃんと、つぶやきながらあたしに
抱きついて来たの・・・。

あたしも、圭織を抱きしめながら、涙が止まらなかったわ。

圭織が今も、あたしのことを姉として思ってくれたことが
嬉しかったし、三年間も圭織に寂しい思いをさせてしまった
自分がやりきれなかった。

そして、また、この世で一番愛している圭織と一緒の生活を送れる
喜びを噛みしめたの・・・。
140 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月27日(日)22時58分09秒
それから、バタバタと事は進み、あたしは建築家と結婚し、まもなく
女の子、なつみを産み落としたの。

旦那は、すぐにまた海外へ出て行ってしまった。
あたしのほうも、子育てが一段落すると、デザイナーの仕事も
ポツポツと始めるようになった。圭織のほうも芝居とアルバイトに
明け暮れる毎日だったの。

一年ほどたった頃だったわ。圭織が家にやって来たの。
可愛い盛りのなつみを膝に抱きながら、話してくれたわ。

今度の公演で、ついに主役を演ることになったそうよ。興奮ぎみに
話す口ぶりに、あたしは、少し違和感を感じたの・・・。

時おり、落とす視線にピンときたわ。 いきなり、
圭織の腹に手を当てたの・・・。

圭織は、ピクッと体を震わせたわ。それで、わかったわ。
あたしだって経験者だもの。

裕子「あなた・・・赤ちゃんが出来たんでしょ・・・」

圭織は力なくうなづいたわ。
141 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月27日(日)23時17分25秒
相手は、よく芝居を見に来る男性で、差し入れなんか何度かする
うちに圭織とつき合うようになったそうよ。

お互い、何にか魅かれあうものがあったのね。いつしか男と女の関係に
なって行ったというわけ。

そして、彼がプロポーズして来たそうよ・・・。
圭織も彼を愛しているのよ。しかし、まだ結婚する気には
なれなかったのよ。そんな時、主役の話が舞い込んできた。

貧乏劇団とは言え、主役は主役よ。圭織は有頂天になったわ。
あたり前のことね。芝居は圭織の生きがいだもの。

だけど、やっかいなこともわかったの。妊娠してることに気づいたの。

普通なら、相手もプロポーズしてるのだから、出来ちゃった結婚を
すればいいんだけど、圭織は彼にはまだ、妊娠してることは話して
ないのよ。

142 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月27日(日)23時43分55秒
ほかにも、問題があったの。彼が結婚したら芝居を止めて欲しいと
言ってるそうよ。

あたしは、その男に会いに行ったわ。
真面目そうで、言う事もしっかりしてるし、好感がもてたわ。
そして、本当に圭織を愛しているのがわかったわ。

彼は言ったわ。圭織とつき合う様になって劇団の現状を知って、
驚いたそうよ。そして、圭織たちの毎日にも・・・。

毎日、食うや食わずの生活、夜遅くまでアルバイトをして、
疲れきって、ただ眠るだけの生活。そして、公演のチケットを
売るために必死に頭を下げてお願いする日々。芝居が始まっても
道具の組み立てから、何にもかも劇団員がやり、終われば、
所かまわず、男でも女でも雑魚寝をするし、圭織の部屋でも
何人もの劇団員が、安酒をあおりながら芝居の話に夢中になっている。

圭織たちにすれば、そんなのはちっとも苦になんかならないのだけど、
はたから見れば、異様なことに見えるかもしれない。
143 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月28日(月)00時01分22秒
圭織は、あたしなんかに相談に来るくらいだから、相当に悩んで
いたわ。

あたしは、圭織の思った道を行けばいいのよ、としか言えなかったわ。
となれば、おのずと道はひとつだけだと思ったわ。

芝居は圭織の生きがいなのだから。子供はどうにでもなるわ。
いざとなれば、堕ろせばいいのよ。やっと主役を貰えたのよ。
男なんぞ、待たせておけばいいのよ。それで別れると言うのなら
それだけの男だったのよ。

あたしは、当然圭織が芝居を取るものだと思っていたのよ。

しかし、圭織は、男を選んだ。芝居を捨て、結婚して家庭に入り、
子供を産んだ。

それもまた、勇気のいることだと思うわ。

裕子は、話を終えた。
144 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月28日(月)18時34分56秒
広「その、生まれてきた子供は・・・僕なんですね」

裕子「圭織は、1人しか産んでいないから、当然あなたしか
いないわね・・・」

広「僕さえ、生まれてこなければ、母さんは自分の生きがいを、
自分の好きな道を歩んで行けたんですね・・・」

裕子「泣かないでいいのよ・・・坊や。圭織は、これっぽっちも
後悔なんかしていないわ。いつだって自分の選んだ道が正解なの。」

広「だって・・・演劇は母さんの生きがいだったんでしょ・・・」

裕子「そこが、圭織の悪女たる所なの。生きがいよりも、男を
選ぶところなんぞ、したたかで、憎らしいわ・・・」

広「僕は、生まれて来て良かったんですか・・・」


145 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月28日(月)18時58分50秒
裕子「圭織は、同時にあなたも選んだのよ。もしかすると、
男よりも、あなたのほうを愛しているかもしれない。
赤ん坊の頃のあなたを抱いた圭織を見ていると、妬ましい
くらいだった・・・」

広「僕はそんなに愛されていたのですか・・・」

裕子「その証拠に、圭織はあなただけしか、産まなかった・・・」

少女時代の詩や絵を描いていた、母の姿。そして、演劇にすべてを
打ち込み、愛した母。そんな母の姿と裕子の姿が重なり、激情が
湧き上がって来て、また裕子の体を求めた。

裕子は、そんな僕を包み込み、受けいれてくれた。
146 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年10月31日(木)22時13分50秒
夜明け前、伯母に起こされた。

伯母は、数時間前の妖艶な雰囲気はなくなっていた。

裕子「そろそろ、帰るわよ。あなたは運転が出来るかしら?」

広「・・・僕はまだ免許を取ってないんですよ。」

裕子「あたしが聞いてるのは、車の運転が出来るかと聴いてるの」

広「そりゃ、前に友達の車を運転したことが、ありますけど・・・」

裕子「じゃあ、あたしのかわりに家まで、運転して行きなさい。
あたしは、お酒を飲んだし、そんな気分じゃないわ。」

広「ハア・・・わかりました。」

伯母のかわりに、ミニクーパーの運転席に座る。
最初は慣れるのに時間がかかったが、やがて、アクセルを踏むと
すぐに反応する、パワーアップされたミニの走りに順応する。
147 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年11月01日(金)23時50分54秒
第三京浜に入ると、すっかり慣れ、調子に乗って百キロ近く速度を
出した。

その時、助手席の伯母がポツンと言った。

裕子「あなた・・・のぞみと寝たでしょ・・・」

一瞬、全身が凍りついた。時速百キロで車を走らせている時に
聴く言葉ではない・・・。

裕子「・・・親子丼が食べたくなっちゃった。」

思わず、伯母の顔を見つめた。

伯母は、僕を責めているのか、それとも・・・、
148 名前:片想いのスケッチブック 投稿日:2002年11月02日(土)00時13分04秒
伯母は、僕の腿に手を置いた。

裕子「あなたを責めているわけじゃ、ないのよ。あたしだって、
あなたを、圭織の身替わりにしたのだから・・・」

確かに、伯母がこの世で一番愛しているひとの面影を僕の中に
みい出していることは、わかっていた。

伯母は、間接的に圭織、僕の母と寝たかもしれないが、
僕自身も伯母の中に母の面影をみい出していた。それは、
間接的に、僕は、母の圭織と寝たのかもしれない。

夜明け前に家に帰りついた。

車を車庫に入れて、伯母の後から玄関に入って、
自分を凝視している、のぞみの前で固まってしまう。
149 名前:未来行きの切符 投稿日:2002年11月03日(日)22時19分52秒
のぞみ「なぜ、言い訳を言うの・・・どうして・・・」

そう言うと、のぞみは去って行った。

僕は、自分の部屋へ戻ったが、どうにもいたたまれなくなり、
のぞみの部屋に向かった。

ドアをノックした、返事がないので何度もノックした。

やっと、のぞみが、顔を出した。

広「・・・悪かった。すべて僕の責任だと思う」

のぞみ「私に言うべき事があるでしょ・・・」

広「・・・僕は、君のママと寝た・・・」

のぞみ「最低!・・・・」

のぞみは、ドアをバタンッと閉めた。
150 名前:未来行きの切符 投稿日:2002年11月04日(月)01時22分58秒
なぜ、のぞみに伯母との事を話してしまったのか、自分でも
わからない・・・。

伯母は、僕とのぞみが寝たことを知ってしまった。だからと言って
のぞみに、伯母と僕との事を言ってしまったわけでもないとは、思う
のだけど・・・。

もう、朝になっていたが、外は雨が激しくふり出していた。
小用に立とうとして、伯母の声が聞こえたので、キッチンに
入って見る。

伯母とのぞみが向かい合っていた。

裕子「あたしが、聴いてるのはこの引き出しに入れてあった
お金をどうしたのかと、あなたに聴いているの・・・」

のぞみを首を垂れていて、少しして言った。

のぞみ「・・・私が使いました。」

裕子「そう。確か、二、三万円あったはずだけど、何に使ったか
話してちょうだい・・・」

のぞみは、唇をかみ締めて黙っている。

外は、どしゃぶりの雨になっていて、雷まで鳴り出していた。

151 名前:未来行きの切符 投稿日:2002年11月04日(月)01時46分03秒
裕子「どうしても言いたくないようね。言えないようなことに
使ったのかしら・・・たとえ親子でも、置いてあるお金を
黙って使ったら、ドロボウみたいなものだわ・・・」

のぞみは、キッと顔を上げて自分の母親を見た。

のぞみ「確かに、黙ってお金を使ったのは悪いと思うわ。
ドロボウと言われてもしょうがないかもしれない・・・、
でも・・・、でも、私の大事な人をとるのも、ドロボウじゃ、
ないの・・・」

伯母は、無表情でのぞみを見つめ、答えなかった。

のぞみ「ねえ、答えてよ!、人の大事な男と寝る女は、
確か、ドロボウ猫と言うんでしょう・・・」

その時、キッチンの入口になつみが立っていることに気がついた。
152 名前:未来行きの切符 投稿日:2002年11月04日(月)02時10分07秒
のぞみは、なおも母親にせまった。

のぞみ「ねえ、どうなのよ・・・このドロボウ猫!・・・」

のぞみの、母親に対してあまりにな、もの言いに、近づいて
止めさせようとした時だった、

ピシッ!と鋭い音と共に、頬が鳴ってのぞみは倒れこんだ。

姉のなつみが、のぞみを殴りつけたのだ。

なつみ「ママに何てことを言うの!謝りなさい!・・・」

のぞみは、頬を押さえながら、ゆっくりと立ち上がり、そして
走りながらキッチンを出て行った。

玄関を開け、外へ飛び出して行った・・・。
傘も持たずに、どしゃぶりの雨の中へ走り出して行った。
153 名前:未来行きの切符 投稿日:2002年11月04日(月)02時28分50秒
なつみさんは、僕に向かって言った。

なつみ「・・・みんな、あなたが悪いのよ!あなたが来てから
何もかも、悪くなったのよ!のぞみを私からとり上げたあげくに、
ママまで、自分のものにするなんて・・・あなたのせいよ・・・」

そう言い捨てて、なつみさんはのぞみの後を追いかけて、外へ
出て行った。

伯母は、椅子に座ったまま下を向いて動かなかった。

僕も外へ出て行った。なつみさんの言葉に打ちのめされていた。

激しい雨の中を、ずぶぬれになりながら茫然と歩いていた。

やがて、近くの公園にたどり着いた。

中に入って行くと、キイ、キイと音がした。

のぞみが、ブランコに乗っていた。全身ずぶぬれになっている。
154 名前:未来行きの切符 投稿日:2002年11月04日(月)20時36分03秒
のぞみの側に行く。

広「のんちゃん、帰ろう・・・」

のぞみは、首を振ってブランコに乗り続けた。

僕が、のぞみの肩に手とかけた時だった、
突然稲光と共に、鼓膜を破るような雷鳴がとどろいた。
近くに落雷したのだ。

のぞみは、僕の体にしがみついて来た。
僕らは、固く抱き合った・・・。

のぞみは、寒さなのか、恐怖なのか、体がブルブルと震えていた。

やっと、おさまって、のぞみの肩を抱いて連れて行こうとした、
しかし、のぞみは僕の手を振りほどきながら、叫んだ。

のぞみ「あたしなんか、死んじゃえばいい!、死ねばいいのよ!」

顔をゆがめ、泣き叫んでいるのぞみを見て、胸がはり裂けそう
だった。

すべて、僕が悪いのだ・・・のぞみをここまで追い込んだ
自分こそ、死ぬべきなのだ・・・。

そんな二人を、なつみが見つめていた。
155 名前:未来行きの切符 投稿日:2002年11月04日(月)20時57分10秒
何とか、のぞみを抱きかかえて家へ向かう。
その後をなつみがついて行く。

やっと帰り着くと、伯母が待ちかまえていて、大きな
バスタオルで、全身ずぶぬれになったのぞみを包んだ。

のぞみは、体を震わせながら、うわ言のようにつぶやいている。

のぞみ「ママ・・・ゴメンなさい・・・」

伯母はのぞみを強く抱きしめた。なつみさんも、二人と抱き合う。

そんな三人を見ながら、僕は、自分の部屋へ行った。

バックに、下着や何か、適当に詰め込む。残りはあとで、
送ってもらえばいい。

抱き合っている三人を思い浮かべた。
自分は、この家にいてはいけない人間だということを、痛いほど
思い知らされた。

部屋を出ようとして、床にポタポタと水がしたたり落ちていることに
気がつく。
自分もずぶぬれなことに気づく。
服を替えなければと思ったが、どうせ、また濡れるのだからと
思い直す。
156 名前:未来行きの切符 投稿日:2002年11月04日(月)21時54分02秒
下へ降りると、誰かに見られないうちに足早に出て行こうとした、
しかし、伯母に見つかる。

裕子「ちょっと、待ちなさい!どこへ行こうというの・・・」

広「・・・友達の所へ行きます。これまで、ありがとうございます、
僕は、ここにいては、いけないんです・・・」

玄関に降りた時、誰かが、後ろから飛びついてきた。
一瞬、のぞみかと思った、後ろを振り返って見て、違うことに
気づく。

なつみさんだった。

なつみさんは、僕に強くしがみついて来る、目に涙がうかんでいる。

なつみ「行かないで!・・・私を許して!あなたが悪いわけじゃ
ないのに、私が、バカなのよ・・・」

広「・・・僕が、すべて悪いんです。僕さえいなくなれば、
またみんな仲良く出来るんです・・・」



157 名前:未来行きの切符 投稿日:2002年11月09日(土)16時49分14秒
なつみ「あなたが好きよ・・・のぞみとのことは、私が嫉妬
していたかもしれない・・・私たちは家族なのよ。」

家族にしては、少し異常な関係かもしれない。

伯母の顔を見ると、彼女はうなづいて見せた。


あれから、一ヶ月がたった。

僕は、伯母と二人で、なつみとのぞみの姉妹の乗った飛行機が
離陸して行くのを見送っていた。

あれから、色々あった末、姉妹はヨーロッパへ留学することに
なった。

のぞみは、僕よりも、姉のなつみを選んだわけになる。
二人で仲良く、旅立って行った。

僕は先日、伯母の家を出て、1人暮らしを始めた。
伯母と二人だけの生活は、身がもたない、イヤ、身のおきどころが
ない。

裕子「さあ、帰りましょう。家へ来る?・・・」

広「え〜、遠慮しときます・・・。」

裕子「そお。あのね、来週、圭織が来るのよ・・・」

広「へ〜、そうですか。」

母の顔を見るのは、何んだか気恥ずかしい・・・。


  終わり。
158 名前:未来行きの切符 投稿日:2002年11月09日(土)19時15分33秒
ようやく、完結しました。

「15」さん、
「81」さん、
「94」さん、
「102」さん、
「114」さん、

レスをありがとうございます。

一応、ヒロインは、マロンメロンコンビの二人ですが、
裕ちゃん、かおりんの二人をはじめ、卒業した、ごっちん、
を含め、モー娘。全員と、美貴てぃ、やメロンの四人を
登場させることが出来ました。 ありがとうございました。

Sairenn。

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