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気が向くままに書いてきます。
- 1 名前:七誌 投稿日:2002年09月14日(土)10時33分53秒
- 月・雪を経て誰もが忘れたころだと思うのでヒサブリに七誌で飼育復活します。
短編・中篇あたりをチラホラ書いていきます。というわけで、少し下がるのをまとう。
- 2 名前:少しだけ意地悪な貴方 投稿日:2002年09月15日(日)00時14分15秒
9月のごっちんの誕生日にごっちんはモーニング娘。を卒業しちゃう。
私がそれを知ってからあっという間に1ヶ月がたってしまった。
ごっちんの卒業まで残り一ヶ月もない。
それなのに――あたしは、器用な体勢で眠っているごっちんに視線を動かした
――実感がないのかノンキに眠っている。私は、小さくため息をつく。
「ごっちん、どうしてやめちゃうの?」
プニプにと頬をつつく。
最近、痩せたと言っていた彼女の頬は確かに以前に比べて私の指を押し返してはこない。
過ぎていく時間を感じて私は少し切なくなった。
- 3 名前:少しだけ意地悪な貴方 投稿日:2002年09月15日(日)00時15分56秒
「ごっちん?」
「z・・・・・・z・・・z」
ごっちんが眠っているのを再度確認する。
そっと背中に触れる。暖かい。大好きな背中、大好きな人。
「ごっちん、好きなんだよ。やめちゃ嫌だよ」
自然に漏れる言葉。
「・・・・・・んぁ」
ごっちんが不意に目を覚ました。私は、驚いて彼女から体を離す。
目をこすりながら「寝ちゃってたよ〜」といって笑う彼女。
もしかして、今の言葉を聞かれたかもしれない。
「ごっちん、聞いちゃった?」
「なにを?」
恐る恐る聞くとごっちんは首をかしげた。
聞かれていなかったらしい。
ホッとすると同時に聞いていてくれたらなという気持ちが浮かんだ。
実際に告白なんてできそうもないから・・・・・・あぁ、なんだかごっちんが遠くに感じる。
「ねぇ、梨華ちゃん」
ごっちんが急に私を見つめた。
「え?な、な、な、なに?」
「なんでそんなに端っこに移動してんの?」
「え?」
気がつくと私は楽屋の端っこまで椅子を滑らせていた。
遠くに感じるんじゃなくて自ら遠くに行っていたなんて・・・・・・チャーミー失敗、テヘ
- 4 名前:少しだけ意地悪な貴方 投稿日:2002年09月15日(日)00時17分19秒
「おはよーござーまーす」
楽屋のドアが開いて加護が入ってきた。
それをかわきりに続々とメンバーも集まってくる。
「あれ?梨華ちゃん、なんでそんなに端っこにいるの?」
よっすぃ〜が、モグモグとベーグルを食べながら間延びした声で言った。
よっすぃ〜、いい加減ベーグル卒業したらどうかな?
「え?ううん」
「梨華ちゃん、変なんだよ〜、後藤と話してるうちにどんどん端っこに行っちゃったの」
ごっちんが笑う。よっすぃ〜も笑う。
気がつくと、加護がごっちんのひざに甘えるように座っていた。
うらやましい。あたしにはできないな。
っていうか、あたしがそんなことしたらかなり危ない人になっちゃうかな?
- 5 名前:少しだけ意地悪な貴方 投稿日:2002年09月15日(日)00時18分08秒
「後藤、ちょっと」
少し遅れて楽屋に顔を出した保田さんがごっちんを呼んでいる。
ごっちんは、加護になにやら謝りながら楽屋を出て行った。
むむっ!怪しい。
この間、保田さんが寝言でヤスゴマヤスゴマって言ってたし・・・・・
それがなにをさしてるのかは分からないけど(^▽^)しないよ
・・・・・・二人の絆は時々私を不安にさせるんだ。よしっ!こうなったらスパイチャーミー発動!
「石川っ!どこ行くの?トイレ??」
立ち上がった瞬間、矢口さんに声をかけられた。
「しないよ」
私は、突き動かされるようにそう発っして楽屋をあとにした。
「しないよってなんだよーっ!?」
後ろから矢口さんの突込みが聞こえた。
- 6 名前:少しだけ意地悪な貴方 投稿日:2002年09月15日(日)10時09分36秒
二人の姿はすぐに見つかった。
私は、気づかれないように後を追う。二人はエレベーターで屋上へと向かっているみたいだ。
私は、先回りするために階段を使った。
チャーミー大ダッシュ!!恋する乙女は強いって本当だね。
屋上の給水塔の上に隠れて二人がやってくるのを待つ。
・・・・・・・・・・・・待つ
・・・・・・・・・・・・・・・・・待つ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いくら待っても二人は来ない。
- 7 名前:少しだけ意地悪な貴方 投稿日:2002年09月15日(日)10時10分40秒
屋上じゃなかったのかな?
私がそんな不安にかられはじめたとき、ガチャッとドアが開いた。
誰かが入ってくる。
ごっちんだ。保田さんの姿はない。
なんで?
ごっちんは、誰かを探しているみたいにキョロキョロとあたりを見回している。
ま、ま、まさか逢引き!?そんな・・・・・・保田さんはカムフラージュだったの?
ホントはほかに誰かと会う約束してたんだ・・・・・・・・・・・・
私、バカみたいだ。
どうしよう?ごっちんが好きな人なんて見たくないな。
でも、ここから降りたらごっちんに気づかれちゃうし・・・・・・
私がそう思っているとごっちんは諦めたように一つため息をついて屋上から去っていった。
あれ?待ち合わせじゃないの?
ともかく、この隙に下りてあたしも楽屋に戻ろう。
- 8 名前:少しだけ意地悪な貴方 投稿日:2002年09月15日(日)10時13分30秒
スカートだけど、下に誰もいないから気にしない。
恋に破れた乙女も強いんだね。
地面に足をつける。
風が心地よく吹いている。
「はぁ・・・」
「どうしたの?ため息ついて」
「ちょっとね、失恋しちゃったの・・・・・・って、え?」
いつもチャーミーと梨華の一人芝居なんてしてるせいで、
無意識のうちに誰かの質問に答えていた私は驚いて振り返る。
そこには――
- 9 名前:少しだけ意地悪な貴方 投稿日:2002年09月15日(日)10時14分39秒
「ごっちん!?」
な、なんでここにいるの!?
私は、あまりの驚きで口をパクパクさせることしかできない。
ごっちんは、そんな私を見てケラケラと笑った。
「梨華ちゃんを探してたんだよ」
「え?でも、あれ?保田さんは??」
「んぁ?けーちゃん?話があったらしいけど、梨華ちゃんが後ろからついてきてるのに気づいて後でいいって」
えーっ!!気づかれてたの!?乙女、恋する猛ダッシュも!?
恥ずかしい。穴があったら入りたいよー。
「それで、失恋って?」
「え!?いや・・・しつれいみたいな」
「は?」
「だから・・・喫煙?みたいな」
「・・・・・・」
「それで、ジミヘン?みたいな」
あ、ごっちんが呆れた目で私を見てる。
好きでこんな寒いこと言ってるわけじゃないのに・・・・・・ごっちんがいきなりくるから悪いのに
- 10 名前:少しだけ意地悪な貴方 投稿日:2002年09月15日(日)10時15分57秒
「ねぇ、なんで失恋したなんて思うの?」
「だ、だ、だから、違うんだって。失恋じゃなくてモツ鍋?みたいな」
「ツしか合ってないから・・・・・・じゃなくてさ〜、告ってないじゃん。
なのに、なんで失恋したなんて思ってるの?」
「だから〜・・・・・・」
ん?なんか変。
告白してないなんてなんでごっちんが知ってるの?
なんかおかしくない?
これじゃ、ごっちんが私の好きな人知ってるみたいじゃん。
しかも、なんでそんなに嬉しそうに笑ってるの?
- 11 名前:少しだけ意地悪な貴方 投稿日:2002年09月15日(日)19時54分20秒
「ねぇ、ごっちん」
「ん〜?」
「・・・・・・もしかして、起きてた?」
「なにが〜?」
そう答えるごっちんの顔はいたずらっ子そのもので・・・・・・
絶対にさっきの私の言葉聞いててからかってるんだ、と思ってついムキになってしまう。
「さっき起きてたんでしょ?」
「さっきって?」
「だから、さっき私がごっちんのこと好き・・・・・・あっ」
言いかけて気づいた。
私は、バカだ。
こんな簡単な誘導にあっさりと引っかかるなんて。
もう・・・・・・ダメだね。今度こそ確実に失恋しちゃう。どうせ・・・
「あたしも好きだよ」
「だよね。ふられるって分かってたから・・・・・・ごめんね、最後の最後に」
はぁ、ごっちんの声が遠くに聞こえる。サヨナラ、私の恋・・・・・・サヨナラ、ごっちん。
「梨華ちゃん??ちゃんと聞いた?」
「もう何度も言わなくていいって」
「いや、根本的に間違ってるんだけど」
「そうだよね、女の子が女の子好きになるなんて根本的に間違ってるよね」
「だから、違うんだってば」
もうしつこいよ、ごっちんは。今は一人になりたいのに。
- 12 名前:少しだけ意地悪な貴方 投稿日:2002年09月15日(日)19時55分04秒
「梨華ちゃんってば」
「え?キャッ!」
グィッと怪力に引っ張られて私はごっちんに抱きしめられる形になった。
え?なんで??なんでこんな体勢に!?
カーッと顔が熱くなるのを感じる。
「分かった?」
「・・・え?」
なにが分かるの?
私は、ごっちんを上目で見る。心なしかごっちんの顔も赤いような
「もう二度とおんなじこと言わないからちゃんと聞いてよ」
そういって、ごっちんは私の耳もとで囁いてくれた。
「あたしも梨華ちゃんが好きだよ」
「ホントに?」
ごっちんが、うなづく。
お父さん、お母さん、チャーミーは日本一・・・・・・世界一・・・・・・宇宙一の幸せものです。
ごっちんは、娘じゃなくなっても私のそばにはいてくれるよね。
だって、両思いだったんだもん。ポジティブポジティブ!
Fine
- 13 名前: ―――― 投稿日:2002年09月15日(日)19時55分40秒
「ところでさー、いつから屋上に戻ってたの?」
「梨華ちゃんが風にスカートをなびかせてカワイイピンクのパンツを見せてくれてたときから」
「え!ウソっ!!」
「ちょっとお得だったね」
・・・・・・お父さん、お母さん、私の好きな人は少し意地悪みたいです。
- 14 名前:七誌 投稿日:2002年09月15日(日)19時57分35秒
- 誰も読んでねーからいいものの
やっぱりハッピーエンドなカップリングものは苦手だな。と思ったわけで。
ま、いっか。
- 15 名前:エレベーター 投稿日:2002年09月16日(月)08時46分40秒
スタジオの移動で珍しく二人きりになった。
大人数移動でしかも大人組にはいるあなたと二人きりになることは滅多にない。
あなたがエレベーターのボタンを押す。
神様がくれたチャンスなのかエレベーターは最上階まで昇っていて、
あたしたちのところまでは数分はかかりそうだ。
このまま時が止まればいいのに――
「あー、ついてないねー」
あなたがエレベーターの表示を見上げて呟く。
私より数段小さなあなたの背中。
抱きしめたい、強く強く――
そんな衝動が私の体を駆け巡る。
- 16 名前:エレベーター 投稿日:2002年09月16日(月)08時47分46秒
だけど、あなたには、あの人がいるから
――あたしの思いは伝えられない。
伝えてはいけない。
まっすぐな瞳を失いたくないから
あなたがくれる笑顔を失いたくないから
でも、少し触れるぐらいなら――
神様、あたしの願いはかないますか?
- 17 名前:エレベーター 投稿日:2002年09月16日(月)08時48分28秒
「どうかした?」
あなたが急に振り向くから――
「いえ、遅いですね、エレベーター」
あたしは、短く答える。
エレベーターのドアが開いた。
振り向いてくれてよかった。
あと、一秒遅かったらあたしはきっとあなたを抱きしめてた。
Fine
- 18 名前:七誌 投稿日:2002年09月16日(月)08時51分51秒
- ちなみにリアル・アンリアル両方ありですこのスレは。
っつーか、カップリングってよう分からんわ。
- 19 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月16日(月)19時54分05秒
- これは、ヨシヤグかな?なんか切なくていいっす。
ちなみにリクはオッケーですか?マイナーカプかおごまが読みたいです。
気が向いたらお願いします。
- 20 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月16日(月)19時54分57秒
- ageてしまいました、すみません
- 21 名前:七誌 投稿日:2002年09月16日(月)23時10分12秒
>19さん
別にsage進行ってワケでもないんで気にしないでください。
ageたりsageさたりで。
ちなみに、萌えもなく、ハッピーでもない・・・かもしれない場合がありますが
リクは基本的にあったほうが書きやすいのでオッケーです。
自分は、有名どころのカプしか分からないので・・・・・・
んで、今んとこストックがけっこうあるんで
いつアップになるるかは定かではありませんがかおごまでてくるまで
生ぬるく見守っていてくださいまし。
- 22 名前:走れ!矢口!!~ギャルゲーガスキ~ 投稿日:2002年09月16日(月)23時13分04秒
「矢口さ〜ん、助けてください!」
珍しく待ち時間にうたた寝をしていたあたしは
心底から救いを求める誰かの声とタックルで潰された――もとい、ムリヤリ起こされた。
あたしに覆いかぶさってきたそいつのおかげで息ができない。
「重いって辻っ!」
こんなことしてくるのはもう辻だけだろう、そう思ってあたしはそいつの肩をぐぃっと押しやった。
「ののじゃないですって」
「加護?」
予想と違った人物にあたしは少し戸惑う。
加護は、よく抱きついたりはしてくるがこんな風に全体重乗っけてくることは
あまりなかったからだ。よほど切羽詰ってるのかもしれない。
とりあえず、加護にどいてもらって体を起こす。
- 23 名前:走れ!矢口!!~ギャルゲーガスキ~ 投稿日:2002年09月16日(月)23時13分57秒
「で?なんなの?」
「だから、助けてほしいんです」
「助ける?」
加護の言葉は端的過ぎてよく意味がつかめない。
それに気づいたのか、加護はさらに短く続ける。
「セクハラするんですよ〜」
セクハラと聞いたあたしの頭に一番に祐ちゃんのにやけた顔が浮かび上がった。
ったく、あの人は誰でも彼でも手を出すんだから。
手出すのはあたしだけにしろってあれだけ言ったのに
「よし、任せろ、加護!!」
あたしは、加護にガッツポーズをしてセクハラ魔人祐子のいる楽屋に乗り込んだ。
- 24 名前:走れ!矢口!!~ギャルゲーガスキ~ 投稿日:2002年09月16日(月)23時15分52秒
「裕子っ!!!」
「な、な、なんや、矢口!?」
突然、怒鳴られた祐ちゃんは目を丸くしてあたしを見ている。
しらばっくれるつもりらしい!!
そうは矢口工務店がおろさねぇー!!
あたしは、祐ちゃんに詰め寄る。
「加護にセクハラしたんでしょ!!どうして、そういうことするのっ!?この三十路スケベ!」
「なっ!!なんやて!?」
「怒って誤魔化そうたってこの矢口の助の目が黒いうちはお天道様も見てるんでぃっ!」
「なんやの、ホンマ!?・・・・・・っちゅーか、矢口のキャラもなんやの?」
ったく、往生際が悪い。
こうなったらセクスィービームを食らわして真実を明るみに!!
そう思ったとき、後ろから「中澤さんじゃないですって」と、声がした。
振り返ると加護が立っている。
- 25 名前:走れ!矢口!!~ギャルゲーガスキ~ 投稿日:2002年09月16日(月)23時17分01秒
「加護、あんたの仇は必ずうってやる・・・・・・・って、はぁ!?今、なんて言った?」
「だから、中澤さんじゃないんです」
申し訳なさそうな加護と、ポカンと口を開けたあたし、そして、どこか怯えた祐ちゃん。
「そうなの?」
確認するようにもう一度問う。加護は、コクリとうなづいた。
「あ、そう、そうなんだ」
祐ちゃんの顔が怯えからだんだんと怒りに変わっていく。
これはヤバイ。
「・・・・・・キャハ、お茶目な矢口の勘違い。それじゃーね、祐ちゃん」
あたしは、脱兎のごとく祐ちゃんの楽屋から逃げ出した。
追いかけられないようにそのまま加護を連れてトイレまで走る。
「はぁ、もうちゃんと言ってよ」
「だって、矢口さんが勝手に走っていくから」
息を弾ませて加護が答える。
正論正論・・・・・・どうせ矢口はせっかちですよ。
っていうか、頭の回転が速いんだよね、困ったことに、キャハ・・・・・・
言っててなんか空しくなってきた。サクサク話を進めよう
- 26 名前:走れ!矢口!!~ギャルゲーガスキ~ 投稿日:2002年09月17日(火)12時04分13秒
「それで、誰がセクハラなんてしたの?」
「飯田さん」
「は?」
「やから、飯田さん!」
「カオリが!?」
信じられない・・・圭ちゃんならまだしもあのカオリが加護にセクハラなんて。
あー、でも最近アイボン、亜依ボン言っててちょっとおかしかったもんなー。
これは由々しき問題だ。
娘。リーダーって代々セクハラになるのかな?
さて、どうしたもんか・・・・・・とりあえず、注意と教育的指導をかまそう。
「分かった、任せろ、加護!!」
あたしは、加護をトイレに置いて再び走り出した。
少し走るとあたしたちの楽屋が見えてくる。
楽屋は素通り、だって最初に矢口がいたのはそこなんだから
カオリはいないことぐらい分かってるもん。
頭の回転が速いんだよね、キャハ・・・・・・さらに空しくなってきた。
ともかく、目標はメイク室!
・・・・・・って、あれ、なんだ?
- 27 名前:走れ!矢口!!~ギャルゲーガスキ~ 投稿日:2002年09月17日(火)12時05分17秒
メイク室の前には数名の人だかり。
その中の一人が立ち尽くすあたしに気づいた。
「矢口さん、矢口さん!」
よっすぃーだ。
「どうしたの、みんなして?」
「それが飯田さんが変なんですよ〜」
カオリが変なのは今に限ったことじゃないけど・・・・・・だからって、みんなして見守るほどじゃない。
被害は加護だけかと思っていたあたしは正直教育的指導を与えるのやめようかなと思いはじめていた。
だって、正直、カオリのマジ暴走なんて止める自信ないもん・・・・・・
「ちょうど、安倍さんも保田さんもいなくて・・・・あ〜、でもよかった、矢口さんが来てくれて」
「え?」
「どうにかしにきたんでしょ?」
屈託のない笑み・・・・・・矢口って巻き込まれ型なのかな。
そんなことを思っていると、あたしはチームワーク抜群の娘。若者衆
(矢口も若い、多分)の手によってカオリの待つメイク室に生贄として捧げられていた。
マジで!?デジマ!?マジデジマ!?って、こういう時に使うんだな。
- 28 名前:走れ!矢口!!~ギャルゲーガスキ~ 投稿日:2002年09月17日(火)12時06分48秒
カオリは、鏡の前でなにやらぶつぶつ言っている。
手には、なにか文章が書いてあるメモ紙を握っている。そして、果てしなく交信中。
あたしが連れてこられたことにもまるで気づいていない。
「・・・・・・カオリ?」
あたしが呼びかけるとカオリはゆっくりと視線を動かした。
そして、なぜか満面の笑みを浮かべて「これ、読んで」と手に持っていたメモをあたしに差し出した。
なに?それだけ?
もっとすごいことが起きていると思っていたあたしは拍子抜けする。
たかが、こんなメモぐらいみんなも読んであげればいいのに。
っていうか、これのどこがセクハラなんだか。
加護も大げさだ。あたしは、カオリからメモを受け取る。
「えっと・・・・・・」
「感情込めてね」
「え?うん・・・・・・・えっと・・・好きよ、夜も眠れないほど・・・えっ!?ちょっとなにこれ?」
「いいから、最後まで読んで」
「えー!!ヤダよー」
「お願い!!」
いや、そんな眼で見られても・・・・・・
- 29 名前:走れ!矢口!!~ギャルゲーガスキ~ 投稿日:2002年09月17日(火)12時11分02秒
最後までってなんであたしがカオリにこんなこと言わなきゃいけないんだよ。
っていうか、なんなのこのセリフは!?
でも、こんなんでカオリの暴走が収まるなら言ってあげたほうがいいのかな。
これもみんなのためだ、矢口一肌脱ぐ。
どれどれ、いがいと長いな、これ。ん?
「あの、カオリさん・・・・・・・この二重カッコはなに?」
「それは、カオリのセリフ」
「・・・ふーん」
なんとなくこれなんのセリフなのか分かった。
最近カオリが徹夜でやってるゲームだ・・・・・・
なんか言ってたな、この間も。エンディングで伝説の木の下に待ってたのが
どうしてしおりちゃん?じゃなくて館林さんなの!?とかなんとか
そんなのあたしに聞くなって感じだし・・・・・・やっぱり嫌になってきた。
でもカオリの顔が怖い。
でも、読みたくない。
でも・・・・・・その時、チラッとドアのほうを見ると隙間から
あたしたちの様子を窺っているみんなの顔が見えた。
みんな、期待してるの?
矢口に?
・・・・・・よしっ!分かった任せとけよ、子分ども!
- 30 名前:走れ!矢口!!~ギャルゲーガスキ~ 投稿日:2002年09月17日(火)12時12分38秒
「矢口〜?」
「長いから最後だけでいい?」
さすがに全部読むのは気が引けるっていうか矢口は長文うざい派だし。
二行以上読まないことにしてるんだよ!
「いいよ」
案外、あっさりとカオリは言った。
心なしか狩をする獣のように目が光ったように見えた。
「・・・・・・・だ、ダメ。もう涙が止まらない。お願い、あなたの胸の中で泣かせて」
「いいよ」
「うれしい。最高に幸せ・・・・・・」
石川もビックリするほどの棒読みになっていた。
しかし、カオリは満足そうだ。そして、おもむろに手を広げている。
なんだかものすごーくものすごーく嫌な予感した。
- 31 名前:走れ!矢口!!~ギャルゲーガスキ~ 投稿日:2002年09月17日(火)12時13分51秒
「・・・・・・あの、なにそれ?」
「カモーンナ!!」
「え!?」
「胸の中で泣かせてあげるから、かおり君って呼んでーっ!!!」
カオリが飛びついてきた。
「マジでーっ!!!!」
あたしは、思いっきり勘違いをしていたのだ。
カオリのセクハラは、メモを読ませることじゃなくて読んだあとから始まるということを
――小さなあたしの体は大きなカオリに包まれてメイク室からどこかへ運ばれていった・・・・・・
Fine
- 32 名前:走れ!矢口!!~ギャルゲーガスキ~ 投稿日:2002年09月17日(火)12時14分24秒
って、おいっ!!終わり!?終わりなの!??!?
遥か後方で「マジデ、デジマ、マジデジマ」という大合唱が聞こえていた。
Fine
- 33 名前:やっすぅ推し 投稿日:2002年09月17日(火)18時57分08秒
- はじめまして。HNの通り保田さんがすきです。
とてもいいです!
リクしてもいいんですか?いいんであれば、ごまやすお願いします。
がんばってくださいね
- 34 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月17日(火)20時55分53秒
- おもろいっす。がんがってください。
リクOKみたいなので気が向いたときにでもカゴマお願いしやす
- 35 名前:七誌 投稿日:2002年09月17日(火)23時32分24秒
とりあえずもう一個イシゴマ一つ。
musixネタだが、書いたのがチョイ前なのでまったくもって今日のではありやせん
んで、そのあとにできたらリクのうちどれかって形で。書けた順にします。
遅くなってしまったカプはごめんなさいってワケで先に頭下げときます。
- 36 名前:友達以上恋人未満 投稿日:2002年09月17日(火)23時33分55秒
「市井ちゃんと一緒のときはでたくないね」
Musixの収録が終わった楽屋でごっちんがあっけらかんと言った。
私は耳を疑った。
だって、二人は教育係とその弟子?の関係ですごく仲がよくて・・・
もちろん、私たちが入ってきてすぐに市井さんは娘を脱退しちゃったから
二人の間になにがあったのか知らないけど・・・・・・
でも、そんな簡単にそれはなくなっちゃうものなの?
「どうして?」
私は聞いてみた。
「嫌なこと思い出すもん」
短くそう答えてごっちんは、私から顔を背けてメイクを始めた。
鏡越しに見える彼女の表情はどこか辛そうにみえる。
- 37 名前:友達以上恋人未満 投稿日:2002年09月17日(火)23時35分27秒
「市井さんのこと嫌いだったの?」
「ううん」
「でも、嫌なことって・・・・・・」
「好きだったから、こんなことされていなくなられたら嫌になるじゃん」
おもむろに私のほうに向き直りごっちんは・・・私に口付けた。
私が驚いて目を白黒させているとごっちんは顔を離して微笑んだ。
そして、もう一度言った。
「こんなことされていなくなられたら嫌にならない?」
私は黙っていた。
それは、突然の彼女の行動にどう答えたらいいのか分からないという単純な理由でしかなかった。
だけど、ごっちんは私のその沈黙を怒っていると思ったのかもしれない。
「・・・ごめん」
小さな声で謝った。
「あたし、市井ちゃんと同じことしてるね・・・・・」
自嘲的な笑み。
それは私がはじめてみた彼女の弱々しい姿。
なにか言わなければいけない。
なにか――
「ご・・・」
私が口を開きかけた瞬間、他のメンバーたちが楽屋に戻ってきて
ごっちんと話すチャンスは失われてしまった。
- 38 名前:友達以上恋人未満 投稿日:2002年09月17日(火)23時38分48秒
次の日も、その次の日も二人きりになることはなかった。
ごっちんは、あの日からも特に変わった様子もなく仕事をしている。
ごっちんは、どうして私にあんなことをしたんだろう。
あれは、彼女からのメッセージじゃなかったの?
だったら、私は言わなくちゃいけない。
ごっちんに――
ちょうど、待ち時間でみんなそれぞれにしたいことをしている。
「ごっちん!」
「んぁ?」
ごっちんが振り返る。
「どうしたの、梨華ちゃん」
ごっちんと話していたよっすぃーが不思議そうに私を見ている。
「ごめん、ちょっとごっちんかして」
「え?」
「貸してってあたし物じゃないし〜」
人の気も知らないでごっちんはふにゃっと笑う。
私は、よっすぃーを見つめる。よっすぃーも真剣に私を見つめ返す。
よっすぃーなら分かってくれるよね、私の真剣な・・・
「見つめられるとヨシコ照れちゃうな〜」
・・・・・・分かってくれなかった。
このままじゃ埒が明かない。うかうかしてたら次の収録がはじまっちゃう。
私は、ムリヤリごっちんの肘を掴んで楽屋の外に連れ出した。
- 39 名前:友達以上恋人未満 投稿日:2002年09月17日(火)23時39分53秒
「いたっ、痛いって、梨華ちゃん・・・」
「あ、ゴメン・・・」
ごっちんの声に私は立ち止まる。
人気のない薄暗い場所。ごっちんは、不思議そうに私を見ている。
「話ってなに?」
「あの、あのね・・・」
「うん」
興味津々といったふうに見てくるごっちん。
「一つだけ言っておきたいことがあるの」
「うん」
「私は、ごっちんが娘。卒業しちゃっても友達だよ。ずっとずっと友達だからね」
ポカンとした顔で私を見るごっちん。
今度は仕返し。
私は、ごっちんにキスをした。
唇を離すとごっちんは自分だって同じことをしたくせにズザザーッと大げさに後ずさった。
- 40 名前:友達以上恋人未満 投稿日:2002年09月17日(火)23時41分09秒
「な、な、な、なにすんの!?」
動揺して少し声が大きくなるごっちん。
「こんなことされていなくなられても嫌じゃないから。何回でもしていいよ」
「・・・梨華ちゃん・・・・・・」
驚きに目を丸くしていたごっちんの顔は徐々に赤くなっていく。
きっと私の顔も赤くなってる。私たちは顔を見合わせて笑った。
「ごっちーん、石川―っ!!」
飯田さんがあたしたちを呼んでいる声がする。
「行かなきゃ」
「うん」
そろって楽屋に走り出す。
途中、ごっちんが早口で囁いた
――ありがとうって。
Fine
- 41 名前:うちの枕 投稿日:2002年09月18日(水)10時31分46秒
一ヶ月前
――そう、ごっちんとおばちゃんの卒業が発表された日から――
うちは抱き枕を使って寝ている。
「ん・・・」
あさの光が遮光カーテンの隙間からうちの顔を照らした。
もう朝や。
まだ隣にいる人は寝ている。
うちは、起こさないようにそっと抱き枕に顔をうずめた。
規則正しい心臓の音が心地いい。
ずっとこうしてられたらええのに・・・・・・
ピピピピ・・・と目覚ましの電子音が部屋に鳴り響く。
うちの憩いの時間の終わりを告げる音。
「んぁ・・・・・・」
うちの抱き枕がもぞもぞと動きだす。
「朝やで、ごっちん」
「ん、おはよ〜、加護」
ポンと頭に手をのせらせる。うちは、満面の笑顔でそれに答える。
これが、うちの日常。
ずっとうちの抱き枕でいてや。
Fine
- 42 名前:願い 投稿日:2002年09月18日(水)10時35分41秒
加護が最近あたしに甘えている。
もうすぐ離れてしまうから仕方ないかもしれない・・・
あたしだって市井ちゃんが脱退する日までベタベタしてたし。
ただ、そのあとの喪失感がすごいことを知ってるから甘やかさないほうが加護のためなのかもしれない。
だけど・・・・・・
一緒にベッドで寝ている加護を見る。
幸せそうな寝顔。こんな顔見せられたら来るなとは言えなくなってしまう。
よく寝てる。無邪気でまだ幼さの残る顔。
いつもこれくらい静かなら注意されないのにね。
さ、二度寝しよう。
そう思って目を瞑った瞬間「ん・・・」と加護が目を覚ます気配がした。
- 43 名前:願い 投稿日:2002年09月18日(水)10時36分54秒
なんとなく目を開けるのがめんどくさかったのでそのままでいる。
すると、加護があたしに抱きついてきた。
生まれたての赤ちゃんのような匂いがした。
加護をおいていってしまうのは辛い。
こんなに自分を慕ってくれているのに・・・・・・ずっとこうしていてあげたい、そう思った。
ピピピピ・・・と二度寝用の目覚ましが部屋に鳴り響く。
加護がそれを聞いてあたしから体を離した。
「んぁ・・・」
今、目がさめたかのように唸りをあげて目を開ける。
「朝やで、ごっちん」
「ん、おはよ〜、加護」
加護の頭を優しく撫でる。
加護が顔いっぱいに笑顔をひろげた。
しばらくはこの幸せが続きますように――
Fine
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月18日(水)18時31分18秒
- カゴマリク答えてくれてありがとうございます。なんか切なくなりやした。
もうごっちん卒業まで5日か・・・・・・
作者さん、イシゴマが好きなのかと思いきやそういうわけじゃないんすね。
てっきりそう思ってました(wこれからもがんがってください。
- 45 名前:一緒に帰ろう 投稿日:2002年09月18日(水)22時00分56秒
「一緒に帰ろ、けーちゃん」
そう声をかけられたのは、番組の収録が終わって帰り支度をしていたときだった。
振り返ると今、一人でのコメント撮りが終わったのかまだ衣装のままの後藤が立っていた。
「帰ろってあんた今日これで終わり?」
「うん」
屈託なく笑う後藤。
この顔がもうすぐ見られなくなるのか。寂しくなるわね。
不意にそんな思いが胸をよぎる。
「ね、帰ろ」
そんなあたしの思いも知らずに後藤はにこにこと私の顔を覗き込んで言った。
「そ、それじゃ、さっさと支度しなさいよ」
「は〜い!」
私の言葉にものすごい速さで着替えて帰り支度を終わらせた後藤。
いつもこれぐらいのペースでキリキリしてたらな、とその後ろ姿を見て思い、
すぐにそんなの後藤じゃないかと気づいて苦笑した。
- 46 名前:一緒に帰ろう 投稿日:2002年09月18日(水)22時02分02秒
一緒に帰るとはいえ、私と後藤の家は逆方向にある。
くだらない話をしながら駅に向かう。そこからは電車が別々だ。
私の乗る改札は少し奥なので後藤の乗る電車の改札まで一緒に歩く。
「それじゃ、明日も遅刻しないようにね」
改札の前で私は言ってから自分の乗る電車の改札に向かおうと背を向けた。
今じゃ、遅刻なんてしないんだけど
――昔、後藤がしょっちゅう遅刻をしていたのでそれは私の口癖になっていた。
「けーちゃん、けーちゃん」
後ろから不意に後藤が私を呼び止める。
振り返るとまださっきと同じところに立っていた。
私は、なにか忘れ物でもしたのかと思い後藤の元に駆け寄る。
- 47 名前:一緒に帰ろう 投稿日:2002年09月18日(水)22時03分32秒
「ん?どうしたの?」
私が心配して問うと、後藤はアハッと笑い私の肩をたたいた。
「そんな顔しなくても家に行ってあげるって」
「は?」
――そんな顔って?
突然の後藤の言葉の意味が分からずに思わず聞き返す。
「来て欲しいなら来てって言えばいいのに素直じゃないな〜、けーちゃんは」
後藤は、からかうようにうりうりと私の脇をつついた。
「誰も言ってないわよ、そんなこと」
「またまた照れちゃって、遠慮しないでよ〜」
「またまたもなにも・・・・・・」
自分が来たいだけなんじゃないの。と言いかけて口をつぐむ。
そういえば、こいつは素直じゃなかったんだ。
まったく大人っぽいくせにいつまでたっても子供なんだから。
私は、小さくため息をつくと「それじゃ、一緒に帰ろ」と後藤の手を握った。
Fine
- 48 名前:―――― 投稿日:2002年09月18日(水)22時04分38秒
「けーちゃんちってホント・・・物、多いね」
「その・・・っていう間は無駄なものばっかって言いたいんでしょ」
「漢字ドリルは?」
「向こうのテーブル」
「ふ〜ん、今日は、後藤と感じドリルしようね」
「意味わかんないから・・・って、なにしてんのよ」
「けーちゃんの胸って意外と柔らかいね〜。気持ちいい〜」
「ちょっと・・・あっ」
Fine
- 49 名前:秋風 投稿日:2002年09月19日(木)08時16分09秒
秋の風はあたしを意味もなく切なくさせる。
今日は、特にそう感じた。
どうしてなんだろう?
いつも分からないけどとても切ない。
ベッドの下のカーペットに腰掛けて窓から吹き込んでくる風を感じる。
「んぁ、どうしたの?」
眠そうな声がベッドから聞こえてきた。
いきなり深夜にあたしのうちにやってきてベッドを占領していた人物。
「あ、ごめんね、寒い?」
「ん〜、涼しくて気持ちいいけど・・・どうかしたの?」
ベッドからもぞもぞと上半身を起こして彼女が言った。
「ん?外のね風景を見てたんだよ」
「外?」
彼女がちょうどあたしの顔の横に自分の顔がくるように体の向きを変えて寝そべる。
「あ〜、曇ってるもんね〜。コンサ雨だったらやだよね」
彼女が顔をしかめる。
確かに、空はどんよりとした雲に覆われていた。
- 50 名前:秋風 投稿日:2002年09月19日(木)08時17分21秒
「秋の風ってさ切なくなっちゃうよね」
さっき思ったことを口に出してみる。案の定、彼女は不思議そうな顔をした。
「なんかね、心をギュッてつかまれちゃうみたいになるの」
「・・・そうかな〜」
彼女は風を感じるように瞳を閉じた。
あたしの言っていることが分からないのかそのまま首をひねっている。
「カオリの言うことって難しいよね〜あたし分かんないよ」
「そっかな〜」
「うん。でも、けっこう好き」
「え?」
「カオリが交信してるとこ見るの」
彼女が笑う。
秋の風がなんであたしを切なくさせるのか分かった気がした。
ううん、じゃなくて、今日だけの理由。
秋は彼女とお別れだから・・・・・・風と共に彼女を連れてっちゃうから
だから、切ないんだ。
- 51 名前:秋風 投稿日:2002年09月19日(木)08時18分16秒
「ねぇ、ごっちん」
「んぁ?」
「ちょっと抱きしめてもらっていいかな?」
「え?」
驚いたような彼女。
だけど、すぐに「いいよ」とベッドからおりてあたしを抱きしめてくれた。
風が部屋の中を駆け抜ける。
秋・風・切ない
Fine
- 52 名前:お勉強 投稿日:2002年09月19日(木)22時24分41秒
ラジオ収録が終わったあとにごっつぁんがそこにいたからなんとなくそんな予感はしてたんだよね。
「やぐっつぁん!」
「な、なに?」
「今日、行こうよ」
「・・・・・・今日?でもさー」
疲れてるし・・・明日、早いしな〜。
ごっつぁんと一緒にいたいのはヤマヤマなんだけど・・・
そう思って断ろうとしたとき、「あたし、やぐっつぁんの声が聞きたいな〜」と
ごっつぁんが少し寂しそうな声であたしを見つめてきた。
正直、この目には弱い。
仕方ない、矢口がんばる!
って、これ誰のセリフだっけ。
忌まわしい過去の記憶は娘。全員で封印してあるから思い出せない。
そんなことより、行くか。
「・・・じゃ、いこっか」
「オッケティングーッ」
あたしが答えるとごっちんはあたしの腕を引っ張ってなれた足取りでいつも使うホテルに向かった。
- 53 名前:お勉強 投稿日:2002年09月19日(木)22時25分55秒
「ん?」
ホテルの前でごっちんが急に立ち止まった。
あたしは、思い切りごっちんの背中に顔をぶつける。
「いったー!急に止まんないでよ」
「あれってさー、よっすぃーと梨華ちゃんじゃない?」
あたしの非難の声もまったく聞こえていないのかごっちんがホテルのロビーで部屋を選んでいる二人の人影を指差した。
「え?」
確かに変装はしてるけど、そうだ。この矢口の眼はごまかせない。
「ホントだ〜どの部屋行くのかな?」
「隣とろ〜隣」
ごっちんが楽しそうな声を上げる。
「え、ちょっマジで!?」
「いいじゃん」
いたずらっ子のような顔。
っていうか、なにもこんなとこで悪戯心出さなくても・・・・・・
「でも、ばれたらやじゃない?」
「大丈夫、ばれないって。大丈夫♪きっと大丈夫♪」
「こんなとこで歌うな、こっちがバレるじゃん」
「あっ早くしないと部屋が分かんなくなる」
ごっちんは、口早にそう言うとあたしの手を引っ張って二人のあとを追いかけた。
- 54 名前:お勉強 投稿日:2002年09月19日(木)22時27分19秒
「じゃーん、ここがよっすぃーと梨華ちゃんの部屋の隣〜!!」
ベッドの上で飛び跳ねるごっちん。
なんでこんなに楽しそうなんだろ。
普段、TVでも見せないキャラ全開って感じだ。
かわいいからいいけど――って、おいっ!!
「ちょっと、なに壁に耳つけてんの!?」
「しっ!やぐっつぁんもホラ」
そのままの体勢でごっちんはあたしにも同じことをするように促す。
しかたなく、あたしも壁に耳をつけた。シャワーの音がする。
―――じゃなくて、なんであたしたちこんなことしてるんだろ?
「盗み聞きなんてやめない?」
「盗み聞きじゃないって」
「・・・じゃぁ、なに?」
「お勉強」
そんな威張って言うことじゃないと思うけどな・・・・・・
- 55 名前:お勉強 投稿日:2002年09月19日(木)22時27分59秒
「あ、なんか喋ってるよ」
「けっこう壁薄いのかな、ここって」
「ん?・・・・・・ねぇ、やぐっつぁん」
またなにかに気づいたのかごっつぁんがあたしを見た。
「なに?」
「よっすぃーが受けみたい」
「はぁっ!?マジで」
予想外の攻守にあたしも思わずまじめにお勉強をしてしまった。
『・・・・・・!・・・・・・・・・!!!』
『・・・・・・・・・』
「な、なんかすごいね、梨華ちゃん」
「ちょっとS入ってんのかな・・・いっつもよっすぃーが寝かせてくれないんです〜とか言ってたのに・・・・・・」
あたしたちは、ゴクリと生唾を飲み込んで顔を見合わせた。
- 56 名前:お勉強 投稿日:2002年09月19日(木)22時29分04秒
『・・・・・・!!・・!!!!』
なんか変な気分になってきたな〜
チラッとごっつぁんを見ると彼女はニコッと悪戯が成功した後の子供のように笑った。
あっ!図られた!!!あたしは、瞬時に気づく。
「ごっつぁん!騙したでしょ?」
「だって〜、やぐっつぁんちょっと乗り気じゃなかったみたいだから、
したくなるようにシチュエーションみたいな〜。でも、よっすぃーたちがいたのは偶然だよ〜」
くっそー、まんまとはまっちゃった・・・・・・けど、ま、いっか。
「それじゃ、第一ラウンド開始―っ!!!」
ごっつぁん、その掛け声いっつもやめよって注意してんのに・・・・・・っていうか、シャワーぐらい浴びさせてよーっ!!!
Fine
- 57 名前:――― 投稿日:2002年09月19日(木)22時30分37秒
「でさ〜、隣の女の声がすっごいでかくてなんかやる気なくなっちゃってマジ不完全燃焼・・・・最悪でしょ」
「ふ、ふ〜ん(やる気がなくなったって梨華ちゃんのやる気かな?)」
「でも、なんかさ〜聞き覚えっていうかすっごい近くにいそうな声なんだよね」
「あはっ!そんな偶然あるわけないじゃん」
「そうだけどさ〜あ、あたし出番みたい。それじゃーね」
「それで、隣の女の人、何回も相手にせがむんですよ。それもボリュームMAXで・・・よっすぃーがやる気なくなっちゃって、おかげで眠れたんですけど・・・・・・ちょっとがっかりしちゃいました」
「そ、そうなんだ(矢口、そんなに声大きいのかな・・・・・・ごっちんが上手すぎるんだよね)」
Fine
- 58 名前:七誌 投稿日:2002年09月19日(木)22時31分41秒
- ウルリラー
ごっちん卒業まであと・・・・・・数えたくねー
- 59 名前:七誌 投稿日:2002年09月19日(木)22時33分11秒
- 次、誰で行くか・・・・・・
ま、ごっちん卒業まではごっちんがらみになりそうだな〜。
- 60 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月20日(金)12時01分51秒
- おはつです。ヤグゴマ、自分も好きです。面白かったです。
で、リクはよしごまだったり。お願いします。
- 61 名前:すれ違う二人の思い T 投稿日:2002年09月21日(土)08時06分57秒
ラジオ収録の帰り、ごっちんから電話があった。
『明日、オフだからどっか行こうよ〜』
彼女独特の間延びした声。
別れを切り出したのは君なのに、どうしてこんな誘いができるんだろう。
そりゃ、友達でいてねとは言ったけど・・・・・・まだ心の整理がついていない。
あたしは、いまだに別れを切り出されたわけが分からないんだよ。
ごっちんがソロになっても一緒にいられるとそう思っていたから・・・・・・
「・・・ごめん、ちょっと学校で補修があるんだ」
『・・・・・・そうなんだ〜、大変だね。ねぇ、よっすぃ〜』
「あ、ごめん、タクシー来たから」
なおも話し続けようとする彼女にウソをついて電話を切ってため息を一つ。
- 62 名前:すれ違う二人の思い T 投稿日:2002年09月21日(土)08時09分29秒
前向きって言葉は簡単だけど実行するのって難しい。
あたしは、今身を持ってそれを実感している。
忘れたいけど忘れられない。
あんなに楽しかったのに・・・・・・
あたしの記憶の中の引き出しにはたくさんごっちんとつくった思い出が詰まってるんだ。
その一番奥には君の笑顔がまだ鮮明に残ってる――
涙が零れた。
君の笑顔が詰まった引き出しを閉める。
今度、ここをあけるのはいつになるだろう。
誰より近くて誰より遠い君の居る場所
あたしの瞳からもう一つ涙が零れ落ちた。
Fine
- 63 名前:すれ違う二人の思い U 投稿日:2002年09月21日(土)08時11分29秒
ヨシコのラジオ収録が終わった時間を見計らって電話をかける。
続くコール音。
一回・・・二回・・・・・・・・・・・・・・・・・・十回・・・
もう諦めようと思ったときにガチャッという音がして彼女の声が聞こえた。
『もしもし・・・』
「よっすぃ〜?」
『・・・うん』
少し間をおいて答える彼女。
携帯にあたしの名前が出てるはずなのにどうしてでてくれたんだろう?
答えは簡単。優しすぎるから、ものすごく。
別れよう。
そう言ったのはあたし。
…わかった。
少し動揺しながらもそう頷いたあなた。
あの時、少しでも嫌だって言ってくれたら・・・
あたしは弱いから強い強い気持ちを見せてくれないと流されてしまう・・・・・・
離れてしまう前にきちんとつなぎとめて欲しかった。
- 64 名前:すれ違う二人の思い U 投稿日:2002年09月21日(土)08時12分38秒
『あ、ゴメン・・・タクシー来たから』
そう言って電話を切るヨシコの声にいつもと変わらない温かさを感じた。
あの頃に戻れたら何度もそう思う。
楽しかった思い出ばかり
何故辛い事って思い出さないんだろ。
あたしは、出会ったころの二人を思い涙を流した。
Fine
- 65 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月23日(月)14時35分01秒
- カオゴマリクしたヤシです。遅くなりやしたが多謝。一言、せつねーです。
ごっちんラストライブいきたかった。作者さんは、行ってたりして
またの交信お待ちしております。
- 66 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月23日(月)22時34分09秒
- 作者さんの書くいしごま、最高です。
これからの作品も期待してます。
- 67 名前:七誌 投稿日:2002年09月24日(火)09時06分39秒
- 今日はアホもので行こう。
- 68 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月24日(火)09時09分15秒
うちは、伝説の勇者・・・・・・になる予定の亜依ボン様や!
今、うちは伝説の剣が眠る神殿におる。
この剣を手に入れしものは魔王なんてチョチョイのチョイらしい。
うちが魔王倒したらつんく王からがっぽりと銭がいただけるはずなんやな。
そう、この旅の全ては銭のため・・・・・・ちゃうちゃう、もちろんそんなんちゃうよ。
うちは勇者や。
世界の平和を守るために日夜修行しとったぐらいやし、そんな銭なんてな〜。
そりゃ、もらえるものは貰うで。
やけど、うちがホンマに見たいんは平和になった世界中のみんなの笑顔や。
これ、ホンマにな。いつまで疑っとんねん!
さ、ちゃっちゃと神殿に忍び込んで剣をパクってくるか。
ファンタジーには、時折、平和のために犯罪を犯してもいいものらしい。
ま、あれやな。大事の前の小事や。違う?
- 69 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月24日(火)09時10分53秒
「勇者、アイボンよ」
「だれ?」
わざわざ深夜を狙って忍び込んだのに・・・・・・
振り返ったうちの前にはかわいい一人の少女。ま、うちも見目麗しい少女なんやけどな。
「ののはこの神殿の神なのれす」
「ウソつけっ!!」
思いっきり怪しい言葉遣いの少女にとりあえず突っ込む。
「本当れす。ののはアイボンに助言を与えにきたのれすよ、感謝ぐらいしてください」
「ふーん、おおきに。はい、感謝したで!ほれ、助言言わんかいっ!」
「・・・・・・本当に勇者れすか?」
「もちろんや、銭のためやなく世界のために戦う勇者亜依ボンや!!」
「・・・・・・・・・・・・まぁ、いいのれす。実はれすね、この神殿には魔王を倒す伝説の剣があるんれすよ。それを持っていけば魔王に勝てるのれす。知らなかったでしょ」
得意満面で言うのの神。
「知っとるっちゅーねん!!!」
とりあえず切れ味抜群のかみそりツッコミでへこませて神殿の奥へと急いだ。
余計な無駄足を喰ったもんや。
- 70 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月24日(火)19時26分34秒
神殿の奥。
視界は暗く見通しが利かない。
伝説の剣言うぐらいやから光っとけって、ホンマむかつくわ。そのときやった。
「あんたが勇者?」
「あんなチッチャイ子が勇者なわけないじゃないですか〜」
「チッチャイって言うな、アゴン!!」
と、どこかからケンカする二人の少女の声が聞こえてきた。
「うちは勇者やで!!!ほんまのほんまに銭のためやない世界を守る勇者や!!!」
うちは高らかに宣言した。
すると、暗かった神殿に光が灯る。
急にまぶしくすんな、アホ!うちは、まぶしさで元々細い目を細めた・・・・・・
な、自分でなに言うてんねん。これはうちの意思やない。
魔王のせいや。恐るべし魔王。打倒・魔王!!
うちが一人でそんなことを考えていると目の前にうちよりもちっちゃい目つきの悪い姉ちゃんと色が黒い姉ちゃんが立っていた。
- 71 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月24日(火)19時28分42秒
「ホントに勇者なの?」
色黒姉ちゃんが言う。
「そうや。勇者亜依ボンや!!」
「ふーん、じゃ、握手」
ちっちゃいねーちゃんがおもむろに手を出してくる。
これはあれやな、有名になる前に有名人と握手したって自慢したいんやな。
ミーハーそうやもんな、この人。しゃーない、したるか。
うちは手を握り返した。
「あっ!!!」
ちっちゃいねーちゃんの手に触れるとバチッと電気が走ったような気がした。
それは、ちっちゃいねーちゃんも同じやったみたいで・・・・・・いや、うちよりすごかったみたいで遥かかなたの壁に弾き飛ばされとった。
「矢口さん、大丈夫ですか?」
地黒のねーちゃんが駆け寄って声をかける。
どうやらちっちゃいねーちゃんは矢口さんと言うらしい。
こっちのほうが短いからうちも矢口さんと呼ぶことにした。
- 72 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月24日(火)19時31分12秒
「梨華ちゃん、この子、マジ勇者だよ」
地黒のねーちゃんは梨華ちゃんと言うらしい。
こっちのほうが短いからうちも梨華ちゃんとよぶことにした。
前の文と一緒やんか。手抜きやな。
「え?」
「矢口、こんなことはじめて」
壁から器用に抜け出しながらうちを見る矢口さん。
「あんたが勇者って認めてやるよ」
別にあんたに認めてもらわんでもうちは勇者や。
そう思ったけど、言わんかった。
「じゃ、魔王退治に行こうか」
「は?」
「どうしたの、アイボン?」
「いや、ちょー待って。なんで二人とも魔王退治に行く気満々なん?誰もついて来い言うてないよ」
うちが言うと、二人は顔を見合わせた。
「来なくていいの?」
矢口さんが不思議そうに言う。
「当たり前や、なんでいきなり仲間なる気満々なん、おかしいやろ自分ら?」
ロープレは仲間を増やしていくことが楽しいいうけどな、
ホンマの話、仲間がおったら分け前が減るんやで。
一人で倒したほうがええんや・・・・・・いや、ちゃう。別に分け前のためやない。
うちは孤独が似合う勇者なんや。いうなればアウトローやな。違う?
- 73 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月24日(火)23時28分35秒
「でも、あたしたちいないと魔王倒せないよ」
梨華ちゃんが首を傾げて言う。うちにぶりっ子は通用せーへん。
「なんでやねん、伝説の剣があればええんやっ!!」
「だから、その伝説の剣ってうちらなんだってば」
矢口さんが割り込んで言う。
「はっ!?」
今、なんつった?伝説の剣が・・・・・・
「伝説の剣ってあたしと梨華ちゃんのこと」
伝説の剣が人型やったなんて・・・ドラえもんもびっくりや。
「やけど、なんで二人・・・二本あるん?」
「あぁ、魔王倒す時と魔王の配下の一番最後にでてくるやつはあたしを使って、で、それ以外は梨華ちゃんを使ったほうが効率がいいんだよ」
矢口さんが答える。
そんなんしらんわ。
っちゅーか、魔王に配下なんておったんか。敵は魔王ただひとりかとおもっとったわ。
亜依ボン、勘違い。ポッポーッ!!
ま、気ぃとりなおして、チャッチャと行くか!!
- 74 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月24日(火)23時29分42秒
舞台変わって魔王の城。
えっらいはしょった冒険やと思うやろ?
ちゃうんやで。ホンマにマッハできたんや。
途中で飯田さんっちゅうなぞの宇宙人に会ってな、UFOで送ってもらったんよ。やっぱり人あたりがええからやな。
まさか見返りに神殿におったのの神を渡したなんて事実はないで、いや、ほんま。
- 75 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月25日(水)09時31分59秒
「よく来たな!我こそは魔王につかえる四天王の一人月光の騎士よっすぃ〜!」
いきなりガラスを突き破って飛び込んできたのはなんや遊びまわってそうな
白いスーツを来た男か女か分からんヤツやった。
ここは、梨華ちゃんの出番やったっけ
「ほれ、行け、梨華ソード!!!」
「よっすぃーっ!!カモーンナっ!!!」
「おぉ、美しい」
よっすぃーは、梨華ちゃんに吸い寄せらせるように近づいていく。
そして、次の瞬間「ホイッ!!」梨華ちゃんの甲高い声が空間に響いた。
うちも矢口さんもちゃんと耳栓しとるんや。準備ええやろ。
気がつくとよっすぃーは倒れていた。
えらい弱い四天王や。
- 76 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月25日(水)09時32分48秒
「よく来たわね!!私は、魔王に使える四天王の一人!ビューティーケメコ!!」
いきなりドアを蹴破ってやってきたのは、ビューティーかビューティーなんか?
と10人中○人に小一時間突っ込まれそうな人やった。
これも梨華ちゃんの出番やったっけ?
「ほれ、行け、梨華ソード!!!」
「保田さーん、カモーンナ」
さっきから気になっとったんやけどこのキショイ甘え声はなんなんや?
それとカモーンナって行った途端、裸エプロンみたいになるんよな、この剣。不思議や。
ほんで「ほいっ!!」これで終わるんよな。
えらい弱い四天王や。
- 77 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月25日(水)09時34分09秒
「・・・・・・こないね、次の四天王」
不思議そうに矢口さんが言う。
さっきまで部屋をあけるごとにどこかから流血しながら四天王が飛び込んできとったのに、
今回の部屋は誰も飛び込んでくる気配がない。
「もう魔王やったりしてな」
「んなわけないよ。それじゃ、矢口が使われないじゃん。っていうか、梨華ちゃんどこ行ったの?」
「一番最初におったホストのとこ行くいうとったかな、確か」
「マジで!?」
「マジデデジママジデジマ!ハイッ」
「「マジデデジママジデジマ!」」
うちらがそんな合唱を始めたときやった。
部屋の中央においてあったベッドがもぞもぞと動きだす。
- 78 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月25日(水)09時35分07秒
「んぁー、うるさいよ、寝られないから静かにして」
中から出てきたのはちょっとうち好みの綺麗な人やった。
眠そうな顔もええ感じ・・・・・・やけど、ここにいるっちゅーことはこの人が
「あんたも四天王なん?」
また布団に包まりかけたその人に声をかける。
「んぁ、そうだよ」
やっぱりーっ!!!!!
うちは、古典的漫画風にガ―ンと頭に岩を落とした。
落とすかっちゅーねん!!そんなんしたら死ぬやろっ!
にしても、運命とはかくも悲しいものなんやな。
いや、諦めたらあかんってどっかの誰かが言うとったな〜一応悪あがきしてみるで。
「な、なぁ」
「んぁ?」
「魔王の手下やなくて王様の手下にならへん?ええもんいっぱいあげるで」
「いいよ〜」
あっさり交渉成功。言ってみるもんやな。
「ねぇ、いいの?いいものいっぱいってそんな軽はずみなこと言っちゃってさ」
自称頭の回転の速い矢口さんがうちに耳打ちしてきた。
矢口さんは知らへん。うちの頭には壮大なストーリーがすでに完成しとることを。
うちは、ニヒルな笑みをかえす。
ニヒルな笑みってどんな笑みなんやろ?。
- 79 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月25日(水)09時36分34秒
魔王まであと一人。
バンっ!とドアを開けるとやけに人懐っこい笑顔の人が立っていた。
「よくここまでこれたべ。我こそは、最後の四天王、モーフェイス、なっち!!いざ勝負だべ!!」
「さぁ、加護あたしの出番だよ」
「そうでしたね。ほれ、行け矢口ソード!!」
「なんだべ、弱そうなヤツが来たベ!!」
なっちが余裕綽々といった風に矢口さんに接近していく。
矢口さん、ほんまに大丈夫なんか?
うちは、ちっこい矢口さんの後ろ姿を見つめながら思った。
「なっち、ごめんね」
矢口さんが呟く。
「え?」
「ピンランプレステお塩ピンランプレステお塩プレステお塩・・・・・・・・・・」
矢口さんがなぞの呪文を唱え始めた途端、モーフェイスなっちは顔を真っ青にして
「そんな事実ないベー」と逃げていった。
うちらの元に戻ってきた矢口さんは一言「辛い戦いだった」とつぶやいた。
えらい弱い四天王や・・・。
- 80 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月25日(水)17時46分19秒
- はじめまして。すごいいいです。切ないのからおもろいのまで幅が広いですね。
期待してます。あと、できたらヤグチューお願いします。
メール欄のお話、やすごまは同意
- 81 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月25日(水)23時10分52秒
とにもかくにも次は魔王や。
魔王と言うからには油断できない。矢口ソードはすでに準備万端!!
いざ、突撃ッ!!
「よぉ、来たな〜。うちこそがこの世界を支配する魔王や!!さぁ、どっからでもかかってこんかいっ!!」
ここは矢口さんの出番や・・・・・・
って、あれ?なんで黙っとんねん!さっきみたいななぞの呪文はどうしたん?
「ほれ、矢口さん!!」
「言えないよ」
「は?」
「だって、やばくない?」
「なにが?」
「矢口けっこう好きかも」
な、な、な、魔王が矢口さん好みやったとは!!!っちゅーか、なんであんな三十路がええねん?
不思議や、ミステリーや、史上最大の七不思議や。他の6つはしらん。
- 82 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月25日(水)23時12分37秒
「いまさらなに言うてんの!?なんとかしてや!!」
「えー、でも」
「どないしたーっ!!かかってこんならこっちから行くで〜!!!」
魔王が飛びついてきた。
って、なんでうちに接近してくんねんっ!?
逃げようとしたところを掴まれて
――ブチューッ!!?
「プハッごちそうさん」
な、な、な、なんちゅーこっちゃ!!うちの神聖なファーストキスがっ!!!
汚い、汚いで・・・・・・・・・・・・
ガクッ、もう終わった。うちの未来は終わった。
あの人と築くはずやったのに・・・・・・・・・・・・
- 83 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月25日(水)23時13分50秒
「ちょっとーっ!!」
え?なに今の怒鳴り声。
って、矢口さんか・・・・・・なんで魔王にどなっとるんやろ?
「なんで矢口にキスしないのーっ!!」
って、なに言うてんねん、このミニラは!!
「え、ええの?」
魔王もなに乗り気になっとんねん!
「だって、矢口ちょっと魔王のこと好きかも」
「ホンマに!?う、うちも最初見たときからちょっとあんたのことええなー思うとった」
じゃぁ、なんでうちにキスすんねん。
「じゃぁ、なんで亜依ボンにキスしたの!?」
そうや、言うたれ矢口!
「そんなん恥ずかしいやんか。うち、本命にはなかなか手出せへんねん」
「え?」
真っ赤になる二人。なんやこの甘酸っぱ〜い空気は・・・・・・勝手にしたってやもう。
うちも愛しのあの人といちゃいちゃして過ごす日曜〜♪したる。
うちは、そのまま魔王を倒したことにして王国へと帰った。
- 84 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月25日(水)23時15分03秒
なぜか王国に帰るとホンマにうちが魔王を倒したことになっとる。
なにもせずとも権力を得る漁夫の利ってやつやな。違う?
うちと愛しのごっちんは、王様のもとへと連れて行かれた。
「勇者、アイボンよ、よく魔王を退治して戻ってきたな〜。全世界の人々のかわりに俺から礼を言おう」
つんく王の礼と共に城内から拍手の嵐が送られた。
ふ、笑ってられるのも今のうちやでつんく。
「さて、今回の件にかんして褒美をやろうとおもうんやけど・・・・・・ん?ど、どないしたん!?」
「浪花ンキーックッ!!!!!!!!!!!!!!」
「んべっ!!!」
つんく王ここに散る。
次の一言でうちの壮大な計画はここに幕を閉じる。
うちはざわめく民衆を前に高らかに宣言した。
「今日から、うちが王やーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
Fine
- 85 名前:伝説の勇者? 投稿日:2002年09月25日(水)23時15分59秒
「知っとるか、矢口」
「ん、なにを、祐ちゃん?」
「新しく王になったやつな、すごい恐怖政治しとるらしいで」
「へ、へぇ〜」
「よっすぃ〜あーん」
「・・・あーん・・・・・・・・・」
「どう、おいしい?」
「・・・・・・・・・・・(バタ)」
「あ、よっすぃー・・・あまりのおいしさに倒れるなんて素直な人、テヘ」
「石川―っ!!」
「げ、保田さん」
「今日は、私の部屋に来る約束だったでしょ」
「そ、そうでしたっけ?」
「そうよ、カモーンナッ!!」
Fine
- 86 名前:なちまりっぷ 投稿日:2002年09月26日(木)07時01分31秒
- アイボンの暴走ぶりには笑いました。頑張ってください。
なちまりのリクいいですか?ちなみに僕は辻後藤、ヤスゴマどっちも思いました
- 87 名前:ケンカ 投稿日:2002年09月26日(木)09時58分06秒
その日、あたしは少しだけ機嫌が悪かった。
っていうか、ぶっちゃけものすごく眠かっただけなんだけど
――逆になっちはすごく元気で・・・・・・いつもみたいにあたしに話しかけてくる。
それはそれで楽しいしかわいいしいいんだけど、今日は辛い。
「それでおかしくてなっち笑ったべさ。ね、矢口おもしろいべ」
「うん、おもしろいね」
相槌を求められて条件反射的にうなづく。
「そのあとに・・・」
「ねぇ、なっち。ごめん。ちょっとだけ寝かせて」
あたしは、少しだけ仮眠を取ろうと思って話し続けるなっちに断りを入れた。
だけど、話に夢中ななっちは「そしたら目が回ってきたべさ。やっぱりなっちはお酒ダメだーって思って」まだ目の前で楽しそうに話している。
- 88 名前:ケンカ 投稿日:2002年09月26日(木)10時00分17秒
「なっち、ホントごめん。矢口マジ眠いんだ」
もう一度言う。
「それをけーちゃんに渡したんだべ。したっけ・・・」
案の定というか、なっちはまったくあたしの言葉を聞いてくれない。
「なっちっ!!話聞いてよっ!!」
無意識のうちにあたしは声を張り上げていた。
楽屋が静まり返って一斉にあたしたちの方に視線が集まる。
なっちが驚いた目であたしを見つめていた。いつものようにすばやく頭が働かない。
しまった――あたしが、そう思ったときにはもうすでになっちは楽屋を飛び出していた。
みんながこっちを探るように見ている。
なんだよ、矢口が悪いって言いたいの?
あたしは、ただ・・・なっちが話聞いてくれないのが悪いんじゃんか。
なっちばっかり・・・・・・
って、あれ?なんか、目の前が・・・白いん・・・ですけ・・・ど?
「・・・ちさん!?」
「・・・・ちっ!!?」
誰が、知だよ・・・・・・
あたしの意識はそのまま暗い闇に飲み込まれていった。
- 89 名前:ケンカ 投稿日:2002年09月26日(木)23時41分34秒
「・・・ち・・・」
・・・ち?
また知かよ!だから、あたしは矢口なんだってば・・・みんなして、からかって・・・・・・
「・・ぐち」
ん?誰、この声
「矢口!」
・・・なっち?
「矢口、死んじゃイヤだべっ!!」
誰が死ぬって!?
あたしは、なっちの声にガバッと飛び起きる。
「・・・矢口、生きてた」
目の前になっちの泣き顔。
っていうか、マジであたしが死んだと思ってたわけ?
勝手に殺すな!とりあえず、心の中で突っ込み。
「あの・・・なに泣いてんの?」
「だって、矢口が倒れたって・・・圭ちゃんが死ぬかもしれないから覚悟しといてって言ったべさ」
「はぁ?」
そっか、あのあと眠すぎでぶっ倒れちゃったんだ・・・・・・
にしても、圭ちゃんめ。
あたしがなっちに怒鳴っちゃったから気使ってくれたんだろうけど縁起でもない。
しかも、なっちもなっちだよ。
そんなあからさまなウソに騙されるなっての。
- 90 名前:ケンカ 投稿日:2002年09月26日(木)23時44分34秒
「死ぬわけないじゃん、ただの寝不足だよ」
「そうなの?」
「うん」
「でも、なっちが矢口のこと怒らせたから血管が切れたってカオリも言ってたべ」
んなわけないじゃん。
圭ちゃん、カオリもなっちをからかうのが楽しいことに気づいたか・・・・・・
だからって、あたしを殺したいか?冗談でも勘弁。
「あたし、言ったじゃん、少し寝かせてって」
「へ?」
キョトンとした顔。
「なっちと話してるとき言ったよね」
「・・・・・・」
首を傾げるなっち。
そういえば、そうだった。
基本的になっちって自分が話してるときに人の話聞かないんだよね。
まぁ、そこがかわいくていいけど・・・・・・
「なっち、あたし死なないから、マジで」
「ほんとに?」
ここでうなづいたらあたしが不死だと思われそうだ。あたしは言った。
「当分は死なない・・・ってか、なっちと一緒にいるうちは死なない」
すると、なっちが嬉しそうに「それじゃ、矢口は不死身だべ」と笑った。
Fine
- 91 名前:Child ~タダイマコウシンチュウ~ 投稿日:2002年09月27日(金)09時04分44秒
ラブアンドピースだよね。やっぱり
なにがやっぱりって?
生きてくにはラブアンドピースしかないでしょ?
他の誰がそう言ってもカオリはそう思うわけ。だから、やっぱりなの。
分かった?
それでね、娘をラブアンドピース略してラブピーにしてるのはのんちゃんだと思うの。
だって、のんちゃんがいるだけで心がほかほかするもん。
確かめてないけど、メンバー全員そう思ってるの、多分。
- 92 名前:Child ~タダイマコウシンチュウ~ 投稿日:2002年09月27日(金)09時06分23秒
「ちょっと辻っ!!お前、いい加減にしろって怒るぞ」
怒るぞっていいながらすでに怒っているのは矢口。
もうカオリがのんちゃんほかほか説した直後にそんなこと言ったらカオリウソツキになっちゃうじゃん。矢口のバカ。
「カオリもなんとか言ってよ」
「え?」
急に話、振られても・・・・・・でも、みんながカオリに注目してる。
とりあえず、リーダーとして「のんちゃん」あたしはのんちゃんに目線を合わせてしゃがみこむ。
「めっ!」
「ちょっ!カオリ!?子供叱ってるんじゃないんだから、それはないでしょ!」
よし、リーダーの務めは終了。
ふー、疲れた。
後ろでまだ矢口がごちゃごちゃ言ってるけど聞こえない。
だいたいカオリ怒るの好きじゃないんだよね。
だって、ラブピー信奉者だもん。
だから、あんまり急いで大人になんてならないでね、のんちゃん。
Fine
- 93 名前:花言葉 投稿日:2002年09月27日(金)22時48分17秒
「矢口―っ!!」
楽屋に矢口がいるとスタッフから聞いたうちは彼女のもとへと飛び込んだ。
矢口は、相変わらず小さい。やなくて、なにやら本を読んでいる。
「矢口?」
「あ、祐ちゃん、どうしたの?」
どうしたの?とは冷たいで。
せっかく、仕事の合間をぬってやな・・・・・・まぁ、ええわ。
読書する矢口っちゅーんも新鮮でカワイイ。
「なに読んどるん?」
「んー、花言葉の本」
矢口は、再び本に目を落としながら答える。
「花言葉!?どないしたん、矢口らしくないでそんな乙女なんは・・・スジャータに感化されとるんか?」
「失礼な、矢口は乙女だよッ、祐ちゃんと違って!!」
「なんちゅうことをっ!どっちが失礼やねん。うちかて乙女や。乙女初勢に感動や!」
「初勢ってなに?」
矢口が顔を上げた。
「知らんのか?美味い酒やでー。今度、飲みに行こうな」
「酒かよっ!まったく、どこが乙女なんだか・・・・・」
矢口にツッコマれてもうたわ。
まぁ、ええ。突っ込みの矢口もなかなかええんよな。
- 94 名前:花言葉 投稿日:2002年09月27日(金)22時50分25秒
「ほんで、花言葉なんておもしろいん?」
「まぁね〜、あのねー、加護がへちまなの」
「は?」
「で、辻が金鳳花、なっちは、柿かな」
どういうことや?・・・つまり娘が当てはまる花言葉の花っちゅーことか?
加護がへちま。なかなかお似合いやな。
金鳳花はようしらんし、柿って食べもんやんか。
あんまりカワイイ花ないなー。それが娘らしいといえば娘らしい・・・・・・なんにしても矢口が楽しそうやしええか。
「それでね、けーちゃんが・・・」
言いかけた矢口を遮って尋ねる。
「うちは?うちはなに?」
「祐ちゃん?」
「そう、祐ちゃんや!高級そうな花がええな〜」
「そうだねー」
矢口は、パラパラとページをめくる。
なかなか決まらないのか。真剣に本とにらめっこしている矢口。
カワイイんやけど・・・ヒマや。
うちがそう思ったとき、「おはよー」となっちが入ってきた。
「おーっ!なっちっ!!」
ナッチも相変わらずかわいいな。でも、矢口いわく、柿なんやて。
花言葉わからへんけど・・・とりあえず抱きついとく。
- 95 名前:花言葉 投稿日:2002年09月27日(金)22時51分10秒
「ちょっと祐ちゃん!矢口が怒るべ」
「矢口かまってくれへんのやもん。なぁ、朝のチューしよなチュー」
「イヤーッ!もー、祐ちゃん」
なっちとじゃれあっていると、ガタンと背後で椅子から立ち上がる音がした。
はっとして振り返る。
満面の笑顔の矢口。やけど、目が笑っていない。
これは、矢口、マジギレ中の笑顔や。ヤバイ、ちょっと調子に乗りすぎた・・・・・・
「や、やぐち?」
「祐ちゃんは、ゴデチア!」
そう鋭く言ってうちの胸に持っていた本を押し付けてドアのほうに歩いていく矢口。
「ごめん、矢口!?祐ちゃんのちょっとお茶目なモーニング挨拶やん。ちょー待って」
うちの声にドアノブに手をかけた矢口がピタッと止まり振り
「矢口は胡蝶蘭、ちゃんと意味調べること!」と言い残してそのまま出て行った。
- 96 名前:花言葉 投稿日:2002年09月27日(金)22時53分50秒
手元に残された本。
「なんだべ?コネデチアとか紺野あさ美とか?」
なっちがうちを見て首をかしげる。誰もそんなこといっとらん。
ぜんぜんかすってもへん。矢口は、ゴデチアと胡蝶蘭って言うたんや!
っちゅーか、矢口、自分の花えっらい高いやつやろ。自分好きやな、ほんまに・・・・・
まず、うちのから探すか。
ゴデチア・・・ゴデチア・・・・・・あった!
なになに、変わらぬ熱愛。ええ感じや、あとは、う、移り気・・・・・・
そんな風に思われとったとは、あかん、あかんで、うちはいつでも矢口一筋やのに
次は、矢口や。
胡蝶蘭。と、うちの花言葉のすぐ上にあった。
――あなたを愛します
・・・・・・矢口。
矢口がどんな思いでさっきのなっちと自分の様子を見ていたんだろう。
移り気言われても文句は言えない。
やけど、やけど
――うちかて矢口のこと愛しとる!!
うちは、矢口を探しに楽屋を飛び出した。
「って、どわっ!!」
廊下に出て数歩行きかけたところに矢口が小さくうずくまっていた。
思わず、蹴飛ばしそうになってうちはジャンプする。
こんなジャンプしたのは20代前半以来や・・・・・・
- 97 名前:花言葉 投稿日:2002年09月27日(金)22時54分39秒
「矢口、なにしてん!?」
「マネージャーさんが来るの待ってるの」
矢口はうつむいたまま答える。
そういえば、今待機中やったんやな・・・・・・
「が、楽屋におったらええやん」
「祐ちゃん、なっちと仲良くしたそうだし・・・・・・」
うちは、うずくまる矢口の隣に同じようにしゃがむ。
そして、その小さな肩を抱きしめた。矢口が顔を上げてうちの顔を見つめた。
「矢口・・・うちはカーネーションやで」
さっき調べた言葉を口にする。
「え?」
怪訝そうな矢口の顔。
「あんたが好きっちゅーことや」
何回も口にしたはずやのになんや言ってて恥ずかしくなってきた。
それを隠そうと強く矢口を抱きしめる。
「祐ちゃん・・・・・・」
少し戸惑って矢口はうちの背中に手を回した。
- 98 名前:花言葉 投稿日:2002年09月27日(金)22時55分14秒
Fine
- 99 名前: ――― 投稿日:2002年09月27日(金)22時56分37秒
「あーっ!!中澤さん、なにしてるんですかー!?」
うちと矢口のラブラブ時間をあっさりと甲高い声が破った。
その声にものすごい速さで矢口がうちから離れる。
なっ!?
せっかく、これから矢口を口説きたおして今日の夜の約束までこぎつけるっちゅーとこやったのに、
「石川―っ!!」
「キャーッ!!ごめんなさいっ!!」
Fine
- 100 名前:孤独な二人 T 投稿日:2002年09月28日(土)11時10分30秒
ほんのりと薄暗い明かりが彼女の裸身を綺麗にうつしていた。
軋むベッドのスプリング。豊かな乳房から下へ下へと指を滑らせていく。
「ん・・・あっ・・・・・・」
切なさの混じった乱れた息遣い。
「イヤ・・・」
かすれた声で彼女が囁く。
あたしは、半ば上半身を起こして彼女を見つめた。
「イヤなの?」
枕元にある時計の音がやけに耳につく。
彼女は答えない。かわりに細い指をあたしの髪に差し込んだ。
そして、小さな子供にするように優しく撫でる。
あたしは、こんなにもひどいことをしているのに・・・・・・どうして彼女はいつも優しいんだろう。
時折、そう思う。
だけど、もうそんなことはどうでもいいんだ。
この痛みを忘れさせてくれるなら――誰でもいいんだ。
- 101 名前:孤独な二人 T 投稿日:2002年09月28日(土)11時12分23秒
あたしは、中断していた作業を再び再開する。
彼女の腹部に下を這わせながら腕は閉じられかけた腿に手をかける。
彼女の体が緊張でビクリと震えた。かまわず足を開かせる。
全てを露にした彼女のそこがもう十分に潤っているのが分かる。
優しい愛撫もなにもなしに彼女の中に指を入れる。
「・・・っ!!!!!」
声にならない悲鳴をあげて彼女が逃げようともがく。
あたしは、もう一方の手で彼女を押さえ、中に入れた指をゆっくりと徐々に早く動かしていく。
それに比例するように彼女の口から声が漏れ始めた。
あたしの指と一緒に跳ねる彼女の腰。
「あっ・・・・・・あぁ・・・ん・ん・・・・ひと・・・ちゃ・・・ぁっ・・・・・」
汗が滴り落ちる。
熱い。熱い。体は本能的に火照っている。
それでも、寒い。寒くてたまらない。
さらに彼女の中をかき回す。腕の感覚が・・・なくなってくる。
「・・・いやぁ・・・・・ん・・・・あっあっあ・・・・・・・・・・・!!」
さっきより激しく彼女の腰が跳ね上がり、次の瞬間にはぐったりとベッドに横たわる。
荒い息が聞こえる。
体がぶるっと震えた。
寒さからは逃れられない。
- 102 名前:孤独な二人 T 投稿日:2002年09月28日(土)11時13分57秒
彼女の汗ばんだ体に抱きつくと、一瞬、彼女の体が強張った。
だけど、彼女は無言のまま優しく抱きしめ返してくれる。
「大丈夫だよ・・・」
聞こえるか聞こえないかの小さな声。
顔を上げると彼女は聖母のように微笑んだ。
あたしの瞳からなにかが零れ落ちた。あぁ、これは『涙』だ。
そういうものがあたしにもまだ残ってるんだな。
あの人がいなくなってからは枯れてしまったと思ってた。
寒かった
――誰かのぬくもりが欲しかった。
偽りでいいから、愛じゃなくていいからただ抱きしめてさえくれれば。あたしは彼女の胸に顔をうずめさらに彼女を抱く力を強める。少し早い彼女の鼓動が耳元で心地よく聞こえた。あたしは、それを子守唄にして眠りに落ちた。
あたしの意識が消えていくまで彼女はきっと微笑んでいる。
Fine
- 103 名前:飯田さんの発見 投稿日:2002年09月29日(日)11時15分44秒
ある日のダンスレッスン休憩中。
キョロキョロと誰かを探している様子の飯田がいる。
「ねぇ、紺野どこ行ったか知らない?」
いい加減、自力で探すことに飽きたのか飯田はたまたま通りかかった高橋に声をかけた。
高橋は、「あさ美ちゃんですか?知りませんけど、まこっちゃん探したらいると思いますよ」
と、答える。
「は?」
飯田は、高橋の言葉が理解できなかったらしく聞き返した。
「まこっちゃんの隣にはあさ美ちゃん。あさ美ちゃんの隣にはまこっちゃんがいることが多いんですよ」
そんな飯田に高橋は説明する。
飯田は腑に落ちないといった表情を浮かべて「じゃぁ、小川探してみる」と部屋を出て行った。
高橋からは紺野のいる場所の手がかりはつかめないと判断したようだ。
- 104 名前:飯田さんの発見 投稿日:2002年09月29日(日)11時16分32秒
小川の隣に紺野。紺野の隣に小川。
そんなのたんなる偶然だろう。
飯田はそう思っていた。
あの一言を聞くまでは――
紺野を探しながら廊下を彷徨っていると、矢口があわただしく飯田の横を通り過ぎようとしていた。
「あ、矢口、紺野知らない?」
飯田は声をかける。
「紺野?さっき小川と一緒にあっちのベンチにいたよ」
矢口は、急いでいるのかおざなりにそう答えると廊下を走っていった。
飯田は驚きを隠せなかった。
まさか高橋が言っていたとおり小川と紺野が一緒にいるなんて――
飯田は、その日、結局紺野を探し出すことはできなかったがその代わりになにかを発見したような気がした。
Fine
- 105 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月29日(日)18時46分55秒
- 毎日、交信乙です。
孤独な二人はUってあるんでしょうか?Tってあるからちょっと気になる。
そして、リクはこんな時だからイシゴマ。お願いしやす
- 106 名前:七誌 投稿日:2002年09月29日(日)23時04分22秒
>105さん
孤独な二人はUというか視点別verと番外編がありますね、はい。
自分、メール欄にレス返しするのが好きなアホなんで分かりにくくてすみません。
リクはイシゴマですね。これはストックがありますので明日の朝にでもします。
- 107 名前:孤独な二人 U 投稿日:2002年09月29日(日)23時07分59秒
あなたは、私を抱く。
ただその行為を行うために私の家に来る。
私たちの間に通じ合った愛なんてものは存在しない。
いつからこんな関係になったんだろう。
もう思い出せないけど・・・・・・
冷めた視線と冷えた指であなたは今日も私を掌の中で弄ぶ。
だけど、あなたはどこか苦しそうで・・・・・・私はあなたを憎むことができない。
いっそのことあなたの孤独に打ち震える魂を暖めてあげられたらいいのに――
きっと私じゃ無理。
あなたが求めるのはあの子だから。
あなたが抱いているのはあの子だから
今はいなくなってしまったあの子だから
いなくなってしまった人には勝てないよ
だから
――心を頂戴とは言わない。
でも、せめて貴方の心の片隅に私の欠片を一つだけ置いてください。
Fine
- 108 名前:しりとり 投稿日:2002年09月30日(月)11時26分21秒
「おはよ〜」
ハロモニの収録で私とごっちんは久しぶりに顔をあわせた。
キョロキョロと楽屋に誰もいないことを確認してからごっちんが私を抱きしめる。
「会いたかったよ〜」
耳元で囁かれる。
「毎週、会ってるよ」
私は、照れちゃって強がりなんか言ったりして。
ごっちんが体を離して首を横に傾けた。
「今日は冷たいね。コールドだ」
「クールになってみたの」
「あは、似合わないね〜」
変わらない笑顔に安心する。
- 109 名前:しりとり 投稿日:2002年09月30日(月)11時27分30秒
それから、あたしは結局クールになりきれずにいろいろごっちんに話しかけた。
ごっちんは、うんうんと頷きながら私の話を聞いている。
これは、いつものこと。
ごっちんって私のつまらない話をいっつも楽しそうに聞いてくれる。
ごっちんの笑顔に私まで楽しくなってくる。
もしかして、こういうの些細な幸せですか〜♪
「相変わらず話にオチがなくて面白いね〜」
私の話がひと段落してごっちんが言った。
「え?」
ごっちん・・・いつもそういうので楽しそうだったの?
チャーミーショックでチャーミーグリーン。
でも、ポジティブ。
だって、ごっちんはつまんないじゃなくて面白いって言ってるんだよ。
これがつまんないだったらネガティブチャーミーに変身しちゃうけど。
- 110 名前:しりとり 投稿日:2002年09月30日(月)11時30分23秒
「あれ?あたし、なんかまずいこと言った?」
固まってしまった私にごっちんがあわてたように声をかける。
「え?ううん」
「ならいいけど〜みんないないと暇だね〜」
せっかく二人っきりなんだからいいじゃん・・・・・・女の子、理解してよ。
「しりとりする?」
「え?」
ごっちんが急に変なこと言い出した。
相変わらずマイペースだね。そこがいいんだけど・・・
でも、しりとり?
「しりとり」
「り?えっと・・・りす」
勝手に始めるし。私も答えちゃったけど・・・ま、いっか。
「す・・・すいか」
「か?・・・・・・かまきり」
「かまきりーっ?普通かまきりって言わなくない?」
「なんで〜?言うよー」
「かだったら亀とかからすとかあるじゃん」
「いいでしょ、かまきり。ごっちん、りだよ」
「りねぇ・・・」
ごっちんが考えてる。
「りなんていっぱいあるよ」
「ん〜、あるんだけどね〜」
りんごとかリトマス紙とかリリパット王国とか。
ごっちんがなかなか言おうとしないので私は、頭の中でりがつく言葉を考え始めていた。
- 111 名前:しりとり 投稿日:2002年09月30日(月)11時31分44秒
「梨華ちゃん」
「え?」
突然、呼ばれて我に返る。
ごっちんがニコッと笑った。
私、なんか笑われるようなことした?しないよ(^▽^
「梨華ちゃん」
ごっちんがもう一度言う。
「なに?」
「だから、り。んがついたから後藤の負け〜」
「え?」
「今日さ、まだ梨華ちゃんって呼んでなかったの。知ってた?」
そうだったっけ?
私は、首を振る。
「あたしもさっき気づいたんだ。そしたら言いたくなって、でも負けちゃうからどうしようとか思ったんだけど、ま、いっかみたいな」
「・・・ごっちん」
なんかすごく嬉しいよ。なんでかな?
私は、ごっちんを見つめる。
すると、ごっちんは「あ!梨華ちゃんが好きにしよっと。そしたら、しりとり続くね」と言った。
・・・・・・ごっちん、私の感動かえして。
でも、私が好きなんて、嬉しいな。えへ。
- 112 名前:しりとり 投稿日:2002年09月30日(月)11時32分57秒
「ほら、次、梨華ちゃんだよ。き、き、き!」
ごっちん、少しは余韻を楽しませてね。
「き・・・あ!き、キスがしたい」
「が人間の本能♪キスがしたいだから『い』だね・・・い・・・」
なんでさらっと流しちゃうの?違うんだって、ごっちん。
「キスがしたい」
「え?・・・ん」
私は、ごっちんの体を引き寄せて唇を重ねた。
ごっちんが目を丸くして私を見ている。だんだん、恥ずかしくなってきた。
私は、唇を離す。
「・・・あ、あは、びっくりした〜」
ごっちんは、ぽりぽりと頭に手をやった。
- 113 名前:しりとり 投稿日:2002年09月30日(月)11時34分16秒
「ごめんね」
「んぁ?ぜんぜん嬉しいし〜。じゃ、次「い」でしょ」
「え?まだ続けるの?」
私の問いかけにごっちんがいたずらっ子のように笑った。
「い、石川梨華にキスがしたい」
「え?キャッ」
今度は、私がごっちんに引き寄せられて・・・・・・
Fine
- 114 名前:―――― 投稿日:2002年09月30日(月)11時35分44秒
「じゃぁ、い、今すぐキスがしたい。」
チュ
「いろんなとこにキスがしたい」
「え!?ごっちん!?キャッ」
Fine
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月30日(月)12時18分32秒
- 飯田さん語り?wのおがこんいいですねーw
キスがしたいも最高♪
- 116 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月30日(月)18時43分10秒
- やっべー!!めっちゃええわ、いしごま。
リクに早速お答えしてくださってありがとーございます。
- 117 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月30日(月)19時50分05秒
- こんな所にいしごまが・・・登録しました。
2人ともかわいいっす。
リクはやはり いしごま(←あや)だったりします。
- 118 名前:青鬼 投稿日:2002年09月30日(月)21時45分07秒
- ほじめまして!私も「飯田さんの発見」好きです。
5期メンものが見たいです!!七誌さんぜひ書いて下さい!
- 119 名前:孤独な二人番外編 Flower 投稿日:2002年09月30日(月)22時39分16秒
バンと鈍い音がして君だったモノが宙に浮かんだとき、なぜかいつかの君との会話が頭に浮かんだ。
「どっか行きたいね〜」
「え?」
「二人でずっと遠くに」
「それじゃ〜、ちゃんと節約してお金ためなきゃ」
「・・・む〜、それは難しい」
どこか甘く優しい響き。
砕け散ったガラスの破片と鮮やかな赤がキラキラとまるで結晶のように美しく見えた。
あたしは、動くこともできずそれをぼんやりと見つめる。
喧騒を引き裂く悲鳴。
ざわざわとあたしの背後に押し寄せてくる人の波。
あたしは、それでもまだ動けずにいた。
- 120 名前:孤独な二人番外編 Flower 投稿日:2002年09月30日(月)22時41分55秒
あたしは、ずっと一人だった。
母はあたしをこの街の隅に生み捨てたらしい。
それは別にこの街じゃありふれたことであたしは母親を恨んじゃいない。
それに、そんな子供は大勢いる。
その中で生き残ることができるのは強いものだけだ。単純な公式。
だから、一人で生き抜いていかなけれ行けない。
生きるためにはこの体さえ売ってしまってもいい。
そう思っていた。
あたしは、もうずっとこの街が大嫌いだったから
――それなのに、その中でたったひとつだけ大切なものを見つけてしまったんだ。
- 121 名前:孤独な二人番外編 Flower 投稿日:2002年09月30日(月)22時44分24秒
バーで見た君の横顔。痩せた顎のラインと細い首。
繊細そうな愁いを帯びたまなざしはこの街では滅多に見られない美しさを放っていた。
だから、他人なんて信じていなかったあたしなのに、君に声をかけずにはいられなかったんだ。
あたしにとってそれは人生をかえるための賭けだった。
君が笑ってくれたからあたしは賭けに勝つことができたとそう思った。
君は、いつもあたしに優しい口調で温かい言葉をかけてくれたけど、
その二つの瞳だけはどこか遠くのありもしないなにかを見ていた。
あたしは、それによく嫉妬を覚えたていたけど、
君がくれる温かい言葉があたしの凍りついた心を溶かして言っていたのも
本当だったからなにもいえなかったんだ。
同じ生業で生きているらしいとは聞いたことがあったけど、
とても信じられないほど君は純粋さをその体に維持していた。
君のそばにいればあたしも少しは浄化されるのかもしれないそんなことさえ考えてしまうほど――
- 122 名前:孤独な二人番外編 Flower 投稿日:2002年09月30日(月)22時46分27秒
「ちょっとどこ行く気よ!」
見知らぬ女のけたたましい騒音であたしは我に返る。
どこへ――?
向かいの花屋だよ――あたしは、薄く笑んだ。
女はまだなにか叫んでいる。
それはあたしになんの意味ももたらさない。
それは言葉としてあたしの耳にはもう届かないから。
――買ってくるね!――君の最後の言葉。
まるでお小遣いをもらったあとの子供みたいだった・・・・・・
- 123 名前:孤独な二人番外編 Flower 投稿日:2002年09月30日(月)22時48分38秒
一瞬の出来事だった。
あたしが「あの花が綺麗」だなんていわなければ、君はなんの確認もせずに道路を渡ろうとはしなかっただろう。あたしが君を殺したといっても過言じゃない。
こんな薄汚れた街で花屋なんて似合わない。
こんな薄汚れたあたしに花なんて似合わない。
それなのに、なぜあたしはそんなことを言ってしまったんだろう。
「この花を一本ください」
君に捧げるよ。
君はいつも見つめていた場所へと一人で行ってしまったから。
二人でずっと遠くになんてやはり叶わなかった。
綺麗な君は神様に選ばれて一人行ってしまった。
薄汚れたあたしじゃいつまでたっても選ばれそうにないから
だから、せめてこの花だけでも連れていって。
Fine
- 124 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月01日(火)03時20分49秒
- 悲しいですね。
ところでリクエストしてもいいんですか?
- 125 名前:なちまりっぷ 投稿日:2002年10月01日(火)10時15分31秒
- 交信、まだでしたか・・・5鬼面のカプのことですけども僕の知る限りでは
紺まこ、愛紺、まこあいが有名ですかねー。にぃはどうなんでしょう?
ともかく、気が向くままにがんばってくださいね。といいつつ、リクは↑
- 126 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月01日(火)12時29分44秒
- 自分は五期メンだと高紺、オガコンが好きですねー
高紺できますか?あんまりないんで・・・
- 127 名前:七誌 投稿日:2002年10月01日(火)14時45分03秒
珍しくメール欄以外にリクくださったみなさま>
順番がたぶんバラバラになっちゃうと思いますので先に申し訳。
あと、五期メンカプ教えてくださった方ありがとうございます。
なんとかチャキッと書き上げれたらいいな〜。
>124さんちょっとお聞きしたかったりしてメール欄どぞ
リクはいつでも受け付けております。
というわけで、カップリング疲れしてきましたので(w
今日だけぜんぜん関係ないしつまらない話書いちゃいます。
- 128 名前:吸血鬼と魔物 投稿日:2002年10月01日(火)14時47分09秒
深夜。
薄暗い道に一人の少女が立っている。
どこか人間らしくない。ピンク色のマント。赤く光った瞳。
グゥ――
奇妙な音が誰もいない道に響いた。
「はぁ、今日も収穫なしか・・・・・・」
お腹を押さえて情けない声を出す少女。
そのときだった。キーッというタクシーの停車音が聞こえた。
少女は顔を上げる。その視線の先には今しがたタクシーから降りてきたらしい女の姿が映った。
少女の目がきらりと光る。
――ポジティブの神様、ありがとう
祈るべき相手がどこか間違っている少女はともかくその女の下へと走りだした。
- 129 名前:吸血鬼と魔物 投稿日:2002年10月01日(火)14時49分08秒
狙うは女ただ一人。
酔っ払っているのかふらふらとした足取りをしている。
これなら楽に血が飲めるな、少女、リカはにやりと笑った。
「こんばんはー!!」
「なっ!誰や!?脅かすな、ドアホ!!」
突然、電柱の陰から飛び出してきた奇妙な格好の少女に女が怒鳴る。
酔っ払いとは喧嘩っ早いものらしい。
「ご、ごめんなさい」
リカは女のあまりの形相に反射的に頭を下げた。
しかし、すぐにどうしてこの私がこんな人間ごときにと思い返し威厳をもった口調で女に向かって言った。
「人間よ、私は・・・私は・・・・・えっと、ちょっと待ってくださいね」
どうやら決め台詞を忘れたらしい。せっかくだした威厳も台無しだ。
「私は、闇に隠れて生きる吸血鬼!そなたの血をいただきに参上した!!」
どこかのアニメを思い出す前半部。後半も聞いたことがある。
ボキャブラリーにかけるセリフだったが、リカは真剣そのものの棒読みだ。
女は無言でリカを見つめている。
ふふ、私に恐れをなして声も出ないようね・・・リカはひそかにほくそえむ。
しかし、次の瞬間にはそれが勘違いだったと思い知らされるのだ。
- 130 名前:吸血鬼と魔物 投稿日:2002年10月01日(火)14時52分34秒
「ふーん、あんた、吸血鬼なん!?」
なにかを考えているかのような表情の女。
「あ、はい」
「わざわざうちに会いに来てくれるやなんて嬉しいわッ、ホンマに!!」」
リカがうなづくとガバッと抱きついてくる。
「え?」
な、なんだこの人間は――リカはあせった。
あわてて体をふりほどく。
ふりほどかれた女は「照れることないやん、うちとあんたの仲やで。あんなこともこんなこともしたやないか」とない胸をそらして言った。
それは酔っ払いの戯言であったが、そんなこととは露知らず素直なリカは混乱した。
自分とこの女はなにか関係があったんだろうか?
そんなはずはない、たまたま見つけた自分の食事、それだけだ。
しかし、それならばこの女はどうしてこんなに自信たっぷりなんだろう。
- 131 名前:吸血鬼と魔物 投稿日:2002年10月01日(火)14時53分42秒
「あの・・・私、あなたに会ったことありますっけ?」
やけに下出にでながら天下の吸血鬼は酔っ払いに尋ねる。
「会ったことあるもなんもな〜」
女はにやりと笑う。
その意味もない笑顔にますますリカは動揺し記憶の糸をたどる。
どれだけ記憶をたどっても会ったこともないのだから無駄な行為なのだが
――と、そこへ「姐さーん、忘れもんやー」と女のもとに走ってくる女が一人。
そして、その女もリカをさらなる混乱へと導くのだった。
- 132 名前:吸血鬼と魔物 投稿日:2002年10月01日(火)21時40分51秒
「あれ、梨華ちゃんやんか」
「え!?」
吸血鬼の少女、イシカー・リカはさらに自分のことを知るなぞの人物に出会って驚きの声を上げた。
「みっちゃん、あかんって」
「なにがや?」
「今な、石川は吸血鬼ごっこしとるんやから驚かされたふりしたらなかわいそうやろ」
姐さんと呼ばれた女が言う。
「そうなん?やけど、危ないで、女の子が一人こんな魔物の前におったら」
みっちゃんと呼ばれた女はリカに耳打ちする。
魔物!?まさか、こいつも自分と同類だったのか?
リカはチラリと女を見た。
女は「みっちゃん、気きかせてはよ帰りや」と叫んでいる。
- 133 名前:吸血鬼と魔物 投稿日:2002年10月01日(火)21時42分12秒
――怖い
これ以上、この二人の間にいたらどうなることか分からない。
吸血鬼、イシカー・リカは生まれて初めて恐怖を知った。
その間にも、姐さんという未知の魔物の手によってみっちゃんという女はどこかかなたに排除されていく。
リカは、足音をたてぬようにその場を去ろうとした。
ガシッという擬音が使われそうな勢いで腕を掴まれる。
振り返ると姐さんという魔物がにやりと立っていた。
ぷーんと異様なにおいがした。しこたま飲んでいたアルコール臭。
しかし、リカはそれを知らない。これが魔物の匂いとリカは顔をしかめた。
・・・・・・ちなみにリカはトイレ臭い・・・・・・(^▽^)しないよ
「さ、家でゆっくり話そうな。アフターもゆっくりじっくりしような」
リカの返事も聞かずずんずんと夜道を歩いていく女。
逃げられない。
リカは思った。
この女は自分なんかが足元にも及ばない魔物だったのだ。
これからどうなるのだろう。ポジティブの神様は答えてくれない。
もう自分が助かる術はどこにもないのだ。
- 134 名前:吸血鬼と魔物 投稿日:2002年10月01日(火)21時43分40秒
しかし、救いは意外に早く訪れる。
静かな夜道に鳴り響くなぞの音楽。
女があわててその出所である機械をバッグからとりだす。
それでも、リカを離しはしなかったのだが・・・・・・
「もしもし?あ、矢口―っ!」
女の声が急激に高くなった。機械からは微かに誰かの声が聞こえる。
声の主はなにやら怒っているのか、だんだん女の声が情けないものに変化していく。
「いや、ごめん、ほんまごめん。――え?なに浮気なんてしてへんって、ホンマに。うちは矢口一筋やで」
ペコペコと誰も居ないところに向かって頭を下げている女。
リカはそれを唖然とした目で見ていた。
この魔物をこれほどまで萎縮させるモノとはいったいどれほど強いのだろう・・・・・・
とてもじゃないが自分では到底かなわない。
そんなことを思っているうちに話が終わったのか女は機械をバッグにしまう。
- 135 名前:吸血鬼と魔物 投稿日:2002年10月01日(火)21時45分48秒
「石川―!」
「ひゃ、ひゃいっ!」
急に名前を呼ばれて声が裏返る。
「どないしよ、矢口怒らせてもうた」
「え?」
「謝っても許してくれへんのよ。どないしたらええかな?」
「さ、さぁ?私に言われても」
リカがワケが分からないまま答えると女は「石川は冷たいなー」と恨めしそうに見つめた。
「ごめんなさい」
さらにワケが分からないまま謝る。
「・・・はぁ、どないしよ」
女は聞いていないのか頭を抱えている。
「今から行って食べたらいいじゃないですか」
リカは、少しだけ女がかわいそうになって吸血鬼的発想でそう口にした。
すると女は目を丸くして「それやっ!!」と叫んだ。
「そうと決まったらタクシーや!ほなな、石川―っ!あんたは今度食べたるからなー」
最後の最後までリカを悩ませた酔っ払い女、中澤裕子はそういい残すと猛ダッシュで去っていた。
「・・・・・・私、引っ越そう」
一人、取り残されたリカは、震える体を抱きしめながらつぶやくのだった。
Fine
- 136 名前:―――― 投稿日:2002年10月01日(火)21時46分34秒
「石川―っ!あんた、昨日祐ちゃんになにいったの!?」
「え?私、昨日中澤さんに会ってませんけど」
「ウソつくなっ!!あれから祐ちゃんうちに押しかけてきて矢口、寝れなかったんだぞ!!」
「チャーミー知りませんよーっ!!」
次の日、罪もない石川梨華は矢口からうらまれていた。
Fine
- 137 名前:124 投稿日:2002年10月02日(水)04時15分09秒
- 矢口さん、寝れなかったという事は・・・
お疲れ様です。
リク書いていただけるなら誰でも・・・
- 138 名前:一番欲しいもの 投稿日:2002年10月02日(水)08時25分58秒
夢を見た。
私と彼女が一緒に暮らしてる。
でも、それは長く続かない――悲しくて恐ろしい夢だった。
「・・・やぐ・・ち・・・・・・っ!」
不安にかられて私は飛び起きる。
そして、今のが夢であったことを確認しようと隣を見た。
彼女はいない。
シーツは冷たくなっていて、彼女がかなり前から自分の隣からいなくなっていたことが分かる。
「矢口?どこ?」
寝室を眺めるが、部屋に求める人影はみあたらない。
カーテンから微かに夜明けの光が差し込む。
その中で自分は独りぼっちだということに気付き呆然となる。
彼女が傍に居る時の柔らかな空気。それさえも幻だったかのように――
こんな事は初めてだった。
目が醒めるといつも矢口がいる。必ず、矢口が傍にいる。
それが私の日常だったのに
どうしていないの?黙ったままどこに行ってるの・・・・・・
先ほどの夢はまるで正夢に思えてくる。
だとしたら、彼女はもう戻ってこない。
- 139 名前:一番欲しいもの 投稿日:2002年10月02日(水)08時26分49秒
ベットから飛び起き全ての部屋という部屋のドアを開けていく。
リビングも、キッチンも、トイレも、風呂場も、押入れも、くまなく探した。
だけど、彼女の姿はどこにも無かった。
矢口がいない。
どうして?どうしてみんな私をおいていっちゃうの?
明日香も裕ちゃんも・・・・・・矢口も。
絶対に一人にしないって約束してくれたのに――
涙が零れ落ちる。体が小刻みに震える。
そして、泣き声は叫びに変わる。
- 140 名前:一番欲しいもの 投稿日:2002年10月02日(水)08時28分17秒
「矢口のバカ!矢口の大バカーッ!!!」
「な!なんで大バカなの!?」
背後から聞こえた非難の声に振り返ると顔を膨らませた矢口が立っていた。
だけど、私の顔をみてすぐに心配そうな表情になる。
「えっ!っていうか、なんで泣いてんの?」
矢口は、すぐに私の元に駆け寄ってくる。
「だって・・・起きたら・・・・矢口がぁ・・・いなかっ・・・・・」
しゃくりあげる私を矢口は「ゴメンね」と優しく抱きしめてくれた。
矢口のぬくもりを感じて涙が止まっていく。
しばらくして「でも、なっちってこんな甘えん坊だったっけ?」と矢口が悪戯っぽく言った。
私は、顔を赤らめながら答える。
- 141 名前:一番欲しいもの 投稿日:2002年10月02日(水)08時30分03秒
「だって、夢見たから」
「ゆめ?」
「そう、なっちと矢口が番組の企画で2少女漂流記させられて、最後、海のど真ん中でくじらがなっちたちのイカダを壊すの。で、木が一枚だけ残ってって二人一緒につかまると沈んじゃうの。そしたら、矢口が私に木を譲って沈んでちゃったんだよ」
恐ろしい夢。
絶対にやりますかやりませんかって聞かれたらやりませんって答えるよ。
「・・・・・2少女漂流記って・・・くじらって・・・・・・」
矢口がどこから突っ込もうか考えるように言葉を繰り返した。
ツッコミが入る前に話題を変える。
「・・・・・でも、矢口どこ行ってたの?」
「え?ホラ、ケーキ」
そう言って、矢口は寝室の隣の部屋を指差す。
テーブルの上には大きな四角い箱。
「ケーキ?」
「あ、忘れてるな?今日は付き合い始めて2周年なんだよっ!」
そう言って、ニコニコと笑う矢口。
- 142 名前:一番欲しいもの 投稿日:2002年10月02日(水)08時31分31秒
毎年毎年、誕生日だ、バレンタインだ、ホワイトデーだ、好きって言って何回目だとか、
愛してるって言って何回目だとか、なっちって呼ぶのが何回目だとか、
キスして何回目だとか、Hして何回目だ(これは数えないでほしい)とか
いろいろな記念日を増やしていく矢口。
そのたびにいろいろプレゼントを用意してくれる。
でも、私は
私が一番欲しいのは――
矢口にもう一度抱きつく。
「いいから・・・矢口が・・・いてくれるだけでいいから・・・・・・・はなれないで」
もうおいていかれるのはいやだから・・・・・・
欲しいものは唯一つ。
願うことも唯一つ。
「・・・うん、離れない・・・・・ずっと傍に居る」
矢口はそう囁いて優しくキスをしてくれた。
Fine
- 143 名前:ゲーム 投稿日:2002年10月02日(水)22時01分49秒
「ねぇ、そろそろやめない?」
「もうちょっとだけ、あと少しでクリアできるから」
「・・・それさっきも言わなかったっけ?」
せっかくのお休みなのに。
せっかく一緒にいられる時間ができたのに
あさ美ちゃんは、朝からずーっとゲームばっかりして相手にしてくれない。
「あさ美ちゃん、あたし帰るね」
「え?なんで?」
「だって、ずーっとゲームばっかりやし・・・」
「あ、でもあと少しでエンディングなんだよ。だから、もうちょっとだけ」
「もういいよ。またね」
「ねぇ、愛ちゃん!」
会話をしている間も、私のほうに視線を向けることもないあさ美ちゃん。悔しい。
昨日、あさ美ちゃんが誘ってくれたことすごく嬉しくて夜ぜんぜん眠れなかったのに
・・・・・・あさ美ちゃんは、なんとも思ってなかったんだ。これじゃ、私バカみたい。
私は、無言であさ美ちゃんの家をあとにした。
ふんっ、あさ美ちゃんのバカ、バカ、バカ。
もう絶対に誘われても家なんか行かない。
ゲームと結婚しちゃえばいいんだ。
- 144 名前:ゲーム 投稿日:2002年10月02日(水)22時02分49秒
そのとき、携帯にメールが届いた。
あさ美ちゃん!?
私は、すぐさまメールチェックをする。
「なんだ、お母さんか・・・・・・」
それが福井にいるお母さんだと分かってつい独り言を言ってしまった。
あんなこと思ったけど、内心はあさ美ちゃんから連絡がくるんじゃないかって
勝手に期待していたことに気づく。
メールでも電話でもいいから・・・・・・
ほんとに私ってバカだな。もう考えるのはやめよう。
だって、あの様子じゃ絶対にあさ美ちゃんから連絡なんてこないだろうし待つだけ無駄だよね。
・・・・・・このまま家に帰ってもヒマだし、ちょっと買い物してから帰ろっと。
私は、そう無理やり考えて渋谷に向かった。
- 145 名前:ゲーム 投稿日:2002年10月02日(水)22時04分22秒
1時間くらい一人で雑踏をフラフラしていたらいきなり携帯が鳴り出した。
またお母さんかな?
私は、惰性で携帯の通話ボタンを押す。
「お母さん?」
「え?」
あれ?お母さんの声じゃない・・・・・・やば、ちゃんとディスプレイ見ておくんだった。
「えっと・・・誰?」
「あ、愛ちゃん、今どこにいるの?」
「あさ美ちゃん?」
なんであさ美ちゃんが?
私は、少し混乱した。
だって、あのあさ美ちゃんだよ。わざわざ電話してくるなんて・・・・
「今ね、愛ちゃんの家の近くなの。さっき行ったらまだ帰ってなかったから・・・」
「え?私の家!?」
「うん」
あっさり返事をするあさ美ちゃん。
なんで、私の家なんかに?
私は、とりあえずすぐに家に帰るからと言ってあさ美ちゃんに待っていてもらうことにした。
- 146 名前:ゲーム 投稿日:2002年10月02日(水)22時09分07秒
駅から一回も休まずに走る。ようやく家が見えてきた。
家の前には人影が体育座りをしている。
あさ美ちゃんだ。
「あさ美ちゃん!」
私の声にあさ美ちゃんが顔を上げる。私の姿を捉えてニッコリと笑った。
「なんで私の家なんかに?」
「だって、愛ちゃんなんか怒ってたでしょ?私、なにかしたかな〜って心配になって」
のんびりと答えるあさ美ちゃん。
なにかしたかな〜って・・・私のこと無視したやん。
「あさ美ちゃんが私のこと嫌いだから」
「嫌いじゃないよ」
心外だとでも言うように驚いてあさ美ちゃんが口を挟む。
「だって、あさ美ちゃんってゲームのほうが大切でしょ」
「え?」
間抜けな声であさ美ちゃんが聞き返す。
いつもそうだ。
私がまじめに話してるのにいっつもこうやってはぐらかそうとして
- 147 名前:ゲーム 投稿日:2002年10月02日(水)22時10分20秒
「あさ美ちゃんの大切なものランキングって1位、アニメ 2位、ゲーム 3位、お餅、4位、かぼちゃwithまこっちゃん、5位が、じゃがいもで、6位が・・・」
「ちょっと、愛ちゃん?なに言ってるの?」
「だから、あさ美ちゃんランキングだよ。私なんてランキング外なんでしょ」
「ランキング外だったらわざわざここまで来ないよ」
「ウソばっかり、どーせゲームクリアしたから来たんでしょ」
「違うよ、クリアしてないけど来たの」
「・・・・・・」
「もう愛ちゃんってよく分かんないよ。それに、かぼちゃとまこっちゃんが一緒になってるし」
あさ美ちゃんが首をひねった。
「それは、最近よくまこっちゃんと一緒にいるから」
「別にかぼちゃについての考察をしてるだけだよ」
「なんで私じゃダメなの?」
「だって、愛ちゃんって熱狂的かぼちゃファンじゃないでしょ」
「・・・・・・・・・」
熱狂的かぼちゃファンってなに?
そんなにかぼちゃが大事なの、あさ美ちゃんは?
かぼちゃに負けるなんて・・・そんなの悲しすぎる。
石川さんの真似じゃないけど
- 148 名前:ゲーム 投稿日:2002年10月02日(水)22時11分42秒
「そ、それにかぼちゃの話なんて面白くないでしょ?」
私の視線に気づいたのか取り繕うように慌てて付け加えるあさ美ちゃん。
「まこっちゃんとあさ美ちゃんが仲良く喋ってるの見るほうがおもしろくないもん」
「え?」
あさ美ちゃんが目を丸くした。
え?
私、今なんて言ったっけ?
興奮して自分がなにを言ったのか覚えていない。
でも―――
「それってかなり嬉しいな」
って、あさ美ちゃんをロケでかぼちゃがでてきたときよりも嬉しそうな笑顔に
させることを言ったのは確か見たい。
だって、そのあとにあさ美ちゃんは私を抱きしめてくれたから・・・
あさ美ちゃんって、マイペースでなに考えてるかわかんなくて
私の気持ちも分かってくれなくていっつも振り回されてばかりだけど・・・・・・
でも、やっぱり好きだな。
Fine
- 149 名前:――― 投稿日:2002年10月02日(水)22時12分55秒
「で、ほんとにゲームやめてきたの?」
「え?・・・・・・あ、途中でセーブできるところがあって」
「・・・・・・・・・・・・」
「今度、一緒にエンディング見ようね」
やっぱり私が怒った原因がなんなのかわかってないんだね、あさ美ちゃん。
Fine
- 150 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月03日(木)00時47分28秒
- うぉおお!!!!高紺はっけーん!!
嬉しいっす!こんなので(・∀・)イイ!!んですw
ほのぼのとしてて振り回される高橋最高ですw
- 151 名前:名無しいしよし 投稿日:2002年10月03日(木)00時50分16秒
- 高紺いいじゃないですかー。作者さんは、自分と同じタイプですね。
自分も紺野に振り回される高橋がいいです(^^/
もう1パターンのやつもぜひしてくださいね。
- 152 名前:My sweet Cat 投稿日:2002年10月03日(木)07時59分18秒
ぼんやりとベッドに寝そべって彼女を見ていると目が合った。
にっこりと私に笑いかけてくる。
ヤバイ、咄嗟にそう思って私は体を起こそうと肘を立てた。
だけど――
「けーちゃん」
そう言って、すばやくかつ勢いよくベッドに飛び込んでくるバカ。
私の予想通り思いっきり私の体にダイブしてくる。
今日のダイブは!
なんていってる場合じゃないわよ、まったく。
たまには、着地点を考えて飛べって!
「重い・・・」
「失礼な、後藤かなり痩せました」
それは見ても分かるけど・・・・・・ほんとに行動が突飛なんだから。
「まったく、あんたって猫みたいよね」
つい呟いていた言葉に後藤は不思議そうにあたしを見つめてきた。
「猫?後藤は、魚ってるよ。どっちかっていうとけーちゃんのほうが猫目で」
「バカ、そういう意味じゃないわよ」
私は、苦笑して彼女に背を向けた。追及を避けようとしての行動。
だけど「じゃぁ、どういう意味〜??」と後藤は、私を揺さぶってくる。
ユサユサと視界もグラグラと・・・・・・相変わらずの怪力だ。
それも、しつこい
- 153 名前:My sweet Cat 投稿日:2002年10月03日(木)08時00分42秒
「ねぇってば〜ねぇ、ねぇ、ねぇ」
「もーしつこいわねー」
私は、後藤のほうに向きなおった。
「けーちゃんが無視するからじゃん」
後藤は、唇を尖らせて言った。
まったく、もう・・・・・・
「気まぐれで可愛くて甘え上手!!」
恥ずかしいので簡潔に早口で言った。
「甘え上手かな〜?」
後藤は、怪訝そうな顔をする。
「私にだけね」
私は後藤の体を引き寄せて耳元で囁いた。
後藤が照れたように「バカ〜」と私を軽く叩いた。
それから、私を見て「じゃぁ、けーちゃんはね〜えっと〜」となにかを考え始める。
「ん?」
後藤のことだから、なんか変わった動物がきそうだ。
少し楽しみにしながら私は、後藤の言葉を待った。
- 154 名前:My sweet Cat 投稿日:2002年10月03日(木)08時02分05秒
「犬だね」
「いぬ〜?なんでよ?」
あまりに普通すぎて私は思いっきり不満そうな声を出していた。
「だってさ〜、犬って人懐っこくてあったかくてバカでエサにすぐ釣られて騙されて・・・」
「ちょっと、それ誉めてないから」
私が途中で止めると後藤はあはっと独特の笑顔で答えた。
「だって、本当じゃん。けーちゃんは、浮気ばっかり」
「してないわよ」
失礼なやつだ。
私が浮気なんてするわけないでしょ。
せいぜいセクハラぐらいよ!
って、自分でなにを自信満々に言ってるのかしら・・・
- 155 名前:My sweet Cat 投稿日:2002年10月03日(木)08時03分33秒
「ほんとかな〜まぁ、そんなけーちゃんがいいんだけどね」
頬を染めて私を見つめてくる後藤。
かわいい――私は微笑んでその頬に触れる。
後藤は、それこそ猫みたいに喉を鳴らしそうなほど満足げな表情をした。
それから、言った。
「知ってた?」
「ん?なにを」
「・・・・・・猫って本当に好きな人にしか身体許さないんだって」
「へぇ〜」
それは知らなかった。変なことを知ってるんだな、こいつ。
私が思っていると後藤が抱きつきながら囁いた。
「だから、けーちゃんは幸せ者だね」
まったく、こいつは・・・・・・でも、それは否定できない。
「そうね。私は、幸せ者ね」
私もそう囁き返した。後藤は、「あは」とまた笑った。
ほんとに私は幸せ者だわ。
Fine
- 156 名前:なちまりっぷ 投稿日:2002年10月03日(木)18時22分46秒
- ぜんぜんいいじゃないですか〜高紺、やすごま、そして、なちまり。
というか、高紺の大事なものランキングでボブを思い出して笑った。
これからもがんがってくださいね
- 157 名前:124 投稿日:2002年10月03日(木)19時09分57秒
- 保田さんに甘える後藤さんいいですね。
リクしてよかった、それにありがとう。
「ゲーム」のかぼちゃwithまこっちゃんに笑っちゃいました。
これからも楽しみに待ってます。
- 158 名前:恋愛ってなあに? 投稿日:2002年10月03日(木)22時14分10秒
「あぁーっ!!!」
ののが楽屋に入ってくるなり大きな声で叫んだ。
「どうしたんだよ〜。怒られるぞ、大きい声出してたら」
隣に立っとったよっすぃ〜がのんびりとした口調で言う。
いや、よっすぃ〜もよくさけんどるやろ。
ののは、そんなよっすぃ〜に見向きもせずにうちのほうにずんずんと近づいてくる。
な、なんなんや?
「ののがいないあいだにドーナツ食べるなんてずるいよー!」
言われてはじめて気づいた。
うちは、慌ててドーナツの入っていた箱に視線を動かす。
箱はさっきうちが最後の一個を取ったばかりやから確認せんでも
もうドーナツは残ってへんのはわかっとった。
うちの斜め前には、最後から2番目のドーナツ君をほおばるまこっちゃん。
- 159 名前:恋愛ってなあに? 投稿日:2002年10月03日(木)22時15分34秒
「さっきまでちゃんと待ってたんですけど〜加護さんが帰ってくるの遅いからもう食べちゃおうって・・・」
もぐもぐと口を動かしながらまこっちゃんが言う。
なにうちのせいにしとんねんっ!って、そう言うたんは本当やけど・・・・
・・・それは火にナパーム弾やで。
うわっ、ののがまるで千年来の敵にあったかのようにうちを睨んどる。
「アイボンのバカーっ」
「だいたい、お前どこ行ってたんだよ〜」
よっすぃ〜が、ののにたずねる。
ナイスや。
いっつもタイミング悪いけど今日はええタイミングで入ってきてくれた。
えらい、感動した!
ののはよっすぃ〜の問いかけに「えっと」と言葉に詰まった。
- 160 名前:恋愛ってなあに? 投稿日:2002年10月03日(木)22時17分22秒
そうそう、元はといえば相方のうちを置いて勝手にどっかに行ったんはののやん。
なら、このドーナツはののにやらんでもええよな。
うん、ええはずや。決定や。
それにな、これはのののためでもあるんや。
うちも人のこと言えんけどせっかくダイエットしだしたののにこれは食べさせたらあかん。
そんな目でうちを見ても無駄やで。
うちは、心を鬼にしてこのドーナツを食べる。
全てはのののために!
パク
「あーっ!!!!!!!!!!!!」
ののは悲鳴に近い声で叫びながらがっくりと膝を突く。
みんなが耳を押さえている。
うちもご多分に漏れず、ドーナツを口にくわえたまま耳栓をした。
- 161 名前:恋愛ってなあに? 投稿日:2002年10月03日(木)22時18分34秒
「ドォーナァツゥ――!!」
恨めしそうにうちを見あげる。
そんな目で見ても――その瞬間、うちはののにぐぃっと引き寄せられた。
「一口頂戴!」
逃げる間もなく、両肩をしっかりとつかまれてうちが口にくわえていたドーナツは
反対側からののにかじられた。微かに唇が触れる。
「「おーっ」」
周りから歓声が上がる。
思いがけない出来事にうちの顔が赤く染まっていくのが分かる。
- 162 名前:恋愛ってなあに? 投稿日:2002年10月03日(木)22時21分43秒
なんでや?なんでこんな恥ずかしいん?
ののとチューやなんて別にいまさら恥ずかしがることやないやん。
――やけど
――やけど
なんかちゃう――
これが、これが鯉・・・・・・間違えた。
こ、恋なんか?
うちは、これからなんかののにアプローチせなあかんのやろうか?
そんなん改まってするのめっちゃ恥ずかしいわーっ!
「の、の、の、のののアホーッ!!」
うちは叫んで楽屋を飛び出した。
「どうしたんだよ〜、大きな声出してると怒られるぞ〜」
よっすぃ〜の声が楽屋の中から聞こえた。
あとから聞いたんやけどドーナツはののが床に落ちる前に見事にキャッチしたらしい。
道理で追っかけてきてくれへんはずやな。
うちの恋は前途多難みたいや。
Fine
- 163 名前:124 投稿日:2002年10月04日(金)03時03分38秒
- 一人混乱している加護ちゃんカワイーですね。
この続きが気になる。
余裕があればお願いします。
- 164 名前:愛の証 投稿日:2002年10月05日(土)09時04分54秒
非常に困った事態だ。
なにもかもを捨てて逃げ出したい状況なんてそうそうあるわけじゃないんだろうけど、
あたしにとって大げさでもなく今がまさにそうだった。
「ん〜」
あたしは、楽屋に備え付けられているソファに座って
のんびりと雑誌を読みながら時間が過ぎるのを待っていたんだ。
うん、それはいい。
そこへまぁなんていうか愛しの梨華ちゃんがやってきた。
うん、それもいい。
そこまでは完璧に吉澤ひとみのいい日旅立ちだったんだ。
それなのに・・・・・・
・・・・・・あいつの一言で
- 165 名前:愛の証 投稿日:2002年10月05日(土)09時07分08秒
「よっすぃ〜と梨華ちゃんってホンマに好き好きビームなん?」
「当たり前でしょ、なに言うの、アイボン」
このあたりからなんとなく嫌な予感はしてたんだよな。
「やけど、なんかよっすぃ〜ちょっと迷惑そうやんか」
「えー、そんなことないよね、よっすぃ〜」
あたしと加護の顔を行ったり来たりする梨華ちゃん。
からかわれていることぐらい気づいて欲しい。
「う、うん」
「ほらー、よっすぃ〜頷いたよ」
勝ち誇ったように梨華ちゃんが言う。
「今のは、少し無理やりぽかった。なぁ、のの」
「そうだね」
「ムリヤリじゃないもん、ねぇ」
どんどん一人でヒートアップしていく梨華ちゃん。
このあたりから完璧に嫌な予感は的中すると思ってたんだ。
「ほな、これで二人の愛を証明してやー」
そう言って、加護が取り出したのはムースポッキーじゃなくてフラン・・・・・・
まぁ、いいんだけどね、それは別に。
- 166 名前:愛の証 投稿日:2002年10月05日(土)09時08分00秒
「フランでなにするの?」
梨華ちゃんが首をかしげた。
「よう見てや」
加護は、そう言うとフランを一本取り出して口にくわえた。
そして、辻に差し出す。
もちろん、辻がそれを逃すわけがない。
どんどん近づく二人の唇。
触れるか触れないかのぎりぎりのところで加護がフランから口を離した。
「どうやっ!!これができてこそ好き好きビームや!」
「そんなの・・・」
梨華ちゃんが言葉に詰まった。
さすがの梨華ちゃんでも人前では抵抗があるらしい。
あたしは、ひそかに胸を撫で下ろしていた。
そんなことしなくても家に帰れば愛なんて確かめられるよ。
だから――ね、梨華ちゃん。
- 167 名前:愛の証 投稿日:2002年10月05日(土)09時10分13秒
「ほーら、やっぱり二人の愛は偽もんやー!!」
梨華ちゃんの肩がピクリと反応した。
そして、つかつかと加護の元へ歩いていく。
ねぇ、まさか・・・しないよね?
ファンタジー?するの?梨華ちゃん??
加護からフランを一本受け取って今度はあたしにつかつかと近づいてきた。
「梨華ちゃん・・・す、するの?」
あたしは、おそるおそる尋ねた。
「するよ」
梨華ちゃんは、満面の笑みで答えた。
- 168 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月05日(土)18時37分27秒
- (^▽^)しないよ
- 169 名前:愛の証 投稿日:2002年10月05日(土)22時15分17秒
で、今に至るってわけなんだけど・・・・・・
「んー」
さっきからずっとフランを口にくわえてあたしを待っている梨華ちゃん。
あのね、梨華ちゃん、目つぶってるから気づいてないのかもしれないけど・・・
ギャラリー増えてるんだよ。
だから、絶対無理・・・・・・ゴメンね、梨華ちゃん。
あたし、梨華ちゃんの期待にはなるべく答えたいと思ってたんだけど
今回ばかりは、答えられないと思う。
- 170 名前:愛の証 投稿日:2002年10月05日(土)22時17分08秒
「ほら、よっすぃー石川がかわいそうじゃん。ラブピーラブピー」
いや、飯田さん、そういう問題じゃないですって。
「なっちは見てないべさ。よっすぃ〜、遠慮なくブチュッとしていいべさ」
いや、安倍さん、思いっきり指の隙間から除いてますって
「吉澤―!あんた、私の石川のお願いが聞けないの。なんなら私がするわよ」
いや、お圭さん、自分の願望で物事はかんないでくださいって
「キャハハ、きしょっ!石川キショ!」
その通りです、矢口さん。あ、いや、梨華ちゃんはかわいいですよ。
「あの、なんかの罰ゲームですか?」
ある意味そうだね、新垣
「先輩、プッチ魂ですよ」
それはまったく関係ないから、小川
「ありゃー、東京の人ってすごいんやな」
・・・あたしたち、どっちも東京出身じゃないからね、高橋
「あれは、期間限定販売、フランのふわっとカフェラテ・・・ムースポッキーじゃないんですね」
・・・・・・紺野、まったくもって冷静だね
「んー」
ああ、梨華ちゃん。
ほんとにほんとにほんとにゴメン。
あたし、人前でそんなことできるほど神経太くないんだよ。
っていうか、いい加減自分の世界からでてきて回り見てよ。
- 171 名前:愛の証 投稿日:2002年10月05日(土)22時19分07秒
「やっぱり、よっすぃ〜と梨華ちゃんの間に愛はなかったな。うちの勝ちやで」
「おかしいよ。もうちょっとしたらするって」
「もうええ加減にあきらめーや。今日のお菓子の買出しはののに決定!」
お前ら・・・賭けてたのか!?
しかも、お菓子の買出しごときで・・・・・・あたしがどれだけ困ってると思ってんだ!
Yさんぶち切れ事件再発生!!
あたしは、二人に向かって今まで貝のように押し黙って耐えていたことを忘れて
怒鳴りつけようとした。
「辻!加護!おまえらっ!!んっ!!?」
あたしが口をあけるのを待っていたのか梨華ちゃんがフランごとあたしを押し倒した。
フランがムリヤリ口に押し込まれる。梨華ちゃんが目だけで微笑む。
微笑んでいる場合じゃないんだけどその笑顔は反則だね、梨華ちゃん。
・・・・・・そして、もちろんゆっくりとそれを食べていく。
次第にあたしの唇に近づいてくる、梨華ちゃんの唇。
・・・・・・ほんとにマジ最強だね、梨華ちゃん。
あー、もうなんか抵抗する気力もなくなってきた。
これって・・・・・・・・・・・・
幸せ・・・ですか?今のあたし・・・・・・?
幸せなんですか〜?
- 172 名前:愛の証 投稿日:2002年10月05日(土)22時21分07秒
「さすがラブピーだね。リーダーは嬉しい。報告しなきゃ」
え?報告ってどこにですか?飯田さん
「なっち、見てないべ。見てないべ」
もういいですから、さっきより乗り出してますよ
「見せ付けてくれるわね・・・娘を嫁に出す気分だわ」
なに潤んだ目で・・・花嫁の父ですか?保田さん
「キャハハ、石川キショキショキショ!」
さっきと変わってませんよ、矢口さん
「あの・・・えっと」
さすがの新垣も困るよね。うん
「うっしゃーっ!!だーッマウントはいったーっ!!」
興奮しすぎだよ、小川。別にここでプロレスしないから
「えっと・・・うらやましいやわ」
それなら変わってあげたいよ、高橋
「どうして、ムースポッキーじゃないんでしょうか?どちらもカフェラテの期間限定販売なのに・・・」
まだ、そこにこだわってたの紺野
「ちぃっ!よっすぃ〜のヘタレ」
「やったー、今日はアイボンが買い出しれすよ!!」
お前らあとで絶対グーで殴る
これでいいのかな、あたし・・・・・
・・・・・・・あぁ、でも梨華ちゃんの唇はおいしいよ
Fine
- 173 名前:好きの違い 投稿日:2002年10月06日(日)08時34分27秒
「いいらさん」
「ん?」
気がつくと彼女があたしの前に立っていた。
「座っていいですか?」
最近、注意されていきなり人の膝の上に座ることをしなくなった。
律儀にそんなことを聞いてくる姿はかわいらしい。
「いいよ」
満面の笑顔であたしの膝に座る彼女。
前よりも少し軽くなったね。お年頃だからかな?
のんちゃんが娘に入ってきたのは2年前。
カオリが教育係になって16ビート教えてあげたの今も覚えてるのかな?
そういえば、あっち向いてホイもしたよね。
あのころののんちゃんは、甘えん坊さんで泣き虫で・・・それは今でもあんまり変わらないけど。
カオリはそんなのんちゃんが大好きなんだよ。
分かるかな、カオリの気持ち。
カオリはのんちゃんにどこにも行って欲しくないの。
カオリのラブピーでいてほしいんだよ。
- 174 名前:好きの違い 投稿日:2002年10月06日(日)08時35分36秒
「ねぇ、のんちゃん」
「ん〜?」
「のんちゃんは、好きな人とかいる?」
勇気を出して聞いてみた。彼女を抱える腕が震えそうになった。
こんなに緊張したのははじめてTVに出たとき以来だ。
「いるよ〜」
「え?」
「お父さんでしょ、お母さんでしょ、お姉ちゃんとマロンと、あと、いいらさんでしょ、亜依ボンでしょ、安倍さんに、矢口さんに、保田さんに、ごっちんに、よっすぃーに、梨華ちゃんに・・・・・・」
「分かった。うん、分かったから」
全メンバーの名前を言い出す彼女を止めた。
予想はしていたことだったからそれほどショックは受けなかったけど。
- 175 名前:好きの違い 投稿日:2002年10月06日(日)08時36分48秒
彼女は幼い。
あたしの言う『好き』という意味も分からないほど。
中3ならもう恋愛感情というものは持っていてもおかしくない。
それなのに、彼女にはそれがまだ分からないのだ。
それが自己防衛だったのかもしれない。
娘という異質な空間に紛れ込んでしまった少女の。
あたしは、彼女の頭にあごを乗せた。
「あたしもねー、のんちゃんのこと好きだよ」
「じゃぁ、一緒だね」
彼女があたしを見上げて笑った。
「ううん、違う」
「どうして?」
彼女があたしを見上げる。
あたしの表情の変化に気づいたのかその笑顔が曇る。
「あたしの言った好きとのんちゃんの言った好きは意味が違うの」
「・・・よくわかんない」
「だよね。今はそれでいいよ」
あたしは、彼女を抱きしめたまま後ろの背もたれに体を預けた。
- 176 名前:好きの違い 投稿日:2002年10月06日(日)08時39分51秒
彼女はいつになったら大人になるんだろう。
考え出すと石川ばりの元祖ネガテブが爆発して途方にくれる。
幼いところが彼女の魅力だけど、幼すぎるのもかえって困る。
だって、彼女が幼いままでいるということは、あたしの言う「すき」という気持ちは彼女には届かないということだから――
彼女が本当の意味を理解するのはいったいいつなんだろう?
それが早くきてほしいと願うけど・・・・・・
彼女がそれを理解したそのときには、その天使のような幼さも
天衣無縫な振る舞いも完全に消え去って、どこから見ても大人になってしまうんだろうか?
そう考えると、そのときがなるべくゆっくりきてほしいとも思う。
純粋な彼女は果たしていつまで存在してくれるのか・・・・・・
今、あたしが心配しても無駄なことなんだろうけれど。
- 177 名前:好きの違い 投稿日:2002年10月06日(日)08時40分45秒
「カオリ、お母さんみたいだね」
「え?」
矢口の声に我に返ると、彼女は静かな寝息を立てて眠っていた。
「ノンキだな〜」
あたしは苦笑いを浮かべながら彼女を起こさないようにゆっくりと横に寝かせる。
きっと彼女もいつか大人になる。
誰だって大人になる。
だから、それまではカオリに見守らせてね、のんちゃん。
Fine
- 178 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月06日(日)11時33分35秒
- 確かにののかお絶頂期の頃の話っぽいけどいいですね〜、これ。
いしよしも面白かったです。ネタ切れらしいですが頑張ってください
- 179 名前:膝枕 投稿日:2002年10月07日(月)11時34分35秒
ある日の楽屋。
紺野と小川が背中合わせでぼんやりと座っている。
なぜ、二人がこんな格好で座っているのかといえば、ポカポカと窓から差し込んでくる日差し。
それがとても心地よいからだった。
「いいね〜、こういうの」
紺野がのんびりと満足げにそう口にした。
「あさ美ちゃん、おばちゃんっぽいよ」
「いいの。おばちゃんも若者も日光浴は健康にとってもいいんだよ」
「ふ〜ん」
再び、静かで穏やかな時間が流れる。
なにもせずに考えることなく背中を合わせているだけでもポカポカと気持ちが温かくなる。
- 180 名前:膝枕 投稿日:2002年10月07日(月)11時35分12秒
「あっ!」
なにかに思い当たったように小川が声を発した。
「どうしたの?」
「あたし、眠くなっちゃったよ〜」
そう言うと、紺野の背中から体を離して正面に回る小川。
「ひーざまーくらー!」
「え?」
紺野が反応するよりもさきに小川の頭が紺野の膝に乗っけられた。
下から「えへへ」と人懐っこい笑顔で紺野を見上げる小川。
「もう、まこっちゃんってけっこう甘えん坊だよね」
そういいつつもどこか嬉しそうな紺野であった。
- 181 名前:膝枕 投稿日:2002年10月07日(月)11時36分03秒
「おはよーございまーす!!」
楽屋のドアが開いて元気な声と共に高橋と新垣の二人が飛び込んできた
「「しーっ!」」
中にいた先輩メンバーから一斉にそのような声が返ってくる。
「え?」
「どうしたんですか?」
新垣がドアのすぐ傍のソファに座っていた矢口に声を掛けた。
矢口は「ただいま爆睡中!」と窓際を指差した。
「え?」
高橋と新垣は同時にその指先を追った。
- 182 名前:膝枕 投稿日:2002年10月07日(月)11時37分36秒
そこで見たものは、幸せそうに寝ている小川を膝枕しながら
同じように幸せそうに自分も壁に体を預けて眠っている紺野の姿だった。
「やっぱりラブピーだね」
飯田が、満足げに頷いていた。
目が覚めてから二人はメンバーから散々からかわれる羽目になったのは言うまでもない。
Fine
- 183 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月07日(月)12時12分29秒
- おがこんだおがこんだ♪
凄くほのぼのしてていいですw
- 184 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月07日(月)19時51分55秒
- オガコンほのぼのキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
すっげーいいっす。
- 185 名前:あなたのことが好きでした 投稿日:2002年10月08日(火)11時34分39秒
「ねぇ、よっすぃ〜、星がきれいだよ」
まだ夏が残るむし暑い夜。
二人で夜道を歩いていると、不意にあなたが空を見上げて呟いた。
「星なんて見えませんよ、曇ってるし」
「でも・・・光ってる」
「・・・そうですか」
あなたのキレイな目には見えるかもしれないけど
あたしの濁った目には、そんなキレイなものなんて見えない。
- 186 名前:あなたのことが好きでした 投稿日:2002年10月08日(火)11時36分46秒
「それより、今日飯田さんの家に行ってもいいですか?」
何度も言い過ぎてそれは日常と化していた言葉。
本当は、そんな断りいらないのかもしれないけど。
でも、言っておかないと体だけが目当てだと思われそうで不安になる。
・・・・・・実際にそうなんだろう。
「え?でも、ちょっと・・・」
「ダメなんですか?」
「そういうわけじゃないけど・・・・・・」
好きな人と一緒にいるのは当たり前だとそう思っていたけど、あなたと付き合い始めて
それは間違いだってことに気づいた。あなたは、一緒にいようとしてくれない。
いつだって全てに対して「受身」で、あたしが約束をこぎつけなければ
自分からは絶対に会いに来てくれない。
そんなあなたにあたしはいつも不安だらけで・・・・・・
- 187 名前:あなたのことが好きでした 投稿日:2002年10月08日(火)11時37分59秒
「一緒にいたくないんですか?」
「っていうか・・・・・・疲れてて」
日常化した言葉と日常化した行為。
あなたは、それに疲弊している。
「別にそういう意味で言ったんじゃないですよ」
「ほんとに?」
「はい」
「じゃぁ、いいよ」
その言い草になんだか少しだけ腹が立った。
あたしは、もう一度さっき彼女が見上げていた空を見上げる。
一面の黒。
やっぱりあたしにはなんにも見えない。
- 188 名前:あなたのことが好きでした 投稿日:2002年10月08日(火)11時40分43秒
部屋についても言葉はなくて――
あたしは、ぼんやりとベッドに腰掛けて、あなたは、所在なげにソファに座る。
一緒にいすぎて、日常としてあなたを知り尽くした結果なのか
知り尽くしたはずなのにあたしは今あなたがなにを考えているのかも分からない。
「っていうか、ヒマじゃない?」
「なんか話しましょうか?」
「なにを?」
「えっと・・・・・・・・」
あたしは、言葉に詰まる。
いつもなにを話していたのかがまったく思いつかない。
なにをしていたのかなら、すぐに思いつくんだけど・・・・・・・
- 189 名前:あなたのことが好きでした 投稿日:2002年10月08日(火)11時42分41秒
愛のないセックス。
別に愛がないって思うのは、あなたのことが嫌いになったとかじゃなくて
今でも好きなのに変わりはないんだけど
ただ、最近、思ったんだ。
最初の頃のような二人はもういないんだなって。
はじめてあなたに思いを打ち明けた日。
はじめてあなたとキスをした日。
初めてあなたと結ばれた夜。
はじめてあなたと見た朝陽。
今は、そんな感動もなにもなくて・・・・・・ただ、快楽を欲しがっているだけのような気がする。
暇があればあなたを求めて・・・
あなたをつなぎとめておくにはこうすることしか方法を見つけられなくて。
それが全ての間違いだったのかな・・・・・・
「エッチしたいの?」
「え?そういうわけじゃないですよ」
再び気まずい沈黙が訪れる。
不意にあなたはソファから立ち上がってあたしの隣に腰掛けた。
- 190 名前:あなたのことが好きでした 投稿日:2002年10月08日(火)11時45分08秒
「よっすぃ〜ってカオのこと好き?」
大真面目な顔であたしを見つめる。
「なんでそんなこと聞くんですか?」
あたしは、目を逸らしながら言った。
「だって・・・」
「なんですか?」
「だって、カオのこと好きじゃないみたいに見える」
「・・・そう、見えますか?」
あなたの視線が突き刺さる。
全て見透かされてしまいそうで。
好きじゃないみたいに見える
・・・あなたがそう感じるのならそうなんだろう。
それで、あなたが傷つくのなら・・・・・・それならば、いっそのこと・・・
「・・・・・・じゃぁ、別れますか?」
あまりにも簡単に口から漏れた言葉。
- 191 名前:あなたのことが好きでした 投稿日:2002年10月08日(火)11時47分15秒
「別れたいの?」
「そうは言ってませんけど・・・」
「じゃぁ、そんなこと軽々しく聞かないでよ」
「だって、飯田さんが変なこと言うから。あたしのこと信じてないってことでしょ」
沈黙。
ややあってあなたは口を開く。
「でも・・・・・・実際どうなの?」
「え?」
思わず顔を上げるとばっちりと目があった。
- 192 名前:あなたのことが好きでした 投稿日:2002年10月08日(火)11時48分19秒
「カオリのことどう思ってるの?」
「・・・だから、なんでそういうこと聞くんですか?」
「聞きたいから」
見つめてくるその瞳にウソはつけなくて
――あたしは、答えられずに無言のままうつむいてしまう。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「分かった・・・やっぱり帰って」
あなたは立ち上がる。その背中を見上げた。
「飯田さん・・・」
「よっすぃ〜の考えてること分かってるよ」
「分かるなら・・・それなら、一緒に最初からやり直しましょうよ」
「・・・無理だよ」
彼女がポツリと呟く。
- 193 名前:あなたのことが好きでした 投稿日:2002年10月08日(火)11時50分07秒
そんなことあたしだって本当は知っていた。
あまりにも今の状態が日常になっているから・・・
あなたはきっと変えようとはしないだろうしあたしも敢えて変えようとしなかった。
あたしたちは、それを知っていてずっとずっと見ない振りをしてきた。
その結果が現状。
だから、なにも変わらない。
あたしたちは修復不可能なところまで来ている。
悲しいけどもう手遅れなんだ。
それでも・・・・・・
「でも・・・・・・」
「もういいから帰って・・・」
会話の拒否。
あなたのきれいな瞳からはきれいなしずくがこぼれ落ちていく。
あたしの体は動かない。
あたしの腕は、泣き出してしまったあなたを抱きしめてあげることができなかった。
「ゴメン・・・なさい・・・・・・」
謝罪の言葉しか出なかった。
あなたは、一瞬固まってあたしに目を向ける。
- 194 名前:あなたのことが好きでした 投稿日:2002年10月08日(火)11時51分42秒
ごめんなさい、ごめんなさい。
あたしは、あなたのことが大好きです。
だけど、好きだけどなにかがもう絶対的におかしくなって・・・・・・
あなたと過ごした日々がどれだけ長くても、いつもあなたが遠くに行ってしまうような気がしてて。だから、傍にいればいるほどすれ違って・・・・・・
だからって、あたしにはこれからどうすればいいのか分からない。
二人の為だなんていったら都合がいいだけなのかも知れないけど。
今、ここで別れることが多分一番いいことなんだと思う。
いつからかすれ違いすぎたあたしたちがこのまま付き合い続けるなんて
・・・・・・お互いが疲れるだけ、傷つくだけだから。
それでも・・・・・・
- 195 名前:あなたのことが好きでした 投稿日:2002年10月08日(火)11時52分55秒
それでも・・・・・・
「あたしは、飯田さんのこと好きでした。一番・・・・・・」
過去形にしてしまわなければならないことが悔しい。
本当は、今だって大好きなのに
今すぐにでも震えるあなたを抱きしめてあげたいのに
でも、それはできない。もう、無理だから・・・・・・
「私もよっすぃ〜のこと、一番好きだった・・・」
赤い目であたしを見つめながらあなたは微かに笑った。
あたしの視界が滲む。
「・・・さよなら」
あたしは、振り返ることはせずに彼女の家を出た。
- 196 名前:あなたのことが好きでした 投稿日:2002年10月08日(火)11時54分23秒
後悔はない。
これが二人のためになるのならば・・・それでいい。
正解だなんて必ずしも言い切れないけど、これからのあたしたちが一番傷つかない方法なんだ。
あなたのことが好きだから、これ以上、あたしの所為で傷つけたくはないから。
そして、あたし自身がこれ以上傷つきたくないから。
自分勝手なのかもしれない。
そう思われたってかまわない。
でも、たった一つだけ変わらないことがある。
あたしは、あなたのことが好きだと言う事実。
だから、きっと一生忘れない。
あなたと一緒に笑い会えた日のことを。
Fine
- 197 名前:なちまりっぷ 投稿日:2002年10月08日(火)17時47分48秒
- 十分、切なかったですよ。リク答えてくれてありがd。
- 198 名前:@ 投稿日:2002年10月08日(火)18時13分10秒
- うぉ〜〜!はじめてハケーン。
森でいしごまetc・・・を書いているものです。
やっぱいしごま最高です。卒業ものは特に切ないですねぇ。。。
がんがってください。
- 199 名前:ああ、勘違い 投稿日:2002年10月09日(水)09時51分03秒
「だから、それは梨華ちゃんの誤解だよ」
「だって見たんだよ!絶対に誤解じゃないもん」
「いや、だからね理由が」
「もういいっ!!言い訳ばっかり聞きたくない」
私は、まだなにか言いかけようとしていたごっちんを突き飛ばして走った。
だけど、ごっちんのほうが確実に足が速いんだよね。
あっさりと追いつかれて腕を掴まれる。
「話聞いてよ!」
少し苛ついているような口調。
逆切れまでするなんてごっちんひどいっ!
私は、ごっちんの手を振り払って両手で耳栓をした。
これでごっちんの話なんて聞こえないもんね。
天才だね、チャーミー
- 200 名前:ああ、勘違い 投稿日:2002年10月09日(水)09時52分10秒
「なにしてんの?」
ごっちんが呆れた目で見ている。
その時だった。
「後藤さん、スタジオ入ってください」
ADさんが、ごっちんを呼ぶ声がした。ごっちんが振り返って返事をする。
行っちゃえ行っちゃえ!ごっちんなんてもう知らないんだからっ!!
私がその背中にあっかんべーをした瞬間、ごっちんがもう一度私のほうを振り返った。
私を見てごっちんは少し傷ついたように眉を寄せる。
それから、
「・・・ともかく、あとでちゃんと話すから仕事終わっても帰らないでよ」
と私に告げそのままスタジオに走っていった。
「だ、誰が待つもんか・・・・・・バカ」
私は、ごっちんには聞こえないように小さく呟いた。
- 201 名前:ああ、勘違い 投稿日:2002年10月09日(水)09時54分35秒
でも、あの眼。ごっちんのこと傷つけちゃったかな・・・・・・
でも、でも、私が悪いわけじゃないもん。
ごっちんが浮気なんてするから。
それも、原宿でお買い物なんて・・・・・・ひどいよ、私の気持ちも考えないで。
いくらソロ同士だからって・・・・・・しかも、素直に浮気を認めないなんて最低だよ。
あれは、誰がどうみたってデートだったし。
ごっちん、あの子のことが好きになったのかな?
私と別れたいのかな・・・・・・
そうだよね。
だいたい、ごっちんが私を好きってことじたいおかしいもん。
どうしてどうして私なんて選んだの〜?だもん。
だから、ごっちんがあの子を好きになっても・・・・・・人間って悲しいね。
考えているうちに悲しくなって涙が出そうになる。
それをこらえて変わりに深いため息をついた。
その時、「あ、おはよーございます、石川さん」と後ろから声をかけられた。
振り向いた私の眼には、ごっちんの浮気相手、諸悪の根源、アイドルサイボーグ・・・は今は関係ないけど・・・
の、松浦亜弥ちゃんがにこにこ笑顔で立っていた。
私は、笑う気にはなれない。ごっちんを奪われたのに・・・・・・・・・・・・
- 202 名前:ああ、勘違い 投稿日:2002年10月09日(水)09時58分54秒
「石川さん、後藤さんに会いましたか?」
な、なんで亜弥ちゃんが私にそんなこと聞いてくるの?
まさか、宣戦布告!?
それとも、もうごっちんから『梨華ちゃんとは別れてるよ。今は亜弥ちゃんだけ』とか言われたの?
「会ってないよ・・・」
「えー、なにしてるんですかねー、後藤さん」
首をひねる亜弥ちゃん。
やっぱりごっちんから私と別れるからって言われてるんだ。
亜弥ちゃんかわいいもんね。
ごっちんって優しいからなかなか言い出せないんだ。そうなんだ。
私と亜弥ちゃんなんて比べなくてもいいもんね。
私が亜弥ちゃんに勝ってるところっていったら・・・・・・
歌はダメだし・・・
演技・・・もダメだし・・・・・・
トーク・・・も寒いし・・・
・・・ほら、なんにもない。これじゃ、捨てられても当然だよね。
- 203 名前:ああ、勘違い 投稿日:2002年10月09日(水)10時00分29秒
「亜弥ちゃん」
「はい?」
「ごっちんのことよろしくね」
「え?」
亜弥ちゃんが疑問の声をあげる。
もう演技はいいんだよ、亜弥ちゃん。
私、みてたんだから。
原宿のアクセショップでごっちんが亜弥ちゃんの指を見つめていたこと。
そして、指輪を買ってあげたこと。その後も、クレープ屋にも行ってたよね。
「・・・・・・ごっちん、冷たそうに見えて本当は優しいし、言葉少ないけどシャイなだけで言うときは言うから・・・ごっちんのこと嫌いにならないでね」
「は、はぁ・・・」
亜弥ちゃんはまだ眼を白黒させて私を見ている。
ほんとに演技が上手だね。感心しちゃうよ。
「あのーなにかー勘違いしてますか?」
「別にしてないよ」
だって、勘違いのしようがないもん。
ごっちんがあのお店で指輪を買ったことは事実だし。
「あのー、本当に勘違いしてませんよねー?」
「してないよ。だから・・・亜弥ちゃんも私に気兼ねなくごっちんと付き合っていいからね」
自分で言った言葉にこらえていた涙が零れ落ちた。
- 204 名前:ああ、勘違い 投稿日:2002年10月09日(水)10時02分12秒
「い、石川さん!?ちょっと、大丈夫ですかー?」
亜弥ちゃんが私に駆け寄って顔を覗き込む。
武士に情けはいらないよ。私は、顔を逸らす。
「あの、さっき後藤さんとあたしが付き合うとかどうとか言ってましたけど・・・それ誤解ですよ」
「誤解じゃないよ、だって、私みたもん。二人が原宿で」
「ああ、あれは・・・なんだ、そのことなんですかー」
亜弥ちゃんが笑う。
そのことって、なに?
なんで一人で納得してるの?
「それなら、今日ちゃんと後藤さんと話してみたらいいですよー。怒って帰っちゃったりしたらダメですよー」
亜弥ちゃんは、説得するためなのかなんなのか意味なく../を私の目の前でしながら
そう言うとその場を立ち去ってしまった。
取り残された私は・・・・・・どういうこと?と頭をひねった。
誤解?
でも、指輪は亜弥ちゃんが持ってて・・・・・・・・・
あれ?
さっき指になんにもなかったよね。
じゃぁ、ごっちんは亜弥ちゃんに指輪をあげてないの?
ううん、でも、収録中だから指輪はずしてたのかも。
よくあるもんね、そういうこと。
じゃぁ、誤解ってなんなの?
- 205 名前:ああ、勘違い 投稿日:2002年10月09日(水)21時59分23秒
その日、ごっちんの仕事が終わるまでの時間を私はかなり鬱々とした気分で過ごした。
こんな日に限って、夕方からオフだったりするんだから。考えなくてもいいことまで考えてしまう。
家のベッドで寝転がっているとチャイムがなった。
外にはごっちんが立っている。
「梨華ちゃん?」
のぞき穴から覗くと仕事が終わってすぐに来てくれたのか
ごっちんはまだしっかりとメイクをしたままだ。
キレイだな〜
・・・なんて見とれている場合じゃなかった。
「なんで来るの?ごっちんは、私のこと好きじゃなくなったくせに」
ドア越しに叫ぶ。
「ちょっと、なに言ってるの!?」
すぐに返事が返ってきた。
それから、ドアノブをまわすガチャガチャと言う音。
「いいから、開けてよ」
「イヤだ!!ごっちんなんか大嫌い!亜弥ちゃんのところに行っちゃえ!!」
私は、気づかないうちにひどい言葉を口にしていた。
- 206 名前:ああ、勘違い 投稿日:2002年10月09日(水)22時00分34秒
ごっちんが返事をするのにかなり間があった。
「・・・・・・・・・・分かった」
小さな声が聞こえて遠ざかる足音。
ごっちんが行ってしまう。
そう考えて私は、ひどく怖くなった。
ごっちん・・・ごっちん、待って。
ごっちんのこと嫌いじゃないよ!嘘!ホントは大好きなのに!!
もう遅いのかな、もう戻ってきてくれないのかな。
不安にかられて私はドアを開けた。
「!?」
ドアの前にごっちんが立っていた。
私はポカンとごっちんを見つめた。ごっちんは、ニヤリと笑って言った。
「そう簡単にあたしが引き下がると思った?」
乱暴に私ごと部屋の中に体をねじ込んでくる。
そのまま私はごっちんの体に抱きしめられていた。
- 207 名前:ああ、勘違い 投稿日:2002年10月09日(水)22時02分08秒
「もう梨華ちゃんってホントバカ」
ごっちんが耳元で囁く。
失礼だよ、ごっちん。
っていうか、ここでごっちんを許しちゃったらダメよ、梨華。
「バカって言うほうがバカなんだよ・・・浮気者!」
流されそうになった気持ちを殺してごっちんの体を全力で引き離す。
ごっちんが、驚いたように私を見て、それからこらえきれなかったのかプッと吹き出した。
「な、なにがおかしいの?」
「だってー、浮気者って・・・梨華ちゃん、誤解しすぎだよ〜。あたしは、こんなに梨華ちゃん一筋なのに」
「嘘ばっかり」
私の言葉にごっちんが困ったように頭をポリポリとかいた。
「さっき亜弥ちゃんから聞いたんだけど、あれはさ〜なんていうかちょっと買い物に付き合ってもらっただけで別にぜんぜん梨華ちゃんが思ってるようなことじゃないんだよ」
また言い訳・・・
ごっちんは優しいからなかなか私に別れを言い出せないんだよね。
でも、その優しさは残酷なんだよ。だから、私から言ってあげるよ。
- 208 名前:ああ、勘違い 投稿日:2002年10月09日(水)22時04分02秒
「じゃあ、あの指輪はなに?亜弥ちゃんの指のサイズ見て買ってたじゃん!」
「それは・・・その」
口ごもるごっちん。
ほら、言い訳できない。やっぱりあの指輪は亜弥ちゃんの・・・・・・
「ほら・・・もういいよ。帰って」
私は、ごっちんをドアに押しやる。
その時、ごっちんがポケットから小さな箱を取り出した。
「だから、その梨華ちゃんへのプレゼントだったの・・・」
ごっちんは、ぶっきらぼうな口調で言った。
「え?」
私の?
じゃぁ、なんで亜弥ちゃんの・・・・・・?
私がごっちんを見るとごっちんは照れたように私から目を逸らしながら言った。
「梨華ちゃんの指のサイズがわかんなくて・・・ほら、後藤の指ってけっこうごついじゃん。だから、多分サイズ違うし・・・細そうな人っていったら松浦亜弥ちゃんかなって・・・思って」
そうだったんだ。
全身から一気に力がぬけていく。
- 209 名前:ああ、勘違い 投稿日:2002年10月09日(水)22時05分05秒
「なんで、もっと早く言ってくれなかったの?」
「言おうとしたら梨華ちゃんが勝手に怒って言わせてくれなかったんじゃん」
「・・・・・・そっか・・・ご、ごめんね」
「まぁ、いいけど。それより、ほら指輪つけてみてよ」
ごっちんがニッコリと笑った。
指輪のボックスを開けるとシンプルなシルバーリング。
それは私の指にぴったりフィットした。
「・・・あ、ありがとう」
ごっちんに抱きつく。
ごっちんは顔を真っ赤にしながら「別に・・・」と返事をした。
でも、しっかりと私を抱きしめ返してくれた。
ごっちんの温かさに包まれながら私は気づいた。
私が、亜弥ちゃんに勝ってること。
ううん、亜弥ちゃんだけじゃなくて世界中の誰にも負けないこと。
それは、ごっちんへのこの思い。
Fine
- 210 名前:―――― 投稿日:2002年10月09日(水)22時06分19秒
「ところで、どうして急に指輪なんて?」
「なんとなく。でも、こんなにネガティブ暴走されるって分かっちゃったから、
あたし、おちおち友達と買い物もできないね」
「う・・・だいたい、ごっちんがいきなりそういうことするから悪いんだよ」
「だって、ビックリさせたいじゃん。人生はスリルがないとね」
「スリル?私は、まったり暮らしたいけど」
「あはっ。じゃぁ、ベッドでまったりしよっか?」
「え?ちょっとごっちん、やだーっ!」
Fine
- 211 名前:なちまりっぷ 投稿日:2002年10月09日(水)23時44分26秒
- 孤独な二人でした、すみません。
長編でも見てみたいですね。
今回のネガティブ暴走梨華ちゃんもよかったです。
というわけで、アンケート(笑)のお答えはいつもどおり↑に
- 212 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月10日(木)02時04分30秒
- 甘々と云えば個人的には『オガ紺』ですね。
後は、ハロモニ公認の『なちのの』とかも良いかも。
でも、これって甘々と云うよりはほのぼのですかね?
- 213 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月10日(木)04時58分45秒
- こんなとこがあったんだ。ふらふらたどりつきました。
甘くも切なくもありよかったです。
新参でアンケートに答えると甘いといえばやぐちゅ〜がいいですね。
では、またきます。
- 214 名前:ネクタイ 投稿日:2002年10月10日(木)11時21分58秒
「ハァ・・・」
Musix収録前の楽屋で梨華はネガティブなため息をついた。
今日は、リストランテMの初収録だ。そして、自分はなんと司会進行役。
以前より幾分かトークに自信がついてきたとはいえ、それは内輪の話。
ゲストを交えて上手くまわせるのかを考えると不安が頭を横切る。
「ハァ・・・・・・」
着替えながらもう一度ため息をつく。
「石川?どうしたの?」
それに気づいて矢口が声をかけた。
「え?あ、なんでもありませんよー」
矢口を心配させまいと空元気で答える梨華。矢口は、ほのかに眉を寄せる。
隠しているつもりだろうがなんとなくいつもと様子が違う。
石川のことだからまたネガティブに悩んでいるんだろうな、と容易に想像はついた。
- 215 名前:ネクタイ 投稿日:2002年10月10日(木)11時23分26秒
「あのさー、梨華ちゃん」
自分より身長のある梨華を上目遣いでしっかりと見つめながら勇気付けるように言葉を続ける。
「普通にしてれば大丈夫だからね」
「え?」
梨華は、確信をついた矢口の言葉に一瞬だけ固まり、
ややあって「分かってますよー、チャーミーですから」と
やはり空元気に久しぶりのチャーミーポーズを作った。
変に頑固なところがあるヤツだ、と矢口は小さく嘆息する。
その時、梨華が手に持っていたあるものに気づいた。
「それ、してあげる」
「はい?」
矢口は、梨華の手からそれをもぎ取ると背伸びをして後ろに手を回した。
- 216 名前:ネクタイ 投稿日:2002年10月10日(木)11時24分41秒
「や、矢口さん!?」
梨華が、動揺を含んだ声をあげる。
「どうせ自分で結べないでしょ?」
矢口は、梨華の胸元に手を添えて慣れた様子でそれを絞める。
梨華はそんな矢口を見ながら感心したように言う。
「・・・矢口さん、上手ですね」
「お父さんのよくしてあげてたからね」
「へぇ〜、私はネクタイなんてしめたことないですよ」
「だろうね・・・はい、出来上がり」
「あ、ありがとうございます・・・・・・あの、矢口さん?」
ネクタイをしっかりと締め終えたあともそこから手を離さない矢口に石川は不思議そうに声をかけた。
- 217 名前:ネクタイ 投稿日:2002年10月10日(木)11時25分51秒
「梨華ちゃんはさー、頑張ると空回りしちゃうから気をつけなよっと!」
矢口は、悪戯っ子のような視線を梨華の方に動かして笑った。
梨華のネクタイがぎゅっと締まる。
「ぐ・・・ぐるし・・・」
思わず、声が漏れる。
「喝いれてあげたんだから感謝してよ。じゃ、先行くから」
矢口は、そのまま楽しそうに楽屋から出て行った。
絞められたネクタイをどうにか緩めながら梨華は矢口の出ていったドアに視線を向ける。
「・・・死ぬかと思った〜」
梨華は一人ごち・・・不思議とさきほどまでの不安がなくなっていることに気づいた。
そして、矢口との短いやり取りでこれだけリラックスできる自分に苦笑した。
「石川さん、よろしくお願いします」
「はい、すぐ行きまーす!」
スタッフに呼ばれて梨華は元気よく楽屋をあとにした。
また不安になったら矢口さんにネクタイをしめてもらおう
――そんなことを思いながら
Fine
- 218 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月10日(木)17時16分49秒
- イシヤグいい!!(・∀・ )
そうか、あのネクタイはマリッペがしめてあげてたのか〜
- 219 名前:七誌 投稿日:2002年10月11日(金)10時56分56秒
( ゜皿 ゜)
( ゜皿 ゜)
( ゜皿 ゜)
( ゜皿 ゜)
ノ( ゜皿 ゜)ノ<ジュウ、デン、チュー!
- 220 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月11日(金)13時01分35秒
- Musix?自分のとこは放送されてないYO(T_T)
っつーか、コウシンチュゥかよ(w
- 221 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月12日(土)22時10分49秒
- 充電長いっすね。ってことは、次回からまた(w
- 222 名前:知りたい 投稿日:2002年10月13日(日)10時56分41秒
あさ美ちゃんのことが知りたい。
私のことを知ってほしい。
そんな思いがふくらんで、どうしようもなくて・・・・・・
「ねぇ、あさ美ちゃん、私たちって案外お互いのこと知らなくない?」
私は、久しぶりに二人で局へと向かう途中でそう切り出した。
- 223 名前:知りたい 投稿日:2002年10月13日(日)10時58分08秒
「急にどうしたの?愛ちゃん」
あさ美ちゃんは、突然、そんなことを言い出した私にキョトンと首をかしげた。
「なんとなく・・・あたし、あさ美ちゃんのこと知ってるつもりだったけど案外知らないことのほうが多いのかなって思って」
「・・・・・・そうかな〜?」
「うん」
「・・・う〜ん」
あさ美ちゃんは少し困ったような表情を浮かべ、
それから「じゃぁ、お互い知りたいこと質問しあう?」と聞いてきた。
さすがあさ美ちゃん!
私は、首が痛くなるぐらい強く頷いた。
あさ美ちゃんは、そんな私を見て少し苦笑していた?ような。
ま、気のせいかな。
それより、なに聞こう?
- 224 名前:知りたい 投稿日:2002年10月13日(日)10時59分48秒
「なに知りたいの?」
「え?えっとぉ・・・た、誕生日は?」
咄嗟に口をついて出た質問はもうとっくの昔に知っているものだった。
あさ美ちゃんは「5月7日だよ・・・忘れちゃったの?」と眉を寄せた。
ヤバイ・・・だって、急に降られても私、アドリブ得意じゃないし・・・・・・
「わ、忘れてないよ。ちょっと前フリ」
「ふ〜ん」
「つ、次の質問ね」
一回失敗してしまうとあとは気が楽になるとはよく言うけど、まさにそのとおりだった。
私は、あさ美ちゃんにいろいろな、それこそ大きなことから小さなことまで質問した。
その全てに、あさ美ちゃんは適当な答えなんかじゃなく時間をかけて真剣に答えてくれた。
- 225 名前:知りたい 投稿日:2002年10月13日(日)11時01分15秒
「あー、いっぱい聞いちゃった」
聞くことが思いつかなくなる頃には私はもうかなり満足していた。
「ホントだね〜、答え疲れちゃった」
あさ美ちゃんはそう言いながらもにっこりと笑った。
ん?
そういえば、あさ美ちゃんはなんにも私に質問していないよね?
お互いに知りたいこと質問しあうって言ったのに・・・・・・
もしかして、私が質問しすぎちゃってできなかったのかな?
「あ、あさ美ちゃんは?」
「え?」
「あさ美ちゃんは、私に聞きたいことないの?」
私の問いかけにあさ美ちゃんはしばし考えた仕草を見せる。
それからややあって一言「ないよ」と言い放った。
ガーン!!
私は、あさ美ちゃんのことを知りたいと思ってるのに・・・・・・あさ美ちゃんは、そうじゃない。
知りたいことがないってことは、私ってそんなにあさ美ちゃんから好かれてないのかな?
目の前が真っ暗になっていく・・・・・・
- 226 名前:知りたい 投稿日:2002年10月13日(日)11時03分40秒
「あ、ないっていうのは愛ちゃんのことに興味がないってことじゃないから」
うなだれる私にあさ美ちゃんが慌てた様子でそう付け加えた。
「じゃぁ、なんで?」
「・・・・・・だって、聞かなくても愛ちゃんのいいとこ知ってるし。それに聞きたいことあったらいつでも聞けるから」
いつでも?
それってつまりずっと一緒にいてくれるって・・・ことだよね?
「傍にいるだけで十分だし」
それって私と一緒にいて幸せって・・・ことだよね?
「だから、安心してていいよ」
超マイペースなあさ美ちゃんにしては珍しく強く私を安心させる言葉。
嬉しくて自然と笑顔が浮かんでくる。あさ美ちゃんも私を見て微笑む。
その笑顔に、自分の考えてたことが馬鹿げたことだってことに私は気づいた。
相手の全てを知ることって難しいしきっと不可能。
だからってそれは気持ちが足りないってワケじゃないんだよね。
大好きな人と傍にいられたら、傍にいてほしいと思われてたらそれだけでいいんだ。
私はあさ美ちゃんと手を握って歩いた。
ゆっくりゆっくり私たちのペースで――
Fine
- 227 名前:――――― 投稿日:2002年10月13日(日)22時59分51秒
「ま、二人で迎えるこんな朝もいいかもね」
そう言って、圭ちゃんは笑った。
- 228 名前:いつかみた朝日 投稿日:2002年10月13日(日)23時03分42秒
その日、疲れているはずなのにあたしはなかなか寝付けなくてベッドから体を起こした。
外からは波の音が規則正しく聞こえてくる。
寝ることを諦めてあたしは隣で寝ている圭ちゃんを起こさないように
そっと窓を開けてベランダに向かった。
奇妙なほど綺麗な満月と寄せては返す波の音。
幻想的な光景。
あたしは、しばしそれに見とれていた。
「どうしたの、真里?」
不意に後ろから声がした。
いきなりの声に驚いて振り返ると少し眠そうな圭ちゃんが立っていた。
「え?いや〜、なんか寝つけなくて」
「ふーん」
そう言いながら圭ちゃんはなぜか上着を羽織りだした。
「なにしてんの?」
「どうせなら外、行かない?」
圭ちゃんの誘いを断る理由はなくて、「和田さんにばれたら怒られるよね」なんていいながら、あたしたちは二人でホテルを抜け出した。
- 229 名前:いつかみた朝日 投稿日:2002年10月13日(日)23時04分53秒
ベランダから見るより、満月も海も近くに感じる。
あたしたちは、堤防に腰掛けてぼんやりとそれを眺めていた。
しばらくして圭ちゃんが口を開く。
「なんか、周りがめまぐるしくてたまにワケわかんなくなるでしょ」
「あー、あるねー」
「でも、こうしてるとそういうの忘れられる気しない?」
その通りだった。あたしは、頷く。
圭ちゃんは、満足そうに笑った。
もしかして、圭ちゃんってあたしの心を柔らかくしようと外に誘ってくれたのかな。
長い間、こうしていると普通に寝ているよりも疲れなんて取れるような気がした。
- 230 名前:いつかみた朝日 投稿日:2002年10月13日(日)23時06分04秒
「あ、あれって朝日じゃない?」
圭ちゃんが海の向こうを指差す。
「ウソ、マジで?」
圭ちゃんの指が指し示すその先に、いつのまにか太陽が昇ってきていて暗かった海が明るく輝き始める。
「ホントだーキレイだね」
それから、あたしたちは朝日が昇るまでそこにいて・・・・・・
「ま、二人で迎えるこんな朝もいいかもね」
圭ちゃんが言った。
「そうだね」
今度、眠れないときまた圭ちゃんを起こそう
あたしは、そう思った。
- 231 名前:いつかみた朝日 投稿日:2002年10月13日(日)23時07分51秒
「あれから、4年・・・か」
あの時のような満月。
でも、隣には誰もいない。隣には圭ちゃんはいない。
いつまでも一緒にいられると思っていたのに――
切なさに胸が痛む。
ただ、あの時――圭ちゃんが教えてくれたことだけは忘れないように・・・
どれだけ疲れていても眠れぬ夜にはこうして満月を見上げていよう。
こうして朝日を迎えていこう。
きっと圭ちゃんも同じ空を見ているはずだから・・・・・・
Fine
- 232 名前:七誌 投稿日:2002年10月13日(日)23時10分36秒
- 明日でこのスレ一ヶ月か。早いもんだ。
- 233 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月14日(月)12時09分03秒
- 一ヶ月おめっす。交信速度の早さにはいつも尊敬です。
これからも、がんがってください
- 234 名前:頼って欲しい 投稿日:2002年10月16日(水)00時00分44秒
今日は、久しぶりに二人で出かける約束をしていた。
というか、後藤から電話があっていきなり時間と場所を指定されたんだけど・・・・・・後藤はまだ来ない。
案の定というか、なんというか――自分がしていた時間ぐらいは守りなさいよ。
でも、電話の後藤の声、やけにはしゃいでたわね。
なにかいいことでもあったのかしら?
私がそんなことを考えていると「けーちゃん、お待たせ〜」と
耳によく馴染んだ声が聞こえた。振り返らなくても分かる。
「遅いわよ」
「ゴメンね〜ちょっと寝ちゃったら乗り過ごしちゃって」
後藤は私の元まで来ると両手を顔の前に合わせた。
走ってきたんだろう。息が荒れている。
疲れてるんだからわざわざ走ってこなくてもいいのに、私はあんたを待つのに慣れてるんだから。
- 235 名前:頼って欲しい 投稿日:2002年10月16日(水)00時02分07秒
「まぁ、いいけど」
後藤の顔がホッとしたように緩む。
「それで、今日はどこ行くの?あんた、昨日なんにも言わないからずっと考えちゃったわよ」
「あは、それじゃ、行こっか」
後藤は、なにかを企んでいるかのような――少なくとも私にはそう見えた――笑顔を
浮かべて私の腕を引っ張った。
なに企んでるのか知らないけど・・・・・・昨日のはしゃぎっぷりから後藤にとっては
すごく楽しいことなんだろうな、と私は予想して引っ張られるままに後藤についていった。
- 236 名前:頼って欲しい 投稿日:2002年10月16日(水)00時03分11秒
「はぁ!?マジで?」
「マジで」
後藤が嬉々として連れてきてくれたのは遊園地。
それも、ファンタジックなオカムーランドとかではない。
本当にありきたりな遊園地。
「・・・なんで遊園地?」
「たまにはこういうレトロなとこもいいかな〜みたいな」
私の問いに後藤の目が小躍りをするように揺らめく。
たった今考えた言い訳なんだろう。
彼女がなにを考えているのかまだ分からないけど、とりあえず騙されてあげよう。
入場券を買って中に入る。
チラホラと人影は見られるが、どの乗り物でも待つことはなさそうだ。
「人少ないわねー」
「平日だしね〜」
「で、なにに乗りたいの?」
私は、後藤に訊いた。
「まずはね〜」
後藤はそう言って、そのまま私を連れて行く。
- 237 名前:頼って欲しい 投稿日:2002年10月16日(水)00時05分20秒
「・・・・・・これ?」
「そう、これ」
「これってお化け屋敷でしょ」
「そう、お化け屋敷」
あたしたちの目の前には大きな学校を模した建物。
古びた感じがけっこう怖さを演出している。
けっこうというか、かなり、ものすごく、超超超・・・怖いかも。
某大変でしたという番組以来かも・・・・・・
後藤もあれ見たはずだから私がこういうの嫌いって知ってるはずなんだけどなー。
「私、やだよー」
とりあえず、言ってみる。
後藤は、ニヤリとわざとらしく笑って「けーちゃん、怖いの〜?」と私を見つめる。白々しいわねー、まったく。
「怖いわよ」
私は、素直に答えた。
「でしょ〜じゃぁ・・・って、今なんて言った?」
後藤は、満足げに頷いたかと思うと、驚きの声を上げた。
どうやら、私がここで怖くないわよと強がりを言うかとでも思っていたらしい。
残念だけど、私はそこまでガキじゃないわよ。あんたじゃあるまいし。
そう心の中で呟き後藤のたくらみを阻止する言葉を告げる。
- 238 名前:頼って欲しい 投稿日:2002年10月16日(水)00時07分15秒
「怖いからイヤだって言ったのよ」
後藤が固まる。
なんだかかわいそうだけどこれだけは譲れないのも事実。
「ほら、他のならなんでもいいからこれはやめよ」
私は、固まったままの後藤にそう声をかけながらお化け屋敷の前から離れようと
じりじりとあとずさった。その瞬間、後藤が私の腕をすばやく掴む。
驚いて手を引きかけ、次の後藤の行動に唖然となってそれを忘れる。
「ちょっと、後藤!あんたなに子供みたいなことしてんのよ」
後藤は、私の腕を掴んだまま駄々っ子のようにしゃがみこんでいたのだ。
- 239 名前:頼って欲しい 投稿日:2002年10月16日(水)00時08分41秒
「イヤだー、これがいいんだってば〜」
そこまでしてお化け屋敷に入りたいわけ?
本当に今日の後藤はなにを考えているのか分からない。
こんな後藤を見るのは多分、私だけなんだろうな。
ほんとに仕方ないヤツ・・・・・・
私は呆れかえってため息をついた。
「・・・もう分かったわよ、はいるわよ、はいればいいんでしょ!」
私の声に後藤が顔を上げた。目がホント?と訴えている。
それに私はうなづく。すると、後藤はにっこりと笑って立ち上がった。
「HO!ほら行こうぜ!!そうだ、けーちゃん行こうぜ!!」
「あんた、今日テンション変ね」
私は、覚悟を決めてお化け屋敷の入り口をくぐった。
- 240 名前:頼って欲しい 投稿日:2002年10月16日(水)00時10分05秒
中は、当たり前だけど暗くて不気味だ。目が慣れるのに少し時間がかかる。
「うわぁ〜」
思わずその不気味さに声を漏らす。
「なに、けーちゃん、怖いの?」
後藤がなにかを期待しているようにそう口にする。
「いや、よくできてるな〜って思ったのよ」
「怖かったら腕くんでもいいよ」
ニヤニヤしながら私の顔を覗き込む。
それが狙いだったのね。
まったく・・・・・・こんなとこで腕なんて組むわけないでしょ、この私が。
「いいわよ、恥ずかしい」
「ふ〜ん、じゃ、進むよ〜」
さほど、がっかりした様子もない後藤はスタスタと歩き出した。
置いていかれまいとその袖をちゃっかり掴む。
気づいているのか気づいていないのか後藤はなにも言わなかった。
- 241 名前:頼って欲しい 投稿日:2002年10月16日(水)00時11分18秒
しばらく進むとスモークが立ち込めてさらに視界が悪くなる。
「もぅ・・・」
「なに、けーちゃん、怖い?」
「思ったほどじゃないわよ・・・」
「そうだね〜なんにもでてこないし」
と、言いながらも後藤の体にしがみつくようにして歩く。
その途端、急に学校の怪談で定番の小さな女の子が出てきた。
なんてこの時に考える余裕はなかったけど・・・・・・
「いやーっ!!!なんか来たぁっ!!!」
私は叫んだ。
後藤の腕を引っ張って懸命に走った。
その途中でいろいろ怖そうな物体Xが出てきてたけどそれを見ないようにしてとにかく走った。
- 242 名前:頼って欲しい 投稿日:2002年10月16日(水)00時11分57秒
「ちょ、ちょっとけーちゃん!とまってよ〜」
後藤の間抜けな声に我に返って私は立ち止まる。
かなり息が上がっている。
「・・・・・・ちょっとそこで休も」
後藤は、そう言うと私の手をしっかりと握って端のほうに腰をかける。
「ハァ・・・もうイヤ。早く出たい」
「けーちゃん、怖い?」
この期に及んでまだそんなことを聞いてくるわけ?
私は、当たり前のことを聞いてくる後藤に少し腹を立てて強く答えた。
「怖いに決まってるじゃない!」
すると、後藤はそれを待っていたかのように言った。
「だったら、けーちゃんが怖くないようにちゃんと抱きしめてあげる」
言うなり、後藤は私を強く抱きしめた。
- 243 名前:頼って欲しい 投稿日:2002年10月16日(水)00時13分24秒
「実はさ〜、ちょっとこれが狙いだったんだよね」
耳元で後藤が囁く。
「どういう意味?」
「けーちゃんって普段あんまりあたしに頼ってくれないじゃん。
頼りないからしょうがないけど、たまには頼ってほしくて。
だって、やっぱりけーちゃんってあたしにとって大切な存在だからね〜」
「後藤・・・・・・」
その声は、今までのふにゃふにゃとした声じゃなくて――
頼りがいがないヤツだとばかり思ってたけど・・・・・・
いつのまにか少しだけ頼れるヤツになっていたらしい。
私は、ここが暗がりでよかったと思った。
だって、私の頬が自分には似合わないほど赤くなってることが分かるから。
私は、自分を抱きしめてくれる後藤の体にしっかりと抱きついた。
これからは、少しずつあんたのこと頼りにするわ
Fine
- 244 名前:―――― 投稿日:2002年10月16日(水)00時14分43秒
-
「ふ〜、疲れたわね〜」
「けーちゃんが走るからだよ。それより、次なに乗る?フリーパスだからいろいろ・・・・・・ん?」
後藤がバッグの中を見ながらそう言いかけて止まる。
「どうかした?」
「あれ?んぁ?」
私の声が聞こえていないのか後藤は自分のポケットを探っている。
全てのポケットをチェックし終わると大きなため息をついてうつむいた。
「なに、どうしたのよ?」
「後藤は・・・もう生きる気力をなくしました」
「はぁ?いきなりなに言ってんの!?」
後藤は、答えない。
ちょっと待ってよ・・・・・・私は、後藤がなにを探していたのかを考える。
話の流れからして考えられるのは一つ。
「あんた、まさかフリーパスなくしたんじゃないでしょうね!!」
私の言葉にびくりと後藤が反応する。
「だって〜けーちゃんがいきなり走るから悪いんじゃん。っていうか、けーちゃんに渡したよ〜多分」
後藤さん・・・・・・責任転嫁ですか?
やっぱりこいつに頼るのはまだまだ先の話のようだ。
Fine
- 245 名前:甘い罠 投稿日:2002年10月16日(水)23時17分27秒
ゆっくりと海面へと浮き上がるように意識はぼんやりとした夢の中から浮き上がった。
薄く開けた視界には、朝のまぶしい日差し。
そして、自分の腰に抱きついて眠っている愛しい少女。
小さく嘆息して、ベッドサイドに置いてある時計に視線を動かす。
時計の針は、そろそろ身支度をはじめなければいけない時刻を示そうとしていた。
そっと起こさないように腰に巻きつけられた腕をはがして起き上がる。
「ん・・・保田さん?」
背後から、まだ寝ぼけた声が自分の名前を呼んだ。
そのあまりに眠そうな声に小さく笑って私は彼女の方に向き直る。
- 246 名前:甘い罠 投稿日:2002年10月16日(水)23時18分15秒
「・・・おはようございます」
「おはよう」
そう言って、頬に手を置いて軽く口を重ねる。
目覚ましのキス。
「そろそろ起きなさいよ」
それだけ言って、私はベッドから離れようとした。
その袖をなにかが引っ張る。
彼女の細くて女性らしいキレイな指。彼女は、私を上目遣いで見つめていた。
「・・・もう少し・・・」
「え?」
「もう少しだけ・・・一緒にいてください・・・・・・」
眠たげな声が懇願する。
瞳を閉じたままの彼女の髪をそっと撫でつけながらゆっくりと抱き寄せる。
- 247 名前:甘い罠 投稿日:2002年10月16日(水)23時18分55秒
甘い甘いあなたの唇。
甘い甘いあなたの声。
朝特有の気だるさとあなたの甘い罠にまんまと嵌りながら
私は、マネージャーに遅刻を叱られる自分たちの姿を想像して微苦笑した。
それでも・・・・・・たまにはこういう朝もいいかもね
Fine
- 248 名前:思い出 投稿日:2002年10月17日(木)23時07分30秒
「梨華ちゃん!!」
「え?」
振り向いた途端に軽くキスされる。
「もう!ごっちん」
私の声にえへへっと悪戯っ子のように舌を出すごっちん。
私は、わざと頬を膨らます。
「ほんとに人の隙をつくのが上手いんだから」
「え〜?そんなことないよ〜」
そんなことあるから言ってるんだけど自覚ないのかな、ごっちんって。
あ、なんかごっちんとはじめてキスしたときのこと思い出しちゃった・・・
あの時は、ごっちんとこんな風になれるなんて思ってなかったな〜
もちろん好きだったんだけどね・・・・・・
- 249 名前:思い出 投稿日:2002年10月17日(木)23時08分34秒
私、ごっちんに嫌われているのかな?
そう思ったのは、ごっちんがふとした拍子にあたしに投げかける鋭い視線だったり、
二人っきりでいるときの沈黙だったり、いろいろな理由があった。
ほら、今だって・・・・・
今、楽屋には私とごっちんしかいない。
ソファに座っているごっちんを鏡越しに見る。
目が合おうとした瞬間にそらされる。やっぱり嫌われてる。
私、なにか悪いことしたのかな?ごっちんを怒らせるようなことしたのかな?
どんどんどんどん二人だけの空間が重たいものに変わっていく。
当分、誰も戻ってきそうにないしごっちんは相変わらず不機嫌そうだし・・・・・・
私が外に出たほうがいいかな。そう考えて、立ち上がる。
- 250 名前:思い出 投稿日:2002年10月17日(木)23時10分09秒
「あ」
ごっちんの小さな呟きが聞こえた。
今のは、私に向けての言葉?
私は、振り返る。
「どうかした?」
「あ、ううん・・・・・・どこ行くの?」
「ちょっと外の空気吸いに・・・・・・」
「年寄り臭いね」
「あはは・・・」
勘違いか。
あんまり話もしたくなさそうだし。
ドアノブに手をかける。
その瞬間、グィッともう一方の腕を引っ張られて私は後ろに倒れそうになる。
「キャッ!」
一瞬、なにが起きたのか分からなかった。
ただ分かったのは、私はごっちんに抱きしめられていたこと。
でも、なんで?
- 251 名前:思い出 投稿日:2002年10月17日(木)23時11分14秒
- 「ご、ご、ごっちん!?」
「梨華ちゃん、行かないで」
ごっちんが耳元で囁く。
私は、もうパニック状態で。
ごっちんがなにを言っているのかも上手く理解できない。
どういうこと?
なんでごっちんは私を抱きしめてるの?
私のことが嫌いなんじゃなかったの?
「ごめんね、変な態度とって」
「え?」
「好きなの、梨華ちゃんのことが」
私は、耳を疑った。
ごっちんが私のことを好き?
そういったよね、今。
つまり、それはあれでどれがこういうこと?
驚いてごっちんを見上げる。
ごっちんの顔は普段の冷静さからは想像できないほど赤く染まっていた。
私、信じていいのかな?
- 252 名前:思い出 投稿日:2002年10月17日(木)23時12分01秒
「ごっちん・・・・・・」
「め、迷惑だった?でも、あたし、梨華ちゃんのこと諦めないから」
「・・・じゃない」
「え?」
「迷惑じゃないよ」
私の言葉にごっちんはこっちが照れちゃうほどかわいらしい笑顔を浮かべた。
私もそれに微笑み返す。
その瞬間に不意打ちのキス。
唇が離れるとごっちんはやっぱりかわいらしい笑顔であたしを見つめた。
大事なファーストキスだったけど・・・・・・ごっちんのこんな表情が私だけのものなんだよ。
それってある意味、すごいよね。
だから、いいんだ。
- 253 名前:思い出 投稿日:2002年10月17日(木)23時13分05秒
「梨華ちゃん、梨華ちゃんってば〜」
「え?」
ごっちんが変な顔で私を見てる。
やばい、思い出し笑いなんてしちゃってたみたい。
「なんで笑ってるの?」
「別になんでもないよ」
「な〜に〜?気になるじゃん」
ごっちんが私をつついてくる。
「二人ともラブラブなのはいいけど、そろそろみんな戻ってくるわよ」
不意にドアのほうから声がした。
「けーちゃん!?」
「保田さん!?」
同時にその声の主に驚きの声を上げる。
この人も人の隙をつくのがうまいんだった。
「ほら、後藤はそろそろ収録でしょ?のんびりしてないでキリキリしなさいよ」
「は〜い。それじゃ、梨華ちゃん、またね」
ごっちんが立ち上がる。
「うん」
私も立ち上がって見送ろうとした。
その拍子に・・・・・・もう言わなくても分かるよね。
Fine
- 254 名前:―――― 投稿日:2002年10月17日(木)23時14分10秒
「だから、ラブラブしてんじゃないわよ!」
「はいはい。けーちゃんにもしてあげようか」
保田さんがピタッと固まった。
「え、ごっちん!?」
「あはっ冗談だよ〜じゃーねー」
ごっちんは私にウィンクすると楽屋から出ていった。
そのすぐあとで固まっていた保田さんがこう呟いたのを私は聞き逃さなかった。
「い、いいわよ・・・」
保田さん・・・・・・冗談だってこと聞こえてましたか?
Fine
- 255 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月18日(金)20時03分05秒
- 思い出イイですね。
初期当時と最近のいしごま見てたら
この短編はリアルじゃないかと(笑
最後の保田もらしくていいです。
- 256 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月19日(土)01時53分54秒
- 甘いのサイコー!
あれ?予告の高紺は(w
- 257 名前:お弁当 投稿日:2002年10月19日(土)22時30分06秒
みんなで一緒に食べるお弁当。
すごく楽しいし一人で食べるよりもおいしく感じる。
でもね、それが二人っきりだったら
大好きな人と二人っきりだったら、もっともっとおいしく感じるよ・・・ね
雲ひとつない真っ青な空。
ポカポカと気持ちのいい秋の日差しが屋上を照らし出している
「いい天気だね〜」
隣で目を細めてあさ美ちゃんが言う。
私たちは、ダンスレッスンの休憩時間に屋上でお弁当を食べようとけっこう前に約束をしていた。
それを急に思い出したのかなんなのかあさ美ちゃんが私を誘ってくれたのだ。
それもなんと手作り。
これは、ちょっと期待してもいいのかな?なんて思ったりもして。
ま、あさ美ちゃんのことだから微妙なんだけどね・・・
- 258 名前:お弁当 投稿日:2002年10月19日(土)22時31分46秒
「ここで食べよ」
「え、うん」
二人で並んで座る。
あさ美ちゃんがお弁当箱のふたを開けた。
「うわーっ!」
私は、思わず感嘆の声を漏らした。
それは、おいしそうっていうのもあるんだけど・・・
「今日はね、この間、愛ちゃんがかぼちゃについての考察を聞きたいって言ってたからかぼちゃ尽くしなんだよ」
そう、お弁当箱の中身は。
かぼちゃご飯?かぼちゃの茶巾包み、かぼちゃのてんぷら、かぼちゃの煮物、かぼちゃの・・・・・・
ありとあらゆるかぼちゃ料理。
っていうか、あさ美ちゃんかなりピントがずれてるよ。
私が言ったのはまこっちゃんとあさ美ちゃんが・・・・・・まぁ、いいや。
今日は、二人っきりでお弁当なんだしね。うん。
それから、たわいもなくもない日本のかぼちゃと西洋のかぼちゃの味の違いについて熱心に語ってくれた。
こんなこと話している間にも食事はすすんであっという間に食後の一休み。
二人でボケーッと空見ちゃったりして。
平凡で幸せな時間。
- 259 名前:お弁当 投稿日:2002年10月19日(土)22時33分51秒
「日向ぼっこっていいね」
「そうだね〜でも」
そう言って、あさ美ちゃんは・・・
え?
なにするの!?
「こうしたほうが気持ちいいかも」
「ちょっとあさ美ちゃん!?」
「膝枕っていいね〜」
いいねーじゃなくてものすごく恥ずかしい。
「やだ、やめてよ、あさ美ちゃん。誰か来たらどうするの?」
「大丈夫大丈夫」
そんな笑顔返されたら・・・断る気がなくなってくる。
で、でもダメ。
恥ずかしいものは恥ずかしいし、
なによりあさ美ちゃんの気持ちが分からないのにこんな甘やかしは私のプライドが許さない。
ごめんね、あさ美ちゃん。
「とぅっ!!」
私は、心を鬼にして膝を勢いよくスライドさせる。
その拍子にあさ美ちゃんの頭が床にゴンッと音を立ててぶつかった。
かなり痛そうな音。
- 260 名前:お弁当 投稿日:2002年10月19日(土)22時34分57秒
「いった〜い・・・・・・」
涙目で私を見つめるあさ美ちゃん。
怒ってるし泣きそうだし・・・かなり罪悪感が・・・・・・とりあえず、下手にでて謝ろう。
「ご、ごめん・・・ただ、あの膝枕がね、恥ずかしかったっていうかごめんね、許して」
「ヤダ」
「え!?」
あさ美ちゃんがムクッと起き上がる。
そして、私の隣になぜかあぐらをかいて座る。
あんまり似合わないな〜、あぐら・・・。
「さ、愛ちゃん」
「え?」
ポンポンと膝を叩いて両手を広げるあさ美ちゃん。
いったい、なにがしたいの?
「私の膝の上に座っていいよ」
あさ美ちゃん、また果てしなく勘違いしてる?
もしかして、私が膝枕されたいから自分のこと落としたと思ってる?
ほんとに違うからそんな目で見ないでよ
- 261 名前:お弁当 投稿日:2002年10月19日(土)22時36分33秒
「あー、頭が痛い」
ぐっ卑怯な。
そんなさらに涙潤ませて・・・・・確かに私が悪いんだし自業自得なんだけど、
でも、あさ美ちゃんが膝枕なんてしなかったらこんなことにならなかったわけで・・・
だけど・・・・・・
「これでいい?」
私は、覚悟を決めてあさ美ちゃんの膝の上に座って背中を預けた。
「んー」
あさ美ちゃんがまだ不満そうな声を出す。
「なに?」
「できたらこう向かい合うように」
「え?」
振り向いた拍子に体ごとあさ美ちゃんの力で反転させられる。
こんな細い腕のどこにそんな力があるのかな〜
っていうか、これって・・・なんか体勢的に怪しい?よね
- 262 名前:お弁当 投稿日:2002年10月19日(土)22時40分08秒
目の前にあさ美ちゃんの顔。
あさ美ちゃんが、顔を赤らめて言った。
「さすがに恥ずかしいね」
いまさらなにを・・・
「じゃぁ、もういいよね」
「うん」
「・・・・・・・・・・・・あの、あさ美ちゃん」
「ん?」
「その腕をほどしてくれないと・・・・・・」
もういいと言いながらもあさ美ちゃんの腕は私の腰に巻きついたままだ。
あさ美ちゃんは、一瞬なにかを考えるような顔をした。
それから、言った。
「・・・・・・愛ちゃん、私のこと好き?」
「はぁ!?」
いきなり聞かれて私の声は裏返る。
あさ美ちゃんは、真剣な顔をしている。
「今から、愛ちゃんにしたいことがあるの。でも、愛ちゃんが私のこと嫌ってたらできないから」
突然そんなこと言われても・・・・・・
っていうか、いったいなにがしたいの?
- 263 名前:お弁当 投稿日:2002年10月19日(土)22時41分34秒
「好き?嫌い?」
「そ、そりゃ、嫌いじゃないけど・・・」
「嫌いじゃない?ってことは、好きでもない?」
あさ美ちゃんの顔が悲しそうに曇る。
もう・・・分かるでしょう。
ほんとに鈍いな〜
「す、好きだよ、好きだけど・・・」
いいかけた私の唇はあさ美ちゃんの唇に閉じられた。
時間にしてほんの数秒。でも、それはすごく長い時間のように感じられた。
ゆっくりと唇が離される。抱きしめられていた腕の力が緩められる。
私は、驚いたまま動けずに口をパクパクした。
あさ美ちゃんが首をかしげる。
それから、心配そうに私に言った。
「いやだった?」
私は、首をぶるぶると振る。
「よかった」
あさ美ちゃんが笑った。
でも、なんで?
あさ美ちゃん、なんでこんなことしたの?
- 264 名前:お弁当 投稿日:2002年10月19日(土)22時43分28秒
「それじゃ、そろそろスタジオにもどろっか」
私を立たせながらあさ美ちゃんが立ち上がる。
その服の袖を掴む。きょとんとした顔であさ美ちゃんが振り返った。
「な、なんでき、き、キスなんて・・・?」
「え〜?」
あさ美ちゃんの顔が急速に赤くなっていく。
しばらくして「だって、愛ちゃんが鈍いから・・・」と言った。
私が・・・鈍い?
それはこっちのセリフだよ。
私は言いかけた言葉を飲み込んでそれからようやくあさ美ちゃんと私がずっと同じ気持ちでいたことに気がついた。
なんだ・・・
二人してお互いのこと鈍いって思ってたら・・・進むわけないよね。
「ほら、行こ」
あさ美ちゃんが私の手を握る。
その手をぎゅっと握り返しながら言った。
「また二人でお弁当食べようね」
私たちが約束する日はきっとお弁当日和。
二人で一緒に食べて・・・
今度は、ちゃんと膝枕してあげよう。
Fine
- 265 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月20日(日)09時27分25秒
- 高紺えがった〜。
- 266 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月21日(月)00時19分35秒
- 高紺すっげーよかったっす!!
ほのぼの最高w
また機会があったら書いて欲しいです
- 267 名前:セクシー8 投稿日:2002年10月22日(火)23時17分37秒
「幸せですか〜今、この場所で」
あ、矢口さん、幸せですか?歌ってる。
セクシーなところは、くぅちぃって笑ってたけど、矢口さんの唇ってほんとにセクシーなんだよね。
ぽよぽよってしててぷるんぷるんって感じで・・・・・・
私もアイボンみたいに遊びでキスできたらいいのにな〜。
矢口さん、安倍さんにはキスしていいとか言うのに私には言ってくれないし
・・・言ってくれたら、もう張り切っちゃう!頑張っちゃうなのにな
「キスしてくれまーすか〜♪」
「え、はいっ!」
「Wow do・・・は?ちょ、なに?石川」
な、なんだ歌詞だったんだ・・・・・・ビックリした。
矢口さんが私にそんなこと言うわけないよね。
「あ、別になんでもないですよ〜」
「変なタイミングで返事すんなよー」
「だって、矢口さんがタイミングよく変なこと言うから・・・」
「はぁ!?」
・・・あ、私バカしちゃった・・・・・・タイミングよくってどんなタイミングだよ!
梨華の初一人ツッコミ!・・・なんてしてる場合じゃないよ。
あー、ほら矢口さん、黙ったまま私のこと睨んでる。
どうしよう・・・・・・そんな目で見ないでください。
- 268 名前:セクシー8 投稿日:2002年10月22日(火)23時18分46秒
「はぁ・・・・・・」
しかも、ため息までついてる。
「キスしてくれますかー♪」
「え?」
「ほら?返事は?」
え?え?え?
「は、はぃっ!」
「声裏返すなよー恥ずかしいなー」
「す、すみません。も、もう一回言ってください」
「はぁ!?何回言わせる気?」
「えっとぉ」
ん〜、いっぱい言ってほしいから・・・あと、100回ぐらいかな〜
でも、100回じゃ足りないかもしれないから保険でもう100回・・・
200回も矢口さんおんなじとこ歌ってくれるのかな〜
「あのね、梨華ちゃん・・・そんな真剣に考えないでよ」
「あ、はい」
「これ最後ね。キスしてくれますか〜♪」
「は、はいっ!!」
私の返事に矢口さんは微笑んで・・・・・・私は、念願のくぅちぃとキスをした。
Fine
- 269 名前:――― 投稿日:2002年10月22日(火)23時20分27秒
「今度、いつ言ってくれますか〜?」
「はぁ!?知らないよ、そんなの」
「えぇ〜、今言ってくださいよ〜」
「絶対いや」
「矢口さ〜ん」
「キショイ声だすな!石川、キショキショキショ!!」
Fine
- 270 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月24日(木)17時11分04秒
- いしやぐ(・∀・)イイ!!
この間のMUSIX!久しぶりに見て萌えた自分でしたw
- 271 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月24日(木)19時36分33秒
- 高紺、イシヤグよかったっす!
リクしちゃっていいですか。(やっちゃった)
- 272 名前:痴話げんか 投稿日:2002年10月25日(金)23時17分59秒
「よっすぃ〜のバカー!!」
「それは、こっちのセリフだよ!!」
ダンスレッスンの休憩時間。
和やかだった空間は突如響きわったその声に緊張感を帯び始める。
――いったい、なにが起きたんだ?
その場にいた少女たちの誰もがそう思って二人に視線を向けた。
ともかく仲がよい。
イチャイチャと周囲を巻き込んで二人だけの世界を作り出す、そんな二人が突然ケンカを始めたら誰だって驚くだろう。
「ねぇ、圭ちゃん、二人ともどうしたの?」
収録で少し遅れてスタジオに入った瞬間に聞こえたその声に矢口は
一番近くにいた保田に小声で尋ねた。
しかし、保田にもそんなことは分かるはずもなく
「知らないわよ。あの二人、さっきまで仲良く喋ってたのよ」と首をひねるしかなかった。
「ついにムースポッキー解散やな」
「あんまり活動もしてなかったれすけどね」
辻と加護にいたってはそんな不吉なことを言い出す始末。
その場にいた誰もが二人のケンカの理由が分からなかった。
しかし、こんな状態をほうっておくわけにもいかない。
- 273 名前:痴話げんか 投稿日:2002年10月25日(金)23時19分51秒
「ねぇ、梨華ちゃん」
「ちょっとよっすぃ〜」
矢口と保田が同時に二人の名前を呼んだ。
二人は、反射的に呼ばれた方向に振り向きかけ――お互いの目が合いそうになって慌ててプイッと顔を逸らした。
かなりの重症みたいだ。
矢口は、大きくため息をついた。
それから、保田に耳打ちしてけんかの理由を別の場所で聞きだそうと提案した。
保田は頷き「よっすぃー、ちょっと来て」と吉澤を、
矢口は「石川―!!」と石川を時間差攻撃エークイックで呼び出した。
その連係プレイになぜかついていく辻、加護。
そして、静かに見守っていたが・・・内心、そぅとぅ気になっていたのかさらにそのあとをついていく五期メンの四人。
途中で別々の部屋に入っていた二組を二手に分かれて
ドアの前で聞き耳を立てる一種異様な光景が廊下では展開されていた。
- 274 名前:痴話げんか 投稿日:2002年10月25日(金)23時20分55秒
「それで、どうしたのよっすぃ〜とケンカなんて珍しい」
いつもからかいの種にしている矢口の口調が今日はやけに優しい。
その気遣いが梨華には嬉しかった。
「あたしでよければ相談のってあげるからさ」
「・・・ポチ」
「そこでポチ言うか!?このアゴンが!!」
「す、すみません。矢口さん」
「で、なに?どうしたの?」
矢口の優しかった口調はあっさりとイライラモードに変わっていた。
そのことを敏感に察知して梨華は口を開いた。
「実はですね・・・・・・」
- 275 名前:痴話げんか 投稿日:2002年10月25日(金)23時21分53秒
「なんですか?保田さん」
まだ不機嫌をひきずっている吉澤に保田は、内心でため息を付き尋ねた。
「どうしたのよ?石川にあんなこと言うなんてあんたらしくもない」
「保田さんには関係ないでしょ」
吉澤から返ってきた返事は心配する保田にはあまりにも失礼なものだった。
「関係なくないわよ!!あんたたちがあんなとこでケンカするのが悪いんでしょ!
そんな口聞きたかったら他の場所でしろってのよ!!
だいたい、あんたたちはねー公私混同もいいとこっていうか・・・・・・・・・・・・」
放っておくと延々と続きそうな保田の説教に吉澤は恐怖を感じ、渋々とケンカの理由を話すことにした。
「・・・実は」
- 276 名前:痴話げんか 投稿日:2002年10月25日(金)23時23分24秒
「よっすぃ〜が私のことを思う時間よりも、
私のほうがよっすぃ〜のことを思ってるよって言ったんですよ」
「梨華ちゃんがあたしのことを考えている時間よりも、
あたしの方が梨華ちゃんのことを考えているよって言ったんですよ」
「それなのに、よっすぃ〜ったら張り合ってくるんですよ」
「それなのに、梨華ちゃんが張り合ってくるんですよ」
「「けんかになって当然でしょ!!」」
同時刻、同じ内容のことを矢口と保田は壁を隔てた隣同士の部屋で聞いていた。
同時刻、同じ内容のことを廊下にいる6人もドアを隔てた場所で聞いていた。
そして、全員が同時刻に同じことを思った。
――こいつら、アホだ、と。
- 277 名前:痴話げんか 投稿日:2002年10月25日(金)23時24分44秒
「それでですねー、私が思うに」
「それで、あたし思ったんですけど」
理由を口にしたとたん、饒舌になって語りだす二人。
矢口と保田は呆れて物が言えなかった。
この二人がケンカするのはこんなくだらないことしかなかったんだ。
それを忘れて、もっと重大な理由だろうと構えていた自分たちの浅はかさを心底から反省した。
そして――
なおもグチグチと語っている目の前の後輩を置いて部屋をあとにした。
「ほら、スタジオ戻って」
「さ、練習再開するわよ」
矢口と保田は、ドアの前にいる6人に声をかけなにごともなかったかのようにダンスレッスンを再開した。
翌日
この類まれなるアホアホコンビは昨日のことなど忘れてしまったかのようにいちゃついていた。
Fine
- 278 名前:七誌 投稿日:2002年10月25日(金)23時27分56秒
ま、気が向いたらシレッと書くかもしれませんが
とりあえずこのスレ短編終了っす。
最後、こんなんでええんか?ええのんか?って感じですな。
読んでくださった皆様、リクしていただいた皆様(あまり答えられず申し訳)
ありがとうございました。
またどこかであえる日を楽しみに・・・・・・下手はけ〜
- 279 名前:なちまりっぷ 投稿日:2002年10月26日(土)22時35分46秒
- 終わりなんすか。そんなの悲しすぎる〜(T▽T)
またかいてくださるときを楽しみにしてます。
- 280 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月28日(月)23時59分05秒
- いつのまにか終わってるよ。
なにげにリク答えてもらってました。ありがとうございます。
- 281 名前:七誌 投稿日:2002年11月06日(水)23時49分27秒
さがったところで明日からチラッとなんか書こう
- 282 名前:――――――――――― 投稿日:2002年11月07日(木)05時13分54秒
くすんだ世界
くすんだ人
失くしちゃったら死んじゃうよ
- 283 名前:くすんだ町 T 投稿日:2002年11月07日(木)05時15分37秒
人々が心を失い淡々と時間だけが過ぎていく、
そんなくすんだ町に今日も一人の少女が足を踏み入れた。少女の名前は、ひとみ。
彼女は、借金のかたにその町にある工場で働くことを余儀なくされた。
ひとみは、長い長い間列車に乗って目的の町にたどり着いた。
目には無色の町並みが広がる。天候が悪かったせいかもしれない。全てがくすんで見えた。
無人の改札を抜けると大きな商店街が広がっていた。
静かなところだ・・・・・・ひとみは、思った。
無駄な音は何もなかった。
人は多く行きかってはいるが誰一人会話を交わすものはいない。
すれ違う人はみな貼り付けたように無表情だった。
ただひとつ聞こえるのは工場が動く音。
ひとみがこれから働くことになる場所――ひとみは、得も知れない不安を感じた。
そして、その不安は奇しくも的中していた。
- 284 名前:くすんだ町 T 投稿日:2002年11月07日(木)05時17分01秒
工場から用意された寮には同じような境遇の少女たちがいるはずだった。
友達ができるかもしれないと少しだけ明るくなりかけたひとみの心は、
次の瞬間には暗く沈んでしまった。
入り口近くで出会った自分よりも少し幼い少女に工場長がいる部屋を尋ねてみたが、
その少女は一言「こっち」と無表情に歩き出したのだ。
廊下ですれ違うほかの少女たちも新参者である自分への興味を示そうとはしなかった。
その場所も灰色にくすんでいた。
工場長の話を聞き終わり、用意された部屋のベッドの上でひとみはあることを思い出していた。
『その町に行くなら感情を決して見せてはいけない』と。
確かにそんな話をどこかで聞いたことがある。
てっきり子供を怖がらせるための御伽噺だと思っていたが、
ここがその町だったのか・・・気づき少しだけ目頭が熱くなった。
しかし、ひとみは泣きはしなかった。
涙は、感情だからだ。ひとみは、機械のように振舞うことを決意していた。
- 285 名前:くすんだ町 T 投稿日:2002年11月08日(金)22時57分52秒
翌日、ひとみは工場長に頼まれてか迎えに来た同じ寮の少女に自分が受け持つ機械の前に案内された。
非常に単調な作業の繰り返しだった。
作業を続けるうちに自分自身が機械になっていくように感じた。
チラリと視線を動かすと同じように機械と同化する同年代の少女たち。
自分もいずれはこれを辛いと感じなくなるんだろうか、フリじゃなく本当の機械に
――それは、そう遠くない未来のように思えた。
- 286 名前:くすんだ町 T 投稿日:2002年11月08日(金)22時58分45秒
気づかれないように嘆息し作業の手を止めてひとみは視界にうつる少女たちを見やる。
その時、不意に奇妙な違和感を覚えた。
違和感を覚えたのは一番奥で同じ作業をする一人の少女――いや、もう成熟した女性といっていいだろう――だった。
色のないくすんだこの町でなぜかその女性だけが輝きを持っているように感じられた。
ひとみは、じっとその女性を見つめた。
伏目がちな瞳、艶やかでキレイなロングヘアを無造作に後ろで束ねて
ぱっと目には他の少女たちと変わらないような気もする。
では、なぜ違うと思うのか――考えても答えは出てこなかった。
しかし、その女性の姿を見ることで自分は機械にならずにこのままでいられるかもしれないと思った。
次の日から、ひとみは作業をいち早く仕上げ余った時間で女性を観察することにした。
黙々と作業する女性とは一度も視線が交差することはなかったがひとみにはそれでもよかった。
- 287 名前:くすんだ町 T 投稿日:2002年11月08日(金)22時59分41秒
それから1ケ月がたった。
他の少女たちとは必要なことを事務的に聞いたりすることはあったが、
女性とは作業場も少し離れておりまったく接する機会がないため一度も話したことはなかった。
それでもまだなおひとみは女性を見るというたった一つのことを心のよりどころとしていた。
一日の作業が終わった工場からの帰り道、ひとみは偶然、女性が一人で帰っていく姿を見つけた。
ひとみは、同じ建物に住む少女たちの群れから不自然に思われないようにはぐれ、
ゆっくりゆっくり女性を追いかけた。
誰に見られても自然なように――
- 288 名前:くすんだ町 T 投稿日:2002年11月08日(金)23時00分43秒
女性は、ひとみの住む建物とは別の――形状はそう大差ないが――建物の中に入っていった。
その時、はじめてひとみは自分と女性が違う場所に住んでいたことを知った。
工場は一つしかないのに寮は他にもあったのか――
当たり前のことに気づいただけなのにひとみはそれがおかしかった。
それは、休みの日のたびにひとみが女性の姿を探して自分の寮を歩いて回っていたからだった。
どうして、自分がそこまでその女性を気にするのか・・・・・・ひとみは、幾度となく考えた。
もしかしたら、このくすんだ町から助けてくれるかもしれないとそう思っていたのかもしれない。
しかし、今は違う。
自分は、あの人のことが好きなんだと、ひとみは漠然とながらも気づいた。
どうすべきかは分かっていた。
- 289 名前:くすんだ町 T 投稿日:2002年11月11日(月)07時32分45秒
次の日,作業を終えた帰り道ひとみは一人歩いていく女性を昨日と同じように追いかけた。
そして、女性の腕を掴んで建物の影の路地に滑り込む。
誰かに見られたらどうしようという気持ちはなかった。
ただ女性と話がしたかった。
ひとみが立ち止まって彼女を見ると少し怯えたような視線にぶつかった。
あれだけ見つめていたのに目が合うのははじめてだった。
その大きな瞳には明らかな戸惑いの色が浮かんでいる。
この人は感情を持っている。
ひとみの全身が心臓になったかのように鼓動が高鳴った。
- 290 名前:くすんだ町 T 投稿日:2002年11月11日(月)07時33分33秒
「好きです」
自然とひとみはそう口にしていた。
このまま彼女を連れ去ってどこか遠くへ逃げてしまいたかった。
「ずっと好きだったんです」
反応のない彼女にもう一度そう繰り返すと、不意に彼女は視線を逸らした。
「やめて・・・・・・」
「え?」
「そんなこと言ったら・・・ダメなんだよ」
彼女の瞳からキラリと光るなにかが零れ落ちた。
それが涙だとひとみが気づくよりも先に彼女は走り出していた。
ひとみは、呆然としたままその背中を見送った。
追いかけたところで女性を苦しめることになるのかもしれない、今はもうどうすることもできなかった。
ただ一つだけ心に誓っていた。
いつか、彼女を連れてこの町をでると――
ひとみが感情を持っていられたのはそれが最後だった。
- 291 名前:くすんだ町 T 投稿日:2002年11月13日(水)09時22分38秒
その日の夜、ひとみは寮に戻ると工場長から部屋に来るよう言われた。
「なんですか?」
「いやね、君が今日変な行動を取っていたと耳に挟んだんだが」
やはり、誰かに見られていたのか。
ひとみは思ったが機械のふりをすることに慣れていたため
その気持ちを表に出さずに「覚えがありません」と短く答えた。
蛇のように狡猾そうな工場長はひとみを凝視し「なら、いいんだがね」と、
唇の端をゆがめて笑った。
心を見透かされているようで落ち着かなくなったひとみは
工場長から目を逸らそうとテーブルに用意されたお茶に視線を落とした。
妙に思われないようにコップを口に運ぶ。
その瞬間、頭の中を乱暴に洗われているような感覚に襲われる。
視界が黒く染まり目の前がぼやけた。
「困るんですよ、秩序を乱されると」
工場長の声をはるか遠くに聞きながらひとみは意識を失った。
- 292 名前:くすんだ町 T 投稿日:2002年11月13日(水)09時25分12秒
次に自分の部屋で目を覚ました時には、演技ではなく本当にひとみは感情と言うものをなくしていた。
何の変化もない一日が始まる。
いつもと同じように工場に行き作業をする
――もうひとみが作業を急いですることはなかった。
そんなことをする理由はなくなってしまったから。
一日の作業が終わり、いつもと同じように少女たちの群れに交じって
寮へ向かうひとみの視界に一人の女性の姿がうつった。
その女性はどこか奇妙に自分のことを見つめていた。
しかし、ひとみは他の少女たち同様、無表情のまま女性の横を通り過ぎた。
不意にひとみは頬になにかが伝うのを感じた。
反射的にそれを手で拭う。奇妙な液体が流れていた。
ひとみには、その液体の意味が分からなかった。
くすんだ町はくすんだまま、色づくことなくそこに存在していた。
fin
- 293 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月13日(水)16時46分45秒
- 短編のとずいぶん雰囲気が違いますね。よっすぃ〜はどうなるんだ?
女の人はよっすぃ〜が犬になりたいって言ってたあの人ですよね?
個人的に好きなカップリングです。続編待ってます。
- 294 名前:――― 投稿日:2002年11月20日(水)22時51分15秒
その人は、突然やってきた。
突然、現れて驚く私に
好きだって言ってくれたんだ。
- 295 名前:くすんだ町 U 〜 夢で夢を見た日 〜 投稿日:2002年11月20日(水)22時52分58秒
そこはくすんだ町。
人々が心をなくし淡々と時を過ごすところ。
くすんだ町にカオリが住むようになったのはいつだったのか、物心つく頃には彼女はその町の工場で働いていた。
工場で働いているのは同じ年代の少女たちだった。
だから、別段自分がそこで働くことに疑問を持つことはなかった。
時がたち、少し成長したカオリは別の作業場に移動した。
作業自体は単純なことの繰り返しで今までと変わったことはなかった。
ただ変わったのは機械の大きさだけだろう。
さらに時がたち、カオリは大人用の機械を扱う作業場に移った。
そこでも、なんの変化はなかった。
くすんだ町はいつまでたってもくすんだままだった。
いつまでも変わらぬ時間が過ぎていくんだろうとカオリは感じていた。
特にそれをどうこうする気もなかった。
しかし、ある日、そんな生活を根底から覆してしまう出来事が起こった。
- 296 名前:くすんだ町 U 〜 夢で夢を見た日 〜 投稿日:2002年11月20日(水)22時54分29秒
少女にいきなり腕を掴まれた時、カオリは自分の身になにが起きたのか分からなかった。
ただ引きずられるまま路地へと連れて行かれた。
少女が立ち止まり自分のほうを振り返る。
カオリは少女を見つめた。少女もカオリを見つめ返す。
どこかで奇妙ななにかがぼんやりと姿を現し始めていた。
「好きです」
少女が口を開いた。
カオリは少女の言葉の意味が理解できなかった。
ただ、先ほど感じたなにかが動き出そうとしているのを感じた。
「ずっと好きだったんです」
少女が繰り返す。
その言葉にカオリの中でわけの分からないなにかがじんわりと広がっていく。
カオリは、咄嗟に少女から目を逸らす。
いつのまにか両目から温かい水分が流れ始めていた。
それは、いけないことだとカオリは感じていた。
「やめて・・・」
カオリは、小さな声で少女に言った。
「え?」
「そんなこと言ったらダメなんだよ・・・・・・・」
顔をあげ少女をもう一度見つめながら言った。
視線が合った瞬間、また瞳からなにかが零れ落ちた。
抑え切れない胸のざわめきに耐えられなくなってカオリは走り出した。
少女は追いかけてこなかった。
- 297 名前:くすんだ町 U 〜 夢で夢を見た日 〜 投稿日:2002年11月21日(木)07時59分07秒
自分の部屋についても少女の眼差しが頭の中から消えなかった。
――ずっと好きだったんです
不意に少女の言葉が脳裏に浮かんだ。
警告の音にカオリは耳を塞いだ。
しかし、少女の言葉が何度も何度もリフレインするのをとめることはできなかった。
少女に掴まれた腕が熱を帯びてくる。
少女の真っ直ぐな瞳が自分を見ている。
――ずっと好きだったんです
より鮮明な少女の声が全身に響いた。
その瞬間、カオリの目から再びなにかがあふれ出していた。
堰を切ったようにあふれ出るそれは涙というものだとカオリは思い出した。
- 298 名前:くすんだ町 U 〜 夢で夢を見た日 〜 投稿日:2002年11月21日(木)08時00分50秒
それがきっかけだったとでも言うように、
カオリの中にさまざまな――感情と呼ばれるものが流れ込んできた。
あまりにも唐突なことにカオリは一瞬パニックに陥りかけたが
少女の言葉を理解したいという思いがその流れに身をゆだねる覚悟をさせた。
そして、はじまった時と同じようにその流れは唐突に遠ざかっていった。
カオリは、しばらくぼんやりと部屋の中を見回した。
今までずっとくすんでいた部屋がはっきりと色を持っていた。
不思議な感覚だった。
まるで生まれ変わったような――
カオリは、少女に会いたいと思った。
あの少女と一緒なら、もっともっと鮮やかな世界を見られるかもしれない。
カオリは、翌日、作業を終えて彼女に会うことを決意しながら眠りについた。
- 299 名前:くすんだ町 U 〜 夢で夢を見た日 〜 投稿日:2002年11月21日(木)08時02分06秒
翌日――
変わらないはずの一日はカオリにとっては驚きの一日に変わった。
ずっとくすんで同じように見えていた町並みは、
どれ一つとっても同じものはなく実に多くの色に包まれていたのだ。
カオリは無表情を保ちながら、きっと自分の人生は今日から変わるのだと確信していた。
作業をしている間、カオリはずっと少女のことを考えていた。
いったい、いつから彼女は自分のことを見つめてくれていたんだろう。
彼女は、どうして他の人とは違うんだろう。
昨日、置いて行ってしまったことに怒ってはいないだろうか。
頭に浮かんでくるのは少女のことだけだった。
でも、少女のことを考えるのが今のカオリにはすごく楽しかった
- 300 名前:くすんだ町 U 〜 夢で夢を見た日 〜 投稿日:2002年11月21日(木)08時03分39秒
そして、待ちに待った終業時間がやってきた。
カオリは、工場の前の通りで少女がやってくるのを待った。
不自然に思われないように極力注意しながら――
ゆっくり、工場の入り口に視線を動かす。
少女がいた。
自分に向かって歩いてきている。ドキドキと胸が高鳴っていく。
しかし、次の瞬間、カオリは信じられない思いで少女を見つめた。
少女からあふれていた輝きが消えていた。
多くの少女たちと同じ無表情。
自分のことを気にすることなく少女は通り過ぎていった
涙がこぼれそうになった。
少女にいったいなにがおこったのだろう?
カオリは、はじめて怒りを覚えていた。
昨日から今日の僅かな時間で何者かが少女をあのようにしてしまった。
自分を好きだと言ってくれた少女はいなくなってしまったのだ。
少女の真っ直ぐな眼差しが心に浮かんで消えていく。
自分を助けてくれた少女。
カオリは、その後ろ姿を見つめながら強く強く誓った。
今度は自分が彼女を救う番だ、と。
Fine
- 301 名前:――――――――― 投稿日:2002年11月24日(日)23時32分41秒
一瞬ですべてが不可能になるなら
その逆もありえるはずだ
あなたとなら不可能だって可能にできる気がしたよ
- 302 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月24日(日)23時34分06秒
そこはくすんだ町。
人々が心をなくし淡々と時を過ごすところ。
1
少女が心を持たない機械になって数ヶ月がたった。
今、カオリができることは少女の姿を見つめること。
かって、少女が自分に対してしていてくれたように――
無駄な行為だと思われようが下手に動くことはできない。
いつ自分が少女と同じように心を封じられてしまうかも知れないのだ。
だから、こうするしかない。
見つめていれば少女はいつか絶対に気づいてくれるはずだ、カオリは純粋にそう信じていた。
しかし、その願いは叶うことなく散らされることになる。
- 303 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月24日(日)23時35分27秒
ある日、少女の作業場がカオリの目の届かない倉庫のほうへ移動したのだ。
作業場は一回受け持ったら機械とのサイズが合わなくなった場合以外では変更されることはない。
特例を除いて――自分へ気持ちを告白した少女はその特例に価したんだろうか。
それとも、自分が少女を見つめていることをあの狡猾そうな工場長に気づかれたんだろうか。
理由は分からない。
ただ――
もう少女を見つめることはできなくなってしまったのだ。
カオリはそれを知り泣き出しそうになった。
心を失くしていた方が幸せだったかも知れないとさえ思った。
しかし、そんな気持ちを打ち殺すために少女のことを考えた。
自分がここで屈してしまえば二度と少女が心を取り戻すことができなくなる。
これからどうするか、それだけを考えるしかない。
そこまでしてカオリは嫌な視線を体に感じた。
怪しまれないように自然に顔をあげると工場長が自分を見ている。
もう時間はあまりないのかもしれない
――カオリは完璧に作った無表情のまま作業を再開した。
- 304 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月24日(日)23時37分20秒
ある日、工場の定期検査のためカオリたちは休みをもらった。
工場長は、検査員と一日一緒にいるはずだ。
少女と接触する機会はこれが最後かもしれないと思った。
カオリは少女の姿を求めて町を彷徨い歩く。見つかる保証はない。
少女が外を出歩いている可能性は低いだろう。
それでも、カオリは少女にあいたかった。
無情にも刻々と時間だけが過ぎていった。
太陽が沈み始め冷たい風が体を嬲る。
カオリは疲れを全身に感じながらも歩みをやめはしなかった。
しかし、もう少女を見つけるのは不可能だと思い始めていたのは事実だった。
カオリは、最後の望みを託してまだ行ったことのない町はずれの小高い丘まで足を運んだ。
そこに少女は町を見下ろしながら一人ポツンと膝を抱えて座っていた。
カオリは目を疑った。
やはり運命なのだ、そう感じた。
カオリはゆっくりと少女に近づく。
少女と会えた喜びとそれに反して、もう少女は自分のことを覚えていないという悲しみが綯い交ぜになった複雑な心境だった。
- 305 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月24日(日)23時38分13秒
「こんばんは」
カオリは思い切って声をかけた。
少女は振り返ってカオリに視線を向けるがなんの反応も見せずに町のほうに向き直った。
「・・・・・・やっぱりカオのこと忘れちゃってるんだね」
分かっていたことだったが、胸を締め付けられたような息苦しさを覚える。
どうしたら、心を取り戻してくれるんだろう。
どうしたら、自分のことを思い出してくれるんだろう。
少女は自分になにをしてくれたのか――
好きとそう言ってくれただけだ。
だが、今、ここで自分が少女に同じ言葉を告げてもなにも変わらないような気がする。
それは、少女が自分に対して言ってくれたから意味があったのだ。
ならば自分はなにをすれば少女にとって意味のあるものとなるんだろう
――それが、分からなかった。
- 306 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月24日(日)23時39分17秒
「隣、座るよ」
カオリが小さく呟くと少女は首を縦に振って応えた
「ここからなにを見てたの?」
少女は、なにも答えない。
かおりも答えを期待していたワケじゃなかった。
そのまま同じように町を見下ろす。
少女が見ている町町並みは自分が見ている色のある町並みとは違うんだろう。
カオリは、少女を見つめた。
輝きを失った少女は、カオリの記憶に残る少女とはまったく別人のようにうつった。
強い風が吹く。以前より少し伸びた少女の髪が揺れる。
なにも語る言葉が見つからなかった。
二人は、そのままそこにたたずんでいた。
しばらくして、完全に日も暮れた頃少女が立ちあがった。
カオリのことなど気にも留めずにそのまま丘を下っていく。
カオリは慌てて少女を追いかけてその前に回った。
- 307 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月24日(日)23時40分03秒
「ねぇ、また会ってくれる?」
少女は、無表情でカオリを見つめるがそこに望んだ反応は窺えなかった。
「明日もここに来て」
すがるようなカオリの声に少女は一回だけ頷いた。
「ここでカオに会ったことは誰にも言ったらダメだよ」
しばらくなんの反応も見せなかったがしばらくしてその言葉にも少女は同じように頷いた。
それから、カオリの体を避けて緩やかな坂を下りて行った。
「・・・・・・お願い、カオのこと思い出して」
カオリは、風にかき消されるほど小さな声で呟いた。
少女の、変わりきった様子が辛かった。
カオリは、少女の後ろ姿が夕闇にまぎれて見えなくなるまでその場に立ち尽くしていた。
- 308 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月25日(月)10時27分08秒
2
夜、心を失ったあの日から定期的に行われている工場長との面談をひとみは受けていた。
「今日は、どんな風に過ごしましたか?」
「・・・町を見下ろしていました」
工場長の問いかけにひとみは抑揚のない声で答える。
「なにか報告するようなことは起こりませんでしたか?」
「なにも起こりませんでした」
面談はいつも同じ質問の繰り返しだった。
そして、ひとみの答えもいつも同じものだった。
- 309 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月25日(月)10時31分53秒
簡素な部屋に戻りひとみはなんとなく頭に引っかかっていた女の姿を思い出す。
彼女は「カオのこと忘れちゃったんだね」と言っていた。
カオとは彼女の名前だろう。
彼女は、自分のことを知っている風だった。
だとすれば、自分も彼女のことを知っていなければならないはずだ。
知っているような気はする。
どこかで会ったような気はする。
だが、それがいつどこでのことだったのかはどうしても分からなかった。
そこまで考えてふとひとみはあることに気づいた。
彼女に話しかけられたことは明らかに工場長に報告するべきことだった。
しかし、ひとみは報告をしなかった。
彼女が誰にも言ってはいけないと言ったからか
――理由はそれ以外にあるような気がした。
- 310 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月25日(月)10時32分48秒
次の日、ひとみが作業を終える頃にはもう日も暮れてあたりは真っ暗になっていた。
それでも、ひとみは昨日約束したとおりに丘に向かった。
こんなに遅くなってはいるはずはないだろうに――
どうして自分はこんな行動をするのかに戸惑いを覚えた。
彼女は、昨日と自分が座っていたところと同じ場所に座っていた。
ひとみは、彼女の姿を捉えて立ち止まる。息苦しさを感じた。
ふとひとみの気配に気づいて彼女が振りかえる。
そして、ひとみを見て安心したように微笑む。
「来てくれないかと思ってた・・・でも、よかった」
ひとみは彼女の反応にさらなる息苦しさを感じながらも小さく頷き少し離れた場所に腰を下ろす。
心のどこかに彼女の温かい声が染込んでいくような気がした。
それ以上、彼女はなにも言葉を発しようとはしなかった。
無論、ひとみもそうだった。
二人は、並んだまま町を見下ろしていた。
- 311 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月25日(月)10時34分03秒
不意に膝のところに温もりを感じた。
彼女の手が置かれていた。彼女は膝立ちになって自分に向き直っていた。
もう片方の手が肩に置かれる。
ひとみは、目前に迫る彼女を見つめた。
ゆっくりと彼女が自分の口の端に唇を重ねる。
彼女の心臓の音が聞こえた。
柔らかな彼女の髪の香りが胸をすき、ひとみは自分の体が火照っていくのを感じた。
やがて、彼女の体が離れる。
なんだかよく分からない空虚感がひとみの体を駆け巡った。
「・・・思い出してよ・・・カオのこと・・・・・・あなたがカオに感情を思い出させてくれたんだよ」
彼女が呟いた。
両目から光る液体がこぼれている。
どこかで見覚えがあった。
ひとみは、彼女をただただじっと見つめた。
もう少しでなにかを思い出しそうな予感がしていた。
「おやおや、困りますよ規律を破られては・・・」
背後から突然そんな声が投げかけられた。
彼女が強張った表情で自分の背中越しを見ている。
ひとみは、ゆっくりと振り返った。
- 312 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月29日(金)01時27分04秒
- カオヨシハケーン!
- 313 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月30日(土)20時41分34秒
3
「工場長・・・・・・どうして!?」
ひとみの背中越しに立っている工場長を見つめてカオリは驚嘆の声をあげる。
「たまたま彼女が丘をのぼっていく姿が見えましてね」
工場長は、アゴでひとみをしゃくりながら言った。
「まったく、油断も隙もありませんね。あなたも治療しないと・・・・・・」
「治療って・・・・・・」
工場長の下卑た笑みにカオリは全てを悟った。
彼女をこんな風に変えてしまったのはこの男なのだと――
カオリは工場長を怒りに満ちた眼差しで睨む。
工場長は、薄く笑うとカオリに懐から取り出した銃を向ける。
それから、横目で座ったままのひとみに「君は部屋に戻りなさい」と声をかけた。
その声にひとみは立ち上がってカオリと工場長を交互に見比べた。
その表情になんの感情も浮かんでいないのを見てカオリは泣き出しそうになった。
- 314 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月30日(土)20時42分21秒
「治療を受ければあなたももう苦しい思いなどしなくてもいいんですよ。
感情なんてこの町では持っているだけ苦しいだけなんですから」
「それでも!それでも、カオはこの気持ちを大切にしたい」
「死にたいんですか」
言うと同時に工場長の持っていた銃が火を噴いた。
カオリの頬にスッと赤いものが滲みでてくる。
「心をなくして生活するのは死んでることと変わらないよ・・・」
「ならば、この場で殺してあげますよ」
工場長は、再び銃をカオリに向けなおす。
ゴメンね、あなたのこと助けられなかったよ――
観念したようにカオリは目を瞑った。
その時、スッと影がカオリの前に躍り出た。
- 315 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月30日(土)20時43分12秒
「この人を傷つけるな」
抑揚のない声。
カオリは瞑っていた目を恐る恐る開けた。その視界にひとみの背中がうつる。
「どういう意味です?まさか、私に逆らおうとでも?」
動揺した声で工場長は言い銃をひとみに向けた。
それを見た瞬間、ひとみは工場長に向かって猛然と走り出した。
工場長が、発砲する。
肩に焼けるような痛みが走る。その痛みがひとみの心に刺激を与えた。
ひとみは、二発目の銃弾が発砲されるよりも先に工場長を殴り倒した。
それから、工場長が倒れるのを見届け、すぐさまカオリの元に駆け戻ると
「逃げますよ!」とその手を握って走り出した。
その声に、突然の出来事に固まっていたカオリはハッとする。
「思い出したの?」
視線を向けるとひとみはぎこちなく微笑んだ。
- 316 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月30日(土)20時43分51秒
二人は町中を駆け抜ける。
ひとみの腕から流れ落ちる血が転々と跡を残していた。
当に日の暮れた町ではその異様な光景を誰一人としてみるものはいなかった。
「最後の電車に乗れれば、この町を出られる」
走りながらひとみがいった。
ひとみが感情をなくしながらも丘から見下ろしていたもの――
それは、日に二回だけこの町に物資を送ってくる貨物列車だった。
駅が見えてきた。
二人はホッとして顔を見合わせる。
しかし、その視界にたくさんの少女たちの姿がうつった。
そして、真ん中にはさきほど殴り倒した工場長が血走った目で二人を睨んでいる。
- 317 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月30日(土)20時45分29秒
「逃げられるとでも思ったんですか?」
ひとみはカオリをかばうように立つ。
と、同時に少女たちが二人に向かって銃を構えた。
驚いて二人は目を見開く。工場長がにやりと笑った。
「私を撃つよりも先にあなたたちが蜂の巣ですよ」
ひとみは、言葉を失った。
「・・・どうしてこんなことするの?あなたにいったいなんの権利があって・・・・・・」
カオリがあえぐような声で言う。
「権利?知らないんですか?あなたたちは、この町に買われた道具、
工場にある機械となんら変わりないんですよ。不良品は修理に出すのが当たり前じゃないですか」
「あたしたちは、道具なんかじゃないっ!!」
ひとみは、怒鳴って足を一歩前に出した。
工場長の銃が火を噴く。
銃弾は、ひとみの髪を掠って彼方に飛んでいった。
列車の近づく音が耳に届いてくる。
- 318 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年11月30日(土)20時47分01秒
「あなたたちはそれでいいの?感情のないまま操られるだけでいいの!?」
カオリが少女たちに向かって叫んだ。
少女たちは、無表情で二人に銃を向けている。
列車はどんどん近づいてくる。
「・・・・・・もう時間がありません。強行突破しますよ」
ひとみが小さくカオリに告げた。
「一緒にでしょ?」
「ええ」
ひとみは、そう答えたが一緒に列車に乗れることはないだろうと考えていた。
ただ彼女がこの町からでていけるのならば自分の命などどうなってもよかった。
「あたしを助けてくれてありがとうございます」
「お礼は、列車に乗ってからだよ」
二人は駅に向かって走り出した。
駅に向かう――
つまり、工場長たちに向かって正面から突き進むということだ。
走りながらひとみは彼女が自分の影になっていることを確認していた。
少女たちの持っている銃と工場長の銃が一斉に二人に向けられた。
- 319 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年12月01日(日)23時06分41秒
劈くような鋭い音がして再び銃口が火を噴いた。
銃弾は、反対側の肩を掠る。それでもひとみは止まらなかった。
彼女を駅に届けるまでは止まらないと決意していた。
「なにをしている!!早く撃て!!」
工場長のヒステリックな声。
聞こえる銃声。
しかし、銃弾はひとみには届かない。
工場長の一番近くにいた少女――ひとみには見覚えがあった。
確か、自分を機械まで案内してくれた少女だった――が、工場長に向かって銃を向けていた。
- 320 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年12月01日(日)23時08分35秒
「うわぁぁぁっ!!!痛いぃ・・・!!!」
工場長が地面に転がっている。
ひとみは、驚いて少女を見た。
少女は、無表情のまま工場長に銃を向けて立っている。
他の少女たちはすでに銃を下ろしていた。
「お前ぇ、こ、こ、こんなことしてただですむと思っているのか!?」
工場長は、顔を真っ青にしながら叫ぶ。
少女は、銃口を工場長に向けたまま二人のほうに視線を動かした。
「あなたも一緒に行こ?」
カオリが問いかける。
しかし、少女は悲しげに首を振った。
否、悲しげな顔をしているようにカオリにはうつった。
その時、列車がホームに滑り込んだ。
「行きますよ!」
少女のことは気にかかったがこの時を逃せばもうこんなチャンスは二度とないだろう。
ひとみは咄嗟にそう考えてカオリの腕を引っ張った。
- 321 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年12月01日(日)23時10分06秒
改札口が無人なのはひとみがこの町に来た当初と変わらない。
列車から荷物が降ろされている。それ以外に、この町で降りるものはない。
列車の汽笛と同時に二人は中に駆け込んだ。
息を切らしながらがらがらの席に腰掛ける。
ゆっくりと窓の景色が動き出した。
くすんだ町並みが次第に早くなりながら後方へと流れていく。
「・・・・・・疲れた」
ひとみが座席に体を預けて呟く。
カオリは、そんなひとみの髪を撫でながら「ありがとう・・・・・・私を連れ出してくれて・・・・・・」と言った。
ひとみは微笑み体をカオリのほうにむきなおした。
「お礼を言うのはあたしのほうですよ。あなたがいなかったらきっと・・・・・・」
そこまでいって、ひとみは言葉を止めた。
カオリは、不思議そうにひとみを見る。
「そういえば、ずっとあなたに聞きたいことがあったんです」
ひとみの言葉にカオリは「・・・私もだ」と今気づいたように言った。
「あなたの名前」
二人は、同時にそう口にして同時に笑った。
- 322 名前:くすんだ町V 〜未来を駆け抜ける日〜 投稿日:2002年12月01日(日)23時11分00秒
くすんだ町はもう二人にはうつらない。
これから二人が暮らしていく世界はきっと色鮮やかになるだろう。
Fine
- 323 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月03日(火)11時38分49秒
- 感動しますた 。・゚・(ノД`)・゚・。
- 324 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月04日(水)18時56分07秒
- 自分も感動しました。・゚・(ノД`)・゚・。
いろんなジャンルができてうらやましいです。
他にも連載してるんでしたら教えてください。
- 325 名前:七誌 投稿日:2002年12月05日(木)00時12分42秒
- 読んでくださってありがとうございます
ちょっと違った感じのを書いてみたくて書いた挑戦ものだったんですが
そういってもらえると嬉しいです。
>>324
月版のはそれであってます。これも駄作ですが
質問のお答えはメール欄に(−−;
- 326 名前:隠れカオヨシ 投稿日:2002年12月11日(水)00時05分54秒
- 今頃読みました。
独特の雰囲気、すっごいツボにはまりました。
カオヨシ最高っ
- 327 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月14日(土)16時18分02秒
- まさにシリアスからコメディまで面白過ぎる。
作者さまの引き出しは無限ですか!?
次回作も楽しみにしています。
- 328 名前:七誌 投稿日:2002年12月15日(日)00時29分33秒
>>隠れカオヨシさん
どもありがとうございます。
カオヨシ、マイナーなようで最近メジャーですね(多分
>>327さん
引き出しの中身はもう空っぽで・・・どないしましょう
リクは今してるとこの容量があまったら次あたりに・・・しないよ(^▽^
意外とこのスレあと一話ぐらいいけるかな〜
- 329 名前:無題 投稿日:2002年12月23日(月)15時40分12秒
あれ?
一人足早に屋上に向かっていく後ろ姿。
艶やかな栗色のストレートヘアーが動きにあわせるようになびいている。
後藤さんだ。見間違うわけがない。
私は、いつだってあの人の後ろ姿を見てきたんだから
後藤真希――私の尊敬する先輩。
周りのことなんて関係ないクールな人だと誤解されやすいけど実際はぜんぜん違う。
いつだってすごく周りの人に気を使ってる。
私がミュージカルでいきなり大きな役を貰った時もさりげなくサポートしてくれた。
強くて優しい私の憧れの先輩――
もうメンバーとして一緒にはいられないけどその気持ちは変わらない。
今日は、ハロモニの収録が一緒だ。
唯一、後藤さんに会えるこの時間が今の私にとって毎週の楽しみになっている。
後藤さん、待ち時間なのかな?
屋上なんかになにしに行くんだろ?
のんびり日向ぼっこなんてする天気じゃないし・・・・・・・・・・・・
考え出すと気になってきた。幸いなことに私も収録まで時間がある。
追いかけてみよう。
私は、後藤さんの後を追って屋上へと出る階段を上った。
- 330 名前:無題 投稿日:2002年12月23日(月)15時42分29秒
重い鉄のドアを押し開ける。
真冬特有の北風が一気に突き刺さってくる。
後藤さんは、私がきたことに気づいていないみたいだ。
手すりにもたれかかって――私が言うのもなんだけど――ぼんやりしている。
髪が風に嬲られ後ろに流れている。
そこからかすかに見える横顔は微かな笑みを浮かべていた。
でも、どうしてだろう?
その微笑はなぜか私には泣いているかのように見えて――私の胸はきゅっと締め付けられた。
- 331 名前:無題 投稿日:2002年12月23日(月)15時43分38秒
「んぁ?・・・誰?」
不意に後藤さんが振り返る。私は、慌ててペコリと頭を下げた。
後藤さんは、目を細めて私の姿を確認する。
「紺野?どうしたの?」
そう言いながら私においでおいでというように手招きをする。
その笑顔はいつものもので・・・さっきみたいな悲しい笑顔じゃなかった。
私は、後藤さんの隣で同じように手すりにもたれかかる。
「・・・なんかあった〜?」
「いえ・・・あの」
まさか後藤さんを追いかけてきたとは言えない。
言い訳を咄嗟に考えていると「気持ちいいね〜」と
さっきの質問を忘れたように後藤さんはのんびりとした口調で言った。
「あ、そうですね」
うなづくと後藤さんはふふっと笑った。
「あたしさ〜、ここから見える景色って嫌いじゃないんだよね〜」
私がいることを気にしていないかのように景色を眺めながら言う。
私は後藤さんの視線の先を追った。
立ち並ぶビル街――その先にあるのもビルだ。
ここからはビルしか見えない。
少し寂しい風景だと私は思った。
- 332 名前:無題 投稿日:2002年12月23日(月)15時44分33秒
「なんか頑張ろうって気にならない?」
「え?」
私は、返答に困り首をかしげる。
だって、私ならこんな寂しい景色見てたら逆に頑張れなくなっちゃう。
どうして後藤さんはこの景色からそんな風に思うことができるんだろう?
「後藤さん」
「ん〜?」
「私には、この風景あわないみたいです。なんかビルに囲まれてたら一人ぼっちを感じるっていうか・・・・・・・寂しくなります」
「あはっ、そうだよね〜寂しいよね〜」
後藤さんはあっさり頷いた。それから、私に視線を動かす。
今日、はじめて後藤さんが私を見た気がする。その目は、どこか暗い。
「でも、寂しい景色を見てると自分だけが寂しいわけじゃないって思えるんだよね」
「?」
「って、意味わかんないよね〜」
後藤さんは、また視線を戻す。
分かりたい。
後藤さんの言っていることの意味を・・・分かりたいと思った。
少しでも後藤さんの力になりたいと、そう思った。
- 333 名前:無題 投稿日:2002年12月23日(月)15時45分23秒
「後藤さん、どうかしたんですか?」
「んぁ?なんで?」
「なんか悩みがあるんだったら・・・その、私なんかじゃぜんぜん頼りないけど・・・・・・・えっと・・・・・・だから、その話すだけでも」
しどろもどろになりながら言葉を繋いでいると後藤さんが「ふっ」と吹き出した。
私は、驚いて後藤さんをみる。
後藤さんは、さもおかしいとでも言うように頭を振りながら
「ごめんごめん、なんか紺野必死だからおもしろくてさ〜」と弁解した。
なにも笑うことないのに・・・・・・そう思うと同時に少しだけホッとした。
その笑顔は私の知っている後藤さんの笑顔だったから
「じゃ〜話しちゃおッかな〜」
ひとしきり笑ったあとに後藤さんが私を子供のような目で見ながら言った。
私は、首を思いっきり縦に振る。
その様子がおかしかったのか後藤さんはまた笑いそれから口を開いた。
- 334 名前:無題 投稿日:2002年12月23日(月)15時46分45秒
「まぁ、なんていうかソロになったはいいけど自分がなにやってるのかよく分かんないんだよね〜
今、してることって別に娘にいてもできたことだと思うし
どこいっても元娘。って言われるぐらいなら娘のまんまでもよかったんじゃんとか・・・・・・」
「後藤さん・・・・・・・・」
「あたし、なんだったんだろうね〜
夢を叶えて歌手になった、有名にもなった・・・
でも、だからってあたし自身が理解されてるわけじゃない。
一人相撲とってるようなもんだよ・・・なんちってあはっ」
冗談っぽい口調。
ふにゃっとした笑顔を見せて――
だけど、それが後藤さんの本当の気持ち。
こんなに弱くて今にも崩れてしまいそうな後藤さんをはじめてみた。
私の中の後藤さんはいつも強くて優しかったからソロになるって聞いても大丈夫だと勝手に思ってたんだ。
後藤さんなら大丈夫だって・・・きっと他のメンバーもそう思ってる。
- 335 名前:無題 投稿日:2002年12月23日(月)15時47分53秒
でも――
「なんか〜あたしらしくないね。ごめんね、変な話しちゃって」
後藤さんが宙を見上げて大きく息を吐いた。
「あの、後藤さん」
違うんだ。
「ん?」
「後藤さんは後藤さんなんです」
本当は、後藤さんだって――
「んぁ?」
後藤さんは顔いっぱいにクエスチョンマークを浮かべている。
「元モーニング娘。の後藤真希もソロの後藤真希も私にとって後藤真希はまるっと後藤真希なんです。」
「紺野?」
「だから・・・だからっ・・・・・・」
私の肩にポンと温かい手が置かれた。
後藤さんと目が合う。後藤さんは微笑んだ。
- 336 名前:無題 投稿日:2002年12月23日(月)15時48分46秒
「分かったから・・・なんとなく紺野言いたいこと・・・・・・・に・・て・・・・・・った」
「え?なんですか?」
最後の部分が風の音で聞き取れなかった。
私がもう一度問い返すと
「ま、い〜からい〜ら。ほら、そろそろ戻らなきゃ収録遅れちゃうよ」
と、誤魔化すように後藤さんは腕時計を私のほうに向ける。
確かにもう戻ったほうがいい時間になっていた。
後藤さんが私の手を握って「走るよ〜」といつものゆったりした口調で言った。
なんだかよく分からないけど・・・・・・後藤さんがいいならそれでいっか。
「それじゃ、いくよ〜!!」
「はいっ!!!」
風の冷たさがつながれた手のぬくもりをより強いものにしていくのを感じながら私たちは走り出した。
Fine
- 337 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月24日(火)00時43分17秒
- 今、向こうで笑ってきてこっちにきたらしんみり
作者さんはどんなジャンルもいけますね〜。
もう一話ぐらいこのスレ書けそうですよ(^^というわけで↑
- 338 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月24日(火)20時44分21秒
- こんごま(・∀・)モエ!
- 339 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月24日(火)22時07分03秒
- マジでごっちんがこんなこと思ってたら・・・・・・ってか、思ってそうだ
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