「私のマリア」

1 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年09月26日(木)21時31分42秒
初めまして。青版に「2番目」というのを書いているものです。
更新は遅いですが完結できるようにします。
学園物を書きます
主人公は後藤さんで、準主人公は紺野さんです
2 名前:私のマリア〜後藤真希〜 投稿日:2002年09月26日(木)21時34分50秒
大きい荷物を片手に学校指定の制服で身を包んで懐かしい学校に入る


「はぁ・・・ただいま・・・」


校門をくぐると2ヶ月前と変わらない学校があった


今日は始業式


長い休暇を終えて家からこの学校に帰ってきた
3 名前:96の名無し 投稿日:2002年09月27日(金)00時45分06秒
 初めまして。96の名無しと言います。名前は気にしないで下さい。
 青板の「2番目」も読んでます。私はよしごま命ですが、この小説の
後紺(違っていたらすいません)も楽しみにしてます。続き頑張ってく
ださい!
4 名前:クロイツ 投稿日:2002年09月27日(金)13時57分55秒
ど〜も〜♪
学園モノごっちん&こんこん!!楽しみです♪
96の名無し様はよしごま命だそうですが…私はいしよし命(笑)。
でも、期待してますよ〜!!
5 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年09月27日(金)20時20分31秒
レス、たくさんありがとうございます!


96の名無し様・・・レスありがとうございます!
          青版の方読んで下さってますか。ありがとうございます。
          こちらの方は「ごまこん」です。


クロイツ様・・・レスありがとうございます!
        こちらのほうにもきてくださってありがとうございます!
        いしよし命ですか。。こちらではいしよし書きます。


レスありがとうございました。
6 名前:私のマリア〜後藤真希〜 投稿日:2002年09月27日(金)20時24分06秒
門をくぐるとすぐ見えてくるマリア様の像


いつ見ても落ち着く・・・

そうここはキリスト教の学校。
そしてここの生徒は寮で暮らしている。

1年生の時は規則で決められていたが、2年生からは自分で寮に入るかどうか決められる
大体は地方から来ている人なので、寮に入るのは普通みたいだ。
7 名前:私のマリア〜後藤真希〜 投稿日:2002年09月27日(金)20時28分50秒
大きな荷物を抱えて寮に向かう


寮はマリア様の像からそう遠く離れていない

寮に向かう時に何人かの生徒を見かけた


そして、6人目を見たとき、寮に着いた


白と黒で塗られた寮は教会の様

ドアを開けて中に進む


中から美賛歌が聞こえてくる

天井からの明るい日差しはステンドガラスに反射して鮮やかに彩る


その一つ一つを食い入るように見つめながら私の部屋に向かった
8 名前:私のマリア〜後藤真希〜 投稿日:2002年09月27日(金)22時05分19秒
〜心境報告〜

こんばんは。
ヒトシズクです。
最近は紺野さんがハマってます^^
タンポポの曲を聴いてハマりました。。。
で、この小説を立てたということです。

(こんなことかいてる暇があったら更新しろよと思う・・・けど、更新が出来ない・・)

こんなバカなやつですが、これからよろしくおねがいします
9 名前:クロイツ 投稿日:2002年09月28日(土)10時17分42秒
私も紺野さん好きです!!
五期メンの中では紺野さん一押しです!!
タンポポの曲の紺野さん、可愛いですよね!!梨華ちゃんもメッチャ可愛いし♪

ごまこんにいしよし!!
楽しみです!!楽しみにしてます!!
頑張ってくださいね♪
10 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年09月28日(土)20時21分20秒
クロイツ様・・・レスありがとうございます!
        クロイツ様も紺野さん好きですか。よかったです。
        タンポポの曲いいですよね〜^^
        これからかもよろしくおねがいします^^
11 名前:私のマリア〜後藤真希〜 投稿日:2002年09月29日(日)19時05分39秒
204と書かれたプレートがドアに下げられている白いドアの前で私は立ち止まった


深呼吸を2回してドアノブに手をかける
ゆっくりと右に回していく・・・


ぎぃ
古いさびた音を立てて、白いドアは開いた。
12 名前:私のマリア〜再会〜 投稿日:2002年09月29日(日)19時14分55秒
白い空間が私の目に映る


中に黒い服を着た少女がいた。

黒い服の少女は、私の方を見て何か口を動かした

だが、私には聞こえない
ただ少女が口をパクパクしているしか見えない・・・

少女に私は話し掛けた
「・・・・ただいま・・」

少女何も言わず、ただビー玉のような眼で私を見る。

その少女が口を動かした
小さい声で・・・
「・・・お帰りなさい・・」

「・・・久しぶり、紺野・・」
少女の名前を私は口にした

黒い髪は2ヶ月前から少し伸び、顔は少しきりっとした様に見える

少女は少し顔を緩めて言う

「久しぶりです、後藤さん」

少女が顔を緩めたのが、少女なりの微笑だとわかるのはたぶん私だけだろう。
誰にも心を開かない少女なりの、微笑み・・・
13 名前:クロイツ 投稿日:2002年09月30日(月)19時07分30秒
きゃ〜〜〜!!!こんこん登場ッスね!!
しかもなんだか、ワケありなご様子…。
わくわくします!!どうなっちゃうのか♪
更新、頑張って下さいね!!楽しみにしてますから!!
14 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年09月30日(月)20時07分33秒
レスありがとうございます!

クロイツ様・・・レスありがとうございます!
        紺野さん登場です^^
        紺野さんには訳有で登場してもらいました。他にもこれからメンバーが登場する予定です。
15 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年09月30日(月)20時11分47秒
心境報告〜パート2〜

ヒトシズクです。
小説を読んでくださっている方、ほんとうにありがとうございます!
最近ですが、夜型になってきてます(笑。
夜3時ぐらいに寝て、朝10時くらいに起きてます^^
当然ですが、学校は遅刻です。はははは。。
ここ1ヶ月程遅刻した日はないかと・・・(笑。
こんなヒトシズクですが、よろしくおねがいします!
16 名前:私のマリア〜再会〜 投稿日:2002年09月30日(月)20時26分08秒
彼女の微笑を見て私も微笑んだ。

「紺野、今日のミサはいつも通り?」

休み明けのミサは時間が違う時がある。
だから、寮に残った人に聞くしかない。

紺野は手に握っていた紙をゴミ箱に捨てながら言った
「はい、いつも通りです。今日も亜弥ちゃんが迎えに来るそうです」

私はゴミ箱に捨てていた紙が気になったが、時計に目線を上げながら答えた
「そう」

ただ、それだけだけど紺野は気づいているだろうか?

私の心の中を。

紺野なら気づくはず
私と同じ傷を負っているんだから・・・
17 名前:私のマリア〜傷跡〜 投稿日:2002年09月30日(月)20時29分03秒
「そろそろ着替えないとね」

独り言のように呟いて、机の横にあるクローゼットに手をかける

中から黒の制服を取り出す
18 名前:私のマリア〜傷跡〜 投稿日:2002年09月30日(月)20時35分49秒
着ていた白のカッターシャツを脱いで、黒色のカッターシャツに着替える

腕に見える傷

いつまでたっても消えない傷


その傷跡をなぞってみる

あの頃は痛かった傷も今は何も感じない。
ただ、あの頃に起こったことを示しているだけ。

「・・・傷・・」
いつの間にか紺野が私を見ていた。
目を丸く見開いて私の傷を見る

「・・・紺野と同じ傷だよ・・・」

そう言って私は紺野の手をとり、私の傷跡に紺野の手をつける
そして、ゆっくり傷跡に沿ってなぞっていく

「・・・・っ・・・」
19 名前:私のマリア〜傷跡〜 投稿日:2002年10月01日(火)21時33分16秒
紺野の苦い顔が私の目に映る


私は紺野の手を離して、黒いカッターシャツを羽織る。

紺野はビクビクしながら私を見ている

私は紺野の視線を気にしながらも、カッターのボタンをとめる

「・・・傷・・・いつの?」
おずおずと紺野が口を開く
「・・・・5歳の頃の」

そっけなく言う
ホントはその話題に触れたくないから。


「そう・・・そろそろ時間だから部屋でないと・・・」

紺野は教科書などを鞄に入れながら言う

「そう。カギは閉めとくから、先行っていいよ」

白のネクタイを締めながら、独り言のように呟いた
20 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月02日(水)16時55分26秒
こんこーん!!
思わずそう叫んでしまいました…。
謎が多くて…先がすっごく楽しみです!!がんばって下さいませ!

大学始まっちゃって、思うように来れない今日このごろ…(泣)
それでも、授業の合間にちょくちょく読んでます♪
ああ、夏休みはよかった…。
21 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年10月02日(水)20時58分27秒
クロイツ様・・・レスありがとうございます!
        謎が多いですねぇ〜。考えるのに苦労します(笑。
        クロイツ様は大学生なんですね。がんばってください♪
        ホント休みの間がいいですよねぇ・・・
        クロイツ様もがんばってください♪
22 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年10月03日(木)21時49分59秒
少しするとカギのチャリンと言う音が聞こえてから、ドアの開く音がして、閉まる音がした


紺野の足音を聞きながら私はため息をついた

「・・・ふぅ・・・」

白のネクタイを締め終えた頃には紺野の足音は消えていた

ふと時計を見るとミサが始まるまで、あと5分
急いで鞄を持ち、私の机に置いてあったカギを持ちドアを開ける
部屋から出て、ドアを閉めてカギを差し込み、右に回す
するとカチッと音がする
それから、またカギを左に戻し引き抜く

それからカギを手に持って走り出す。

23 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月04日(金)12時01分02秒
どきどきっ♪
紺野さんとごっちんの間の距離感が気になりますねぇ〜!!
頑張ってくださいませ☆楽しみにしておりますので♪
24 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年10月04日(金)21時25分36秒
クロイツ様・・・レスありがとうございます!
        どきどきですか!?ありがとうございます!
        ごっちんと紺野さんの関係には秘密が・・・(笑。
        これからもよろしくおねがいします♪
25 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年10月04日(金)21時31分55秒
大きな扉の部屋の前で私は止まった。
急いで腕時計を覗き込む

よかったあと3分ある。
ほっと一息ついてドアを開けようとしたときだった。
後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「先輩!」

振り返ると、そこには後輩の松浦亜弥が立っていた。

「・・・あ〜・・亜弥ちゃん・・・どうしたの?」
急いでるのに・・・・
心の中で文句をいいながら言う
「どうしたの!?じゃないですよ!ずっと待ってたんですよ!」
つかつかと私の方に歩きよってくる亜弥ちゃん

「・・・んー・・ごめんね。ちょっといろいろあって・・・」
今日の朝のことを思い出しながら言う

「まぁ、いいですけど・・・」
私の1歩手前で止まった亜弥ちゃんは私の顔をじっと見る
26 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年10月05日(土)22時35分47秒
するどい眼が私を捕まえる

亜弥ちゃんはまだ私を見つめるだけ
私も負けずに見つめ返す



ガチャ

大きな音がして、ドアの向うから人が出てきた

出てきた人を見る

「・・・・紺野・・・」

それは私のルームメイトの紺野が私と亜弥ちゃんを交互に見ている


「・・・後藤さん・・?」

紺野は私にゆっくり近づいてくる

「・・・もうすぐ、ミサが始まります。席に着いてください」
紺野は亜弥ちゃんに向かってそう言う

亜弥ちゃんはしぶしぶ私から離れて、ドアの向うに消えていった

「ありがと」

亜弥ちゃんが見えなくなってから、私は紺野に言った

「いえ。それより後藤さんも早く行かないと遅れますよ」

紺野はそう言い終らないうちに歩き始める


「あ。カギ」
私はそう言って、紺野が振り向いたとたん、カギを紺野の方に向かって投げた

「・・・じゃね」
紺野のそばを通る時に、ぼそっと言う


そのままドアを開けて中に入る

27 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月08日(火)19時13分30秒
ごっちーん!!なんで紺野には冷たいんだぁぁ〜(泣)
何があったのか…メチャメチャ気になります!!
そしてあやや登場!!
楽しみ〜!!どうなっちゃうんでしょうかね〜♪
28 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年10月08日(火)21時10分27秒
クロイツ様・・・レスありがとうございます!
        ごっちん紺野には何で冷たいんでしょうかね?ははは(笑。
        あやや登場です。実は私も兵庫県出身です(は?)
        これからもよろしくおねがいしま〜す!
29 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年10月08日(火)21時21分47秒
音がしないようにそっとドアを開けて、中に進む。

中では一人の背の高い少女の所に20人くらいの少女達が集まっている。
その少女にゆっくりと近づいていく。


(どうしてしまったんだろう・・・?)
自分の中で思う

紺野のことだ。
今さっきも、冷たくしようなんて思わなかった。
それなのに勝手に体が動く。
部屋でのことでも。
傷を触らせようなんて思わなかった。
その前に、傷を見せることなんかしなかったのに・・・・
30 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年10月08日(火)21時26分36秒
紺野のことになるとなぜが冷たくなってしまう。


「・・・はぁ」
いつの間にか私はため息をついていた。

少女の座っている、横の席の鞄を置く。
その瞬間に集まる、取り囲んでいた少女達の目線

その次に・・・掴まった。
少女達が、一斉に私の方に集まってくる。

でも、私は無視。
相手をすると疲れるから。
時間が無駄だから。



しばらくすると、神父さんが教壇の上に立つ

「生徒の皆さん。しずかに席に着いてください」
ゆっくりとおだやかに神父さんは言う。

皆、しずかに席に着いていく。
31 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月12日(土)14時31分51秒
クールだ…!!超クールですね、ごっちん!!
一匹狼的なこのごっちん、かなり好きですよー!!
紺野に冷たい理由が気になりまくりです。
続き、期待しております!!
32 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月03日(日)13時37分15秒
クロイツ様・・・レスありがとうございます。
        PCが壊れて全然更新ができませんでした。すいません。
        これからは日曜日には更新できると思います。
        これからもよろしくおねがいします。
33 名前:私のマリアーアイツー 投稿日:2002年11月03日(日)15時41分50秒
ざわめく声が消えかかったころ、神父さんは静かに言った。
「今日は転入生を紹介したいと思います。2年A組に入る、石川梨華さんです」
教壇の後ろからか細い少女が出てきた。
すると、静まり返っていた教室がざわめきでうるさくなっていく。
34 名前:私のマリアーアイツー 投稿日:2002年11月03日(日)15時47分42秒
私は鞄から本を取り出して静かになるまで待つ。
ふと、隣を見るとあの少女が私を見ていた。

「何?よしこ」
本をたたんで机において、よしこを見た
「ん?いや・・転入生に感心ないのかな〜?と思って・・・」
よしこというのは私の幼なじみの吉澤ひとみのこと。
「ごっちんってさ〜いつもクールだよね」

「そうかな?普通にしてるだけなんだけどな」
私はそういって、教壇に目をむけた。
あの少女にどこか見覚えがあったから。
必死に思い出そうとしてみる。
35 名前:私のマリアーアイツー 投稿日:2002年11月03日(日)15時57分55秒
いつだった?
あの少女を最後に見たのは・・・・



ふと蘇る、幼かった頃の思い出。
封じ込めたはずのアイツとの思い出



「真希ちゃん!」
涙目のアイツはどこかさびしそうな瞳で私を見る。

「約束したじゃん、ずっと一緒だよって」
幼い私は涙を溜めた瞳であいつを見て叫ぶ

「だけど!パパが・・・パパのお仕事なの・・・」

「そんなの嫌だよ、なんで行っちゃうんだよ、アメリカなんかに・・」
叫ぶ私の声は掠れていた

「わかんないよ・・・・真希ちゃんがわかんないよ。なんで愛ちゃんのとこに行ったの
行かなかったら私はアメリカに行かなかったのに・・・」

「そんなの関係ないよ。愛が・・・・心配だったからだよ。普通はそうだよ」

「もういい。私、もう真希ちゃんのことなんか忘れるから」
そういって去っていったアイツ。
車に乗って、どこか知らないとこに行ったアイツ


・・・・・・・・・・・・
36 名前:私のマリアーアイツー 投稿日:2002年11月03日(日)16時03分18秒
アイツ・・・・・石川梨華・・・

その文字だけが私の頭を過ぎる



「さて・・・・石川さんは・・・後藤さんの隣に座ってもらいましょうかね
後藤さん、手を挙げて」

神父さんは、手を挙げた私のところに行くようにアイツに言った。

トコトコ歩いてくるアイツはあの頃と同じだった。

「後藤さんですか?」
遠慮がちに聞いてくるアイツのアニメ声

「はい、2年A組の委員長をやってます、何か困ったことがあれば言ってくださいね」
落ち着け自分
自分に言い聞かせながら冷静に言った。
にこっと笑うとアイツは安心したのか、はにかんだ笑顔を見せた。
37 名前:私のマリア〜アイツ〜 投稿日:2002年11月08日(金)19時38分45秒
「さぁ、朝のミサをはじめます」

神父さんが口を開く。
私の耳には神父さんの声は聞こえてなかった。
隣にアイツがいたから・・・・

「あのぉ〜・・・」
少し遠慮がちに私に言ってくるアイツ
「はい?」
読んでいた本を机の上に置いてアイツを見た。
「すいません、聖書見せていただいても良いですか?忘れたんです・・・」
少し照れくさそうに言うアイツ
「あ・・・はい。どうぞ」
38 名前:私のマリア〜アイツ〜 投稿日:2002年11月08日(金)19時43分44秒
読んでいた本の隣に置いてあった聖書をアイツに手渡した。
「あの・・・後藤さんは?」

「あー・・・覚えてるから・・」
読もうと本を持ち上げたときに言われて、少しめんどくさそうに言った。
「ありがとう」
笑顔を私に見せてアイツは聖書を嬉しそうに読み始めた。
「・・・・なんだよ」
誰にも聞こえないようにボソッと言った。
隣にいるよしこにも聞こえないように・・・
39 名前:私のマリア〜アイツ〜 投稿日:2002年11月14日(木)21時51分37秒
気がつけばミサはとっくに終わって、教室には私と神父さんだけしかいなかった。

読むはずの開けられた本のページ。

アイツに貸していた聖書

無造作に置かれたカバン


「・・・・はぁ」
知らぬうちに私の口からため息がこぼれる。

「・・・どうかしたんですか?」

上から静かな声が降ってきて、驚いて上を見る。
そこには神父さんが微笑んで、心配そうに私を見ていた。

「何か心配事でもあるんですか?」
太陽の光で光るステンドグラスを神父さんはまぶしそうに見ながら言った。
40 名前:私のマリア〜アイツ〜 投稿日:2002年11月14日(木)22時01分52秒
「・・・・最近、自分が何のために生きてるかわからなくて・・・・」

私は神父さんを見ないようにして、答える。
神父さんの眼を見てると何もかもが見透かされてしまいそうになるから・・・・

机の上に置かれた聖書や本を掴んで無造作にカバンの中に放り込んだ。
腕時計を見ると、1時間目はとっくに始まっていた。

「・・・」
だるい体にむちを打って椅子から立ち上がる。
それと同時に床に落ちる、淡いピンクの紙切れ
その紙が落ちるときに舞うのが、桜の花びらのように見えた。
淡いピンクの小さな花びらに・・・・

(疲れているのか?)
心の中で自分で自分に問い掛ける。

かがんで床に落ちた紙を拾い上げ読む
それは、アイツからだった。
ピンクの紙にピンクのペンで書かれた手紙。
「後藤さんへ
 聖書どうもありがとう。おかげで助かりました。
 ぼーっとしてたみたいなので手紙でお礼を言います
 1時間目は自習だそうです。
                           
                 石川梨華        」
41 名前:私のマリア〜アイツ〜 投稿日:2002年11月16日(土)08時31分31秒
手の中におさまるほどの小さな紙を私は手の中で握りつぶした。

クシャッ
と音を立てて紙は小さく丸くなる。
紙をカバンの中身放り込んだ。

「・・・・もう、行きます」

小さく神父さんに聞こえるかどうかわからないような声で私は言った。
言うと同時に私は足を進めた。
42 名前:私のマリア〜アイツ〜 投稿日:2002年11月16日(土)08時36分00秒
「いいんですか?」

神父さんの静かな声が私の足をとめる。

「・・・・何がですか?」

足をとめて振り返り神父さんを見ていった。
神父さんは相変わらず微笑んでいた。

「あなたの心配事ですよ・・・あの頃のように話してくれれば嬉しいんですけどね」
それと、力に慣れるかもしれませんね。

と神父さんは付け足しながら言った。

「・・・・・今日は授業出ないと、先生に言って置いてください」
私はそれだけ言って、ミサのときに座っていた場所に又、座った。
43 名前:私のマリア〜アイツ〜 投稿日:2002年11月19日(火)20時38分05秒
神父さんはにこっと私に笑いかけて、教室を早足に出て行った。
私はため息を一つついて立ち上がった。
カバンからケータイを取り出して見慣れた文字を呼び出す。

【紺野あさ美】

一息ついて電話をかけた。

プルル・・・♪

何度か呼び出し音が鳴って紺野が出た。

「・・・・はい」
「あ〜紺野?寮のカギさ、持ってたよね?持ってきてくれない?」
「・・・は?」
いきなりのことで紺野は変な声をあげた。
「だから、今日は用事があるから帰る。だからカギがいるの」
イライラしながら、そのことを気づかれないように言った。
「・・・あ〜・・・はい。分かりました。で、後藤さん今、どこですか?」
「ミサやってたトコ」

ピッ

[必要のないことはしゃべらない]

脳にその言葉が浮かんだとき私は反射的に携帯を切っていた。
44 名前:私のマリア〜アイツ〜 投稿日:2002年11月19日(火)20時39分17秒
「・・・・また・・・か・・」

口から思っていたことが出てくる。

この言葉が浮かんだのは今で何回目だろうか?
あのときからずっと・・・・・

45 名前:北都の雪 投稿日:2002年12月19日(木)22時06分16秒
まったり待ってます。
46 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月22日(日)10時54分50秒
北都の雪様・・・レスありがとうございます!
        更新は遅く、申し訳ありません。。。
47 名前:私のマリア〜過去の出来事〜 投稿日:2002年12月22日(日)11時07分48秒
窓から差し込む色とりどりの光

静かな教室に小さく綺麗に響く賛美歌

私を静かに見つめているマリア様の像



私は教室をゆっくり見回してからカバンからそっと音を立てないように本を出した。
この静かな場所で音を出してはいけないような気がして。
この静けさの中で私の存在を消して欲しくて。
この静けさで私を包み込んで欲しくて・・・・・



ガチャ

本をそっと開こうとしたときだった。
ドアが開いてこの場に不釣合いな大きな足音が響く。

「後藤さんっ!」
ドアのところで私の名前を叫ぶ少女は私に向かってつかつかと歩み寄る。
48 名前:私のマリア〜過去の出来事〜 投稿日:2002年12月22日(日)16時36分02秒
私は本をたたんで、音のする方へ顔を向けた。
そこには案の定、紺野が大またで私に近づいていた。
それをみて、私はゆっくりと椅子から立ち上がる。

「やぁ」
紺野と私の距離が近くなってあと2〜3歩のところで私は紺野に話し掛けた。
紺野はまだ、私に近づいている足をとめなかった。
私と紺野の距離が1歩。
そのとき紺野は足をとめた。
「・・・・カギ・・・です」
走ってきたのか、乱れている呼吸で紺野は私にカギを差し出す。
「ぁ、ありがと」
紺野からカギを受け取りポケットにしまう。
「松浦さんが・・・きましたよ・・・教室に・・・・」
紺野は乱れた呼吸を直そうとせずに話し始める。
「・・・紺野。ゆっくり呼吸直してからでいいから」
49 名前:青のひつじ 投稿日:2002年12月23日(月)19時00分53秒
読んでました。物語の静な雰囲気がいいですね〜。
実は紺野さん結構好きで、僕も月板で紺野主役の
小説書いてるんですよ。かなり期待してます。
50 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月24日(火)20時10分11秒
青のひつじ様・・・レスありがとうございます!
         紺野さんは私もハマってるんですよ^^
         これからもよろしくおねがいします♪
51 名前:私のマリア〜過去の出来事〜 投稿日:2002年12月24日(火)20時19分51秒
私がそう言うと紺野は静かに頷き深呼吸をし始める。
そんな姿を私はそっと見ていなさそうにしながら見ていた。

その横顔が愛にそっくりでびっくりした。
マジメで優しくて純粋で綺麗に笑うから
思わず涙が出そうになった。
まるで、ここにはいない愛を見ているような気分になったから・・・・


「・・・後藤さん?」
すこし、戸惑い気味の声はすぐに私の心に響いてきて、私はすぐはっと我にかえった。
「・・・もう、大丈夫?」
紺野を見るとすこしまだ顔は赤かったが呼吸はすこし落ち着いたようだった。
「はい、ありがとうございます」
ぺこっと私に頭を下げる。
「いや、私は何もしてないし・・・それで亜弥ちゃんは?」
「あ、松浦さんが探してたみたいで、教室にいないって行ったら今夜行きますからって言っといて下さいって・・」

52 名前:私のマリア〜過去の出来事〜 投稿日:2002年12月25日(水)12時38分07秒
「・・・そう・・」
いまいち意味がわからないが一生懸命説明している紺野に言うのは失礼だと思い適当に答えた。
「かぎ、ありがと。助かったよ」
笑うのは苦手だが、ポケットからカギと出してにこっと笑った。
「あ、はい。じゃ、失礼します」
紺野は腕の時計を見て、ぺこりとお辞儀をして忙しそうに部屋を出て行った。
53 名前:私のマリア〜過去の出来事〜 投稿日:2003年01月27日(月)20時44分37秒
マジメなところが素直なところが純粋なところが、似ていたから。
死んだ、義理の妹に。
半分しか血がつながっていない妹。


・・・・そして。
初めて愛した人。
今でも想ってる人・・・・


許されない恋をしたから
私達2人

だから、悲しみに耐えられなかった愛は自ら命を絶った
最後まで私を愛しながら
涙を浮かべて
「大好き」と色の無い唇でささやきながら・・・・
54 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月02日(日)14時15分36秒
続き待ってますよ〜!
55 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年02月05日(水)20時51分18秒
レスありがとうございます。

名無し読者様・・・ありがとうございます。更新は遅いですが完結させるつもりなので
         最後まで付き合っていただけたら嬉しい限りです。
56 名前:私のマリア〜過去の思い。そして今も〜 投稿日:2003年02月05日(水)20時54分40秒
なんで愛しちゃったんだろうね。
義理の兄弟と分かっていたのに。
いくら愛しても2人一緒になって幸せになることはないのに。

バカだね。
私達。
そんな簡単なことも分からないほど相手に惚れてたんだから。
それほどまで愛してたんだから。
周りが見えないほど
アナタだけを。
57 名前:私のマリア〜過去の思い。そして今も〜 投稿日:2003年02月05日(水)20時59分05秒
何でアナタを最後まで苦しめちゃったんだろう
苦しむのは私だけでいいのに

何で最後まで愛させてしまったんだろう
愛ならば他の愛でも、よかったはず。
嘘言って、早くこの恋終わらせてしまえば
アナタが死ぬことなんてなかったのに。

愛してる。
今、何度言ってももう、アナタに届くことはないんだよ
そんなことならあの頃もっと言っとけばよかった。
「愛してる」・「大好き」

今でも思い出すよ
アナタの最後
私の妹の最後
私の愛した人の最後

何度でも繰り返される悪夢のように
逃げられない過去のように

追い詰められる
58 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月24日(月)10時55分50秒
保全です
59 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月05日(月)19時57分57秒
放置?
60 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月01日(日)15時58分40秒
ごまこん、ごまこん♪
61 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年06月08日(日)12時02分56秒
すみません、しばらくの間更新してなくて・・・
もう少ししたら更新しますので・・・
62 名前:私のマリア〜過去の思いはいつまでも〜 投稿日:2003年06月10日(火)23時06分18秒
「――――愛・・・」

愛しくて愛しくて溜まらない
どうして、どうして私の傍にいないの?
どうして、もう一度あなたを抱きしめることが出来ないの?

封じたはずの涙は頬を伝って流れ落ちる。
どんどん、力が体に入らなくなっていって私は床にひざをついた。
まるで、お祈りするような形で。

「愛・・・・」

愛、今でも愛してるよ
絶対、この先あなた以外愛さない
あなた以外必要ないから・・・・・

63 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年06月10日(火)23時06分48秒
えっと、短いですが更新です。
次は土曜ぐらいに更新します。
64 名前:tsukise 投稿日:2003年06月13日(金)22時35分11秒
更新、お疲れ様ですっ。
過去をひきずるごっちん…せつないですね…。
ゆっくりと続きをお待ちしてますので、ヒトシズクさんのペースで
頑張ってくださいねっ。
65 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年06月18日(水)00時23分42秒
tsukise様・・・こちらにも来て下さってたのですか!?ありがとうございます〜
           こちらは空版と違ってめちゃめちゃ悲しくする予定なので・・・(汗。
           では、こちらでも宜しくお願いします。
66 名前:私のマリア〜過去の思いはいつまでも〜 投稿日:2003年06月18日(水)00時33分34秒
「―――やめろ・・・」
自分にそういい聞かす。
一つ思い出せば次々と思い出が溢れて、どこかに流れていっちゃいそうに感じる。
そして、あなたを求めてしまう。
周りが見えなくなるから・・・・

思いを、思考を遮る様に頭を何回か振る。
そして、目を閉じてあなたを追い出そうとする。
そう、何も考えなかったらあなたは自然にカギの閉まった扉の奥に帰ってくれる。
だから、何も、何も
何も考えないようにする。

ただ、それでいいの
ただ、それだけでいいの

そうすれば少しは楽になるから
心臓をぎゅっと掴まれたような苦しさも、涙が出そうで出ない感じも
少しは消えてくれるから・・・



「――――いいですか?」
静かな、空気のような声。
その声が、礼拝堂から消えてから私は静かに目を開けて後ろを振り向く。
少し先の暗闇に隠れるような黒い服。
「―――少し取り乱しただけですから、気にしないで下さい」
一つ、深呼吸をして声を落ち着け私は暗闇に静かに答える。
67 名前:私のマリア〜過去の思いはいつまでも〜 投稿日:2003年06月21日(土)09時53分47秒
抜けられない闇と
抜けられるのに抜けたくない闇が

私の中でぐるぐる回って

そして1つになって

創りだすのは、あなたという過去の思い出

闇は私を飲み込んで
目の前を真っ暗にして
心に重い鉛を残して

去っていく

いつもそう。
やっと忘れかけた頃に、ふとやってきて
悲しみと憎しみと切なさを私に一気に感じさせ
私を狂わそうとする。

もう止めて欲しいのに
もう思い出したくないのに
もう忘れたいのに

闇がやってくるのを待ってるもう一人の私

どうすればいい?
どうすればいい?

いくら泣いたって
叫んだって
わめいたって

答えは出ないの。

向こうに見える光は全て闇が消してしまうから―――――
68 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月14日(月)23時50分36秒
続きカモンナッ!
69 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年08月02日(土)21時01分03秒
名無しさん・・・ありがとうございます★
        かなり放置気味ですみません・・・(汗
        これからも宜しくお願いします!

では、続きです!
70 名前:私のマリア〜過去は縛り付けるもの?〜 投稿日:2003年08月02日(土)21時15分10秒
「―――後藤さん」
静かな声がホールに木霊して、耳に届く。
その声にまたハッとして、思考を遮るように神父さんに気づかれないようにそっと
息を吐いた。
さっきまで、瞼をきつく閉じていたためだろうか頭の端っこがくらくらして
軽い眩暈を引き起こそうとする。
「―――過去にとらわれてはいけませんよ。過去は思い出としなければあなたは1歩も進めない。
 進めないまま回りを見渡すだけになる―――」
神父さんはそう言いながら、私に1歩1歩ゆっくり近づいてくる。
「私にだけでも言ってくれたらどうでしょう?吐き出すだけ吐き出せば胸の中の蟠りも少しはなkなるかもしれない」
そう言って神父さんは少し微笑む。
そして私の肩にそっとその右手を置く。
ふわっと、何かの羽が降りてきたみたいだった・・・

「――私は・・・あの子・・・愛のことを忘れたくない・・・」
神父さんの目線から逃れて、うつむく。

私の頭の中で誰かと誰かが言い争う。
世に言う頭の中にいる天使と悪魔のことだ。
一人はこのまま神父さんに何もかも言っちゃえよと囁き
もう一人は誰にも言わず自分の胸の中に閉じ込めとけよと囁く
71 名前:私のマリア〜過去は縛り付けるもの?〜 投稿日:2003年08月02日(土)21時21分21秒
もう言っちゃえよ。

そう、一人の私が言った時私はゆっくりと口を開いた。

「私は、あの子を愛してました・・・血が繋がってるって知ってたんです。
 でも、でも・・あの子が欲しかった。あの子さえいれば生きてけた・・・
 それで・・あの子と思いが通じた時、ホントは死にそうに嬉しかった・・・
 でも・・でも・・・あの子は私を置いて行っちゃったんです・・最後に笑って・・・
 あの子は私が――――――殺したも、同じようなものです」

殺した
その言葉がいつになっても私の心の中で響いていた。
悲しくもない
哀れんでもない
泣いてもいない
楽しんでもいない

そんな響きがした―――
72 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年08月02日(土)21時22分37秒
えっと、一応生存報告というか・・・(笑。
まぁ、そんな感じでちょこっと更新です。
この1週間ぐらいで半分ぐらいまで、更新できれば・・と思ってます(苦笑
では、また次回で・・・
73 名前:tsukise 投稿日:2003年08月02日(土)22時55分42秒
待ってましたっ!更新お疲れ様ですっ
ごっちん…痛いですね…。心に刻まれたキズに切なくなりました…。
押し込めてきた気持ちを吐露しても、晴れない心が特に…(涙)
空板ともども応援していますので、がんばってくださいね。
74 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年08月06日(水)22時55分14秒
tsukise様・・・こちらも来て頂いた様で・・・ありがとうございます★
        これからも宜しくお願いします♪
75 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月07日(木)13時15分40秒
今までこんなに良い作品があるとは気が付きませんでした。
お恥ずかしい…。
ヒトシズクさんの描く描写にすごく惹きこまれます。
そしてごまたか大好きなんで後藤さんの過去の話の切なさにハマりました!
これからも更新楽しみにして待ってます。
76 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年08月24日(日)11時23分45秒
しばらく更新をしてなくてすみません。
もう少しすれば更新するので、それまでお待ちください(−−;

>75
名無しさん様
いや〜どうもありがとうございます。そんなに褒めていただいて嬉しい限りです。
ごまたか、好きですか〜^^私も好きです♪
更新は遅いですが、宜しくお願いします(−−;
77 名前:私のマリア〜過去は縛り付けるもの?〜 投稿日:2003年08月27日(水)14時05分55秒
「―――殺したなんて言うものではありませんよ」
静かな声が私を響かす。
それと同時に怒りに近いものを覚える

アンタニナンカワカルハズガナイ
カッテナコトヲイウナ

そんな言葉が頭の中を駆け巡って、止まらない。
「私が殺したから、そう言ったまでです。あなたには分からないでしょ?私の気持ちなんて」
嫌味がどんどん出てくる。
溢れても溢れても、それでも出てくる。
暗い闇はどんどん私を覆って、それでも私を飲み込もうとする。
なら・・・

――――いっそのこと楽にしてよ。
あなたのいる所に連れてってよ。
もう疲れたんだ。
あなたのいない生活も
罪を負って生きる道も

――――もう、何も見えない。
78 名前:私のマリア〜過去は縛り付けるもの?〜 投稿日:2003年08月31日(日)12時14分07秒
「――――そんなこと・・・」
神父さんは私を見たまま何も言わない。
この静寂すらいつもは嬉しく感じるのに今はイライラする。
窓のステンドガラスから入ってくる数色の光が部屋の中を舞う埃を照らして、埃が埃じゃないような気がするほど綺麗
「――あなたは・・どうしてこの学園に入ったのですか?高橋さんに・・・謝る為に来たんじゃないんですか?」
「そうですよ。それが何ですか?」
握った拳にどんどん力が入って血管が1本、1本と浮き出てくる。
「それだったら、殺したなど言わない方がいいんじゃないですか?そんな事言っても高橋さんは喜びはしません。悲しむだけです・・・」

そんな事言っても
愛は喜ばない―――
悲しむだけ―――?

79 名前:私のマリア〜過去は縛り付けるもの?〜 投稿日:2003年08月31日(日)12時17分36秒
「―――すみません。何か気が動転していて・・・」
早口にそう神父さんに謝って、ホールから逃げるように出た。
歩くたび、ポケットの中のカギがカチャ、カチャ鳴って何か音楽を奏でているよう。

―――もう、ここから逃げてしまおう。
誰も・・・愛のことを知らない所へ。
いや―――

愛のところへ行こうか・・・・?
80 名前:tsukise 投稿日:2003年08月31日(日)20時20分07秒
更新お疲れ様ですっ!
ってか、ごっちーーんっ!!(泣
凄く罪の意識に苛まれてる姿が痛々しいですね…っ。
終了も近いみたいですねっ。最後までお供させて頂きますので
頑張ってくださいねっ!
81 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年08月31日(日)22時44分34秒
>tusukise様
毎回の様にレスありがとうございます〜☆
ええ、もうすぐこっちは終わりですね〜こっちが終わるまで空の方の更新は遅くなりそうです(>_<;
こっちの方に専念して早く終わらせる計画ですので・・・(ぇ
では、最後まで宜しくお願いしますっ!!!
82 名前:私のマリア〜過去は縛り付けるもの?〜 投稿日:2003年09月02日(火)14時26分47秒
いつもはうるさくて耳に入ってくる音を手で遮断しないと頭痛を起こす廊下も開けっ放した窓から入ってくる生暖かい風だけが独り占めする。
風は色んな匂いを連れてやってきては、1つ、また1つと新しいモノを手に入れれば古いモノを落としていく。
窓枠につけられた純粋さの証である真っ白な、汚れ1つとして付いていないレースのカーテンが風に揺られて小さく、また大きく揺れる。
大きく膨れ上がって、次の瞬間にはしぼんで、と繰り返すカーテンをいつの間にかじっと見つめていた。
昔、誰かが言っていた。
『白はね、どんな色にでもなれるんだよ。黒でも赤でも黄色でも空色でも青色でも、何でも。でもね、白色はすぐに違う色になっちゃうから私達が着色しちゃダメなんだよ』
白は青に
白は黄色に
白は赤に
青は黄色は赤はもう変化しない。
ただ薄くなるか、濃いくなるか、失敗作になるか。

83 名前:私のマリア〜過去は縛り付けるもの?〜 投稿日:2003年09月02日(火)14時45分28秒
廊下をひたひたと歩いて、見慣れたプレートの部屋の前に立つ。
【204】
金色のプレートに黒の文字でホテルの番号の真似のように書かれたプレート
金色のプレートは権力者を示す、という意味でこのプレートがかかっている部屋は委員長などの部屋とされている。
それに少しため息をついて、紺野から受け取ったカギを鍵穴に差し込んで右に45度。
カチャっと乾いた音が嫌なほど響いて、カギを抜き取って部屋を開けた。

―――え?

時間が止まったと感じたのは私だけだろうか?
いや、たぶん空気も止まったと思う。
何故なら、いるはずの無い人が部屋に居たから。
84 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月02日(火)19時41分21秒
おお!まさかあの人!
85 名前:tsukise 投稿日:2003年09月04日(木)17時42分10秒
更新お疲れ様です♪
ごっちんの目の前に現われた人…っ!?
だ、誰なんでしょうっ!?き、気になりまくりですっ!
何気に色の表現に、凄く切ないキモチになってしまいましたデス…。
続きも期待していますので頑張ってくださいねっ。
86 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年09月05日(金)16時37分01秒
すみません〜〜〜(>_<;
やっとテストが終わり、更新できます!!!

>名無しさん様
あの人・・・あってましたでしょうか?(w
これからも宜しくお願いします〜

>tsukise様
こちらにも来ていただいて本当にありがとうございます!!!!
色の表現は授業中に思いついたのを書いてみました(暇人
喜んで(?)もらえたようでこちらとしても嬉しいです♪
では、こちらもどうぞ宜しくお願いします!!!

では、更新です〜
87 名前:私のマリア〜過去は縛り付けるもの?〜 投稿日:2003年09月05日(金)16時45分22秒
私はドアノブに手をかけたまま固まる。
空気が止まったと思ったのは私だけではなかったようだ
私はどこからかニセモノの笑顔を顔に貼り付けてへらへらとその人に笑って、開けたドアを閉めた。
茶色いドアと向き合っていたら、剥がれない様に接着剤でとめたはずの笑顔は剥がれて無の表情になった。
もう1度、心を落ち着かせてからあのプレートを見上げる。
【204】
文字は変わりない。
カギに彫られている部屋の番号の数字も204

―――なんで?

ただ、そう思った。
何であの人がここに居るのか分からなかった。
今の時間帯は数学であの鬼教師にしごかれているはずなのだ。時間割通りでは。
自習になった?
いや、そんなわけない
あの鬼が自分の授業をほったらかしてどこかへ行くような生易しい教師ではない。

じゃあ、何故?

そう反射的に思った時には、私はもう1度ドアノブを掴んでいた。
ゆっくりとノブを回して・・・

「―――なんでいるの?」
今の自分にしては上出来な声だった。
不安が出て声が震えてもいなかったし、声が高くなったり低くなったりせず
普通の声。

88 名前:私のマリア〜過去は縛り付けるもの?〜 投稿日:2003年09月05日(金)17時16分30秒
「んー?何でって言われても・・・」
独特の甘い声
違う意味でくらくらした。
「もう1度聞きます。石川さんは何でここにいるんですか?」
「―――えーっと・・・中澤先生に部屋はここだって言われたの」

バカバカしい。
そう思った。

「―――あのねー・・・一つ言っとくけどあの人の言うことは8割がた流しとかないとやってけないよ?」
私の言葉にポカンとマンガに出てくるような表情で私を見つめる彼女。

はぁ。
ため息を吐いた。
水にでも溶けてしまいたい気分だ。
それと同時に炎が胸の奥でチラチラ燃え上がっていくような気分がした。
それはただ一つ

怒り。

89 名前:私のマリア〜過去は縛り付けるもの?〜 投稿日:2003年09月07日(日)15時09分01秒
転校してきたばっかりの何も分からない人にくだらない嘘をついて
それを影で見て楽しむ。

馬鹿げた事だと思った。

「後で中澤先生に言っとくから。・・・ってかさ、今授業中でしょ?何でいんの?」
自分らしくないな、と今更ながら思う。
普通の私なら彼女の姿を見た瞬間、授業中なのに何故いるのか?なんて疑問を抱いてたはず。

―――あぁ・・・

まだ動揺してるのか・・・

神父さんに図星をつかれたから、子供みたいに反撃して自分を安全な殻の中に閉じ込めるんだ。
だけど、その殻は時にハンマーで叩いても壊れないくらい固くて時に触れば壊れてしまうほど柔らかいものになる

バカみたいなのはどっちだよ。
自分にそう言って、自嘲気味に笑った。
ふと、時計を見れば休み時間まであと数十分。

―――寝よう。
疲れた。
疲れすぎた。
もう何も考えたくない
いつもは考えて考えて愛しくてたまらない愛のことも
今は考えたくない―――
90 名前:私のマリア〜過去は縛り付けるもの?〜 投稿日:2003年09月07日(日)15時25分14秒
本能のまま、私はベッドに寝転がる。
目を閉じてすぐにやってきた睡魔に身を任せ―――

「真希ちゃん!!!」
睡魔はすぐに飛んでいった。
甲高いアニメ声はいつもに増して高くなっていて、近くで叫ばれたため耳の奥がキーンと鳴る

ふと、思った。
『真希ちゃん』なんて呼ばれるのは何年ぶりだろう・・・
確かな記憶ではここ数年、この学園に入ってからは呼ばれたことがない。

「――何、梨華ちゃん?」
少し戸惑いを感じながら、そう答えた。
この名前を呼ぶのも、もう懐かしいくらい昔に呼んでから初めてだ。
そんなことを思いながら、ベッドから上半身を起き上がらせて彼女の顔を見た。

過去は消せないんだね
いつまでたっても
共有した人物が忘れてなかったら
私が忘れたくても、それを許してはくれないんだね

もう色褪せたはずの過去が思い出が
もう心の奥の放り込んでカギを閉めて、鎖を巻きつけてもう出てこないようにしていた思い出が過去が
いとも簡単にカギも鎖も壊して溢れてくる、出てくる、忘れられない

ねぇ、どうしてそんなに過去にこだわるの?
ねぇ、どうしてそんなに忘れたいの?
91 名前:私のマリア〜過去は縛り付けるもの?〜 投稿日:2003年09月07日(日)15時30分09秒
そんなの決まってる
あの子・・・愛を忘れたくないから、過去や思い出にして色褪せたりなんかしたくないから

いいじゃない。
そんなこと。

あなたに関係ないじゃない

干渉しないでよ
触らないでよ
心配しないでよ

そんなことしたってあなたには何の得にもならないし
私は迷惑なの

だから、ほっといてよ
あなたに関係なんかないじゃない。
あなたに何が分かるのよ

あなたは大切な人亡くした事あるの?
ないなら言わないで
触れないで
干渉しないで

あなたになんか心配してもらう必要はないから

ほっといてよ

関係ないじゃない

心配しなくていいじゃない

ほっといてくれたっていいじゃない

何で今ごろ現れるのよ

外国にでもずっといればいいじゃない

どうしてよ

どうしてよ


どうして。。。


もういいじゃない


――――あなたには関係ないんだから。



ほっといてよ



92 名前:私のマリア〜暴かれる過去〜 投稿日:2003/09/09(火) 22:44
「―――嘘なの。全部」
休み時間に入ったのか、少しザワザワとした気配が漂って小さな小声が耳をつく。
それなのに彼女の声はハッキリと聞こえて変な感じが襲う。
いつもの高い声じゃなくて少し落としたゆっくりとした声
彼女が声をこんな風に変えるときはいつも重大なことを言う時だった。
「―――何が?」



何が

「―――中澤先生に言われてここに来たってこと。ホントは自主的に来たの。あなたと話すために・・・」
93 名前:私のマリア〜暴かれる過去〜 投稿日:2003/09/09(火) 22:51
あぁ。
やっぱりあなたは過去のことを話すために来たんだ
今更何を話すって言うの
もういいじゃない。

過去のことなんて

「何を話したい訳?私は話したくないけど」
ベッドからゆっくりと起き上がって、近くの回転椅子に座る。
「あなたはいつもそう。過去のこと・・・愛ちゃんのことになると避けるのね」
「・・・もう誰にもかき回されたくないからね」
「―――紺野も・・・紺野も心配してるの。あなたが愛ちゃんのことを忘れられないでずっといるんじゃないか?って・・・」

紺野―――?

紺野が何で出てくる?

―――

あぁ、そっか。
紺野は愛の一番の親友だっけ。
愛は紺野のことになると一番楽しそうに話すから、私はいつも紺野に嫉妬してたっけ。

もう。
もういいや。

みんな。

もう静かにしといてよ
ほんとの事とか、心配とかもう要らない。

だから。。。

お願い

掻き回さないで
私の思い出を。
94 名前:tsukise 投稿日:2003/09/10(水) 08:09
更新、お疲れ様ですっ!
うわぁ…(泣 痛い…痛すぎです…っ!
なにもかもが疎ましくなってしまっているごっちん…切ないです…。
けど、目が離せないっ!
今後も期待して待ってますので、頑張ってくださいねっ!
95 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/10(水) 22:35
>tsukise様
毎回のレス本当にありがとうございます〜♪(泣
青板の方と少し話が似てるような感じがするのは私だけですか・・?
これからも宜しくお願いします〜もうすぐ終わりですが(汗。
では〜
96 名前:私のマリア〜暴かれる過去〜 投稿日:2003/09/10(水) 22:45
「――それが何?梨華ちゃんとか紺野とか私のこと心配して何になるの?何の得にもならないじゃん。関係ないじゃん。・・・ほっといてよ―――」
「な・・・・」

梨華ちゃんは信じられないと言うように私を見て、言葉を失う。
私は自嘲気味に笑って、興奮した気を静めようと深呼吸をいくつか続ける。

「ねぇ、もうほっといてよ。掻き回さないで、やっと落ち着いたところなんだ」
落ち着いた声でそう梨華ちゃんに言って私は立ち上がろうと―――

何かが飛びついてきた。

「―――こ・・・紺野ぉ?」
私に抱きつくようにひっついているのを紺野だと判断するのに数瞬かかった。
驚きと何故ここに紺野がいるのか、という不思議が混ざった声で紺野の名前を呼んだ。
驚いて、部屋中に視線を駆け巡らすとドアが大きく開いていて、そこから風が入ってくる。
その風が紺野の髪をなびかせ、シャンプーの淡い香りが鼻をくすぐる。

97 名前:私のマリア〜暴かれる過去〜 投稿日:2003/09/12(金) 16:01
「―――止めてください」
紺野は静かにそう言って私から離れて、梨華ちゃんと私の間へ移動する。
キッといつもからは想像できないほどの鋭い視線で梨華ちゃんを睨む。
「私はそこまでして、とは言っていないはずです」
驚きの色が顔中に張り付いている梨華ちゃんは驚きの色を隠そうともせずに紺野の言葉に反応する
「だって!そこまでしないと、真希ちゃん話を聞いてくれないし・・・」
あとは聞こえなかった。
いや、聞こえないように梨華ちゃん自身がそう声を小さくしたのかも知れない。
「―――私は・・・後藤さんにはもう少し時間が必要だと思うんです」
静かな紺野の声に少し苛立ちが募って、声が大きくなっている梨華ちゃんの声


昔、こんな風景を見たことがあったような気がする。

薄ぼやけて霧がかかったように見えなくて、でもどこかで見たことがあるという記憶だけが残って私の中で騒ぐ

98 名前:私のマリア〜暴かれる過去〜 投稿日:2003/09/12(金) 22:07
私の周りで2人の少女が言い争いをするの
1人は静かにけど、鋭い口調で
1人はあらか様に怒っていると分かる口調で
何かを言い争うの。

思い出せないけど
愛が死んだ直後のことだった

99 名前:私のマリア〜暴かれる過去〜 投稿日:2003/09/12(金) 22:14
「―――あ〜・・・もういいわ。分かった。紺野から言っといてよ、あのこと。せっかく転校までしてきたのに、また戻らなくちゃ・・」
梨華ちゃんはそう言うとポケットから携帯を取り出して、どこかに電話をかけ始める。
お嬢様の梨華ちゃん、というイメージが強かった私にはさっきの梨華ちゃんの言葉が梨華ちゃんに似合わないな、と場違いながら思ってた。
「―――じゃあね。短かったけど。。。これアドレスと電話番号だから何かあったら連絡してよ。・・・それにまた会おう?」
白い紙切れに胸元のポケットにさしていたボールペンでさらさらと文字を書いて私に差し出す彼女。
「――うん。あんまりよく分かんないけど・・・連絡する。絶対会おう」
紙を受け取って、梨華ちゃんの細い手に自分の手を重ねて誓う
小さい頃よく握った手はそのままで細かったし女の子って感じがした。
100 名前:私のマリア〜暴かれる過去〜 投稿日:2003/09/12(金) 22:20
「じゃ、またね」
梨華ちゃんは短くそう言うとやんわりと握った手を離して、ドアを開ける。
そこにはいつの間にかいたよしこがいて、私に手を小さく振って梨華ちゃんの手を握って私の視界から消える。
ドアが風に吹かれてパタンと乾いた音を立てて閉まって、私はゆっくりと床に座る

「―――石川さんは吉澤さんと2年前から付き合ってるんですよ」
私の隣に紺野が座って説明してくれる。
よく見ると紺野は制服姿で紺野の制服姿って始めてみたなーって思う。
101 名前:私のマリア〜暴かれる過去〜 投稿日:2003/09/14(日) 09:40
「ねぇ・・・あのことって何?」
それはさっきから気になってたこと。
唐突に聞いたせいか、紺野は大きな瞳をより一層大きくして私を見る。
「――私はさ・・・大丈夫だから・・・」
俯いてしまった紺野の頭にぽんっと手のひらを置いて、髪の毛をぐしゃぐしゃする。
「ね?話してよ」
紺野の顔を覗き込んでゆっくりとそう言う。
紺野は濡れた瞳でじっと私を見て・・・頷いた。

―――どこかで見たことがあるなぁって思ったのは・・・

愛が倒れた時、愛の友達の紺野と梨華ちゃんが何故か言い争いをしてた。
やっと愛の病室に行けた時濡れた瞳の愛に私はさっきの紺野と同じようにして・・・

あぁ。。。
それからか。
恋に落ちたのは―――
102 名前:私のマリア〜暴かれる過去〜 投稿日:2003/09/14(日) 09:49
「愛ちゃんが遺言を残してたんです。つい最近、石川さんの家に郵便として送られたのと私の実家に送られたのと2つありました。
 石川さんの所に来たのには後藤さんとの関係が綴られていて、私の所へ来たのには後藤さんと愛ちゃんが血の繋がった兄弟ではないことが書かれていました・・・」

何・・・・?

血が繋がっていない・・・・?

そんなバカな・・・

だって・・・
親から聞いたよ?
『お前らは実は血が繋がってる』って・・・

103 名前:tsukise 投稿日:2003/09/16(火) 01:48
更新お疲れ様ですっ!
なっ!なんと…っ!衝撃的な告白…っ。
紺野の所に届いた手紙の内容も気になりまくりです…!
先が読めなくてドキドキしますね…っ。
続き、期待しながらお待ちしていますので頑張ってください
104 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/17(水) 18:10
>>103 tsukise様
衝撃的な告白、どうでしたでしょうか?(笑。
終わる、終わると言いながら全然このお話が終わらないのは・・・私のせい?(ぇ
もうすぐ・・・えぇ、たぶん、もうすぐで終わります、ハイ。
では、これからも宜しくお願いします〜
105 名前:私のマリア〜暴かれる過去〜 投稿日:2003/09/17(水) 18:18
「簡単な話でした。後藤さんの父親と愛ちゃんの母親が付き合っていたとき、後藤さんの父親にはもう一人の愛人が居たんです。
 その2人のうちで子供が出来たのは愛ちゃんの母親ではない人の方でした。そして、愛ちゃんの母親も、その違う方も同じ時期に後藤さんの父親から姿を消しました。
 それで勘違いしたんでしょう。もともと、付き合いの長かった愛ちゃんの母親に子供が出来てしまったと。そう勘違いしたんです」

「―――それで、愛の母親が死んだ時、自分の子供だと思って愛を引き取った」

全てがすらすらと分かっていく。
何か参考書を解いていて、答えを見て―――とそんな感じ。
そして、怒りは感じられなかった。いや、感じていたのかもしれない。
でも、それが大きすぎて感覚が麻痺して何も感じられないようになっているのかもしれない。
106 名前:私のマリア〜暴かれる過去〜 投稿日:2003/09/19(金) 22:27
「――でも、後藤さんの父親には妻が居る。そこに引き取ってもやばいだけ。そこで後藤さんの父親は場所と金を与えると言う形で愛ちゃんを引き取ったんです」
紺野はいつもと変わらない口調で続ける。
淡々としているせいか、何か授業を聞いているような感じに陥る。


あぁ。
思い出した。
さっき紺野と梨華ちゃんが言い争っているのを見たことがあるのは、愛が死んだ時。
その時、梨華ちゃんは紺野に言ったんだ。
『愛ちゃんは真希ちゃんの妹じゃない。紺野が真希ちゃんの本当の妹だ』って。
その時はこんなことなんてありえない、と思ってた。
紺野はいつもの落ち着いた感じからは想像できない位、反発していつもは小さい声も大きく叫び声のように張り上げていた。
そんな紺野を見たのはあの時だけでその事が印象的だったから覚えてたんだと、今更ながらに納得する。
記憶がぼやけて霧がかかったように見えたのは、愛の事を無理に忘れさせたから。
愛の関係ある記憶だけはさみで切り取っていたから。
107 名前:私のマリア〜暴かれる過去〜 投稿日:2003/09/19(金) 22:33
「あのさ・・・愛の母親とは違う愛人がいたってさっき言ったよね?その愛人の子供は?」
何かが繋がりそうな気がする。
あの時の梨華ちゃんの言葉が正しければ―――


「それは、私のことです」

ほら。
予想したとおり。
紺野と私は兄弟で、愛とは血なんて1つも繋がってない、他人。
梨華ちゃんがその事を知ってたのは、たぶん愛から聞いたんだと思う。
愛と梨華ちゃんはやけに仲が良かったし、梨華ちゃんは愛のことを本当の妹のように可愛がってたし、愛は梨華ちゃんのことを頼ってたから。



―――

ねぇ、決心がついたよ。
さっきまで心が不安定だったのは決心がつかないのにどんどん先の事を考えてたから。


「ねぇ、紺野。私、ここを出るよ」
108 名前:tsukise 投稿日:2003/09/22(月) 20:05
更新お疲れ様ですっ!
あぁっ!なんて衝撃的な告白が…っ!
しばらくPCの前でフリーズしてしまいました…。
ごっちんがこれからどうなるのか…楽しみにお待ちしています!
109 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/23(火) 11:28
しばらく更新を休んでいてすみません。
今日ごっちんの誕生日ということで、このお話をやっと終わらそうと思います。
では、レス返しです〜

tsukise様
衝撃的言葉にフリーズ・・・大丈夫ですか?(心配。
もう、ほんの少しで終わりますので最後までどうぞ宜しくお願いします。
では〜
110 名前:私のマリア〜最後の日〜 投稿日:2003/09/23(火) 11:35
「―――え?」
紺野は口をパクパク動かして、ただその言葉しか言わない。
私は自然とこみ上げてきた笑顔を作った。
これは、本当の笑顔。
もうニセモノの作り物の笑顔なんて要らない。
捨ててしまったよ、さっき。
決心がついたとき。

「――ここを出て、働いて、紺野が卒業する時迎えに来るよ。それで一緒に住もう?」
もう、ずっと考えてた事。
それに・・・愛が望んでたこと。
愛がね、死ぬ時口パクで言った事がさっき分かったんだ。
『家族は一緒に住むのが幸せなんだよ』って。

ねぇ、紺野
うちら兄弟じゃん。家族じゃん?
だからさ、愛の為にもキミの為にも一緒に住もう?
それが愛の望んだことだから。

それにね、もう過去は振り返らないって決めたんだ。
愛のことはいい思い出、それで忘れなかったらいいんだ。
無理をして忘れないように意地を張って、何てバカなことしないよ。

分かったんだ。
そんなことをしても愛は喜ばないって。
遅すぎるけどさ、分かったんだ。
自分の力で迷路を抜けたんだ。
抜けられないと思ってた巨大すぎる迷路を。
111 名前:私のマリア〜最後の日〜 投稿日:2003/09/23(火) 11:47
「紺野が卒業する頃には、大きな家を買って、そこによっすぃーも梨華ちゃんも呼んで皆で住もう?家族は一緒に住むのが幸せなんだから」
夢なんて考えなかった。
でも、今はどんどん考えようって思える。
それに考えたことがどんどん大きくなって膨らんでいく。
「・・・いいですね。卒業する時を楽しみにしてますよ」
紺野はふわっと微笑むと私の手をとって優しく握る。
「約束ですよ。―――お姉ちゃん」


ねぇ、いつか愛は言ったよね
『私のマリア様は真希ちゃんだよ』って
あの時はすごく嬉しかったよ。
それにね、思ってたこと言えなかった。
『私のマリア様は愛だよ』って。

本当に思ってた。
キミが居なければ今の私はいなかったろう
キミがいなければきっと夢なんて考えられなかった

ねぇ、私のマリア
ずっとずっとキミは私のマリアだよ。
そして、ずっとずっと私の中で生きていて。
綺麗事だと思ってた。
人の心の中で死んだ人が生きる、なんて。
今はそう思わないよ。
ただ、キミが私の中にいて欲しいと、願うよ。

ねぇ、私のマリア
きっと私のマリア
そしてキミのマリアは私

ずっとずっと、私のマリア
ずっとずっと私のそばに居て
私がキミの傍に行ったら迎えに来て


―――ずっとずっと私のマリア

もう過去は振り返らない
だってキミは私の中にいるんだから
もう誰も信じないなんて思わない
信じることの大切さを教えてくれたから
もう生きることに苛立ちを覚えない
私を必要としてくれてる人がいるから

もう、迷路には迷わない。



                       おわり。
112 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/23(火) 11:51
はい、終わりました。
長い間読んでいて下さって方、本当にありがとうございます。
内容の割には時間をかけ過ぎましたが、完結できて本当に嬉しく思います。
では、こちらでの更新はこれで終わりとさせていただきます。
新しく青板で『金魚鉢』という短編スレを立てさせていただいています。
空板『GIVE ME A LOVE』と共に宜しくお願いします。

では、長い間お付き合いして頂いて心から感謝します。


ヒトシズク
113 名前:tsukise 投稿日:2003/09/24(水) 20:58
脱稿お疲れ様ですっ!
読み終わって、しばらくジーンと余韻に浸ってしまってます…。
ごっちん…やっと新しい一歩を踏み出すことができたんですね。
色んな悲しい出来事があったけれど、それを思い出に変えれた
勇気に胸が温かくなりました。紺野との生活もきっと、楽しく
過ごせるでしょうね。
長々となりましたけれど、本当にお疲れ様でしたっ。
青板・空板の方も引き続き楽しみにしていますので頑張ってくださいね。
114 名前:名無しさん 投稿日:2004/03/04(木) 20:26

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