なちよし

1 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年10月06日(日)23時04分49秒
はじめまして!娘。の小説を書くのはこれが初めてで凄く緊張してます。
ここも初めてで一通りルールは読みましたが何かおかしいところがあったらいって下さい。
一応放置はしないつもりです。更新は遅くても10日以内にしたいと思います。
ご要望によってはエロもだします。
実は超はまってるなちよしで…。駄文ですが宜しくお願いします。
2 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月06日(日)23時09分55秒
「はぁーい。お疲れ様〜!」
ダンスの練習が終わり、緊迫していた空気が一気に緩む。ダンスの振り付けを教えてくれるまゆみ先生はいつもの厳しい顔から普段の顔に戻る。今日は新曲の振り付けの初のダンスレッスンの日だった。固まっていた13人がちりぢりになり、少数のグループに分かれる。
3 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月06日(日)23時10分39秒
ひとみは他のメンバーの波に紛れて、ある人物を探していた。
「よっすぃ〜、お疲れ〜。」
「あ!ごっちん、お疲れ!あのさぁ、安倍さん見なかった?」
「ん?なっちならさっき、まゆみ先生と話してたけど…。」
後藤が言い終わる前にひとみは走っていた。ざわついた人ごみの中を駆け抜けて、やっと目当ての人物の顔が見える。なにやら真剣な顔でまゆみ先生と話し込んでいる。
4 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月06日(日)23時15分38秒
「あ!安倍さん!…えと、まゆみ先生も…なに話してるんですか?」
二人の顔色を伺いながらひとみは半分、なつみの顔を見ながら言った。
「あ、吉澤…。ん〜、別になんでもないから。ほら、あなたもしっかりしなくっちゃ。」
ひとみとは目を合わせないなつみの頭をぽんぽん、と叩いてまゆみ先生は行ってしまった。なつみは相変わらず下を向き、バツの悪そうな顔をしている。
「あの…安倍さん、どうしたんですか?もしかしてまゆみ先生になんか言われたんですか?」
一瞬、泣き出しそうな顔をしたなつみだったが、すぐにその顔をひとみの見えない方へとくるりと回転させた。
5 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月06日(日)23時18分40秒
ひとみはなつみに対してどのように接すればいいのか分からないまま、何とか必死になつみの怒っているわけを聞きだそうとしていた。
「でももし、まゆみ先生になんか言われたんなら気にしないでいいと思いますよぉ。ほら、私もよく、怒られてるし…。他のみんなもよく怒られてるじゃないですか。安倍さんだけが気にしなくたって大丈夫ですよ!」
ひとみのそんな言葉にも振り向かず、なつみはそのまま自分の荷物が置いてある場所へと歩いていった。ひとみは、後ろでくくったその髪を振りながら後を追う。
6 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月06日(日)23時29分52秒
既にほとんどの他のメンバー達は帰ったようだ。なつみの荷物の少し離れた場所で飯田、矢口、保田がまだ喋っている。ひとみはそのメンバー達がこちらを気にしてないのを確認して、そっとなつみの耳に口を近づける。
「もしかして、私が原因ですか?」
帰り支度をしていたなつみの手がぱっと止まる。ひとみは小さなため息をつき、しゃがんでいるなつみの顔の前に膝を沈める。
「なっちぃ〜。うち何かしたぁ〜?」
なっち。二人きりの時にしか使わない呼び名。他のメンバーの手前、普段は安倍さんと呼び、敬語を使っているのだ。そのあだ名で呼ばれて、やっとなつみは顔を上げた。なつみの顔は…赤かった。
「よっすぃー…。」
「ちょっとぉ。二人ともまだいるのぉ?先行くから、最後、電気よろしくね!」
口を開きかけたなつみの声を、矢口の甲高い声が遮った。ドアの閉まる音がその後に続く。
7 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月06日(日)23時46分07秒
残された二人には沈黙だけが残った。固まってるなっちの手に、ひとみは自分の手を上から重ねた。
「私さ、もしかして知らない間になっちの事傷つけてた?」
顔を赤くしたまま俯くなつみに、ひとみはまた一つ小さなため息をつき、なつみの目を覗き込むようにしながら言った。
「うち…よく鈍感って言われるから、知らない間になっちに辛い思いさせてたら、その、無意識のうちになんかしてたのかもしれなかったら、謝るよ…ごめんね、なっち。」
「よっすぃーが謝る事じゃないべさ!」
なつみの声がホール中に響き渡る。はっと我に返り、え?というひとみの顔を見つめ、握られていた手をきゅっと握り返す。
「…よっすぃー、笑わないで聞いてくれる?なっちね、今日の練習でさ…。」
語尾の方でまた顔を下に向け、小さな声で続ける。
「…嫉妬してたんだ。」
やっと出た声は掠れていた。なつみの顔は真っ赤だった。
8 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月06日(日)23時47分10秒
「なっち、やっとよっすぃーと一緒に前で歌えるから嬉しかったんだぁ。だから今日の練習、期待してたんだけど、まさかあんな振り付けだったなんて…。」
なつみの言葉に、やっと原因が今日の練習にある事に気付く。と、同時に、なつみが何で嫉妬しているのかも分かった。
「なぁんだ、そんな事だったの。」
ひとみが大口をあけて肩の力を抜く。
「そ、そんな事だったの、じゃないべさ!あんなに顔を近づけて…しかも小川とだけじゃなくて、途中の踊りで石川とも、何か顔がくっつくし…。」
なつみは目を泳がせる。
「なぁ〜に?だからまゆみ先生に何か話してたの?」
「うん…。振り付けをもうちょっと変えて、顔を離せないですか、って…。」
9 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月06日(日)23時57分34秒
顔を真っ赤にして喋るなつみを、ひとみはにんまりとて見ながらすくっと立った。
「なっち、立って。」
え?と顔を上げながら条件反射的に立ち上がるなつみを、ひとみは思いっきり抱きしめた。
「なっちって可愛い〜!なんでそんなに可愛いんですかぁ?」
ひとみはいまだに顔を真っ赤にしているなつみに、自分の顔を近づけた。
「あ…。」
突然の不意打ちになつみはなすすべもなく、その身をひとみに預ける。
10 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年10月07日(月)00時07分03秒
短いですが今日の更新はここまでです。
この後エロをいれるかどうか思案中なんですが…。
それと凄く短くなりそうです。
娘。処女作で長編は難しそうだなぁ〜と。
それと書き忘れましたがリアル系のなちよしです。
でもリアルといってもあまり娘。の現実が分からないのでリアルの中での空想です。
というわけで、次の更新は明後日になりそうです!宜しくお願いします。
11 名前:よっさん 投稿日:2002年10月07日(月)12時38分47秒
なちよしだぁ〜。このCPって少ないですよね。
吉子大好きなんで、楽しみにしてまーす!
12 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月07日(月)20時30分48秒
少し長めのキスの後、ひとみはもう一度なつみを抱きしめながら言った。
「私が好きなのは…安倍さん…なっちだけですよ。」


二人で、手をつないで歩く帰り道。
外はすっかり冬になってしまい、なつみは繋いでいた手を、寒そうにひとみの腕に廻した。

「でもやっぱり納得いかないべさ。」
「んー。何がー?」
「つんくさん。なっちとよっすぃーの関係に気付いててもいいはずなのに、何でなっちまで男役にならないと駄目なんだべさ。」
「んー。別に深い意味はないんじゃん?それになっちが男役外れちゃうとソロもなくなっちゃうしぃ。」
「そ、それはそうだけど…。」
13 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月07日(月)20時31分45秒
「それに小川は新メンでまだ私の事なんて何にも思ってないだろうし。梨華ちゃんと顔が近づくっていったって一瞬の事だし。」
「それでも大分近づくべ!今日の練習の時もみんなに冷やかされてたっしょ。石川も何か顔赤くして、まんざらって感じじゃなかったし…。これから毎回、練習やテレビに出る度に顔が急接近するんだよ!」
なつみは廻していた腕を外し、自分の手と手を近づけて顔と顔が近づくような格好をしてみせた。
「んー。まぁ確かに、私と梨華ちゃんって世間ではラブラブカップルに見えるらしいからねぇ〜。」
14 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月07日(月)20時33分21秒

「!?」

なつみの顔が一瞬固まる。

「あはは!やっぱり安倍さんって可愛いですよねぇ〜!」
「こ、こら!年上をからかうでないべさ。」
「でもそれに…。」

ひとみは突然、叩かれていたなつみの手をとり、彼女の目を真剣に見つめた。

「私となっちだったら洒落にならないじゃないすか。」

そう言ってにっこりと笑い、顔を近づける。

「もしかして本番中、こうやって本当にキスしちゃうかもだし…。」

本日二度目のキスの味をあじわいながらひとみは言った。

「と、年上をからかうなって言ってるべさぁ〜!」

もう冬なのに、顔から蒸気をふいているなつみが叫ぶ。
15 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月07日(月)20時34分37秒
2001年、冬。二人のMr.Moonlightのドラマは、まだ始まったばかり。
16 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年10月07日(月)20時38分03秒
なんか文字数を思案してたら変な分け方になっちゃいましたm(−−)m
私って行と行の間にもっとスペースいれるべきですよねー。
もっと勉強します。
今日は更新できないかなって思ったんですが案外宿題とテスト勉が早く終わったんで…(苦笑)
学生は辛いです。でも多分、明日も更新できると思います。

>よっさん
 私もよっすぃ〜大好きです☆
 なちよし、探してもあんまりないから自分で作っちゃいました(笑)
 駄文で面白くないかもですが、頑張りますのでこれからお願いします〜。
17 名前:名無し 投稿日:2002年10月07日(月)21時09分34秒
なちよしですか!
続きが非常に楽しみです。
18 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月08日(火)20時38分46秒
次の日からもまた、新曲の「Mr.Moonlight〜愛のビッグバンド〜」の振り付けの練習が始まった。
なつみは、昨夜のひとみの言葉を信じながらも、やはり練習中はひとみが他のメンバーと顔が近づく度、内心冷や冷やしていた。

「あぁ!よっすぃ〜、そんな近づいたら…。
そんなかっこいい目で見つめたら…。
あ、あ!そんなとこ触っちゃ駄目だって!
あ、駄目!小川、完全にうっとりした目でよっすぃ〜見てんじゃん…。
今度、なんかの機会に小川を集中的に怒らないと駄目だべさ。
あ!次は石川と…。
…ってか、よっすぃ〜、かっこいい…。」



「なっち、なっちったら。」

ふと気付けば横に矢口が来ていた。

「まゆみ先生呼んでるよ。何、かおりんみたいに交信してんの?」

そういって小さな体を揺らしてきゃははと笑う。
なつみはひとみの事しか目に入ってなかった自分が恥ずかしくてたまらなかった。
19 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月08日(火)20時43分06秒
ずっとなつみの視線に気付いていながらも気付いてないふりをしていたひとみは、そんななつみを見て笑っていた。

「よっすぃー、なに笑ってんの〜?」

甘えた声を出しながらひとみの肩に手をのせてきたのは、上目遣いの得意な梨華だった。


「あ、梨華ちゃん。別になんでもないよ。」

そっけなくその場を立ち去ろうとするひとみに、梨華は目の前まで走っていき、今度は面と向かってひとみと立ち会う。

梨華の両腕は、ひとみの両肩に乗っていた。


「よっすぃー、何でそんなに冷たいの?私、最近ちょっと寂しいんだよ。
もう大分、家にお泊りに来てくれてないじゃん。」

梨華の伸ばしている両腕がだんだん短くなっていく。
ひとみの顔との間も、だんだんと縮まっていく。

梨華は、その目をいっそう上目遣いにして、小さな声で言った。
20 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月08日(火)20時44分28秒
「私ね、こないだ聞いちゃったんだ、まゆみ先生が話してたの。
 今度の新曲で、よっすぃ〜と雰囲気作って、いい感じに踊れるのは私しかいないって。

 何で小川があの役に選ばれたのか知らないけど、多分、
 私が小川の役だったらよっすぃ〜と似合いすぎて面白くないからかもねー。
 でも、あの振り付けではちゃんとよっすぃ〜の『お似合いの相手』になってるし。
 
 だからさ、私達ってさ…。」


梨華が一人、顔を赤くして指をいじいじさせている。


「ごめん、梨華ちゃん、何が言いたいのかさっぱり分かんない。
言いたい事があるならはっきり言ってくんない?」

ひとみは半ばうんざりとしたように肩に乗せられていた梨華の手を払う。


「あ、ごめんね、よっすぃ〜。えと、だからね、私が言いたかったのはね…。」
21 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月08日(火)20時46分19秒
「はぁーい、ごめんなさいねぇ。
えっと、取り込み中、悪いんだけど、よっすぃーにはちょっと先輩から注意しないといけない事とかがあるので、ちょっと中断させてもらうよ。」

なかば強引に二人の間を割って入ってきたのは、なつみだった。


「え〜っと注意って何ですか〜?安倍先輩。」


梨華のふくれた顔を横目に、なつみとひとみは部屋の隅っこまで来ていた。


「よっすぃー!気をつけるべさ!」

「え…?」

突然、なつみがひとみの肩をわしづかみにする。


「石川のやつ、絶対よっすぃー狙ってるよ。
さっきの会話おかしすぎるっしょ?よっすぃーもそう思わなかった?
このままだと石川、よっすぃーを押し倒しかねないような勢いだったべ!」


なつみの言葉を聞きながら、ひとみはまた「はぁ〜」とため息をつく。
22 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月08日(火)20時49分09秒
「なっちさぁ、そんなに心配になるんなら、私達の事みんなに言わない?
そしたら、仮に梨華ちゃんがうちの事を好きだとしても、諦めてくれるじゃん。
前々から思ってたけど、もう付き合って1ヶ月以上経つんだからさ、そろそろ言ってもいいんじゃん?」

ひとみの言葉に、顔色を変え、いきなり声を弱くするなつみ。


「そ、それはちょっと駄目だべさ…。」

「何で?何で私達の関係をみんなに秘密にしないと駄目なわけ?ちゃんとした理由を聞かせてよ。
もしかしてなっち、なんか隠してない?」


「え?べ、別に何も隠してないべさー。なんていうかさぁ、やっぱメンバー内でってやばいかもしんないしー…。」

「そんな事ないと思いますよ。中澤さんがいた時は、矢口さんといつも見せ付けるようにラブラブしてたじゃないですか。なっちだって知ってるでしょ。」


「あ、そういえばそうだっけー、あはは。なっち最近、物忘れ激しいんだよねー。」


「だから…!!」
23 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月08日(火)20時51分33秒
ひとみがまた何か言おうとした時に、まゆみ先生から集合の声がかかった。

なつみは安堵した顔をして、「あ、行かないと。」と苦笑いして先に走って行ってしまった。

結局なつみが何を隠してるのか突き止められず、何だか納得のいかないひとみだった。



と、その時メンバーが集まってる所から、物凄くきつい視線を感じた。

刺さるような、冷たい感じの、痛い視線。


思わず梨華かと思ってそちらを見たひとみだったが、梨華は全然違う方向を向いていた。



その時、梨華の横に立っている人物から妙な違和感を感じた。


真希だった。


真希の体から、なつみへ向けて異常なオーラが発されていた。
24 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月08日(火)22時13分36秒
結局、その時の真希の異常な視線の意味も分からないまま、時は過ぎていった。

あの日から、なつみは決まって「ごめん、用事があるから!」と言っていつも先に帰ってしまう。

仕事と仕事の合間の時間も、大体は梨華か加護に取り囲まれていてなつみには近づけない。

一応メールは毎日してるのだが、肝心な事は中々言い出せず、いつも他愛のないやりとりをしていた。

先に帰る理由を何度か聞いたが、いつも「ごめん!埋め合わせはするから。」という返事しか返ってこなかった。

なつみはドラマの仕事とかも兼ねていたので、その都合もあるのだろうとひとみは勝手に納得していた。

夜更かしが苦手ななつみに、中々夜中に電話する事も出来なかった。



なつみとの間は一向に進展しないにも関わらず、新曲をテレビ披露など、仕事だけはどんどん進んでいった。

一応それらを上々にこなしながらも、ひとみは踊っている最中に、やはり何かやりきれない違和感を感じていた。
25 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月08日(火)22時22分22秒
そんな時、やっとなつみと予定を合わせる事が出来た。

既に練習を始めているプッチモニの新曲が発売間近になると、それこそ中々なつみとの時間が合わなくなるから、なるべくその前に会っておきたかった。

会って、話をしたかった。このまますれ違いが続くのも、ひとみには耐えられなかった。



待ちに待った日がやってきた。

といっても、お互い一日中オフというわけではなく、約束は夜からだ。

その日はなつみの家に泊まる事にもなっていた。

なつみの家は一人暮らしだ。付き合って約1ヵ月半。

なつみの家に行くのはこれが初めてだった。


「ピンポーン。」


緊張しながらベルを押す。バタバタと走る音が聞こえて、それからドアが開いた。


「よっすぃー!待ってたよぉ〜!」

エプロン姿のなつみは、ひとみの目に新鮮に映った。
久しぶりに二人きりで会う。しかも今日は、なつみの家で一緒に一晩…。


「なっちぃ〜!!!」


気がつけば持ってきた手土産のケーキも放り出しながら、ひとみはなつみに抱きついていた。

「ちょ、よっすぃー苦しぃ〜〜!苦しいよぉ〜。」
26 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月08日(火)22時24分50秒
なんとも言えない幸せに包まれたひとみを出迎えたのはなつみの手料理だった。

「これ、全部なっちが?」

「うん、よっすぃーの為に、なっちちょっと頑張っちゃった!」

(くぉおおおっ!なっち嬉しい事言ってくれるじゃん!しかも超可愛い…。私って今、世界一幸せなやつかも…!!)

なつみの一挙一動にいちいち抱きしめたい衝動にからかわれながらも、久しぶりに二人っきりで過ごせる時間を、ひとみは心から喜んでいた。



ご飯も食べ、一通り片付けも終わって一段落ついた所で、ひとみはなつみの部屋に案内された。
女の子らしい、なつみらしい可愛い部屋。
きちんと整頓されていて、さっぱりしたような可愛らしいような、そんな印象があった。
27 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月08日(火)22時28分09秒
「それでさぁ、その時圭ちゃんがさぁ…。」

普段通りの何の変哲もない会話。それだけでひとみは幸せだった。
好きな人とこうやって寄り添って、手を繋いで、他愛のない会話が出来る。

それだけで、本当は良かった。


「あはは!まぁた圭ちゃんは、面白いよねぇ〜。」

話が一段落した所で、ひとみはずっと聞きたかった事を口に出した。

「所でさぁ、なっち。ずっと聞きたかったんだけど、なっちってごっちんと、その、喧嘩でもしてるの?」

一瞬、なつみの顔が強張った気がした。いや、ひとみの気のせいだったのかもしれない。
なつみはいつもの笑顔に戻って答えた。

「えぇー?私とごっつあんがぁ?何でそう思うのー?」

ひとみはその笑顔に少し躊躇しながらも、自分の感じてた違和感を思い出しながら説明した。

「何か歌の練習の時とか、その合間とか、全然なっちとごっちんが一緒にいるのを見た事がないなぁって。一回疑問に思ったら確かにそうだなぁって感じで。歌ってる時も二人ともソロだから一緒に前で踊ったりするのに、全然目も合わせないなって…。」

なつみの顔をちらっと窺うと、彼女の顔から既に笑みは消えていた。
28 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月08日(火)22時33分44秒
「なっちとごっちんってさ、こないだまで凄く仲良かったじゃん?ザ・ピ〜スの時ぐらいまでさぁ。私、よくごっちんに嫉妬してたんだよ。なーんてね!」

一気に雰囲気が暗くなってしまったのでひとみは、あははと笑ってみたがなつみの表情は変わらなかった。


「ごめんね、よっすぃー…。ちょっとさ…なっち、今は言えない。まだ言えないよ…。」


膝に顔をうずめ、か細い声でなつみは言った。
泣いてる、と気付くのに、そう時間はかからなかった。

ひとみは自分の言った事がそんなに悪かったかのかと自問し、答えは見つからなかったが、後悔した。
何が理由であれ、自分は好きな人を泣かしてしまったのだ。

そして、ひとみは、なつみを抱きしめていた。
29 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月08日(火)22時40分19秒
「ごめん…ごめんね、なっち。言いたくなかったら言わなくていいんだよ。別に、無理に聞いてないしさ。答えたくなかったら答えなくていいから。」

ひとみの胸の中で震えるなつみを、さらにきつく抱きしめた。

「何か、辛かった事…聞いてごめんね、なっち。うち、もうちょっと相手の気持ちとか、考えるよ。無神経、すぎたよね、ごめん。」


「違う!…よっすぃーは悪くないから…。よっすぃーは、凄く、優しいから。」

なつみはそう言いながら涙に濡れた顔を上げた。

(優しすぎるから…。)


「よっすぃー…。」


なつみの瞼がそっと閉じられる。涙に濡れた頬に、ひとみはそっと手を近づける。


唇と唇が触れ合う。いつものキス。でももう、大分してなかったような。


数秒後、ひとみはなつみの顔から自分の唇を離した。
なつみは少しだけ目を開け、「よっすぃー…。」と呟いてから再び目を閉じた。

なつみが何を求めているのかが、ひとみには分かった。

ひとみの心臓は今までにないぐらい、どきどきしていた。
30 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年10月08日(火)22時46分05秒
今日の更新はここまでです(−−)
いい所で終わってますが、結構書いたので今日はここが限界。
次の更新は、明日か明後日になると思います。
何かごっちんが出てきたりして少し痛い系になっちゃうかも…。

>17 名無しさん
 はい〜、なちよしです!
 駄文ですが、これからも宜しくお願いしますm(−−)m
31 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月09日(水)19時37分58秒
再び、ひとみは自分の唇をなつみの唇に重ねる。

ふんわりとして、暖かい。

ひとみはなつみの肩に手をかけ、こちらに引き寄せた。

なつみの口が少し開かれる。
自然とひとみも自分の口を少しあけ、舌を絡ませる。

ひとみにとって初のディープキスだった。


(なっち…)


ひとみは少しだけ目を開け、目の前にあるなつみの顔を見た。
閉じられた目から、長くて綺麗な睫毛が伸びている。
頬には先ほどの涙の跡が残っている。


「よ、っすぃー…。」


ひとみの唇が離れた後、なつみは息切れしながら名前を呼んだ。

ひとみの方も、鼓動が早くなり自然と息が荒くなる。


「なっち…。私、なっちが…なっちが欲しい。」


ほとんど唇が触れ合いそうな所でひとみはそっと呟いた。

二人はそのままおもむろにベッドに上がる。


その間もずっと唇は重なったままだ。
32 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月09日(水)19時42分24秒
「な、っちぃ…。」


ひとみは息を荒くしながら声を出した。

ベッドには自然とひとみがなつみの上に覆いかぶさる格好になり、激しくなつみの唇を奪う。
こういった行為は初体験のひとみだったが、ある程度の事は知っていた。


ひとみの右手が自然となつみの胸に触れる。

「あっ…!」


先端にある固いものに触れた途端、なつみの体は反応していた。
どこかやりきれないような表情で、体をこおばらせている。

なつみが出す初めての声に、ひとみの体は物凄く熱くなっていた。

理性などほとんど残っていなかった。


ひとみはなつみと唇を激しく重ねながら、両手で胸を揉んでいた。

ブラウスに手をかけ、一つずつゆっくりとボタンを外していく。


なつみの綺麗な白い肩が姿をみせた。


その美しさに、ひとみはしばらく見とれていた。



「あ、あんまり見ないで…。恥ずかしいさぁー。」


「あ、ごめん…なんかあまりにもきれくて…。なっち、すごい綺麗…。」
33 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月09日(水)19時45分58秒
ひとみは今にも壊れてしまいそうななつみの背中に腕を廻した。
ブラのホックを外すのに、少々時間がかかってしまう。

(あれぇ〜。おかしいなぁ。自分で外す時は簡単なのに…)
少し焦り始めた頃、やっと外せた。

真っ白なブラの間から、透き通るように白い胸が表れる。
その先端は既に突起していた。ひとみは迷わずその胸に自分の顔を寄せた。


「あっ…!」


なつみの体が今まで以上によじる。
何ともいえない快感に、なつみはどうしていいのか分からないといった感じだ。

ひとみはそんななつみの顔を見ながら左手で左胸を攻めるのも忘れなかった。
右手は右手で右胸を揉みながら、舌先をその先端に這わせる。
時々、舌を円状になめるように動かし、時々はその突起を口の中でころころと転がした。


「ぁっ…!や〜っ…、んっ…。」


ひとみの体はなつみの喘ぎ声を聞く度に熱くなっていた。
既に自分も物凄く感じていた。

確認しなくても分かるくらい、自分のそこは熱く、濡れていた。
34 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月09日(水)19時58分42秒
再びなつみの唇を塞ぎながら、ひとみの手はだんだんと下方へ移動していった。

なつみも自分と同じように感じてるはず。

そう思いながら、手をスカートの中にいれた。



びくっ!



なつみの体が硬直する。


4歳年上の先輩でも、やっぱり緊張するんだろうか――


ひとみは、自分も緊張していたため、すぐにはその部分に触れず、なつみの反応を伺うに太ももをさすってた。

ひとみにとって全てがはじめてだった。
こんな事を、自分が他人にしていいのかさえ分からなかった。
だが、それ以上になつみが欲しかった。


その手がほとんどなつみの部分に触れようとしていた時、彼女の様子がおかしい事に気付いた。
さっきまで快楽に満ち、体の全てをひとみに託していたはずのなつみの体が、表情が、変化していた。


「…なっち?」

ひとみは喉を振り絞って声を出した。
もしかして自分は何か間違った事をしてしまったんではないだろうか。
大きな不安がひとみをよぎる。
35 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月09日(水)20時00分31秒


「ごめん…よっすぃー…。いいの、なんでもないから。だから、続けて…。」


そういいながらなつみは片手で自分の両目を覆った。

ひとみには何が何だか分からなかった。

一体何がなつみを苦しめているのか。

自分との行為はなつみにとってどういうものなのか。


ひとみには何も分からなかった。
だからひとみは、そのままベッドから降りた。

「よっすぃー…?」

ひとみはなつみに背を向け、自分の顔を二度、ぱんぱんと叩いてから笑顔で振り返った。

「なっち、今日はもう、寝よっか!」

なつみはそんなひとみの笑顔を見て、また泣いた。「ごめんね、ごめんね。」と何度も呟き、その肩を抱かれながら。


ひとみの優しさが痛かった。

優しくて優しくて、優しすぎるから、甘えてしまって。

傷つけたくなくて。

自分がどんどん汚くなっていくようで。

ただ、彼女の優しさだけは、彼女だけは、汚したくなかった。


失いたくなかった。
36 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月09日(水)20時03分40秒

結局、その日はなつみのベッドで二人で寝た。
ひとみは何も聞かなかった。
聞いたら何かが壊れてしまいそうな気がした。
ただこうして、自分と一緒にいてくれる事、気持ちに答えてくれている事。

自分の腕の中で寝息をたてているなつみを見ながら、今はそれだけでいいと、ひとみは思ってた。
37 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年10月09日(水)20時08分04秒
今日の更新終了!
なんかいつの間にか安倍さんがわけわかんなくなってる…。
しかもよしこ視点になってる?何か滅茶苦茶だなぁ〜^^;

ちょっと思ったけどなちよしヲタっているのかな?(^^;
自分は結構はまってるんだけど…やっぱマイナーだしなぁ(−−;
38 名前:shio 投稿日:2002年10月09日(水)21時13分10秒
とってもいいです。
これからも、楽しみにしてまーす。
39 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月09日(水)22時43分02秒
自分はなちよしではなかったんですけど、はまりそう(w
まじ、いいです!
期待してます。
40 名前:17 投稿日:2002年10月10日(木)16時58分35秒
よいです!
なちよしヲタがマイナーでもいいんです(w
これからもお願いします!
41 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月10日(木)20時51分54秒
思っていた通りプッチモニの仕事が忙しくなり、それから暫くはすれ違いが続いた。
普段はメールをし、お互いの仕事が思ったより早く終わった夜には電話もしていた。
この前の未遂で終わった時の事についてはどちらも話し出さなかった。

ひとみは、なつみを信じて待つしかなかった。


(でも私って、なっちの事、実は全然知らないんだよな。)

最近ひとみは、よくそう考える。
先晩の事以来、ひとみはなつみの事ですっかり自信がなくなっていた。

もともと、告白したのはひとみからだった。
娘。に入った時からずっと想っていた。
なつみの事に関してはいろいろな噂が飛び交っていた。
その中に、ひとみの信じたくないような物も沢山あった。
でも、ひとみは気にしなかった。

なつみを信じていた。
自分の好きななつみを、自分の前で微笑んでくれる彼女を、信じていた。
だけどそれに自信がなくなってきた。
信じたいんだけど、信用したいんだけど、不安ばかりが胸に積もっていく。

なつみが自分に何を隠しているのか、自分の事を本当に好きでいてくれてるのか。
なつみの過去に何があったのか。

ひとみの中で支えていたものが、音を立てて崩れかかっていた。

42 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月10日(木)21時02分28秒
「お〜い、よっすぃ〜!なに交信してんの?」

隣からかかった声に、ひとみははっと我に返る。

(そうだ…今はリハーサル中だったっけ。)


「ねぇ、だからよっすぃ〜さぁ、後藤の話ちゃんと聞いてた?」
「え?あ、ごめん、なんだっけ。」

「もう。だからさぁ、よっすぃ〜、今日の夜、後藤んちおいでよ。」

「へ?」

(何々?一体どっからそんな話になったの?)

「だからさぁ〜、よっすぃ〜、今日は両親が用事かなんかで家にいなくって、弟と二人で寂しい夕食って言ってたじゃん?だから後藤んちに来て、一緒にご飯食べようよ!夕食ご馳走したげるよ〜。」
「え!い〜って。ごっちんのお母さんに悪いもん。」

「いいからいいから。こっちの事は気にしないで。はい、んじゃ決まりね〜。」


半ば強引に決められた事だったが、悪い気はしなかった。
今日はなつみは夜まで仕事だ。
家で一人で夕食を作って弟と食べるより、全然気が晴れる。
久しぶりに真希の家にも行きたかった。
43 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月10日(木)21時13分00秒
ひとみはなつみにこの事をメールするかどうか迷った。
だが、この前のなつみの反応から、真希とはどうやら喧嘩してるっぽいので、なんとなくやめた。

(また嫉妬されても困るしね…。)

なつみが、自分と真希の関係についてあれこれ聞いてくるのを想像する。
自分で思いながらも、そんな嫉妬してくれるなつみが凄く可愛く思えた。


予定時間より少し遅れて仕事が終わり、ひとみと真希は一緒に同じ家へ向かった。
真希の家は普通の一軒家よりも大きく、いつもすみずみにまで掃除が行き届いていてすっきりとしている。


「はぁ〜。本当、ごっちんのお母さんって料理の天才だよね〜!」
真希の部屋に入りながらひとみは言った。

「そんな事ないよぉ〜。あ、はい、よっすぃ〜ここに座って。」

ひとみは久しぶりに入る真希の部屋を見渡しながら、その手に促されてベッドの上に腰掛ける。

「え〜っと明日も仕事だったよね?」
言いながら、真希もその横に座る。

「うん。朝からだったはずだよ。」

「そっかぁ〜。…ならもう、本題に入っちゃわないとね〜。遅くなっちゃうしね〜。」
44 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月10日(木)21時19分59秒

「本題?」

「うん。実はさぁ、今日はちょっと、よっすぃ〜に聞きたい事があったんだ〜。」

そう言って真希の表情が一瞬固くなる。
真希がこうやって改めて何かを言い出すのを見るのは、ひとみにとって初めてだった。

「最近気になってたんだけどさぁ〜。よっすぃ〜って今、付き合ってる人とかいるの?」


「え?」


突然の真希の問いかけに、ひとみは面を食らった。
プッチモニに加入して以来、真希とは仲良くやってきたが、彼女がこういう話を持ち出すのは初めてだった。
誰がどう見ても、昔、真希は市井と付き合っていたし、市井が脱退して真希が相当なショックを受けているのも一目瞭然だった。

真希に恋の話をするのはきっと辛いだろうし、自分もなつみへの想いは一人でひっそりと想っていたかった為、ひとみの方からこういう話を持ち出した事はなかった。
幸い、真希の方からもしてこなかった。
45 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月10日(木)21時27分26秒

「ん〜。一応……いる、けど。」

ひとみはなつみの言ってた「メンバーにはまだ打ち明けないでほしい」という言葉を思い出しながら、少し小さめの声で言った。

「…ふ〜ん。やっぱりそうなんだぁ。何か最近のよっすぃ〜、雰囲気変わったなぁって後藤、思ってたんだよねぇ。」

「え?そう?そんな分かっちゃう?」

「うん、分かっちゃう分かっちゃう。で、相手は誰なの?」

真希はさらっと聞いてきたが、ひとみにとっては聞いて欲しくなかった質問だった。


ひとみは迷っていた。

別に真希に口止めしといてもらえば、一人ぐらい言ったっていいかな、とも思っていた。
もしかしてなつみは、みんなに冷やかされるのが嫌なだけかもしれないし…、などと思いながら、ひとみの口は勝手に動いていた。

「う〜ん。ごっちん、内緒にしといてくれる?」

真希がこくっと頷くのを見てから、ひとみは決心し、小さな声で言った。



「実は私…安倍さんと、付き合ってんだ。」

46 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月10日(木)21時34分16秒


「え…?」


今までからかうような目つきだった真希の顔が変わった。


「あ、やっぱりびっくりする?そうだよねぇ〜。あんまりそういう風に見えないもんねー。」

ひとみは少し照れくさそうに頭をかいた。
だが、ひとみは内心嬉しかった。
やっと誰かになつみとの関係を話す事が出来た。
本当は世界中のみんなに、「なっちは私の彼女です!」と叫びたいぐらいだった。

「のろけになっちゃうかもしれないけどさー、なっちって可愛いんだぁ。あ、本人の前ではうちは『なっち』って呼んでるんだけどね。嫉妬とかしちゃってさぁ。なんか愛されてるっていうか〜。」

指を絡ませながら、ひとみは幸せそうに言う。
真希の顔が硬直しているのにも、気付いてない。


「…ははは。あはははは!!」

突然、真希は天井を見ながら笑い出した。

「え?ごっちんどうしたの?何がおかしいの?」

「え、あはは…いやぁ、ごめんごめん。なんかおかしすぎて、涙出てきちゃったよ。」

お腹をおさえながら真希は言う。そんな真希を見て、ひとみは首をかしげる。

「あれ?よっすぃ〜、知らなかったの?なっちって、超有名な遊び人なんだよ。」
47 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月10日(木)21時43分33秒


「は?」


思いがけなかった真希の言葉に、ひとみは自分の耳を疑う。

「あれぇ〜。本当に知らなかったんだぁ。4期メンバーにはまだ知れ渡ってないのかなぁ。あ、もしかしてよっすぃ〜、なっちの事本気?違うよねー?よっすぃ〜も遊びでしょ?」

「え?な、何いってんのごっちん。悪い冗談やめてよ〜。うちとなっちがいくらラブラブそうだからって…。」


「冗談なんかじゃないよ。」

笑って誤魔化そうとしていたひとみに、真希はぴしゃりと言い放った。
真希の顔からはもう、笑みは消えていた。

「なっちは昔からね、人を本気で好きになる事が出来ないんだよ。後藤も裕ちゃんとかからいろいろ聞いたんだけどね。ほら、なっちって上京してきた時、まだ16だったじゃん?それでいきなりモーニングのソロ奪い合いみたいなのさせられてさ。裕ちゃん言ってたけど、やっぱりあんな若さでモーニングの先導をひっぱっていくってのは相当ストレス溜まって、相当辛かったんじゃないかって。」

後藤も今、16なんだけどね〜、ときゃははと笑いながら言う。
48 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月10日(木)21時53分41秒
「やっぱり実家離れてさ、ずっと情緒不安定みたいらしかったんだ。裕ちゃんが気付いた時には、なっちは特定の人とか決めないで、人と付き合ってたんだって。」

「…特定の人を、決めないで、付き合う…?」

「誰とでもHするって事だよ。」

やっと振り絞って出されたひとみの言葉をまたまた真希は真顔で跳ね返す。

「特に後藤が入ってきた時には、荒れてたね。ふるさとの売り上げが良くなかったのは、自分のせいだとか思い込んでた。」

ひとみは自分の耳を塞ぎたかった。
どうせなら耳が聞こえなくなればいいとも思った。
真希が発している言葉を、これ以上、一つも聞きたくなかった。
だが、ひとみの体はまるで金縛りにでもあってるように動かなかった。

「…でもね、実は一人だけ…一人だけなっちが、多分今までで一番、本気になった人が、一人だけいるんだ。」

後藤が目を落とし、トーンを低めて言う。その言葉に、ひとみの凍り付いていた心が動く。

「え…?それって、それってもしかして…!」


「…なっちが…なっちが、よっすぃ〜と付き合う前に、付き合ってた人だよ。」
49 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月10日(木)21時59分22秒

「え…?」


自分の思っていた事と全然違う言葉を発する真希の顔を、ひとみは凝視した。

「…その人とも、気持ちのすれ違いで別れちゃったみたいなんだけどね〜。なっちは、まだ好きだったのに、小さな誤解で別れちゃったんだよね。なっちはまだ、その人の事を想ってるっていうのに…。」

遠くを見つめながら言う真希に、ひとみは何も言えなかった。

次の言葉を聞けば、自分の中でぐらぐらになりながらも、まだ支えられていた、信じていたなっちへの気持ちが、壊れてしまいそうだったから。
だがひとみは、真希にストップをかける事も出来なかった。


「…その、付き合ってた人っていうのは…。」



チャラリラ〜チャラリ〜♪



その時、部屋中漂う緊張感を全て絶つように、携帯の音が鳴った。
音は、ひとみの鞄の中から聞こえてくる。

「あ、ちょっとごめん…。」

張り詰めた空気とは無関係に、携帯の音は次第に大きくなっていく。

携帯のスクリーン画面には、「なっち」と書いてあった。
50 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月10日(木)22時07分13秒
ひとみは一瞬迷った後、無視するわけにもいかないので通話ボタンを押した。


『ハロー、よっすぃー?』

携帯を通して、なつみの元気な声が聞こえてくる。

「あ…うん、なっち。どうしたの?仕事は?」

なっちという言葉を聞き、真希の顔が警戒しながらこちらを向く。

『あ、うん。実は今日、思ったより早く終わったのさー。何?よっすぃー何か元気ない?』

「え?いや、ううん、そんな事ないよ。」

『それならいいんだけど…。えと、だからさー、よっすぃー今日、家で弟と二人きりで寂しいって言ってたっしょ?だから優しいなっちが電話してあげたのさー。』

なつみの言葉に、胸が締まる。
普段なら、こんな言葉を言ってくれるなつみが愛しくてたまらないのに…。

「あ、ごめん、なっち…。ありがたいんだけど、実は今、ごっちんちに来てて…。」

電話の向こうでなつみが『え?』というのが聞こえる。

その瞬間、ひとみの携帯は彼女の手の中から消えていた。


「あ、なっち〜。久しぶり。誰だか分かるぅ〜?後藤だよ、ご・と・う。」


真希が電話を取ったと分かったのは、そのすぐ後だった。
51 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年10月10日(木)22時19分48秒
今日の更新は中途半端ですがここまで…^^;
ちょっと宿題がたまってて…。

何だかどんどん痛い系に進んでいってる気がする…。
それと安倍さん、あなたの過去を汚してしまってごめんなさいm(−−)m

沢山のレス有り難うございます!
レスがくるとやる気が出ます。めっちゃ嬉しいです。

>>38 shioさん
 有り難うございます!やる気が出ました。
 これからも宜しくお願いします!

>>39 名無し読者さん
 なちよしじゃなかったのにはまりそうってかなり嬉しいです(;;)
 一人でもなちよし好きさんが増えてくれたならと思ってる今日この頃(−−)
 これからも宜しくお願いします!

>>40 17さん
 なちよしヲタがマイナーでもいいですか?
 そっか、いいですよね。
 マイナーだからこそ、なちよしなのかもしれないし(謎)
 これからも宜しくお願いします!
52 名前:ななし 投稿日:2002年10月10日(木)22時44分30秒
非常に面白く楽しみに読んでるんですが‥‥
姉が弟しかいなくて寂しいようなら、弟の方はなおさらなのでは。
ねーちゃん早く帰ってやれよ。
53 名前:名無しです〜 投稿日:2002年10月11日(金)23時37分37秒
なちよし、こんなカップル待ってました!!!
なちよし最高!!!
がんばってください!!!!!
54 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月12日(土)20時41分42秒
「あれ〜?なっち〜、久しぶりなのに冷たいじゃん。後藤、なっちが最近冷たいから寂しかったんだよ〜。でもさぁ、何か聞いちゃったんだけど、誰かさんには凄い優しくしてるみたいじゃ〜ん。」

どうしていいか分からないひとみの方を、真希はちらっと一瞥してから、

「でもなんかさぁ〜、その子、なっちの事本気みたいなんだってぇ〜。だからさぁ、可愛そうだし〜、いい加減やめちゃえば?どうせ本気じゃないんでしょ。」

真希の一言一言がひとみの耳に突き刺さる。
電話の向こうでなつみがどういう反応をしているのかが物凄く気になった。
だがそれ以上に、はじめてみせる真希の冷たい態度に大きなショックを受けていた。


「え?なになに〜?何言ってるのか、後藤よく分かんないな〜。最近耳が遠くてね〜。」

電話ごしに、真希がきゃははと笑う。


「え?よっすぃ〜に?そっかぁ。後藤とは電話で喋るのも嫌なんだね〜。」

言った途端、ひとみにぱっと携帯を差し出した。

「なっち、何か後藤と喋るの嫌みたい。よっすぃ〜と変わってだって。」

真希は声を低くして言った。その顔からは何の感情も読み取れなかった。
55 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月12日(土)20時50分38秒
少し躊躇して、ひとみは電話を受け取った。


「もしもし…。」

自分でも分かるくらい、声が沈んでいる。
ひとみの中で支えてきていたものが、今まさに崩れようとしていた。


『…よっすぃー。なっち、今からそっち行くから…。』

電話の向こうの声も、聞き取れないくらい小さかった。

「え?こっちに来るって…どういう事?」

『なっちが、よっすぃー迎えに行くから。…そこで、待ってて。』

バイバイ、という言葉を最後に電話は切れた。
ひとみの思考回路も、止まっていた。


「…なっちが、今からここに来るって…。」

暫くして、ひとみは言った。頭の中は混乱していた。

「ふぅ〜ん。何しにくるの?」

「うちを、迎えにって…。」

「そっか〜。優しいじゃん。まぁ、なっちんちから後藤んちまで、たったの一駅だしねぇ〜。」

普通に会話をやり過ごす後藤に、ひとみはいつしか苛立ちを覚えていた。
56 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月12日(土)20時59分35秒
「ねぇごっちん、一体何がどうなってるの?!何であんなひどい事、私にもなっちにも言ったの?何でなっちはごっちんちを知ってるの?私…わけわかんないよ!!!」

最後には怒鳴り口調になっていた。
ひとみの中で抑えていたものが、全て爆発したみたいだった。

「ん〜、何でなっちが後藤んちに来るのかは、後藤も分かんないけど〜。別になっちが後藤んち知ってたって普通じゃない?これでもよっすぃ〜より、なっちとは付き合い長いんだよ。」

ひとみとは打って変わって、相変わらず普通の口調で真希は答える。

「でもだから、ごっちんとなっちは何が原因で喧嘩なんか…。」


「喧嘩なんかじゃないよ。」

遮るように真希は言った。相変わらず、顔は無表情だ。
なつみと喋った後から、真希は一度も笑みを見せていない。
冷たいオーラだけが伝わってくる。
57 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月12日(土)21時00分18秒

「ただの…ただの喧嘩なんかじゃない。これは…復讐。」

「え?」

最後の方だけ声が小さすぎて、ひとみの耳には届かなかった。


「後藤さ、もう、裏切られるのも、捨てられるのも、どっちも嫌なんだ〜。」

一つ一つ、語句を区切りながらそう言った後、真希はにっこりと口元を緩めてひとみを見据え、そして言った。


「前、なっちが付き合ってたのって、後藤なんだ。」


瞬間、ひとみの中で支えていたものが、完全に崩れ落ちたような気がした。
58 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月12日(土)21時05分49秒
ひとみの頭の中は真っ白だった。

今ひとみは、真希の家の洗面所の鏡の前にいる。
水で顔を洗っていた。
少しはさっぱりして、今起きている現実を洗い流してくれるかなと思ったのだが、無理だった。

―なっちは誰にも渡さないからね。

頭の中で、先ほど言っていた真希の言葉が繰り返される。

―二人だけ幸せになろうなんて…許さないんだから。

また、水を出した。
それでまた、顔を洗う。
本当はいっそ、頭から水をかぶりたかった。

(なっちは誰にも渡さない…って?どういう事?今付き合ってんのは私なんだよ!ごっちんのものでもなんでもない。なっちはなっち…私の彼女なんだから!)

胸中で叫んでみるが、真希本人の前では言葉にならない。
真希からは異様なオーラは発されていた。
ひとみの心を刺すような、射るような。
やっぱり、あの練習の時に感じた冷たい視線は真希だったのだ。
ひとみにとってそれは、恐怖以外のなんでもなかった。
取り合えず、真希と同じ空間にいるのに耐えれなくなり、洗面所まで逃げてきたのだ。


その時、ひとみのポケットの中から携帯が鳴った。
メールの着信音だった。

『もう、家の前。』

なつみからだった。
59 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月12日(土)21時18分05秒
恐かったが、仕方ないので取り合えず真希に、なつみが来たと報告をし、真希のお母さんに夕食の礼を言ってから玄関に向かった。
その間、二人は何も喋らなかった。

真希が、ドアノブに手をかける。
ひとみは緊張していた。


「よっすぃー!…と、ごっつあん…。」

急いで家を出てきたのだろう。
なつみの髪は乱れていた。

「ごっつあん、なんて今更やめてよ。よっすぃ〜には後藤から全部話しといたから。」

一瞬目を丸くしたなつみだったが、下を向きながら「そっかぁ…」と呟きながら手で髪を触った。
ひとみとは目を合わせようとしない。

「真希、ごめん。なっち、今よっすぃーと付き合ってんだ。…だから、よっすぃーを迎えにきたんだべさ。」

なつみ口から出た『真希』という呼び捨てに、ひとみの心は締め付けられた。
60 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月12日(土)21時18分40秒
何も言わない真希を横目に、なつみはひとみの方に顔を上げた。

「よっすぃー、帰ろ!」

なつみは微笑んでひとみにそう言った。
その笑顔があまりにも優しくて、ひとみの心をいっそう締め付けた。

今にもなつみを抱きしめたかった。
そうすれば、この不安を全て消してくれるような気がしたから。
なつみのその優しい笑顔を、失いたくなかった。
61 名前:二人のMr.Moonlight 投稿日:2002年10月12日(土)21時26分59秒

二人が家を出て行ってから、真希は部屋に戻り自分の携帯に手を伸ばした。
慣れた手つきでかけたい相手を見つけると、発信ボタンを押す。


「もしもし、後藤だけど。」

数回目のコールの後、真希は言った。
部屋の中には真希の声しか響いていない。

「やっぱり、よっすぃ〜はなっちと付き合ってたみたい。」

ずっと崩れない無表情のまま、電話の相手に言い放つ。
真希は、相手の反応を窺ってから、

「はは、大丈夫。後藤に任せてよ。」

やっと口元に笑みを浮かべながら言った。

「よっすぃ〜の事好きなんでしょ?モノにしたいんでしょ?なら、後藤に協力してくれるよね。」

口元に浮かべた笑みを消さないまま、相手の応対を待つ。

「おっけ〜。そうこなくっちゃ。それじゃぁ、また連絡するよ。」

じゃあね、と付け加え、電話を切った。


真希が切断のボタンを押す一瞬前、携帯の画面には、『梨華ちゃん』という文字が映し出されていた。

62 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年10月12日(土)21時35分25秒
今日は短いですがここまで。
何か暗いし痛くなってきてるから書くのが難しい〜(−−;
こないだ初めてエロを書いた時も時間かかったけど、これも結構精神使いました。
何か暗いの書いてるとこっちまで疲れてしまった…。

レス有り難うございます。私の心の支えです。

>>52 ななしさん
 おお!弟の指摘有り難うございますm(−−)m
 この指摘を見た後に「しまったぁっ!」と思いました。
 まじ、すっかり忘れてました。
 どっかでフォローを入れようかと思ったんですけど、雰囲気壊れそうなんでたぶん入れないです…。
 でもまじで、指摘有り難うございました!
 これからもいろいろ矛盾が出てくると思うんですが…宜しくです。

>>53 名無しです〜さん
 なちよし最高ですよね!(笑)
 もう、このカップル大好きなんです(−−)
 駄文ですがこれからも宜しくお願いします!
63 名前:破局 投稿日:2002年10月13日(日)12時11分43秒
帰り道が非常に長く感じた。
寒さのせいもあってか、空気が重苦しい。
真希の家を出てからまだそんなに歩いてないのに、二人の間で交わされる沈黙は永遠のようだった。

ひとみは何を話せばいいのか迷っていた。
そういえば弟を家に一人置き去りにしてる事を思い出した。
あまりにも場違いな事を考えが頭に浮かび、自嘲した。
この現実から少しでも目をそらしたいのかもしれない。


「よっすぃー…。真希から、全部聞いたんだってね。」

なつみの声に、現実に引き戻される。
沈黙を破ったのはなつみだった。

ひとみが返答に困っていると、なつみは目の前を指さして言った。

「ちょっと、ここの公園寄っていこ?なっち、よっすぃーにちゃんと話さないといけない事があるからさぁ…。」

ひとみはこれから起きる現実を察して、心が緊張した。
64 名前:破局 投稿日:2002年10月13日(日)12時15分39秒
近くにあった自動販売機でホットの缶コーヒーを二つ買い、二人はベンチに腰掛けた。
周りには誰もいない。


缶コーヒーに目を落としながら、なつみは少し笑いながら口を開いた。

「よっすぃー、真希には何、言われた?なっちの昔の事、全部聞いちゃった?」

ひとみも缶コーヒーに目を落としながら言った。

「…なっちが、私の前に、ごっちんと付き合ってたって事…。」

声を出すだけで精一杯だった。
頭の中はもやもやしていた。
自制しなければ、泣きながらなつみに質問を聞きまくってしまいそうだった。


「それだけ?」

「…うん。」

ひとみには、そう答える事しか出来なかった。


「そっか…。よっすぃー、ごめんね。大事な事なのに、話さなくって…。本当、ごめん。」

そんななつみに、ひとみは向き直って言った。
65 名前:破局 投稿日:2002年10月13日(日)12時18分28秒
「何で?!何でなっちが謝るの?!ごっちんとは、もう終わったんでしょ?関係ないんでしょ?私は、過去の事なんて気にしない。今のなっちでいい!今、私の事が好きって言ってくれてるなっちで、いいから。昔の事なんて、私は気にしない!それなのに、何で…。」

謝るなつみが、ひとみには悲しかった。
堪えていた感情が、一気に噴出した。
思いっきり、泣いてしまいたかった。

だが、ひとみが涙を流す前に、なつみの方が先に涙を流した。

「…ごめん。ごめんね、よっすぃー。本当、ごめん。なっち、ずっと考えてた。家から真希んち行く間、ずっと考えてた…ごめん、よっすぃー。」

なつみの言ってる事がよく分からなかった。
泣きながら謝る彼女を見て、こんな事が前にもあったのを思い出した。
ひとみとの行為になつみが拒否反応をしたあの夜だった。

肩を震わせながら泣くなつみを、ひとみは抱きしめる事は出来なかった。
自分も相当参っていた。
ただ、次のなつみの言葉を待つしかなかった。
「今なっちは、よっすぃーの事が好きだから、大丈夫だよ。」
そう言ってくれる事を信じていた。
66 名前:破局 投稿日:2002年10月13日(日)12時21分48秒
だが、次になつみの口から発された言葉は、ひとみの期待を完全に裏切るものだった。


「…よっすぃー…距離をおこう。」


え?というひとみの顔を横目に、なつみは続けた。

「ごめん、よっすぃー…。本当になっち、勝手だけど…ちょっと距離をおいて、一人で考えたいんだ…。」

果たしてそれがひとみの耳に届いてるかは不明だった。


「真希には、なっちから告白したんだ。なっちは真希の事が大好きだった。なっち、その時いろんな人とも付き合ってたんだけど、心からずっと想ってたのは真希だけだった。」


(やめて…。)


「でも真希は紗耶香と付き合ってた。真希が紗耶香を心から好きだったのも知ってた。でもなっち、真希が幸せならそれでいいって思ってた。遠くから見るだけで、それでいいって…。それ程、なっち、真希の事好きだった。」


(聞きたくない…。)


「でも、二人は別れた…なっちはずるいから、紗耶香の変わりでもいいから、って思って、真希に告白した。真希はOKしてくれて、それから付き合う事になって…。」
67 名前:破局 投稿日:2002年10月13日(日)12時24分08秒


「やめて!!!!!」


自分でもびっくりするくらい大きな声を出していた。
ひとみは耳を塞いでいた。
塞いでいても、なつみの声が聞こえてきた。
ひとみはそれ以上、聞いていたくなかった。

「…ごめん、なっち。私、おっきな声、出すつもりじゃなかったんだけど…。」

ひとみはそう呟いてから、びっくりしてこちらを見つめるなつみに、耐えきれずに聞いた。

「でも…なっち、OKしてくれたじゃん!なっちもうちの事が好きだって、うちが告白した時言ってくれたじゃん!それは何だったの…?うちだけ、盛り上がってたの?勝手に舞い上がってたの?うちだけが、付き合ってたと思ってたの?…全部、嘘だったの?」

ひとみの目には涙が溢れていた。

一番なつみに見られたくない顔だった。


「ごめん、よっすぃー…。なっちも…同じだった。」

「え?」

「真希と…同じだった…。真希と別れたすぐ後で…なっち、寂しかったのさぁ…。誰か、なっちの隣にいてくれる人を探してた。」

体が硬直したように動けないひとみを見つめて、なつみは言った。

「ごめん、だから…考えさせて。」

68 名前:破局 投稿日:2002年10月13日(日)12時25分58秒

「それって…。ごっちんの事が、まだ好きって事?」

聞きたくない筈なのに、口が勝手に動く。

「ごめん!よっすぃー。分かんない…。なっち、分かんないんだべさ…。だからお願い。暫く、距離をおかせて!なっちに、時間を頂戴…。」

振り絞って言うなつみを見ながら、ひとみは涙を呑んで言った。

「分かりました…。暫く、普通の先輩と後輩に戻りましょう。」



(終わった…。)


その時ひとみはそう思った。


(私達は、もう終わりだ。)



冬の風が吹いた。

肩を震わせて泣くなつみを、ひとみはただ黙ってみる事しかできなかった。


69 名前:告白 投稿日:2002年10月13日(日)19時33分10秒
クリスマスや年末年始に向けて、娘。のスケジュールはいっそう忙しくなった。
あの二人に会いたくなくても、強制的に会わなくてはならない。
しかも、ほとんどの番組で毎回のように歌う『Mr.Moonlight 〜愛のビッグバンド〜』ではあの二人と歌わなくてはならないのだ。
ひとみ、真希、なつみは、たった3人だけのソロなのに、歌っている最中、誰も目を合わせようとしなかった。

そんなひとみに優しく接してくれるメンバーがいた。
梨華だった。
休憩中、いつもひとみが暗い顔をしていると、梨華が声をかけて、優しい言葉をかけてくれた。
ひとみが何で悩んでるのか、梨華は聞こうとしなかった。
70 名前:告白 投稿日:2002年10月13日(日)19時35分39秒
あるテレビ番組の収録中、ひとみは倒れた。
貧血だった。

「よっすぃー?!大丈夫?!」

真っ先に駆けつけてきたのは梨華だった。
ひとみの顔を心配そうに覗き込む。

「梨華ちゃん…。大丈夫、ただの貧血。」

本気で心配してくれる梨華に微笑みかけながら、ひとみは朦朧とする意識の中、なつみを見た。
なつみも、今にも駆け出してきそうな形相でこちらを見ている。
だが、そんななつみの隣に真希がいた。
決心したように走ろうとするなつみの腕を、真希が掴んだ。

ひとみの意識はそこで途切れた。
71 名前:告白 投稿日:2002年10月13日(日)19時46分37秒
「真希!何するべ?よっすぃー、倒れちゃったよ。なっち、いかないと…。」

なつみは必死に真希の腕を振りほどこうとする。

「駄目だよ。今、いいとこなんだから。」

真希は口元に笑みを浮かべてひとみと梨華を指差した。

「ほら、よっすぃ〜と梨華ちゃんってお似合いでしょ?見てよ、あの梨華ちゃんの心配そうな顔。もう、よっすぃ〜なしじゃ生きてけないって顔だよ。よっすぃ〜も愛されてるよね〜。後藤、羨ましいなぁ〜。」

真希の言葉になつみは梨華を凝視する。
確かに、二人が並ぶとお似合いな気がする。

「あ〜〜〜!吉澤さん、大丈夫かなぁ〜〜。」

そんななつみと真希の横で、誰かが大声を出した。
新メンバーの小川だった。

「駄目だよ、まこっちゃん。吉澤さんには石川さんが付いてるんだから。」

今にもひとみの元に駆け出しそうな小川を止めるように腕を掴んだのは、またまた新メンバーの高橋だった。

「ん〜、でも吉澤さんが倒れちゃったんだよぉ〜〜!」

「分かってるけど、まこっちゃんが行ったとこで何にもなんないよ。」
高橋は小川の腕を放さない。
72 名前:告白 投稿日:2002年10月13日(日)19時48分07秒
「確かに、あの二人って………らぶらぶ、だよね。」

一歩テンポが遅れたような口調で二人の会話に入ってきたのは、これまた新メンバーの紺野だった。

「美男美女って感じだよね。あ、何か違うか。」
高橋が一人でつっこむ。

「でも吉澤さんって、かっこいいよね。」

太い眉毛を強調させながら入ってきたのは、またまたまた新メンバーの新垣。

「でもやっぱり………石川さん相手じゃかなわないよね。」
紺野が表情を一つも変化させずに言う。

「はぁ〜、でも本当、吉澤さんって…。」
小川は一つ、大きく息を吸った。

「かっこいいよね〜。」

その言葉に他の新メンバー3人も頷き、皆、ひとみの倒れている姿を見つめた。
本気でひとみの容態を心配してるメンバーは、この中にいるのだろうか。
73 名前:告白 投稿日:2002年10月13日(日)19時51分02秒
そんな新メンバー4人のやり取りを見ていて、なつみは唖然とした。
いつの間に、ひとみはこんなにモテていたのだろうか。

「ははは!本当、よっすぃ〜ってモテモテだよねぇ〜。」

真希は大声できゃははと笑う。

「ねぇ、なっちとよっすぃ〜、喧嘩したんでしょ?二人とも、全然喋ってないもんね。もしかして、後藤が原因?」

真希の問いかけになつみは答えず、そのままそこを立ち去ろうとする。
真希はそんななつみの腕を一瞬、自分の方に引き寄せ、耳元で囁いた。

「後藤、なっちの事まだ好きだから。」


なつみの顔が一瞬にして赤くなる。
と同時に、なつみは真希の元から走り去った。

そんななつみを見ながら、真希はくすっと笑った。
74 名前:告白 投稿日:2002年10月13日(日)19時55分51秒
ひとみは、夢を見ていた。


あれ…ここ、何処?
真っ暗…何も見えないじゃん。
やばい、こっから抜け出さないと。
出口は何処だろう?
あ!光だ!光が見える…!
出ないと、こっから出ないと。
はぁはぁ、大分近づいてきた。後ちょっと。
やった!出口だ!

あ!なっち!なっちがいる!
そっか、なっちが私をここから助けてくれたんだね!
あれ…?
ごっちん?!何でごっちんがそこにいるの?!
あれ?なっち、何処行くの?
私を、見てよ。こっち、向いてよ!
どうして、何でごっちんにそんな優しい顔をするの…?
やだ…お願い、なっち、見て…。
私を、見てよぉ…。何で行っちゃうの…?

あれ?また真っ暗だ…。
そっか、またここに戻ってきちゃったんだ。
当たり前だよね…私が、選んだんだから…。


ひとみの夢は、そこで中断された。
唇に、柔らかい、生暖かいものを感じた。

「ん…?」

うっすらと目を開けると、そこには梨華の顔があった。
75 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年10月13日(日)20時05分48秒
やっと題名変えました。
本体の題名は一応「二人のMr.Moonlight」なんですが、この掲示板初めてで使い方分からなかったんで「なちよし」になっちゃってます。
一応これから場面ごとに題名変えていきたいと思います。

ってか一日で結構更新しちゃった…(−−;;
こんなスピードで読んで下さってる方、いるのだろうか?
ってか、なちよし自体マイナーだからなぁ〜^^;
76 名前:読者 投稿日:2002年10月13日(日)20時10分39秒
読んでます。
なちよし好きなので頑張ってください。
77 名前:17 投稿日:2002年10月13日(日)20時25分09秒
マイナー好きです(w
これからもお世話になります。
78 名前:shio 投稿日:2002年10月13日(日)21時45分34秒
なんか凄い展開になってしまって驚いています。
なっち、はやくよっしーのもとに戻ってよー。
ラブラブになって下さーい!
79 名前:39 投稿日:2002年10月15日(火)23時57分56秒
安倍さーん・・・。
ご、後藤さん?

どうなっちゃうのかすっごい気になります。
いやでもごっちんちょっといい・・・(v

お疲れ様です。
ご無理はなさらないように、でも期待して待ってます!
80 名前:告白 投稿日:2002年10月16日(水)18時28分12秒
よく見ると梨華の目は閉じている。そしてこの唇に感じる感触は…。

「り、梨華ちゃん?!」

ひとみはまだはっきりとしていない頭を働かせながら今の状況を考えた。


―梨華ちゃんが私にキスしてた…?


いきなりひとみが目を覚まし、後ろに飛び退いたので梨華は驚いた。

「あれ…?よ、よっすぃー、起きてたの?!」

梨華はうろたえながら、その顔をみるみる赤くさせていった。
つられてひとみの顔も赤くなる。
暫く、二人は何も言わず、ただ俯いていた。

「え、えとぉ、梨華ちゃん…。今のは一体…?」

頭の中で今起きていた事を整理しながらひとみは聞いた。

「ご、ごめん!よっすぃー!その…ただちょっと、よっすぃーの寝顔が可愛かったから…つい。」

梨華は困ったように下を向き、答える。

「ほ、ほら!よく加護ちゃんやののだって遊びで『ちゅっ』ってしてるじゃない?それと一緒だよ。ははははは。」

梨華は、らしくない笑い方をして誤魔化した。
笑いながらも顔は真っ赤である。
81 名前:告白 投稿日:2002年10月16日(水)18時32分23秒
「あ、そっかぁ。遊びかぁ。な〜んだ。びっくりしちゃったよ。」

ひとみは梨華の言い訳をはなから信じたみたいだった。
ふぅ、とため息をつきながら、思いっきり安心した顔をする。

娘。のメンバー同士でのキスというのは、実はさほど珍しい事ではなかった。
特に加護と辻はキス魔常習犯であり、ひとみも何度か餌食になった事があった。
だが、梨華が自分から他のメンバーにキスをしようとするのを見た事がなかったので、ひとみはびっくりしていたのだ。

相変わらず顔を真っ赤にして俯いてる梨華には気付かず、気を取り直してひとみは言う。

「あれ?そういえば今何時?!収録はあれからどうなったの?」

ひとみは部屋を見渡し、時計を探す。

「あ、収録は今さっき終わったとこだよ。結局、よっすぃーなしで進めちゃったんだけど…。」

「え?嘘?!やばい、私、超迷惑かけてんじゃん!ディレクターさんとこ行かないと…。」

立ち上がろうとして、また眩暈が襲い掛かった。
さっきまで寝ていたソファに尻餅をつく。

「大丈夫?もうちょっと安静にしといた方がいいんじゃない?」

頭を押さえるひとみに、梨華は心配そうに言う。
82 名前:告白 投稿日:2002年10月16日(水)18時34分55秒
「ここは緊急休憩所みたいなとこらしいんだけど…。さっきまでスタッフの人がいてたんだけどね。私が来たら、『丁度良かった』って言って出ていっちゃった。何か仕事があったみたい。よっすぃーが起きても、気分が良くなるまでここで寝てていいって。」

ひとみをソファに寝かせながら梨華は言った。

「…梨華ちゃんは、仕事が終わってすぐ来てくれたの?」

「うん!よっすぃーの事心配だったから…。あ!後、新メンの4人も来てたよ。でも私をみたら何故か残念そうな顔をしてどっか行っちゃったみたい。それと、他のみんなも私がよっすぃーん所行くって言ったら宜しく言っといてだって。」

「そ、そっかぁ…。ねぇ、梨華ちゃん。安倍さんは…来なかった?」

「え?安倍さん?んー、何かスタッフの誰かに、収録のあと呼ばれてたみたいだよ。確か飯田さんも一緒に。」

「そっかぁ…。」

ひとみはあからさまに残念そうな顔をする。

(まだミーティングなのかな?なっち、きてくれたっていいじゃん…。)
83 名前:告白 投稿日:2002年10月16日(水)18時42分33秒
ひとみが無口になって天井を見つめていたら、梨華が突然明るい声を出して言った。

「ね、ねぇ、よっすぃー?」

声は少し裏返っている。

「よっすぃーの事さぁ、これから、『ひとみちゃん』って呼んでいい?」

梨華が指をもじもじしながら訊ねる。

「え?別にいいけど、急にどしたの?」

あまりにも唐突な質問に、ひとみは目を丸くする。

「…よっすぃー…。ひとみちゃん、は、特別だから…。」

「え?」

梨華はそう言って、何かを決意したように自分の拳を胸元で握り締めた。
そしてゆっくりと、しかしはっきりと口を開いて言った。


「ひとみちゃんは、私にとって、特別な人だから。」


梨華の目が突然真剣になり、ひとみを真っ直ぐとみつめる。
ひとみはわけが分からないというような表情で、そんな梨華を見つめ返す。

「え?ちょ、ちょっと待ってよ梨華ちゃん…。それってつまり…。」

「ひとみちゃんが、好きなの。」


うろたえるひとみの手をとりながら梨華は言った。
ひとみの心臓は一気に跳ね上がる。
84 名前:告白 投稿日:2002年10月16日(水)18時53分06秒
「えぇ?!そ、そんな…だって、梨華ちゃんはずっと親友だって…。」

突然の梨華からの告白にどきどきしながらも、大切な事を思い出し、顔を上げる。

「あ!それにごめん…。告白してくれて嬉しいんだけど…うち、今付き合ってる人がいて…。」


「安倍さん、でしょ。」

梨華が少し手に力をいれて、その名を呟いた。

「え?梨華ちゃん…知ってたの?」

「ひとみちゃんの事ならなんだって分かる。」

ひとみの手を握っている手をだんだんと自分の顔に寄せながら、梨華は続ける。

「ひとみちゃんがいつも安倍さんしか見てなかった事…。モーニングに入った時から知ってた。でも、私もその時から、ずっとひとみちゃんだけを見てたの。」

「り、梨華ちゃん…。」

(うわぁ〜!梨華ちゃんが私の事好きだったなんて…全然、気付かなかったよぉ〜!)


「でも、あの人は駄目…。」

そう言って、梨華の顔が険しくなる。

「あの人はひとみちゃんを苦しめてるだけ!だって、そうでしょ?ひとみちゃんが今日倒れたのだって、あの人のせいなんでしょ?」
85 名前:告白 投稿日:2002年10月16日(水)18時59分25秒
必死で問い詰めてくる梨華の目を、ひとみは無意識にそらした。

「ち、違うよ…。今日倒れたのは、ほら、今アレでさ。今日、二日目なんだよね。だからちょっと、貧血起こしちゃってさ…。」

言い訳をする自分が嫌になった。

本当は梨華の言うとおり、ここ最近、なつみの事が頭から離れず、なかなか眠れなかった。
胸が張り裂けそうなほど、なつみの事をいつも考え、悩んでいた。

「何で…?そんなに、あの人の事が好きなの?何で…。あの人は、ひとみちゃんを苦しめてるだけなのに…。」

そう言って、手で目元を押さえる梨華を見て、ひとみの胸は痛んだ。
目の前にいる人物も、自分と同じように人を好きになり、自分と同じように悩み、苦しんでいる。

ひとみは、切なかった。


(私がもし、梨華ちゃんを好きだったら…?両想いだったら?…そしたら、誰も、苦しまないですむのかな…。なっちもごっちんと幸せになって、私も、梨華ちゃんと幸せに…。)
86 名前:告白 投稿日:2002年10月16日(水)19時05分51秒
ひとみの心は傷ついていた。
現実が苦しくて、切なくて、辛かった。

なつみと付き合い始めた頃は、なつみの事を考えるだけで幸せになれたのに、今はその逆だ。
なつみの事を考えるたびに、胸が締め付けられ、刺されるように痛かった。


そんな現実から、ひとみはただ、目をそらしたかっただけのかもしれない。

目の前で肩を震わせて、自分の為に涙を流してくれる梨華を、無意識のうちに、ひとみはそっと抱きしめていた。

「ひとみ…ちゃん?」


ひとみはその問いかけに答える事は出来なかった。
ひとみ自身も、泣いていた。

梨華の腕もひとみの背中に廻される。
暫くの間、二人はそのまま動かなかった。

数分後、二人の体は自然と離れ、見詰め合う。
涙に濡れたひとみの顔に、梨華は目を閉じながら、そっと顔を近づける。



二人の唇が重なった時、「ぎぃ」とドアの開く音がした。
はっとして二人が顔を向けると、ドアの向こうには、なつみが立っていた。

87 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年10月16日(水)19時17分26秒
沢山のレスを頂いたのに、更新遅くなってすいませんm(−−)m
ちょっと6期メン追加の話でかなり参っちゃってて。
小説書ける状態でありませんでした。^^;

何かどんどんなちよしから離れてきてるよ〜な?
でも勝手にストーリーが進んでいくんですよね〜、私の予定とは違う方向に^^;

>>76 読者さん
 読んで下さっていて有り難うございます(涙)
 なちよし好きですか?!嬉しい!
 頑張って、良い(強調)なちよし書いていきたいと思います(滅)

>>77 17さん
 マイナー好きさん!良いですよね!
 こちらこそこれからも宜しくです♪
 頑張ってなちよし成立させたいです。

>>78 shioさん
 なっちとよっすぃ〜がラブラブに戻れる日はいつなんだろう?
 書いてる本人にも疑問です(ぇ)
 凄い展開になってますが原点は『なちよし』なので…はは。

>>79 39さん
 ごっちん、黒いですよね…黒ごま…自分で書いてて恐いっす(苦笑)
 でも黒ごま密かに推し??かも。良い感じですよね^^;
 はい、自分のペースで頑張って書いていきたいと思います!
 何か気を使って下さって有り難うございますm(−−)m励みになります。
88 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月20日(日)15時38分55秒
い、痛・・・。

これおもしろい!期待してます(w
89 名前:儚い心 投稿日:2002年10月20日(日)20時04分56秒

「あ…えっと…。」

抱き合うようにソファの上で重なっている二人を見ながら、なつみは瞬きせずに口を開いた。

「ご、ごめん…。何かなっち、お邪魔…だったみたい…。」

視線を床に向けながら、一歩後ろに下がり、ドアを閉めようとする。

「なっち!!!」

ひとみがソファから身を乗り出して叫んだ時には、既になつみは走り去っていた。


「ごめん!梨華ちゃん、私行かなきゃ。」

言うやいなやひとみはドアまで走っていた。
ソファから飛び起きた途端、軽い眩暈がしたがそんなの気にならなかった。

「ひとみちゃん!!」

後ろから梨華の叫び声が聞こえたが、ひとみは走る事をやめなかった。


(ごめん…!ごめん、なっち!)

走りながら、ひとみは頭の中で謝っていた。

(うち、まだこんなになっちの事好きだったのに…ごめん!)

やりきれない気持ちでいっぱいのまま、ひとみは走っていた。


一人部屋に取り残された梨華は、自分の鞄から携帯を出していた。
目的の番号を見つけると、発信ボタンを押す。
そして、何もない壁を見据えたまま、言った。

「もしもし…。…真希ちゃん?」
90 名前:儚い心 投稿日:2002年10月20日(日)20時13分19秒
なつみは、今自分の目で見た事を頭の中でリピートしていた。

(キス…?キス、してたよね…。よっすぃーと、石川…。キス…だったよね。)

頭の中で何度も何度もそのシーンが回想される。
まだ、頭の中で何が起きたか理解できても、感情が理解できてなかった。

なつみの心の中は、徐々に真っ白になっていく。


「なっち!!」

後ろから自分の名前を呼ばれ、条件反射に振り返る。
そこには、さっきまで梨華とキスしていたはずの人物が立っていた。

「はぁ、はぁ。良かった、追いついた。」
その人は息を切らせながら近づいてくる。

「…なっち、ごめん!私、梨華ちゃんとあんな事するつもりは無くて…。」
そう言って目の前で手を合わせる。必死に謝っているようだ。

「ごめん、なっち!本当、ごめん!!誤解でもなんでもないんだけど…。私は梨華ちゃんとそういう関係でもなんでもないから…。あれ?何言ってんだ、私。違う、そうじゃなくって…えっと、だから…。」
その人の喋り声がだんだんと遠くなっていく。その人の言葉は、もう半分しか聞こえてない。
91 名前:儚い心 投稿日:2002年10月20日(日)20時21分06秒
「だから、えっと…。あの……なっち??」
目の前にいるその人は、今度は不思議そうな顔をして手を振る。


「…なっち?どうしたの?!なっち!!」

肩を揺さぶられて、やっとなつみは正気を取り戻した。

「あれ…?よっすぃー…?」

瞬きをして顔を動かすなつみを見て、ひとみは安堵のため息をついた。

「はぁ、良かった!なっち、大丈夫?突然、瞬きしなくなって、目も動かなくなったからびっくりしちゃったよ。」

肩においてる手を背中に廻し、なつみを抱きしめる形になった。

「ごめん…、なっち…。やっぱ、怒ってんだよね…。怒るよね、そりゃぁ〜普通…。」

なつみはひとみに抱きしめられながらも、まだ今の状況が完全に把握できないでいた。

「あれ?よっすぃー、今、石川といなかった?」

ひとみの腕に包まれながら、なつみは不思議そうな顔で言う。

「え?うん…。そう、だから、ごめん。」
92 名前:儚い心 投稿日:2002年10月20日(日)20時21分46秒

「あれ…。なっち、今何してたんだっけ…。確か走ってて…。」

そう言ってなつみはひとみから体を離す。
こめかみを押さえ、頭を抱える。
遠い記憶を辿っていく。

「あ!そうだ。確か、よっすぃーが休んでるっていう部屋に行って、それで…。」

消えていた記憶を見つけて、なつみは険しい表情とともに顔を上げた。

「よっすぃーと石川が…キスしてたんだ。」
93 名前:儚い心 投稿日:2002年10月20日(日)20時32分03秒
「記憶が、消える?」

帰り道を歩きながら、ひとみは横にいるなつみに聞いた。
外はもう、すっかり夜である。

「うん…。何かなっちね、時々、記憶が途切れ途切れになってる事があるのさぁ。何か、ショックな事があったり、嫌な事があったりしたら、昔からよく記憶が途切れるんだよねー。最近、無かったんだけどさー。久しぶりだったから、ちょっとびっくりしちゃった。」

真剣に語るなつみを見ながら、ひとみは首をかしげる。
ひとみには、なつみの言ってる事が今ひとつ理解できなかった。

「つまり…嫌な事とかがあると、その部分だけ忘れちゃうって事?」

「うん。そうみたいなんだべさ。昔はよくあったんだけど、でも、真希が…。」

真希の名前が出て、ひとみの顔がこおばる。

「真希が、それは現実逃避だから、良くないって。だから直せって言われて、それから嫌な事でも頑張って見るようにしたのさぁ。逃げないように。それからだんだん、記憶が消える事はなくなってきて、最近はずっと、ちゃんと普通に、嫌な事でも我慢して見れるようになってきてたんだけど…。」

途中からなつみの独り言になっていた。ひとりで喋りながら、首をかしげたりする。
94 名前:儚い心 投稿日:2002年10月20日(日)20時40分36秒
そんななつみを見ながら、密かにひとみは喜んでいた。
久しぶりになつみと喋った。
久しぶりに、なつみと帰る事ができる。
今、横を一緒に歩いている。

それがたまらなく愛しかった。
傷ついていたとはいえ、一瞬でも梨華と両想いだったら、などと考えた自分が恥ずかしかった。

(ごめん、梨華ちゃん…。私やっぱり、なっちが…。)

だが、梨華の事を思うと心が痛んだ。
中途半端な気持ちで、抱きしめてしまった自分に悔いる。
自分のした事がどれだけ梨華を傷つけるか、分かっていたはずなのに。


「あー!そういえば大事な事忘れてたー。よっすぃー、石川とキスしてたっしょ?」

ずっと独り言を言っていたなつみが突然声をあげた。

「え?あ、うん。だから、ごめん、なっち。私、そういうつもりじゃなかったんだけど…。」

ひとみは何度も謝りながら、歯切れ悪く答える。

「梨華ちゃんに告白されて…。私も、なんか、その…どうしていいか、わかんなくって…。」

そして声を小さくして言った。

「…それに、なんか寂しかったから…。」

言った途端、涙が出てきそうだったが、寸前でとめた。
なつみの前では、泣きたくなかった。
95 名前:儚い心 投稿日:2002年10月20日(日)20時46分41秒
「そっか…。そうだよね。ごめんね、よっすぃー。なっちのせいだよね。よっすぃーが石川とキスしてても、なっち、何にも言う権利ないよね。」

前を見ながら、諦めた表情でなつみは言う。

そんななつみの態度が、ひとみには悲しかった。
ついこの前までは曲の振り付けだけで嫉妬してくれたのに。
なつみの心は、やっぱりひとみから離れてしまったのか。
いや、そもそも、もともとひとみの元になつみの心はあったのか。
ひとみの心に不安がつのる。


「なっち…。」
(まだ、迷ってるの?)

言葉を続けようとしても、続けれなかった。

(まだ、距離を置かないと駄目なの?ごっちんの事、忘れられないの?)

聞けなかった。聞くのが恐かった。


「よっすぃー。どうする?なっち達…。」

「え…?」

言葉を繋げたのは、なつみだった。

「このまま、距離を置きながら、付き合う?でも、距離を置きながら付き合うのって、付き合ってるっていうのかねー。」

そういってなつみは苦笑する。

次の瞬間、ひとみはなつみを抱きしめていた。
96 名前:儚い心 投稿日:2002年10月20日(日)20時54分43秒


「なっち…好き。」

そう言って、きつくきつく抱きしめた。

「私は、なっちの事、今でも好きだから…。だから、距離を置きながらでも…付き合ってたい。」

そう言いながら、体を少し離す。
周りに人がいない事を確かめてから、なつみの顔に顔を近づける。


ひとみの唇がなつみの唇まであと数センチという時、携帯が鳴った。
なつみのだった。

なつみは閉じかけていた目を開けると、少し気まずそうに携帯を出した。
どうやらメールだったようだ。

「真希…。」

携帯の画面を見つめながら、なつみは思わず呟いた。

「…ご、っちん?」

度々、なつみとの間を邪魔されてるような気がして、怒りがこみ上げてくる。
なんと言うタイミングだろう。
どこかから監視しているのではないだろうか。

ひとみは思わず、なつみから携帯をひったくっていた。
メールにはこう書かかれていた。
97 名前:儚い心 投稿日:2002年10月20日(日)20時57分38秒


《なっち今どこ〜?もう家〜?これからTELしたいな☆なっちに逢いたいよぉ!それだけだったんだけどメールしちゃった(笑)そういえば今日よっすぃ〜に会わなかったよね〜?ごとーの忠告聞いといた方がいいよ〜。よっすぃ〜は絶対りかちゃんに浮気する!(笑)じゃぁ、TEL待ってるよぉ〜☆》


読んでる途中から、ひとみの手は震えていた。

「あ、よっすぃー…。なっちの携帯…。」

なつみに携帯を掴まれて、ひとみはやっと手を離した。
もう少しで握り潰してしまいそうだった。
ひとみの心の中は、怒りと悲しみでいっぱいだった。

(ごっちん…ひどい、ひどすぎる。)

「あ…。よっすぃー、気にしない方がいいよ。その、なっち、真希と電話なんかしないしさぁ。メールも、そんなにやってないんだよ。ただ、真希が一方的に送ってくるだけで…。」
98 名前:儚い心 投稿日:2002年10月20日(日)21時00分43秒

「…どっち…?」



「え?」

「なっち、どっちなの?!どっちが好きなの?私?ごっちん?どっち?どっちなの?!」

ひとみは思わず大声を出しながらなつみの肩を掴んでいた。

「私…もう駄目だよ、こんなの…。やっぱり、やっぱり…。」

ついさっきまで、なつみが好きならそれでいいと思っていたのが嘘のようだった。

「ごめん、なっち…。」


放心しているなつみをおいて、ひとみはその場から走り去った。

向かってくる冬の風が、物凄く冷たく感じた。



(人の心って、何でこんなに弱いんだろう?脆くて、弱くて…。私は、こんなの…。)

流れてくる涙を拭いながら、ひとみは思った。


(こんなの、耐えられない。)


99 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年10月20日(日)21時06分40秒
久しぶりに更新!今週は忙しかったので(−−)
それにしても何でこういう展開に?って感じです。
安倍さんの記憶が飛ぶとか…予定ではそんなの無かったんだけど。
これからどうなっていくのか書いてる本人も全然分からないんで、
更新がちょっと遅れ気味になるかも?微妙だけど。

>>88 名無し読者さん
 レス有り難うございます!
 痛いですよねぇ^^;自分で書いてて痛いです。
 おもしろいと言ってくれて有り難うございますm(−−)m
 期待に答えられるよう更新頑張ります。
100 名前:39 投稿日:2002年10月21日(月)00時48分31秒
思いもしない展開にどきどきです。
なちよしはどうなっていくのでしょう。
まったり待ってます。
101 名前:まるみ 投稿日:2002年10月23日(水)03時59分42秒
うおー!!
「なちよし」はっけん!
作者さんガムバッテ
こーしん待っております。
102 名前:名無しです〜 投稿日:2002年10月23日(水)22時17分38秒
久しぶりに美少女教育を見ていたら、
よっすぃ〜に抱きつくなっちをみました!!!!
やっぱ「なちよし」最高!!!!!
103 名前:汚れた現実 投稿日:2002年10月24日(木)19時38分32秒
月の光が明るい夜。
まだひとけがある路地を梨華は歩いていた。
帽子を深く被っていても、冬の冷たい風が頬に触れる。
早く温まりたい、という一心で梨華は歩調を速めた。
目的の家が見えるようになって、メールを送る。

梨華がそのドアの前に辿りついた頃には、既に彼女は立っていた。

「いらっしゃいっ。」

はにかむような笑顔で自分を迎える彼女。
こうやって、夜にこの家に来るのは何度目だろうか。
彼女から誘われる度に、梨華は何度も断ろうとした。
だが、今自分に必要なぬくもりを与えてくれる彼女の存在は必然だった。

罪悪感に苛まれながらいつも足を運んでしまうこの家。
そんな気持ちも、彼女のこの笑顔を見ると少し和らいだ。
104 名前:汚れた現実 投稿日:2002年10月24日(木)19時44分35秒
梨華は無言のまま彼女の部屋に入り、いつもと同じようにベッドに腰掛ける。
鼻歌を歌いながらドアに鍵をかける彼女も、意気揚々と梨華の横に座った。

「あれ?どうしたの?暗いじゃん。」

そう言って、無言のまま俯く梨華を覗きこんだ。

「…だって、やっぱりひとみちゃんは安倍さんを追いかけて行ったから…。」

「な〜んだ、そんな事?そんなのどうだっていいじゃん。計画は順調に進んでるんだしさ。」

梨華のテンションとは打って変わって明るい調子で彼女は続ける。

「それによっすぃ〜とキスできたんでしょ?しかもそれをなっちが見たんでしょ?後藤の計画以上にいい展開になってるじゃん。やっぱり、梨華ちゃんを選んで正解だったなぁ〜。」

だが、梨華の顔は暗いままだ。

「でも…でもやっぱりひとみちゃんは安倍さん追いかけてちゃったよ?ひとみちゃんとキスできて嬉しかったけど、でもやっぱりひとみちゃんは…。」

「大丈夫だって〜!相変わらず、梨華ちゃんはネガティブだよね〜。そんなに気を落とさなくても、よっすぃ〜はこれから梨華ちゃんにどんどん気が向いていくから!」

真希は得意げに手を絡ませて笑顔で続ける。
105 名前:汚れた現実 投稿日:2002年10月24日(木)19時53分14秒
「後藤がなっちにアプローチ。予定通り、なっちの心は揺れてよっすぃ〜となっちは喧嘩状態。傷ついてるよっすぃ〜に梨華ちゃんが優しい手を差し伸べる!しかも梨華ちゃんとよっすぃ〜のキスシーンをなっちが見たんなら話は早いね〜。なっちはよっすぃ〜に対して疑問をもつ!そこで、後藤が積極的にアプローチ!よっすぃ〜は梨華ちゃんと、後藤はなっちと、それぞれ幸せになれるってわけ。」

興奮して語る真希を見ながら、梨華は不安を洩らした。

「…そんなにうまくいくかなぁ?」

「いく!いくってぇ〜!ね!だからさ…。」

そういって真希は梨華の肩に手を廻す。

「梨華ちゃんが必要なんだよねぇ〜。今の後藤には…。」

真希の唇が重ねられる。梨華の口はすぐにこじ開けられ、舌が進入してくる。

「あ…。真希ちゃん、今日は私…。」

そういって拒もうとする梨華の腕を掴み、また唇が塞がれる。
106 名前:汚れた現実 投稿日:2002年10月24日(木)20時00分11秒
舌を絡ませながら梨華を押し倒す。
真希は梨華の上にまたがりながら、その服を器用に脱がす。
上半身、ブラ姿となった梨華は、まだ抵抗しようとその体を持ち上げる。
だが、両腕を真希に摑まれ、身動きがとれない。

「…おとなしくしててよ…。また、よっすぃ〜だと思ってていいからさ…。」

耳元に息を吹きかけながらそう囁き、そっと耳たぶがかまれる。

「あ…。」

梨華の体から力が抜けた。
また罪悪感に満ちた快楽に、身を任せた。


       −−−


(いつまでこんなのが続くんだろう…。)
一通りの行為が終わった後、真希の腕に抱かれながら梨華は思った。
(ひとみちゃんが、私に振り向いてくれるまで…?)


       −−−

107 名前:汚れた現実 投稿日:2002年10月24日(木)20時06分21秒
真希から、家に来いと誘われたのは数週間ほど前の事だった。
真希とはひとみを通じて仲良くなったのだが、少し軽い感じの性格が梨華には合わず、個人的に遊んだ事は一度もなかった。

そんな真希がある日突然、楽屋で二人きりになった時に話しかけてきたのだ。

「ねぇ〜、梨華ちゃんってよっすぃ〜の事好きなんでしょ?」

突然の事に一瞬梨華は躊躇したが、数秒後には「うん…。」と答えていた。

「後藤さ、よっすぃ〜ってなっちと付き合ってると思うんだよね。」

「え?ほ、本当?!」

「うん。でもまだはっきり分かんないから…また、電話するよ。」

そう言って手を振りながら出て行った真希を、梨華はまだ覚えている。


数日後、ずっと昔に登録したが一度もかかってこなかった名前が携帯に表示された。
真希だった。

その時、本当にひとみとなつみが付き合っていた事を知らされた。
梨華はショックだった。
ひとみがなつみの事を好きなのは知っていたが、付き合ってたとは知らなかった。
深い失恋に、梨華が気を落としていると、真希が意外な事を言った。

「はは、大丈夫。後藤に任せてよ。」
108 名前:汚れた現実 投稿日:2002年10月24日(木)20時10分18秒
そして真希に協力しろと言ってきた。
梨華は少しためらったが、このままで終わらせるのは嫌だったから、真希に協力する事にした。


事の始まりはそれからだった。


いろいろ話したいからと言われ、初めて真希の家に行った夜。
駅まで迎えに来てくれて、夕食までおごってくれて優しかった真希のもう一つの目的を、その日梨華は初めて知った。


真希は昔なつみと付き合っていた事を打ち明けてくれた。
はっきり言って真希は市井としか付き合った事が無いと思っていたので、びっくりした。

そして真希の計画というのは、真希となつみが元に戻り、傷ついて一人になったひとみを梨華が慰め、梨華とひとみも両想いになり、みんなハッピーエンドというものだった。
計画の名前に『ハッピーエンド』などともつけていた。
その計画を成功させる為に、真希は梨華が必要だという。
109 名前:汚れた現実 投稿日:2002年10月24日(木)20時16分17秒
一通りの事を話し終えた後、真希は突然、梨華に顔を近づけてきた。

「梨華ちゃんって、可愛いよね。」

そう言ったかと思うと、突然唇を重ねてきた。
そしてすぐに、舌も絡ませてきた。

梨華は突然の事に驚き、思わず真希を突き放した。
一瞬、真希の顔が氷のように冷たくなったが、すぐに優しい顔に戻り、また梨華に近づいてきた。

「後藤をさ、よっすぃ〜だと思ってよ。」

その言葉に一瞬油断してしまい、梨華の両腕は自由を奪われた。

それでもはじめはずっと抵抗していた梨華だったが、目をつぶるたびにひとみの事を想像してしまい、いつの間にか真希の口と手の動きに、体が熱くなっていた。
好きな人以外とこんな事をしてはいけないという罪悪感と、好きな人にこんな事をされたらという快楽の葛藤に苛まされながら、梨華は真希の手に落ちていった。
110 名前:汚れた現実 投稿日:2002年10月24日(木)20時19分27秒

それから何度か真希に誘われ、拒みつつも結局彼女の家に足を運んでいる自分がいた。
だが、先日ひとみとキスするが出来た事もあり、今まで真希の言うとおりに動いてきた結果が芽を出してきた。
真希の言うとおりにしていれば、いずれは本当にひとみが自分に振り向くかもしれない。
その気持ちだけが、罪悪感に苦しむ梨華を支えていた。

      −−−

目の前で目を閉じている真希を見ながら、梨華はふと思った疑問を口にした。

「真希ちゃんってさ、私に、真希ちゃんをひとみちゃんだと思えって言うけど…。」

真希は少し寝ぼけた調子で「ん〜?」と言いながら目を開ける。



「真希ちゃんは、誰の事を思ってるの?」


言った途端、真希の目がはっきりと開いた。

「…安倍さんの、事?…………それとも…。」


111 名前:汚れた現実 投稿日:2002年10月24日(木)20時22分50秒



「どーだっていいじゃん。そんな事。」


梨華を遮るように、真希は無表情で言った。
だがすぐに優しい顔に戻り、

「それに、言ったじゃん。梨華ちゃん可愛いねって。後藤、梨華ちゃん好みなんだよね〜。だから別に、誰の事も思ってないよ。」

そう言って軽くキスをする。


梨華には、真希の心が分からなかった。
なつみの事が好きなはずだが、真希からなつみに対する気持ちというのを、あまり聞いた事がない。
聞かされるのはいつも、ひとみとなつみをどう引き裂くかという事だけだった。

勿論、自分の事も好きじゃないというのは分かっている。
ただの好み…それだけで自分を抱いているのだろうか。
梨華は複雑だった。
ひとみに対しての自分の気持ちにも、疑問を持ち始めていた。
112 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年10月24日(木)20時27分20秒
今回は完全にいしごまでした…自滅。
ん〜、でもストーリー上、このシーンは入れたかったんで…申し訳ないっす。
でも一応なちよし志向なのでいしごまのエロシーンは省いときました。
リクエストがあれば、書きますが…。

次からまたもうちょっと痛くなってくると思います。
まだどうするか考えてないんですが…^^;
いつかこれを書き終えた後には、番外編でらぶらぶななちよしを書きたいと思ってます。

レス有り難うございます!嬉しいです!!!

>>39
113 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年10月24日(木)20時33分43秒
え〜、すいません!!間違ってTab+Enter押しちゃいました(^^;
気を取り直してレス…。

>>100 39さん
 また〜り待って下さって有り難うございます!
 なちよしどうなっていくんでしょう…。
 きっと二人が幸せになる頃にはこの物語は終わるでしょう(ぇ)

>>101 まるみさん
 更新、遅いかもですが頑張っていきます!!
 なちよし…からちょっと離れていってますが宜しくです!
 なちよし、いいですよね〜^^

>>102 名無しです〜さん
 私も昔のハロモニ未公開映像見たらなっちがよっすぃ〜に抱きついてました。
 なちよし萌えですよね^^思わずスローモーションしてしまった(ぇ)
 これからもなちよし応援していきましょ!^0^

というわけでこんななちよし小説ですがこれからも宜しくお願いしますm(−−)m
感想等、頂ければ嬉しいです^^
114 名前:まるみ 投稿日:2002年10月24日(木)20時45分30秒
お!更新早すぎ!!
今回のいしごまもいいなー
(ダレデモエエンカイ)
リアルで見れてよかった〜。
番外編見たいけど終わるのやだな〜。
極力長くかんばって!
115 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月27日(日)14時55分14秒
始めて読みました。
面白い!続き気になります。
116 名前:ぷれぜんと 投稿日:2002年11月02日(土)22時15分15秒
その日ひとみは、久しぶりのオフに街へ足を運ばせていた。

せっかくの一日オフなので本当はなつみと過ごしたかったのだが、この前の夜以来、仲直りができていない。


    


あの時、なつみを置いて走り去ってしまった自分に非常に後悔していた。
梨華ともキスをしてしまった。
なつみに真希との事を強く責める権利は、自分には無かったのだ。

あれ以来、真希とはもちろん、なつみや梨華ともまともに口を聞いていない。
なつみとのメールも途絶えていた。
ただ、気のせいか、梨華と真希が一緒にいる所をよく見る気がする。
真希の行動には特に敏感になり、どれだけなつみに近づいているかなど、ひとみはいつもチェックしていた。
117 名前:ぷれぜんと 投稿日:2002年11月02日(土)22時20分42秒




「あ。」

ひとみはある店の前で足を止めた。
街はもうすっかりクリスマスの雰囲気をかたどり、活気づいている。
その中で一つ、小奇麗にクリスマスの飾り付けをしている店があった。

ひとみは被っている帽子を少しあげて店の中を見た。
どうやらアクセサリー専門店のようだ。




ひとみには一つ、決心してる事があった。


数日考えたが、ひとみはやっぱりなつみの事が好きだった。
なつみが今でも真希を好きでも、梨華をふる事になっても、なつみへの気持ちだけは変わらなかった。
自分の気持ちに正直になる為、ひとみは2週間後に訪れるクリスマスで、ある事を決心していた。




ひとみは人目を気にしながら帽子を取り、店に入った。
長身ですらっとしている店員が「いらっしゃいませー。」とビジネススマイルをつくる。
118 名前:ぷれぜんと 投稿日:2002年11月02日(土)22時26分19秒
今日入った店は、この店で3つ目だった。
ひとみはずっと、ある物を探していた。



一通り店の中を見廻ったが、ひとみの考えている物は置いてなかった。


最後に一箇所、先ほどからずっと男女のカップルがいるピアスのセクションを見たら、この店も終わりだ。
そのカップルは先ほどからずっと一つのピアスにこだわって話し合っている。
どうやら女が男にねだってるようだった。


ひとみが少しいらいらし始めた頃、やっと男がおれたようでカップルはその場を立ち退いた。
同時に新しい客が入ってきたようで、また店員の甲高い「いらっしゃいませー。」という声が聞こえる。
だがひとみはそんな事気にせず、すかさずピアスセクションに移動した。
シルバーに輝いた、いろんなデザインをかたどったピアスが置いてある。

(はぁ〜、やっぱここも無いかな〜。)

一通り見渡して、ひとみが半分諦めかけていた時、右上で光る一つのピアスを見つけた。

(あれ〜?結構いいんじゃん?)

ひとみがそのピアスを手に取り、よく見ようとした時、横に人が立つ気配を感じた。
119 名前:ぷれぜんと 投稿日:2002年11月02日(土)22時34分34秒
反射的にそちらを向いてみると、そこにはびっくりした顔で立っている真希がいた。

「あれ?よっすぃ〜…?嘘、何してんの、ここで?」

それはこっちのセリフだよ、と胸中で呟きながら、ひとみは手に持っていたピアスを元の場所に戻した。

「いや…別に、普通に買い物だけど。ごっちんは?」

「ん。後藤も普通にショッピング。でも知らなかった〜。よっすぃ〜、こういう店くるんだ。」

真希が少し嘲笑いながら店内を見渡す。
それはこっちのセリフだって、とまたひとみは心の中で呟く。

「ごっちんこそ。こういうとこ来るなんて知らなかったよ。」

少し嫌味に言ったつもりなのだが、全然気にしてないという感じで、真希はひとみに向き直った。


「いや、後藤はさ、プレゼント探してんだよね。なっちの。」

無表情のままストレートに言う後藤に、ひとみの心臓はどきんと跳ね上がった。

「え…。プレゼントって…クリスマスの?」

「そうそう、クリスマスプレゼント。なっちに何あげよっかな〜って考えてたら、この店見つけてさ。」

ひとみの心臓が次第に高まっていく。

(まじ…?ごっちんと同じ店、選ぶなんて。)
120 名前:ぷれぜんと 投稿日:2002年11月02日(土)22時43分46秒
顔をしかめるひとみには気付かず、真希は身を乗り出して、ひとみがさっきまでみていたピアスセクションを見渡した。

「ん〜。なっちにはピアスって感じがするんだよねぇ。
 ……あ!これなんかいいかも!」

そう言って真希が手に取ったのは先ほどまでひとみが持っていたピアスだった。

「これなっちにあいそうだな〜。これにしちゃおっかな〜。」

上に掲げてそのピアスを見つめる真希の姿に、ひとみは唖然としていた。

(う、嘘…。しかも同じの選ぶなんて…。って、てかダメ!)

「…ま、待って、ごっちん!それは私が先に…。」

「ん?」

「私が先に、見つけてたんだけど…。」

やっと見つけた物を、そう簡単に横から取られたくない、特に真希には。

「え、なに?よっすぃ〜、このピアス欲しいの?ん〜、ごめん。
 後藤はっきり言っちゃうけど、よっすぃ〜には似合わないと思うよ。」

「いや、別に私がするわけじゃないんだけど…。取り合えずそれ、私が先に見つけたから。」

真希に対しては、ずばずばと言葉が言える。
よく考えれば、今一番会いたくない、喋りたくない相手とひとみは喋っていた。
121 名前:ぷれぜんと 投稿日:2002年11月02日(土)22時50分16秒
「え、よっすぃ〜がするわけじゃないって…。
 …もしかして、よっすぃ〜もなっちへのクリスマスプレゼント探してたの?」

真希の顔からだんだんと笑みが消えていく。

「うん。だから、それ。やっとイメージにあってたの、見つけたから。
 私が先に見つけたから。ごっちん、それ、渡してくれない?」

今までこんなに冷たい口調で真希に話した事は無かった。
人間とは憎しみだけで、ここまで変われるものなのだろうか。

右手を真希の前に差し出すひとみを横に、真希は暫くピアスを見つめていた。


そして真希は暫くして顔をあげると、満面の笑みを浮かべて、ひとみにではなく、店員に向かって叫んだ。

「すいませ〜ん!これ、同じのもう一個ありますか〜?」

「え?ごっちん、何言って…。」


「申し訳ありませんがお客様、それと全く同じものは当店では扱っておりません。
 ですがこちらに、少しだけデザインの違ったピアスがございますが。」

そう言って店員が持ってきたピアスを手に取る。

「ふ〜ん。あんまし変わんないね。うん、でも後藤、こっちでいいや。」
122 名前:ぷれぜんと 投稿日:2002年11月02日(土)22時54分44秒
有り難うございます、と店員がカウンターに去るのを見ながらひとみは真希の行動の理解に苦しんでいた。

「はい、これ、よっすぃ〜の。」

そう言って真希は先ほどのピアスをひとみに渡した。

「え?ごっちん、これ、どういう事…?」

「あれ?よっすぃ〜、それ欲しかったんでしょ。買えばいいじゃん。
 後藤はあっちの買うよ。あっちの方が気に入ったし。」

「え?でも…。」

「い〜からつべこべ言わずに買えばいいじゃん。それと、店出てから、ちょっと話があるから。」

カウンターに歩いていく真希を、ひとみは唖然と見つめていた。


       −−−


「ねぇ、後藤さっきいいこと思いついたんだけど。」

結局、あのピアスを買ってひとみは後藤を追いかけ店を出た。
後藤も帽子を深く被っている。そのまま二人で街を歩く。

「なっちにさ、決めてもらおうよ。クリスマスの日に。」

123 名前:ぷれぜんと 投稿日:2002年11月02日(土)23時00分32秒

「え?決めてもらうって?」

「なっちに、後藤かよっすぃ〜の、どっちかのプレゼントを選んでもらうんだよ。」

お互い、帽子を深く被っている為、真希の表情は深く読み取れないが、相変わらず口元は笑ってるみたいだった。

「好きな方のね、プレゼントを、受け取ってもらうの。どっちかを選んでもらうんだよ。ただし…。」

真希の声が少し低くなる。

「選ばれなかった方は、いくらなっちの事が好きでも、そこで手をひく事。
 完全にふられたわけだし、なっちに『何で選んでくれなかったの?』とか詰め寄らない事。
 あっさりすっきり、なっちからは一切、手を引く。」


少し間を置いてから、真希は「どう?」とひとみの帽子の中を覗き込んだ。

真希の顔は自信に満ち溢れていたが、ひとみもその案には賛成だった。
どちらにせよ、クリスマスにはある一大決心をしていたのだから。


「いいよ、それ。おもしろそうじゃん。」

ひとみも負けずと自信満々の笑みを返した。
真希の顔が一瞬、冷たく無表情になったが、すぐに元通りの笑みに戻った。
124 名前:ぷれぜんと 投稿日:2002年11月02日(土)23時04分36秒
「おっけ。そうこなくっちゃ。…それじゃ、私まだ寄ってくとこあるから〜。」

そう言って真希は手を振りながら曲がり角を曲がって歩いていった。

           −−−

ひとみはクリスマスにかけていた。
なつみの事が好きだという気持ちを、ありったけ伝えたかった。

ひとみは、クリスマスの日に、なつみに改めて『告白』する事を決意していた。
それはひとみにとって最後の希望だった。

          −−−

ひとみと別れてから真希は無表情で梨華にメールを打っていた。

《今すぐ、どうしても会いたい。》

真希は、今すぐ梨華を抱きたかった。
ひとみのあの自信に満ち溢れた笑顔が気に食わなかった。

(バカじゃん…。クリスマスまでに、後藤が先になっち落とすんだから…。
 なっちは後藤が好きなんだから…好きなんだから…。
 好きなん だ か ら … …。)

真希の瞳孔は大きく見開かれていた。
125 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年11月02日(土)23時10分00秒
久々に更新。まじ、宿題やテストやらで忙しいんで申し訳ないっす。
今も結構、時間ぎちぎちなんですが(^^;
でも10日以内に更新するというのは守りたいです。

>>114 まるみさん
 すぐレス有り難うございました!嬉しかったです。
 やっぱり更新遅いですけどこれからもヨロシクお願いします。
 リアルで見れてよかったってのはいしごまエロがあっても良かったって事ですか?
 ご要望に答えられるよう、極力長く頑張りまっす。

>>115 名無し読者さん
 初めて読んで頂いて有り難うございます!
 面白いといって下さって有り難うございますm(−−)m
 書いてる私も続きがどうなるか分からないっす(苦笑)

レス有り難うございます!
また、感想等、頂けると嬉しいです。
126 名前:17 投稿日:2002年11月02日(土)23時37分02秒
久しぶりにココを見たら、
いつの間にか話が盛り上がってますね。
なちよしはどうなるんでしょう・・・。
マイナー好きとしては非常に気になります(w

127 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月03日(日)00時23分46秒
なちよし、最近ハマってます。
世間ではマイナーCPですが、自分は断然好きです!
「うたばん」でのなっちの「ひーちゃん」発言に萌えましたよ(W
128 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)09時47分12秒
「もうすぐ、クリスマスか…。」

壁にかけられたカレンダーを見ながら、なつみは一人でため息をついた。
クリスマスまで後一週間。
夜遅くに仕事から家に帰ってきて、いつもする事がカレンダーチェック。
その日の日付を赤い×印で上から消しては、近づいてくるクリスマスにため息をつく。
その日、なつみがつけた×印の下には、赤いペンでハート型に囲まれた25日という日付があった。

「今年のクリスマスは、よっすぃーと過ごすつもりだったんだけど…。」

立てかけてあるカレンダーを見つめながら独りで呟く。

「なっちが、こんな風にしちゃったからなぁ…。」

はぁ〜っとため息をつきながら、なつみはベッドの上に身を投げ出した。
近くにあった枕をつかみ、ぽふっと顔をうずめる。
129 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)09時50分41秒
(よっすぃーは、どうするんだろう…。)

ひとみの顔が思い浮かんだ後に、すぐに真希の笑顔が思い浮かぶ。

(真希はどうするんだろう…。…でもそういえば、去年のクリスマスは真希と過ごしたっけ。)

あれは、真希と付き合い始めてちょうど4ヶ月ほど経った頃だった。
なつみは、夢にまでみた真希と二人きりのクリスマスを過ごせるのに、心を躍らせていた。
だがせっかくのクリスマスなのに仕事が夜遅くまであり、二人でなつみの家に帰った時は、二人ともぐたぐたに疲れていた。
その日は結局、ただプレゼントを交換しあって、同じベッドで一緒に寝ただけだった。

来年のクリスマスはもっとゆっくり二人で過ごそうね、と真希が優しく笑いかけてくれたのを思い出す。

(あの時は、あれで幸せだったのに…。いつからなんだろう、真希といるのが、不安になっていたのは…。)


なつみが枕から顔を上げて、ふと横を見ると、そこにはひとみとなつみが笑顔でピースしてる写真があった。
なつみはベッドから降りるとその写真たてを手に取った。
130 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)09時54分42秒
(でも、よっすぃーも今、なっちが感じてたのと同じように、不安なんだよね…。)

写真ごしに笑いかけてくるひとみの笑顔を見ると、なつみの心は締め付けられた。


写真をいったん机の上に戻すと、下にある引き出しを開け、中に伏せてあるもう一つの写真たてを取る。

そこには若い頃の真希となつみが写っていた。

この写真をとった時は、まだ真希とはそういう関係ではなかった。
真希が娘。に加入して暫く経った頃のものだった。

口を閉じて少し照れ笑い気味ななつみと、口をあけて無邪気に笑っている真希…。
なつみはその写真を暫く見て、やがてそのフレームから写真を抜きとった。

(忘れないと、ね…。)

なつみはその写真を小さく折りたたんでからゴミ箱へ捨てた。
131 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)09時55分13秒
ずっと迷ってた事だった。
まだ、はっきり言って踏ん切りがついていない。
だが、これ以上ひとみを苦しめたくなかった。

そしてなつみは気付いていた。
例え、また真希とやり直す事になっても、真希の心はいまだにあの人にあるという事を。
そして、少なくともひとみといると心が温まるという事を。
そしてそれが、愛という感情なのではないかという事を。

(今週末ぐらいに、よっすぃーへのクリスマスプレゼント、買いに行かないとね…。)

なつみは、思いながら、もう必要の無い写真のフレームを、引き出しの奥に閉まった。
132 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)09時58分03秒
     
     −−−

ひとみは焦っていた。

ここ最近、なつみと全然喋っていない。
年末の番組へ向けて相変わらず仕事は忙しく、その度になつみと顔を合わせているのだが、話しかけるきっかけがつかめない。
時々目が合うたびに、話しかけようかと迷うのだが、いつも横から加護や辻がすぐにちょっかいをかけてくる。
休憩時間やリハーサルの間、ひとみはほとんど加護や辻と一緒にいた。


ある日の休憩時間、ひとみが一人で台本に目を通していると、横から高橋が声をかけてきた。

「あの、吉澤さん、ちょっといいですか?」

ひとみは高橋の教育係についていた。
こうやって時々、高橋の方から質問を投げかけてくる。
一歳しか違わないが、ひとみにとっては可愛い後輩だった。

だがその日は少し違った。
高橋だけでなく、新メンバー全員が集まってるのだ。
ひとみが驚いたように椅子から立ち上がると、高橋の横にいた小川が一歩前に踏み出した。
133 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)10時00分42秒
「吉澤さん、大丈夫ですか??」

小川は顔の前で手と手を握り、上目遣いでひとみを見上げている。

「最近、全然元気がないな〜って、私達心配してたんですよ。」

後ろから早口で高橋が付け加える。

「それで、もし良かったら、今度のクリスマスに、パーティがあるんで…。」

紺野が一言一言区切りながら言う。

「是非、吉澤さんにも来て頂こうかな、と思いまして!」

新垣が妙に丁寧な口調で元気よく声を出す。

「え?えっと、あの、そのパーティって…。」

「あ!私達4人が開催するパーティです!
 盛り上がるはずなので、吉澤さんが来てくれたらすごく嬉しい、
 あ、いや、もっと盛り上がるかなぁと思って。」

小川がどんどんと顔を近づけてくる。
いつも歌を歌うたびに彼女と顔を近づけるのだが、さすがにこんなにアップで近づかれると、少しひいてしまう。

「あ、いや、その、ごめん!嬉しいんだけど…ちょっと先約入っちゃってて…。」

ひとみは真希との約束を思い出しながら頭をかいた。
134 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)10時03分17秒
ひとみがもう一度「ごめん!」と頭を下げると4人は肩を落としながらその場を去って行った。
下を向きながらぶつぶつと何かを言っている。

「やっぱり石川さんだ…。」

「ちっ、別れたと思ったのに。」

「くすん、やっと告白する勇気がでたのに!」

「元気出して、まこっちゃん!私がついててあげるから…。」

明らかにひとみに聞こえるように呟いている4人を見送りながら、(なんだったんだ…)と胸中呟いた。


クリスマスまで後4日。

(やっぱり、なっちと仲直りしといたほうがいいよね。)

ひとみは今日の仕事が比較的いつもより早く終わる事を確かめてから、久しぶりになつみに話しかける事を決意した。
135 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)10時07分02秒
最後の歌の収録が終わった後、ひとみは久しぶりになつみの名前を呼んだ。

「あの、安倍さん!」

ひとみの声に、なつみの体が一瞬びくっと反応する。
だが振り返ってこっちを見るなつみの顔は、優しかった。

「何?よっすぃー。」

なつみの隣にいた飯田と矢口も一緒に振り返る。
二人の視線が気になりながらも、ひとみは少し声を小さくして言った。

「あの、今日一緒に帰りませんか?」

ひとみの言葉に、飯田と矢口が驚いたようにこちらを見る。

「…うん!いいよ。…実はなっちも、よっすぃーと話したかったんだ…。」

少し顔を赤くして笑ってくれるなつみを見て、ひとみは安心した。
そしてそんななつみが可愛すぎて、思わず抱きしめたい衝動にからかわれた。
横で、飯田はぽかーんと口をあけて、矢口は何かいろいろ聞きたそうになつみを見ていた。



そこから少し離れた場所で二人のやりとりを見ていた梨華は、雑誌のインタビューに答えている真希の元へ走って行った。
136 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)10時11分24秒

     −−−

ひとみが帰る用意をしてる時、梨華が声をかけてきた。

「ひとみちゃん、ちょっといい?」

梨華と喋るのも久しぶりだった。
あの日以来、お互い表面だけで挨拶などを交わしていたが、まともに二人きりで喋るのは久しぶりだ。


梨華につれられて楽屋の端へ行くと、梨華は俯き加減に口を開いた。

「前も言ったよね、安倍さんは、だめだって…。」

「え?」

「安倍さんは、ひとみちゃんを苦しめるだけだって。私、言ったよね?」

ひとみは梨華に告白された日の事を思い出した。
そういえばそんな事を言ってたような気もする。

「うん。あんまり覚えてないけど…。」

「今、安倍さんがどこにいるか知ってる?」

「え?楽屋じゃ…。」

言いながら辺りを見回してみるが、安部の姿が見つからない。

「あれ?どこいったんだろう。さっきまでいてたのに。トイレじゃないの?」

「違うよ。私、さっき見たんだけど、ごっちんと二人で、空き部屋に入っていってた。」

梨華の言葉に、ひとみの顔が険しくなる。
137 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)10時14分59秒
「え?ごっちん??二人でって…。それ、どこ?!梨華ちゃん!!」

ひとみに肩を揺さぶれながら、梨華は目をそらした。

「ひとみちゃん、行かないほうがいいと思う。
 真希ちゃんから聞いたんだけど、安倍さんと真希ちゃんって付き合ってたんでしょ。
 やっぱり、あの噂は本当だったんだよ。安倍さんは、軽いって…。」

「梨華ちゃん!!」

思わずひとみは大声を出していた。
もう少しで、梨華の顔をぶつところだった。

梨華は一瞬躊躇し、諦めたようにひとみを楽屋の外まで連れて行った。


     −−−


「まださ、好きなんでしょ?」

少し開いたドアから、声が聞こえてきた。
中は電気がついてなく、薄暗くなっている。
どうやら誰も使っていない楽屋のようだった。

ひとみがドアの隙間から中を覗いてみると、中には真希となつみがいた。
真希はなつみを追い詰めるような格好で、壁に手をついている。
なつみの表情は暗くて読み取れない。
138 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)10時20分30秒
「ごめん、真希…。」

振り絞ったようになつみが答える。
その反応に真希の態度に苛立ちが芽生える。

「ごめんって…、何それ!
 まさか、後藤よりあの子の事が好きになったなんて言うんじゃないよね!?」

真希の声が部屋に響く。
いつものおっとりとしたような雰囲気は、一つも読み取れない。

なつみが黙っていると、真希はふっと肩の力を抜いた。
そしてさっきとは打って変わった優しい口調で言葉を続ける。

「なっちさ…、思い出してよ。
 後藤と一緒にいて、楽しかったでしょ?幸せだったでしょ?
 後藤は楽しかったよ。一緒に買い物行ったりしてさぁ。
 毎日、なっちは後藤といるだけで幸せだって、言ってくれたじゃん!」

なつみは黙って下を向いている。

「何で?何でさぁ、突然別れようなんて言い出したの?後藤、何か悪いことした?」

真希がなつみを覗き込むように首をかしげる。

「…真希は、どっち?」

「え?」

「紗耶香となっち、どっちが好きなの?!」

なつみが顔を上げた。
ひとみからその表情は見えなかったが、声には涙が混じっていた。
139 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)12時51分01秒
なつみの言葉に、真希は一瞬躊躇した。
が、すぐに正気を取り戻し、優しい言葉をかけた。

「なんだ…。やっぱりそんな事で悩んでたんだ…。
 …はは、やっぱり誤解だったんだね!ははは。」

天井を見上げて、真希が笑う。

「後藤は、もうなっちだけだよ。なっちが、好きだから。大好きだから。
 いちーちゃんの事は…忘れた、から。」

真希の手がなつみの頬をなでる。
そしてそのまま目の涙を拭うと、顔を近づける。

なつみが抵抗せずに真希の口付けを受ける時、ひとみはその場から走っていた。


     −−−



「ひとみちゃん!待って…!待ってよ、ひとみちゃん!」

梨華は必死で前を走る人物を追いかけていた。
これでも元テニス部だ。元バレーボール部より、走りには自信がある。

「はぁ…はぁ…。もう、びっくりしたじゃん。突然走るんだから…。」

先ほどの部屋から大分走った。途中で何度か階段を降りた気もする。
行き止まりになって、やっとひとみは止まった。

壁を向いたまま動かないひとみの背中を見ながら、梨華は息を切れ切れに吐いた。

「ね…。言ったでしょ。安倍さんは、だめだって…。」
140 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)12時56分37秒
自分でそう言いながらも、梨華の胸中は複雑だった。

真希の口から初めてなつみの事が好きというのを聞いた。
目の前で真希がなつみにキスするとこも見てしまった。
はっきり言って、真希の唇がなつみの唇と触れ合う時、梨華の心は凄く動揺していた。
どこか裏切られたような痛い気持ち。
この気持ちがなんなのか、今の梨華には分からなかった。

だが取り合えず、ここから自分の仕事を遂行しなければいけない。
ほとんどは、真希の言ったとおりに計画が進行していた。

「…そうかも、しんない…。」

突然、壁を向いていたひとみが声をあげた。その声は少し震えていた。

「梨華ちゃんのさ…言ってた、通りだね。」

そういって振り返ったひとみは、笑っていた。
だがその目には、溢れんばかりの涙が溜まっていた。



     −−−





「ごめんね、梨華ちゃん。良かったの?明日も仕事で、疲れてるんじゃ…。」

「ううん。大丈夫。それにやっぱり、一人暮らしは寂しいしね!
 それにしても久しぶりだよね、ひとみちゃんが、うちに泊まりに来てくれるの。」
141 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)13時00分07秒
梨華はテレビの前にあるソファに座るひとみを笑いながら見た。
ひとみも、「確かに久しぶりだな〜。」と言って家の中を見回す。

梨華はあるアパートの小さな部屋で一人暮らしをしていた。
家の中は少しイメージと違って質素な感じだが、ほとんどの物がピンクで飾られている。

梨華は、本当にひとみを家に連れてきてしまった事に、少し焦りを覚えていた。
あの時のひとみがあまりにもかわいそうだったから、というわけではなかった。全て真希が言った通りに動いていた。

『それで、梨華ちゃんの家にもつれてっちゃえば、最高だよね。』

行為の後、裸のままシーツにくるまった真希の姿が思い浮かぶ。

『そうだ!そこでバージン奪っちゃえば?
 そしたらもう二度と、よっすぃ〜はなっちに近づかないだろうしさ。
 完全に梨華ちゃんのものにもなるよ!うん、それがいいって!』

その後、バージンなんて奪えないと梨華が反抗すると、真希は梨華が人の抱き方を知らないのだと勘違いし、抱き方を教えてくれた。
いつも真希にされている行為を、その時初めて、梨華が真希にした。
その時の事を思うと、梨華の体は熱くなった。
142 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)13時02分39秒
だが、あの時と同じ事を、果たしてひとみに出来るのだろうか。
それに、ひとみが受け入れてくれない可能性もある。
梨華の緊張と不安は高まっていた。

「ね、ねぇひとみちゃん。シャワー浴びる?そろそろ寝ないと、明日も仕事だし…。」

「あ、うん、そうだね。じゃぁちょっと借りよっかな。ありがと、梨華ちゃん。」


ひとみがシャワーを浴びた後、梨華もシャワーを浴びた。
水に打たれている間、梨華の心は緊張と不安でいっぱいだった。

そして迷いもあった。

本当にひとみを抱けるのか。
真希を抱いた時は熱くなってしまった。
教えられながら、必死だったが、あの時、梨華は本気で真希を抱いていた。

そんな風に、ひとみのことも抱けるのだろうか。
143 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)13時06分24秒
梨華が部屋に戻った時、ひとみは横に敷かれた布団の上で雑誌を読んでいた。

「あれ…?布団、どっから…?」

「あぁごめん。いつもの場所見たら、あったから。勝手に敷いちゃった。ごめんね?」

「ううん、いいけど…。」

そんなひとみをみて、梨華は少し安心した。
このまま何もせずに、普通のお泊りで終わらせようか…。

そう思ったのもつかの間、自分はひとみが好きなんだ、このチャンスを逃すともうひとみを手に入れることはできないかもしれない、と自分に言い聞かせた。

真希の顔も浮かんだ。今頃、なつみといるのだろうか。

「梨華ちゃん…。今日は本当、有り難うね。ここきてちょっと、気が晴れた。」

「ううん、私はいいけど…。安倍さんのこと、どうするの?」

梨華の問いに、ひとみの体がびくっとなる。

「さぁー…。まだ分かんないけど、でも私、やっぱりなっちが好きだから。」

「…そう。」

「でも、もうだめかな…。なっちがごっちん選んじゃったら、勝ち目ないもん。
 ごっちんも、なっちの事本気みたいだし。」

梨華の心臓がずきんと鳴る。
144 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)13時09分00秒
「あーあ、本当、辛いなぁ。
 …こんな事なら、梨華ちゃん好きになっとけば良かったなー。」

笑いながらひとみが振り返る。

「ひとみちゃん…。」

「ん?」

「今日、私のベッドで、一緒に寝よう?」

梨華の心臓は極限まで高くなっていた。手が、汗で濡れている。

「え?何、言ってんの梨華ちゃん。あ、気ぃ使ってくれてる?
 大丈夫だよー、私は今寂しいけど、一人で寝れるからさぁ。」

「違う、そうじゃなくって…。」

汗まみれの手を握りながら、梨華は決心したように顔を上げた。

「ひとみちゃん、ここ、座って。」

ベッドの方を指しながら梨華はきびきびとした口調で言った。

ひとみは少し躊躇してから、「なになに?あらたまっちゃって。」と言いながらそこに座った。


ひとみがベッドに座った途端、梨華は抱きついた。

「ひとみちゃん…!好き…。」
145 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)13時12分12秒
突然の事にひとみは何が起こったのか分からないといったように目を丸くさせたが、すぐに梨華の体を離そうとする。

「ちょ、待ってよ、梨華ちゃん!何やって…。!!」

だが、ひとみの口は梨華の唇によって塞がれた。

「ん…!」

ひとみはそれを離そうとするが、思ったように力が入らない。

そうしているうちに、梨華の舌がひとみの口の中に進入してきた。
梨華の舌がひとみの歯、口の中を嘗め回す。
隙の無い行為に、思わずひとみの舌もそれと絡み付いてしまう。

(ん、す、すごいテクニック…。)

梨華のディープキスの上手さに圧倒されながら、ひとみの体は徐々に傾いていった。


やっと梨華の唇が離れた時にはひとみは完全にベッドの上に押し倒されていた。

「ちょ、ちょっと待って梨華ちゃん!こ、こんなのって…。
し、しかもどこでそんなテクニックを…。」

「ひとみちゃん…ひとみちゃんが好きだから…!お願いひとみちゃん、抱かせて…。」

梨華は、自分でも言ってる事が半分理解できていなかった。

本当にひとみの事が好きなんだろうか。
本当にひとみを抱きたいのだろうか。
キスしてる間にも、浮かんできたのは真希の顔だった。
146 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)13時15分50秒
「だ、抱かせてって梨華ちゃん!どこでそんな言葉を…。」]

結局梨華は年上だったのだ。
梨華の事を純粋な少女だと思っていたひとみはショックを受けていた。

「ひとみちゃん、好き…。」

そういってまた唇を重ねる。
はじめ抵抗していたひとみの体からも、だんだん力が抜けていく。
梨華のキスに、感じはじめてさえいた。

なつみの事が頭に浮かんでは消える。
はじめは罪悪感から抵抗していたのだが、なつみも真希とこんな事をしてるのか、と思うと、次第に抵抗は緩くなっていった。


暫くして、梨華がひとみの胸に手を廻した。
そしてその突起を、上手いように指でつまむ。

「あ…。」

ひとみは初めて感じる感覚に、思わず声を漏らしてしまった。
梨華の唇の呪縛が解け、その舌がひとみの首筋を這う。

梨華の手がひとみのパジャマを解きだした。
ボタンを一つずつ外していく。
その行為を見ながら、ひとみはだんだんと我に返っていった。

「ま、待って!梨華ちゃん、私やっぱり、こんなの…。」

ひとみは初めて素肌を重ねあうのは好きな人と、と決めていた事を思い出した。
147 名前:こなごな 投稿日:2002年11月08日(金)13時17分20秒

ひとみはボタンを外している手を掴んだ。
だが、その手には力が入っていなかった。

不思議そうに梨華の顔を見てみると、その目からは涙がこぼれていた。


「ごめん…ごめんね、ひとみちゃん…。」


ひく、ひくと肩を震わせながら、梨華がベッドから降りる。


ひとみはパジャマのボタンをつけなおし、泣いている梨華の肩を抱いた。

梨華は暫く、ひとみの胸の中で泣き続けていた。

148 名前:報復 投稿日:2002年11月08日(金)13時23分56秒
次の日、仕事に行く前にいったん家に帰るために、ひとみは朝早くから電車に乗った。

電車に揺られながら、昨日起きた事を頭の中で繰り返す。
あの後、梨華は真希との関係について打ち明けてくれた。

おかげで梨華のテクニックの上手さにも納得できたが、それ以上に真希への憎しみが大きくなっていった。
純粋な梨華さえも巻き込み、なつみの事が好きなくせに梨華とは体を重ねる。

梨華は、真希の本当の気持ちが分からないと言っていた。
なつみが好きという素振りを見せたことが無いと。

だがそんな真希を、自分でも気付かないうちに好きになっていたという事も教えてくれた。

(遊んでるのはごっちんの方じゃん。
 許せない…。なっちも、梨華ちゃんも傷つけて。許せないよ!)

ひとみは自然と歯軋りを立てていた。なつみの事を思うと、胸がもっと熱くなった。

(昨日、あれからどうなったんだろう…。なっちはもう、ごっちんの作戦に堕ちちゃったのかなぁ…。)

昨日の真希となつみの事を思い出して、急に弱気になる。
149 名前:報復 投稿日:2002年11月08日(金)13時26分46秒
考えてても仕方ない、と気を紛らわすために、ひとみは携帯を取り出した。

2通が新着だった。

《よっすぃー、昨日は何で先帰っちゃったの?
 楽屋行ったらもういなかったから、探したよ〜。携帯も繋がんないしさ。
 でもま、明日喋れるしね!明日も仕事がんばろぉ!》

なつみからだった。

どういう事だろう。

探した、という事はあの時、あれ以上真希とは何も無かったのだろうか。
ひとみの心の中にかすかな希望が芽生える。


もう一つのメールは梨華からだった。真希から連絡がきたらメールするとのこと。



それから家に帰るまで、ひとみはどんな風にして真希を問い詰めるかだけを考えていた。

150 名前:報復 投稿日:2002年11月08日(金)20時18分41秒
その日の仕事は思ったより忙しかった。
なつみとは朝、挨拶を交わしたきり喋れてない。
真希の様子も窺っているのだが、どこかしら元気がないようだった。
リハーサル中にも何度かミスをおかしていた。
いつもの真希にはありえない事だった。

やっと空いた少しだけの休憩時間に、梨華からメールがきた。
すぐ横に座ってるのに、何でメール?とひとみは首をかしげたが、その内容を読んで理解できた。
梨華は真希との事をひとみに打ち明けてしまった事は、まだ真希には秘密にしておきたいようだった。
昨日のことは未遂で終わった、としか真希には報告していないらしい。
気になる真希の方は、一言、『作戦失敗』とだけ言ったようだった。
つまり、なつみとはあれ以上何もなかったという事だろうか。
作戦失敗という文字を見て、ひとみは思わず、「よっしゃっ!」と叫んでしまった。
151 名前:報復 投稿日:2002年11月08日(金)20時21分27秒
取り合えず、なつみと真希がまだ恋人同士になっていないという事だけで、ひとみは嬉しかった。
ひとみにも、まだなつみに改めて告白するチャンスはあった。

(後は、ごっちんだな…。)

遠くの方で台本に目を通してる真希を見据えながら、ひとみは思った。


結局、昨日のことはなつみに適当な言い訳をして、今日は用事があるから、と言って一緒に帰るのをやめた。
ひとみはどうしても、真希と話をしておきたかった。

真希が楽屋を出るのを確かめてから、1分ほど遅れて後を追う。
建物から出て暫く先に、真希が歩いてるのが見えた。

周りを気にして、近くまで走ってから後ろから「ごっちん!」と呼んだ。
深い帽子を被ったまま、真希が徐に振り返る。

「…よっすぃ〜…?」

その声は明らかに沈んでいた。

「ちょっとさ、付き合ってくんない?」

「…遠慮しとく。」

真希は帽子を深く被りなおしてから、ひとみを無視して歩き出す。
152 名前:報復 投稿日:2002年11月08日(金)20時24分34秒
「何で?私は言いたい事あるんだけど。ちょっとぐらいでいいからさ。」

「今さぁ、後藤がいっちばん見たくない顔の人って、誰か分かる?」

「え…?」

「あんただよ、あ・ん・た。」

魚が死んだような冷たい目で真希は言い放った。
その迫力に、ひとみは思わず後ずさる。

「ちょ、何それ…。って、ちょっと待ってよごっちん!
 私だって、今別にごっちんと話したくなんてないんだけど…。」

ごちゃごちゃとひとみが言ってる間に、真希はどんどん前へ歩いていく。

「違う、だから、昨日!そう、昨日、なっちと何があったの?」

ひとみの言葉に真希が立ち止まった。帽子のせいで、表情が読み取れない。


「…別に。」

「別にって…。私、見たんだよ!ごっちんが…なっちに、キスするとこ…。」

「ふ〜ん、それで?そこまで見たんなら、後藤に聞く事はなんもないでしょ。」

「でも、そこまでしか見なかったから…。辛くなって、走っちゃって。
 今日、ごっちんの様子、おかしいし…。」

そこまでひとみがいうと真希はぱっと顔を上げた。
153 名前:報復 投稿日:2002年11月08日(金)20時27分50秒
「え?見てない?見てないの?キスの後、見てないの?」

頷くひとみを見ながら真希の顔に笑みが広がっていった。

「ふ〜ん、そっかぁ。んじゃぁ、これだけ教えといてあげる。
 あの後、なっちを抱いたよ。服着たまま。指でだけ、だけどね。」

「……。…え?」

「でもやっぱりその後さぁ、なっちに拒まれちゃってさぁ。
 恋人の関係には、なれないって。後藤の事、忘れたいんだってさ。
 よっすぃ〜を傷つけたくないとも言ってた。」

何事もないように言い放つ真希の言葉が、ひとみには一つも理解できなかった。

「だから後藤悩んでてさぁ〜。どうやったらなっちが素直になるのかなぁって。
 で、どう考えてもお邪魔虫を退治しないと無理だなぁって思っててさぁ。
 だから今、本当、いっちばん、顔、見たくないんだよねぇ。」

真希はお得意のきゃははという笑い声をあげる。
ひとみの頭の中は、真っ白だった。



その後、どうやって家に帰ったか覚えていない。
気付けば朝だった。
ベッドの横にあるカレンダーを見た。

クリスマスまで、後2日だった。
154 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年11月08日(金)20時35分29秒
うだうだと書いてますが大分終盤に近づいてきました。
いらないシーンが多かったような気もしますが…。
駄文でちまちまと書いてるけど読んでる方がいると信じて!
更新していきたいと思います(--)

>>126 17さん
 いつの間にか話が盛り上がってますよね(^^;
 何故こんな展開に?って私も分かりません。
 らぶらぶなちよしは、きっともうすぐやってくるので…汗)
 それまで少しマイナー路線を外れるかもですが(ェッ!?)

>>127 名無し読者さん
 なちよしいいですよね〜^^
 マイナーだからこそ、萌えるのです!
 でも密かに、なちよしヲタって結構いるんですよね。
 うたばんのひーちゃん発言には私も萌えました!

また、レス、感想等、頂けると嬉しいですm(--)m
155 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月09日(土)14時25分20秒
なちよし大好物です!がんがってください!!
156 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月09日(土)21時27分28秒
梨華ちゃんが切ないっすね…
よすぃこが頑張らんと
157 名前:報復 投稿日:2002年11月11日(月)22時28分41秒
朝起きて、ご飯を食べ、歯を磨いて、仕事に行く用意をした。
先ほどちらっと見た天気予報によると、今日は相当冷えるそうだ。
コートを取る時に、もう一度カレンダーを見た。
なつみに改めて告白する日まで後2日だった。

お気に入りのベージュのコートを羽織り、マフラーをしながら昨日の真希との事を思い出した。
そういえば、何のために真希に話しかけたのだろう。
一番問い詰めたかった、梨華との関係について話すのを忘れていた。

最後に、帽子を深く被り、鞄を取って、机の上に飾ってあるなつみの写真を見た。

(ごっちんの事なんて、気にしない。私は信じない。…なっちだけを、信じよう。)

ひとみは踵を返し、部屋を出た。
写真の中のなつみは笑っていた。


駅に向かっている途中、メールが来た。
梨華からだった。

昨夜、混乱する意識の中、必死で梨華に電話をかけた。
だが何度かけても留守だった。
仕方なく、昨日真希が言った事をメールで送っておいたのだ。
158 名前:報復 投稿日:2002年11月11日(月)22時30分44秒
その返事が今きたようだ。
梨華のメールには『何それー!絶対嘘だよ!』と書いてあった。
時間厳守の梨華の事だ。
今頃、既に楽屋かそこに向かって歩いてる途中だろう。

すれ違う人を見ながら、ひとみは梨華に電話をかけた。

「ひとみちゃん!それ絶対嘘だよ!!」

繋がった途端、甲高いアニメ声が聞こえてくる。

「そんな事あったら、絶対私に報告してるし、真希ちゃん、もっと元気なはずだよ。
 何かあれからすっごい落ち込んでるし…。作戦失敗、しか言ってくれないんだけど…。
 そりゃ、それがもし本当だったら悲しいけど…。」

電話越しにも、梨華が今どのような表情で喋っているのかがよく分かる。

「それとなんか、でもクリスマスがあるから、とかも言ってた。
 多分、クリスマスに何かやるんだと思う。
 ほら、HEY×3の生放送の後、もう仕事ないでしょ?その時だと思う。」
159 名前:報復 投稿日:2002年11月11日(月)22時31分29秒
梨華に相槌を打ちながら、駅が見えてきた。
ひとみはもう電車に乗るから、と言って電話を切った。

(やっぱり、昨日ごっちんが言ってた事は嘘だったのかな…。
 でも、どちらにせよ、ごっちんもクリスマスにかけてるんだよね。)

ひとみははぁ〜とため息をついた。はいた息が寒さで白くなる。

(なっち…。)

薄暗い空を見上げながら、ひとみはホームの端で電車が来るのを待った。
160 名前:決心 投稿日:2002年11月12日(火)11時58分09秒
その日は夜までHEY×3の生放送の収録だった。
夕方からリハーサルを始めて、夜から本番だった。

クリスマスという事で、休憩中にはプレゼント交換大会が行われていた。
ひとみも一応用意してきた物をメンバーやマネージャーに配った。
真希にも渡すかどうか迷ったが、結局鞄の中に入れとく事にした。

クリスマスまで仕事があるという事で、みんなどこか落ち込んでいた。
特に落ち込んでいたのは加護だった。
休憩中に、泣いたりしていた。
生放送中にも、ずっと半泣きだった。
加護のホームシックは今に始まった事ではないが、今日の態度にはマネージャーやスタッフもうんざりといった感じだった。
CMに入った途端、加護はマネージャーに叱られていた。
161 名前:決心 投稿日:2002年11月12日(火)12時00分30秒
ひとみはとうとうこの日が来たと思った。
なつみに告白する日。
今日で、なつみが自分を選ぶか真希を選ぶかをはっきりさせる。
CM中ひとみは、早く収録が終われ、と心の中で呟きながら何度も時計を見ていた。

だがそんな時、真希が話しかけてきた。

「今日の勝負、なしね。」

ひとみの方を見ずに、突然そう言ってきた。

「この前言ったでしょ。なっちはもう、後藤のもんなんだよ。
 この前、後藤が確かめたから。
 だから、クリスマスがくるまでに、勝負ついちゃったからさ。
 なっちにプレゼント選んでもらうっていうの、無しね。」

そう言いながら、真希の目はどこか泳いでいた。

「悪いけど、私、ごっちんの事信じてないから。なっちだけを信じてるから。
 それに、勝負とかもう関係なく、私はなっちにプレゼントを渡すよ。
 それでその時、本当の事を聞かせてもらう。
 私は、なっちの口から本当の事を聞くまで何も信じないから。」

ひとみは真希を見据えてはっきりとそう言った。
真希が怪訝な顔をしてこちらを向いた時には、ディレクターから声CMの終わる声がかかった。
162 名前:決心 投稿日:2002年11月12日(火)12時05分06秒
8時に、娘。の生放送の収録が終わった。
明日は丸一日仕事がないので、これで暫くのオフとなり、メンバー内から歓喜の声があがる。

ひとみは他のメンバーと一緒に楽屋に戻ってすぐに帰り支度をした。
なつみはまだ来ていない。雑誌のインタビューでも受けてるのだろうか。


暫くして、なつみは飯田と一緒に楽屋に入ってきた。

「なっち!!!」

なつみが入った途端、ひとみは大声をあげた。ひとみの声は楽屋全体に響いた。
明日のオフに何をやるかなどを話しながら帰り支度をしてたメンバー全員がこちらを振り向く。
注目を浴びながら、ひとみは鞄とコートを持ってなつみの前まで歩いていった。
途中、真希の刺さるような視線が気になった。

「私、話したい事がある。渡したい物もあるし…。
 今夜9時、思い出の場所に来てほしい。
 私はそこで待ってるから。…なっちが来るまで、待ってるから。」
163 名前:決心 投稿日:2002年11月12日(火)12時06分38秒
ひとみの声だけが楽屋に響いた。
なつみが口をあけてぽかーんとした顔で立っている。
暫くして、戸惑いながらうなずくのを見てからひとみは楽屋を出た。
間際に後ろを振り返ると、梨華の「がんばれ!」という口の動きと、無表情でこちらを見つめてる真希、そして放心状態ので立っている5期メンバーの姿が見えた。


     −−−


『思い出の場所』までは電車で10分しかかからなかった。
既に時刻は8時40分をさしていた。
どうせなら楽屋か帰り道になつみと話をすればよかったのだが、ひとみは少し恐かった。
改めて告白して、振られるのが恐かった。
『思い出の場所』にもしなつみが現れないのなら、それが彼女の答えになる。
ひとみは意味の無い告白をせず、傷つかなくて済む。
だがそれ以上に、ひとみは『思い出の場所』でもう一度告白したかった。


電車を降りて、駅から少し歩いたところにあるパン屋さんによる。
閉店寸前のせいか、ほとんどパンは残っていなかった。
だがひとみのお気に入りのプレインベーグルだけが残っていた。
ここでしか売っていない、貴重なベーグルだった。
164 名前:決心 投稿日:2002年11月12日(火)12時09分10秒
パン屋を出てから、また道沿いに少し歩くと、公園が見えてきた。
帰宅岐路につく人々の輪から抜け出して、その公園に入っていく。
公園は少し切り立った丘の上にあり、その街全体が見渡せた。

(なつかしいなぁ…。)

夜景を見つめながら、ひとみは初めてこの公園に来た時の事を思い出していた。
もともと、ここは梨華の家の近くであり、ひとみがベーグルが大好物なのを教えると、ここに連れてきてくれたのだ。
テレビの収録などの帰り道にしばしば寄った。
梨華は、いつも自分の家と反対方向のこちらに来る事を嫌がっていたのだが、ひとみがどうしても、というといつも付いてきてくれてた。
何度か来るうちに自然と立ち寄るようになったのが、この公園だった。


腕時計を見ると、8時45分だった。
ひとみは夜景が一番よく見えるベンチに腰掛、先ほど買ったベーグルの袋を開けた。
ここでこうしてベーグルを食べるのは、何度目だろうか。

暖かいベーグルをほおばると、気持ちが落ち着いた。
ひとみは食べている間、ここでなつみに告白した時の事を思い出していた。
ベーグル以外の理由で、初めてこの公園に来た日。
あの日の夜景も、確かこれくらい、きれかった。
165 名前:ひとみの回想 投稿日:2002年11月12日(火)12時11分16秒
私が安倍さんの事を好きになったのはあの日からだった。

娘。に入りたてで、まだルールも何にも知らなかった時。
初めてのジャケット撮影に、私達はお祭り気分ではしゃいでた。
敬語とかよくわかんなかったし、加護や辻は握手とかしてもらってた。

だけど、私達は怒られた。
先輩達に、たっぷり怒られた。
私ははっきり言って泣きそうだった。
特にショックだったのは、安倍さんが恐かった事だ。
テレビではいつも天使みたいな笑顔で優しそうな感じがしたのに、すごく厳しかった。


それから私や梨華ちゃん、辻加護と相談して、先輩達に遅れを取らないように頑張る事にした。
でも娘。の世界は思ってたより大変で、私はとても歌やダンスについていけなかった。
166 名前:ひとみの回想 投稿日:2002年11月12日(火)12時13分44秒
確かあれは、一人で残ってダンスの練習をしてた時。
安倍さんが忘れ物を取りに戻ってきた。
私は一人で練習してたのが見つかって、少し気恥ずかしかった。

「あれ〜?吉澤まだ練習してたんだ〜?」

って、安倍さんは普通に話しかけてくれたけど、私はまた怒られるかな、と思って少し恐がってた。

でもそんな私の恥ずかしさに火をつけるように安倍さんは、目の前で踊って見せてって言ってきたんだ。

「あ、違うよ、そこはこうやって…。」

忘れ物を取りに来ただけのはずなのに、安倍さんはそれから熱心にダンスを教えてくれた。
思ってたより全然恐くなかったし、安倍さんの教え方の上手さで、私は自分でも分かるぐらいにその日だけでダンスが上手くなった。

「あの、今日は本当、有り難うございました!」

結局最後まで付き合ってくれて、帰る時にお礼を言うと、テレビで見せるあの天使の笑顔で笑いかけてくれた。

「ううん、いいよ。なっちにできる事をしただけだべさ!
 これから一緒に頑張っていこうね、よっすぃー!」

そう言って手を握られた時、私の中で何かが弾けた。

   あぁ、この人と一緒に歌いたい、って本気で思った。

167 名前:ひとみの回想 投稿日:2002年11月12日(火)12時19分06秒
そしてそれから、安倍さんに褒められる為にダンスも歌も頑張った。
私が頑張ってると、いつも笑顔で「頑張ってるね!よっすぃー!」って言ってくれた。
初めはその笑顔だけでよかったんだけど、いつかその笑顔を独り占めしたいな、と思い始めた。


だから、今度の新曲でセンターを任されるってつんくさんから聞いた時、私はやっと決心がついた。
私もやっと安倍さんに近づけたと思った。
だから、告白する決心をした。
なんていうか、自分に自信がついたって感じだった。


新曲のレコーディングがあったその日、私は思い切って安倍さんに話しかけた。
理由もなしに一緒に帰るのを誘うのは変かなぁと思い、私は思いがけない事を口走っていた。

「あ、あの安倍さん!い、一緒にベーグル食べに行きませんか?
 美味しいとこ、知ってるんです。」

凄く緊張してたんだけど、安倍さんは笑顔でいいよって言ってくれた。
私は嬉しくてたまらなかった。

わざわざ電車に乗ってまで付いてきてもらって、一緒にベーグルを買った。
店を出た後、私は歩いてさりげなく公園に誘導した。
168 名前:ひとみの回想 投稿日:2002年11月12日(火)12時24分58秒
「よっすぃーって本当ベーグル好きだよねぇ〜。
 なっち、よっすぃーのベーグルと卵好きさにはびっくりしたべ!」

「で、でも私には、ベーグルよりも何よりも、もっと好きなのがあるんです。」

私は凄く緊張してた。緊張して何を口走ってるのかもよく分からなかった。
安倍さんの顔がまともに見れなかった。

周りは既に暗くなっていて、その公園には私達以外誰もいなかった。


私は決心して安倍さんの顔を見た。
ベーグルを頬張ってる顔も可愛いな、などと思ってしまった。

「私、安倍さんの事が…す、す、す、す、す…。」

緊張しすぎて舌が動かなかった。
不思議そうな顔をして私を見る安倍さんの顔も、また可愛かった。

「す、好きです!ずっと…ずっと好きでした!」

顔から火が出るかと思った。自分でも分かるくらい、体が熱くなっている。

「え…?よっすぃーが、なっちを?」

きょとんとした顔で安倍さんは自分を指差した。私は頷く事しか出来なかった。

「えーっとそれってつまり…。」

なんとなく反応が悪い。私は不安になった。
169 名前:ひとみの回想 投稿日:2002年11月12日(火)12時28分38秒
「あ…。すいません、やっぱり女の子にこんな事言われたら、気持ち悪いですよね。
 ははは…。すいません、何か、安倍さんを困らせる事言っちゃって…。」

私は弱気だった。片手に持っていたベーグルを見て、それを食べた。
恥ずかしくて泣きそうだった。

「好き、って事は、付き合いたいって事?」

「え?いや、まぁそうです、けど。ははは。」

「そっか。いいよ。なっち、よっすぃーと付き合っても。」

「ははは、やっぱ駄目ですよね。付き合ってもいいんですよね…って、えぇーーーっっ?!」

安倍さんの言葉が信じられなかった。
思わず、持っていたベーグルを落としてしまった。

「なっちもさ、よっすぃーといると楽しいし、安心するっていうか…。
 よっすぃーの事、好きだし、もっとこれから、よっすぃーの事知りたいよ。」

そう言って今までで最高の笑顔を見せてくれた。
私の顔は思わず緩んでしまい、思いっきりにやけてしまった。

「う、嘘…安部さんが、私と…。ゆ、夢じゃない、よね。」

「夢じゃないよ!その証拠に…なっちの事おもぉいっきり抱きしめていいべさ!」

安倍さんの言葉に、私は気を失うかと思ったぐらい、どきどきしていた。
170 名前:ひとみの回想 投稿日:2002年11月12日(火)12時30分20秒
ずっと触れたかった、安倍さんの体にさわれる。
今まで何度、その体を抱きしめたいって思ったか。
私は恐る恐る、安倍さんの体に近づいた。

「あ、安倍さん…。す、好きです、安倍さん。好き!」

ぎゅっと抱きしめると、壊れてしまいそうなほど細かった。
肌を通して安倍さんの温もりが伝わってきた。

「なっち、でいいよ。敬語も使わなくていいから…。
 よっすぃー、あったかいね。」

安倍さんも私の体に手を廻してくれた。
なんとなく、安倍さんの心臓の音も聞こえた気がした。
とてもどきどきしていた。

その時私は、この人を絶対傷つけないって思った。

幸せにしたいって心から思った。



171 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月12日(火)12時35分20秒
なつみは時計を見ながら楽屋を出た。
ひとみが出て行った後、他のメンバーに質問攻めにされて暫く動けなかった。
矢口や飯田や保田はからかってくれるだけで済んだのだが、辻と加護には宣戦布告をされてしまった。

「うちらのよっすぃ〜は誰にも渡さへんで!な?のの。」

「そうれす!安倍さんはこれからのの達の敵れす。」


最も恐かったのは新メンバーだった。
小川には泣き落としをくらった。

「えぇーん、吉澤さんが…吉澤さんがぁ…。安倍さん、安倍さんなんかにぃ…。」

「安倍さん!まこっちゃん泣かしてひどいじゃないですか!それでも先輩ですか?」

「あのぉ〜、石川さんはどうなってるんですか?」

「ま・ゆ・げ・ビームっっっ!!!」


なつみは死に物狂いで自分の鞄までたどり着き、楽屋を出た。

だが、まだ誰か、忘れてるような気が…。

「待って!」

(やっぱり…。)

なつみは声のしたほうを振り返った。
172 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月12日(火)12時40分16秒
「行かせない。絶対行かせないよ、なっち!」

そこには真希が立っていた。真希の顔は必死だった。

「真希…。こないだ、言ったはずだよ。
 なっちはもう、真希の事は…なんにも思ってない。よっすぃー、だけだから。」

そのままエレベーターに向かうなつみの前を、真希が立ちはばかる。

「駄目だよ!絶対、行かせないんだから。後藤、許さない!
 よっすぃ〜もなっちも、みんな許さない…。何で…?
 何でみんな後藤を裏切るの?そんなに後藤が嫌いなの?
 後藤だって、後藤だって…。」

無表情を維持していた真希の目から涙が落ちた。

なつみは自分の鼓動が高鳴るのを覚えた。
目の前で真希が、私のせいで泣いている―。
なつみの意識が遠くなりかけた。

(やだ…また、現実逃避?いやだ…。なっち、負けたくない…。
 行かないと、よっすぃーのとこへ、行かないと。)

「…真希、お願い、そこを、どいて…。」

なつみは迫り来る頭痛に頭を押さえながら真希に近づいた。
173 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月12日(火)12時44分05秒
「い、いやだ…。なっちとよっすぃーだけ、幸せになろうなんて…。
 絶対後藤、許さないよ!二人だけ幸せになんて、絶対させるもんか!
 いちーちゃんも、あの時後藤が止めてれば良かったんだ。
 こうやって、何処にも行かせなかったら、きっと、今でも後藤を…。」


「もうやめて!!!」

真希の声を遮るように、大きな甲高い声がかかった。
なつみは自分とは違う声が聞こえて一瞬何が起きたのか分からなかった。
真希がびっくりしたように、なつみの後ろを見つめている。

「梨華ちゃん…?」

こめかみを押さえながらなつみが振り返ると、そこには息を切らした梨華が立っていた。

「もうやめて…。こんな事したって、誰も幸せになれないよ!
 真希ちゃんだって、どんどん傷ついていってるだけでしょ?
 もう、こんな事やめようよ!」

突然の梨華の出現に、なつみは驚いていた。

「…そっか、梨華ちゃんも、後藤を裏切るんだね…。
 みんな、みんな嘘つきじゃん。
 後藤の友達のふりして、みんな嘘つきだったんじゃん!?
 みんな、許せない…ゆる、せない…。」
174 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月12日(火)12時45分39秒
「真希ちゃん、ちが…。」

「後藤のこと、好きだって言ってくれたいちーちゃん。
 後藤のこと、一生裏切らないって言ったなっち。
 後藤に協力するって言ってくれた梨華ちゃん。
 …みんな、許せない。
 復讐…ふく、しゅうしてやる…。
 みんな、みんなに…ふくしゅ…。」

その時、両手で頭を押さえながら瞳孔を見開いて立ち動く真希に、梨華が抱きついた。

「真希ちゃん…ごめん、ごめんね。裏切るつもりとか、そんなんじゃなかったの。
 …私ね、いつの間にか、真希ちゃんの事、好きになってたの。」

「り、かちゃん…?」

「もう大丈夫だよ、一人じゃないから。
 もう、真希ちゃんを誰も傷つけないから。
 私は裏切らないから…。ずっとそばにいるから。
 だから、もう一人じゃないよ。」

瞳孔を見開いたまま立ち尽くす真希に、梨華は優しく語りかけた。

「後藤、一人じゃ、ないの…?」

そう言った真希の目からは、いつしか涙が溢れていた。
梨華が、真希の頭をそっと抱きしめた。
真希は何かを呟きながら、完全にその身を梨華に委ねた。
175 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月12日(火)12時49分38秒
立ちすくんでその様子を見ているなつみに、梨華が振り返った。
その目にも涙が溢れかえっていた。

「安倍さん、行って下さい。ひとみちゃんが、待ってます。」

なつみは梨華の目を見て頷いてからエレベーターに乗った。
エレベーターが閉まる瞬間、安倍は小さく「ありがと、石川。」と呟いた。



     −−−




時計を見ると、既に9時30分だった。
ひとみは、食べ終えたベーグルの袋をゴミ箱に捨てに立ち上がった。

(なっち…こないな。)

さすがに長い間何もしないでただベンチに座っていると、体が冷える。

ひとみは手袋を外して冷たくなった自分の顔に手をやった。
鼻が特に、冷えていた。

(振られちゃったかなぁ…。)

ひとみは雲に覆われ、星の見えない夜空を見上げながら、自分になつみに告白する決意をさせてくれた歌を思い出していた。
176 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月12日(火)12時51分26秒

「Mr.Moonlight…。」

自然と、口ずさむ。白い息とひとみの声が空中に消える。

「今夜誓うよ〜、出来るだけ…。」

ひとみはなつみの事を思った。

「愛しているよ、多分、きっと…。」

(誓えなかったな、愛してるって…。)

自然と、涙がこぼれそうになる。


「Mr.Moonlight。」

突然、ひとみの後ろから声がかかった。

その声に聞き覚えがあり、後ろを振り返る。

「愛しているよ、多分きっと。」

そこには、天使が立っていた。少なくともひとみにはそう見えた。

「Mr.Moonlight、愛してく、Be up & doing…。」

そして、その天使は笑った。ひとみも、一緒に笑った。

『The future is mine!』

177 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年11月12日(火)13時25分58秒
もうすぐ終わりです。
やっとなちよしらしくなってきたかな?
くどくどと書いていてすいません。

>>155
 なちよし大好物ですか!私もです。
 がんがるのでこれからもヨロシクお願いします。

>>156
 よすぃこには頑張ってもらわないとだめっすね。
 でも梨華ちゃんは幸せになったかな?

レス有り難うございました!
178 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月12日(火)15時44分54秒
もうラストなんですか!?いつも更新楽しみしてたので寂しいです・・・
作者さんのなちよし好きなのでがんがってくらさい。
179 名前:訂正 投稿日:2002年11月20日(水)18時57分52秒
作者です。
訂正する箇所を見つけたので投稿します。

・つい最近までよっすぃ〜に弟が二人いたという事を知りませんでした。
 この中では一応1人のつもりで書いてました。すいません。

>>124のごっちんの台詞で「私」という一人称になってますが本当は「後藤」です。

>>114さんのレスで「リアルで見れてよかった」という意味が最近になって理解できました。
 なのに変なレス書いてしまってすいませんm(−−)m

以上!今までに作者が見つけた訂正箇所でした。( ̄∀ ̄*)イヒッ
180 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年11月20日(水)19時02分26秒
10日以内更新という発言を守って維持でも更新します。
今日は中途半端な所で終わりますがお許しを…。
相変わらず宿題まだやってません。
なんだかんだいってあまり場面が進展しない。
うだうだと書いてて申し訳ないっす。

>>178
 もうすぐラストです〜。でも番外編書くつもりなのでもうちょっと続かせます。
 いつも更新楽しみにして頂いてたんですか。感動です(ノд`)・゚・
 私なんかのなちよしを好きっていってくれてありがとうございます。

レス有り難うございます!
また感想等ありましたら書き込んでください。
181 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月20日(水)19時04分31秒
「なっち…来てくれたんだ。」

ひとみの体から緊張の糸が切れた。
半ば、諦めていた。振られたと思ってた。もう来ないと思っていた。
そのなつみが、今、目の前に立っている。
ひとみの心は安心感でいっぱいになった。

「うん。よっすぃー、遅くなってごめんね。」

「思い出の場所、分かってくれたんだ。」

「当たり前さぁ〜!よっすぃーに告白された場所を忘れるはずないべ。

 それに、キスもここでしたし…。」

天使のように微笑みながら言うなつみの言葉に、ひとみは少し顔を赤らめた。
そう、ひとみにとってのファーストキス。

それもここの公園だったのだ。


     −−−

182 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月20日(水)19時07分30秒
なつみと付き合う事になってからも仕事が忙しく、中々二人で出かける事が出来なかった。
だからよく仕事の帰りにこの思い出の場所に来ていたのだ。
無論、ひとみが大のベーグル好きでそれが目的というのもあったわけだが。


何度目かのデートの夜、その日は珍しく人が少なかった。
時間帯も少し遅かったからかもしれない。

その頃、ひとみはなつみとの関係を進展させたいと思っていた。
本当はいつもなつみに触っていたいぐらい、好きだった。
ずっとずっと触れていたかった。
いつの間にか、手を繋ぐだけじゃ物足りなくなっていた。

その日は絶好のチャンスだと思った。
人気が無く、夜空に雲は無く星が輝いている。
夜景も綺麗だ。
シチュエーションとしてはばっちりだった。

後はひとみの一押しだった。


「何か今日、寒いね。」

なつみがぶるっと肩を震わせる。
ひとみは「そうだね。」と言いながらさりげなくその肩を寄せた。
大気の気温は低いはずなのにひとみの体温は一気に上がる。

「よっすぃー、あったかい…。」
183 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月20日(水)19時10分08秒
そう言って自分の体に顔をうずめるなつみを見て、ひとみはくらくらした。
付き合い始めてその顔を何度も見ているのに、何度見ても胸がときめく。

「なっち…。」

ドラマで見るのと同じようにさりげなく、なつみの頬に手をやる。

なつみが顔を上げた。
目と目が合って、ひとみの心拍数はいっそう高まる。

そして、なつみの瞳がそっと閉じられる。

(き、きた!)

ひとみはなつみの唇に神経を集中させた。
秋の夜空に光る星に負けないくらい、その唇は光っていた。

(か、かわいい…。)

顔を真っ赤にしながらも、ひとみも目を閉じてそっとその唇に自分の唇を重ねた。

しっとりとした感触。
相手の体温が唇を通して伝わってくる。

初めてのキス。
ひとみはその日の事を忘れた時はない。


     −−−

184 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月20日(水)19時13分52秒
「お〜い。よっすぃー?」

目の前で手を振るなつみに、現実に引き戻された。
あの時の感触を思い出し、ひとみの顔は自然とにやけていた。

(違う!私がしようとしてたのはこんな事じゃなくて…。)

ひとみはにやついた顔を手で元に戻し、鞄の中に手を入れる。
目的の四角い箱を探り当て、それを持ってなつみの前まで歩いていった。

「安倍さん!」

ひとみはきをつけの姿勢になってから、箱を持った手を前に差し出した。

「私の…気持ちです。 
 ずっと好きでした!何があってもやっぱり好きです!諦められないです!
 大好きです、安倍さん!
 付き合って下さい!」

手を差し出し、頭を垂れたままひとみは自分のありったけの気持ちをぶつけた。

なつみがどんな顔をしているのかが気になった。
今更、改めて告白なんかして、嘲笑しているのだろうか、呆気に取られてるのだろうか。

だがひとみが顔を上げた時、なつみはどの顔もしていなかった。
ただ微笑みながら、差し出された小さな箱を手に取った。
185 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月20日(水)19時16分29秒
「実は、なっちも吉澤さんの事、好きでした。
 ずっとずっと好きだったんだけど、なっちは自分に自信が持てなくなって、いろいろ迷っちゃいました。
 でも、なっちもずぅーっとずぅーっと吉澤さんの事が好きでした。」

綺麗にラッピングされた箱を手で包みながら、なつみは優しく微笑んだ。
同時に、ひとみの顔にも笑みが浮かぶ。


「なっち!!」

壊れてしまいそうな細い体を抱きしめる。
ひとみの頬がなつみの頬に触れ、その温もりが伝わってくる。

「よっすぃー!顔、冷たい…。ごめんね、なっちが待たせちゃったから…。」

なつみの手がひとみの頬に触れる。

自分を見つめるその瞳があまりにもかわいくて、ひとみは思わず顔を近づけていた。

「ん…。」

少しだけ開いた唇に、自分の唇を重ねる。
久しぶりのなつみとのキス。
冷たかったはずのひとみの体はすっかり熱くなっていた。


「よっすぃー…これ、開けていいかな?」

ひとみが渡した箱に、なつみが手をかける。
ひとみが頷くのを待ってから、きれいにラッピングされた包みを丁寧にほどいていく。
ラッピングがはがされて箱だけになった時、なつみはその蓋をそっと開けた。
186 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月20日(水)19時18分23秒
「あ…!」

中にはシルバーに輝くピアスが入っていた。
なつみはそれらを手に取り、宙にかかげる。
銀色に輝くそのピアスはわっかになっていて、そこに星型のまた違うピアスがぶら下がっていた。

「かわいい!よっすぃーありがとう!
 今、なっち物凄く感動してるべ。こんなかわいいもの貰ったのはじめてさぁ。
 なっち本当、嬉しいよぉ!」

満面の笑みを浮かべてはしゃぐなつみに、ひとみは満足していた。

「つけてみていい?」

なつみが自分の耳に手をやり、今つけているピアスを取る。
何もなくなった耳に、ひとみから貰ったピアスをつけようとした。
だがみかけによらず不器用なのか、なかなか穴に入らない。
必死になるなつみを見てひとみはくっくっとお腹を押さえながら笑いをこらえた。

「こ、こら!よっすぃーここは笑うとこじゃないべ。」

「あはは!もう、安倍さんって本当不器用ですよね〜。」

「そ、そんな事ないべさ!」

「あぁ〜、もういいから。ほら、私がつけますよ〜。」
187 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月20日(水)19時21分57秒
顔を赤くして講義するなつみに苦笑しながらひとみはピアスを手に取る。
輪の先端を耳たぶに刺さらないように、ゆっくりとなつみの耳の穴に通す。
「鏡があったらなっちだってこれぐらい付けれるべ!」というなつみの言葉には反応しないで、そのままもう片方の耳にも同じピアスを付ける。
「よし。」と言いながらひとみは一歩後ろに下がり、なつみの顔を見つめた。


「…どう?」

おずおずと耳に手をやりながらなつみがたずねる。

「うん!かわいい!似合ってるよぉ〜。
 やっぱり、これだ!って思ったんだよね〜。
 なっちに似合うって思ってたんだぁ。」

「かわいい…?」

「かわいいよ〜。よく似合ってると思う。」

「本当?
 …まぁー、やっぱりかわいいってのは元々の素材がいいからだべさ〜。」

「え?
 今、安倍さん何か言いました?
 最後の方、聞こえなかったんですけど。」

「もぉ!よっすぃーも素直じゃないべ。」

二人は顔を見合わせて笑った。

幸せ…その時ひとみは、心からそう思った。

188 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月20日(水)19時23分15秒

「で、実はなっちもよっすぃーに渡したいものがあるんだけど…。」

「え?うちに?」

ひとみは驚いた。

まさかなつみも自分にプレゼントを用意してくれていたなんて思わなかった。

なつみは鞄の中をごそごそとして、それから大きな包みを取り出した。
クリスマスの模様でかわいくラッピングされている。

「はい、よっすぃー!メリークリスマス!」

なつみは満面の笑みを浮かべながら包みを差し出した。


189 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月22日(金)21時30分01秒
何だろ何だろ、とひとみがさっそうに包みを開ける。

「気に入ってくれるかわかんないんだけど…。」

やがて綺麗な包装紙の中からは、薄いピンク色のマフラーと手袋、そして耳あてがでてきた。

「うわっ!かっけー!」

「本当はさ〜、マフラーとか手編みにしたかったんだけど…なっち時間なくって。」

「ううん。嬉しいよ!ありがとう、なっち!」

新しいマフラーとか欲しかったんだよね〜と言いながら自分の首に巻く。
手袋もつけ、耳あてもつけた。

「あったけぇー!かわいいし。本当ありがとー、なっち!」

ひとみはなつみに貰ったものをつけてはしゃぎまわった。

「あー、こんな幸せなクリスマス過ごすの初めてだよ〜。本当、嬉しいな。」

口ではそう言いながらも、本当は真希の事を思い浮かべていた。
結局、真希はどうしたのだろう。
なつみにプレゼントは渡せたのだろうか。
自分だけこんな幸せなクリスマスを過ごしていいのだろうか。


ひとみが星の多い夜空を見上げていると、コートの端が引っ張られた。
見ると、なつみが俯き加減に下を向いてひとみの服を掴んでいた。
190 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月22日(金)21時32分33秒
「何?どうしたの?」

「…実は、なっちね。まだよっすぃーに、あげたいものがあるんだけど…。」

10cm以上も身長が低いなつみが俯いてしまうと、こちらからその表情は完全に読み取れない。
ひとみは嬉しそうに首をかしげた。

「え?まだあるの?嘘ぉ〜。なっち、どうしたの。太っ腹じゃ〜ん。」

軽く笑ってみたがなつみはそれに答えない。
ひとみは少し困った顔でまた首をかしげた。

暫くして、なつみがゆっくりと顔を上げる。
その顔は、先ほどまでとは違って真っ赤だった。

「なっちね…決心してたんだけどさ。今日、よっすぃーにあげるって…。」

だがひとみと目を合わせた途端、再び下を向く。

「決心?なになに?そんなすごいものくれるの?!
 まさか『なっち特製ベーグル』とか?」

ひとみはずっと前に話題に出た『なっちの手作りベーグル』の事を思い出していた。
ひとみがあまりにもベーグル好きなので、それならなつみが愛情を込めて作ってくれると言ったのだ。
だがその時はあまり突っ込まず、軽く受け流していた。
191 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月22日(金)21時36分13秒
だがひとみの言葉に再び、沈黙。
ひとみのテンションだけがさっきから空回りしている。

困惑したままなつみが口を開くのを待つ。
192 名前:真実の愛 投稿日:2002年11月22日(金)21時38分15秒
だがだんだん立っているのにも疲れを感じ始めた。
たまらなくなってひとみが声をかけようとした時、なつみの口から小さな声が発せられた。


「…家、行こ?」


「え?」

はじめの方がよく聞こえなかった。

「…なっちの家、行こ?」

「家?あー、うん。ちょっと待ってね。今うちに電話するから。」

状況がよく分からないまま鞄に手を突っ込み、携帯を探す。

「…絶対に、来てほしいの…。」

「あ、うん。多分大丈夫だと思うよ。なになに?やっぱり特製ベーグル?」

ひとみは耳に携帯をあてながら笑って応える。

「…よっすぃーに、あげたいの。…なっち、を…。」

「…あー、うん。なっちをくれるんだぁ。…って、え?!」

ひとみは携帯を耳にあてたまま固まってしまった。

「…だからさ、行こ。…なっちの家へ…。」

耳まで真っ赤になり、俯いたままのなつみの表情は相変わらず読み取れなかった。

ただその時、携帯を通して聞こえてくる母の声と、自分の心臓の音だけが、寒い冬の公園に妙に響いていた。
193 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)18時49分57秒
それから電車に乗ってなつみの家へ行った。
ひとみはその間気を使って他愛のない話をしていたが、なつみは返事をするだけであまり喋らなかった。

なつみの家は前来た時とほとんど何も変わっていなかった。
娘。に入ってからみんな、家というものはただ帰るだけのねぐらになっている。
クリスマスの飾りつけなど、到底されていなかった。

もう10時半だった。
ひとみはなつみの家にあるソファに座った。
その日の疲れがどっと出た。


「お風呂、入る?沸かしてきたから。」

近くにある雑誌を読んでいたひとみは体を少しびくっとさせて顔を上げた。

「あ、うん。じゃぁ、はいろっかな。なっちはいいの?」

「なっちはよっすぃーの後に入るよ。着替え、取ってくるね。」

なつみは自分の部屋へ着替えを取りに行き、それをひとみに渡した。


なつみの家の風呂に入るのは始めてだった。
洗面所は綺麗に掃除されてある。
シャンプーやリンスと、バスタオルの位置を説明してからなつみはドアを閉めた。

ひとみは服を脱ぎ、浴場に入る。
風呂は少し熱かったが、今日のような寒い日にはちょうど良かった。

湯につかりながらひとみは自分の手元を見る。
194 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)18時54分17秒
(爪は…切ってある、っと。)

確認してから自分の頭をぽかぽかと叩いた。

(わぁ〜!何考えてんの私…。
 でも、なっちをくれるって…つまり、そういう事なんだよね。)

ひとみは未遂で終わった夜の事を考えていた。

あの時、なつみはまだ自分を受け入れる心の準備ができてなかった。
今日、なつみがその体を許してくれるというのは、ひとみの事を完全に受け入れてくれたからなのだろうか。
真希の事はもう忘れたのだろうか。
ひとみは、うまくできるか不安だった。
それ以上に、また否定されるのも恐かった。


風呂から上がって、髪を乾かしてなつみの部屋に行った。
なつみはベッドの上で眠っていた。
ひとみが部屋に入ると目をこすりながら起き上がった。

「あ…なっち眠ってしまってたべさ。お風呂どうだった?」

「うん、凄いあったまったよ。なっち大丈夫?今日はもう疲れてるんじゃ…。」

「大丈夫大丈夫。なっち、夜はちょっと弱いだけなのさぁ。それじゃ、お風呂入ってくるね。」
195 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)18時58分49秒
眠そうな目をこすりながら部屋を出て行った。
なつみが風呂から帰ってきた時は…。
ひとみは初体験をする前の男の緊張のようなものがなんとなく理解できた。
ひとみにとって、これからする事は初体験になる。
なつみにとって、ひとみは何人目かの人間で過ぎない事は分かっていた。
だから余計に、うまくできるかが心配だった。


ふと、鞄に目をやり、中にある携帯を取り出した。
電源を切っておかないと、途中で誰かからかかってきては困る。
ボタンを押す前にディスプレイに目をやると、メールが来ていた。
梨華からだった。

《メリークリスマスよっすぃ〜!あれから安倍さんは来てくれたでしょ?
 あの後、真希ちゃんがちょっと暴走しちゃって…。
 止める勢いで、とうとう告白しちゃった!
 返事はまだ貰ってないけど、今は真希ちゃんと一緒にいます。
 よっすぃ〜も安倍さんといるのかな?もしそうだったら今夜、がんばってね!》

(何を頑張れっていうんだ…梨華ちゃん。)

ディスプレイを見たままひとみは苦笑した。
196 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)19時32分31秒
本当についこの前まで純粋で可憐な少女だと思っていた彼女から、まさかこんな言葉が出るとは。
梨華も真希も経験済みだ。
一人だけ取り残されてる気分になって、ひとみは急に自分が子供に感じた。


梨華にメールを打ってから、机の上にある写真に目をやった。
そこには幸せそうに笑っている自分となつみがいる。
この時はまだキスも経験してなかったはずだ。
その自分が今夜、なつみを抱こうとしている。


写真を手に取った時、ドアが開いた。
トレーナー姿のなつみが入ってきた。

「あぁ〜。やっぱりお風呂は気持ちいべ。」

なつみは机の上にあったリモコンを取り、暖房の温度の調節をする。
横に立つなつみから、シャンプーのいい匂いがしてくる。
197 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)19時37分04秒
「さてと…それでは…。」

体をくるっと反転させ、なつみはひとみの前に立った。
少し俯き加減に、机の上にある時計に目を向ける。

「まだ、クリスマスだよね。良かった。今日中に、ちゃんとプレゼント、あげたかったから…。」

「なっち…。いいの?私なんかで。ごっちんは…。」

「真希の事はもう、何にも思ってないべ。よっすぃー、ごめんね。
 なっち、よっすぃーを凄く苦しめちゃった。
 本当はなっちさ、真希に気ぃ使ってたんだ。
 真希は紗耶香の事で凄い傷ついてたから、これ以上真希を傷つけたくなかった。
 だから真希を裏切っちゃだめかな、って思ってて。でも…。」

なつみは顔をあげた。その瞳は必死だった。

「でも本当は、ずっとよっすいーが好きだったべさ!
 よっすぃーに告白されてから、よっすぃーと一緒にいて、なっち幸せだったさ。
 …なっち、自分の本当の気持ちに気付くのが、少し遅かったのさぁ。」

「なっち…。」

ひとみは泣きそうだった。
ずっと知りたかった、なつみの本当の気持ち。
それが、自分だった。
198 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)21時29分09秒
「よっすぃー…。好きだよ。」

なつみの両手がひとみの首に廻される。
二人は自然と目を閉じ、唇を重ねる。
どちらからともなく、口を開いて舌を絡ませる。
久しぶりのディープキス。
そういえば梨華のテクニックは凄かったな、と場違いな事を考えた。
あの時の梨華のようにひとみも少し強引に舌を奥までしのばせる。
二人の息遣いが、だんだんと荒くなる。

ひとみは少し目を開けて、体をベッドの方へ向きを変えた。
なつみにベッドに座らせ、自分もその上に覆いかぶさるようにキスをする。
そのまま自然とベッドに倒れこむ。
なつみが下になり、ひとみが上になった。
時々目を開けては、なつみの顔を確認する。
しばしばなつみも目を開け、ひとみと見詰め合う。
なつみの目はとろーんとしていた。
キスだけで感じてくれてるのだろうか。
ひとみの方はキスだけで、既に濡れていた。

長い間舌を絡めあった後、ひとみは今度は首筋に口を伝わせた。
甘い石鹸の香りが漂ってくる。
ふと目を開けると、ひとみが先ほどあげたピアスが目に入った。
そういえば、ずっと昔に読んだ漫画で「耳が弱い」と書かれているシーンがあった。
199 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)21時31分51秒
「ねぇ…なっちって、耳弱いの?」

少し低めの声で耳元でそっと囁く。
ひとみの吐息がかかっただけでなつみの体はびくんと反応した。

「え…。そ、そんな事ないべさ…。ってか耳はちょっと…って、あっ。」

答えを聞く前にひとみはなつみの耳を舌でなぞっていた。

「あ…。」

ひとみの肩を掴みながらなつみはどこかやりきれない顔で声を漏らす。
その声を聞いてひとみの舌の動きもいっそう激しくなる。

「あ…。よ、よっすぃー、耳はやっぱり…あ、なっちは…よわっ…。」

顔を動かしながらもひとみの舌は止まらない。
なつみの耳の奥にまで舌をいれ、舐め回す。

「きもちい?」

はぁはぁと息を吐きながら耳元で尋ねる。
なつみはただ頷く事しかできないようだ。

再び、なつみの口にキスをしながら今度は胸元に手をやる。
トレーナーの上からでも分かるくらい、なつみの乳首はたっていた。

「あ…。」

ひとみの手が胸の先端に触れると、なつみは今まで以上に体をよじらせた。

「なっち、胸の方が感じるんだね。」
200 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)21時37分48秒
ひとみはトレーナーの上からではあまり触れないので、積極的に中に手を入れた。
トレーナーの下には何も着てないようで、素肌の感触が伝わってくる。

「服…いい?」

トレーナーに手をかけながらなつみに尋ねる。
なつみは頷いてから少し上半身をあげ、自分で服を脱いだ。

服の下からは、前見た時と同じように透けとおるような白い肌が露出する。

「ブラ…取っていい?」

なつみの背中に手を廻しながらフックを外す。
前回と違って、簡単に外せた。ブラの下からは形のいい乳房が姿を見せる。

「なっち…きれい。」

「あ、あんまり見ないでほしいべ。」

思わず見とれてしまいそうなほど、なつみの上半身は美しかった。
ひとみは少し緊張しながら、またなつみにキスをし、さりげなく手を体に這わせる。

「大丈夫?なっち、寒くない?」

「うん、大丈夫だべさ。でも、ちょっと電気消してもらって、いいかな。」

恥ずかしそうになつみは体を小さくする。
ひとみは「あ、そっか。」と呟きながら電気を消した。
201 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)21時45分08秒
真っ暗の中、手探りでなつみの体を触る。
舌を首元に這わせながら、両手で胸をもんだり、乳首をつまんだりした。
その度になつみが淫らな声を出す。
テレビでは決して聞ける事のできない声。
ひとみはその声をもっと聞きたくて、そのまま口を胸元に持っていった。

「あ…!やっ…。」

口の中でなつみの乳首を転がす。
片方の手でもう一方の胸を揉む事も忘れない。
ひとみは少し歯を立てたり、舌でつっついてみたりして、なつみの反応をうかがった。

一通り上半身を攻めながら、ひとみは徐々に手を下半身の方へ向かわせていた。
未遂で終わってしまった前回。今回は、なつみは自分を受け入れてくれるはず。

ひとみはズボンの上からなつみのそこに手を伸ばした。
なつみの体が少しだけ反応する。
手を股間にあて、ズボンの上からなぞってみる。
ひとみはそれだけで物凄く緊張していた。
自分のそこは既に濡れまくっている。なつみもそうなのだろうか。

「あ…あん。」

少し指をたてて奥までなぞってみる。自然となつみも足を広げる。

(これって、もう我慢できないって事かな。)
202 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)21時48分17秒
ひとみはなつみのそこから手を外し、恐る恐るズボンを脱がすようにその手を持っていく。
その様子に気付いたように、なつみ自身がズボンに手をかけ、脱がしていく。
ズボンの下からは真っ白なパンツが姿を現した。
ひとみの心臓が一段と高まる。

ひとみの手がなつみのパンツに触れようとした時、なつみが「待って。」と言った。

「なっちだけ裸になるの恥ずかしいよ。よっすぃーも脱いで?」

「え…。ええぇぇぇっ?!」

「えーじゃないべさ。なっちはよっすぃーと、肌と肌で触れ合いたいべさ。」

そう言ってなつみはさっそうとひとみの服に手をかける。
ひとみがなつみの服を脱がす時はあんなに時間をかけて雰囲気を出したのに、ひとみの時は妙に乱雑だ。

「ちょ、ちょっと待って。ま、まじで?」

「まじさぁ〜。よっすぃー早く脱ぐべ。」

ひとみは少し考えてから、仕方なく頷いた。

「…分かった。でも、自分で脱ぐよ。」

なつみの視線を感じながら、上の服を脱いでいく。
ブラ姿になった途端、肩やお腹の辺りがヒヤッとした。なんとなく肌寒い。

「下も脱ぐべ。」

「し、下もですか、やっぱ。」
203 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)21時56分04秒
ひとみはおずおずとズボンを脱いでいく。
これでひとみもブラとパンツ姿だけになった。
電気をつけてないとはいえ、窓からもれる月明かりに、その姿がうつされる。

「よっすぃーも、肌、きれいだね…。」

なつみがひとみの腕をなどりながらとろんとした瞳でひとみの体を見つめる。

「なっち…。」

これ以上は脱げない、と勝手な事を思いながら、ひとみは再びなつみにキスをする。
再び、熱い吐息が漏れる。
素肌と素肌が触れ合い、冷たかったひとみの体もだんだんと熱くなっていく。

今度こそ、と思いながらひとみはなつみの太ももに手を当てる。
だが焦らず、じっくりと周辺を撫で回す。
その間も胸を攻める事は忘れない。

大分じらしていたら、なつみの方から足を開いてきた。
いや、ひとみがそう感じただけなのかもしれない。
ひとみは緊張しながら、パンツの上からなつみのそれに指をあてた。
なつみの体が少しだけ反応する。
パンツの上からその部分を上下に撫でた。少し押してみたりもする。
その度に、なつみは体をよじらせた。
204 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)21時58分56秒
我慢できなくなり、パンツに手をかけた。
今度はなつみは拒まなかった。
ひとみがおろしていく下着を、うつろな目で見つめている。

「なっち…!」

とうとう全裸になったなつみにひとみはキスをした。
そしてそのまま右手を、あらわになった部分に押し当てる。
初めての感触。その部分は、濡れていた。

「…あっ!」

その部分を指で愛撫すると、なつみは今まで以上の反応を見せた。

「なっち、きもちい?」

自分の指の動きがどれだけ相手を感じさせてるのかが分からなく、ひとみは不安げに聞いた。

「うん…いいよ、よっすぃー。なっち、おかしくなっちゃいそうだよ。…はぅっ。」

たどたどしく指を動かしながら、ひとみはなつみの愛液が溢れ出してくる部分を少し広げ、指をいれた。
今まで味わったことのない感触が、指から伝わってくる。
なつみの中は濡れていて、暖かかった。

(これが、なっちの中…。凄い。濡れてる…。)

「指、動かしても、いい?」

ひとみは体をよじっているなつみに聞いた。
なつみが頷くのを見てから、ひとみはゆっくりと指を動かした。

「あ…!ん…やっ…。」
205 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)22時03分02秒
指を中にいれたり引いたりして動かした。
なつみのそこは熱く濡れていて、動かしやすかった。
なつみの体が今まで以上に大きくよじる。
自然と足もどんどん開いてくる。

そんななつみを見ていて、ひとみの指も自然とスピードを増してくる。
ひとみの体もかなり熱くなっていた。
なつみの体も、ひとみの指につられて自然と動いてくる。

「なっち…なっち、好、き。な、っち。」

「あ…よっすぃー、なっちも…なっちも、好き…あっ!」

ひとみの指がなつみの奥まで突き上げた時、なつみの体はびくびくっとなり、ひとみの指は締め付けられた。


暫く、二人は動かなかった。
ただ、肩で激しく息をしていた。
なつみの顔は快楽に満ちていた。

ひとみが指を引き抜くと、そこから大量の液も放出された。
引き抜いた指を目の前にかかげてみる。
月明かりに照らされて、それはきらきらと光っている。
ひとみはそれを迷わず口に含んだ。

「よ、よっすぃー?!」

「…へへ、なっちの。食べちゃった。」

いたずらに笑ってからなつみに抱きつき、キスをした。

「なっち、気持ちよかった?」
206 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)22時07分33秒
快楽の頂点に達した後は、先ほどまで自分がしていた事が凄く恥ずかしく思える。
なつみは少し顔を赤らめながら「うん…。」と頷いた。

「イッタの?」

「…ぅん…。」

なつみは恥ずかしさを隠す為、ひとみの胸に顔をうずめた。

「あ!そういえばよっすぃー、ブラ外さないとだめさぁ〜。よっすぃーも全部脱がないと!」

「い、いや私はいいよ…。ほ、ほらぁ、今日はもう寝よう。」

「だめだべ!なっちだけきもちい思いしちゃって…。
 なっちもよっすぃーを気持ちよくさせてあげる!」

なつみは強引にひとみにキスをした。
すぐに舌が挿入される。
確かにひとみのそこも熱くなっていたので、満たしてほしかった。
だが、なつみに自分の体を見せるのには、まだ気が引けた。

「ま、待ってなっち!私、まだ心の準備が…。」

「大丈夫だよ。なっちが、優しくしてあげるから…。」

既になつみの手はひとみの背中に回っていた。
慣れた手つきでブラが外される。
ひとみは突然空気に触れた胸をとっさに隠す。
だがそれも、なつみの前では無駄な事。
ひとみはあっという間になつみの手に落ちていった。
207 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)22時14分25秒
太陽の光で目を覚ました。
カーテン越しに漏れてくる光が、ちょうどひとみの瞼の部分をさしていたのだ。
ひとみは目を開けた。
いつもと見慣れない天井が目に入り、自分がなつみの家に泊まったのだという事を思い出す。
同時に、昨夜の熱い夜の事も思い出された。
それはベッドの感触が素肌にしみるように、裸で寝ている自分が証明している。

ふと横を見ると、なつみの姿はなかった。
先に起きたのだろうか。
上半身を起こして時計を見ると、既に10時になっていた。
やばい!と思ってベッドから飛び起きるが、そういえば今日は仕事は休みだったという事を思い出す。

取り合えず服を着て部屋を出る。
すると、キッチンの方から物音が聞こえてきた。
ひとみは靴下越しに伝わってくるひんやりとした床の上を歩いて音のする方へ行った。
見ると、なつみが朝食を作ってるようだった。
208 名前:体と体 投稿日:2002年11月24日(日)22時15分16秒
テーブルをセットする為に振り返った時、こちらに気が付いた。

「あ!おっはー!よっすぃー。」

「おっはー、なっち。ごめん、私起きるの遅かったから、何か一人で朝食作らせちゃったみたいで…。」

「あー、何いってるべさ。ここはなっちの家だべ。なっちが作るのは当たり前さぁ。」

それに、と言ってなつみが近づいてきた。
朝一のエプロン姿がきらきらと輝いて眩しい。

「愛する人の為にはこれぐらいしないとね!」

と言ってキスしてきた。
朝一番のなつみのキス。

ひとみはふわ〜っと天国にあがる気分になった。
209 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年11月24日(日)22時19分01秒
クライマックス寸前。
次の更新で最後になるかもです。
リアル系甘甘は難しいですね…。疲れました。
くどくどと長々としかかけない自分の文章力に消沈。
210 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月25日(月)01時03分06秒
はぁ〜、ようやく結ばれたふたり・・
良かったです。安心しました!
クリスマスに想いが通じ合って良かった良かった・・
次回更新、お待ちしてます。
211 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月26日(火)06時54分25秒
いよいよラストですか・・・
応援してます。がんがってください!
212 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年11月26日(火)21時20分36秒
>>210
 長々と引きずりましたがやっと結ばれました!
 良かった良かった。作者も安心です。

>>211
 応援して下さってありがとうございます!
 私も実はすっごく書きたかったです、なち攻(ry

というわけでくどくどと長々とやってきましたが、やっと最後です。
ラストのせいか、書いてる本人はじけちゃいました。
なんか雰囲気が違うような…。

では、最後の更新です。
213 名前:体と体 投稿日:2002年11月26日(火)21時36分24秒
なつみが用意してくれた朝食を食べながら、ひとみはなんとなくこうして二人で朝を迎えるのに喜びを感じていた。
昨日までの不安が嘘のようだ。
そういえば、梨華と真希はどうなったのだろう。
二人も同じような朝を迎えてるのだろうか。

ひとみは昨夜の事を思い出しながら、やっと自分も大人になれたんだと思い、自然と顔がにやけてしまう。
なつみに見られたらと思い、慌てて顔のデッサンをなおす。
見ると、なつみもにやけたまま食パンを口に含み、その動きは止まっていた。

「あ、あのぉ〜、なっち先輩どうしたんですか?」

ひとみは少し後ろにひきながら言った。

「え…?いや、えへへ。そりゃさぁ、あはは。
 昨日のよっすぃ〜思い出しちゃってさぁ  …ぷっ。」

「ぷ、ぷっって何?!今確かにぷっって言ったでしょ!」

「いやぁ、だってさぁ〜、『早くよすぃこをイカセテ(はあと)』なんて言うんだもん。
 なっち一瞬ひいたべさ。せめてひーちゃんだったらまだ良かったのに…。」

「い、言ってない!絶対言ってない!私は自分の事よすぃこともひーちゃんとも言わないから!!」
214 名前:体と体 投稿日:2002年11月26日(火)21時37分26秒
「あぁー、なんかその辺はなっちが勝手に解釈してるかもだけど…。
 取り合えず昨日のよっすぃー可愛かったべ。
 なっち、若くてぴちぴちした美味しいもん食った後ほど幸せな時はないべさ。
 確か真希の時は…。」

顎に手をあて舌なめずりをするなつみ。

「…なっち…。」

見ると、ひとみの眉間にはケンシロウもびっくりするような皺がよっていた。

「え?あ、う、嘘だべ!ちょっとしたジョークだべさ!あはははは。」

「…やっと幸せになれたと思ったのに…。」

「ご、ごめんよっすぃー。なっちちょっとふざけすぎたべ。
 こういう爽やかな朝はちょっとしたギャグでも一発かまさないと一日が始まらないからさぁ。
 ほら、道三子ギャグって昔流行ってたべ!懐かしいなぁ。」

そう言ってなつみは遠い明後日の方向を見る。

何かが違う…ひとみは思った。
215 名前:な ち よ し 投稿日:2002年11月26日(火)21時41分33秒
次の日から仕事だった。
その日は昨日に比べて外は一段と冷えていた。
いつもなら、こんな日はずっと家にいたい、と思うのだが今日のひとみは違った。
なつみから貰ったマフラーと手袋をつけ、さすがに耳あては目立つのでお気に入りの帽子をかぶり、いつもより少し早めに家を出る。

ひとみは今日仕事に行くのが楽しみだった。
なつみに改めて告白し、念願の本当の両想いになれてから、はじめて他のメンバーと顔を合わす。
なつみはもう、二人の関係は隠さないと言ってくれた。
今まで真希の事があったから秘密にしておきたかったのだが、もうその必要はなくなったからだ。
どちらかというと、みんなにひとみとの事をきちんと話しておきたかった。
だがそうやって嬉しそうに語るなつみは一瞬だけ顔を暗くして、「でも、相当な覚悟をしてないと、恐ろしい目にあうべ。…よっすぃー、二人で一緒に頑張るべ!」と言っていた。

ひとみには何のことだか分からなかった。
216 名前:な ち よ し 投稿日:2002年11月26日(火)21時45分36秒

雑誌の撮影をするビルに入ると、廊下にはなつみが立っていた。

「おはよう、なっち!みんなは?」

「うん、もうみんな来てるよ。楽屋にいるべ。」

少し早めに家を出たのに、電車が遅れてしまった為、思っていた時間より少し遅くついてしまった。
だがみんなが集まっているというのなら好都合だ。
ひとみは迷わずなつみの手を握った。

「じゃ、いこっか。」

「…うん!」

伝わってくる温もりを感じながら廊下を歩いた。

だが間もなくして曲がり角を曲がった所には、真希がいた。
正確に言うとこちらに向かって走ってきていた。
そしてその遠い後ろには、小さく喚く梨華の姿。

「あ!なっちはっけーん!!」

なつみの顔を見た途端、真希は子犬のように笑みを浮かべてそのままなつみに突進…正確には抱きついてキスをしていた。

「んんん…。」

「ご、ご、ごっち…。」

「ぷはっ!あー、なっちとの久しぶりのキスはいいなぁ。
 というわけで遅れて後藤からのクリスマスプレゼント!気に入ってくれた?」

真希は顔に満面の笑みを浮かべてなつみに頬をすりすりと寄せる。
217 名前:な ち よ し 投稿日:2002年11月26日(火)21時48分02秒
突然の出来事になつみは何がなんだか分からないといった状態だった。
だがその横には、頭に火山を抱えたひとみが立っていた。

「ごっちん!な、何すんのいきなり!!なっちは私の彼女な…。」

「真希ちゃーーーーーんっっっ!!!!!」

だがそんなひとみの怒声をも吹き飛ばすような、甲高いアニメ声がこだました。
真希は「げっ。」と呟きながらその場を去ろうとするが、すぐに後ろから引っ張り戻された。

「ちょっと!今の何?!安倍さんにキスしたでしょ!もう、信じらんない!
 突然安倍さん見た途端走り出すんだから…。」

「ん〜、だからぁ、ごめんだけどぉ、後藤まだなっちの事が好きだからぁ〜。」

『え!?』

梨華とひとみ。二人の声が重なる。

「だからよっすぃ〜、油断してちゃだめだよぉ。
 いつ後藤がなっち取っちゃうか分かんないだから…。」

「ちょ、ごっちんそれって…。」

「ちょっと真希ちゃん!!」

ひとみが講義しようとするとまたしてもアニメ声に制止されてしまう。
だがひとみもなつみも、今まで見た事のない梨華の形相に恐怖を抱き始めていた。
218 名前:な ち よ し 投稿日:2002年11月26日(火)21時52分45秒
「何よ!一昨日私に言ってくれた事は嘘だったの?
 …私の事、好きになるって言ってくれたじゃん。
 今はまだ無理かもだけど、努力するって。付き合ってくれる、って言ってくれたじゃん!」

耳をふさぎたくなるような高い声で梨華は訴えた。
だが、こんな状況でもお得意の上目遣いは忘れない。

「ん〜、だからさ。梨華ちゃんには追いかけられてるのが好きなんだよねぇ。
 不倫関係、みたいなの、後藤好きなんだよねぇ。
 だから、後藤はいつまでもなっちにアタックするし、梨華ちゃんはいつまでも後藤を追いかければいいんだよ。
 後藤は体の関係、受けてあげるからさぁ〜。」

へらへらと笑みを浮かべながら、そのまま梨華に近づき、キスをした。
朝から何人にキスをしているのだろう。
梨華は真希のキスを積極的に雰囲気をだして受け止めた。

「んもう!何それ!信じらんない。そんな話聞いた事ないよ!」

「あはは。やっぱりやきもちやいてる梨華ちゃん可愛いなぁ〜。」

「…え?ほ、本当?」

「あ、可愛い顔が台無しだよ。さっきの怒った顔にしてくんなきゃぁ。」

「わ、分かった…。」
219 名前:な ち よ し 投稿日:2002年11月26日(火)21時54分29秒
真希に言われてせっせと顔の表情を変える梨華。
そんな二人のやり取りを見ながら、ひとみとなつみは思わず呆然。
いつの間に漫才師になったのだろう、とひとみは心から疑問に思った。

「…えとぉ、取り合えずなっちたち行くから…。後はお幸せに。」

二人の世界に触れないよう、そそくさとその場を去ろうとするなつみとひとみ。

梨華の肩を抱く真希を見て、ひとみは呆然とした意識の中少し安心した。
二人とも、どうやらうまくいったみたいだ。
だが当分、ひとみとなつみの周りを煩く走りまわっているのだろう。

ひとみは立ち去り際に真希を見た。
真希もひとみを見た。
目が合って、どちらからともなく微笑んだ。
あの、冷酷な表情の面影は、もうどこにも残っていなかった。
220 名前:な ち よ し 投稿日:2002年11月26日(火)21時56分35秒

なつみとひとみは楽屋の前に来ていた。
ひとみはなつみの方を向き、頷いた。
なつみも、それを見て頷いた。
ひとみはドアノブに手をかけた。
もう片方の手はなつみの手に繋がれていた。

『あーーーーーーっっっ!!!!!』

ドアを開けた途端、メンバーが一斉にこちらを向き、声をあげた。
中には指をこちらにむけてさしている無礼者もいる。

「あーあ。やっぱり二人はくっついちゃったか。オイラも誰からぶらぶな人ほしいよ。」

「何々?二人ともいつの間にそういう関係になってたわけ?」

「…(交信中)。」

「来たな!いくで、のの。敵やで。向こうからのこのこと手ぇ繋いで乗り込んで来よったわ。」

「戦闘準備完了なのれす。のの、いつでも出撃OKれす。」

二人が楽屋に入った途端、そこはまるで煩い野次馬が騒ぐコンサート会場と化していた。

「な、何これ…。」

「はぁ〜だから言ったべさ。相当な覚悟が必要だって…。」

なつみは頭を抱えてため息をつく。そういえば、まだ他に誰かいたような…。

「よ、よ、よ、吉澤さんと、あ、安倍さんが…て、て、手を…。」

やっぱり。
221 名前:な ち よ し 投稿日:2002年11月26日(火)22時01分41秒
「まこっちゃん!気をしっかりもって!
 …こんのぉ、先輩だからってもう容赦はしねーさぁ。
 まこっちゃん失神させてぇ、なーにが天使なんだぁ。
 テレビでいう事ってのはぁ、信用するなってぇ、
 よく田舎のばーちゃんが教えてくれたけんど、本当だったださぁ。
 もう金輪際、安倍さんの事天使だなんて思わないださぁ。」

失神して倒れる小川を支えながら、高橋が本気で切れたようにまくしたてる。
途中からは早すぎて何を言ってるのかが分からなかった。

「…えっとぉ、こういう時私どうすればいいんでしょうか?」

「ま・ゆ・げ・ビーム!!!(いつもよりもっと太くて黒いバージョン)」

一人たたずむ紺野と、クリスマスに家に帰って全然手入れをしてなかったと想像される眉毛を得意げに振り回す新垣を見て、ひとみはここがかつていたモーニング娘。いこいの場だったという事が分からなくなってしまった。
222 名前:な ち よ し 投稿日:2002年11月26日(火)22時02分15秒

「…逃げよう。」

「え?」

「なっち!ここは危険だからさ、逃げよう!」

なつみの腕を強引につかんで、開けたばっかりのドアを閉めてそのまま廊下を突っ走る。
そういえばこの後の雑誌の撮影どうなるのだろう…などという事が頭をかすめたが、嫌な事は忘れる主義で、すぐにその考えをどっかにやった。



吉澤ひとみ(16)と安倍なつみ(20)。

二人の未来は前途多難。


223 名前:な ち よ し 投稿日:2002年11月26日(火)22時03分38秒

  ――でもさぁ、なっちと一緒ならどんな事だって乗り越えていけそうだよねぇ

  ――そうだなぁ。なっちもよっすぃーと一緒ならどんな事だってやっていけそうな気がするべ

  ――なっち、これからもずぅっと一緒にいようね

  ――うん!ずーっとずーっと、一緒にいようね

  ――なっち、好きだよ

  ――なっちも、よっすぃーの事、だーい好きだよ




                          おわり
224 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年11月26日(火)22時50分15秒
完結しました。
短い間でしたがこんな駄文に付き合って読んで下さった方々、レスくれた方々、ありがとうございました。
最後にらぶらぶななちよしを書けたので番外編はいらないかなと思ってます。
何かリクがあれば考えますが…。

ここでちょっとしたぶっちゃけ話、実は>>15で終わるつもりでした!(w
でもあまりにも短すぎだなと思って、んじゃぁもうちょっとひっかけ廻すかって事になり、こんなんになってしまいました。

次はシリアスな長編に挑戦したいと思ってます。

では、またいつかどこかでお会いしましょう。

本当に読んで下さった方々、ありがとうございました。
225 名前:210 投稿日:2002年11月27日(水)00時54分10秒
完結、お疲れ様でした。
いやぁ〜、何だかなちよしにハマリそうです(w
9/23の「TFP2」でも、なっちはしきりとよっすぃ〜に話しかけていて、
この二人、何かイイなぁと思ってました。
オトコマエよっすぃ〜と天使なっち。最高です!
是非またなちよしで何かお願いします。

次はシリアス長編ですか?
こちらもお待ちしております。
226 名前:なちよしヲタ 投稿日:2002年11月29日(金)09時24分48秒
ども、最高でした。
途中どうなるものかとハラハラしましたが、
最後は二人が幸せになってくれたので、涙が出ました。
んもぉね、このカップリングは最高です。
ホント、面白かったです^^
227 名前:17 投稿日:2002年11月30日(土)17時59分00秒
お疲れ様でした。
なちよし最高です!
この二人はやっぱりいいですねえ。
今度はシリアス長編ということで、
楽しみに待っています。
228 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年12月01日(日)21時35分19秒
完結した作品にレスをつけていいのか迷いましたが。
こんなにも感想レス書いて下さった方々がいらっしゃったのでレスしちゃいます。
本当、作者感動して泣いてます(ノд`)・゚・
というわけで、レスありがとうございました!

>>225 210さん
 私の作品を読んでなちよしヲタにはまって頂いたんならすっごい嬉しいです!
 男前よすぃこに天使なっち。いいですよねぇ〜。
 なっちが年上っていうのにも凄く萌えるんですが(ぇ
 なちよしはいつもほのぼのと愛を育んでおります(w

>>226 なちよしヲタさん
 なちよしヲタさんキターーーーー!!!
 始めはラブラブだったのに、引っ掻き回してはらはらさせちゃいましたね。
 本人たちもかわいそうだったです。
 それにしても…「涙が出ました」発言には作者カンドーーー!!
 私なんかの作品で涙を流して下さって、こちらもまじで(ノд`)・゚・です。
229 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年12月01日(日)21時36分36秒
>>227 17さん
 17さんには最初の頃からちょくちょくと励ましのレスを頂きました!
 作者、いつも17さんのレスがくるの楽しみにしてたです。
 マイナーCPヲタさんですよね?(w
 これからもなちよし推していきまっしょいっ!

というわけでまだまだ感想下さる方がいたら嬉しいです。

実は黄板の方でシリアスな新作始めちゃいました。
興味がある方は見て下さい。

まだ容量が残ってるので、また短編などを書いた時は、ここに更新しますね。
もちろん、なちよしで♪
                    (●´ー`)人(^〜^0)
230 名前:shio 投稿日:2002年12月01日(日)23時49分18秒
ひさしぶりです。
完結おめでとーございます。
いろいろあったけど、最後はらぶらぶになってよかったです。
やっぱり、なちよし大好きです。
短編も楽しみにしています。
231 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月02日(月)14時16分07秒
完結おつかれさまです。
ひーちゃんとなっつぁんがラブラブになれて本当によかったです!
作者さんのなちよし大好きなので次回作も期待してます!
232 名前:なちよしヲタ 投稿日:2002年12月08日(日)22時32分16秒
小説読みますた。
おれもなちよしが大好きなんで
読んでて萌えちまいますた。
ありがとう。
233 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年12月24日(火)10時48分32秒
またまた完結した作品にレスをするか迷いましたが、
嬉しかったのでします。レスくれた方々ありがとうございました!

>>230 shioさん
 短い間でしたがお世話になりましたm(−−)m
 最後にらぶらぶになってくれて、作者も満足してます。
 というか始めはらぶらぶだったのに自分が勝手にこじれさせちゃったんですけど(w
 なちよし大好きですか!いいですよね〜。

>>231
 ひーちゃんとなっつぁんですか!良い呼び方ですね。どこかで使おうかな(w
 コソーリレス4度目ですか!あの方かな?
 ありがとうございます。励みになりました。
 私なんかのなちよしを好いてくれてありがとうございます(ノд`)・゚・感涙です。

>>232 なちよしヲタさん
 なちよしヲタさんきたーーー!
 小説読んでくれてありがとうございます!
 萌えて頂けれたのなら尚更ですw
 なちよしイイですよね?なちよし最高っす。

レスありがとうございました。
少しずつでもなちよしヲタさんを増えていってる事を願ってます。
自分の中ではメジャーCPになってきてます(w

黄板の方でも頑張りますので、興味のある方見ていって下さいm(−−)m
234 名前:なちよしヲタ 投稿日:2003年01月13日(月)22時41分40秒
この小説で印象に残ったのは、
やはりよっすいーの初体験の相手がなっちてところです。
よっすいーには男性自身がないけれど(当たり前だ)、
体験前の心情が男みたいにところには苦笑しました。
あと男性自身の代わりになっちに指を挿入するところで
おれは萌えました。
あとなっちがよっすいーをどう責めたのか、
非常に気にかかりました。
作者さんはネタをお書きになりたいとのことですが、
なちよしのやりとりが十分にネタですので、
この路線でよいかと。
235 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月13日(木)00時54分43秒
hozen
236 名前:バレンタインの過ごし方〜番外編〜 投稿日:2003年02月14日(金)20時40分51秒
ひとみはいつもより念入りに鏡チェックをしていた。今日は午後まで仕事だった。
新曲の「そうだ!We’re alive」のテレビ収録があったのだ。

新曲だしたてで忙しいはずなのだが、マネージャーの気配りで今日だけは午後からオフにしてくれた。
メンバー全員、歓喜の声をあげていた。

そう、今日はバレンタインデー。
一年に一度、どの女の子にも勇気が与えられる特別な日である。
確か去年は、なつみにチョコをあげようと用意までしていたのに結局渡せず、辻加護にあげてしまった事を覚えている。

だが今年は違う。クリスマスから付き合い始めて約2ヶ月。
お互いに仕事が忙しかった為あまりデートには行けなかったが、なつみとはそれなりにらぶらぶな毎日を送ってきた。
だが数度に渡り他メンバーの邪魔が入り、特に最近はまともになつみと仕事場で口を聞く事が出来なかった。

また、いつも交信中で中立を保っていた飯田までもが、「なっちはかおりのモノだよ!」と言って邪魔をしてきたのにはさすがに驚いた。

だからこそ、ひとみはこの日にかけていた。
今日はずっと二人きりで、熱々に過ごせるような計画を立てていた。
237 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)20時43分37秒
だが、肝心のなつみの姿が見当たらない。
リーダーでもないのに、よくスタッフや雑誌編集部の人に呼ばれる。
ひとみは邪魔が入る前に、さっさと楽屋を去りたかった。

「なぁ、よっすぃ〜。これって食べていいん?」

「わぁ!すごい量なのれす!さすがによっすぃ〜なのれす!
 ののはこんなに貰いませんれしたよ!」

隣ではファンから届いたチョコの周りを激しく行き交う辻と加護、プラス黙々と断りもせずにそれを頬張る紺野の姿があった。
ひとみは泣きそうになった。


今日はなつみの要望で遊園地へ行く事になっている。
こんなバレンタインの日に真昼間から行っても人がいっぱいだろう、とひとみは言ったのだが、なつみはずっと遊園地に行きたかったそうで、「よっすぃーと二人っきりで行きたかったべさ。」なんて可愛い顔で言われたら、断れるはずもなかった。
238 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)20時44分40秒
遊園地は予定外だったが、夕食には少しお洒落な店を予約してある。
そこでムードを作り、ちまたでは女たらしと言われたこのテクニックでなつみをとろとろにするつもりだった。
ひとみの家には家族がいるので、一人暮らしのなつみの家に、そのまま行く事になっている。
そこでチョコを渡し、気分が盛り上がった所でなつみをいただくという戦法だ。
何とも美しく素晴らしい作戦だろうか。

「ねぇひとみちゃん、真希ちゃん見なかった?」

チョコの山を掻き分けて梨華がやってきた。
顔がいつもよりドス黒い感じがし、ネガティブ波動出しまくりである。

「ううん。見なかったけど。梨華ちゃんもさぁ、なっち見かけなかった?」

「えー、見かけなかったけど…。どこ行っちゃったんだろう、二人とも。」

「本当、どうしたんだろう。所で梨華ちゃん、ちゃんとアレは持ってきたの?」

「うふふ。ばっちりだよ。ちゃんとかわいくラッピングして、カードまでつけちゃった!」

そう言って少しだけ顔を明るくする。
239 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)20時45分47秒
アレとはつまりアレだ。バレンタインには欠かせない、手作りチョコである。

元々料理が苦手だったひとみは、今年のバレンタインもその辺の店でチョコを買おうかなと考えていたのだが、梨華が一緒に作ろうと言ってきたので、今年は初めて手作りチョコに挑戦してみた。
梨華が作った真希へのチョコにはハートやキスマークが沢山かかれてあり、横から見てるだけできしょかったが、あえて口にはしなかった。



そんな時、やっと楽屋になつみが姿を現した。
満面の笑みを浮かべてひとみが声をかけようとしたのだが、横で梨華が叫んだ。

「あ!真希ちゃ〜ん!!待ってたんだよぉ。」

そう、なつみの後ろから、その体に抱きつくようにして真希が一緒に現れたのである。
ひとみは嫌な予感がした。
横を見ると、梨華も眉間に皺を寄せて何かを感じているように顔を曇らせていた。


240 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)20時47分13秒
「うわぁ〜。カップルばっかりだねぇ〜。」

遊園地にある喫茶店の中で、昼食を食べていた。
予定通り、隣には嬉しそうにはしゃぐなつみの姿がある。
だがひとみは浮かない顔をしていた。
口からは少し歯を覗かせ、何度も舌打ちしている。

「よっすぃ〜何なのさっきから?遊園地好きじゃないの?」

そう言って顔を覗き込んできたのはなつみではなく、前の席に座っている、真希だった。

「…何でてめーらがここにいるんだよ…。」

そっぽを向き、小さな声でぶっきらぼうに言った。

「そうだよ真希ちゃん!何で私達がひとみちゃんと安倍さんと一緒にいないといけないわけ?!」

真希の横でずっと下唇を噛んでいた梨華が立ち上がった。

「ぐ、苦しいぃ〜!梨華ちゃん苦しいよぉ。げほげほ。
 はぁー、死ぬかと思った。こらぁ梨華ちゃん。
 そういうプレイはベッドの中だけって言ってるでしょ。」

本気で首を絞められていた真希が、梨華のおでこをぴんっとはじいた。
真希の言葉に、梨華、下を向きながら赤面。

「あー。相変わらず真希と石川はラブラブで羨ましいべ。よっすぃーどうしたの?
 さっきから全然楽しそうじゃないべさ。」
241 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)20時48分41秒
「誰のせいなんですか!何でごっちん達とダブルデートしなきゃいけないんですか!
 嗚呼、せっかくの私のなっちもアンアン大作戦がこれで全てぱぁに…。」

「何だべそれは。」

「い、いえこっちの事です。」

「取り合えず、なっちは今日はおもいぃっきり楽しむよー!」

なつみは掛け声をかけながら右手を挙げた。
真希も同じように「楽しむよー!」と声をかける。
梨華は相変わらずSMプレイの真似事をし、ひとみは一人嘆息した。



行き交う人々、みなカップルである。
今日のようなこの日は、引きこもって某アイドルばかりを追いかけているヲタどもは外を歩いてはいけないのだろうか。

カップルの波に飲まれて、負けずとらぶらぶ光線を放とうとしていたひとみの横に、なつみはいなかった。
数メートル前方で、真希と二人で楽しそうにはしゃいでいる。
ひとみの横には鞄から鞭を出しだした梨華がいた。
242 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)20時50分18秒
「真希ちゃん…それ以上私を無視したら今度はこれで…。」

「り、梨華ちゃんちょっと待って。
 それ本当に痛そうだし危ないしベッドの中じゃないと…って、
 そういう問題じゃなくって何でそんなの持ち歩いてんの?!」

「え、だって真希ちゃんが時々、休み時間の合間にトイレでしてほしいって…。」

「?!」

ひとみはそこで鼓膜をつぶすことにした。否、聞かなかったことにした。



窓から見える夕日は遠い国から飛んでくるツバメよりきれかった。
目の前で座る彼女の顔も赤く染められ、どこか虚ろな瞳でいる。
外から隔離された狭い空間の中で、自分と二人きりだから赤くなっているのだろうか。
ここはカップルが必ず乗る遊園地の定番、観覧車の中だった。

「…で、何であなたがここにいるの?」

目の前にはミニスカートから幾数ものヲタを魅了した脚をちらつかせながらこちらを向いている梨華がいる。
わざとらしく、何度も足を組み替え、たまに濡れた瞳で深いため息をつく。

「だから雰囲気出すなって!」

「ご、ごめん。何か昔の事思い出しちゃって…。」

梨華は頭をかきながら外を見る。外界にある物が全て、小さく見える。
243 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)20時53分08秒
「そういえば去年の今頃は、私、ひとみちゃんにチョコあげたんだなって。」

「あー、そういえばくれたね。確か私もあげたよ?」

「うん。凄く嬉しかった。本当はその時、告白しようって思ってたんだよ。」

「えぇ?!」

「でも、その時見ちゃったの。
 ひとみちゃんが、メンバー全員に配ってたチョコとはまた別のを用意してたのを。
 それで、ひとみちゃんがいない隙に、こっそり見ちゃったんだけど、
 そこに安倍さんの名前が書いてあった時はびっくりしたなー。
 あの時はこんなの見るんじゃなかったって思ったけど、
 今となってはあれで良かったのかも、とも思うよ。」

「梨華ちゃん…。」

「それもこれも、きっと全部真希ちゃんのおかげなんだけどね!
 だから二人の邪魔する気はもうないから。ただし…。」

いきなり声のトーンを落として、鞄の中に手を入れた。

「私達の邪魔をする安倍さんはとっても許せないから。
 殺っちゃっていい?ねぇ、いいでしょひとみちゃん。
 ちょっと、止めないで!お願いだからあの観覧車を落とさせてー!!」
244 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)20時54分41秒
「がーーー。梨華ちゃん危ない!危ないから!ちょ、す、座ってよ。危ないから!
 大体、あの観覧車落としちゃったらごっちんだって死んじゃうんだよ?」

どこで手に入れたのか本物か偽物か見分けのつかない銃を出してきた梨華を、間一髪の所で食い止めた。
やっと落ち着いて腰を下ろす彼女をみて、ひとみは本気で死ぬかと思ったようにため息をつく。

(り、梨華ちゃんと付き合ってなくてよかった…。)

心底思った。



「…で、もう前置きは無しにして単刀直入に聞くけど、何でこんなとこまでついてくんの!!」

「え〜、だってぇ〜、事前によっすぃ〜の手帳見て、
 なっちもアンアン大作戦の細かく書かれた予定を全部暗記したからぁ〜。」

「!!!」

ちょっとお洒落で夜景が綺麗なレストランに、4人は来ていた。
ひとみは、今にも真希に食いかかるというような姿勢をとっていたのだが、その動きは止まっていた。

「さっきから気になってたんだけど、そのなっちもアンアン大作戦ってなんだべさ?」

既にフォークを口にくわえ、今か今かと料理を待つなつみもおもむろに聞く。
245 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)20時57分20秒
「い、いいいいいえ、何でもありませんありませんありませんから。
 あ、もうすぐ料理がくるみたいですよ。」

そう言って明後日の方向を指差し、180度話題を変える。
「え?どこどこ?」と横を通り過ぎていく料理に目を向けるなつみは、既にその術にかかっていた。



「…ねぇごっちん、一つだけ聞きたかったんだけどさ。」

せっかく予約までとっていたムードたっぷりのレストランでも、食べることに夢中でひとみには目もくれないなつみを尻目に、口を開いた。

「んあ?」

「何で、こんな大切な日にまで私達の邪魔をするの?
 梨華ちゃんだってかわいそうじゃん。
 ごっちんの為に、きしょいチョコレート必死になって作ってたんだから!」

「ひ、ひどい、ひとみちゃん…。」

「あ、ご、ごめん。別にそういうつもりじゃなかったんだけど…。つまり、そうだ。
 ごっちんにはもう梨華ちゃんがいるでしょ!
 それで、私にはなっちがいるんだから、もうこういう事はしないでほしいの。」
246 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)21時00分02秒
ひとみはなつみの手を握ろうとした。
私達はらぶらぶなんだから、と示すつもりだった。
だが何度その手を掴もうとしても、食べることに夢中になってるなつみの手は、ひとみを拒絶した。

「ひとみちゃん、惨めだね…。」

「梨華ちゃんに言われたくないよ!」

「あのさぁ〜、よっすぃ〜も梨華ちゃんも、何か後藤となっちのこと誤解してな〜い?」

ずっと黙ってた真希がへらへらと笑った。

「後藤はただよっすぃ〜の手帳を見て、後藤も遊園地に行きたくなって
 このレストランに来たくなっただけで、
 なっちとよっすぃ〜と一緒に行動するつもりなんてなかったんだよぉ〜。」

「じゃぁ何で一日中一緒に…。」

「あれ〜?昼間の喫茶店入る前で偶然会って、
 そのままウェイトレスが4人一緒だって勘違いして
 同じ席につかされただけじゃなかったっけ〜?」

「え?そ、そうだっけ…おかしいな。何かその辺の描写が抜けてたような…。」
247 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)21時03分30秒
「ついでに梨華ちゃんもよっすぃ〜も全然乗り物のってくんないしさぁ〜。
 仕方ないから乗り気のなっちと一緒に乗ってただけだよぉ。
 観覧車だって梨華ちゃんに乗ろう〜って言ってたのにあんな道端でろうそく出してくるからさぁ。」

梨華、またまた下を俯き赤面。

「まぁい〜じゃん。後藤は今日楽しかったよ〜。」

そう言って、真希は満面の笑みを浮かべた。
ひとみは、梨華と一緒に早とちりしていた自分が恥ずかしくなった。

誤解が解けたようで熱々に会話をする梨華と真希を見て、ひとみも負けじとなつみを見た。
なつみはまだ、食べ物をむさぼっていた。



「「じゃぁね〜!」」

かたく手を繋いで寄り添いながら去っていく二人。
それを心底嬉しそうに手をふるひとみ。なつみも普通に、それを見送っていた。

「さて!なっち!今日はあれだよね!あの日だよね!」

「うぅ。げふっ。なっちちょっと食べ過ぎたべ。
 よっすぃー、何であんな美味しいとこ今まで隠してたの?
 もっと早く教えて欲しかったよ。それにしてもちょっと飲みすぎたべ。」

なつみは言いながらも体を不安定にふらふらと揺らせた。
248 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)21時04分45秒
「なっち、お酒弱いんだから飲んじゃダメって言ってるじゃん。
 もぉ、倒れないで下さいよ、こんなとこで。」

結局こういう展開になるんだな、と半ばがっかりしながら、でもこれでもいいかと開き直りながら、なつみの体を支えた。

「う”〜、よっすぃーごめんね。本当はもっと早く渡したかったんだけど…。」

突然、なつみは鞄の中に手をいれ、一つの包み箱を取り出した。

「え、これって…ん。」

その箱を受け取った途端、ひとみの唇はなつみのものによってふさがれた。
目を閉じ、少しだけその温もりに浸る。

「…なっち、お酒の味がするよ。」

「はは。よっすぃーはよっすぃーの味がしたよ。」

酔ってるのだろうか、そんな恥ずかしい台詞をぬけぬけと言うなつみに照れて、

「そ、それより、これ開けていい?」

「いいよー。」

そっと包みを開いた。
249 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)21時05分45秒
中には何となく形が崩れているが、沢山のチョコが入っていた。
ひとみはその中のハート型に近いのを取り、口の中に入れた。
紛れも無く、チョコの味が広がる。

「うわぁ。なっち、これ、もしかして手作り?」

「…何か形は変になっちゃったんだけど、そうだべさ〜。
 実は手作り初めてだから、もうちょっと上手く作りたかったなって思ってるんだけど。」

「ううん!美味しい!嬉しいよ!本当に、ありがとう。」

そう言うと、なつみは少し照れながら、でも嬉しそうな顔をした。
その顔を崩ささないように、ひとみも鞄の中からチョコを出す。

「ハッピーバレンタイン、なっち!」

「うわぁ!嬉しいべ!こんな沢山チョコ貰ったらなっち太っちまうさぁ。」

「大丈夫だよ。シュガーレスのにしといたから。」

ひとみの些細な気遣いには気付かず、受け取った手作りの大きな固形チョコをなつみは嬉しそうに眺める。
250 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)21時07分47秒
そんななつみの顔を見つめながら、ひとみはそっと手を頬にもっていく。

「なっち、好きだよ。」

周りに人がいない事を確認してから、徐々に顔を近づける。
なつみの瞼も、段々と閉じられていく。


唇まであと数センチというところで、遠くの方から聞こえてくる地響きに、ひとみは顔をあげた。
見ると、遠くのほうから見慣れた連中が凄い勢いで突進してきている。


「きいぃぃぃぃぃぃっっ!!悔しい!
 チョコが貰えないし渡す相手がいないってのは悔しいわ!」

「なっちはかおりのもの。なっちはかおりのモノ。
 なっちはカオリのモノ。ナッチはカオリのモノ。」

「きゃはは!何かおもしろそうだよ!
 オイラも裕ちゃんとこ行く前にちょっと参加しとくよ!」
251 名前:バレンタインの過ごし方 投稿日:2003年02月14日(金)21時11分15秒
「あ、あかん。ついていかれへん。体が重すぎるわ。のの、どうや?」

「だめなのれす。一歩も動けないのれす。一体どうやってここまで来たのかも謎なのれす。」

「…吉澤さん。吉澤さんのチョコは新潟の命にかけても奪ってやるっ!」

「まこっちゃん!その意気やよ。でもいい加減、私の想いにも気付いてほしいわぁ。」

「何だか体が軽いです。ちゃんと食べた物は出しましょうね、辻さん加護さん。
 ということで、今日も完璧です!」

「私の眉毛入りチョコ食べてくださ〜い!」

それぞれ好き勝手な事を叫びながら、相変わらず二人の邪魔をしようと他メンバー達がどこからともなくやってきた。
その様子に、ひとみとなつみは再び絶句。

「なっち…。」

「よっすぃー…。」

二人は顔を見合わせ、頷いた。

「逃げよっか!」

「逃げるべ!なっちの家まで走るのさぁ〜。」

そう言ってどちらからともなく手を繋いだ。
そしてそのまま、全速力で走った。
その日食べたチョコのカロリーは、これで消費されるかな、と思った。

(●´ー`)<Happy Valentine!>(^〜^0)
252 名前:りゅ〜ば 投稿日:2003年02月14日(金)21時20分19秒
勢いで更新してしまった!ぐは。凄い駄文。やばい。
まじでやばいです。すいませんすいません。許してください。
ほとんど見直ししてないです。ごめんなさい。
でも今日中にうpしたかったんです、ごめんなさい。

>>234 なちよしヲタさん
 なちよしヲタさんキタ━━(゚∀゚)━━!!!!
 長い感想ありがとうございます。嬉しかったです!
 この作品のメインパートであるエロの部分が印象に残ってくれたのなら、
 とても嬉しいです。私もよっすぃ〜の初体験の相手をなっちにしたのは、
 自分で設定してて萌えました。
 激しくなち攻めエロも書きたいと思ってますので、いつかどこかでまた読んで下さい。

>>235
 保全ありがとうございます!実は倉庫落ち待ってたんですが…w
 おかげで書く気が出ました。(●´ー`●)ありがとう。

というわけで一応番外編を書きましたが、容量もそろそろいい所なので、
このスレはこれで終了させたいと思います。
今まで読んで下さった方々ありがとうございました。

黄板の黒い太陽の方も、宜しくお願いします。
なちよしマンセー
253 名前:shio 投稿日:2003年02月14日(金)21時26分39秒
久しぶりに読み返してみようかなと思ってきてみたら、番外編があるじゃないですか。
嬉しくていっきに読みました。
よっすぃーがいろいろと考えているのがとてもかわいいです。
また、最後がとても面白く終わっているので笑ってしまいました。
黄板のほうも楽しみにしていますので、頑張ってください。
254 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月14日(金)21時30分10秒
番外編キタ―――(゚∀゚)―――!!!
なにげにかおなちまでアッタ―――・゚・(ノД`)・゚・―――!!!
素敵です、なちよしの二人。
しっかり走ってくらさい、とメッセージを残したいです(w
255 名前:17 投稿日:2003年02月19日(水)10時33分02秒
番外編ありがとうございます。
なちよし、やっぱりいいですね〜。
黄版の方もしっかりと見てますよ。
これからの展開が楽しみです。
256 名前:なちよしヲタ 投稿日:2003年02月22日(土)15時20分01秒
ツッコミよかですか?

>こんなバレンタインの日に真昼間から行っても人がいっぱいだろう
2002年2月14日って木曜日のはずなんですが・・・・・・

>女たらしと言われたこのテクニックでなつみをとろとろにするつもりだった
どっちがとろとろにされてんだか(藁)
話を通して、経験豊富ななっちがうぶなよっすい〜をとろとろにしているんですが・・・・・・

>なっちはかおりのもの。なっちはかおりのモノ。なっちはカオリのモノ。ナッチはカオリのモノ・・・・・・
ひい〜!怖いよ〜!

なんだかんだいいながらおもしろかったです。
また期待していますよ。



257 名前:りゅ〜ば 投稿日:2003年02月22日(土)17時04分08秒
思いっきりあがってたんで何となくレスります。

>>253 shioさん
 久しぶりに読み返そうなんてしようとして下さったんですか(ノд`)・゚・。
 嬉しいです。よっすぃーの考え方かわいいですよね(はあと
 笑ってくれてありがとうございます。今回はネタ系で攻めたかったんです。

>>254
 名無し読者さんの事を考えながらかおなちを入れました(w
 気に入って頂けたなら幸いですた。なちよしの二人は素敵ですよね。
 二人にはどこまでも走っていってダイエ(ryしてもらいたいです。

>>255 17さん
 なちよしはやっぱり(・∀・)イイ!!です。
 黄板の方も見て頂いてるという事で、頑張りたいと思います。
258 名前:りゅ〜ば 投稿日:2003年02月22日(土)17時04分49秒
>>256 なちよしヲタさん
 つっこみキタ━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━ !!!!!
 思いっきりageられてたので、どきっとしました(w
 しかしリアルだという事を半分忘れてました!
 2002年2月14日は木曜日でしたか…。ううん、鋭いっ!!
 女たらしの部分は余計でしたね。ネタとして書いちまいました。
 でもなんだかんだいいながら面白かったってまじですか!!
 嬉しいです(ノд`)・゚・。でも突っ込みありがとうございました!
 やっぱり勢いだけで投稿はダメっすね。これからは見直しします。

最近、アマアマなCPものが書けなくなってきてる自分に気付きました。
まだ容量残ってるので、前言撤回してもしかしてまたリアルCPもの書くかも?!
でもその前にきっと倉庫落ちだ罠。

というわけでレスありがとうございました(*゚∀゚)ゞ
259 名前:なちよしヲタ 投稿日:2003年03月21日(金)19時25分17秒
まだ残ってましたんで、改めて読み直してみたら、改めてなっちのテクニック
の虜になってしまうよっすい〜の可愛くてうぶなところにすごく萌えてしまい
ますた。

(●´ー`)^〜^0)
260 名前:よっすぃーの誕生日〜番外編2〜 投稿日:2003年04月12日(土)19時35分09秒
壁にかかってるカレンダーを見て、なつみはため息をついた。
今日の日付、4月10日の二つ横にある12という数字は、ピンクのハートで囲まれている。
4月12日。それは、よっすぃーの誕生日。後2日で、彼女は17歳になる。
自分の8月の誕生日が来るまで、二人の年の差はたった3つになるのだ。
1歳違うだけで、何かが大きく変わるような気がする。
なつみは、彼女が17歳になる事に、多分本人以上に心を躍らせていた。

だが、なつみは悩んでいた。誕生日プレゼントの事だ。
どうせなら、一生ひとみの心に残るような、そんな物をあげたい。
数週間ぐらい前からずっとそう思ってきたが、いざ何が良いのかと考えてみると、何も思いつかなかった。

まず、ひとみの好きな物というのを考えてみた。
だが思いつくのは、ベーグルやガッツ石松ぐらいで、到底誕生日プレゼントにあげるような物ではない。
261 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時36分50秒
だから数週間ほど前のある日、TVの収録の合間に、本人に聞いてみたのだ。

「よっすぃーってさ、何が好きなの?」

あまりにもストレートすぎる質問かなと思ったけど、変に遠まわしに聞いて勘ぐられるのも嫌である。
ごく自然に、さり気なく聞いてみた。

ひとみは次の収録に移るため目まぐるしく動いてるスタッフ達を見てから、顔をこちらに向けた。

「え、何ですか、いきなり。」

「いや、別に深い意味はないんだけど、よっすぃーの今いっちばん好きな物は何かなって。」

言いながら、そういえばひとみの好きな物とは何か、なつみはほとんど把握していなかったと思い返す。
付き合う前からひとみが大のベーグル好きだという事は知っていたが、付き合い始めても、特に新しい発見などは無かった気がする。
強いて言えば、ファーストキスの相手がなつみだったという事を知ったぐらいか。

なつみは、上の方を見上げて唸り声をあげるひとみに手を絡みたくなり、さり気なく体を近付けた。
262 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時37分39秒
「んー。やっぱりいくら考えても、好きなモノって言ったらあれしかないですよぉ。」

だがなつみが手を絡める前に、ひとみが肩に手を廻してきた。

「よ、よっすぃー?」

「今の私のいっちばん好きなモノって言ったら、安倍さんしかいませんよぉ。」

「な、何言ってるべ。ほら、スタッフも変な顔してこっち見てるべさ。
 っていうかなっちはモノじゃないってー。」

その後、他メンバーからお咎めを食らったのは言うまでもない。

結局本人から直接聞き出すという作戦は失敗に終わった。


263 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時38分48秒
なつみは机に行き、折りたたんでピンで留めてあった紙を取り、それを広げた。

そこにはひとみの誕生日プレゼントに関するメモが書かれてあった。
一番上には、一番最初に相談した、真希のアイディアが書かれている。

「誕生日プレゼント?そんなの体にしたらいいじゃん。」

真希とはひとみと付き合い始めて以来、微妙な距離を保ってきた。
梨華がいる時は決まって見せ付けるようになつみに抱きついてくるのだが、いざ二人きりになると、どことなくぎこちなかった。

それがなつみにも伝わってきて、真希とは微妙な会話しか出来なかった為、その日も話題づくりの為に、ひとみの事を聞いたのだ。

だが意外にも、真希の言葉には『遠慮』というものがなかった。

「か、体…!?何言ってるべさ…ごっつぁん冗談はいいから真剣に答えてほしいのさ。」

「え〜。後藤は梨華ちゃんの誕生日に体あげたよ〜。」

「?!」

「あ、もちろんただ体をあげるだけじゃ駄目だよ〜。
 いつもと同じになっちゃうからね。その日は特別に後藤はねぇ…。」
264 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時40分55秒
その後の事を、なつみはほとんど覚えてない。
ただひとみのイメージと繋がる言葉がほとんど無かった気がする。
なつみ自身はそういう事にも少し興味はあるのだが…いくら1歳大人になると言ったってまだ17である。
ひとみにそんな事は教えれない。
でもそういえば、真希はひとみと同い年だったような…?

深く考える事はやめ、次の行に目を落とした。
そこには、様々な人間関係の間で常に中立を保ってる紺野の名前があった。
その横に、『不思議なもの(星の欠片)』と書かれてある。

「吉澤さんの誕生日プレゼントですか?
 安倍さんは吉澤さんとああいう関係なんですよね。
 つまり二人は特別な関係という事ですよね。
 特別といえばやっぱり特別な物をあげなくてはいけません。
 私にとって特別な物といえば不思議な物ですね。」

TVの前ではいつもおっとりしてる紺野が、この時ばかりは早口だった。
時々呂律が回ってないが、彼女の意見は明瞭で的確な気がした。
下手すると、ずっと年上の自分の方が頭が悪いんじゃないか、と思う時もある。

「不思議な物ってなんだべ?」
265 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時42分41秒
「不思議な物ですよ。この世にないようである物。
 誰がどう見ても不思議だと感じる物です。
 人間は今まで見た事無い物を見ると、自然と心をときめかせるんです。
 さらにそれは深く心に残り、一生思い出に残る人もいるでしょう。
 …そうですねー、星の欠片、なんてどうでしょうか。中々不思議だと思いますよ。」

この後、星の欠片を手に入れるためにはどうすればいいかという講義を延々と聞かされたが、なつみはその説明の1/5も理解できなかった。

ただ『今まで見た事ない物』というアイディアには惹かれたので、『星の欠片』の横に、追加メモを走らせた。

次の行には、なつみに恋人がいる事を妬んではいるが、一応中立の立場にいる保田の名前があった。
その横には『保田大明神人形(レア物)』と書かれてある。
なつみは会話を思い出す気にもなれず、保田の文字の上に一本の直線を引いた。

だがその下には、最年少であるのに今までで一番まともな意見を言った新垣の名前があった。

「恋人同士って普通、指輪を渡しあうんですよね。」
266 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時44分09秒
さすがまだ少女漫画やドラマの世界しか知らない子供の意見だ。
その眉毛の濃さと同じぐらい単純だが、まっとうな意見でもある。
しかしひとみは指輪など貰って嬉しいのだろうか。
でも取り合えず一番妥当な意見なので、第一候補にした。

もう一段、目を落とすと、恋愛に関しては大先輩な矢口の名前があった。
その横には『手作り』という文字が書かれてある。

「やっぱり心を込めて作ると、相手に伝わるんだよね〜。」

なんとでもない、と言う風に矢口は言った。

「でも、手作りって何を作ればいいんだべ?」

「もー、それはなっちが考える事じゃん。オイラはここまでしかアドバイスできないよ!」

そう言って小さい体を揺らし、高い声で笑いながら走り去った。
矢口が、手作りで何かが作れるほど器用な人間だとは思わなかった。
今度中澤に、今まで何を貰ったか聞いてみようと思った。

取り合えず手作りできるのは料理ぐらいだと思い、この意見は保留して、最後のメモを見た。
そこには、やっと小川の目を盗んで接触が出来た高橋の名前があった。

「私文字書くのが好きなんですよ。」

いつも通りの訛り具合に加えて早口で言った。
267 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時45分29秒
「やっぱり言葉ってのはぁ、大事だと思うんですよ。
 私もお母さんといっつもメールし合ってるんですがねぇ、文字ってのは大事だと思うんですよ。
 特に私なんてぇ、ほとんどの友達に電話しても意味分からん言って切られるからぁ、もう文字を書くしかないんですね。
 言葉を書いてみてぇ、やっとコミュニケーションっちゅーもんが取れるってやつなんですよ。」

なつみの顔をじっと見ながら、相槌する余地も与えないまま高橋は言った。
はっきり言って半分ぐらいしか聞き取れなかったが、単語だけピックアップして脳内変換した。
『文字』…ある意味高橋らしい意見だと思った。
だがこれは、プレゼントとは関係ないだろう。

なつみはもう一度、メモ用紙の上から下まで目を走らせた。
後聞いてないのは梨華だ。彼女には明日相談するつもりだった。
その他のメンバーはなつみとひとみの関係を好ましく思ってないようなので聞く事ができない。

取り合えず後1日ある。
まだ時間はある、と自分に言い聞かせ、そして人の意見はいろいろだなと思いながらベッドに入った。
268 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時47分07秒


次の日もやはり忙しく、中々空いた時間が無かったが、全ての収録を終えた所でやっと梨華を捕まえることが出来た。
何となく他メンバーの目を気にしながら、楽屋の隅に行く。

「誕生日プレゼントですか?そうですねぇ〜。
 ひとみちゃんはもう安倍さんのものだから、この際とっておきのアイディアを教えときます。」

そう言って梨華は意味のないポーズをとった。思わず「きしょいよ。」と言いそうになったが我慢した。

「実は最近石川はぁ、光物に凝ってるんです。」

「光物?」

「そう。ピンクもやっぱり捨て難いけど、光物も素敵よね〜。」

「それって石川の趣味なんじゃないの?」

「え?やだなぁ〜安倍さんったら。ひとみちゃんも光物大好きですよ!きっと。
 石川がお薦めするんだから間違いありませんって。」

「…取り合えず石川の意見は分かったべ。相談乗ってくれてありがとうなのさ。
 じゃ、そういうことで。」

え〜、もうちょっと話聞いて下さいよぉ〜という梨華の声は無視し、メンバーがたむろする楽屋の中心に戻った。
鞄の中にあるメモを取り、『光物』と付け足す。
269 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時48分10秒
さて、どうしたものかと横を見ると、辻加護がひとみを囲んで何やら顔をしかめていた。

「えー、明日はうちらと一緒に夜を明かしてくれるんちゃうんかぁ〜?」

「そうれすよ〜。せっかくよっすぃ〜の誕生日なんらから、のの達と遊ぶのれす!」

ひとみは「うーん。」と困った声を出しながら、頭を掻いた。

なつみはいてもたってもいられず、ひとみの横まで歩いていった。

「あ、安倍さん。」

心なしか、その表情が緩む。

「お、またでよったなぁ。うちらとよっすぃ〜の間を引き裂く堕天使めー。」

「戦闘準備完了なのれす。いつでも出撃OKれす。」

「ちょ、ちょっと待ってよ辻加護。
 …えと取り合えず、よっすぃーは明日忙しいから、二人とは遊べないよ。」

「何で安倍さんがそんな事言うねん。」

「そうなのれす。何かがおかしいのれす。」
270 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時49分01秒
辻と加護が一歩前へ踏み出す。その勢いに、なつみは思わずたじろく。

「あ、まぁそういう事だから、二人ともごめんね。
 じゃぁ、安倍さん一緒に帰りましょ〜。」

そう言って二人に手をふりながら、ひとみはなつみの肩に手を廻した。
辻加護は「えー。」と言いながらやりきれない顔をしてその場を去った。

なつみは、肩にかかる手のぬくもりを感じながら、

「よっすぃーごめん!今日はなっちちょっと、この後用事が入ってるから一緒に帰れないんだべさ。」

出来るだけ申し訳なさそうに頭を下げた。
ひとみは少し顔を曇らせたが、「分かりました〜。」とまたいつもの調子で納得してくれた。

271 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時51分06秒
なつみは、ひとみとの間だけで呼んでる「思い出の公園」に一人で来ていた。
最近、何か考え事をしたい時には必ず立ち寄る場所だ。

その日も相変わらず人通りは少なく、高台から見える夜景は抜群だった。

なつみはその果てしない景色を眺めなら、心が落ち着いていくのを感じ、鞄に手を入れた。
中から、青白い包装紙に包まれた小さな箱を取る。
先ほど、仕事が終わってから某店に立ち寄り、買ってきたものだ。
結局、新垣のアドバイスを聞いて、自分でも一番妥当かなと思った、指輪をあげる事にした。
女同士でどこまで意味があるのか分からないが、指輪をあげるという行為も、恋人しか出来ない特別な事かな、とも思った。

だけど、何かが足りない。
ひとみの心に一生残るような、そんなプレゼントをあげたかったはずだ。
272 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時52分07秒
なつみは夜風に揺れる髪を押さえながら、もう一度メモ用紙を広げた。
『印象に残る物、体、不思議なもの(星の欠片)、手作り、文字、光物』。
走り書きされたメモを眺め、そんな物ないよなー、とため息をつきながら夜空を見上げた。
ちょうど、飛行機が一機、体を光らせながら飛んでいた。
ちかっちかっ、と定期的に点滅するそのネオンに、UFOじゃないかと幼い頃は何度か騙されたものだ。

(ん…?ネオン…?)

少しずつ移動していく飛行機を見ながら、なつみの中にまだ形を宿さない何かが浮かび上がってきた。

(ネオンか…。不思議な、光る星の欠片の文字…それを手作りで…。
 …そっか。うん、いいかもしれない。うん、ダメで元々、やってみよう。)

なつみは一人頷いて、左へ向かって移動してる飛行機にひとこと礼を言った。
そして次の瞬間、一目散に走っていた。

◇ ◇ ◇
273 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時53分49秒
4月12日。今日は自分の誕生日だ。
朝から家族にプレゼントを貰って、仕事に行くとメンバーやマネージャー、スタッフからも祝いの言葉を貰った。

だが世界はひとみを中心にまわってるわけでなく、またいつもと同じように忙しい一日が始まる。

休憩の合間合間にプレゼントを貰ったりして、いつの間にか夜になって、もう仕事も終わりに近づいていた。
だが、なつみからはまだ何ももらってない。
昨夜の0時ちょうどに電話がかかってきたのは嬉しかったけど、今日はまだ祝辞の言葉しか貰ってなかった。

なつみと付き合ってから始めての誕生日なので、やはり何が貰えるのか期待してしまう。
去年は、矢口と二人からという形で、小物入れを貰った。

考えを巡らせてるうちに、仕事が終わった。
なつみから声がかかるのを待ちながら、ゆっくりと帰り支度をする。
だがそんなひとみの気持ちはお構いなしに、メールの着信音が響いた。
親からだった。
画面を覗くと、今日は早く帰ってきなさい、という文字が冒頭に書かれてある。
そういえば今朝、ケーキを買っとくからお祝いしましょ、と母が言ってた気がする。
274 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時55分53秒
いつもは嬉しい家族だけの誕生日会なのに、今回は心が冷めていく感じがした。
毎年やってる事なので断ることも出来ず、ひとみは暫くその場に佇み、どうすればいいか考えていた。

「あ…よっすぃー。あのさ、ちょっとこの後、いいかな…?来てほしいとこがあるんだけど…。」

そうしてると、案の定なつみから声がかかった。
ひとみは携帯を握り締めながら苦い想いをかみ締めて、

「すいません…この後、親がちょっと家に帰って来いって…。」

「え…?」

横で、なつみが息を呑むのが分かった。

ひとみは必死に頭を回転させた。どうやって家から抜け出すか。
どうやって親を説得させるか。だが具体的な方法が思いつく前に気持ちだけが先走って、

「でも、一時間だけです。一時間だけ、家に帰れば、
 後はずっと、安倍さんと、なっちと一緒にいれますから…。」

半分必死に言った。
分かりやすいもので、ひとみがそう言った途端、なつみの顔にはみるみる笑顔が戻っていく。
275 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時57分47秒
「そっか!良かった。なっちどうしようかと思ったべ。
 じゃぁ、今からだと一時間半後かな。
 それぐらいに、思い出の公園に来て欲しいんだけど…。」

「はい、分かりました。思い出の公園ですね!」

「…うん!じゃぁ、なっち待ってるべ。」

なつみは満面の笑みを浮かべ、着替え室に入っていった。

ひとみはなつみからのプレゼントがどういうものか気になり、家族の事など忘れ、思わず一人でにやついていた。

「あー!吉澤さんが安倍さんと喋った後一人でにやけてる…。うわぁん。
 やっぱり二人っきりで誕生日過ごすんだ…。…ひっく…吉澤さんが、安倍さんと…ひっく。」

「まこと、大丈夫やで。大丈夫やからもう泣かんとってぇ。っていうか早く私の気持ちに気付いてぇよ。」

小川と高橋のコントには慣れたので軽く無視ったが、もっと危険な人物が、目の前から近づいてきていた。

「よっすぃー、なっちと何喋ってたの?なっちはかおりのものだよ。
 なっちはかおりのモノだよ。なっちはカオリのモノだよ。ナッチはカオリのモノだよ。」
276 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)19時59分54秒
目の前でまた交信しだす飯田に悪寒が走る。
ひとみは何とか一言だけ、「ごめんなさい!なっちは私のものなんです!」と言って一目散に部屋を駆け抜けた。
鞄を取り、そのまま帰路につく。
帰り道や電車の中でもずっと、なつみは何をくれるのかな、という事ばかり考えていた。



「思い出の公園」へ向かう電車の中で、ひとみは何でこの物体はもっと早く走れないのかと癇癪を起こした。
出口として開くドアの前に体をつけ、何度も時計に目を走らせる。

結局何の計画も立てないまま親との誕生日会を始めてしまったため、なつみとの約束の時間を大幅にオーバーしてしまった。
なつみには何度も電話をかけ、「後少しだから。」となだめたが、なつみの方も段々堪忍袋の尾が切れていったようで、しまいには電話に出なくなってしまった。
どうやら電源を切ったようであり、いくらかけても通じない。

なつみは最後の電話で、「…さっきから変な人がついてくるんだけど、なっち襲われるかも…。」と半分脅しのような文句を言っていた。
それが本当だったらかなり危険だが、冗談にしてもかなり怒ってるという感じだ。
277 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)20時01分03秒
ひとみは自分のいい加減さにつくづく嫌になった。
だが今は電車の中。
ひとみ自身はこれ以上どうする事も出来ないので、いつもより遅く走るように見えるこの物体に文句をぶつけていたのだ。

いつもと変わらない速さなのだが何となく遅く感じて、やっと目的の駅についた。
ホームから出て、いつもの公園まで一目散に駆ける。

今帰りのサラリーマンや塾帰りの学生などの横を通り過ぎ、やっと約束の場所についた。

だがそこに、なつみはいなかった。
使い古した腕時計を見ると、約束の時間から1時間以上も過ぎている。
ひとみは携帯をとり、発信ボタンを押した。
だが相変わらず留守番サービスセンターに繋がるだけで、なつみは出ない。

携帯の画面には「4月12日」という淡い文字が光っている。自分の誕生日だ。

ひとみは高台に立つ気にもなれず、近くのベンチに腰掛けた。
途端、なつみの最後の言葉を思い出し、もしかして本当に変な男に襲われたのではないかと、不安になりながら辺りを見回す。
278 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)20時02分03秒
本格的に探そうと立ち上がった時、携帯が鳴った。
慌てて画面を見ると、「なっち」と書かれていた。

「もしもし?なっち、ごめん!」

発信ボタンを押すと同時に、片手を垂直に目の前に上げながら大声で謝る。

「……ハッピバースディ、トゥーユー……。」

だが携帯を通して聞こえてきた声は、ひとみの想像していたものと違った。

「……ハッピバースディ、トゥーーユー…。」

なつみだ。なつみの歌声だ。ひとみは自然に、その声に心を寄せる。
透き通るような歌声。そういえば娘。に入る前から、なつみの声は大好きだった気がする。
そう、それはまるで天使の歌声…。

「……ハッピーバースディ、ディアよっすぃー…。」

そこでひとみは、その声が携帯以外からも聞こえてくる事に気付いた。
音を立てないように、そっと携帯を離す。それは、高台の方から聞こえてきた。

「…ハッピーバースディ、トゥーーユーーー……。」
曲の終わりと共に、暗い夜空になつみが浮かび上がる。
(あれ、何でこんなに明るいんだろ?)と思ったやおら、ひとみは自分の目を疑った。
279 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)20時03分20秒
そこには大きく『よっすぃー誕生日おめでとう』という文字が浮かび上がっていた。
いや、光っていた。下から見たそれは、まるで夜空に浮かぶ星のように、輝いていた。
そしてその横でなつみが照れくさそうに笑っている。

「夜空に浮かぶ…天使…。」

ひとみは思わず呟いていた。
後で何でそんな風に言ったのか疑問に思うのだが、その時は本当に、天使が光り輝く星を使って文字を浮かばせていたと思った。
『よっすぃー誕生日おめでとう』という文字が光ってるそこだけ、まるで世界が違うようにも見えた。

暫く、ひとみはそこに佇んでいた。どう言っていいのか、どう動いていいのか、分からない。
言葉では表現できないもの、とはこういうのを言うんだろう。

いつの間にか手をふって自分を招いてるなつみに気付いて、やっとそこを駆け上る。
結構長い間立ちすくんでいたと思ったが、多分数十秒程度だろう。

「よっすぃー、18歳の誕生日おめでとう!」

そこにはなつみの満面の笑みが待っていた。

「あ…ありがとう、なっち。えと、あの…あ、遅れてごめん!それで、えっと、これは…。」
280 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)20時04分56秒
「はい、これ。」

「え?」

「誕生日プレゼント!」

ひとみの前に、青白い小さな箱が差し出された。

「え、あ…でもこれは…?」

そう言って『よっすぃー誕生日おめでとう』と光っている文字を指差す。

「あー、これ、びっくりした?」

「もうびっくりしたってもんじゃないよー。すげー嬉しかったって!
 ってかこれなっちが一人で作ったの?というかこれは一体何でできて…。」

あたふたしながら質問するひとみに、先ほどの箱が突き出された。

「先にこれ受け取ってほしいべさ。」

ひとみは動機が高くなってるのを感じながら、それを受け取った。
前にも同じように、こうしてなつみからプレゼントを貰った事がある。
確かクリスマスの時だ。

ひとみは丁寧にラッピングを外してから箱を開けた。
何となく目をつぶり、先に手で感触を味わう。
わっか状になってる、丸い物。ひとみはそっと目を開け、中身を確かめた。
シルバーの、指輪だった。

「うわぁ!え、まじ。なっちありがとう!ってかいいの、こんな高そうな物…。
 うわぁ〜、かっけー!指輪だよ!」
281 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)20時06分25秒
「サイズ合うかな?」

「…えーっと…。あ、うん、ぴったり。この指にぴったりだよ〜。
 うわー、なっちありがとう。誕生日って幸せだ〜。」

そう言って右手の薬指につけてから、なつみを抱きしめた。
何度もありがとう、と呟きながら。

何となく目を閉じて口を近付ける。だがその時、二人を包んでた光が消えた。
咄嗟に目を開けると、先ほどの文字も消えていた。

「あれ…?これは…。」

「へへ。よっすぃー、不思議な気持ちになった?」

「え、うん。なったけど。あれは一体なんだったの?」

「んー、星の欠片。」

「え?」

相変わらず首を傾げるひとみを見ながら、なつみは笑った。
282 名前:よっすぃーの誕生日 投稿日:2003年04月12日(土)20時08分02秒
「ねぇ、なっちの家行く?」

「あ、うん!…あ、でも親に電話しないと…。」

「えー。ちょっとだけならいいっしょ〜?」

「…いや、だって泊まるから、って言わないと…。」

再び暗闇が包んだ二人に、静寂が訪れる。

「……よっすぃー、エッチだべさ…。」

「え、いや、じょ、冗談ですよ。ははははは。」

「仕方ないべ。今日は特別だからあんな事やこんな事もやっちゃうべさ。」

「え!?」

「あ!しまった…ごっつぁんの影響だ…。な、なんでもないよ。気にしないことさ。
 じゃぁよっすぃー、行こうか?」

そう言って、指輪のされたその手を取った。

ひとみはまだ首を傾げていたが、なつみの手があまりにも暖かかったので、別にいっかと心中で頷いた。
空を見上げ、本物の星たちの輝きを見て、(誕生日、か。)と心の中で呟く。
283 名前:よっすぃーの誕生日〜番外編2〜 投稿日:2003年04月12日(土)20時09分21秒
何となく嬉しくなり、顔をなつみの方へ向け、

「なっち、好きだよ。」

と言った。同じように夜空を見上げていたなつみもひとみの方に顔を向ける。

「…うん。なっちも、よっすぃーの事、大好きだよ!」

その時、なつみは自分の目を疑った。
ひとみの後方で、夜空に浮かぶ数万個の星たちが一斉に光った気がしたのだ。

なつみは少し目をしばたいた後、(誕生日、か)と心の中で呟き、再び笑顔になって、

「よっすぃー、誕生日、おめでとう!」

と言った。



次の日その公園で、なつみが放置していった「光る文字」がちょっとした問題になるなど、その時の二人は知る由も無い。


284 名前:りゅ〜ば 投稿日:2003年04月12日(土)20時14分24秒
番外編2を書きました。>>260-283

ラストの方で作者風邪をひいてしまい、オチがめちゃくちゃになってしまいました。
出来ればもっと推敲したかったのですが今日中に投稿したかったので…変な話すいません。

>>259 なちよしヲタさん
 読み返してくれてありがとうございます(感涙
 なっちのテクニックに萌えましたか…なちよし、いいですよね。

というわけで何度もしつこく番外編書いててすいません。
容量も良い所なので今度こそ倉庫落ちを期待して…と言っといて何かまた書くかもしれません

では、なちよしマンセー。そしてよっすぃ誕生日おめでとう!
285 名前:なちよしヲタ 投稿日:2003年04月15日(火)22時36分40秒
追加有難うございました。
ちょっとSF入ってて、今までとは違った視点で楽しめて、
なおかつネタも押さえていて、良かったです。

こんどは1年後の出来事も書いてみてはいかがでしょうか?
286 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月27日(日)21時02分37秒
保全
287 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月16日(金)13時03分45秒
とりあえず保全
288 名前:短編:電車の双り 投稿日:2003年05月20日(火)08時49分31秒

――あ、いた。

 数人のおじさんや学生達に紛れて、私はいつもの時間、いつもの車両に乗り込んだ。そしていつもと同じように反対側のドアに体を預け、そしてまたいつもと同じように携帯を取り出して、メールを打つふりをする。これで準備万端だ。
 毎週、火曜日と木曜日は絶対寝坊しないように、この時間にこの電車に乗る事を決めている。
 私は携帯の画面を見るフリをして、そっと目線を上げた。

 瞬間、高鳴る鼓動。

 体中の血液が一気に逆流でも始めたかのように、騒ぎ出す。
 切れ長の目に、くっきりとした二重。透き通るような白い肌に、ピンク色の唇。横顔だけでも分かる、整いすぎている顔だち。
 いつもと同じように、Tシャツとジーンズというシンプルな姿でも、そこだけ世界が違うように感じる。
 彼女はいつもと同じように、立ったままドアにもたれて、本を読んでいた。
289 名前:電車の双り 投稿日:2003年05月20日(火)08時50分10秒

――名前も年齢も、住んでる場所も知らない。

 だけど、一週間に二回、必ずこの時間、この車両にいる。そんな彼女が気になりだして、かれこれもう一ヶ月になる。
 
 きっかけは簡単。その日、私は偶然にもいつもより早く目が覚めてしまって、意味はないけど、取り合えずいつもより一本早目の電車に乗った。
 ラッシュ時と少しずれるせいか、空席が目立つとまでは言わないがまだ空いてる席があるというのに、そんなのは気にしないで、彼女が立っていた。
 基本的に席に座るよりドア越しに立って景色を見る方が好きな私も、その横に立った。
 彼女はその時も、本を読んでいた。
 きっかけは本当に簡単。彼女が読んでいた本は、丁度前の日に私が読み終えたものだった。だからなに、というわけじゃないけど、その本にはちょっと感動して泣いてしまって。
 私に彼女への興味心を抱かせるには充分な動機だった。
290 名前:電車の双り 投稿日:2003年05月20日(火)08時50分44秒
 それから暫く、その電車には乗らなかったけど、次の週の火曜日に思い切ってまた乗ってみたら、案の定彼女はいた。
 彼女が毎週火曜日と木曜日にこの時間、この車両にいるという事が分かるまで、時間はかからなかった。

 何度も話しかけようとして、その度に拒んだ。変な人と思われたくないし、第一何を話せばいいか分からない。
 メールを打つフリをして迷いながら、それでも必ず来てしまう、私の降りる駅。
 彼女は私がいてもいなくても関係ないという風に、その姿勢を崩さないまま、私を見送ってくれる。それを見ていつも私は、「明日こそ」と心の中で決意する。
291 名前:電車の双り 投稿日:2003年05月20日(火)08時53分06秒
 半分、それが日常になっていたある日。
 きっかけなんて、本当に些細なことで。心の準備なんてお構い無しに、思わず発してしまった言葉。
 「あ」
途端、周りにいる人たちの視線が一気に私に集中する。そりゃそうだ。突然一人で、上を見上げて声を出したんだから。勿論、こちらを見てる人たちの中に、あの人もいる。
 反射的に、無条件にそちらを向く。彼女の目が真っ直ぐと私を見ていた。いつも、紙の上の文字にしか注がれていなかったあの目が、真っ直ぐとこちらを。
 「…あ、あの、これ…知って、ますよね」
全身が熱くなるのを感じる。火を噴いてるようだ。普段、いくらバレーボールの試合前でも緊張しない私が、我を失いかけている。
 彼女の目は一旦、私が指差した広告の方に注がれ、また戻った。そしてゆっくりと、こくっと首を縦に動かす。
292 名前:電車の双り 投稿日:2003年05月20日(火)08時53分56秒
 「…あ、やっぱり。あ…前、この本、読んでましたよね。私も、この本、読んだ事があって。…ベストセラーかぁ。凄いなぁ」
 注がれる視線。痛い。そして熱い。耐えられなくなり、目を逸らして、上の広告を見上げる。
 私は、何を言ってるんだろう?彼女がこの本を読んでたのはもう一ヶ月も前の事だ。そんな時の事を今更言って、私が彼女をずっと見ていた事がばれてしまうじゃないか。きっと今彼女は、必死で考えてるんだろう。いつからストーカーにあっていたんだ、と。
 すると、彼女は笑った。いや、唇の両端が少し上がっただけで、笑ったのではないかもしれない。だが私には、笑ったように見えた。そしてそれは、初めて見る表情だった。
 「『月の見える夜に』」
初めて聞く声だった。
「この人の小説、好きなんです。あなたも?」
 形のいい唇は、確かにそう動き、それは私のために発せられた言葉だった。私は胸の中で何かがはじけるのを感じながら、こくっと頷いた。
293 名前:短編:電車の双り 投稿日:2003年05月20日(火)08時54分32秒

 「私は、安倍なつみ。すぐそこの、○○大学に行ってます。あなたは?」
「わ、私は――」

 耳に響く、電車の音。もう、私達の事など気にしてる人などいない。
 この場所、この時間、この瞬間。
 この空間は、私達だけのもの。二人だけの世界。

 「――私は、吉澤ひとみ。すぐそこの、高校行ってます」
 
 それが、私達の出会い。
 

 『月の見える夜に』の作中に書かれていた言葉を思い出す。

   あなたのこだわってる夢、優しい時間――
   全てを純粋な瞬間に変えて、新しい恋愛を――

   このまま未来まで、そんな時間を、あなたと育んで生きたい。

 今、あなたも同じ言葉を思い出してると空想して。

 私はまた、この電車に乗ります。


END
294 名前:りゅ〜ば 投稿日:2003年05月20日(火)09時02分43秒
少し諸事情があり、「なちよし 月 片想い」に加えて歌の「電車の二人」をテーマに短編書きました。
「電車の二人」の歌詞は結構意識しました。
というわけであまり時間かけずに書いてしまいました。お目汚しスマソ。

>>285 なちよしヲタさん
 レス有り難うございます。
 今度は一年後の話ですか…それ(゚∀゚)イイッ!!
 時間があれば書きたいです。

>>286-287
 保全有り難うございます。
 でも次はいつ書けるか分からないのでそろそろ倉庫いきしても(ry

黄板の方もなるべく早く更新します。こんな時に短編書いてスマソ。

では、本日の更新。
短編:電車の双り>>288-293
295 名前:名無し少年 投稿日:2003年05月20日(火)23時26分18秒
淡い…。
電車の中ってのにやられました。
密閉された空間の中、幾つもの車両の中でたくさんのドラマがありますよね。
誰かと誰かが喧嘩したり、誰かが倒れたり、誰かと誰かがキスしあったり、誰かが誰かに恋に落ちたり。
僕も学校から家へ帰るとき、電車で好きな人一緒に帰ってた日々を思い出し、勝手に切なくなりました(w
なんだか色々インスピレーションが湧きました。

そして、この物語の最後の一行を読んで、作者様はこの物語の続きを書くつもりだと確信しました!!
続きを勝手に何時までも待ち続けます(w
296 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月24日(火)02時01分03秒
ほぜん
297 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月26日(土)01時03分19秒
保守
298 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/14(日) 02:58
hozen
299 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/14(火) 00:58
ほぜん
300 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/04(木) 04:05
hozen

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