おいらは恋のキューピット

1 名前:世紀 投稿日:2002年09月20日(金)17時41分14秒
はじめましてです。
世紀っす。
放置はしないようにします。
できる限り頑張ります。

やぐちさん視点で物語は進んで行きます。
だいたい週に1回か2回ぐらいしか更新できないかもしれませんが。

やぐちさんのほかにもなっちとか、ごっつぁんとかいちーさんも出てくると思います。
なっちは確実にでるのですが・・・。
だいたいなっちとやぐちさんが主役でしょうか?
2 名前:プロローグ 投稿日:2002年09月20日(金)17時43分52秒
オイラ、まり。
プリティーでセクシーな女の子なんだ。

オイラが今日もいつもどうりの楽しい一日を
過ごすのかと思ったら今日は違ったんだ。

3 名前:プロローグ 投稿日:2002年09月20日(金)18時02分05秒
この日、朝の太陽の光がカーテンのすき間から
差し込んできて、オイラは目が覚めた。

オイラ達の目の前には、オイラに負けないくらい可愛い可愛い女の子がいた。
ん?誰だ?カオリじゃな〜い。
オイラ、別に人見知りするような性格じゃないから別にいいけどさ。
はじめて見る女の子。
オイラは、一応カオリの友達やオイラの友達は覚えてるはずだ。
オイラは、頭もいいんだから。
だから、カオリの言ったこともちゃ〜んと覚えてる。


「ねぇ、なっちこの子がいいべ!この子!超かわいいべ!!」
目の前の女の子は、オイラを指差してニコニコして言った。
ん?オイラ?
なんだよぉ。オイラ、何にもしてないぞ。


うわっ!その、一人称、『なっち』(たぶん)はオイラはだっこした。
なんだよぉ。ホントに。ビックリするじゃんか。
・・・・・でも近くでみるともっと可愛い。


「あ、やぐちぃ?うん。いいよ、別に。ちなみに名前はまりだから。」
カオリの声だっ!!
オイラ、カオリの声、すぐわかるんだよ?
なんたって、生まれた時からずっと一緒だもん。

4 名前:プロローグ 投稿日:2002年09月20日(金)18時15分42秒
「だから、なんで名字と名前があるのぉ?変だよ。」
『なっち』は、笑いながら言った。笑った顔も可愛い。
でも、『なっち』の言ったことは前にも
カオリが友達に言われてるのを見たことがある。

「えー?いいじゃん。でもなっち、やぐち元気だから、気をつけてね?」
元気ぃ?セクシーでしょ?
「もちろん!なっち、元気な子好きだもん。」
「じゃあ、なんかあったら電話してね?」
「わかった。じゃあ、やぐちもらってくね。」
「うん。」

へ!?オイラ、どっかいくの?
「やぐちぃ、ごめんね。」
そういって今度はカオリの顔が目の前にきた。
いっつも思うんだけど、キレイ。
でも話は続く。
「やぐちの兄弟、いっぱいでしょ?やっぱり大変なの。
だから、なっちにもらってもらうことになったんだ。」
ふ〜ん。そうゆうこと。もうちょっと前もオイラの
兄弟の一人がどっかいっちゃたもんね。

「だから、やぐち、これからはなっちと一緒にくらすんだからねっ!」
そんなの全然いいにきまってるじゃん!
カオリとお別れは寂しいけど、だいじょぶ。
また会えるもんね。
だから、大きく返事した。

「わんっ!!」
5 名前:プロローグ 投稿日:2002年09月20日(金)18時16分35秒



こうして、オイラはなっちと一緒にくらすことになった



6 名前:世紀 投稿日:2002年09月20日(金)18時19分40秒
まず、プロローグです。
まだ最後までできてないんですけど、これから考えます。
>3の、一人称『なっち』(たぶん)はオイラはだっこした。
    一人称『なっち』(たぶん)はオイラをだっこした。に
直してください。
最初から間違えました・・・。
7 名前:オイラのご主人様 投稿日:2002年09月21日(土)10時17分02秒
オイラ、やぐちまり。
やぐちが名字でまりが名前なんだって。
よくわかんなかったけど。


オイラのご主人様は、なっち。
とってもかわいいんだ。
ほんとはカオリのところで生まれたんだけどね。
兄弟、おおいからなっちに引きとられた。

今では、カオリの家のも遊びに行くようになったんだ。
なっちの家にきてから、2ヶ月。
なっちは、一人ぐらし。
バイトをやってるんだって。
それでも、お金足りないから、家からお金をもらってるって聞いた。


ちなみに、オイラ、ミニチュアダックスフンド
ミニチュアダックスフンドってゆーのは、犬の種類。


人間のとしでいうと19さい。
若いんだぞっ!!

オイラたち、ミニチュアダックスフンド足が短いんだよ。
いでんだもん。しょうがないじゃん。



わかってると思うけど、オイラ、♀だからなっ!!
まちがえんなよっ!!

8 名前:オイラのご主人様 投稿日:2002年09月21日(土)10時23分25秒
最近、オイラのご主人様、なっちはバイトがおわったあと
にこにこして家に帰ってくる。

なっちがうれしそうなのはオイラもうれしい。
『どうしたの?』ってききたいけどオイラ、犬だし。
日本語わかんないだよぉ。
わかるのは、犬のはなす言葉だけ。


それでも、オイラはなっちがしゃべってる言葉、聞くことはできるんだ。
頭いいだろ?犬は、みんな頭がいいんだ。
ちゃんとしつけてあればだけど。
このまえ、散歩にいってるとき、しつけのなってないダメ犬が
オイラにむかって、わんわんほえた。
でもオイラ、シカトした。
オイラ、ちゃんとしつけがなってるからほえないんだ。
すごいだろ?しつけのなってる犬だもん。
9 名前:オイラのご主人様 投稿日:2002年09月21日(土)10時30分17秒
「ねぇ、やぐち。」
なっちがバイトから帰ってきてオイラを
膝のうえにのせてあたまをなでてくれた。
あ、気持ちいい。気持ちいいから、目を閉じた。
なんか、眠くなってきたなぁ・・・・。

「なっちね、実はバイトいっしょにやってる子のこと
好きになっちゃったんだよぅ。」
へぇー。だからバイトから帰ってくると幸せそうな顔してるんだ。
その話、もっときかせて?ねぇ、なっちぃ。
オイラ、もっとしりたいよぉ。
オイラだって、19さいなんだぞ!?

オイラは、なっちを見上げて、しっぽをぱたぱたふった。
「あは。やぐち、かわいー。」
そう?ありがと。でも今は、なっちの好きな人のことしりたいよぉ。
おしえてよぉ。
え?なんでかって?そりゃ、大好きなご主人様だもん。
オイラ、口堅いんだからさ。
10 名前:オイラのご主人様 投稿日:2002年09月21日(土)10時43分28秒
「あのねぇ、その子は後藤真希っていう女の子なんだよぉ。
なっちよりも年下なんだけど、なっちよりもおおきいんだよ?
笑った顔がすっごくかわいいんだぁ。一緒にいると楽しくて
バイトも辛くなんかなくてむしろ、楽しいんだ。」

なっち、嬉しそう。
それにバイト楽しいんだ。よかったぁ。
女の子ねぇ。でも、もうちっとまえに
同性でも結婚できるようになったんでしょ?
よかったね!なっち。まだチャンスはあるんだ。
オイラも、応援するよっ!
んん〜?どうすればわかるかなぁ?
そうだっ!
なっち、見ててよ!

「やぐち?」
オイラは、ぴょんっとなっちのひざからおりた。
ホントはもうちっとひざの上にいたかったんだけど、我慢しなきゃ。

オイラはなっちのまわりをぴょんぴょんとびまわった。
ねぇなっち、オイラの気持ち、伝わった?
ホントはね『がんばれー!!』って口で伝えたいんだ。応援したいんだ。
でも、なっち、オイラが言ってることわかんないもんね。

「わんっ!わんっ!」
少ししてなっちはオイラをだっこした。
「ありがとね。」

どういたしまして。
なっちにオイラの気持ち伝わったね。

11 名前:オイラのご主人様 投稿日:2002年09月21日(土)10時49分26秒
何日かたって、オイラはなっちのバイト先に行けることになった。
なんかねぇ、「一日限定看板犬」ってなっちがいってた。
でも、これで『後藤真希』ちゃん
なっちがゆーには『ごっちん』に会えるんだっ!
うれしいよっ!オイラ。楽しみで楽しみで
しっぽがさっきからぱたぱたふってとまらないよぉ。

でも、それほど楽しみなんだよ?なっち。


「やぐち、ここがなっちのバイトの店だよ。」
あっ!ここ知ってる!クレープ屋でしょ?
カオリ、いっぱい行ってたからしってるよ。


「やぐちぃ、ごめんね。やぐちはここでまっててね」
12 名前:オイラのご主人様 投稿日:2002年09月21日(土)10時57分12秒
オイラは、オイラの首の首輪からでてるリードを近くの木に縛った。
これじゃ、オイラどこにも行けないよ。
看板犬ってのも大変だね。

「やぐちは、元気があるから、縛っておかないとね。」
う〜・・・・・。なんだよ、それ。
「じゃあ、すこししたらまたくるからね。」
なっちは、エプロンをして、どっか行っちゃった。
そんなこと言ってもここからでもすぐになっちは、見えるんだけどね。


太陽にぽかぽかあたりながら、ひなたぼっこしてたら一人の女の人がきた。
「ねぇ、なっちぃ、この子がなっちの家の犬〜?」
その人は、なっちにむかって何か言ってる。
そうだよ、オイラ、なっちの家のわんこだよ?
「うん。そうだよぉ。かわいーでしょぉ?」
なっちの声が遠くから聞こえる。

「こんにちは、後藤真希だよ。よろしくね。
なっちと一緒にバイトしてるんだよ。」
え?『後藤真希』・・・・。『ごっちん』だぁっ!!

「わんっ!!わんっ!!」
13 名前:オイラのご主人様 投稿日:2002年09月21日(土)11時03分17秒
この人が『ごっちん』かぁ。かわいい人だね。なっち。
なっちもなかなかいい趣味ではないですか。

「あは。しっぽふってる〜。かわいいねぇ。ほんとに。」
あれ?いつのまにかオイラは、しっぽをふってた。
だって、嬉しかったんだよ。
「じゃあ、ごとー仕事あるから、またね。」
ごっちんは、オイラの頭をなでなでしてから、走って行っちゃった。


うにゃ・・・。なんか遠くから話し声が聞こえる。
なっちとごっちんだぁ。
話し声はだんだんこっちに近づいてきた。

「やぐち、やぐち。」
あれぇ?いつのまにおわったんだろ、バイト。
あ、オイラ寝てたんだぁ。

「やぐち、寝てたみたいだね。お日様、気持ちよかったのかな?」
うん。気持ちよかったよ。ひなたぼっこもしたしね。
たまにはこーゆーのもいいかもね。

「やぐち、今日はごっちんも一緒に帰るんだよぉ。」
えっ!?ホント!やったねっ!なっち。
14 名前:オイラのご主人様 投稿日:2002年09月21日(土)11時11分25秒
さっきから、なっちはごっちんと楽しそうにお話してる。
よくわかんなかったけど、なっちが楽しそうだったからいっか。

「なっち、なっち。」
「ん?なぁに?」
「あのね、実はごとーもわんこ飼ってるんだぁっ!」
「ええっ!?」
オイラも『ええっ!?』だよ。ごっちんの家のわんこ、見てみたいなぁ。
それは、なっちも一緒だったみたいで。
「ほ、ほんとだべか!?なっち、見たいべっ!」
なっちのクセ、驚くとなまりがでること。
なっち、なまってるよ。
「もちろん、いいよ。なっち、かわいいね。なまり。」
「あ・・・・。」
なっちは下をむく。恥ずかしかった?でも、なっちかわいーよ。
「ねぇ、なっち、今度遊ぼ!そん時に、わんこもつれてくる。」
「ええっ!?あ、もちろんいいよ。約束だよっ!」
「なっちは、来週の日曜日、平気?」
「平気、平気。じゃあ、1時にあそこの公園に集合だよ。」
「うん。いーよ。それじゃ、ごとーこっちだから。」
「わかった、それじゃ、日曜日に。」

そのあと、なっちはず〜っとはなうたを歌ってた。
でも、オイラも楽しみだな。新しいわんこの友達ができるんだもん。
いいやつだったらいいなぁ・・・・。
15 名前:世紀 投稿日:2002年09月21日(土)11時12分59秒
やぐちさんはわんこっす。
わんこのことそこまで詳しくありませんが・・・。
16 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月21日(土)12時10分06秒
やぐかわいい。ごっちんのわんこが気になる。
17 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月23日(月)00時55分35秒
シェパードとかだったり・・・。
18 名前:ななし 投稿日:2002年09月23日(月)18時00分17秒
題名を見て「矢口かっ!」と思い読みました。
いいっすね、わんこの矢口。かわいい。
19 名前:オイラとあいつ 投稿日:2002年09月29日(日)10時14分57秒
今日は朝から、なっちがそわそわしてる。
そりゃ、そうだ。
今日は、なっちの愛しのごっちんと初めて遊ぶ日なんだから。
オイラだって、楽しみなんだ。

だって、ごっちんもわんこを飼ってるって言ってたから。
最近、新しい友達のわんこなんかできてないから。

なっちはさっきから、髪の毛を梳かしたり、歯を磨いたりしてる。
オイラは、そんな心配いらないんだけどね。
そーゆーとこでは、わんこって楽だなーって思う。
はやく行きたいなぁ・・・・・。


―――
「や〜ぐ〜ちっ!」
んんっ?なっちがよんでる。
なんですか?なっちさん。
オイラは、顔をなっちのほうにむける。

「そろそろ行くよ?」
ほんとっ!?やったぁ。
なっち、やっと準備できたんだね。
遅いよぉ。オイラ、ずっとがまんしてたんだからね。
さぁっ!出発だぁっ!!


ここは公園。
ここで待ち合わせするんだって。
それにしても、ごっちん遅いなぁ・・・・。
なにやってるんだろ?
なっちもさっきからベンチに座ってる。
オイラはその下。
ちゃんとつながれてるけどね。
ごっちん、はやくこないかなぁ・・・・。
20 名前:オイラとあいつ 投稿日:2002年09月29日(日)10時29分24秒


「なっち〜!」
この声は、ごっちんじゃないかい?
遅いよっ!
「あ、ごっちんだ。やぐち、ごっちんが来たよ。」
うん。わかってるよ。なっち。
なっちはオイラのリードをもって立ち上がる。


あれ?
ごっちんのわんこ。




オイラと一緒・・・・。
そう。ごっちんのわんこは、ミニチュアダックスフンド。
オイラよりも大きめの。っていっても、オイラ、もともと平均より小さいし。
普通ぐらいなのかなぁ?

「ごっち〜ん。遅いよぉ。」
「ごめんねぇ。なっち。寝坊しちゃって・・・・・。」
なっちは、苦笑い。
もしかして、いつものこと?

「それにしてもごっちん。種類まで同じとは・・・。」
やっぱりなっちも考えてたみたい。
「そうだよ〜。ごとー、秘密にしてたけどね。驚かそうと思ってぇ・・・。」
今、気付いたけどごっちんの笑った顔、かわいい。


「ねぇなっち、昨日ね、遊園地の割引券もらったんだ。だから、一緒に行こ?」
「ほ、ほんと!?うんっ!行くっ、行こうよ。」
「そうと決まれば即行動!・・・・・あっ、でもこのわんこたち、どうする?」
そうだよ。オイラたち忘れないでよ。オイラ、遊園地なんて行けないし。
21 名前:オイラとあいつ 投稿日:2002年09月29日(日)10時35分36秒
「じゃあさ、1回なっちの家に戻ってやぐち達、おいてくる?
ほら、やぐちたちだってわんこ同士で遊ばせとけばいいんじゃないかな?」
おおっ!なっち、頭いいねぇ。
オイラも、久しぶりにわんこ同士で遊びたいっ!!
「ほら、やぐち、しっぽふってるしさ。」
うんっ!オイラ、はやく遊びたいよ。だからはやくなっちの家に戻ろっ!
「そだね。じゃあ、なっちの家、いこっか?」
「うん。」


―――
「じゃあやぐち、おとなしく待っててね。」
「わんっ!!」
わかったから、はやく遊びに行ってきてよ。ね?
なっちだってせっかくのごっちんと2人っきりだもんね。

「それじゃあ、いってくるね。」
いってらっしゃ〜い。
いつもならちょっと寂しいんだけど、今日は嬉しい。
ごっちんに感謝。


22 名前:世紀 投稿日:2002年09月29日(日)10時38分51秒
ちょっと更新。
また今日中に更新できたら・・・・と。
>16様
ごっちんのわんこ、このあとお名前がでます。
>17様
シェパードですか。たぶん、シェパードはでないです・・・。
>18様
わんこのやぐち、かいてみたかったのです。
23 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月29日(日)22時15分08秒
ごっちんのわんこの名前が気になる・・・。
続き楽しみです。頑張って下さい!
24 名前:ななし 投稿日:2002年09月30日(月)01時41分40秒
読んでると顔がニヤけてしまいます。
ほのぼのしてていいです。はい。
25 名前:オイラとあいつ 投稿日:2002年09月30日(月)16時20分16秒


―――
さてと。
なっちとごっちんが遊園地に遊びに行った。


どうしよ?
やっぱ、話し掛けるべきだよね?


・・・・・オイラ、なんできんちょーしてるんだろ?
そっ、そうだよ。いつもみたいに、笑顔で話し掛ければいいんじゃないかっ!



やっぱりきんちょーするなぁ・・・。
なんでだろ?
久しぶりだからかな?

さっきからおもたーい空気か漂ってる。
なんか、ヤな空気だ・・・・。


26 名前:オイラとあいつ 投稿日:2002年09月30日(月)16時33分31秒
ちょっとだけむこうのわんこの様子をみてみる。
オイラよりもちょっと大きめな体。
いいなぁ。オイラもあのくらい大きくなりたかったなぁ・・・・・。
やっぱ食べるものが違うのかな?


むこうのわんこは目とかも、平均並。
なんか、羨ましい。

さっきからずーっと外の景色を眺めてる。
楽しいのかな?
オイラは、毎日見ててつまんないんだけど。
いっぱい建物が建っててさ。


つまんないよぅ・・・・・。


「あのさぁ・・・・。」
オイラは、むこうのわんこに話しかけた。
一回話し掛ければ後は楽なんだ。
気が合えばすぐに仲良くなれる。

「なに?」
むこうのわんこは、目はこっちにむけないで、外の景色を眺めながら言った。
なんだよぅ。話しかけたんだから、こっちぐらいむけばいいのに。

「ねぇ、名前、名前なんてゆーの?」
まずはやっぱ、名前からだよね。
名前がわかんなきゃ、困るしね。


「紗耶香。市井紗耶香。」
いちい・・・さやか?女の子なんだぁ。
27 名前:オイラとあいつ 投稿日:2002年09月30日(月)16時45分18秒
「あたしが言ったんだから、あんたも名前教えてよ。」
うっ・・・・・。なんかムカツク。
『あんた』はないでしょ?『あんた』は。

「なんだよぉ。『あんた』ってぇ。」
「だって、名前知らないもん。」
ホントにムカツク〜!!
ちょー生意気。
こんなヤツと、友だちになんかなりたくない。
いくら、オイラの心がひろいからって
こんなヤツとだけは仲良くなりたくないねっ!
うん。死んでも絶っ対ヤダ。
でも、今ここにいるのはその絶っ対友だちになりたくないムカツクヤツだけ。
基本的に喋るのが好きなオイラ。
こいつしか話し相手がいないのならしょうがない。

「矢口真里だよ。」
「ふ〜ん。」
なんだよっ!!この市井紗耶香ってっ!!
すっごいムカツク。こんなわんこ、今まで初めてだ。
あ、違う。そういや、散歩途中に吠えてきたわんこ、あいつもヤなやつだった。
いくらオイラが、かわいくてセクシーだからって、嫉妬することないじゃんか。

あれ?確か『紗耶香。市井紗耶香』って言ったよね?
名字があんの?もしかして、オイラと一緒?
28 名前:オイラとあいつ 投稿日:2002年09月30日(月)16時57分17秒
「ねぇねぇっ。あのさ・・・そのぉ、紗耶香って名字と名前があんの?」
オイラの場合、『やぐち』が名字で『まり』が名前。
じゃあ、紗耶香は『いちい』が名字で『さやか』が名前ってこと?

「なに勝手に、あたしの名前、呼び捨てでよんでるわけ?
別にいいけどさ。あたしは、もとは市井さんの家で飼ってもらってたの。
だから、『市井』そのあとに、後藤の家に来ただけ。」

「ところで、あんたはここにずっと前からいたわけ?」
さっきから、紗耶香はオイラをバカにしたように話してくる。
「『あんた』じゃなくて、やぐちだよっ!それに、オイラは
もうちょっと前にここにきたの。」

さっきから、生意気なことばっかいうこの目の前のヤツ。

なっちぃ、はやく帰ってきてよぅ・・・・。
でも、なっちは今、ごっちんと二人で、デート。

あ、もしかしたら、この目の前のムカツクやつなら
ごっちんのことなにか知ってるかもしれない。
あんまりこいつになにか聞くってゆーのはヤダけどね。
29 名前:世紀 投稿日:2002年09月30日(月)17時02分20秒
昨日のうちに更新できなかった分、今日更新。
少しですけど・・・・。
裏話・・・・。
実は、もうちょっと前まで、いちーさんがやぐちさんに一目ぼれにしようと
思っていたのです・・・。んで、最後にはさやまりに・・・。って感じ?
よく考えたら、さやまり嫌いな人いるかなぁーって思って・・・・。
犬猿の仲にしてみました。

>23様
やっと名前、でてきましたぁ。
>24様
ほのぼのしか書けないというアホな私なんです・・・。
痛い系?とかって書けないんですよぉ。
30 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月30日(月)19時33分14秒
さやまり、大好きなんですけど・・・。
これからの展開に期待します。
頑張って下さい!
31 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月01日(火)19時15分22秒
なちまり発見!!
と思ったら「なちまり」ではないようですね。
というコトで、さやまりに発展するコトを期待します。
32 名前:LOVE 投稿日:2002年10月02日(水)20時39分14秒
タイトルにひかれて読んでみたらハマっちゃいました。
なちまり好きのおいらですが、この小説はGOODです!矢口が犬ってのもいいっす!
33 名前:オイラとあいつ 投稿日:2002年10月03日(木)18時25分21秒
「あのさぁ・・・。」
「なに?」
目の前のムカツクやつは冷たい目でこっちを見る。
こいつ、もうちょっと愛想よくてもいいのに。
どーゆー教育うけたんだよ。
育ちが悪いやつってホント、きらい。
なんてゆーか、見てるだけでムカツク。
あんまり見たくないんだけどさぁ。
さっきからムカツクやつはさ、外の景色ばっか見て
こっちなんかむいてもくれない。

「紗耶香のご主人さぁ、なっちのことなんか言ってた?」
「なっち?」
そういえば、まだなっちのこと知らないんだっけ。
「なっちってゆーのは、オイラのご主人様だよ。」
「あぁ。あいつね。」
「あいつってなんだよぉ!なっちのこと、バカにしたろ!」
なっちのこと、バカにするなんてオイラ、ぜったいに許さないっ!!
なんたって、なっちはオイラの大切な大切なご主人様だから。
いくら、2ヶ月しか一緒にいなくてもね。
それにオイラ、なっちのこと大好きだもん。
34 名前:オイラとあいつ 投稿日:2002年10月03日(木)18時45分13秒
「別に。何も言ってないよ。」
オイラがなっちのことを考えてたら
よこからそんな言葉がオイラの耳に入ってきた。
なんだぁ。
ごっちん、なんにも言ってないのぉ。
なんか言ってくれてもいいのに・・・・。
好きじゃないのかなぁ。



でも、嫌いなら一緒になんか遊ばないよねっ。
やっぱり、何事もプラス思考じゃないとね。
人間生きてけないよ。
・・・・・・犬だけどさ。

「あ。」
何か思い出したように、ムカツクやつが声をあげる。
「なんだよ。」
「やぐちこそなんだよ。あたしがせっかく思い出したのに。」
あれ?今、『やぐち』ってよんだ。はじめてじゃない?
なんか、嬉しい。

「それで?思い出したってなにを?」
「後藤、言ってた。たしか
『かわいくていいこで年上って感じしない』って。」
「ほんとにっ!?」
「うそついてどうすんの?」
「うっ・・・・・・・。」
35 名前:オイラとあいつ 投稿日:2002年10月03日(木)18時50分30秒
そりゃさ、うそなんてつかないだろうけど。
でも、嬉しくてさ。
よかったね、なっち。
なっちには、まだチャンスがある。
オイラは心の中でなっちにそっとつぶやいた。
ほんとだったら今すぐにでも、なっちに伝えてあげたいんだけど。
やっぱり、犬と人間だから。
ちょっと言葉がちがくて。
人間の言葉、とってもとっても難しくて。
いくらオイラが頭よくても、人間の言葉はわかんなくて。
ごめんね、なっち。
でも、できる限りのことは、応援するよ?
だから、なっちも頑張って?


36 名前:オイラとあいつ 投稿日:2002年10月03日(木)18時56分23秒
それから、紗耶香とだって頑張って話題見つけて、たくさん喋った。
・・・・笑うことは少なかったけど。
でも、今日わかったことがいっぱいあった。



そりゃ、ごっちんのこともだけど、紗耶香のことも少しわかった気がする。
たとえば、オイラより年が1つ下だとか。
こんなムカツクやつでも、ちゃんとご主人様のことは大切に思ってるみたいで。
はじめて会ったときよりも、好きになれた・・・・と思う。



で、でもっ、ちょっとだけだからねっ!!
誤解しないでねっ!!!
37 名前:オイラとあいつ 投稿日:2002年10月04日(金)16時22分12秒
「ただいま〜。」
「おじゃましま〜す」

あ!どうやら、なっちとごっちんはお帰りのご様子。
それは、紗耶香も気付いたみたいで。
紗耶香は、ぴょんと立ち上がる。
あ、ちょっとかわいいかも。


「やぐちぃ、ただいま〜。」
おかえり、なっち。
なっちはオイラをだっこした。
急に見えるものがかわる。

あれ?なっちなんか、ふくろもってる・・・。
なに、それ?
オイラはそのふくろをじーっと見つめた。

「ん?なに、やぐち?あぁ、このふくろ?」
うん。そのふくろ、なにが入ってるの?
「これはねー、帰りにごっちんと一緒に、店に行ってやぐちたちの
ごはんを買ってきたんだぁ。ごっちんのオススメなんだって。」
ごはん!?やったぁ。どうやら、新しいごはんらしくて。
はやく食べてみたいなぁ・・・・・。


「なっち、ごとーたち、そろそろ帰るね。」
ごっちんも、紗耶香をもちあげる。
「うん。わかった。途中まで送ろうか?」
「いいよいいよ。じゃあね、なっち。」
「うん、ばいばい。ごっちん」
38 名前:オイラとあいつ 投稿日:2002年10月04日(金)16時31分24秒
ごっちんたちが帰って少し後。
すこし、疲れたなぁ、なんて思っていたら。

「ねぇ、やぐち。」
今度は膝の上にオイラをのせる。
それで、オイラの頭をなでる。

なぁに?なっち。

「実は今日ね、ごっちんと、手をつないで帰ってきたんだよ。」

ほんとに!?なっち、よかったじゃん。
なっちも頑張ったんだねぇ。

「ごっちん、笑って『いいよ』って言ってくれたんだぁ。」
なっち、嬉しそう。
オイラは、なっちの幸せならオイラも嬉しいよ。

きっとごっちんは、なっちのこと嫌いじゃないね。
むしろ好きなんだよ。
その『好き』が恋だったら嬉しいなぁ・・・・。
39 名前:世紀 投稿日:2002年10月04日(金)16時37分09秒
ちょい、更新。
今、さやまりどうしようか悩んでます。
どうしましょ?


>30様
私もさやまり好きなんですよぉ。
結構。
さやまりにしちゃいますか?
>読んでる人@ヤグヲタ様
すいません。なちまりでは、ないです。
この1人と一匹は、友情?家族愛、みたいな感じですね。
>LOVE様
私もなちまり、好きなんですよ。
この小説を誉めてくれるなんて、光栄です。ありがとうございます。
やぐちがわんこって一回書いてみたかったんです。
40 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月04日(金)20時15分12秒
さやまりにしちゃいましょう!
41 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月04日(金)21時04分15秒
矢口わんこ メッチャ(・∀・)イイ!!
ちなみに自分もさやまり希望です!
42 名前:ななし 投稿日:2002年10月04日(金)22時25分30秒
さやまり…やっちゃえ!さやまりだいすっき!
43 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月06日(日)10時33分09秒
さやまりカモォン!!
44 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月07日(月)16時54分04秒
今日も、なっちはバイト。
あーあ。つまんないよぅ。
毎日、毎日そうなんだけどさ・・・・。
いい加減なれなきゃいけないよね。
でもさぁ、慣れてもヒマなんだよねぇ・・・・・。
なんか、楽しいことないかな。



ひなたぼっこでもするか。
気持ちいいんだよね。
ひなたぼっこ。
オイラは、ちょうど日のあたるところに移動する。
ぽかぽかと日にあたる。
あったかい・・・・・。




うぅ・・・・・。
眠くなってきた・・・。
寝よ。
おやすみなさぁい。




45 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月07日(月)17時09分43秒
―――
「・・ち、やぐちっ!」


んぅ・・・・・。
なんだよぉ。
なっち?
その声は、なっちじゃない?



オイラは重たい目を少しあける。



・・・・あ、なっちだぁ。
「やぐち、寝てた?ごめんね、起こしちゃった?おはよ、やぐち。」

全然平気だよ。おはよ、なっち。

「ねぇ、やぐち聞いてくれる!?」
急になっちが怒る。
めずらしいよね、なっちが怒るの。
そんなにヤなことがあったの?
オイラ聞いてあげるよ?
ねぇ、話してよ、なっち。



ぱたぱた・・・・。
オイラは、しっぽをふる。
46 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月07日(月)17時28分58秒
「わかってるよ、やぐち。」
へへへ・・・。
最近、わかったこと。
オイラがしっぽをぱたぱたふると
なっちがいろんなこと教えてくれる。
今日、何があったとか、ごっちんのこととかね。


「今日ね、新しいバイトの子が来たの。
その子がね、ごっちんの幼なじみなんだって。
それでね、それでね、すっごい仲いいの。」

なっち、嫉妬してるんだ。
かわいいね。

「やぐち?聞いてる?」

聞いてるよぉ。失礼だなぁ。

「あっ!そうそう。明日さ、やぐちさ、バイトまた来ない?
『一日限定看板犬』なんだけど、やる?」

んん〜。どうしようかな。そのなっちのライバルの子も見たいし、行こうかな。

「わんっ!」
行くよっ!

「えっと、行くのかな?」
うんっ!
ぱたぱた・・・・。
また、しっぽをふる。

「わかったよ。やぐち。じゃ、明日ね。」
うんっ!!
47 名前:世紀 投稿日:2002年10月07日(月)17時31分58秒
マジ、ちょい更新です。
>40様、41様、ななし様、読んでる人@ヤグヲタ様
みなさん、まとめちゃってすみません。
さやまりにするかどうかは、なんとか決まりました。
結果を楽しみにまっててください。

48 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月10日(木)18時28分03秒
楽しみに待ってまーす♪
49 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月12日(土)10時38分28秒
やった、やったぁ。
今日もなっちと一緒にバイトに行けるんだ。
お出かけだぁ。


今日はいつもよりもはやく目が覚めちゃった。
なっちのライバル、どーゆー人なんだろ?


「やぐち、今日起きるの早かったねぇ。やぐちも早く行きたいの?」
なっちは、自分の用意をしながらオイラに話し掛ける。

オイラ、超楽しみなんだから。
なっち、早く行こうよ。

しっぽをぱたぱたふる。

「やぐち、そんなにしっぽふっても早く行かないよ。
いつも通り家をでればいーの。」

えー!?やだよ、やだやだやだやだ。
早く行きたいもんっ!



すねてやる。

50 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月12日(土)10時44分50秒

ぷいっ。




とてとてとて。




ぴょん。



オイラは、後ろをむいてなっちのベットに飛び乗る。
それで、壁のほうをむいて、まるくなる。


どうだ。
オイラ、怒ってるんだから、早く行こうよ、なっち。



「ちょ、やぐちぃ。」

へへっ。なっち困ってる。
オイラを怒らせると、恐いんだぞ?


なっちのベット、気持ちいい・・・・。
こんないいところでいつもなっちは寝てるの?
ずるいよ。



「ねぇ、やぐち。そこにやぐちがのると
毛がついちゃうでしょ?だから、おりて。」


やだよ。おりてなんかやんない。


『おいろ』って言われておりるばかなんていないよ。
51 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月12日(土)10時49分52秒
「やぐち、おいてっちゃうよ?」

うぅ・・・・。なっち、それずるいよ。
おいてかないでよ。オイラだって行きたいもん。



「やぐち、もう行くからさ、おりてきてよ。」
そういいながらオイラを持ち上げる。
強制じゃんか。


「ね?」


くっそー。なっち、かわいいじゃんか。
そんな目で見ないでよぉ。
なっち、かわいすぎ。



わかったよ、もう降参。
行くってば。


オイラは、ぴょんとなってのうでから飛び降りる。
それからすぐにドアの近くまで行く。


「やぐちはいいこだね。それじゃ、行こっか?」

うんっ!
52 名前:世紀 投稿日:2002年10月12日(土)10時52分02秒
ほんとに、ちょっとだけ更新。
また、休みのうちには更新するつもりです。

>48様
ありがとうございます。
できるだけ速く更新したいです。
53 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月12日(土)14時19分48秒
すねるやぐちが強烈にカワイイ!!
54 名前:LOVE 投稿日:2002年10月12日(土)23時59分55秒
なっちと拗ねるやぐちのやりとりがかわいい。
読んでると絵が浮かんで幸せになれます…(笑)
55 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月13日(日)00時54分01秒
やぐち可愛いなぁ〜。
さやまりも期待してます!
56 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月13日(日)15時27分00秒

「やぐち、ここでおとなしくまってるんだよ?」
「わんっ。」



やっとなっちのバイト先のところについたらすぐにつながれた。
オイラ、おとなしくしてるのに・・・・・。


でもさ、返事しなきゃさなっちうるさいもんね。


やっぱ、オイラって頭いいね。
さすがだね。


つながれるの、好きじゃないんだよなぁ。






オイラの、つまんない一日が始まった。


57 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月13日(日)15時32分31秒
あれ?
今日なんで、ここに来たんだっけ?



そだ。
なっちのライバルを見にきたんだ。


はやくこないかな〜。



ぼーっとしてたら、近くをわんこが通る。
ご主人様につれられて。



またオイラとおんなじ、ミニチュアダックスフンドだ。
でも、紗耶香じゃないね。
だって、ご主人様がごっちんじゃない。
それに、紗耶香よりもすこしおっきい。


58 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月13日(日)15時50分30秒

ん?あれ?
そのわんこのご主人様、なっちとしゃべってるよ。


知り合い?
だれだれ??


あっ。

その人は、クレープ屋の中に入っていく。


あれぇ?
お客さんじゃないのかな?





もしかしてっ!!
あの人って、なっちのライバル?
だってあの店、働いてる人、少ないもんね。


もっと顔見とけばよかった。


今さら後悔。


だってさ、しょうがないじゃん。
そのなっちのライバルらしき人がわんこつれてるんだから。



オイラだってわんこだもん。
わんこに興味があるのっ!
しかもおんなじ種類だったしさぁ。
もう人間のとしで19才だよ。
恋愛だってしたいもん。
59 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月13日(日)16時00分13秒

はぁ。
オイラも恋したいなぁ・・・・。
なっちだって恋してるしさ。



だれかいいわんこいないかな〜?



いいわんこ募集中。



なんちゃって。
へへへ。


むこうから、一匹のわんこがとことこ歩いてくる。
だれだぁ?


さっきのわんこだ。
なっちのライバルらしき人のわんこ。
しかもなんとミニチュアダックスフンドとは・・・・。




だんだんこっちに近づいてくる。


「こんにちは〜。」

そのわんこはにこにこしながらあいさつをする。
ふぇ?オイラ?

「こ、こんにちは。」
近くで顔を見るとけっこうかっこいい。

60 名前:世紀 投稿日:2002年10月13日(日)16時09分03秒
少し更新です。
ほんとに少し。
すいません。

>読んでる人@ヤグヲタ様
すねてるやぐちさん、好きです。
>LOVE様
想像できるなんて、すばらしいですっ!!
>55様
さやまり、どうなるかは完全にきまったわけではないんですが
できる限りは頑張ります。
61 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月14日(月)13時45分37秒
新わんこ登場ですね。
いったい誰なんだろう・・・?
62 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月14日(月)15時21分46秒

「えっとさ、誰?」

オイラは、そのわんこに当たり前だけど質問する。
「あ。よしざわひとみって言います。」
「『よしざわひとみ』?」
オイラは、言われた名前を繰り返す。

「そうです。『よっすぃ〜』ってよんでくれたら嬉しいです。」
「うん。わかった。じゃ、『よっすぃ〜』にする。」
「ありがとうございます。えっと、あなたの名前は?」

あっ。オイラとしたことが言ってなかった。
「オイラ、『やぐちまり』ってゆーの。」
「やぐちさんですか。」
「うん。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」




会話がとまる。


「よっすぃ〜はどうしてここにいるの?」
さっそく今覚えた『よっすぃ〜』をつかって質問する。
「よしざわのご主人がですね〜、あそこのクレープ屋で働いてるんですよ。」
よっすぃ〜は、目でそのご主人様が働いている店を見る。
なっちが働いてる店じゃんか。
「オイラのご主人様もそこの店で働いてるよ?」
「ほんとですかっ!?」
「うん、ほんと。」
うそついてどーすんのさ。
でも、いいやつみたい。
紗耶香と違って。

63 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月14日(月)15時32分30秒

「もしかして、そこで店番してた人?」
よっすぃ〜は驚きながらも話を続ける。
「うん。『なっち』ってゆーの。よっすぃ〜のご主人様はなんて名前?」
「『梨華ちゃん』です。『石川梨華』です。」
石川梨華?

「ねぇ、よっすぃ〜その人ってさ、どーゆー人?」
もしかしたら、なっちのライバルの情報がゲットできるかもしれない。

「あのですね〜、梨華ちゃんはアニメ声なんですよ。」
「アニメ声?」
なに、それ?
よくわかんないんだけど。

「まぁ、簡単に言えば声が高いってことですよ。」
「ふ〜ん。そんなに高いの?」
「もちろん。梨華ちゃんに言っちゃ悪いんですけどね、色黒なんですよ。
ちなみにこのバイトに入ったのは最近で
幼なじみのごっちんがいたんですよ。」
「ええっ!?」
やっぱり、そうだったんだ。
『梨華ちゃん』だったんだ。
なっちのライバル。


会ってみたいなぁ。


64 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月14日(月)15時43分57秒

「オイラ、その『梨華ちゃん』に会いたいんだけど。」
「いいですよ。でもやぐちさん、つながれてるじゃないですか。」

そうなんだよ、オイラつながれてるんだよ。
なんでよっすぃ〜はつながれてないのさ!?
ずるくない!?

「なんで、よっすぃ〜はつながれてないのさ。」
オイラは文句を言う。
「そんなこと言われてもですねぇ・・・・。
よしざわ、この辺は慣れてますから。」

よっすぃ〜困ってる。
いいなぁ。オイラ、どこにもいかないのに。

でもよっすぃ〜に文句言ってもしょうがないんだよね。

「でも、梨華ちゃんときどきよしざわのこと見にきますから。」
「じゃあ、そのときに見られるのっ!?」
ちょっと興奮気味なオイラ。
『梨華ちゃん』が見れるんだよ?


しっぽもいつのまにか、ぱたぱたと・・・。

「梨華ちゃんがこっちにくるときは見れますね」
「じゃあ今日はずっとよっすぃ〜のそばにいる。」
オイラ、決めたもんね。絶対、離れないでなっちのライバルさんでも見るかな。

65 名前:世紀 投稿日:2002年10月14日(月)15時49分19秒
ちょっとづつ更新していきます。
土、日ぐらいにはできるだけ大量更新したいつもりです。


>読んでる人@ヤグヲタ様
新しいわんこはよしざーさんです。

よしやぐ・・・?

66 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月15日(火)13時45分35秒
やぐよし?さやまり?
自分的にはどっちもOK(w
とにかく、やぐちにも幸せを与えてあげて下さい。
67 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月16日(水)01時24分08秒
なんか今までにない感じでいいですね!
犬の皆さんがかわいい・・・。
個人的になちごま好きなんで・・・。なちごまになると嬉しいんですが(v
68 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月16日(水)18時19分25秒
いいっすね…わんこの視点みんな可愛い。

新しいわんこはヨシですか…
てっきりご主人と逆かと思ってたので
やられますた(笑)
69 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月18日(金)17時48分22秒

う〜・・・・・・。
まだかよぉ。
はやく来てよぉ。



太陽がちょうど一番上まで昇った。


オイラのとなりにいるオトコマエのかっこいい顔のわんこは
太陽が昇ってる途中にいつのまにか、夢の中。


寝顔は、ちょっとかわいいかも。


寝顔はちょっとかわいいオトコマエのわんこのご主人様がどうしても
見たいからこうして一緒にいるわけなんですけども。



どうして来ないんだろ・・・・・。
となりでわんこが寝ていてよけいまぶたが
重たいんだけど、寝るわけにはいかない。


70 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月18日(金)17時54分26秒

ときどき子供が近寄ってきて頭をなでなでしたりする。
『なでなで』っていっても頭の毛をぐしゃぐしゃにする
子が多くて困るんだけど。


でも、それはそれでいい眠気覚ましになる。
それに、ぐしゃぐしゃにした後、必ず『かわいいね』って
言って今度は優しい手でなでなでしてくれる。


ちょっと幸せに浸ってる感じ?


ときどきオイラを木から離そうとする子もいるんだけど
どうしてもほどけない。
少ししたら諦めてさわるだけとかね。



オイラ、子供好きだもんね。

71 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月18日(金)17時59分56秒


「よっすぃ〜・・・・。」

遠くから甲高い声が聞こえる。
なんか、うるさいよ。
よくこの声で人の迷惑にならないよね。



あっ。失礼か。ごめんなさい。

でも今『よっすぃ〜』って言ったよね?
あの甲高い声は『アニメ声』ってゆーんじゃないのかな?
やっぱり、もしかして・・・。

ね、そうでしょ?よっすぃ〜?
オイラは、となりのすっかり夢の中のオトコマエくんに心の中で話しかける。


いつまで寝てんの?
起こしたほうがいいのかなぁ?
でも、このオトコマエくんがここにいてくんなきゃ困るんだよね。
『梨華ちゃん』がここにきてくれないとね。
つながれてるし。

ごめんね、よっすぃ〜。

72 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月18日(金)18時06分25秒

「あれ?よっすぃ〜?」

きたきた。
うわっ。
ほそっ!!

木の陰から出てきたのは、アニメ声で色黒
よっすぃ〜の言ったとおりだったけど・・・・・。


ものすごく細い人だった。
それに、かわいい子だね。


よっすぃ〜がにんげんだったらけっこう
お似合いのカップルになれるんじゃない?



オイラは?
オイラがにんげんだったらなっちとお似合いのカップルになれるかな?
なっち、かわいいからな。
オイラはカッコイイ彼氏?



おっと。話がズレたね。
『梨華ちゃん』だった。
73 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月18日(金)18時17分07秒

もう近くまできてる、『梨華ちゃん』

「よっすぃ〜、寝てるの?」
うん。そうなんだよ。寝てるんだ、よっすぃ〜。
喋れないけど心で話す。


「えっと、キミは?」
『梨華ちゃん』はちらりとこっちを見る。
オイラ?
オイラはやぐちまりだよ。よろしくね、『梨華ちゃん』



そんなこといっても通じないんだけどさ。


「もしかして、安倍さんの犬?」
『梨華ちゃん』はしばらく考えてから結論をだした。

「わんっ。」
ぱたぱた・・・。声もだしたし、しっぽもふる。
気付いた、よね

「・・・そうみたいだね。だって、ミニチュアダックスフンドだし
小さめな体だし、木につながれてるし。『やぐちまり』って名前でしょ?」

得意げな顔でオイラをだっこしながらオイラに問う。

「わんっ、わんっ。」

「あたし、『石川梨華』っていうの。よっすぃ〜の主人なの。よろしくね。
よっすぃ〜寝てるみたいだし。終わったらまたくるね。バイバイ。」

うん、バイバイ。梨華ちゃん。またね。
よっすぃ〜のは伝えといてあげるからね。

74 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月18日(金)18時28分47秒

なんだ。いい人じゃんね。梨華ちゃん。

オイラは梨華ちゃんの後姿を見ながら思う。
かわいい子だったし。


よっすぃ〜もなかなかいいご主人様ではないですか。
ま、なっちほどでもないけどね。


―――
「ふぁ〜・・・・・。よく寝たぁ。」
梨華ちゃんがこっちにきてどのくらいたったのかな?
ん〜。太陽ももう下がり始めたし・・・・・。


そんなとき、いままで夢の中だったオトコマエくんはやっとお目覚め。

「おはようございます、矢口さん。」
どうやら目はぱっちりみたい。

「おはよ、よっすぃ〜。でも朝じゃないよ。お昼過ぎ」
「あれ?そんなに寝ちゃいましたか・・・・。」
マイペースだねぇ・・・・・。
平和って感じがするね、よっすぃ〜。


「さっきね、梨華ちゃんきたよ。」
『さっき』ってほどじゃないけどね。
75 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月18日(金)18時39分39秒

「ええっ!?」
いままでのんきだった顔が一瞬のうちに変わる。
あーあ。オトコマエの顔が台無しだよ?
もっとカッコイイ顔しなくちゃね。

「いつきたんですか!?」
まだ驚いて、パニックになってる。

「よっすぃ〜、落ち着いて。」
よっすぃ〜を落ち着かせないとうるさいからね。
よっすぃ〜は少し落ち着く。


「梨華ちゃん、怒ってなかったよ?
なんかね、『またバイトが終わったらまたくる』って言ってた気がする。」
「そうですか。じゃあ、まってます。」
「うん。オイラもなっちを待ってるし一緒に待ってよ?」
「はい。」

よっすぃ〜も好きなんだね。ご主人様。
ご主人様がキライなわんこなんてちょっと辛いもんね。
オイラもご主人様、好きだよ。


なっちは?
なっちはオイラのことどう思ってるの?
大好きだったら、嬉しいなぁ。
へへへ。
76 名前:世紀 投稿日:2002年10月18日(金)18時44分58秒
テストがもうちょっと前に終わりました。
それにしても・・・・まだ英検が残ってるのです・・・。
逝きそう・・・・。

>読んでる人@ヤグヲタ様
やぐちさんも最終的には幸せにしてあげます。
ほのぼの系にしたいので・・・。
>67様
なちごまですね。
まだどうなるかは秘密ですが・・・・。
みなさんを幸せにしたいです。
>68様
よしこさんはわんこです。
迷ったのですが・・・・。
なっちさんのライバルでごとーさんって言ったらいしかーさんが頭に・・・。

土、日のどっちかに更新予定です。
77 名前:LOVE 投稿日:2002年10月19日(土)10時44分33秒
読んでたら、幸せな気分になれました。
やっぱりやぐちわんこは可愛いっ!!
78 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月19日(土)14時43分58秒

空がオレンジ色に染まりはじめた。
きれい・・・・・。


「よっすぃ〜、空、きれいだね。」
ちょうど空を見上げていたよっすぃ〜の話しかける。

「はい。ものすごくきれいですよね。よしざわ
この時間の空が一番好きなんです。」
よっすぃ〜、嬉しそう。
オイラもこの時間の空、好きだなぁ。


「もうすぐ梨華ちゃん帰ってきますよ。
だから安倍さんももうすぐ帰ってくるんじゃないですか?」
よっすぃ〜は、顔をオイラのほうにむける。

もう公園にいた子供たちも姿を消し始めていた。
子供たちがいない公園はすこし、寂しそう。
公園に子供がいるときはうるさいなって思うんだけど
いなくなるとやっぱりちょっと子供たちが遊んでいた時間が恋しくなる。
79 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月19日(土)14時54分11秒

「なっちもだいたいこの時間に帰ってくるの。一緒の時間かな?」
「たぶん、そうだと思いますよ。誰もいない公園で
クレープ売っても意味ないじゃないですか。・・・
『くれーぷ』でいいんですよね?
あの黄色の生地でまいてあるおいしそうな食べ物・・・・。」
よっすぃ〜は遠い目でどっかを見てる。
なんか、カオリみたい。
ちなみにカオリってゆーのは、オイラの前のご主人様。
カオリもいいご主人様だったよ。
『交信』ってゆー不思議なことをときどきするけど。

「一回食べてみたくないですか?よしざわ、食べてみたいです。
もっと欲を言えば、梨華ちゃんがつくったやつがいいですね。」
よっすぃ〜、オヤヂ。・・・・・違うよ、オヤジだね。
日本語、間違えちゃったよ。
80 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月19日(土)15時03分32秒

「オイラも食べてみたいな。」
オイラはぼそっ、とつぶやく。
「やっぱりやぐちさんも食べたいですよね?おいしそうですよねぇ・・・。」
あ、よっすぃ〜、また遠くに行っちゃてる・・・・・。
一人でぶつぶつなんか言ってる。
何言ってるんだろう?
ちょっとへんなとこあるのかな?よっすぃ〜って。



「やぐち〜。」
なっちだ!!
なっちだ、なっち!

「よっすぃ〜。」
あれれ?
梨華ちゃんも一緒ではないですか、そこのオトコマエくん。

「よっすぃ〜、梨華ちゃんもきたみたいだよ?」
「はいっ!わかってますよぉ。よしざわ、気合入っちゃいます!」

はぁ?なに言ってんの?
なんで、気合?



やっぱ、よっすぃ〜はへんてこだ。
81 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月19日(土)15時13分23秒

「じゃ、よしざわ、先行きますんで。」
そう言って、よっすぃ〜は一瞬のうちにびゅんって
愛しのご主人様の元へと、とんでいった。



オイラだってほんとはなっちの元へと行きたいんだよ?
それなのにさぁ、なっちったら木につないじゃうからさ、行けないわけよ?
辛いね。


「や〜ぐ〜ちっ。」
なっちがきた。
そしてそのとなりには、梨華ちゃんと
愛しのご主人様に幸せそうな顔してだっこされた、オトコマエくんの姿が。
また、オトコマエくんの顔は、崩れてる。


なっちは、オイラを木から解放してくれた。
オイラはなっちにだっこされる。
またしっぽは、ぱたぱた。


「かわいいね〜やぐちは。」
なっちは優しい目でオイラを見て頭をなでなでする。
なっちの優しい目、大好きなんだ、オイラ。


「さ。帰ろっか?」
うん、いいよ。なっち。
82 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月19日(土)15時22分02秒

「梨華ちゃん、なっちたち帰るね。」
「あ、はい。あたしは、よっすぃ〜の散歩させますから・・・・。」


愛しのご主人様の腕の中で幸せそうにしっぽをふる。
そんなに好きなんかい?キミは。


ま、オイラもご主人様のこと大好きだけどね。


「そのわんこがさっき話したよっすぃ〜?」
なっちが梨華ちゃんに聞く。
「そうです。よっすぃ〜です。かわいいでしょ?」
梨華ちゃんは、よっすぃ〜をちょっともちあげる。

「うん。かわいいね。おんなじ種類だしね。」
「そうですよね。それじゃ、よっすぃ〜を散歩させるので。それじゃあ。」

梨華ちゃんはなっちにかるくあいさつして、オイラの頭をなでなでしてから
よっすぃ〜の散歩コースへ歩いていった。

「やぐち、なっちたちも帰ろ?」
うん。こんどこそかえろーね。
83 名前:オイラのご主人様のライバル 投稿日:2002年10月19日(土)15時27分27秒

―――
「ただいま〜。」


ふぅ、とため息をしながらなっちは、かばんをおく。
それでオイラをまた膝の上にのせる。
なっち、オイラを膝にのせるの、好きなんだって。あったかいから。

オイラもなっちの膝の上、好き。

「ねぇ、やぐち。あの子が梨華ちゃん。けっこういい子なんだよね。
きらいじゃないんだけどさ、ごっちんのことになると、ね。」

嫉妬しちゃうわけだ。
まぁ、たしかに梨華ちゃん、いい子だもんね。


ごっちんのことはなっちの努力しだいってわけだ。
84 名前:世紀 投稿日:2002年10月19日(土)15時31分42秒
更新しました。
次から新しいお話です。
新キャラ登場予定です。

>LOVE様
この小説で幸せな気分になれるとは、嬉しいことです。
ありがとうございます。
書く気がでてきますね。

85 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月19日(土)21時41分16秒
わんこやぐち可愛すぎる!
次回、新キャラ登場ですか・・・誰だろう?
続き楽しみ。
86 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月22日(火)17時08分57秒

看板犬が毎日続くようになってきた、最近。
なんでだろ?
別に理由はないんだけどさ、家にいてもつまんないし?
ここ、公園だからときどき誰かがやってきて、オイラを構ってくれるから、
けっこう楽しい。


構ってくれなければ、つまんないんだけど。
でも、夕方か夕方のちょっと前ぐらいは小学生がいっぱい通る。
そのときは、必ず誰か一人は一緒に遊んでくれる。


それにさ、よっすぃ〜や紗耶香がくるときだってあるし。
あっとゆーまに一日が終わる。
昼間なんかは、会社に行ってる人がお昼ご飯とかを食べにくる。
その人たちはあんまり構ってくれないんだけどね。


87 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月22日(火)17時29分05秒

それは、お昼前の事だった。



あれぇ?
あそこにいるの、中学生かな?
オイラから見えるブランコのあたり。
制服ってゆーのを着た、女の子がいた。
中学生って、今は勉強の時間じゃないの?
だって、まだお昼前だよ?

おっかしーなー。
オイラの情報、間違ってたのかなぁ?
遊びに行くのかな?
でもなんで、遊びに行くのに制服なんだろ?
制服は、中学に行きときに、着るものだよね?




あ。
そんなこと考えてたらその女の子たちが、こっちにむかって歩いてくる。
なんか、『ほんとに中学生?』って聞きたくなるぐらいの小さな背丈に
幼い顔、かわいいね、二人とも。
そんな女の子たちだった。



「ののー。わんちゃんや。」
一人の女の子が声を出す。
なんか、喋り方へんだよね?
最後の『や』ってなに?
もしかして、なっちみたいな訛り?
ふーん。なっちみたいな訛り意外にもいろんなのがあるんだね。
やっぱり、人間の言葉って難しい。
88 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月22日(火)17時36分35秒

「ほんとれすー。かわいーれすね。」
えっと・・・これも訛り?
それとも単なる舌足らずに喋ってるだけかな?


たぶん、舌足らずなだけ・・・・かな?

その舌足らずな子がにこっと笑う。
笑った時に見える八重歯がまたかわいらしかった。

「このわんちゃん、足、みじかいれすね。」
さっきの舌足らずな子が珍しそうに言う。

うるさいなぁ!遺伝なんだからしょうがないじゃんっ!!
それがミニチュアダックスフンドなんだから!


「のの、このわんちゃん、もともとやで?
こーゆー種類なんや。なんだっけ?
ミニ・・・・・ミニィ・・・・・。あれ?
よう、覚えておらへん。まぁ、もともとや。」

ミニチュアダックスフンドだよ!
そんぐらい覚えてないのぉ?
だめだなぁ。

「のの、このわんちゃんとあそびたいのれす。
あいぼん、いっしょにわんちゃんとあそびましょ?」
オイラと?
まぁ、悪くないね。
ひまだしさ。
89 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月22日(火)17時48分12秒
   
「でも、のの、このわんちゃん、つながれてるで?」
「えー!?だれがやったんれすか!?かわいそうれす!!
ののが、ほどいてやるのれす。まっててくらさい、わんちゃんっ!」

『のの』って子はかわいい顔を真剣な顔に変えて、
ひもを木からはずそうとする。

「のの?あ、かご、そーゆーの得意や!」
一人称、『かご』って子は、得意げな顔をしてひもをはずしはじめる。
そしたら、あっとゆーまにひもはとれた。
すごいねー。
そーとーの悪ガキ?


「あいぼん、すごいのれすっ!!」
『のの』って子は小さな体でぴょんぴょんとびはねる。
もちろん、満面な笑みで。
ほんとにかわいーねぇ。

「かご、引越ししてくる前は、友だちと一緒に『悪ガキ』いわれたから、
こーゆーこと慣れてんのや。」
ほらね。悪ガキだ。

90 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月22日(火)17時53分25秒

「悪い子だったのれすか?」
「んー。ま、気にしんといて。のの、わんちゃんと遊ぶんやろ?」
「そうれす!」

あのさー、木からはずしたのはいいんだけど、なっち、どうしよう・・・?
なっちのことだから探し回るにきまってるよ。

そうだっ。一回なっちのところへ行ってこよう。
オイラは、猛ダッシュでなっちのところへ行く。

「あー!わんちゃん、まってくださいれすー!」
「ののっ!追いかけるで!」
「わかったれす」

二人はオイラを追いかける。
うーん、どうしよ?二人をなっちのとこへつれてくか。

近くになってきたクレープ屋。
店番をしているのは、なっち。

「あれ?やぐち!?」

なっちはオイラのことに気付いて、ビックリする。
あ、まってね、すぐそっちに行くから。

91 名前:世紀 投稿日:2002年10月22日(火)17時59分17秒
更新しました。
今回のお話はちょっと恋には、関係ありませぬ。

それから、一応、この話の結末がきまりました。
いや、最後はきまってたんですけど、
そこにもっていくまでがきまってなかったのです。

で!絶対終わったら、あまると思うんですよ。
このスレ。
だからサイドストーリーを続きに・・・と思いまして・・・・。
テーマとかがきまりました。
あー、でもサイドストーリーは、恋じゃないです。たぶん。
すいません。

>読んでる人@ヤグヲタ様
新キャラ、二人です。
なんとか登場。
よくあるパターンですが。
92 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月23日(水)12時18分30秒
新キャラは人間でしたか。
自分の中では、新キャラはわんこだと決め付けてました(w
しかしやぐちは、とんでもない2人に見つかってしまった予感・・・。
93 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月24日(木)13時28分42秒
ほのぼのしてていいですね。
ヤグが可愛くて萌えます。
94 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月25日(金)17時46分42秒

「わんっ。わんっ。」
これでも、ほんとは『なっち〜!』ってよんでるんだ。
ひとには聞こえないけど。

「やぐち?どうやって、 ひもとったの?」
なっちが店番してるから、すぐになっちの近くまで着く。

「わんちゃん、まってれす〜!」
「何も逃げる事ないやんか〜。」

あ、さっきの二人がきた。
ごめんね、ちょっと走るのが速すぎたね。


「ねぇ、二人がこの犬のひもはずしたの?」
なっちはやさしく二人に話しかける。

「ひもをほどいたのは、あいぼんれすよ?」
急にあだ名でよんでもなっち、わかんないよね。
でも、そーゆーとこ子供って感じがするね。

「あいぼん?」
ほら、なっち、わからなかったでしょ?
なっちは首をちょっとななめにする。

「かごのことや。かご、ののから『あいぼん』って呼ばれてる。
ほんまの名前は『かご、加護亜依』ってゆーんや。」
なっちの言葉にすぐに反応して応える、かごって子。

「のの?」
なっちには新たな疑問が生まれた。

「のの、『つじ のぞみ』ってゆーのれす。あいぼんからは、
『のの』ってよばれてます。よろしくれす。」
「うん、よろしくね。」
一通りの挨拶が終わる。
95 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月25日(金)17時53分57秒

「じゃあ、亜依ちゃんがとったんだね?」
なっちは、あだ名がわかったところでまた質問する。
でも、なっちの声は、いたってやさしくて、あったかい。

「うん。だってのの、『わんちゃんと遊びたい』ってゆーから・・・・。」
最後のほうの声が小さくなっていく。
反省してるのかなぁ?
でも、悪ガキなんだよねぇ。
それじゃ、『いいわけ』ってやつかな?

「そのわんちゃんねぇ、なっちのお友だちなの。一緒に暮らしてるんだぁ。」
なっち、嬉しそうな顔で二人に話す。
ううん、そのときはオイラにも話しけてたみたい。
『お友だち』?そっか、なっち、オイラのこと、『ペット』じゃなくて
『お友だち』だと思ってるんだぁ。
ひととわんこを平等にしてるんだね。
やっぱ、なっちは、いい子だね。
でも、オイラは、なっちを敬わなきゃいけないよね。
大切な『ご主人様』だもん。
96 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月25日(金)18時03分19秒

「ごめんなさいれす・・・。のの、わんちゃんと遊びたかったのれす・・・。」
ののは、体全体をしゅん、とさせて、反省してるみたいに顔を下にする。

「ののちゃん?怒ってないんだよ?
ただね、『ひもがとれてすごいなぁ』って思って。」
「ほんとれすか?」

八重歯を見せて、輝くようなかわいらしい笑顔で顔をあげた、のの。
かごは、よくわからないような顔できょとん、としてる。

「うん。ほんとだよ。このわんこはね、『やぐち』ってゆーの。」

「「やぐちさん?」」

二人で声をそろえて聞き返す。
・・・・・なんで、『さん』付け?

「あははっ。『やぐち』で、いいんだよ?まぁ、
『さん』付けでもいいんだけどね。」

なっちは笑う。
なんか、お母さんになったみたい。
こーゆーの、なっちの母性本能ってゆーのがくすぐられるのかなぁ?

「じゃあさ、やぐちと一緒に遊んであげてくれるかなぁ?」

97 名前:オイラと小さな冒険者  投稿日:2002年10月25日(金)18時11分05秒

「いいんれすかぁっ!?」
さっきよりもきらきらした八重歯が見える、笑顔。

「いいんか!?」
きょとん、とした顔をののと同じように変えて、きらきらした笑顔。

「もちろんっ。」
なっちもふわっと笑う。

「やぐちね、ひまだもん。いっぱい遊んであげて。
それでさ、さっきから聞きたい事があったんだけど・・・・。」
なっちは、笑顔を顔から消す。

「なんや?」
かごの顔も何を言われるのかがわかったようにちょっと、くらくなる。
でも、ののは何にもわかってない様子で、まだ笑顔を残していて
しゃがんでオイラの頭をなでなでする。

「二人とも、制服着てるけど、学校は?」

98 名前:オイラと小さな冒険者  投稿日:2002年10月25日(金)18時15分48秒

ののの顔がいっきにくらくなって、頭を撫でていた手が、止まる。
かごは、わかっていたように、手に力を込めていた。
かごの手に力がこもったのは、オイラが下から見ていたから、すぐにわかった。


「あ、ごめんね?言いたくなかったら言わなくていいんだよ?
なっちさ、夕方ぐらいまでここで、クレ−プ売ってるから
それまで、やぐちと遊んでてね?」
なっち、焦ってる。
聞いちゃ、いけないことだったんだね。
なんか、ヤなことでもあったのかな?
ちょっと、気になったけど、悪いよね。
誰にだって、みんなに隠してる事や、言いたくない事があるもんね。
99 名前:世紀 投稿日:2002年10月25日(金)18時19分21秒
カンのいい、読者様はなにがあったのかは、
予想がついたかもしれませんが・・・。

>読んでる人@ヤグヲタ様
人間です。そのうち、わんこも登場させる予定です。

>93様
ほのぼのです。
あいののがでると、ほのぼのになってしまうのです・・・。
100 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月26日(土)18時04分02秒
自分はカンが良くないので、何があったのか判りません・・・。
101 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月27日(日)16時11分28秒

「ねーちゃん、名前。」
ののが、オイラをだっこして後ろをむいて歩き出そうとした時に
かごもなっちに背を向ける。

でも、そのあとかごはまたなっちのほうをむいて
ぶっきらぼう、しかも言いたい事だけをなっちに質問する。
なんか、学校のこと聞かれたのが、そうとういやだったみたい。

「は?」
案の定なっちは、よくわかんない、という顔をする。

「だから、ねーちゃんの名前。」
かごはさっきよりもちょっとわかりやすく聞く。
顔が怒ってる感じだったけど・・・・・。

「あ、名前ね。安倍なつみってゆーんだよ。よろしくね。」
「ん。」

愛想のない挨拶。

「あいぼん?」
ののは、かごが後ろをむいて、なっちと喋ってるのに
ようやく気付いたように不安そうな顔で足を止める。

「なんや?」
さっきと変わって優しい口調になる。
のののこと、大好きなんだね。
102 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月27日(日)16時27分25秒

「はやくあそびに行こうよぉ。」
その声は、中学生にはおもえないほど、幼く聞こえる。
なんか、ちっちゃい子供が喋ってる感じ。

「うんっ。」
かごもまた、ののと同じで笑うと幼い印象をうける。
さっきと全然違うね。

「やぐち、二人をよろしくね。」
なっちは、二人を優しい目で見守りながらオイラに言う。
「わんっ。」




「ねぇ、あいぼん。」
ここは、なっちのとこから少し歩いたところ。
オイラは、ののにだっこされてる。

ののの手は、ちっちゃくて、でもあったかかった。
そのちっちゃな手でオイラの頭をずーっとなでてる。

「なに?」
「やっぱり、せいふくだと、みんなからへんてこに見えるれすよ。」
さっきからののはちょっと不安そう。
どうしたのかな?

「じゃあ、なに?のの、今から学校行くん?」
かごの声はちょっとののを挑発してるように見える。

「そうじゃないけどぉ・・・・。」
な〜んかいやな空気。
なっちが学校の事聞いた後からなんか、かごの機嫌が悪い。

「あいぼん、あのおねーちゃんが言ってたこと、おこってるのれすか?」
「安倍さん、ってゆーんやで。」
「安倍さん?」
「そうや。」
103 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月27日(日)16時37分20秒

おもしろみのない会話。
ちっちゃい子とかって、ときどき面白くない会話でも盛り上がるよね。

二人は、楽しいのかなぁ?

「別に怒ってへん。」
かごは、顔をあげようとしない。
だから、表情がわかんない。

「でも、あいぼん、いつもとちがうのれす・・・・。
あいぼん、わらってくれないれす・・・・・。
のの、あいぼんがわらってくれないと、さびしーのれす。
しんぱいれす。のの、あいぼんのこと、大すきれすから。
みんなが、あいぼんのこときらいでも
ののは、ののだけはずっとあいぼんのこと、大すきれすから。」

ののの必死の主張。
まだ、上手く表現できなかったみたいで、不満そうな顔をして
自分に腹を立ててる、のの。
なんか、まだ言いたい事があるみたいで、でも言えなくて・・・・。


「のの・・・・・。」
かごはやっと顔を上げる。
なんか、目がウルウルしてるよ、かご。

そりゃ、ののにあんなこと言われたら、感動するよね。
ウルウルしちゃうよね。



自分の考えを素直に表現できる子、それがののなんだ。




なんだ、この二人、けっこーいいコンビじゃん。

104 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月27日(日)16時45分35秒

「のの、ごめんな。」
かごも、素直になる。



「いつものあいぼんにもどったのれすぅ。」
人懐っこい笑顔、いつもの幼い印象のののにもどる。
ののは、嬉しそうで、心からの笑顔だった。


「のの、やぐちさんと一緒にすべりだいしよか?」

すべりだい・・・・・・。
中学生のやることじゃないよね。
オイラ、見たことあるけど、やった事ないんだよね。



あれって、わんこもできるのかなぁ?
だってさ、高いとこから滑るじゃんか。
正直言って、怖いって。


「やぐちさん、できるんれすか?おちちゃいますよ?」
「そやな。やめよ。」

却下される。
やってみたかったんだけどなぁ。


「フリスビー、やりたいのれす。」
あ、それならオイラ、得意だよ?
やりたい、やりたい。
しっぽを、ぱたぱたふる。

105 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月27日(日)16時54分51秒

「かごもっ!!」
元気よく賛成するかご。

「・・・・でも、ないのれす。」
フリスビー。

かごもののもしゅん、となる。

「でも、この公園、けっこう人くるみたいやし、探してみるか?」
かごはまた、笑顔になって嬉しそうに言う。
さすが、悪ガキ。

「ちょっとわるいことかもしれないれすけど、
それしかないれす。さがすのれすっ!!」

ののの目の中では、火が燃えてるみたいだった。


二人はいろんなとこを探す。
草むらの中、ベンチの下、砂場の中、ブランコ・・・・・などなど。


オイラは、ののにずっとだっこされたままだったけど。
だっこされてるからわかったけど、ののは真剣だった。
ずっと真剣な顔で、あるかもわからないフリスビーを探すののは、
なんかものすごく、かわいかった。


106 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月27日(日)17時04分43秒

「ののー、あったかぁー?」
「ぜんぜん、ないれすぅ〜!!」

いつのまにか二人は制服のことなんか気にしないで夢中で探しまくった。
まるで、宝捜しをしてる冒険者みたいだった。


そーゆーときは時間なんてあっとゆーまに過ぎてしまうもの。
気づいたときには、夕陽が沈んでいた。


「見つからないれすね。」
「そうやなぁ・・・・。」
二人も半ば、諦めてるみたいだった。
それにしても、なっち遅いなぁ。


いつものように、ごっちんや梨華ちゃんと喋ってるのかなぁ。
なっちは、お喋り好きだから、みんなと喋ってから
オイラのとこへくることはよくあることだった。


「ののっ!一番星や!!」
目を輝かせて、空を指すかご。
その指の先には、ひとつ、ぴかぴか光る、一番星があった。

「ほんとれす〜!!」
ののも空を見上げる。
ののの目も輝いていた。

二人とも、フリスビーのことなんか、頭にはないみたい。

「きれいれすね。」
ののは、見上げていた顔を、やっとかごのほうにむける。

「そうやな。」
かごもののを見る。

107 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月27日(日)17時11分18秒

なんか、ほのぼのしてて、久しぶりに心があったかくなった。

「へへへ。」
「てへてへ。」

二人は顔を見合ってにこにこ笑う。

「のの、あんた、顔泥だらけやで〜。」
ののの顔は、フリスビー探しを必死にやってたせいで、顔に泥がついていた。
かごは、ののの顔を指差して笑う。

「それなら、あいぼんだって、おなじれす〜!」
ののも、かごの顔を指差して無邪気に笑う。

「・・・・お互い様やっ!!」

また、二人は無邪気に笑いあった。
ほんとの宝物を見つけたみたいだった。


また、いい思い出がひとつ、ふえた。
108 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月27日(日)17時26分03秒

「やぐち〜、あいちゃ〜ん、ののちゃ〜ん・・・。」
「安倍さんやっ。」
「ここにいるれすよ〜!!」

ののは、大きな声を出す。


なっちが、こっちにむかってくる。

「安倍さん、もう終わったん?」
もうちょっと前まで生意気で、ぶっきらぼうに
なっちと喋っていたかごはもうここには、いなかった。

「『もう』って、もう六時過ぎだよ?」
なっちは、驚いてる。

「安倍さん、一番星れすよっ。」
ののは自慢してるように、一番星を指差す。
そーゆーとこは、やっぱ子供みたいだ。
「ほんとだね。でも、もうすぐ帰らないと、暗くなって危ないよ?」

なっち、二人のお母さんみたい。

「わかったれす。ののも、そろそろ帰らないとヤバイのれす。」
「かごも。」
二人は時間がわかった途端、焦る。

「でも、もっとやぐちさんとあそびたいのれす・・・・。」
ののは今日の中で一番悲しそうな顔をする。


のの、オイラももっと遊びたいよ?
でもさ、時間ってものがあるじゃん?

「安倍さん、またやぐちさんのとこに遊びにきていい?」
不安そうな顔で、かごはなっちに聞く。
なんか、遊ぶ前、なっちと喋ってたかごじゃないみたい。
109 名前:オイラと小さな冒険者 投稿日:2002年10月27日(日)17時30分00秒

「もちろんだよ。やぐちもなっちも待ってるからね。」
『当たり前だよ』って言ってるみたいだった。
なっちも、笑顔だった。

「うんっ!」
「わかったれす〜!」




かご、のの、今日はものすごく楽しかったよ。
また一緒に遊ぼうね。





110 名前:世紀 投稿日:2002年10月27日(日)17時33分00秒
ふぅ・・・・・。
大量更新、のつもりです。
あいのの、登場はおわりです。
いや、またでますが・・・・。

ちなみにののちゃん、簡単な言葉なら漢字なのれす。

>読んでる人@ヤグヲタ様
そのうちわかります。
実は、わかるのは、サイドストーリー(予定)に
はいってからですが・・・。
111 名前:LOVE 投稿日:2002年10月29日(火)09時23分02秒
んあ〜!!やっぱかわいい〜!!やぐちわんこ最高!
やぐちわんこにかなりハマっちゃいました…。でも、なっちの恋の行方も気になる…
112 名前:オイラと大人なわんこ 投稿日:2002年10月30日(水)17時43分24秒

今日も看板犬。
やっと慣れてきた。


昨日から、ひもをはずしてくれた、なっち。
なっちに感謝しなきゃね。


だからいろんなとこへ行けるようになった。
いろんなとこっていっても公園の中だけ。

この公園も広いから楽しいんだけど。
まだ、行ってないとこもあると思う。

だから、今日はいろんなとこを行く予定。





もぞもぞと茂みの中にはいっていくオイラ。
こーゆーときって体が小さいから有利。






「あんた、誰なのよ?」




113 名前:オイラと大人なわんこ 投稿日:2002年10月30日(水)17時52分23秒

「へ?」


「だから、あんた、誰?首輪があるってことは、どっかのやつのペットよね?」


わんこだ。
ちょっと生意気っぽい。ってゆーかきつい口調。



でも、びっくりなことにまたミニチュアダックスフンド。
ちょっときりっとした目だ。


「ねぇ、きみこそ誰?」
オイラが逆に質問する。

「私?私はここに住んでるの。」
即答だった。
「ここ?」
「そ。ここ。」

ここって公園?

「なに?驚いてるの?」
「うん・・・」

だって、ふつー公園で生活するわんこなんているの?
でもこのわんこは、首輪、つけてない。
114 名前:世紀 投稿日:2002年10月30日(水)17時53分37秒
時間がないので少し更新。
レスは、次に返します。
すいません。
115 名前:オイラと大人なわんこ  投稿日:2002年11月01日(金)18時02分56秒
首輪をつけてないってことは、誰にも飼われてないわけだ。
野良犬ってやつ?


オイラは野良犬やったことないから、よくわかんないけど
食べ物とか自分で探さなきゃいけないし家もないから大変だよね。


「野良犬やってんの?」
「そうよ。」
「いつから?」
「ずっと前から。」

ってことは、オイラがここにきてたときもほんとは居たんだぁ。
全然気付かなかった。


「そういえば、あんたの名前聞いてない。」
「オイラ?オイラはね、『やぐち』だよ。きみは?」



「『やすだ けい』」
116 名前:オイラと大人なわんこ  投稿日:2002年11月01日(金)18時09分47秒

「『圭ちゃん』ってよんでいい?」
「いいけど。」


なんか、圭ちゃんは全然喋ってくれない。
圭ちゃんに喋っても一言で終わっちゃうんだもん。



なんか、そんなとこはちょっと紗耶香に似てるかも。


「圭ちゃんさ、野良犬、大変じゃない?」
「もう慣れたわよ。それに近所の人がときどきなんか
くれるからそれを貰って生きてるだけよ。」

なんか『生きてる』って・・・・。
深刻な問題みたいじゃんかぁ。

「やぐちは、誰のペット?」

圭ちゃんは珍しくオイラに興味をもったみたい。
圭ちゃんが、質問してきたのなんて最初会ったときだけだもんね。

「オイラはね、そこのクレープ屋で店番してる人がオイラのご主人様。
『なっち』ってゆーんだぁ。すっごいかわいいんだよ。圭ちゃん、知ってる?」

一通りなっちの説明をする。
だって、ずっとここに住んでるのなら、なっちのこと知ってるかもしれない。

「・・・・・あぁ。なんか、見たことある気がするわ。」
117 名前:オイラと大人なわんこ  投稿日:2002年11月01日(金)18時18分56秒
「ほんとっ!?」
「うん。一回だけ、ご飯を貰った気がする。」

圭ちゃんは何か、どーでもよかったことみたいで、
なっちのことはあんまり覚えていなかった。


「圭ちゃんはどーして、野良犬やってんの?」
「・・……昔、飼われていたけど捨てられた。
犬が多くなってきたからね。ほかにも数匹捨てられたのよ。私の兄弟。
今は生きてるかどうか・…。」

「そっか。」
何か急に話がしんみりしちゃったよ・…。
オイラ、こーゆー空気は苦手だよぉ。
こんな空気にしたのは、オイラなんだけどさ。
自業自得ってやつ?

「け、圭ちゃん、ごめんねっ。なんか、イヤな事思い出させちゃって・・…。」
「別にいいわよ。結構前の話だから。」

なんだ。怒るかと思ったのに。
それとも単に兄弟たちの事がきらいだっただけなのかも。


まぁ、それはおいておこう。


「圭ちゃんは、誰かに拾われたこととかないの?」
118 名前:オイラと大人なわんこ  投稿日:2002年11月01日(金)18時32分01秒
「拾われそうになったことは、何回もあるけど、私、人間嫌いだから。」
最後のほうはきっぱりと力を込めて、言った。
なんか、アクセントがついたみたい。

「なんで?なんできらいなの?いっぱい良い人いるよ?」
圭ちゃんが人間の事知らないからだよ。
だって、オイラのまわりにはいっぱい良い人がいるもん。

圭ちゃんが、人間に捨てられたから?

「やぐちはわかってないのね。」

ぽそっと呟くように言う。
まるで、オイラにあきれたみたいだ。
さすがにそれはオイラも、頭にきた。

「なんだよっ!それっ!わかんないよ!
圭ちゃんが何言ってるか、全然わかんない!!
なっちだって、みんな、みんないい人ばっかだもん!!」

圭ちゃんはそれでも、さっきと変わらない表情を
したままオイラの主張を聞いていた。

「この地球は、汚れてるのよ。人間のせいで。どんどん汚くなっていくわよ。
この公園もいっつもごみが落ちてる。私、いつも見てるもの。
ここに住んでるからわかる。真夜中なんか不良の人がたくさんきて、タバコを
当たり前のように捨てるし、殴り合いもしょっちゅうする。
ここに住んでる私たちは、迷惑してるのよ!」
119 名前:オイラと大人なわんこ  投稿日:2002年11月01日(金)18時38分20秒
「・・・・・・。」
オイラは言葉が出なくなった。
そっか。オイラはいつも夜になればなっちと一緒に
あったかいお家へ帰っておなかいっぱいごはんを食べる。

それで、真夜中にはゆっくり眠ってる。



でも、でも圭ちゃんやここにいる動物たちは、そんなことないんだ。
夜になれば、こんなに寒い中震えながら朝を待つんだ。


きっと、夜中なんか、全然眠れないんじゃないの?
おなかがすいてる日が何日あっても、我慢しなきゃいけないんだ。
真夜中なんか、もっとひどいよ。

寒い中震えてる中を、不良の人たちがいっぱい来て、
きっと圭ちゃん達はすごく、怖かったに違いない。


今まで、普通に生活してたと思ってた。
でも、オイラは、幸せ者なんだ。


120 名前:オイラと大人なわんこ  投稿日:2002年11月01日(金)18時52分04秒

「圭ちゃん、ごめんね。」
なんか、自然と言葉が出た。


オイラ、けっこう意地っ張りとか、
そーゆー性格だったけど、この言葉はすぐに出た。

「別に、謝る事じゃないけど。」
なんか、圭ちゃんも素直じゃないみたい。
顔、赤いよ?


気のせい?


「それじゃ、圭ちゃん、オイラさ、そろそろなっちのこと行かなきゃだから。」
「うん。」
「また、ここに来てもいい?」
「・・・・いいけど。」

「それじゃあね。」
「ばいばい。」


オイラはそのままなっちのもとへ、向かった。

オイラは自分が幸せ者だとゆーことがなんかわかった気がした。

121 名前:世紀 投稿日:2002年11月01日(金)18時55分13秒
なんか、いつもより短かったです。
ほんとは、もうちょっと長かったんですけど・・・・。
大体、半分ぐらいいったんですかねぇ。

>LOVE様
自分で書いてるとかわいいとか、かわいくないとか
よくわかんないんですよねぇ。
だから言ってもらえると嬉しいです。

122 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月02日(土)03時30分46秒
野良わんこまで登場するとは・・・。
しかし、なんか可哀相ですね。
123 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月03日(日)15時27分43秒

圭ちゃんという野良犬に会ってから数日。
毎日、看板犬として働いてる。



・・・・んなわけがなくて、いつも圭ちゃんのとこ。

ま、なっちがひもをとってくれたからね。

だから今日もその野良犬わんこのもとへ。
あれ?ニホンゴ、おかしいかな?



「やぁぐちさぁ〜んっ!!」

ん?なんか聞き覚えのある声が聞こえたぞ?
なんだよ、今から圭ちゃんのとこへ行くってゆーのにぃ。


でもその声が気になって後ろを振り向く。
「自分の名前、わかるんや〜。やぐちさん、賢いなぁ。」


124 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月03日(日)15時36分51秒

一回だけ見たことのある幼い顔。

『また遊ぼうねっ。』なんて言いながら、全然遊びに来てくれなかったやつ。
人懐っこい笑顔でオイラの頭を撫でる。


そう。
かごとののだった。


「わんっ。」
しっぽをぱたぱたふる。

オイラ、結構この二人、好きだもん。
また会えてうれしーよ。
だって、連絡のとりようがないからいつ会えるかわかんないもんね。


「こんにちは。」

125 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月03日(日)15時47分54秒
二人に気を取られて下のほうを見てなかったけど
地面、ってゆーか二人の足元を見る。



わんこだ。



「このわんこなぁ、ののん家のわんこなんやで。
ま、ののが世話してるんやけど。な、のの?」

ののは誇らしげに小さく頷く。
でも、前みたいに舌足らずに喋ってくれない。
どしたの?

「『紺野あさ美』ってゆーんやで。」
かごは、ののに代わってそのわんこをオイラに紹介する。

「はじめまして。紺野あさ美っていいます。」
そのわんこはまたまたミニチュアダックスフンドだった。

「紺ちゃん、こっちはなぁ、クレープ屋の店番しとる安倍さんのお友だちで
安倍さんと一緒に暮らしてる『やぐちさん』や。 仲ようしてなぁ。」

「やぐちだよ。よろしくね。」
「はい、こちらこそ。」
126 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月03日(日)15時54分23秒
「なぁ、やぐちさん。今日も一緒に遊びましょ?
そのために紺ちゃんもののが連れてきてくれたんですからぁ。」

さっきからずっと笑顔が耐えないかご。

一緒に遊ぶのは全然構わないんだけど・・・・・。
一緒に遊ぶんだったら圭ちゃんも誘いたいなぁ。


「わんっ!」
「やぐちさん、どないしたん?」
しょうがない。前みたいに圭ちゃんのとこまで走ってもらうか。


「ちょ、やぐちさぁ〜ん。またですかぁ〜?」
やっぱ、前のこと覚えてたみたい。

「のの、紺ちゃんっ。行くでっ!」
かごはののの手をとって走る。
その紺野ってわんこもご主人様とその友だちを追いかける。
127 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月03日(日)16時03分14秒
「け〜いちゃんっ!!」
草むらの中をいつものようにもぞもぞ入っていく。

「あ。やぐちじゃない。おはよ。」
「うん、おはよ。」
まぁ、一通りいつものあいさつを交わす。
圭ちゃんもオイラがここに来ても笑顔で迎えてくれるから居心地がよかった。

「あのね、圭ちゃん。今日はさ、みんなで遊ぼっ!」
「みんなって誰よ?」
「もうすぐ来るよ」


「やぐちさぁ〜ん・・・・・。」
かごもののもへとへとになってる。
それでもオイラの居場所を発見。

発見してくれなきゃ困るんだけどさ。

「やぐち、もしかしてこのチビっこたちと遊ぶわけ?」
あからさまにイヤな顔をする圭ちゃん。
「そうだけど・・・・。楽しいよ?結構。」


「あれぇ?わんちゃんやないですかぁ。」
疲れた顔をまた笑顔に変えて喜ぶかご。


「ののぉ、わんちゃんやでっ!」
かごはののに『はやくはやく』と、手招きする。

ののはぴょこん、と顔を出して圭ちゃんを見る。
128 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月03日(日)16時23分57秒
ののは圭ちゃんを見た途端、八重歯を見せて可愛らしい笑顔になる。

「のの、このわんちゃんとも、遊びたいやろ?」
ののはすぐにこくこくと頷く。

「ちょっと!私の意思は無視な訳!?」
圭ちゃんがキレる。
でも、わんこが怒ったって、人間に聞こえるわけがない。
「圭ちゃん?だからさ、楽しいって。」
「やぐちは遊ぶわけ?」
「オイラ?オイラは遊ぶけど・・・・。」
なんか、目が怖いよ、圭ちゃん。

「じゃ、ののとぉ、かごとぉ、紺ちゃんとぉ、やぐちさんとぉ、
このわんちゃんで一緒に遊ぼ?」
129 名前:世紀 投稿日:2002年11月03日(日)16時25分46秒
また時間ないのでレスは次のときに・・・・。
少し更新です。
130 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月03日(日)22時35分03秒
紺ちゃんまでワンちゃん!!(w
他のメンバーも続々出てきましたね。
誰が後は犬なんだろう〜♪
131 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月04日(月)13時48分12秒
「私、頭数に入ってるじゃない!?」

かごが一緒に遊ぶメンバーの名前を言いながら、指をおっていたから
その指を見てキレた。

っていっても、さっきからずっとキレてるんだけど。


今日の圭ちゃん、怒ってばっかだ。



子供、苦手なのかな?


「でも、このわんちゃん、なんて名前なんや?」
さっきまでずっとこの中で一人、唯一喋っていたかごは、
話を急に止めて独り言みたいに呟いた。

ののもかごに、言われて気付いたみたいに『あっ。』と、表情を変える。


「かごたちで考えようかぁ・・・・。」


「はっ!?何よ、それ!まだ『やすだ けい』って
名前のほうがいいじゃない!」

圭ちゃん、まだ名前言ってないよ・・・・・、って言いたかったんだけど
圭ちゃんの目には青い日がついていて言わせてくれない。
132 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月04日(月)13時58分50秒
「安倍さんなら知っとるかなぁ・・・・・。」
一人でずっとぶつぶつ圭ちゃんの名前を考えていた様子のかごは、
結局、いい名前が思いつかなかったみたいでなっちに頼る。

「のの、安倍さんのとこにでも行くか?」


「あれ?圭ちゃん、なっちなら知ってるんだよね?」
「あぁ。知ってるわね。」



オイラと圭ちゃんが話している間にはもう、ののが頷いていた。


「のの、ののは紺ちゃん抱っこして。
かごはやぐちさんとわんちゃんを抱っこしていくから。」

ののは、『任せろっ』と言う風に紺ちゃんを抱っこする。
かごも、ちょっと『二匹は辛いなっ。』と言いつつ、頑張った。

抱っこしなくてもちゃんとついて行くのに。


それとも単に抱っこしたいだけなのか・・・・・。


133 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月04日(月)14時11分24秒
かごはちょっと頑張ってなんとかクレープ屋についた。

「安倍さんっ。」
かごは満面の笑みで店番をしていたなっちにつめよる。

なっちは一瞬、お客がきたのかと思ったみたいで、営業スマイルをするけど
かごたちだと気付くと、また営業スマイルとは違う、笑顔でかごたちを迎えた。


「あれ?あいちゃんにののちゃん。久しぶりだねぇ。元気だった?」
「まぁ。」

「ところで安倍さん、このわんちゃん、
ここの公園にいたんやけど、名前知っとる?」

圭ちゃんをぐいっと持ち上げる。
圭ちゃんはなんだかビックリしてるみたいだった。

「もしかして、圭ちゃんの事?そうでしょっ!?」
「『圭ちゃん』?」
かごはなっちが言った言葉をオウム返しした。

「うん。『やすだ けい』ってゆー名前なんだ。」
「やすださんかぁ。」

またオイラのときみたいに『さん』付けだった。
でも今日、声を出したのはかご一人。


そういえば、今日のの、喋ってないね。
もうちっと前に気付いたけど、ただ単に喋る事がないだけかと思ってた。

134 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月04日(月)14時19分34秒

でも、へんだよね。
だって、この前初めて会ったときは、
喋らなくてもいいこともののは、かごと喋ってそのあとすぐに
八重歯を見せて、かごと一緒に無邪気に笑ってた。


今日だって、笑ってくれてるときもあるけど、この前みたいに
いつもにこにこしてるわけじゃない。

笑ったって、八重歯は見えたけど、声は出さなかった。
圭ちゃんの名前を考えるときだってかご一人で考えてた。






のの、どうしたの?


「ののっ!やすださん、ゆーんやって。
やすださんも一緒に、遊びに行こ?」
ののはまた頷いた。

オイラも、しぶしぶかごとのののあとをついていった。
135 名前:世紀 投稿日:2002年11月04日(月)14時25分42秒
更新です。

あ、それから。

>131の
圭ちゃんの目には青い日がついていて言わせてくれない、を
圭ちゃんの目には青い火がついていて言わせてくれない、に直してください。

ミスりました。すいません。

>読んでる人@ヤグヲタ様
そのうちやすださんも幸せにしてあげるのです。
もうすぐ、やすださんもたぶん、幸せになるでしょう。

>130様
わんこ、続々登場です。
今思うと結構の人数が登場してます。
136 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月06日(水)13時55分11秒
辻、どーしたんだろう?
137 名前:オイラは幸せ者  投稿日:2002年11月08日(金)16時55分02秒
「のの、ののは確か、今日、フリスビーもってきたんやろ?」

かごは、にこにこしながらのののほうを向く。
なんか、今日のかごは圭ちゃんを発見して新しい友だちが出来てご機嫌らしい。


それとも、いつもよりも大人数で遊べるからかな?

あ、でも学校ってとこは同い年の子がいっぱいいるんだよね。

と、ゆーことは学校の友だちもいっぱいいるのかなぁ。
だってさ、こんなに元気で明るくてかわいいんだよ?

かごなんか悪ガキなんでしょ?
なら、いっぱい友だちがいるよね。

中学生って悪ガキ、小学生とかよりも多いもんね。
むしろ、真面目クンだと、友だち少ないんじゃない?


ののだって、あんな人懐っこそうな笑顔で
話し掛けられたらすぐに友だちになっちゃうよ。
のの、人見知りしなそうだし。

二人の性格からして、いっつもまわりには友だちが
集まってみんなで笑ってるんだろうなぁ。

いいなぁ、学校。
オイラ、一度でいいから学校に行ってみたい。
きっと楽しいんだろうなぁ。

138 名前:オイラは幸せ者  投稿日:2002年11月08日(金)17時07分40秒
いつのまにか、自分の世界にはいってた。


自分の世界から抜け出した時には、ののが
鞄の中からピンクのフリスビーを取り出していた。


鞄の中って、本を入れるんだよね?
ののの鞄の中には、フリスビーとお菓子しか入ってなかったよ?




ののは、食いしん坊だなぁ。


「おぉっ!のの、さすがやなぁ。忘れんかったんか。
かご、ののが忘れたらどないしようかと思ったで。
家になんか夕方まで戻れんしなぁ。」

なんかの言葉にののはピクッと反応して少しの間、
俯いて小さくかたかた震えた。


「あ、のの、ごめん、ごめんな。かご、つい・・・・。
かごっ、もう言わへんから・・・。今日はこの公園に遊ぶためにきたんやろ?
全部忘れて、遊ぼ?」


ののはやっと顔を上げる。
ののは落ち着きを取り戻したみたい。
あぁ、よかったぁ。

なんか今日ののの、この前会った時となんか、違う。
かごのさっきのどの言葉・・・ってゆーか単語に反応したのかはわからなかったけど
少しの間、小さく震えたり、全然喋ってくれない。

なんか、気になるね。
139 名前:オイラは幸せ者  投稿日:2002年11月08日(金)17時25分27秒

「やぐちさーんっ!投げるでっ!!」
そう言ってすぐに力を込めてピンク色のフリスビーを投げる。


あ、あれっ?


かごが投げたピンクのフリスビーはよろよろと飛んでいく。
かご、ほんとに力込めたのかぁ?

それでもやさしい(自称)オイラはかごとののが期待の目をしているのを
視線で感じていたから、ぴょんぴょんと、
よろよろピンクのフリスビーを追いかける。



あっ!!


ざざっ。



「あっ!!」
140 名前:世紀 投稿日:2002年11月08日(金)17時27分34秒
少量更新。
あしたかあさってにでもまた・・・。

>読んでる人@ヤグヲタ
のののことはそのうち、わかりますです。
でもこの進み具合じゃけっこう先になるかもしれませぬ。
すいません。

141 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月09日(土)15時14分16秒
誰もが驚いた。

かごの投げたよろよろ飛んでいたピンクのフリスビーは
ざざって音と同時に、みごとに高い木の枝に突っ込んだ。


「あっ!!やってしもた!!」
なんだかかごのセリフは『もう慣れてます』って感じだった。


「あーあ。やっちゃったわね。」
圭ちゃんもあきれたような声を出す。

「あの木、前も誰かがフリスビーかなんかがひっかかって取れなかったのよ。」
オイラが、圭ちゃんのほうを振り向くと、丁寧に教えてくれた。

「あの木、高いですからね。かごさんとご主人様だけで取れるんでしょうか?」
久しぶりに紺野の丁寧な喋り方で喋った。
なんで、敬語?

さっき紺野が言った『ご主人様』ってゆーのはのののことだろう。
だって、ののん家のわんこだもんね。

「うん。あの二人、背ぇちっちゃいもんね。」
紺野が言った言葉にオイラは、付け足しをする。

「のの、ごめんなぁ。ののが持ってきたのに・・・・・。
かご、すぐとってくるから、ここで紺ちゃんたち見てて?」

かごは少し焦ったみたい。
早口でののに必死に謝る。


ののは、あんまり怒ってないみたいだけど、頷いた。
142 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月09日(土)15時27分46秒
「のの!その場所から動くなやっ!!」
のののほうをむいて最後にお母さんみたいな言葉を一言残して
ののの返事も聞かずに、全速力で走っていった。

全速力で走っていったからすぐにかごの小さな背中は、見えなくなった。


ののは、かごの背中が見えなくなるまでずっと見ていた。
でも、かごが見えなくなったと思ったら、オイラたちを見るようにしゃがんだ。


オイラも圭ちゃんも紺野も、黙ってののを見ていた。


ののは、にこぉっ、と八重歯を見せて笑って
オイラたちわんこの頭を順番にくしゃくしゃっとなでなでしてくれた。

ののの手は、子供の手みたいであったかいから気持ちよかった。
前、遊んだ時もののの手はあったかくて、なんだか安心した。


「ねぇ、紺野。ののさ、今日全然喋ってないんだけど、なんかあったの?」
もしかしたら、一緒に住んでる紺野なら知ってるかもしれない。
ましてや、わんこだよ?



ののが、何か話し掛けてるかもしれない。
なっちと一緒で―――


143 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月09日(土)15時36分07秒
「うーん・・・・。そうですねぇ・・・・・。」
いろいろ思い出すのに一生懸命な紺野はなんか、かわいかった。

「なによ?この八重歯の子、なんかあるわけ?」
「『辻希美』ってゆー名前らしいよ。」
圭ちゃんが紺野が考えている間にオイラに聞いてきた。
そっか。圭ちゃんは、この前のののを知らないんだっけ。

『八重歯の子』ってゆーのはどうかと思って、ののの名前を教えてあげた。

「あんね、前にののとかごとオイラで遊んだことあるんだ。
そん時は、のの、かごと同じくらいうるさかったんだけど、
今日は一言もしゃべってないなぁって思ってさ。」

「そういえば、辻、喋ってないわね。」
早速圭ちゃんはオイラが教えた名前をつかう。

「でも、確かご主人様が喋らなくなったのは、もうちょっと前からですよ?
今日だけじゃありません。」
144 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月09日(土)15時42分15秒
やっと思い出したのか、会話に入ってくる。

「「えっ?」」
紺野の言葉に圭ちゃんも驚く。

「どーゆーこと?」
オイラの好奇心がくすぐられた。

「こんのを拾ったときは、元気だったんです。目は寂しそうだったけど。
でも、もうちょっと前から、突然・・・・。」
紺野の体がしょぼん、と小さくする。

紺野も、のののことは心配みたい。


でも、なんか、勝手にのののこととか聞いちゃ悪いよね。
本人の許可を得たわけでもないんだし・・・・。

これ以上知るのをオイラはやめた。

145 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月09日(土)15時55分15秒
しばらく経ってもかごは帰って来なかった。
取れないのかなぁ・・・・・。

少し、心配になってきた。


そんな思いが通じたのか、待ちくたびれてブランコを
ぎぃぎぃ鳴らしながらつまんなそうに足でこいでいたののは
ぴょん、と立ち上がってとことことオイラたちのほうに歩いてきた。

ののは、圭ちゃんをだっこして目でオイラと紺野に『おいで。』と言った。
圭ちゃんをだっこしたのはたぶん、今日はじめて会って間もないからののに
ついて来てくれないかもしれない、と不安だったからだと予想した。

「やぐちさん、行きましょう。」
紺野はオイラよりも先にののの視線に反応して
すぐにのののあとにつづいた。

「うん。」



ののはフリスビーがどの木にひっかかったか覚えてないみたいで
かごを探して、きょろきょろ公園の中を一人で探し回った。

「ここの公園、木が多いですから、かごさんを探すのは一苦労ですよね。」
紺野は、歩きながらオイラのほうを見て話し掛けた。
「うん。そうだよね。」
喋りながら、オイラと紺野もちゃんとかご探しに参加した。
圭ちゃんも見れる範囲をきょろきょろしてる。
146 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月09日(土)16時11分03秒
公園を歩き回ってどのくらい経ったのかな?
結構、時間が経った気がする。

だってほら、赤や黒のランドセルを背負った
子供たちが楽しそうにお喋りをしながらときどき通る。


ののの顔は少しづつだったけど、くしゃくしゃになってきた。
もう目にはいっぱい涙が溜まってると思う。

圭ちゃんは、ほんとは優しいから、涙とかに弱そうだしだっこされて
よけいに近くで泣きそうな顔をされるんだから、
それはきっとものすごく辛かったに違いない。


かご、一体何処にいるんだよぉ・・・・。


もしかしたら、かごのことだから木に登ってるかもしれない、と予想してみた。
だって、ののは木には登ってるわけでもない。
もし、かごが木に登っていたなら、運がよくないと会えないと思う。


いやいや、もしかしたらもうとっくにフリスビーなんて
取ってきてすれ違ってるんじゃないの?

それでもののは、諦めない様子。
ずっといろんなとこをとぼとぼ歩いて、かごを必死に探す。



もう、ののの目からは涙がぽたぽた零れ落ちてるんじゃないのかな・・・・。
147 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月09日(土)16時19分29秒



大好きな友達、ううん、親友をこんなに探しても見つからない。



しかも一緒にいるのは日本語が喋れない、わんこ。三匹。


ののの心の中は今、真っ暗だと思う。
近くに、誰もいなくてひとりぼっち。
いくらおっきな声で叫んでも誰も返事をしてくれない。





ののの心の中は不安がいっぱい。
不安で、押し潰れちゃうほど・・・・・。




のの、ちっちゃいんだよ?
いくらののが食いしん坊だからって、
一気に潰れちゃうよ?


はやく、誰かが手を差し伸べて助けてあげなきゃ。



誰がいいかって言えば、やっぱり、日本語の喋れないわんこよりも
あの、どこの訛りだかは知らないけど少し、訛ってる喋り方で、
悪ガキで、ののと同じくらいの背丈で、いっつも笑顔を絶やさないで
ののといつも一緒にいる子がいいとオイラは、一番いいと思う。
148 名前:世紀 投稿日:2002年11月09日(土)16時24分45秒
なんか、あいののが長ぁくなっております・・・・。
それからまたまたミスが・・・。

>147の最後の文。
ののといつも一緒にいる子がいいとオイラは、一番いいと思う。を
ののといつも一緒にいる子が一番いいと、オイラは思う。
にしてください。

上の文(ミスした文)日本語通じません。
149 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月09日(土)18時58分55秒
いいです〜…
加護ぉ早く辻の所に現れてあげてぇ〜。
ワンコ達のトークもおもしろいですねぇ。
150 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月13日(水)14時32分48秒
ののは歩きつづけて疲れ果てたのか、歩く速度を遅くする。
でも、諦めて捜すのをやめることは絶対にやめなかった。


オイラ、だいぶ疲れてきたよ・・・・。
だって散歩もこんな長い距離は歩かないもん。
オイラ、もうちっと体鍛えたほうがいいのかなぁ・・・・・。


「かごさん、見つかりませんね・・・。」
紺野が話し掛けてきた。
「うん・・・・。でものの、まだ諦めてないみたいだし。
もうちっと頑張ろうよ?」
「こんのもそのつもりです。」




「わあっ!!」




んん?
なんか後ろのほうから変な声が聞こえたような・・・・・・。

「かごさんの声じゃないですか?」
紺野が少し不安そうな顔で言う。
ほんとにかごの声かわからなかったからかな?

紺野が喋ると同時ぐらいにののが、さっきまでの
疲れを忘れたみたいに全速力で走り出した。

151 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月13日(水)14時49分59秒
ののにだっこされていた圭ちゃんは急に
ののの走る速度が変わったからビックリしたと思う。


オイラと紺野もすぐにののの後を追いかけた。




「いてててて・・・・・・。」



ののの後を追いかけたら、さっきまで一緒にいたかごが
木の下で、しりもちをついていた。

「のの・・・・・。」
かごの着ていた制服やかわいい顔には、ところどころに泥がついていた。

「のの、なんでここにおるん?」
やんちゃそうに笑う。
オイラには、痛いのをののに見せたくなくて、我慢してるように見えた。

「あ、ごめんなぁ。フリスビー、結構高いところにあんねん。
かご、あんまり背、おっきくないから全然手がとどかへんの。」
そう言いながら少しののにむかって『ごめん。』と頭を下げる。


「でも、かご、もうちょっと頑張るから。まだ体力残ってるから。
なんぼでもいけるわ!こんなもんっ。だからのの、ここでまっててくれへん?」
頭を軽く下げた後、すぐにまた喋りだした。
152 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月13日(水)15時02分39秒
ののは、力が抜けたみたいに圭ちゃんをやさしくおろしてあげた。
「あ、圭ちゃん。」
「もう、辻が走った時はどうなるかと思ったわよ。」
「お疲れさま。」
少し圭ちゃんと会話をしたけどそれ以上は
あんまり喋れるような空気じゃなかった。




ののの目からは、ぽろぽろとひかるものが落ちてきた。
最初は、一粒、二粒・・・・・・。

だんだんいっぱいになって、最後には数えきれないほどおちてきた。


「の、のの?どないしたん?そんなに
あのフリスビー、大事やったん?それなら、ほんまにごめんっ!
今からとってくるから・・・・。」
かごの言葉にののは、首がとれちゃうんじゃないかと思うほど
ぶんぶん顔を横に振った。


オイラが思うにたぶんののは、フリスビーのことで泣いてるんじゃなくて
かごを見つけられて安心したからだと思う。


153 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月13日(水)15時18分36秒
かごはさっきからののが泣いてるのを見ておろおろしてた。
オイラ達わんこの間でも、会話は一つもなかった。


ののは、ぽろぽろと涙をこぼしながら、ぎゅうっとかごを抱きしめた。
そしたら、かごが急なことでびっくりして後ろにばたんっ、て倒れた。


「のの?ほんまにどないしたん?だいじょぶか?」
かごは、ののに押し倒されたまま、さっきから
ずっと泣いているののの頭をやさしくなでた。


少しして、かごに頭をなでられて落ち着いたのか、
ののの目からは涙がぴたっととまった。

かごに頭をなでられてすぐに涙がとまったから、
オイラにはかごの小さな手が『魔法の手』に見えた。
154 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月13日(水)15時29分04秒

「ののぉ、ほんまにごめん。」

しばらくして、みんなが無言になってたときに
最初に口を開いたのはかごだった。

ののは、きょとん、としている。

「フリスビー。」
かごは、さっきの言葉に付け足す。

ののは、またすぐにぶんぶんと横に顔を振った。


「のの、許してくれるん・・・・?」
不安そうな顔でかごはののの応えを確かめる。
ののはこくん、と頷いた。

「ほんまっ!?ほんまにありがとう!!ののっ。」
かごの顔にも笑顔が戻ってきた。

ののもかごと一緒ににこぉっと笑った。
二人で笑い合うとののは、
自分のポケットから花の絵がかいてあるハンカチを取り出す。

「のの?」


ののは、ハンカチでところどころ泥が
ついているかごの顔を、きれいに拭いてあげた。

かごの顔がきれいに拭き終わったら、またののはにこにこ笑った。

「あ、のの・・・・ありがとう。」
かごもののに顔を拭かれて自分の顔の泥に気付いたみたい。
155 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月13日(水)15時40分19秒
「のの、もう帰らないと・・・・・。」
夕陽を見て、かごは寂しそうに言う。
ののもかごの言葉を聞いてしゅん、とする。

「これ以上暗くなると帰りとか真っ暗になっちゃうわよ。」
毎日外にいる圭ちゃんだから、
きっとこーゆー天気の変わり具合とかも詳しいと思う。

「のの、またここに来よ?」
ののは、遊び足りなかったみたいだけど我慢して頷いた。



「なぁ、のの。ずっと考えてたんやけど、
かご、やすださん引き取ろうと思う。」

覚悟を決めて言うかご。
この言葉には誰もが驚いた。

「はあっ!?」

そりゃ、一番驚いたのはもちろん圭ちゃん。

「何言ってるのよ!?勝手に決めないでよ!!
だいたいあんた、世話できるの!?」
圭ちゃんが怒ったって、かごやののには聞こえない。

「保田さん、かごさんのこと嫌いなんですか?」
紺野が、ショックを受けたような顔で言う。

「え?い、いや・・・別にそーゆーわけじゃないけど・・・・。」
あれ?圭ちゃん、ちょっと押され気味じゃない?

「いいじゃん、圭ちゃん。かご、いいご主人様になると思うよ?」
結構、子供ってちゃんと世話するじゃん?
156 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月13日(水)15時50分15秒
「誰にも言わへんのも失礼かと思うから、
かご、安倍さんに一言言っておこうかと思うねん。」
そう言って、さっさと圭ちゃんをだっこする。


「かご、ちゃんと圭ちゃんの世話してくれるのかね?」
ののん家のわんこの紺野ならかごのこともオイラたちよりも
もっと知ってるかもしれないと思って、聞いてみた。
「かごさん、何気にしっかりしてるので、
ちゃんと世話してくれるんじゃないですか?」

『何気に』ってゆーのが気になったけど
その質問はあえて、言うのをやめといた。


「あーべーさんっ!!」
あっという間になっちのもとへたどり着いた。
「おぅ!あいちゃんにののちゃん。どしたの?」
「かご、保田さんと一緒にお家に帰りたい。あかん?」

上目遣いでなっちを見上げるかご。
「え?なっちに聞くの?なっちは、圭ちゃんの事
大切にしてくれるなら誰でも構わないんだけど・・・。
あいちゃんは、圭ちゃんの事大切にできる?」

なっちはできる限りのことをこたえた。
だってなっち、圭ちゃんのご主人様じゃないしね。

「かご、保田さんのこと大事にする!友だちとして一緒に過ごすから!!」
かごは真剣な顔でなっちを見る。
157 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月13日(水)15時56分13秒

「それならなっちは全然いいと思うよ?」
なっちは笑顔でかごを見る。

「ほんま!?やったぁ〜!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶかご。

かごはやっと圭ちゃんをおろしてくれた。
「圭ちゃん、よかったね。寒くなったら外じゃ、
凍え死んじゃうかもしれなかったんだよ?」

「まぁ、私も、かごならまだマシなのかもね。」
素直じゃないなぁ、圭ちゃんは。
どーせほんとは嬉しいんでしょ?
顔に書いてあるよ?

「保田さん、これからよろしくなっ。」
圭ちゃんの頭をなでながら、挨拶をする。

「のの、紺ちゃん、それから保田さん、そろそろ時間やし、帰るか?」
ののが頷くのを確認するかご。

「それじゃあ、やぐちさん。また遊びにくるからな。
そんときは、保田さんも紺ちゃんも一緒やで?」
今度はオイラの頭をなでる。

「わんっ。」
オイラは大きく返事をしてあげた。
158 名前:オイラは幸せ者 投稿日:2002年11月13日(水)15時59分14秒
かごたちは、オイラの頭をなで終わるとすぐに、帰っていった。

「やぐち、なっちももう終わりだから、帰ろっか?」



今日は楽しかったなぁ・・・・・・。
少し歩きつかれたけど。

圭ちゃんもかごに引き取られたし。
新しい友だちも増えたし。


オイラ、もしかしたらけっこう幸せ者なのかもしれないね。


159 名前:世紀 投稿日:2002年11月13日(水)16時05分06秒
つ、疲れた・・・・・。
やっと終わりました。
次からは恋のお話で・・・。


>149様
なんとか二人を会わすことに成功しました!!
わんこたちのトークっすか?
おもしろいなら光栄です。はい。

それからですねぇ。
>読んでる人@ヤグヲタ様
>140のときのすいません。
今気付きました。
『様』がついてませんでしたぁ・・・・。
『様』をつけたつもりだったんですが・・・・・。
悪気があったわけではなくて・・・。私がドジなばっかりに・・・・・・。
反省してます。今度から気をつけます。
160 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月14日(木)15時27分00秒
圭ちゃん、拾われて良かった。
次にわんこ達が会うときには、圭ちゃんも幸せを実感できるわんこになってるかな?

>>159
>作者さん
「様」の有無なんて、まったく気にしていません。
>>140のコトも、今初めて気付きました(w
だから作者さんも全然気にしないで下さいね。
161 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月15日(金)15時21分53秒
今日のなっちのライバル、梨華ちゃんはへんだ。
妙にそわそわしてる。


なっちやごっちんは気付いてないみたいだけど。


「ねぇ、よっすぃ〜。」
「なんんですか?」
今日はよっすぃ〜も公園にいる。
だから、いっぱいお喋りするんだぁ。

「なんか、今日の梨華ちゃん、そわそわしてない?」
「あーそうなんですよぉ・・・。実はですねぇ。」
「なになにっ?」
「あっ!!!だめです!言えません、梨華ちゃんに
『誰にもないしょだよ?』って言われました!」

なぁんだ・・・・・。つまんない。
よっすぃ〜、何気に口堅いんだね。
もっとなんでもぺらぺら喋ると思ったのに。

それとも、自分のご主人様だからかな?
162 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月15日(金)15時29分44秒
でも、やっぱり知りたい・・・・。
「よっすぃ〜、絶対だめなの?」

『えぇ〜。』と言いながら頭を悩ませる。

「絶対ってわけじゃないんですけど・・・ねぇ。
よしざわ、あんまり梨華ちゃんを裏切りたくないんですよ。
ご主人様だし、いいとこあるし・・・・・。」

へぇ、よっすぃ〜、結構忠実なんだ。
ちょっと見直したかも。

「うん。そこまで言いたくないんならいいよ。」
オイラも聞きすぎるのはよくないしね。
もう、諦めるよ、うん。

「でも、そのうちわかると思いますよ。バイトが終わったら。
よしざわ、そのためにここに来たんですから。楽しみです。」
「じゃあ、今日わかるわけ?」
「もちろんです。」

なんだ、それなら今聞き出さなくてもすぐにわかるね。
だって、たぶんだけどもうすぐバイトも終わる時間が迫ってきてると思うし。
163 名前:世紀 投稿日:2002年11月15日(金)15時46分50秒
少しづつ。
レスはまた次のときに・・・・・。
164 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月16日(土)09時36分04秒

ほらね。
なんか、アニメ声が聞こえるよ。
『ありがとーございましたぁ』って聞こえるけど。
もう終わったのかな?この声、梨華ちゃん?

「よっすぃ〜、梨華ちゃんの声だよね?」
「そうですよ。バイト、終わったみたいですね。」
「うん。」

梨華ちゃんの声が聞こえてすぐによっすぃ〜も
梨華ちゃんと同じくらいそわそわしはじめた。

なになに?



あ。
梨華ちゃんとごっちんだ。

少しして梨華ちゃんとごっちんが二人で歩いてくる。
よっすぃ〜のおむかえかな?


「よっすぃ〜、おむかえじゃないの?」
「う〜ん・・・・・・。」
よっすぃ〜の頭の上には?マークがいっぱいとんでる。
どしたの?

「おっかしーなぁ・・・・・・。」

『なにがそんなにおかしいの?』って聞きたかったけど、やめといた。
165 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月16日(土)09時51分34秒


「あっ・・・・・あのね、ごっちん・・・・・。」


さっきまで他愛のない話に花を咲かせてた梨華ちゃんとごっちん。
でも、急に梨華ちゃんの顔が今までに
みたこともないくらい、真剣な顔になった。


しかもラッキーなことにオイラや
よっすぃ〜からも二人の会話が聞こえる距離でっ。


「んぁ?なに、梨華ちゃん?」
ごっちんは前見たときと全然変わってなかった。
なんか久しぶりだ、ごっちん。


「いけっ!がんばれ、梨華ちゃんっ!!」
「よっすぃ〜?」
気付けば隣にいたよっすぃ〜は、梨華ちゃんの応援をしはじめた。
オイラが呼びかけても気付いてくれないほど、よっすぃ〜も真剣だった。
166 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月16日(土)10時11分13秒
「よっすぃ〜、よっすぃ〜ってば!!」



「あ、やぐちさん・・・・・。」
『あ』じゃないよっ!!
何回も呼んだのにオイラのほうなんか見向きもしないしさ。
ひどくない?

「さっきからよっすぃ〜は、なに応援してるのさ?」
やっと質問できたぁ。

「えっ!?あ、見てればわかりますよ。
だから静かに、そして話し掛けないで下さい。」
わがままだなぁ、よっすぃ〜は。
自分の喋りたい事だけ喋ったらもう、視線は梨華ちゃんとごっちんのほうへ。







「あのね、あたし、前からずっとごっちんのこと、好きだったの・・・・・・。」







167 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月16日(土)10時16分47秒




はっ!?
え?
り、梨華ちゃん、何おっしゃってるんですか?



す、『好き』!?

オイラの頭の中は混乱状態で、難しい事は考えられなかった。





「ほぇ?梨華・・・ちゃん?」


ほらね。急だったからごっちんもびっくりしてる。



ちらりと横を見ると満足しきったオトコマエの顔があった。
「え、と。よっすぃ〜?」
「梨華ちゃんの長年の夢が今、叶いましたよっ!!」

『ばんざーい、ばんざーい』って一人で盛り上がってるわんこ。

え?
もしかして、今日、梨華ちゃんやよっすぃ〜が
そわそわしてた理由ってこの事だったの!?
168 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月16日(土)10時23分49秒



梨華ちゃん、顔真っ赤だ。



よく言った!!






・・・・・・・・。
あ、だめだよっ!
そうだよ!
ごっちんはなっちのものなんだからっ。


オイラ、梨華ちゃんの応援してる場合じゃないじゃん!!


これって、もしかして、なっちの危機・・・?



「梨華ちゃん、それ、本気?」


まだごっちんも信じられないって顔してる。



「うん。ほんとだよ。ちっちゃい頃からずっと好きだったの。
最初は恋愛対象じゃなくてね、幼なじみとして大好きだったよ。
でもね、いつだったか覚えてないけど、いつのまにか恋の感情が
芽生えてきて、大きく育っちゃったんだぁ。
今はね、きれーな花がもうすぐ咲きそうなの。」

ぽつり、ぽつりと梨華ちゃんが喋りだす。


顔もだんだんと元の色に戻っていった。
169 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月16日(土)10時31分54秒
「きれーな花?」
ごっちんもいつもと変わらなくなった。



「うん。その花はね、ごっちんの応え次第で、ぽとって静かに落ちるか
大きく、大きくきれーに咲くかどっちかなの。
その二つの選択なんだ。あたしにとってはね。
もちろん、素直な気持ちを言えばあたしの花、きれーに咲いて欲しいんだ。
だから、今、言ってみたんだけどね。」


ほぉー。
オイラには考えつかない表現だね。


「梨華ちゃん・・・・・・・。」
隣では静かに応援してるわんこが一匹。


ごっちんは考えてるのか、ずっと下を俯いたままだ。



170 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月16日(土)10時39分37秒
「・・・・・・・。」


「あ、ごめんね。ごっちん・・・・・・。あたし、
ごっちんの気持ち、全然考えてなかったね。
ごっちんがなんにも言ってくれないってことは応えは『NO』なんだよね?
ごめんね、なんか強制みたいで・・・・・・・。
でも、あたし、明日から、幼なじみとして見るように努力してくから。
だから、また、喋ってくれるかな・・・・・?」

ごっちんが何も言わなかったのを察して梨華ちゃんが
ものすごい勢いで喋りだす。


泣くのを、我慢してるみたいだ。


はっきり断られたくないのかな?
それとも、単にごっちんが言いにくいだけ?


「梨華ちゃん・・・・。」
当然のごとく、オトコマエくんもしょぼんと、
しおれた風船みたいに小さくなった。


「よっすぃ〜、帰ろう。」
梨華ちゃんは、すぐによっすぃ〜をだっこする。


オイラから見たときは、目にいっぱい涙がたまってるように見えた。
171 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月16日(土)10時49分06秒




「いいよ。」




ごっちんが一言、梨華ちゃんが帰る寸前に言った。


「え?」
梨華ちゃんは足を止める。





「ごとー、梨華ちゃんの花、咲かしてあげるよ。
おっきくて、きれーな花でしょ?
ごとーでよければ、梨華ちゃんの花、咲かしてあげる。」

ごっちんは下を向いたまま小さな声で、でも強い声で言った。



「ごっちん?ほんと?ほんとにいいの?」




「うん・・・・・。いいよ。」


あれ?
ごっちんなんか様子が変じゃない?
オイラの気のせい?


「ごっちん、ありがとうっ!あたし、今、咲いたよっ!!
きれーな花!!ほんとに、ありがとうっ。」


梨華ちゃんが小走りでごっちんの元へ。

172 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月16日(土)10時52分46秒

梨華ちゃんは、無邪気に喜んでた。
よっすぃ〜も梨華ちゃんの腕の中で、はちきれんばかりの笑顔で喜んでた。




でも、オイラ、素直に喜べないよ。
そりゃ、もちろん、ごっちんが幸せになるのが一番いいと思うよ?
でもさぁ、オイラ、なっちのわんこだもん。
ご主人様が悲しがるような事、ほんとはやだもん。
ご主人様には誰よりも幸せになってほしいもん。




なっち、だいじょーぶかなぁ?



173 名前:世紀 投稿日:2002年11月16日(土)10時56分28秒
終わりに差し掛かってきました。
このまま突っ走っていきます。


>読んでる人@ヤグヲタ様
そうですね。
圭ちゃんも幸せというものをやっと手に入れられたわけです。

>140のこともありがとうございます。
読んでる人@ヤグヲタ様が心の広い方でよかったです。
感謝感謝です。
174 名前: 投稿日:2002年11月17日(日)02時40分50秒
そろそろやぐちがキューピットに?
175 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月17日(日)16時12分51秒
さっきの梨華ちゃんの告白タイムが終わって
梨華ちゃん、幸せいっぱいの顔。
どーやら、きれーなお花が咲いたみたい。

そんで今、告白をうけて梨華ちゃんの恋人になった人は、
オイラのあたまをなでなでしてる。

「やぐっつぁん、またね。」

『やぐっつぁん』?
なんだ、それ?

「ごっちん、やぐちさんにあだ名つけたの?」

『あだ名』?
あぁ。あれね。『なっち』とか『ごっちん』みたいなもんでしょ?
オイラのあだ名、『やぐっつぁん』?
そんなの、初めてだぁ。
みんな『やぐち』とか、『やぐちさん』だもん。

なんか嬉しいかも。

「うん。なんか『やぐちさん』とかってごとーには合わないかなって思って。」
『へへへ』と恥ずかしそうに笑うごっちん。
かわいいねぇ。
176 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月17日(日)16時21分18秒
「ごっちん、途中まで一緒に帰ろ?」
「うん、もちろんいいよ。」

ごっちんはオイラの頭をなでていた手を止めて、立ち上がった。
「それじゃあね、やぐちさん。」
梨華ちゃんもオイラにあいさつをする。
そしたらよっすぃ〜も小さくぺこりと頭を下げた。

「わんっ。」
よっすぃ〜には聞こえたと思うけど『ばいばい』って言った。



「やぐち。」
なっちだっ!!

後ろをむくとなっちが普段着を着てかばんを持って立っていた。
なっち、仕事終わったみたい。

「帰ろっか?」
うん。最近、ちょっと寒いもんね。
外にずっといると寒いよ。

なっちと一緒にいつもの道を歩く。
もう、ほとんど毎日通ってるから道も覚えちゃった。

がちゃ、という音を立ててドアを開けるなっち。
177 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月17日(日)16時36分24秒
オイラはすぐに部屋に入った。
もちろん、なっちのあとにね。
「やぐち、今日ね・・・・・」
部屋に入ってすぐに喋りだしたなっち。



「さっき、梨華ちゃんがごっちんに告白してるとこ、ずっと見てたの。」


なっち・・・・・?
なっち、見てたんだ・・・。

なっちの目に涙が見えた。
あ、なっち、泣いちゃうよぉ・・・・・。
どうすればいいんだよぅ・・・・。


「な、っちね、あのね、見たく、なかった。だからね、なっちね、
聞かないようにね、してたんだよ?『うそだよ。』って。自分に言い聞かせた。
でもね、ごっちんが『いいよ』って言ったときね、
現実なんだって思ったの・・・・・。
自然に、聞こえちゃった。だからね、なっち、失恋したんだ・・・・・。
新しい人、探さなきゃ、ね。」


なっちぃ・・・・・。

なっちに声をかけてあげられなかった。
もちろん、わんこだから声なんかかけてあげられないけど。


だからオイラは、静かに寄り添ってあげた。
178 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月17日(日)16時44分18秒

「やぐち?」

ねぇなっち、元気だしなよ。
まだ勝てるかもしれないよ。
無理矢理ごっちんを奪い取るのは、あんまりよくないと思うけど。
だって、なっちは、梨華ちゃんとも仲よしだもんね。
それに、ごっちんを奪い取ったらよっすぃ〜との仲も悪くなると思う。
そんなのやだもん。

でもさ、もしかしたらごっちん、梨華ちゃんの目が真剣で
そのときだけ好きになっちゃったかもしれない。

だって梨華ちゃん、あんな真剣な顔で言うんだもん。

「へへへ。ありがとね、やぐち。」

なっちの目から涙が消えた。
よかったぁ。

「なっち、明日からまたバイト、頑張るからね。」
うんっ。オイラもバイト、行くよ。
圭ちゃんは、加護に引き取られちゃたけど。
なっちの仕事、見てるだけでも楽しいかもしれないしね。
179 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月17日(日)16時55分54秒
なっちの涙もおさまって、夜が明けた。
今日は朝からバイトだって。
しかも、ごっちんと梨華ちゃんも一緒。
もちろん、オイラもついてくことにした。


「おはよ〜。」
「おはよ。」

オイラがなっちと公園についたらそこには、あの紗耶香がいた。
なんだ、紗耶香か。
つまんなぁい。
よっすぃ〜なら話にのってくれるんだけどなぁ。

「やぐちも来たわけ?」
「『やぐちも』ってなにさ。オイラはよくここにくるもん。
そんなこと言う紗耶香なんか滅多にこないじゃんか!」
「寂しいわけ?」
「違うもんっ!」

あ〜!ムカツクねぇ。こいつ。
最初に会ったときよりは少しはマシだけどっ!!

「紗耶香、ごっちんが梨華ちゃんと付き合ったの知ってる?」
「そりゃあね。あたしの主人だし。」

じゃ、情報収集できるのかな?

「ごっちんって、梨華ちゃんのことが前から好きだったの?」
180 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月17日(日)17時08分15秒
「前からかは知らないけど。後藤、
そーゆー自分の気持ちは、あたしに言わないから。」
「へぇ。」

なんだよぉ。ごっちん、紗耶香になんか言ってくれててもいいじゃんか。




「「やぐちさぁ〜んっ!!」」
あれ?
誰だぁ?


「てへてへ。久しぶりれす〜。」
「久しぶりかぁ?だいたい四日前ぐらい前に会ったやろ?」
「そういえば、そうれすね。」

後ろを振り向くと『へへへ』と二人で笑いあう姿があった。


ののに加護だ。
あれ?
のの、喋ったよね?

なんか安心した。


「やぐち。」
「やぐちさん。」

「圭ちゃんに、紺野っ!!」

181 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月17日(日)17時21分31秒
「ね、圭ちゃんと紺野、ののって喋れるようになったの?」
圭ちゃんと紺野は二匹で顔を見合わせて『ふふっ。』と笑う。

「え、なになに〜!?教えてよぉ。」
オイラの推理によるとこの二匹、絶対なんか隠してるよ。

「これは、言えませんよ。」
「そうねぇ。企業秘密ってとこかしら。でも、
一言で言えば加護もいいとこあるじゃない?って感じね。」

「そんなんじゃ全然わかんないよぉ・・・・・。」
だいたい企業秘密って、圭ちゃん・・・。
加護がなんかしたのかなぁ?
考えれば考えるほど、謎だらけだ。

「それじゃあやぐちさん。かごたち、行くところあるので。また来るからな。」
「またあそびにくるれすよ。まっててくらさいね。」
二人でわしゃわしゃとオイラの頭をなでた。

「と、ゆーことだから。それじゃあね、やぐち。」
「それではまた。」
二匹も簡単な挨拶をして、二人のあとをついてった。


「誰?あの人たち。」
紗耶香が二人と二匹が遠くに行ったときに聞いてきた。
「オイラの友達。ときどきこの公園に遊びに来るんだ。」

182 名前:世紀 投稿日:2002年11月17日(日)17時26分01秒
予定してなかった辻加護&圭ちゃんに紺野です。
しかし、少ししか登場してませんね。

>累様
まぁ、どんな感じでしょうね。
最後は題名のとおりいきたいですね。
183 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月17日(日)21時57分20秒
紗耶香と対峙するやぐちがカワイイ!!
184 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月24日(日)14時10分40秒
紗耶香は二人とニ匹のことを聞いたけど、あんまり興味はないみたい。
「紗耶香って、どーゆーわんこがタイプなの?」
ちょっと口に出してみた。

「どーゆーって?好きになる犬は喋ってると好きになってたりする。」
「ふーん。今まで誰か好きになったこととかあるの?」

紗耶香の好きな人とやらが気になった。
いやっ、別に紗耶香のこと、好きになったわけじゃないからねっ!
勘違いされてもオイラが困るんだから!!

「うーん・・・。あんまりないね。なれなれしいの嫌いだし。」
なんだ。つまんないわんこだなぁ。

「それじゃ、あたし、寝るから。」
「はっ!?」

なんでなんでなんで!?
一人ってつまんないんだよっ!
お願いだから寝ないでよぉ・・・・・・。

「夜、あんまり寝れないんだよね。だから、昼頃があたしの睡眠時間。」
「え〜・・・。つまんないじゃんか。ねぇ、喋ってようよぉ。」
ちょっと甘い声を出してみる。

「や。眠い。」

185 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月24日(日)14時21分37秒
わがままなやつ。


ま、オイラも、わがままなんだけどさ。
オイラの事はおいとくんだよ。
今は、もう目が半分閉じてる紗耶香のこと。


「ね、紗・・・」

すーすー。


もう寝ちゃった・・・の?


寝るの早いねぇ。
オイラには真似できない早さだ。

なんだよ、オイラ、ひまじゃん。



―――――
「やぐち、やぐち。」

・・・?
なんかゆさゆさと体を揺らされる。



なっちぃ?

186 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月24日(日)14時34分17秒
あ、オイラ、寝てたんだ。
あれぇ?
紗耶香がいない。
もう起きたのかな?

目をあけるとなっちの顔。
あ、かわいい。

「今日は早く終わったんだ。梨華ちゃん、なっちに話があるって。
だから、なっちん家に来るからね?」

えへ。やっぱ、かわいい。
オイラの自慢のご主人様。
いーでしょぉ。
なっちは、ごっちん以外には誰にもあげないんだからね。

そんなへんなこと考えてたらなっちにだっこされて
なっちの家に歩かないでも着いちゃった。

「おじゃましまーす。」
梨華ちゃんのアニメ声が聞こえた。
そっか、梨華ちゃん来るんだった。

「どーぞどーぞ。汚いけど気にしないでね。」
「そんなことないですよぉ。かわいい部屋ですねぇ。」
「へへへ。ありがと。」
187 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月24日(日)14時51分07秒

あれ?
なっちの顔が真剣になる。
「で、相談ってゆーのは?」
そーだん?
梨華ちゃん、なっちの相談があるの?

「安倍さん、直球ですね。」
笑いながら言う梨華ちゃん。

そんな梨華ちゃんになっちは、紅茶を出す。

「あ、ありがとうございます。」
ぺこりとお辞儀をする。
「ぜんぜん気にしないで。勝手に飲んじゃっていいから。」
「はい。」

なかなか本題に入らない。


「あの、安倍さん、ごっちんのことなんですけど・・・・・。」
ちょっと紅茶を飲んでから、梨華ちゃんは本題に入る。
たぶん、ごっちんのことなのかな?


「ごっちん?」
なっちは、表情が変わるのを我慢してたみたい。

「あの、ごっちん、あたしのこと、好きなのかなぁ・・・。」
ぽつりと、なっちに聞こえるぐらいの小さな声で言った。

「ごっちん?好きだから付き合ってるんじゃないの?」
なっちは、ごっちんのことを好きなのを
梨華ちゃんに知られないように頑張ってた。

「そうなんですけど・・・。ごっちん、あんまり
あたしを見てくれない気がして・・・・。ほかの子を見てる気がするんです。」
寂しそうな顔で言う。
188 名前:世紀 投稿日:2002年11月24日(日)14時55分05秒
更新。
なんか終わりに近づいた感じ。

>読んでる人@ヤグヲタ様
いちーさん、書くのが難しいです・・・・。
反省。
性格、変えたほうがよかったでしょうか?
189 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月25日(月)13時42分37秒
いちーわんこは、この性格がグットだと思いますよ。
190 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月30日(土)15時02分51秒



「なっち、ごっちんに直接聞いたげよっか?」
なっちはすぐに笑顔で言う。

「え?安倍さんが、ですか?」
梨華ちゃんは顔を上げる。
「うん。『梨華ちゃんの事、好き?』って。
あ、もちろん、梨華ちゃんの名前は出さないよ。」

「いいんですか?」
おずおずと梨華ちゃんは、口を開いた。

「うん。今度のバイトの時にでも。」
「あ、ありがとうございます。」
梨華ちゃんはあっけにとられた感じ。

「ほんとに、今日はありがとうございました。」
玄関のとこで、小さくぺこりとお辞儀する梨華ちゃん。
なんかもう帰るみたい。

「ううん。それじゃあ、気をつけて帰ってね。」
「はい。」
きぃ、という音を立てて扉を開けて、梨華ちゃんは帰っていった。
なっちは、扉が閉まるまでずっと手を振っていた。

191 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月30日(土)15時03分42秒



「なっち、ごっちんに直接聞いたげよっか?」
なっちはすぐに笑顔で言う。

「え?安倍さんが、ですか?」
梨華ちゃんは顔を上げる。
「うん。『梨華ちゃんの事、好き?』って。
あ、もちろん、梨華ちゃんの名前は出さないよ。」

「いいんですか?」
おずおずと梨華ちゃんは、口を開いた。

「うん。今度のバイトの時にでも。」
「あ、ありがとうございます。」
梨華ちゃんはあっけにとられた感じ。

「ほんとに、今日はありがとうございました。」
玄関のとこで、小さくぺこりとお辞儀する梨華ちゃん。
なんかもう帰るみたい。

「ううん。それじゃあ、気をつけて帰ってね。」
「はい。」
きぃ、という音を立てて扉を開けて、梨華ちゃんは帰っていった。
なっちは、扉が閉まるまでずっと手を振っていた。


192 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月30日(土)15時14分29秒
なっちは、扉が閉まったあとオイラを持ち上げた。

「やぐち、ここ、寒いでしょ?風邪、ひくから部屋に戻ろ。」
なんか、なっちの声、辛そうだよ。
だいじょぶ?


部屋に戻ったあとも、なっちのことじぃっと
見てたらオイラの視線に気付いたみたい。


「やぐち、なっち、ちゃんと梨華ちゃんの相談相手になれたかなぁ?
ごっちんのこと、なっち、諦めるの。
だからね、自分の気持ち、封印して、梨華ちゃんの話し聞いたつもりなんだ。」

なっちの顔は、さっきの梨華ちゃんと同じ顔だった。
ほんとは、諦めたくないんだよね。
辛いんだよね。

なっちは、優しいね。


「今度のバイトは、明後日なんだ。そのとき、ごっちんに聞くつもり。」
なっちは、笑顔になった。
でも、その笑顔は、ほんものじゃなかった。
仮面かぶってるみたい。
なっち、仮面の下で、泣いてるの?




ねぇ、オイラの前ではその仮面、はずしていいよ?
仮面つけっぱなしじゃ、なっちが壊れちゃうよ。



193 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月30日(土)15時24分30秒
次の日は、なっちはずっと家にいた。
部屋の片付けみたい。

ほこりがつもってるとこがあって、
下にほこりをなっちがはらってる時は、辛かったね。


だから、すぐにバイトの日がきた。
今日もいつも通りに、バイトの支度。
それをずっと見てた。
目が、不安そうだった。


―――――――
「なっち、おはよ。」
なっちとオイラが着いたときには、ごっちんがいた。

「おはよ。ごっちん。」
「そだ。ね、今日さ、話があるからバイトが終わったら時間、いいかな?」
首を傾けながら、ごっちんに聞く。

「うん、全然いいよ。それにしても、なっち、かわいいねぇ。」
「えっ!?そ、そんなこと、ないべ・・・よ。」
顔がりんごみたいに赤くなって、下を向くなっち。
しかも、訛りが。
そんななっちもかわいいね。ほんと。


「あはっ。早くなっちも準備しなよ。」
でもごっちんの笑顔もかわいいね。
あーあ。けっこういいカップルだと思うのはオイラだけ?

194 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月30日(土)15時41分14秒
今日、一緒に喋ってくれるお相手はだーれもいない。
よっすぃ〜でも、紗耶香でもいいんだけど来てくれないかなぁ。

あ、圭ちゃんたちでもいいね。


あ〜やばい・・・・。
眠くなってきた。
昨日、あんま眠れなかったんだよね。


もういいや。
寝ちゃえ。
おやすみなさ〜い。



―――――
「な・・・べっ!そ・・・!?」
う〜・・・・・。
うるさくて眠れないよぉ。
誰だよぉ。


わずかになっちの声に似てる気がしたのはオイラの気のせい?
おいら、耳悪くなったかな?
まさか、年っ!?


うわぁ。やだやだやだやだやだ。
オイラ、もっと長生きしたいよぅ。


いい恋するんだもんね。


でもさっきのうるさい人、訛りがあった気がする。
しかもなっちと同じ・・・・・。
やっぱ、まさか、まさかね。

でも、意外とそのまさかだったりするんだよね。

気になるから目を開けよう。



おや?
あそこで真剣な顔で怒ってるのはオイラの大好きなご主人様ぁ?


195 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月30日(土)15時50分41秒
うん、確かにあそこにいるのはなっちだね。
正真正銘、安倍なつみ。


相手は、背中向けててよくわかんないんだけど長い髪の毛に、
なっちよりも大きい背。
いや、なっちって、もともと大きいほうじゃないから
みんなでっかいんだけどね。


オイラ、思うんだけどあれは、ごっちんじゃない?


「もういいべっ!ごっちんのばかっ!!」

あれ?あらららららら?
なっちはぷりぷり怒りながら、こっちにむかって歩いてくる。
いつもならオイラもなっちの元へ走るんだけど、今日ばかりは
なっちの体から出るオーラで近づけなかった。


なんか、怖いよぉ。


「やぐち、帰るべよっ!!」
なっちは怒ったままオイラをだっこした。
うぅ。
怖いよぉ・・・・・。


はじめてかもね。
なっちの腕の中にいるのが怖く感じるのって。


196 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月30日(土)16時04分29秒


家につく時間が遅く感じた。
だってさ、なっちずっと怒ってるんだもん。

なっちらしくないよ。


「ごめんね。」
なっちの腕の中で震えてたオイラにいつもの優しい顔で
謝ってきた、なっち。

いつものなっちに戻ったぁ。


「なっちね、ごっちんに梨華ちゃんのこと、聞いたんだ。」
部屋に戻って、最初の一言は、オイラを膝に乗せて、頭を撫でながら言った。
なっちはやっと落ち着いて、訛りもなくなった。

「ごっちんね、『友だちとして好きだったの。大好きだよ?
でも、恋愛対象としては、見てなかったんだぁ。
梨華ちゃんがごとーのこと好きってこと気付かなかった。
ほんとはごとーも好きな子いるんだ。だけど、きっと叶わない恋だから。
梨華ちゃんだけでも幸せになってほしかったの。
それで、付き合ってあげてるんだ。』って言ったの。
それでね、なっち、頭に血が上ってかぁーってなってね、怒ったの。」

あ、だからごっちん、告白の時、様子が変だったのかな?


「でもね、なっち、ごっちんに怒ったんじゃないと思うの。」

は?どゆこと?
よくわかんないんだけど。



「なっち、自分に怒ったの。」


なっち?

197 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年11月30日(土)16時10分47秒


「だって、なっちってひどいんだよ?
ごっちんが、『好きな子がいる。』ってゆーの聞いてさ、
期待しちゃった自分がいたの。
もう、諦めたはずなのにさ。
おかしいよね、なっち。自己中だよね。
梨華ちゃんのこと、聞こうと思ったのにさ。
全然、梨華ちゃんの役に立てなかった。
なっちさ、怒るだけ怒って、帰ってきちゃったもん・・・・。」


なっち、目、うるうるだよ?
かわいそうだよぉ・・・・。
オイラ、なんかできないかなぁ。



きっと、なっちは悪くないよ。
誰も悪くない。

なっちは友達想いのいい子だよ。
だって、自分を犠牲にしてまで、ごっちんに梨華ちゃんのこと、聞いたしさ。
梨華ちゃんはライバルなのに、相談にのってあげたじゃん。


なっち、元気だしてよ。



オイラ、恋のキューピットになるからさ。



198 名前:世紀 投稿日:2002年11月30日(土)16時14分04秒
もうすぐ終わりそう。
なんかちょっと前からずっと終わりそうって言いっぱなしな気がします。
更新、できるだけはやくしますね。

>読んでる人@ヤグヲタ様
いちーさんの性格のこと、ありがとうございます。
何気に書くのが難しかったりします。
やっぱ、ののとか加護ちゃんとか書きやすいです。

199 名前:LOVE 投稿日:2002年11月30日(土)21時34分52秒
やぐちわんこちゃん!なっちのキューピットになってあげてっ!

いや〜、やっぱりこのお話好きです。っていうか、続きが気になる…。
矢口わんこの力でなっちが幸せになることを祈ってます(笑)
200 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年12月04日(水)23時04分52秒
今度、矢口がなっちとのW主役でラジオドラマをやるんだけど、
矢口の役はなんとわんこ!!
まさか現実世界でやぐちわんこの声を聴けるとは・・・・。
201 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年12月05日(木)17時46分56秒


「ねぇ、聞いてるっ!?」
オイラ、さっきからずっと喋ってるのにまともな反応を見せてくれない。

「うん。聞いてるよ。」
「だったらさ、ちゃんと会話するようなこと喋ってよぉっ!!」
「だってどっちでもいいもん。」
さらりとオイラの言葉を交わす紗耶香。
ここは公園。
なっちの付き添いでまた来たら紗耶香がいた。
それでさ、『なっちとごっちんの二人の雰囲気が、けんかしちゃって
悪いから二人を仲直りさせたい』っていったら『あっそ。』って。
だんだんその反応もよくなってると思うんだけど。

「紗耶香もいい考えないの?」
オイラだけじゃ物足りないじゃん。
一人より二人のほうがいいし。


「直接二人で話させればいいんじゃないの。」

202 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年12月05日(木)17時54分56秒
「それが出来ないから考えてるんだよ。」
もう、呆れた。
まともに考えてくれやしない。
最悪。

「話をさせるのはやぐちの努力次第だよ。」
オイラが強制的に話し掛けるわけ?
でもそれしかないのかなぁ。

待ってるだけじゃ、ね。

「じゃあ紗耶香、協力してくれる?」
さりげなーく甘えた声を出してみる。
どうせ紗耶香になんか意味ないだろうけど。

「簡単なことならいいけど。」
おおっ。珍しいね。
紗耶香、協力的だよ。
もしかして、オイラの甘い声が効いたのかな?
そこまで決まればもう簡単。

強制的に話させればいいんだもん。


なっちとごっちんの様子を盗み見ると二人は、話もしないで
ただテキパキと仕事をしてる。
いつもは、喋りながらゆっくりやってるのに。

やっぱりオイラたちがなんとかしなきゃ。

203 名前:世紀 投稿日:2002年12月05日(木)18時08分11秒
あぁ。
なかなか進まない。
すみません。

>LOVE様
話を好きといってくれるとありがたいです。
更新、遅くてすみません。


>読んでる人@ヤグヲタ様
ま、まじですかっ!!
知らなかった・・・・・。
ラジオ、聞けるかわからないのですが、聞きたいです。
204 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年12月07日(土)15時14分27秒

「いい?よ〜く聞いてね。」
オイラはぐいっと紗耶香に顔を近づける。


いや、キスとかしたいんじゃないからね。

「わかったから、早く言ってよ。」
「うっさい。あのさ、今度の日曜日の散歩の時間って決まってる?」
「大体、朝とお昼食べた後と、夕方の六時ぐらい。」

オイラの散歩と同じ時間は六時だね。
よし。

「じゃあさ、六時の時の散歩って、公園の前は通る?」
「うん。」

完璧だね。
この作戦。


「オイラもこの公園通るんだ。だからさ、会うかもしれないじゃん。」
まだ日曜日に散歩であった事なんかないけどさ、
もしかしたら、会えるかもしれない。

「まぁ。」
「で、会ったときに話をさせるわけ。いい考えじゃない?」
さすがオイラ。

「てか、そのまんまだね。」
「それは禁句。」
オイラも思ったんだから。
紗耶香、こんぐらいなら協力してくれるよね。

「あたしは何をすればいいの?」
まだオイラの作戦が、単純だったから呆れてるみたい。

「なるべく公園のとこにいて。」
「じゃあ、できるだけのことはやるよ。」


「お願いね。オイラも頑張るから。」



205 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年12月07日(土)15時22分57秒



あっという間に日曜日。
今日一番の楽しみはやっぱり、なっちとごっちんの仲直り企画。
紗耶香、ちゃんとやってくれるかな?
もうここまできたら、紗耶香を信じるしかないね。

もうすぐ六時。
散歩の時間。



「やぐち、散歩行こうか?」
うん。早く行こうよ。
いつもの散歩よりもすっごく楽しみなんだ。
今日の散歩。
少し、心配だけど。


いつものように
いつもの道を通る。
外の景色はいつもとかわらないけど、
それでも楽しかった。


もうすぐ、公園だ。
紗耶香とごっちんいるかな?


公園の入り口のところ。
あれ?
紗耶香、いないよ。
どこ?
どこいったの?


もしかして、失敗しちゃったの?
なっちはずっと変わらない表情で歩いてる。
ごっちん、来てくれないかなぁ・・・・。
206 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年12月07日(土)15時29分33秒


ちょ、ちょっとまってよ。



あれ?
もうちょっと前を歩いてるのって・・・。




ごっちんと紗耶香?
うん。
間違いないよ。
だって、わんこをつれた女の子。
そのわんこは、オイラと同じ種類。


こっから走る?
でもなっち、運動苦手なんだよなぁ。


よーし。
こうなったら・・・。





「わん、わんっ!!」
ちょっとしつけのなってないわんこみたいで恥ずかしいけど、叫んでみた。
ごっちん、気付いてくれたかな?


「やぐち、だめだよ。どーしたの?いつもはもっといい子なのに。」
オイラ、怒られちゃった・・・。
反省してるよ。
だって、好きでこんな事やってるわけじゃないもん。


なっちにだっこされちゃった。
これじゃ、走れないよ。
ごっちん、気づいてよぉ・・・・。



「わん、わん!!」
こうなったら、怒られるの覚悟で吠えてやる。


「やぐち。ほんとにどーしたの?」

なんかなっち、怒るのも忘れて心配してくれた。
ごめんね。



207 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年12月07日(土)15時35分26秒
これ以上は吠えられないよ。
なっちに心配かけさせたくないもん。



「あれ、なっち?あは。なっちだぁ〜!」
そんなこと思ってたら、遠くのほうからごっちんの声が聞こえてきた。
もしかして、気付いてくれた?

紗耶香をだっこして、こっちまでわざわざ戻ってきてくれた。


「ご、っちん。」
なっちも気付いてくれたね。
よかったよかった。

さて、あとはなっちとごっちんに頑張ってもらわなきゃ。


「紗耶香、早すぎるよ、ここ通るの。」
「これでもやぐちが吠えた時は、ちゃんと後藤を後ろ
むかせるのに苦労したんだからね。」
二人で、自分のご主人様の腕の中、少しおしゃべり。



肝心のオイラ達のご主人様は、ちょっと二人とも戸惑ってるご様子。
もうっ!
なにやってんだよぉ。

208 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年12月07日(土)15時42分17秒


「あ、あのごっちん、なっち、勝手に怒ったり、『ばか』って
言ったり、その・・・ごめんね?ほんとに悪かったべ。」


訛ってるよ。


でもそれほど、きんちょーしてるのかな?

でも、あんま素直じゃないんだよね、なっちって。
だから、自分から謝れただけでもすごいのかな?


なっちの顔、真っかっか。
かわいいね、かわいい。


「なっち?ごとー怒ってないよ。だいじょぶだよ?
ただ、ごとー、なっちを怒らせちゃったみたいで、ごとーこそごめんね?」


よかったぁ。
仲直りだね。
これで、なっちが告白なんかしちゃったりしたら、最高なんだけどなぁ。


209 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年12月07日(土)15時51分26秒


「ごとーね、あのあといっぱい考えたんだぁ。
それでねごとー、梨華ちゃんと別れる事にしたんだ。
だって、恋人として好きじゃないんなら、梨華ちゃん、可哀想かなぁって。
それに梨華ちゃん、かわいいからきっとすぐに新しい恋人が
見つかると思うの。だから、今度言ってみる。」

ほんとによかったね、なっち。
なんか、手が少し震えてるよ。

「ごっちん・・・・。」



「ごっちん、またバイトのとき、喋って、くれる?」

なっち、そんなこと聞かなくてもわかるじゃん。
心配なの?


「なっち、何言ってるの?当たり前でしょっ。」
ごっちんは笑顔になった。
しかも『当たり前』だって。

「じゃあ、これからもよろしくね、ごっちん。」
「そりゃあもう。」

なっちも、太陽みたいな笑顔。
なっちには、笑顔が一番似合うね。


「じゃあね、なっち。またバイトで。」
「うん。ばいばい、ごっちん。」



作戦は大成功だね。

210 名前:世紀 投稿日:2002年12月07日(土)15時52分32秒
あと一回か、二回か・・・・・。
もうすぐ。
211 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年12月08日(日)13時26分51秒


仲直りした次の日は、バイトはお休みだった。
そのせいかなっちは、お昼頃まで寝てた。
だから朝の散歩はしなかった。
すこし、ショック・・・。


でも今は、なっちは起きてるよ。
今、ごろごろしながら雑誌を読んでる。
オイラにはよくわかんない雑誌。

ピーンポーン。
あ。なっち、誰かきたよ。
誰かな誰かな。

なっちは、雑誌を閉じて立ち上がった。
まってよぉ、オイラも行くよ。

「やぐちはここでまっててね。」
ちぇっ。
つまんないの。


しょうがない。
ここで待ってよ。
昨日なっちに怒られたばっかだしね。
212 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年12月08日(日)13時36分43秒

ここじゃ声は聞き取りにくい。

部屋に入ってきてくれないかな?
「おじゃましまーす。」
ん?
入ってきたよ。
梨華ちゃんじゃないかい?
アニメ声だし。


「あっ。やぐちさんっ!」
歩いてオイラのほうに向かってくる梨華ちゃん。
オイラの頭をなでてくれた。

「梨華ちゃん、何してるの?」
なっちが部屋に入ってきた。
すぐにこっちにこないでキッチンのとこでまた飲み物を用意してた。
今度は、お菓子も。


「安倍さん、あたし、ごっちんと別れたんです。」
きっぱりとなっちに聞こえるような声で言った。
今、なんていったの?
『別れた』って?


なっちは、オイラと梨華ちゃんのところへ歩いてきた。
「梨華ちゃん、それ、ほんと?」
なっち、びっくりしてる。
そういや昨日、『別れる』って言ったっけ。
それでもやっぱり、びっくりだね。


「安倍さんは、ごっちんのこと好きなんですよね?」
なっちはまたまた驚いた。
目が少し大きくなったもん。
でも、梨華ちゃんは確信してた。
213 名前:オイラの作戦 投稿日:2002年12月08日(日)13時46分26秒


「なんとなくわかってたんです。確信、とまではいきませんでしたけど。
でも、この前相談した時ぐらいからだんだん確信に変わっていきました。
あたし、応援してます。安倍さんの花、咲くことを願ってますから。
頑張ってくださいね。」

にこっと笑った。
もう、梨華ちゃんは心の底から笑ってた。
ほんとになっちのことを応援してるみたい。


「梨華ちゃん、ありがとね。」
「いえ。全然構わないんです。でも、告白してくださいね。
きっと、大丈夫ですから。」

梨華ちゃんは『大丈夫』と言った。
オイラも大丈夫って思った。
きっと、ごっちんの好きな人はなっちだよ。


「あたし、帰りますね。」
「うん、わかった。」
もくもくと帰る準備をしている。

「それじゃあ、また。」
「うん。ばいばい。」
入り口のところでの会話。
今度はオイラも連れてきてもらった。
なっちは小さく手を振っていた。
214 名前:エピローグ 投稿日:2002年12月08日(日)13時51分49秒


なっちは明日、告白に行くって。
オイラはおるすばん。



この日の朝、出て行くときのなっちの
不安そうな背中は、見てるのが辛かった。



おるすばんはひまなのに、今日はひまじゃなかった。
オイラは、ここで祈ってることしか出来ないけど・・・。




「ただいま〜っ!」



オイラ、なっちが帰ってきたときの顔、
絶対に忘れない―――




・・・・END


215 名前:世紀 投稿日:2002年12月08日(日)13時55分05秒
終わりましたっ。
なんかあっという間という感じです。
想像以上の出来になったので満足です。


この後、この続きにサイドストーリーっていうんでしょうか?
書いていきます。
これから、新しい話がはじまります。
よろしくお願いします。
216 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年12月08日(日)19時49分52秒
脱稿お疲れ様でした。
最後、なっちがどんな顔で帰って来たのか、読者に想像させる終わり方がなんかイイですね。
自分はもちろん、最高の笑顔を想像しました。
物語り全体の感想としては、やぐちわんこの可愛さが炸裂していた作品だったと思います。
では、番外編(?)も激しく期待してます。
217 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月11日(水)20時13分12秒

―――



「な、奈良から来た加護亜依です。」




218 名前:世紀 投稿日:2002年12月11日(水)20時13分59秒





『いのちのことば』

219 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月11日(水)20時19分03秒
最初、あいさつをしたときほんまに緊張した。
だって、みんなこっち見とるんやもん。

先生が『加護亜依』って黒板に書いてた。
みんな、かごのことをじろじろ見てきた。


なんやねん。

かごが前いた学校とここの制服は、似ていたから安心した。
でも、上靴は全然違って、恥ずかしかった。


「加護さんはあそこのあいてる席に座ってね。」
先生は、一番後ろの席を指差した。
かご、ここに一人で突っ立てるのいややったからなるべく速く歩いた。

隣に座っとったのは一人の女の子やった。
220 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月11日(水)20時32分08秒


かごが席につくと先生が話をはじめた。
先生は、喋るだけ喋って職員室に行ってしもうた。

やっぱ、隣の子ぐらいにはあいさつしたほうがええんかなぁ?
女の子やし、話しやすいやろ。


「ねぇ、奈良ってことは関西弁喋ってるの?」
「学校のこと教えてあがよっか?」
大勢の人がかごの机のまわりに集まってきた。
こんなの初めてや。
突然自己紹介とか始める子もおったし、質問攻めしてくる子もおった。
転校生ってこんなもんなんかぁ。
なんか、ええなぁ。
人気者になれた気分や。


ふと、隣の子を見るとずーっと下を向いてた。
その子にはだぁーれも話し掛けてこおへんかった。
なんや?
ひとりぼっちの子?



寂しいなぁ。

かご、友達になったろか?

221 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月11日(水)20時42分42秒
チャイムが鳴っても無視して話し掛けてくる子もぎょーさんおった。
かごも出きるだけ対応したつもり。

ちゃんと笑顔やったと思う。

先生が来てやっと席についた人たち。
かごも隣りの子と話ができるっちゅーわけ。


「なぁ、あんた、名前なんて言うん?」
笑顔で話し掛けてみた。
その子は体をびくっと小さく反応させた。

そんなに話し掛けられたの驚く事ないやろ?
かごの顔、怖かったん?



「つじ のぞみ、れす。」
びくびくしながら自己紹介。
なんか最後の『れす』ってなに?
口癖か?
へんな子やなぁ。


なんか、膝にはばんそうこうはっとるし。
転んだんかなぁ。
もしかして、辻さんの友達は今日休み?
ほら、二人だけで仲よくて、ほかに話す人がおらんとか。
そんでそのばんそうこうは一緒に遊んだ時のけが。


辻褄合うやん。



かご、天才?


222 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月11日(水)20時50分08秒
次の日んなって気づいたんやけど、辻さんの友達が休みなら
机が一つあいとるはずやん。

けど、どこもあいてへんかった。



ほんまに友達おれへんの?



そら、寂しいわぁ。


数学の授業中、辻さんが先生に指された。
「辻さん、ここ、いくつになるかわかる?」
かごはわかった。
答えは−3。

けっこう簡単な問題。
それでも辻さんは下をずっと向いとる。
休み時間と同じや。
まわりでは『こんなんもわかんないのぉ?』とか『−3だよねぇ』とか
辻さんを侮辱する声がたくさん聞こえた。


「・・・・わからないれす。」
223 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月11日(水)20時57分50秒


「こんなんもわかんねぇーのかよー!」
誰だか知らんけど、男子が笑いながら辻さんをばかにした。
そしたらその近くにいた男子たちも、大きな声を出して笑ってた。

何人かの女の子も小さな声でくすくす笑ってた。
辻さんを見ると、ずっと下を向いたまま。
少し、涙が溜まってるように見えた。


「はいはい。静かにしなさい。」
数学の先生は、やさしい先生やった。
だから、生徒を怒るなんてしなかった。


「辻さん、大丈夫やで。」
同情心かよく自分でもわからへんかったけど小さな声で慰めてあげた。
まわりの声に、掻き消されなかったか心配やったけど。


「でも・・・・。」
なんとか、かごの声は聞こえたみたい。
でも、もっと落ち込んでしもた。





「かごも、あの問題わからへんかったから・・・。」



224 名前:世紀 投稿日:2002年12月11日(水)21時06分24秒
新しい話が始まりました。
>217の名無しは私です。


あと訂正。
>220の
「学校のこと教えてあがよっか?」
「学校のこと教えてあげよっか?」
にしてください。ごめんなさい。

>読んでる人@ヤグヲタ様
個人的にもなっちは笑顔です。
まぁそれは、人それぞれ。
矢口さん主役もここまでです。
読めばわかると思いますが、加護と辻です。
もちろんそのうち矢口さんも、なっちも出てくると思いますが。
期待を裏切らないような作品にしたいと思っております。
225 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年12月13日(金)21時11分55秒
加護、エエ子や・・・。
226 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月20日(金)17時16分29秒



「ほんと、れすか?」
辻さんは、少し目を輝かせてかごのほうを見る。
初めて、かごの顔を見てくれた気がした。


「ほんまや、ほんま。かご、アホやから全然わからへん。」
辻さんだけが聞こえるような小さな声で、言ってあげた。
辻さんは、『てへてへ。』とほんの少しやけど笑ってくれた。


それから、その時間はずっと辻さんと小さな声でお喋りをしてた。
学校のこと、辻さんの事、かごの事、奈良のこと・・・・・。


ほんまに楽しかった。
いつのまにか授業も終わってた。


「辻さんのあだ名ってなんて言うん?」
やっぱり、こんなにたくさん喋ったんやから、もう友達や。
だから、辻さんの事をさん付けやなくて、あだ名で呼びたかった。

「あだ名、れすか?」
『うーん。』とかいろいろ言ってたけど、
あだ名って、そんなに考えるものなんかぁ?
みんなから、よばれてる名前やから時間はかからないものなんやないか?


「みんな、『辻。』とか『ばか。』とかなのれす・・・。」
しゅん、と体を小さくさせる辻さんは、どこか寂しそうやった。

「さん付けで呼ぶ人なんて、かごさんしか、いないれすよ。」

227 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月20日(金)17時34分02秒
辻さんは、喋れば喋るほど、寂しそうな顔になっていった。


「なら、かご、辻さんの新しいあだ名をつくったる!」
いいあだ名がないんなら、今からつくればええ。

「いいんれすか?」
辻さんの目は、授業中、話をしていた目に戻って、きらきらしてた。
その目を見たら、なんかわからへんけど、頑張ろうって思った。

「もちろんや。そのかわり、かご、奈良のみんなには『あいぼん』って
呼ばれてたから、辻さんも『あいぼん』ってよんでくれるか?」
かご、奈良におった時、一匹のわんこを連れた女の子に
初めてあだ名を付けられた。
それが、『あいぼん』やった。

ほんまにめっちゃ嬉しくって、ずっと喜んでた。

「あいぼん・・・れすか?」
不安そうな目でこっちを見てきた。
なんか、人のあだ名を言うのが慣れてへんみたい。


「そうや。辻さんはかごがこっちに来てからのはじめての友達や。」
228 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月20日(金)17時45分20秒


「友達、いいんれすか?」
なんか、辻さんはかごが言う一つ一つに反応してるみたい。
やっぱり、友達おらへんの?


「かご、次の授業の時に、辻さんのあだ名を考えるから、
それまでまっててくれへん?」
かごやって、すぐに人のあだ名が思いつくわけあらへん。
だから、次の授業中に考える事にした。
  

辻さんは、ほんまに嬉しそうやった。
かごも、嬉しくなった。


「どんなにかかってもまってるれすよ。初めてのあだ名なんれす。
ほんとにうれしいれす。かごさ・・あ、ちがう。
あいぼん、ありがとうれす。」
なんかまだ、かごのあだ名を言うのが慣れてへんみたい。
でも、そのうち慣れるやろ。


辻さんと喋ってたら、チャイムがなってしもた。
もっと、辻さんといろんな話をしたかった。
229 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月20日(金)18時03分52秒

先生が、黒板に文字を書いたり、教科書を読んだりしてたけど
かごはずっと辻さんのあだ名を考えてた。

隣の席の辻さんは、ノートに黒板に書かれた文字を、写していた。


どーゆーのがええんやろ?
辻・・つじ・・・。
下の名前、なんやっけ?


『つじ のぞみ、れす。』
確か、名前を聞いたとき、こう言ったはずや。
のぞみ、ねぇ。

どーゆー漢字なんやろ?
ふと、辻さんの名札を見たら『辻 希美』と書いておった。


のぞみ・・・。のの、とかどうや?
なんか、辻さんにピッタリな名前やない?
230 名前:世紀 投稿日:2002年12月20日(金)18時08分01秒
遅れてすいません。
なかなか出来なくて・・・。

>読んでる人@ヤグヲタ様
加護は基本的にいいこなんです。
たぶん。
やぐちさんのひもを外したのだって、遊びたかっただけですから。
この後も、きっといいこです。
231 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月22日(日)17時46分11秒


あぁ、早くチャイムならへんかな。
チャイムがなったらすぐに辻さんに伝えるんや。
『ええ名前、考えたで。』って。

かごの予想だと辻さんは大喜びするはずや。


「それじゃあ、今日はここまで。」
先生が、終わりの合図を出したっ!

「きりーつ。ちゅーもーく。れい。」
日直のやる気のない声で挨拶も終わりや。


「辻さん、辻さんっ。」
辻さんは、イスに座って教科書やノートを片付けてた。

「どうしたんれすか?」
かごを見上げる辻さんはきょとんとしておった。
「辻さんのええあだ名、考えたで。」
かごも、自分のイスに座って、教科書やノートを片付けた。

「もうれすかっ?はやいれすねぇ。なんてゆーんれす?」
辻さんは目を輝かせて、かごの考えてあだ名をじっと聞こうとしとった。
なんかその姿が妙にかわいらしかった。


「辻さんの下の名前は希美、やろ?せやから『のの』や!」
どうや?
自信作やで?
だから、胸張って言ってやった。


「のの、れすか?」
辻さんはよくわからない表情をしててかごには読み取れへん。
なんか、微妙な表情やった。


232 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月22日(日)17時54分19秒


「辻さん?いややった?」
かご、なんか不安になってきた。
だって辻さん、嬉しそうな表情もしないし、悲しそうな顔もしないんやもん。


「ううんっ。ぜんぜんいやじゃないれす!嬉しいれすっ。
ののでいいれす!あいぼん、ありがとうね。」

なんや。
びっくりしたやんか。
でも、どうやら気に入ってくれたみたい。



「ねぇ、加護さん。」
後ろをむいたら、同じクラスの子やった。
ある程度、かわいい顔つきの。

「なに?」
「あのさ、話があるんだ。ここじゃ、言いにくいから、廊下にきてくれない?」
申し訳なさそうな顔で聞いてくる。

「もちろん。ええけど。」

233 名前:世紀 投稿日:2002年12月22日(日)17時58分03秒
わずかながら。
更新しました。

ゆっくりと進んでいくと思います。
234 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月25日(水)14時57分42秒


「のの、話が終わったら、また話そ?」
イスから立ち上がってののを見た。
そしたら、ののは暗い表情をして俯いていた。

「のの?」
もしかしたら、気付いてないだけかもしれない。

「な、なんでもないれす。あいぼん、早く行ってあげなよ・・・。」
でも、ののの顔はなんでもない顔やなかった。
ほんまに心配や。

話が終わったら、たくさん喋ろう。
そしたらきっと、またさっきのののに戻るはずや。

「それじゃあ、のの、すぐ戻ってくるから。」
ののは少し時間を空けてこくん、と頷いた。

235 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月25日(水)15時11分50秒


「かごさーん。こっちこっち。」
さっきの子が、廊下に出たかごを見て手を振る。

「どないしたん?」
その子がかごを呼んだ所には数人の女の子がおった。
みんな、同じクラスの子や。

「かごさん、辻さんと仲いいの?」
ちょっと目つきの悪い感じの子がすぐに聞いてきた。
なんやねん。

関係あらへんやん。

「なんで?」
理由を言わなかったらかごだって言わへん。
お互い様や。

「あ、別に変な意味じゃないよ?ただ、注意してるだけ。」
ほかの子がかごを怒らせないように少し笑いながら言う。

でも、注意って?

「かごさんは知らないと思うけど、辻さんは男子からいろいろ言われてるんだ。
だから、かごさんも一緒にいるとなんか言われるよ。」
かごだって、ののが何か言われてる事くらい、すぐにわかった。
あの、数学の授業の時から。


「あんたらも、のののこといじめてるん?」
さっきよりもかごは、この目の前にいる人たちを警戒することにした。

「いじめてないよ。」
たった一言。
でも、正直言うと、あんまり信用できへんかった。

「そろそろ戻るね。」
また、ほかの子がそう言うとみんなで教室に戻ってしもた。
236 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月25日(水)15時19分57秒


今日は、ののと一緒に帰ろう。
確か、かごの家と同じ方向だった気がする。

だって、廊下の呼び出された時から、ののは全然喋ってくれへん。
やっぱり、あの人たちものののこと、
何かしら言っとるんやないかって思うんや。


教室だと、人がぎょーさんおるからきっとかごと喋るのに抵抗があるんや。
だから、学校帰りならそんなの気にしなくても、喋れる。

「のの。」
ずっとイスに座っているののに、話し掛けると、こっちをむいてくれた。
「なんれすか?」
それでも声は暗かった。

「今日、一緒に帰らへん?」
ののを元気にさせたる。
だから、できるだけ明るい声ではなす事にした。

「あいぼん、いいんれすか?」
あだ名を決めたときみたいにまた目が輝きを少しやけど取り戻した。

「あたりまえやん。いややったら自分からさそわへん。」
「それじゃあ、いっしょにかえるれす。」
『てへてへ。』とやっと笑ってくれた。
なんか、かごも嬉しい。

237 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月25日(水)15時44分42秒

かごはののと一緒にすぐに学校を出た。
それから、遠回りをしながら、ゆっくり歩いてたくさん話をすることにした。

「あいぼんは、どーして自分のことを『かご』ってゆーんれすか?」
「へ?」
ののは急に真剣な顔になったと思ったらそんな事を聞いてきた。

「どーしてれすかっ?」
ののの興味津々の顔。
そんな顔、初めてやない?

「それはなぁ、引越ししてくる前の友だちの影響、かなぁ?」
自分でもようわからへんの。
今、思うんやけど、かごがこーゆー性格になったのも
全部あの子の影響やと思う。
そーいえば、かごが犬を好きになったのもそうや。

「へぇ。じゃあこんどから、『のの』にするれす。」
「は?」
さっきからののは、わけのわからないことを喋っとる。

「だから、じぶんのことを、『のの』って呼ぶのれすっ!」
今度は怒り出した。
本気やないと思うけど。

「なんで、『のの』なん?」
かごの一人称が『かご』と、ののの新しい一人称、『のの』ってゆーのは
どーゆー関係があるんや?

「『のの』ってゆーあだ名は、初めてのあだ名だかられすよ。
ずっとわすれたくないかられす。」


また、ののは『てへてへ。』と笑った。
238 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月25日(水)15時51分35秒

ののには、『てへてへ。』という笑い方が一番似合ってるって思った。
なんか、ののが笑うと心があったかくなるんや。

めっちゃ不思議な子やった。


「あ。あいぼんっ、あれ、見てくらさい!」
そう言った途端、急に走り出したのの。
なにがあったん?

「あいぼん、見てくらさい。」
ののがぴたりと止まった。
そこには、少し小さめな、ダンボール箱が置いてあった。

「のの?」
かごには、よく見えへんかった。
ののは、その場にしゃがみこんだ。

「わんちゃん、れすよ。」

239 名前:世紀 投稿日:2002年12月25日(水)15時55分15秒
少し更新です。
なんか、最近遅くなってすいません。 
240 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月27日(金)12時13分42秒

ダンボール箱の中にいたのは一匹のわんちゃんやった。

「かみがおいてあるれす。」
わんちゃんと一緒に置手紙みたいなものが一枚置いてあった。
「のの、その紙見せて。」
「いいれすよ。」
ののがもっていた一枚の紙を、見せてもらった。

「あいぼん、なんて書いてあるんれすか?」
どーやら、まだ読んでなかったみたい。
かごのほうをじっと見る。

「『世話ができる人なら、誰でもいいのでこの犬をもらって下さい。
この犬は『紺野あさ美』と言います。』って」
かごは、ののに聞かせるように読んであげた。
このわんちゃん、捨て犬かぁ。

「・・・かわいそうれすね。」
そんなにショックだったのかののは、落ち込んどる。
ののは、そのわんちゃんの頭をなでなでしてた。
241 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月27日(金)12時21分44秒


「ののは、紺ちゃんの気持ちがわかるのれす。」
紺ちゃん?

「のの、紺ちゃんってなんやねん?」
「あだ名つけたのれす。あだ名をつけてもらえるとうれしいれすから。」
ずっと、その紺ちゃんの頭をなでてた。
紺ちゃんも、気持ちよさそうな顔して、目を閉じていた。

「ののは、あいぼんが来るまで、学校でずっとひとりぼっちらったんれす。
なんか、さびしかったのれす。あいぼんがはなしかけてくれたり、
あだ名をかんがえたりしてくれて、ほんとにうれしかったのれす。
あいぼん、今さらだけど、ありがとうね。」
ののは、ずっとひとりぼっちやったの?
今、紺ちゃんは、ダンボールの中でひとりぼっち。


でもな、かごにもわかるで。その気持ち。

242 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月27日(金)12時30分53秒


「かごは、当たり前のことしただけや。なんか、初めて会ったとき
ののが、寂しそうやった。だから、話し掛けてみた。
そしたら、だんだん仲良うなってっただけのことや。」

かごも、紺ちゃんの頭をなでた。
紺ちゃんは、あったかかった。
かごには紺ちゃんがやさしく笑ってるように見えた。


『あいぼん、犬にもね、人の言葉はきっと伝わってるんだよ。
もし、伝わってなくても気持ちは通じてるんだよ。
だから、犬にも話し掛けてあげるんだ。』

引越ししてくる前、かごに初めてのあだ名をつけてくれた子は
その子の犬の頭をなでながらそう言った。

だから、紺ちゃんにも、かごたちの言葉が伝わったんかな?
そう考えたら、なんだか嬉しくなった。

243 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月27日(金)12時36分06秒


「ののの家は、わんちゃんを飼えるかわからないんれす。
あいぼんの家は、わんちゃん、飼えるんれすか?」

なんや。
のの、紺ちゃんを拾おうとしてるん?

「かごん家もわからへん。」
うちは、どうなんやろ?
後で、聞いてみるかな。

「のの、紺ちゃんに、パンあげるれす。」
ののは給食の残りのパンを、紺ちゃんのダンボール箱に入れた。
紺ちゃんは、そのパンを少し見て、匂いをかいでから、もぐもぐ食べてた。

「かごも、あげる。」
残りのパンやけど。
かごも、紺ちゃんのダンボール箱にいれてあげた。

244 名前:世紀 投稿日:2002年12月27日(金)12時36分55秒
たぶん今日中にまた更新します。
245 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月27日(金)15時32分24秒


紺ちゃんは、おなかがすいていたのか、あっという間に食べてしもうた。


―――もっと。

紺ちゃんの目がそう言っていた。

―――もっと、ちょうだい。

紺ちゃんの目を見るのが辛くなった。
だから、紺ちゃんから目をそらした。

「あいぼん?」
ののはこっちを見る。

「どないしたん?」
「なんか、もっとほしがってるみたいれす。」

ののにも、わかるんかぁ。
かごにもわかるで。

でも、もう食べるもの持ってへん。
困ったなぁ・・・。


「あいぼん、あした学校くるときに、のの、ここをとおって
紺ちゃんにごはんをもってくるれす。」

やっぱり、紺ちゃんはかごたちが喋ってる言葉、わかるんかなぁ。
だって、しっぽをめっちゃふっとる。
紺ちゃん、嬉しかったんやろな。

「じゃあのの、明日一緒に学校へ行こう?かごも一緒にまたここに来る。」
のの一人に任せるのは、かわいそうや。
乗りかかった船やから。
かご、ののに付き合うで。
246 名前:いのちのことば 投稿日:2002年12月27日(金)15時42分49秒

「わかったれすっ。」
ののは、すぐに了解してくれた。

「のの、そろそろ帰らないと・・・・。」
もう、夕方やん。
かごん家、過保護やから、すぐ心配するんや。

「わかったれす。それじゃあ、紺ちゃん、あしたまたくるからね。」
また紺ちゃんの頭をなでるのの。
それを見て、かごも紺ちゃんの頭をなでてあげた。


二人が別れるところで、明日の朝、七時四十分に待ち合わせをした。

247 名前:世紀 投稿日:2002年12月27日(金)15時43分37秒
今日中に更新できました。
少しですが。
248 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年12月30日(月)14時14分56秒
辻はなんでイジメられているんだろう?
イジメが終わる日は来るんだろうか・・・。
249 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月02日(木)14時09分02秒

朝。
最近は早く家を出る。
それは、家が嫌いとかやなくて、それは紺ちゃんに会いに行くため。
最近は毎日なんやで。

だから、慣れてきた。
家からちょっとだけ、食べ物を盗って来るんやけどな。

だって、そうしないと紺ちゃんかわいそうや。
ののもいろんな食べ物をもってきてくれる。

ののはどうやって食べ物を持ってきてるかは知らんけど。


「のの〜!」
いつもの集合場所にののは、一人で立っていた。
「あいぼんっ。」
後ろをむいてかごに手を振ってくれた。


「おはようれす。」
「おはよ。のの。」

250 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月02日(木)14時16分23秒

「紺ちゃんっ!」
ののはいつも紺ちゃんのダンボール箱の近くになると走り出す。
なんか、嬉しいみたい。
だからかごも、一緒に走ってあげる。

紺ちゃんもかごたちに懐いて、しっぽをふっとる。

「おはようれす、紺ちゃん。今日もごはんもってきたれすよぉ〜。」
いつも同じ会話。
かごたちがご飯をくれることをもう理解してる紺ちゃんは、
はやく、はやく、としっぽをふる。

そんな紺ちゃんは、めっちゃかわいい。
「どうぞ、れす。」
ののは、鞄の中に入れてあるパンをわたす。
かごも鞄の中から、パンを取り出して紺ちゃんにあげた。

紺ちゃんのためには、なんか犬専門のエサとか
あげたほうがええんやけど、お金かかるやん?
せやから、家にある食べ物で我慢してもらってる。

「あいぼん、そろそろがっこうに行くれすか?」
251 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月02日(木)14時29分46秒

「そうやな。」
ここは、あまり人が通らへん。
けど、なんとなくわかるんや。


「紺ちゃん、またあそびに来るれすからね。」
「そや。それまで待っててな。」
二人で交互に紺ちゃんの頭をなでなでした。
紺ちゃんは、嬉しそうやった。

「あいぼん、今日のほうかごもまた行きましょうね。」
「当たり前やんっ。」
毎日、毎日、朝と放課後、二回紺ちゃんのとこへいくのが日課になってった。
そんな毎日は、かごにとって楽しかった。
もちろん、ののも。

やっぱり、学校が近くなっていくにつれて、どんなに遠回りしても、
必然的にだんだん会う人も多くなっていく。

だからか知らんけど、ののは喋る回数が少なくなって、下を俯き始める。
そんなののを見てるといつもかわいそうに見える。
252 名前:世紀 投稿日:2003年01月02日(木)14時49分04秒
久々の更新なのに少ない・・・。
すみません。

それから。
今年は2003年。
今年もよろしくおねがいします。

>読んでる人@ヤグヲタ様
私は人をいじめたこと、ないんですよね。
いじめられたことならありますけど。
いじめる人の気持ち、というのは、正直わかりません。
すいません。難しいんですよね。
253 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月04日(土)15時04分10秒

ののは、学校に着くとクラスの人にいじめられた。最初、教室に入ると、
『バカが来た』という目で見られるのの。
それでも、じっと耐えて自分の席に着く。

ののと一緒に教室に入ってくるかごも、何か言われることが多くなっていく。
その度にののは
『あいぼん、ごめんね。』って。

今日もきっとそうや。
「あいぼん、あいぼんは、ののといっしょに
きょうしつに入らないほうがいいんじゃないれすか?」
下駄箱のところで誰もおらへんかったからか、ののにそう言われた。
めっちゃ、さびしそうな横顔やった。

「なんで?」
「だって、ののといっしょに入ると、あいぼんもばかにされるんれすよ。」
ぼろぼろの上靴を履きながら、ののは一言そう言って、
スタスタとかごを下駄箱の所において、はや歩きで階段を登って行ってしもた。

「ののっ!」
すぐにののを追いかけようと思ったけど、ののの歩く速度は
だんだん速くなって、もう見えなくなっていた。

待てやっ!
かごも、全力ってほどでもないけど小走りでのののところへ向かった。
でも、間に合わへんかった。

かごが階段を登り終わるともう、ののは教室に入るところやった。


254 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月04日(土)15時25分37秒

教室に入ると、もうののはイスに座っていた。
クラスの人達もいつも通り、お喋りをしていた。
かごが、自分の机のところまで来てののを見たら、
俯いていて、鞄から教科書やノートを机の中に入れていた。

「のの、かごはののの友達やから。」
イスに座って、ののにやさしく話し掛けた。
でもののは、ずっと俯いたまま。

ののは、一言も喋ってくれへんかった。
そんなことしてる内に、先生が教室に入ってきて
会話をできる状態じゃなくなった。


――――
「のの、今日も一緒に紺ちゃんのとこに行くやろ?」
ののから言い出したんやから。

放課後の帰りの会が始まる前に、ののに勇気を出して話し掛けた。
ののは、少し時間を空けてから小さくコクン、と頷いた。

帰り道、二人でゆっくり歩く中、いつもより会話がなかった。
なんて言ったらええのかわからへんかったから。

「・・・・めいわくじゃないんれすか?」
よく聞こえへんかったけどぽつりと、ののが口を開いた。
まだ俯いたまんまやったけど。

「あいぼん、ののといっしょにいるから、いじめられるれすよ?」

255 名前:世紀 投稿日:2003年01月04日(土)15時27分42秒
また、少しです。
すいません・・・。
256 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月09日(木)19時58分29秒
がんばってください。
楽しみなので。
257 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月13日(月)15時48分27秒

ずっと気にしてたのかもしれへん。
ののは、不安なんや。
自分がいじめられてるから。

ののにはきっと確信があったんや。
ののと一緒にいると、いじめられるって。

「かごは、大丈夫。気にすることないで、のの。」
「ほんとれすか?」
まだ、疑いの眼差し。

「信じてくれへんの?」
「ちがうれす。あいぼんのとこ信じるれす。」
ののは迷いもせずにすぐに答えた。
せやから、嬉しかった。
かごのこと、信じてくれるんやって。


「紺ちゃ〜ん。」
ののは紺ちゃんのところへ来ると何もなかったように笑顔になった。
紺ちゃんに、心配させたくないからや、きっと。
そんなののを見てると、胸がちくりと痛んだ。
258 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月13日(月)16時04分34秒
紺ちゃんは、頭がええ。
かごと違って、すぐにいろんなことを覚える。

ええなぁ。
紺ちゃんは。
せやけど、紺ちゃんには家がない。
あるのはダンボール箱。
誰かが飼ってくれたらええんやけどなぁ。

ののに嬉しそうにじゃれてる紺ちゃんを見て、そう考えた。
紺ちゃんは、そんなこと気にしてないのかな。


「あいぼん?」
「あっ、何?」
「どうしたんれすか?」
紺ちゃんのこと考えてたら、ぼーっとしてしもた。
ののも紺ちゃんもかごの方を見とる。

「なんでもあらへん。」
そう言って、かごは紺ちゃんの頭を力いっぱいなでてあげた。
もしかしたら、力いっぱいなでたせいで、紺ちゃんは迷惑やったかも。

「そうれすか。」
『紺ちゃ〜ん。』って言いながらののは、ぎゅうっと紺ちゃんを抱きしめる。
ののは、ほんまに紺ちゃんのことが大好きなんや。見てればわかる。
紺ちゃんも、のののこと大好きみたいやからええんやけど。
259 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月13日(月)16時17分51秒

かごも大好きや。
紺ちゃんも。
ののも。

みんな、好き。

「あいぼん、そろそろくらくなっちゃいますよ。」
「ふぇ?」
周りを見たら、周りが暗くなり始めた。
暗くなってからやと、おかんがうるさいねん。

「そ、やね。」
「じゃあ、またあしたれすね、紺ちゃん。」
いつものように紺ちゃんの頭をなでなでしてばいばい。
かごも、同じようにして、紺ちゃんとお別れした。


「それじゃ、あいぼん、またね。」
「うん。また明日なっ。」
お互い、手を大きく振ってののとも別れた。
260 名前:世紀 投稿日:2003年01月13日(月)16時20分00秒
ごめんなさい。
ほんと。

遅れてばっかり。

>256様
遅れてすいません。
楽しみって言ってくれてほんとに嬉しいです。
ありがとうございます。

261 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月18日(土)14時22分55秒

今日、朝起きたら体がだるかった。
体が思うように動かへんの。

おかんにそれ言ったら、無理矢理学校を休まされた。
あっという間に、おかんは学校に電話してしもた。
かごも、ののん家に電話しないと、いつもの待ち合わせ場所で待ってると
ののが遅刻しちゃうから、ののん家に電話した。
ののは、『気をつけるんれすよ?』って言って、電話を切った。


外の景色を眺めてたら、昔のことを、思い出した。
そしたら、自然にあの子の笑顔が頭をよぎった。
急に、奈良が懐かしくなった。



コン、コン。
誰?
思い出に浸っていたら、ノックの音が聞こえたんやけど。
おかんやったら、ノックなんて、するわけあらへん。

「はい。」
一応、返事はしとかないとな。


がちゃ。

「あいぼん、だいじょうぶれすか?」
ドアが開いたと思ったら、そこにいたのは
心配そうな顔で突っ立っている、ののやった。



「ののっ!?」
思わず、大きな声出してしもた。
ののもびっくりしたみたい。
262 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月18日(土)14時36分18秒

「のの、こっち来ぃや。」
入り口の前で部屋に入ろうとしないののを見てたら、言葉が自然に出た。
ののはだまってちょこちょこ歩きながら、かごの部屋に入ってきた。
なんか、ののの動きがぎこちなくて、がちがちで、ちょっと笑えた。

「のの、きんちょーしてるん?」
つい、ふきだしてしもた。
だって、かごが用意したイスに、ぴしっと背筋を伸ばして、
手を膝の上において座ったから。

それに、まともに笑ってくれへん。
「だ、だってぇ、あいぼんのおうち、すごいんれすもん・・・。」
のの、目がうるうるしてきてるけど平気なん?
ここには二人だけしかいないのに、めっちゃかしこまって。

「すごいって、何が?」
「あいぼんのおうちは、おかねもちなのれす・・・・。」
なにぃ?
そんなこと、気にしてたんかぁ?
ののは。

正直、自分で言うのもどうかと思うけど、かごん家は、結構お金持ち。
だからって、別に普通の家とかわらへん。

「おうち、外からみると、ほかのおうちとちがって、大きかったれすよ。」
ようやくののも少しずつやけど、落ち着きを取り戻したみたい。
でもやっぱ、ぎこちない喋り方。
263 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月18日(土)14時48分22秒

今住んどるこの土地は、元はといえばおじいちゃんの。
せやけど、おとんの仕事の都合で、引越しせなあかんようになった。
それで、おじいちゃんから土地を貰った、らしい。

で、そのおじいちゃんの土地に新しい家を建てたっちゅーわけ。
それがこの家。

確かに、近くの家と比べて大きい。
自分でも思ったほどに。
でも別に、かごは何にもしてへんもん。
かごが自慢する事やないし、自慢できるわけでもない。

「ののはどうしてかごの家知ってたん?」
ののがかごの部屋をきょろきょろ見回してるのが少し、恥ずかしいから
あんまり気になってなかったけど、聞いてみた。
「先生におしえてもらったんれすよ。」
「そっか。」

ののも、喋ってると、だんだんいつものののになってきた。
よかったぁ。
ののをちらりと見ると、ののの手には小さな傷があった。
けが、したんかなぁ?

「のの、そこのけが、どないしたん?」
「・・・どこれすか?」
のの、自分の傷に気付いてないんかなぁ。

「ほら、そこや。」
ののの手を指差した。
そうすると、ようやくののも気付いたみたい。

「これはれすね、ばつなんれすよ。」
264 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月18日(土)15時09分15秒

『えへへ。』と、いたずらっこのような顔で笑うのの。
「・・・罰?」
「そうれすよ。今日れすね、このまえのテストがかえってきたんれす。」
ほんかかいな・・・。
ヤバイんやない?
この前のテストといったら、勉強しなかったやつやんか。

あぁ。
学校行きたない。
「あいぼん、どうしたんれすか?」
「あ、ごめん。それで?」
ののの話を中断させてしもた。



「おうちにかえって、お母さんに見せたんれすよ。
そしたら、ぶたれたんれす。」


一瞬、時間が止まったように思った。
今、ののはなんて言ったん?


『ソシタラ、ブタレタンレス。』


って。聞こえたんやけど。
なんで?

なんでのののお母さんはののをぶつん?


「・・・・なんで?」
イヤでも、頭の中で、最悪のシナリオが次々に溢れ出て来た。
手が、小さく震えて・・・。
怖くて、ののの顔が見られへんかった。



「ののが、二十五点しかとれなかったかられす。」




ののの一言で、かごの頭の中のシナリオが、まだ続きそうになった。
それでも、ののの声は明るかった。

265 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月18日(土)15時16分46秒


そういえば、かごがこっちに来た時もののは膝にばんそうこうを貼ってた。
もしかしてあの時も――――



違う、違う!

そんなことあらへん!!
絶対違うねんっ!


頭の中で、いっぱい自分に言い聞かせた。


「お母さんはれすね、ののにもっとあたまがよくなってほしいんれすって。
だから、ののにばつをあたえるのれす。」



うそや・・・。
そんなこと、あらへん。

のののテストの成績が悪かったら、なんでぶたれるん?
いくら頭がよくなってほしいからって、ぶつことないやんか。

「のの・・・。平気なん?」
それってテレビで見た、虐待っちゅーやつだと思った。

「ぜんぜんへっちゃられすっ!」
『えっへん。』とまたののは笑った。

266 名前:いのちのことば 投稿日:2003年01月18日(土)15時23分58秒

ののは、学校でもいじめられてる。
それなのに、家でもぶたれたりして、ほんまに強い子や。


「のの、明日、学校一緒にサボろ?」
サボって、元気になろ?

「あいぼん、だめれすよぉ。」
にこにこ笑って、かごの誘いを拒否するのの。
ののは、いじめられる場所でも、自分から立ち向かうんやな。

でもな、ずっとそうやってると、疲れて倒れちゃうで?
人は、一人じゃ生きていけないんやから。


「のの、気分転換や。ずっといじめられるのは、疲れるやろ?」
ののは少し、考えてた。
そりゃ、迷うことや。
先生に見つかったら、大目玉やもん。



「のの、あいぼんとサボってみるれす。」

267 名前:世紀 投稿日:2003年01月18日(土)15時24分56秒
少しずつ、です。
ほんとに。
268 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月03日(月)17時08分07秒
ののと一緒に学校をサボるって言っても、
親にはちゃーんと学校に行くふりをせなあかん。

せやからぴしっと制服着て、学校に行く準備。
そうそう、それから後で学校に電話せなあかん。
自分でな。テレカ持って行かなきゃ。
ののとの集合時間わざと早くした。
そうやないと、学校の行く人に見られちゃうやん。

「行ってきま〜す!」
「行ってらっしゃい。」
朝の光をぎょーさん浴びて、さぁ出発や!
なんか、冒険気分でめっちゃわくわくしてきたで、かご。
ののも今はこんな気分味わってるんやろか?
それとも、サボることで頭がいっぱいで緊張してるんか?

あっ!
ののや。
ののはもう集合場所にいた。
はやいなぁ。

「のの、おはよ。」
「あ、あいぼん。おはようれす。」

なんやねん。
普通やん。
のの、緊張しなかったんやな。
けっこー度胸あるねんな。
かごのほうが緊張してきたわ。

「ののも学校に電話するんやろ?」
ののなら忘れてるかもしれへんから、先に言っとかないと…。
「でんわ?」
ほら。かごって、天才やな。予想通りや。
「学校に電話しないと家に電話が掛かってくるかもしれへんの。
せやから先に自分で電話するんやで。」
269 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月03日(月)17時20分03秒
「あいぼんは、もの知りれす。ののはテレカもお金もないのれす…。」
なんか、『物知り』言われると気分ええな。
初めてやもん。
実はかご、昔は『世間知らず』やったんやで。
これ、ののにはないしょ、な。

「安心しぃ。かごがテレカを持ってきたで。ののにも貸したる!」
ポンと、胸を張って見せた。
ののといると自分が頼られてるって感じする。
なんか、ええよな。自分が誰かに必要としてもらってるんやもん。

「ほんとれすか!?よかったれす。ありがとうね、あいぼん。」
「気にすることないで。さ、公衆電話さがさな。」
「わかったれす。」
ちょうど、運良く近くに公衆電話があるわけでもなくて、歩いたで。
あんなどこにでもある緑の電話が、こんなに見つからないなんてな。

「あいぼん、あれじゃないれすか?」
ののが指差したのはまさしくかごたちが捜していた公衆電話。
なんか、めっちゃ歩いたなぁ。
足、痛いで。

「電話や!のの、電話するで!電話っ!」
「もちろんれすっ!」
270 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月03日(月)17時30分20秒
電話に向かって走ってる自分らって食べ物に飢えた動物みたいやな。
いまどき、公衆電話ごときで喜ぶ人って滅多におらへんよな。
ケータイあるし。
かご、前に買ってもらったんやけど、壊れちゃったんや。
それ以来、なかなか買ってくれへんの。
使えない親やな。ほんまに。

「あいぼん、先、でんわしていいれすよ。」
はぁはぁ、と呼吸を整えながらののは喋る。
でもな、今思ったんや。


「ののぉ、かご、学校の電話番号わからへん…。」


そうや。電話番号わからへんのなら、ケータイ持ってても意味ないやん。
うわあぁ。やってしもたな、かご。
アホか、自分。
ミスったで。

かご、やっぱアホやわ。

271 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月03日(月)17時48分15秒
「どこかに書いてないのれすか?」
不安げな顔でこっちを見るのの。
あ、そっか。その手があった。

「のの、頭ええなぁ。」
「そ、そんなことないれすよ!」
ぶんぶんと顔を高速に横に振るのの。
なにも、そこまでせんでも…。

生徒手帳とか、あるやんか!
たしか、制服の内ポケットの中に入ってた気がする。


「のの、見て!生徒手帳があったで!きっとどっかに書いてあるはずや。」
「おおっ!そうれすね。さがすれす、さがすれす。」
パラパラとページを二人でめくる。
きっと、最後のほうとかに書いてあるんちゃうかなぁ?

最後のページ。
あ、あるやんか。
電話番号!

「あったれすね、あいぼんっ!」
「うん!さ、電話や、電話!」
少し古ぼけた公衆電話。
いくらかごたちが小さいからって一人しか入れへん。

一人ずつ、順番や。
272 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月03日(月)17時59分06秒
ええっと…。
受話器を取ってテレカいれるやろ。
久しぶりやな。
公衆電話。

プルルルル……。
ガチャ。

出たっ!

「あ、もしもし。二年三組の加護亜依なんですけど…。」
『加護さん、どうかしましたか?』
この声はウチのクラスの担任やん。
「えっと、頭が痛いので今日は学校休みます。」
『あっ、頭痛、大丈夫?はーい。わかりました。気をつけてくださいね。』
「はい。」
ガチャ。
へへん。ひっかかったで!担任!
ただの仮病や。サボりや。アーホ。ドージ。マヌケー。
なーにが『気をつけてくださいね』、や。
気をつけるも何もかごは健康やっちゅーの。

でも、のの心配やな。
ばか正直やから。

「あいぼん、おわったれすか?」
扉を開けたらののが目の前に出てきた。
少し、びっくりしたで。

「うん。すぐにひっかかった。アホやから。ののも、電話してきぃ。」
「わかったれす。」
273 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月03日(月)18時09分30秒
外ってけっこー寒いんやな。
のの、はよ終わらへんかな。
ちょっと心配なんやもん、のの。

あ、のの帰ってきた!
早いねんな。
「のの、どうやった?」
「だいじょうぶれしたよ。かぜって言っておきました。」
また『てへてへ』って笑った。
なんや、平気やな。あの担任。ただのボケか。

「でもあいぼん、どこ行きましょか?」
「決まってへんもんな。」
でも、この近くを歩いてると同じ学校の人に会うからなぁ。
危険地帯やな、ここ。

「遠くでも行くか?」
「いいれすね、さんぽみたいで。のの、さんぽ好きれす。」
散歩、な。
二人だけで迷子にならないならええけど。
まっすぐ歩いてれば平気やろ。

「ま、進むで。」
「わかったれす!」

ののはずっとかごの後を子供みたいについてきた。
かごもそれで安心できるから、全然かまわへんのやけど。
どんな話でもののとなら、すぐに盛り上がるからめっちゃ楽しい。

気付いたら、ずっとまっすぐの道を歩いてただけ。
「あいぼん、こうえんれすよ。」
ののの視線の先には、どこにでもある公園やった。
のの、ここで遊びたいんかなぁ?
「少し、よってくか?」
「うん!」
274 名前:世紀 投稿日:2003年02月03日(月)18時16分18秒
最近、このペースが普通になってきて少し恐ろしいです。
ちなみに中学校の生徒手帳に学校の電話番号が
書いてあるかどうかは知りません。

でもこのペースでいけばきっと次回には矢口さんが登場する、かな?
なっちも。

それから、今さらながら昔のところを訂正…。
>242
『あいぼん、犬にもね、人の言葉はきっと伝わってるんだよ。
もし、伝わってなくても気持ちは通じてるんだよ。
だから、犬にも話し掛けてあげるんだ。』
 ↓
『あいぼん、犬にもね、人の言葉も気持ちも伝わってるんだよ。
だから、犬にも話し掛けてあげるんだ。』
に、してください。
275 名前:名無し 投稿日:2003年02月03日(月)19時29分23秒
更新乙です
加護の関西弁がちょっとだけ、おかしいですね
例えば「壊れちゃったんや」ではなく「壊れてもうたんや」と言う方が
スムーズに聞こえます
細かいこと言ってすいません
276 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月07日(金)11時16分02秒
壊れちゃったんやでも普通やと思うぞ。ここは関西弁上手いと思うぞ。
ちなみに俺は関西人
277 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月16日(日)14時52分00秒
公園に入った所に、誰でも昔遊んだ事のある懐かしいブランコがあった。
「のの、懐かしいなぁ。ブランコやで?昔、遊ばへんかった?」
「あそんだれすよ、まいにち。楽しいれすよね。」
ブランコなんて最近は全然遊んでへんもんなぁ。

あれ?
あそこになんかおる。
こっからじゃよく見えへん。
行ってみるか。

「あいぼ〜ん、どこ行くのぉ?まってよぅ…。」

…そんな不安そうな声出さんでもまた戻ってくるって。

あ、ののついて来るんか。
別にええけどな。


ののはまだあそこにおるやつに気付かへんのか。
あれ、わんちゃんっぽくないか?
「ののー。わんちゃんや。」
「ほんとれすー。かわいーれすね。」
ののもそう思うか?かごもこのわんちゃんかわいいと思う。
わんちゃんってみーんなかわいいんや。
しかも、紺ちゃんと同じ種類や。たぶん。

でもののは、
「このわんちゃん、足、みじかいれすね。」やって。
もしこのわんちゃんが日本語のわかる利口な犬やったら、
きっと今ごろ心の中でかんかんやで、きっと。

278 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月16日(日)15時10分17秒
このわんちゃんのフォローしてあげるか。
「のの、このわんちゃん、もともとやで?こーゆー種類なんや。
なんだっけ?ミニ……ミニィ……。あれ?よう、覚えておらへん。
まぁ、もともとや。」
ののに『犬の種類まで言えるんやで。』って自慢したかったんやけど
名前が出てこぉへんかった。
なんやっけなぁ…。

かご、一個覚えたら何か一個忘れる性質やからな。
きっと勉強のやりすぎでテストに出ないことは忘れてもうたんかな。

か、かご勉強ようやるからな!

「のの、このわんちゃんとあそびたいのれす。
あいぼん、いっしょにわんちゃんとあそびましょ?」
ののはかごが犬の種類を言えなかったことはどうでもええみたい。
なんか、ショックやな。

ののは遊ぶ事しか頭にないんか?
でも、なんか木につながれてへん?
誰か飼い主がいるんやろな。

「でも、のの、このわんちゃん、つながれてるで?」
気付いておらへんのか?
「えー!?だれがやったんれすか!?かわいそうれす!!
ののが、ほどいてやるのれす。まっててくらさい、わんちゃんっ!」
279 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月16日(日)15時23分04秒
『そのひもってわんちゃんのご主人がわんちゃんのこと心配やから
わんちゃんをつないでるものちゃうの?』ってののに言おうとしたけど、
ののの真剣な顔を見たら声には出せなかった。

しょうがないな。
「のの?あ、かご、そーゆーの得意や!」
こーゆー作業は奈良におる時友達に教えてもらった。
ほらな、もうとれたで。
初めてほどけなかったひもがほどけるようになった時は、ほんまに嬉しかった。

「あいぼん、すごいのれすっ!!」
へへへ。照れるやんかぁ、ののぉ。
さっき犬の種類言えなかったからな。
「かご、引越ししてくる前は、友だちと一緒に
『悪ガキ』いわれてたから、こーゆーこと慣れてんのや。」
奈良にいた時は、その友達と一緒におる時がご飯食べる時間よりも楽しかった。
でも今は、ののとおるときもめっちゃ楽しいな。

「悪い子だったのれすか?」
なんかのの、別の想像してへん?
別に暴走族に入って人から金を脅し取ってたとかじゃないからな。
「んー。ま、気にしんといて。のの、わんちゃんと遊ぶんやろ?」
このまま話してると日が暮れそうや。
今日はわんちゃんと遊ぶんやもん。
「そうれす!」
忘れてたんかいな、のの…。
280 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月16日(日)15時36分14秒
ひもをほどいたらわんちゃんは猛ダッシュや。
なんやこの犬。
「あー!わんちゃん、まってくださいれすー!」
「ののっ!追いかけるで!」
「わかったれす。」
結構足が速いな、あのわんちゃん。
短いくせに。

やっと追いついたところには『よく潰れないよね』と言いたくなるような
ちっぽけなクレープ屋があった。
「ねぇ、二人がこの犬のひもはずしたの?」
この人、誰?
もしかしてご主人様かいな。
この犬、まさか仕組んだんか。
かご達お説教?

しかも、こんな童顔に…。


「ひもをほどいたのは、あいぼんれすよ?」
なんやねんのの。人に罪をたける気か。
自分だけ無罪って主張するなや。
一人だけ説教から逃れるなんてずるいやつがやることやで。

「あいぼん?」
こうなったら、自首するか。
捕まるよりもきっと自首の方が罪が軽いもん。

「かごのことや。かご、ののから『あいぼん』って呼ばれてる。
ほんまの名前は『かご、加護亜依』ってゆーんや。」

でもこの人、頭から角が生えてこぉへん。
怒ってないんか?

「のの?」
「のの、『つじ のぞみ』ってゆーのれす。
あいぼんからは『のの』ってよばれてます。よろしくれす。」
281 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月16日(日)15時49分12秒
のの、挨拶してどないすんねん…。
もう自分に罪がない事を童顔に言ったからもうどーでもいいんか?

「うん、よろしくね。」
それで童顔もかい…。
そっか!わかったで!
もう童顔もかごだけが悪いと思ってののには優しくするんやな。
冷たいなぁ。

「じゃあ、亜依ちゃんがとったんだね?」
しつこいやつやなぁ。
今自首したやんか。
でも、かごにもチャンスがあるってことやな。

「うん。だってのの、『わんちゃんと遊びたい』ってゆーから…。」
こうなったらののにも罪があることを言ってやるで。
それで二人で一緒に怒られるんや。
「そのわんちゃんねぇ、なっちのお友だちなの。一緒に暮らしてるんだぁ。」
なんか嬉しそうに話す童顔。
自慢話か?

「ごめんなさいれす…。のの、わんちゃんと遊びたかったのれす…。」
のの、反省しとる。
「ののちゃん?怒ってないんだよ?ただね、
『ひもがとれてすごいなぁ』って思って。」
なんかこの童顔、ちょっとずれとるわ。
感心する事やないやろ。
「ほんとれすか?」
ののは『怒ってない』と聞いて嬉しそうになった。
かごも、嬉しいけど。
282 名前:世紀 投稿日:2003年02月16日(日)16時01分51秒
更新しました。

>275様
関西弁、すみませんでした。
関西弁を話す人とまともに話した事がないので、テレビとか参考にしてます。
だから間違える事とかあるかもしれません。すいません。
>276様
関西の方に『関西弁が上手い』といわれると嬉しいです、ほんと。
ありがとうございます。関西弁は変換が難しいです。
283 名前:いのちのことば  投稿日:2003年02月18日(火)17時25分19秒
「うん。ほんだよ。このわんこね、『やぐち』ってゆーの。」
この童顔は名前まで教えてくれた。

「「やぐちさん?」」

なんや、ののと声がそろったやんか。
こーゆーのをハモりってゆーんやな。
かごら、気が合うやんか。
仲良しやもんな〜、かごとののは。

「あははっ。『やぐち』で、いいんだよ?
まぁ、『さん』付けでもいいんだけどね。」
なんでやろ?
なーんか、『さん』なんか付けたんか自分でもわからんかった。
ののは、なんで?

「じゃあさ、やぐちと一緒に遊んであげてくれるかなぁ?」
「いいんれすかぁっ!?」
「いいんか!?」
ののはすぐに反応して笑顔になる。
かごも、めっちゃ嬉しかった。
だってやぐちさんと遊びたかったんやもん。
なんや、この童顔もええやつやんかぁ。

「もちろんっ。」
童顔は、優しいお姉ちゃんなんやな。
きっと妹とか弟がおるんやったら、優しくするんやろな。
ええなぁ。こーゆーお姉ちゃん。

「やぐちね、ひまだもん。いっぱい遊んであげて。
それでさ、さっきから聞きたい事があったんだけど…。」
284 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月18日(火)17時39分04秒
めっちゃいやな予感がした。
かご、こーゆーのは当たるんや。
「二人とも、制服着てるけど、学校は?」

自然に手に力が入った。
ののの顔も一気に太陽が雲に隠されてみたいに暗くなった。

その後、頭の中パニックになってののを守ってあげようと必死やった。
だから自分で何を言ったのか全然覚えてなくて。
気付いたらあの童顔の名前が安倍さんってことを知った。

かごが変なのに気付いたのかののも不安そうやった。
285 名前:世紀 投稿日:2003年02月18日(火)17時40分10秒
更新です。
少し。
286 名前:いのちのことば  投稿日:2003年02月21日(金)16時19分28秒
「でも、あいぼん、いつもとちがうのれす…。
あいぼん、わらってくれないれす…。
のの、あいぼんがわらってくれないと、さびしーのれす。しんぱいれす。
のの、あいぼんのこと大すきれすから。
みんなが、あいぼんのこときらいでもののは、
ののだけはずっとあいぼんのこと、大すきれすから。」

「のの……。」
のの、勘がいいのかもしれへんな。
自分で言うのもどうかと思うけど、かごはみんなに嫌われてると思うねん。
だって、本人には可哀想やけど、いじめられてる子と一緒にいるんやから。



それでも、かごは、ののと一緒に居たい。


みんながかごのこと嫌いでもって縁起の悪い事言うなや。


大丈夫やで、かごは。
ののは、大丈夫か?

かごはののの方が心配やけどな。


なんか、ののの顔がぐしゃぐしゃに見えてきたで。
なんやかご、泣きそうやんか。

「のの、ごめんな。」

やっぱり、ののに迷惑かけたしな。
謝らなあかん。

287 名前:いのちのことば  投稿日:2003年02月21日(金)16時28分39秒
「いつものあいぼんにもどったれすぅ。」
ののも、笑って許してくれた。
やっぱり人生助け合いやな。

かご、この年で人生語るってゆーのはどーゆーことやねん。


「のの、やぐちさんと一緒にすべりだいしよか?」


自分で言った後に後悔した。
かごって精神年齢いくつなんやろ?

なんか、のの見てたら『すべりだい』やった。
でも、やぐちさんやって、やったことないだろうし、やってみたいやろ?

「やぐちさん、できるんれすか?おちちゃいますよ?」

まともな意見やな。

「そやな。やめよ。」
やっぱやぐちさんの安全を考えて、な。
やぐちさんが怪我でもしたらかごたちに責任があるからな。
さすがに優しい『安倍童顔』も許してくれへんかもな。

「フリスビー、やりたいのれす。」
おおっ!いい考えやんか。

「かごもっ!!」
かごもさんせーい。
二人と一匹しか居ないから多数決でフリスビーに決定やな。

「…でも、ないのれす。」
フリスビーが。

はぁ…。
そうやな。やられたわ、かご。
どうしよう…。

そや。

「でも、この公園、けっこう人くるみたいやし、探してみるか?」
288 名前:世紀 投稿日:2003年02月21日(金)16時29分25秒
更新しました。
やっぱり、少しですが。
289 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月22日(土)10時43分10秒
初めてきた公園やったけど、人がよく来てるってことはよくわかった。
だってな、あちこちにゴミや空き缶が落ちてるんやもん。
少しきれいにできへんのかなぁ。

ボランティアの人とか。

「ちょっとわるいことかもしれないれすけど、それしかないれす。
さがすのれすっ!!」

よっしゃ!
ののものってくれた!
でも悪い事、なんやろか?

ま、遊び終わったらもとあった場所に戻せばいいんや。
バレへんって。

ののはずっとやぐちをだっこしたまま、フリスビーを探してた。
大変やないんかなぁ。
でも、ののは真剣やった。

かごはののが探してる場所から離れてほかの場所を探した。
同じとこ二人で探しても意味ないやん。

「ののー、あったかぁー?」
「ぜんぜん、ないれすぅ〜!!」

そっか。
もしののがフリスビーを見つけたら、
嬉しそうな顔ですぐに言いに来てるかもしれへんし。


「見つからないれすね。」
「そうやなぁ…。」

ののはいつのまにかかごの近くに来ていた。
諦めるしかないんかな。

290 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月22日(土)10時51分57秒
かごはふと空を見上げた。
あれっ?


「ののっ!一番星や!!」
もうこんな時間になってしもたんか。
早いなぁ、時間が進むのって。
授業中はもっと遅く感じるのに。

「ほんとれす〜!!」
ののにも一番星を教えてあげた。
そしたらののも、喜んでくれた。

「きれいれすね。」
「そうやな。」

めっちゃきれいや。
一番星なんかよく見るのが当たり前になってたけど、
ののと見るのは初めてやもんな。

「へへへ。」
「てへてへ。」

ついののと目が合ってしまって、笑ったらののも笑った。
あ、ののの顔。

「のの、あんた、顔泥だらけやで〜。」
めっちゃ情けない顔やなぁ…。
ちっちゃい子みたいやで。
「それなら、あいぼんだって、おなじれす〜!」
ののにかごの顔を指差されて笑われた。
半分かごをバカにしたような笑い方やった。

なんや、かごにも泥ついてたんか。

「…お互い様やっ!!」
やっぱりかご達は似たもの同士やな。
気が合うのかもな。
291 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月22日(土)11時05分47秒
「やぐち〜、あいちゃ〜ん、ののちゃ〜ん…。」
「安倍さんやっ。」
情けない声になってるで、安倍さん。
「ここにいるれすよ〜!!」
ののが叫ぶ。
気付くんかいなぁ。

あ、来た。

「安倍さん、もう終わったん?」
もっとののとやぐちさんと遊びたかったんやけど…。
だってまだ、何にもしてへんで?
ただフリスビー探しただけで。

「『もう』って、もう六時過ぎだよ?」
ほんまかいな。
だから一番星が出てきたんやな。

「安倍さん、一番星れすよっ。」
なんやねん、のの。
一番星はかごが見つけたんやで?
これはかごのおかげやんか。
だから一番星はかごが安倍さんに教えようと思ったのに、先を越された。

「ほんとだね。でも、もうすぐ帰らないと、暗くなって危ないよ?」
安倍さん、少しくらい誉めてくれたってええやんか。
確かに時間はヤバイけどな。

「わかったれす。ののも、そろそろ帰らないとヤバイのれす。」
なんや、ののもか。
「かごも。」

いつもこんな時間には家でテレビを見てる時間やからな。
でも言い訳はかごの得意分野や。
テストが近かったから友達と学校で勉強してたとでも言えば平気やろ。
292 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月22日(土)11時20分19秒
「でも、もっとやぐちさんとあそびたいのれす…。」
ののも同じかぁ。
そりゃ、フリスビー探ししかしてないもんな。
かごももっと遊びたい。
でも、時間がない。

「安倍さん、またやぐちさんのとこに遊びにきてもいい?」
めっちゃ不安やった。
だってかご、初めて会ったときの安倍さんへの態度最悪やもん。
もしかしたら安倍さんはののの事は大好きやけど、
かごの事は……って考えたから。

「もちろんだよ。やぐちもなっちも待ってるからね。」
安倍さんは、めっちゃ優しい笑顔。
嘘はついてなさそうで、心からの言葉に聞こえた。
よかったぁ。

だってかご、本人には言わへんけど安倍さん大好きなんやもん。
かごが好きでも相手が嫌いだったらめっちゃ寂しい。

「うんっ!」
「わかったれす〜!」

かごも、ののも元気いっぱい頷いた。
293 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月22日(土)11時33分19秒
「のの、めっちゃ楽しかったなぁ。」
公園から出た後、かご達は自然にお互いの手を握ってた。
どっちからなんてわからへん。
「そうれすね。がっこうをサボるってゆーのもいいもんれすね。」
「あ!のの、問題発言や!」
さすがに常習犯はだめやろ。
かごだってやってへん。

「ち、ちがうよ〜…。ののははじめてれすもん。あいぼんはよくやった?」
あ、痛いとこつくんやな、ののは。

「かご?かごもなぁ、初めてやで?」
「うわぁ〜、ウソっぽ〜い。」
「なんやて!?」
「あ〜、ウソれすよぉ、じょうだんれす!」
ののは楽しいなぁ。
かご、実は奈良では何回かやったんやで。
ののの前ではいいこちゃんみたいな感じで。

でもののも、冗談言えるまでに心の余裕が出来たんやな。

「それじゃ、のの、明日は学校でな!」
「うん!あいぼん、サボっちゃだめれすよっ?」
「しないわ、ボケっ!」

294 名前:いのちのことば 投稿日:2003年02月22日(土)11時54分53秒

次の日、かごはちゃんと学校に元気よく登校。
もちろん、となりにはののも一緒。 
でも今は頭の中はぐるぐる回るのはののと一緒に
紺ちゃんのとこへ向かう今日の朝のののの発言。

―――
『ねぇ、あいぼん。』
『ん?なんやねん。』
なんか朝からののの様子がおかしいのは気付いてた。
急にかしこまっちゃって。

『ののね、紺ちゃんをうちでひきとろうとおもうの。』

―――
別に、反対したわけやない。
むしろ、賛成やった。
いくらかご達がごはんあげたって、構ってあげたって、
ほんとの家族が欲しいに決まってる。

ののん家だったら、かごだって遊びに行ける。
でもののはその後にこう言った。

『ののがめんどうみるれすよ。』

ほんまに大丈夫かいな…。
愛情を持って育てる事は確かや。
きっとののが紺ちゃんを育てれば、人一倍愛情を注いでくれるはず。
信用してないわけやない。

ただ、ののは学校に通ってる。
ののが学校にいるときは誰が面倒見るん?

かごが、マイナス思考なだけか?
295 名前:いのちのことば  投稿日:2003年02月22日(土)12時18分45秒
「…ぼん、きいてる?」
「あ、ごめん。なんや?」
つい自分の世界に入ってしもた。
そうやな、ここは学校やもんな。

「だから、紺ちゃんのことれすよ。あいぼんは、さんせい?」
やっぱその話か。
「賛成やで。」
ちょっと冷たくしすぎたかな?
ののが寂しそうな顔しとる。

「のの?」
「また、紺ちゃんのとこではなしましょう。」
人目を気にしてるんか?
学校やからな。

「わかったで。」

かごがいるからかはわからへんけど、のののいじめは収まってる。
直接、かごはののがいじめられてるところをまともに見たことがない。


―――
放課後、学校が終わるとかご達はすぐに紺ちゃんの所に行く。
だって学校を出ないとののはまともに喋ってくれへんし、
紺ちゃんにも出来るだけ早く会いたい。

まぁ、ののが喋ってくれへんのは、かごのことを
思ってくれてるって事を知っとるから何も言えへん。

「なぁ、のの。かごは、ほんまに賛成なんやで?」
朝の話の続きせな。
ののはまだ俯いてる。
296 名前:いのちのことば  投稿日:2003年02月22日(土)12時28分13秒
「だって紺ちゃんは幸せになれるもん。
紺ちゃんはのの家に行けばご飯をお腹いっぱい食べられる。
それに、夜もあんなボロっちぃダンボールやなくてあったかい布団で眠れる。
何より紺ちゃんに、ホンモノの家族が出来る。
それってええことだらけやん。」

なんか、自分の意見主張するって結構難しいんやな。
恥ずかしいし。


「あいぼん、のの、紺ちゃんのかぞくになるれすよ。」

少し考え込んでからののの答え。
まだ戸惑ってるみたい。
最初に言い出したのはののやのにな。

「そうと決まったら早速紺ちゃんのとこへダッシュや!」
「あ〜、あいぼんまってよ〜…。」


はぁはぁと、まだ息が整ってない状態で、待ってましたと言ってるように
しっぽを振ってる紺ちゃんに話し掛けた。

「紺ちゃん、よかったなぁ。ののが、紺ちゃんの家族になってくれるって。」
紺ちゃん、紺ちゃんには日本語通じる?
もし通じてるんやったら、めっちゃ嬉しいやろ?

ののは優しい子やから、安心して暮らせるで。
ほんまに、おめでとう。


297 名前:世紀 投稿日:2003年02月22日(土)12時28分57秒
更新しました。
やっと紺ちゃんも辻の家族に…。
298 名前:世紀 投稿日:2003年02月25日(火)17時21分06秒
すいません。
実は受験が迫ってきてる毎日でして…。
だから二週間ほどお休みします。
299 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月16日(日)06時37分18秒
うみゅ!受験はがんばり〜〜〜☆

マターリ待ってますYO!川 ̄ー ̄川ニヤリ
300 名前:いのちのことば 投稿日:2003年03月16日(日)13時23分31秒
ののは紺ちゃんを今にも壊れそうな物みたいにそっと抱きかかえて歩いた。

「今度ののん家行ってもええ?」
「もちろんれすよ。おいしいものよういしてまってるれす。」

『おいしいもの』ってかご、そんなに大食いやないで。
人ん家まで行って、行儀悪く食べ物貰う子ちゃうで。

ののやって、大食いやんか。

「食べ物は、別に無くてもええ。
 …その…あったらでええねんで、のの。」

うそや。ほんまは食べたいねん。
だってなぁ、育ち盛りなんやで?
縦に伸びる時期なんや、かごは横にも伸びるけど。

背、なんであんま伸びないんやろか?
まだ150センチもいってない。
遺伝の問題かぁ?

「あいぼん、やっぱり食べたかったんれすね。」
クスクスと小さく声を立てて笑うのの。
なんかムカツクなぁ。

「ええやんかっ!」
「あいぼんが怒ったぁ〜。」
「うるさいボケっ!」
301 名前:いのちのことば  投稿日:2003年03月16日(日)13時30分11秒
最近、のののやつ、生意気やな。


反抗期か?



あほか。
かごのこと、バカにしとんのか?

「あいぼん、ののん家よってくんれすか?」
いつもみたいに聞いてくる。
どないしよ?
今日、学校から出た時間少し遅かったからなぁ。
また後でにしよか。

「のの、今度でええ。」
「ん。わかったれす。それじゃあ、ばいばい。」
「じゃあな。」

お互い、小さく手を振った。
大きく手を振るなんて、恥ずかしいやん。

でものの、平気かな?
紺ちゃんのこと。
ちょっと不安や。

明日、聞いてみよ。

302 名前:いのちのことば  投稿日:2003年03月16日(日)13時39分57秒
朝、ののとの待ち合わせ場所でののを待ってても全然来ぉへん。
待ってると、かごが遅刻しそうやったから、
のののことを置いて学校にきてしもうた。

心の中で『ごめん、のの。』と呟きながら。


でも、今日のの、学校休みかもしれへんやん。
一人でサボってるかもしれん。
寝坊したかもな。

いろんな事考えてたんやけど、先生が教室に入ってきて、のののことを告げた。




「辻さんは両親が昨日、事故で亡くなったのでお休みです。」




なんやねん、それ。
ののの両親が事故った?
なんで?


じゃあ、ののはどうなるん?



先生はその後、のののトコに行くとかなんとかで教室を出て行ってしもた。
『先生が行くならかごも行く!かごも、連れてって!』って叫ぼうとしたけど、
声が出ぇへんかった。

授業開始のチャイムが鳴るまで、いつもよりも教室が騒がしかった。
もちろん、話題は全部のののもの。
303 名前:いのちのことば  投稿日:2003年03月16日(日)13時48分56秒

『事故った?』
『そう言ってたよね。』
『大変だねぇ。』

『あいつ、学校来るのかよ。』
『ははっ。両親の事故のショックで登校拒否ってか?』
『うわ。それって、マザコン?』
『おれんとこの両親も死んでくれないかなぁー?』
『あ、おれんとこも。』


めっちゃ腹が立った。
こんな時にまでみんなして、のののことばかにするん?
ののは、マザコンなんかやない。

大体、自分の親勝手に『死ね』とか言うな。
ほんまに死んだらギャアギャア泣くくせに、偉そうな事言うな。


『仏の顔も三度まで』やで。
かごなら、三度やなくてもキレるっちゅーの。

なぁのの、ののやったらこんな時どないする?
『ののはマザコンじゃないれす!』って言って、
さっき言ってた奴に平手打ちするか?
それとも、『簡単に自分の親の悪口を言うな!』って言いながら泣き喚くか?

304 名前:いのちのことば  投稿日:2003年03月16日(日)13時57分24秒
かごはなぁ、平手打ちの方やろな、きっと。
人前で泣きたないもん。

頭ん中真っ白にして、相手にぶち当たるんや。


でも、なんでやろ?
それが出来ひんかった。

脳が、『殴れ』指令してこなかった。
冷静やった。

ただ、一秒でも早く、ののの笑顔が見たかった。
授業なんて、サボって、のののとこに駆けつけてあげたかった。
のの、一人ぼっちで泣いてるかもしれん。

先生行ったって、意味ないかもしれん。
だって、先生はののの担任として、ののの所に行ったから。


やっぱこーゆー場合、一番適任なのは、トモダチやと思う。
それなら、かごがその役を引き受ける自信がちょっとある。

一緒に学校サボったんやから。
一緒に喋ったんやから。
一緒に笑ったんやから。




かごが、のののこと、大好きやから。


305 名前:世紀 投稿日:2003年03月16日(日)14時04分03秒
二週間とかいいながら思いっきりオーバーしました。
ごめんなさい。

>299様
受験、なんとか終わりました。
発表はまだですが…。
恐ろしい…。
マターリ待っててくれてどうもです。
306 名前:いのちのことば 投稿日:2003年03月18日(火)14時25分21秒


『学校を飛び出せ。飛び出してののに会って来い』


かごの脳の指令はそれやった。


脳の指令に反応して、かごの体は走り出した。
途中、先生に会って『待ちなさい!』って叫ばれた。

玄関のところで靴に履き替えてたら、先生が角を生やして来た。


カンカンに怒ってた。
鬼みたいやった。

周りは、めっちゃ静まり返ってた。
教室からちょっとだけ知らない顔も見えた。

先生は、ガミガミ怒鳴った。
かごはずっと床を見てた。
こんなに口を大きく開けて怒ってるなら、唾もとんどんのかな?
そう考えたら、思わず吹き出しそうになった。
307 名前:いのちのことば 投稿日:2003年03月18日(火)14時35分41秒
結局、ののん家には行けなかった。


それで今、自分の部屋におる。
めっちゃ悔しいねん。



ののに会いたい。
ののに会って、たくさん喋って励ますんや。

いっそ、ののが両親を忘れるぐらいに…。


いっぱい、笑わせたる。



のの、今頃何やってんのかな。
『オツヤ』ってやつか?

のの、真っ黒な服着てんのやろか?
両親の写真持って歩くんやろか?
両親を燃やすとき、ののは一人で泣くんやろか?
誰かそっとののを抱きしめてあげる人とかおるんかな。

かごは、そーゆーの全然知らん。
参加した事ないねん。



ののはいつ、学校に来てくれるんかな。
学校に来た時は、ちゃんと笑ってくれるんかな。

あいつが言ってたみたいに『登校拒否』なんてことあらへんよな。

のの、誰が世話してくれるんやろ。
誰もおらんかったら、かごん家に来てええからな。
大歓迎やで。

そん時は、紺ちゃんも一緒やで。
308 名前:いのちのことば 投稿日:2003年03月18日(火)14時53分45秒

『なぁ、かご黒い服持ってないで。』
おかんにそう言ったら、無言で制服を指差した。


…これかい。

確かに制服は黒やで?
せやけど、お葬式に制服、かぁ…。

そーゆーのってアリなんやな。
知らんかったで。

かごもこれで一つ、物知りになったってわけやな。


今日、もしかしたらののに会えるかもしれん。
だって、今日のお葬式はののの両親のやから。


お葬式でののに会えるってちょっとののには失礼やな。
ののは落ち込んどるのに。

でも、よーく考えてみ?
ののは、おかんにぶたれてたんや。
それなら、泣く事もないんか?

だって、もうののはぶたれることなないんやで。
めっちゃ失礼やけど。


心のはじっこで、かごはちょっぴり喜んだ。

309 名前:いのちのことば 投稿日:2003年03月18日(火)15時00分39秒

「のの〜!」

ののは、手を振ってくれた。
なんや。
ののも制服なんやな。
おそろいや。
ちょっと安心。

ののの近くに行って見たんやけど、ののの目はいつもと同じで。
泣きすぎて真っ赤やと思ったのに。

のの、ほんまは心冷たい奴なんか?
それとも、いつも暴力ふるおかんがおらんようになって嬉しいんか?

「のの、久しぶりやな。」

ののは、『そうれすね。』って言ってるように頷いた。
ちゃんと喋れや。

「のの、紺ちゃんは?」

少し考えてから、ののん家の方を指差す。

「家におんの?」

また、『そうれす。』って言ってるように頷いた。
なんで喋らんの?

「あら?希美ちゃんの友達?」
310 名前:いのちのことば 投稿日:2003年03月18日(火)15時08分27秒
後ろから、聞きなれない声が聞こえてきた。
ののはそのおばはんの質問に答えるように頷いた。

「そう。私ね、今度希美ちゃんを家で引き取る事になったの。」

なんや。親戚のおばはんんかい。
でものの、思いっきり三十路を通り越したようなおばはんと暮らすんやな。

厚化粧みたいやで、このおばはん。
シワもあるで。

あれやな。
バーゲンセールとかしっかりチェックしてそうな顔しとるな。
絶対図々しいで。

孫もおるんちゃう?
…それは流石にないか。

「お姉さんの家はこの近くなん?」

『お姉さん』言うとかないとな、こんなおばはんには。

「あら。いい子ねぇ。そうよ。私の家もこの近くなの。
 だから希美ちゃんも転校する事なんかないのよ。良かったわねぇ。
 友達と別れることもなくって。」

ののは、誇らしげに『うん。』と頷いた。

「なぁ、のの。なんか喋れや。」
311 名前:いのちのことば 投稿日:2003年03月18日(火)15時18分35秒
ちょっと冷たく言い過ぎたかな?

だってのの、俯いとる。
おばはんも顔を歪ませた。

「あ…のの、その…。」
『ごめん。』って言葉が出てこんかった。

「ごめんねぇ。希美ちゃんはね、喋れないんだよ。
 ご両親が亡くなったから、そのショックだと思うんだけどねぇ。」

三十路を通り越したおばはんは笑顔でののの肩に手を乗せてそう言った。


ののが喋れんようになった?
両親が、死んだから?

のの、そんなにショックやったの?
せやから、さっきまで喋らんかったんか?

「え…?の、のの?」

かごも驚いて声がまともに出ぇへんかった。
ののは俯いとる。

両親が死ぬ気持ちって、実際そうならんとわからへんよな。
どんなに暴力ふられたって、ののにとってたった一人のおかんやったんや。
ののから、おとんのことは聞いてへんけど、おとんも同じ。


かごって、ののをいじめるクラスの奴よりもっとさいてぇな奴。
だって、ののの両親の死をほんの少しでも喜んでしまったから。
312 名前:いのちのことば 投稿日:2003年03月18日(火)15時29分34秒


「…っ!のの…ほ、ほんまにごめん。ごめんなぁ…。」

なんでかごが泣かなあかんの?


そんなのわからんかったけど、涙がぽろぽろ。
頑張って我慢したけど止まらんかった。


ん?


目の前を見たらののがこっちまで来て、かごの頭を優しく撫でてた。
ののは、憎たらしいほどめっちゃ笑顔。
言葉を失ったなんて思えない優しい笑顔。


ののの手、めっちゃあったかいな。

気付いたら、三十路通り越したおばはんの姿が消えてた。
それにさっきに比べて、黒い服を着た人が集まってきた。

大人の人がぎょーさんおる。
きっと、のののおとんの会社の人かな。

「のの、ありがとう。」

ののは、『ぜんぜんへいきれすよ。』って言っとる。
かごにはわかる。

ののを励ましに来たのに、逆にののに励まされた。
313 名前:世紀 投稿日:2003年03月18日(火)15時33分09秒
ちょっと更新。

お葬式、参加した事あるけど、二人同時の場合ってどうなるんだろう?
そこらへん、よくわからない上にお葬式自体に詳しくないので
こんな駄文ですが(それはいつも)許してやってください。
314 名前:いのちのことば 投稿日:2003年03月24日(月)16時23分14秒
ののん家の親戚の人は、みんな寂しそうな顔しとった。
数人がののに話し掛けて、励まそうとしてた。

聞いた話やと、ののん家の親戚関係の人と
かご達ただの知り合いは、終わる時間が違うみたいや。

あれかな。
骨を二人で箸つこうてなんかに入れるんやな、きっと。

それが終わったらののに会えへんのやろか?
やっぱ、明日学校で会うのが一番なんやろか?

でものの、喋れんようになったから、学校来ぉへんのかな。
ののとゆっくり話したいなぁ。

…だめか。
ののは喋れんやった。
でもなぁ、喋れんでもええねん。

心通じてるから。
かごが一人で喋っててもええ。
となりでののが笑顔で聞いてくれれば。

あのおばはん家、どこなんやろ。
ののと二人で学校サボりたいな。
そうすれば、ずっと喋ってられる。

そや、もしサボれたらまたやぐちさんのとこ行こ。
確かまた遊びに行くなんてこと言ってた気がするし。

すっかり忘れてたわ。

315 名前:いのちのことば 投稿日:2003年03月24日(月)16時34分49秒
とうとう親戚以外の人たちが帰る時間になった。
どうしよう…。
あ、ののやっ!

「のの、のの!」

よかった、ののも気付いてくれた。
こっちをむいて、『あいぼん!』って言ってるで。

「なぁ、のの。明日、いつも通りに待ち合わせ場所に来てくれへん?」

ののはすぐに元気よく頷いた。
ののは元からそのつもりみたいやった。
かごが心配しすぎやな。

「でな、明日、話したいから学校サボるで。
 それでまたやぐちさんのとこ行こ。それでな、紺ちゃん連れて来ぃ。
 のの、フリスビー持っとる?」

今のうちに計画を全部伝えんとな。
特に紺ちゃんのことは。
少し考えた後、ののは『うん。』と頷いた。

「わかった。じゃ、忘れんといてな。」

ののは再び頷いた。
ま、ののは喋れんからな。
316 名前:世紀 投稿日:2003年03月24日(月)16時35分22秒
更新です。
317 名前:なちまり大好きっ子 投稿日:2003年03月25日(火)23時54分07秒
一気読みしちゃいました。
なちまり最高!
318 名前:いのちのことば 投稿日:2003年03月31日(月)14時12分10秒
ののは三十路を過ぎたあのおばはんに連れられて、歩いていった。
かごは、ののの背中が見えんようになるまでずっと手ぇふっとった。

でもののは、一度も振り返らなかった。


心ん中で、ちょっぴり泣いたってことは、絶対に内緒や。


――――
朝んなるといつも通りで。
目覚し時計止めて、二度寝して、起こされる。

でも今日は、学校に行って授業せんでもええねん。
遊ぶんや。

「行ってきまーす。」
「行ってらっしゃい。」

いつも通りのあいさつをして、家を出てく。
319 名前:いのちのことば  投稿日:2003年03月31日(月)14時34分08秒
ののとの待ち合わせ場所に行くと、ののはもうそこに来ていた。 
紺ちゃんを連れて。

よかった。
紺ちゃん、ののに懐いてるんやな。
ののに懐いてなくて、ただのばかわんこやったらどーしようかと思ったで。

のの、優しいからな。
甘く見られてるかもしれんやんか。

「のの〜!」

朝やから、いつもよりも声のボリュームを下げてののを呼んだ。
かご、こー見えても礼儀正しいんやで?
いつものようにののは、かごの言葉に反応して、こっち見れくれた。

紺ちゃんまでもが。

嬉しかったなぁ、ほんまに。
紺ちゃん、かごの声わかるんやもんな。
天才わんこかもしれへんな。

「おはよ。」
『おはようれす、あいぼん。』

ののの口がそう動いた。

「紺ちゃん、連れてきたんやな。」
『つれてこいって言ったの、あいぼんれすよ。』

あ、また生意気な口きくんか!

のどまで言葉が出たけどそれはあえて言わんことにした。
320 名前:いのちのことば  投稿日:2003年03月31日(月)14時42分23秒
この前と同じ、緑色の電話。
テレカもポケットの中にある。
さっき手ぇ入れて確認したんやから、確実や。

「なぁ、のの。かごは、電話出来るけど、ののはどうするん?」

ののが喋らなくても、いつも通り接するって心に誓ったはずやった。
でも、こればっかりはできへん。

『ののは、でんわしないのれす。もうバレたの。
 オバチャンに。でも、いいって。きょうだけはとくべつらよって。』

ちょっと長い話で、実は聞き取りにくかった。
とにかく、電話せんでもええってことや。

「じゃあ、電話してくる。」

『うん。』

321 名前:世紀 投稿日:2003年03月31日(月)14時45分11秒
更新しました。

>なちまり大好きっ子様
なちまり大好きなんですね。私もなちまり好きですよ。
ほのぼのとした感じのが。
322 名前:いのちのことば 投稿日:2003年04月05日(土)10時37分04秒
先生はちょっと不信そうにしてたんやけど、大丈夫やろ。
ののも待っとることやし、はよこんな狭い部屋出よ。

「のの、電話してきたで。」

紺ちゃんは、なんかぼーっとしとる。
朝やからかぁ?
朝、そんなに苦手やったっけな?

あ、もしかしてののやかごがおるから安心しとんの?

それやったら嬉しいなぁ。

「やぐちさん、きとるかな?」

『あべさんもね。』

「そりゃ、やぐちさんおったら安倍さんもおるやろな。」

ののは、安倍さんみたいな人、好きそうやからな。
なんかこう、あったかくて包み込んでくれそうな…。

おかんみたいな雰囲気もっとるからな、安倍さん。

あ、公園見えたで。

やぐちさんおるかな?
また一緒に遊ぶで。

今日こそはフリスビー持ってきたんやからな。

323 名前:いのちのことば 投稿日:2003年04月05日(土)10時45分00秒
「のの、あれやぐちさんちゃうん?」

公園に入ったらとことこと歩いとる足の短いの。
やぐちさん、ひもつけてないんやな。

もしかして、捨てられたか?
やぐちさんの家はダンボールかな。

やっぱり、ご飯とかつまみ食いしたんやろか?
クレープ屋やからな。

ののも、気付いたみたい。
嬉しそうな顔をする。

「やぁぐちさぁ〜んっ!!」

後ろから早速呼んでみた。
そしたら、すぐに振り向くやぐちさん。

「自分の名前、わかるんや〜。やぐちさん、賢いなぁ。」
324 名前:いのちのことば 投稿日:2003年04月05日(土)10時51分40秒
誰にもバレへんように、やぐちさんをまじまじと見たら
ちゃっかりと首輪が見えた。

なんや、捨てられてへんのか。
よかった。

とりあえず、久しぶりにやぐちさんに触れたくて頭なでてやった。

「わんっ。」

やぐちさん、嬉しいんかぁ?
しっぽふってるで。
その様子をののは、幸せそうな顔で見てた。

やぐちさんは、紺ちゃんに気付いたみたい。
二人で目を合わせて、喋ってるように見えた。

紺ちゃん紹介せなあかんね。
のの、無理やから。

「このわんこなぁ、ののん家のわんこなんやで。
ま、ののが世話してるんやけど。な、のの?」

ののに話をふると、誇らしげに『そうれすよ。』って言いながら頷いた。
325 名前:いのちのことば 投稿日:2003年04月05日(土)10時59分02秒
「『紺野あさ美』ってゆーんやで。」
ちゃんと名前も紹介せなあかんのや。

「紺ちゃん、こっちはなぁ、クレープ屋で店番しとる安倍さんのお友だちで
安倍さんと一緒に暮らしてる『やぐちさん』や。仲ようしてなぁ。」

あ、またや。
紺ちゃんとやぐちさんは目ぇ合わせてる。
わんこ同士の会話ってやつかな?

ええなぁ。
聞いてみたいで。

「なぁ、やぐちさん。今日も一緒に遊びましょ?
そのために紺ちゃんもののが連れてきてくれたんですからぁ。」

やぐちさんは少し考え込んだ後、また前みたいに走り出した。
かごたちのこと、嫌いか?
でも、追いかけるしかないな。

「ちょ、やぐちさぁ〜ん。またですかぁ〜?」
ヒドいなぁ、ほんまに。
「のの、紺ちゃんっ。行くでっ!」
ののがぼーっとしてたから、ののの手を握って走った。
紺ちゃんが来てくれるか心配やったけど、心配する必要もないみたいや。
326 名前:いのちのことば 投稿日:2003年04月05日(土)11時04分18秒
やぐちさんは少し走った後、草むらの中に入っていった。
なんやなんや?

やぐちさんのシュミか?
疲れてきたで。

「やぐちさぁ〜ん……。」

ほら、ののも疲れとる。
あ、やぐちさん発見!

やぐちさんの近くにはわんちゃんがおった。
きっとやぐちさんの友達やな。

「ののぉ、わんちゃんやでっ!」
後ろをへとへとになって走ってたののに手招きをした。
『わんちゃん』という単語を聞いて、ののは嬉しそうな顔をした。
わんちゃん、好きやなぁ。

ののは、わんちゃんを見てめっちゃ嬉しそうやった。
かごも嬉しかったけどな。
327 名前:いのちのことば 投稿日:2003年04月05日(土)11時13分56秒
「のの、このわんちゃんとも、遊びたいやろ?」

ののの答えなんて聞かんでもわかる。
今は、ちょっとでもののが喜ぶことをしてあげたかった。
だから、実はこれでも笑顔を絶やさないように頑張っとる。

「じゃ、ののとぉ、かごとぉ、紺ちゃんとぉ、
やぐちさんとぉ、このわんちゃんで一緒に遊ぼ?」

決定や!
ののも賛成を表してるのかぱちぱちと拍手してた。

「でも、このわんちゃん、なんて名前なんや?」
名前がわからへんのは不便や。
ののも、そう思うやろ?

ほら、顔の表情が変わった。

こうなったら最終手段。
「かごたちで考えようかぁ…。」

…難しいよなぁ。
ええ名前が思いつかへん。
いつもならええのがすぐでるんやけど…。

「安倍さんなら知っとるかなぁ…。
のの、安倍さんのとこにでも行くか?」
安倍さんにも会いたいしな。
ののも、すぐに頷いてくれた。

328 名前:いのちのことば 投稿日:2003年04月05日(土)11時23分23秒
「のの、ののは紺ちゃんを抱っこして。
かごはやぐちさんとわんちゃんを抱っこしていくから。」

実はちょっと無理したかご。
二匹やで?
重たい…。

でもなぁ、今会ったばっかりのわんちゃん、逃げ出すかもしれんから。
そしたらのの、寂しがる。

それだけは避けたかったから、しょうがないんや。
前に一度見たクレープ屋。
店番をしとるのは、やっぱり安倍さんやった。

「安倍さんっ。」
びっくりするかな?

「あれ?あいちゃんにののちゃん。
久しぶりだねぇ。元気だった?」

なんかよくわからへんけど、安倍さんの瞳って、子供みたいやな。
ののはそーゆーとこが好きなのかもしれんけど、かごは正直、ニガテやな。

子供みたいな、無邪気な瞳してるやつって。
ののも、無邪気な瞳してるけど、何故かののは、受け入れられる。

「まぁ。」

だから、こんな曖昧な返事しかできへん。
329 名前:いのちのことば 投稿日:2003年04月05日(土)11時30分46秒
「ところで安倍さん、このわんちゃん、
ここの公園にいたんやけど、名前知っとる?」

ちょっと重たかったけど、わんちゃんを持ち上げてみた。

「もしかして、圭ちゃんの事?そうでしょっ!?」
安倍さんはまた子供のような瞳で聞いてくる。
「『圭ちゃん』?」

『そうでしょ?』って聞かれても知らんから聞きにきとるんやで。
だから聞き返してやった。

「うん。『やすだ けい』ってゆー名前なんだ。」
「やすださんかぁ。」

微妙な名前やな。
なんとも言えん。
誰かつけたのかがめっちゃ気になったけど、あえて聞くのはやめた。

「ののっ!やすださん、ゆーんやって。
やすださんも一緒に、遊びに行こ?」

もうののも聞いたと思うけど、確認や、確認。
ののを連れて、少しフリスビーが出来る場所まで歩いた。
何も言わずに、ののはついてきてくれた。
330 名前:世紀 投稿日:2003年04月05日(土)11時32分06秒
更新しました。
なんか、終わりに近づいてく感じです。
331 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月29日(火)18時49分45秒
保全
332 名前:いのちのことば 投稿日:2003年05月05日(月)13時10分06秒
「のの、ののは確か、今日、フリスビーもってきたんやろ?」

ののは大きく頷いて、鞄の中からフリスビーを取り出した。
笑顔でフリスビーを取り出すののは、手品をしてるみたいやった。

「おぉっ!のの、さすがやなぁ。忘れんかったか。
 かご、ののが忘れたらどないしよかと思ったで。
 家になんか夕方まで戻れんしなぁ。」

ののはたぶん、『家』って言葉に反応したんかな?
おばさんは優しいらしいけど、やっぱりまだお客様扱いってやつらしい。
ののは、家に戻りたくないんや、きっと。

「あ、のの、ごめん、ごめんな。かご、つい…。
 かごっ、もう言わへんから…。今日はこの公園に遊ぶためにきたんやろ?
 全部忘れて、遊ぼ?」

もう、忘れてかまわへん。
いじめられたことも、おかんのことも。

333 名前:いのちのことば 投稿日:2003年05月05日(月)13時19分12秒
―――
「やぐちさーんっ!投げるでっ!!」
ののが持ってきてくれたピンクのフリスビー。
先にやっていいよ、とののが勧めたからかごが一番。

力をこめたはずなのに、フリスビーはよろよろととんでいく。
なんや、このフリスビー!?
まさか、のの、何か仕込んだんか?

いや、ののはそんなことしない、たぶん。

でもやぐちさんはよろよろのフリスビーをつかまえようとしたみたい。

ざざっ。

「あっ!!」


フリスビーは高い木の枝の方へつっこんだみたい。
あー…。
これじゃあやぐちさんも無理やな。

「あっ!!やってしもた!!」

前もこーゆーことやったなぁ。
昔は風船やった気がするわ。
小さいころ、買ってもらった風船、手ぇ離してしもて。
334 名前:いのちのことば 投稿日:2003年05月05日(月)13時28分15秒
あのときの風船は自分のやったから
まだええんやけど、今回はのののやからなぁ…。

「のの、ごめんなぁ、ののが持ってきたのに…。
 かご、すぐとってくるから、ここで紺ちゃんたち見てて?」 

ののは笑顔やった。
怒ってるようには見えんかった。
でも、フリスビーなかったら遊べんしな。

「のの!その場所から動くなやっ!!」

のののことやからちょっと心配やった。
なんてゆーか、好奇心旺盛っちゅーんか?

すぐにフリスビーがとんでいった方向に走ったけど、
実際どこに落ちたかはわからへん。
でも、探さなあかん。

どこかに落ちてればすぐ見つかるんやけどなぁ…。
木とかに引っかかってるとちょっと難しい。
335 名前:いのちのことば 投稿日:2003年05月05日(月)13時36分34秒
――― 
ないないないない…。
さっきからずっと下を向いて歩いてるんやけど、見つからん。
やっぱ木に引っかかったんかな。
でもたぶん、ここらへんに落ちたはずや。

はやくしないとな。


んん?
あれや!!
あれ!

もうすぐ夕方になっちゃうぐらいの時間やけど、やっと見つけたで!
ピンクのフリスビー。

でも、木、高いなぁ。
かご、とどくか不安や。
木登りは苦手やないんやけどな。
前に教えてもらってな。

制服やから、動きにくいな。
木登りは久しぶりで、思うように体が動かない…。

なんや、このアホみたいな体は!

いいとこまで登れてもすぐに足がすべる。
めっちゃ悔しい。
336 名前:世紀 投稿日:2003年05月05日(月)13時38分52秒
ほんとにすいません。
家のインターネットができなくなってしまい、別のところで今やってます。
更新、遅くなりそうです。
 
>331様
保全、ありがとうございます。
感謝してます。
337 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月13日(火)02時41分47秒
ホゼン
338 名前:名無し読者2 投稿日:2003年05月25日(日)21時06分17秒
とても楽しみに保全
339 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月18日(水)16時37分54秒
ほぜん
340 名前:いのちのことば 投稿日:2003年06月22日(日)13時48分05秒
何度もやっても途中で落ちてしもうて、なかなかとれへん。
落ちたところを小学生に見られてばかにされた。
『おねぇちゃん、何やってるの〜?』って。
指さされて笑われた。
なんかムカついたから、一発頭をぶってやった。
軽くやけどな、軽く。
そしたら走って逃げていった。
なんやねん、ほんまに。

それでも、かごは諦めんで。
中途半端はキライや。
それに、のののやし。

「よっと…。あと少し…。」

ちょっとキツい体勢やな…。
あ、手があと10センチ長かれば届くんやけどなぁ…。
それにしてもほんまにヤバイ、落ちそうや。

「わあっ!!」

かご、ほんまにアホやわ。
足、滑らせてしもうた…。
341 名前:いのちのことば 投稿日:2003年06月22日(日)14時02分19秒

「いてててて……。」

かご、死んじゃうんかなぁ、なんて思いながら落っこちたら、
目の前にののがいるやん!
ののは大切そうにやすださんをだっこしとった。

「のの……。」

ののは泣きそうやった。
それがフリスビーに対してなのか、
かごを心配してくれたのか、わからへんけど。

後者やったら、嬉しいなぁ…。
でも、ののを心配させるわけにはいかない。

「のの、なんでここにおるん?」

ちょっとお尻のあたりがひりひりしとった。
でも、笑ってごまかした。

「あ、ごめんなぁ。フリスビー、結構高いところにあんねん。
かご、あんまり背、おっきくないから全然手がとどかへんの。」

ちょっとだけ、ののに頭を下げた。
そりゃあ、かご、反省しとるもん。

「でも、かご、もうちょっと頑張るから。まだ体力残ってるから。
なんぼでもいけるわ!こんなもんっ。だからのの、ここでまっててくれへん?」

大丈夫。さっきおしいところまでいったんやから。
次は絶対いけるで。
342 名前:いのちのことば 投稿日:2003年06月22日(日)14時12分22秒
ののはそっとやすださんをおろしてあげた。
のの、怒ってるんやろか?
やすださんをおろしたその手でかごをグーで殴るんかな?

グーは痛いやろ。
せめてパーがええな。
かごだって、さっきの小学生を叩いた手はパーやで?

でも、ののにはきっとかごを殴る資格はある。

覚悟を決めてたら、予想外な展開。
のの、急に泣き出した。
これにはかごも驚いたで。

「の、のの?どないしたん?そんなに
あのフリスビー、大事やったん?それなら、ほんなにごめんっ!
今からとってくるから…。」

『今からとってくるから、泣かんといて。』って言おうとしたら、
ののが高速で首を横に振った。

かごには何がなんだかさっぱりわからん。
のの、なんで泣いてんの?
なぁ、かご謝ったやんか。
『ちゃんととる』って言うたやないか。



だから、ののお願いやから…泣かんといてぇな…。



343 名前:いのちのことば 投稿日:2003年06月22日(日)14時25分31秒
かご、気付いたらののに抱きしめられてた。
ののを泣き止まそうとおもろいこと考えてたから、ののを
支えきれずに後ろに二人で倒れてしもた。

「のの?ほんまにどないしたん?だいじょぶか?」

ののは泣きやまんから心配になってきた。
だから、優しく頭をなでてあげた。
だってな、こうするしかなかったんやもん。

ののの頭をなでてあげたら、ののは泣き止んだ。
ちょっとびっくりや。


少しの間、誰も喋らんかった。
まぁ、まともに喋れるのはかごだけなんやけどな。
でも、この雰囲気はどうも馴染めない。

「ののぉ、ほんまにごめん。」

でも、かごが話すことといえばこれしかない。
ののは『何が?』という顔をしとる。
のの、忘れてんの?

「フリスビー。」

ののはすぐに顔を横に振った。
…さっきほどではなかったけど…。

「のの、許してくれるん…?」
だって顔を横に振ってるんやもんな。
でも不安やったから、確かめてみた。
344 名前:いのちのことば 投稿日:2003年06月22日(日)14時34分25秒

ののは目がまだ赤かったけど小さく笑いながら頷いてくれた。

「ほんまっ!?ほんまにありがとう!!ののっ。」

ああ、よかった。
ののがこんなにも優しくて。

かごもなんだか自然に顔が緩むで。
ののもにこにこしとる。
一件落着やな。

ののは自分のポケットに手をつっこんでハンカチを取り出した。
花の絵が描いてあった。

「のの?」

ののは、そのハンカチをかごの顔にもってきて、かごの顔を拭いてた。
ハンカチは、めっちゃきれいで、ののの匂いがした。

どうやら、かごの顔に泥がついてたらしい。
ののは拭き終わると満足げな顔をして、笑った。

「あ、のの…ありがとう。」
345 名前:いのちのことば 投稿日:2003年06月22日(日)14時46分53秒
かごの視界に入ってきた、夕陽。
もう、時間やな。

「のの、もう帰らないと…。」

寂しいな。
ののもやろな。

「のの、またここに来よ?」
ののはちょっといやそうな顔をしたけど頷いてくれた。
かごやっていややもん。

そろそろほんまに帰らんとあかん。
せやから、覚悟を決めるで、かご。

「なぁ、のの。ずっと考えてたんやけど、
かご、やすださん引き取ろうと思う。」

ののは『いいね〜!』って感じ。
驚いてたけど。
だってやすださん、野良犬なんやろ?
そんなの寂しいやんか。
夜になればやぐちさんだって帰るし、一人ぼっちやんか。

ののやって紺ちゃん引き取ったし。

「誰にも言わへんのも失礼かと思うから、
かご、安倍さんに一言言っておこうかと思うねん。」

急にやすださんがこの公園からいなくなったら
もしかしたら心配する人が出るかもしれへんからな。
346 名前:世紀 投稿日:2003年06月22日(日)14時51分08秒
一ヶ月以上も空けてしまったんですね…
ゆっくり更新になりすぎなのでは、と反省してます
終わりも近づいてますので

>337、338,339様
保全ありがとうございます
感謝です
347 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月28日(土)16時18分20秒
続きが楽しみです。
作者さん、頑張って下さい。
348 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月30日(水)13時02分37秒
hozenn
349 名前:いのちのことば 投稿日:2003年08月03日(日)13時30分12秒
―――
「あーべーさんっ!!」
安倍さんはいつもの場所にいた。
安倍さんはいつも笑っとるな。

「おぅ!あいちゃんにののちゃん。どしたの?」

覚悟したやんか、頑張れ、自分。
安倍さんは優しいから、大丈夫や。

「かご、保田さんと一緒にお家に帰りたい。あかん?」

こーゆーおねだりする時は上目遣いや。
昔、教えてもらった技や。

「え?なっちに聞くの?なっちは、圭ちゃんの事
大切にしてくれるなら誰でも構わないんだけど…。
あいちゃんは、圭ちゃんの事大切にできる?」

よかったぁ…。
安倍さん、聞き方が幼稚園の先生みたいやな。
350 名前:いのちのことば 投稿日:2003年08月03日(日)13時41分52秒
「かご、保田さんのこと大事にする!友だちとして一緒に過ごすから!!」

安倍さん、初めて会ったとき、やぐちさんは
安倍さんにとって『友だち』やよって言ってたやろ?

かごにもな、わかるねん。
その気持ち。

「それならなっちは全然いいと思うよ?」

「ほんま!?やったぁ〜!」

めっちゃ嬉しい!!
なんか天国にいるみたい!!

「保田さん、これからよろしくなっ。」
これからは保田さんとかごは家族やからな。
保田さんの頭を優しくなでてあげた。
保田さんは、気持ちよさそうな顔をしてたように見えたで、かごには。

「のの、紺ちゃん、それから保田さん、そろそろ時間やし、帰るか?」

ののは笑顔で頷いた。
紺ちゃんも保田さんもしっぽふっとる。

やぐちさんにも挨拶しなあかんな。

「それじゃあ、やぐちさん。また遊びにくるからな。
そんときは、保田さんも紺ちゃんも一緒やで?」

やぐちさんの頭もなでてあげた。
やぐちさんもしっぽふってくれたし、
『わんっ。』って返事してくれたんやで。
351 名前:いのちのことば 投稿日:2003年08月03日(日)13時53分04秒
帰り道は、行く時よりもひとつ影が多い。
なんか嬉しいなぁ、ほんまに。

ちゃんと言い訳考えとかんとな。
何にも言ってへんのにわんこ連れてきたらおかん達驚くんやろな。


…これで、ののが喋れるようになってくれればほんまに最高なんやけどな。
今日もほとんど一人で喋ってるようなもんやったからなぁ。

ののといろんなはなしがしたいねん。

ののは、紺ちゃんをだっこして頭をなでとる。
優しい笑顔なんやけどな。

そんなに両親が死んでショックやったん?
学校でもいじめられとるしな。

やっぱ、辛いんかな。

352 名前:いのちのことば 投稿日:2003年08月03日(日)13時59分40秒

今ののが住んどる家の人はどうでもええのかな、のののこと。


かごは、のののこと、心配やで?


喋れんようになったのって、ココロの問題なんやろな。
誰かが、手を差し伸べてやらんとずっとこのまんまかもしれん。





―――手を差し伸べるのは、誰の役目?




かご?
紺ちゃん?

それとも、今一緒に住んどる親戚の人?
精神関係のお仕事しとる人?




誰でもええんかなぁ?



かごが引き受けちゃってもええんかな?



でもちょっと照れくさいねん。
それにちょっと不安や。
どうなるかわからへんやろ?
もしかごの言った言葉が逆に、のののココロを塞いでしもたら、
もうかごとも会ってくれへんかもしれんしな。





正直、怖いねん。





353 名前:いのちのことば 投稿日:2003年08月03日(日)14時06分30秒

でも、ののと喋りたい。


どうする?


もし、ののが泣き出してしもたら、謝ればわかってくれるかな?


よし…。



「なぁ、のの…。」

微妙に声が震えとる。
大丈夫、いつもどおりやれば。


ののは『ん?』と顔を紺ちゃんからこっちに向けた。
なるべく、みないでほしいねんけどな。

今『あんまり見ないで』なんて言ったら傷つくやろな。


「あんなぁ、かごは、のののこと心配なんや…。」

なんか難しいなぁ。
この気持ちを言葉に表すの。

ちゃんとわかってな、のの。
かごはいっぱいいっぱいなんやから。
354 名前:いのちのことば 投稿日:2003年08月03日(日)14時14分22秒
ののはまだ、わかってないみたい。
続けるしかないか。

「だからな、んーなんて言うんやろな。
 かごにとってののはこっちに引っ越してきて初めての友達やんか?」

ののは小さく頷く。
あー…。
めっちゃ照れるねん。

「かご、勝手に思ってるんやけど、ののはかごの親友やねん。
 だからな、ののが困ってたり、泣いてたりするの見ると、心配やねん。
 でな、ののが笑ってたりすると、かごも楽しいねん。」

ちらっと、ののの顔を見るとちょっと驚いてる感じやな。
もうののの顔見て喋れへん。









「ののには、いつも笑っててほしいねんな、かご。
 ちゃんとな、ココロも笑っててほしいねん。」




355 名前:いのちのことば 投稿日:2003年08月03日(日)14時18分54秒

ののぉ、わかってくれたか?
なんかもう自分で言ってて恥ずかしいで…。







「…ぼん。」






んん?
今喋ったの誰?

かごちゃうで。







「あい…ぼん、ありがとう、ね。」







「のの…。」






ののが喋った?
ほんまに?



前と変わらへんなぁ。


やっとののの顔見れるで。
でも、視界がゆがんでよう見えんけどな。


ののもかごと同じくらい涙でいっぱいの顔。
のののどんぐりみたいな目から止まりそうにない涙。




356 名前:いのちのことば 投稿日:2003年08月03日(日)14時24分07秒



ののが喋ったんや!!


「のの、もう喋れるん?」


ウソみたい。
夢みたい。




「うん。あいぼんのおかげらよ。
 なんか、うれしかった。」




舌足らずなのも変わってないな。
でも、そのほうが嬉しい気がする。


しかも、かごのおかげで!!



かご、ええことしたんやな。



「てへてへ。」



八重歯を見せて笑うのの。


ココロから笑ってくれとるみたい。




「あいぼん、ありがとうね。ほんとに。」



なんかちょっとオトナになったな、のの。


嬉しくて、嬉しくて、言葉にならない。



ほんまにもう、死んでもええ。


357 名前:いのちのことば 投稿日:2003年08月03日(日)14時29分19秒








その後ののはこっそり
『あのねあいぼん、のののしんゆう、あいぼんらよ。
 だからね、ののもあいぼんがうれしいとうれしいの。
 おたがいさまなんれすよ。』って
二人にしか聞こえないくらい小さな声で言ってくれた。




      ―END―
358 名前:世紀 投稿日:2003年08月03日(日)14時35分07秒
…終わりました、なんとか。
無理矢理終わりにしちゃった感じなんですけども。
また長い時間空いちゃったし…。
もうあいののの方は大体決まってたんですよ、ストーリー。
でも結構時間かかってしまいました。

読者の方に保全してもらったり…。


最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。
よろしければ感想を言っていただくと非常に嬉しいです。


>347様
とうとう終わりました。
時間かかっちゃってすいません。
>348様
保全ありがとうございます。
感謝です。

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