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センチメンタルあいつ向き。

1 名前:某作者 投稿日:2002年09月02日(月)01時56分40秒
ごっちんの卒業もあと一ヶ月をきったので、
やぐごまを書かせていただきます。
よろしくお願いします。
2 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月02日(月)01時57分52秒
結局…フラれちゃった…

彼女はフェムでかわいい人。
今までボーイッシュな人としか付き合ったことなかったけど…
彼女はバイで。笑顔がかわいくて…
最終的に…ハタチの誕生日を迎える前に彼女はあたしを振った。

やっぱり子供も欲しいし、結婚もしたい。
それが彼女の理由だった。

あたしは即飲んだよ。
だって…女同士じゃ、結婚もできない。
子供なんて…無理だもんね。

あたしは気がついたら、前の彼女が勤めていたバーに来ていた。
3 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月02日(月)01時59分26秒
はぁ…最悪だな。
慰めて欲しい、って思った。

ドアを潜る。
懐かしい、そんな思いが胸を掠める。

「よっすぃ〜、います?」
「あれ?真里ちゃん?久しぶりだね〜。」
カウンターにいたのは、お圭さんだった。
彼女はタチ寄りのリバらしいんだけど…この店じゃ、よっすぃ〜の次に人気があった。
その人柄としゃべりで固定客を伸ばしていったみたいで。今は、オーナーを任されてる。
4 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月02日(月)02時00分23秒
「元気してた?」
優しいんだよな…笑顔が…。
「ちょっ、何?」
あたしは目の前が滲んで…お圭さんはすごく慌ててしまった。
「いや、ちょっと失恋の傷を癒しに…。」
笑って言った。
「そっかぁ〜。ふぅ〜ん、でも残念っ!よしこならね、半年ぐらい前に辞めちゃったよ〜。」
あたしは胸がトクッと鳴るのを感じた。
半年前って…あたしがあいつを振った頃じゃん…。
やっぱり、そんなに甘くはないよね…
ちょっと反省。でも、どうしようかな…

「適当に遊んだら?安くしといてあげるよ。」
お圭さんはウィンクをしてそう言った。

結局、その言葉に甘えさせてもらうことにした。
しかし…改装したのかな?店の雰囲気が変わった。
紺を主調としたデザイン。落ちついてて結構好きかも…。
5 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月02日(月)02時01分02秒
「ご指名は?」
壁に張りつけてある写真の並んだ額縁を指して、お圭さんはそう言った。
「ん〜、この子!」
「あ〜、愛ちゃんね!最近人気あるのよ、ちょっと時間かかると思うけどいーよね?」
あたしは頷いて席へと歩いた。

「失礼します。」
そう言って、紺のスーツの子が席にやってきた。
足元から視線を辿らせて顔を見る。
お腹ぐらいまである髪を後ろで一つに結んで…目鼻立ちも整ってる。
…ちょっとカッコイイ。
「座りなよ。」
あたしはそう言った。
「失礼します。」
そう言って、隣に座った。
「何にします?」
「あー、ウィスキー貰おうかな。」
彼女は、ホールの子にあたしの注文を告げた。
6 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月02日(月)02時01分37秒
…カッコイイな、ほんとに女の子なんだよね?
うん、胸はあるし…ってかでかいな…。
「名前聞いてもいいですか?あ、あたしは真希です。よろしく。」
「真希か、あたしは真里だよ。」
「……。」
「ちょっ、どうしたの?」
急に黙りこんだ彼女に声をかける。
「いや、実は今日がはじめてで…真里さんがはじめのお客なんです…。」
そう言ってはにかむ笑顔はかわいかった。
「そうなんだ?」
「はい。」
そう言う顔はやっぱりはにかんだ笑顔。
…この子絶対人気出るわ。なんか母性本能くすぐられる…。
「真里さんはこの店によく来るんですか?」
運ばれてきたウィスキーを氷を入れたコップに注ぎながら真希はそう話し掛ける。
「ん〜、わけあって半年ぶりぐらいかな?」
「そーですか。」
「ねぇ、真希も飲んで。」
「あ、あたしお酒弱いんですよ…。」
「じゃ、軽いヤツ頼んでいいよ。」
「ほんとですか?」
真希は嬉しそうに笑って、自分のものを注文していた。
7 名前:某作者 投稿日:2002年09月02日(月)02時02分49秒
一応、出会い編ということで…。
8 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月02日(月)14時02分05秒
ホストごっちんかっこいい。
9 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月02日(月)15時37分49秒
とりあえず期待。
10 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月02日(月)18時46分15秒
お圭さん(w
期待しております。
11 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月03日(火)04時05分26秒
「どんなことを話せばいいとか、まだ全然わかんないんだ?」
あたしはちょっとからかってやりたくなって、そう言う。
「はい…。」
やっぱりはにかむ。少し恥らっているのかな。
「しかも、自分、しゃべるの得意じゃないんで…。」
「え、なんでこの店に?」
「はい、お圭さんにキャッチされちゃいまして…。」
「あははっ!キャッチ!そっかぁ〜、カッコイイしかわいいもんね、真希は。」
そう言ったら、少し赤くなった。
かわいいかもしんないー!!

「真希ー!歌って!」
お圭さんがカウンターから声をあげた。
「ちょっと失礼します。」
真希はそう言うと、席を立ってステージに向かう。
歌えるのかな?ちょっと情けなさそうだけど…
12 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月03日(火)04時06分05秒
というあたしの予想に反して、真希は歌が上手い。
尾崎豊の「I love you」を完璧に歌いこなした。
あたしは、時々投げかけられる真希の視線にすっかり酔ってしまった。

「どうでした?」
テーブルに戻ってきた真希ははにかんでそう言う。
「すっごくかっこよかったよ!」
あたしはそう言って、腕を組んだ。
「…真里さん。」
ははっ、照れてる…ほんとにかわいい。
「ねぇ、チュウしない?」
「え!?」
真希の顔が真っ赤になる。
「いーじゃん。しようよ?」
「真里さん、酔ってます?」
「んー。」
あたしは酔ってるのかな?
目を瞑ると、真希の唇が軽く振ってきた。
胸がドキドキする。
13 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月03日(火)04時06分41秒
「愛ちゃん、8番テーブルねー。」
お圭さんのそんな声が聞こえて、あたしはハッとする。
そう言えば指名してたっけ…
「どうもー。」
そう言って、席に座ってきた女の子は写真より可愛かった。
「愛です。よろしくお願いします。」
ってか訛ってる?
真希は愛ちゃんをあたしの側に通すと、愛ちゃんの分のお酒もつくりはじめる。

愛ちゃんは楽しくてかわいい子だ。
キョロキョロと動く大きな目がチャームポイントだね。
だけど…あたしは真希が気になる。
14 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月03日(火)04時07分19秒
「真希!お客さん!」
お圭さんの声が聞こえてドキッとする。
「亜弥…。」
真希がそう呟いたのを聞き逃さなかった。
真希が席を立つ。カウンターの側に立っている、あの亜弥という少女のところへ行ってしまう…。
そう思ったら、なんだか無性に寂しくなった。

「真里さん?」
「え?」
「どうしたんですか?」
「ううん、なんでもないよー。それで、どうしたの?」
なんでもない振りしたけど…真希があの子の頭をなぜてるところを見て嫉妬した…。
なんだろ、この感情…。
「ごめん、あたし帰るね…。」
15 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月03日(火)04時08分04秒
あたしはそう言うと、お圭さんに付けを頼んで、真希と亜弥の側を抜けて行った。
「また来てくださいね!」
真希が背中にそうなげかけてくれた。
胸がぽわっと熱くなった。
けど…途端に寂しくなる…。

あの子…誰なんだろう…。
16 名前:某作者 投稿日:2002年09月03日(火)04時12分17秒
更新終了です。
いっぱいレスがついててビクーリしましたw
ありがとうございます!!

>8 名無し読者さん
ごっちんのキャラはかっこかわいい系を目指してますw
自分の中でのイメージはそんな感じなのでw

>9 読んでる人@ヤグヲタさん
ありがとうございます。
期待に添えるようにがんがりたいです。

>10 名無し読者さん
ありがとうございますw
ヤッスーを出す時はこのニックネームが結構多かったりして…
17 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月04日(水)00時18分21秒
「なんか暗いじゃん〜どうかしたの?」
カフェに入ってくるなり、カオリはそう言った。

カオリもレズビアン。
かわいいかわいいアヤカさんという彼女がいる。
どっちもリバなのかな?とかどうでもいいようなことを考える。

「はぁ〜…。」
「oh〜baby〜それは恋!恋わずらいさ!」
「ちょっとタチ悪いギャグはやめてくれます?」

それってあたしと付き合ってたときによっすぃ〜がよく言ってたこと。
ため息を吐くたび、そうやって笑わせてくれたっけ…。
18 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月04日(水)00時18分56秒

「で、どうしたの?」
あ、大人の顔になった。
カオリだけだよ、どんどん大人になってくのは…
「矢口は駄目だな…。」
「何?あたしより意味わかんないよ?アンタ。」
「うん…どうしよ…一目ボレしちゃった…。」
「へぇ、どこの誰?マックのスマイルがかわいいお姉さん?それともー、元気なガソリンスタンドのお姉さん?」
「…クラブで働いてる女の子。」
「えっ…。それは、また…やっかいなのに恋したもんだぁ…。」
カオリは腕組をした。
「まさか…ひとみが働いてるとこ?」
「よっすぃ〜辞めちゃったって。」
「ってことはやっぱり一緒なとこか…。」
「キスしたんだよねぇ…。」
「え!?じゃあ、いけるんじゃない?」
「でも、たぶん彼女いる。」
「マジ!?」
カオリの反応を見てたら何故だか笑えてしまった…。
19 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月04日(水)00時19分26秒
「はぁ…。」
「矢口さぁ〜、恋ってできるだけで幸せだよ?」
「…彼女いるヤツに言われたくなぁーい。」
「そうですかぁー。」
そうは言ったけど、少しだけ、カオリの言葉に心が浮かんだ。
いつも刺さること言ってくれるんだよな…。
でも、振られたとたんにこの恋はきつい…。

カオリの痴話喧嘩の話しをさんざん聞かされた後に、カフェを後にして原チャリで走る。
あー、ガソリンないな…。

遠くにガソリンスタンドが見えて、そこに入ることに決めた。
小さなガソリンスタンド。
少ししてから、従業員が出てきた。
20 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月04日(水)00時20分00秒
あたしは、その顔を見てぎょっとする。
「真里さん?」
そう、真希だった…。

真希は、仕事をする。
その姿を見てた。
クラブで働いてて、スタンドでもバイト?

「真希…。」
「はい?」
タンクにガソリンを注入してる真希を呼ぶ。
「…あ、なんでもない…。」
視線が合ったとたんに何も言えなくなった。
何を言うかなんて決めてなかったけど…
真希はフワッと笑って…。
21 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月04日(水)00時20分31秒
細かいのを持っていなくて、お釣りをあたしに渡した後
「また来てくださいね。」
真希が笑顔でそう言った。
「うん。」
あたしも笑顔で答えて…
「ありがとうございました!!」
大きな声が背中に聞こえた。
22 名前:某作者 投稿日:2002年09月04日(水)00時21分04秒
更新終了です。
23 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月04日(水)03時39分37秒
シャイなごっちんがイイです。
やぐごま好きなんで頑張ってください!
24 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月04日(水)20時00分20秒
やぐごま〜!!
25 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月04日(水)23時39分21秒
あたしはハナウタなんか歌いながら、原付を転がす。
ガソリンがなくなったので浮かれているわけではない。
あの店には真希がいるから。
あたしも収入が低いわけではないけど、やっぱりクラブに通うのはキツイ。
会うのは、一週間ぶり。このために仕事帰りにちょこっと遠回りしてみたりした…。
丁度一週間だから、真希はいるはず!
今日は御金がないとか適当に誤魔化して半分ぐらいにして貰おうかな?でも、500円も持ってないなんてカッコワル過ぎるな…。
その手は使えないかぁ〜。
26 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月04日(水)23時40分00秒
あっ!真希いた!
帽子を脱いで車を送っている。
ふと、こっちを向いた真希がほわっと笑う。

あ〜、めちゃめちゃ好きだ…。
そう実感してしまった。

「いらっしゃい。」

真希が笑顔でそう言ってキーを受け取る。
少しだけ触れた手にもドキドキしてしまった。
末期だぁ…。
27 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月04日(水)23時40分38秒
「クラブ上手く行ってる?」
あたしがそう言うと、真希は苦笑いを浮かべた。
「どうも、向いてないみたいで…。」
「えー、真希絶対人気出ると思うけどなー。」
「そうですか?」
「うん。」
立ち話をしながら、幸せを噛み締めていると、

「真希ー!!」

スタンドの事務所の方から声がしてあたしはドキッとする。
亜弥という少女…あの子が顔を覗かせてた…。
28 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月04日(水)23時41分28秒
「亜弥…もう何?呼び捨てすんなっつってんのにぃ。後で聞くから、ちょっと待ってな。」
「はぁ〜い。」

そう言って亜弥ちゃんは中に戻った。
なんで…。ちょっとぐらい…あたしにも真希を分けてよ…。
さっきまでの気分はスッカリ散ってしまった…。

「480円になります。」
「はい。」

あたしは丁度を渡して、すぐにエンジンをかけた。
29 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月04日(水)23時42分05秒
「真里さん、また店にも来てくださいね。」
「意外と商売上手じゃん!」
「ああ…。」

あたしが明るくそう言うと、真希は苦笑いを浮かべる。
ああ…なんとなく泣きそうな気分になってくる…。

「じゃあね…。」
「ありがとうございました!!」

その声はすぐにうるさい排気音に消された。
視界が滲む。
事故ったら真希のせーだぞ…。
…責任転嫁もいいところだよ。

その日の夜はなんとなく眠れなくて、結局朝方までゲームをしてしまった。
30 名前:某作者 投稿日:2002年09月04日(水)23時44分32秒
更新終了です。

レスありがとうございます。

>23 名無し読者さん
ぉぉw
やぐごま仲間(w)がんがります。

>24 無しさんさん
はい。やぐごまですw
31 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月05日(木)04時21分48秒
やぐっつあんベタボレですね。
二人の仲はどう進展していくのでしょうか?
楽しみです!
32 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月06日(金)01時36分52秒
「おっす!」
会社に出ると、彩さんがそう挨拶をくれた。
あたしが勤めているのは、出版者。
腰掛け程度、という意識しかないのだけど、彩さんのつくる雑誌があたしは好き。
「なんか矢口、隈できてないか?」
彩さんがしかめっ面で顔を近づけてくる。
「そ、そうですか?」
ちょっと怖い…。

「ま、いろいろとあんでしょうねー。」
そう言ってニヤリと笑った。
あたしはそれに苦笑いを返す。
「どぉ?今日終わったら一杯!」
「…一応、あたし未成年なんだけどねー。」
めちゃめちゃ飲んでるけど…。社内での体裁を保つためにそう返す。
「あはは。行く?行かない?」
「行きます…。」
小さな声でそう答えた。
33 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月06日(金)01時37分39秒

「へぇ〜、なかなか粋だねぇ。」
「はぁ、そうですか?」
粋って…。
いつもの居酒屋。彩さんと飲むときはここに決まっている。
最近はあまり来ていなかったけれど。
「で、その亜弥って子は彼女なわけ?」
彩さんはあたしがレズビアンだと言うことを知っている。
ひとみと付き合ってることを、偶然街で会った時に言い当てられてしまった。
何かを見ぬく目があるのかも…。ライターさんだしな。
「それはわからないんですけどー。」
「んぁら、ガンガン行け〜!矢口〜!!」
…彩さんはかなり酔っている。
今日はペースがはやい。付き合わされてあたしも結構飲んだ。
旦那さんと喧嘩でもしたのかなぁ?
34 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月06日(金)01時38分47秒
「はぁ…。」
「ん?」
そう言ってこっちを向いた彩さんの目は完全に据わっている。
「こら!真!まだかわらないのかぁ〜。」
いきなり襟元を掴んで、ガクガク揺さぶられる。
ちなみに、真っていうのは、彩さんの旦那さんの真矢さんのことで…。
「彩さん…。」
「ん?矢口?ちょっと聞けよ!」
今、あたしに気付いたみたいな顔をして肩を抱き寄せられる。
「は、はい?」
不敵な笑みを浮かべた彩さんにさんざん愚痴を聞かされてしまった。
35 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月06日(金)01時39分29秒

「そんなこと言うヤツはサイテーだぁ〜!!」
「そーだそーだ!」
「彼女がなんだ!」
「そーだそーだ!!」
あたしはかなり酔っ払った。
案外、冷静な気もするけど、やっぱりどっかの神経が麻痺してるだろうな…。
現に店の人に注意されてここは居酒屋の前。
「おい!真里!」
「なんだ!彩!」
「今から行けー!」
「どこにだぁー!」
「そのクラブだぁー!あたしは帰る!!」
彩さんはそう言うと席を立った。
あたしはなんだかフワフワして。
「わかったー!行ってきまーす!」
そう言って、彩さんと別れた。

36 名前:某作者 投稿日:2002年09月06日(金)01時41分36秒
更新終了です。
ごっちん出てない…。

レスありがとうございます。

>31 名無し読者さん
ベタボレですね、はい。
次回で急接近するようなしないような…w
37 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月07日(土)02時05分46秒
「お圭さぁ〜ん。」
「ちょっと真里ちゃん?」

グデングデンに酔っ払ったあたしが店をおとずれると、お圭さんは大きな目を更にぎょっと剥いた。

「ねぇ、あたしってぇ、ついてないと思う人ぉ〜!はぁ〜い!!えへへへへ…。」
「はぁ…。」

近くでため息を吐かれた。
あんなに飲んだのに何故だか意識だけはハッキリしてたりする。
ここに来るまでに少し酔いが冷めたのと、真希に会うからキンチョーしたのと。

「ね!真希は?真希!」
「あ〜、もうすぐでてくると思うけど、これ以上飲んだらヤバイんじゃない?あんた」
「だぁ〜いじょうブイ!」

あからさまに呆れた顔…。
馬鹿やってないと、真希に会いにこれないんだもん…。
38 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月07日(土)02時06分23秒
「おはようです。」
顔にかかった前髪を少しうっとおしそうなかきあげながら、タイミングよく真希がドアから出てきた。
「あっ!真希だっ!!」
あたしはそう言って、抱きついた。
「真里さん?」
「酔っ払ってんのよ、コイツ…。」
真希の顔が苦笑いを浮かべるのを見てから、その胸に顔を埋めた。
真希が背中をなでるように優しく包んでくれる。
…どうしよう…泣きそう…。
酔いも、完璧に冷めちゃったみたいだよ…。
39 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月07日(土)02時07分11秒
抱きついたまま、ソファまで歩いて、真希はそっとあたしの体を離した。
「どうしたんですか?心配になっちゃいますよ。」
…なんでそんなに優しいの?
ああ、仕事なんだよね…。
馬鹿みたい、あたしって…。
「これ。」
そう言って差し出されたのは、グラスに入った水だった。
「飲んでください。」
動こうとしないあたしにもう一度優しく促す。
あたしはコクコクとその水を飲み干した。
40 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月07日(土)02時07分54秒
「真希、アンタ今日もういいからその子送ってやってっ!」
お圭さんがそう言うのが聞こえた。
「駄目だよっ!」
あたしは咄嗟にそう叫んだ。
「ちょっと、どうしたのよ?」
お圭さんが回りに愛想を振り撒きながら席まで寄ってきた。
「真希、おかねいるんだよね?だから帰しちゃ駄目…。あたし一人で帰れるから…。」

あたしはそれだけ言うと、真希の顔を見ないで歩き出した。
酔いはほとんど抜けていた。

店を出ると、その場にしゃがみ込む。
彩さん…やっぱり駄目だよ…。上手く行きそうにない気がする…。
もう諦めよう…。
アスファルトに小さな模様が一つ、浮かんだ。
41 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月07日(土)02時08分34秒
立ち上がって歩き出す。

「真里さん!」
ああ、やっぱり酔ってるのかな?
真希の声が聞こえるなんて…

だけど、それは酔いのせいなんかじゃなくって…。
「真希?」
肩で息をしながら、真希があたしの前に回りこんできた。
「どうしたの?」
「送ります。」
少しはにかんだ笑顔でそう言う。
「駄目だよ、店もどんなって…。」
「真里さん、ほっとけないでしょう!さぁ。」
真希に強い口調で言われて、あたしは腕を掴まれて歩き出す。
「痛いよ…。」
「あ、ごめんなさい…。」
真希がすごく困った顔で立ち止まった。
あたしは目の前が滲んで…
それをごまかすように、真希の腕に自分の腕を絡めて歩き出す。
42 名前:某作者 投稿日:2002年09月07日(土)02時09分10秒
更新終了です。
まだ急接近しなかったな…。
43 名前:とみこ 投稿日:2002年09月07日(土)09時35分39秒
いい感じですね^^がんばってください!!
44 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月08日(日)05時55分55秒
やぐごまいいです。楽しみな展開ですね。
45 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月08日(日)07時43分31秒
「象の鼻はなんで長いと思います?」
「キリンの首はなんで長いと思います?」
真希の話しってほんとくだらない。
オチがオチてないんだよね…
でも、一生懸命話してくれる真希を心から愛しいと思った。
そんなにされたら、期待しちゃうんだから…。

すぐにあたしの家に着いた。
もっと側にいたかった。
ただ、それだけだった。

「真希、あがってって。」
真希は少し困った顔をしたけど、部屋に来てくれた。
46 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月08日(日)07時44分04秒
玄関を閉めて、鍵をかけて、あたしは無造作に真希の首に腕を回して口付けた。
強引に舌を入れて…
真希ははじめは驚いたように固まっていたけど、そのうちに絡めてきてくれた。

少しの間だけ深いキスをして、あたしはバッと真希を突き放した。
「ごめん…。」
「……。」
「かえっていいよ?」
「…。」
真希は首を傾げて、なんだか切なそうに笑った。
「ほんとは…ヤだ…。」
あたしはそう言って、真希の首に腕を巻いて引き寄せる。
「ね…一回だけでいいの、抱いてくれないかな?」
自分でも、何言ってるんだ、って思う…
一回なんかで諦められるわけがない…
なのに…言わずにはいられなかった…
47 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月08日(日)07時44分46秒
「駄目ですよ、真里さん…。」
胸が、痛くなる。
「じゃあ、なんでキスしたのよっ!」
最初にした自分のことを棚に上げて、真希の肩を揺さぶった。

「あたし、好きな人がいるんです。」
落ちついた口調で真希は言って…。
「あの、亜弥って子?」
あたしが真希の目を見て聞くと、苦笑いをして首を振った。
「秘密を一つ…握ってもらってもいいですか?」
真希が苦笑いをくずさないまま…だけど少しだけ切なそうに瞳の色を変えてそう言ったので
あたしは頷いてた。
「あたしは、今男の人に恋をしてるんですよ…。」
「え…。」
そっか…。バイなのかな?
でも、あの店って…
「真里さんがしゃべったら、あたしはあの店首になっちゃいます。」
面白そうな顔をして真希はそう言った。
「ずるい…。」
「そう、あたしはずるいんですよ、嫌いになるなら今のうち…。」
「そんなわけないじゃん…。」
あたしはそう言って、真希に抱きついた。
48 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月08日(日)07時45分21秒


ベッドに仰向けになって、真希のことを思い出す。
『ケータイかしてください。』
真希はあたしのケータイをいじって、自分の番号を押した。
真希のポケットで一回だけ鳴って、切れた。
それからメールでも、同じことをして…。
『聞いていい?』
真希は答えてくれた。
なんで、お金が必要なのか…お姉さんが入院しているらしい。
真希が恋をしているのは…お姉さんのフィアンセ…。
その話しをしている時の真希の自嘲したみたいな笑顔が離れない。
涙が込み上げる。
あたしは、またあの子に荷物を背負わせてしまったのかな?
それとも…真希の荷物をあたしが一緒に抱えるの?
溢れそうになった涙は指でぬぐって…
あたしは真希を瞼に浮かべて眠りについた。
49 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月08日(日)07時46分10秒


「ん…頭痛い…。」
あたしは目を覚ますと、のそのそと起きあがって、キッチンに行き、ミネラルウォーターを注いでグッと飲み干した。

『病院一緒に行ってくれますか?』
ケータイを見ると、真希からメールが入っていた。
あたしは単純に嬉しかった。真希が誘ってくれてる、と思うと。
『なんで?あたし行っていいの?』
メールを返す。
『今日は、検査の日だから、あの人も来るんです。』
50 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月08日(日)07時46分42秒
「……なんだよ、それ。」
あたしが痛い思いをするのは目に見えていた。
真希、かわいい顔によらず、ひどいことすんのね…。
でも、行かずにはいられない…。
51 名前:某作者 投稿日:2002年09月08日(日)07時48分41秒
更新終了です。
レスありがとうございます!!

>43 とみこさん
はい、がんがりますw

>44 名無し読者さん
楽しみは持続しましたでしょうか?
52 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月08日(日)16時31分40秒
やぐ切ねーよ・・・。
53 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月09日(月)02時48分55秒
ドキドキする展開ですね。
もうすっかりハマってます!

更新頑張って下さい!
54 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月09日(月)04時04分11秒
「おはよう。」
あたしが病院前にいた真希に声をかけると、真希はまた切なそうに笑った。
あたしの勝手な思いこみかな?

「どうしたの?泣いた?」
真希の…敬語がとれてる。
仕事してないからか…なぁーんか嬉しいかも。
「ちょっとだけね…。」
「そっか…。」
真希はそれ以上何も言わなかった。
昨日の今日だし、わかってるんだろうね、真希も…。
複雑な夜を過ごしたの?
「ん?」
顔をジッと見詰めていたあたしに向く。
「ううん。もう入るの?」
「うん。…もう市井さん…姉ちゃんのフィアンセも来てるはずだから…。」
真希が無理するみたいに笑うから、あたしは真希の手をぎゅっと繋いだ。
真希はあたしに向かってフワッと笑った。
胸がぎゅっとなる。
市井さん、って言うんだ?
…あたしは、真希の背負ってるものを少しでも軽くしてあげれるのかな?
55 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月09日(月)04時04分55秒
病室は3階にあった。
ドアを開ける前に、少しだけ躊躇うような間をもたせて、真希はガラッとドアを開け放った。
「いらっしゃい。」
優しそうな笑顔を浮かべた男の人が真希に向かってそう言った。
真希と繋いでる手にグッと力が込められた。
ああ、この人がそうなんだ…。

ベッドの上で上半身を起こして微笑んでいる、あの人が真希のお姉さん…。
ショーットカットで優しそうな笑顔の、かわいらしい人。
「真希ちゃん、そちらは?」
市井さんがそう言った。
「あ、友達。真里さん。」
あ、名字教えてなかったな、なんて今更後悔…。
「そうか。市井です、よろしく。」
その人は優しそうな笑みを絶やさずにそう言った。
「真里さん、あれが姉のなつみ。」
「うん。あ、ごめんなさい、なんか来てよかったんですかねぇ?」
あたしは少しうろたえた。
「あたしの大切な人なんだ、いいよね?」
真希がそう言った。
胸が締め付けられる。
市井さんを思うが故に、真希の口から飛び出した嘘。
繋いだ手の優しさはそれでも変わらなかった…。
56 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月09日(月)04時05分31秒

あたしは、それから病室を離れた。
真希には、お姉さんの病気の様態が告げられているはずだ。
自動販売機で、レモンティーを買う。
側にあるベンチに腰をかける。

「ふぅ…。」
張り詰めていたものを吐き出すように、一つ、息を吐いた。

真希に惹かれた。
真希のことが気になった。
眠れない夜が続いた。
真希とこうして秘密を持った。
苦しい気持ちと、嬉しい気持ちが半分半分。
真希にとってあたしって何?

それ以上考えるのはやめた。
悲しい答えが出るに決まっている。
57 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月09日(月)04時06分01秒
足音が聞こえて振りかえると、真希が立っていた。
あたしはいっとかなきゃ、と思ってたことを最初に言った。
「あたし、矢口だから、名字。」
「…。」
真希は俯いて動かない。
「ちょっ、どうしたの?」
「お、ねぇ…ちゃ…。」
あたしは驚いた。
顔を上げた真希の頬には涙がいくつも伝っていたから。
そして、真希はあたしに抱きついてきた。
あたしは、ドキッとしたけど、しゃくりあげる真希を抱きしめながら泣きそうな気分になる…。
どうしたの?
58 名前:某作者 投稿日:2002年09月09日(月)04時09分40秒
更新終了です。

レスありがとうございます!

>52 名無し読者さん
ヤグの切なさが私のつたない文章でも伝わったみたいでよかったです…

>53 名無し読者さん
はい。がんがりたいと思いますw
59 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月10日(火)04時32分39秒
ごっちんどうしたの〜?
60 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月10日(火)05時38分55秒
しばらくすると、真希は泣き止んで、あたし達は隣り合ってるベンチに腰掛けた。
丁度、真希の横顔が見える。少しだけ、目を赤くさせたままの。
「お姉ちゃんの病気、」
真希が話し始めた。
「心臓病なんだよね…。」
真希が泣いていた時点で病気が重いんだってことは気付いていた。
お金のことだってそうだ。軽い病気ではそんなに、手術代はかからない。
そんな状態の姉、その姉のフィアンセを好きになってしまった真希の気持ち…。
考えると胸がギュッと締め付けられる思いがした。
「うん…。」
最初からわかっていたようなあたしの返事に少しだけ、驚いた様子を見せる真希。
でも、自分の中で納得したのか、すぐに話しを続ける。
61 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月10日(火)05時39分31秒
「バイトも意味なくなっちゃったよ…。市井さんがね、払ってくれるらしい。
手術が上手くいったら、結婚するんだって…。」
表情から、真希の気持ちは読み取れない。
強がってるの?
あたしは思わず、真希の膝の上で握り締められていた手に手を重ねた。

あたしに向いた真希は、泣きそうに顔を歪めた。
「真希…。」
真希はまた涙を溢れさせた。
あたしは手をギュッと握っていることしかできなかった。
62 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月10日(火)05時40分09秒


「部屋行ってもいいかな?」
お姉さんと市井さんに簡単な挨拶を済ませて、病院の廊下を歩いていると、真希がそう言ってきた。
「うん、いいよ。」
あたしにはそう返事をすることしか残されていない気がした。

無口なまま、あたしの部屋までやってきて、
真希は…あたしの手をギュッとずっと繋いでいた。

ドアを開けて真希を通す。
鍵を閉めて、見詰め合う。
そういうことなんだ、って気付いてた。
どんなに胸が苦しくたって、真希が悲しいの癒してあげられるなら…
あたしは傷ついてもいいよ…。
63 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月10日(火)05時40分46秒
出会ってそれほど経っていない、この少女のどこにこれほど惹かれたのか
自分でもわからないまま、思いは強く切なくなっていくだけ…。

カーテン越しに遠くの道を走る車のヘッドライトが見えて
それに気を取られてる間に、あたしは真希にスッポリと抱きすくめられていた。
強い、強い力。
抗えない。
抗う気などない…。

「真里さん…。」
耳元におとされたその声が少し震えていて…
あたしは背中に回した腕にギュッと力を込めた。
「いい匂いするね…。」
真希がそう言う声はもう涙声だった…。
64 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月10日(火)05時41分23秒
そんなこといいから、はやく抱きなよ。
忘れさせてあげるよ?
真希がこないなら、あたしが忘れさせてあげる…。

あたしは、腕を緩めて、真希を真っ直ぐに見詰めた。
「真希…。」
顔を近づけようとして…手で遮られた。

「お腹すかない?」
「え?」
つい素っ頓狂な声を出してしまう。
「あたしお腹空いたよ〜。」
真希は笑ってそう言いながら、電気のスイッチをパチッとおした。
65 名前:某作者 投稿日:2002年09月10日(火)05時42分47秒
更新終了です。
レスありがとうございます!

>59 名無し読者さん
ごっちんには複雑な思いがあったのでせう...
66 名前:とみこ 投稿日:2002年09月10日(火)17時31分14秒
あぁ、やぐごま切ない。。。市井となっちもなんかいいですね。
こういってはなんですが、なっちってどうも病室が似合いますよね^^;
67 名前:名無しごまファン 投稿日:2002年09月11日(水)03時01分25秒
設定から何からツボに入りまくりで大好きです、この話。
ごまもやぐもどっちも切ない…
ちなみにクラブで働くごまのビジュアルは、私の脳内では
後藤主任に変換されてます(w
68 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月11日(水)12時20分32秒
「冷蔵庫見てもいい?」
「う、うん。」

そう返事をすると、真希ははおっていたシャツを脱いで、ソファにかける。
そして、冷蔵庫の前に座り込む。
辛くないの?苦しくないの?
メチャクチャになりたくないの?
69 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月11日(水)12時21分08秒
「ん〜…簡単なものならつくれるかな?」
真希はあたしのそんな思いも知らずに、明るい声を出す。
「…へぇ、真希料理できるの?」
真希がそういう風な態度なんだから、あたしもそうしよう…。
真希の側に歩み寄る。
「うん。ウチ、両親いないから。亜弥はつくらないし。」
「え!?亜弥って…。」
「妹なんだ。」
そう言っておかしそうに笑った。
あたしは勘違いしてた自分が恥ずかしくてちょっと顔が赤くなるのを感じた。
70 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月11日(水)12時21分40秒
真希はチャーハンを手際良くつくって、テーブルに並べた。
「食べてみてっ。」
「うん。」
真希がつくったチャーハンはおいしかった。
「おいしい!」
「そ?よかった。」
フワッと笑うと、自分もチャーハンを口に運ぶ。

夕食を食べ終わって、あたしは真希に言った。
「とまっていきなよ。」
まだ傷が痛むなら…チャンスをあげたい。
あたしの醜い下心も入った言葉。
71 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月11日(水)12時22分23秒
だけど、一緒なベッドに入っても、真希は何もしてこない。
「あたしって魅力ないのかな?」
ふいに口を零れ落ちてしまった。
だけど、真希は薄暗い光の中、やっぱりフワッと笑って
「それはいらない心配。」
そう言った。
「真里さんは、側にいてくれるだけで充分なんだよ。」
その言葉がさぁ、あたしのこと傷つけてるの、気付いてないでしょ?
真希…

そのうちに規則的な寝息が聞こえてきて…
あたしはそっとその寝顔を見詰めていたけど、しばらくすると眠りにおちた。
72 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月11日(水)12時23分05秒

ガチャン−

その音にあたしは目を覚ました。
寝ぼけた頭で必死に考える。

昨日は確か…
真希…?
ああ、さっきのはドアの音?

なんにも言わずに出て行っちゃったんだ?

少しだけ、寂しい気持ちになりながら、ベッドの隣を触れると、まだ少し真希の温もりが残ってる気がした。
73 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月11日(水)12時23分48秒
ん?
テーブルの上にメモを見付ける。

『昨日はゴメン。挨拶しないで帰ること許してね。
ほんとに真里さんがいてよかったよ。』

あたしはバッと立ちあがった。
そして近くに脱ぎ捨ててあったコートを羽織る。
下はジャージだけど気にしてはいられなかった。

真希を追いかける。
じゃないと、なんとなくもう会ってくれないような不安がしたから…。
74 名前:某作者 投稿日:2002年09月11日(水)12時27分47秒
更新終了です。
レスありがとうございます。

>66 とみこさん
なっち似合いますね(汗
ついこういう設定に…。

>67 名無しごまファンさん
そうですかw嬉しいです。
私の中でも、ごっちんは後藤主任かも。
服装もボーイッシュな感じが多いものと思われます。
75 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月12日(木)17時55分35秒
ごっちんかっけーよ。
76 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月12日(木)19時17分06秒
階段を駆け下りると、すぐに真希の後姿は見えた。

「真希!」

あたしは走っていたので、息が切れる。
真希は立ち止まって振り向いた。
77 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月12日(木)19時17分56秒
「はぁはぁ…。」

近くまで走り寄ったあたしに
「あっ、目やについてるよ。」
真希はそう言って、それをぬぐってくれた。
…恥ずかしいな、もう。
あたしは顔が赤くなって、それに気付いたのか真希はフワッと笑った。

「どうしたの?」
朝の光の中で見る真希は、ポケットに手を突っ込んで、なんかすんごく柔らかい雰囲気を漂わせてる。
「友達、だよね?」
真希の目を見詰めながら言ったあたしに真希は、少し間を開けて
「うん。」
と笑顔で答えた。
78 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月12日(木)19時18分30秒
「でも、なんか恥ずかしいから先に帰っちゃおうかと思ったのになぁ。」
体をグラグラと揺らしながらそう言う。
なんか、かわいい…。
「ってゆーか、鍵かけないで出たでしょ?」
あたしがそう言うと真希はハッとした顔をして「あっ、」って言った。
「あっ、じゃないってー、ぶっそうだなぁ。」
「ごめん…。」
申し訳なさそうな顔でそう言う。

「ね、コーヒーぐらい飲んでいきなよ。」
あたしは真希のシャツの裾を掴んで言う。
「ん〜、わかった。」
結局、二人であたしの部屋に戻った。
79 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月12日(木)19時19分26秒
「はい。インスタントだけど。」
「うん。」
あたしがカップを渡すと、真希は口を寄せて、
「あっつーい。」
と、一言。
「あはは。」
あたしはそんな真希を見詰めながらコーヒーを口に運んだ。

無口なままコーヒーを飲み干して、少し窮屈だったかもしれない…。
「じゃ、ほんとに帰るね。スタンドのバイトもあるし。」
沈黙を絶ち、真希はそう言った。
「あ、うん。」
「じゃ、また。」
はにかんでそう言った真希の言葉はさっきのコーヒーよりもあたしを暖めてくれた。
80 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月12日(木)19時20分01秒


『仕事、ちゃんと終わったー。これで今日からぐっすり眠れるよぉ〜。』
朝起きたら、真希のメールが入ってて笑った。
真希は必要がなくなったので、クラブの仕事を辞めた。
『よかったじゃん!今度、カラオケでもいこっか?暇な日教えてよ。』
返事を打つ。

あたし達はあれから、友達、やってる。
と言っても真希は今までクラブとスタンドの仕事で忙しく、会ってるわけではないけど。
電話で話している時は楽しそうだから、市井さんのことは整理がついたのかもしれない。
でも、あたし真希のことが好きだよ。
現状に満足してないわけじゃない。
でもやっぱり、真希の一番になりたい…。
もっともっと、好きになってる気がした。
81 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月12日(木)19時20分42秒
ピンポーン−

チャイムが鳴る。誰だろ?
カオリかな?
「はい。」
ドア越しに返事をすると、
「真里ちゃん。」
…あたしは心臓がドクンッと飛び跳ねるのを感じた。

忘れるわけもないその声…。
ドアを開けたそこには…
あの日より、少しだけ大人びた、彼女の姿…。

「りんね…どうしたの?」
!?
いきなり抱きつかれてしまった。
あたしの心臓は冷静だった。
「ちょっと、どうしたの?」
「ごめん…ちょっとだけ、こうさせてて。」
82 名前:某作者 投稿日:2002年09月12日(木)19時22分45秒
更新終了です。
レスありがとうございます!

>75 名無し読者さん
かっけーすかw
そう言って貰えてよかったス。
83 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月12日(木)20時48分09秒
やぐの相手がりんねなんて予想外ですごいびっくりしました。
あの子だと思ってました。
84 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月13日(金)18時48分56秒
りんねを、とりあえず部屋にあげた。
部屋の明かりのせいかな?その顔は少し疲れて見えて…
「驚いたよー、何があったってのさ?」
あたしは、ウーロン茶をコップについで、りんねの前に置く。
「…ううん。ちょっと顔見たくなっただけ。」
そう言って笑った顔も、さっきの行動だって、それだけじゃないって思わせたけど、
これ以上聞くことはできなかった。
たぶん、彼女が望んでいるものをもうあたしはあげられない。
85 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月13日(金)18時49分44秒
「…やっぱり帰るね。」
りんねはそう言うと、席を立った。
「え…」
「急にごめんね。」
そう笑う顔はやっぱり彼女らしくないものだったけど、
あたし達は軽い挨拶を交わして、玄関で別れた。

複雑な思いがないわけじゃない…。
何があったのかはわからない。
だけど、りんねはきっと結婚したい、って一回でも思った気持ちをそう簡単に捨てられない気がする…。
86 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月13日(金)18時50分15秒
「ふぅ…。」
小さなため息を吐く。
それに、あたしは…。

ケータイを見る。
メール帰ってこないな…。
りんねが来たことで、真希のことがやっぱ好きなんだ!って思い知って…
少しでもはやく会いたいのに…

結局、その日、真希からメールは返って来なかった。
87 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月13日(金)18時51分21秒


『こちらは留守番…』
機械的な声が聞こえてきた途端、プツッと電源を切る。
「なんでぇ…。」
あれから2日経っても、真希からのメールは帰ってこない。
電話はいつも留守番電話サービスセンターに繋がってしまう。
あたしは、真希がまだバイトしてるガソリンスタンドに向かうことにした。
少し、怖い…。

原チャリにのって、ガソリンスタンドに着く。
「今行きます!」
向こうを向いて、雑巾を畳んでいた真希がそう言って振りかえる。
あきらかに動揺が見えた。
なんで??
だけど、そんなことは全く無視してあたしの胸には愛しい気持ちが溢れた。
88 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月13日(金)18時52分02秒
あたしは原チャリから降りる。
「真希…なんかあったの?メールも電話もくれないし…。」
真希は俯いたままで何も言わない。
「…カラオケ行こうって誘ったのに…あたしとはもう遊びたくない?」
「そんなことないっ!」
急に顔を上げてそう言ってきた真希に少し驚いた。
「そんなことないよ…。」
けど、またすぐに俯いてしまう。
「真希…。」
あたしが何を言ったらいいのかわからなくて、思考を巡らせていると一台の車が入ってきた。
「ごめん。仕事中だから。」
そう行って行こうとした真希にあたしは咄嗟に声をかけた。
「うちで待ってるからっ!嫌いになったなら、来ないでいいよ。」
真希は立ち止まっていたけど、すぐに車の方に駆けて行ってしまった。
89 名前:某作者 投稿日:2002年09月13日(金)18時54分41秒
更新終了。
レスありがとうございます!

>83 名無し読者さん
あの子、あの子。
どの子でしょう?(笑)
思わぬ事故のような形でこのような配役に…(謎)

次回がラストの予定です。
少し長めです。
90 名前:とみこ 投稿日:2002年09月14日(土)10時19分58秒
ら、ラストーぉ?!?マジですか。。。
でも長めとは嬉しい!がんばってください!
91 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月14日(土)19時06分42秒
時計が6時丁度を指す。
真希のバイトが終わるのが5時。
もう来ててもいい頃。

やっぱり…あたしの気持ちには答えられない?
涙が込み上げてくる。
92 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月14日(土)19時07分14秒
ピンポーン−
ふいにチャイムが鳴った。
外を覗くと、真希が俯いて立っていた。

あたしはすぐにドアを開けた。
「よかった…。」
私がそう呟くと、真希はバツが悪そうに笑った。

テーブルの側に座ったはいいけど、なんか空気が重い。
「カラオケいこっか?カラオケ!」
あたしはわざと明るい声を出してそう言った。
真希は俯いて、正座した膝の上で拳を握っている。
「どうしたの?真希。」
「…この間の、女の人、誰?」
「へ?」
トーンをおとした声。少し震えているように感じた。
93 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月14日(土)19時07分54秒
「この間?」
「玄関のとこで抱き合ってた人…。」
「え?真希見てたの?」
真希はコクリと頷いた。
「あれは…元カノ。」
「寄り戻すの?よかったじゃん。」
「え?」
真希は笑ってそう言った。
「真里さんがしあわせになれるならよかった。」
真希が視線をはずしてそういう。
「それだけいいに来ただけだから…。」
真希は立ちあがろうとする。
「ちょっと待ってよ。」
「もう、友達もいらないよね…。」
腕を掴んだあたしに背を向けたまま真希はそう呟く。
94 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月14日(土)19時08分38秒
あたしは小さくため息を吐いた。
「真希ってさぁ、あたしのことが好きなんでしょう?」
思いっきり意地悪く言ってやった。
真希はバッと振り向いた。
「そんなわけな…」
最後まで言わせなかった。
あたしがキスで塞いだ…
「馬鹿じゃない。何よ。さんざん好きにならせといて「幸せになれるならよかった」って。ばっかじゃない。もうサイテー…。」
あたしは泣いていた。
「真里さん?」
少し赤い顔をしたままで真希はめちゃくちゃ困った顔をしてる。
と思ったら、抱きしめられた。
「…真希?」
強くなる腕。
95 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月14日(土)19時09分09秒
「…当たり。」
「え?」
「何時の間にか好きになっちゃってた…。」
真希はなんとなく諦めがかった口調でそう呟いた。
そのまま、体がゆっくり離されて、そっと唇が重ねられた。
「サイテーついでに抱いてもいい?」
そう言った顔は泣きそうで
「ばか…あたしも真希が好きだもん…。」
あたしの涙はもう止まらなかった。

96 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月14日(土)19時10分14秒

優しく優しく壊れ物を扱うみたいに抱かれた。
おおいかぶさっている真希の顔は真っ赤で…
愛撫だって、全然慣れてなくって…
それでも、あたしは充分気持ちよかった…
心から愛しいと思った。

「真希…。」
隣にゴロンと横になって、真っ赤なままの彼女の名を呼ぶ。
「普通、腕枕とかしてくれるでしょ?」
あたしはわざと意地悪く言ってやった。
真希は苦笑いを浮かべて、そっと腕を伸ばす。
あたしはその腕に頭をあずけて…

「…こんなんでよかったのかなぁ?」
「…ほんとに馬鹿じゃない…。」
「ごめん…。」
落ちこんだような声。
ほんとにもう…かわいいなぁ…。
「すごい気持ちよかったよ…。」
あたしが顔を見詰めてそう言うと真希は真っ赤になってしまった。

97 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月14日(土)19時11分05秒


「ん…。」
あたしは薄く目を開いて、隣の温もりを探す。
外はもう白くなっていた。何時の間にか眠ったんだな…。
あれ?
真希いない…。

ガバッと体を起こす。
「真希…。」
いた。トイレのドアを音を立てないようにそぉっと閉めている真希発見。
「ふふっ…。おはよ…。」
その仕草がかわいくてつい微笑んでしまう。
「おはよ。」
真希は照れくさそうに笑って返事をする。
98 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月14日(土)19時11分41秒
「こっち来て。」
あたしは手を伸ばす。
「ん?」
真希は歩いて来て、ベッドに腰掛けた。
「キスしてよ。」
あたしがそう言うと、真希が頬を少しだけ赤く染めて、顔を寄せてくる。
目を閉じて、優しい唇の温もりを感じる。
そのまま、真希の腕に包まれて…。
「よかった…。」
あたしはポツリは呟く。
「ん?」
「夢じゃなくって。」
あたしがそう言うと、真希はクスッと笑って
「好きだよ…。」
って耳元で囁いてくれた。
99 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月14日(土)19時12分20秒

ああ、変だな。
真希に出会ってから、あたし、涙脆くなっちゃった。
真希は、あたしが泣いてるのを見付けると、ビックリした顔をする。

「ごめん、なんか嬉しくて…。」
あたしがそう言うと、真希は眩しいほど優しい笑顔を浮かべる。
笑顔とかわらない優しい指先であたしの頬をぬぐって、
「笑ってよ。笑ってる顔が見たい。」
その顔は、止らないあたしの涙にちょっと困っていて…
「じゃ、も一回キスして。」
あたしがそう言うと、
「しょうがないなー。」
いきなりちょっと大人ぶって、
そしてそっと子供みたいなキスをくれた…。







〜FiN〜
100 名前:某作者 投稿日:2002年09月14日(土)19時12分53秒
更新終了!
101 名前:センチメンタルあいつ向き。 投稿日:2002年09月14日(土)19時13分36秒
でもって完結!
102 名前:某作者 投稿日:2002年09月14日(土)19時15分21秒
レスありがとうございます!

>90 とみこさん
完結しましたー!
こんなのでよかったのだろうか…。

読んでくださったみなさん、
レスをつけていただいたみなさん、
嬉しかったです。
ありがとうございました。
103 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月15日(日)05時45分58秒
おつかれさまです。
やぐごま好きとしてはすごく面白かったです。
またやぐごまを書いて下さい。
104 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月16日(月)22時32分39秒
ずっとロムってたんですが…
すっげーおもしろかったです。
書いてくれてありがとう!!
105 名前:某作者 投稿日:2002年09月23日(月)07時39分43秒
短編をいきたいと思います。
卒業の日なので、一気に…。
その前にレスのお礼です。

>103 名無し読者さん
あれがとうございます。
そう言っていただけるとほんとうに嬉しいです。
また書いてみましたので、よかったらどうぞ…。

>104 名無し読者さん
いえいえ、こちらこそ。
すげー面白いなんて言葉が頂けて嬉しい限りです。
ありがとうございます!

それでは…やぐごまです。
106 名前:幼なじみの憂鬱。 投稿日:2002年09月23日(月)07時40分13秒
あたしは机の上にノートと教科書を広げて黙々と勉強をしているやぐっつぁんを見詰める。
やぐっつぁんとあたしは幼なじみ。
日曜日の昼間に勉強なんて…しなくていーじゃん。
最近、仲のよかった友達に彼女ができてしまって、日曜日は暇になったから、こうやって向かいのやぐっつぁんの家に入り浸ってるんだけど…。
なーんて、ほんとは嬉しいんだけどね。
口実ができるじゃん。

だけど、やぐっつぁんは勉強をしているわけで…。
見かけによらず、誰にでも気を使いすぎるやぐっつぁんが気を使わないでいてくれるっていうのはすごく嬉しいよ?
でも…
107 名前:幼なじみの憂鬱。 投稿日:2002年09月23日(月)07時40分50秒
やぐっつぁんのこと、好きだって気付いたのはいつだろう、って
その綺麗に整った横顔を見詰めながらボンヤリ考える。

あれは…中学3年生の時かな。
やぐっつぁんが高校で、休みの日はいつも遊びに出かけちゃうぐらい仲いい友達を、あたしの知らないところでつくって…。
毎日、モヤモヤしてたなぁ。
あの頃は、真里姉ちゃんって呼んでて…あたしもまだかわいかったよ。
恋だって気付くのにすごく時間がかかったのを思い出してついクスッと笑ってしまった。
108 名前:幼なじみの憂鬱。 投稿日:2002年09月23日(月)07時41分53秒
「なに?キショイ。」
「…なんでもないよ。」

あたしの笑い声に冷静な顔で突っ込みを入れるやぐっつぁんについふてくされて返事をする。
ここでもっとかわいい態度がとれたら…悪化しちゃってるような今の関係も少しはよくなるのかなぁ?

やぐっつぁんがあたしにいつも笑顔だけを見せてくれていたのはいつのことだったっけ?
たぶん、あたしが恋心を認識した頃だった気がする…。
ないちゃったんだよね、やぐっつぁんの前で。
「もっと真里姉ちゃんと遊びたいよぉ〜。」って。
ガキくさいこと言ってるってわかってたけど、涙も言葉も止められなくて。
そしたら、「かわいーな、真希は。」って優しい笑顔で頭なぜてくれた。
109 名前:幼なじみの憂鬱。 投稿日:2002年09月23日(月)07時42分51秒
「ふぅ…。」

小さくため息を吐いたあたしに、やぐっつぁんは視線を向ける。

「ねぇ、」

それでも、視線を合わせようとしてくれないやぐっつぁんに急に寂しくなってなんとか自分に注意を向けさせようと言葉を繋ぐ。

「ん?」

それでも、視線はノートに…。
110 名前:幼なじみの憂鬱。 投稿日:2002年09月23日(月)07時43分32秒
「あたし、最近悩んでるんだよね…。」

あっ、ちょっと反応してくれた。

「何?なんかあった?」

そっけない口調。視線はノートからはずさないけど…。なぜだか、すごく心配してくれてる気がするのは…あたしの都合のいい解釈かな?

「好きな人が、すごい冷たいの。」
「…へぇ。」

ちょっと思いきってみたんだけど、やぐっつぁんはそれだけ言うと、また勉強の続きをはじめてしまった。
なんで?気にならないの?あたしの好きな人…。
今まで、冷静に見てた机に向かう姿に…その綺麗な横顔が急に冷たく思えて…
すごく切ない気分になる。
111 名前:幼なじみの憂鬱。 投稿日:2002年09月23日(月)07時44分16秒
「あんまり見んなよぉ。」

ため息混じりに、こっちを向いたやぐっつぁんは固まる。

「ちょっ…なんで泣いてんのぉ?」
「……。」

あたしは涙を堪えようと必死になる。

やぐっつぁんは急にオロオロしはじめて、ベッドの上にいるあたしに近づいてきた。
その様子がなんだかすごくおかしくて、笑ってしまった。

「何泣きながら笑ってんだよ…。」

隣に胡座をかいて座りこむ。
その表情はすごく困ってる。
なんか…もっともっと困らせたくなっちゃった…。
112 名前:幼なじみの憂鬱。 投稿日:2002年09月23日(月)07時44分57秒
「真希!?」

急に抱きついたあたしに、ビックリしてる。
クスクス笑ってしまう。

「ちょっと、どうしたのってぇー。」

背中にそっと手が添えられる。
やぐっつぁんちっちゃい…。スッポリ腕の中に入っちゃったよ。

「ってか真希でかくなり過ぎ。」

そう言えば、こんな風に触れ合うのも久しぶりだっけ?

「何が?胸?」

あたしは、笑いながら、わざとからかう。

「はぁ!?」

予想外に大きな声を出したやぐっつぁん。あたしはビックリして体を離した。
…なんで、顔が赤いんだろ?
もしかして…意識してくれたのかな?
113 名前:幼なじみの憂鬱。 投稿日:2002年09月23日(月)07時45分31秒
「ね、」
「ん?何?」

目を合わせない。これって絶対意識してるでしょ?
あたしは、わざともう一回やぐっつぁんをギュッと抱きしめた。

「オイ!やめろって!コラっ!」

腕の中でもぞもぞと動くやぐっつぁん。
かわいい…。今までそんな風に見たことなかったけど…。
あたしも結構大人になったってことかなぁ?

チラッとその顔を覗いてやろうと思って、視線を向けると、耳が真っ赤だ…。
あたしは、そんなやぐっつぁんがすごくかわいく思えて、そっと耳にキスをしてやった。

「は?何やってんだよ!」

暴れようとするやぐっつぁんをギュッと捕まえる。
114 名前:幼なじみの憂鬱。 投稿日:2002年09月23日(月)07時46分11秒
「ね、ひょっとして、あたしのことすっごく意識してない?今。」
「……。」

あれ?暴れるのもやめておとなしくなっちゃった…。
馬鹿なこと言っちゃったかなぁ…。

と思ってたら
急に、やぐっつゅんの手が背中に回って、ギュッって抱きしめられた。

「してる…。」
「へ?」

顔がボッと熱をあげる。

「めちゃくちゃしてんだよ…。だから離せ。」

あたしの肩に顔を埋めながら、やぐっつぁんはそう言った。
115 名前:幼なじみの憂鬱。 投稿日:2002年09月23日(月)07時46分54秒
「ヤだ。」
「なんで。離さないと襲うぞ?」
「…いいもん。」
「は?真希、何言っ…。」

あたしは、体を剥がすと、肩を掴んで口付けた。

顔が真っ赤なのが、自分でもわかる。
でも、やぐっつぁんの顔も真っ赤で…。
やぐっつぁんは俯いてしまった。

「なんだよ…。やめろよ…。」

小さくそう呟く。

「せっかく…真希のこと諦めようって思ってたのに、なんでこんなことするんだよ…最近、よく家に来るしさぁー…。」

…え?

「冗談なら、ほんとやめろって…。」

やぐっつぁんは、立ちあがる。
あたしは焦って、その腕をグッと掴んだ。
116 名前:幼なじみの憂鬱。 投稿日:2002年09月23日(月)07時47分35秒
「うわっ!」

やぐっつぁんはベッドの上にひっくり返って…あたしはかまわず、上に覆い被さってキスをした。

「冗談じゃないもん…。」

顔をギリギリまで近づけたまま、その瞳を見詰めて…。

「あたし、ずっと…ずっとやぐっつぁんが好きなんだもん…。」

また涙が滲んできてしまう。
!?
ふいに、やぐっつぁんがキスをくれた。そして、ギュッと抱き寄せられる。

「泣くなよ…。真希が泣いたら、オイラどうしていいかわかんないじゃん…。」
「だってぇー…好きなんだもんっ。しょうがないじゃん!」

やぐっつぁんが優しく頭をなでてくれるから、余計に涙が止らなくなってしまう。
117 名前:幼なじみの憂鬱。 投稿日:2002年09月23日(月)07時48分11秒
「泣くなってばぁ…。ほんとに困るんだって…。」
「…もう一回…、」
「ん?」
「キスしてくれたら泣き止む。」

あたしは体を起こして、やぐっつぁんの目を見詰めて言った。
やぐっつぁんは真面目な顔をして、それから、顔を起こして…重ねるだけの長いキスをしてくれた。

「ふぇ…。」
「もう、泣き止むって言ったじゃん。」

涙がまた溢れてきたあたしに体を起こしたやぐっつぁんはそう言って。
だけど、その顔は嬉しそうに、少し恥ずかしそうに笑ってる。
118 名前:幼なじみの憂鬱。 投稿日:2002年09月23日(月)07時48分45秒
「ほんと…かわいくてヤんなるよ。」

真っ赤な顔でそう呟いて…。
いつまでも涙を止められないあたしが強請るだけ…優しいキスを繰り返してくれた。





〜Fin〜
119 名前:某作者 投稿日:2002年09月23日(月)07時49分59秒
更新終了。
そして完結です。
ごっつぁん、卒業してしまうのか…。
ほんとに寂しい。
120 名前:某作者 投稿日:2002年09月23日(月)07時57分16秒
なんかちょっとだけ…
121 名前:某作者 投稿日:2002年09月23日(月)07時58分01秒
ネタバレ防止しとこうって気分。
122 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月25日(水)22時30分19秒
やぐごま良かったです!
何となく、今までイメージ的にやぐごまというと、やぐ→男、ごま→女役な
印象強かったんですが、逆も自然でいいですねー。つーか、男装したごまの
かっこ良さにはやぐじゃなくても惚れるさ!(w
レスが遅れましたが、実は初回から読んでました。また次回作も期待してます。
123 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月07日(月)18時44分24秒
作者さんのやぐごま、すごく好きです。
2作ともヒットでした!
次作はあるのでしょうか?
あったら嬉しいなあ。
124 名前:某作者 投稿日:2002年10月08日(火)00時34分22秒
短編、いきます。

先にレスのお礼を。

>122 名無し読者さん
ありがとうございます!
作者としては、ヤグから入ったヤグゴマヲタなもので
ヤグが女、ごっちんが男。っぽい感じが好きなんですよね。

>123 名無し読者さん
ありがとうございます。
そう言っていただけるとすごく嬉しいです。
よかったら今回のも読んでやってください(w

では、短編を。
設定としては、リアルですかな。
125 名前:まねっこ。 投稿日:2002年10月08日(火)00時35分21秒
あたしは、ダンスレッスンのスタジオでやぐっつぁんの横顔を見ながら考える。
真面目だよね…ストレッチをしてる。

ね、知ってた?
やぐっつぁんが努力してるの見てあたしもやんなきゃ!って頑張ったとき、何回もあるんだよ。

二人きり。
時間がゆっくり流れてる気がする。
126 名前:まねっこ。 投稿日:2002年10月08日(火)00時36分02秒
「あ、こないだの大丈夫だった?」

やぐっつぁんが声をかけてくる。
あー、セットに腕をぶつけた時のこと聞いてるのかな?
あれなら、小さく痣になっただけでもう薄くなってる。

「大丈夫だよ、ほら。」

あたしはそう言って、腕のその部分を見せる。

「そっか。」

あー、その笑顔、好き。
やぐっつぁんって、笑う時の目がすごく優しくて。
あたしはもしかしたらそこが好きなのかもしれない。
127 名前:まねっこ。 投稿日:2002年10月08日(火)00時36分41秒
もともと笑うのが大好きな人で。楽しむのが大好きな人で。
あたしがこんなだから、結構ペースを掴めずにいたのかもしれないけど、
最近はほんと自然に相手してくれて、嬉しいんだよ。

「ん?」

ボーッと顔を見詰めていたらしいあたしにやぐっつぁんが聞く。
そのほっぺたが少しだけ赤い気がする。
そして、いつもそんな時やぐっつぁんは目を逸らす。

少し、寂しい気持ちにもなるけど…。
やぐっつぁんはいつもごとーのことよくわかってくれるから。
だから…ううん…それだけじゃなくって、なんか好き。

何時の間にか好きだった。
128 名前:まねっこ。 投稿日:2002年10月08日(火)00時37分20秒
ね、好きって言ったらどうなるかな?
あたしの気持ち、ちょっとは気付いてたりするのかな?
それでも優しくしてくれるのは期待しちゃっていいってことかな?
けど…やぐっつぁんは優しいからね。

あたしも、またつられるようにしてストレッチをはじめる。

しばらく、黙々とストレッチを続けていた。
聞こえるのは、たまに強く吐き出される二人の息だけ。

うん。確かにそうだな。
ごとーはね、やぐっつぁんのマネするのが好きだよ。
それって好きってのもあるけど…
なんかいいんだよね、やぐっつぁんって。

誰とでも明るくできて、裏表を使い分けない人で。
憧れてるんだよ。
好きって気持ち以上に。
129 名前:まねっこ。 投稿日:2002年10月08日(火)00時37分50秒
「ごっつぁんさー、ほんと頑張り屋になったよな。」

そう言ってあたしの大好きな顔して笑ってくれるやぐっつぁん。
あたしは照れくさくもなるけど、ついジッと見詰めてしまう。

『頑張り屋』
その言葉、最近よくくれるよね。
その度にこんなに嬉しくなってること知らないでしょ?

だって、あたしを頑張り屋にしたのは、
やぐっつぁんだよ。
130 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
川o・-・)ダメです…
131 名前:まねっこ。 投稿日:2002年10月08日(火)00時39分46秒
「フッ。」

つい声に出して笑ってしまった。

「ごっつぁん、怖い!」

一人笑ってしまったあたしをやぐっつぁんがケラケラと笑いはじめる。
あたしの…あたしの大好きなその笑顔で…。

ほら、またごとーマネしてる。
やぐっつぁんが楽しそうに笑うから、何故だか笑顔になっちゃうよ。



〜fin〜
132 名前:某作者。 投稿日:2002年10月08日(火)00時41分20秒
更新終了。
あちゃ。やってまいましたー。
削除以来出しておきますが、一応、
>130 は途中で余分なフレーズが入っているので
飛ばして読んでいただきたいです。
133 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月08日(火)07時15分55秒
やぐごま最高!
もっと書いてプリーズ
134 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月08日(火)19時02分40秒
ごっちん可愛い〜!
やっぱやぐごまはいいですね。
135 名前:名無し123 投稿日:2002年10月08日(火)20時54分22秒
ごっちんの語り口がかわいくて、ほのぼのしますね。
作品全体の雰囲気すごく好きです。
レスしたとたん新作が読めて、嬉しかったです!
がんばってください。
136 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年10月09日(水)01時04分00秒
微妙に現実のエピソードとか入ってて、いいですね。
やぐごまリアル、もっと読んでみたいです!
137 名前:某作者 投稿日:2002年10月11日(金)02時30分35秒
わお。
レスがいっぱいで嬉しいです!
どうも、ありがとうございます!!

>133 名無し読者さん
ありがとうございます。
また書きますよほ。

>134 名無し読者さん
やぐごまマンセー(w

>135 名無し123さん
なんか絶対この二人ってほのぼのっていうのか、マターリつーのか
そんな空気が流れてそうかなー、と思いますw

>136 名無し募集中。。。さん
ヤグゴマスレを最近読んだので、その影響が大きいかもです(w

リアルに結構反響があったので、リアルの話しを2作書きました。
一つ目の超短編うpしまーす。
138 名前:キラキラの景色 投稿日:2002年10月11日(金)02時31分38秒
ANNSが終わってレインボーブリッジを渡る車の中、メールの着信があったことに気付く。
ディスプレイには『ごっつぁん』。
ドキッとして、無意識に微笑んでしまう。
『やぐっつぁん暇?』
そのメールを読んで声を出して笑ってしまった。

運転してるマネージャーさんがチラッとバッグミラー越しにオイラを見てた。
『暇ってねー、今ラジオやってたの!聞いてなかったなぁ?』
オイラはそうメールを打ち返す。
139 名前:キラキラの景色 投稿日:2002年10月11日(金)02時32分30秒
しばらくすると、着信が来る。
起きてるんだ…。
『だって、なんか梨華ちゃんのこととかしゃべってたから。でも、メールしたのは終わった時間だよ?』
え?

オイラがその文章にドキッとした瞬間にまた着信。
『ごめん!さっきのなし!忘れて。』
ってメールが着た。

オイラはドキドキしてしまう。
だって…それって嫉妬?
今までもごっつぁんって時々オイラのこと好きかなぁー?って思わせる態度とったりしてる…。
オイラも好きなのに…なんか照れくさくてどうすればいいのかわかんなくて…
だけど、こんな風にめちゃくちゃドキドキして、
ごっつぁんが好きな気持ちが溢れ出しそうになった時…
どうすればいいのかわかんない。
140 名前:キラキラの景色 投稿日:2002年10月11日(金)02時33分35秒
『駄目。忘れない。』
そうメールを返した。

窓の外を見詰める。
少し重態気味の道路はまだレインボーブリッジの上。
キレイだなー。水面がキラキラ光ってる。

ごっつぁん、メール読んだかな…。
まさか、寝てたりして…。
オイラの気持ち伝わった?
141 名前:キラキラの景色 投稿日:2002年10月11日(金)02時35分48秒
〜〜♪
ドキッと胸が跳ねる。
『もう眠くなってきた 笑 今日は、いい夢が見られそうだよ。やぐっつぁんは?』
ドキドキする。
そしてクスッと笑ってしまう。

『寝な。明日もはやいんでしょ?おやすみ。オイラもいい夢見れそうだよ。』
きっと…ごっつぁんの夢…。

車はやっと渋滞を抜け出して…
さっき見たキラキラの景色を忘れないように、オイラはそっと目を瞑った…。
142 名前:キラキラの景色 投稿日:2002年10月11日(金)02時37分25秒

キラキラの景色 〜Fin〜
143 名前:某作者 投稿日:2002年10月11日(金)02時38分48秒
更新終了。
ほんとに短い(^^;)
近いうちに繋がっている話をうpします。
ANNSはタイムリーですが、昨日の放送は聞いてない罠。。
144 名前:りょう 投稿日:2002年10月11日(金)13時45分14秒
ごっつぁんカワエエ…w
やぐカワエエ…w
続き待ってますw
145 名前:名無し123 投稿日:2002年10月11日(金)20時33分57秒
すっごくいい感じのふたりですね。
作者さんの小説、とても気持ちが伝わってきます。
次も楽しみに待っています!
146 名前:遊びのキス? 投稿日:2002年10月12日(土)16時32分14秒
いつかさー、ごっつぁんとキスしたよね。
オイラ、意識してない子だと簡単にできるくせにさ…ほら、やっぱり照れくさいじゃん。
大切にしたいとも思うし…。

だけど、ちょっとだけ…。
欲が出ちゃった…。キスしたいなー、って思って…
『モーチャンに載せるからキスしよ!』って。
デジカメ片手になんでもない風に言った。
147 名前:遊びのキス? 投稿日:2002年10月12日(土)16時32分55秒
ごっつぁんはすごくしぶったよね。
矢口ショックだったんだぞー。
でも、もしかしたら、ごっつぁんも照れてたりしたのかな?
最近、そんな気がするよ。
矢口を自惚れ屋にしたのはごっつぁんなんだぞ…。

はじめてごっつぁんとしたキスは…
遊びのキスだったけど…
今でも忘れてないよ。

時々ね、思い出してさぁ、またキスしたいなぁ、って考えちゃうよ。
今日も、そんなこと思ってる。
ハロモニ。だから一緒なのに…
昨日メールであんなやりとりしたから…
ごっつぁんのせいだぞっ!
148 名前:遊びのキス? 投稿日:2002年10月12日(土)16時33分42秒
ドキドキしながら、楽屋に入る。
「おはよ〜。」
ドアを開けると…

ごっつぁんが一人だけ先に来てた。
「おはよ!やぐっつぁん!」
…なんでお前はそんなに普通なんだよ…。
眠たそうな顔でそんなにかわいい笑顔は卑怯だぞ。
ドキドキさせられまくって…オイラ馬鹿みたいじゃん…。
149 名前:遊びのキス? 投稿日:2002年10月12日(土)16時34分13秒
少しだけ赤くなってるだろうほっぺたを隠すように、メイク台の前に座る。
「今日、はやいじゃん。」
普通に、普通に…。
「うん。ドラマがちょっとだけあってさー。」
「そっか。」
チラッとごっつぁんを鏡越しに見ると、爪をイジってる。
「なんかでも、抜けた感じまだしないんだよねー。」
ごっつぁんが息だけで笑いながらそう言う。
娘。を卒業したことについて言ってるんだろう。
ごっつぁんはたまに言葉が足りなくて、けど、オイラにはだいたいわかる。
「まぁ、これだけ会う機会あるからね。」
オイラは嬉しいよ。ごっつぁんと前と同じように会えて。
「けど…。」
「ん?」
ごっつぁんが口篭もるので振り向く。
「今度、新曲出るよね?」
そう言った顔は、俯いたままでよく見えなかった。
「ああ…そうだね。」
なんとなく、切ない気分になった。
ごっつぁんもそうなのかな?
シーンと楽屋が静まり返る。
150 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
川o・-・)ダメです…
151 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
川o・-・)ダメです…
152 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
川o・-・)ダメです…
153 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
川o・-・)ダメです…
154 名前:某作者 投稿日:2002年10月12日(土)16時39分50秒
更新終了。
えーと、あやふやな感じですが、
一応、ここまでです。
ん〜、なんだかなぁ…。

レスありがとうございます!
>144 りょうさん
ありがとうございます。
続きこんなんなっちゃいました…。

>145 名無し123さん
どうもです!
嬉しいです(w
155 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月13日(日)04時59分27秒
なんだか可愛らしい二人がいいですね。
156 名前:名無し123 投稿日:2002年10月13日(日)09時42分55秒
微妙な関係の二人がじれったくていいですね!
いちごま派なのですが、ここの小説を読んで、
かなりやぐごまに傾きました。
がんばってください!
157 名前:某作者 投稿日:2002年10月17日(木)05時57分01秒
レスありがとうござまーす!!

>155 名無し読者さん
かわいらしいですか、ヨカタです(w

>156 名無し123さん
いつもありがとうございます!
がんがります(w

短編と、その続編って形で少し痛い系?な感じのいきたいと思います。
設定はアンリアル。
158 名前:KIREI 投稿日:2002年10月17日(木)05時57分48秒
真里は夜10:00いつもの浜辺に来ていた。

何時の間にか足はここに辿りつく。

波の音を聞きながら…涙を一粒だけ零す。

まるで、次にとっておくために。

159 名前:KIREI 投稿日:2002年10月17日(木)05時58分51秒


あたしはまだ死んでない。

あたしは…

 
160 名前:KIREI 投稿日:2002年10月17日(木)05時59分34秒
「いっつもいるよね。」

「!?」

俯いていたら頭上から聞こえてきた声にハッと息を呑んで顔を上げた。

「…誰?」

誰かが歩いてくる。

黒いシルエット。いかにも怪しそうな雰囲気に真里が逃げ出してしまわないのは、さっき聞こえた声が女のものだったから。

近づいてくる。

女の手だと思われる個所には、綺麗に伸ばしてある爪に白いマニキュアらしきものが塗ってあり。

月の明かりだけでひっそりと白く浮かび上がって見える。

距離を3mぐらいまで縮めたところで、その人は姿を現した。

161 名前:KIREI 投稿日:2002年10月17日(木)06時00分33秒
「…誰?」

真里はさっきと同じ質問を繰り返す。

距離が1mを切って、女の顔がハッキリと見えた。

暗くてよくはわからないが、長い髪が水でべっとりと頬に張りついている。

ウェットスーツ…。年は同じか…それとも少し年下?

「そっちこそ、誰?」

その少女は笑って真里に言うと、真里の隣に腰を下ろした。

「知らない人に…名前教えたくないし…。」

真里は俯いて答える。
162 名前:KIREI 投稿日:2002年10月17日(木)06時01分03秒
「後藤真希。」

「へ?」

女は笑顔で続ける。

「趣味はサーフィン。それから、ああ、年は16さい。」

「…。」

「これで知らない人じゃない。」

真希はそう言って笑った。

「で、そっちは?」

「矢口…真里。」

「ふーん。それだけ?」

「何…。」

「だからー、趣味とかー、年とか。」
163 名前:KIREI 投稿日:2002年10月17日(木)06時01分45秒
「年は…19。」

真里は自分の年を人に言うのがあまり好きではない。何故なら、真里が特別背が低いこともあって、その年齢には

到底見えないと、笑われてしまうことがいつもだからだ。

「へぇ、お姉さんだ。」

けれども、真希はくったくなく笑いながらそう言っただけだった。

真里は少し拍子抜けしてしまう。

「…驚かないんだ?」

「ん?何に?」

「いや、いつも絶対19には見えないって笑われるから…。」

「ん〜、いつも見てたし。」

「え?」
164 名前:KIREI 投稿日:2002年10月17日(木)06時02分30秒
「あたし、ここでいっつもこの時間サーフィンしてんの。」

「えっ?」

「ははっ、やっぱり気付いてなかった?」

「うん。」

「真里、でいいよね?」

「あ、うん。」

「真里が、海見てるの知ってた。その瞬間の表情は、ちゃんと19さいだったよ。」

真里は自分だけが知られていたという事実がなんだか恥ずかしく感じた。

「そのキンパツ目立つもんね。」

真希は笑顔で続ける。

「月の明かりに光って、綺麗だよ。」

真っ直ぐ真里を見詰めて言ってきた。

165 名前:KIREI 投稿日:2002年10月17日(木)06時03分06秒
「そっちの爪だって…。」

「へ?ああ…。」

一瞬、真希の表情が強張った気がした。

いや、波に反射している緩い光のせいなのかもしれない。

だって真希は今も笑顔を浮かべている。

「帰らないの?」

「え?」

真里が時計を見ると、いつもなら帰る時間を過ぎていた。

「帰らなきゃ!お母さん心配するっ。」

真里は駆け出して、真希の存在を思い出す。

「あっ…。」

振り向くと、真希は笑顔で手を振って。

「また来週、かな?」

そう言った。

166 名前:KIREI 投稿日:2002年10月17日(木)06時03分37秒


ほんとにいつも見られてたのか…。

真里があの浜辺に行くのは一週間に一度。

母親の仕事が遅い土曜日。

そして…父親の帰りがはやい土曜日…。
167 名前:某作者 投稿日:2002年10月17日(木)06時04分25秒
更新終了!
一応、前編といった感じで…。
168 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年10月18日(金)01時16分51秒
なんか神秘的な感じですね。
リアルの二作も良かったです!
やぐごまの灯を守って下さいw
169 名前::KIREI 投稿日:2002年10月18日(金)03時15分17秒
「真希…。」

真里はベッドの上で一人呟く。

母親との少し遅い夕食を済ませた。その場に父はいたけど、ただ母親がいる、それだけで得られる安堵感。

土曜の夜のこの時間だけは、唯一ホッとすることができた。

苦しいことはまた来週。

『また来週』

真希が言った言葉を思い出す。

(かわいい子だったな…瞳が月の光でキラキラ輝いてあたしとは大違い。…大違い。)

真里は布団を頭からかぶると、そのまま眠りについた。

 
170 名前:KIREI 投稿日:2002年10月18日(金)03時15分50秒
『なぁ、気持ちいいって言えよ…。』

いつもの浜辺。

追い払おうとしても、あの男の声が離れない。

『気持ち、いい…。』

そう言った自分の言葉も。

「元気?」

明るい真希の声。暗くても近づいてくるのが爪でわかる。

今日も真っ白いその爪。

「元気に見える?」

真里はちょっとムッとして、すぐそこまで近づいてきた真希に答えた。
171 名前:KIREI 投稿日:2002年10月18日(金)03時16分30秒
「だってそんなのいつもじゃん。」

「は?アンタ視力いくつだよ…。」

真里は鼻をすすった。

「ほら…。」

そう言って、真希は真っ白く光るその指で真里の涙をぬぐった。

「教えてくれるんだよ。」

話し始めた真希の言葉をその横顔を見詰めながら聞く。

「波がね、あの子は今泣いてるよ。って。」

そう言うと真里に向いて笑った。

「何よ、それ…。」

ただ、静かに隣にいた。

何も言葉を交わすことはなく、

ただ一つ交わす言葉は『また来週』そして、真希の笑顔…。

 
172 名前:KIREI 投稿日:2002年10月18日(金)03時17分07秒
いつもの浜辺、白い爪。

真希はその手を伸ばして缶コーヒーを差し出す。

「飲む?」

「いいの?」

「うん。寒いでしょ?」

「アンタは?」

「あたしは慣れてる。」

そう言って波を見詰めて笑った。

変なヤツ。

変なヤツ。でも…なんかその笑顔を見るとホッとするのはなんでたろうな…。

きっと爪が光ってるから。真希はとっても綺麗だから…。

あたしの汚さと混じって丁度良くなる…。

 
173 名前:KIREI 投稿日:2002年10月18日(金)03時17分38秒

手の届かない存在。

あたしは、真希の持ってるものが欲しい。

真希になりたい。

でも、手の届かない存在。

苦しい…苦しい。

 
174 名前:KIREI 投稿日:2002年10月18日(金)03時18分09秒
「あたし…父親に犯されてるの。」

「…。」

なんでそんなことを口に出したのかわからなかった。

全てを伝えたら綺麗なこの子がどうなるのか見たかったのかもしれない。

あたしを軽蔑すればいい。

そうすればまた一つ、この世界にあきらめがつく。

 
175 名前:KIREI 投稿日:2002年10月18日(金)03時18分46秒
「毎週、お母さんが遅くなる土曜日の夜に。はじめはね、死にたいと思ってここに来たの。

でも、波の音聞いてると、涙が溢れて…なんか全部許されてる気がして…。」

『アイツはどんな顔するだろなぁ?』あの男の言葉。

真里はもともとあの夫婦の子ではない。だけれど、母親だけはいつも変わらず、ほんとうの娘。のように自分を育ててくれた。

一度、家出を計画した。

だけど、あの男が裏で手を回して決まっていたアパートも、駄目になった。地位だけはあるあんな男。

それでも母さんは愛しているんだ…。とてもとても…。

「もう慣れちゃったよ。あたしも汚くなった。」

それだけ言うと、真希の方を向いた。

どんな顔してるの?哀れんだ表情?それとも怯えたみたく震えてる?

176 名前:KIREI 投稿日:2002年10月18日(金)03時19分25秒
真希は…いつもと同じように…微笑んでいるだけだった。

「汚くないじゃん。」

「真希にはっ!真希にはわからないっ!!」

「何がさ?」

「もういいし!!」

真里はそう言い放つと、その場を立ちあがろうとした。

その手を真希がグッと掴んだ。

「わかる。」

そう言った顔はいつもの笑顔の消えた、少し哀しい表情だった。
177 名前:KIREI 投稿日:2002年10月18日(金)03時20分02秒
「ん!?」

真希は真里をひきよせるとムリヤリ唇を重ねた。

「何!!」

「あたしも真里を抱きたい。だからほら、爪も切ってきた。」

そう言って、手をかざした。

「何言って…。」

言葉が遮られる。真希の唇によって…。

結局、その日真里は真希に抱かれた。

誰もいない浜辺で。

ただ静かな行為だった。

「気持ちいいよ…真希…。」

真里はそう言った。

何が違うというのだろう?あたしはムリヤリ犯されているのに…変わりはないのに…

相手が女だから?

真希だから?

それとも…キスが…とってもやさしかったから??

 
178 名前:KIREI 投稿日:2002年10月18日(金)03時20分40秒
「真希…。」

「ん?」

「手ぇおっきいね。」

浜辺で真里はうつぶせて、真希は仰向けに寝転んだまま。

荒い息も落ちつかぬまま

その繋がれたままの手を握って真里はつぶやいた。

「そぉ?」

「うん。」

「あたし…この手で人殺したんだよ?」

はじめは冗談かと思った。

真希はいつもみたいに笑っていたから。
179 名前:KIREI 投稿日:2002年10月18日(金)03時21分39秒
「2ヶ月前、少年院から出た。孤児院で育って、弟がいじめられたの。だから側にあったフルーツナイフで刺してやった。」

「ふーん。」

「驚かないの?」

「別に、どうでもいーじゃん、そんなこと。」

「あはは。そー?」

「綺麗なものなんて一つもないんだよ。今日わかった。」

真希はクスッと笑った。

「ねぇ、真希、」

「ん?」

「このおっきな手で、あたしをどっかに連れてってくれない?」

「どっか…?」

「うん。」

「いいよ…。でも、いいの?」
180 名前:KIREI 投稿日:2002年10月18日(金)03時22分28秒
「いいよ。綺麗なものなんてどこにもないんだもん。あたしはこのおっきな手に連れ去って欲しいってただ思っただけ。

悪いことなんて何もない。」

真里はそのまま真希の上に覆い被さると、唇を重ねた。

真里が唇を離すと、月に透けた真里の髪を指に絡めて真希は微笑む。

「真里、綺麗…。」




〜FiN〜
181 名前:某作者 投稿日:2002年10月18日(金)03時24分50秒
更新終了。
レスありがとうございます!

>168 名無し募集中。。。さん
やぐごまの灯は守れてるでしょうか?(汗

近いうちに続編をうpします。
今更気付いたんだけど、ごっちんの年が16になってる…あちゃ。
182 名前:某作者 投稿日:2002年10月18日(金)04時58分11秒
うわ…。最悪だ…。
『遊びのキス?』の途中が抜けてることに今更気付いた(^^;;)
削除以来出しといて、KIREIの続きを書く前にそっちをうpしたいと
思います。
どうもすみません…。
183 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月18日(金)10時52分29秒
作者さん、普段はいしよし書き?
184 名前:某作者 投稿日:2002年10月18日(金)13時23分31秒
>183 名無し読者さん
私の気持ちの問題で申し訳ないのですが、
いずれ名前は明かしますので、それまでノーコメントと
させてください。
185 名前:名無し123 投稿日:2002年10月18日(金)17時55分25秒
痛いのに美しくて…引き込まれます。
続きが楽しみです!

186 名前:某作者 投稿日:2002年10月19日(土)01時28分53秒
削除していただいたみたいなので、はやめに『遊びのキス?』の続きを...

>149 の続き

187 名前:遊びのキス? 投稿日:2002年10月19日(土)01時30分32秒
ガチャ−
「おはようございま〜す!!」

その沈黙を破ったのは、加護だった。
「おう!ごっちん、元気ー?」
「元気だよ。」
フニャっとごっつぁんが笑う。

「矢口さん!」
「おはよ〜。」
加護はなんかテンション高いなぁ〜。
「矢口さん今日もちっちゃくてかわいいですねー。ん〜!」
…キスされた。
もう慣れたけど、今日は吸いつかれなくてよかった…。
188 名前:遊びのキス? 投稿日:2002年10月19日(土)01時31分34秒
「ん?どしたん?ごっちん。」
加護の肩にごっつぁんの手がかかった。
「やぐっつぁん。」
「ん?」
そう言った瞬間−
!?
キスされた…。
それは一瞬のことで…
オイラはボーッとしてしまって…赤くなる顔を隠すこともできなかった。

「あ〜!ごっちん、矢口さんにだけずるいなぁ〜、ウチにもさして?」
「駄目ぇ〜。」
我に返ると、そんな言い合いが聞こえてきた。
189 名前:遊びのキス? 投稿日:2002年10月19日(土)01時32分21秒
ごっつぁん…どうしよう。
嬉しすぎて…ドキドキが止まらないよ…。
もう、こんなに好きにさせといて…なかったことにはできないんだから…。
とうとう、言おうと思った、けどそこに…

「おはようございま〜す!!」
またドアが開いて今度は辻が入ってきた。
「のの〜おはよ〜のチュウ!!」
加護が入ってきたばっかの辻に駆けよってジャレはじめた。

その様子を見届けて、オイラはごっつぁんを見る。
赤くなってる顔はおさまらなくて…。
そうしたら、オイラと目が合ったごっつぁんは微笑んで…
その顔は勘違いじゃなくて赤い。
190 名前:遊びのキス? 投稿日:2002年10月19日(土)01時32分52秒
「悔しかったから。」
ごっつぁんが視線をはずしてそう言った。
「なんだよ、それ…。」
オイラが赤くなって俯くと、ごっつぁんに手を握られた。
顔を上げると、ごっつぁんは笑いながら加護と辻を見てる。
これじゃ…『言う』なんてできないじゃんか…。

「ごっちん助けて〜!」
何時の間にか形勢が逆転してて、加護がそう言ってる。
「もう、何やってんだよ!」
ごっつぁんは楽しそうに笑いながら、手を解いて行ってしまった。

去ってしまった温もり。視線の先で笑うごっつぁん…。
なんか悔しい。
オイラばっかドキドキしてる気がして…。
でも、…ごっつぁんが笑ってる顔見てると…どうでもいいような気分になっちゃうのはなんでかな?
一緒にいられるだけでいいなんて、そんなこと思っちゃうのはなんでかな?
191 名前:遊びのキス? 投稿日:2002年10月19日(土)01時33分27秒
でも…覚悟しとけよ、ごっつぁん!
矢口は決めた!照れくさくてもやってやる!
今度はオイラがごっつぁんにキスするから…
だからそん時は…
はぐらかさないでちゃんと答えてくれるよね…。



〜Fin〜
192 名前:某作者 投稿日:2002年10月19日(土)01時35分17秒
更新終了です。

>185 名無し123さん
レスありがとうございます!
楽しみにして頂いてるのに少し読みづらくなってしまって
すみません…。
193 名前:某作者 投稿日:2002年10月21日(月)05時35分45秒
では、KIREIの続きを…

194 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月21日(月)05時36分30秒
『ねぇ、後悔してない?』

あたしはブルブルと顔を横に振った。
笑顔を見せても、真希は切なそうに笑うだけ。

あたしはそんな顔が見たくなくって、そっと唇を重ねる。
真希を押し倒しても、ベタンと寝転がっただけで…

あたしは、真希の胸に顔をうずめて、そのまま眠ってしまった…。


195 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月21日(月)05時37分06秒
――------------


あの夜、海岸から手を繋いでこのアパートにやってきた。
ここは真希の家。
少年院から出たばっかりの真希は、保護監察下にあって、
遠くに行くのは無理だった。
怯えながら暮らす日々。

あの…汚い男の影から…。

それでも、あたしは真希といると綺麗な自分になれる気がするから…。
『綺麗。』って真希が笑ってくれるから…。
不安もどこかに消えていたのに。

最近は、月の光の差しこむ部屋で、体を重ねることもしなくなった。
196 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月21日(月)05時37分41秒
わかってる。
真希もイライラしてるの…。
あたしの不安も真希は知っていて、
そして真希は今、面接に行っている。

あたしに会うまでは、生きよう、って思わなかったって言った。
あたしがこの家に来た次の日、真希は笑顔で『行ってきます!』って言うと玄関を
出ていったんだ…。
でも、2日経ち、3日経ち…一週間も経つと、さすがに笑顔が消えた。

保護監察と言っても、このアパートの家賃は真希が払っていかなければならないという。
あたしにはその辺の事情はよくわかってないけれど…。

最近ね、考えてることがあって。
『あたしが働けないかな?』って真希に言ったら、
『危ないから絶対駄目!』って強い口調で言われた…。
197 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月21日(月)05時38分16秒
あたしは時計に目をやる。
面白くもないテレビドラマの声が聞こえてる…。
もう9時を過ぎた…。
どこで何やってるんだろう?
家賃も払えないあたし達はケータイなんて持ってなくて…。

真希をぼんやり思っていると、鉄の階段を上ってくる足音が聞こえた。
真希だ…。

カチャ
ドアが開いて、真希が入ってきた。
「おかえり。」
あたしは笑顔で話しかける。
「ただいま…。」
真希は視線を合わせてくれない…。
198 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月21日(月)05時39分07秒
「ご飯食べる?」
あたしは立ち上がった。
「あ、いらない。飲んだから…。」
「え?」
あたしが近寄ると、真希の体からは、アルコールの匂いがした。
「駄目じゃん、今飲んだりしたら…。」
あたしは心配でそう言ったんだ。
そしたら、真希は急に強い目であたしを見詰めた。

「真里にはわかんないよ!!」
そう怒鳴る。
「どうしたの…?」
真希の瞳はなんだかすごく狂気じみていて、あたしは思わずあとずさった。
「ははっ、怖い?あたし怖い?」
「真希…?」
ジリジリと距離を縮めてくる。
「みんなそーだよ。年少上がりってだけでさー、汚い目で見やがって…あのオヤジ…。」
「どうしたの?」
「ね、真里も思ってんでしょ?いつ誰を殺すかわかんないって!」
肩を両手で掴んで揺さぶられる。
「そっんなこと、思ってないよ…。」
…ほんとは少し怖かった。
だけど、それは今の真希が、だよ。
声が震えたのが伝わったんだろう…。
真希はフッと笑って、手をどけて視線をはずした。

199 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月21日(月)05時40分03秒
「もういいよ…。あたしいつ真里殺すかわかんないよ?出てけば?」
「え…。」
嘘…。
「出てけっつってんの!!」
真希に肩を押された。

あたしを見詰める目はすごく冷たくて…

あの時…
なんで飛び出したんだろう、って今も思う…。

200 名前:某作者 投稿日:2002年10月21日(月)05時41分47秒
更新終了!
この続編も短編ぐらい短いです…。
あと2回ぐらいかな?
201 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月21日(月)06時33分33秒
痛い展開ですね。やぐごま好きとしては。
でもこの話すごく好きなんで、二人を幸せにしてあげて下さい。

あと「遊びのキス?」の続編も書いてくれたらうれしいです。
202 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年10月21日(月)06時47分01秒
>あの時…。
>なんで飛び出したんだろう、って今も思う…。

この回想視点からの語りが不安を誘う。。。
幸せな結末を祈ります。

203 名前:名無し123 投稿日:2002年10月21日(月)10時01分04秒
心に余裕が無い状態なんですね…痛いです。
辛い思いをしている二人だからこそ、幸せになってもらいたい!

204 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月22日(火)07時54分53秒
−真希−


バタン!
勢いよく閉められたドアが音を立てる。

「いってぇ…。」
でかい音があたしの脳みそを直撃してグワングワン鳴る。

ドタン!と音を立てて、畳の上に寝そべった。

追いかけよう!
体を勢いよく起こしたら頭がグラグラと揺れた…。

…真里…ゴメン。
でも、あたしと一緒にいない方がいいや。
ベタン、とまた寝転ぶと、ほっぺたを涙が流れて、あたしは必死でそれをぬぐった。
けど、後から後から流れてきて…
205 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月22日(火)07時55分31秒
頭はグラグラして…
真里の怯えた目があたしを見てる…
ゴメン…。
ゴメン…。

何時の間にかあたしは眠っていた。


206 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月22日(火)07時56分03秒
「ん…。」
明るい日差しに目を覚ます。
「いたた…。」
体を起こすと、腰とかいろんなところがいたい…。
ついでに頭も…。

部屋を見渡して気付く。
「……。」
真里、いないんだ…。
207 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月22日(火)07時56分54秒
今更、後悔が押し寄せる。
涙が滲む。
真里がかわいいって選んだ100円のタオルが流しの側にかかっている…。
あたしは…あたしには真里が必要。
だから後悔してんの…。
でも、真里には…。
真里に必要なのは、きっとあたしじゃ、ない…。

体が痛くて、視界が滲んで、そのせいで頭がガンガンと痛み出す。
あたしは、ダルイ体をそのまま横たえて、ボーッと天井を見詰めた。
208 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月22日(火)07時57分53秒


結局、一週間、死人みたいな生活を続けた。
寝て起きて、たまに食べて。
テレビつけて、消して。
ゴミ箱に突っ込んだままの求人雑誌は、見ないことにして…。

真里…。
目を閉じると浮かんでくるのは真里のことだけ…。

あたしはとてつもなくひどいことをした…。
だって、真里には行くところがなかったんだもん。
なのに、追い出した…。
209 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月22日(火)07時58分25秒
見付けてあげたいって思うけど…。
手がかりもなんもない。
一度、真里の家に電話をした。
通信販売の業者の振りして。
お母さんが出た。その声は、想像していたよりも、ずっと年をとっているように感じた。
真里の名前を出した途端に『いない。』ということだけ告げると慌てて切られてしまった。
真里…。
あたしの知ってる真里…。
あたしの知らない間の真里…。

変だね、ユウキ。姉ちゃん、今更、人殺したこと後悔しはじめてるんだよ…。
アンタのためなら…って思ってたのに。
アンタもあたしを責める?

ははっ、って笑ったら、予想外にその声が響いて、涙が滲んだ。
210 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月22日(火)07時59分05秒

チャリリリリリリリ。。。

電話のベルが鳴る。
山崎さんかな?保護監察ってウザイ…。

「もしもし。」
のっそりと電話を引き寄せて、半身を起こすと電話に出た。
『ほぉ、アンタが真希、か』
「は?」
関西弁のイントネーションで女の声。
「誰?」
『ほんとに女なんやな。』
「は?何?」
211 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月22日(火)07時59分38秒
『真里がなー、寝言でアンタの名前呼ぶんよぉ。』
「……。」
頭がチカチカする。
真里…。
「真里!?」
あたしは噛みつきそうな勢いで聞き返した。
「どこにいるの!?」
『あはは!』
「何がおかしいの?」
『いや、ごめんて。とりあえず会いに来るか?』
あたしはムッとしてたけど、とりあえず住所を教えてもらって、その場所に向かうことにした。
212 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月22日(火)08時00分19秒
真里に会う…。
久しぶりに鏡を覗いた。
…ひどい顔。
前より、すごい痩せてる。
髪を梳かして、それから洗濯したての服を着て、その場所に向かった。
213 名前:某作者 投稿日:2002年10月22日(火)08時05分39秒
更新終了。
レスありがとうございます!

>201 名無し読者さん
ネタバレ防止のためノーコメント(爆
遊びのキス?の続きは…リアルはちょっと苦手なんですが、
もし出来たら載せます。ただ、今はできてません(^^;)

>202 名無し募集中。。。さん
やぐごまのために祈ってあげてください…。

>203 名無し123さん
そうですね。
そうなんですね。
そうなんですがね(と含みを持たせてみたり…)

いや、難しいですね。
こういうレスってどうつければいいのでしょうか(笑)
次回がラスト…な感じ?(何
214 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月24日(木)20時51分01秒
ここじゃん…。

あたしは呆然とした。
さっきの電話の女、たぶん『中澤』って人にに告げられた住所に来てみると…。
どう見ても、水商売系の店が並んでいる一角に辿りついた。

その住所の場所には、『ゆうこ』と書かれた青い光の灯った看板が立ってて…。
ここだよね?

半信半疑で、店のドアを引いた。
215 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月24日(木)20時51分51秒
「いらっしゃ〜い。」
驚かれると思った。
迎えてくれたのは、大きなつり目が印象的な女の人。
「はじめてですよね。」
けど、冷静で柔かな声が返ってきた。
「あ、あの…中澤って人、尋ねてきたんですけど…。」
「あ、祐ちゃん?」
その人は急に間の抜けた声を出した。

「ただいま〜。」
!!?
後ろから聞こえた声に固まる。
心臓がドクドクと脈打ってる…。
ゆっくりと振り向いた、そこには…。
216 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月24日(木)20時52分34秒
「真希…。」
真里が驚いた顔をして立っていた。
あたしは言葉を発せずに、ただポカンとしてしまった。
少し大人っぽいメイクして…だけど…
確かに真里で…

あたしが口を開こうとした瞬間だった。
「なんで来たの!?」
「へ?」
真里はあたしを睨む。
「なんで?祐ちゃん?もうしんじらんない…。帰ってくんない?」
「え、待って…。」
あたしは頭がクラクラして、ちっちゃな子供みたいにうろたえる。
言葉が何も浮かんでこない。
217 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月24日(木)20時53分43秒
「帰って。」
真里は、冷静な声でそう言い放つと、店の奥に消えた。
「……。」
真里に会えるってだけで浮かれて…
真里はあたしについてきてくれるもんだと思っていた…。

けど、よく考えたら、そんなはずはない…。
だって、あんなにひどいことをしたんだもん…。
あたしは半ば放心したまま、踵を返そうとした。
「あーのさ、」
ふいに後ろから聞こえた声にビクッとなる。
さっきの女の人が苦笑いをしてた。
「どうする?祐ちゃん二階だと思うけど。」
「…。」
「とりあえず会っていきな!外でて、階段上った部屋。ノックしたら出ると思う。」
彼女はそう言って笑った。
218 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月24日(木)20時54分53秒
どうしようか迷った…。
カツン、カツンと足音が響くから…意識を連れ戻すから…何度もひき返そうと思ったけど…
あたしはドアに手を伸ばした。

カチャ
ノックしようとした手はからぶって、中から金髪の女の人が顔を覗かせた。
その金髪は…真里を思い出させた。
「おう、アンタが真希?」
電話の声と一緒。この人が『中澤』さん…。
「はぁ…。」
「はいりや。」
そう言うと、ドアを押して、あたしが入れる隙間をつくってくれた。

「座っててええよ。飲むか?」
チューハイの缶を見せられて、あたしは首を振った。
豹柄のソファーの端に腰掛ける。
219 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月24日(木)20時55分36秒
中澤さん、は、ビールを開けると、向かいのロッキングチェアーに座った。
「アンタ、なんのために来たん?会ったんやろ?真里に。しけた面しよってからに。」
もう酔ってるのかと思うような、くだけた口調…。
「真里が帰って、って…。」
「うんー…。あいつもアホやな…。」
中澤さんはそう言うと、グイッとビールを煽った。
「……。」
「そんで、アンタは帰るんか?」
真剣な目で見詰められる。
なんだか責められているような気になる。

あたしは…ひどいことを…したんだ…。
「帰るんやったらウチが真里貰うで。」
「え…。」
顔を上げると、中澤さんはニヤリと笑みを浮かべる。
220 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月24日(木)20時56分58秒
「あいつ、いっつも誰かのこと考えとって…たぶん好きなやつだと思うんやけど、ちごたんかなぁ?」
好きなやつって…。
あたしかなぁ?
「じゃ、もう帰るか?」
「え…。」
「これから真里口説くから。すぐかもな。ウチのこと嫌いなら一緒な部屋に泊まったりせんやろ。ちゅーか、ひっかかってたのは、たぶんアンタのことやと思うから?もう障害はないわなぁ?」
「……。」
この人といた方が、真里は幸せになれるかな…?
221 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月24日(木)20時57分39秒
「まぁ、ウチかて後味悪いのは嫌やし?これは伝えとくべきかもな…。」
チラッとあたしを向く。
「あいつなぁ、はじめて会った日、海で泣いとったんよ。」
「……。」
あたしは…どこで気持ちを歪めてしまったんだろう…。
海という言葉を聞いた途端に、眠っていた気持ちがブワーっと溢れ出してきた。
それは…涙になって頬を伝う。
「わっ!何?ちょっと待ちぃや…。」
中澤さんが妙に慌てている。
「あ、たし…。」
聞いて欲しかった、誰かに…。
「真里にひどいことした…。」
「そぉなん?よぉわからんけどもやね…。」
「けど、真里のことが好きで…あたしは…真里を守りたい…っく…。」
中澤さんは、なんだか切なげな眼差しをあたしの膝の辺りに落とした。
222 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月24日(木)20時58分29秒
「アンタはまだ子供やねんな…。せやのに、いろんなことを抱えすぎてんねん。」
そう言うと、中澤さんはあたしをギュッとその腕で包んだ。
涙が、止まらなくなるのはなんでだろう…。
「守りたいゆうたけど…それって一方的じゃ成らんで?せっかく、真里と二人でおんのに、あんたがそんなんなって、真里を傷つけて…誰が特をするよ?ほんとは、アンタを今こうやって抱きしめるのはウチやないよ。真里やで。わかるか?
恋人同士でおる限り…、自分の好きな人が側で笑ってくれる限り、相手の気持ちを信頼してあげなあかんわ。
そんで、忘れたらあかん。アンタがキュウキュウになってんの、全部見ぬいてんやから。
そん時、どうなるかわかるか?アイツもキュウキュウになるねん。
渡したったらええやん。そんで、アイツの荷物を持ったったらええがな。
ほんまに不器用やで、アンタら…。」
ただ、淡々と、それでも強く吐き出される中澤さんの言葉は一つ一つ心に落ちた。

あたしは子供のように泣きじゃくった。
223 名前:某作者 投稿日:2002年10月24日(木)21時00分50秒
更新終了。
最初に書いていたものに納得できない点があって、
ほとんど書きなおす形になりました…(汗。
224 名前:名無し123 投稿日:2002年10月24日(木)23時36分22秒
裕ちゃんの言葉、心に染みますね。
ごっちん、がんばれ!
225 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月25日(金)23時38分29秒
「泣き止んだか?ええ子や。」

中澤さんに頭を撫ぜられた。
悪い気がしないから不思議だ。
それどころか…嬉しい気さえするんだもん。

ほんとなんだ。あたしは子供。
それを知ってて、強がっていた。
弱いところを見せたくなかった。
傷つきたくなかった。
まだぶつかってないじゃん…。
226 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月25日(金)23時39分01秒
「…行ってきます。」

あたしは、鼻声で中澤さんにそう言った。
中澤さんはなんだか眩しげに微笑んでくれた。
あたしも精一杯の笑顔を返した。

店に下りると、真里を探した。
…女の人に肩を抱かれている。
ここって、そういうお店なんだね…。

フツフツと沸きあがる感情をもう否定しない。
思いっきりヤキモチ妬いてる…。
227 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月25日(金)23時39分33秒
「真里!」
あたしがそう呼ぶと、真里はこっちを見てハッとした。
泣いてたのバレたかな?
たぶんまだ鼻声だし…。
けど、そんなことどうでもいい。
今更、何を隠すの。
ね、あの日、あたし達、お互いの全てを見せ合った気がしてたよね?
ううん、見せ合ったんだ。
いつのまに、真里の知らないあたしをつくったの?
馬鹿みたい。

「帰ろう!」
視線を逸らした真里の腕をグッと掴んだ。
「ちょっ、待って!」
「待たない!」
強く言うと、真里は黙って店の外まで来てくれた。
「さっき帰ってって言ったよね?」
真里の…視線が泳いでる。

あたしは何時の間に…真里の大切な部分から目を逸らしてたの…。

228 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月25日(金)23時40分09秒
「帰らない…。」
「なんで?」
真里がグッとあたしを見据える。
あたしもジッとその目を見詰めた。
「真里と一緒に帰る。」
「……。」
「これが最後のチャンス…なんだ。もう一生ないよ。」
そう。これが最後のチャンス。神様があたしにくれた…
「…真里みたいに好きになれる人には…きっと二度と出会えないから…だから、帰って欲しい。」
真里の目に涙が浮かぶのがわかった。
「駄目?あたしには、真里が必要…。」
あたしは零れ落ちた真里の涙を指でそっと拭った。
229 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月25日(金)23時40分42秒
「…真希…。」
真里は急にしゃくりあげて泣き始めた。
そして、あたしにしがみつく…。
心臓がドキドキする。それから、愛しくなる。
あたしだけじゃないんだよね?
これが答えって思っていいでしょ?
「帰ろう。ってか連れて帰る。真里をこの手で…さらう。いい?」
精一杯の強がりは少しだけ声を震わせた。
背中に回った腕に力が込められて、真里が頷くのがわかる…。

230 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月25日(金)23時41分19秒
「やれやれ…。」
手を繋いで歩き始めたあたし達の後ろから、声が聞こえた。
振りかえると中澤さんが腕組をして立ってる。
「アンタら二人に…ホレ!」
中澤さんがメモの束を投げた。
その最初のページには、どこかの住所と電話番号…。
真里の顔を見て、それから中澤さんを見る。
「ウチの兄貴がやってるとこや。」
「え?」
「後は二人でどうにでも。」
目だけにうっすらと笑みを浮かべる。
「祐ちゃん!」
立ち去ろうとした中澤さんに真里が声をかける。
だけど、中澤さんは、振り向かずに手を掲げて2度、振った。

「…カッコつけすぎじゃない?」
しばらく呆然としてたけど、あたしの言葉に真里が笑った。
あたしがそれに嬉しくなって笑うと、真里にバシッと腕をしばかれた。
231 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月25日(金)23時41分51秒
「許さないんだから…。」
「え…。」
「今度、同じようなことがあったら、もう戻ってやんないってこと!」
「ああ…。」
途端に物凄く自分が嫌になる…。
「もう…ビシッといってよ!そんなことないって!」
真里が肩を揺さぶった。

視線が…絡み合う…。
引き寄せられるように、口付けを交わした。
ギュウ…と力を…気持ちを込めて抱きしめる…。
「もう、あんなことしない…。」
低く、確かに落とした声は、自分への『誓い』。


232 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月25日(金)23時42分42秒

中澤さんに貰ったメモにかかれてた場所に電話すると、『ああ、聞いてんで。いつからでもええけどどうする?』と聞かれた。
上手い話…あたしはこれに甘えていいの?
ふと、手に持っていたメモの裏に文字がかかれていることに気付く。
そこには両手を上に上げて肩を竦めている中澤さんのイラストが書いてあって…吹き出しには『迷ってる?ハァ〜、これやから…青臭いガキは…。』

「明日!明日からいいですか?」
あたしは気がついたらそう言ってた。

233 名前:綺麗じゃなくても。 投稿日:2002年10月25日(金)23時43分28秒

綺麗じゃなくたっていい。
ドロドロになって転がったっていい。
この手はね、きっと真里より大きいまんま。
真里と一緒にいれば…。

あたしはいつだって…
綺麗が見えるから…。

神様があたしにくれた、たった一つの『綺麗』。
握り締めたから、もう2度と…離さない。



〜FiN〜
234 名前:某作者 投稿日:2002年10月25日(金)23時44分50秒
更新終了!
235 名前:某作者 投稿日:2002年10月25日(金)23時45分20秒
完結です。

レスありがとうございます!!

>224 名無し123さん
ごっちん、頑張ったかな?(w
236 名前:某作者 投稿日:2002年10月25日(金)23時46分19秒
またすぐにでも、綺麗じゃなくても。の番外編を一つうpします。
237 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月26日(土)00時06分19秒
感動しました!!本当に作者さんのやぐごまの世界が好きです。
番外編も楽しみにしています。
238 名前:某作者 投稿日:2002年10月27日(日)00時36分03秒
では、番外編を。

真希視点ではわからなかった間の、真里と中澤の話しです。
239 名前:綺麗じゃなくても。番外編:真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時36分58秒
なんで飛び出してきたんだろう…。

一週間経った今でも考える。
けど、答えは出ない。

だけど…どっかで思ってた。
あたしが真希の負担に…焦りに繋がるんじゃないのかな?

きっと…だから、だ。

「おい、真里ー。」

そんな時、祐ちゃんはいつも声をかけてくれる。
そして、あたしにじゃれてきて、それでしばらく何も考えずにいられる。

真希…どうしてる?
240 名前:綺麗じゃなくても。番外編:真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時37分36秒

――――――――――

真希に「出てって!」って追い出されて、
あたしは行く場所がなくって、途方に暮れた。

怖かった。
何より、怖かった。

あの男が…

真希がいてくれる、それだけでどんなに心強かったのかって…思い知った。

そして、何時の間にかあたしは、真希と出会ったあの海岸に来てた。
241 名前:綺麗じゃなくても。番外編:真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時38分11秒
変だね…。
来る度に泣いてたこの場所が…
真希と出会ったってそれだけで、こんなにも愛しい場所に変わる…。

堤防に腰を下ろして、膝をグッと抱える。
変でしょ。
また涙出てくる…。

今日は、…迎えにはきてくれないの?
あたしの大好きなあの大きな手でひっぱって…
家に連れて帰ってくれないの…

「真希ぃ…。」
242 名前:綺麗じゃなくても。番外編:真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時38分46秒
「誰よ?それ」

は!?
急に声が聞こえて辺りを見まわした。

何時の間にか側に女の人が立ってた。
金髪で…関西弁のイントネーション。

煙草をくわえる姿がすごくスマートに見えた。

そんなことを考えていると、隣まで寄って来る。

「アンタ、なんしてんの?こんな時間に。危ないで?」
何、この人…補導員??じゃないよな…。
243 名前:綺麗じゃなくても。番外編:真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時39分19秒
!!
途端に体が震え出す…
まさか…
あの男が…

「ちょっとどうしたん?」
肩を揺さぶられる。
あたしは首をフルフルと何度も振っていた。

彼女は、近くにあるらしい自販機であったかいコーヒーを買ってきてくれた。
あたしは、それまで怖くてただブルブルと震えていた。
『真希、真希…。』
何度も呼んだ。

ほっぺたにあったかい缶を当てられて、ジンワリと目の前に現実が戻ってくる。
「なんかほっとけんやないの。帰れへんのか?」
彼女は2本目の煙草に火を着けた。
「帰るとこ…ない…。」
「ほぉ…。」
244 名前:綺麗じゃなくても。番外編:真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時40分06秒
ジィー…とただ隣に並んで打ち寄せる波の音を聞いていた。
あたしは、真希を思う。
あの波に…
優しい波に…抱きしめてくれる真希を思って
自分の体を両腕でギュッと抱いた。

「さて…ウチ帰るけどどうする?」
「え…。」
彼女は、自分の分のコーヒーにジュッと音を立てて煙草を放り込んだ。
「一緒に来てもええで?」
その表情からは何も読み取れなかったけど…


245 名前:綺麗じゃなくても。番外編:真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時40分56秒
『ゆうこ』という看板のある怪しい感じのお店。
「ここやで。」
というとコツコツと側の階段を上る。
あたしもそれに続いた。

「アンタ、名前は?」
「…知らない人に教えたくない…。」
真希に会う前よりもずっと…。
「ははっ、ええ度胸やね。」
彼女は笑い飛ばすと、ま、ええわ、って笑って部屋に通してくれた。

派手な部屋。
『アンタが何を考えとるかはわからんけど…いたいだけおったらええわ。あ、後この返はなぁ、ゲイの人ばっか集まる店やから。寄ってきても女の子やで。安心しぃ。』
そう言って、得意そうにニヤリと笑った。

246 名前:綺麗じゃなくても。番外編:真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時41分28秒

----------
穏やかな日々…
真希が隣にいる日々。

真希、あたしはね、真希になら殺されてもいいんだよ。
またきっと怒るでしょ?
真希って思ってたより、ずっと子供。
そんなとこも、いとおしくてたまらないって、
もうきっと真希に伝わってるよね。

247 名前:綺麗じゃなくても。番外編:真里 投稿日:2002年10月27日(日)00時42分22秒

チャリリリリリ。。。
「あ、祐ちゃん?…うん、真希ね、頑張ってる。…えー、うん。でも疲れてるから、休みの前の日だけね…ははっ…その時は寝かせてくんないの!…え?あたしはお水はもうやんないよ!真希だけね…大切にしたいから…あはは!何言ってんのぉ?
うん、今お風呂入ってて。…うん…あ、祐ちゃん!…ほんと、ありがとね。…あはは!
うん。じゃ、また!…はぁーい。」



〜FiN〜
248 名前:某作者 投稿日:2002年10月27日(日)00時44分26秒
以上!
「KIREI」「綺麗じゃなくても。」
完結でーす。

>237 名無し読者さん
レスありがとうございます!
そう言って頂けるとほんとうに嬉しいです!
249 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月27日(日)05時37分47秒
完結おめでとうございます。すごくよかった。
すごく独特の雰囲気があるお話で、ちょっとせつないけどきれいな感じ。
そんな感じがとてもよかったです。
またやぐごまを書いて下さいね。
250 名前:名無し123 投稿日:2002年10月27日(日)09時49分07秒
お疲れ様でした。
ふたりで一生懸命生きていくって感じがして、すごくよかったです。
次作もありますよね!? ねっ!?
作者さんのやぐごま大好きなので、期待して待っています!
251 名前:某作者 投稿日:2002年11月15日(金)02時26分39秒
レスありがとうございます。

>249 名無し読者さん
ありがとうございます。
>ちょっとせつないけどきれいな感じ。
そういう風に意識して書いた話しだったので、
そう言って頂けるとほんとうに嬉しいです。

>250 名無し123さん
ありがとうございます。
こちらも、一生懸命生きていく二人、ってスバリそれも
書きたかったものなので、嬉しいです。

リアルの方の続きをかいてみました。
252 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時27分33秒
『ね、今日泊まりに行ってもいい?』
メールを見た瞬間、心臓が飛び出すかと思った。

そりゃさ、前はー、うん、そんなに意識してなかった頃はホテルで同じ部屋になってマッパで過ごしたりとかしたけど?
好きだ、って気がついたら…
やっぱなんか、ねぇ。
意識しちゃうじゃん。

『泊まり?』
考えた末、こんな返信。

すぐに届くメール。
『うん。明日あたし暇だから。駄目?』

駄目?って言われても…。
それは…ごっつぁんと一緒にいたいし…。
253 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時28分33秒
!!!!!
は?
確か今日から旅行だとか言ってなかったっけ?ウチの家族。
3連休を利用して…。

『家族いないからいいよ
ん〜…
これじゃなんか誘ってる女みたいじゃない?却下。
パカパカとクリアボタンを押す。

『家族いないけど、いいの?
…これも変だな。
なんかすっごい挑発的…
254 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時29分09秒
〜〜〜〜〜♪
ごっつぁんから着信。
『ヤだったらヤだって言えばいい。』
…ヤなワケないじゃん。

『そんなことない。いいよ。』
そう返信した。
…なんだ、めちゃくちゃ簡単じゃん。

『今どこ?どこ行けばいいかな?』
ごっつぁんのメールに、家から近い駅の側を指定した。


255 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時29分39秒

どーでもいいけどオイラ、ダンスレッスンだけだったから…
中途半端な格好しかしてないよー。
…でも、ごっつぁんなら見慣れてるか。
アハハ。

そんなことを考えてると、つまらなそうにブーツで石を蹴飛ばしているごっつぁん発見。

声を出したらバレそうで怖いから、
静かに近づく。
ごっつぁんはオイラに気付くと、ニコッと笑った。

…イチイチかわいい…。

でもさー、なんでオイラがいっつも意識してる時にコイツは普通なんだろう?
年上なのに、なんか悔しい…。
256 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時30分09秒
「迷惑だった?」
歩きながらごっつぁんが聞いてくる。
しゃべらなかったのを勘違いしたみたい。
「んなワケないじゃん…ごっつぁんが来てくれて、嬉しい…。」
俯きながら、精一杯勇気を振り絞った。

!?
ごっつぁんの手が触れたと思ったら、ギュッと握り締められた。
ごっつぁんの横顔は、少し視線を落として…それからちょっとだけほっぺたが赤い…。

触れている手がすっごく温かくて、幸せな気分になってくる。
トクトクと鳴る鼓動が心地いい。
257 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時31分02秒
「あ…。」
大切なこと言うの忘れてた。
「ん?」
「うん、あのなんて言うか、今日家族旅行でいないんだよね。」
「あ…そうなんだ?」

少しだけ驚いたような声。
繋いだ手はそのままに、家までの道のりをゆっくり歩いた。
「やぐっつぁん寒くない?」
「オイラ、コレ裏が起毛だから平気。」
「そっか。」
そう言って笑う。
かわいー…。

258 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時31分45秒

「お邪魔しま〜す。」
家に招き入れると、ごっつぁんは何を考えてるのかわかんないようないつもの調子でそう言いながらブーツを脱ぐ。
あ、ちゃんと端に寄せるんだ。かわいい…。

「あ、矢口夜食べたけどごっつぁんは?」
「うん。食べて来たよ。」
「そっか。」
なんだか、胸がずっとドキドキする。
それはすごく穏やかな感じだけど…。

今、この家にごっつぁんと二人っきりなんだよね…。
って何考えてんだろ。

「ジュース持っていくから部屋上がってて。」
部屋は昨日片付けたばっかで、綺麗だからよかった。
259 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時32分21秒
「あっ、クッキー!」
ごっつぁんが階段を上ったと思ったら、おいらの足元に最近飼いだした犬のクッキーが寄って来た。
「偉いなー。お前、ごっつぁんに吠えなかったね。」
さては…オイラの好きな子だって知っててかぁ?小さな声で耳打ちしてみる。
クッキーはなんにもわからないように、オイラの頬をペロペロと舐めた。

260 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時32分51秒

「ごっつぁ〜ん?」
ドアを背中で押しながら、下で見付けた増量お得版のポテチとジュースを持って部屋に入る。
「ん?どうしたの?」
「これ…。」
ごっつぁんに見せられたものに、ボッと顔が赤くなった。

それは、ハロプロ写真集の為に渡されたカメラで撮った写真で…。
ごっつぁんとオイラで撮ったヤツ。
気に入ったから、こっそり持って帰ってきちゃってたんだよねぇ…。

「このやぐっつぁんすごいかわいい。」
ごっつぁんが写真を見詰めたままそんなことを言うからドキドキしてしまう。
261 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時33分27秒
トテトテトテ
ん?

「あ〜!かわい〜!お前がクッキーかぁ?」
ごっつぁんはクッキーを抱き上げて、話しかける。
あー、クッキーいいなー…って何考えてんだよ…。

ん?
「あれ?名前…。」
教えたっけ?
ごっつぁんはすぐに察したようで口を開いた。
「あ、ラジオで聞いた。」
「あ、そう…。」
ごっつぁんはオイラのドキドキも知らないで、座りこんでその膝にクッキーを乗せて笑顔…。
262 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時34分11秒
オイラが、机に持ってきたトレイを載せて座ると、クッキーがごっつぁんの手からオイラに歩いてきた。
「ん〜かわいいなー。お前はー。」
あんまりかわいくてチュウをしてしまう。
ほんっとかわいんだもん。
コイツがいてよかったかも。
変な風に緊張しなくて済む。

「ごっつぁん?飲んでいいよ。」
ごっつぁんは気がつくと、ちょっと不機嫌そうな顔で壁を見詰めてる。
「ごっつぁん?」
「クッキーに先にキスされた…。」
「はぁ!?」
オイラは顔が真っ赤になるのがわかる。
263 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時34分55秒
「ってゆうか…犬じゃん…。」
胸がすんごくドキドキ言って…
なんかこれじゃ、恋人にする言い訳みたいじゃん…。
「ごっつぁん?」
「犬でも…人がせっかくさぁ、」
「ん?」
ごっつぁんはチラッとオイラを見ると、抱えていた膝に顔を埋める。
「なんでもない…。」

…なんで…
なんでごっつぁんはそんなかわいいの?
264 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時35分46秒
「ごっつぁん…。」
肩に手を置いて、顔を上げたごっつぁんに…
キス、した…。

目を瞑って感じるごっつぁんの唇。
はじめは驚いたみたいだけど、少しずつ角度を変えるキスをしてくれる。
優しい…ごっつぁんのキス。

唇が離れて、そっと目を開ける。
ごっつぁんが真剣な顔でオイラを見詰めてる。
「やぐっつぁん、好き…。」
胸がギュッと締め付けられて、ゆっくりと擦れた声を絞った。
「オイラも、ごっつぁんが好き…。」
「…別に焦らなくていいよね…。」
ごっつぁんが真っ赤な顔で、視線をはずしてそう言う。
どういう意味か…。
だいたいわかる。

だって別にごっつぁんは…その、Hがしたくてウチに泊まりに来たんじゃないってことだよね。

 
265 名前:泊まり? 投稿日:2002年11月15日(金)02時36分42秒
眠る時、ごっつぁんはおいらの手を握って…もうくっつきかけた瞼でほにゃり、と幸せそうに笑ってくれた。
クッキーがクンクン言って寄ってきたのに、
「やぐっつぁんは今日は後藤のものだから!」
そう言うごっつぁんに胸がギュッてなって…
「そーだよ、邪魔するな?」
おいらもクッキーに言ってやった。

ごっつぁんと顔を見合わせて二人とも照れながら笑ってる間にクッキーは、諦めて自分の寝床に丸まった。

クスクス笑ってるうちに、ごっつぁんが眠りについて…
それでも、離さない繋がれた手がすっごい、嬉しくて。
おいらは飽きるぐらいその寝顔を見詰めて、内緒だけど、キスして、そして眠りについた。



〜FiN〜
266 名前:某作者 投稿日:2002年11月15日(金)02時37分42秒
更新終了。
う〜ん…。
なんだか、ショボいですね(汗
267 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月15日(金)02時46分58秒
いや〜ん、萌え萌え
268 名前:名無し123 投稿日:2002年11月15日(金)17時55分56秒
クッキーに嫉妬するごっつぁん、かわいい!
続きが読めて、すごく嬉しいです。
269 名前:オガマー 投稿日:2002年11月16日(土)06時38分46秒
>267 名無し読者さん
ありがとうございます。
萌えて頂けてよかった!

>268 名無し123 さん
いつもありがとうございます。
ほんとに励みになりました!!(w

ということで作者は私でした…。
しばらく、ネタが思いつきそうにないので
バラしてみます(何)。
270 名前:名無し123 投稿日:2002年11月16日(土)15時34分02秒
とちゅうから、オガマーさんかなって思っていました。
いしよしも読ませていただいてます。

バラしたからって、やぐごま終わりじゃないですよね。
どの作品もすごく好きだったので、終わって欲しくないです。
待ってまーす!
271 名前:オガマー 投稿日:2002年12月05日(木)08時32分15秒
>名無し123さん
やぐごまスランプ気味です。
なかなか二人でいるシーンが見れなくて。
妄想が…止まってしまう状態です。
戻って来れるかどうかは、不明です。
ずっと書けないのに、待たせておくのも忍びないので…
272 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月05日(木)13時36分35秒
寂しい限りです
やぐごま不足が加速しそうです
273 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月08日(日)14時44分31秒
オガマーさんだったんですか!?
いしよしにはいつも萌えさせていただいてますw
ここのやぐごまもイイっすねぇ〜
是非、やぐごまの次回作を期待しております。
274 名前:名無し123 投稿日:2002年12月08日(日)19時09分07秒
丁寧なレスありがとうございます。
たしかに二人のシーンはありませんよね…残念ながら。
もし妄想が溢れ出た?ときは、ぜひ書いてください。

275 名前:オガマー 投稿日:2002年12月24日(火)00時16分50秒
>272 名無し読者さん
少しでもやぐごま不足を解消できるでしょうか。

>273 名無し読者さん
はい、私ですた(w

>274 名無し123さん
ちょこっとだけ書けました。

暖かいレスありがとうございます。
短編を。
276 名前:メールで繋がる、クリスマス。 投稿日:2002年12月24日(火)00時17分37秒
あ〜、大迷惑。
仕事が終わって、帰る電車の中、ずっと隣のヤツがクリスマスイブ聞いてるの。

゛きっと君は来ない〜一人きりのクリスマスイブ"

大迷惑。
大きなお世話。

なんだよ、ごっつぁん。
モーニング娘。はもう解散したってのに。

仕事おわんないの?
どうなってんだよ、捕まるぞー。

寒い…。
アナウンスが流れてドアが開く度にこの席冷えるっつーの。
277 名前:メールで繋がる、クリスマス。 投稿日:2002年12月24日(火)00時18分34秒
はぁ…。

…メールくらいくれてもいいのに。

と思ったら、ケータイがブルった。
うわ、ヤバ。
電源切ってなかったや。

え?ごっつぁん?
急いで本文を見ると
『ギャー間合わん 外 外』

は?
何??

外?

嘘……。

窓の外に視線を向けると、ごっつぁんがいた。
走ってる。
手振ってる。

あ…

ホーム切れちゃった。
ごっつぁんが遠ざかる。
278 名前:メールで繋がる、クリスマス。 投稿日:2002年12月24日(火)00時19分15秒
なんだったんだ…。
と思ったら持ったままのケータイに着信。

『走ったんだけど、間に合わなかった(涙)』

思わずクスッと笑って、慌てて口を抑えた。
ちょっと、涙滲んじゃうじゃん…。

電車を下りて、速攻電話した。
したら、留守電。

夜中にこっそりと入っていたメール。
会えるなら、あのチャンスしかないってよっすぃ〜から仕事終わった時に
メール貰ったらしい。

『ごとー頑張ったんだけどさ。2分、とか言われたんだよ?走ったけど間に合わなかった〜。』
クスクス嬉しくて、そんでちょっとだけ涙が滲む御前0時。
電話したい気もするけど、なんとなく楽しいからいーかな。

メールで繋がる、クリスマス。
279 名前:オガマー 投稿日:2002年12月24日(火)00時19分46秒


 fin
 
280 名前:オガマー 投稿日:2002年12月24日(火)00時20分38秒
更新終了ー。
281 名前:オガマー 投稿日:2002年12月24日(火)00時22分00秒
すげー短い(汗)。
書いた後で気付いたんですが、ハロプロのリハなら一緒な時間に
終わるのかな?まぁ、その辺はそれぞれ解釈を(w
みなさんも、よいクリスマスを・・。
282 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月24日(火)22時17分16秒
ちょっとだけやぐごま補充
この間のANNSはコメントだけだけど少し良い感じでした
早く18歳になってくれ
283 名前:名無し123 投稿日:2002年12月29日(日)14時52分17秒
わーい、やぐごまだ。
忙しさの中での二人の様子が、とってもかわいらしくてよかったです!
284 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月29日(日)23時03分47秒
もっとクレ−
もっとクレー
285 名前:オガマー 投稿日:2003年01月04日(土)02時43分07秒
レスありがとうございます!!

>282 名無し読者さん
コメント部分、かわいかったですね。
それにウケるヤグもかわいかったし。
ヨーヨーのこと、リハで知ってたってのもポイント高かったなぁ〜(w

>283 名無し123さん
ありがとうございます!!

>284 名無し読者さん
ちょっとですが、どうぞ(w

少し前、ゴチーン卒業の前ぐらいに書いてた話なんですが。
すごい短くてアレですがせめてもの…短編です。
286 名前:真っ青な空 投稿日:2003年01月04日(土)02時44分00秒
見上げた空。真っ白なでっかい雲が風に流されて2つに別れ、その一つが広い空に溶ける。
隣では、随分優しくなってきた日差しに目を閉じて寝息を立てる恋人。
バレーなんかをしている生徒から隔離されたように目の前には色褪せた卓球台が並ぶ。

(あの、大きな真っ白な雲は真希だ…。)

真里は、もう一度空を見上げ、さっきの片割れ雲を見詰める。
もうすぐ大学に上がる。
物理的に開いてしまう距離は、真里の心をどうしようもなく不安にさせた。

287 名前:真っ青な空 投稿日:2003年01月04日(土)02時44分37秒

「眩しー…。」

「……。」

隣の真希が何やら呟いたみたいだけど、他の生徒の声にかき消されてしまった。
ふいに目の前が霞む。
真里は真希の横顔をジッと見詰め、それからゆっくりと唇を重ねた。

規則的に繰り返される小さな寝息に、
声にならないため息を一つ吐き出し、また空を見詰める。

「好きだよ。」

妙にハッキリと聞こえた声に驚いて真希を向くと、眠そうな瞼を開けて真里に向かい微笑んでいた。
288 名前:真っ青な空 投稿日:2003年01月04日(土)02時45分18秒

「何、起きてたの?」
「いや、今のキスでっ。」

真希は人差し指を口に当てると、それをパッと離して見せた。
真里は今更ながら照れて頬が熱くなるのを感じる。

真希が真里の手を探り、指を絡め繋ぐ。
真里はもう一度そっと空を見上げた。
さっきの片割れ雲が、真っ青な空にスゥーと溶けて行くのが見えた。

キーンコーンカーンコーン−

「あ゛…もう行かなきゃ…めんどくさーい…。」

真希がそう言って、ほんとうにめんどくさそうに立ちあがろうとするのを真里は手に力を込めて止めた。
289 名前:真っ青な空 投稿日:2003年01月04日(土)02時46分04秒

「ん?」
優しい微笑み。
「フケちゃおっか?」
真里の言葉に真希はニコッと笑って。
「いいんですか?生徒会長さんっ。」
「今日1日ぐらいは許されるでしょ!」

頭上には真っ青な空だけが広く高くどこまでも続いている―――



fin
290 名前:オガマー 投稿日:2003年01月04日(土)02時46分44秒
更新終了。
もう少し長い話が書けたらなぁ…。
291 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月05日(日)00時09分17秒
新年早々やぐごま読めて嬉しいです
あーあ、でももう全然娘。と絡まなくなってしまったなぁ…
292 名前:オガマー 投稿日:2003年01月05日(日)02時14分25秒
レスありがとうございます。

>291 名無し読者さん
ほんとですよね。もっと絡んで欲しい…。

新作です。中編ぐらいのを書きました。
293 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月05日(日)02時15分08秒

それは暑い夏の日の出来事だった。

駆け足の、彼女とあたしの記憶。

294 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月05日(日)02時15分49秒

「えっ?」
「だからねー、部下の手違いで、同じとこ契約しちゃったみたいなんだよ。」
「は!?」

小さな不動産会社の事務所であたしは声を張り上げる。

「ど、どうするんですか?」
「あー、悪いけど、そちらさん二人で話し決めてくれないかな?」
「はぁ!?」
「いやいやいや、申し訳ないとは思うよ。でも、どっちかにあきらめて貰わないことには収集がつかなくてね…。だから、ほら。」
「ちょっと待ってくださいよ…。」

あたしはガックシと首をたれ下げる。

295 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月05日(日)02時16分27秒

親が転勤するって決まって。
それって出世したってことなんだって聞いたけど、あたしはこの土地に残ることに決めたんだ。だって…ここを離れたら…あたしの夢が叶えられなくなる気がして…。
親に無理言って、生活費だけは出してくれることになったけど、アパートも自分で決めなくちゃならなくて…。

それで、ここにやってきた。
数日前に部屋は見せてもらって。駅からは20分かかるけど、部屋がリビングも合わせて3つもついてて家賃6万はすごい安い…。見かけはぼろっちぃけど、お風呂もついてるし。
ってことで即契約に踏み切った。

なのに…

「あ、来た来た。」

あたしの相手をしていたオジサンが、そう言うと、不機嫌そうに顔をしかめた、丁度同い年ぐらいの子が自動ドアをくぐって入って来た。

296 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月05日(日)02時17分07秒

「あっちの部屋使っていいから、話し合ってくれる?」

オジサンはそう言うと、資料みたいなファイルされた紙をペラペラとめくりはじめる。


マジでぇー?

あたしはあるはずのない救いを求めようと、不機嫌な顔の彼女に視線を送る。

案の定、一瞬だけ合った目は逸らされて…
彼女は使っていいと言われた部屋の中へ入っていく…。

あたしもトボトボとその後について入る。

ドカッ
そんな音でも聞こえて来そうな座り方で、向かい合わせになっているソファーの一方に彼女が腰をかける。
なんか、この人ガラ悪いよぉ…。
297 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月05日(日)02時17分39秒

あたしもおずおずと座って…

「で?」

「は?」

彼女は冷静な顔で腕組をして、あたしを見詰める。

「アンタ、諦めてよね?あたし困るんだから。」

はい?

「ちょっと待ってくださいよ、そんなこと言われてもあたしも困ります。」

そうだ。弱気になってちゃいけない。
あそこを逃したら、思い描いた快適な一人暮らしがチャラになってしまう。

「でも、あたし、諦める気はないから。諦めるなら、アンタだよ?」
「っていうか、そっちが諦めてくださいよ。あたしも同じ気持ちです。」

あたしが少し強くそう言うと、彼女は茶色く抜いた長いの髪をバサバサと手で掻いて、ため息を吐いた。

298 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月05日(日)02時18分19秒

「面倒くさいな…。」
「……。」
「もういいや。一緒に住む?」
「は!?」

あたしはギョッと目を剥いてしまった。

「だーかーらー。」
「いや、ちょっと待ってください。一緒にって…。」
「それが嫌なら、アンタが諦める。どぉ?」

どぉ?って…。
この人、何??
思わず、ジィーと目の前の少女を見詰めてしまう。

…でも、ほんとにやっと見付けたんだよね…。
学校へも通っている芸能スクールにも一駅で着けちゃう部屋。
どうしたらいーんだろ…。
299 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月05日(日)02時19分10秒

「さっさとしてくんないかな?あたし、これからデート!なんだけど。」
「さっさとって…。」
「何?アンタさー、ズバッと決断できないのかな?あー、頭くんなぁ!」

そう言うと彼女は、背もたれに腕をかけてそっぽを向いた。

「わかったよ…。」
「え?」
「住めばいいんでしょ?」

あたしは気付いたらそう口走っていて…
目の前の少女は不敵にニコッと笑う。

サァーと血の気がひく。
もしかして、あたしってどんでもないこと言っちゃったんじゃないのかなぁ??

そんなこと考えてる間に、彼女はドアを開けて、「決まりましたー。」なんて言ってる。
300 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月05日(日)02時19分43秒

「じゃ、敷金、礼金はお二人で持つと、家賃も、ですね。」
「うん。」「はい…。」
「お名前は…」
「あ、こっちの人でいーよ。」
「はぁ!?」
彼女がそう言うのにでかい声をあげてしまった。
「…吉澤さん、でいいですか?」
冷静に聞いてくる事務のオッサン。
「…はい。」

なんかもう、疲れてきちゃった…。

契約書を見なおして、彼女と二人して自動ドアをくぐる。

「あたし、今晩には荷物入れるから。」
「へ?」
「じゃ、サヨナラ〜。」
「ちょっと!」
「何よ?」

面倒くさそうに彼女が振りかえる。

「アンタの名前…。」
「あ、後藤真希。よろしくね〜、吉澤さん!」

そう言いながらまた踵を返して手をヒラヒラと振った。


…あたし、どうなっちゃうんだろう…。

301 名前:オガマー 投稿日:2003年01月05日(日)02時20分33秒
更新終了。
302 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月06日(月)03時55分33秒

ウカウカしてらんない、なんて変なライバル心に胸を焦がして、あたしはその次の日の朝まで荷造りにはげんだ。
アイツに…部屋をいいように扱われてはたまったもんじゃない。

今日の11時には引っ越しセンターの人がやってくる。
女の人がやってくれるらしい。だからそこにした。
なんて言うか…あたし男って苦手なんだよねぇ…。

!?
アイツ…デートとか言ってたよね?
まさか…男連れこんで来たりとかしない!?

あたしは蒼白になる顔を感じながら、荷物を詰める速度をあげた。

303 名前:オガマー 投稿日:2003年01月06日(月)03時56分06秒

「ありがとうございましたー。」
あー、いい人だったな…。
引っ越しのお姉さん…。

アパートになんとか、荷物を運び終えた。
しかし…あの後藤真希、だっけ?は、部屋に入ったまま出て来ない。

時計を見ると1時。まだ寝てたりとかすんのかな?

それにしては、気になるのが玄関に置かれたミュールだ。
大きいのと小さいのが1つずつ。
どっちとも真希の…なワケない。
友達泊めてるワケ?
もう…

「……。」

ん?
なんか今、声が聞こえた?
あたしはそぉ〜っと真希が陣取った部屋のドアに耳を寄せる。

「ぁんっ…イくっ…真希ぃ……。」

……

304 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月06日(月)03時56分44秒


な、な、な、な、な…
何してんですか!?あの女!!!!!

女の人と…Hしてる…??

あたしは物凄い勢いでその場を離れて、自分の部屋に戻った。

とんでもない!
どんでもないことになったぞ!
何?あの人…そっちの気がある人なんだ…。
昨日のデートって女だったんだ…。


でも、それの方が都合いいかな?
だって、あたしは男が苦手。
彼女が俗に言うレズだったとしても…彼女がいるワケだし。
あたしには、何も悪いことはない、かも。
305 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月06日(月)03時57分15秒

「よっすぃ〜?」

ん?

トントンと扉をノックされる。

「そんなヤツほっときなってば。」
真希の声が聞こえる。

「ねぇ、よっすぃ〜ってば。」
それより、よっすぃ〜って…もしかして、あたし?

おそるおそるドアに近づいて開ける。

「何か?」
「へぇ〜、ほんとだ。キレイな顔〜。」

あたしは目線を一段おとす。
そこには、金髪の小さい女の人が立っていた。

306 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月06日(月)03時57分58秒

「ね、真希。仲良くするんだよ?」
「なんで…。」

真希はそう言ってそっぽを向く。
イチイチムカつくヤツだなぁ…。

「私、矢口真里。よろしく!よっすぃ〜。」
「あ、あの…、よっすぃ〜って…。」
「あ、あたしが考えたの。よっしぃーじゃ芸がないからよっすぃ〜、いいでしょ?」

彼女はサラッとした笑顔を浮かべた。
なかなかいい感じの人かもしんない。

「馬鹿みたいな名前つけんなって。」
「あ〜、真希妬いてるんでしょ?」
「だっれが…。」
「ほらぁ〜。」

矢口さんが真希に寄って行って、ほっぺたをつつく。
あ…
真希が笑った。
307 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月06日(月)03時58分30秒

なぁ〜んだ。結構かわいい顔して笑えるんじゃん。

…。
ふと、その笑顔に見入ってしまう。
なんだか、泣きたいような愛しさを…堪えるみたいな笑顔…。

あたしは、その瞬間、はじめて二人で暮らすってのも、いいかもね。なんて思ったんだ。
真希って人間に少しだけ興味が沸いた。
 
308 名前:オガマー 投稿日:2003年01月06日(月)03時59分37秒
更新終了。

なんか、恥ずかしい場面でタイトルと名前が入れ替わってる(汗
309 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月06日(月)12時58分24秒
やぐごまやった!前作の短編学園ものもすごく好きな設定でした。
生徒会長のやぐとか。
今回もがんばってください。
310 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月06日(月)14時38分45秒
矢後吉ですか?
311 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月07日(火)15時45分09秒
真希がワガママなせいで、ちょっとした言い争いをしながら、リビングに置く家具なんかを揃えた。
結構いい感じになった。

丁度玄関に真向かいの窓の側に、向かい合わせて椅子を置いて。
真ん中にはテーブル。

この部屋にあるのは、それと、冷蔵庫とレンジぐらい。
312 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月07日(火)15時45分55秒


夏休み中、スクールに朝から夕方まで通い詰で。
けど、真希ともあたしから話しかけることによってそこそこ仲良くなることができた。

笑顔を、あたしの前でも見せてくれるようになった。

うん、結構悪くない。

だけど…

気になってることがある。
真希は高校には行っていなくて。昼間はブラブラしてるなんて言ってるんだけど…
夕方から出かけて、真夜中に帰ってくることが多い。

…なんか危ない仕事とかしてるんじゃないかって。
まぁ、真里さんと会ってるとかならそれでいーんだけど…。
真希はあんまり自分のことを語ろうとしない。
上手く、はぐらかされてしまうんだ、いつも。

言いたくないことを無理に聞こうとは思わないし…。

313 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月07日(火)15時46分39秒

それと…

あ、またあの笑顔…。
あたしは、その瞬間、いつも泣きたいぐらいの衝動に狩られる。

真希と、真里さんと三人でご飯を食べてる。
たまに、そんな日はあって。

ね、真希。なんでそんなに泣きたいみたいな顔で真里さんを見るの?

すぐに、明るい真里さんの言葉にそんな疑問はかき消されて…。

しばらくすると真希が眠ってしまって、あたしと真里さんはちびちびと飲み物を口に運んでた。

「真希ってさ、愛想ないでしょ?」
「ん〜、確かに最初はそうだったけど、慣れるといい子ですよ。」

あたしが少し考えてそう言うと、真里さんはすっごく優しい顔で微笑みを浮かべた。

314 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月07日(火)15時47分27秒

「よっすぃ〜でよかったよ。」
「へ?」
「ううん。よっすぃ〜が真希の友達になってくれてよかった、って。」

いつもいつも、明るいこの笑顔に誤魔化されてることがあるような気がしてならない。
けど、それを聞くことを許さないのも…この笑顔なんだ。

胸にできるとっかかり。
毎日増えては、どこかへ消えていく。

静かな…月に照らされるこの部屋で。

真希が小さな声で唸ったのを、笑顔で見詰める。

この二人といると、あたしは不思議な感覚に支配される。
何かって聞かれてもわかんない。

そっと窓から月を仰ぐと、その答えを貰ったような気分になれた。

315 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月07日(火)15時47分57秒

不思議な不思議な同居人。


部屋を一個挟んだ屋根の下で眠る。
その時間だけは、どんなに笑っていても切れそうな静寂のようだった、と
記憶してる。

  
316 名前:オガマー 投稿日:2003年01月07日(火)15時51分39秒
更新終了!
レスありがとうございます!!

>309 名無し読者さん
ありがとうございます(w
生徒会長、ってとこが「ツボ」なんですよね、あの話しの(w

>310 名無し読者さん
あまり、その辺の期待はしないで頂きたいかな、と…。
317 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月08日(水)13時26分10秒
そして、夏休みも中盤にさしかかった頃、それは起こった。



「ただいまぁ〜。」
いつもよりは少しだけはやく帰ってきた真希の声が響いた。

「おかえり〜。」
自室を出てビックリした。

だって…真希の肩に知らない女の人がぶらさがってたんだもん。

「ああ、彼女行くところないって言うから、泊めてあげる。いいよね?友達だから。」
「…あ、うん。それなら別にかまわないけど…。」

「ん?」
なんだか、妙に高い声を出して、その人は顔を上げた。
どうやら酔ってるらしい…。目が開いてない…。

318 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月08日(水)13時26分53秒

「ほら、梨華ちゃん、一緒に住んでるひとみ。泊まらせてくれるって。そこの椅子で寝れるでしょ?」
窓の側の長椅子を指して、真希は言った。

「うん、ありがと。真希ちゃん〜。」
彼女はそう言って、真希の首にぎゅうっとまとわりつく。

「じゃ、あたし、もう寝るわ。」
真希は、梨華さん?を椅子に横たえて、それからタオルケットをかぶせてやると、自室に戻る。
「んじゃ、あたしも…。」
「おやすみ。」
ドアから顔を覗かせた真希が笑って。
「おやすみぃ。」
あたしもそれに笑顔で返した。

梨華さんをチラッと見ると、気持ち良さそうに唸りながら鼻を擦って…もう夢の中みたいだった。

319 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月08日(水)13時27分37秒

ベッドの中、考える。
どうしても気になってしまう。
真希って…何してるんだろう?
さっき、真希の身体からもアルコールの匂いがした…。

それは、遅く帰ってくる日は当たり前のことで…でも気付かない振りしてたけど…

駄目だ。駄目。
何、詮索してんだろ。
別にいーじゃん。同居人が何してたって。
真希は、結構いいヤツだし。

あたしは、本格的に眠ることに決めて、もう一度トイレに行こうと部屋を出た。

320 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月08日(水)13時28分18秒

「あ…。」
あたしは一瞬固まってしまう。

さっきまでそこで眠っていたはずの梨華さんが身体を起こして外を見詰めていたから。

グスッと鼻をすする音が聞こえる。

「…どうかしたんですか?」
あたしの言葉に彼女はやっと視線を合わせる。
「ううん。なんでもない…。」
少し鼻を赤くして、そう笑う彼女に胸がトクンと鳴った。

「ね、お酒、ある?」
「あ…真希が飲んでるのなら…。」
「貰っていいかな?」
「たぶん…。」

あたしはそう言うと、冷蔵庫に歩いて数本並んでいるライムチューハイを一本取って彼女の元へ届けた。

321 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月08日(水)13時29分02秒

「ありがと。」

彼女はそう言って微笑む。

「……。」
「どうしたの?」

タブを起こした彼女があたしに向いて…
あたしはボーッと彼女を見詰めていた自分に気付く。

「座る?」
彼女がそう問いかけて、あたしはなんかボーッとしたまま、向かいの椅子に座ろうとした。

「こっちでいーじゃん。」
と、彼女の腕をグッと掴まれて、同じ椅子にドシッと座らされた。
彼女が腕を絡めて…ライムチューハイを喉に通すと、あたしの肩に寄りかかってくる。

322 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月08日(水)13時29分46秒

…あたし…
すんごくドキドキしてる…。

外からのわずかな光にだけ照らされた彼女の顔が…とてもキレイで…。

「ね、ひとみちゃん、だっけ?」
名前を呼ばれただけで心臓が跳ねる。
「どうしたの?」
彼女が固まってるあたしを見てクスッと笑う。

だって…顔がすっごく近いんだもん…。

彼女の顔が柔らかい微笑みを浮かべて…
それから近づいて…

唇に…柔らかい…

!!!!!!!!!?

キス!?

あたしは驚いて目を見開く。
焦点の合わない、目を閉じた彼女の睫毛がすぐそこで少し揺れて…

323 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月08日(水)13時30分24秒

アルコールの香りのするキスは…その香りだけで…
あたしを酔わせた…
彼女に舌で唇をなぞられて、それから…
深いキスをした…


「なんで…。」
ぎこちなく、唇を離すと、俯いた彼女に問い掛ける。
「いーじゃない。そんなこと…。」
彼女があたしに身体を預ける。

その横顔が、すごく儚く見えて…
胸に渦巻いたいろんな気持ちは…
とうとうあたしの口を零れることをしなかった…
324 名前:オガマー 投稿日:2003年01月08日(水)13時31分07秒
更新終了!
325 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月09日(木)09時40分11秒
目が覚めると、もう11時を過ぎていた…。
今からでも、スクール行こうかな?

昨日のことを考える。

あのキスの後すぐに梨華さんは、「もう寝るね。」って笑ったから、
あたしはこの部屋に戻ったんだ。

そぉーっとドアを開く。

…いない。

どうやら、真希も梨華さんももうこの部屋にはいないようだった。
326 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月09日(木)09時40分47秒


昨日のアレはなんだったんだろう…。
あたしは…梨華さんが…。

レッスンでクタクタに疲れた体で、パタパタと階段を上って玄関を開ける。

「あれ?真希いたの?」

真希が窓辺に凭れかかってこっちを見ていた。

「おかえり。」
「ただいま。」

なんだか、いつもの笑顔に見られてるだけなのに…
梨華さんとのことがあったから、上手く視線を合わせられない。

「ひとみさぁ〜、梨華ちゃんとキスしたんだって?」

「は?」

驚いて顔をあげると、真希はニヤニヤと笑っていた。
327 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月09日(木)09時41分19秒

「すごいじゃん。今まで誰も梨華ちゃんをおとせなかったのに。」
「…あーのさ…。」

あたしは真希の向かいの席に腰掛ける。

「梨華さんって、何者?」
「あはは!やぐっつぁんの友達だよ。」
「あーそーなの?」
「うん、たまに、店に来るんだ。」
「店?」
「そぉ、あたしが働いてる店。」

もう暗くなった外をあおぎながら真希が言った。

「店って…。」
「あたしバーテンやってんの。レズビアンバーの。」
「あー、そうなんだ…。」

真希が話してくれたことに驚いて、それから嬉しくなった。
328 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月09日(木)09時42分01秒

「ねぇ、ひとみ…。」
「ん?」

机に頬杖をついて窓の外を眺める真希。

「月って…太陽がなくなったらどうなるんだろうね。」
「え?」

あたしは真希の言いたいことが掴めずに聞き返すと、真希はクスッとだけ笑った。

「太陽がなくなると、闇に紛れちゃうよね…。太陽がないと…駄目なんだ…。」

その時の真希の横顔は、どこか遠くへ消えてしまいそうなぐらい…綺麗だった。

だからあたしはわざと大きな声で言ったんだ。

「でもさ!太陽なくなったらさー、あたしらも生きてけないじゃん!困るのは月だけじゃなくない?」

329 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月09日(木)09時42分35秒

真希はそんなあたしを見て、微笑んだ。

少しの沈黙の後…

「そろそろ寝るわ。」
「あ、うん…。」

そう言って部屋に戻る真希を引き止めてれば…よかったのかもね…。


  
330 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月09日(木)09時43分08秒

朝起きると、妙な不安にかられた。

「真希?」
部屋をノックする。

返事がないので、焦ってドアをあげた。
カチャリと軽い音がして…

見た部屋はスッキリと、無機質に片付いていた。

起きたばっかの頭でなんとなく違和感を感じながら部屋をグルッと見まわした。

そんなあたしの目に、1枚のメモ用紙が映った。

「真里と旅行に行ってくるよ。これ、梨華ちゃんのケータイ番号。」

そこにはそう書かれていた。

331 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月09日(木)09時43分44秒


「いらっしゃい。」
ぎこちない笑顔を浮かべたあたしとは対照的に、梨華さんは華やかな笑顔を浮かべた。

「真希ちゃん、行っちゃった?」

ジュースを選んでいると、声がして振りかえる。

梨華さんは、テーブルに指の先だけつけて、そして窓の外を見詰めてた。

「あ、うん。」

「そっか…。」

なんで…
なんで梨華さんの肩は震えてるの?
ヤな…ヤな予感がしたんだ…

332 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月09日(木)09時44分20秒

「なんで!?なんで泣くのぉ!?」

あたしは梨華さんの肩を掴んでガクガクと揺さぶった。

「真里っぺと、真希ちゃん…もういないんだよ。」

あたしは、どっかでわかっていたその言葉を耳に流しこまれて、
ペタンと尻餅をついた…

思ったんだ…

あの月の夜…

最後に見た真希の笑顔…

「この世の…どこからも…いなくなっちゃった。」

梨華さんは、静かに、涙を零していた。
333 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月09日(木)09時45分03秒

真希と真里さんは…正真証明の姉妹だった。
異母姉妹。
それを知らずに巡り会った二人は狂おしいほど愛し合い…

そして、その、事実を、知ってしまった。

「なんでぇ…。」

梨華さんの話しを聞き終わった後で…
遅すぎるあたしの涙はやっと零れ落ちた。

受け入れて、しまった…。

お互いにしがみつくようにして…
梨華さんと抱き合い、泣いた。

月と太陽…
いなくなっちゃって…

あたし達にどう生きろって言うのさ…。

皮肉なことに、真夏の太陽は、うざったいぐらいそこに在る証明とばかりに
この部屋に眩しく、差しこんでいた。

  
334 名前:二人のお話。 投稿日:2003年01月09日(木)09時45分51秒

いつか、ベッドの上、梨華ちゃんが言った。
「案外、生きてるかもよ?」
「…。」
「この世って絶望してしまうには、惜しいものだってそう思わない?」
耳元でそう言う彼女に、あたしは笑顔で頷いた。




〜fin〜
335 名前:オガマー 投稿日:2003年01月09日(木)09時47分00秒
更新終了。
そして完結。
336 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月11日(土)12時10分36秒
姉妹だったんですか!
驚いた・・・。
337 名前:オガマー 投稿日:2003年01月12日(日)07時24分13秒
レスありがとうございます。

>336 名無し読者さん
そうだったんですね…。

新作です。
338 名前:for you. 投稿日:2003年01月12日(日)07時25分09秒
空が晴れていて…
あたしはそんな空を見ていられなくて、視線をおとす。
足元に見付けた空き缶をコン!と蹴っ飛ばす。

その音にハッとして、急いで空き缶を拾って近くにあったゴミ箱に投げ捨てた。
…何してるんだろう。

あたしは、悪い子なんだよね。
髪の色だって、校則に絶対引っかかるぐらい明るくしたし。
今まで、大事にしてた親にも冷たい態度を取ってる。
なんか違うって思っても…やめられないんだもん。

なんかムシャクシャして、空き缶を投げ入れたゴミ箱をガツン!と蹴ってやった。

339 名前:for you. 投稿日:2003年01月12日(日)07時25分57秒

「はぁ…。」

最近、いつもそう。気がつけばため息なんか零してる。

…みんなアイツが悪いんだ。
あたしに黙って…いなくなっちゃうから…。

馬鹿みたいないいわけってそろそろ気付いてる。
でも、頭をブンブンと振ってまた歩き出した。
340 名前:for you. 投稿日:2003年01月12日(日)07時26分31秒
学校ふけて、友達がバイトしてる開店前のクラブでちょっと話してそれから家に帰る。
お酒は…出されたけど今日も飲まなかった。

いつか、アイツに注意されたから…。
髪なんてキンパツの癖してさ…。
真希は子供だから飲んじゃ駄目だよ、って言った。
自分は、友達と飲んでる癖に…。全部知ってたんだよ。
それでも、守ってた。

守ったら…すごく優しい顔して笑ってくれるんだもん…。

「もう祐ちゃん!!」

前から発せられた甲高い声に心臓が止るかと思った。
あたしは、その声の主を確認して、もう一度息を止める。
341 名前:for you. 投稿日:2003年01月12日(日)07時27分03秒

「やぐっつぁん…。」

アイツがいた。なんか同じような髪の色した、随分大人な女の人を支えながら、細い路地をこっちへ歩いてくる。

どうしよう、どうしよう…。
あたしは俯く。
混乱してる。
あたしにやましいことはなんにもないはずなのに…。

声はどんどん近づいてきて…。
そして
あたしを通りすぎた。

嘘…。

やぐっつぁんだよね?
あたしは顔を上げて、その姿を確認する。
後姿だって…そのちょっとしか見えない横顔だって間違えるはずないっ!

342 名前:for you. 投稿日:2003年01月12日(日)07時27分42秒

「やぐっつぁん!」

あたしは叫んでからハッとした…。
やぐっつぁんはピタッと動きを止めて振りかえる。

あたしの顔を見て、それから隣の女の人に視線を運ぶ。
女の人はやぐっつぁんの顔とあたしの顔をとろんとした目つきで交互に見てる。

「あの…私?」

一瞬、何を言われてるかわからなかった。
けど、やぐっつぁんは確かにそう言ったんだ。

「知り合いか?」

酒が入っているのか、隣の女の人は関西訛りな口調で、怪訝そうにやぐっつぁんに尋ねた。

心臓がドクドク言ってるのがわかる。
343 名前:for you. 投稿日:2003年01月12日(日)07時28分17秒

「さぁ?」

その動作はスローモーションに見えた。
やぐっつぁんが首を少しだけ傾けて、不思議な顔をしてそう言った。

「え、何言ってんの?真希だよ、後藤真希。知ってるでしょ?」

声が震えてるのがわかる。
ジリジリと意識とは関係なく、やぐっつぁんのいる方へ一歩ずつ近づく。

「後藤、真希?」

あたしの足はピタッと止った。
嘘を…ついてるとは思えない。なんで?

「なぁ、矢口、祐ちゃん吐きそう。」
「はぁ!?」
「はよ、帰ろ?」

女の人にそう言われて、腕を引かれて…
やぐっつぁんはチラチラとあたしを気にしながら、歩いて行ってしまった。

344 名前:for you. 投稿日:2003年01月12日(日)07時28分49秒

あたしは動けなかった。
何?なんで?
やぐっつぁんだったよね?顔も声も身長も髪の色も…。
あの頃と何もかわらない。

変わっているのは…
あたしに向かった時に…もう優しい目をしてくれていないことだった…。
345 名前:オガマー 投稿日:2003年01月12日(日)07時29分31秒
更新終了。
346 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月12日(日)16時49分06秒
新作ヤター!
347 名前:for you. 投稿日:2003年01月13日(月)09時07分14秒
「どうしたの?真希…。」
家に帰るのを止めて、またクラブに戻ったあたしにひとみが驚いた顔をして言う。

もう開店時間は過ぎているから、ゆったりした曲が流れていて…グループが2組だけテーブルに座ってた。

「酒…。」
「え?」
「なんでもいいからつくって…。」
「でも…わかった。」

あたしの様子でなんか感じたんだろうね…。
いつもはひとみが勧めてあたしが断るのに。
348 名前:for you. 投稿日:2003年01月13日(月)09時07分55秒

しばらくすると、綺麗なピンク色に透き通ったカクテルが目の前に置かれた。
あたしはそれを手にすると、ゴクッと一口に飲み下した。
チェリーだけがコロン、とグラスの中で揺れる。

…あー、気持ち悪い。
あたしってお酒弱いのかな?
飲んだことないからわかんないや…。
でも、頭がグラグラする…。

やぐっつぁん、なんで?
駄目だ。駄目だ駄目だ。
考えてると頭がおかしくなっちゃう。

「おかわり。」
「…。」

ひとみはもう何も言わずに、同じのを出してくれた。
今度は、味がわかる。
チェリーだ…甘くて酸っぱくて…ちょっとだけ苦い。

「真希…。」

あたしは泣いている顔を見られたくなくって、カウンターに突っ伏した。

349 名前:for you. 投稿日:2003年01月13日(月)09時08分35秒


あたしはマクドナルドでバイトしてた。
毎日、それなりに楽しくて、友達もいて。
そんな時、やぐっつぁんに出会ったんだ…。

「真希、お客さん。」

隣のレジにいた圭ちゃんにそう言われて、あたしはハッとして振りかえった。
ん?
ハテナを一つ浮かべた後、あたしの視線はそのお客さんを捕らえた。

「あ…。」

小さかった。目の前にいなくて…視線を落として気付いた。
思わずそう呟いてしまったあたしに、そのお客さんは少しだけムッとしたようだった。

350 名前:for you. 投稿日:2003年01月13日(月)09時09分26秒

「あれ、矢口さんって人だよねー。」
「え?」

ハンバーガーの入った袋を持って、自動ドアをくぐっていく小さな後姿を見詰めてると、圭ちゃんがそう言ってきた。

「知らない?3年に金髪の子が転入したって話し聞いてない?」
「え?同じ学校の人?」
「そう。」

圭ちゃんは見えないかもしれないけど、まだ高校三年生で…。
あたし達、偶然同じ学校だった。
その学校に今のちっちゃいお客さん、矢口さんもいるらしい。

「3年に見えないよねー?」
「え?そう?」

圭ちゃんにそう言われたけど、あたしはそんな風には思わなかったな。
なんか表情とかが結構大人びてたっつーか。

「アンタ、珍しい。やっぱ珍しいわ。」

圭ちゃんはそう言って、なんだか一人で納得してた。そのうちにそっちのレジにお客さんが来て、『矢口さん』のことは忘れてしまっていた。

351 名前:for you. 投稿日:2003年01月13日(月)09時10分16秒

次に会ったのも、ちょっと衝撃的だったかな。
学校の図書室。
担任の先生に頼まれた言付けを、司書の人に伝えるために行ったんだけど。
言付けを伝えて、「さぁ、帰ろう。」と思って振り向いたら、
見覚えのある小さな背中が、背伸びをしてた。

どうやら、高いところにある本に手が届かないらしい。
あたしは、良心でやったまでだったんだよ。
届きにくそうだから、取ってあげた。

「これ?」

って。
そしたら、『矢口さん』はバッとその本を手から奪った。
352 名前:for you. 投稿日:2003年01月13日(月)09時11分04秒

「余計なお世話。」

そう言われた。

「…じゃ、はしご使って取ったら?」

あたしはついカチンときて、そう言った。普通の身長の人ならばはしご使うなんてとんでもない高さの本だったんだけどね。

「高所恐怖症なんだよっ!」

向こうもカッとしたみたいで…でも、言われた言葉につい笑ってしまった。

また怒られたけどね…。
でも、喧嘩してると司書の人に怒られちゃって、図書室を追い出された。

353 名前:for you. 投稿日:2003年01月13日(月)09時11分56秒

「どうしてくれるんだよ…。」

『矢口さん』は隣でそう呟く。
そう。本が借りられてない。

「だって、あたしがいなきゃあの本取れなかったでしょ?」

あたしがぶっきらぼうに言うと。

「アンタさぁ、さっきからあたしのこと馬鹿にしてるでしょ?」
「は!?」
「小さい小さいって思って馬鹿にしてんでしょ?」

『矢口さん』はすごく怒ってる。顔が真っ赤になってる。

「あ、ごめん。」
「はぁ!?」

謝ったのが、余計に火をつけてしまったみたいだった。
馬鹿にしてたわけじゃない。ムキになって、喧嘩になっちゃって…
本も借りられなかったことに謝ったんだ。
354 名前:for you. 投稿日:2003年01月13日(月)09時12分50秒

そう説明をすると、矢口さんは俯いてから。

「なんか、悪かったね…。」

って呟いた。
あたしはなんでだか矢口さんが気に入って、それからことあるごとに矢口さんに会いに3年の教室に行った。
矢口さんもかわいがってくれて…
呼び名も「やぐっつぁん」と「ごっつぁん」に変わって。

楽しかったなぁ〜、あの頃は…。

355 名前:オガマー 投稿日:2003年01月13日(月)09時14分17秒
更新終了!

>346 名無し読者さん
ありがとうございます。
がんがります。
356 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月13日(月)16時59分44秒
続きが気になる…。
357 名前:for you. 投稿日:2003年01月15日(水)13時55分15秒


「もしもーし?真希ー?」

肩を揺さぶられて目を覚ました。

「どこ?」

目の前にいたひとみに目を擦りながら尋ねた。
頭がボーッとしてる。なんかどっかの控え室って感じ?ロッカーが並んでて。
あたしは端に置いてあるソファーで眠ってた。

「クラブのバックルーム。」
「ああ…。」

なんか思い出した。
眩暈がする。
358 名前:for you. 投稿日:2003年01月15日(水)13時55分53秒

「気持ち悪い…。」
「飲めないのに飲むからだよ。」

ひとみはぶっきらぼうにそう呟いた。

「ごめん…。」
「ふふっ。で?」
「ん?」
「なんかあったんでしょ?話してみなよ。」
「ああ…。」

そりゃ、いきなり飲ませてくれなんつって来たら感づかれるに決まってるよね。
359 名前:for you. 投稿日:2003年01月15日(水)13時56分23秒

「やぐっつぁんに、会った。」
「…へぇ。元気してた?」
「…覚えてないんだよ。」
「え?」
「あたしのこと覚えてなかったの!やぐっつぁん!」

あたしは涙が溢れそうになんのを堪えて明るく言った。

「は?でも、5ヶ月?しか経ってないじゃん。なんで?」
「知らない。わかんない。」
「…記憶喪失、とか?」

ひとみがポツリとそう言った。
そんなわけないじゃん!
って笑い飛ばせはしなかった。
だって…さっきのやぐっつぁんの様子、それなら全て辻褄が合うんだもん…。
5ヶ月前に急にいなくなったことも、何かがあったんだとしたら…。
360 名前:for you. 投稿日:2003年01月15日(水)13時57分07秒

「そーかもしんない…。」
「へ?」
「マジでそーかもしんない!」

あたしは興奮してひとみの肩を揺さぶった。

「ちょっと落ちつきなって。矢口さん今どこに?」
「わかんない…。」
「へ!?」
「ショックで…すれ違って声かけて…それから、どっか歩いて行っちゃった…。」

ひとみは小さくため息を吐いて、

「馬鹿だねぇ…。」

って呟いた。
なんか優しかった。自分が思ってたことを誰かに指摘されると、ちょっとだけ気持ちが軽くなった。
まぁ、ひとみだからなのかもしれないけど。
361 名前:for you. 投稿日:2003年01月15日(水)13時57分59秒

「この近く?」
「うん。」
「なんか他に手がかりない?」
「あっ!金髪の人と歩いてた。」
「ガイジンですか!」
「違うよ…。」
「ジョークだよ。」
「笑えない。」
「…で、金髪って?」
「なんか年は…よくわかんないんだけど…20〜う〜ん30ぐらいかなぁ?そのくらいの年齢不詳な感じで、眉間に皺が寄ってて、酔っ払ってる人。」
「…なんかすごいなその人…。矢口さんの知り合いなのかねぇ。」

ひとみに言われてハッとした。
なんか妙に仲よさげだった。
胸がギュッて掴まれた。
362 名前:for you. 投稿日:2003年01月15日(水)13時58分58秒

「とにかく、従業員とかに聞いてみるわ。機会があったら店長にも。」
「ほんとに?」
「うん。」
「ありがと!」
「ははっ。なんか慣れねー。」

ひとみはそう言うと立ちあがって小さな冷蔵庫から、紙パックのジュースを取って口のみしてた。
363 名前:for you. 投稿日:2003年01月15日(水)14時00分37秒
次の日、退屈な授業にあくびをかみ殺しながら、ぼんやり思考を巡らせてた。
やぐっつぁんは、あの時のことも忘れちゃったんだよね…。


やぐっつぁんに呼び出されて、図書室に行ったんだ。
「これなぁーんだ?」
やぐっつぁんはニヤリと笑って鍵をチャリと鳴らした。
それは図書室の鍵で。

なんでも、やぐっつぁんは前に後藤と喧嘩になった時の本をまだ借りてなかったらしいのだ。もうあれから半年は経ってたのに。
で、司書の先生に鍵を借りてきたと『課題にどうしても必要なんです!提出しないと居残りで!』やぐっつぁんはその様子を演技付きで教えてくれた。

でも、あたしの頭には?マークが浮かんでた。
だって、嘘ついて鍵借りて…何するの?

「ごっつぁんに取って貰おうと思って。」

やぐっつぁんの後について図書室に入り歩いていると、そう言われた。
364 名前:for you. 投稿日:2003年01月15日(水)14時01分25秒

「あ、これでしょ?」

あたしは、出会いの衝撃もあったから、その本を覚えていて、サッと手に取った。
『精神…』?後は漢字が難しくて読めなかった。

「ごっつぁんさ、」
「ん?」
やぐっつぁんが妙に深刻そうな顔をして、俯き加減で話しかける。
「矢口が、これからどんなんなっても、変わらないでいてくれる?」
何故か、その声は張りつめていて、そして少しだけ震えていた。
「ん?どういう意味?」
「いや、矢口…ごっつぁん好きなんだ…。」

はにかんでそう言ったやぐっつぁんに心臓がバクバクと騒ぎ出した。
待ってよ、好きって言ったって、友達の『好き』かも。

「あたしも好きだよ?」

自分を落ちつかせて、さぐり気味にそう言った。

「嬉しい。」

やぐっつぁんはやっぱりはにかんでそう言って…。
答えは結局…いや、わかってたのかも。

365 名前:for you. 投稿日:2003年01月15日(水)14時02分25秒

司書の先生が来るまで、やぐっつぁんは図書室にいてもいいって許可を貰ってたらしくって、テーブルに本を広げて、真剣に読んでた。
あたしは眠くなってきちゃって。
すごく夢みたいな気分で目を閉じた。

やぐっつぁんは知らないでしょ?
あたしね、あの時起きてたんだよ。
やぐっつぁんが、そっと、眠ってるあたしのほっぺたにキスをしてくれたとき…。
  
366 名前:for you. 投稿日:2003年01月15日(水)14時03分07秒


「ごっちん何泣いてんの!?」
イキナリ肩を揺さぶられてビックリした。
前の席のおーやんが、目を見開いてあたしを見てた。
おーやんは変わった人で。不良でもないのに金髪なんだ。
先生からは注意されるけど、それにもめげない。
『もしも追い出されたら、学校はあたしには必要じゃなかった、ってことだから。』って言う。
変わった人だ。

だから、ちょっと悪ぶって不機嫌装ってるあたしにも平気で話しかけて来る。

「いや、なんでもない。ちょっと思い出して…。」
おーやんは、それ以上何も聞かないでくれた。
何かの歌を、前の席でずっと歌ってた。

それが、彼女のなりの『友情』なのかな?やっぱ変わった人。
でも、なんだか優しいのに面白いその歌はあたしの心を軽くしてくれた。


367 名前:オガマー 投稿日:2003年01月15日(水)14時04分48秒
更新終了。

>356 名無し読者さん
ありがとうございます!
368 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月15日(水)17時28分03秒
うぅ切ない・・・。
369 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)15時34分40秒

丁度、下校しようとしたとき、ひとみからメールが来た。
『とにかく店来て。』
そう言われて、行ってみると、あたしの指定席の隣の席に女の子が座ってた。
年は同じくらいかな?

「あ、ごっちん。梨華ちゃん、あの子がごっちんだよ。」
ひとみがそう言うと、梨華ちゃんと呼ばれた女の子は、
「私、石川梨華です。よろしくね。」
と愛らしい笑顔を浮かべて言った。

「で、何?」
「梨華ちゃんのお母さんなの。」
「え、何がさ?」
全然、意味がわかんない。
「金髪で眉間にシワの酔っ払い。」
「え…。」
フラッシュバックする光景。
370 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)15時35分24秒

「お母さんって…。」
あたしが呆然と呟くと
「うん。ひとみちゃんから聞いたけど、矢口さん、今ウチにいるよ。」
梨華さんはそう言った。
「……。」
あたしは何を言っていいやら、わからなくなる。
やぐっつぁんのあたしをあたしとして映さない目が蘇る。

「矢口さん、…真希ちゃんのこと忘れてるの?」
梨華さんはおずおずとそう聞いてきた。
あたしはコクリと頷く。
「そっか…。」

371 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)15時36分20秒

『明日の午後、学校が終わったらここ来てくれるかな?』
梨華さんの独特な高い声が頭の中をグルグル回る。
『矢口さんに会いたい?』
そう聞かれたとき、あたしすぐに頷けなかった…。

何かが、確かに変わっていたから…。
だけど、頷くしかできなかった。
あんな風に会った後でも、少しも変わらない気持ちが
この胸にあったから…。

  
372 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)15時37分03秒

あたしは結局、学校をサボってしまった。
登校しようとしたんだけど、どうしても行けなくて。
足が自然にこの店に向かった。

ひとみがすぐに梨華さんを呼んでくれて…。

「じゃ、いこっか?」
そう言う梨華さんに、あたしは、コクリと頷いた。

373 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)15時37分46秒

この間、やぐっつぁんとすれ違った路地の反対側の道。
すぐ近くに、梨華さんのお母さんがオーナーをしているって店は在った。

「そんなに、暗い顔しないで。けど、ちょっとだけ、辛いかもね…。」
まるで、自分のことみたいに笑う梨華さん。

足が、上手く動かない。

「ただいまー!」
梨華さんは明るい声でそう言って、店の裏口のドアを開けた。

「おかえり〜。」
あ、この声だ。
あの、金髪の女の人の声。

すぐに、あの人が顔を覗かせた。
そして、あたしに向いて笑った。

「いらっしゃい。矢口なら、上におるで。」
彼女はあたしに笑顔でそう言って
「ウチももうすぐしたら行くから、茶でも出したってや。」
と梨華さんに言った。

374 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)15時38分31秒

細い階段を上って

「ここだよ。」
と梨華さんが立ち止まる。

あたしが頷くのを確認してから、梨華さんは笑顔を見せて、そしてドアをノックした。

「はい。」
やぐっつぁんの声。
…やぐっつぁんの…。

鼻の奥が、なんかツンとして、溢れそうになる涙をグッと我慢した。

「私。入っていい?」

少しの間があって、先にドアが開いた。
「どうしたの?」
そう言って、顔を覗かせたのは、やっぱりやぐっつぁんだった。

「あ…。」
やぐっつぁんがあたしに気付く。
「友達?」

…わかってたけど、梨華さんに向かってやぐっつぁんがそう言った時、
胸がギュッてえぐられるみたいだった。
ちょっとだけ、期待してた。

ジョークだよ、ってなんでもない顔してあの頃みたいにやぐっつぁんが笑って…
『ごっつぁん』って、あたしの大好きな笑顔で、そう笑って…

375 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)15時39分04秒

「どうしたの?」
そう言って、あたしを覗いてきたのはやぐっつぁんだった。

あたしが目に涙にじませたの、気付いたんだ。
変わらないね、あたしのこと忘れても…。
やぐっつぁんはやぐっつぁんだ。

止めようという意識ももうなかったけど、勝手に涙がほっぺたを滑り落ちた。

やぐっつぁんは、少しだけ困った顔で梨華ちゃんに視線だけで尋ねてる。
梨華さんは曖昧に笑った。
376 名前:オガマー 投稿日:2003年01月16日(木)15時42分26秒
更新終了!

>368 名無し読者さん
なんかちょっと作者もブルー…。
377 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)16時03分48秒
連れて来られた別の部屋。


「あの子の病気はもう治らへんねん。」

「症状が進んだら、いつかは…。それももう遠くない話しや…。」

そんな言葉がフワフワ脳みその中で、浮かんで。
何言ってんのか、わかんないよ…。

『ほんとに聞きたいんか?』
『後悔せんか?』
そう、念を押された後だった。

駄目だね。
あたし馬鹿だから、やぐっつぁんの病気のこと何一つとして理解できなかったよ…。


頭がクラクラする…。
378 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)16時05分05秒

「アンタにとったら辛いことでしかないかもしらんけど、このままここでくらした方があの子にとってもええことやと思うんよ。」

あの金髪の女の人−裕子さんは、そう言った。

やぐっつぁんは、どんどん物事を忘れていく病気で。
記憶もなくしてしまう病気で。

「…それでもっ、やぐっつぁんといたいんです。」

あたしは、もうタダをこねる子供みたいだった。

「それは無理なんよ。あの子の症状はこれからどんどん悪化してく。
イライラするのはしょっちゅうやし、自分で『忘れた』ってことさえ認識できんから、
何度も何度も、同じことを繰り返したりやとか。
まず、ずっと一緒におることが一番大切やねん。アンタまだ学生やし、そんなことできんやろ?ウチは、看護士の免許持ってるし、梨華はフリーターやからな。
乗りかかった船や。店、誰かにまかせてでも看護してやろうと思てるよ。
矢口、ええヤツやねんな。症状進んできても、それだけはちゃんとわかる。」

「あたしは…。」

裕子さんの言葉を遮った。
379 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)16時05分52秒

−『矢口が、これからどんなんなっても、変わらないでいてくれる?』

「あたしは…やぐっつぁんが好きなんです。すごく好き…なんです。」

涙で声をつまらせながら…そんなことを言うのが精一杯で。

「何度も…さっき会ったのに、5分後にはアンタのことも忘れる日が来るんよ…。
好きやから、って気持ちだけではできんことがある。好きやから、尚更、できんことがある。
いつかな、体も動かんなって…生理的なことも自分一人じゃままならんなって…。
矢口が、矢口も、アンタのこと好きやったら、尚更それは…。」

裕子さんは言い辛そうに、何度も言葉を選んでそう話す。

「やぐっつぁん…。」

笑ったやぐっつぁんが、子供みたいにイタズラするやぐっつぁんが…。
妙に大人みたいな顔して、何かを真剣に考えるみたいな小さな体が…。

380 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)16時06分36秒

あたしの涙が一頻り溢れて、やっと収まりかけた頃、

「ちょっと矢口と話すか?涙拭いて、ほら。」

裕子さんはそう言って、優しくティッシュで涙をぬぐってくれた。


その時、裕子さんはあたしがやぐっつぁんに会うのをそれで最後にさせるつもりだったらしかった。


裕子さんの部屋に移動していたあたしは、やぐっつぁんの部屋の前に立ち、そしてそっとドアをノックした。

「はい。」
さっきみたいな声がして。
だけど、もう来てすぐの時よりかは、悲しい気持ちはしなかった。

『梨華さんの友達』
そんな風にあたしを見られることも…。

ただ、やぐっつぁんの声が聞こえるってことに胸が絞めつけられた…。
やぐっつぁんが、そこに、いる…。

381 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)16時07分19秒

「え、知り合いなの?ごめん…。」
あたしが何故ここにやって来たかって理由を話すと、やぐっつぁんは、すぐにそう言った。

「そんな顔することないよ…。」
あたしは精一杯笑ってそう言った。
そしたら、やぐっつぁんも、微笑んでくれた。

「ほんとに思い出せないんだ。家ももう思い出せなくて…。祐ちゃんが身元調べて
連絡は入れてくれたんだけど…。」
やぐっつぁんは、親戚の人たちと暮らしてるって聞いたことがある。
あんまり、いい人達じゃないっていつも愚痴ってた。

「あたしさ、貴方のこと好きだったんだろうね。」

やぐっつぁんが、いきなりそう言ってあたしは思わず顔をバッと起こした。
そんなあたしにやぐっつぁんは笑って

「なんか、そんな気がする。貴方が、あたしを好きでいてくれたことも。
だって、こうやって来てくれたぐらいだもんね。」
やぐっつぁんは、ほんとうに嬉しそうに笑った。

貴方が今言っている『好き』は、あたしの抱いてる『好き』とは違うんだよ。

胸が裂かれそうな感情も、やぐっつぁんが笑ってる顔をみてると、どっかにとんでいきそうだよ…。

そんなことを考えていると、急にやぐっつぁんがあたしから目を逸らした。

382 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)16時07分49秒

「どうしたの?」
なんだか、不自然な動作に思わず尋ねる。
「いや、なんでもない…。」

そう言う、やぐっつぁんのほっぺたが…赤く染まってる…?

嘘…。

「やぐっつぁん?」
「ん?」

そうだ…。間違いない。
やぐっつぁんって、嘘つくときとか、後ろめたいことがあると視線を絶対合わせない。
他の時は話しかけると必ず目をみて、話しを聞いてくれるのに。

そうなんだ…。
やぐっつぁん…。
383 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)16時08分22秒

「…ね、抱きしめてもいい?」
「え!?」

あたしは思わず、笑った。
喉が詰まって変な声が出たけど

やぐっつぁんはやっぱりやぐっつぁんだ…。

動揺するとすぐに態度に出る。
そんなとこも…大好きだよ…。

あたしは返事を待たずに、やぐっつぁんの側に寄ってギュッと抱きしめた。

「ど、どうしたの?」
「ん?いーじゃん。」
くぐもって聞こえる声に、あたしの涙声が重なる。


あたしは、目の前が滲んで…、
だって、こうやって抱きしめ合うのが、はじめてだったって気付いた…。

384 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)16時08分55秒

腕にスッポリと収まっちゃうその身体は、あの図書室でキスをくれたときと
同じ、コロンの匂いがして…。


こんな、皮肉な事実。
どんなに何を忘れても…

あたしを好きになるの?やぐっつぁん…。


「…泣いてるの?泣き虫だなぁ…真希ちゃん。」

『真希ちゃん』か…。
こんなに切なくても、こうしていたいって…
ずっとずっとこうしていたいって思うんだよ。

だって、やぐっつぁんが、優しく髪を撫でてくれるんだもん。
自分の方が断然ちっさい癖してさ。
けど、いつも、追いつけないほどお姉さんで…。

あたしの全ての思いが、やぐっつぁんの黒いパーカーに零れ落ちて、
染みこんでいく…。
385 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)16時09分32秒

「ごめんね…。」
ささやくような声がそう言って…。
あたしはもう我慢もせずに、しゃくりあげて泣いた。

やぐっつぁんは、なにも悪くないのに…。
そう、なにも…。


「もう、大丈夫。」
あたしは、嘘をついた。
そして、身体を離す時、一瞬だけ、その唇を奪った。

キョトン顔のやぐっつぁんを見て微笑んで、
あたしは、部屋を出た。

386 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)16時10分18秒

−カチャン

「うぅ…っく…ぁあー……。」

廊下にくずれおちる。

好きなのに…好きなのに…。
あたしには、何もできないんだ。

初めて交わしたキスは…涙でしょっぱかった。

「ん…っく……。」

やぐっつぁんが、いつか、全てを忘れて…
自分の名前さえ忘れて…

だけど、あたしは…
あたしは…



「うわーん……。」


  
387 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)16時11分03秒

わかってたんだよ。

『友達?』
次に梨華さんと一緒に部屋を訪れたとき、やぐっつぁんはまたそう言った。

あたしの恋は終わって、

でも、何度でも始まるんだよ。
だって、あたしが好きでしょ?やぐっつぁん。

まるで、はじめてみたいに恋におちて、はじめてみたいにあたしにドキドキするんだ。
全部、全部忘れても、あたしがちゃんと抱いてるから。
零れないように、全ての思い出をギュッと抱きしめてるから。



あの日、きっとその病気のことが載っていた本をあたしに取らせて、
そして、あの時言ってくれた言葉の意味を、

あの時、ほっぺたにくれたキスを…

あたし、都合いいように取っちゃうんだから…。

  
388 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)16時11分44秒

ガタンと揺れる電車。
やぐっつぁんの今日の調子はいいらしい。
裕子さんに、本を借りて。
大切なことは表にしてもらって。
バッグの中に入ってる。

あたしは、裕子さんに借金をした。

『はやいうちやないとな…。』
たった、1ヶ月だけの約束。
もしかしたら、それよりも短い期間で終わっちゃうかもしれないけど。

海辺の小さな家を借りて、そこでやぐっつぁんと住むんだ。
やぐっつぁんがずっと行きたがってた、『南の島』とは違うけど。
やぐっつぁんの好きな海が見えるよ。

許してね、やぐっつぁん。
あたし、やぐっつぁんに残された時間が少しでいいから欲しいの。
裕子さんとこにいるより、居心地は悪いかもしれない。
でも、許してね。

389 名前:for you. 投稿日:2003年01月16日(木)16時12分22秒
だって、こんなに好きなんだもん。
まだ、加速度をつけて、胸がギュッと熱くなるんだもん。

あたし達の恋は何度でも、繰り返す。
もう長くない、やぐっつぁんの命の為に。

その、綺麗な横顔を見詰める。
やぐっつぁんは、少しだけ微笑んで歌を口ずさみながら…。
覗けば否応なく感じる、真っ白になってきた瞳の奥も、なんかどうしようもなく愛しいんだよ。
側にいたいよ。

だから、

一生分の恋をあたしとしてよ、やぐっつぁん。
一生分の好きを、あたしは貴方にあげるから。

苦しさも切なさも涙もシッカリと抱きしめて。

貴方だけに恋をして、毎日を生きるから…。

「やぐっつぁん、ほら、海が見えるよぉ〜!!」








fin
390 名前:叶うならば、奇跡を 投稿日:2003年01月16日(木)16時13分18秒
「これ見るか?」

真希ちゃんと、矢口さんが乗りこんだタクシーが視界から消えた途端に
お母さんが、メモ張を差し出してきた。

「これ…。」
「矢口の使ってる引出しあるやろ。あそこにな…。」

お母さんは、目に涙を溜めてメモを見詰める。

「確信したんよね、これで。あの子らは一緒におるべきやって…。」

そのメモ張の最初のページには、鉛筆で書いたほんとに小さな字で『まきちゃん』
って文字がかかれてた…。


私は、もう一度タクシーが消えた道の向こうを仰ぐ。

ほんの少しでも、少しでいいから…
せめて、この一ヶ月、
あの二人に幸せな未来を…、

もしも、叶うならば、奇跡を…。


願うことしかできない自分が、物凄くはがゆかったけれど…。
391 名前:  投稿日:2003年01月16日(木)16時13分49秒


 fin.
  
392 名前:オガマー 投稿日:2003年01月16日(木)16時17分39秒
完結です。

この小説を書く(投稿する)にあたってすっごく悩みました。
少しだけ、申し訳ない気持ちです。
暗いだけの話しになってしまっている気がして。
それは、他でもなく私の筆力のなさなんですが…。
ここの矢口さんと後藤さんには謝りたい気持ちです…。
393 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月16日(木)17時44分26秒
悲しい話だったかもしれませんが、
自分の中ではある意味ハッピーエンドかなと思います。
今度は明るい話期待してます。
この作品を投稿して下さってありがとうございます。
394 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月16日(木)20時21分17秒
悲しいけれどとっても良い話だったと思いますよ
395 名前:オガマー 投稿日:2003年01月23日(木)00時26分10秒
>393 名無し読者さん
ありがとうございます。
こちらこそ、呼んで頂いてありがとうございました。

>394 名無し読者さん
ありがとうございます。
渦巻いた気持ちをかき消して貰いました。

明るい話しではない気がしますが、
短編書きました。
396 名前:蜘蛛の巣 投稿日:2003年01月23日(木)00時27分03秒
「ね、キスしよっか?」

ダークなクラブの一角。
誰の邪魔になることも気にせず、細い廊下でそう呼びかけて
肩に手をかけた。

「え…。」

彼女のことさえ気にせず、ムリヤリ引き寄せた腕で
彼女の唇を奪う。

案外、スンナリと彼女はそのキスを受け入れて。
面白くないなー、もっと抵抗してよ。
アンタなら、アタシなんて簡単に突き飛ばせるでしょ?

397 名前:蜘蛛の巣 投稿日:2003年01月23日(木)00時27分41秒
違うか。
ほんとは突き飛ばして、そんで、それから、
アタシをめちゃくちゃにして欲しいの。

アンタになら、それができるでしょ?

唇が、微かな余韻を引き摺りながらはがれる。

彼女の肩に腕をかけたまま、
ベタンと、壁に寄りかかって

「ね、なんで?」

彼女はアタシのお腹の辺りを手でゆっくりとなぜる。

アタシは、もう一度グッと彼女の首を引き寄せると耳元ギリギリまで唇を近づけて言った。

「いいコト、しようよ。」

  
398 名前:蜘蛛の巣 投稿日:2003年01月23日(木)00時28分29秒

「あっ…。」

流石、そこそこ高級なクラブだけあってトイレも綺麗で個室も広い。
彼女に抱きついたまま、抱えられて
彼女の体に足を絡ませたアタシは、冷たい便器のフタにガシャンと乗っけられた。

「矢口さんって、そういう趣味のある人だったんだ。」

名前、呼ばないでよ。
でも、アンタがそうやって笑うの嫌いじゃない。

「んっ…。」

唇が、抵抗する合意の元に強引に奪われる。
そんな野蛮な空間。
紫のライトは、彼女の背中を熱く感じさせた。

そのシャツが破れるほど爪で引っ掻いて。

399 名前:蜘蛛の巣 投稿日:2003年01月23日(木)00時29分02秒
「んぅ…。」

窒息しそうになって、頭の隅だけが微かな酸素を求めて巡る。

その手が、胸に這ってきて、それから敏感な突起を掠める。
チョンチョン、とイタズラするみたいにブラの上から触れる指は、
彼女の笑顔にとても似てる。

服が無造作に剥ぎ取られて、それから、荒い、息が響く
小さな部屋の中。

耳を這う舌は、まるで意志を持っているように巧みにアタシの形をなぞる。
やけにスゥースゥーする胸元を、彼女の熱い手のひらが撫ぜて、
痛いくらいに掴まれる。

そんなやり方にだって感じる。
アタシ、どうかしてる…。

400 名前:蜘蛛の巣 投稿日:2003年01月23日(木)00時29分35秒
「ぁっ…。」

声を出すのが嫌で。
かみ殺す、自分にゾクゾクしてる。

「んんっ…。」

耳元で彼女が低く囁く言葉は、全部濡れた卑猥な言葉に代わる。
遠ざかりながら色褪せてく視界の中。

蜘蛛の巣を見付けた。
天井近く。

ゾクゾクして、背筋が震える。

「もうイッちゃったの?」

もう…イッちゃった。
401 名前:蜘蛛の巣 投稿日:2003年01月23日(木)00時30分13秒
「アンタの、せいじゃん…。」

そうだよ。
アンタのせい。

アンタのその笑顔が好きなの、アタシ。
愛しい恋人には絶対に見せないような。

その笑顔が好きなの、アタシ。

だから、

「もう一回、シテよ。」

ほら、その笑顔が…。
狂いそうなほど、…好き。
402 名前:蜘蛛の巣 投稿日:2003年01月23日(木)00時30分45秒


fin.

  
403 名前:オガマー 投稿日:2003年01月23日(木)00時31分33秒
更新終了。そして完結。
相手の名前はでてきてませんが、もちろんあの人ですよ(w
404 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月28日(火)23時25分51秒
ほんのりと萌えさせていただきました(w
405 名前:オガマー 投稿日:2003年02月10日(月)05時44分52秒
>404 名無し読者さん
レスありがとうございます。
よかった(w

また短編ですが、今度は明るい感じかと…(w
406 名前:けどさ。 投稿日:2003年02月10日(月)05時45分38秒
「一人暮らししよっかなぁ…。」

ガヤガヤと他の娘。達が騒ぐ部屋。
今日はごっつぁんが来てても絡んで来ない辻加護にほっとしながら、
楽屋でモニター見てると、側のごっつぁんが小さな声でそう言った。

「何?」
「だから、一人暮らしをね。」
「なんで?」
「ん〜?」

ごっつぁんは、曖昧な間延びした声を出すと、右手で髪の毛をサラッと梳かした。
407 名前:けどさ。 投稿日:2003年02月10日(月)05時46分15秒

「なんかよっすぃ〜の話し聞いてると、いいなーって…。」

チラッとオイラの顔を見る。
ごっつぁんのその視線が、イタズラをして怒られることがわかっている時のクッキーの顔みたいで
ちょっとクスクスした。

一瞬一瞬が
胸が熱くなるのを、誤魔化すみたく…
いや、ほんとは熱いのを膨れ上がらせていくだけ。

そっか。石川一人暮らしだもんね…。

「できんの?」

オイラはちょっとだけ、からかうみたいな口調でそう尋ねる。

408 名前:けどさ。 投稿日:2003年02月10日(月)05時47分03秒

「できない。」

ごっつぁんはそう言ってニヘラと笑った。

「なんだよ、それぇ…。」

ちょっとだけ期待したのに。
いや、別に本気で一人暮らしして欲しいわけじゃ…
して欲しいけど…
無理させるつもりじゃない。

けどさー…

「でも、もっと一緒にいたい…。」

モニターを見詰めてふいにそんなこと言う顔は少しだけはにかんでて、そんでちょっとだけほっぺたが赤い。

409 名前:けどさ。 投稿日:2003年02月10日(月)05時47分48秒

あー、どうすればいーんだろう。
ギュッて抱きつきたい。
手を繋ぎたい。

こんな気持ちにさせて…
させて欲しかったんだけどさ…

なんか、いや、でも、やっぱり…

ごっつぁんの膝の上の手をギュッて握った。
こういう時、駄目なんだよねぇ…。
オイラは、ごっつぁんの顔を見ることができなくて、モニターだけに視線を送る。

なんだか、あやされるみたく、一度浮かんだ繋いだ手は、
ごっつぁんの力が篭って、温かい。
410 名前:けどさ。 投稿日:2003年02月10日(月)05時48分27秒

「次、地方いつだっけ?」
「え?」

ごっつぁんがキョトンとしてる。

「なんでもないよ…。」

オイラがそう呟くと、ごっつぁんは真面目な顔して繋いだ手を何度も振った。

「2日も、待てないよね。」

しばらく経って聞こえたその声に、聞こえてない振りしたけど…


その後、わざと手を解いて二人で駆け込んだトイレで、触れるだけのキスをした。
411 名前:  投稿日:2003年02月10日(月)05時49分10秒

fin.
   
412 名前:オガマー 投稿日:2003年02月10日(月)05時49分53秒
更新終了。そして完結。
413 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月10日(月)08時35分40秒
キタ━(-^◇^-)━( -^◇)━( -^)━(  )━(^- )━(◇^- )━(-^◇^-)━!!!

待ってたよ
414 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月11日(火)00時20分17秒
最後の一行だけで「詩」になってる・・・。

もっと読ませて下さいね、オガマーさん。
415 名前:オガマー 投稿日:2003年03月10日(月)08時55分41秒
>413 名無し読者さん
>414 名無し読者さん
ありがとうございますー。
またまた短編ですが、どうぞ(w

リアルっぽいですが、上のとは繋がってないかな・・。
416 名前:shitto 投稿日:2003年03月10日(月)08時56分21秒
「矢口、愛してる!」

!?

「とか言われたい?」

3つ年下の恋人はそう言ってニヤリと笑った。
ビ、びっくりしたぁー。

落ちつけ、しんぞー。
そんなにドキドキすることでもないじゃん。
417 名前:shitto 投稿日:2003年03月10日(月)08時56分57秒

そうそう。ごっつぁんは、ただこのドラマのセリフを真似して…
いいなー、こんなセリフ。とか思っちゃってるオイラに
ただ単純に、オモシロ半分に言ってみただけであってぇ…
タイミングは確かにバッチリだったけど…

「あはっ!赤くなってる。」

ごっつぁんにほっぺたをプニプニつつかれて、
どうすることもできずにジッと膨れる。

空回りするテレビの中のセリフ。
何時の間にかほっぺたを離れた指先が
急に不安になって、隣を見てみると、ごっつぁんは
なんでだかしんないけど、…拗ねてた。

418 名前:shitto 投稿日:2003年03月10日(月)08時57分28秒

「…何。」

なんだかいじけモード入っちゃってる横顔に尋ねる。

「ん〜?」

いつものパターン。
拗ねちゃったら「ん〜?」しか答えない。

「どうしたの…。」

オイラが拗ねるのはわかるけど、君が拗ねるとこじゃないでしょ。
今のは…。

ゆっくりと移動して、ごっつぁんの隣にピッタリ身体をくっつけると、
お腹の辺りをくすぐってやる。

419 名前:shitto 投稿日:2003年03月10日(月)08時58分05秒

「わっ!」

バッと体を逸らして、それでもオイラの手から逃れられないごっつぁんは、
反撃に出て来た。
オイラの手首をギュッと掴んで、それから…床に…
押し倒す…!?

茶色く透けた髪がサラサラとごっつぁんの背中から降りてきて、
ギュッと掴まれた手首が痛い。

「…何?」

ちょっと、ドモっちゃった…。
ごっつぁんは、真面目な顔でオイラの首筋にゆっくりと顔を埋めて…


   
420 名前:shitto 投稿日:2003年03月10日(月)08時58分56秒

「ね、なんで怒ってるの?」

いつになく激しく愛された後で、ダルい体をそのままに首だけ動かして尋ねる。

「なんか悔しかったから…。」

聞き取れないぐらいの小さな声。
天井を見詰めた横顔が、不機嫌を物語ってる。

「何が?」

肩にかかった髪の毛を指先で梳かしながら。
ごっつぁんの口から飛び出した言葉は、さっきのドラマに出てた男優の名前だった…。

421 名前:shitto 投稿日:2003年03月10日(月)08時59分42秒

「なんで笑うのぉー?」

怒った顔。
だって、おかしいよ…。
なんか、可笑しくて矢口、涙出てくんだけど…。



fin.
422 名前:オガマー 投稿日:2003年03月10日(月)09時00分29秒
更新終了!そして完結!!
423 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月10日(月)15時32分54秒
オガマーさんのやぐごまは独特の雰囲気あって良いですね
特にリアル物大好き
424 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月13日(木)22時50分13秒
ヒサブリの更新ー!
425 名前:オガマー 投稿日:2003年03月29日(土)01時13分46秒
レスありがとうございます!!

>423 名無し読者さん
独特の雰囲気ですかー。
嬉しいです。

>424 名無し読者さん
ありがとうございます。
また、待たせてしまいました…。

Mステでイメージが沸いてきました。
またまた短編ですが(汗
426 名前:a rainy day 投稿日:2003年03月29日(土)01時16分08秒
なんで、こうやって雨に濡れてると、何もかもどうでもよくなってくるんだろうね…。

ほら、ほっぺたを涙が流れても、誰も気付かない。

あたしは、今、傘を持っていない…。

何してんだろう?
何してる?
あたしのこと、好き?

ねぇ、あたしのどこが好き?
427 名前:a rainy day 投稿日:2003年03月29日(土)01時17分14秒

こんなにもしょうもなくって…
こんなにも…ネガティブなあたしの…。

マンションの階段に、足跡と雫を残して。

押したインターホンは、少しだけ暖かい音がした。

428 名前:a rainy day 投稿日:2003年03月29日(土)01時17分50秒

「…どうしたの?」

Tシャツでもろボーッとしてましたムードのごっつぁん。

目を大きく見開いてあたしを見る。

なんかね、寒いの。
すっごく、寒いよ。

「ちょっ、取り敢えず、これで拭きな!」

上から下までビショ濡れで
髪の緩いパーマなんか取れちゃってるあたしの頭に、バスルームから引っ張り出してきた
バスタオルをかけて

ワシャワシャと拭いてくれる。
濡れちゃうよ、ごっつぁん。
429 名前:a rainy day 投稿日:2003年03月29日(土)01時18分26秒

「え、泣いてる?」

ごっつぁんの慌て方が、かわいくてつい笑ってしまった。

「寒い、ごっつぁん…。」

自分でわかるほど鼻声で、それから歯がカタカタと震える。

「ん?寒い?」

ごっつぁんは、そう言うと一通り水をぬぐったあたしの体ごと、ギュッと抱きしめてくれた…。
あったかい…。
でも、あたしは冷たいでしょ?

ねぇ、ごっつぁん…。
430 名前:a rainy day 投稿日:2003年03月29日(土)01時19分10秒

「なんかあった?」

あたし何してんだろうね。
2コも年下のコに甘えてるのかな。

あきらかに温度が違う腕。
ちょっと、鳥肌立てちゃってるごっつぁんの腕。
ごめんね、寒いよね。
でも、離して欲しくないんだ…。

「ん。やぐっつぁん、とりあえずお風呂入ろう。話はそれから聞くから。」

あたしは、体を離そうとしたごっつぁんにまた涙が溢れてきて…。
だから、ギュッとしがみついて

「一緒に入ろうよ…。」

って、震える声で言った。

431 名前:a rainy day 投稿日:2003年03月29日(土)01時19分41秒

「ん?あー、いいよ…。」

きっと顔真っ赤でしょ?
子供の癖に、ね…。

なんで…ごっつぁんに抱きしめられただけで
こんなにあったかくなれるんだろうね…。



   
432 名前:a rainy day 投稿日:2003年03月29日(土)01時20分16秒
ユニットバスに体を向かい合わせて沈めて。

「何があったのさ?」

さんざん笑って、洗いっこしたあとだから、あっけらかんと尋ねてくるごっつぁん。

あたしは、ブクブクと真っ白いお湯に浸かった。

「やぐっつぁ〜ん?」

ちょっと甘えるみたいな声でごっつぁんがあたしの名前を呼んで。

だから、あたしは、顔を出した。
433 名前:a rainy day 投稿日:2003年03月29日(土)01時20分49秒

「特に、なんも…。」
「ん?」
「特になんもなかったんだよねぇー。」

自分でも、あきれる。
なんであんなに寂しい気分だったのか、わからないんだもん…。

「なんだ…。」

チャポンと音を立てて、ごっつぁんの肩が沈む。

「よかった。」

なんで…
なんでそんな優しい顔で笑うの?

ごっつぁんの腕を引っ張って、それからギュッてしがみつく。
434 名前:a rainy day 投稿日:2003年03月29日(土)01時21分25秒

「ん〜…。」

ごっつぁんが肩口に顔を埋めるのがわかって、くすぐったくなる。
鼻の奥が…ツーンとする…。

「ヤにならない?」
「ん?」
「あたしのこと…。」
「なんで?」

あたしの髪の毛先を指先でクリンと弄りながら。

「嫌になるわけないよ。」
「…。」

涙が…出る…。
435 名前:a rainy day 投稿日:2003年03月29日(土)01時22分02秒

「こうやって、来てくれないと、心配であたし死んじゃうかも。」

ごっつぁんが息だけで笑う。

ただ、会いたかったのかも。
うーんと、優しくして欲しかったのかも。
その笑い声が…聞きたかっただけかも、って思った。

「泣き虫ぃー。」
「うるさいー。」
「あ、なんか泣きそうになってきた。」
「なんでよ?」
「ん?わかんない…。」

ほんとに、泣きそうな顔すんなよ…。
愛しい…愛しいなぁ、ごっつぁん。

436 名前:a rainy day 投稿日:2003年03月29日(土)01時22分46秒

「っていうかごとー。」
「ん?」
「ハナヂ出そうになってきたぁー。」

…どこまでも3枚目なんですか?
上がってもいいけどさ…。
その後も、いっぱいいっぱい抱きしめてくれるって、
約束してね…。

いっぱいいっぱいいっぱーーーーい、抱きしめてくれなきゃヤだよ。
ね…?ごっつぁん。



fin.
437 名前:オガマー 投稿日:2003年03月29日(土)01時23分18秒
更新終了。
そして完結ー。
438 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月29日(土)03時26分58秒
うーん幸せ
夜更かしして良かった

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