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専属ケーキ屋さん
- 1 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月15日(火)11時36分15秒
- 青板で『わたしの望み。』と言うのを書いてた、クロイツと申します。
今回はここで、『専属ケーキ屋さん』を書かせて頂きたいと思います。
いしよしです。
他のカップリングも出す予定ですが、とりあえずベースはいしよしです。
どうぞ、よろしくお願いします♪
- 2 名前:プロローグ 投稿日:2002年10月15日(火)11時36分58秒
- 家の目の前に、ケーキ屋さんが開店した。
「…ケーキ屋さんっ!!」
車の窓におでこをくっつけて、よーく見る。
『Tochter.』
そう書かれた看板が掲げられた、そのお店。
今まで聞いた事も見た事もない名前の、そのお店。
どんなケーキが置いてあるんだろう?
どんな人が売ってるんだろう?
彼女は空想し、心をめぐらせる。
あのケーキ屋さんのケーキが食べたい!!
…全ては、そこから始まった。
- 3 名前:第一話 投稿日:2002年10月15日(火)11時37分33秒
石川梨華。
世界屈指の大金持ち・石川家の次女に生まれ、何不自由なく育った本物のお嬢様だ。
世間では不況だなんだと騒がれているが、石川家には何の損害もない。その不況でさえ
も手玉に取り、稼ぎまくっている。多少景気が悪くなった所で、石川家の屋台骨には小さ
な傷すらつかないのだ。
そんな、いわば最強の大金持ち・石川家。家系もとっても由緒正しく、家系図を遡れば
平安時代の貴族にまで行き着く。
そんな最強の大金持ちの家柄に生まれ育った梨華。
学校への送り迎えに使われているのは、彼女専用のベンツ。もちろん運転手も彼女専用。
自宅は超高級住宅地にそびえ立つ、城のような豪邸。その豪邸には、百人近い使用人が
住み込みで働いている。
この豪邸の他にも、世界各地に城のような別荘を保有しているのだが…一応、ココが石
川家の『本邸』となっている。
その本邸の玄関先で…梨華は財布を握り締めて立っていた。
その周囲には、たくさんの使用人達が群がっている。皆、とても心配そうな表情だ。
そんな使用人達の間から、スーツに身をかためた一人の少女が姿を見せる。
女執事の、後藤真希である。
- 4 名前:第一話 投稿日:2002年10月15日(火)11時38分03秒
- 高校二年生の梨華よりも一つ年下な彼女だが、代々石川家に仕える執事の家系に生まれ、
幼い頃から執事の勉強と梨華の世話をして来ている為、もう立派な女執事に成長したのだ。
「…梨華お嬢様…。」
ポーカーフェイスに隠しきれない心配を、ちょっとだけ表に出す。
「…お金の使い方は、ちゃんとわかりましたね?
向こうが提示した額を、きっちり払わなくても良いんですよ?おつりをもらえば良いん
ですからね?」
「わ、わかってる。真希がちゃんと教えてくれたし。」
財布を握り締める手に、もっと力がこもる。
「それじゃあ…行って来ます!」
梨華は意を決して、重い玄関の扉を一人で開いて…出かけて行った。
その後ろ姿を見て…真希はつぶやく。
「…大丈夫かなぁ。今まで一人で出かけた事も、カード以外で買い物した事も、一人で店
員と話した事もないのに…。
でもまぁ、行くのは旦那様が梨華お嬢様の為に内緒で用意したお店だから…大丈夫だろ
うけど…。」
- 5 名前:第一話 投稿日:2002年10月15日(火)11時39分12秒
梨華が豪邸の玄関先で財布を握り締めていたのと、ちょうど同時刻。
こちらは、石川家の本邸の目の前で本日開店したばかりの、ケーキ屋『Tochter.』。
黒と白の二色で統一された内装に、ケースの中の色取り取りのケーキ達。その絶妙のア
ンバランスさが、とてもセンス良く感じる店内。
「「「・・・・・・。」」」
そんなセンスの良い店内で、ぼぉ〜っとたたずむ少女が三人。
「…暇だね。」
最初に口を開いたのは、一番背の高い少女。
彼女の名は、吉澤ひとみ。
白いシャツに、黒のベスト・ネクタイ・パンツ・前掛けと言うギャルソン姿をしている。
パッと見だと中学生〜高校生くらいの男子に見えるが、服の胸元を控えめに盛り上げてい
る胸が、彼女が女である事を証明してる。
「…仕方ないれすよ。ココ、高級住宅街れすからね。人通りもめったにないれすし。」
次に口を開いたのは、口元から八重歯をのぞかせている少女。
彼女の名は、辻希美。
彼女が着ているのは、すそがふわっと開いた膝丈の黒いワンピースに、白いフリル付き
のエプロン…つまり、メイド服。ご丁寧に髪留めまでしている。
- 6 名前:第一話 投稿日:2002年10月15日(火)11時39分46秒
- 「ビラ作りましょうか?この周辺のお宅のポストに入れる為の。」
最後に口を開いたのは、希美と同じコスチュームに身を包んだ少女。
彼女の名は、紺野あさ美。
そのあさ美の言葉に、ひとみと希美はため息をつく。
「…あさ美ぃ…この店は『金儲け』の為に作られたんじゃないんだってば。」
「そーれす。『宣伝は最低限。常連客以外は作らないように、ひっそりと営業』って条件、
出されたじゃないれすか。」
「あっ!そうでしたね。ごめんなさい。」
あさ美がぺこっと頭を下げる。
「…でもまぁ、売り上げの心配しなくて済むのは楽だよなぁ。」
「そうれすね。お客さんは…例のお嬢様が来てくれればそれで良いんれすから。暇れすけ
ど、でもそのおかげで、もうしばらくはひもじい思いをしなくて済むし。」
「…それに…こんな形だけど、なつみ姉さんの夢だったケーキ屋さんが開けましたからね。」
三人同時に、奥の厨房へとつながっている扉を見てうなずく。
と、そこに。
「…あ!門からお嬢様が出て来たのれす!」
希美の言葉に、ひとみとあさ美はたたずまいを直す。
- 7 名前:第一話 投稿日:2002年10月15日(火)11時40分17秒
がーっ
「「「いらっしゃいませ。」」」
自動ドアが開き、彼女たちのお客が入って来た。
石川梨華だ。
梨華は不安そうな表情で入って来て、レジにいるひとみに言った。
「あの…。」
緊張しているらしく、眉毛がハの字になっている。声もちょっと震えている。
希美とあさ美は目配せし合い、笑顔を浮かべたまま黙った。
焦らせては、絶対にいけない。落ち着かせて、最低限の手助けをして…でも、手を出し
過ぎないように気をつけて、このお嬢様に『一人でお買い物』をさせなくては。
それができなきゃ、この店の存在意義がなくなってしまう。
希美とあさ美が、ちらりとひとみを見る。ひとみはこくっと頷いて、俯いている梨華に
言った。
「どのようなケーキを、お求めなんでしょうか?」
できる限り、優しい声で。怖がらせないように。
すると梨華は、その優しい声に安心したのか…ゆっくりと顔を上げる。
「…タルト、ありますか?」
- 8 名前:第一話 投稿日:2002年10月15日(火)11時40分50秒
- 「はい。本日、タルトは苺と洋梨と生チョコレートの三種類ございます。」
「そ、それじゃあ…苺のタルトと洋梨のタルトを二つずつ。それから生チョコレートのタ
ルトを一つ下さい。」
「かしこまりました。少々お待ち下さい。」
そう言うと同時に、希美とあさ美がショーケースを開ける。そしてひとみはレジを叩く。
「苺のタルトが二点。洋梨のタルトが二点。生チョコレートのタルトが一点の合計五点で、
1430円になります。」
梨華は慌てて、財布を開ける。だけど、焦らせてはいけない。希美とあさ美はできるだけ
ゆっくりと手を動かし、包装する。
慣れない手付きで札と小銭を出して、トレーに置く。
全部出し終えた時、希美とあさ美の作業も終わった。
「こちら、商品となります。…1430円、ちょうどお預かりします。」
そのひとみの言葉を聞いて、梨華はほっとしたような顔をする。
そして、商品を受け取ると…極上の微笑を浮かべた。
(…可愛い…。)
その笑顔を見て、ひとみの心に何かが刺さった。
そんなひとみの心中も知らず、梨華はぺこっと頭を下げる。
「「「ありがとうございました〜。」」」
店から出て行く梨華の後姿に、そう声をかける。
- 9 名前:第一話 投稿日:2002年10月15日(火)11時41分21秒
梨華の姿が、豪邸の門の中に消えたのを確認してから…三人同時にため息をつく。
「…成功、ですかね。」
「…成功、れすよ。」
「・・・・・・。」
「しっかし、本当にいたんですね!!初めて一人で買い物する、高校二年生!てゆーかア
レ、お財布持ったのも初めてって感じでしたよね!!」
「石川家からもらったデータだと、梨華お嬢様は一人で外出した事もないんだそーれすよ!
すごいれすね〜。今まではお気に入りの店のパティシエやらデザイナーやらを家に呼んで、
その場で作らせてたんだそーれす。超金持ち〜!!」
「・・・・・・。」
「お嬢様の『お買い物レッスン』の為に、ケーキ屋をひとつぽ〜んっと作っちゃうし…やっ
ぱ世界的な大金持ちってすごいです。」
「スケールでか過ぎれすよね。」
「・・・・・・。」
希美とあさ美の会話は、ひとみには聞こえていなかった。
ひとみの頭の中にあるのは、さっきのお嬢様の事。
- 10 名前:第一話 投稿日:2002年10月15日(火)11時41分52秒
店に来た時の、あの不安そうな表情。
注文する時の、あの緊張で震えてた高い声。
財布からお金を出す時の、必死そうな顔。
そして、ケーキを受け取った時の…あの笑顔。
思い出すだけで、心臓が跳ねる。
ひとみはしばらく、現実に戻れなかった。
- 11 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月15日(火)11時42分45秒
- こんな感じで、毎回一話ずつ進んで行こうかと思います。
未熟者ですが、どうぞよろしくお願いします!!
- 12 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月15日(火)13時31分06秒
- お、おもしろい…
設定がすごくて、かなり楽しい。(w
楽しみにしています、頑張ってください。
- 13 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月15日(火)20時50分47秒
- クロイツさんの新作だぁ!
向こうのも読んでましたw
設定なんかいいですね♪
他のカップリングも何があるのか楽しみです(^^)
- 14 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月15日(火)21時04分22秒
- (0^〜^)<おっ、お嬢様ベーグルはいかがでしょうか?
( ^▽^)<ひぇっ! ひっ、ひとつ、ください。
@ノハ@
( `д´)<よっすぃ〜、何、顔赤してんねん
前スレから、くっついて来ましたよ!
今からわくわくで〜す。
- 15 名前:あおのり 投稿日:2002年10月16日(水)00時37分21秒
- 初めてのお買い物by梨華お嬢様編…設定面白すぎる。
あんたはアラブの石油王かい!と突っ込み3万回
あー!それでお肌の色がくろ…ボクッ(撲殺
- 16 名前:第二話 投稿日:2002年10月16日(水)17時12分29秒
「だだいまぁっ!!」
「「「「「おかえりなさいませっ!!!」」」」」
梨華が頬を赤くしながら玄関の扉を開けると、たくさんの使用人達が玄関先で待機してい
た。全員、梨華が出かける際に、梨華の周囲に群がっていた者達だ。
全員一様に、心配そうな表情をしている。
そんな中でただ一人、笑みを浮かべている者が、一歩前に出た。
男物のスーツに身を包んだ、若き女執事…真希である。
「おかえりなさいませ、梨華お嬢様。」
「み、みんな待っててくれたの!?ここで!?」
「ええ。心配しておりました。」
「…大丈夫なのにぃ。」
「それでも心配してしまうのが、親心と言うものですよ。
現在アメリカ支社にいらっしゃる旦那様と、イギリスの別荘にいらしてる奥様からにも、
梨華お嬢様の『初めてのお買い物』の報告をしたのですが…先ほどから度々お電話やメー
ルが来てます。」
プリントアウトされたメールや、通話内容をメモした紙を渡されて、梨華は頬を膨らます。
「赤ちゃんじゃないんだからっ!」
- 17 名前:第二話 投稿日:2002年10月16日(水)17時13分01秒
- 「ですから、親と言うのはそう言うものです。
…ところで、梨華お嬢様。ずいぶんたくさん買われたんですね。」
梨華の持っている大きな箱を見て、真希は言う。
すると梨華は、ふわんっと笑った。
「久しぶりに、真里お姉様と亜依と里沙と…それから真希とお茶会を開こうかと思って。」
「え?私?」
「そう。…誰か、真里お姉様と亜依と里沙を呼んで来て!それから、五人分のお茶の用意
をしてください。」
かしこまりました、と言う声が聞こえると、珍しく驚いた顔をしている真希の手を取る。
そして、『戦利品』のケーキを使用人の内の一人に渡して、真希を引っ張ってダイニン
グへと移動した。
- 18 名前:第二話 投稿日:2002年10月16日(水)17時13分34秒
石川家の四姉妹。
上から順に、真里(大学一年)・梨華(高校二年)・亜依(中学二年)・里沙(中学一
年)。
ケーキ屋『Tochter.』の面々は、その一人一人の顔写真を見ていた。
「…四人姉妹かぁ。ウチらと一緒だね。」
ひとみが言うと、希美はチチチっと舌を鳴らした。
「のの達とは違うのれす。らって、のの達は全員おかーさんが違うのれす。
おとーさんは同じれすけど。」
「ののぉ…寂しい事言うなよぉ。」
ひとみは希美に抱きついて、わしわしと頭を撫でる。
すると、厨房に続く扉が開いて…コック服姿の女性が登場。
彼女の名は、安倍なつみ。
なつみの目には、涙が溜まっていた。
「…そうだべ、のの。」
「な、なつみおねーちゃん…。」
希美は気まずそうに、目線を泳がせる。そんな希美を、なつみはひとみから受け取り、抱
きしめる。
- 19 名前:第二話 投稿日:2002年10月16日(水)17時14分06秒
- 「母親違うけど、なっちはみんなの事を本当の姉妹だと思ってるよ。…血は半分しか繋がっ
てないけど…でも、それ以上に強い『絆』で結ばれてると思ってるべさ。」
「…ごめんなのれす…。」
希美が言うと、あさ美もなつみに甘え始める。
そんな中、ひとみは四枚の写真の中から一枚を手に取る。
梨華の写真だ。
幸せそうに微笑む梨華。
胸が高鳴るのを覚えて、ひとみは首をかしげる。
「…なんで?」
どきどき言い続けている自分の心臓に、そう問いかけてみても…心臓はどきどき言ってるだ
けで、何も答えてはくれないのだった。
- 20 名前:第二話 投稿日:2002年10月16日(水)17時14分38秒
「久しぶりだね。五人集まってお茶なんて。…ああ、真希。そんな事しなくて良いから、
席に着いて。」
長女・真里に言われて、四人分の紅茶を淹れていた真希は笑顔を返す。
「真里お嬢様。それはできません。私は執事ですから。」
「そんなのカンケーないよ、真希ちゃん。」
「そうですよ。前みたいに一緒にお茶しましょうよ、真希さん。」
亜依と里沙にもそう言われ、さすがに苦笑する。
「そうよ、真希。…それに、カップの数が一つ足りないわよ?」
「…ですから、私は執事で…」
「それ以前に、一緒に育った姉妹みたいなものじゃない。」
真里は使用人を一人呼んで、もう一人分のお茶の用意をさせる。そして亜依と里沙は強引に
真希を席に着かせる。さらに梨華が、真希の分のタルトを差し出す。
そこまでされて、真希はようやく諦めた。
「…仕方ないですね。今日だけですよ?」
亜依と里沙が手を取り合って喜ぶ。
- 21 名前:第二話 投稿日:2002年10月16日(水)17時15分11秒
- 「…しっかし、梨華。家の目の前のお店とは言え…よく一人で買いに行ったねぇ。」
「えへへ♪」
右隣に座る真里に頭を撫でてもらって、梨華ははにかみながら微笑んだ。
「それにこのタルト、すっごく美味しいよ〜。ねえ、梨華お姉様!どんなお店だったの!?」
亜依が身を乗り出す。
「すっごく素敵なお店だったな。白と黒で統一されてて…それに、店員さんが素敵だったの!」
その言葉に、真希は心の中だけで反応する。
あの店は、梨華達の父親が『梨華の初めてのお買い物用』にわざわざ作った店。無論、梨
華はそんな事は知らないが。
だから、どんな対応をされたのか等はとても気になる。
万が一、失礼な振る舞いがあったりしたら、即刻首を切らなくてはならない。
そして、その見極めをするのは真希の仕事。
「…どんな店員さんだったんですか?」
探るような心を押し隠し、とても軽い感じで尋ねる真希。若くともプロの執事だからこそで
きる技だ。梨華は気付かず、楽しそうに続ける。
「あのねっ、亜依や里沙と同い年くらいの可愛い店員さんと…あと、真希みたいな人がいた!」
- 22 名前:第二話 投稿日:2002年10月16日(水)17時15分44秒
- 「…私?」
「そう!!男装の麗人!!
真希よりも男っぽい人だったけど…アレは絶対女の人!!
すっごく優しくて、かっこよくって…。あの人だったからわたし、ちゃんとお買い物でき
たの!」
亜依と里沙は興味津々、真里は優しく微笑んでいる。
「声も、ちょっと低めの優しい声で…」
興奮気味に続ける梨華に、微笑んで相槌をうちながら…真希は、すごく複雑な気分に襲われ
ていた。
この、一番手のかかった…一番愛しいお嬢様。
そのお嬢様の口から語られているその店員に…真希は自分の居場所を盗られてしまうよう
な予感がしているのだ。
怒りと嫉妬を押し隠しながら、真希は必死に笑顔を浮かべていたのだった。
- 23 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月16日(水)17時16分21秒
第二話でっす!!
甘やかされまくり梨華ちゃんです(笑)。
>>>12名無し読者様
ありがとうございまっす♪
面白いだなんて…うれしいです!!頑張りますね!!
>>>13名無し読者様
引き続き、読んで下さってるんですか〜♪ありがとうございます!!
設定、凝りました!!設定負けしないよーに頑張りますね!!
>ひとみんこ様
ををっ!!こちらも読んでくださいますかっ!!ありがとうございます!!
こっちもテンション高く飛ばしてまいります!!どうぞよろしくお願いします♪
>あおのり様
アラブの石油王…確かにそんな感じ(笑)。
お肌の色も(以下略)
がんばりますので、どうぞよろしく!!
- 24 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年10月16日(水)22時12分10秒
- こんばんは。
えっと新作も面白いです。
こちらも楽しく読ませていただいてます。
テクニックを盗まなくては... ( ..)φメモメモ
更新を楽しみにしています。
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月17日(木)00時14分05秒
- 全然違うけどおぼっちゃまくん思い出した。
設定が楽しいですね。
ケーキ屋店員のメンツがデ(ry と食い過(ry
- 26 名前:キャンドル 投稿日:2002年10月17日(木)09時26分03秒
- はじめまして。
楽しく読ませていただいております。
期待しているCPがあったんですが、どうやら難しい感じになりましたね。
- 27 名前:第三話 投稿日:2002年10月17日(木)16時13分25秒
あの、久しぶりに五人のお茶会を開いた日から…梨華は毎日『Tochter.』に通い
つめていた。
最初は、ケーキに魅了されていた。
今まで食べた、どのお店のケーキよりも美味しい。
そう言っているだけだった。
確かに、『Tochter.』のケーキは美味しい。
高級感溢れる味の中に、なんとも言えない『暖かさ』を感じられる。まるで作っている人
間の人間性がそのまま出ているような味。
梨華以外にも常連が出来てしまって、あのケーキの味を独り占めできなくなってしまった
のが悔しいとも言っていた。
それが、最近少し変わった。
ケーキの他に、店員の事もほめるようになった。
そして、その店員の胸の名札に書いてある『ヨシザワ』と言う名前。
それが、頻繁に登場するようになった。
梨華が初めて買い物をした時に相手をしてくれた店員だからだろう。
そう思って、真希は梨華が『Tochter.』に通うのを見ても何とも思わなかった。
…いや、何か思うのを意識的に避けていただけかも知れない。考えたくなかっただけかも
知れない。
- 28 名前:第三話 投稿日:2002年10月17日(木)16時13分55秒
- そんな真希に、ある日梨華は言った。
「…ねえ、真希。聞いて。わたし…あの『吉澤さん』って言う店員さんの事…好きになっちゃっ
たみたいなの…。」
頬をピンクに染め、潤んだ瞳で。
「え…!?」
真希の心を、激しい衝撃が襲う。
だけど、彼女は執事。いつでもどんな状況でも、感情を表に出す事は許されていない。
「…そ…そうですか…。」
おちつけ、と自分に言い聞かせる。
「…ですが、梨華お嬢様。その店員の方の事、あまり知らないんでしょう?」
「うん。名前も…『吉澤』って言う苗字しか知らないし、お会計の時の短い会話しかした
事ないし…どんな人なのかも全然わからない…。」
「それに、相手は女の方でしょう?」
「うん…。
でもね、わたし…あの人の事すごく好きなの。
もっともっとあの人の事知りたいし、わたしの事を知ってもらいたい…。
あの人の事を考えると…胸がきゅんってなるの。コレって、恋よね…。」
- 29 名前:第三話 投稿日:2002年10月17日(木)16時14分28秒
- 「・・・・・・。」
真希の目の前が、暗くなって行く。
「…ねえ、真希。わたし、どうしたら良いのかしら?」
「・・・・・・。」
(それを訊くの!?この私に!?)
ずっとずっと、好きだった。
小さな頃から見守って来た、本当に本当に手のかかるお嬢様。
自分が男に生まれなかった事を…対等の身分に生まれなかった事を、恨まなかった日は
ない。
想いを告げる気なんか、なかった。
いつか梨華は、身分に見合う男と結婚するだろう。その時にはきっぱり諦める。
だけど、その日までは…その日までは、自分が一番近くにいたい。
そう言う想いを抱き続けて来た。
こうやって相談して来ると言う事は、やっぱり真希が一番信頼できると思っているのだ
ろう。
だけど…真希には辛過ぎた。
- 30 名前:第三話 投稿日:2002年10月17日(木)16時14分58秒
- 黙りこくるしかできない真希に、梨華は心配そうな表情になる。
「…真希?どうかしたの?」
その不安そうな声で、我に返る。
職務を忘れては、いけない。
プロとしての責任感とプライドを総動員して、笑顔を作る。
「…おめでとうございます。梨華お嬢様の初恋ですね。
まず、相手の事を何も知らないのなら、知れば良いんです。」
真希の言葉に、梨華は安心したような微笑を浮かべた。
その笑顔も、真希の心を痛めつける。
「…私が調べ上げても良いのですが…それは、やめておいた方が良いでしょうね。勇気を
出して、梨華お嬢様自身でお尋ねになったらいかがでしょう?」
声が、震えないように。
泣き出してしまわないように。
- 31 名前:第三話 投稿日:2002年10月17日(木)16時15分31秒
- そんな真希の心中も知らず、梨華は極上の微笑みを浮かべる。
「うんっ!!ありがとう、真希!!わたし、頑張る!!
…本当は、真希にも打ち明けるの怖かったんだ…。『女同士なんて!』って反対された
らどうしようって思って…。」
そう言って反対しよう、とも思った。
だけど…そんな自分の想いまで否定するような事は、真希にはできない。
「思い切って打ち明けて、本当に良かった!」
「…恐れ入ります。
あ!梨華お嬢様、家庭教師のお時間が近付いてますよ?早くお部屋にお戻り下さい。」
「はーいっ!!」
走り去る梨華の後姿を見ながら…真希は、一粒だけ涙を流す事を自分に許した。
一粒だけだ。
それ以上流したらきっと、涙は止まらなくなってしまうから。
- 32 名前:第三話 投稿日:2002年10月17日(木)16時16分10秒
初恋は実らない。
それを石川家の中で一番最初に経験したのは、亜依だろう。
亜依の初恋の相手は、真希だった。
だけど、去年の冬…想いを告げる事なく亜依は失恋した。
真希が肌身離さず持っている懐中時計の、文字盤の裏側。そこにひっそりと隠してあ
る、梨華の写真を見てしまったのだ。
もう涙が出なくなるんじゃないか?と思うくらいに泣いた。そして、その後三ヶ月間
は梨華と口をきかなかった。
(…若かったなぁ…。)
亜依はしみじみとそう思う。
口をきかなくなって三ヶ月経った時、梨華は泣きながら亜依に言った。
『あ、亜依は…おねーちゃんの事、嫌いになっちゃったのぉ!?』
ぼろぼろに泣き崩れる次姉を見て、亜依は思った。
梨華自身ではなく、『真希の心を独り占めしている梨華』が嫌いなのだ。
…悪いのは、諦めちゃった自分じゃん。
そう考えて、吹っ切れた。
諦めなければ良かったのだ。梨華が好きなのがわかっても、『いつか振り向かせてみ
せるっ!!』と頑張れば良かったのだ。
それがわかった時、亜依は別の人に恋をした。
- 33 名前:第三話 投稿日:2002年10月17日(木)16時16分46秒
「あー!!おばちゃんっ!!」
「何ィ!?」
おばちゃんこと、保田圭の背後から抱きつく。抱きつく直前、大きくジャンプしている
ので、圭は亜依をおんぶしているような体勢となった。
日本最高の偏差値を誇る国立大学に通う彼女は、今年の春から梨華の家庭教師をして
いる。
「…亜依お嬢様。アタシ、まだ二十歳でしてよ?」
「じゅーぶんおばちゃんだって。」
がっくりうなだれる保田の背中で、亜依は頬をピンクに染めていた。
「ねーねー、遊ぼう?」
「あのねー、アタシは仕事しに来たの!遊びに来たんじゃないの!」
「いーじゃん。梨華お姉様だって、勉強よか遊ぶ方が好きだよ?」
「そーゆー問題じゃないのっ!もー、離しなさいっ!」
「ちぇ〜。」
亜依が離れると、圭はため息と共にくきくきと肩を鳴らす。
- 34 名前:第三話 投稿日:2002年10月17日(木)16時17分16秒
- 「…やっぱおばちゃんじゃん。」
「やかましいっ!この小娘っ!!」
亜依は、ぴゅーっと走り去る。圭には背を向けているから見えないその顔は、耳まで真っ
赤。
自室の扉をばたんっと閉めて、深呼吸。
顔の熱は、しばらく取れそうにない。
「…はやく、高校生になりたいなぁ…。」
そうすれば、自分も圭に勉強を教えてもらえる。
幼稚園から大学院までエスカレーター式に上がれるお嬢様学校に通う亜依は、受験生
にはなれない。
だから、高校生になって勉強が大変にならなければ、家庭教師はつかないのだ。
高校入学と同時に、圭を家庭教師に指名する。
そして、十六歳になったら…告白する。
そう心に決めている、亜依であった。
- 35 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月17日(木)16時17分50秒
第三話〜。今回、ケーキ屋さんの面々は出てませんね。
ビデオで後藤主任を見てから、彼女のスーツ姿に悩殺されまくりです。
なので、執事にしちゃったんですよね〜。
>ななしのよっすぃ〜様
どーもどーも♪
いやいや、盗める程テクニックないですよ(汗)
ありがとうございます♪がんばります!!
>>>25名無し読者様
ありがとうございます。設定、けっこー頭の中で熟成させましたわ(笑)。
ケーキ屋の面々や石川姉妹は、名前の似てる人たちを組みあわせてみました。
>キャンドル様
はじめまして!読んで下さって、ありがとうございます!
期待なさってたカップリング…どれでしょうか(汗)。
今回は、いしよし意外はマイナーカップリングにしてみよーかと思ってたりします。
どうぞ、よろしくお願いします!!
- 36 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月17日(木)16時59分37秒
- 後藤の好きな相手は石川だったんですね(泣)
どうか新しい恋に出会えるといいです!
他のCPも結構好きなんで楽しみです〜♪
- 37 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月17日(木)17時28分54秒
- ここのチャミさまは究極の理想像ですな、やっぱりチャミさまは、無邪気で可愛いのがいちばんです。
ひーさま⇔チャミさま、ごちん⇒チャミさま、もう王道です、嫌になるくらい王道です。
でもとても嬉しいです、ハッピーになれそうです。
「やすかご」ですか? どんなCPが出てくるんでしょうね、楽しみです。
@ノハ@
( `д´)<師匠! すんまへんケメコに逝ってしまいました。
- 38 名前:あおのり 投稿日:2002年10月18日(金)01時58分09秒
- 梨華おじょうの告白!意外と大胆なおじょうにノックアウッ!
恋に恋するお年頃具合がめちゃめちゃツボにはまってしまいました。
自分を殺すことを生まれながらに強いているようなストイックごま執事もかっけぇ〜
クロイツさんの書かれるキャラはすぐに情景が浮かんできます。
しかし保田さんはどこでもモテモテだなぁ
- 39 名前:キャンドル 投稿日:2002年10月18日(金)08時49分37秒
- あまり気になさらないでください。
@吉澤さん、石川さんがらみではない。
A二人とも既に登場していて、姉妹同士でもない。
Bマイナーかどうかはわからないけど、この掲示板ではあまりない。
ここで誰と誰と書いて、進行に変な影響を与えてもわるいので、こんなところで。
- 40 名前:第四話 投稿日:2002年10月18日(金)10時16分13秒
午後三時五分。
毎日、その時刻が近付いて来るとひとみは急にソワソワし出す。
「・・・・・・っ!ねえっ、のの!!」
「なんれすか、ひとみおねーちゃん。」
「…な、なんでもない…。」
「ああ、そうれすか。」
「〜〜〜〜〜〜っ!!ねぇっ!!あさ美!!」
「何でしょう、ひとみ姉さん?」
「…なんでもない…。」
「ああ、そうですか。」
そんな姉の様子に、希美とあさ美は同時にため息をつく。
「…ひとみおねーちゃん。浮かれすぎれすよ。」
「まさに『ロマンティック恋の花咲く浮かれモード』ですね。完璧です。」
あさ美は歌付き振り付きである。
「う、ううううううるさいなぁっ!!」
そう言うひとみの顔は、見事に真っ赤。
午後三時五分…それは、石川梨華が来店する時刻。
- 41 名前:第四話 投稿日:2002年10月18日(金)10時16分47秒
- あと、二分。
そう思うと、胸が高鳴る。
「…毎日コレれすからね。見ててイタイのれす。」
「ひとみ姉さんのこんな姿、私は初めて見ます。」
あさ美に言われて、ひとみも思う。
そう…今までの人生で、こんなになったのは初めてだ。
これはきっと、恋なんだろう。
恋をするのは初めてじゃない。ひとみは今まで、男とも女の子とも付き合った事がある。
だけど、こんなにどきどきするのは初めてなのだ。
ふと時計を見ると…三時四分、四十秒。
「…うあ〜…どうしようっ!」
「…どーもしなくて良いのれす。ケーキ売れば良いだけなのれす。」
「ののさん…丁度お客さんもいらっしゃいませんし、私達は席を外しましょうか。」
「ええっ!!」
「そうれすね。ののは厨房でなつみおねーちゃんに遊んでもらうのれす。」
「じゃ、私はちょっとお散歩に行って来ます。」
- 42 名前:第四話 投稿日:2002年10月18日(金)10時17分21秒
- 「えええっ!!ちょっと待ってよ〜!緊張するじゃん〜!!」
「何寝惚けた事いってるんれすか。
ののは忘れないれすよ〜?ひとみおねーちゃん、前の彼女と家で二人っきりになりたい
が為に、ののとあさ美に『商店街にココナッツ娘。が来るんだって』とか言って騙して、
追い出したじゃないれすか。」
「そうそう。その前の彼氏の時は、『この近所に、美味しいアイス屋さんができたらしい』
って嘘吐いて追い出しましたよね。」
「・・・・・・。」
「ま、その彼女とも彼氏とも長続きしなかったのはきっと、そーゆーコソクなシュダンを
使ったかられすね。」
「ですから今度は、私達も協力してあげます。頑張って下さいね〜。」
そう言って、希美もあさ美も出て行った。
店内に、一人取り残されるひとみ。
- 43 名前:第四話 投稿日:2002年10月18日(金)10時17分54秒
- 「ううう…嬉しいんだか恥ずかしいんだかわからない…。」
そう呟いた、その直後。
がーっ
「い、いらっしゃいませ!!」
自動ドアが開いて、入って来たのは…いつも通り、制服姿のあのひと。
「…あの…。」
ピンクに染めた頬と、潤んだ瞳に…ひとみの心臓が一段と跳ねあがる。
「…本日は、どのようなケーキをご所望でしょうか?」
営業用ではない笑顔を浮かべながら言うと、梨華はちょっと俯いた。
「・・・・・・。」
「…お客様?」
不安になって、そう言うと…梨華は、真っ赤な顔でこう言った。
「…わたし、今日は…あなたの事が知りたいですっ!!」
ひとみの頭の中は、真っ白になった。
- 44 名前:第四話 投稿日:2002年10月18日(金)10時18分30秒
時間は少し遡って、三時ジャスト。
「…緊張する…。」
迎えに来た車(ベンツ)の中で、梨華はピンクに染まった頬を両手で押さえていた。
昨日、真希に言われた言葉。
『まず、相手の事を何も知らないのなら、知れば良いんです。』
梨華は、それを実行しようとしていた。
「…でもでもっ!!お店の中に他の人がいたりしたら…恥ずかしくてできないよぉっ!!」
店の中にはいつも、お目当ての店員の他に二人の店員がいる。
それに最近は、他の客がいる事もある。
だから、梨華は決めた。
今日、店内にあのひと以外に誰もいなかったら…話しかけてみよう。
そして、さりげな〜くいろんな事を訊いてみよう。
(…誰もいないでほしいような、誰かいてほしいような…。
…ううん、駄目よ梨華!そんな弱気な事言ってちゃ!!今日は絶対話しかけるの!!だ
から、『誰もいないでほしい』って願わなきゃ!!)
後部座席で一人、拳を握る梨華。
そんな梨華に、専属の運転手・山崎は思った。
(…お嬢様、なんか悪いモンでも食べたのかな…?)
- 45 名前:第四話 投稿日:2002年10月18日(金)10時19分00秒
- そんな二人の複雑な気持ちを乗せて、車は石川家に到着。
車を降りると同時に、梨華は財布を握り締め、門へと向かう。
「…お嬢様、今日もケーキ屋さんに行かれるんですか?」
運転手・山崎の心配そうな声に、梨華は珍しくキリッとした表情で答える。
「今日は、ケーキじゃないわ!!」
そして、小走りになる梨華。
心臓は、信じられないくらいどきどき言ってる。
今からもう、顔が熱い。
そして、彼女の笑顔を思い出すだけで…胸がきゅんっとする。
がーっ
自動扉の向こう側にいるのは、恋しくて愛しいあのお方。
そして…店内には誰もいない。
- 46 名前:第四話 投稿日:2002年10月18日(金)10時19分31秒
- 「い、いらっしゃいませ!!」
いつもよりちょっと大きな、優しい声。
梨華の心臓の、鼓動の速度が上がる。
(やっぱり、現実のこの人の方が…わたしの空想の中のこの人よりも素敵…。)
「…あの…。」
今日は絶対、会計以外の会話もする!と意気込んで来た梨華だったが…本物を目の前に
するとやはり、緊張してしまう。
それ以上、声が出ない。
「…本日は、どのようなケーキをご所望でしょうか?」
いつもより優しい笑顔に見えるのは、梨華の目の錯覚だろうか。
「・・・・・・。」
「…お客様?」
何か、言わなきゃ…。礼拝の最中にも授業中にも車の中でも、ずっと『こう言おう』と考
えていたのに、いざとなると頭の中は真っ白。
ようやく言えたのは、この一言。
「…わたし、今日は…あなたの事が知りたいですっ!!」
自分の発した一言に、梨華は猛烈に驚いていた。
- 47 名前:第四話 投稿日:2002年10月18日(金)10時20分05秒
あさ美は、周囲の豪邸を見回しながら歩いていた。
「…すご〜い…。」
石川家の豪邸がすご過ぎる為、ちょっと色褪せて見えてしまうが…それでも、この周辺
の家はみんな豪華だ。
あさ美は、今まではまったく無縁だった世界に足を踏み入れてしまったような感覚にと
らわれてしまって…ちょっと、わくわくしていた。
あさ美の母親は、あさ美が十歳の時に亡くなった。交通事故だった。
それなりに社会的地位のある男の愛人だった母だが、生活はいつも苦しかった記憶があ
る。夕食が食べられないなんて事はいつもの事だったし、お弁当の材料を買うお金がなかっ
たので遠足に行った事もなかった。
だけど、あさ美は母が大好きだった。
母の死後、父親であるなつみの父に引き取られたが…なつみの母に嫌われて、いつも叩
かれていた。
- 48 名前:第四話 投稿日:2002年10月18日(金)10時20分35秒
- その頃、なつみはパリに留学していた。
留学を終えて、一人前のパティシエとなって家に戻って来たなつみが見たものは…自分
の母親が、あさ美を殴っている姿。
なつみは、あさ美を連れて家を出た。
そこまで思い出して、あさ美は頭を振る。
もう、過去の事。思い出すのはやめよう。
「ふにゃっ!!」
何かに激突して、あさ美は頭を打つ。額に鋭い痛みを感じて、あさ美は二、三歩後退した。
「ご、ごめんなさいごめんなさいっ!!」
とっさに頭を下げるが…ふと気が付くと、相手は電柱。
「…ど、道化た事をしてしまいました…。」
頭に触れると、なんだかぬるっとした感覚。驚いて手を見ると、血が付いていた。
「!?」
電柱を見ると、針金のようなものが突き出ていた。どうやら、ぶつかった時に引っかいて
しまったようだ。
自分から血が流れている。
それは、あさ美にとっては恐怖だった。
- 49 名前:第四話 投稿日:2002年10月18日(金)10時21分06秒
- 『あんたなんて生まれて来なければよかったのにっ!!』
義母の言葉が、頭の中に蘇る。
憎まれて、当然の立場だった。
でも…叩かれるよりもそう言われる方が、苦しかったし痛かった。
「う…っ。」
涙がこみ上げて来て、ポケットを探るが…ハンカチはない。
(…そうだ、さっきののさんに貸しちゃったんだっけ…。)
そう思って、メイド服のエプロンで拭おうとした、その時。
「…怪我したの?」
「!?」
振り返ると、そこにいたのは…
(お、王子様!?)
何気にロマンチストなあさ美。整った顔立ちと長髪とスーツ姿なその人物を、そう評
した。
- 50 名前:第四話 投稿日:2002年10月18日(金)10時21分40秒
- 「血、出てるね。」
「は、はいっ!!でも、完璧です!!」
「は?」
「う…いや、その…。」
「完璧?」
「・・・・・・。」
あさ美は恥ずかしさで、俯いてしまった。
「…く、口癖なんです…。『完璧』って…。」
すると、王子様は一瞬きょとんとした顔をして…その直後。
「あっはははははははははははは!!!」
大爆笑した。
「な、なんで笑うんですか!!」
「だ、だって完璧って!!完璧が口癖って!!」
「笑わないでくださいっ!!」
「ご、ごめ、ごめんっ!でも…ぶはっ!!あはははははははははは!!!」
『完璧』は、王子様のツボに入ってしまったようだ。
- 51 名前:第四話 投稿日:2002年10月18日(金)10時22分10秒
王子様はしばらく笑い続けてから、言った。
「ごめんごめん。でも、こんなに笑ったの久しぶりだよ。」
「そうですかっ!」
あさ美はぷいっと顔を背ける。
「…それで君、そのメイド服…『Tochter.』の店員さんだよね?」
「そうですっ!」
「じゃあ、早くその傷を消毒した方が良いよ。」
「無理ですっ!!しばらく帰れないんです!!」
「え?なんで?」
「なんででもいーじゃないですか!…それじゃ、失礼します。」
「ちょっと待って!」
あさ美は腕をつかまれて、身体をびくっとさせる。
「ひっ…」
「あ、ご、ごめん。」
王子様は手を離して、笑顔を浮かべてこう言った。
「…そのままでいると、菌が入っちゃったりするから…治療しなきゃ。
私の家、すぐ側なんだ。笑っちゃったお詫びに、手当てさせてくれないかな?」
「・・・・・・。」
あさ美はぷいっとそっぽを向く。
- 52 名前:第四話 投稿日:2002年10月18日(金)10時22分41秒
- 「名前も知らない男の人に付いて行っちゃいけないって、姉に言われてますから!」
すると王子様は手を打った。
「…そー言えばそうだね。…でも私、女なんだけど。」
「え!?」
あさ美は驚いて、王子様(女)見る。
「む、胸ないじゃないですか!!」
「サラシ巻いてるからね。」
「それに、スーツじゃないですか!!」
「職業的に、着てた方が仕事がスムーズに行く事もあるからね。」
そして、王子様はハンカチを差し出しながら言った。
「…私は、後藤真希って言うんだ。君の店の目の前の石川家で、執事をしてる。
ま、私達は一応、同じ雇い主を持ってるって言うワケ。…だから、信用してくれない?」
あさ美の胸が、どくんっと跳ねた。
- 53 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月18日(金)10時23分21秒
第四話〜。
ちょっと、いしよしが恋心に気づくのが早すぎたかな?とか思っております(汗)。
でもなぁ…書いてるこっちが待ちきれなくなっちゃったんですよね…四話目にして(笑)。
>名無し読者様
もしかしたら期待通りになるかも知れませんよ〜!!
とりあえず今回、確実にこんこんは惚れてますから(笑)
がんばりますね!
>ひとみんこ様
やすかご…何気に最近マイブームなんですよ。
うれしいですか〜。よかった♪
>あおのり様
お嬢様は大胆でなくては!!今回も大胆です、梨華お嬢様。
ありがとうございます♪
>キャンドル様
うう〜む…わからん…(汗)。
ご期待通りになれば良いのですが…。
ご期待通りでなくても、読んで頂けると嬉しいな☆なんて…スミマセン(大汗)
- 54 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月18日(金)17時51分43秒
- おもしろいです!!
なにげにやすかごにかなり期待してます・・・。
加護ちゃんがんばれ〜。
- 55 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月18日(金)18時06分14秒
- 好きなCPにはならなさそうだけどおもしろい!!
- 56 名前:キャンドル 投稿日:2002年10月18日(金)18時30分13秒
- 第2希望にはなりそうなので・・・。
ところで、とりあえず全員CPにするんでしょうか(関係ないですけど)
- 57 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月18日(金)22時41分07秒
- うわ〜どなってくんでしょか?
とんでも無いCP出てきそー。
「ごまこん」結構つぼかも?
まっ! あたしゃひーさまとチャミさまが有ればいいですけどね。
- 58 名前:第五話 投稿日:2002年10月19日(土)07時56分31秒
石川家の本邸。その広大な敷地内にある、使用人の住居用の建物。
「…マンションみたいですね。」
あさ美はその建物を見て、そう言った。
「ま、寮だからね。左側に男性、右側に女性が住んでて…私の部屋は、右側の一階にある
んだ。」
通された部屋は、とてもサッパリした印象の部屋だった。大きい物は、ベッドと机とテレ
ビくらいしかない。
「おじゃまします。」
「ベッドか椅子に座ってて。今、救急箱出すから。」
なんとなく、ベッドではなくて椅子に座る。
(…だって…信じられないです。この人が女の人なんて…。)
「お待たせ。さあ、見せて。」
言われて、慌ててハンカチを取る。
「…けっこう派手に引っかいたね。女の子の顔なのに。」
真希の顔が、至近距離にまで近付く。
額にキスするようなその体制に、あさ美の心臓がドクドクと言い出す。あさ美は思わず、
ぎゅっと目を閉じた。
「ちょっとしみるよ?」
「は、はい…。」
ぷしゅー、と言う音とともに、ピリピリとした痛みが額に走る。消毒液をかけられている
ようだ。
- 59 名前:第五話 投稿日:2002年10月19日(土)07時57分03秒
- 「もーちょっとの辛抱だから。」
「はい…。」
真希は、傷口にふーっと息を吹きかける。
(きゃ…きゃ────────────────っ!!!)
顔が真っ赤なのが、自分でもわかる。特に額が、信じられないくらい熱い。
何かを貼り付けるような感触がして、真希が言った。
「はい、終わり。よく我慢したね。」
「ど、どうも…完璧です。…あっ。」
「…あはっ。」
イメージに合わない、無邪気な笑い顔を見せる。
「・・・・・・っ!!」
どきどきが、止まらなくなりそうだ。
(こ、壊れちゃう!!私の心臓っ!!)
あさ美は自分の心臓を抑える。
- 60 名前:第五話 投稿日:2002年10月19日(土)07時57分36秒
- 「あ、あのっ!!上手なんですね、こーゆーの!!なんか、慣れてるって感じで!!」
どきどきを誤魔化したくて、口を開く。すると真希は、ふと視線を窓の外に移した。
「…昔はよく、梨華お嬢様もこう言う怪我をしてね。
意地を張って、他の者には『大丈夫』って言い張って…治療をさせなかった。私にだけ、
させてくれたんだ…。だから私は…必死に本を読んで勉強したんだよ。いろんな怪我の、
処置の方法を…。」
懐かしそうだけど、どこか寂しそうな横顔。
「・・・・・・。」
その真希の横顔を見たあさ美の胸に、何か正体のわからない感情が浮かぶ。
怒りにも似てるし、悲しみにも似てる。
それが『嫉妬』だと言う事に、彼女はまだ気付いていない。
- 61 名前:第五話 投稿日:2002年10月19日(土)07時58分44秒
(わ、わたしってば何て事を!!)
思わず爆弾発言をかましてしまった梨華は、ものすごい勢いで後悔していた。
こんな直接的に言う気はなかった。
もっとさりげな〜く、お天気の話から入るつもりだった。
なのに…気持ちが先走って、こんな事になってしまった。
目の前の愛しのお方は、驚いた顔のまま固まっている。
(ああ…もう駄目だわ…!!絶対変なコだって思われてる!!嫌われちゃったかも!!)
幼い頃からネガティブに陥りやすかった梨華。今回も例にもれず、どんどんどんどんネ
ガティブな方向に思考が向く。
(嫌われちゃったよね…。不審人物でもう出入り禁止かも…。)
それくらいで出入り禁止にする店は、少ない。だが、最強の世間知らずの思考回路では
そうなってしまうらしい。
- 62 名前:第五話 投稿日:2002年10月19日(土)07時59分15秒
- と、そんな梨華に…ひとみは言った。
「ええっと…」
身体をびくっと震わせた梨華。だから、ひとみの顔が真っ赤だと言う事に気付いてない。
ひとみは、熱くなっている顔と高鳴っている胸を押さえながら続ける。
「…あたしも、知りたいです。あなたの事…。」
梨華は驚いて、顔を上げた。
そこにあったのは…今まで見たことのない、ひとみの笑顔。
今まで見た、どの笑顔よりも優しい笑顔。
心臓が、激しく動き出す。
こうして二人の、新品の時計が動き出した。
- 63 名前:第五話 投稿日:2002年10月19日(土)07時59分45秒
その様子を、厨房と店内をつないでる扉の小さな窓から覗く者がいた。
「…バカップルの素質、アリれすね。ウザい二人になりそーれす。」
「こらこら、のの。覗いてる上に失礼な事言っちゃ駄目だべ。」
なつみに言われて、希美は渋々と窓から離れる。
「ちぇ〜。…でも、良いれすねぇ。恋って。
今までのひとみおねーちゃんの彼氏や彼女を見てると、あんま思わなかったれすけど…
でも、今回はマジでそう思うのれす。」
「そうだなねぇ。確かに、恋は良いべさ。…でも、のの。良いだけじゃないんだべ?」
なつみは、ココアの注がれたマグカップを希美に渡しながら言った。
「辛い事も苦しい事も、ちゃんとある。今まで感じた事もないような苦しさや悲しさを感
じなければいけない事もある。」
自分は、紅茶の入ったマグカップを傾ける。
「だけどね…それでもやめられないんだなぁ、コレが。」
「へぇ〜…。」
興味津々、と言った感じで自分を見ている希美に気付いて、なつみはちょっと頬を赤くす
る。
- 64 名前:第五話 投稿日:2002年10月19日(土)08時00分18秒
- 「あはははは…ちょっと語っちゃったよ。恥ずかしいなぁ〜。」
「そんな事ないれすよ!!勉強になったのれす!」
「そっかぁ?」
そして、目を見合わせて同時に微笑む。
その希美の顔を見て、なつみは祈る。
(…どうかこの子は、なっちみたいな目には遭いませんように…。)
五年経っても、いまだに胸に残る痛み。
本当に本当に大好きだった、あの人。
写真は全て処分したのに、鮮明に思い出せるその顔。
思わず涙が出そうになって、なつみは紅茶を口に含んだ。
そんななつみの正面で、希美はココアを片手に微笑んでいた。
(いつかののにも、そーゆー相手ができるんれしょーか…。
ひとみおねーちゃんみたく、だらしない顔とか情けない顔とかするよーになるんれしょー
か…。それはそれで楽しみなのれす。
幸せな恋が、してみたいのれす…。)
二人の間には、心地よい沈黙が流れていた。
- 65 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月19日(土)08時00分49秒
第五話〜♪
今回のののたんにピッタシの曲…それはモーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」の
中のアリア「恋とはどんなものかしら」…。
書いてて思いました。背後に流しててほしいなぁ、と(笑)。
>>>54名無し読者様
ありがとうございます☆やすかご…けっこー人気あって良かったです〜。
『お嬢様は積極的』なので、彼女もきっと梨華ちゃんのよーにぐいぐいと行くでしょう!!
>>>55名無し読者様
ありがとうございます♪
好きなCPになりそーにないのに読んで下さるなんて…感激です!!
>キャンドル様
第二希望にはなりそうですか?よかった〜。
全部CPには、しません。一部、CP関係ない人もいます。だけど、『好きなCP、できる
限り全部出したい〜!!』とか思ってたりもするので…けっこう多くなるかも(汗)
>ひとみんこ様
ごまこん…例のミュージカルでハマりましたわ…。それまではごっちん絡みだと「い
ちごま」か「なちごま」が好きだったんですが…。
とんでもないCP…出てくるかもです(笑)。頑張りますねー!!
- 66 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月19日(土)10時18分25秒
- (0^〜^)<のの、おいらだらしない顔とか情けない顔とかしてるかな〜?
( ´v`)<そうれす、はっきり言ってあふぉれす、うざいれす。
うわ〜「フィガロ」ですか? えらいもん持ってきますね。
今CDを入れたので、すぐに聞こえてきますので、しばらくお待ちください。
- 67 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月20日(日)17時59分08秒
- おぉ!後紺だぁ!希望してたやつになって嬉しいw
この間の後今来たんで、読んで喜んでました(笑
甘々で痒くなりそう・・・w
続きが楽しみです〜♪
- 68 名前:第六話 投稿日:2002年10月21日(月)21時06分07秒
ひとみは、浮かれていた。
「んっふふふふふふふふふふ…♪」
それも、ハンパじゃなく。希美は青い顔で、なるべくひとみの方を見ないようにしていた。
ひとみがここまで浮かれるのも、無理もない。
最強の大金持ち・石川家の次女、石川梨華。
雇われケーキ屋(しかも販売員)がどんなに強く想っても、絶対届かないと思ってたの
に…なんと、メールアドレスまで交換する程仲良くなれてしまったのだから。
「んっふふふふふふふふふふ…♪」
携帯の画面に、梨華の携帯番号とメールアドレスを表示し、それを眺めながらニヤける。
ひとしきりそれをした後、ひとみは自分に背を向けている希美の背後に忍び寄った。
そして、背中から抱きつく。
「おりゃっ!」
「うひゃあ!!」
突然の事に驚いている希美をぎゅ〜っと抱きしめながら(見ようによっては羽交い絞めに
してるよーにしか見えないが)、ひとみは猫なで声で言う。
- 69 名前:第六話 投稿日:2002年10月21日(月)21時07分15秒
- 「ののちゃぁ〜ん。おねーちゃんの恋バナ、聞きたくなぁい?」
「…け、結構れす。いらないれす。てゆーかカンベンしてほしいのれす。」
「あら〜、ののってば♪やっぱり聞きたいんだね〜?それじゃーしょーがない。姉ちゃん
語っちゃうぞ〜?」
「そんな事、一言も言ってないのれす!!いらないのれす!!離してほしいのれす!!」
しかし、ひとみは暴れる希美を押さえ込みながら語り始める。
「も〜、梨華ちゃんってば可愛いんだぞ〜?何が可愛いって、そりゃーもう全てが!!
でもってウチが『明日から学校行くから、いつもの時間にはここにいない』って言った
ら…泣きそうな顔で、『学校が終わったらメールちょうだいっ!見計らって来るから!』
とか言ってくれちゃってさぁぁぁぁぁぁ!!!」
「わかったのれす!!もーわかったから、はなしてくらさい!!」
「メールアドレス交換しちゃったんだよー!?うひょー!!どうしようねぇ!?
やっぱりココは男前に、ウチの方からメール送った方が良いのかなー!?ねぇ、ののは
どう思う!?」
- 70 名前:第六話 投稿日:2002年10月21日(月)21時08分23秒
- ど、どっちでもいいのれす。さっさとはなすのれす!!」
「きゃはー!!やっぱりー!?ウチから送った方が良いよねー!!何て送ろうかなー!!」
「ののの話をきくのれすー!!!」
会話がかみ合ってない。だが、ひとみは気にしていない。
『浮かれモード』を通り越して、『ハシャぎ過ぎモード』である。希美はいい迷惑だ。
そんな次姉と三姉の横で…あさ美は物思いにふけっていた。
(…ごとう、まき…さん。)
名前を思い出すだけで…幸せなような、切ないような気分に襲われる。
額の絆創膏に触れる。
そして、手当てしてくれた後の…あの横顔を思い出す。
「・・・・・・。」
涙が、出そうになった。
慌ててポケットを探ると…血がついた白いハンカチが出てきた。
(あ!!…これ…返すの忘れちゃった…!!)
額を怪我した時、真希に貸してもらったハンカチだ。隅の方に、『M.G』という刺繍が入っ
ている。
- 71 名前:第六話 投稿日:2002年10月21日(月)21時09分58秒
- (…血のあと、残っちゃうだろうな…弁償しなきゃ。…でも…)
「…返したく、ないな…。」
そう呟いて、あさ美は、そのハンカチをぎゅっと握り締めてから…大事そうにポケットに
しまった。
背後ではまだ、ひとみと希美が騒いでいる。
だけど、あさ美には聞こえていない。
…そうしている内に、ケーキ屋『Tochter.』は閉店時間を迎えたのだった。
- 72 名前:第六話 投稿日:2002年10月21日(月)21時10分31秒
その頃、梨華は入浴中だった。
一流の温泉宿の風呂場にも負けないくらい、豪華で広い石川家の風呂。梨華はその湯船
に肩までつかりながら…ひとみの事を思い出していた。
(…やっぱり…ううん、想像以上に優しくて素敵なひとだったなぁ…。)
そして、ひとみの笑顔を思い出して…顔がぼんっと赤くなる。
「…きゃっ♪」
頬を両手で押さえて、にっこりと微笑む。
勇気を出して、よかった。
今、本気でそう思う。
勇気を出したからこそ、ひとみと仲良くなれたのだ。
(今はまだ『お友達』だけどっ!!いつか絶対、わたしの恋人になってもらうんだから!!)
心の中で呟いて、ガッツポーズを取る。
…『いつか』じゃなくて、告白さえすれば『いつでも』なれるのだが。
このお嬢様は、まだ知らない。
と、そこに。
「梨華お姉様ー!」
- 73 名前:第六話 投稿日:2002年10月21日(月)21時11分03秒
- 脱衣所から、声が聞こえて来る。
この声は…亜依だ。
「んー?なぁに?」
「亜依も一緒に入って良いー?」
「いいわよ。いらっしゃい♪」
「わーい!」
はしゃいだような声がして、亜依は早足で風呂場に入って来た。
「亜依、転んじゃうよ。」
「平気だよっ♪」
シャワーで身体を流してから、どぼんっと音を立てて梨華の隣に入る。
「へへへっ。久しぶりだね、一緒に入るの!」
「そうね。」
「…ねえ、梨華お姉様。今日、何か良い事あったんでしょ。」
「えぇ!?」
そう言われて、梨華は条件反射のようにひとみの顔を思い出す。そして、かぁっと顔を赤
くした。
- 74 名前:第六話 投稿日:2002年10月21日(月)21時11分36秒
- 「やっぱりあったんだ〜!!ねえ、何があったの?亜依に教えて!」
「…な、なんでもないわよ。」
「嘘ー!ねえ、教えてよー!亜依もとっておきの秘密、教えるから!」
「…じゃ、じゃあ、亜依から言ってよ。」
「駄目ー!梨華お姉様からー!」
姉妹はしばし、むーっとにらみ会う。
そして、同時にぷっと吹き出す。
「…しょうがないね。じゃあ、せーので同時に言おう。」
「そうだね。」
二人は深呼吸して、顔を見合わせる。
「「せーのっ。」」
「ケーキ屋さんの店員さんを、もっと好きになっちゃいましたっ!」
「亜依は、保田先生が大好きですっ!」
そして、二人ともきょとんとした顔をする。
「「…えええええぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜!?」」
その後、石川家の広くて豪華な風呂場は、大変な騒ぎになったそうだ。
- 75 名前:第六話 投稿日:2002年10月21日(月)21時12分06秒
どうして、あんな事を話しちゃったんだろう。
真希は執事用の詰め所で業務日誌をつけながら、ため息をつく。
集中できないまま書き終えた日誌を、首席執事である父親に渡す。
「どうしたんだ?真希。お前らしくもない。」
「…いえ…ちょっと、体調が優れないだけです。」
「そうか。ここの所、梨華お嬢様の事でいつも以上に気をもんでいるからな。疲れている
んだろう。今日はもう部屋に帰って寝なさい。」
「…はい。」
真希は一礼してから、退室する。
部屋に帰って明かりをつける。
「・・・・・・?」
なんだか、いつもと雰囲気が違うような気がする。
(…いや、雰囲気じゃなくて…空気?)
そう思って部屋を見回していると…椅子が目に留まった。
『ど、どうも…完璧です。…あっ。』
真っ赤な顔で、そう言った少女を思い出す。
- 76 名前:第六話 投稿日:2002年10月21日(月)21時12分42秒
- どうして、あんな事を話しちゃったんだろう。
梨華との思い出なんて、誰にも話した事はなかった。ずっと、自分一人の胸の中に…宝
物のようにしまっていた。
なのに…あの子には、話してしまった。
(…なんとなく、昔の梨華お嬢様を思い出すんだよね…あの子見てると。)
困ったような真っ赤な顔が、眉をハの字にしていた幼い頃の梨華に重なる。
だからだろう。
そう、自分に言い聞かせるようにして…真希は男物のスーツを脱いだ。
(ま、梨華お嬢様は『完璧です』なんて言わなかったけど。)
ぷっと吹き出して、はたと思い出す。
(私…人前で大爆笑したのって、初めてだ…。)
脱ぎかけのスーツを持ったまま、ちょっと驚く。
そう言えば、あの子の前ではずいぶんと色んな感情を表に出してたかも知れない。
頭の中で、ケーキ屋『Tochter.』に関する資料をめくる。
(紺野あさ美、か…。)
資料の中から彼女の名前を探し出して、真希はまたくすっと笑った。
- 77 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月21日(月)21時13分12秒
第六話でっす!!一回一話だと、けっこー早いですねぇ♪
クロイツ的今回の見所は、『姉妹でお風呂☆』です(笑)。
>ひとみんこ様
今回、さらにだらしない顔してます。ヨッスィーってば。
ののたんってば被害者ですわね(笑)うざいどころの話じゃないっつーか(爆笑)。
>名無し読者様
『カユくなるほどあまあま』が、私のポリシーです(笑)。
どんどんカユくなってくださいませ!!
がんばりますね〜!
- 78 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月22日(火)09時26分26秒
- ヤパーリ石川家のお風呂は24時間、温泉が流れていて
金色ライオンの口からお湯が流れてるんでしょうね。
少しタレ気味のひーさまの目尻、下がりまくって八の字に成ってるんでしょうね。
- 79 名前:第七話 投稿日:2002年10月22日(火)14時48分15秒
「ほら、ひとみ!いつまで寝てるつもりなんだべさ!」
なつみは、ひとみの布団をはぐ。
「うあ〜…何すんだよ姉ちゃん…。」
「何すんだ、じゃないっしょー!早く起きなきゃ遅刻しちゃうべ!!」
ひとみはのそのそと身を起こし、時計を確認。
「…なんだよ、まだ七時じゃん。」
「『まだ』じゃなくて、『もう』だべさ!
希美とあさ美は、もう起きてご飯食べてるよ!?」
「なんでぇ〜?開店時間にはまだかなり時間が…」
言いかけたひとみを、なつみはべしっと叩く。
「何寝ぼけてるんだべ!?ひとみは、今日から学校だべさ!!」
その言葉で、先日受けた編入試験の事を思い出す。
「…そーいやぁ、そーだったね…。」
あくび交じりに起き上がり、部屋から出る。
ひとみの部屋では、なつみが腰に手をあてて『もうっ!』と怒っていた。
- 80 名前:第七話 投稿日:2002年10月22日(火)14時48分51秒
「あ、『ねぼすけハシャぎ過ぎモード』の参上なのれす。」
「の〜ぞ〜み〜!!!」
「おそようございます、ひとみ姉さん。」
「あ〜さ〜み〜!!!」
妹二人に、ひとみが抱きつく。いつものじゃれあいだ。
複雑過ぎる思春期を健全に乗り切る為には、家族とのスキンシップが必要なんだそうだ。
なつみが『昔読んだ週刊誌に載ってた』と言っていた。
「ほらほらっ、ひとみ!早くご飯食べ始めて!希美、ちゃんとよく噛んで食べなさい!あ
さ美、もーちょっと早く食べて!」
「「「は〜い。」」」
元気良く返事をして、三人はそれぞれのペースでご飯を食べる。
「…あ。」
そんな三人に、なつみは何かを思い出したかのように手を打ってから言った。
「そうだ!三人とも聞いて!あのね、石川家の旦那様のアイデアなんだけど…毎月十九日
に、限定ケーキを作る事になったの。」
「「「限定ケーキ?」」」
三人同時に聞き返されて、なつみは満面笑顔で頷く。
「そう。その季節にぴったりのケーキを、毎月十九日に発売するの。」
「へぇ〜…凝った企画だね。」
ひとみはもごもごと口を動かし、ごくん、と飲み込んでから続けた。
- 81 名前:第七話 投稿日:2002年10月22日(火)14時49分23秒
- 「…でもさ、なんで十九日なの?」
「ひとみ〜。ひとみがソレ訊いてどうするべさ。…一月十九日が、梨華お嬢様の誕生日で
しょ?」
「ああ!!それでか!!!…なんか悔しい…。」
「修行が足りないべ、ひとみ。」
からかうように言うなつみに、希美が尋ねる。
「ゲンテイで、なんこ作るんれすか?」
「五個。…だけど、実際作るのは六個。一つは梨華お嬢様用。」
「へぇ〜。」
「…それで、限定で出したケーキは…その後はどうするんですか?評判良かったら、定番
化するんですか?」
「ううん、しない。」
「「「えええっ!?」」」
なつみは困ったような笑顔を浮かべる。
「…限定ケーキは全て、旦那様から梨華お嬢様への贈り物になるから…同じ物を五個以上
売る事になると、価値が下がっちゃうんだって。」
なつみは口に出さなかったが、梨華の父親は最初は五個でも多すぎると思っていたよう
な口ぶりをしていた。
だけど、なつみが梨華一人の為に一つだけケーキを作ったとなれば…いくら世間知らず
な梨華でも、このケーキ屋が自分の『お買い物レッスン用』だと気付いてしまうかも知れ
ない。
- 82 名前:第七話 投稿日:2002年10月22日(火)14時50分28秒
- 梨華の父親は、それだけは避けたいらしく…『限定ケーキ』として、梨華に贈る物以外
にも五個作るように言って来たのだ。
「な、なんれすか、それは!!シツレーな話なのれす!!いっぱいあったらだめなんて…
なつみおねーちゃんのケーキは、なんこあってもゼッピンなのれす!!」
「そうですよ!…大金持ちの価値観って、私にはわかりません!!」
「まあまあ。…でも、梨華お嬢様に気に入って頂ければ…定番化できるかも知れないっしょ?
『また食べたい』って言って頂ければ…。」
だけど、希美とあさ美の眉間のシワは取れない。
一方ひとみは、ものすごい勢いで心が沈んで行くのを感じた。
梨華と自分の住んでいる世界は、違い過ぎる。それをまざまざと見せ付けられたような
気分なのだ。
- 83 名前:第七話 投稿日:2002年10月22日(火)14時51分01秒
- この小さなケーキ屋の目の前に聳え立つ、あの城のような豪邸。
こんなに近くにあるのに…ものすごく遠く感じる、自分と梨華の距離。
「・・・・・・っ!」
ひとみは、頭を振った。
(考えるな…考えすぎたらあたしは、一歩も前に出られなくなる!)
それでも、梨華が好きなのだ。
諦めたりなんか、したくない。
(…でも…。)
「…ごちそうさま…。」
ひとみは珍しく、半分以上も朝食を残した。
- 84 名前:第七話 投稿日:2002年10月22日(火)14時51分32秒
「…それじゃあ、ののたちも学校にいくのれす。」
電車を使って通学するひとみは、もう家を出た後だ。
「でも…本当にお店は大丈夫なんですか?」
希美とあさ美が心配そうに言うと、なつみはにっこりと微笑む。
「大丈夫だって。言ったでしょ?石川家の方から二人も店員さんを派遣してくれるって。」
「でも…。」
「石川家のヒトなんて、シンヨウできないのれす!きっと、おタカく止まったイヤなヤツ
にきまってるのれす!!」
どうやら、朝の限定ケーキの話で、希美とあさ美の石川家に対するイメージは、悪い方に
傾いてしまったようだ。
なつみは、苦笑する。
「大丈夫だって。要するに、ちゃんと仕事してくれれば良いんだから。」
「でも…なつみおねーちゃん、いじめられちゃうかもなのれす…。」
「大丈夫だってば!なっちは強いべ?
ほらほら、早く出かけないと…遅刻しちゃうっしょ?転校初日から遅刻なんて、カッコ
悪いべさ!」
「「うう〜…。」」
二人はうなってから、ちょっとうなだれて…手をつないで出かけて行った。
- 85 名前:第七話 投稿日:2002年10月22日(火)14時52分35秒
- そんな二人の後姿を見ながら、なつみはちょっと後悔していた。
四人で生活するようになってから、『どんな小さな事でも、みんなと分け合って生きて
いこう』と決めた。だから今回も、限定ケーキの事を三人に話したのだが…
「…やっぱ、言わない方が良かったかなぁ…。」
怒るのは、目に見えていた。でも、石川家の面々と自分たちとは価値観が違いすぎるのだ。
理解できない事も、多々あるだろう。
だけど…なつみにとって石川家は、夢にまで見た『自分のケーキ屋さん』を実現させて
くれた、恩人でもあるのだ。
と、そこに。
「あの…『Tochter.』って、ココですよね?」
そう言われて、なつみは反射的に振り返る。
そこにいたのは、大きな荷物を抱えた女。
「は、はい!そうです!ここです。」
「じゃあ、あなたが安倍なつみ様?」
- 86 名前:第七話 投稿日:2002年10月22日(火)14時53分06秒
- 「はい、そうです!!…あなたは?」
いきなりの『様』付けに戸惑いながらなつみが訊くと、女は背筋を伸ばして凛々しい微笑
みを浮かべた。
「市井紗耶香と申します。石川家の方から、店員として派遣されて参りました。
…今まで、販売員と言うものをした経験はないのですが…一生懸命頑張ります。どうぞ
よろしくお願い致します。」
穏やかに、だけど力強く。そして、声には誠実さが含まれている。
なつみはちょっと圧倒されながら、笑顔を作る。
「は、はい。市井さん、ですね。…あの、二人いらっしゃるって聞いてたんですけど…?」
「…申し訳ございません。もう一人は、急遽来られなくなってしまいまして…。」
「ええっ!?」
「でも、私一人で二人分できる、と旦那様が判断なされました。
旦那様の期待にこたえられるよう…そして、安倍様のお役に立てるよう、誠心誠意頑張
りますので、どうぞよろしくお願いいたします!!」
そして紗耶香は、深々とお辞儀をする。
この丁寧な派遣店員に、なつみは戸惑いを隠せなかった。
- 87 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月22日(火)14時53分37秒
今回、梨華ちゃんがお休みしてますね(笑)。
そして、現れたのがいちーちゃん。
この丁寧さ…どこかで見たような見ないような?(爆笑)
>ひとみんこ様
石川家のお風呂、まさにその通りでございます!!でもって、床は大理石!!
そして、今回沈んじゃったヨッスィー。でも、目はハの字のまま(笑)
ののたんの目は、怒りでつりあがっているのれす。
- 88 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月22日(火)23時50分53秒
- ( ` v ´)<ケッ! お高うとまりやがって! (うぅ、あいぼんになってしまったのれす)
(O´〜`)<のの、梨華ちゃんは違うよ。 うっ、目が八の字だ。
はいはい、どっかで見ましたね〜 いちーちゃんどう絡んでくるんでしょうね、怖いですね〜
- 89 名前:キャンドル 投稿日:2002年10月23日(水)16時04分45秒
- いちいさんって、フリーでしょうか(あべさんも?)
「お買い物レッスン」って梨華お嬢様だけなんでしょうか
妹に必要ないとしたら、姉としてかなり・・・。
- 90 名前:第八話 投稿日:2002年10月23日(水)16時57分41秒
真希は、梨華とは違う学校に通っている。
梨華が通うのは、良家の令嬢が数多く通う名門女子校。真希が通うのは、公立の女子校。
…執事としては、片時もお嬢様から離れたくなかったのだが…学校が同じでも学年が違
うのでは意味がない。…と言うわけで、真希は別の学校に通う事にしたのだ。
「…はい、皆さん静かに。今日は転校生を紹介します。」
担任の教師のその言葉に、真希は激烈に嫌な予感を覚えた。
転校生。って事は、ここ数日の間にこの近所に越してきた事になる。
ここ数日の間に、この近所に越してきた同い年の人物に…真希は、心当たりがあった。
(…まさかね。)
そんな偶然、あるわけない。
それに、近所と言っても…その人物の家からこの学校までは、電車で五駅も離れてる。
きっと、彼女ではないだろう。
「…どうぞ、入って来て。」
担任が呼ぶと、教室の前の扉が開いた。
「・・・・・・。」
入ってきた人物を見て…頬杖をついていた真希は、机に突っ伏す。
「はじめまして、吉澤ひとみです。どうぞヨロシク。」
真希の『激烈に嫌な予感』は、見事的中したのだった。
- 91 名前:第八話 投稿日:2002年10月23日(水)16時58分12秒
- 「〜〜〜〜〜〜っ!!」
「ご、後藤さん?どうしたの?」
「い、いや、なんでもないっ。」
左隣の席の少女に言われて、真希は慌ててたたずまいを直す。
そんな真希に、担任は言った。
「席は、後藤さんの右隣が空いてるわね。後藤さん、面倒見てあげて。」
断りたかった。
だが、例えこの場に主がいなくても…彼女は、プロの執事。
「…はい。かしこまりました…。」
頼まれた用事は、よほどの事がない限り断れない真希であった。
- 92 名前:第八話 投稿日:2002年10月23日(水)16時58分45秒
『Tochter.』の店員の制服である、ギャルソン姿になった紗耶香を見て…なつ
みは息を呑んだ。
「こういう服、けっこう慣れているのですが…ギャルソンの格好と言うのは初めてですね。
…いかがでしょうか、安倍様?」
「に、似合うっ!!すごく似合いますよ、市井さん!!」
なつみは、反射的にそう答えた。
(ひとみも『似合い過ぎ』って思ったけど…この人もすごく似合う…。)
もしかしたらひとみ以上かも、と思ったなつみ。
「それでは、安倍様。私の仕事内容を教えて頂けますか?」
「ふえっ!?あ、ああ、ハイ。仕事内容ね…。」
なつみは、紗耶香をまともに見られない。
(こ、こんなにカッコいいなんて…は、反則だべさ、石川家っ!!)
どぎまぎしているなつみに、心配そうな顔の紗耶香が言う。
「…安倍様?どうなさいました?」
「ど、どうって…いや、なんでもないべさっ!!」
思わず出てしまった訛りに驚いて、口を押さえるが…時、すでに遅し。
- 93 名前:第八話 投稿日:2002年10月23日(水)16時59分10秒
- 「…べさ?」
聞かれてしまっていた。
(うひゃあぁぁぁぁぁぁっ!!なっちの馬鹿ぁーっ!!こんなカッコいい人の前で訛っちゃ
うだなんてぇぇぇぇぇぇっ!!)
もっと早く、訛りを直す訓練をしておけば良かった、と後悔した、その時。
「…あははっ。可愛いですね。」
「ふへっ?」
「可愛いですよ、安倍様。」
「は…あ、ありがとうございます…。」
顔が、赤くなる。
「あ、あのっ!!」
「はい?」
「市井さんは、カッコいいですっ!!」
「え?」
「…あああああっ!ごめんなさい!!なっち、もう、何言ってんだか…っ!!」
真っ赤な顔で、倒れそうにしているなつみを…紗耶香は支える。
「大丈夫ですか?」
「だ、だいじょぶです…すみません…。」
- 94 名前:第八話 投稿日:2002年10月23日(水)16時59分43秒
- 「あの。」
「へ?」
紗耶香の苦笑が、なつみの目に入った。
「…嬉しいです。ありがとうございます。」
「はひ?」
「…カッコいいって。」
「・・・・・・っ!!!」
なつみの心臓が、どくんどくんと存在を主張し出す。
(待て、なっちの心臓っ!!)
真っ赤な顔をぺちぺちと叩く。
(誓ったっしょ?あの人以外、好きにならないって。
どんな素敵な人が現れても、あの人を愛し続けるって…。)
色あせない、大好きだったあの人。
その顔を思い出して、なつみは心臓を落ち着けた。
「それで、安倍様。仕事内容は?」
「ああ、はいはい。…仕事内容よりも、まず、お願いがあります。」
「はい。」
- 95 名前:第八話 投稿日:2002年10月23日(水)17時00分16秒
- こほん、と咳払いをして、なつみは言った。
「…なっちの事は、『安倍様』じゃなくて『なっち』って呼んで下さい。
…なんか、様付けは慣れなくて…。」
すると紗耶香は、一瞬きょとんとして…それから、優しく微笑んだ。
「わかりました、なっち。」
静めたハズのなつみの心臓が、また激しく動き出した。
- 96 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月23日(水)17時00分48秒
今回、またしても梨華ちゃんお休み…(汗)
いしよしメインなはずなのにー(大汗)!!
でも、次回は絶対に出演するハズです!!
>ひとみんこ様
あいぼん風ののたん、ナイスです!!
いちーちゃんとあの人は、どうカラむのか…うふふふふ☆
- 97 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月23日(水)17時03分01秒
- ごめんなさい…落としてしまいました…(汗)
>キャンドル様
いちーちゃんとなっちは、こんなんなってしまいましたねぇ〜(汗)
妹たちは、また別のジャンルでお店が作られるんでしょう。
あいぼんはきっと、『ファンシーショップ』ですね(笑)
- 98 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年10月23日(水)20時59分00秒
- よっすぃ〜、住む世界が違ってもがんばればなんとかなるさ。
お嬢様な石川さん、可愛いですね。惚れちゃいそうです。(w
クロイツさん、いつも良質な作品ありがとうございます。
読者としてはうれしいかぎりです。
これからも更新を楽しみに、ちょくちょく顔をだします。
よろしくお願いいたします。
- 99 名前:あおのり 投稿日:2002年10月23日(水)21時23分53秒
- よしいしは一休みですがどんどん周りが進展している模様。ケッコウケッコウ
市井さん登場で道産子なっちさん舞い上がっておりますなぁ
musix!のcafewoodstuckのウェイターなっちを思い浮かべてしまった。
石川さんも舞い上がりキャラが似合いますが、
安倍さんも舞い上がりキャラが似合うことを改めて確認(w
- 100 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月23日(水)21時48分30秒
- わちゃ〜ぁ、ミスムン、すぺしゃるばーじょん。
ひーさまでしょ! ごまたんでしょ! いちーちゃんでしょ!
3人並んだら、腰砕けになります、あたしゃ!
もう寝ます。
- 101 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月24日(木)22時46分09秒
- 連続カキコ、他スレネタでスマソ。
クロイツさん、「娘。嫌い」ですか?
お隣さん、そんなこと言わずに好きになってくださいよ〜。
せめて」、ひーさまだけでも・・・、おねげーします。
- 102 名前:第九話 投稿日:2002年10月25日(金)09時49分07秒
昨夜の、亜依の大告白の興奮もさめやらぬまま、梨華は登校していた。
(はぁ〜…亜依が保田先生を…なんて、全然気がつかなかった〜…。)
頬杖を付き、窓の外を眺める。季節はもう秋だ。
校庭から見える道路には、黄色く色づいた銀杏がどこか誇らしげに立っている。
それを眺めながら、梨華は亜依の事を考えていた。
「ねぇ、梨華さん。」
「は、はいっ!?」
そんな状態で声をかけられて、梨華は焦って振り返る。
「何でしょう?」
すると話しかけて来たクラスメートは、興奮気味に言って来た。
「今日、このクラスに転校生が来るんですって!」
「え?転校生?」
「そう!私、さっき職員室で偶然聞いちゃったの!!」
そして、クラスメートは祈るような形で手を組んだ。
「とっても可愛い方だったわ!!ミステリアスな感じで!!」
「は、はぁ…。」
- 103 名前:第九話 投稿日:2002年10月25日(金)09時49分39秒
- なおもその転校生の話を続けるクラスメートに相槌を打ちながら…梨華は思った。
(転校生かぁ…どんな子かしら?
そう言えば、ひとみちゃんも転校生として今日入学なのよね。この学校にではないのが
悔やまれるわ…。)
そこまで考えて、はたと気付く。
(…ひとみちゃんも女子高に入学するって言ってたわよね…。
あっ!!!もしかして…わたしよりも可愛い子とかいて、そっちの方が好きになっちゃっ
たりしたらどうしよう!!)
とてつもない不安に襲われる。
いきなり表情を暗くした梨華に、クラスメートは心配そうに言った。
「…梨華さん?どうなさったの?」
「い、いいえ…なんでもありません。」
「なんでもないって顔、してないわ。…保健室、行った方がよろしいんじゃない?」
「いいえ。それでは、転校生に悪いから…。」
「梨華さん、優しいのね。」
「そんな事ないわよ…。」
そんなやりとりをしていると…教室の扉が開いて、担任教師が登場。
梨華以外のみんなも、転校生の事は既に知っているらしく…担任の姿を見ただけで、全
員が黙る。
- 104 名前:第九話 投稿日:2002年10月25日(金)09時50分10秒
- 「はい、おはようさん。」
担任教師・中澤裕子は、いつもよりシーンとしたクラスを見回して微笑む。
「皆、噂とかで聞いとるな?…転校生や。」
ちょっと喜ばしげなざわめきが起こる。
「ほら、入って来。」
「はい。」
促されて入って来た少女は…噂に違わぬ容姿の持ち主だった。
とっても可愛くて、ミステリアス。
そんな少女は、ぺこりとおじぎを一つして…やっぱりミステリアスな微笑みを浮かべた。
「柴田あゆみです。よろしくお願いします。」
その名前に、全員が驚きの声を漏らす。
柴田あゆみと言えば、石川家に次ぐ大金持ち・柴田家の末っ子だ。
「ほらほら、皆静かにー。そうやな…柴田の席は…そこ、一番後ろの一番窓側が空いとる
やろ。そこや。」
「はい。」
あゆみは梨華の隣をすっと通って…梨華の、二つ後ろの席に座った。
(…気のせいかしら?)
通り過ぎる一瞬の内に、あゆみと目が合ったような気がしたのだが…。
(…気のせいよね。)
てきぱきと朝のHRを終わらせて、裕子が退室した直後…梨華は携帯を取り出した。
(…ひとみちゃん、学校はどうなんだろう…。)
耐え切れなくなって、梨華はメールを作成し始めた。
- 105 名前:第九話 投稿日:2002年10月25日(金)09時50分43秒
(うあ?)
胸ポケットの中で携帯が震えるのを感じて、ひとみは顔を上げる。
現在、三時間目の真っ最中。
こっそり携帯を取り出して、開いてみると…梨華からだった。
ちなみに、梨華がメールを作成し始めたのは一時間目が始まる前である。
作成しては『こんなの駄目っ!』と消し、また作成しては『こんなの恥ずかしいっ!』
と消し…それを繰り返しているうちに、こんな時間になってしまったらしい。
メールには、こうあった。
『ひとみちゃん、学校はどうですか?仲良いコとかできた?わたしのクラスにも、転校生
が来たの!柴田あゆみちゃんって言うコ。それで、ひとみちゃんを思い出しちゃいました。』
それを見て、ひとみの頬は緩む。
(…思い出してくれたんだ…。)
ちょっと幸せな気分に浸ってから、ひとみは返信メールを打ち始める。
『順調だよ〜!友達できたし!それに、隣の席の後藤真希って人がすごく親切にしてくれ
るんだ。』
(送信、と…。)
- 106 名前:第九話 投稿日:2002年10月25日(金)09時51分14秒
- しばらく待っていると、また携帯が震える。梨華から返信だ。
『ええ!?後藤真希!?ひとみちゃん、一年生だよね!?
…もしかして、髪の毛長くてサラサラで…身長160cmくらいの垂れ目の人?』
(えええええっ!?)
思わずがばっと横を向いて、真希の姿を確認してしまう。
(び、ビンゴ…。)
『その通りだよー!!なんで梨華ちゃん、後藤さんの事わかんの!?』
送信すると、返事はすぐに返って来た。
『…その人…わたしの家の執事なの…。』
「どえええええええええええええええええっ!!!!」
思わず叫んで立ち上がる。すると真希も、珍しく驚いた顔をした。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あんた!!!」
ビシッと指差して、そう言った瞬間…ひとみは思い出した。
授業中だった、と言う事を。
- 107 名前:第九話 投稿日:2002年10月25日(金)09時51分44秒
最悪。
真希の頭には、その言葉しかなかった。
あの、隣の席のケーキ屋の店員。
梨華の想い人。
…そして…あさ美の姉。
「いや、それは別に良いんだけど。」
最後の一つに自分で突っ込みをいれながら、自室に入る。
ひとみの事を思い出して、イライラする。
(…ヘンなあだ名付けるし!!)
思い出しただけで腹が立つ。
あの後、大変だったのだ。授業を妨害された先生には、何故か二人一緒に怒られるわ、
屋上で一人で昼食を食べている所を襲撃され、『ねーねー仲良くなろーよ』とか言われ、
強引に友達にならされた挙句、
『ねーねー、ごっつぁんって呼んで良い?てゆーか今日から後藤さんはごっつぁんだから』
とか宣言されるわ…。
おかげで、『近寄りがたい』と言う事で有名だった真希のイメージは、ガラガラと崩れ去っ
てしまったのだった。
- 108 名前:第九話 投稿日:2002年10月25日(金)09時52分15秒
- (冗談じゃないよっ!!何がごっつぁんだよっ!!)
制服を脱ぎ、スーツに着替え、髪をひとつにしばって…鏡の前に立つと、自分の顔が恐ろ
しく不機嫌に歪んでいる事に気が付く。
「…いけないいけない。」
こんな不機嫌丸出しの顔を、梨華の前に出すわけにいかない。
ばしばしと両頬を叩き、目を閉じる。
『落ち着け。静まれ。…そう念じて、心の中で十秒数えるんだ。』
執事としての、全ての技術を真希に教え込んだ人物の声を思い出す。
『十秒数えたら…仕えるべきお方の顔を、じっくりと思い出す。』
梨華の笑顔を思い出す。
『そして、完全に思い出したら、目を開く。…どうだ?苛立ちも何も、忘れられるだろ?』
(…そーだね。後藤、頑張るよ。)
唯一、真希に『子供』でいる事を許してくれた人物。
その人は去って行ってしまったけど、教えてくれた事は真希の中に残っている。
真希はネクタイを直して、部屋から出た。
石川家の本邸に着くと、もう三時二分を回っていた。
もうすぐ、梨華のご帰還だ。
- 109 名前:第九話 投稿日:2002年10月25日(金)09時52分46秒
- そうしてる内に、車が到着したと言う連絡が入る。
玄関の扉が開かれて、梨華の姿が見えると…真希はぺこりと頭を下げた。
「お帰りなさいませ、梨華お嬢様。」
「・・・・・・。ただいま…。」
いつもとは違う反応に、真希はちょっと戸惑う。
「どうなされたのですか?具合でも悪いのですか?」
そう言う真希を、梨華は潤んだ瞳で見上げる。
あからさまに顔に出したりはしないが、その表情に…真希は愛おしさを感じて微笑みを
浮かべた。
「どうなさったのですか?」
すると梨華は眉毛を寄せて、震える声でこう言った。
「真希、ずるいよぉ…。ひとみちゃんと同じクラスになれるなんて…。」
心底そう思ってるらしく、梨華の瞳からはちょっぴり涙がこぼれた。
そして、それを必死になぐさめたり安心させようとしたりしながら…真希は思う。
(…やっぱりお前なんか嫌いだっ!!吉澤ひとみっ!!!)
- 110 名前:第九話 投稿日:2002年10月25日(金)09時53分18秒
転校初日、希美はとっても順調だった。
舌っ足らずなその口調や、子供っぽいそのキャラが受けて…友達がたくさんできた。
それにどうやら希美の入ったクラスは、とても感じの良いクラスとして校内でも有名な
クラスなんだそーだ。
「それじゃ、ののは帰るのれす。」
「ええ?ののちゃん、一緒にお茶して帰ろうよ。」
隣の席の、希美が一番最初に仲良くなったクラスメート…小川麻琴にそう言われて、希美
はぺこりと頭を下げた。
「ごめんなのれす。ののははやく帰って、おうちの手伝いをしなくてはならないのれす。」
「お家の手伝い?」
「へいっ!のののおうちはケーキ屋さんなのれす!店番をしなくてはならないのれす!!」
カバンをぎゅっと握り締め、希美はすまなそうにする。すると麻琴は笑顔で言った。
「いいよいいよ。そーか、ケーキ屋さんかぁ…。いいなぁ。
今度、お休みの時があったら教えて!そしたら一緒に遊びに行こうぜ!!」
「おー!!なのれす!!」
そう返して、希美は廊下を走る。
目指すは、あさ美のクラス。
- 111 名前:第九話 投稿日:2002年10月25日(金)09時53分48秒
- (あさ美も、おともだちできたんれしょうか…。)
だけど、独特で面白いキャラの持ち主であり、ついでに頭も良いあさ美の事だ。
(きっと、にんきものになってるにちがいないのれす!!)
そう信じて、希美はあさ美のクラスの扉を開けた。
「あさ美ー!帰るのれす!!」
そう叫んだ希美にあびせかけられたのは…氷より冷たい視線。
「…あれ?」
今まで体験した事もない事態に、希美はちょっと後退した。
そんな希美の目に…一番スミの席で小さくなっているあさ美が見えた。
顔が、ちょっと青い。
「・・・・・・。」
希美は勇気を出し、冷たい視線をかいくぐって教室に入る。
「…あさ美?」
するとあさ美は、びくっとなって顔をあげた。
「…あ、ああ…ののさん。」
今、希美の存在に気付いたあさ美。
- 112 名前:第九話 投稿日:2002年10月25日(金)09時54分25秒
- 不審に思ったが…周囲の視線が痛いくらい突き刺さって来るので、希美は早足であさ美の
手を引いて教室から出た。
「…どうしたんれすか?あさ美…。」
心配そうに尋ねるが、あさ美は無理に笑顔を作って首を横に振るのみ。
「か、帰りましょう。早く帰らないと…。店番しなきゃ…。」
フラフラと歩き出すあさ美を、希美は支える。
そして、ふとあさ美の教室を振り返った。
(…いやなかんじのクラスなのれす。)
希美は、あさ美を自分のクラスに入れられる方法がないかどうか…考え始めた。
- 113 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月25日(金)09時55分14秒
第九話…紺野、一体何があったんだ!?
書いてる私もどっきどき(笑)。
そしてごっちん…がんばって…。
>ななしのよっすぃ〜様
ありがとうございまっす!!
がんばりますね!!お嬢様梨華ちゃんはもぅ、私の理想ですから(笑)
力入りまくってます。
>あおのり様
今回はいしよし出てますねっ!なんか書いてる私もうれすぃ〜☆
舞い上がりなっち、私はかなり好きなんです(笑)
>ひとみんこ様
カッケ〜!と言えばこの三人+ヤッスーだろ!!って事で(笑)
そーなんですよ!!友達みんな娘。嫌いなんですよ!!
なので、隠れモーヲタです。二年目です。
最近は、ちょっと『石川さん可愛いよね』とか言えるようになりましたが(笑)
- 114 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月25日(金)15時57分47秒
- ( ´ v `)<ののも男前になるのれす。
なんかここの、ののちゃんはしっかりもんの予感。
はい、ごちんに執事の心得を教えた人、うふふ、あの人かな〜。
- 115 名前:第十話 投稿日:2002年10月27日(日)10時47分47秒
月、水、土はバイトの日。
「ねーねー、圭ちゃんも遊びに行こうよ。」
帰り際、大学の友達にそう言われて…保田圭は残念そうに微笑む。
「ゴメン。アタシこれからバイトなのよ。」
「家庭教師だっけ?しかも週に三日。課題も大変なのに、圭ちゃんよくやるよねー。」
半ば呆れ気味の友人に、苦笑を返す。
「でも、バイト代がかなり良いからね。…もう行かなきゃ。それじゃあね。また誘って。」
「うん。頑張ってね〜。」
友人たちは揃って、校門から出て行く。
「…さて、と。」
圭はそれを見送ってから、本屋へと向かった。
また、梨華用に新しい問題集を買わなくてはならない。
圭の生徒は、梨華だけだ。他の人には教えていない。
何故なら圭は、最初は家庭教師と言うバイトをする気はさらさらなかったのだから。
(…アイツに頼まれなきゃ、家庭教師なんてやる気にゃならなかったわよ。)
幸い、梨華は真面目な生徒だった。反抗して来る事もないし、どちらかと言うと姉のよう
に慕われている感じもする。圭も梨華を妹のように思っていて、教えに行くのは楽しみだ。
だけど実は…圭は家庭教師を早く辞めたくて仕方がなかった。
- 116 名前:第十話 投稿日:2002年10月27日(日)10時48分21秒
- (…教えるのは好きだけど…あのコに、会いたくないのよね…。)
問題集を選びながら…自分よりも六つも年下の少女の顔を思い浮かべて、首を振る。
(あのコの責任じゃないわ。アタシは早く、忘れなきゃいけないのよ。…そう、あのコの
せいにしちゃ駄目なの。)
視線を棚に戻して、圭は深い深いため息をついた。
『いいなぁ、お姉ちゃんは…。私もお姉ちゃんみたく、頭が良ければなぁ…。
そうすれば…ううん、なんでもない。なんでもないんだよ、お姉ちゃん。心配しないで。』
今でもありありと思い出せる、あの子の声。
どうして、気付かなかったんだろう。
どうして、気付いてあげられなかったんだろう。
後悔は今も、抜けない棘のように圭の心をちくちくと痛めつけるのだった。
- 117 名前:第十話 投稿日:2002年10月27日(日)10時49分00秒
今日は、圭が石川家に来る日。
亜依はこれ以上なく、舞い上がっていた。
「ねえねえ、里沙!!この髪型、変じゃない?」
「…変じゃないわ。」
「ねえねえ、似合う!?」
「…ええ、似合いますとも。」
「ねえ、この服は?やっぱり私服に着替えた方が良いかなぁ?」
「…制服でもとっても可愛いってば。」
自分の部屋の鏡の前で、くるくると回りながら…延々同じよーな事を言って来る三番目の
姉に、里沙はちょっとどころじゃなくうんざりしていた。
「…それより、亜依お姉様。もうそろそろ保田先生が見える時間じゃない?」
それとなーく追い出しをかけてみる里沙。
すると亜依は、ちらっと腕時計を見て…満面の笑みを浮かべる。
「ありがとう、里沙!亜依、頑張るから!!」
そう言い残して、踊るように出て行った姉を見て…里沙は遠い目で呟いた。
「…恋は盲目って言うけど…亜依お姉様は見えなさ過ぎよ。…アレで、私には気付かれて
ないって思ってるんだから…。バレバレだっての。」
里沙はソファーから立ち上がって、勉強机へと向かった。
さあ、今日の授業の復習をしなくては。
- 118 名前:第十話 投稿日:2002年10月27日(日)10時49分36秒
亜依は、どきどきしながら圭を待っていた。
そして、壁にかけてある鏡をちらっと見る。
いつもは頭の両サイドでおだんごにしている髪を、今日はポニーテールにしてみた。そ
れも、ただのポニーテールじゃない。ウィッグまで使って、かなり可愛くしてみた。
クラスメートが今日、こっそり持ってきていた雑誌に載っていた髪型だ。
ちょっと大人っぽくなりたくて…頑張った。
(…気付いて、くれるかな?)
と、そこに…圭が来た。
亜依の心臓が、いつも以上にどきどきと騒ぎ出す。
(よっしゃ!!)
心の中で──ちょっとはしたないけれど──拳を握る。
そして…。
「保田先生ーっ!」
その亜依の声に、圭はちょっと身構えたが…今日は背中に飛びかかられなかった。
その事に拍子抜けしている圭の前に…亜依は早足で近付く。
「こんにちわっ!!」
声が震えないように、顔が赤くなり過ぎないように。
注意しながらそう言った亜依の目に映ったのは…驚愕に見開かれた、圭の目。
「…愛…っ!!!」
- 119 名前:第十話 投稿日:2002年10月27日(日)10時50分07秒
- まるで呟くように発せられたその言葉を、亜依は聞き逃さなかった。
「はい?」
自分の名前を呼ばれたのかと思って、亜依は思わず返事をしたが…圭の様子から、呼ばれ
ているのが自分じゃない事に気が付く。
圭の顔は、真っ青だった。
「や、保田先生?」
その、亜依の言葉を聞いてから…保田は、崩れ落ちるようにして倒れた。
「保田先生っ!!ちょ、ちょっと誰か!!誰か来て!!!」
悲鳴のような亜依の言葉に、使用人達が集まる。
「どうなさいました?亜依お嬢様。」
「保田先生が倒れちゃって…!!大丈夫!?保田先生、保田先生ってば!!」
しかし、圭は返事をしない。どうやら気を失っているようだ。
圭は、使用人達の手によって客間へと運ばれて行った。
- 120 名前:第十話 投稿日:2002年10月27日(日)10時50分39秒
その頃、梨華は『Tochter.』にいた。
「…そう、お友達…たくさんできたの。よかったね、ひとみちゃん…。」
微笑んではいるものの、梨華の表情には元気がない。ひとみはちょっぴり困った。
(…どうしたんだろう、梨華ちゃん…。元気ないなぁ。あたし、もしかして何か変な事言っ
ちゃったのかな?…でも、弱弱しい笑顔の梨華ちゃんも可愛い…。)
そんな事をひとみが考えていると、唐突に梨華が叫んだ。
「ああっ!!いっけない!!今日、家庭教師だったんだ!!もうそろそろ帰らなきゃ…。」
「あ、そ、そうなの?ごめんね、長々と引き止めちゃって…。」
「ううん、こっちこそ…。」
(…ああ、梨華ちゃん!!まだ帰したくないぃぃぃぃっ!!)
(…ああ、ひとみちゃん!!まだ帰りたくないよぉぉぉぉっ!!)
((もっと一緒にいたいぃぃぃぃっ!!!))
お互いに名残惜しさを感じまくっている。しかし、お互い相手が自分と同じ事を考えてる
とは、夢にも思っていない。
(…駄目だ、吉澤ひとみ!!ここで引き止めたりしたら…タダのウザい女だ!!)
(…駄目よ、梨華!!ここで留まったりしたら…タダのしつこい女よ!!)
同時に、心の中でため息を付いた。
- 121 名前:第十話 投稿日:2002年10月27日(日)10時51分09秒
- 「そ、それじゃひとみちゃん。また明日…。」
「う、うん…また来てね…。」
帰りたくない梨華と、帰したくないひとみの視線が合った…その時。
がーっ
「梨華お嬢様!!」
自動ドアが開いて、真希が飛び込んで来た。
「真希!?」
「ごっつぁん!!」
二人のユニゾンを聞いて、真希は一瞬複雑そうな顔をしたが…すぐに引っ込めてこう言っ
た。
「早く、お戻り下さい!」
「あ、ああ…ごめんなさい!もう保田先生いらしてるのね。すぐに…」
「そうじゃないんです。保田先生が倒れられて…。」
「ええっ!?」
梨華の足元が、ふらつく。
「な、なんで!?」
「それはわかりませんが…実は倒れられたのが、亜依お嬢様の目の前だったみたいなんで
す。」
「亜依の!?」
- 122 名前:第十話 投稿日:2002年10月27日(日)10時51分41秒
- 梨華の顔から、血の気が引く。
しかし、すぐに気を持ち直して…背筋をしゃきっと伸ばす。
「…すぐに行きます。わたし、亜依の側にいてあげなきゃ!」
そして、くるりと振り返って…ひとみに言う。
「…それじゃ、また明日。」
「う、うん…。」
ひとみは何と声をかけて良いのかわからなかった。
一人残された店内で、ひとみは複雑な気分に襲われる。
(…かっこよくて、キレイだったな…梨華ちゃん。)
またしても『身分の差』を感じてしまい…そしてそれ以上に、さっきの毅然とした梨華
に惚れ直してしまい…。
(…胸が、痛いな。)
ひとみは胸を押さえて、切なそうな笑顔を浮かべる事しかできなかった。
- 123 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月27日(日)10時52分11秒
第十話…よーやくここまで来ましたねぇ。なんだかしみじみしてしまいます。
まだまだ続きますが、皆様どうぞよろしくお願いします!!
>ひとみんこ様
ののたんはしっかりものにする予定です!!…あいぼんとからめるかどーか、迷ってます。
あいぼんと一緒になると、とたんにイタズラ天使になっちゃうんで…迷いまくりです(笑)
- 124 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月27日(日)20時01分52秒
- いや〜まいったな〜、連載中フォルダのトップになってしまいましたよ。
ウチのブラウザ閲覧歴の多い物ほど上に来るんですわ。
わたしにとっての娘。小説の王道、「よしりか」がらみの
オールスターキャスト、たまりません。
毎日、チェックします♪
- 125 名前:第十一話 投稿日:2002年10月28日(月)16時05分02秒
梨華が石川家本邸に着いた時には、亜依はひどい状態だった。
暴れたり大声を出したりしているわけではないがひどく取り乱していて、自室に一人で
こもって誰も近付けさせず、声を殺して泣いていた。
梨華はそれを、なんとか落ち着かせて…まだ目覚めない圭の枕元に二人で立った。
「…保田先生…。」
まだ泣いている亜依を、後ろからぎゅっと抱きしめて…梨華は言った。
「…大丈夫。大丈夫よ。先生、ここの所ちょっと疲れ気味だったみたいだから…亜依のせ
いで倒れたんじゃないわ。」
「…うっく…でも、倒れる直前『あい』って言ったよ?
亜依の事呼んだんじゃないって思ったけど…えっく…も、もしかしたらアレ、亜依の事
だったのかも…。」
「そうとは限らないわよ。…今は、保田先生が目覚めるのを待ちましょう。」
「…うん…。」
だけど、亜依の涙は止まらない。
それを横目で見ながら…梨華は心の中でため息をついた。
無理もない事だ。
梨華だって、目の前でひとみに倒れられたら…と考えると、それだけで背筋が凍る。ショッ
クを受けない方がおかしいのだ。
眠っている保田の顔は、とっても苦しそう。
- 126 名前:第十一話 投稿日:2002年10月28日(月)16時05分35秒
- そして…。
「…い。あい…っ!!」
「え?」
梨華が振り返ると、亜依は真っ青な顔をしていた。
「…また、呼んでる。『あい』って…。」
「誰の事なのかしら…。」
「わからないけど…亜依の事かなぁ?」
「…この様子だと、ちょっと違う気がするけど…。」
梨華がそう言った直後。
「愛っ!!!」
「「うきゃぁっ!!」」
いきなり叫んで起き上がった圭に、梨華と亜依はそろって驚く。
「「・・・・・・。」」
驚きのあまり呆然とする二人を前に、圭は荒い息をついて…それから周囲を見回した。
「…あれ?ここって…。」
そして、驚きの表情のまま固まる梨華と亜依を見て、思い出す。
そうだ、ここは石川家だ、と。
そして自分は、梨華に勉強を教えに来たはずだった。
(…それがなんで、寝てるの?)
そう考えると、さすがに亜依よりは早く我に返った梨華が笑顔を作る。
- 127 名前:第十一話 投稿日:2002年10月28日(月)16時06分07秒
- 「お、お目覚めですか?…保田先生、倒れられたんですよ。」
「そ、そう…。」
「侍医によれば、貧血のせいですって。」
「あ…ああ、確かにここの所、貧血気味だったけど…。」
「大学忙しいのに、週三回も来て頂いてるんですものね…。すみません。」
頭を下げる梨華に、圭は慌てる。
「いや、そうじゃないのよ。それは大丈夫なの。
…それより、亜依お嬢様。ごめんなさいね。」
今までじっと黙ってた亜依の体が、びくっと震える。
「びっくりしたでしょ?いきなり倒れちゃって。」
「…ごめんなさい…。」
また、亜依はぽろぽろと涙を流し始める。そんな亜依を見て、圭は驚く。
「な、なんで亜依お嬢様が謝るの?」
「だって…だって保田先生、亜依の事見て倒れちゃったんだもん…!きっと、亜依がなん
かしちゃったんだ…!!!」
「違うのよ、そうじゃないの。」
- 128 名前:第十一話 投稿日:2002年10月28日(月)16時06分40秒
- 「でも…。」
そんな様子の亜依の肩に、保田は両手を置く。
「本当に、亜依お嬢様のせいじゃないの。…強いて言うなら、アタシのせい。」
保田の声は、これ以上なく優しい。
そして、圭は梨華に言った。
「石川。亜依お嬢様と二人で話したいから…席外してくれる?」
梨華は、泣いている亜依が気になったが…それでも、素直に頷いた。
- 129 名前:第十一話 投稿日:2002年10月28日(月)16時07分16秒
梨華が出て行って二人っきりになると、保田は笑顔を浮かべて言った。
「今日、亜依お嬢様はいつもと違う髪型してたでしょ?」
「…う、うん…。」
亜依の顔が、ぽっと赤くなる。
(気付いてくれてたんだ…。)
そんな亜依に、保田は続けた。
「それを見て…死んだ妹を思い出しちゃったのよ。」
「え…っ?」
「自殺だったの。」
一瞬、亜依は動けなかった。
息をのむ事もできず、ただただ目を見開く。
そんな亜依にかまわず、独り言のように圭は続ける。
「…あい、って名前でね。でも、亜依お嬢様とは字が違うの。愛情の愛って書くのよ。
同じ姉妹なのに、アタシとまるで正反対。
勉強が苦手で、成績はいつもあんまり良くなくて…でも、優しい子だった。」
いつの間にか、圭の視線は窓の外に投げられている。
「…この近所の中学に通ってたんだけど…どうやら、いじめにあってたらしいの。クラス
にすごく悪いヤツがいて…そいつにずっといじめられてて。
ある時、『テストで90点以上取れなければ、援助交際しなきゃいけない』ってクラス
で決まりを作られて…それで、あんまり勉強ができなかった愛は…90点以上は取れなく
て。」
- 130 名前:第十一話 投稿日:2002年10月28日(月)16時07分48秒
- 亜依の目から、ますます涙が流れ出る。
「あの子も馬鹿よね。そんなの、無視しちゃえば良かったのに。
でも、断りきれなくて…援助交際始めちゃって。そいつに脅されてお金巻き上げられて、
後戻りできなくなっちゃって。それで去年、学校の教室で首吊って死んじゃったの。」
圭の目は、すごく遠い。
きっと、夜の闇の中に妹の姿を見ているんだろう。
「…怒りも憎しみも、湧いて来なかった。
湧いて来たのは、後悔ばっかり。
なんで、気付いてあげられなかったんだろうって。
気付いてたら絶対、守ってあげたのに。打つ手は色々あったのに。」
涙を流す亜依の頭をなでながら、圭は言う。
「…亜依お嬢様の、今日の髪型…愛がいつもしてた髪形だったの。
それで、思い出しちゃって…亜依お嬢様が、愛に見えちゃって…それで、ちょっと驚い
ちゃったのよ。
だから、亜依お嬢様のせいじゃないの。」
- 131 名前:第十一話 投稿日:2002年10月28日(月)16時08分19秒
- そう言われても…亜依の目からは、涙が止まらなかった。
「…そいつ、愛ちゃんをいじめたヤツ!!亜依は許せないよ!」
涙を流しながらも、きっぱりと亜依は言い放った。
「そんな事、絶対に許されないんだから!」
「亜依お嬢様…。」
困惑顔の圭に、亜依は言う。
「保田先生が怒れないなら、亜依が怒る!!」
「ええっ!?」
「亜依が、かわりに怒る!!」
亜依の顔には、悔しさがにじみ出る。
「…保田先生の為に、亜依…何かしたいんだもん!それに、すごく腹が立つし!!
だから亜依、保田先生のかわりに怒る!!」
拳を握り締めて、亜依が高らかに宣言する。
そんな亜依を、圭はやさしく抱きしめた。
「…ありがとう。亜依お嬢様は優しいわね…。」
圭の腕の中の亜依の顔が赤いのは、怒りの為なのか…それとも、別の理由なのか。
それは、亜依にもわからなかった。
- 132 名前:第十一話 投稿日:2002年10月28日(月)16時08分52秒
(…何事だべさ。)
夕食の席についた妹達を見て、なつみは驚いた。
全員、一様に元気がない。特にあさ美は、まるで葬式のような表情だ。
(…いや、葬式でだって、こんな絶望的な表情してるひとはいないっしょ…。)
なつみはご飯をよそいながら、心の中でため息をついた。
「…はい、みんな!ごはんにするべ!いっただっきま〜す!!」
必要以上に明るく、テンション高く言ってみたが…なつみ以外はぼそぼそと「いただきま
す」と呟いたのみ。
(…すっごいハズカシイべさ…。)
味噌汁に口をつけながら、なつみは思う。
(みんな、どーしちゃったんだろう…。何か嫌な事でもあったのかなぁ?)
考えているだけでは、わからない。
なつみは、決心した。
わからなければ、訊けば良いのだ。
- 133 名前:第十一話 投稿日:2002年10月28日(月)16時09分22秒
- 「…ねえねえ、のの。学校はどうだったんだべ?」
暗い中でもそれなりに明るい表情をしている希美に尋ねると、希美は苦笑とも取れる微笑
みを浮かべた。
「…楽しかったれすよ。おともだちもできたのれす。」
「クラスの雰囲気はどうだった?」
「すごーくよかったのれす。」
いつもならば、きかなくてももっと喋ってくれる希美なのだが…今日は、それだけ言う
と黙ってしまった。
「…ひ、ひとみは?学校はどうだった?」
するとひとみも、力ない笑顔を浮かべる。
「うん。楽しそう。石川家の女執事と隣の席で、いろいろ教えてもらえるし。」
その言葉に、あさ美がぴくっと反応する。
それを知ってか知らずか、ひとみは続けた。
「後藤真希って言ってね。みんなは『近寄りがたい』って言ってるけど…あたしはけっこー
良いヤツだと思うよ。」
「へえ〜。ひとみと同い年で執事だなんて…カッコイイなぁ〜。」
「うん。だよね。」
それだけ言って、ひとみも黙ってしまう。
- 134 名前:第十一話 投稿日:2002年10月28日(月)16時09分54秒
- 困ったなつみは、あさ美を見た。
「…あさ美は、どうだったべ?」
「・・・・・・。」
あさ美はうつむいて、箸も茶碗も置いた。
そして、右手をポケットに入れて…黙りこくる。
「…あさ美?」
訝しげななつみに、あさ美は無理矢理笑顔を見せた。
「だ、大丈夫。楽しかったですよ。完璧です。」
希美が何か言いそうになったが…あさ美は右手をポケットに入れたまま立ち上がった。
「…ごちそうさま。」
「え?ぜ、全然食べてないのに…」
「もう、おなかいっぱいなんです…。」
そう言い残して、あさ美は部屋へと帰って行った。
残された三人は、顔を見合わせた。
不思議そうな顔のなつみとひとみ。しかし、希美は…困り顔をしていた。
(…あさ美のクラスのこと…おねーちゃん達にいったほうがいいのれしょーか…。)
あの、暗い雰囲気を思い出して、言おうかと思ったのだが…あさ美の口から何も言われて
ない事を言うのもどうか、と、希美は迷っているのだった。
- 135 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月28日(月)16時10分24秒
今回、ちょっと暗いですね(汗)
次回は明るくなりますよーに…(←オイ)。
てゆーか、全然ケーキが出て来ない(汗)あんだけ一生懸命、資料集めたのに(泣)
これから先では、どんどん出します!!出す予定です!!
>ひとみんこ様
ありがとうございますぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜!!!!
嬉しいです!!メッチャ嬉しいですぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!
これからもがんばりますね!!どうぞよろしく!!
- 136 名前:あおのり 投稿日:2002年10月28日(月)18時27分06秒
- ちょっとちょっと!
あまりにも今のあさみちゃんにとって意味深な保田先生のエピソードじゃないですか!
続きが気になる〜
私の今の予感が杞憂に終わりますように…
- 137 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月28日(月)20時23分34秒
- 今回は、ちょっとブリザード状態でしたね。(チャミさまのギャグの様に)
人生ほのぼの状態ばっかりだと、ボケてきます。
つらさの後に来る喜びは、ずっと大きな物になります。
みんながんばれ!
- 138 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年10月28日(月)21時19分23秒
- クロイツ さま
あまあまの展開かと思えば、だんだん怪しい雲行きに...。
がんばれ、あさ美ちゃん!!
いつも更新楽しみにしています。
これからもがんばってください。
PS:『わたしの望み。』を保存さていただきましたが、
こちらの作品も保存させていただいてよろしいでしょうか?
- 139 名前:第十二話 投稿日:2002年10月29日(火)21時14分19秒
学校に行くまでの道が、すごく遠く感じる。
昨日、同じ道を通った時には…こんなに遠いとは思わなかったのに。
(…知らない道の方が、遠く感じるはずなんですよね。理論的には。)
あさ美は、心の中でため息をついた。でも、表には出さない。
「…あさ美ぃ…どうしたんれすか?」
隣を歩く希美に言われて、あさ美の身体がびくっと震える。
「えっ!?ど、どうもしないですよ!?完璧です、完璧っ!!」
「…とてもそうは見えないのれす…。」
「大丈夫ですよ。本当に。何でもないんです。
…そ、そう!ただちょっと、風邪気味みたいで!!それで、ちょっとダルいんです!!
それだけですから…!!!」
そのあさ美の様子に…希美は果てしない不安を感じる。
(いつものあさ美じゃないのれす…。)
いつもは、必要以上に自分の事は喋らないあさ美。本当に『大丈夫』なのだったら、絶
対こう言う言い方はしないだろう。
だが、それがわかっても…希美には、どうして良いのかわからなかった。
- 140 名前:第十二話 投稿日:2002年10月29日(火)21時14分50秒
- 二年生の教室がある、校舎の四階にたどり着く。
「…それじゃ、ののはこっちれすから…また。」
「…はい。それじゃ。」
「…あさ美っ!!」
希美は、教室へと歩いて行こうとするあさ美に、後ろから抱きついた。
「の、ののさん!?」
驚くあさ美に、希美は言った。
「ののは…ののは、あさ美の味方なのれす!!」
あさ美の身体が、硬直する。
それを感じながら、希美は続けた。
「なにがあっても、ののは…あさ美の味方なのれす!!
だから…なにかつらいことがあったら…素直にいうのれす!!」
あさ美は、右手をポケットに突っ込んだ。
そして、ポケットの中で『あるもの』に触れる。
「…ありがとうございます、ののさん…。」
外に出ている左手をぎゅっと握り締め、あさ美は言う。
- 141 名前:第十二話 投稿日:2002年10月29日(火)21時15分21秒
- 「…本当に、大丈夫なんです。私は完璧なんです…っ!!」
そういい残して、あさ美は駆け出した。
「あさ美ぃっ!!」
その背中を見て、希美は涙ぐんだ。
どう考えても、あさ美は『完璧』な状態なんかじゃなかった。
(…それに…さいごの言葉は…『たすけて』って言ってるようにしかきこえなかったのれ
す…。)
希美はしばらく、その場から動けなかった。
- 142 名前:第十二話 投稿日:2002年10月29日(火)21時15分51秒
市井紗耶香は、謎の人だった。
メモを取っている様子もないのに、一度教えた事は二度と質問して来ない。しかも絶対
間違えない。
接客もプロ並だ。紗耶香一人で、ひとみ・希美・あさ美の三人分は働いてくれる。
そして…ひとみ・希美・あさ美が帰ってくる直前に、見計らったかのように去って行く。
「…あの〜、紗耶香さん?」
なつみは耐え切れなくなった。
紗耶香は、謎が多すぎるのだ。
好奇心がくすぐられちゃってくすぐられちゃって、いてもたってもいられない。
「はい、なんでしょう?なっち。」
振り返りざまのその笑顔も、完璧なまでに男前。なつみの心臓が、知らない内に跳ねあが
る。
(…だ、駄目だってば、なっち。)
心を落ち着けて、口を開く。
「い、嫌だったら答えなくても良いんですけど…紗耶香さんって、どこにお住まいなんで
すか?」
なるべく訛らないように、細心の注意を払う。
それでもちょっと訛っているのだが、本人は気付いていない。
- 143 名前:第十二話 投稿日:2002年10月29日(火)21時16分24秒
そんななつみに、紗耶香は笑顔で答える。
「この近所です。」
「…そ、そうですか…。」
「あ、もうそろそろ、柴田様がご来店になる時間です。
…確か大谷様、本日は予約をされてたのではありませんか?」
紗耶香に言われて、なつみは思い出す。
「そう。特注のフルーツケーキ1ホール。『メロンをメインにして下さい』って言われ
て…なっち、ちょっとびっくりしたべ。」
「そうですね。メロンが入ったケーキはあまり珍しくありませんが…メロンがメインの
ケーキなんて、ちょっと珍しいですよね。」
「…だけど、なっちはプロだべさ!!美味し〜いケーキに仕上がったんだべ!!」
「それは素晴らしい。さすがはなっち。」
「へっへへへ♪」
なつみは、完璧に訛りが出てしまっている事に気付いてない。
ついでに『どこに住んでいるのか』という質問もはぐらかされてしまった事にも、気
付いていない。
- 144 名前:第十二話 投稿日:2002年10月29日(火)21時16分54秒
- 「それで、そのメロンのケーキの名前はどうなさったんですか?」
「う〜ん…それが、ちょっと迷ってるんだべ。ウチのケーキ屋の名前、ドイツ語っしょ?」
「そうですね。…それが、何か?」
「なっち、ドイツ語は全然なんだべ。フランス語とイタリア語ならなんとかなるんだけ
ど…。」
なつみは腕を組んだ。
「この店の名前、なっちじゃなくてオーナーが付けたから…。
…ドイツ語の店なのに、フランス語やイタリア語の名前のついたケーキ売ってるなん
て…アンバランスだべさ。」
すると紗耶香は優しい笑顔を浮かべた。
「それなら、日本語の名前をつけたらいかがでしょう?
そっちのほうが、お客様にはなじみやすいかも知れません。」
「おおっ!!ナイスアイデアだべっ!!!」
なつみは目を輝かせた。
(…なんて名前にしようかなぁ…。
そうだっ!!ひとみと希美とあさ美のおやつにも、このケーキを焼いてあげよう!!)
なつみと紗耶香は、顔を見合わせて…にっこりと微笑んだ。
- 145 名前:第十二話 投稿日:2002年10月29日(火)21時17分26秒
まるで、地獄のようだ。
あさ美は、そう思っていた。
「それじゃあ、この問題を…そうだ。転校生の紺野さんにやってもらおう。
紺野さん、前に出て来て。」
まだ若い数学教師に言われて、あさ美はびくっとなって立ち上がった。
「は、はい…っ。」
「解ける?ちょっと難しい問題だけど。」
「…は、はい…。」
あさ美はノートを持って、前に出た。確かに、中学二年にしては難しい問題だ。だが、
あさ美を悩ませる事はできないようだ。
黒板の前に立ったあさ美は…体中にあびせかけられる冷たい視線を感じながら、チョー
クを握る。
(…今は、問題に集中しよう。)
そうは思っても、ひそひそと交わされる声が耳に入る度…あさ美の思考は停止しそう
になる。
それでも、チョークは動かす。
- 146 名前:第十二話 投稿日:2002年10月29日(火)21時17分59秒
- だけど、視線と声は気になる。
(…たすけて…っ!!!)
そう思って…無意識のうちに視線を右のポケットに移す。
右のポケットに入っているもの…それは…
真希に借りて、まだ返していないハンカチ。
(…後藤さんっ!!!)
その顔を思い出すだけで…あさ美は、癒される。そして、勇気が出る。
あさ美はいっきに、答えを書き終えた。
「…できました。」
すると、数学教師は笑顔で頷く。
席に戻る最中も、視線や声は聞こえて来た。
でも、あさ美は背筋を伸ばして歩く。
真希のハンカチがくれた勇気だ。
席に着いたあさ美に、数学教師は笑顔で言った。
「すごいわ、紺野さん!!実はこれ、都立の高校入試で出題される問題なのよ!
しかも、正解!!完璧に正解よ!これ以上、早く解く方法はないはず!」
「は、はぁ…どうも…。」
顔をちょっと赤くして、あさ美が言うと…クラスメート全員が、シーンとする。
- 147 名前:第十二話 投稿日:2002年10月29日(火)21時18分29秒
- しかし、興奮状態の数学教師は気付かない。
「すごいわ!!さすがは紺野さん!!
この前の全国統一模試では、並み居る中学三年生をおしのけてTOP3に食い込んですっ
てね!!素晴らしいわ!!」
その言葉で、クラスの空気が凍りつく。
数学教師が次の話に進んだ時…あさ美に、たくさんの手紙が回されて来た。
ノートの切れ端のようなその手紙たちを、あさ美が開く。
『でしゃばるんじゃねーよ、このブス!!』
『調子に乗んな!!』
『死ね!!!』
どの手紙にも、罵詈雑言が書かれている。
あさ美は、ポケットの中のハンカチを握り締め…必死に、涙をこらえた。
- 148 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月29日(火)21時18分59秒
今回、よーやくケーキが出て来ましたね(笑)ちょっとだけだけど。
そして…紺野。
紺野ぉー!!ごめんよー!!!
こんなひどい役になるとは…私も想像してなかったんだよほ…(泣)!!!
>あおのり様
こんこん…こんな事になってます(泣)
杞憂に終わりそうにない気配がしなくもないけど…きっと救いはあるはずです(汗)
>ひとみんこ様
今回もちょっぴりブリザード…(汗)
梨華ちゃんのギャグっつーか、ヒトミ・ヨシザワの世界のジョーク並でしょうか(笑)
わ、私も頑張ります…。
>ななしのよっすぃ〜様
ありがとうございます♪
…てゆーか、こっちもして頂けるんですか!?マジですか!?
うれしいです!!ありがとうございます!!
こんなんでよければ、どうぞ保存してやって下さいませ☆
- 149 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月29日(火)22時13分02秒
- 可哀想ですが、「こんこん」このの役はまりすぎです!
他の誰でも駄目です、完璧です!
ダイジョブ、貴方にはののがいます。
さやりん、謎の人?
- 150 名前:第十三話 投稿日:2002年10月31日(木)22時14分03秒
麻琴は、ぽろぽろと涙を流す隣の席の少女を前に、困っていた。
(…どうしろって言うんだよぉ…。)
隣の席の少女は、昨日転校して来たばかりの転校生だ。先生から『何かと面倒見てやれ』
と言われてるし、何よりもこの実年齢よりも遥かに幼く見えるこの少女が大好きになって
いた。
困っている事があるなら、助けになりたい。だが、少女ははっきりと涙の訳を言わない
のだ。
「…ねえ、ののちゃん。どうしたの?」
「ののは…ののは、ムリョクなのれす…。」
「何で?何でののちゃんは、自分が無力だって思うの?」
「うぇっく…らって…らって!あさ美があんなにつらそうにしてるのに、ののにはなにも
してあげられないのれすっ!ののは…ののはおねーちゃんなのに…!!」
麻琴には、意味不明だ。
あさ美と言うのが、希美の苗字の違う同い年の妹(家庭の事情が、いろいろと複雑らし
い)って事は知っている。
だが、何が起こっているのかはサッパリ見当が付かない。
「…ののちゃん。」
麻琴は優しく、希美の頭を撫でた。
- 151 名前:第十三話 投稿日:2002年10月31日(木)22時14分35秒
- 「私、ののちゃんともっと仲良くなりたい。
昨日会ったばっかだけど、ののちゃんの事は一番の友達だと思ってる。だって今まで、
ののちゃん程気の合った友達っていなかったんだもん。」
「うっく…ののも、まこっちゃんほど気のあうおともだちははじめてなのれす…。」
「でしょ?私ら、けっこー良いコンビになりそーじゃん?」
麻琴の手は、休まず動き続ける。
「だからさぁ…何があったのか、一から教えてくれないかなぁ?もしかしたら私、ののちゃ
んの手助け出来るかもだし。
生徒会入ってるから、この学校の中の事だったらけっこー顔きくし、いろんな事知って
るし。」
その言葉に、希美は涙に濡れた顔をがばっとあげる。
「ほんとれすか!?」
「うん。」
麻琴はにこっと笑う。
「だからさ…教えてくれない?ののちゃんが元気になってくれるんだったら、この小川麻
琴…なんでも致しますぜ?」
なんだかアヤしいその言葉遣いに、希美は笑顔を見せた。
そして…ためらいがちに、口を開く。
「…じつは…。」
- 152 名前:第十三話 投稿日:2002年10月31日(木)22時15分09秒
「…でさぁ、あさ美の様子が変なんだよねぇ。」
「・・・・・・。」
「なんかビクビクしてるって言うか…いっつも右手をポケットん中に突っ込んで、目をぎゅっ
とつぶってからじゃないと喋ろうとしないし。」
「・・・・・・。」
「もともと、ちょっと変わったコだったんだけどさぁ。
あさ美と暮らしはじめて、もう二年になるけど…あんなあさ美、初めて見るんだよね。」
「・・・・・・。」
「ねえねえ、ごっちん。どー思う?」
真希の手の中で、割り箸がぼきっと四つに折れる。
「ごっちん、折れたよ?割り箸。」
「知ってるよ!!」
真希はふるふると震えながら言う。
「…何なんだよ、その『ごっちん』ってのは…っ!!」
「え?そりゃーもちろん。後藤真希さんのあだ名。」
ひとみはしゃあしゃあとしている。
「『ごっつぁん』って言うの、ちょっと言いにくいから。ごっちん。」
「そーじゃなくて!!
何なれなれしく話しかけて来てるんだよ!!言ったじゃん!私はあんたが大っ嫌いって!!」
真希は、お腹の底から吐き出すように言う。
- 153 名前:第十三話 投稿日:2002年10月31日(木)22時15分39秒
- そう、真希は宣言したのだ。
今朝、体育館裏にひとみを呼び出して、面と向かって。
『梨華お嬢様を私から奪って行くお前なんか大嫌いだ』と。
(それなのに…!!!全然態度変わらないし!!!)
と言うより、むしろ前よりなれなれしくなっている。
怨念込めてぐぐっとにらみ付ける真希を前に、ひとみはにんまりと笑っている。
「…てゆーかさぁ…あたし、初めてなんだよね。」
「はぁ!?」
「こーゆー…なんてーの?ライバル?恋敵か?そーゆーのがいるのって。」
「なっ!!?」
真希は絶句する。
「今までは、なんとなぁ〜く告られてなんとなぁ〜く付き合って、みたいな感じだったん
だよ。本気で好きになった人っていなかったんだね、ウチ。」
「・・・・・・。」
「もしかしたらウチ、梨華ちゃんが初恋かも。…だからもー、楽しくて楽しくて。」
「…それで?」
真希はすでに呆れ顔だ。
「ごっちんもその『楽しい』ってのの一つ。ライバルじゃん♪青春じゃん♪
…だから、コンビ組もうよ。」
- 154 名前:第十三話 投稿日:2002年10月31日(木)22時16分15秒
- 「はぁ!?コンビぃ!?」
「そう。『梨華ちゃん大好きーズ』じゃん。ウチら。言ってみれば、共通の『好きなモノ』
を持つ同士!!これ以上、気の合う人間がいるだろうか!?いや、いない!!」
反語まで使って、ひとみはかなり熱くなっている。
「…そんな親友・ごっちんに、相談してるワケよ。ウチの妹どーしよう?って。」
「はっ?」
真希の思考が、一時停止する。
「し、しんゆうっ!?ちょ、ちょっと待った。勝手に決めないでよ!!」
「いーや、決まったね。ウチら親友。でもって『梨華ちゃん大好きーズ』。」
「だから、勝手に決めるなってば!!」
「回避不可だから。諦めろ、ごっちん。」
「お前が言うなーっ!!!」
「ウチの事は、ヨッスィーと呼んで☆」
「絶対呼ばないから!!!」
こうして、『梨華ちゃん大好きーズ』の昼休みは過ぎて行くのであった。
- 155 名前:第十三話 投稿日:2002年10月31日(木)22時16分47秒
眠さもピークの、五時間目。
(…ね、眠いわ…。)
梨華は古典の授業を聞きながら、睡魔と闘っていた。
そこに、携帯が震える。
ディスプレイを見て、胸がうずいた。
(ひとみちゃんっ!!)
眠気など、遥か遠くに消し飛んだ。
宝箱を開けるように、大切に大切に…メールを開く。
『やっほー!五時間目って眠いよね。梨華ちゃんは今、何の授業?ウチは世界史。マジ寝
そうだよ。』
(…ひとみちゃんってば。)
梨華は顔を赤くしながら、メールを打つ。
『こんにちはっ!わたしは今、古典の授業を受けてます。わたしも眠い…でも梨華、がん
ばる!今日のおやつは、フルーツケーキが食べたいな♪』
何度も何度も読み返して、震える手で送信ボタンを押す。
すると、一分も経たない内に返事が来る。
『だったらさっき、パティシエの姉ちゃんからメールが来たんだ!今日は、珍しいメロン
のケーキ作ったんだって。それ、用意しとくよ!』
(メロンのケーキ!?)
梨華の胸が、躍る。
- 156 名前:第十三話 投稿日:2002年10月31日(木)22時17分20秒
- もともと、大のケーキ好きな梨華。ご贔屓の店の珍しいケーキとなれば、当然食べたく
なる。
『うん!食べたい!珍しいね、メロンのケーキなんて。何て名前のケーキなの?』
するとまた、すぐに携帯が震えた。
『それがねー、傑作なの!姉ちゃん、「メロン記念日」って付けたんだって。』
梨華は、口元をほころばせた。
『それじゃ、その「メロン記念日」…一つ予約ね。』
『はい、かしこまりました。「メロン記念日」一つですね?
ご一緒に、吉澤ひとみなどいかがでしょうか?』
『もうっ。からかわないでよ〜っ!』
そんな、他愛もない会話をメールでしていると、梨華の胸に甘酸っぱい香りが広がる。
(ああ、そうなのね。)
梨華は、胸を押さえて思う。
小さい頃、ずっと思い描いていた『素敵な恋』。
この甘酸っぱさは…その味なのだ。
(両想いに、なりたいな…。)
メールを眺めながら、梨華はぽつんとそう思った。
- 157 名前:第十三話 投稿日:2002年10月31日(木)22時17分52秒
麻琴は、焦った。
早くなんとかしなきゃ…取り返しのつかない事になる。
(…まさか…ののちゃんの妹が入ったのが、あのクラスだったなんて…!!!)
麻琴は小さく舌打ちする。
『あのクラスに入ってから…あさ美のようすがヘンなのれす…。』
あの、舌っ足らずな麻琴の親友は言った。
『くら〜い顔で…なきそうな顔してるのに、ののには「だいじょうぶ」って言うのれす。
れも、ののにはわかるのれす。だいじょうぶなんかじゃないのれす。』
麻琴の足は真っ直ぐ、校長室に向かっている。
『あさ美になにがおこってるのか…ののにはぜんぜんわからないのれす。
れもきっと、ただごとじゃないのれす!!
ののは、あさ美をまもってあげたいのに…なにもできないのれす。ムリョクなのれす。』
「失礼します!!」
校長室の扉を、乱暴に開ける。
- 158 名前:第十三話 投稿日:2002年10月31日(木)22時18分25秒
- 「…なんだね、麻琴。」
とぼけた顔の、老人。
それが、この中学の校長であり…麻琴の叔父である。
「叔父さん…なんで、あのクラスに転校生を入れたんですか!?」
わなわなと、身体が震えている。
「また、犠牲者を出すつもりなんですか!?」
「何を言ってるんだ、麻琴。ちょっと落ち着きなさい。」
「落ち着いてられませんよ!!」
麻琴は拳を握る。
「去年、思い知ったはずでしょう!?あのクラスは…いや、あの女は危険なんです!!」
「…しかしなぁ。」
校長は困り顔で、顎を撫でる。
「彼女は『反省してる』と言っているが…」
「口でなら、何とでも言えます!!
現に紺野あさ美さんに、危険な兆候が見えるんです!!去年の彼女と同じ、危険な…」
「もう、よしなさい。麻琴。お前らしくもない。」
「叔父さん!!」
麻琴の顔に、焦りの色が見える。
「…紺野あさ美を、私のクラスに入れてください。あのクラスは、危険過ぎます!!
特に、彼女みたいな…おとなしい子は!!危険なんです!!」
- 159 名前:第十三話 投稿日:2002年10月31日(木)22時18分59秒
- 「…出て行きなさい。わしは忙しいんだ。」
「叔父さん!!」
校長室から追い出されて、麻琴はひとり、唇を噛んだ。
(叔父さんがわかってないハズ、絶対ない!…見て見ぬふりしようとしてるんだ…!!)
麻琴は、壁を蹴り飛ばした。
「…大人って、卑怯だよ…!!!」
その呟きは、低く廊下に反響して…すぐに消えて行った。
- 160 名前:クロイツ 投稿日:2002年10月31日(木)22時19分32秒
メロンのケーキの名前、大決定(笑)
つーかまこっちゃん…かっけー!!なんか予想以上にかっこよくなってしまいました!!
>ひとみんこ様
こんこん…はまってますか。それはよかった(笑)。
いちーちゃんは謎の人です。どこから来て、どこに帰るのか…謎です。
- 161 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年10月31日(木)23時16分41秒
- クロイツ さま
紺野さんつらいですね。完璧ですが、切ないです。
一方、よっすぃ〜と梨華ちゃんは、あまあまですね。
お嬢さまな梨華ちゃんは最高です。髪型は巻き髪ですかね。
PS:保存の件、ご了承いただきありがとうございます。
前回と同じ場所ですが、
ttp://
isweb45.infoseek.co.jp/novel/kuni0416/text/index.html
に、保存させていただきました。
次の更新もがんばってください。楽しみに待っています。
- 162 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月01日(金)13時48分33秒
- ひーさまの暴走始まりましたね、ごちんの顔が浮かぶようです。(笑
甘々の裏で進行する闇、のの&まこぴー連合軍、こんこんの救世主に成れるか?
いや〜 娘。小説ってほんとにいいもんですね〜
- 163 名前:第十四話 投稿日:2002年11月01日(金)19時34分14秒
『Tochter.』のあまり広いとは言えない店内には、小さなカフェがある。
だが、店内でケーキを食べるのは梨華だけだ。
なつみの作るケーキや焼き菓子客は『品があって、でもとっても懐かしい味がする』とマ
ダムや令嬢達の間で評判になり、最近は客も増えたのだが…それでも、そのカフェを利用す
るのは梨華だけなのだ。
もしかしたら、マダムや令嬢達は遠慮しているのかも知れない。
『カッコ良い』と評判のこの店の店員と、毎日夕方になるとあらわれる上品で美しい少女。
この初々しい二人に、遠慮しているのかも知れない。
今日も今日とて、他の客の暖かい視線にも気付かず…初々しい二人は初々しく会話を交わ
す。
「…すごーい!!可愛い!!」
梨華は『メロン記念日』を前にして…とろけるような笑顔を見せる。
そんな梨華の笑顔を目の前にして、ひとみは目じりを下げまくっていた。
- 164 名前:第十四話 投稿日:2002年11月01日(金)19時34分46秒
- (ケーキより、梨華ちゃんの方が可愛い…。)
ケーキの製作者である彼女の姉が聞いたら怒りそうな事を考えながら、ひとみは気をとり
直してケーキの説明に入った。
「…苺と違ってメロンは酸味が少ないから、クリームは甘さ控えめなんだそうだよ。それか
ら、なつみ姉ちゃんはスポンジにもメロンの味をつけてみたんだって。」
「へぇ〜…。」
梨華は目をきらきらさせた。
「おいしそう〜っ!でも…食べちゃうのが勿体無いくらい可愛い!!」
「なつみ姉ちゃんは、デコレーション凝るからね〜。」
「…でも、食べたいっ!!いただきますっ!!」
梨華は恐る恐る、と言った感じで、『メロン記念日』にフォークを入れる。
一口食べて…梨華は頬を押さえた。
「〜〜〜〜〜〜っ!!おいしい〜〜〜〜〜〜っ!!!」
「でしょ!?ウチもさっきちょっと食べたけど、ほっぺ落ちるかと思ったんだよー!」
「うんっ!!ほっぺ落ちそうっ!!
甘さ控えめのクリームが、メロンの甘さと絶妙に合ってる〜っ!!!」
「で、コレにはダージリンが合うんだよ。」
ひとみに言われて、梨華は純白のティーカップに注がれたダージリンを一口飲む。
「…あ〜、幸せ♪」
- 165 名前:第十四話 投稿日:2002年11月01日(金)19時35分18秒
- ティーカップを両手で持って、梨華は優雅に微笑む。そんな笑顔に、ひとみの心臓が跳ねた。
(…ウチも幸せだよ、梨華ちゃん…。だって、この瞬間だけは…梨華ちゃんを独り占めして
られるんだもん。)
ひとみはテーブルに頬杖を付いて、梨華の笑顔を眺めていた。
「…そう言えば、昨日はごめんね。お騒がせしちゃって。」
「ふへっ!?」
いきなり言われて、ひとみは急いで記憶をさぐる。
そして、前日の別れ際を思い出した。
「…ああっ!!だ、大丈夫だよ。…それより、妹さん大丈夫だった?」
すると梨華はふるふると首を横に振る。
「ううん。わかんない。」
「へ?」
ひとみが驚きで身を乗り出すと、梨華は紅茶を一口飲んでから続けた。
「最初はすごく動揺してたけど…ま、それはそうよね。大好きな人がいきなり目の前で倒れ
たんだもの。動揺しない方がおかしいわね。
それで、保田先生が目覚めるまで、わたしも側にいたんだけど…」
梨華は首をかしげた。
「目覚めたら『二人きりで話したいから』って言われて、部屋出ちゃったのよね。
だから、なんで保田先生が倒れたのかも…亜依がどうしてあんなに元気になれたのかも、
わたしは知らないの。」
- 166 名前:第十四話 投稿日:2002年11月01日(金)19時35分51秒
- 「ちょ、ちょっと待った。梨華ちゃん。」
ひとみは慌てた。
「それで良いの!?知りたいって思わないの!?梨華ちゃんだって心配してたじゃん!」
「そりゃー興味はあるし、心配もしたけど…でも良いの。」
梨華はにっこりと、微笑んだ。
「だって、亜依が元気になってくれたんだもの。」
「・・・・・・っ!!」
神々しい程のその笑顔に、ひとみの心臓の音が激しくなる。
そんなひとみに気付かず、梨華は続ける。
「それ以上の事は、ないでしょ?それに…亜依だって、わたしには聞かれたくないだろうし。」
「な、なんでそう思うの?」
「だって、好きな人と二人っきりの秘密なんだよ?やっぱり、姉とは言え他の人には知られ
たくないでしょ。」
ケーキを一口、口に含む。
- 167 名前:第十四話 投稿日:2002年11月01日(金)19時36分24秒
- 「…まあ、それはそうだね。」
うんうんと頷くひとみの顔を見ながら、梨華は心の中で付け加える。
(わたしだって、ひとみちゃんとの間の秘密は…誰にも知られたくないしね。)
「ん?ウチの顔、なんか付いてる?」
あまりにまじまじと見つめたので、ひとみがそう言って来たが…梨華は微笑んで首を横に
振るだけ。
「…梨華ちゃん?今、なんか考えた?」
そう尋ねられて、梨華は口の前に人差し指を立てた。
「ナイショ♪」
そんな梨華のしぐさにも、ひとみの心はきゅんっとなるのだった。
- 168 名前:第十四話 投稿日:2002年11月01日(金)19時36分55秒
「あさ美…。」
希美の、今にも泣き出しそうな顔を前にして…あさ美は無理矢理に笑った。
「大丈夫、大丈夫なんです。完璧です。だからののさん、何も心配しないで下さい。」
これは、嘘。
心配はかけられない。大切な大切な…大好きな姉達には、知られたくない。
自分が新しいクラスで、みじめな目にあってるなんて、絶対に…!!!
昼ご飯は、かび臭い体育倉庫に隠れて食べた。
休み時間は空き教室に逃げ込んで、誰にも見つからないように息をひそめていた。
クラスメートに見つかったら、何をされるかわからなかったから。
体育館裏に呼び出されたけど、無視した。そうしたら、嫌がらせがエスカレートしたの
だ。もう、罵詈雑言が書かれた手紙をもらうなんて可愛いモンじゃなくなった。
「…それじゃ、ののさん。私、本屋に寄ってから帰りますから。先に帰ってて下さい。」
「ののも行くのれすっ!!」
「いえ…本屋にはひとりで行くのが好きなので…。ののさんは帰ってて下さい。梨華お嬢
様がお店にいらっしゃる時間に、帰れないかも知れないんで…。」
そう言われると、希美は黙るしかない。
- 169 名前:第十四話 投稿日:2002年11月01日(金)19時37分27秒
- ひとみが梨華に付きっきりになる為、接客は希美かあさ美がすなくてはならないのだ。
「…わかったのれす。ののは先にかえるのれす…。あさ美、はやくかえって来るんれすよ?」
そういい残して、希美は名残惜しそうにあさ美から離れて行った。
希美の背中が見えなくなってから、あさ美は反対方向に歩き出した。
そっちの方向には、本屋はない。あるのは公園だ。
あさ美は早足で、公園に向かっているのだった。
- 170 名前:第十四話 投稿日:2002年11月01日(金)19時38分00秒
誰もいない公園に着くと、あさ美は一目散に一番奥のベンチに駆け寄った。
(…このベンチの位置だったら…公園の入り口や遊具から見えない…。)
それを確認したと同時に、あさ美はポケットからハンカチを取り出した。
『M.G』
「…っう…ふぇ…っ!!」
血のシミの、すぐ下にあるそのイニシャルを見た瞬間から…あさ美は泣き始めた。
「…ううぅっ…っく、うえぇ…。」
ハンカチを、抱きしめた。
「あうぅ…っ、うぇっく…うあ…っく…。」
涙は、まるで滝のように流れる。
「…とう、さ…」
あさ美は、蚊の鳴くような声で言う。
「ご…っ、と…うさ…、ごと…っう…さんっ!!」
- 171 名前:第十四話 投稿日:2002年11月01日(金)19時38分34秒
- なんで、あの人の名前を呼んでいるのか…あさ美自身にもわからない。
それでも呼ばずにはいられないのだ。
(こんなの…こんなの、甘えだってわかってます…。)
真希の顔を思い浮かべながら、滝のような涙を流す。
「後藤さん…っ!!」
祈るような気持ちで、あさ美は吐き出すように呼ぶ。
(…届かなくても良い。助けてくれなくても良いっ!!ただ、今は…名前を呼ぶ事を、許
してください…!!!)
そうすれば、また頑張れる。
どんな事でも耐えられる。
…そんな気がして、あさ美は真希を呼び続けた。
「呼んだ?」
- 172 名前:あおのり 投稿日:2002年11月01日(金)19時38分47秒
- 『梨華ちゃん大好きーズ』遂に登場ですね。会員は日本だけでも1億二千万人ぐらいはいるのでは(w
あの常に超冷静な後藤執事もバカップルのアホアホぶりには手も足も出ずといったところでしょうか。(w
後藤さん抵抗するのはやめなさい、すぐ気持ちよ(ry
最後に小川がんがれ…
- 173 名前:第十四話 投稿日:2002年11月01日(金)19時38分55秒
- (幻聴…?)
真希の声が聞こえたような気がして、あさ美は顔をあげた。
だが、真希の姿は見えない。
(そう、幻聴だってば…。だって、いるワケないじゃない…。)
あさ美が視線を下に落とす。
すると…。
「ねえ、呼んだ?」
また、聞こえる。
(…いい加減、私もしつこいですね。)
深いため息をついて、肩を落とす。
その肩に、誰かの手が触れた。
「!?」
ビクッとなって、背後を見ると…そこにいたのは…
「…何?呼んだ?」
真希だった。
- 174 名前:第十四話 投稿日:2002年11月01日(金)19時39分26秒
- 「…っご…っ!?」
驚きのあまり、涙も引っ込んで…あさ美は口をぱくぱくとした。
「…ぶはっ!!!」
真希は、そんなあさ美を見て噴出す。
「あっははははははははははは!!!!金魚みたいだよ、それ!!金魚そっくりだよ!!!」
「し、失礼ですよ、それ!!てゆーかこの前から、あなた失礼です!!」
「ごめんってば…でも、面白すぎるんだもん!!あははははははははっ!!!」
その真希の笑顔を見て…あさ美の目から、また涙が溢れ出す。
今度の涙は、さっきとは違う味がした。
- 175 名前:第十四話 投稿日:2002年11月01日(金)19時39分59秒
『メロン記念日』…私も食べたい…。
てゆーか私のオリジナルのケーキなつもりなんですが…同じようなケーキが既にあったら
ごめんなさい(汗)
そして、紺野よ。
ごっちんのツボ、押しまくりです(笑)
>ななしのよっすぃ〜様
ありがとうございます!!前のに続き、コレも保存して下さるなんて…嬉し過ぎです!!
でもって、梨華ちゃんの髪は先日の「リストランテM」の梨華ちゃんの髪型っぽいのを
イメージしております(笑)。
巻いてる巻いてるっ♪
>ひとみんこ様
大暴走っ!!しかも何気に、ペースに巻き込まれてます、ごっちん。
こんこんの救世主は、のの&まこっちゃんなのか!?それともごっちんなのか!?
がんばりますので、どうぞよろしく☆
- 176 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月01日(金)19時52分59秒
- またしても落とした…(汗)
>あおのり様
梨華ちゃん大好きーズは不滅です(笑)。
でもいしよし、まだカップルじゃないんですよね。
「付き合って下さい」「はい」がありませんから。
初々しくて涙が…。
- 177 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月02日(土)00時00分31秒
- 奥の小さなカフェに「吉澤ケバ子」を行かせてみたい今日この頃。
§§§§§
§(0^〜^)§<「なぁなぁ〜ぅちにも「メロン記念日」食べさしてえ〜な〜」
そうか! こんこんの王子様を忘れてました、きっと・・・・・・・・?
- 178 名前:オガマー 投稿日:2002年11月02日(土)07時03分18秒
- クロイツさん、面白いです。
更新、楽しみにしてます。
がんがってくださいね!
- 179 名前:第十五話 投稿日:2002年11月02日(土)10時08分32秒
「どうぞ、あがって。」
扉の鍵を開けて、真希はあさ美を部屋に入れる。あさ美は恐る恐る、と言った様子で部屋
にあがる。
真希が公園の近くを通りがかったのは、全くの偶然だった。
梨華が『Tochter.』に行ってしまい、仕事をほとんど片付けてしまって暇だっ
たので、気晴らしに散歩していたのだ。
そして、あさ美を見つけた。
またもや大爆笑してしまった真希だったが、そのまま放っておくわけにも行かない。高
級住宅街とは言え、暗くなった公園で女の子が一人で泣いてるなんて、危険過ぎる。
なので真希は、あさ美を再び自宅へと連れて来たのだ。
「…紅茶とココア、どっちが良い?」
「おっ、おかまいなく!!」
「いや、どっちにしろ私も飲みたいから。…どっちが良い?」
その優しい口調に、あさ美はまた泣きたくなる。
それをぐっとこらえて…言った。
「こ、ココア…お願いします。」
「わかった。」
てきぱきと用意を始める真希の背中を見ながら…あさ美は思う。
(…はずかしいなぁ、もう…。)
- 180 名前:第十五話 投稿日:2002年11月02日(土)10時09分04秒
- 見られてしまった。
真希の名前を呼びながら、大号泣している所を。
あさ美は、自分の顔が熱いのを感じた。
「…はい、どうぞ。」
マグカップを渡されて、あさ美ははっと現実に戻る。
「あっ、ありがとうございます!」
受け取って、ぺこりとお辞儀をすると…真希が、優しく微笑んだ。
「…二度目だね。」
「え?」
「ここで、紺野さんと向き合うのは。」
「…はい。」
頬をぽっと赤くして、あさ美はうつむいた。
それと同時に、気になる。
自分ははたして、真希の目にどのように映っているのだろうか?
「…おいしい。」
「そう。よかった。」
もしかしたら自分は、この上なく醜いのではないか、と思ってしまう。
だから…転校したばかりなのに、こんなにクラスメートに嫌われるのではないかと。
- 181 名前:第十五話 投稿日:2002年11月02日(土)10時09分39秒
- 「・・・・・・。」
ふと、真希の顔を見る。
(…きれい。)
整っている。とても女性的な顔立ちなのに、男物のスーツを着ていても違和感がない。
そしてスーツの上からでも、スタイルが良いのがわかる。
(…私が後藤さんみたいにきれいだったら…こんな目にはあわないんだろうな。)
「…何?どうした?」
あまりにじっと見ていた為、真希はあさ美に問いかけた。
いえ、大丈夫です。完璧です。
あさ美は、そう言おうとした。だが…言葉が出ない。
「・・・・・・っ!!」
言葉の代わりに出てきたのは、涙だった。
「紺野さんっ!?」
「うぅ…っく、ご、ごと、後藤さ…っ。」
「何?」
「…なんでも、な、ないんです…っ!!ごめ、んなさ…っ!!」
- 182 名前:第十五話 投稿日:2002年11月02日(土)10時10分18秒
- 「何でもないって事、ないでしょ?じゃあ、なんで泣いてるの?」
「なん、でもな…っ、なんでも、ないんです…か、完璧…」
「完璧なんかじゃないよ、今の紺野さんは!」
そう言って、真希はあさ美を抱きしめた。
「・・・・・・っ!?」
真希の腕の中で、あさ美は混乱する。
(な…何が起こってるの!?)
状況分析ができない。心臓が、跳ねあがる。そして、一時的に涙が止まる。
「…紺野さん。」
「はいっ!?」
妙に甲高い声が出てしまって…あさ美は戸惑う。
そんなあさ美に、真希は言った。
「こんな事…こないだ会ったばっかりの私がして良いのかわからない。」
いつも余裕綽々に聞こえた真希の声。しかし今は、切羽詰ったように聞こえる。
「よかったら…なんで泣いてるのか、教えてくれないかな?」
「・・・・・・。」
- 183 名前:第十五話 投稿日:2002年11月02日(土)10時10分49秒
- あさ美の目から、止まってた涙がまた流れ始める。
「…良いんですか?気持ちの良い話じゃないし…後藤さんを不快にさせてしまうかも知れ
ませんよ…?」
震える声のあさ美をちょっと離して…真希はあさ美の顔を覗き込んだ。そして、指先で涙
を拭う。
「このまま何も聞かないで帰したら、きっと私は後悔するよ。
そして、『紺野さんどうしただろう』って気になって…仕事が手につかなくなりそう。」
そう言う真希の顔が、あまりにも優しかったから。
あさ美はすべてを、真希に話してしまったのだった。
- 184 名前:第十五話 投稿日:2002年11月02日(土)10時11分19秒
暗くなりかけた空を見上げて、梨華は言った。
「あ…もう、帰らなきゃ。」
「そうだね…暗くなったら、危ないし。」
名残惜しさを感じながら、梨華とひとみは席を立つ。
店を出て、門まで送る。
昨日は真希が迎えに来たので店内で別れたが、いつもはそうしているのだ。
人気のない、石川家の門前。
「…それじゃ、ありがとう。今日も楽しかった。」
「うん…ウチも、楽しかったよ。」
そんな会話を交わしながら…ひとみは、どうしようもない寂しさに襲われていた。
もっと一緒にいたい。
それは前から思っていた事だけど…最近は、それがエスカレートして来てしまった。
メールや電話じゃ物足りない。
もっと、側に寄りたい。
抱きしめたいし、キスもしたい。
- 185 名前:第十五話 投稿日:2002年11月02日(土)10時11分51秒
- (…欲求不満か、あたしは…。)
内心で苦笑する。
わかっているのだ。欲求不満などではなく、梨華への想いが膨れ上がり過ぎているのだ
と言う事は。
「…また、明日。」
いつも通り、そう言う。
その言葉を合図に、梨華は門の中へと消えて行く。
その背中を見送ってから、ひとみは店内に戻るのだ。
しかし、今日は違った。
梨華は、門の中に入ろうとしない。
華奢な背中をひとみに見せて、門の前で立ち止まっている。
「…梨華ちゃん?」
声をかけると、梨華はびくっとなって…振り返った。
その顔は…涙にぬれている。
「り、梨華ちゃん!?どうしたの!?どっか痛いの!?」
慌てて、梨華に駆け寄るひとみ。
梨華は…そんなひとみの胸に飛び込んだ。
- 186 名前:第十五話 投稿日:2002年11月02日(土)10時12分23秒
- 「っ!?」
いきなりの梨華の行動に、ひとみは驚く。そして、胸に梨華のぬくもりを感じて…ひとみ
の心臓が激しく動き出した。
「…り、梨華ちゃん!?」
「…き。」
「え?」
「すきなの。」
「・・・・・・っ!!!」
ひとみの胸に顔をうずめたままの梨華が、言う。
「もう、駄目。こんな短い時間しか一緒にいられないなんて…耐えられない。
わたし以外の人にも、その笑顔を見せてるって思ったら…胸が張り裂けそうになるの。
こんな気持ち、初めてで…どうしたら良いのかわからない。」
「り、かちゃ…」
「お客さんのひとり、じゃ嫌。もっと特別になりたい。
ひとみちゃんの、恋人になりたいの…!!!」
- 187 名前:第十五話 投稿日:2002年11月02日(土)10時12分54秒
- ひとみは、梨華を抱きしめた。壊れないように、だけど離さないように強く。
「…あたしも、好きだ。梨華ちゃんが…。」
「え…?」
「あたしも、ずっと…初めて見た時から好きだったんだ。
…届かないと思ってた。あたしなんかの、想いなんて…叶わないと思ってた…!!!」
ひとみは、梨華の顔を持ち上げる。
「…大好きだよ、梨華ちゃん…。あたしも、梨華ちゃんの恋人になりたい。」
梨華はまた、ひとみに抱きついた。
ひとみもまた、梨華を強く抱きしめた。
「「…大好き。」」
同時に言って、ちょっと笑ってから…キスをした。
- 188 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月02日(土)10時13分24秒
くっつきました!!よーやく!!十五話目にして!!!
おっしゃー!!これからいしよしラブラブシーン書きまくるぞー!!!
…いや、こんこんの事も忘れちゃいけませんが(笑)
>ひとみんこ様
ケバ子さんと夢子さんのツーショットで訪れて頂きたい☆
こんこんの王子、こんこんの前だと変わりますね〜。
>オガマー様
ありがとうございます!
がんばりますね!!これからも、どうぞよろしく☆
- 189 名前:あおのり 投稿日:2002年11月02日(土)14時26分50秒
- よーやくくっついたよしいし。
これからもケーキみたいな甘甘期待しております。
あさみちゃんもちょっと光が見えた兆しのようですが、まだまだ続きそうでちょっとドキドキ
ところで石川家の門前はやっぱり「にんきがない」んですか?(w
あう、前回は更新中に横入りレスすんまそん。失礼しました。
- 190 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年11月02日(土)17時46分25秒
- クロイツさま
更新お疲れさまです。
ただ読ませていただくほうとしては、更新の早さに感謝するばかりです。
両想いの二人が、ようやくくっつきましたか。
あまあまな、いしよしは、読んでいて楽しいです。
紺野さんも幸せにな手欲しいです。がんばれ、紺野さん!
- 191 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月02日(土)20時21分27秒
- ごちん、かっけー! 男っこ前ー!
ここのひーさまはちょっと甘ですが、ホントにクールなひーさまの前では
ごちんが女に見えてしまうのは私だけでしょうか?
ここのチャミさまって、なんか小柄に思ってしまうんですよね
じっさいはそんなに小さくないのに、なんか辻加護位に思ってしまします。
- 192 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2002年11月03日(日)01時39分57秒
- はじめまして!
今日、ここを発見して読ませてもらいました。
ひさびさに素晴らしい小説に巡り合えて、感激です。一人一人のキャラ設定とキャラ同士の関連性や背景の緻密さがすごいっす
そして何よりいしよしがサイコー
自分はもう2年くらい、いしよし小説を読みアサってますが、やっぱこのカンジが一番好きです。
これからも応援させてください!!
- 193 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月03日(日)14時51分35秒
- おおおお!!
すごい面白い!!
続きすごい期待です^^
がんばってください。
きゅーんとくる話ですね^^
- 194 名前:まるみ 投稿日:2002年11月05日(火)03時30分59秒
- どきどきどき・・ピーー
「先生!患者さんの心臓が・・!」
「い・いかん!早く!」
・
・
・
「早く作者がうpしなければ患者が目覚めないぞ!」
クロイツさん、患者共々楽しみにまっています。
- 195 名前:第十六話 投稿日:2002年11月05日(火)08時41分12秒
「梨華ちゃ〜ん。暗くなっちゃったよ?」
誰もいない、石川家の門の前。
ひとみは、自分から離れようとしない梨華を抱きしめながら言う。しかし梨華は、『イヤ
イヤ』と首を横に振るばかり。
「嫌って、そんな…。もうそろそろ家の中入らないと。梨華ちゃん寒いでしょ?」
しかし、また『イヤイヤ』。
「梨華ちゃぁ〜ん。」
すると梨華は、ようやくひとみの胸から顔を上げる。そして、潤んだ瞳でひとみの目を見
つめた。
「…ひとみちゃんは大丈夫なのぉ?もうわたしと離れちゃって…。わたしは嫌っ!まだ、
もっと、ずっと一緒にいたいのぉっ!!」
ひとみ、KNOCK DOWN。
(鼻血噴きそうな勢いなんですけどぉぉぉぉぉ〜…。)
くらくらとする頭を必死で立ち直らせる。
「…あたしも、もっと一緒にいたいよ。だけどね、梨華ちゃん。これであたしが本能の赴
くままに梨華ちゃんを引き止めちゃったら…梨華ちゃんの家族が心配するでしょ?」
「・・・・・・。」
- 196 名前:第十六話 投稿日:2002年11月05日(火)08時41分42秒
- 梨華は、ぷーっと膨れた。
(…そんな顔も可愛いぜベイベー…。)
「…わかった。」
梨華はぐす、と鼻をすする。
「また、明日ね!明日もまた、絶対会いに行くからね!!」
「は〜い、待ってますよ〜。お嬢様。」
そう言って、一旦は離れて行った梨華だが…またしても、門の直前で止まった。
そして、くるりと振り返る。
「…あの…ひとみちゃん。」
「何?」
梨華は頬をピンクに染めた。
「もう一回、キスして?」
目をつぶってキスを待つ梨華に、ひとみは優しくキスをする。
理性がブッ飛びそうになるのを必死でこらえ、触れるだけのキスにとどまる。
- 197 名前:第十六話 投稿日:2002年11月05日(火)08時42分13秒
- (…あああああっ!!!もっと激しくしたいけどっ!!!)
これ以上激しくしたら、確実に理性は弾け飛ぶ。それをよ〜くわかっているひとみであっ
た。
そんなひとみの気も知らず、唇が離れた後の梨華は…ほわん、と音のするような笑顔を
浮かべる。
「それじゃ、ひとみちゃん。また明日。…大好きだよ。」
「うん…また明日。あたしも大好きだよ。」
そして、梨華の背中を見送る。
(…梨華ちゃんが、ウチの彼女…!!!)
そう考えて、一人ニヤニヤする。
この時、ひとみは色々な事を忘れていた。
だが…ようやく梨華と想いが通じた幸せに浸りきっているひとみは、『何か忘れてる』
と思う事さえ忘れているのだった。
- 198 名前:第十六話 投稿日:2002年11月05日(火)08時43分50秒
下校途中、亜依は亜依の専用車(BMW)の窓ガラスにぴったりと引っ付いた。
「…あああああああっ!!!保田先生っ!!!」
そう叫んで、運転手の頭をばしばしと叩く。
「ちょっとちょっとちょっと!!!止めて止めて止めて止めて止めてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「うわっ!!んなっ!!ぐわっ!!!」
箸やナイフやフォークより重い物を持った事がないハズなのだが、実はけっこう怪力な亜
依。そんな亜依に運転中に頭をブッ叩かれた運転手・野上は…当然ながら、慌てた。
しかし、野上もプロ。素早くハンドルを切り、車を道の端に寄せる。
「な、何なさるんですか、亜依お嬢様…っ!!!」
バクバク言ってる心臓を押さえながら言うが、亜依はどこ吹く風。
「だって、保田先生を見つけたんだもん。
亜依、声かけて来る!!ちょっとここで待っててね!!!」
「え!?ちょ…!!!待って下さい、亜依お嬢様!!!」
野上の制止の声も聞かず、亜依はBMWから飛び降りた。
- 199 名前:第十六話 投稿日:2002年11月05日(火)08時44分27秒
- 恋する乙女は止まれないモンである。
そして積極的なのは、先祖代々、脈々と受け継がれて来た石川家の人間の特色である。
自分の専属運転手に言われて止まるようじゃ、石川家の人間ではないのである。
例に漏れず、亜依は何の抵抗もなく…愛しいあの人のもとへと駆けて行った。
圭がいるのは、喫茶店だった。そんな大繁盛しているわけではないのだが、そこそこお
客は入っているような、どこにでもある喫茶店。
亜依は、ちょっと困った。
「…どうしよう。」
積極的・情熱的な亜依だが、これには困った。
生まれてこのかた、喫茶店などには入った事がないのだ。
入り口はわかるのだが、そこから先はどうして良いのかわからない。
「ううううう…っ。」
さしもの亜依も、経験値不足だけはどうにもならないらしい。
愛しいあの人は、ガラスを隔てたこんなに近くにいるのに…。
亜依は、初めて知った。
人生そんなに甘くはない、と。
- 200 名前:第十六話 投稿日:2002年11月05日(火)08時44分59秒
- そんな亜依に、追い討ちをかけるような事態が発生した。
本を読んでいた圭が顔を上げて、笑顔を浮かべたのだ。
「・・・・・・っ!!」
今まで、見た事もないような笑顔に…亜依の胸が締め付けられる。
そんな亜依をあざ笑うかのように、圭の前に一人の少女が立った。亜依と同い年くらい
の、きりっとした顔の美少女だ。
少女は、当然のように圭の目の前の席に座る。
そして圭は、とても優しい笑顔でメニューを差し出す。
声は聞こえないが、口の形から『なんでも好きなものを注文しなさい』と言ってるよう
だ。
「・・・・・・。」
亜依は、呆然と立ち尽くす。しかし、ガラスを隔てた向こう側の圭は、そんな亜依には全
く気付かない。
「っ!!!」
亜依は、車まで走って戻った。
「…出して。」
出て行く時とは打って変わった亜依の様子に、野上は驚いたが…何も訊かなかった。
亜依は自宅に着くまで、とうとう一言も発しなかった。
- 201 名前:第十六話 投稿日:2002年11月05日(火)08時45分38秒
圭は、複雑な気分だった。
さっきから本を読んでいるのだが、全然頭に入って来ない。んなモンだから、ページは
1ページもめくられない。
(…ナニ緊張してんのかしらね。)
そんな自分にちょっと苦笑して、ふと顔を上げると…丁度、待ち人が来た。
小川麻琴。圭の死んだ妹・愛の、親友だった子だ。
麻琴は圭の姿を見つけると、にこっと笑って会釈した。
その笑顔に、圭はちょっと安心する。
よかった、元気でやってるみたいだ。
そう思うと、自然と笑顔が浮かんで来る。
愛の葬式の時に見た麻琴は、ボロボロだった。
涙を流す事すらできずに、呆然と立ち尽くし…友人たちに支えてもらって、ようやく歩
けていると言った様子で。
「…こんにちは。お久しぶりです。」
「こんにちは。どうぞ、座って。」
そう言うと、麻琴は圭の向かい側に腰を下ろす。圭は麻琴に、備え付けのメニューを渡し
た。
- 202 名前:第十六話 投稿日:2002年11月05日(火)08時46分52秒
- 「本当に久しぶりね。なんでも好きなものを注文して。」
「えっ?良いんですか!?」
「もっちろん。」
ほくほく顔でメニューを広げる麻琴を前にして…圭は愛の事を思い出した。
(…あの子は、素直じゃなかったのよね。)
ケーキを買って帰っても、アイスを買って帰っても、何か奢ると言っても…愛は『え〜?
太るよぉ〜』しか言わなかった気がする。だけど、そう言う顔はこの上なく嬉しそうで…
圭はよく、『表情は素直なんだから、言葉も素直になりなさいよ』と言ったものだった。
注文し終わって、アールグレイの紅茶とモンブランが運ばれて来ると…麻琴は唐突に口
を開いた。
「…実は…また、起こりそうなんです。」
圭はその言葉に、激烈に嫌な予感を感じた。
「…何が?」
「・・・・・・。」
麻琴は、ちょっと黙った。そして、意を決したように口を開く。
「…愛ちゃんみたいな子が、また出そうなんです…。」
「どう言う意味?」
- 203 名前:第十六話 投稿日:2002年11月05日(火)08時47分25秒
- 「アイツが…!!」
麻琴は目に涙を溜めて、膝の上で拳を握り締める。
「転校生を、いじめ始めたんです…!!!
その転校生、私の友達の妹で…!!!叔父さん…校長に言ったんだけど、取り合っても
らえなくて…。」
「・・・・・・。」
「もう私、どうしたら良いのかわからないんです!!
保田さん以外に、誰に相談して良いのかもわからなくて…!!!」
目の前でぼろぼろと涙を流す麻琴にハンカチを差し出して…圭はコーヒーカップの中をの
ぞく。
黒いコーヒーの中に浮かぶ、自分の顔。それがだんだん、愛の顔に変わって来る。
(…まるで、アタシの心の中みたい。)
亜依には『怒りも憎しみも、湧いて来なかった』と言ったが…それは嘘だ。
憎んだし恨んだし、呪いもした。ただ、忘れただけだ。そうでもしないと、気が狂って
しまいそうだったから。
それがまた、黒い渦となって圭の心に蘇えるのだった。
- 204 名前:第十六話 投稿日:2002年11月05日(火)08時48分01秒
らぶらぶいしよし〜!!!
甘えんぼ梨華ちゃん…すごい好きです。最高です。なので、私の書く梨華ちゃんはみんな
甘えんぼです。
>あおのり様
石川家の門前、にんきがありません(笑)。
大豪邸過ぎる為、みなさん近寄りがたいみたいです。
P.S 更新中に横レス…お気になさらないでください☆
>ななしのよっすぃ〜様
あまあまないしよし…書いてても楽しいです!!
がんばりますねー!!!
>ひとみんこ様
私が書く梨華ちゃんは、辻加護より身長が低く感じてしまうんですよね〜。
矢口さん並!?(笑)
オンナノコですから☆って感じで書いてるせいでしょうか…。
>ラヴ梨〜様
はじめまして!!!
緻密だなんて…そんな…!!
でも、ありがとうございます!!そう言って頂けると嬉しいです!!
頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!!
>まるみ様
だ、大丈夫ですか!?目覚めましたか!?更新ですよー!!!(笑)
がんばりますね☆どうぞよろしくでっす!!
- 205 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月05日(火)08時50分20秒
- >ヒトシズク様
ををっ!!!お久しぶりです!!こちらも読んでくださるんですか?
ありがとうございます!!!
がんばりますよー!!!
- 206 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月05日(火)10時33分39秒
- あぁ〜まぁ〜すぅ〜ぎぃ〜てぇ〜、とぉ〜けぇ〜てぇ〜まぁ〜すぅ〜。
甘すぎる! べったべたです! 満腹です! どうにかしてください!
アイツは誰なんでしょうね?
- 207 名前:まるみ 投稿日:2002年11月05日(火)17時32分43秒
- ぐ・ぐは!!!
「先生!患者さんが吐血しました!」
「これは!?・・・いしよしが甘すぎるからだ」
いやー、甘々ないしよし大好きです。
失血死なんて気にしないでどんどん行ってください
- 208 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月05日(火)20時49分53秒
- 青版の方終わったんですね。遅いですが完結おめでとうございます^^
こちらの方は読んでますよ^^もちろんですっ!
面白くて悲しくていい感じですね。
私の方はまだ青板で書いてますので、暇だったら読んでやってください。
今の話が終わればまた、どこかで話を書きたいと思いますので・・・
長くなりましたが、これからもがんばってくださいね♪
- 209 名前:第十七話 投稿日:2002年11月06日(水)12時58分27秒
あさ美の口から語られる、学校での事に…真希は怒りを覚えた。
「…そんな…そんな事、されたの!?」
怒りで、わなわなと拳が震える。そんな真希に、あさ美は笑顔を向けた。
「でも…きっとそれも、私が悪いんです。
私がトロいから…しっかりしてないから、いけないんです。
それに…私が…その、あんまりキレイじゃないから…いけないのかも知れません。
…だから、嫌われるんだと思います。」
うつむいて、スカートのすそを握るあさ美に、真希は言った。
「そんな事ないっ!!!」
あさ美は驚いて、顔を上げる。
「紺野さんは、可愛いよ。すっごく。」
「えっ…?」
涙に濡れたあさ美の頬が、ぼっと赤くなる。
「そ、そんな…事ないですよ。あの、なんて言うか…。」
「そんな事、あるよ。可愛い。私はすっごく可愛いと思う。」
「えっと…あの…その…。」
どぎまぎとして、真っ赤になった頬を両手で押さえて…あさ美は消え入りそうな声で、よ
うやく呟く。
「…ありがとうございます…。」
あさ美の心臓は、今や爆発寸前。
- 210 名前:第十七話 投稿日:2002年11月06日(水)12時59分00秒
- そんなあさ美の気も知らず、真希は俯いてしまったあさ美の顔を覗き込む。
「でもさ、紺野さん。」
「はひっ!?」
至近距離にある真希の顔を意識し過ぎて、まともに声が出ない。
「…この事、私以外の人にも…お姉さんとかにも、言った?」
「い、いいえ…。後藤さん以外には、誰にも…。
…あ、もしかしたらののさん…一番下の姉にはばれてるかも知れませんが。」
そう答えたあさ美の頬に、真希はそっと触れた。
「…お姉さんにも、この事を言おう。」
「ええっ!?」
真希に触れられている部分を、ものすごく熱く感じながら…あさ美は悲鳴のような声をあ
げた。
「だってそれ、もう紺野さん一人で片付けられる問題じゃないよ。
それに…ののさん、だっけ?気付いてるのなら、きっとすごく心配してるはず。それに、
あと二人のお姉さんだって…紺野さんが元気ないって心配してると思うよ?」
現に、ひとみも心配していた。
その事を思い出した真希は、あさ美の額に自分の額をくっつけた。
「それに、味方は一人でも多いほうが心強いよ。」
「みかた…?」
- 211 名前:第十七話 投稿日:2002年11月06日(水)12時59分30秒
- 「そう。味方。紺野さんの事を大切に思っていて、紺野さんが元気になるんだったら、何
でもしてあげたいって思ってる人。」
真希はにこっと笑った。
「私も、『味方』だよ。」
その言葉に、あさ美の目からぼろぼろと涙がこぼれ始める。
「で、でもぉ…っ!!」
「うん?」
真希は右手の指先で涙をぬぐい、左手であさ美の頭をなでる。
「そんな事されてるって、バレたら…私、私…!!姉さん達に嫌われてしまうかも知れま
せん…!!!『そんな事も一人で片付けられない、しょうがない子だ』って…!!!」
「ああ、それはないね。」
即答した真希を、あさ美は目を見開いて見る。
そんなあさ美に、真希はやわらかい笑顔を向けた。
「どっちかって言うと、紺野さんのお姉さん…特に二番目のお姉さんは、紺野さんの世話
を焼きたくてしょうがないみたいだから。」
- 212 名前:第十七話 投稿日:2002年11月06日(水)13時00分05秒
「ふぇっくしょぉ!!!」
『あさ美の世話を焼きたくてしょうがない、二番目の姉』こと吉澤ひとみは、『Toch
ter.』の店内で盛大なくしゃみをかました。
「ひとみおねーちゃん、キタナいのれす。くしゃみする時は、口を手でおさえるのれす。
それがエチケットってモンなのれす。」
「あ〜、悪ィ悪ィ。でも、どーしたのかな〜。誰か噂でもしてんのかぁ?」
「…きっといまごろ、『アイツうざい』とか言われてるのれす。」
「の〜ぞ〜み〜!!!!!」
妹に背後から抱きつき、思いっ切り締め付ける。
「誰がうざいってぇ〜?もっかい言ってみ!?」
「く、くるしい…っ!!!くるしいのれすっ!!!はなすのれす!!!」
「言うまで離さねぇぞ!!」
「や、やめるのれす〜!!!」
そこに、たまりかねたなつみ登場。
「もうっ!!二人ともやめるべさ!!」
鶴の一声ならぬ、姉の一声。二人はささっと離れた。
- 213 名前:第十七話 投稿日:2002年11月06日(水)13時00分37秒
- なつみは、壁にかかった時計を見て呟く。
「…あさ美はどうしちゃったんだべ…?」
「もう、七時過ぎるのれす。いくらなんでも遅いのれす。」
「…最近なんか元気ないし…どうしちゃったんだろうなぁ。」
ひとみは呟く。
「…あさ美は初めて会った時から、なんかすごいしっかりしててさぁ。あたし、姉ちゃん
なのに…全然姉らしくできてないから…たまには頼ってほすぃ〜んだけどなぁ。」
どうやら彼女の相方の読みは、かなり的中しているようだった。
- 214 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月06日(水)13時01分07秒
今回はちょっと短め?
しかもいしよしラブラブなしで、ちょっと切ない…。
>ひとみんこ様
誰なんでしょうねぇ〜、『アイツ』。
予定としては、嫌いじゃないのに私が書くといつも悪役になっちゃう彼女、ですね(笑)
…わかりにくくってすみません…(汗)
>まるみ様
し、死なないでくださいっ!!今回甘くないから大丈夫かしら…?
がんばります!!
>ヒトシズク様
PC壊れたんですか…大変でしたね(汗)
青板のアレ、更新なさったんですか!?きゃ〜!読みに行かなきゃ!!
がんばりますので、どうぞよろしく!!!
- 215 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年11月06日(水)19時48分17秒
- ライバルのはずなのに、よっすぃ〜の思考を読むとは、さすが、相方。
ごっちんの活躍にも期待です。
読んでいても、よっすぃ〜と梨華ちゃんの『あまあま』ぶりは楽しいです。
切ない話しも面白いですけど、いしよしは、やっぱり『あまあま』が楽しいですね!
では、続きも楽しみに待っています。
- 216 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月06日(水)21時15分41秒
- はは〜ん、あの人ですか? そうですか? (一人で納得)
もう何でもいいです、好きにやっちゃって下さい!
- 217 名前:あおのり 投稿日:2002年11月06日(水)23時41分53秒
- おー!梨華ちゃん大すきーずの結束は岩よりも固いようですね。
ごまとよしの関係が娘を嫁にやるお父さんとその婚約者の関係のようで笑ってしまいます。
認めたくないのだけれどなんか気になる…みたいな(w
いつも冷静なごま執事があさみちゃんのこととなると熱くなるのにも萌えです。
やっぱり吉は手で押さえないでくしゃみをぶちかましているんだろうなぁと妙に納得…
- 218 名前:第十八話 投稿日:2002年11月07日(木)14時57分42秒
「帰って来ない…。」
なつみは真っ青になって、時計を見上げた。もう、九時十七分だ。くるりと後ろを振り向
いて、二人の妹を見ると…その二人も、真っ青な顔をしていた。
「…どうしちゃったんだろう…あさ美。こんなの初めてだよね…。」
ひとみは携帯を握り締める。
あさ美は、携帯を持っていない。
『携帯は、十五歳の誕生日プレゼント』と言うのが、この四姉妹の決まりなのだ。ひと
みも、十五歳の誕生日に初めてなつみにもらった。そして、まだ十四歳の希美・あさ美は
持っていない。
「ぐす…っ。はじめてれす…。」
希美はもう、泣き出してしまっている。
「…二人とも、しっかりするべさ!大丈夫だって!!
きっとあさ美の事だから、どっかでぼーっとしてるだけかも知れないっしょ?」
「…この時間にソレやってるって事が既に危険だよ…。」
妹に正論を突かれて、なつみはううっと黙る。
そんな姉二人に、希美は涙ながらに言った。
「…ののが、悪いのれす…。」
「「へ?」」
- 219 名前:第十八話 投稿日:2002年11月07日(木)14時58分45秒
- 唐突な希美の言葉に、二人は面食らう。
しかし希美は、真剣な面持ちで続ける。
「ののが悪いのれす…。きづいてたのに…それなのに、『あさ美の口からいわなきゃ』と
かヘンな気ィまわして…言わなかった、ののが悪いのれす…。」
「のの?何言ってるんだべさ。」
「のののせいなのれす。」
希美は、涙を流すばかり。
そんな希美の顔を、なつみが覗き込む。
「…ののぉ。それだけじゃわからないっしょ?だからちゃんと、一から説明して。お願い。」
優しい口調で言われて、希美はこくりと頷いた。
「…じつは、あさ美のクラス…すごくフインキがわるいのれす。」
「雰囲気が悪い?」
「そうなのれす。のののクラスとは大違いで…なんか、ピリピリしてるのれす。
それで…その中であさ美はずっと、小さくなっているのれす。」
ひとみは、何かを感づいて…顔を上げる。
「もしかしてあさ美、いじめられてるかも知れないの?」
ひとみの言葉に、希美は涙をぬぐいながら頷く。
- 220 名前:第十八話 投稿日:2002年11月07日(木)14時59分17秒
- 「…あさ美の口からは、なんもきいてないのれす。
らから…それはもしかしたら、のののおもいすごしかもなのれす。
あさ美は、『大丈夫です。完璧です。』って言うのれす。
らけろ、ののは…ののにはそれが『たすけて』って言ってるみたいにきこえるのれす!!!」
一気に言って、希美はわっと泣き出した。
そんな希美の背中をなでながら、なつみとひとみは顔を合わせる。
と、その時。
TURURURURU…TURURURURU…
店の電話が鳴り始めた。
ひとみが飛びつこうとしたけれど、なつみが手で制する。
「…なっちが出る。」
そう言って、一回深呼吸をしてから受話器を取った。
「はい、ケーキ屋『Tochter.』でございます。」
もしかしたら、身代金請求の電話かも知れない。
そう考えて、ちょっと硬くなってしまった声を自認するなつみ。
『夜分遅く、申し訳ございません。安倍なつみ様はいらっしゃいますか?』
なつみは、色んな意味で驚いた。
まず、相手がものすごく丁寧で穏やかな口調だと言う事。身構えていたなつみは、なん
だか拍子抜けしたような気分になる。
- 221 名前:第十八話 投稿日:2002年11月07日(木)14時59分49秒
- そして次に…その口調。
他でもない、市井紗耶香そっくりなのだ。
「…は、はい、私ですが…。何でしょうか?」
『安倍様でしたか。はじめまして。私は、石川家で執事をしております、後藤真希と申し
ます。』
「は、はぁ…。」
石川家。
それで納得が行った。紗耶香も、石川家から派遣されて来たのだ。きっと同じような教
育…と言うか、指導を受けているのだろう。
『安倍様の妹さんの紺野あさ美さんなのですが…今、私の所にいらっしゃいます。
…実は、ずいぶん前からいらしてたのですが…連絡が遅くなりまして、申し訳ございま
せん。』
「え!?そうなんですか!?」
なつみは、安心した。石川家の執事の所にいるなら、安全だろう。
「…こちらこそ、すみません。妹が迷惑をかけまして…。」
『いえいえ、そんな事ありません。
…それで、実は…あさ美さん、眠ってしまいまして。』
- 222 名前:第十八話 投稿日:2002年11月07日(木)15時00分23秒
- 「へっ!?」
なつみの目が、点になる。
『よく寝ていらっしゃるので、起こすのも忍びありませんし…。
よろしければ、今夜はこちらに泊まって頂こうかと思うのですが…いかがでしょう?』
「ええっ!?い、良いんですか!?迷惑じゃあ…」
『いえ、そんな事はございません。』
なつみは、考えた。
相手が本当に石川家の執事なのか、ちょっと疑ったのだ。
しかし、口調があまりにも紗耶香に似ている。
迷っていると、いつの間にか隣にいたひとみに、受話器を取られる。
「もしもーし!!ごっちん!?」
『…吉澤さん?』
「やっぱりごっちんだー!『ヨッスィー』で良いってば。…あさ美、ごっちんのトコにい
るの?」
『うん。よく寝てる。』
真希の声は、とても優しい。
- 223 名前:第十八話 投稿日:2002年11月07日(木)15時00分56秒
- ひとみはなんだかすごく嬉しくなって、言った。
「じゃあさ、泊めてやって。あさ美って、一度寝ちゃうとなかなか起きないし。」
『わかった。…連絡遅れて、ごめん。』
「いいよー。それじゃ、また明日。学校でね!」
『うん。お姉さんに、よろしく言っておいて。』
「了解ー。」
ひとみは受話器を置いた。
「あさ美、ごっちんのトコ泊まるって。」
「ひ、ひとみ!!あの人と知り合い!?」
「うん。前に言ったじゃん。『石川家の執事と仲良くなった』って。」
言われて見れば、聞いた事あるよーな気がする。
「…ま、石川家の執事さんのトコなら安心だね。」
三人は顔を合わせて、微笑んだ。
- 224 名前:第十八話 投稿日:2002年11月07日(木)15時01分28秒
ひとみは、部屋に帰ってから思い出した。
「…そーいや、ごっちんも梨華ちゃんの事好きなんだっけ…。」
『梨華ちゃん大好きーズ』を言い出した張本人なのに、真希の声を聞くまですっかり忘れ
ていたひとみであった。
「…どーしよう。」
抜け駆けしてしまった。
…とは言え、先に告白したのは梨華の方である。
だけど、ひとみも真希の事はサッパリ忘れて答えてしまい、恋人になってしまった。
(…怒るよなぁ、ごっちん…。てゆーかあたしだったら超怒るだろーし…。)
かと言って、嘘を吐ける程ひとみは器用ではない。
(明日会ったら、ちゃんと言わないと。…もしも怒られたら、どーしよう…。)
ひとみはふと、梨華の事を想う。
笑顔の梨華。驚いた顔の梨華。幸せそうにケーキを口に運ぶ梨華。etc…。
ひとみの頬が、にへっと緩む。ついでに目じりもでれっと下がる。
- 225 名前:第十八話 投稿日:2002年11月07日(木)15時02分01秒
『もう一回、キスして?』
そう言って目をつぶった梨華を思い出して、思う。
(…どれだけごっちんに怒られても、あたし…梨華ちゃんだけは譲れないや…。)
しかし、真希も同じように梨華を大切に想ってる事を、ひとみは知っている。
「う〜ん…。」
腕を組んで、ちょっぴり考えてから…顔を上げた。
「寝よ。」
考えたって、わからんものはわからん。
あたって砕けろ。
それが、吉澤ひとみの信条であった。
- 226 名前:第十八話 投稿日:2002年11月07日(木)15時02分32秒
一方、こちらは石川邸。
「真希ーっ!!!」
勤務日誌を届けに、母屋へと出向いた真希は、梨華に呼び止められた。
「何でしょうか、梨華お嬢様。」
「聞いて聞いてっ!!!あのねっ!!!」
梨華は頬をピンクに染め、心底嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「ひとみちゃんと、恋人になっちゃったぁっ!!!」
「・・・・・・は、はぁ…。」
真希は頬をちょっとかいて、目線をさ迷わせてから…笑顔を浮かべた。
「おめでとうございます。よかったですね、梨華お嬢様。」
「うんっ!!!」
梨華は、うっとりと宙を見て…ため息をついた。
「幸せ…。両思いって、こんなにも幸せな気分になれるのね…。」
- 227 名前:第十八話 投稿日:2002年11月07日(木)15時03分06秒
- 「梨華お嬢様がお幸せなら、私も幸せです。」
「えへへっ!ありがとう、真希!真希に一番に知らせたかったの!!
…それじゃわたし、もう寝るね。おやすみっ!」
「はい、おやすみなさい。」
軽やかに駆けて行く梨華の後姿を見ながら、真希はため息をついた。
(…失恋、か。)
長い、片思いだった。
物心付いた時から、ずっとずっと好きだった。
だけど、真希は気付いた。
(…全然、辛くない…。)
確かに、胸はちょっと痛い。だけど…全然辛くない。
そして、なんとなく…早く部屋に帰って、あさ美の顔を見たいと思った。
(なんでだろう?)
真希は首をかしげて、ちょっと考えてから…早足で、あさ美のいる自分の部屋に帰って行
くのであった。
- 228 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月07日(木)15時03分39秒
ごっちん失恋…。
そしてバカップルいしよし。
んでもって、ねぼすけ紺野。
…今回のお気に入りは誰かと言われれば…
やっぱり、ちょっぴりお馬鹿な吉澤さんでしょう(笑)。
>ななしのよっすぃ〜様
いしよしあまあまは、私の理想…!!!
ごっちんには新しい鯉…じゃなくて恋をして頂きましょう。
この二人にも注目です☆
…てゆーか、注目して頂けるよう頑張ります。
>ひとみんこ様
わかりましたか?わかったんですか?スゲェ…(汗)
やっちゃいます。頑張ります。気合入ってます。
>あおのり様
ごまの事すっかり忘れてたよし。てゆーか巻き込んだのはオマエだろ!!と、書きながら
突っ込みました(笑)
>娘を嫁にやるお父さんとその婚約者の関係
ををっ!!まさにその通り!!!
そして、豪快なくしゃみは『男前』の代名詞。
私のくしゃみも、何気に豪快です。
てゆーかオヤジくさいです。
- 229 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月07日(木)20時13分17秒
- >「寝よ。」
>考えたって、わからんものはわからん。
>あたって砕けろ。
そうですね、ひーさまはこれです! これ以外に有りません!
チャミさまは遊泳中です。
アイツは当たってるんでしょうか?
- 230 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月07日(木)21時35分17秒
- おお〜!!!!ごっちん!!!
失恋ですか・・・悲しいですね。。でも、ごっちんが悲しくないと言うのは」・・?
もしや・・!?って感じです^^
更新楽しみに待ってます♪
がんばってください!
- 231 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年11月07日(木)21時49分41秒
- 更新お疲れさまです。
いしよしのあまあまは、王道ですね。いつでもどこでも、あまあまな時を過ごして欲しいですね。
ごっちんは、こんこんに行きそうですね。梨華ちゃんを忘れてこんこんへ!
う〜ん、続きも楽しみです。
PS:十八話まで保存終了しました。
URLが11月9日から変更になることになりました。h
ttp://kuni0416.hp.infoseek.co.jp/text/index.html
- 232 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年11月07日(木)21時51分49秒
- すみません。書いてる最中にEnterで投稿してしまいました。
保存スペースに使っているISWEBのURLが変更になります。
これからも、保存して行きますので、よろしくお願いいたします。
では、続きを楽しみに待っています。
- 233 名前:まるみ 投稿日:2002年11月08日(金)06時42分38秒
- ごっちんは自分の気持ちに気づいたのでしょうか?
でも・・・あのぼけぼけよっすぃーが「お姉さま」
でも良いのか!!
更新楽しみです^^
がんばってください♪
- 234 名前:キャンドル 投稿日:2002年11月08日(金)09時56分49秒
- 後藤さんと紺野さんはどっちから切り出すんでしょうね。
どっちもあまり積極的じゃなさそうなので、長引きそうですね。
- 235 名前:第十九話 投稿日:2002年11月08日(金)15時51分22秒
翌日の朝早くに帰宅したあさ美の顔は、ずいぶんと明るさを取り戻していた。
「昨日は、連絡が遅くなってしまって…申し訳ありませんでした。」
あさ美を家まで送り届けた真希は、なつみに深々と頭を下げた。
「い、いえ、そんな…こちらこそ、妹が迷惑をかけてしまって…すみませんでした。」
なつみも慌てて、頭を下げる。
「…それでは、私はこれで失礼します。」
「え?あの、お茶でも…」
「いえ、学校がありますので。」
そう言って、真希は帰って行った。
なつみは、驚きを隠せなかった。
ひとみと同じ年齢の子供が、完璧な執事だと言う事を目の当たりにしたと言う事も衝撃だっ
たが…口調だけじゃなく、その立ち振る舞いまでもが紗耶香そっくりなのだ。
「…すごいね、本当に…石川家って言うのは…。」
- 236 名前:第十九話 投稿日:2002年11月08日(金)15時51分55秒
- 教育が行き届いてる、と言うのはこう言う事なのか、と一人納得するなつみの横を、ジャー
ジ姿のひとみが駆け抜ける。
「ええっ!?ひとみ!?そんな格好でどこ行くんだべさ!?」
なつみは驚いて声をかけるが、ひとみは何も答えなかった。
一人残されたなつみは…ぽつりとつぶやく。
「…すっごいヘンな寝癖ついてるのに…。」
更に、右頬にはシーツのアトもついていた。
- 237 名前:第十九話 投稿日:2002年11月08日(金)15時52分58秒
しばらく歩いた所で、真希は思いっきり腕をつかまれた。
「!?」
ちょっと驚いたが、彼女はプロの執事。
石川家の執事の信条は『どんな事態にも冷静に対応』である。ハンパじゃなく大金持ちな
石川家の人間は、危険な目にも遭いやすい。なので、石川家の執事たちは全員、空手黒帯だっ
たりもする。
そんな石川家の中でも『執事の中の執事』と呼ばれる真希は、とっさにかまえた。…が、
すぐにその顔が呆れ色に染まる。
「…何してんの?吉澤さん。」
そう。真希の腕をつかんだのはひとみであった。
「…っ!!ちょ、ちょっと、ま、待ってて…!!息、と、整えるから…!!!
て、てゆーかごっちん…足、は、速過ぎ…!!!」
そりゃそーだ。
迅速な行動が求められる石川家の執事は皆、足が速いのである。
「…ふー、もー、追いつかないかと思ったよ。」
ようやく息を整えた、ジャージ姿の相方に…制服姿の真希は冷たい視線を送る。
- 238 名前:第十九話 投稿日:2002年11月08日(金)15時53分29秒
- 「…何か用?てゆーかなんて格好してんの?」
「だって、寝起きなんだもん。」
「…この時間に起きて、間に合うと思ってんの?」
「人生なんでも、気合でなんとかなる場合もあるんだよ。」
「・・・・・・。」
真希はこめかみを押さえて、深いため息をついた。
「…で、何の用?」
「あ、謝らなきゃいけない事があるんだ…。」
ひとみは、ばつが悪そうに目線を逸らす。
それで、真希はピーンと来た。ちょっとにやりと笑う。
「実は…その、なんて言うか…言いにくいんだけど…」
「『抜け駆けして、梨華お嬢様と恋人になっちゃってごめんなさい』?」
「いや、あたしは決してそんな直接的に言うつもりは…って…え?」
驚きに目を見開いて、ひとみが顔を上げる。そんなひとみとは対照的に、真希は笑顔だ
- 239 名前:第十九話 投稿日:2002年11月08日(金)15時54分01秒
- 「…な、なんで…?」
「昨日、梨華お嬢様が私に言ったんだよ。『ひとみちゃんと恋人になっちゃった』ってね。
嬉しそうに、真っ赤になってたよ。」
「・・・・・・。」
ひとみの顔が、かーっと赤くなる。
「…あんたも正直だね。」
その真希の言葉で、ひとみは我に返る。
「そ、そうなんだ。実は…。抜け駆けしちゃって…ごめん。」
「抜け駆けじゃなくて、梨華お嬢様の方から告白したんでしょ?」
「そ、それも梨華ちゃんが言ったの!?」
「いや、これは推測。」
ひとみはぽりぽりと、頭をかく。
「…さすがは、あたしの相方。よくわかってるじゃん…。」
「相方って何だよ。誰が誰の相方だよ。勝手に決めんなよ。」
「…やっぱし、怒ってる?」
真希は、はーっ、とため息を吐いて額を押さえた。
- 240 名前:第十九話 投稿日:2002年11月08日(金)15時54分36秒
- 「不安だ…。こんなのが梨華お嬢様の『最愛の恋人』だなんて…。」
「は、はあ…。スミマセン…。」
「『スミマセン』じゃないよっ!まったく…先が思いやられるよ。」
「あの…。」
「何?」
がっと睨まれて、ひとみはちょっと後退りする。
「…怒ってるの?怒ってないの?」
「…どちらとも言えない。」
真希は正直に答えた。
「確かに。こんなアホなのが、大切な大切な梨華お嬢様の恋人なんて…先行き不安過ぎて
しょうがない。しかも癪に障る。」
「は、はぁ…。」
「…だけど、当の梨華お嬢様が…あんたじゃなきゃ駄目だっておっしゃってるんだ。…ま、
主の幸せを願う執事としては…あんたがもっとしっかりしてくれる事を祈るばかりだよ。」
真希は、長い髪をかきあげる。
「…私は、執事なんだ。梨華お嬢様に仕えるのが、私の生きる意味。存在意義。
だから、あんたは別に私に遠慮なんかしなくて良いんだよ。」
- 241 名前:第十九話 投稿日:2002年11月08日(金)15時55分10秒
「そ、そんなの悲し過ぎるじゃん!!ごっちんだって、梨華ちゃんの事好きなクセに!!」
「いいんだってば。それは、いらない感情なんだから。」
「いらなくなんかないっ!!!」
ひとみは、真希に詰め寄った。
「伝えなきゃ駄目じゃん!!行き場がなくなっちゃうよ、ごっちんの『想い』!!」
「…何言ってんの?」
「だって…そんな…!!!」
真希は苦笑した。
なんて人の良いヤツなんだ、と。
「…じゃあさ、あんたは良いワケ?私が梨華お嬢様に告白して、万が一梨華お嬢様が私に
惚れちゃったりして、あんたに『別れよう』とか言って来ても。」
「嫌だ!!」
即答である。真希の苦笑は止まらない。
なんて、自分に正直なヤツなんだろう、と。
「…でしょ?ま、万が一の話だけど…ありえないとも言えないし。」
「・・・・・・。」
ひとみは、真剣に悩んでいるようだ。
- 242 名前:第十九話 投稿日:2002年11月08日(金)15時55分43秒
- 「それに、安心してよ。もうちゃんと吹っ切れてるから。」
「…そうなの?」
「うん。」
目を閉じて、梨華を思い浮かべるが…もう胸は痛まない。
何が、自分をこうさせたのだろう?
薄々わかってはいる。
あの子のおかげだ。
完璧じゃないのに『完璧です』が口癖で。
思わず触りたくなるようなほっぺをしていて。
ゆっくりだけど、ものすごくよく食べて。
…寝顔が、まるで天使のようで。
…だけど真希は、気付かないフリをする事にした。
「…それじゃ、私は先に学校行ってる。遅刻しないようにね。」
真希はくくっと笑って、言った。
「ヨッスィー。」
ひとみの顔が、上がる。
「え!?ごっちん今…!!」
そう、ひとみが言った時には…既に歩き出していて、真希の姿は遠くなっていた。
- 243 名前:第十九話 投稿日:2002年11月08日(金)15時56分17秒
梨華は、困惑顔で亜依の部屋の前をうろついていた。
昨日から、亜依の様子がおかしいのだ。
「…どうしちゃったのかしら。」
もうそろそろ、出かけなくてはいけない時間になる。それなのに、部屋から一歩も出て来
ないのだ。
…まあ、石川家の四姉妹の部屋は、それぞれホテルのスイートルーム並みの作りになっ
ていて、洗面所もトイレも風呂もついているから…部屋から出ずに学校へ行く準備をする
事も可能である。
だが、朝食を食べに来なかったのだ。
それに亜依はいつも、学校に行く前に大浴場で風呂に入るのだが…それもしていない。
「…どうしちゃったのかしら…。」
もう一度、梨華が呟くと…梨華の背後に、一人の人物が立った。
市井紗耶香である。
「どうなさいましたか、梨華お嬢様。」
- 244 名前:第十九話 投稿日:2002年11月08日(金)15時56分48秒
- 「さ、紗耶香さん!?」
梨華は大きく飛びのいた。
「なんで、ここに…!!」
すると紗耶香は笑顔を崩さずに言う。
「実は、真里お嬢様が『たまには顔を出しなさい』とおっしゃったもので。
それに、ちょっと仕事も頼まれたので、一時的に帰って来たのですよ、梨華お嬢様。」
「そ、そうだったの…。久しぶりね!!そうだ、真希に…!!」
「後藤は、もう学校へ行ってしまったようです。
…梨華お嬢様も、もうそろそろご出発なさらないと。遅刻してしまいますよ?」
「ええ…でも、亜依が…。」
亜依の部屋の扉は、まるで『誰も入るな』と言ってるかのように立ちはだかっていた。
紗耶香はにっこりと微笑んだまま、梨華に言う。
「私が、何とか致します。ですから、梨華お嬢様は学校へいらして下さい。」
「…わかった。」
梨華はしょぼん、と肩を落とす。
「…紗耶香さん、亜依の事…頼んだわよ!」
「かしこまりました。お任せ下さいませ。」
その言葉をきいて、梨華は紗耶香に背中を向けた。
その背中を見送ってから…紗耶香は亜依の部屋をノックした。
- 245 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月08日(金)15時57分20秒
実は、大学生なクロイツ。
しかも音楽学部声楽学科だったりするクロイツ。
んでもって今日のレッスン、先生にすっぽかされたクロイツ。
そんなワケで、更新です(泣)。
>ヒトシズク様
んっふふふふふ。ごっちんよ…早く素直になりなされ。
そんな事を考えながら書いてます(笑)
がんばりますね〜!どうぞよろしく!!
>ななしのよっすぃ〜様
いしよしあまあま…今回も出せなかった(泣)。
次回は多分、入るはずです。
保存、いつもありがとうございます!!
>まるみ様
ヨッスィーは姉妹だいすっきです。
梨華ちゃんも姉妹らいすっきれす。
ごっちん…素直になりたまへ(笑)。
楽しみだなんて…ありがとうございます!!嬉しいです☆
がんばりますね〜!!
>キャンドル様
長くなりそうですねぇ。…てゆーか意外と、紺野さんが積極的になれそうです(笑)。
どうぞ、お付き合いくださいませ☆
- 246 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月08日(金)20時04分01秒
- ごちん、かっこ良すぎです。
いちーちゃんとの接点が・・・・・?
- 247 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月08日(金)20時24分57秒
- ごっちん、クール!!!!さいこーです^^
実は私、ごっちんを見習って学校でクールに過ごしています^^(笑。
関係ない話ですが・・・。
更新楽しみに待ってます!
がんばってください!
- 248 名前:とのもり 投稿日:2002年11月08日(金)22時05分09秒
- 後藤執事カッケーよ後藤執事。
これからも梨華ちゃんのことは一生見守ってあげてください。
( ´Д` )<よ〜めにゆくひ〜が〜こなけりゃいい〜と〜
先生よくぞレッスンをすっぽかしてくれました。
こうして今日も私はこのお話を読むことができました。
これからもどんどんすっぽかしてください(←マテ
- 249 名前:第二十話 投稿日:2002年11月11日(月)18時04分20秒
『Tochter.』に入るなり、梨華はひとみに抱きついた。
「ひとみちゃんっ!!」
「うわっ!!梨、梨華ちゃんっ!?」
もうそろそろ来る頃だと思っていたひとみだったが、梨華のこの行動には驚いた。
「会いたかったのぉっ!!」
「そ、そんな、昨日も会ったじゃん。それに、昼間もメールとか電話とかしたし…。」
「そーゆー問題じゃなくて、ナマのひとみちゃんに会いたかったの!!!」
そう言って、梨華はぎゅっとひとみに抱きつく。
ひとみは、店内を見回した。
誰もいない。さっきまでいた希美とあさ美も、気を使って奥へと引っ込んだようだ。そ
して、客もいない。
それを確認してから…ひとみも梨華を抱きしめる。
「…あたしも、会いたかったよ。ナマの梨華ちゃんに。」
周囲に人がいたら、こんな台詞は一生かかっても言えなさそうなひとみであった。意外
と恥ずかしがりやさんである。
ひとみは梨華の甘い香りをさんざん堪能し、梨華はひとみの腕の温かさをさんざん味わっ
てから、ようやくちょっと離れる。
- 250 名前:第二十話 投稿日:2002年11月11日(月)18時04分50秒
- 「キスして?」
上目遣いでそう言われて、ひとみは思わず眩暈を起こしそうになった。
「き、キスって…ここで?」
「うんっ!!」
早くも梨華は目を閉じている。
その顔は、果てしなくセクシー。
(…か、可愛くて色っぽいなんて…な、なんかずるいよ、梨華ちゃん…!!!)
そう思いつつも、優しくキス。
目を開けた梨華は、なんだかとろんとした表情。
その表情も、限りなくセクシー。
(ぐはぁっ!!!いかん…離れないとあたし…!!!)
そんなひとみの心中も知らず、梨華はまたぴたっとひっつく。そして、そのままの姿勢で
上目遣い。
そのちょっと熱っぽく潤んだ瞳は、どこまでもセクシー。
ここまでセクシーでありながら、なんとなく汚してはならない女神のような神々しさも
ある。
その神々しさが、ひとみの理性を支えていると言っても過言ではない。
- 251 名前:第二十話 投稿日:2002年11月11日(月)18時05分24秒
- ここまで熱いモノを感じながら、触れるだけのキスしかできないひとみ。発散されない
熱が身体中を駆け巡り、ハッキリ言ってメチャメチャ辛そうである。
(わかってる!?わかってやってるのか!?梨華ちゃん!!!)
この、積極的だけど経験値ゼロなお嬢様が、そんな高度な技をやってのけられるワケが
ない。
つまり、コレは『天然』。
生まれ持ったセクシーと、究極の育ちの良さがかもし出すハーモニー。
まったく、先が楽しみなお嬢様である。
- 252 名前:第二十話 投稿日:2002年11月11日(月)18時05分55秒
あさ美は今日、学校を休んだ。
あさ美は『負けたくないから、行きたい』と言ったのだが…三人の姉が許さなかった。
『大切な大切なあさ美がそんなヒドい事されるって知ってて、行かせられるワケないべさ!!』
『そうだ!!そいつ…あたし、許せないよ!!あさ美、行くな!!家にいて!そうでない
とあたし…あさ美が何されてるか心配で、いても立ってもいられないよ!!』
『そうなのれす!!行かなくて良いのれす!!…ののはクラスがちがうから、授業中にな
んかされたら…助けに行けないのれす!らから、家にいてほしいのれす!!』
三人とも、涙まじりだった。
あさ美は…嬉しかった。
嫌われると、思っていた。そんな事をされていると知られたら…。
『私も、『味方』だよ。』
思い出して、顔が真っ赤になる。
昨日、真希が言ってくれた言葉。
(…私には、なつみ姉さんもひとみ姉さんもののさんも…後藤さんもいる。)
- 253 名前:第二十話 投稿日:2002年11月11日(月)18時06分27秒
- あさ美は、ポケットからハンカチを取り出した。
真希のイニシャルの入った、白いハンカチ。真ん中に血のアトが残っている。
昨日、真希に正式にもらったのだ。
ぎゅっと抱きしめて、目を閉じる。
(…大好き、です。)
きっと、届かないだろうけど。
あの人にはもっと、ふさわしい人がいるだろうけど。
(…でも、想う事くらいは許して下さいね。)
あさ美は決心した。
明日は、学校に行く。
そして戦うんだ、と。
- 254 名前:第二十話 投稿日:2002年11月11日(月)18時07分34秒
圭は今日、家庭教師を休ませてくれ、と石川家に電話を入れて来た。
「…き、きっと…あの子と一緒にいるんだ…!!」
「亜依お嬢様…。」
膝の上で泣きじゃくる亜依の頭を、紗耶香は優しくなでた。
あの後、紗耶香は『Tochter.』に欠勤の電話を入れ、ずっとここにいた。
学校を休んだあさ美が、紗耶香の代わりに店番をしたそうだ。有閑マダム達は『こんな
小さい子が、こんな時間にお店にいるなんて!』と驚いていたそうだが、なんとか誤魔化
したらしい。
そして、朝から現在まで、亜依は泣きっぱなし。
時折紅茶を入れて水分補給をさせたりしたのだが、食べ物は一切口にしようとしない。
「亜依なんて眼中ないって、わかってたよ…。保田先生が亜依の事、恋愛対象に見てない
なんて事、ちゃんとわかってたよ。それに、女同士だって事も…!!」
「…はい。」
「だけどね、頑張ってれば…一生懸命頑張れば、いつか振り向いてくれるって…そう信じ
てたの!!なのに…なのに…!!!」
また、わっと泣き出す。
- 255 名前:第二十話 投稿日:2002年11月11日(月)18時08分06秒
- 紗耶香は笑みを浮かべたまま、優しく亜依の背中を撫でる。
「…ですが、亜依お嬢様。その保田様と待ち合わせをなさってた方、本当に保田様の恋人
なのでしょうか?」
「…わかんない…。」
亜依はひくっ、としゃくりあげる。
「でも、すごい仲良さそうだったの!亜依、保田先生のあんな笑顔、見た事ない!!」
泣き続ける亜依に、紗耶香は穏やかな口調で言う。
「わからないなら、決め付けてはいけません。」
その言葉に、亜依は顔を上げた。
「決め付けは、とても愚かな事です。ご本人の口からそう聞いたのなら、信じる価値はあ
りますが…亜依お嬢様は、保田様が女の方と待ち合わせている所を御覧になっただけでしょ
う?」
「…うん。」
「だったら、もしかしたら亜依お嬢様は勘違いをなさっているだけかも知れません。
亜依お嬢様と同じ年頃の女性、とおっしゃってましたね?でしたら、親戚の方かも知れ
ないし、ご友人の妹様かも知れない。他には…保田様は梨華お嬢様の他にも家庭教師のバ
イトをしようと思っていて、昨日はその面接をなさっていたのかも知れない。
…可能性は、無限にあります。ひとつだと決め付けていては、真実が見えなくなります
よ。」
- 256 名前:第二十話 投稿日:2002年11月11日(月)18時08分38秒
- 穏やかに…そして優しく言う紗耶香を、亜依は腫れた目で見つめた。
「…そう…だよね…。」
紗耶香と目を合わせて、亜依はにこっと笑った。
「亜依らしくなかったよね!!逃げて来ちゃうなんて…。」
「そうですね。」
「どうせなら割り込んで、『この女ダレよー!』とか叫んで来れば良かったんだよね!!!」
「…執事の立場として言わせて頂きますと、もっと穏便な方法を取って頂きたいなぁ、と
思いますが。」
「そっか…そっか、そっか!!!」
亜依の腫れた目には、いつもの輝きが戻っていた。それを見て、紗耶香も安心する。
「元気になられたようですね。…それでは、お食事の用意を致しましょう。昨日から何も
口にされていらっしゃいませんので、やわらかいものにいたしましょうね。」
「うん!!おなかすいたー!!」
紗耶香は亜依の部屋に備え付けられた内線で、厨房に注文を出す。これで、十分後には食
事が届くはずだ。
亜依は、受話器を置いた紗耶香の背中に向かって言う。
「ありがとう、紗耶香ちゃん。」
紗耶香はにっこりと微笑んで、深々と礼をした。
- 257 名前:第二十話 投稿日:2002年11月11日(月)18時09分09秒
帰り際、梨華は『Tochter.』の店内の張り紙を見つけた。
『今月十九日から、限定ケーキ始めます。』
「限定ケーキっ!?」
梨華は目を輝かせた。
「…ああ、ソレね。」
梨華の輝いてる目を見て、ひとみは説明する。
「毎月十九日に、限定五個のスペシャルケーキを出すんだ。その季節に合ったケーキをなつ
み姉ちゃんが作るんだって。」
「へぇ〜!!すごいっ!食べたいっ!!…でも、五個かぁ…。」
梨華の顔が、急に輝きを失う。
「…わたしが来る頃には、売り切れちゃってるよね…。」
ひとみは、緊張した。
この限定ケーキはもともと、梨華への贈り物なのだ。だから、梨華は確実に食べられるの
である。
だが、この店が『梨華のお買い物レッスン用』だと言う事は、梨華には内緒。バレてはい
けない。
だからひとみは、梨華に不審がられないように梨華に『確実に限定ケーキを食べられる』
と言う事を伝えなくてはならない。
それについては、さっきなつみと打ち合わせをしたばっかりだ。
ひとみは心の中で、ヨッシャ!!と気合を入れた。
- 258 名前:第二十話 投稿日:2002年11月11日(月)18時09分41秒
「…何なら、予約して行く?」
「えっ!?予約なんてできるの!?」
「うん。」
「でも、それだったら…もう予約、いっぱいじゃないの?」
「ううん、大丈夫。梨華ちゃんが予約一号だよ。」
「本当に!?」
再び顔を輝かせた梨華に、ひとみは笑顔で言う。
「…実は、予約ができるって他のお客様には言ってないんだ。
だけど、梨華ちゃんは…この店の一番の常連さんだからね。特別なんだよ。」
梨華は、嬉しそうに笑ってから…ひとみに抱きつく。
「嬉しいっ!!」
「は、ははは…それはよかった。」
梨華の(何気に大きな)胸が押し付けられて、ひとみはどぎまぎしてしまった。
「十九日、楽しみっ!!!」
とろけるような笑顔に、ひとみの心臓はドッキドキ。
そして、安堵しながら思う。
(任務、完了…。)
そして梨華の背中に腕を回して、ぎゅっと抱きしめる。
- 259 名前:第二十話 投稿日:2002年11月11日(月)18時10分14秒
いつも通り、門の前まで送り…キス。
「…また、明日…。」
そう言って、名残惜しそうに去っていく後姿を見ながら…ひとみはため息をつく。
そして、唐突に思い出してしまった。
(そうだ…!!!あたし、梨華ちゃん騙してるんだ…!!!)
梨華は、家の前にケーキ屋ができたのは偶然だと思っている。
しかし、それは実は偶然ではなく…梨華の父が仕組んだ事。
(それなのにあたしは…そんな自分の立場も忘れて…。)
ひとみは、空を仰いだ。
もう、暗くなって来ている。冬が近い。
(神様。)
ひとみは天に向かって、祈った。
(どうか…どうか、最後まで梨華ちゃんにバレませんように…。)
最後が来たら、潔く身を引くから。
それまではせめて、この幸せを続かせて下さい。
ひとみはぐっと、拳を握った。
- 260 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月11日(月)18時10分44秒
バカップルかと思いきや、けっこう重大な問題を抱えてるいしよし。
…てゆーか、今回のいしよしのバカップルっぷりを書くのは楽しかった…!!!
いちーちゃんはなんか悟ってますね。彼女の過去には、何があったんでしょーか♪
>ひとみんこ様
今回はごっちん、回想のみの出演(笑)。
いちーちゃん、めずらしくいっぱいしゃべってます!!
>ヒトシズク様
学校でクール…!!その内きっと、相方が出てくるでしょう。
男前で恥ずかしがりやでわかりやすい、ちょっぴり間抜けな…(笑)
頑張りますね!どうぞよろしく!!
>とものり様
どーもー!!
カッケーですか?よかった〜。
今日はレッスンすっぽかされませんでした。だけど、レッスン直後に更新です(笑)
がんばりますので、よろしくおねがいしますねー!!!
- 261 名前:まるみ 投稿日:2002年11月11日(月)18時27分49秒
- この頃、姫の性格が変わってきたような・・・?
いちーちゃんのCPもあるのかなー?
あさ美がんがれ!
- 262 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年11月11日(月)20時49分36秒
- クロイツさま
更新お疲れさんです。
よっすぃ〜じゃなくても、梨華ちゃんに抱きつかれて上目遣いで見られたらクラクラしちゃいますよ。
でも、良く我慢した。偉いぞよっすぃ〜。
いや〜あまあまな、いしよしはやっぱり最高ですね。
なっちが作ってるケーキとここのいしよしとどっちが甘いか、比べて見たいです。(w
では、次の更新を他のしみに待ちつつ保存作業してます。
- 263 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月11日(月)21時03分03秒
- 更新お疲れ様です。
いちーちゃん、悟ってますね〜。でも、そんなとこがカッケーんですけどね。
いしよし、毎回甘すぎて見ている方がクラクラきますね。でも、そんなとこが最高!
次回の更新楽しみにしてます。
がんばってくださいね!
- 264 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月12日(火)08時16分15秒
- ナチュラルセクシーなチャミさま、きゃわいい〜。
これで華開いたら、一体どうなるんでしょうか?
>(それなのにあたしは…そんな自分の立場も忘れて…。)
>ひとみは、空を仰いだ。
「幸せですか」のPVの中でちょっと寂しげに見上げるひーさまの顔が浮かんできました。
- 265 名前:あおのり 投稿日:2002年11月12日(火)09時42分43秒
- 天然で誘っている梨華お嬢…今回こそは遂に死にました
迫られて舞い上がっているひとみおもしれー!
しかし梨華お嬢はともかくひとみちゃんは未だ身分の違いにこだわっているようで…
でもゆっくりゆっくりいけばそのうち
「かいかんかいかん」「まいばんまいばん」
の関係になるかと(w
- 266 名前:第二十一話 投稿日:2002年11月12日(火)13時58分52秒
「ちょっと、良い?」
梨華は思いもかけない人物に声をかけられて、戸惑った。
その人物とは…柴田あゆみ。
先日転校して来た、梨華よりも二つ後ろの席に座るミステリアス美少女である。
「え、ええ…良いけど。なあに?」
梨華はとまどいつつも、笑顔であゆみを見た。するとあゆみは、笑顔を返す。
ぞっ
その笑顔が、梨華にはとても冷たいものに見えて…梨華のちょっぴり地黒な肌に、一斉
に鳥肌が立つ。
だが、顔に出すわけにはいかない。なんとか笑顔を保ちつつ、その冷たい笑顔を見てい
た。
そんな梨華の内心を見透かしたように口の端を歪め、あゆみは続ける。
「…ちょっと、ここでは話せないから。屋上に行きましょう。」
梨華は、ちょっと迷った。
実は、あゆみと会話するのはこれが初めてなのだ。
(それが、人前では話せない話なんて…。)
梨華は不安を感じつつ、こくりと頷いてから席を立った。
- 267 名前:第二十一話 投稿日:2002年11月12日(火)13時59分25秒
昼休みとはいえ、もう秋だ。さすがに屋上には誰の姿も見えない。
つまり、梨華はあゆみと二人っきりになってしまったのだ。
(ううう〜…なんか怖いよぉ…。ひとみちゃん…。)
愛しいあのひとの姿を思い浮かべ、勇気を振り絞る。
「…話って、なあに?」
ぎこちない笑顔になってしまったかも知れない。まあ、それも仕方ない事である。
しかし、あゆみは振り返らない。梨華に背を向けたままである。
「あの…柴田さん?」
沈黙してしまったあゆみに、梨華は恐る恐る言うと…あゆみは突然振り返り、さっきより
も数倍冷たい微笑を浮かべた。
「!?」
驚いて数歩後退する梨華に、あゆみは言った。
「吉澤ひとみと、別れて。」
「…え…?」
いきなり出されたひとみの名に、梨華はたじろぐ。
「ねえ、別れてよ。」
「な…っ!!」
- 268 名前:第二十一話 投稿日:2002年11月12日(火)14時00分08秒
- 少し混乱していた梨華だが、すぐに正気を取り戻す。
「な、なんで!?」
「なんでも良いじゃない。別れて。今すぐ。」
「嫌よ!なんでそんな事、柴田さんに言われなきゃいけないの!?」
怒りの感情を前面に出した梨華に、あゆみは勝ち誇ったように言う。
「私には、その権利があるの。だって…」
あゆみは、ポケットから定期入れを取り出し…その中から一枚の写真を取り出して梨華に
見せる。
「・・・・・・っ!!!」
梨華の目が、見開かれた。
そこに写っているのは、あゆみとひとみ。
しかもひとみが、あゆみを背後から抱きしめている写真。
さすがの梨華でも、それが恋人同士の写真だと言う事はすぐにわかる。それくらい、密着
して仲の良さそうな写真だった。
- 269 名前:第二十一話 投稿日:2002年11月12日(火)14時00分40秒
- 「わかった?吉澤ひとみは、私の恋人なの。だから、別れて。」
「・・・・・・。」
梨華は、その場に力なくへたり込んだ。
(嘘…でしょ…?って事はわたし…二股目だったの…!?)
梨華は頭を振る。
(そんな事、ないっ!!ひとみちゃんはそんな事、できるひとじゃ…!!!)
そこまで考えて、思いつく。
梨華は、ひとみの事をほとんど何も知らないのだ。
今まで、どんな生活をしていたとか。どうして姉妹全員苗字が違うのかとか。ご両親は
どんな人なのかとか。…自分以外に、何人の人と付き合って来たのか、とか。
知っているのは、ごくわずかな事だけ。
気付いたら、あゆみはいなくなっていた。
梨華は、はらはらと涙を落とし始める。
「…ひとみちゃぁん…。」
絶望的な気分で、梨華は両手で顔を覆った。
- 270 名前:第二十一話 投稿日:2002年11月12日(火)14時01分13秒
姉達の反対を押し切って学校に出て来たあさ美は…朝からずっと、戦っていた。
机にマジックで書き殴られた罵詈雑言を、学校に常備してある洗剤できれいに落とした
り、隠された体操着や上履きを探して焼却炉まで行ったり、机の中に入れられていたヒキ
ガエルとおともだちになったり…etc。
そんな事をしている間に、あさ美はなんだか全てがどーでも良くなって来た。
「…皆さん、暇なんですねぇ。こんな事してる時間に英単語でも覚えてれば…きっと成績、
ものすごく上がると思いますよ、私は。…ねえ、フランソワーズ?」
「げこ。」
「フランソワーズは賢いですねぇ。」
「げこ。」
あさ美はヒキガエル(フランソワーズ)を入れた水槽を机の上に置き、話しかけていた。
放この水槽は、三時間目の生物の時間に教師がくれたものだ。側面にでかでかと『フラン
ソワーズ・シャルル・ド・シャトーブリアンのお部屋』と書かれた紙が張ってある。
フランソワーズは、何気にフランス人でしかも貴族らしい。
そんなあさ美を見て、クラスメート達はひそひそと聞こえよがしに悪口を言う。
「紺野さん、暗〜い。」
「カエルに話しかけてるよ〜。気持ち悪〜い。」
- 271 名前:第二十一話 投稿日:2002年11月12日(火)14時01分52秒
- それを聞いて、あさ美ははーっとため息をついた。
「…レベルが低い…。そう思いませんか?フランソワーズ。」
「げこ。」
それを聞きつけて、クラスメートの内の一人が真っ赤な顔で立ち上がった。
「ちょっとアンタ!!!調子に乗ってんじゃねえよ!!!」
あさ美はそのクラスメートの顔を、正面から見据えた。
「調子に乗ってる?私が?」
あさ美はふっと、不適に微笑んだ。
「…それじゃあなた達は、『尻馬に乗ってる』んですね。」
教室全体がざわめく。
そんなクラスメート達を尻目に、あさ美は水槽に向かった。
「さ、行きましょうか、フランソワーズ。これからののさんと一緒にお昼を食べるんです。
フランソワーズの事も紹介してあげますからね。」
そして、かばんと水槽を持って教室から出た。
残されたクラスメート達は、しばらく黙ってる事しかできなかった。
- 272 名前:第二十一話 投稿日:2002年11月12日(火)14時02分24秒
電話口で泣きじゃくっている梨華に、真希は困惑していた。
「梨華お嬢様?どうなさったのですか?何でそんなに泣いてらっしゃるんですか?」
『うぇ…っく、ま、真希ぃ…っ!!わた、わたし…もう…!!!』
「どこにいらっしゃるんですか!?何があったのですか!?」
『がっこ…学校…。』
「誰かに何か、されたんですか!?」
『う…ふ、ええええぇぇ…』
真希は、いても立ってもいられなくなった。
この世で一番大切なお嬢様が、泣いている。
それだけで心がかき乱されるのだ。
「一体、どうなさったのですか…?泣いているだけでは、私にはわかりませんよ?」
『うう…えっく…ひ、ひとみちゃんが…ひとみちゃんがぁっ!!』
「…吉澤ひとみが?」
真希の背中に、緊張が走った。
それと同時に、隣の席に今まさに戻って来たひとみが『え?ウチ?』と素っ頓狂な声を
出す。
「吉澤ひとみが…何をしたんですか!?」
『ううっく…うえっく…』
- 273 名前:第二十一話 投稿日:2002年11月12日(火)14時02分56秒
- 電話の相手が梨華だとわかったひとみは、急いで真希から携帯を奪い取った。
「もしもし、梨華ちゃん!?」
『ひ…とみちゃ…!?』
「何!?泣いてるの!?どうしたの!?」
『・・・・・・。』
すると梨華は、ちょっと黙る。そして…。
『…別れよう。わたし達。』
「はぁ!?」
ひとみは耳を疑った。
「何言ってるんだよ、梨華ちゃん!!なんで…!!」
『…恋人、いたのに…わたしと付き合うなんて…そんなの、酷いよ。』
「何言ってんの!?ウチの彼女は梨華ちゃんだけだよ!?」
『嘘…吐かないで。』
梨華の声は、聞いたこともないくらいに細く、かすれて…弱弱しかった。
「嘘じゃないよ!!」
『柴田あゆみちゃん、って、知ってる?』
ひとみは、記憶の中をさぐる。
そして、前に梨華からもらったメールの内容を思い出した。
- 274 名前:第二十一話 投稿日:2002年11月12日(火)14時03分28秒
『ひとみちゃん、学校はどうですか?仲良いコとかできた?わたしのクラスにも、転校生
が来たの!柴田あゆみちゃんって言うコ。それで、ひとみちゃんを思い出しちゃいました。』
「…梨華ちゃんのクラスの転校生でしょ?それがどうしたの?」
『…それ以外には…?』
「それ以外ぃ!?」
ひとみは必死で、記憶の中をさぐる。
(何だってぇ!?柴田あゆみ!?しばたあゆみ。しばた、あゆみ。しば…)
「…ぁあああああああああああああっ!!!」
『…その子と、付き合ってるんでしょ?』
「違っ…そ、それは違うんだよ!!」
『何が違うの?』
「なんて言うか、その…。」
ひとみは、言葉に詰まる。
『…わたしには、言えないんだ…。』
「そうじゃなくてっ!!」
梨華は、涙ながらに続ける。
『わたし、ひとみちゃんの事なんにも知らない。
わたしと出会う前は何してたのかとか、どこに住んでたのかとか…その他にも、知らない
事の方が多い。』
「・・・・・・。」
- 275 名前:第二十一話 投稿日:2002年11月12日(火)14時04分00秒
- ひとみは、黙るより他なかった。
そんなひとみに、梨華は叫ぶように言う。
『わたしはこんなに…こんなにひとみちゃんが大好きなのに!!ひとみちゃんは、わたしの
事そんなに好きじゃないのよね…!!!』
「梨…!!!」
電話は、切られた。
「梨華ちゃん…。」
切れた電話(真希の)を見つめて、ひとみは呆然としていた。
頭の中は、混乱しっぱなしだ。
(柴ちゃん…なんで今頃になって…!!!)
そんなモンだから、ひとみは気付かなかった。
背後で、激怒した真希が頭上高く机を持ち上げ、ひとみを狙っていた事に…。
- 276 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月12日(火)14時05分01秒
いしよしピーンチ!!!
んでもって、ヨッスィー!!はやくごっちんに気付かないと、脳天かち割られそうよ!!
いやぁ、どーなっちゃうのか。前回あまあまだった分、今回はハードですねぇ。
そしてフランソワーズ。
名前考えるのに、たっぷり三分は悩みました。
>まるみ様
性格、変わって来てます?意識はしてないのですが…。
でも、甘えん坊にはなりましたね(笑)。
いちーちゃんCP…どうでしょうねぇ♪とりあえず彼女は『謎の人』です。
>ななしのよっすぃ〜様
保存、いつもありがとうございます!!
なっちのケーキVSいしよし…どっちなんでしょーねぇ♪
基本的になっちが『甘いもの好き』なんで、良い勝負かもです!!
>ヒトシズク様
ををっ!!いちーちゃん大人気!?(笑)
元祖『男前』いちーちゃん。これから先も、多分壊れる事なくカッケーかと思われます。
がんばりますねー!!
- 277 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月12日(火)14時06分03秒
- レスの続きでっす!!
最近レスがいっぱいでうれしいなー♪
>ひとみんこ様
雲行きが怪しくなって参りました。いしよし。
ヨッスィーにはどんな過去があるんだか。
てゆーか今まで、過去が出て来たのって…こんこん&ヤッスーのみ!?
いやぁん…もっと出さなきゃ…(汗)
>あおのり様
身分の違いどころじゃなくなりました…。
ヨッスィーどうする!?
てゆーか…イタい系梨華ちゃんってば、私のマジ好みだったりします。
好きな子ほどいじめた〜い☆(小学生男子)
- 278 名前:まるみ 投稿日:2002年11月12日(火)14時18分58秒
- 『フランソワーズ・シャルル・ド・シャトーブリアンのお部屋』
↑
ワラタ
ヒキガエルと友達になれるあさ美は何者だ?
いじめなんかに負けるな!
そーいえば・・・柴ちゃんの存在忘れてた(w
- 279 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月12日(火)14時41分53秒
- いやいや、いしよしは超硬質超合金鉄板です。
少々、火であぶってもびくともしません。
でも机が・・・・・、ごちん机はないべ。
無事を祈ります。
- 280 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年11月12日(火)20時35分02秒
- 柴田さん何するんですか!(怒
確かによっすぃ〜は可愛いしかっこいいけど。
甘い雰囲気だった、いしよしが...。(泣
なんて、更新お疲れさまです。
甘さを際立てるためには時には、波風も必要です。
あんこも甘くするには塩も入れるそうですから。
こんこん、強くなりましたね。でも、かえるにフランソワーズって、ほんとにつけてそうです。(w
では、続きも楽しみに待っています。
- 281 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月12日(火)21時13分23秒
- フランソワーズ、いい味出してますねぇ〜。
柴ちゃん、あんたいったい何者!?
いしよし、ピンチですね(笑。
てか、よしこ、ごっちんに気がついて!!!
このままではよしこ、君は死んでしまうぞよ・・・
って感じですね。
がんばってください。
更新楽しみにしてます♪
- 282 名前:あおのり 投稿日:2002年11月13日(水)00時00分36秒
- 「…ぁあああああああああああああっ!!!」ってこっちが言いたいよ!よしこさん!
今度という今度は吉推しの私でもフォローできません。まぁったく、ぷんぷん!
正直にお嬢に全てを話して許しを請いなさい…
ってその前に後藤執事を止めなくてはっ。コリャチヲミルナ、キット
- 283 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時32分48秒
頭上高く持ち上げられ、ひとみに向かって投げつけられた机は、ひとみに命中せずに床
に転がった。
どかーん!
破壊的な音と共に、机の脚は折れ曲がった。
ひとみと、その光景を見ていたクラスメート達の背筋に冷たいモノが走る。
「ご、ごごごごっちん…もしかしてウチを殺す気?」
そう言うひとみを、真希は無言でにらみつける。その細い身体の、どこにそんな力が潜ん
でいるのか…真希は机をもう一つ持ち上げた。
そして、危険に輝く瞳でこう呟いた。
「…次は、あてる。」
- 284 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時33分51秒
- 「う、わあああああああっ!!待った!!ちょっと待った!!」
「待てるか!!貴様、石川家のお嬢様を二股目にするとはどう言う事だ!!」
「ふ、二股目なんかじゃないって!!梨華ちゃんが本命だって!!」
「っああああああ!!!それでも許せん!!二股かけてる時点で、貴様は万死に値する!!」
「だから、ちょっと待ってよ!二股なんかじゃないんだって!!」
「だったら何故、『柴田あゆみ』と言う名前に反応した!?」
「そ、それには事情が…ってゆーかごっちん…なんでウチらの話の内容、そこまで詳しく
知ってるの?」
真希は机を持ち上げたまま、ふっと不敵に笑った。
「受話器から漏れ聞こえる会話を盗み聞きできないような聴力じゃ、石川家の執事は務ま
らないんだよ。」
主の発した一言一句までもを聞き逃さない為に、石川家の執事は日夜訓練している。そ
して『執事の中の執事』後藤真希は、工事現場の騒音の中ででも、百メートル離れた場所
にいる梨華の『きゃあっ』と言うささやかな悲鳴も聞き取れるのだ。
- 285 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時34分26秒
- 真希はため息をついて、机を下に下ろした。
「…まあ良い。貴様と戯れてる場合じゃない。梨華お嬢様を迎えに行かなきゃ…。」
携帯をひとみから奪い返し、梨華の専属運転手・山崎にかける。
そんな真希の足元で、ひとみはまた呆然としていた。
『…別れよう。わたし達。』
梨華の泣き声が、頭から離れない。
『わたし、ひとみちゃんの事なんにも知らない。
わたしと出会う前は何してたのかとか、どこに住んでたのかとか…その他にも、知らない
事の方が多い。』
当然だ。ひとみの過去は、梨華に言えるようなキレイなものじゃない。
『わたしはこんなに…こんなにひとみちゃんが大好きなのに!!ひとみちゃんは、わたしの
事そんなに好きじゃないのよね…!!!』
そんな事は、絶対にない。
- 286 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時35分00秒
- (…もどかしい!!)
ひとみはぐっと、目をつぶった。
何かが、邪魔をしている。
あゆみではなく、自分の中の何かが。
ひとみにリミッターをかけて、それ以上先に進めなくなっているのだ。
ひとみには、そのリミッターの正体はわかっている。
『身分の差』だ。
ひとみは、かっと目を開いた。そして、電話中の真希を見る。
「…うん、そう。私も行くから、すぐに向かって。…それじゃ、また後で。」
そう言って電話を切った真希に、ひとみはつかみかかった。
「うわっ!!何!?」
「あたしも連れてって!!」
「はぁ!?」
真希の驚きの顔が、怒りに変わる。
「自分で何言ってるのか分かってる!?あんた、梨華お嬢様の傷口に塩を塗り込むつもり!?」
「そんな事、絶対にしない!!」
ひとみよりも少し背が低い真希は、ひとみの燃えるような瞳に覗き込まれて…困惑した。
- 287 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時35分33秒
- ひとみが、何かを決意しているのはわかる。
だが、それが梨華を喜ばせるものなのか悲しませるものなのか…見当がつかない。
「頼むよ、ごっちん。梨華ちゃんに、言わなきゃいけない事があるんだ。」
真希は、目を閉じた。そして考える。
今も、梨華は泣いているだろう。
だが…果たして自分が行って、梨華を泣き止ます事ができるだろうか?
そんな真希の中で、昔言われた言葉が蘇る。
『一人でなんでもしよう、と思っちゃいけない。
自分の力じゃ不可能だ、とわかったら、迷わず他人の力を借りる事。
自分は万能である、なんて奢っては駄目だ。人間には必ず限界がある。
周囲や状況だけでなく、自分の事も冷静に見つめる事。
それが、執事に必要な事の内のひとつなんだ。』
- 288 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時36分06秒
「…わかった。」
真希はゆっくり目を開けた。
「…一緒に行こう。」
「ごっちん!!」
「その代わり!!」
真希はぐっと、ひとみをにらみつける。
「また梨華お嬢様を傷付けるような事になったら…今度こそ私は、あんたを許さない!!
わかったな!?」
「うん!!ありがとう、ごっちん!!」
「本当に分かってんの!?」
二人は揃って、教室から走り出た。
- 289 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時36分42秒
圭は、亡き妹・愛が通っていた中学に来ていた。
校門をくぐり、校長室に向かっていると…自然と顔が険しくなってしまう。
校長室の扉を見て、一年前の記憶がフラッシュバックする。
『お宅の娘さんは、「自分は売春をしていた」と言う自己嫌悪から自殺したんです。』
『自己嫌悪なんかじゃありません!!いじめに遭ってたんです!!それも、極めて悪質な!』
『しかし…そのような事実は本当にないんですよ。
愛さんのクラスメート達も、全員が全員「いじめなんかなかった」と答えていますし…。』
『それを鵜呑みになさるんですか!?』
『保田さん、しつこいですよ。』
頭を振る。
今は、頭の中から追い出しておこう。下手な私情は、邪魔になるだけだ。
こんこん
「はい、どうぞ。」
返事は、すぐに聞こえた。
- 290 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時37分13秒
- 憎くて憎くてたまらないヤツらのうちの一人の声。聞くだけで吐き気がする。
「失礼します。」
圭はそんな内心はおくびも出さずに扉を開けた。
「…っ!!あなたは…!!!」
校長の席に座る老人の顔が、驚きによって引きつる。それを前にして、圭はにっこりと微
笑んだ。
「お久しぶりです、校長先生。愛の葬式の時以来ですね。」
「・・・・・・。」
老人は黙った。そりゃそーだ、と圭は思う。
(黙る以外に出来ないでしょ、このじいさんは。)
「…そ、それで…今日はどんなご用件で…。」
「わかってらっしゃるんでしょう?」
「・・・・・・。」
「姪御さん…小川麻琴さんから、お話は聞いているはずですものね。」
「…いや、私は何も聞いて…」
「聞いてない、とおっしゃるの?あの時みたいに?」
二人の間を、張り詰めた空気が流れる。
「何も知らない、じゃ今回は済まされないんじゃないですか?」
「…何の話でしょう?」
「『あの子』の今回のターゲットは、愛と違って『超天才少女』ですからね。」
- 291 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時37分46秒
- 「・・・・・・。」
圭は、カバンの中から数枚のプリントアウトを取り出した。
「紺野あさ美。
全国統一模試で、日本全国の『天才』と呼ばれる中学三年生をことごとく打ち負かして…
全国一位を勝ち取った『超天才少女』。
彼女のIQ、200を越すんですってね。NASAがもう今から狙ってるそうですよ。彼女の
事。」
「・・・・・・。」
「そんな紺野あさ美が自殺したりしたら…愛の時の騒ぎどころじゃないでしょうね。」
「・・・・・・。」
「愛は『ただの中学生』でしたけど、今度は『超天才少女』ですもの。
愛の時みたいに、三流スポーツ新聞や三流写真週刊誌がちょっと騒ぐだけでは終わりま
せん。きっと、世界中の非難をあびる事になるでしょう。」
「・・・・・・。」
老人はそわそわし出して…それから、怒鳴りつけるように叫んだ。
「いい加減にして下さいよ、保田さん!!脅してるつもりですか!?」
- 292 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時38分19秒
- 「いいえ。事実を忠告しているだけです。」
「余計なお世話です!!我が校には『いじめ』なんてありません!!」
老人は立ち上がった。
「それに保田さん!!私達としても迷惑してるんですよ!!
『売春の果てに自殺』なんて事をやらかしてくれた、あなたの妹のおかげで!!!」
圭の目が、果てしない冷たさを帯びる。
それに射られて、老人は背筋を凍りつかせた。
「…わかりました。」
圭は立ち上がった。
「そちらがそのつもりなら、結構です。アタシも気兼ねなく、戦えます。」
そのまま、圭は校長室から出て行った。
残された老人は…へなへなと床に座り込む事しかできなかった。
- 293 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時38分50秒
「梨華お嬢様!!」
「梨華ちゃん!!!」
梨華専用車のベンツから降りて来た二人の顔を見て、梨華は迷わず逃げ出した。
「うおっ!?ちょ、ちょっと待った!!なんで逃げる!?」
「あたりまえだっつの!!だから私は言ったんだよ!!あんたは車ん中で待ってろって!」
「だってそれじゃ…」
「お二人とも!!今はそんな事言い合ってる場合じゃないでしょう!!」
運転手・山崎に言われて、二人ともはたと気付く。
そして、真希は落ち込む。
「う、運転手に突っ込まれるなんて…!!この私が!!『執事の中の執事』と呼ばれた、
この私がっ!!!」
真希が苦悩してる隙に、ひとみは駆け出す。
「待って、梨華ちゃん!!」
しかし、当然の事ながら梨華はとまらない。
- 294 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時39分23秒
- (まずい…校舎ん中入られたら不利だ!!)
ひとみにとっては初めて来る場所でも、梨華にとっては毎日来る場所。どこか見えにく
い所に隠れられたら最後、見つけ出すのは困難だ。
「待ってよ、梨華ちゃん!!」
校舎に入る、すんでの所でひとみは梨華をつかまえた。
(せ、セーフ…。)
心の中で呟いて、梨華を背後から抱きしめる。
「…離して。」
「嫌だ。」
「…離してってば。」
「絶対嫌だ。だって離したら、梨華ちゃん逃げちゃうでしょ?」
「・・・・・・。」
ひとみは梨華を、ぎゅっと抱きしめる。ひとみの腕の中で、梨華は身をかたくした。
「…駄目だよ、ひとみちゃん。柴田さんに悪いよ。」
「関係ないよ。」
「関係なくなんか…」
「関係ないんだ。本当に。」
- 295 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時39分57秒
- 梨華の甘い香りが、ひとみの心を締め付ける。
「柴ちゃんに、何言われたんだか知らないけど…あたし、二股なんてかけてない。」
「・・・・・・。」
「信じてよ、梨華ちゃん。」
梨華は身をかたくしたまま、震えだした。
「…信じたいよぉ…。でも…。」
「でも?」
「わたし、信じられる程…ひとみちゃんの事知らないの…。」
梨華の前に回されているひとみの手に、冷たい感触。どうやら梨華は泣いているようだ。
「梨華ちゃん…。」
「ひとみちゃんが話してくれるまで、待とうって思ってたの。…でも…でも…。」
「・・・・・・。」
ひとみは梨華を抱く手に、更に力を込める。
そして、梨華の耳元で囁くようにしてしゃべり始めた。
- 296 名前:第二十二話 投稿日:2002年11月14日(木)18時40分28秒
「…あたし…二年前まで柴ちゃんのヒモだったんだ。」
「…へっ?」
そのひとみの告白に…滝のように流れていた梨華の涙が、ぴたっと止まった。
ひとみは空を見上げて、ため息をつく。
(…もう、冬だよなぁ…。)
今は亡き母の顔を思い出して、ひとみは気合を入れなおしたのだった。
- 297 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月14日(木)18時41分00秒
ヨッスィー大告白。
いやー、びっくり。書いてる私もびっくり。
>まるみ様
フランソワーズは、ただのヒキガエルじゃございません。
そしてこんこんも、ただ者じゃございません。
そして、柴ちゃんの存在…私もつい最近まで忘れてました(笑)
>ひとみんこ様
ヨッスィー、一応無事でした☆
ごっちん怪力〜。
そして、だんだんキャラ壊れて来ますねぇ…こんこんの影響でしょうか。
>ななしのよっすぃ〜様
>あんこも甘くするには塩も入れるそうですから。
良い事をおっしゃいますね〜!!
そうなんですよー!!もっともっと甘くなる為に、必要な儀式なのです!!
嵐が去ったら…きっとまた、べたべたに甘くなるはずです(笑)
がんばりますねー!!
- 298 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月14日(木)18時44分59秒
- レスの続きです♪
うわーい!!
>ヒトシズク様
フランソワーズ…人気みたいでうれしいです!!名前考えた甲斐があります!!
てゆーかヨッスィー、無事でした。よかったよかった。
でも、アレですね。ごっちんがあなどれない…(笑)
がんばりますので、どうぞよろしく☆
>あおのり様
ヨッスィー大告白です!!
フォローしてあげてください(笑)。私にはできないので…。
てゆーかヨッスィーの過去もハードっぽいですねぇ。
- 299 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月14日(木)22時07分13秒
- ひも〜!!!????
ジゴロだったのか????
- 300 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年11月14日(木)22時57分46秒
- クロイツ さま
嵐で荒れそうですね。
ヒモだったんですか。柴田さんの...。
ちょっといいかも。
理想の職種です。美人のヒモって。
よっすぃ〜の後釜に立候補しそうです(w
では、更新を楽しみに待ってます!
- 301 名前:まるみ 投稿日:2002年11月14日(木)23時37分35秒
- 姫の恋人・・・。
柴ちゃんのヒモ・・・。
私もなりたい・・・。
- 302 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年11月15日(金)14時46分34秒
- 川o・-・)<フランソワーズ、ひとみ姉さんがピンチですよ げこ>
柴のヒモなら、なってもいい。いや、ヲレが囲ってもいい。
ああ、そう言えば大金持ちのお嬢だった。じゃ、やっぱりヒモだな。
- 303 名前:きゃは 投稿日:2002年11月15日(金)16時32分24秒
- ( ^▽^)<ヒモ?梨華わかんな〜い
- 304 名前:第二十三話 投稿日:2002年11月15日(金)20時36分05秒
あさ美は、安堵の面持ちで用務員室から出て来た。フランソワーズの預かり場所が、確
保できたのだ。
学校に置いて帰ると、クラスメートに何をされるかわからない。かと言って、爬虫類系
が嫌いななつみとひとみのいる家には連れて帰れない。
そんな悩みを抱えていたあさ美だったが、昼に希美に紹介された小川麻琴に『それなら、
用務員室に置いてもらえば?それで、朝迎えに行けば良いじゃん。』とアドバイスを受け
たのだ。
引き受けてもらえるとは思えず、二番目の姉譲りの『当たって砕けろ精神』でぶつかっ
てみたのだが…けっこう快く引き受けてもらえたのだ。
「よかった…完璧です。」
ようやくできた、友達第一号だ。あさ美にとっては宝物も同然である。
と、そこに。
「あ!ねえ、ちょっと、そこのあなた!」
あさ美は反射的に振り返る。すると、そこにいたのはパンツスーツ姿の女性だった。
「・・・・・・?」
見た事のない人物だったので、人違いかと思ったのだが…その女性はあさ美に追いつくな
り、こう言った。
「紺野あさ美さん、よね?」
- 305 名前:第二十三話 投稿日:2002年11月15日(金)20時36分36秒
- 「へ?…ええ、まあ…そうですが。」
あさ美は、不審そうな顔をする。そりゃそーだ。見知らぬ人間が自分の名前を知っていて、
なおかつ呼び止められるなんて…ちょっと怖い。
しかも、今のあさ美は『他人』と言うモノに対して敏感になっている。あまり意識しな
いよう、考えないようにしていても…やっぱり、クラスメートにされている事はあさ美の
心を少しずつ傷付けているのだ。
そんなあさ美の内心を見抜いてか、女性はにこっと微笑んだ。
「…ああ、自己紹介が遅れたわね。アタシは、保田圭って言うの。」
そう、その女性とは圭であった。
さっき校長と会って、その後職員室に寄ったのだ。
「やすだ、けいさん…。」
あさ美は、『どこかで聞いた名前だなぁ』と思って、記憶を探る。
そんなあさ美の脳裏に、一年前に電車の中で隣に座った中年男性が読んでいたスポーツ
新聞の記事を思い出した。(あさ美は盗み読みをしていた)
『女子中学生、援助交際の果てに自殺
背景には、集団による「いじめ」の疑い』
そこに書いてあった名前と、酷似しているのだ。もっとも、新聞記事に書いてあった名前
は保田『圭』ではなく『愛』だったが。
- 306 名前:第二十三話 投稿日:2002年11月15日(金)20時37分06秒
- (…でも、そんなハズないですよね。世間はそんなに狭くないです。)
実は、けっこう狭いのである。
しかし、そんな事はあさ美は知らない。
今目の前にいるのが、新聞記事の中学生(あさ美と同い年だった)の関係者であるハズ
がない、とあさ美はそう思って、ぺこりと頭を下げた。
「はあ…どうも。」
何と言って良いのかわからず、あさ美は少々困惑する。
そんなあさ美に、圭は言った。
「…ねえ、紺野さん。ちょっと、時間ないかしら?ちょっと話したい事があるんだけど。」
会ってまだ数分も経っていない相手にそう言われて…あさ美は目をぱちくりさせるのだっ
た。
- 307 名前:第二十三話 投稿日:2002年11月15日(金)20時38分13秒
その頃、紗耶香は『Tochter.』のカウンターの前で時計を確認していた。
(…あと、一時間か。)
紗耶香の勤務時間は、午前十時から午後三時までだ。三時を過ぎると客はぐっと減るし、
それに三時以降までいると梨華にバレる可能性がある。
梨華は、『Tochter.』は石川家とは無関係であると信じている。また、それを
信じさせてなくてはならない。
それが、『Tochter.』の開店条件の内の一つだ。
だから、紗耶香が帰った三時から、希美とあさ美が帰って来る三時半までは、なつみが
店に出ている。しかし、客が少ないのでなんとかなっているらしい。
「ねえ、紗耶香さん。今月の限定ケーキ、なっちはパンプキンパイにしようと思ってるん
だけど…どうかな?」
厨房から出て来たなつみが言うと、紗耶香はいつもの穏やかな微笑を浮かべた。
「良いんじゃないですか?ハロウィンも近いですからね。」
「う〜ん…だけどなぁ。限定ケーキ一発目にしては、地味過ぎないかい?」
「そんな事ないですよ。」
紗耶香は笑みを崩さずに続ける。
- 308 名前:第二十三話 投稿日:2002年11月15日(金)20時39分16秒
- 「なっちの作るケーキは、どれもみんな輝いています。地味なんて事、ありませんよ。」
「…そ、そうだべか?」
「ええ、そうですとも。」
なつみは真っ赤になった頬を押さえた。
(うう〜…なんでこのヒト、こんなキザな事をさらりと言ってのけるんだべさ…。)
しかもそれが嫌味にならず、普通に聞こえるから恐ろしい。
「…それじゃ、素材に凝ってみようかなぁ。もともと素朴〜な味だから、良いモノ使えば
それだけ良い味出るだろうし…。あ!!そうだ!!上からあめがけとかしてみたらどうか
なぁ!!」
「あめがけ?」
紗耶香が首をかしげる。するとなつみは、きらきら輝くような笑顔を浮かべる。
「うん。あめがけって言うのはね、キャラメルと水飴を温めてやわらかくして、糸みたい
に細くして…上にふわふわって乗せるヤツ。見た事あるっしょ?」
「…ああ!!アレ!」
紗耶香はぽんっと手を叩いた。それを見て、なつみはまるで子供のような表情になった。
- 309 名前:第二十三話 投稿日:2002年11月15日(金)20時40分19秒
- 「可愛いですね、それ。良いんじゃありませんか?」
「良いっしょ!?可愛いっしょ!?うふふ。それから…お嬢様に出す分には、お皿に一緒
に生クリームかバニラアイスも乗せて…」
ぶつぶつ言いながら、なつみは厨房に戻って行った。
(ケーキの事を考えてるなっちは…本物の天使みたいだな。)
そんな事を考えつつ、紗耶香はなつみが作ったケーキ達を眺めた。
どれもこれも、素晴らしい出来である。一流ホテルのお抱えパティシエにだって、なつ
みにはなれるだろう。
事実、なつみはこの店を始める前までは都内にある一流洋菓子店でパティシエをやって
いて、かなり評判が良かった。数々のコンクールで優勝した経験もあるし、留学先でもい
くつか賞をもらっている。なつみは、本当に優秀なパティシエなのだ。
(狂わせてしまったかな。彼女の運命を。)
- 310 名前:第二十三話 投稿日:2002年11月15日(金)20時40分49秒
そこまで考えて、紗耶香は胸を押さえ目を閉じた。
(…私は執事。『あの方』に仕える事こそ、私の人生。)
だから、『あの方』以外の人間に目を向けてはならない。
そう自分に言い聞かせて、紗耶香は目を開いた。
紗耶香は、気付いてはいけないのだ。主の間違いにも、自分の気持ちにも。
(だから、なっちに特別な想いを抱いてはいけない。)
例えそれが、どんなに抑えがたいものであっても…。
紗耶香は胸の痛みを、気付かなかった事にした。
- 311 名前:第二十三話 投稿日:2002年11月15日(金)20時41分22秒
梨華は、混乱していた。
(ヒモ…)
頭の中でリフレインすると、眩暈が起こるような気がする。
「…梨華ちゃん、ヒモって…わかるかな?」
「う、うん…。昔、真希に教わった…。恋人にお金をもらう人、だよね?」
ひとみはこくりと頷く。そして、大きく息を吸い込んだ。
「…ウチ、家庭がイロイロと複雑でさ。
あたしの母親…愛人でさ。母子家庭だったんだよね。」
吐き出すように喋るひとみの顔は、上を向いていた。
「父親は…あたし、会った事ないんだけど…どっかの小さな会社の社長さんらしい。」
ひとみの身体がちょっと震えている事に、梨華は気付いた。
「母ちゃんの両親は、母ちゃんが高校の時に死んだんだって。それで、旅館の仲居やって
て…あたしは小さい頃、母ちゃんの遠い親戚とか言う家に預けられてたんだ。」
「・・・・・・。」
「よくある話。あたしはその親戚の家の人たちとうまく行ってなくて…でも、逃げ場もな
くて。そうしてる内に、完全に嫌われちゃったみたいで…」
ひとみは一回、息を全部吐き出した。そして、消えそうなくらい小さな声で言う。
「…ごはん、もらえなくなっちゃったんだ。」
- 312 名前:第二十三話 投稿日:2002年11月15日(金)20時41分53秒
- 「・・・・・・っ!!!」
「最初は、我慢してた。すっごくお腹すいて、辛かったけど…。
でも、そのうちわかった。『ああ、この人達はあたしにいなくなって欲しいんだなぁ』っ
て。」
ひとみの声は、しっかりしていた。だけど、梨華のうなじに冷たいものが落ちて来る。
「…その親戚の家を、飛び出した。行くあてなんかなかったけど…それでも、ここに居たら
このまま死んじゃうって思ったんだ。だから、動けるうちに家を出た。」
梨華のうなじには、次々に冷たいモノが落ちて来ている。だけど、ひとみの声は全くブレて
いない。
「それは…いくつの時なの?」
「…十歳。」
梨華は、両手で口を押さえた。
「しばらく、ホームレスみたいな生活してた。ダンボール拾って、それかぶって路上で寝て。
ごはんは、ゴミあさったり…たまに、盗んだりして。」
梨華を抱くひとみの手の力が、ちょっと強くなった。それを感じて、梨華も泣きたくなる。
…いや、気付いたら既に泣いていた。
「そんな時、柴ちゃんに出会った。」
「・・・・・・・。」
- 313 名前:第二十三話 投稿日:2002年11月15日(金)20時42分23秒
- 「いや…出会ったって言うか…拾ってもらったんだ。
柴ちゃんちは梨華ちゃんちに次ぐ金持ちだったから…家に連れて帰ってもらって、お風呂
入れてもらって、新しい服もらって、ごはん食べさせてもらって…部屋も用意してもらって。」
ひとみは思い出す。
あゆみが用意したのは、柴田家本邸の近所のマンションの一室だった。
「幸せだった。ごはんがお腹いっぱい食べられて、闇に怯えなくて済むのが…こんなに幸せ
な事だとは思わなかった。
柴ちゃんはあたしを『好き』って言ってくれた。だからあたし…その日から柴ちゃんの恋
人になったんだ。学校にも通わせてもらった。
あたしは…寝る場所やごはんとかと引き換えに、柴ちゃんの恋人になった。
…それで、十歳から十四歳になるまでの四年間…あたしは、柴ちゃんのヒモだったんだ。」
梨華は、『もうやめて』と叫びそうになった。…いや、今だけではない。あゆみの話が出た
時からずっと、叫びたかった。
- 314 名前:第二十三話 投稿日:2002年11月15日(金)20時42分53秒
- どうして、その時ひとみを見つけたのが自分でなかったのか。
それを考えると、胸が引き裂かれそうになるのだ。
「だけど、十四の時に…なつみ姉ちゃんがあたしを探し出した。」
梨華は、少し震えだしていた。
「なつみ姉ちゃんは、『こんな生活してたら、絶対ロクな大人になれない。今よりも貧乏に
なるだろうけど、一緒に暮らそう。』って言ってくれた。
それであたし、目が覚めたんだ。
今のあたしは、柴ちゃんを不幸にしてるってわかった。」
「…不幸?」
ひとみちゃんを手に入れて、不幸なはずないじゃない。
梨華はそう言いかけて、やめた。
もしかしたらそれは、梨華のプライドだったかも知れない。
それを知らずに、ひとみは続ける。
「だってあたし、柴ちゃんに恋愛感情持ってなかったんだもん。」
「…え?」
- 315 名前:第二十三話 投稿日:2002年11月15日(金)20時43分24秒
- 「嫌いじゃなかった。…だから、その…恋人がするような事も、したし…抱きもした。」
「・・・・・・。」
激しい嫉妬を感じて、梨華は顔をしかめた。
(わたしには触れるだけのキスしかした事ないのに!!)
でも、やっぱり口には出さない。
そんな梨華の内心を悟ってか、ひとみは慌てたように付け加える。
「そうする事が恩返しだって思ってたんだよ、それまでは!
だけどあたし…柴ちゃんの事、友達以上には思えなかったんだ。
それなのに、生活費全部頼って、恋人のフリして…恩返しどころか、あたしはずっと柴ちゃ
んを傷付けてたって事に気付いた。
だから、柴ちゃんと別れて…なつみ姉ちゃん達と暮らし始めたんだ。」
話し終えて、ひとみはふーっとため息をついた。
- 316 名前:第二十三話 投稿日:2002年11月15日(金)20時43分54秒
(…言っちゃった…。)
これで、もしかしたら梨華との関係が終わってしまうかも知れない。
ひとみはそれを考えて…梨華をもっと強く抱きしめた。
もう、これで会えなくなっても後悔しないように。
だけど…ひとみは、わかっていた。
そんな事をしても、梨華を諦める事なんかできないだろう。
あゆみには悪いが、これはひとみにとって初恋なのだ。
何も言わない梨華を抱きしめて…ひとみは絶望的な気分に襲われるのだった。
- 317 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月15日(金)20時44分25秒
ヨッスィー…辛い過去があったのね…。
つーか彼女、ドン底の生活と最上級の生活、両方とも知ってます。
そして、恐るべしこんこんの記憶力(笑)
>ひとみんこ様
ジゴロってゆーか…けっこう苦労人、ですね(笑)
てゆ−か『波乱万丈』?
>ななしのよっすぃ〜様
柴ちゃんのヒモ立候補一人目〜!!
理想の職種…たしかにそうですね(笑)
がんばります!!
>まるみ様
柴ちゃんのヒモ立候補二人目〜!!
確かにヨッスィー、うらやますぃ〜…。
>ごまべーぐる様
柴ちゃんのヒモ立候補三人目〜!!
どーも、こんにちは〜!!柴ちゃんもてもてですねぇ♪
フランソワーズ、用務員さんに預けられました。
>きゃは様
執事・後藤が教え込んでたそうです(笑)
( ` Д´)<梨華お嬢様、悪いヤツに捕まってはいけません!!
( ^▽^)<梨華、よくわかんないっ♪
- 318 名前:まるみ 投稿日:2002年11月15日(金)21時30分33秒
- いちーちゃんはもしかして・・・なっち?
なっちにも幸せをあげて下さい。
それにしても10歳でヒモ生活をしていたヨッスィーも辛かったんだろうね。
四姉妹みんな幸せになって!
- 319 名前:あおのり 投稿日:2002年11月15日(金)22時47分03秒
- うーヨシコにそんな過去が…
柴ちゃんとのことはしょうがなかったんだよねぇ。
梨華ちゃんも分かってあげてくれい。
しかし齢10歳そこそこで女心をくすぐるとは!
梨華ちゃんこれからも苦労しそう。でも俺的にはそこが萌え(←氏ね
あさみちゃんにもこれ以上はない!ってぐらいの頼りになる
正義の味方圭ちゃんが現れたからもう大丈夫、きっと大丈夫!?
- 320 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月16日(土)08時28分31秒
- ひーさま、波瀾万丈の人生、まるで小説みたい!?
そうか! 小説でしたね。(w
しかし10歳にしてヒモになれるなんて、天才的に男前?
- 321 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月16日(土)09時07分40秒
- よ・・・・よしこぉぉぉ〜〜〜!!!
思わず叫んでました。10歳でそんなことをしてたなんて・・・・
これからは幸せになって欲しいです^^
更新楽しみにしてます!
がんばってください!
- 322 名前:第二十四話 投稿日:2002年11月16日(土)13時46分51秒
しばらく無言で梨華を抱きしめていたひとみだったが、時間が経つにつれそわそわして
来た。
(…梨華ちゃん、今のあたしの話聞いて…どう思ったんだろう。)
そう。反応と言うモノが一切ないのだ。黙って俯いたまま、動かないのだ。
暴露してしまったひとみとしては、是非とも何か反応が欲しい。
(…できれば、拒絶反応だけはしてほしくないなぁ…。)
多くは望まない。同情されても良い。それで梨華が側にいてくれるのなら。
「…あの、梨華ちゃん?」
耐え切れなくなったひとみが声をかけると、梨華はびくっとなった。
(あ、駄目なのかな。)
ひとみの心に暗い影が落ちる。
そんなひとみの手に…梨華の手が触れた。
「…ごめんね。」
「え?」
「辛いこと、言わせちゃった。思い出させちゃった。」
- 323 名前:第二十四話 投稿日:2002年11月16日(土)13時47分22秒
- 「…そんな事…。」
ひとみは今更ながら、心臓が跳ねる。
「…あの…最後にひとつだけ…あっ、二つだけ質問して良い?」
「う、うん。かまわないよ?」
梨華の真意がわからず、ひとみはどぎまぎする。そして、自分の心臓の音が梨華にダイレ
クトに伝わってる事がすごく恥ずかしく感じた。
「ひとみちゃんが、親戚のお家を出た時…お母様は…?」
「ああ、その直前に母ちゃん、病気で死んじゃってたんだ。」
「!!…ごめん!!わたし、またひどいこと聞いちゃって…!!!」
「いや、かまわないよ。…もともと、ほとんど会った事なかったから。母ちゃんは住み込
みの仲居やってたから、休みもほとんどなかったし。」
梨華は、また黙った。
梨華はジレンマに陥っていた。
これ以上、ひとみに辛い過去を思い出させたくない。でも、もっとひとみの事を知りた
い。出会えなかった十七年間を、埋めたい。だけど…。
「で、あと一個は?」
- 324 名前:第二十四話 投稿日:2002年11月16日(土)13時47分53秒
- ひとみに言われて、梨華はうろたえる。
「あの…その、えっと…。」
口を開くが、なかなか言葉が出て来ない。そんな梨華のうなじに、ひとみは顔をうずめる。
「…なあに?」
その優しい口調に、梨華は拳を握り締めた。
「…わたしと出会うまで、何人くらいの人を…好きになったの?」
それは、梨華にとって一番重要な問題。
あゆみの事は好きじゃなかった、とひとみは言った。
だからこそ、気になるのだ。
「…いない。梨華ちゃんが、初恋なんだ。」
梨華は両手で顔を覆う。
- 325 名前:第二十四話 投稿日:2002年11月16日(土)13時48分24秒
- 「確かに、付き合った人はいっぱいいたよ。…でも、好きじゃなかった。あたし、寂しかっ
ただけだったんだ。
なつみ姉ちゃんやあさ美と一緒に暮らすようになって…その後、ののも来て…家の中は
暖かかったんだけど、それでも何か満たされなくて。それで、彼氏とか彼女とか次々に作っ
たんだけど…でも…。」
うなじにかかる吐息が、梨華の胸をいっそう締め付ける。
「…本当に、初めてなんだ。こんなに…こんなに好きになったのは。
柴ちゃんと出会って、あたしは初めて『愛される』って事を知った。
そして…梨華ちゃんと出会って、初めて…『愛する』って事を知ったんだ。」
「ほ、ほんとに?」
「うん。愛してるよ。」
恐る恐る、ひとみの顔を振り返る梨華。その梨華をひとみは一回離して、今度は前から抱
きしめなおす。
梨華の顔は、大粒の涙で濡れていた。
- 326 名前:第二十四話 投稿日:2002年11月16日(土)13時48分56秒
- 「わたしだって、愛してる。わたしも、ひとみちゃんが初恋なの。」
ひとみの胸に顔をうずめ、梨華はひとみにしがみつく。
「大好きだよ、ひとみちゃん。本当に本当に。
…だけど、わたし…悔しいの。」
「悔しい?」
「…なんで、十歳の時のひとみちゃんを見付けたのが…わたしじゃなかったんだろう。」
「え?」
梨華は、ひとみの着ているセーターをぎゅっと握る。
「…これが、嫉妬って言うのかしら。柴田さんが、四年間もひとみちゃんを独り占めにし
てたって思うだけで…悔しくて悲しくて、涙が止まらないの…。」
梨華は今まで、他人を羨むと言う事をした事がなかった。常に梨華は『羨望の対象』だっ
たのだ。
初めて味わう感情に、梨華は戸惑っている。
「…軽蔑とか、しないの?」
「なんで?」
梨華は涙に濡れた顔を上げた。
「だってあたし…私生児で、元ホームレスで、元ヒモなんだよ?」
- 327 名前:第二十四話 投稿日:2002年11月16日(土)13時49分26秒
- 「でも、ひとみちゃんじゃない。」
「え?」
梨華の言ってる意味がわからず、ひとみはきょとんとする。そんなひとみに、梨華は微笑
んだ。
「…馬鹿ね、ひとみちゃん。
わたしは、『ひとみちゃん』が好きなの。
過去も環境も何も関係ないよ。わたしが好きなのは『吉澤ひとみ』って言う人間なんだ
から。」
「梨、華ちゃ…」
ひとみは、梨華を強く引き寄せる。
「きゃんっ」
いきなり引き寄せられ、梨華はひとみの腕の中に倒れこむように抱かれた。
「…梨華ちゃん。愛してるよ。」
「うんっ。わたしも愛してる。」
そして、キス。
今までのような触れるだけのキスではなく…もっと激しい、お互いの想いを乗せたキス。
唇が離れると、梨華はぼんっと赤くなった。
- 328 名前:第二十四話 投稿日:2002年11月16日(土)13時49分59秒
- 「…可愛い。」
「・・・・・・。」
ひとみに言われて、梨華は真っ赤な顔を隠そうと俯いた。しかし、それもひとみに阻止さ
れる。
「可愛いんだから、もっと見せてよ。」
「は、恥ずかしいよぉ…。」
「本当に可愛い…。」
もう一度キスをしようとした、その時。
「ちょっと。私の存在、キレイさっぱり忘れないでくれない?」
慌てて声のした方を見ると、そこにいたのは…あゆみだった。
「柴ちゃん!」
「柴田さん!!」
ミステリアス美少女・柴田あゆみは、そのミステリアスな美貌を曇らせた。
「…そー来るか。やっぱ私、読みが浅かったな。」
- 329 名前:第二十四話 投稿日:2002年11月16日(土)13時50分33秒
- はーっ、と、深いため息を付く。そんなあゆみに、ひとみは梨華を抱きしめたまま言った。
「ごめん、柴ちゃん…。あたし、ひどい事したよね。」
「ま、ひどい事されたわね。」
「…本当にごめん。でも…。」
ひとみも表情を曇らせる。
「あたし…やっぱり、柴ちゃんのトコには戻れない。梨華ちゃんが好きなんだ。」
「ひとみちゃん…。」
梨華はその言葉に感激しつつ、あゆみを気にする。
するとあゆみは、厳しい顔付きになって…言い放った。
「あんたじゃないのよ。」
「「・・・・・・。」」
しばし、沈黙。
「…はい?」
立ち直ったのは、ひとみの方が先だった。
- 330 名前:第二十四話 投稿日:2002年11月16日(土)13時51分06秒
- 「だから、ひとみじゃないの。」
「え?」
「…いい加減、察しなさいよ。」
あゆみはつかつかと二人に歩み寄り、梨華をひとみから引っぺがした。
「きゃあっ!」
「梨華ちゃんっ!」
そしてあゆみは、梨華をきゅっと抱きしめる。
「私が欲しいのは、こっちなの。」
呆然とするしかないひとみと、困惑顔の梨華。
そんな二人を前に、あゆみは…ミステリアスに微笑んでいた。
- 331 名前:第二十四話 投稿日:2002年11月16日(土)13時51分41秒
中学校の近所の喫茶店で、圭はあさ美にメニューを渡した。
「どうぞ、なんでも好きなものを注文して。奢るわよー。」
圭に言われて、あさ美の頬が思わず緩む。
「…それじゃ私、『あんブラン』注文して良いですかー!?ココのオリジナルで、美味し
いって有名らしいんですよー!今日仲良くなった方に進められて…」
そこまで言って、はたと気付く。
(わ…っ、私、一体何を…!!見知らぬ方に連れられて喫茶店に入ってケーキ奢らせよう
だなんて…!!!)
なかなか図太い神経をしている。
「…あんブラン、ね。飲み物は?」
「アールグレイのストレートで…。」
ウェイトレスに注文を出すと…圭は話を始めた。
「…さっきも言ったけど、アタシは保田圭って言うの。」
「は、はぁ…紺野あさ美です…って、ご存知なんでしたっけ…。」
あさ美はぽりぽりと頭をかいた。そんなあさ美を、圭はにっこりと笑顔を浮かべて見る。
- 332 名前:第二十四話 投稿日:2002年11月16日(土)13時52分11秒
- 「…それで、私に…何の御用なんでしょうか。」
「アタシの妹は去年まで、紺野のクラスにいたの。」
「はぁ…。」
そこに、ウェイトレスがケーキと紅茶…そして圭の頼んだコーヒーを運んで来た。
一旦話を中断して、ウェイトレスが去るのを待つ。
「…でも、妹は…もういない。自殺したのよ。」
そこで、あさ美は目を見開く。
『女子中学生、援助交際の果てに自殺
背景には、集団による「いじめ」の疑い』
その記事がまた、脳裏に蘇ったのだ。そして、その記事に書いてあった学校名を思い出す。
(どうして今まで、思いださなかったんだろう!!)
その学校名は、あさ美の現在通っている学校の名前だった。
「…妹さん、愛さん、でしたっけ。」
「知ってるの?」
「はい…去年、ちょっと新聞で見かけまして…。」
「そう。それなら話は早いわ。」
圭はコーヒーを一口飲んだ。
- 333 名前:第二十四話 投稿日:2002年11月16日(土)13時52分42秒
- 「…紺野さんも、『アイツ』に…やられてるんでしょ?」
「…はい。」
あさ美はふと、『アイツ』と呼ばれている人物の顔を思い出した。
あさ美をいじめを裏で仕切っている、影の首謀者。
他のクラスメート達は、そいつの尻馬に乗っているに過ぎない。あさ美が怖いのは尻馬
に乗っているクラスメート達ではなく、その首謀者ただ一人だ。
何をするか、わからないヤツなのだ。
「アタシの妹は、自殺じゃない。『アイツ』に追い詰められて…殺されたのよ。」
「・・・・・・。」
やりかねない、とあさ美は思った。
「紺野さんは、愛よりも強いのね。屈する事なく、戦ってる。
だから、お願いがあるの。」
圭とあさ美の目線が合う。
「『アイツ』…松浦亜弥を、倒して!!」
あさ美は、フォークを握る手に力を込めた。
- 334 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月16日(土)13時53分14秒
よーやく『アイツ』の名前が出ました。
最後の最後まで迷いましたよ。誰にしようか、と。
…しっかし…私が書く彼女は、何故にいつも憎まれ役なのだろうか…。
けっこう好きなのに…(泣)。
>まるみ様
どーなんでしょーねぇ。いちーちゃん。
彼女にもまだまだ謎がありますから♪
ヨッスィー、今回もピンチです(笑)!!
>あおのり様
苦労人梨華ちゃんに萌えるとは…通ですね(笑)!!
私もなにげに頑張って(苦労して)る梨華ちゃんがかわゆくてしょーがなかったりします。
今回は困惑顔で終わった梨華ちゃん。次はどんなだ!?
>ひとみんこ様
天才です。彼女は天才的男前です。
こんこんは本物の天才なのですが(笑)
そーいや最近、ののたんが出て来ないなぁ…。
>ヒトシズク様
マジで波乱万丈。人生経験豊富です。
それ故に、身分違いをそこまで意識するんですねぇ、このヒトは。
頑張りますよー!!どうぞよろしく☆
- 335 名前:まるみ 投稿日:2002年11月16日(土)14時34分09秒
- あ〜やあややあややや〜
でたー!!!
柴ちゃんそっちに行ったかー
姫の取り合いどーなるんでしょうか?
楽しみ。
- 336 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月16日(土)16時51分34秒
- 最初の頃にレスをしたものです〜(w
ずーっとその後ロムってました。
アイツの名前が出ましたね、、、
全然想像してませんでした!どうなるのかなぁ(w
後は柴ちゃんですね!そ〜くるとは(W
続きが楽しみです♪
- 337 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月16日(土)18時02分55秒
- 初レスします。ついに『アイツ』の名前が出ましたね。
こんこん、圭ちゃんと愛ちゃんのためにも負けずに立ち向かって欲しいです。
で、柴ちゃん…そう来ましたか。
もう1人存在忘れられてる人がいる気がするんですが、その人は柴ちゃんのことどう思うでしょうかねぇ。
続き楽しみです。
- 338 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月16日(土)18時28分55秒
- あ〜松浦さんでしたか〜。。。
なるほど・・(自分でいって自分で納得・・)
よっすぃ〜の過去。つらいっすね〜。。。
てか、柴っちゃん!梨華ちゃん目的でしたか〜。。。ほぅほぅ・・・
また、一波きそうですね^^;
ではでは更新がんばってください
楽しみにしてます^^
- 339 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月16日(土)19時13分41秒
- 初レスです。
やったー。あややだ。
勝手に「アイツ」はあややなんじゃないかなぁ〜なんて読んでたんで。(w
こんこんの恋愛と学校のこれからとか、石・吉・柴の結末とか、いちーちゃんとなっちとか、すんごい気になります。
あとフランソワーズさんも何気、気になる。(w
本当に更新が楽しみです。
これからも頑張ってください!
- 340 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月16日(土)20時35分55秒
- ビンゴ〜〜〜〜〜〜〜〜!
アイツ、当たってました、彼女しかいないと思ってました。
でも彼女にも救いの手が・・・・・・?
しばっちゃん、そう来ますか?
もう目が離せません!
- 341 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年11月17日(日)01時16分33秒
- クロイツさま
更新お疲れさまです。
『あいつ』は、あやゃですか。
よっすぃ〜・梨華ちゃんと同じぐらい好きな亜弥チャンがいじめの主犯。
どうか更正して、優しい子になりますように...。
柴田さんのヒモよりも姫のヒモになりたい。
上目遣いでお願いされたたらなんでもしちゃいそうです(w
PS:ようやく更新に保存が追いつきました。
BGMをつけて見ました。
2曲しかないですが選択できるようにしました。
どんな曲が一番、ここのイメージに合うんでしょうね?
よかったら、教えてください。
h ttp://kuni0416.hp.infoseek.co.jp/text/
- 342 名前:第二十五話 投稿日:2002年11月17日(日)15時24分09秒
真希は、ため息と共に立ち上がった。
「…フ…私は執事。主の専属運転手に突っ込まれたくらいで、いつまでもクヨクヨしてい
ちゃいられない…。」
その割りに、立ち直るまでに約一時間かかった真希であった。
「…それじゃ山崎。後はまかせたよ。」
「え?後藤さん、お嬢様をお待ちしないんですか?」
「先に石川家に戻ってる。せっかく早退したんだ。たまってる仕事を全て片付けておこう
と思って。」
そして真希は、梨華とひとみが去って行った方向を見た。
「…それに、あいつがいるし。仲直りした後は、私なんて邪魔なだけだ。」
「はあ…。」
「それから山崎。一つ忠告しておく。」
くるりと向き直った真希に指差され、山崎は面食らう。そんな山崎に、真希は人の悪い笑
みを浮かべた。
「バカップル相手にヘタな事を言うと、うんざりする程のろけられる。
それを回避するには…終始、黙ってる以外に方法はない。」
なんとも説得力のある言葉を残して、真希は去って行った。
残された山崎は…一瞬ぽか〜ん、としてからはっと正気に返って呟いた。
「後藤さん…逃げたな。」
- 343 名前:第二十五話 投稿日:2002年11月17日(日)15時24分39秒
「…ったく、人騒がせな。大体、なんで私が梨華お嬢様とヨッスィーの仲を取り持つよ
うなマネをわざわざせにゃーならんのか…。」
最寄り駅にたどり着き、石川家本邸までの道のりを歩きながら…真希はぶつぶつと呟いて
いた。
彼女はまだ、ひとみが出現してから自分のキャラが壊れかけている事に気付いていない。
『執事の中の執事』後藤真希のキャラを壊すとは、恐るべし吉澤ひとみ効果。
ようやく石川家本邸の正門前に着く。ふと反対側を見ると、『Tochter.』があ
る。
(…ヨッスィーと言い、紺野さんと言い…ここの店員は変わってる人間の宝庫だな。もし
かして、長女と三女も変わってるのかな?)
先日、あさ美を送り届けた時に会った長女の事を思い出す。
(安倍なつみ、だっけ。)
ほのぼのとした印象を与える、お姉さんだった。標準語でしゃべってはいたが、ところど
ころイントネーションが訛っていた。真希の頭の中にある資料によると、北海道出身らし
い。
- 344 名前:第二十五話 投稿日:2002年11月17日(日)15時25分15秒
- 「…ま、どうでも良い事だな。」
要するに、梨華に『お買い物の仕方』を教えてくれれば良いのだ。それ以上、真希には深
入りするつもりはない。
…ひとみとコンビを組み、あさ美と急接近してる時点で、十二分に深入りしてると言う
事を真希はまだ気付いていない。
そんな真希の目に、一人の人物が見えた。
「・・・・・・っ!!!??」
『Tochter.』のカウンターで、じっとケーキを見つめている人物。
ひとみの『Tochter.』での制服と同じ、ギャルソン服に身を包んだ、男装の麗
人。
離れてたって、一目見ればわかる。自分が今、プロの執事として梨華に仕えていられる
のは彼女のおかげなのだから。
「…いちーちゃん!!!」
真希は、自分でも知らない内に叫んでいた。
呼ばれた人物…市井紗耶香は、真希の姿を見て…ゆっくり、穏やかに微笑んだ。
- 345 名前:第二十五話 投稿日:2002年11月17日(日)15時25分45秒
梨華をはさんで、ひとみとあゆみはにらみ合っていた。
「…柴ちゃん。どういう事だよ。」
ひとみの言葉に、あゆみは冷たい微笑みを浮かべる。
「どういう事もこういう事もないよ。私が欲しいのは、石川さん。」
そう言って、ちょっと考える。
「…石川さんって、なんか他人行儀よね。ねえ、私も『梨華ちゃん』って呼んで良い?」
腕の中で混乱中の梨華に言うと、梨華は目をぱちぱちと瞬かせた。
「か、かまわないけど…」
「梨華ちゃんっ!!ナニ許可しちゃってんだよ!!」
「いやぁん、嬉しいっ!!梨・華・ちゃん♪」
「コラ、柴田ぁ!!調子に乗んな!!梨華ちゃん離せ!!馴れ馴れしく『梨華ちゃん』呼
ぶなぁぁぁぁ!!!」
ひとみがつかつかと近付くと、あゆみもそれと同じ分だけ離れる。
そして、梨華をぎゅっと抱きしめながら言う。
「…確かに私、二年前まではひとみが好きだったわ。だから初めてのキスもえっちも全部
捧げた。…あの時は、ひとみみたいな『王子様〜!!』って感じのヒトが理想だったのよ。」
『初めてのキスもえっちも』の部分で、梨華の表情が曇る。
- 346 名前:第二十五話 投稿日:2002年11月17日(日)15時26分16秒
- しかし、あゆみはそれに気付かずに話を進めた。
「だけどね…ひとみと別れた後、気付いたの。
私やっぱり、守られるより守りたい。王子様よりお姫様の方が好き。」
「「・・・・・・。」」
ひとみも梨華も絶句。
そんな二人にまたしても気付かず、あゆみは拳を握り締めて語りだした。
「梨華ちゃんは覚えてるかな?去年の、飯田家主催のハロウィンパーティー!!」
「う、うん…毎年ハロウィンに、飯田家の長女の圭織さんが開く仮装パーティーだよね?」
「そう!!」
あゆみのミステリアスな美貌に、うっとりとした色が浮かぶ。
「ひとみと別れて、自分の好みに気付いた私は…そこで、理想のお姫様を見つけたの!!」
「「・・・・・・。」」
「それこそが梨華ちゃん!!あなたなのよ!!」
「…は、はぁ…。」
梨華は曖昧に答える事しか出来ない。
- 347 名前:第二十五話 投稿日:2002年11月17日(日)15時26分48秒
- 確かに、飯田家のハロウィンパーティーには毎年招待されて、出席している。だけど、
そこであゆみに出会った記憶は皆無なのだ。
「一目惚れだったわ!梨華ちゃんはピンクのフリフリのドレスを着て、頭に輝くティアラ
をかぶっていて…!!マリー・アントワネットも裸足で逃げ出すであろう可愛らしさだっ
たのよ!!」
「そ、そんな事…ないよぉ。」
「謙遜する梨華ちゃんも可愛い☆」
「だから、そんな事ないってばぁ。」
だが、ほめられて悪い気のする女はいない。梨華は頬をピンクに染めた。それがひとみに
は気にいらず、ひとみの顔は不機嫌の色に染まる。
「…それだっつーのに…この私とした事が、声をかけられなかったの!!!悔しかった…!!
その夜は私、悔しさのあまり眠れなかった!!
その時、決めたの。梨華ちゃんと同じ学校に通ってやるって。
そうしたら、一日中一緒にいられるじゃない?
…だけど…石川家はガードが固くて。なかなか見つからなかったのよ。だから一年もか
かっちゃったのよね。」
- 348 名前:第二十五話 投稿日:2002年11月17日(日)15時27分21秒
- あゆみは梨華をじっと見つめる。
「…それで、ようやく見つけた。私のお姫様。…それなのに…それなのに!!」
あゆみはキッと、ひとみをにらみつける。
「こんなヘンな虫がついてるじゃない!!」
「へ、ヘンな虫って…柴ちゃん。仮にも元カノに向かって…。」
「うるさいわね!過去は過去!!今、私達はライバルなの!!」
あゆみはため息をついた。
「…ったく、計画が台無しよ!!梨華ちゃんに『ひとみは二股をかけてる』って信じさせ
て、ひとみと別れさせて…それで『お互い、ヒドい目にあったわね』とか言いつつ急接近
して、『傷を癒す為に新しい恋をしよう』って持ちかけて、梨華ちゃんを私の彼女にする
計画だったのに!!」
あゆみ、何気に策士である。
- 349 名前:第二十五話 投稿日:2002年11月17日(日)15時27分54秒
- 「…何だよソレ!!梨華ちゃん騙すつもりだったのかよ!!」
「モチロン。恋愛には駆け引きと戦略も大切なのよ。」
「それじゃあ、あたしはともかく梨華ちゃんの気持ちはどうなるんだよ!!」
「それは大丈夫。私は梨華ちゃんを幸せにできる自信がある。」
あゆみはびしっとひとみを指差す。
「あんたじゃ駄目なのよ。」
「か、勝手に決めんなよ!!」
しかし、あまりのあゆみの自信満々な態度に、ひとみはおされ気味。
「四年間も付き合ってた私が言うんだもの!!信憑性あるわよね〜、梨華ちゃぁん。」
「な…っ!!そんな事ないよね、梨華ちゃん!!あたしの事、好きなんだよね!?」
そんな二人に挟まれて、梨華はおろおろと、眉毛を寄せて困っていた。
- 350 名前:第二十五話 投稿日:2002年11月17日(日)15時28分29秒
放課後、誰もいない廊下を、麻琴は一人で歩いていた。生徒会の会議が長引き、こんな
時間になってしまったのだ。
誰もいない廊下が、麻琴は嫌いだった。今は亡き親友を思い出してしまうから。
勉強なんか出来なくても、彼女は十分に素敵な人間だった。
彼女と出会ったのは、二人の他には誰もいない廊下だった。
『あ、なんか落ちましたよ?』
それが、初めて聞いた彼女の声。
宿題のプリントを落としたのを、彼女が拾ってくれたのだ。
最後に彼女と会ったのも、二人の他には誰もいない廊下だった。
『大好きだよ、麻琴。…私は弱い人間だから、強い麻琴がずっとうらやましかった。』
それが、一番最後に聞いた声。
どうして、彼女が『アイツ』にいじめられていると…援助交際なんかさせられてると、
気付けなかったのか。それは、麻琴の心に抜けないトゲとして残っている。
- 351 名前:第二十五話 投稿日:2002年11月17日(日)15時29分02秒
- 「…愛ちゃん。」
呟いてみても、返事はない。
当然だ。もう彼女の親友は、この世にはいないのだから。
と、そこに。
「愛ならいないけど、亜弥ならいるよ〜。」
「!?」
麻琴は身構えて、振り返る。そこにいたのは…誰よりも憎い女。
松浦亜弥であった。
「こんにちは、小川さん。久しぶりだね。」
「…できれば一生、会いたくなかったよ。」
「そんな事言わないでよぉ。あやや、悲しくなっちゃうじゃん。」
麻琴はぐっと、拳を握った。
「…そうだよね。松浦さんは、役者だもんね。悲しくもないのに涙が流せるんだよね。」
麻琴は、思い出した。
涙すら流すことの出来なかった、愛の葬式。そこで亜弥は、派手に泣き崩れて見せた
のだ。
- 352 名前:第二十五話 投稿日:2002年11月17日(日)15時29分33秒
- だが、葬式が終わった後の亜弥の顔を、麻琴は忘れない。
『ショボい葬式だよね。ウチのおじいちゃんの時でさえ、もっと金かかってたよ。』
取り巻き連中にそう言いながら、高笑いを上げていたのだ。
「…やだ、怖い顔しないでよぉ。」
麻琴は、ふっと顔を亜弥から逸らした。
これ以上見てても、良い事なんか何もない。
(こいつを殺したって…愛ちゃんは戻って来ないんだから。)
麻琴は歩き出した。
「何?挨拶もナシに行っちゃうワケ?感じ悪〜い。」
そんな亜弥の言葉を背中に受けて…麻琴は、あさ美の事を思い出した。
今日の昼、希美に紹介されたあさ美。
ちょっと喋っただけでもわかる。頭がものすごく良くで、不思議で…ちょっと変わっ
た女の子。
麻琴は不敵に微笑んで、亜弥を振り返った。
「…松浦さん、新しい遊び相手を見つけたんだってね。」
- 353 名前:第二十五話 投稿日:2002年11月17日(日)15時30分08秒
- すると亜弥も、にっこりと笑う。
「うん!前の不良品とは違って、今度のオモチャはすっごく良いのよ!なんてったって、
性能違うの。」
人間を人間とは思ってない、その言葉。麻琴の笑顔が、冷たいものに変化した。
そして、言い放つ。
「…今度は、前みたいにアンタの思う通りには行かないから。覚悟しときな。」
麻琴は、その場から早足で去った。
そして、さっきの廊下から十分離れた所にある、教職員用トイレに駆け込み、個室に
入る。
麻琴は声を殺して、泣き始めた。
- 354 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月17日(日)15時31分12秒
あやや…なんでそんなに悪役が似合うんだ…。
私、本当に好きなんですよ?あやや。
梨華ちゃん>>>>>>>ヨッスィー>>>>ミキティ>>>あやや>>>>ののたん
って感じですが(笑)
柴ちゃん策士ですね。そんな彼女も大好きです。
>まるみ様
梨華ちゃんもてもて。んでもって柴ちゃん、策士です。
体力勝負・ヨッスィー…どう出るか!?
>>>336名無し読者様
おおっ!!お久しぶりです♪
ありがとうございます。がんばりますね!!
あやや…ひどい役でごめんよ…。
>>>337名無し読者様
はじめまして〜!どうも、ありがとうございます!
柴ちゃんに何言わせるか考えるの、すっごく楽しいです☆
がんばりますね!どうぞよろしく!!
- 355 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月17日(日)15時32分16秒
レスの続きです♪レスが多くてほんとに嬉しい…
>ヒトシズク様
一波ってゆーか、大波注意報です。
お姫様、困りまくってます。
ありがとうございます、がんばります!!
>>>339名無し読者様
はじめまして!!ありがとうございまっす☆
石・吉・柴、決着つくまでちょっと時間がかかりそうな勢い(笑)
頑張ります!!どうぞよろしくお願いします!!
>ひとみんこ様
ををっ!ビンゴですか?おめでとうございます!!
ま、彼女にもいろんな事情があるのです。
ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいです♪
>ななしのよっすぃ〜様
すみません…あややかなりの悪役で…(汗)
好きなんですけどね…てゆーか、完璧な悪役がこなせるのが彼女しかいなかったって
言うか(大汗)。
姫のヒモ…なりてぇ!!確かに、おねだりされたら断れませんね!!
そして、いつも保存ありがとうございます!!感謝しております!!
BGM…やっぱり執事・後藤の気持ちを察して、私はいつも『ハッピーサマーウェディン
グ』にしております(笑)。
- 356 名前:チップ 投稿日:2002年11月17日(日)16時34分37秒
- 失礼します。
今まで黙っていましたが、梨華ちゃん争奪戦★
私くしも参戦致します。 遅すぎ?
にしてもあやや演技派ですか、おがたか好きなので切ないです。
よしこのごっちん破壊工作に乾杯!
- 357 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月18日(月)08時52分50秒
- 消去法で行くと、S系が似合うのは、やぐかあややでしたから、あややに賭けました。
ここは、ほんとの悪人はいないようなので、安心しています。
柴っちゃん、立ち? に変身ですか? おもろいかも。
柴っちゃんの策には、ひーさま体力勝負ですか?(w
- 358 名前:第二十六話 投稿日:2002年11月18日(月)12時35分11秒
梨華は、困っていた。
ひとみとあゆみは、梨華をめぐってどんどんと険悪になって行くのだ。十七年間、温
室の中で育った梨華は…どうして良いのかわからないのだ。
(ど、どうしよう〜っ!!)
梨華が好きなのは、ひとみだ。
それは、変えようのない真実。
だけど、自分の事を『好きだ』と言ってくれているあゆみに、何て言って良いのかわ
からないのだ。
「…ねえ、梨華ちゃん。どーなのさ。」
ひとみの声に、怒気がこもって来る。
「ど、どーって…。」
「あたしなの?柴ちゃんなの?どっちを選ぶの?」
(それはひとみちゃんなんだけどぉぉぉぉっ!!)
おろおろしながら、ひとみの顔とあゆみの顔を見比べる。
不機嫌なひとみに対して、あゆみは笑みを浮かべていた。
「梨華ちゃん、そんなせっかちで怒りっぽい女なんて放って置いて、私と付き合おうよ。」
「う…いや、あの…。」
「ゆっくり考えてくれてかまわないのよー?私はひとみと違って、梨華ちゃんを急かし
たりはしないから。」
「…そ、その…。」
- 359 名前:第二十六話 投稿日:2002年11月18日(月)12時35分42秒
- しどろもどろになる梨華の頬に、あゆみはちゅっとキスを落とす。
「っあああああああ!!何しやがるっ!!!」
「おほほほほ!!ヘタレは黙って見てなさい!!」
「てめぇ…コロス!!」
「望む所よ!あんたさえいなくなれば梨華ちゃんは私のモノ!!」
既に臨戦態勢に入った二人を見て、梨華は腹を決めた。
「…もう、やめてよぉ、二人とも!!」
梨華の叫び声に、二人はぴたっと動きを止める。
そんな二人に向かって、梨華は眉毛を寄せながら言った。
「…ちゃんとハッキリ言わなかったわたしが悪いのよね。」
「いや、そんな…」
「梨華ちゃんは悪くないのよ。」
「ううん、わたしが悪いの。」
梨華はするりとあゆみの腕から抜け出て、自分の足ですっくと立った。
「…ごめんね、柴田さん。わたしやっぱり、ひとみちゃんが好きなの。」
- 360 名前:第二十六話 投稿日:2002年11月18日(月)12時36分17秒
「「・・・・・・。」」
一瞬、ひとみですらその言葉の意味を理解できなかった。
「梨華ちゃん…!!」
ようやくその意味を理解したひとみが、梨華に近付こうとするが…梨華は手でそれを制す
る。
「…ねえ、柴田さん。さっき『ひとみちゃんじゃわたしを幸せにできない』って言ってた
わよね?それはなんで。」
するとあゆみは、ちょっと曇った表情で口を開いた。
「…ひとみはね、流されやすいの。」
「流されやすい?」
「そう。」
あゆみはちらりと、横目でひとみを見る。
「…コイツ、私のヒモ時代に別の女作った事あるのよ。」
「うぐっ。」
「えええええっ!?」
ひとみの顔に、モロに『しまった!』と言う言葉が出る。
「そう。例え本命の彼女がいても、告白されたら断れないの。
断っても、『一回抱いてくれたら諦めます』って言われたらそのまま抱いちゃうのよ。」
「・・・・・・っ!!!」
ショックを受け、よろめく梨華。
- 361 名前:第二十六話 投稿日:2002年11月18日(月)12時36分48秒
- 「しかもひとみ、なんだか知らないけどエラいモテるのよ。特に女に。
…私が『王子様』じゃなくて『お姫様』を求めるようになったのも…そのおかげよ。」
あゆみはうっとりとした表情になり、梨華を見た。
「…ま、そのお陰で、梨華ちゃんに出会えたんだけど♪」
「・・・・・・。」
梨華の表情は青い。その梨華を見てから、ひとみはあゆみをにらみつけた。
(…よ、余計な事を…!!)
するとあゆみは、その心の言葉を読み取ったらしい。悠然と微笑んだ。
(余計な事じゃないわよー?あんたの彼女になるなら、大切な事じゃなーい♪)
(あたしはもう梨華ちゃん一筋なんだよっ!!)
(でも、性格はあんま変わってないじゃない。)
(うぐっ…で、でも、あの時のあたしと今のあたしは違うんだっ!!)
(さ〜て、どうかしらね〜。)
無言の会話を交わすひとみとあゆみ。
その二人を前に、梨華は涙を流し始めた。
「ええっ!?梨華ちゃん!?」
ひとみが慌てて駆け寄るが、梨華はあゆみの方を見ていた。
「…辛かったのね、柴田さん…。」
「「へ?」」
- 362 名前:第二十六話 投稿日:2002年11月18日(月)12時37分51秒
- 「だって…そんな、恋人が自分以外の人に…そんな事しちゃうなんて、辛かったでしょう?」
すると、ひとみよりも一足先に立ち直ったあゆみが、あわれっぽい表情を作って見せる。
「…そう…辛かったわ…。その辛さはもう、身を八つに引き裂かれるかのごとく…」
「うっあああああ!!デタラメ言うなぁぁぁぁぁぁ!!!
騙されるな梨華ちゃん!!柴ちゃんだって、あたし以外に女作ったり男作ったりしてた
んだぞ!?」
「それは、ひとみの浮気に対抗してだもーん♪」
「嘘吐くなっ!!他に相手作ったのは柴ちゃんのが先だったじゃん!!」
「少なくとも私は、あんたに気付かれないように細心の注意払ってたもん。
浮気は、バレなきゃ『浮気』にならないのよ。」
「ワケわかんねぇっ!!」
そんな二人の間に割って入り、梨華はあゆみの頭を撫でた。
「柴田さん、良い人なのね…。自分が辛い目を味わったから、わざわざ忠告してくれるな
んて…。」
「うう〜ん、ちょっと違うんだけど、梨華ちゃんがそー言ってくれるならそーゆー事にし
ておこうかなぁ。」
- 363 名前:第二十六話 投稿日:2002年11月18日(月)12時38分22秒
- 「…かわいそうに…。」
梨華に触れられて、幸せそうなあゆみ。梨華の背後に立っているひとみは、これ以上なく
不機嫌な顔をしていた。
「でもね、柴田さん。」
「なあに?梨華ちゃん♪」
「…ごめんなさい。わたし、それでもひとみちゃんが好き。」
「「・・・・・・。」」
「もし、二股とかされても…わたし、きっと嫌いになれない。
だって、こんなに好きなんだもの…。」
「梨華ちゃん…!!」
今度は止められなかったので、ひとみは梨華を抱きしめた。あゆみから引き離す事も忘れ
ていない。
「…ひとみちゃん。…でもね…できれば浮気も二股もしないで欲しいの…。」
「もちろん!!しないよ!!梨華ちゃんがいるのに、そんな事するワケないじゃん!!」
あゆみにしてみれば、失礼なハナシである。
- 364 名前:第二十六話 投稿日:2002年11月18日(月)12時38分52秒
- するとあゆみは、頭をぽりぽりとかきながら言った。
「…わかったわよ。わかった。今回はおとなしく引き下がるわ。でもね。」
あゆみはびしっとひとみを指差した。
「…私は、諦めないからね!!隙があればいつでも、梨華ちゃんを奪い取るから!!覚悟
しときなさいよ!!」
そういい残して、あゆみは去って行った。
残された梨華とひとみは、もう一度見つめあう。
「…梨華ちゃん。うれしかったよ。ウチを選んでくれて…。」
「選ぶもなにも…わたしには、本当にひとみちゃんだけなんだもん。今までも…多分これ
からも、きっとひとみちゃんだけなの。」
「梨華ちゃん…!!」
ひとみはぎゅっと梨華を抱きしめた。
「…目、閉じて?」
そう言うが、梨華は首を横に振る。そして、ひとみをきっとにらみつけた。
「ひとみちゃん。」
「…はい?」
「…本当に、しないでよ?」
「え!?」
キスしちゃ駄目なの!?と思ったひとみであったが、梨華はすぐにうるうると目を潤ませ
た。
- 365 名前:第二十六話 投稿日:2002年11月18日(月)12時39分25秒
- 「『え!?』って何!?やっぱりするつもりなの!?浮気とか!!」
「あ、ああ!!そっちか!!…もちろん。しない。絶対に。」
「本当よ?」
「うん、本当。」
「もしもしたら…」
「したら?」
梨華は真顔で言った。
「真希に『おしおき』してもらうからね!?」
ひとみの背中に、冷たい汗が流れ落ちた。
真希の『おしおき』。
浮気でそれを受けるような事になったら。ひとみは確実に命を落とすだろう。
「…それは怖いなあ。でもね、梨華ちゃん。」
ひとみはちゅ、っと梨華の唇を奪った。
「…安心してよ。あたしもう、梨華ちゃんしか見えないから。」
そう言うと、今度は梨華からキスをする。
一回唇を離して…次はひとみから。今度は梨華に口を開かせて、舌を入れる。
とろけそうになるキスに応えながら、梨華は頭が真っ白になって行くのを感じた。
- 366 名前:第二十六話 投稿日:2002年11月18日(月)12時39分55秒
打倒・松浦亜弥を心に決めたあさ美であったが…具体的に、どうして良いのかはわから
ない。
「…ってなワケなんですが…ののさんはどう思います?」
「うう〜ん…むずかしいモンダイなのれす。」
紗耶香も帰り、客も少なくなった『Tochter.』の店内で、あさ美は希美に相談し
ていた。
「やったこと、そのままやりかえすってのもひとつのテれすけど…」
「嫌ですよ。あんなレベルの低い事するの。恥ずかしいったらありゃしない。」
「れすよねぇ。ニンゲンとしてちょっと…って感じれすからねぇ…。」
「…まあ、私が変わらず毎日学校に行き続けるのが、一番の攻撃かも知れませんね。」
「うう〜ん。たしかに、自分のやってることがぜんぜんむくわれてないって思うのは、ちょ
っぴしセツないものなのれす。」
希美は、表情を曇らせた。
「でも…だいじょうぶなんれすか?あさ美…。そんなことされてるトコに、毎日行くなんて…。」
「完璧です。学校にはフランソワーズもいるし、ののさんも麻琴さんもいるじゃないですか。
一人じゃない、『味方』がいるんだって思えば、どーって事ないです。」
「…れも…。」
- 367 名前:第二十六話 投稿日:2002年11月18日(月)12時40分25秒
- 涙声になって来た希美に、あさ美は焦る。
「大丈夫ですってば。それに、お守りもあるんです。」
「おまもり?」
「はい。」
あさ美は、ぽっと頬をピンクに染めた。
「…とっても良く効く、お守りなんです…。」
そんなあさ美を見て、希美はなんとなく思った。
(もしかしたらあさ美…『恋』をしているかもなのれす…。)
それは、直感に近いものだった。だが、希美は確信を持つ。
そして、空想の世界に入った。
(恋とは、どんなモノなんれしょう?)
- 368 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月18日(月)12時40分56秒
けっこー簡単に決着がつきました。石・吉・柴の大戦争。
柴ちゃんはまた、ちょくちょく出て来ます。
策士でミステリアスな彼女、何気に書きやすくて大好きです。
んでもって先日、何気に白板の「作者フリー 短編用スレ 二集目」にいしよし短編
投稿したりしました(笑)。HN「十字架」で。「クロイツ」の日本語訳ですね。
なんだったら読んでやって下さいませ☆
>チップ様
はじめまして〜!!梨華ちゃん大好きーズ、一名様追加〜!!(笑)
ヨッスィー、ごっちんのキャラ壊してるのは無意識です。
そして、ごっちん自身、壊されてるなんて気付いてません。
どうぞよろしくお願いします!!
>ひとみんこ様
やぐっつぁん、S似合いますか?うっふふふふふふ…。
やぐっつぁんの見せ場はこれからやって来るのです…。
ヨッスィーは体力勝負のヒトですから!!ハードルで梨華ちゃんに負けてたけど!!(笑)
- 369 名前:まるみ 投稿日:2002年11月18日(月)13時55分17秒
- 白板も見てきましたよ〜
やっぱり、いしよしは良いですね〜
こちらでは三角関係が早々と決着がついたし、あとは
あさ美VSあやですかね〜
やぐちゃんの活躍もあるみたいなんでこれからもがんばってこー!
- 370 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月18日(月)18時11分28秒
- ぐわぁ〜〜〜〜〜、やぐさまもお出ましになるんですか?
もうこれ以上ない位のオールスターキャスト、たまりません。
この作品、完結したら、製本化します。
- 371 名前:名無し 投稿日:2002年11月18日(月)19時43分09秒
- 370のひとみんこさん。
製本化した本・・・自分も欲しいッス!
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