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(EU)
- 1 名前:(EU) 投稿日:2002年09月05日(木)00時48分29秒
- 最近やぐちゅー多いんですけど
どうしても自分でも書いてみたくなり
たててしまいました。
掲示板に小説書くのは初めてなので
改行、長さなど読みにくいところが
あったら教えてください。
元ネタありのアンリアルものです。
でも書いているうちに違う方向にいきそうな……
- 2 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)00時50分38秒
- 新大久保のさびれたビリヤード場、その入り口の横にある階段を
小柄な少女が勢いよく駆け上がっていく。
階段を登ったところにはドアがあり、その横の木でできた表札には
豪快に【中澤裕子】と、そしてその横にはマジックで
ちっちゃく【矢口真里】と書いてある。
少女はそのドアを勢いよく開けて、靴も脱がずに中に駆け上がっていく。
もう午後3時でもあるにかかわらず、カーテンを締め切っているため
部屋の中は真っ暗、しかし少女はどこになにがあるか分かっているかのように
床にころがっているビールの空き缶を巧みに避けながら、
部屋の奥まで一気に走り、ベッドに飛び乗る。
- 3 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)00時51分40秒
- 「裕ちゃん、いつまで寝てるの! 仕事だよ、1ヶ月ぶりの仕事だよ!」
少女はふとんを必死に揺すって起こそうとするが、ふとんの中の固まりは
もぞもぞと動くだけで、顔を出す気配がない。
「ん、もぅ〜」
少女は軽く頬を膨らませてから、いたずらな笑みを浮かべてふとんの中に潜り込む。
「うわっ! 酒くせ〜」
そういいながら、ふとんの中でもぞもぞと動き始める。
「ん……んぁぁん…やめてえな…んぁぁ……」
ふとんの中から艶めかしい寝ぼけた声が漏れ始める。
「んぁぁ…ぁん…ぁぁ……!!!…………なんやぁぁぁぁー!」
ふとんの中からはだけたパジャマの胸元を押さえながら、
この部屋の主、中澤裕子が飛び起きる。
「や、矢口! 朝っぱらから何しとんねん?」
よほど驚いたのか、その目は見開き、呼吸は荒い。
「うふふ、もう裕ちゃんを起こすの大変だから、いろいろ考えたんだよ」
頭からかぶっていたふとんから顔を出して、
少女、矢口真里はしてやったりという満足そうな笑みを浮かべる。
- 4 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)00時52分58秒
- 「わかった。うちが悪かったから、次からちゃんと起きるから、
もうこの起こし方やめといてな」
裕子は、頭をかきながらベッドからだるそうに起きあがる。
「もっと、違う起こし方もあるやろ。例えばコーヒーとトーストの匂いで起こすとか、
キスで優しく起こ、グォッ!」
ぶつぶつ文句を言い続ける顔に、真里の投げた枕が直撃する。
「この汚い部屋で料理なんかする気になるかぁ!
それにキスだって一度やったことあるけど
その時、結局ベッドに引きずり込まれて遅刻しそうになったじゃんかよぉ!」
「そんなことあったかぁ?」
とぼける裕子を軽く睨みながら、真里はカーテンを開き窓を開け、
部屋の中に太陽の日射しと新鮮な空気を入れる。
そして、まだとろ〜んとしている裕子に向かってバスタオルを投げつける。
「ほら、1時間後には事務所にお客さんが来るんだから、
とっととシャワーを浴びて目を覚ますのっ!」
- 5 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)00時54分16秒
- 「なぁ矢口〜、うち、眠うて眠うてしょうがないんや。
いまシャワー浴びたら、寝てもうて溺れちゃうかもしれん。
なぁ、一緒に入ろ〜」
裕子が真里にもたれかかる。
「だめ!いや!早く入れ!」
散らかった空き缶を片づける真里は振り向きもしない。
「なんや、このごろの矢口は初々しさがないな」
そんな裕子のつぶやきを聞きながら真里は心の中で微笑む。
──ふふ、もしここで矢口がいいよって言ったら、慌てふためくくせに──
「昔は赤面して、慌ててくれたのにつまらんなー」
裕子はぶつぶつ言いながら、バスルームに入っていく。
そして、ひょこっと首を出して
「なぁ矢口ぃぃ〜、一緒にはいっ!がっ!」
裕子の顔に真里の投げた空き缶が当たる。
「さっさと入れ!」
- 6 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)00時55分11秒
- 新宿から代々木に向かって少し歩いたところにある
裕子の部屋とはまったく違う高級マンション。
ここの一室が裕子の事務所である。
部屋数も3部屋あり、もちろんバス、トイレ、キッチンも完備している。
真里は一度、何でここに住まないのか聞いたことがあったが
「落ち着かないんや」
それが裕子の答えだった。
依頼人が来るまでまだ15分くらいあるので
真里はコーヒーを入れ始め、裕子はソファーに座って新聞を読み始める。
「ねぇ裕ちゃん、久しぶりの仕事だね。でもそんなやっかいな事件じゃないから
ほどほどでいいよ」
「んん?」
いつもはっぱをかける真里のらしくない言葉に裕子は首をかしげる。
「なんや、珍しいなぁ。もちろんそのつもりや」
そのときチャイムがなり、来客を知らせる。
- 7 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)00時58分22秒
- 真里が依頼人を出迎えにいき、裕子は少し厳しい表情をする。
裕子の腕の噂を聞いて、依頼人はけっこうくるのであるが
華奢な裕子をみて、明らかに不安な表情を浮かべる人間が多い。
そんな人間に対して下手に出てはなおさら舐められる。
だから、裕子は最初に思いっきり睨みをきかして依頼人に会うことにしていた。
ただ一つの例外をのぞいて。
「依頼人の安部なつみさん」
真里に紹介された依頼人を見た瞬間に、裕子の表情が満面の笑みにかわる。
そう例外とは依頼人が美女の場合。
真里は予想通り、なつみのルックスが裕子のストライクゾーンであったことに
頭を抱える。
- 8 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)00時59分24秒
- 「本当にボディーガードなんていいんですけど、でも父が心配性で…」
なつみは北海道の大牧場の一人娘で、大学受験の塾の夏期講習を受けるために
東京に一ヶ月ほど滞在することになったのだが、娘を溺愛する父が東京での生活を
心配し、ボディーガードとして裕子をやとったのだ。
「いやお父さんの心配ももっともですよ」
裕子の言葉が標準語になり、それと同時に真里の顔が曇る。
「なつみさん、東京は危険よ。私がちゃんと守ってあげるからね」
なつみの手を握る裕子、わなわなと震え始める真里。
きりっとした表情でなつみの目をじっと見つめる裕子。
心なしかなつみの頬がほんのり赤くなる。
裕子は不思議と女性にもてる。
「うちなぁ、女の子からしかラブレターもらったことないんや」
そんな自慢を裕子がしていたことを真里は思い出す。
なつみの可憐なルックスを見たとき、裕子が一方的に惚れることだけを
心配していたが、真里は自分の認識が甘かったことを思い知らされる。
「ちょっといいですかぁ」真里はなつみと裕子の会話に割り込んだ。
- 9 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時01分01秒
- 「裕ちゃん、標準語になっているよ」
別室に裕子を連れていき、真里は裕子を睨み付ける。
「標準語…あっ」
裕子は気に入った女の子と話すとき、無意識にそうしてしまう癖があった。
真里に一度指摘されてから、直そうと何度も試みたが
つい好みの依頼人が来たときに、きりっと見せようとして出てしまう。
「あちゃぁぁ〜」
恐る恐る真里を見る。
「裕ちゃん、なつみさんは依頼人なんだからね!」
なつみの前に戻ってきた裕子と真里。
「あの……何か問題でもあるんですか?」
心なしかシュンとしている裕子を見て心配そうになつみが聞く。
「あ、何でもないです。ちょっと別件での打ち合わせで…
申し訳ありませんでした」
真里の表情もどこか固い。
首をかしげながら、裕子と真里を交互に見るなつみ。
──なんちゅう愛らしい仕草するんや。もう裕ちゃん、
我慢できへん──
裕子は突然立ち上がると、真里を別の部屋に連れていく。
「ちょ、どうしたの裕ちゃん?ねぇ」
強引に引っ張る裕子に真里は抵抗できない。
- 10 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時02分58秒
- 「おまたせ!じゃぁとりあえず東京見物でも行きましょうか?」
部屋から一人でてきた裕子が、なつみに微笑みかける。
「案内してくれるんですか?でも、あの真里さんは?」
なつみは嬉しそうな顔をしながらも、出てこない真里を怪訝に思う。
「かまへん、かまへん。真里はさっきの別件の仕事の
調べものしているから。
さぁ行こかぁ」
「あの中澤さん、関西弁…」
なつみは突然生き生きと話しだした裕子にのまれながらも
当然の疑問を口にする。
「あぁ、これか?これは心を許すとこうなんのや」
こういう言葉をさらりというから、同性にもてるのだろう、
なつみもこの言葉に一瞬、頬を赤くする。
裕子はなつみの手を握って踊るように外に駆け出した。
そのころ、別室の中では真里が手足をロープで
縛られてころがっていた。
ご丁寧に口にもバンダナで猿ぐつわをしてある。
足掻けばほどけるように結んであったロープは
しばらくして解ける。
だが、そのときにはもう裕子となつみの姿は消えていた。
ゴン!真里の拳が激しい音ともに壁に打ちつけられる。
「裕子のバカヤロォォォォォー!」
マンションに一ヶ月ぶりに真里の怒声が響きわたった。
- 11 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時08分51秒
- そのころ、裕子たちはなつみのリクエストに従って
原宿、青山、渋谷でウィンドウショッピングをしていた。
「テレビとかで見るよりも人がいっぱいだぁ〜」
初めて見る東京の雑踏に、はしゃぐなつみ。
「何も買わんでいいんか?」
見るだけで買おうとしないなつみを不思議に思って
裕子が声をかけると
「ううん、いいんです。綺麗だとは思うけど、
自分が着ても似合わないと思うから…
おしゃれって見るのは好きなんだけど、自分がしたいとは
あんまり思わないですよね」
「そうかぁ、なつみちゃんなら何着ても似合うと思うけどなぁ」
裕子が何気なく言った一言に、なつみは頬をあからめる。そして
ばしーん、強烈な平手が裕子の背中を襲った。
「嫌だ、中澤さんたら」
本人は意識していないが、小さい頃から農場を手伝っていたなつみは
見た目よりもはるかに力があった。
「うぐぅ」裕子の呼吸が一瞬止まる。目から涙が流れ出す。
見えはしないが、裕子の背中には綺麗な紅葉ができていた。
- 12 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時11分19秒
- 休憩がてらに入った喫茶店、裕子の口はあんぐりと開いていた。
何かを話そうとしても、なつみはその隙を与えてくれない。
実際、牛の出産とか興味の惹かれる話題はあるのであるが、
裕子がそれを詳しく聞こうとすると、なつみはもう次の話題に
入っている。
次から次へとマシンガンのようになつみの口からは言葉が飛び出し、
そして一人で納得して、一人で笑う。
裕子はそのなつみの笑うタイミングに合わせて愛想笑いを
することしかできなかった。
──こんなことなら矢口を連れてくればよかった──
裕子がそんなことを考えた瞬間、
あはは、矢口のことを置いていったりするからだよ!
そんな真里の声が聞こえた気がし、ビクッとして裕子は回りを伺う。
慎重に確認し、安堵のため息をついた裕子をなつみが
心配そうに見つめる。
「どうしたんですか?」
首をかしげて聞くなつみに裕子の目尻が下がる。
──あかんあかん、怒られるの覚悟で矢口を置いてきたんや。
どうせなら楽しまな!──
とりあえず、裕子はなつみの会話が切れたタイミングを逃さずに
店から脱出することに成功した。
- 13 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時14分06秒
- 「さてと、どこ行こか?どっか行きたいとこある?」
「ううん、もう十分です。真里さんのところに戻って
一緒に晩御飯食べましょう」
裕子は予想だにしなかったなつみの返答に戸惑う。
「え、せっかく東京来たんよ。なんかお洒落なお店とかで
ご飯食べたいと思わんの?」
とりあえず、なつみを外で食べることに誘導しようとする裕子。
「でも、そういうところってなんか落ち着かない気が
するんですよねー。……そうだ!私の手料理をご馳走しますよ。
こう見えても料理は自信あるんですよー」
裕子は追い込まれた。外食にこだわると、それはなつみの手料理を
食べたくないように取られる。
かといって、手料理を食べるには真里のもとに戻らなければならない。
とりあえず、真里のところには戻らなければならないだろう。
裕子は腹を決めた。
でも、ちょっとでも戻る時間を遅くする努力をしてみたりする。
「ねえ、なつみちゃん。ご飯の前に見せたいものがあるんやけど…」
「見せたいもの?」
「そうや、うちのとっておきの場所に招待したるわ」
- 14 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時16分18秒
- 「うわ〜綺麗〜!」
裕子が案内したのは、新宿の繁華街が一望できる
高級高層マンションの屋上。
「風が強いから、あんまり端っこに行かんときや…どうや
北海道の自然の美しさにはかなわんかもしれんけど、
東京の夜景の美しさもなかなかやろ」
目を輝かして夜景に見入っているなつみを、
優しい顔で見つめる裕子。
なつみの愛らしいルックスだけでなく、
贅沢を好まない性格に裕子は好感を持ち始めていた。
裕子は途中で買った缶のホットミルクティーをなつみに投げて
自分は缶ビールの栓を抜く。
夜景にうっとりとしているなつみを見ながら、
どんな口説き文句を使うか考えつつビールを一口飲んだそのとき、
「裕子ぉぉぉぉぉー!」
そんな真里の怒った声が聞こえた気がして、
裕子の動きが一瞬止まる。
──さっきといい、今といい、今までこんなことなかったのに、
さすがに縛ったのはやりすぎやったかな──
ちょっと反省しつつ、なつみに向かって歩き出したとき、
その視線が自分ではなく、さらに後ろに向かっていることに気が付く。
そして、その顔が笑みに変わってペコリと頭をさげた。
- 15 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時17分44秒
- 「よくもやってくれたわねぇ〜!」
今度ははっきり聞こえる、間違いなく真里の声。
ひきつった笑顔で振り返る裕子。その視界に
腰に手をあて仁王立ちの真里が映る。
裕子には心なしか、真里の小さな体が大きく見える。
「や、矢口…なんでここが…?」
なつみに気づかれないように笑みを浮かべてはいるが、
真里の笑顔は明らかにひきつっている。
後ろにずりずりと下がりながら、逃げるが勝ちと裕子が
真里の横を駆け抜けようと腰をちょっと落としたとき
「真里さ〜ん!」
なつみが突然、真里に手を振りながら裕子の腕に自分の腕を絡ませた。
最悪、裕子の脳裏にこの二文字が浮かんだ。なつみのこの行為は裕子を
逃げさせないだけでなく真里の怒りをさらに煽る。
真里の笑顔はさらにひくひくと引きつりはじめる。
裕子にできることは、少しでも真里の怒りを押さえるために、
とびきりの笑顔で微笑みかけることだけだった。
- 16 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時21分11秒
- ……効果はなかった。あるわけはなかった。
どうやらその笑顔は真里の怒りにさらに油を注いだらしい。
真里の手は握り拳になってわなわなと震え始める。
唯一の救いはなつみがこの状況にまったく気づいていないこと。
「な、なつみちゃんがねぇ、これから腕によりをかけて晩御飯を
作ってくれるんやてぇ」
心の中で手を合わせながら裕子はなつみに話題を振る。
「そうなんですよぉ〜これから部屋に戻って真里さんと
三人で食べようって話していたんだけど、ちょうど良かった〜。
真里さんって好き嫌いあります?」
──なつみちゃん、ナイスや!──
心の中でガッツポーズをしながら、恐る恐る真里を見る裕子。
怒りに燃えた目で裕子を見ていた真里の視線がなつみに移る。
つられて裕子もなつみを見る。
- 17 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時21分45秒
- 裏表のなさそうな、はち切れんばかりの笑顔は、
どうやら真里の怒りを沈めたらしい。
ふーという真里のため息が聞こえて、
「好き嫌いはないですよ。どんな料理を作ってくれるんですか、
楽しみだぁ」
そう言って、裕子たちのそばにかけより、なつみと反対側で
裕子の腕に自分の腕を絡める。
「そ、そうやぁ、早く帰ってなつみちゃんの料理食べたいわぁ。
楽しみやなぁ、矢口ぃ」
裕子は心の中で冷や汗を拭って、真里に笑いかけた。
だが、冷や汗を拭うのはまだ早かった。
- 18 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時23分09秒
- 真里を見る裕子の笑顔が凍りつく、
裕子を見るその顔は明らかにまだ怒っていた。
「な、なんでここが分かったん?」
何か言わないとと思ってつい聞いてしまった裕子だが
言ったあとに後悔する。
明らかにしてはいけない質問だったと気づく。
裕子は真里が怒り出すことを覚悟する。
しかし、真里は怒らなかった。
かわりに、その怒った顔が今にも泣き出しそうな顔になる。
──え?え?な、なんやぁー?──
裕子にとって一番効果的な攻撃だった。
潤んだ瞳で見つめられて、ずきっと裕子の胸が痛む。
真里はなつみがいる手前、必死に泣くのをこらえて、
ずずっと鼻をすすって小さくつぶやいた。
「裕子の…ばかぁ…」
- 19 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時25分12秒
- 左腕には軽くスキップするように鼻歌を歌っているなつみ。
右腕にはどよーんと暗く、今にも泣き出しそうな真里。
左右のあまりにも違う湿度差に裕子は途方に暮れる。
そんな裕子の気持ちを察したわけではないだろうが
真里が大きく深呼吸をして、なつみに笑顔で話しかける。
「なつみさん、材料は何が必要ですか?」
とことこと裕子の手を離して、なつみのそばに行く。
「うーんとね、牛肉でしょ、トウモロコシでしょ、
じゃがいもでしょ…あとは実際、スーパーで売っているものを
見ながら決めようと思ってるんだけど」
「じゃぁ、買いに行きましょう」
真里は強引になつみの手を掴んで、
裕子から引き離すように引っ張り
スーパーへ行こうとせかす。
笑みを浮かべながらも逆らえない迫力で引っ張る真里に、
なつみは戸惑いながらも従うしかない。
なつみの背中を押すようにして、下へ降りる階段に向かう。
ぼーぜんと立ちすくむ裕子に
真里は思い出したように気づく振りをして
てててと戻り、耳打ちをする。
「裕ちゃん、今夜はお仕置きだからね」
- 20 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時26分26秒
- 仲良く手をつないで、裕子の前を歩く真里となつみ。
「早くおいでよー!」
と、後ろをのろのろと歩く裕子に真里が手招きする。
──なんでやろ?
なんで矢口はあそこにいることが分かったんや?まさか──
裕子は立ち止まって、
自分の体をボディーチェックするようにさわり出す。
──別に発信器はみつからんな。うーん…んっ?──
そんな裕子の視界に一台の車が入った。
黒塗りのベンツが真里となつみの後をつけるように
ノロノロと走っている。
裕子の中で警戒信号が鳴り始める。
ベンツが徐々にスピードをあげ始める。
──やっぱり!──
裕子もそれと同時に走り出す。
- 21 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時27分57秒
- 激しいブレーキの音、
その方向を見た真里となつみの視線に
ベンツから飛び出して自分たちの方に駆けてくる
エンジ色と深緑の悪趣味なスーツを身にまとった二人の男が映る。
「な、なに!」
驚く真里は、それでも依頼人を守るという使命感に、
瞬時に腕を開いて男達の前に立ちふさがり
なつみの盾になろうとする。
だが、その体は盾になるにはあまりにも小さく軽かった。
「邪魔だ!」
男の張り手が真里の頬を直撃し吹き飛ばす。
「ま、真里さん!」
倒れた真里に駆け寄ろうとするなつみの手首を深緑の男が掴む。
「一緒に来てもらうぜ」
そう言って車に戻ろうと振り向いた瞬間、
「うぐっ!」
男はくの字に体を折るように地面に崩れ落ちる。
- 22 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月05日(木)01時29分14秒
- そこには、男の鳩尾に蹴りを入れた裕子が立っていた。
「なつみちゃん、もう大丈夫やからね」
残っているエンジの男となつみの間に動き、裕子は
倒れている真里を一瞥してから、男に視線を戻す。
「女の子に手をあげるなんて、あんた小物やなぁ」
口調はとぼけているが、その表情は明らかに
怒りに満ちている。
「こ、このやろう!ふざけたことを言いやがって!」
裕子を外見で判断した男は、何も考えずに拳を
振り上げて殴りかかる。
「だから、女の子に手をあげたらあかんって言ってるやろ!」
襲いかかる拳を首の動きだけだけで避けた裕子の膝が
バランスを崩した男の鳩尾に食い込む。
「あんたは、真里を殴ったからもう一発や!」
崩れ落ちる男の首に肘を落とす。
- 23 名前:(EU) 投稿日:2002年09月05日(木)01時36分02秒
- 今日はここまでです。
では失礼します。
しまった。たった二行でしめるなら、コピーが
終わった後に数行あけて打てば良かったと
ここで思っても、もう遅い……
- 24 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月05日(木)19時41分12秒
- 不思議なタイトルに惹かれて読んでみました。
元ネタわかります。懐かしいマンガですね。大好きでした。
がんばって下さい。
- 25 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年09月08日(日)04時07分59秒
- やぐちゅー万歳のセーラムと申します
続き、楽しみに待ってます
- 26 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月14日(土)15時16分43秒
- 男の人なにしにきたんですか?
- 27 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月16日(月)00時37分22秒
- やぐちゅー発見!!
良い感じの作品で今後の展開に期待してます。
- 28 名前:(EU) 投稿日:2002年09月20日(金)04時56分22秒
- 初めて書き込んだ次の日からマシンの調子が悪くなって
久しぶりの更新です。
レスしてくれた方、ありがとうございました&
放置していたようですいませんでした。
24さん ありがとうございます。
でもたぶんそんなに結構はなれていくと思いますけどよろしく願いします。
やぐちゅー中毒者セーラム いやはじめましてと言われましても……
ここに来ている人間でやぐちゅー好きならせーラムさんの名前は知っていますよ。
しかし、本当にのがさず、やぐちゅーにはレスしてますよね。
26さん 今回読んでいただければ、少しはわかる……のかな?
読んでる人@ヤグヲタさん やぐちゅー最高ですよね。
僕の今の心配は10月から内容が変わるらしいハロモニ、
それで中澤・矢口が絡めるコーナーはあるのかですよ。
矢口が離れてキッズと独立したコーナーとかやられたら
いやだなぁぁ。
ということで更新です。今回は初回ほど多くないです。
今後はこのくらいのペースでまたーりといかしてもらいます。
- 29 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月20日(金)05時02分52秒
- 「真里さんの様子はどうでした?」
事務所のベッドに真里を寝かして戻ってきた裕子に、
なつみが心配そうに問いかける。
「ん、大丈夫や。ちょっとほっぺたが腫れるかもしれないけど
それ以外はたいしたことあらへん」
それを聞いて、安堵の吐息を漏らすなつみ。
「とっさになつみちゃんを庇うなんて、
さすがうちのパートナーやろ?」
優しい笑みを浮かべてなつみに話しかける裕子。
- 30 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月20日(金)05時03分57秒
- 「あ、うちがこんなこと言ったの内緒な」
うなずきながらも、なんで?という風に首を傾げるなつみに
「本人に言ったらまた図に乗っちゃうから…
調子に乗るともっと危険なことに
首をつっこみたがるからな。でも今日のはちょっと自慢した気分や。
思い切り、いいこいいこって頭を撫でたい気分や」
満足そうな笑みを浮かべてビールを飲む裕子を
なつみは寂しそうな表情で見つめる。
「ん、どうしたん?」
それに気づいた裕子が、不思議そうに見つめ返す。
「なんかいいなぁ、うらやましいなぁって思って…
それより約束の料理を作りますね。
助けてもらったお礼に腕によりかけますから」
なつみは、何かを言おうとした裕子に言葉を発せさせるのを
避けるように急に立ち上がって、台所に駆けていった。
裕子は、一瞬手を伸ばして呼び止めようとしたが、
ゆっくりとその手をおろした。
- 31 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月20日(金)05時05分35秒
- 「ねぇ、裕子さん…」
シチューを作っていたなつみは、裕子に味をみてもらおうとしたが
裕子の姿はリビングから消えていた。
「裕子さ…!」
裕子を探すなつみの目に入ったのは、真里の寝ているベッドに腰掛け
愛おしそうにその頭を撫でる裕子の姿。
やがてその顔はゆっくりと真里に近づき、唇を重ねる。
唇を離した月明かりに浮かぶ裕子の顔はなつみが初めて見る
優しい顔だった。
なつみは、ふーっと息を大きく吐いてからリビングに戻って
「裕子さーん、料理できましたよー!」
何事もないかのように声をかけた。
- 32 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月20日(金)05時06分46秒
- なつみはボーゼンとしながら、裕子と真里の食事風景を見ていた。
二人はよほどお腹が減っていたのか、一心不乱、
そんな言葉が似合うような下品ではないのだが、
すごい勢いで次々となつみの作った料理を片づけていく。
女性三人にはちょっと多いかなと思ったシチューやサラダ、
それがなつみは今は逆に足りないんじゃないかと心配しはじめていた。
「なつみちゃん、とってもおいしいで。
どうしたん全然食べてないやん」
腹が落ち着いてきたのか、裕子がやっと口を開いた。
「本当においしいですよ。夢中で食べちゃった…恥ずかしい」
真里も裕子の言葉で我に返り、頬を赤くする。
「うふふ、いいんですよ。それだけ夢中で食べてくれると
下手に言葉で誉められるより嬉しいです」
なつみは微笑んで、自分もシチューを食べ始める。
- 33 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月20日(金)05時09分23秒
- 「私のお父さん、やくざなんです…いや、やくざだったんです」
食事を終えてコーヒーを飲んで三人で談笑していた時、
会話がとぎれてしばらく間が空いてからなつみが突然口を開いた。
「知っとったよ」
別段驚いた表情も見せずにさりげなく言う裕子に
逆になつみが驚く。
「えっ、どうして?」
なつみの言葉に驚き、すぐに裕子にも驚かされた真里も叫ぶ。
「えっ、えー!そうなの?なんで裕ちゃん知ってたのー?」
裕子は真里を一瞥して、まだまだやなとつぶやいてから
真里に説明を始めた。
- 34 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月20日(金)05時10分17秒
- 「簡単なことやん。真里、うちらはどこかに仕事の宣伝しとるか?」
真里は首を振り、でもまだ分からないという表情をする。
「そやろ。じゃぁうちらのことを知っとるのはどんな人間や?」
「…えーと、いわゆる裏の世界の人間?」
ビッと親指を立てる裕子。
「正解や。じゃあ、そんなうちらのことを知っている
なつみちゃんのお父さんは」
「そうか、裏世界、もしくはその世界に精通している人間」
「で、北海道で安倍という名字やったら…」
「10年前に解散した安倍組の…」
真里は納得して、思わず手を叩く。
「よくできました。しかしよく覚えとったな」
少し驚いた表情の裕子を見て、真里は自慢げに指で鼻の下をこする。
- 35 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月20日(金)05時11分05秒
- 「だって裕ちゃんが前に教えてくれたじゃん。
組長の当時小学生の娘が、
お父さんである組長を説得して解散した組があるって。
印象に残っていたから覚えていたんだ」
「それなら娘のことを心配してうちらに
ボディーガードを頼むのも分かるやろ」
裕子は唖然としているなつみに微笑んでから話し続ける。
「知ってはいたけど、なつみちゃんが自分で話すまでは
しらんぷりしとこうと思ったんや騙していたみたいやけど、怒った?」
裕子の問いになつみはブルンブルンと首を振る。
- 36 名前:第一話 安倍なつみ 投稿日:2002年09月20日(金)05時11分50秒
- 「で、狙われる覚えはある?」
「もう引退して結構立つし、大丈夫だと思ったんですけど…」
「でもね、なつみちゃんのお父さんは今も結構影響力あるんよ。
いまだにいろいろな組の親分が慕って相談に行っているらしいから
それがうっとおしい人がいるんやろな」
「なつみさん大丈夫だよ。裕ちゃんはこう見えても頼りになるんだから」
不安にさせてはいけないと思った真里が、なつみを勇気づけようとする。
だが、それはいらぬ心配だった。
「怖いなんて思ってませんよ。中澤さんと真里さんがいるから……」
一応真里の名前も入っているが、なつめの目はずっと裕子をみつめていた。
その目は間違いなく恋する少女のもの。裕子は全く気づかないが、真里は
敏感にそれを察する。そして、なつみを守るのは裕子に任せて
自分は裕子の毒牙からなつみを守るのに専念しようと誓うのだった。
続きます。
- 37 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年09月20日(金)12時03分23秒
- 放棄かと心配していましたが・・・安心しました。
矢口は、安倍を中澤から無事に守るコトが出来るんでしょうかね?
このへんの矢口中澤の攻防が楽しみです。
- 38 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月25日(水)01時27分19秒
- やぐなっちゅーだ!(w
すっごい楽しみです。
- 39 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月29日(日)22時14分37秒
- すごく面白いです。頑張ってください。
- 40 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2002年10月21日(月)02時19分53秒
- 楽しみにまってますよ(w
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