Forever Kiss〜天使になった少女〜
- 1 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年09月23日(月)17時51分57秒
- まだまだ2作目の甘ったるい文章ですがお付き合いください
主人公は後藤で
そのほかには、なっち、裕ちゃん、などが出てきてアンリアル物です
どうぞ宜しくお願いします
- 2 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年09月23日(月)17時54分04秒
- Forever Kissを書く前に
後藤真希のバースデイと卒業記念として短編を書きたいと思います
前編後編に分けての2回更新でいくと思います
ではスタート!!
- 3 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年09月23日(月)17時55分53秒
- 2000年九月上旬 新曲I wishを発売
後藤と新メンバーの吉澤・石川・加護・辻をメインにしたその曲は
オリコン初登場一位を獲得した……
- 4 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年09月23日(月)17時56分31秒
- Memory of “I wish”〜涙が止まらない〜
- 5 名前:後藤真希 投稿日:2002年09月23日(月)17時57分16秒
- 異変に気づいたのは数日前のことだった…………
メンバーのみんなに話しかけても素っ気無い返事しか返ってこない
「加護、今日一緒に帰らない?」
「あ、今日はののと約束があるんですいません」
「ねぇ、よっすぃ、一緒に帰んない?」
「あ〜今日梨華ちゃんと一緒に帰るから、ごめんね」
「なっち、一緒に帰ろ」
「いやーごめん、今日矢口と約束あるんだ」
以前なら誰かと約束があっても3人で行こうって言ってくれたメンバー
何かが前と変わっている…………
- 6 名前:後藤真希 投稿日:2002年09月23日(月)17時57分53秒
- 新曲発売後 初めてのテレビ出演
「お前ら本当に仲良いのか?」
「めっちゃくちゃ仲良いですよ。この前もみんなで焼き肉食べに行きましたよ」
あたしは誘われてもいない
あたし以外のメンバーだけで行ったのだろうか
異変に気づいていなければテレビ向けの答え方だと思っていただろう
でも今となってはどうでもいいことだ……
メンバーと一緒にいて楽しい事など何一つない
もうメンバーといる時が嫌としか思わなくなってしまった
- 7 名前:後藤真希 投稿日:2002年09月23日(月)17時58分39秒
- 9月12日
メンバーと口も聞かなくなって数日後のこと
いきなり、やぐっつぁんが話しかけてきた
「ごっつぁん!」
その声に驚いたあたしは慌てて振りかえった
「ごっつぁん、明日から3日オフでしょ」
「うん、そうだけど」
「何か予定ある?」
「いや別にないよ」
ずっと話しっていなかったからか 無意識の内に返事が素っ気無くなる
「じゃあさ、みんなで旅行行かない?」
「旅行?!」
「そう、一泊二日でさ、旅館とかは裕ちゃんが全部やってくれるみたいだし」
少し迷った…
でもみんなとの仲直りをするいい機会かもしれないと思った
「面白そう、行きたい」
「あ〜よかった、もう10人で予約してたから
ごっつぁんが来ないって行ったらどうしようかと思ったよ
じゃあ明日朝7時に家の前で待ってて、迎えに行くから」
そう言ってやぐっつぁんは去って行った
- 8 名前:後藤真希 投稿日:2002年09月23日(月)17時59分15秒
- 夢じゃないだろうか…あたしは頬をつねってみる
……痛い……
夢じゃない…本当にあたしを誘ってくれた…
その日はいつもと違って家までの足取りが軽く感じた
家に帰ってからもハイテンションのまま明日の準備をしていた
―――どんな所だろう―――
―――ホテルかな、旅館かな―――
―――部屋は広いのかな―――
―――わくわくするなぁ―――
色んな思いが頭の中を巡る
みんなとどこかに行くのっていつ以来だろう
前に行った時は7人メンバーだった頃だよねぇ
あたしは色々な事を考えながら眠りについた
- 9 名前:後藤真希 投稿日:2002年09月23日(月)17時59分53秒
- 9月13日
午前6時 起床
「ふぁ〜あ〜」
大きな欠伸をしてベットから起きあがる
「よかった寝坊しなくて」
こんな日に寝坊したらメンバーに何言われるかわかんないよ
そんな事を考えつつ朝ご飯の用意を始めた
「今日はトーストで良いか」
時間をあまり使いたくなかった私は普段は食べない食パンでトーストを作った
ご飯を食べ終わり、身支度を整えている時にふと思った
―――あたしだけ浮いてたらどうしよう…―――
このごろメンバーと話していない…そのことがあたしを不安にさせた
でも、元々深く考えない性格なので『なんとかなる』と思い55分に家を出た
家の前で待っていると家の右側からワゴンがやってきた
ワゴンが家の前で止まり、ゆっくりとスライドドアが開いた
そしてみんなの声でさっきまでのあたしの不安は一気に吹き飛んだ
- 10 名前:後藤真希 投稿日:2002年09月23日(月)18時00分25秒
- 「「「「「「「「「おはよー!!」」」」」」」」」
その声に驚いたが、あたしも負けじと「おはよ!!」と言い返した
運転席には裕ちゃん、助手席には圭ちゃん、
2列目の席には左からカオリ、辻、梨華ちゃん、なっちの順に座っていて
3列目の席には左からよっすぃ、やぐっつぁん、加護の順に座っていた
そしてあたしはやぐっつぁんと加護の間に座ることになった
本当に昨日まで何も話していなかったのが嘘のようにあたしはみんなと打ち解けていた
「裕ちゃんどこのほうに行くの?」と、聞いてみた
「近場や、近場、しなびた旅館やけど、ごっちんにはそういうところの方が良いやろ?」
確かにあたしは旅館が好きだ ホテルと違ってる、あの日本な感じや、木の優しい香りがすごく好きなんだ
「2,3個山越えたらすぐや」裕ちゃんが付け加えた
- 11 名前:後藤真希 投稿日:2002年09月23日(月)18時01分02秒
- もう二時間ぐらいが経った。いつの間にやら雨も降っている
まだ旅館には着かない
みんなとトランプとかゲームをしながら来たけど
「中澤さーん、まだですかぁ?」と、不満の声を上げるヒトもいた
「もうちょっと、この山降りたらすぐや、あと10分、15分ぐらいで着く」
その言葉に安心したみんなは再びゲームを始めた
「どんな旅館かな、温泉とかあるのかな?」
加護に話しかけてみた
「加護も楽しみですぅ〜」と答えが帰ってきた
ドン!!
突然車がゆれた!
「何?!」
あっという間に車内がパニックになる
「土砂崩れみたいや!!」
何が起こったのかまったく掴めなかった
そのあと車のタイヤが滑り車は山の壁にぶつかった
そこであたしは頭を打って意識を失った
- 12 名前:後藤真希 投稿日:2002年09月23日(月)18時01分49秒
―――楽しい旅行のはずだった―――
―――旅館でワイワイ騒ぐはずだった―――
―――帰る時には『もう一泊!』って、誰かが言ったりするはずだった―――
―――それで、裕ちゃんも『もう一泊して行こか!』って、言うはずだった―――
あたし達が楽しみにしていた旅行は不慮の事故により中断された
一度意識が戻った時
「おーい!!!まだ生きてるぞーー!!」
と言う声が聞こえた
助かると思った、そしてまた意識を失った
- 13 名前:後藤真希 投稿日:2002年09月23日(月)18時02分29秒
- 9月20日
次に目覚めた時は病院のベッドの上だった
「お、やっと起きたか」
裕ちゃんの声が聞こえ、パッと起きあがった
するとメンバーのみんながベッドの回りを囲んでいた
「ごっちんが一番起きるの遅かったべ」となっちが言った
「え、あたしどれくらい寝てた?」
どれくらい寝ていたかわからないあたしは聞いてみた
「1週間ぐらい寝てたよ」圭ちゃんが言う
「まぁ、ごとぉはいつも寝坊すけだし」カオリが言う
「寝坊すけはひどいんじゃない」
「ごっちん寝坊すけだよね、梨華ちゃん?」
「うん、ごっちん寝坊すけだよ」
「二人ともひどーい」
- 14 名前:後藤真希 投稿日:2002年09月23日(月)18時03分04秒
- 「でもごとうさんの寝顔かわいかったですよ」と加護が言った
加護に言われちゃおしまいだよ、と思った
「たしかに、ごとうさんのねがおはかわいかったれすよ」
辻までもがそう言った
でもみんなが来てくれたのが嬉しかった
「じゃあごっちんも起きた事やし、ウチらは帰るで」
「うん、ありがとみんな」
「ばいばいごっちん」
「ばいばい」
「またね、」
すぐに帰ってしまったのは悲しかったけどみんなと仲直りが出来たのは嬉しかった
ガラッ!と音がしてドアが開いてた
「ユウキ…」
「姉ちゃん?」
するとユウキは驚いて部屋を飛び出して行った
「ちょっと、どうしたの?」
話しかけたがもういない
- 15 名前:後藤真希 投稿日:2002年09月23日(月)18時03分39秒
- そしてすぐにお母さんを連れて戻ってきた
「ほら!姉ちゃん起きてるだろ!!」
するとお母さんがあたしに抱きついてきた
「真希!!よかった目が覚めて!このまま寝たきりだったらどうしようかと思ったわよ」
「あれそこでみんなに会わなかった?」
「何いってんの姉ちゃん?」
その時何か違和感を感じた、何かがオカシイ…何かが違う…しかし違和感の正体を掴めなかった
――――――――――――――――――――――――
- 16 名前:後藤真希 投稿日:2002年09月23日(月)18時04分18秒
- 「もうダイジョウブです、念のために今日まで入院して明日退院としましょう」
ここの先生らしい人がそう言って部屋から出ていった
「ここってどこの病院?」
ここがどこかわからないので聞いてみた
「土砂崩れのあったそばの病院…ここ来るのも大変だったんだぞ」
ユウキが言った
「どこ行くつもりだったんだよ、こんな所にしかも車で」
「旅行」
「旅行?!」
「うんメンバーのみんなといっしょに」
「13日の8時ごろに姉ちゃん家行ったんだぞ、まだ寝てると思って、
そしたらいなくてテレビ見たら土砂崩れのニュースやっててびっくりしたんだぞ」
「ごめん」
「へ?」
「どうしたの?」
「いや、姉ちゃんが素直に謝るなんて変だなと思って」
「今機嫌良いから…」
あれから違和感の正体を掴もうとしているがさっぱりわからない
何かがあるはずなのにそれすらもわからない一体なんなんだろう
- 17 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年09月23日(月)18時08分05秒
- 今回はここまでです
この短編は後藤真希のモー娘。卒業を違う形でおこなおうと思っています
しかしその前に何が起こるかはわからないということで
Memory of “I wish”〜涙が止まらない〜 後編 ご期待ください!!
- 18 名前:ななし 投稿日:2002年09月23日(月)18時15分16秒
- え?何?何?
違和感ってなんなのさー!?
っつーか、ほかのメンバーは?
めっちゃ続きが気になるーーー!!
- 19 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月24日(火)11時01分24秒
- 卒業を違う形?どんな形?
何が起こるかわからない?
うぉ〜めちゃくちゃ気になる〜!!!
期待大です!!!
- 20 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月24日(火)19時18分31秒
- 天使て・・・死んだんかい!!
- 21 名前:ななし 投稿日:2002年09月30日(月)00時48分56秒
- 川o・-・)<…あの…保全です…。
- 22 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年10月10日(木)22時04分08秒
- 長いこと放りっぱなしですいません。仕事が忙しくて更新に来れません(この書き込みは携帯からです) 仕事が落ち着き次第更新しますので、もう少しおまちくださいm(_ _)m
- 23 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月11日(金)00時47分03秒
- めちゃめちゃいい所で切られているので、新手の嫌がらせかと思いました(w
…と言うのは冗談で、更新楽しみに待ってます。
- 24 名前:名無し 投稿日:2002年10月17日(木)01時10分32秒
- 待ってるよ〜
- 25 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年10月28日(月)08時04分53秒
- 約一ヵ月の放置、本当に申し訳! まだめどはたっておりませんが次の日曜日にと考えております もう少しお待ちください
- 26 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)14時53分24秒
- みさなん長らくお待たせいたしました〜
これより Memory of “I wish”〜涙が止まらない〜 後編
を更新いたします
でもその前に
>>18、>>21 ななし さん
保全ありがとうございます
違和感の正体はもうすぐわかります
>>19 名無し読者さん
お待たせいたしましたすぐ更新です
>>20 名無しさん さん
あの〜もしかして勘違いなされているかもしれません
今書いているのは「Memory of “I wish”〜涙が止まらない〜」
であって「Forever Kiss〜天使になった少女〜」ではないんです
紛らわしい書き方をしてすいません
>>23 名無しさん さん
そんな嫌がらせができるくらいの腕がほしいです(w
>>24 名無し さん 更新です
- 27 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)14時55分01秒
- 9月22日
ようやくの事ながらあたしは実家のほうに帰ってきた
何故1人暮らしのマンションに戻らなかったかというと
母さんが心配だからと言う理由でだ
家に戻ったあたしはすぐに自分の部屋に入りベッドにねっころがった
病院のベッドは堅くてなんだか眠りにくかったから
家のベッドは余計に気持ちよく感じた
「姉ちゃん」
ベッドに横になって数秒
ユウキがノックもせずに部屋に入ってきた
「何よ、部屋に入る時はノックしてって言ってるでしょ」
「あ、ごめん。母さんが無理はするなよって。まだ完璧じゃないんだからって」
「なんだ、そんなことか、わかってるよ」
それだけ言うとユウキは部屋から出ていった
実はあたしはまだ包帯がとれていない
昨日退院だったはずなのが今日に伸びたり
包帯巻きっぱなしになっているのも
結構不便な物だ
「ふ〜、これからどうしようかな」
マネージャーから仕事の連絡もない
当分暇になるだろう
- 28 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)14時55分37秒
- マンガでも読むかな」
あたしは机の上においてあったやぐっつぁんから借りっぱなしになっているマンガを取った
「うる星やつら第20巻……」
マンガを読み出したものの、一度読んだ事のあるその本は15分ほどで読み終わってしまった
「のどかわいたな…」
あたしは飲み物を取りにリビングに行った
リビングに誰もいなかったので自分でジュースを探す
冷蔵庫を開けて1,5リットルのペットボトルを取り出す
更に戸棚を空けてコップを取り出しオレンジジュースをコップに注いだ
ゴクゴクとジュースを飲み干す
そこにユウキがやってきた
「あ、ユウキ、母さん知らない?」
「知り合いの葬式って言ってたよ」
そういうユウキもカバンを背負っている
「あんたもどこか行くの?」
「うん、事務所、誰かとユニット組むんだってもしか歌手デビューかもよ
あ、あと今日泊まりだから」
「あ、そ。行ってらっしゃい」
あたしはジュースを飲み干したあと特にする事もなく
ソファーに寝そべっていた
- 29 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)14時56分14秒
- ピンポーン
インターホンが鳴った
「誰だよ、こんな時間に」
時計を見てみるともう12時を廻っていた
仕方ないのでソファーから起き上がり玄関へ歩いていく
覗き穴から外を見る
するとそこには誰も見えなかった
「ん?」
もう一度覗きこむとギリギリで金髪が見えた
「やぐっつぁん?」
ドアを開けるとやぐっつぁんが立っていた
「あ、よかった……いなかったらどうしようかと思った」
いきなり現れたやぐっつぁんはいつもより少し暗い表情をしていた
「どうしたの?!こんな時間に?!あ、とりあえず上がって?」
あたしはやぐっつぁんを部屋へはいるよう促した
やぐっつぁんはさっきまであたしが座っていたソファに座り
あたしはやぐっつぁんの正面のソファに座った
「なんで…」
“こんな時間に?”と聞こうとしたら
あたしの携帯電話が鳴り出した
こんな時だから無視しようとも思ったが携帯の画面を見て気が変わった
- 30 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)14時57分29秒
- 【裕ちゃん】
やぐっつぁんに「ちょっとまって」と言い携帯に出る
「もしもし」
『もしもし、ごっちんか?』
「うん」
『ごめんなこんな時間に、矢口来てないか?』
予想どうり、おそらくやぐっつぁんがここに来たのは裕ちゃんが原因だろう
「うん、来てるよ。…なんかあった?」
『今そばにおるんか?ちょっと矢口に聞かれたくない話しやねん、2階に上がってくれへんか?』
「…わかった、やぐっつぁんちょっとまってて」
やぐっつぁんはコクンとうなずいた
携帯をもったまま2階に上がる。一応やぐっつぁんがついてこない事を確認する
「もしもし?裕ちゃん、2階にあがったよ」
『………』
「もしもし、裕ちゃん?」
『………』
あたしは声を少し大きくして言う
「もしもし!裕ちゃん?!」
『ツーツーツー』
切れた………………
2階に上がって電波が弱くなったのかと思った
窓際に行き今度はこっちからかけてみる
『おかけになった電話は電波の届かない所におらおれるか、電源が入っていないため………』
- 31 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)14時58分08秒
- カチン!
音はしなかったがちょっと頭に来た。
おちょくられてんのかな………
あたしはしぶしぶ1階に戻ってリビングのドアを開けた
パン!パン!パン!
するとリビングから大きな音がした
「「「「「「「「「ごっちん!おめでと―!!!!!」」」」」」」」」
「え?!何?どうしたのみんな?!」
なんとそこにはやぐっつぁん裕ちゃんを初めとするメンバー全員が揃っていた
「ごめんねごっつぁん、こんな大勢で押しかけちゃって」
やぐっつぁんが一歩前に出て代表の様に挨拶した
「って言うか、さっきの電話とかはなんなの?」
「あれはごっちんを驚かすための芝居……」
「そ、それは良いけどみんな何しに来たの?」
「今日は何月何日?」逆によっすぃがあたしに聞いてきた
「え?今日は…9月22日?」
「もう12時廻ったよ?」
「じゃあ23日……あ!」
やぐっつぁんはニヤリと笑った
「今日はごっつぁんの誕生日だよ」
「え?じゃあみんなあたしのために来てくれたの?」
「そうだよ〜じゃなきゃこんな時間に来るわけないじゃん〜」
- 32 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)14時58分39秒
- 正直…嬉しかった
ついこの間までクチを聞いていなかったメンバーがあたしの誕生日を祝ってくれる
一年前はあたしが加入したばかりで祝ってもらえなかった誕生日…
たった一年しか付き合っていないメンバーから誕生日を祝ってもらえるなんて
あたしの目にはうっすらと涙が浮かんでいた
「ごっつぁん!泣くのは早いぞ!」
やぐっつぁんが冷やかしてくる
「な、泣いてないよ!」
泣き顔を見せるのが恥ずかしくて、意地を張ってそう言い
目頭をおさえて涙をぬぐう
すると加護がハンカチを差し出してきた
あたしは加護からハンカチを受け取った
「泣いてないけど…もらっとくよ」
「意地っ張りやな、ごっちんは…」
裕ちゃんにそう言われた
なんだか心はみんなに見透かされている気がした
「ほらごっちん、こっち来て!」
よっすぃがあたしをソファに座らせる
そして辻加護コンビが白い箱ををもってきた
- 33 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)14時59分20秒
- 「「開けてー!!」」
ステレオで二人はそう言った
「開けるよ…」
フタを開けて見ると、中には立派なバースデイケーキが入っていた
中心のチョコプレートには『ごっちん15歳オメデトー!』と言う文字も入っている
裕ちゃんがライターでロウソクに火を点けていく
火を点け終えると 梨華ちゃんが部屋の電気を消した
「歌うぞー」そして圭織が合図をみんなに送った
「「「「「「「「「
ハッピーバースディ トゥーユー♪
ハッピーバースディ トゥーユー♪
ハッピーバースディ ディア ごっちんー♪
ハッピーバースディ トゥーユー♪
」」」」」」」」」
みんなは近所迷惑になるぐらいの大きな声で歌ってくれた
あたしは大きく息を吸い込んでロウソクに点されている火を吹き消した
ロウソクの火は一吹きで消えた、そして
パチパチパチパチ
みんなが拍手をした
「みんなプレゼント渡すでー!!」
裕ちゃんがみんなに呼びかけた
- 34 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)14時59分52秒
- ―――裕ちゃん
「裕ちゃんからはこれや、中身はウチがはじめて作ったガラスのコップ。大切にしてな」
「ありがと、大切にするよ」
―――圭織
「カオからは目覚し時計二個、ほら、後藤あんまり早起きじゃないし」
「なんかすごい現実的、でもありがと」
―――なっち
「なっちからはサングラス、この前ごっちん欲しいっていってたでしょ」
「あー、ありがと、なっちって人の話しよく聞いてるよね」
―――やぐっつぁん
「オイラからはこれ!ごっつぁんと前に行ったアクセサリーショップの指輪、ごっつぁんこれずっと見てたでしょ」
「ありがとーこれ本当に欲しかったんだ!」
―――圭ちゃん
「あたしからはカメラ、ごっちん写真撮るの好きだし、お古で悪いんだけどさ」
「ありがと、あとはフィルムがあれば完璧だね(笑)」
- 35 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時00分55秒
- ―――よっすぃ
「あたしからはバングル、ほらごっちんってこう言うのあんまり着けないでしょ」
「そう言えばそうだね、じゃあこの機会に着けるようにするよ」
―――梨華ちゃん
「あたしからは、あたしの好きなピンクの服!!」
「えー!!梨華ちゃんとおそろいになっちゃうー!………ってうそうそ、ありがと梨華ちゃん」
―――辻
「つじからは『おるごーる』なのれす、なかに『あい うぃっしゅ』がはいっているのれす」
「ありがとね、辻」
―――加護
「加護からは〜、後藤さんは髪を後ろで束ねる事が多いから、バレッタって言う髪飾りです」
「へぇ〜、変わった髪止めだね、ありがとう加護」
- 36 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時01分34秒
みんなからもらったプレゼントは、今までで一番嬉しい気がした
「じゃあ、ケーキでも食べよか、ごっちん一人でも食べきられへんやろうし」
裕ちゃんがそう言うと、やぐっつぁんが包丁をもってきてケーキを切り始めた
「あたし、今日は今までで一番楽しい誕生日だよ……みんなありがとう」
あたしは下を向きながらしゃべっていたのでみんなの顔は見えない
「そんなの、あらためて言われたら照れちゃうじゃん…」
「そうだね、おかしいね、あたし」
そのあとみんなでケーキを食べてバカ騒ぎして、楽しかった
そして遊びつかれて…あたしはいつしか眠りについた
- 37 名前:〜夢〜 投稿日:2002年11月04日(月)15時02分12秒
- ―――よくわからない…うまく説明出来ない
『あたし達、ずっとごっちんのそばにいるから』
―――よくわからないけど…うまく説明出来ないけど
『ごっちんはごっちんらしくいれば、それでいいから』
―――……………悲しい気がした
――――――――――――――――――――――
- 38 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時04分37秒
- あうち!!
名前欄に「後藤真希」って入れ忘れた!!
ちくしょー!!
ちょっと透き間が開くのでこのスレッドでメインに書く
「Forever Kiss〜天使になった少女〜」のCMを入れます
- 39 名前:Forever Kiss〜天使になった少女〜のCM 投稿日:2002年11月04日(月)15時05分50秒
- うまい棒メンタイ味が送る 史上最大の迷作!!
「あたし、もう生きられないの…?」
―――自分の死の原因になった事故
「あたし、なっちの事が好き!」
「なっちは、真希とは付き合えない」
―――限りある残りの生をどう生きぬくのか…
学校、妹、愛しい人、周囲の全てを巻き込んでしまう後藤…
「今の後藤といてもつまらない」
―――昔の親友
「なんで姉ちゃんをふったんや!!」
―――大切な妹
「ウチか…幽霊や……」
―――謎の幽霊
「あたし…真希の事が好き!!」
―――愛しい人……
死が迫る……その中で後藤が見つけた答えとは?!
「バイバイ……なっち」
全世界が熱狂し、感動した作品をあなたの元へ!!
「あたしを助けて……」
―――愛は時に……心を壊す……
Forever kiss 〜天使になった少女〜
近日公開!!
- 40 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時07分13秒
- 面白おかしくCMを作ってみましたがどうでしょうか・・・・・・
まぁいいや
では続きを載せまして一気にラストまで行きます!
- 41 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時07分46秒
- 9月23日 正午
「おい!姉ちゃん!大丈夫かよ!起きろよ!おい!」
ユウキが何か叫んでいた、その声であたしは目覚めた
「ん……ユウキ?」
「もー、びっくりさせんなよ、こんなところで寝てるから頭痛か何かで気失ったかと思うだろ」
「あ……ごめん」
………あれ…あたしいつの間に寝ちゃったんだろう
いつ寝たか、まったく記憶にない
周りを見てもみんなが家にいた感じがない
ユウキの様子を見てもみんなとは会ってはいないようだ
……夢だったのかな……
「あ…」
机の上にある物を見てあたしは安心した
机の上にはみんなからもらったプレゼントが置いてあった
それを見てあたしは微笑んだ
―――夢じゃなかった…夢な訳ないか…
昨日の事で確認できた、あたしはみんなと繋がっている
みんなはあたしの事をわかっていてくれる そう思った
- 42 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時08分18秒
- あたしはみんなにもらった物を持って自分の部屋へと戻った
部屋に戻ったあたしはまず鏡の前に立った
梨華ちゃんにもらったピンクの服を着てみたり
―――――(あたしピンクの服は似合わないな……)
なっちにもらったサングラスをかけてみたり
―――――(うわ〜これじゃ、怪しい人だよ…)
よっすぃにもらったバングルを着けたり
―――――(お、これは結構…イケテル?)
やぐっつぁんにもらった指輪にチェーンを通してネックレスにしてみたり
―――――(これはこうやった方が良いかも)
加護にもらったバレッタで髪を止めてみたり
―――――(自分で言うのもなんだけど可愛い…)
- 43 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時08分53秒
- そのあとは
机の上に裕ちゃんからもらったコップを飾ったり
―――――(なんか使うのもったいないし)
圭織にもらった目覚しをセットしたり
―――――(って言うかこの部屋目覚し時計多すぎ!8個もあるし)
辻にもらったオルゴールを鳴らしてみたり
―――――(これ、……結構綺麗な音)
圭ちゃんにもらったカメラでベランダからの風景を撮ったり
―――――(一眼レフって結構難しいな…)
色んな事をしてみた
カメラであたりの風景を撮っていると突然携帯が鳴った
画面を見て相手を確認を確認する、マネージャーだ
「もしもし、……はい後藤です…2時からですか?…はい、わかりました」
あたしは2時に仕事の事で事務所に呼ばれた
- 44 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時09分30秒
今あたしが立っているのはさっき電話で呼ばれた事務所の部屋の前
「後藤真希様………?」
部屋の前の白い紙にはそうかかれてあった
部屋へと続く無機質な白い扉を開ける
部屋の中央には真四角の机があり、それを隔てて向かい合う様に椅子が2つ置いてある
そして1つの椅子には既に人が座っていた
「よう、後藤…来たか」
「え…つんくさん?……あ、おはようございます」
いきなり現われたつんくさんに驚いた
仕事の話とはいえ、つんくさんが出ると言う事はかなり大きい仕事なんだろう
こう見えてもモーニング娘とつんくさんはなかなか会う機会がないのだ
- 45 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時10分02秒
- 「まぁ、座りぃな」
「あ、はい、失礼します」
つんくさんに促されあたしは椅子に腰掛けた
「あの、もしかしてソロデビューですか?」
「ん、なんでや?」
「外に『後藤真希様』って書いてあったし、つんくさんが出てくるぐらいだから、そうかなーと思って」
「ええとこ、ついてるけど少し違うな……」
ソロデビューではない……
それでもなんだかあたしはホッとした
メンバーのみんなはあたしのソロデビューを反対はしないだろうけど
あたし一人だけがはみ出すようなまねはしたくない
ソロデビューだってなっちの方が先だ、そう思った
「もしかしたら、そうなるかも知らん……」
もしかしたら?……どう言う意味なんだろう?
「身体は大丈夫なんか?この前なんか事故に遭ってんて?大変やったな……」
「ア…身体の方は大丈夫です……」
なんだか、つんくさんは話しを引き伸ばしているような感じに見えた
話の内容が全然見えてこない…
「あの!………今日どうしてあたしは呼ばれたんですか?」
話の確信をつく質問をしてみた
- 46 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時10分39秒
- つんくさんは長い沈黙の後、話し始めた
「………あのな、おれも本当は話しにくいんや……でもこんな事話せるのは俺だけしかおれへん」
つんくさんの様子を察するにかなり話しにくい内容らしい
そしてこの話しを聞いてあたしは今までにないほど………………驚いた
「この前の9月13日やったかな……お前達が事故に遭ったんは
……その時にな、後藤以外のみんなも怪我して、重傷やったんや
正直…後藤が一番傷が浅かったんや」
みんなが怪我をしていたという事実をあたしは知らなかった
「みんな……数日は意識不明のままでも、まだ生きとったんや…
でも……みんな揃って……19日の朝に……」
つんくさんは一呼吸置いた
そして最後の一言をしゃべった
「亡くなった」
その言葉があたしの中の時間を止めた
- 47 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時11分53秒
- ―――『みんな亡くなった』―――
その言葉があたしの頭の中を何度もリフレインする
―――ミンナナクナッタ?ナニガナクナッタノ?ミンナハドコニイッタノ?
「みんな、亡くなった?…」
嘘だよ…昨日ウチに来てみんなでパーティーしたよ?
プレゼントだってもらったし、嘘に決まってるじゃん……
「あの、、嘘ですよね?みんなが死んだって?」
あたしの問いかけにつんくさんは答えない
「あ!ドッキリでしょ?!
ほら、壁の向こうにビデオカメラがあってそれであたしの反応を撮るんですよね?そうですよね?」
「すまん、今まで黙ってて、医者には精神状態安定するまで言うなって言われてたから
しかたなかったんや、ほんまにすまん」
つんくさんは初めてあたしに頭を下げた
「つんくさん、嘘ですよね?……嘘だって言ってくださいよ!!」
「これからの事は後藤、お前が決めたら良い、ソロになるのもモーニング続けるのもお前が決めたらいい
誰もお前の事なんか責めへん、」
つんくさんはこれからの事を淡々と説明し続けた
- 48 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時12分30秒
- 「モーニング続けるならまた新メンバーが入る…ソロになるなら、モーニング娘。は事実上の解散や」
つんくさんはそれだけ言うと部屋から出ていった
嘘だ!!!!!嘘に決まってる!!!!
あたしは部屋を出て事務所を飛び出した
―――嘘だって確かめてやる!ここから一番近いのはやぐっつぁんの家だ!
あたしは駅から電車に乗ってやぐっつぁんの家を目指した
生きている事を確かめる、でも正直恐い、もし……もしみんな死んでいたら…………
いや、そうじゃない事を確かめに行くんだ、絶対みんな生きている!!
もう何時間経ったのだろうか当たりはもう真っ暗……電車を何度も乗り換えバスと徒歩を繰り返し
今はやぐっつぁんの実家の前にいる
あたしは初めにやぐっつぁんが1人暮らしをしているマンションに向った、でも留守だった
携帯にかけても繋がらない……
だからこうして実家まで来た
家族なら何があったか知っているはずだ、そう思った
- 49 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時13分06秒
- ピンポーン、インターホンを押した
「ハーイ、あ、真希ちゃん真里に会いに来て来てくれたの?」
「あ、はい」
やぐっつぁんのお母さんの様子は前に会った時と何ら変わりはなかった
「さ、あがって」
「おじゃまします」
あたしはやぐっつぁんのお母さんに案内されて廊下を進んで行く
「真里、真希ちゃんが会いに来てくれたわよ」
やぐっつぁんのお母さんが入った部屋にあるものがあたしの目に飛び込んできた
あたしに見えたのは仏壇の中にあるやぐっつぁんの写真……そして
祭壇の前にある……骨壷が入っている木の箱だった
予想していた事が現実となってあたしに襲いかかってきた
みんな本当に死んじゃったんだ……
それからどうやって家に帰ったのかは覚えていない
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 50 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時13分43秒
- 気が付くと天井が見えた
………………ここは自分の部屋
あたしはベッドに横になっていた
メンバーが死んだ事に気が付かなかった自分が不思議に思う
テレビでも週刊誌でも「モーニング娘死亡」の特集をやっているし
あたしにも気づく節はあったのだ
事故に遭ったあとの病院で感じた違和感
あの正体がついさっきわかった
あたしは事故に遭って瀕死の怪我を負っていた
母さんはあたしがずっと目覚めないのではないかと言う事も考えていた
あたしがいた病室は「ICU」
中にはいるにはあの時のユウキや母さんの様に
白い割烹着のような抗菌の物を身に付けてからでないと部屋にはいる許可が下りないはずだ
でもみんなは旅行の時の服装のまま
白い服を身に付けていなかったのだ
あの時感じた違和感はまさに“それ”だったのだ
- 51 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時14分20秒
- もう本当にみんなはいない、あたしはこれからどうしたら良いのかわからない
今のあたしにはモーニング続ける事もソロになる事だって出来やしない
もう本当にどうしたらいいかわからない
これからの事考える……それ以上に難しい事は今のあたしにはないだろう
ピリリリリリリリリ
携帯電話が鳴った
今は電話に出るほど元気じゃない
無視しようと思った
でもその電話はずっとなりつづける
2分……3分……うるさくて仕方なかったので携帯電話に出た
「もしもし」
『あ、後藤?』
相手の声は何度も聞いたことのある声だった
- 52 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時14分59秒
- 「……市井ちゃん?」
『あ、ウン、市井だけど、いや〜ずっと電話に出ないからどうかしたかと思ったよ』
市井ちゃんの声は、今までに聞いたことがないほど
そう、市井ちゃんが卒業を告白したとき以上に
緊張した声だった
『あの、……もう聞いてんのかな?みんなのこと』
「うん、今日聞いたよ」
きっと市井ちゃんは……落ち込んでるであろうはずのあたしを元気づけるための電話をかけたんだろう
『そっか、…………』
でも、それきり市井ちゃんは黙ってしまった
「ねぇ、市井ちゃん?あたし、これからどうすればいいのかな……」
あたしは、かつてのモーニング娘。の教育係である市井ちゃんに自分が悩んでいた問題を聞いてみた
- 53 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時15分29秒
- 『市井にはわからないよ……あたしは5ヶ月前に辞めちゃったけど
みんなのために出来る事とか考えても……全然わかんないんだ』
市井ちゃんも……あたしと同じ事を悩んでいた
「みんなのために出来る事なんてあるのかな?」
もう一つの質問をしてみた
『多分あるよ……どっかから絶対見つかると思うよ』
みんなのために出来る事……
あたしはそれが見つかるまできっと復帰できない
『多分後藤の好きにしたらいいと思う……
みんなだって、後藤の事を一番に考えてたと思うし
あんまり考えないほうが良いかもしれない、
じゃあ、またなんかあったら電話してよ』
あたしは市井ちゃんが最後に言った言葉がよくわからなかった
- 54 名前:〜夢〜 投稿日:2002年11月04日(月)15時16分24秒
- 気づくとそこには1枚の扉があった
ここは夢の中だ、あたしにはそれがわかった
この場所は現実には存在しないから
その扉の横にはモーニング娘。様と書かれた張り紙がある
みんなはもういないのだからこの空間は夢にしか存在しない、そう思った
扉を開けるとそこからは「みんな」の笑い声や話し声が聞えてくる
その空間はまるで楽屋、みんなが休み時間にくつろいでいるそんな感じだった
あたしがその空間に入って行ってもみんなは各々の話しに夢中であたしに気が付かない
多分あたしはこの空間にいる人物じゃないのだ
あたしはみんなに聞きたいあたしはこれからどうすればいいのかを
あたしはみんなのために何が出来るのかを
あたしだけ生き残ってしまってよかったのかを
- 55 名前:〜夢〜 投稿日:2002年11月04日(月)15時17分07秒
- 「あたし!どうすれば言いかわかんないよ!!!」
あたしの心の声はその空間に響きわたった、
そしてあたしが叫んだ声に気づいてみんながあたしに方に振り返った
『あたし達を思う事はないんだよ』
『ごっちんがしたい事をすればいい』
『モーニング辞めたって』
『ソロになったって』
『ごっちんが変わらずにいれば』
『それで良いよ』
みんなの声が聞こえた
それだけでみんなの気持ちがあたしの中に流れ込んできた
さっきまで悩んでいた事がまるでちっぽけに思えた
あたしがみんなに微笑み返すとみんなはこの空間から出ていった
あたしの心にはもう迷いもなく、気持ちも晴れ晴れとしていた
あたしはその空間からの扉をくぐり、そして、目が覚めた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 56 名前:後藤真希 投稿日:2002年11月04日(月)15時17分42秒
- 「トゥルルルルル、トゥルルルルル、トゥルルルルル、ガチャ
…もしもし、市井ちゃん?……あたしね…みんなのために出来る事……見つけたよ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 57 名前:後藤真希 投稿日:2002年11月04日(月)15時18分26秒
- ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「アンコール!アンコール!」
2002年9月23日――横浜アリーナ
ここでは、あるアーティストのライブが行なわれていた
客の歓声がひときわ大きくなった時、舞台そでから5人の人影が飛び出してきた
「みんなーアンコールありがとうー!!」
その中にはあたし…後藤真希の姿もある
「1度モーニング娘が半壊してから丸二年、新メンバーが入ってから約1年が経ちました
あたしは今日モーニング娘を卒業するけれど
もう今はモーニングの意志を次いでくれる4人がいます。
来月、小川はハロプロキッズとプッチモニを再結成し
紺野と新垣はタンポポを再結成し
高橋はやぐっつぁん、加護、辻が考えていた新ユニットミニモニを発足させます
後はみんなに任せてあたしは今日卒業します
今日のこの日の思いで I WISH……」
あたしが言い終えると 四人はそでのほうに帰り
I WISHの曲が流れ始めた
- 58 名前:後藤真希 投稿日:2002年11月04日(月)15時19分25秒
- 歌が流れ始めても
あたしはまだ歌い始めない
このパートはあたしの歌うパートじゃないから
「退屈な夜〜♪あたしだけが寂しいの?」
自分のパートだけを歌う
あたしがこんな行動をとったのは 2年前生放送中の歌番組
音楽活動に復帰したあたしは
歌番組でI WISHのソロヴァージョンを歌うはずだった
でもあたしにはみんなのパートを歌う事が出来なかった
歌う時だけはみんなの死を認める事が出来なかったから
でも、その時、みんなの声が聞えた
あたしの周りで踊っているみんな、歌っているみんなが見えたんだ
だからあたしは今日までみんなと一緒に踊り続けてきた
今日もあたしの周りにはみんながいる
- 59 名前:後藤真希 投稿日:2002年11月04日(月)15時19分58秒
- 吉澤『くだらなくて』
辻 『笑える』
石川『メール』
後藤「届いたyeah」
中澤・保田『何故か涙止まらない』
安倍・飯田・矢口『Ahありがとう』
あたしにしか見えないみんな
あたしにしか聞えないみんなの声
あたしはまだみんなと一緒に歌いたかった
後藤「誰よりもわたしが〜私を知ってるから〜」
全員『「誰よりも信じてあげなくちゃ〜」』
みんなはあたしのしたい事をしろって言ってくれた
あたしがしたかったのはソロになる事でも辞める事でもない
“モーニングの意志を継ぐ事”
メンバーのみんなのためにしてるわけじゃないんだ
あたしがしたいからしている
- 60 名前:後藤真希 投稿日:2002年11月04日(月)15時20分45秒
- ………でも、このみんなと一緒に歌うI WISHも今日で終わりだよ
全員『「人生って素晴らしい ホラいつもと
同じ道だってなんか見つけよう
Ah素晴らしい Ah誰かと めぐりあう道となれ!!」』
今日であたしはみんなに甘える事は終わりにするよ?
いつまでもみんなに頼ってたら5期メンに示しが付かないでしょ?
加護『でも笑顔は大切にしたい♪』
後藤「yeah愛する人のために〜♪」
ねぇ……みんな? あたしは今日モーニング娘から……
みんなの思いでから……卒業するよ……
「みんなー!!今までありがとうー!!」
あたしが最後に見た、みんなの笑顔はずっと心に残っているから……
2002年 9月23日 横浜アリーナ 後藤真希 モーニング娘。卒業……
fin
- 61 名前:うまい棒メンタイ味〜あとがき〜 投稿日:2002年11月04日(月)15時21分53秒
- ラストはちょっと無理やりな感じがしないわけでも(略w
9月23日の内に一度に更新する予定が長々とみなさんを待たせてしまいどうも申し訳!!
(めちゃイケモーニング娘スペシャルをビデオで見たばかり)
じつはこれは元々名作集用に書いていた訳じゃないんです
昔「週刊ストーリーランド」と言う番組ががありまして
物語が採用されると最高賞金50万円が提供者に送られるという物だったんです
その時に書いてみたのですが番組自体は終了してしまい原稿用紙だけが残ってしまいました
そして先日後藤真希卒業のニュースを見た後に
モーニング娘関係のビデオを探す時に押入れからこの原稿用紙が出てきて
「これは使えまんがな!!」と思い後藤の卒業とバースデイ記念に新たに書き直しました
- 62 名前:うまい棒メンタイ味〜あとがき〜 投稿日:2002年11月04日(月)15時23分08秒
- この元々の話しは
「仕事ばかりで家族を省みなくなった父親がある日家族に誘われ旅行に行く
その時に交通事故で家族を失いますが父親にはみんなの幽霊が見えました
そして誕生日にプレゼントをもらいその日を境にみんなが見えなくなりました
そして警察に届を出すと『皆さん亡くなってらっしゃいますよ』と言うことを聞き
初めてみんなが死んでいた事に気づきます 父親はもっと家族を大事にすればよかったと
後悔しますが家にいる時最後にみんなが現われて家族は『父さんが大好きだったから
別に良いんだよ』と言う事を聞き見事もとの生活へ戻って行く」と言うお話でした
- 63 名前:うまい棒メンタイ味〜あとがき〜 投稿日:2002年11月04日(月)15時23分50秒
そして書き直す時に辛かった事があります
それは後藤への誕生日プレゼントです
原作の父親へは3つだけだったんですが
メンバーからのプレゼントとなると9つ考えなくちゃいけない
そしてこの9つのアイテムを考えるのに1週間近くかかりました
圭ちゃんのカメラ、石川のピンクの服、裕ちゃんのガラスのコップなどはすぐ決まりました
(ちなみに裕ちゃんのコップは『改心』を読んで考えました、裕ちゃんはガラス職人になりたかったんですね)
しかしほかの物を考えるのに苦労しました
最初吉澤は「べーグルを家庭で作れる物」とか考えていました
でも「俺べーグルってどんなのか知らないな〜」と思い調べてみると
パンの一種……こんなもの家庭で作れるか〜!!と他のプレゼントにしました
- 64 名前:うまい棒メンタイ味〜あとがき〜 投稿日:2002年11月04日(月)15時24分24秒
- そして作中未公開になった「生放送の歌番組(○ュージック○テーション)」
これも元々書く予定だったのですが最後で初めて見せた方が良いかな〜と思い未公開にしました
書く予定の時には後藤がモーニングで復帰する事が決まり
1人でテレビに出ます、そしてソロバージョンの「I wish」を歌うはずが
後藤は何故か自分のパートしか歌わなかったそして番組終了後にマネージャーにしかられる事になる
という物でした
そして書き直す時に一番辛かった事がつんくからメンバーの死を告白される所でしょう
- 65 名前:うまい棒メンタイ味〜あとがき〜 投稿日:2002年11月04日(月)15時25分21秒
- つんくはどうやって話をするのか
メンバーの死を知った後藤がどんな反応をするのか
これを夢にみてしまうほど考えました(w
実はこれは私が夢に見たそのままなんです
私がつんくになっていて(夢の中だと違和感がない)後藤にメンバーの死を話して
私が(つんくが)出て行く所までは夢のまんまを書いているんです
しかし夢にまで見てしまうとは……もうこの世界から抜け出せない(w
長々と失礼しました、あとがきは以上です
そして途中でCMを入れました
これはこのスレッドでメインに書く物です
(しかし短編で結構容量使っちゃったな、足りるかなァ)
一ヶ月以内には第一回を更新するつもりです
では、皆さん次回作を楽しみにしておいてください
最後にこの駄文をここまで読んでくださったかたがたへ
本当にありがとうございました
- 66 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時25分56秒
- ネタばれ防止レスっす
- 67 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時26分29秒
- ネタばれ防止レス2っす
- 68 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月04日(月)15時27分19秒
- ネタばれ防止レス3っす
ありがとうございました!!
- 69 名前:ななし 投稿日:2002年11月09日(土)12時05分53秒
- I WISH歌ってるところで泣いちゃった。番外編でこの状況。
本編始まったらどんな事になるのやら。・゚・(ノД`)・゚・
更新乙です。
- 70 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月26日(火)14時57分23秒
- 私は「運命」と言う言葉は信じない
もしもこの世界が運命付けられているのだとしたら
私はそんな世界生きようとは思わない
もしも私の生きてきたこの世界の全て物の運命が決まっているのだとしたら
私は恋なんてしなかった
そんな、別れるのも、うまくイクのも決まっているような恋愛は面白くない
運命はきっと自分で切り開くもの、
だから私は………恋をした
- 71 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月26日(火)14時58分03秒
Forever kiss〜天使になった少女〜
- 72 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月26日(火)14時58分54秒
- 私は4年前本当の家族を二人失った
原因は夜遊び…
あたしがその時の1番の親友と夜遊びに出かけた
その時父さんと弟があたしを探しに夜の街へと向った
そこで不良の抗争に巻き込まれた
あたしが家に帰った頃には二人は病院に運び込まれていた
母さんからその事を聞いて二人で病院に向ったが“時既に遅し”
あたしが夜遊びになんかに行かなければ二人は死ぬ事はなかった
あたしはその事を悔やみ続けていた
そして1年前母さんが再婚した
相手の男性にはあたしより2つ年下の女の子が一人いた
あたしは義父さんとも妹とも打ち解けて本当の家族みたいだった
何より妹が出来たのが嬉しかった…
そして半年前………
- 73 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月26日(火)14時59分35秒
- 義父さんとお母さんが交通事故に遭った
あたしは悲しかった…
家族の温かみを知った時に
家族がいなくなった…
そして私の家族は妹たった1人になった
二人暮らしでも幸せだった
このままこの暮しが続けばよかった
しかし……
悲劇は起こってしまうのだった……
- 74 名前:―1話― 悲劇 投稿日:2002年11月26日(火)15時00分42秒
- ―2001年5月上旬
あたしの名前は後藤真希
もう少しで16歳になる高校1年生
あたしには血は繋がっていないが妹がいる
中学二年生の13歳
名前は加護亜依
何故苗字が違うかというと
両親が夫婦別姓を条件に結婚したからだ
二人共、都心近くにある
中高一貫の私立学校に通っている
妹と二人でだけでも楽しく暮していた…
でも悲劇は起こった
なんだかこの時は 全ての事が悲劇に関連しているように思えた
- 75 名前:―1話― 投稿日:2002年11月26日(火)15時01分14秒
- 「ねぇ〜、お姉ちゃ〜ん」
「ん〜、どしたー?」
テレビを見ていたはずの亜依はテレビを消して、台所で洗い物をしている真希に声をかけた
「あ〜の〜さ〜、お願いがあるんだけど〜」
「お小遣いならこれ以上あげられないよ」
「えっと〜、そうじゃなくて〜」
洗い物を終えた真希は今にいる亜依のそばに座った
「じゃあ、何?」
「あの〜ビデオを借りてきて欲しいなーって」
真希はあきれた様子で「何のビデオ?」と聞いた
「あのねー、アイドルの娘が出てるやつで『マリア』って言うんだけど」
真希は「ああ、あれか」と言った様子で頷いた
「さっき同じグループのメンバーがドラマ出てたから、久しぶりに見たいなーと思って」
真希はそのドラマを1話だけ見た事があった
“白血病の少女と異母の4人姉妹と医者”と言うよくわからない話だったと思う
真希はとりあえずいやがる振りをして見せた
- 76 名前:―1話―悲劇 投稿日:2002年11月26日(火)15時03分44秒
- 「お姉ちゃん、最初の1巻だけでいいから、お願い、一生のお願い!」
そう涙目で真希に訴えかける
亜依の『一生のお願い』は今まで何回使われたかわからない
「あ゙あ゙ー、もうわかったわかった、借りてくれば良いんでしょ」
真希はとうとう根負けして承諾してしまった
自分の頼みを断れるわけがないと、妹は勝ち誇ったような笑みを浮かべている
真希自身も自分が妹に甘い事はよくわかっていた
それは今まで自分が妹の頼みを断った事がない事からもわかる
“可愛い妹の頼みを断れるワケがない”それは二人が思っている事だった
「九時までには帰るから」
真希は亜依にそういって家を出た
- 77 名前:―1話― 悲劇 投稿日:2002年11月26日(火)15時04分24秒
- 少し人通りの多いストリートを真希は人ごみをかき分ける様に進んで行った
よくよく考えれば、わざわざこんな人通りの多い時間に来る事はなかったのだ
今更ながら真希は反省した
しかし出て来てしまったものはしかたがない
真希は気を取り直して、レンタルビデオショップに急いだ
レンタルショップに着いた真希は、わき目も振らずドラマのコーナーに進んで行く
アイウエオ順に並べられた棚の中から『マリア』のビデオを探す
そしてマ行の中から『マリア』のビデオを見つけた
しかしその棚の前には人が立っていた
その人の手が『マリア』にのびようしているのを見て
真希は『取られちゃマズイ』と思い、、同じように、その人より早く手を伸ばし『マリア』のビデオを掴んだ
その人と目が合わないように、サッサとレジのほうへ向うと
聞いた事のある声で呼びとめられた
「あれ?真希じゃない」
「なっち」
振りむきそこにいた真希と同じように『マリア』を借りようとしていたのは
真希の学校の友達 安倍なつみ だった
- 78 名前:―1話― 悲劇 投稿日:2002年11月26日(火)15時05分15秒
- 彼女は真希と同じ高校に通う 高校三年生
真希がなつみと知り合ったのは
中学生の時
屋上で昼寝をしていた時に出会った
「そっか、亜依ちゃんに頼まれてたのか」
「うん、亜依ったらさぁ『最初の1巻だけでいいから〜』とかいってさぁ、まいるよ」
「でも可愛くてしょうがないんでしょ?」
「いや、まぁ……そうだけどね」
レンタルショップを出た真希達は、自販機で買ったジュースを片手に
歩きながらの雑談をしていた
「あ、忘れてた、なっちコンビニで買わなきゃ行けない物あったんだ」
「そうなの?付き合おうか?」
「いいよいいよ、亜依ちゃんビデオ待ってるんでしょ?早く帰ってあげなよ」
「そうだね、わかった、じゃあまた明日バイバイ」
「うん、また明日!」
コンビニへ行くなつみと別れて真希は再び帰路につく
心なしかさっきよりも早足で
真希は『最初の1巻だけでいい』と言われながら
全巻借りてきていた
真希は妹の喜ぶ顔がみたかったから、なけなしの小遣いをこのために使ったのだ
- 79 名前:―1話― 悲劇 投稿日:2002年11月26日(火)15時05分57秒
- 段々と家が近づいてきた
あとはこの大きな道路をわたって二分もかからないだろう
だがあいにく今は赤信号 真希は持っていたジュースを飲み干し空き缶をごみ箱に放った
一回目はゴミ箱へ当たり外に転がって行った
真希は今放った空き缶を広いもう一度投げて見る
今度は見事ゴミ箱の中に入っていった
そうこうしてる内に信号が青へと変わった
再び早足で歩きだす
後たった二分で家に着くはずだった
家でよろこんでいる妹と一緒にビデオを見るはずだった
だがそれは叶わなかった
コンボイホーンのようなクラクションの音が真希の聴覚を一気に引き裂いていった次の瞬間
真希のからだが宙を舞った
- 80 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月26日(火)15時13分26秒
- 更新終了
更新分 >>70-79
>>69 ななしさん
レスありがとうございます
私の小説で泣いていただけましたか
本当に感無量というかうれしい限りです
末永く見やってください
ところで 以前私は「Fate`s cross point」という小説を
風版で書いていたのですが
「いつ番外編を載せるんだ!?」
というのを 前に読んでいてくださった方からメールをいただきまして
決して放棄する気はございません
いつかマイホームページをもてたら続きを書こうと思います
(それとも新作を書いていって余った所でつなげるのもありかもw)
ということなので絶対に続きは書きます
どうにかして皆さんの目に見えるところに出します
どうかそれまで飽きずに待っていてください
- 81 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年11月26日(火)16時41分40秒
- うわーやっちゃったよ
>>79 5行目 訂正
真希は今放った空き缶を広い
↓↓
真希は今放った空き缶を拾い
です すいません
- 82 名前:( T ДT ) 投稿日:2002年11月26日(火)21時09分31秒
- なぁんだとぅ〜〜〜〜?!!!!
気になるどぃ!
- 83 名前:―2話― 初めて知った恋心 投稿日:2002年12月01日(日)14時12分48秒
- 「も〜、なんでこのコンビニ『よっちゃんいか』売ってないんだよー」
なつみは、誰にいう訳でもなく苦情を言いながらコンビニを出てきた
「(こうなったらちょっと遠回りだけど向こうのコンビニに行こうかな)」
なつみがそんな事を考えていると、いつもより人だかりをつくっている交差点が見えてきた
「ん……なんだろ、なんかあったのかな」
なつみは人だかりに近づいていくと
あたりの人に事情を聞いてみた
「あの、何かあったんですか?」
「事故だよ、事故、酔っ払い運転で若い子がはねられたんだ」
なつみはそれを聞いて妙な胸騒ぎがした
「まさか……真希……」
なつみはさっき別れたばかりの真希ではないかと思った
- 84 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
- 川o・-・)ダメです…
- 85 名前:―2話― 初めて知った恋心 投稿日:2002年12月01日(日)14時14分03秒
- 「すいません!通してください!友達かもしれないんです!通してください!!」
なつみは半ば強引に人を押しのけて野次馬の中を進んで行った
そしてなつみは凄惨な光景を目にした
頭から血を流し倒れている真希、すっかり酔いの覚めたドライバー
それを見て、なつみの頭の中は真っ白に染まっていった
倒れている親友も、半分狂った様に叫んでいるドライバーの声も
周りで騒いでいる野次馬も、全てが、
なつみの中からフェードアウトしていった
- 86 名前:―2話― 初めて知った恋心 投稿日:2002年12月01日(日)14時14分51秒
「安倍さん!安倍さん!」
なつみはようやく意識を取り戻した
「あ……亜依ちゃん」
気づいた場所は病院の手術室の前
何故か目の前には真希の妹の亜依がいた
「ナ…なんで亜依ちゃんがここにいるの?」
「何言ってるんですか、安倍さんが呼んだんじゃないですか」
正確に言えば、なつみは気を失っていたわけではない
あの凄惨な光景を目の当たりにして極度にぼーっとしていただけなのだ
しかもその精神状態で妹まで呼び出していた
「あ…真希はどうなった?」
「まだ手術室から出てこないんです」
再びなつみの頭にあの光景がフラッシュバックした
頭から血を流す真希を見て、なつみは
“もう二度と真希に会えない”
そんな予感がしたのだ
「大丈夫です、お姉ちゃんはこんな事で死んだりしませんから」
亜依がなつみを勇気付ける
はたから見たら、その年下が年上を勇気付ける光景は明らかにおかしかっただろう
- 87 名前:―2話― 初めて知った恋心 投稿日:2002年12月01日(日)14時16分12秒
- 『手術中』のランプが消えた
手術室の扉が開いて中からは執刀医が出てきた
「あの…真希は……」
「大丈夫です、思った以上に傷が浅く、内臓等へのダメージを少なかったので
命に別状はありません、今は麻酔で眠っていますが、直に目も覚めるでしょう」
そういうと医者はスタスタと立ち去って行った
「はぁ…よかったぁ……」
なつみは安堵の声をもらした
「よかったね、真希助かったって」
なつみは亜依に話しかけたが、亜依は俯いたまま答えなかった
「亜依ちゃん?どうしたの……」
なつみは亜依のそばにしゃがみこんで顔を覗きこんだ
するとなつみが見た少女は泣いていた
姉が死なない事に安心して涙腺が緩んでしまったのか
少女の頬を大粒の涙がつたっていく
それを見て、なつみはそっと亜依を抱きしめた
「もう安心して良いよ、真希はどこにも行かないから、ずっと亜依ちゃんのそばにいるから」
その言葉は自分自身にも言い聞かせる様に言った
亜依は十数分なつみの胸の中で泣いた
亜依はまるで母親に抱かれているような安心感を感じた
- 88 名前:―2話― 初めて知った恋心 投稿日:2002年12月01日(日)14時16分54秒
少女は涙を吹くと「もう大丈夫」と言い
手術室から出ていった真希をのせたベッドを追いかけていった
なつみも亜依に続いて病室へと向った
「もう夜だから今日はおきないかもね」
「そうですね、お姉ちゃんいつもネボスケだから」
真希は二人の心配をよそにスースーと寝息を立てていた
「亜依ちゃん帰らないの?帰るんだったら送って行くけど」
「いえ、今日は看護婦さんにお願いして、泊めてもらいます」
「そう、じゃあなっちは帰るよ」
「はい、今日は色々ありがとうございました」
「いいよ、いいよ、じゃあね」
亜依に別れを告げてなつみは病室を後にした
そしてなつみは初めて知ったある事を考えていた
それは、失うかもしれないと思って初めて気づいた恋心
きっと実らない恋……でもこの愛しいと思う気持ちは止められない
―――なっち、真希のことが好きだったんだぁ
―――なっち初めて気がついたよ
なつみは初めて知ったその思いに苦しめられていた
- 89 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年12月01日(日)14時21分20秒
- ぐあ!!
二重カキコになってしまった!!
鬱だ…………
削除依頼出さなきゃ
>>82 ( T ДT ) ネガティブ後藤さん?
レスありがとうございます
「( ´ Д `)と( ^▽^)のメールの恋」 読ませていただいてます
もしかしたら私は 「気にさせ方」だけは天才的かもしれません(w
これから 約一ヶ月更新にこれません
どうかまたーリお待ちください
- 90 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月16日(月)16時10分41秒
- 次の更新が待ち遠しいよ〜。
後半月、我慢我慢。
- 91 名前:第3話―定められた運命― 投稿日:2002年12月22日(日)17時28分15秒
―――急にクラクションの音が頭の中に響いてきて
ふっと横を見るとトラックのライトが眩しくて
自分の身体の感覚がどんどん無くなっていった
―――あぁ、これが「死ぬ」って言う事なんだ
直感的にそう感じた
今まで遠くにあった「死」のイメージが頭の中に浮かんできて
もう駄目なんだな……生きられないんだと…実感した
「オマエハマダ死ヌ運命にナイ、オマエハマダ死ンデハイケナイ」
―――本当に死ぬと思ったとき、そんな声が聞えてきた
その声が、
あたしから「死」のイメージを遠ざけてくれた
- 92 名前: 第3話―定められた運命― 投稿日:2002年12月22日(日)17時30分24秒
- 真希が目を覚まして起き上がると
何故かベッドのそばの椅子に亜依が座りながら
真希の膝元に寝そべっていた
「亜依、亜依、ちょっと、起きてよ」
真希が起こそうとしても一向に目を覚まさない
「…もう…」
真希はそっと微笑み、自分のかぶっていた毛布を肩にかけてやるとベッドから降りた
部屋の窓から外を見る、その風景の中には公園があった
この病院の入院患者らしい人達も見受けられる
「あの公園行ってもいいのかな」
真希は病室を出ると、その公園に向った
まるで吸い寄せられる様に
真希自身その場所に呼ばれているような気がしたのだ
正確には、その場所にいる誰かに
公園には入院患者やその人たちに付き添っている看護婦の人たちがいた
そして1人…場違いではないが、浮いている女性がいた
―――きっとあたしを呼んだのはこの人だ
真希はそう直感した
真希はゆっくりとその人に歩み寄った
- 93 名前:第3話―定められた運命― 投稿日:2002年12月22日(日)17時31分09秒
「やっと会えたな」
それがその人の第一声
どこかイントネーションの違う声
真希がはじめて亜依とあった時のような発音
真希も不思議と違和感を感じなかった
「あなたは誰ですか?」
真希は思った事を口にする
「ウチは中澤裕子っちゅう者や」
「……後藤真希です」
真希も名前を名乗った
「まぁ、わかってると思うけど、あんたを呼んだんはウチや
理由は、あんたがまだ死ぬ運命に無いからや」
普通の人には到底理解できない言葉だろう
しかし、何故か真希は素直にその言葉を受けとめる事が出来た
「この夢も直に覚める、それでもあんたの運命は決まってる
また近いうちに「ホントウ」に会うやろ」
真希は最後に思った疑問を聞いて見た
「あなたは何者なんですか」
「ウチか…幽霊や……」
その人がそう言った途端、急に目の前が真っ暗になった
- 94 名前:第3話―定められた運命― 投稿日:2002年12月22日(日)17時32分52秒
バッと真希が起き上がると、そこは夢の中で見た光景だった
そばに亜依が眠っている、真希は夢と同じように毛布をかけてやった
ベッドから降りて窓から外を見てみた
夢と違うのはその人がそこにいない事だった
「あたしが……まだ死ぬ運命に無い…?」
真希は普段使わない頭をフル回転させて考えた
―――まだ死ぬ運命に無いから生きている?
って事は既に決まった運命にしたがってあたしが生きているって事だ
もしこれからあたしが恋をしたり、好きな人と結ばれたりしても
それは決められた人で、決められた人生を歩むわけ?
「わかんないなぁ」
真希はもう一度ベッドに横になった
―――じゃあ、今私が亜依を好きだっていうのも決められたことなのかな
そんなのやだ……
突然現われた幽霊、知らされた事実
真希は起きあがり、
亜依の頭をなでてこれからの事を考えてみた
―――あたしはこれから、どこに行くのだろう
- 95 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年12月22日(日)17時39分09秒
- 更新終了!
>>90 名無し読者さん
約一ヶ月と言いながら3週間です
お待たせしてる割には 一度の更新量は少ない(苦笑
多分年内の更新はありません
今日も日曜出勤を断ってネットカフェに来てます(社長にばれたら殺されるw
と言うことです!!
それではみなさん よいお年を!!
- 96 名前:うまい棒メンタイ味(i-mode) 投稿日:2003年01月19日(日)05時17分37秒
- だいたい次の日曜26日ぐらいに更新したいと思います こんな時間に短編書いてます この短編もその時いっしょに載せたいと思います
- 97 名前:tsukise 投稿日:2003年01月23日(木)23時26分47秒
- 先程、一気に拝見させていただきましたっ。
先の読めない展開に、すっごく引き込まれますね。
これからの展開、楽しみにしていますので頑張ってくださいね。
もちろん、短編も期待しています!
- 98 名前:第4話―届かない、届けたい思い―加護亜依 投稿日:2003年01月26日(日)16時01分07秒
- 亜依は誰かが頭を触っている感触で目が覚めた
「お…姉ちゃん?」
「ありゃ、起こしちゃったか…」
頭に触れていたのは、亜依の頭を撫でていた真希の手だった
「お姉ちゃん!!」
亜依は眠りから覚めていた真希を見ると、バッと抱きついた
「ど…どうしたの亜依?」
「心配やったんやから!!事故に遭うたって聞いて
あのやぶ医者はすぐに目ぇ覚ますって言うたのに、
何日も眠ってるから心配したんやから」
「ごめん……」
真希はそう言い、自分に抱きついている亜依を抱きしめた
「許さへん……」
亜依が関西弁を使うのは、本当に感情が昂ぶった時だけだ
その話し方を聞いて、真希は本当に心配をかけたと反省した
「どうしたら許してくれる?」
真希はそう問いかけた
亜依は、
「もう少しこのままおらして」
と、答えた
それを聞いて真希はより一層力をこめて亜依を抱きしめた
- 99 名前:第4話―届かない、届けたい思い―加護亜依 投稿日:2003年01月26日(日)16時01分44秒
- どのくらいそうしていただろうか
亜依がゆっくり身体を離して「許してあげる」と笑顔でそう言った
その言葉に真希も自然と口元が緩んだ
「あ!」
真希が突然声を上げた
「どうしたの?」
亜依の口調も、もう元に戻っていた
「亜依!今日で事故の日から何日経った?!」
「え…えっと丁度1週間かな…」
「ビデオは?!マリアのビデオテープ!」
「あ、あれ確か安倍さんが……」
「じゃあ早く返さないと!延滞料金って物凄いお金かかるんだから!」
「あ〜あ〜そうだ、安倍さんに連絡しないと!」
さっきまでの雰囲気は一気に吹っ飛んだ
亜依は病室を出てすぐに公衆電話に向かった
―――本当にお姉ちゃんが死ななくてよかった…
きっとお姉ちゃんがいなくなったら、あたしは生きていけない
お姉ちゃんは気づいていないだろうけど
あたしはお姉ちゃんが大好き…
初めてあった時からずっと好き…
姉妹としてではなく、多分恋愛対象として
あたし…このまま思いつづけていいのかな…?
- 100 名前:第4話―届かない、届けたい思い―加護亜依 投稿日:2003年01月26日(日)16時02分40秒
- 数日後の午前
亜依は検査室の前で姉の検査が終わるのを待っていた
待っている時の時間は長く感じる物だが、以外と早く姉は出てきた
「あ…お姉ちゃん、どうだった?」
真希に問い掛ける
「明日、退院していいって」
「本当に?」
「本当に…」
「やったー!!」
亜依がよろこんではしゃいでいると辺りの人がこちらをにらんだ
「院内は静かにお願いします」と看護婦の人に注意された
「「あ…すいません……」」
「おーす、真希、元気?」
時間が正午を示した辺り、亜依と真希が暇を持て余している時になつみは突然やってきた
「おう、なっち来てくれたんだ?」
「うん、これお見舞い」
なつみの持ってきた籠にはりんごやメロンなどのフルーツ系統がどっさりと入っていた
「ありがとー、って言うかあたし明日退院なんだよね」
「そうなの?じゃあこれ持って帰ろうか?」
「えー、置いて行って下さいよ〜」
冗談で言ったなつみに対して亜依は本気で抗議した
- 101 名前:第4話―届かない、届けたい思い―加護亜依 投稿日:2003年01月26日(日)16時03分10秒
- 「冗談だよ、冗談」
「なんだ冗談か」
それを聞いて亜依はホッとしたような顔を見せた
「真希、なんか食べる?切ってあげようか?」
「あ、じゃありんご切って、そっちの冷蔵庫の所に包丁とかあるから」
「OK」
なつみは包丁を握るとスイスイなれた手つきでりんごの皮をむき始めた
そして一分とかからぬうちに4分の1に切られたりんごが姿をあらわした
「へぇーなっちって以外と料理上手なんだね」
「そうだよ、ほら、亜依ちゃんも食べれば?」
「は〜い、いただきまーす」
亜依は待ってましたとばかりにりんごに飛びつき
真希と亜依は二人で仲良くりんごを食べていた
「……なっち、どうかした?あたしの顔になんかついてる?さっきからじろじろ見てるけど」
「へ?え、ああ、うん、なっちにはくれないのかなぁって思って」
「あ、ごめん忘れてた」
「いやいいんだけどね」
なつみは小さな嘘をついていた
ただ好きな人の顔に見とれていただけだった
それを隠そうと、些細な嘘をついた
- 102 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年01月26日(日)16時08分31秒
- まずレスを…
>>97 tsukiseさん
『先の読めない展開にすっごく引き込まれますね。』
うれしいお言葉をありがとうございます
これからもうまい棒ワールド?をお楽しみ頂ければ光栄です
これからリアル物の短編を書きます
これは『LOVEマシーン』のPVを見ているときに思いついたことで
歌詞として二番目の歌詞も出てくるので
あまり聞いたことが無い人にはつまらないかもしれません
それにしても……短編のつもりで書いて何でこんなに長くなっちゃうんだろう
- 103 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時10分15秒
- ―――なんだか物足りない―――
あたしの名前は後藤真希、今世界で一番忙しいアイドルグループの一員
「モーニング娘。」は他の人と何ら変わりは無い、ただ一般より少し忙しいだけのこと
でもあたしは他の人と確実に違うことがある
「ごっちん、今日一緒に帰ろ」
「うん、いいよ」
あたしの理性の中には機械がある
「どしたのよっすぃ?ニヤニヤしちゃって」
もちろん本当に機械が入っている訳じゃない
その機械はあたしの恋愛感情を維持するため、
あたしの理性の崩壊を防ぐための虚像として存在する
「ごっちん、まだ『マトリックス』見たことないって言ってたでしょ?」
あたしはいつからか本当の生身の恋愛が出来なくなってしまった
ただそれがいつからだったかは憶えていない
「来年『マトリックス2』と『マトリックス3』が公開になるから『マトリックス』のDVD買ったんだ〜」
別にあたしは恋愛なんて出来なくていい、あんな物生きる為の欲を満たすためにある物だ
「そうなの〜?ありがと〜」
恋愛の始まるきっかけなんて何でもいい、どんなことでも始められる
でも、恋愛がこの世に存在するのは性欲を満たす為だけだ
- 104 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時11分42秒
- 「これからウチに見に来る?」
人は生きるときに『3大欲』を満たしながら生きている
食欲、睡眠欲、そして性欲
「うん、見に行く」
普通の人は、男同士、女同士の恋愛はおかしいって言うかもしれないけど
恋愛は同性同士でも、異性とでも何も違わない
「よし、じゃあ帰ろう」
人は死ぬまで3大欲を満たしながら生きる
その内の1つ、性欲、満たすだけなら相手が同性でも異性でも構わない
人は恋愛と託けて、ただ性欲を満たしているだけなんだ
あたしは恋愛なんかしなくても、欲を満たすだけで生きていける
他人への恋愛感情なんて……必要ない!!
「面白かったね」
「でしょ?」
- 105 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時12分15秒
- ―――それでも上手にされちゃ―――
「何ごっちん?」
「しよ、丁度良いじゃん、今日よっすぃの家に泊まるし」
「ちょ、ちょっと待ってよごっちん!あたし今日そんなつもりで呼んだんじゃない!」
「良いじゃん別に」
人は三つの欲を満たすだけで生きていける
本当は誰にも恋愛感情なんて必要ないんだ
「あ…はぁ……ン…」
「もっと…声聞かせなよ」
「あ、…いゃ…あぁ…はぁ」
あたしは何で人に恋愛感情があるのか不思議に思っていた
でもあたしはあの子との恋愛をしてその疑問の答えにたどり着いたんだ
- 106 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時12分54秒
LOVEマシーン〜自己的恋愛感情維持機械〜
- 107 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時13分29秒
- あたしは次の日、あたしに好意を持っている人がいる事に気が付いた
それは楽屋にいる時にわかった事だった
「おはよ」
「おはよごっちん」
「ごっつぁん、おはよ」
「おはようございます後藤さん」
あたしはいつも通り入り時間の20分ほど前に楽屋に入った
そこでその日の仕事の準備をしていると、5期メンバー高橋が話しかけてきた
「あの…後藤さん『おっとっと』いりませんか?」
「え…何で?」
「えっと、家から間違えて持ってきちゃって、じゃなくて気づいたら入ってて…えっとその…」
普通の会話でどもっている高橋を見て あたしに気がある事が分かった
「もらって良いの?」
「はい!差し上げます」
「ありがとう、休憩時間にでも食べるよ」
どうやら高橋はあたしに気がある
以前TV番組で「後藤さんが好きなんです」って言ってたこともあるし
でも、あたしと付き合いたいなら恋愛感情なんか要らないって事をわからせないとイケナイ
―――熱けりゃ、冷ませばいい―――
この時はまだ、機械の告げる声が正しいと信じていた
- 108 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時14分06秒
- 「あの後藤さん、よければ今日一緒に帰りませんか?」
「んぁ、良いよ別に、今日誰とも約束してないし」
「良いですか?じゃあ帰る準備をするのでちょっと待っててください」
あたしがOKの返事をすると彼女は満面の笑みを浮かべた
この彼女からの誘いがあたしにとっても都合がよかった
「用意できた?じゃあ帰ろっか」
「はい」
あたし達は夜の街を並んで歩いていった
駅が近くなってきた時に、あたしは高橋に話しかけた
「高橋ってさぁ…」
「はい、なんですか?」
「あたしに気があるの?」
「え?」
彼女は足を止めて黙ってしまった
あたしも彼女に合わせて立ち止まる
そしてその場に流れた沈黙を彼女は破った
「ハイ…」
あたしの予想は見事に当たった
「じゃあ、あたしに抱かれたいとかも思うわけ?」
「え?」
彼女の様子が変わった、あたしが突然そんな事を言い出したせいだ
「どうなの?」
少し語調を強めて聞いてみる
「あの…えっと」
「答えにくい?」
「あ…ハイ」
そう答える事も予想済みだ
「じゃあ…躰に聞いてみるよ」
「え、今なんて?」
- 109 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時16分02秒
あたしは彼女の腕を掴み、裏路地につれこんだ
「あ…あの」
戸惑っている彼女を無視して強引に唇を重ねた
「ん…ん…」
彼女が抵抗しようとあたしの肩の辺りを突き飛ばそうとしたが、あたしは彼女を抱きしめてそれを防いだ
「んんん……ん」
あたしはキスを深い物にしようとしたが、彼女は唇を開かなかった
彼女の後ろに廻している手で彼女の首筋の辺りをそっと撫でた
それで彼女は力が抜けたのかその刺激に感じたのか口元が緩んだ
その隙にあたしは舌を侵入させ口内を舐めまわした
そして舌先が彼女の舌を捉えると舌をからませてその感触を楽しんだ
一瞬、彼女が息苦しそうにしていたので一度唇を離した
「ぷは…はぁ……はぁ…ごほっ…ごと…さん…何を…?」
あたしと彼女の口に透明の液体が糸を引きその光景があたしの神経を余計刺激する
- 110 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時16分34秒
- 「だから、躰に聞いてるだけだよ」
あたしは言って再び彼女に口付けた
彼女の両手を後ろに廻し片手で掴んだ、これで彼女の両手の自由は封じた
その後キスしていた唇を放し、首筋にキスの雨を降らせた
「ん…あ………はぁ…」
彼女の声も動きも全てがあたしの活力源となる
あたしは余っている手で彼女の胸に手を当て乱暴に揉み始める
「ん…いや……あぁ…」
以外と大きい彼女の胸を揉んでいた手をどんどんと下のほうに伸ばして行く
その時彼女の両手を掴んでいた手が緩み彼女の片手を自由にしてしまった
彼女は焦りを感じていたのか、さっきよりも力をこめてあたしを突き飛ばした
そして、怯えた目をして言った
「後藤さん…あたしが思っていた人と…全然違ったみたいです…今日はもう1人で帰ります!」
彼女は走り去って行った、逃げられてしまった
駅に入られてしまってはもう追いかけようが無い
トイレ以外は全て人目に付くし、無理やりトイレには連れ込めないし
今日は諦めるしかないか…
- 111 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時17分11秒
- あたしも駅に入って電車に乗った
明日どうやって彼女と二人きりになれるだろう、どうにか方法を考えないと
あたしは彼女との事を考えながら家に帰るまでの時間を潰した
―――あんたにゃもったいない―――
そう、彼女とあたしじゃ釣り合わないんだ…
でも…あたし高橋に避けられていなかったか?
―――……………………………―――
機械がうまく作動しない、あたしの質問に答えない
どうして答えないの?彼女がなんだって言うの?あたしの機械の方程式に合わない恋なんてないはず
…恋?恋じゃない、恋愛感情が無いんだから恋じゃないでしょう?
なんだか…自分が狂い始めている、自分の中の何かが……狂い始めている
- 112 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時17分41秒
- 次の日の仕事場
その日はCM撮影と、雑誌のインタビューだった
もちろんのこと高橋のあたしへの態度は冷たい物となっていた
楽屋で二人きりになるとすぐにどこかへ行ってしまうし
スタジオへ移動する時もスタジオにいる時もあたしとはかなりの距離を開けている
かなり嫌われてしまった様だ
…嫌われた?高橋はあたしに気があるんじゃなかったの?
あたしはどうして嫌われているの?
―――どこにいたって愛してて欲しいわ―――
…そうも昨日から機械の調子が悪い、的はずれな事ばかり言っている
やはり何かが狂っている……いや本当に狂っているのだろうか?狂っていたものが元に戻り始めているんじゃないのか?
もしも戻っているんだとしたら、いつから狂い始めたんだろう
- 113 名前:LOVEマシーン―後藤真希―回想― 投稿日:2003年01月26日(日)16時18分52秒
- 「市井ちゃん!なんでモーニング娘。辞めるの?後藤が嫌いだから辞めるんでしょ?!」
「違うよ、後藤の事は好きだよ、ただあたしには夢があるんだ、その為にモーニング娘。を辞めるんだ後藤も応援してくれよ」
「じゃあ後藤はどうすんの?!市井ちゃんのいないモーニング娘。なんて嫌だよ!あたしが好きなら、夢なんか諦めて後藤のためにモーニング娘。に残ってよ」
「なんかさ、後藤変わったよ」
「え?」
「後藤あたしと付き合い始めた時は、もっとあたしのことを思ってくれてたと思うんだよ、でも今は市井より自分のことを言ってるし、市井が高望みなんじゃないだろ?後藤がわがままになったんだよ」
「…………」
「それだけだよ、言いたいことは、もうアンコールだ、行くぞ後藤」
「市井ちゃん……」
―――明るい未来に就職希望だわ―――
なに?この声……?
- 114 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時19分46秒
ああ、そうだ、あの時市井ちゃんと別れた時だ
あたしが狂い始めたの
初めて機械の音を聞いたのもその時、あの時から全てが狂ってしまったんだ
「ごっちん!次ごっちんとよっすぃだべ!雑誌のインタビュー」
なっちの声で思考回路のど真ん中にいたあたしが現実に引き戻された
「あ、ごめんごめん、ちょっと考え事してた」
「考え事ぉ?」
「いや、大したことじゃないんだ、行こ、よっすぃ」
あたしはよっすぃと一緒に楽屋を出て、インタビューを受ける隣の部屋に入った
受けた雑誌のインタビューの内容は聞き飽きた物だった
新曲のイメージは?ファンにはどこを聞いて欲しい?
新メンバーとの仲は?最後に意気込みを!
インタビューはあっという間に終わった
「じゃあ、ありがとうございました」
インタビューはあたし達二人が最後だった
雑誌記者は一礼すると、部屋から出ていった
結果この部屋はあたしとよっすぃの二人きりになった訳だ
- 115 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時21分10秒
「ねぇよっすぃ、ちょっと話しあるんだけど」
「ん?楽屋に戻ってからじゃ駄目なの」
「大事な話しなんだ」
あたしはたった1人の相談人よっすぃに今のあたしの不安定な気持ちを打ち明けた、あたしの気持ちがよっすぃにない事も
「今、あたし自分がわからないんだ、自分が誰を好きなのかわからなくなってきたんだ、本当に誰も好きになれないって言うか、適当にしたいからしてるみたいな…」
あたしはよっすぃがあたしを好きでショックを受けると思っていた
でもよっすぃは表情ひとつ変えずに普通に返事をした
「ごっちん変わったね」
「え?」
『なんかさ、後藤変わったよ』
よっすぃの言葉に軽いフラッシュバックを起こした
いつか誰かに言われた言葉があたしの頭の中をさまよう
「変わったって何が?」
あたしはあの時と違う返事を求めて聞いてみた
「あたしごっちんのこと心配してたんだよ、前と全然性格変わっちゃってさ、誰とでも付き合うようになってたから」
よっすぃはあたしを特別視していたわけでも遊んでいるわけでも、あたしを性欲処理に使っているわけでもなかった
あたしのことを思って心配してくれていたんだ
- 116 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時22分04秒
- 「あたしの事は気にしなくていいよ今のごっちん本当に好きなわけでもなかったし、ただごっちんが荒んでいくのを止めたかった」
よっすぃはあたしのために黙って抱かれたりしていたわけ?
あたしは申し開きさえ出来なかった
「ごっちんが元に戻り始めているならもうあたしは必要ないよ、後はごっちんが本当のごっちんに戻るだけ」
後はあたしが元に戻るだけ?よっすぃは元のあたしを、本当のあたしを知ってるの?
よっすぃは部屋から出ようと立ち上がって部屋の出口のほうに進んで行った
「待ってよっすぃ!」
よっすぃは振り返り「なに?」と聞いた
「よっすぃはあたしとの事、後悔とかしてないの?」
「ごっちんが元に戻れば後悔なんてしないよ」
よっすぃはドアを開けた
- 117 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時22分41秒
- 「待ってよっすぃ!もう1個だけ!」
再びよっすぃが振り返る
「よっすぃは本当のあたしに…最後にいつ会った?」
質問の意味が伝わるだろうか?
何度目かの心の中での自問自答
でも自分が答えを出す前によっすぃは答えた
「最後がいつかは覚えてないけど、ハッピーサマーウェディングの頃はいたんじゃないのかな」
そういうとよっすぃは部屋を出た
やっぱり機械が言葉をしゃべり始めた頃とあたしが変わり始めた頃は一致する
でも、まだ本当のあたしの手がかりさえ掴めない
本当のあたしはどこにいる?どうすれば本当の自分に戻れる?
きっと元のあたしに戻れば、よっすぃとの事も、高橋との事も全てが解決すると思った
―――誰しも気づいてない―――
- 118 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時23分19秒
次の日からの1週間は新曲のダンスレッスンに費やされた
レッスン中あたしはいつもの調子が出せずにいた
「後藤!位置ずれてる!」
「後藤!振り間違えてる」
「後藤!テンポ1つはずしてる」
いつものあたしは夏先生に怒られる事は少ない
でも、高橋と自分の事を考えると集中できなかった
「高橋!そこはさっき言ったでしょ!」
「高橋!腕上がってない!」
「高橋!なんかい言えば分かんの?!あなたもうすぐ加入して一年たつんでしょ!しっかりしなさい!しっかり!」
自分の事で気づかなかった
高橋もあたしと同じように怒られている
今回のレッスン恐らく80%はあたしたちが怒られている
他のみんなは三回ずつも怒鳴り声をあげられていない
―――誰にも分からない―――
くそ…うるさい!!
この前は聞いても何も言わなかったクセに今度は動きっぱなしでうるさい
もうお前の助言は必要ない!というより助言にすらなっていないんだ、少し黙れ!
あたしは余計にレッスンに集中できなくなった
それでもあたしはブンブンと頭を振って機械の声を振り払い、集中しようとする
- 119 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時23分53秒
- ドサ!!
レッスンルームに思わしくない音が響いた
あたしは機械が壊れた音なら良いと余計な事を考えていた
ただ、みんなのその人を呼ぶ声で真剣にならざるをえなくなった
「高橋!!」「愛ちゃん!!」「高橋ちゃん!!」「高橋!!」
高橋が倒れていた、みんなが近づいて高橋に声をかける
でもあたしは声をかける事も近づく事も出来なかった
そう…これは「恐れ」だ、今元に戻り始めている自分を彼女に拒絶される事への「恐れ」
夏先生がスタッフの人に「救急車呼んで!」と言い場が落着きかけた時
あたしは「恐れ」を断ち切るように行動を起こした
「夏先生!あたし着いて行ってあげても良いですか?」
「だめ、今あなたが一番憶え悪いの、他の人に着いて行ってもらうから」
あたしの行動は無駄に終わった
結局、一番憶えのよかったやぐっつぁんが着いて行き
レッスンは二人抜きで再開された
- 120 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時24分30秒
- 高橋には悪いが、その後のレッスンを
あたしは夏先生に怒られる事無く進める事が出来た
彼女と同じ空間にいるだけで感じる罪悪感
それが無くなっている間にあたしはダンスに集中し前半の遅れを取り戻したその甲斐あってレッスンも予定どうりに終了した
あたしはやぐっつぁんに高橋が入った病院と部屋番号を聞いた
レッスン後のシャワーもサッサと浴びてすぐに病院に行く準備を始めた
その時部屋の隅に高橋と同じ5期メンバーの小川と紺野がいて何やら話していた
二人には悪いと思ったが一瞬「愛ちゃん」と言うキーワードが出たので盗み聞きする事にした
そしてあたしは前より深い罪悪感に苛まれる事となった
「大丈夫かな愛ちゃん」
「なんかね、このごろ寝れないんだって、メールにもちょこっと書いてあったそういう事」
「うん、あたしも知ってる恐い夢見ちゃってすぐ起きちゃうって、一昨日の夜3時にあたしの家に来たもん」
「マコっちゃんちに?」
「うん、しかも自転車で来たんだよ、よっぽど恐い夢見てるんだろうね」
「なんか〜誰かに負いかけられる夢なんだって、だから起きても恐くてすぐに眠れないんだって」
「「だいじょぶかな」」
- 121 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時25分43秒
- あたしのせいだ……
あたしが無理やり……襲ったせいだ……
―――恋愛って夢の落とし穴 MYSTERY―――
うるさい!こんな時に!
あたしは荷物を持って部屋を出ると外へ飛び出した
外へ出てタクシーを止めた
あたしはタクシーに乗りこむとやぐっつぁんに聞いた病院の名前を運転手に告げた
10分程で目的地に着き2000円を運転手に渡してお釣りももらわず外へ出た
あたしはスタスタと病院内を進んで行き高橋とやぐっつぁんがいるであろう812号室の前に着いた
病院って確か9とか4とか「終わり」や「死」連想する数字は使わないんだよな
どうでも良いけど隣の隣の隣に809号室が見当たらなかったのでそれを思い出した
余計なことを考えて時間を稼いだけど無駄だ、ここまで来た以上彼女に会わなければならないんだ
- 122 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時26分56秒
- でもあたしは高橋に会って何を言うつもりなんだろう?
“もう襲わないから安心して”?
一度襲われた事のあるやつにそんなこと言われてもあたしなら信用できない
でも謝罪ぐらいしなきゃ人間として
自分で自分の背中を押して自分を勇気付ける、さぁ、入れ、
病室の引き戸に手をかけて、ドアを開こうとした時に
「あれ?ごっつぁん?」
後ろから声をかけられた、その呼び方をする人物は1人しか知らない
「やぐっつぁん…」
「なに?もうレッスン終わったの?って言うかだから来たのか」
普段と余り変わらないやぐっつぁんを見て高橋がそんなに心配される状況でない事がわかった
- 123 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時27分27秒
- 「丁度良いや、ちょっと来てよ話しあるんだ」
「やぐっつぁん、高橋は?」
「ああ、睡眠不足から来る過労だって、今どうせ寝てるよ,なんか『スイミンドーニューザイ』とか薬何種類も飲んで点滴とか打って」
やぐっつぁんに誘われ休憩所のようなところに入った
そこにあった自販機でジュースを買い、備え付けの椅子に座った
「ごっつぁんさ、高橋になんかした?」
「はぁ?!」
やば……一瞬声裏返った
「あ、いや、ごめん聞き方悪かった」
やぐっつぁんはあたしが動揺しているのに気づいていないようで安心した
- 124 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時28分22秒
「あいつ、高橋さ、あたしがついてる間ずっと寝てたんだけどさ、ずっと寝言って言うか、うわ言?呟いてんの『後藤さん…やめて』とかって」
やっぱり…まだあたしが夢の中で高橋を苦しめてるんだ
「ごっつぁん?おーい、ごっつぁん」
「え、あ,ウン、聞いてるよ」
「本当かよ?まぁ何もないなら良いけど、だからさあいつが起きたら顔だけでも見してやってよ、あたしもう帰るし」
「うん分かった」
乗り気だった訳じゃないが高橋が苦しんでいるならそれを少しでも軽減してやらないと
あたしはやぐっつぁんと別れるともう一度812号室に来た
寝ていると分かりさっきよりは入りやすかった
部屋にはいるとやぐっつぁんの言った通り高橋は眠っていた、そして
「後藤さん……もう、いや」
夢の中のあたしに苦しめられていた
- 125 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時29分01秒
- あたしはベッドのそばにあった椅子に座り高橋の手を握った
「もう苦しまなくて良い、そんな後藤はもういないから」
こんな時、映画やドラマなら「あたしがついているから安心して」とか言うんだろうけど
あたしがついていたって高橋は怯えるだけだ
「高橋…もう…あたしのせいで苦しまないでよ」
高橋に掛けている言葉がどこか、自分にも言い聞かせているようにも思えた
「ん…んん」
ん…起きちゃうかな、じゃああたしはここにいないほうが良いよな
あたしは高橋が起きない内に部屋を出た
「ごっつぁん」
「や、やぐっつぁん、ま、まだいたの?」
「ああ、ちょっと忘れ物しちゃって高橋の部屋に」
「そ、そうなんだじゃ、じゃあ後藤帰るから、ばいばい!」
あたしはやぐっつぁんから逃げる様に立ち去った
「へんなごっつぁん」
やぐっつぁんはあたしの事を不審に思いながら部屋に入って行った
- 126 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時29分51秒
次の日のダンスレッスンにも高橋は来なかった
当たり前と言えば当たり前だ、レッスン中に倒れたんだから
やぐっつぁん情報によると高橋はもう家に帰ったらしい
病院より家が落着くので家で療養するらしい
病院ならまだ会うチャンスもあったのに
その日は高橋の事は忘れようとレッスンに打ちこんだ
早くその時間が過ぎて欲しくなくて ただ、我武者羅に踊っていた
その日、みんなが帰ってしまった後の楽屋であたしは一人考えこんでいた
高橋のあたしの恐怖を取り去るにはあたしが元に戻るしか根本的な解決にはならない
でもまだあたしは…元のあたしが掴めない
あたしはポケットから1つの機械を取り出した
ここ数年で普及した携帯電話、着信履歴の中から目当ての番号を探し出して通話ボタンを押した
「もしもし」
『もしもし、どうしたのごっちん』
電話をかけたのは相談人よっすぃだ
「まだ、分からないんだ」
本当のあたしが…
- 127 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時30分23秒
- 『ごっちん本当に見つかってないの?』
「どう言う事?」
『今のごっちんと本当のごっちん、どこが違うか考えてみればいいじゃない』
あたしと、本当のあたしの相違点?
「何?意味わかんない」
『ふぅ…ごっちんさ…あんまり笑わなくなったとか自分で思わない?
ごっちん…自分の感情にリミッタ―がついちゃってるんだよ、
だからそれ壊しちゃえば良いんだよ』
「壊し方……知ってるの?」
意味は余り通じなかったけどなんだかあたしの中にあるあの機械の事を示唆しているように思えた
- 128 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時31分12秒
- 『ごっちんの想っている人に想いをぶつける…ただそれだけ』
あたしの……想う人……
『あたしに言えるのはそれだけ、じゃあ、またね』
「ま、待ってよよっすぃ!あたし誰が好きか分かんない……!!」
電話は切れていた、よっすぃの言ったことは分かっても、理解ができない
いや、あたしが理解したくないだけかもしれない
拒絶からの恐れ……
いまあたしが自分を取り戻さないと、高橋はずっと……
あたしが高橋を襲った事も、そのおかげであたしが元に戻り始めているのも消しようの無い事実
行かなきゃ…あたしが助けなきゃ…もう…迷わない
……答えを……見つけた。
あたしは以前二人で来た公園にいた
『前に一緒に行った公園で待ってる、来て、ずっと、あなたが来るまで待ってるから』
その人を呼び出したのは9時…でもその時刻は一時間前に過ぎてしまった
その人は来ないかもしれない、今更どうして彼女に想いを……
彼女を助ける為だ、その為に待ちつづけるんだ
- 129 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時32分07秒
- …もう日が変わろうとしている、やはり来ない
諦めようか、明日も仕事だし座っていたベンチから立ちあがった
すると公園の入り口のほうに人影が見えた
ハァハァと息を切らしながら近づいてくるその様子は急いで走って来たことが一目でわかった
「高橋……」
来てくれたんだ……
彼女は何も怯えた様子は無かった、まるで全てを分かっているかのように
「すいません……遅れちゃいました」
言い訳をしないを所も彼女らしかった
- 130 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時33分04秒
- 「ごめんねこんな時間に……先ず謝らなきゃこの前無理矢理襲ったりして…ごめん、謝って済む事じゃないけど本当にごめん、もう仕事以外で近づいたりしないから」
そのあと一瞬の間が在った
「あの…それだけですか?」
「いやもっと大事な話があるんだ」
決めたんだ、高橋を助けるにはこれしかないって、想いを話すしかないって、言え!後藤!
「その前に聞きたいんだ、参考までに…」
「はい」
「前の時、あたしに気があるって言ってたけど…あれっていつのあたしを見たの?」
「ちょこっとLOVEの頃でした」
彼女は答えた、即答だった
やっぱりあの頃、あたしは今から、あの頃に戻る
「実は…」
リミッタ―を壊せ!
「あたし…」
高橋を助けろ!
「高橋の事が…」
その為のプライドなんかいらない!
「好きなんだ……」
・
・
・
・
―――ブレイクダウン―――
・
・
・
・
- 131 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時33分38秒
- 機械が活動を停止した
リミッタ―が壊れたんだ、これでもう元のあたしだ
「話しはそれだけ…ごめんねこんな時間に」
もう高橋が悪夢にうなされる事はない
あたしも本当の自分に戻れた
全てが…心の傷以外の全てが…元通り
あたしは公園の入り口に向って歩き出した
振り返らずに歩く、もうこれでここへ来る事はない、彼女と話す事もない
これで良い、これが罪を犯した者への……罰
「待ってください!!」
想像していなかった事が起こった
高橋があたしを呼びとめた
「なに?」
振り帰らずに返事をした
「あたしの気持ちは…返事は聞かないんですか?」
その言葉を聞いてあたしは初めて振り帰った
「だって…あたし高橋に最低な事したんだよ……返事なんか、聞かなくても分かるよ」
そう、言い訳も出来ない……
「後藤さんは最低な事なんかしてません!“本当の”後藤さんは!
あたしの知ってる後藤さんは!ずっと素敵な人です!」
どうして本当のあたしを知ってるの?何もしゃべっていないのに…
「あたし!後藤さんの事、好きです!大好きです!!」
- 132 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時34分35秒
- …ずっと、元に戻る前から思っていた事がある
恋愛感情なんて人には必要ないって思ってたけどそれは間違いだって確信できたよ
恋愛ってすごいよ
人の心を…傷ついた人の心を治してくれるんだ
昔あたしが恋愛をして失恋して恋が出来なくなった
誰かが言ってたよ
「恋愛」っていう字から「失恋」恋を失っても…「愛」は残るんだって
恋愛をして失恋しても愛は残っていた、あたしにはちゃんと愛が残っていたんだ
恋愛感情が必要ないって思ってた事…取り消すよ
あたしは今恋をしている
恋愛感情で恋をしている
高橋が好きだから、好きになれたから、本当の自分を取り戻せたし、高橋の傷も癒せる
ありがとう高橋
- 133 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年01月26日(日)16時35分06秒
「ねぇ、本当にあたしなんかで良いの?高橋後悔しない?」
「後悔なんてするわけないですよ、あたし後藤さん以外の人なんて考えられません」
走ってくる高橋を抱きしめて、自分が幸せである事を感じた
そして問いかけてみた
「ねぇ、高橋、キスしていい?」
すると高橋は少し身体を離して
「そんな事聞くもんじゃないですよぉ」と答えた
「だって勝手にして、また無理矢理になっても困るじゃない」
そういうと彼女は満面の笑みを浮かべ「良いですよぉ」と言って目を閉じた
あたし達はふれあうだけのキスをした
愛を確かめ合うキス、心を癒すキス
二人の道はこれからも、きっと、ずっと、続いて行く
これは機械なんかの感情じゃないから…
あたし達はキスをしたあとも抱き合っていた、ずっと…ずっと…ずっと
愛してるよ、高橋…これからも……ずっと……ずっと……ずっと……
end
- 134 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年01月26日(日)16時43分40秒
- 誤字を発見…鬱だ…
とうとう記事番号100を超えましたちんたらちんたら本編更新するより
短編だけのほうがどんどん進んでいくんじゃないかと思う今日この頃……w
そんで、今回!エロに初挑戦してみました!
どうかそういうところでも感想や非難、罵倒何でもいいので感想ください
『何だよ!最後までやれよ!』と言うことでも結構です
でも作者はそういうことにあまり詳しくない16歳で(あと二週間で17歳)
最後までかけないんです、途中まで読んで期待した方すいません!
まだまだこれから勉強していきます
実は『LOVEマシーン―後藤真希― 』となっていますが
短編なのに続きがあります
高橋編があるんです…いつココに乗せるか
早ければ来週の日曜日
遅くても2月9日ぐらいには
実はフォーエバーキスの方は筆がゼンゼン進んでいません
情景雰囲気等が頭に浮かんでいても文章にできないんです
スランプでしょうか…
でもつなぎに短編とか書いていくつもりですお待ちください
- 135 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年01月26日(日)16時47分50秒
- END隠しのレス
私ってなぜか新作のネタばかりが頭に浮かぶんですよ
フェイツ、フォーエバー、は載せました
いちごま一作、まきまり一作、ごまかご二作、ごまたか3作
短編、メモリー、カップリングなし
ラブマ、ごまたか、なちごま一作
といったような状態でたまになに考えてるか、わからなくなります
- 136 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年01月26日(日)16時49分51秒
- romッてる方いましたらレスください
ひとつだけでもレスがあればやる気が出るんです
そして『LOVEマシーン』を呼んでくださった方々
ありがとうございます!!
- 137 名前:チップ 投稿日:2003年01月26日(日)17時17分52秒
- ROMりました。え〜と上手く言えないんですが
FKの続きも気になるんで読みたいですけど
短編もかなりタイプな感じで面白かったので高橋編楽しみにしてますね〜
エロってムズイですよね、でもごまたかは最後までなくても
充分かなぁと思ったりしました。変な感想でごめんなさい・・・
- 138 名前:tsukise 投稿日:2003年01月26日(日)22時04分26秒
- 更新、お疲れ様ですっ。
ぐはっ!やられました、ごまたか…っ。
この短編を読んで、今日のハロモニ(2週遅れなんですが)を見て
何故か高橋から目が離せなかった私は重症…(爆)
新作がどんどん上がりそうですねっ!楽しみに待っています!!
- 139 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年02月09日(日)14時38分27秒
- 自分で言ってた期限ぎりぎりです
LOVEマシーン高橋編を更新します
が、私、>>134で「続きが有ります」と言いましたが間違いです
すいません
ただ上のお話を高橋視点にしただけです
でも、Forever kissが終わった後か、
Forever kissのネタが浮かばない時にLOVEマシーン日常編
として、続きを書くつもりです
>>137 チップさん
いえいえ、変な感想でも(作者は変とは思っていません)もらえれば嬉しいです
エロは難しいと言うか……具体的に良く分からないと言うのが本音ですw
>>138 tsukiseさん
レスありがとうゴザイマス
ハロモ二二週遅れって事は関東地方じゃないんですね
私も大阪に住んでおりまして
どうにかしてほしいもんですね1時間に……
- 140 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時40分05秒
- 初めてあの人を見た時、それは2年前の事だった
『愛という字を思い出す時』
ブラウン管を通してみる彼女の第一印象は『カワイイ』だった
憧れのあの人は、「モーニング娘。」でも「プッチモニ」でも大ブレイクし、学校でも話題の中心にいた
「ねぇ見た昨日のMステ、「ちょこっとLOVE」一位になってたじゃん?」
「うん、見た、すごいよねぇ?あの三人あたしCD買ったよ〜ん」
「あたしだって買ったよ」
「愛も買ったの?じゃあこのクラスのほとんどが買ったんじゃん」
でも憧れだったそのひとへの思いはいつしか変わってしまった
憧れの「好き」じゃなくなった、でも恋愛で好きかどうかはその時は分からなかった
- 141 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時41分21秒
一年前に4期メンバー募集の番組がやっていた
あたしは応募しなかった、憧れのまま気持ちを置いておきたかった
でもあたしは合格者が四人出てその中の最年少「加護亜依」が、あたしより年下だった事と後藤さんが教育係に付く事にショックを受けた
あの年で受かるのならあたしでも愛かったかもしれない
憧れが少し近づいた感じがした
次は応募しようと心に決めて近くの先生にボイストレーニングもしてもらって
体力もつけて応募までの期間を待った
でも3期メンバー募集から4期メンバー募集までの期間と比べると
5期メンバー募集は遅かった
でもやっとその時が来たと思って応募した
そしてあたしは最終審査に残る事が出来た
メイクをしてもらった後モニターでモーニング娘。が9人最後のLOVEマシーンを歌っているのを見た
もしかしたらあの中に入れるかもしれない
あたしの心は浮き足立っていた
大きな大画面が開いて、モーニング娘。と初対面した
「ザ☆ピース」の黄色い衣装に包まれた「ゴトウマキ」を初めてみた
その印象は「カワイイ」じゃなく「カッコイイ」だった
- 142 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時42分03秒
- 「小川麻琴」
「新垣里沙」
「高橋愛」
3人の名前が挙げられた
一瞬、失格者の名前を言ってるんじゃないかと「つんく♂」さんを疑った
でも憧れの人が拍手をしてくれて合格したとわかった
その後、赤点合格と言って「紺野あさ美」ちゃんも合格になった
これであたし達四人はモーニング娘。になった
憧れの人と同じに……
- 143 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時43分20秒
それからダンスレッスン、ボイストレーニングと覚える事はいっぱいあった
私達5期メンバーの初シングル「Mr.moonlight」に向けてそれらのレッスンもプロとして厳しくなってきた
そう、あれはあたしがダンスレッスン中にひどく怒られたときの事
あたしがレッスンが終わった後1人楽屋の隅で泣いていた時
「高橋、一緒に帰ろ」
と、後藤さんが声をかけてくれた
しゃくりあげてるあたしを家の近くまで送ってくれて
家の近くにあった公園で話していた
「気にしなくて言い事はないけど、気にしすぎないほうがいいよ、
まだ一ヶ月であたし達と同じ事やれっていわれても出来る訳ないし
だからって甘えるのも駄目だけど」
その時の後藤さんの言葉はあたしを優しく包み込んでくれた
- 144 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時44分12秒
- 「今はただできる事を頑張るだけ、それだけで今あたし達がいるところまで来れる、ね、高橋」
泣いてるあたしをなぐさめてくれた後藤さん
その時に気づいた、これは恋だと
ずっと憧れだった人が今目の前にいて、その事がすごく嬉しかった
憧れの「好き」じゃなく恋愛としての「好き」
あたしはこの時からずっと後藤さんが好きなんだ
そして、ずっと告白も何もできずにいたあたしだけど転機はいきなり訪れたんだ……
LOVEマシーン―支配されない感情―
- 145 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時45分01秒
- あたしはいつもと同じぐらいの時間
入り時間の40分ぐらい前に楽屋入りした
仕事が始まるまでの間に荷物整理をしていたら
何故か『おっとっと』が出てきた
「おはよ」
「おはよごっちん」
「ごっつぁん、おはよ」
『おっとっと』に気を取られていると後藤さんがやってきたので
「おはようございます後藤さん」
と、挨拶した
あたしは何か話すきっかけをと、さっきの『おっとっと』を持って後藤さんに話しかけた
「あの…後藤さん『おっとっと』いりませんか?」
「え…何で?」
「えっと、家から間違えて持ってきちゃって、じゃなくて気づいたら入ってて…えっとその…」
「もらって良いの?」
「はい!差し上げます」
「ありがとう、休憩時間にでも食べるよ」
後藤さんは笑ってそれをもらってくれた
笑った顔が見れて少しうれしかった
- 146 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時45分58秒
- その日は、あたしが告白を決意した日だった
今の関係を壊したくない…今のままじゃ嫌だ
これまでずっとその2つの思いがあたしの中にはあった
それでもあたしはこのままの関係より一歩前進したかった
もしかしたら振られるかもしれないけど
今のままでいるよりは完全燃焼になる、そう思った
「あの後藤さん、よければ今日一緒に帰りませんか?」
「んぁ、良いよ別に、今日誰とも約束してないし」
「良いですか?じゃあ帰る準備をするのでちょっと待っててください」
すぐにOKの返事をもらえた、あたしはすぐに準備をした
「用意できた?じゃあ帰ろっか」
「はい」
前に二人で通った道をあたし達は歩いて行った
- 147 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時46分45秒
でも、告白を決意したものの、あたしは何も話せないでいた
駅も近くなってきて、“今日は諦めようか”と思ったその時
「高橋ってさぁ…」
後藤さんが話しかけてきた、あたしはそれに返事をする
「はい、なんですか?」
「あたしに気があるの?」
「え?」
後藤さんはあたしの心の中心、あたしの気持ちの確信をつく質問をした
まさか、今から告白しようって時に、本人の口から「あたしが好き?」って聞かれるとは思わない
すこし驚いたが、あたしは意を決して答えた
「ハイ…」
ただその時後藤さんの表情が変わった気がした
「じゃあ、あたしに抱かれたいとかも思うわけ?」
「え?」
「どうなの?」
その時少し後藤さんが恐く見えた
「あの…えっと」
「答えにくい?」
「あ…ハイ」
すると後藤さんはニっと微笑んで言った
「じゃあ…躰に聞いてみるよ」
「え、今なんて?」
すると腕をぐっと引っ張られ、うすぐらい裏路地に連れ込まれた
- 148 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時48分17秒
- 「あ…あの」
言葉になっていない言葉を口にしたときふいにキスをされた
「ん…ん…」
あたしは驚いて、一瞬後藤さんを突き飛ばそうとしたが
後藤さんにぎゅっと抱きしめられてそれを防がれた
「んんん……ん」
そして後藤さんはあたしの首筋の辺りを後ろに廻している手で撫でた
一瞬身体がビクッとなって次の瞬間、口の中に後藤さんの舌が入ってきた
口内を蠢いて舌をからませられる、そのはじめて味わった感触が気持ちよかったりして何もできずにいた
二人分の唾液が一気に口の中に流れ込んできて息苦しくなった
すると一度後藤さんは唇を離した
「ぷは…はぁ……はぁ…ごほっ…ごと…さん…何を…?」
聞いても後藤さんはただただ笑うだけで「だから、躰に聞いてるだけだよ」と言うと再びキスした
両手を後ろに廻され掴まれた、全然振りほどく事が出来ない
その後後藤さんは唇を離して今度は首筋にくちづけて舌をはわせてきた
「ん…あ………はぁ…」
つい気持ちよくて声が出てしまった、ただあたしはこんな無理矢理のような物は望んでいなかった
- 149 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時48分48秒
- いつの間にかあたしは服の上から胸をを触られていた
だんだんと欲望と理性が葛藤を始める、このまま最後までと思う自分と
こんなのは嫌だと思う自分
「ん…いや……あぁ…」
そして段々と後藤さんの手が下のほうに伸びてきているのを感じた、
……こんなの嫌だ……
理性が欲望に勝った、あたしはこの状況を脱出しようと手に力をこめた
すると片手が掴まれている手から離れた
あたしはさっきよりも力をこめて後藤さんを突き飛ばした、正直……後藤さんが恐かった
「後藤さん…あたしが思っていた人と…全然違ったみたいです…今日はもう1人で帰ります!」
あたしは全速力で逃げた、時々後ろを振り返って後藤さんが追ってこないかを見ながら
駅に入った後すぐに切符を買い、丁度来ていた電車に飛び乗った
恐かった……
あたしは周りを見て後藤さんが同じ電車に乗っていないかを確認した
後藤さんらしき人はいなかったので安心した
でも、どうして後藤さん急に……
あたしは「ゴトウマキ」を理解できなくなっていた
- 150 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時50分58秒
- ピンポーン
自宅に帰った後、家の呼び鈴がなった
あたしの家は事務所に用意してもらったマンションだ
この住所を知っている人は少ないはずだからまた勧誘かなんかだろうか?
あたしは覗き窓から外を見たが誰もいない
?
一応チェーンロックをかけて扉を開いた
ガン!
見るとドアの開いた隙間に靴が挟まっていた
『やっほ〜、高橋、何?チェーンなんか掛けちゃって、せっかく来たんだから中入れてよ』
あたしはブンブンと首を振った
『嫌ですよ!昨日あんな事しておいて!』
『あっそ、じゃあ仕方ない』
すると後藤さんはどこからか大バサミのような物を取り出してチェーンをちょん切った
- 151 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時52分52秒
- 『嘘……』
『あー、やっと入れた』
後藤さんは中にはってくるとドアと鍵を閉めた
『さぁ高橋、今日は最後まで楽しもうよ』
『い、いや!』
あたしは部屋の中を逃げ回ったが2LDKのマンションを逃げ回ってもすぐに限界が来る
ドン!
あたしはリビングの床に押し倒された
『いいじゃん、あたしと高橋の仲じゃんか』
『い、いやぁ……いやあぁぁぁぁぁ!!』
- 152 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時57分01秒
- 「うわあぁぁぁ!」
バッと起きあがって気づいた場所は自分の部屋だった
まだ窓の外も暗くて、時計を見ると夜2時だった
あたしはベッドから降りて周りの物を確認する
ちゃんとチェーンも繋がってる……夢か……最悪…よりにもよって昨日のリプレイみたいな……
あたしはもう一度眠ろうとベッドに入ったがへんな汗をかいたせいか眠れなかった
一度寝汗を流そうとシャワーを浴びた、だけど再び眠りについたのは5時ごろだった
- 153 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時57分37秒
「あの、次後藤さんと吉澤さんです」
あさ美ちゃんと一緒にインタビューから帰ってきたあたし達は楽屋でそう言った
吉澤さんはすぐに「OK」と返事をしたが後藤さんは反応しなかった
「ごっちん!次ごっちんとよっすぃだべ!雑誌のインタビュー」
「あ、ごめんごめん、ちょっと考え事してた」
「考え事ぉ?」
「いや、大したことじゃないんだ、行こ、よっすぃ」
後藤さんが吉澤さんと一緒に楽屋を出て行ってようやく落ち着いた
「はぁ……」
ため息が出た
「どうしたの愛ちゃん?ため息なんかついて」
あさ美ちゃんか……
「昨日眠れなくて……ハハ……」
力なく笑った
「明日からダンスレッスンだから今日はゆっくり寝たほうが良いよ」
「うん、そうする」
- 154 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時58分55秒
その次の日からダンスレッスンが始まり1週間が経った
あたしはその間も一日に3時間程度しか眠れなかった
理由は、毎晩後藤さんが夢に出てあたしの事を襲うからだ
二日前なんか夜が恐くてまこっちゃんちに泊まりに行ったくらいだ
でもあたしのの都合に合わせて「モーニング娘。」のスケジュールが決まる訳じゃない
「高橋!なんかい言えば分かんの?!あなたもうすぐ加入して一年たつんでしょ!しっかりしなさい!しっかり!」
また叱られた、本当に今日何回目だろう、でも頑張って踊らないとみんなに迷惑かかるし……
『今はただできる事を頑張るだけ、それだけで今あたし達がいるところまで来れる、ね、高橋』
あれ?なんで今後藤さんの言った事なんか頭に浮かんだんだろう?
そう思った瞬間、目の前の景色が歪んで行った
あれ?なんだろうこれ?
そしてその次の瞬間、世界が回転した、あたしは……気を失った
- 155 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)14時59分47秒
気づいた場所は病院で、病院までついてきてくれた矢口さんに、あたしがレッスン中に倒れた事を聞いた
「あんまり無理しちゃ駄目だよ、身体は1つしかないんだから」
矢口さんにそう言われた、それから「『薬飲んで寝てろ』だってさ、先生がそう言ってたよ」
とも聞いたので、あたしは薬を飲んでもう一度な眠る事にした
気絶している間はあの夢は見なかった、けどもう一度寝た時にはまたあの夢を見てしまった
どう言うわけかその夢は覚めずに何度もリピートされた
後から考えた事だけど、
多分、薬の中に「睡眠薬」に近い物が入っていたからだと思う
- 156 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)15時00分24秒
- 『高橋、こんなチェーン何回直しても無駄だよ』
以前見た夢と同じ様に、後藤さんは大バサミでチェーンをちょん切った
『後藤さん……もう…嫌だ……』
何度も何度もあたしを襲うその場面があたしの中に流れる
『もう……やめてください……』
『いいじゃん、別に減るもんでもないし』
「高橋……」
…誰?
誰かがあたしを呼んだ…?
「高橋……」
ふと見ると、誰かがあたしの手を握ってくれていた
『誰…?』
なんだかその人のおかげであたしの心が落着いてきている感じがした
目の前にいた後藤さんを見ると、何故かノイズがかかったように後藤さんの映像がぐらつき始めた
『た……かは…し…』
すると、ヒュっと音をたててその後藤さんが消えた
その空間に溶ける様に……
- 157 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)15時01分58秒
- 再び目が覚めた
病室は矢口さんがいない事以外何も変わった事はなかった
なんだったんだろう?今の夢……
考えているとどこからか矢口さんが戻ってきた
「あ、起きてたの?高橋」
「いえ、今起きたところです」
すると矢口さんは不思議そうに首をかしげた
「あの、矢口さんですか、あたしの手をずっと握ってくれていたのは」
あたしの手には温もりが残っていて、誰かが手を握ってくれていたのは夢じゃないと思った
「え?矢口じゃないよ、ごっつぁんじゃないの?今までいたんだけど、起きたら顔見せてやれって言ったのに、その様子じゃ会ってないんだね」
「後藤さん来てたんですか?」
「うん……来てたよ」
矢口さんはそばにあった椅子に座った
「高橋、聞いていいかな?言いたくなかったら言わなくてもいいんだけど」
「はい、いいですよ」
「ごっつぁんとなんかあった?」
図星をさされた
- 158 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)15時02分56秒
- 「え……なんで?」
「いや、言いたくなかったらいいんだけどさ、今部屋入ろうとしたときにさ、ごっつぁんの声が聞えてきて」
あたしは黙って矢口さんの言うことを聞いていた
「『高橋…もう…あたしのせいで苦しまないでよ』とか言ってたの……だから、なんかあったのかなって」
「いえ、あの、大した事じゃないんですよ」
あたしは話をはぐらかした、本当の事は、言わないほうがいいと思った
あたしは次の日の早朝、家に戻った
「じゃあもう矢口行って大丈夫?」
「ハイ、いろいろありがとうございました」
「なーに、いいっていいって」
家に戻ってからも病院にいるのとほとんど一緒
結局は薬を飲んで寝ていなくちゃならない
あたしは矢口さんに作ってもらった朝ご飯を食べると、薬を飲んで眠った
そしてどう言うわけか、今日はあの悪夢を見なかった、おかげでぐっすり眠れた
- 159 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)15時03分47秒
起きたのは8時ごろでリビングのソファに三角座りでインスタントラーメンを食べながらTVを見ていた
その時間にやっていたのは歌番組の「名曲集」とかいうやつ、でもたいした「名曲」は流れていなかった
でも、
「あ…」
あたしの視線はTVに釘づけになった
『恋という字を〜辞書でひいたぞ〜』
後藤さん……
プッチモニのちょこっとLOVEが流れていた
プッチモニの部分が流れ終わっても
あたしはTVを見つめてぼーっとしていた
〜♪
着信メロディの音で我に返った
あたしは持っていたインスタントラーメンを置いて
ベッドの横にある携帯電話を取りに行きディスプレイを見た、後藤さんだった
無視しようとも思った
でも無視してもしょうがないので出る事にした
「もしもし」
『もしもし、あたし、後藤』
「なんですか?」
いつもと違うトーンの声で言った、自分でもかなり棘のある言葉だと思った
『あの、話しがあるんだ、9時、前に一緒に行った公園で待ってる、来て、ずっと、あなたが来るまで待ってるから』
そういうと電話は一方的に切れた
行くもんか、あんな静かな公園に言ったら何されるか分からない、絶対に行くもんか
- 160 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)15時04分38秒
- 9時、10時、11時と時間だけが過ぎてゆく
さっきはそう思ったものの、あたしは悩んでいた
大丈夫かな…夏って言っても夜にずっと外にいたら風引かないかな……
でも、あたしが行くわけにいかないし
再び着信メロディが流れた、後藤さんだろうか?、ディスプレイを見ると、吉澤さんだった
「もしもし」
『もしもし、高橋?ごめんねこんな時間に』
「いえ…」
『もう身体平気?みんな心配してるけど』
「あ、もう明日からはレッスン参加します、心配かけてすいません」
『いーよい―よ、本当はそんな事聞くために電話したんじゃないから』
「え?なんですか?」
『あたし長い話し苦手だから単刀直入に言うよ』
「はい」
『ごっちんとなんかあったでしょ?』
「え、なんでそれ?!」…しまった、口がすべった
『やっぱり、昨日の高橋が倒れたときのごっちん見れば一目瞭然だよ、他のみんなは高橋に気を取られてたから気づいてないだろうけど、で、何があったの?』
なんだか吉澤さんには話してもいい気がした
- 161 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)15時05分57秒
- 「この前無理矢理襲われました……」
『マジ?!ごっちんすごいね無理矢理って……あ、ごめん』
「いえ、いいんです、最後まで行かずに逃げましたから」
『ふーん、それはいいけどさ、高橋って、ごっちんの事どう思ってるの?』
「え?」
『ごっちんの事、好きじゃないの?嫌いなの?』
なんでそんな事聞くんだろう
「分かんないんです、あたし、ずっと後藤さんが好きだったのに……あんなことされて、後藤さんが分かんないんです」
『うん、じゃあ大丈夫』
「え?」
『ごっちんは、次高橋と会う時は高橋の好きなごっちんのはずだよ』
「何で…そんなこと」
『あたしには分かるの、って言うか知ってるの、だからさ、ごっちんと会う機会があるならすぐにでも会ったほうがいいよ、じゃあね』
電話は切れた
- 162 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)15時06分31秒
- 「この前無理矢理襲われました……」
『マジ?!ごっちんすごいね無理矢理って……あ、ごめん』
「いえ、いいんです、最後まで行かずに逃げましたから」
『ふーん、それはいいけどさ、高橋って、ごっちんの事どう思ってるの?』
「え?」
『ごっちんの事、好きじゃないの?嫌いなの?』
なんでそんな事聞くんだろう
「分かんないんです、あたし、ずっと後藤さんが好きだったのに……あんなことされて、後藤さんが分かんないんです」
『うん、じゃあ大丈夫』
「え?」
『ごっちんは、次高橋と会う時は高橋の好きなごっちんのはずだよ』
「何で…そんなこと」
『あたしには分かるの、って言うか知ってるの、だからさ、ごっちんと会う機会があるならすぐにでも会ったほうがいいよ、じゃあね』
電話は切れた
- 163 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)15時07分02秒
- 「ごめんねこんな時間に……先ず謝らなきゃこの前無理矢理襲ったりして…ごめん、謝って済む事じゃないけど本当にごめん、もう仕事以外で近づいたりしないから」
え…?それだけ?それじゃああの優しい後藤さんかどうか判断できないよ
「あの…それだけですか?」
「いやもっと大事な話があるんだ」
もう1つの大事な話し…あたしはそれに賭ける事にした
「その前に聞きたいんだ、参考までに…」
「はい」
「前の時、あたしに気があるって言ってたけど…あれっていつのあたしを見たの?」
「ちょこっとLOVEの頃でした」
さっきTVで見たせいか自然に声が出た
「実は…」
「あたし…」
「高橋の事が…」
「好きなんだ……」
驚いた……
後藤さんがあたしの事を好き?本当に?後藤さん?
- 164 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)15時07分42秒
- 「話しはそれだけ…ごめんねこんな時間に」
後藤さんが後ろを向いて歩き始めた
別にあの時の優しい後藤さんと判断できたわけじゃないけど
気づいた時にはもう後藤さんを呼びとめていた
「待ってください!!」
後藤さんは立ち止まった
「なに?」
「あたしの気持ちは…返事は聞かないんですか?」
後藤さんが振り返る
「だって…あたし高橋に最低な事したんだよ……返事なんか、聞かなくても分かるよ」
あたしは、思いを全て伝えようとした
「後藤さんは最低な事なんかしてません!“本当の”後藤さんは!
あたしの知ってる後藤さんは!ずっと素敵な人です!」
あたしの思いを伝えた……
「あたし!後藤さんの事、好きです!大好きです!!」
- 165 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年02月09日(日)15時08分18秒
- 「ねぇ、本当にあたしなんかで良いの?高橋後悔しない?」
「後悔なんてするわけないですよ、あたし後藤さん以外の人なんて考えられません」
あたしのその場の勢いを借りて後藤さんに抱きついた
そしたら、後藤さんもあたしをきつく抱きしめて……耳元でささやいた
「ねぇ、高橋、キスしていい?」
え?そんなこと聞かなくても……雰囲気とかそういうので……と言おうとして黙った
「そんな事聞くもんじゃないですよぉ」
すると後藤さんは笑って悪びれた
「だって勝手にして、また無理矢理になっても困るじゃない」
あたしは暗い雰囲気になるのが嫌だったから
100%の笑顔で「良いですよぉ」と答えた
後藤さんがあたしにキスをした
この前みたいに乱暴じゃなく、優しい、暖かいキスだった
そして偶然にもあたし達がキスしたのは丁度0時だった
なんだかロマンチック……
後藤さん、今すごく幸せです……
後藤さん……愛してます……
end
- 166 名前:LOVEマシーン―吉澤・邂逅編― 投稿日:2003年02月09日(日)15時09分11秒
0時を廻った頃、ごっちんから電話がかかってきた
「ねぇ、よっすぃはなんであたし達の事色々わかったのさ?」
「んー、あたしごっちんの先輩だから」
「はぁ?意味わかんない」
「機械の声……そう言えば分かるでしょ」
そう、少し前まで、あたしの頭の中にもごっちんと同じような機械が存在していた
「マジ?!そうだったの?そうか……だからこうなる事とかわかってたのか……ねぇ、よっすぃの相手って誰?壊してくれた人いるんでしょ?」
しまった余計なことしゃべったかな……
「…矢口さん……」
「マジ?!やったよっすぃのよわみ発見!」
「はぁ!?何言ってんの?あたし達の事言ったら二人の事も言うからね!」
「別にいーよー、ほら、高橋、ちょっとこっちおいで」
ごっちんは近くにいるらしい高橋を呼んでいた
「「だってあたし達!ラブラブだもーん!!」」
恐いもの知らずほど恐い物はいない……そう認識した
「すいません…みんなには内緒でお願いします……」
「まぁみんなには黙っておいてあげるよ、じゃあね」
二人に一生頭が上がらなそう……
- 167 名前:LOVEマシーン―吉澤・邂逅編― 投稿日:2003年02月09日(日)15時09分50秒
- 「ん?よっすぃ誰から電話だったの?」
「あぁ、やぐっさん、ごっちんからだよ、高橋とうまくいったってさ」
「そうなんだ、よかったじゃん」
「でもなぁ……あ゙ー!!」
「ど、どうしたの?」
「よわみ握られた……あたしとやぐっさんの……」
「はぁ?!言ったの?よっすぃ」
「ちょっと、口が滑った」
「何やってんのさ…でもこっちにもよわみあるじゃん」
「え……何の?」
「ごっちんがよっすぃを遊びに使った事、高橋に言うぞって」
「駄目だよ……高橋無理矢理襲われてもごっちんと付き合ってるぐらいだから」
「うーんそうか……」
「あ、ごっちんに言うの忘れてた」
「ん?何を」
「やぐっさんあたしの時の事覚えてるでしょ?機械が壊れたあとの少しの間あたしがどうなってたか」
「あーあー憶えてるよ、あの時のよっすぃ大変だったもんね」
「へっへっへっへっへ、まぁ仕事の時ぐらいフォローしてあげるけど、明日から楽屋が楽しみだね」
あたしとやぐっさんは大声で笑っていた
to be continued
- 168 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年02月09日(日)15時10分42秒
- end隠しレス1
- 169 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年02月09日(日)15時11分16秒
- end隠しレス2
- 170 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年02月09日(日)15時11分47秒
- end隠しレス3
- 171 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年02月09日(日)15時24分44秒
- ダラダラ後書き
高橋編には後藤編で自分で読んで違和感のあった部分をカバーするために書きました
最後の部分でなぜに高橋が来たのか?
そこにはよしこややぐの隠れた人の応援があったからだということです
後藤編を思いついたのは前述の通り「ラブマ」のPVを見たとき
ハート型のものがカプセルに入ってバチバチしてるシーンが有ります
(おそらくあれが「ラブマ」だと……)
あそこを見たときラストのブレイクダウンが思いつき
CPを誰にしようかなどを考えて完成したわけです
……ああ、そして再び誤字発見……ネットカフェに間違えて誤字訂正前のものを持ってきてしまった
どこぞのスレで「誤字訂正ぐらいしろ」のような物を見つけて以来気を使っているのに……
そしてまた新作が思いついてしまった……
また脳がパニックを起こします
早く書き溜めているのを消化しないといけないのに
でもどこかに浮気するような勇気も無い……
代わりに書いてくれる人募集!!w(冗談です)
- 172 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年02月09日(日)15時26分47秒
- Forever kissのほうは一度筆が進んでは止まり進んでは止まりしております
このままだと……(ry
一度完結したデータがあったんです・・…
でもそれは余りにも恥い作品でして
文章を全て削除して書き直したら
まず1話の長さが二倍になり
2話で書いていたシーンが五話まで引っ張られる始末
そして新キャラが出てきたり
一年前に書いていたから仕方がない……
どうにかしないと……
まぁこの辺で後書きは終了……
また家に戻って小説の続きでも書きます
次の更新は未定
でも絶対に放棄はしません
- 173 名前:tsukise 投稿日:2003年02月11日(火)07時02分21秒
- 更新お疲れ様ですっ。
LOVEマシーン・高橋編、かなりよかったです!
よっすぃーに矢口…いいヤツですね〜。
そして邂逅編を読んでこの2人のことも気になる今日この頃(^^
その後のごっちんと高橋も気になりつつ、ゆっくり次回更新待ちますので
頑張ってくださいねっ。
- 174 名前:第5話―「生」と「死」― 投稿日:2003年02月12日(水)14時49分57秒
『あなたは一体何者なんですか?』
『何であたしの夢の中に入ってくるんですか?』
『一体何がしたいんですか?』
―――あれから何度と無く見た夢、何度もその人はあらわれた、あの公園で……
それでもあの人は答えなかった
『時が満ちれば分かる』
―――その人が唯一発した言葉、それだけが目覚めたあたしの頭に残っている言葉だった
退院の日
「あー、やっと家に帰れるね」
亜依が真希に向って話しかけた、でも真希はぼーっとしたまま答えなかった
「?…お姉ちゃん?どうかした?」
「え、いや、なんでもないよ」
「本当になんでもない?」
「なんでもないって」
「…ならいいけど」
「……ねぇ、亜依先に帰っててよ、あたしよる所があるんだ」
「え?どこ?お買い物?何でもいいけど亜依もついていくよ」
「いいから、先帰ってて」
真希は少し語調を強めて言った
「早く帰ってきてよ……」
亜依は寂しそうにそう言うと一人で帰っていった
- 175 名前:第5話―「生」と「死」― 投稿日:2003年02月12日(水)14時51分57秒
- 真希は亜依が帰るのを見送ると、すぐさまあの公園に歩き出した
―――今日現実にその人に会える
なんの根拠もなく真希はそう確信していた
きっと本能的に何かを感じているのだろう
夢で見るいつもの場所にやはりその人はいた
金髪に青いカラーコンタクトに銀色の派手なピアス
夢であった“中澤さん”そのままだった
「やっと会えました」
「ああ、待っとったで」
夢では何度も会ったが、本当にする初めての会話
「教えてもらえますか、夢で言ったこと全部」
「ああ、ええで」
中澤は一呼吸置くと説明し始めた
「あんたは事故に遭うた、でもそれはこの世界からしたら予想外の事なんや、
あんたはあそこで事故に遭うはずやなかった」
「それって、あたしがどう生きてどう死ぬか決まってるって事?」
「そうや、人の生き死にはウチらの天使界では決まってる事や」
「…………………」
- 176 名前:第5話―「生」と「死」― 投稿日:2003年02月12日(水)14時52分39秒
- 「次にまだあんたは生きてるけど長くはもたん、魂が死にかけてるんや」
「魂……」
「ええか?人の死には二種類ある1つが『肉体の死』や
文字通り肉体を傷つける事でなる死に方や」
「……」
「もう1つが魂の死、これは主に寿命やけど、
あんたは事故に遭ったせいで仮死状態になった、
その時一回魂が抜けたんや、つまり事実上あんたは一回死んでるんや」
「なんや、普通はもっと取り乱すもんやケドな、あんたは話やすいわ、
えー、つまりやな、その時ももう一回抜けた魂を吹き込んだんやけど、
魂が相当なダメージを受けてる、だからあんたはもうすぐ死んでまうんや」
「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど、」
「なんや?」
「どう生きてどう死ぬか決まってるって言ってたけど
それは誰が決めてるの?」
「誰が決めたのかはウチには分からん下っぱやからな」
「じゃあ、あたしはいつ死ぬの?」
真希は自分の死にも驚きの表情を見せず、そのままを受けとめていた
「だいたい後二ヶ月って所やな、その間のあんたの行動にもよるけど」
- 177 名前:第5話―「生」と「死」― 投稿日:2003年02月12日(水)14時53分58秒
- 「あたし、もう生きられないの…?」
「…………後二ヶ月やて」
「生きられないんだ………………」
真希は初めて表情を変えた、さっきまでの無表情とは違う
でもその表情もすぐに消えてまた無表情に戻った
「ただ、まだ助かる方法があるんや、奇跡に近い事やケドな」
中澤のその言葉に、真希は中澤の顔を見た
「これができたらホンマに奇跡や……
ええか、今あんたの周りにおる近しい人物で今あんたに惚れてる人、
その人を幸せにしてみる事が条件や、それで、大天使様が新しい命を与えてくださる」
―――大天使……そんな人がいるのか…でも…なんであたしはそんなチャンスをもらえたのだろう
「ちょっと聞かせて欲しいんだ、なんであたしにそんなチャンスがあるの?
あたしの死が予想外の事だったから?」
「違う、あんたの周りにおる人のためや、今あんたが死ねば、周りの人全員が不幸になる
だからあんたの死は作られへんかったんや」
「……分かった、教えてくれてありがとう」
「なんか困った事があったらあたしのところに来ィ、できる事なら、力になるから」
- 178 名前:第5話―「生」と「死」― 投稿日:2003年02月12日(水)14時54分29秒
- ―――15年と八ヶ月、あたしは「生」に対してなんの疑問も持たずに生きてきた
きっとこれまでも「幽霊、天使」と名乗る人たちの施しを受けてきたのだろう
それはきっと『運命』の名の元に行なわれてきた事なんだ
あたしは生きなければならないの?
『死にたくない』……普通の人が当たり前に思うことだ
でも今のあたしは『生きたい』とも思わない
『運命』なんて言葉に支配された人生、生きたいと思う人はいるのかな?
- 179 名前:第5話―「生」と「死」― 投稿日:2003年02月12日(水)14時55分06秒
- 「ただいま」
「「おかえりー」」
真希が家に帰ると、何故かなつみと亜依の二人が出迎えた
「あれ?なんでなっちがいんの?」
真希が当然思った事に対してなつみは笑いながら
「マリアのテープ借りてきたから一緒に見ようと思って」
と答えた
真希はその言葉に憎まれ口を叩きながら二人の間に座った
「なっちも子供じゃないんだからさ、ビデオぐらい一人で見れないのー?」
「べつにいいべさ!みんなで見る方がたのしいっしょ?」
「なっち、訛ってるよ」「安倍さん訛ってますよ」
なつみは二人の的確なツッコミにもめげず、
「さぁ!早く見よ!」
と強引に会話を戻した
―――やっぱり生きたい
例え決まっている人生でも、こんな楽しい事、生きてなきゃ味わえないから
ねぇ、なっち、もしあたしが死んだら、亜依の事面倒見てくれる?
ねぇ、亜依、もしあたしが死んだら1人で生きていける?
無理だよね……
あたし、生きて見せるよ、絶対に……絶対に……
- 180 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年02月12日(水)15時01分20秒
- 今回はちょいと早めに更新
ああ……名前欄に「後藤真希」って入れ忘れた
たまたま今日バイトが休みになったので
更新しました
>>173tsukiseさん
毎度毎度レスありがとうございます
日常編はすでにイメージは完成してます
吉澤矢口は……作ってもごまたかversionと似たり寄ったりになると思いますw
最後に二人で言ってることは日常編への伏線ですんでw
もしかしたら今度の日曜にも更新するやも知れません
このごろバイトがひまになっちゃて……
ということで今日の更新終了!!
- 181 名前:弟 投稿日:2003年02月26日(水)19時43分45秒
- このスレを立てた「うまい棒メンタイ味」の弟です
先日24日に交通事故で兄が亡くなりました
皆さんにはすいませんがこの後の話はもう書くことが出来ません
どなたか削除依頼をお願いします
- 182 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月26日(水)20時00分43秒
- >>181
え!?
- 183 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月27日(木)02時26分50秒
- 名前 : うまい棒メンタイ味(i-mode) 投稿日 : 2003年02月17日(月)18時49分03秒
というレスがあったのですが何か?
- 184 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月27日(木)23時35分02秒
- ほんとうですか?
>>181
I'm sorry to hear about this.
Thanks for 「うまい棒メンタイ味」had worte these novels
God bless his soul in heaven.
- 185 名前:うまい棒メンタイ味(公共パソコン) 投稿日:2003年02月28日(金)18時41分22秒
- どこのどいつか知りませんが
人を勝手に殺すな!!
自分が死んだ呼ばわりされるのはかなりムカツキます
以後こんなことがないようにお願いしたい!
ということで読者の皆さんご安心ください
私はちゃんと生きてます
きちんと話は完結させます
できれば>>184さん
日本語でお願いします
「この事実に関して私は残念です。どうか“うまい棒メンタイ味”の魂が天に召されますように」かな
私にはこうしか訳せませんでした
てっことで今日は小説データを持っていないのですいません
携帯電話から見たら
自分が殺されているので電気屋のパソコンよりアクセスしました
次の更新日は未定です
- 186 名前:第6話―束の間の日常―真希・亜依― 投稿日:2003年03月05日(水)21時10分55秒
翌日、
戻ってきた日常は騒々しく始まった
「お姉ちゃーん!早く起きろー!今日から学校だー!!」
布団に入って眠っている真希にまたがって亜依はそう叫んだ
「お姉ちゃん今日も休むよ……一日二日休み増えたって変わんないし」
寝ぼけ眼の姉はそう言った
真希はあの幽霊に言われた事を考えていたせいで眠れなかった
つまりは睡眠不足なのだ
「お姉ちゃんが学校休むのは勝手だけど、亜依の朝ご飯とお弁当!作ってもらわないと困るんだけど」
―――そうだった、いつも朝ご飯はあたしが作ってたんだった……入院中はよかったのに……
「ほら!早く起きてよ!」
妹に急かされしぶしぶ起き上がった真希は「顔洗ってくる」と言って洗面所に向った
亜依はというと、その間に制服に着替え、学校の準備をしていた
「まだ戻ってきてない……?」
姉がいつまでたっても戻ってこないので亜依は洗面所に向った
「……zzzzz」
器用にも、姉は立ったまま壁に寄りかかって眠っていた
- 187 名前:第6話―束の間の日常―真希・亜依― 投稿日:2003年03月05日(水)21時11分40秒
- 「お姉ちゃん!!眠ってる場合じゃないでしょ!!」
真希はビクッ!として眠りから覚めた
「うわー、びっくりさせないでよー」
「お姉ちゃんが寝てるからでしょ!」
……正論……
「いやー、顔洗ってたら水泳選手が襲ってきてさ……」
「すいえいせんしゅうぅ?」
「水泳選手が……スイマーが……睡魔が…zzzzz」
「こら!寝るなって言うてるやろ!」
・
・
・
その後真希はすっかり目を覚まし、朝ご飯を作っていた
「まだぁ?」
「はいはい、もうできたよ」
真希は亜依の朝ご飯を机の上に置くと、今度は二人分の弁当を作り始めた
亜依は朝ご飯を食べながらTVを見ていた
「お姉ちゃん!今日みずがめ座一位だよ!うわーなんかいい事あるかも」
「あたしのは?」
「うーん、おとめ座は九位だって」
「うわ、微妙だね、こりゃまた」
・
・
・
- 188 名前:第6話―束の間の日常―真希・亜依― 投稿日:2003年03月05日(水)21時12分12秒
- 弁当を作り終えた真希はサッサとご飯を済ませ、
適当に教科書と弁当箱をリュックに詰めると亜依と一緒に部屋を出た
部屋に鍵をかけスタスタと歩き出す
と、アパートの廊下で隣の部屋の人と出くわした
「おはよう」
「あ、おはようございます石黒さん」
「昨日退院したんだっけ?大変だねぇ」
「ええ、入院中は部屋の留守番ありがとうございました」
「いいのよ、今から学校でしょ?いってらっしゃい」
「はい、いってきます」
真希達二人の住んでいるアパートは親戚経営の物で隣近所に住んでいる人たちも
よく真希たちの面倒を見てくれた、特に隣の部屋の石黒はよく食べ物や着る物など色々世話を焼いてくれるのだ
真希も石黒には感謝をしていた
カンカンカン
歩くと音のする階段を降りて行き
自転車置き場へ歩いていく
そこには去年亜依にせがまれて真希が買ったマウンテンバイクが置いてある
真希が自転車にまたがると亜依は後輪に取り付けてある六角に飛び乗った
「行くぞ、亜依!」
「おう!」
真希が力強くペダルをこぎだすとマウンテンバイクは発進した
- 189 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
- 川o・-・)ダメです…
- 190 名前:第6話―束の間の日常―真希・亜依― 投稿日:2003年03月05日(水)21時13分36秒
- 細い道を颯爽と自転車が駆けぬけていくと大通りに飛び出した
大通りに出ると北上し始めたが再び細い裏通りに入った
二人は通学時、いつもこの道を通った、理由は人通りが少なくスピードを出せるからだ
「お姉ちゃん2分オーバーだよ」
「うそ、やばいじゃん」
亜依は携帯電話の時計を見て予定より二分遅れている事を姉に報告する
「飛ばすよ、亜依!」
遅刻の危険を感じた真希はさっきよりも更に力をこめてペダルを漕ぎ出す
長いストレートやS字コーナー、
急なカーブも通りぬけて通学最後の難関がやってきた
それは学校の裏手にある大きく急な上り坂
「亜依、降りて!」
「OK!」
亜依と真希は自転車を一時的に降りてその急な坂を走って登り始める
亜依はともかく真希は自転車を支えながら走りにくそうに走る
50m程の坂を登り終えると再び自転車にまたがる
何も言わずに亜依も六角に飛び乗る
今度はさっきと同じぐらい急で同じぐらいの長さの下り坂
「「ィィィィィイヤッホー!!!」」
大声を出して坂を猛スピードで下って行く
坂を下り終えても、その勢いを残したまま裏通りを抜けた
ようやく二人の通う学園の門が見えた
- 191 名前:第6話―束の間の日常―真希・亜依― 投稿日:2003年03月05日(水)21時14分20秒
- 「亜依、時間は?」
「ギリギリセーフかな」
途中の道を飛ばしたおかげでどうにか遅刻せずに済んだ二人
門の前で自転車を止めると亜依が六角から飛び降りる
「じゃあね」
亜依はそういうと中等部の校舎へ歩いて行った
一人になった真希は自転車置き場へ自転車を置きに行く
遅刻せずに済んだ安心感からか再び眠たくなってきた
昨日の睡眠時間は約3時間、眠たくもなるはずだ
真希はとりあえず高等部の自分の教室に向った
「おはよーごっちん、久しぶり」
教室に入って、自分の席に座ると隣にいる吉澤ひとみが話しかけてくる
「なんか今日はいつもに増して眠そうだね」
「分かる?あんま寝てないんだよね」
ひとみは真希が入院していた事を知らないのか普通に対応していた
「あたしこれから寝るからさ、ちょっとの間寝かしといてよ」
「うん、いいよ」
真希は机にうつ伏せると、眠りの世界におちて行った
- 192 名前:第6話―束の間の日常―真希・亜依― 投稿日:2003年03月05日(水)21時15分18秒
- あうう・・・・・
失敗した
今回も更新少な目ですがすいません
今日の更新終了
- 193 名前:tsukise 投稿日:2003年03月28日(金)06時28分37秒
- 更新、お疲れ様ですっ!
束の間の日常…タイトルからして続きを気にしてしまいますっ!
ゆっくりと待たせていただきますので、頑張ってくださいね。
- 194 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年04月03日(木)17時29分48秒
- 短編書きます
しかしなんだかここは本編前々更新しないでなにやってんだろ
短編集みたい(苦笑
- 195 名前:もう恋なんてしない 投稿日:2003年04月03日(木)17時30分41秒
あなたがいなくなって1週間。私はまだあなたの事が忘れられない。
別にあなたがいないと何にもできない訳じゃない
あなたと一緒に住む前から1人暮らしはしていた
でもヤカンが蒸気を吹きだしていても、カップの用意はできても、
紅茶がどこにあるかは分からなかった
あなたがいつも紅茶を淹れてくれていたし、あなたが使い易いどこかへしまってしまったのだろう
朝食も今完成した。自分の得意料理を作ったつもりだ
あなたと一緒に住むようになってから、料理はずっとあなたが作っていてくれた
ブランクのせいだろうか?自分で作った御飯は、全然美味しくなかった
これがもしあなたの作った物なら、あたしは思いっきり文句をいっただろうね
この部屋にいっしょに住むようになって、最初は楽しかった。
でもいつからだろう?二人でいると窮屈に思えてしまったんだ
部屋の広さの話じゃない、色々と憎まれ口を叩くあなたを……
一瞬だけ邪魔に思った事があるんだ
愛する人に愛されているかなんて、当然気になるのに、
あたしはその憎まれ口を「嫉妬」や「やきもち」だと、気付いてあげられなった
- 196 名前:もう恋なんてしない 投稿日:2003年04月03日(木)17時33分27秒
- もうあたしは自由なんだ、
もう誰も文句は言わない、誰にも言われない
でも……どうしてかな?
あたしは前より寂しくなった……
「さよなら」と言ってこの部屋を出ていってしまったあなた。
あなたの気持ちはわからなかった
リビングにあるこのTVの前にソファは左にあなた、右にあたしが所定の席、
今あたしが左を向いてもその場所にあなたはもういない、代わりに、
あたし1人だけのその空間が、
物凄く寂しい景色が見えるんだ
もし君に1つだけの強がりを言えたとしても、もう恋なんてしないなんて、言わないよ絶対
- 197 名前:もう恋なんてしない 投稿日:2003年04月03日(木)17時34分23秒
- 「さよなら」と言ってこの部屋を出ていってしまったあなた。
あなたの気持ちはわからなかった
リビングにあるこのTVの前にソファは左にあなた、右にあたしが所定の席、
今あたしが左を向いてもその場所にあなたはもういない、代わりに、
あたし1人だけのその空間が、
物凄く寂しい景色が見えるんだ
もし君に1つだけの強がりを言えたとしても、もう恋なんてしないなんて、言わないよ絶対
洗面所に並んだ2本の歯ブラシ。
もう、1本は捨ててしまおう、使う人がいないのだから……
あなたの趣味で買ったあたしの服、もうあなたには見せてあげられないから
もったいないけど捨ててしまおう
「潔く」「けじめ」そんな言葉を考えながら、ゴミ箱を抱えているあたしの姿は
世界中のどんな人が見ても、センチメンタルなんだろう
- 198 名前:もう恋なんてしない 投稿日:2003年04月03日(木)17時35分45秒
- ゴミ箱の中にはこんなにいっぱいあなたがここにいた証がある
こんなにあなたの抜け殻を集めて知った
あたしにとって必要のない物でも、そういう無駄なものにか困れて暮らすのも幸せなんだという事を
『高橋愛様』
もうあなた宛ての手紙も郵便も、ここには届かなくなった
きっと新しく住む場所を見つけたんだろう
まだあなた宛ての手紙が配達されてる頃
あなたはまだ迷っていたでしょ?あたしと別れる事を…
でもあたしの事なんか心配しなくていいんだ
逆にその迷っている姿があたしには心配だったから
あなたが心配しなくても二人で見つけ出せなかった幸せは
あなたの知らない誰かと見つけて見せるから
本当に本当にあなたが大好きだったから、あなたにも幸せになって欲しいから
もう恋なんてしないなんて言わないよ?……絶対……
- 199 名前:もう恋なんてしない 投稿日:2003年04月03日(木)17時36分33秒
プルルルルルル!!
幸せは……
「もしもし」
『もしもし、あ、後藤さんですか?』
「なんだ、紺野か……なんか用?」
あなたの知らない誰かと……
『あの……あたし映画のチケット持ってるんですよ……よかったら一緒に……』
見つけて見せるから……
『えっと……暇だったらで……いいんですけど』
もう恋なんてしないなんて言わない……
「いいよ、どこで待ち合わせよっか?」
end
- 200 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年04月03日(木)17時42分26秒
- 200突破!!
なんかちょいちょい短編書いてて
本編の更新を忘れ(おいおい!
ってことは無いのでご安心を
FKのほうもだんだん筆が進み始めました
>>193 tsukiseさん
待って頂いて本当にありがとうございます
なんかレスが少なくてやる気が落ちそうなときにいつもtsukiseさんのレスをみて
「やったるデー!!」な、気分にさせてもらってます
それで私事ですが、青板にて新作連載中
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=blue&thp=1047197011
今まで現実に無いファンタジー色の強いものばかり書いてきましたが
今回は現実にありうる話を書いていきます
お暇なときにでもどうぞ
- 201 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年04月03日(木)17時43分05秒
- ネタバレ防止レス1
- 202 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年04月03日(木)17時44分00秒
- 浮気しつつ頑張りますのでどうぞよろしく
ネタバレ防止レス2
ではマタ後日、 さよなら〜!
- 203 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年04月03日(木)20時03分19秒
- 言い忘れましたが
この「もう恋なんてしない」は
「LOVEマシーン」とは別物です
- 204 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月23日(水)17時09分45秒
- 保全
- 205 名前:第7話―束の間の日常2―後藤真希― 投稿日:2003年04月27日(日)16時55分40秒
―――1時間目は先生が気付いていなかったのか
気付いていて無視したのか知らないが起こされる事はなかった
しかし2時間目は先生に気付かれ起こされてしまった
その先生というのが……あの、恐怖のイングリッシュケメコだったんだ
「こら!後藤!起きろ!」
保田は持っていた黒い出席簿で真希の頭を叩いた
「んぁ?」
「んぁ?……じゃない!授業中に眠る奴がいるか!」
「いるじゃん…ここに…zzzzz」
「だから寝るな!!」
保田は再び出席簿で真希の頭を叩いた
「うっさいな!なに?後藤になんか用?!」
真希は安眠を妨げられ逆ギレ状態で保田に怒鳴った
「だから授業中に寝るな!そもそも夜ちゃんと寝ていれば学校で眠たくなるはずないでしょ!それに後藤……」
保田先生お得意の長説教
―――このままじゃ寝れない
真希はそう感じ、大きな行動に出た
- 206 名前:第7話―束の間の日常2―後藤真希― 投稿日:2003年04月27日(日)16時57分35秒
バン!!
真希は机を叩いて大きな音を出して立ち上がった
驚いたのか保田は2歩程後ずさる
「な……なんだ後藤?……」
「気分悪いので保健室で寝てきます」
「は…はぁ?」
真希はリュックを背負うと教室の出入り口に向かって歩き出した
「待て!まだ話しは終ってない!」
ガラガラ…バン!!
真希は教室の外へ出ていった
「ったく、しかたない、じゃあ授業始めます」
保田は出て行った真希を諦め授業を始めた
「ふぇー、うるさいよあの先生」
独り言を呟きながら真希は廊下を進んで行った
目的地は真希がいつも昼寝に使う保健室
あそこほど眠れる場所はないと真希は思っている
ガラララ
保健室には、丁度よくベッドも空いており保健の先生もいなかった
真希はリュックを置いてベッドに滑りこむと即座に眠る態勢に入った
〜♪
メールの着信音が静かな保健室に流れる
- 207 名前:第7話―束の間の日常2―後藤真希― 投稿日:2003年04月27日(日)16時58分48秒
ポケットから携帯を取り出し、今届いたメールの内容を画面に表示させる
メールの差し出し人はなつみだった
『おっす、真希起きてる?なっちは今日寝坊しちゃった。てへ。でさ、今日もマリア持ってくから一緒に見よ』
なつみにしては短い文章だと真希は思った
メールを打ち返そうと真希はいろいろボタンを押していくが
再び強烈な睡魔が襲いかかってきて、真希はメールを打つのを途中で止めて携帯をしまってしまった
「…………zzzzzzz」
真希は既に眠りに入っていた
・
・
・
熟睡して目を覚ましたのは12時半頃だった
真希が起きてまずしたのはメールの返信
『マリア……別にいいよ、って言うか今からお昼休みじゃん?一緒に屋上でお弁当食べない?』
メールを送ってから数分、なつみからの返事が届いた
『わかった屋上で待っててよ』
なつみからの返事をもらい、真希はリュックを背負うと保健室を出ていく
眠気が完全に飛んで、真希は普段の調子を取り戻し始めていた
屋上に着いた真希は日陰になっているところを陣取りなつみを待った
- 208 名前:第7話―束の間の日常2―加護亜依― 投稿日:2003年04月27日(日)17時00分10秒
- 教室で自分の席についた亜依は普段通りに一時間目の授業の準備をはじめていた
「あいぼん、あいぼん」
「ん、なんや?のの」
後ろの席の辻希美が話し掛けてきたので亜依は身体を後ろに向けた
「今日転校生が来るらしいれすよ」
「え?そうなん?」
初耳だった亜依は驚きの表情を見せた
「あいぼん、やすんでたからしらないのれす」
「ふ〜ん、転校生なぁ……」
亜依はいつも家にいる時は標準語で話す
でも学校にいる時、特に仲のいい友達と話すときは関西弁である
だから家で関西弁を使う事があるとすればかなりてんパっている時と考えてもよい
「あいぼん、がっこうやすんでなにしてたんれすか?」
「ん、ああ、ちょっとな……まぁ、大した事ちゃうんやけど、ええやんそんなこと」
「あ、せんせいきたのれす」
辻の言葉でバッと前を向く
- 209 名前:第7話―束の間の日常2―加護亜依― 投稿日:2003年04月27日(日)17時01分01秒
「えー、みんなおはよう、今日は前から言っていた転校生を紹介する、松浦さん、入って」
先生の言葉に“松浦さん”と呼ばれた人が教室に入ってくる
「初めまして、松浦亜弥です、えっと、あたしはこの間まで入院していて学校にこれませんでした
一年ぐらい入院してやっと学校に来れるようになりました
そのせいで本当はみんなよりもひとつ年上なんですが
気軽にタメ口で話してください、よろしくお願いします」
その少女は亜依が思うには“すごくカワイイ”子だった
茶色に染めた髪、パッチリ開いた目、その全てが印象的で亜依はしばらく彼女に見とれていた
「じゃあ、あそこの後ろから2番目の席に座って」
「はい」
亜依はその子の席が自分の隣になった事にも気付かず、その子が席についた後も彼女を見つめていた
ふと、彼女と目が合った、ずっと見ていた亜依の視線を感じ、彼女が亜依のほうを振り向いたのだ
亜依は慌てて視線をそらす、すると彼女が「よろしく」といってきたので
亜依も「よ、よろしく」と返した
・
・
・
- 210 名前:第7話―束の間の日常2―加護亜依― 投稿日:2003年04月27日(日)17時01分58秒
「へぇ、あいぼん関西弁しゃべれるんだね」
「うん、小さい頃は奈良に住んどったから」
一時間目終了後、最初にしゃべった事もあって二人は仲良くなっていた
「でも亜弥ちゃんでないね、関西弁」
「でしょ?こっちの暮らしが長くて忘れちゃった」
亜依と亜弥は気が合った
元々同じ関西人だし、年もひとつしか違わなかったのがその理由だろう
「なんか初めて会った気がしないね」
「そうやな、いい友達になれそうやな」
授業の間の休み時間はずっと二人で他愛のない話をしていた
何ともない会話だが、今日会った二人とは思えないほど話しは弾んだ
「あ、お昼一緒に食べよっか?」
「うん、いいよ」
昼休みのお弁当の時間
二人は正面に向かい合う様に机をくっつける
「あいぼんって、自分でお弁当作るの?」
「ううん、お姉ちゃんが作ってくれる」
「あ、お姉ちゃんいるんだ」
「うん、めっちゃ優しいで」
「ふーん、今度会ってみたいな」
・
・
・
- 211 名前:∬´◇`∬<ダメダモン… 投稿日:∬´◇`∬<ダメダモン…
- ∬´◇`∬<ダメダモン…
- 212 名前:第7話―束の間の日常2―加護亜依― 投稿日:2003年04月27日(日)17時03分10秒
- ・
「ねぇ、その卵焼きちょうだい」
「じゃあ、そっちのから揚げくれる?」
「いいよいいよ、交換交換♪」
・
・
・
お弁当を食べ終わり、また二人でしゃべり始める
「あたしさー、ここへの編入いきなり決まったからこの辺りの事よく知らないんだよね」
「そうなん?」
「うん、だからこの辺り色々案内してもらえるとうれしいなー」
「ええで、案内するぐらい」
「本当?!じゃあ行こう!」
「え?まだ学校終わってへんやんか」
「そんなのいいじゃん、一日二日サボったって大した事ないよ」
「あるよ!成績下がったらお姉ちゃんに叱られるんだから!」
「えー?つまんなーい……あ、そうだ、じゃあ手をお腹に当ててちょっとかがんで」
「え?こう?」
亜依は言われたままの姿勢をとる
「え?あいぼんお腹痛いの?!大変だ!すぐ帰ったほうがいいよ!あ、あたしついて行ってあげるから!」
「え?え?え?」
亜依は大声でしゃべる亜弥の行動が理解できずに疑問符をあげる
- 213 名前:第7話―束の間の日常2―加護亜依― 投稿日:2003年04月27日(日)17時04分09秒
「(ほら、早く鞄持って)」
亜弥が小声で話す
―――あ、芝居か……筋書きは多分あたしがお腹痛いから帰る、で亜弥ちゃんはあたしに付き添ってくれると
亜依は亜弥に背中を押され教室を出る、そしてそのまま学校を出ていった
「亜弥ちゃん!言うてくれんと分からへんやんか!」
「まぁまぁ、でもこれで"成績"は下がらないでしょ、ちゃんとみんなに聞こえるように言ったから」
―――はぁ、亜弥ちゃんってよう分からへん
「ほら、早く行こ!なんか楽しい場所!案内してくれるんでしょ?」
「あ、うん……よし!乗りかかった船や!どっか行こ!」
「おう!行こう!!」
半ば亜弥の強制で二人はお昼の街に遊びに出かけた
- 214 名前:第7話―束の間の日常2―安倍なつみ― 投稿日:2003年04月27日(日)17時04分53秒
ピピピピ!ピピピピ!ピピピピ!
ジリリリリ!ジリリリリ!ジリリリリ!
ピリリリリ!ピリリリリ!ピリリリリ!
ジリリン!ジリリン!ジリリン!ジリリン!
マンションの一室で十数個の目覚しが鳴り響いていた
枕元でそれだけの騒音が鳴っているにもかかわらずその部屋の主は眠りこけていた
ピピピピ!ピピピピ!ピピピ……
だん!だん!だん!だん!だん!だん!だん!だん!だん!だん!だん!だん!
時計が鳴り始めて5分後、ようやくその部屋の主である少女が
時計の頭についている、ボタンをだんだんと叩いて音を止めていく
彼女がやっと目を覚ました、
そう、この少女の名は、安倍なつみ
「はぁー眠たいよー、なんで学校なんかあるんだろう」
当たり前の事ながら、昨日早く眠っていれば気分爽快で目覚められるのだ
眠くてしかたがないのは、マリアを真希の家で見た後、帰ってすぐ寝なかったからだ
ベッドに入ったままのなつみは、丁度良い感じにまどろんできて再びうとうとし始めた
- 215 名前:第7話―束の間の日常2―安倍なつみ― 投稿日:2003年04月27日(日)17時06分01秒
〜♪
枕元の携帯がなっている
まどろみの中から引きずり出され、なつみは携帯を取ってディスプレイも見ず通話ボタンを押した
「もしもし、だれ?」
「ん?矢口だよ、なっち何してんの?」
「別に……特に何もしてないよ……」
「あたし今日なっちと一緒に学校行こうと思ってなっちのマンションの下で待ってるんだけど」
「……別に一緒に行くのはいいけどさ、早過ぎない?まだ7時じゃん……」
「はぁ?何いってんの?もう8時じゃん」
「へー、あ、そうなんだ、もう8時なんだ……」
「……」
「……………8時?!」
なつみはバッと置き上がり時計を見た、確かに短針は8を指していた
「うそぉ!?」
なつみは矢口と時計を疑った、矢口が嘘をついているだけなら時計が8時になっているのはオカシイ
時計が電池の消耗か何かで時間がずれたにしても十数個もある時計がいっせいに狂うはずがない
なつみは本当に8時だと認識した
- 216 名前:第7話―束の間の日常2―安倍なつみ― 投稿日:2003年04月27日(日)17時07分14秒
「なんで8時なんだよぉ!時間セットしまちがえたかなー?」
なつみは勘違いをしていた
一度目覚しがなったのは7時、そのままベッドの中で数分しか経っていないと考えているが
本当は二度寝をしてしまい矢口からの電話の着信音で再び目を覚ましたのだった
「ちょっ、矢口待ってて!すぐ仕度するから!」
「え?今から仕度すんの?!」
プツッ
電話を切った
顔を洗い、服を着替え、メイクをして、冷蔵庫の中からコンビニのおにぎりとお茶のペットボトルを取り出す
鮭おにぎりを口につめこんでお茶で流し込む
ドンドン!
喉に詰まったのか胸をドンドンと叩いて、もう一度お茶を飲む
準備が完了して鞄を持って外に出る
「あ、携帯忘れた」
携帯電話をさっき枕元に置きっぱなしだったので一度取りに戻る
「あったあった、」
携帯をポケットにしまって外に出る
鍵を閉めようとポケットをあさるが鍵が出てこない
「あ、鍵忘れた」
今度は鍵を忘れ、再び部屋の中に戻る
「よし、今度こそOK」
やっと完璧に準備ができ、家を出てエレベータを使って下に下りる
- 217 名前:第7話―束の間の日常2―安倍なつみ― 投稿日:2003年04月27日(日)17時07分56秒
「矢口ごめーん」
「あ、ねぇ、もしかしてなっち寝てた?」
「うん、矢口からの電話なかったらヤバかったよ」
「どーでもいいけどさ、なっち5分で準備できるの?」
「まぁね」
学校へは歩いて20分程、たった5分で準備した事もあって授業開始時刻には余裕だった
「なっち、なんか良い事でもあった?」
「え?なんで?」
「この前と全然顔違うよ、何日か前まで世界の終わりみたいな顔してたよ」
「え?そう?」
「そうだよ、なんかあったでしょ?」
「別に大した事じゃないんだけどさ、真希がね、昨日やっと退院したの」
「……え?そんだけ?」
「うん、それだけ」
マンションの下でなつみを待っていたのはなつみのクラスメイト、矢口真里
真希よりは付き合いが長いのだが、なつみにとっては真希の次に大事な親友だ
- 218 名前:∬´◇`∬<ダメダモン… 投稿日:∬´◇`∬<ダメダモン…
- ∬´◇`∬<ダメダモン…
- 219 名前:第7話―束の間の日常2―安倍なつみ― 投稿日:2003年04月27日(日)17時10分55秒
教室についたなつみは、自分の席についた後、携帯をポケットから取り出す
メールの着信はなかったのでポケットにしまうが、
―――真希にメールでも打とうか……
そう考え、もう一度携帯を取りだした
慣れた手つきで1〜0のボタンを押して文章を作っていく
―――明後日日曜日だし、遊びにでも誘おうかな
「おーい、なっち」
「ん?なに?」
矢口が話し掛けてきたので文章を保存して一度携帯を閉じる
「今度の日曜遊びに行かない?」
「へ?!」
「何?あ、もうなんか予定入ってる?」
「ううん、今は何も……」
―――今から入るところだったけど
「矢口見たい映画あるんだよね、なんだっけ、あの魔法学校のやつ」
「ハリーポッター?」
「そうそう、それ、あ、言っとくけど、秘密の部屋じゃなくて、賢者の石の方ね」
「ん?まだやってんの?そっち」
「普通にはやってないんだけど、矢口の知ってる映画館でリバイバルやってるんだ」
「ふーん」
- 220 名前:第7話―束の間の日常2―安倍なつみ― 投稿日:2003年04月27日(日)17時11分46秒
ガラガラ
話の途中だったのだが先生がやってきてしまった
「あ、じゃあまた後でね」
側に来ていた矢口は自分の席に戻った
―――1時間目が終わった後も矢口は話しかけてきた
「ねぇねぇ、映画見終わったらさ、お昼食べてどっか遊びに行こう?でさ、矢口この前面白い店見つけたんだけど―――」
なんだか矢口がすごいはしゃいでる様に見えた
いつもよりテンションの高い矢口に合わせて「うん」「OK」等と相槌をうってこの休み時間も終わった
二時間目の授業が始まり、すっかり出し忘れたメールを送った
その日は珍しく真希からの返事が遅かった
なつみの携帯が振動でメールの着信を知らせたのはお昼休みまで後数分というところだった
お昼の誘いがあったのでOKの返事をした
―――あ、そうだ、今日お弁当作る時間なかったから、
購買部でパン買って来なきゃ……
- 221 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年04月27日(日)17時19分46秒
- 更新しましたです
後藤:本編更新しないで短編ばっかりってどういうこと?
作者:いえ、これにはふかーい訳がございまして……
安倍:なっちほとんど登場してないべさ
作者:いえ、それにもふかーい訳がございまして
加護:で、結局真希姉ちゃんはどっちとくっつくんや?
作者:いえ、それは……いえません
後藤:なんで当事者に言えない訳?
作者:まだその部分が書いていなくて
安倍:そんな言い訳が通ると思ってるべか?
作者:あ、なっち何でバットなんか持って……?
加護:ウチラは一体どうなるんかなー?
作者:あ、加護までスパナなんか持って……
後藤:ちょっと焼きいれたほうがいいね?
作者:う、ごっちんまで鉄パイプなんか……
後藤安倍加護:おらおらおらおら!
作者:ぐぁぁぁぁぁ!
というわけで現在執筆中
↑はどういうわけかといいますと
「収拾がつかない」ということが言いたい訳です
- 222 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年04月27日(日)17時21分00秒
- >>204さん
保全ありがとうございます
話の最後を隠すレス
- 223 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年04月27日(日)17時21分44秒
- えー、次回更新もまた未定です
どうか見てくださってる方々
飽きないでください
ではまた、ごきげんよう
- 224 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月03日(土)18時00分18秒
- ↑↑
っていうか飽きるほど進んでないでしょ。
飽きないだろうけど、待ちくたびれる
- 225 名前:ティモ 投稿日:2003年05月04日(日)23時53分10秒
- Forever Kissとてもよかったです!次回作も期待してます。
メンタイさんのごまたかがまた見たいっす!
ごまたか大好きなので☆
- 226 名前:tsukise 投稿日:2003年05月05日(月)22時16分49秒
- 更新、お疲れ様ですっ。
おおっ、あやや登場ですねっ!
あいぼんとのかけあいが中々面白いですねっ!
続き楽しみにしていますので、頑張ってくださいね。
- 227 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月20日(火)07時26分18秒
- おもしろいよ〜
- 228 名前:8話―午後の日常―後藤真希―安倍なつみ― 投稿日:2003年06月15日(日)13時47分34秒
「まだかなー」
なつみを待っていた真希は既にリュックからお弁当も取りだし準備万端、しかしなつみはまだ来ない
「先食っちゃうぞー」
真希が来てそれから15分ほど後、ようやくなつみがやってきた
「あれー、真希どこだー?」
―――はぁ?こんな時に見えないフリとか止めてよ…今完璧に視界に入ったじゃない…
正面にいる真希になつみはまるで気付かない、それこそ視界には入ったものの真希に焦点は合わなかった
“ちょっと、いい加減に”、真希はそう発しようとした、が、声は出なかった
その瞬間、真希の体を激痛がを襲った
―――何…これ?…
急に全身を駈け巡る痛み、真希は全身をコンクリートに打ちつけたような痛みを覚える
痛みは特に頭が酷く、真希は片手で頭を抑えた
(二日酔い+インフルエンザ)×100
そんな公式が真希の頭の中には浮かんだ
激痛に体の自由を奪われ真希の膝に上に乗っていたお弁当箱が屋上の床に落ちる
真希はあまりの痛さに気を失いそうにもなる、しかし
「あれ、真希さっきからココにいた?」
なつみに声を掛けられた瞬間、今までのそれが嘘の様に急に痛みは飛んだ
- 229 名前:8話―午後の日常―後藤真希―安倍なつみ― 投稿日:2003年06月15日(日)13時48分17秒
―――なんなんだろ…今の感覚……
「真希、何か顔青いけど大丈夫?」
「え?ああ、大丈夫」
近づいてきていたなつみに気付き、とりあえず返事をした
―――今の感覚って…まさかあの幽霊の人が言ってた……
・
・
・
なつみとのお弁当タイムが始まり、なつみは楽しくお弁当を食べながら話をしていたが真希は一人考えこんでいた
―――魂が抜ける感じってあんな感じなのかな…それとも違うのかな……
一人考えこむ真希をよそになつみは1人で話しを進めて行く
「今日さ、メールでも書いたけど寝坊しちゃってさ、お弁当作る時間なかったんだ」
―――でも、さっきのは痛いだけで、魂が抜けるって言うのとは違う感じがするんだよな……
「真希、なっちの話ちゃんと聞いてるべか?」
「んぁ?ああ、ちゃんと聞いてるよ」
「ホントに?」
「ホントだって、寝坊しちゃってお弁当作れなかったんでしょ?」
「…ちゃんと聞いてるか…でさ、購買部混んでてさー、中々パン買えなかったの」
真希はとりあえず考え事は後回しにして、会話に専念することにした
別に話しは聞いていなかったわけじゃないので、すぐに会話には入っていけた
- 230 名前:8話―午後の日常―後藤真希―安倍なつみ― 投稿日:2003年06月15日(日)13時49分05秒
そしてお弁当も食べ終わった頃、なつみが新たな話しを振ってきた
「真希、明日に遊びに行かない?」
「ふぇ?」
いきなり振られた話しに真希は素っ頓狂な声をあげる
「いや、ホントは明後日の日曜にしようと思ったんだけど、
矢口が『なっち、明日映画見よ!』とか言うからさ、明後日しか空いてなくて、」
なつみは真希が聞いてもいないことをせせこましく話す
真希は別に断る理由もないのですぐにOKの返事をする
「うん、別に良いよ」
「ホントに?じゃあ、明日どこに行くとか考えとくよ」
キーンコーンカーンコーン
学校のチャイムのおとが学校中に鳴り響く、昼休み終了の合図
「鳴っちゃった…あ、後今日もマリア見に行くから」
「わかった」
―――なっちなんか変…
真希は少しなつみの様子がおかしいとは思ったが特に突っ込みはしなかった
「じゃあまた夜に真希の家に行くよ」
「うんOK」
昼休みの終わりに、二人はそう言って別れた
「さて、昼からは真面目に授業受けようかな」
真希は独り言を呟くと、リュックを背負って校舎の中に戻って行った
- 231 名前:8話―午後の日常―後藤真希― 投稿日:2003年06月15日(日)13時50分53秒
下校時間になり、真希は特にする事もなくいつもと同じように帰ろうとした
いつもは、自転車置き場で待っている亜依と一緒に帰るのだが、今日は少し違った
真希が高等部校舎の玄関にある自分の靴箱を開けると自分の靴以外に封筒が入っているの事に気が付いた
「何だこれ?」
真希は不思議に思い宛名を見る
『後藤真希様』
「あたし宛てか、何だろう?」
真希はその場で封筒を空け中身を確認する
「なんか、剃刀とか入ってたら嫌だな……お、手紙だ…何々……
『今日の放課後、午後4時に高等部校舎裏でお待ちしてます…中等部3年、高橋愛』誰だよ?」
聞き覚えのない差し出し人、無視するわけにも行かず、とりあえず校舎裏に向かう事にした
「あ、そうだ」
真希はポケットから携帯を取り出すとどこかへ電話を掛ける
「もしもし、亜依」
『ん、何?』
「あたしさ、誰かから呼び出されちゃってさ、すぐ帰れるかどうかわからないんだ」
『いいよ、今友達の家だし、帰れるんだったら電話して?』
「OK、じゃあ、ちょっと待っててね」
プツ
- 232 名前:8話―午後の日常―後藤真希― 投稿日:2003年06月15日(日)13時51分50秒
真希は電話を切った後携帯のディスプレイに表示される時間を見てみた
3:48
「そろそろ行くか」
真希は呼び出された時間が近いので校舎裏へ向かう事にした
その場所に向かうと1人の少女がいた
サラサラのショートヘア、パッチリと開いた目
真希とは違う中等部の制服に身を包んでいた
「あなたが……っと、……高橋愛ちゃん?」
真希は手紙の中の差し出し人の名前を確認して聞いた
「はい、そうです、いきなり呼び出したりしてすいません」
「いいよ別に…で、何かな?」
「えっと、あたし前から、後藤先輩の事が好きでした!付き合ってください!」
真希は驚いた
校舎裏に呼び出された時点でもしかしたらとは思っていたが本当にそうとは思わなかった
- 233 名前:8話―午後の日常―後藤真希― 投稿日:2003年06月15日(日)13時52分27秒
「あの……駄目ですか?」
真希がずっと黙っているので愛は返答を尋ねた
「あ、ああ……」
真希は驚きのあまり声もまともに出なかった
「……やっぱり、女同士とか、気持ち悪いですよね?……すいません」
愛はそのまま帰ろうとしたので真希は慌ててひきとめる
「あ!違う!そうじゃないの!」
愛が立ち止まって話を聞いてくれる態勢に入ったので
まずは愛の言っていた事で間違っていた事を否定する
「あの、あたしそういう事には偏見ないんだ。どっちかって言うとあたしも…そう、同性……愛者、だし」
真希は何を言おうか考えながら言葉を並べていく
「それじゃあ…」
「でも!」
真希は愛に出来るだけ期待を抱かせない様に喋る
「あたし、今好きな人がいるんだ。愛ちゃん以外に」
「……そう、ですか……」
そのがっかりした様子を見た真希は予定に入っていない言葉を喋り出す
真希は優しく、ただその子を悲しませたくなかった
「愛ちゃんはあたしの事よく知ってるかもしれないけど、あたしは愛ちゃんの事全然知らないんだ。
……でも、もし愛ちゃんがあたしを今あたしの好きな人から振り向かせて見せるって言うなら…別に良いよ」
- 234 名前:8話―午後の日常―後藤真希― 投稿日:2003年06月15日(日)13時53分05秒
愛はそれを聞くとパッと花が咲いた様な笑顔になった
「ホントですか?」
「自信ある?」
「あります!絶対、後藤先輩を今好きな人から振り向かせて見せます」
「そう、じゃあ、頑張ってみなよ」
―――優しさから…彼女の悲しい顔を見たくないから、あたしはそう言った
でもこれが原因で、あたしはより酷く壊れる事になる
きっかけは別の事、でもこれがなければ、未来はもっと別の形を迎えていたのかも知れない
もっと違った…未来が……
- 235 名前:8話―午後の日常―加護亜依― 投稿日:2003年06月15日(日)13時54分25秒
「桃色の片思うぃ♪恋してる♪」
「Yeah!メッチャホリディ♪」
「ハシャイじゃぁってよいのかな♪」
「亜弥ちゃん、そろそろ代わってーやー」
今二人がいるのは真昼間から営業している近所のカラオケ屋。
「えー、あと3曲待ってよ、あと少しじゃん」
「イヤや、さっきから何曲連続で歌ってんの?ウチまだ2、3曲しか歌ってへんで」
カラオケでは亜弥はほとんどマイクを離さず、自分のレパートリーを歌い上げていた
「だってもう予約入っちゃってるもん」
「じゃあ、それだけ歌ったら代わってや」
「OK」
・
・
・
- 236 名前:8話―午後の日常―加護亜依― 投稿日:2003年06月15日(日)13時55分00秒
「はぁー……」
カラオケを出た後、亜依は大きなため息をついた
結局亜弥はあの後1曲だけ代わったものの、その後すぐに復帰してその後はマイクを離さなかった
「ごめんねー、あたしマイクとか鏡とかあると性格変わっちゃうらしいんだ」
亜依は“なるほど”とは言えなかった、あまりにも似合いすぎて
「もうええよ、次はどこ行く?」
ゲーセン、カラオケ、近くにある娯楽の場所へはもう行った
亜依は次はどこが言いか亜弥に聞いてみた
「うーん、もう良いかな、そうだあたしの家この近くなんだ、良かったら来ない?お茶ぐらい出すよ」
亜依も次に行く場所が特に思いかばなかったのでお邪魔することにした
「さぁ、入って入って」
「はーい、お邪魔しまーす」
「じゃますんのやったら帰ってー」
「あいよー、ってなんでやねん」
近畿地方ではまだ通じる吉本ギャグをかわしながら二人は家に入った
「うわー、広っ!ココ1人で住んでんの?」
ザッと3LDK、亜依は自分の部屋と比べるのも馬鹿馬鹿しく思った
「うん、このマンションの持主さんがね、えと、お母さんの従姉妹の夫の母親のはとこかなんかなんだって」
「遠っ!」
あまり近くない親戚だと亜依は思った
- 237 名前:8話―午後の日常―加護亜依― 投稿日:2003年06月15日(日)13時55分36秒
「そこ座ってて」
そう言われ、亜依はリビングのソファに座る
そして数分、紅茶をもって亜弥がキッチンから戻ってきた
「はい」
そう言って亜弥が紅茶とクッキーをすすめる
「あ、ありがと、いただきます」
亜依はクッキーを食べて紅茶を飲む
何か話そうとしたが話題が見つからずそのままクッキーを食べ「おいしいよ」等と言っていた
亜依は何か違和感を感じた
ふと亜弥の顔を見ると目が合った
ずっと亜弥が亜依の事を見ていたからだ
「ん、どうかした?」
不思議に思って問いかけて見た
「亜依ちゃんってカワイイよね」
「へ?」
亜依はいきなり何を言い出すんだばかりに素っ頓狂な声を出した
- 238 名前:8話―午後の日常―加護亜依― 投稿日:2003年06月15日(日)13時56分09秒
- 「亜依ちゃんって好きな子とかいるの?」
「んぇ?いないよ」
何が聞きたいのか分からないまま亜依は質問に答える
「あたし亜依ちゃんの事好きなんだ」
「はぁ?!」
亜依は驚きの声を出した
「今日初めてあった時にビリビリって来た、ヒトメボレかな」
「……」
亜依はもう驚きで声も出なくなっていた
そして次の瞬間、亜依はソファに押し倒された
「ちょ…!」
それを拒む様に声を出したが聞く耳を持たなかった
だんだんと亜依の顔に亜弥の顔が近づいてくる
「キスしたい……」
そう言って亜弥はドンドン顔を近づけてくる
亜依は逃げようとしても肩を抑えられているので逃げられない
そして唇が振れるまで後2、3cm
〜♪
- 239 名前:8話―午後の日常―加護亜依― 投稿日:2003年06月15日(日)13時56分46秒
- その唇が触れるか否かの瞬間に亜依の携帯の着メロが鳴った
その音に我に返ったのか亜弥の動きが止まる
亜弥はゆっくり抑えていた亜依の肩から手をどけて亜依の上から自分の身体をどけると「出れば?」と言った
亜依は急いでポケットから携帯を取り出すと通話ボタンを押した
『もしもし、亜依』
「ん、何?」
『あたしさ、誰かから呼び出されちゃってさ、すぐ帰れるかどうかわからないんだ』
「いいよ、今友達の家だし、帰れるんだったら電話して?」
『OK、じゃあ、ちょっと待っててね』
プツ
姉からの電話はすぐに切れた
亜依はさっきキスされかけた事を考えて、何も言い出せなかった
数十秒ほどその部屋には沈黙が流れた
外は「物干し竿売り」の車が通っているらしく、その部屋の沈黙をほんの少しだけ和らげていた
- 240 名前:8話―午後の日常―加護亜依― 投稿日:2003年06月15日(日)13時57分32秒
「ごめん」
ようやく亜弥が口を開き、その場の沈黙が消えた
「いや、別に…」
亜依はどう返して言いか分からず口篭もってしまう
「あの…さっきも言ったけど、あたし亜依ちゃんの事好きなんだ。だからキスしたいとか思うし、
色んな所遊びに行きたいとか思うんだけど……あたし感情表現ってどうやれば良いのか分からないんだ
好きな子が目の前にいても何話して良いかわかんなくて…」
亜弥はほぼ一年入院していた。そのせいで同じ年頃の友達をなくしてしまって、どうや他人と接して良いか分からなくなってしまったのだ
亜依は自分には好きな人がいる事などとうの昔に理解している
真希が好きだと、でも真希は自分に気があるとは気付いていない。このまま亜弥と付き合ってしまえば丁度姉の事も忘れられて良いのかもしれない
そう亜依は考えた
「……ウチ、今は亜弥ちゃんの事なんとも思ってへん、ただの友達と思ってる。だからさっきみたくキスされても拒むし
……でも、これからは好きになれるかも知らん」
- 241 名前:8話―午後の日常―加護亜依― 投稿日:2003年06月15日(日)13時58分46秒
―――この言葉は亜弥ちゃんに失礼なのかもしれない
あたしは好きな人を忘れるために亜弥ちゃんを利用してるだけかもしれない
もしかしたら可哀想と思ったのかもしれない
感情を、スキという感情を持っているにもかかわらず、上手く伝える事が出来ない亜弥ちゃんを……
ウチ、このままでええんやろうか?
「ホントに?」
「亜弥ちゃんのこと好きになるかどうかはわからんで」
「あたしの魅力に気づかせてあげる!絶対に好きになってもらうんだから!」
子供のような笑顔を浮かべる亜弥を見て亜依はひとまず安心した
それから数分後、亜依の携帯に真希から電話がかかってきた
そして、亜依は亜弥に「また、遊ぼう」と言い真希が待っている学校へ向かった
- 242 名前:ForeverKiss 投稿日:2003年06月15日(日)13時59分33秒
- to be continued
- 243 名前:ForeverKiss 投稿日:2003年06月15日(日)14時00分18秒
- 今日の更新 >>228-242
- 244 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年06月15日(日)14時04分16秒
- こちらもヒサブリの更新です。
えー、私事ですがついに念願の自作パソコンを購入いたしました。
しかしながらまだネットワークには接続できておりません。
後2,3ヶ月もすれば家でインターネットが出来るようになると思います。
そうなったらたぶん更新速度はアップするとは思います。
今日は以上で更新終了です。
それではまた。
- 245 名前:うまい棒メンタイ味(i-mode) 投稿日:2003年06月15日(日)19時14分11秒
- ちょっとネットカフェの時間を気にしてて 皆様へのレス書くのを忘れてしまいました。 次回更新時にまとめてお返ししたいと思います。 失礼しました。
- 246 名前:tsukise 投稿日:2003年06月16日(月)23時25分01秒
- 更新お疲れ様ですっ!
ご、ごっちん…っ、身体は大丈夫なんでしょうかっ!?
そして高橋登場ですねー!加護&松浦の展開にも期待大ですっ。
あと、自作PC購入、おめでとうございますっ!
これからの更新も楽しみにしているので、頑張ってくださいねっ
- 247 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年06月19日(木)16時27分55秒
- …失敗発見してしまいました。
鬱です。
>>230
五行目
「いや、ホントは明後日の日曜にしようと思ったんだけど、
矢口が『なっち、明日映画見よ!』とか言うからさ、明後日しか空いてなくて、」
となっていますが、
「いや、ホントは明後日の日曜にしようと思ったんだけど、
矢口が『なっち、明後日映画見よ!』とか言うからさ、明日しか空いてなくて、」
「明日」と「明後日」が逆になっていました。スイマセン
では、お詫びに更新いたします。
- 248 名前:9話―午後の日常2―後藤真希―加護亜依― 投稿日:2003年06月19日(木)16時29分55秒
真希は愛と別れた後、校門の前で亜依を待っていた
「お姉ちゃーん!」
遠くから亜依が走ってくるのが見えて真希はマウンテンバイクのスタンドを上げる
「お待たせ」
「いや、そんなに待ってないよ、早かったじゃん、辻ん所行ってたにしては」
「ん、今日はののの所じゃないよ」
「え?違うの?」
亜依が友達の家に遊びに行くイコール辻のところへ遊びに行く、と真希は思っていたのでその亜依の言葉は以外だった
「うん、今日は亜弥ちゃんの所」
「アヤちゃん?誰それ?聞いた事ない」
「それはそうだよ、今日転校してきた子だもん」
「ふぅーん、まぁいいや、帰るよ」
真希がそう言って自転車にまたがったので亜依も話を止めて六角に飛び乗った
「んじゃ、行くよ」
「オッケー」
二人を乗せた自転車は朝の様に走り出した
- 249 名前:9話―午後の日常2―後藤真希―加護亜依― 投稿日:2003年06月19日(木)16時31分12秒
「そうだ、お姉ちゃんは誰に呼び出されたの?」
「え?あぁ……なんかね、人違いだった。あたしの靴箱に手紙が入ってたんだけど、隣の人の靴箱にいれようとしてたみたい」
「人違い?じゃあ、宛名とか書いてなかったの?」
「あ、うん、書いてたらすぐに人違いって分かるのにね」
真希は嘘をついた。とくに理由はなかったが、何か亜依にはなそうとは思わなかった
真希自身、何故ウソをついてまで隠した理由がわからないのだ
「お、そうだ、ちょっと寄り道していい?」
「どこに?」
「スーパー。冷蔵庫何も入ってないんだ」
真希が十字路を曲がり商店街通りに入ると晩御飯の買い出しの主婦で賑わうスーパーが見えてきた
真希は普段行くスーパーの前の駐輪場に自転車を止める
「亜依はココで待ってる?」
「ん、ついてく」
中学高校生と言う、スーパーには不似合いの二人が中へと入っていく
真希は灰色のスーパーのカゴを持って陳列棚を物色する
「亜依は晩御飯は何食べたい?」
「から揚げ」
「そんなの今から作れるわけないじゃん。それに太るぞ」
「ふーんだ。太らないもん」
スーパーの中を進みながら会話をする二人
- 250 名前:9話―午後の日常2―後藤真希―加護亜依― 投稿日:2003年06月19日(木)16時31分56秒
「じゃあ、ハンバーグ」
肉コーナーを通っている時に亜依がそう口にする
「肉しか思い浮かばないね、じゃあ、それでいい?」
「いい」
とりあえずメニューはハンバーグに決まり、真希は材料をカゴに放り込んで行く
「そうだ。卵もなかったな」
真希は卵もなかった事を思いだし、卵コーナーにも進んで行く
そのとき真希の目にダンボールの切れ端に太いサインペンで書かれた文字が写った
『卵L寸1パック69円−お一人様1パック限り』
それを見て真希の目がキラリと光る
「やった、今日は亜依がいるから2つ一度に買える」
真希は積まれている卵のパックを2つとってカゴの中にいれた
「よし、亜依行くよ」
色々入ったカゴを持ってレジへと向かう
「2052円になります」
真希は財布から千円札1枚、十円玉5枚、一円玉2枚を取り出して青い受け皿のような勘定皿に置く
「丁度お預かりします、ありがとうございました」
レジと出入り口の間にある机の上で白いスーパーのビニール袋に買ったものを詰めると足早に店を出る
- 251 名前:9話―午後の日常2―後藤真希―加護亜依― 投稿日:2003年06月19日(木)16時32分30秒
「亜依、ちょっと荷物見ててよ」
「んぇ?また入るの?」
「うん、卵安いからね」
真希はポケットからヘアゴムを取り出すと、髪の毛を後ろで一つにまとめた
そして違うポケットから伊達眼鏡を取り出し、その眼鏡をかけると再び中へ入っていった
その光景を見て亜依は一言呟く
「なんで変装道具持ってんねん……」
真希が店から出てくると亜依に卵を預けまた変装を始める
ポケットからもう一つヘアゴムを取り出し、さっきのヘアゴムをはずし、今度は左右で一つずつまとめる
そしてさっき伊達眼鏡を出したポケットに眼鏡を戻し、今度はサングラスを取り出して掛けると再び中へ入っていった
再び亜依が一言呟く
「それやったらただの怪しい人やん……」
・
・
・
- 252 名前:9話―午後の日常2―後藤真希―加護亜依― 投稿日:2003年06月19日(木)16時33分37秒
- 「「ただいまー」」
帰った二人は自分たちの部屋に鞄を置きに行く
真希は冷蔵庫に買ってきたばかりの食材を入れていき、亜依は普段着に着替えた
「亜依ー、お風呂にお湯はってきて?」
「うん、わかった」
着替え終わった亜依はお風呂場へ行き、言われた通りお湯を張り始める
その間に真希も普段着に着替え夜御飯を作り始める
「お姉ちゃん、お風呂の準備できたよー」
「じゃあ、先入っちゃってー、まだ御飯出来てないからー」
「はーい」
真希はハンバーグのタネをこねながらお風呂場にいる亜依にそう言った
両手でタネをキャッチボールし上手く形を整えていく
「こんなもんでいいか」
後は焼くだけ、そのとき真希達の部屋から着信メロディが聞こえてきた
「うお!電話だ!」
真希は部屋にもどると制服のポケットに入れっぱなしだった携帯を取り出すとディスプレイを見た
そこに表示されていた名前は、ついさっき登録したばかりの物だった
- 253 名前:9話―午後の日常2―後藤真希―加護亜依― 投稿日:2003年06月19日(木)16時34分36秒
「もしもし」
『もしもし、後藤先輩ですか?』
「うん、そうだけど」
『あの…えっと……明後日の日曜、お暇ですか?』
「明後日?暇だけど」
『あの、よろしければ……一緒に、遊びに…とか……』
「ああ、別にいいよ」
『いいですか?じゃあ、えっと…お昼の1時に…どこで待ち合わせしましょう?』
「どこでもいいけど……あたし達が知ってる共通の場所って学校ぐらいしかないじゃない?」
『じゃあ、1時に学校でいいですか?』
「うん。いいよ」
「じゃあ、明後日楽しみにしてます。」
愛から真希へのデートの誘い
真希は始め一緒に遊びに行くぐらいならと軽い気持ちで考えていた
「…おお、そうだ、ハンバーグハンバーグ」
携帯をしまうとまた料理に戻る
ジュー♪
熱されたフライパンでハンバーグが音を立てる
このまま両面焼き色をつけてフタを閉じて蒸し焼きにして中までじっくり火を通す
- 254 名前:9話―午後の日常2―後藤真希―加護亜依― 投稿日:2003年06月19日(木)16時35分16秒
明日はなつみと、明後日は愛と遊びに行く
なつみはいいとして問題は愛だ
真希は今までデートなどした事がない。待ち合わせの後どこに行けばいいか分からないし、何をする物なのかも分かっていない
―――どうしよう…あたしデートなんかした事ないし
って言うかデートって何さ?
どうする物なの?
真希が考えに入っていると亜依がピンクのチェックのパジャマで風呂から戻ってきた
「お姉ちゃん」
「わぁ!」
考えに没頭していた真希は亜依が風呂から上がってきた事に築かずに驚いた
「何?そんなに驚かなくてもいいじゃん」
白いバスタオルを頭に載せたまま亜依は言う
「あ、うん。なに?」
「御飯まだ?」
「あ、もう出来るよ」
- 255 名前:9話―午後の日常2―後藤真希―加護亜依― 投稿日:2003年06月19日(木)16時35分58秒
真希はフライパンのフタを開けてハンバーグの様子を見る
「お、オッケー」
火を止めて焼けたハンバーグを皿に移す
食器棚から茶碗を取り出してご飯をよそる
亜依はというとテーブルについてご飯が出てくるのを今か今かと待っている
真希がテーブルの上に完成した晩御飯を並べていく
「お待たせー」
「お、おいしそー」
亜依がハンバーグを見て待ちきれないように声を出す
「まって、サラダもあるから」
真希は冷蔵庫から大きなボウルを取り出すとその中には大量のマカロニサラダが入っていた
「じゃ、食べよっか」
そう言って真希もテーブルについた
「「いただきまーす」」
亜依が出来立てのハンバーグに齧り付く
「熱っ…」
「急いで食べるからだよ」
熱がってる亜依に冷蔵庫から飲み物を取りだしコップに注いで渡した
亜依はすぐ飲み物を飲まず、口の中で熱いハンバーグハフハフとして飲みこんでから「美味しい!」と言った
「あは、美味しい?」
「うん、すっごい美味しい!」
そう言って火傷しない様に亜依は飲み物を飲んだ
- 256 名前:9話―午後の日常2―後藤真希―加護亜依― 投稿日:2003年06月19日(木)16時36分47秒
食事が進む中亜依が喋り出した
「あのさー、さっき話した亜弥ちゃんの事なんだけど」
「ん、転校生?」
「うん」
真希もご飯を食べながら話を聞く
「今日転校してきたんだけど…で、友達になってお家いって……」
「それで?」
真希は中々話が進まないので急かす様に聞く
「告白された……」
「……何を?」
「愛ちゃんがスキだって…」
「……ふぅーん」
「……」
「……はぁ?!」
ワンテンポ遅れての突っ込み
「好、告白って、ちょっ、どう言う事?!」
「お、お姉ちゃん、落ちついて……」
「あ……」
真希は一度落ちついてから「それで、亜依はどう思ってるの?」と聞く
「別に特別好きって訳でもないけど……」
「で、なんて返事したの?」
「亜弥ちゃんの事なんとも思ってないって、これから好きになる可能性はあるけどって……」
- 257 名前:9話―午後の日常2―後藤真希―加護亜依― 投稿日:2003年06月19日(木)16時38分17秒
―――ははは、あたしの高橋への返事とそっくり……
真希は心の中で苦笑する
「どうしたらいいと思う?」
「どうすればいいって…亜依が亜弥ちゃんの事嫌いじゃないなら、付き合ってもいいんじゃない?これから好きになるかも、だし」
―――はぁ、あたしなんでその子の肩持ってるんだろう…
「別に嫌いじゃないけど……そうなんかな……」
亜依も亜依でなんとなく納得してしまった様だ
「……マツウラアヤって……どっかで聞いた事あるような気がするんだけどな……」
真希はどこかで聞いたことあるような気がする名前で悩んでいた
「「ご馳走様」」
恋?の相談も終わり、食事も終了した
「亜依、あたしお風呂入るから食器片付けといてよ」
「ん、いいよ」
真希が着替えとバスタオルを持ってお風呂場へ向かう
亜依は真希が風呂に入っている間に言われた通りに食器を洗う
「これでよし」
食器を洗った後のお皿を水切り台に置いて一段落、そのとき
『トントン』
ドアをノックする音が聞こえた
「はーい」
『あ、亜依ちゃん?』
「安倍さん?」
亜依がドアを開けるとそこにはビデオテープを持ったなつみが立っていた
- 258 名前:9話―午後の日常2―後藤真希―加護亜依―安倍なつみ― 投稿日:2003年06月19日(木)16時39分47秒
- 「おっす、今日もみんなでマリア見ようって、真希に言ってたんだけど」
なつみはマリアのビデオテープ亜依に見せて言う
「あれ?真希は?」
「今お風呂入ってます」
「上がっていい?」
「いいですよ」
真希がお風呂に入っている間、二人はまだビデオを見ずに真希が出てくるのを待っていた
「亜依ー、今日なっちがマリア見に来るんだけど…ってもう来てるの?」
お風呂場の方からブルーのチェックのパジャマに身を包んで現れた真希
「お邪魔してるよ」
「お姉ちゃんも来たし、じゃあ、マリア見ようー」
亜依はビデオデッキにテープをセットする
「そうだ、ねぇなっち。あした亜依もつれて行かない?」
「亜依ちゃんも?」
「んー、なんの話しー?」
急な提案をする真希、それに躊躇うなつみ、なんの事か分からない亜依
「なっちがいいならつれて行こうと思ってさ」
「別になっちはいいけど」
「あのね、亜依、明日なっちと遊びに行こうって言っててさ、亜依も行きたい?」
なつみの了解を得た真希は亜依にも聞いてみる
「うん、行きたい」
亜依は即答
「よし、じゃあ明日は3人で遊びに行こう!」
- 259 名前:9話―午後の日常2―後藤真希― 投稿日:2003年06月19日(木)16時40分17秒
―――あたしにとって日常だった“普通”の日々
もう戻ってこれないかも知れない日々
あたしの身体には、徐々に変化が起こり始めていた
- 260 名前:ForeverKiss 投稿日:2003年06月19日(木)16時40分52秒
- To be continued
- 261 名前:ForeverKiss 投稿日:2003年06月19日(木)16時41分33秒
- 今日の更新>>247-260
- 262 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年06月19日(木)16時49分24秒
- 更新しましたです。
>>224さん
確かにあまり話が進んでいません。
この頃筆を投げそうになることがしばしば…藁
と言うのは冗談でもう少し早く話が進むよう努力します。
>>225ティモさん
ごまたかに嬉しいレスをありがとうございます。
ラブマは結構話がスラスラ書けたので早いエンディングになりました。
FKが終わる頃にはラブマの外伝を書いていくつもりですので楽しみにしていてください。
>>226 >>246tsukiseさん
あいぼんとの掛け合い、面白いといってもらえてうれしいっす!!
高橋は、今の所娘。の中で一番好きなので登場させたかったんです
亜弥と亜依はこれから少し話しが膨らみますので期待していてください。
>>227さん
面白いと言ってもらえて嬉しいです。これからもよろしくお願いします。
- 263 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年06月19日(木)16時52分42秒
- 再び私事ですが
ラブマの中で「マトリックス」の事言ってましたが、
ついさっき「リローデッド」見てきました。
うーん、歯切れはチョット悪かったような(けなしてる訳では有りません)
でも早く「レボリューション」が見たくなるような感じでした。
小説には関係ない話でしたが、興味がある方はマトリックスを見てから映画館へどうぞ。
それでは今日の更新終了です。
- 264 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)20時50分33秒
『で、どこ行こっか?』
『なっち買物とかしたいな』
『でさ、ゲーセンとか行ってさ』
『その前にマックよってさ、』
金曜日の夜、真希はマリアを見た後なつみと二人で今日遊びに行く予定を立てていた
本当は十時に待ち合わせの予定だったのだが…
「お姉ちゃん、そろそろ起きなくていいの?」
「んぁー、今何時ー?」
真希は寝ぼけ眼のまま亜依に問いかける
いつもの光景、いつもの事
姉を起こす妹
「もう9時半だよ?」
「……9時半?!」
バッと起き上がって亜依の顔を見る真希
「何時に約束してたの?」
「やばいよ!!」
起きあがってタンスを開けるとすぐに着替え始める
「もしかしてすぐ着替えなきゃヤバい?」
「やばいよ!!早く亜依も着替えて!」
数分後、真希は赤いTシャツにGパンに白いジャケット、亜依はデニムのスカートにピンクにグレイの入ったシャツと言う格好で待ち合わせの場所へ向かった
- 265 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)20時51分06秒
待ち合わせの場所についた二人は辺りを見まわすが、なつみらしき人物は見当たらない
真希は携帯電話の時間を確認する
『10:03』
「なっちいないよね?」
辺りを見まわしてもなつみを発見できない真希は亜依にも確認を取る
「うん、いない」
真希はなつみがどこにいるのかを確認する為に電話を掛けてみる
『…留守番電話サービスセンターに接続します…プツッ』
「どこいんだよ……」
「お姉ちゃんここであってるの?待ち合わせの場所」
「あってるよ、あたしとなっちが日曜とかに遊びに行くときはいつもココだもん、マックの前……」
待ち合わせの場所に来ない、電話も繋がらない、二人は数分その場で待ちぼうけ……
グゥゥゥ……
寝坊したので朝ご飯を抜いてきた二人の腹の音が鳴る
「まだ来ないね……」
「だね……」
「なっちが遅刻するのが悪いんだから先何か食べとこうか?」
「そうしよう、もうお腹ペッコペコ」
・
・
・
- 266 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)20時51分47秒
- 30分後、昼のご飯を食べるかどうかが分からないのでハンバーガー一つだけを食べて二人がマックから出てくる
「まだ来てないみたいだね」
「だね」
・
・
・
「「じゃんけんホイ!」」
「あっち向いてホイ!」
「「じゃんけんホイ!」」
「あっち向いてホイ!」
「「じゃんけんホイ!」」
「あっち向いてホイ!やった、またお姉ちゃんの負けー!」
・
・
・
「「いっせのーで」2!」
「「いっせのーで」0!」
「「いっせのーで」1!」
「「いっせのーで」2!」
「やったー!お姉ちゃんの負けー!」
・
・
・
「じゃあ次マックはいるのどっちだと思う?」
「次こそ女!」
「……あはは!また男の人だ!お姉ちゃん弱ーい!」
・
・
・
「もうやる事ないね……」
「だね……」
・
・
・
- 267 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)20時52分28秒
- 「ごめん!寝坊した!」
「「遅いよ!!!」」
二人が暇つぶしにしていた遊びもなくなり更に数分が経った頃ようやくなつみがやってきた
「今何時?何?11時半って?どう言う事!」
「ほんっと申し訳ない!」
なつみは顔の前で手を合わせて頭を下げて何度も謝る
「どうしても許して欲しかったら……昼、なっちのおごり」
「え〜!それはちょっと……」
「ふーん……」
真希は妖しげな笑みを浮かべる
「亜依、帰ろうか?」
「え?帰るの?」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ!帰らないでよ!今日遊ぼって言ってたじゃん!」
「……おごり……」
慌てるなつみに真希は一言だけ呟く
「分かったよ」
なつみは観念して昼をおごる事にした
「亜依、よかったね、昼いっぱい好きな物食べなよ」
「酷っ……」
- 268 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)20時53分03秒
1時間前に食べたにもかかわらず
真希の胃にはビックマック二個、ダブルチーズバーガー二個、ポテピリチーズバーガー1個、
亜依の胃には、フィレオフィッシュ二個、ビックマック二個が消えて行った
「ううう、今月のお小遣い……」
なつみは今にも泣きそうな顔をしてハンバーガをかじる
「なっちが寝坊するから悪いんだよ」
「そりゃそうだけど……」
なつみが泣いてる横でポテトをパクパク食べる真希とマックシェイクをかき混ぜる亜依
「でもさ、前見たときなっちの部屋にいっぱい目覚しあったじゃない?なんで起きれないの?」
「起きるんだけどすぐ寝ちゃったり、寝たまま止めちゃったりして……」
「今日はどっち?」
「寝たまま止めた」
真希は10数個の目覚しを寝ながら止めるなつみの姿を想像して思わず吹きだす
- 269 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)20時53分46秒
- 「なに笑ってんの?」
「ん、なんでもない。さて、これからどうしようか?」
笑った事をごまかしつつ次の予定を考える
なつみの大遅刻のせいで昨日の予定通りには行かなくなってしまったのだ
「アクセサリーショップでも行く?なっち新しいお店見つけたんだけど」
「じゃあそこ行こっか?」
「賛成ー」
二人の会話にシェイクを飲み干した亜依が返事をする
3人はマックを出ると、なつみの案内でアクセサリーショップに向かう事にした
「確かに外観はいい感じだよね」
案内されたアクセサリーショップを見て真希が一言
そのショップは表に面さない、少し裏道にそれた場所にあった
「亜依、入るよ」
なつみと真希が店に入っていって、店を見たまま固まっていた亜依に向かって真希が言った
「あ、うん」
ウィーン
自動ドアが開いて3人が入店、外観とは裏腹に中は以外と広くてオシャレな作りになっている
- 270 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日―安倍なつみ 投稿日:2003年07月05日(土)20時54分24秒
- 「ちょっ、真希見て、これカワイー!」
カウンターのそばにある透明なケースに入ったリングを見てなつみが騒ぐ
「どれ?…まぁなっちには似合うかもね……後、値段を見てから考えようね」
なつみが選んだリングは婚約結婚用とも言いたげな『0』が6つ並ぶ高価な指輪だった
「あ……ホントだ……」
「……」
「ん、亜依どうかした?」
「んーん、何でもない」
明らかに気分の乗っていない亜依を見てなつみが言う
「真希、なんか亜依ちゃんに合うようなの一緒に探してあげなよ、なっちは1人で見てるからさ」
「え、あ、うん」
なつみは亜依の思いに気付いていた。
自分が真希を好きというのと同じ感情を亜依が持っていると言うことに
―――亜依ちゃんは真希の事が好きなんだろうなぁ、
一緒にピアス選んで笑ってる姿なんか見てるとすぐ分かる
本々義姉妹なんだし、好きになって当たり前な気がする
毎日一緒にいるんだし、それだけ真希の事を知る事が出来るんだ
正直、羨ましい……
- 271 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)20時55分01秒
「お、これなんかいいんじゃない?」
「……」
「どしたの、さっきから」
「……だってさ、ピアスつけるって事はさ、耳に穴あけるじゃない?……痛くないかなって思って……」
「あぁ、そんな事考えてたのか。大丈夫だよそんな痛くないし。恐いんなら今開けなくてもさ、もう少し経ってから開けてもいいんだし、今は持ってるだけでさ」
「うん、そうだね」
真希の言葉を聞いて再びピアスを選び始める
「じゃぁ、これとかどうかな?」
亜依が一つのピアスを指差す
亜依が選んだのは星型で金メッキの施された小さいピアス
「ん、似合いそうじゃん。それじゃ、ピアスデビューって事であたしが買ってあげよう」
「え?ホントに?いつもケチケチしてる姉ちゃんが?」
「買うのヤメヨっか?」
“ケチケチしてる”の言葉に怒った振りをする真希
「嘘!冗談冗談!ありがとう」
「よし、素直でよろしい。……って言うかさ、あたしこの前の誕生日亜依になにも買ってなかったじゃない?だから言っちゃなんだけどその代りって事で。遅れたけど誕生日プレゼント」
「やったー」
- 272 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)20時55分51秒
ホンの偶然で買ったピアス
なんでもない気持ちであげたピアス
これが生きている内に亜依に渡す最後の誕生日プレゼントになる
そんな事を夢にも思わない真希だった
その後、真希はシルバーリングを、なつみは写真の入るロケットを購入した
「なっち、そろそろゲーセン行こっか?」
「お、いいね、行こうか」
「行こ行こ」
3人はゲームセンターがある繁華街の方へと足を伸ばした
「なっちさ、新しいゲームセンター見つけたのー、だからそこ行こうよ」
「じゃあ、そこでいいよ」
二人がなつみについていくと、二人は初めて見るゲームセンターが見えてきた
- 273 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)20時56分22秒
- 確かに新しいっぽくて中にもみた事のないゲームも沢山並んでいる、結構大きな所だった
「あ、あれ……」
真希がUFOキャチャーを指差す
二人もそれに気がついて三人でそのUFOキャッチャーに近づく
「あれ、ミニモちゃんカメラかなんかだよね?」
「うん、そうだと思う。あれホントにカメラなんだね」
UFOキャッチャーの中に入っていたのは
数ヶ月前に、アイドルグループ『ミニモニ』が2ndシングルで使った『ミニモちゃんカメラ』
「よし、亜依100円あげるから、行け!」
「おっし、取ったるでー!」
亜依は真希からの100円を受け取ると投入口から受け取った百円玉を放りこむ
亜依はゲーム系統に強く、とくにお金が掛かると実力以上の力を発揮しすごく強くなる。
真希が見ている限りではUFOキャッチャーなどでははずした事がないという
カチ、カチ、
2本足のキャッチャーが右から左、手前から奥へと移動する
ガーッ
キャッチャーが下に下がり正方形に近い箱を左右から挟みこむ
ガーッ
箱を挟んだままキャッチャーが上に上がった、だがまだ油断は出来ない
- 274 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)20時57分12秒
ウィーン
奥から手前、左から右へとキャッチャーが移動するのを3人は真剣な表情で見つめる
ゴトン!
四角い箱は見事、透明な丸筒の中に落ちた
「よっしゃー!」
亜依が声をあげ小さくガッツポーズを取る
「よかったねー、えらいえらい」
真希は亜依の頭を撫でながら言う
なつみは丸筒の下の部分にある受け取り口からカメラの入った箱を取り出す
「あ、これフィルムも入ってるからそのまま使えるみたい」
「ホント?撮ろ撮ろ!」
3人はゲームセンターの中で10数枚の写真を撮った
- 275 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)20時58分06秒
真希が撮った亜依となつみのツーショット
亜依が撮った真希となつみのツーショット
なつみが撮った真希と亜依のツーショット
真希が手を伸ばして自分達の方を向けて撮った3人のスリーショット
ふざけながら撮っているとあっという間にフィルムは尽きてしまった
「じゃあ、これしまっとくね。今度現像しよ」
真希がそう言って鞄の中にしまった
「姉ちゃん、あれ勝負しよ」
亜依が指差す先にはレースゲーム
「おう、いいぞ」
「真希頑張れ」
二人並んで100円投入
“『AT』か『MT』を選択してください”
二人はなにも言わずに『MT』を選択する、まるで示し合わせた様に
“ready?”
画面に文字が表示された
青ランプが一つ、赤ランプが三つ画面に表示されている
その下には自分の選んだ車が見える
赤ランプが一つづつ灯って行く
三つ目の赤ランプが点灯した後、青ランプが点灯すると共に画面に“GO!”と表示された
・
・
・
- 276 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)20時58分51秒
- 数分後
「えっへっへー、お姉ちゃんの負けー!」
「うっさい!今日は調子が悪かったんだよ」
真希が負けた言い訳をしていた
「真希カッコ悪ー」
なつみにまでそう言われる始末
悔しがる真希はリベンジをしかける
「よし、じゃあアレで勝負だ!」
真希が新たにゲームを選んで亜依に勝負を仕掛けた
・
・
・
…………将棋、バイクレース、格闘アクション、スクロールシューティング、ありとあらゆるゲームで勝負をした真希だったが見事全敗
「なんで勝てないんだよー……」
「やっぱりココの違いかなー」
亜依は自分の頭を指しながら挑発的な口調で喋る
「真希カッコワルーい……」
なつみは負けつづける真希に同じ事しか言わなくなった
「なんかないかな、勝てそうなの……」
なんとか亜依に一泡ふかせようと勝てそうなゲームを探す
- 277 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)20時59分27秒
「おーい。そこの標準語と関西弁と室蘭弁の三人。」
「ん?」
真希たちが声のしたほうを振り向く。
そこにはGパン姿に紫の「闘」とロゴの入ったTシャツに身を包んだ男前の少女がいた。
「おっす。」
「ああ、よっすぃ」
「お、よっすぃ」
「よっすぃ」
真希と同じクラスの吉澤ひとみ。
ポケットに両手を突っ込みながら3人のほうに近づいてくる。
「3人そろってるなんて珍しいね。なにしてんの?」
「今日はさ、3人でどっか遊びに行こうって、でここに来た」
「ふぅーん」
ひとみは暇そうな様子で、一人だった。
「よっすぃは?なにしてんの?」
なつみがひとみに問いかける。
「や、ここらへんに新しいゲーセンが出来たって聞いたから来てみただけ…………。
ってそうだ。ちょうどいいや。ちょっと来てよ。3人とも」
- 278 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)21時00分09秒
ひとみは何かを思い出したように歩き出した。
“ついて来て”と言われたのでとりあえずついていく3人。
さっきいた場所から数m先にくるとなにやら人だかりが出来ていた。
「ほら、あれ見て」
ひとみが3人にそう言ってゲームを指差す。
『Dance!step!revorution!』
ゲーム機からデジタルな声が響いた
明らかにパクりのようなダンスゲーム。
8方向の足もとのパネル。
音に合わせてそのパネルを足で押さえると言うゲームだった。
「アレの事?おもいっきしパクリじゃん」
なつみがゲームを見てそう言った。
「パクリじゃないよ。元々ダンレボよりこっちの方が先に作られてたし、これ結構難しくて人気なんだよ?」
なつみの発言にひとみが返す。
「ごっちん。対決してみたら?あいぼんと。ごっちんダンレボ得意だから勝てると思うよ」
「よし!亜依勝負だ!」
「望む所だー」
- 279 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)21時00分52秒
二人の前にプレーしていた人が去って行き二人が台に上る。
二人揃って百円玉を投入した。
真希が画面から音楽を選んで行く。
「なんだ。曲目は一緒じゃん」
真希は自分がダンレボで慣れた曲を選択する。
「よし。」
最後の決定ボタンを押し音楽が流れ始めた。
画面下のほうから流れてくる8種類の矢印にタイミングを合わせて足元のパネルを踏む。
真希も亜依も画面を凝視しながら足を動かしている。
『CREAR!!』
数分後。二人は同得点のままクリアをした。
「あれ?お姉ちゃんには勝ったと思ったのにー」
「甘いよ。あたしがどれだけダンレボやってると思ってんの?」
スコアが画面に表示されている。二人はそんなことを話していた。
「ごっちん、あいぼん、二人そろって↑のパネル3回踏んでみて?」
「うえ?」
真希と亜依が顔を見合わせる。
「んじゃ、踏んでみよっか……せーの、」
ピンピンピン……ピロリン!
ひとみに言われたとおりに↑のパネルを3回踏むと何やらゲーム機から効果音。
画面の表示が変わり『HARD MORD』という表示が出ていた。
- 280 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)21時02分24秒
「なにこれ?」
判りきっているのにも関わらず真希はトーンの落ちた口調で呟いた。
「はーどもーど、って画面に書いてあるじゃん」
ひとみは悪びれる様子もなく一言返す。
「こんなん出来るわけ無いやろ!よっすぃアホちゃうか!」
亜依が起こった様子で喚いた。
「べつにいいじゃん。そのほうが見てる側としては面白いし、」
ひとみは笑いながら言う。
画面では『セレクト ミュージック』という表示と、その右に数字がカウントされていた。
「ほら、早く選ばないと曲勝手に決まっちゃうよ」
ひとみは二人にそう言い、二人はあわてて曲を選択した。
- 281 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)21時03分00秒
再び音楽が流れ始める。
画面にはさっきとは比べ物にならないぐらいの矢印が画面下の方から流れてくる。
「「うわっ!多っ」」
画面を見て真希と亜依は同じ言葉を発した。
さっきの華麗なステップとは違い、忙しなく足を動かしていく。
「うわー、こんなの無理ー!」
亜依が途中で叫ぶ。そう言いながらも必死でパネルを踏んでいく。
『FIRED!!』
亜依の画面に急にそんな文字が出た。
「うわ!なんやこれ!」
いきなり画面が切り替わって亜依が驚く。
「ああ、歌に追いつけなかったから、つまりクリアできなかったんだよ」
状況がわかっていないであろう亜依にひとみが説明する。
「お姉ちゃんは?」
亜依は真希の方をむき様子を見る。すると真希はまだステップを続けていた。
- 282 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)21時03分56秒
『CREAR!』
数十秒後、真希の画面にはそう表示された。
「ふぅー…」
二曲目が終了して真希がため息をつく。
「負けた……」
亜依もため息をついた。
「あれ、あたし亜依に勝ったの?」
真希が亜依の画面を覗き込んで、対決を見ていたはずのひとみとなつみに問いかける。
「うん、勝ったね」
「すげぇ、ごっちん。あいぼんに勝っちゃったね」
ひとみとなつみからはそういう返事が返ってくる。
「やったー!!亜依に勝った!!」
真希はうれしさからか、沢山のギャラリーが見ている前で飛び跳ねる。
「どーよ、亜依。これでも自分がゲームの天才?」
真希はさっき自分もされたように挑発的な言葉を亜依にかける。
「うわっ!すっごい腹立つ!……なんか違うもんやって来る!」
亜依はその場を離れてどこかへ行こうとする。
「あ、なっちごめん。亜依についていってあげて?まだゲーム続くみたいだし…」
「あ、うんオッケー」
なつみは立ち去る亜依についていった。
「よし!ごっちん。今度はこのよっすぃ様と勝負だ!」
ひとみはそう言いながらさっきまで亜依が乗っていた2P側の台に上る。
「いいよー!メッチャくちゃに負かしてやる!」
- 283 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)21時04分29秒
「亜依ちゃん、ちょっと待ってよ。」
すたすたと歩いて行く亜依に、それを追うなつみ。
「なんやねん!あのお姉ちゃんの言い方!もうちょっと普通な言い方ないんかい!」
なつみはまだ関西弁でしゃべっている亜依をみてそれ以上話しかけるのをやめた。
亜依は1つのゲームの前で立ち止まって100円玉を投入した。
『アリゲーターアリゲーターパニック』と言う名前のゲーム。
飛び出してくるアリゲーターをハンマーで叩くという簡単なゲーム。
音楽が鳴り始めて亜依はハンマーを握る。
ダン!
ダンダン!!
ダダンダン!!!
亜依はアリゲーターが穴から少し出ただけでそれを見抜き、5cmと出てこない間にアリゲーターの頭を叩いて引っ込ませる。
「………早」
なつみはその様子を見てそう呟いた。
「あほ!あほ!あほ!」
アリゲーターの頭を叩きながらそう言う亜依。
「あ、なんだろあれ?」
なつみは自分のすぐ傍にあった新しいゲームに気づく。
「面白そー。ちょっとやってみよっかな」
なつみは百円玉を投入してゲームをし始める。
- 284 名前:―ForeverKiss―10話―土曜日― 投稿日:2003年07月05日(土)21時05分21秒
なつみは亜依の後ろにいる亜依に近づいてくる一人の影に気がつかなかった。
『アノ子かわいなぁ。トイレにでも入れてヤッチまうか?』
「ねぇー、そこのアリパニやってるお嬢さん?」
「んぁ!何やねん!今やってるとこやからもう少し待ちや!」
亜依は後ろも見ずにそう言葉を返した。
なつみもゲームに熱中しているせいか傍にいてもその声には気がつかない
「そんな口のききかたはないんじゃない?年上のお兄さんに向かってさぁ!」
男が亜依の背後に回りいきなり口に手を当てて声を出せないようにする。
亜依は驚いて暴れようとしたが男に両手を片手でつかまれ身動きも取れない。
「ん!なんやねん!」
一瞬男が口をふさぐのが遅れて声が出た。
「お、こいつ関西弁喋ってるぞ。関西のやつはどんな声で喘ぐんだろうな?」
周りを通りすがって行く人。
なつみさえも亜依を押さえつけている男には誰も気づかない。
絶体絶命。
- 285 名前:ForeverKiss 投稿日:2003年07月05日(土)21時06分02秒
- to be continued
- 286 名前:ForeverKiss 投稿日:2003年07月05日(土)21時06分56秒
- today`s up date>>264-285
- 287 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年07月05日(土)21時08分59秒
- 何気に大量更新…
途中の『アリゲーターアリゲーターパニック』
あれはつい最近やった『ワニワニパニック』が元ですw
えー。まだ家はネットに繋いでなくて
どこと契約しようかとか悩んでます。
では、更新終了です
- 288 名前:tsukise 投稿日:2003年08月02日(土)22時44分46秒
- おぉっ!なんと…っ、絶体絶命のピンチ…ですねっ。
凄く続きが気になります…っ。
なっちにごっちん…!早く気づいてって感じで…。
次回更新、楽しみに待ってますので、頑張ってくださいねっ。
- 289 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月10日(日)20時47分04秒
- えー、遅ればせながら
なっち誕生日オメデトー!!!
ってことで、なっち誕生日記念で短編書きたいと思います。
あと、ゴマ紺の短編を、
筆がなかなか進まずこういうことになってすいません。
あっと、レス返しを>>288 tsukiseさま。
何気にピンチにしてしまいました。
いや、あまり意味は無い…w
空板の方ずっと見てますんで頑張ってくださいね
- 290 名前:なっち誕生日短編 投稿日:2003年08月10日(日)20時47分53秒
- 「はぁ………しんど………」
2003年8月10日。
そう、今日はなっちの誕生日。それなのに。
「はぁ………誕生日なんて祝ってもらう気分じゃないよ………」
全然ため息は止まらない。
誕生日と言うのにこの忙しさ。
何でこんなに忙しいのかと不思議に思う。これでも忙しいピークは過ぎたはずなのにため息が出るほど忙しい。
「はぁ………事務所もこんなときぐらい休みくれたらいいのに」
なっちは数え切れないぐらいの回数ため息を重ねて、その日の仕事場を後にした。
「ちぇっ。誰からのメールも無いや。」
家に帰った後、携帯電話を開いてメールの確認をしたけど誰からのメールも届いていなかった。
去年は確か8月9日の日付が8月10日に変わる瞬間にメールが届いたのだが今年はそういうことは無かった。
10日の夜11時になっても誰からのメールも無い。なんとなく寂しくなった。
- 291 名前:なっち誕生日短編 投稿日:2003年08月10日(日)20時48分31秒
- 「せめて………あの子からぐらいあってもいいのに………」
あの子というのはなっちの恋人のこと。ファーストツアーを終えたばかりで忙しいのは知っている。
それでも恋人の誕生日なんだからメールを送る時間ぐらいはあるでしょ?
仕事と恋人どっちが大事なんだよ。
何故か知らないけどなっちは情緒不安定。
きっと急にモーニングの卒業が決まった事もあるんだろうけど。
ココ何日もその恋人に会っていないからだ。
- 292 名前:なっち誕生日短編 投稿日:2003年08月10日(日)20時49分01秒
11:59。
リビングのソファに座ってテレビの下のビデオデッキの時間を見るとその時間が表示されていた。
もうすぐなっちの誕生日が終わる。
結局誰からのメールも電話も無かった。
もちろん家族からはあったよ。今日帰ってきたら隣のオバちゃんが荷物預かってくれてて北海道のいろんな物が入ったダンボールが届いてたんだけどそれはお母さんからだった。
でもメンバーからは一言だってお祝いが無かった。
ブーン!
目の前の小さな机の上の携帯電話が振動した。メール?電話?
なっちは携帯が振動を終えないうちに携帯を手に取った。
メールだ。
ところが、メールの表示を見てなっちはびっくり。
メール着信14件。
今のこの瞬間に一気に14通も届いたの?
もしかしてメンバー全員で示し合わせたのかな。
- 293 名前:なっち誕生日短編 投稿日:2003年08月10日(日)20時50分45秒
『なっち。誕生日おめでとう!今度また遊びに行こうね 圭織』
『なっち。今度また焼肉喰いに行こうぜ!それと誕生日オメデト 矢口』
『なっちゃーん!!誕生日おめでとう!! 吉澤』
『安倍さーん!誕生日おめでとう!!グッチャー!! 石川』
『安倍さん。誕生日おめでとう!!今度旨いたこ焼き屋連れてったるからなー 加護』
『あべさん。誕生日おめでとうです。今度アロエヨーグルトいっぱい持っていきます 辻』
『安倍さん。誕生日おめでとうございます!! どうにもこうにもマコッちゃん!!』
『安倍さーん。おじゃ、マールシェ。紺野です。誕生日おめでとうございます!!』
『安倍さん。今度また五月ヶ瀬持ってくからよろしくー!! 高橋』
『誕生日おめでとうございます!!塾長からの応援メッセージです!! 新垣塾塾長』
『安倍さん!!誕生日おめでとうございます!!今度美味しい焼肉屋につれて行ってあげます 藤本』
『安倍さん。誕生日おめでとうございます。今度一緒に遊んでください 亀井』
『誕生日おめでとうございます。安倍さん。また一緒にプリクラ撮りましょう 田中』
『安倍さん。お誕生日おめでとうございます。 道重』
- 294 名前:なっち誕生日短編 投稿日:2003年08月10日(日)20時51分26秒
読み終わったあとなっちの涙腺が緩む。
みんなできっと示し合わせたんだ。でなきゃこんなに揃って、しかもギリギリに来るわけ無いもん。
時計を見ると丁度12:00になっていた。
でも、
ごっちんからは来なかったな。
- 295 名前:なっち誕生日短編 投稿日:2003年08月10日(日)20時52分36秒
〜♪〜♪〜♪
着信メロディがなる。今目の前に置いたばかりの携帯電話からだ。
なっちは誰からの電話とか考えずにすぐに通話ボタンを押していた。曲名ですぐに誰か分かったからだった。
今なった着メロ『スクランブル』。
「ごっちん?」
「なっちー。誕生日オメデトー」
「ごっ、ちん………」
何故かまた涙がぶり返した。数日振りの電話だった。
「ん、もしかしてなっち泣いてんの?」
ごっちんは意外と鋭い。涙声になっていたんだろうか?
「泣いてる訳ないじゃん……ごっちんからの電話で泣く訳無いでしょ」
「じゃあ何で涙声なのさ?」
やっぱり今のなっちの声は涙声らしい。でも、なんとなくそれが知られたくなくて
「泣いてないってば」
強がって見せる。
「そう言うならそういう事にしておくけどさ。そうそう、外に出て見てよ。すっごい星綺麗だよ」
「星?」
ごっちんに言われてなっちは玄関から外に出た。マンションの廊下部分。手すり壁から身を乗り出して空を見上げてもあまり星は見えなかった。まぁココは都会だから、
なっちの田舎の室蘭と比べる事なんか出来ないけど。
- 296 名前:なっち誕生日短編 投稿日:2003年08月10日(日)20時53分47秒
「あ、やっぱり泣いてるじゃん」
急に隣から声がしてそっちを向くとそこには見慣れた顔。
ごっちんだった。
なっちの携帯を持っていた手がブランと下に下がる。
ごっちんは携帯をポケットにしまった。
「目ぇ赤くなってるよ」
ごっちんの細い指がなっちの目じりの涙をぬぐう。
「何でここにいるの?」
「んぁ。決まってるじゃん。なっちの誕生日祝いにだよ」
やっぱりごっちんはなっちの恋人だ。どんなに忙しくても、どれだけ遅刻しても。
ごっちんは誕生日を祝いに来てくれた。
なっちは泣き顔を隠すためと、ごっちんの体温を感じたくてごっちんに抱きついた。
「遅いよ………もう11日になっちゃったよ」
なっちがそう言うとごっちんはなっちの背中に腕を回してくる。
「まだなってないよ。」
「なったよ。さっき時計見たもん」
ごっちんはまだなってないと言い張る。でもさっきビデオデッキのタイマーを見たときには確かに12:00と言う表示になっていた。
- 297 名前:なっち誕生日短編 投稿日:2003年08月10日(日)20時54分44秒
ごっちんはポケットをごそごそして何かを取り出す。
さっきしまったばかりの携帯電話。
片手で何処かに掛けるとなっちの耳に受音部分を当てた。
『午後11時56分40秒をお知らせします。』
ピッピッピ、って言う音と機械みたいな声が聞こえた。
確かにまだ11日にはなってないみたいだ。でもさっきのビデオデッキは確実になっていた。そんなに時間がずれるわけないのに。
「なっちの家の時計。あたしがずらしといた。」
「はぁ!?」
急にそんな事を言ったごっちんの顔を見上げる。
「なっちを泣かせてみようと思ってさ。だからみんなに言ってギリギリにメール送ってもらったりしてさ。」
「ん?メンバーからのメールもごっちんの命令?」
「命令ってほどのものじゃないけどね」
頭にキタのを通り越して笑えた。
「あはは。今日初めて笑ったね。」
「なっちの誕生日のためだけにそんなことしたの?」
「そうだよ。」
ごっちんって何か凄いね。さっきまでメールが届かないだけであんなに不安になってたのに。
もうこんなにもごっちんが側にいることが理解できてしまっている。
- 298 名前:なっち誕生日短編 投稿日:2003年08月10日(日)20時55分33秒
なっち。
ごっちんの恋人でよかったよ。
「って言うか早く入ろうよ。暑いよここ。冷房掛かってる?なっちの部屋」
「あ、うん。入ってるよ」
これからもずっとなっちの恋人。
絶対離さない。
独り占め。
ごっちん。
大好きだよ。
END
- 299 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月10日(日)20時56分13秒
- とりあえずなちゴマ短編を。
じゃあ、ごまこん短編いきます。
- 300 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)20時57分12秒
- 『あたしなら構いませんから!!飲んでください!!』
『嫌だよ………もう、早く………人間になりたい………』
『だって!………そのままじゃ後藤さんが死んじゃう!!』
『なんか、あれだね………自分でもびっくりした。………誰かを想って、流せる涙が……あたしにもあったなんて』
『後藤さん、お願いです………』
『あたしは………化け物じゃないよね?………このまま死ぬ事が出来たら………あたしは人間として死ねるよね?』
何年か振りに夢を見た。
あたしと、知らない誰かがいて。
あたしとその子は泣いていた。
その夢の中で話した内容なんかは覚えてないけど、
ただ。
その子の泣き顔だけは、妙に心に焼き付いていた。
その子のバックに写る背景は、
真っ黒い、雲ひとつ無い夜空と明るい月。
下弦の月だった。
- 301 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)20時57分54秒
A Crescent Moon.-もしもあたしが人間だったら-
- 302 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)20時58分26秒
世間では8月を真夏と呼ぶ。
人間にとっては穏やかに暮らし辛い季節らしい。
それでもあたしにとってはすごく住みやすい季節。暑いからと言う理由で薄着になり、ターゲットを選びやすくなる。
空を見上げると、輪郭のはっきりとした満月があたしの瞳に届いた。
月明かりが優しくあたしを包み込む。今日は風が強い。雲が流れてきて満月を覆い隠して月明かりが弱くなった。
夜の公園は人が少なかった。この公園はあたしの家の側にある。夜になるとあたしはこの公園にいた。
今日も、ターゲットを選んでいた。
この公園に来てから少し経った。
公園の真ん中のベンチから入り口付近を傍観していると一人の女性が通り過ぎる。
恐らく十代後半か二十代前半。ギリギリか………狙い目だな。
そう感じてあたしはベンチから立ち上がって歩き出した。
- 303 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)20時59分27秒
すぐに彼女の後ろをついて行く。少し早足で歩いて前を歩く彼女に追いついた。
「あの、すいません」
あたしがそう言葉を発すると目の前の彼女が立ち止まって振り返る。
カラーコンタクトでもはめているのか自然の色なのかは知らないが、少し茶色い瞳には淡い月明かりを光源にあたしの姿を反射させる。
栗色の長い髪、少し離れているたれた眼。それがあたしの姿。見た目は何の変哲も無い人間だ。
「え?なんですか?」
目の前の彼女が発した言葉だ。話しかけられてもあたしは言葉を返さない、意味が無いから。
あたしは、振り返った彼女の首に手を回して抱きついた。
「え?え、あの」
驚いている彼女の首筋に、あたしはゆっくり口付けた。
- 304 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時00分25秒
◇◇◇――――――――――
あたしが唇を離すと目の前の彼女の瞳は虚ろになっていた。
あたしは回していた手をゆっくりと解いた。
その瞬間に彼女はゆっくり地面へと崩れ落ちる。
「ちょっとヤリ過ぎたかな………でも、死にはしないよね」
あたしは唇の辺りに着いた液体を拳でぬぐった。何事も無かったかのようにその場から立ち去る。
長居は無用だった。
普段なら一人をしとめることが出来れば家に帰る。
でもこの頃は違った。
探していた。月明かりの映える雲の晴れている日にはずっと探していた。
夢に出てきた少女。泣き顔しか分からない少女。あたしは、探していた。
- 305 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時01分28秒
◇◇◇――――――――――
「夢が現実になったこと?」
「そー」
同じように夜。淡い月明かりの映える夜。
あたしが縄張りにしているところとは違う公園で。この辺りを縄張りにしている彼女と話をしていた。
彼女の呼び名は美貴。肩に掛かる茶髪と大きな瞳が印象的なあたしの同類だ。
「今まで何度か夢は見た事あるけど、あたしのは全部現実になるんだ。美貴はどうかなぁと思って」
あたしはたまに縄張りを抜けて彼女のいる公園に来る。誰かと話したいときにはココへ来て彼女に話す。
一ヶ月に一回程度だろうけど、面白い人を見つけたときや、ムカツク奴を見つけたとき、季節が変わったときに彼女とは話をしていた。
「美貴の夢も現実になるよ。誰か美味しい人喰べた時とかを夢に見てさー、大体三日以内に現実になるよ」
あたしの質問に美貴はそう答えた。そしてあたしに問う。
「何?なんか美味しそうな人でも夢に見たの?」
美貴はあたしを友達と呼んでくれた。同じ化け物であるあたしを。
だからあたしは美貴に何の隠し事もしない。友達だから。
- 306 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時03分39秒
「泣いてる子を見た。多分、あたしのせいで泣いてる子」
あたしの言葉に美貴は興味を示して眼を輝かせる。
「何ー?ごっちん女の子泣かせるんだー?ひっどいねぇー」
美貴は半分からかう様な口調であたしに言う。冗談だと分かっているからあたしは話を続ける。
「なんかね。………あたしも泣いてたんだよね」
「泣いてたぁ?ごっちんが?」
美貴があたしの顔を覗き込んで聞いてきたのであたしは首を縦に振った。
「ふぅーん。あたし達って泣けるんだね。」
「あ、でも。まだ現実になるって決まったわけじゃないし。」
「何言ってんの、今まで見た夢全部現実になるんだからこれから見る夢も現実になるに決まってるじゃん。」
美貴の言う事は分かる。現実になるという実感もある。
でも、自分が涙を流す事を否定したかった。
あたしは化け物。
涙なんか無い生き物だと思いたかった。
- 307 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時04分25秒
◇◇◇――――――――――
夢を見た日から数日。
満月はうっすら欠けてきている様な気がした。
あたしは自分の縄張りの公園でいつものようにターゲットになる誰かを待ち伏せる。
今日が夢に見た彼女との出会いの日とは思わなかった。
今日の月は夢に見た下弦の月よりも月が欠けていなかったから。
「………いゃあ!止めて下さい!!」
いきなり声が聞こえてきた。
公園の入り口近くの木陰からだ。
あたしの眼は悪いほうではない。どっちかというと良いほうだ。夜でも木陰にいる人の顔が見えるくらい。
声に気が付いてそちらに眼をやって見えたのは、泣き顔じゃなかったけど、夢に見た彼女の困ったような顔だった。
「いいじゃんかよ。送って行くって言ってんだから」
次に聞こえたのはそんな男の声。夏になると変質者が多くなるのか。女の子が肌を露出するせいかな。あたしは思った。
- 308 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時05分42秒
そんな事より彼女の困った顔が眼に焼きついてはなれない。妙な感覚。
夢に出てきた彼女の顔と言い今の顔と言い何故か心に残るような顔。彼女にいったい何があるというのか。
考えても答えが出ないのは分かっている。あたしはいつの間にかその木陰に近づいていた。
「止めてあげれば?彼女嫌がってるよ。」
「ん、なんだお前」
木陰の暗闇にいた男の姿が見える。いかにも軟派な顔した男。いや、こんな木陰で女の子口説いているような奴男じゃないけど。
「こんな人のいないところじゃないと女の子口説けないの?だっさいねぇ」
「………なんだと?」
男の視線から夢の女の子が外れた、あたしは口パクで女の子に「に・げ・て」と伝えた。でも女の子はあたしが何を言いたかったのか伝わらなかった様子。逃げなかった。
- 309 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時06分24秒
- 「………お前が相手してくれるならこんな女逃がしてもいいんだけど、どう?」
男の気持ちの悪い視線があたしに絡み付いてく。こんな男、気絶させるくらいなら簡単なんだけど、あの子がいる。人に見られてはいけない。
「どうなの?相手してくれんの?」
あたしは彼女の前に回りこんで彼女の視界にあたしの目が映らないようにする。同時に彼女を守る事も出来るはずだ。
………守る?
何であたしが彼女を守らないといけないの?
何か。そんな理由があった?
「どうなんだよ!!」
男の声があたしを思考状態から通常に戻す。
考えても分からない事は分からない。今はこの男をどうにかする事のほうが先決だ。
あたしは頭を切り替えて男にスッと視線をくれてやる。一度『眼』を閉じる。
ゆっくり、瞼を開けて男の目を睨みつけた。
- 310 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時07分02秒
急に男の挙動が変化する。あたしは『眼』で人の目から直接信号を送ることで人を気絶させる事が出来る。
化け物としての、呪われた力だ。
ただこのまま男が倒れれば後ろの子が不審がる。あたしは男に近づいて腹の辺りを殴った。
「がっ」
反射のせいか男が奇声を発する。あたしが身体を引くと男は前に向かって倒れた。
「ふぅー。」
1つため息をつく。
あたしはゆっくり振り返った。
改めて彼女の顔を見る。
クルっとした大きな目。ふっくらした頬。ポニーテールに耳の辺りの髪を下げている。
ファーストインプレッション。イコール可愛い。
その大きな瞳であたしを見つめたまま放心状態になっている彼女はあたしが声を掛けるまであたしを見続けていた。
「大丈夫?」
自然と出た彼女を気遣う言葉だった。
- 311 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時07分45秒
- 「え?あ、大丈夫です。ありがとうございます、助けてもらって」
あたしの耳には甘い声。まるで心臓を鷲掴みにされたような電撃が体を流れた気がした。
「あ、あの………どうかしました?」
彼女の甘い声が段々とあたしを狂わせる感じがした。
これ以上彼女の声が聞きたくない。妙な感覚だった。
「何でも無い………」
あたしは振り返って彼女から離れるように歩き出した。
彼女が何か言っていたような気がしたけれど、あたしは聞こえない振りをして、公園を出て行った。
- 312 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時08分34秒
次の日。
昨日よりも欠けている下弦の月。
でも夢に見た月よりは未だ欠けている部分が少ない。そんな日。
ここに居ては絶対彼女に会ってしまう事は心のどこかで感じている。でも、あたしは何故かまたこの公園に来ていた。
認めたくは無かったけど。彼女に会いたがっているのかもしれない。
ほら、やっぱり来た。
髪形が昨日と変わっていた。今日は左右で二つにまとめてヘアゴムか何かで縛ってる。可愛いという印象は抜けないけど。
彼女はベンチに座っているあたしに近づいてくると話しかけてきた。
「あの、お隣よろしいですか?」
「……いいよ」
昨日のような甘い声だけど、あたしを狂わせるような感じは無かった。
彼女の座るスペースを空けるようにあたしはベンチの左側に寄った。彼女はあたしの右側に座った。
「あの、昨日はありがとうございました。」
「いいえ、どう致しまして」
あたしはあまり感情のこもらない言葉を返す。何か彼女は普通の人と違う感じがした。別にあたしや美貴と同類のような意味では無いけれど。
- 313 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時09分16秒
- 「あの、えっと。お名前聞いてもいいですか?」
「………ごとーまき」
名前を隠す理由は無かったので普通に教えた。当然だがこっちだけ言うわけにはいかない。それに彼女の名前も気になっていた。
「アンタは?」
「あ、あたしは紺野です。紺野あさ美です」
コンノアサミ。変わった名前でもないか。
「どんな字?」
「あ、えっと。紺色の『紺』に野原の『野』。と、『あさ』は平仮名で。美しいって書いて『美』です」
紺野あさ美………か。
「あの、ごとーさんの字も聞いていいですか?」
「んぁ、あたしは『後』ろの『藤』に真実の『真』に希望の『希』」
ははは。真なる希望だって。今気付いたけどあたしの親、なんて名前付けたんだよ。こんな化け物に真なる希望か。笑えるよ。すっごい。
「後藤真希さんですか。良い名前ですね。」
心の中で親の事を笑っているあたしに対して彼女は、紺野はそんな事を言った。
- 314 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時09分56秒
「何しにココ来たの?」
なんとなくあたしに会いに来たのではないかと思っていた。自惚れは情けないから一応聞いておきたかった。
「なんとなく………」
彼女ははじめにそう答えた。でも、
「昨日助けてもらって、後藤さんの事カッコいいなぁって思って。次会った時には絶対お礼言おうと思ってて、もしかしたらココに来たら会えるかもと思って来ました。」
「後藤さんに会いたくて来ました」
紺野は言葉を二回に分けて言った。また妙な感覚が身体を支配していく。
いったい何なんだろうこの感覚。彼女の何か声を聞くたびに、身体を何かが通り抜けていく。
その正体が何か全く判らない。
- 315 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時10分34秒
それから数日、彼女が来た日は毎日彼女と話した。
彼女が通っている学校の話や、塾の話、初めてあたしに会ったときも塾の帰りだったそうだ。そんな彼女の話を聞いていた。
でも彼女はあたしの事を詮索する事は無かった。ただ自分のことを話すだけで、あたしには深く入り込んではこなかった。
そう、その日も。同じようにずっと彼女の話を聞いていただけだった。
「じゃあ、あたしそろそろ帰ります。」
いつもと同じぐらいの時間話していた。いつもと同じように帰ると言った紺野。
何故か、あたしは立ち上がって帰ろうとする紺野を引きとめた。
「待って!」
あたしも立ち上がっていた。ほとんど無意識に近かった。
「何ですか?」
紺野が振り返る。相変わらず可愛いという印象は消えない。そのせいだったかも知れない。あたしが自分でも判らない不可解な行動をしたのは。
「え?」
彼女が発した声はあたしが何をするかわからずに驚いたからだと思う。あたしは彼女の頬に手を添えて顔を近づけていた。
「ん、」
あたしが眼を閉じていても彼女は普段から大きな目を見開いていた。
あたしはゆっくり唇を首の辺りに移動させる。
- 316 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時11分28秒
- 「いやぁ!」
彼女の細い腕があたしを突き飛ばした。
はっきりと聞こえた拒絶の言葉。
その言葉は確実に、あたしの心を揺さぶり、変えた。
あたしの心を動かした。
突き飛ばされた後で考えた。あたしは今紺野に何をした?
今あたしは何をした?
喰べようとしただけならまだ判る。
その前にあたしはいったい何をしたんだ?
紺野に視線を向けると怯えた表情をしていた。
あたしは、人間が嫌がる事をしたの?
突き飛ばされて崩れた姿勢を元に戻してあたしは一歩紺野に近づいた。
あたしが一歩進むと紺野は一歩後ずさる。恐れられてる。紺野に。
あたしは紺野に近づくのをやめた。そして、
「ごめん」
一言誤った。あたしには誤って済む問題かどうかもわかってないけど。
紺野は「あの、いえ」と、曖昧な返事を返して。あたしはその場に残った雰囲気を変えられないままその場所を後にした。
- 317 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時12分57秒
「お、ごっちんじゃん」
「おす」
何日か、あの公園には行かなかった。紺野に会うのが気まずい感じがしたから。
一人で考えても何もわからない。だから、今日は美貴のところに来た。
「ごっちんなんかやつれてない?」
「あ、うん。5日ぐらい人間喰べてない」
「何で?!死んじゃうよ!」
あたしは考えていたんだ。あたしや美貴は普通に人間を喰べているけど、それは良いことなのかどうか。
あたし達は生きるために人間を喰べる。でもあたし達が生きている事に意味はあるのか。それを考えてしまったんだ。
- 318 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時13分34秒
「なんか、この前。多分喰べようとしてただけだと思うんだけど。無意識の内に、あたしその子にキスしてた。美貴はそんな事無い?」
「ん〜。あるよ、なんか他人が恋しかったときとかね。で、何でそれが絶食と関係あるの?」
「………美貴は人間になりたいって思ったこと無い?」
「へ?」
「ホントは、人を喰べるのはいけない事だと思う。だからあたしは拒絶されたと思うんだ。………だから、人間になれたら良いなって思った。」
「もしかしてごっちん、人間が好きになった?」
「………まさか」
「だってそうでしょ。人間になりたい理由なんか人間と一緒に居たいからに決まってるじゃん!それだけ言って違うなんて言わせないよ!」
あたしは、人間と一緒に居たいの?紺野と居たいの?だから人間になりたいの?
「そう、なのかな………」
判っていても理解は出来ない。あたしは所詮化け物。どう足掻いたって人間にはなれやしない。
- 319 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時14分08秒
「でも、美貴も人間になりたいって思ったことあるよ。」
「え?」
「大分前にね。ちょっとだけ思ったことがある、何であたしは人を喰べないと生きていけないんだろうって。
その時に人間だったら人を喰べなくて良いのにって、誰かと一緒に居ることも出来るって思った。」
「………でもあたし達は人間から見れば化け物で、共存することなんか出来ない?」
「そうだよ、多分ね」
あたし達は人間を殺さないように喰べて生きている。そんなことをしなくても良い方法は無いのだろうか?
あたしは紺野に拒絶された。あたしは紺野と生きることはきっと出来ない。
多分。もうすぐあたしの人生は終わりを迎える。
- 320 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時15分08秒
またあの公園にやってきた。
空を見上げると何時か見たような下弦の月。
空は晴れ渡っていて真っ黒の色に染まっている。
今日多分あたしは死ぬ。あの日見た夢を段々と思い出してきた。
あたしは涙を流してしまうんだろうか?紺野はあたしのために涙を流してくれるんだろうか?
もはやどうでも良かったかもしれない。あたしは今日紺野に自分の正体を告白する。
あたしが来なかった日も待っていたのだろうか。
紺野はいつものベンチに座っていた。所定の場所、ベンチの右側に。
「隣良い?」
あたしは紺野に近づいて話しかけた。紺野はあたしに「どうぞ」と返した。
- 321 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時15分42秒
「こないだはごめん」
「………いいえ、あの時はいきなりでびっくりしただけですから………」
あたし達の間には未だに気まずい空気が流れていた。
でももう今となってはどうでも良い。
「あたし、もう会いにこれない。」
「え?何でですか?」
紺野はあたしの顔を覗き込んで聞いてきた。
「あたし、普通の人間じゃないんだ。」
パッと言ってしまえば楽になる。でも中々口からその言葉は出ない。
「あたし、掟に従うのが嫌になったんだ。人を傷つけてまで、もう生きたくないんだ。だから………分からない?あたし前より痩せたの。」
紺野はジト目であたしを見ると「どうしたんですか?!」って聞いてきた。
「人を傷つけることでしか生きられない。逆に言うと人を傷つけなければ死んでしまう。」
あたしは、最後の告白をする。
- 322 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時16分38秒
「あたし、吸血鬼なんだ。」
紺野の表情が驚きに染まる。
見なくてもそれぐらいのことは分かった。
「この前、あたしが紺野の首にキスしようとしたのも、紺野の血を吸おうとしてただけなんだ」
どこか自分でも納得できなかった。あの時本当にあたしは紺野の血を吸おうとしてたのか。でも、事実そうなんだと思う。いくら無意識とはいえ。状況から見ればそうなんだ。
「でも、………この前先に口に………」
「それはあたしにも分からない。ほとんど無意識だったし、それに………」
「嫌です!!」
急に紺野があたしの言葉をさえぎって言った。
「嫌です!後藤さんが居なくっちゃうなんて!あたし、あたし後藤さんの事好きなんです!」
- 323 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時17分58秒
生憎、あたしは多分「好き」という感情は持ち合わせていない。
だからきっと、紺野の気持ちにはこたえられない。
「でも、人の生き血を吸えば、人が傷つく。もう。化け物扱いされるのは嫌だよ………」
「化け物なんかじゃないですよ!後藤さんが化け物だったら、そんな人間を大切にするような事言いません!」
紺野の言いたいことは分かる。でも事実あたしは化け物なんだ。
「そうだ!あたしの血を飲んでください!あたしなら大丈夫ですから!」
あたしにもう血は要らない。もう、紺野が居れば何もいらない。きっと。
「そんなの要らない。その代わりさ………」
「キスさせてくれない?」
あたしは忘れている夢のとおりに事を進めていたのかも知れない。
でも。これはあたしがしたい事をしているんだ。
あたしが聞いても紺野からの許可は下りない。もう時間が無い。月はもうあの場所まで昇っている。
あたしは許可が下りないまま。勝手に紺野の唇にキスをした。
- 324 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時19分08秒
「へへ………紺野遅いよ、答えるのが、待ちくたびれるよ………」
あたしは紺野の顔を見て言った。
それと同時に視界がブレた。自分の身体が地面に落ちるのが分かった。
「ご、後藤さん!!」
紺野の顔がすごく近くにあるのが見えた。
最後だよ。きっと。この場面をきっと夢に見たんだ。
「あたしなら構いませんから!!飲んでください!!」
血なら飲まないよ。だって。今血を飲んだら。あたしは化け物になっちゃうんだ。
この方法で死ねば、人間らしいじゃん。
「嫌だよ………もう、早く………人間になりたい………」
人間になんてなれないのは分かってるけど。せめて、人間らしく死にたい。
「だって!…血を飲まないと!……そのままじゃ後藤さんが死んじゃう!!」
「泣かないでよ紺野。自分で決めたんだ。人間になるって。血を飲めば化け物になる、だから。」
「だって!!後藤さん泣いてるじゃないですか!!」
自分では分からない、涙を流しているかどうかなんて。
- 325 名前:-三日月- 投稿日:2003年08月10日(日)21時20分02秒
- でもちゃんと夢のとおりに、あたしは涙を流したんだね。
「なんか、あれだね………自分でもびっくりした。………誰かを想って、流せる涙が……あたしにもあったなんて」
ホントにビックリだよ。最後の瞬間まで泣かないと思っていたけど結局夢のとおりなんだね。
「後藤さん、お願いです………」
「あたしは………化け物じゃないよね?………このまま死ぬ事が出来たら………あたしは人間として死ねるよね?答えてよ紺野………」
あたしの質問に紺野は答えない。お願い。答えてよ。
聞いてから数十秒。紺野は首を縦に振った。
「紺野がうらやましいよ。人間は愛に満ちてるよね。」
あたしは人間になれたんだよね?
もう、良いよね?
もう、疲れたよ………
あたしはゆっくり、眼を閉じた。
誰かを想い、祈りながら………
- 326 名前:-三日月-紺野あさ美 投稿日:2003年08月10日(日)21時21分16秒
- 午後9時を回った頃。あたしはいつもの公園に向かって走っていた。
塾で昨日出されていたレポートをするのを忘れて居残りさせられてしまったのだ。
だからきっとあの人はいつもの場所で待ちぼうけ。だから出来るだけ急いでいた。
空にはあの頃とは違う、今日は月の見えない日。新月だった。
「こーーんのーー」
「あ、ごと−さん」
あたしが公園に着くといつものように後藤さんが向かえてくれた。
そう、後藤さんは死んでなんていなかった。
今もちゃんとこうして生きている。生きているんだ。
「紺野、今日は何の話してくれんの?」
「えっと、今日はいつもおっちょこちょいな友達の話を。」
別にあたしの血を吸って生きているわけでもない。
後藤さんはあれ以来もちゃんと人の血を吸わないで生きている。
多分、後藤さんは人間になったんだ。
- 327 名前:-三日月-紺野あさ美 投稿日:2003年08月10日(日)21時22分17秒
「あはははっ。それはドジだねーー」
「ですよねー?だって、バナナの皮で滑るなんてコントじゃないんですから、」
あたし達の関係も何も変わらない。夜の月の下の公園で何か話していた。
ただ一つ変わったのは。あたしが帰る時に必ず後藤さんがすること。
「ん、………」
Kiss。
こうしてたま〜に話の途中でいきなりしてきてびっくりする事もあったけど。
他に変わった事といえば、後藤さんが人間になった事を証明できるような事。
昨日レポートし忘れたのもこれが原因だ。
「あー、もう明るくなってきたね。」
「あ、ほんとですね」
話に夢中になっていると朝まで話している事とかがたま〜にある。
でも、朝日を浴びても後藤さんは消えたりしない。
それは多分人間になったからなんだ、後藤さんが。
「紺野帰らなくて良いの?学校どうするの?」
「ん〜、………今日は学校休みます。」
こうして、あたしの過ごした奇妙で、切ない物語はおわった。
そして後藤さんとの想い出は。
これから作っていく。
END
- 328 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月10日(日)21時24分37秒
- うーん。実はこれ2回目のゴマ紺です。
1回目はSEEK内のどこかで匿名で書いてます。
作名 angel wing
見たい方は探してください。
あとtsukiseさん。ごめんなさい。
ごまこん作ったら一番に知らせるっていったのに、
結局言ってません。ほんとにごめんなさい。
では。今日の更新終了です。
- 329 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月10日(日)21時25分08秒
- レス流し?スレ流し? 其の一
- 330 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月10日(日)21時25分40秒
- 流し 其の二
- 331 名前:tsukise 投稿日:2003年08月11日(月)18時11分48秒
- ご連絡ありがとうございますっ!早速拝見させていただきましたっ!
うわぁっ!!ごまこんっ!!素敵過ぎですっ!
というか…途中切な過ぎて泣きました…本当に。
ラストはもう嬉しくて、ニヤニヤしてしまいましたし(^^
そして、もう1つの作品ももちろん読ませていただきましたっ!
こちらも凄く切なくて、胸が締め付けられる感じでした…っ。
うまい棒メンタイ味さんの書かれる作品は、情景がはっきり浮かんできて
凄く好きなんです…っ!
本編の更新も楽しみにしていますので、これからも頑張ってくださいねっ
応援していますっ!
- 332 名前:09 投稿日:2003年08月12日(火)22時16分50秒
- 0365
- 333 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月16日(土)16時25分39秒
- >>331 tsukise様
ゴマ紺、これを書いたのはきっとtsukiseさんの影響です。
きっととか言うより絶対です。
しかも好きと言ってもらえてかなりうれしいです。
情景とかもかなり心配してるところなんでそういってもらえて一安心です。
こちらも応援してますんで、がんばってください(自分のスレで言うのは可笑しいかw
>>332 09様
…………0365?
どういう意味でしょうか?もしかスレ違い?
それとも何か意図があるのでしょうか?
…作者の頭は空っぽです…
え〜〜。ネット開通まで後2ヶ月ほど…。
それまでの繋ぎとしてまた短編2個書きます。
一個はゴマ紺SS。もう一個はLOVEマシーンの続きの日常編です。
レスは大歓迎です!!
では行きます!!
- 334 名前:LOVEマシーン 投稿日:2003年08月16日(土)16時26分18秒
―日常編―
- 335 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年08月16日(土)16時26分53秒
久しぶりのオフ、今日は高橋がウチに遊びに来る
あたしの家は高橋のマンションから二駅ほど離れた辺りにある
だいたい三年ぐらい前に事務所に用意してもらった物だ
本当は昨日の仕事が終わった後からウチに泊まりに来るはずだった
でも、「ちゃんとドラマ録れてるかどうか心配なんです」と言う高橋の一言でお泊まりはなくなった
『今から行きます』
さっきそんな電話があった
それからずっとあたしは玄関の所で高橋が来るのを待っている
自分でもよく分かっている、この頃自分がなんかオカシイというのを
1人でいると急に寂しくなったり、高橋といられるだけでなんかハイテンションになったり
機械が頭の中に在った頃には考えられなかった事だ
どうも上手く感情をコントロールできない
多分これがよっすぃの言ってた事だ
『機械が壊れた後ってね、感情表現とか行動とかが大袈裟になっちゃうんだよ』
よっすぃもそんな時期があってやぐっつぁんにかなり迷惑をかけたらしい
でもあたしは別にこれで構わない、メンバーのみんなにばれたって平気だし
感情表現が大袈裟な事だって考え様によってはどうって事ない
高橋への思いも大袈裟に伝えたほうがその分大きな思いを伝えられる
- 336 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年08月16日(土)16時27分38秒
ピンポーン
インターホンがなった
あたしは即座に覗き穴から外を見る
この前あたしが買ってあげたジーパン、黒い文字で『DREAM』とかかれたチューブトップ
その上に白いコートを羽織って彼女は立っていた
髪をポニーテールにして耳には小さなピアス、
周りから気づかれない様に黒い帽子を目深に被っていた彼女の名前は、あたしの恋人、高橋愛
あたしはドアを開けるとすぐに彼女に抱きついた、彼女の温もりで寂しさを吹き飛ばしたかった
- 337 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年08月16日(土)16時28分34秒
インターホンを押すとすぐに後藤さんが出てきていきなり抱きしめられた
「ど、どうしたんですか?」
驚いたあたしがそう聞くと後藤さんは一言
「寂しかった」と呟いた
「え?」
「1人で15時間と32分、寂しかった」
15時間と32分…今の時間から逆算すると昨日の丁度あたしが家に帰るぐらいの時間だった
つまり後藤さんは昨日あたしと別れてからずっと寂しかったというのだ
「ご、後藤さんなんかこの頃変ですよ、この前もメンバーの前なのに楽屋で急にに抱きついてきたりとか」
「いや?」
「や、いやじゃないですけど」
「じゃあ、いいじゃん」
「あの、後藤さん?」
「なに?」
「もう離してくれませんか?ホラここだと誰かに見られるかもしれないし」
「ヤだ……後藤寂しかったもん、もうちょっとこのままいさせてよ」
なんだか後藤さんはあたしと付き合うようになってからわがままというか「甘えた」になった気がする
まぁそんなあたしだけに甘えてくれる後藤さんもかわいくて好きなんだけど
「……中入ろっか」
後藤さんがそう言ってあたしを抱きしめていた腕を解いた
後藤さんが中に入っていったのであたしも中に続いた
- 338 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年08月16日(土)16時29分11秒
「お昼食べた?」
「いえ、まだです」
「じゃあ、丁度いいや、あたしもまだなんだ、なんか作るから待っててよ」
「あ、手伝います」
「いいって、今日はあたしの手作り料理食べさせてあげるから」
部屋に戻った後藤さんはまたいつものクールな後藤さんに戻ってしまった
あたし的には甘えてくる後藤さんのほうがかわいくていいんだけど
- 339 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年08月16日(土)16時30分12秒
料理を作り始めて数分
「なんか自分で言ったけど意外だなー」
「え、なにがですか?」
ソファに座ってTVを見ていた高橋はTVを消してあたしに聞いた
「あたしって男っぽいからさ、絶対恋人できたら手作り料理?とか作ってもらうほうだと思ってた」
「あ、そうなんですか?」
「うん、だからさ、今度高橋の家行った時はあたしだけのために高橋の手作り料理食べさせてよ」
「はい、じゃあ練習しときます」
そして数分料理も完成に近づいた時もう一回高橋に話しかけた
「あのさぁ」
「なんですか?」
「仕事中とかさ、メンバーのみんなと一緒にいる時とかはいいんだけどさ、二人でいる時ぐらい敬語やめない?」
「え、でも」
「それに『後藤さん』もやめよ、それじゃあ全然付き合ってる感じしないもん」
「じゃ、じゃあなんて呼べば…」
「いっぱいあるじゃん『ごっちん』でも『ごっつぁん』でも『真希ちゃん』でも」
鍋から目を離して高橋のほうを見ると困ったような顔をしていた
「でないといつまで経っても高橋のこと『愛』って呼べないもん」
『愛』
その呼び方を聞いた高橋の顔がボッと茹蛸みたく顔が真っ赤になった
「いや、でも…」
- 340 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年08月16日(土)16時30分49秒
まだ戸惑っている高橋に近づいて後ろからそっと抱きしめた
「じゃあ練習『真希ちゃん』…はい、」
「ま、…まきちゃん……」
そう口に出して言った高橋はさっきよりも顔が高潮していた
「愛、顔真赤だよ」
あたしは初めて高橋のことを『愛』と呼んでみた
「ま、真赤になんかなってませんよ…あと、その呼び方…」
「いいじゃん、『愛』って名前もカワイイよ、いつまでも高橋じゃあさ…」
あたしは少しの間高橋を抱きしめていた、そしてちょっとした悪戯を思いついた
「愛、今日一緒に寝ようか?」
「ん、別にいいですよ…」
高橋はあたしが言った悪戯言葉の意味をわかっていなさそうに答えた
「しようって言ってるんだよ?」
『しよう』その言葉を聞いた高橋はようやく『一緒に寝よう』の意味がわかったのか再び顔が紅潮し始めた
「え…ア…う……その……」
ハハハ、耳まで真赤になってる、これ以上いじめちゃ可哀想かな
「うそだよ〜ん」
「え?」
「高橋がどんな反応するかと思ってさ、アハ、さっきの高橋すごく可愛かったよ」
あたしは火に掛けっぱなしの鍋を見に立ちあがった
そしてキッチンのほうにゆっくり歩き出す
- 341 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年08月16日(土)16時31分28秒
意地悪くらい笑って受け流せるでもちょっとお返しに意地悪がしたくなった
あたしはポケットから石川さんコントでご愛用『水の入った目薬ケース』を取り出して目の周りに数滴たらした
「本気にしたのに……」
後藤さんに聞えるように声を出す、後藤さんがゆっくり振り向く
振り向いた後藤さんの瞳には涙を流した(様に見える)あたしが映っている
「もう後藤さんなんか知らないもん!!後藤さんのバカァ!!」
バッと後藤さんに背を向けて泣き真似をする
「え、あ…ちょ……高橋?」
横目で後藤さんを見るとすごく慌てていた
「ちょ、ごめん高橋、あの、冗談とか本気とかじゃなくて、ほら、まだあれから2週間も経ってないし
高橋が恐がっちゃうかと思って、あの、したくないんじゃなくて、そりゃしたいけど、高橋は恐がるし、えっと、その……」
正直面白かった、普段はクールなあの後藤さんが慌てている
中々見られないと思って泣きまねを続けていた
すると後藤さんの少し低い声が響いた
「おい……」
あれ、もしかしてばれちゃったかな?
- 342 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年08月16日(土)16時32分07秒
高橋を泣かせちゃったと思って必死で言い訳をしてたんだけど
なんかオカシイ事に気づいたんだ
高橋の肩が小刻みに震えている、それを泣いているせいだと思ったんだけど違ったんだ
こいつ笑ってたんだ
「おい……」
あたしが高橋にそう言った
すると高橋は
「ごめんなさい…だって……真希ちゃん面白い」
肩を震わせて泣き笑い
まぁ『真希ちゃん』にも慣れたらしいのは分かったけど
「そういう悪戯するやつには…こうしてやる!」
ドサ!
あたしは高橋をソファに押し倒した
「「…………」」
数秒間あたし達は無言で見つめ合う
身体は20cmぐらい離れているのにそれだけ離れていても高橋の体温はちゃんと伝わってきて
心臓のドクドクと言う音も聞えてきそうだ
あたしは顔をゆっくり近づけて高橋の唇にキスをした
- 343 名前:LOVEマシーン―高橋愛― 投稿日:2003年08月16日(土)16時32分55秒
十数秒のキス
唇にキスしてきた後、後藤さんは額、頬、とキスする場所を移していく
そして後藤さんの唇があたしの首元に触れた
「ん…」
すると後藤さんは舌をはわせてあたしを刺激する
その時あたしの視界に『ある物』が映った
別に今、こんな行為の途中に言う事ではない
でもそっちが気になってしかたがない
「真希ちゃん」
「ん?恐い?」
後藤さんは首元から顔を離してあたしの顔を見る
「ん、違う」
「なに?」
「う、うしろ」
「うしろぉ?」
「あの、鍋……」
後藤さんの見えないところでは鍋が大変な事になっていた
- 344 名前:LOVEマシーン―後藤真希― 投稿日:2003年08月16日(土)16時33分49秒
指摘されて気がついた
さっきまで自分が何をしていたか
あたしはお昼ご飯を作っていた
料理中、鍋、そのキーワードから連想できる事は……
あたしは恐る恐る後ろを見た
案の定コンロの上で鍋は蒸気をモクモク吹き上げていた
「あ〜あ」
あたしは高橋を置いてキッチンに向かった、火を止めて鍋の中を見る
火に掛けっぱなしだったみそ汁はさっきよりも水位が3cmほど低くなっていた
「大丈夫?」
高橋も経ちあがってこちらにやって来る
「だめ、すっごいしょっぱい、作り直し」
結局その後はそんな雰囲気にもっていけず二人で作り直したお昼ご飯を食べた
まぁ、焦る事はない、二人で過ごす時間はこれからたっぷりとある
敬語を止めて、呼び方を変えただけでも、一歩前進…………かな?
end
- 345 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月16日(土)16時36分05秒
- …かなり腑抜けてます…。
文章の後に“。”が無いのは書いたのがかなり昔だからです…。
何度も何度も視点変更してます。
読みにくくてすいません。
ではでは。
ゴマ紺SS行きます。
- 346 名前:SS@紺野あさ美 投稿日:2003年08月16日(土)16時37分25秒
- 最近後藤さんの様子がおかしい。
2人きりになると妙によそよそしくなったり、前までは普通に話してくれたのに、この頃あまり話しかけてくれない。
前にあたしの事を好きって言ってくれましたけど、
本当にあたしの事好きなんですか?
なんだか、不安です。
- 347 名前:SS@紺野あさ美 投稿日:2003年08月16日(土)16時38分55秒
-ココと勘違い-
- 348 名前:SS@紺野あさ美 投稿日:2003年08月16日(土)16時39分25秒
「後藤さーん。遊びに来ましたよー」
ハロモニの収録途中。
カッパの花道が今収録中であたしは暇だったから、笑わん姫の収録を待っている後藤さんの楽屋に遊びに来た。
「あ、紺野。丁度よかった。今からちょっと出てくるから留守番しててよ」
でも後藤さんはあたしに留守番を言い渡してすぐに楽屋を出て行ってしまった。
近頃こんな感じ。あたしが楽屋に行ってもいなかったりすぐに何処かに行ったり。
なんか、避けられてる感じ。
本当に、何か不安になる。
帰りも一緒になる事はないし、後藤さんと仕事中に会えるのはハロモニの収録とハロプロのコンサートの途中の少しの時間だけだし。
それにプライベートでは休みの日もあまり重ならないから一緒に居られない。
一緒に居る時間がドンドン少なくなっていく。
何で後藤さんはあたしを避けてるんだろう?
- 349 名前:SS@紺野あさ美 投稿日:2003年08月16日(土)16時39分56秒
「ねぇねぇ理沙ちゃん。何でだと思う?」
「えー?そんな事あたしに聞かれてもねー」
後藤さんの事を理沙ちゃんに相談。でも理沙ちゃんは何も答えてくれない。
「愛ちゃん、何でだと思う?」
「んー。忙しいんじゃない?」
そんなわけ無いよ。後藤さん仕事が減ってるって嘆いてたもん。そんなに大げさじゃないけど。
「ねぇねえ。マコッちゃん。」
「ん、何?」
「この頃後藤さんがね」
「え?!後藤さんがどうかしたの?」
マコッちゃんは何故か大きなリアクション。何か知ってるのかな?
「後藤さんが最近冷たいんだけど。何でだと思う?」
「え?あ、っとー。なんだろ?わかんない。」
結局マコッちゃんも何も言わない。
ホントになんでかなー。
- 350 名前:SS@紺野あさ美 投稿日:2003年08月16日(土)16時41分03秒
それから2週間ぐらい後。同じくハロモニの収録日。
あたしはまた後藤さんの楽屋に遊びに行った。
「ごとうさーん」
「あ、紺野。今から仕事なんだ。ごめんね遊べなくて」
また後藤さんはすぐに楽屋から抜け出して何処かへ行ってしまった。
また逃げられちゃった。でも今日は違う。どこへ行くか突き止めてやる。
あたしは後藤さんの後を尾行して行った。
- 351 名前:SS@紺野あさ美 投稿日:2003年08月16日(土)16時41分34秒
「控え室ぅ?」
後藤さんが入っていったのはモーニングとか後藤さんの楽屋があるのと同じ階の控え室。
でも控え室って言ったって空き部屋も多いからここが誰かの控え室かどうかは分からないけど。
とりあえず張り込みだ。
近くの廊下の、座って扉が見える位置の椅子に座った。
扉のほうを食い入るように見つめて後藤さんが出てくるのを待つ。
何分ぐらいそこで居たかは分からない。
あたしは喉が渇いてすぐ側の販売機で牛乳のパックを買った。
でも、不良品なのかストローがついていなくてすぐに飲む事が出来なかった。
もうひとつの飲む方法で紙パックをあけようとしたけど鋏も何も無くて開けることができずにちょっといらいらしていたその時。
あたしがココで見張り始めて結構な時間がたっていたけど、後藤さんは出てきた。
あたしは自分の目を疑う。後藤さんと一緒に部屋から出てきたのは、マコッちゃん。
2人はものすごい笑顔で。声は聞こえないけどマコッちゃんが何かを言って。後藤さんは軽くマコッちゃんの頭を小突いた。
まるで恋人同士に見えた。
- 352 名前:SS@紺野あさ美 投稿日:2003年08月16日(土)16時42分13秒
。
あたしの中にあった疑問が解決した。
この前マコッちゃんが「後藤さん」のキーワードを出しただけですごい反応した理由。
二人はあたしに隠れて会っていたんだ。
後藤さんも「仕事」とか「忙しいから」とか嘘までついて。
どこに嘘をつく理由がある?きっとあたしに隠さなきゃいけなかったからだ。
販売機から出てきて結構な時間がたっている牛乳パック。周りの湿気を冷やしてついた水滴のせいかあたしはパックをすべり落としてしまった。
「!………紺野」
後藤さんに気付かれてしまった。
マコッちゃんもあたしに気が付いたみたいだった。
後藤さんは慌てたような声であたしの名前を呼んでいた。
でも、あたしはショックだった。
好きって言ってくれたはずの後藤さんだったのに。こんな事で崩れてしまうなんて。
- 353 名前:SS@紺野あさ美 投稿日:2003年08月16日(土)16時42分49秒
あたしはその場を走り去った。
もう信じられない。誰も信じられない。
嘘までついて会わなくたっていいのに。ホントの事言えばいいのに。
「ホントは小川のほうが好きだ」って言えばいいのに。隠すから余計に悲しくなって。
あたしは気が付くと、モーニング娘。の楽屋に戻ってきていた。
誰も居なかった。泣くのには丁度いいけれど泣かなかった。
泣けば後藤さんはあたしを好きじゃないと認めてしまう事になる。だから泣かない。泣きたくない。
でも、ホントに泣きそうだった。普段はあまりモーニングの楽屋は誰も居ないようになることは無い。
その静けさが余計に悲しかった。
- 354 名前:SS@紺野あさ美 投稿日:2003年08月16日(土)16時43分25秒
トントン。
ドアをノックする音。
ガチャっと音を立てて扉が開いた。
「こん……の?」
後藤さんの声。息切れしたようにハァハァいいながら部屋に入ってきた。
「ハァ、びっくりさせないでよ。いきなり走って行ったらびっくりするじゃん。」
後藤さんは普段と変わらない声で喋っている。気が付いてないんだ。あたしが後藤さんとマコッちゃんのことに気が付いた事を。
「マコッちゃんは置いてきたんですか?駄目ですよ恋人を置いてきちゃ。」
自分で言ってなんだか悲しくなってきた。でも、中途半端な状態を引きずるよりは全然いい。これでいいんだきっと。初めから後藤さんはあたしを好きじゃなかったんだ。
「紺野?何言ってんの?」
でも、後藤さんはこれ見よがしに惚ける。ホントの事言えばいいのに………。
「知ってるんですよ!!後藤さんがマコッちゃんと遊んでた事!!仕事とか嘘ついて、嘘なんかつかなくてもホントの事言えばいいじゃないですか!!」
溜め込んでいた感情が一気に飛び出した。それと同時に我慢していた涙がドンドンと溢れてきた。
止めようと思っても全然涙は止まらなくて。後藤さんに涙を見られるのが嫌だったから後藤さんには背中を向けた。
- 355 名前:SS@紺野あさ美 投稿日:2003年08月16日(土)16時44分29秒
「………こんの」
急に後藤さんが後ろから抱きしめてきた。
声はいつものような甘い声。回された手もいつもと同じように暖かかった。
「嘘ついててごめん。でも、紺野ちょっと勘違いしてるよ」
「勘……違い?」
「うん、この頃ね。ちょっと習い事しててさ。ずっと先生に教えてもらってたんだ。」
後藤さんが少しだけ抱きしめていた片手を放して何かを取り出してあたしの目の前に持ってきた。
緑色の葉っぱといろんな色の花がついた飾り。これって。
「『ココ』だよ。この前紺野がハワイヤーン娘で作ってたでしょ?」
そうだ、ココだ。レイを作るには大きすぎるからってココを作ったんだ。
「少し前からずっとあの先生からココの作り方を教えてもらってたんだ。小川もレイの作り方教えてもらいに来ててさ。この事は黙ってるように言ってたんだ。」
そうか、だからこの前後藤さんの名前を出したらマコッちゃん変なリアクションしてたんだ。
でも、なんで後藤さんがココを作ってたの?わざわざあたしに黙って。
- 356 名前:SS@紺野あさ美 投稿日:2003年08月16日(土)16時45分32秒
「これね。紺野にあげようと思ってたんだ。」
「ふぇ?!あたしにですか?!」
びっくりした。だってあたしが物をもらう理由が無い。誕生日はとっくに過ぎたし後藤さんに何かあげたわけでもないし。
「なんとなくね。紺野に似合いそうだったから」
そういって後藤さんはココをあたしの髪の毛の左側につけてくれた。その後はまた暖かい手であたしを抱きしめてくれたんだ。
「あの………ごめんなさい。なんか、勘違いしてたみたいで。」
謝ると、また止まっていた涙が流れてきた。
「ちょっと!紺野が謝る事無いの!黙ってたあたしが悪いんだから。」
だって。何か後藤さんに嫌な事言ってないかな?
「でも、」
「泣かないでよ。これは紺野に喜んでもらおうと思って作ったんだから。」
後藤さんは更に力を込めてあたしを抱きしめる。
この前まで感じていた不安は一気に吹っ飛んだ。
後藤さんはこんなにもあたしの事を思っていてくれたのに。何を不安になってたんだろう。
あ。
そういえばココを左側につけたときの意味って。
END
- 357 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月16日(土)16時49分49秒
- ココ作りを始めたときのハロモニを見て思いつきました。
自分的には完全燃焼。
っていうかハロモニ見てない人は何がなんだかわからないですね。
ココを左側につけてる人は結婚してる人。
右側につけてる人は独身の人。
両方につけてる人は恋人募集中。
左側につけた紺野さんは既婚者。
つまりごっちんからの婚約指輪ならぬ、婚約ココだったわけです。
ん〜〜。しかし、ごっちんと紺野の絡みがだんだんテレビから少なくなってるような…
TV東京がそんな企画を立ててくれたら…
ハロプロワイドにごっちんが一瞬だけピーマコの代わりをするとか…
まぁ、ここら辺で妄想はストップ。
- 358 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月16日(土)16時50分22秒
- 流し
- 359 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月16日(土)16時51分02秒
- 流し2
- 360 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月16日(土)16時51分53秒
- 流し3
今日の更新終了です。
- 361 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月17日(日)06時41分26秒
- ごまたか最高!
続編期待です!
- 362 名前:hina 投稿日:2003年08月17日(日)20時10分00秒
- にゃーーーー!!
ごごごごまたかやーーーーーvvvvv
あ、私の好物なんです。。(ぇ
あの〜・・よろしければ、もっと長編で書いてくれません??
駄目・・・ですか・・??
あ、エロとか入れて下さって、全然オッケーですので!!
てか、むしろ大歓迎☆
ごまたか万歳!!良い返事待ってます!!
川*’ー’)人(´Д `*)
- 363 名前:tsukise 投稿日:2003年08月19日(火)23時10分10秒
- 更新お疲れ様ですっ!
ご、こまたか…萌えてしまいました…っ(爆
真希ちゃんなんて…くぅっ!(謎
そして、ごまこんもサイコーですっ!
左に差すのはもうお約束ですねっ!読んでて顔がニヤけてしまいました(爆
本編の続きも、ゆっくりお待ちしていますのでうまい棒メンタイ味さんの
ペースで頑張ってくださいねっ。
- 364 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月27日(水)17時34分46秒
- ダアァァァァァァ!!!
フルルルル、イヤッホー!!!!!!(壊
ってことで今しがたごっちんとの握手会に行ってきました!!
もうかわいかったっすよ!顔ちっちゃいっすよ!
背も思ったより低くて、もう
可愛いーーーー!!!!!!!(壊
ハァハァ……………。
「more maki」買おうと思ったけど売り切れ…
もっと数用意しとけゴルァ!!
ふー、この出会い(?がまた脳内での妄想に力を使われていきますキット。
でも、やっぱりごっちんはクールというより『プリティー』っすね。
今日気がつきました。
- 365 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月27日(水)17時35分32秒
>>361 さん、
ごまたかに『最高』と言って頂きましてうれしいです。
続編はすでに作成中です。
>>362 hinaさん
ごまたか万歳!!
…
おぉ!初めてのお客様ですね!!
初めましてです。これからもよろしく。
ところで>>103->>171の『LOVEマシーン』は読まれてますよね?
この前書いた日常編はあれの続きなので…
やっぱりごまたかは需要に供給が追いついていないようで、(焦
『LOVEマシーン』は、書く人いなけりゃ書いちまえと、書いた初めてのゴマ高だったわけです。
続編。
期待できるかどうかはわからないですが書きます。
>>363 tsukiseさん、
おぉ!!萌えていただきましたか。
自分で書いた小説を読んでも萌えない。
だから他の人がこれを読んで萌えるかどうかがわからない罠w
ごまこんも結構にやついて頂いたようで。うれしい限りです。
空板のほうも楽しみにしてるんでお互い頑張りましょうね!!
- 366 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月27日(水)17時39分35秒
- えーー。リクエストのほうもありましたので
『LOVEマシーン』の続編。公開したいと思います。
これを書き始めたのは結構最近です。
でもまだ、ラストまでかけてませんのでご了承ください。
おそらく。3回か4回更新になります。
- 367 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月27日(水)17時41分27秒
- あ、言い忘れました。
時期は大体昨年の夏の終わりから秋ごろっす。
日常編に関しても大体その前ぐらいということで。ご勘弁ください。
- 368 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)17時42分14秒
2002年、7月の終わり頃。
「それ…………マジですか?」
「……あぁ、マジな話やで」
あたし、後藤真希とつんくさん二人だけの部屋。真っ白な無機質な部屋。
四角い机を挟んで向かい合って硬い椅子に座っていた。
「今から変更はもうないんですか?」
「ないな。もうこの決定は変わらへん」
「そう……ですか」
その“マジな話”を聞いて、あたしはショックを受けていた。
- 369 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)17時43分32秒
「お、ごっつぁんおかえりー!」
モーニングの楽屋に戻るとやぐっつぁんからの『おかえり』。
あたしはその言葉に返事をした。
「おぅ、ただいま」
きっと今。あたしの顔を見ればあたしは悲しい顔をしていると思う。だから出来るだけそんな感じは出さないように笑顔で言った。
「何の話だったの?マネージャー」
何かの本を読んでいた圭ちゃんが一瞬だけ視線をこっちに向けて聞いてきた。
「ミュージックステーションに出る日が変わったんだって。あ、ごとーの歌の方ね」
つんくさんと話した部屋から帰ってくるまで間に考えていた嘘。
何の話かを聞かれたらこう答えようと思っていた。けれど、それもたった数日しか通じない嘘だけど。
「ふーん。そんな事だったらココで言えばいいのにね」
なっちの鋭い指摘。急な言葉にびっくりして旨い言葉は返せなくて「そ、そうだよね」と言葉を濁した。
- 370 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)17時44分42秒
近いうちにみんな知る事になる。
なっちも、圭織も、やぐっつぁんも、圭ちゃんも、梨華ちゃんも、よっすぃも、あいぼんも、ののも、小川も、新垣も、紺野も、
そして、
「石川さん、そのピアス変ですって!絶対おかしいですよ!」
「何よー高橋ー。チャーミーに似合わないものは無くってよ!」
梨華ちゃんと高橋がなにやら言い合っていた。
あたしの好きな高橋も、その事実を知ってしまう事になる。
あたしも嫌な事実を、変えられない事実を知ってしまう事になる
まだ、このときは大丈夫と思っていた。
再起動はしてなかった。
- 371 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)17時45分29秒
LOVEマシーン-卒業と別れ-
- 372 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)17時47分02秒
7月の終わり。
ハロプロライブを終えたあたし達は1つの部屋に集められた。
モーニングだけじゃなくその日のライブに来ていたハロプロメンバー全員が集められた後、つんくさんが遅れて部屋に入ってきた。
ハロプロを新編成する。
そんなつんくさんの言葉から色んなことが伝えられた。あたしだけじゃなくてプッチやタンポポの事とかもいろいろと伝えていた。
まずミニモニやぐっつぁん卒業。タンポポは梨華ちゃん以外のメンバーが総入れ替え。プッチはよっすぃ以外のメンバーが総入れ替え。
そしてあたしと圭ちゃんの卒業。
隣に居た加護はシュンとなっちゃって、前に居た小川は泣いちゃってて、
少し遠くに座っていた高橋は“本当ですか?”とでも聞くように悲しい顔をしていた。
あたしはその顔を見るのが辛くって高橋から視線をそらした。
翌日、マスコミを集めての記者会見が行われた。
みんなはそれぞれハロプロ新生についてのコメントをしていた。そのときの高橋の言葉。
- 373 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)17時47分48秒
「その、話を聞いたとき………涙が出てきましたよ…っ」
涙声のコメントになってしまった。
あたしは高橋のそんな悲しい顔も、悲しい声も聞きたくなかった。
つんくさんから聞いたときも、何でもいいから理由を付けて断りたかった。
それでも決定された項目が変わらないのは分かっている。でも辛かった。
「一緒に帰りましょ」
その会見が終わった後、その日の仕事はもう無かったので皆帰る準備をしていた。
心を落ち着かせるための数日のオフ。そんなときに彼女はあたしに声をかけてきた。
予想外だった彼女からの誘い。あたしは無言で頷いた。
- 374 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)17時50分04秒
「おじゃましまーす」
いつもと変わりのない彼女の言葉。
暗い雰囲気にならないように強がっているのが見え見えの作り笑い。
普段と同じように接してくれる彼女の心がすごく痛かった。
もう一緒に居られない事はあの会見の前から分かっていた。
「あれ?真希ちゃん紅茶どっか置いた?」
自分で言った事、『二人でいる時ぐらい敬語やめない?』。
ああ言ってから数日が経って彼女はあたしの事を『真希ちゃん』と呼びタメ口で話せるようになった。
あたしにとっても彼女にとってもこれが普通だった。
あの時は思っていたのに、時間なんていくらでもあるんだからと。
………でも今は時間が無い。あと二ヶ月であたしはモーニングから脱退する。
- 375 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)17時50分52秒
「ねー真希ちゃん、紅茶知らない?」
「愛はあたしが居なくなっても平気?」
あたしは高橋の聞いた事にも答えず勝手な質問をした。
多分あたしが今聞いたことは自分で聞きたいとも思っていないことだ。
「あたしがモーニングからいなくなっても愛は平気で居られる?」
普通にできない事なんかわかってる。今日の高橋の会見の様子を見ていれば一目瞭然だ。
あたしがモーニングを辞めればあたしと高橋を繋ぐ物は何一つ無くなる。
きっとそうすれば、あたし達が付き合っていると言う事実も無いに等しくなる。
それに再起動の事もある。今別れたほうが傷は一番浅くて済むはずだ。
- 376 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)17時52分08秒
「別れよう」
やっとあたしの口から言おうと思っていた言葉が出てきた。
つんくさんから言われて数日後に思い立った事だ。
あたしがモーニングを辞めて、付き合っているのかいないのか分からない曖昧な関係を続けるよりもこうした方がずっと良いはず。
『別れた』という事実さえあればきっと高橋もまた誰かと付き合い始める。それなら高橋はあたしとそんな関係を続けるより幸せになれる。
「別れない。って言うかなんでモーニング辞めるの?あたしの居るモーニングよりソロのほうがいいの?」
「あたしはソロのほうがいい。前から、ずっと前からつんくさんにもそう言ってた」
あたしの口からは高橋をあきらめさせるための嘘が出てくる。そんな事言った覚えは無い。
「真希ちゃんあたしのこと好きだって言ったよね?そやったら何で辞めんの?あたしの事好きやったら辞めんといてよ!あたしの事好きやないから辞めるんやろ!!」
- 377 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)17時53分03秒
- 高橋は感情が高ぶったせいか独特の訛りを出しながら何処かで聞いたような言葉を言った。
「もう決定した事だよ。テレビにも出てるし。」
あたしは側にあったリモコンからテレビの電源を入れた。いくつかチャンネルを回すとあたしの卒業の部分を喋っているニュース番組があった。
「それに………」
あたしは一番最後に高橋が諦められるような言葉を言う。
自分では言われたくない言葉。つまり自分がそういわれれば諦めがつくと思った言葉。
「それに“高橋”のことは半分遊びだったし」
最後の言葉を言い終えた後高橋の表情が一変する。
パン!!
- 378 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)17時55分13秒
乾いた音はその部屋に響いてすぐに無音の空間に変わる。
彼女の手が打ったあたしの頬は少し赤くなっていた。
平手打ちをした当の彼女は泣いていた。
そんな事をされてもあたしは微動だにせず彼女に視線を向ける。
「………」
ただ冷たい視線で彼女を見つめていた。
急に彼女は立ち上がった。机の上にあった鞄を持って部屋から飛び出していった。
「いてぇ………」
彼女が去った後。彼女に打たれた左側の頬を押さえた。
何でこんなことになっちゃったんだろう。
いくら考えてもあたしは何もしてないのに。どうしてこんなことになったんだろう?
頬を押さえている手の上を何か熱いものが伝っていった。
彼女と同じようにあたしは涙を流して。ただ呆然としていた。
- 379 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)17時56分25秒
次の日。あたしはやぐっつぁんの部屋を訪れていた。
「何?話って」
3人分のコーヒーを運んできたやぐっつぁん。
ソファにはあたしが座っていて。あたしの前のソファにはやぐっつぁんの恋人のよっすぃも座っていてやぐっつぁんはコーヒーを置くとよっすぃの隣に座った。
「たいした話じゃないよ。一応あぃ………高橋に変な事いわないように釘刺しとこうと思って」
あたしの言葉に2人の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「別れたんだ。あたし達。」
あたしがそういうと2人は固まる。
「ちょっ、どう言う事!?何で別れたんだよ!?」
急にコーヒーの置かれている机にダン!と手を突いて詰寄ってくるやぐっつぁん。
「まさか卒業するから別れたとか言う馬鹿げた話じゃないよね?」
やぐっつぁんとは対照的に冷静に事を判断しようとするよっすぃ。
「関係ないことは無いけど。でもあのままだとあたしは高橋のこと傷つけてたと思うから………」
あたしは一呼吸間を置く。
- 380 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)17時59分51秒
「みんながつんくさんからハロプロ新生を聞いた5,6日前なんだけど。あたしつんくさんと2人で話してたんだ。
そん時にあたしが卒業する事聞いた。半分強制的辞める事をね。で、それから2,3日後からなんだけどさ………また、聞こえるんだ」
2人は「何が?」といった様子でこちらを見ていた。あたしは続きを話す。
「また、機械の音が聞こえるんだ。」
そう、あたしの頭の中には、あの時いなくなった機械が再起動し始めていた。
でも、やぐっつぁんは“機械の音”というキーワードを理解できなかったようなので一応説明をする。
「あたしもよっすぃもおかしい時期があったでしょ?そのときに聞こえてた声の事」
補足するように話した。でも、よっすぃは“信じられない”と言った面持ちで下を向いて考え込んでいた。
「ねぇ、よっすぃには無かったの?そんな事」
あたしが聞こうと思っていた事をやぐっつぁんがよっすぃに聞いた。
- 381 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)18時00分35秒
- 「分かんない。あたしは機械が止まった後は二度とあの声は聞いてないから。」
あたしは何処かでよっすぃに期待もしていた。
もしかしたらよっすぃなら対処法を知ってるんじゃないかと。でもどうやら無駄だった様だ。
「あたしと高橋の事知ってる人もういないよね?いるんだったら口止めしておいて。高橋の傷抉る様な事言わない様にさ」
最後にそういってあたしは立ち上がる。
「帰るの?」
「うん、ここにいてもしょうがないし。」
- 382 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)18時01分56秒
「ハロモニは、ごっちんの卒業を認めておりませーん!!!!」
仕事だらけの日常は普通に戻ってきた。
ハロモニやMUSIXであたしの卒業企画が行われ始めていた。
「うち等が頑張れば。ごっつぁんは卒業しないって次の日の新聞に載るから。『卒業辞めた!!』って」
やぐっつぁんもよっすぃも普通に仕事をしている、さすがはプロと言ったところだ。
ただ問題は高橋だ。仕事だと言うのにあたしにちっとも絡んでこない。
別にその方が楽であたし的には良かったけれど、少し心配だった。
そして昼近く、
「じゃあ休憩はいりまーす」
一本目の取りが終わりADの声で昼休憩に入った。
モーニングの楽屋に戻ると13人分のお弁当と13本のお茶缶。
一個ずつとっていつもの自分の場所に行ってお弁当を食べる。
もうあたしの卒業とかの話題は出なくなっていた。やぐっつぁんやよっすぃが違う話題で盛り上げようと頑張っているからだ。
- 383 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)18時03分37秒
―お腹空いてるんだったら食べれば?―
急に機械の声が聞こえた。うるさい。考え事ぐらいさせろ。それに言われなくても食べるよ。
でもあたしの言葉には返事は返さない。一方的に喋るだけの機械。
今は未だこんな調子。前はもっとおしゃべりだった。でもまだ起動したばかりであまり喋らない。
きっとそのうち五月蠅くなる。でも以前のようにはなりたくなかった。
あたしは早めに弁当を食べ終えて昼休憩の時間も残っていたので局内を散歩していた。
本当言うと楽屋でみんなの輪の中で喋る気分じゃなかったし、高橋と同じ空間にいるのも辛かった。
- 384 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)18時05分11秒
「あ、ごっちんー」
「んぁ」
正面から来る誰かから名前を呼ばれた。
この頃更に髪を染めて可愛くなったハロプロのアイドル。松浦亜弥。
「あ、まっつー。何でこんなとこいんの?」
「歌撮りですよ歌撮り」
まっつーはまっつー特製の親指人差し指中指のスリーピースを目のところに当ててにっこり笑った。
「ごっちんは何してるの?」
『後藤さんは何してるんですか?』
何度か瞬く。まだ“後藤さん”と呼んでいた頃の高橋がまっつーにダブる。
「ん、あぁ、別に」
頭の中の機械がまた何か喋り始めている。
「大丈夫?ごっちん。調子悪そうだよ?」
何故かあたしに抱きついてきてあたしの方を上目遣いで見つめてくるまっつー。抱きつき魔だっけ?まっつーって。
………またまっつーに高橋の姿がダブる。これは高橋じゃない。多分機械が見せてる幻影だ。
- 385 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)18時06分34秒
―襲っちゃえばいいじゃん。誰も見てないんだし。すぐ側に女子トイレもある。襲っちゃえよ―
バカ、何言ってんだよ。そんなことしていい訳無いじゃん。まっつーはあたしの事好きでもなんでもないんだ。
「ごっちん顔色悪いよ?本当に大丈夫?」
あたしの顔を心配そうに覗き込む。けれどその気遣いの声もあたしには届かない。
―まっつーは自分の事を好きかどうかなんていってないでしょ?本当は自分のことがすきなんだよ?―
「まっつー………あたしの事好き?」
あたし何聞いてるんだよ。そんな事聞きたくもないのに。
「好きだよぉ」
―好きだって言ってるじゃん。じゃあ襲っちゃってもいいじゃん―
違うよ、今の好きって言うのは恋愛感情じゃなくて友達とか同じハロプロのメンバーとして好きだって言ってるんだよ。
絶対そういう意味じゃないよ。
「それがどうかしたの?ごっちん」
「………なんでも、ないよ」
あたしは抱きついているまっつーの腕を解いて少し離れる。
- 386 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)18時07分33秒
「あ、ごっちんと亜弥ちゃん」
「ああ、吉澤さーん」
後ろから聞きなれた声がする。この声はよっすぃだ。
「あのぉ、ごっちん何か顔色悪いんですけどー」
「え?」
よっすぃが側までやってきてあたしの顔を覗き込む。でもすぐに視線は外されてまっつーのほうを向くよっすぃ。
「大丈夫だよ、ごっちんちょっと風邪気味なんだ。ほら、ごっちんは楽屋戻って、ほら、亜弥ちゃんも」
よっすぃはまっつーの背中を押して向こうのほうへ歩いて行く。
「えぇ?ちょっと、ごっちん放っといていいの?」
「ダイジョブだって」
- 387 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)18時08分33秒
あたしは2人が立ち去った後、何とか心を落ち着けようとすぐ側のトイレに入った。
手洗い場の鏡に向かってため息を吐く。
「おかしくなりそう………」
一言呟いた。
幻覚。きっとそんな感じだろう。この声も。そして目の前の鏡に写る自分も。全てが本物ではない。
だって今鏡に写っている自分は自分と違う動きをしているから。
―好きだって言ってるんだから襲っちゃえばよかったのに―
「うるさい。前の高橋のときと同じ状況じゃんか。」
―高橋のときはうまく収まったでしょ?―
「収まってないよ。高橋は今傷ついてる。」
あたしは鏡の中の自分に向かって話しかける。でも鏡の中の自分は、機械の声はあたしの言葉を全て受け答えて返してくる。
―それは自分がフッタからでしょ?それに高橋と別れたなら誰と付き合ってもいいでしょ?高橋に負い目を感じる必要は無いんじゃない?―
「うるさい!!!!」
バリ!と、音を立てて鏡がバラバラになる。自分を写していた鏡は光源をうまく反射できなくなりあたしが何人も映っている。
そして鏡をそうしたあたしの左の拳は血だらけになっていた。
- 388 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)18時10分10秒
- 「ごっつぁん、だい………」
『大丈夫?』と続くのだろうか?たぶんよっすぃから話を聞いたんだと思う。やぐっつぁんがあたしのいるトイレに入ってきた。
やぐっつぁんはヒビの入った鏡とあたしの血だらけの手を交互に見つめていた。
「ちょっ!本当に大丈夫ごっつぁん!!」
「ははは………」
本当に何がなんなのかもう理解らなくなってきた。
あたしは膝を折ってやぐっつぁんに縋るように抱きついた。
「もう………オカしくてさ………壊れちゃいそうだよ」
前に機械の音を聞いてるときはこんなでも無かった。機械の声に頼っていたから。
でも機械の声に反発すると、自分の全てが否定されたような感覚に陥る。
自分がドンドン理解できなくなってくる。
「助けて………だれでもいいから、ごとーを助けてよ………」
もうあたしは壊れていたのかもしれない。
- 389 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)18時10分43秒
- LOVE MACHINE
- 390 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)18時11分28秒
- TO BE CONTINUED
- 391 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月27日(水)18時12分12秒
- TODAY`S UP DATE>>366-390
- 392 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月27日(水)18時13分13秒
うー、まず、停止編、日常編、と来まして、今回が『再起動編』です。
今回は吉澤も頼りにならないので結構ごっつぁんがピンチになってます。
大体これで半分か、1/3ぐらいです。
今回はまだハッピーエンドかどうかラストを決めてません。
感想いただけましたらその時にハッピーエンドがいいかどうか書いていただければ嬉しいです。
では、今日の更新終了。
- 393 名前:つみ 投稿日:2003年08月28日(木)07時31分00秒
- せつねえなぁ〜
- 394 名前:くり 投稿日:2003年08月28日(木)11時25分10秒
- 更新おつかれさまです!
LOVEマシーンの続きかなり楽しみ
にしていたのでうれしいっす!!!
後藤さんと高橋さんのこれからの展開
かなり気になります。
でも、最後はやっぱしハッピーエンド
がいいです!
つぎの更新もがんばって下さい!
- 395 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)11時55分12秒
- 更新お疲れ様です。
ラストは、作者さんが思うがままに頑張って下さい。
青の方も待ってます。
- 396 名前:tsukise 投稿日:2003年08月28日(木)21時18分25秒
- 更新お疲れ様ですっ。
ごっちん…痛いですね…っ。
これからのごっちんと高橋の関係がどうなっていくのか
凄く気になりまくりです…っ!続き、お待ちしていますので
頑張ってくださいねっ。
- 397 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月30日(土)17時27分26秒
- >>393 つみさん、
『せつない』と言って貰えて光栄です。
こんな感じの話を書くのは初めてなのですが、精一杯がんばります。
>>394 くりさん、
いやー、もうどっちが本編か分からないくらいラブマを盛り上げちゃってるようで…
二人の関係はこれからドンドンと昼ドラのように泥沼化させてみたいと(嘘
ハッピーエンド…今からそうなるのが難しい方向に話を進めてしまったようで、
自分の技量に合わない話は書かないほうがよさそうですw
>>395 名無しさん、
うおっ、そう言ってもらえれば気持ちが楽です。
青のほうですが。
話を早く進めるために自分を追い込んだはずが逆のようで…(苦笑
あちらもできるだけ早い更新を目指します。ごめんなさい。
>>396 tsukiseさん、
!!!
痛いと言ってもらえた!!
実は『痛い』話を目指して書き始めたんです。
相違って貰えればもう満足(オイ マテ
できるだけ早い更新を目指します。
えー、会社のパソコンより無断で仕事中に書いてます。
明日、夕方頃に更新すると思います。
と言うか明日中に続きを更新します。
- 398 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)18時47分56秒
『ごと………真希ちゃん。今度遊園地行き……行かない?』
『んぁ?今度っていつ?』
『次のオフ。水曜日。真希ちゃんも休みでしょ?』
『そうだけど………なんで遊園地?』
『前から行ってみたかったから』
まだ高橋があたしへの敬語に慣れていなくって“真希ちゃん”という呼び方にもなれていない頃。
2人であたしの部屋。
あたしは雑誌を読んでて、高橋はあたしに寄り添うようにテレビを見てたんだけど高橋が急に遊園地に行こうって言い出した。
その時テレビが遊園地特集をやってたせいだろう。
あたしも高橋とはデートらしいデートはしていなかったのでいい機会だと思って遊園地にいく事にした。
- 399 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)18時49分00秒
『うわー。本当に遊園地だー』
遊園地に着いた高橋の第一声。目深に帽子をかぶっているあたしは隣でそんな高橋を見ていた。
『愛はこういうところ来たこと無いの?』
『ないよー。福井にはそんなとこねぇもん』
あたしの質問に高橋はまた少し訛る。結構慣れてきたんだけどやっぱり可笑しい。
あたしは口角を緩ませながらも高橋に聞く。
『じゃあ、ジェットコースターとかにも乗った事無いわけだ』
『うん』
あたし達はフリーパスを買って遊園地内に進み始めた。
高橋は絶叫系が好きのようでコースター系の物や、タワー型の『ドーン!!』って上がる奴とかそんな奴に乗りたがった。
若さのせいか高橋はすっごい元気で『次あれ!』『次はあれ!』って感じで勝手に進んでいく。
あたしも高橋のようにはしゃぎたいけれど場所が場所だけにばれる様な真似はしたくない。
ココで見つかれば大騒ぎだ。
- 400 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)18時49分58秒
『真希ちゃん早く!』
『分かった。分かったから手ぇ引っ張んないでよ』
こんな感じで数十分。
それだけの間高橋に引きずられてたらあたしは疲労が溜まってきて、
『高橋。ちょっとペース落とそうよ。あたし疲れちゃったよ』
『えー。だってフリーパスなんだからいっぱい乗らないと損じゃないですか』
『そ、そりゃそうかもしれないけどさ』
疲れ気味のあたしはそばにベンチに座ろうとした。そのとき、
『あ!じゃあ、あれ乗りましょ!』
『へ?』
高橋は近くにあるアトラクションを指差した。
すっごい高くて一周何分掛かるか分からないくらいの観覧車。
あたしもそれなら大丈夫と高橋に手を引かれて観覧車に向かった。
- 401 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)18時55分06秒
観覧車は頂上だった。
さっき言ったように他からは絶対見えない。
あたしは高橋の頬を引き寄せて何度も何度もキスをした。
角度を変えて、高橋の髪をぐしゃぐしゃにするように貪る様なキスをした。
多分こんなにキスしたのは初めて。
なんとなく、観覧車の頂上って言うのがあたしをそんな行動に走らせた。
あたしが唇を離すと高橋はトロンとした目であたしのほうを見ていた。
そして、
『頂上に着いたらあたしからキスしようとしてたのに、されちゃった。』
そんな事を高橋は呟いていた。あたしはぐしゃぐしゃにしてしまった高橋の髪の毛を手ぐしで元に戻した。
- 402 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)18時55分46秒
『ねぇ、今度2人で旅行行かない?』
『旅行?』
観覧車が全体の3/4ぐらい回った頃。高橋がそんな話をふってきた。
『あ、今度って言ってもすぐじゃなくて連休がもらえたとき。』
『いいね、新婚旅行代わりだ』
『え、新婚………』
なんか高橋はそういう話には弱いみたいですぐに顔が赤くなる。ホントに茹蛸みたい。
って言ってもホントの茹蛸は紫っぽいけどね。
『って言うかさ、新婚旅行ってことは新婚初夜って事だからなんかあるよね?』
『ま、真希ちゃん!!』
『あはは、冗談冗談。ホント愛って可愛いね』
あたしはフッと外に視線を向けた。
そこで何か違和感に気が付く。
『やばい、多分あたし達が居ることバレテル。』
『え、嘘?』
外の入り口の辺りにはすごい人だかり。
明らかに観覧車の順番を待っているのではない。
- 403 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)18時56分33秒
- 『愛、出たら走って、そんで今日は帰ろう』
『う、うん。分かった。』
あたし達の乗った観覧車は入り口について係員の人が鍵を開けた。
あたし達と入れ違いに誰か二人が観覧車に乗った。
向こうの人だかりの中から『真希ちゃーん』とか『愛ちゃーん』とか歓声が聞こえる。
『愛、絶対手離さないでね』
『う、うん』
あたしは高橋の手を強く握った。
『走れ!』
『ウン!』
あたし達は人波掻き分ける様にその人ごみの中を走っていく。
少しファンの子がついてきちゃったみたいだけど何とか振り切ってあたし達は遊園地を後にした。
―――今となっては過去の記憶。
すごい楽しかったあの頃。
それに何の不安も無かったあの頃。
そして
もう戻れないあの頃。
- 404 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)18時57分05秒
「手、大丈夫?」
「うん、あんまり痛くない」
さっき居たトイレの近くの空き部屋。
やぐっつぁんがどこからかもって来た包帯であたしの左手は応急手当をしてもらった。
痛みもあまり無かった。こんな物。高橋の痛みに比べたら全然痛くない。
「落ち着いた?」
「さっきよりは。もう声も聞こえない。」
あの後すぐに機械の声は聞こえなくなった。だからすぐにあたしは冷静を取り戻していった。
そのせいか、だんだん左手に痛みの感覚が戻ってくる。
少し強く拳を握ると白い包帯に少し血が滲んだ。
「ねぇごっつぁん。不安なんじゃないの?」
ふいにやぐっつぁんに話しかけられた。
「不安?」
「そ、モーニング卒業したら否が応でもモーニングの高橋とは距離が開いちゃうじゃんか。
距離が開くってことはあまり会えなくなるし、会えない間高橋は誰といるかも何してるかも分からない。それが不安だったんじゃないの?」
やぐっつぁんの言ってることは全然間違っていない。確かにあたしは不安だった。
「そりゃ不安だよ。高橋可愛いし、誰にでもすぐ好かれる性格だし、もし高橋が誰かを好きになったらって。すごい不安」
- 405 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)18時58分37秒
自分の言葉にハッとする。
………そうか。だからあたしは別れたんだ。
フラれる心配が無いように。別れてしまえばフラれる事は無い。
あたしは怖かったんだ。高橋がいなくなってしまうことが。
………でもこれじゃあ一緒。あたしは結局高橋を見失って壊れかけている。
あたしは高橋を見失った恐怖で、また機械を呼び起こしてしまったんだ。
「なんとなく判った………どうすればいいか」
あたしは立ち上がった。今動かなければもう戻れない気がした。
「ご、ごっつぁん?」
あたしは話を聞いてくれたやぐっつぁんを放って一目散に楽屋に戻った。
- 406 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)18時59分17秒
「高橋いる?」
楽屋を除くも高橋はいない。
「ねぇ、高橋知らない?」
楽屋の隅で本を読んでいた圭ちゃんに高橋の事を聞いてみた。
「スタジオ。コントの撮影だと思うけど。」
「わかった。ありがと圭ちゃん」
行方を聞いてすぐにスタジオに向かった。コント撮影用のスタジオはすぐ側。そのスタジオへ行く途中に廊下でなっちとすれ違う。
「あれ、ごっちん。今日はアヤノコウジフミマロじゃなかった?」
「え?」
なっちの口から聞いて思い出す。
そういえばあたしもコントに出なきゃいけない。しかもフミマロ………。
撮影までもう時間が無い。今からじゃ無理だな。
高橋と話すのは帰りにしよう。
あたしは今高橋と話すのを諦めて着替えに戻った。
- 407 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)19時00分16秒
「はいOKでーす」
「お疲れ様でしたー」
監督の声がして2本分のコントが撮り終わった。
あたしはすぐに高橋の後を追って話しをしようとした。けど、
「後藤さん。卒業に向けてのコメント撮りたいんで少しいいですか?」
こんなときに撮らなくてもいいのに、と思ったけど仕事だ。仕方が無い。
ADさんに呼ばれてあたしは控え室のような所でコメントを撮ってもらった後にすぐに楽屋に戻った。
けどもう高橋は帰ってしまったようで楽屋にはいなかった。
「はぁ、仕方ないか。」
本はと言えば自分のせいだ。あたしは帰る準備を始めた。
家に帰る前、駅の近くで携帯電話を取り出した。
高橋と話がしたかった。今すぐに話がしたい。今から会えないか。
聞きたかった。ここの所全然聞かない高橋の声。
戻りたかった。あの頃の2人に。遊園地に行ったり。2人で渋谷に出かけたり。
あの頃の関係に戻りたかった。
機械音が何度もコールする。
こんなときだから長く感じるんじゃない。実際に長いんだ。
コール音は無情にも途絶えてしまった。
後から「プー、プー、プー、プー」という単音が届いた。
- 408 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)19時01分00秒
もう一度電話を掛けた。
しかし今度は電源が切れた事を示すメッセージが流れてきた。
避けられている。絶対に。
もともと『遊びだった』と言ってふったんだ。避けられて当然。
でも苦しかった。
自分でまいた種だけど。
辛かった。
- 409 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)19時02分03秒
パチ。
部屋の明かりをつけた。
電球が切れかけている。そういえば高橋が言ってた。そろそろ交換しないと、って。
もともと一人暮らしのはずなのにこの部屋が寂しく感じる。
それはきっと高橋がいないせい。
いつの間にか2人でいることに慣れてしまっていたから。一人は悲しく感じる。
いろんなところに高橋のものが置いてある。
ソファの上には高橋専用のクッション。ダブルベッドの上には高橋の枕。
お風呂場には高橋のボディソープとシャンプーとトリートメント、リンス。
洗面所には高橋の歯ブラシ。
こんなにもこんなにも高橋がここに居た証があるのに。高橋はここにはいない。
もう、
戻れないかも知れない。
あたしは疲労感からかベッドに倒れこんだ。
目を瞑って浮かぶのは高橋の笑顔、泣き顔、怒ってる顔。
いつの間にか高橋はあたしの心のウェイトを大きく占めていた。
高橋がいなくなってこんなに悲しいとは思わなかった。
前なら、隣を見ればすぐに高橋の顔があったのに。
もういない。
あたしはいつの間にか眠りに着く。
そして機械のせいか夢を見た。
嫌な夢だ。
- 410 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)19時02分50秒
『ねぇ、高橋』
『なんですか?』
『話し…あるんだけど』
『聞きたくないです。そんな話。それに………』
『それに?』
『もうあたしあさ美ちゃんと付き合ってるんです。できれば近づかないでください。』
『嘘、でしょ?』
『ホントです』
「うわぁぁあ!!」
急に起き上がる。
目覚めたの自分の家のベッド。
眠り始めてから恐らく1時間と経ってない。
嫌な夢だ。
- 411 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)19時03分39秒
―その内そうなる。これは自分で蒔いた種でしょ?―
寝起きから頭に響く機械の声。
あたしは必死で頭を振って声を払う。
でもそれは無駄なようで機械の声ははっきり自分の頭に届いてくる。
―もう諦めな。無駄なんだから。―
「うるさい………」
あたしは声に苛立って左の拳を握った。
左手はジンジンとしてきてまた包帯を赤く染めていく。
ガン!!!!
左の拳を強く握ったまま壁に打ち付けた。
壁には拳の形に血の後がついた。
「ホントに。壊れちゃいそうだよ………あぃ………会いたい。」
あたしは離れて初めて。愛の名前を呼んだ。
けれども空を切る言葉は決して愛には届かない。
虚しかった。
- 412 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)19時04分48秒
次の日からもあたしの電話は高橋には届かなかった。
電源が切れる事は無かったけど、あたしの電話には出てくれなかった。
仕事現場で会ってもそっけないし、2人で話すチャンスも無い。
そんなまま時間はドンドン過ぎていく。
もう、横浜アリーナのリハーサルが始まっていた。
「おいごっつぁん、大丈夫かー?」
「、だいじょぶだよ………」
ライブ会場の控え室から舞台へ向かうために廊下を歩いていた。
あたしの隣にはあたしに付き添うやぐっつぁん。
「まったく、前のときの高橋と一緒じゃんか。夜寝れないって。」
「そのせいで倒れちゃったらお笑いだね。」
あたしにはまだ冗談を言う元気はあった。
でも、いつものような元気は無い。それは前を歩くやぐっつぁんとの距離がドンドン開いていく事からもわかる。
いつの間にかあたしの心の傷は肥大化して行った。
ただ高橋と話せないだけ。それはドンドンあたしの心を蝕んでいく病気のようなものだった。
機械のせいで夢にはあたしを嫌いになる高橋しか見れない。
すぐに目は覚める、中々眠る事ができない。
何時かの高橋と全く同じ状況だった。
- 413 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)19時05分20秒
夢には高橋を襲おうとするあたし。その悪夢のせいですぐに目が覚めちゃってダンスレッスン中に倒れちゃったんだったよね。
今さらだけどそのツケが自分に回ってきたんだ。
頭はグラグラするし、足取りは重い。
今日のリハだってずっと舞台の上に入れるかどうか判らない。
そんな風に考えていると何故か高橋の顔が脳裏に浮かんだ。
泣き顔じゃない。笑顔でもない。
悲しい顔。
瞬間。
あたしの視界がぐらりと揺れる。
あたしはゆっくり膝を付いて。地面に手を付く。
やぐっつぁんがあたしの側に戻ってきたらしい。
何か声は聞こえるけど何を言ってるのかわからない。
顔を上げるとやぐっつぁんの姿が二重に映る。
自分の吐息さえ聞こえないほど脳がどうかなっている。
急に頭が重くなる。目の前が真っ白になって。立ちくらみを起したようだった。
でも、次の瞬間にはあたしの目の前は真っ暗になっていて、
あたしは意識を失っていた。
自分の倒れる音さえ聞こえなかった。
- 414 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003年08月31日(日)19時06分08秒
LOVE MACHINE
TO BE CONTINUED
TODAY`S UP DATE>>398-414
- 415 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月31日(日)19時08分35秒
- はぁ〜〜………
ため息しか出ないっす。
今日やっとネットが開通したんですけど。
昨日うちのパソコンのHDDがぶっ飛びました。
小説のデータもすべてそのパソコンにしか入ってなくて
唯一無事だったのはフロッピーに入っていた少量のラブマ。
ネット開通したら更新早くなるといいましたが
もう少々時間をください。
すいません。
- 416 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年08月31日(日)19時09分16秒
- 流し
- 417 名前:tsukise 投稿日:2003年08月31日(日)20時16分47秒
- 更新お疲れ様ですっ!
うわ…っ、ごっちん…っ!!と思わず叫んでしまいました…。
すごく描写が細かく表現されてて>>413の部分に、凄く惹きこまれました…っ。
そして、パソコン…大変みたいですね…(^^ゞ
ゆっくりとお待ちしていますので、がんばってくださいね…っ。
- 418 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)22時50分30秒
- はぁぁ〜切ない!
高橋の気持ちが気になる…
続き待ってます!パソがぶっとんでしまったみたいですがゆっくり頑張ってください♪
- 419 名前:hina 投稿日:2003年09月03日(水)20時19分01秒
- うっわぁ〜〜〜〜〜〜!!!!
ごまたかだぁーーーーww
あっ有難う御座います!w(ぇ
続き待ってますんで!!
やっぱごまたか小説少ないから、一つでもあると嬉しいです〜。。w
これからも頑張って下さい〜w
応援してむわっす!(誰
- 420 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/10(水) 22:09
-
入り口の所で係員の人にフリーパス見せて観覧部屋?に二人で入って外から鍵を掛けてもらった。
あっという間に地面は離れていき観覧車は高いところまで上り始める。
『これ、一周するのにどれぐらい掛かりますかねぇ』
『さぁ、相場とか分からないしね』
『………』
『………』
『何で黙っちゃうの?』
『なんか会話に困るね、ここ』
隣同士で座っていたあたし達は何故か会話が進まない。
なんとなく手持ち無沙汰のあたしは外の風景を見る。観覧車は結構高いところまで来ている。
頂上まであと少しのところまで来ていた。
『もうすぐてっぺんだね』
『あ、ホントだ』
『この一番上って他の部屋からも絶対見えないよね?』
『そうですね』
『それに完全密室だし、ヤラシイ事しても誰からも見られないし逃げられないよね?』
『………なに考えてんですか?』
『や、高橋と何かするには絶好の場所だと思ってさ』
あたしは外の風景から視線を戻して高橋の顔を見た。
うっすらとそのほっぺは赤くなっている気がした。
『大丈夫だよ。こんな所で襲わないし、仮にもアイドルなんだし。』
高橋の表情からフッと力が抜けた気がする。ほっとした表情だ。
『するとすればキスぐらいかな。』
- 421 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/10(水) 22:12
- 今更ながら抜けてるのに気が付きました。
400と401の間にこれが入ります。皆さんも何か違和感があったと思いますが
勘弁してやってください。HDDも完璧に壊れてしまいました、
…5MB分の小説が……
- 422 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:12
-
見慣れない場所で目を覚ます事は分かっていた。
きっと病院か近くの休める場所のどちらか。
目を開けるとやはり見慣れない天井が見えた。
頭が重くてあまり考える気力も無いけど今起き上がったら立ちくらみを起すだろうと思った。
ゆっくり身体を起す。やっぱり立ちくらみを起した。
急に目の前が灰色に近い白色に変わった。
部屋を見渡す前にあたしはまた布団の上に倒れる。
結構重症みたいだ。
『だからなんか顔ぐらい見せていけっての』
『だって、今は会いたくないんです』
『じゃあ何でココに来たんだよ!!』
『いいじゃないですか、放って置いてくださいよ!!』
外の部屋からはなにやら言い争いが聞こえる。どちらも聞いたことのある声だ。
でもあたしはまだ立ち上がれなくて部屋の外には出れない。何を言ってたのかを聞くことも出来ない。
しばらくして声は止んだ。
そして声が止んですぐ今あたしがいる部屋の扉が開いた。
- 423 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:13
-
「お、ごっつぁん起きたのか」
外から聞こえた声の片割れ。やぐっつぁんだ。
「うん、あたし何時間ぐらい寝てた?」
「大体10時間かな。今は夜の8時で、そんでここはスタッフさんの仮眠室です」
やぐっつぁんは何か変な口調で喋る。その顔からは苛立ちというかそんな感情が読み取れる。
「なんかあったの?」
あたしは布団からを身を起して聞いた。
「………はぁ。あんたらってホント似た者同士だねー」
やぐっつぁんはため息をついて言葉を濁す。
あたしにはその言葉が何を意味するのか全く分からない。
「さっきまで高橋がいたよ」
やぐっつぁんが言った一言。
重くてうまく働かない頭だけどなんとなくのやぐっつぁんが言った『似たもの同士』の意味が分かった。
あたしも高橋が倒れてしまったときに同じような事をしたから。
見舞いには行ったけど、高橋には直接会わずに帰ったんだ。
そのときの記憶は忘れようとも忘れられない。
- 424 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:13
-
「高橋が来てたの?」
あたしの言葉にやぐっつぁんは『Yes』とも『No』とも言葉は言わずにただ頷いた。
「早く仲直りしちゃえよ。見てるこっちがイライラするよホントに」
仲直りはしたい。でも高橋はあたしを避けてる。
話したくとも。話せない。
「無理だよ………」
あたしの口から初めて諦めの言葉が出た。
「何が無理なの?」
「もう、戻れないよ」
きっともう戻れない。楽しく笑っていたあたしと高橋の関係は崩れてしまった。
戻ることはもう出来ない。もう二人して同じことで笑う事は無い。
「戻れるよ」
- 425 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:14
- 急にやぐっつぁんが言った。
その言葉はやけに自信に満ちている。
「何でそんな事やぐっつぁんに分かるのさ」
「ごっつぁんはなんで高橋がごっつぁんに会わずに帰ったか分からないの?」
………会いたくないからでしょ。もうあたしになんか愛想尽かしたんだよ、きっと。
「高橋はね。『後藤さんはあたしの事がもう嫌いになったから顔は見せないほうがいいと思う。』って言ったんだよ。意味分かる?」
―嘘だよ、そんなの嘘だ。―
急にまた機械が喋りだす。その口調はあたしの言葉を代弁したような気がする。
「高橋はまだごっつぁんのこと諦められないんだよ?」
―そんなの放っておけばいいよ。今はもうなんでもないんだから。―
更に機械は言葉を続ける。多分、機械が喋る理由が分かった。
あたしが高橋を取り戻して、不安が消え去ったとしたら、また機械は活動を停止する。
だからあたしが不安を抱き続けるように夜毎不安になるような夢を見せるんだ。
つまり、あたしが不安を消せたとしたらまた機械は活動を停止する。って言う事。
「ねぇ、やぐっつぁん。」
「ん、」
「悪いんだけど、楽屋から携帯電話持ってきてくれない?」
あたしのその言葉にやぐっつぁんは説教モードから通常モードに戻る。
やぐっつぁんはすぐに立ち上がって「分かった」って部屋を出て行った。
結構すぐにやぐっつぁんは戻ってきた。モーニングの楽屋のすぐ側にこの部屋はあるらしい。
「はい、」
そういってやぐっつぁんはあたしに携帯電話を渡した。
「ありがと」
メモリーから高橋のナンバーを表示させた。
妙に緊張する。ここ数日つながらなかった電話。
今もつながらないとすればそれは拒絶以外の何物でもない。
- 426 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:14
- 怖い。
もし繋がらなかったら………。
目を閉じて浮かぶのは最後に話したときの悲しみに包まれた高橋の顔。
きっと高橋も元に戻りたいと思ってるはずだ。
あたしは自分の気持ちに拍車を掛けて通話ボタンを押した。
プップップという小さな音がした。
プルルルルルと向こうを呼び始める。
何度も何度もコールする。
1分2分3分。長く長くコールした。
でも結局は。
『プー、プー、プー』
という音を立てて電話は切れた、今日も同じ。
希望を光を灯すはずのコールは繋がらなかった。
携帯電話を電源ボタンと共通のHLDボタンを押して通話を切った。
「ごっつぁん?」
「………繋がらなかった。」
あたしのテンションはただの寝起きよりも低くなる。
「高橋と別れた日からずっと、高橋あたし避けてるみたいなんだよね。だから、もう元にも戻れないよ」
諦めの言葉は、あたしとやぐっつぁんしかいない部屋に虚しく響いた。
もう戻れないと知ったあたしの瞳は少しずつ潤み始めていた。
「ご、ごっつぁん………よし、オイラが何とかしてやる!!」
「え?」
急にやぐっつぁんが高い大声で叫んだ。
「二人で話せる場所を作ればいいんだろ?そんな事オイラならちょろいもんよ。このおいらに任せとけ!!」
やぐっつぁんは多分あたしを元気付けようとそんな事を言ったんだと思う。
でもいまのあたしはそんな信用できるかどうか分からない事まで信用したい気分だった。
「お願い………」
あたしは力ない言葉でやぐっつぁんにお願いした。
- 427 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:15
-
「………その歌が後藤の卒業と何の関係があるんや?」
「直接は関係ありません。ただ、想いを伝えたい人が居て、ちゃんと心配しないで見ててほしいんです」
急な事だった。
急に思い立った事であたしはリハーサル最後の日、9月18日に事務所に来ているのを知っていたある人をを訪ねていた。
「それで、悔いなくモーニングを卒業できるんか?」
「できます。ちゃんと想いを伝えて、悔いなんか残りません。」
無機質な真っ白い部屋。真っ白な四角い机。向かい合うように置いている真っ白な椅子。
たった二人きりのその部屋であたしはつんく♂さんに頼みたい事があった。
「わかった。振り付けのことはまゆみに頼んどく。音の方は昔の奴で頼むわ。時間はもう無い、あとは自分の好きなようにしたらええ。」
「あの、歌はラストの一つ前がいいんです。」
「ダブルアンコールのすぐ後か?」
「はい」
「………分かった。何とか話しつけてみる。23日だけでええねんな?」
「はい」
最後の返事につんくさんは立ち上がって部屋を出て行った。
「あとはあたしの頑張り様か………」
あたしも部屋を出てリハーサルを行うべく横浜アリーナへ向かった。
- 428 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:15
-
「みんなおつかれー」
「おう、おつかれー」
リハの終わった後の楽屋。
時間は六時、終わるには早いほうだ。
でもあたしもやりたいことがあるし丁度よかった。
「ごっつぁんは帰らないの?」
「うん、まだ用事あるし」
最後に残っていたやぐっつぁんが聞いてきた。
「何の用事?」
「へへへ、な・い・しょ。それよりやぐっつぁん。高橋はどうなってるの?」
「高橋?それがさ、おいらがドンだけまだごっつぁんは高橋のことが好きって言っても信用してくれないの。
本人の口から聞かなきゃ信用できないって、でも本人には会いたくないって言うんだよ、矛盾してるよホントに」
やぐっつぁんは何気なく言ったのだろうけどあたしはショックだった。
“会いたくない”。
その言葉はあたしの無茶をした心をドンドン締め付けていく。
「あ、大丈夫だから!絶対ごっつぁんの卒業までには何とかするから!ね!」
あたしの変化に気付いたのかやぐっつぁんがそんな声を掛けてきた。
「うん、お願い」
急に弱くなったあたしの声だけど、このことはやぐっつぁんにしか任せられない。
とりあえずそのことは考えずに今は“あの事”に打ち込もう。
あたしはそう考えやぐっつぁんを先に帰らせた。
そんでまだアリーナに残ってるはずの夏先生を探した。
- 429 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:16
-
「ふぇー。疲れたよー」
自宅にて、浴槽で温かいお湯に浸かりながらあたしの口から独り言が漏れた。
「夏先生気合入りすぎだよ。」
夏先生からの秘密の特訓の項目。自分からつんくさんにお願いした事だけれどまさかこんなに扱かれるとは思っていなかった。
「こりゃ、あたしがモーニング入ったとき以来の厳しさだね」
喋る相手がいるわけでもないのにあたしは何かを呟いていた。
浴槽は一人だと広い、二人だと少し狭い。そんなぐらいの大きさ。
お風呂もよく高橋と二人で『狭ーい!』とか言いながら入ってたんだ。
何故かそんな事を思い出してあたしは記憶の階段を下り始める。
『愛さ、何でそんな胸大きいわけ?』
『ま、真希ちゃんどこ見てんの?!』
『ここだよーん』
『ちょっ、触んないでよ!………あ、ちょっと。くすぐらないでって…あ、あははっ、あはは。ちょ、真希ちゃん!』
付き合いだしてからはよく二人でお風呂に入った。
高橋は毎度毎度恥ずかしがってたけど。
『ほら、髪洗ってあげる。』
『あ、ありがと』
あたしはお風呂に浸かったまま、高橋はお風呂用の腰掛に座ってあたしは高橋の背中を見ながら髪の毛を洗ってあげる。
『結構髪の毛伸びたよね?』
『あ、うん。真希ちゃんも長いから伸ばそうかなーって思って。』
『別にあたしの真似しなくてもいいじゃん』
『一緒がいいの』
『ああ、そうですか』
ピチャン。
蒸気が露になって浴槽の水面に落ちる。
落ちた水滴は波紋となって水面に伝わって消えていく。
ふと、記憶の回廊から抜け出して、意識が戻る。
「楽しかったな、」
別に何があったわけでもないけど、二人ではしゃいでいる時が一番楽しかった。
記憶の中には存在しても今の自分からは一番遠い記憶の1コマ。
「戻って見せるよ、絶対。」
これ以上自分で自分を不安にするのは止める。
自分ぐらい自分の事を信用してあげないと誰がするんだ。
不安になんてならない。
絶対元に戻るから。
あたしは気合を入れる様に両手で自分の頬を少し強く叩いてぼんやりしかけていた意識を元に戻した。
- 430 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:16
-
横浜アリーナの公演は21.22.23日。
19.20日はその日の体調を整えるためのオフだ。でもあたしはその日。近くのスタジオのレッスンルームにいた。
今日も夏先生に扱かれていた。
「はーい、じゃあ10分休憩、」
「はい。」
秘密の練習はやっと休憩に入って、あたしは部屋の隅っこにおいてあるタオルとミネラルウォーターを取りに行った。
適当に汗を拭いて水を少しだけ飲む。
後4日。
もうそれだけしか時間が残っていない。やぐっつぁんはうまくやってくれているのだろうか?
高橋とあたしの話す場所を作るって言ってそのままだけど、いったいどうなってるんだろうか?
「おはようございまーす、」
そんなことを考えていたころ。まるで見計らったように現れた。
「ん?おはよう、矢口どうした?今日はオフでしょ?」
夏先生が一言やぐっつぁんに聞く。
「いやぁ、ちょっと後藤に用があって。」
「ふーん、そうか。」
やぐっつぁんは夏先生に挨拶を終えるとあたしの方にやってきた。
「おはよごっつぁん」
「おはよ。やぐっつぁん。何でここにいるのがわかったの?」
「マネージャーさんに聞いた。」
「あ、そうか」
やぐっつぁんはいつもの調子とぜんぜん変わらない。
けれどその瞳には何かの強い意思がはっきり見えた。
- 431 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:17
-
「高橋のことだけどさ。」
急に切り出してきた。あたしも長い話は苦手だからちょうどいい。
「うん。何?」
夏先生やほかの人には聞こえないように小声であたしは聞いた。
「あの子、もう限界だよ。心は後藤に会いたがってるのに、後藤に遠慮して、会わないでいる。それが、高橋をきつく締め付けてる。」
高橋を苦しめてる?
またあたしは高橋を苦しめてるの?
「昨日も、矢口と高橋でよっすぃの家に泊まりにいったんだけどさ、ずっと何もついてないテレビ見つめてたりとか、ずっとうわ言呟いてたりとか。
多分、ずっとごっつぁんを、自分のいるべき場所に戻りたいと思ってるんだよ。」
あたしにあのときの記憶が蘇える。
自分のせいで高橋を苦しめて、病院でうなされていた高橋。
結構時間がたっているのに鮮明にあの時の高橋の姿が思い浮かぶ。
…またあたしは苦しめているんだ。
あの時、これ以上高橋とを苦しめるわけには行かないと思って、いつの間にか高橋のことを想っていて。
その時の事が。今じゃ何の意味も無い。
「高橋と二人で話す時間は作って有る。明日の午後10時。みんなライブに備えてアリーナの近くのホテルに集合する。
部屋割りはチョッと違うけど何とかする。マネージャーさんに頼んで。だからごっつぁんは、」
「高橋に気持ちを伝えればいい。でしょ?」
高橋と話す時間さえあればどうにかなる。
そう思わずに入られなかった。
自分だけならまだしも、高橋も苦しんでいるのならもうどうにかするしかない、どうにかしたい。
絶対に。
高橋を、自分を。
これ以上傷つけない。
- 432 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:17
-
「部屋割りはまず507が安倍飯田、509保田石川、510加護辻、521高橋後藤、525矢口吉澤、そんで狭いかもしれないけど612新垣小川紺野。以上」
ホテルのロビーでマネージャーさんが発表した部屋割りを聞いた後やぐっつぁんがこっちに向かってガッツポーズをした。
この部屋割りも多分やぐっつぁんがマネージャーさんに頼んだんだろうな。そう想ってあたしはやぐっつぁんに感謝した。
もうすぐ、もうすぐあたしは愛への想いを伝えるから。
もうすぐ、安心させてあげるから。
だから、待ってて。
ね、愛。
あたしが卒業することが決まってから。
いろいろな想いがこの頭の中を駆け巡ったけど。
やっぱり最後まで残ってる思いは是一つ。
『きっと、あなたのことを愛してる』
是一つだけ、この想いだけできっとあたしたちは救われる。
だってそう感じてからあの機械はちっとも喋らないから。
だからもうすぐ、あなたへの想いを伝えるよ?
- 433 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:18
-
「高橋入るよー?」
もうすでにロビーからは高橋の姿はなくなっていて。後を追うようにあたしは521号室へとやってきた。
外から中にいるはずの高橋に一応声をかけて、ドアを開いた。
「遅かったね。」
でもそこに居たのは高橋じゃなかった。
「でも、これはまだ予想範囲内だし、」
「やぐっつぁん?」
そこに居たのはやぐっつぁんで、高橋の影も形も無かった。
それに"予想範囲内"と言う言葉がすごく引っかかった。
「何であたしがここにいるのか聞きたいんでしょ?」
それは気になる。高橋がいるはずの部屋になんでやぐっつぁんがいるのか。
「高橋に部屋代わってくれって言われた。だから部屋代わってあげた、それだけ」
部屋の入り口であたしは立ち尽くす。
それじゃぁ高橋と話せない。
「あっと、ごっつぁん。最後まで話しは聞いてね。」
ネガティブモードに入りかけていたあたしにやぐっつぁんはまるで救いの言葉のような言葉を掛けてくれて、
「今からよっすぃ呼ぶから、だからあたしたちの部屋に行って話してくればいいよ。」
そういってやぐっつぁんは携帯電話を取り出してよっすぃへと電話を掛け始めた。
あぁ、そうか。高橋に部屋を代わってって言われることが予想範囲内だったんだ。それからでも同じ部屋の人を呼び出せば高橋と二人っきりで話せる。
「もしもし、よっすぃ?何?何で涙声なの?まぁいいや。今からごっちん行かせるから部屋出て。」
やぐっつぁんは一言二言言うと早々に電話を切った。
「じゃあ、あたし行くよ」
「あ、待って!!」
部屋を出て行こうとしたあたしにやぐっつぁんが声を掛ける。
あたしが振り向くとやぐっつぁんは一度部屋の奥に引っ込んですぐに戻ってきた。
「これ持って行って。お守り。もしものときになったら開けて?」
やぐっつぁんに渡されたものはとてもお守りには見えないカラフルで小さめの巾着。
「ん、わかった。ありがと」
一応お守りを受け取ってあたしは部屋を出た。
廊下でよっすぃとすれ違って、「がんばれ」って言われた。
がんばるよ、これが自分のためで高橋のためだからきっと。
- 434 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:18
-
「ふぅーー。」
一度部屋の前で深呼吸。ちゃんと525号室なことも確認する。
部屋間違えたら赤っ恥だしね。
「ふぅーー。」
二度目の深呼吸。
ここまできた。あと少し。後もう少しで元に戻れる。
もう、不安になんてならない。
絶対元に戻れるから。
コンコン。
「愛。」
扉をノックして名前を呼んだ。
返事は返ってこない。
今はこの部屋の中にいる。それはわかる。さっきまでよっすぃがこの部屋に居て、そのすぐ後に出て行くとは考えられない。
出たくない。でもそれは愛が勘違いをしてるから。
愛はきっとあたしがもう愛のことを好きじゃないと思っている。
あたしは携帯電話を取り出して、愛の携帯番号に電話を掛けた。
『〜〜♪』
案の定部屋の中から愛の携帯電話の音がする。
愛は携帯電話を絶対手放さないから部屋の中に置いておくことは無い。つまり部屋の中には愛がいる。
「愛、話があるんだ。開けてよ」
携帯電話はコールしたまま部屋の中に声を掛ける。
けれども返事は返ってこなくて、携帯電話のコールも途切れた。
- 435 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:19
-
急に気落ちする。
一度すれ違った心と心はもう元に戻れないのだろうか?
きっとそんなことは無い。
でも、
あたしと愛を阻む壁は開くことの無い冷たい扉。
扉に手を当てても愛の暖かさはちっとも伝わってこなくて扉に触れた部分からあたしの心を凍りつかせていく。
ふっと、手を下ろして目を閉じた。
"もう、限界かな"
そんな考えが頭をよぎった。
『これ持って行って。お守り。もしものときになったら開けて?』
急にさっき言われた言葉を思い出した。
やぐっつぁんに渡された巾着袋。
もしものとき。きっと今がそうだ。
あたしは迷いもせずにそのお守り袋を開けた。
中からは見た事のある機械。
いつもやぐっつぁんが持ち歩いている携帯電話。
このホテルのものと思われるメモ帳の一ページに「これからなら電話繋がるかも」ってのが一緒に入っていた。
やぐっつぁんはどこまで予想してるんだか。
でも、このお守りはありがたく使わせてもらうよ。
- 436 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:19
-
ピッピッピッピ、
番号を入力した後。たった二回のコール。
「もしもし。」
まるでずっと聞いていなかったような愛の声。
なんか鳥肌が立ったような妙な感覚に落ちる。
「もしもし?矢口さん?」
こっちからはまだ何も言葉を発してなくて。愛はまだ電話を掛けたのがやぐっつぁんだと思っている。
「もしもしぃ?」
「…切らないでよ…」
一言目の言葉がこれ、
頼み込むような弱弱しい言葉だったけど、きっと愛にはこのつらさが伝わっているはず、
愛も同じつらさを感じてるはずだから、愛もあたしと"本当"に話したいはずだから。
「聞いてくれるだけでいいから、何も答えなくてもいいから、こうなったのは自分のせいだから。
贅沢を言えば一言だけ答えて欲しいけど、いやだったら答えなくても良いから」
たった何十文字かの言葉だけでも伝えるのが難しい。
こんな息苦しい関係にしてしまったのは自分だけど。それでも元に戻りたい。
「愛のこと………遊びだって言ったけど、うそだから。全部うそだから。
……ほんとはずっと、愛と一緒に居たかった。ずっともっと一緒に居たかった。
あたし馬鹿だから、居なくなって見ないと本当に大切なことが何かもわかってなかったんだ。
愛があたしのことをもう嫌いになっていたらもう仕方が無いけど、
答えてくれる?………あたしのこと、まだ…好き?」
自分の中にある想いが伝わってくれれば、機械が壊れてくれれば、不安が消えてくれれば。
それだけできっとあたしたちはあの場所へ還れる。
だから、答えてよ、愛。
- 437 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:20
-
「好きだよぉ…………」
返ってきたのは涙声の愛の言葉で、
それは二人が元に戻れることを示す言葉だった。
「真希ちゃんが、好きだよぉ………別れたくないよ………」
その声に、やっぱりあたしが愛と苦しめて居たんだと自覚する。
「ごめんね。何回謝っても謝り足りないけど、無理でも愛にはわかってもらいたかった、ずっと、愛の事が好きだってことは、」
電話の向こうから聞こえてくる彼女の声はどこか少し嬉しそうにも聞こえて、
哀しみの抜けた声にあたしも少し嬉しくなった、
「ドア開けない?」
ドア一枚をはさんですぐそばにいるのに電話で話すのはやっぱりどこかおかしい。
あたしはそう聞いてみたけど、
「開けない………」
と、予想外な言葉が返ってきた。
「真希ちゃんが卒業するまで絶対泣かないって決めたから、今会うと泣いちゃうから、開けない。」
もう泣いてるのに………
電話でも愛が泣いてることぐらいわかるよ?
きっと愛の声を一番知ってるのはあたしだから、愛のことを一番知ってるのはあたしだから、誰も知らない愛を知っているのはあたしだから。
「真希ちゃん、卒業しちゃうんだよね?」
「うん、ずっと一緒に居たかったけど………」
「卒業したって一緒に要られるよ、キット。」
「そう、だね………」
「23日に、真希ちゃんが卒業したら一緒に帰ろう」
「うん、あたしの家に泊まりにおいでよ。掃除しに………」
「えぇ?!真希ちゃんまた部屋散らかしたの?」
「だって部屋掃除するの苦手なんだもん」
「もー、」
仲直りしたばかりなのに、そんな冗談を言って笑い合った。
もう何も心配要らない。
もう元のあたし達だから。
もう何も心配要らない。
――――――――――――――――――――――――――――――――
- 438 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:20
-
――――――――――――――――――――――――――――――――
アンコールが終了して観客席からものすごい「ごっーちん」コールが聞こえる。
Wアンコールは「手を握って歩きたい」だけの予定になっていた。
でも、これはあたしの勝手に希望で一曲増えた。
「手を握って歩きたい」の前に一曲だけ歌わせてもらうんだ。
「卒業だねごっつぁん」
「うん、もう卒業だね。」
二ヶ月前に聞いたのにもうこの時間まで来てしまった。
「そだ、高橋に言っておいてよ。今から高橋への想いの曲を歌うって」
「え?手を握って歩きたいでしょ?何で高橋への想いなの?」
「ま、聞いてればわかるよ。だから伝えておいて?」
舞台裏でやぐっつぁんにそれだけを伝えてスタンバイに入る。
夏先生に扱いてもらったおかげで一人用のダンスもどうにか二日で覚えることができた。
自信は有る。
でも、それ以前に高橋に想いを伝える自信も有る。
「行くか。」
舞台に出る階段のところまで来ると、ゆっくり、音楽がかかり始めた。
『Hey, I'm afraid to ask you for I want to know so much...』
たった最初の二言だけでもきっと、愛への思いは伝えられると思う。
『But, if I open my heart, I feel that would be the end』
愛への想いはずっと絶えない。
『And there is only one thing....』
ずっと想い続ける。
『Still, I will love you more.』
「あ、い、し、て、い、ま、す、I LOVE YOU」
―――――――――――――――――――――――――――――――
- 439 名前:LOVEマシーン-後藤真希- 投稿日:2003/09/17(水) 18:21
-
―――――――――――――――――――――――――――――――
『後藤さん、卒業おめでとうございます。
………旅行行く、一緒に旅行いくやく、行く約束。忘れないでくださいね。』
『忘れないよ?』
『後藤さん大好き!』
―――――――――――――――――――――――――――――――
『愛、帰ろ』
『うん、今準備する』
『なんか久しぶりだね、話すの』
『うん、すごい久しぶり。』
『今日は帰って何しようか?』
『あたしお腹すいたから真希ちゃんの料理食べたい』
『ん、いいよー、じゃあその間部屋掃除してね?』
『えー、あれホントだったの?』
『冗談だよ』
『あー、びっくりした。』
『ねぇ愛?』
『ん、何?』
『今日さ、』
『ん、』
『一緒に寝よっか?』
―――ブレイクダウン―――
end
- 440 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/17(水) 18:28
- ふぅ、LOVEマシーン。今回にて完結です。
脳内では一度バッドエンドになりましたが自分で認められずに書き直しましたw
一応途中で伏線張ったので「高橋編」なるものを書く予定はありますが、ぜんぜん筆が進みません。
これはまたいつかまた忘れたころに書きます。
>417 tsukiseさま。
実はあそこ酒の力を借り(ry
って言うのは冗談であそこはかなり力はいったところなんでそういってもらえて嬉しいっす!!!
パソコンはHDD入れ替えて何とかですが小説データは全部飛んじゃったのでまだ更新は遅いままかと………
>418名無しさん
せつないですか。そういってもらえれば満足です。
高橋の気持ちはこんな結果になりましたがどうでしたでしょうか?
>419hinaさん
ごまたか少ないですよね。
無ければ書いちゃえって感じで書き始めたんですけどね。
気に入っていただければかなり嬉しいです。
- 441 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/17(水) 18:29
- 次回からはForeverKissの更新に戻りますがまだ不定期更新のままかと
- 442 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/17(水) 18:29
- 流し
- 443 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/17(水) 18:29
- 流し 今日の更新終了。&LOVEマシーン完結。
- 444 名前:みるく 投稿日:2003/09/17(水) 20:07
- 今日偶然にも、ごっちんの卒コンのビデオを見たんで、余計に感情移入しちゃいました。凄くよかったです♪
- 445 名前:hina 投稿日:2003/09/21(日) 19:32
- ごまたか最高でした!!(w
是非ともまた書いて下さい!!
メンタイさんのごまたか大好きですーv
それでは!頑張ってくらさい!!
(*´ Д`)人川’ー’*川
- 446 名前:tsukise 投稿日:2003/09/22(月) 07:48
- LOVEマシーン完結お疲れ様ですっ!
良かったです…ごまたか…!
読んでいて、どんどん惹きこまれる感じで更新が楽しみでした。
本編も、ゆっくりお待ちしていますので頑張ってくださいね。
- 447 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/23(火) 00:16
- ごっちん誕生日おめでとーーー!!!
って事で更新。
>444 みるくさん
一部ノンフィクションを混ぜてみたんで作戦成功って感じですw
これからも本編のほうも見ていただければ嬉しいです。
>445 hinaさん。
「最高」この言葉以上のほめ言葉はあるでしょうか?
在ったとしても今はこれが最高のほめ言葉ですwww
くぁー、わたしのごまたか好きですか?
んー。そんなこといわれたらまた日常編書きたくなっちゃうなw
もしかしたら書くかもなので、本編チェックしつつ待っててくださいw
>446tsukiseさん。
「LOVEマシーン完結お疲れ様ですっ!」
いえいえこちらこそありがとうございます。
完結とは言ってもまだ高橋編が残ってたりしますw
いつ書くか分からないし本当に書くかも分からないw
また本編の更新に戻ります。
このごろあちらには顔出して無いですけど
tsukiseさんも空板がんばってくださいね。
では、ForeverKiss本編の更新行きます。
かなり時間がたってて前どこまで更新してたか忘れてましたw
ではいきます。
- 448 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:18
-
「お姉ちゃん!!」
ほんの一瞬。
男が亜依をトイレに運ぶときに亜依の口から男の手がはずれ出た声。助けを呼ぶ声。
「黙ってろ!!」
バシッ!
乾いた音と助けを呼ぶ声は男だけに聞こえ、周りにはゲームの音が騒々しすぎて届かない。
亜依は殴られたせいかすでに放心状態。
なつみはゲームをしていて亜依がドンドン遠ざかっていくのに気がつかなかった。
でも。
- 449 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:19
-
「あれ?今亜依の声しなかった?」
ステップを続けながらでも喋る余裕の出来た真希。
「は!?わかんねぇよ!」
自分からハードモードに誘っておいて必死にステップを踏むひとみ。
「今確かに聞こえたんだけど………なんか、普通の声じゃなかったような………」
真希は普段聞いていた亜依の声を思い出す。
やはり違う。さっきのは涙交じりのような、泣いている時の声に近かった。
「よっすぃパス!」
真希はゲームを放棄して亜依を探しにゲーム台を飛び降りた。
「え?!ごっちん?!」
ひとみは真希がいきなり降りて行ったのに動揺してステップを続けることが出来ない。
放棄した真希より少し先にひとみの画面には『FIRED!』と表示されていた。
周りの人だかりからなにやらひそひそ話が聞こえる。
「あの人格好わるーい」
「何あの人。先に放棄した人より先に失敗してる」
そんな声がひとみの耳には聞こえた。
「もー!!絶対ごっちんとは二度とゲーム対決しなーい!!」
ひとみは悲しみの雄たけびを上げた。
- 450 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:19
-
一方真希は亜依を探してゲームセンター内を散策していた。
その時格闘アクションゲームの前で一人必死でコマンド入力しているなつみを発見した。
「ねぇ!なっち!亜依は?」
「え?後ろに………え、いない?」
なつみは後ろを振り返る。でもさっきまで居た場所に亜依はいなかった。
「何処いったんだろ?!」
真希はなつみに聞かれても困る。さっき任せたのだから。
「いなくなっちゃったのはしょうがないからなっちも探して!さっき亜依が泣いてるような声聞こえたんだ!」
「ん!わかった!」
なつみは迷子にしてしまったのは自分だと思いゲームをすぐにやめて亜依を探し始めた。
なつみと真希は二手に分かれて亜依を探す。
真希はゲームしていたせいかどっちから声が聞こえたかは分からない。
でもこういう時はよく勘が働く。真希は迷うことなくトイレのほうに進んでいた。
バン!
勢いよく女子トイレの扉を開いたが誰もいなかった。
個室の扉まで開けて亜依を探す。
「あいーー!!」
一応叫んでみるが返事はない。
真希は思った。
誰かに泣かされるような状況だとして。その相手が女なのだろうか?
もしかしたら男だと言うこともありうるのではないか。
真希は少し考えると女子トイレの前にある男子のトイレの扉を開こうとした。
- 451 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:19
-
ガン!
扉は開かなかった。
鍵がかかっている。
「あいーー!!」
もう一度中に向かって叫んでみた。
「おねぇ………!」
ほんの一瞬。亜依の声が聞こえた。
真希は亜依の声を聞き間違えるわけがないと自分で思った。
「誰だよ!!中にいる奴!!」
もう一度真希は叫ぶ。返事は返ってこない。
亜依は中にいる。扉は開かない。
打つ手がない。店の人を呼ぼうか?いや、間に合わない。その間に亜依がどんな目に合わされるか分からないのだから。
男子トイレにとじこめられてる以上、相手はおそらく男。もしかしたら………
真希はそれ以上考えるのをやめる。扉を開ける方法を考えればいい。
鍵が掛かっている。鍵を壊すことは出来ない。
………
ならば扉を壊せばいい。
- 452 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:20
-
真希は『亜依を助ける』以外の考えを持っていなかった。
扉を壊せば器物破損で店に訴えられるかもしれない。でもそんなこと真希の頭の中にはなかった。
真希はトイレの近くの50cm×50cmで高さ1mぐらいの忘れ物ボックスの中から傘を4つ程取り出した。
更に同じボックスの中からガムテープがあったのでそれを取り出し、傘を四つ束ねるようにガムテープを巻きだした。
ガムテープをボックスの中に放り、4つ纏めた傘を持って扉の前に戻った。
「だー!!」
纏めた傘の先を、突くように扉の真ん中にぶつけた。
ガス!!!
4つの傘は見事に扉を貫いた。穴が開いて脆くなった扉。真希が蹴りを一発くれてやるとドアノブが付いた部分がトイレの中に飛んでいった。
扉が開く。
真希は扉を開けて中に入っていった。
中には驚いた顔の男。
「なんだ!!てめぇ!!」
男はどこか普通の雰囲気ではない。
「亜依!!」
トイレの中には男子用の壁に張り付いているものが二つと大きい方用の個室が二つ。
手前の個室には亜依の姿が見えた。
「お姉ちゃん!!」
亜依は泣きそうな顔で真希を見ていた。
- 453 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:20
-
「お前!亜依に何してんだよ!!」
なつみを呼んでからこればよかったと真希はいまさらながら思っていた。
「はははは。何してるかって?見れば分かるだろう?ヤろうとしてるんだよ。それともそれがわかんないほどお子様なのかなー?」
男の声は気持ちが悪くて真希は一瞬吐き気を覚える。
「うっさい!!亜依から離れろ!!」
男は真希を半分無視してポケットから何かを取り出す。
「知ってるかー?これ打った後にヤルとすっげぇ気持ち良いんだぜ」
男が取り出したのは注射器。
『こいつ………まさか薬でもやってるの?』
真希の頭の中にそんなことが浮かぶ。
「止めろ!!」
真希は注射器を払おうと男に近づく。
「近よんじゃねぇ!!」
男がいきなりそう発する。
男はもう1つのポケットからナイフを取り出した。
「こいつがどうなっても良いのか!!!」
男がナイフを亜依の首元にあてがう。
「や、やめてよ!」
真希がそう言う。男はナイフを持っている自分の左手のほうにその注射器を指して何かを体の中に流し込んでいく。
「あはぁー。これだよー」
男は間の抜けた声を出す。
真希は考えていた。
どうすれば亜依から男を離すことが出来るか。
- 454 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:21
-
真希は自分の周りを見る。
周りにあるものは高が知れてる。でも薬中毒者ならこの程度でも大丈夫かもしれないと真希は思った。
真希は男が薬を打っている間に傍に落ちていたホースを水道の蛇口につないで蛇口をひねった。
シャー!
水がホースの先から飛び出して男の顔に当たる。
「何してんだてめぇ!!」
男は逆上してあたしに近寄ってきた。
後はナイフを払うだけだ。
真希はこう言う時に使えるような護身術というものを知っていた。
例えば、ナイフを持っている者と対峙するときには先ず相手の利き手を見る。
相手が右に持っていたら右利き、左に持っていたら左利き。
もし相手が右利きだったら自分から見て右によければ相手は確実に攻撃を当てにくくなる
右によけてからナイフを持ってる手を掴めば相手の攻撃手段はない。
真希は護身術を使うために右によける。
しかし体は動かなかった。
昨日学校にいたときと同じような激痛が体全体を襲った。
- 455 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:22
-
『な、何だよこれ………』
学校にいたときは頭が酷かったのだが今日は体全体だった。
真希は肩を抑えてうずくまった。
『体が………動かない……』
真希のその様子を見て男の動きが止まる。
「なんだぁー。?」
「お姉ちゃん!!」
亜依が真希の名前を呼ぶ。
あの時と同じように真希のからだからは痛みがとんだ。
すぐには動けなかった。
でも今は別だった。亜依が何かされようとしている。
助けなきゃいけない、と思う気持ちが強かった。
男が亜依の声に反応して亜依の方を向いている間に立ち上がる。
真希はすぐ傍にある掃除用具入れからデッキブラシを取り出して男の頭を殴りつけた
- 456 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:22
-
「だ!!」
男は奇声を上げて倒れこんだ。
真希は男の手の中にあったナイフを蹴飛ばして遠くにやる。
「この!この!この!」
真希は男の背中を何度も蹴りつける。
そのうち男は泡を吹いて気絶した。
「お姉ちゃん!!」
「亜依!!」
亜依が真希に抱きつく。そして、
「お姉ちゃーん!怖かったよー!!」
真希の胸で泣いた。
きっと怖かったんだ。
無理やり男にトイレに押し込まれて何をされるのかも分からずに。
真希はそっと亜依を抱きしめた。
- 457 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:22
-
「あれ、亜依ちゃん見つかったの?」
真希と亜依はゲームセンターの出口でなつみと合流した。
「いや、それがね」
真希はなつみに事情を話した。
「亜依ちゃんダイジョウブ?」
なつみは亜依に聞く。亜依は真希の手を握ったまま。
「うん、ダイジョウブ」
あんな事があったばかりだから大丈夫じゃないのは分かってる。
真希の提案で今日はもう帰ることにした。
- 458 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:23
-
「おじゃまします」
「おう、入って」
真希の家に上がる3人。
まだ3時ごろだったので家で遊ぼうと言うことになり3人は真希の家にやってきた。
「うちで遊ぶって言ったってテレビゲームぐらいしかないよね」
「いいよ、そんなもんで」
真希の言葉になつみが返す。
「亜依、何のゲームがいい?」
真希が亜依に聞く。
「ダンレボ!」
亜依は明るく言った。
もう大丈夫のようだと真希となつみは思った。
- 459 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:23
-
「駄目だー。亜依には敵わないなー」
真希は床に座り込んでそう言った。
画面に表示されているスコアは93560
「ま、本気出せばこんなもんかな」
一方の亜依のスコアは98720
「でも凄い僅差だよね?真希も亜依ちゃんも凄いじゃん」
スコアを見てなつみがそう言う。
真希はふと時計を見た。
「あれ?もうこんな時間か。なっち代わって。あたし晩御飯の買い物してくる」
「あ、うん。いいよ」
「よければさ、今日なっち泊まっていきなよ。亜依も喜ぶと思うし」
真希はジャケットを羽織ながらなつみに言った。
「え?いいの?」
「いいよー。大勢で晩御飯なんて中々無いし、亜依もいいでしょ?」
「うん、嬉しいよー」
亜依もそう言う。
「じゃあ、今日は泊まらせてもらおうかな。」
なつみは二人の奨めで泊まることにした。
「じゃ、あたし買い物行って来るから。」
「「いってらっしゃい」」
- 460 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:23
-
「ふぅ。なっちが来てるから今日は豪勢に決めちゃった」
真希は焼肉用のお肉を沢山買って家に帰る途中だった。
「あれ?何だこれ」
店を出たところで鞄の中に何か入っているのに気が付く。
「あ、ミニモちゃんカメラだ。」
ゲームセンターで写真を撮ったカメラ。
真希はちょうどいいので現像して帰ることにした。
スーパーの袋を持ったまま写真屋に入り現像を頼んだ。
数分して写真が出来上がりお金を払って家に帰った。
- 461 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:24
-
「ただいま」
「おかえりー」
「あ、おかえり………」
亜依が明るいのに対してなつみはかなり落ち込みモードだった。
真希はテレビ画面を見るとすぐにその理由が分かった。
亜依のスコア100000
なつみのスコア65250
22勝0敗
それだけ表示されたリザルト画面。
なつみはずっと負けていた。
真希は『あたしの事かっこ悪いとか言えないじゃん』と鼻で笑っていた。
「亜依ー。そろそろゲームやめてさー。お風呂沸かしてくれない?」
「うん、わかった」
「あ、なっち手持ち無沙汰なんだけど。」
「じゃあ、お風呂沸くまで晩御飯作るの手伝って?」
「オッケー」
- 462 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:24
-
「お姉ちゃんーお風呂沸いたよー」
十数分後、亜依が戻ってきて真希にそう伝えた。
「分かった。なっち、ここはもう良いから先お風呂入ってきてよ?」
「え?先入っちゃっていいの?」
「いいのいいの。服は後で持ってくから」
「じゃあ、先頂いてくるよ」
なつみはお風呂に入るためにキッチンを離れた。
「亜依、こっちちょっと手伝って」
「わかったー」
真希は亜依を呼んで調理の続きを始めた。
- 463 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:24
-
数分後。真希は服を届けるために脱衣所へ。
「なっちー。服とバスタオルここ置いとくからねー」
『ありがとー』
真希が言うとバスルームからなつみの返事が聞こえた。
真希はすぐにキッチンへ戻った。
「ねぇ真希ー。この服ってさー」
「え?」
なつみがお風呂から戻ってきた。ブルーのパジャマに身を包んで。
「これって昨日真希が着てたやつじゃないの?」
なつみは香りをかぐ様に袖口を鼻に近づける。
「あはは、大丈夫だって。ちゃんと洗濯したから」
真希はそう言葉を返した。
『本当は……洗濯してなかったほうが嬉しかったりして』
なつみは心の中でそう考えていた。
- 464 名前:11話-変化の訪れ- 投稿日:2003/09/23(火) 00:25
-
そして数分後
「美味い!」
真希が焼いた焼肉を食べてなつみがそう言った。
「うん。おいしー」
亜依もなつみにつられるようにそう言った。
「あ、ほんとだ。おいしー」
作った本人の真希までがそう言う。
3人はリビングのテーブルについて晩御飯を食べていた。
「「「ごちそう様ー」」」
3人は口をそろえてそう言った。
「じゃ、あたし後片付けするからさ。亜依はお風呂入っといで」
「はーい」
真希に促され亜依はお風呂へ向かう。
「真希。なっちは?」
なつみは手持ち無沙汰なのに気づいて何かしようかと尋ねる。
「なっちはいいからさ。テレビでも見ててよ。」
真希は特にすることも思い浮かばずそうなつみに伝えた。
- 465 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/23(火) 00:25
- 本編更新滞っていたためもう一話更新
- 466 名前:12話-真実- 投稿日:2003/09/23(火) 00:26
-
「あははは!」
なつみがテレビを見て笑っている声が届いた。
その時真希は洗い物を終え布団を敷いていた。
左側からなつみ、真希、亜依。
真希は布団を敷き終えると部屋の隅に置かれている薄い紙袋に気が付いた。
「あ、さっき現像してきた写真だ。」
帰ってきたときに放った。それが部屋の隅に落ちていたのだ。
「先に見ちゃお」
真希はみんなに現像してきたことを言う前に先に一人で見ることにした。
紙袋を開けて中から写真を取り出す。
『………何これ?』
真希はその写真を見て驚いた。
その写真の自分が写っているべき場所に自分が写っていない。
いや、正確には写っていた。
ただ、自分の体が透けていた。
- 467 名前:12話-真実- 投稿日:2003/09/23(火) 00:26
-
『何なの?これ?』
印刷ミスかとも真希は思った。
でも20数枚ある中で全て自分の写っている場所は左側や右側と違う場所なのに自分だけが透けているのはおかしい。
真希は印刷ミスなんかではないことはすぐに理解した。
「真希?」
真希は後ろからなつみの声がしてなつみの方に振り向き写真を自分の体の後ろに隠した。
「あれ?今なんか隠さなかった?」
「何も隠してないよ?」
「ホントにー?」
なつみは怪しむような眼で真希の方を見る。
「何も隠してないって。」
「なら良いけど」
なつみは納得したのかしてないのかまたテレビの前に戻った。
『なっちは意外と鋭いからな。注意しないと。』
真希以外。亜依もなつみも。真希が幽霊に会った事やおかしな体験をしていることを知らない。
言ったとして信じてもらえるかどうかも分からない。
真希は誰かに言って楽になりたかった。でも話さない。話せない。
周りから見ればただの絵空事を言う頭のおかしい少女だから。
- 468 名前:12話-真実- 投稿日:2003/09/23(火) 00:27
-
「お姉ちゃんお風呂開いたよ?」
亜依が戻ってきた。
「あ、分かった。」
真希はとりあえず写真を自分の布団の下に隠し、着替えとバスタオルを持つとお風呂場へと向かった。
「ふぅー。」
真希はかかり湯をした後、ゆっくり湯船に浸かった。
普段なら落ち着くはずの時間も今日は落ち着かなかった。
気楽なのが特徴の真希も考え事をしていた。
幽霊を名乗る人が言っていたこと。
もし自分が死んだら亜依はどうなるか。
あたしが幸せにしなければいけない人は誰か?。
そしてさっき見た写真。
「おかしいんだよなー」
写っている場所
真希だけが身に着けているもの。
フラッシュ。
どう考えてもおかしかった。
ただ透けて見えるだけならともかく、真希の後ろにあるものまでが見えているのは明らかにおかしかった。
「写真の現像ミスじゃないよ。」
誰かに喋るような口調で独り言を呟いた。
お風呂から出てバスタオルで体を拭いた。
真希はいつもとは違う赤いパジャマに着替えて髪も乾ききらない状態でバスタオルを頭に載せたまま布団部屋へ戻った。
- 469 名前:12話-真実- 投稿日:2003/09/23(火) 00:28
-
「「あはははは!!」」
布団部屋から亜依となつみの笑い声が聞こえた。
何が可笑しいのか気になって真希は布団部屋へ行く。
「何が可笑しいの?」
真希が戻ってきたことに気が付くと亜依となつみは顔を見合わせて再び笑い出した。
「だから何が可笑しいの?」
真希がもう一度聞くとなつみは口を開いた。
「さっきさ。真希が何か隠したと思ってこの部屋亜依ちゃんと二人で探してたらー。こんなの見つけちゃった。」
なつみが真希に見せたのはさっきの写真が入っている薄い紙袋。真希はなぜそれを見て笑っているのかが気になった。
「この写真でしょ?真希が隠した理由。」
なつみが見せた一枚の写真。その写真には半眼を開いた情けない自分の姿が『普通に』映し出されていた。
「え?」
真希はそんな写真があった事よりなぜ写真が戻っているのかを気にしていた。
- 470 名前:12話-真実- 投稿日:2003/09/23(火) 00:28
-
3つ並んだ布団の中。
二つの規則的な寝息が聞こえる中、真希はゆっくりと体を起こした。
「あやちゃん………」
「なっちもうたべられないべさ………」
寝言を呟く二人。真希は立ち上がって服を着替え出掛ける準備を始めていた。
『写真のこととか。後はなぜか定期的に襲ってくる痛みのこと。その理由は多分あの人しか分からない』
真希はあの時のように直感的にそう考えていた。
その人のところへ行けばどうにかなると。
真希は音が立たない様に扉を開け同じように扉を閉めた。
階段を下りて通学のときしか使わない自転車の鍵をはずした。
自転車をこぎ始めた真希。自分一人だとペダルは軽かったと、真希は思った。
湿気が高いせいか自転車をこぐ真希の額には汗がにじみ出ていた。
焦りか。それとも。
真希は急いでいた。
直感的に時間が無いことを感じていた。
キキー!
後輪に強くブレーキを掛けて後輪を少し滑らせて自転車は停止した。病院の前の公園。
真希は自転車を降りて前にその人と会った場所へ歩いた。
真希が近づくと、まるで待っていたようにその人は姿を現した。
「おかしいな。まだ来る予定や無かったんやけどな」
以前会った。名前は確か『中澤裕子』の幽霊。
- 471 名前:12話-真実- 投稿日:2003/09/23(火) 00:29
-
「聞きたいことがあって来ました」
「あぁ、知ってる範囲で答えたるわ」
真希は自分が感じていたことを話した。
写真に自分が写ってい無かった理由。
日毎に襲い掛かってくる痛み。
その理由を中澤に問いただした。
「もう………そんなとこまできてんのか………」
中澤は表情を曇らせてそう言った。
「手遅れかも知らん。」
「一体、何がどうなってるんですか?」
真希の問いに中澤はようやく問いの答えを話した。
「写真にあんたが写って無かったんは、あんたの体から魂がほとんど抜けてて、現実から消えようとしてるからや」
中澤はそう言った。その答えに真希は新たな疑問をぶつける。
「じゃあ今は何でちゃんと写ってるの?」
「そこまでわからへん。その場におった訳ちゃうからな」
疑問の答えが出ないとわかって真希は次の疑問を問いかける。
「あの痛みは何?自分の体を揺さぶられるような感じの………」
「多分……魂がドンドン抜けていってるんやな。もう時間が無い………」
「一体、どうやったら魂は抜けずにすむの?」
「前に言うたやろ?あんたの身近にいる人物を………」
「誰か分からないよ!」
真希はヒステリックに怒鳴った。真希がいきなり人に怒鳴るなんて中々無いことだ。
そこまでに真希は焦っているのだ。
- 472 名前:12話-真実- 投稿日:2003/09/23(火) 00:30
-
「ウチにも見えへんのや。あんたが幸せにせなあかん人が。ただ見えるのは」
「見えるのは?」
中澤は一呼吸置いて話す。
「………3人の人影、イニシャルのどっちかがA。って、言うことぐらいや」
3人の人影、イニシャルがA。
皮肉にもイニシャルがAの人物は真希の周りにはちょうど3人いた。
安倍なつみ。あべabe
加護亜依。あいai
高橋愛。あいai
「まさか3人とも幸せにしろって言うの?」
「いや、そんなはずは無いと思うんやけど………ほんまにわからへんのや。………すまん」
「別にあなたに謝ってもらうことは………」
真希にも中澤にももうどうすることも出来ない。
事態は深刻だった。
「さっき。時間が無いって言ってたけど。………このままだといつ位までもつ?」
「あんた、諦めるんか?」
「諦めないよ。あたしには。守らなきゃならない人がいる。」
真希の脳裏には愛しい妹の笑顔が思い浮かぶ。
「絶対諦めない。」
真希の眼には強い意志がとってみれた。
そして中澤が話す。
「もって、後1ヶ月。………そんだけしかもたへん」
- 473 名前:12話-真実- 投稿日:2003/09/23(火) 00:30
-
知らされた残された時間は、あまりにも短かった。
「その間に。誰かを幸せにしないといけないんだ。分かった。」
真希は後1ヶ月の命と言う言葉にも動じずに決意を固めていた。
「………ただいま」
誰も起こさないようにボソッと言った。
なつみも亜依もぐっすり眠っていて真希が出かけたことになど気づいていないはず。
真希は二人が先に起きてしまった時のために一応さっきまで着ていた赤いパジャマに着替えて布団の中に入った。
―――真希は自分の心を失い始めていた。
亜依を見守りたいだけのはずだった。
亜依、愛、なつみ。
その3人の中の誰かを幸せにしなければいけない。
その誰かが亜依以外の二人のどちらかだったら?
そう考えると、真希はこれから自分がどうなるのかが分からなかった。
- 474 名前:ForeverKiss 投稿日:2003/09/23(火) 00:31
- to be continued
- 475 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/23(火) 00:31
- 流し
- 476 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/23(火) 00:32
- えーー、勝手ながらw
このたびホームページを開設しました。
http://www.eonet.ne.jp/~kamukaze/
こちらになってます。
掲示板等ありますのでぜひぜひお越しください。
- 477 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/23(火) 00:33
- 今日の更新終了
- 478 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/24(水) 02:43
- む〜どの子になるのか…
個人的にはごまたかになって欲しいですが(w
- 479 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/30(火) 13:40
- >478さん。
レスありがとうございます。
ごまたかですか、やはり需要不足な用で(焦
最終的にどうなるかは言いませんが少しごまたかな感じのところもあります。(今回更新分には出てきませんが。
末永く見て行っていただければうれしく存じますww
- 480 名前:13話-日曜日- 投稿日:2003/09/30(火) 13:41
-
午前10時頃。真希は目を覚ました。
「ふぁーあ」
大欠伸を欠いて身を起こす。隣に居る亜依もなつみも眠ったままだった。
真希は自分が一番遅くまで起きていたのに何で自分が一番起きるのが早いのかと言うどうでも良い疑問が頭に浮かんだ。
グゥゥ。
腹の音が部屋に響いた。真希は腹を押さえながら立ち上がった。
行く先は冷蔵庫。何か朝ご飯になるものを作ろうとした。
冷蔵庫の中に残っているのは卵と少量の肉とボールに入ったマカロニサラダ。
これだけじゃ足りない。真希は思った。
今度は炊飯器を開けてみる。ご飯はある程度残っていた。
コンロの上の大きななべを開けてみるとこれまた微妙な量の味噌汁。
真希の頭の中にシンキングタイムのメロディが流れる。
- 481 名前:13話-日曜日- 投稿日:2003/09/30(火) 13:41
-
雑炊にしちゃえ!
真希はそう思いついた。
思いついたらすぐに行動に移す。真希は味噌汁を温め始め炊飯器は保温を切ってふたを開けておく。
もう1つのコンロで残っていた少量の肉を焼く。
味噌汁が温まり始めたら炊飯器からのご飯を移してご飯をほぐす。
焼いてる肉は雑炊に入れるからちょっと辛目の味付け。塩コショウと醤油で。
ちょっと焦げ目が付くぐらいで鍋の中へ。
後はご飯が味噌汁を吸収するのを待つだけだ。
「ぁぁ。なんか良い匂い」
「ほんまや………お姉ちゃん朝ご飯何ー?」
匂いにつられてか2人も起きてきた。
「すぐ朝ご飯だから顔洗ってきなー」
「ふぁーい」
「ほーい」
2人は連れ立って洗面所へと向かった。
二人がリビングに戻ってくる頃には朝食も完成していた。
「んまい!」
一口目を食べてなつみが大声で言った。
「そりゃよかった」
真希もそれの言葉に軽く返す。
「安倍さん。肉ばっかりとらないでくださいよ、ウチの分なくなるじゃないですか」
「あ、ごめんごめん」
鍋を机の真ん中においてお玉を使って勝手にとるようにしているからなつみと亜依がケンカ中。
食べ物の恨みは恐ろしい、のフレーズが真希の頭の中に浮かんだ。
「なっちからはお金取ろうかな」
なつみの食べっぷりをみながら真希が呟いた。
「何で?!なっちそんな食べてないよ!」
「なっちが一番食ってるよ!」
冗談だけどこう言う状態のなつみをからかうのは面白いと真希は思っていた。
「冗談だけどさ、お金取るって言うのは」
と、付け足した。
- 482 名前:13話-日曜日- 投稿日:2003/09/30(火) 13:42
-
朝食が終わった後、なつみは着替えて家に帰ってしまった。
『今日は矢口と約束あるからさ』と言って。
真希は朝食の後片付け。亜依は特にこれと言ってやることは無い。
真希が片付けの途中横目で亜依を見るとメールを打っていたようだが。
「ふぅー、休みの日は良いね。やること無くてごろごろ出来るからさ」
真希は亜依に同意を求めるように言ったが亜依からの返事は返ってこない。
「亜依?」
「ん、え?何?」
「さっきから誰とメール打ってんの?」
「え、のの」
「そんな熱中するメールなの?」
「うん、まぁまぁ」
「あっそ」
真希はまたごろ寝に戻る。
何か忘れてる気がする。
真希はそう思った。今日は何かスケジュールがあったような気がする。
思い出せない。真希は起き上がって机の上の充電器に指してある携帯をとって一度は見たメールを読み返してみる。
今日の日付で約束していることは無い。じゃあ一体なんだ?
今度は発信履歴と着信履歴を見てみた。
その着信履歴の中に二日前の日付で妙に目に付いた文字。『高橋愛』
………。
『やべぇ!』
真希は心の中で叫んだ。
履歴を消して時刻を確認した。
12:48
ココから約束した学校までどう急いでも15分は掛かる。
急がなければいけない。
真希は亜依への言い訳はどうしようか?と、考えていた。
『メールに夢中だから大丈夫か』
真希は起きたときから着替えてないパジャマを脱いで着替え始める。外へ出て遊びにいく用の服に。
「ん、お姉ちゃんどっか行くの?」
「うん、ちょっと買いたい物あって」
亜依への返事をごまかして着替えを済ませる。
「お腹すいたら冷蔵庫にいつものサラダ入ってるからそれでも食べて待っててよ」
………言った後に後悔した。そんなに長い時間帰ってこないのかと思われないか?
「うん、分かったー」
しかし真希の心配とは裏腹に亜依は何も思わなかったようだ。
「んじゃ、行ってくるー」
「いってっらっしゃい」
家を出るとさっきまで亜依に見せていた余裕な感じと違って急ぎだした。
愛はもう待ってるかもしれない。真希は急いで学校まで急いだ。
- 483 名前:13話-日曜日- 投稿日:2003/09/30(火) 13:42
-
「あ!後藤先輩!」
学校の校門の前で愛が走ってくる真希に大きく手を振った。
「はぁ、はぁ、………ごめん、ちょっと遅れた」
愛の前で立ち止まると真希は一言謝った。
「いいえ、全然待ってないですよ。ほら。10分ぐらいですよ」
愛は携帯の時刻を真希に見せていった。
「はぁ、はぁ…はぁ、何処行こっか?」
息を整えた後、真希は愛に聞いた。
「あたし、後藤先輩とだったら何処でも」
真希は何処へ行こうかなんて考えていない。
半分愛に任せようと思っていたぐらいだ。
『ど、どうしよう?』
真希は心の中で考える。一言でも言ってしまえば楽かもしれない。
「映画でも行く?」
真希の口からはそういう言葉が出た。
愛は、
「はい!」
と真希に返した。
ところが、映画外に着いたら。
「もう始まっちゃってるのばっかり………」
「ですね………」
5つほど放映されているものは全てが数分ばらつきがあるものの30分ほど前から開始されていた。
「どうしよっか」
「どうしましょう」
映画館の前で立ち尽くしてしまった2人。
真希はこの雰囲気をどうしようかと考えていた。
その時。
- 484 名前:13話-日曜日- 投稿日:2003/09/30(火) 13:42
-
「ちょっとー、ソコのカワイコちゃんたちー」
「おっ、マジで可愛いじゃんこの子達」
明らかに遊んでます風な男が2人、一人は色黒でGパンに黒のランニング、一人は色白で同じくGパンに白いTシャツにジャケットって言う格好だった。
「なにやってんのー」
男たちが近づいてくると愛が真希の後ろに隠れた。明らかに怖がっている。それは男たちから見ても分かるだろう。
「何その子の反応?怖がられてるー?」
「何か用?」
真希はこれ以上なめられない様に強気に言う。実際こんな連中怖くないのだが今が愛が居る。ケンカごとはしたくなかった。
「何か用?、だってさー、冷たい反応だねー傷ついちゃうよー」
お前たちが傷つこうとつくまいとこっちには何の関係もない。そう言ってやりたい真希だったがそうも言えない。
黙っていると色白の男が真希と愛の後ろに回りこんできた。
「今から4人で遊びに行こうよ」
「そんでその後は4P、いいじゃん」
真昼間から何を、真希とあきれたような顔をする。かなり不機嫌そうな顔だ。
「ちょっとさ、馴れ馴れしすぎるよ。あんた等」
愛が居る前だがもう我慢できなかった。
「そんなにしたけりゃ、あんた等だけでやってろよ」
言葉だけを浴びせる、これはまだ第一段階。
「へぇー。結構強気な人だねぇ。そういう人ヒィヒィ言わせるの好きだけどなぁ」
まだ言うか。真希の中には怒りがメラメラとこみ上げてきた。
愛ちゃん、離れないでよ。
真希は小声で愛に伝えた。愛は小さく頷いた。
- 485 名前:13話-日曜日- 投稿日:2003/09/30(火) 13:43
-
愛が背中にくっついたまま目の前に居る色黒の男に近づく。
「遊びに行く気になった?」
「ならねぇよ」
相手の肩に手を置いて、鳩尾に向かって膝蹴り。急所に向かって真希の膝蹴りはヒットした。
「がはぁ、」
男はお腹を押さえて膝を折って倒れる。
「てめぇ!」
続いて色白の男が向かってきた。
愛を後ろに回して振り向く。真希は愛を後ろに遠ざける。
男の大振りな右フック。真希と姿勢を下げてそのフックをかわす。
続いて少し無駄な動きの混じった左フック。また姿勢を下げてかわす。
もう一度右フック。真希はモーションが見えた時に左手を差し出した。
男の手首に自分の左腕を当てるようにフックを止める。
「な!」
男が驚いているうちにこっちから攻撃。
右拳を強く握った。少し身体をひねって相手の左頬めがけて思いっきりパンチを打った。
男の足元がふらつく。でもまだ倒れるには至らない。
真希と祈るときのように両手を握り合わせた。
ゆっくりその両手を振り上げる。
「グッバイ」
そういって思い切り両手を相手の頭めがけて振り下ろした。
ゴン!
結構鈍い音がした。真希もやばいかも、と思った。
「愛ちゃん、行くよ」
「あ、え、はい。」
真希は真希のケンカ見て驚いてたのかうまく会話の出来てない愛の手を握ってその場から走り去った。
- 486 名前:13話-日曜日- 投稿日:2003/09/30(火) 13:43
-
「コーヒー。愛ちゃんは?」
「あ、えっと。オレンジジュースで」
「少々お待ちください」
あの後真希達は少し離れた場所にある喫茶店に入った。店員が立ち去ってから真希は愛に話しかけた。
「結局映画見れなかったね」
「あ、でも。大丈夫です。映画なんていつでも見れますから」
「………愛ちゃんって良い子だよね」
「え?え?そうですか?」
真希が言ったとたん愛は顔を赤く染めた。真希はそんなにクサいセリフを言ったつもりは無いのだが。
「お待たせしましたー」
店員がさっき頼んだコーヒーとオレンジジュースを持って現れた。
真希の前にコーヒー。愛の前にオレンジジュースを置いてまた戻っていく。
「どうしよっか」
真希はコーヒーに砂糖を入れながら言う。
「どうしましょう」
愛はストローの袋を開けてコップに挿しながら言う。
「映画、何か見たいのあった?」
「うーん………マトリックスリローデッド………見たいかな」
「たしかそれ3:30からだったからそれまで暇潰そっか」
「はい」
- 487 名前:13話-日曜日- 投稿日:2003/09/30(火) 13:44
-
「面白かったね、あたしマトリックス1見てないけどさ」
真希はリローデッドが始まる前の予告の時間に愛から1のあらすじを事細かに説明してもらった。
おかげで上映中に眠ることは無かった。
「もう6時回っちゃったね、どうしよう。門限とかあるの?」
「いえ、特に門限とかは………」
「今日はもう帰る?」
「もうちょっと一緒に居たいんですけど」
でも真希はこれ以上行くところが思い浮かばなかった。
デートなんてしたことが無い真希が『映画でもいく?』なんて言葉を思いついたこと自体奇跡だった。
「あれ?」
「?、どうかしました?」
「あれ、亜依かな」
真希の目にコンビニから出てくる二人の人影が眼に入る。
そのうち一人は確かに自分の妹、亜依だった。
「だれですか?」
「あのお団子頭、あたしの妹」
朝はしてなかったお団子頭で誰かと一緒に歩いていた。
「誰だ、あれ?」
亜依と一緒に歩いている人物には心当たりが無い。
「あ、亜弥ちゃんだ」
「ん、アヤちゃん?」
隣に居た愛が『亜弥ちゃんだ』と言った。
「アヤちゃんってマツウラアヤ?」
「そうです、中学生で1つダブってるんで結構有名だったりするんですよ」
『あの子、やっぱりどこかで見たことある。何処で見たんだ?』
真希は考え込む、やはりどこかで亜弥を見た事がある。
「ねぇ、アヤってどんな字?」
「え?えっと」
愛は携帯電話のメモ帳機能を使って字を探した。
「こんな字ですよ」
『松浦亜弥』
字を見ても何も感じなかった。何か違和感がある。
松浦亜弥、加護亜依、
マツウラアヤ、カゴアイ、
まつうらあや、かごあい、
・
・
・
かご………………あや?
加護亜弥?
- 488 名前:13話-日曜日- 投稿日:2003/09/30(火) 13:44
-
どこかで聞いたようなフレーズだ。亜依と1文字違いだからだろうか?
違う。どこかでこの名を聞いている。
真希はフッと顔を上げた。
写真だ。
真希はそう思った。
「ごめん愛ちゃん、ちょっと用事できちゃった」
「え、えぇ?」
真希は愛を置いて走り去った。
家に向かって走っていた。
ガチャ。
扉を開けて家の中に入る、向かうは仏壇の置いている部屋。
仏壇の前に座った。一応手を合わせる。
仏壇の下の引き出し。真希は一度興味本位で開けたことがある。まだ真希のお義父さんが生きてる頃だ。
写真屋でもらえるような小さなアルバム。この写真の中で一度見た。
ページをめくっていく。小学5年生の頃ぐらいからの亜依の写真が載っている。写真の裏にはちゃんと日付と年齢が書いてある。
これじゃない。真希はどんどんページをめくる。
最後から数枚目のページ。二枚重なっている写真がある。下になっている写真を引き抜いた。
その写真には小さな赤ん坊二人が写っている。一人は亜依、そしてもう一人。ものすごく亜弥に似ている子だ。
真希は恐る恐る裏を見た。
1989年2月
亜依1歳
亜弥2歳
裏にはそう書かれていた。
覚えていた。憶えていた。お義父さんが一度真希に話したことがあった。
真希はそのときの会話の内容を思い出す。
『実は、亜依には姉が居るんだ』
『亜依の1つ上の子で 加護亜弥って言うんだ。分かれるときに母さんが亜弥を、私が亜依を連れて行くことになった。』
『もう再婚したらしくて苗字は変わってるかもしれないが』
『いつか会わせてあげたいと思っている』
聞いたことがあった。ちゃんと憶えていた。
亜依の姉が、松浦亜弥。
どうすることもできない。亜依は亜弥と付き合おうとしている。姉妹で恋愛なんてできないはず。
亜依には、亜弥ちゃんには本当のことを伝えるべきなのだろうか?
教えてはいけないんだろうか?
亜依は、あたしと居るより亜弥ちゃんと居るほうが幸せなんだろうか?
あたしは。分からない。
- 489 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/30(火) 13:45
- ForeverKiss
- 490 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/30(火) 13:45
- To be continued
- 491 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/09/30(火) 13:45
- 今日の更新終了
- 492 名前:14話-日曜日。加護亜依編- 投稿日:2003/11/08(土) 03:56
-
「よし、行ったな」
亜依は窓から出かけていく真希の後姿を確認した。
それが愛とデートに行くと言う事に亜依は気付いていない。
自身が隠そうと思ってることに必死だった。
亜依は携帯電話で再びメールを打つ。
『今から亜弥ちゃんの家行くわ。今から着替えるところやから少し遅れるかも知れへん』
さっきまでメールしていた相手は亜弥だった。
ただ真希に言うと何かいろいろ聞かれそうな気がして、メールの相手を聞かれたときに『え、のの』と、嘘をついたのだ。
メールを送信すると亜依は着ていたパジャマを脱いで着替え始めた。
いつもの様に髪をお団子にしていつものようにラフな動きやすい服に着替えた。
「おし、行こか」
亜依は呟くと家を出て鍵を閉めた。
ピンポーン。
インターホンの音が外にまで聞こえてきた。
そしてインターホンからではなく直接扉の向こうから声が聞こえる。
「はーい、どちらさまですかぁー?」
「かっごちゃっんです!」
扉に向かって亜依も返した。すぐにドアが開いた。
「あいちゃーん」
「あやちゃーん」
この前のような嫌な雰囲気は引きずっていない。
出来るだけ自然に話せるように2人とも努めていたのかもしれない。
亜弥は白いタンクトップにGパン、その上に半袖の青いジャケットを羽織っていると言う亜依と似たようななラフな格好だった。
「今日はどこ行く?」
2人は外へと出てどこへ行くかを話していた。
「昨日お姉ちゃんに新しいアクセサリーショップ連れてってもらったんやけどそこ行く?」
「あ、行って見たーい」
亜依の提案で2人は昨日なつみ、真希、亜依の三人で行ったアクセサリーショップ行く事になった。
- 493 名前:14話-日曜日。加護亜依編- 投稿日:2003/11/08(土) 03:57
-
「あー、ココ知ってるー」
「え?知ってんの?」
「三日前ぐらいに来た、結構可愛いの置いてたよね」
「なんや、知ってんのか」
「いいじゃん、なんか二人でお揃いの買おうよ、ほら!」
亜弥は亜依の手をひっぱって店の中に入っていった。
「そういえば亜依ちゃんピアスはつけないよね?」
「あ、うん。なんか痛そうやし」
亜弥は亜依の耳を一瞬だけ見て言った。
「じゃあ、指輪とかー、ペンダントでも良いねー」
亜依と一緒に指輪のコーナーを眺めていく亜弥。その姿は亜依といて本当に楽しそうだ。
「亜依ちゃんってどういうのが好みー?」
「ん、っとな。あんまり派手すぎひん奴」
亜弥の問いに答えながら自分も亜弥の言う『好み』の指輪を探す。
「あ。これどう?」
「ん、どれ?」
亜依が興味を示した指輪。シンプルなシルバーリングなのだが光を反射するときに金とも銅とも見える反射を起す。
シルバーの中に小さくちりばめられたゴールド。
「あー、カワイー!これにしよ!!」
亜弥も興味を示したようで即これに決定した。
「あのー。これリングケースみたいなの付きません?あの、婚約指輪みたいな」
亜依が目を離した好きに亜弥は何かを店員に聞いていた。
「んぁ、亜弥ちゃん何聞いてんの?」
亜依が側に戻ってきて亜弥に聞く。
「へへへ、な・い・しょはあとはあと」
亜弥は話した内容をはぐらかして店員に代金を支払った。
「亜弥ちゃんさっき買った指輪どうなったん?」
「あ、あれね。今度渡すから。ちょっとやりたい事あるんだ」
亜弥は亜依に何かを隠している。亜依は何を隠しているのか気になったが何だか楽しみだったので深く追求せずにいた。
- 494 名前:14話-日曜日。加護亜依編- 投稿日:2003/11/08(土) 03:57
-
「あれ、警察がいる」
「ん、ほんまや。なんかあったんかな」
繁華街のほうまで歩いてくると映画館の側にパトカーと救急車が止まっていて警察と思われる人が2人ほどいた。
「見にいこ!」
「え!」
亜弥に引っ張られて亜依は無理やりその側まで連れて行かれた。
亜弥は人ごみを掻き分けて亜依を引っ張りながらたかっている野次馬の先頭まで来た。
亜依はその姿に『大阪のオバちゃん』パワーを感じた。
関西出身の女性はみなそうなってしまうんだろうかと感じた亜依だった。
先頭に来て見えたのはストレッチャーに乗せて運ばれる色白と色黒の男。
「あのー、何があったんですかー?」
亜弥は隣にいた男の人に聞いた。
「さっき女の子になんか声掛けてたんだけどねあの2人。逆に殴られちゃって倒れちゃったみたい。」
「へぇー」
亜弥と亜依はそれが後藤真希であることを知らない。
「その女の子はもうどっか行ったみたいだけどね。」
と、男の人は付け足した。
「亜弥ちゃん。こんなとこおってもつまらんからどっか行こうや」
亜依が暇になってそんな事を言った。確かにこんな風に野次馬をしていて手持ち無沙汰だと亜弥も思った。
「どうしよ。映画でも見る?」
「うん。でも………もう全部始まってんで?」
亜依はすぐ側にある映画案内の時間表を見て言った。
「大丈夫。あっちにももう1つ映画館あるから、いこ」
また2人手をつないで移動する。
その姿はさながら恋人同士の様。ただ2人が女同士でなければの話だが。
- 495 名前:14話-日曜日。加護亜依編- 投稿日:2003/11/08(土) 03:57
-
「あ"ー!もう2分で始まるー!」
亜弥の案内で着いた映画館内で亜弥がそう叫んだ。
目的の映画が始まるまで後二分しかなかったのだ。
「あ!亜弥ちゃんちょっと待って!ポップコーンポップコーン!」
「え!そんなの買ってる暇無いよ!」
「何言うてんの!映画館は静かにポップコーンとコーラを楽しむ場所やで!」
「え?そうなの?」
「そうやで」
亜依に騙されて、一緒になってポップコーンとコーラを買う亜弥。
買った後急いで上映場に入ると時間通りには始まらずに次のシーズン公開の映画の予告がスクリーンに流れていた。
「よかった、間に合った。」
「大丈夫やって、映画の前には普通予告があんねんから」
映画館はガラガラで真ん中辺りの見やすい場所を2人は陣取った。
「これなんていう映画?」
「『まいびっぐふぁっとうぇでぃんぐ』だって」
亜弥は慣れないような英語を喋った。
2人はアームレストについた飲み物置にコーラを置いてポップコーンを頬張る。
数分が立つとスクリーンに映画が上映され始めた。
- 496 名前:14話-日曜日。加護亜依編- 投稿日:2003/11/08(土) 03:57
-
「あれ?亜依ちゃん寝てる?」
物語が中盤辺りに来た頃。亜弥が隣を見ると亜依は眠りこけていた。
片手にはまだ半分ほど入ったポップコーンの紙コップが握られている。
「もー……せっかくのデートなのに…」
亜弥は亜依が眠ってしまった事をつまらなく思って頬をプクーっと膨らませる。
でも亜弥は亜依の寝顔を見ているとそんな気持ちが抜けて行った。
「まぁ、いっか」
亜弥はこぼさないようにと亜依のポップコーンの紙コップを自分の飲み物置に移動させた。
「あ、コーラも持ってたらポップコーン食べれないじゃん」
左手にはポップコーンの紙コップ。右手にはコーラの紙コップ。亜弥はそうした後に気がついた。
しかし強引に飲み物を飲むようにポップコーンの紙コップを口につけて口に流し込んだ。
「これで食べれるや」
亜弥はまた映画の続きを見始めた。
「亜依ちゃん。起きてよ」
「ん………あれ?もう終わってもうたん?」
亜弥が亜依を揺り起こすと寝ぼけ眼を手でこすりながら亜依は目を覚ました。
「なんか気持ち良さそうに寝てたから起こさないほうが良いかなって思って、」
亜弥は亜依にに気を使ってそんの言葉を掛けた。普通なら亜弥は気を使うほうではないのだが、だ。
亜依は両手を上に上げて伸びをすると「ふぁーあ」と、1つ欠伸をした。
「どこ行こっか?」
映画館を出たところで亜依が亜弥に聞いた。
「ちょっとコンビニでも寄って行こうよ。なんかちょっとお腹空いたし」
「あ、うん。ええよ」
亜弥はコンビニで何か買おうと提案し二人は近くのコンビニに入って行った。
- 497 名前:14話-日曜日。加護亜依編- 投稿日:2003/11/08(土) 03:58
-
「………亜弥ちゃんするめなんか食べんの?」
「え、駄目?」
「いや、別に駄目ちゃうけど胃に残らへん?もうすぐ晩御飯の時間なんやし、普通のお菓子にしたほうがええんとちゃう?」
コンビニのお菓子コーナーの前でなにやら話し込む亜弥と亜依。
「亜依ちゃんは何買うの?あたし同じので良いや」
亜弥が亜依に向かってそう言う。
亜依は目の前のポッキーとプリッツを見比べた。
「ほんじゃあ、ウチはイチゴムースポッキーにするわ。」
「じゃあ、あたしは抹茶ポッキー」
仲良く二人で何を買うか決めると客の並んでいないレジに向かった。
「今日はウチがおごったるわ」
「ホント?ありがと。」
亜依の言葉に遠慮もせずに亜弥は財布をしまった。
コンビニを出たところで2人は買ったポッキーを開けた。
2人はすぐ側に真希と愛がいることに全く気が付かなかった。
亜弥と亜依はコンビニを出たところでそれぞれのポッキーを食べはじめている。
「一袋交換しよ」
「うん、ええよ」
2人はポッキーの中に入っている三袋の中の一袋を交換した。
「どこ行く?もう遅いから帰ろっか?」
亜依がそう提案した。時間はもう6時を回っているところだった。
「んー、もう6時かー。そうだね。帰ろっか」
「うん、お姉ちゃんに心配かけてもアレやし。帰ろう」
時間が時間なので2人はもう今日は帰る事にした。
ポッキーを食べながら二人は帰り道を歩き出す。
- 498 名前:14話-日曜日。加護亜依編- 投稿日:2003/11/08(土) 03:58
-
亜弥のマンションの前に着いた。
2人はもう先ほどのポッキーを食べ終わっていて話をしながら歩いていた。
「ほんじゃあ、また明日」
「う、うん。また明日」
亜弥がマンションの入り口の前に立っていた。
亜依は亜弥に一度手を振って背中を向けて歩き出した。
が、
「亜依ちゃん!!」
「んぇ?」
亜弥が亜依を呼び止めた。
亜弥は急いで亜依の元に駆け寄る。
「何?どうかしたん?」
「忘れ物だよ」
「え、ウチ何か忘れモンした?」
チュ。
「え?」
「えへへへ」
亜弥は亜依が拒む暇を与えずに。触れるだけのキスをした。
「じゃ、また明日ね!」
亜弥は急いでマンションの中に戻っていった。
亜依はというと、キスされた状態のまま全く動かないで呆けていた。
そう、亜依にとって。亜弥にとってもだが、これが初めてのキスだった。
- 499 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/11/08(土) 03:59
-
ForeverKiss
- 500 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/11/08(土) 03:59
- ログ流し
- 501 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003/11/08(土) 03:59
- 今日の更新終了。
&
500とっぱ
- 502 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/15(土) 09:32
- 作者さま更新お疲れ様です。毎回本当に楽しみにしておりますので
マターリと更新してくださいませ。お待ちしております
- 503 名前:tsukise 投稿日:2003/11/16(日) 20:22
- 更新お疲れ様ですっ
遅ればせながら拝見させて頂きましたっ
危機一髪から、出生の謎…そして甘々モード…
読んでると、どんどん次の展開が気になってきますっ!
次回もゆっくりお待ちしていますので、メンタイ味さんのペースで
頑張ってくださいねっ
- 504 名前:15話-義姉妹、姉妹- 投稿日:2003/12/25(木) 12:51
-
「ただいまー」
「ん、おかえりー」
真希はいつもと変わらぬ調子で亜依を出迎えた。
帰ってきた亜依はいつも置いている机の上の充電器に携帯を差し込んだ。
「ん、何作ってるの?」
キッチンに立っている真希に聞く亜依。
「晩御飯だよ」真希はそうとだけ答えた。
「そうだ、もうお風呂沸かしてあるから先入っちゃって?」
「ほーい」
真希が言ったので亜依は部屋に戻り着替えを取るとお風呂場へと向かった。
2分ぐらいが経っただろうか。真希は料理の手を止めた。
『本当に本人かどうか確かめなきゃいけない。』
真希の心の中には強い決心があった。
真希は振り向くと亜依の充電器に差し込んである携帯電話に手を伸ばした。
- 505 名前:15話-義姉妹、姉妹- 投稿日:2003/12/25(木) 12:51
-
「お姉ちゃーん」
亜依の声が聞こえたので伸ばした手をすぐに引っ込めた。
すぐにキッチンに向きなおす。
「な、なにー?」
お風呂場のほうに向かって喋った。
「シャンプー無いんだけどー」
「ん、分かったー持ってくー」
近くの戸棚に閉まってある詰め替え用のシャンプーを取り出した。
すたすたと歩いて亜依の待っているお風呂場へ持って行った。
「ここ置いとくからねー」
「ありがとー」
真希は再びキッチンに戻る。
お風呂場の扉がちょっとだけ開いて亜依がシャンプーを取ったのを確認した。
お風呂場の扉が閉まる。
- 506 名前:15話-義姉妹、姉妹- 投稿日:2003/12/25(木) 12:52
-
真希は一度深呼吸して、亜依の携帯電話を手に取った。
どこかに登録してあるはず。真希は亜弥のメモリーを探した。
電話帳、グループ分け『友達』の中に『松浦亜弥』の名前を発見した。
真希は急いでポケットから自分の携帯を取り出してそのナンバーを登録した。亜依の携帯を充電器に戻す。
これで連絡先はゲットした。真希はコンロの火を止めた。
机の上のメモ帳に側に転がっているボールペンで走り書きする。
『マヨネーズ買って来る』
それだけ書くと真希は家を出た。
歩いて、たどり着いたのは学校の前。
金曜日、電話をしてすぐに亜依がやって来た事から亜弥の家はココから近い距離にあるはず。
そう真希は考えていた。
- 507 名前:15話-義姉妹、姉妹- 投稿日:2003/12/25(木) 12:52
-
真希は再び深呼吸するとさっき登録した亜弥の番号に発信した。
何度もコールする。そのコール音に真希は落ち着かなかった。
「もしもしぃ?」
「あ、え。もしもし」
「どちらさまですかぁ?」
電話の向こうから間延びした声が聞こえる。
「あ、えっと、あたし、加護亜依の姉なんだけど………」
「え、お姉さんですか?」
「あの………亜弥ちゃんだよね?」
「そうですよぉ」
相変わらず間延びした声。少し声質が亜依に似ている気もした。
「あの、亜依のことで。大事な話があるんだけど、今から会えない?」
真希は本題を出した。
「今何処にいますぅ?」
『大事な話がある』そのキーワードにも間延びした声は変わらない。
「今、学校の前」
「あのぉ、校門を出て左斜め前の方にに赤茶色のレンガ模様のマンション見えます?」
真希は言われたとおり校門を背にして左斜め前を見た。そちらの方向にはレンガかどうかはわからないが確かに赤茶色のマンションが見える。
「うん、見えるよ」
「あたしソコに住んでるんですよぉ、1階の玄関で5桁の番号に15039って入れればドア開くんでエレベーター使って11階の左側にある1109の部屋まで来てください」
亜弥は話をする場所に自分の家を選んだようだ。
「ん、分かった。すぐ行く」
真希はそういって電話を切りマンションに向かって歩き出した。
- 508 名前:15話-義姉妹、姉妹- 投稿日:2003/12/25(木) 12:52
-
「でかっ」
真希は目の前のマンションの大きさにそんな声で驚きを表現した。
自分の住んでるアパートとは違ってきっと広いんだろうと考えていた。
「お金もある所にはあるんだね」
真希はそんな貧乏暮らしをしているような口ぶりで呟いてマンションの中に入っていった。
「1・5・0・3・9っと、」
ガーっと言う音を立てて扉が開いた。
厳重なロック。いったい家賃は幾ら位か。そんなことを考えながらエレベーターを待つ真希。
すぐにエレベーターは降りてきて中に乗り込むと11階のボタンを押した。
ポーン。
そんな音を立ててエレベーターが止まった。
11階。
扉が開いて真希が降りた。左側に進んで言われた部屋番号を探す。
1105
1106
1107
1108
1109
ここだ。真希は思った。
すぐにインターホンを押した。
「はーい」
インターホンからではなく扉の向こうから直接声が聞こえた。
数秒して扉が開く。
- 509 名前:15話-義姉妹、姉妹- 投稿日:2003/12/25(木) 12:53
-
「いらっしゃいませ。亜依ちゃんのお姉さんですよね?」
「そ…そうです」
いきなり亜弥が出てきて言葉が出ずに何故か敬語になる真希。
「どうぞ、入ってください」
「あ、はい。おじゃまします」
亜弥に促されて真希は部屋の中に入っていった。
広い玄関。
左側には何段もある靴箱。右側には傘立て。廊下も幅が広い。相撲さんでも通れそうなくらいだと真希は思った。
「座ってください」
「あ、うん」
言われてリビングのソファに座った。そして亜弥はキッチンのほうに向かっていった。
ココで亜依が亜弥にキスを迫られた事を真希は知らないままだ。
すぐに亜弥がキッチンから戻ってきた。手には紅茶の載ったお盆を持っている。
「紅茶で良いですかぁ?」
良いも何ももう持ってきてしまっている。『無理』と言うことは出来ず、
「うん、いいよ」
と、真希は言った。
- 510 名前:15話-義姉妹、姉妹- 投稿日:2003/12/25(木) 12:53
-
「話って何ですかぁ?」
目の前に来ても間延びした声は変わらない。
真希は話を始めようとした。が、
「あ、えっとね………」
何を話すか、話をまとめずに来てしまった。いまさらながら真希は反省していた。
「あの………亜依のことどう思ってる?」
とりあえず思いついた言葉を口にした。
すると亜弥は、
「もしかして亜依ちゃんからあたしの話し聞きましたぁ?」
と、間延びした声で聞いてきた。
「うん、聞いたよ。亜依のことが好きなんでしょ?」
「好きですよぉ」
「でもあたしが聞いてるのはどういう『好き』か。
友達的に『好き』なのか、恋人にしたいって言う『好き』なのか。家族みたいな『好き』なのか。そう言う事」
真希の言葉に亜弥は少し考えていたようだ。
亜弥のその眼差しは真剣に亜依を捉えて、亜依のことを本当に考えているのかどうかを本当に考えているようだった。
「………恋人的に………好きです。」
数秒後に亜弥が答えた言葉。
- 511 名前:15話-義姉妹、姉妹- 投稿日:2003/12/25(木) 12:53
-
「それは、これからも変わらないもの?」
「………どういう意味ですか?」
亜弥の間延びした声が消えて真剣な表情に変わる。
明らかにさっきとは違う雰囲気だった。
「これから亜弥ちゃんと亜依が付き合ったとして、亜弥ちゃんが亜依を悲しませるような事があるとしたら、あたしは亜弥ちゃんを許さない。
………………亜弥ちゃんは、ずっと亜依のことが好きで居られる?絶対他の子に心変わりしたりしない?」
真希も真剣な表情で問いかける。それほどまでに真希は亜依のことを想っていた。
「在りえません」
すぐに亜弥は答えた、力強い言葉で。
「もし、万が一、亜依ちゃんとあたしが付き合って、別れる様な事があるとすれば、亜依ちゃんがあたしを嫌いになったときです」
真希の目の前に居る少女は純粋に亜依を追いかけている。
こんな誰かを幸せにしないといけない状況で真希は亜依を想う事など出来ない。
亜弥なら、亜依を想ってくれる。亜弥なら大丈夫と思った。
ただ。
「真実は、辛い物だったりするよ?」
「何ですか?意味分からないんでけど」
真希はまだ迷っている。本当のことは伝えて良いものだろうかと。
亜弥は真実を受け入れられるほど大人なのかどうかが分からない。
- 512 名前:15話-義姉妹、姉妹- 投稿日:2003/12/25(木) 12:53
-
「例えば………亜依が何かの理由で牢屋に入れられたとして、亜弥ちゃんは今すぐにどうやって亜依に会いに行く?」
これは出来るだけ感づかないように考えたものだった。
姉妹で想いあう事。それはもう女同士という時点でクリアしている問題かもしれない。
でも。確かめたかった。受け入れてほしい、真希はそう思っていた。
「………あたしも亜依ちゃんと同じことをします。………それで同じ牢屋に入ります」
「それで、亜弥ちゃんのことを心配する人がいるんじゃない?」
「周りは関係ありません。あたしは亜依ちゃんと一緒に居たいから、多分そうします。」
『大丈夫、きっと大丈夫』
真希は確信した。
亜弥ちゃんならきっと真実を知っても亜依のことは嫌いにならない。距離も置かない。何も変わらないはずだ。
その『好き』という感情さえあれば、きっと亜依のことをずっと思っていてくれるはずだ。
- 513 名前:15話-義姉妹、姉妹- 投稿日:2003/12/25(木) 12:54
-
「これ見て」
真希は鞄の中から手帳を取り出した。
そしてその手帳に挟んである一枚の写真を亜弥に見せた。
「誰だかわかる?」
「………こっちは亜依ちゃん」
亜弥は写真の中の亜依を指差して言った。
「じゃあこっちは分かる?」
真希が写真の中の亜弥を指差す。
でも亜弥は分からない様子だった。
「後藤さんですかぁ?でも似てない………」
亜弥は写真と真希の顔を見比べていた。
亜弥の口調は元に戻っている。真希はなんとなく気が付いた。
「亜弥ちゃんだよ」
真希は写真を裏向けた。
そこには亜弥と亜依の名前が書かれていた。
- 514 名前:15話-義姉妹、姉妹- 投稿日:2003/12/25(木) 12:54
-
「え………なんで?」
亜弥の表情が一瞬で驚きの色に変わる。
「亜弥ちゃんのお母さん再婚でしょ?」
「う、うん」
「本当のお父さんの話は聞いた事ある?」
「………無い。聞いても教えてくれない」
真希は真実を亜弥に伝えた。
「亜弥ちゃんと亜依は、姉妹だよ。………ずっと昔に両親が離婚して、離れ離れになってたみたいだけど」
「この写真がその証拠だよ」
次に見せた写真。
「こっちの人、亜弥ちゃんのお母さんでしょ?」
「う、うん。あたしのママ」
その写真には亜依を抱く母親が写っていた。
「あたしと亜依ちゃん………姉妹なんだ………」
驚きの表情はドンドン消えて亜弥は受け入れ始めていた。
「でも、そんなの関係ないよ。もう一度他人になったわけだし、元姉妹だからって恋愛しちゃいけないわけじゃないし、大丈夫。」
亜弥はすぐに立ち直った。
「亜依に言うかどうかは亜弥ちゃんが決めれば良いと思うよ。多分、亜弥ちゃんにしかその資格無いから。」
真希はそう言って初めて紅茶に口をつけた。
時間の経ったそれは少し冷めていた。
- 515 名前:15話-義姉妹、姉妹- 投稿日:2003/12/25(木) 12:54
-
「ただいまー」
真希は手にマヨネーズの入ったビニール袋を提げて帰ってきた。
「お姉ちゃんお腹すいたー!」
テレビから一瞬目を離した亜依が真希に向かっていった。
「ごめん、マヨネーズ安いの売ってなくて遠くまで行ってたから。すぐ出来上がるからさ」
真希はキッチンに戻って出て行く前にしていた調理の続きを始めた。
もう亜依は自分の元を離れる。
真希は決心を固めようとしていた。
ただ、
それが真希の壊れた要因だったかもしれない。
- 516 名前:うまい棒メンタイ味@露兎死 投稿日:2003/12/25(木) 12:55
- Forever Kiss
- 517 名前:うまい棒メンタイ味@露兎死 投稿日:2003/12/25(木) 12:55
- 念のためログ流し
- 518 名前:うまい棒メンタイ味@露兎死 投稿日:2003/12/25(木) 12:59
- >>502名無し読者様
毎回たのしみにしていただいてありがとうございますw
更新ペース遅めですいませんがお付き合いください
>>503tsukise様
中々思うように筆が進まないもので(滝汗
次は(●´ー`)編書かないととか思って
しかももうストックが無い・・・_| ̄|○イ`・・・
とかやってみたりwww
OPV作ってるヒマがあったらマジで小説書かないと………
って言うか青板はあぼーんですか………_| ̄|○
保全いっぱいあったから安心してた矢先………
すいませんです。ホムペで続き書いていきます。
m(_ _)m
- 519 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/04(日) 12:44
- 作者さまあけましておめでとうございます。
更新お疲れ様です。今年もしっかりフォローしていきますので
待ったりペースでがんばってくださいね。
- 520 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:36
-
「お姉ちゃんどうしたの?学校遅れるよ」
「うん………」
いつもの朝と何も変わらないはずなのに。
真希の表情は暗かった。
亜依が呼びかけるも上の空と言った様子でリビングの椅子に座って、学校の制服にも着替えずにただボーっとしていた。
「今日ちょっと具合悪いから遅れて行くよ。自転車使って良いから先に行って来な………」
「具合悪いの?ちゃんと寝たほうがいいよ?」
「うん。分かってる」
亜依は姉の心配をしながらも真希から自転車の鍵を受け取って、学校へ向かった。
学校へ行く亜依を見送った真希は机にうつ伏せてため息をついた。
真希の様子がおかしいのはその前の日から。
それは亜依のことが原因だった
――――――――――――――――――――――――――――――
- 521 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:36
-
昼休みに暇をもてあましていた真希は何の思いも無く中等部の校舎に足を運んだ。
亜依に会おうと思ったわけでもなかった自然と足は亜依の居る教室の方向へと進んでいた。
「あ、亜依」
真希は亜依の居る教室を覗き込んで亜依を発見すると名前を呼んだ。
「あ〜お姉ちゃん。」
ただその姉を呼ぶ声に重なってもうひとつの声が聞こえた。
「あ、後藤さん!」
声の主は亜弥。
亜依の居る窓際のすぐ隣に立っていた亜弥は亜依の手を引っ張りながらこちらへ歩いてきた。
「あの後藤さん。報告したいことがあるんですよ」
「ん?なに?」
真希は"報告したいこと"という言葉が気に掛かり亜弥の話に興味を向けた。
「あの〜。あたしと亜依ちゃん付き合うことにしたんですよ!」
――――――――――――――――――――――――――――――
- 522 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:37
-
真希はうつぶせていた顔を上げて寝室の向こうに見える窓の外の景色が変わっていくのを感じた。
窓の外には雨が降り出していた。
「亜依………なんかあたしに知られたくなかったみたいな顔してた………」
真希は亜依が離れていくのを感じていた。
亜弥にあの話をした時から離れるとは分かっていたはずの真希。
それでも実際に離れていくのを肌で感じると。
心はどんどんと不安定になっていった。
真希は立ち上がって、昨日付け忘れたカレンダーの元まで歩くと赤いマジックでカレンダーに斜線を一つ追加した。
「亜弥ちゃんに話してからまだ三日目なのにな………」
自分と離れて亜弥と暮らすほうが亜依は幸せになれると真希は思っている。
ただ、亜依が自分から離れることで自分がどうなってしまうのかはまるで分かっていなかった。
「なんか急にいろいろあり過ぎて訳わかんない………」
ホンの二週間ほど前までは何もおかしい事などなかった。
きっかけはあの交通事故。
――――――――――――――――――――――――――――――
- 523 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:37
- 『亜弥ちゃんと亜依は、姉妹だよ。………ずっと昔に両親が離婚して、離れ離れになってたみたいだけど』
『あたし、後藤先輩とだったら何処でも』
『もって、後1ヶ月。………そんだけしかもたへん』
『………3人の人影、イニシャルのどっちかがA。って、言うことぐらいや』
『今日はさ、3人でどっか遊びに行こうって、でここに来た』
『よし、素直でよろしい。……って言うかさ、あたしこの前の誕生日亜依になにも買ってなかったじゃない?だから言っちゃなんだけどそ
の代りって事で。遅れたけど誕生日プレゼント』
『亜弥ちゃんの事なんとも思ってないって、これから好きになる可能性はあるけどって……』
『あの、よろしければ……一緒に、遊びに…とか……』
『あたし前から、後藤先輩の事が好きでした!付き合ってください!』
『だから授業中に寝るな!そもそも夜ちゃんと寝ていれば学校で眠たくなるはずないでしょ!それに後藤……』
『お姉ちゃん!!眠ってる場合じゃないでしょ!!』
『今あんたが死ねば、周りの人全員が不幸になる。だからあんたの死は作られへんかったんや』
『いいよいいよ、亜依ちゃんビデオ待ってるんでしょ?早く帰ってあげなよ』
『お姉ちゃん、最初の1巻だけでいいから、お願い、一生のお願い!』
『はじめまして。真希って言うの?なっちは安倍なつみって言うの。よろしく♪』
『あぁ!ごっちんじゃん!久しぶり〜』
『あいちゃん?あたしはごとーまき。よろしくね』
『は、はじめまして………か、かごあいです』
『あたし。この街出ようと思ってさ』
『ごと〜。遊びに行こ〜』
- 524 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:38
-
いつかどこかで誰かに聞いた言葉。
いつかどこかで誰かに言った言葉。
そんな言葉達が真希の頭の中を通り過ぎる。
亜依の物や自分の物が所狭しと置いている部屋。
この部屋は自分が一番落ち着く部屋だったはず。
でもその部屋もまるで色を失ったように真希は感じ始めていた。
「なんか………置いてきぼりにされた気分………」
真希は寝室のほうに歩き始めて窓のそばまで来ると窓を開けて外の景色を眺めた。
『…●Э>;б…』
『…□1○8$…』
『…Ψ◇<2*…』
その景色の中を歩く人々はまるで自分に気づかないように歩を進め、
それぞれ人と話したりしながら景色の外へと消えていく。
その景色にも色は無く。
景色もどんどんと速さを増して流れていく。
まるで自分の居るその場所だけが時間が止まったように。
- 525 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:38
-
真希は窓を閉めて後ろを振り向いて壁掛け時計を見た。
その時計も速さを増して針が回転していた。
『多分……魂がドンドン抜けていってるんやな。もう時間が無い………』
このままだと自分がこのまま消えてしまうんじゃないかと真希は不安を覚えた。
不安というよりは恐怖というほうが正しいのかもしれない。
真希は灰色のような白黒の世界を歩いてまたリビングの椅子に座った。
「あたし………何がしたかったんだろ」
顔を横に向けて机に再びうつ伏せる。
目の前に映る鏡には色を失った自分が映っている。
鏡の中の自分と目が合い、鏡の中に歪みが起きて自分と色を失った景色が溶け込んで混じりあっていく。
『きっとこのまま目を閉じれば自分は消える………』
何の確証もないがそう思って真希はゆっくり目を閉じようとした。
何も未練はないと自分に言い聞かせるように思って鏡を見つめたままゆっくり瞼を下げる。
- 526 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:39
-
コンコン!
色のない世界に急に響く音。
殆ど閉じかけていた瞼を上げると目の前の鏡には普通に真希の姿とその周りの景色が映っていた。
真希は心に何か引っかかりを覚えた。それは喪失感のようで何か良く分からない感覚。
死を失った感覚なのか。生を奪われたような感覚なのか。
よくは分からないが妙な感覚だけが残る。
コンコン!
再び音が響く。
真希の耳に届いたその音がきっかけなのか世界はまた色を取り戻していた。
壁に掛かった時計を見るとゆっくりと秒針が進んでいる。
「夢………な訳ないか………」
真希は椅子から立ち上がって音のなった場所。
ノックされた玄関の扉まで歩いた。
「誰?」
少しばかり礼儀のない言葉だが、返事の声に真希は驚いた。
「あ、高橋です」
「………たかはし?」
意外な人物の登場だった。
家の場所を教えた覚えはないしまだ学校が終わる時間でもないはず。
元々学年が違うからそっちは終わる時間なのかもしれないが。
真希は突然の来訪に驚いたが、とりあえず扉を開けた。
- 527 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:39
-
「あ、後藤さん大丈夫ですか?風邪引いたって聞いていろいろ持ってきたんですけど………」
「風邪?」
真希は朝のことを思い出す。
『今日ちょっと具合悪いから遅れて行くよ』
真希は、あぁ。アレのことか。と言った様子で高橋がここに来た理由を理解した。
「別に風邪引いてるわけじゃないよ。ちょっと具合悪かっただけ………」
言って真希はまだ自分がパジャマのままだったことを思い出す。
こんな姿では具合が悪くて眠っていたと思われても仕方がないことだが、別に高橋相手ならどうでも良かった。
「上がれば?お茶でも出すよ」
真希はそう言って部屋の中へ戻る。高橋は「おじゃまします」とだけ言って中に入って扉を閉めた。
真希はヤカンにお湯を沸かす間に高橋をリビングの椅子に座るよう促す。
「あ、あの、りんご持ってきたんですけど食べますか?」
「りんご?」
「あ、ミカンとかキウイとかいろいろ持ってきたんですけど………」
「じゃあミカンちょうだい」
真希はミカンを一つ貰って皮をむき始めた。高橋も同じようにミカンを一つ取った。
- 528 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:39
-
「高橋ってさ………」
「はい?」
「あたしのドコに惚れたの?」
「へ?」
真希が高橋に急な質問をする。
高橋は真っ赤な顔をしてなにやら考え出す。
でも真希は冷めた顔で冷静にミカンの皮を剥いていた。
「あの、えっと。なんていうかカッコよくて………優しそうで……あと、………笑った顔がとっても好きで………」
高橋は今考えたことなのか本当に思っていることなのか。真希の質問に答える。
真希はと言うと嬉しいことを言われてるはずなのに相変わらず無表情のまま。
「それってさ………良いことなのかな」
「え?」
一口も食べないままのミカンを机の上において真希がそう口にする。
「例えばかっこ悪くて性格悪くて。笑った顔なんて見てられない人だとして、その人は長生きする
でもカッコよくて優しくて笑った顔が素敵でもホンの17年しか生きられない人。それはどっちが良い事か分かる?」
「ご、後藤さん?」
真希は眼を瞑った。
「お湯沸いたね。紅茶とコーヒーどっちにする?」
「え、あ。えっと。紅茶で………」
- 529 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:40
-
真希は高橋の返答を聞いて立ち上がるとコンロの火を止めた。
お盆の上に置かれたカップ二つにティーパックを入れてヤカンからのお湯をそそいだ。
あたりにはミルクティーの香りが充満して真希はヤカンをコンロの上に戻す。
「ん………――――」
急に目の前の景色が色を失う。
真希自身の体も景色に融けるように色を失っている。
真希が時計を見るとまた時間が早く流れているようだ。
「訳分かんない………」
盆の上に置かれた紅茶をそのままに真希は後ろを振り返った。
高橋がいたあたりを視界に入れる。すると目の前の景色に急にノイズが掛かった。
「後藤さん?どうかしたんですか?」
『ご・・・ん?・・・たん・・・すか?』
音にもノイズが混じって声すら聞き取れない。
テレビ画面の砂嵐のようなノイズ………。
『あたしはいったい何がしたいの?』
「あたしは高橋と付き合ってるよね?」
真希はゆっくりと高橋に歩み寄る。
「後藤さん?」
高橋の声はノイズに紛れて真希の耳には届かない。
- 530 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:40
-
『高橋は………あたしと付き合って何を望む?』
「高橋は……こんなあたしに惚れたんだよね?」
真希の眼に映るノイズは晴れないまま。けれどそこに高橋がいるのは分かる。
高橋も真希に近寄って何がどうしたのかと真希の顔を覗き込みに来る。
「ごと………」
「訳わかんない………」
「……ぁ…」
高橋が小さく悲鳴を上げた。
真希は片手を高橋の首の後ろに回し。片手で腰の辺りに触れて高橋を引き寄せた。
真希自身何故そうしたのかは分からない。
ノイズは晴れない。
真希はノイズが見える眼を閉じて高橋の唇にゆっくりと自分の唇を重ねた。
「…ぅ………っ…ぅー…」
高橋の唇から漏れる声もノイズが掛かっているせいで真希には聞こえない。
ノイズと色を失った世界はゆっくりと確実に真希の躰に変化を起こさせていた。
「んぁ………ご、と………さん………」
無理やりに口付けられながらも高橋はいつの間にか真希を受け入れていた。
真希に惚れていたのだから当たり前といえば当たり前なのかもしれない。
真希は真希でそうすることで何か変わるわけでもないのに何故かずっと高橋の唇にキスを続けていた。
ザザッ!!
きつくノイズが掛かった。眼を開くとすべての景色が砂嵐に覆われている。
何も聞こえずに。ただ唇の感触だけしか感じられない。
『………あたし………誰が好きなんだっけ?………』
- 531 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:41
-
ザザザーザザッ!!
急にノイズが晴れた。
世界も色を取り戻して。ただ耳が強く耳鳴りを起こしていた。
真希はようやく我に帰って唇を離した。
高橋から離れて背中を向けた。
「ご……めん………」
真希が無理やりキスしたことを謝る。
しかし、
「何で………謝るんですか?………」
高橋は何も謝られる事がないような返事をした。
「あたし………好きだった人に振られた………だから、ただ寂しさを埋めたかっただけなんだ………」
真希の身体に掛かるノイズとグレイフィルタ。
それは真希が妹を失って、寂しさから逃げるために見ている虚構。
しかし真希にとって事実でしかないその状況から逃げ出すことなど皆無。
真希は逃げ出すことを選んだ………。
「構わないです………」
高橋はそう言って真希の後ろから真希の身体を抱きしめた。
「あたし………後藤さんが好きです。だから、誰かを好きだった後藤さんも、誰かを好きになる後藤さんも、全部好きになれます………」
「でも、高橋を寂しさを埋めるためだけに使うかもしれないんだよ?」
「平気です………」
「誰か別の人を好きになったら捨てちゃうかもしれないよ?」
「ホンの少しでも、一緒にいられれば構わないです………」
「ごめん………ごめんね………」
「謝らないでください………なんか、絶対に捨てられるみたいじゃないですか………」
「………ごめん………」
- 532 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:41
- Forever Kiss
- 533 名前:-16話-崩壊- 投稿日:2004/02/22(日) 21:43
- >>519 名無し読者様
遅れましてあけましておめでとーございますです(ぉ
ペースがマッタリし過ぎて既に限界までケツカッチンなのでございますが(マテ
どうにか更新は早め早めにできるよう努力いたしますw
- 534 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2004/02/22(日) 21:44
- 本日の更新終了
- 535 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/04(木) 00:59
- お疲れ様。いいかんじになってきましたね
このままがんばってくださいね。楽しみに
してますから
- 536 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2004/05/09(日) 21:52
-
―――武器を持たなければ、あなたを護る事が出来ない………。
「………ハァ……ハァ、ハァ…」
雨を降らしている灰色の空が気持ち悪かった。
ドシャ降りの雨の中。アタシはスラム街を駆け抜けていく。
追っ手が迫ってきている。足音は三つ。
手に持ったDESERT EAGLEと呼ばれる大型のハンドガンの残弾も残り少ない。
けれど今ココで追っ手を絶たないと奴らはアタシ達のアジトまでついてくるだろう。
産業廃棄物のばら撒かれたスラム街に良い道など無いがアタシはさらに悪い道へと進む。
狭い裏路地に入って追っ手を撒こうとするが向こうも足が速い。
けれどこの道ならばはずさない。
裏路地を抜けたところでアタシは立ち止まり後ろを振り返った。
足音が二つになっていたことには気付いていなかった。
サイレンサーの付いたDESERT EAGLEを構えて裏路地から追いかけてくる追っ手に銃口を向けた。
影が二つ見える。アタシは右手に銃を持って狙いを定めた。
パシュン!
パシュン!
サイレンサーの効果で小さな銃声がする。
二つの影は地面に消えて追っ手は残り一人。
けれどその残った追っ手は裏路地に姿を現さない。
何時居なくなったのか。
今ココで取るべき正しい行動。追っ手は退散したのかそれともどこかに息を潜めているか。
しかし考えてる時間は無い。
アタシは間も無く走り出した。
ココで倒れるわけにはイカない。アタシには護らなければならない人が居るから。
- 537 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2004/05/09(日) 21:52
-
パシュン!
パシュン!
グラリと視界が揺れる。あたしの身体は前のめりに倒れて持っていた銃は2.3m離れたところにに転がった。
左足に激痛が走る。二つの弾痕が脹脛と太腿に見えて、辺りに溜まる水溜りを赤に染めていく。
「もうその足では逃げられないだろう。タカハシアイを渡せ。ゴトウマキ」
追っ手の声が聞こえた。
「……ヤダね。渡すわけ無い!」
雨に濡れた茶色の髪を振って転がるように銃の元へ。右手に銃をつかんで即座に追っ手に向けて構える。
パシュン!
「ぐぁっ、」
相手の持つM92Fが放った弾丸があたしの右手を貫通してイッた。
アタシの銃が落ちて。痛みに耐えかねて左手で右手を押さえた。
「もうコレで銃も使えない。あの大型銃を片手で扱うだけでも驚きだが、利き手じゃない手では流石のゴトウマキも無理だろう。」
雨のせいで冷たくなった躰からドンドン感覚が無くなっていく。
右手と左足からは紅い液体が流れ続けて、アタシの命が抜け出ていく感じさえした。
「コレが最後だ。タカハシアイを渡せ。」
渡すものか。
渡してしまえばそれで終わり。アタシが武器を持つ理由も。アタシが生きる理由も。全て意味が無くなってしまう。
- 538 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2004/05/09(日) 21:53
-
「……た…ない………」
「なんだと?」
「………渡さない!!」
落ちた拳銃を左手で拾い相手に向かって構える。
即座にトリガーを引いて弾丸が発射される。と、同時にアタシは銃の反動で後ろに転がった。
右手か両手で撃たないとその反動を腕だけでとどめる事が出来ないからだ。
なれない左手で撃った銃の反動はアタシを弾き飛ばして。
運良くアタシを狙っていた追っ手の放った弾丸を肩をかすめるだけにとどめてくれた。
「………く、油断……したか、」
そんな台詞を最後に追っ手は崩れ落ちた。
アタシは近くの金網まで這いつくばって移動すると金網に捕まりながら立ち上がった。
「愛は。誰にも渡さない………」
アタシは何故愛が狙われているかの理由を知らない。
けれど、愛が何者かなんてアタシにとってはどうでもいい。
アタシにとって愛はアタシの愛している愛に代わりは無いのだから。
だから。アタシは愛を護る。
追っ手が途絶えるまでは愛に会うことも出来ないけど。
それでも愛を護る。
武器を持たなければ、愛を護る事が出来ないけど。
武器を持ってしまえば、愛を抱きしめる事も出来なくなる。
それは承知の上だった。
アタシは自分の命よりも。愛の事が大事なんだ。
武器を持たずに2人して死ぬより。
武器を取って愛を護る。
―――武器を持たなければ、あなたを護る事が出来ない………。
―――けれど武器を持てば、あなたを抱きしめる事ができない………。
アタシはまだ戦い続ける。
キズが増えようと。銃を持つ事が出来なくなろうと。
それでも戦い続ける。
愛を抱きしめる事が出来るようになる、その日まで………。
- 539 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2004/05/09(日) 21:53
- 保全用にSS書きました。
更新遅くて申し訳ないですm(_ _)m
- 540 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2004/05/09(日) 21:55
- >>535 いい感じですか?w
そう言ってもらえると安心します。
更新は遅いですがこれからもよろしくです♪
- 541 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2004/05/09(日) 21:55
- 更新終了
- 542 名前:kurohina 投稿日:2004/05/19(水) 15:52
- 更新お疲れ様ですw
kurohinaこと黒崎です。板ではkurohinaでいきます。(謎)
小説イイ感じじゃないですか(w
後高スキーさんにしてはとてもオイシイわけで(ぇ
これからも応援しておりますので、メンタイさんのペースで頑張って下さいね。
。・*゜・。(*´ Д`)人川’ー’*川。・*゜・。
- 543 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/14(火) 11:21
- 放置ですか?
- 544 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/14(火) 11:21
- 放置ですか?
- 545 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/14(火) 17:03
- おち
- 546 名前:ライウ 投稿日:2004/09/14(火) 19:31
- 雨は降り続いていた。
いつしか客はアタシ一人だけになったいつものラーメン屋のカウンターでアタシは窓の外を見上げた。
黒い雲はゴロゴロと不吉な音を立てて雨の勢いだけを強めていた。
もう既に終電なんかなくてこの後どうしようかと考えて、ラーメン屋の女主人の裕ちゃんは泊まっていき、と軽く言った。
━━━そういえばあの日もこんな風に雨が降っていた。
━━━あの子と別れてもう一週間か……。早いな。
「そろそろ店閉めよか。」
裕ちゃんはそんなことを言って店じまいを始めた。
この天気とこの時間じゃもう誰も来ないだろう。
仕事着なんてとっくに脱いだ裕ちゃんは店を手っ取り早く閉めると賄い料理みたいなものと瓶のビールや酒の類を運んできた。
「飲もか。」
「……なんで?」
「なんかごっちん寂しそうな顔してるやん」
裕ちゃんとは結構長い付き合いで。
アタシの考えなんてほとんどと言っていいほど分かってくれてて。
こんな風に何度慰めてくれたことだろうか。
「やっぱ裕ちゃんにはバレバレかぁ。」
「当たり前やん。裕ちゃんに隠し事なんできるわけないやろ」
頭をグシャグシャとされて。差し出されたコップにビールが注がれた。
「何があったん?」
- 547 名前:ライウ 投稿日:2004/09/14(火) 19:31
-
――――――――――――――――――――――――――――――
ぬるい、大粒で小雨の雨の中を歩くのはすごく気分が悪かった。
せめてもう少し雨の勢いが強ければこの寂しい気持ちを洗い流してくれそうな気がして、
まだ今よりは気分がすぐれるのに。
こんな夜中に彼女の家を訪れようと思った理由なんてなかった。
いや。訪れるのに理由なんて要らない。彼女に会うこと。彼女に触れること。彼女を思うこと。
すべてが理由で。すべてが理由じゃない。
彼女の家に向かう途中。ほんの偶然だった。
コンビニからアタシのよく知る人と二人で出てきた彼女の姿を見たのは。
アタシが見たこと無いような笑顔で話す彼女。
アタシが知らない彼女の姿。
アタシが居ることにも気づかない彼女。
何かが壊れた。
「あ……ぃ…?」
自然と口から漏れた彼女の名前。
彼女は急にアタシのほうを振り返った。
驚いたような顔でアタシのほうを見つめて。アタシはすべてを悟った。
アタシじゃなかった。アタシは彼女の大切な人ではなかったんだと。
- 548 名前:ライウ 投稿日:2004/09/14(火) 19:32
-
「ご、ごとーさん!」
いつまでもアタシのことを真希ちゃんとかごっちんとかそう言う風に呼んでくれないのはそう言うことだったんだよね?
何となく分かっちゃったよ。
その子の事は美貴ちゃんとか呼ぶのに。アタシはいつまでたっても後藤さん。
アタシの独りよがりだったんだよね?愛?
「…サヨナラ……」
「後藤さん!!」
アタシは二人に背を向けて歩いた。
走らなかったのは愛が追いかけてきてくれるかもと淡い期待を抱いていたからだ。
けれど、走った方が良かったのかも知れない。
追いかけてきてくれないと言うことが。よけいにアタシの心に深く突き刺さった。
最初の角を曲がった頃に。雨は降り始めた。
そう、すべてアタシの勘違い。
恋人だとか。大切な人だとか。一方通行の想いだったんだ。
もう。すべて雨に流れてしまえばいい。
あたしの想いも。傷ついた心も。寂しいと感じる心も。
すべて。すべて…。すべて………。
- 549 名前:ライウ 投稿日:2004/09/14(火) 19:32
- To be continued
- 550 名前:老師@うまい棒メンタイ味 投稿日:2004/09/14(火) 19:37
- 更新滞り気味で申し訳ないです。
老師にHN変えたうまい棒メンタイ味です。
勝手ですが川*'ー')人(´Д `) 生誕週間として23日まで連短編を書きます。
本編の更新はもう少し待っていただけると幸いです……
>>543 >>544
名無し読者様
放置気味で申し訳無いです…。完結だけはきちんとさせますので……。
最後まで読んでいただければうれしいです。。。
- 551 名前:カイセイ 投稿日:2004/09/15(水) 19:06
-
二人で竹下通りを歩いた。
空は雲一つ無くて、デート日和って言葉が似合いそうだ。
「ごとーさん♪」
「んぁ?」
「何考えてたんですかぁ。」
『ぁ』に独特な訛りをつけて愛はアタシに話しかける。
「ぃや。これからどこ行こうかなって」
前々からデートの約束をしていた訳だけど。行く当てなんてなくて。
適当に降りた駅から通りに向かって歩き出しただけで。
あ、そーいえば前にココに来たときにアクセサリーショップ見つけたっけ。
「どーしましょーか。」
「アクセサリーショップでも行こっか」
アタシ達は端から見たら恋人同士に見えないほどあっさりしてるらしい。
でもアタシ達にはアタシ達の付き合い方があるわけで。
それに愛もそんなアタシにひょこひょことついて来る。
- 552 名前:カイセイ 投稿日:2004/09/15(水) 19:07
-
「あ、コレとか可愛くないですか?」
「んー。アタシ的にはこっちのが良いと思うんだけどなぁ」
「えー、でもこのちっちゃいやつとか後藤さんに似合いそうですよぉ」
「それならこっちのながーいやつのが愛に似合いそうだね」
指輪やらピアスやらペンダントやら。
店で買う気もない物を見て何が似合うか、どんなのが好きかなんて話を延々として。
「コレ欲しいなぁ」
愛が聞こえないほど小さい声で言った言葉をアタシは聞き逃さなかったわけで。
すぐにその目線の先を追うと手持ちで十分買える値段のピアス。
よくアタシが言うやつだね。ムダに長いピアス。
愛はこんな感じのヤツいっつもつけてるね。今日はピアス自体つけてないけど。
「ごとーさんは欲しいのとか無いんですか?」
さっきの一言が聞こえてないと思ってるんだろうな。
アタシは振られた話題に答えて隙を探す。
愛に気づかれないようにさっき愛が欲しがっていたピアスを買えるタイミングを。
「アタシは欲しいの別にないけど。これとか愛に似合いそうじゃない?」
さっきの場所から遠ざけて、アタシは愛にどうでもいいピアスを勧める。
「一回つけさせて貰ったら?」
アタシは一人店員を呼んでつけてみていいか確認を取った。
わざと着けにくそうなピアスを選んだのはこの隙にさっきのピアスを買えると思ったから。
鏡の前で一個ずつ丁寧にピアスを着けてる間にさっきの場所にそっと移動してもう一人の店員に声を掛けた。
- 553 名前:カイセイ 投稿日:2004/09/15(水) 19:07
-
「ごとーさんどーですか?」
支払いだけをさっさと済ませていったん愛の元に戻る。と、ちょうど話しかけられた。
「うーん、着けてみると微妙だねぇ。やっぱこっちのムダにながーいヤツとかいいんじゃない?」
ムダに長いとは言った物のさっきのヤツとは別物。
コレも着けるのは面倒くさそうなヤツだ。
愛にまた試着をさせて今度は商品を受け取った。包みは要らないかな。
茶色い紙袋に包まれた商品をジーパンの後ろのポケットに突っ込んでまた愛の元に戻る。
「あれ。どこ行ってたんですか?」
「いや。ミキティっぽい子がいた気がしたけど気のせいだっただけだよ」
とってつけたような嘘で愛の質問を回避した。
それから今着けてるピアスもやっぱり似合わないとだけ言って買う気を無くさせた。
「そろそろ出よっか」
愛が欲しがっていたピアスが無くなっていることに気づかれないうちにアタシ達は店を出た。
後はこのピアスをいつ渡すか。
「とりあえずウチ帰ろっか」
この後行く場所も思いつかない。
いつものように晩ご飯の材料だけ買ってアタシの家に帰ることにした。
- 554 名前:カイセイ 投稿日:2004/09/15(水) 19:08
-
「おぉー、良い匂い」
お風呂から出た後ハーフ丈のパンツとTシャツに着替えて、バスタオルで頭をがしガシと吹きながら出てくると、
愛が作ってくれた晩ご飯の良い匂いがしてきた。
「もーできるがし。座ってまっとって」
愛の言葉にアタシはリビングの椅子座って。バスタオルを肩に掛けた。
と、ジーンズのポケットにピアスを入れっぱなしなのを忘れていた。
アタシは脱衣所に戻るとピアスの入った茶色い小さな紙袋を取り出した。
「いつ渡そうかな…」
またパンツの後ろのポケットに袋をしまって、リビングに戻った。
が、愛の姿が見あたらない。
コンロの火はちゃんと消してある。と言うことは自分からどこかへ動いたってこと。
「愛?」
「あ、後藤さんこっちこっち」
ベランダのほうから愛の声がした。
すぐにそちらへ向かうとベランダの外に愛が居た。
「さっき思い出したんやけど今日花火の日やざ」
花火?そう言えば夏祭りの季節だったね。
アタシの部屋はマンションでも高い階だから結構眺めは良い。
花火はまだ始まっていないみたいだったけど。そんなに時間待つ訳じゃないしちょっとの間ココで花火が始まるのを待とうか。
「後藤さん。」
「んぁ?」
「花火を一緒に見たら幸せになれるって噂知ってますか?」
「…なにそれ」
「あ、ちょっと笑わないでくださいよ〜」
- 555 名前:カイセイ 投稿日:2004/09/15(水) 19:09
-
「花火なんて見なくてもアタシ十分幸せだよ?」
「……ごとーさん」
「愛は幸せじゃないの?」
どう答えるかなんて全部分かってる。
アタシと居て幸せじゃないわけ無い。ってきっとあなたは答えるんだろう。
「ごとーさんと居て幸せじゃないわけ無いじゃないですか」
もっとハッピーな気分にさせてあげようか。
あなたが欲しがっていたピアスをそっと耳に着けて。アタシがなんて言葉を掛けたら一番あなたは喜ぶだろうか?
「プレゼントあげるよ」
茶色い袋からアタシは青色の箱を取り出して。箱の中から愛が欲しがっていたピアスを取りだした。
「…ぇ、それって。」
すぐに愛は気づいたようで少し驚いていた。
アタシが彼女の耳にピアスを付けるとうれしそうに「ありがと」って。
「好きだよ」
「あたしも大好きです」
好き。なんて言葉。いくら伝えても伝え足りないけど。
それでもあなたを喜ばせるには十分な言葉なんだね。
アタシ達が抱き合う中。
やっと一発目の花火が上がった。
- 556 名前:カイセイ 投稿日:2004/09/15(水) 19:09
- To be continued
- 557 名前:老師@うまい棒メンタイ味 投稿日:2004/09/15(水) 19:09
- スレ流し
- 558 名前:老師@うまい棒メンタイ味 投稿日:2004/09/15(水) 19:10
- 二回目終了
- 559 名前:セイテン 投稿日:2004/09/16(木) 20:06
-
真夏の照りつける太陽がうざくて。
実家のガレージからCBX400Fと言う単車を何ヶ月かぶりに引っ張り出した。
色々さび付いたりしていたけど。ほんのちょっと手入れするだけで走りそうだった。
特に何もすることの無い夏休みに。アタシは単車の手入れをして、テスト走行を始めた。
近くの行きつけの単車の店でオイル交換してもらって。ガソリンスタンドでガスを入れて。
どこまで走ろうか考えたとき、たまたま海をイメージしたどでかいポスターがガソリンスタンドの壁に貼られていた。
「海まで走ろっかな」
黒のパンツにTシャツでノーヘル。
ガレージで手入れを始めたときの格好のままでアタシは海沿いの道を気分良く走っていた。
時間なんて忘れるほどに走る事に夢中になって。
いつの間にか夕暮れ時になって。それでもまだ海沿いの道を走っていた。
海の家が数軒並ぶ砂浜の近くで単車を止め。小腹も空いたし一度単車を降りて海の家に入った。
そろそろ店じまいの時間だったらしく主人はいやそうな顔をしていたけど気にせずに焼きそばを注文した。
「んぁ、」
海の家の中から海のほうをぼーっと見つめて、何か違和感の有ることに気が付いた。
まだ帰りたくないと駄々をこねる子供と、もう帰らなきゃいけないからと子供を説得する親。
せっせとテントをしまう子供達とソレを傍観している子供。
夕焼けに染まった海の中で泳ぐ子供。
そして、
その海の向こうの方で違和感のある泳ぎ方をしている子。
いや。溺れているようにも見える。
- 560 名前:セイテン 投稿日:2004/09/16(木) 20:06
-
「ダレも気づいてないっぽいかぁ」
あんまりこういう事には首突っ込みたくないってのがアタシの本心だけど、人の命が関わるからにはぼーっとはしていられない。
焼きそばが運ばれてきたっぽかったけどアタシはもう海に向かって走っていた。
服濡れるなぁ。とか微妙な事も考えていた気がする。
クロールでバシャバシャと水をかき分けながら結構遠い場所まで泳いだ。
アタシがちょうど溺れていたその子の元にたどり着いたときにちょうどその子は力尽きた。
女の子だった。
力尽きて、沈んでしまわないようにアタシは彼女の腕をつかんでアタシの首の後ろに回させた。
右手で彼女の右手を持って、左手で彼女の脇のあたりから彼女の左半身を支えて、バタ足だけで海岸の方へと戻った。
アタシは落ち着いて居たけど彼女の呼吸が停止していることにも気づいて、出来るだけ急いで砂浜に戻った。
髪をポニーテールにした可愛い子だった。
砂浜に戻ってもライフセーバーとかその手の類の人がいないようで。
保健の授業でうろ覚えの気道確保とうろ覚えの人工呼吸をした。
多分この子が目覚めたら人工呼吸されたのが女の子で良かったとか思うのかなぁ。とどうでも良いことを考えていた。
数分後、彼女が飲んだ水をはき出してゆっくり呼吸をし始めた。
「ゲホッ!……ゴホッ。……はぁ……はあ……」
息も荒くてまだ意識も戻っていないけど多分大丈夫だろう。
と、ちょうど良くこの子の知り合いのような子がやってきて、「アイチャン!アイチャン!しっかり!!」なんて声をかけ始めた。
眉毛が印象的な小さな子だった。
声をかけ始めてまもなく。彼女が目覚めて、よく分からないままに眉毛の少女に「この人が助けてくれた」などと声を掛けられていた。
まず溺れたことも覚えてないような気がするんだけどね。
ただ溺れていた彼女に、息絶え絶えの小さな声でありがとうございます、とだけ言われて。
アタシはどういたしまして、とだけ答えた。
もう夜の帳も降り始める。
早く帰らなくちゃと言う考えが浮かんで、アタシは単車の方へ歩き出した。
CBXのセルを回したときに焼きそばを食べるのを忘れたことを思い出したけどもうどうでもいいやと思って、そのままアタシは走り出した。
- 561 名前:セイテン 投稿日:2004/09/16(木) 20:07
-
「あっちぃ〜」
数日後の日中。
友達のミキティとセンター街を歩いて適当に遊び歩いていた。
真夏の太陽はうざいと言う言葉で片づけられないほどうざくて。
サテンに入ってもクーラーが効いてるのかどうか分からないくらい熱くて。
ゲーセンに行ってもどこへ行っても熱くて。
結局そのまま駅でミキティと別れて。自分の家に帰ろうと山手線に乗った。
電車に十数分揺られて。自分の降りる駅で降り損なって。反対向きの電車に乗り換えて。
また降り損ないそうになって急いで降りて。
ようやく自分の家の近くの駅に帰ってきた。
「熱いからなんかコンビニでアイスでも買おかな」
コンビニに入って少し涼んで。
好きなチョコアイスを一つとバニラアイスを一つ買って外へ出た。
家に帰るまでに溶けないだろうかと心配しながら家の方へ向かった。
そんなときだった。
「あれ?」
「んぁ?」
この前海で溺れていた子が目の前に立っていた。
「あ、えっと……この前はどうも。ありがとうございました」
彼女と偶然の再会をした。
「いえ、どういたしまして。」
これからとても近くなる存在と気づかないままに。
- 562 名前:セイテン 投稿日:2004/09/16(木) 20:07
- To be continued
- 563 名前:老師@うまい棒メンタイ味 投稿日:2004/09/16(木) 20:07
- スレ流し
- 564 名前:老師@うまい棒メンタイ味 投稿日:2004/09/16(木) 20:08
- 第三回目終了
- 565 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/17(金) 13:15
- このCPスキです。これからもがんばってください
- 566 名前:ユキ 投稿日:2004/09/17(金) 20:40
-
「後藤さんのこと。好き………です。」
体中の血が一気に巡っている気がした。
体全体が異様なほどに熱を持って。
突然の告白に目眩を起こしそうだった。
休日、遊びから帰った雪の夜の公園。
遊びに行こうと誘ったのはアタシだった。こんな夜遅くなるつもりもなかった。
帰り道、ちょっと公園で休もうと言われて、雪が降ってる中公園で休憩というのも変な話だけど。
そんな時に。
━━━『後藤さんのこと。好き………です。』━━━
突然の告白だった。
愛の中でアタシは一体どんな存在だったんだろう。
アタシは偶然海へ行って。
偶然愛が溺れていて。アタシはソレを助けて。
街中で偶然再会して。日常的に会うような関係になったけれど。
一体いつから愛の中でアタシは特別な存在に成り得たのだろうか?
海で助けたとき?
再会したとき?
それともいつも会うようになってから?
答えは皆無。
人が人に惹かれるのに理由なんて無い。
たとえ偶然が重なって愛がアタシに惹かれたとしても、きっとその偶然は運命と呼べるのだろう。
- 567 名前:ユキ 投稿日:2004/09/17(金) 20:41
-
アタシは愛のことをどう思っていたんだろう。
運命に導かれて再会したこの年下の彼女を。
ただの女友達なんて言葉じゃ括れない程に、アタシ達はきっと親しかった。
ソレこそ数ヶ月前に出会ったばかりとは思えないほど。
アタシもきっと彼女と同じ想いを抱いていたんだろう。
ただ。彼女がその想いを告白してくれるまで、アタシはその想いに気が付けなかった。
きっとこの熱い体も。
ようやく気が付けたこの想いに同調しての事なんだ。
薄暗い公園。街灯の明かりと月明かりだけがアタシ達を照らす。
そして降り積もる雪がその光を反射して、そのアタシ達のいる場所だけが明るく見えた。
「アタシも……愛のこと。好きだよ」
ねぇ?
明日も休みだし、明日は海へ行こうか?
アタシ達が出会った思い出の場所へ。
そんで誓いを立てよう。
絶対に離れない。絶対に裏切らない。絶対に貴方を思うと言う誓いを立てよう?
そしたら。きっとアタシ達は離れることなく。ずっと一緒にいられる気がするんだ。
「……嬉しい。」
「アタシもなんかすっごい嬉しいよ」
雪降る夜。
アタシ達は初めて本気で人を愛することを知った。
12月の。雪の降る夜……。
- 568 名前:ユキ 投稿日:2004/09/17(金) 20:41
- To be continued
- 569 名前:ユキ 投稿日:2004/09/17(金) 20:41
- スレ流し。
- 570 名前:老師@うまい棒メンタイ味 投稿日:2004/09/17(金) 20:42
- レスへの返事はは全部終了してからまとめて行います。
第四回目終了。
- 571 名前:カミナリ 投稿日:2004/09/19(日) 00:40
-
「……なんか話がバラバラでよぅワカランなぁ」
裕ちゃんのラーメン屋。
空いたビール瓶。ウォッカ。リキュール。
裕ちゃんが作ってくれる洋酒は甘くて飲みやすくて、酒という感じがしないけどアルコールは強かった。
雨は少し弱まって。でも雷雲は晴れなくて数分ごとに雷の音がしていた。
「あの思い出の海で、すべてを誓ったのに……。一生離れない。一生貴方を思うって…。なのに…」
いくら悲しみを積もらせても愛は戻ってこない。
流れる涙は。ただ現実に自分を引き戻すだけで。
自分がもう何も出来ないと言うことが悲しかった。
「今日はもうこのへんで止めとき。これ以上飲んだら毒やで」
裕ちゃんの声もアタシの耳には届かない。
また、思い出の世界で愛に会う。
思い出の世界の愛はアタシに微笑んでくれるから。
今と違って、離れてしまった愛とは違う。アタシだけの愛。自分だけの愛。
アタシに永遠を誓ってくれた。愛。。。
- 572 名前:カミナリ 投稿日:2004/09/19(日) 00:41
- To be continued
- 573 名前:カミナリ 投稿日:2004/09/19(日) 00:41
- スレ流し
- 574 名前:老師 投稿日:2004/09/19(日) 00:42
- 日付変わってしまいましたが本日分更新。
第五回目終了
- 575 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/20(月) 13:36
- ごま愛(・∀・)イイネ
- 576 名前:老師 投稿日:2004/09/27(月) 12:51
- 申し訳ないっす。。
ごっちん紺参戦してたら家に帰れない日々が続いてw
明後日ほどに一斉更新する予定……は未定。w
本当に申し訳ないっす。。
- 577 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/05(火) 04:57
- 作者さまお疲れ様でございます。これもすごくいいですね。
本編のほうもがんばってください
- 578 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/12(水) 14:34
- 続きは・・
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