トラップ・フォーカス2
- 1 名前:物心 投稿日:2002年09月07日(土)16時16分56秒
- 前スレです。
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=silver&thp=1026229154
立てた途端、完結です。
当然の事ですが、折角お借りしているスペースなので、きちんと消化するつもりです。
どうぞ宜しくお願い致します。
- 2 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時24分08秒
「そっかぁ。帰っちゃうのか」
「はい」
アヤカが溜息をつく。
「帰っちゃうんだよねぇ」
「…はい」
保田が頬杖をつく。
テーブルの上にはホールのケーキと、お茶と、なぜかお酒。
ささやかながら、梨華の最後の夜を飾ろうという保田とアヤカの心遣い。
以前のように乱闘有りの宴にならないかとヒヤヒヤしていたが、
流石にアヤカも保田も、しんみりとした口調を崩さない。
「寂しくなるな」
「もっといればいいのに。狭い家だけど」
「その狭い家に入り浸ってるあんたはなんなのよ」
「別に圭ちゃんちに入り浸ってるんじゃないよ。梨華ちゃんがいるのがたまたま圭ちゃんちだから仕方なく来てるだけ」
「呼んでないのに勝手にあんたが」
「梨華ちゃん、次は絶対うちにおいでね?」
嘗ては梨華の位置に、市井がいたのだろう。
こうやって誰かが買ってきたケーキを突つきながらふざけ合ったのだろう。
- 3 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時25分23秒
- 「でね、圭ちゃんとも相談して、これをね」
アヤカが片手に乗るほどの小さい包みを置いた。
「お餞別っていうのも変だけど」
「そんな、私の方こそお世話になったのに」
「梨華ちゃんに貰ってほしいの」
お願い、とアヤカが微笑み、保田も同調する。
ほどくのが勿体無いくらいの包み紙を、慎重に剥がす。
淡いベージュの、マニキュア。
「余り目立たない色だけど。圭ちゃんはピンクがいいって騒いだんだけど、私は梨華ちゃんにはこっちの方が似合うと思うの」
「……ピンクもいいとおも」
「大切なときに、使ってね。覚えてるよね。うまく塗る秘訣」
忘れたりしない。
『マニキュアを塗る時はね、好きな人の事を考えながら塗るとうまくいくの』
きっと、帰ったら何度もこのマニキュアを眺めるだろう。
だが、当分の間は爪にのせることはないかもしれない。
見せたい人は、近くにはいないから。
- 4 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時26分14秒
- 「いい?焦っちゃだめよ。くれぐれもどうしようもない男の人にひっかからないようにね」
「そうそう。優しいからってほいほい好きになっちゃだめだよ」
「どうも危なっかしいんだなぁ梨華ちゃんは」
いつのまにやらマニキュアから恋愛講義へと発展していく。
冗談めかしてはいるが、心配してくれているのだ。
が。
「例えばさ、かっこよくてお調子者でモテモテだけど二人きりになったら冷たかったり」
「かと思えば急に優しかったり肝心な所で優柔不断だったり」
「優しいって言っても他の人にやたらと優しすぎたりするのもダメね」
次々と挙げられる『だめな条件』がスットンスットンとヒットする。
…全部よっすぃに当てはまる…けど、けど、違うよね。
よっすぃに限って、違うよね。
アヤカがとどめの一撃を打ちこむ。
「あの人は違うって信じてる、とかいうのは一番ダメだからね」
「……」
- 5 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時28分41秒
マニキュアの塗り方。
お化粧。
カタツムリの食べ方。
この夏で、色々なことを教わった。
寂しい夜の、秒針の音。
擦りきれて磨耗した胸の鈍い痛み。
押し潰されそうなほど重苦しい、夏の湿気。
色々なことに、気付いた。
一分一秒はやけに長いのに、あっという間だった夏。
「保田さん、まだ起きてますか?」
さっきから横で何度も寝返りを打つ気配。
「んんー、なんか色々思い出しちゃってた」
「私もです」
「電気点ける?」
「いいえ」
「さっきのお茶が残ってるけど」
「このままでいいんです」
保田との最後の夜。
いくら吉澤に未練があったとしても市井に頼みこまれたとしても、保田がいなければここまで長くとどまりはしなかったろう。
吉澤の隣では得られない穏やかで一定な時間の流れ。
沈みこむような安心感。
- 6 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時30分41秒
- 「色々とありがとね。紗耶香のことも、吉澤のことも」
「…」
「こういう事言うのってかな〜り恥ずかしいけどさ、なんか、パワーみたいなもの、貰った気がする」
「私にですか?」
「なんつぅのかなぁ、一生懸命、空回ってる梨華ちゃん見てるとさ、頑張んなくっちゃって」
「…それ、誉めてます?」
「誉めてるよ?」と笑いを含みながら保田が答える。
暫く躊躇して、梨華は口を開く。
「ものすごく余計なお世話ってわかってるんですけど」
「うん」
「まだ市井さんのこと許せませんか?私、その時の話とか市井さんに聞いて」
「梨華ちゃん」
穏やかだが、確かな意志を孕んだ保田の呼び掛けに遮られる。
- 7 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時31分30秒
- 「許すとか許さないとかじゃないけど、紗耶香とのことは、まだ時間が必要かもしれない」
「……」
「何の理由もなく行動するような奴じゃないことはわかってる。でも、事情を聞いてハイそうですかって元に戻れるようなものでもないと思うから」
「…はい」
「タイミングってあるんじゃないかな」
「…市井さんも、そう言ってました」
「紗耶香が?」
「色んなタイミングがあるからって」
「……そっか」
物でも、友達でも、恋人でも、何かを壊すのは本当に簡単。
だけど修復したり元に戻すのはなんて難しいんだろう。
タイミングや、時間や、技術や、気力や、色んなものが必要で。
- 8 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時33分35秒
「人のことはいいけどさ、梨華ちゃんこそ、いいの?」
「はい?」
「吉澤のこと。好きなんでしょ?」
「……」
吉澤が梨華を撮った時、どこまでかはわからないが、一部始終を目撃していた保田。
これ以上言い繕う意味もない。
「好きです。今でも」
「うん。あの撮影の前から気付いてたよ。ってか、普通気付くよ」
「…」
「それなのに、急に紗耶香が好きとか言い出すから吃驚しちゃった。また一人で空回ってるんだろうなとは思ったけど。アヤカと相談して、そっとしておこうって事になったし」
「……」
「あたしさ、どうして紗耶香が吉澤を相手に選んだか、わかる気がする」
「…はぁ」
唐突に始まった会話は、また唐突に途切れた。
梨華は幾度か口を開こうとしたが、一体自分が何を話したいのか、何を聞いてもらいたいのか、よくわからなかった。
- 9 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時34分45秒
次に梨華を起こしたのは、朝の日差し。
ようしっ!と気合を入れて、まだ眠っている保田を起こさないように洗面所に向かう。
水を叩きつけるようにして顔を洗う。
私、痩せたのかな?
なんだかちょっとだけ…いい女になってない?
頬が削げた?
…色々苦労したような気もするし。
……単に空回ってただけみたいだけど。
身支度を整え、朝食を作る。
いつもと変わりない朝の風景。
伝えたいことはまだ沢山あるけれど。
言葉を重ねれば重ねるだけ、言い足りない気がしてしまうから。
「忘れ物、ない?」
「大丈夫だと思います」
「気を付けてね」
「アヤカさんに宜しくお伝え下さい」
「それじゃ、また、でいいんだよね」
「はい。ありがとうございました」
深々頭を下げる。
その拍子に鼻の奥を刺激が突き抜ける。
慌てて玄関のドアを閉め、息をつく。
…危なかった。
今日は絶対に泣かないって決めたのに。
朝から早速、破っちゃうところだった…。
- 10 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時36分43秒
開場の時間にはまだ早過ぎる。
スタジオの中にも事務室にも寄らずに上の階へあがる。
まだ準備中だよね。誰もいないといいけど。
期待はいともあっさりと裏切られ、入口のパイプ椅子にふんぞり返った後藤の無関心な視線がお出迎え。
「おはようございます」
「……も」
さっぱりと「どう」を省略した、「も」。
それでも完全無視されるか凄まれるよりかはよほどまし。
「あの、他には誰か?」
「……」
今度はきれいにスルーされた。
縦長の狭いスペース。
その右側だけに縁なしのパネルがかかっている。
全部で7枚。
ひとめ見て、市井の写真だとわかった。
反対側は全くの空白。
ほっとすると同時に、少しだけがっかりもしている。
見たい。見たくない。見たくないけど見てみたい。
吉澤の眼を通した自分自身を。
- 11 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時37分58秒
「見学してもいいですか?」
一応、後藤に声をかけてみる。
お返事ナシ。ということは見てもいいのだろう。
作品のタイトルも、撮影者の名前も一切ついていない。
1枚目。
「えっ…」
今よりもかなり短い、金髪。
頬のラインがまだ幼さを残している。
2年、それとも3年くらい前だろうか。
強張った表情で後藤がじっとこちらを見ている。
視線を横にずらして、2枚目。
バストショット。
見切れているが、腰に手をあてているかポケットに手を突っ込んでいるのだろう。
「…かわいい」
すぐ近くに本人がいるのも忘れて呟く。
はにかむような、それでいて満開の笑顔。
レンズの向こうに至上の喜びを見出したといわんばかりの。
思わず見ている方もつり込まれて顔を綻ばせてしまう。
…とても背後にお控えあそばす後藤と同一人物とは。
3枚目、4枚目と、あどけなく笑う後藤が続く。
- 12 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時38分58秒
- 5枚目は夜の屋外。時期はクリスマスだろうか?
背景の木々にイルミネーションが灯されている。
何か特殊なレンズを使っているのか、イルミネーションの光がはっきりとした十字型を描く。
右端に、横向きでぽつりと佇む後藤。
その表情は覆い被さった髪でよく見えない。
綺麗だ。文句無く綺麗だ。
だけど。梨華は首を傾げる。
写真として綺麗、であって、メインの筈の後藤に微かな違和感を覚える。
6枚目にして、その違和感は決定的なものにかわる。
シャッターを切る瞬間に思いきりカメラのボディを揺らしたかのように、激しくぶれている。
失敗作?まさか。いくらなんでも失敗作を並べたりはしないだろう。
こういう効果を狙って撮った、としか思えない。
ぶれてはいても不快な印象は受けない。
だが、写っているのは後藤であって、後藤ではない。
『現像するのが恐くて。頭に描いた絵の方が負ける、負けてる』
『こっちが潰れる』
市井の吐き出した言葉がそこにそのまま、写っている。
「負けたくない」「潰れたくない」「うまく、撮ってやろう」
市井と後藤の闘い。
だがそれは、一方的な。後藤は望んでなんかいなかった闘い。
- 13 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時39分59秒
そして、7枚目。
意表を衝かれた。
後藤の上半身。
だが、前の6枚とは文字通り180度違う角度。
真っ白なTシャツに包まれた、背中。
無造作に肩に流れる髪。
梨華にもようやく合点がいった。
これは、市井と後藤の歴史。
たった7枚の写真に凝縮された二人の軌跡。
出会って、溺れて、溺れる余り自分も相手も見失いそうになって、不器用に足掻いて。
そして遂にまた、相手の姿を、見つけた?
- 14 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時41分10秒
「おー、来てたんだ」
素っ頓狂な声に意識が引きずり戻される。
相変らずのあやふやな笑みの後ろにもうひとつ、硬く強張った顔。
「…お久し振りです。…久し振り」
最初のお久し振りは市井へ。後の久し振りは、吉澤へ。
あの日と同じ黒いTシャツを着た吉澤が、「うす」と首を曲げる。
屋上で別れて以来、数日振り。
まだぎこちなさは拭えない。
吉澤もそれは同じだろう。
片腕に抱えていたダンボールを下ろして、あっちへ動かしこっちへ動かし。
落ち着かないこと甚だしい。
「後藤、留守番ご苦労さん」
市井が声をかけても後藤は無視。
「ごっちん、これでいい?」
吉澤が缶のお茶を渡すと「サンキュ」と本日初めて意味の通る言葉を口にした。
「あれ?なにこの鞄」
目敏く市井が梨華の鞄に気付く。
「あ、今日、これから帰るので」
「…そうなんだ。教えてくれれば良かったのに」
「ええ、まぁ」
あやふやな答えを返しながらも、吉澤の視線を頬のあたりに感じる。
- 15 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時41分59秒
「で、どう?これ」
市井が最後の1枚を顎で指し示す。
「あ、素敵だと思います」
「でしょ」
後藤がちらりとこちらを窺う。
気にしまいとしていても、やはり気になるらしい。
「これね、一発勝負で決めたんだよ。撮影時間5分。最短記録」
なるほど。
5分では仲直りする余裕もないだろう。
撮ったと思ったらもう終わりと言われて憤然と帰る後藤の姿が眼に浮かぶ。
「どうしても、一発勝負じゃなきゃ駄目だったから」
「…はい」
「結構満足してんだ。やっと、少し前に進めた気がするわけよ」
涼しげな市井の顔を見据えて、頷く。
「石川さんにはほんと、迷惑かけちゃったけど」
「ほんとにそう思ってます?」
「ま、元はと言えば、後をつけられておまけに騙されて」
「わかりました!もうそれはいいです!」
容易には感情を表に出さない市井。
焦りも苦しみも、全て曖昧な微笑の下に押し隠して。
- 16 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時43分12秒
やっぱり梨華に写真のことはわからない。
それでも、最後の1枚は、素直に『いい』と感じた。
密着して体のラインが強調されるTシャツ。
凛々しく張った肩甲骨。
もう知らないと拒絶しているようにも見える。
早く追いつけと叫んでいるようにも見える。
「この背中をさぁ、今度は、あたしが追いかけるわけよ」
普段に似ず、硬質なものが居座った切れ長の瞳。
「直ぐに追いつくかはわかんないけど」
市井は数歩後ろにさがると、ゆっくりと入口に向かって歩きだす。
一歩、また一歩と挑むように後藤に近付く。
待ち受ける後藤は。
興味のない素振をする余裕もないのだろう。
真っ白になるほど缶を握る指に力をこめて。
得体の知れない侵入者に相対する、野良猫さながらに全身から見えない針を突き出している。
が、お構いなしに、市井は距離を詰めていく。
無造作に缶を取り上げて、喉を鳴らして自分の口に流しこみ。
「ま、あれだ、その、なんだ。愛があるから、大丈夫ってやつだ」
- 17 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時44分04秒
吉澤から間の抜けた溜息がもれる。
梨華はぐっと拳を握り締める。
言った!市井さん!やった!
飛びつく?抱きつく?泣きつく?
それとも大胆にキス?
だが、突然の告白が予想外ならば。
後藤の行動も、予想外。
弾かれるように椅子から転げ落ちると。
「うあぁぁあッ」
奇声を発し、市井を突き飛ばして、非常扉に体当たり。
あっという間に走り去って。
行って、しまった。
- 18 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時45分12秒
「…行っちゃいましたよ」
「……行っちゃったよ」
予測不能の事態に梨華も吉澤も市井も、ぼけらっと後藤が消えた非常扉を眺めるだけ。
「あたし、もしかして振られた?」
その言葉は本心ではないだろう。
後藤の心の奥底は、市井は解り過ぎるほど解っているはずだ。
「市井さん」
「ん?」
「今度はあたしが追いかける、んでしたよね?」
「…後藤、足速いんだよなぁ」
「市井さん…」
「よしっ」
「行くんですね?」
逃げる後藤に追いかける市井。
まさに、梨華の計画通り。
経過は随分と違うような気もするけれど。
細かいことは、気にしない。
「吉澤ッ、吉澤ッ」
「あっ、はい」
「悪いんだけど、ちょっと後藤追いかけて捕まえてきてくんない?」
「はぁァァッ!?なんであたしが?」
「いーじゃん若いんだし。体力あるでしょ?」
「なななんでよっすぃが行くんですかっ。市井さんが追いかけなきゃ意味ないですっ」
「うーん…なんか嫌な予感がすんだよね」
往生際悪く、ぶつぶつ呟きながら市井がようやくエレベーターのボタンを押す。
「階段使って下さいッ」
梨華の甲高い叫び声に顔を顰めながらも、その姿は非常扉に消えて行った。
- 19 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時47分02秒
「大丈夫かな…」
送り出したまではいいが、不安だ。
非常に、不安だ。
あんな気の抜けた調子で、大丈夫だろうか。
「大丈夫だよ」
こちらは他人事とばかりにのんびりとした吉澤の口調。
「ちょっと、本当に心配してるの?」
「あたしらが心配したってしょうがないじゃん」
そうだけど。その通りだけど。
自然に会話のスタートが切れて安心したのか、吉澤はごく気軽に笑いかける。
「ごっちんはちょっと混乱してるだけだから」
「…うん」
「ああやって不貞腐れて、市井さんに甘えてるんだよ」
「…そうなのかな」
「散々振り回されてきたんだし。でも良かったぁ。これで安眠できるよ」
「どうして?」
「市井さん、仕事終わってからよくごっちんの家に来てたんだって。それが急に来なくなったわけじゃん?来るかもしれないって待つのが嫌なんだってさ」
それで夜になると転々とあちこちの家を巡っていたわけだ。
待つことの苦しみは、梨華にもわかる。
来ないとわかっている。でも、もしかしてもしかしたら。
梨華が後藤だったら、とっくに限界を越えて押しかけるなり責めるなりしていただろう。
- 20 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時49分34秒
「梨華ちゃん……帰る、んだ」
「うん。写真見に寄っただけだから」
吉澤の眼に何とも言えない寂しげなものが走る。
そんな素直な眼をしないで。
置き去りにされた犬みたいな眼をしないで。
梨華は視線を逸らす。
どうせなら最後まで冷たくして。
よっすぃの言う通り、甘えられたら、甘やかしてしまう。
どこまでも際限なく。
やめたいよと泣かれれば、やめちゃいなよと一緒に泣いてしまう。
帰りたいよと泣かれれば、帰っておいでと言ってしまう。
「勝つといいねっ!これ、勝負なんでしょ?」
微妙な空気を壊したくて不自然なほどテンションをあげる。
「また。梨華ちゃんほんとに負けず嫌いなんだから」
「だって負けるより勝ったほうがいいじゃない?」
「負けるよ、絶対。わかるもん」
「やってみないとわかんないよ!」
「ありがと。けどまだ全然ダメだ。構図も甘いし、ぱっと目を引かないっていうかさ」
「そんなことないよ!」
見てもいないのにむきになりだした梨華に、吉澤が苦笑をもらす。
- 21 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時51分00秒
「それにさ、あたしのは結局、1枚だけなんだよね」
「…え?どうして?」
やはり自分では力不足だったのだろうか。
後藤の、パネルを突き出るような存在感。
観る者をひきこまずにはいられない開放的な笑顔。
表情だけではない。
引き締まった背中ですら、言葉以上の迫力で、何かを訴えかける。
「うあっ、違う違う。梨華ちゃんのせいじゃないって」
「でも…」
「梨華ちゃんはすげぇ良かったんだよ。まじで。でもさ、市井さんの見たら、これ1枚で勝負しようって気になってさ」
軍手をはめて、宝物でも扱うようにそっとダンボールから1枚のパネルを取り出す。
市井とは反対側の壁のど真ん中に、専用のテープでしっかりと固定する。
- 22 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時52分07秒
そして梨華の眼にとびこんできたのは。
下から掬いあげるようなアングル。
空を背負い、握り締めた両手を額に押しつけて祈っている、自分の姿。
瞑った眼から零れ落ちる結晶体は、歓喜か、それとも切望か。
「これ…」
「うん」
だけど、だけど。
白いワンピースも後方に僅かに入りこんでいる錆びた手摺も、あの朝の屋上を示しているけれど。
撮られた覚えがない。
知らないうちに撮られた?
仮定を直ぐに打ち消す。
いくら機材やダンボールが積み上げられていても人が隠れていればわかる。
錆びついた屋上の扉。
気付かれずにのぼってきてシャッターを切り、また戻っていくのは不可能。
「ファイヤー・オン・フォーカス」
「え?」
梨華にも解るように言葉を選びながら吉澤が説明する。
「予めピント合わせておいてさ、被写体がそこに入ってくると自動的に連続してシャッターが切れるようにしておくわけ。動物写真とかでよく使うんだけど」
…人は、いなかった。
だが。
機材は、あった。
全部壊れているものとばかり思っていたけれど。
- 23 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時53分02秒
「…ずるい」
勝手に人の気持ちを盗み見るようなことして。
ずるいね、よっすぃは。
「ごめん」
空に向かって祈っている梨華。
薄く開いた唇から、今しも溢れてきそうな言葉。
吉澤には、伝わっているはず。
この掌の中にあるものが何なのか、知っているのだから。
並んで、写真に見入る。
「…よっすぃ、ずるっこだよ」
「うん」
温かいものが伸びてきて、梨華の手の甲を撫でる。
「卑怯だもん」
「うん」
中指がぎゅっと握り締められる。
じわりと吉澤のもどかしさが伝わって、梨華の心を熱くする。
「…最後の賭け、っていうかさ」
「……賭け?」
「何回も振られて、もう今度こそ駄目だとか思うんだけど」
「別に私は…」
振った憶えはない。何回も振った憶えは更にない。
考えてみれば、吉澤にきちんと告白された事すらないのだから。
「どうしても吹っ切れなくて。なんかおかしいっていうか」
吉澤が何を言おうとしているのか。
その先が読めない。
「例えばさぁ、寝こみを襲われたりとか」
「……ッ!!」
指を振り払おうした。
が、一瞬早く吉澤の掌に力がこもり、振り払えない。
「…なんでっ…」
指を掴まれたまま、まともに向かい合う。
- 24 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時54分22秒
- 「だって起きてたもん」
目眩がする。
気を緩めると鼻先に蝶々が飛び交いそうだ。
「いや、体はまじで動けなかったんだよ」
黄色いお空にぶんぶんぶんと飛び立ちそうな梨華に慌てて吉澤が付け足す。
「意識は一応あるんだけど、なんか遠くから自分を見てるみたいな感じでさ」
「そっそれじゃ、その、お水…あれしたり、とか、全部」
「…うん。わかってた」
「……」
「でも嬉しかったから」
「……」
「すごい、安心できたし。ありがとね」
「…言っとくけど、あれはあの、やましい気持ちとかは全然、あれなのよ」
形勢逆転。
へどもどと余計な言い訳を重ねる梨華に、吉澤の頬がひくひく震える。
「よっすぃ…笑ってない?」
「…やだな。笑ってないよ」
「……やっぱり、納得いかない」
「だから笑ってなんかないってば」
「そうじゃなくって。この写真のこと!騙されたっていうか、嵌められたっていうか…」
「ああ、だってさ、ファイヤー・オン・フォーカスには別の呼び方もあってさ」
えへへぇ、と悪戯っ子の笑みを浮かべる。
「トラップ・フォーカスってんだよね」
- 25 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時56分44秒
トラップ。罠。
…見事に、かかっちゃったわけね。
「いやー、まさかこんなにうまくいくとは思わなかったけど」
まんまと狙った獲物が引っ掛かって上機嫌。
「最初はあたしも嫌だっつったんだけど、市井さんの言う通りにしてよかっ…」
「…へぇ、市井さん」
「……」
策士、策に溺れる。
尤も策を練ったのはどうやら市井で、吉澤はそれを実行しただけのようだが。
「いや、違った違った。市井さんじゃなくて…」
「…」
「…市井さんなんだけど」
「…」
「つい、出来心で」
「…」
「…ごめんなさい」
- 26 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時57分16秒
どいつもこいつも。
中指を握っている手を、梨華の方からきゅううっと締めつける。
ぎくりと肩を縮めた吉澤が、ぼそぼそと白状しだす。
「梨華ちゃん泣いてたからさ、我慢できなくなって、そんで市井さんに直接…」
言葉を切った吉澤の手を、更に、ぎゅっと。
「…でも、そんなの自分で確かめろって…あっ、だけど個展の話は本当に知らなくてっ」
軽く手首を捻ってみる。
ィテェッと吉澤が小さく悲鳴をあげる。
「…けど、現像する前に屋上でまた振られて、でもこれ見たら」
吉澤の逆襲。
手首を、空いている方の吉澤の手で素早く掴まれる。
「間違ってなかったなって」
「……」
「梨華ちゃんの言葉に惑わされちゃったけど、まだ絶対あたしと同じ気持ちだって、思った」
潤んだ大きな瞳に見詰められて、息苦しくなる。
引き寄せられ上体が泳ぐ。
吉澤の腕の中に身体が着地したその瞬間。
- 27 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)16時59分26秒
「はなせーーーっ!」
突然の叫び声に、慌てて身を離す。
エレベーターの中から、市井と後藤がもつれるようにおりてきた。
後藤を羽交い締めにしている市井。
だが後藤の方が背も高ければ恐らく力も強い。
市井は必死に踏ん張りつつも振り回されている。
「おぉぉ〜い、よしざわぁ、ちょっと手伝ってくれよぉ」
息も絶え絶えに情けない声を振り絞る。
まだ仲直りしてなかったんだ…。
それともまた不用意な発言で後藤さんを怒らせたとか?
半ば呆れて、エットコヤットコ格闘している二人を眺める。
チッ。
真上から苛立たしげな舌打。
「市井さん!ごっちん!いい加減にして下さいよほんとにもう」
二人を仲裁する為に、吉澤の腕が、梨華から滑り落ちる。
再び接点を失った互いの温度。
寂しいような、どこかほっとしたような気分で梨華は腕時計に目を落とす。
新幹線の時間が、迫っていた。
- 28 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)17時00分36秒
「なぁにやってんですかっ!」
「だってこいつが暴れるからっ」
「ごっちん!!」
「はなせーーーッ!」
「離したらまた逃げるだろーがっ!うわッ、噛んだッ!こいつ噛みやがったッ」
くんずほぐれつ三人組。
「うがーーーッ」
「ごっちんに何したんですかっ」
「何にもしてねーよっ」
「じゃなんで暴れてんですかッ。イデーッごっちんそれあたしの腕っ」
「好きって言って何が悪いんだよッ!噛むなーーッ!」
よくわからないけど…。
市井さんと後藤さんは、大丈夫みたい。
市井さんの腕が大丈夫かどうかは、わからないけど。
- 29 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)17時01分23秒
- 壁のパネルをもう一度、眺める。
人生に一度きりしかない今年の夏が、ここに収まっている。
梨華の想いを全て閉じこめて。
鞄を手に取る。
時間がないから。
本当は、よっすぃをこれ以上見詰めていると帰れなくなっちゃうから。
死んじゃってもいいくらいに、幸せだけど。
みんな、いい人だけど。
やっぱり、ここは私の居場所ではないから。
帰らなくちゃ。
梨華は飽きることなく暴れ回っている一団を横目に、ひっそりと非常階段の扉を、開けた。
- 30 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)17時03分22秒
ターミナル駅の改札で、振り向いた。
いない。
いるわけがない。
…ちょっとやってみたかっただけ。
こういうのって、ドラマみたいだし。
言い訳をして、切符を自動改札機に潜らせる。
発車まではまだ時間がある。
少しでも心証を良くしようと自宅用のお土産を物色。
お茶と喉飴もついでに買う。
ホームに上がり、既に停車している新幹線に乗りこもうとして。
また、振り返った。
階段から現れるまばらな人影。
ホームの端から端まで。あるはずもない姿を探して。
…バッカみたい。何、期待してるんだか。
渋っている気持ちを切り捨て、勢い良く乗りこむ。
切符の座席番号と照らし合わせながら席を探す。
窓際。ついてる。
「すみません。奥、いいですか?」
「あぁ、すんません」
お隣は若い女性。
「これ、上にあげましょか」
もたもたとしている梨華の荷物を網棚に押し上げてくれる。
なんだかいい人そう。良かった。
金髪で関西の訛りがあって少し恐いけれど、やはり男性よりは遥かに気が楽だ。
- 31 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)17時04分59秒
- 「あんたこれ飲まん?」
「あ、いいです」と断りかけて差し出された物を凝視する。
ビー、イー、イー、アール。
どこからどう読んでもビール、と読めるような気がする。
そしてどこをどう差し引いても、梨華は未成年。
「ふぅん。なら一人でいただくわ」
「…どうぞ」
いい人なの?ほんとにいい人なの?
ハンドタオルを握り締める。
トラップ、罠、トラップ、罠。
騙されっぱなしの夏なんてイヤ…。
一気に高まった梨華の警戒心を感じ取ったのか、お隣さんもそれ以上は何を勧めるでもなく、淡々と缶を傾ける。
「…なぁ」
「…」
「なぁ、ちょっとあんた」
「…はい?」
今度はなんだろう。出来れば構わないでいて欲しいのに。
「あれ、あんたと違う?」
凶器として十分に通用しそうな爪を、お隣さんが窓の外に向ける。
「ほら、あそこあそこ」
仕方なく指差された方向に漫然と顔を傾ける。
「あそこってどこですか」
「だからあそこやん。あの赤い車」
「ああ、あの赤い車がどうし………あれ……えぇえっ?」
- 32 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)17時09分56秒
何本も線路を間に挟んだ先の、一般道。
真っ赤な車。助手席から上半身を乗り出している影。
黒いTシャツ。
「よっすぃ!?」
「さっきからなんやしらん、盛んに合図しとるで」
でも、でも。車なんて運転できた?
どうして?
違う。一人じゃない。後部座席にいるのは……あれは多分…。
後部座席の窓からなぜかカメラらしきものを構えている、保田。
更にもう一人。運転席にいるのは…アヤカ。
吉澤が、手をメガホンにして盛んに何かを叫んでいる。
梨華も座席から立ちあがって、窓に張りつく。
だが、いくら叫ぼうと、こんなに遠くては声も聞こえないどころか口の動きすら読めない。
「聞こえないっ、聞こえないよっ」
梨華は必死で大きく胸の前で×印を作ってみせる。
と、何を思ったか、吉澤の上半身が車内に引っ込んだ。
同時に保田の姿も消え、何やらごちゃごちゃともみあっているようにも見える。
「…今の、カメラ小僧?すごい望遠やなぁ」
呆れたように眺めていたお隣さんが感嘆して保田のカメラを誉める。
…あぁ、そうか。
保田さんは写真を撮っていたわけじゃなくて、あれで私の姿を探していてくれたんだ。
- 33 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)17時10分51秒
吉澤が再び上半身を外に出した。
布きれを、両手でいっぱいに広げる。
白い布に真っ赤な文字。
これを、これを見ろといわんばかりに布を振る。
振るから、余計に見えない。
梨華は食い入るように見詰める。
額も口も鼻も、ガラスに押しつけて。
「アチチ?」
不思議そうにお隣さんが首を傾げる。
「…違い、ます」
たった四文字の、カタカナ。
欲しくて欲しくて欲しくてたまらなかった、四文字。
気が遠くなるほど欲しくて欲しくて。
でも、やっとの思いで諦めた筈の、言葉。
マッテテ
思いっきり首を縦に振る。
ガッツンと窓ガラスに額をぶつけた。
構わず幾度も幾度も首を振り続ける。
- 34 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)17時11分58秒
発車のアナウンスが流れる。
ほどなくしてドアが閉まる。
ぐっとひと揺れして、車体が静かに滑りだす。
吉澤が慌てたように運転席を振りかえる。
走れ走れと急かしているのだろう。
新幹線に合わせて車も併走しだす。
しかし、徐々にスピードを上げると次第に後ろに下がっていってしまう…と思いきや。
負けじと加速して追いつく。
アヤカさん…。
大人っぽくて優雅なアヤカに憧れてきたけれど。
アクセル全開で車を突っ走らせるアヤカも、最高にかっこいい。
「あぶなっ」
「いやっ」
重なるお隣さんと梨華の悲鳴。
吉澤が激走している車の窓枠に腰掛け、片手で布を振り回しだした。
聞こえないとわかっている筈なのに、ずっと、ずっと叫び続けている。
聞こえない。
でも、聞こえる。梨華の胸に直接、響いている。
待ってて。待ってて。
一人前になるまで、待ってて。
待ってる。待ってるからね。
心配しないで。慌てないで。
よっすぃは、よっすぃのペースで進んでいって。
大丈夫だから。
私は、待ってるから。
- 35 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)17時13分18秒
「…おいおい、やばいんとちゃう、後ろ…」
お隣さんが上着の裾を引っ張った。
…後ろ?
視線をずらして……ぎょっとした。
赤いランプをつけた白い車体の…。
「よっすぃ!後ろ!後ろ!警察!!!」
スピード違反。
ハコ乗り。
布を振り続ける吉澤に、必死で後ろを見るように示す。
ジェスチャーゲームは得意だけれど。
焦りが空回りして、全く伝わらない。
新幹線は更に加速する。
今度ばかりはいくらなんでも車では追いつけない。
一瞬のうちに、赤い車体は視界から消え去った。
梨華は窓にへばりついたまま呆然と立ち尽くす。
「まぁまぁお嬢ちゃん、座り座り」
お隣さんに促されるまま、すとんと座席に埋もれる。
「いやー、感動やったな。感動した、感動した」
無関係ならば感動で済むが。
梨華としては気が気ではない。
「どうなっちゃうんだろ…」
「どうなっちゃうって、捕まるやろなぁ」
「捕まる…」
「道路交通法違反ちゅうやつやな」
「道路交通法、違反…」
「罰金払ってこってり絞られるんちゃう?」
よっすぃ、前科者になっちゃうの?
- 36 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)17時14分23秒
運転しているアヤカが当然スピード違反ということになる。
おまけに疾走する車にハコ乗りしていた吉澤。
保田は…そういえば、保田は?
落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせ、いま見たばかりのシーンを再生する。
途中から姿を消した保田。
降りたはずはない。
しかし最後まで後部座席から顔すら覗かせなかった。
吉澤が一旦車内に引っ込んだ時に、何かあったのか?
声が届かないと気付いた吉澤が、布を見つけて、恐らくは誰かの口紅で文字を書いて。
…布。
ちょうど、シャツくらいの大きさの。
どこからともなく現れた布と、保田の失踪。
「すみません」
「なん?」
「あの、車の中に、ですね、下着姿の人がいたら、それも罪になりますか?」
「……」
- 37 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)17時15分47秒
…ともかく。
有り難う、アヤカさん、そして保田さん。
絶対に、忘れません。
次はいつ会えるかわからないけれど。
市井さんと後藤さんは、ちゃんと仲直りできたのかな?
でも、きっと二人は前に進み始めているから。
…後藤さんはまだ当分、素直になれないかもしれないけど。
私とよっすぃは?
直ぐそばにはいてあげられない。
だけど。
今、はっきりと言える。
私とよっすぃは繋がってるって。
毎日電話をしなくても、毎日メールをしなくても。
繋がっている。
「これ、食べ」
膝の上に剥き甘栗の袋が乗せられた。
震える指で封を切り、艶やかな粒を掌に転がす。
鼻水を啜り上げ、口の中に放りこむ。
「……あまい…」
「甘栗やからな」
- 38 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)17時16分37秒
帰ったら、まずは家族に謝って。
そう、それから、よっすぃの家に行こう。
あちらでよっすぃにお世話になりましたって。
すっごく、頑張ってました、って言わなくちゃ。
うえっ、としゃくりあげた拍子に、甘栗が喉にひっかかった。
「よしよし。泣け、泣け」
お隣さんがわしゃわしゃと首の付け根を撫でてくれる。
こそばゆくてくすぐったくて、切なくて。
涙が甘栗の袋をぱたぱたと叩く。
- 39 名前:トラップ・フォーカス 投稿日:2002年09月07日(土)17時17分53秒
遠回りしたけれど、遠回りしなければ手に入らなかったものがある。
待ってて。
よっすぃが、最後の最後の最後で、必死に届けてくれた言葉。
他の人にとっては甘い言葉ではないかもしれないけど。
好きとか愛してるとか。
そんな言葉より、よっすぃの今の気持ちが丸ごと、詰まっているから。
私は私の生活を大事にしながら。
待ってるから。
だからよっすぃ。
いつか、言ってくれるよね。
ただいま、梨華ちゃん。
待たせたね。
って。
ENDLESS SUMMER
でもEND
- 40 名前:物心 投稿日:2002年09月07日(土)17時19分11秒
完結しました。
レスを頂いた皆様、本当に有り難うございました。
>325 オガマー様
いつも素早くかつ楽しいレスを本当に有り難うございました。
どうにかこうにかラストまで辿りつけました。
>326 88 89 134 203 245 様
率直に申し上げまして…「渋を散布」ってなんだなんだ。
わからないのに笑いました。渋を散布。ありそうでなさそうで、ありそうな。
>327 j 様
終わっちゃいますねぇ。8月中に完結を目指していたのですが、やはり駄目でした。
予定は未定のいい見本ですね。
>328 名無しどくしゃ様
有り難うございます。
吉澤さんにたった一言を言わせるのに、ひと夏かかってしまいました。
- 41 名前:物心 投稿日:2002年09月07日(土)17時19分50秒
- >329 ナナシー様
ラストは急ぎ過ぎてしまったかもしれません。
余りご期待に添えず、申し訳ないです。
>330 クロイツ様
ある意味さりげなくそして地味に、保田さんも最後に活躍して頂きました。
市井さんと後藤さんも、多分、恐らく、きっと、どうにかなることでしょう。
>331 肩身様
…軽く、脅迫されました。
希望されていたラストとは程遠いかもしれませんが、許して下さい。
>332 名無し読者様
すみませんすみませんすみません。
経過に詰まってぼんやりしていたらかる〜く日にちが経ってました。
- 42 名前:物心 投稿日:2002年09月07日(土)17時20分37秒
- >333 ホッピー ◆hoppyFIM 様
以前にレスにて暗いだけの話にはしませんとお約束した覚えがありますが、
守れましたでしょうか?
未来へと繋がるハッピーエンドを目指したのですが、曖昧すぎたかなという気もしています。
>334 読者 様
あわわわ。すみませんすみません。そして有り難うございます。
読み返すと恐ろしい矛盾やミスに突き当たったりします。
自分ではもうとてもじゃないですが、恐くて読み返せません。
>335 ごまべーぐる様
まさにその通りだと思います。やけに寂しくなっちゃいますね。
……特に何があったわけでなくとも。
- 43 名前:物心 投稿日:2002年09月07日(土)17時21分34秒
- お付き合い頂きました皆様、本当に有り難うございました。
絶対的ではなく、そこはかとないハッピーエンドをと思ったのが最初でした。
青春って見栄とかプライドとか複雑に絡んじゃうから厄介、と、そういう話を書きたかったような気もするのですが、途中から自分でも何が何だかわからなくなりました。
すみませんすみませんすみません。
バレバレでしょうが、カメラについては全く知識がありません。
よって、おかしいなという所も多々あるかと思います。
いえ、あります。
すみませんすみませんすみません。
落ち着いたら番外編をひとつと、あとは今度こそ軽〜い短編をちょこちょこと。
その時は懲りずにまたお付き合い頂ければ嬉しいです。
- 44 名前:j 投稿日:2002年09月07日(土)18時12分41秒
- (TД⊂) <楽しいんか〜,人泣かして楽しいんか〜。
慌ててタオルを取りに走りました。
中澤さんの登場シーンから、ラストまで完璧でし。
素敵な作品を、ありがとうございました。
番外編、短編、楽しみにしています。
- 45 名前:肩身 投稿日:2002年09月07日(土)18時29分13秒
- 完結おめでとうございます。
今日改めて最初から読み返してみました。
最初のHNで使った青春万歳という言葉がまた浮かんできました。
番外編も短編も楽しみにしています。
- 46 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月07日(土)18時31分41秒
- 最高でした。涙ぽろりぽろり止まらないです。
胸が苦しくなったり、声に出して笑ったり、幸せな気持ちになったり。
素敵な時間をありがとうございました。番外編、短編、とっても楽しみです。
- 47 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月07日(土)18時32分27秒
- 初レスです。
レスはなんとなく恥ずかしいので今までしてこなかったのですが、今回はさせていただきます。
最後、泣きながら笑っていました。
こんな作品は初めてです。
楽しませていただきました。
番外編や短編も楽しみにしてますね。
- 48 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年09月07日(土)18時33分13秒
- 。・゚・(ノД`)・゚・。ウォンウォン
凄いです。凄いです作者様。感動です。
体が震えて止まりません。今回もまた、別の衝撃を受けました。
空回りな感じの石川さん、カッケー吉澤さん。良かったですw
短編待ってます
- 49 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月07日(土)18時59分32秒
- 初レス失礼します。
今まで、ずっと読ませていただいてました。
ラストはものすごく感銘を受けました。
もう、感動、では足りない、感銘。
こんな作品を産み出してくださった作者様に感謝です。
次も楽しみに、首を長〜〜〜くして待っております。
- 50 名前:読者 投稿日:2002年09月07日(土)20時50分51秒
- もう、言葉がみつかりません。
ただ「涙」です。
額に押しつけて…この顔をよっすぃが見れてよかった。
ありがとうございました。
- 51 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月07日(土)21時59分02秒
- 初めてレスします。
こんなに楽しみに更新を待った作品は久しぶりでした。
もう、なんか、胸を締め付けられる感覚が堪らない。
本当に、良い作品をありがとうございました。
- 52 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月07日(土)23時09分34秒
- 後藤と市井のその後が、やっぱりなんとなく
心配というか気になる・・・
- 53 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月07日(土)23時28分30秒
- お疲れさまでした。
久しぶりに続きが気になる作品でした。
2人の撮った写真が見てみたいですね。
そして私も、市井と後藤のその後が気になる・・・(笑)
良い作品、ありがとうございました。
- 54 名前:娘。 投稿日:2002年09月08日(日)00時32分17秒
- よかった
- 55 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月08日(日)00時45分10秒
- よかった。
- 56 名前:ステキカット 投稿日:2002年09月08日(日)00時49分04秒
- お疲れさまでした。
よっすぃと梨華ちゃんの2人の手のやりとりが、
なんだかおかしくてあったかくてとても良かったです。
そして、市井と後藤も。
今度の番外編では後藤が少しは素直になれるのでしょうか…(笑)
- 57 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月08日(日)01時19分24秒
- 人生泣き笑い〜。・゚・(ノД`)・゚・。
「北の国から」との連続攻撃で目が…。
すげーよかったっす。番外編も期待してます。
- 58 名前:ルパン4th 投稿日:2002年09月08日(日)01時45分12秒
- 完結お疲れ様でした。
もう「すごい」の一言に尽きます。
本当にドラマを見てるように引き込まれ、よっすぃが撮った梨華ちゃんの写真が目に浮かぶようでした。
こんな、すばらしい作品に出逢えたことに感謝します。
- 59 名前:しゃんぶらー 投稿日:2002年09月08日(日)02時27分51秒
- 読みました。。よかった。。セリフが心に染みてたまらないよぉ。
物心様お疲れ様でした。そして、こんなにすばらしい作品をありがとうございました。
- 60 名前:オガマー 投稿日:2002年09月08日(日)03時46分31秒
- お疲れさまでしたぁー!!
くはぁー、やっぱりこぉ、情景が物凄く伝わってくるなぁ、と感心致しました。
なんていうのか、出てきていた人それぞれのキャラが際立つw
なんと言うか一言で言うと、そう、よかったです(w
番外編も待ってますね!
- 61 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月08日(日)04時06分09秒
- 完結本当にお疲れ様でした。
前作から更に増した完成度の高さにただただ驚いています。
作者さんの作品は本当にみるみる話の中に引きずり込まれて、その時々の情景が驚く位に
目に浮かんでくるんですよね…
もう毎日毎日更新が待ちきれなくてハラハラ、読んで更にハラハラハラハラ、寿命縮まるんじゃないかって位
こう胸にくるんですよね、うまく言えないですけどw
とりあえずもう作者さんには本当に感謝です…
この2ヶ月間、本当に楽しかったです。夢をありがとうございました。
- 62 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月08日(日)09時12分20秒
- 一言だけいわせとくれ。
ありがとう!
- 63 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年09月08日(日)09時37分39秒
- 無鉄砲なヨシアヤヤス、が(・∀・)イイ!!シャツを渋々(?)差し出す、
ヤッスー、カコイイ!(警察で、どれほど怒られたのだろう)
最後だけの登場で、おいしいトコ持ってってる姐さん。
そしてなにより、健気なくらい空回りで一途ないしかーさんがいとおしい。
日本の総人口の7割くらいは、この作品を読んで、甘酸っぱいようなくすぐったい
ような気持ちにさせられたと思いまする。
青春っていいな〜。くぅ〜!
お疲れ様でした。
- 64 名前:未唯亮 投稿日:2002年09月08日(日)11時13分17秒
- もう、すっごいすっごい感動しました!
写真の事とかよくわからないんですけど、全然気にならないぐらい
頭の中でイメージできました!!
最後の最後に「待ってて」と梨華ちゃんが一番欲しかった言葉を送る
よっすぃ〜・・・最高にかっけぇ〜ですぅ・・・。
完結お疲れ様でした!!感動をありがとう!!!!
- 65 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年09月08日(日)13時19分49秒
- 完結お疲れ様でした。
最後のシーンはその映像が、頭の中に映し出され。。。
すばらしい作品でした!
お疲れ様でした。そしてありがとうございました。
- 66 名前:じゃない 投稿日:2002年09月09日(月)00時17分11秒
- 毎度のことながら
秀
逸
- 67 名前:CA 投稿日:2002年09月09日(月)02時10分19秒
- 完結おめでとうございます。
不器用な吉澤さんと、空回りする石川さん、ホント2人の情景が浮かんできます。
どこまでも純粋な2人に出会えて、こちらも心が洗われました。
この作品にで当て良かったです。ありがとうございました。
- 68 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月09日(月)02時32分41秒
- 毎回楽しみに読まさせていただきました。
やはり最後は泣いてしましました。
短編楽しみにしてます。
おつかれさまでした。
- 69 名前:たろ 投稿日:2002年09月09日(月)06時02分20秒
- 最終話を読みたいけど、まだ終わってほしくない気持ちがあって
ずっと読み渋っていたのですが、一気に集中して読んでしまいました。
よっすぃの撮った梨華ちゃんの写真が目に浮かぶようです。
二人の気持ちが通じて本当によかった。
完結お疲れさまでした。番外編、短編も楽しみにしています!
- 70 名前:CA 投稿日:2002年09月09日(月)08時03分21秒
- >67
>この作品にで当て←出会えての間違えです。すみません。
- 71 名前:クロイツ 投稿日:2002年09月09日(月)09時07分55秒
- 完結、おめでとうございます。
毎回、更新が楽しみで楽しみで・・・終わってしまうと思うと、すごく切ないです。
でも、番外編と短編があるとか。
すっごく楽しみです♪
最後までやってくれました、保田さん。
爆笑してしまいました。
カッコ良すぎです、保田さん。
いしよしも、良かった・・・!!
甘栗を食べながら泣く梨華ちゃんに、胸がきゅんっとなりました。
ああ、ヨッスィー・・・ビッグになって梨華ちゃんを迎えに行って!!
本当にこの作品、大好きです〜!!
- 72 名前:ホッピー ◆hoppyFIM 投稿日:2002年09月09日(月)12時00分10秒
- (O´ー`O).。oO ( 良かったべ… )
切なかったけど、みんな成長できたような…
それが本当のハッピィエンド、だね。本当にお疲れ様だべ。
- 73 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月09日(月)17時59分25秒
- 涙が止まらないです。
ホントに感動作でした。
- 74 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月10日(火)21時58分30秒
- いしよし苦手なんですけど…大号泣してしまいました。
これから作者さんが過去に書いた物を読みたいと思います。
完結お疲れ様でした。
- 75 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年09月10日(火)23時32分12秒
- 完結お疲れ様でした。
涙出ました…
表現が凄く上手いので想像しながら読みました。
番外編と短編があるそうなので楽しみにしています。
本当にいい作品ありがとうございました!
- 76 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月13日(金)06時42分32秒
- 面白い小説をありがとうございました。
ただそれだけです。
- 77 名前:初書き 投稿日:2002年09月14日(土)23時54分18秒
- 完結おめでとうございます。続編たのしみにしております。
- 78 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月16日(月)16時46分26秒
- 今初めて全部読みました。
完結お疲れ様でした。
そして良い作品をありがとうございました。
- 79 名前:婆金 投稿日:2002年09月16日(月)21時46分00秒
- 完結、お疲れ様でした。
面白くて、切なくて。
読んでいる間中、ハラハラしっぱなしでした。
もぅ大好きです。
ありがとうございました。
- 80 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月29日(日)21時20分21秒
- そろそろ番外編かな・・・・と。
こそっと期待しちゃってます(^〜^)
- 81 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月05日(土)00時32分44秒
- どうしたら、こんなに心に入ってくる話が書けるんだろ?
色々書きたいけれど、恥ずかしくて書けません。
有り難うしか言えません。
- 82 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月23日(水)19時01分49秒
- ho
- 83 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年11月11日(月)14時21分13秒
- ぜ
- 84 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月13日(水)19時30分51秒
- ム
- 85 名前:物心 投稿日:2002年11月17日(日)23時30分47秒
- ももももも申し訳ございません。
道に落ちていた玉手箱を開けたら、うっかり月日が経ってしまいました。
沢山の感想を本当に有り難うございました。
そして、感謝と番外編が遅くなりまして、どうにも、すみません。
今更なんなのよ、という突込みを受けそうですが、レスさせて下さい。
>44 j 様
割と楽しいです。ウケウケ笑ってます。
迷いましたが、やっぱりここ一番で締めてくれるのは中澤さんかなと思いまして。
>45 肩身 様
HN、楽しませて頂きました。次はどうくるどうでる、と。
結局こちらがギブアップしてしまいましたが。また闘える日を夢見て。
>46 名無し読者 様
こちらこそ、書く事で素敵な時間を頂いたように思います。
展開に詰まって胸が苦しくなったり声に出して叫んでみたりレスを読んで幸せになってみたり。
>47 名無し読者 様
初レス有り難うございます。レスが何となく恥ずかしいというのは非常によくわかります。
逆に、受ける側から言えば、非常に嬉しいものです。
読んで頂いた事、そしてレスを頂戴した事、心から有り難うございます。
- 86 名前:物心 投稿日:2002年11月17日(日)23時31分34秒
- >48 名無しどくしゃ 様
石川さんには空回りがよく似合いますね。だからこそ、ある意味書き易いのかもしれません。
最後まで、励ましや感想を本当に有り難うございました。
>49 名無し読者 様
頭を低〜〜〜く垂れて、感謝しております。読んで下さっている方が少しでもいらっしゃる、
と思うからこそ、詰まりながらも完結できました。
お礼を申し上げるのはこちらのほうです。有り難うございました。
>50 読者 様
設定が設定なので、ポイントに写真も絡めたくてあの場面を書きました。
余談ですが、保田さんの趣味がカメラという事もあって「カメラマン」という設定にしたのに、
某番組できっぱり「飽きた」と宣言しているのを見た時の衝撃といったら。
>51 名無し読者 様
吉澤さんの心理描写を全くといっていいほどしていないので、自分で言うのもなんですが、
とても不親切な小説かと思います。ですが、何かしら仄見えるものがあればな、と。
>52 名無し読者 様
ですよね…。後藤さんが素直になれる日は来るのか、と。
番外編でほんのちょびっとだけ触れる予定ではあります。
- 87 名前:物心 投稿日:2002年11月17日(日)23時32分12秒
- >53 名無し読者 様
二人の撮った写真のシーンも当初はあったのですが、ちょっとくどいかなと思い、
サックリと省いてしまいました。ひとつ、ここはご想像にお任せしますということで。逃走。
お付き合い頂き、有り難うございました。
>54 娘。様
と言って頂けて、良かった。
>55 名無し読者 様
と言って頂けて、本当に良かった。
>56 ステキカット 様
手でのやり取りはどうしても描きたかったシーンのひとつです。
温度や仕草は、多くの場合、言葉より雄弁だと思っています。
>57 名無し読者 様
いい言葉ですね。人生泣き笑い。そういう人生を歩きたいものです。
できれば「笑い笑い笑い泣き笑い笑い」くらいの割合で。
>58 ルパン4th 様
素敵にドラマチックなHNですね。
写真の描写はもんのすごく不安だったので、ようやく今、少しだけほっとしました…。
本当に、有り難うございました。
- 88 名前:物心 投稿日:2002年11月17日(日)23時33分53秒
- >59 しゃんぶらー 様
皆様のレスに励まされつつ、ようやく辿り着けたラストです。有り難うございました。
台詞が不自然にならないように気をつけたつもりなので、嬉しいです。
あくまで、つもり、に過ぎませんが。
>60 オガマー 様
キャラの描き分けって本当に難しい…。かなりいっぱいいっぱいでした。
オガマーさんの精力的な執筆に脱帽です。
>61 名無し読者 様
情景描写はとても苦手なので、独りよがりにならないよう気を付けました。
途中でへこたれて寿命が縮んだ事もありましたが、レスを読んで復活しました。
こちらこそ、読んでくださった皆様への感謝は尽きません。
>62 名無し読者 様
それではこちらも一言だけ言わせてください。センキューベリマッチ!
>63 ごまべーぐる 様
いやー、登場人物が増えて焦りました。途中から脇役に終始したアヤヤスにも最後に見所を!
と思いまして、ラストはあの3人で決めてみました。
多くの人物を同時に操れるごまべーぐるさんは凄いです。
- 89 名前:物心 投稿日:2002年11月17日(日)23時34分25秒
- >64 未唯亮 様
ええ。吉澤さんはかっこ悪くて、かっこいいです。優しくて、優しくないです。
色んなボタンのかけ違いですれ違う2人、を書きたかったようにも思います。
>65 よすこ大好き。読者 様
以前よりよすこ大好き。読者さんのレスには勇気づけられ励まされ、そして励まされ。
ボキャが足りなくて「有り難うございます」しか言えないわけですが。
>66 じゃない 様
ちくわには程遠いストーリーの練り具合ですが、完結できてほっとしております。
今宵のちくわは特別に美味です。
>67&70 CA 様
あくまでイメージですが、実在の二人に近いキャラとして設定してみました。
まったく、妄想には事欠かない二人ですよね。妄想するなというほうが無理というものです。
>68 名無し読者 様
ラストで泣いて頂けるとは、実は予想しておりませんでした。
少し曖昧で、批難GOGOかなと恐かったのですが。ほっとしました。
泣いて頂いて有り難うございますというのも変ですが、有り難うございます。
- 90 名前:物心 投稿日:2002年11月17日(日)23時35分26秒
- >69 たろ 様
もっととんでもないラストも考えていましたが、そこはやはり、いしよしヲタ。
落ち着く所に落ち着いてしまいました。作者のせいではありません。あの二人が悪いのです。
>71 クロイツ 様
どうしても保田さんは「常識人」というイメージがありまして。
酒を飲もうがケメ子になろうが。
そこはかとない「恥ずかしさ」が本人から漂っている気がします。
>72 ホッピー ◆hoppyFIM 様
それぞれがほんの半歩づつ前に進めるような、そんな話が書きたかったのです。
恋愛の要素は抑えようと思ったのですが、いしよし好きの血が騒いでしまいました。
>73 名無し読者 様
有り難うございます。涙が瞬時に乾く番外編でないといいのですが。
>74 名無し読者 様
あわわわ。前作は120%全力投球でいしよしなのです…。
まさか、いしよしを苦手な方に読んで頂けるとは思いませんでした。
とても嬉しいです。有り難うございます!
>75 ぶらぅ 様
妄想に妄想を重ねてやっとの思いで書き上げました。
想像しながら…と言って頂けて、報われる思いです。
- 91 名前:物心 投稿日:2002年11月17日(日)23時37分41秒
- >76 名無し読者 様
「面白い」は、自分にとって最上の言葉です。有り難うございます。
>77 初書き 様
申し訳ないです。続編の予定はないです。番外編の後は、全く別物を書かせて頂こうかと。
書き方がまずくてすみません。よろしかったらまた読んでやって下さい。
>78 名無し読者 様
一気読みは作者にとっては非常に恐いものがあります。
何かとんでもなく辻褄の合わない箇所があるのではと。実はあるのですが。
>79 婆金 様
無事に完結できるのか、というハラハラは作者も同じでした。
青春恋愛物、のつもりですが、作者の中ではサスペンス。スリリングな体験でした。
- 92 名前:物心 投稿日:2002年11月17日(日)23時38分51秒
- >80 名無し読者様
こそっと、ごめんなさい…遅くなって…。
>81 ひとみんこ様
有り難うございます。少しでも心に残って頂けたとしたら、
それは実在のキャラの魅力のお陰だと思います。
>82・83・84様
ごめ・んな・さい
お礼が遅くなり、本当に申し訳ございませんでした。
番外編に突入します。
何回かに区切らせて頂きます。
- 93 名前:in the car 投稿日:2002年11月17日(日)23時46分16秒
家が、ビルが、木々が、ゆっくりと後方に流れる。
僅かながらも確実に威力の衰えた陽光を浴びる街並み。
だが、今は風景を楽しむ余裕などない。
通行人の顔を確認できてしまう程度のまどろっこしい走りに苛々が募る。
「…あの」
「なに?」
「もっとスピード出せませんか?」
アヤカさんはちらっと横目をくれる。
「無茶言わないでよ。この状況でどうスピード出せっていうのよ」
そんなことは言われなくてもわかってる。
平日の昼間の、大通り。
混雑というほどではないが、快適に流せるというわけでもない。
少し走っては徐行、またしばらく走っては徐行。
一列になってお行儀良く徐行の行進。
- 94 名前:in the car 投稿日:2002年11月17日(日)23時47分05秒
- 「アヤカさん、なんかいい抜け道とか知らないんですか?」
「知ってたらとっくにそっち行ってる」
冷静な切り返し。
その通りだけど、その冷静さに、苛立ちの煙が胸の中にくすぶる。
そこへもって後部座席から呑気な合いの手。
「まぁまぁ、急がば回れっていうし」
バックミラーごしに保田さんを睨む。
「回ってる間に、梨華ちゃん行っちゃいます」
「んなこと言ったってしょーがないじゃん」
「しょうがないって、保田さんはそれで済むでしょうけど」
「済むよ。だってちゃんとお別れしたもんねー、アヤカ」
「……」
「お別れ会もしたし。いっぱい遊んだし、ねー、アヤカ」
厭味…はイヤミだが、切り返す元気はない。
胃の奥からせりあげてくるような不安を、声に出してみる。
「どうしよ…」
出してみたら、不安の塊は一気に重力を増す。
「…どうしよ、どうしよ……」
鼓動が速くなる。膝が小刻みに上下する。
「貧乏揺すり、気になるからやめて」
ピシリとアヤカさんが釘を刺す。
「どうにかしたいと思うことはどうにかなるからさ」
流石に悪いと思ったのか、保田さんがフォローを入れてくる。
それでも焦燥は一向におさまらず、鋭い切先で体中を突っつく。
- 95 名前:in the car 投稿日:2002年11月17日(日)23時48分05秒
どうしよう。
このまま梨華ちゃんが帰ってしまったら。
電話で話せばいい?
そんなの嫌だ。それじゃダメだ。
目を見て顔を見て、伝えなきゃいけないことがある。
直接きちんとぶつけなきゃいけないことがある。
『今日、これから帰るので』
わかってた筈なのに。
夏が終わる前に帰ってしまうことくらい。
梨華ちゃんには学校があるから。
あたしが捨てた生活が、あっちにあるから。
つい数日前までは、心のどこかで早く帰っちゃえって思ってた。
近くにいるのに会えないなら、触れられないなら、遠くにいて会えない方がまだまし。
見てない所で市井さんと会ったり、保田さんの家で笑ったりして欲しくない。
梨華ちゃんの気持ちのベクトルが他へ向かうのを見るのもきついけど。
厄介なことに、見えないと、もっときつい。
悶々と部屋にこもっているその間にも、市井さんと会ってるんじゃないか、って。
- 96 名前:in the car 投稿日:2002年11月17日(日)23時49分09秒
時折、保田さんとアヤカさんの会話から漏れる梨華ちゃんの影。
今日は梨華ちゃんが好きなケーキを買って帰ろうとか。
公園で花火ってできるのかなとか。
この服は梨華ちゃんに似合うかもしれないとか。
そういうのを聞くと、頭にカッと血が昇った。
こっちがこんなに苦しんでるのにバカヤローッ、って。
どうせあたしがいなくても平気なんだ。
どうせあたしがいなくても笑えるんだ。
梨華ちゃんの想いなんてそんな程度のものだったんだ。
勝手な話だけど、猛烈に腹が立った。
やっと。
ほんのついさっき。
気持ちが繋がったのに。
散々ひどいことしてきたあたしを、梨華ちゃんは許してくれるって確信が持てたのに。
ごめんね。大好きだよ。ありがと。
色んな気持ちをこめて掴んだ中指。
細いけれど、芯のあるしっかりとした感触。
泣きたくなるほど、それは懐かしくて。
あたしの掌と梨華ちゃんの指が溶けて混ざり合うような錯覚すらおぼえた。
- 97 名前:in the car 投稿日:2002年11月17日(日)23時50分53秒
- 「つながんないけど」
保田さんが腕を伸ばして携帯を差し出す。
「どうする?留守電入れとく?」
「…いえ、いいです」
「少し待っててもらうよう頼んでみれば?」
「いいんです」
我知らず、強くてぶっきらぼうな声が出てしまった。
理由は自分でもよくわからないけど、そういうことは、したくない。
したくない、というか、出来ない。
落ち着いてお茶でも飲みながら向かい合うと、肝心な言葉を言いそびれてしまいそうだから。
…それだけじゃないな。うまく言えないけど。
今度こそ最後の、賭け、なのかもしれない。
間に合えば、気持ちを伝えられる。
間に合わなかったら。
おしまい。
だから、何が何でも間に合わせなきゃ。梨華ちゃんを捕まえなきゃ。
- 98 名前:in the car 投稿日:2002年11月17日(日)23時53分04秒
…あぁ、また赤信号に引っ掛かった。
あたしは世界一、運が悪いに違いない。
ぽてぽてと目の前を通行人が横切っていく。
彼らには何の罪もないけれど、のんびり具合が腹立たしくてたまらない。
ちんたら歩くな!走れ!どけ!引け!撤収!
マシンガンか手榴弾があれば。
血みどろの交差点。障害物を片っ端から跳ね飛ばしていく車。
物騒な妄想。
「…ねぇ、吉澤」
「はい」
「もう梨華ちゃんとエッチした?」
- 99 名前:in the car 投稿日:2002年11月17日(日)23時54分01秒
- 脳内の手榴弾がドッカンと爆発した。
「なっ、なんですか保田さん急にッ」
「いやー、もうやっちゃったのかなぁって思って」
「やっちゃったとか言わないで下さいっ!」
「それじゃ、もうチョメチョメした?」
「余計やらしいすよっ」
「どっちなのよ」
ぐっと喉が詰まる。
正直に答えるべきだろうか。
だが、しかし、待てよ。
保田さんは梨華ちゃんを気に入っている。
まさか狙っているとまでは思えないけど、ここはひとつ梨華ちゃんがあたしのものだというアピールをしておくのが得策かもしれない。
「……まぁ、あれです、それなりにってやつです」
「へぇ…やるね」
「やるときゃやりますよ」
実際には「やって」もいないのに、なぜかその気になって胸を張る。
- 100 名前:in the car 投稿日:2002年11月17日(日)23時56分24秒
いつからだろうか。
小さい頃からもう数え切れないほど触れてきた梨華ちゃんの手。
気付いたら、ぷにぷにだった梨華ちゃんの手は、しっとりと柔らかい一人の女性の手に変わっていた。
前のように無心に、その手を取れなくなっていた。
梨華ちゃんの体の変化を、眩しいような後ろめたいような目で眺めていた。
でも、梨華ちゃんに向ける自分の視線について深く考えることは、なかった。
梨華ちゃんがあたしの部屋に飛び込んできたあの日までは。
『薄情でろくでもない男の人に引っ掛かってぼろぼろにされた挙句に捨てられて泣いても平気?』
思い出すだけで笑ってしまう台詞。
お陰であたしも大して悩まずに、たった今、どうしたいのかってだけで答えが出せた。
泣かせたくない。
悲しませたくない。
他の人に、それが男だろうが女だろうが、渡したくない。
そして、その気持ちは、一度だって変わったりはしなかったけれど。
「梨華ちゃん、いい体してるもんなぁ」
ぽつりと保田さんが呟く。
「……それどういう意味ですか」
「そのままの意味だけど」
「…そのままの意味ってどういう意味ですか」
「だから梨華ちゃんいい体して……」
「ダスッ!!!」
「………ダス?」
- 101 名前:in the car 投稿日:2002年11月17日(日)23時58分55秒
- しまった。
保田さん、と叫ぼうとしたのに。興奮の余り名前を引っ繰り返してしまった。
「今日から圭ちゃんは、ダーヤスね、ダーヤス」
すかさず、アヤカさんがはやしたてる。
「…それで、保田さん」
「……」
「保田さん?」
「……」
「……ダーヤスさん」
「はいはい?」
「梨華ちゃんの体がどうこうとかって、もしかして…」
「そんなの服の上からでもわかるでしょ?」
「…それじゃ変なことしたわけじゃないんですよね」
「変なことって?」
完全にからかわれている。
だけど、梨華ちゃんの身の貞操を確認するのが先。
万が一何かあったとしても梨華ちゃんを受けとめる覚悟は、ある。
いや、どうかな。わかんない。
嫉妬でおかしくなっちゃうかもな。
だけどいつか、乗り越えてみせる。
…でもさ。それはそれとしてさ。
相手が保田さんとなると…つまり、将来的に梨華ちゃんとそういう関係になった場合。
あたしと保田さんが間接的にそういう関係になるわけで。
いわば義兄弟の契りを交わすわけで。
「バカじゃないの?あるわけないじゃん、変なことなんて」
「…ですよね」
なんて言いつつ、自分の為にもほっと胸を撫で下ろす。
- 102 名前:in the car 投稿日:2002年11月18日(月)00時00分44秒
「梨華ちゃんはあんたのことしか見てないからね。ほんと、可哀相だったよ」
「……」
「人の恋愛には首を突っ込まない信条だから、強くは言わなかったけど」
声音に笑いの余韻が残ってるけど、バックミラーに映る保田さんの目は真剣だ。
「元気そうに振舞ってたけどさ、あんたの写真見てはぼんやりしてたよ」
「…はい」
「夜とか、泣いてたみたいよ」
「……はい」
「あんたはあんたで、これでいいんですの一点張りだし」
「…すみません」
扇風機が運んでくる梨華ちゃんの髪の香り。
縋りつくような眼差し。
暗闇の中で嗚咽を堪えている、荒い息遣い。
耳で、鼻で、皮膚で。
あらゆる感覚器官に否応なく刻み込まれる、梨華ちゃんの存在。
シャットアウトするには余りにも大きなその存在。
過敏に尖った神経に、次第に疲れていった。
- 103 名前:in the car 投稿日:2002年11月18日(月)00時03分48秒
アヤカさんの指が、トントンとハンドルを打つ。
表情は落ち着いているけれど、やはり焦っているのだろう。
均一なリズムに、荒ぶった神経が少しだけ鎮まる。
もしかしたら、さっき保田さんが突拍子もない事を訊いてきたのも、苛立ったあたしの神経を他へ逸らそうとしてくれたのかもしれない。
梨華ちゃん。今ならわかるよ。
甘えていたんだ。梨華ちゃんに。
毎日がいっぱいいっぱいで。
不安だらけで神経すり減らして。
すごい人たちを目の当たりにして自信なくして、目標も見失いそうになって。
ずるい方法で、梨華ちゃんに甘えてた。
苛々も不安も、全部梨華ちゃんにぶつけちゃってたんだ。
どこかで、それでも許してくれる、って思いこんでたんだ。
ねぇ、梨華ちゃん。皆は言うよ。
「吉澤は強いね」って。
「梨華ちゃんって、何か守ってあげたくなるって感じだよね」って。
だけどさ、どうなのかな。
- 104 名前:in the car 投稿日:2002年11月18日(月)00時09分57秒
梨華ちゃんは、強いね。
それは鋼の強さではなくて。例えるならば、しなやかなゴムの強さ。
手で押せば簡単に形を変える。引っ張れば簡単に伸びる。
でも、引きちぎれない。完全に潰すことはできない。
知らない間にまた、同じ形に戻っている。
そうだね。今ならわかる気がするよ。
地元にいる時のあたしは、梨華ちゃんを守っている気になっていた。
梨華ちゃんはあたしがいなければダメになるって思っていた。
だから、恐かったんだね。
弱いあたしを見られるのが。情けないあたしを見られるのが。
だってさ、あたし、約束したんだ。
「面倒みます」って。
だけど、約束を果せそうになくて、でも梨華ちゃんの想いは手放したくなくて。
強くなる、なんて約束は、やっぱり出来ない。
今は自分に自信なんかない。
芯の強い梨華ちゃんと肩を並べて歩く自信すら、ない。
だけどさ、もう少し、もう少し時間をくれないかな。
だってあたし、梨華ちゃんを、諦められないよ。
- 105 名前:物心 投稿日:2002年11月18日(月)00時12分45秒
以前より更新に間があくやもしれません。
それでも良いという奇特な方がいらっしゃいましたら、
またお付き合い頂ければと思います。
- 106 名前:オガマー 投稿日:2002年11月18日(月)01時11分33秒
- 奇特な方ですが、何か?(w
待っておりました。
ヨシの気持ちが伝わってきます…。
マターリ待ってますYO!w
- 107 名前:CA 投稿日:2002年11月18日(月)01時43分45秒
- 奇特な方、その2!です。
今までが不器用な感じだっただけに、吉澤さんの心情が伝わってきます。
お忙しいようですが、お体に気をつけてください。
のんびりsage走りでもしながら待ってます(w
- 108 名前:名無し香辛料 投稿日:2002年11月18日(月)01時51分55秒
- ・゜(ノД`)・゜.
お待ちしていました。更新嬉しすぎて死にそうです。
いつまでも待ちますです。がんがってください。
すでに切なくなって泣きそうなのは内緒です。
- 109 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月18日(月)08時13分20秒
- 奇特な方、ここにもいます、その4!です。
ティッシュの箱、横に置いて有るので、充分泣かせてやって下さい。
- 110 名前:j 投稿日:2002年11月18日(月)18時20分51秒
- 更新お疲れ様です。
これから寒くなってきますので、お体に気をつけて下さい。
物心さんがここに書き続ける限り、応援しています。
- 111 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月18日(月)19時34分43秒
- キタ━━(゚∀゚)━━ッ!
待ってました!次の更新もハンカチ片手にお待ちしてます。
- 112 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月19日(火)21時16分09秒
- 待ってました────────────────────!!!!!
奇特です!!私も!!待ち望んでおりました!!
「ダス」に大爆笑です。
ううううう、続きも楽しみです!!
うれしいなー♪楽しいなー♪
- 113 名前:ステキカット 投稿日:2002年11月22日(金)21時12分35秒
- しまった!乗り遅れたっ!!
いよいよ番外編始まりましたね〜♪
よっすぃサイドとは驚きましたが続き楽しみにしています。
魚心さんもお忙しそうですが、たくさんの奇特な人間の1人として
のんびり更新お待ちしております。
- 114 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年11月25日(月)22時52分48秒
- 来た―――!!
待ってました!書くのが遅くなりましたが
吉澤サイドですね!?
のんびりとお待ちしてます!!
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月01日(日)14時36分58秒
- 番外編、始まったんですね。
凄く期待してます。
- 116 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月22日(日)23時57分43秒
- 続きまだかな〜?
- 117 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年12月27日(金)14時28分30秒
- 今年も終わりかぁ。
作者様は忙しいのでせうかマターリ。
待ってますよぉ〜
- 118 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月07日(火)09時57分03秒
- 久しぶりにトラップフォーカス読み返したら泣けてきた。
- 119 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月26日(日)15時40分56秒
- 続きが読みたいです
- 120 名前:in the car 投稿日:2003年01月26日(日)20時54分52秒
随分昔、いや、本当はそれほど昔のことなんかじゃないけれど。
世界はシンプルだった。
家族がいて、先生がいて、友達がいて、梨華ちゃんがいた。
物事の大半は、善悪と好悪で割りきることができた。
嫌いなものは嫌い。悪いことは悪い。
自分はハッキリとものを言える人間だと信じこんでいた。
稚なかった。
自分の弱さやずるさに、気付かなかった。
気付かずにすんできたというほうが正しいかもしれない。
- 121 名前:in the car 投稿日:2003年01月26日(日)20時56分08秒
その日は特別忙しく、スタジオにいる全員の苛々が煮詰まった焦げ臭い空気が充満していた。
元々限界に近いスタジオのスケジュールに加えて、急な撮り直しが割りこんできた。
トラブルと睡眠不足からくるストレスを、寺田さんは隠そうとはしなかったし、とばっちりを食った先輩は、怒りの矛先を下っ端のあたしにぶつけた。
深夜になってようやくひと段落する頃には、誰もが半ば投げやりな気分になっていたのだと思う。
「こんなにあくせく働かされてよぉ、たまんねぇよな」
一人の先輩が、自嘲気味に呟いた。
ほんと、やってらんねぇよ、ともう一人の先輩が愚痴に乗っかった。
「いーよなぁ、市井は」
- 122 名前:in the car 投稿日:2003年01月26日(日)20時56分48秒
- うっかり、口が滑った、という感じだった。
おい、と相槌を打った先輩が僅かに顎をしゃくってあたしを指した。
人の耳がある、と注意を促したかったのだろう。
だが、その行為が却って先輩の神経を逆撫でする結果となった。
「かまやしねぇよ。誰が聞いてようが」
一段声のトーンを上げて、吐き捨てた。
「……」
「俺は、言いたい時に言いたい事を言う男なんだよ」
「…まぁ、わかったから」
「何がわかったんだよ。お前もさぁ、腹ん中じゃそう思ってんだろ?うまいことやりやがったって思ってんだろうが。え?」
「いや、別にそういうんじゃ…」
「俺らがこうやって必死に汗水垂らしてる間に、市井はお飾りみたいな写真撮って有名になってちやほやされてよ」
「……」
絡まれた先輩は明らかにあたしの方を気にしているようで、答える口調は歯切れが悪い。
それを察したのか、唐突に攻撃の切先はあたしに向けられてきた。
「どうなんだよ、吉澤は」
「え?……あたしですか?」
「お前さー、市井に憧れてここ飛びこんできたんだよな」
「ええ、まぁ」
- 123 名前:in the car 投稿日:2003年01月26日(日)20時57分26秒
- 市井さんは、あたしの憧れの人だった。
雑誌の誌面で見る市井さん、テレビで見る市井さん。
どの市井さんも、かっこよくて、ほんと、かっこよくて。
あたしはボキャブラリーが少ないからうまく言えないけど。
とにかく、かっこよかった。
だけど、ただの憧れの人で終わらるつもりはなかった。
あの頃はどうしてあんなに生意気で、根拠のない自信があったんだろう。
東京に行って頼みこめば何とかなると訳もなく腹を括って、飛び出した。
お前、ラッキーだよ。
先輩も寺田さんも、皆が呆れたように言う通り、そこまでは吃驚するくらい幸運で。
たまたま体の空いていた寺田さんに会うことができて、殆ど話もしないまま、給料が安くていいならと働かせてもらえることになった。
どうしてですか、と寺田さんに聞いたことがある。
働かせて下さいって飛びこんでくる人は後を絶たなかったから。
寺田さんは即座に、「眼やな」と答えた。
それとタイミングやな、と。
確かに眼は大きい。
けど、だから、なんだっていうんだろう。
- 124 名前:in the car 投稿日:2003年01月26日(日)20時58分24秒
「吉澤は今の市井の写真、どう思ってるわけ?」
「え……と」
正直言って、先輩がいうほど『お飾り写真』とは思わなかった。
ただ、意外ではあった。
市井さんはてっきり、人物を撮り続けるものだとばかり思っていたから。
街のゴミや風景を捕えた写真。
特殊効果用のレンズやフィルターを駆使した、技巧的な写真。
いわゆる「お洒落」の為だけに首からカメラをぶら下げて街を闊歩している若者には受けるかもしれないけど、本当に市井さんが撮りたいシャシンだとは到底思えなかったから。
それはファンの勝手な思いこみなのかもしれない。
市井さんが本当は何をどんな風に撮りたいかなんて、市井さんしか分からないのだから。
『悪くないと思いますけど』
そう、答えるはずだった。
体に突き刺さる、先輩の試すような眼差し。
「まぁ……なんか、軽いですよね」
口から、滑り出た言葉。
- 125 名前:in the car 投稿日:2003年01月26日(日)20時59分14秒
「…だろ?そう、思うよな、やっぱ」
お望みの返答をあたしから引き出した先輩は、勝ち誇ったように笑った。
あたしもつられるようにして、笑った。
鏡を見なくてもわかる。
醜く引き攣れた、あたしの口元。
先輩に、世間におもねって、卑屈な笑みを浮かべたあたし。
仕方ない。
そう思った。
たかがこれくらいのこと、うまくやってく為なんだって。
業務用の太いコードを機械的に巻き取りながら、あたしは自分に言い聞かせた。
人間関係は大事なんだから、仕方ない。
多かれ少なかれ誰でもやってることだけど。
手繰っている黒いコードに自分の心が縛られていく、気がした。
- 126 名前:in the car 投稿日:2003年01月26日(日)20時59分53秒
夏が始まりかけたあの日。
アパートの前に、梨華ちゃんの幻を見た。
毎夜夢で抱き締めていた彼女は夢よりもいくらか小柄で、何だか怯えたように内股で立ち竦んでいた。
その時あたしはどんな表情をしていただろう?
「なぁんだ、先客?」
アヤカさんのからかうような声で我に返った。
「かわいいー。やるねー」
わけのわからない苛立ちの皮膜がべったりと心に貼りついた。
動揺していてよく覚えていないけれど、そういう関係じゃないとか何とか、そんなような事を言ったと思う。
梨華ちゃんは、やたらと「ごめん」を連発した。
何に謝っているのか分からないけど、なぜ梨華ちゃんが謝るのかは分かって、また苛ついた。
あたしの顔色を窺う梨華ちゃんと、顔色を窺わせているあたし。
「狭いね」「古いね」。
梨華ちゃんがそんな言葉を口にするわけがないのに。
あたしの殺風景な部屋について何もコメントしない梨華ちゃんの気遣いが、鬱陶しく感じられた。
けば立った畳。旧式のテレビの、横っ腹に刻み込まれた派手な傷。扇風機のシールの剥がし跡。
蛍光灯が部屋の細部まで、やけに白々しく照らす。
- 127 名前:in the car 投稿日:2003年01月26日(日)21時01分18秒
重苦しいのに薄っぺらな空気から逃れたくて直ぐにシャワーを浴びた。
いつもは水道代の節約の為に、体と頭を洗う時はいちいちシャワーのお湯を止めているけど、その日は盛大にお湯を流しっぱなしにした。
簡単には、苛立ちの残り滓があたしの体から流れていきそうになかったから。
ああ、そうだ。そうだった。
体を洗いながら「この後に梨華ちゃんがシャワーに入る」事に思い当たって、あたしは体中に泡を付けたまま湯船を掃除したんだっけ。
それで裸のまま四つん這いになって必死で湯船を擦っている自分の姿が我ながら情けなくて、声を押し殺して笑ったんだっけ。
そうだよ。それはまさにこの夏のあたしの姿そのものだった。
ううん、もしかしたらこの夏だけじゃないのかもしれないけれど。
本当はすっ裸なのに、見せかけの泡だけ着こんでポーカーフェイス装って。
梨華ちゃんを遠ざけたり、這いつくばって追いつこうとしたり。
傍目から見たらどれほど無様だったろう。
- 128 名前:in the car 投稿日:2003年01月26日(日)21時02分45秒
「ねぇ〜、吉澤ぁ」
「……吉澤?」
「よっすぃぃ〜ん」
夏の始まりから意識を引きずり戻された。
「…なんすか」
「なに思いに耽っちゃってるのかなーと思って」
「いや、別に、色々」
「いろいろって?…梨華ちゃんの顔とか?梨華ちゃんの脚とか?梨華ちゃんの胸と…」
「圭ちゃんっ」
アヤカさんにたしなめられた保田さんが、ふざけただけじゃん、とひょっこり首をすくめる。
「調子に乗りすぎ」
小声の反抗にもアヤカさんは間髪入れずに突っ込む。
本当にこの二人は、いいコンビだ。
メイクアップアーティストとしてフリーで飛び回っているアヤカさんは、それだけに仕事に関してはシビアだ。
誰が守ってくれるわけでもなく、一つ一つの仕事がそのまま実績として残るんだから当たり前といえば当たり前。
柔らかい空気を崩さないけれど、仕事に関しては自分に妥協を許さない姿勢はぺーぺーのあたしにだって容易に見て取れる。
そんなアヤカさんだけど、保田さんといる時は心底リラックスしているように感じる。
そうでなきゃ一文にもなりゃしない保田さんのコンテスト用の写真を撮る為にわざわざ車を出したりはしない。
- 129 名前:in the car 投稿日:2003年01月26日(日)21時04分40秒
本来なら、保田さんは今日という貴重な休日を、アヤカさんと撮影に繰り出してるはずだったんだ。
だけど梨華ちゃんがいないことに気付いて転げるようにしてスタジオの中を探しまわるあたしから事情を聞くと直ぐに車を出してくれた。
「電車で行ってる梨華ちゃんを電車で追いかけたって仕方ないでしょ」
返す言葉もなかった。
遠慮する余裕もなかった。
あたしはアヤカさんの真っ赤な車に乗りこんで、そして。
- 130 名前:in the car 投稿日:2003年01月26日(日)21時05分34秒
「いーよねー、若いってさぁー。ねー、んねー、ねーってば」
…保田さんの軽口攻撃にさらされている。
「…保田さんもまだ若いじゃないですか」
「いや!吉澤!それは違う!」
「…何がですか」
と、聞き返しておかないうちにはいつまで経っても諦めないから、気乗りしないままに聞き返す。
本当は、梨華ちゃんのことを考えていたいのだけれど。
梨華ちゃんに会ったらまず何をどう言おうか。
あたしには梨華ちゃんが帰るのを引き留める権利があるのか。
そもそも、梨華ちゃんが帰るのを、引き留めるつもりなのか。
「若さとは、相対的なものであって、つまりは…」
切々と『若さ』について語る保田さんに適当に相槌を打ちつつ、あたしは、市井さんに食いついた日の記憶に押し流されようとしていた。
「梨華ちゃんたぶらかして、楽しいですか」
- 131 名前:物心 投稿日:2003年01月26日(日)21時07分54秒
短いですが、生存報告もかねて。
>106 オガマー様
奇特ですね…有りがたいことです。
またもやうっかり、意識を失ってこんなに遅くなってしまいました。すみません。
>107 CA様
不器用な吉澤さんが好きです。sage走る吉澤さんも好きです。
そうですね、のんびりのんびり…と、つかぬことをうかがいますが、今は何月ですか?
>108 名無し香辛料様
有り難うございます。切ない話が書けるかどうかは…。
甚だ怪しいところではございますが。頑張ります!
>109 ひとみんこ様
いえいえ。ティッシュの箱など恐らく必要ありません。
ポケットティッシュでも余るくらいの番外編です。
- 132 名前:物心 投稿日:2003年01月26日(日)21時08分36秒
- >110 j 様
寒いですねー。誰のせいでもないのですが、舌打ちしたくなります。
いつも有り難うございます。お気持ち、嬉しく受けとめさせて頂きます。
>111 名無し読者様
お待たせしまして…。ほんとにほんとにまぁまぁ。
うっかり年を越した自分に吃驚です。
>112 クロイツ様
クロイツ様の更新スピードに日々驚嘆しております。
少しでも見習いたいなと。思ってはいるのですが。
>113 ステキカット様
どちらかといいますと、吉澤視点の方が書きやすかったりします。
忙しいには忙しかったのですが、怠慢も大いにありまして…すみません。
>114 ぶらぅ様
有り難うございます。のんびりにもほどがありますが、お待ち頂ければ嬉しいです。
- 133 名前:物心 投稿日:2003年01月26日(日)21時09分22秒
- >115 名無し読者様
始まりました。性懲りもなくもう少しだけ続きます。
プレッシャーに弱いのですが、出来るだけご期待に添えるよう、がんばります。
>116 名無し読者様
へいっ。おまちっ。…すみません。
>117 名無しどくしゃ様
終わりましたねぇ。うっかり、明けましたねぇ。…すみません。
>118 名無しさん様
いや、嬉しいお言葉です。お年玉として頂戴しておきます。
>119 名無し読者様
有り難うございます。次回はこれほどは間をあけないつもりです。当たり前ですが。
- 134 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月26日(日)22時38分22秒
- きたーーーーーーーー!
毎日見ていた甲斐がありました・゚・(ノД`)・゚・。お帰りなさい。
- 135 名前:桐 投稿日:2003年01月26日(日)22時42分08秒
- ひゃ〜〜〜vvvv
待ってました!幸せです!!
初めまして。一気に読んで、続きを待っていました。
大好きです!むちゃくちゃ好きです〜vvv
応援してます。頑張ってください。
- 136 名前:名無しバッカーズ 投稿日:2003年01月26日(日)22時55分27秒
- 川o´∀`)ノ<待ってますた。
最初からドバーーッと読ませていただきました。
これからも頑張ってください。
- 137 名前:ごまべーぐる 投稿日:2003年01月26日(日)23時05分42秒
- >127の件が特に、自分的にはもう、もう…。
ヨスコの心の葛藤がその1レスに集約されてて、相変わらずうまいなーと。
何が言いたいのか、よく分からなくなってきましたが、とりあえずアヤカに小言を
言われてるヤスに萌え。
川`.▽´)||ノ<圭ちゃんっ! (`.∀´;)<ふざけただけじゃん
自分的には、このコンビの登場シーンは「夕飯にステーキ」くらいの
ご馳走です。
- 138 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月26日(日)23時08分05秒
- キタ━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━!!!!!
なにげにヤッスーとアヤカのコンビが好きです。
この2人の話もみたいなぁ、とか呟いてみるテスト。
- 139 名前:ぶらぅ 投稿日:2003年01月27日(月)00時47分50秒
- キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
お待ちしておりました!!w
あ、遅いは自分のレスするのがです。
マータリマータリ気長に待っていますので、作者様のペースでどうぞです。
やっすーとアヤカのコンビ好きなんでいいっす♪
ますます楽しみです。頑張ってください
- 140 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月27日(月)05時39分31秒
- やったー!更新だ!!(コオドリ♪)作者たんありがとう!
- 141 名前:j 投稿日:2003年01月27日(月)20時11分05秒
- 更新お疲れ様です。
元気にしてました?お忙しいようですが、
あまり無理なさらぬよう、マターリ更新して下さい。
- 142 名前:名無し 投稿日:2003年02月01日(土)22時17分21秒
- 応援してます。
- 143 名前:名無し蜜柑 投稿日:2003年02月02日(日)16時33分16秒
- キタ――――――――――――――――!!!!!!!!!!
大好きな作品なので、嬉しいです!!
いつまでも待ってるんで、マタ―リ更新してくださいな。
- 144 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月20日(木)21時51分15秒
- (o^〜^o)マターリマッテマス。ガンガッテクダサイ。
- 145 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時08分49秒
突然、マンションの近くまで押しかけてきて挨拶もそこそこに噛みつくあたしを、市井さんは呆れたように見上げていた。
背丈ならあたしの方が高いのに。
相変らず余裕を含んだ表情に追い詰められて、見下ろされているのはあたしの方だった。
弱い犬は吠える。
だからあたしも、やたらと市井さんに吠えついた。
「梨華ちゃん泣かせて気分いいですか」
「…」
「市井さんにかかれば、簡単なもんですよね」
- 146 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時09分26秒
- いくら言葉を重ねても、ちっとも焦りも怒りもしない市井さんに、あたしは苛立って仕方がなかった。
市井さんが部屋にあがれと言うのも片手を邪険に振って断った。
多分、部屋に行けば、市井さんに呑まれてしまうから。
憧れの市井さんに噛みつくには、目が廻りそうなくらいの怒りの力に押されなければならないから。
沸騰してゴボゴボと訳の分からない悲鳴が弾ける頭の隅っこで、小さな小さなあたしが、闇雲に喚く自分自身の姿を哀しく見ていた。
だって、梨華ちゃんが市井さんを好きならば。
いや、好きだと、引き返せないと確かに梨華ちゃんは宣言したのだから。
我ながらよく言ったものだと思う。
「きれいになったね」なんて。
でもここに来てからの梨華ちゃんは時を追うごとにどんどん綺麗になって。
本当は、最初っから綺麗だったのに。
それを知っているのはあたしだけだったのに。
単純に喜んじゃってる梨華ちゃんにイライラして。
梨華ちゃんの全身を舐める周囲の視線にイライラして。
無頓着で無防備すぎる梨華ちゃんにイライラして。
- 147 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時12分08秒
『相手に好きな人がいるってわかってて、それでも好きになったらいけないの?』
言い放った梨華ちゃんの全身から眩しいものが弾けていた。
そして気付いた。
お化粧のせいじゃない。洋服のせいでもない。
梨華ちゃんが綺麗なのは、必死で恋をしているからだと。
叶わぬ恋をしているからだと。
あたしはその夜、暗くて狭い台所でバカみたいに泣いた。
もっと優しくできたら梨華ちゃんの気持ちは離れなかったんだろうか、とか。
結局、梨華ちゃんの気持ちはその程度だったんだ、とか。
世界に見放された気分だった。
体育座りをして、両膝の間に頭を突っ込んでひぃひぃ泣いた。
しまいには座っているのもだるくて、ごろりと横倒しになった。
ベニヤの天井のきったない染みさえも侘しくてまた泣いた。
終わったんだ、と自分に言い聞かせようとした。
- 148 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時17分42秒
- それでもあたしは何とかして梨華ちゃんから市井さんの手を引かせたかった。
恋の結末は、鮮やかすぎるくらいに見えていたから。
梨華ちゃんが泣くのを黙って見過ごすわけにはいかなかった。
そりゃ市井さんはかっこよくて、あたしなんか全然かなわないけど。
梨華ちゃんが好きになっちゃうのも無理はないんだけど。
でも、でも。
市井さんはダメだ。
市井さんだけはダメだ。
もどかしさと、怒りと、嫉妬と、とにかく色んなものでぐちゃぐちゃで。
ぐちゃぐちゃにほつれた感情の奥に、たった一つの真実が居座っていて。
…本当を言うと、市井さんじゃなくてもダメなのに。
あたし以外の誰かじゃダメなのに。
- 149 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時19分58秒
- それから。多分…いや、「多分」なんて卑怯かな。
あたしは、見たかった。うん。見たかった。
市井さんの余裕を失った顔が。
一人で人生悟っちゃったような顔してるのが許せなかった。
「市井さんのことはやめなって言ったんですよ」
「でも、本気だって言うんですよ」
「他に好きな人がいても、市井さんじゃなきゃダメだって言うんですよ」
「す、っげー、梨華ちゃん、バカみたいに純粋なんですよ」
「市井さんとは違うんです」
思えば、それだけでも随分、酷い言葉を浴びせかけたものだ。
食べれば食べるほどもっともっと食べたくなってしまう、魔法のプディング。
小さい頃に読んだお話と同じ。
プディング、という響きは何やらとてつもなく甘美なものを含んでいた。
あの頃は色鮮やかなプディングの挿絵を眺めては、一度でいいからこのプディングを味わってみたいと熱望していたけど。
いつの間にか、あたしはプディングを口いっぱいに頬張ってしまっていたんだね。
- 150 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時25分04秒
- もっと傷つけるような言葉を、もっと残酷な言葉を。
口にすればするほど、もっと、もっと、もっともっともっと。
「市井さんは、女の子泣かせるの、得意ですもんね」
市井さんは僅かに眉を寄せたけれど、その唇から発せられたのはやっぱり市井さんらしかった。
「……あんた少し落ち着きなよ」
遂にあたしは、一番でっかくて一番甘い、禁断のプディングに手を出した。
「そうやってごっちんも手に入れたんですか」
「……」
「そんで捨てたんですよね」
「…よしざ」
「お見事なもんですよね。あ、でもごっちんは元気ですよ」
「あのさ」
「仕事もしてるし、一応は。だって、それがフリーになる条件だったんですよね?」
「…待てって」
「それくらいしないと、やっぱ、この世界は厳しいですもんね」
「やめろって」
「やめませんよ」
- 151 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時26分22秒
- やめない。やめてなんかやらない。
何でも一人でそうやって背負ってるような顔しちゃって。
本当はあたしだって何となく分かってる。
市井さんがごっちんから離れたのは他にも何か理由があるからだってことくらい。
でも、ごっちんは、現に苦しんでいて。
あたしの家、保田さんの家、アヤカさんの家、それからとにかく色んな人の家を我がもの顔で泊まり歩いている。
最初は、寂しいのかと思った。
でも梨華ちゃんがアパートを飛び出していってから、おぼろげだけど、ごっちんの気持ちが理解できたような気がした。
孤独、なんて言葉にしてしまえば、やけに薄っぺらくなっちゃうけど。
ううん、孤独とも少し違う…なんて言ったらいいのかな。
『恐怖』みたいなものだと思う。
孤独は知らぬうちに胸の中に触手を伸ばして根を張るけど、恐怖は、刻一刻とあからさまに胸を食い荒らす。
帰って来ない人を待つのは寂しい。
でも、もしかしたら帰ってくるかもしれない人を待つのは、恐怖だ。
- 152 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時27分07秒
- だから、ごっちんはお菓子を作る。
いてもたってもいられないから、せめて頭を空っぽにしようとお菓子を作る。
生地をこね、オーヴンを温め、パウダーを振りかける。
ごっちんの作るお菓子は美味しい。
だけど濃く甘ったるい香りはいつだってあたしを息苦しくさせる。
市井さんへの昇化しきれない感情がこめられている気がして。
飲み込んだ筈の物体が、閉じこめないでと、外に出してと押し戻ってくる。
胸が灼ける。
もし、これが梨華ちゃんだったら?
律儀で何でも一生懸命な梨華ちゃんのことだ。
掻き混ぜろと書いてあれば必死で掻き混ぜ、泡立てろと書いてあればどこまでも泡立てるだろう。
だけど、実は意外に大雑把だから、分量をよく量ってなくて、最終的には「そうと思えなくもないもの」ができあがるんだろうな。
それで「あれ?おかしーなー、あれ?」なんて首を傾げて今度は必死に言い訳なんかするかもしれない。
そしてあたしは、どんなに甘ったるくても粉っぽくても、まずいまずいと言いながらそのお菓子を平らげる。
平らげてみせる。
- 153 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時29分55秒
…ああ、会いたい。梨華ちゃんに会いたい。
触れたい。
抱き締めたい。
掌を梨華ちゃんでいっぱいにしたい。
梨華ちゃんを掴んでいられなかった意気地なしの腕が、悲鳴をあげてる。
もし、もしも、あの夏の始まりの日に戻れるんだったら…。
「宝くじを買うね、私は」
「…」
「吉澤は?」
「…は?」
「聞いてなかったの?だからぁ、もし宝くじで3億当たったらどうするって話」
「…はぁ」
「アヤカは貯金するんだって。夢がないと思わない?」
「何言ってるの圭ちゃん。少年老いやすし、よ。いつまで仕事続けられるかわからないんだし、人生何があるかもわからないんだから。堅実にいっとかないと」
さすがアヤカさん。言うことがシビアだ。
「それはそうだけどさー、どうせあぶく銭なんだし、パッ、と、さ」
パッとまた宝くじっていうのも、卑しい気がしないでもないけど。
「じゃ、せめて半分は貯金しなよね」
「えー、3割じゃだめ?」
「だめ。5!」
「4」
「4,5」
どっちもどっちかもしれない。
皮算用もここまでくると、ご立派。
- 154 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時32分48秒
- 「で、吉澤は?」
「あたしですか?…あたしは…」
まず、カメラ買って、フィルムも買いだめして。
それより自分の暗室なんか作っちゃったりして。
…暗室と言わずに、マンション買えばいいんだよね。
狭くても、2人で住めるマンションを。現金で、ババーンと!
あとは梨華ちゃんの洋服とお揃いの指輪と……あたしも結局は平民だな…。
「あーあ、これだもん」
大仰に保田さんが溜息をつく。
「はい?」
「鼻がたるんでる」
「なっ、なんですかそれっ」
鼻がたるんでる、ってどういう形容なんだ。
微妙に気分が悪い。
「どうせ、2人の愛の巣とか考えてたんでしょ」とアヤカさんが口の端に笑いを含ませている。
図星の為、黙秘。
「貯金もするんだよ。人生何が起こるかわからないんだから」
受け売り保田さんは、無視。
軽快な妄想を乗せて、心なしか車も先ほどよりは軽快に滑っている。
アヤカさんがエアコンの設定温度をさりげなく下げる。
少し排気ガス臭い風がこめかみを撫でる。
さっきからあたしを襲う、途切れ途切れの記憶。
その繋がりは漠然としているのに、いやに鮮明なひとつひとつの情景。
まるで小さい頃の思い出のようだ。
- 155 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時34分43秒
しばらくの沈黙の後。
ねぇ、とアヤカさんが前置きをしてから訊ねた。
「梨華ちゃんがいなくなったって気付いてからどれくらい経ってる?」
あたしは間髪入れずに大体の時間を答えた。
「そう」と素っ気無く流そうとしたけれど、その眉が微かに歪むのをあたしは見逃さなかった。
なぜですかとは聞かない。
アヤカさんと同じ不安がにずっと揺さぶられているから。
でも、口にしてしまえば不安が現実に変わってしまいそうだから。
梨華ちゃんがいなくなってから、ゆうに1時間弱は過ぎている。
乗り換えを計算に入れても、梨華ちゃんが駅に着いて電車に乗るには十分な時間だ。
あたしは下唇を噛み締める。
車に乗っているのが30分。
スタジオ中を探しまわったのが、多分、20分くらい。
致命的な時間のロス。
- 156 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時36分40秒
ちら、と市井さんの姿を思い浮かべる。
「おい、ちょっちょっ、ちょっ、ちょい待てっ!」
車に乗りこむあたしに向かって必死に呼びかけていた市井さんは情けなくて滑稽で。
場違いなあたしの微笑を誘う。
市井さんが焦るのは無理もない。
たった1日だけだし、そりゃもうこじんまりとしたものだけど、今日は紛れも無いあたしの個展なのだから。
主役がいなくてどうするって話だ。
だけど、あの瞬間、迷いはなかった。
追いかけないという選択肢すら思いつかなかった。
個展のチャンスなんてこの先、いくらでも掴んでやる。
そもそも今回のチャンスが、あたしには身分不相応なものだったんだ。
でも、梨華ちゃんを追いかけるチャンスは、今、この時しかない。
たった1回。最後のチャンス。
- 157 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時38分20秒
- だけど。
ろくに事情を説明せず、やすやすと市井さんを振り切れたのは、あたしの勢いのせいだけじゃない。
市井さんの背中には。
そう。
地獄の亡者よろしく、ひとまわり大きな塊がべったりと張りついていたからであり。
「ちょっとだけっ、なっ、頼むッ、離してくれッ」
必死の懇願も虚しく宙に吸い取られるばかりで、二度と離すものかとばかり、長〜いて足を絡みつかせている、ごっちん。
悲しいかな、それはあたしを梨華ちゃんの元へ行かせようという友情なんかではなく。
目の前の人を、ようやく通じた想いを、今度こそ離すまいという執念に違いなく。
…ごっちんの愛情表現も、過激というか極端というか。
市井さんの自業自得と言えばそれまでだけどね。
あたしの意識は完全に梨華ちゃんに持っていかれてたから、「ありゃ〜」程度にしか特に感想はなかったし。
市井さん。観念して、存分にとり憑かれちゃって下さい。
- 158 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時39分43秒
気付くと、車線が増え、道幅も目に見えて広くなっている。
目的地は、近い。
もっと速く、速く。
上体が前に傾ぐ。
シートベルトを抜けて、はやる心が記憶にある駅のターミナルをさまよう。
改札を通り、確か4番線か5番線。ホームの階段を上がって。
いつしか、あたしの視線はそのまま梨華ちゃんの視線と同化している。
喉が弱いから、飴と、お茶を買おう。
そうそう、お土産は足りてるかな?
家の分、学校の友達の分。
…地名がでかでかと恥ずかしげもなく彫られているだけのキーホルダーの類いは止めようね。
貰った方が困るから。
「…よしざわ、よしざわ」
- 159 名前:in the car 投稿日:2003年02月26日(水)00時42分30秒
梨華ちゃんと共にお土産を物色していた意識が、シートベルトの内に戻ってくる。
と同時に、自在に飛んでいた意識とは裏腹に、車は徐々にスピードを落とし……止まった。
「…事故による車輛規制により、この先一部通行止め、だって」
保田さんの尖ったまなじりに、ようやくあたしは事態を飲みこんだ。
頭の芯が熱くなる。
「えっ、でも、前には進めるんですよね?」
とんちんかんな問いを縋るように投げかける。
前には進める。だけど、このままじゃ。
アヤカさんはじっと前を凝視したまま動かない。
真ん前の車の後部には、眠っているらしき球形のイラストに「赤ちゃんが乗っています」と書かれたラベル。
それを言うなら、今のあたしはさしずめ「大切な人に冷たくした挙句、逃げられそうになって慌てふためいてる間抜けな大人が乗っています」といったところだ。
「どうする、吉澤」
どうするもこうするも。
- 160 名前:物心 投稿日:2003年02月26日(水)00時43分54秒
次回こそ完結!
完結なのだ!と、自分に言い聞かせてるのだ!
無駄に長くてあいすみません。
>134 名無し読者様
毎日とは…畏れ多くもありがたいことです。
ただいま、と言わせて頂ける喜びを噛み締めております。
>135 桐 様
初めまして。一気読み、誠にお疲れ様でした。
今度は、応援が作者に届くよう応援してみて頂ければ幸いです。
>136 名無しバッカーズ様
随分と長いことお待たせいたしまして。
ドバーーッとですか。次回こそ、ドバッと完結に突入致しますので。
>137 ごまべーぐる様
ちょっとお茶目な保田さん風味にしてみました。
色んな萌えがあるのだなぁ…と感心しているところです。
- 161 名前:物心 投稿日:2003年02月26日(水)00時45分08秒
- >138 名無し読者様
この2人がなぜか人気のようです。
脇役がいつのまにか前へ前へと出てきてしまう…というのが悩みです。
>139 ぶらぅ様
マターリマターリ書いていたらまたもやこんな月日が。
時間というやつは、油断も隙もございませんな。
>140 名無しさん様
読み歌い舞って頂き、ありがとうございます。
…歌ったかどうかは定かではありませんが、細かいことを言っちゃぁいけやせん。
>141 j 様
忙しいような忙しくないような日々ですが、無理はいたしません。
自分が大事なもので。いつも温かいレス、有り難うございます。
- 162 名前:物心 投稿日:2003年02月26日(水)00時45分50秒
- >142 名無し様
有り難うございます。皆様の応援あっての物心です。
念の為ですが、議員選出馬の予定はありません。
>143 名無し蜜柑様
有り難うございます。
次回にて完結致しますので、あと少しお付き合い頂ければ幸いです。
>144 名無し読者様
お言葉に甘えてひねもすひねもす。時を過ごしてしまいました。
申し訳ございません。
- 163 名前:ステキカット 投稿日:2003年02月26日(水)21時07分23秒
- そうかー。こんな壮大(?)かつ困難な裏事情があったとは!!!
そして亡者ごっちんの変身ぶりには笑いました(笑)
お忙しそうですが楽しみにしてますので頑張ってくださいね。
- 164 名前:j 投稿日:2003年03月05日(水)22時33分38秒
- >無駄に長くてあいすみません。
無駄?・・無駄などありましょうか、
「梨華ちゃんの視線」と同化している「吉澤」に、同化してしまいました。
次回完結等とは言わず、思う存分(ry/・・執筆、頑張ってください。
- 165 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月18日(火)16時12分43秒
- いつまでも待ちます。
焦らず自分のペースで執筆頑張ってください
- 166 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月19日(水)02時50分20秒
- おっと更新されてるの気づきませんでした。
ごっちんキャワイイー!
いしよしもきになるけど いちごまの様子もあれからどうなったのかきになりどころですw
- 167 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月02日(水)23時24分29秒
- 待ってるよ〜。
- 168 名前:京 投稿日:2003年04月03日(木)14時53分37秒
- なんかいい。すっごくいいです!じ〜んってなりました★
がんばって下さい、待ってます。
- 169 名前:京 投稿日:2003年04月20日(日)06時53分58秒
- スミマセン。上のやつageてるんですよね…?
あんまりパソコンのこと分かってなくて…
今度はsageときました。
- 170 名前:京 投稿日:2003年05月04日(日)02時20分46秒
- うぃっす!待ってます!
- 171 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月02日(月)01時42分05秒
- ほぜん
- 172 名前:名無し形 投稿日:2003年06月18日(水)18時59分10秒
- 物心タソがんがれ。
楽しみに待ってます
- 173 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月20日(金)01時37分38秒
- 新作始まりましたが、こちらはまだですかね?
楽しみにしています。
- 174 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月15日(火)18時40分29秒
- hozen
- 175 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年07月21日(月)08時15分00秒
- 作者さん戻ってきませんか〜?
- 176 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月21日(月)12時39分03秒
- ゆっくり待ちましょう
- 177 名前:京 投稿日:2003年08月19日(火)23時20分09秒
- お〜い…
- 178 名前:名無し初心者 投稿日:2003年08月23日(土)13時16分57秒
- 最近「いしよし」にハマッタんですけど、いや〜
こちらの作者さんのは良いですね〜才能ある方が
「いしよし」で良かった〜!と、心底思ってます。
綺麗な文体は言うに及ばず。
なんか、キャラがとても魅力的なんですよね。
エピソードとかも可愛くて、なんだかそうすると知らず知らずの
うちに作者さんの世界に引き込まれて登場人物と一緒に
泣き笑いしてたりして。今の「いしよし」な自分が
あるのもこちらの作者さんのおかげと言っても過言ではありません。
是非是非また頑張っていただきたいです。
- 179 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月23日(土)15時10分10秒
- >178
ホントに初心者でつね…
期待しちゃうから上げないで。
- 180 名前:名無し初心者 Part2 投稿日:2003年08月23日(土)20時30分15秒
- まあまあ、いいじゃないの、誰もが通った道。
- 181 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/21(日) 22:21
- hozen
- 182 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/21(日) 23:58
- どっすーんと落ち。
>181 >179 です。
- 183 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/05(日) 01:02
- こっちも待ってるぜぇ
- 184 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/12(水) 00:59
- ho
- 185 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/03(水) 10:34
- 保全
- 186 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 22:10
- 保全
- 187 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/27(土) 03:58
- 10ヶ月放置。もう待てません
- 188 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/27(土) 07:58
- >>187
それなら読まなきゃいい。
俺はずっと待ってます。
- 189 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/20(火) 18:04
- 待ってるで〜
- 190 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/11(水) 14:25
- トラップフォーカスをリアルタイムで読んで心を躍らせてたのがもう一年半前。
時が流れるのは早いですね。
読み返さなくたって、映像がまだリアルに残っています。
有り難う。
- 191 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/14(土) 22:40
- http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/wind/1055681855/
同一人物だよね?
- 192 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/26(木) 17:52
- そうですよ
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