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女の子のサンタクロース

1 名前:青鬼 投稿日:2002年10月01日(火)10時58分40秒
空板で書いていた者です。展開にかかわるミスをしてしまったので移りました。
森板でも書いています。そちらの方もよろしくおねがいします。(ヘタですけど)
気が向いたら評価おねがいします。
2 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月01日(火)11時09分29秒


あれは幻だったのでしょうか・・・

それとも長い、長い、夢だったのでしょうか・・・

今では検討もつきません

でもたしかにいた・・・彼女達は

私のすぐそばに

あのぬくもりを思い出すたび

瞳から熱いものがこみ上げてくる

あの日、たまらなかったあの時代に

彼女達は

夢も希望も無い私に逢いに

冬と共にやって来た・・・

女の子のサンタクロース




3 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月01日(火)11時22分13秒

 第1話  夢の無い、こんな世界

4 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月01日(火)12時32分28秒
あちら読んでいました。
こちらから最初からやるのでしょうか?
向こうは使わないのでしたら削除依頼したらどうでしょう。
続きお待ちしております
5 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月01日(火)12時43分37秒
こんな世界になんの意味がある?

もう、うんざりだった。吉澤ひとみ。16歳。
11月後半。
あたしはごく平凡な高校生です。はい。
ありがちな話しですが、ようするにこの平凡な毎日に飽きたと言う事。
その結果、今ではあんまり学校には行ってない。
まだ12月にもなっていないのに、早い所はもうクリスマスの準備だ。
あたしのバイト先の、喫茶店−ロマネスク−も、店内にはツリーが
飾ってある。
そこは駅のそばにあるが、客はあまりこない小さな喫茶店。
店長の飯田さんとバイトのあたしで切り盛りしている。
後、飯田さんの幼馴染みの安倍さんもよく来る。
その日、飯田さんから話しがあるとの事で、勤務時間より早く来た。
「飯田さん、話しってなんスか?」
「まぁまぁ、そこ座って」
あたしはカウンター席に座る。
「かおりーコーヒーまだぁ?」
なぜか安倍さんも来ていた。

6 名前:青鬼 投稿日:2002年10月01日(火)12時48分30秒
すいません。設定変えました・・・。
矢口さん主役予定だったんですが。
矢口さんと中澤さんは絶対出します。
後で削除依頼はだしておきます。
7 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月01日(火)13時06分24秒
「ごらんの通り、この店はあたしとよっすぃ〜でがんばってきました。
しかし、やはり人手不足です」
「ちょっと待って下さいよ、人手不足ってほど客きて無いじゃないっスか!」
「はい!そこ、うるさ〜い。でね、バイト募集してたよね?」
「ねぇ、かおりコーヒー」
「はい!そこもうるさい。でね?新人の娘決まりました」
「「うそ!」」
あたしと安倍さんで同時に叫ぶ。
「嘘ついてもしかたないでしょ!そして、今日来ちゃってます!」
「え!何処?誰?」
関係ない安倍さんがはしゃぐ。
「新人さん!いらっしゃ〜い」
店の奥から恥ずかしそうに出てくる少女。
「石川梨華です」
石川さんは特徴的な高い声でそう言った。

8 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月01日(火)13時16分20秒
「むちゃくちゃ可愛い娘でしょ?これで店も大繁盛?みたいな」
飯田さんは上機嫌だ。
「あたし安倍なつみって言うの。よろしくね?」
「よ、よろしくおねがいします」
あたしは固まってしまった。
だってホント可愛い・・・。
「ちょっとよっすぃ〜?何恐い顔してんの?」
安倍さんの声。
え?あ、しまった・・・まただ。
石川さんは少し哀しそうな顔であたしを見てる。
「吉澤ひとみです」
「よろしくおねがいします・・・」
やっちゃった・・・。あたしの悪い癖だ。
昔から緊張すると人相が悪くなる(らしい)。
後になってから、吉澤さんって恐い人かと思ったって言われる。
怯えている石川さんの視線が痛い。


9 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月01日(火)13時32分02秒
安倍さんが帰った後、プチ奇跡が起きた。

「カレー1・オムライス2・コーヒー4・・・」
「ねぇ、吉澤・・・ふざけてる?」
人聞きの悪い飯田さん。
「いえ、まじです」
「どういう事?」
飯田さんが不思議がるのも無理はない。
あたしも信じられない。この店に3人以上の客が入るなんて。
しかも、あたしや飯田さんが少しでも忙しいと感じたら客足は減り、
客来ないなぁ・・・と思ったら、忙しくならない程度に客が来る。
まさに丁度いい・・・良すぎる。
「まさか石川効果・・・?」
と、飯田さんが呟く。
あたしと飯田さんは石川さんのいる厨房に目を向ける。
石川さんは皿を割っていた。
「「なわけないか・・・」」
ふたり同時に肩を落とした。

そう、この日はたんなる偶然か神様がくれた奇跡だと思った。






10 名前:青鬼 投稿日:2002年10月01日(火)14時03分15秒
なんとなく生きてきた。

こんな世界に意味なんて無いと思う。飯田圭織。20歳。
11月後半。
高校を出て大学にも行かず、就職もしないで、家でごろごろしていた。
そんなかおりに、父はこのお店をゆずってくれた。
ロマネスクだ。
特にやりたい事もないかおりにとっては、おいしい話しだったので引き受けた。
夢が無かった訳じゃない。絵をやりたいと本気で思った時期もあったわけで。
しかし、高3の時の美術の先生に「おまえの絵には個性が無い」
と言われ、あっさり辞めてしまった。
それ以来何かをすると言う本能が無くなってしまったようだ。
そんなこんなで現在に至る。

11 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月01日(火)14時23分14秒
今日、このロマネスクに奇跡が起きた。
ふだん客がまったくこないロマネスクに客が来た。
これにはあのクールなよっすぃ〜も目を見開いていた。
その日の売り上げはいつもの4倍!?4倍だよ?4倍!
売り上げはよかったんだけど、石川の割った皿のおかげで、その分出費は
加算むんだけどね・・・。
「もう1時か・・・帰るか、そろそろ」
かおりは店を閉めようと、最後の戸締まり確認をする。
結構神経質なんだ。
その時、窓が濡れている事に気づく。
「雨・・・?」
外は土砂降りだった。
「やだ・・・傘あったっけ」
そう言えば、裏口に傘が掛かってたはず。
かおりは小走りで店の裏口の玄関まで行く。
すると、ドアの窓から人影が見える。
「・・・泥棒!?」
とっさにかおりはそう思った。
だってこんな真夜中に、うろついてる人ってそれしかなくない?
かおりは横に置いてあったモップをかつぐ。
恐る恐るドアの前まで、忍び足で近づく。
ノブに手を掛ける。
かおりが倒す。そして警察から表彰される。
そして一気にノブを回しドアを引く!!

12 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月01日(火)14時39分44秒
「きゃっ!」
よっしゃ捕まえた!・・・って今なんて言った?
きゃって、めちゃくちゃ可愛くないか?
「あの・・・」
そう言った泥棒を、かおりは改めて見る。
そこにいたのは、かおりよりも全然背の小さい、大きな目に八重歯で、
おまけにずぶ濡れ?の女の子。
しばらくかおりとその女の子はお互い見合ったまま固まっていたが、
その女の子がくしゃみをしたので、かおりはすぐ正気に戻った。
とりあえず「そこじゃ風邪ひくから、中入んな」
女の子を中に入れた。
まずかおりはその子にタオルを渡し、紅茶を入れてあげた。
「ねぇ、あんた名前なんて言うの?」
「・・・・ぞみ」
「へ?」
「・・・辻希美」
小さい声だが確かにそう言った。

13 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月01日(火)19時45分44秒
「ぎゅるるるっ」
辻のお腹が鳴る音がした。
「ひょっとして、お腹空いてる?」
辻は大きく首を振る。
「よし分かった。かおりが何か作るから、ちょっと待ってな?」
すると、辻は八重歯をニ〜っと出して笑った。

かおりは辻の為に、オムライスを作った。
「はい、お待たせ・・・」
かおりが言い終わらないうちに、辻は勢いよくオムライスにかぶりついた。
焦って食べているので、時々咳き込んでいる。
「相当お腹へってたんだ」
オムライスはすぐに無くなった。
辻の口の周りにケチャップが付いているから
かおりが拭き取ってあげた。
そうすると、また八重歯をニ〜っとだして笑うのだ。
可愛いな。かおりは一人っ子だから。
こんな妹ほしかったなぁ・・・。
あ、かおり重大なこと忘れてんじゃん。
「ねぇ、なんでこんな夜遅くに外にいたの?お母さんとか心配してない?」
すると、さっきまでの間抜けな笑顔が一瞬にして消え、今にも泣き
そうな表情になる。
「あ、ごめん。無理しなくてもいいから・・・」
さすがに泣かれるのは勘弁だ。

14 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月01日(火)20時10分34秒
その時。
「お願いします!ののを、ののをここにおいてくらさい!!」
それはすごく舌っ足らずな口調で。
「え!それはできないよ!?」
「お願いします!なんれもします!」
辻はかおりに向かって土下座して。
「頭あげてよ!?」
「良いって言ってくれるまで上げません!お願いします!」
何度も何度も。
「分かった!いいよ!」
「え?ありがとうございます!」
お願いした。
「何があったかは聞かないけど、ずっとっていうのは無しだよ?」
「はい!ありがとうございます」
15 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月01日(火)21時16分11秒
まさかこんな展開になるなんて、かおりは想像してなかった。
そういえば、辻は学校どうするんだろう?
聞きたいけど、泣きそうだな。
また落ち着いたらその辺の事も聞いてみよう。
とりあえず今日の所はかおりの家に連れて帰ろう。

でもこれって本当に良いことなのだろうか・・・。

かおりのマンションはこの店からはそう遠くない。
「さ、入って」
辻は遠慮しながらも、お邪魔しますと小声で言い、部屋に入る。
びしょ濡れだった辻を、お風呂に入れ自分のジャージを着せた。
「ちょっと大きいかな・・・」
辻はかおりのジャージの裾を大分引きずっている。

さて、明日からどうするかな・・・。

「あの・・・」
辻の声。
「ん?」
言いにくそうにもじもじしている。
「どうしたの?遠慮しないで言ってみ?」
「・・・一緒に寝てもいいれすか?」
「まさか・・・恐いの?」
黙ってうなずく辻。
「しかたないな。じゃあ行こう」
辻をかおりの寝室まで連れてく。
「ところでさぁ、かおりの名前知ってる?」
辻は少し考えて。
「かおりさん」
あ、自分の名前言ってた。
「えっと、飯田佳織です。よろしく」

16 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月01日(火)21時20分51秒
しかし、辻は。
「いいら・・・」
「い・い・だ」
「い・い・ら」
「だ」
「ら」
「・・・・」
しかたないか。自分じゃ「だ」って言ってるつもりみたいだし。
かおりと辻は同じ布団に入る。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
おやすみ辻。

そうだ、明日一応よっすぃ〜にも言わなくちゃ。
石川といいこの子といい、今日は不思議な日だな。


17 名前:青鬼 投稿日:2002年10月01日(火)21時46分40秒
「しばらくお世話になります。辻希美れす」

あたしと石川さんは開いた口がふさがらない。

今日また飯田さんから、話があるという事で、あたしも石川さん
も勤務時間より早く来ていた。
「飯田さんそんな事していいんですか?ちゃんと、警察とかに言わなくて」
「まぁまぁ、よっすぃ〜。堅いこと言わない」
「堅い事ってそういう問題じゃないですよ」
すると。
「ご、ごめんなさい・・・のののせいれすね」
辻が今にも泣きそうになる。
「え!ご、ごめんね?そう言うつもりじゃないから」

18 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月02日(水)21時39分21秒
設定変えたんですね
削除依頼出しましょう
19 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月04日(金)00時37分35秒
ちなみに削除依頼は
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/imp/998148102/l50
↑です。
20 名前:青鬼 投稿日:2002年10月04日(金)14時13分41秒
名無し読者さん
いろいろありがとうございます。
削除依頼ちゃんと出しました。後は、待つだけです。
放置だけは絶対しませんので、これからも見守っていて下さい。
21 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月04日(金)14時33分59秒
「もう、よっすぃ〜!泣かさないでよ」
と飯田さんまで。
「だからそう言うつもりじゃなくて〜!・・・ごめんね?もうそんな
事言わないから。ね?後でお菓子あげるから」
あたし「お菓子」と言う言葉を発した瞬間。
辻は八重歯をニ〜っと出して笑った。
子供ってホント疲れる。

結局辻はロマネスクの手伝いをする事になった。
どこの娘かも分からない上、働かせるるなんて、飯田さんは捕まらないの
だろうか。飯田さんの幸運を祈る。
22 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月04日(金)15時23分07秒
勤務時間までまだ時間があったので、あたしと石川さんは調理室の掃除を
任された。
しかし、飯田さんときたら、人に仕事任しといて自分は辻と遊んでるんだもんな。
ちゃんと仕事しろよ!
その時、あたしはガスコンロの掃除をしている石川さんとバッチリ目が合って
しまった。
ちょっとドキっとしてあたしは思いっきり目をそらしてしまった。
ヤバイ・・・。
石川さんが哀しそうにうつむいたのが横目で分かる。
昨日の自己紹介以来、一言もしゃべっていない。
本当はしゃべりたい。でも石川さんにとっては、昨日のあたしの
第一印象は最悪だったに違いない。
そうなると、こっちも話しかけづらい。
向こうで飯田さんと辻の笑い声が聞こえる。

一方の調理室には重苦しい沈黙が漂う。

話題・・・話題が思い浮かばない。
こういうの本当に苦手だ。
23 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月04日(金)15時43分55秒
・・・やめた。いいや!気にしなきゃいいじゃん!
時間が過ぎれるのを待てばいい。さ、掃除やろっと!
「・・・・・」
「・・・・・」
調理室にはあたしの床を掃く音と、石川さんのコンロをふく音しか聞こえない。
「・・・・・」
「・・・・・」
ヤバイ!やっぱこの沈黙は無理!むちゃくちゃ恐い!?
もっと早く時間が過ぎれば良いんだ!24時間が長すぎるんだよ!
時計の馬鹿!

しかし、意外なものがこの恐ろしい沈黙を破った。
もちろんあたしでもなく石川さんでも無い。

−ガシャン
「きゃっ」
石川さんの短い悲鳴。
「こらっ石川ぁ!またあんた皿割ったね?早くかたづけな!」
遠くから飯田さんの怒鳴り声。
石川さんは、自分のひじで横にあった皿を落としてしまったらしい。
あたしは石川さんに駆け寄る。
「大丈夫?」
割と自然に言葉が出た。
石川さんは驚いた表情であたしを見る。
24 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月04日(金)16時11分30秒
石川さんの指に血が滲んでいた。
「ちょっと待ってて?そのまんまだよ?」
あたしは石川さんにそれだけ言うと、店のレジに向かう。
レジの下には救急箱があるからだ。
あたしはそれを取ると、また石川さんのところへ向かう。
調理室に入ると、石川さんは本当にそのままの、しゃがんでいて立とうとして
いるような、微妙な体制のまま固まっていた。
それを見て、あたしはおもわず笑いそうになった。
「石川さん、手ぇ見せて」

傷は全然浅かった。
なので、手当は消毒液とバンソウコウだけで済んだ。
「ありがと、吉澤さん」
石川さんが上目使いであたしを見る。
「どういたしまして・・・」
今度はなんとか言葉を返す事ができたし、自然に目を反らす事もできた。
危なかった・・・ってかあの上目使いは反則だよ。
女のあたしでもドキドキしちゃったじゃん!
25 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月04日(金)16時40分54秒
改めてちゃんと顔を見たけど・・・なんて綺麗な娘なんだろう。
確かに飯田さんも綺麗だし、安倍さんや辻も可愛いけれど、この娘は
なんか違う。見る人すべてを魅了してしまう。そんな魅力がある。
・・・って嫌だ、あたしマジで何考えてるんだろう?女の子に。
まるで変態じゃん!
「あの、どうかしたの?」
石川さんが心配そうにあたしの顔をのぞき込む。
二人の顔にはあまり距離は無い。
あたしの顔が熱くなった。
「何でも無い・・・」
あたしのまた冷めた態度に、石川さんの表情が曇る。
気づいていたけど、あたしはそのまま石川さんから離れた。

その日も客の入りはなかなかだったが、あたしは何故か全く仕事にならない状態
だった。結局飯田さんに帰るように言われ、あたしは早退した。
夜になっても、石川さんの顔が頭に離れなかった。
26 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月06日(日)22時53分23秒
ずっと、引いてもらったレールの上を
ひたすら走っていた。

私は思う。この世界には意味が無いと。安倍なつみ。20歳。
11月後半。
私は研修中のナースの卵だ。研修先はガンセンターの小児科だ。
自分で言うのもおかしいけど、私は結構優秀だと思う。
小さい頃からそうだった。
小・中・高と、成績は常に上位だったし、球技大会だって私のいる
チームはいつも優勝。習字や絵だって毎回表彰されていた。
現在通っている看護学校でも、私の成績はかなり良い。

27 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月06日(日)23時15分18秒
多分、トップ合格間違いなし!
・・・・・・
まぁ、別にナースになりたいとは思ってなかったんだけどね。
ナースになるのは、私にとっては宿命みたいなもの。
おじぃちゃんは病院の院長。お父さんも次期院長。
おばぁちゃんはナースで総婦長。お母さんもナースで婦長。
そう、私の家族は医者家族なのだ。
って事は当然この私も自動的に、医療関係の仕事に就かなくてはならない。
お父さんは最初、私をナースではなく、医者にしたかったらしい。
だから、私が小学校の頃のお父さんはめちゃくちゃ恐かった。
ちょっとでも成績が悪いと、よく叩かれた。
しかし、いい成績をとると、お父さんは喜ぶが、反対に同級生に妬まれて、
今度はいじめられた。
そんな私の唯一の心の支えが佳織だった。
佳織はよく、いじめられて泣いている私を助けてくれた。
そう、佳織と私は小学校からの仲で、いわゆる幼馴染みだ。

28 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月06日(日)23時29分29秒
佳織は駅前にあるロマネスクという喫茶店で働いていて、私も
よくそこへ遊びに来る。
昨日の夜、佳織から電話があった。
私が帰った後、ロマネスクに客が沢山来たらしい。
売り上げもいつもの4倍だったとか・・・。
私が帰った後、と言うのが何となく気にくわない。
そして、今度は早朝にまた佳織から電話があった。
今度は、ロマネスクに小さな女の子がやって来たと言う。
夜遅くに、住所も親の事も何も言わないその娘は、辻希美と言うらしい。
そして佳織はしばらくその娘を、預かるらしい。
ったく佳織は本当にお人好しなんだから。
何があったって知らないから。


29 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月07日(月)00時09分09秒
そして・・・。
佳織からの電話から、やく4時間後。
私は今、研修先の晴海ヶ丘総合ガンセンター・小児科のナースステーション
にいる。患者は割と少なく、5人だ。
ここにいるナースはゆうちゃん、圭ちゃん、研修の私と
同じナース学校の柴田。

「申し送り始めるで〜」
ゆうちゃんは婦長だが、みんなには割とフレンドリーに接してくれる。
ここに来てまだ2ヶ月だが、私はもうあだ名で呼んでしまっている。
「まずは圭ちゃんやな。201号室の斉藤貴之君、今月中には退院でき
そうやわ」
貴之くんは足のガンで、半年前にこのセンターへやって来たそうだ。
担当はもちろん保田さん。
「よかったなぁ、圭ちゃん」
「うん」
圭ちゃんが微笑む。
「んで、柴田。202号室の近藤秋君。今日から点滴を使う事になった」
柴田の顔が凍る。
「最近だいぶしんどいみたいや。体からもう一つ腫瘍が見つかったんや」
近藤秋君も小児ガンでこのセンターへやって来た。もう1年経つ。
担当はゆうちゃんと柴田。




30 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年10月07日(月)00時25分58秒
「そしてなっち。ウチとなっちで担当しとった山田由美ちゃん。
担当はウチ一人になった」
山田由美ちゃん。私が始めて担当している女の子。
「え?私担当から外されるって事?」
「そうや、でもななっち。なっちには一人で受け持ってほしい子がおるんや」
え?一人って・・・まだ研修中なのに?
「なっちは研修中なのに、他のナース顔負けなくらい優秀や。今回
はその優秀さを見込んでの事なんや」
ゆうちゃんは真面目な顔で言う。
認めてもらえたのは嬉しい・・・でも由美ちゃんの担当は外れたくない。
「担当してもらいたい子は、昨日センターにやって来た子なんやけど、肺ガン
を患っておる」
ゆうちゃんは淡々と話す。
「おい、なっち聞いとるか?」
「え・・・?」
「アホ!これは人の命を預かる仕事やで?由美ちゃんの担当を外され
たくないのは分かるけどな。これは仕事やで。人の話聞かんのは
ようなのは仕事できひんで?しっかりし!」
31 名前:青鬼 投稿日:2002年10月07日(月)00時29分57秒
↑中澤さんのセリフで。「人の話聞かんようなのは」でした。
誤字脱字多くてすみません・・・。
32 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月28日(木)15時35分52秒
続きまだですか〜?
お待ちしてます
33 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年12月03日(火)20時00分19秒



名前は加護亜衣ちゃん。14歳。今は個室に入っているそうだが、病状が良くなればす
ぐに大部屋に移れるそうだ。ゆうちゃんが言うには、人見知りのしない明るい子
だったそうだ。

亜衣ちゃんの病室の前に立つ私。由美ちゃん担当は外れたくなかったし、出来るなら
退院まで見届けたかったな。でも、ゆうちゃんや院長が私を見込んでくれてした事。
これはチャンスなんだよね?
一呼吸置く。・・・よし、行きますか。
と、意気込んだが、ゆっくりドアを開けて中の様子をうかがおうとする私。
・・・ドアを開けた瞬間、暖かい風が私の頬をくすぐるのと同時に、歌声が
聞こえる。


34 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年12月03日(火)20時28分55秒
白いレースのカーテンが揺れている。
そこにはお団子頭の、小さな少女がベットに横たわっている。
彼女が亜衣ちゃんだ。亜衣ちゃんは、私が居ることに気づいていないようで、
まだ歌を口ずさんでいる。 

  泣き顔が微笑みに変わる  瞬間の涙を
  
  世界中の人達に  そっと分けてあげたい

  争って 傷つけあったり 人は弱い者ね

  だけど愛する力は きっとあるはず


35 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年12月03日(火)20時53分11秒
私は聞き入ってしまった。
そんなにうまいとは言えない歌だけど、なんか心にグッとくるような・・・
そんな歌だ。
その時、歌声が止まる。
ハッとして我にかえると、亜衣ちゃんが困ったような顔をして私を見ていた。
どうしていいか分からない私は「歌すきなんだね〜!」
と、笑ってごまかしながら病室に入る。
亜衣ちゃんは少し笑って、小さくうなずく。
私は改めて。
「亜衣ちゃんの担当の、安倍なつみっていいます。全然新米だけどよろしくね」
すると。
「加護亜衣です、あいぼんってよんでいいよ!」
予想以上に元気のいい声がかえってきた。
「そう、あいぼんね?じゃあ私の事もなっちって呼んでね?」
「はい、なっちさん!」
よかった、話しやすい娘で。
でも本当に病気?って疑っちゃうほど元気だな〜。
「ねぇ、そういえばさっきの歌。何て言う歌?」
私の素朴な疑問に、あいぼんは少し顔を赤らめた。
「えっと、本当はよく知らないんだけど・・・学校で教えてもらった曲なの」
「へぇ〜歌うまいんだね?あいぼんって」
「そ、そんなことないよぉ〜、でも将来は歌手になりたいの」
36 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年12月03日(火)21時09分38秒
少しドキっとした。
だってこの娘の眼、昔の私にそっくりだったから・・・。

(佳織〜!どう?私歌うまいでしょ?)

(お父さん!私歌手になりたいの!)

(やめて!痛いよぉ・・叩かないで・・・)

(お母さん助けて!!・・・お母さん?どうしていつも見て見ぬふりするの?)

・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・

「・・・さん・・・ちさん・・・なっちさん!?」
あいぼん!?
「あ・・・!ごめんね?ぼ〜っとしてた」
「もう〜びっくりしましたよ〜急に動かなくなるから」
「ごめんね〜ちょっと疲れてるのかな?私」

37 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年12月03日(火)21時12分40秒


・・・そうだ、なんで気づかなかったんだろう・・・

あいぼんが歌ってたあの歌・・・あの頃、私が一番好きだった歌

38 名前:青鬼 投稿日:2002年12月03日(火)21時15分16秒
お待たせしてすみません!
ちなみに、あいぼんが歌っていた歌は実在します
39 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年12月03日(火)21時22分46秒
第2話 気になるあの娘
40 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年12月03日(火)21時38分34秒
辻がロマネスクに来て、およそ3日。
もう辻はあたしを怖がらなくなっていた。
石川さんとはろくに会話が出来ない始末だが・・・。
ぶっちゃけ、あの調理室での一見以来軽く挨拶は交わすが、後は必要な会話
すら出来ていないのだ。
しかし、一つだけ気づいた事がある。
これはあたしの思い上がりかもしれないけど・・・
石川さん、ひょっとしてあたしの事見てる?
時々妙な視線を感じる事がある。
その視線の発生先をたどると、かならず石川さんと眼があうのだ。
そしてつい、あたしは眼を反らしてしまう。
その度、石川さんの落ち込んでいるようなオーラがあたしの所まで漂ってくる。
こんな事を1日に12、3回は繰り返している。
41 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年12月07日(土)11時35分01秒
今日、あたしと石川さんは飯田さんにじゃがいもの皮むきを任された。
やはり飯田さんは仕事はせず、辻となぞなぞで遊んでいる。
おい、あんた店長だろ

「・・・・・」
あ、沈黙。
あたしは調理室の異様な雰囲気にやっと気づく。
そういえば石川さんと二人っきりだ。

あたしは目を石川さんの方に向けた。
俯き加減、ちょっと暗い感じ。でも整った顔・・・綺麗。
薄い唇に切れ長の目。淡々とじゃがいもの皮をむいている
真剣な表情・・・
すると、石川さんはあたしの視線に気づいたようで
バッチリ目が合ってしまった。

42 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年12月07日(土)11時51分19秒
慌てて目を反らすあたし。
どうしよう・・・変な風に思われてなきゃ良いけど。

「・・・吉澤さん」
弱々しい、でも何処か芯のある・・・何か怒っているような
声。
石川さん。
あたしの向かい側に居たはずの彼女は、いつの間にかあたしの
すぐ横にいた。

「い、石川さん?いつの間に・・・」
「・・・吉澤さん、私の事・・・嫌いですか?」

ええええええっ!?
何を急に・・・ってか顔近いよ石川さん!!
43 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年12月07日(土)12時08分03秒
「ええっ!?何で急に?」
「答えて下さい・・・」
「だ、だからどうして?」
「答えてください」
無表情であたしに迫る石川さん。
この人、怒るとむちゃくちゃ恐いかも。

ビビリまくっているあたしは。
「別に嫌いじゃないよ?嫌ってる分けないじゃん!アハハハハハ・・・」
ちょっと声が裏返ってしまった。

「じゃあ、どうして私に冷たいんですか?私何かしましたか?」
石川さん・・・
「別に冷たくしてるわけじゃ・・・」
「嘘だ・・・あまりしゃべろうとしてくれないし、朝の(おはよう)って
言うさり気ない挨拶だって、辻ちゃんや飯田さんに言うのと、私に言うのと
じゃ全然違う!!・・・私と目が合ったってすぐに反らすじゃない・・・
ずっと、ずっと吉澤さんを見てたのよ・・・?」

44 名前:女の子のサンタクロース 投稿日:2002年12月07日(土)12時27分30秒

石川さんは瞳に涙をいっぱい溜ながらも、あたしを真っ直ぐ見ていた。
そこまで傷ついてたんだ・・・。
45 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月11日(火)22時40分10秒
どうなるんだろう……

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