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インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板

Hello mate!

1 名前:りむす 投稿日:2002年10月09日(水)02時59分14秒
初めまして、りむすです。
短編をチョコチョコ書いていこうと思います。
もしかしたら、同じ舞台で何作か書くかもしれません。
最初は、紺野さん主役の学園物です。
2 名前:お弁当 投稿日:2002年10月09日(水)03時00分03秒
 外は今日も晴れています。
 降り注ぐ陽光の中を私は意気揚揚と歩きます。
 秋の空は高く、てっぺんが何処なのかまったく見当もつきません。

 今朝は珍しく早起きをしました。(普段はお母さんに起こしてもらうのですけど、今日
はちゃんと自分で起きました)
 宿題はしっかり昨日のうちに片付けてあります。
 じゃあ、何故早起きしたかって?
 ふふふ、実は……。

「お、あさ美ちゃんじゃーん」
「まこっちゃんっ!」
 不気味な笑みを浮かべている私の肩を、まこっちゃんが軽やかな足取りで駆けてきて叩
きました。
 まこっちゃんは私と同じ中等部二年です。クラスは違うのですが、家も近所で小さい頃
からの仲良しなのです。
3 名前:お弁当 投稿日:2002年10月09日(水)03時00分42秒
「ちょっと、にこにこしちゃってどうしたの?」
 まこっちゃんが肩の上で切りそろえた髪をなびかせながら、私の顔を覗き込みます。
 昔っからそう。私は、まこっちゃんに隠し事が出来ないのです。
「ははーん、石川さんねぇ?」
 にやにやした表情。
 きっと、私の頬は真っ赤に染まっているに違いありません。
 その頬をぷにぷにとつつきながら、まこっちゃんはずけずけと追求してきます。

「ええっ、お弁当!?」
 全てを話した私の耳に、まこっちゃんの大きな声が響きました。
 慌てて口をふさいでも、まこっちゃんは未だに何かもごもごと口走っています。
「声が大きいよっ」
 まこっちゃんは、何度も頷きながら、手を離せというジェスチャーをします。仕方なく
私は、まこっちゃんの口から手を離しました。
4 名前:お弁当 投稿日:2002年10月09日(水)03時01分20秒
 一呼吸置いて、まこっちゃんが笑顔を見せます。
「へー、やるじゃーん」
 誉められました。
 まこっちゃんが私を誉めるのは滅多にないことです。
 雨でも降るかと天を仰ぎましたが、視線の先は言うまでもなく青天井。雨は明日降るに
違いありません。間違いなく豪雨です。

 私が今朝早く起きたわけ。
 早起きは三文の得だから、などとおばあちゃんの知恵袋をおっぴろげてみたわけではあ
りません。
 お弁当を作ったのです。

 やっぱり愛しいあの人には手作りのお弁当を食べて欲しいわ、と思いながら、半日後に
は出るであろう満天の星空を遠く見上げました。
 またにやにやしてるー、などと宣うまこっちゃんは放置です。
5 名前:お弁当 投稿日:2002年10月09日(水)03時01分52秒
 しばらく歩いて、学校に到着。まこっちゃんとはここでお別れです。
 さばさばした性格で友達も多いまこっちゃんは、すぐに彼女のクラスメートの人たちに
持っていかれます。
 生まれてから小学校まですっと一緒。
 一年前、中学校に来て初めて私たちは別れ、まこっちゃんが友達に連れて行かれるのを
見たとき、私は前髪をおでこに張り付かせたまま、ギュッと唇を噛み締めました。
 口の中には、じんわりと鉄の味が広がっていって、ひどく不味かったのを記憶していま
す。
 寂しさの味でした。

 玄関から教室まで、私は一人で歩きます。
 友達がいないというわけではありませんが、それでも両手両足をつかまれ、地面に口付
けをさせられたまま引きずりまわされるほどの人気は、私にはないのです。
 そうなることを夢見たりもしましたが、以前まこっちゃんが同じような目にあって半べ
そをかいているのを目撃して以来、そんな気はさらさらなくなりました。
6 名前:お弁当 投稿日:2002年10月09日(水)03時03分03秒
 教室につけば、朝のホームルームが始まるまで読書の時間です。
 鞄からお気に入りの一冊を取り出し、栞の所までページをめくります。
 私はここで、読み耽るということをしません。時折視線を窓の外に向けたりしながら、
少し飽きているということをアピールします。
 これは真剣勝負。
 ほのぼのした雰囲気の私の奥がこれほどの熱を帯びていることを、誰が想像できるでし
ょう?

「あさ美ちゃん、なに読んでるのー?」
 来たッ!
 私の心の内で遠く喝采が聞こえます。
 言うなれば釣り。読書に飽きている、という餌に引っ掛かったクラスメートに、私はニ
コリと笑顔を見せて、口を開きました。
7 名前:お弁当 投稿日:2002年10月09日(水)03時03分36秒
「かなづちコンギョ。泳げないコンギョは、死ぬまで水面には上がれなくて、水底で口を
ぱくぱくしてるだけっていう、壮大なストーリーなの!」
 コブシを振りあげて力説する私の言葉に、クラスメートは、ほぉっと言って聴き入って
います。
 瞼は大きく開かれ、既にコブシ大はあります。

 高橋愛ちゃん。彼女のフルネームです。
 気の合う友達の一人で、読書に飽きた私に毎朝話し掛けてくれます。まさに入れ食いで
す。
8 名前:お弁当 投稿日:2002年10月09日(水)03時04分10秒
「そういえば、今日なんか機嫌よくない?」
 そんな彼女も、普段より上機嫌な私に気付いたようで、汗で張り付いた私の前髪を弄び
ながら質問を投げかけてきます。
 私は、迷わずその手を叩き落としました。
「わかる?」
 まこっちゃんで免疫のついていた私は、慌てることもなく冷静に対処します。
 真実を伝える前に、万が一に供えて口を封じる準備をしましたが、彼女の口は大きかっ
たので諦めました。
9 名前:お弁当 投稿日:2002年10月09日(水)03時04分45秒
「わかるよぉー。だって、いつもより口がパクパク言ってるしぃ」
 それは『かなづちコンギョ』の説明をしていたからだ、と言おうとして止めました。
 誰だって間違いを指摘されるのは気分のいいものではないのです。
 私の口からは代わりに、上機嫌な理由、というものが吐き出されました。

 それを聞いた愛ちゃんは、弁当箱の入った私の鞄を物欲しそうな目でじっと見詰めます。
 私は鞄を大きく動かしました。
 愛ちゃんの瞳が、それに続いてぐるっと動きます。
 ……。
「もしかして、欲しいの?」
「いやぁ、そんなことないんだげど」
 ぐぅ。
 愛ちゃんのお腹がなりました。
「……あはは」
10 名前:お弁当 投稿日:2002年10月09日(水)03時05分32秒
 苦笑いを浮かべあいながら、厳しい視線を交差させている私たちを、ドアを開ける音が
包みました。
 どうやら先生が来たみたい。
 それと共に愛ちゃんは去っていき、私の前には、彼女の残した舌打ちがいつまでも木霊
していました。後半の何回かは、腕時計の音でした。

 真面目な表情で前を向き、先生の話を聞く振りをしながら、私は昼休みに思いを馳せま
した。
 必死に早起きをして作ったお弁当。
 石川さんはどんな顔をして食べてくれるだろう。
 様々な先輩の顔が浮かんでは消え、その残像がいくつも重なり、私はため息をつきます。
 雲ひとつない空には相応しくないそのため息が、蛍光灯の所まで浮かんでいって、ゆら
ゆらと揺れました。

 いつまでも木霊する舌打ちと腕時計の音は、昼休みになるまで、私の耳から離れそうに
ありません。
11 名前:りひす 投稿日:2002年10月09日(水)03時09分09秒
りむすですと書いておいてなんですが、りひすに変更します。すみませんでした。
とりあえず、今日の更新はここまでです。
後、一回か二回で終わると思います。
12 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月10日(木)01時55分21秒
おもしろげ。期待。
13 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月10日(木)14時48分09秒
面白そうです!
続きが楽しみだ(w
14 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時29分42秒
 授業が終わるのはあっという間でした。
 上の空で授業を受けると言うのは楽しいものです。
 担任の飯田先生が中空に向け、なにやら怪しげな視線を送っていましたが(通称、目か
ら怪光線)、いつものことなのでさほど気にはなりませんでした。
 窓の外から漏れる陽射しが虹色に輝き、とても綺麗です。

 昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴ると同時に、私は勢いよく椅子から飛び上がりま
した。
 ガタリという音と共に、後ろの席から微かな呻き声が聞こえた気がします。
 教室の窓にかけられたカーテンが、微かに揺れました。
 きっと、風の音だったのでしょう。
15 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時30分15秒
 そうと決まれば、後はこの教室に思い残すものなどありません。
 すぐに鞄の中から弁当箱を取り出そうとします。
 しかしそこに、目的のものはありませんでした。

「え……」

 目の前が真っ暗になって、私の体から血の気が引いていきます。
「だーれだ」
「愛ちゃん」
 驚くほどあっさりと光が戻りました。
16 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時30分59秒
「ごめん、急いでるの……」
 私は、さも申し訳なさそうに言ってのけます。
 心のこもらない言葉でも言ったもん勝ち、が私の持論でした。
 そしてすぐ、弁当箱の捜索に戻ります。

「何を探してるのぉ」
 無視です。
 彼女は基本的に、困っている人を見ると、手を引いてあげる振りをしてそのまま離して
しまうという迷惑な癖がありました。
 彼女の目はキラキラと少女漫画の登場人物のように輝いています。
 正直ありえない、と思いました。
17 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時31分38秒
 しばらくそのまま放置していると、愛ちゃんはつまらなさそうに自分の席に戻りました。
 そして、私の持ってきた弁当箱の包みと同じ色の包みを開き、同じ形の弁当箱を開け、
同じ配置で置かれたタコさんウインナーを口に運び――

「って、おい!!」

 おっとりとした仮面の内側から必死に搾り出した鯨波が教室内に轟きます。
 それでも食に必死な愛ちゃんの後頭部めがけ、習っていた空手を辞めて以来初めてのグ
ーが飛びました。
18 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時32分19秒
 いつもとは景色の違う階段の踊り場。
 高等部の校舎で一人、私は息を大きく吐きます。
 手には弁当箱(食いかけ)
 予想外のタイムロスにも見舞われましたが、私は確かにここにいて、石川さんと同じ空
気を吸っています。

 私はゆっくりと、しかし確かに足を一歩進めました。
 永遠に続くと思われた闇が一瞬にしてひらけ、私の目に石川さんのクラスの扉が映りま
す。
 ドクリ、と一度大きな音が聞こえ、逆にそれが私を落ち着けました。
19 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時32分54秒
 扉に手をかけ一気にそのローラーを滑らせます。
 それはまるで鬨の声。私にとっては勝ち鬨に他なりません。
 意気揚揚と部屋の中に視線を這わせました。

「どした、紺野ー」
「あ……」

 目の前には飯田先生。
 よく見ると(よく見なくても)、そこは職員室。
 勢いよく開けた扉がその反動で戻ってきて、現実と書かれた室内を私の視界からフェー
ドアウトさせていきます。 
 なおもしつこく、どーしたの、と言いながら扉に手をかける飯田先生ごと、私は蓋をす
るようにさらに勢いをつけて扉を閉めてしまいました。
 現実と理想には、確かな線引きが必要なのです。
20 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時33分26秒
 私は今度こそ、石川さんの教室の前に立ちました。
 教室の前にいる生徒十人に聞いた結果、全ての人が石川さんはこのクラスだと言ってい
たので、間違いはなさそうです。
 むしろ、全員が石川さんがこのクラスだと知っていたことの方が驚きです。
 彼女の絶大な人気は、私のライバルを増やしてしまった模様でした。

 先程の失敗を教訓に、今度は奇襲を仕掛けることにしました。
 こっそりと扉を開けるのです。
 信じきることほど怖いものはありません。
 そろーりと教室の前に設置された扉に手をかけ、ゆっくりと引いていきます。
 後ろの扉が飽きっぱなしなことなど、目に入りません。
21 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時34分04秒
 扉を開けると、そのわずかな隙間から光がはじけ閃光となり、私の瞳を覆います。
 微かに覗いた瞼の先に、石川さんの姿が映りました。
 艶やかな黒髪、ほっそりとしたボディーライン、天を睨みつけるように尖ったそのアーゴ。
 全てが、これ以上ない確かさで、私の石川さんでした。

「石川さ……」

 しかし、私の声はそこで止まってしまいました。
 私の視線は、石川さんの右手に注がれます。
 彼女の右手に確かに握られたチョップスティックが、目の前にいる女性の口元に運ばれ
ていたのです。
22 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時34分38秒
「はい、あーんして」
「いやぁ、えっへっへ。あーん」

 知っている顔でした。
 確か、バレー部の、いつもかっけー吉澤さん。

「梨華ちゃーん。次ごとーにもそれやって」
「もう、しょうがないなぁ……」

 さらには、帰宅部で、いつも寝ていて、吉澤さんと親友なんだけど石川さんと出会って
しまったために彼女を取り合ってしまい、吉澤さんとの仲がしばしば険悪になり見ている
人の目をハラハラさせる後藤さんも横に控えていました。
 見事なまでのいしよしごまに、私は開いた口がふさがりません。
 正確に言うと開いた口はふさがるのですが、どうしてもパクパクしてしまうのです。
 多大な需要を誇るこの三者のコラボレーションに、私は抗う術を持ちませんでした。
23 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時35分28秒
 しばらくそのまま呆然と佇んでいると、石川さんと目が合いました。
 私はあくまで自然な動作で視線を逸らし、それに気付かない石川さんは、ゆっくりと私
の元へ近づいてきます。

「どーした、紺野?」
 少し照れたような、それでいてお姉さんぶった口調で私に声を掛けました。
 優しさに満ちた高音が、私の胸を疼かせます。
「ええと、あの……」
「ん?」
 不思議そうな彼女の瞳。右手に持った弁当箱(食いかけ)
 そして、高鳴るマイハート。
 私は、意を決しました。
24 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時35分59秒
「石川さんっ!」
「な、何?」
 私はしっかりと彼女の瞳を見据えます。
「こ、このお弁当」
 石川さんの視線が、私の右手に動きました。

「愛ちゃんに食べられちゃったんです。助けてください!」

「……え?」
 そう言った石川さんの瞳が、みるみるうちに怒りに染まっていきます。
「あの子、そんなことしたの!?」
 石川さんと愛ちゃんは、家がご近所。
 傍若無人な愛ちゃんも、幼馴染のおねーちゃんには頭が上がらないようなのです。
 ごめんなさい、愛ちゃん。
 これ以外、方法がなかったんです。
25 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時36分29秒
 しばらくして、石川さんの瞳は、申し訳なさそうな色に変わっていきました。
「ごめんね、紺野……。後できつく言っておくから」
「いえ、いいんです。どうしたらいいかわからなくなっただけですから……」
 そう言って、私は教室から駆け出しました。
 はるか後方から石川さんの声が聞こえた気がしましたが、1500メートルを5分台で
走る私には追いつけないようでした。
26 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時37分15秒
 一人ぼっちの屋上。
 私は、無言のままにお弁当を開けます。
 四個あったはずのタコさんウインナーが二つに減っていて、何故だか私はそれを愛しく
感じました。
 一つだけ口に運ぶと、それはとてもしょっぱくて、黙って食べた愛ちゃんの優しさを思
います。
 気付くと私の頬には涙。
 ああ、しょっぱいのは涙のせいなんだ、と気付いて、私は愛ちゃんへの前言を撤回しま
した。
27 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時37分53秒
「あさ美…ちゃん?」

 突然の声。
 空から降り注ぐ声に、私は上を見上げました。
「まこ…っちゃん……」
 彼女の顔は陰影で彩られ、思わず可愛いと思ってしまいました。
「どしたの?」
 彼女は努めて優しく言葉をかけます。
 必死に首を振る私に、彼女は黙って優しく微笑みました。

 私は、まこっちゃんに隠し事が出来ないのです。

「おいしいよ」
 まこっちゃんは、私を慰めるでもなく、最後のタコさんウインナーを口に運びました。
「あ…はは。タコさんウインナー大人気だね。次からはもっと多くしようかなぁ……」
 その言葉に、まこっちゃんはもう一度笑いました。
28 名前:お弁当 投稿日:2002年10月16日(水)14時38分27秒
 風が私の涙を拭います。
 二つ重なった影が、微かに揺れました。
 おいしそうにお弁当を口に運ぶまこっちゃんの横顔をひとしきり眺めた後、私は静かな
ため息をつきました。
 チラリと視線を送るまこっちゃんに、何でもないと首を振って見せます。

 私は知っています。
 まこっちゃんが、お母さんに作ってもらったお弁当をもう食べ終わったこと。
 私と比べて、そんなに多量のご飯を食べないこと。
 それでも笑顔を作って、おいしいよって言って食べてくれていること。

 私は、まこっちゃんの肩にもたれかかりました。

「何?」
「……なんでもない」

 太陽は緩やかに沈んでいきます。


 これは、私が初めてお弁当を作った日のお話。
 いつもとかわらない、ありふれた日常のお話です。
29 名前:りひす 投稿日:2002年10月16日(水)14時44分00秒
終わりましたー!
あとがきでも書こうかとワクワクしていたのですが、短い話なので断念しました。
というか、一週間開けるほどの物でもありませんでした。後悔。

>>12 さん
ありがとうございます。
新垣さんが出てきませんが、新垣のことを嫌いなわけではないです。
むしろ、愛しています。

>>13 さん
ありがとうございます。
短い話でしたが、楽しんでいただけたでしょうか?
本当は、もっとほのぼのした話が書きたかったのですが…。
30 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月17日(木)18時43分51秒
まこっちゃん優しい!
高橋の様子もおもしろかったですw
いしよしごまってのも(w
まだ色々短編があるのでしょうか?
お待ちしております!w
31 名前:12 投稿日:2002年10月27日(日)02時52分49秒
ごちそうさまでした(合掌)
このあとの、めくるめくこんまこたかに期待しています。
32 名前:りひす 投稿日:2002年11月25日(月)17時03分25秒
自己保全レス、かっこ悪い(ノд`)・゚・。

>>30 さん
短編、ネタだけは既に出来ております……。
すぐにでも書くはずが、なんやかんやで後回しに……。
登場人物変わってしまうやも知れませんが、その際はよろしくお願いします。

>>31 さん
おそまつさまでした(合掌)
こんまこたかにい頑張ります。
33 名前:りひす 投稿日:2002年12月30日(月)21時47分13秒
【激注】
心なしか色々な話と被っているやも知れません。
パクってはいないつもりです。
34 名前:おさるさん 投稿日:2002年12月30日(月)21時48分06秒
 授業が進む。
 お昼ご飯を食べ過ぎた私は、先生の必死な声も上の空で、茶色い机に突っ伏した。

 コン。
 コンコン。

 コンコン? あさ美ちゃん?
 微かに残る意識を隅の方から必死に引っ張り出して、睡魔に抗う。
 やっとの思いで瞳をこじ開けると、そこにはドアップで映し出された顔。

「授業中に寝てはいかんニィ」

 ……訂正。
 そこには、ドアップで映し出された、豆。
35 名前:おさるさん 投稿日:2002年12月30日(月)21時48分38秒
「いててて」
 授業が終わっても、私は机に突っ伏していた。
 おでこに出来た赤のしるしを必死に擦る。

「自業自得だニィ」
「ぐ……ッ」

 里沙ちゃんが絡んできた授業中。
 窓際の一番後ろの席が私の席。そして、廊下側の一番前の席が里沙ちゃんの席。
 教室の端から端まで歩いた里沙ちゃんに先生が気付かないわけも無く、怒りのチョーク
は一直線で私たちの元へ。
 綺麗な放物線を描いたそのチョークは、華麗なスウェーを見せた里沙ちゃんをすり抜け、
私のおでこにクリーンヒットしたのだった。
36 名前:おさるさん 投稿日:2002年12月30日(月)21時49分10秒
「おっとぉ、しわ発見ニィ!」
「痛いっ! 痛いっ!」
 しわ発見とのたまって、赤いあざの部分に右手親指をこすりつける。
 私は必死にその手を振り払った。

「授業中に寝てるから天罰が下ったんだニィ」
「……」
 相手をする気力もなくなり 再び机に突っ伏した。
 そんな私の肩に、小さな手のひらが添えられる。

「気を落とすなニィ」

 ……うあ。
 今度こそ私の意識は、闇へと呑み込まれていった。
37 名前:おさるさん 投稿日:2002年12月30日(月)21時50分00秒
「まこっちゃん、まこっちゃん」

 肩が揺すられる。
 その振動に、夢からの帰還を命じられた私は微かに目を開いた。
 そして、恐る恐る揺する人物を見上げる。

 私の脳裏に浮かぶのは、豆。

「まこっちゃん、起きて」
「加護、さん?」
 覚醒していく意識の中で、ようやく人物の照合に成功した。
 それは豆ではなく、クラスメイトの加護さん。
「いややなぁ、あいぼんでいいって」
「ああ、うん。あいぼん」
38 名前:おさるさん 投稿日:2002年12月30日(月)21時50分30秒
「じゃあ、いこっか」
「え、どこに?」
 私は思いっきり首を傾げる。
「どこって。あさ美ちゃんのところに決まっとるやん」
「う、うん」

 私は頷きながらも、もう一度首を傾げた。
 加護さ――あいぼんは、あさ美ちゃんとはそんなに仲が良くない。
 それなのに突然こんなことを言い出すなんて……。
 きっとどこかに頭でもぶつけたんだろうと勝手に納得し、私は今も赤くなっているであ
ろうおでこを擦った。
39 名前:おさるさん 投稿日:2002年12月30日(月)21時51分09秒
 あさ美ちゃんの教室に着くと、あさ美ちゃんはなにやら不思議な構えをしながら、ゆら
ゆらと揺れていた。
 なんだこいつ、と冷たい目で蔑むような視線を送らないこともなかったが、いい加減長
い付き合いということもあって、彼女のこういった行動には慣れている。

 あさ美ちゃんは小さい頃からの大の仲良しで、小学校の頃はいつも遊んでいて、登下校
だって一緒だった。
 それが、いつからだろう。
 あさ美ちゃんは私を避けるようになって、一緒に学校に行くこともなくなった。
 たまに一緒に行けても、玄関に辿り着くと、急によそよそしくなって私の元から離れて
いく。
40 名前:おさるさん 投稿日:2002年12月30日(月)21時52分04秒
 思考の旅から帰ってきても、あさ美ちゃんは未だにおかしな構えのままだった。
 そのまま視線を横に滑らせる。
「あさ美ちゃん、ずるい! ずるい!」
 あさ美ちゃんの友達の愛ちゃんが、文句を言いながらあさ美ちゃんの周りをぐるぐる回
っている。
 それに惑わされずに、あさ美ちゃんは常に愛ちゃんの正面に構える。

「ええと、なにやってるの?」
 思わず声が漏れた。
 驚いた顔で、あさ美ちゃんが振り返る。
 左ひざを折り曲げたまま宙に浮かせ、右足は爪先立ち。両腕を横に広げて手首を折りた
たむという奇妙なポーズのままで。
 それは、私に「カンフー」という格闘技を思い出させた。
 ……あさ美ちゃん。あなたが習っていたのは、空手でしょ?
41 名前:おさるさん 投稿日:2002年12月30日(月)21時52分39秒
「あさ美ちゃん、ずるいよう。空手は反則」
 いや、だから空手じゃないって。
「愛ちゃんが私のノートに落書きしたのが悪い」
「だってえー、それはあさ美ちゃんがお姉ちゃんに告げ口したのが悪い」
 お姉ちゃん、というのは高等部の石川梨華さん。
 私はあまり面識が無いのだけど、あさ美ちゃんの密かな想い人だったりする。

「私嘘はついてないもん」
「あ、開き直った!」
 走行してる間に、再び二人の世界に突入していく。
「まあまあ」
 すると、あいぼんが二人の間に止めに入った。
 そして、二人を交互に見渡し
「愛ちゃんが悪い。決定」
「なんでだよ!」
42 名前:おさるさん 投稿日:2002年12月30日(月)21時53分21秒
 数分後。
 いつのまにやら、争いの中心点は愛ちゃんとあいぼんに移っていた。
 少し疲れた様子で、あさ美ちゃんが私の元へと寄ってくる。
「疲れた……」
 心底疲れた様子で溜め息をついた。
 そんな節目がちな彼女がとても愛らしく見えて、私は思わず微笑んだ。
 そんな私の耳に、再び諍いの声。

「大体あんたは、いっつもお姉ちゃんお姉ちゃんって梨華ちゃんにべたべたしすぎなんや!」
「あっれー、あいぼん、もしかして妬いてるのー?」
「そんなことあらへん!」
「ふーん、なるほどお。あいぼんがお姉ちゃんをねぇ」
「……」

 事態はいつの間にやら、おかしな方向へと流れ出していた。
43 名前:おさるさん 投稿日:2002年12月30日(月)21時54分17秒
「あの頃が懐かしいわあ」
 そう言って、愛ちゃんがニヤニヤと笑い出す。
「な…なんなん?」
 怯えるあいぼんを前に、背中から一冊の冊子を取り出す。
 表紙には「卒業文集」の文字。

「六年一組。加護亜依。タイトル『恋愛ってなあに?』」
「や……やめっ!」
 あいぼんが必死に飛び掛るけど、背が高くすらりと手足の長い愛ちゃんから取り返すこ
とは出来ない。
「『チョコより甘いって 本当なの?』だって。プッ」
「な……っ!」
 屈辱に顔を歪ませるあいぼんとは対照的に、愛ちゃんは教室を出て、廊下を疾走しなが
ら詩の朗読を続けた。
44 名前:おさるさん 投稿日:2002年12月30日(月)21時55分14秒
 声が聞こえなくなるくらいに愛ちゃんが遠くへ行ったところで、あいぼんが溜め息をつ
いた。
「まこっちゃん、かえろっか」
 私は何も言えずに、ただ頷いた。
「あさ美ちゃんも帰ろ?」
 私はあさ美ちゃんに声を掛ける。
 うん、と頷きかけた後、あいぼんの方をチラリと見て、首をブンブンと横に振った。あ
いぼんは気付いていないようだった。
「ごめん、今日は用事があるから」
 寂しげにそう言うと、愛ちゃんと同じように教室から出て行った。
45 名前:おさるさん 投稿日:2002年12月30日(月)21時56分03秒
「……なんだよ」
 私はこっそりと呟いた。
 どうやらあいぼんに聞こえたらしく、私のほうに顔を向けたから、私は何でもないと首
を振ってやった。

 教室から出ると、窓から秋の低い空が見えた。
 私たちは二人が駆けていったのと逆の方向へと歩き出す。
 放課後のざわめきの向こうにあさ美ちゃんの声が聞こえた気がした。少しだけ、額の傷
が疼いた。
46 名前:りひす 投稿日:2002年12月30日(月)21時57分09秒
今日の更新は終了です。
まだ続いたりします。
47 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年12月30日(月)22時06分09秒
再開してたんですね~!
この作品好きでした、頑張って下さい
48 名前:12 投稿日:2003年01月03日(金)10時46分40秒
「お姉ちゃんへの告げ口」って、お弁当食ったことだったんですねー…

正直間空き過ぎてわかりませんですた。
49 名前:おさるさん 投稿日:2003年01月04日(土)17時25分31秒
「あー、またやってもうた」
 隣りであいぼんが悔しそうに俯きながら呟く。
 私はというと、廊下に駆け出していった愛ちゃんの言葉が脳裏に蘇ってきて、思わず吹
き出してしまった。
「……なに?」
「なんでもないなんでもない」
 慌てて首を振って見せると、あいぼんは再び俯く。
 なんとなく声を掛けづらい雰囲気だったから、私も黙って歩いた。

「なあ」
「何?」
「愛ちゃんって、やっぱり梨華ちゃんのこと好きなんかなぁ?」
「え?」
「やっぱそうかぁ……」
「……何が?」
50 名前:おさるさん 投稿日:2003年01月04日(土)17時26分06秒
 あいぼんは、一人で納得したように頷くと、そこで言葉を切った。
 さっきまでと同じように二人、とぼとぼと歩みを進める。
「どうしたの、あいぼん」
 たまらずに声を掛ける。
「ん?」
「愛ちゃんがどうしたの?」
「ああ」
 あいぼんは、フッっと笑って空を見上げた。
 西日に照らされたあいぼんの髪がフワリと舞って、その額を煌煌と輝かせた。
 笑いを堪えきれない口元がピクピクと痙攣するのを必死で隠しながら、あいぼんの次の
言葉を待つ。
51 名前:おさるさん 投稿日:2003年01月04日(土)17時27分00秒
「愛ちゃんにうちは、似合わんのかな……」
「そんなことないよ! ……って、あれ?」
 あいぼんの言葉にわざとらしく否定の言葉を被せながら、私はとあることに気付いた。
 あいぼんの口から出たのは、石川さんではなく、愛ちゃん。
 ってことは、あれ?

「あいぼんが好きなのって、もしかして……」
「――フッ」
 あいぼんは私に、ごく優しい微笑みを見せる。
 黒目がちの瞳を細くして、明後日先を見つめる。
「恋って、なんやろ」
 私を視界にいれずにそう呟くと、もう一度柔らかく微笑んだ。
52 名前:りひす 投稿日:2003年01月04日(土)17時32分29秒
短い更新でごめんなさい。
もしかしたら、次は少し更新間隔あいてしまうかもしれません。(二、三週間くらい)
本当にごめんなさい。

>>47 さん
ありがとうありがとう!
読者の少なそうなこの話に食いついてきてくれて本当に(●´ー`●)ありがとう。
前作とは違いますがよろしくお願いします。

>>48 さん
更新遅くてごめんよほ(ノд`)・゚・。
その解釈であってます。他の所はもしかしたら読ませきれていないかもしれません。
今後頑張ります。
53 名前:りゅ~ば 投稿日:2003年01月08日(水)02時59分33秒
面白いです!可愛い世界観が何ともいえないです。
豆タンは次いつ出てくるのかな豆タン
54 名前:りひす 投稿日:2003年02月06日(木)14時40分31秒
自己保全
55 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月11日(火)14時52分22秒
正直最高です。1人でにやけてしまいました。
若手中心なのかな?続き楽しみにしてます。
56 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月15日(火)23時08分03秒
hozen

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