Liar 2
- 1 名前:作者 投稿日:2002年08月30日(金)10時23分31秒
- 風板から引っ越してきました。
一応、よしやぐちゅーです。
風板からの続きですが、おそらく、このスレはそんなに使わないで終わると思います。
ですので、話が完結した後は、また裕ちゃん絡みの短編を気ままに書いてくつもりです。
よろしくお願いします。
- 2 名前:作者 投稿日:2002年08月30日(金)10時27分20秒
- 前スレ↓
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=wind&thp=1012210310
風板の雰囲気、何となく好きだったんですけどね。
やぐちゅーものが多かったし(笑)
まさか2枚目にいくなんて思ってもみなかったけど。
とりあえず、自分の中では順調に完結に向かってるんで、この調子でがんばりたいなと。
もう、先が見えちゃってる人も多いんじゃないかと思いますが…。
では、更新します。
- 3 名前:Liar 投稿日:2002年08月30日(金)10時28分27秒
- ピッと通話ボタンを切って、裕子は手の中のコードレスを見つめた。
ため息とともに、それを充電器に戻して。
視線を感じて顔を上げると、ひとみが真っ直ぐにこちらを見ている。
「矢口の声、久しぶりに聴いたなぁ」
笑って話しかけると、ひとみはちょっと困ったように首を傾げた。
「やっぱり、会いたいですか?」
「そりゃ、会いたいわ……」
にやっと笑ってひとみに歩み寄る。
「今更アンタに虚勢張るつもりはないし。いい機会やん。吉澤の決心がついたなら、早めに矢口に会いに行くか?」
- 4 名前:Liar 投稿日:2002年08月30日(金)10時30分00秒
- 裕子の言う決心とは、真里に自分の本当の気持ちを伝える決心ということで。
数日前の出来事以来、裕子の優しさに触れてることを実感できる。
きっと、真里やみちよたちとは、ずっとこういうふうに接し続けてきたんだろう…と思いながら。
笑顔はもちろん、皮肉げな顔や困惑顔など、人間味あふれる表情を垣間見せて。
今まで、自分たちがどれだけ相手の1つの表情しか知らなかったかを、お互いに思い知った。
ふと、家族ってこーいうもんかな…とまで思えてしまう。
不倫の末の子供という事実を知った頃はいわゆる反抗期で、その後、母も長い間病気を患っていたこともあり、楽しい思い出はずい分と遡らなければない。
- 5 名前:Liar 投稿日:2002年08月30日(金)10時30分41秒
- だから、裕子との再会と真里との出会い、更に、2人と暮らし始めたことは、考えていた以上に大きなことだったと。
だけど、真里に本当のことを話したら、軽蔑されるかもしれない。
されてもおかしくないだけのことを、自分はしてしまったんだから。
でも、今の真里の気持ちがどうなってるかもわからなくて。
とにかく、誠心誠意、真里に謝ろう…と、決意を新たにしたひとみだった。
- 6 名前:Liar 投稿日:2002年08月30日(金)10時31分11秒
―――――――――――
- 7 名前:Liar 投稿日:2002年08月30日(金)10時31分58秒
- 一旦決心してからのひとみの行動は、早かった。
真里とメールで連絡を取り、裕子と一緒になつみの家へ行く日時を決める。
そして、からっと晴れた、天気のいい日曜の午後。
2人はなつみの部屋を目指していた。
もう何回か経験した、裕子の車の助手席。
決して気楽な訪問ではないことが予測できるせいか、車中は沈黙しがちだった。
そんな中、ひとみがぽつりとつぶやく。
「矢口さん、怒るかなぁ…」
裕子は、前に向けられていた視線をふとひとみに移す。
ひとみ自身は真っ直ぐ前を見据えていた。
- 8 名前:Liar 投稿日:2002年08月30日(金)10時32分44秒
- 「言うの、怖いん?」
裕子もすぐに視線を戻して尋ねる。
「決心が鈍るとかじゃないですし、怒られても、軽蔑されても、私は何も言えないですけど……」
「けど?」
「矢口さんに嫌われるの、やっぱり辛いなぁって思えて…」
「矢口のこと、好きなんか?」
「はい……。あっ、いえ、別に…」
ひとみは即答してから、はっとして慌てて首を振った。
- 9 名前:Liar 投稿日:2002年08月30日(金)10時34分49秒
- そんな様子を見て、クスリと笑う。
「別に焦らんでもええよ。わかってるから」
「はい、すみません…」
裕子はふと真顔に戻る。
「矢口は……怒らんと思うよ」
「何でですか?」
ひとみの問いに少しの間考えて、口を開いた。
「―――何となく」
それっきり、口をつぐんでしまう。
でも、車はすぐに目的地に到着した。
- 10 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月30日(金)12時24分27秒
- 新スレおめでとうございます。
微妙な人間関係がなんだかいいですね。
裕子とひとみの関係も良好になって(w
せっかく新スレになったのでひっぱって書いてください。(w
- 11 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月31日(土)01時17分20秒
- 新スレだー!!
吉澤の告白ですか・・・
矢口も告白したりして(w
- 12 名前:名無し読者。 投稿日:2002年09月02日(月)15時22分32秒
- トライアングルって難しい・・・
裕ちゃんライブいってきました。もう最高です〜。
娘。ライブとはかなり違った(祭りじゃない)聞かせるライブ・・・
正直裕ちゃんあんなに歌が上手いとは思いました(裕ちゃんごめん
HEROは鳥肌ものでした。(w
- 13 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月05日(木)18時51分46秒
- 発見発見大発見!!
新スレ待ってました。
まだまだ頑張って書いて下さい(w
- 14 名前:作者 投稿日:2002年09月06日(金)03時37分21秒
- レスありがとうございます。
>>12 名無し読者。さん
裕ちゃんのライブ、よかったですね。
私は大阪・AXと参戦しました。
次の参加予定は2週間ほど先なので、今から待ち遠しいです。
それでは、更新です。
- 15 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時38分59秒
- アパートの部屋の前に立つと、さすがにドキドキしてくる。
インターホンを押そうと手を伸ばした裕子が、ちらっとひとみを見る。
「緊張するか?」
なぜか、小さく笑いながら。
「それなりに……」
ひとみは短く答える。
ピンポーン。
音が鳴るのとほぼ同時に、ドアの向こうで物音がした。
「こんにちは。いらっしゃい」
開けられたドアの向こうには、先週会ったばかりの笑顔のなつみがいた。
- 16 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時39分44秒
- 「こんにちは」
裕子も笑顔であいさつを返し、ひとみの背中を押す。
ひとみは戸惑うように裕子の表情を伺うが、促されるままに部屋に入った。
見渡すまでもなく、ワンルームの部屋の中には真里の姿が見つけられる。
目が合うと、真里はどこかぎこちなく微笑んだ。
「よっすぃー」
「あの…、こんにちは。矢口さん」
すると、背後から裕子がひとみの肩にぽんと手を置く。
「アタシら、外に行ってるわ」
確かに、なつみがいる場で話せることではなかった。
微かに怯えた色の瞳で裕子に頷き返す。
- 17 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時40分36秒
- 「なっつぁん、アタシと一緒に、ちょっとそこまで買い出し行かへん?」
裕子は明るい声で横にいるなつみに声をかける。
え?という顔で、なつみはひとみと裕子の顔を交互に伺う。
が、何か察するところがあったのか、すぐに裕子の言葉に頷いた。
「それじゃ、矢口、ちょっと行ってくるね」
とりあえず…という感じで財布やケータイを手に取ると、部屋の中にいる真里に声をかける。
「矢口、また後でな」
目の前にひとみが立っているせいで、ドアのところにいた裕子から真里の顔は見えなかった。
ただ、それだけ言って、部屋の外に出る。
最後にもう一度、ひとみの肩に手を置いてから。
真里からの返事は……裕子には聞こえなかった。
- 18 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時41分19秒
- ひとみは後ろでバタンとドアが閉まるのを聞き、その音で覚醒したかのように、真里のところへ歩み寄る。
「矢口さん………」
促されて、その場にぺたりと座り込む。
「久しぶり」
今度はいつもの笑顔で話しかけてきた。
「久しぶり……ですね」
「―――何か飲む?あの2人、買い出しとか言ってたけど、よっすぃーたちが来るからって、なっち、いろいろ買ってきたみたいだし」
「あっ、大丈夫です」
ひとみは立ち上がりかけた真里を慌てて制する。
そう?と再びその場に座って。
- 19 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時42分05秒
- 「矢口に話…だよね?」
あれだけあからさまに裕子がなつみを連れて行ってしまったんだから、そのくらいは真里にも想像がつく。
久しぶりに見るひとみの様子は、なつみの言葉通り、以前よりも少しだけ幼く見えた。
裕子は………はっきり見えなかったから、自分にはわからない。
今頃、なつみとどこで時間を潰してるんだか。
俯いてしまった目の前のひとみに、ゆっくりと手を伸ばす。
「よっすぃー、どうしたの?大丈夫?」
顔の前で手を振ると、ひとみはぱっと顔を上げた。
「あ、はい。ごめんなさい。ぼーっとして…」
「ううん。いいけど。えっと、矢口がこんなこと言うのもなんだけど、裕ちゃんと上手くいってるみたいじゃん」
そう言って、真里はうれしそうに笑う。
- 20 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時42分52秒
- 「あの、それなんですけど……。矢口さんに話したいことがあって―――」
頷きながらも、何だろう?という表情で、真里は真っ直ぐにひとみを見つめている。
口の中に溜まった唾をコクリと飲み込み、はっきりとした口調で話し始めた。
「ごめんなさい。私、矢口さんに、嘘、吐いてました」
真里は黙ったまま、次の言葉を待った。
ひと息ついて、ひとみは口を開く。
「矢口さんに、好きって言ったこと……」
- 21 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時43分34秒
- 口をきゅっと結んで、困ったような悲しんでるような、どちらともとれる表情をしていた。
「嘘ってことは、気持ちが冷めたとかじゃなくて、最初っから……?」
真里の目をしっかり見て、1つ頷く。
「自分でもどういう種類の感情なのか、未だにはっきりしないんですけど、私は中澤さんのことが好きでした」
「―――えっ?」
「これは、中澤さん自身も知らなかったことですが、私が初めて中澤さんに会ったのは10年以上前で………」
真里は目を見開いた。
- 22 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時44分43秒
- 「その時に、子供の憧れみたいな感じで中澤さんのことを好きになったんだけど、時が経つに連れ、自分の中の一方では恵まれた人生を送ってる中澤さんにものすごく嫉妬し始めて……。矢口さんに告白したのは、中澤さんを妬んで、そして、傷つけたくて…………」
ところどころ口ごもりながらも、ひとみは真里の目を見て言葉を続けた。
ただ、最後もひと言だけは視線を逸らしてしまう。
数秒間の沈黙の後、喉の奥から搾り出すように発せられた真里の声。
「信じらんない―――」
怒りのせいなのか、わずかに震えているようで。
- 23 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時45分28秒
- 「何で、そんなことができるんだよぉ……」
「あの、でも、中澤さんのこととか関係なく、矢口さんのことは―――」
ひとみは、真里に対する好意を説明しようとする。
取り繕うように話す自分が情けなかった。
「どうして、姉妹で傷つけ合わなきゃならないの?今のよっすぃーには、裕ちゃんってたった1人の家族なんじゃないの……?」
わなわなと震え、時折り掠れる声で言葉を続ける。
「裕ちゃんもよっすぃーもお互いが苦手なのかな…とは思ってたけど、よっすぃーがそんなふうに考えてたなんて……」
- 24 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時46分35秒
- その時のひとみには、真里の気持ちの方がわからなかった。
真里が憤りを感じているのは、真里を好きだという気持ちを偽ったことじゃなくて。
どうやら自分が裕子を『傷つけたい』と思っていたことにあるようで。
「今更、何を言っても遅いかもしれないですけど………」
それでも途中で投げ出すことはしたくなかった。
全てを話すと決めたのだから。
「あくまでそれは、過去のことなんです。中澤さんと暮らし始めて、それまでとは違う姿を目にするようになって、私の気持ちも変わっていって。最近ですけど、自分はすごく中澤さんのことを頼りにしてるんだなって思えるようになって」
- 25 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時48分09秒
- ひとみが言葉を選びながら話すに連れ、耳を傾ける真里の表情から徐々に険しさが薄れていく。
それでも、眉根を寄せて、考え込むように視線を彷徨わせ。
「そう…なんだ……」
「何ヵ月もかかったけど、ようやく、中澤さんこそが自分の家族なんだなって」
ひとみがそう言ったきり、少しの間、どちらも口を開かなかった。
真里がへの字に曲げられた口元を解き、はぁーっと細く長い息を漏らして、その沈黙を破る。
そして、彷徨っていた視線が、ふっとひとみを捉える。
「何か、よっすぃーの話を聞くと、矢口が悩んできたことってすごく小さなものなのかなぁって……」
- 26 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時49分05秒
- それは違う。
口には出さなかったが、ひとみは心の中で真里の言葉を否定した。
そりゃ、きっかけと悩んだ時間は自分の方が半端じゃなく長いかもしれない。
でも、自分と裕子の確執は、真里の中ではとてつもなく大きいものだというのが傍目にもわかった。
そして、真里のその想いはとてつもなく深くて。
あの時、好きだと言った自分の気持ちは確かに嘘だったけど、好きだと応えた真里の気持ちも………。
きっと、本心からではなかったのだろう――――と。
- 27 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時49分46秒
- 「じゃぁ、矢口って、よっすぃーにフラれたことになるのかぁ」
それは痛いなー…と、明らかに無理やり作ったような笑顔を浮かべた。
無理して作った笑顔でも、それを自分に向けてくれたのが素直にうれしかった。
もう口も聞いてくれないかも…という思いさえあったから。
どうして、裕子も真里も、こんなに優しいんだろう。
こんなことをしてきた自分に、どうして笑顔を見せ、声をかけてくれるんだろう。
そんなの、どれだけ考えても答えなんか出てこない。
人間の心の内側なんて、本当の気持ちなんて、その人自身でもわからなかったりするんだから。
ひとみ自身が、長い間そうであったように―――。
- 28 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時50分49秒
- 「うまく言えないけど、そうじゃないと思います」
「へっ?何で?」
だって矢口はつき合ってると思ってたのに…とつぶやいて。
「矢口さんの好きな人って、私だったんですか?」
「そりゃ、もちろん………」
真里は自信なさげに言いかけて、大きなため息を吐いた。
おそらく、真里もどこかで気づいているのだろう。
今日ここを訪ねてから、一度も裕子に声をかけなかったことを。
それ以前に、先日の電話で裕子に代わろうとした時の動揺を。
その理由と、真里自身の想いに。
- 29 名前:Liar 投稿日:2002年09月06日(金)03時52分12秒
- 黙ってしまった真里の横で、ひとみがゆっくり立ち上がる。
戸惑ったままその様子をぼーっと見上げていた真里は、ひとみがケータイを取り出したことで、その意図に気づいた。
「私が、矢口さんに謝りたかった話は終わりですけど、中澤さんと安倍さん、呼んでいいですか?」
不安そうな表情のまま、真里は小さく頷いた。
ケータイをいじるひとみを真里はじーっと見つめて、ぽつりとこぼす。
「よっすぃーの話、裕ちゃんは知ってるんだよね……」
「あ、はい、話しました…けど…」
ケータイを耳に当てながらひとみは答えた。
ふーん…と軽く頷いた真里を視界に認めながらも、ひとみの意識はすでに電話に向いていて。
電話の向こうで裕子の声が聞こえたのと同時に、ひとみは真里の声を耳にしたような気がした。
小さな声で「アホ裕子」と。
- 30 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月06日(金)09時02分20秒
- 内容濃いな(w
今からはやぐちゅーなのか?
裕子となつみは二人で何か話してたのかな?
- 31 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月06日(金)13時14分34秒
- 矢口は今、どんな気持ちなんだろう・・・?
- 32 名前:作者 投稿日:2002年09月11日(水)06時22分30秒
- 今週のハロモニはタンポポSPでしたが。
この調子で平家さんSPとかやってくれないんでしょうか……。
あー、そしたらゲームとかはどう考えても無理だよな。
せめてメドレーでスタジオライブでも。
――なんてことを思ってしまいますが。
ただたんに裕ちゃんと平家さんの絡みが見たいだけだったりして(苦笑)
では、更新です。
- 33 名前:Liar 投稿日:2002年09月11日(水)06時23分28秒
- なつみの部屋を出た裕子たちは、近くのコンビニへ行って冷たいジュースを買い、5分ほど歩いたところにある小さな公園に来ていた。
木陰のベンチに座り、砂場や滑り台で遊ぶ子供たちを見ながら。
「なっつぁんには、いろいろ迷惑かけたなぁ」
あの子がかわいいとかあっちの子が転んだ…などという会話から一転して、裕子がつぶやいた。
「え?」
思わず聞き返すと、すまんなぁ…と謝られ。
「矢口、何だかんだ言うて、1ヵ月近くなっつぁんのとこに世話になってるやん」
- 34 名前:Liar 投稿日:2002年09月11日(水)06時24分15秒
- 「あぁ。別に迷惑だとは思ってないし。まぁ、部屋が狭くて不便な思いさせちゃってるかもしれないけど、なっちはすごく楽しいから」
そぉか…と返して、缶ジュースをコクリと仰いだ。
「矢口から、それなりに話は聞いてるんやろ?」
「ん。まぁ、それなりに…ですけど」
ちょっと気まずそうに、なつみもジュースをひと口飲んだ。
「矢口は、よっすぃーのことも裕子さんのことも、すごく好きなんだって。裕子さんとうまくいかなくなっちゃったー…って泣きつかれたこともあったけど、それ以上に、裕子さんとよっすぃーの仲がぎくしゃくしてたのが辛いみたいで」
- 35 名前:Liar 投稿日:2002年09月11日(水)06時25分07秒
- 確かに、裕子がひとみとの距離を意識して縮めようと思ったのは、真里が出て行ってからだ。
自分でもこのままではまずいと思っていた矢先のこと。
「何かさぁ、矢口って行動力あるよなぁって……」
裕子は決してなつみの方を見ようとはせず、視線だけはずっと遊ぶ子供たちを追っていた。
「なっつぁんのとこ行くって宣言された時は、引き止めたい思いでいっぱいやったんや」
子供たちを見つめる裕子の目には、どこか穏やかな光が灯っている。
「でもな、今、アタシ、結構吉澤といい関係になれたんやないかなぁって。それもみんな、矢口のお陰なんやと思う」
やはり、変化を感じてるのは本人たちも同じだったみたいで。
- 36 名前:Liar 投稿日:2002年09月11日(水)06時25分44秒
- 「じゃあ、今日のよっすぃーの話って、何なんですか?」
なつみがふと疑問を口にすると、裕子は視線を移してにやりと笑った。
「さぁな。後でなっつぁんから訊いてみぃ」
皮肉っぽい表情と言葉を取り戻した裕子を見た時、なつみはおかしな満足感を覚えた―――。
- 37 名前:Liar 投稿日:2002年09月11日(水)06時26分32秒
- ジュースも飲み終わろうとする頃、裕子のケータイにひとみからの着信が届く。
短い受け答えの後、ケータイをパチンと閉じると、裕子はなつみを促して立ち上がって。
「さて、なっつぁんの部屋に戻りますか」
木陰のベンチを離れると、明るい日差しに目を細めて、うーん…と伸びをする。
- 38 名前:Liar 投稿日:2002年09月11日(水)06時28分37秒
- 「矢口と会うの、どうですか?さっきは何も話してなかったでしょ?」
「ん?楽しみやよ。すごく」
「気まずい思いとかは?」
「どうなんやろ。アタシはないけどな。だって………」
「だって?」
「アタシ、矢口のこと好きやし」
当たり前のように言って、なつみの先に立って歩き始める。
2人だけで長い間話をしたのも初めてだったけど、まさかこんな言葉がこの人の口から飛び出すとは思わなかった。
やっぱり、中澤裕子はわからない………。
なつみは裕子の後を追いながら、ぼんやりと思った。
- 39 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月13日(金)10時36分31秒
- 更新お疲れ様です・・・
微妙になっちゅーというか会話してるだけですが(w
昔は王道だったなっちゅーもいまや・・・・
矢口と裕子の最初の会話が気になる今日この頃です
- 40 名前:作者 投稿日:2002年09月15日(日)04時36分23秒
- なっちゅーですか…。
読むのはいいんですが、私はどうもなっちが書けない(汗)
なっちゅー自体が苦手な訳ではないと思うんだけどなぁ…。
ってことで、更新します。
- 41 名前:Liar 投稿日:2002年09月15日(日)04時37分31秒
- 「ただいまー」
なつみの声に続いて、裕子もようやく部屋に上がる。
真っ先に目に入ったのは、何て言っていいのかわからない、複雑そうな真里の顔。
今にも泣き出しそうなのか、怒り出そうとしているのか。
横にいたひとみは、真里に比べれば幾分さっぱりしたようで。
それでも、視界に裕子を認めると、ほんの一瞬だけ切なげに目を細めた。
とりあえず、話すべきことは話したんやな。
裕子はひとみに小さく微笑みかける。
「お帰りなさい」
ひとみは立ち上がって真里の隣を空ける。
- 42 名前:Liar 投稿日:2002年09月15日(日)04時38分17秒
- なつみが裕子をちらりと見た。
その視線に頷いて、裕子はひとみが空けてくれた場所に座る。
つまり、真里の隣に。
「やーぐち。元気やったか?」
もっと神妙な顔をして話しかければよかったのかもしれない。
でも、今の自分にはこの軽口が精いっぱいで。
電話の時みたいに、真面目な顔をして言えなかった。
「会いたかったで」
真里は何も答えずに、視線を逸らす。
逸らしたまま、つぶやいた。
「アホ裕子」
- 43 名前:Liar 投稿日:2002年09月15日(日)04時39分07秒
- 何や、久しぶりに聞いたわ。その言葉。
「アホ言うなや。アタシ傷つくから」
笑って返すと、真里が即座に続ける。
「アホ」
「ちょぉ、待ち。何でアタシがそんなにアホアホ言われなあかんの」
「決まってるじゃん。アホだから」
「決まってるって………」
裕子が頭を抱えるその横で、なつみとひとみが苦笑混じりに顔を見合わせた。
こんな様子の裕子を見るのは初めてだと言わんばかりに。
クスリと笑みがこぼれてしまう。
- 44 名前:Liar 投稿日:2002年09月15日(日)04時40分00秒
- それに気づいてじろりと2人を睨みつけると、裕子は大きく息を吐いて、再び真里に向き直る。
「なぁ、矢口ぃ。アタシ、ほんまアンタに会いたかったんやよ」
それでも、こちらを向こうとしない真里に焦れてくる。
そんな裕子を見かねたように、なつみが言った。
「裕子さん、なっちたち、外に行ってましょうか?」
どうしようかと裕子が考える間もなく。
「その必要ないっ」
ばっと顔を上げて真里が叫んでいた。
- 45 名前:Liar 投稿日:2002年09月15日(日)04時40分56秒
- 裕子としては、なつみに申し訳ないと思いながらも、その提案はうれしかった。
だが、こうまではっきり真里に否定されては何も言えない。
かと言って、このままこの狭い部屋に4人で座り込んでいても、何ら進展があるとは思えなくて。
真里以外の3人は、一様に重いため息を吐いた瞬間だった。
突然、真里はすっくと立ち上がり、隣にいた裕子の腕を掴んで引き上げる。
「えっ?矢口?」
うろたえる裕子をそのまま引っ張り、部屋を横切って玄関へ向かう。
「ちょっ、矢口。痛いって………」
腕をとられてるせいで腰をかがめた辛そうな体勢のまま、裕子はあたふたと部屋を出て行った。
- 46 名前:Liar 投稿日:2002年09月15日(日)04時50分01秒
- 乱暴に開け閉めされたドアが、大きな音をたてて。
ほんの10秒ほどのこと。
嵐が過ぎ去ったかのように静かになったなつみの部屋で。
ひとみとなつみはどちらからともなく息を吐く。
「矢口さん―――」
「ほんとは話したかったんじゃない………」
2人が消えて行ったドアを見つめながら、ひとみとなつみはつぶやいた。
- 47 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月15日(日)17時34分00秒
- 寸止め(苦笑
先が気になる今日このごろ
今日は名古屋で裕ちゃんコン
ヒーローを歌う裕ちゃんカッコよすぎ・・・シャウトした声がとくにツボ
裕ちゃんファンなのに歌あんまり歌上手くない?
と今回のツアーがないと誤解してました(w
行って良かった。
- 48 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月15日(日)19時58分15秒
- いよいよ、やぐちゅーの和解ですかね?
続きが待ち遠しい・・・。
- 49 名前:作者 投稿日:2002年09月16日(月)00時11分14秒
- 久しぶりにANNSSをリアルタイムで聴いてる気がする。
名古屋ライブ直後のせいか、妙なテンションの裕ちゃんですね。
ってことで、更新します。
- 50 名前:Liar 投稿日:2002年09月16日(月)00時12分17秒
- 真里はなつみの部屋を出るとすぐに、つかんでいた腕を離す。
しかし、そのまま裕子を振り返ることなくすたすたと歩き出した。
その小さな背中を見つめながら、裕子は素直にその後を追う。
1分ほどその状態が続いた頃、前を歩く真里の足がパタリと止まった。
数歩の差で追いついて、後ろから覗き込む。
「どしたん?」
「さっき、なっちとどこにいたの?」
頑なな様子が見られなくなったことに、裕子はほっと胸をなで下ろした。
「さっき?近くの公園やけど。そこ行くか?」
- 51 名前:Liar 投稿日:2002年09月16日(月)00時13分03秒
- コクリと頷いた真里を見て、今度は当たり前のように裕子が先に立つ。
その半歩後ろをついてくる真里に、そっと手が伸ばして。
「構へん?」
それに応える言葉も見つからないまま、真里は差し出された白い手を握る。
身体に見合わない小さな手。
そのやわらかい感触に、一瞬だけドキッとして。
そのまま、どちらも口を開くことなく公園までの数分の道のりが過ぎていった。
- 52 名前:Liar 投稿日:2002年09月16日(月)00時14分10秒
- 空いていたベンチに座ると、俯きがちだった真里がようやく話し出す。
「よっすぃーね、矢口じゃなくて裕ちゃんのことが好きだったんだって」
「うん」
「でもね、裕ちゃんのこと好きだったけど、ずっと嫉妬してたりもしたんだって」
「うん」
「矢口はね、よっすぃーのことが好きなのに」
そう言うと、真里はわずかに顔を上げて、ちらりと裕子の表情を伺う。
「……そぉか」
しかし、何の変哲もない裕子の相槌を聞いて、真里は諦めたように肩を落とした。
「アホ」
「へ?何でそうなんの?」
- 53 名前:Liar 投稿日:2002年09月16日(月)00時15分38秒
- この人は、本気で尋ねてるんだろうか。
真里は少しの間考えて、口を開く。
「だって、よっすぃーに訊いたら裕ちゃんも知ってるって言うんだもん」
「そりゃ、まぁ…。あ、でもな、吉澤のアタシを好きって気持ちは、今は家族として好きってことやと思うけど?」
「ふうん…」
「ふうんって…。まぁ、ええけど」
それより…とひと区切りつけて。
「さっき自分で言うてたけど、矢口はまだ吉澤のこと好きなんか?」
ふっと真剣そうな目が向けられる。
真里はそれに否定も肯定もしなかった。
「だったら何?」
質問で返す。
- 54 名前:Liar 投稿日:2002年09月16日(月)00時18分15秒
- その質問に、口元に笑みを浮かべて、でも、あくまでその視線は真剣なまま、裕子は答えた。
「ん。アタシは、ずっと矢口のことが好きやから」
「な…に言って…」
途端にくしゃっと顔を歪めた真里を見て、裕子の口元から笑みが消える。
そして、ゆっくりとくり返す。
「アタシは、矢口が好きや」
- 55 名前:Liar 投稿日:2002年09月16日(月)00時20分06秒
- 真里は何かを堪えるように、きゅっと唇を噛みしめた。
「嘘…」
「嘘やないよ。矢口が幸せならそれでいいって思ったけど、いつまで経っても諦められへんし。それに、吉澤の話を聞いて決心したんや。もっかい矢口に好きって言おうって」
失恋した真里につけ込むようなことをしてるのは、自分でも十分承知していた。
でも、誰に卑怯だって言われてもいい。
この気持ちだけは、ずっと変わらない。
それだけは、確かなことだから―――。
- 56 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月18日(水)03時04分23秒
- 矢口の真相。。。
頑張れやぐちゅー!!
- 57 名前:作者 投稿日:2002年09月20日(金)11時58分17秒
- もうそろそろ終わるかなー…と思い始めてから、すでに1ヵ月が経とうとしてますが。
いや、ほんと、ようやく終われそうな気がしてほっとしてます(笑)
とりあえず、今回の更新。
- 58 名前:Liar 投稿日:2002年09月20日(金)11時59分20秒
- 裕子の言葉を聞きながら、真里の目には涙が溜まってくる。
「矢口、裕ちゃんよりもよっすぃーを選んだんだよ」
「知っとる」
「裕ちゃんのこと、信じられなくなったんだよ」
「そんな想い、もう二度とさせへん」
「な…んで……」
震える声で、一生懸命言葉を続けようとする。
「さっきから言うてるやん」
そんな真里の心を見透かすように、裕子は潤んだ瞳をじっと見つめる。
「アタシは、矢口が好きやから……」
- 59 名前:Liar 投稿日:2002年09月20日(金)11時59分55秒
- 自分の気持ちは変わらないどころか、真里の不在とひとみの告白を経て、想いはますます強くなった。
断られたって構わない。
むしろ、玉砕覚悟の告白だった。
真里自身の言葉通り、彼女の気持ちはまだひとみに向いてると思っていたから。
かと言って、真里にフラれてきれいさっぱり諦められるハズがないのもわかっていたけど。
それでも、この気持ちを伝えずにはいられなくて。
再び黙ってしまった真里を、苦笑混じりに見守りながら。
- 60 名前:Liar 投稿日:2002年09月20日(金)12時00分44秒
- 「矢口………、やっぱ困ってるん?」
コクリと頷く。
「そっか……。そやな。ごめんな、いきなりこんなこと言うて」
真里はちらっと裕子を見て、息を吐いた。
この人はカン違いしてる。
聞き分けがいいのか悪いのか。
自分の態度と表情で全てを悟った気になっている。
あながち、それがはずれてるとは言えないのが悔しいけど。
きっと、今ははずれている。
困ってるのは確かでも、それは裕子の考えてる理由とは別のものだ。
- 61 名前:Liar 投稿日:2002年09月20日(金)12時01分31秒
- 好きで。
裕ちゃんのことは大好きで。
それは、何にも変えられない自分の中の真実だと自覚したけど。
今、それを正直に口にしたら、軽い人間だと非難されてしまうような気がして。
さっきの「よっすぃーが好き」は、明らかに強がりから出た言葉。
それを聞いた時の裕子の反応が見たかった。
あの時、あからさまに態度に表してくれたら。
ほんの少しでも悔しそうな、辛そうな色を、その声や表情に浮かべてくれたら。
すぐにでも直前の自分の言葉を否定していたのに。
裕ちゃんが好きだと言っていたのに。
- 62 名前:Liar 投稿日:2002年09月20日(金)12時02分08秒
- 自分の気持ちがどこに向いてるかなんて、今日、ひとみに言われるまでもなく気づいていた。
でも、裕子はその言葉を信じてる。
自分がまだひとみを好きだと思ってる。
だから、裕子に告白されて困ってると思ってる。
「違うよ」
裕子からの告白でこぼれそうになった涙をぐっと堪え、力強く否定した。
「えっ?」
困惑顔の裕子は、真里の顔をまじまじと見つめて。
- 63 名前:Liar 投稿日:2002年09月20日(金)12時02分58秒
- 「裕ちゃんの気持ちが迷惑で困ったんじゃないよ」
一度、口をついたら、止められない。
いや、止める必要なんて、今はない。
好きだって言いたかったんだから。
自分を偽らずにいればいいんだから。
「―――裕ちゃんを好きだっていう矢口の気持ちが」
裕子は一瞬目を見開いて、数秒間、何かを考えるように真里から視線を逸らした。
「だって、矢口、さっき………」
吉澤が好きやって……。
眉間にシワを寄せた裕子を、今度は真里がじっと見つめる。
気づいてよ、裕ちゃん。
矢口の気持ち、わかってよ―――。
- 64 名前:Liar 投稿日:2002年09月20日(金)12時03分53秒
- たまらずに、真里は裕子の手に自分の手を重ねた。
手が触れた瞬間、裕子の身体がピクッと震える。
戸惑った瞳が、恐る恐る真里を見下ろして。
さっきまでの強気な姿勢はどこへ行ったのか。
でも、そんなところが裕ちゃんらしいや………。
こんな状況なのに、そう感じられる自分が少し意外だった。
「さっきのは、違う。矢口、裕ちゃんのこと好きだって自分で気づいたけど―――」
重ねた手にぎゅっと力をこめる。
「軽い気持ちだと思われたくなくて。思わず、裕ちゃんを試すつもりであんなこと言っちゃって……」
- 65 名前:Liar 投稿日:2002年09月20日(金)12時04分38秒
- 戸惑いつつも、裕子の瞳がふわりと優しくなった。
「矢口ぃ………」
少しの沈黙の後、真里の下に置かれていた裕子の手がそっと引き抜かれ、頬に伸ばされる。
一瞬だけ、いつかの記憶が蘇る。
あの時は、思わず身を退いてその手を避けてしまった自分がいた。
目の前には、自分に拒まれてものすごく悲しそうな瞳をした裕子がいた。
でも、今度は、そんなことない―――。
恐る恐る頬に触れてきた裕子の手に、再び、自分の手を重ねて。
「こんな矢口だけど、裕ちゃんは、それでも好きって言ってくれるの?」
真里の目に溜まっていた涙は、いつの間にか消えていた。
- 66 名前:Liar 投稿日:2002年09月20日(金)12時06分29秒
- 2人の視線が真っ直ぐに絡み合う。
裕子は両手を伸ばして、ぎゅっと真里を抱きしめた。
真里も目を閉じてその背中に手を回し、身を預ける。
「―――当たり前やん。矢口が好きや」
ちょっと掠れた裕子の声が、耳元で囁かれて。
その瞬間、真里の背中を何かがゾクリと這い上がる。
その痺れに陶酔しそうになる自分を慌てて引き戻し、真里もつぶやいた。
「うん。矢口も……」
- 67 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月20日(金)15時51分01秒
- うおおおおお!
とうとう・・・・(w
ラブラブ?(ニヤ
終るなんて・・・日常をもう少しだらだら続けて欲しいな(w
せっかく次スレできたのに(w
- 68 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)16時42分39秒
- やぐちゅーキター!!!
ってか・・・ぜんぜんパート2の存在知りませんでした(わら
もう…終わりがみえたなんて・・・残念。
- 69 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月22日(日)10時44分04秒
- やぐちゅーもヨリを戻したようだし、
そろそろクライマックスっぽいですね。
- 70 名前:名無し読者。 投稿日:2002年09月25日(水)03時39分08秒
- 終るなんて・・・イヤだ(涙
せめて。。。番外編でも。。。作者さまお願いします。
- 71 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月01日(火)14時06分41秒
- そろそろ・・・待ちきれなくなってしまいました!(w
- 72 名前:作者 投稿日:2002年10月04日(金)01時34分03秒
- すみません。かなり間隔があいてしまいました。
更新します。
- 73 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時35分00秒
- お互いに気持ちを再確認した裕子と真里だったが、目の前には現実的な問題がいくつもあって。
ひとみも含めていろいろ話し合った結果、真里は実家に戻ることになる。
「何か、結局のとこ、追い出すようなカタチになってすまんかったな」
引っ越し当日、荷物の手配も済み、あとは裕子の車で家まで送ってもらうだけだ。
玄関先で交わされる言葉。
「ん、いいよ。別に。裕ちゃんが妹と同居するっていう大義名分があるから、家族もあっさり承知してくれたし」
真里は笑顔を崩さずに、言葉を続けて。
「それに、ほら、何か帰ってきて欲しかったみたいなのね。お母さんとかは。だから、そんな申し訳なさそうな顔しないでよ」
- 74 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時35分42秒
- いつもよりも更にタレ目がちになった裕子の頬を、真里は両手でそっと包み込む。
「学校帰りにも寄るしさ。休みの日も、一緒に遊ぼ?」
その言葉に、裕子は思わず苦笑した。
「遊ぶの?アタシと矢口が?何して?」
「う〜、別に、何したっていいじゃん。裕ちゃんの好きなことでも」
裕子は、言葉に詰まって自分から離れようとする真里の動きを封じ、にやりと笑う。
「アタシの好きなことって………」
真里の左手首をつかんで斜めから真里を見下ろす裕子の瞳が、妖しい光を放った。
「こんなこと―――?」
- 75 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時36分28秒
- そう言うと、ふっと眼を閉じて、真里の手のひらにゆっくりと唇を寄せる。
スローモーション映像を見てるのかと思うほど、裕子の動きは遅々としていた。
真里は硬直したまま、自分の左手に近づく裕子を凝視する。
肌きれいだなぁとか、睫毛長いなぁとか、わかり切ったことが頭の中に浮かんでは消えていく。
今にも唇が触れるという瞬間、伏せられていた瞼がそっと持ち上がり、裕子は横目でちらりと真里を見た。
その眼差しに、否応なく動悸が激しくなって。
ふわりと優しく触れた唇に、身体が反応しそうになるのを真里は必死に押し止める。
長いのか短いのか、よくわからなかった。
気づいた時には、裕子の唇は離れていた。
- 76 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時39分58秒
- 「裕ちゃんのアホ」
顔を真っ赤にして、どこか苦しそうな真里の声。
そんな様子に気づいてないのか、裕子は手のひらへの1回のキスであっさりと真里を解放した。
ほんの少し前の妖しさは欠片もない笑顔で。
こんな時、真里は少しだけ不安になる。
別に裕子の気持ちを疑うワケではないが、相手を欲しがってるのは自分ばかりじゃないかと。
求めれば応えてくれるけど、それさえ小さなコドモのワガママにつき合うかのようで。
実際のところ、そうかもしれない。
出会った時から裕子を追いかけていたのは自分だった。
そう言えば、今回のように、裕子からの積極的な告白は初めてだったかも。
- 77 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時40分35秒
- 「ねぇ」
解放されて自由になった手で、そっと裕子の腕に触れる。
裕子は、ん?と先を促して。
「矢口さ、裕ちゃんと離れるの、ほんとは寂しいんだよ。せっかく仲直りできたのに」
途端に、真里を見下ろすその表情が困惑顔になった。
「ほんまごめんなぁ。でも、アタシはこれでええと思うよ。矢口のことは大好きやけど、吉澤のこともすごく大事やし」
「うん、わかってる。ちょっと言ってみただけだから」
真里はちょっとの間俯いた。
「だから、さ…」
なかなかその続きを言おうとしない。
「だから、何や―――?」
裕子はわずかに腰を屈めて俯く真里を覗き込む。
- 78 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時41分12秒
- その直後、真里は肘の辺りに軽く触れていただけの手を、すっと伸ばして裕子の首に回した。
「ちょぉ、やぐ、ち…っ」
慌てる裕子を他所に、引き寄せた裕子の耳元で熱っぽく囁く。
「だから、矢口のワガママ、聞いてよぉ…」
首筋に顔を埋め、その匂いを胸いっぱいに吸い込んで。
甘くて蕩けそうな裕子の匂い。
それが真里の全身を駆けめぐり、狂わせる。
それなのに、一瞬前まであたふたしていた裕子は、真里の言葉にもうすっかり落ち着きを取り戻してしまう。
しがみつくように抱きついた真里の背中を、あやすようにゆっくりと撫でて。
その落ち着き払った態度が悔しくて、真里の中にほんの少し、悪戯心が生まれた。
- 79 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時42分41秒
- 目の前にある白い首筋に口を寄せて、ぺろりと舐める。
さっきのお返しとばかりに。
「んんっ」
ピクンと震え、裕子は慌てて真里を引き剥がそうとする。
そんな小さな抵抗を無視して、真里の唇はその肌を離れようとしなかった。
それだけに止まらず、シャツの裾から手を忍び込ませて素肌に触れる。
「や、矢口っ。何するん……」
更に焦り始めた裕子は、ちょっと力を込めて真里の腕から逃れた。
飛び退いたように後ずさり、その勢いで壁にどすんと凭れかかる。
「何やねん。びっくりしたわぁ……」
真里は残念そうに裕子を見つめて。
「そんな必死になって逃げなくたっていいじゃんかよ。矢口のささやかなワガママだったんだから」
- 80 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時43分20秒
- 裕子は慌てて真里を宥めた。
「あぁ、ごめんな。だって、矢口、いきなりなんやもん。ほら、もっと場所とか雰囲気とか考えてくれたら………」
おろおろする裕子がかわいくて、真里はくすりと笑う。
「嘘だよ。ごめん。矢口が悪かった」
裕子はほっとしたように胸をなで下ろす。
「でも、矢口、いつでもどこでも裕ちゃんが欲しい」
ストレートすぎるその言葉に、裕子は驚く様子もなく、小さく微笑んだ。
その笑みに見惚れながらも、真里はぼんやりと考える。
やっぱ不意打ちで迫られた時の裕ちゃんの方が面白いなぁ…………。
- 81 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時44分23秒
- 「ほな、今度デートしよな」
言いながら、真里を促して玄関を出ようとしたところで、ハッと立ち止まった。
「あ、吉澤……。どうしよか。待ってるか?」
そうなのだ。
ひとみは朝から梨華の家へ行くといって出かけたきり。
午後になっても何の連絡もなかった。
「う〜ん。矢口が今日家に帰ることは言ってあるから。よっすぃーにはまたメールするし」
会いたくない訳じゃない。
いや、むしろ、会って見送って欲しいけど。
自分が出発することもその時間も伝えてある。
だから、その時間に帰ってこないのはひとみの意志かもしれなくて。
- 82 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時45分07秒
- 「そぉか。今電話したらどうなん?」
「ん。どうしよう……」
その時だった。
ドアの向こうで足音が聞こえたと思った途端、勢いよくインターホンが鳴る。
応える間もなく、鍵が差し込まれて目の前のドアが開いた。
「うわっ」
そこに立っていたのは、ひとみだった。
まさか玄関に2人がいるとは思ってなかったのだろう。
明らかに数秒間固まって。
「―――びっくりしたぁ。何でこんなとこにいるんですか」
走ってきたらしく、時々大きく息を吐く。
だが、すぐに裕子の持つ荷物を見て察したらしい。
- 83 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時45分49秒
- 「あ、もう出かけるとことだったんですね。よかった、間に合って」
「ちょうど吉澤に電話入れようかと思ってたとこや。タイミングええなぁ」
そろそろ行こか、と裕子は2人の間を縫って、閉じかけていたドアを開ける。
「お、何や、来てたんか。久しぶりやな」
ドアの外には困惑顔の梨華がいた。
きっと、中に入ろうかどうしようか迷っていたのだろう。
ドアを開けた裕子と眼が合うと、ちょっぴり安心したようで。
「あ、こんにちは。お久しぶりです」
聴き間違えることのない、特徴的なその声。
思わず真里もひとみを押し退けて外に出る。
「うわぁ、久しぶりだねー。元気だった?」
「はい。矢口さんも元気そうで…」
にっこり笑うその仕草は、あいかわらずかわいらしくて。
- 84 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時46分40秒
- しばらくの立ち話の後、真里の荷物を手に、裕子はエレベーターへ向かって歩き始めた。
慌てて真里もその後を追おうとした時。
「あの、矢口さんっ」
ほんの少し焦ったようなひとみの声に呼ばれて立ち止まる。
数メートル先を歩いていた裕子も、その声に振り返った。
「ちょっとだけ、時間、いいですか?」
伺うように首を傾げるひとみは、どことなく様子がおかしくて。
真里が答えるより先に、裕子が口を開いていた。
「石川、先に行こ。矢口の荷物、持ってくれるか?」
真里とひとみの間に立ち尽くしていた梨華は、はいっと元気のいい返事をして、真里の手にあったバッグを強引につかむ。
- 85 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時47分19秒
- 「矢口さん、これ、持ちますね」
そう言って、だーっと裕子のもとへ駆け寄った。
裕子はさり気なく梨華の背中を押して促すと、真里とひとみに小さく笑いながら言った。
「ほな、アタシら先に車ンとこで待ってるわ」
エレベーターへ向かう2人の後ろ姿を見ると、梨華がずいぶんうれしそうな顔で裕子に話しかけてるのがわかる。
「梨華ちゃん、うれしそう……」
ぽつりとつぶやいた真里に、ひとみが苦笑いを浮かべた。
「中澤さんに会うの、楽しみだったみたいですよ。怖そうだけどカッコいいって、散々言ってましたし」
素直に喜んでいいんだか。
真里は何とも言えない顔でひとみの言葉にふ〜んと頷いた。
- 86 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時49分43秒
- 「あの、それで…ですね」
突然、改まった感じのひとみは真里の正面に向き直る。
「ほんとは、そんな中澤さんが気を利かせるほどのことじゃないんですけど…」
言いにくそうにしながら、バッグの中から何かを取り出した。
「今までプレゼントとかあげたことなくて、どういうものがいいのかわからなくて。梨華ちゃんにいろいろ相談して………」
口早に言うと、小さな紙袋を真里に差し出す。
「え…。矢口に?」
「安いし、どこにでもあるようなものですけど。何でもいいから、矢口さんへの気持ちをカタチにしたいなって思って―――」
差し出された袋を、真里はそっと受け取る。
「ありがとう。よっすぃー…」
開けていい?と尋ねると、ひとみは照れたように頷いた。
傾けた袋から真里の手に滑り落ちたのは、小さなクロスのピアスだった。
- 87 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時50分54秒
- 「かわいい……」
ほぉっと息を吐いてそのピアスを見つめる真里に、ひとみはようやく安心したようで。
「矢口さん、いっぱいピアス持ってるけど、クロスのは見たことないなと思って」
「ありがと。使わせてもらうね」
満面の笑みを向ける真里を見て、今までのことを思うと、ひとみは少しだけ胸が痛む。
「矢口さん」
真剣そうな声に、真里も思わず真顔になる。
「私、矢口さんに出会えてよかったです。どうもありがとうございます」
「な、何だよ、いきなり………」
突然の言葉に驚いた。
でも、ふわりと笑ったひとみに気づき、真里もすぐに笑顔を取り戻す。
「矢口も、よっすぃーに会えてよかったよ。これからも遊びに来るけど、よろしくね」
- 88 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時51分58秒
- 真里とひとみがマンションの駐車場へ向かうのと同じ頃――――。
「なぁ、石川」
「はい?」
「これからも、吉澤のことよろしく頼むわ」
「―――はいっ。がんばります」
一生懸命に頷く梨華を見つめる裕子の口元にも、自然と笑みが浮かんでいた。
- 89 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時53分58秒
- 「何で?アンタらは行かへんの?」
ようやく降りてきたひとみは、この場で真里を見送ると言う。
「はい。もう、矢口さんに言いたいこと言えましたから」
裕子は隣にいる真里に視線で問う。
「うん。矢口も言いたいこと言ったし。裕ちゃん、行こ?」
何や、やけにあっさりしとるなぁ…とつぶやきながらも、2人がそれでいいなら、自分が口を挟むこともない。
裕子と真里は車に乗る。
「じゃ、行ってくるわ。帰る時にはまた連絡するから」
裕子の言葉に、ひとみは軽く頷き返して。
- 90 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時54分35秒
- 「それじゃ、またね。梨華ちゃんも、今日はわざわざありがと」
「いえ、そんな。矢口さんも元気で」
そんな遠くへ行くワケじゃないから…と笑いながら答えると、その視線は隣にいたひとみに向けられる。
「じゃあ、またね、よっすぃー」
車はゆっくりと走り出し、徐々に小さくなるひとみと梨華に、真里は大きく手を振る。
2人の姿が見えなくなると、真里はようやく前を向いてシートベルトを締める。
「吉澤、何やって?」
「ん?矢口に会えてよかったって。ありがとうって言ってくれた」
真里はポケットにそっと手を入れ、ピアスの存在を確かめた。
そっか…と、目を細めた裕子の眼差しは、真っ直ぐ前を見据えながらも優しくて。
「裕ちゃんのことよろしくって言っといたから」
「何やねん、それ…」
- 91 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時58分05秒
――――――――――
- 92 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時58分43秒
- 「矢口、元気でがんばんな」
家に着いて、真里の母親にあいさつも済ませた裕子は、早々に自分の家へ帰ると言う。
真里にしてみれば、もう少し話していたかったのだが。
どうも真里の家には居辛いらしい。
「うん。裕ちゃんも仕事がんばってね。みっちゃんにもよろしくね」
「おぉ。伝えとくわ」
瞬間、2人とも沈黙する。
真里は次の言葉を言いたくなかった。
言ってしまえば、裕子は帰ってしまう。
ここで別れたって、すぐに会いに行くこともできるのに。
電話やメールをすることもできるのに。
- 93 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)01時59分39秒
- 戸惑ったまま裕子を見上げる。
裕子が口を開きかけるのに気づき、真里は慌てて裕子に抱きついた。
「裕ちゃん、好きだよ…」
「矢口……」
裕子は真里の家の玄関先という場所を気にしながらも、抱きついてきた小さな身体をぎゅっと抱きしめ返す。
「アタシも好きや。矢口のこと、大好きやから」
「離れたくないよぉ…」
裕子の胸に顔を埋めているせいで、真里の声はずいぶんくぐもって聞こえた。
「今までと何が変わるワケでもないやろ。それに、矢口には、矢口のことを大切に思ってくれる家族がいっぱいおるやん。幸せやで?」
これは裕子の本心だった。
自分にも家族と呼べる人ができ、その大切さを知った。
真里の気持ちもわからなくはないが、真里を想う家の人たちを察すると、これがいちばんいい方法のような気がして。
- 94 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)02時00分29秒
- それでも、真里はなかなか離れようとしない。
「ほら、はよぉ家入り。お母さん、あんなに矢口の帰り待ってたんやから」
俯いたまま裕子の腰にしがみついた真里を、そっと引き剥がした。
案の定、くぐもった声は涙のせいでもあって。
「矢口、泣かんといて。アタシにとっては前みたいな辛い別れやないんから」
「っく…。わかってる…けどぉ……」
真里の瞳からこぼれ落ちる涙をそっと拭い、触れるように口づける。
「な、帰ったら電話するから。アタシも矢口の声聴きたいし」
「―――うん。待ってる」
ぐすっと鼻を啜りながらも、顔を上げた真里はくしゃくしゃな笑顔を見せて。
少し赤くなった鼻の頭と、潤んだ目元が泣いた跡を思わせるけど。
- 95 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)02時01分29秒
- 裕子は真里の髪に指を差し込んでさらさらと梳く。
何ものにも代えがたいほどの愛しい存在。
それはずっと変わらない。
「じゃあな」
思い切るように真里から離れる。
今度はしがみついてくることはなかった。
軽く手を振ると、真里も応えて手を振り返す。
車に乗り込み、バタンと音をたててドアを閉める。
バックミラーに映る真里の姿を見ながらも、振り返ることはせずに車を発進させた。
さぁ、帰ろう。
家族の待つアタシの家へ。
薄暗くなった道を走りながら、裕子は自分の中で何かが変わっていくのを感じていた。
- 96 名前:Liar 投稿日:2002年10月04日(金)02時02分18秒
―――Fin―――
- 97 名前:作者 投稿日:2002年10月04日(金)02時10分29秒
- 正直、無理やり終わらせた感もするかと思いますが、この話はこれで終了です。
今更ですが、ネタバレを少し。
最初にドラマが元ネタだと書きましたが、それは「続・星の金貨」でした。
でも、あくまで設定時の人間関係だけで、かなり早いうちから違う話になってたと思いますが。
えっと、ここまで長くなるとは思わなかったけど、続けられたのはいろいろレスしてくださったみなさんのお陰です。
どうもありがとうございます。
- 98 名前:作者 投稿日:2002年10月04日(金)02時13分38秒
- ―――と言いつつ、この設定で番外編?らしきものを書き始めてます。
更新予定はあいかわらず未定ですが、次回もおつき合い頂ければ幸いです。
- 99 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月04日(金)03時25分50秒
- お疲れ様でした。
この作品超スキでした。
本編は終了してしまったけど・・・番外編またまた期待してます。
番外編じゃなくて続でもいいですよ(w
ありがとうございました。
- 100 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月04日(金)13時22分38秒
- 脱稿お疲れ様でした。
途中、矢中吉の関係がかなりぐちゃぐちゃしたりなんかしましたけど、
誰も不幸にならないキレイな終り方で良かったです。
次回の番外編らしき作品も楽しみに待ってます。
- 101 名前:名無し読者。 投稿日:2002年10月05日(土)00時21分42秒
- とうとうラスト(涙
三者三様の想いが・・・ドラマっぽかったです。
まだ話続きそうでなによりです。
ひとまずお疲れ様だした。
- 102 名前:名無しkunn 投稿日:2002年10月09日(水)12時30分08秒
- とうとう終了したんですね。。。
でもまだ番外編があるようで(w
よかった。楽しみに待ってます。
- 103 名前:作者 投稿日:2002年10月16日(水)01時30分23秒
- えっと、レスありがとうございます。
番外編の方もちょこちょこ書き始めようかと。
番外編って言っても、続きじゃなくて過去の話です。
平家さんを書きたくて始めたんですが、気づけば出ている裕ちゃんと矢口さん。
まぁ、結局のところはこの2人の話になるんだろうな。
タイトルの『Liar(→嘘吐き)』は、いろんな意味で吉澤さんのことを表してたきた言葉なので、
このまま使おうかどうか迷いましたが、ま、いいにしちゃいます。
- 104 名前:Liar 投稿日:2002年10月16日(水)01時31分32秒
今思うと、あれはひと目惚れだったのかもしれない――――。
- 105 名前:Liar 投稿日:2002年10月16日(水)01時32分21秒
- 「それじゃ、平家さんにはこちらの中澤裕子さんが付いてくれるから」
入社式を終えて所属部署へと連れられて、課長から自分の新人教育を担当する人物を紹介された。
「あっ、あの、平家みちよと言います。よろしくお願い致します」
相手のまっすぐな視線に怯えを感じながらも、あいさつして頭を下げる。
「―――中澤裕子です。こちらこそ、よろしく」
外見から想像したよりも低い声。
自分よりほんの少し低い身長と華奢な体つき、肩を越すくらいのさらさらの髪は女性らしさを演出してるけど、その眼差しに圧倒される。
お互いに名前を言っただけで、瞬間、沈黙が場を支配した。
- 106 名前:Liar 投稿日:2002年10月16日(水)01時33分05秒
- 何を言っていいのかわからずに、みちよは困惑顔で裕子の横に立つ課長を伺う。
目が合った課長は苦笑いといった表情を浮かべていて。
「それじゃ、中澤、よろしく頼むな」
「はい」
課長はさっさとその場を後にしようとする。
そんなぁ…という思いで離れていく課長の姿を追うと、擦れ違う際にぽんっと肩を叩かれた。
声には出されなかったけど、「がんばれよ」という口の動きが読み取れて。
しばらくその後ろ姿を縋りつくように見つめていると、不意に横から声が聞こえた。
「なぁ」
先ほどは気づかなかったけど、標準語とは微妙に異なるそのイントネーション。
関西の人?と考える余裕もなく、姿勢を正して彼女の方を振り返る。
- 107 名前:Liar 投稿日:2002年10月16日(水)01時33分46秒
- 「は、はいっ。何ですか?」
そのせいか、自分もそのイントネーションで返してしまった。
それに気づいたのか、険しさを含んでいた裕子の瞳にほんの少し、驚きの色が見えて。
「別に、そんなに緊張せんでもええよ。普通にしてや。何か、こっちまで肩凝りそうやわ」
バリバリの関西弁やん…。
単身、東京に出てきたばかりで不安だったせいか、馴染みのある関西弁を聞けただけでみちよはほっとした思いだった。
「えっと…、平家さん…やったっけ。出身どこなん?関西やろ?」
「はい。三重…ですけど。あの、中澤さんは…大阪ですか?」
「アタシか?京都や」
よぉ間違えられるんやけどな…と小さく笑う。
- 108 名前:Liar 投稿日:2002年10月16日(水)01時34分36秒
- 口元に浮かんだその笑みが、裕子に対する印象をがらりと変えた。
つい先程までの怖いオーラが一気に崩れたような気がする。
その一瞬のギャップに、どうしようもないほど惹きつけられて。
自分の視界がその笑顔で占領されたみたいで。
冗談ではなく、ドキリと胸が高鳴った。
何や、めっちゃかわいい顔する人やんか……。
極度の不安と緊張感でいっぱいだったその日。
みちよにとって未知の世界に足を踏み入れた、社会人としての一日目。
それは、中澤裕子との出会いの日だった―――。
- 109 名前:Liar 投稿日:2002年10月16日(水)01時36分02秒
- 裕子は他人にすごく厳しいが、それ以上に自分にも厳しくて。
そのせいか、裕子のことを近寄り難く感じる人は珍しくなかった。
みちよはそんな彼女を尊敬に値する人だと思っていたけど。
でも。
裕子とのつき合いを重ねていくうちに、尊敬や憧れが愛情だったと気づくのにそう時間はかからなかった。
そして、自他共に認める親友になれたと感じる頃には、その気持ちはみちよの中で揺るぎないものとなっていた。
彼女の仕草とか、言葉とか、それがどんなに他愛のないものでも、自分の心を鷲づかみするくらいの力があって。
惹きつけられて止まなくて―――。
- 110 名前:Liar 投稿日:2002年10月16日(水)01時36分44秒
- そんな自分の想いを知らない彼女は、よく「結婚したい」発言をくり返す。
冗談とも本気ともとれる口調で。
つき合ってる人もいたりいなかったり。
そのたびに、やり切れない気持ちに苛まれる。
だけど、『親友』の自分はそれに笑って返すことしかできなくて。
ひと言、「好きだ」と伝えられたら、どんなに楽になるだろう。
フラれてすっきりしてしまえばいいのかもしれない。
でも、それで彼女との『親友』としてのつき合いまで失ってしまうのは怖すぎる。
結局、心に邪まな想いを抱えながら、彼女の傍にいられる立場に甘んじてしまうのだった。
- 111 名前:Liar 投稿日:2002年10月16日(水)01時38分37秒
- でも、あの日、裕子があの電車の、あの車両に乗らなければ。
いや、裕子が妙な正義感さえ出さなければ。
そうすれば、あの2人は出会わなかったのに――――。
- 112 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月16日(水)13時22分01秒
- 番外編・・・みちゅー・・・みっちゃんけなげさがGOOD!
まさにみっちゃんいい子なのに(w
人間模様を楽しみたいと思います。
- 113 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月16日(水)14時55分46秒
- 主人公は平家さん?
でも、やぐちゅーも楽しめそうですね。
続き期待してます。
- 114 名前:名無し読者。 投稿日:2002年10月16日(水)22時29分27秒
- 過去編いいですね。
先がワクワクして早く読みたいです。(w
みっちゅーもやぐちゅーもどっちも好きです。
姐さんとみっちゃんの絡み・・・もう見ることなくなるしな・・・残念。
- 115 名前:作者 投稿日:2002年10月18日(金)02時20分00秒
- レスありがとうございます。
主人公ね、平家さんのつもりだったんですが、どうも他の2人の方がいっぱい出てます(汗)
みっちゅーの絡みがなくなっても、いつまでも書いていけたらいいなぁとは思いますが…。
更新します。
- 116 名前:Liar 投稿日:2002年10月18日(金)02時21分39秒
- 「あれ?」
毎日同じ、朝の通勤ラッシュ。
もう慣れたとはいえ、好んで乗りたいものではない。
みちよは今朝も同じように重いため息を吐き、ホームで電車を待ってるところだった。
ところが、いつもなら会社に着かないと会えない人が駅のホームに佇んでいる。
見間違えるハズはない。
自分の心の大部分を占める、中澤裕子その人なのだから。
でも、どうしたんやろ。
いつもは車なのに………。
不思議に思いながら裕子に近づき、声をかけた。
- 117 名前:Liar 投稿日:2002年10月18日(金)02時22分49秒
- 「裕ちゃん?」
ふっとこちらを振り返り、みちよの姿を視界に認めた瞬間、気難しそうな顔が一気に崩れる。
「あー、みっちゃーん。会えてよかったぁ」
瞬時に情けない顔になってしまった裕子に呆れつつ、頼られたことがうれしくて。
「車、どしたん?事故ったんか?」
笑いながら軽口を叩くと、むっとした眼で睨まれた。
「アタシは事故らんよ。駐車中にどっかのアホがぶつけたんや。今、修理に出しとる」
ぶつぶつと文句を言いながら、ぶつけた相手への恨み言を重ねている。
どうやらぶつけた相手もわかっているらしく、修理代は相手持ちだとか。
笑って相槌を打ったけど、心の中では駐車中でよかった…と安堵していた。
ケガがなくて、ほんとによかった。
- 118 名前:Liar 投稿日:2002年10月18日(金)02時26分33秒
- だが、裕子の悪態はとどまるところを知らない。
その矛先はいつの間にか通勤ラッシュに向けられていた。
「みっちゃん、毎日こんな状態で通ってるんやな。尊敬するわ、ほんまに」
「そりゃなぁ、車で通勤してる裕ちゃんには、こんなことでもなきゃ一生わからんことやったね」
苦笑混じりに答え、ちょうどホームに入ってきた満員電車に乗り込んだ。
電車の中は吊り革につかまる必要もないほどで、周囲にはスーツや制服姿の人間で埋められている。
みちよは隣にいる裕子の身体が自分に押しつけられるたび、密かに胸が高鳴った。
目の前にある見慣れた薄茶色の髪からは、ふんわりとシャンプーの香りが漂ってきて。
裕ちゃん、今朝、シャワー浴びてきたんかなー…と、ぼんやりと考えていたら。
- 119 名前:Liar 投稿日:2002年10月18日(金)02時27分57秒
- 「うっ……」
裕子の隣にいた40代くらいの男性が、痛みを感じたような呻き声を上げた。
電車が揺れた瞬間、よろめいた裕子が彼の足を踏みつけた…ように見えたのだが。
みちよが驚いて裕子を見つめると、彼女は下からじろっとその男性を睨みつける。
うわっ、怖………。
突き刺すようなその視線は、まるで、研ぎ澄まされた刃物のような鋭さを放っていた。
他人に向けられたものとはいえ、その怖さは横にいたみちよにも十分伝わっている。
裕ちゃん、謝らないんやろか…。
つーか、何で睨んでるんやろ…と成り行きを見守っていると。
その視線に耐えられなくなったのか、急におろおろした男性は身動きとれないほどの車内で無理やり身体の向きを変え、裕子に背を向ける。
その後、裕子は何事もなかったかのように電車に揺られていた。
みちよはものすごく気になりながらも、周囲に人がいるせいで事情を聞くこともできなくて。
- 120 名前:Liar 投稿日:2002年10月18日(金)02時29分23秒
- 降車駅までが長かった。
ようやく駅に着き、雪崩のように人が降りて行く。
裕子とみちよもその波に逆らうことなくホームへと押し出される。
足早に階段へ向かう人々を尻目に、みちよはそっと裕子の腕をつかんで話しかけた。
「なぁ」
「ん?」
「さっき、電車の中で………」
言いかけた時だった。
「あの、さっきはありがとうございました」
突然聞こえた女の子の声。
2人して同時に振り向くと、ずいぶんと小さな女子高生が立っていた。
誰に声をかけたんや…?
見に覚えのないみちよがきょとんとしていると、隣にいた裕子が口を開く。
- 121 名前:Liar 投稿日:2002年10月18日(金)02時31分45秒
- 「別にえーよ。お礼言われることちゃうし」
そう答える裕子を見て、みちよは事の次第が何となく飲み込めた。
先程の電車の中で、裕子が男の足をわざと踏みつけた理由が。
おそらく、裕子は痴漢の現場を目撃して、ついつい手が出てしまったのだろう。
本当なら、駅員に突き出した方がいいのだろうが……。
目の前の女の子は、裕子の関西弁に驚いたのか、一瞬だけ怯んだように動きを止める。
が、すぐに意を決して話し出した。
「いえ。矢口、あーいうの嫌だけど、何も言えなくて。ほんとに、どうもありがとうございます」
言葉とともに、ぺこりと頭を下げる。
「もうええよ。アタシが見て見ぬふりのできないお節介な人間ってだけやから」
小さく微笑みながらも、女の子の真っ直ぐな感謝に、どこか照れたように話す裕子に気づき、みちよは漠然とした嫉妬に駆られた。
そんなにきれいな笑顔、赤の他人に見せんでもええやん。
思わず、胸がぎゅっと締めつけられる。
みちよは下唇をかみ締めて、2人の様子を傍観していた。
- 122 名前:Liar 投稿日:2002年10月18日(金)02時32分46秒
- 矢口という名の女子高生は、裕子の笑顔を見て明らかに息を呑む。
なかなか次の言葉が発せられそうもなかったので、裕子はみちよの方を見る。
「ほな、行くか?」
「あ、うん」
それじゃ…と、女の子に背を向けて歩き出そうとしたところで、その子は金縛りから解けたように、一歩裕子に近づいた。
裕子の腕に、恐る恐る手を伸ばして触れてみる。
「あの………」
ふっと振り返った裕子からは、つい先程の笑みは完全に消えていた。
「何や?」
その瞬間、裕子に触れていた彼女の腕が、ピクリと震える。
しかし、それにも怯まずに言葉を続けて。
「あの、矢口真里って言います。よかったら、名前、教えて下さい」
- 123 名前:Liar 投稿日:2002年10月18日(金)02時35分45秒
- ―――どうしようか。
そんなに悪い娘には見えないが、この先出会う機会があるとも思えない。
急いでいると言って振り切ることは簡単だった。
だけど、澱みない視線を正面から受け止めた裕子に、そのまま立ち去ることはできなかった。
ふぅっと小さく息を吐くと、困ったように髪をかき上げて、名前を告げる。
「中澤裕子や」
「な…かざわ、ゆうこ……」
真里は口の中でその名前をくり返した。
忘れないように。
胸に刻みつけるように。
そんな真里の様子を見た裕子は、今度こそ、という感じでみちよに視線を走らせる。
「じゃあな。これからは気ぃつけなあかんで」
それだけ言うと、さっさと階段に向かって歩き始めた。
みちよはハッとして慌ててその後を追う。
「ちょっと、待ってぇな。裕ちゃん」
完全に真里に背を向けて小走りになったみちよの耳に、小さなつぶやきが聞こえた。
「ゆー…ちゃん………」
振り向いて確かめる間もなかった。
ざわついた駅のホームでの空耳だったのかもしれない。
でも。
裕子を追いかけるみちよの胸中は、何とも言えない気持ちが広がっていった。
- 124 名前:名無し読者。 投稿日:2002年10月19日(土)03時47分12秒
- みちやぐちゅー最高です。
矢口もなんか初恋って感じでくぁいい!!!
作者さんを応援しています。
- 125 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月19日(土)18時57分30秒
- アリがちな出会いですが、なんか萌えますね(w
やぐちゅーは、次はどういうカタチで再会するんだろう・・・。
続き楽しみ!
- 126 名前:作者 投稿日:2002年10月22日(火)06時28分49秒
- 今週のハロモニ、ミニマム矢口もいいですが、私的にはオスカル飯田が微妙にツボでした。
ヒゲはなくてもいいような気もするけど…。
つーか、飯田さん、脚長っ。めっちゃ素敵だなぁ。
あと、おでこ出してる大金持子さんもかわいかった(笑)
更新します。
- 127 名前:Liar 投稿日:2002年10月22日(火)06時29分52秒
- その翌日、みちよが通勤途中で裕子と会うことはなかった。
車の修理が終わるのは3日後と言っていたから、今日も電車通勤のハズなのに。
数分間隔で次々とホームに入ってくる電車を2本見過ごしたが、みちよは諦めて次の電車に乗る。
アホらし。
アタシ、一体、何やってんのやろ。
こんな人の多い場所で会える方がおかしいわ…。
そう言えば…と、電車の中をぐるりと見渡した。
昨日の女子高生の姿は見えなかった。
少なくとも、裕子とあの娘が会う確率はほぼゼロに近い。
何を不安に思うことがある?
みちよは自分に言い聞かせた。
- 128 名前:Liar 投稿日:2002年10月22日(火)06時30分41秒
- 昨日の一件以来、どこか自分はおかしい。
裕子に向けられたあの娘の視線は、感謝の気持ち以上のものを含んでいた気がして。
何であの娘のことが頭から離れないのだろう。
―――あかん。頭冷やそ。
ちょうど駅に着き、みちよは思い切るように頭を振って電車を降りた。
電車を降り、階段を下り、改札を出て、会社への道を歩き出す。
いつもと同じならば………。
今日は、改札を出る直前で呼び止められた。
矢口真里という名の少女に。
- 129 名前:Liar 投稿日:2002年10月22日(火)06時31分28秒
- 「すみません。急いでるところ、呼び止めちゃって」
「や、ええよ、別に。どしたん?」
真里の次の言葉は、大体想像できたが、やはりその通りだった。
「昨日、中澤さんと一緒でしたよね」
「うん。今日はアタシ1人やけど」
「あ、わかってます。ほんとは中澤さんを待ってたんですけど、今日は会えなくて」
心持ち目を伏せて、どこか恥ずかしそうに言う真里を見て、みちよの中の不安は確信に変わる。
それにしても、すごい行動力やなぁ。
どれくらいから待ってたんやろ…。
- 130 名前:Liar 投稿日:2002年10月22日(火)06時32分12秒
- 「あの、これから、中澤さんとお会いしますか?」
別に嘘をつく理由もなかった。
不安感があるのも確かだけど、彼女に近い自分の居場所が、そう簡単に失われるものではないのもわかっている。
何より、この娘はまだコドモだ。
何をムキになることもない。
「うん。これから会社行けば会うと思うけど」
それを聞いて、ほっとしたように肩を落とすと、真里は制服のポケットから何かを取り出す。
手紙のようだ。
「申し訳ないですけど、これ、中澤さんに渡してもらえませんか?」
真っ直ぐに見上げてくる視線は真剣そのもので。
みちよは複雑な思いとともにその手紙を受け取ったのだ。
- 131 名前:Liar 投稿日:2002年10月22日(火)06時33分27秒
- 会社に着いてみれば、かなり前からくつろいでいたらしい裕子の姿。
聞けば、ラッシュが嫌で、2時間早く家を出たんだとか。
こちらの顔を見た途端、あいさつもせずに目の前にピースサインを突きつけられた。
「今日は座ってきたで」
何がそんなにうれしいのかと呆れるほどの笑みを見せる。
そっか、2時間も早けりゃあの娘も会えへんワケや。
みちよは突きつけられたピースサインに、バッグから取り出した手紙を挟ませる。
「何や、これ。手紙?」
笑顔から一転してハテナ顔の裕子は、宛名も差出人も書かれていないかわいらしい封筒を見つめて尋ねた。
- 132 名前:Liar 投稿日:2002年10月22日(火)06時34分24秒
- 「裕ちゃんへのラブレター」
「アンタからの?」
「うん」
至って真面目な顔でみちよが答えると、裕子も真面目な顔でう〜ん…と考え込む。
「ごめんな。受け取れへんわ、これ」
ほんの数秒唸ってから、即座に手紙を突き返す。
「え〜っ!何でやのぉ!?」
みちよは途端に泣き出しそうな声を上げた。
突然の大声にびくっと肩を震わせると、うっさいわ、いきなり…とつぶやきながら、みちよを見てため息を吐く。
- 133 名前:Liar 投稿日:2002年10月22日(火)06時35分43秒
- 「んで?ほんとは誰からなん?」
「や、だからアタシやって」
「アホ」
言葉とともに、額をぺちんと叩かれた。
痛いなぁ…とぶつぶつ言いながらも、みちよはようやく真実を告げる。
「昨日の女の子。矢口さん…やったっけ?その娘から」
「矢口?あぁ、あの娘か。何で?また駅で会ったんか?」
手紙を天井の蛍光灯に透かしてみたり、ぱたぱたと仰いでみたり。
「うん。何かね、裕ちゃんを待ってたみたいやけど、会えなくて。で、アタシを発見して声をかけたんやって」
ふぅん…と軽く頷いて、裕子はデスクの上のペーパーナイフに手を伸ばす。
そのまま躊躇わずに封を切り、中から便箋を取り出して読み始めた。
- 134 名前:Liar 投稿日:2002年10月22日(火)06時36分52秒
- だが、みちよが覗き込むように顔を寄せると、即座に伏せて見えなくしてしまう。
「何でぇ?見せてくれへんのぉ?」
「当たり前や。何言うてるん、自分。あの娘に失礼やろ」
まぁ、確かに裕子の言うことは理に叶っている。
自分が書いた手紙、その人以外に読まれたら嫌やもんなぁ。
仕方なしに、他にすることもないみちよは、手紙を読む裕子の表情をじぃっと見つめて。
しかし、1分もしないで読み終わったらしい。
その表情には何の変化も見られなかった。
裕子が手紙から視線を上げると、それを見ていたみちよと目が合う。
- 135 名前:Liar 投稿日:2002年10月22日(火)06時37分48秒
- 「何やって?」
「ん、別に…。会って、改めてお礼がしたいとか何とか……」
どうしっよかなぁ…と考えながら、裕子は手紙を自分のバッグにしまう。
「どうすんの?会うんか?」
「そこまでしなくてもええかなぁって。っちゅーか、アンタ、やけに絡んできとらん?そんなに気になるん?」
「や、そういうワケやないけど……」
痛いところを突かれて、思わず言葉に詰まる。
「アタシのことなんか放っておいて、アンタもいい出会い探さなあかんで」
- 136 名前:Liar 投稿日:2002年10月22日(火)06時40分28秒
- いい出会いねぇ…。
そんなん探そうと思って見つかったら苦労せんわ。
ため息とともに、みちよは自分の席に着いた。
自分の中で、裕子以上に好きになれる人ができたら何もこんなに悩むことはない。
イスの上で伸びをしながら、職場をぐるっと見渡した。
みんないい人だけど、そういう感覚で好きかって言われると少し違う。
結局は、隣の席に座る人間に目が留まるのであって。
始業時間直前のせいか、心持ちキリッとした顔をしているのに、自分の視線に気づくと、すぐにへらっと表情が崩れる。
その笑みに呆れながらも小さく応え、みちよは諦めたように肩を落とした。
あー……、当分の間はこの人から逃れられそうにないわ。
- 137 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月22日(火)13時25分36秒
- 当然のコトなんでしょうけど、裕ちゃんは
矢口のコトなんか眼中ナシって感じですね。
- 138 名前:作者 投稿日:2002年10月25日(金)03時08分44秒
- ハローランド番組内のミニドラマ「東京美人」の裕ちゃんが、素敵で素敵でどーしよーもない。
夜中にあれ見て、完璧壊れました(^^;
メガネをかけた横顔が……!!
1日経った今でも、ビデオ見返すたびに興奮してしまう(苦笑)
そんな感じで、ちょっと更新。
- 139 名前:Liar 投稿日:2002年10月25日(金)03時13分23秒
- いつもの退屈な古典の授業。
まだ2時間目になったばかりだというのに、すでに空腹を感じ始めていた。
真里は窓際の席にいるのをいいことに、頬づえをついてぼんやりと外を眺めて。
昨日から、頭に浮かぶのはあの人ばかり。
中澤裕子……さん。
満員電車で痴漢に遭ったのは、昨日が初めてだった。
逃れようにも身動きがとれなくて、声を上げる勇気もなくて。
俯いて、じっとしてることしかできなかった。
早く次の駅に着けばいいと、それだけを願いながら。
- 140 名前:Liar 投稿日:2002年10月25日(金)03時14分22秒
- そんな時だった。
小さな呻き声が聞こえたのと同時に、自分の身体を這い上がる悪寒と手が、ふっと離れたのは。
俯いていた自分の視界に、右隣に立っていた女性の靴が動いたのが映る。
どうやら、女性が意図的に男の靴を踏みつけたらしかった。
思わず顔を上げて隣を見る。
その女性は真里の後ろに立つ男を、鋭い視線で睨みつけて。
助かった……。
ほっと胸をなで下ろし、隣の女性を伺う。
人を寄せつけない冷たい視線と表情のまま、彼女が自分の方を振り向くことはなかった。
それをいいことに、真里はじっとその横顔を見つめてしまう。
- 141 名前:Liar 投稿日:2002年10月25日(金)03時15分29秒
- 綺麗な人………。
色白な肌にくっきりとした目鼻立ちと長い睫。
「ありがとうございます」のひと言を言いたいのに、彼女をまとう空気がそれを許してくれない。
だけど、降車駅が同じだったのが、彼女を追いかける気にさせた。
背が低いせいで人の波に埋もれるように電車を降り、必死でその女性の姿を見失わないように後を追う。
だけど、その人はホームの階段を下りることなく、連れの女性と立ち止まって話をしていて。
その姿を見た途端、衝動的に声をかけてしまっていた。
始めは、ほんとにお礼を言いたかっただけなのだが………。
- 142 名前:Liar 投稿日:2002年10月25日(金)03時16分14秒
- 彼女が一瞬垣間見せたその笑顔は、綺麗と言うよりかわいらしく。
思わず見惚れてしまうものだった。
このまま別れてしまうのが嫌で、咄嗟に名前を尋ねていた。
ダメもとだったけど、それでも彼女は答えてくれて。
すぐに去って行ってしまったけど、どうしても忘れられない―――。
手紙、読んでもらえたのかなぁ。
グラウンドでは、どこかのクラスがサッカーをやっている。
真里の視線はボールの行方を追っていたけど、思考はそれについていってなかった。
- 143 名前:Liar 投稿日:2002年10月25日(金)03時17分13秒
- 授業が終わり、放課後になって。
気乗りせずに友達の誘いを断った真里は、1人で家に帰る。
不意にケータイが鳴った。
瞬間、淡い希望が脳を横切る。
そんなハズはないと、自分に言い聞かせながらも。
バッグから着信を告げるケータイを取り出して、ぱちんと開く。
見覚えのない電話番号からだった。
ドクン…と胸が鳴る。
まさか―――。
数秒間、手の中のケータイを見つめてから、ピッと通話ボタンを押して、耳にあてた。
「……もしもし?」
- 144 名前:Liar 投稿日:2002年10月25日(金)03時18分16秒
- 『あー、矢口…さん?』
あの人だ………!
「はっ、はいっ。矢口です…けど」
『えっと、中澤やけど。わかる?今日、手紙もらって―――』
「はい、わかりますっ。わざわざ電話ありがとうございます」
電話の向こうで、肩を震わせたような小さな笑いが微かに聞こえた。
緊張して、焦って、興奮して、かなり舞い上がってしまってるのは自分でもわかっていた。
でも、抑えられなくて。
『電話くらいええよ。それでな、改めてお礼が言いたいってことなんやけど……』
「そうなんです」
『や、そんなに気ぃ遣わんでええから』
「―――えっ?」
- 145 名前:Liar 投稿日:2002年10月25日(金)03時19分18秒
- どういう意味なのか、わからなかった。
別に気を遣ってるつもりはない。
もしかして………。
「もしかして、迷惑でした?」
『う〜ん…、迷惑とはちゃうけど、そんな大したことしてないから、アタシ。そこまでさせるのも申し訳ないなぁと思って』
確かに、自分のとった行動が非常識なのは承知している。
でも、お礼云々は最早言い訳でしかなくて。
そう。
この人にもう一度会いたいがために、無理やり考え出したことだった。
- 146 名前:Liar 投稿日:2002年10月25日(金)03時20分06秒
- でも、裕子の口からは真里を突き放す言葉しか出てこない。
『アドレスとケータイの番号が書いてあったから、一応、手紙を受け取ったって連絡だけはしとこかなと』
仕方なく電話したんだと、そう言われているようだ。
「………………………」
何を言っていいのかわからない。
『だから、まぁ、そういうことやから』
今にも電話を切られそうな空気を感じて、真里は慌てて口を開いた。
「あ、あのっ、実は……」
『―――何?』
- 147 名前:Liar 投稿日:2002年10月25日(金)03時20分46秒
- この際、当たって砕けろの精神だ。
正直に言ってダメなら、それまでだと思って諦めればいい。
「ほんとのこと…言うと、この間のお礼がどうっていうよりも、もう一度、中澤さんに会いたい……だけなんです」
『…………………………』
沈黙が怖かった。
次に何を言われるのかと思うと。
「嘘吐いて、ごめんなさい」
少し経って、はぁ…と小さく息を吐くのが聞こえた。
- 148 名前:Liar 投稿日:2002年10月25日(金)03時21分35秒
- 『――――ええよ』
「えっ?」
何が「ええよ」なのだろうか。
それが否定の意味なのか肯定の意味なのかもわからず。
「いいって、何が…?」
『ん?アンタと会ってもええよってこと。いや、言い方が悪いか……』
会ってもいい?
そう言った……よね。
裕子の言葉を、心の中で反芻してみる。
確かに、「会ってもいい」と。
ほんとですか、と言おうとした真里の耳に、再び裕子の声が入る。
『都合がつくなら、会おうや』
断る理由なんて、ない。
自分からお願いしたことなんだから。
「はいっ。ぜひ」
これ以外に、自分は何て応えられただろうか。
- 149 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月25日(金)16時18分36秒
- 裕ちゃんは、どーゆう意図で・・・?
自分も、あのドラマ見ました。
同じ白衣を着ているのに「ごくせん」の役とは違って
かなり知的でカッコ良かったですね。
いつの日か、精神科医の裕ちゃんを主役としたやぐちゅーを書いて下さい(w
- 150 名前:名無し読者。 投稿日:2002年10月29日(火)10時41分38秒
- 矢口かわいい。
みっちゃんかわいそう(w
- 151 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月31日(木)11時44分55秒
- 裕子の気持ちはいつ変化するんだろう(w
頑張れ矢口。
- 152 名前:隠れ読者 投稿日:2002年11月06日(水)00時28分08秒
- そろそろ先が読みたい〜!!
お待ちしています
- 153 名前:作者 投稿日:2002年11月08日(金)01時05分35秒
- 大阪と渋谷の裕ちゃんライブに行ってきました。
かなりいい場所で観れたこともあり、やっぱ生はいいなと再認識。
裕ちゃんの歌はもう最高でした。衣装も…(笑)
そんな、私的に濃いぃ連休でしたが。
では、更新します。
- 154 名前:Liar 投稿日:2002年11月08日(金)01時07分07秒
- 真里と電話してから約1週間後の日曜日の午後。
裕子は待ち合わせ場所である駅の出口に立っていた。
国内一のテーマパークの最寄り駅のせいか、たくさんの人間が通過する。
自分たちの目的地も、この多くの人たちと同じなのだが。
待ち合わせの時間までには、まだ20分ほどあった。
早く来てしまうのは昔からのクセで。
相手を待たせるよりはずっといい。
裕子は壁に寄りかかり、真里のことを考える。
その時の電話を思い出してみても、ほんとに面白い娘だなぁというのが感想の大部分で。
ただ、会ってすぐに気づくだろうか。
背が小さいことは記憶にあるが、顔立ちをよく覚えていなかった。
まぁ、大丈夫やろ。
- 155 名前:Liar 投稿日:2002年11月08日(金)01時08分14秒
- それにしても、変わった娘だ。
電車の中で、顔を赤くして俯いていたのが信じられないほどの積極さを持っている。
もともとは断るつもりで電話したのに、必死な様子は電話越しでも伝わってきた。
会ってみるのも面白いかもしれない――――。
そんな程度の気持ちで承諾した裕子だった。
時間まで後5分といった頃。
改札の中から駆け足でこちらに向かう女の子の姿が見てとれた。
視線は真っ直ぐに裕子に向けられている。
うん。あんな感じの娘だった。
壁に寄りかかっていた身体をゆっくりと起こし、その少女を見つめる。
その娘は視線を彷徨わせることもなく、裕子のところまでやって来た。
- 156 名前:Liar 投稿日:2002年11月08日(金)01時10分01秒
- 「遅れてすみません。矢口です」
ところどころ肩で息をしながら、裕子に告げる。
「時間に遅れてるワケやないから、そんなに焦らんでもよかったのに」
苦笑しながら、裕子は荒い息を吐く真里の背中を擦った。
「あ、もう、大丈夫……です」
真里はすっと背筋を伸ばして裕子を見上げる。
「今日はどうもありがとうございます」
言葉とともに、ぺこりと頭を下げて。
そんな様子に、裕子は小さく肩を竦める。
「そんな他人行儀な言い方、止めようや」
「え?」
「アタシのことは裕ちゃんでええから。友達はみんなそう呼ぶし」
真里は、初めて会った駅のホームで、思わずそうつぶやいた自分を思い出す。
- 157 名前:Liar 投稿日:2002年11月08日(金)01時10分44秒
- 「あと、堅苦しい敬語もナシで頼むわ」
「いいんですか?」
「アタシがいいって言ってるから、構へんやろ。あ、アンタのことは何て呼べばええの?」
「矢口で……」
「わかった。ほな、行こか。矢口」
さらりと口にすると、裕子は真里の肩をそっと押して歩き出した。
- 158 名前:Liar 投稿日:2002年11月08日(金)01時11分16秒
―――――――――――
- 159 名前:Liar 投稿日:2002年11月08日(金)01時12分44秒
- 「裕ちゃ〜ん!次、あれに乗ろう。ね、いいでしょ?」
自分の数メートル先に立つ真里は、あれあれと言いながら、目の前のアトラクションを指差して。
「ちょ、矢口…。何で走らなあかんの。ええやん、歩いても」
年なんやし…と、自分に言い聞かせるようにつぶやいて、裕子は真里の後を追う。
よっぽど来たかったんだろうか。
ディズニーランドのゲートをくぐってからの真里は途端に目をきらきらと輝かせ、裕子を急かして走り回る。
最初こそはですます調が抜けなかったり、中澤さんと呼ぶことも多かったのだが、入園してから1時間もしないうちに、この様子だった。
自分に対してずいぶんと萎縮した態度が気になっていたのだが、それを心配することもなく。
解放されたように、そこら中に笑顔を振りまいている。
そのうち、一向に足を速めようとしない裕子に焦れたのか、速く…と急かしながら裕子の手を取って走り出した。
だが、どんなに急いでも、結局は列の最後尾に並んで待ち時間をやり過ごすのに変わりはない。
- 160 名前:Liar 投稿日:2002年11月08日(金)01時13分37秒
- 「何や、これってデートみたいやな」
少しずつではあるにしろ、確実に進んでる列の最中で、裕子はぽつりとつぶやいた。
ディズニーランドなんて、右を向いても左を見てもカップルばかりだ。
しかも、そろそろ夕方になるせいか、家族連れの割合は減ってきているようで。
自分でデートみたいだと言ってから、何だか変な気がした。
初めて会ったといってもおかしくない人間と、こうして珍しくディズニーランドなんかに来て。
10歳も年下の女の子に連れられて走り回ったり。
―――まぁ、楽しいからいっか。
- 161 名前:Liar 投稿日:2002年11月08日(金)01時14分27秒
- そんなことを思っていたら、横で真里の声がした。
「………デート」
「へ?」
別に返事を期待していたワケではなかったから。
意外に思って真里を振り返ると、どことなく拗ねたような眼で裕子を見上げていた。
「何か言うた?」
改めて問うが、真里は何も答えない。
その目元には、薄っすらと涙が浮かぶかのように潤んで見える。
ちょぉ、待てや。
アタシ、この娘泣かすようなこと言うたか?
デートみたいって言うただけやよな…。
- 162 名前:Liar 投稿日:2002年11月08日(金)01時17分21秒
- 「や、矢口……?」
真里はふっと裕子から視線を逸らす。
「矢口、今日、デートのつもりだったのに……」
言われて、ようやく裕子は自分の失言に気づいた。
「あ……、ごめん」
自然と謝罪の言葉が口をつく。
でも、心のどこかでは、そこまで気にしなくても…などと思いながら。
「ほんまごめん。なぁ矢口、機嫌なおしてぇな」
真里は横を向いて頬をぷぅっと膨らませて。
確かに、ひと言でデートなんて言ったって、その意味合いはいろいろあって。
裕子にとっては自分の存在なんてどうでもいいのかもしれないけど。
真里はアトラクションの待ち時間も終わりに近づいてるのに気づく。
何だか、無性に裕子に伝えたくなった。
自分のこの気持ちを。
- 163 名前:Liar 投稿日:2002年11月08日(金)01時18分42秒
- 「ねぇ、裕ちゃん」
「ん?」
「初めて会った時から、矢口、裕ちゃんのこと気になってた。―――好き…なんだと思う」
明らかに驚いた顔して、裕子の歩みが一瞬止まった。
「―――な、んやって?やぐ……」
思わず、裕子は前を歩く真里の腕をつかもうと手を伸ばしたが。
「こんにちはー。何名様ですかぁ?」
嫌味のない明るい笑顔のキャストが目の前に迫っていて。
「2人」
真里も笑顔でそのキャストに答えたりなんかして。
伸ばされた裕子の手は、行き場を失ったまま下ろされる。
- 164 名前:Liar 投稿日:2002年11月08日(金)01時20分45秒
- 「はい、2名様。3番へどうぞー」
誘導されて、3と書かれた枠の中に立つ。
「なぁ、矢口、さっきの……」
言いかけたところだったのに。
裕子の問いは、滑り込むようにやってきたスペースマウンテンの音にかき消された。
はっきりしないまま、裕子は真里に倣って乗り込む。
「さっ、裕ちゃん。いよいよだねっ」
デートだと思ってた…と悲しそうな顔をして言った一瞬前の真里はどこにもいなかった。
純粋にスペースマウンテンが楽しみだというような表情で。
――――って、ちょっと待ってや。
安全バーやらの確認のアナウンスが流れてハッと気づく。
アタシ、まだ心の準備ができてない………。
- 165 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月08日(金)11時48分30秒
- やぐちゅー・・・ディズニ−ランドでデートは可愛くていいいですね。(w
エクセレント大阪・渋谷いったんですか?
めちゃくちゃ羨ましいです!!!
前回のように地方にもきて欲しい!(涙
聞いた話ですが昨日のみっちゃん最終大阪ライブ・・・裕ちゃんと稲葉さんがきてたらしいです。
しかも舞台でみっちゃんが裕ちゃんに「1個だけバラしいていい?(お客さんに)」
「私がいつもずっとつけている指輪は裕ちゃんに貰ったものです。そして裕ちゃんがいつもつけてる
指輪は私があげたものです」
ってみっちゅーぶりを暴露したもようです(w
やぐちゅー&みっちゅー&作者さんの小説最高です!!!
- 166 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月08日(金)14時26分00秒
- この告白は、裕ちゃんが矢口のコトを意識するキッカケになったかな?
最後のライブにはハロプロメンバーほぼ全員来たそうですね(矢口のANN-Sより
そして矢口は裕ちゃんに「ハタチになったら飲みいこ〜なぁ〜」と
誘われてるらしいです(w
- 167 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月09日(土)04時11分43秒
- ファーストデートいいな(w
矢口の初々しさが可愛い。
>>166
みっちゃんライブin渋谷AXは、娘。・姐さん・稲葉さん・メロン等
大阪最終ライブは、姐さん・稲葉さん
とにかくみっちゃんのライブは最高です!
- 168 名前:作者 投稿日:2002年11月18日(月)04時17分54秒
- 何か、平家さんライブのレスを頂けて、すごくうれしいです。ありがとうございます。
>>165-167
ラジオで本人も言ってたけど、裕ちゃんは大泣きだったらしいですね。
指輪とかの話も、卒業ライブに行った友人から聞きました。すごく感動したと。
いいなぁ。平日でなければ行ったのに…。
それで、今週のハロモニでは運動会の様子が流れたり。
オープニングでは両チームのキャプテンが並んでコメントしてました。
私はこれだけですごく喜んでしまいました(^^;
去年は手を繋いでの選手宣誓なんかもあったんですが、今年はほんとにダイジェスト版みたいで。
今年の運動会、DVD化されたりするんだろうか…?
更新します。
- 169 名前:Liar 投稿日:2002年11月18日(月)04時19分57秒
- 「大丈夫?」
「ん、大丈夫や…」
スペースマウンテンを降りた裕子は、妙に膝がガクガク震えるのを堪えながら、狭い通路を抜けて出口へ向かう。
「絶叫系の苦手だったの?言ってくれれば他のにしたのに…」
「いや、特別好きじゃないってくらいのつもりやったけど、心づもりが―――」
真里に手を引かれる状態で、近くにあるファーストフードの店内へ入る。
とりあえず空いてる席を見つけて2人で座った。
裕子はほっと息を吐いて。
「何や、めっちゃ恥ずかしいとこ見られたなぁ」
苦笑混じりにつぶやいた。
「裕ちゃんって、落ち着いたオトナの女性って感じだったから、意外なとこも見れてうれしいな」
真里はにこにこと笑顔を崩さない。
- 170 名前:Liar 投稿日:2002年11月18日(月)04時21分05秒
- 「こんなことなら……」
言いかけて、裕子は思い出したようにふっと顔を上げる。
「あ、そや、矢口」
「何?」
「さっき乗る前に、アンタ、アタシのこと好きって言うたよな」
「あ、うん。言ったけど…」
大したことないように言われて、裕子はちょっぴり拍子抜けした。
何や、そんなアタシが心配するほどの気持ちやないってことか?
それならそれで、別に構わんけど……。
「あれ、本気だよ」
少しだけ、真里の眼が真剣さを帯びたような気がしたけど、それでも口調は軽い感じがした。
裕子はしばらくそんな真里を見ていたが。
- 171 名前:Liar 投稿日:2002年11月18日(月)04時23分02秒
- 「―――アタシ、矢口と会うのは今日が2回目のハズなんやけど」
「うん。そうだよ」
「だから、ほんまに?」
「嘘じゃ…ないよ」
自分で訊いといて思うのもおかしいが、それは何となくわかる。
真里は嘘をつくのが下手そうだった。
楽しいことも嫌なことも、全てが表情に出てしまうタイプであるのは、裕子も今日だけで十分に感じていた。
「電車の中で助けてくれた時、綺麗な人だって思ったのが最初だった。思わず声をかけたら、笑った顔が何だかかわいくて、このまま赤の他人で終わっちゃうのがイヤだなぁって」
言葉を続ける真里を、裕子はじっと見つめている。
「気になってしょうがなくて、忘れられなかった。手紙書いたり、自分でも思い切ったことするなって思ったけど、矢口は、裕ちゃんのことが、好き」
「そっか…。うん。ありがとな」
- 172 名前:Liar 投稿日:2002年11月18日(月)04時24分33秒
- とりあえず…といった具合に、裕子はそれだけ口にした。
その表情は、喜んでるようにも迷惑そうにも見えなくて。
沈黙が怖くて、真里は思いつくままに口を開く。
「裕ちゃん、迷惑…だった?」
「ん、迷惑とはちゃうよ。ただ、驚いたし、ちょっと戸惑ってるのは確かやけど」
迷惑じゃないと言ってくれただけで、何となくほっとした。
そこで、真里は思い切って言う。
「矢口と、つき合って下さい」
裕子はやっぱりすぐには何も言わず、真里の様子を見つめていた。
真里の展開の速さは、驚くと同時に、どこか新鮮だった。
「なぁ矢口、そんな頭下げんでええから」
思った以上に優しい声で促され、真里は顔を上げて裕子を見る。
- 173 名前:Liar 投稿日:2002年11月18日(月)04時25分44秒
- 「矢口、アタシにどうして欲しいん?」
「どうしてって…?」
「好きって言われても、アタシも矢口も女やで?つき合うってどーゆーことかなぁって」
「―――わかんないよ。矢口、裕ちゃんと一緒にいたいだけで…」
困ったように視線を彷徨わせる真里を見て、裕子はどうしようかと考える。
まさか、こんなに真剣に告白されるなんて考えてもいなかった。
軽い気持ちで今日の約束を承諾した自分を、正直、ちょっと後悔していた。
だが、自分を好きだと言う真里の気持ちは、おそらく憧れとかに近いものに思えて。
そんなに深く悩む必要はないのかもしれない。
少なくとも、今の時点で真里のことは嫌いではないし。
かわいい娘だし、真っ直ぐな視線とその気持ちは、とても自分にはないものだろう。
驚かされることも多いけど、真里と一緒にいるのはとても楽しかった。
- 174 名前:Liar 投稿日:2002年11月18日(月)04時27分51秒
- 黙り込んでしまった裕子に、真里が焦れる。
「裕ちゃん……」
促されて、裕子は小さく肩を竦める。
「……ええよ、矢口」
その瞬間、真里の顔がぱぁっと明るくなった。
「ほんとに?やった。ありがと、裕ちゃん!」
この笑顔に自分が和まされることに、裕子は十分なくらい気づいていた。
真里の真剣さに対して、失礼なくらいの中途半端な気持ちなのも確かだけど―――。
- 175 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月18日(月)12時40分25秒
- う〜ん、矢口は積極的ですね〜。
まさか2回会っただけで、ここまで関係が発展するとは・・・。
多少、裕ちゃんの気持ちが気になりますが・・・。
平家さんがこのコトを知ったら、相当ショックを受けるだろうなぁ・・・。
- 176 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月22日(金)06時06分58秒
- 続きが待ち遠しくて仕方ないです〜
- 177 名前:作者 投稿日:2002年11月29日(金)04時58分34秒
- 裕ちゃんのセカンド写真集買いました。もう大好き。
いろんな表情の裕ちゃんが見れて幸せです。
では、ちょっと間隔あきましたが、更新します。
- 178 名前:Liar 投稿日:2002年11月29日(金)04時59分23秒
- 告白をOKされてからの真里は、それ以前に比べて、より一層うれしそうに振舞っていた。
アトラクションに乗るために並ぶのも、パレードの場所取りをするのも、全てが楽しいらしく。
真里はもう何度も来ているのだろう。
アトラクションやショップの場所もみんな頭の中に入っているようだった。
裕子は真里に連れられるままに行動する。
パークの雰囲気のせいか真里に勧められてか、職場へのお土産に人気のお菓子を買ってみたり。
閉園ギリギリまでいるのも初めての体験だった。
- 179 名前:Liar 投稿日:2002年11月29日(金)05時00分15秒
- 名残惜しそうにゲートを出た真里と肩を並べ、駅までの道を歩いて。
「矢口、帰り電車やろ?」
「うん」
「家、どこなん?駅は?」
「横浜。どーして?」
横浜か…。やっぱり車の方がよかったかな…。
裕子はちらっと腕時計に目を落とす。
「車やったら家まで乗せてったけど、今日はアタシも電車やからなぁ」
「裕ちゃん、普段は車なの?会社行くのも?」
「そうやよ」
何を今更…と言わんばかりの表情で真里を見下ろした。
「――え、じゃぁ、あの…時は?何で電車?」
「ん?あの時?…あぁ、矢口と会った時は、たまたま修理に出してたんや」
- 180 名前:Liar 投稿日:2002年11月29日(金)05時01分50秒
- 何でもないことのように言う裕子の横で、真里はへぇ〜と息を吐く。
それって何か、運命みたい………。
声にこそ出さなかったが、心の中でつぶやいた。
隣を歩く裕子をそっと伺い見て。
この人に、出会えてよかった―――。
端正なその横顔に見惚れていると、裕子の視線がふっとこちらに向けられる。
「横浜まで一緒に行くわ」
「え…?」
「ほんとは電車を降りてからの方が危ないと思うんやけど、そこまではな。アタシも明日仕事あるし」
まさか、そんなことを言ってもらえるとは思ってなかった。
- 181 名前:Liar 投稿日:2002年11月29日(金)05時02分26秒
- 「そんな、悪いよ…」
「えーから。素直に甘えとき。どうせ電車の中だけやから」
そう言って、にっこりと笑う。
「あ、ありがとう」
「どう致しまして」
驚く申し出だったけど、素直にうれしかった。
少しでも長く一緒にいたかった。
- 182 名前:Liar 投稿日:2002年11月29日(金)05時03分11秒
- 舞浜から横浜まで、電車で約1時間。
楽しい時間はいつだって早く過ぎていく。
1人だったら何倍にも感じていただろう。
この1時間も、裕子と話しながらではあっという間だった。
横浜駅で2人は電車を降りる。
裕子は真里を見送りに改札の前まで出向いて。
「じゃな。今日は誘ってくれてありがと。楽しかったわ」
真里はぶんぶんと首を横に振る。
「矢口の方こそ。すっごく楽しかった…」
このまま話していたい気持ちは山々だったが、遅くなればなるほど裕子に迷惑がかかるのも承知してた。
- 183 名前:Liar 投稿日:2002年11月29日(金)05時04分03秒
- 「それじゃ、お休みなさい」
ばいばいと手を振ると、裕子も笑顔で応えてくれる。
「ん。お休み。家まで気ぃつけてな」
真里は後ろ髪を引かれる思いで改札を出る。
歩き出してふと振り返ると、まだ自分のことを見てくれていた。
振り向いた自分に、小さく手を振ってくれて。
真里も裕子に笑顔を見せ、再び歩き出す。
もう一度振り返りたいのを、必死で堪え。
冷たい夜道を1人で歩きながら、今日のことを思い出していた。
- 184 名前:Liar 投稿日:2002年11月29日(金)05時04分48秒
- つくづく、後先考えずに行動してるなぁ。
出会いからして突然だったけど、その後の誘い方も、告白の仕方も、出会いに劣らず唐突で。
ほんとは、あんなに真面目に気持ちを伝えるつもりはなかった。
「デートみたい」と言われた瞬間、落胆すると同時に、自分がそれを望んでいたことに気づいた。
自分と裕子の想いの深さの違いを、改めて思い知らされた。
そのまま流してしまうことができなくて、ああいうカタチになったけど。
でも、それでよかった。
思い切って伝えられて。
また、会えることになったんだから―――。
- 185 名前:Liar 投稿日:2002年11月29日(金)05時07分41秒
- 改札の向こうに消えて行く真里の姿を見守り、それが視界から消えると、裕子は大きく息を吐いてホームへ向かう。
小走りになりながら、腕時計にちらりと目を走らせる。
―――急ごう。
終電には余裕で間に合うだろうが、そんなにのんびりできるほどの時間でもない。
階段を駆け上がり、タイミングよくホームに入ってきた電車に飛び乗る。
自分の背後で閉じたドアにもたれかかり、少し乱れた息を整えた。
落ち着いてから顔を上げ、空いた席を見つけて座る。
妙に、自分の周囲が静かだった。
他に人がいない訳では決してない。
電車に乗っているのだから、様々な音が耳に入る。
だが、先程まで隣にいた真里の声がなくなってるのは大きかった。
無理もないか。半日近く一緒にいたんだから。
静かな時間が経つにつれ、裕子の気持ちも、いつもの自分へと引き戻される。
どこに行ってたのかひと目でわかるキャラクター満載の紙袋。
それを持ってる自分が、何だか妙に気恥ずかしかった―――。
- 186 名前:読者 投稿日:2002年11月29日(金)09時59分15秒
- やった〜!
更新されてる〜!!
やっと心がつうじたんですね(w
でもみっちゃん・・・(w
写真集綺麗・可愛い言葉ないってカンジです。(w
- 187 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月01日(日)16時18分41秒
- ディズニ−の紙袋をもった姐さんって想像できない(w
これから思いの深さがちじまっていきんだろうな
めっちゃ楽しみです。
- 188 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月17日(火)00時07分36秒
- う〜 続きまだかな?
楽しみに待ってます。
- 189 名前:読者 投稿日:2002年12月24日(火)00時46分43秒
- そろそろ続きが読みたいです。
- 190 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月03日(金)13時03分00秒
- 明けましておめでとうございます。
今年もやぐちゅーをお願いします。
- 191 名前:作者 投稿日:2003年01月06日(月)22時12分49秒
- 1ヵ月以上も更新しないで申し訳ないです。
このスレ、底の方に沈んでるかと思ってました…。
少しですが、更新します。
- 192 名前:Liar 投稿日:2003年01月06日(月)22時14分22秒
- 「おはよーございまーす」
誰に言うのでもなく、みちよはいつものように出勤した。
ばーっと見渡しても、まだ全員そろってる様子もなく。
しかし、1ヵ所だけやけに人が集まっている。
その中心には裕子もいて。
手にはドナルドダックが描かれたお菓子の缶。
珍しい。何であんなものをあの人が持っているのか…。
みちよは不思議に思いながら、その輪に近づいた。
「おはよー、平家さん」
いち早く気づいてくれた同僚にあいさつを返し、肩越しに裕子の手元を覗き込む。
- 193 名前:Liar 投稿日:2003年01月06日(月)22時15分34秒
- 「何やの、それ?」
「お、みっちゃん。おはよーさん」
「おはよ。―――で、これは?」
言いながら、裕子の返事を待たずに缶の中のチョコクランチに手を伸ばした。
そんなみちよを咎めることもなく、裕子は半ば予想通りの答えを言う。
「見りゃわかるやろ。お土産。みんなへの」
お土産…ねぇ。
てことは、もちろん―――。
「ディズニーランド行ったとか?」
「そうや」
「………誰と?」
まさか1人で行く訳ないし…と思いながら尋ねる。
やや抑えた声での今度の答えは、予想外のものだった。
- 194 名前:Liar 投稿日:2003年01月06日(月)22時16分26秒
- 「矢口と」
「矢口って、あの女子高生?」
直後に、じろりとキツイ目で睨まれ、慌てて口を噤む。
どうやら、あまり人に聞かせたい話ではないらしい。
その割に、お土産を買って配ってるところは矛盾してて面白いのだが。
始業前にひと通り配り終えたらしい裕子は、空に近くなった缶を手に、みちよの隣のデスクへと戻ってきた。
「余ったから、もう1コあげるわ」
「ありがと」
みちよが差し出されたままに受け取ると、裕子も1つ取り出してピリッと袋を破り、口の中に放り込んだ。
「楽しかった?」
「うん」
「何に乗ったん?」
「いろいろ」
「遅くまで遊んでたん?」
「かなり」
- 195 名前:Liar 投稿日:2003年01月06日(月)22時17分21秒
- 裕子は隣にいるみちよを見ようともせず、自分のバッグを漁っている。
大して興味がなさそうな様子を見て、みちよは肩を竦めて質問を止めた。
いいなぁ、ディズニーランド…と思いながら、自分のデスクの上を整理していると。
不意に、横から裕子の手が伸ばされる。
その手には小さなガラス細工の小人の像。
それがコトリと目の前に置かれた。
訳もわからずに見つめていると、戸惑い顔の自分に気づいた裕子は、至極満足げに微笑んだ。
「お土産。大したもんやないけど」
「あ、あり…がと」
思わぬ心遣いに、一瞬、呆けてしまった。
- 196 名前:Liar 投稿日:2003年01月06日(月)22時18分04秒
- 「かわいかったから。そうや、みっちゃんにって思って、買ってみた」
「――裕ちゃん、意外と女の子っぽいとこあるんやねぇ」
へぇ〜とつぶやくと、横で不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「何やの。せっかく買ってきたのに。アンタもまだまだアタシのことわかってないんやな」
「嘘やって。冗談に決まっとるやん。アタシと裕ちゃんの仲やないのぉ」
ほんとは、十分すぎるほどわかってた。
裕子もそこまで本気で言ってないのは見え見えで。
「まぁ、ええけど。大事にせぇや」
「――うん。ずっと大事にするわ」
柄にもなく神妙に言うと、裕子はちょっぴり不思議そうな顔をするが、その表情はすぐにやわらかく崩れた。
「いつか、一緒に行こうな」
- 197 名前:Liar 投稿日:2003年01月06日(月)22時19分55秒
- 後になって、時々思う。
この時、裕子が真里とのことを話していてくれたら、自分の想いは変わっていたんだろうか。
裕子に対して、何かしらアクションを起こしていたりしただろうか。
―――いや、多分、何もしないし、変わらない。
何でやろ。
自分でもわからないけど、それだけは確信できた。
- 198 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月07日(火)05時06分02秒
- ヤタ!更新だ!
やぐちゅーヲタだけど、みっちゅーも好き。
なので、ホント、ツボです。
てか、みっちゃん切ない…
- 199 名前:名無し読者S 投稿日:2003年01月09日(木)12時35分46秒
- 更新されてたんですね(w
超嬉しいー。
やぐちゅー作者さんかなり減ってるので・・・頑張って完結してください。
・・・すごく応援&感謝してます。
みっちゅーもこそっと頑張って欲しいです。(w
- 200 名前:作者 投稿日:2003年01月17日(金)00時25分12秒
- 読んで下さってる方もいるようなので、見限られない程度に更新しないと…。
レスありがとうございます。頑張ります。
- 201 名前:Liar 投稿日:2003年01月17日(金)00時26分50秒
- 「ねぇ、裕ちゃん」
「何や?」
「矢口、今度裕ちゃんち行ってみたい」
2人で会うようになって、どれくらい経っただろう。
真里との距離は、格段に縮まっていた。
週末に買い物や映画に行ったり、その帰りに食事をしたり。
それこそ中高生の頃の自分を思い出すようなデートを重ねて。
今日もそんな1日で終わろうとしていた。
ファミレスでの夕食を食べ終えて、真里を自宅まで送る車の中。
突然の真里の言葉に、裕子は面喰らった様子で応える。
- 202 名前:Liar 投稿日:2003年01月17日(金)00時27分51秒
- 「アタシの部屋、何もないで」
「いいよ」
「矢口が来ても、つまらんだけやと思うけど」
「そんなことないよ」
「そうかぁ…?」
いまいちはっきりしない裕子を見て、真里は不安げに眉を顰めた。
「ダメ…かな?」
「や、別に構わんけど、ほんま何もないよ」
「そんなの、裕ちゃんがいれば、十分だよ」
にっこり笑う真里に、裕子は一瞬固まった。
が、すぐに、口元にふっと笑みが浮かぶ。
よくまぁ、そんな言葉を照れもせずに言えるな…。
若いから…という理由ではなさそうだ。
少なくとも、自分はこんな高校生じゃなかったし。
- 203 名前:Liar 投稿日:2003年01月17日(金)00時29分23秒
- 「――じゃ、今度はウチに招待するわ」
「うん。楽しみにしてるねっ」
真里はすぐにでもそれを実行したいらしく、早速日取りを決めようとする。
基本的には高校生である真里は、ほとんど毎日、夕方以降は暇な訳で。
学校さえ終われば、いつだって遊びに行きたい…という思いでいっぱいだった。
「でもなぁ。ほら、あんま先の約束しといて、直前で仕事入ってキャンセルってのも悪いやろ」
う〜ん…と考え込む裕子を目の前に、真里はぷぅっと頬を膨らませる。
「その時は、また次の約束決めればいいでしょ。矢口はいつでもおっけーだからさ。ね、いつならいい?」
「そうやなぁ……」
裕子は悩みながらも、思いついた日を挙げてみる。
真里は即座に首を縦に振った。
- 204 名前:Liar 投稿日:2003年01月17日(金)00時30分16秒
- 「んじゃ、とりあえずってことでいいから。その日にしよ?」
ねっ…と小首を傾げて見つめられたら、頷かずにはいられない気がして。
「ん。ええよ」
軽く承諾して、裕子は真里の笑顔を受け止めた。
この上ないほどうれしそうな真里を、裕子はどこか不思議な想いで見守る。
真里には、人を惹きつけて止まない何かがあった。
それが自分に対してだけ発揮されてるのかははっきりしないが…。
「それじゃ、今日はありがとう。また今度、裕ちゃんちで会おうね」
真里の家が視界に入る辺りで車を停め、裕子は真里を振り返った。
「わかった。待ってる。つーか、アタシ、迎えに行くから」
「うん。お休みなさい」
そう言って、ドアに手をかける。
「お休み」
裕子はそんな真里の動作を見つめていた。
- 205 名前:Liar 投稿日:2003年01月17日(金)00時31分34秒
- すると、真里の動きがふっと止まる。
「矢口…?」
ロックが解除できなかったか…などと思い、裕子は真里の手元を覗き込もうと身を乗り出した。
次の瞬間、意を決したように真里が振り向く。
「裕ちゃんっ!」
「へっ?」
その勢いに押され、裕子は情けない声をあげると、無意識に身体を退いた。
……正確には退こうとした。
だが、真里によって止められた。
ぐっと裕子の手首を捉え、顔を近づける。
- 206 名前:Liar 投稿日:2003年01月17日(金)00時32分21秒
- あー、矢口、やっぱ顔ちっちゃー。
きれいな眼ぇしてるんやなぁ…。
驚愕の表情のまま、裕子は焦点さえも合わなくなるほど間近に迫る真里の顔を見ながら、そんなことをぼんやりと思った。
近づいてきた真里の唇は、限りなく口に近い頬の辺りにそっと触れてきて。
でも、一瞬の後に離れていた。
「お休みなさいっ!」
言い捨てるようにそれだけ言うと、真里はあっという間にドアを開けて車を飛び出して行く。
硬直したままの裕子の視界には、走る真里の後ろ姿が映っていた。
気づいたら、真里がキスした辺りに手が伸びて。
自分で触れてみた頬は、いつもより少しだけ熱いような気がした。
- 207 名前:Liar 投稿日:2003年01月17日(金)00時35分32秒
- 裕子は大きく深呼吸してから、ゆっくりと車を発進させる。
真里の真っ直ぐな気持ちはわかっていた…けど。
「矢口の好きって、そーいう意味やったんやなぁ……」
ぽつりとつぶやくと、その言葉の重さがのしかかる。
でも、頭のどこかではわかっていた。
時折見せる大人びた真里の表情や仕草とか、切なそうな眼差し。
キスする直前の、濡れたような真里の瞳が頭から離れない。
だけど、その考えに気づかぬ振りをしてきた自分がいて。
真里とのこういうつき合いが楽しくて、居心地がよすぎて。
―――真剣になってしまう自分が怖くて。
- 208 名前:Liar 投稿日:2003年01月17日(金)00時39分32秒
- でも、そんなことは無意味だったのかもしれない。
すでに、真里に対しての気持ちは、興味本位だとか、そんな薄っぺらいものでは説明できなくなっている。
何だかんだ言っても、この娘にハマってきてるのは自分の方なのかもしれない……。
このままのめり込んでしまうのか。
そうなってもいいんだろうか。
でも、やっぱり怖い……。
帰り道、裕子は車の中で考えていた。
- 209 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月17日(金)18時27分47秒
- 更新ありがとうございます。
やぐちゅー接近中(w
- 210 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月23日(木)01時38分55秒
- わくわくわくわくわく。
- 211 名前:作者 投稿日:2003年01月23日(木)23時35分03秒
- 細々と更新。
みっちゅー書いてると、裕ちゃんがどんどん酷い人になっていく…ような気がする(笑)
- 212 名前:Liar 投稿日:2003年01月23日(木)23時36分06秒
- 「――で、何でアタシなん?」
みちよは乗り慣れた車の助手席に座り、運転手に尋ねる。
休日に裕子の運転する車に乗って、彼女の家へ行くなんて、なかなか素敵な時間の過ごし方だ。
でも、事情を聴いたら何のことはない。
今夜、家で2人だけで会うのに怖気づいたらしい。
まぁ、理由も訊かずに、『みっちゃん、明日、暇?』のひと言で頷いてしまった自分も救いようがないアホだけど。
わざわざ家まで車で迎えに来てくれるなんて、よっぽど来て欲しかったんだろうか。
- 213 名前:Liar 投稿日:2003年01月23日(木)23時37分08秒
- 「ほら、いちお、アンタも矢口と面識あるやん」
「面識って……。かなり前のことやし、あの時やって、ほんの数秒しかしゃべってへんで」
「や、時々、アンタの名前出してるから。アタシが」
「どうせ、悪口言ってるだけでしょぉが」
「まぁ、その通りやけど」
「裕ちゃんっ!」
「あー、嘘やって。もうっ、死にたくないんやったら、運転中にちょっかいだすなっ」
焦ったような声音は、演技にも聞こえなかったから、みちよは大人しく前を向いた。
仲、良くなってたんやなぁ。いつの間に…。
「なぁ、何でなん?」
「だから、みっちゃんがいちばん頼みやすかったって……」
「ちゃうよ」
「えっ?」
「今までやって、矢口…さんと何度も2人で会ってたんやろ?何で急に――」
- 214 名前:Liar 投稿日:2003年01月23日(木)23時37分56秒
- それを聞いて、裕子はわざとらしく鼻の頭をぽりぽりと掻く。
「んー、ま、いろいろあってな」
「ふぅん。いろいろって、例えば?」
要領を得ない言葉で裕子がお茶を濁しているうちに。
「――ほらっ、着いたで。さっさと降りぃや」
車は目的地に着いてしまった。
何度となく訪れたマンションの駐車場。
車から降りる裕子を待って、エレベーターに乗る。
- 215 名前:Liar 投稿日:2003年01月23日(木)23時39分04秒
- 何となく2人とも無言のまま、部屋までやって来て。
「お邪魔しまーす」
裕子に続いてみちよも部屋に上がった。
いちばん最近来たのは……いつやったっけ?
そんなことを思いながら、リビングまで足を進めて。
「まだ……時間あるか…」
部屋の時計を見ると、裕子は大きく息を吐いてソファに腰を下ろした。
「みっちゃんも座りぃや。あ、何か飲む?」
「ん。何かもらうわ」
腰を浮かせかけた裕子を制して、みちよはすたすたとキッチンまで行く。
- 216 名前:Liar 投稿日:2003年01月23日(木)23時40分02秒
- 冷蔵庫を開けると、ビールがいっぱいの見慣れた光景。
裕子と違って車に乗らないから、それを飲んでも良かったのだが。
まぁ、時間も時間だし…と思いながら、ドアポケットにあるお茶のペットボトルを取り出した。
「お茶、もらうけど。裕ちゃんは?」
「ちょーだい」
カウンター越しに尋ねると、素っ気ない答えが返ってきて。
2つのグラスに注いで、ボトルをしまう。
「ええ加減、話してぇや。ここまで引っ張ってきたんやから」
はい、とグラスを差し出しながら言うと、何とも情けない顔で見上げられた。
小さく頷きながら、裕子は差し出されたグラスを受け取る。
- 217 名前:Liar 投稿日:2003年01月23日(木)23時41分08秒
- しばらく逡巡したように視線を彷徨わせた後、両手で抱えたグラスを見つめて口を開いた。
「――みっちゃんさ、今、好きな人…おったりする?」
いきなり、核心を突いてきて。
グラスに口をつけたまま、みちよは一瞬固まったが、すぐにひと口だけ冷たいお茶を含み、喉を潤す。
「……さぁ」
「何やねん、それ…」
ふん、と不満そうに唇を突き出す。
「じゃぁ、裕ちゃんに訊くけど。裕ちゃん、いるの?」
「んー………」
否定も肯定もしなかった。
「そっちこそ。人のこと言えないやん」
みちよの言葉に、裕子が盛大にため息を吐いた。
- 218 名前:Liar 投稿日:2003年01月23日(木)23時42分39秒
- そのまま、少し沈黙が続いて。
何だか気まずい空気が漂った。
それを打破するように、みちよは伺うような視線を向ける。
「矢口さんと、何かあったんやろ?告白でもされたん?」
あの娘なら、いつかはそうすると思っていたけど……。
「や、それはもう、ずっと前に――」
…………えっ?
- 219 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月27日(月)03時33分53秒
- 続きが気になる…
- 220 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月29日(水)02時23分06秒
- やぐちゅー大すきだけど。。。
みっちゃんっも気になったり(w
- 221 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月03日(月)17時07分44秒
- そろそろご更新お願いします。
やぐちゅーの作品が、この頃減ってしまって・・・
やぐちゅー不足で死にそうです。
- 222 名前:作者 投稿日:2003年02月06日(木)15時03分31秒
- 企画板でアカデミー大賞っていうのやるんですね。どんなものなんだろう?
けど、個人的には本物のアカデミー賞がどうなるのか気になるところ。
ノミネート発表は来週でしょうか。今年は好きな女優さんが何人かノミネートされそうなんで、非常に楽しみ。
関係ない話ですみません。更新します。
- 223 名前:Liar 投稿日:2003年02月06日(木)15時05分30秒
- 「ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってぇなっ」
みちよは慌てて裕子の言葉を遮ると、グラスをテーブルの上に音を立てて置き、身体の向きを変えて、正面から裕子を見る。
「今、何て言うた?」
「へ?今?アタシ、何か変なこと言うた?」
みちよの剣幕に驚いた裕子は、きょとんとした顔で見つめ返して。
みちよはすーはーと深呼吸して気持ちを落ち着かせると、ぐっと食い入るような眼差しで裕子に尋ねた。
「ずっと前に、矢口さんから好きやって言われてたん?」
「――あ、うん。そう。言われた」
「いつ頃…のことか、訊いてもええ?」
「ちゅーか、もう訊いてるやん。えっとね、ディズニーランド行った時やから…」
- 224 名前:Liar 投稿日:2003年02月06日(木)15時06分21秒
- それって、めちゃくちゃ前やん!
みちよは信じられない思いで裕子を見て、肩を落とす。
そりゃ、隠さず何でも話す義務なんてある訳ないけど。
話してくれてもいいじゃないか。
でも、それが相談事にまで発展しなかったということは、彼女にとってそんなに大した出来事ではなかった…とか?
「うん。3〜4ヵ月くらい前になるよな。会ったばっかの頃って言うと…」
指折り数える裕子を、複雑な想いで見ていると。
「って、こんなことを話したいんやなくって…」
- 225 名前:Liar 投稿日:2003年02月06日(木)15時07分19秒
- こんなこと………。
裕子のそのひと言に、みちよは心の中どこかでほっとした思いを抱く。
おそらく、精いっぱいの気持ちで告白しただろう真里の想いを、裕子は「こんなこと」呼ばわり。
まだ、大丈夫――。
妙な安心感だった。
それじゃぁ、自分が同じ言葉で彼女に気持ちを伝えたら、一体、何て答えるだろう?
やはり「そんなこと」と、一蹴されてしまうだろうか。
今、言ってみる?
――まさか。そんなことできるはずがなかった。
みちよは頭を振ってバカな考えを追い出す。
- 226 名前:Liar 投稿日:2003年02月06日(木)15時08分12秒
- 「どしたん、裕ちゃん。落ち着いて話しぃや」
落ち着かなきゃならないのは、自分の方なのに。
それでも、裕子の前では虚勢を張る。
できる限り、背伸びをして。
良き相談者ぶって、裕子の悩みを聞き出して。
それが、自分を偽ることなのは百も承知で。
でも、その結果、自分が傷つくことに、この瞬間は気づいてなかった。
- 227 名前:Liar 投稿日:2003年02月06日(木)15時09分18秒
- 裕子は怖々とした口調で話し出す。
「あんな、アタシ、何かおかしいかもしれんのや」
「何が?」
「今日、矢口と2人で会うの、怖いんや」
「何で?」
コクリと、裕子は唾を飲み込んだ。
「――アタシ、矢口を、好きになりそうで」
「……………………………」
ガツン、と後頭部を殴られたような衝撃だった。
- 228 名前:Liar 投稿日:2003年02月06日(木)15時10分37秒
- みちよは何も声をかけられずにいて。
一瞬前のほっとした思いは、一体何だったのか。
自分が情けない。惨めだ。
わかってるつもりでいたけど、実際は、彼女のことなんて全く理解していなかったんだと。
残酷な裕子の言葉を反芻する。
“アタシ、矢口を、好きになりそうで”
好きになりかけているんだろうか。
自分の想いが成就するなんて、みちよはハナから考えていなかった。
自分も裕子も女で。
親友だと認めてくれるだけで十分だと。
好きな人ができて、いつかは結婚するだろうとは思っていたけど。
何で、こんなことになったんやろぉ…。
- 229 名前:Liar 投稿日:2003年02月06日(木)15時11分56秒
- 「なぁ、みっちゃん…」
弱々しい瞳が見上げてくる。
無知な裕子の言葉は、何にも変えて、自分を傷つける。
今のアタシに何を言えと?
自問しながら、それでも彼女のために言葉を探す。
「矢口さんを好きになりそうなのが、何で怖いん?」
「そりゃ、10コも年下で、それに、ほら、女の子…やし……」
震えがちな口調なのに、その内容はみちよの胸にナイフのように突き刺さった。
ふぅーっと細く長い息を吐き、みちよは次に言うことを考えて。
- 230 名前:Liar 投稿日:2003年02月06日(木)15時14分38秒
- 「だって、矢口さんの方はずっと前に気持ち伝えてたんやろ?何で、今更」
「…自分がこんな気持ちになるなんて、思ってもみなかったんや」
裕子は自分を抱きしめるようにして、ぽつりぽつりと話し始める。
「好きやって言われた時も、矢口、かわいいし、楽しいし、断る理由なんて何もなくて。それに、あの娘といると、全てが新鮮やった。
こーいう人間関係もありかなぁって。でも……」
「でも、何?」
「でも、矢口の気持ちは思った以上に真剣で。アタシも嫌いやないっちゅーか、むしろ大好きやってことに気づいたし。
だけど、このままでええんかなぁとか……。何や、自分でもよぉわからんわ」
ふっと小さな笑みをこぼして、みちよの反応を見ずに立ち上がった。
半分以上中身が残ってるグラスを持ってキッチンに行って。
みちよはその後ろ姿を見ながら、今にも抱きしめたい衝動に駆られる。
けど、彼女が好きなのは、自分じゃなくて矢口真里で。
- 231 名前:Liar 投稿日:2003年02月06日(木)15時16分33秒
- グラスを置いただけでキッチンから戻ってきた裕子は、いくらか晴々とした表情をしていた。
「まぁ、そんな感じや。辛気臭い話聞かせて悪かったな」
話したことで、少しはすっきりしたようだった。
「や、話くらいいつでも聞いたるからええけど。それより、これからどーするん?」
「――これからって、今日のこと?」
「ううん。そーゆー意味やなくて。これから先、好きやって気づいて、それをちゃんと伝えるつもりなん?」
「う…ん。わからんわ。とりあえず、まだ怖いって気持ちがあるから、すぐには言わんと思うけど。だから、今日、みっちゃんも一緒におってや」
- 232 名前:Liar 投稿日:2003年02月06日(木)15時18分36秒
- それが目的で呼んだんやし…と付け加えられると、みちよは今更ながら、呆れてしまう。
自分がずいぶんと都合のいい人間になってしまってるのは十分承知だったけど。
一生叶わない想いなのはわかっていたから。
それなら、せめて、好きな人には笑ってて欲しいってやつ?
あーぁ、もっと、アタシに勇気があったらなー……。
裕子の言葉に頷いて、みちよは微かに笑顔を見せた。
- 233 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月08日(土)02時04分28秒
- どんどん矢口にはまっていく裕ちゃん、すごくいいです!
- 234 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月08日(土)03時37分19秒
- ミチャーン…切ねぇ…。でもカコイイぞ。
心理がリアルで、惹き込まれます。
- 235 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月18日(火)00時28分44秒
- 続きをおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーー!!!
- 236 名前:作者 投稿日:2003年02月20日(木)05時06分32秒
- 続き、いつもお待たせしてすみません。
先日、ハロプロ運動会のビデオを見ました。
平家さんへの飢えが、ちょっとは満たされたかなと。
惜しむらくは、両キャプテン、もっと絡んでくれーって感じでしょうか。
私的な見所は、ハードルの時、一生懸命練習してる正副キャプテンの4人+飯田さん…かなぁ。
あと、ハードル完走後のやぐちゅー万歳(笑)
ではでは、更新します。
- 237 名前:Liar 投稿日:2003年02月20日(木)05時08分24秒
- 「んじゃ、ちょっと行ってくる」
「行ってらっしゃい」
最寄り駅まで真里を迎えに行くために、裕子は出かける。
みちよに、自分の部屋の玄関から見送られて。
それが何だか奇妙だった。
ばいばいと手を振る自分も、振り返すみちよも、今にも笑い出しそうな顔をしてて。
少し、気恥ずかしく思いながら、部屋を後にした。
駅までは歩いたってそんなに時間はかからない。
それこそ、悩む暇なんてないくらいに。
どんな顔して会えばいいんやろ?
そんなことを思わなくもなかったけど、いつも通りで十分だと言い聞かせて。
- 238 名前:Liar 投稿日:2003年02月20日(木)05時09分36秒
- いつものクセで、待ち合わせの時間よりもずいぶん早めに着いた。
後20分くらい待つだろうと思っていたが、改札付近には見慣れた小さな姿。
「えへへへー」
不意を突かれたような裕子の顔に、真里は照れた笑みを見せる。
「裕ちゃん、おっそーい!」
ぶつかりそうな勢いで腕をつかまれ、裕子はいささか面食らった。
どんな顔して会えばいいかなんて、気にしたアタシがアホみたいや……。
それに、実際、真里を目の前にすると、自分の気持ちも枷が外れたように軽くなる。
あれこれ頭の中で考える必要なんて、なかったのかもしれない。
- 239 名前:Liar 投稿日:2003年02月20日(木)05時11分21秒
- 「別に遅くないやん。アンタが早すぎるんやろ?」
「そうだけどさ。裕ちゃんっていっつも早く来てるから、何か悪いなぁって」
肩を並べて歩きながら、真里はうれしそうに話し続ける。
「今日、裕ちゃんち行けるんだーと思うと、緊張しちゃってさ。何か、遠足前の小学生みたいだった」
「だいじょーぶ。矢口なら、まだ小学生で通用するで?」
そう、大丈夫。いつも通りに――。
横ではむっと頬を膨らませた真里がぶつぶつとつぶやいていたが。
「あ、そや、矢口」
「ん?何?」
「今日な、友達、一緒でもええ?」
「と、もだち?裕ちゃんの?」
「うん。アンタも会ったやろ。平家」
「平家、さん…。あ、あの人。……どうしたの?」
- 240 名前:Liar 投稿日:2003年02月20日(木)05時12分09秒
- 少しだけ声のトーンが落ちたのはわかったが、裕子はそれを無視して続けた。
「前から矢口のこととか話しててな。いつか会わせてって言われてたんや」
「ふーん。そっかぁ……」
「あー、急で悪いとは思ったんやけど。でも、矢口が嫌なら、平家とはまたにするで」
「ううん。そんなことないよ。矢口も、平家さんに会ってみたいし」
思わず口をついた嘘だったが。
それを全く疑っていない真里の様子に、微かな罪悪感を持ちながらも、裕子は胸をなでおろして。
- 241 名前:Liar 投稿日:2003年02月20日(木)05時14分11秒
- 「ね、それじゃあさ、これから平家さんが裕ちゃんちに来るの?」
「や、もう来とる。今、留守番させてる」
「…………………」
「―――や、ぐち?」
不意に静かになった真里を、裕子は不安げに見下ろした。
唇を尖らせて不満そうな真里は、少しの間、何かを考え込んでいて。
裕子はみちよがいることをあっさり告げてしまった自分の無神経さに気づいたが、咄嗟にいい言い訳は思いつかなかった。
それに、自宅にみちよがいるのは事実。
どの道、このまま帰宅すれば会ってしまうのだから。
改めて、自分が行き当たりばったりな性格だということを自覚した。
- 242 名前:Liar 投稿日:2003年02月20日(木)05時17分03秒
- 「矢口、どしたん?大丈夫か?」
裕子は俯きがちな真里の手を取り、きゅっと握った。
その手は小さいけれど、自分のよりもずっとあったかくて。
「なっ、何でもないよ。うん。だいじょーぶ」
ばっと裕子を見上げ、真里はぶんぶんと大きく首を振る。
そのままふーっと息を吐くと、ちらっと盗み見るように隣の裕子を伺って、ぽつりとつぶやいた。
「……何か、手、びっくりした」
「へっ?」
「裕ちゃん、急に、手、握ってきたから…」
「あ、ごめん。つい―――」
慌てて握っていた手を解こうとするが、逆に真里の手に力が込められる。
「違うよ。びっくりしたけど、すごくうれしかったんだから。このまま、繋いでていい?」
その言葉に、裕子も小さく笑って握り返した。
- 243 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月20日(木)19時55分03秒
- 待ってましたー!!!
矢口がなんかかわいいです。
のんびり待ってますんでがんばってください。
- 244 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月20日(木)22時37分46秒
- わーい!更新だ!
やぐちゅー一直線に向かって、頑張れ、
作者さん!(w
- 245 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月21日(金)00時47分24秒
- やぐちゅー万歳!!!
ありがとうでーす。(w
- 246 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月02日(日)04時06分52秒
- そろそろやぐちゅー電池が切れてきたので・・・充電よろしくお願いします(w
- 247 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月07日(金)00時53分59秒
- う… まだかなまだかな。
- 248 名前:作者 投稿日:2003年03月09日(日)01時44分11秒
- この間のハロモニは裕ちゃんの出番少なすぎたなぁ。
10時間後に期待。
まぁ、期待は裏切られることが多いですが(笑)
- 249 名前:Liar 投稿日:2003年03月09日(日)01時45分55秒
- ガチャリと音を立てて開かれたドアの向こうには、見覚えのある1人の女性。
「こんにちは、いらっしゃい。あ、それと、お帰りぃ」
その女性は笑顔で真里に声をかけ、視線を上げて裕子を見る。
「あ、あの、こんにちは」
笑顔に釣られるようにして、真里も慌ててあいさつを返した。
「矢口、これが平家みちよ。んで、みっちゃん、彼女が矢口真里」
真里の肩を軽く押すようにして、背後にいた裕子が簡単に名前を告げる。
裕子の手に促され、真里は靴を脱いで部屋に上がり、みちよの後に続いた。
それでも、きょろきょろと周りを見ながら。
1人暮らしのマンションにしては、ずいぶんと広い印象だった。
目にするドアを全て開けたい衝動に駆られてしまう。
- 250 名前:Liar 投稿日:2003年03月09日(日)01時46分41秒
- リビングに通され、ソファを勧められ、何か飲むかと尋ねられ。
「あ、何でも、いい…です…」
何だか、妙に緊張してしまう自分がいた。
裕子はぷっと小さく吹き出すと、笑いながらグラスを取り出している。
「何や、矢口。急に敬語なんか使って。みっちゃんおるからアガってんの?」
それに応じるように、真里の前に座っているみちよが真里の方を向いて。
「そーなん?」
「あ、いや、それもある…けど…」
不思議そうな顔をしたみちよは軽く首をかしげる。
- 251 名前:Liar 投稿日:2003年03月09日(日)01時47分37秒
- 「ここが裕ちゃんちだーって思うと、それだけで緊張しちゃって」
「すまんかったなぁ。裕ちゃんと2人切りのとこ邪魔してもうて」
そんなこと…と、ふるふると首を横に振る真里を見て、みちよはふっとやわらかく微笑む。
そのままの視線で裕子を追って。
でも、すぐに視線を真里に戻すと、少しだけ表情を引き締める。
「えっと、まぁ、改めて自己紹介でもしとくか?」
それに応じるように、真里もぴっと背筋を伸ばした。
「あ、はい。あの、矢口真里です。17歳。高校3年で、横浜に住んでて、えっと、それから……」
何を言おうかと迷い、真里の言葉が一瞬途切れる。
- 252 名前:Liar 投稿日:2003年03月09日(日)01時48分54秒
- 「―――裕ちゃんの彼女で?」
その間を突いたように、みちよはさらりと口にして。
「え?あ、あぁ、はい」
真里は驚きながらも、躊躇うことなくその問いを肯定する。
直後、伺うような目を裕子に向けたが、自分に向けられたその背中からは何もわからなかった。
聞こえなかったのかもしれない。
少しだけ、がっかりして肩を落とす。
ま、裕ちゃんにとってはそんなもんなのかもしれないけど。
この間のキスのことだって、あれ以来、何事もないように振舞われて。
恥ずかしくて、キスした途端に車を飛び出しちゃったけど、もしかしたら、嫌…だったのかなぁ。
でも、嫌なら言うよね。きっと――。
さっきだって、裕ちゃんから、手、繋いでくれたし。笑ってくれたし。
- 253 名前:Liar 投稿日:2003年03月09日(日)01時49分43秒
- 気づいたら、3つのグラスを乗せたトレーを持って、裕子が横に立っていた。
「何や、いないとこでアタシの悪口言わんといて?」
カタリとそのトレーをテーブルに置くと、真里の隣に腰を下ろす。
やわらかいソファが少し沈み、真里の身体が裕子の方に傾いた。
微かに肩に触れただけなのに、慣れることなくドキッとして。
でも、そんな真里に構うことなく、裕子とみちよの会話は弾んでいた。
- 254 名前:Liar 投稿日:2003年03月09日(日)01時50分49秒
- 「裕ちゃんの悪口ねぇ。そんなん、言ってみたいわ」
「何言うてんの。しょっちゅう言ってるやん」
「ちゃうよ。それより、今は矢口さんに自己紹介してもらったんや。邪魔せんといてー」
「ちょぉ待ち。何でアタシが邪魔すんねん」
「え、だって、いろいろ聞き出そうと思ってたのに。すぐに裕ちゃん来てもうたやん…」
「恐ろしいこと言うなや。怖くてアンタと矢口を2人にできひんわ」
「ひっどいわぁ。知ってた?裕ちゃんってこーいう冷酷無比な人なんやで?」
不意に自分に振られ、真里はどぎまぎしながらみちよと裕子を交互に見る。
「えっ?あ、いや…そんなこと…」
すると、裕子はすっと真里の肩を抱くようにして、耳元で囁いた。
「みっちゃんの言うこと信じたらあかんで」
- 255 名前:Liar 投稿日:2003年03月09日(日)01時53分28秒
- 体温が、上がる。
肩に触れられてる手から、耳にかかる吐息から、目に見えない何かが自分の中に流れ込んできてるみたいだ。
「ほら見てみぃ。アンタのせいで矢口びびってるやん」
赤くなってしまった真里の顔。
裕子に咎められて、みちよは苦笑混じりに謝った。
「ごめんなぁ」
とは言うものの、この娘が萎縮してるのはアタシのせいちゃうで…と、心中でため息とともにつぶやいて。
顔を赤くしながらも、真里は軽妙なやり取りを続ける2人を、少しうらやましく思う。
そりゃ、つき合いの長さじゃ叶わないんだろうけど。
それでも、直接肌で感じる裕子の存在は大きすぎて。
自宅のせいか、はたまた親友のみちよといるせいか、普段の裕子とはあまりにも違うリラックスした態度と表情。
――これからは、矢口も裕ちゃんのそーいう顔、いっぱい見られるのかなぁ。
- 256 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月09日(日)15時43分49秒
- ヤホーイ!待ってました!
- 257 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月09日(日)22時14分16秒
- 同じく、待ってました!!
初々しいですね、矢口さん(笑)
- 258 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月20日(木)10時11分21秒
- そろそろ・・・お願いします。
- 259 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月30日(日)01時05分14秒
- こんなに更新されてたとは(w
のぞいてよかったでーす。
- 260 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月02日(水)17時57分19秒
- 保全
- 261 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月03日(木)19時19分07秒
- 続き待ってます。
- 262 名前:作者 投稿日:2003年04月08日(火)01時05分24秒
- いつの間にか月イチ更新になってしまって…。すみません。
にしても、日曜夜に裕ちゃんのラジオが聴けなくて物足りなさを感じた昨日の夜。
あー、ラジオがないとネタも激減するんだよなぁ…。と言うか、とにかく寂しい。
- 263 名前:Liar 投稿日:2003年04月08日(火)01時07分03秒
- 「裕ちゃん、手伝おっか?」
所在なさげにリビングでTVを見ていた真里は、3度目ともなる言葉とともに、恐る恐るといった様子でキッチンにやってきた。
キッチンでは、夕食を作ってる最中の裕子と、手伝ってるのかちょっかい出してるのかイマイチわからない行動をとるみちよがいて。
真里が来てから3人でとりとめのないことを話した後、食事に出かけようかという流れになったのだが。
『裕ちゃんの料理、食べたい』
真里の放ったこのひと言で、照れながらも、裕子がこうしてキッチンに立つことに。
みちよはリビングで真里の相手をしてくれたかと思うと、突然のように裕子を手伝ったり、楽しそうに動いている。
- 264 名前:Liar 投稿日:2003年04月08日(火)01時07分53秒
- 「ええよ、そんな。矢口はお客さんなんやから」
これも先程とほとんど同じ裕子の返答。
エプロン姿でキッチンに向かう後ろ姿は、これまでのイメージを覆すほどにかわいらしくて、そんな一面が見れたことはうれしいんだけど。
別に、お客さん扱いされたい訳じゃないんだけどなぁ。
裕ちゃんと一緒に何かしたい。
料理なんて、それこそ恋人同士っぽくて素敵なのに…。
「でもさ、することなくて、何か申し訳ないし。矢口、こう見えても料理は得意なんだよ」
「ほんまに?」
包丁を持つ手を止めて、裕子が振り返った。
みちよも面白そうに真里を見る。
- 265 名前:Liar 投稿日:2003年04月08日(火)01時10分44秒
- 「うん。家でもよく作るし。そりゃ、一人暮ししてる裕ちゃんよりは下手かもしれないけどさ」
「大丈夫やって。さっきは言わなかったけど、この人、ほんまは料理苦手やもん」
「うっさい。バラすな。一生懸命やってんのに」
「――そうなの?」
意外そうな真里の問いに、ほんの少しだけ躊躇った後、裕子は小さく頷いた。
その様子がかわいくて、真里の口許が思わず緩む。
すると、焦ったように裕子は続けて。
「べ、別に、食べられへんほど酷いもんとちゃうで。ただ、あんまり得意じゃないってくらいやから」
一応、一人暮し歴は長いんやから…と、妙に言い訳がましくつぶやいた。
- 266 名前:Liar 投稿日:2003年04月08日(火)01時11分53秒
- 真里はあいかわらず笑いながらも、正直な気持ちを口にして。
「裕ちゃんが作ったのなら、矢口、どんなことしてでも食べたいもん」
「うわっ。やぐっちゃん、勇気あるわぁ」
隣でそのやり取りをみていたみちよは、大げさなリアクションで仰け反る。
「……みっちゃん?」
どーゆー意味や?とばかりに、裕子がじろっと睨みつけた。
「え?あ、いや、まぁ、文字通りっちゅーことで。ははは…」
「――まぁ、ええわ。あながちハズレって訳でもないんやし」
- 267 名前:Liar 投稿日:2003年04月08日(火)01時12分34秒
- でもなぁ…と、あいかわらず言葉尻を濁していたが、それでも真里が調理を手伝うことは承諾してくれたみたいで。
「何作ってるの?」
一応は訊いてみたが、目の前のまな板の上に並んだ野菜とコンロに置かれた鍋。
これはもう―――。
「カレー。あと、サラダでもつけようかと」
真里の予想が裏切られることはなかった。
- 268 名前:Liar 投稿日:2003年04月08日(火)01時13分19秒
――――――――――
- 269 名前:Liar 投稿日:2003年04月08日(火)01時14分16秒
- 「んじゃ、いただきまーす」
口々に言って、スプーンを手にする。
テーブルの上には、裕子が宣言した通り、カレーとサラダ。
真里とみちよも手伝って、なかなかの出来ばえだ。
「ん。美味しー」
早速ひと口食べた真里の表情に釣られるように、裕子とみちよも手を動かす。
「あ、ほんまや」
「おぉ。やっぱやぐっちゃんのお陰やね」
「ひと言多いわ。アホ。アタシだってちゃんと作れんで」
「ごめん。わかってるって。でも、ほんまに美味しいわ。すごいなぁ、やぐっちゃん」
- 270 名前:Liar 投稿日:2003年04月08日(火)01時15分13秒
- 「えへへへ。矢口頑張ってるもん」
「何を頑張ってんねん」
得意そうな真里に、呆れたような声音で裕子が問うと。
「花嫁修業」
事もなげに真里は答える。
2人とも驚いたように真里の顔をまじまじと見つめて。
一瞬先に我に返ったようなみちよが、相貌を崩した。
「何、やぐっちゃん。裕ちゃんとこお嫁に来るん?」
- 271 名前:Liar 投稿日:2003年04月08日(火)01時16分26秒
- 「ちょぉっ、みっちゃん。何言うてんねん!」
焦った裕子は、向かい側に座るみちよの脛を思わず蹴りつける。
「いっっ……!」
顔を顰めてるみちよに、心の中で謝りながらも、真里のことが気になって。
それなのに、真里は冗談とも本気ともつかない口調で後を続ける。
「えー、ダメなの?裕ちゃん?」
「え……。あ、いや、ダメっちゅーか、ほら、なぁ、その…」
急にしどろもどろになる裕子を見て、真里はふふっと笑った。
その笑顔はちょっと見慣れないくらい大人びていて。
「いいよー。矢口がお嫁さんになるのがダメなら、裕ちゃんになってもらうから――」
- 272 名前:Liar 投稿日:2003年04月08日(火)01時17分21秒
- ぶっ。
唖然としながらも顔を赤らめた裕子の耳に、不快極まりない音。
その正体はわかってるから、ほんとはあまり見たくはないのだけれど…。
「ごほっ。ごほっ。あー…、ごめ、水、吹き出してもうた――」
口許をぬぐって、テーブルの上に布巾を滑らせて。
何か、お約束やなぁ。コイツ…。
思わず、唇の端が上がる。
- 273 名前:Liar 投稿日:2003年04月08日(火)01時18分10秒
- 「大丈夫、みっちゃん?」
「はぁ、大丈夫。ほんまごめん。何か、アタシ空気ぶち壊してばっかやなぁ…」
「そんなん気にするような人間とちゃうやろ」
「酷っ。素直に謝っとんのに…。ごめんなぁ」
みちよは改めて真里を見て、小さく謝った。
あの言葉は、口調こそ砕けたものだったけど、真里の本気の想いかもしれなくて。
自分が思わず吹き出したりしなかったら、彼女は何と答えていたのだろう。
彼女の気持ちが傾いているのはわかっていたけど、それでも、肯定の言葉を聞ける心の準備はできてない。
まぁ、わざと吹き出した訳でもないし、ほんとにびっくりしたし。
- 274 名前:Liar 投稿日:2003年04月08日(火)01時22分12秒
- 「やだなぁ。そんな謝らなくてもいいのに」
けらけらと笑う真里に、みちよはほっとして肩を竦める。
そのままの笑顔で、真里は隣にいる裕子を仰ぐ。
「裕ちゃん、本気にしたの?」
「あ、あぁ。うん。いや、とにかく驚いたわ」
「裕ちゃんって、普段クールで人寄せつけないのに、直球で攻めると弱いよね」
―――やぐっちゃん、鋭いなぁ。つーか、楽しそうやなぁ……。
- 275 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月08日(火)02時07分20秒
- 更新されてる(w
姐さんのラジオ・・・日曜の深夜にマッタリと良かったのに・・・本当に悲しい。
矢口さんもモチロン大好きなんですけど・・・日曜日の深夜は中澤さんだったんですよね。やっぱり。
その代わりに土曜日のヤンタン(中澤さん&さんまさん)が聞き逃せなくなった(w
- 276 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月09日(水)19時33分22秒
- 更新されてた、嬉しいです。
照れてる裕ちゃんが可愛い、みっちゃん・・・ちょっと切ないな〜。
ヤンタンはけっこう聞き逃すことが多かったんですが、今度からは逃すことができません(苦笑
日曜のラジオの代わりにはならないんですが・・・
- 277 名前:名無しKUNN 投稿日:2003年04月14日(月)12時17分55秒
- 更新待ってました(w
- 278 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月22日(火)01時00分45秒
- そろそろ続きが読みたいな〜。
- 279 名前:作者 投稿日:2003年05月06日(火)03時11分32秒
- HEY!×3で裕ちゃんの新曲を初聴。改めて、この人の声が、歌が、好きだなぁと。
早くフルで聴きたいです。
それでは、更新します。
- 280 名前:Liar 投稿日:2003年05月06日(火)03時12分49秒
- 「矢口、もう遅いし、そろそろ帰らな家の人、心配せん?」
いろいろあった夕食も終わって、ひと段落し、そろそろ片づけでも…と思い始めた頃。
「えー、だって、まだ片づけ終わってないよぉ」
「そんなん後でやっとくで。何のためにアタシがビール飲まなかったと思ってんの」
あんなに大好きなビールを、休日前の夜やっていうのに…。
「――え?何で?」
「アンタを家まで送るからに決まってるやん」
「あー………」
そっかぁ…とつぶやいて、真里は考え込むように小さく唇を噛む。
- 281 名前:Liar 投稿日:2003年05月06日(火)03時13分39秒
- 「みっちゃんも。一緒に送ってくわ」
「うん。ありがたいけど、アタシはええよ。まだ電車も余裕であるし」
みちよはさすがに気後れしたように、顔の前で手を振った。
真里にとって、自分は最初からお邪魔虫以外の何者でもなかったんだし。
ほんとに今の今までここに居座ってよかったのかとも思うけど、そんなの今更だ。
裕子も引き止めようとはせず、小さく頷いた。
「ん。わかった。無理言ってすまんかったな。今日はありがと」
「そんなん気にせんといてー。アタシもやぐっちゃんに会えて楽しかったし」
- 282 名前:Liar 投稿日:2003年05月06日(火)03時14分16秒
- 自分の名前が耳に入ったのか、裕子の傍らで俯いていた真里が顔を上げる。
みちよと視線が合うと、への字にされてた唇がきゅっと上がった。
「じゃ、やぐっちゃん。またな。裕ちゃんにちゃんと送ってもらい?」
「うん。矢口も、みっちゃんに会えてよかった。また今度ね」
手早く自分のバッグを拾い、みちよは慌ただしく帰る仕度をしている。
「何か用事でもあったんか?妙に急いでるやん」
裕子はハンガーに掛けておいたジャケットを手渡しながら、みちよの顔を覗き込むように尋ねた。
みちよはそれを受け取って袖を通しながら、ふっと笑い、真里に聞こえないような小声で囁く。
- 283 名前:Liar 投稿日:2003年05月06日(火)03時15分03秒
- 「そぉか?気ぃ利かせてるつもりなんやけど」
「なっ…。そんな、いらんことせんでもええのに」
「だって、やぐっちゃんといる時の裕ちゃん、めっちゃいい顔してるんやもん。思わずアタシも見惚れるくらいやで?」
「………………うっさい」
「裕ちゃんとしてはまだまだ吹っ切れてないのかもしれへんけど、いい変化やと思うで?」
「―――いい変化って、何やねん…」
唇をわずかに尖らせて、それでも思い当たるところがない訳ではなく。
「まぁ、そーゆことで。また会社でな」
「え?あ、うん。ちょぉ、待って。下まで行くわ」
裕子もみちよの後に続いてサンダルを履いて。
「矢口、みっちゃん下まで送ってくる。アンタも帰る準備しとき?」
真里は神妙そうにコクリと頷く
「うん。行ってらっしゃい。じゃね、ばいばい、みっちゃん」
「おー。またなぁ、やぐっちゃん」
- 284 名前:Liar 投稿日:2003年05月06日(火)03時15分36秒
- パタンと閉じられたドアをしばし見つめ、2人はそろってマンションの廊下を歩き始める。
「……どー思う?」
「何が?」
「矢口のこと」
「あぁ。ずいぶんと積極的な娘やね」
「そうやね」
「でも、ええんとちゃう?さっきも言うたけど」
エレベーターの前までたどり着き、みちよがボタンを押す。
- 285 名前:Liar 投稿日:2003年05月06日(火)03時16分45秒
- 「変…とか、思わんの?」
「何で?」
「や、相手、同性…やし」
「そんなん思う訳ないやろ。こう見えても平家さん、進歩的で理解ある人間なんやから」
「…………アホぉ」
「裕ちゃん、自分で思ってる以上に好きなんとちゃう?」
「――わからんわ」
「気になってるのは確かやろ。好きでもない人間に迫られて、そこまで悩むか?」
「悩むかもしれへんやん」
「あ、そっ。なら、もうええわ」
「……何でそんな投げやりなん?」
「別にぃ」
「ふん。みっちゃんの意地悪…」
どっちがやねん……喉まで出かかったその言葉を呑み込んで。
みちよはちょうど上ってきて開いたエレベーターに乗り込む。
- 286 名前:Liar 投稿日:2003年05月06日(火)03時17分30秒
- 一歩遅れて裕子がそれに続き、無言で1のボタンを押した。
話したいのに、いい言葉が見つからない。
裕子の焦りを嘲笑うかのように、エレベーターは瞬く間に1階へと到着してしまう。
マンションのエントランスを出ようとした裕子は、腕を軽く掴まれ、足を止められる。
「この辺でええわ。わざわざありがとな」
「――ううん。アタシの方こそ。また、遊びに来てな」
「行く行く。裕ちゃんが誘ってくれたら、何を置いても駆けつけるわ」
からっとした笑顔を向けられ、裕子も自然と表情がやわらかくなった。
みちよは裕子の腕をそっと放す。
- 287 名前:Liar 投稿日:2003年05月06日(火)03時21分11秒
- 「じゃ。お休み」
そのまま歩き出そうとしたみちよの背中に、小さな声が降りかかった。
「――――アタシ、いいんかなぁ」
ふと振り向いたみちよの顔は、あいかわらず優しくて。
「いいんやって。素直になり」
そう言って、ばいばいと小さく手を振る。
みちよの背中を見送り、裕子は再びエレベーターに乗り込んだ。
- 288 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月08日(木)01時36分16秒
- みっちゅーせつない〜。
更新待ってました(w
- 289 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月09日(金)21時38分34秒
- みっちゃん・・・・・・裕ちゃんもじれったいな〜(笑
やぐっちゃんと裕ちゃん、このあと2人はどうなるんですかね?
更新待ってました!!
- 290 名前:作者 投稿日:2003年05月28日(水)03時33分05秒
- なかなか進まなくてすみません。
いつもよりも短いですが、更新します。
窓の外を見つめるナオミ姐さんが素敵だったなぁ…なんて思いながら。
- 291 名前:Liar 投稿日:2003年05月28日(水)03時34分08秒
- 部屋に戻ると、ソファにちょこんと座った真里の姿。
「矢口?」
「裕ちゃん、お帰りなさい」
「あ、あぁ、うん。ただいま……って、アンタ、準備できてるん?」
すぐにでも帰れる仕度をしているものとばかり思っていたのだが、真里にそんな様子は伺えない。
それどころか、テーブルの上に並んでいた食器は全て流しに置かれていて。
- 292 名前:Liar 投稿日:2003年05月28日(水)03時35分30秒
- 「――食器、片してくれてありがとな」
「ううん。そんなこといいよ。洗おうかと思ったんだけど、まだ勝手がよくわかんなくて」
「や、片づけはアタシやっとくから。先に矢口送ってくって言うたやん」
「うん…。それ、なんだけどぉ」
「どしたん?」
「矢口、今日、泊まってったりしちゃダメ…かなぁ」
頑なにこちらを向こうとしない真里は、かしこまった姿勢を崩さずに。
裕子も裕子でリビングの入り口に立ち尽くして動けないでいる。
「でもな、ほら、家の人、心配するやん…」
「裕ちゃんがみっちゃん送ってる時に、お母さんに電話した」
「――で、お母さん、泊まっていいって言ったんか?」
- 293 名前:Liar 投稿日:2003年05月28日(水)03時36分06秒
- コクリと頷く真里の後ろ姿。
裕子はソファに座る真里の前まで行って膝をつき、若干赤くなった真里の顔を覗き込んだ。
「矢口、ほんまにお母さんいいって?」
「言ったよ。ねぇ、裕ちゃん、ダメ?」
照れた顔色はそのままに、でも、眼差しは真剣だった。
- 294 名前:Liar 投稿日:2003年05月28日(水)03時37分27秒
- 『素直になり』
ふっと先程のみちよの言葉が蘇る。
そうだ。この娘に惹かれてるのはどうしようもなく事実で。
それだけで、十分やん…。
気づいたら、首を縦に振っていた。
- 295 名前:Liar 投稿日:2003年05月28日(水)03時38分06秒
- 「ほ、ほんとに?」
「――うん。ええよ」
「泊まってっても、いいの?」
「ええって言うてるやん」
戸惑ってたような真里の顔が、ぱぁっと破顔した。
にこにこと照れたように笑いながら。
「ねぇ、裕ちゃん」
「ん?」
「あの、さ…」
「何や?」
「裕ちゃん、大好きぃ」
- 296 名前:Liar 投稿日:2003年05月28日(水)03時47分39秒
- 言った途端、目を伏せて、えへへ…と照れ隠しに頭に手をやる。
裕子はそんな真里を呆けたように見つめた。
何を思うでもなく、自然に上がった裕子の手は、自分の髪をいじる真里の手に重ねられて。
重ねたまま、その手をゆっくりと下ろし、真里の膝の上に置く。
照れ笑いを浮かべていた真里の表情が、再び真剣さを帯びた。
「やぐ、ち……」
消え入りそうなほど小さな声で、その名を呼ぶと。
熱っぽく潤んだ瞳が裕子を見据えた。
その瞳に引き寄せられ、裕子は顔をそっと近づける。
真里の吐息が肌をくすぐる。
吐息に答えるように、その言葉はごく自然に裕子の口から発せられた。
「好き…や…」
- 297 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月28日(水)19時09分39秒
- おお〜、更新お待ちしてました!
ついに中澤さんの気持ちが告げられましたね。
続き楽しみにしてます。
- 298 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月30日(金)02時36分01秒
- ワーイ!更新待ってました!
- 299 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月15日(日)17時39分22秒
- こいこいこいっ!
- 300 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月26日(木)19時14分19秒
- マターリ待ってます
- 301 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月30日(月)21時10分07秒
- まだかなまだかな…
- 302 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月14日(月)01時24分45秒
- ぼちぼち…どうでっしゃろ?
- 303 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月23日(水)01時47分29秒
- 密かに待っております
- 304 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月23日(水)08時08分46秒
- なんでageるの
- 305 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月03日(日)20時31分13秒
- ほ
- 306 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月18日(月)20時15分53秒
- ぜ
- 307 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月02日(火)08時45分39秒
- ん
- 308 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/25(木) 15:00
- 保
- 309 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/08(水) 14:07
- 全
- 310 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/22(水) 02:11
- 保全
- 311 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/16(日) 16:04
- ホゼン
- 312 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/03(水) 10:57
- 保全
- 313 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 17:56
- 保全
- 314 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/05(月) 21:12
- そろそろ続きお願いします
- 315 名前: 投稿日:2004/03/02(火) 03:48
- aaaa
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