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流れぬ涙

1 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時04分43秒
石川視点です。
いろんな人とからませようとは思うんですが
まだ相手が決まっていません。
登場人物は話が進むにつれて増えていきます。
2 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時06分25秒
長い長い雨・・
日の光が差すことはない。
常に闇に包まれている。
闇からは逃げられない。
それが生まれもった宿命だから・・
3 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時07分43秒
キーン コーン カーン コーン

この鐘が私の目覚まし。
またあの夢を見た。
まだ体に震えが残っている。
冬だからというわけではない。
私の忌まわしい記憶がそうさせている。

ふと周りを見渡すとクラスメイトの子達は友達と喋りながら部屋からさっさと出ていき始めている。

「梨華ちゃん、何してんの?早く帰る用意してよ、急がないとまにあわないよ〜!」
「あ、柴ちゃんごめんね〜。」

今隣で私をせかしているのは私の隣のクラスの柴田あゆみちゃんだ。
この学校で私に話しかけてくるのはこの子ぐらい。
私の少ない・・ううん唯一の友達、親友。

「口だけの謝りはいらないから急いでってば!」
「わかってるよぉ〜」
「またずっと寝てたの?」

私は無言で頷いた。
だって・・聞くだけ無駄なんだもん・・

「しょうがないな〜、ノート明日コピーして持ってきてあげるよ」

柴ちゃんはホントに面倒見がいい。
本当に同い年なのって思っちゃうくらい。
いつもごめんね・・柴ちゃん
でも・・本当は必要ないんだよ。

「あ、帰る用意できたね。さ、急いで!」
「うん!」
4 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時08分58秒
今日、こんなに柴ちゃんが急いでいるのは
この町に新しいケーキ屋さんが開店するから。
ケーキ屋さんぐらいでそんなに大騒ぎする事では無いのかもしれないけど・・
この町には今までケーキ屋さんどころかファミレスもないしコンビニも
無かったから。
この町の女子校は私達が通っている学校一つだけだけど、全校生が狙っていると
みて間違いない。

「もう・・まにあわないかも・・・・・・」

学校を出てケーキ屋さんまで二人で走っている途中で柴ちゃんは諦めたように
うなだれてしまった。

「大丈夫だよ、まだまにあうよ〜」
「もう・・走れないよ・・」

地面に座り込もうとする柴田の手を握り梨華はまた走り出そうとした。
でも柴田はもう息が上がっている。

そうだよね・・柴ちゃんは普通の女の子だもんね。
また壁を感じちゃったな。
普通の女の子との壁。

「わかった、私が行って買ってくるから・・!柴ちゃんはいつもの公園で待っててよ。
柴ちゃん何食べたい?」
「えっ・・梨華ちゃんまだ走れるの?」
「大丈夫だよ〜。私昔から走るのは得意だもん」
「そっか・・そうだったね。じゃあ私は梨華ちゃんと同じでいいよ」
「オッケ〜、任せといてよ!」

柴ちゃんとの距離が遠のくにつれ私の走る速さも増していく。
そして心地よい風が私に吹きつけてくる。
今まで足の速さでは誰にも負けたことはない。負けるはずがないの間違いかな?
5 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時10分04秒
梨華がケーキ屋さんの近くまで来た時、店の前で五、六人の先輩達が場所をとっていた。
そして梨華と同学年の子達がその先輩達の様子を遠巻きにして見ているのがわかった。
店の前にたむろしている先輩達が怖くて店に近づけないというのもすぐにわかった。

私はもちろん気にしなかった。
柴ちゃんが楽しみにして待っているんだもん。

同級生達の間を通り抜け私は先輩達の前に立った。
その子達はは後ろから好奇心からか私達の方を見つめている。

「そこ・・じゃまなんでどいてくれませんか?」

私は先輩達に無駄だとは知りながら一応お願いしてみた。
だいたい反応は予測がつくけど・・

「は・・?あんた何言ってんの?」
「あんた後輩でしょ。口の利き方に気をつけなよ!」

予想通りの反応。
私は自分の計算通りだった事にほっと胸をなで下ろす。
こんなとこが普通じゃないんだろうね。

「こいつ、笑ってるよ!」
「なめてんじゃないよ!」
「ちゃんとした口の利き方教えてあげないとね!」

うるさい・・
本当にうるさいよ。

「すいません、急いでるんで・・」

私はそう言って先輩達を押し分けて店の中に入った。

「ちょ・・待ちな!」

私をつかもうとしたみたいだけど・・先輩・・遅すぎるよ。
デブ、うるさい、のろい。女として最悪の三拍子がそろってるね。
それじゃ私以下だよ・・。
6 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時11分02秒
それじゃ私以下だよ・・。

店の外にいた先輩達は私が店の中に入るとなぜかもう手出しをしてこなかった。
ただ私の様子を憮然とした表情でにらんでいるだけだった。
私はとりあえずその人たちを無視して店員さんにショートケーキを注文した。

こんな甘そうなの食べるのいつ以来だろう・・
その味を思い浮かべるだけでも頬がゆるみそうになってしまうよ。

柴ちゃん、待っててね。今すぐ持っていくからね。
柴ちゃんの喜ぶ顔が思い浮かぶのがなんとなくうれしいよ。

そうこうしているうちにケーキはすでに包まれて私の前に置かれていた。
お金を払って店を出るとまだあの人達がいた。
私の周りを取り囲み次々と何か雑音を私の耳に送り込んでくる。
しばらく黙って聞いていたけどいらいらしてきた。
とりあえず私はその人達を振り払って柴ちゃんのいる公園の方に走った。
ただ一つ覚えているのは私達を見物していた同級生の子達が
「あの子、殺されるよ〜」
と言ってたことくらいかな。
7 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時11分53秒
公園に着いたとき日は暮れ始めていて風が少し冷たく感じた。
柴ちゃん寒がりだからちょっと心配になった。

「あ、梨華ちゃ〜ん、こっちこっち〜」

柴ちゃんはブランコに乗っていた。
その様子を見てちょっと笑っちゃった。
だって本当に可愛いんだもん。
夕日に映えて輝き風に吹かれてたなびくその髪がまた・・
ホント・・うらやましいよ。
8 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時12分58秒
梨華が柴田と別れて家路についたのは七時頃だった。

もう辺りは完全に暗くなってたから私は柴ちゃんを家まで送った。
柴ちゃんは
「それっておかしくな〜い?」
とか笑いながら言ってたけど・・
だって柴ちゃんはか弱い女の子なんだよ。
可愛いし、襲われたら大変だよ。

あ、私も女の子なんだよね。
ホント、すぐ忘れちゃうよ。
でも柴ちゃんのケーキを食べてたときの笑顔は忘れられない。
あんなにうれしそうな顔してるの初めて見たような気がする。

ふと空を見上げると、月が見えた。
月は全く欠けることなく闇を照らし出していた。

月を見ると柴ちゃんのことを考えてしまう。
私が闇だとしたら
柴ちゃんは月なんだって。
闇を照らしてくれる。

そんな事を考えているともう家の前についてしまった。
今日は仕事無いし・・ゆっくり休もう。
家に入ってすぐに私はベッドに向かった。
私のベッドは全てピンクで包まれている。
ピンクのシーツ、ピンクの枕、そしてベッドの上に置いてあるパジャマもピンク。
自分には似合わないとわかっているけど。

もう眠いよ・・
睡魔が私を誘惑する。
あ、お風呂はいるの忘れちゃったよ・・
朝に入ればいっか・・

梨華の意識は遠い別の世界へといざなわれた。
9 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時13分49秒
今日は久しぶりに目覚めがよかった。
何故か今日はいつもの悪夢を見なかったからだ。
私は起きてすぐにシャワーを浴びに風呂場へ向かった。

シャワーを浴びると急いで髪を乾かして、制服を着た。
まだ八時前だけど・・柴ちゃんとの約束があるから急がなきゃ。
その後私はテーブルにいつもおいてあるパンを一つだけ食べて家を出た。

そのまま学校には向かわず私は柴ちゃんの家に急いだ。
柴ちゃんを家までお迎えにいくって事なんだけど
こうして毎朝柴ちゃんの家に通って五年になる。

柴ちゃんの家の近くに来ると柴ちゃんが家の前で私を待っているのがわかった。

「おはよ〜、柴ちゃん!」

私の挨拶に柴ちゃんは手を振って応えてくれた。

「お、今日はいつもより顔色いいね、何かいいことあった?」
「うん、今日はいい夢が見れたから」
「え、どんな夢〜?聞きたいな〜」

どんな夢?
そんな事聞かれたって・・
ただいつもの夢を見なかっただけ。
そんな事言えないし・・
そう思って私が返事できずにいたら

「あ、わかった〜。どうせ梨華ちゃんの事だから王子様とメルヘンチックな出会いを
しちゃったとかでしょ〜」
「あ、わかっちゃった〜?実はそうなの」

危ない、危ない〜。
でもそんな夢見てみたいな。
10 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時14分45秒
こんなくだらない話をしている間にもう学校に着いていた。
もっとお話ししたかったのに・・

「じゃあね、柴ちゃん」
「じゃあ、昼休みにね」

柴ちゃんと私は教室の前で別れた。

そして梨華が教室に入ると教室中の視線が梨華に集まっていた。

何・・?
私ってそんなに注目されてたっけ?
私が席に着くと私への視線は無くなった。
ただ私が話の種にされているようだった。
もちろん私は気にしない。
それにそんなに悪い気もしなかった。
注目されたのなんて初めて。
でも眠いよ〜。
11 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時15分58秒
キーン コーン カーン コーン

この音で私が目覚めたとき時計はすでに昼をしめしていた。
やっと昼食だと思って柴ちゃんが教室に来るのを待っていた。
でもじゃまが入った。
チャイムが鳴ると共に教室に入ってきたのは昨日の先輩達だった。
・ ・そっか・・だから私、注目されてたんだ。
今の今までこの人達の事は完全に忘れていた。
先輩達は私の席の前に立つとまたわめき始めた。

「こいつだよ!」
「まちがいないよ!」
「立ちな石川、一緒に来てもらうよ!」

どうして私が・・?
て言うかなんで名前知ってるの?

「約束があるんで、また今度にしてもらえませんか?」

お願いだから今日は帰ってよ。
今そんな気分じゃないんだよね。
もちろんそんな願いをきいてくれるわけなかったけど。

「ついてこいって言ってんだよ!」

その中で一番腕力がありそうな金髪の先輩が私の腕をつかんで私を無理に立たせた。
抵抗はしようと思えばできたけどやめた。
あまり目立つといけないしね。
私は二人の先輩に両腕をつかまれてまるで囚人のように教室の外に引きずり出された。
後ろの教室からはクラスメートの心ない言葉が聞こえた。
そしてそのまま私は学校の屋上へと連れて行かれた。
これじゃまるで私がいじめられてるみたい。
12 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時18分25秒
「ねえあんた!昨日の態度はどういうつもり!」
「私らなめるとどういうことになるかわかってないようね」
「と言うわけで、今からお仕置きしま〜す」
「覚悟した方がいいよ〜」

六対一か・・
先輩達はかまえから見てせいぜい素人に毛が生えたようなものだろう
とりあえず反抗しちゃいけない
どんなことをされても・・

「とりあえずさ、縛っちゃおうか」
「そうだね〜、その方がやりやすいし」

縛る?
先輩そんな趣味があるの?
私は後ろ手に縛りあげられたけどおとなしくして抵抗しなかった。
何をされるのか少し興味がわいてしまったからだ。
それから縄の縛り方下手すぎですよ・・先輩。

「石川、あんた後輩のくせしてなめたまねしてくれたもんね」
「たっぷりお仕置きしてあげるわよ」

ニヤニヤ笑ってる・・
気持ち悪い〜

「じゃあ、黒木さんお願いしまっす!」

黒木さんと言われた人は昨日あの場にはいなかった。
敬語って事は・・この人はこの人達のリーダーなのかもしれない。
ただ眼がちょっとやばそうな感じ。
13 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時20分12秒

「本当にこの子なの?」
「そうです!」
「完全に私らの事なめてますよ!」

黒木って人は私の前に立つといきなり私の顎をつかんできた。

「可愛い顔してんのに・・かわいそうにね〜」

そう言うと私の顎をグイッと引っ張って私を地面に叩きつけた。
私が立ち上がろうとすると他の人たちが足をつかんだり髪を引っ張ったり
して立たせようとしない。
14 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時21分11秒
我慢、我慢・・こんなところで目立つわけにはいかない・・
私は自分をそうやってなだめながら先輩達の報復にただ耐えた。
でもだんだんやられる事がエスカレートし始めた。
最初はただ私をなぶっていただけだったのが腹に蹴りを入れてきたり、
挙げ句の果てには顔まで蹴ろうとしてきた。
もちろんそっちの方は紙一重でかわしてるけど。

「こいつ、しぶといね・・泣き言一つ言わないなんて・・」

そりゃそうよ。
だって全然痛くないもん。
でも黒木という人の次の言葉にはさすがに背筋が寒くなった。

「脱がせちゃおうか・・」
「そうっすね」

まさか・・冗談でしょ?
もちろん冗談などではない。
すでに三人覆い被さってきて私の服に手をかけ始めている。

「ちょっと・・いや・・・・・・! やめてください!」

さすがに身の危険を感じた私は起きあがろうとしたが、私の上に乗っている三人の体重は信じられないほど重い。
手が縛られてなければ・・こんな人達の好きにさせないのに・・
私はその時自分の軽はずみな行動を後悔した。
すでに上の方は服は完全に脱がされてしまいブラだけになってしまった。
下の方も半分ほど脱がされ始めている。
私は恥ずかしさのあまり涙が浮かんできた。
15 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時21分50秒
「おい、こいつ泣いてるよ〜」
「本当だよ、今更遅いっつうの!」
「悪いのはあんただからね〜」

こんなミスするなんて・・
情けないよ・・

私は抵抗するのを諦めて為されるがままになった。
もうどうなってもいい・・
そう思っていると私の上に乗っていた三人がにわかに立ち上がった。

「この制服、私達が売っといてあげるからあんた今日はその恰好で帰るんだね」
「アハハ、いい気味だよ!」

気づくと私は下着だけの姿にされていた。
縄はまだほどかれていない。
先輩達は私をそのままにして屋上から降りようとしていた。
16 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時22分46秒
先輩・・最後の詰めが甘いですね

私は地面から飛び起きると一気に先輩達の背後に走り込んだ。
先輩達もその時になってようやく私の存在に気づいた。
でも・・もう遅い。

一番後ろ・・つまり私に一番近くにいた先輩に振り向いた瞬間に
私の頭突きがクリーンヒットした。
ゴキッという音がした。
鼻から血が吹きだしている。
たぶん鼻の骨が折れたんだろう。
手応えもあったし。



三十秒後、他の先輩達もみんな床にはいつくばっていた。
1人を除いて。
私を見てガクガク震えている。
さっきまでの態度が嘘みたい。

「先輩・・」
「・・な・・・・何よ」
「縄・・ほどいてください」
「は・・はい・・」

そんなにおびえなくてもいいじゃない・・
でも私の体は快感で満ちあふれていた。
人をここまで傷つけたのも何年ぶりだろう。
17 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時23分57秒
私は自分の服を取り返すとさっさと着て教室に戻った。
もちろんその時の事の口止めは忘れなかった。
まあ言うとは思えないけどね。
教室に戻ると柴ちゃんが私の席に座っていた。
柴ちゃんはすぐに私に気づき駆け寄ってきた。

「梨華ちゃん・・先輩達に屋上に連れて行かれたって聞いたけど大丈夫だった!?」
「あ、うん。なんか先輩達が階段から足滑らしちゃってさ〜」
「そうなの〜?よかった、心配したんだよ〜」

柴ちゃんは私にギュウ〜ッと抱きついてきた。
私も抱きしめ返した。
柴ちゃんの体・・温かかった。

「梨華ちゃん、体冷えてるよ」

私を抱きしめたまま柴ちゃんはクスッと笑った。

「屋上寒かったんでしょ?」

半分正解。
でも半分間違い。
私の体温はもともとこんなもの。
だってそうやって作られたんだもの・・・

あ、それから柴ちゃん、昼食の約束守れなくてごめんね。
18 名前:カーン 投稿日:2002年10月06日(日)14時25分08秒
とりあえず今日の更新ここまでです。
次は娘のメンバーを誰か出したいと思っています。
19 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月07日(月)01時07分37秒
とても続きが気になりますね
石川に何があるのか!w
がんがってください
20 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月07日(月)05時57分11秒
確かに石川に何があるのか気になる…
続き期待しとります
21 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時36分56秒
今日もいつも通り柴ちゃんと教室の前で別れ教室に入ると
中の様子が少しおかしかった。

何でみんな真面目に勉強してるの〜!?

いつもはすぐに席について寝てしまう私だけどさすがに気になって
一度ぐらいしか話したことのない隣の席の人に思い切って聞いてみた。

「あの〜、何でみんな勉強してるの?」
「えっ?何言ってるの、今日期末テストじゃない」

えっ!!
そんなの聞いてないよ〜
何で柴ちゃん言ってくれなかったの〜

そう思いつつもやはり私は寝てしまった。

そんな梨華の様子を隣の子はただ呆れた様子で見ていた。
22 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時38分09秒




「え〜、では数学の試験を開始する。・・・・始めぇ!」

教室中に鉛筆を走らせる音が響く。

みんな頑張ってるな〜。
それにしてもどんな問題なんだろ。
私は問題用紙を他の人より約2分遅れで開いた。

・・・なあんだ・・・

梨華はその後3分ほど問題を解いていたがその後再び眠りについた。
それは他のテストに対しても同じであった。
23 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時39分13秒
数日後・・

テストが返される日がやってきた。
朝礼前、教室中はいろんな声であふれていたが、教師が教室に入ってくると静けさが教室を支配した。
テストは出席番号順に返されるようになっている。
このクラスの出席番号1番は・・石川梨華である。

「え〜石川、石川梨華!」
「はいっ!」
「・・・・・・」

あれ?
先生が私の答案を見て沈黙していた。
というより硬直しているようにも見えた。

「あの・・先生?」

私の言葉でようやく先生は顔を面に上げた。
でも少し震えてるような・・

「い・・石川!」
「はい・・!」
「よくやった!!先生は嬉しいぞ!」

先生の声に教室中がどよめいたのがわかった。

「いつも寝ているお前が全科目満点なんて・・わ、私は・・ウウッ」

そんな泣かなくても・・
先生の目からは本当に涙がこぼれていた。
24 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時39分50秒
その後はさらに大変だった。
学年中の噂になってしまったし、先生からは長々とお褒めの言葉をもらったし。
柴ちゃんも結構成績はよかったみたいだけど・・
帰り道でしつこく詮索された。

「どういう事よ〜、何でいつも寝てる梨華ちゃんが学年トップなわけ〜」
「わ、私にもわかんないよ〜」
「私にも隠れて勉強してたんでしょ〜!」
「そ、そう!そうなの!」

はあ〜
やっぱり問題解かなきゃよかった・・
今まではほどほどに調節してたけど、今回は全部解いてしまった。
そのせいで私はまた注目されるはめになったんだ。
もう二度とテストを真面目に受けるのはやめよう。
そう固く決心した。
25 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時40分53秒

「あっ、明日家賃払う日だ〜!」

テストが返されて想像以上に疲れた体を引きずり帰ってきた私は
ふとカレンダーを見て叫んでしまった。
今日は二十四日・・
明日の二十五日のところにはきれいに赤丸がされていた。
赤丸がしめすのは家賃を納める日・・
忘れるともちろん追い出されてしまう。

「しょ〜がない、今日仕事するか〜」

一週間後の予定だったけど・・
くよくよ考えたってしょうがないもんね。
このアパート追い出されたら行くとこないし。

私は夜の仕事に向けて着々と準備を進めた。
26 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時41分39秒
誰もが寝静まったであろう深夜
満月も少し欠け始めている夜、影のごとく黒いスーツに身を包んだ梨華が
静かな町を走っていた。
梨華は迷うことなく一つの大邸宅の門の前で立ち止まった。

ここだわ・・

前から眼をつけていたお邸。
ここならお金がいくらでもありそう。
そう思って一ヶ月前から忍びこむために綿密な計画を立ててきた。
本当は家族が全員出かける来週の日曜日がよかったけど・・
でも私の技術なら誰にもきづかれないはず。

まず最初の関門は門。
でも私にとっては大した障害じゃない
私は身をかがめると一気に地を蹴った。
自分でも惚れ惚れするほどの鮮やかなジャンプ
最初の関門はあっさり飛び越えた。
27 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時42分39秒
そして門を越え屋敷に入り込むまで何の障害もなかった。
あっさり邸に入り込むことができた。
邸の中は明かりがついていなかったけど私にとって明るさはあまり関係ない。
部屋の隅々まで見渡すことができた。

この部屋には何もないか・・
隣の部屋に移る。
もちろん忍び足で。
ここにもめぼしい物はないなあ・・
次の部屋・・と
あ、あれ?
こ・・これは!

別の部屋に移ろうとした時、その部屋で私はある物に目にした。
28 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時43分19秒
ル、ルビーの指輪!!
それはまるでほったからされているかのように大きなテレビの上に置かれていた。
何でこんなとこに置いてるのか知らないけど・・
ハッピ〜!!
神様、ありがとう。
私はまだ見捨てられてなかった。
これで明日の家賃払える〜。
この家の人ごめんなさい、でも私も生きるためなんです。

もちろん直接は謝れないけど心の中で一応謝っといた。
じゃ、指輪をもらおうっと・・

私が指輪を手にしようとしたその時だった。

殺気・・?

勘違いじゃない・・
誰かこの部屋にいる・・

誰・・?

声に出すわけにはいかない。
私は指輪に伸ばしていた手を引っ込めて身構えた。
そしてもう一回部屋中を見渡してみる。

誰もいない・・
でも確かにこの部屋には私の他にもう1人いる。

私はただ身構えたまま見えない相手の出方を待つしかなかった。

それからどれほどの時が流れたのだろう・・
私も相手も全く動かない。
ただ私の息づかいが少しづつ荒くなっていくのがわかる。
29 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時44分07秒

パラパラ・・

ん?
塵・・?
そっか!上だ!
私が上を見上げるとやっぱり・・
誰かいる・・
私は上からの攻撃に対して構えなおした。

「ばれたか〜」

私が上を見上げた時天井から声が響いた。
そして一つの影が私の目の前に落ちてきた。

「私に気づくなんてただの泥棒じゃあないみたいだね」

まだ顔を下に向けているからよくわからないけど
声からして女の子みたい。
私は警戒をゆるめずその子に小声で話しかけてみた。

「あなた・・誰?」

泥棒の私が聞くのも何なんだろうけどね。
相手の子が顔を下に向けたまま吹きだしているのがわかった。

「何がおかしいのよ〜」

笑われたことにちょっと腹が立った。

「アハハ、まあいいや。私の名前はひとみ。この吉澤家の一人娘の吉澤ひとみだよ、可愛い泥棒さん!」

そう言ってその子は顔を面に上げた。
30 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時45分29秒
あ・・
思わず私はその顔に見とれてしまった。
                   
「何〜、私の顔に何かついてる?」

か・・かっこいい〜
危うくそう言ってしまいそうだった。
いつも冷たいはずの私の体が火照っているのがわかった。
どうしちゃったんだろう、私・・。
しっかりしないと・・
そう思いながらもやっぱりその顔から目が離せなかった。

私と同じくらいの歳だろう
ボーイッシュなその顔立ち
ちょっとやんちゃそうな金色の髪・・
スタイルも男らしい・・

梨華は自分の構えがおろそかになっている事にさえ気づかなかった。

「ねえ、泥棒さん。あなたの名前は何て言うの?」

そのひとみという子からは泥棒の私に対して全く敵意が感じられなかった。
ちょっと変わってる。
全く警戒してる様子はないし、誰かを呼ぼうともしない。
ただ私の様子を観察してるみたい。

「石川・・」
「石川?」
「梨華・・」
「へえ〜、可愛い名前じゃん。梨華ちゃんか〜」
31 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時46分06秒
何で名前なんて言っちゃったんだろ・・
もしここで逃げられてもこの子が警察に私の名前を言ったら捕まるというのに
このときの私は少しおかしかった。
ううん、このときだけじゃない。最近の私はホントにおかしい。

「梨華ちゃんって言っていい?」

会ったばかりなのに少し馴れ馴れしくない?
私はそういうのが一番苦手だった。
でも・・

「いいよ・・」

完全にひとみという子に会話の主導権を握られていた。

「あ、そんな小さな声で話さなくてもいいよ。今この家にいるのは私1人だし」

それならもっと早く言ってよ〜
結構びくびくしてたんだから。

「それから私のことはよっすぃ〜って呼んでね」

はあ?
何それ・・
でも私には考えている時間も与えられなかった。

「で、何しに来たの?」
「え、その・・あの何かお金になる物が欲しくって・・」
「あ、そうなんだ〜。それでその指輪を取ろうとしてたわけ?」
「うん・・」
「別にいいよ〜欲しければ上げるよ。どうせ五十万ぐらいの安物だし」

五十万!?
それをくれるの?
ウソ、ホントに?
32 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時46分59秒
「でもただじゃあ上げられないなあ・・」

さっきまでニコニコ笑っていたよ・・じゃない、ひとみという子は
ちょっと意地悪そうな笑みに変わっていた。

「梨華ちゃんさあ、かなり腕には自信ある方じゃない?」
「何の?」
「格闘技」
「まあ・・少しは」
「じゃあさ、こうしようよ。あたしと梨華ちゃんが闘ってもし梨華ちゃんが
勝ったらこの指輪上げるよ。でもあたしが勝ったら・・」
「勝ったら?」
「う〜ん、その時考えるよ」

少しの間私は考えた。
この自信、先ほどの身のこなし、この子もかなり武芸に通じてるに違いない。
でも・・
私には勝てない。
ならこの子をどれだけ傷つけずに倒すか・・だね。

私はその申し出をのんだ。
33 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時51分01秒
>>19 名無し読者さん ありがとうございます〜
          頑張ってきたいにこたえたいです。
>>20 名無し読者さん 石川さんの謎ですか?
           これは自分でもまだはっきりは決めてないんです、
           でもおもしろくするよう頑張ります!
34 名前:カーン 投稿日:2002年10月07日(月)22時52分29秒
今日の更新はここまでです。
毎日更新できるわけではないですが頑張ります!
35 名前:カーン 投稿日:2002年10月11日(金)23時35分14秒
和やかな会話は終わり梨華とひとみの二人は共に距離を取り構えあった。

この子・・空手か・・

張りつめた空気を振り切るように
先に動いたのは私の方だった。
一気に距離をつめ顔面に拳を繰り出す。
今までの敵はたいていこの一発でノックアウトしてきた。
でも今回は違った・・

速い・・

ひとみという子はそれに応えて拳を繰り出し私の拳を払いのけ、
そのまま私の腕をつかんだ。
36 名前:カーン 投稿日:2002年10月11日(金)23時35分55秒
!!

一本背負い!

その時目の前の世界がスローモーションに感じられた。
私はそのまま受け身を取ることも忘れて地面に叩きつけられてしまった・・

「ゲホゲホッ・・はあ・・はあっ・・」
「どうしたの〜?あんまたいした事ないね〜」

そんな・・
私がこんな簡単に投げられるなんて・・

私は投げられた痛みよりもいとも簡単に投げられた事の方がショックで
立ち上がることもできなかった。

ひとみという子が持っていた私の腕を離すと私は人形の様に倒れてしまった。

「もうお終いなの〜?つまんないな〜」
37 名前:カーン 投稿日:2002年10月11日(金)23時36分35秒

何も言い返せなかった。
私は・・負けたの?

しばらくその状態が続いた。
私はそのまま倒れたままでひとみという子はそんな私をじっと見下ろしていた。
その視線がさらに私に屈辱感を与えた。

「そんな眼で見ないで・・」

やっと出た言葉がこれだった。
ひとみという子はそのまま何も言わず私を見つめていた。

「ねえ・・あなたが勝ったんだから・・」

警察でも何でも呼びなさいよ!
私は逃げも隠れもしないわよ・・
って言うかもう倒されちゃってんだけどね

「あたしが勝った時の条件まだ言ってなかったよね・・」

おもむろにその子は口を開いた。
でも勝ち誇っている様子はなかった。

「今夜一緒にいてくれない?」

・・・・へ?・・・・

「そしたら今夜の事は誰にも言わないしこの指輪もあげるよ、どう?」

どうって言われても・・

「今夜は誰も家にいないから暇なんだよね〜。いろいろお話しようよ」
38 名前:カーン 投稿日:2002年10月11日(金)23時37分35秒
私は何か言おうとしたけど思いとどまった。
私を見下ろしているひとみという子の顔を見ると何も言えなくなった。
何となく寂しそうだった・・
私は起きあがると

「いいよ・・」

とだけ言った。
その時ひとみという子に少し笑顔が戻った気がした。

「じゃあ暗いのもなんだし、電気つけよっか」
39 名前:カーン 投稿日:2002年10月11日(金)23時38分27秒

ひとみという子のその言葉でようやく私には一つの疑問が浮かんだ。

何でこの暗さで私の姿が見えるの?
普通の人間には何も見えないほど暗いのに・・
その事をひとみという子に聞こうとした時だった。
部屋に明かりがついた。
ひとみという子は何か飲み物をグラスに入れてきてくれた。
そしてグラスを私に渡すといきなり質問してきた。

「ねえ、梨華ちゃんの親は何してる人?」

いきなりの痛い質問・・

「家族はいないんだ・・昔事故でみんな死んじゃったの」
「あ、そうなんだ・・ごめん」
「あなたが謝る事じゃないよ」

私はあまり気にしてなかったけど
ひとみという子は本当に申し訳なさそうな顔をしていた。

「あなたの親は?」
「私の親?あの吉澤グループの会長だよ、知らないでこの家に盗みに入ったの?」

吉澤グループ!?
それって日本で最も大きな財閥だよね?
じゃあこの子は・・吉澤グループ会長の娘!?
何がなんだかわからなくなってきたよ・・
ひとまず頭を落ち着けよう・・
そう思って渡されたグラスに口をつけた。
40 名前:カーン 投稿日:2002年10月11日(金)23時40分09秒
久しぶりに更新しました。
読んでいる人もしいたらすいません。
あんまり話が進まないしおもしろくないかも・・
感想があったらお願いします。
41 名前:カーン 投稿日:2002年10月13日(日)04時18分23秒
ちょっと甘い冷たい紅茶だった。
その香りが私を落ち着かせてくれた。

「それにしてもホント大きな邸だよね・・」
「まあね・・」
「こんな大きい家なら執事とか、家政婦さんとかいるんじゃないの?」
「うん・・でも住みこみじゃないから夜はいつもあたし1人なんだ」
「やっぱりお父さんもお母さんも忙しいの?」
「家に帰ってくる事なんてそんなにないよ・・」
「寂しくない?」
「寂しい・・かもね」
42 名前:カーン 投稿日:2002年10月13日(日)04時18分58秒
似てる・・
そう思った。
この子は何か暗い面を持っている。
私みたいに・・

「ねえ、暗くなるし話変えよ、もっと明るい話題にさ!」

ひとみという子の顔は笑っていたけど
私は何か違和感を感じた。
何かを笑顔で隠している・・
43 名前:カーン 投稿日:2002年10月13日(日)04時19分36秒
気づくともう夜は明け日が昇りその光が窓のカーテンの間から射し込んでいた。
あのあと話がはずんでいろいろ話した。

友達の事、学校の事、他にもいろいろ・・

「ひとみちゃん、もう朝だし私帰るね・・。学校の準備しないと」
「そっか・・じゃあこれ約束だから・・」

そう言ってひとみちゃんは私に指輪を差し出した。
ひとみちゃんはよっすぃーと呼んでほしかったみたいだけど・・

「いいの?」
「いいの、それにこれがないと困るんでしょ?」
「ありがとう・・」

私は素直にそれを受け取ると胸ポケットに入れた。
44 名前:カーン 投稿日:2002年10月13日(日)04時20分09秒
「ねえ・・また会えるかな・・?」

私が邸を出ようと扉を開けたとき後ろから微かにひとみちゃんの言葉が。

「え・・?」
「ううん、何でもないよ・・」
「・・じゃあね」
「・・バイバイ・・」

不思議な出会いだった。
あの子も私と同じような闇を抱えている・・
そんな事を感じたのは初めてだった。
もう二度と会うことはないだろうけど
あの子との出会いには何か意味があるような気がする。

でもあの子かっこよかったなあ・・
まだあのときの体の火照りが消えていない。
あの子の事を思い出すと体が熱くなるのは・・・・なぜ?

冬の朝の冷たい風を感じながら家へと急ぐ梨華であった。
45 名前:カーン 投稿日:2002年10月13日(日)15時02分54秒
吉澤家の邸から自宅に戻った梨華は大急ぎで着替えをすませると
柴田の家へと急いだ。
柴田はいつも通り家の前で梨華を待っていた。

「梨華ちゃん、おはよ〜!」
「おはよ〜柴ちゃん」
「あれ・・?梨華ちゃん、目にくまができてるよ」

そりゃそうよ
一晩中起きてたんだから

「ああ、昨日はいろいろ考えちゃってさ。眠れなかったんだよね」
「成績のこと?」
「うん・・まあね」
「学年トップだもんね〜、そりゃいろいろ考えちゃうよね」

いつも通りの何気ない会話。
でも柴ちゃんと話している私の心はうわの空だった。
あの子の事が気になっていた。
あの笑顔と寂しげな顔が交互に浮かんでは消えていく。 

・・・・・・
やっぱり最近の私はおかしい・・
46 名前:カーン 投稿日:2002年10月13日(日)15時05分06秒
ここまでぐらいが第1話ってところでしょうか
第2話以降にはおそらく四期メンまでのメンバーが続々でてくると思います。
47 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月15日(火)14時09分49秒
初めて読んだけど、面白そうだね。
文章も上手だし、期待してますよ。
48 名前:カーン 投稿日:2002年10月26日(土)17時00分04秒
「・・じゃあ石川さんでいいですね〜」

拍手が教室内を包んだ。

「じゃあ石川さんに決定しました〜」

さらに拍手が大きくなるのを感じた・・
この拍手は私の幸福を祝うものなんかじゃない・・
自分達が免れたことを喜んでいるだけだ。
今日、初めて居眠りをしていたことを後悔した。
もう遅いけど・・

事の始まりはクラス会からだったみたい
放課後に私達は全員残されて今度の学園祭についての話し合いが行われた・・
そこまでは覚えてるんだけど・・
やっぱり寝ちゃった。
で、劇をするらしい。
そして私がヒロイン役になったみたい。
起きたらいつのまにかそうなってたんだけどね・・
49 名前:カーン 投稿日:2002年10月26日(土)17時00分53秒
「じゃあ、石川さん。これ台本だから」

台本もうできてるんだあ・・
私はその手際の良さに感心してしまった

「じゃ、これ明日までに読んどいて!明日から練習するから」

とりあえず手渡された台本のストーリー部分をパラパラッと読んでみた。

・ ・・・・姫は悪い魔女にだまされて魔法の檻に閉じこめられる・・

・・・・・そのりりしき王子は魔女を倒すと魔法の檻は壊れ王子は姫を助け出す・・

何これ?
何で高校生にもなってこんなのしなきゃいけないの・・
 
いやな台本だけどとりあえず最後まで読むことにした。


・・・・・そして王子は姫を強く抱きしめたあと熱いキスを・・
-―――――――――――――――――――――――――――――                           
                       ――――――――終わり
50 名前:カーン 投稿日:2002年10月26日(土)17時01分23秒
ふ〜ん、結構ロマンチックかも。
ってあれ??
ちょっと待って・・
これって・・
キ・・キス!?
私がやるの!?

「ちょっと待って!!」

私はおもわずちょうど帰ろうとしていた台本を渡してきた子を呼び止めた。

「何?」 
「これって・・冗談だよね?」

私は台本のその気になる部分を指さした。

「え?冗談も何も・・これが学園祭のメインイベントじゃない」

メインイベント?
どういうこと?

「ほらここに書いてるでしょ」

その子が示すところを慌てて確認する。

――― なおこの王子役は当日のオーディションで決定されます―――

「ね、これが目当てでやってくるお客さん多いんだよ〜」
「あ・・あの・・」
「それに石川さん綺麗だしたぶん応募が殺到するよ〜」
「だから・・あの・・」
「じゃ、友達が待ってるから帰るね〜」

大変なことになっちゃった・・
51 名前:カーン 投稿日:2002年10月26日(土)17時01分55秒
「ねえ、柴ちゃん、どうしよ〜どうにかしてよ〜!」
「そんな事言われてもさ〜どうしようもないよね。」
「だって私まだ誰ともキスなんかしたことないんだよ!」
「それは何回も聞いたよ・・」

その日の学校の帰り道、私は柴ちゃんに泣きついた。
こんな事は初めてだけど事が事だけに柴ちゃんしか泣きつく相手がいない。

「でもさ、もしかしたらすっごくかっこいい人かもしれないじゃん」
「それでも・・」
「好きでもない人とはできない?」
「うん・・」

悩んでいる私を柴ちゃんはおかしそうに笑ってる。
何よ・・私がこんなに悩んでるのに・・

柴ちゃんはどういう運命の巡り合わせか魔女役になったらしい。
だからこんなに気楽な顔してられるんだよ・・

「でも私、梨華ちゃんがこんなに悩んでるの初めて見たな」
「え?」
「だっていっつも梨華ちゃんって感情を内に秘めてるっていうか
そんな感じなんだもん」
「柴ちゃん・・」

「ちょっと嬉しかったな、梨華ちゃんの中が見れたみたいで」
「・・・・・・・・」
「じゃ、また明日ね!」

いつのまにか柴ちゃんの家の近くまで来てしまっていた。
私は走っていく柴ちゃんの後ろ姿を呆然と見ていた。

私は・・柴ちゃんにも知らないうちに警戒してた・・
52 名前:カーン 投稿日:2002年10月26日(土)17時02分39秒
「おや可愛いお姫様、こんなところで何をしてるんだい」
人の良さそうなお婆さんが湖で悲しんでいる姫のもとへと歩み寄ってきました

「ここで水遊びをしてたんですけど供の者とはぐれて・・おばあさんはだれ?」
姫はいきなり現れたお婆さんに驚いた様子でした。

「私かい?私はずっとこの森にすんでいるただのとしよりじゃよ・・」

「あの、お城への道は知りませんか・・?帰れなくて困ってるんです」

「それは可哀想に、でも知らないねえ・・」
お婆さんは心の底から同情しているかのように首を振りました。

「そうですか・・」
姫は再び悲しそうに顔を手で覆いました。

「じゃあ私の家に来ないかい?お腹すいてるじゃろ?」
お婆さんはそんな姫の手を取り優しく声をかけました。

「はい・・でも・・」

「遠慮することはないよ、さあ、おいで」
お婆さんはその人の良さそうな顔の笑みを絶やさずさらに姫を誘いました。

「はい、じゃあおじゃまします・・」
姫は歩き出したお婆さんの後ろをついていきました。

―――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――

「ハイ、カット〜!」

「柴田さん、結構演技うまかったよ」
「ありがと〜」
「石川さん、あなたいくら困ってるシーンでも元気なさすぎよ!しっかりして!」
「はい・・」
「じゃ、五分休憩!」
53 名前:カーン 投稿日:2002年10月26日(土)17時03分43秒
監督(学級委員の子がなぜかはりきってやってる)の合図で
ようやく先ほどまでの張りつめた空気がとけた。
私は柴ちゃんと一緒に練習場の講堂から出て近くにあるベンチに座った。

「梨華ちゃん、やっぱり気になってるの?」
「うん・・」
「でも梨華ちゃん可愛いからもうとっくに済ませてると思ってたけど」
「そんな事・・」

ないよ・・

私は今まで男の人とキスはおろか遊んだことさえないのに
女の子とだって柴ちゃんとぐらいしか遊んだことはない
そんな私が・・

梨華は隣に柴田がいることも忘れて頭を抱えて考えこんでしまった。
そんな梨華の様子を柴田はおかしそうに見ていた。
54 名前:カーン 投稿日:2002年10月26日(土)17時04分14秒
先ほどの練習で流れた汗が冬の風で冷たく感じ始めた頃、
柴田は首元にかけたタオルで顔の汗を拭い次のシーンの台本を読んでいた。

はあ・・

時々口ずさむ柴ちゃんの言葉が私にはカウントダウンに聞こえた。
あのシーンまで・・あと三日・・
私はどうすればいいんだろう・・?
55 名前:カーン 投稿日:2002年10月26日(土)17時07分15秒
>>47 こんなくだらない小説を読んでくださってる方がいるとは・・
   更新遅れましたが中途になってしまいました・・
   とりあえず頑張らしていただきます
   どうもありがとうございます。
56 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月28日(月)21時56分50秒
続きが気になります・・・
57 名前:カーン 投稿日:2002年11月03日(日)23時31分02秒
時がたつのははやいものだ。
三日なんてあっというまだった。
毎日放課後に残されて夜遅くまでの練習
帰ったらすぐにベッド
そして学校へ行く・・
これの繰り返しが三回あっただけだった。

「どう・・?柴ちゃん?」
「うん・・・・すごいよ・・」

ああ・・もうだめだあ・・

「三百人はいるねえ・・」

だめ・・現実逃避しちゃいそう・・

学園祭当日・・
私達は物陰から王子様オーディションをこっそりと見に来たけど
結局私は怖くなって見ることができず柴ちゃんに代わりに見てもらっちゃったわけ。

「梨華ちゃん・・?大丈夫〜?」
「・・・・・・」

私は自分で自分の顔から血の気が段々ひいているのがわかった。
おそらく今の私の体温は十℃を少し越えたぐらいにまで下がっているだろう。

「お〜い梨華ちゃん、そろそろリハーサルだよ?」
「あ、わかった・・行こっか」

柴ちゃんの足取りは軽く私のは鉛のごとく重かった・・

柴ちゃんこんな足速かったっけ・・?
と思っちゃうほどだった。
58 名前:カーン 投稿日:2002年11月03日(日)23時31分48秒
順調にリハーサルが終わった頃、時計の針は既に十一時を示していた。

「梨華ちゃん、今オーディションも終わったらしいよ!」
「そう・・」
「で、王子様役の人ね、何か台本を一回見ただけで完璧にこなしたらしいよ!」
「そう・・」
「ただ、見た目の情報が入ってこないんだよね〜。一番肝心なのに!」
「そうだね・・」
「梨華ちゃん・・何か梨華ちゃんの近くにいると寒くなるんだけど気のせい・・?」

柴田の最後の言葉は梨華の耳に届かなかったのか全く梨華は反応を示さなかった。
59 名前:カーン 投稿日:2002年11月03日(日)23時32分46秒
本番直前・・
梨華は柴田と共に着替え、メイクを済ませて舞台裏で舞台の開幕を待つ身にあった。
二人はお互いの扮装した姿を見るのが初めてだった。

「うわ〜梨華ちゃん可愛い〜」
「柴ちゃんこそ・・魔女のカッコ似合ってるよ」
「そう?ありがと〜。ところで王子様はまだかなあ?」
「そうだね・・」

そこへ監督(自称)がやってきた。

「あ、あなた達。あのさ、王子様役の人が今メイクに時間かかってるから
先にあなた達が舞台に出て始めといてよ」
「でも・・」
「大丈夫、王子様の出演は中盤以降だからまにあうよ」
「わかりました・・」
「じゃ、頑張ってね!」

つまり私は例のシーンまで王子様と顔を合わせる事はないわけだ・・

監督が走り去るとすぐに会場の講堂のアナウンスの声がした。

「え〜大変長らくお待たせしました。それでは本日のメインイベントの
劇を始めさせていただきます」

アナウンスが終わると同時に幕が開いた。
もう後戻りはできない・・
60 名前:カーン 投稿日:2002年11月03日(日)23時33分23秒
ほんの数秒の間梨華は完全に固まっていた。
前に出て挨拶をしなければならないのはわかっているが足が動かないのだ。
目の前には劇を今や遅しと待っている観客が何百人といる。
しかし梨華にはその時何も見えていなかった。
ただあのシーンが何度も何度も頭の中で走馬燈のごとく駆けめぐっているのだ。

そんな梨華のブロンド像のごとく固まっている様子をいち早く見つけたのは柴田だった。
柴田はサッと梨華の手を取るとスタスタと前に出た。
そして戸惑う梨華を観客の前に立たせると柴田はギュッと梨華のしなやかな背中を
つねった。

「痛ッ・・!」

不審そうな顔をして柴田の顔を見る梨華を尻目に柴田は自分の挨拶を始めた。
これで完全に梨華の逃げ場は無くなった。
梨華は気を取りなおして柴田の挨拶が終わると一歩前に出た。
会場からは大きな拍手が送られてくる。

「えっと・・主演の石川梨華です・・」

それだけ言うのが梨華には精一杯だった。
ペコリと頭を下げると恥ずかしそうにそそくさと後ろに下がった。

しかしその可愛らしい声とお姫様の衣装からうかがえる梨華の見事なスタイルに
観客の男達は完全に虜になっていた。
そんな事に気づく事もなく梨華はただうつむいて他の出演者の挨拶が終わるのを
待っていた。
61 名前:カーン 投稿日:2002年11月03日(日)23時34分37秒
「キャッ!お婆さん何するの!?」

「ヒヒヒ、まだわからないのかい?自分が騙されたことに!!」

「イヤーッ。誰か助けてー!!」

『何と人の良さそうなお婆さんは悪い魔女だったのです・・。こうして可哀想なお姫様は魔法の檻に閉じこめられてしまいました・・・。』

語りの人が言い終わると同時に照明が落ちた。
舞台ではなるべく音をたてないように背景などの移動が行われた。
梨華はその檻の中に入ったまま舞台の裏まで運ばれてきた。
そのまま梨華は檻から出ず自分の出番まで待つことにした。
62 名前:カーン 投稿日:2002年11月03日(日)23時35分10秒
舞台では柴田の一人芝居が始まっている。
柴田の可愛らしい(?)ダミ声が舞台の裏の梨華の耳にまで届いていた。
後は王子様が魔女を退治するまで梨華の出番は無い。

「よっ、名演技だったよ!お姫様」
「ありがとうございます・・」

監督が檻の外から声をかけてきたのだ。
知らない人が見ると全くおかしい光景である。

「王子様ももうすぐ出るけど・・なんかはりきってるねえ・・」
「そうですか・・」
「鏡の前でポーズとか決めちゃってるよ・・」
「・・・・!!・・あの・・!」
「何?」
「お願いだから今話しかけないでください・・!」
「あ、そうだね・・ごめんっ!」

梨華のいつもとは違う様子をただの緊張と思った監督は梨華の前から立ち去りまた梨華は檻の中で一人になった。
しかし今回の梨華の異変は緊張によるものではなかった。
監督が完全に離れた事を梨華は確認すると檻の中で丸くなりガタガタ体が震えだした。

こ・・こんな時に・・!

梨華の顔色はさきほどまでの真っ青な顔から豹変して真っ赤になり、
その呼吸はまるで何百キロと走ってきたかのように乱れていた。

「し・・柴ちゃん・・柴ちゃ・・」

混濁する意識の中で梨華はひたすら柴田の名を呼んだ。
いや実際は呟きにすらなっていなかっただろう。

梨華の体が完全に動きを止めるまでそう時間はかからなかった。
梨華が気を失うと同時に梨華の顔色はまた青白くなり梨華はただ眠っている
かのようになった。
63 名前:カーン 投稿日:2002年11月03日(日)23時37分05秒
 
 ――――――――――――――――

「石川さん、そろそろ出番だから運ぶわよ!」

監督が再び檻の前に現れた。
その時は同時に大道具の子達も一緒だった。

「石川さん・・?あ、もう役に入ってるわけね・・じゃあ運ぶよ!」

監督は全く梨華の異変に気づくことはなかった。
普通の人なら彼女のように楽観的な判断はしないはずなのだが・・。
64 名前:カーン 投稿日:2002年11月03日(日)23時37分45秒
「ギエ〜ッ!!」

魔女柴田の断末魔の声が会場全体に響き渡る。
魔女柴田は王子に突き刺された剣を引き抜こうとしたがついに力つき息絶えた。

魔女柴田の見事な最期もさることながら王子役の華麗なる剣さばきはひときわ観客の
目を引いた。

「おい・・半日の練習であれかよ・・すげえな・・」
「かっこいいわ〜」
「こっち見て王子様〜」

男も女もいろんな意味で王子様に見とれていた。

魔女柴田が倒れると舞台の端からお姫様を閉じこめた檻が登場した。
檻の中ではお姫様が可愛い顔をして眠っていた。

そして王子様はその檻に向かってゆっくりと歩み寄った。
いよいよ運命のシーンは目前に迫っていた。
65 名前:カーン 投稿日:2002年11月03日(日)23時38分40秒
「悪い魔女に騙された可哀想なお姫様・・もう大丈夫ですよ・・」

りりしきいでたちをした王子はゆっくりと魔法の檻の扉に手をかけた。
魔女が倒されたので扉はいとも簡単に開いた。
会場の空気は自分の腕時計の針の音が鮮明に聞こえるほど静まりかえっていた。

「さあ、お姫様・・目を開けて・・」

王子の右手の人差し指の関節が姫の左の瞼に優しく触れた。
66 名前:カーン 投稿日:2002年11月03日(日)23時39分29秒
――――――――???――――――――

舞台をこっそりと舞台の裏から眺めていた監督は舞台の異変に気づいた。

「何で石川さん起きないの・・?」

確かにおかしかった。
台本では王子様が姫に触れたとき姫は眼を覚まし王子様に助け起こされて
檻から出てそこでキスして幕が閉じるはずだった。
しかしいくら待っても一向に梨華が起きる様子は無かった。
その堅く閉じられた瞳がまるで起きることを拒否しているかのようであった。

「まずい・・石川さん起きて〜!」

大声で舞台に向かって叫ぶわけにもいかず監督はただ唇をギュッと噛み見ていることしかできなかった。
観客の中には異変に気づき始めている者もいる様子だった。

「お終いだ・・」

監督は自らの作品の失敗を実感した。
完璧な芝居だったはずなのに・・
唯一の失敗はねぼすけの石川に主役を与えてしまった事だと悔やんだ。

そして監督の反省が絶望に変わり思わず顔を手で覆った時だった。
舞台に変化が起こった。
67 名前:カーン 投稿日:2002年11月03日(日)23時40分08秒
「まだ眠いのですか?お姫様?」

王子が梨華を抱きかかえたのだ。
これが本当のお姫様抱っこと言うものだろう。
王子は姫を抱きかかえると檻から観客の前へと再びゆっくり歩き始めた。
これはもちろん台本には入っていなかった。

もしここでロマンチックな音楽が流れていたら観客の隣同士の男と女は手を取り
うっとり見つめ合っていただろう。

「姫・・まだ目をさましてくれないのですか・・?」

王子は姫の閉じられた瞳を見つめながら語りかけた。
そして続けて言った。

「もう悪い魔女は倒しました・・安心して眼を覚ましてください・・」

そう言って王子は梨華の下半身を地に下ろした。
つまり梨華の体はその首に回っている王子の左手だけで支えられいる状態である。
そして王子は梨華の髪を右手で愛おしそうにかきなでた。
68 名前:カーン 投稿日:2002年11月03日(日)23時40分38秒
「――――――――んんっ・・?」

ここはどこだろう
光がまぶしい・・
それに体が不安定だ・・

少しづつぼやけた視界が一点に定まってきた。
何か・・私の目の前に・・人?
あ、だんだん近づいてくる・・

―――――――――!!

梨華の思考回路は再びショートした。

唇が・・誰かの唇と触れている・・
キス・・?
69 名前:カーン 投稿日:2002年11月03日(日)23時42分37秒
>>56 名無し読者様 どうもお待たせしました。
         また中途に更新しました。
         飽きずによろしくです・・
70 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月12日(火)12時30分52秒
続きプリーズ。
えらいところで終わっとるがな。
71 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月23日(土)17時37分22秒
続ききになるーーー
お待ちしてますw
72 名前:カーン 投稿日:2002年11月24日(日)10時59分18秒
「・・・・んんっ・・」

何か言おうとしたけどもちろん無理だった。
口元が完全に目の前の人に塞がれているから・・
ただ何とも言えない息苦しさだけを感じた。
その時は相手が誰かとか考えようともしなかった。
考えることができなかった。

しばらくすると舞台の幕がゆっくりと降り始めた。
そしてそれまで目の前の光景に見とれていた観客達の拍手が贈られた。

しかし当の梨華にはその拍手は届いていなかった。
ただ目を大きく見開きその不安定な体を目の前に人物に預けていた。

そして幕が完全に降りた。
と、同時に周りから監督、柴田やその他の関係者が梨華と王子に向かって
駆け寄ってきた。
それを確認した王子はゆっくりと梨華の口元から自分の唇を離した。

そして
「なかなか良い演技だったよ・・梨華・・」

梨華の耳元に唇を寄せ囁いた。
もちろん梨華には届いていない。
端から見ると見つめ合っているように見えるが梨華の視界は完全に真っ白である。
73 名前:カーン 投稿日:2002年11月24日(日)10時59分48秒
「ありがと〜あなたのおかげよ!」

監督は王子の前でひたすら感謝し続けた。
確かにこの劇の成功は王子の気転によるものだ。
王子はニコリと笑ってそれに応えた。

「梨華ちゃん?大丈夫〜?」

柴田がまだ王子様に支えられている梨華の目の前で手を振っている。
梨華の返答は沈黙である。

「まさか・・気絶してる・・?」
74 名前:カーン 投稿日:2002年11月24日(日)11時00分45秒
梨華がふたたび意識を回復した時・・
目の前には柴田だけがいた。
そこは保健室のベッドの上だった。

「あれ・・柴ちゃん・・?」
「また例の発作起こしたみたいだね・・とりあえず薬うっといたから・・」

柴田はそう言って注射を打つジェスチャーをした。

「・・ありがとう・・」
「もちろんみんなには気分が悪くなったみたいとしか言ってないから・・」
「うん・・」
「でも梨華ちゃん・・早く病院に行ったほうがいいんじゃないの・・?」
「うん・・」
75 名前:カーン 投稿日:2002年11月24日(日)15時31分07秒
柴田がさらに言おうとしたとき保健室に誰かが入ってきた。
その顔に梨華は見覚えがあった。

「ひとみちゃん・・」
「やあ、梨華ちゃん」

保健室の扉を開けた所に立っているのは確かにあの邸で出会った少女だった。
梨華は驚きで目を見開きひとみは出会った時と同じように笑顔だった。

「どうしてここに・・?」
「どうしてって・・」

梨華の言葉に今度は逆にひとみの方が困惑したようだ。
そして行き詰まった会話に柴田が入り込んだ。
「あの〜もしかして二人は知り合い・・?」
「あ・・ええちょっとしたきっかけで・・」
「そうなの?」

柴田は梨華の方を見て尋ねた。

「うん・・町で偶然・・」

梨華はとっさに思いついた嘘をついた。
もちろん家に忍びこんで知り合ったなど言えるわけがない。

「ふ〜ん・・・そうなんだ〜」

柴田は意味ありげに笑った。
76 名前:カーン 投稿日:2002年11月24日(日)15時32分01秒
「な、何よその笑い方は・・」
「別に〜梨華ちゃんに男の子の知り合いがいるなんてね〜」
「え・・!?」

驚きの声を上げたのはひとみちゃんだった。

「あたし女なんですけど・・一応・・」
「ええ!?」

さらに大きな声を上げて驚いたのは柴ちゃんだった。

「だって・・さっき王子様やってたし・・その恰好・・」

ひとみの服装は黒い革ジャンに黒のTシャツ、そして黒のジーパンだ。
そして髪は後ろで束ねられている。
確かに男っぽい女と言うより女っぽい男と言った感じである。
柴田の驚きはもっともだ。
77 名前:カーン 投稿日:2002年11月24日(日)15時33分23秒
「ちょっと柴ちゃん・・今何て言った?」
「え?」
「ひとみちゃんが王子様役・・?」
「そうだけど?」
「何かさ〜偶然この学園祭見に来たらさいきなり門のところで『王子様になりませんか?』とか言われちゃってさ・・あたし女だから断ったんだけど半ば無理矢理・・」
「あ、そうなんだ〜でもそりゃ間違えられちゃうよこの恰好じゃ〜。ね梨華ちゃん?」

私は自分の頭の中でいろんな事を一つずつ整理しはじめた。

ひとみちゃんは偶然この学園祭に来た。
次に王子様役のオーディションをうけさせられた。
そして王子様役に選ばれた。
私はお姫様として出演した。
王子様とお姫様はキスをした。
そして王子様はひとみちゃんだった。
ひとみちゃんは女の子。
私は初めてキスをした。

つまり・・
私は女のひとみちゃんにファーストキスを奪われた・・?

「・・嘘でしょ〜!!」

梨華の叫びが保健室に木霊した。
78 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月24日(日)15時36分04秒
>>70 名無し読者様 お待たせしました・・
          なかなか時間がないもんで感想有ったらどんどん下さいね。
>>71 名無し読者様 更新しました。
          おもしろいかどうかわかりませんが・・
          感想お待ちしております。
79 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月24日(日)20時47分57秒
面白い。
しかし、謎が多い展開だよね。
80 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月29日(日)21時36分44秒
続ききぼん

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